あー・・・・2^^¥
このスレのコンセプト。
DQはちゃんとした小説がエニックス出版から出ていますが、FFは2以外まったく刊行されていません。
文才と多少の暇のある方、どうかこのFFDQ板でFFのどの作品でもいいので、ストーリーの最初から
最後まで完全小説化してみてください。
といっても一人でこんなこと最後までやりつづける人はいないでしょう、普通。印税入るわけじゃないし。
ただの趣味だし。根気が続くはずが無い。
なので、リレー小説にするのが妥当かと。
結構おもしろい企画だと思いませんか?
ただ飽くまでも「公式の小説が出版されていない作品を情熱あるこの板の住人がノベライズする」
がコンセプトなので、FFでなくてDQでもいいです。
ただしDQ1〜7は当然対象外になるわけで、可能なのはモンスターズ等でしょう。
やはりプロの作品にはかなわないですから、DQ1〜7は書く必要がないわけです。そういうものです。
とりあえず立てました。
過去スレ閲覧。過去作はまとめサイト参照で御願いします。
またか…少し目を離すとですぐ落ちるな
6 :
297:2006/04/06(木) 22:11:45 ID:Ga9j8jtf0
久々に来てみたら、7スレ目いってて超驚いた。
でもdat落ち連発だったんですね……(´・ω・`)ショボーン
html化待ってます。
怖いから寝る前に保守しとこう
新スレ乙です。
前スレのログです。
ttp://ff-novelize.main.jp/kakolog6.html あと前スレまでの進行状況を貼っておきます。
・FF2 フリオニール達が黒騎士の襲撃に遭ったところまで。(5スレ目145)
・FF4 バロン城でセシル達がバロン王と対峙したところまで。(前スレ74)
・FF5 マギサ、フォルツァと激突中。(4スレ目87)
ジョブはバッツ『ナイト』ファリス『青魔道士』レナ『黒魔道士』ガラフ『モンク』
・FF6 エドガーとケフカが対峙し、会話を交わし終えたところまで。(4スレ目33)
・FF7AC クラウドがツォン、イリーナと別れた後、仲間達とPHSで会話しているところまで。(前スレ85)
・FF8 電波塔頂上でサイファーとビッグス、との対決。勝者サイファー。(4スレ目63)
ほすさげ
保守
ホシュ
波の音だけが、小さく聞こえる。
燃えるような夕日に照らされた廃墟で、彼等は暫しの休息を取っていた。
焚き火を囲う彼等の間には一言の会話も無い。世界を救う旅の、その終着点も間近であるにも関わらず。
重い空気を取り払うかのように、金髪の少年が立ち上がる。隣に座る少女は、憂いを帯びたまなざしで
彼を見上げる。少年は、彼女の肩にその褐色の手をそっと置く。心配するなと、暗に示すかのように。
少年は、近くの小高い丘へと歩を進める。その頂上に立つと、彼等の終着点がよく見渡せる。
その景色を、少年は知っているはずだった。しかし、それは余りにも違いすぎている。
それをしばらく眺めていた少年は、誰にともなく語りかける。共に旅をした仲間も、それに耳を向ける。
「最後かも知れないだろ?……だから、全部話しておきたいんだ」
かくて、物語は綴られる。螺旋の果てへと向かう、その物語を
FINAL FANTASY ]
14 :
13:2006/04/08(土) 09:20:29 ID:M04hwx/w0
最後の行訂正です。
×螺旋の果てへと向かう、その物語を
○それは、螺旋の果てへと向かう物語。
ていうか、勝手にはじめたけどOKなのかな?
15 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/08(土) 14:57:26 ID:AyWNr3dP0
>>14 FF]キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
どんどん始めちゃって構わないと思うよ。
]は未プレイなので楽しみ。
保守
スタジアムの最寄りの桟橋に、一艘の船が到着する。住居を兼ねたその船から姿を見せたのは、一人の少年だった。
日に焼けた肌に金色の髪、深い海のような青い瞳の少年……彼はただの少年では無い。古くからザナルカンドの人々の
最大の娯楽であるスポーツ『ブリッツボール』の選手である。それも、一流チームの、一流プレーヤーだ。
桟橋の周りには既に多くの若者たちが集まっていた。しかし、少年は特に驚く様子も無い。こんな事はザラである。
少年は笑顔で手を振り、彼等の元へと歩み寄る。そして、彼等も少年の元へと駆け寄る。
「サインして、サイン!」
その小さな体にはいささか大き過ぎる、競技用のブリッツボールを差し出して男の子がサインをねだる。
「はいよっ」
少年はポケットからマジックを取り出すと、ボールにサインを書いた。『Tidus』……少年の名前だ。
ティーダは男の子にボールを返すと、一緒に来ていた2人の男の子のボールにも、同じようにサインをしていく。
「ちょーだい!」「ボクも!」
「焦んなって……はい、出来上がりッスよ!」
子供たちは、目の前にいる自分達のヒーローにもらったサインで大はしゃぎしている。今度は、2人組の女性ファンが来た。
ティーダは自身の天才的なプレーだけではなく、端正な容姿から女性のファンも多い。そこらのアイドルよりは、ずっと多い。
「サイン、お願いしていいですか?」
「もちろん!」
2人組の女性は、どちらも中々の美人だ。思わずティーダの頬も綻ぶ。
「試合、頑張ってね!」
「任せとけって。じゃあさ、今夜シュート決めたら……あ〜…… こうすっから!」
そういうと、ティーダは両腕を挙げてガッツポーズをしてみせた。
「それ、ふたりへのメッセージっつうことで!席どこ?」
「東ブロックです、最前列!」
「私、右から5番目ね」
「了解っす!」
「試合終わったら、待ってていい?」
「もちろん!」
「やったぁ!いい店知ってんだ〜!」
とりあえず、今夜も試合の後のお楽しみは確保出来た。その後も幾人かのファンにサインを書いていたが、ゆっくりもしてられない。
「んじゃ、そろそろ行くわ。応援、よろしくな!」
ティーダはファンに別れを告げて、スタジアムへと向かおうとする。その時、先ほどの子供たちが声を揃えて言った。
「ブリッツボール教えて!」
ティーダは戸惑った。出来る事なら、彼等にブリッツボールを教えてやりたい。子供は好きだし、オフの日は近所の公園で
ブリッツボールのテクニックを教えてやったりする事もある。しかし、時間が時間だ。ブリッツ教室で試合に遅刻なんて笑えない。
「これから試合だって」
「じゃあ、終わってから!」
「今夜は、え〜と……」
今夜は先約をつけてしまっている。とはいえ、子供たちの熱意を無碍にも出来ない。どうしたものか考えていると
「今夜は、ダメだよ」
ふと、背後の少年が言った。変わった服装をし、フードを目深に被った少年である。少し不気味にも思ったが、最高のパスを上げてくれた。
「だろ?明日明日!」
「絶対だよ〜?」
「約束ッス!」
ようやくファン達を振り払ったティーダであったが、スタジアムへと向かうバスは既に発車してしまっていた。
ため息をひとつついたが、すぐにスタジアムへと続く道を走る事にした。
今の時間なら徒歩でも十分間に合うだろう。それに、ウォーミングアップも兼ねる事が出来る。
試合の事や今夜の事、明日のオフの過ごし方等をボヤボヤ考えながらティーダは駆け出した。
19 :
13:2006/04/09(日) 00:41:06 ID:eIaPBGQX0
>>13のタイトル、「序章 ザナルカンドにて」でお願いします
イイヨイイヨー
ティーダはザナルカンドの常勝チーム、ザナルカンド・エイブスのエースである。
それも、昨年鳴り物入りで入団し、わずか一年でルーキーからエースまで上り詰めたのだ。
当然、それは彼自身の弛まぬ努力と天性の才能に裏づけされた確かな実力のたまものであるが、
実はもうひとつ、大きな理由が存在する。彼自身の最大のコンプレックスでもある、大きな理由が。
『俺がそのニュースを聞いたのは、3回目の家出をしている時だった。みんなのヒーロー、ジェクトが練習中に行方不明。
捜索打ち切り。俺の親父はジェクトの熱狂的なファンでさぁ……』
ふと、よく聞くテレビ放送のMCの声が聞こえる。すぐ近くのビルを見上げると、特大の屋外ビジョンに伝説の選手……ジェクトの姿が写しだされている。
ティーダはその顔を少しだけ見つめた後、ふん、と吐き捨てると、再びスタジアムへと駆け出した。
『おいおいおい、回想シーン入っちまったぁ……さて! あれから10年。今年から始まったジェクト記念
トーナメント。そのきつ〜い潰し合いから勝ち残ったのは、そう、東A地区のエイブスと、南C地区のダグルス!
注目はもちろん、エイブスのエースのアイツ!去年のルーキーが今年はいきなりエースだ!』
10年前に行方不明になった名選手。今大会のような大規模なトーナメントに名前を冠される程の偉大な選手。しかし、ティーダはジェクトを尊敬などしない。
『あのジェクトの血を受け継いだ新しい星、今日はどんな動きを見せてくれるのか!? 今日こそ、あの幻のシュートが炸裂するのか!? 期待するなってのが無理だよなぁ!』
そう、何故ならティーダは、ジェクトの実の息子である。常勝軍団エイブスへとスカウトされた最大の要因も現在の人気もそれが大きく影響している。
そして、ティーダにはそれが耐え難い屈辱であり、コンプレックスなのである。
スタジアムには、既に多くのファンが殺到していた。選手入場口も例外ではない。
ファンはティーダの姿を見るやいなや、一斉に集まってきた。
「通して通して!はいはい、ごめんね〜」
ファンを掻き分け入場口を目指すが、中々たどり着けない。
「遅れちゃうっつーの……おい、引っ張んなって!」
普段は温厚なティーダも、流石にいらついている。しかし、ようやくガードマンがファンの洪水をせき止めてくれた。
ティーダはファンに手を振ると、早速控え室へと走った。試合まであと少し。ウォームアップは、十分だ。
その男は、小高いビルの屋上からスタジアムを見下ろしていた。エンジ色の、着流しのような服装をした白髪混じりの男だ。
彼はスタジアムから遠い海へと視線を向けた。旧い友人を見つめるような目で。
そして、海は少しずつ隆起をはじめ、巨大な球状に変化する。その中に、異形の怪物を宿して。
男はそれを確認すると、腰に提げた酒瓶を傾け、一息に飲み干した。
そして、ザナルカンドに悪夢の夜が訪れる。
スタジアムは暗闇と静寂に包まれている。ティーダはプールサイドに腰掛け、精神を昂ぶらせている。
流石にその頭には今夜の事や明日のオフなど全く無い。この試合で勝つ。純粋に、それだけを考えていた。
ティーダは瞑っていた瞳をカッと開く。それと同時に、スタジアムは光につつまれ、夜空を切り裂くような大歓声が響く。
選手たちが空中で球状を成すプール……スフィアプールへと飛び込んでいく。ティーダはエイブス側のフィールドの
最前列、フォワードのポジションにたどり着く。ダグルスのFWがガンを飛ばしてきたが、ティーダは相手にしなかった。
そして、開幕を告げるホイッスルが鳴り響く。途端に、球状のプールは戦場と化した。
相手チームのダグルスは、荒っぽいプレーと圧倒的な得点力で定評がある。楽に試合を出来る相手では無い。
スフィアプール内のあちらこちらで選手たちの衝突が繰り広げられている。ティーダはパスをもらおうとマークについた
選手を振り払う。しかし、今度は背後からタックルされ、思わずバランスを崩す。それでも上手く体をコントロールし
MFからのパスを受け取った。しかし、ダグルスの選手たちが即座にティーダの周囲を取り囲む。
当然だ。数々の名選手を擁するエイブスの中でも、ティーダは頭ひとつ抜き出ている。ティーダは止む無くパスを回す。
その後も試合は拮抗し、互いに体力を削りあう消耗戦へと様相を変えて行った。しかし、エイブス一の名コンビでもある女性のFWとMFにより
ようやく1点決めることが出来た。一度流れがつくと、もうエイブスは止められない。どんどんダグルスのフィールドを侵攻していく。
ダグルスのDFがティーダへとタックルを放つが、流れるような動きでそれをかわす。勢い余ったDFは、水壁を破り観客席へと突っ込んだ。
その様を嘲るように悠々と見届けたティーダは、再びダグルスのゴールへと泳ぎだす。そして、ボールが高く高く打ち上げられた。
ティーダはその後を追う様に上へ上へと泳ぎだす。ボールはプールを破り空を目指す。同じくティーダも水面から高くジャンプをする。
そのままバック宙のように回転し、ボールを思い切り相手ゴールへと打ちつけるティーダの十八番……スフィアシュートの動作に入った刹那。
水のヴェールに包まれた、巨大な怪物がティーダの視界に収まった。
もうちょっと上手く改行使ったらずいぶん読みやすくなるんでねえかな
>>25 アドバイスdクス。
なるだけレス数使わない用にと思ってやったけど
確かに読み辛いですね……バリバリ改善します。
お
28 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/10(月) 19:52:24 ID:3Ir+Pr+fO
お
下手ではないのにあまり魅力のあるものにならないのはFFがノベライズに合わないか、セリフが原作のままなので慨視感があるのからなのも知れません。
鮮明に映像化されてるものをノベル化するのはそうとうな実力が必要だと思います。
本編では描かれてないけどこんなことがあったら面白いんじゃないか、というようなことを書くことをお薦めいたします
俺スレ違いかな^^;
唐突に飛ぶけど
12を考える時、アーシェの復権武勇伝になるのか
ヴァンのモブ狩り放浪期(短編集)になるのか気になるw
いつか12をノベライズすることになったなら
ヴァンの出番を大幅に増やすか、さもなきゃ思い切ってバルフレアが主人公な路線で書いたほうがいいかもしれんな
真面目な話
保守
>>30 > ヴァンのモブ狩り放浪期(短編集)になるのか気になるw
ヤズマット戦を是非書いてほしいw
どんな戦闘になるんだろうかw
34 :
299:2006/04/11(火) 12:32:47 ID:FhAO2K040
FINAL FANTASY IV #0385 4章 6節 双肩の意志(5)
カイナッツオォと名乗ったその者には。既にセシルが倒していたスカルミリョーネよりも自らの
強さを誇示するかのような口ぶりであった。
「ぬぐっぉおお!」
完全に壁と一体化した王――カイナッツォは少しの間が開いた頃、かけ声があがった。
同時に壁を突き破るかのように、腕が再出現する。
やがて、壁から全身を表し、その全貌が明らかになる。全身が青色の甲羅を装着し、四隅から手足
を表し、先端部に顔を覗かせる、その姿は亀のようであった。
「これがお前の真の姿か……!」
「そうとも!」
堂々と言ってのけた途端、急にカイナッツォの体周辺を取り囲むように何かが出現する。
これは……
セシルは驚かざるを得なかった。
何故か、周りには全身を包み込むかのように水柱がわき上がっている。
水をいきなり発生させる、これが水の四天王の力だというのか。
「気を付けろ!」
後ろでテラの声が聞こえる。
振り向くまでもなく、既に戦闘の準備に移っている事は分かった。
テラはあれが攻撃の準備であるといいたいのだろう。
セシルにもそれは分かっていた。
来る!
予兆した時には、カイナッツォの周囲の水――水の鎧とでも形容すべきものは、怒濤の勢いをつけて
目の前にいるセシル達に迫る。
「!」
その時の意志を何か声にして出そうが上手くはいかない。
思考を張り巡らせようとした時には既に、津波は無情にもセシル達を飲み込んでいた。
35 :
299:2006/04/11(火) 12:36:08 ID:FhAO2K040
FINAL FANTASY IV #0386 4章 6節 双肩の意志(6)
気付いた時の風景は先程と大して様変わりはしていなかった。まだ動ける。体の無事を確認し、辺りを見回す。
「みんな無事か!?」
一瞬、以前津波に襲われた記憶が思い出される。
ファブールからバロンへ向かう航路の際、魔物に襲われ、そのものの起こしたであろう津波に飲み込まれた。
結果、セシルは仲間と別れ、遠き地に流される事となった。苦い記憶が頭をよぎり、自然と仲間の安否が気がかりに思った。
「大丈夫だ!」
テラの強い声が返ってくる。見ればポロムとパロムも一緒だ。
(ヤンは……?)
「セシル殿……」
そう思い、新たに視線を逸らそうとすると、近くから自分を呼ぶ声がする。
「ヤン。良かった。無事か……」
「セシル殿は……大丈夫でしょうか?」
「ああ……僕はこの通り」
「違うのです……」
「え?」
体の無事を聞いてきたのだろうと思ったのだが……違うのか?
「あのものは王ではありませんでした……ならば本物の王はもう……」
それはセシルも承知であった。
「そして王を手にかけたのは、おそらくあの者でしょう……」
一息おいてゆっくりと告げる。
「セシル殿はそんな者、相手に戦えるでしょうか……という意味です」
おそらくは、最前のセシルが怒りを表したのを見て危惧したのだろう。
「此処は私達にだけ任しても……」
「いや、いい」
セシルはきっぱりと言った。
「そんな相手だからこそ自分で戦わなきゃいけないんだ。安心して……決して怒りに支配されたりは
しないから」
ヤンの心配する所はそこなのだろう。
「本当に倒すべき相手はまだ此処にはいない。それまでは」
「わかりました」
36 :
299:2006/04/11(火) 12:48:48 ID:FhAO2K040
FINAL FANTASY IV #0387 4章 6節 双肩の意志(7)
「話は終わったようだな」
いつの間にか近くに来ていたテラが見計らったかのように訪ねる。
「あいつのバリアを破れる方法はあるのか?」
先のベイガンとの戦いも彼の力が勝利に大きく影響した。
「勿論だ」
きっぱり言うテラ。
「あのバリアは単純なものだ。本当に回りに水の壁をつくって、攻撃を防いでるだけだ」
本当にあっさりとそう述べただけであった。
「それで……」
「対策か? 水のバリアだ。此方もただ雷の魔法で対抗すればいいだけだ」
「では……さっそく」
やや拍子抜けした様子はあったが、ヤンは攻撃を開始しようとしていた。
「ではいくぞ!」
テラのかけ声と共に、ヤンはカイナッツォに向けて攻撃を開始しようとした。
37 :
299:2006/04/11(火) 12:49:34 ID:FhAO2K040
FINAL FANTASY IV #0388 4章 6節 双肩の意志(8)
「ははは……何をやっている!」
水の壁の向こうから聞こえたカイナッツォの言葉は余裕に満ちていた。
「この壁がある限り、攻撃など……」
すっかりと優越感に浸っているが、セシルの狙いはそこであった。
瞬時、雷が――この密閉された場所に突如発生した。
「ぬお……」
雷の線が幾多にも絡まりながら、カイナッツォを包む。黒魔法サンダラの完成だ。
それと同時に、完全無欠な水の壁は徐々にその形成を失いつつある。
慌てて形成し直そうとしたのだろうが、既にセシルが目の前まで迫っている。
「迂闊だったな!」
思った通りだ……それは絶対的な防御を持つが故の相手の油断。
最前、王として対峙した時点から、この者には迂闊に自分の素性を喋ったりと
饒舌で口外しやすい性格なのだろうと予感していた。
そのようなタイプならば己の絶対的な自信を突けば……読みは見事に正解であったようだ。
「くぅぅ!!!」
焦りつつも己の持つ第二の鎧。甲羅へと体と四肢を潜めようとする。
「まだっ! この程度で!!!」
「今だ!!!」
セシルは咄嗟に叫んで攻撃を中断。挙げ句には後退まで始める。
この不可解な行動……カイナツォは好転と判断した。
何を思ったのか知らんが、一端、体制を――
目前が白く光った。同じタイミングで全身に痺れが伝わった。
「おおぅ……」
もはや判断すら鈍り、甲羅から姿を現す。其処には……
「判断を誤ったな! 僕の勝ちだ……」
裁きを下すかのように、手負いのカイナッツォに剣が振り下ろされる。
あまりに突然な事だったので水のバリアをはる事すら出来なかった。
「まだ……終わ……り……で……」
何かを言おうとしたであろう言葉も途切れていった。
38 :
299:2006/04/11(火) 12:50:40 ID:FhAO2K040
FINAL FANTASY IV #0389 4章 6節 双肩の意志(9)
甲羅の中から、人とは異なる色をした血が流れ出す。
「これで……」
一人セシルが呟くと……
「あっという間でしたな」
いつの間にか近くにやってきていたヤンが驚きがちに言った。
「自分でも……驚いてるよ」
先程までの戦いの最中セシルには王を殺された怒りや悲しみが消えかけていた。
だからこそ、冷静に戦えたのだが……
「でも、僕は、これで終わりとは思えないんだ」
カイナッツォは最後に含みを残した言葉を言おうとしたように、セシルには聞こえた。
それに、何かを大事なものを何処かに置き忘れていたような気分。更には、思い出さなければ
いけないのに、全く思い出せないもどかしい気持ち。
その二つが混ざり合った気持ちがセシルを支配していた。
「気のせいだといいけど――」
そんなセシルの心配を打ち消すかのように豪快に扉を開ける音が聞こえてきた。
39 :
299:2006/04/11(火) 12:53:27 ID:FhAO2K040
FINAL FANTASY IV #0390 4章 6節 双肩の意志(10)
「こうらぁ〜良くも今まで閉じこめてくれたな!」
扉を壊さんばかりにこじ開け怒声と共に飛び込んできたのは……
「シド!」
「おおうっ! セシルか! 今助けに来てやったぞ!!」
其処まで言って、勢い良く玉座へと目を向ける。
「覚悟せいっ! バロン王。良くもあんな黴臭い所に閉じこめてくれたな!」
異変に気付いたらしい。
「王は……僕が倒したよ」
後ろからセシルが言う。
「なんじゃと……そうか。なんとっ!」
一瞬、落胆と安堵混じりのため息を発せたかに見えたが、すぐさま驚いたかのように言った。
「いや正確には――」
それだけでは、説明不足であったのだ。
シドは王の変化は知っていても、王がすり替わっていた事は知らない。
それに、王とセシルの関係を知っていたのだ。いきなりそんな事を言われては
戸惑うのも無理は無い。
「王は、既に殺されていたんだ……ゴルベーザに」
今まで、分かっていながらも敢えて口にしなかった言葉を口にする。
こうして口にすると、その事実がより一層現実味を帯びたような気がした。
40 :
299:2006/04/11(火) 13:01:01 ID:FhAO2K040
FINAL FANTASY IV #0391 4章 6節 双肩の意志(11)
「なんと……」
シドも驚きを隠せなかったようだ。だが……
「その、ゴルベーザとやらは何者なんだ? 赤い翼の新しい指揮者という事は、聞いておったが……」「詳しくは知らんが、今まで、裏でバロンを操っていたもので、
他国のクリスタルを奪おうとしておるところまではわかっとらん」
横からテラが口を挟む。
「おおう、テラか」
その声は少しだけ気まずい。
「え、テラ。知っているのか?」
しかし、疑問を投げかけたセシルに悟られない位には平常を保っていた。
シドからしてみれば、牢獄での一件を気にしていたからだ。
「そういえば、言ってなかったな。牢獄へ行った際に助けてな」
セシルと合流した時は丁度、ベイガンとの激突の最中であった。
それから、直ぐに此処に乗り込んだのだ。詳しく、事情を話す時間が無かった。
「そのときに知り合ったのだが……」
何かを思い出したのか、シドへと向く。
「何かやる事があるとってたが、何をやってたのだ?」
牢獄脱出の際、シドが言った事だ。
「ああ、王の間以外にも、魔物達がいる所もあったからな。まずは皆を、城の他の場所を解放しておったのだ」
41 :
299:2006/04/11(火) 13:06:47 ID:FhAO2K040
FINAL FANTASY IV #0392 4章 6節 双肩の意志(12)
「なら、ローザも!」
セシルが期待に満ちた声で言う。
「ローザ?」
だが、疑問を持ったのはシドの方であった。
「お前と一緒ではなかったのか?」
「いや……ゴルベーザに捕らわれて、それで助けに……」
元々このバロンへと戻ってきた最終目的はローザを助け出す為であった。
ファブールでゴルベーザは去り際に、バロンへ来いと言った。その言葉を信じて此処まで来た。
「そういえば、ゴルベーザとやらは何処だ?」
今まで黙っていたヤンが言った。
「奴らがバロンを取り仕切っているのならば、当然此処にいても可笑しくはないのでは……」
「ではいないという事か……」
王に四天王であるカイナッツォが化けていたのだ。任せて別の場所に移ったと見て間違いないだろう。
当然ローザも一緒だろう。
「ならばローザは……」
「今だ囚われの身という事になるのか……」
シドの言葉をセシルが引き継いだ。
「では何処に行ったんだ……」
ゴルベーザが何処にいるのか? バロン以外にゴルベーザがいる場所は?
少しの間考えたが、全く思いつかなかった。
42 :
299:2006/04/11(火) 13:11:13 ID:FhAO2K040
FINAL FANTASY IV #0393 4章 6節 双肩の意志(13)
「お前がいながらなんたる事だ!」
ようやく事情を完璧に把握したのか、急遽シドが怒声を挙げた。
「あいつはなっ! どれだけお前の事を想っていたのか判ってるのか!」
「すまない」
シドには旅立ちの時、シドはローザを泣かすなと念を押されていた。
あの時は、まさか此処まで長い旅になるとは思っていなかった。すぐにでも
バロンに帰ってきて、ローザとも……それがこうなってしまった。
「お前がな死んだと報告が入った時のあいつの悲しみは計り知れないものであっただろう!」
そう、自分はミストでの一件以来、バロンでは死亡認定されていた。
事情はどうあれ、その情報が彼女を苦しめていた事は確かであろう。
「その上、お前に関係しているからといって……厳しい取り調べまで行われて!」
声には力が籠もる。まるで自分の事のように怒っている。
「どういう事だ……?」
その事――自分が謀反を企み、バロンを倒そうとしているという疑惑をかけられていた事を
セシルは知らなかった。
シドきた
さぁ、ここからがFF4屈指の泣き所シーンですよ
ドキドキドキドキ
新作乙
カイナッツオあっさりしすぎじゃない?
スカルミョーネより弱いんじゃ・・と思わせるあっさりさなんだけど
実際スカルミリョーネの方が苦戦したけどなw
保守屋です。落ち防止ですがな。
いつもご苦労さん
保守
50 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/13(木) 23:48:30 ID:30Pf3OM/0
あげる
>>45 モンスターやボスキャラの強さは、必ずしも原作どおりでなくてもいいと思う。
むしろ意外性があっていいじゃん。
FF8作者さんの描くヴィックスとか、カッコよかったし。
でもFF8、最近止まっちゃったね。続きを期待してますよ、作者さん。
それとこれとはまた話が違うような…まあいいか
いいや、オリジナルティがあったほうがよい。
ゲームをそのまんま小説にしても、先が読めるだけだし。
299氏GJ!
言ってる事ずれてない?
>>45だけど、自分が言いたかったのは四天王のバトルなんだから
もう少し苦戦してる表現でも良いんじゃないかってこと。
オリジナリティ云々は関係ないよ。
まぁ、オレがサンダガのタイミングを何回も間違って苦戦したからなんだろうけど。
タイミング間違うと反撃でつなみ?だった気がする。
299氏の力量を知ってるだけに、今作は不出来と言わざるを得ない。
57 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/15(土) 22:35:57 ID:gR+1DJFw0
あ
hosu
保守
誰もいないっっ
いや、いる
63 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/18(火) 00:40:22 ID:QdqIeJzm0
巨大戦艦インビンシブル・・・浮上します!!
FF4はこれからが盛り上がりどころだな!
話楽しみで仕方ない
磁力の洞窟のギルバードイベントやローザ奪還やら、
リディア登場イベントとか
ども、保守屋です。
>>48 これぐらいしか出来ないもんで…。
なるべく1日1保守しときます。
今まとめ見てたらおれのがちゃんと保存されててびびった
当てる事が出来たならば厨臭いSSを貼ってやろう
魔列車とみた
違う。
ヒント:一部だけ
DQ8?
後3レス以内に答えが出なかったらこの話題終了な。
じゃあFF1だ
多分ACのプロローグ部分の人。
75 :
66:2006/04/19(水) 18:14:34 ID:G0m1qiwQ0
ミミ:::;,! u `゙"~´ ヾ彡::l/VvVw、 ,yvヾNヽ ゞヾ ,. ,. ,. 、、ヾゝヽr=ヾ
ミ::::;/  ゙̄`ー-.、 u ;,,; j ヾk'! ' l / 'レ ^ヽヘ\ ,r゙ゞ゙-"、ノ / l! !ヽ 、、 |
ミ/ J ゙`ー、 " ;, ;;; ,;; ゙ u ヾi ,,./ , ,、ヾヾ | '-- 、..,,ヽ j ! | Nヾ|
'" _,,.. -─ゝ.、 ;, " ;; _,,..._ゞイ__//〃 i.! ilヾゞヽ | 、 .r. ヾ-、;;ノ,.:-一'"i
j / ,.- 、 ヾヽ、 ;; ;; _,-< //_,,\' "' !| :l ゙i !_,,ヽ.l `ー─-- エィ' (. 7 /
: ' ・丿  ̄≠Ξイ´,-、 ヽ /イ´ r. `ー-'メ ,.-´、 i u ヾ``ー' イ
\_ _,,......:: ´゙i、 `¨ / i ヽ.__,,... ' u ゙l´.i・j.冫,イ゙l / ``-、..- ノ :u l
u  ̄ ̄ 彡" 、ヾ ̄``ミ::.l u j i、`ー' .i / /、._ `'y /
u `ヽ ゙:l ,.::- 、,, ,. ノ ゙ u ! /_  ̄ ー/ u /
_,,..,,_ ,.ィ、 / | /__ ``- 、_ l l ``ーt、_ / /
゙ u ,./´ " ``- 、_J r'´ u 丿 .l,... `ー一''/ ノ ト 、,,_____ ゙/ /
./__ ー7 /、 l '゙ ヽ/ ,. '" \`ー--- ",.::く、
/;;;''"  ̄ ̄ ───/ ゙ ,::' \ヾニ==='"/ `- 、 ゙ー┬ '´ / \..,,__
、 .i:⌒`─-、_,.... l / `ー┬一' ヽ :l / , ' `ソヽ
ヾヽ l ` `ヽ、 l ./ ヽ l ) ,; / ,' '^i
76 :
66:2006/04/19(水) 18:16:27 ID:G0m1qiwQ0
ばれたwwwwww
保守
一応保守っときます
イチイチイッカイ
保守屋です。一日一保守♪
投稿時間から察するにACだろう。
っていうかACって書き手複数だったの?
いや、案外FF1かも
書き手複数だろ?所々セリフとか文の多さとか違うから
FFTは書き手一人だよ
悪かった。俺が言いたかったのは「ACは書き手が複数だろ?」ってこと
ホッシュ!
一応ね・・・
職人カモーン
スランプ中
復帰したはずの297氏もこないな……
299氏にはますます頑張って頂きたい
余りプレッシャーをかけない方がいいとオモタ
マターリ頑張ってください
93 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/23(日) 12:59:47 ID:o0riXj5M0
質問。
10始まったばっかりだけど10−2やるとかアリですかね?
ネタバレしてもいいならどうぞ
死ね
むしろ生`
いいけど、やるからには責任を持てよ
途中で切れてもそのうち誰か繋げるだろうからよくね?
そういう人がいないから言ってるのよ
初期から続いてる4以外は「一作品につき一人」な状態だし
6は違うだろ
8モナー
ほす
5も書き手一人じゃないよ
ACも違うだろ
書き手一人なのはT、U、]だけだな。
今のところ
保守
保守♪
保守。
前スレのレス数は超えたか。
110 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/27(木) 07:08:12 ID:bemPGnxM0
age
111 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/27(木) 07:39:23 ID:2yGSsnccO
このスレ大好きだから、がんばってくれ!
応援保守
保守協力!
ほしゅ
114 :
299:2006/04/28(金) 01:21:47 ID:ULTTN/tS0
FINAL FANTASY IV #0394 4章 6節 双肩の意志(14)
「お前には謀反の疑惑がかかっていたのだ。更には協力を拒んだミストを焼き討ちし、逃亡したとな」
「!」
シドの言葉はセシルに衝撃を与えるには充分すぎた。
「そんな! 第一、僕は死んだとみなされていたんじゃ!」
「その後、お前が死んだという話が入ってきたのだ。詳しくは語られなかったが逃亡中に野垂れ死んだと
皆は思っていたようじゃ。馬鹿げているだろう。上手く出来すぎているだろう……」
既に、王は――ゴルベーザは初めから自分をバロンへと復帰させるつもりは毛頭無かった。
これは承知していたが、ここまで周到に情報を操作し、刺客まで送ってきていていたのか。
「そんな荒唐無稽な噂ですらも儂やローザは信じかけていたのだ……それ程までにこの国は
荒んでおったのだ……」
少し間を置きシドが続ける。
「それでも何とか希望を取り戻し、お前の所へと行ったというのに……まさかそんな事に
なっていようとはな……情けない!」
最後の言葉は自分に言ったのだろう。
「ローザはな一度は生きる気力すら無くしたのだぞ! だが、彼女はそれでも立ち直って
お前を追ったのだ……」
語るシドは別段セシルを責め立てる口調ではなかった。それが無意味なのはシド自信も判っていたからだ。
「ローザ。君は……そこまで……」
なのに、カイポでの再会の時には全く辛さを見せなかった。
(ローザは何も言わなかった……話さなかったんだ!!)
わざわざ自分を追ってきた彼女がどのような理由を持っていたのか、どれだけ辛かったのか、
それを気にかける事があの時の自分には出来なかったのだ。
己の無神経さを、今は思い切り叱りたい気分であった。
「ローザ……」
猛烈に彼女へ合いたくなった。
115 :
299:2006/04/28(金) 01:23:08 ID:ULTTN/tS0
FINAL FANTASY IV #0395 4章 6節 双肩の意志(15)
だから言った。しばらくの間沈黙が続いた後に。
「シド」
「なんじゃ……?」
今だ落胆した様子であったが、セシルの淀みない問いかけに、耳を傾ける価値があると
判断したのか問い返す。
「飛空挺は何処にある?」
ヤンが、バロンに利用されていた時、彼にはある命令が下されていた。
最新式の飛空挺。シドが開発したそれは、創造主自信であるシドによって誰にも判らぬ所に
隠された。おそらくはシドの性格上、どうやっても口を割らなかったのであろう。
だから、わざわざ兵士を動員してまで捜しあてる事になったのだろうが、結果は出なかったのだ。
「そうか!」
その問いにシドの口調も明るさを取り戻す。
「よくぞ言ったぞ。セシル」
どうやらセシルの決意がシドにも判ったようだ。
「ゴルベーザを追い、ローザを取り返すんだな!」
黙ってセシルは頷いた。
「こうなってしまった責任は僕にもある。でも、今更後悔しても遅い。だから行く。それに……」
改めて、彼女ともう一度出会えば、以前は分からなかった彼女を、今なら垣間見えそうな気がした。
「ですが、どうやって」
二人のやりとりを見守っていたヤンが訪ねる。
「簡単じゃ! 儂の最新式の飛空挺さえあれば世界中何処へでも一っ飛びじゃ!」
「やはり隠されていたんですね……」
一時期、その捜索を任を受けていたヤンは存在しないものだと思いこんでいたのかもしれない。
「ですが、城を探しても見つからず、町中何処を探しても……」
「ふん! 当然だ。儂にしか判らない所に儂にしか見つけられぬようにしてあったからな」
自信を持ってシドが言う。
「こうしちゃおれんぞ、早く飛空挺を出すぞ!」
勢い良くシドは出口へと向かった。
116 :
299:2006/04/28(金) 01:35:22 ID:ULTTN/tS0
FINAL FANTASY IV #0396 4章 6節 双肩の意志(16)
と、そのシドの前に小さな影がよぎる。
「おっちゃんがシドか。俺たち飛空挺に乗れるのか?」
「お……おう。もちろんじゃ!」
元気な問いかけにシドはちょっとばかり慌てたが、すぐにいつものような威勢で返答する。
「あの……初めまして。私、ポロムと言います。こっちは弟のパロム……」
そこまで言って、今度はパロムの方を向いて言った。
「挨拶くらいしないさい。いきなり話しかけるとびっくりするじゃない!」
「へん。何良い子ぶってんだよ! お前は飛空挺に乗れるのが楽しみじゃないのか?」
バロン到着時、セシルから聞いた話に出てきた、天翔る船、飛空挺。子供達の興味を引きつけるには
充分すぎるものであった。
それの創設者たる人物が目前にいるのだ。自ずと心躍るのだろう。
「そりゃ……」
「そうだろ!」
「ですけど! きちんと――」
続く、二人の会話を見て、シドが笑った。
「わかった。わかった。もういいぞ」
その顔には最前までの重苦しさが緩和され、以前のような穏やかな陰りが見え隠れしている。
「早く来い! すぐにでも乗せてやるぞ!」
「本当かっ! やったあ!」
その報はパロムに並々ならぬ喜びを与えたようであった。
足取り軽く、パロムは真っ先に駆け出した。
「ちょっと……」
そう言いつつもポロムも嬉しいようで、慌てて後を追った。
久しぶりにキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
299氏乙です!
飛行船キター!
新作乙!
節のタイトルはこの後の展開を指しているのかな?
保守
ほ
もういっしょ保守
保守
夜の保守
とりあえず5スレ目の226レスを目指して保守
FINAL FANTASY IV #0397 4章 6節 双肩の意志(17)
玉座が備え付けられた王の間と、城の中心部にある大広間。
この場所は直接繋がっている訳ではない。
その間には、控えの間と呼ばれる小広い部屋がある。
王との謁見を許された者はまずはこの部屋に通される。その後、一通りの手続きの
上で、改めて王との謁見に入る。
当然ながら、王が殺されてから今までの間、新しき王は謁見する事を許さなかった為、
しばらくは使われていない。
そして、二度と聞きたくないと思っていた、その声が聞こえてきたのは、
セシル達全員が王の間より足を踏み入れた直後であった。
「クカカカ……」
「カイナッツォ……!」
セシルは静かに声の主の名を呼んだ。
「この俺を倒すとはなあ。だがおれは寂しがり屋でな。クカカカ……」
その言葉がセシルの読みが当たっている事を示す。更にはカイナッツォが何かの
企み――策を用意している事を想像させる。
(しかし、奴はすでに倒したはず……!)
今更なにを……そう思った瞬間、問いが帰ってきた。
「死してなお凄まじい、この水のカイナッツォの恐ろしさとくと味わいながら死ねえ……!
先に地獄で待ってるぞお……;! ヘェッヘッヘッ――」
声はそこで途切れた。
これで奴が意識すらも途絶えたであろう事をセシルは何となく感じていた。
その直後の事――
127 :
299:2006/05/02(火) 05:22:10 ID:UJEMa7bd0
FINAL FANTASY IV #0398 4章 6節 双肩の意志(18)
最初に異変に気づいたのは、ヤンだった。かすかな地響き。
その音と振動は徐々に大きくなっていく。不安に駆られる一同。
「見ろ、壁が、壁が迫ってくる!」
シドが叫んだ。地響きの正体、それは迫りくる壁の仕掛けの作動音だったのだ。
「いかん、退け、退くのじゃ!」
一同は通路を引き返した。迫りくる壁のせいで、道幅はどんどん狭くなっていき、
通路の入り口に到着した時には、大人の肩幅程にまでなっていた。
「開かない。まずいぞ!」
入り口の扉をこじ開けようとしたヤンが、切迫した調子で言った。
(え――!
慌てふためく皆の中、セシル自体は平静さを保っていた。
何故なら……
既に何度か見た既視感のある光景。セシルにはそう映ったのだ。
段々と鮮明な色を帯びてそれが蘇ってくる。)
128 :
299:2006/05/02(火) 05:23:12 ID:UJEMa7bd0
FINAL FANTASY IV #0399 4章 6節 双肩の意志(19)
セシルの脳裏に「万事休す」という言葉が浮かびあがって来た。
(可笑しい――
心では落ち着きを取り払っている。だが、そんな言葉が浮かび上がる。
簡単に考えが纏まらない。緊迫した現状が、それを加速させる。)
その時、セシルは自分の足元を小さな影がすり抜けていくのを感じた。
パロムとポロムだ。二人は互いに背中合わせになって、壁を押す構えをとった。
「パロム、ポロム……」
(やめろ!!!
そんな事をしたら君達が!
悲痛な叫びを発せようとするが声にならない。)
129 :
299:2006/05/02(火) 05:26:36 ID:UJEMa7bd0
FINAL FANTASY IV #0400 4章 6節 双肩の意志(20)
彼らは構えを崩さず、顔だけをセシルに――口々に言った。
「あんちゃん、今まであんがとよ」
「お兄様が出来たみたいで、とっても嬉しかったですわ」
喜びと寂しさの入り混じった、複雑な表情だった。そして言葉を続けた。
「あんたらをここで殺させやしない」
「テラ様! セシルさんをお願いしますわ」
先ほどとは打って変わって、断固たる決意がみなぎっている。
(でも、そうすればどうやってこの状況を乗り切る!
そもそも、何故こうなった?
未然に防げる事だって!!!!)
「よせ、やめるんだパロム、ポロム」
結局、自棄気味に言った言葉。
夢の自分が発した言葉。それは同じ結末へと誘う言葉。
130 :
299:2006/05/02(火) 05:27:40 ID:UJEMa7bd0
FINAL FANTASY IV #0401 4章 6節 双肩の意志(21)
しかし二人はセシルに耳を貸す様子はない。
「行くぞ、ポロム!」
「うんッ! 」
「やめろー!」
セシルは絶叫した。
何に叫んだのか。自分に? 双子に?
それすら解らず叫ぶ。そこには運命が働いたのか。
考える事すらも無駄であった。
131 :
299:2006/05/02(火) 05:35:46 ID:UJEMa7bd0
FINAL FANTASY IV #0402 4章 6節 双肩の意志(22)
気付いた時には……
もはや以前の半分以下になった控え室に、セシルは立ち尽くしていた。
テラもシドもヤンも呆然としながらそこに立っている。
そして……部屋の両脇の壁には……満面の笑みを浮かべた二人の子供達の姿。
決して動く事無く、決して表情を――喜怒哀楽の激しかった二人の――変化させぬ子供達の姿。
全身は固く冷たい。だけどそこに内包されるものは誰よりも温かい。
黒魔法ブレイク。
対象者の体を内部から硬化させ、最後には全身を石塊にしてしまう魔法。
一度術が成功すると、その対象者は治療魔法。例えばエスナなどの魔法をかけられぬ限り、
元に戻る事はない。
ある種、治療手段を持たぬ者には最も恐ろしい魔法だといってもいい。
その魔法を、通常は攻撃として用いるはずを、パロムとポロムは自分にかけたのだ……
実際は、黒魔法を使えるパロムの手によるものだろう。だが、ポロムもそれを拒まなかったのだろう。
そして、石となった自分達の体で、迫り来る壁を受け止めたのだ。
132 :
299:2006/05/02(火) 05:39:21 ID:UJEMa7bd0
FINAL FANTASY IV #0403 4章 6節 双肩の意志(23)
「馬鹿者がっ! はやまりおって!」
口を開いたのはテラだった。それは此処にいるもの達すべての意志を代弁する言葉であった。
それに相応しく、怒りと悲しみを一気に込めた言葉であった。
「おいっ……お前さんも魔法使いなのだろ! ならばっ、こやつらを速く、元に戻してやれ!」
急かすようにシドが言う。
「じゃ……」
「何?」
「無理じゃ……」
「何だと!」
以外なテラの返答に怒ったように返す。
「この子達は……望んで自らの身を犠牲にした……だから治療魔法も効果がない!」
「では! ずっと……一生このままだというのか?」
「それは……私にもわからん。だが、すぐにという訳にはいかんのだろう……」
悲痛なシドの叫びに対し、随分と淡泊な受け返しであった。だが……
「死ぬのはっ! 死ぬのは、この老いぼれだけで充分であっただろうに!」
床を叩き、テラが叫び出す。
「おのれ……おのれぇ……」
呻き悲しむのは賢者としての無力感。そして、死ぬつもりであった自分以外の犠牲。
「こんな幼子が……」
無念に暮れるテラの傍ら、今まで黙っていたヤンが言った。
「この私が無念をはらず!」
テラが立ち上がり言った。以前にも増しての敵への打倒の意識を感じられる。
其処には半ば、危険な勢いすらも感じさせられる。
「弔い合戦だ!! エンタープライズを出すぞ!」
シドが同調するかのように言った。僅かな時間であったが、無邪気な二人の
今の行動には心動かされるものがあったのだろう。
「皆行くぞ!」
シドが大声で続けた。
133 :
299:2006/05/02(火) 05:41:07 ID:UJEMa7bd0
FINAL FANTASY IV #0404 4章 6節 双肩の意志(24)
皆が先ゆくシドに続く。
当然ながら、セシルもそれに続くのだが、部屋を出る際に一度だけ
二人を振り返った。
「…………」
皆が悲しむ中、セシルはひたすらに無言であった。
そして、改めて二人を見ても無言であった。
何度も見た夢、それはこの事を予期していた事は先程も察せった。
しかし、セシルにはそれを防ぐ事ができなかった。
いや、彼らの意志。この状況を己の犠牲で乗り切ろうとした事。
それを阻止する事はセシルとて不可能であっただろう。
二人の内なる意志はそれ程に固かったのだ。
テラの言う通り、今すぐにでも助けられるのは、二人を元に戻せば、また壁は動きだす。
それは、二人にとっても本意ではないのだ。
だが、もしこの状況自体が起こらなかったら。今だに二人は元気な姿で
セシルの傍らを歩いていたのでは……
それを思うと、無性にやりきれないのだ。
(すまない……)
二人に聞かせるかのように、贖罪と決意を込めた言葉をささやく。
そうするとセシルは踵を返し、テラ達の後へと続いた。
>>299 新作乙鰈!
遂にキタ…(ノД`)゚・。
パロ・ポロ・・・(´;ω;`)ウッ
ブレイクってよく考えたらポロム使えないんだよな・・・
パロムの手でやったのか・・・
ゲーム中じゃ描かれてなかったけど、SSで表現されててよかった!
ゲームじゃ泣けなかったけど、SSだとジワっときた
乙!!
299氏新作乙です!
悲しい話だったけど次はいよいよ飛空艇ですね!
((o(´∀`)o))ワクワク
保守
ほ
まとめサイトも更新キテタ
141 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/04(木) 11:49:11 ID:tI8+jTXeO
も
hosyu
Final Fantasy XII 「Prelude」
未だパレードが始まるまで時間があるというのに、ダルマスカの大通りは人々で溢れ返っていた。
近隣諸国からの観光客も多く、パレードで使用しない通りの両端はキャラバンや市民の即席の市で賑わっていた。
「どう?御成婚記念の今日だけだよ!」
美しいミスリル細工や織物、珍味などが屋台の売り子に捕まえられた人々の財布を途端に涼しくさせて行く。
長い耳を持つヴィエラの二人組みが談笑を止めて顔を上げた。その瞬間、視線の先で花火が上がった。
「いよいよ始まるのね!」
誰かがそう叫んだ。観光客が眺めていた金細工を放り出した。
大通りへ続く道へ、各々の速度で人々が進み始める。
打楽器の奏でる音が微かに聞こえ始めた。
門が開き、パレードの先頭が現れた。
ナブラディア地方に住む民族らしい男を先頭に、ビュエルバのモーグリ族の鼓笛隊、草原のコッカトリスの群が続く。
モーグリが同じリズムで太鼓を叩きつづける。先頭を行く男がシンバルを打ち鳴らした。
人々がモーグリやコッカトリスのちょこちょこと歩く姿を見て微笑んだ。
ゆっくりと開く門から、鞍と甲冑で飾られたチョコボ隊がコッカトリスに続いて登場した。
少年達が大人たちの頭の群の後ろからそれを見ようと躍起になってその場で何度も跳躍する。
そしてついに、この日の主役が登場した。
磨き上げられ、埃一つ無い馬車を先程のチョコボ隊が引いている。
Final Fantasy XII「Prelude」
綺麗……、と誰かが呟いた。
その馬車の上に、優雅な微笑を湛えた女性と、同じように微笑む青年が立っていた。
アーシェ・ダルマスカとラスラ・ナブラディア。
白銀のドレスと鎧を纏い、幸せそうな笑みを湛えた王子と王女。
彼らを祝福する花びらが、両端に建っている民家の窓から少女達によって通りに舞い落ちている。
目の前にゆっくりと落ちてきたそれをアーシェは薬指に指輪のはまった手で受け止めて、
視線を花びらに落とし、そっと微笑んだ。
「大いなる父の名において汝らふたりを夫婦であるとみなす」
キルティア教の神官が厳かな声を、貴族の集まった教会に響かせた。
「恵み深き神の祝福が、汝らの行く道にとこしえにあらんことを――ファーラム」
人々の座る椅子よりも高い位置にいる神官の目の前でアーシェと向き合っていたラスラが半歩踏み出した。
ぎこちない動きでアーシェが顔を上げる。
ラスラがアーシェの手を取った。二人が顔を寄せる。
たくさんの人々が見守る中、誓いの口付けを交わした。
もう少し改行多かった方が良かったかも
読みにくくてごめんよ(´・ω・`)
]Uやったことないけど、
プロローグでおもしろそうだと思った
乙!
乙!
描写上手いと思った
まとめサイトの仕事の速さに感動
ほす。
ho
153 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/08(月) 07:36:12 ID:9ZWdO6ja0
あげとくね。
FF12編書いてる人へお願い
名前欄に「FF12」と入れて貰えませんか?
NG指定したいのでお願いします。
別にあなたの作品が嫌いというわけではありません。
プレイするまで予備知識を入れたくないだけです。
不躾ですがよろしくご対応ください。
俺さ…]の小説書きたいんだけど…今どこまで執筆されたか教えて
前から思ってたんだけど、
何も文章入れないで
書き込む人って
何がしたいの?
じゃあ午後から]の続き書くよ
保守
162 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/09(火) 17:08:41 ID:XRls+tL8O
じゃあ言った通り書いていい?
ごめん…忘れた
final fantasy]
怪物は四発ほど閃光弾の様な攻撃を放っただろうか、少なくとも彼にはそう見えていた。
「え…」彼はそう呟くしか出来なかった…
閃光弾は街の建物に、まるで「かまいたち」の様な攻撃を加えていく。みるみると建物は爆発と炎上をこの「眠らない街」で繰り返していく…
崩された建物は空に浮上していった。無重力世界の様に…全てを空に帰していった。
ちょっと適当すぎかな
マジで?やっぱり人の続きからだと相手に合わせようと変な文になるなorz アトバイスない?
うーん、文章量が少ないなぁ。
もう少し自分で場面毎の区切りを決めて、まとめて投下するようにした方がいいと思う。
読み方も読み易いし、次の人もリレーし易い。
まあとりあえず新作乙でした。
final fantasy]改訂
姿は見えないが球状になった水のヴェールの形を見るだけでは巨大で不気味に、空に舞い上がったティーダにはそう見えた。
゙怪物゙はその力を見せつけるかの様な攻撃を「眠らない街」に放つ。
先程までは賑やかなフリーウェイも、ジェクト記念トーナメントでファンでごったがえしたスタジアムも圧倒的な力によって壊されていく。街は炎上し、建物の残骸は空に昇っていった。
街は一瞬にして街ではなくなってしまった。平穏な日々の崩壊を物語っていた
また区切る場所が微妙だったな…駄文でスマソ
一応次から新しい段落にしたいんだ…んで題を決めたいんだけど「はじまるよ」か「覚悟を決めろ」どっちがいいかな?
>姿は見えないが球状になった水のヴェールの形を見るだけでは巨大で不気味に、空に舞い上がったティーダにはそう見えた。
素で思った
日本語でおk
じゃあヴェールを日本語に?
主述の対応くらいクリアしとけ
じゃあ改善する所言ってくれたら改善するんでヨロ
175 :
299:2006/05/10(水) 14:11:43 ID:bQrQXTet0
FINAL FANTASY IV #0405 5章 1節 刻む足跡(1)
シドに連れたって到着したのは、控え室を出た先、両翼に兵士達の控え室が並ぶ広間であった。
「こっちじゃ!」
その中、竜騎士達の待機する部屋であった所の扉を開け放つ。
しばらく使われていなかったのか、備え付けられた机を初めとした備品には、厚い埃の層が
出来上がっていた。
シドは何にも目も暮れず、部屋の隅まで走り、其処の壁へと手をつく。
「ここを……だな」
見ると、僅かながらに小さな歯車らしきものが伺える。シドの家の門にあったものと
似ている。
「こうして!」
瞬時、すぐ近く壁が音を立てて穴を造った。
「さっ! この先だ!」
壁の穿ち出来た穴を覗き込むと、まだまだ先に続いてることが伺えた。
「この大きさならなんとか入り込めるか……」
その穴は体全体が収まりきらない大きさであったが、屈んで潜ればなんとか潜入できる大きさであった。
幸いしたのは、入り口が狭いだけで、中の通路自体は何の問題もなく通行できる所であった。
「まさか……こんな所に……」
その道をすすながら、ヤンは驚きがちに言った。
「道理で多くのものが探しても見つからなかったわけだ……」
「当たり前じゃ! そう簡単に見つけさせてなるものか!」
仮に見つけていても、あの歯車自体を上手く操作し、この通路を見つけられたものはいなかったであろう。
家の門の仕掛けですら、解くのには困難を要したのだ――実際、シドの飛空挺に何度か乗せてもらい、
彼の研究にも、何度か携わってきた、セシルがいなければ門を開けられなかったかもしれない。
見つけさせない事を目的としたあの歯車は更なる厳重に造られているのであろう。
「ついたぞ!」
そんな事を考えていると、シドの叫びが聞こえてきた。
176 :
299:2006/05/10(水) 14:17:32 ID:bQrQXTet0
FINAL FANTASY IV #0406 5章 1節 刻む足跡(2)
通路の終着点にある粗末な扉を開けた先には、小さな扉からは想像出来ない程の広い空間が存在した。
それも、ただ広いだけでなく、天井までの距離がもの凄く高いのだ。
「親方!」
入って、すぐにでも若い男が此方へと駆け出してきた。
「おおう! 待たせたな。準備は?」
「万全です! 後は飛び立つだけです」
「そうか、ご苦労だった。引き続き頼むぞ!」
シドがそう言うと、若者は威勢よく返事を返し去っていった。
「どういう事……だ?」
「ああ……牢獄を出た後な、直ぐにでも発信できるように準備をさせとったのだよ。
さすがに結構前に隠しとったし、整備をしなければ飛び立てんのだよ」
「そうか……」
牢獄で言った、準備とやらにはこの作業も含まれていったのだろう。
「さて! 着いてこい! いよいよ発信の時だ!」
広間の中心辺りに、一際目立つ存在として置かれた船があった。
「これがエンタープライズだ!」
既にブリッジへの吊り橋も架けられており、乗り込み可能な状態だ。
「これが……凄い……」
セシルが感嘆の声をあげる。
「おい……一体どの辺りが凄いのだ?」
セシルとは対称的にテラが疑問を馳せる。見れば、ヤンも同じような心境のようだ。
「凄いって、そりゃ、もう全てに於いて旧来の飛空挺とは違う!」
「そうなのか……」
だが、テラには力説するセシルの言葉にやや、難解めいたもの感じたのか、シドに話を振る。
「まあ、初見の人間には判らぬと思うが、現存技術の髄を結集した事は確かじゃ……」
セシルはかつて飛空挺団の隊長を務めていた。だから彼はこの様な話には随分と詳しい。
「まあ、とにかく。発信するぞ!」
シドのそのかけ声に呼応するように、甲板を初めとしたらゆる場所で、シドの弟子の技師達が忙しなく動き出した。
177 :
299:2006/05/10(水) 14:30:42 ID:bQrQXTet0
FINAL FANTASY IV #0407 5章 1節 刻む足跡(3)
「発信準備完了!」
セシル達、全員が甲板に乗り込んだ後、息をつく暇も無く、若い技師のかけ声が聞こえた。
「よし! 発信じゃ!」
シドの声。同時に僅かな振動。
次の瞬間には天かける船は地を離れ、大空へと飛び立ち始めた。
「以前よりも、振動が少ない……」
飛び立つ時、セシルはふと一言呟いた。
以前までの飛空挺は発信時にもっと衝撃が大きかったのだが、それが随分とやわらいでいる。
それから大した時間もかからず、船は上空へと到達する。
「これが……飛空挺か……」
テラが驚いている。何故飛んでいるのかの原理への疑問より、純粋に空を駆る
事実に驚いているようだ。
「親方! 前方より何か近づいてます……赤い翼です!」
突然、一人の技師から声がした。
見れば、同じように空を駆る飛空挺編隊が前方から近づいている。
当然ながら、今この世界で飛空挺技術を習得している国はバロンだけである。
正確には、バロンの技術を知っている者。ゴルベーザ達も含まれる。
「来たか! 早速迎え撃て!」
即座に敵だと理解したシドはそのような指示を出す。
「シド……この船は?」
「ああ……かつての赤い翼の飛空挺から派生したからな。基本的な武装は着いている!」
「だが、あの大群では……」
勝てるのか? と言いたげにヤンが訪ねる。
「安心せい! 機動力はこのエンタープライズが何倍も上だ!」
セシルの心配を打ち消すかのようにシドが声を出す。
178 :
299:2006/05/10(水) 14:31:27 ID:bQrQXTet0
「親方……向こうが……白旗をあげてます……」
「何ぃ……」
誰もがこれから始まるであろう激突に、士気を高めていた所にそんな報が入ったのだ。
シドも思わず声を上ずらせた。
「どうします?」
「むう……」
これにはシドも悩みを要した。
もし本当に降伏をする意図が分からなかったからだ。安易に攻撃を中断でもしたら……
逆に攻撃を食らってしまうかもしれない。
「罠と見た可能性がよろしいのでは……?」
ヤンが言う。
「私もそう思うな」
テラもそう言った。
「そうか……そうだな」
「いや。攻撃を中断してくれ」
半ば、攻撃再開の決断をシドは決めかけた時、セシルが言った。
「本気ですか! セシル殿……」
「ああ」
「ですが……もし罠だったらどうするのです? そうだとすれば私達は……」
「大丈夫だよ」
言って、セシルは段々と大きくなる飛空挺編隊を見た。
「あの船にはあいつが乗っている……」
このような事を敵の中でするのは一人しかいない。セシルは思った。
「あいつ……」
「カイン……君だろ」
セシルはその名を――友の名を呼んだ。
179 :
299:2006/05/10(水) 14:35:14 ID:bQrQXTet0
上タイトル入れ忘れ。
FINAL FANTASY IV #0408 5章 1節 刻む足跡(4) です。
180 :
299:2006/05/10(水) 14:41:34 ID:bQrQXTet0
FINAL FANTASY IV #0409 5章 1節 刻む足跡(5)
セシルの読みは正解であった。
白旗を出した飛空挺は、エンタープライズに攻撃の意志が無いと悟ると、その傍らに近づき、
二つの船の間に梯子をかける。
「久しぶりだな。セシル」
架け橋となった、梯子をつたって、真っ先に渡ってきたのは……
「カイン、やはり君か……」
「どうやらお前には判っていたようだな! 嬉しいぞ!」
「カイン……」
君も同じなのか?
一瞬口から、そんな言葉が出かかったが、慌てて抑える。
ベイガンの言った言葉。あいつも自分と同じ存在だ。
野心の為に、己を……
「カイン、どういうつもりじゃ!」
急に登場したカインに、それもこのような形で対峙したシドは動揺を隠せなかった。
「奴は……ゴルベーザに従っているのです!」
ヤンが言う。既に体は何時でもカインを攻撃できるように準備している。
例え、セシルの友人だという人間でも、ファブールへの攻撃の中心を担い、クリスタルを強奪
した人物なのだ。そう簡単に疑いを晴らす事が出来ないのが本音なのだろう。
181 :
299:2006/05/10(水) 14:42:14 ID:bQrQXTet0
FINAL FANTASY IV #0410 5章 1節 刻む足跡(6)
「何と! では、ローザも!?」
「ああ……此方の手の内だ」
カインは特に躊躇いも無く言った。まるでその事を伝えるのが目的だったように。
「何処におるっ! 無事なんだろうな……?」
「今の所はな……ただ、何時までもという訳にはいかんな……」
「なんとっ、カイン! お前それでも……あいつの事を」
突き放すようなカインの言葉に、彼の心中を理解しているシドもきつい言葉で言い返す。
「まあ、待て。未だ続きがある。いいか、トロイアという国は知ってるだろう。
其処にはまだクリスタルが残っている。ローザの命が惜しければそれと引き替えだ」
シドの言葉にもカインは平静を保っていた。少なくともセシルにはそう感じられた。
「貴様……」
「手に入れたら、また連絡に来る。ローザの身を案じるなら素直に従え」
そこまで言って、カインは身を翻した。
「待てっ! 目を覚ますのじゃ……カイン!」
「己……卑怯な!」
口々に皆が言葉を発するがカインはどれにも耳を傾けない。
「言いたい事はそれだけか? カイン……」
そんな中、今まで無言であったセシルは去ろうとするカインの背に問う。
「ああ……話す事はそれだけだ……」
カインは振り返りもせずに答えた。
「…………」
セシルは黙ってカインを見送った。
飛行船キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!乙!
もうすぐ磁力の洞窟にいけるな!楽しみだ。
>>182 一応突っ込んどくけど、”飛空艇”な。
>>299 新作乙!
やっぱりこうやって文章化されると良いな。
飛空艇の隠してある部屋までの隠し通路や、飛空艇自体の描写が、読んでて想像力を掻き立ててくれる。
飛空艇同士のドッグファイトもちょって読んでみたいと思ったり。
final fantasy] 「はじまるよ@」
ティーダは少しの間だろうか、意識を失っていた。崩れるスタジアムに必死にしがみついていたティーダは、誤って手を滑らせてしまい、落下したのだ。
彼は崩れたスタジアムの入場口で静かに意識を取り戻した。「う〜ん…」片手で頭を触る。頭がズキズキと痛む。同時に嫌な予感ともとれる寒気が身体中を包んでいた。
ティーダは回りをゆっくりと見渡す。この街の住人達が慌ただしく逃げるように走っていた。
彼は自分が回りの人間と同じ様に危険に晒されている事に気付く。不安と恐怖が彼を襲う。いくらブリッツボールのスター選手と言えども生身の人間には変わりない。まだ17歳の少年だ。その様な感情がない方がおかしい。
final fantasy]「はじまるよA」
彼は走り出す。上手く走れない。崩れた建物の破片が自分の走路を邪魔している。軽い苛立ちさえ覚えていた。
そんな事を繰り返していると目の前の男に目が移った。「あっ!」ティーダは思わず声を漏らした。ティーダはその男が何者であるかを知っていた。ここ10年の間ティーダの後見を努めてきた男だったからだ。
年はいくつだろうか…40前半…いや30後半。白髪が混じった黒髪。サングラスが黒く光っている。
赤い服の下に隠された身体は服の上からでも立派な肉体である事がわかる。腰には酒瓶を提げて…右手には嫌でも目に入るような大剣を持っていた。
「アーロン!!」ティーダはその男の名前を叫んだ。その男-アーロンはこの非常事態を予期していたのだろうか、妙に落ち着きを払っていた。
そんな彼の様子にティーダが声を荒げて言う。「なにボサッとしてんだよ!!」
その言葉にアーロンはこう切り替えした。
「お前を待っていた」
sageとく
保守
final fantasy]「はじまるよB」
ティーダはアーロンの後を追い掛け、まだ崩れていない長い長いフリーウェイを走っていた。周りの人達の向かう流れに逆らうように、二人は走っていた。ティーダにはそんな事は気に掛ける余裕が無かった。
ただただ目の前の男を追い掛けていた。
どれぐらいの距離を走ってからだろうか。ティーダは周りの建物に目を向けた。炎上し、黒煙を上げている。街が悲鳴をあげている様に見えた。
その時だった。
ティーダの前にどこかで見た少年が立っていた。目深に被ったフード…この街の住民にしては変わった服装…ティーダは思い出した。試合前、家の前で見掛けた少年だ。
ティーダは一息吐き、その少年に声を掛けようと彼に歩み寄った。
その瞬間空気が変わるのに気付いたティーダは何事かと思い、周りを振り返った。
目に映る怪異に言葉を失った。
逃げていた住民が石の様に固まっている。建物から立ち込めていた黒煙も、まるで建物の一部の様にその場にとどまっている。
驚くのは当たり前だ。17年間生きてきた中で一度もなかったのだから。
呆然と立ち尽くしていたティーダに後ろからフードの少年が声を掛けた。
「はじまるよ」
ティーダはハッとした面持ちで振り返る。
少年は続けた。
「泣かないで」
言葉の意味が分からず立ちすくしていたティーダの目の前から少年はいつの間にか消えていた。
先程まで固まっていた街の様子も、元に戻っていた。
依然呆然としていたティーダは我に帰り、途端に走り出した。
「待てよ!!」目の前の先のアーロンを追い掛けて…
なんて稚拙・・・
サブタイトルが・・・
じゃあサブタイ改善するよ。何かない?
じゃあ「start up」
サブタイトルワロタ
文章はもうちょっと改行したほうがいいな。
でも内容は悪くないので、次回に期待
ho
startup, start up
【コンピュータ】起動.
start-up a. (新事業・企業の)起ち上げの.
startup disk 【コンピュータ】起動ディスク.
startup screen 【コンピュータ】スタートアップ・スクリーン, 起動時表示.
⇒start
三省堂提供「EXCEED 英和辞典」より
196 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/13(土) 12:27:29 ID:q6qd2f9h0
いきなりY 魔導士ケフカのおつかい
ちょっと思いついて、かたほう脱いでみたブーツ。
さかさまにして振ったら、アホみたいに大量の砂が出てきて、ケフカはわなわなと肩を震わせた。
「クソエドガーめ! こんなチンケな場所に城なんか建てやがって――っ!」
叫んだ、空。
そこには雲も鳥もない。
ガストラ皇帝の命令で、フィガロ城を偵察することになったケフカ。
サウスフィガロまでは帝国の船で来れたけれども、大変なのはそこからだった。
街のチョコボ屋が閉まっていたので、残された交通手段は徒歩。
護衛の兵士を2人したがえて、朝10時に出発。かれこれ3時間あるき通しだ。
すでに数回、砂嵐にみまわれた体は、かわいそうな状態になっている。
「このブーツだって、気に入ってたのに……」
ブーツをはきなおして、とんとん、と、わざとらしく地面を鳴らす。
兵士は慌ててハンカチを取り出すと、あっという間にブーツを磨き上げた。
「はっ! きれいになりました!」
「ブーツだけ、ね。ほっほっほっほ」
しん、と、あたりが静まりかえる。
「……くだらん!」
吐き捨てると、ケフカは大またで歩き出した。
ほんの数歩で、ブーツは元どおりになった。
「クソエドガーめ、クソエドガーめっ……!」
砂漠の城は、ようやく地平線にちいさく、その姿を現した。 おわり。
197 :
196:2006/05/13(土) 14:26:08 ID:dWXrEGgt0
めっちゃ失礼なことしました。。
ここのとこ、もう書いてた方がいらっしゃったのに(; ;)
まとめサイト見落としてたアホです。すみません。。
以降新作を書く時は必ずまとめサイトの進行状況を確認するように
ってテンプレに入れようぜ
保守します
200到達!
あと27レスで5スレ目の記録を抜くぞ!
んじゃそろそろ]の続き書くかな
保守
保守
ほ
FINAL FANTASY] 「first contact」
ティーダはアーロンを必死に追い掛ける。
進むに連れて空気が張りつめていくのをティーダは肌で感じていた。
明らかに危険な方向へと向かっているのが分かる…空気が重い…まるでアーロンが危険へと導いていくかの様にティーダは見えた。
「なぁ!こっちヤバいって!」
アーロンに追いついたティーダは息を切らしながら彼に言う。しかし、彼は一向に落ち着き払った様子で、空に浮上している破壊の元凶なる球状の物体を見ながらティーダに「見ろ」とだけ告げた。
ティーダは目を見開きながら破壊の元凶を見上げた。
恐怖もあった。しかし、その時のティーダには驚きの方が強かった。
この球状の物体が、どうやって街を破壊したのかという疑問があったからだった。
呆気に取られているティーダにアーロンは口を開いた。
「俺達は、『シン』と呼んでいた。」
FF10未プレイにだから読んでなくてゴメン
でも、期待して待ってます
保守
未プレイでもバリバリ読んでる俺が来ましたよ
FINAL FANTASY]「first contactA」
「『シン』………?」
聞き覚えのない、その名前をティーダは口にした。
眠らない街ザナルカンド。その街を一瞬にして破壊した元凶の名前はティーダの心に深く刻まれた。
その時、二人の耳に轟音が響いた。巨大な魔物-『シン』が吹き飛ばした体の一部が目の前の建物に突き刺さった音だった。
同時に『シン』が体を一振りするや否や、無数の青白い光を放ったウロコの様な物がティーダ達がいるフリーウェイに降り注ぎ、無数の光輝く羽根を持つ魔物と化して道を塞いだ。
魔物はティーダとアーロンを素早く取り囲む。
ティーダは手を振り回し追い払おうとするも、魔物の多さにうろたえるばかり。
無理もない。ティーダは魔物なんてほとんど見たことが無かった。
ましてやブリッツのスター選手と言えども魔物退治に関しては無知もいい所なのだから。
ティーダは相変わらずの様子で取り囲む魔物を追い払おうとするも、魔物に威圧をかけられ、尻餅を付いてしまった。
そんなティーダの様子を見てアーロンは一本の剣をティーダに差し出した。
「使え」
保守♪
FINAL FANTASY]「first contactB」
ティーダはゆっくりと剣の柄に手を伸ばした。柄を掴むと同時にアーロンがティーダを引っ張りあげた。
重い。軽そうに見えたのに。両手で持ち上げる事すら難しかった。
アーロンはその様子を見ながらティーダに言い放った。
「ジェクトのみやげだ。」
「オヤジの!?」
ジェクトと言う言葉に敏感に反応したティーダはアーロンの方を驚きの標情で振り返った。
いや、今そんな事はどうでも良かった。自分達は危険に取り囲まれている。
思い出した様にじりじりと近付いてくる魔物達にティーダは、ぎこちない手付きで目の前な魔物達に剣を振り回した。
当たる訳がなかった。魔物は軽々と身をかわしながら逆にティーダを襲おうとする。
また尻餅を付いてしまった。膝が笑っていた。大きなブリッツの大会の決勝ですらこんな事は無かったのに。
ティーダは険しい顔のまま力を入れて立ち上がる。
魔物との距離を充分に取ったティーダは一度息を吐き心を落ち着かようとする。
怖がるな。大丈夫だ、冷静になれ。一人じゃない、アーロンもいる。
そう思うと先程より大分気持ちが軽くなった。
ティーダはゆっくりと剣を構える。アーロンが声を掛けた。
「使い方は、実戦でな。」
ゆっくりとティーダは頷いた。
これがデビュー戦…彼の紡ぐ物語の最初の試練…
訂正
×目の前な
○目の前の
FINAL FANTASY]「タイトル未定@」
「雑魚に構っている暇はない。突破するぞ」
大きな太刀を構え、アーロンが言う。
アーロンは次々に目の前の無数の魔物を斬り落としていく。刀の大きさを感じさせない様な素早い斬撃は、ティーダが呆気に取られる程、見事だった。
遅れをとってはいけない。ティーダも魔物に果敢に斬りかかった。
恐怖に支配されていた先程とは別人の様な動きで魔物を斬り落としていく。
さすがにそこはブリッツ選手。並外れたボディバランス、反射神経、運動神経は申し分ない。素早い動きについていけるのも頷ける。
しかし、ウロコは空から無数に振り続け、フリーウェイに魔物として降りたっていく。
数が多すぎる。二人ともいつの間にか囲まれてしまっていた。
「全て倒そうと思うな。邪魔な奴だけ切り捨てて走れ!」
魔物が飛ばしてくるトゲを器用に避けながら魔物を切り捨て、二人はフリーウェイを駆けていく。『シン』がより大きく見えていた。確実に近付いていた。
と、その時、フリーウェイの先に『シン』が飛ばした大きなコケラが突き刺さっていた。
不気味に光る大きな物体を目指しながらティーダは叫ぶ。
「好き勝手暴れやがって!!」
一行空けの乱発は却って意味をなさない。
FF12の続きを書いてもいいですか?
どうぞ
216 :
FF12:2006/05/18(木) 19:55:07 ID:XajrO5cp0
ありがとうございます。では、拙いですが投下。
Final Fantasy XII 「Prelude」
冷たい石の回廊を、大で歩く軍服の男――
すれ違う何人もの王宮仕えのメイドや警衛兵が、その男の纏うただならぬ雰囲気に、不安げな視線を寄せていた。
それらの視線をものともせずに、彼はひたすらに歩を進める。駆け出しそうになる体を押さえ、出来るだけ早くその広間へとたどり着けるように――
「このあと、アルケィディアが陸、空、双方からの同時攻撃を開始すれば――」
机上に広がる地図の上を囲むようにして、男たちが顔をつき合わせていた。椅子に座る余裕もなく、全員が立ったままだった。
上座にダルマスカ王国国王、その次座には先日国王の末娘、アーシェ・ダルマスカと正式に結婚した隣国ナブラディアの王子、ラスラ。
そして軍師、参謀などダルマスカ王国軍の中心人物たちが、難しい顔をして現場から帰還した兵士の状況説明を受けていたが――
張り詰めたような足音とともに、広間の入り口から姿を表した一人の軍人の姿――誰もが一瞬息を止めた。
視線が集中するのを感じた。彼は――息を一つ吸い込んでから、声を張り上げた。絶望的な台詞を口にするのは初めてではない
が――何度体験しても嫌なものだった。
「ナブディスが落ちた!」
わ、改行めちゃくちゃで読みづらいですねすみませんorz
改訂版を改めて載せますのでちょっとお待ちください(´・ω・`)
218 :
FF12 :2006/05/18(木) 19:59:41 ID:XajrO5cp0
Final Fantasy XII 「Prelude」
冷たい石の回廊を、大で歩く軍服の男――
すれ違う何人もの王宮仕えのメイドや警衛兵が、その男の纏うただならぬ雰囲気に、不安げな視線を寄せていた。
それらの視線をものともせずに、彼はひたすらに歩を進める。駆け出しそうになる体を押さえ、出来るだけ早くその広間へとたどり着けるように――
- - - - -
「このあと、アルケィディアが陸、空、双方からの同時攻撃を開始すれば――」
机上に広がる地図の上を囲むようにして、男たちが顔をつき合わせていた。椅子に座る余裕もなく、全員が立ったままだった。
上座にダルマスカ王国国王、その次座には先日国王の末娘、アーシェ・ダルマスカと正式に結婚した隣国ナブラディアの王子、ラスラ。そして軍師、参謀などダルマスカ王国軍の中心人物たちが、難しい顔をして現場から帰還した兵士の状況説明を受けていたが――
張り詰めたような足音とともに、広間の入り口から姿を表した一人の軍人の姿――誰もが一瞬息を止めた。
視線が集中するのを感じた。彼は――息を一つ吸い込んでから、声を張り上げた。絶望的な台詞を口にするのは初めてではないが――何度体験しても嫌なものだった。
「ナブディスが落ちた!」
219 :
FF12:2006/05/18(木) 20:01:22 ID:XajrO5cp0
その一言に、場の空気が一気に張り詰める。彼――バッシュも、それを言葉にした途端に胸に焦燥が走るのを感じていた。ナブディス。アルケィディア帝国とダルマスカ王国の狭間にある小国。アルケィディア帝国のダルマスカ侵攻を防ぐ、たった一つの堰だった。
そのナブディスが、落ちた――
「なに!?」
王が目を見開き、鋭く囁くように呟いた。そして、その声を遮るように、
「父は!?」
ラスラがバッシュを見上げ、どこか縋るような声を上げた。当然だろう――彼の故郷であるナブラディアの首都、ナブディスが落ちたのだ。家族や民、なによりも国を思う気持ちからか、ラスラの目に悲壮なものが宿る。
バッシュは一瞬言葉を詰まらせた。だが――事実を伝えなければならない。目を伏せる。真摯な彼の視線に耐えられなかった。
「わかりません、ラスラ様……」
「っ……」
バッシュの答えをある程度は予想していたのだろうが――アルケィディア軍の強大な軍事力による侵攻の凄まじさは、身に染みて彼も知っているはずだった。
その為の政略結婚だったのだから。ダルマスカとナブラディア。弱小国家同士の苦肉の策だった――ラスラは言葉を詰まらせた。
220 :
214:2006/05/18(木) 20:05:18 ID:XajrO5cp0
ああ、細かい間違いがいっぱいあるorz
とりあえず219の二行目の「ナブディス」は、「ナブラディアの首都・ナブディス」に脳内変更してください。
ほんとすいません(´・ω・`)
221 :
FF12:2006/05/18(木) 22:16:11 ID:XajrO5cp0
ラスラを一瞥してから、王の傍らに佇んでいた参謀が声を上げた。
「ナブディスが落ちたとなると、アルケィディア軍のダルマスカ侵攻を妨げるものは何もありません」
参謀が指し示したのは、机上の地図。そこにはバッシュの発言を受けて、地図上の仮想アルケィディア軍の戦力――陸からの勢力は青、空からの勢力は赤に色づけされている――が、ダルマスカの国境・ナルビナ城塞へと殺到する様子が表されている。
「奴らが国境に達するのも時間の問題です」
ダルマスカ王国軍とアルケィディア帝国軍は、ナルビナ城塞でのぎりぎりのせめぎ合いをしていた。強大な軍事力を持つアルケィディア帝国軍の猛攻撃を、ぎりぎりとはいえ抑えることができているのは僥倖だ。
ただでさえそんな深刻な状況だというのに、この上ダルマスカへの直接攻撃への堰の役目を果たしていたナブディスが落ちたとすれば――そして、ナブディスへ向かっていたアルケィディアの軍勢が、すべてナルビナ城塞に向かうとすれば。
考えるまもなく、絶望的な事態が予想される。戦場は、一方的な死地へと変わるだろう。
「では、ナルビナには――」
それでも――王の声に、バッシュは声を上げた。
「わたしが行こう」
222 :
FF12:2006/05/19(金) 09:36:10 ID:bmDA8QYe0
祖国ダルマスカ。救う方法があるとすれば、ナルビナ城塞で敵を止めることだけだろう。それが出来なければ、ダルマスカ本土はアルケィディア帝国軍に蹂躙される。それだけは――故郷を失うことだけは、避けたかった。
バッシュはそれだけ告げると、背を向ける。一刻の猶予もない――飛空挺を多く所持するアルケィディア軍が、矛先をナブディスからナルビナへと向けたのはもう数時間も前だ。急ぎ向かい、そして対策を練らなければならない。
と――
「ご一緒させてください!」
思わぬ声に、バッシュは足を止めた。体半分だけ振り返ると、ラスラがこちらを見据えている。
驚いたような国王の顔。そしてラスラの顔を見つめ――
(…………)
彼の目に強い決意の光が灯っていることを認めると、バッシュは頷いて歩き出す。その背中に、駆け寄ってくるラスラの足音が聞こえてきた。
223 :
FF12:2006/05/19(金) 09:36:41 ID:bmDA8QYe0
ダルマスカ王国の王都ラバナスタ。ほんの数日前には、豪華な成婚パレードが行われていたメインストリート――花びらが舞い、華やかな音楽と共に壮麗な馬車が走り――そして隣には、彼女がいた――幸せがそこにあったというのに。
轟音と共に空から舞い降りた無骨な飛空挺から、吐き出されるようにチョコボに乗った騎士がストリートへと降り立つ。チョコボ上の騎士たちが行進に加わり、そしてその周りには歩兵がおのおの武器を携えてまっすぐに進んでいく。
騎士や歩兵の進む先――ダルマスカ王家の住まう宮殿。祭事用の広いバルコニーの真ん中に設えられた王座に腰を下ろしていた国王が立ち上がるのを確認して、ラスラはその眼前に進む。
背下には数万人の兵士がいる。戦地へと赴く彼らの目までは見えないが、彼らが不安や恐怖に少なからず心を支配されているのはすぐにわかった。張り詰めたような空気を、背負うような気持ちだった。
国王がそばに控えていた侍従から剣を受け取る。見事な装飾が柄に施された美しい剣。
224 :
FF12:2006/05/19(金) 09:38:29 ID:bmDA8QYe0
「ガルテアの加護を、そなたに」
厳かな言葉と共に差し出された剣を、ラスラは受け取った。
ずしりと、重みが腕に伝わる。美しい剣。人殺しの道具であるというのに――それはどこまでも美しく、気高く見えた。
「ありがたき、幸せ」
人の命を奪うもの。けれど、それは同時に――守ることの出来る、唯一の武器でもある。
(――――……)
ラスラは視線を正面の国王からわずかに右に移した。王の斜め後ろには――
守るべき人が、そこにいた。
彼女は不安げな顔で――傍目にはいつものきりっとした顔にしか見えないだろうが、ラスラには彼女がその胸を不安でいっぱいに満たしているのがすぐにわかってしまっていた――こちらを見つめていた。
亜麻色の美しい、肩までの髪。儚げながらも、強い意志をその双眸に宿した気高き皇女。――生涯の妻。守るべき、者。
ラスラは彼女を見つめた後、体を反転させながら剣を抜いた。驚くほど手に馴染む柄を握り締めて、一気に鞘から解き放つ。
そして、固く掲げ――声を張り上げた。
数万人の兵士たちが、ラスラの声に答えるように声を張り上げた。それぞれの守るべき者への、別れの言葉と――再開を約束するかのような、力強い声だった。
225 :
214:2006/05/19(金) 09:43:28 ID:bmDA8QYe0
218から214までのタイトルは、「FF12 Prelude-守るべき者-」でお願いします。
改行規制で無理やり改行した部分があるので、
もしまとめに載せる際に訂正が効くならお願いしたいです(´・ω・`)
なんかスレストになってしまって申し訳ない・゚・(ノД`)・゚・。
お目汚し失礼いたしますた。
まぁ気にするな!乙!
]の作者だけど題名考えて貰えませんか?
「first contact」のまま続けてはいかが?
個人的には、ちょこまかとタイトル変更するのは好きではありません。
タイトル読むだけで本編が想像できてしまうのは、興を削ぐと思いませんか?
オリジナル小説ならともかく、メジャー作品のノベライズでは特にね。
因みに
@←これは機種依存文字ですので、使用は控えたほうがよろしいかと。
指摘の方、ありがとうございます 気を付けながら続けていくので今後とも宜しく
231 :
214:2006/05/19(金) 17:59:08 ID:bmDA8QYe0
またスレストになる恐怖を若干感じつつ('A`)
続きからオープニングの最後までを書きました。
良かったらお付き合いいただければと思います(・∀・)
232 :
FF12:2006/05/19(金) 17:59:55 ID:bmDA8QYe0
ナルビナ城塞はその歴史上類を見ないほどに苛烈な戦場となっていた。
上空を飛び交うのは無数の飛空挺。一人乗りの射撃用機関銃のみを搭載した飛空挺が、まるで蜜の多い花の取り合いをしている蜂のよう
に、触れるか触れないかの位置を猛スピードで飛び交っていた。
そのはるか上空には、空母――アルケィディア帝国軍の誇る艦隊が、まるで戦争を観察しているかのように悠然と構えている。おそらく
そこにはアルケィディア軍の将軍首がいるのだろう。苛烈な、そして明らかに押されているダルマスカ王国の必死の抗戦を――あざ笑って
いるのかもしれない。
それを思うと唾を吐きかけてやりたい気分になった。だが――そんな暇など、ない。
大混戦となったナルビナ城塞の頂上近くから、バッシュは城塞入り口付近を見下ろした。眼下には――まさしく地獄絵図が広がっている
。ダルマスカ王国軍とアルケィディア帝国軍。それらを構成する、ヒュム、バンガ、シーク――イヴァリースに存在するすべての種族が、
渾然一体となって殺し合いを続けている。
233 :
FF12:2006/05/19(金) 18:02:55 ID:bmDA8QYe0
ちょ……また改行めちゃくちゃだよ。なんでだ('A`)
すみません、以下改定分です
-----
ナルビナ城塞はその歴史上類を見ないほどに苛烈な戦場となっていた。
上空を飛び交うのは無数の飛空挺。一人乗りの射撃用機関銃のみを搭載した飛空挺が、まるで蜜の多い花の取り合いをしている蜂のように、触れるか触れないかの位置を猛スピードで飛び交っていた。
そのはるか上空には、空母――アルケィディア帝国軍の誇る艦隊が、まるで戦争を観察しているかのように悠然と構えている。おそらくそこにはアルケィディア軍の将軍首がいるのだろう。
苛烈な、そして明らかに押されているダルマスカ王国の必死の抗戦を――あざ笑っているのかもしれない。
それを思うと唾を吐きかけてやりたい気分になった。だが――そんな暇など、ない。
大混戦となったナルビナ城塞の頂上近くから、バッシュは城塞入り口付近を見下ろした。眼下には――まさしく地獄絵図が広がっている。
ダルマスカ王国軍とアルケィディア帝国軍。それらを構成する、ヒュム、バンガ、シーク――イヴァリースに存在するすべての種族が、渾然一体となって殺し合いを続けていた。
234 :
FF12:2006/05/19(金) 18:04:32 ID:bmDA8QYe0
その規模は数千、いや数万にもおよぶかもしれない。両国軍の上層部は同じ事を考えているのだろう――ここが正念場だ。ダルマスカ侵攻は、ナルビナ城塞戦の結果ですべてが決まる。アルケィディア帝国軍はそれだけに軍のほぼすべてをこのナルビナ城塞に向けている。
ほとんど絶望的な戦いだった。押されているのは目に見えている。かといって諦めることなど出来ない――押し切られればそれで終わりだ。ダルマスカ王国は帝国に侵略される。
だが――
バッシュは弓を引き、チョコボ上から落とそうとこちらを弓で狙っているアルケィディア帝国軍兵士に向けて放つ。まっすぐな軌跡を描いて矢が戦場を引き裂き、弓を構えていた兵士の咽喉元に突き立つ。
くず折れる兵士を一瞥すらせずに、バッシュはそのそばを駆け抜ける。そして――冷静に判断をした。
この場所はもう持たない――せめて友軍の多く残る、ナルビナ城塞内部へと撤退すべきだ、と。
本来ならば決してそんな判断はしなかった。無謀なのは百も承知で、その場に踏みとどまって一人でも多くのアルケィディア帝国軍を倒したかった。けれど――今、自分が守らなければならないのはその身だけではない。ダルマスカ王国の希望が、彼の手にゆだねられているのだ。
235 :
FF12:2006/05/19(金) 18:05:38 ID:bmDA8QYe0
「ここは落ちます。撤退しますぞ!」
混戦状態の戦場で、バッシュは叫んだ。
そのすぐそばで、チョコボ上から剣を振り下ろすラスラ――その手には当然、王から下賜された聖剣が握られている――は、チョコボ上の自分たちを引き落とそうとするアルケィディア帝国軍の歩兵を敵を一人、その剣で薙いだ。
「まだだ! まだ、魔法障壁がある!」
魔法障壁――そう叫んだラスラが天を仰いだ。その動作につられるようにしてバッシュも天を仰ぐ。
魔法障壁。ナルビナ城塞の最奥部では、四人の白魔導士たちがクリスタルを囲んで今も呪文の詠唱を続けているはずだ。魔法障壁はナルビナ城塞上空を囲むようにして展開されている。ガラス球の内部にいるようにその障壁は普段は目に見えないが、障害物――上空でいまだ
激しくぶつかり合っては墜落する飛空挺を受け止め、城内への侵入を防いでいた。
-----
これほどまでに激しい戦闘は、経験したことがなかった――
ナルビナ城塞の最奥部の間の中央に置かれているのは、巨大なクリスタルだった。光を放つそれを囲むようにして、自分を含めて四人の 白魔導士がその手をかざし、延々と呪文の詠唱を続けている。
「くっ――」
額から汗が流れ落ちる。無理もない――もう数時間もずっと詠唱を続けているのだから。
236 :
FF12:2006/05/19(金) 18:07:41 ID:bmDA8QYe0
額から汗が流れ落ちる。無理もない――もう数時間もずっと詠唱を続けているのだから。
魔法障壁――シェルとプロテスの応用魔法であるその障壁を維持するのには、通常の白魔導士の精神力では耐えることは出来ないであろう。
苛烈な任務だったが――逃げるわけにはいかなかった。最奥に敵が侵入しないように命を賭して門前を守る友軍の兵士を、とてつもない殺傷力を持つアルケィディア帝国軍の小型飛空挺の砲火に曝すことなど出来ない。
「ひっ――!」
息を飲み込んだような悲鳴を聞いて、彼は顔を上げた。そして――絶望的な光景を目の当たりにした。
眼前――クリスタルの間の入り口から現れたのは――紛れもない、アルケィディア帝国軍の兵士の姿だった。
「うわあああああっ!」
悲鳴。そして――
一番扉に近い位置にいた白魔導士の一人が、駆け寄ってきたアルケィディア帝国軍の兵士によって斬り下げられた。剣が彼の体を走ってからは、彼は悲鳴すら上げずに床に沈みこんだ。どさ、というやけに重い音だけが耳にこびりついて離れなかった。
彼を切り捨てた兵士は、その奥にいた彼の姿を認めると剣を振り上げる。
その切っ先が胸に沈むその瞬間まで――彼は、呪文の詠唱を止めることはなかった。
「――――……」
少しでも魔法障壁の維持を――
薄れ行く意識の中、見上げた視界には――崩壊する魔法障壁を見上げ、静かに笑みを浮かべる兵士の姿が映った。
237 :
FF12:2006/05/19(金) 18:44:04 ID:bmDA8QYe0
-----
まるで何かの冗談のように――魔法障壁が、崩壊した。その輪郭が歪み、融けるように――障壁が音もなく消えた。
「魔法障壁が……!」
愕然と、ラスラが呻く。
「これまでか……」
思わず呟いてしまってから、バッシュはかぶりを振る。まだだ。諦めてはいけない。可能性がある限り――希望がここにある限りは、まだ決して終わらないのだから。
ラスラはバッシュを抜かすと、殺到する兵士をその剣で薙ぎつつ進んでいく。どうやら、先ほどのバッシュの意見――撤退、ということばに賛同しているようだった。魔法障壁のない今では、空からの勢力が一番無防備なこの最上部へと殺到するのも時間の問題だろう。
「父の仇を! 父の仇を――!!」
ラスラは自らを鼓舞するかのようにそう叫ぶと、前進を始めた。チョコボ上から群がるアルケィディア帝国軍兵士を薙ぎ倒して進んでいく。その勇ましい背中に、バッシュも続こうとして――
(――――っ!)
ふと悪寒のようなものを感じ、バッシュは一瞬動きを止めた。背中の毛がすべて粟立つような――そんな、感覚。初めてではない。幾度も戦場で感じたことのある感覚。自分に向けられた殺意――とでもいうべきものだろうか。戦士としての危機感、とでもいうべきだろうか。
バッシュは焦燥に駆られたようにあたりを見回す。そして――
視界に走ったその姿に、バッシュは一瞬頭の中が真っ白になったような感覚すら覚えた。
前方――ちょうど、先行するラスラの視界からは外れるであろう位置。そこに――弓を構える、一人の兵士の姿。ラスラの姿――その装束や装備から、将軍首だと判断したのだろう。その兵士の弓は、明らかに自分ではなくラスラを指し示している。
絶望的な想像が脳裏を占める前に、彼は叫んだ。
「ラスラ様!!」
238 :
FF12:2006/05/19(金) 18:44:46 ID:bmDA8QYe0
叫びながら、弓を引き絞る。照準もじっくり合わせる間などなく――そして、失敗など許されない条件下で――バッシュは弓を放った。
ひゅん――と風を切る音と共に、その弓は吸い込まれるように兵士へと突き立った。が――
バッシュの矢が到達する寸前にその兵士の放った矢が――そこに突き立つのを、バッシュは確かに見た。
「ぐっ――!」
叫び出したいような衝動が全身を突き抜ける。目の前の光景。絶望的な、その光景――
ぐらり、とチョコボ上のラスラの身が揺れる。その手が自分の胸に突き立った矢に触れた。抜こうとしたのだろう。だが――そこまで、だった。
がくりと力なくチョコボの首にもたれかかったラスラへ、兵士が殺到する。その一瞬前に、バッシュはラスラへと駆け寄ると、その襟元を掴んでラスラの体を自分のチョコボ上へと引き寄せた。
(くっ――)
二人分の重量を支えつつ、健気に進もうとするチョコボ。だが、バッシュはその綱を引いて留まった。
じわじわと――手傷を負った将軍首を抱えたダルマスカのチョコボ騎兵へと、アルケィディア帝国軍の歩兵が歩み寄ってくる。辺りにはもう、生きた友軍の姿はない――完全に、孤立してしまった。
239 :
FF12:2006/05/19(金) 18:46:51 ID:bmDA8QYe0
と――
轟音に思わずバッシュは顔を上げた。
上空――魔法障壁の無くなった夜空から、ダルマスカ王国軍の大型飛空挺が一機――こちらへと墜落してくるのが見えた。
バッシュは思わず身構えたが、その飛空挺はバッシュたちのいる位置からずれた場所へと落下していく。轟音と共に落ちていく飛空挺は、ナルビナ城塞の堅牢なる外壁を抉るようにして落ちていく。
その破片の一つが、バッシュたちのすぐそばに落ちた。崩れた外壁の下敷きになった者の悲鳴に驚いたアルケィディア帝国軍の兵士たちの注意がそちらに向かう。同時に、地面に落下した飛空挺の爆発音。
これ以上の好機はないだろう。これが――最後のチャンスだ。
「はぁっ!」
バッシュが気合を入れて叫び、綱を強く引いた。すると、待っていました、と言わんばかりに――二人分の重量など気にならないかのように、チョコボが軽々と跳躍した。
チョコボをひづめを眼前に受けた兵士が悲鳴を上げる。その悲鳴にこちらを振り返ったアルケィディア帝国軍の兵士たちが、すぐに注意をバッシュたちへと向けた。
が――その時には、バッシュはすでに外壁の落下地点からは離れた場所にいた。
兵士が叫ぶ。将軍首が逃げた――とでも叫んだのだろう。一騎のチョコボ騎兵を、進行方向にいたアルケィディア帝国軍の兵士たちが認める。
こちらに殺到する兵士を、バッシュは剣で薙ぐ。悲鳴を上げることもなく倒れる兵士を振り返ることなどせずに、バッシュは向かってくる敵すべてに剣を突き立て、進んでいく。
(まだだ。まだ、終わりじゃない――!)
腕の中のラスラを落とさないように抱え直して、バッシュは疾走する。背後で怒号や悲鳴が聞こえてはいたが、振り返ることすら出来ず――ただ、チョコボを進めていた。
240 :
FF12:2006/05/19(金) 19:07:11 ID:bmDA8QYe0
その背後で、何かが倒壊する音を聞いてバッシュは振り返った。その視界に――白魔導士たちが魔法障壁の呪文を詠唱し続けていたナルビナ城塞最長部の塔が、轟音と共に崩壊する姿が見えた。
すべてが終わったのだと、――バッシュは、思った。
-----
(※ここから文末までは作者の創作です。創作が苦手な方はスルーしてください※)
どれくらい走ったのだろうか。悪夢のような一夜は明け、もうすぐ陽が昇る。
すっかりナルビナ城塞は遠くなった。バッシュたちが場外へと脱出する姿を見て、追いかけてきたいくらかのダルマスカ王国軍兵士たちは皆一様に傷を負っていた。おそらく――これが残存兵力のすべてだろう。
砂漠の真ん中――ラバナスタへとあと少し、という位置で岩場に影を潜めるようにしてチョコボを止めると、他の兵士たちも同様にチョコボから降り立つ。
動けるものはその背に乗せてきた重傷者の介抱を始め、また――途中で力尽きたのか、もう動かない仲間の体を抱きしめてむせび泣く者もいる。
完全な敗戦だった。ナルビナ城塞は――落ちた。
バッシュはチョコボを降り、ラスラの体を下ろした。もうぴくりとも動かない体を、砂の上に敷いた自分のマントの上に横たえた。まだ幼さの残るその顔は、まるでただ眠っているようだった――その胸に突き立っている、矢さえなければ。
傍らに膝をつくバッシュに、影が差した。陽は大分昇っている。が、曇り空の所為であまり明るくはなかった。雨が降るのだろう。ラバナスタは、雨季へと入る。
「バッシュ。無事か?」
「……ウォースラか」
その声に顔を上げると、ウォースラがこちらを見つめていた。バッシュを見、そして――バッシュの傍らの横たわったラスラを認めると、その枕元に膝を落とし――目を伏せた。
241 :
FF12:2006/05/19(金) 19:07:48 ID:bmDA8QYe0
「ラスラ様は戦死された」
「ああ……」
「最後まで勇敢だった」
「……わかっている。――自分をあまり責めるなよ、バッシュ」
ウォースラは立ち上がると、片手を上げた。バッシュがそちらを見ると――比較的元気なチョコボに一人の兵士が飛び乗り、ダルマスカ方面へと駆け出していった。王に状況を――ナルビナの陥落、そしてラスラの戦死を伝えにいくのだろう。
この場所へ、時間をそう置かずに飛空挺が到着するだろう。ラスラは、その飛空挺でダルマスカへと帰還する。
と――
轟音に顔を上げると、頭上をいくつかの飛空挺が飛んでいくところだった。ナルビナ城塞方面から、ダルマスカへと向かっている。
おそらく――アルケィディア帝国軍の指揮者が乗艦している艦だろう。その空母を護衛するようにいくつかの飛空挺も飛んでいたが、その数は少ない。当然だろう――ダルマスカはもう、ほとんどの兵力を失っている。幸福韓国に向かう艦に、大規模な護衛など必要ない。
バッシュは――知らず、拳を握り締めていた。守れなかった無力感。爪が皮膚を破って血が流れても、拳を解くことができなかった。
(※ここまで創作です※)
242 :
214:2006/05/19(金) 19:09:40 ID:bmDA8QYe0
あんまりスレを独占するのも気が引けるのでいったんきります。
このあと、オープニングの終わりまでは書いてあります。
もう少ししたらうpしたいと思っとります(`・ω・´)
243 :
FF12:2006/05/19(金) 22:00:44 ID:bmDA8QYe0
ほんの数日前の出来事だった。あの幸せに包まれた瞬間。初めて触れた唇の感触も、ぎこちなく自分の手をとって指輪を嵌めてくれたあ
の手つきも、昨日のことのように思い出せるというのに。
あの時純白の花嫁衣裳に身を包んでいたアーシェだったが、今は――彼の死を悼み、喪に服す為に漆黒のベールを纏っている。
「汝の肉体は大いなる父の祝福を受け、大地へと帰らん――」
厳かに祈りが捧げられる。祭壇の上には、棺があった。その棺の中には、――ラスラが、いる。
アーシェは棺のそばに立ち尽くしていた。誰よりも、ラスラの近くに立っていた。彼女の視界には入っていなかったが、礼拝堂には人が
溢れていた――誰もが涙を流し、若き王子の死を悼んでいる。
(どうして――)
ナルビナに発つ前――戴剣式のときに、彼が見せた表情。
もう二度と会えなくなるなどと、誰が想像できただろう。もう二度と触れられなくなることに、誰が耐えられるのだろう。
涙が一筋、零れ落ちた。
(なぜ、いなくなってしまうの――)
膝をつく。棺に縋る。ラスラの、――愛する夫の、傷一つ無い顔。まるで寝ているだけのような、安らかな――顔。今にも目を開けて、
彼女に声を掛けてくれるような気がした。『どうしたんだ? アーシェ』少し眉をひそめて、涙を流す彼女の頬を優しく拭ってくれるよう
な、そんな気がした。
だが――もう、そんな瞬間は訪れないのだ。永遠に。
「汝の魂は母なる女神の元、安らぎのときを迎えん」
(ラスラ…………)
ラスラは死んだ。ダルマスカは、帝国の手に落ちた。不思議と怒りは感じなかった――ただ深い悲しみに心を支配されて、それ以外の感
情が表れていないだけかもしれないけれど。
「ファーラム」
鐘が鳴る。彼の魂を、安らかなる世界へと連れ去る音。
雨音が聞こえてくる。彼の死を悼むように、雨がダルマスカに降り注いでいた。
Final Fantasy XII 「Prelude」 了
244 :
214:2006/05/19(金) 22:05:35 ID:bmDA8QYe0
あんまり長くなかったので最後までうpしてしまいました。
長々とスレを占領してしまってすみません。
そして最後の最後でまた改行おかしくてすいませんorz なんでだーヽ(`Д´)ノ
わたしは144-145さんではないんですが、タイトルはやっぱり一貫して「Prelude」でお願いします。
で、以下が改行直したver.です。
-----
ほんの数日前の出来事だった。あの幸せに包まれた瞬間。初めて触れた唇の感触も、ぎこちなく自分の手をとって指輪を嵌めてくれたあの手つきも、昨日のことのように思い出せるというのに。
あの時純白の花嫁衣裳に身を包んでいたアーシェだったが、今は――彼の死を悼み、喪に服す為に漆黒のベールを纏っている。
「汝の肉体は大いなる父の祝福を受け、大地へと帰らん――」
厳かに祈りが捧げられる。祭壇の上には、棺があった。その棺の中には、――ラスラが、いる。
アーシェは棺のそばに立ち尽くしていた。誰よりも、ラスラの近くに立っていた。彼女の視界には入っていなかったが、礼拝堂には人が溢れていた――誰もが涙を流し、若き王子の死を悼んでいる。
(どうして――)
ナルビナに発つ前――戴剣式のときに、彼が見せた表情。
もう二度と会えなくなるなどと、誰が想像できるだろう。もう二度と触れられなくなることに、誰が耐えられるのだろう。
涙が一筋、零れ落ちた。
(なぜ、いなくなってしまうの――)
膝をつく。棺に縋る。ラスラの、――愛する夫の、傷一つ無い顔。まるで寝ているだけのような、安らかな――顔。今にも目を開けて、彼女に声を掛けてくれるような気がした。少し眉をひそめて、涙を流す彼女の頬を優しく拭ってくれるような、そんな気がした。
だが――もう、そんな瞬間は訪れないのだ。永遠に。
「汝の魂は母なる女神の元、安らぎのときを迎えん」
(ラスラ…………)
ラスラは死んだ。ダルマスカは、帝国の手に落ちた。不思議と怒りは感じなかった――ただ深い悲しみに心を支配されて、それ以外の感情が表れていないだけかもしれないけれど。
「ファーラム」
鐘が鳴る。彼の魂を、安らかなる世界へと連れ去る音。
雨音が聞こえてくる。彼の死を悼むように、雨がダルマスカに降り注いでいた。
乙。12はなんか壮大だから大変だな。
創作とかいちいち書かなくていいと思う。
綺麗につながってたし、オリジナルストーリーがまざるのがこのスレの良さな気がする。
それに12とかACとか本編が説明不足すぎるからオリジナルは必要だよ。
246 :
214:2006/05/20(土) 06:57:58 ID:fQc94Q810
>>245 ありがとう。創作も交えて問題ないんですね。
まだこのスレ読み始めて日が浅いのでどこまでだったら平気なのかわからなかったんです。
一晩経って読み返してみたら、誤字と間違った文法だらけでo,,,,,,rz
OP見ながら興奮しつつ書いてたのと、見直しをしなかった所為だ('A`)
まとめサイトのしたらばの方に改めて訂正した分を投稿させてもらってもいいですか?
これがまとめに載ってしまうとちょっと恥ずかすぃ(´・ω・`)
>>246 良いですよ。
修正要望スレの方に投稿お願いします。
あと出来れば節の区切りを分かり易くして頂くと幸いです。
節の区切りというのは、例えばPrelude(1),(2),(3)・・・・ということです。
FINAL FANTASY]「start up 5」
杭の様な形状をした巨大な魔物に向かってティーダは威勢良く立ち向かう。
しかし、大きな羽根を持つ魔物達が瞬時に二人を取り囲む。
一体一体は決して強くない。先程の戦闘でもそれは明らかな事実だが、数で相手を圧倒していた。
その様な状況を見据えてアーロンは太刀を構えて言う。
「まとめて片付けてやろう。」
瞬間、凶々しい空気がフリーウェイを取り囲んだ。幾度の死線をくぐってきた男が殺気を振り撒いていた。
背筋が凍りつく程の圧迫感と恐怖感。勿論隣で構えているティーダにも嫌でも伝わっていた。
アーロンは一体の魔物に向かって斬りつける。
すると周りの魔物達にも斬撃が襲いかかり、体が一瞬にして二分された。まるで鎖で繋がっていたかの様に。
「す、すっげぇ…」
ティーダは思わず感嘆の声を上げた。
普段は訳の分からない行動と言動で、自分を混乱に招いていた男としか印象が無かったティーダに、この光景は衝撃を犇々と与えていた。
FINAL FANTASY] 「start up 6」
しかし、凄まじい攻撃を与えていても杭の形状の魔物には大した驚異には至ってない様に見えた。
突然、魔物の身体が青白い光を強く放つ。光がフリーウェイに強く突き刺さる部分から先端へと昇っていく。 次の瞬間、物凄い圧力が二人を押し潰さんとばかりにのしかかった。ティーダは思わず膝をついた。堪えられない程の重圧。身体が潰れる様な感覚に襲われる。
「ちょ……何だよこれ…アーロン!」
「奴は、重力を操っている。このままだと確実に俺達は押し潰される。」
アーロンですら身を屈める程の重力は一向に止まないままだった。
「じゃあどうすればいいんだよ!!やられっぱなしで終わるのかよ!?」
「本体の上の方に強く光る触覚の様な物が見えるか?あれを斬り落とせば、おそらく止まる筈…お前なら届くだろう」
「は!?オレがやれってのかよ!?」
「お前の脚でしか届かない。このまま押し潰されたく無かったら斬り落とせ。」
確かに重力は強まるばかり。体力ももう限界に近付いている。早く止めなければアーロンの言う通り押し潰されるだろう。
「…分かったよ…斬ればいいんだろ!!」
ティーダは腹をくくり、ゆっくり立ち上がり、魔物へ飛びかかる。
重力が強い為、一回で上に飛び乗る事は出来なかった。魔物にしがみつき、足場を探して、経由してから上に昇った。
何本もの触覚に向けてティーダは一心不乱に剣を振り回した。
一本、二本と確実に斬り落としていく。力はもう殆んど残っていない。その中、ティーダは最後の一本を斬り落とした。
二人を苦しめた圧力は一瞬にして止まった。
うわぁ…改行めちゃくちゃでスマソι
戦闘シーンは創作しちゃったけど大丈夫かな?
ほ
保守
ドラクエ8でもいいんですよね?
FINAL FANTASY IV #0411 5章 1節 刻む足跡(7)
飛空挺の編隊は段々と遠ざかっていき、ついには雲に隠れてそのまま見えなくなってしまった。
大空には、ぽつんとエンタープイズが一つ浮遊し、プロペラが大きな音を立てて回っていた。
その甲板、既に昼が終わり、もうすぐ夜がやってくるであろう時間の日に照らされた甲板はすっかりと
消沈していた。
「どうするのだ……」
シドが訪ねる。
飛空挺は彼の指示で動いている。いざとなれば自分の命令で船を動かし、追跡する
事も出来たであろう。それをセシルに聞いてくるのだ。彼も判断に困っているのだろう。
「トロイアにいくしかないだろう……」
カインがゴルベーザの元に動いているとしても、簡単にローザに危害を加えるとは考えづらい。
おそらくは、ゴルベーザの欲する、クリスタルを確保させるまでは、ローザの身は安全であろう。
「そうだな」
カインとの間に多少の親交があったシドも同感だったのだろう。
「だが、トロイアにまでいくには少し準備がいるな」
「準備?」
「元々、長い間地下に閉じこめておった船だからな。すぐに飛べるようにはしたものの、それでも、
長期間の飛行をするのはちょっと厳しいのだ」
「そうか」
「なので、一旦着艦するぞ、それでいいか?」
「ああ」
セシルは頷く。
「テラ、ヤン。いいか?」
「はい……」
ヤンが答える。テラも無言ではあるが、頷いた。
今の状況に対し、深い理由を知らない二人は既におまかせといった感じだ。
「では! 一時帰還じゃ!」
シドの叫び一声で、エンタープライズはバロン城へと舵を取った。
256 :
299:2006/05/22(月) 03:31:21 ID:tDNMwP+e0
FINAL FANTASY IV #0412 5章 1節 刻む足跡(8)
着艦後、シドは直ぐにでも、自分の弟子である、部下達に指示を下し始めた。
トロイアまでの航路をとるには色々と準備がいるようだ。
当然ながら、セシルを初め、ヤンやテラ達には何か手伝える事があるわけではない。
それどころか、邪魔になってしまうかもしれない。
「数日程時間がかかりそうじゃ……すまんが、ゆっくりと休んでおいてくれ……」
テラは、一刻も早く出発したいようで、その言葉を聞いた時は苛立ち気味であった。
最も、いつまでも焦っている事はなく、すぐにでも休息をとる事になった。
テラにもこれからの事で色々思い悩む事もあるのであろう。
ヤンも同じようであった。
そして、セシルにとって、与えられた休息は、大変有り難いものであった。
それは単純な疲れを癒すだけでなく、今の状況や、バロンの変化とその影響を
知る為にも、充分な時間であったからだ。
「失礼するよ……」
そしていま、セシルは城内の一つの扉を叩いていた。
「何でしょう」
返答は間もなく帰ってきた。直後、扉が向こう側から開く。
「これは、セシル……さん」
表れた人物を見て、扉を開いた男は少しばかりの敬意を払ってその名を呼んだ。
「あ、別にそんなに改まってもらわなくても……」
「ですが、あなたがこんな所に来るとは珍しいですから」
こんな所――竜騎士団の詰め所にセシルは来た事はあまり無かった。
「何用でしょうか?」
「あ、少し聞きたい事があって……入れてもらえるか?」
「はい……」
ゆっくりと頷いてから、男はセシルを部屋へと案内した。
257 :
299:2006/05/22(月) 03:39:09 ID:tDNMwP+e0
FINAL FANTASY IV #0413 5章 1節 刻む足跡(9)
中には、エンタープライズを発進させる時に通った際に感じた、無人感はすっかりと
無く、今は人が居住していると分かる雰囲気になっていた。
だが、もはや日が西へと傾き、夜へと移行しようとする時期である。
部屋はがらんどうとしており、男とセシルが残されるだけであった。
「それで……」
セシルが勧められた椅子に着席すると、間もなく男が訪ねてくる。
「ああ、カインの事なんだ……」
「カイン」
その名を聞いた男はさして驚く様子も無く。
「ああ、やっぱりそうでしたか」
と言った。
「あなたが此処に来るのはそれくらいしかありませんからね」
そう言って、男――竜騎士団現副長はくすりと微笑した。
隊長として任命されたまだ若いカインを影ながら支えた彼にとって、セシルとカインの
関係も承知の上であったのだ。
「仲良き事で……羨ましいものですな」
最後にそう付け加え笑った。
「…………」
その笑いが今のセシルにとっては辛かった。
258 :
299:2006/05/22(月) 03:39:52 ID:tDNMwP+e0
FINAL FANTASY IV #0414 5章 1節 刻む足跡(10)
「それで?」
「その、まずはすまない……」
本題に聞こうとする副長に、セシルは先打って謝罪の意を述べる。
「僕と一緒にいたからカインは……」
ミストでセシルと共に消息を絶ったカインは未だにバロンでは行方不明という扱いに
なっていた。
「いや! いいのです! むしろ私はあなたについていったカインさんには賞賛の意すら称えたいと
思いますよ!」
大きく身を振る副長は更に続ける。
「むしろ私達の方こそ、王が偽物であったと気付かずに、それどころかただ恐ろしく、
その意のままに動いていたのです!」
王の件についての真相はセシルの判断により、すぐにでも国の重役達に伝える事にした。
その事実はあっというまにに民への周りへと伝わり、今やもはや民にとって周知の事実となっていた。
最も、古くからの重臣達の大半は少なからずの予想は抱いていたようであった。
「全く持って、不甲斐ないです。カインさんに合わせる顔がないですよ……」
落胆する副長にとっては、カインが行方不明になっていても無事であると信じているようである。
「その事なんだが……」
歯切れ悪い言葉であるが、何とかセシルは切り出そうとした。
セシルにとってはここからが本題であったのだから。
259 :
299:2006/05/22(月) 03:59:18 ID:tDNMwP+e0
FINAL FANTASY IV #0415 5章 1節 刻む足跡(11)
「はい」
「カインは生きている」
「何ですって!」
思わず叫び、副長は立ち上がる。
「それで! 今は何処に?」
「今は……」
副長は言葉を待った。
「ゴルベーザの元にいる……」
「ゴルベーザですと!」
当然ながらバロンの民もその名は知っていた。
いや、副長ほどの役職であれば、自然と耳に入ってきたであろう。
「ひょっとすると捕らわれているのですか!」
急に話された事柄に驚きつつも、副長はそう解釈した。
「いや……それが、違うんだよ」
「では……」
ごくりと息の呑んだ音がする。
「カインは、今ゴルベーザに味方している……」
「え……その、つまりは……」
副長は混乱を隠しきれないようである。無理もない。
つまりはこの国に敵対しているという事。
いつか剣を向け合う時が来る日もあると否定できない関係。
「せめて副長には話しておきたくて……」
「何故、カインさんはそんな事を?」
その事実を知った副長がまずセシルに返したのは、その可能性の否定ではなく、理由であった。
「それは僕にも……」
分からない。そう答えたかった。
そうと言えば、自分は今だに昔の自分達――三人を維持できるかもしれない。
だが、それは既に叶わない願い。知ってしまった自分には……
260 :
299:2006/05/22(月) 04:01:47 ID:tDNMwP+e0
FINAL FANTASY IV #0416 5章 1節 刻む足跡(12)
「僕に……責任があるんだ……」
セシルは言った。
「そうですか」
副長は平坦な口調で言葉を受け止めた。
彼は、セシルとカイン。二人の親交を深く理解していた。
しかし、其処に介入する「三人目」である人物については知らなかった。知りようがなかった。
それを理解してくれたのか、彼は深く追求をしてくる事はなかった。
「わかりました……カインさんの事をよろしく頼みます……」
深々とお礼をする姿はまるで親が子供の事を御願いしているかのようだ。
「ところで――」
そんな考えがよぎったのでつい訪ねてしまった。
否、今の様な関係だからこそ、カインの事をもっと詳しく知りたいと思っていたのかもしれない。
「カインの両親はどんな人だったんだ……?」
既に死別している事は知っていた。だけど、どんな人かは聞いた事がなかった。
孤児である自分が聞くのは、厚かましいと思っていたし。そんなセシルを気遣ってか、
カインも自ら話す事はなかった。
「…………」
少し副長は黙った後、口を開いた。
「ついてきてください……」
と言って自ら扉を出て行った。
セシルも促されるようにして扉につきそった。
おつ!
262 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/23(火) 10:37:21 ID:HMP1VqjL0
あげ
うおおぉ副長がきたーーー!
オリジナル展開?
っぽいね。でも本編の台詞にはうまいこと繋がってた気がする
前に297氏が書いた「竜の騎士団」の副長とは違うのかな?
その副長は・・・・。。(⊃д`)
>>266 いや、その人は死んでるから……
設定だけ生かした別人物ってところだろうか
269 :
144:2006/05/25(木) 16:51:03 ID:QRrfYGPJ0
270 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/26(金) 04:37:31 ID:7fNDK2gZ0
あげ
FF12って実は面白いのか…?
おかしい…プレイしてストーリー糞杉とか思ったんだが…
誤爆?
あ
保守
このスレの12が面白かったって言いたかったんだよ
きっと
まあ実際の12も初めのほうは神だったが
277 :
214:2006/05/28(日) 09:18:42 ID:6tBz+jWH0
>>まとめサイト管理人さん
いつも乙です。まだ書き直しが終わってないので、提出wはもう少し待っててください。
昨日書き直してたんだが、途中で今更スプーを見てしまったら笑いが止まらなくて書けなくなりました(´・ω・`)
>>144 ありがとうw
保守
ほしゅほしゅ
280 :
144:2006/05/30(火) 19:42:27 ID:gbl81WRp0
ほしゅ
281 :
144:2006/05/30(火) 19:51:03 ID:gbl81WRp0
>>214氏
そんな貴殿に
つ
/ ̄`''''"'x、
,-=''"`i, ,x'''''''v'" ̄`x,__,,,_
__,,/ i! i, ̄\ ` 、
__x-='" | /ヽ /・l, l, \ ヽ
/( 1 i・ ノ く、ノ | i i,
| i, {, ニ , .| | i,
.l, i, } 人 ノヽ | { {
}, '、 T`'''i, `ー" \__,/ .} |
.} , .,'、 }, `ー--ー'''" / } i,
| ,i_,iJ `x, _,,.x=" .| ,}
`" `ー'" iiJi_,ノ
282 :
214:2006/05/30(火) 21:05:51 ID:S9J2TPMh0
>>144 ちょっw スプーキタコレww
本気で思い出し笑い地獄にハマったので今夜も推敲は断念しますw
続きも書きたいんだけど、私が書くとほぼオリジナルになりそうなので断念しますた(´・ω・`)
どなたか続きを書いてくださると幸いです。
書いてほすぃ
保守♪
こういう小説って全部書いて投下してる訳じゃないんだよな?
構想とか伏線とかは覚えとく物なのか?
そういう段取りすら理解できてない俺にとってどういう流れで小説を書いてるのか分からんな
ようするに、書き手さん頑張れ!!!
286 :
299:2006/06/01(木) 05:06:41 ID:m2d1QN9i0
FINAL FANTASY IV #0417 5章 1節 刻む足跡(13)
副長を追いかけて到着したのは、城の地下深くの一角の
部屋であった。
(この場所は……)
既に開け放された扉の中には、先だって来ていた副長が二つの棺の
前へと立っていた。
セシルはこの場所――バロンの歴史へと貢献してきた群雄達の眠る場所
に立ち入る事は数える程しかなかった。
それも、孤児として後ろ立ての無かった為である。
勿論、此処に眠る者に対し敬意を抱いていなかったとは思っていない。
むしろ、自分のような者が来ては行けないという遠慮があったのだ。
「これは……カインの……」
副長の目前に備えられた棺の一つに刻まれた名には覚えがあった。
ハイウインド。
カインと同じ名だ。とすれば父はここに眠っているのか……
「ハイウインドというのは、竜騎士を率いるものが名乗る姓なのです。
つまりは、元からの名ではなく、その時々に授けられるもの……」
「つまりカインの父さんも?」
「はい、立派な方でありました。まだ若造であった私も大変お世話になりました……」
副長はそこで一旦言葉を切った。感傷に浸っているのか、しばらく無言であった。
「本当に立派な方でした……しかし、その後戦地に赴いき、その命を散らしてしまったのです」
「知らなかったよ……」
セシルがまだ学校へといた頃の話である。当時のセシルにはただ何となく大変な事が起きていると
いう事くらいの自覚しかなかった。
「この事はカインさんにはしばらく内密にしていました。母親を失って間もない頃でしたからね……」
そこまで言って今度は少しばかり話題を変えた。
「正直セシルさんがいなければ、あの時のカインさんはもっと苦しんでいたでしょうね。あなたが
いてくれたおかげでカインさんは元気を取り戻していったですから」
「いや、僕の方こそ……」
そう……孤独な寂しさを紛らわせ、楽しさを分かち合えたのはカイン、そしてローザのお陰なのだ。
自分もカインと一緒にいることで救われていたのだ。
287 :
299:2006/06/01(木) 05:07:32 ID:m2d1QN9i0
FINAL FANTASY IV #0418 5章 1節 刻む足跡(14)
(君も苦しんでいたのか? カイン)
鬱蒼とした心の闇を払い、人生への光明を開いてくれたのはカインだ。たとえお互いに争う事になった
今でもその過去だけは変わらない。
「それ以来、竜騎士団は分裂の兆しを見せました……後継者が見つからなかったのです」
竜騎士団を率いるには、パートナーである竜に認められる必要がある。
それはセシルも知っていた。
「その時、見事団長の竜をてなづけたのがカインさんです。それと同時に父の死を知り、それも克服した。
私達は幼いあの人の実力を認め、全員一致で団長へと推したのです……」
急に副長が震え上がった。顔を俯かせているのは泣いているからだろうか。
「私達は永遠の結束に結ばれたと思っていました。幾度の困難もありましたがカインさんのお陰で
乗り越えてきました。ですが、今はカインさんが何故ゴルベーザに味方をするのか分からない!」
副長は顔をあげた。必死に悲しみを抑えようと勤めているが、既に無意味である。
「だけどっ! あなたは……少なくとも私達以上にはカインさんを! あの人の“理由”を
知っているのでしょう……!」
「…………」
セシルは無言であったがしっかりと頷いた。この剣幕では嘘など到底通用しない。
ましてや、嘘などつきたくもなかった。
「やはり……では、改めて御願いします……」
「わかった……」
もはや、願いの確認などは必要なかった。
「じゃあ……」
身を翻そうとするセシル。
「私はもう少しだけここにいます……」
「…………」
「それと、カインさんの件に関しては私だけの胸に締まっておきます……」
「そうしてくれると、助かるよ」
例えどのような理由があろうとカインがゴルベーザへと味方しているのは
間違いない。それはある意味、バロンへ反乱したとみなすことも出来る。
それを知れば、カインを裏切り者だという者が必ず出てくる。
セシルはそれを避けたかった。少なくとも、カインにもう一度会って話をするまでは。
288 :
299:2006/06/01(木) 05:13:02 ID:m2d1QN9i0
FINAL FANTASY IV #0419 5章 1節 刻む足跡(15)
一人地下から引き返すセシルの考える事は一つであった。
友達……それ以上の関係であった親友と呼べる存在。
それでいて一線を越える事のなかった関係。少し前までは……
自然と崩れ去ったそれを復元する事は容易くない。
かけがいの無いあの時の瞬間は長き時を経た今でも色褪せる事なく
思い起こされる。良い事、悪い事、悲しい事、苦しい事、幸せな……
どれもが関係なく、無限とすら思える程に……
何故なら、その思い出は今のセシルにとって全てと言っても差し支えがない
記憶だからなのだ。
その中の幾つかが思い出される。
289 :
299:2006/06/01(木) 05:15:24 ID:m2d1QN9i0
FINAL FANTASY IV #0420 5章 1節 刻む足跡(16)
(今日はここまでだよ……)
立ち止まるセシル。不服そうなローザ。
(ど……)
どうしてと聞きたいのだろう。
(だって君のお母さんは僕の事を……)
(そう……)
悲しそうに去っていく彼女をセシルは黙って見送っていた。
(ねえ、私も今日からお城へ勤めるのよ……)
そう彼女が切り出したのはいつだったろう……
(白魔導士団に入ることにしたの)
胸を張って答える彼女。決して白魔法が得意だったとは聞いてなかった。
(だって……こうすれば……)
続きの言葉をローザは語らなかった。
あの時のセシルには分からなかった言葉であった。
しかし、今ならその言葉の先にあるものが分かる。
その言葉の持つ意味も……
何処のものか全く保障の無いセシルをローザの母親は嫌っていた。
シャーロットは、ローザの心情も母親の苦悩も知っていた。
そのどちらの肩を持つことができずに苦しんでいた。
ローザはローザで母親の事が嫌いではなかった。
白魔導士団へ入る事には相当な葛藤があっただろうし、実際に母親との対立は
あったはずだ。事実、ローザはそれ以降、殆ど家に帰ってはいないはずだ。
それなのに……自分は――心の何処かで彼女の気持ちを理解していたはずなのに……
290 :
299:2006/06/01(木) 05:17:28 ID:m2d1QN9i0
FINAL FANTASY IV #0421 5章 1節 刻む足跡(17)
カインは有名な家柄に生まれ父に続き、竜騎士を率いた。
それだからローザとは誰もが認めるくらいに相応しかった。
しかも、ファレル一家とカインの父親は親戚にあたり、ローザの母も
カインとの付き合いは好んでいたのだ。
そして、カインもローザに対し、特別な意識を持っていた。
ローザは……ローザはその関係を知っていた。
そして自分の思いが何処にあるのかも自分で分かっていた。
でも、それでも……いつまでも続く三人の関係を望んでいた。
だから彼女は必死に、孤独な戦いを続けていた。
そう、自分やカインが彼女に対しての意識を変えていく中で彼女だけが。
自分の気持ちを抑制してまで。
そして自分はそれを知らなかった……
挙げ句、ローザの気持ちにも答えずに……
291 :
299:2006/06/01(木) 05:18:43 ID:m2d1QN9i0
FINAL FANTASY IV #0422 5章 1節 刻む足跡(18)
過去に自分を救ってくれたかけがいのない親友。
自分の人生を変えた二人。最初の友人であり最高の友。
今の自分にはあの時の二人のように、今の二人を救ってあげる事は
できるのだろうか?
不可能ではない。もう一度……もう二度と繰り返させない。
今も昔も、過ちも苦しみも全てを解き放つ。
消せないものもある。だけど、目をそらさない。
今の自分にそれだけの覚悟も力もあると確信できる。
行く。かつての絆と親愛の元へ。三人で刻み刻んだ足跡。
いつも同じ場所へ向かっていた――いつの間にか別々に向かいつつあるそれ。
修正できぬかもしれぬ軌道。だけど、交わる事ならばできる。
だから行くのだ。自分は。
(もう一度やりなおす。君たちを僕が……)
それが出来るのは誰でもない自分だけなのだから。
292 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/02(金) 00:08:50 ID:pkshqYni0
乙
うぉぉ……泣ける!
299氏グッジョ!!
保守
295 :
FF7 1/4:2006/06/03(土) 03:49:53 ID:eArVmbC20
FF7本編はまだ誰もノベライズしてないみたいだな。投下してみるか…。
…ガダンゴトンガダンゴトン…ガダンゴトンガダンゴトン…。
ホームには一台の列車が滑り込んでくるように停車した。
「おい新入り!もたもたしてる暇はねぇ!急げ!!」
列車の屋根から二つの人影が姿を現した。一人の大男が怒鳴りたてるように叫ぶ。
やれやれ……といったような表情で軽く頷くともう一人の男が後に続いた。
奥から警備兵らしき男が走ってくる。彼は背中に背負っている一般人には扱えないような
大剣を右腕だけで引き抜き、可憐な動きで警備兵を翻弄してゆく。
ホームの角を曲がると、先程の大男と、先に待ち伏せていたであろう仲間達の視線が一斉に注がれた。
「さすがソルジャー!こんぐらいのことじゃものともせずって感じすね!」
「ねぇビッグス、それって本当?ソルジャーっていったら私達アバランチの敵でしょう?
そのソルジャーがなぜ私達に協力してくれるの?」
ビッグスと呼ばれた男が答える。
「はやとちりするなってジェシー。ソルジャーだったのは昔の話。今はもう
神羅をやめてオレ達の仲間ってわけさ」
…ふーん。といったような表情でジェシーと呼ばれた女性が頷いた。
「ええと、あなたの名前を教えてもらえるかしら?私はジェシー。そこにいるのがビッグス。
で、もう知ってると思うけどあそこの大男がバレット」
「……クラウドだ」
「クラウドっていうのね。よろしくね!」
「ああ……」
突然バレットが怒鳴りだす。
「おいお前ら!固まって行動するなって言っただろ!ターゲットは壱番魔光炉だ!
魔光炉前のブリッジに集合だぞ!」
バレットの一喝で全員が動き出す。
…ここに今、星を巡る大きな運命の歯車が動き出したのであった。
296 :
2/4:2006/06/03(土) 03:52:12 ID:eArVmbC20
まるでスクラップ工場のような場所へと足を運んでゆく一行。
入り口のエレベータに辿り着くとバレットが重い口を開いた。
「おい、お前魔光炉は初めてじゃないんだよな?」
「ああ、元ソルジャーだったからな。」
バレットが怒りと、そして悲しそうな声でつぶやき始めた。
「この星はよ、魔光エネルギーによって満ちてるんだ。それはお前もわかるよな。
ここの住民はみなこの魔光エネルギーを使って日々を暮らしている。
でもよ、誰もこの魔光エネルギーの本質を知らねえんだ。神羅って会社はよ…」
「悪いが、先を急ごう」
話を断ち切られてしまったバレットはチッと舌打をしながらもエレベーターのスイッチを押した。
魔光炉の内部に侵入したクラウド一行は順調に歩を進める。パイプの上を伝っていき
高低差激しい梯子など危険な箇所をものともせずに進んでゆく。
「私とビッグスはここで脱出時の経路を確保しておくわね。クラウド、気をつけてね」
こくりと頷くクラウド。
「ほんとに無愛想なんだから…」
思わずため息がでるジェシー。
「さて、ここが魔光炉の核となる部分だな。ここを壊せばいいわけだ」
「ああそうだ。クラウドさんよ、この爆弾をセットしてくれ」
「あんたがやればいいんじゃないのか?」
思わず疑うクラウド。バレットが即座に言い返す。
「お前さんが変なマネしないようにオレはここで見張らせてもらう」
多少ムッとした表情を見せるクラウド。だがすぐさま爆弾のセットに取り掛かる。
途端、頭に激痛が走る。
『目を覚ませ!これはただの発電所なんかじゃない!』
うっと意識が揺らぐクラウド。思わず頭を抱えしゃがみこんでしまう。
(なんだ…?お前は誰だ?なぜオレの意識に…)
クラウドを不思議そうに見つめるバレット。
「う…。いや、何でもない。気にしないでくれ………よし、セット完了だ」
刹那、クラウドが後ろに後退した。
「…来る!!」
297 :
3/4:2006/06/03(土) 03:53:04 ID:eArVmbC20
ガードロボットであろう大きなマシーンが二人の頭上を掠めるように落下してきた。
「本格的にくるぜ」
クラウドはこくりと頷くと、背中に差してある大剣を抜き構えた。
「おらぁぁぁぁ!!」
バレットが猛獣のように怒鳴り散らし腕のマシンガンを一斉にぶっ放す。
クラウドは背後にまわりこみ、マシーン後方から斬撃を加える。
マシーンが背後のクラウドへと方向転換し、体当たりを試みる。
咄嗟に上空へと舞い上がり回避するクラウド。そして落下しつつマシン中央部を切り裂く。
大破するマシーン。プスプスと音を上げ回路が切断されたのだろか停止した。
「強いじゃねぇか!元ソルジャーってのもほんとうみてーだな」
「当たり前だ」
これくらい朝飯前と言わんばかりのクラウド。ははっと笑うバレット。
だが安息も束の間、警報が鳴り出した。
「しまった!警報装置が作動したか!急いでここを出るぞ!」
二人は急いで元来た道を戻り始めた。
「あれは…ジェシー!」
先程、脱出経路を確保すると言い、待機していたジェシーが足をもたつかせている。
「大丈夫か?」
声をかけるクラウド。
「ごめん!ちょっと足くじいちゃっただけだから!心配しないでも大丈夫!」
本当は大丈夫じゃないのだろう。ジェシーは足を引きづりながら引き返してゆく。
待ち合わせ場所であったブリッジへと到着した一行。
「できたわ!下がって!脱出しましょう!」
ジェシーの合図と共に、逆方面の八番街方面へと走る。
「これでよかったんだよね…」
「星の命、少しは延びたかな…」
崩れ落ちてゆく瓦礫を見ながら漏らす面々。なんだか、ちょっと後ろめたい気持ちで。
そんな中一人、クラウドは遠くを見つめていた。
(あの声は誰だったんだ?あれは幻聴だったのか?…いや、たしかに聞こえていた…)
298 :
4/4:2006/06/03(土) 03:53:50 ID:eArVmbC20
さあ、事が大きくなる前に引き上げるぞ!ランデブー地点は八番街ステーション!
各自単独行動だ!みんな必ず戻って来いよ!」
「お、おい!ちょっと…」
ふと我に返ったクラウドが漏らす。
「報酬はアジトに無事帰れたらだ!」
各自が目的地へとバラバラに散り始めた。
駅へ向かおうと歩き始めた途端、突然一人の女性が声をかけてきた。
「ねぇ、何があったの?あなた知ってる?」
一瞬、何と答えようか迷ったがふと女性が持っている花に視線がいった。
「花か、珍しいな」
「あ、気に入ってくれた?1ギルなんだけど、どう?」
どうしようかと考えたが、珍しいので買うことに決めた。
「嬉しい。ありがとう!」
クラウドは照れたのか少し頬をぽりぽりかいたが、早々にここを立ち去ろうとした。
「アンタ…気をつけるんだ」
その女性はえっ?と不思議そうな表情を浮かべたがクラウドは立ち去ってしまった。
(何だろう、あの人とはまた会える気がする…)
足を速め、急ぎ駅へと向かう。駅が見えて初めてきたとき突然声をかけられた。
「おい!そこの男!止まれ!」
チィっと舌打するクラウド。こんなにも早く兵士に見つかるとは。
「悪いが…お前らに付き合ってる暇はないんでね!」
走り出すクラウド。後方では兵士達が叫んでいるが耳には入らない。
だが、兵士は次々と集まり、クラウドは追い詰められてしまった。
ふと後方を見るクラウド。追い詰められたクラウドの場所は橋の上で下には線路が走っていた。
遠方に列車が見えた。兵士達が何かしゃべっているがクラウドには聞こえていない。
「いまだ!捕らえろ!」
兵士達が一斉にクラウドを抑えにかかったが、クラウドは後方へとジャンプし、橋から落下した。
そう…走ってくる列車へと飛び乗ったのだ。
過ぎ去ってゆく街並みを眺めつつ、ふぅと溜息を漏らす。
「傭兵も楽じゃないな…」
うう、ごめん。1つめsage忘れたorz
あと補足、魔光炉の『光』の字なんだけど、本当はこの字じゃない。
変換で出なかったので諦めて『光」にしました。
みなさんレベルたけぇ…。
300 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/03(土) 04:27:57 ID:RwP1ax1X0
FF5のピアノマスターまでの、
全曲聞けるサイトってあったら教えていただきたいのですが。
>>295 とりあえず乙。
あと、可憐w→華麗 だね。
クラウドが可憐なのはウォールマーケットだwww
302 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/03(土) 07:55:26 ID:M82uLYGp0
>>299 「晄」は「あきらか」で変換できる字にある。
ノベライズを続けるなら「魔晄炉」で単語登録しとくことをお勧めする。
一応、FF7の中心にあるものだし…。
保守
ほ。
FINAL FANTASY IV #0423 5章 1節 刻む足跡(19)
おぉ……おぉ……ぃ……ぉおぉ……
『セシル……ぉぉ……セシル……』
立ち去ろうとしたその刹那、不気味にとどろく声に呼ばれて、セシルは驚き振り返った。棺の前の副長と目が合う。
「……風ですよ。どこからか、吹き込むんです」
セシルより一回り以上年上の騎士は、一瞬だけ閃いた狼狽を消して微笑んだ。彼が足繁くこの場所を訪れていることを伺わせる、落ち着き払った態度だ。
その言葉に異を唱えるかのように、再び声が、セシルを呼んだ。
『……セシル……』
冷やりとした墓所の空気が背筋をなでる。さらに力強く、はっきりと聞こえてきた声は、もはや聞き間違いなどではない。
『セシル……其処に居るのか、セシル……』
呼びかけの合間に、冷たい石床を踏みしめる靴音が混じる。狭い地下空間で音は反響し、源は定かでないが、あきらかに近づいてきていた。
「……誰だ!?」
セシルは神経を研ぎ澄まし、気配を探った。
声は居並ぶ棺のさらに奥──ではなく、セシルが戻ろうとしていた方角から、響いてくる。
そのことに気付いて、セシルは剣にかけた手を離した。苦笑を浮かべ、緊張を解かない副長に、地上への道を指し示す。
まさにそのとき、物音の主が姿を見せた。がっしりとした体躯、もじゃもじゃの髭、額のゴーグル、機械油まみれの作業服──
おなじみ、我らが技師長殿だ。
「セシル〜〜!ここにおったんか〜っ!
すぐ出発するぞ!」
「……技師殿。お静かに願います」
セシルの姿を認め、木槌を振り上げたシドに向かって、副長は憮然と注意を促した。
FINAL FANTASY IV #0424 5章 1節 刻む足跡(20)
「……すまん、ちと気が急いてしもうた」
英霊たちの眠りを妨げた非を認め、棺の群れに向かってシドが頭を垂れる。彼が神妙にするのは珍しい。
「それにしたって急ぎすぎだよ。あと2日はかかるはずだろう?」
エンタープライズ号の儀装にかかる時間は、あらかじめシドから告げられていた。こういうことに関して、彼の予測は外れたためしがない。まして、整備に手を抜くようなことは絶対にない。
「なんせ、あの子らの命がかかってるんじゃからの。ワシらも気張ろうというものじゃ。
まだ細かいのがちと残っとるが、ミシディアまでなら十分飛べるぞ!」
「ミシディア? あの子たちって、まさか……パロムとポロム?」
「そうじゃ! あの耄碌ジジイ、昨日になっていきなり言い出しおってからに!!」
「お静かに」
「……すまん」
どうやらシドは、徹夜の果ての興奮状態にあるようだ。はじめのほうこそ声を潜めていたが、すぐにいつもの怒鳴り声に戻ってしまい、再び副長に諌められる。
セシルもまだ事情は飲み込めないが、双子を救う可能性がミシディアにあるらしい。それならば、一刻も早く飛び立つことに否はなかった。詳しいことは、後でテラにでも聞けばいい。
「今行くよ。皆は?」
「もう乗り込んどるよ。あとはお前さんだけじゃ」
「わかった」
副長への挨拶も忘れ、セシルはすぐにも上に戻ろうとした。しかしなぜか、足が動こうとしない。
それどころか全身に痺れが走り、指先すら満足に動かせなかった。
『……………セシル……………』
奥から──死せる勇士らのつくる列の先、薄闇に沈む通路の向こうから響いてくる声が、セシルの自由を奪う。
どこからともなく風が吹き始めた。
FINAL FANTASY IV #0425 5章 1節 刻む足跡(21)
『セシル……セシル……』
びょうびょうと吹く風に乗り、声はただセシルの名を呼び続ける。
セシルは思い切り首をひねり、潜むものの姿を捉えようと努力した。だが無数に続くかに見える棺と、同じく凍りついた副長の他は、彼に見えるものはない。
「この奥は……」
「禁域です。王以外は──」
王。
不意にセシルの呪縛は解けた。副長の返答に含まれた単語が、記憶を呼び覚ましたのだ。
墓所の奥に正対し、膝をつき、手を肩口に当てる。
『セシルよ……』
「──御前に」
どうか、僕の声が届きますように。祈りを込め、セシルは、彼を呼ぶおごそかな声に応えた。
何故すぐに気付かなかったかという思いと、たとえようもない懐かしさで震えそうになる声を抑え、頼むべき兵士であろうと努める。
『幻獣界との縁を見出せ……
お前の力になれるだろう』
「かしこまりました」
顔を伏せ、足元の床を見ていれば、その声はまるで、すぐ目の前からかけられているように思える。
堅牢な玉座に腰を据え、指示を下す主君の姿が、まざまざと脳裏に蘇った。v
FINAL FANTASY IV #0426 5章 1節 刻む足跡(22)
──それは、セシルが物心つく前から、自らに禁じていた呼びかけだった。
余計な波風を立てぬよう、他ならぬ王自身に迷惑をかけぬよう、絶対に人前で口にしてはならないと、心の中でさえ使うことを避けていた。
『……よい。
では最後の命令だ。
顔を上げよ、セシル』
「仰せのままに」
立ち上がり、改めて通路の奥に目を凝らす。いつしか風は止んでいて、禁域を守る闇が少しずつ視線を吸い込む。
広かった。誰もいない通路は、本当に広かった。
「……いってしまわれたの」
「僕らも行かないと」
副長に別れを告げ、鼻を啜り上げるシドに先んじて、セシルは地上へ続く階段に足をかけた。
胸に焼きついた通路の広さが、セシルの覚悟の証だった。二度と目を逸らさない、その自信に形ができた。
それこそが陛下の、王の、バロンの─────
(行って参ります。父上)
エンタープライズの発進は奇妙なほど静かだった。誰もが己の成すべき事を知り、すべての動きがよどみなくかみ合って、まるで全員でひとつの生き物のような連帯感で結ばれている。
あわただしい出発を見送る、ほとんど偶然に居合わせた人々までもが、その流れに飲み込まれていた。
会話らしい会話もなく、不思議な平穏のうちに作業が進められていく。
やがてプロペラが風を切り、巨大な船体が宙に浮いた。
セシルは再び、故郷の城を旅立った。
◆HHOM0Pr/qI氏
久々に乙!!!!!!!!
セシルの心情を書くのがウマーですね。
311 :
295 :2006/06/05(月) 21:27:33 ID:J7ueWE580
「クラウド…こなかったな」
「無事だよね…?クラウド…」
列車の貨物室では重い空気が流れている。みなクラウドの安否を気にしているのだろう。
「あんな金にしか興味ねぇような奴が報酬も貰わないで消えるわけないだろ!!」
大声で誤魔化してはいるものの、やはりクラウドが気になっているであろうバレット。
「お前らがもう少し頼りになればよ、あんな奴雇わないでもいいんだがな…」
…はぁ、と溜息をつく二人。車内にはますます重い空気が張り詰めた。
……バタン!それは突然だった。一同は驚きドアの方に目を向けた。
何とクラウドがドアを蹴破って入ってきたのだ。
「「「クラウド!!」」」
あまりにも突然の出来事で誰もが声を張り上げた。
「すまない、遅刻のようだ」
あくまで冷静を装う。ほっと胸を撫で下ろす他の面々。
「遅ぇじゃねえか!心配させんじゃねえ!」
「ほう…心配してくれたのか」
揚足をとるクラウド。思わずクスっと笑うビッグスとジェシー。
「う、うるせえ!よし、おめぇら!場所を変えるぞ!ついてこい!」
バレットが一喝し動くと、ビッグスがそれに続いた。
「やだ、クラウド!顔真っ黒じゃない!」
ジェシーがポケットから濡らしたハンカチを取り出しクラウドの頬の汚れを拭き取った。
恥ずかしかったのかクラウドは頬をぽりぽりとかいた。
「私達も移動しましょ!」
二人も隣の車両へと移ったのだった。
312 :
295:2006/06/05(月) 21:30:50 ID:J7ueWE580
〜ミッドガル8番街ステーション発最終列車〜終点はスラム7番街列車墓場駅〜
車内でアナウンスが響く。長いトンネルを通過して地上に差し掛かり、一同は窓から外を見上げた。
「見ろよ…地上が見えてきたぜ。昼も夜もねぇオレ達の街がな。あのプレートさえなけりゃ
でっけぇ空が拝めるんだけどな…」
バレットがふと漏らす。クラウドもいつになく真剣な表情で考え込んでいる。
ここ大都市ミッドガルの上空は巨大なプレートで覆われており、日の光は拝めない。
都市中心部に建てられた大きな支柱と各区画に建てられている柱でプレートが支えられている。
爆破した壱番魔光炉は都市の最北端に位置し、そこから時計回りに8つの区画に分けられている。
そしてこの8つの区画にあるそれぞれの魔光炉が、この大都市の電力供給を果しているのだ。
区画ごとの移動は中心部の支柱に螺旋状に走っている列車で行う。
「落ち着かない風景だな…」
らしくないクラウドの発言に目を疑うバレット。
「まさかあんたがそんな風に感じるとはな、意外だな。あの腐ったピザのせいで
下の人間がどんなに苦しんでいることか。下の世界は今じゃゴミの溜り場だぜ」
数秒の沈黙の後にクラウドが口を開く。
「どうして上の世界に移らないんだろう…」
「わかんねぇ、金がない…もしくは、どんなに汚れていても地ベタが好きなんだろうよ」
「そうかもな…。敷かれたレールには逆らえない。それは俺だって…そうさ」
また重い沈黙が流れる。誰もがみな列車の窓から外を眺めている。
二人の会話をただ黙々と聞いていたビッグスとジェシー。
…バレットはいつもとは少し違ったクラウドを垣間見た気がした。
みなが様々な思いを巡らせつつ列車は終着駅へ到着した。
313 :
295:2006/06/05(月) 21:32:36 ID:J7ueWE580
「みんな集まれ!今回の作戦は大成功だ!だが気を抜くんじゃねぇ!
大事なのはこれからだ!次はもっと大規模だからな!ってことでアジトに集合だ!」
みな説明が終わると一目散に駆け出してゆく。クラウドは一人ゆっくりと歩き始めた。
ここ七番街は他の区画とは違って治安が良い方である。アバランチの本拠地があるのもここ七番街だ。
アバランチは元々はもっと大きな組織だったが、色々いざこざがあり今では数える程度の人数となってしまった。
こんな少人数でこの巨大都市ミッドガルを統括している『神羅カンパニー』に刃を向けているのだ。
「へへ、早く幼馴染のティファに会いてぇか?」
ニヤニヤしながらバレットが尋ねてきた。
はぁ…というような表情を見せあしらうクラウド。
「よし、お前らは先に入ってろ!」
バレットの一言で中へと入るクラウド達。
「あ!ティファ!みんな戻ってきたよ!」
ティファと呼ばれた女性が駆け寄ってくる。
「お帰りなさいクラウド。うまくいったみたいね。バレットとはどうだった…?」
「見たまんまの奴だな」
クラウドの返答に思わず苦笑いをするティファ。
「あれ、クラウド…花なんか珍しいわね、一体どうしたのよ」
「別に……。そうだマリン、あげるよ」
「わぁ!ありがとう!」
マリンといわれた小さな女の子がはしゃぎだす。
慣れないことをしたせいか、クラウドは照れるとまた頬をぽりぽりとかきだした。
314 :
295:2006/06/05(月) 21:35:08 ID:J7ueWE580
少し間を置いてバレットが中へ入ってきた。
「おかえり!父ちゃん!!」
マリンは大はしゃぎだ。すぐさまバレットへと飛びついた。
「よしさっそく会議はじめっぞ!地下の部屋に移動だ!」
「おいクラウド、壱番魔光炉にはソルジャーってのはいたのか?」
「いや、いなかった。そもそも本物のソルジャーがいたのなら今頃アンタ達はここにはいない」
「な、何だと…!元ソルジャーだったからって偉そうに言うんじゃねぇ!」
クラウドの発言にムッときたのかバレットが怒鳴り散らした。
「…事実を言ったまでだ」
あくまで冷静なクラウド。やれやれといった表情でバレットを見つめる。
「確かにオマエは強い、オレだってこの目で見たんだ。それはわかってるつもりだ
だけどよ!今はオレ達アバランチに雇われている身だ!神羅の肩をもつんじゃねえ!!」
「神羅の肩を持つ!ふざけないでくれ!本当の事を言っただけだ!……報酬の話がしたい。上で待っている」
普段、感情をあまり表に出さないクラウドが怒りを露にし、上へ引き返そうとした。
「待ってクラウド!バレットだって悪気があって言ったわけじゃ…!」
「フン!そんな奴ほっとけよティファ!未練タラタラでどうしようもねぇようだからな!」
「……ほーんととっつきにくい性格なんだから」
横で黙々とやりとりを聞いていたジェシーが漏らす。
ティファは上へ戻ってしまったクラウドを急いで追いかける。
「クラウド…お願い。私達に力を貸して」
「ティファ、悪いけど…」
クラウドが言い終わる前にティファが続ける。
「私達の星が病んでるの。このままじゃ大変な事になっちゃう…
誰かがなんとかしなくちゃならない。ううん、私達が何とかしなきゃいけないのよ」
「それはバレット達が何とかするだろう。俺には…関係ないことだ」
ティファの目が少し潤んだ。途端に呆れ返ったように喋りだす。
「幼馴染の私の言うことも聞いてくれないんだ。約束一つ守れないんだね」
「…約束?」
「やっぱり覚えてないんだ。ほら、あれは7年前……思い出して」
315 :
295:2006/06/05(月) 22:57:25 ID:J7ueWE580
「ほら、村の給水塔…覚えてる?」
クラウドは必死に自分の中の記憶を掘り起こす。
「ああ、あの時か。ティファなかなか来なくて寒かったな」
クラウドの脳裏に7年前の出来事、故郷での給水塔の場面が思い出される。
「おまたせ!話があるってな〜に?」
「俺さ、春になったら村を出て行くよ」
突然のクラウドの発言に戸惑うティファ。
「みんな村を出て行っちゃうんだね…」
ティファが寂しそうに漏らす。
「俺はみんなとは違う。ソルジャーになりたいんだ。英雄セフィロスみたいなソルジャーに」
ソルジャーという言葉を聞いてティファが問いかける。
「ソルジャーになるのって、大変なことなんでしょ?」
「ああ、しばらくは村に戻って来れないだろうな。仕方ないよ」
重い沈黙が流れた。クラウドが次に何を喋ろうか考えているとティファが突然立ち上がった。
「ねえクラウド。約束しない?もしクラウドが有名になってさ、その時私が困ってたら…
クラウド助けにきてよね!」
「はぁ?」
突然何を言い出すのかといったように首を傾げる。
「私がピンチになったらヒーローみたいに助けに来てくれるの。女の子なら誰だって
一度は味わってみたいじゃない?」
「はぁ…」
再び疑問の表情を浮かべる。
「いいじゃないのよ!約束しなさい〜!」
よっぽど恥ずかしかったのだろうか、顔を赤らめながら強い口調で言い放つ。
「わかった、約束するよ…」
(そういえば、そんな約束したっけな……)
「…思い出してくれたみたいね」
「ああ。だが俺は英雄でも何でもない。…約束は守れない」
「確かにセフィロスみたいな英雄にはなれなかった。けど、夢は実現できたでしょ?」
いつになく真剣に考え込むクラウド。ティファがもう一押しというようにクラウドを見つめる。
(…俺は英雄にはなれなかった。英雄…英雄…。そんな言葉に捉われてたらだめだな…)
クラウドが決意を固め口を開こうとした瞬間、バレットが戻ってきた。
「ほらよ報酬だ!…約束は約束だからな」
クラウドが報酬を受け取りクスっと笑う。
「こんなしけた報酬じゃやってらんないな」
クラウドの予想外の発言に驚きを隠せない二人。
「それじゃあクラウド…!」
「次の指令はあるのか?倍額で請け負うことにしようか」
「ば、倍額だとぉ!!」
倍額という言葉に異常なまでに反応するバレットだったが、ティファになだめられやむなく承諾した。
「クラウド、ありがとう」
「約束一つ守れないような男はダメだろ?気にするな」
「話はまとまったようだな!細かい話はまた明日だ!今日はもう休むぞ!!」
作戦成功の喜びと、極度の緊張感から解放されたからだろうか、一同はすぐに深い眠りについた。
317 :
295:2006/06/05(月) 23:00:24 ID:J7ueWE580
「今回は私も参加するわよ!」
前回参加できなかったからだろう、いつも以上にティファが張り切っている。
「今回の標的は伍番魔光炉だ!詳しい説明は列車の中でな!」
「クラウド!今日もがんばろうな!」
「今日は足手まといにならないようにがんばるね!」
みながクラウドを頼りにしている。頼られていることが嬉しいのか恥ずかしいのか
クラウドは少し照れた表情で下を向く。
「おっと忘れてた!今回はウェッジも同行するぜ!」
ウェッジと呼ばれた男が挨拶をする。
「クラウドさん、今日はよろしくたのんます!」
「ああ…」
相変わらずなクラウドの返答に苦笑する面々。
「…んでよクラウド。我ながら情けねぇんだがオレはマテリアの扱い方がよくわかんねぇ!
オマエなら詳しいだろうからちっと教えてくれ!」
「やれやれ…少々長くなるがしっかり聞いてくれ。マテリアというのは……………
マテリアとは『material(素材・材料)』が原語で、そこから派生している。
この世界を取り巻く生命の流れ『ライフストリーム』中の様々な故人の知恵や魔力が宿っている。
それらが圧縮されたのがこのマテリアであり、見た感じは宝石のようである。
大きさは手の平に収まる程度で非常に扱いやすい。といっても様々な種類があり、中には素人では扱えないようなものも。
これらマテリアを武器や防具の穴にはめ込み、自らの精神と連動させて効果を発揮する。
人によって異なるが、精神への負担が大きいため過度の使用は危険である。
…………というわけだ」
「ぜっんぜんわけわかんねぇ!マテリアの管理はオマエに任せる!!」
まぁ、そうだろうなというような表情のクラウド。
「それじゃ出発だ!マリン!留守番頼んだぜ!」
「お留守番任せたわよマリン。それじゃあね!」
318 :
295:2006/06/05(月) 23:02:09 ID:J7ueWE580
〜本日も御乗車ありがとうございます〜4番街ステーション到着予定時刻は11時45分〜
「さて、今回はどうするんだ?」
いつも以上に落ち着いているクラウドがバレットに問う。
「相変わらずの野郎だな!そんじゃ説明するぜ。ジェシーから聞いただろうが
上のプレートとの境界には検問がある。列車ごとにIDスキャンするシステムだ」
「神羅自慢のね…だから今までのニセIDはもう使えないの」
ジェシーが説明する。
「あと3分ってところね。3分経ったら列車から飛び降りるわよ」
恐々にこくりと一同が頷く。やはり列車から飛び降りるというのは抵抗があるのだろう。
「……よし!そろそろ3分だ!飛び降りるぞ!」
バレットの一喝でビッグス、ウェッジ、ジェシーが次々に飛び降りてゆく。
そんな中、ティファが足を震えさせていた。
「怖いね……」
「今更どうしたんだ?だいたい危険とわかっててどうして来たんだ?」
半ば呆れ返った口調でティファを問い詰める。
「だって…」
「おい!時間がないぞ!早くしてくれ!!」
バレットが急かすように怒鳴りたてる。
「うん。決意ついた!私飛ぶから!よーく見ててね!」
バレットの一喝で決心がついたのか、ティファが勢いよく列車から飛び降りた。
クラウドは安堵の表情を浮かべてバレットに一声かける。
「先に行くが、構わないな?」
「ああ!オレは最後まで残る!それがリーダーだ!心配すんな!」
「いった〜い…」
「大丈夫か?」
強く尻餅をついてしまったティファにクラウドが声をかける。
「大丈夫!これくらいなんともないわ!」
(何ともないわけないだろう…ジェシーといいティファといい、強がりだな…)
319 :
295:2006/06/06(火) 01:05:42 ID:WiF4K55B0
「よし!何とか無事だったようだな」
バレットが周りを見回して安心する。
「ん〜と…ここは四番街プレートだな。伍番魔光炉まではまだ遠いな…
ビッグス、ウェッジ、ジェシーの三人は先行して準備をしてるはずだ!俺たちも行くぞ!」
薄暗いトンネルの中を北上する。緊迫した雰囲気だ。
無言のまま突き進んでゆく。しばらくするとセンサーらしき光の帯が視界に入ってきた。
「これは…警戒センサーだな。これ以上先には進めないようだ」
クラウドがどうしようかと考え込んでいると、ティファがふと横にある小さなダクトを見つけた。
「ダクトがあるわ。ここからなら何とか行けるんじゃないかしら?」
「こんなせまっちぃ所に入るのか…チッ仕方ねぇな」
一同は嫌々ながらダクトへと足を踏み入れた。
「ほんとプレート下部っていうのはややこしい迷路のようね」
ティファが愚痴をたれる。彼女はまだあまりこのような場所は慣れていないのだろう。
「仕方ないさ、そのうち慣れてくる…。最も慣れたくなんてないんだがな」
構造は壱番魔光炉内部のそれと似ている。スクラップ工場のような場所を進んでゆく。
「遅かったじゃない、心配したわ」
「三人とも無事だったようだな」
「なんとか大丈夫だったみたいすね!」
ジェシー達と合流したクラウド一行。
「さて、この先が伍番魔光炉よ。この前みたいにドジは踏めないわ
私達はまた脱出経路の確保をしておくから、三人とも気をつけてね」
「おう!失敗は許されねぇ…!クラウド!ティファ!いくぞ!」
細長い通風口の内部を滑り降りてゆく。辿り着いた先は伍番魔光炉。
「よし、急いで済ませよう。爆弾は俺が取り付ける」
率先してクラウドが爆弾を取り付けようとしたその時だった…。
320 :
295:2006/06/06(火) 01:06:42 ID:WiF4K55B0
「…うっ!」
突如頭を抱え込むクラウド。意識が朦朧とする。
『パパ…!セフィロスね!全部セフィロスがやったのね!セフィロス…ソルジャー…魔光炉…
神羅…全部!全部大キライ!!』
ティファらしき人物が魔光炉と思われる場所で叫んでいる。目の前には彼女の父親らしき人物が横たわっている。
(こ、これは…ティファ?とティファの親父さん…?うぐっ何なんだ…)
「クラウドどうしたの?」
「うっ…ティファ……」
哀しそうな目でクラウドはティファを見つめた。
「いや、何でもない…すまなかった。急ごう」
爆弾を取り付け急いで脱出経路へ向かう三人。
しかしもうちょっとで地上に出られるという所で神羅兵に取り囲まれてしまった。
「神羅兵!?なぜこんなとこに待ち伏せてやがる!」
「……罠だな」
しばしの沈黙の後クラウドが呟いた。
奥から一人の人物がゆっくりと歩いてきた。
「「「プレジデント神羅!」」」
「久しぶりだな、プレジデント…」
「ああ、君がアバランチに参加してるという元ソルジャーか。ええと名前は…」
「クラウドだ。覚えておけ」
自分の名前を覚えていなかったためか、少し苛立った口調で吐きかけるクラウド。
「もうすぐここも爆発で粉々になるぜ!さまぁみあがれ!」
二人の会話を遮る様にバレットが意気揚々に叫ぶ。
コホンと一つ咳払いをしてからプレジデントが周りを見渡した。
「悪いが、君達の相手をしてる暇はないのでね。キミ達にはコイツの実験台になってもらおう」
プレジデントがパチっと指を鳴らした直後であった…。
321 :
295:2006/06/06(火) 01:08:15 ID:WiF4K55B0
「…!気をつけろ!」
クラウドの一声で身構える一同。
「我社の兵器開発部の試作機動兵だ。キミ達は戦闘データの実験台となってもらうよ
それでは失礼」
プレジデントが喋り終えると、取り巻きの兵士と共に去ってしまった。
「とりあえずコイツを何とかしねぇとな」
瞬時、クラウドが上空へと舞い上がった。
「ティファ!俺にサンダーを唱えるんだ!」
突然のことで驚いたが、すぐに頷くとサンダーを唱えた。
上空に翳したクラウドの大剣に雷の力が宿る。雷を帯びた大剣は一心不乱に振り下ろされた。
雷に弱いからであろう、マシーンが感電したせいか動きが鈍くなっている。
「うぉぉぉおおおお!」
バレットはマシンの足元めがけてマシンガンをぶっ放した。
痛烈な爆発音と共にマシーンの脚部が大破する。
「これでもくらえ!」
ティファが手榴弾を投げつけ、追い討ちをかける。
「とどめだ!」
クラウドがマシンへ向かい一直線に進んでゆく。そして『凶』の字を描く様に切り刻んでゆく。
もはや原型もないくらいにボロボロになったマシーン。
だが、いち早く異変に気がついたのはクラウドだった。
「二人とも離れろ!!」
クラウドの声と共に自爆したマシーン。そのせいで足場が抉り取られている。
マシーンに近接していたクラウドの足場が抉られ、宙ぶらりの状態となってしまった。
322 :
295:2006/06/06(火) 01:09:15 ID:WiF4K55B0
「クラウド!!」
駆け寄るティファ。しかしバレットが取り押さえる。
「だめだティファ!もうすぐ魔光炉が爆発する!もう間に合わねぇ!」
「そんな…!クラウドお願い!生き延びて!絶対に!もっと話したいことがたくさんあるの!」
「ああ、わかってるさ。俺だってそうだ」
心配するなと言ったようにやわらかい口調で話しかける。
「オマエなら大丈夫だって信じてるぞ…生き延びろよ!また後でな!」
「ああ、ティファを頼む…」
手の握力が次第に薄れてゆく。
(もうダメかな…限界だ…)
次の瞬間クラウドは手を離してしまった。
『おい大丈夫か…?』
『聞こえるか…?』
「……アンタは…このまえの…」
『あの時はヒザすりむいただけで済んだけど…』
「あの時?待て!アンタ誰だ!?」
『気にしなくていいさ。今は自分の身体の事だけ考えるんだ』
「……ああ。ちょっと意識が朦朧とするが、大丈夫そうだ」
『そうだ…少しづつ、ゆっくりとな………』
「俺は大丈夫だ。それよりアンタ誰なんだ…?」
『……。迎えが来ているぞ。さあ目を覚ますんだ…』
「もしも〜し」
「生きてま〜す〜か〜?」
323 :
295:2006/06/06(火) 01:16:01 ID:WiF4K55B0
>>301 >>302 誤字の指摘どうもでした。
「あきらか」で変換してみたんですが、出ませんでした。
「おう」や「こう」でも変換したけど出ず。
あらすじをトレースしただけの、単調でめりはりのない文章。
量より質を高める努力を。
>>295氏
最初のうちは好きな描写の作家の作品を読破してから、
その書き方を真似るように工夫するといいと思います。
>>323 参考までに。
魔晄炉
これ右クリックでコピーした状態で[Ctrl]+[F10]
(ATOKなら短縮コマンドは[Ctrl]+[F7])→[単語登録]
[単語]の項目には既にコピーしてある「魔晄炉」が入ってるはず。
[読み]の項目に「まこうろ」
[品詞]はテキトーに好きなの選んで(固有名詞でいいんじゃないか?)[OK]
…固有名詞だし、やっぱ少し気を遣った方がいいかと個人的には思う。お節介スマソ。
それからお節介ついでに。
ゲームをやってても誰がどう話しているのかが分かりづらく、会話ばかりで話が進むから
この辺が単調に感じる原因なのかも知れない。
>>324-325あたり参考にして頑張れ。
>>326に捕捉すると、エディタ上(メモ帳とか)での操作な。長レスすまん。
保守
そろそろ]でも書くかな
できれば遠慮して。
もうちょっとスキルつんでからでも遅くないよ。
下手なりにアトバイス貰いにきてんだけど?ここはそういうスレだろ?見る側のプロでもない、いち閲覧者に書く前から批判されてもウザいんだけど
332 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/07(水) 18:39:00 ID:mX/rYNn/0
確かにw
書く前から
>>330の発言はきついかも。
でも昔の5とか今の7とかの単にストーリーを文字にしただけって感じの文章を読むのもきついのは事実。
書く人はある程度の経験、技量、自信が必要ではないかな?
ここはノベライズスレであって書いた作品にアドバイスをつけてもらうスレではないのではないだろうか?
一閲覧者の意見だけどね。
ここは「リレー」形式のノベライズスレだって事を忘れるな。
同じコースは二度と走れない。
どんなに下手くそな、でたらめな走り方したとしても、
後の走者は二度とそのコースを走れない。
お前が走った(書いた)事を、全て後の人間が引き継がなきゃならん。
だから書くなら責任持って書け。
アドバイスもらう事を最初から目的にしてるようなら
後の走者に迷惑だ。
それが他のスレとの一番の違いじゃないか?
…そう思った。
>>333 書いてもないような見る側だけの人間のくせによく言うよ…Zみたいな文章に稚拙な表現だからってダメ出しするだけじゃ気持ち良くないし、作者に失礼だろ。
書いてる側からしてみれば『じゃあお前が書いてから物言えよ』って言いたい。
リレー形式なら個人個人の個性があるんだからある程度の表現の上手い下手が出るのは事実。
「お前が書いてから物言えよ」っていう文句はこういう場面でよく見る逃げ口上だけど
はっきりいって甘え以外の何物でもないぞ。
人によって上手い下手の差があるのは事実だが、それは言い訳にはならないな。
プロでもない、いち閲覧者とお前は言うが、お前こそプロの作家でもなんでもないくせに何偉ぶってるんだ?
アマチュア同士、書き手と読み手の違いなんかない。
自分は書いてる側だから閲覧者よりも立場が上だ、だなんて勘違いはやめろ。
それに、ダメ出しだけっていうのも結構いい薬だぞ。
そういうのは言い方こそきついが、図星をついてることが多い。要は受け取り方の問題。
お前のようにただ突っぱねるんじゃ毒にしかならないだろうがな。
と、一応書いてる側の俺が思いつく限り言ってみる。
リレー形式なら自分も書いてみろよって事だ。
しかし、書かせないってのはおかしいだろ?『出来れば遠慮して』?これに対しては突っぱねたらいけないのか?
俺の言いたいのはそれだけだよ。雰囲気を害して悪かった。このスレにいる限りは、アンタの意見も参考にしないといけないから…まぁこれからも宜しく
>>335 アンタ書いてる側か?上から物を言われてるみたいに感じるんだが?
自分は上手いと思ってるから書いてるのか?下手だと感じる相手の作品は書かせないのか?
>>YSuMrHcwO
落ち着けよ。
個人的には巧い人にしか書いてほしくないな。
自分が文章巧くなろうって思ってここに書くのはスレ違い。
過去スレでも出た話題だけど文章の評価スレはどっかにあったはず。
書けないくせにどうこうってのもおかしな話。
駄文を書くくらいなら書かないほうがいいもの。
出鼻を挫かれて不快な気になっちゃったのは分かるけど、
言ってることは間違ってるよ。
書く人も読む人も対等とまではいかないと思うけど
書いてないやつは文句言うなってのはおかしい。
映画評論家が映画を作る訳じゃない。音楽評論家が音楽を作る訳じゃない。見る側の視点って必要なんだろ?指摘されてそれは分かった。書いてない奴が書いてみろって言うのは訂正するよ、悪かった。
でも前書いた物を「内容は悪くないから次回に期待」って人もいてくれた。だから書くなって言われたら誰でも怒るだろ?それだけは言わせてくれないか?
見る側専門からなら、多少厳しい目線で物を言われてもいいけど、
書く側の人間から毒を吐かれたらどう見ても上から目線だろ?それはZの作者だって同じだと思う。
読む側に何か言われれば「書いてもいないのに」とファビョり、書く側にそれを正されたら今度は「上から目線」。
わがままなやつだな
だいたい、
>>329にどんな反応を期待してたんだ?
「書いてくださいお願いします」とでも言ってもらえると思ってたのか?
誰か]の続き書けば良いんだよ。
>>340 何でそんなに喧嘩腰で言われなきゃならないんだよ?間違ってるって言われたから謝ってるだけだろ?気分を害したくないから、意見を受け取ってるのに何様のつもりで言ってるんだ?
数年前に別のスレだけど小説の投稿らしき事をした時、不出来だったら
容赦なく叩かれるだろうなという緊張感を持ってスレに投下してた。
2ちゃんて結構そういう所だと思うから、他人にああだこうだ言われずに
書きたいなら、自分のサイト作った方が精神的には楽だよ。
意見が貰いたいと思って投下するなら好意的な意見ばっかり来るわけじゃないって
覚悟してからの方がいいと思う。
>>343 どうも。それは十分に分かってますよ。ただ、書く前から否定されてるからさ…それだけ。
書く前から否定ってうだうだ言ってるけど
それってそもそも君が
>>329でいらん予告したからじゃなかったかな?
>>329みたいなこと言わなかったら、誰も「書く前から否定」なんぞする由もなかったし、
普通に投下すれば叩かれてもせいぜい批評の範疇におさまるものだっただろうに。
君がこだわってる「書く前から否定」の原因を作ったのは、他でもない、君だよ。
じゃあもう、予告無しに書いて良かったんだな?保守の意味も重ねたつもりで書いたのが裏目って訳だ。分かった、指摘有難う
そんなことよりまとめサイトのWだけがいつまでたっても更新しないのは何故?
このスレに投稿されてる中で技量を感じられる作品てどれだと思う?
またこの人の文が読みたいなって思う人はいる?
>保守の意味も重ねたつもりで書いたのが裏目って訳だ。
二時間前に保守されてるよ。
>>348 自分個人の意見でしかないけど4は続きが楽しみだな。
「書く前から否定」っていうけどさ、今までX書いてきたのは君なんだろ?
その君が続きを再開するという宣言をしたから、君の力量をすでに知っている人が
「できれば遠慮して」とレスしたんじゃないの?
だとすれば「書く前から」という事にはならないと思う。
>>348 4.6.8だね。
4以外は停滞してるのが残念。
>>347 ごめんなさい。
今週末位には更新再開するので、しばしのお待ちを。
そんなに皆して責めなくてもいいんじゃないかな。
悪かった部分はちゃんと認めてるんだし。
>>330さんは言い方もっと気を使った方がいいと思う。
ここに参加する権利はいろんな人にあるんだし、
作品見てからでも遅くないと思う。
それで駄目ならガンガン言ってあげればいいんだし。
>>348 個人的にまとめサイトの「竜の騎士団」は超オススメ。
ガリ好きにはたまらん
W以外は糞だな…描写の書き方がWは突出している…つーか元々のFFシリーズのどれが好きか嫌いかでこの小説の各シリーズの好きか嫌いかってのも、上手い下手の他にあるんじゃない?
そんなことないよ。
8のスコール目線でストーリーが進むのもおもしろいし
6の書き手さんもなかなかウマーだ。
(まぁどっちも止まってるけどね)
12が結構うまいと思ったんだけど、どうもここじゃ糞扱いみたいだ。
表現とかかなり小説っぽいと思ったんだけどオレだけか?w
続きを書いて欲しいんだけど、本人が書かないって言ってるんだから無理か。。
しかし4の人気がすごいなw
忘れてた。12もいいよね。まだ序章だけどいい感じ。
まあ4は初代スレからずっと続いてるこのスレの目玉作品からな。
人気が集まるのは当然だと思う。
みんなガンバレ。
塚本当に下らない喧嘩してるな。「書く前から」の意味についてとかのどうでもいい所まで喧嘩してる。どっちも馬鹿にしか見えない罠。
>>352さんみたいな温厚な態度で物を考えられる人がこのスレには必要だと思うよマジで。
いきなり蒸し返すお前も馬鹿
言いたいことはわかるが少しは雰囲気ってものを読もう
まとめサイト落ちてないか?
直ったな
というか
>>353の言ってる「竜の騎士団」って、
出来が悪いとは言わないけど、おもっきしリレーを無視した短編じゃないか?
このスレ的にはそういうSSとか書くのはありなのか?
無視っつーかリレーに支障ないし、おもしろけりゃいいじゃん 話に深みもでるし、何より裏設定の小説化はファンにはたまらんて
他所でやるべきだね
話の肉付けとしての短編って意味では許容範囲内
4の書き手さんが書いてたからありなんじゃないかと思う。
全く関係ない人がいきなり短編だけ投下したら反応が違うと思う。
>>368同意。確かに4の作者さんが書いたからいいって感じだよな。ひいきって感じもするけど…4の作者さんの描写が神なのは事実だから仕方ないけどね。
ひいきっつーか、
3rdスレのときに
>ちょっと思ったんだけど、これから来る人または書く人がわかりやすいように、
>短編の規制とか決めておいた方がいいんじゃないかな。これまでにも質問あったし。
>んで、スレのコンセプトとか既にでてる意見からすると、
> ・まだノベライズされきっていない部分を抽出した短編は不可
> ・既にノベライズされた部分に基づき、筋に反しないような短編は可
> ・登場人物とは別に、ゲームの世界背景だけを用いた短編は可(exまとめサイトの魔列車編)
>……と大体こんな感じで問題ないと思うんだけど、ひとつ聞きたいのが、
> ・ゲーム中で描写の無かった、登場人物の過去等についての短編
>これはどうなるんだろう。一応は補完部分に反しないことになりそうなもんだが…。
>それとも、ノベライズの本筋とは別物の短編を書く事自体、そもそもスレ違いなのかなぁ。
>長々と失敬。
という意見があったから、
297が試しに短編書いて住人にその辺を判定してもらおうとした、って感じだったはず。
それで特に反論がなかったからまとめさんが補完したんだろ。
判定ってのもあほくさい話だったな。
あれ。第一ルールなんか定めるのからして
明らかに邪魔だったんだしさ。
372 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/12(月) 04:14:26 ID:0f0x2FZrO
あげ
どっちにしろ
いまさら蒸し返す話じゃないってことだ
保守
短編を書きたい奴の工作活動?
荒れる元になるからやめとけって。
流れを荒らそうと必死こいてるのはどっちなのかねえ
結局10を書くと言ってた人はどうなったのだろう?
>>377だから蒸し返してんじゃねぇよ粕が。また雰囲気がぶち壊しになるような論争始まるだろ
過剰に反応しすぎるお前が雰囲気ぶち壊しにしてるってことに
早く気づけ
とりあえず落ち着いてくれ
そして、落ちない程度にレスするだけということを心がけるんだ
10イラネ
はいはい
保守しとくな。もう
384 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/16(金) 17:25:08 ID:fzMg4rs/O
あげますね
そういえば5はもう続き書かれないのかな?
ずっと書いてた作者は来ないし、内容的にリレーするのも難しいし、どうしたら
いいものか
自分の始めたいところから始めればいいんじゃない?
もしくは最初から書くとか
それはないだろ
5投下したいとは思ってるのだけど・・ネットつながってないからな・・・・・
繋がったら投下させていただきます。
前の書き手さんではありませんが・・・・。
リレーであれば歓迎するよ。
最初から始めたり、気に入ったエピソードだけを書くつもりなら、
どこか他所で頼むよ。
390 :
214:2006/06/17(土) 19:25:44 ID:Jc83yFIy0
御無沙汰です。214です。
まとめ管理人さんがこちらを先に見るかもなので御連絡事項を。
訂正版をまとめサイトに投稿しておいたので確認をお願いします。
続きを書かない宣言をしたんですが、て、撤回してもよろしいですかね?
レックスの辺りならまだ本編には食い込まなさそうなので書けそうかな、と。
最近の流れだと、いきなり続き書くと「書かない」とか言ったのが誘い受けに取られかねなくてコワスw
5はもうジョブが決定されてるからな。
ちょっと書きにくい
>>390 投稿確認しました。
タイトルは全部「Prelude」で、区切りもあのままでいいんですよね?
続き期待してますよ〜。
それでは。
保守
そうだ保守だ。
まだまだ保守
けうも
真面目に二次創作っておk?
二次創作というか、ゲーム上では語られなかった部分を妄想でノベライズしようと思ってるんですけど……
その辺の線引きって難しいよな
どうなんだろう?
>>370を見て、書こうとしている短編がどの例にあたるかを考えるといいかも
400 :
397:2006/06/20(火) 22:11:49 ID:emdNLmtlO
携帯から失礼。
>>399 俺が書こうとしてるのは、諸事情によって一時的にパーティから離れたキャラの、別行動中のできごとです。
だから、
> ・ゲーム中で描写の無かった、登場人物の過去等についての短編
これにあたるのでしょうか?
これに関しては370でも答えは出てないようで……
正直過疎ぎみの時は何を書いても良さそうだけどな。
その一時的にパーティが離れたというシナリオまで既にノベライズ
されている状況だったらこのスレに投下で何の問題も無いが、
>>397のはいきなりの単発だから千一夜スレが一番妥当
402 :
397:2006/06/21(水) 07:41:17 ID:4gv3yrvs0
了解しました。
では、とりあえず作品が完成した千一夜スレに投下しようと思います。
398さん、399さん、401さん、ご返答ありがとうございます。
どうもお騒がせしました(´・ω・`)
ほす
404 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/23(金) 00:39:40 ID:+mjHMSUI0
あげ
ほしゅ
定期保守
ほ
408 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/24(土) 16:53:14 ID:2ZdeMyU4O
ここが噂の超過疎スレですか(n‘∀‘)η゚・*!!
このスレはFF4でようやく存続できているスレですから
どの作品が好きと思うかは自由だと思うけど
投稿作の中でどれがいいかとかランク付けを
読み手がやってると投稿する人はしづらいだろうなと思う。
FF4以外、わりと排他的な住民の性質にも一因があると思うんだがw
まぁ、それ以上に真面目に本編を小説化しようとするのが難しすぎるからな
俺じゃ、到底面白い文なんて書けないし
というわけで保守
ああ確かに排他的… でも継続的なのは4だしねえ。
もうFF4しか見えない
4以外はパーティの組み方が自由自在だからそれが書きづらい理由の一つかも
5はメンバー固定だけどジョブが自由だし…
ほす
戦闘シーンの描写が難しすぎるんだよね。
戦闘シーン以外がからっきし書けない俺の立場はどうなる
よし戦闘シーンになったらリレーを引き継ぐのだ
とりあえず、一日一回の保守
保守する
あ
保守。
ほす
ほ
426 :
299:2006/07/01(土) 08:23:01 ID:8lUAP/8j0
FINAL FANTASY IV #0427 5章 1節 刻む足跡(23)
ミシディアへと着いた途端、テラの導きにより、セシルは長老のいる場所。
つまりは町の最奥へとそびえる、神殿へと向かった。
「どういう事だ!」
セシルが着いた時には、先に着いていたテラの怒ったような
声が聞こえていた。
「長老は今は祈りの塔の中です。誰にも会うことはできません!」
見ると、奥へと続く階段の前を何人もの女官達が必死に行く手を
遮っている。
「何故だ! ひどく重要な話なのだぞ……」
「決まりは決まりです。例えテラ様といえど例外ではありません……」
女官は目前の賢者相手にも全く動じる事なく冷静に対応する。
「そうか……」
さすがに、その態度にはどうやっても無理だろうと思ったのか、テラは
声を潜める。
「セシル、出るぞ」
そして、身を翻し神殿から外へと退出した。
427 :
299:2006/07/01(土) 08:24:59 ID:8lUAP/8j0
FINAL FANTASY IV #0428 5章 1節 刻む足跡(24)
白い外壁。円を描くように立ち並ぶ家屋。そして来訪者迎えるよう
建造された神殿、其処へ誘う為の直進の道。
何もかもが変わらないミシディアの町であった。
「テラ、何をするつもりだったんだ?」
そして神殿への道を町の入り口へと向かいながら、セシルは訪ねる。
飛空挺での移動中、テラはずっと無言のまま黙っていた。
ヤンにもシドにも詳しくは話していなかったそうだ。
「あの子達は自分達で……だから」
「だから……」
「まずは、あの子達が戻りたいと思わせなければならないのだ……」
「二人の想いを解き放たなければならない……か」
一通りの話をそう解釈した。
「それで長老に頼る事にしたのか」
「そうだ。だが、あやつは……私に会わんとは!」
「なら、どうするつもりだ……」
「あやつが私に会うまで待っておく!」
「……ねえ、テラ?」
断固として主張するテラにセシルは声をかける。
「本当に、今あの子達を元に戻すことが、僕らのやるべきことなの
だろうか?」
「何……!」
テラは驚き、絶え間なく疑問を投げかけてくるセシルを見る。
「あの子達は自ら……僕等を救うために自分達を犠牲にした
ならば無理にでもそれを解くのはあの子達にとっても本意では
ないんじゃないか?」
自分でもやや驚くほどの突き放した意見だと思った。
しかし、二人のあの瞬間を見た時、その後の石となった姿を見た時、
一番先に思った事だ。
428 :
299:2006/07/01(土) 08:26:20 ID:8lUAP/8j0
FINAL FANTASY IV #0429 5章 1節 刻む足跡(25)
「では、お前はあの子達を見捨てるというのか!」
テラの怒りは当然だと思う。自分の意見が絶対的に正しいとも思えない。
「だけど、どうする。今長老は、祈りの塔にいる。今は待つことしかで
きないじゃないか……」
「…………」
テラは黙り込んでいた。何も言い返さないのは、言い返せないのか、はたまた
何かを考えているのか。
「ひょっとすると、長老にとっても今はとっても大事な時なのかもしれない。
あの二人の命以上に……」
「なんじゃと!」
テラは少し怒ったような声を出した。
「他にもいいやり方をあやつなら知っておるかもしれんぞ」
テラがそう返した。
何にせよ、セシルの決断は一つであった。
「悪いけど、もうこれ以上は待てない。後少ししたら、シドに発進の準備を
してもらうよ」
それだけ言い残してセシルは足を速めた。
ミシディアからバロンに向かってから、まだ数える程の日数しか経っていない。
未だに自分を受け入れない人間も多くいるだろう。
ジェシー。それに長老すらもまだ迷いがあるのだろう。そんな場所に長居をしたく
ないという考えもある。
そして、テラの前で言ったとおりの事。今、二人を救う事が本当に今の最優先事項なのか。
「人一人には出来る範囲、つまりは限界というものがある。それ以上の事をしようと
すれば何も出来なくなってしまうのではないか……」
救いきれないもの。やり切れないもの。捨て置かなければならないもの。
誰にでもそのようなものはあるのではなかろうか。
数多くの目的や願望から、僅かな一つを選ばなければならない時が
あるのかもしれない。
そして自分は何をすればいいのか。簡単に答えなんかは出ないはずだ。
429 :
299:2006/07/01(土) 08:27:15 ID:8lUAP/8j0
FINAL FANTASY IV #0430 5章 1節 刻む足跡(26)
(もしテラが待ち続けていれば。置いていくことになるのか……)
飛空挺まで向かう際にふいに考えがよぎった。
それがいいのかもしれない。
これからの戦いでゴルベーザとまみえた時、テラがメテオを使う可能性は
極めて高い。
もしそうなるとすれば、テラは……
試練の山から帰還した際、セシルは長老からテラの過去を聞いた。
それが終わった時、長老は一言だけセシルへと頼み込みをしてきた。
「テラを守って欲しい」
たった一言ではあったが、長老の言葉は大体分かった。
メテオがどんなものかはセシルもわかっていた。そして長老が危惧する理由も。
そして、それは今のセシルに抱えられる程の簡単な御願いでもなかった。
FINAL FANTASY IV #0431 5章 1節 刻む足跡(27)
「待て! セシル!」
考えるセシルの元に慌てたかのような声と、足音が近づいてくる。
「確かに、お前がいうとおりなのかもしれんな。今はあやつを……ゴルベーザを
倒すべきなのかもしれん」
振り返ると息を切らしたテラが立っていた。
「じゃあ、もういんだね……」
何がとは聞かなかったが、テラも理解しているであろう。
「ああ、あの子達は決して死んだわけではない。それに今は二人も――」
石となった人間に想いというものが存在するかはテラにも判らないのであろうか、そこで口を閉じる。
「だけど、時間が……時間が二人を何とかしてくれるかもしれん……」
しばしの時を経て、テラはそう言った。それは無理にでも自分を納得させている言葉に、セシルには
感じられた。
同時に朝から昼へと移行し始める空を見上げる。その姿は何処か脆くセシルは感じた。
「僕もそう思うよ。行こうか……」
「ああ……」
そう言ってテラは足を速めようとした矢先――
「おうい!」
シドとヤンがこちらへとやってきた。
「もういいのですか?」
「ああ」
ヤンが訪ね、テラが答える。
「随分と早かったな。それでどうだったのだ」
今度はシドが話しかける。
「ああ、もう少しばかり時間がかかりそうだ。これ以上此処に用はない。
さっさと出発してしまうぞ!」
返答するテラはすっかり元通りの元気な口調であった。
しかし、セシルにはその背中は言葉とは裏腹に、随分と小さく見えた。
職人さんキター!!
GJ!葛藤するセシルの心理描写イイ!
ほす
するのだ
435 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/03(月) 23:43:54 ID:+lTMDkqE0
それにあげとくぜ
once par day
さげほしゅ
けうもほすだ
439 :
299:2006/07/07(金) 04:39:38 ID:Dg1L1WEk0
FINAL FANTASY IV #0430 5章 2節 再会の調べ(1)
ミシディアを飛び立ち、半日程が過ぎた頃であろうか、
飛空挺から見上げることの出来る風景が森一色になったのは。
「もうすぐ、トロイアだね」
トロイア国。その国が国土のほぼ半数以上が森林で出来ている事を
知っているセシルの言葉だ。
その知識があれば、今の飛空挺がトロイア領へと入った事は
簡単に察せるであろう。
「そうだな。だが、ここからが本番だぞ」
「勿論さ……でも大丈夫か?」
シドの言った言葉が、単なるこれからの喝入れ以上の意味がこめられている。
それがわかったのもセシルがトロイアという国のもう一つの特徴を知っていたからだ。
近くにいるヤンもテラも、今の二人の会話には特に気にもとめた様子も無く、それぞれ
の感慨に浸っている。
「どうだろうな。実は、前もっての入国知らせはしていないのだ」
つまりは向こう側にとって今回の来訪は全く持っての想定外の事態となるのだ。
「まあ、トロイアはまだ飛空船の技術に関しては全くもって進んでおらん。
ずるい話だが、エンタープライズが打ち落とされる心配はせんでいいぞ」
それが、自らの技術への自信から来る言葉であったかどうかは判らない。だが、
本当に向こうに技術があるとするならば、とっくの昔に船は撃沈されていたであろう
とセシルは断言できる。
何故ならば、あの国にある特徴を知っているからだ。加えて、今回の来訪の理由が
あの国にあるクリスタルについてであるところだ。
「本当に大丈夫なんだろうか?」
「儂にもわからん。だが、事情が事情だ。何があっても用件を聞き届けてもらわんと
いかん」
そう言うシドには自然と力が入っていた。
やはりシドにとっても、ローザの身は心配なのだ。
それにカインの動向も気になっているのだろう。
440 :
299:2006/07/07(金) 04:40:56 ID:Dg1L1WEk0
訂正
#0430→#0432
441 :
299:2006/07/07(金) 04:41:49 ID:Dg1L1WEk0
FINAL FANTASY IV #0433 5章 2節 再会の調べ(2)
「親方! トロイアが見えましたが」
突如、操舵士の技師の言葉が響く。
「そうか! とりあえずは着艦だ。あそこの城内には大きめの庭がある。
そこに止めさせてもらうぞ!」
「いいんですか?」
技師が慌てて聞き返す。彼の性格を理解している者にとっても今の判断は咄嗟に
納得できぬものだ。
「仕方ないだろ。向こうには着艦後に詳しく話す!」
それ意気に納得したのか、操舵士を初めとした技師達が着艦準備に入る。
「本当に大丈夫かな?」
一人セシルは呟いた。だが、すぐにでも良い方法が思いつくはずもない。
「どうしました、セシル殿?」
ヤンが話しかけてくる。
「いや、これからの事を……君も少し覚悟しといた方が」
「そうですか」
セシルの気苦労を少し理解したヤンはやや、困惑気味に返答した。
442 :
299:2006/07/07(金) 05:04:02 ID:Dg1L1WEk0
FINAL FANTASY IV #0434 5章 2節 再会の調べ(3)
着艦後。船から城内へと降り立ったセシル達は早速もって予想した出来事に直面した。
「バロンの者か! 己っ……遂にはこの国にまでも!」
一人の兵士が手にした槍を向けている。
「我々に飛空戦の技術があったのなら即刻打ち落としていたものを!」
見ると、一人だけでなく幾多もの兵士達が飛空戦の周りを取り囲んでいる。
「だが、よくぞ一隻だけで来たな! その覚悟だけは褒めてやろうかな!」
「やはり、思った通り歓迎はされぬようだな」
セシルとシドは思った通りの展開に打開策を考えていた。
しかし、この国の実情を知らぬ、テラとヤンは別の事態に驚いていた。
「この者達……女か!」
テラが思わずといった感じで口に出す。
いくら剛健な雰囲気で迫ろうとも、やはり全身から女と察せるのだろう。
「なんと……」
「ええい……悪いか!」
兵達を率いている女が怒声と共に更に槍を突き出す。
「待ってくれ、我々は別に戦いに来たわけじゃないんだ!」
今にも飛びかかりそうな勢いに慌ててシドが割り込む。
「ならばお前達の国の最近の状況はどうした! あちこちに手を出しているではないか!」
「あれは……」
シドは口籠もる。ゴルベーザとは関係ないと言っても簡単に信じてもらえはしないだろう。
「待て!……私はファブールのモンク僧だ!」
ヤンが言う。
「この者達は、戦いに来たのではない! むしろ、他国へ侵略を進めるバロンに
対しては否定的である……信じてもらえるかどうかわからぬが、ファブール侵攻の
際にも一緒に戦ってくれたのだ!」
443 :
299:2006/07/07(金) 05:05:28 ID:Dg1L1WEk0
FINAL FANTASY IV #0435 5章 2節 再会の調べ(4)
「確かにその姿はモンク僧……」
一人の兵士がその姿を見て呟く。
「隊長……」
ヤンの言葉に傾きつつあるのだろうか。自身の隊長へ判断を委ねる。
「黙れ! 嘘に決まっている」
「ですが……そういえば、この前ここに流れ着いた者も似たような事を
言っていたではありませんか!」
「はっ! あの放浪者か、奴の言葉を信じるとでも!大体、どこぞや王子だと
名乗るのからしておかしい!」
「何!」
一連のやりとりを聞いて、セシルは少しばかり疑問を感じた。だが……
「皆の者!」
途端、いなすような言葉が聞こえてきた。
「大臣殿か!」
声と共に、波が引けるように直ぐさま道がつくられ、そこから一人の老婆は姿を見せる。
「其処の者達……クリスタルが目的なのですね?」
「はい」
セシルが答える。彼女の言葉には嘘は通じないであろう厳格さがあった。
丁度ミシディアで長老と話した時に近いであろうか。
「そうですか……ですが残念ですね。一足遅かったようです」
「どういう事で……?」
「既にクリスタルはこの国にはありません」
「では、奪われたと!」
大臣の告げた言葉にセシルは驚きを隠せなかった。
「安心しなさい、少なくとも貴方達が思っている人物の手には渡っていません」
その言葉はセシル達を二度の意味で安心させた。
一つは言葉の通りゴルベーザが全てのクリスタルを手に入れていないこと。
もう一つは、大臣がセシル達以外にもクリスタルを狙う者の存在を理解していおり、
セシル達を敵視していない事。
444 :
299:2006/07/07(金) 05:06:48 ID:Dg1L1WEk0
FINAL FANTASY IV #0436 5章 2節 再会の調べ(5)
「大臣殿! そう簡単に言っていいのですか……」
近寄ってきた、隊長が小声で話す。
「その事はまだ、一部の者にしか言っていないはず。現に私も部下には誰にも
口添えしてません。それを、こんな見ず知らずな者に……」
そう言ってセシル達の方を見る。
「ですが、いずれ判ってしまう事ではありませんか。それに、この者達がもしかする
と貴方の思っているような方だとしたらどうなりますか?」
「どうなるとは?」
「目的のものが無いと判ったらですよ。簡単に引き返してくれますか?」
「…………」
大臣の厳しい切り口に無言の隊長。
「この城は無事では済まないと思いますよ」
「ならば何故……大臣殿は彼らを信用するのです? こんな……」
「私がもしバロンの指揮官でしたら、今までと同じやり方をしたと思いますよ」
「どういう事で?」
「つまりは、上空から爆撃を重ねるだけです。そして適度に戦力を消耗させた後、
クリスタルを奪いに来る……」
「…………」
またも隊長は無言になる。
「もし、彼からがバロンの者だとしても、告知無しの爆撃などせず、こうやって
話をしに来てくれただけで、幸運に思うべきでは。そしてそのような者には
敬意を持って接するべきでは……」
「う……」
そこまで言われると何も言い返せなかったようだ。
「この者達を司祭さまのところまで連れて行こうと思います」
そう言った後、セシル達の方を向く。
「では、いきましょう」
445 :
299:2006/07/07(金) 05:07:44 ID:Dg1L1WEk0
FINAL FANTASY IV #0437 5章 2節 再会の調べ(6)
城内な最奥であろう場所に到着すると八人の女性が待っていた。
「この方々がトロイアを治める神官達です」
老婆の紹介とともに、セシルは神官達を見る。
いずれも女性である。しかし、皆年齢は近くその誰にも似たような面影を感じられた。
「我々神官達は八人姉妹なのです。代々、土のクリスタルに仕えていました
この国、トロイアは土のクリスタルの恵みを授かり、それにより繁栄していたのです」
神官の一人がセシルの考えを感じ取ったのか、そう説明する。
「最も、今は仕えているではなく仕えていたんですけどね……」
更に別の神官が言葉を継ぐ。
「そうなのですか。それで……」
その会話からは良からぬ事が起きていると容易に伺える。
「既に大臣から聞いたのでしょう?」
「土のクリスタルは……?」
「この近くに住むダークエルフというものに盗まれてしまったのです」
一人が黙って告げた。もう一人の神官がそれに続く。
「ですが安心してください。そのダークエルフと呼ばれる者はあなた達が
戦っている者とは全く関係がないモノですから」
神官達の指す戦っている者とはゴルベーザのことだろうか。
446 :
299:2006/07/07(金) 05:08:41 ID:Dg1L1WEk0
FINAL FANTASY IV #0438 5章 2節 再会の調べ(7)
「知っていたのですか?」
セシルは、見通すかのような態度に驚き質問する。
「これでも一国を統治する責任を背負った身。無知である事を許される立場では
ありません」
「では……僕たちをここに呼んだのは……」
「それは大臣の独断です。あなた達は私達に敵対する者とは違うと思ったからでしょう。
ですが、我々も彼女とは同意見です」
「そしてあなた方がクリスタルを欲するにも、今までの国を襲ったもの達とは違う理由がある事も
わかっています」
「そうですか……」
八人の神官達によって次々に語り継がれる言葉にセシルはほっと息をなで下ろした。
国に来て囲まれた時はどうなる事かと思ったのだが、トロイアの神官達の対応は思ったよりも
円滑に進んだの嬉しい誤算であった。
「ですが、クリスタルは奪われた事に変わりはありません」
そうセシルが思っている間にも話は続いていた。
「ならば僕たちが取り返しますよ」
セシルは言った。どのみちクリスタルが必要なのだ。
「その代わりに土のクリスタルを取り返した後、しばらくの間、僕たちに借してほしいのですが」
クリスタルが無いという事はトロイアという国自身にも問題であろう。
利害の一致というやつだ。
「わかりました」
神官達の全員が口を揃え承諾した。
結構稚拙な文章だな
今までの229氏の文章と比べると、
>>448に同意
トロイア国といえば後に控えたダンジョンがあまりに厄介だったため
トロイア国自体は印象が薄かったけど
今回の投稿で細かいとこまで思い出せた。八人の神官なつかしす。
続き期待!
何だろう…文の構成が単調?な感じ…台詞の部分と状況を描写する部分の対比があまり感じられないんだ
台詞と状況描写をなぜ対比させる必要がある?
いつからこのスレは作文道場になったんだ?
批評するなとはいわないけどほどほどにしておきなよ。
こういうネタになると急に盛り上がるなw
批評をほどほどに?
299氏の力量を知っているだけに、今回は不出来だったと言ううしかない。
職人さんの批評長く続きすぎだろ・・・
というわけで、ただの保守に戻ります
ちょっとの批評にピラニアみたいに食いつくから長く続きすぎるわけで
みんなもうちょい大人になろうぜ
保守
本当に299さんが書かれたか、と言うことには疑問はないの?
レベルっていう意味じゃないよ、ただ
なんとなく文体が違う気がして…
文章なんて気分によって変わるとも思うから、
もし本当に299さんだったら申し訳ない話ですが!
まぁ批評もある程度明確に書くならいいんじゃない?
>>448とかつまんないとかはわざわざ書く必要ない気がするけどさ
ほっしゅ
保守
前から思っていたが299氏、トリを付けることをお薦めする
以前、偽物も出ているし。
ホス
468 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/14(金) 04:10:31 ID:FfYXckYz0
あげ
職人よ、惰性で書くな。
よし、じゃあ俺らも書こうぜ!
そんな簡単に書けるものならとっくに書いとるがな(´・ω・`)
読み手よ、ごちゃごちゃ言わずに書き手となれ
ほ
474 :
299:2006/07/17(月) 11:47:56 ID:Hsx+pHFJ0
断筆宣言
本人?
476 :
299:2006/07/17(月) 12:18:10 ID:Hsx+pHFJ0
至らぬ点はすべて私の責任です。今まで有難うございました。
ご苦労様でした
お疲れ様でした
お疲れ様(`・ω・´)
480 :
299:2006/07/17(月) 22:49:06 ID:9b7i/IcK0
FINAL FANTASY IV #0439 5章 2節 再会の調べ(8)
「ふう……」
半ば強制的に始まった交渉を終え、その後協力する為の情報を聞き、
神官達の部屋から退出ししばらくした後、シドは大きくため息をついた。
「話のわかる連中で助かったわ……」
と、セシルを初めとした皆の意見を代弁するかのように言った。
「そういえば、どうしてため息をついとったのだ?」
安堵するシドにテラが訪ねる。飛空挺の時の事を言ってるのだろう。
「確かにセシル殿も……」
ヤンも同じく疑問を口にする。二人にとってあの時の甲板での二人の態度は
腑に落ちぬものであったのだろう。
「それはだな、この国の……」
シドの言葉を聞きながら、テラもヤンも自然と納得せざるをえなかった。
「つまりは……」
周りを見渡しながら、
「そうだ。この国は女性だけによって統治されておるのだ。兵士や、政治家等
国家の重要な機関の人間は」
「同時に、それが起因しての問題もある」
二人の疑問への解答をセシルが引き継ぐ。
「元々この国は、決して女性だけの国ではなかったんだ。勿論今だって男が、いないわけでは
ない。だが、ある時から政治は女性だけで取り組む方針を推し進めたんだ」
「つまりは、男は政治に必要ないという訳か……?」
「そう。僕も詳しくは知らないけど、ある時代の大臣がそう決めたんだ。以降、
この国では男性の政治参加は全く認められていない」
481 :
299:2006/07/17(月) 22:49:40 ID:9b7i/IcK0
FINAL FANTASY IV #0440 5章 2節 再会の調べ(9)
「ふ〜む……解ったような解らぬような……」
自らの問いの肯定と解答に、テラは肯定と否定ともとれるような声を発した。
既にテラは前述の問題――女性のみの統治についてのはっきりと理解したようだ。
そう……女性による統治。それは今まで何処の国もが実践したこと等ないもの。
現にその話を聞いたテラもやはり、それには納得しかねる反応を示しているのだ。
「なかなか人は新しい姿勢をうけいれないからね……自然とこの国も強い
姿勢を貫かざるをえなかったんだよ。それにこの国は戦争に巻き込まれた事が
未だ一度もない……」
森と水の都トロイア。美しきその名を守ってきたのにはそんな事実が存在してきた。
血で血を洗うと評される事のあるバロンとはまさしく対象的といえる国家であろう。
だが、現状という名の現実は、近年、この国にも着実に足を進めて来ている。
その一環がゴルベーザの各国のクリスタル奪還なのだ。
既に残されたのがこの国だけとならば、嫌でも緊張感は高まらざるを得ないであろう。
「もし、人が簡単に許し合え分かり合えたのならなら。随分と楽だろうな……」
皮肉ではなく本心から出た言葉は、何故か――必要以上に自らの心へと響いた。
482 :
299:2006/07/17(月) 22:51:54 ID:9b7i/IcK0
FINAL FANTASY IV #0441 5章 2節 再会の調べ(10)
「で……これからどうするんだ?」
一通り会話を終え、城外へと向かって歩き始めた、
「当然、ダークエルフからクリスタルを取り戻しに行く。場所は教えて
もらっている」
そう言って、神官達から譲り受けた地図を取り出す。
その地図は、トロイア領内を詳細に表した地図である。そしてその北東部に、
一つ印がつけられていた。
「ここがそのダークエルフの住処である場所だ……此処の国の人達は磁力の洞窟
と呼んでいる」
「ほう……何故だ?」
セシルの言葉にシドが疑問を割り込ませる。
「この洞窟にはその名通り、強い磁力が張り巡らされているらしいんだ」
「つまり……」
「金属製のものは使えないと言うことだよ……」
導き出された答えに、皆少しばかりしんとした。
483 :
299:2006/07/17(月) 22:52:31 ID:9b7i/IcK0
FINAL FANTASY IV #0442 5章 2節 再会の調べ(11)
「えーと、という事はミスリル製を初めとした金属器類を使用して使われた、
剣、盾、鎧、兜等は一切使えないという事か?」
シドがとりあえずと言ったまとめを口に出す。
「使えないんじゃなくて、身に纏ったものが少しでも足を運ぶと、身動きが
とれなくなってしまうらしい……この前も、とある旅人が洞窟内の宝石目当てに
金庫を持って行った旅人が酷い目にあったらしいよ」
幸いにもその旅人は金庫を失っただけで、済んだのだが、その話は笑い話としては
いささか、今のセシルとは親密度が高すぎた。
「そうか、大丈夫なのか?」
シドが気遣うような声をかけてくる。
これは、その話の欲張りな旅人でも、自らに問いかけた訳でもない、紛れもなく
セシル本人に向けられた言葉だ。
「だから、今から準備をしないといけないね」
そう、これから行く先にあるダークエルフの根城の磁力とやらが、この噂通りであると
すれば一番とばっちりを受ける。つまりは戦力的に数えて問題になるのは紛れもなく
セシル自身である。
テラは魔法を使えるし、ヤンは己の肉体を武器にして戦う。シド影響を受ける事は
あるだろうが、彼の性格ならば木槌を振り回してでも戦おうとするであろう。
となると自分は……なにか打開策を応じる必要がありそうだ。
「とりあえず、街の方に宿があるらしいから、今日はそこに泊まることに
した。準備には時間が必要だろうし――」
484 :
299:2006/07/17(月) 22:53:35 ID:9b7i/IcK0
FINAL FANTASY IV #0443 5章 2節 再会の調べ(12)
途端、聞き覚えのある音色が聞こえてきた。
「どうした、セシル?」
「テラ、何か聞こえないか?」
「そうか……」
セシルに促され、テラも耳をこらす。
「確かに……」
見ると、行き交う城内の兵士達もが、その足をとめて、始まった演奏に
耳を傾けている。
「何処から……」
ふいに疑問がよぎる。
それは遠く風に乗って聞こえてくるのか、それともすぐ近くからの音色なのか、
いやそんなことはどうでもよかった。
問題は音色はセシルの聞き覚えのある音なのだ。
そう、これは竪琴の……音。
その音や楽器――結びつくのは唯一人それも良く見知った。
「セシル殿……?」
半ば、答えに辿り着きかかってたヤンは、セシルへと訪ねる。
「ヤン! この音は竪琴だよ! 君も聞いた事があるだろう!」
「竪琴……っ!」
そこまで言われるとヤンにもわかったのだろう。
「という事はっ……!」
合点したヤンの言葉を全て聞き終えるか終えないか、定かでない内に
セシルはもう走り出していた。
間違いない。進む演奏を聞くに連れ、セシルは思う。
このような音色を――竪琴の美しい調べを奏でる人物をセシルは一人しか知らない。
もはや疑惑でなく確信へと移ったその意識を胸にセシルは更に走る速度を早めた。
485 :
299:2006/07/17(月) 23:12:23 ID:9b7i/IcK0
久しぶりになりますが、どうやら自分の至らなさのせいで
皆様に多大な迷惑をかけてしまったようですね。
その意味では「もう一人」の御方の言われるとおり、自らの恥を
認めてでもこの場を去るべきなのかもしれません。
ですが、元来、諦めの悪さが取り柄の自分には、そのような潔さは
例えどのような状況であろうと無理でしょう。
まさしく生き恥を認めず、晒してでも書き続ける事になるでしょう。
ヘタレという奴ですかね。(苦笑)
486 :
299:2006/07/17(月) 23:18:02 ID:9b7i/IcK0
>>462 上でも言ったとおり、問題箇所は全て私299の手によるものです。
落胆させてしまったのならご容赦を。
>>466 それは以前にも忠告され、その上で私自身が有耶無耶にしてしまったの
ですが、それが今回のような騒動を招いたのであれば、当然の報い
というべきなのでしょうか。
ですが、今回の忠告も誠に有り難いのですが、好意だけを受け取っておく事にします。
誠に自分勝手な我が侭でありますが。
よって今後、この者が299本人であるか否かは皆様の判断に委ねて頂くより他にありません。
もう一人、否、もう千人の私に関しても同様です。
長くなりましたが要は、トリップはつけずにこれからもつづけていくという事です。
ある漫画家さんの言葉を借りるとすれば
「これからも僕を応援してくださいね」というやつでしょうか?
以上、自称「本人」の言葉です。乱文長文失礼。
おぉ、乙
これからも楽しみに待ってます
なんとしても、終わりまで見届けたい・・・
コテつけてる時点でトリップつけても変わりないと思うのだが
とにかくGJ
やっぱ書ける人はすごいよ
色々言われてる人もいるけど
聞くべきとこは聞いて無視すべきとこは無視して書いていっていいと思う。
心無い批判であきらめないでと思う
GJ!
次の展開を期待させる書き方で読んでて楽しい。
トリ無しコテは、遊びだと解釈してる。
それに読む側としては誰が書いてるかって事はあんま関係ないし。
あと
>>488の下一行に同意。
490 :
462:2006/07/19(水) 01:27:42 ID:kVu1Ipbt0
すすすす凄い失礼な事を言ってスミマセンでした!!!!!
あの、まだ読みたいです。好きです。
491 :
462:2006/07/19(水) 01:28:14 ID:kVu1Ipbt0
おっと途中送信…
これからも楽しみにしています。
ほす
494 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/22(土) 01:00:54 ID:HC4Xw7yQ0
あげ
毎日のほす
HO
shu
乙
ほ
to
299さんに期待してます
ほす
けうも
508 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/31(月) 22:57:03 ID:7pTcDRID0
いい感じあげ
オイオイヨ
さげって・・・
まとめサイト管理人さん、ご覧になってます?
本当に我がままなお願いなのですが、ローマ数字がMACだと表示されないのです…
(協)←こういう風に文字化けしたり?になってしまいます。
このスレ好きでまとめサイトも応援してますのでもし、よろしければ
ローマ数字でなく例えば6ならV+I でVI、みたいに表記して頂けないでしょうか…
順番で分かるから本当にわがままなお願いなのですが。
捕手
あ
ほ
だ
これほど投下が遅いことは無かったのではないか?
保守
今に始まったことじゃないさ
もう一ヶ月近いのか
駄作の投稿ならないほうがマシってもんだ
気にすんな。夏だし。
ほす
久々に干す
保守
投下が無い
このスレはただの保守スレのようだ。
うろたえるな!
ドイツ軍人はうろたえない!
FINAL FANTASY IV #0444 5章 2節 再会の調べ(13)
白から紅まで、様々な階調の赤に彩られた花が、木影を映す水面で細波にゆれている。広間の敷石のような丸い葉に陣取って、澄んだ声で鳴く蛙たち。
大きな緋色の水鳥が、細長い足を見せびらかすようにのんびりと歩き回り、見事な羽をそびやかして餌を求め身を屈める。
”麗しのトロイア”の名に恥じぬ、堀に面した優雅な庭園。そこで標は途切れていた。
城を出ようとしていた一行を引き止めておきながら、セシルたちがその姿を見出す前に、竪琴の弾き手は演奏を止めてしまったのだ。
「……だめだ、聞こえなくなった」
「仕方あるまい。広いからな、この城も」
ひととおり周囲を見渡し、どこか慰めるふうに言葉を返すヤン。たしかに彼の言うとおりだった。そもそも、初めて訪れた場所で、聴覚だけを頼りに人を探すのは容易ではない。
それでも不可能ではないと、ついさっきまでのセシルは思っていた。
「今のはギルバートの竪琴だ。そうだろう?」
「おそらく」
だが自信はない──とヤンは続けた。
「私は、楽には疎い。情けないが、微妙な違いを聞き分けられるとは思えん」
彼がそれを恥じ入ることはないはずだ。しかし、見るからに無骨な修行僧は、本心から悔しがっていた。
ホブス山で出会ってから、ファブールの都にたどり着くまで、ヤンがギルバートの演奏を聞かなかった夜はない。
初めは、傷ついたモンク僧たちを励ますためだった。雄大なファブールの山々を称え、かの地に伝わる英雄が記した武勇を歌い上げ、あまりの痛手に気力まで失っていた精兵たちを、ひとり残らず奮い立たせた。
最期に頼んだ頌歌を声なき声で口ずさみ、力尽きた若いモンクは、とても誇らしげな顔で眠りについた。
『その歌飽きた〜』と拗ねるリディアの為に軽快な流行り歌を織り交ぜ、ローザとふたり聴き入るセシルに、『リクエストはないのかい?』と笑いかけ──
1日の最後には、機嫌を直した少女に素朴な子守唄を贈った。
当時はあんなに必死で、不安と焦燥に駆られていたというのに。
十日にも満たない道のりは、今思い返すと、不思議と優しい手触りを返す。
まるで何年も昔のことのように。
FINAL FANTASY IV #0445 5章 2節 再会の調べ(14)
「どうする、まだ探すか?」
「ああ。
いや……」
ヤンの問いに対し、セシルは言葉を濁した。
音楽の心得を持たないことにかけては、セシルもヤンと大差ない。先ほどの演奏が、間違いなくギルバートのものか、急にあやふやに思えてきた。
竪琴ぐらいどこにでもある。詩人などどこにでもいる。
一度我にかえると、なぜあんなに強く確信することが出来たのか、自分でもわからなかった。
本当にこの城のどこかにギルバートがいるのなら、是非とも会いたいと思う。だからといって、本来の目的を放り出してまですることではない。
理屈ではわかっていながら、どうしても、ここにギルバートがいるはずだという直感をセシルは捨てきれなかった。頭の隅に何かが引っかかっている。
心を決められずにいるうちに、やや息の上がった年長組が追いついてきた。
「どうしたんじゃセシルよ。いきなり走り出しおって」
「この城の女どもは、まだ我々を警戒しているようじゃ。突飛な行動は慎まんか。
……誰を探しとるか知らんがな」
「すまない。もういいんだ。市街に出よう」
セシルが探索を諦め、踵を返したその途端。高く鋭い音が、4人の耳を打った。
戯れに爪弾いているだけなのか、旋律らしきものはなく、ただ澄んだ響きが雨だれのように鼓膜をくすぐる。
「……こっちか!」
いち早く身を翻したヤンに続いて、回廊を走り抜ける。ふと、鎧のたてる金音がやけにうるさいことに気がついた。竪琴の音をかきけしてはいないかと、足を緩める。
多少静かにはなったが、金属を打ち鳴らす音は止まない。
それはセシルたちの前方、中庭に停めた飛空挺の側で鳴っていた。
うおおおおおおおおおおおおおおおお
待ちに待っただけあって短いながら読みごたえ抜群だった。
二人が思わず駆け出してしまったことにすごく感情移入できたよ。
力作GJ!
キター!!!!!!!
GJ
ほしゅしてたかいがあった gj!
535 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/20(日) 22:55:01 ID:okwjpKF+0
age
FINAL FANTASY IV #0446 5章 2節 再会の調べ(15)
飛空挺のつくる影から、更に二十歩ほど離れているだろうか。葉がついたままの枝を地面に刺し、幅の広い布をめぐらせた内側で、複雑に髪を結った娘たちが踊っていた。
彼女らを囲むように、やや年嵩の女性が3人、笛や鼓を携え、芝の上で膝を組んでいる。全員が巫女の類なのだろう、厳粛な祭儀の空気が、声をかけることを憚らせた。
──IDLEM URODO ITAU A WI ROT──
──UKUKFU KUSH ONUOY NEHAWUOCH──
各々が小振りの錫杖を手に、訓練された良く通る声で歌っている。むきだしの腕で宙を掻き、足を踏み鳴らすたび、杖の飾りが触れ合って、華やかな音を立てた。
見る限り、竪琴を手にしているものはいない。耳を澄ますと、確かに弦をはじく音が鳴っている。だがそれは、目の前で奏でられる楽とは調和していないように思えた。セシルでさえ違和感を覚えるほど、明らかに拍が合わないのだ。
「む、あの娘は……」
テラの視線は、舞姫たちのつくる輪の中心を指していた。自然と、セシルの目もそちらに吸い寄せられる。
花蔓と鳥の羽で編んだ冠を戴いた女性が、藍銅色に染めた瞼を半ば伏せ、ゆるゆると杖を持ち上げる。先ほど会ったばかりの、八姉妹の一人に間違いなかった。
──ENADU YOIMI NNESAR URUGEM!
激しく鼓が打ち鳴らされ、横笛の音が中庭に響いた。それに合わせ、巫女たちが手にした錫を一斉に振り下ろす。
涼やかな音が周囲を圧し、あらゆる邪悪な存在を押し流すようだった。
FINAL FANTASY IV #0447 5章 2節 再会の調べ(16)
「何用ですか、お客人」
夕立を思わせる残響が収まると、神官は冠を脱いで、立ち尽くしていたセシルを見据えた。
「お立ちになられますか、バロンの将軍よ」
セシルたちの方を向いたまま、手で合図を送る。十人ばかりの巫女たちは、神官の手から冠と錫杖を受け取ると、斎域を示す枝を抜き取って奥の回廊に退いた。
さっき会ったときとは違い、化粧をしているせいだろうか。ひとり残った神官の表情は、ずいぶんと険しく見える。
「いや、違うけど……」
「そうですか。では、船を動かす際には、どうぞお声をいただけるようお願いします」
ようやくセシルは質問の意図を理解した。離陸の妨げにならないようにということだろう。言われずとも、そんな危険な真似をするつもりはないが。
「承知した」
「ありがとうございます」
こころなしか、表情から険が取れた気もするが、神官の口調は素気ない。
「そもそもあんたがた、ここでいったい何をしとったんじゃ?」
「御覧いただいたとおりです」
シドの質問を受け、神官の、深い青で縁取られた視線がエンタープライズに向かう。
「精霊たちがあまりに騒ぐので、お鎮まりいただくために舞を奉じておりました。
あるべきものが無いせいで、人も森も、皆浮き足立っているのです」
騒ぎの原因を、彼女は口にしない。しかし精霊とやらの気配はともかく、この巨大な来訪者が理由であることは明らかだった。
いくつもの苦難を切り抜けて、ようやく取り戻した翼。セシルにとってはどこまでも頼もしく、懐かしささえ誘う姿だ。
けれどトロイアの人々の目には、異様な怪物のように見えるのかもしれない。
柱の影から、窓の奥から、セシルに浴びせられる視線が不安で満ちているように。
FINAL FANTASY IV #0448 5章 2節 再会の調べ(17)
「ところで、この竪琴を弾いている方をご存知だろうか?
以前はぐれた仲間のものと、似ている気がするのだが」
「竪琴、ですか?」
「そうだ、教えてくれないか?」
ヤンが用件を思い出してくれたおかげで、セシルは居たたまれない思いから解放された。
楽器を手にした巫女たちが姿を隠しても、最初に聞いた竪琴の音だけは未だに続いている。彼らの会話を聞いてでもいたように、ぴぃ──ん、とひときわ高く澄んだ音を響かせた。
「……もしかして、今の音ですか?
これは水琴と申します。地底に据え付けた瓶に水滴が落ちると、空隙に反響してこのような音がするのです。
人が奏でている訳ではありません」
「そう……なのか」
「ですが、ひとつ思い当たることがあります。少し前、この近くに流れ着いた者の話が、あなた方のそれと良く似ているのです。
当人はダムシアンの王族と名乗っていますが……お会いになりますか?」
「……やはり!」
「頼む!」
竪琴の正体を知って一度は気を落としたセシルだったが、続く神官の言葉で心が弾んだ。
それと同時に疑問も解けた。最初に水琴の音を聞いたとき、ギルバートだと思い込んだ理由──まさにこのエンタープライズから降り立った時、彼らを取り囲んだ女兵士たちが、それらしい人物の話をしていたからだ。
「では、ご案内いたします」
結い上げていた髪を下ろし、神官は奥の建物に向かって歩き出した。近寄ってきた巫女に神楽の再開を指示し、他の神官にも伝えるよう頼む。
そのまま正面のスロープを上がり、広々としたテラスを回って南向きの部屋へとセシルたちを導いた。
「眠っていなければいいのですが。
……入りますよ」
そう言って、黒檀でできた扉を神官が押した途端、膏薬の匂いが鼻を刺す。寝床の上に身を起こし、錆の浮いた塊を抱えた人物が、こちらを振り向いた。
「……セシル!? ヤン!
無事だったんだね!」
──人違いだった。
一瞬そんなことを考えてしまうほど、彼らの名を呼ぶ声は、酷くしわがれ、かすれていた。
以前ボーカルコレクションのIを使わせていただいたので、今回はIIの方から。
5レス分も回り道してようやく本題復帰ですよ。
続きはまた今度〜
再会キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
ゲーム中ではわからなかったギルバードの様子とか状態とか表せてて、
切ないな
どぅわ
550 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/30(水) 09:36:59 ID:80/p7V8iO
そいやそいや
いいお仕事してくださる!GJGJ!!
保守
ひお
ff6ー33 figaro
ロックは彼らの会談を無表情で眺めていた。極力感情を表に出さないように。自分を抑えていなければ、反射的に飛び出してしまいそうになったからだ。
彼自身も帝国に対して良からぬ感情を抱いている。ロックだけなく、この世界に生きる人間ならば今のガストラ帝国を快くは思わないだろう。それくらい、奴らは暴虐の限りを尽くしているのだ。
中でもあのケフカという男は帝国の悪しき部分を具現化したかのような男だ。いやらしく、ずるがしこく、他者を踏みつけることで満足を得る。
一国の主とはいえ、あんな男と立派に外交してみせるエドガーはある意味尊敬に値する。自分だったら、あの男のヒョヒョヒョ笑いを聞いた瞬間、反射的に拳を鼻面にぶち込んでしまいそうだ。
そんなエドガーも、こちらに戻ってきた時は明らかに苦々しげな表情をしていた。ロックはその顔を見て不謹慎にも僅かに安堵した。彼だって、感受性豊かな一人の人間なのだ。内心では自分以上に腸が煮えくり返っているのかもしれない。
「気に食わない奴らだな」
「ああ、あの薄汚い面に新発明のドリルをぶち込んで黙らせてやりたいくらいにな」
エドガーが軽い口調で冗談(あるいは本気かもしれない)を言ったので、二人は拳をつき合わせて小さく笑った。
しかし、すぐにエドガーは真剣な表情に戻り、 真っ直ぐな目でロックを見た。
それだけで彼の言わんとしていることが理解できた。
「奴ら、本気なのか?」
「明朝……早ければ今夜中だ。準備は万全を期してるが、念のため最終確認に入る」
ぞわり。体内の血が騒いだような気がした。
「あの娘を頼むぞ」
そういい置き、エドガーは振り向かずに背後の門を潜った。ロックは軽く頷き、一目散に走り出す。
奴らが求める少女。ティナのところへ。
スレを見かけて面白そうだったので初挑戦させていただきました。
前話までを一読したきりで、文章も全然下手なのでお見苦しいとは思いますが、もしよろしければ続きも書かせていただきたいです。
いやいや、GJです
期待してます
続き見たい!
どうもありがとうです。
6が大好きなので、もしよければ少し調子にのって書かせていただきます。
文章的な問題点などの指摘は喜んでいただきたいですが、「調子に乗りすぎだ」と思ったらソフトに伝えていただけるとありがたいです。
ff6ー34 figaro
扉を叩く音に、ティナのまどろみかけていた瞼はハッキリと意識を持って開かれた。
「……誰?」
聞き返した声は擦れて、相手に通じたかどうかは分からない。そのまま少し待っていると、扉は軋んだ音を立ててゆっくりと開かれた。
入ってきたのはロックだった。
「すまない。窮屈な思いをさせてしまったみたいだ」
「ううん、大丈夫」
申し訳なさそうに謝るこの青年の仕草に、ティナ微かに微笑んだ。まだ出会って数時間も立っていないのに、彼は信頼できる、そう思っている自分がいる。
しかし、彼の表情は明るくない。ティナはさっきまで聞こえていた城内の慌しげな様子を思い出し、何があったのかを尋ねてみた。
「ちょっと面倒なことになりそうだ」
「……ガストラ帝国の兵士が来たの?」
少し間があったが、黙ってても仕方がないと思ったのか、ロックは首を縦に振った。
「彼らは……私を連れ戻しに来たの?」
フィガロと帝国は同盟国だと聞いたが、さっきまで扉越しに感じられた不穏当な空気は、どう考えても友好的な歓迎をしているという雰囲気ではなかった。
――私は、帝国の兵士。
そんな自分を匿ったりすれば、帝国はフィガロに対していい感情を持たないだろう。
――だって私はただの兵士じゃない、私は――
内心の不安を汲み取ってくれたのか、ロックがティナの肩に優しく手を置いてくれた。
「大丈夫、君を帝国に差し出したりなんかしない」
「でも、この国は帝国の同盟国なんでしょう?」
「表向きはな」
ティナを落ち着けるためか、ロックはそっと肩に手を置いてベッドに座り込ませると、自分は木作りの三角椅子に腰掛け、心持ち明るい声で説明を始めた。
「ナルシェもそうだが、今世界中で帝国に好意的な国は存在しない。エドガーももちろん、対外的は友好関係を結んでいるように見せかけているけれど、実は誰よりも帝国のやり方を嫌っている。それでなくても君を差し出したりなんかしないさ」
「けど、それじゃ帝国に敵視されてしまう」
「それは遅かれ早かれ同じこと。帝国側も前々からフィガロとの同盟は疎ましく思っていたはずさ。同盟国ではなく、属国として支配下に置くためにはね。もちろんエドガーもそんなことは見越している。
そこで、今度は百八十度立場を変えて、判定国組織リターナーに組しようと画策してるんだ」
「反帝国組織?」
そんな組織があったなんて初耳だ。もちろん、今だ擦れている記憶の中では耳にしたことはあるかもしれないけれど。
「ああ、俺はその橋渡しとして動いている」だから王様とも対等な関係なんだぜ、と笑うがティナの真面目な様子を見て真剣な口調に戻る「ナルジェのジュン、あの人もリターナーの一員なんだぜ」
「リターナー……反帝国組織……私は、帝国の兵士……」
「だった、だろ?」
言われてハッとする。ロックの目は真剣そのもので、真っ直ぐにティナの瞳を覗き込んでいた。
凪の湖のような蒼い瞳。不思議と落ち着きを与えてくれる、澄んだ眼差しだった。
「君は兵士なんかじゃない。兵士だったのは帝国に操られていた偽りの姿。今は違う」
「わからない……よく覚えていない、思い出そうとすると、頭が痛い。私は、どうすればいいの?」
「これからは自分の意思を持てって事さ」
ロックはそっと歩み寄ると、ティナの頭を優しく撫で、くるりと振り返った。
「今は深く考えないこと。道は必ず見えてくるから」
「自分の意思を……?」
「そう、自分がやりたいことを考えて、やりたいように行動する」
「ドロボウのロックが反帝国組織にいるみたいに?」
部屋を出て行こうとしていたロックの膝がガクリと折れる?
「……エドガーが言ったのか」
「え、うん。違うの?」
チッチッチッ、と指を振り、ことさらカッコつけたポーズを取るロック。
「俺はトレジャーハンター。孤高の宝探しさ。盗みなんかやりはしない(そんなに多くは)」
そして「これから忙しくなる、少しでも寝ておきな」と告げて部屋を出て行った。
一人残されたティナの胸のうちに、彼の言葉が何度も繰り返された。
――自分の意思を持て。
それは、未来へ向けて進むための言葉。
「私は、帝国の兵士じゃない。私は――」
564 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 10:12:45 ID:6e8VONzVO
au
ち
だ
っ
スペースはともかくわけの分からん一文字を書く理由が分からない
VIPとか流れの速いところに行ってみな
保守の一つみたいなもんだ
だから、それをここでする理由があるのですか?
ということでは?
意味不明な一文字は
どうでもいいや
g
FINAL FANTASY IV #0449 5章 2節 再会の調べ(18)
トロイアは低地の国だ。西の山脈を除いた国土の大半が、海面と等しい高さにある。潮が満ちるたびに海水が河を遡り、高台につくられた町のすぐ側まで押し寄せるのだ。
その上げ潮に乗ってギルバートは運ばれ、彼を見つけた漁師の助けを借りて、この城までたどり着いた。神官への面会を願い出て、バロンの脅威を訴えた後、力尽きとそのまま城で世話になっているのだそうだ。
「リディアは?」
「……面目ない」
「可哀想に……
僕なんかより、ずっと立派に戦っていたのに」
少女の末路を聞かされ、ギルバートは初めて辛そうな表情を浮かべた。
痛んだ髪が張り付いた額にはひきつれた傷が走り、膿んで紫色に腫れ上がっている。頬の肉が大きく抉られ、線の細い輪郭を乱していた。手元の竪琴には錆が浮き、弦もほとんど切れている。
彼の音楽も、端正な容姿も、荒れる波が削ぎとってしまった。
「そんなことないさ。
君が……助かって良かった」
力付けようとセシルは口を開き、結局、『無事』という言葉を飲み込んでしまう。もっと話術を磨いてけば、と後悔したところで遅い。沈んだ空気を変えたのは、本来気を使われる側の人間だった。
「さっき、飛空挺の音がしていた……
あれは君たちだね?」
「その通りじゃ!
このシドとエンタープライズがついとるからには心配いらん!」
話題が得意分野に及んだと見るや、シドがセシルを押しのけて、ギルバートの前で胸を張る。
「後はワシらにまかせて、ゆっくり養生しなされ
あんたのことはセシルから聞いておる。たいそう世話になったとか」
「そうですか。あなたが……
……っ!」
握手を求める技師の手を、一拍の間を空けてギルバートが握り返す。かと思うと、見る間に表情がゆがみ、ギルバートは体をふたつに追って激しく咳き込みだした。
FINAL FANTASY IV #0450 5章 2節 再会の調べ(19)
「魔法は効きません。体力を消耗するだけです」
ケアルを唱えだしたセシルを神官が止める。代わりに、奥に控えていた医師たちが病床に駆け寄った。
助手らしい大柄の青年が咽返るギルバートの背をさすり、甘い匂いのついた水を顔に吹きかける。胸のすくような香りは、咳鎮めの薬だ。
やや落ち着いたギルバートの視線は、傍らの医師でも、セシルにでもなく、無論目の前のシドでもなく、これまでの騒ぎに眉ひとつ動かさない老人に向かっていた。
「テラ……さん……
生きていて……くださったんですね」
直に話し掛けられてなお、テラは表情を変えなかった。彫像か何かのように、ひたすら押し黙っている。まるで、ギルバートの存在自体が目に入らないとでも言うように。
「テラ……」
「数少ない取柄もなくしたか。
貴様のような腑抜けにはよく似合っておるわ」
皆が注視する中、テラは煩わしげに言い放ち、長居は無用とばかりに背を向けた。
「テラ!!」
「待たんか、こら!」
周囲の非難を無視し、部屋を出て行くテラ。追おうとしたセシルたちを引き止めたのは、他ならぬギルバートだった。
「いいんだ……
僕が……アンナを、死なせてしまったんだから」
「それは君のせいじゃ」
セシルの言葉を遮って、ギルバートは頭を振る。
「僕のせいだよ、セシル。
あの人のところから、アンナをさらっていった……
どんなことがあっても守らなくちゃいけなかったんだ」
FINAL FANTASY IV #0451 5章 2節 再会の調べ(20)
これまでの経緯を教えて欲しい、とギルバートは頼んだが、医師によって止められた。薬の副作用で眠りに落ちた彼を残して、セシルたちは部屋を出た。
「ひとまず峠は越えました。今は絶対安静あるのみです」
容態を尋ねるヤンに、老婆といっていい年齢の医師は落ち着いた声で答えた。その回答は、けして明るいものではなかったが。
「もとに戻りますか?
その……声は」
「多くを期待しないほうがいいでしょう」
重ねて問うセシルに、医師は言葉を濁すことなく告げた。
「元々、丈夫な方ではないようです。ここの気候も辛いご様子。
ともかく、今無理をさせてはなりません」
「……わかりました。
よろしくお願いします」
パロムやポロムのときと同じだった。今のセシルに出来ることはない。無駄な時間を費やすことなく、ローザを救うため、土のクリスタルを手に入れるために行動するのが唯一の道だ。
「お見舞いならば歓迎しますよ。ただし、お静かに願います」
「ええ。また来ます」
「失礼する」
「わしらから、元気だせと言うとったと伝えてくれ!」
水上を渡る風が涼気を運び、知らぬ間に汗ばんでいた体を冷やす。再び神官に先導され、セシルたちは一度中庭に戻った。
「ふん、ようやく戻りおったか」
ひとり先に出ていたテラは、案の定、飛空挺で待っていた。
久々にここ来たら超久々に◆HHOM0Pr/qI氏キテタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
あきらめかけてた続きキター
ギルバカワイソス。ゲーム中じゃ、テラとギルバ会話なしだったけど、
あって不自然じゃないんだな というかまだ許してなかったんだな。
テラがギルバ見直すところ期待。
gj
ギルバード痛々しい・・・ 続きも期待!
GJ!
続き激しく期待
捕手
ff6ー35 figaro
「お休みのところ、失礼します!エ、エドガー様!!」
(来たか…)
寝室で休んでいたエドガーは、瞼を開き、用意していたフィガロの機械甲冑を身につけた。
「斥候部隊からの報告です!ケフカが帝国の魔道アーマーを率いて、こちらにむかっているとのこと!」
「分かっている。大臣達を叩き起こせ!『オペレーション・黄金のフィガロ』発動準備!」
「ハッ!ただちに!」
エドガーの怒号のような命令を、初めて聞いたこの兵士はことの次第の重要さを即座に理解したようだ。
半時もせぬうちに、大臣たちが王室に続々と集まってきた。
「いよいよですな!」
「やっとこれで帝国におべっか使わずにすむぜ!」
「フィガロの雄姿!ケフカの野郎にみせつけてやりましょう!」
一気に燃え上がるフィガロの戦士たちとは対照的にフィガロ王エドガーが落ち着いていた。
「みなのフィガロにかける意志を私はとても頼もしく思っている!
しかし、一国を束ねる王として最悪の事態は出来るだけ回避したい!
帝国もまだ、われらに刃を構えただけで、振るったわけではない!
私はこれから、ケフカと最後の話し合いをするつもりだ!」
エドガーの言葉で、騒然としていた場が静まり返り、みな落ち着きを取り戻したようだった。
(この方の王としての器、計りしれん…。)
先代のフィガロ王から従事している大臣が、感慨にふけるそのときであった。
「帝国の使者、ケフカ様のご到着です!」
と門番兵から無線が入った。
「衛兵はいらん!向こうを挑発するだけだからな。大臣!!」
「ハッ!ここに!」
一瞬大臣の目には、エドガーが先代王に重なって見え思わず、大臣は膝をつき頭をたれた。
エドガーは、大臣の肩に手を置き、静かに囁いた。
「…顔をあげてくれ。私がフィガロを離れた場合、この国における全権を君に託す。」
頭を上げると、そこにはやさしく微笑みかけるエドガーの顔があった。
「わ、私が…!」
「君は父上の代から、フィガロに仕えている。
私は父上同様、君に全幅の信頼を置いているんだ。フィガロを頼む…。
それに…それにここは、マッシュが帰ってくる家でもあるんだっ…!」
エドガーの普段表にださない思いを聞き、大臣は再び頭を下げた。
「命に代えても…!!」
「……頼むぞ…。」
エドガーはその場を離れ、謁見の間にいるケフカのもとへ向かった…。
ff6ー36 figaro
「ケ、ケフカ様!どうか、この場でお待ちを…!」
「フン、邪魔だよ、殺しちゃうよ、君たち!」
フィガロ城の廊下を下るエドガーの向こう側から、
周囲ののフィガロ兵を突き飛ばしながらあの高笑いがまっすぐこちらに向かってきた。
「ヒッヒッヒ…!魔道の娘を出す気になったかな?」
「昨日もいったとおり、いるかもしれないし、いないかもしれないなぁ。」
ケフカはニヤニヤ笑っている。
それは毎度のことなのだが、エドガーは何かその表情に違和感を感じた。
「ケフカ…?貴様、何を考えている?」
そのとき、ケフカの表情が急変し真顔になり、指をパチリとかき鳴らした。
すると傍にいた帝国兵が無線を手にとり呟いた。
「…やれっ!」
城外から放たれた青白い光はフィガロ城の左翼を貫いた。
「ご・め・ん!撃つつもりはなかったんだけど暴発しちゃった〜!許して、許して〜!」
「クックック…!焼け死ね。」
あまりに突然の出来事にしばらく、呆然としていたエドガーだったが、目の前の帝国兵がそういうと同時に、一気にためていたものが爆発した。
「貴様ァ…!!」
帝国兵の胸ぐらをつかみ、感情のまま殴り飛ばした。
「あら、まぁ!同盟国の国王が相手の兵士をぶつなんて!シンジラレなぁーい!」
(…っ!図られた!これでは、こちらからしかけたも同然じゃないか!)
ケフカのほうをキッと見返すも、ケフカは不気味に笑っていた。
「同盟をそっちから破棄したんだから、仕方ないよね〜……みんな壊しちゃえ!」
城外で待機していたもう一人の兵士が、魔道アーマーを使い次々と城を破壊していく
「仕方ない…!」
エドガーは近くにいたフィガロ兵士に
「『オペレーション・黄金のフィガロ』発動だっ!」と叫び、
ロックたちと合流すべく駆けすのであった。
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ロックは部屋の外の騒然とした雰囲気を感じ、目を覚ました。
「……!?………!!」
(…まさか、本当に来たのか!?)
急いで上着をまとい、装備を整え、外に出ようとしたとき、
今まさに開けようといていたドアが逆に開き、
フィガロの兵士とともに黒煙が飛び込んできた。
「ロック様!!急ぎ、ティナ様を連れ、例の場所へ!!」
そういった兵士の顔は、真っ黒な灰をかぶり、すすけている。
「あ、あぁ…。すぐ行く…。」
と、答えたもののロックは兵士の言葉よりも、
兵士の頭越しに見える風景に目を奪われていた。
もくもくと煙が立ち上り、火の手が四方八方にあがっている。
城内の兵士が担架で運ばれたり、女中、子供の、悲鳴や泣き叫ぶ声が聞こえる。
ロックは、奥歯をかみ殺し、怒りに震える自分自身に冷静に言い聞かせた。
「ロック!!」
そう呼ばれ、我に返ると、
今にも泣き崩れそうな表情を必死にこらえているティナの姿がそこにあった。
「て、帝国が…、攻めてきた…って。
みんな…私のせいで…。わ…たし、どうすれば…!?」
「…大丈夫だ、ティナ…。エドガーが、何とかしてくれるさ。それより…良かったよ…。」
「えっ?」
「…そんな表情もできるんだな…。君は感情のない人形なんかじゃない。」
ハッとした表情でティナは、うつむきかけた顔をロックのほうへ向け、思わず大粒の涙を流した。
「これが涙なの?自分で制御…できない…。」
「それが、悲しみって感情さ。焦らなくていいさ、他の感情もいずれ戻る。
それまで、俺が君を守るから…。」
「……うん。」
子供のような声でティナは、静かにうなずいた。
「お急ぎ下さい!間もなく『オペレーション・黄金のフィガロ』が発動されます!」
無線に応対していた兵士が叫んだ。
「さぁ、ティナ!こっちだ、急ごう!!」
ロックは、ティナの手を握り、駆け出した!
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「エドガー!」
「ロック!ティナ!無事だったか!!」
無事、作戦通り城の主城と右翼の渡り廊下にて合流することに成功した一同だったが、
息をつく間もなく、右翼の側壁が崩壊し始めた。
「おいおい、ほんとに、大丈夫なのか!?」
「心配するな!あれは外装に過ぎん!」
「外装って?」と、ティナがたずねた。
「この城には仕掛けがあってね!いつか、君の心の外装も私がきれいに剥がして…」
「分かった!分かったから早いとこ脱出しようぜ!」
思わず、ロックが割って入った。
このままほうっておけば、城全体が崩れ落ちるまでくどきかねない。
「む、そうだな…。下を見ろ!」
ロックが下を覗くと、黄色い大鳥がこちらを見つめ、いなないている。
「クエェェ!!」
「チョコボか!」ロックがエドガーの方を見ると、片目をつむり
「そういうことだ、先にいくぞ!」と飛び降り、チョコボにまたがった。
「ったく、王様やってる時は、いい顔してんのにな…っと!」
続いてロックが、飛び降りた。
「よし!あれ、ティナは?ティナ!?」
エドガーが見上げると、ティナが不安そうにこちらを見下ろしている。
「ティナ!早く!!」もう外装はそう長くはたない。
そうなれば、作戦も失敗だ。
「ダメ…!私、一人で乗ったことないもの…!」
ティナは、とうとうその場に座り込んでしまった。
「大丈夫だっ!おれの瞳を見ろ!」
ロックの真っ直ぐな瞳は、ティナの心に語りかけているようだった。
(おれを信じろ!)
「…。わかった。行くわよ!」意を決し、助走をつけ飛び降りた。
「クェエェエ!!」途端に、ティナの乗ったチョコボが暴れだした。
「きゃあぁぁ!ちょっと、お願い!暴れないでぇ!」
「ティナ!前を見て、しっかり手綱を握るんだっ!」
体勢を立て直し、ロックの言葉通りしっかり手綱を握ると、
自然とおとなしくなった。
しまいには、クェ〜と可愛い声で鳴き、ティナの方を心配そうに見つめる始末だ。
「ロック、エドガー、心配かけてごめんね。もう大丈夫みたい。
よしよし、いい子ね…。」
「よし、エドガー!」「あぁ、分かってる!いいぞ!沈めろ!」
エドガーはチョコボに常備されていた狼煙に火をつけ、高らかに投げ上げた。
投下終了?
乙。
おっ オリジナルの展開はいってておもしろいな 乙!
6大好きな者ですが、色々と6好きにはたまらない展開で嬉しいです!
GJ!これからも期待してます。自分のペースで頑張って下さい。
ff6ー38 figaro
エドガーの投げた狼煙は、白くゆるゆる煙を吐き出しながら、空高く舞い上がった。
青い空と黄色の砂漠の中、フィガロ城管制室にいた大臣の目にはハッキリと確認できた。
「あれはエドガー様からの合図!各隊現状を報告せよ!」
兵士の元気な声とともに、無線から様々な情報が送られてくる。
「左翼!ドッキング完了!」「同じく右翼!ドッキング完了!」
「城の者たちの全員室内へ避難完了いたしました!」
「外装パージします!」
「こちら、メインコントロール室じゃ!いつでもよいぞ!」
誰一人として、この状況に失望などしていない。
大臣も心は一兵士と同じであった。フィガロに希望を見出し、明日を見ている。
全ての確認作業が終了した。
「さあ!黄金の大海原にダイブするフィガロの雄姿!とくと見せてやろうぞ!!
『オペレーション・黄金のフィガロ』起動!機長!!」
機長と呼ばれたメインコントロール室長の老人は、煙草をふかしながら、その時をいまか、いまかと待ち続けていた。
帝国を追われた彼の腕を拾ったのは先代王である。
その恩に報いるため、城の改造をエドガーたちが生まれる前からを試みていた。
このデリケートな動力炉のメンテナンスを一手に引き受け、エドガーに機械の知識や機術の基礎を教えたのも彼である。
今、初めてフィガロに恩返しができる。
そう思うと、彼の心のアドレナリンは高揚せずにはいられなかった。
「ビビッてちびるんじゃあねぇぞ、小僧ども!それ、えーんやこーら!!」
エドガーたちの脱出の模様を望遠鏡で覗いていたケフカの高笑いは止まらなかった。
「おやおや王様はお逃げになるようですよ!こりゃあユカイ!ヒッヒッヒ!」
敵が無様に逃げる姿ほど笑えるものはこの世にはないだろう。
自然と上機嫌になりかけたケフカだったが、それも長くは続かなかった。
「ケ、ケフカ様!?」ケフカとともに、城に乗り込んだ帝国兵が呼び止めた。
エドガーに殴られたあとが、かわいそうなくらい腫れている。
「もう、いい所なのに!うるさいぞ!一体何だ!?」
「し、城が沈んでいきます!」
「なにバカなこといってるの!そんなことあるわけ……ん?待てよ!?」
今まで、窓から遠くを見ていたので気づかなかったのだが、
近くを見ると確かに、地面が近づいている。
「このノロマ!!なんで早くいわない!」
「も、申し訳…」
「謝ってる暇があるなら、とっとと、脱出するんだよ!このバカ!」
轟音とともに砂ぼこりが舞い、城はどんどん地中に吸い込まれていく。
何とか、ぎりぎり、脱出に成功したケフカだったが、全身砂まみれになっていた。
「…僕チンのお洋服が!お気に入りのブーツがぁ!」
怒りを通り越して悲しみにふけるケフカの眼前を、
三羽のチョコボが軽快に走り去っていった。
「ヒャッホー」「ブラボー!フィガロ!」
ケフカはその様子を、見送っていたがあることに気がついた。
「ん!?あれは、魔導の娘!!エドガーめ…!やっぱり隠していたな!
ボクチンを騙した報いを受けてもらうぞ!
おいお前たち!魔導アーマーで追いかけろ!さっさと行け、殺せ!」
「ハッ、ハイ!」
あらかじめ砂の中に隠しておいたもう一体を起動させ、
二人の帝国兵は、魔導アーマーに乗り込み、チョコボの足跡を追い前進し始めた。
ff6ー39 figaro
「もう、大丈夫か?」ロックがチョコボの歩みを止め、振り返ったそのときであった。
砂漠の生物にしては異型の二本足の物体が真っ直ぐこちらに近づいてきていた。
「いや、待て!あれは…魔導アーマーだ!」
「おいおい、まじかよ!」
「だがこの距離なら、チョコボで全力ではしりきれば何とか振り切れる距離だ!急げ!」
いっせいに走り出した両者だったが、ティナがついてこない。
「ティナ!?早くしろ!!」
しかし、ティナは魔導アーマーのほうを見つめたまま呆然としている
「帝国で私、あれに乗ってた…。ナルシェの人も、私があれに乗って…。
あ、頭が割れそう……!!」
頭をかかえ、ティナはチョコボから転げ落ちてしまった。
と同時に、ティナが乗っていたチョコボは一目散に逃げ出した。
「おい、ティナ!くそっおれが戻る!エドガーは先にいってくれ!」
怖気づいて戻ろうとしないチョコボを乗り捨て、ロックはティナのもとへ走った。
そうこうしているうちにも、みるみる魔導アーマーが近づいてくる。
「ロック!ちっ、そんなことできるわけないだろう!
ボチョコ、ここでみんなと待機してくれ!」
「クェクエェ!」
ボチョコと呼ばれたエドガーのチョコボは(分かった!)といいたげな声で鳴いた。
エドガーはチョコボから降り、ロックのあとを追った。
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「私が、みんなを…!」
もうティナは魔導アーマーの射程内に完全に収まってしまっていた。
「魔導レーザー起動!ターゲットロックオン!」
胴体の主砲がティナに向けられる。
「ティナーー!!」状況を察知したロックが叫び、ティナに飛びかかった。
直撃だけでも避けなければならない。
「発射!!」
魔導アーマーから放たれた青白い光がティナの周囲を蹴散らした。
「ごほっ、ごほっ!!ティナ!大丈夫か!?」
間一髪ロックがかばったおかげで、ティナは無傷ですんだようだが、
頭を抱えたまま、歩くことすらままならない状態だ。
ついに、ティナとロックの眼前にまで魔導アーマーが近づいてきた。
「直撃は免れたようだな!だがこれで終わりだ!
このメタルキックで踏み潰してやる!」
「くそっ!!」ロックは覚悟を決め、ダガーを抜き構えた。
そのとき、「ロック!!伏せろ!!」
エドガーの声が耳に入り、ロックはティナの頭を押さえ、ともに伏せた。
「『フィガロ機術壱式オートボウガン』!貫け!」
エドガーがまとっている機械甲冑の右腕のギミックが展開し弓状に変形した。
そして、目にも止まらぬ早業でエドガーは四本の矢を発射した。
矢は魔導アーマーの鋼の鎧を貫いた。
「バカな!?魔導アーマーの装甲が!?」
大破した魔導アーマーの背後から、潜んでいたもう一体が現れた。
「下がれ!おれがやってやるよぉ!」
エドガーに殴られた恨みもあるだろう。いきなり鷲摑みにしようとした。
「『フィガロ機術弐式ブラストボイス』!」
今度は背中のバックパックがホルン状に展開した。
エドガーは思い切り息をすいこみ、吐き出すとホルンから不気味な音が、
周囲の空気を圧迫した。
しかし、ロックの目から見ても魔導アーマーには、何の変化もみられない。
もちろん、兵士はがぜん強気である。
「何だ!ビビらせがって!何にもおこらねぇじゃなぇか!今楽にしてやるからぜ!
って、あれう、動かねぇ!?どうなってんだ!?」
「君、さっきは殴ってすまなかった!だから一つ忠告してやる!
無理に動かせば次でチェックメイトだぞ!」
「何を、言いやがる!くそっ、魔導レーザーで!
あっあれ?じ、『自爆』!?そんな、ばかな!?」
次の瞬間、閃光と爆発であたりは、なにもみえなくなったが、
煙の中からゆうゆうとエドガーの姿が現れた。
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「エドガー、その甲冑は…?」
「あぁこれかい?フィガロの技術を結集して完成させた機械甲冑さ!
事態にそなえて急ピッチで仕上げたから、
さすがに新開発のドリルまで搭載するまではいかなかったが…。それより、ロック、大丈夫か?ティナは?」
「おれは、軽傷だ。ティナ?」
ロックは震えるティナを抱き起こした。
「あの人たち、悪い人なの?私…こわい…。」
「ティナ、会ってほしい人がいる…。」
エドガーがおもむろにきりだした。
「俺達は地下組織リターナーのメンバーだ。」
「その指導者バナンに会ってくれないか?今度の戦争は『魔導』の力がカギになっている。」
「魔導……。」
ティナは自分の中に眠る力を呪っている。
無理もないことである。その力のおかげで、帝国に利用され、
幾人もの命を奪い今も自分を苦しめている。
彼女は考える。
もし、この力を持っていなければ、ジュンやロック、エドガーたちはここまで自分のために戦ってくれるだろうか。
彼らもつまるところ、関心があるのは、この力で、自分自身ではないのではないか。
「ティナには魔導の力がある。その力は幻獣と反応しあった。何か関係が…」
核心をついたエドガーの言葉に、ティナは声を荒げずにはいられなかった。
「私は何も知らないわ!あの力も気がついた時は自然と使えるように…」
「しかし生まれつき魔導の力を持った人間などいない!」
気まずい空気が流れる。
「すまない。」
「私どうすれば…。」
もう、わからない。これからどうすればいいのか。どう生きればよいのか。
帝国から助けてくれたエドガーにあやまらせて、いじけて、最低だな私…。
「帝国がティナの力とその秘密を狙って追ってくるだろう。力が帝国の手に渡ったら世界はおしまいだ。
ティナも自分の持っている力の正体を知りたいだろう?ならば、バナンに会い真実を見極めてほしい。」
「………。」
それが、今一番良い方法なのかもしれない。その人に会うことで、
自分が何者なのかを確かめることが出来るのなら。
何より、今初めて自分の心に出来ようとしている、この人と人との暖かい繋がりを絶ちたくない。
「俺からもたのむ。」ロックがティナのほうをみつめている。
ロックは体を張って私を助けてくれた。エドガーも国を犠牲にしてまで、私の身を案じてくれた。
私の力が何なのか今はまだ分からない。でも、私は彼らの力になりたい。
その気持ちは本物だ。
初めて選択できた自分の意志─
「…分かった。私、バナンさんに会うわ。ごめんね、エドガー。」
「フッ、構わないさ。女性を悲しませてしまうのは私の性分だからね。」
「ふふふ、そうね!」思わずティナから笑みがこぼれた。
「やはり、女性は笑顔が一番!よし!南に向かおう!
サウスフィガロへと続く洞窟があるはずだ。じきチョコボたちも戻ってくるだろう。」
ff6ー42 figaro
チョコボたちを三人で待っていると、ティナはロックが右腕に怪我をしていることに気づいた。
「ロック、その傷…。」
「うん?あぁこれか、ポーションでも使えば治るさ。心配するな。」
「ちょっとジッとしてて…。」「ティナ?」
ティナは、傷口に両手をあてがい、静かに瞳を閉じ精神を集中させた。
淡い緑の光が傷口をみるみる回復させていく。
ティナが瞳を開くころには、ロックの右腕は完治していた。
「おっ!治ったぜ!すげーよ、ティナ!!ん、どうしたエドガー?」
「ロ、ロック君!ちょっと!ちょ〜っとこっちに来てくれたまえ!」
一部始終を見ていたエドガーがロックを呼び出し、ロックの右腕を触り始めた。
「な、何だよ!気持ちわりーな!」
「ほ、ほんとに治ってる!?」「だから、これがティナの凄い能力なんだろ。」
「何が凄い能力だよ!!これは魔法だよ!ま・ほ・う!!」
「へぇ〜!ティナの能力って魔法だったんだ!
魔法ねぇ〜、えっ魔法?ま、ま、ま、ま、まほう〜〜〜!!!あれが魔法!!」
二人の密談が気になったティナが様子を見に来た。
「あの〜、チョコボたちが帰ってきたんですけど…。」
「う、うむ。そうか、そうだなぁ。あの〜ちょっといいかなティナ。
さっきのって、な、なんなのかなあ…?」
「あ、あの…。さっきのは『ケアル』っていって…。」
ロックが割って入った。
「いいんだ!謝るのはこっちの方だ、あんなに驚いたりして…!」
「ほんと、ほんと!魔法なんて初めて見たんで、つい、驚いてしまった。
…君はいったい…?」
「………。」
私は一体何者なのか?自分でも分からない。掴めない。
「でも私は、この旅が君を見つけることになると信じているよ。」
「そうだよ、エドガー!ティナは魔法が使える。俺達は使えない。
それだけのことさ。そして、ティナの魔法は今、必要なんだ!」
ロックもエドガーも、本気で私のことを思ってくれている。
信じてくれている。
帝国では、自分はただの兵器としての存在価値しかなかった。
その兵器の存在価値も魔導の力によるもので、私自身の価値はなかった。
今眼前にいる彼らは違う。これが『嬉しい』って感情なのかな…。
「ありがとう!ロック、エドガー!」
チョコボにのり、サウスフィガロの洞窟を目指す一行を、見つめる一人の男がいた。
「ヒーーー!くっそー!このかりは必ず返しますよ!」
投下終了!
ff6ー35figaroからff6ー42figaroの作者です。
初めて書かせていただきました。
私自身もFFナンバーズでは6が好きで
また、機会あれば書かせていただくかもしれません
では
乙カレー
アレンジなかなかよかった!
おつー!!
ま、ま、ま、まほうー!?はないのかな?と思ったらちゃんと入ってて良かった!
エドガーカコイイです。GJ!!
FF7AC Keep Waiting(1)
ティファはベッドに座り込んだまま、壁にかかっている時計を見た。すでに深夜の3時を回っている。
セブンスヘブンの寝室で、彼女はただただクラウドからの連絡を待ち続けていた。
が、彼が忘らるる都へ向かってからかなりの時間がたっている今も、電話の一本もかかってこない。
ロッズとの戦闘で受けたダメージはもう回復しているが、時間とともに不安がつのり、次第に落ち着きを失っていくのが自分でもわかった。
やきもきした思いで立ち上がり、窓に歩み寄って空を見上げる。暗雲がたちこめていて何も見えない。ベッドに戻って座り込み、しばらくするとまた時計を見、立ち上がって窓を見てを繰り返した。
「…そろそろ寝たらどうだ」
そんなティファに、後ろからルードが声をかける。今夜でもう3回目の提案だった。
タークスの2人もまだセブンスへブンにいた。レノは同じところを何度も行ったりきたりし、ルードは部屋の隅に立ったままほとんど動かない。
「神経が参るぞ」
ルードはさらに言う。無骨な口調だが、気遣わしげだった。
「こんな時に寝ていられるほうが、どうかしてると思うけど」
ティファはそれだけ言って窓に視線を戻した。神経が参るほど待つのは、今に始まったことではない。
「………」
ルードは低くうなって、寝室を出て行った。階段を下りていく音が聞こえる。
それから30分ほどして戻ってきたルードの両手には、コーヒーの入ったマグカップが握られていた。
驚いて目を丸くするティファとレノ。
「…徹夜にはこれがいい」
ルードはゆっくりとティファに歩み寄り、左手に持ったカップを差し出した。
「…あ、ありがとう」
ティファはこぼさないように慎重にマグカップを受け取り―――わかりやすいところにお盆が置かれていたはずだが、あえて言わないでおいた―――淹れたてのコーヒーを飲んだ。苦い。
ルードは妙に満足げな様子で、右手に持ったカップを口に運んだ。
「おい、俺の分…」
「…自分で淹れて来い」
相棒の邪険な言いように、レノはかーーっと呻いた。
ティファは、少しだけ笑った。
FF7AC Keep Waiting(2)
朝7時。ミッドガルの冬は日の出が遅く、まだ遥か東の空がうっすら白んできた程度でしかない。
結局、一晩待ってもクラウドからの連絡はない。ティファの不安はいよいよ大きくなり、もう我慢の限界に達する寸前だった。
クラウドは一体どうしたんだろう。
携帯電話が壊れでもして連絡できないのか。いや、それとも…
ティファは首を横に振った。その可能性は考えたくない。
その時、意外にもレノの携帯電話が鳴った。レノは慌ててポケットから電話を取り出すと、画面を見て息を呑んだ。
「…ツォンさんからだ」
その一言でルードの顔にも緊張と動揺が浮かぶのがわかった。レノは電話を取った。
そして彼らは、カダージュ達がルーファウスを拉致し、このエッジへ向かっている事を知った。
状況は一変した。
レノとルードは慌ててセブンスヘブンを飛び出していったが、ティファはそれでもまだ、クラウドからの連絡を待っていた。
というのも、去り際にレノがいまから電話がかかってくるかもしれない、と言い残したからだ。
「ツォンさんはクラウド探しに行ってからエッジに向かうってよ。だからもうちょい待ってれば連絡があるかもしれねえぞ、と」
それだけ早口に言って、ルードとともに店を出て行ってしまった。
なぜツォンがクラウドの現状を知っているのか、そして彼を探そうとしているのか。
極度の不安に苛まれていたティファは、そこまでは考えが及ばなかった。
FF7AC Keep Waiting(3)
そして、独り寝室に残された彼女は、今もまだ待ち続けている。
だが、やはりというか、セブンスヘブンの固定電話機がなる気配はない。1時間がたち、2時間がたち…ティファはその間、レノに伝えられたことを頭の中で反芻していた。
カダージュ達がこちらに向かっているという事実は、クラウドの失敗を意味している。
それならクラウドは、そしてデンゼルは、マリンは、子供たちは一体どうなったのだろう。今のティファにはなにもわからない。
一晩中抱えられ、肥大し続けたティファの不安は、いまや耐え難い焦燥に変わっていった。
どのくらい時間がたったか、ティファは店の外がにわかに騒がしくなってきた。
窓から外を見ると、通りは何人もの人でごったがえしていた。人々は皆騒然とした表情で、先を急ぐように街の中央へと走っている。
ただならぬ雰囲気を感じたティファは店を出て、通りかかった人の一人をつかまえ、訊いた。
「あの、なにかあったんですか?」
「あんた、知らないのか」
その中年の男性は切迫した様子で答えた。
「中央広場の記念碑を壊そうとしてる奴らがいるらしい。それで、そこに昨日から見当たらなかった子供らもいるんだと」
ティファはもう一瞬たりとも待てなかった。気がついたときには、群集に混じってエッジの中央に立つ記念碑へと走っていた。
皮肉なことに。
あと少し、あと5分だけ待てば、あれほど待ち続けたクラウドからの電話に出られたことを、彼女は知らなかった。
FF7AC Violators(1)
魔晄都市ミッドガル。
かつて人類が手にした栄華のシンボルにして、いまの人類の惨状を象徴する瓦礫の山。
その瓦礫の山に寄りそうようにして、復興都市エッジは建設されていた。
2年前にミッドガルが崩壊したとき、しぶとくも生き延びた人間たちの一部はどこかへ移住していった。
だがその他の大多数は、この地に新たな都市を築くことを選んだ。
瓦礫の中から使えそうな廃材をわざわざ選び出し、粗末な鉄骨を痩せた地面に突き立てて。
新しい街を作り上げるならもっと別な新天地があっただろうに、彼らはこの花一輪咲きそうにない荒野を選んだのだ。
なぜって?
決まっている。そこに居たかったからだ。
この土地で、ミッドガルの傍らで生き続けたかったからだ。
いまは廃墟でしかないその成れの果てに、かつての繁栄の名残を見続けたかったからだ。
…くだらない。
どこまでも浅はかで、弱い奴ら。
こんな虫ケラみたいな奴らに母さんがとられたと思うだけで、ヤズーは腹の底が煮えくり返るのだった。
ヤズーとロッズは、復興都市エッジの中央広場にいた。
その広場のさらに中央、ふたりの背後には巨大なモニュメントがある。
瓦礫を積み上げて造った思しき太い柱の上に巨大な円盤、さらにその円盤を支える何本もの細いワイヤー…見るからに不恰好だ。
神羅の社長によれば、それは記念碑というもので、なんでも復興の象徴として建立されるものなのだそうだ。
眼前には数百もの人間が群れていた。どれも憤怒の形相で、口々に罵り声を上げている。
やめろ、やめろと。訴える声は悲痛ですらあった。
こんな汚いガラクタ一つに、なにをそこまで騒ぐのやら。ヤズーは群集の罵声には応えず、背後に立つ記念碑を見上げた。
記念碑はすでに半壊していた。
FF7AC Violators(2)
だが人間たちはヤズーとロッズに罵声を浴びせるだけで、それ以上のことはできない。
記念碑の周囲をぐるりと、子供たち―――ほとんどが身寄りのない孤児だ―――が囲っているからだ。
子供たちは手に手にマテリアを持ち、ヤズー達に近づこうとする人間を魔法で威嚇し、まるで壁のように立ちはだかっている。
カダージュから思念を分け与えられ、常人離れした体力と魔力を得ているのだ。
とはいえ、それは本当のリユニオンが始まるまでの、ただの間に合わせ。
一時的なものだし、強いショックを受ければ洗脳もすぐに解けてしまう。
それにこの人数差と体格差。大人がひとかたまりになってその気になれば、簡単に突破されてしまうはずだ。
にもかかわらず、こいつらはそうしない。ただ口々に声を上げるだけだ。
時々子供たちの威嚇に怯まず向かってくるやつがいるが、その数はあまりに少ない。
たった一人で群集から飛び出してきては、子供たちの魔法にあっさりと吹っ飛ばされるのが関の山だった。
本当にひ弱な奴らだ。ヤズーはそんな人間たちを鼻先で笑い、すでに半壊している記念碑に光る腕を向けた。群集から上がる声が、一段と大きくなる。
その声の中の一つが、はっきりと耳に入ってきた。
「子供たちを返せ!!」
ヤズーははたと動きを止め、声のしたほうを振り返った。
声の主は中年くらいの男だった。周りの人間に抑えられ、両腕を振り回してバタバタと暴れている。
「この子たちに何をしたの!?」
別の方向からも聞こえる。今度は女の声。
群集の半分は、記念碑の破壊に抗議しているのではなく、子供たちが操られていることに怒りの声を上げているのだった。
それに気づいたヤズーは、神経がピリピリと逆立つのを感じた。
―――こいつら、何言ってるんだ?
FF7AC Violators(3)
―――知ってるのか?お前たちが見向きもしない所で、星痕を宿した子供たちが一日に何人死んでいるのか。
「おい、聞いているのか!」
―――どれだけの苦痛と絶望を抱えて死んでいくのか、知ってるのか?
「なんでこんなまねするんだ!」
―――その時、お前たちは何をしてくれる?
「この子たちをどうする気だ!」
―――何もしてくれないじゃないか。それどころか、道端に転がった死体に触れるのも嫌がるじゃないか!
「返して…子供たちを返して!」
―――助けてくれなかったくせに!哀れんでさえくれなかったくせに!お前らが!いまさら都合のいいことを、都合のいいことを言うな!!
ヤズーの思考はそこで途切れた。目を血走らせながら、群集のほうを向いて光る左腕を掲げる。
その瞬間、空気が変わった。
記念碑を取り囲んでいた人々は、気圧されたかのように動きを止め、それまで上がっていた怒りの声がぴたりと止んだ。
代わりに、広場のあちこちから、耳障りな低い獣の唸り声が聞こえる。
訝る人々の耳に入ってきたのは悲鳴。次いで気味の悪い咆哮。
群集の背後から何物かが突進し、形成されていた人垣が悲鳴とともに引き裂かれていく。
どこからともなく狼のような姿のモンスターが現れ、広場に集まった人間を手当たり次第に襲い始めたのだった。
誰かが一際大きな悲鳴を上げ、その場から逃げ出す。それを契機に、全体がパニックに陥った。
あたり一帯が混乱に支配される。
モンスターたちは無力な人間たちを追って広場を縦横無尽に駆け回り、後ろから飛びつき、踏みつけ、噛み殺していく。
転んだ男の上にのしかかり、そこに何匹もよってたかって喰い殺した。
他人を突き飛ばしてでも逃げ延びようとしていた人間に横から跳びかかり、太い前足でその頭を踏み砕いた。
追い越しざまに脚に噛み付き、そのまま走り続けて引きずり回し、最後にはその脚を噛み千切った。
淀んだ灰色のアスファルトの地面が、瞬く間に深紅に染め上げられていく。
そこにあったのは一方的な殺戮だった。
FF7AC Violators(4)
話に聞いたとおり、記念碑は破壊されかけていた。頂上の円盤状になっている部分には大穴が開いており、張られているワイヤーの何本かが千切れ、だらりと垂れ下がっている。
その下に、子供たちが記念碑を囲むようにして立っていた。
ティファはその姿を見て、息を呑んだ。
立っていたが、しかし。
眼前で繰り広げられる殺戮にも、絶えず上がる悲鳴にも、派手に飛び散っては顔や体に降りかかる鮮血にも、何の反応も示さず。ただ無表情で、ただ、そこに、呆然と、立っていた。
異様。
その光景は、異様としかいえなかった。
正面からモンスターが猛然と突っ込んで来た。さらに後ろからも、食いちぎられた人の足をくわえて引きずりながら、もう一匹。
(………!!)
ティファはそこで一瞬棒立ちになったが、すぐに正面から来る敵に向かって走り出した。モンスターは獲物が自分から飛び込んでくると見るや、醜悪な口を大きく開き、中に溜まっていた血と唾液をまき散らしながら跳躍した。
だが。
次の瞬間、ティファは獣よりも高く跳び、すれ違いざまに、モンスターの眼球を踏み潰した。
反動でさらに高く舞い上がったティファは、下から聞こえる悲痛な吠え声を無視し、再び記念碑の子供たちへと目をやる。
その中に、見覚えのある子供が、いた。
着地する。血糊で足が滑った。後ろから人の足をくわえたモンスターが追ってくるのを認めると同時に、脚を突き出してかがんだまま一回転する。
足を払われた獣は、走ってきた勢いのまま、顔面から地面に激突した。
頭を潰されてのたうちまわるそのモンスターを飛び越えてしゃにむに走り、やっと記念碑の前までたどり着いたティファの目の前にいたのは―――
「デンゼル!」
息を切らしながらデンゼルに走りより、その両肩をつかむ。デンゼルはうつむいたまま、やはり何の反応も示さない。
「…デンゼル?………デンゼル!」
もう一度呼びかけてみても応じない。体を揺さぶると、そのはずみでやっと顔を上げた。
デンゼルの死んだ瞳に、ティファの憔悴しきった表情が映った。
FF7AC Violators(5)
無様に逃げ回る人間たちを見、その惨めな死を眺めているうちに、ヤズーは気分が落ち着いてきた。血が昇った頭が冷えていくのを感じる。
「おい、ロッズ」
しばらくして、隣で肩を震わせているロッズに声をかけた。振り向いた顔は、みっともない泣きっ面だった。
「泣くなよ?」
言うと、ロッズは笑顔になった。
そして2人は、ここに来た本来の目的を思い出すことにした。記念碑に向き直り、輝く左腕を向ける。
と、背後から耳障りな声がした。
「何してるんだぁ?」
その軽薄そうな声を聞いた途端、ヤズーの神経がまた疼いた。
…あいつらか。
悲鳴と獣の耳に悪そうな吠え声が飛び交う中、レノとルードはゆっくりと、記念碑を破壊しようとしている2人組に歩み寄った。
レノの手にはすでに得物の電磁ロッドが握られ、ルードは革のグローブを締めなおしている。
ざっと5メートルの距離を置いて立ち止まる。そのまま互いに挑戦的な目つきで睨みあったが、やがてヤズーが沈黙を破った。
「母さんは…ここなんだろ?」背後の壊れかけた記念碑を親指で指して、言う。
「どうして?」ルードがすかさず言い返した。
「この…なんだ、記念碑?あんたらの社長がここに隠したって言ってた」
今度はロッズが、太い声のわりに幼稚な口調で言った。
「社長をさらうなんてなあ。お前らにしては頭使ったな、と」
「しかし、ハズレだ」
指で頭をつついて挑発するレノに、ルードが絶妙な合いの手を入れる。じゃあどこだよ、と言いたげに顔をしかめるロッズに、さらに「俺達も知らないぞ、と」と畳みかけ、ルードと一緒に陰気に笑ってやった。
事実、ルーファウスはジェノバの隠し場所を誰にも教えないし、レノもルードもあえて聞こうとはしなかったのだが、
「なんだ…信用ゼロだな、お前ら」と、ヤズーが痛烈な一言を返してきた。
これが気に障って、ヤズーを睨みつけるレノだったが、そこで不意に動きが止まった。
言い返す文句が思いつかない。
ルードを見る。視線をそらした。ヤズーを見る。何も言えない。ルードを見る。また視線をそらした。ヤズーを見る。やっぱり何も言えない。
奇妙な反復運動を繰り返すうち、レノは表情がどんどん情けなくなっていく。
で、結局。
「うおりゃー!」
レノ達の方から仕掛けた。
FF7AC The Papets(1)
エッジの住民は、住みたくてこの土地に住んでいるのではない。
当然だ。何が嬉しくてかの大惨事で崩壊し、瓦礫の山でしかないミッドガルの傍で暮らすというのか。
2年前のあの日、彼らは全てを失った。
蓄えてきた財産も。住み慣れた家も。親しかった友人も。何もかも。
更に生き延びたものの、彼らはミッドガルから離れることはできなかった。
ミッドガルとともに、それまで世界を支えていた神羅カンパニーも事実上崩壊し、空前の規模の難民と化した彼らを受け入れられる所など、どこにもなかったからだ。
忌まわしい過去を思い出させる廃墟に縋って生き続けること以外、彼らに与えられた道はなかったのだ。
別な新天地を探すこともできず、かといって廃墟となったミッドガルを建て直すほどの力もなく。
ミッドガルに寄り添うようにして新たな都市を築くという、なんとも中途半端な格好で、復興都市エッジは誕生したのだ。
そして2年がたち、街がそれなりの規模になり、重労働で日銭を稼ぐ生活にもやっと慣れたところへ、この追い討ち。
これはもう、悲惨の一言に尽きる。
「そろそろさ、本当のコト言って楽になろうよ」
ある建設中のビルの最上階で、カダージュは朗々と言った。
完成にはまだ程遠く、しかし既に地上13階まで建設されたそのビルからは、復興都市エッジのどんよりした町並みが一望できる。
もちろん、広場の惨劇もだ。
「ウソなんだろ?あの記念碑だかなんだかに隠してあるって」
続けて、傍らのルーファウスを見る。
ルーファウスはカダージュと目をあわさず、繰り広げられる虐殺を無表情に眺めていた。
言うまでもなく、記念碑にジェノバが隠されているというのは、真っ赤な嘘だ。
夜遅くにカダージュ達がヒーリンに現れたとき、ルーファウスはその場凌ぎの嘘をついたが、今度ばかりは逃げることはできなかった。
カダージュ達はほとんど拉致する格好でルーファウスをエッジに連れてくると、
彼の目の前で見せしめに記念碑を破壊し、次いで市民を虐殺しだしたのだ。
そして広場に現れた狼型のモンスターは今も増え続け、一部はすでに広場の外へと流れ出ている。街全体に被害が広がるのも時間の問題だ。
カダージュは今、復興都市エッジの全市民を人質に取っているのだった。
FF7AC The Papets(2)
黙りこくっているルーファウスを見下ろすカダージュの目には、勝ち誇った光が、これでジェノバを取り戻せるという確信が宿っていた。
当然だ。ルーファウスがこうして黙りこくっている間にも、エッジの市民は一人また一人と殺されていく。
一般人が虐殺されていく様を延々と見せつけられて、しかもそれが自分のせいとあっては、口を割らずにいる人間などいない。いくら時間を稼いだところで、時間の経過はカダージュたちに有利なのだ。
とでも思っているのだろうか。
彼に人質などという安っぽい脅しは通用しない。
一時は恐怖政治まで掲げていた男だ。自分のせいで罪もない人が苦しむ姿を見せつけられても、特になんとも思わない。
クラウドに話して聞かせた「世界に対する責任」も半分は建前だし、エッジへの支援事業はその建前の裏づけと、人々の記憶に神羅の名を残し続けるためのアピールでしかない。
エッジの市民が何人死のうと、ルーファウスの知ったことではないのだ。
「なあ、カダージュ」
かなり長い沈黙の末、ルーファウスがやっと口を開いた。
「ひとつ教えてくれ」
「…ひとつだけだよ?」
カダージュは、いつもの甘ったるい声で応じた。ルーファウスが話題を逸らそうとしているのをのを知りながら。しかし目算がすでに大きく外れていることを知らずに。
「おまえは…ジェノバ細胞を手に入れて元通りになるといっていたが」
内心ではそんなカダージュを嘲りながら、ルーファウスは淡々とした声で続ける。
「あれはどういう意味だ?」
見え透いた探りだ。だが、自分の優位を信じているせいか、カダージュはあっさり話に乗ってきた。
「もうわかってるはずだよ、社長。 彼が、帰ってくるのさ」
そう、ルーファウスもすでに気づいていた。カダージュ達の狙いにも、
「…セフィロス」
その後ろで糸を引いている、「彼」の存在にも。
とりあえずここまで。
みんなもう忘れてるんじゃないかと思うぐらい久しぶりのACです。
いろいろと話を詰め込んでしまう悪癖は健在です。
本編でティファとタークスの絡みがほとんどないのがどうにも納得できなかったので、強引に入れちゃいました。
ルードってティファに気があるんでしたよね?
>>610-
>>619 GJ
ACの描かれなかった場面に対する
>>620氏の解釈が新鮮でイイ!
続き期待
乙。ルードはティファのこと好きだお。
うお!?一番下だよ!?保守。
624 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/03(火) 18:44:04 ID:GmA7EGb00
age
>FF6
視点が不徹底。
一人称表現と三人称表現がごちゃまぜで、読んでいて困惑させられる。
一人称:主人公の内面を深く掘り下げるのに有効。
反面、それ以外のキャラは主人公の視点を通して描写せざるを得ないため、制約が生ずるが、
うまく機能すれば読者との距離が近くなる。
三人称:いわゆる神の視点。すべてのキャラを客観的に描写できる。
どのキャラをどれだけ深く掘り下げるかは作者の裁量次第。
最近このスレを見つけました。
まだ、4しか読んでないけど
作家の人たちすごいです!
ゲーム上になかった描写がおいしいです。
応援してます!
>>625 アドバイスありがとうございます。
以後、書くことがあれば、その辺りを留意したいと思います。
ほっしゅ
保守
FINAL FANTASY IV #0452 5章 3節 不和の旋律(1)
飛空挺を移動させるついでに、下見をしておこうと思い立ち、セシルたちは北東へ飛んだ。
トロイア本土から海峡を隔てた帆船のような形の島の中央に、ダークエルフが潜む洞窟が口をあけている。
だが、飛空挺が降りられるような平坦な地面は、いくら探しても見当たらなかった。
「場所はここで間違いないのか?」
「何度同じことを言わせれば気がすむのだ!
ここであっとるか、さもなくば地図そのものが出鱈目かじゃ」
「むぅ……」
セシルやヤンが目を凝らし、着陸地点を探す一方、テラは遠見の魔法サイトロを使い、あたりの地勢を地図と照らし合わせていた。
シドは操縦に専念している。磁力の影響なのか、船体が下に引っ張られるような気がする、と話していたところからすると、やはり、この場所で間違いないのだろう。
「無理矢理降りられんのか?」
「……帰れなくなるよ」
テラの強引な提案に、セシルは首を横に振った。
荒々しい岩山の裾野にまつわりつくようにして、樹木が這い寄っている。途切れなく続く緑の絨毯を見ていると、飛空挺の船体も支えられそうな錯覚に陥るが──ひとたび枝を突き破り樹冠の下に消えたが最後、二度と飛びたてなくなることは明らかだ。
「セシル〜、どうじゃ、見つかったか!?」
「駄目だ!
いったん街に戻ろう!」
「ええぃ、しかたないのう。出直すぞ!」
シドの首が機関室に引っ込むと、エンジンが出力を上げ、船体が浮き上がった。
「まあ、あらかじめ様子を見に来てよかったというところだな。
準備万端整えた上でこの有様では、笑い話にしかならん」
「……金庫の人より間抜けだね」
セシルも気が緩んだのか、前向きなヤンの弁に、つい皮肉を返してしまう。
空から近づけないのなら、地道に歩いていくしかない。しかし厄介なことに、ここでは羅針盤が役に立たないのだ。洞窟に近づくにつれて針が振れだし、ついにはぐるぐると回りはじめた。
目印になるような山も周囲にはなく、地上で方角を知る手段は皆無と言っていい。
「やはり、地元の人間を頼るのが一番か」
少なくとも、件の話の主人公は、目的地に着くことはできていたのだ。彼の足取りが、セシルたちをも導いてくれるよう、祈るしかなかった。
FINAL FANTASY IV #0453 5章 3節 不和の旋律(2)
トロイアの町の東、柔らかな牧草で覆われたごく狭い高台に飛空挺をおろし、セシルたちは市街地へと繰り出した。
ぬるんだ空気と水のにおい。石造りの建物は少なく、草で屋根を葺いた木造の小屋が目立った。河岸では女たちが洗い物を広げ、夕暮れを映した薄紫色の水の上を、緑色の果実を積んだ舟が滑っていく。
一向は浮橋をわたり、中洲に立つ大きな建物へ向かった。
「いらっしゃい!」
いくつかの棟が合わさった、大きな食堂だ。気風のよい女主人に料理と酒を注文し、用向きを告げる。女将はしばらく考え込んで、テーブルのひとつに陣取った一人の男をセシルたちに紹介した。
「ロドニー、あんたにお客だよ」
「なんや、メシ持ってきたんとちゃうんか」
盆で頭を叩かれ、ロドニーと呼ばれた男は卓上から足を下ろした。日焼けした体躯、訛の入った口調、明るい茶色の髪と目。熟練の狩人、あるいは漁師といったところか。年齢はヤンと同じくらいで、彼と同じく口髭をたくわえている。
「で、なんか用かい、兄ちゃんたち」
どうやら気さくな人物らしい。同席を願い出たセシルたちを快く受け入れ、問いかける口調は、子供のような好奇心であふれていた。
「磁力の洞窟に行きたいんだ。
案内してくれる人を探したら、あなたが適任だと言われた」
「……はぁ?」
よほど意外な申し出だったのか、ロドニーは目を丸くした。
「やめときやめとき。あんなところ、地元のもんでもよう行かん」
「そういうわけにも行かないんだ。どうにかならないか?」
「む〜。雨季やったら、何とかならんこともないけどな〜〜
なんや、宝石でも拾おうっちゅうわけか?」
「……そんなところだ」
セシルに先んじて、ロドニーの追求をテラが誤魔化す。眉に埋もれがちな目配せに、セシルも頭を冷やした。土のクリスタルが奪われたことは、まだ一般の国民に知らされていない。いずれ公表するにしても、判断するのはこの国の統治者であるべきだ。
FINAL FANTASY IV #0454 5章 3節 不和の旋律(3)
「そない理由やったらなぁ……」
「はいよ、お待ちどうさん!」
腕組みして考え始めたロドニーの前に、子供の身の丈ほどもある巨大な皿が置かれる。大芭蕉の葉の包みを開けると、たくさんの香草と一緒に焼かれた川魚が盛んに湯気を吹き上げた。
蒸かした芋、魚のすり身と百合根のスープ、薄く切った煮こごりと付け合せのピクルス。貝の身と混ぜて炊いた粥や、海老と茸と根菜の煮込み。
瓜に似た星型の果物にイチジクの蜜漬け、と、続けざまに料理が運ばれ、最後に果実酒の瓶と人数分のジョッキが、皿と皿の隙間にねじ込まれた。
「ま、話は後にしてとりあえず飲め。
わしらのおごりじゃ」
「おっ、なかなか話がわかるやんけ」
シドは真っ先に酒瓶に手を伸ばし、相好を崩したロドニーがジョッキを差し出す。
「やれやれ……」
「ま、腹が減ってはまとまる話もまとまりませんからな」
苦笑しつつ、セシルたちも運ばれた料理に手をつけた。魚は身が柔らかく、香辛料のおかげで臭みもなく食べやすい。大の男が五人がかり、テラはあまり食欲がないようだが、それでも大量の料理が見る間に減っていった。
日が落ちきると次第に客が入りだし、ロドニーに挨拶がてらセシルたちに好奇の視線を投げていく。早くも出来上がったシドが彼らにも杯を勧め、小規模な宴会の輪が形成されいた。
「それで、磁力の洞窟の件だが」
器に盛られた木の実をつまみながら、ヤンが水を向けると、途端にロドニーは渋い表情を見せた。
「それなんやけどな……
今はアカン。水が引いてしもうた」
トロイアは低地の国だ。雨季が訪れると、降り注ぐ雨で河があふれ、ごく一部の高地を除いてすっかり水に浸かってしまう。
その季節だけは、柱のように水中から突き立つ幹の合間を船で縫い、どこへでも行くことができる。
ロドニーの説明を受け、テラが尋ねる。
「ては、次の雨季は?」
「七ヶ月先や。ホンマすまんのぅ……」
木の実を口に運ぶセシルの視線の先で、シドが見知らぬ男たちと肩を組み、大声で歌っていた。聞き覚えのある旋律は、場内で巫女たちが奏でていた楽とよく似ている。歌詞はまるで異なるが。
「……ずいぶんかかるね」
申し訳なさそうなロドニーの視線を頬に受け、セシルは炒った木の実を音を立てて噛み砕いた。
おつかれさまです。
オリジナルキャラですか?
続き、楽しみにしてます。
正直関西弁はきつい
保守
待ってました続き!オリジナル要素が好きだ
ho
syu
639 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/16(月) 16:14:31 ID:ys3lutrxO
あげ
ほ
し
ゅ
h
ありゃ
こんなスレがあったのか
手元に\プロローグの一番最初で書きかけ放置してるやつがあるのを思い出した
でもいいか
うん、いらないよ^^
保守
648 :
FF9 OP:2006/10/27(金) 19:45:28 ID:pqALb+Qt0
十六歳の誕生日、王女はいつもの夢で目覚めた。
嵐の夜、荒れる海原、いつ転覆してもおかしくないような小舟。
そんな状況で少女と女性が必死に生き延びようともがく夢だ。
王女はそれが自分であるかどうかもわからないし、その日に
何があったかもわからない。ただ、その夢に秘められた
忌まわしい記憶だけが王女の心の片隅に残されていた。
窓を開けてみる。滅多に出ることのないこの城で、唯一
自由に外の世界を見渡せる場所。
もう夕闇迫るアレクサンドリアの空を真っ白な鳥が
群れを成して飛び立っていった。
王女はその鳥の名前も知らないし、アレクサンドリアでは
別段珍しくもない鳥だ。しかし、その鳥を見るたび王女は
思うのであった。
「あの鳥のように、私も自由になれたら…」
「君の小鳥になりたい」
「最高に切ないラブストーリーを今…
呪われし運命、消せぬ記憶…。夢と現実と、そして生と死と」
時同じくして、とある飛空艇の中。
少年は、そのお芝居のパンフレットらしい冊子を握りしめ、
つぶやいた。
「いよいよ今日が、決行の日か…」
649 :
648:2006/10/27(金) 19:48:47 ID:pqALb+Qt0
FF9誰もやらないみたいなので書いてみました。
カキコ初めてなんで、やさしくしてね…
ガーネットの回想シーンですね。
もうほとんどFF9は内容忘れちゃったけど期待しています。
自分もFF5を書きたいと思ってるので、とりあえずここまでの内容把握中
少年は飛空艇の内部の、とある部屋に入った。まだ誰も
来てないらしく、部屋の中は真っ暗だ。
「暗いな…」少年は部屋の中央にあるロウソクに火を灯した。
「誰だっ!!」少年は、不意に聞こえた声に一瞬警戒したが、
すぐその警戒を解いた。声の正体がわかったからだ。
「なんだ、いたのかブランク。」少年は、相手にもわかるように
自分の名前を告げた。
「オレだ、ジタンだよ。」
「遅かったじゃねえか、ジタン!」
自分が一番乗りだと思っていたその部屋には、すでに一通りの
メンバーが揃っていた。ブランク、マーカス、シナ、
そして彼……シッポの生えた少年、ジタン。
「すまない、みんな…ところでボスはもう来てるのか?」
シナが応えた。「いんや、まだずらよ。」
その瞬間、ドアを蹴破って男が入ってきた。男は竜の仮面を被り、
右手に大きな剣を持っている。男はジタンたちに向かって
剣を振り下ろした!「とぉ」
「うりゃ」「あいてっ」「体力が残り少なくなったらアイテムの
ポーションを使うといいぜ」などと敵意むき出しの言葉を吐きながら
襲い掛かってくる仮面の男に、ジタンたちは次第に防戦一方に
なっていった。
「なんだ、もうお終いか。だらしねえなあ、ガッハッハ!」男の
勝利の高笑いが部屋にこだました、そのとき。
唯一立ち上がっていたブランクの拳が、仮面の男の脳天に
クリーンヒットした!
男の仮面が割れ、その正体があらわになる…
「うわぁ…」「仮面が割れて、さらに凶悪な顔が現れたずら」
「てめぇら!このバクー様を忘れたとは言わせねえぞ!」
仮面の男の正体は、彼らのリーダー、バクーだった。
「てめえらが最近たるんでるから、腕試しでもしてやろうと
思ったら……!」
「じょ、冗談ッス!」マーカスはあわてて言った。
「そんな怒んないでほしいずら!」シナもすぐその後に続いた。
「ガルルルル……。…まあいいわ、すぐに隣の部屋へ来やがれ!
会議はじめんど!!」
-ただいま会議中-
バクーが口を開いた。
「…我らの目指すはアレクサンドリア王国、そして我ら
盗賊タンタラス団の今日の仕事はアレクサンドリアの王女、
ガーネット姫をかっさらうことなんだが…おい、シナ!」
応えるように、シナが続けた。
「さて、その後はおいらが説明するずら。もうすぐ、おいらたちの
乗っているこの劇場艇プリマビスタがアレクサンドリアに到着するずらよ。
到着したら、おいらたちは平然とした顔をして……。
アレクサンドリアで大人気の芝居“君の小鳥になりたい”を
演じるずら!頼むずらよ!主役のマーカスさん!」
「頑張るッス!でも今回の作戦の主役はジタンさんとブランク兄貴ッス!」
「幕間にオレがこいつで城の連中を混乱させる…と」
そう言ってブランクが取り出したものは「ブリ虫」。すばしっこい上に
しぶとく、しかも見た目にもなんとなく気持ち悪いのでみんなに
嫌われている虫である。ブランクもその例外ではない。
「しかし、いくつになっても慣れないもんだな、ブリ虫って。
まあ、仕方ないから我慢するけどよ。…で、その後はジタン、お前の
出番だぜ!」
「よし、わかった!その間にブラネ女王を誘拐すればいいんだなッ!?」
「そろそろやばいずら…」シナがつぶやいた。
「………ジタン、今ので何回目だ?」
バクーが怒りを押し殺すように静かに聞いた。
「えっ……と……。三回くらい…言ったような……気が……するな。」
「ちっがーーう!!なんべんやらせるんじゃ!
こっちはヒマじゃねえんだ!マジメにやらんかい!!」
「わ、わかってるって!誘拐するのはガーネット姫だろ?」
「わかってるじゃねえか!!」バクーは続けた。
「そうだ〜、我々が誘拐するのは、アレクサンドリアはじまって以来の
美姫と名高いガーネット姫!」
「もうそろそろ着く頃ずら。ちょっと外の様子を見てくるずら。」
シナが甲板に出て身を乗り出した。アレクサンドリア城の目印でもある、
巨大な剣を天にかざしたようにそびえたつ塔がかすかに見える。
「見えてきたずら、アレクサンドリアずら!」
バクーが威勢よく叫ぶ。「おめーらっ、準備はいいな!?」
「おおっ!」ジタン達は、その倍近い声で応えた。
654 :
648:2006/10/28(土) 01:47:12 ID:YXmAgFkY0
書き溜めていたOP一気に投下しました。
期待にそえたでしょうか…
USAもいいですか?
656 :
648:2006/10/28(土) 19:48:18 ID:hcpyXVovO
PCがアクセス規制に巻き込まれたので
続きはしばらく待っててください…
バトンはまだオレが持ってるよ!(`・ω・´)ノ
おっ その意気だ。ガンがレよ
658 :
648:2006/10/29(日) 20:15:56 ID:53iKVeA50
FF9 アレクサンドリア城下町にて#1
アレクサンドリア王国の王女の誕生日とあって城下町は大変な賑わいを
見せていた。そんな中、一際小さな男の子がひとり、チケット屋の前に
立っていた。「あれ?君もお芝居を見に来たの?じゃ、チケット見せてね。」
チケット屋は、下を覗き込むようにして、男の子に話しかけた。
トンガリ帽子を深くかぶったその男の子は、ちょっとオドオドしながら
「う、うん」とポケットの中を探り出した。「あ、あれ?な、ない…。」
チケットが見当たらないのか、急にあわてだす男の子。そこへ
「ねえ、これ君のでしょ?後ろに落ちてたよ!」と女の子がチケットを
差し出した。「あ、ありがとう」男の子はそう言ってチケットを
受け取ると、チケット屋に差し出した。「うん?これ…よく出来てるけど、」
その直後、男の子にとって酷な言葉が飛び出す。「ニセモノだねぇ。」
「えーーーーっ…」男の子はショックを隠せない様子だ。
「そんなガッカリするなって…気持ちはわかるけどさ。そういえば
さっきも君と同じような歳の子が同じチケット持ってきたけど…
最近こんなのが流行ってるのかなぁ」
その一部始終を影で見つめていたネズミの子は
「ぷくく、あいつオレと同じ目に遭ってやがんの!」
とニヤニヤしていた。「ん…?でもアイツ、使えるかもな…!」
何か思いついた様子のネズミの子は、トンガリ帽子の男の子の方にかけていった。
「おい、オマエ、オマエだよオマエ!そこのトンガリ帽子!
オマエ、チケットニセモノだって言われたクチだろ?
オレの子分になれば、芝居を見せてやってもいいぜ!」
トンガリ帽子の男の子「う〜ん…。 →はい いいえ」
「オマエまさか自分に“いいえ”なんて選択肢があると思うなよ!
オマエは“はい”だ!一生“はい”だ!死ぬまで“はい”だ!
わかったら返事は!……“はい”だろぉがぁ〜〜!!」
「…はい。」トンガリ帽子の男の子は仕方なく応えた。
「いい返事だ!はい!わかったら行くぞ、はい!」
659 :
648:2006/10/29(日) 20:17:33 ID:53iKVeA50
FF9 アレクサンドリア城下町にて#2
「オマエがな、チケットニセモノだって言われてたとき、オレ様は
芝居を見るためのスーパー、そしてグレート、なおかつとびっきり
デンジャラスな作戦を思いついていたのだ!! ……オマエ今
どんな作戦か知りたくてしょうがないって感じだろ?」
「………。」トンガリ帽子の男の子は応えない。
「言っとくけど、選択肢は一つだからな。」
「……はい。」トンガリ帽子の男の子は、しぶしぶ応えた。
「本当に?どうしても知りたい?どうしても?」
「はい。」
「……まあ、歩きながら話すのもアレだからあそこの尖塔のほうに
行ってから話そうか」
「はい……。」トンガリ帽子の男の子はもはや半泣きだった。
アレクサンドリアの城下町には、立派な鐘が備え付けられた尖塔がある。
しかし、今はもう誰もその鐘を撞くことはなく、また、人目に
つかない所にあるので、今ではすっかり子供の遊び場、……そして、
ある生物の住処になっているのだ。
「誰かいるのクポ?」尖塔の影から顔を出したのは、白く丸っこい体に
小さな羽根、そして頭の赤いポンポンがチャームポイントの
“モーグリ”という生物だ。
「モ、モーグリだ」トンガリ帽子の男の子がつぶやいた。
「おう、紹介するぜ、オレの子分第一号のクポだ!」
そのモーグリは、ネズミの子の子分だったのだ。
「よろしくクポ〜。ところで親分、お芝居はどうしたのクポ?」
「それが、あのチケットニセモンでよ、それで腹が立ったから、
同じくニセモンのチケットを掴まされたこいつと芝居をタダ見して
やろうと思ってよ。それで、どうするかというとだな……。」
660 :
648:2006/10/29(日) 20:19:27 ID:53iKVeA50
FF9 アレクサンドリア城下町にて#3
「いいか?このアレクサンドリア城下町は住宅がかなり密集していて、
家の屋根と屋根が大人なら軽く飛び越えられるくらいに近いんだ。
しかしオレたちはまだ大人みたいな身長もジャンプ力もない。そこで……、
さっき拾ってきたコイツの出番だ。」と、ネズミの子が取り出したのは、
大人の身長ぐらいはある大きな木の板だ。
「まずオレがコイツを使ってこの尖塔のてっぺんから向こうの屋根へ渡る。
そしたら向こうでオレがコイツを押さえてるからオマエはその後渡って
来ればいい。後はそれを繰り返して……。オマエ今、激しく“いいえ”って
いいたそうだなぁ。」トンガリ帽子の男の子はガクガク震えていた。
「………ひゃ、ひゃい。」声の震え方も半端じゃない。
「だあっ!!言うのかよ!あのなあ、オマエに“いいえ”なんて
言わせた日にはなあ、オマエは絶対何だって“いいえ”で済ませようと
するだろ?ちょっと恐いことがあると“いいえ”。なにかいやな
ことがあっても“いいえ”!そんなすぐ“いいえ”で逃げるような
“いいえ”人間にはなりたくないだろ!?なら答えは“はい”だ!!
いいな、はい!?」ネズミの子の言葉は、確実にトンガリ帽子の男の子の
心を動かした。「はいっ」
「いい返事だ、はい!!」
ネズミの子はそういうと、尖塔のてっぺんへと続くはしごをのぼっていった。
661 :
648:2006/10/29(日) 20:20:51 ID:53iKVeA50
FF9 アレクサンドリア城下町にて#4
「さあっ、あともう少しだ、がんばれ!」ネズミの子が叫んだ。
トンガリ帽子の男の子が、屋根と屋根の間に出来た橋を渡っている。
まだ足がガクガク震えているが、確実に橋の向こう側へと進んでいた。
そして、ついに反対側にたどり着いた。「へへっ、やったな、はい!」
「う…、は、はいっ」トンガリ帽子の男の子はいつもの口調で「うん」と
言いかけたが、すぐに「はい」と言い直した。
「ところでオマエ、本当に名前が“はい”なんてオチじゃないだろうな?」
ネズミの子がそう尋ねると、そのトンガリ帽子の男の子は自分の名前を言った。
「ぼくの名前は…ビビ。」「ビビか…。変わった名前だな。」
ネズミの子は、さらに続けた。
「なあビビ、オレが“はい”しか言うなっていったって“はい”さえ
言ってりゃいいと思ってたら大間違いだぞ。」
「え……。」ビビは、首をかしげた。
「はいはい言うだけなら、“肺”と変わんねえんだよ。だけど
オマエは人間だろ?オレは“肺”の子分なんか欲しくねえんだ。わかる?」
ネズミの子はそう言いながら、素早く橋を渡っていった。
「おらっ、さっさと渡って来い!」ネズミの子は、ビビを急かした。
「う、うん…。」ビビはそう言うとさっきと同じように、「はいはい」で
橋を渡り始めた。「あっ。」橋を渡りながら、思い出したようにビビは尋ねた。
「君の名前はなんて言うの?」聞かれたネズミの子は、こう答えた。
「おう、オレはパックって言うんだ。よろしくな!」
ビビも、さっきよりずいぶん速く橋をわたることが出来た。
「やったな、ビビ!」パックはそう言うと、ビビと
「ハイタッチ」を交わした。
662 :
648:2006/10/29(日) 20:26:52 ID:53iKVeA50
とりあえず今回の投下はここまでです。
普通にノベライズしたのではこのスレの神々には勝てないと思い、
別の路線を走ってみました。
これからしばらく、反応をヒヤヒヤしながら見守ることにします。
シェリー、俺は上手く笑えているか…?
ブラネボケ乙
664 :
648:2006/10/30(月) 21:30:12 ID:K/sEV7DZ0
FF9 アレクサンドリア城の人々#1
「おやぶ〜〜ん、待ってクポ〜」二人がアレクサンドリア城の外壁に
たどり着いたとき、後ろからパックを呼ぶ声が聞こえた。
パックを「親分」と呼ぶモーグリといえば、クポしかいない。
「クポじゃねえか、どうしたんだ!?」パックは驚きながら聞くと
「僕もお芝居を見に来たクポ!」クポはさも当然であるかのように答えた。
「そういえばお前たちモーグリは空を飛べるんだったっけ…。
なんだかずるい感じだなあ…まあいいか。」パックはそう言うと、
外壁をヒョイと乗り越えていった。乗り越えた先は、
アレクサンドリア城内部に位置する劇場の観客席の最後尾だ。
ビビとクポもすぐパックに続いた。
もちろん観客席は満員で立ち見客も続出しているが、何とか
小さな二人でも舞台を覗ける場所を見つけた。席と席の小さな隙間だ。
隙間から見える舞台を覗き込みながらパックは小さな声で言った。
「どれどれ…おっ、もうすぐ始まるぞ。開演の合図のパレードだ!」
それは賑やかな音楽と色鮮やかな花火で彩られた、これから始まる
演劇への期待をあおるには十分なパレードだった。
パックはまた小さな声で言った。「おっ、王族の席はスタイナーが
守ってるぞ。アイツ面白いんだぜ。」アデルバート=スタイナーは
古くからアレクサンドリアを守ってきたとされる騎士団「プルート隊」の
現在の隊長であり、このアレクサンドリアの(ある意味)名物でもある。
パックが言っていたとおり、非常にからかい甲斐があるからだ。
普段はプルート隊隊長としてのプライドがそうさせるのか、ふんぞり返って
偉そうにしているが、少しでもバカにするようなことをすると
見事なほどにその態度が崩れる。
それをよく表す例として、こんな話があった。
665 :
648:2006/10/30(月) 21:33:15 ID:K/sEV7DZ0
FF9 アレクサンドリア城の人々#2-1
今より少し前のことだ。よく晴れたある日、スタイナーはいつものように
アレクサンドリア城周辺のパトロールにいそしんでいた。
「異常なーし!」スタイナーは城内に帰ろうとしたとき、一つの小さな
箱を見つけた。「ムムッ、何だこれは」通路の真ん中にポツンと
置かれたその箱をスタイナーは疑いの余地もなく開けた。
するとその中にはモンスター!!………が思いっきりマヌケになったような
人形が飛び出してきた。「こ、これは妖術の類でござるか!?」
スタイナーは腰を抜かして驚いた。もうその時には32才なのに、だ。
「スタイナーのヤツ、ビックリ箱なんかに引っかかってるぜ!!」
「アホもここまで来ると、奇跡ね!」「本当、素晴らしいなアイツは」
箱を仕掛けたらしき子供たちが、褒め称えているのかけなしているのか
よくわからない批評を口にしていると、スタイナーが血相を変えて
子供たちに近づいてきた。
「こらあっ!お前たちか!こんなのを仕掛けたのは!!」
子供たちはすっかりからかい慣れていて、びびる様子もない。
「なによ、ひっかかったアンタが悪いんでしょ」
「子供相手に本気になるなよ、スタイナー!」そして、次の言葉が
スタイナーの理性にトドメを刺した。
「隊長のオマエがそんなんだからプルート隊もうだつが上がんねえんだよ」
するとスタイナー、剣を鞘から抜き出し正面に構え………。
「うわああああ〜〜ん!!」と泣きながら剣を無茶苦茶に振り回した!
繰り返しになるが、彼はその時には32才である。文字になっているから
笑い事で済ませられるが、32の無骨なオッサンが
666 :
648:2006/10/30(月) 21:35:07 ID:K/sEV7DZ0
FF9 アレクサンドリア城の人々#2-2
「うわああああ〜〜ん!!」と泣きながら剣を振り回す姿は何とも
見苦しいものがある。スタイナーのあまりの迫力に圧倒されたのか、
子供たちは一目散に逃げ出した。もう子供たちの姿も見えなくなった頃、
スタイナーはまた別の意味で涙を流していた。初めて自分ひとりの力で
子供たちを追い払ったことに感動していたのだ。
何ともどうしようもないオッサンなのであった。
667 :
648:2006/10/30(月) 21:36:58 ID:K/sEV7DZ0
FF9 アレクサンドリア城の人々#3
アレクサンドリアを守るとされているプルート隊の隊長がそんな調子でも
アレクサンドリアは今まで無事だった。
要するに、大きな戦乱がなく、平和そのものだったのだ。
ところが、最近は様子がおかしい。
パックはまたまた小さな声でささやいた。
「それにしても不思議だよな。どうやってあんなのからあんな綺麗な
王女が生まれるんだろう」
パックが言ったのは、ブラネ女王のことだ。確かに、出っ張った腹と
でかい顔はガーネット姫のそれとは似ても似つかない。それでも昔は
それも愛嬌のある容姿だとアレクサンドリア民に愛されていた。
しかし、今では妙に悪い顔色、醜くゆがんだ顔面、おまけに
頭の足りないオバチャンなどにありがちな趣味の悪い服装からは
何となく邪悪なオーラさえ醸し出している勢いだった。
さっき最近様子がおかしいと言ったのは、このブラネ女王を巡る
様々なウワサのことだ。このブラネ女王があらゆる国に攻め込もうと
してるんじゃないかとか、ブラネ女王がおかしくなったのは
変な男がたぶらかしたせいじゃないかとか、ブラネ女王の容姿を
例えるなら象が一番ふさわしいんじゃないかとか、いやむしろ
ブタの方がピッタリじゃないかとか、本当に様々なウワサが
飛び交っているのだった。しかし今夜ばかりはそのブラネも
演劇の始まりを告げるパレードに夢中になっていた。
その隣で、憂鬱そうな表情を浮かべる自分の娘には目もくれずに……。
パレードの最後、特別大きな花火が上がったときブラネは
「おおっ、すげえ」およそ女王のそれとは思えない言葉でその感動を表した。
668 :
648:2006/10/30(月) 21:47:23 ID:K/sEV7DZ0
>>662とはいったものの、今日まとまった時間が出来たので、
一気に書き上げた新作を投下。#2はひとまとめにして読んでください。
ff9好きだけど、あんま話題あがらないんでノベル化あきらめてた。
応援してるぞ!
670 :
648:2006/10/31(火) 22:34:18 ID:dUFCsc150
FF9 君の小鳥になりたいの#1
パレードが一通り終わると、バクーがノッシノッシと舞台中央に上がってきた。
劇団タンタラスではバクーが前口上を務めるのがお決まりとなっている。
この日もバクーはそのお決まりどおり、タキシード姿で現れた。
似合うわけがないのであった。今にもワイシャツのボタンが
弾け飛びそうなどてっ腹、いかにも悪役が似合いそうな顔、寝るときさえ
取らないんじゃないかと噂されるゴーグルが一体となった変なマスク。
そんな男がビシッと正装で決めようと努力している姿は、もはや
一種のギャグと受け取る者さえいた。当然、これを初めて見た者は困惑する。
どうするの?こんな男が司会で大丈夫なワケ?お金ちゃんと返して
くれるのかしら……。貴族たちがいろいろ批判言いたい放題口にしていると…。
バクーは息を一飲み、「さあて、お集まりの皆様!!」その迫力ある
低い声で貴族たちの批判を黙らせた。同時に、バクーに観客の注目が
一斉に注がれる。バクーは大勢の観客から発せられるプレッシャーを
物ともしないといった顔で、一呼吸間をおいて、続けた。
「今宵、我らが語る物語ははるか遠い昔の物語でございます。
物語の主人公であるコーネリア姫は恋人マーカスとの仲を
引き裂かれそうになり……一度は城を出ようと決心するのですが、
父親であるレア王に連れ戻されてしまいます。今宵のお話は、それを聞いた
マーカスがコーネリア姫の父親に刃を向けるところから始まります。」
バクーの声は、先頭に座る者にはちょっとうるさすぎるくらい
よく通っていた。バクーはさらに続ける。
「それでは、ロイヤルシートにおられますブラネ女王様も、ガーネット姫様も、
そして貴族の方々も、屋根の上からご覧の方々も、手にはどうぞ厚手の
ハンカチをご用意下さいませ。」バクーはちょっと気取ったしぐさで
一礼すると、気持ち急ぎ気味に舞台裏へと退散した。レア王に変身するためだ。
バクーが去った後も、拍手はしばらく鳴り止まなかった。
671 :
648:2006/10/31(火) 22:39:19 ID:dUFCsc150
サブタイトルは間違いじゃないよ(´・ω・`)
今日は忙しかったので一話だけ放り込んどきます。
そこの君!出川見てるヒマがあったら俺のFF9読みなよ
672 :
648:2006/10/31(火) 22:54:55 ID:dUFCsc150
俺の文章読んでくれて、なおかつヒマな人は
感想でも書き込んでやってください
読んだ人の意見が聞きたい…。
文章の校正もイ〜ネ!
673 :
648:2006/10/31(火) 23:21:36 ID:dUFCsc150
ちょっとレス入れすぎかもよ
>>648 とはいえバクー乙
ff9久しぶりにプレイしたくなってきた
子供の悪戯に泣き喚くスタイナーに違和感。
677 :
648:2006/11/02(木) 21:40:37 ID:MY4m5TeP0
只今、続きを鋭意執筆中です。今日中には無理なので
投下は明日になると思います。もうしばらくお待ちください。
それでは、
>>656の最後の一行で失礼します
しまった……。
このシーンってアレクサンドリア城に劇場があるんじゃなくて、
劇場が一体化したプリマビスタごと城の中に入っていくのね…。
これはまずい…1から書き直さなきゃいけないほどの大ミスだ…。
責任は取らせてください。新作もオープニングの改訂版を投下したときに
同時に投下します。ご迷惑かけて本当に申し訳ないです。
FF8 第一章 SeeD-39
「さあ、次はてめぇの番だぜ。覚悟しな」
ヴィックスに応急措置を施しているウェッジに対し、サイファーが声を張り上げた。
しかし、その声にいつもの力強さはない。息遣いも荒く、胸からの出血も収まってはいない。
なのに、まだ続けるつもりなのか、サイファー・・・
「無茶だぜサイファー、その傷で」
「そーそー、無茶だよ〜」
「やかましいっ!」
ゼルとセルフィが口々に諌めるが、サイファーは聞く耳を持たない様子だ。
「彼等の言う通りだ」
応急措置を終えたウェッジが立ち上がり、口を開いた。
「貴様はヴィックス少佐と尋常に立ち合い、そして見事に勝利を収めた。その誇りを胸に、ここは退くがよい」
「なんだと!てめぇ、逃げるのかよ」
「ヴィックス少佐には及ばぬものの、私とて武人の端くれ。手負いのものを倒す拳は持たぬ」
そう言うとウェッジは俺たちに向き直り、言葉を続けた。
「まずは彼の手当てを。その上で、誰が私と立ち合うか、決めるがよい」
「馬鹿にすんじゃねぇっ!」
激昂したサイファーが、ガンブレードを振りかぶってウェッジに突っ込んで行こうとした。
止むを得ないな・・・
俺はサイファーの前に回りこみ、当て身を食らわした。
「ぐっ、スコール、てめぇ・・・」
「悪いな、サイファー。セルフィ、サイファーを頼む」
「おっけー、まかせて♪」
気を失いくずれ折れるサイファーをセルフィに任せ、俺はウェッジに向けてガンブレードを身構えた。
FF8 第一章 SeeD-40
「ちょっと待った!」
ゼルが横からしゃしゃり出て来た。
「スコール、ここは俺に任せてくれ。な、頼む」
両手を合わせ、俺を拝むように懇願してくる。
どうしたものか・・・俺は逡巡した。
ゼルの戦闘能力には俺も一目置いている。おそらくサイファーも同様だろう。しかし・・・
迷いを見せる俺に対し、ゼルはさらにたたみ込んでくる。
「アイツの武器はメタルナックル。俺と同じ徒手格闘の使い手だ。ぜひ手合わせしてみたいんだよ」
・・・手合わせって、ゼル、これはガーデンでの戦闘訓練とは違うんだぞ。
SeeDの実地試験、本物の戦闘なんだ。本当に状況を飲み込めているのか?
「それに何より、俺はアイツが気に入っちまった。
お前も見てただろ、スコール。さっきのサイファーへの応対、なかなか出来るもんじゃねぇ。
な、だから頼むスコール。おれにやらせてくれ」
自他共に認める熱血小僧・ゼル。そのハートに熱い炎が灯ってしまったようだ。
・・・仕方ないな、ここはゼルに任せよう。
「気を抜くなよ、ゼル」
「サンキュースコール!恩に着るぜっ」
言うが早いか、ゼルは勇躍してウェッジと対峙した。
「つー訳で、俺がアンタの相手だ。名はゼル・ディン。バラムガーデンのSeeDだ!」
「まだSeeDじゃないくせに〜」
サイファーを介抱しつつ、セルフィが突っ込みを入れたが、バトルを前にした二人に、その声は届いていない様子だ。
「受けて立とう。私はガルバディアの大尉・ウェッジだ。さあ、参れ」
「よぉし、いざ尋常に勝負っ!」
681 :
648:2006/11/03(金) 15:30:40 ID:NFGO7b8h0
差し替え部分FF9 OP2
「うわぁ…」「仮面が割れて、さらに凶悪な顔が現れたずら」
「てめぇら!このバクー様を忘れたとは言わせねえぞ!」
仮面の男の正体は、彼らのリーダー、バクーだった。
「てめえらが最近たるんでるから、腕試しでもしてやろうと
思ったら……!」
「じょ、冗談ッス!」マーカスはあわてて言った。
「そんな怒んないでほしいずら!」シナもすぐその後に続いた。
「ガルルルル……。…まあいいわ、すぐに隣の部屋へ来やがれ!
会議はじめんど!!」
彼らが乗っている劇場艇プリマビスタは、数ある飛空艇の中でも群を抜いて
巨大な飛空艇だ。その中には数え切れないほどの衣装、大道具、小道具、
舞台装置などが全てこの巨大な飛空艇の中に収まっている。
そして、甲板。そこには何と舞台そのものが甲板と同化していて、
プリマビスタがそこに着陸すれば、何は無くともいつでもどこでも
舞台が開けるというスグレモノだ。その貨物室では今、ある会議が
繰り広げられていた。バクーが口を開く。
「…我らの目指すはアレクサンドリア王国、そして我ら
盗賊タンタラス団の今日の仕事はアレクサンドリアの王女、
ガーネット姫をかっさらうことなんだが…おい、シナ!」
応えるように、シナが続けた。
「さて、その後はおいらが説明するずら。もうすぐ、おいらたちの
乗っているこの劇場艇プリマビスタがアレクサンドリアに到着するずらよ。
到着したら、おいらたちは平然とした顔をして……。
アレクサンドリアで大人気の芝居“君の小鳥になりたい”を
演じるずら!頼むずらよ!主役のマーカスさん!」
「頑張るッス!でも今回の作戦の主役はジタンさんとブランク兄貴ッス!」
682 :
648:2006/11/03(金) 15:33:13 ID:NFGO7b8h0
差し替え部分FF9 アレクサンドリア城の人々#1
「おやぶ〜〜ん、待ってクポ〜」二人がアレクサンドリア城の外壁に
たどり着いたとき、後ろからパックを呼ぶ声が聞こえた。
パックを「親分」と呼ぶモーグリといえば、クポしかいない。
「クポじゃねえか、どうしたんだ!?」パックは驚きながら聞くと
「僕もお芝居を見に来たクポ!」クポはさも当然であるかのように答えた。
「そういえばお前たちモーグリは空を飛べるんだったっけ…。
なんだかずるい感じだなあ…まあいいか。」パックはそう言うと、
外壁をヒョイと乗り越えていった。乗り越えた先は、
アレクサンドリア城が劇場艇プリマビスタを迎え入れるために用意した
観客席の最後尾だ。ビビとクポもすぐパックに続いた。
もちろん観客席は満員で立ち見客も続出しているが、何とか
小さな二人でも舞台を覗ける場所を見つけた。席と席の小さな隙間だ。
隙間から見える舞台を覗き込みながらパックは小さな声で言った。
「どれどれ…おっ、もうすぐ始まるぞ。開演の合図のパレードだ!」
それは賑やかな音楽と色鮮やかな花火で彩られた、これから始まる
演劇への期待をあおるには十分なパレードだった。
パックはまた小さな声で言った。「おっ、王族の席はスタイナーが
守ってるぞ。アイツ面白いんだぜ。」アデルバート=スタイナーは
古くからアレクサンドリアを守ってきたとされる騎士団「プルート隊」の
現在の隊長であり、このアレクサンドリアの(ある意味)名物でもある。
パックが言っていたとおり、非常にからかい甲斐があるからだ。
普段はプルート隊隊長としてのプライドがそうさせるのか、ふんぞり返って
偉そうにしているが、少しでもバカにするようなことをすると
見事なほどにその態度が崩れる。
683 :
648:2006/11/03(金) 15:38:43 ID:NFGO7b8h0
>>681の差し替え部分はOP3の間違いです…。
おまけに
>>682は最後の一行コピーし忘れました……。
「それをよく表す例として、こんな話があった。」を
付け足してください。失敗だらけで本当にすみません!
684 :
648:2006/11/03(金) 17:08:26 ID:NFGO7b8h0
訂正の訂正です。
>>681の
彼らが乗っている劇場艇プリマビスタは、数ある飛空艇の中でも群を抜いて
巨大な飛空艇だ。その中には数え切れないほどの衣装、大道具、小道具、
舞台装置などが全てこの巨大な飛空艇の中に収まっている。
そして、甲板。そこには何と舞台そのものが甲板と同化していて、
プリマビスタがそこに着陸すれば、何は無くともいつでもどこでも
舞台が開けるというスグレモノだ。その貨物室では今、ある会議が
↑この部分を
彼らが乗っている劇場艇プリマビスタは、数ある飛空艇の中でも群を抜いて
巨大な飛空艇だ。数え切れないほどの衣装、大道具、小道具、
舞台装置などが全てこの巨大な飛空艇の中に収まっている。
そして、甲板。そこには何と舞台そのものが甲板と同化していて、
プリマビスタがそこに着陸すれば、何は無くともいつでもどこでも
舞台が開けるというスグレモノだ。その会議室では今、ある会議が
↑これに差し替えてください。重ね重ねの失敗、
本当に、本当に、本当に申し訳ありません…。
現在少しパニック状態なんで少し頭冷やしてから新作を
投下しようかどうか考えたいと思います……。
>>468 もちつけ。訂正乙
焦ってたから仕方ないかもしれんが、他の書き手さんの直後に投下する時は
その作品の感想を書くとか、ここから続き投下とか
ワンクッションあった方が見やすい
687 :
648:2006/11/03(金) 20:00:49 ID:NFGO7b8h0
ご迷惑をおかけしました…。これから続きを投下します(つまり、新作ね)が、
その前に感想への返事、そして自分の感想を書き込みたいと思います。
>>674すみません…またどうでもいいことにレスをつかってしまいました…
これから気をつけます。
>>675それは私のノベライズを読んで、という意味でしょうか?
だとしたら……俺の思うツボですね( ̄ー ̄)ニヤリッ
>>676スタイナーは「こんなヤツがいたら面白いかな」と考えながら
書きました。もし、スタイナーのイメージと激しく違ったら、
もう別物と割り切ってしまった方がいいかも知れないです…。
FF8 ◆mgMQDUQocw 氏 新作お疲れ様です!
ヴィックスだけでなく、ウェッジもカッコ良くなってますね。
他の作家さんもそうですが、俺に無いものを沢山もってるんで、
これからも頑張ってください!
>>685ご迷惑をおかけしました…。肝に銘じます
688 :
648:2006/11/03(金) 20:05:12 ID:NFGO7b8h0
FF9 君の小鳥になりたいの#2
舞台の暗転が終わると、舞台右端からジタン、ブランク、シナが現れた。
彼らはコーネリア姫の恋人、マーカスの友でレア王に恨みを持つものが
集まった、言わば同志の役柄だ。まずはブランク、
「父を殺され!母を殺され!そして恋人と引き離されたマーカスよ!」
と先陣を切った。一流の役者と比べると多少見劣りはするものの、
持ち前の熱さとノリでなかなか様になっている。続いてシナ、
「おお、斯くも不仕合わせなマーカスよ!これからお前は何を希望に
生きてゆけば、よいのだ!」普段の口癖を封印しているためか、
ちょっとぎこちない。そして二人を率いるようにジタン、
「こうなれば我が友のため!憎きレア王の胸に烈火の剣を突き刺して
やろうではないか!」もともと要領がよく、なんでもこなすジタンは
三人の中では抜群に上手かった。そして最後に全員で「オォーッ!!」と
掛け声を上げながら、マーカス、レア王の待つ舞台中央へと駆けていった。
一方、舞台中央ではマーカスが「憎きレア王、俺から全てを奪ったレア王!
貴様がそれを償えないと言うのならば、例え明日処刑されようとも俺は今日、
貴様の命を奪う!!」と、熱のこもった演技を見せていた。
マーカスといえば、舞台に立つために生まれたような男である。
普段は大人しく控えめな態度を取っているが、一度舞台に立つと
その態度がガラリと変わり、その存在感が強烈な炎のように煌々と輝く。
後にマーカスはこう語る。「俺はタンタラスで舞台に立つ前、ずっと自分の
居場所を探してたんです。しかし、舞台に立った瞬間、確信しました。“ああ、
俺の居場所は、ここにあったんだ”ってね。だから、俺の原点は
タンタラスなんです。」ちょっと生意気であった。
689 :
648:2006/11/03(金) 20:08:21 ID:NFGO7b8h0
FF9 君の小鳥になりたいの#3
「レア王への復讐に燃えるマーカス」が乗り移った天才役者、マーカスの
ギラギラした目つきを見た、レア王ことバクーは「マーカスの野郎、
いつもながらいいヴァイヴレーションだぜ!」と心の中で満足していた。
「覚悟!」マーカスが叫んだその時、「助太刀に来たぞ、相棒!!」と
ブランク、ジタン、シナがマーカスのもとへやってきた。
「手出しをするでない!!」マーカスがそう言うと、
「そうはいかぬ!俺もレア王には兄弟を殺されているのだ!」シナが応え、
続いてジタン「相棒…、死ぬときは俺たち四人一緒だ。お前を一人で
死なせはしないぞ。」それを受けたマーカスは「相棒…。」とつぶやくと
「見たかレア王!我が友は斯くも素晴らしいぞ!たった一人で暴虐を続けた
お前が我らの血の誓いに勝てると思うか!!」と、あらためてレア王への
敵意をあらわにした。そしてレア王、
「ええい、下がれ下がれ、無礼者!我が野望の行く手を塞ぐ奴は誰とて
容赦せぬぞ!余に刃向かう奴は、この闇夜の露と消してくれるわ!!」
そう言うとレア王は目を閉じ呪文を唱え始めた。
「天よ、怒れ。広大なる宇宙より彷徨える星を呼び寄せ、この者達に
裁きを与えたまえ。」それは隕石を呼び寄せる古の黒魔法、メテオの
ものだった。すると、空から隕石が降ってきて、轟音を立てながら
舞台に衝突した。しばらく砂煙で舞台が見渡せなかったが、よく見ると
なんと、舞台も無傷だし誰一人傷ついていない。強いて言えば、
吹っ飛ぶ演技をした際、膝をすりむいたシナぐらいか。
それは、光幻惑魔法を古の強力な魔法に見せるように改良した、
“まほう”と言うタンタラス劇特有の舞台効果だった。
iiyoiiyo-
691 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/04(土) 11:28:59 ID:cqU84PQ70
うお、FF8だー!
待ってましたよ、作者さん!
相変わらず人物造形がうまいね。キャラがいきいきしてる。
テンポもよく、盛り上げ方もよく知ってるって感じ。
続き楽しみにしてますよ。
692 :
648:2006/11/05(日) 00:02:29 ID:5YXawIhP0
FF9 君の小鳥になりたいの#4
光幻惑魔法というのは、様々な映像や音で相手を惑わす魔法で、
もともとは魔道師が一番最初に覚える初歩の初歩の魔法であり、
練習さえ積めば誰でも使える物だ。それを劇の効果として
使おうとしたのはシナの思い付きだった。
「シナ、何だこりゃ。」目の前に置かれた分厚い本をバクーは物珍しそうに
尋ねた。「オイラが光幻惑魔法の応用をまとめた本ずら。これを読めば
いかに魔法のセンスのかけらもないあんたらでも、簡単に古の強力な魔法を
使えるように見せることができるずら。」シナのさりげない毒舌を聞いた
ジタンとブランクは、途端にムッとした表情を見せた。
「まぁた、そういうこと言うッスから…。」マーカスは心の中で
呆れていた。
「なるほど、確かにそれを使えば劇も盛り上がるな。」バクーは何度も
うなずきながらそう言うと、最後にコロッと表情を変え、
「だが、仲間やボスをバカにする態度は頂けん。オシオキだ!!」
「ひえっ、アレだけは勘弁ずら〜」
よほどオシオキが怖いのか、シナはあっという間にその場を去り、
どこか遠くに消えてしまった。
“まほう”を使った演出はたちどころに話題となり、有名になった。
大陸のあらゆる国で引っぱりだことなったのも、マーカスと“まほう”の
影響に依るところが大きい。人気の秘密を探るべく、他の劇団から送られた
偵察員も“まほう”を目にしたときには「うわ、その発想は無かったわぁ〜」
などと舌を巻くしかなかった。
693 :
648:2006/11/05(日) 00:05:13 ID:5YXawIhP0
FF9 君の小鳥になりたいの#5
レア王の放った“まほう”「メデオ」をきっかけに、激闘の火蓋が切って
落とされた。芝居ではマーカスの右に出るものはいないが、チャンバラとなれば
俄然張り切るのがジタンとブランクだ。レア王の猛攻、
右手から振り下ろされる剣、左手から迸る“まほう”を彼らは
アクロバティックな動きでヒラリ、ヒラリとかわしていく。
「おのれ、小癪な奴らめ!」業を煮やしたレア王が剣を大きく振りかぶると
何かが激しくレア王の右手にぶつかった。ブランクの投げたナイフだ。
剣は回転しながらレア王の後方に吹っ飛んでいった。
「な…、我が剣はどこに消えた?」「お前が探しているのはこれのことか?」
いつの間に後ろに回っていたのか、レア王が振り向くとそこにいたのは
ついさっきまで自分が持っていた剣を手にしたジタンだった。
「貴様、それをどうするつもりだ!」「こうするのさっ!!」
そう言うとジタンは剣を空高く放ると、自分も剣に向かって一直線に
ジャンプした。そして、強烈なキックを喰らわし、剣を叩き割った!
「お前の武器は俺が壊した!」空中でジタンが言うと、続いて地上のブランク、
「そして、あれだけ強力な魔法を次々放っていては魔力も残っていまい!」
そして締めはマーカス「最期だ!暴君、レア王!!」ちなみに、
チャンバラの部分は全てアドリブで、しかもこのあとの展開は
レア王が勝利した場合とジタン達が勝利した場合の二つが用意されている。
つまり、バクーとジタン達のガチンコ勝負だ。だからこそ、この後、
レア王は本気で「グヌヌ……。」と呻った。そして、ジタン達が勝利した方の
展開で物語は進む。「このままで済むと思うなよ、マーカス!」レア王は
そう言うと、逃走を図った。当然それを許すはずがないマーカス達。
「待てっ!」ジタンが真っ先に後を追おうとすると、意外な人物が
ジタンを制した。ブランクだ。
オリジナルオモシロス
>FF8
読者を待たせすぎwでも相変わらずうまいね。
続きを読んでみたいという気にさせてくれる。
>FF9
テンポが単調でメリハリがない。長めのあらすじを読まされてる感じ。
文章がごちゃごちゃしすぎ。改行くらい工夫してほしい。
696 :
648:2006/11/05(日) 14:22:06 ID:5YXawIhP0
>>695今投下中なのは演劇のシーンなので少し
状況説明が多くなりすぎたのかも知れません。
とはいえ、テンポが肝心なバトルシーンでこの有様では…orz
修行して出直します。
改行は改善の余地がありそうですね。
具体的に、このスレのどの作家さんを参考にしたらいいか、
教えてくれるとありがたいです。
FFUSA冒頭部分投下します。
序章 勇者の誕生
何時かも知れぬ古の時代。
この世界に大いなる恐怖が襲ってきた。
闇王ダークキング。
彼は瞬く間に世界を闇に包んだ。
そんな時一人の若者がクリスタルという秘宝を用いて闇を葬り、ダークキングを世界の中心、フォーカスタワーに封印した。
しかし若者は何時か封印は解けるという。
だが自分の意志を受け継ぐ者が現われ、世界を救うだろうという。
その予言を信じ人々は待っていた。
【光の勇者】を・・・。
698 :
697:2006/11/05(日) 15:06:30 ID:7XbxI1vyO
FFUSA
序章 勇者の誕生#2少年ザッシュ
朝、俺は昨日着いた村の宿屋のベットで目を覚ました。
心地よい朝だ。
鏡を見ながら身嗜みを整え愛用の鎧と剣の手入れをした後は運ばれてきた朝食を腹に入れ、宿屋を後にした。
今日は北に見える運命の丘をフォレスタ方面に向かおうと思う。
【運命の丘】、かつては運命石とかいう宝石が採れたとかそんな話を宿屋の主人がしていたような気がする。
簡単に食料の補充をした後、俺は嫌な予感がした。
さっきから地鳴りが聞こえるような気がする。
さっさと行ってしまおうと思った時、いきなり地面が揺れだした。
大地に亀裂が走る程の地震だ。
おかしい、ここはそんなに地震が起きるような土地柄ではない。
俺は運命の丘まで非難することにした。
途中で親とはぐれた子供を見かけた。
「しかたねぇな!畜生!」
子供を抱え親を探した。
そうこうしてる間に地面が崩れだした。
男性と女性が巻き込まれそうになっている。
抱えていた子供が
「パパ!ママ!」
子供の叫び声も虚しく、男性と女性は地割れに落ちていった。
「とりあえず何処かに非難するぞ!」
「パパとママが・・・」
「まずお前が生き延びるんだ。いいな。」
俺は暴れる子供を無理矢理連れ運命の丘に向かった。
>>697 USAキター 乙。
この作品は消防以来なんでかなり懐かしい。
>>648 リアルで好きな作家の小説読んで、表現を参考にしてみたら
>FF9
意気込みは買うが、ちょっと質より量って感じがする
読みにくくて目がすべる罠
あとやっぱり単調
701 :
648:2006/11/05(日) 21:05:58 ID:5YXawIhP0
>>695の批判を受けて、新たに改行を施した新作を
一本だけ試験的に投下します。
>>699アドバイス有難うございます。参考にしているというか、
“こういう風に書けたら良いなぁ”と思っているリアル作家はいます。
タネがばれちゃうので、明言はしませんが…。
>>700すみません、また懲りずに新作投下です…。
いらんセリフを削いだり色々したんで、
テンポの単調さは改善されてる……はずです。
されてなかったらまた指摘お願いします。
702 :
648:2006/11/05(日) 21:08:01 ID:5YXawIhP0
FF9 ガーネット姫誘拐作戦、決行#1
「なぜ止める、ブランク!」ブランクの意外すぎる行動にジタンは思わず激昂する。
「ジタン、冷静になってよく考えてみろよ。
シュナイダー王子とコーネリア姫が結婚すれば、二つの国は平和になるのだ!」
「笑止千万!それで全てが丸く収まればこの世に不仕合わせなど存在しない!」
言うが早いか、ジタンはブランクに斬りかかった。それをバック転で華麗によけるブランク。
二人の息が合ったコンビネーションプレイがあって、初めてできる技だ。
「こうなれば、いざ勝負だ!」着地も決まったブランクが、ジタンに一対一の戦いを宣告した。
今度は先程の対決とは違い、正真正銘、剣のみで魅せるチャンバラである。
ある時は相手の剣を華麗な身のこなしでかわし、
またある時は剣と剣を衝突させることで観客を次々に沸かす。
観客の興奮をチャンバラによって最大限に引き上げた後、役目を終えたブランクは
「チッ、このままじゃ分が悪いな…この勝負はおあずけだ!」
逃げるように舞台裏へと消えた。
「逃がすか、ブランク!」すぐさま後を追うジタン。
その折、ブランクはジタンに今回の作戦の確認を促す。
「ジタン、わかってるな?この後は……。」
「ああ、アレクサンドリア兵のヨロイを奪って……、だろ?」
一方、アレクサンドリア城内、プルート隊の控え室。
二人のプルート隊員がヨロイを装備しながら談話していた。
片方の兵士が口を開く。「何か、芝居の方がやたら盛り上がってたな。」
それに対しもう片方の兵士、「そりゃそうだろ。今や大人気の劇団タンタラスが来てて、
それがガーネット姫生誕十六周年記念公演なんだぜ。盛り上がんねえほうがオカシイってもんだ。
あぁ、俺も観客席の警護がよかったよぉ〜!」などと愚痴っていると、後ろに怪しい人影が二つ。
「いいヨロイ着てんじゃないのボク達ィ」
「ちょっとお兄さんにも見せてくんないかな、ソレ……!」
どうも、ご無沙汰しておりました。
久々の投下、いかがでしたでしょうか?
諸々の都合で、半年以上も放置してしまったこと、申し訳なく思っています。
またぞろ続けていく所存なれば、よろしくお付き合いください。
>FF9&USA作者さん
どちらも未プレイなので、興味深く拝読しています。
お互い切磋琢磨して、スレをもりあげていきましょう。
FF8 第一章 SeeD-41
ゼルは一気にラッシュをかけた。
ジャンプ一番、一挙動で間合いを詰めると、強烈な左右の四連打を繰り出した。
「甘いな」
ウェッジは動じることなく、ファイティングポーズもたらぬまま、ゼルの四連打を全てかわした。
「まだまだっ!」
ゼルは手を休めず、更なるラッシュをかけた。
ローキックからの連打、裏拳から廻し蹴り、連打からの正面蹴り、そして踵落し・・・
ゼルが得意とする、流麗かつ力強い連撃の数々。息つく暇も与えぬとはこの事だ。
しかし、その全てをウェッジはかわしている。相変わらずファイティングポーズもとらずにだ。
「その若さにしては中々。だがまだ甘い」
「へん、かわすのが精一杯のくせして、よく言うぜ」
余裕の態を見せるウェッジに対し、ゼルが負けじと言い返す。
しかし、それが虚勢なのは明らかだ。
徒手格闘において、ゼルに並ぶ者など、ガーデンには存在しない。
そのゼルのラッシュを全てかわしてしまうとは・・・ゼルも内心驚愕の思いだろう。
「ならば見せてやろう。力の差を」
ウェッジが初めてファイティングポーズをとった。
「しゃらくせぇ!」
ゼルがムキになって仕掛けていく。
ガガガガッ!
拳と拳のぶつかり合う音が立て続けに4回、周囲に響き渡った。
ゼルの繰り出した左右の四連打に合わせて、ウェッジもまた四連打を放ち、その拳で全てを正確に受け止め、はじき返していたのだ。
「これが力の差だ」
ウェッジは落ち着き払った声で言った。
FF8 第一章 SeeD-42
ゼルに対し、徒手格闘でここまで優位に立つ者がいようとは・・・正直、俺は愕然とした。
ウェッジの言う通り、力の差は明らかだ。このままではゼルに勝ち目はない。
ゼルは嫌がるだろうが、ここはサポートに入るしかない。
俺がそう決心したとき、ゼルの口から意外な言葉が漏れた。
「ふ、嬉しいぜ。アンタ本物だ」
口元に笑みを浮かべつつ、ゼルはさらに言う。
「ようやく本気でバトルできる相手に巡り合えたぜ」
「ゼルとやら、虚勢を張るな。力の差、貴様には既に分かっていよう」
ウェッジの言う通りだ、ゼル。この相手にハッタリなど通用しない。
「虚勢かどうか、かかって来なよ」
笑みを浮かべたまま、ゼルが挑発する。
「戯れ言を・・・ならば、参る!」
ウェッジが始めて攻撃を仕掛けた。ゼルのお株を奪うかの様な、左右の四連打だ。
ガガガガッ!
拳と拳のぶつかり合う音が再度、周囲に響き渡った。
先程ウェッジがして見せた様に、ゼルは相手の四連打を同じく四連打で迎え撃っていたのだ。
「なるほど・・・私にできる事は貴様にもできる。そう言いたいのだな」
「そいつはちょっと違うぜ。アンタの拳、よく見てみな」
「拳だと・・・」
ウェッジのメタルナックル、そこには無数の亀裂が・・・と、見る間にメタルナックルは砕け散った。
「む!」
「破壊力なら、俺の方が上ってこった」
ゼルは得意げに鼻をうごめかせた。
706 :
697:2006/11/06(月) 19:58:02 ID:m0gwD9h7O
USA 序章 勇者の誕生#3運命の丘
地震はまだ止まない。
それどころかたった今俺達がさっき迄いた村は地面毎沈んでいた。
それを確認した俺は急いで運命の丘を抜けフォレスタに向かおうした。
(ここもヤバい)
俺の旅人としての直感がここを離れるよう忠告していた。
運命の丘に入った俺達は走れるだけ走った。
途中で老人が立っていた。
いや立っているというより浮いている。
下半身が雲の様な物に覆われていて足が見えないのだ。
俺はこの老人を精霊か何かと感じた。
何にせよここにいるのはまずい。
俺は老人に声をかけた。
「大変だ!村が一つ沈んだ!ここもヤバい!」
老人は俺達を見てこう言った。
「こっちじゃ!」
老人は流れるようなスピードで俺達を誘導する。
するとかなり大きな地割れが出来ていた。
老人は難なく地割れを飛び越え、こう叫んだ。
「今じゃこっちにジャンプじゃ!」
「無理だよう・・・」
子供が弱音を吐いた。
まぁ確かに普通は無理だろう。
「しっかり捕まってな。」
俺は一呼吸する。一か八かの賭けだ。俺は子供を抱き抱え助走をつけた。
俺は走り幅跳びの要領で一気に地割れを飛び越えたのだ。さすがに跳躍力には地震がある・・・じゃなかった自信があるとはいえ凄くびびった。
俺が向こう岸に着陸した時ちょうどいいタイミングだったのか、俺達がいた岸は沈んでいた。
今日はここまで。
8と9の人お互いに頑張りましょう!
707 :
648:2006/11/06(月) 23:14:51 ID:C+XSPbTQ0
FF8の作者さん、切磋琢磨って、イイ言葉ですね…。
オレのわずかないいところがあなたをレベルアップさせる
きっかけになれれば幸いです。
USAの作者さん、激しく同感です!
708 :
648:2006/11/06(月) 23:24:52 ID:C+XSPbTQ0
サブタイトル「ガーネット姫誘拐作戦、決行」は
「君の小鳥になりたいの#6」でお願いします。迷惑ばっかでホントすいません…
FF9 ガーネット姫、逃亡#1
「ちょろいもんだぜ!」
プルート隊の格好をした男が言った。中身はブランクだ。
足元にはパンツ一枚にされた二人のプルート隊員。死んだように動かない。
「おいブランク、このメットちょっとニオウぜ」
ジタンがメットの臭いに耐えかねて、顔をしかめている。
ブランクがそれがどうした、と言った様な顔をしながら
「それを言うならな、俺のメットなんかちょっとじゃなくて凄くニオウし、アーマーのサイズは
合ってないし、背中のあたりが何だかカユイし、ブーツなんか湿ってるし、
グローブはヌルヌルするし、ポケットの中にはビスケットのカスがたまってるし……
ああ、何でオレがこんな格好をしなきゃなんねえのかなあ。
ほら、オレってさあ、その懐の深さがそうさせちまうのか、何でもホイホイ
安請合いしちゃうナイスガイじゃん?それはオレも誇りに思ってるし、いいことだとは思うんだ。
でも、その勢いのまま流れに乗っちゃうとすんごい後悔するときがあるのよ。
それが今日であってさ、そんな、オレが歯喰いしばってがんばってる中、それを何?
お前はたった一回、しかもちょっとメットがニオっただけで
それを押し付けようとするわけ?ひどくない?なんだよそれ。」
物語始まって以来の長いセリフでグチった。
何故、メットの臭いを指摘しただけで、ここまで言われなければならないのだろうか。
ブランクはまだ言い足りないのか、
「ジタン、聞いてるのか?」聞けというほうが無理だ。
当然途中から聞き流していたジタンは、
「あぁ、アレか、アレはたしかにうまいよね、うん。」
ひどく適当な返事でやってのけるのだった。
709 :
648:2006/11/06(月) 23:30:12 ID:C+XSPbTQ0
ちなみに、今回の新作は最近じゃ一番上手く書けたんじゃないかと思います。
これでまだ評価が悪かったら、本気で出直す必要がありそうです……。
FF9 ガーネット姫、逃亡#2
ジタンとブランクはプルート隊控え室を出て、小さな通路に立った。
ブランクがぐるりと半円を描くようにして二階に上って行く、その階段を指して説明を始める。
「事前の調査によるとだな…、この階段の上に、王室の観劇席があるらしいぞ。」
「ああそう、で?」
「“で”?“で”? この期に及んで“で”だと?
あのなあお前、オレがせっかく親切で教えてやってんのに“で”ってなんなの?
オレの親切心、泡に返して楽しい?
“趣味・人の心をないがしろにすること”ってどんな変態だよ、お前。
まあ、オレはお前ならいつかはやると思ってたわな。大体お前は……。」
ミヒャエル・エンデ「はてしない物語」より果てしなく続きそうなブランクの愚痴を
遮るべく、ジタンが口を挟んだ。
「ブランク!芝居が終わらないうちに、さっさと仕事済ましちゃおうぜ!」
「おおっ、そうだった。よし、行くぞ!」
ジタンが先頭に立ち、ブランクが後を追う形で、二人は階段を上っていく。
先頭に立つジタンが階段を上りきった、そのとき。
「あの……。道を譲ってくださらないかしら?」
ジタンの前に立っていたのは、白いフードを目深にかぶった女の子だ。
顔はよく見えないが、華奢な体つき、丁寧な口調からは育ちのいいお嬢様を思わせる。
ジタンは顔をチェックしようと、フードの中を覗き込んだ。
「あの……。急いでいるので、失礼してよろしいでしょうか?」
フードに隠された顔にハッとして、女の子を引き止めるジタン。
「ちょっと待った!」
710 :
697:2006/11/07(火) 17:58:39 ID:UcUojs2qO
USA 序章 勇者の誕生#4予言
地震は少し止んだ様だ。
俺は一息つこうと道具袋からポーションを一瓶取出し飲み干した。
ポーション・・・これが有れば飢えも渇きも解消できる、つまり体力回復ができる旅の必需品だ。
俺は道具袋からもう一瓶取出し子供に勧めた。
「いいの?」
「遠慮すんな、飲め。」
俺は老人の方に駆け寄った。
「爺さんも飲むか?」
「いや、いらん。ところで若いの、あの塔が見えるか?」
俺は老人が指差した方をみた。
「あれは・・・」
「あれがこの災いの源、闇王ダークキングの住まう塔・・・フォーカスタワー。」
俺は息を呑んだ。目に映ったのは果てしなく高き塔だった。
「古の戦いで封印したが・・・奴め、クリスタルの力を奪って復活しようとしておる。」
「村を沈めたのはそいつか!」
「左様、奴が蘇る時封印されていた災いが世界に降り注ぐのじゃ。・・・このままでは奴は完全に蘇り・・・世界は滅ぶ・・・」
「一体どうすりゃいいんだ・・・」
「わしはダークキングを再び封印する勇者を探しておったが・・・お主にその素質がありそうじゃ!」
「俺に?おい爺さん、冗談は顔だけに・・・」
しとけよと俺が言おうした時さっき助けた子供の悲鳴が聞こえた。
俺は慌てて振り返りそして血の気が引いたような気がした。
視線の先には牛型の魔物がいたのだ。
711 :
697:2006/11/07(火) 18:29:48 ID:UcUojs2qO
USA 序章 勇者の誕生#5勇者任命
「ベヒーモスじゃ・・・」
俺は腰の鞘から愛用のミスリルソードを取出し、いま老人にベヒーモスと呼ばれた魔物に切り掛かった。
「爺さん!ガキを頼む!」
俺はベヒーモスの気を自分に引き付ける様に攻撃しながら叫んだ。老人は子供をベヒーモスの周囲から引き離し岩影に隠れた。
ベヒーモスは完全に俺の方に興味が出たらしく俺に向かって突進してきた。速度がありながらも簡単な攻撃を避け後ろの方から俺は切り掛かる。
ベヒーモスは堅い装甲を持っているが、首回りや後ろ側など装甲が付いてない部分を狙って攻撃すればダメージを与えられる、そう確信した俺は避けては切る、避けては切るの繰り返しで確実にダメージを蓄積していった。
そしてベヒーモスの動きがかなり鈍ったところで、
「終わりだ。」
俺はべヒーモスの背に乗り首に剣を突き刺した。
「ン、モォーーーン!!」
ベヒーモスの断末魔は丘に響き渡り、ベヒーモスは息絶えた。
ベヒーモスの首から剣を引く抜くと岩影から老人が拍手しながら出てきた。
「ほぅわしの勘は当たっておった様じゃ。」
「勘だって!?」
俺は呆れてしまった。
「とにかく俺には勇者の素質があってダークキングを封印することが出来るんだな。」
「まぁ慌てるな、素質があってもお主には経験が無かろう。・・・そろそろこの丘も限界みたいじゃ、麓の森で落ち合おう、詳しくはそこでじゃ。」
「まて。」
俺は老人を引き止めた。
「なんじゃ」
「このままこのガキを安全なところに連れてってくれ。・・・天国とかは無しな。」
「わかった。」
老人は子供を雲に乗せると、飛び去っていった。
「まってろよ・・・ダークキング。てめえに世界を滅ぼす前に俺がてめえを滅ぼしてやる!」
俺は運命の丘を降りていった。
713 :
697:2006/11/08(水) 22:58:14 ID:fx+T2IeWO
とりあえずUSAの方も一応リレー方式をとります。(やってくれる人がいれば)
章毎のサブタイトルは
一章 枯れた森(麓の森から土のクリスタル復活まで)
二章 凍り漬けの町(フェイ加入から水のクリスタル復活まで)
三章 燃え上がる火山(ファイリアから火のクリスタル復活まで)
四章 吹き荒れる風(つり橋から風のクリスタル復活まで)
最終章 光と闇(ウィンディアから最終決戦まで)
の予定です。
ちなみこのUSAはかなりオリジナルが入っています。
てか最初からオリジナルだし。
俺が飽きるまで頑張りたいと思います
>697
一人称小説では、地の文=主人公の独白、ということになる。
しかし、君の文章は三人称小説の「彼」を「俺」に置き換えただけ。
一人称小説の利点を活かしきれていない。
地の文をもっと主観的表現にするといいよ。
715 :
697:2006/11/09(木) 18:34:21 ID:6fRj2NyGO
>>714 ご指摘ありがとうございます。
只、自分は学習能力がないのでまた同じような指摘をされると思いますが、今後もよろしくお願いします。
USA 一章 枯れた森#1失われた緑
運命の丘を降りた俺は、麓の森まで来ていた。
しかし、これは森と呼べるのか?
なんというか・・・枯れている。
木には花も実も葉っぱも付いていねえし、妙に細い。
落ち葉も土に還る気配が無え。
あの爺さんを待っていると、どこからかゴブリンが現れた。
俺は剣を抜こうと思ったがどうもこのゴブリン様子がおかしい。
ゴブリン達は本来肉食のはずなのに今俺の目の前にいるゴブリンはよほど腹が減ってんのか落ち葉をくってやがる。
俺の視線に気付いたのかゴブリンは死にかけにもかかわらず俺に襲いかかってきやがった。
俺は攻撃を避けて抜きかけた剣を抜き、ゴブリンを斬った。
なんともあっけねぇ。
ゴブリンはその一撃だけで死んじまったみてぇだ。
「どうじゃこの有様は」
いきなり声がしたので振り替えるとあの爺さんがいた。
697氏と区別しやすいように名前を変えました。
>>697セリフもほとんどオリジナルですか?
セリフ回し、結構面白い表現が多くて気に入ってます。
久々に新作投下です。以下、2レスで
「ガーネット姫、逃亡#3」としてください。
ジタンの声に気づいて振り返る女の子。端正な顔立ちの横顔が、わずかに覗けた。
「わたくしに何か御用ですか?」
「いや、その……。実はアナタがね、先週送ったあの、懸賞ね。ガム一年分。
それが見事当選したので、ご報告に来た次第であります。
あの、やっぱり目立つハガキっていうのは選者の目に付きやすいんですよ。
アナタだけですよ。ハガキを蛍光ペンで装飾したりしてたの。
よっぽど欲しかったんですね、ガム一年分が。」
「そんな覚えはありません。どういう口説き文句ですか。」
「じゃあ、話題を変えよう。そうだな、たとえば……。オレ達どっかで会ったことないか?」
「いえ、わたくしは……。」
「そうかなぁ……。いいや、オレがこんなカワイイ子見逃すわけがないぞ」
そう言ってジタンはまた、まじまじと女の子の顔を覗き込む。
顔を見られたくないのか、あせる女の子。
「やべえな……、まだわたくしがガーネット王女ってバレるわけにはいかねえんだけど」
ジタンは我が耳を疑った。いや、この女の子がガーネット姫であることは
カンの鋭いジタンなら最初から気づいていた。問題はその周辺の、
“やべえな”だの“バレるわけにはいかねえんだけど”の辺りの発言だ。
これが本当にあのガーネット姫の発言なのだろうか?
いやいや、まだ“わたくし”の辺りに理性が感じられる。と言うことは……?
考えれば考えるほど、ジタンの頭はこんがらがっていった。
そして、しばらく考えた後
「今はそんなことを考えている場合ではない」という結論にたどり着いたジタン、
「なあ、ひょっとしてキミは……」と、女の子に語りかけた。
しかしさっきまでいたはずの女の子は「いなくなってるよこれが!!」
「おい、うるさいな。何があったんだ」そう言いながら、階段をのこのこ上ってきたブランク。
なにやら上機嫌の様子で、普段は引き締まった表情も、今はアホみたいにだらしない。
もしこんな顔の動物が野生に放たれたら、他の肉食動物に喰われるのに2秒とかからないだろう。
この手のアホは死んでも直らず、食物連鎖の輪に巻き込まれた瞬間も
「喰われちゃったよ〜ン」などと言っては、またアホな表情で天に召されるのだ。
ジタンが“お前何してたんだ”とでも言いたそうな様子で尋ねた。
「ブランク、さっき女の子が階段降りていかなかったか?」
「ああ、あの。白いフードを被った子だろ?
フードで顔隠してたけど、よく見ると可愛かったな、うほほほほ」
「ほほほほって、オカマかお前は!バカ!あの子がガーネット姫だ!」
「なんですってェ!」
人がよく、ノリもいいブランクは、例えその気がなくてもその場のノリで
そう言ってしまうのだった。
>>697アドバイス、早速取り入れてるね。でも、今度は意識しすぎw
口調じゃなくて、「自分が主人公だったらその状況をどう読み手に説明するか」を
考えてみるといいかも知れないです。
同じく一人称のFF8とは違って結構フランクな主人公だから読み手に話しかけるのも面白いかも。
ヘタクソが余計なお世話スマソ(他の皆さん、オレのアドバイスが間違ってたら指摘してください)
では、お互い頑張りましょう!
FF9 波乱万丈伝 ゾーン&ソーン#1
二人は双子のアレクサンドリア宮廷道化師。名前はそれぞれ、ゾーン、ソーン。
「大変でおじゃるよ!」「大変でごじゃるよ!」
ゾーンの口癖は「おじゃる」、ソーンは「ごじゃる」。
ちなみに、「おじゃる」は「尾JAL」と変換されるのがうざったくてたまらない。
「一大事でおじゃる!」「ブラネ様に怒られるでごじゃる〜!!」
二人は今年で米寿(べいじゅ)。立派なおじいちゃんだ。孫ももう四人いる。
「急ぐでおじゃる!」「急ぐでごじゃる!」
二人がアレクサンドリア城に宮廷道化師として招かれてから、もうかれこれ60年以上になる。
しかし、そのキャリアの三分の二以上を先輩道化師の前説として過ごしてきた。
こき使われ、お前らじゃ客が入らないとなじられ、さんざん罵倒されてきた。
悔しさで眠れない夜など、それこそ数え切れないほどあった。
そんな二人にチャンスが巡ってきたのは、15年前のことだ。
あの憎かった先輩道化師が病気で倒れたのだ。
二人は自分たちの時代が来ることを確信していた。
しかし、アレクサンドリア城の人々の視線は厳しく
「どうする?ドビュッシーさん倒れちゃって。あの人、ステージに上がれば
必ず笑いを取ってたからなあ…。」
「あれがいるじゃん。ほら、なんてったっけ、あの双子。」
「ああ、あれか…、ゾーンとソーン。
でもあの二人、あれでドビュッシーさんより年食ってんだぜ。もう引退じゃね?」
「まあ、でも、事態が事態だからさ。」
「でもオレ、あの人達の演芸で笑ったことないんだよね。センスが古いって言うか。
野球部の部室とかにいた方が、まだ面白い会話が聴ける気がする。」
「………。まあ、オレも笑ったことないけどね。」
裏でそんな冷ややかな会話が交わされてるとも知らず、二人は年甲斐もなくハッスルしまくった。
「ぬょ〜ん」「てぃひ〜ん」「あぱぁ」など、彼らを代表するギャグを舞台で連発した。
スタイナーのヘタレエピソードでもちょっとアレだったが、
>>「やべえな……、まだわたくしがガーネット王女ってバレるわけにはいかねえんだけど」
おれは限界だと思った
>>721 同意。
他の箇所も含めて、悪ふざけが過ぎる。
NG登録させてもらった。
スタイナーの件は旅をする中で彼が「妄信」から脱却する様子を目立たせるために
わざと滑稽にしたのかなと好意的な見方で読んでたけど
ガーネットの言葉遣いは今後ダガーになる時の訓練のところで恐ろしく矛盾しそうだな
FF9ノベライズとしては読めなかったけど表現は面白いっちゃ面白かった
個人的にはこれ以上読みたいとは思わないけど書くならがんばれ
まず、私の書いた文章のせいで気分を害した全ての人に深くお詫び申し上げます。
>>721すみません。全て書いてる途中のノリでセリフを考えてしまった
私の責任です。
>>722オレは荒らしたいために話をいちいち考えたりしません。
たとえあなたがどんなクレームを持ってきたとしても
真摯に対応しました。断言してもいいです。
わかったら今後、勝手な真似は控えるように。
>>723続行は無いと思います。
非難されながら書くのはやっぱ嫌だし、
需要と供給があってこそボランティアも成り立つと思うんで。
オレの文章を楽しみにしてる人はたぶんもういないです…。
最後に、FF9をこれから書こうとする人達へ。
私の存在は忘れて最初から書いたほうがいいです。
というか、是非そうしてください。
このスレで私が書いたFF9のキャラは私にしかわからない部分が
多分にあると思うので…。
スレ汚し、本当に失礼しました。それでは。
726 :
697:2006/11/10(金) 20:39:47 ID:wLY+f/R9O
>>754 待ってくれ。
だったら、もう一回書き直せばいいじゃないか。
悪いと思ったとこ直してさ。
一緒に盛り上げようって誓っただろ。
俺も今からこの間投下した一章を書き直す予定だ。
あれは失敗したから。
俺9やってないけど、悪ふざけしているとこ以外は結構いいと思った。
長文スマン
727 :
697:2006/11/10(金) 20:41:17 ID:wLY+f/R9O
>>648氏
もう少し言葉を選んだほうがいいよ。
あなたの様にこまめにレスをする場合、レスの内容で読者に好意を持たせて
未プレイの読者が作品読むきっかけを作ることもできるし、逆もまた然り。
些細な事だけど読み手に与える作者のイメージは意外と重要だと思う。
小説は投下後半は読みやすくなってきてたから
もしいつか書くことがあればこの調子でスキルうpしつつ頑張ってください。
729 :
697:2006/11/10(金) 23:33:41 ID:wLY+f/R9O
>>715の文を訂正したのを投下します。
USA 一章 枯れた森#1麓の森
俺は運命の丘を抜け老人が言っていた麓の森に向かう。
麓の森と言う位だから、丘を降りてすぐに見える森に向かえば良いわけだが今目の前に見える場所は森なのだろうか?
何というべきだろう?
俺の頭で思いつく言葉は「この森は死んでいる。」
木には冬でもないのに葉っぱが全て落ちている。
かといって落ち葉がどっさり落ちているわけでもない。
俺は近くにあった木に触れてみた。
木は触れただけで折れた。
断面をみると、スカスカで触れただけで折れた理由がよく分かる。
しばらく歩いていると遠くにゴブリンを確認した。
見たところ餌を探しているようである。
剣を抜き少しづつ接近しているとゴブリンの様子がおかしなことに気付いた。
そのゴブリンは痩せて頬が痩け、栄養失調みたいになっている。
いや、みたいではなく、完全に栄養失調である。
ゴブリンは俺に気付くと接近してきたが途中で息絶えたのか倒れてそのまま動かない。
近づいて改めて確認するとやはり死んでいた。
フォレスタは緑が美しい場所と聞いていたがこれはとても美しいとは言えない。
俺はここはフォレスタではないという錯覚すらした。
どうでしょうか?
>>728本当に申し訳ない…。
>>724-725はもう書き込むこともないと思って
半ば投げやりに書いたレスです。
さっきの態度も含めて、しばらく反省する必要がありそうです。
というわけで
>>697氏、また参加するきっかけがあればよろしくお願いします。
あなたのレスを発見したとき、ホントに目頭が少し熱くなりました
>>FF9担当648
要求に応じて書くのではなく、そもそも「書きたい」っていう意欲がないなら投下は辞めた方が良い。個人的な意見だけど。
自分でも気付いている通り、投下に対するリスクは自分自身が全て背負い込むことになるから。
それと需要と供給で成り立つのは市場原理、ここは市場じゃない。
だからこそ良い作品が読めると思って来てるんだけどね。
書き手もそうだと思うけど、読み手も相当マジメに読んでるよ。自分の好きな作品ノベライズの場合なんかは特に。
今はたぶん批判意見に対して感情的になってるだろうから、何を書いても聞く耳持てないだろうけど、
少し冷静になったらレス読み返してみ? 皆ちゃんとヒントくれてるから。
それができなきゃここで書くことは潔く諦めた方が良い。これ煽りじゃないからな。
お節介な長レス失礼。
>>FF8
文章はうまい。しかし、バトルの途中で切って、小出しに投下するのはどうかと思う。
リレーされないための措置なのかもしれないが、つながりが把握しづらい。
決着がつくまでひとととおり書き終えて、まとめて投下するようにしてほしい。
>>FF9
原作ファンにとってみれば、お気に入りのキャラがきちんと描かれていないことに違和感を抱く。
ダメキャラや三枚目として笑いのネタにされては、反感すら抱くことになる。
オリジナルな性格付けは必ずしも歓迎されるものではなく、非常にリスキーなものだと知ってほしい。
>>USA
正直最初のころは薄っぺらい文章だと感じていたが、徐々に良くなっている。
>729あたりは一人称小説としての体裁を充分保っている。
これからの展開同様、文章の上達ぶりを楽しみにしている。
733 :
697:2006/11/11(土) 12:30:58 ID:kYVwioC1O
>>732 アトバイス有難うございます。
USA 一章 枯れた森#2失われた緑
空を見ると空が茜色に染まっていた。
こんなところさっさと抜けたいが、老人との約束があるので俺は動けない。
仕方ないのでテントを破って野宿することにした。
おそらくこの森での食料確保は出来ない。
腹も減ってなかったので、すぐに寝ることにした。
今日はなんか色々あった。
日課で書いている日誌を書きながら今日あったことを思い出す。
気付くとテントの前に人影が見えた。
テントから出て確認するとそこにはあの老人がいた。
「ほっほっほ、待たせたのう。」
「そんなとこにいたのか。で、どうすりゃ良いんだ?」
「・・・まずはクリスタルについて教えようかのう。まずこの世界には四つのクリスタルがあるんじゃ。それぞれ、土、水、火、風を司るクリスタルがな。
それらはフォーカスタワーを中心として四つの地方に分けて存在しているのじゃ。そして、ここフォレスタには土のクリスタルがある。それぞれのクリスタルには【力】がある。
土のクリスタルの【力】は【生み出す力】じゃ。闇の力は言うならば【マイナス】じゃ。ダークキングは全てのクリスタルに【マイナス】を加えておるのじゃ。」
「+×−=−ということか?」
「そうじゃ、クリスタルはいま【マイナス】となっておる。【生み出す力】の【力】を持っている土のクリスタルは今逆に木々や人間、果てには魔物の力すら奪っておるのじゃ。そこでお主、【光の勇者】の出番じゃ。
【光】はクリスタルにとっては【プラス】、【闇】にとっては【マイナス】じゃ。」
「じゃあ土のクリスタルのところに俺が向かえば良いんだな。」
「待つんじゃ、お主だけでは無理じゃ。」
「なんでだ?【光】はクリスタルにとっては【プラス】なんだろ?」
「【心】が無いんじゃ、土の【心】を持った、【土の戦士】がの。」
「誰なんだ、【土の戦士】ってのは?」
「わしも知らん。わしは【光の勇者】に道を教えるだけじゃ。その道でお主が何しようが勝手じゃ。一緒に土のクリスタルを【プラス】に変えた者が【土の戦士】なのじゃ。【光】だけではクリスタルを【プラス】に変えることはできん。
ともに戦う仲間を探すのじゃ・・・。」
734 :
sage:2006/11/11(土) 12:40:54 ID:kYVwioC1O
USA 一章 枯れた森#3ヒーローオブザネーム
「そうそう、名を聞いてなかったな。」
「俺の名は・・・ザッシュ。」
「ザッシュか・・・いい名じゃ、わしはホワイトじゃ・・・」
そういうと老人・・・ホワイトはどこかへ飛び去っていった。
俺は明日に備え、早めの就寝をする。
明日には町に向かい仲間を探そう。そう日誌に書き込むと寝床に入り込んだ。
735 :
648:2006/11/11(土) 17:47:19 ID:gSxInImi0
上手く書けるかわかりませんが、一日かけて整理した自分の考えを
レスしたいと思います。
まず、今までのノベライズの続きですが、これはもうないです。ハイ。
他のFF9を愛する人達にあまりに失礼なことをしたので…。
もし、今後書くとしたら1からやり直したいと思います。
今は、ファンも、やったことのない人も、一回やったきりという人も、
誰もが納得でき、なおかつ楽しめるような文章の書き方を模索してます。
高すぎる理想だとは思いますが、ゆっくり時間をかけて探すつもりです。
もうしばらく、
>>648の存在を記憶に留めてやってください。
736 :
648:2006/11/11(土) 18:26:54 ID:gSxInImi0
>>731ようやく今、「書きたい」という気持ちは初投稿時の頃に
戻りつつあります。再び投稿できるかどうかはわかりませんが…。
とはいえ、
>>697氏のレスに心打たれたのは確かです。
>>732キャラに対して自分の持っているイメージを
全ての人が持っているとは限らないということが、
今回身に染みてわかりました。
今後書くことがあればその点に留意したいと思います。
それからFF9のノベライズをしようとする人達へですが、
やはり最初から書いてください。
書いた自分自身が続行不可能な状態なので…
最後に、私の文章に目を通してくれた人、
20分足らずでオレを引き止めてくれた
>>648氏、
オレの駄文にアドバイスを下さった人達、ありがとう。
この一件で気分を悪くした全ての人々に深くお詫びします。
737 :
648:2006/11/11(土) 18:31:17 ID:gSxInImi0
最後アンカー間違えた。
>>697ね。
自分に感謝してどうすんだw
いいオチもついたところで、失礼します。
保守
>>697 おもしろくなってきた。イイヨイイヨー!
保守
保守
ほ
743 :
697:2006/11/19(日) 11:12:43 ID:jUxv2syUO
大変なことに気付いた。
USAじゃ【土のクリスタル】じゃなくて【地のクリスタル】だった・・・
まとめサイトの人、修正キボン。
とりあえず学校の文化祭がありましてそれの準備の方が忙しくこちらに来られなかった事を深くお詫びします。
USA 一章 枯れた森#4放浪の勇者
夜明けに出発した筈なのに、日が大分昇っている。
地図を見ながら進んでいたが・・・
「もし、そこの若いの。」
老人に呼び掛けられた。
「なんだ?爺さん」
「ワシはのう自分の町に帰りたいんじゃがの・・・ほれ、あの岩が邪魔してのう・・・すまんが退かすのを手伝ってほしいじゃ。」
老人の後ろを見ると結構な大きな岩がある。
だが二人なら押せそうな大きさだ。
数分後・・・
「なんとか、通れそうじゃ。」
「なんでまたこんなとこに岩が・・・」
「いやぁ、わしが町に魔物が入らないようにバリゲート代わりに置いたものでのう。」
「そんで、置いてみたら自分が通れなくなったと?」
「そうじゃのう。」
「はぁ・・・ところでこの先に町があるらしいが案内してほしいんだ。」
「そうじゃのうこんなとこで立ち話もなんじゃ。」
俺は老人についていく。
そして・・・
「ここが・・・フォレスタの町じゃ・・・」
メモ帳に数レス分書き溜めて
一度に投下したほうがよろしいかと
>>697 情景描写が甘すぎる。
画面見ながら読んでるわけじゃないから、もう少し映像を文章にする努力をしてほしい。
書く前にまず読書すべきかと思われ。
それからある程度の量を書いてからまとめて投下した方がいいのは
>>744に同意。
エロパロの方でも言われてたろ?覚えてる?聞く耳持たない?
746 :
697:2006/11/20(月) 06:10:10 ID:2iwzLvV7O
>>744>>745 すまない・・・
ちょっと気がゆるんでいたみたいだ・・・
もう少し文章を推敲してから投下します。
さっきのは無しの方向で。
このスレって本編のノベ化メイン?
まとめサイトにサイドストーリー的な作品もあったけど
オリジナルはあまり好ましくないのかな
絶対駄目ってわけじゃないけど、やるなら他所のほうが向いてるって感じかな
もしサイドストーリー的なものを書くことを考えてるなら、他のスレに投下したほうが多分喜ばれる
SSスレってどこも過疎ってるからさ
うーんそうなのか
とりあえずここの板の探してみたけど、貼るにはちょっと趣向が違うみたいだ
ちょいと他のトコ逝って探してみるとするよ
ここでいいじゃん
千一夜スレは見た?
オリジナルならそこが一番趣旨に近いと思う
このスレでこういうやり取りするのはもう三回目ぐらいだな
最下層
754 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/23(木) 23:40:47 ID:WMc7fZ7P0
わちゃ
VIPじゃないんだからsage関係ないのでは?
という保守
まだ容量あり?
363kb
まだ行けそう。460で次立てるにしてもあと100はある。
ほっす
759 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/27(月) 23:08:31 ID:HB12NQ9n0
ところで、これってリレーなの?
それとも同じ人の連作なの?
自分も書きたいが、誰かの続きじゃなく始めたいんだが、そういうのはいいの?
>>759 原則リレー。
既にノベライズが進行中の作品を最初から書き直すのは御法度。
自分で始めたいならまだノベライズされていない作品を選ぶのが宜しいかと。
>>759 もし書きたい作品が既にここで小説化されてたら、
恋する小説スレか千一夜スレに投稿するといいんじゃないかな
もうまったく進行しなくなった(誰もリレーしない、最初書いてた人も全然現れない)
状況なら、新規に始めてもいいとは思うけど、どれくらいの時間が経てば
それが認められるかの判断が難しいね
763 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/28(火) 22:42:02 ID:+QrlfacQ0
>>760〜2
そうなのかー、ありがとうっす。
FF9書きたかったなー。
構想は出来てたんだが。
>>763 9なら別に新しく書きはじめてもいいと思うけどな。
前の人、もう散々叩かれてたし、もう書かないでしょ。
あと、sageてね。
765 :
648:2006/11/28(火) 23:14:17 ID:vviDJLeh0
よかったら最初から書いてくれないか。
オレのFF9はあまりにアレだったんで…
もしずっと書き続けるならオレは静かにこのスレを去ります。
766 :
648:2006/11/28(火) 23:23:22 ID:vviDJLeh0
>766
リレーなら参加するってのか?
おいおい勘弁してくれよ・・・
あとリレーが前提というのは確かにそうだけど
それは「一人がずっと続けるのは無理だから」
という配慮から生まれた前提だから、一人でずっと書けるというなら
それは別に問題ないですよ。
一人でずっと書けるというなら、の話だけどね
こんばんは、759〜763です。質問。
大筋以外、ゲームのフラグや進行に忠実でなくてもいいかね?
また小説化する上で適切と思われる改変を幾つもするつもり。
例えば鳥頭やカバ頭といった獣人は出さない等。(ネズミやク族除く)
またエピソードが前後したり、まったく削られる可能性があることも予め明記しておく。
余りにゲーム的と思われる設定の諸々も筆者の独断と偏見で変えていくし、キャラの喋りや
容貌・設定もそれに伴って「小説版」として変えていくつもり。
ゲーム・マンガ的というより童話的な語りを目指したい。
そういう前提を理解してくれるなら心安んじて書けるけど、駄目なら諦めますね。
例えばの話に突っ込むのは野暮かとも思ったんだけど、
獣人は色々と多種多様に出してほしいなあ<FF9
確か、ストーリーの根底にある設定にも絡んでたよね、獣人が多い理由
FF9は特に世界観とかを大切にしているファンが多いから、改変に対しては
大小あれども多少の反感は出ると思う
というか、どこをどう変えるのかわからないので、一概に「改変OK」なんて言えん
他のシリーズにしてもそうだけど、説得力のある改変なら読者はついてくるだろうし、
そうじゃないなら反発するんじゃね?としか、言えないと思う
>>771 ストーリーの根底にそんな要素が絡んでいたかは知らないし、シナリオの
"魂入れ替えによる目に見えない侵略"という部分にとって、削るのは何の
問題もないと思うのが理由の1。命の多様さは別の表現が出来ると思う。
「生きると言う事は?」と「何故命が大事なのか」はゲームとは別の答え
を用意しているため。獣人の要素はほぼ絡まない。
もう一つは人の身体に無節操に動物の頭が乗っかっている存在に馴染めな
いのが理由の2。寓話以外であんなものをファンタジーだからという理由
で認められない。メルヒェンなら話は別だが。
ただ明らかに人間ではないバクー一座の構成もあるので、無理のない範囲
で「人間でない種族」は用意できると思うし考えている。
異人種はFFでいえば11のような表現になると考えてほしい。
またゲーム劇中明らかに文明度の不均衡があったので、そういう部分は削
って行こうと考えている。飛空挺はあるが、庶民の足になるほど一般的で
はない。庶民は空を見上げ、憧れ、恐れてもいる存在として描こうと考え
ている。実際、飛空挺レベルのエンジンがあるなら、普通は車を作るだろ
うが、それをすると世界観が壊れるためにそう組みなおした。
通常牧歌的な面を前面に押し出して書こうと考えているので、それに関連
する処置と考えて欲しい。
はっきりいえば自分は7・8・10・12の機械が氾濫するFFのアンチであるから。
他にも色々理由はある。少なくとも文章にするのに、ただゲームをなぞろうと
は考えない。ゲームと文章では登場人物の動機や関連付けが異なる流れになるの
は、ままあることだから。
>>772 このスレの住人の好みは基本的に原作に忠実
なおかつそこに、オリジナルのサブストーリーや心理描写などを加えたものだと思う
話を聞いた感じのあなたの作品だと、バッシングを受けるかもしれない
それでも書いてくれるのなら私は大歓迎します!
>>772 あなたの熱いこだわりはわかった
が、ゲーム原作のノベライズで、あんまり作者の主張が強すぎるのもどうかと思う
ある程度の個人的解釈が混じったり、ストーリーを円滑にするためのオリジナル要素くらいは
別になんとも思わないんだけど
書き手の個性がゲームの雰囲気より上回っていたら、ノベライズの領域を出ちゃわない?
……と、思う人間もいるわけなので、反発を受けるかもしれないという覚悟はしてほしい
その上でやり通すかどうかは、あなたの決めることだと思う
ノベライズということを切り離し、新解釈のFF9って形で見るなら、あなたの構想も
興味そそられるんだけどね
とにかく一度書いて見せてみるのが一番良いようですな。
だが"小説化"といえば、それはどう考えたって書き手に影響されるものだしその意思の下に置かれるものだと思う。
なぜなら原作は台本じゃないからだ。(そして恐らくこれが貴方のいうノベライズだと思う。台本としてのFF)
だが物語として文章に直すには劇中の振る舞いやセリフ以外の身振りや外的、内的描写が多くなり、結局これが
"ゲーム本編"から"小説"が離れていく一因となる。そうしたときゲーム上では自然だったり、とりとめて気にしな
かった背景や設定が、俄然色を帯びたり、あるいは作られたり、或いはそれを描写すると実は世界観にそぐわない
ものだったと解る時が必ずでてくる。そういう時は敢えて原作を無視したり削ったりしなきゃならないだろう。
だから、一応「みんなの心の中にあるそれぞれのFF9にはならないよ。」と注意したのだ。
とはいえ自分のやり方は天野氏や坂口氏の意向に十分沿ったものだと思う。
なぜなら二人は「天野氏の絵を見て想像を膨らませ、其々の解釈が出来たところでゲームに触れて欲しい」と
言っているからだ。ゲームそのものはユーザーの叩き台と明言された。(2000年・Vジャンプ緊急増刊より)
どんな"メディア化"でもそうだが原典は叩き台にしかならない。でもファンの多い作品はそれぞれ独自に
心に描くものがあるが、それを反映するのは不可能だ。
だから結局「これが私の"小説版"です」と言うしかないし、予め注意をしておこうと思ったのだ。
つまり新解釈ではなくあくまで私が書いた「小説版」。もっとも自分がFF9の世界をFF7みたいな世界に改変し
たら新解釈と言えるだろうが。自分としては多数の目と価値観にじかに触れる場所なので批評・批判の覚悟はある。
ただ書いた後で「これは自分のFF9ではない」と言われても様々な理由から貴方のFF9は割愛させてもらってますよ
と予め宣言しておく必要があると思ったのだ。
>>775 そこまで決心ついてるのなら、書いてみてください。
というか書いて欲しいです。
まさにコンセプトの「情熱あるこの板の住人〜」に当てはまる書き手
として。
wktk
とにかく、投下しようぜ
そんで、散々だったらやめりゃーいいじゃん
このスレには向かなかったねって事で
何人かファンがつけばOKなんじゃないの?
ファンがついたなら最悪の場合違うスレ立てればいいし
なんか、前にも1か2をやるっていって宣言だけ立派でそれ以降ぷっりな人もいたし
とにかく投下するのが大事だと思うよ。
誤変換ごめん
ぷっり→ぷっつり
ノベライズ化に伴いある程度の設定変更はやむをえないものだと理解しているが、
あくまでもそれは「原作の雰囲気を壊さない」範囲であるべき。
妙な創作心を出して、俺式解釈のノベライズを披露する勘違い野郎も時々見かけるが、
そんなのは個人のサイトでやるべきで、ここにはそぐわない。
個人の解釈の入ってないノベライズなんてありえない
ゲーム内で簡単にしか説明されてなかったところを世界観を崩さないように膨らませるならOKだと思う
でも、この設定や話はいらない・おかしいと切り捨てて自分で作った設定とか話をつっ込むのはノベライズじゃない
みなさん今晩は。FF9はお試しと言う事で序章を書きはじめましたよ。
とはいえ、今も会社からな訳ですが中々時間もありませんので推敲出来るかどうか。
うまくいけば遅くとも日曜日には掲載できるかもしれませんが、年末ですのでさもなければ
沙汰止みとなるかもしれません。
それと掲示板に小説投稿という経験はないのでお聞きしたいのですが、ここは一回の書き込みで
一行の文字数いくつ、行数は幾つ、総文字数幾つまで大丈夫ですかね。あとルビや圏点が生きるかも
お聞きしたいですな。ほかの送りなどはどうせ駄目でしょうから、取り急ぎこれだけ知りたいと
思うのですがね。
>>782 それは個人の解釈の相違なのでしょうが、余りにもゲームゲームしすぎた設定は切り捨てますよ。
例のハイパー化とかそういうものは(小説が続けば)一部例外を除いて一切出さないつもりです。
あと武器の類は殆ど変えないでしょうね。最初鉄の剣をもっていたら、基本的に全編そうなります。
細かい事ですが。
それでは失礼します。
>>783 掲示板に投稿した経験はないという話ですが、普通に小説を
書いたりはよくやってるんですか?
>一行の文字数いくつ、行数は幾つ、総文字数幾つまで〜〜
そこらへんは過去ログで他の人の見て研究すればいいんでないの?
【参考】
FFDQ板での設定(game10鯖)
http://game10.2ch.net/ff/SETTING.TXT 1回の書き込み容量上限:2048バイト(=2kb)
1回の書き込み行数上限:32行
1行の最大文字数 :255文字
名前欄の文字数上限 :24文字
書き込み間隔 :45秒以上
(書き込み後、次の投稿が可能になるまでの時間)
連続投稿規制 :3回まで
(板全体で見た時の同一IPからの書き込みを規制するもの)
1スレの容量制限 :512kbまで
(500kbが近付いたら、次スレを準備した方が安全です)
↑参考までに。
それから個人的な考えも書いておきます。大方
>>782と同意見ですが、
ゲームではセリフやイベント以外でもステータス画面で地味に語られる物語もあります。
ATBやトランスなど「システム」という、ゲーム独特の表現方法がノベライズした作品の中に反映されていると
読み手としてはニヤリとする要素になるでしょうし、逆にそう言う埋もれた要素にまで細かく配慮されている
作品が読める事を期待しています。ただ、これはあくまでも好みの問題になるのでしょうが。
ゲームを作る側の事は分かりませんが、少なくとも「システム」はFF各作品の世界観においてある程度の
意味合いを持たせている様に感じます。(クリスタルや魔石、マテリア、魔法装備など)
別スレでの話だったが、「トランス」のシステムをいい具合に取り入れた戦闘シーンに、
ものすごく感動したことがあったなー
ゲーム独特の表現方法を、どう小説の舞台に持ち上げていくかが書き手の腕の見せ所
家に着きましたよ。おお
>>787さん、ありがとうございます。
小説に限って言えば、自分は"ゲームの小説化"ではなく"映画やマンガを文章にする"レベルで考えていますので
クリスタルや魔石など、物語の主軸を担うような設定でもないかぎり、基本的に無視します。
あくまで大事なのはテーマだと思うので。
また単なるゲームの攻略ルートをなぞる攻略本とならないよう、登場人物の性格や個性や人生につっこんで
書くつもりです。その場合多くは小説内で新たに創作するしかない要素でしょう。他にも必要に応じてこうしたものを
加えるつもりです(劇中名前の無かった人物に名前、ある登場人物を補強するために新たに人物創作など、説明キャラや
引き立て役キャラのことだと考えてください。)
また童話的昔話的な作風でいきたいので、それに合いそうに無い物も独断と偏見で切り捨てます。
"キャラクター"といえば一部の語尾についても使わないつもりです。(おじゃる、ごじゃる、ブリ等)
さて、気に入ってもらえて続くことになるか、はたまた拒絶されて万回の罵倒のもと消えるのか。
ところで今、もしそこまで続けばですが黒のワルツ各自に名前を付けることも考えてますよ。1号2号とかでなくて。
これなんかは原作至上の方からみれば、許しがたい行為かもしれませんね。
御託を並べるよりも
書き手は作品で語るべきだ。
それが受け入れられるか否かは読み手一人ひとりによるだけのこと。
まぁ、読み物としての内容のない長文レスでスレを無駄遣いするなと
>>790禿同
とにかく楽しみにしてます。FF9は大ファンなので。
というわけで、できるだけ早く投下をお願いします
こんばんは、ID:HB12NQ9n0です。今帰ってきました。orz
風呂入って飯くって、それからです。日曜アップできるか少し怪しくなってきました。
日曜夜目標に、なるべく早く第一回をアップします。
逐一報告しなくてよろしい
>HB12NQ9n0
つ【チラシの裏】
期待保守
798 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/03(日) 23:52:54 ID:rmQ1GBtuO
真面目に不真面目
カイケツゾロリ
日曜日投下と言うから今日ならさすがにと覗いてみたら、まだだったのか。
FF8 第一章 SeeD-43
「すご〜い!やるぅ〜」
傍らにいるセルフィが感嘆の声を上げた。
ゼルの奴、ハッタリや虚勢などではなく、今まで本当に力を抑えていたというのか・・・驚きだ。
「どうやら貴様の言う通りらしい。私は貴様を過小評価していたようだ」
「わかってもらえて嬉しいぜ。さあ、行くぜ!」
「うむ、来い!」
両者が激突する。
空気を切り裂き、うなりを上げて繰り出される技の数々、そして、目まぐるしく入れ替わる攻防の数々。
なんて奴らだ・・・驚きを通り越して、俺は半ば呆れた。
二人が繰り出すのは、まともに食らえばKO必至の強烈な技ばかりだ。
なのに、どちらも大きなダメージを負うことなく、それらを見事にさばき、あるいはガードしている。
まさに一進一退、勝敗は容易にはつきそうにない。
「互角、か」
「そんなことな〜い!押してるよ〜」
思わず口をついて出た俺の言葉に、セルフィがすかさず応じた。
俺は改めてバトルを注視した・・・確かにセルフィの言う通りだった。
スピードは互角でも、やはり破壊力にはゼルに分があるのだろう、僅かずつではあるがウェッジが後退し始めた。
「いいぞ〜、行け〜!」
セルフィの声援に背中を押されるかのように、ゼルがさらにラッシュをかけていく。
じりじりと後退するウェッジ。
しかしその後退はやがて、背後の壁によって阻まれることとなった。
「さあ、追い詰めたぜ」
攻撃の手をとめて、ゼルはニヤリと笑った。
FF8 第一章 SeeD-44
「追い詰めた?それは違うな。私が貴様をここへと誘なったのだ」
落ち着き払った声でウェッジが返す。
「何言ってんだウェッジさんよ、この状況で何をやろうってんだい」
「こうするのだ」
ウェッジは壁に背を預けると、腰を低く身構え、気を練り始めた。そして・・・
「ハッ!」
裂帛の気合とともに、両の掌をゼルへと突き出した。
白く輝く闘気がウェッジの掌から放たれる。
「これは、百歩神拳・・・ぐわぁっ」
闘気がゼルを直撃し、ゼルはフロアの中央辺りまで弾き飛ばされ、そのまま床に叩きつけられた。
「この技、うかつに放てば反動で己が身も吹っ飛んでしまうのでな」
なるほど、それで奴は壁際まで後退し、それを支えとしたのか。
「とどめ!」
ウェッジはゼルに向かってダッシュすると、前方宙返りからの強烈な踵落としを放った。
「んなろ」
かろうじて寝返りを打つゼル。
ドゴン!!
数瞬前までゼルがいた箇所に、ウェッジの踵がめり込んでいる。
「百歩神拳とは・・・恐れ入っちまうぜ」
辛くも一撃を逃れたゼルが、苦しい息で言った。
百歩神拳、文字通り百歩の距離から相手を倒すという伝説の拳。
闘気を目に見えるまでに練り上げ、相手にぶつける・・・言葉にすれば簡単だが、
これを実戦レベルで体現しうる者など、存在しないと思っていた。
なのに、実際にこの目で見ることになろうとは・・・ウェッジという男、底が知れない。
FF8 第一章 SeeD-45
「貴様ほどの男、下手な情けは却って屈辱となろう。本気で倒す」
そう言うとウェッジは再び壁際まで後退し、百歩神拳の構えをとった。
ゼルは片膝をついたまま、 まだ立ち上がれない。かなりのダメージを負っているようだ。
「その様子では、次はかわせまい」
「勘違いすんな。状況は今でも俺に有利なんだぜ。アンタは壁際、逃げ場はないんだ」
苦しい息ながらも、ゼルが言い返した。
何を言ってるんだ、ゼル・・・俺は耳を疑った。
ウェッジに逃げ場がない?確かにその通りだが、この状況で奴に逃げる必要がどこにある。
奴には百歩神拳があり、その射程内にゼルを捉えているんだぞ。
百歩神拳を掻い潜り、奴に攻撃を加えることなど、今のゼルには不可能のはずだ。
「強がりはよせ。貴様はもう手詰まりなのだ。これで終わらせる」
ウェッジが気を練り始めた。
「手詰まりなんかじゃねぇよ。俺にだって飛び道具はあるんだぜ」
「なんだと?」
「食らえっ、バーニングレイヴ!!」
ゼルが渾身の力を込めて足元の床を殴りつけた。
ビシッ!
床に亀裂が生じた。亀裂はそのままウェッジに向かって疾走していく。
「なんと!」
亀裂は進むにつれてその規模を大きくしていき、ウェッジに到達する頃には巨大な裂け目となって、ウェッジを飲み込んでいった。
「ぐふっ、なんと・・・このような、技が・・・」
瓦礫の山に埋もれたウェッジが、切れ切れの息で言った。
「だから言ったろ、逃げ場はないって」
「そうだな・・・貴様の、言うとおり・・・わ、私の・・・負け、だ・・・」
言い残して、ウェッジは意識を失った。
乙
描写ちょっと淡白すぎない?
まあ誰でも最初はそんなもんだ。
ところでFF9はどうなった?
メモなどを取って一応書き進めてますよ。
ただ、此処暫く忙しいのであまり進んでませんがね。
言い出しの責任もあるので、せめて一言どうなっているのか書き込もうとも思ったのですが
チラ裏ともいわれるので控えてたのですよ。
昨日は0時過ぎ、今日はどうにか0時前。明日はもう少しはやく帰ってこれる予定。
それでは皆の衆。おやすみ。
ff8乙
百歩〜ってあったっけ?
なんかあの二人組みはへたれてた記憶しか残ってないw
ff9
なるほど、がんばってくれ
きたいしてるぜ
>>806 簡潔に『今は無理だが〇日以内には投下できる』とでも書けばいいのに、わざわざ長文にするな。常に容量との戦いなこのスレでは尚更。
ほう
言い訳+厚かましい
大昔に描いたのがしっかり保存されてるorz
なぜHB12NQ9n0は微妙に偉そうなんだろう……
HB12NQ9n0よ、煽り耐性が低すぎるぞ。
投下前からアンチ作ってどうする。
君の性格は、掲示板への作品投下に向いてない。
作品を見るまでは分からない。
個人的にID:HB12NQ9n0は結構良い文章を書いてくれるんじゃないかと期待してる。
>>790に概ね同意だけど、多少の意見交換は見てて面白いから良いような気もする。
できれば投下された作品から発展する形だと理想的かなと思うけど、とりあえず書くのがんばれ。
816 :
sage:2006/12/08(金) 02:04:54 ID:qSsUrhbs0
>>813供給する側が上だ、と言う意識があるからだろう。
いちいちHB12NQ9n0につっかかる奴もうざいな。
いつもは過疎なのにこういう時だけ書き込みしてんじゃねーよ
TAクリアしたら書きたくなった。
未出だよな?
819 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/09(土) 00:30:01 ID:Qb/MONUe0
供給する人ガンバ!
こんばんわ。
>>606です。
FF6の続きを書きました。
ID:HB12NQ9n0さんを待った方がよろしいでしょうか?
かなり真面目にFFをのばらイズしてみる
>>820 違う作品なので別にいつ投下してもいいはずですよ
>>818 未出だからどんと来い。
ただ、あれって横道メインだから本編だけなら結構短くなるな。
823 :
606:2006/12/10(日) 00:56:39 ID:HHXa4OT70
FF6-southfigaro-(1)
照りつける太陽の下、半日ほど、チョコボに揺られながら南東の方向に下った一行は、
サウスフィガロの洞窟へたどり着いた。
洞窟の入り口では、二人のフィガロの兵士が立っている。
フィガロ本国とサウスフィガロを結ぶこの洞窟は、フィガロの管轄化でもある。
エドガーはチョコボから降り、駆け寄ってきた兵士にチョコボの手綱を手渡した。
「エドガー様!ご無事で!?」
「あぁ。なんとかな。」
もう一人の兵士は、ロックとティナのチョコボを預かり、慣れた手つきで自分たちの荷物をまとめ始めた。
「本国から緊急用の伝書鳩がこちらへ参りましたので、大体の事情は察しております。心配しておりました。」
「大臣め、手はずが良いな。」
自身の判断に間違いはなかったことにエドガーは確信を持った。
彼ならばエドガーがおらずとも家臣団をまとめることができるだろう。
「それで、これからどちらへ?」
「洞窟をぬけ東のサウスフィガロの町をめざす。その後、北のリターナーの本部へおもむく。フィガロ城に戻ってこの事を伝えてほしい。」
「承りました。」
兵士は頷くと、急に深刻な顔になり、そっとエドガーに耳打ちをした。
「それと…例の件ですがエドガー様の仰った通りでした。」
「うむ…分かった。」
824 :
606:2006/12/10(日) 00:57:10 ID:HHXa4OT70
エドガーが、もう一人の兵士のほうへ目をやると、もうチョコボに荷物を積み上げ終わっていた。
「ではボチョコたちは、我々が責任を持って本国まで連れてゆきます。お気をつけて!」
二人の兵士はエドガーたちに一礼し、チョコボにまたがるとさっそうと三人の前から去っていった。
「で、例の件って一体なんのことだ?」
二人の兵士の後姿を見送りながら、ロックはエドガーにたずねた。
ロックは、先ほど会話を聞き、エドガーの表情が変わったのを見逃してはいなかった。
「今は時間が惜しい。歩きながら話そう。」
と言い、エドガーはさっさと洞窟の中へ入っていった。
825 :
606:2006/12/10(日) 00:58:09 ID:HHXa4OT70
FF6-southfigaro-(2)
フィガロ、サウスフィガロ間を結ぶこの洞窟は「サウスフィガロへの洞窟」と称されている。
砂漠のキャラバンや、行商人、旅芸人などかなりの交通量があるため、
暗がりではあるが、最低限のたいまつが炊かれ、道もある程度舗装されている。
洞窟内は外に比べて、気温が低く、熱射の砂漠を通ってきた一行にとっては、とても快適だった。
「実は、彼らに少し調べものを頼んでおいたのだよ。」
エドガーが二人を先導する。
サウスフィガロはフィガロの姉妹都市であり、エドガーもこの洞窟は何回か通ったことがある。
「何をだ?」
ロックがすかさず聞き返した。
「…ティナ、前のこと、といっても二日前ほどのことだが…思い出せるか?」
エドガーの問いにティナは少し不安そうな顔をしたが、静かにうなずいた。
「やってみる。それで…何を思い出せばいいの?」
「どうやってナルシェまで来たのか教えてくれないか?」
エドガーは歩みを止め、ティナのほうを振り返った。
826 :
606:2006/12/10(日) 00:59:30 ID:HHXa4OT70
「どうやってって、そんなの帝国ご自慢の空軍部隊(インペリアル・フォース)で
ベクタ大陸を南下して北から入ったんじゃねぇの?」
「ナルシェは北・東・西を山々に囲まれたいわば天然の要塞のような場所だ。
加えてあの地域には独特の寒冷風が渦巻いている。いくら帝国の空軍部隊でも、なかなか突破するのは難しいだろう。
そう考えると答えは一つ…。」
「ナルシェの南から陸路での進入か!」
ご名答、とばかりにエドガーは片目をつぶった。
ティナはしばらく辺りを見回していたが
「…自信ないけど、わたしここを通った気がする。」と呟いた。
「先ほどの兵士たちからも、ここ最近魔導アーマーらしきものが通った形跡があると報告を受けた。」
「待てよ!ここを抜けるにはサウスフィガロを通らなくちゃいけないんだぜ。
サウスフィガロはフィガロの姉妹都市なんだし…。
目的不明の魔導アーマーが三機も町を抜けることなんて不可能だろ?」
「私もそう思った…が、内通者がいれば話は別だ。」
そこまで聞いたロックは、エドガーの懸念を理解した。
「なるほどな。
ベクタ大陸のマランダから海路でサウスフィガロへ入り、内通者の協力を受け、町を抜け出した後、
この洞窟を通ってナルシェに攻め入ったってことか…。」
「そういうことだ。
リターナー本部へは、コルツ山を越えなければならないが、今の状態では厳しいだろう。
内通者のことは気がかりだが、装備を整え、体もを分に休めるためにも、サウスフィガロへ立ち寄る必要がある。
町では慎重に行動することを心がけてくれ。」
827 :
606:2006/12/10(日) 01:01:06 ID:HHXa4OT70
FF6-southfigaro-(3)
サウスフィガロへの洞窟を抜けると、あたりはとっぷりと日が暮れていた。
ロックが取り出した自前の双眼鏡には、遠くにサウスフィガロの明かりが映っていた。
「今から夜通し歩けば、朝までにはサウスフィガロに着くかな?」
腕時計と月に照らし出される自分の影の角度を見ながら、ロックは提案したが、
エドガーは、難色を示した。
「サウスフィガロの状況も昼間の兵士に聞いたが、今晩はよしたほうがいい。
ここ最近の戦々恐々とした世情を踏まえ、夜には自警団が町の警備についているらしい。
行くなら夜が明けてからだな。」
「じゃあ、今日は野宿…」
と、ロックが言いかけたとき、ティナの明るい声が聞こえてきた。
「ねぇ、あっちに家が建ってるわ。泊まらせてもらえないかしら?」
ティナの指差した方向には、木造の一軒家が建っていたが明かりはついていなかった。
家の周囲は閑散としていて、数日間人が帰った気配はなかった。
家を一通り見回ったロックが、リビングで待っていたエドガーとティナの所に帰ってきた。
「奥の部屋にベッドがあるな。ティナが使えよ、おれとエドガーは交代で起きとくからさ。
ここの住人が帰ってくるかもしれないし。」
「分かった、ありがとう。ねぇ、ロックこれ何の花かな?」
ティナが見ていたのは窓辺に置かれた青々と咲いた花であった。
「おっ!『ブルー・ド・オアシス』別名『砂漠の涙』って花だな。
普通は、砂漠にしか咲かない花で、室内で育てるような種じゃないんだけどな。
品種改良でもされてるのか?よっぽど好きなんだろうな。」
「その花…」
エドガーは、驚きの表情でその花瓶を見つめている。
「どうした、エドガー?」
「い、いや何でもない…。」
エドガーは、花に背を向けソファーに腰掛けた。
828 :
606:2006/12/10(日) 01:02:36 ID:HHXa4OT70
「?じゃあお休みなさい。」
ティナが寝室まで案内したあと、リビングに戻ったロックはエドガーの隣に座り、
部屋の掛け時計に目をやった。
「さってと、夜明けまで五、六時間てとこか。三時間交代だな。コーヒーでも飲むか?」
ロックはそういうとキッチンの方へ向かった。
しばらくすると、キッチンからガサゴソと気になる音が聞こえてきたため、
エドガーは様子を覗いた。
「ロック?何やってるんだ?」
「へへっ!職業柄こういう普段使ってる食器を見れば、
大体どんなやつが住んでるのか分かるのさ!
っとこれは……残念!たいした値打ちはないな。でも、珍しいな、フィガロ産の食器か。
機械類はしょっしゅう目にするけど、陶器も生産してるんだな。
ナルシェ産ミスリル100%ならジドールの貴族たちに人気だから高値で売れるんだけどな。」
「ロック…」
呆れた様子のエドガーにあわてて食器を棚に戻した。
「冗談、冗談!おれは、トレジャーハンターだぜ!ドロボウじゃないんだからな。
…コーヒー豆はないみたいだな。仕方ない、このハーブティーで我慢するか。」
「悪いが先に休ませてもらうぞ。三時間後起こしてくれ。」
そう言い残すとドカッとソファーに寝そべった。
どこか懐かしい淡いハーブの香りに包まれながら、エドガーは深い眠りに落ちるのだった。
乙
やっぱ、あんた最高だよ
6最高!!
830 :
697:2006/12/10(日) 01:23:23 ID:XuIGw/nOO
よーしこのままUSAも投下だ!
USA 一章 枯れた森#4彷徨い
翌朝俺は仲間を探すならまず町を探してみようと思い、地図を広げる。
どうもこの森を西に抜けたところに町があるらしい。
俺は早く町に向かおうと思って、西の方へ足を向けた。
この森の景色は昨日と変わらず美しいと思える要素は何一つ無い。
「こんなとこ早く出てーよ。」
つい独り言を言ってしまう。
昨日この森にきてから気分が良くない。
おそらくホワイトが言っていた【マイナス】の力が影響しているらしい。
さっさと抜けなければ命に関わりそうだ。
そんなことを考えながら歩いていると行く手に岩があった。
大きさは俺の背より大きい程度だが幅は人間三人分位だ。
ご丁寧に道を占領していて通れない。
やろうと思えば飛び越せそうだ。
しっかり準備体操をしてジャンプの準備を整える。
助走をつけ体をバネにし岩を飛び越える。
小さい頃竜騎士という物に憧れて、竜騎士の真似をよくしたものだ。
竜騎士とは遠い国の戦士の種類の一種らしく、その跳躍力で上空にいる飛竜に乗って戦う空中戦のプロだ。
だから竜騎士に近付くために毎日高くジャンプ出来るように特訓した。
その時の特訓がこんなところで役に立つとは思わなかった。
道中モンスターにはあまり出会わなかった。
出会ったとしても餓死しかけているやつばかりだ。
先程の岩以外には大した障害はなく比較的楽に森の中を進んでいく。
そして集落らしき場所に出た。
おそらくここがフォレスタの町だ。
831 :
697:2006/12/10(日) 01:24:12 ID:XuIGw/nOO
USA 一章 枯れた森#5森の民
予想していなかったわけではない。
森の様子を見れば予想するなと言うほうが無理である。
だがここまでとは思わなかった。
道に植わっている花は枯れ、切り株を司った家々は朽ちかけている。
とにかくこの町の長にこの町に腕のたつ戦士がいるかどうかを聞いてみようと思う。
俺は早速情報収集のために近くにいた老婆にに声をかけてみた。
「もしもし、お婆さん。この町の長はどちらに・・・」
「お婆さんって私のこと?」
「はっ、はい。」
「ひどい!お兄ちゃん、人をお婆さん扱いして!あたしまだ十歳なのよ!」
「なんだって!」
驚いた。
人を老化させるほど【マイナス】の力は強まっていたのかと。
とにかく老婆(少女)を泣き止ませ、長老なる人物の家の場所を聞くとさっさとその場からトンズラさせてもらった。
832 :
697:2006/12/10(日) 01:25:45 ID:XuIGw/nOO
さて、そんなこんなで長老の家についた俺は外にいた人に招かれ、長老の部屋にいた。
長老もだいぶ弱っており、ベットに伏していた。
「すまんのう旅人よ。ろくなもてなしも出来ずにのう。」
「別に俺はいいんだ。この町で腕のたつ戦士を紹介してくれれば。」
俺は単刀直入に用件を話した。
長老は深刻そうな顔をして答えた。
「それは無理じゃよ・・・」
「なぜ?」
「この村にはもう戦士はおらん。皆この災害の原因を探りにいったまま誰も戻ってこないのじゃ。」
「そうですか・・・」
「まぁ全くいないと言うわけではないが・・・」
「本当ですか!」
「まぁのう・・・家の場所を教えるから、あってみるのがよかろう。」
俺は家の場所を覚えると早速そこに行こうと思ったが
「待ちなさい。これを持っていったほうがよかろう。」
長老は枯れ枝と本を夫人にもたせていた。
「何ですか?これは。」
「いやちょっとした餞別じゃ。きっとお主の役に立つじゃろう。」
本を確認すると魔法の本【ケアル】だった。
「そんな!こんな貴重な品うけとれません!」
魔法の本・・・それはその本毎にそれぞれの本に記された魔法についてかかれており、持ち主がその魔法を唱えられたとき、その魔力は持ち主の物となり只の本になる。
「いいのじゃわしが持っていても何もならん。それに・・・お主には何かを感じるのじゃ。」
俺は【ケアルの本】と枯れ枝を受け取ると、教えられた家に向かった。
6の人GJ!
本編の伏線的要素の回収の仕方が上手いわ。
続き気になるー(;´Д`)
>>832 なんか独特っていうかゲームブック的だな。
これはこれで面白い。
835 :
606:2006/12/10(日) 19:21:50 ID:HHXa4OT70
>>829 >>833 ありがとうございます!大変励みになります。
今のところリターナー本部前、
もしくはパーティ分岐イベント前まで書く予定です。
書くのが困難になった時は必ず連絡します。
836 :
606:2006/12/10(日) 19:23:25 ID:HHXa4OT70
FF6-southfigaro-(4)
翌日の正午前に、一行は行商人やキャラバン隊の群れにまぎれて、サウスフィガロへ入った。
町は旅人や船乗りなど様々な人々が行き交い、活気に満ち溢れていた。
エドガーの提案でひとまず宿屋に向かった。
宿屋でチェックインを済ませたあと、エドガーは二人を呼び今後の日程を説明した。
「明朝、朝一番で町を出て、コルツ山へ向かう。私も少し用事があることだし、今日は自由行動にしよう。
ここの宿代と種々の装備代は私が払っておく。昨日も言ったが慎重に行動するようにな。では、また明日。」
そういうとエドガーはそそくさと宿屋を後にした。
「何かエドガーの様子、夕べから変じゃない?」
エドガーの落ち着きのない行動にティナも違和感を覚えていた。
「まっ!エドガーのことだし、この町に目をつけてる女でもいるんだろう。
こっちはこっちで、ゆっくり過ごそうぜ!俺も…。」
と、ロックは大きなアクビをした。
「…ふぁ…。昨日はほとんど寝れなかったからな。明日は登山だし、ティナもゆっくり休むと良いよ。」
ロックはベッドに大の字になると、ティナが返事をする間もなく、あっという間に寝てしまった。
837 :
606:2006/12/10(日) 19:25:25 ID:HHXa4OT70
FF6-southfigaro-(5)
エドガーは、サウスフィガロの地図を片手に×印されている家を目指し、街中を歩いていた。
今日の朝方、家の表で人の気配がしたので、
ロックと交代で起きていたエドガーは、玄関を開け外に出た。
家の外には生活水のために井戸が引いてあり、その井戸の水で行商人風の翁が顔を洗っていた。
「すまん。この家の者か?」
と尋ねようと思い、歩み寄ったエドガーだったが、
エドガーが声をかける前に老人のほうから話しかけてきた。
「おんやぁ、あんた久しぶりじゃねぇ…。無事じゃったのか?」
「…いや、申し訳ない。私は旅の者で昨夜この家にたまたま泊まっただけなのだが?」
エドガーがそういうと、老人は顔を拭き終え眼鏡をかけた。
「ほ!いんやぁ〜よく見るとあんた、ダンカン様んとこのお弟子さんじゃあないねぇ。しっかしよく似とる…。」
「…その…なんだ…。そのここに住んでる私に似たお弟子さんは、今どこにいるかご存知か?
無断で宿代わりに泊まってしまったので、一言お礼を言いたいのだが。」
「ほいほい!知っとるよ!2、3日前のお師匠のダンカン様が殺されたらしいんじゃが、
その直後、コルツ山へ向かったそうじゃよ。
ダンカン様の息子、バルガスも行方しらずでねぇ。詳しい経緯などはわからんのだよ。
おお!そうじゃ、ダンカン様の奥さん、クレアさんがサウスフィガロに住んどるから、訪ねてみるとええ!」
老人は道具箱から、サウスフィガロの地図を取り出し、町の南東に位置する場所に×印を書いた。
老人から地図を受け取り見送った後、改めて室内を見回したとき、エドガーは一つの結論にたどり着いた。
「マッシュがここに…?」
838 :
606:2006/12/10(日) 19:29:16 ID:HHXa4OT70
訂正:FF6-southfigaro-(5) 一行目
エドガーは、サウスフィガロの地図を片手に×印されている家を目指し、街中を散策している。
ききたくない
わ!
に期待。
840 :
818:2006/12/10(日) 21:39:32 ID:Cl6jKv4i0
FINAL FANTASY TACTICS ADVANCE 序章『その日、ぼくの知っている街は』
第一話 四人
1.マーシュ・ラディウユ
それまで見ていた夢が、目覚まし時計の音で掻き消えた。
「う……ん……」
枕元にある時計のスイッチを叩いて止める。
でももう一つ、タンスの上に置いてある方が鳴り続けて二度寝はさせてくれない。
「……よい、しょっと」
温かい布団から何とか這い出てそっちも止めたときには、そこそこ目が覚めていた。
時計を二つかけておくという策はちゃんと効果があったみたいだ。
この田舎町、セント・イヴァリースに越してきてからは一個じゃなかなか起きられなくなった。
それというのも――
「……今日も雪、か」
カーテンを開けると白い粉雪が絶え間なく穏やかに降り注ぎ、地面を厚く覆っていた。
閉まった窓からも冷気が伝わってきて部屋はかなり冷えている。
こんなに寒いんだ。体が布団から出たがらないのも当然ってものだと思う。
越してきて一週間。
ぼくはまだ、ママの故郷だというこの雪の降る街にあらゆる意味で慣れていなかった。
841 :
818:2006/12/10(日) 21:41:51 ID:Cl6jKv4i0
「おはよう、ママ……?」
着替えてから居間に出ても、ママの姿はなかった。
働きに出るは早いし、そもそも今日はお休みのはずだけど……
よく見ると代わりにテーブルの上に書き置きが置いてあった。
『今日はドネッドが帰ってくるので迎えに行っています。昼には帰ってくるから遊んであげてね 母より』
「……そっか。ドネッド、帰ってくるんだ」
生まれつき体の弱い弟、ドネッドは車椅子で生活して、家と病院を行ったり来たりしている。
この街に来たのも都会の空気があいつの肺か何かに悪いからだって聞いた。
それだけが理由じゃないけど、それが大きな理由になってるのは間違いない。
「ちょっとは良くなってるかな、あいつ」
そんな簡単には良くならないってわかってるけど、悪くなってはいないだろう。
せっかく田舎に引っ越してきたんだから、せめて立てるぐらいになってても罰は当たらないと思う。
置いてあった食パンをトースターに入れ、牛乳をレンジに入れる。
ずっと昔は通勤前のパパが食卓にいたような記憶もあるけど、今はそれもなく一人きりだ。
会おうと思えば会える。だけどパパの方がそれを望むかわからないし、ママはきっと怒るだろう。
「……いただきます」
早く食べて学校に行ってしまおう。
一人だと色々と考え込んじゃうから。
842 :
818:2006/12/10(日) 21:43:47 ID:Cl6jKv4i0
2.リッツ・マルール
顔を洗った後に鏡を見ると、そこには真っ白な髪の少女が映っていた。
「……なんて、三文ホラーにもならないわ」
一日の始まりだっていうのに、あたしは洗面所で深い溜息をついた。
毎朝毎朝うんざりしてしまうけど、残りの人生ずっとこの溜息に付き合うと思うとさらにうんざりする。
あたしの髪は白い。パパもママも普通の赤毛なのに、あたしだけ年寄りみたいに真っ白。
劣性遺伝だとか何だとか理由はあるらしいけど、あたしにとっては今この髪に色がないことだけが事実だ。
あたしは、この色がついてるとすら言えない色が嫌いだ。
白なんていうのは他の色を乗せるための下地でしかない。
だから今日もあたしは髪を染める。
使い慣れたピンクの染髪料を取り出し、手早く塗っていく。
染髪してもすぐ落ちるから、毎朝こうして染めないといけない。
長い髪だから消費も激しくてお金もかかるけど、この色のせいで髪型の選択肢まで狭められるなんてのは嫌だ。
当然染髪料の色は順調に綺麗に乗っていく。邪魔をする色がないんだから当たり前だ。
ほどなく、鏡の中からは白色が消えた。
「うん、よし」
三面鏡で背中側までしっかり染まったことを確認すると、嫌な気分も多少は収まった。
朝ご飯を食べて学校に行こう。
クラス委員のあたしが不機嫌な顔していたらクラスもまとまらない。
……ただでさえ問題児が三人もいるんだから。
そこまで考えてクラス委員としての悩みにまた表情が沈んできた。
「ああもう。しっかりしなさい、リッツ!」
頬をパンとはたき、足早に居間に向かう。
することはたくさんある。いつまでもグズグズはしていられない。
843 :
818:2006/12/10(日) 21:45:17 ID:Cl6jKv4i0
3.ドネッド・ラディウユ
「ドネッド君、調子はどう?」
看護婦さんの声に読んでいた本を置いて、ボクは顔を上げた。
「いつも通りかな。痛くはないけど」
それはどちらかっていうと調子がいい方なんだけど、だからって歩けるわけじゃない。
うまく曲がらない膝を触っているうちに手際よく体温を測られ、寝汗を拭かれた。
看護のされ方が上手なんて変な誉め方をされたけど、小さい頃から入院してるからってだけだ。
「今日は一時退院の日だったわね。お母さん、もう少ししたらいらっしゃるわよ」
「どうせ帰るのは昼だからそんなに早く来なくてもいいのになぁ」
「そんなこと言わないの」
軽く小突き、看護婦さんは朝ご飯を持ってきた。
この雪国に引っ越してきて一番良かったことは、病院食が美味しくなったことだ。
カップに入ったスープを飲みながら、今日の午後のことを考えた。
家に帰れるって言っても、せいぜいゲームができるぐらいだ。ここじゃ携帯機しかできないし。
……お兄ちゃん、この前みたいに間違ってボクのデータ上書きしてなきゃいいけど。
食べ終わると、看護婦さんとちょうど入れ替わりにママが病室に入ってきた。
やっぱりというか何というか、調子はどうとか看護婦さんと同じことを聞いてきたので同じことを答えた。
帰る前に中庭でも散歩するか聞かれてけど気乗りしないから断った。
車椅子を押してもらっての散歩なんて散歩って気がしないし、ここは寒いから。
また本を読み始めて、溜息をついた。
ボクも本の主人公みたいに走り回りたい。剣や魔法の世界で冒険したい。
冒険はともかく、普通の人みたいに走ることもできない自分の体が嫌だった。
844 :
818:2006/12/10(日) 21:48:05 ID:Cl6jKv4i0
4.ミュート・ランデル
「パパ。ほらパパ、起きてよ」
「ん〜? 何だぁミュート、まだ朝じゃねぇかぁ」
パパは起きようという素振りすら見せず、寝返りをうって背中を向けた。
「朝だから起きるんでしょ。今日はちゃんと仕事探してくるって約束だよ」
パパの部屋は朝からお酒臭かった。
きっと昨日も遅くまで飲んでたんだ。そこら中に色とりどりの瓶が転がってる。
どれも眠る前にはなかったものだ。どう見ても一晩で飲むには多すぎる。
「はいはい、っと。このシド・ランデル様が本気になりゃあ仕事の一つや二つ……ひっく」
「ほら、お水。酔ってたらどこも雇ってくれないよ」
「すまねぇな。醒めたらちゃんと探しに行くからなぁ……」
そう言うとパパはがくんと頭を落としてまたいびきをかいた。
「もう、起きてよパパ! ボクはもう学校に行くよ!」
「おう、気をつけて行けよ……ぐぅ」
「……ふぅ」
このままじゃ遅刻しちゃうから、諦めて学校に行くことにした。
遅刻までしたら先生より先にクラス委員のリッツに怒られる。
それにあいつら……ライル達に何て言われるかわかったもんじゃない。
これはなかなか書き慣れている感じだな、FFTA
846 :
818:2006/12/10(日) 21:49:57 ID:Cl6jKv4i0
教科書が鞄に入ってるのを確かめると、ベッドの上に置いていたクマのぬいぐるみを抱えた。
これをくれたママは、もうどこにもいない。
だからこれがママの代わりだ。
馬鹿にされても、いじめられても、これだけは手放せない。
これまでいなくなっちゃったらと思うと、それだけで泣きたくなってしまう。
「……でも、いじめられたくもないなぁ」
これを持ってなくたって、遅刻しなくたって、あいつらは何か理由をつけて絡んでくる。
今日は半日授業だからまだマシな方だけど。
持ち物を確かめても何か忘れてるような気がして、昨日一日の出来事を思い出す。
「……あ、そうだ。お金持っていかないと」
貯金箱からなけなしのお小遣いを取り出して、取られたりしないよう鞄の底に入れた。
昨日古本屋で面白そうな本を見つけたんだ。
古本という名前通りにすごく古いけど、すごく綺麗な絵や変な文字が書かれてる本。
怪物みたいな絵もあって、まるで魔法の本だった。
……あんな風に魔法が使えたりする世界だったら、ボクもいじめられずに済むのかな。
時々そんなことを考える。でもボクじゃ怪物と戦うなんてできないし、やっぱり駄目かも。
いじめられたくないんなら誰も逆らえないような偉い王子様にでもならないといけない。
そうすると王様がパパ? ……やっぱり無理だ。
「っと、本当に遅刻しちゃう」
鞄の口を閉めると、急いで靴を履いて家を飛び出した。
古本以外にも楽しみなことはあるから、いつもよりちょっとは学校も嫌じゃない。
この前転校してきたマーシュって男の子。
何度か話したけど、今のところいじめてくるってこともない。
……もしかしたら、友達になってくれるかもしれない。
帰りに古本屋に誘ってみよう。そう決意して、ボクは通学路を走った。
847 :
818:2006/12/10(日) 21:50:55 ID:Cl6jKv4i0
とりあえず以上。
全編ザッピングで書くつもりはさすがにない。
おお、一気に盛り上がってる。
6の人は相変わらず丁寧で素敵。
筋肉ダルマと「たわごとなど聞きたくない わ!」に期待。
USAはプレイ当時を思い出す。
つかあのジャンプ機能はガリの真似かよ。半熟英雄のリューキーシじゃねぇかw
TAの人は初投下とは思えんほど上手いな。
テーマがテーマだから四人ともコンプレックスばりばりだ。
動きのあるシーンまで結構あるだろうけど期待してる。
850 :
606:2006/12/11(月) 14:25:46 ID:6I544o4/0
FF6-southfigaro-(6)
地図を辿っていくと、こじんまりとしたどこか品の良いレンガ造りの家が建っていた。
庭もきれいにガーデニングされており、
その中には昨晩の小屋で見かけたブルー・ド・オアシスの姿もあった。
エドガーが呼び鈴を鳴らすと、間もなくパタパタと足音が聞こえ、ドアが開いた。
そこには、小奇麗な老婆の姿があった。
「私はフィガロの王、エドガーと申す者。
ここに…マッシュ…という男がいるということを聞き訪ねてきたのだが…。」
(どことなく、婆やにも似ているな。)
そんなことを考えていると、
(あなたが…)といった表情でエドガーの方を見つめていた老婆はやがて、一礼をした。
「…ダンカンの妻、クレアと申します。マッシュからも聞いております。
彼の兄上でもあられるのでしょう。狭いところですが、どうぞ。」
案内された室内はきれいに整頓されていたが、老婆の一人暮らしのような様相でもあった。
「…主人は、ほとんどこの家には帰ってきませんの。旅と修行が三度の飯よりも好きなような人でしたから…。」
エドガーの心を読み取ったのか、椅子に腰掛けたエドガーのほうを見ながら、クレアも椅子にすわり語り始めた。
「…十年ほど前のことでしょうか。主人がマッシュを連れ帰ってきたのは…。
あの子はとても素直で、優しい子でした…。
最初の一年は私と一緒にこの家で暮らしていました。でも、やはり主人が恋しいようで…。
そのうち主人の後ろにくっついて一緒に旅をするようになり、三年目の春。
マッシュは正式に主人の、ダンカン流格闘術の弟子となりました。
それからは、私たちの子、バルガスとともに、修行の毎日を送っていたのですが…。」
そこまで語るとクレアの瞳から涙がこぼれ落ち、話すこともままならない状態になった。
エドガーが落ち着かせようと立ち上がったが、クレアは首を振り、小さな声で大丈夫です、と返事をした。
「…取り乱して申し訳ありません。
二日前のことですが…突然マッシュが家へ帰ってきました。
あの子は満身創痍で、何か修行中に事故でもあったのかと尋ねましたら、そうではないと。
私たちの実の子バルガスが、主人を殺したと…。自分があの子を止めると申して飛び出して行こうとしましたの…。
私はマッシュを引きとめ、事情を聞きました…。」
851 :
606:2006/12/11(月) 14:27:49 ID:6I544o4/0
FF6-southfigaro-(7)
それは、三日前のこと…。
コルツ山の山頂で、マッシュは瞳を閉じ、精神統一をしていた。
聞こえるのはセルピアスのいななきと、コルツ山のふもとを流れるレテ川支流の滝の音だけである。
その時、不意にマッシュの右側に石つぶてが飛んできた。
(つぶてはフェイク!本命は…)
カッと目を見開くと、素早く左側に体を半開させた。
砂塵が舞う中、そこにあったのはダンカンの突き出した拳であった。
「…ふむ!だいぶわしの動きにもついてこられるようになったな。
お主は、少々力任せな気性があるが、同じくらい相手を読むことができれば、
わしやバルガスを超えることもできるであろう!」
褒めることが苦手なダンカンから、ここまでの賛辞を受けたことのないマッシュは歓喜に震えた。
「ありがとうございます!」
マッシュが頭を下げたとき、黒い影がマッシュの隣を横切った。
「親父、話がある。」
黒々とした長い髪を大雑把に後ろで縛り、日焼けした褐色の筋肉は隆々としている。
その筋肉の鎧をまとった体格はマッシュより、さらに一回り大きい。
「…バルガス、修行中は、師匠と呼ぶようにと常日頃から言っておるだろう。」
「すいません、師匠お話がございます。」
バルガスは仰々しく頭を下げた。
ダンカンはニコリともせず、バルガスとともに去っていった。
近頃、ダンカンとバルガスの間にわだかまりができていることは、マッシュも感じていた。
おそらく、バルガスがマッシュたちから離れ、独自で修行を開始した頃からである。
先ほどの修行で、そうとう神経を使ったため、マッシュは疲れ地べたにゴロリと横になった。
先月、風の噂で、フィガロが帝国と同盟を結んでいたことを聞いてからは、マッシュの頭の中はそのことでいっぱいだった。
(兄貴が、このまま帝国の犬に成り下がることはないと思うが…。)
ダンカンと共に世界中を旅するうちに、帝国のやり方にはマッシュも強い反感を持つようになっていた。
青い空を眺めながら、そんな事を考えていていたが、突然の轟音と爆風が、マッシュを叩き起こした。
「な、何だ?」
音のした方向へ向かうと、そこには信じられない光景が広がっていた。
852 :
606:2006/12/11(月) 14:32:57 ID:6I544o4/0
FF6-southfigaro-(8)
「ククク、惨めなものだな。両足を折られては、もはや立つことすらままならぬか?」
そこには、足を押さえうずくまるダンカンと、それを見下すバルガスの姿があった。
「し、師匠!?バルガスさん!?」
「き、来てはならぬ!マッシュ!」
思わず、駆け寄ろうとするマッシュであったが、ダンカンがそれを制した。
「動くな!動けばこの男を崖から突き落とす。」
「クッ!バルガスさん、一体どういうつもりです!?」
「…答える舌はもたん。ここで屍となる貴様にはなぁ!!」
バルガスのダンカン流にはない、つまりマッシュの見たことのない構えをとった。
「くらえ!我流奥義!連風燕略拳!!」
バルガスの周囲の空気が、突き出したバルガスの両の掌の中で球状に圧縮されていく。
そこから竜巻といってもよいほど、強力な突風が巻き起こり、マッシュを襲った。
「うわぁあぁあ!」
必死に防御したマッシュであったが、あまりに強力な風を受け、吹き飛ばされ深い谷へ落とされてしまった。
「くそ!マッシューー!!」
とっさの判断でダンカンも、バルガスの一瞬の隙をつき自ら谷に飛び込んだ。
「自ら、死を選ぶとはな…。それがあんたの宿命か…。」
バルガスはそう吐き捨て去っていった。
853 :
606:2006/12/11(月) 14:34:02 ID:6I544o4/0
「大丈夫か…?」
ダンカンは崖の中腹に突き出た木の枝を左手に掴み、右手でマッシュの右腕を掴んでいた。
しかし、人二人を支えるにはその枝はあまりにも細すぎる。
「し、師匠…!手を離してください!今離せば、師匠は助かる!このままじゃあ二人とも…!」
二人の耳には、激流で有名なレテ川支流の轟音が響いている。
この高さから落ちれば、まず助からないだろう。
「ふっ…バカ弟子が…。そんなこと出来るわけなかろう。」
枝は早くもしなり、メリメリとひびが入り始めていた。
「…わしは、お前と同じくらいバルガスの素質にも惚れていたんじゃ…。
それにお主らは、わしと違ってまだまだ若い…。
二人で互いに競い高めあえば、わし超えさらなる高みへ近づけると思っていたんじゃがのう。
…本来ならわしの責任かもしれんが…。
マッシュ、わしからの最後の頼みじゃ、バルガスを、あの子を止めてくれ…。」
「師匠…まさか!」
その瞬間、二人を支えていた枝がついに折れた。
「むぅん!!」
ダンカンは最後の力を振り絞り、マッシュを天高く投げ上げた。
「し、ししょー!!!」
マッシュの叫びもむなしく、ダンカンは微笑みながら虚空のかなたへ落ちていった。
「バルガスさん…。いや、バルガス!おれはあんたを許さない!絶対に!!」
854 :
606:2006/12/11(月) 14:36:13 ID:6I544o4/0
FF6-southfigaro-(9)
ことの一部始終を聞いたエドガーは、しばし沈黙した。
幼く不安定だった頃のマッシュにとって、クレアは母親代わりであり、ダンカンは父親代わりだったのであろう。
そのダンカンが、実の息子に殺された。
弟子が師匠を殺したというよりも、マッシュの目には息子が父親を殺した様に映っていたに違いない。
家族を愛する男にとってそれは最も許しがたい行為でもある。
「…フィガロの王族であったことは聞いていましたが、マッシュは、それ以上のことは語ろうとしませんでした。
フィガロのことは少し気にしているようでしたが…。」
エドガーが窓のほうへふっと目をやると、外はいつの間にか漆黒の闇が支配していた。
「…色々とありがとう。明日は朝早いので今日のところは、これで失礼する。」
「たいしたもてなしもできませんで…」
と、頭を下げようとしたクレアをエドガーは制した。
「よしてくれ、頭を下げるのはこちらの方だ。
弟は…マッシュは、いい方々に巡り合えて本当に幸せだっただろう…。」
玄関まで見送りにきたクレアは、庭先で咲いているブルー・ド・レイの花を一輪積み上げエドガーに手渡した。
「マッシュが好きな花ですの…。もし、あの子に会うことがあれば、渡していただけませんか?
…それと、いつでも帰ってきて構わないと、この老婆が申しておりましたと…。」
エドガーは、優しく微笑み左手を胸に当て片ひざをついた。
「女性からの頼みごとを断るわけにはまいりませんよ…。必ずお伝えします…。」
外に出たエドガーは、ポケットから一枚のコインを取り出し、強く握り締めた。
(あの時の選択はお互いにとって、間違ではなかった…。そう思っていいんですよね…父上、母上…。)
855 :
818:2006/12/11(月) 21:19:59 ID:E/H7SZx60
第二話 雪合戦
今日は担任のレスリー先生が午後から出張だとかで半日授業だ。
小さな学校で最小限の先生しかいないから、こういうこともたまにあるらしい。
結局他の日に授業は割り振られるけど、何だか得した気になるのは仕方がない。
給食を食べた後、昼休みにクラスで雪合戦をして解散。そういうことになった。
「マーシュってさ、体育得意そうだよね」
靴箱で上靴をしまっていると、クラスメイトのミュートがそんなことを言ってきた。
「そう見える? でも、期待に添えなくて悪いけどあんまり運動神経は良くないんだ」
「ふぅん」
ドネッドと家の中で遊ぶことが多かったから、というのを言い訳にするのは卑怯だけど。
敢えて言い訳するなら、まだ雪の上を歩くのにも慣れてないってことかな。
体育が苦手っていうミュートでも上手く滑らない場所を滑らないように歩いている。
こういうの、どれぐらいで慣れるものなんだろう。
「ミュート、マーシュ、早く来なさいよ。もうみんな出てるわよ」
外から女の子の声がした。リッツだ。
まさにクラス委員って感じの子で、大人びている。
みんな一目置いているというか一歩引いてるけど、転入したてのときに色々世話を焼いてくれたし、ぼくは嫌いじゃない。
「じゃ、行こうか。リッツ、怒ったら恐そうだし」
「うん」
ミュートはくすっと笑い、凍った排水溝の上をひょいとまたいで危なげなく歩いていった。
一方のぼくは、出口で踏み固められた雪に転びかける有様だった。
856 :
818:2006/12/11(月) 21:20:57 ID:E/H7SZx60
雪の積もるグラウンドは物凄く寒いとばかり思っていたけど、厚着と照り返しで汗をかくぐらいだった。
雪合戦用の壁は既に出来ている。
前に作られて、何度も使い回されてるようだった。
さすが雪国、と妙なところで感心してしまう。
「ルールみたいなのはあるのかな? たしか旗を取り合う公式ルールみたいなのがあった気がするけど」
「普通だと思う。単純に雪玉をぶつけ合って、多く当てた方の勝ち。そんなに細かくもないよ」
たしかに、みんな一斉に投げ合うんだから正確に数えることはできないだろう。
現に今ライルとコリン達がふざけて雪を投げ合ってるけど、それだけでも数え切れない。
「じゃあみんな、さっき言ったとおり席の右と左で分かれてちょうだい」
リッツの声にぼく達は壁の両側にぞろぞろと移動した。
こっちのチームはぼくとミュート、体育委員のライルに美化委員のノーマだ。
ライルを見てミュートはちょっと困った顔をした。
ライルとギネス、コリンの三人組はミュートをよくからかってる。
暴力とかじゃないけど、見ていて嫌な感じだ。
向こうのチームはそのギネスとコリンに加えて、リッツと保険委員のヴァージニア。
はっきり言って、戦力差がありすぎて試合にはなりそうにない。
857 :
818:2006/12/11(月) 21:22:13 ID:E/H7SZx60
ライルも同じことを思ったみたいで、大げさに頭を抱えて嘆いている。
「うわ、こんな弱っちいやつらと組んだって面白くも何ともないよ。なぁ、転校生?」
転校生っていうのはぼくのことだ。転入してきてから三人組からはそう呼ばれている。
特に反論も同意もする気にならずに肩をすくめると、ライルは今度はミュートに絡んできた。
「あれ、ミュート。今日はクマさんと一緒じゃないの?」
からかう口調で、ミュートの頭をつつきながらそう言った。
クマさん……確かにミュートはいつもクマのぬいぐるみを持ち歩いている。
宝物らしく、前に触ってもいいか聞いてみるとやんわりと断られた。
でも、理由を聞いたら納得した。だってそれは……
「ほらミュート。ロッカーにでもしまったのか? どうなんだよ」
ミュートは口を固く結んで俯いている。きっと、言い返せば余計絡まれるから。
だけどそれを面白がって、壁の向こうから今度はコリンとギネスまでやじを飛ばしてきた。
「そりゃそうさ。雪合戦なんかで大切なクマさんが汚れたら大変じゃん?」
「ママからもらった大切なクマさんだもん、な?」
そう、小さい頃にママから買ってもらった大切なものだと言っていた。
だけど、ミュートのママは――
柄にもなく少しカッとなって、気づくとぼくはミュートの前に出てライルを睨んでいた。
普段黙ってるぼくが睨んだところでライルはひるみもせず、鼻で笑っている。
「何だよ転校生。言いたいことがあるんなら言ってみろよ」
口を開こうとして、みんなの前でママに関することを言ったらミュートが傷つくかもしれないと思い、声は喉の奥に沈んだ。
その様子を見ていたギネスは笑い声を上げている。
「ほっとけよライル。どうせこいつ言い返さないよ。女みたいにヒョロっちい性格なんだから」
さすがにそんな挑発には乗る気にもならず、それでもギネスのほうを見ると意外なことになっていた。
リッツがギネスを下から睨み上げ、きつく眉を寄せていた。
858 :
818:2006/12/11(月) 21:23:17 ID:E/H7SZx60
「そういう発言、やめてくれる? 「セクハラ」って言うのよ。「じょせいべっし」だわ。社会じゃ裁判沙汰よ」
難しいことを言われてギネスが口をぱくぱくさせていると、それに構わずリッツは今度はこちら側に歩いてきた。
ライルは少し後ずさり、「俺はそんなこと言ってないよな?」なんて呟いている。
「な……なんだよ、リッツ」
「あっち行きなさい」
ビッ、と鋭い動きでリッツは親指を背中側に向けた。
「え?」
「こっちがイヤならチーム替わってあげるって言ってるのよ。これで満足でしょ? あたし、さっさとゲーム始めたいのよね」
イヤとは言わせない迫力でそう言うと、ライルも逃げるように壁の向こう側に走っていった。
不謹慎にも少し痛快に思っていると、リッツは今度はぼくの方まで睨んだ。
「あんたも名前くらい言い返してやればいいのよ、マーシュ。いつまでも転校生なんて呼ばれちゃって!」
綺麗なピンク色の髪の毛が逆立ちそうな勢いでそう吐き捨て、ぷいと顔を背けた。
唖然としていると裾が控え目に引っ張られた。ミュートだ。
「ごめんね、マーシュ」
「何でミュートが謝るのさ。ミュートは何も悪くないよ」
悪いのはライル達と……ぼくだ。
リッツの言うとおり、こういうときは言い返してやればいい。
なのにそれができないのは単にぼくに勇気がないからなんだ。
ちょっと情けない気分になっていると、当のリッツは校舎から出てきた先生に声をかけていた。
「先生、準備できました。ゲームを始めましょう!」
一部始終を見ていなかったレスリー先生は全員揃っていることを確認するとうなずき、首に下げた笛を持ち上げた。
「よし、じゃあクラス内紅白雪合戦を始めるぞ。……始め!」
ピィーーッ、と甲高い笛の音がグラウンドに響き渡った。
859 :
818:2006/12/11(月) 21:24:10 ID:E/H7SZx60
先陣を切ったのはやっぱりリッツだ。
両手に持った雪玉を勢いよく投げ、ライルとギネスに命中させる。
「うわ、やったな!」
「おいギネス、コリン」
ライル達が一箇所に集まって何か相談を始めた。
ヴァージニアがスカートの裾を気にしながら投げてくるけど、目をつぶってるから当たりっこない。
好機とばかりにリッツは次々とライル達に投げつける。
ぼくも及ばずながら何個か投げたけど、全部外れた。
ミュートはやっぱりこういうことは苦手みたいで、雪玉をせっせと作ってはぼくやノーマに「はい」と渡す。
「もう、ミュート君も自分で投げてよね」
ノーマは呆れ顔だけど、この性格にも慣れてるみたいで受け取った玉をなかなか上手く投げた。
ぼくも負けてられない。ミュートから貰うと精一杯投げ続け、何とか一つ当てた。
下手な鉄砲……と自分でわかるのが悲しい。
「ほら、あんた達も喋ってないで参加しなさいよ!」
「言われなくてもちゃーんと参加するって。なぁ?」
「ああ。じゃあやろうぜ」
やがてライル達はにやにや笑いながら雪玉を作り始めた。
怪訝に思いながらぼく達が投げていると、まずコリンがベースボールの投手の真似をしながら投げた。
リッツのより速く飛んだそれは、雪玉を作っていたミュートの背中に命中した。
「あっ」
「ほらミュート、背中向けてたら流れ玉に当たっちまうぞ!」
ミュートがもたもたと体を起こしていると、今度はギネスの玉がまたミュートに当たった。
「や、やめてよ」
「何だよ、俺達は委員長様に言われたとおりマジメに雪合戦やってるだけだろ?」
「ほら、どんどん点取っていくぞ」
三人は玉ですらない雪の塊を次々ミュートだけにぶつけていく。
ミュートは逃げ惑い、リッツは不機嫌そうに対抗し、ぼくは何もできなかった。
860 :
818:2006/12/11(月) 21:24:59 ID:E/H7SZx60
ライル達はリッツに当てられるのも気にせず、壁から身を乗り出してミュートに集中攻撃する。
ぼくはミュートの前に出ようとしたものの、脚の間や頭の上を上手くすり抜けてミュートに当ててくる。
「ちょっと、やめなさいよ!」
見かねたリッツが注意するけど、三人はそ知らぬ顔だ。
「ちゃんと雪合戦やってるだろ。反則なんてしてないぜ」
「よく言うわ、さっきからミュートばかり狙ってるくせに!」
ギネスは笑ってまたミュートに、今度は頭へ雪玉を当てる。
「わっ」
「大丈夫、ミュート?」
「うん、平気……」
ミュートは顔についた雪を払いながら首を振る。
「ほら見ろ。ミュートは平気だってさ」
「当たり前でしょ! 平気じゃなかったらどうするつもりよ!?」
「うるさいなぁうちの委員長は」
リッツの剣幕に少し押されながらも、コリンがまた雪玉をミュートの顔に当てた。
「痛っ!」
さっきまでと違う悲鳴に振り返ると、うずくまるミュートの額に赤い色が滲んでいた。
「ミュート、額のとこ切れてるよ!」
「え……?」
ミュートは半泣きで傷に触るとビクッと震え、指についた血を見て青ざめた。
その足元には、白一色の上に一個だけ雪にまみれた石が転がっていた。
「石が入ってたんだ……!」
ひどい。こうなるとゲームどころじゃない。
861 :
818:2006/12/11(月) 21:26:33 ID:E/H7SZx60
「俺、石なんて知らないぜ。雪玉投げただけだもん」
「だいたい、ミュートがトロいんだよ」
「狙われたって当然さ。ゲームに勝つには点を取らなきゃ。なぁ?」
三人は口々に勝手なことを言うけど、石を入れたのは間違いない。
リッツは腰に手を当て、心底軽蔑したような声を上げた。
「勝てれば何してもいいわけ? あんた達最低ね。これだから男の子って嫌いよ」
「何だと、この白髪オンナ!」
雪より冷たい声に罪悪感が湧いたのか、単にカッとなったのか、ライルはリッツを振り向いて怒鳴った。
……白髪? 何だってリッツに白髪だなんて……
勝手な罵声かと思ったのに、リッツは体を強張らせて怒鳴り返した。
「誰のことよ!?」
「染めてるクセに! お前の頭、ほんとは真っ白じゃん!」
「やーい、白髪ババア! いっつも澄ましやがって!」
尻馬に乗ってギネスとコリンは次々はやし立てる。
そういえば染めてるのはわかっていたけど、やけに鮮やかに色が乗ってるとは思っていた。
「何ですって! もう一度言ってみなさいよ!」
リッツにとってそれは許せないことだったらしく、飛び跳ねてるコリンに掴みかかろうとしていた。
頭に血が上ってる。止めないと――
「いい加減にしなさい!!」
レスリー先生の怒鳴り声に、リッツと三人組のみならず、ぼくも含めた全員がすくみ上がった。
周りで遊んでる他のクラスの子達も何事かと振り返っている。
先生は三人とリッツの間に割って入ると、珍しい大きな声で周りに告げた。
「雪合戦は中止! ライル、コリン、ギネスは今から職員室に付いてきなさい」
厳しく告げると、すぐ心配そうにミュートの方を見た。
「ミュート、怪我は大丈夫か?」
「あ、は、はい」
「そうか。じゃあみんな、今日はもう解散だ。帰っていいぞ……ライル達は帰るな!」
逃げ出そうとしていたライル達を引っ張って先生は校舎に入っていき、後には重い空気が残った。
こうして、全員に嫌な気持ちを刻んでから今日の学校は終わった。
862 :
818:2006/12/11(月) 21:27:19 ID:E/H7SZx60
1レス目にタイトルぐらい入れるべきか。FFTAね。
>>862 FF6の人と連なっちゃったから、パッと見分かりづらい人もいるだろうし
タイトルは入れたほうが優しいね
何はともあれ、お二人とも乙
他人の作品見ると創作意欲がわくなぁ
TAはやったことないけど面白そうだな
ってことでやろうとしたらハードがGBAか・・
作者さん、最期まで頼む!w
このスレ始まったな。
6もTAもイイヨイイヨー
序・中盤は4でもってたようなものだしな
無印7・9・10はどうするんだろう
ってか、先週あたり書くと言っていた9の人は消えたのか?
ともあれ、作者さんGJです!
>>866 おはようございます。これから出社です。
9は現在鋭意進行中、1行40文字30行の原稿用紙5枚ほどの内容となっております。
時間も中々とれないので、思いついた文章を前後を気にせず載せて、そのあとで
削ったり付け足しながら形を整えるやり方をしています。
クリスマスが過ぎる頃までは深夜帰宅か、さもなければ泊りとなるので何時アップ
できるかわからない状況です。ともあれもう少しお待ちください。
それとですね、供給する側が上などとは思っていませんよ。ただそういう事をいわ
れると「批評する側はそんなに偉いのか?」と思うわけです。だから鏡をみろとい
ったのですよ。こういうのはお互い様ですね。
HB12NQ9n0
もっと物の言い方とかを変えてみたらいいんじゃないか?HB12NQ9n0のレスが一部の住人に不快感を与えてるのも事実みたいだし。(プロでなくとも)文章・小説を書く能力があるのならば、他人の気持ちも考え、察する能力もあるはずだと思うが。
まぁ、個人的にはHB12NQ9n0のレスは良くも悪くも刺激があるように思うので喜ばしく思う。
携帯から失礼
少しでも気にされると尻尾を振るように無駄な長文を振るう
犬かよお前
まぁまぁ、読むほうは面白けりゃいいのさ
書くほうは書ければいいのさってことでいいじゃん
まぁ、個人的な感想ではね、著者は前書きと後書きだけかいてればいいと思うんだ。
でも、ここは掲示板だしレスありゃ返すのは当然じゃんと。まぁ長いけどな。そういう性格なんだろ。
神経質なんだと思う。
まぁそんなことより6とTAは面白かったと。
おれはTAやった事ないから展開読めなくてこれはこれで楽しいなと。
少し調べたら、ネヴァーエンディングストーリーみたいな感じみたいだね
これを機に4の人やACの人とか、皆復活してくれないかな…
872 :
606:2006/12/13(水) 03:16:26 ID:kUhwKMN30
FF6-southfigaro-(10)
ロックは、ノックの音で目を覚ました。目をこすりながら、時計をみるともう夕暮れ時である。
オレンジ色の西日がロックのすすけた革靴を照らしていた。
「ごめん。まだ、寝てた?」入ってきたのはティナだった。
「いや、そろそろ起きようと思ってたところだし…。」
背伸びをしながら、ロックはベッドから立ち上がった。
「…それで、どうした?」
「うん、あのね。海…」
ティナは少しうつむいている。
「海?」
「うん。海を見に行きたいんだけど…。」
(ダメかな?)と言いたげな表情でロックのほうを見上げた。
ロックは、内心驚いたが、少し嬉しかった。ティナ自ら、何かをしたいと発言することは滅多にない。
「うしっ!じゃあ行くか!」
873 :
606:2006/12/13(水) 03:17:18 ID:kUhwKMN30
宿屋を後にし、二人は海岸線に向かった。
途中、サウスフィガロの市場を通ったとき、
突然「おっ!ロックじゃねぇかっ!?」と声をかけられた。
声の方向を振り向くと、船乗りのような風体の大男が立っている。
剥き出しになった大きな左腕には、碇とカモメの刺青が彫ってあった。
「おぉ!グダじゃん!こいつま〜た太りやがったな?奥さんは元気か?」
といいつつ、互いに歩み寄りロックとグダと呼ばれた大柄な男は握手をした。
ロックは、
「ティナ!こいつはグダっていって昔、帝国軍の下っ端に絡まれているのを助けてやったのさ!
今はこの町で一番うんまい居酒屋やってんだ!」
と紹介すると、近寄ってそっと耳打ちした。
「…こいつも、リターナーの一員さ!」
ティナがおそるおそるグダの方を見ると、大声で笑っている。品はないが、どこか痛快な笑い声でもある。
「ガッハッハ!元気も元気!今じゃすっかりカカァ天下さぁ!こうやって使いっぱしりにも出されてるぐれぇだしなぁ!
まっ、ここで積もる話もなんだし、後で店に顔出せや!サービスするぜ、後ろの姉ちゃんもな!」
グダはティナのほうを向いて大声をあげた。
「おっと!あんまり油売ってるとあとで母ちゃんにどやされっからな!ロック、また後でな!」
「おぅ!」
グダは巨体を揺らし町の方角へ歩いていった。
874 :
606:2006/12/13(水) 03:18:08 ID:kUhwKMN30
FF6-southfigaro-(11)
夕暮れともなると海岸線は人影もまばらだった。
二人は、夕日がちょうど見える浜辺に腰をおろした。
遠くで、夜間用船の荷の積みいれ作業や、子供たちが波打ち際で、砂遊びしているのが見える。
しばらく、どちらも口を開くことなく黙って海をただ眺めていたが、
波の音や、子どものはしゃぐ声、船の汽笛、カモメの鳴き声が二人の耳を満たしていた。
「…海見るの、初めてか?」
ロックが尋ねると、ティナは首を横に振った。
「…初めてじゃないと思う。ロックとエドガーが言っていたとおり、私この大陸には船で来たから…。」
「…記憶戻ったのか?」
ティナは決まりの悪い顔でうつむいた。
「…序々にだけどね。でも、思い出されるのは最近のことだけ。昔のことはまだ何にも…。」
「そっか…。焦んなくてもいいさ。もうティナを縛るものは何にもないんだからな…。」
ティナは黙ったままだった。
875 :
606:2006/12/13(水) 03:19:11 ID:kUhwKMN30
だんだん夕日も落ちてきて、あたりは薄暗くなってゆく。
「…海って、不思議ね…。何だか心が落ち着くわ…。」
「まぁ『海は万物の母』ってゆうぐらいだしなぁ…。」
ロックは両手を頭にやり寝転がった。
「……母かぁ…。」
ティナは港のほうを見つめていた。
ロックがその方角へ目をやると、浜辺で遊んでいた子供たちを母親が迎えに来ているところであった。
「…私にもお母さんやお父さんっているのかな…。」
「当たり前だろ!そんなこと…」
思わずロックは頭を上げた。
しかし、ロックにもティナの両親については何の見当もなかった。
しばらく気まずい空気が流れたが、話題を変えようとティナが
「ねぇ、ロックは何でトレジャーハンターになったの?」と尋ねた。
しかし、ティナの思惑は外れ、途端にロックの表情が暗くなった。
今まで明るかった分、そのギャップにティナは驚いた。
「…探し物があるんだ?」
「探し物?」
「……ティナには…話してもいいかな…。おれ…」
ロックはティナのほうをじっと見つめた。
と、その時グゥウゥ〜!と、周囲に聞こえるほど強烈な音が、ティナのお腹から発せられた。
ロックは、腹をかかえて笑い転げた。
「…ごめんなさい。」
ティナは顔を真っ赤にしている。
「あっはっは!!いや、いいんだ!そうだな、腹も減ったし、飯でも食いにいくか!な?」
ロックは尻についた砂を払いながら立ち上がり、手を差し伸べた。
いつものロックの顔に戻ったので、ティナも喜んでその手を掴んだ。
「…うん!」
腹ペコティナハァハァ。
877 :
818:2006/12/13(水) 15:18:55 ID:DvgJyATT0
FINAL FANTASY TACTICS ADVANCE
第三話 親子
何だかその場に居づらくて、ぼく達は教室で鞄を取るとすぐに帰る準備を始めた。
隣の席のリッツはさっきのことをまだ気にしてるようで、しきりに髪をいじりながら教科書を乱雑に鞄に突っ込んでいた。
「あ、あの……」
声に振り向くと、ぬいぐるみの頭を鞄から覗かせたままミュートが頭を下げていた。
「えと……さっきは、ありがとう」
その言葉にもリッツは口をへの時に曲げて、勢い良く鞄の口を閉めた。
「別に、助けたかったわけじゃなくてあたしは弱い者いじめが嫌いなだけ。バッカみたい!」
ざっとかき上げたピンク色の髪が広がる。
ミュートに怒ってるわけじゃないんだろうけど、その責めるような口調にミュートはびくっと震えた。
そっとしておいた方がいいと思ったようで、今度はぼくの顔を見て口を開いた。
「マーシュはこれからどうするの?」
「え? なんで?」
「本を……古本を今から買いに行こうと思って。マーシュも一緒にどうかなって……」
古本か。引っ越すときに大分捨てちゃったし、いいかもしれない。
何か面白そうな本があればドネッドにも……あ。
「ごめん、今日はだめだ。弟が退院してきてるから」
ミュートはしゅんとうなだれた。ちょっと悪い気もする。
横では少し落ち着いたリッツが首を傾げている。
「退院? 弟さん、病気なの?」
「うん。体が弱いんだ……生まれつきね。特に脚が弱いから走ったりできなくて、病院と家を行ったり来たりしてる」
「ふぅん……大変ね」
小さく「ごめんね」と付け加えて、ばつが悪そうな顔をした。
878 :
818:2006/12/13(水) 15:20:16 ID:DvgJyATT0
「本って、どんな本?」
なんだか空気をさらに重くしちゃった気がしたので、ミュートに尋ねてみた。
「うーん、ぱらっと見ただけだからよくわかんない。でも、ゲームに出てくるみたいな魔法とか怪物みたいなのが書かれてるみたい」
冒険小説みたいなのかな? ゲームならドネッドもよくやってるし、気に入るかもしれない。
「じゃあさ、その本を持ってうちにおいでよ。ドネッド……弟も喜ぶと思うんだ」
ミュートは意外なものでも見るように目をしばたかせた。
「……いいの?」
「うん。もし良ければドネッドとも友達になってほしいし。リッツも一緒にどう?」
「あたし?」
話を振られたのが意外だったのか、リッツも目を丸くする。
……ぼくが遊びに誘うのって、そんなに意外なのかな。
リッツは指に髪を巻きつけながら少し考えて、頷いた。
「え……えっと、そうね。今日は何もないし……行ってもいいかな」
良かった。機嫌も直ったみたいだし、遊ぶなら多い方がいい。
「じゃ、決まり。場所はわかる?」
「壁の黄色い、あの家でしょ?」
「あ、それならボクも知ってる。本を買ったらすぐに行くよ」
「うん、待ってる」
そうと決まったら、もう教室に留まってる理由はなかった。
三人組が戻ってきたら気まずいし、早く出てしまおう。
879 :
818:2006/12/13(水) 15:22:19 ID:DvgJyATT0
一緒に通学路を歩いていると、三人ともの分かれ道になっている商店街に着いた。
ぼくのうちは東、古本屋は南、リッツの家は西だ。
「じゃあここで……」
「うぃ〜……っク」
解散しようとした矢先、間延びした声がすぐ近くから聞こえてきた。
横にあったカフェから出てきた中年の男の人だ。顔は赤く、明らかに酔ってる。
「やだ、昼間から酔っぱらい?」
こういうことに厳しそうなリッツは案の定、不快感を露わにしていた。
ミュートは何故か男の人から目を背け、俯いている。
と、その時男の人はぼく達の……いや、ミュートの方を見た。
「お? ミュートじゃないかぁ。父さんだぞぉ。久しぶりだなぁ〜」
そしてよたよたとミュートに歩み寄ってくる。その足取りは今にも倒れそうだ。
……この人が、ミュートのパパ?
ミュートは一つ溜息を吐くと、その人の脇に寄って体を支えた。
「ほぉら、こんな時間にうろうろしてちゃぁ駄目だぞぉー。ちゃんと学校に行かないとなぁ〜」
「……今日は半日授業だよ。パパこそ、お仕事探しはどうしたのさ」
「今日は父さんも休みだぁ。酒はうまいぞ〜。やなこと、みーんな、わすれっちまうぞ〜」
そう言ってぐりぐりとミュートの頭を撫で回している。
ミュートは迷惑そうにその手を払うと、責めるような、諦めてるような声を出した。
「じゃあ明日はちゃんとしてくれるんだね?」
「おうよ。おうともさ。だぁからあと一杯だけ飲んでくらぁ〜」
最後の方は呂律が回っていない声を出すと、ふらふらと通りの向こうへ歩いていった。
ぼくとリッツは、ただ何を言えるわけでもなく立っていた。
880 :
818:2006/12/13(水) 15:24:16 ID:DvgJyATT0
残されたミュートはしばらく心配そうに見た後、深く溜息をついた。
「ママが死んじゃってから、毎日ああなんだ。……格好悪いよね」
「……」
……そっか。
たしかに格好良くはないけど、あんなになるぐらいミュートのパパはママのことが好きだったんだ。
自然と、ぼくは自分の両親のことを思い出してしまった。
ぼくとドネッドが起きてる間は事務的に最低限のことしか話さないパパとママ。
ぼくとドネッドがベッドに入ってからは目が覚めるぐらい大きな声で怒鳴り合うパパとママ。
断片的に聞こえてくる言葉だけ拾っても、喧嘩の原因は毎日違ってた。
物心ついた頃はまだそんなじゃなかった気がする。
どこかで何かを間違えたんじゃなくて、長い時間をかけて間違えていったんだと思う。
パパとママが仲良くしている姿は、もうぼくの記憶の中にはない。
そしてこれからも、そんな思い出は絶対にできないってことがこの前決まってしまった。
きっと、もしパパが死んじゃっても、ママは一日で普通のママに戻ってしまうんだろう。
「……マーシュ?」
ぼくが黙っていると、ミュートとリッツが不思議そうに肩を揺すった。
「……あ、ごめん。ミュートの家ってさ、パパとママ、仲が良かったんだね」
不謹慎だとわかっていてもそう口にしてしまった。
幸い、ミュートはそれほど気にしなかったようできょとんとしている。
それでも何となくいたたまれず、ぼくは帰り道の方へ一歩踏み出した。
「じゃあ二人とも、待ってるから。また後で」
返事も待たずに、ぼくは滑りそうになりながら早足で帰っていった。
どっちが幸せなわけでもどっちが不幸なわけでもない。
それでも、ぼくはミュートのパパの姿を羨ましいと思ってしまった。
881 :
818:2006/12/13(水) 15:25:37 ID:DvgJyATT0
以上。
自宅PCが規制に巻き込まれ中で出先から投下してるので、次は規制明け。
TAのひとGJ!
プレイしていたときのことを思い出せたよ。
続き期待しています。
ツンツンリッツハァハァ。
心情描写の追加も違和感なくて凄くいい。今週でOP終わらせそうな勢いだな。
6オリジナルもTAもGJ!!
4も帰ってくるといいなぁ!
885 :
606:2006/12/13(水) 23:22:05 ID:kUhwKMN30
FF6-southfigaro-(12)
グダの居酒屋につく頃には、すっかり日も落ち、店の外からでも中の賑わいが分かるほど、店内は盛り上がっていた。
『居酒屋 白波亭』と掲げたのれんをくぐると、店内は大繁盛で、様々な様相の客たちが酒盛りをしていた。
テーブル席は満席だったため、ロックたちはカウンター席に座った。
すぐに、テーブル席を回って客と話していたグダが、カウンターに戻ってきた。
「よぅ!ロック!改めて久しぶりだな、何にする?」
「とりあえず、奥さんの手料理をこの娘にくわしてやってくれ!おれは、とりあえず最高にうまい酒だな!」
「あいよっ!母ちゃん!」
グダが厨房に向かって声をあげると、これまた体格の良い女性が顔をだした。
「うるさいねぇ!そんなデカイ声をあげなくても聞こえてるよ!
やぁ、ロック、彼女かい?やっぱりいい男はモテるねぇ!」
「ち、違うよ!マグさん!」
あわててロックが声をあげた。
「へっへっへ〜!ロック、お前さんは運がいいぜ!こいつを見ろ!!」
グダが酒樽から、一本のボトルを持ってきた。
「こ、こいつは『フィガロの夜明け』!?銘酒じゃないか!?」
「今日、入荷したんだぜ!どうも近頃、それを買い占めてる男がいてなぁ!
そいつのせいで中々手に入れるのが困難だったんだが…。」
グダは急に眉を寄せ、小声になった。
「どうも、くせえんだよな…。」
「…エドガーから頼まれたな?その男が内通者なのか?」
ロックも真顔で聞き返した。
カウンター席に座っているのは、ロックとティナだけである。
「いや、そいつじゃねぇ…。
その男、その酒を中央通りに住んでる爺さんに、毎日届けてるんだよ…。
その爺さん昔…え〜と何つったっけ…。あっそうそう!アロットだ!
北の豪邸に住んでる郷士のアロットさんとこの召使だったらしいんだが…。
おれは、そのアロットさんが怪しいと踏んでいる。まだそこまでの確証はねぇが…。」
886 :
606:2006/12/13(水) 23:23:05 ID:kUhwKMN30
「…あの…。」
ティナが二人の会話に割って入った。
「さっきから、奥さんが呼んでますけど…。」
ハッとわれに返ったグダであったが、もう遅かった。
「あんた!!さっきから呼んでるのに、無視するとはいい度胸だね!」
「ご、ごめんよぉ!母ちゃん!」
マグに叱られたグダは温かい皿を持ってカウンターへ戻ってきた。
ティナの前に差し出された皿からの芳ばしい香りが、ティナとロックの嗅覚を刺激した。
「へい、お待ち!『ムーの胸肉と野菜のコトコト煮』だよ!」
「おいしそう!」
パクリと食べたティナの顔をみれば、ロックにもその美味さは伝わったようだ。
「おれも、同じやつ頼むわ!っと、こっちも、ん〜いい香り!どれどれ…」
ロックはグラスに酒を注ぎ、口にした。
「…うんめぇ!やっぱり、銘酒は違うなぁ〜!ん?どうした、ティナ?」
ティナはロックの飲んでいるものに興味があるようだった。
ロックはもう一つグラスを頼み、それに少しだけ酒を注ぎティナに手渡した。
ティナは少し躊躇したが、グイと飲み干した。
「おっ!ティナちゃん、いい飲みっぷりだねぇ!!」
「不思議な味がする…。」
ティナは初めて酒を飲んだらしく、少しむせた。
「まっ、この味を理解するにはまだ早いな。」
「ティナちゃん、こう言ってるけど、こいつだって酒には弱いんだぜ…。」
「ば〜か!おれは、酒は好きなんだよ!…弱いけど。」
887 :
606:2006/12/13(水) 23:24:27 ID:kUhwKMN30
小一時間ほどたつと、ロックの顔はほんのり朱色に変わり、うとうとし始めた。
「大丈夫、ロック?ちょっと飲みすぎなんじゃないの?」
「まだ大丈夫…。そうだ、グダ!今週の『ベクタ新聞』あるか?」
ロックが尋ねると、奥からマグが持ってきてくれた。
「あいよ!ったく、週一回のくせに課金が高いんだから、ベクタ新聞は…。」
ぶつくさ文句をいいながらマグは厨房に戻っていった。
「一面トップは、『フィガロ同盟破棄!?─エドガーの思惑─』か…。
やっぱりティナのことは何も載ってないようだな。」
ティナには、ロックが読んでいる記事の裏面がちょうど見えていた。
(今週のお天気、新着モンスター情報、帝国軍は君を待っている!チョコボ屋は黄色い羽看板が目印です!…。)
と、そのときロックが新聞の1ページを見せてきた。
「ティナ、ティナ!このページ見てみな!」
ページの見出しには、でかでかと『帝国賞金首ランキング』と書かれていた。
帝国賞金首ランキング最新情報
討伐済み
『Dランク…砂漠の狼/フィガロ盗賊団─報酬金10,000ギル』
今月の賞金首新規登録
『Sランク…キング・オブ・カジノ/セッツアー─報酬金290,000ギル』
『Cランク…世界最強の剣士?/ジークフリート─報酬金62,000ギル』
今月のランクアップ
『A→Sランク…闇夜の怪盗/ロック─報酬金180,000ギル(34,000ギルup)』
『S→SSSランク…サイレントキリングマスター/シャドウ─報酬金詳細は帝国軍本部まで』
「…このシャドウっていう人、すごいんだね。」
ティナは率直な感想を述べたが、ロックは不満そうだった。
「そうそう…って、そこじゃないよ!ここ、ここ!」
ロックは自分の名前が書いてあるところを指差した。
「あっ!ロックの名前も載ってる!」
「だろっ!へへへ…。まぁ、そのシャドウってやつも大したことないさ!すぐに追いついてやる!」
そんなことを話していると、一人の男が店内に入ってきた。
888 :
606:2006/12/13(水) 23:25:48 ID:kUhwKMN30
FF6-southfigaro-(13)
それまで騒がしかった店内が静まり返ったので、
ロックたちが店の入り口のほうへ目をやると黒ずくめの不気味な男が立っていた。
その足元には、猟犬で名高いハウンド犬が大人しくしている。
店内の注目を受けながらも、その男は静かに歩きロックの横のカウンター席に座った。
そして、グダにギルが詰まった袋を乱暴に投げつけた。
「シャドウだ…。おれ、はじめて見たよ…。」
「ばかっ!見るんじゃねぇ!目が合ったら…殺されっぞ!」
「おっかねぇ…。」
店内にはまだどよめきが残っていたが、彼はそんなことには慣れているようだ。
誰に忠誠を誓うわけでもない。その冷たい瞳の奥に隠された素顔を見た者は誰もいない…
シャドウ
889 :
606:2006/12/13(水) 23:26:49 ID:kUhwKMN30
「…七千ギルはある。釣りはいらん。酒と…。」
足元にいるハウンド犬の頭をなでながら、
「こいつの餌を頼む。」とだけいった。
「なっ、七千ギル…。しょ、少々お待ちを!」
グダは、シャドウを目の前にした恐怖で声が震えている。
ロックは、その横で『フィガロの夜明け』の最後の一杯をグイと飲み干した。
「へっ!びびってんじゃねぇよ、グダ!おれが、叩き出してやる!シャドウ、勝負しやがれ!」
勢いよく立ち上がり、挑発したが、シャドウはロックを無視して飲み始めた。
「てっ、てめぇ!」「…やーめーとーけ!飲みすぎだぞ、ロック。」
二人の間に入ったのは、なんとエドガーだった。
「エ、エドガー!?何で、ここに…ってウップ…。」
ロックは、口を押さえ、一目散に店の表に駆けていった。
「グダ、勘定は?」
「も、もう頂いております!」
エドガーはうなずくと、グダにそっと耳打ちした。
「…内通者の件。引き続き頼むぞ。」
と、エドガーが言うと、グダは黙ってうなずいた。
「よし、ティナ!帰ろう!」
「う、うん!」
去り際にエドガーは、シャドウの背中を見ながらぽつりと独り言を発した。
「シャドウ……。金のためには親友をも殺しかねない暗殺者…か。出来れば関わりたくはないな。」
ティナは慌てて身支度を整え、
「ごめんなさい。」
と、頭を下げシャドウに謝ったが、チラリとも見ることなく酒を飲み続けている。
「ごめんね。」
頭を下げると、シャドウの足元でじっとしているハウンド犬が、ティナの顔を見上げていたので、ティナはその犬の頭を優しくなでた。
「よせ、他人にはなつかない犬だ。」
シャドウは、ティナの方へは一切見ずに、まるで独り言のように注意した。
ハウンド犬は、喜ぶことも嫌がることもなくティナの顔をただみている。
ティナは、グダとマグの方へも一礼し、エドガーの後を追い『白波亭』を後にした。
890 :
606:2006/12/13(水) 23:37:06 ID:kUhwKMN30
こんばんわ。FF6担当606です。
感想を述べられている方、いない方、ご拝読ありがとうございます。
続きを書くにあたり、まとめサイトの過去のノベライズを
確認したいのですが、サイトに繋がりません。
しばらく待ったほうがよろしいでしょうか?
また、参考にさせて頂いているセリフ集も、ここまでしか掲載されていません。
他に、セリフの一覧が見られるようなサイトはありますか?
クライドさんキタコレ。
6は世界観を膨らませるのが上手いな。
まとめは今週頭にはまだ見られたと思うが閉まっちゃったか。残念だ。
まとめサイト落ちたせいで過去ログも全部見れなくなってるな
29チャンは閉鎖しちゃったしな…
datは一応持っているが
895 :
818:2006/12/15(金) 16:37:06 ID:UAo+EeQ90
FINAL FANTASY TACTICS ADVANCE
四話 グラン・グリモア
「ただいま」
「おかえりなさい、マーシュ」
家に帰ると、ぼくのものじゃない子供用の靴がもう一足あった。
ドネッドだ。
部屋に入ると、テレビゲームをしていたドネッドが車椅子ごと振り向いた。
「お帰り、お兄ちゃん。昼までって聞いたけど遅かったね」
「学校で雪合戦したんだ。あちこちびしょびしょだよ」
他にも色々あったけど、原因は雪合戦っていってもいいだろう。
ミュートをかばって雪を被った上着を見せると、ドネッドはくすくすと笑った。
「どうせお兄ちゃん、当てられてばっかなんでしょ。ちょっと運動音痴だし」
「雪に慣れてないだけさ」
さすがに弟に馬鹿にされて認めたくはない。そう言い訳すると、ドネッドはますます笑った。
「ぼくのことはいいよ。それよりドネッド、具合はどうなんだ?」
「んー、それなり。マイナスがゼロになるぐらいにはマシになった」
引っ越す直前のドネッドの症状は随分と酷かった。
それが落ち着いただけでも、まぁ喜ぶべきなのかもしれないけど。
「でもご飯は美味しいし、看護婦さんもビジンだよ」
「馬鹿」
軽口を叩ける程度に良くなってることに安心して、ちょっと肩が軽くなった。
896 :
818:2006/12/15(金) 16:38:30 ID:UAo+EeQ90
それから取り留めのない話をした。会話っていうよりは新生活の報告って感じだ。
「新しい学校はどう?」
「向こうに比べてすごく小さい。二階建てだよ」
「今度連れてってよ」
「散歩しても風邪ひかないぐらい暖かくなったらな」
「雪、溶けちゃうじゃん」
「溶けてからって言ってるんだよ」
車椅子が坂なんかで滑ったら大変だし。
「もう友達はできたの?」
「それなんだけど、多分もうすぐ……」
案の定、言いかけるとインターホンが鳴った。ミュート達だ。
ママのスリッパの音が部屋の前をパタパタと通り過ぎて、少し経って声が聞こえてきた。
「マーシュ、お友達が来たわよ」
「あがってもらって!」
「お友達? 呼んだの?」
友達ができてたのがそんなに意外なのか、ドネッドは本気で首を傾げている。こいつ。
「面白そうな本を見つけたって聞いたから持ってきてもらったんだ。ドネッド、本好きだろ? よく読んでるじゃない」
「病院じゃ本とゲームくらいしかやることがないだけだよ」
ふてくされたみたいに言うけど、家でもやってる。しかも楽しそうに。
そうこうしてるうちにノックが聞こえた。
「どうぞ。入って」
「おじゃまします」
着替えたリッツと、随分と大きな本を抱えたミュートが入ってきた。
897 :
818:2006/12/15(金) 16:40:25 ID:UAo+EeQ90
「こんにちは、あなたがドネッド? あたしリッツっていうの。お兄さんのクラスメイトよ」
リッツはにっこりと、学校での苛烈さを感じさせない雰囲気で自己紹介した。
「あ……えっと」
「同じく、こっちはミュート。よろしくね」
一秒と待たず、言うタイミングを逃していたミュートの分も紹介してしまった。ここら辺がリッツらしい。
「よろしく」
そんな関係を一目で理解したようで、ドネッドも苦笑して二人に会釈した。
ミュートは今度こそ何を言うか迷ったらしく、困ったようにこっちを見ている。
「ミュート。本ってそれ?」
両手で持っていた本を指さすと、頷いて表紙を見せてくれた。
「うん。古本屋のおじさんもこの本の題名を知らないんだって」
「へぇ……思ったよりずっと古いんだね……」
装丁は綺麗でしっかりしているけど、色合いは随分と年季を感じさせる。
本当に魔法の本みたいだ。
「じゃあここに広げてくれるかな。……そう、そこ。ドネッドも見えるよな?」
「うん。文字は見えても読めなさそうだけどね」
確かに、見たことのない字だ。幸い絵や図がたくさんあるから、そっちを読もう。
ドネッドの前に座り、ぱらぱらとページをめくっては色々と話した。
「あ、この絵、ゴブリンじゃない?」
「こっちは……モーグリだよね? こんな昔の本に描かれるぐらい歴史があったのかな」
「ゲームや本に出てくる種族って何か『元ネタ』があるでしょ? それじゃないかしら」
「ボクもこれ、この前ゲームで見たよ。バンガとヴィエラだっけ」
へぇ。難しい本と思ったら意外と馴染みがある。神話とか昔話の本なのかな。
本には色んな空想の種族や怪物、RPGみたいな格好をした人間の絵が綺麗に描かれていて、なかなか楽しめた。
898 :
818:2006/12/15(金) 16:41:47 ID:UAo+EeQ90
「……文字の方はさっぱりわからないや。これ、魔法の呪文かな?」
絵の下に細かく書き連ねられている文章を見て、ぼくは冗談半分でそんなことを呟いた。
初めて見る文字の下には英語で訳が書いてあるけど、発音を書いてるだけみたいだからやっぱり意味はわからない。
リッツも何度か英訳をぶつぶつ読み上げた後に顔を上げた。
「あながち嘘じゃないかも。だって上に描いてあるこれ、魔法陣でしょ? 元はラテン語なのかしら。この英文は後から書き足したみたいだけど」
「リッツ、ラテン語わかるの?」
「まさか。語感がそれっぽいって思っただけよ」
成績優秀のリッツでもわからないんじゃお手上げだ。子供用の本じゃないみたいだから当たり前だけど。
ミュートも文字の方に興味が移ったらしく、それっぽく手を動かしたりしながら読み上げている。
「ええっと……アルタ・オロン。ソンドス・カミーラ……? 本当に魔法みたい」
「魔法っていいなぁ。ボクにも使えたらいいのに」
そんなことを言ってドネッドも魔法陣を横から上から眺めている。
「ドネッドも気に入ったみたいだね」
するとドネッドはニヤリと笑った。
「魔法が使えたらさ、お兄ちゃんだってもっと運動うまくできるよ」
「変なこと言うなよ!」
「あはは、本当のことじゃん」
他の人の前でそんなこと……やっぱりリッツもミュートも笑ってるし。まったく。
「そうね、せめてしょっちゅう転びそうになるのは何とかした方がいいわね。見てて危なっかしいもの」
「前住んでたところは雪が積もらなかったってだけだよ」
我ながらだんだん言い訳っぽくなってきた。
魔法を使ってどうこうしなきゃいけないなんてほど運動音痴なわけじゃない……と自分では思ってる。
ひとしきり笑った後、ミュートは犬人間ののような種族の絵を見ながらぽつりと呟いた。
「……でもね、本を読んでるとよく考えるんだ。本の世界が現実だったら、ってね」
両親のことや、いじめられてることを考えたんだろうか。少し寂しそうだった。
899 :
818:2006/12/15(金) 16:43:48 ID:UAo+EeQ90
リッツはそれをフォローするように澄まして言った。
「あたしはイヤね、本なんて。だって『パターン』が決まっているんだもん」
「じゃあリッツだったら何がいいの? まさかマンガなんて言わないよね」
尋ねてみると、リッツは剣や鎧を装備した戦士の絵を指さした。
「あたしだったらゲームかな。強いモンスターを相手に剣で戦うの。そういうのって面白いと思わない?」
確かに、誰だって一度は考えるようなことだ。
自分の腕一本で名を上げて勇者や英雄になるってのは、今でもたまに憧れる。
ミュートも頷くと、ゲーム機の上に置いてあったパッケージを見て言った。
「ボクなら『ファイナルファンタジー』がいいな。この本に書かれてるのもそんな感じだし」
「でも自分がなるんならセーブとかできないし、ちょっと怖いや」
「お兄ちゃん、リオファネス城で何度も死んでやめちゃったもんね」
「あれは難しすぎるよ」
逆にあれはセーブできるから詰まったんだし。
それからしばらくはミュートの本とゲームの話で盛り上がった。
多分二人とも、外に出られないドネッドの話題に合わせてくれたんだろう。少し嬉しかった。
日が暮れた頃に、「さて」とリッツが立ち上がった。
「結構時間経っちゃったわね。そろそろおいとましようかな」
「ボクも帰るよ。じゃあね、マーシュ。明日また、学校で」
ミュートも本を閉じて立ち上がった。結構重そうだ。
「今日は楽しかったわ。ドネッドも、またね」
「バイバイ、リッツおねーちゃん」
「そこまで送るよ。ドネッド、ちょっと行ってくるね」
上着を着て二人の後を追う。
部屋を出るときに小さく、ドネッドの声が聞こえた気がした。
「魔法、使えたらなぁ……」
気のせいかと振り返ったけど、すぐにママが「ドネッド、薬の時間よ」と水と薬を持ってきたからそっとしておいた。
――魔法が使えたら外を自由に走り回れるのに。
ドネッドがそう思っているのは、わざわざ確かめるまでもないから。
900 :
818:2006/12/15(金) 16:45:27 ID:D90Dpxxf0
なお、TA世界ではTと12のゲームとしての存在が示唆されるけども12は未プレイ。
テラウィーグラフwww
いよいよ次か。超期待。
902 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 19:33:11 ID:dPLRA3pv0
落ちそうだから上げとく。
なぜ上げるのか意味が分からない
脱兎落ちは最終書き込みだし・・
下げで行ったほうがいいと思うが
904 :
818:2006/12/17(日) 16:46:14 ID:g2YlQhnQ0
FINAL FANTASY TACTICS ADVANCE
第五話 雪が止んだ夜
1.ミュートと魔法の本
「ただいまー……」
ボクがマーシュの家から帰っても、パパはまだ帰ってきてなかった。
「……ふぅ」
重たい本を置いて、買い置きのパンとハムで簡単な夕飯をとった。
小さい頃から好きな店のパンだけど、一人で食べてもあまり美味しくない。
テレビが七時を告げてもまだ玄関のドアは開かなかった。
こういう日は大体日付が変わるぐらいじゃないとパパは帰ってこない。
一人でご飯を食べて、一人でお風呂に入って、一人で明日の準備をするうちに気持ちはどんどん沈んでくる。
すると、さっきマーシュ達にぼやいたように思ってしまう。
本やゲームが現実になったら、って。
嫌なことばかりってわけじゃない。今日の午後は楽しかったし、図書館にいるときも落ち着く。
でもママはもういないし、パパはすっかり変わっちゃったし、学校は怖い。
もう少しボクに都合のいい世界があってもいいんじゃないかって、そんなことを考えてしまう。
古本をめくると銀色の鎧を着た騎士や、長い毛の生えた犬のような顔の魔法使いが目に飛び込んでくる。
こんな世界に生まれてもボクはいじめられっ子なんだろうか。
それは分からないけど、少なくとも今のこの世界よりはきっとマシだ。
教科書が全部揃ってることを確かめて、ママの形見のクマを撫でる。
外は相変わらず雪が降っていて、部屋の中の淀んだ空気を入れ換える気にもならなかった。
そのとき、古本のページがめくれた。
「……?」
窓は閉まってて風は入ってない。すきま風でも入ってるのかな。
そんな考えを笑うみたいに、ページは二枚、三枚と次々めくれていった。
段々勢いを増して、まるで生きてるみたいに。
905 :
818:2006/12/17(日) 16:47:19 ID:g2YlQhnQ0
「な、何これ……?」
めくれていくだけでなく、本は光り始めていた。
描かれた魔法陣がくるくると回っているように見える。
怖い。
何だか分からないけど逃げようとしたそのとき、どこからか声が聞こえた。
――ミュート。
「え……?」
本の上にぼうっと光が上り、その中に人の姿が浮かんでいた。
でも、その人は……
――ミュート。
「……ママ……?」
病気で死んじゃったはずのママが、目の前に浮かんでいる、
夢……?
でも、腕の中のクマの感触は間違いなく現実のものだし……
ママは思い出の中と同じように優しく微笑んだ。
――あなたの望む世界を作ってあげる。
「望む、世界……?」
――誰もあなたを傷つけない、あなたを一人になんかさせない、そんな世界。
それは確かに、今願っていたことだけど、でも……
「ママは? 今ここにいるママは幽霊なの? 一緒にいられないの?」
夢でも幽霊でも、せっかくまた会えたのに、話せたのに。
また別れるなんてイヤだ!
――そんな顔しないで。その世界ではママもミュートの傍にいてあげる。ずうっと、いてあげる。
ママと、また一緒にいられる……?
だったら……
「だったら、ボクはその世界に行きたい……!」
そう叫ぶと、光がますます強くなって何も見えなくなった。
ママがまた見えなくなるのが怖くて、ボクは夢中で光の中に手を伸ばした。
握り返された。懐かしい手の、懐かしい感触だった。
906 :
818:2006/12/17(日) 16:47:51 ID:g2YlQhnQ0
2.シドとレメディ
「うぃー……っク」
私が目を覚ますと、そこは公園のベンチだった。
また泥酔して意識を失ってしまったらしい。
雪が降っているというのに。下手をすると凍死してるところだ。
公園で孤独な死。死体は市内在住のシド・ランデル、無職……ってとこか。
「はは、死んだら死んだでまたお前に会えるのかな、レメディ」
亡き妻に乾杯をしようとしたが、生憎ともう酒がない。
……続きは家で飲むか。ミュートももう寝てるだろう。
とにかく……酒だ。
酒がないと、何を見てもレメディを思い出して何も手に付かない。
早く家に……
そのとき、雪が止んで空が明るくなった。
……もう夜明けか? いくら何でもそんなに眠り込んだってことは……
空を見渡すと、一箇所から光の柱のようなものが立ち上り、次第に広がっている。
火事か? いや、そんな風には見えないが、それよりあっちは私の家の方向……
「……ミュート!?」
何か分からないが、家の方で何かが起こっている。家にはミュートがいる!
空の酒瓶を放り出し、私は公園を飛び出し……おかしな光景を見た。
907 :
818:2006/12/17(日) 16:48:33 ID:g2YlQhnQ0
「何だ、これは……?」
街の建物が揺らぎ、消えていく。
酔った幻覚かと思ったが、顔をつねっても何をしても揺らぎは止まらない。
建物が消え……別の建物が現れていく。中世風の古めかしい建物だ。
変化はゆっくりと、しかし一つずつ確実に現れている。
何だ? 何が起きている?
視線を彷徨わせていると交番が目に入った。
警察がどうこうという状況ではないだろうが、少なくとも人がいるだろうと踏んで駆け込んだ。
「おい、一体何が……」
警官は、確かにいた。
が、彼の姿もまた揺らいで別のものへと変化していく。
トカゲのような頭をした異様な姿へ。
「う、うわ……!」
外へ飛び出すと、帰宅中のサラリーマンや店を閉めていた女性も目の前で姿を変えていく。
小さなぬいぐるみのような姿、兎のような長い耳を持つ姿。
そしてそれら同士が特に驚く様子もなく顔を合わせ、会話をしている。
私は気が狂ったのか?
当然そんな恐怖が頭をよぎるが、踏みしめる地面の感触、空気の匂いまで私はしっかり感じ取れている。
だがその地面も空気ももはやセント・イヴァリースのものではない。雪が消えて地面が露出し、温かい空気が満ちている。
既に私以外の全てが別のものへと変化していた。
奇怪な姿の半人半獣や映画のような格好をした人間が中世風の街を歩き回っている。
呆然としている私の耳に声が響いた。
――これはミュートが望んだこと。
聴き間違えるはずがない。懐かしく、私が最も愛した声だ。
――あなたにも担ってもらいます。ミュートの望んだ世界の、その一部を。
「レメディ……?」
名前を呼ぶと同時。私の意識は途切れて消えた。
908 :
818:2006/12/17(日) 16:50:46 ID:g2YlQhnQ0
3.マーシュと夢
その夜、薬が効いてドネッドが早く寝ちゃったからうるさくもできず、ぼくはベッドの中で退屈していた。
明日も学校だ。早く寝ないといけないのは分かってるんだけど。
その時だった。
「ん……?」
今、窓の外が光ったような……雷?
ドネッドが起きてしまったんじゃないかと隣のベッドを見ると、
「……え?」
ドネッドが横になったまま宙に浮かんでいた。
それこそ、まるで魔法のように。
「ドネッド!?」
飛び起きて手を伸ばそうとしたけど、ドネッドはパッと消えてしまった。
ドネッドだけじゃない。部屋が何だかゆらゆらして、それに……
「ぼくも浮いてる……!?」
足が地面に着かずふわふわしている。
何もできないまま部屋が、家が消えていくのを見続けた。
夜の空気が体を冷やすことを覚悟したけど、雪は降ってなくて、空気も冷たくなかった。
夢?
その考えが正しいように頭がぼんやりして、体が軽くなっていった。
やっぱり、これは夢なんだ。
夢なら、このまま目を覚ませば元に戻っているはずだ。
そしたら学校に行って、慣れてないながらもいつも通りに過ごせるはずだ。
そのはずだったけど。
その日、街はぼくの知っている街ではなくなった。
909 :
818:2006/12/17(日) 16:51:23 ID:g2YlQhnQ0
以上。ようやくオープニング終了。
乙
TAは未プレイでスルーしようかと思ったが、
さわりだけみたら全部読んでしまった
頑張れ
乙
俺も未プレイだけど楽しく読んでるGJ
FF9マダー?
913 :
818:2006/12/18(月) 21:34:20 ID:KXaSubil0
FINAL FANTASY TACTICS ADVANCE 一章『異世界イヴァリース』
第一話 エンゲージ
「う…ん……」
立ち眩みのような感覚を覚えて、近くの壁にもたれる。
あれ? たしか変な夢を見たからここはベッドの中のはずじゃ……
ぼくが立っていたのは見たこともない街だった。
なんだか中東のような乾燥した雰囲気のある町並みで、どの建物も古めかしい。電線も走ってない。
ぼくの格好もパジャマじゃなかった。なんだか硬い生地の鎧のような服を着て、腰にぶら下がってるこれは……剣?
何でぼく、こんな格好でこんな所にいるんだっけ……?
まだ少しぼーっとしたまま、とりあえずここがどこなのか確かめようと階段を上った。
きょろきょろしながら歩いてたから注意力が欠けてたんだろう。
肩にどん、と軽い衝撃が走った。
「おい、よそ見してンじゃねぇぞ!」
「あ、すみません」
頭の上から声が降ってくる。横から来た人にぶつかっちゃったみたいだ。
謝ろうとその人を見上げると……
「ト、トカゲ人間……?」
そうとしか言いようがなかった。
二本の脚で立って服も着てるその人は、頭だけがトカゲのそれだった。よく見ると露出した腕にも鱗が生えている。
仮装行列でもしてるのかとぼんやり考えていると、その人はお面にしてはやけにはっきりとした表情を見せた。
それも「怒り」の表情を。
「小僧っ! 今、なンて言った!?」
「えっ?」
トカゲ人間、って。でもお面を被ってることを指摘されて怒るなんて……
「オレのことを「トカゲ」って言ったろ? あン? 言ったよな? オレ達バンガをトカゲ呼ばわりしやがったな!」
自分で言っててますます加熱したようで、今にも殴りかかってきそうな勢いで詰め寄ってくる。
ど、どうしよう……?
914 :
818:2006/12/18(月) 21:35:49 ID:KXaSubil0
さっきまでは周りで町のざわめきが聞こえていたのに、いつの間にか静まり返っていた。
もめ事の気配にみんな離れてしまったらしい。
ぼくが逃げるべきかもう一度謝るべきか迷っていると、場違いな可愛らしい声が横から飛んできた。
「クポ〜。やっと見つけたクポ〜」
見ると、小さな子供ぐらいの背丈のぬいぐるみがとことこと歩いてきた。
このぬいぐるみ、確かゲームで見たような……?
「モーグリか。この小僧はお前のツレか?」
「クポ。田舎から出てきたばかりクポ。あんた達バンガのこと、よく知らないクポ〜」
どう見てもぬいぐるみなのにやけにはっきりとした声だ。子供が入ってるにしては言葉もしっかりしてる。
呆然としていると、隣までやってきたモーグリ(?)がぼくの腰をつついた。
「ほら、ちゃんと謝るクポ〜」
「あ、う、うん。……ごめんなさい」
とにかくぶつかって、何か失礼なことを言っちゃったのは確かだから頭を下げた。
「ここはモグに免じて許してやってほしいクポ。それじゃ行くクポ〜」
モーグリに引っ張られるままにぼくはその場を後にする。
どうやら上手く逃がしてくれたらしい。分からないことだらけだけど、とにかく感謝しないと……
「おい、コラ、ちょっと待て!」
背中から大きな声で呼び止められ、思わず肩が震えた。
「クポ?」
「そっちのヒュムのガキ、よく見りゃその格好……ソルジャーだな?」
「ソルジャー?」
ヒュム……っていうのは確か人間のことで、多分ぼくのことだと思うけど……
「なら、ここでオレがエンゲったところで文句はねぇってことだ!」
バンガの彼がそう叫ぶと同時、甲高い笛の音が響いた。
振り向くと、建物の上にいつの間にか銀色の鎧を着て鳥に乗った騎士のような人がいた。
あの鳥も見たことがある。チョコボだ!
モーグリ、バンガ、チョコボ。見たことのない町に、腰に下がった剣。
――あたしだったらゲームかな。強いモンスターを相手に剣で戦うの。
昼に聞いたリッツの言葉を思い出す。
……もしかして、本当にゲームの世界に入っちゃったってこと!?
915 :
818:2006/12/18(月) 21:36:47 ID:KXaSubil0
「エンゲージに入るクポ!」
どこか緊張した声でモーグリが鋭く囁く。
エンゲージ? 尋ねようとしたけどそんな暇はない。
バンガがその太い腕でいきなりぼくに向かって殴りかかってきた!
「うわっ!」
咄嗟に転がるようにして避ける。
……運が良かった。あんなのに当たったらすごく痛そうだ。
でも、何でぼくがソルジャーっていうのだといきなり殴りかかって……
今までの流れとバンガとモーグリの言葉から考える。
「そうか……! エンゲージって、戦うってことだったんだ!」
「クポ! 何当たり前のこと言ってるクポ? ジャッジもいるし、今日のロウも決まってるクポ!」
ぼくを助け起こしながらモーグリが早口に言ってくる。
「ジャッジ? ロウ?」
新しい言葉にまた頭が混乱してくる。
「エンゲージの最中だっていうのに呑気な子だクポ〜」
モーグリはバンガの拳をしゃがんで避けながら呆れたような顔をした。
「今日のロウは『薬禁止』クポ! 怪我してもポーションの類は御法度だクポ! ほら、ジャッジも見てるクポ〜」
そう言ってあの銀色の騎士を指さす。
やっと分かってきた。
「エンゲージ」はバトル、「ロウ」はそのルール、あの鎧の騎士「ジャッジ」がエンゲージを監視する審判、ってことか。
「一対二なのに避けてばかりかよ! 腰に下げてンのは飾りか!?」
バンガはそう言ってるけど、喧嘩もしたことないし運動も苦手なのに戦うなんてできっこない。
それに、「飾り」じゃない剣で斬ったりしたら殺人なんじゃ……
「ヤクトじゃないんだから思いっきり斬っても死にはしないクポ! モグがサポートするからうまくやるクポ!」
斬っても死なない?
わからないけど、あのモーグリが言うんならそれもルールなんだろう。
「わ、わかった……やってみるよ!」
916 :
818:2006/12/18(月) 21:38:00 ID:KXaSubil0
腰の剣を抜く。思ったよりずっと重いけど、それでも動けないほどじゃない。
銀色の刃先が太陽の光にきらめく。本物の刃、なのかな……?
「やっと抜きやがったか。だがやらせねぇよ!」
バンガは深く腰を沈めると脚を跳ね上げた。
速い。とても避けるなんてできそうもない蹴りだったけど、どういうわけかちゃんと軌道が見えた。
体がちゃんと動けば、避けられる……!
上半身を後ろに反らすと、あごの先をバンガの爪先が掠めた。
「痛っ!」
掠っただけで血が滲んで痺れる。だけど、体はちゃんと思い通りに動いた。
続けてまたパンチが来る。がら空きになった腹狙いだ。
体を反らすときに踏ん張ったから、今度は避けられそうにない。でも避けられないのなら……
右手を思い切り体の前に振る。
しっかり握っていた剣がぼくの腹とバンガの拳の間に割り込んだ。
勢いの止まらない拳は剣の腹を思い切り殴る。硬い音が響いた。
「うおっ!? くそ、痛ぇだろうがこのガキが!」
右手を振りながらバンガが一歩下がる。ぼくの手も痺れてるけど、なんとか凌げた。
こんな感覚初めてだ。考えたと同時に体が動く。
「まったく、そんな無茶して自分に刺さったらどうするつもりだクポ〜」
背中に軽い感触。モーグリが背中に張り付いて耳元で囁いた。
「でも、ぼーっとしてるかと思ったら意外とやるクポ。今度はこっちから仕掛けるクポ」
「わかった。どうすればいい?」
「モグが魔法で隙を作るクポ。そしたら君の出番だクポ」
……やっぱり魔法もあるんだ。
頬を抓って夢じゃないことを確かめると、ぼくは頷いた。
917 :
818:2006/12/18(月) 21:39:16 ID:KXaSubil0
モーグリは目を閉じてぶつぶつと呟き始めた。詠唱、ってやつなのかな。
その間、ぼくはバンガの攻撃を引き付けなきゃならない。
バンガは頭に血が上ってるらしく、がむしゃらに殴りかかってくる。
体は大きいのにすごく速い。当たったらタダじゃ済まないんだろうけど、ちゃんと避けられる。
もちろん華麗にヒラヒラとはいかない。転ぶように、滑るように何とか体を倒して凌いでるだけだ。
それでも自分がどこまで動けるか、それがわかってきた。
いつもはとてもできない動きが自由にできる。まるで空想の中の自分と同じように。
「避けンじゃねぇよコラぁ!」
「無茶言わないでよ!」
こっちだっていっぱいいっぱいなんだから。
と、後ろに一歩避けたとき体がガクンと倒れそうになった。
しまった、階段だ!
何とか段を踏みしめて転げ落ちないようにしたけど、体勢は完全に崩れた。
「オラぁ!!」
バンガの拳は真っ直ぐぼくの頭に飛んでくる。今度こそ避けられない!
覚悟を決めたそのとき、モーグリの声が高らかに響いた。
「サンダー!」
晴れた空から一筋の稲光が、真っ直ぐバンガへと落ちた。
「うぉぉぉ!?」
凄い音がしてバンガが顔を覆う。
……本当に魔法だ!
火傷とまでは行かないまでも全身痺れているようで、所々がビクビクと痙攣している。
「今だクポ!」
そうだ、やるなら今しかない。体を起こして剣を改めて握り締める。
死にはしない。その言葉を信じて腕を思い切り振り抜く。
「えぇぇぇい!!」
衣を裂いて鱗を削る硬い感触がした。
肩から胴を抜けて腰へ。バンガの体に、斜め一直線に大きな傷が入った。
918 :
818:2006/12/18(月) 21:40:46 ID:KXaSubil0
「やったクポ!」
モーグリが駆け寄ってくる。
バンガはうずくまって体を押さえている。
剣じゃなくてもこんな重い物で叩かれたら、鱗があってもこうなるだろう。
「っぐ……畜生、傷薬……ポーションを……」
懐を漁って青い瓶を取り出した。
傷薬……これもゲームの通りならすぐ回復してまた襲ってくる!?
「心配ないクポ」
強張ったぼくの腕をモーグリが気楽に引っ張った。
心配ないって……そういえば「薬禁止」とか何とか……
バンガは一気に瓶をあおった。すると傷がみるみる癒えていく。……すごい。
ピィィィィーーッ!!
エンゲージが始まったときと同じ高い笛の音。「ジャッジ」だ。
それまでじっとぼくらの戦いを見ていたジャッジは素早くバンガの近くに駆け寄ると、赤いカードを投げつけた。
「ロウ番号R2-4601、「薬禁止」違反! ロウ違反者をただちにプリズン送りとする!」
低い声でそう宣告すると、バンガの体が光に包まれた。
「ゲッ!? しまっ……」
最後まで言い終えることなく、バンガの姿は掻き消え、光は放物線を描いて空高く上っていった。
「クポポ〜、プリズン送りだクポ。ああはなりたくないクポ」
「……プリズン?」
「ロウ違反者が一時的に入れられる収容所だクポ。くら〜い、イヤな場所だクポ」
ジャッジは一つ頷くと、鎧の金属音一つなくぼくらを振り向いた。
「プリズンへの移送を完了。面会を望む者は山岳都市スプロムのプリズンにて受け付ける。以上、エンゲージ終了」
そう淡々と述べると、ジャッジもまた姿を一瞬で消した。
「相変わらず愛想のない連中クポ〜」
モーグリはやれやれとばかりに肩をすくめた。
……終わったみたいだ。
何とかやり過ごせたみたいだけど、エンゲージにロウにジャッジ……ここはいったい……?
919 :
818:2006/12/18(月) 21:42:08 ID:KXaSubil0
以上。「アイテム禁止」じゃさすがにね。
良く分からんかったが乙
TAってのは敵が死なないの?
仕事早いな。GJ。
>>920 ヤクトって地域以外では死なない。
そこら辺の説明はもう少し後だけど、
今後のために早めに明示しといたがいいかもわからんね。
保守る。
923 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/21(木) 15:32:15 ID:6fOpGutOO
ウホッ
924 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/23(土) 01:30:06 ID:qvsKYHGKO
(;^ω^)
TAやってみたらいじめられっことその親父がかなりのイケメンだったorz
926 :
818:2006/12/23(土) 21:29:40 ID:gilw/M4R0
FINAL FANTASY TACTICS ADVANCE
第二話 教えてモンブラン
エンゲージが終わると街のざわめきは戻っていた。
街の人はそういう気配を感じると屋内に引っ込む、ということに慣れてるようだった。
ぼくは、さっきのモーグリと石段に座って一息ついた。
「助けてくれて、どうもありがとう」
モーグリは一度頷くと、指を突き付けて厳しい表情で言った。
「バンガに「トカゲ」は禁句! こんなの赤ん坊でも知ってるクポ!」
「ぼく、本当に知らなかったんだ」
「知らなかったって……まさかバンガ族を見たの、初めてクポ?」
知っているか知らないかっていうんなら、知ってはいる。だけど……
「実物を見るのは、ね。それに君はいったい……」
モーグリは首をひねると、羽をパタパタさせてぼくの服を見た。
この羽の動きもとても作り物とは思えない。
「クポ? 変なこと言うクポ。君、出身はどこクポ? カドアン? ミュスカデ?」
聞いたことのない地名を次々に挙げてくる。
「その……よく分からないんだ。とても混乱して……どうしてぬいぐるみが喋ってるの?」
「ぬいぐるみ!? モグはれっきとしたモーグリだクポ!」
「だって、モーグリだなんて言われても……」
まだ夢なんじゃないかって疑念はなくなってない。
いくら感覚も頭もはっきりしてたって、ここまで現実離れしてるとさすがに信じられない。
「クポ。きみが混乱してるのはよ〜くわかったクポ」
そう言ってモーグリはしばらく考えた様子だったけど、頷くと言い聞かせるようにゆっくり話し始めた。
「落ち着いて整理するクポ。まずこの街の名は「シリル」。イヴァリース王国の街のひとつだクポ。……ここまではいいクポ?」
「イヴァリース? ぼくの住んでる街と同じ名前だ」
「街? 国じゃないクポ?」
「うん、セント・イヴァリースって言って……そこにはモーグリやバンガ族はいないんだ。人間だけなんだよ」
「他の街にもクポ?」
「世界中、どこにもいない。犬とか猫はいるけど、喋るのは人間だけ」
周りを見るとバンガやモーグリの他、犬のような頭をした小柄な種族、飾りには見えない兎の耳を付けた女の人もいた。
もちろん、ぼくの知る街にそんな人達はいない。
927 :
818:2006/12/23(土) 21:30:29 ID:gilw/M4R0
モーグリはしばらくぼくの言葉を反芻していたようだったけど、ふと思いついたように首を傾げた。
「でも、さっき見たことあるって言ったクポ」
「うん、何て言うか……実物じゃないんだ。ぼく、ゲームの中で君たちを見たんだよ」
「クポ〜?」
ゲームという言葉が分からないのか、ぼくの言うことが突飛なのか、モーグリはますます不思議そうにしている。
「「ファイナルファンタジー」って言うんだけど……本物じゃなくて、おもちゃなんだ。物語があって、自由に冒険できるっていう……」
「この街……世界がおもちゃとそっくりってことクポ?」
「そっくりっていうか……ゲームそのもの、かも」
やったゲームそのままってわけじゃないけど、不思議な種族に魔法、剣での戦い。どれもゲームや本にしかないものだ。
「なら、君はおもちゃの中にやってきたクポ?」
「そこがよくわからなくって……」
これが夢じゃないなら、そういうことになってしまうけど……何でそんなことになったんだろう。
そんな不思議な世界の住人にとっても信じられないことのようで、モーグリも半信半疑だ。
「なんだか、呆れるくらいにすごい話になってきたクポ〜」
「本当だよっ!」
「そう言われても、にわかには信じがたいクポ〜」
そりゃあ、ぼくの話が本当ならモーグリたちはゲームのキャラってことになるから、信じられないのも当たり前だ。
そうなるとこの世界の誰にも信じてもらえないってことで、元の世界に帰れるかどうかも分からない。
急に不安になってきた。
「ぼく、これからどうしたらいいんだろう?」
するとモーグリはポンと胸を叩き、頷いた。
「モグにもっと詳しい話を聞かせてほしいクポ。ここで会ったのも何かの縁クポ。できるだけ力になるクポ〜」
この際、一緒に考えてくれるだけで十分すぎる。有り難い申し出だった。
「ありがとう。ぼく、マーシュっていうんだ。きみは?」
「モンブランっていうクポ。明日にはクランのみんなもこの街に来るから、みんなにも紹介するクポ」
「クランって?」
「そのあたりもこれから説明するクポ。まずは宿にでも行くクポ〜」
モンブランはぴょんと跳ねると、ぼくの手を引っ張っていった。
928 :
818:2006/12/23(土) 21:32:29 ID:gilw/M4R0
宿代はモンブランが払ってくれ、また一つお世話になってしまった。
お金の単位もギル。ここがゲームの世界だって確信が深まった。
二人用の部屋に入ると、ベッドにぽふんと座ったモンブランが早速尋ねてきた。
「それじゃ、まずは何から聞きたいクポ?」
「ええっと……まず、エンゲージっていうのは? ぼくの世界じゃ、武器で喧嘩なんてそれこそ収容所行きだよ」
深夜のマフィア映画を思い出した。
死にはしないっていうのも気になるけど、まずあんなことが頻繁に起こっているような口振りだったのが気になる。
「エンゲージはれっきとした問題の解決法クポ。よっぽどのことじゃない限り、もめ事は交渉かエンゲージで解決するクポ。
一種のスポーツって言ってわかるクポ?」
「う、うん。でも何でわざわざそんな危ないことで解決するの?」
「そりゃやられたら痛いけど……ロウがあるから死にはしないし、ジャッジも立ち会うから公平クポ」
まただ。「死にはしない」。
「普通、剣で刺されたりしたら死んじゃうんじゃないの? この世界で死人は出ないの?」
「多分ここからがマーシュの世界との差になるクポ。ずっと昔の王様が、イヴァリース全土に強力な魔法をかけたクポ」
「魔法?」
「それが「ロウ」クポ。元は戦いの中で非道を防ぐためにあったクポ」
さっきのエンゲージの最後、ポーションを使って「プリズン」に送られたバンガ。
確かに魔法っていえばしっくりくるけど、傷を治すのがそこまでの罪とはまるで思えない。
「それでエンゲージに制限が加わって、破るとペナルティを受ける代わりに……「死」が封印されたクポ」
死が封印……途方もない話だ。
「あくまでエンゲージでの死者を防ぐだけだから、殺人事件や病死、寿命はあるクポ。
でも、ロウのおかげでクラン競争も安全にできるクポ」
「さっきも言ったね、クランって」
「クポ。クランっていうのは便利屋の集まりって思えばいいクポ。お店の手伝いから遺跡調査まで何でもやるクポ〜」
ゲームで言うならパーティってとこなのかな。モンブランの仲間はどんな人達なんだろう。
929 :
818:2006/12/23(土) 21:35:48 ID:gilw/M4R0
「でも、それとエンゲージと何の関係があるの?」
尋ねると、モンブランは少し困ったように眉を下げた。
「最近まではちょっとした仕事上のトラブルはあっても、クラン間に本格的なエンゲージはあまりなかったクポ。
でもボルゾイクランが現れてから色々とおかしくなっていったクポ〜」
「ボルゾイクラン?」
「犯罪にも手を染めてる、荒くれ者の集まりクポ。色んな所で暴れて、そこを自分達のなわばりにし始めたクポ。
なわばりにすれば街でサービスを受けたり何かと得クポ。それで、色んなクランが触発されて今イヴァリース中でなわばり争いをしてるクポ。
それから急にエンゲージが多発するようになったクポ」
なるほど。死人が出ないからこそ起きるような事態だ。
「宮廷もジャッジを派遣したり治安の維持に務めてるクポ。その一貫がロウの強化クポ。
ちょっとした行動まで日替わりで禁止されて、安易に力任せのエンゲージができなくなったクポ〜」
それで「薬禁止」か。治安維持にしたって怪我を治すぐらい許してもいいだろうにって思ってしまう。
そのことを言ってみると、モンブランはまったくだとばかりに頷いた。
「最近のロウの追加は何かとおかしいクポ〜。女王が王子のワガママに合わせてロウを決めてるって噂まであるクポ」
「女王……がロウを管理してるの?」
「難しいクポ。ロウはジャッジとその上に立つジャッジマスターの管轄だけど、今のジャッジマスターは女王の夫クポ。
結果的には宮廷の都合のいいようにできるから、女王が実質的管理者って言ってもいいクポ」
そういうの、癒着っていうのかな。イヴァリースがどういう仕組みの国かはまだよくわからないけど。
「大変なときに来ちゃったのかな、ぼく」
こうなるとぼくもモンブランについていく以上クラン競争に巻き込まれるのかもしれない。
モンブランは頷いたけど、すぐに付け加えた。
「競争がなくてもクランの仕事は荒っぽい仕事が多いクポ。でもその分実入りもいいし、珍しくて面白い話も聞けるクポ」
「じゃあ、ぼくが元の世界に戻る方法も……」
「クランに参加した方が探しやすいと思うクポ」
それならためらってる場合じゃない。
スポーツと割り切ればエンゲージもそれほど怖くはないし、本当を言うと……少しわくわくもしていた。
930 :
818:2006/12/23(土) 21:38:46 ID:gilw/M4R0
「モンブラン達のクランに入るにはどうしたらいいの?」
「簡単クポ。モグがみんなに紹介すればマーシュもモグ達のクランメンバークポ」
それは楽でいい。
こっちの世界じゃ住所も身分証明もないから、細かい手続きが必要だとどうしようもないところだった。
「モグは今日まで派遣の仕事に行ってて、明日みんなと合流するとこだったクポ」
「でも、ぼくなんかが入って足手まといにならないかな?」
運動は得意じゃない。こっちに来てからは何だか上手く動けるけど……
「エンゲージの経験がないのは仕方ないクポ。それに、いい動きしてたから慣れればすぐエースになれるクポ」
「そ、そうかな?」
エースは言いすぎだと思うけど、誉められて悪い気はしない。
ぼくが照れてると、モンブランは明後日の方向を見つめてぽつりと呟いた。
「とりあえずエメットとのポジション争いに期待クポ」
「え? 今何て言ったの?」
「明日になれば分かるクポ〜。今日は疲れてるだろうから早く寝るクポ」
ふわふわした手をぽんと打ってモンブランは寝転がった。
「ねぇ、ポジション争いって?」
「おやすみクポ〜」
「ねぇってば!」
モンブランは楽しげに笑いながら寝返りをうって顔を逸らした。
ポジション争いって、それこそスポーツチームの中のみたいなものなのかな。
……クランのメンバー、怖い人じゃなければいいけど。
ベッドに入ると気持ちも少し落ち着いた。
どうやら夢じゃなくてぼくはゲームのような世界に来てしまったらしい。
来れたなら帰ることもできるって思いたい。
……それに、ぼくの前に消えたドネッドのことも気になる。
あいつもこっちに来てるなら、帰るより先に探さないといけない。
目的が決まれば混乱してばかりもいられない。明日から頑張ろう。
931 :
818:2006/12/23(土) 21:39:25 ID:gilw/M4R0
以上。
説明が説明台詞だらけだ。
そろそろ次スレの時期かね
933 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/25(月) 16:06:15 ID:fQCVIYMYO
メリークリトリス!
...| ̄ ̄ |< 4はまだかね?
/:::| ___| ∧∧ ∧∧
/::::_|___|_ ( 。_。). ( 。_。)
||:::::::( ・∀・) /<▽> /<▽>
||::/ <ヽ∞/>\ |::::::;;;;::/ |::::::;;;;::/
||::| <ヽ/>.- | |:と),__」 |:と),__」
_..||::| o o ...|_ξ|:::::::::| .|::::::::|
\ \__(久)__/_\::::::| |:::::::|
.||.i\ 、__ノフ \| |:::::::|
.||ヽ .i\ _ __ ____ __ _.\ |::::::|
.|| ゙ヽ i ハ i ハ i ハ i ハ | し'_つ
.|| ゙|i〜^~^〜^~^〜^~^〜|i~
ところで9の人も・・・
批判が怖いと思うけど
投下キボンだお^^
FINAL FANTASY IV #0455 5章 3節 不和の旋律(4)
金庫を失くした男の話は、意外と簡単に聞くことができた。
彼は前回の雨季の終わりに間に合ったため、洞窟の入り口まで船で移動し──本当にぎりぎりの時
期だったために、金庫を持ち帰る策を練ることができず、水が引く前に立ち去る羽目になってしま
った。
「……それで?」
水鳥の羽毛をつめたクッションに体を預け、ギルバートは会話の続きを促した。
まだ起き上がれるほどではないが、先日のように急に咳き込むこともなく、顔色も幾分明るくなって
いる。
時折遠くを見るような、心ここにあらずといった表情を見せはするものの、彼の容態が持ち直してい
ることにセシルは安堵した。
「……駄目だった。甘く見てたよ」
雨季まで待て、と繰り返すロドニーを説得して船を出してもらい、ダークエルフの島へ渡るまで
はよかった。しかし、いざ地上を進もうとしたときの困難はセシルの想像をはるかに超えていた。
泥と朽ち葉が交互に層をなした地面はぬかるんでひどく歩き難く、多数のモンスターが衛兵のごとく
行き来する。
双頭の大蛇ツインスネーク、古木に潜む悪霊ウッドアイズ、有毒の花粉を振りまくデスビューティー
、子牛ほどもある全身に針を植えたヘルニードル──初めて遭遇する魔物たちはみな手ごわく、セシ
ルたちは見る間に消耗して行った。
特にテラの疲労は激しかった。回復魔法はなるべくセシルが受け持ったが、それも焼け石に水。しかたなく、日の高いうちにテントを張った。
それすらも、休むための乾いた地面を探すところからはじめなければならない有様だった。
「みんな無事でよかった」
「……本当に」
ギルバートの慰めに、セシルは心から肯いた。
あの調子では、磁力の洞窟に着く前に、手持ちの物資が尽きるのは避けられない。だからセシルは、ローザから遠ざかる道を、自分から選択した。
仲間は何も言わなかった。
みなセシルより年上で、それぞれ得意分野は異なるが、他人を指導する経験を十分に積んでいる。
そんな彼らが、セシルがリーダーとして正しい判断を下すまで、黙って付き合ってくれていた。
そこに込められていただろう期待と忍耐に、セシルが気づいたのは、トロイアの町に帰りついたあとのことだった。
日付は変わっちゃいましたけど、メリークリスマス!
いやほんと、遅くなってすいません。今回も、もうちょっと先へ進む予定だったんですが、間に合わず……
年末は時間取れそうなので頑張ります。
>934
呼びましたか?w
おお!GJ
メリークリスマス!
10の続きマダー?
割りと好きなんだが・・・職人さんカムバック
9の書き手は敵前逃亡か
まあまあ。クリスマスあたりまでは忙しいとレスがあったから待とうではないか。
しかし、本来投下はもっと前に可能というレスも過去にあったようだ。
有言実行でないというか計画通りにいってないという点を考えると、自分の力を過大評価したり自信家だったりするのかもわからんね。
かと言って投下されたものはこの上なく素晴らしいものかもしれん。
これはやはり見るまではわからん。楽しみだ。
とりあえず保守
期待保守
ほっしゅ
期待保守
945 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/31(日) 17:05:20 ID:NL7KGJIHO
過疎杉
あけましておめでとうございます。
今夜あたり、4の続きを3レスほど投下しようと思うんですが、
次スレをお願いしてもいいでしょうか?
レス数も容量ももうぎりぎりだな
思えば完走はずいぶん久しぶり。新年早々めでたい
以下、テンプレ案
FFを「かなり真面目に」ノベライズしていくスレです。
□現在の進行状況
・FF4 トロイアでギルバードと再開し、磁力の洞窟へ向かうまで(前スレ>633)
・FF5 マギサ、フォルツァと激突中。(4スレ目87)
ジョブはバッツ『ナイト』ファリス『青魔道士』レナ『黒魔道士』ガラフ『モンク』
・FF6 サウスフィガロ、シャドウの初登場イベントまで(前スレ>889)
・FF7AC ルーファウスとカダージュの会話でセフィロスの名前が出るところまで(前スレ>619)
・FF8 電波等頂上でビッグス&ウェッジを倒したところまで(前スレ>650)
あとは
>>3、と。
10、TA、USAは未プレイでどう書けばいいのかちょっとわからないので
誰か進行状況補完よろ
まとめサイトと過去ログのURLは削ってセリフ集のサイトだけ
>>948に加えるという形にしてもいいかも
z保守
>>950 ・10 ティーダ、アーロンが最初のシンのコケラとバトル中(?)
>>250 創作で止めちゃってるからどうなるんだ・・・
職人さんカムバック
>>950 ・USA フォレスタ到着、枯れ枝入手まで(前スレ>832)
・TA 初エンゲージ後、ロウとクランの説明まで(前スレ>930)
よし、立ててくる
無理だた
ダメ元で試してみる。
ホスト規制でした…。
よっしゃ、いってくるぜ!
うん、ホスト規制なんだ…(´・ω・`)
保守
皆さん規制中のようなので、スレ立てに挑戦してきます。
964 :
963:2007/01/04(木) 23:50:14 ID:LyE5goZu0
ホスト規制中でしたorz
埋まる前に誰か立てないと・・
こっちも規制中だったから誰か頼む!
>966
スレ立てありがとうございます。
4の続き投下してきました。
968 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/06(土) 22:13:28 ID:fEAq5khWO
埋めようぜ
梅
970 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/08(月) 23:01:42 ID:4Hhd+5+OO
梅揚げ
おいしいよ
せっかくなんで、新スレに投下した分の感想とかつけていただけるとうれしいです。
普段は荒れるかも?と遠慮しているような、辛目のものでも今なら流しちゃえますし。
妻帯者二人がテラの心情を理解できてるってのが凄くいい。
設定もうまく使えて深みが出てるし、今回分に問題点は見あたらないな。
973 :
606:2007/01/13(土) 23:48:48 ID:xuTwKm4l0
こんばんわ。
FF6の続きを作成いたしました。
次スレに書き込んだほうがよろしいでしょうか?
次のほうがいいんじゃない?
埋めてるみたいだし。
975 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/17(水) 20:45:07 ID:KQ6ytoFDO
うめ
なんというキモスレ・・・
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きめぇwwwwwwww
あと2KBが埋まらんな