かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その5

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名前が無い@ただの名無しのようだ
FFを「かなり真面目に」ノベライズしていくスレです。

□過去スレ
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1091624036
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その2
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1115452328
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1125830783/
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その4
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1134807046

いずれもdat落ち、作品自体はまとめサイトに記載されているので
そちらを参照に

□参考
セリフ集
http://members.at.infoseek.co.jp/nayuka_aaaa/wp/ff.html
まとめサイト
http://ff-novelize.main.jp/

コンセプト、進行状況等は後のレスにて説明します。
2名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/20(金) 01:19:38 ID:dn5iIzzj0
□進行状況(3スレ目終了時点でのものです)
・FF4 バロンでヤンが記憶を取り戻した場面まで
・FF5 北の山、レナがマギサの毒矢を受ける場面まで
・FF6 神官長によるマッシュの回想シーンまで
   本筋はフィガロにケフカがやってくる場面まで
・FF7A セブンスヘブン、ティファとの会話が終わった場面まで
・FF8 Seed試験を控えて、学園長の挨拶が済んだ場面まで
3名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/20(金) 01:21:01 ID:dn5iIzzj0
このスレのコンセプト。

DQはちゃんとした小説がエニックス出版から出ていますが、FFは2以外まったく刊行されていません。
文才と多少の暇のある方、どうかこのFFDQ板でFFのどの作品でもいいので、ストーリーの最初から
最後まで完全小説化してみてください。
といっても一人でこんなこと最後までやりつづける人はいないでしょう、普通。印税入るわけじゃないし。
ただの趣味だし。根気が続くはずが無い。
なので、リレー小説にするのが妥当かと。
結構おもしろい企画だと思いませんか?

ただ飽くまでも「公式の小説が出版されていない作品を情熱あるこの板の住人がノベライズする」
がコンセプトなので、FFでなくてDQでもいいです。
ただしDQ1〜7は当然対象外になるわけで、可能なのはモンスターズ等でしょう。
やはりプロの作品にはかなわないですから、DQ1〜7は書く必要がないわけです。そういうものです。
4名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/20(金) 01:27:16 ID:dn5iIzzj0
なんか4スレ目がいきなり落ちていてびっくりしました。
このまま終了するというのも書き手がふえて盛況をみせるなかどうかと思いましたので
新しく5スレ目を立てさせてもらいました。(4スレ目に入ってからはやや衰え気味にも
感じましたが)
完全とは言えないテンプレかもしれませので補足などがありましたら追加して
ください。
5494 ◆yB8ZhdBc2M :2006/01/20(金) 01:41:12 ID:wX3QMSii0
みなさんお久しぶりです。
更新遅れていてすみません。
3スレ目の過去ログは自分が持っていましたので、サイトにアップしました。
前スレのログはミスで消えてしまいましたのでdat落ちスレ補完所に依頼してきました。
もしどなたかログを持っている方がいましたらアップの方お願いします。
これからも更新遅れ気味になるかもしれませんが宜しくお願いします。
6494 ◆yB8ZhdBc2M :2006/01/20(金) 01:46:32 ID:wX3QMSii0
あとスレ立てありがとうございます。
一応過去ログ追加しておきます。
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。
http://ff-novelize.main.jp/kakolog1.htm
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その2
http://ff-novelize.main.jp/kakolog2.htm
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3
http://ff-novelize.main.jp/kakolog3.htm
7494 ◆yB8ZhdBc2M :2006/01/20(金) 01:53:59 ID:wX3QMSii0
前スレアップします(dat落ちスレ補完所より)
http://2ch.pop.tc/log/06/01/20/0106/1134807046.html
8名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/20(金) 02:33:35 ID:dn5iIzzj0
迅速な補足ありがとうございました。
dat補完所には自分も頼んでたのですが、494さんの方が速かったですね。
まとめサイトの更新も頑張ってください。
9名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/20(金) 08:41:21 ID:SDzm+DFhO
いきなり消えててびっくりしたわ
うろ覚えだが494さんて受験生だっけ?
明日センターじゃん!それなのに乙!そしてガンバレ!
10299:2006/01/20(金) 19:11:40 ID:gA8+9N2K0
FINAL FANTASY IV #0320 4章 4節 これから(40)

最初に異変に気づいたのは、ヤンだった。かすかな地響き。
その音と振動は徐々に大きくなっていく。不安に駆られる一同。
「見ろ、壁が、壁が迫ってくる!」
シドが叫んだ。地響きの正体、それは迫りくる壁の仕掛けの作動音だったのだ。
「いかん、退け、退くのじゃ!」
一同は通路を引き返した。迫りくる壁のせいで、道幅はどんどん狭くなっていき、
通路の入り口に到着した時には、大人の肩幅程にまでなっていた。
「開かない。まずいぞ!」
入り口の扉をこじ開けようとしたヤンが、切迫した調子で言った。
セシルもシドもヤンに加勢したかったのだが、道幅がそれを許さない。
セシルの脳裏に「万事休す」という言葉が浮かびあがって来た。
その時、セシルは自分の足元を小さな影がすり抜けていくのを感じた。
パロムとポロムだ。二人は互いに背中合わせになって、壁を押す構えをとった。
「パロム、ポロム、何を・・・」
双子の真意が読めず、セシルは思わず問いを発した。
彼らは構えを崩さず、顔だけをセシルに向けて、口々に言った。
「あんちゃん、今まであんがとよ」 
「お兄様が出来たみたいで、とっても嬉しかったですわ」
喜びと寂しさの入り混じった、複雑な表情だった。そして言葉を続けた。
「あんたらをここで殺させやしない」
「テラ様! セシルさんをお願いしますわ」
先ほどとは打って変わって、断固たる決意がみなぎっている。
ここに至って、セシルはようやくパロムとポロムの意図に気付いた。
「よせ、やめるんだパロム、ポロム」
しかし二人はセシルに耳を貸す様子はない。
「行くぞ、ポロム!」
「うんッ! 」
セシルは絶叫した。
「やめろー!」
11299:2006/01/20(金) 20:49:24 ID:snqqN1k60
えーと誰でしょうか?
12名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/20(金) 23:32:28 ID:0bjYpXur0
FF1の小説は既にかかれていますか?
13 ◆XYZ.ReoI/2 :2006/01/20(金) 23:43:54 ID:yQ6PkPnE0
>>12
昔俺が最初の方だけ書いた。つまらないのではじめから書き直してくれることを望む
14名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/20(金) 23:45:52 ID:0bjYpXur0
ゲームそのままの流れにしなくてもOKですか?
むしろ導入部は完全な創作になると思います。事件の発端とか。
15名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/20(金) 23:50:37 ID:yQ6PkPnE0
ある程度は自由にやっていいんじゃないかな。
16名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/20(金) 23:59:22 ID:0bjYpXur0
ゲームをそのまま文章にすると小説としては唐突すぎるので、どうしても前日談というか
序章のような導入部が必要と感じたのです。
いきなりクリスタルの戦士が王様から反逆の臣の討伐を依頼されるシーンで始まるのは
正直どうかと思いますし。
それと過去FFのCDヴォーカルコレクションでFF1の曲がAn Palas De Varreという曲として
収録されているのですが、歌詞に登場するマラノ王子やガン王も出してみたいと考えています。
もちろんを名前拝借するのみで歌詞の内容とは寸分も重なりませんが。
17299:2006/01/21(土) 00:00:24 ID:snqqN1k60
FINAL FANTASY IV #0321 4章 4節 これから(41)

「ろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーー!!!!!」
セシルははね起きた。
「え……」
そして自分でも分かるくらいに間の抜けた声を上げる。
「何だったんだろう……」
見ると辺りは暗く、近くの窓から僅かな明かりが漏れていた。
此処は……と自問した所で、気づく。
布団を遠くへ投げ捨て……立ちつくしている己の姿に。
「ははは……ははは……」
近くの明かりを付けて今の場所を確認しようとする。
薄明かりに照らされた部屋は随分と散らかった部屋であったが、意外と広かった。
そして、自分の隣にも眠りに付く人物を発見した。
「ヤンか……」
ヤンは巨体にしては小さな寝息を規則正しくたてていた。
「…………」
其処まで回りの景色が明らかになり、自分がとんだ間の抜けた人間だと気づいた。
そして、記憶も鮮明に蘇ってきた。
「ここはシドの家。今は夜。つまりは夢って事か……そして僕は……」
夢にうなされていたという事だ。
「顔でも洗ってくるか……いや、外の風にでもあたってこようかな……」
どっちとも決めずに漠然とセシルは立ち上がった。とりあえずはこの部屋から出て頭を
冷やそうかな。そう思ったからだ。
18299:2006/01/21(土) 00:00:57 ID:Rh8boZQU0
FINAL FANTASY IV #0322 4章 4節 これから(42)

先程の悩み、つまりは顔を洗うか、外の風に当たるかの悩みをセシルは少し考えた後、
その両方を実行に移すことにした。
そして最初に選らんだ顔を洗う事を済ました。
外へ出ようと、廊下を歩いていると、更に記憶が蘇ってくる。
顔を洗った事で最前までぼやけていた意識が鮮明になったからだろう。
自分達はあの後、つまりはシドがレッシィに託した図案が城への潜入を可能にした事。
さらにはその道を開くために鍵を運良くヤンが所持していた事。
二つの幸運に恵まれ、進路に光明が見えた時である。
だが、直ぐに行かずに此処で一泊する事にした。
理由は色々あった。一つはパロムとポロム。二人の子供達の事。
近衛兵を倒した時。二人は初めて人間相手に戦った。
それが直接手を下さなかったにしろ随分と衝撃な事であったろう。
そして城に行けば必然的に兵士と再び激突する。万一、体よく忍び込めたとしても剣を
交える可能性は高い。
二人には少しだけ心の整理――覚悟を決めてもらわなければならないと思い、その為の
猶予を与えた。
もう一つはヤンの様態を気にしてだ。回復魔法で深い傷を負ったヤンはなんとか事なきを
得た。しかし、たとえ回復魔法でも完全には手当はできない。休養を挟む必要があると判断したからだ。
テラは反対した。テラはバロンに来てからいっそうに焦り先を急ぐようになった。
だが、結局セシルの説得で何とかテラは折れ、一泊を許可した。
そして、セシルは開いている部屋が無かったのでシドの部屋に泊めてもらったのだ。
部屋が散らかっていたのはその為だろう。
19299:2006/01/21(土) 00:01:30 ID:snqqN1k60
FINAL FANTASY IV #0323 4章 4節 これから(43)

「それにしても……」
どうかしてるなと自分にため息を一つつく。
そんなに休養をとっていないわけではない。ミシディアを旅立つ前日にはゆっくりと休んだ。
あれからまだ二日。それも時差の関係上自分にとって時間は一日しかたっていない。
それなのに変な、といったら失礼かもしれないが奇妙な夢をみるなどとは。
本来セシルは夢をあまり見ないのであった。
いつも寝床に伏し、気づいたら朝になっている。いつもそんな目覚めであった。
だが、バロンを離れてから、時々だが夢を見るようになった。
それでもこんな夢は見たことがなかった。
そして今まで見たことの無い夢を見てしまった事がセシルに妙な不安を抱かせていた。
「取りあえずは外に出よう……風にでもあたろう」
そう思い、外へ出ようと歩きだす。が、途中僅かに開いた扉から明かりが漏れているのを発見した。
20名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/21(土) 00:05:51 ID:Rh8boZQU0
新スレお疲れ様です。言い忘れましたが4スレ目を立ててくれた方も
有り難うございました。

>>16
>3にコンセプトが書いてありますし、基本的にどんな内容でも
有りなのではないでしょうか。
むしろ多少のオリジナルな設定があった方が好まれると思います。
21名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/21(土) 00:18:55 ID:pYmZkTrA0
新スレ乙
いきなり落ちててびっくりした。
そしていきなり(40)とかかぶってるし、意味不明。
でも299さん、フォロー乙。
今回は結果的に主人公の疲れみたいなのが表現できてよかったけど
書いてる人は繋ぎやすいように書いたほうがいいと思う。
22名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/21(土) 00:24:00 ID:KJgQokoF0
>>20 返信ありがとうございます。
さっそく構想を練り上げたいと思います。
23 ◆HHOM0Pr/qI :2006/01/21(土) 22:14:03 ID:OynS6H8h0
スレ立て乙です。

すいません、#308のあと2レス分ほど書いた所でつまってしまい、結果的に伏線を投げっぱなしにした形になってしまいました。
299氏が上手につなげてくれたので、このまま流れに乗らせていただきます。

>5
まとめサイトには大変お世話になっています。無理せずにリアル優先で頑張ってください。

>13
◆XYZ.ReoI/2さんお久しぶりです。4人のキャラ付けは結構好きでした。
あの頃よりも住人増えていると思うので、気が向いたらまたチャレンジしてくださいね。
……って、受験生でしたっけ。
24名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/22(日) 02:27:44 ID:PptoStaQ0
受験生は297さんじゃないの?
ともあれスレ立て乙です。作者さんたちもお疲れさまです。
25名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/23(月) 02:15:02 ID:c8zKWf+40
あげ
26名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/24(火) 00:05:44 ID:DoZ8Ck1Q0
保守
27名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/25(水) 00:14:51 ID:CZ8XS9NN0
一日一回の保守!
28名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/25(水) 23:55:29 ID:P4gVUu+n0
保守
29名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/26(木) 23:16:02 ID:CjNx+dzA0
保守
30名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/27(金) 17:33:01 ID:tCw97sW1O
保守
31名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/28(土) 00:11:34 ID:ZNhRO8N00
保守。小説楽しみにしてます。
32名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/28(土) 17:15:16 ID:Krcew+Wl0
まだだ、まだ落とさんぞ
33299:2006/01/29(日) 02:40:48 ID:x+CIPBWr0
FINAL FANTASY IV #0325 4章 4節 これから(45)

「レッシィか」
扉を覗く前から確信が持てた。
そしてやはり、その部屋にはセシルの予期した通りの人物が
中央の机に備え付けの椅子に座っていた。
「起きてたのか……」
わざわざ、話しかけなくてもいいと思ったが、もう一度寝直すのはできないと思った。
皆が起きるまでもう少しだけ時間がかかりそうでもあるし、時間を持てあますよりはいいと
判断し、部屋に入室した。
「あら……でも、もう早朝といってもいいでしょうし……」
よく見ると、窓から見渡せる風景は既に暗闇が薄くなりつつある。
しばらくせぬ内に静まりかえった町に活気が返ってくるであろう。
「いつもこんなに朝が早いのかい……?」
何気なく聞いてみる。するとレッシィは少し考える仕草をした。
「う〜ん……こんなに早起きするようになったのは極最近になってからです。とは言っても
今までも、お父さんと二人で暮らしてましたからね。基本的には早起きですよ」
最近というのはいつだろうか? 彼女の生活に変化がおきたということだろう。それは……
「やっぱり気になるのか?」
日常に起こった変化。ためらいつつも、セシルは訪ねる。
「お父さんですか……そりゃあ、やっぱり気になりますわよ」
セシルはシドの事とは言わなかったが、彼女は直ぐに何を聞きたいのか分かってしまった
ようだ。
「でもね……心配ばっかしてても仕方ないですから。お父さんは昔から無茶を
する人だったけど私やお母さんを悲しませる人ではなかったからね」
元気な娘だ。そこには無理に意志を保っているような気配は感じられない。
さすがは豪快な飛空挺技師であるシドの娘といった所か。多少の事でへこたれはしない。
34299:2006/01/29(日) 03:45:50 ID:x+CIPBWr0
FINAL FANTASY IV #0326 4章 4節 これから(46)

「それでもやっぱり、心配でね。なかなか寝付けなかったりするの。もし眠れたとしてもね
こうやってすぐに目が覚めちゃったりして……」
そこまで言って、彼女はあっと声を潜めた。
「なんだか、愚痴みたいになっちゃたわ……ごめんなさいね」
「いや、むしろ安心したよ。相変わらずみたいでさ。此処に通してももらったばかりの時は
正直、お父さんがいなくなって消沈してんじゃないかと思って……」
「はは、私がそんな性格じゃないってのはあなたも良く知ってるでしょ」
そうなのだ。
彼女――レッシィ・ポレンディーナはシドとその妻から生まれた子供であった。
女性ながらも父親ゆずりの性格は昔ながらのものであり、年下であるセシルも過去、学校時代周囲から
浮き出したセシル自身をとても親身になって接してくれた数少ない人物であった。
彼がここまで気を許している相手はカインとローザに続くであろうか。
そして、シドの妻、つまりは彼女の母親が早くに亡くなってからは、一人でこの家を守ってきた。
「そういえばセシル。あなたはなんでこんなに朝早くに起きてきたの?」
「何か奇妙な夢をみてね……」
その問いにセシルは素直に答えた。自分でも驚くらいにだ。
比較的親しい関係であったシャーロットですら無下に扱ったのだ。
それなのにこの体たらく、そもそもこの家に訪れたのも、彼女を無意識の内に信頼していたのかもしれない。
「どんな夢だったの?」
「ん……えーと……」
問いに返答しようとして気づいた。
自分がその夢の内容をさっぱり忘れてしまっている事に。
35299:2006/01/29(日) 03:58:15 ID:x+CIPBWr0
FINAL FANTASY IV #0327 4章 4節 これから(47)

「ごめん、思い出せないや……」
不思議であった。自分の中では今でもその夢を見たという事は恐怖に感じているのに。
全く内容を思い出せないのだ。もしかしたら思い出したくないのかもしれない。
「でも……いやな夢を見たって気持ちはあるのね。もしかすると正夢になったりして」
「やめてよ! そんなこと」
思わず声をセシルは荒げた。
詳細こそ忘れたものの、その夢が悪い夢だという確信は未だセシルに心を支配していた。
本当は、あれは誰かの悪戯であった。自分は何か妖しい術によって、みたくもないものを見さされていた
だけだ。自分の見た夢だとも認めたくはなかった。
「冗談よ冗談」
本当に冗談だったつもりなのだろう。過剰気味のセシルの反応にレッシィはたじろいだ。
「ごめん……」
「いえ、私もちょっといたずらがすぎたわ。後、一つ忠告しとくわ」
拒否を許可せぬ意気にセシルは黙って聞き入る。
「その直ぐに謝る癖。自覚はないのかもしれないけど、それが、他の誰かがあなたを拒絶する理由
にもなってるかもしれないのよ」
今でこそ人との付き合いはそこまで悪くはないが、少年時代、もっと正確にいうと、学校時代の事だ、
セシルはあまり人付き合いが円滑に進んでいなかった。
それは、自分の出生が不明でありながらも王に大事にされていたからだという事への妬みのせいだと
思っていた。この考えは間違いではなかったし、今でも間違いだと思っていない。
だが、そのような身分上の問題を横に置いていてもセシルは他人との関係をこじらせてしまうことが
あった。
そして彼女は言う。原因はあなたの中で無意識下の中に存在していたと。
36299:2006/01/29(日) 04:02:18 ID:x+CIPBWr0
FINAL FANTASY IV #0328 4章 4節 これから(48)

「まるで不必要に波風を立てようとしない。どんな相手でも関係をこじらせず、みんなと
仲良くしていたい。そんな風にさえ感じる。欲張りでずるいわよ……」
今まで上手くいっていたのは相手が自分を気にかけていてくれていたからだというのか。
「ごめ……」
何かを口にしようとして、出た言葉がそれであった。
「また! すぐに直すのは無理でしょうけど……」
そう言ってため息を付く。
「努力するよ……」
「実を言うとね、私がその癖を直してほしかったのは……あなたが、この先にどのような事に出くわすか
分からない。でもね、時には何か自分の大切なものの為には何か、もう一つの大切なものを失わなければ
ならないかもしれないてこと……それを分かってほしかったの」
まるで何でも見通すかのような口調。過去の彼女がセシルにとってのそうであったように。
やはり自分は望んで此処にきたのだな。
「何を言ってるのか自分でも分からなくなってきたわ。ごめんね……」
そう言った後、あなたの癖がうつったようねと苦笑してみせる。
「それにしても、今ではあなたの方が背……高くなっちゃたわね」
立ち上がり、セシルの前に立ってみせる。
彼女は女性にしては長身の方であった。しかし、今ではセシルが見下ろすほどである。
「うん……そうだね」
思えば幼い頃。彼女はセシルよりも高かった。
それが今は自分が見下ろす事になろうとは。
思えばセシルには共に悩んだりする友人やいざとなったら助けてくれる友人や仲間はいるが、
自分を叱り、欠点を指摘してくれる存在は数少なかった。
その為、レッシィという女性はセシルにとっては貴重といえる知り合いであった。
「さてと……私は朝食の用意をしなきゃね。今日は大人数になりそうだからね」
意気込み、部屋を出て行く。キッチンへと向かったのだろう。
そしてセシルも外の風へと辺りに行こうと部屋を出る。
外はいつの間にか朝日が昇っていた。
37名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/30(月) 19:40:13 ID:N/5V12m50
age
38名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/30(月) 19:46:32 ID:CTk4tpE40
新作乙。
セシルとレッシィの掛け合いが絶妙。
次はいよいよ入城ですね。
39名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/31(火) 22:22:01 ID:bHOnd7cB0
ほっしゅ
40名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/01(水) 15:38:46 ID:7GE6bPfS0
保守
41名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/02(木) 03:29:19 ID:/AvIHqds0
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1116383929/222-225

なりきり板だが、独特の雰囲気がすごいと思った。
魔列車喋ってるけどw
42名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/03(金) 02:18:25 ID:p3NbdRSV0
保守っと
43名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/04(土) 16:38:39 ID:3ROtRnop0
保守るぜ
44名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/04(土) 18:21:31 ID:9xM7tcTY0
ところで以前FF1小説化を希望して構想を練ってる者ですけど、どこかにFF1のマップや
モンスターや地名に詳しいサイトなどご存知のかたいませんか?
ゲーム通りにシナリオを進めることはしないつもりなのですが2,3気になる事があって、
特に大陸や町など最初から設定されている地名は無視するわけにはいきませんから。


ついでに上げますね。
45名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/04(土) 19:32:28 ID:gMbF/m7N0
>>44

ttp://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Bay/9757/

今プレイ中なんだけどマップみつけた
46名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/05(日) 00:42:11 ID:3amYjR3Q0
この辺りはどうだろう。>>1にある台詞集も参考になるかもしれない。

http://www2.tky.3web.ne.jp/~rokkozu/rpg.html

http://www.parabox.or.jp/~takashin/ff-01.htm
47名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/05(日) 08:02:39 ID:buXx7WO70
お二人ともありがとうございます。
>>45氏のアドレスは残念ながら利用できませんでした。(準備中とでました)
>>46氏のアドレスは二つとも以前調べた場所でした。実はドットグラフィックのあるサイトを探していたのです。
他のナンバーにはあるのですけど1だけ見当たらないんですよね。

小説はゲームの攻略道順やイベントをなるべく外観か骨格のどちらかをのこして、なるべく無視して描いていく
つもりです。そうでないと単なるゲーム攻略小説になりますし、展開が突飛になりすぎたり矛盾が出てきてしまいます。
古いゲームですからね。

いっそ地名も無視するかオリジナル改変して進めようか迷うところです。
48名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/05(日) 08:35:35 ID:sOofF7s50
じゃあノベライズじゃなくて別のとこで完全オリジナル書けよ
49名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/05(日) 09:09:36 ID:buXx7WO70
攻略手順をベタ反映させないと言ってるだけなのですが、それが駄目なら
書くのは辞めましょうかね。
FFは思い入れの深い人もいるでしょうし、一字一句汚されたくないという
人もいるでしょうからね。
50名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/05(日) 10:19:59 ID:IkzbteHCO
止めないで!書いて!












って言ってほしいの?
誘い受けうざ

51名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/05(日) 11:04:47 ID:VD9ns9Ej0
>>47

すすめたワールドマップは46と同じサイトだったわ。
確かにFFTはサイト上でもなかなかマニアックな情報はないかもしれない。
だが地名とか実際の町の雰囲気からイメージを広げて書くことも出来る。
実際プロも攻略本、台詞集、プレイした自分の解釈でノベライズしているものもあるしな。
もっとも、破綻のない完璧なものを書きたいこだわりがあるんなら料理する材料は自分の足で探すのが一番だと俺は思う。

ちなみにドット絵は海外サイトとかにあるかもしれないな。
52名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/05(日) 12:13:11 ID:ta+cGXRo0
>>51 どういたしまして。
たとえば王冠に化けていたアトモスなどは、実際文章やビジュアルにすると
とんでもないものが出来てしまう気がするので、そういう「ゲーム的なもの」
は極力避けていこうと思っていたわけです。
爆弾で海峡を作って外海へとか、問題も多いですからね。
地名は準拠するのは当然ですが、自分が言っていたのは大陸や草原や河川や
砂漠などにもついていたかもしれない名前で、それが分からなかったんですよね。
だから「改変かオリジナルで」と言ったわけです。
プレイしながら書くのは今現実的でないのでそういうサイトを探していたのですが・・・

海外サイトは色んな意味で怖いので近寄り難いですね^^;
小説を書くとしたら製品では明かされなかったガーランドの憎しみの発端のようなものから
書き始めてみたかったですね。新しい製品では関連したイベントが挿入されているのでしょうか。
前にWS版をしたときにはありませんでした。

>>50 ?
53名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/05(日) 13:42:09 ID:kzspeDbg0
hosyu
54名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/05(日) 13:51:09 ID:ZnBq0ABv0
>>50の意訳

いちいち御託並べる暇があったらまず書け
55名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/05(日) 20:05:31 ID:kCbdW9vV0
>>50に同意だけど

なんか凝ってそうで楽しみだね。
他の作者さんたちのも改変はあったりするし
1スレ目でも出てた話だけど1,3,5はキャラへの感情移入が難しいから
>「改変かオリジナルで」
っていうのは妥当なんじゃないかな。
56名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/05(日) 22:36:10 ID:HC4XTGiF0
小説化を通じてみんなで世界観を広げるような趣旨のスレかと思ってたのですが、
どうも違うようで自分の質問やいらぬ配慮で雰囲気を悪くしてしまい、これは書かないほうが
良いかとも考えたのですが>>55さんのおかげで挑戦してみようと思いなおすことが出来ました。

近日アップしますのでお待ちください。
それから改変かオリジナルでというのは土地名や国の設定などのことで、決まった名前がないのなら〜
という意味です。そのためにマップのあるサイトを探していました。(残念ながら見つかりませんでした)

それでは今夜は失礼します。みなさん静かな良い夜を。
57名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/05(日) 22:41:06 ID:yCK376hY0
失礼かもしれないが、>>56さんは以前DQ1小説書くからというスレ立ててた人?
あれは好きだったから、もしあの作者さんだったら期待。
勿論そうじゃなくても期待するけど。
58名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/07(火) 00:34:19 ID:YPCfbba20
保守
59名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/08(水) 20:37:48 ID:l6h8vGxP0
一日一回の保守
60名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/09(木) 15:02:56 ID:lcOqBSDN0
保守
61299:2006/02/09(木) 18:36:18 ID:SMU97CQV0
FINAL FANTASY IV #0329 4章 5節 忠誠と野心(1)

シドの図案は完璧であった。
的確に罠を張った場所を示したそれを頼りにすれば、地下水脈を超える事も
困難ではなかった。
地下水脈の終着点。小さな部屋に出る。
手にした明かりを頼りに、扉を探す。程なくして見つけ、それを開ける。
城の一角、空は朝の様相から昼に移ろうとしていた。
見る限り、一番懸念していた近衛兵達はいない。
万一なら、迎え撃ち退ける事も可能であるが、できるだけ兵との激突は避けたかった。
目的を果たす前に消耗を押さえておきたかったという理由もあるが、何よりも
パロムとポロムの二人の事があったからだ。
視線を後ろから着いてくる二人に向ける。初めて見るであろう、城に驚きつつ眺めている。
この町に最初に訪れた様に騒ぎ立てたりはしてないが。
一夜明け、目を覚ました二人は元の二人の様に元気を取り戻していた。
その様子は、休養を取った事は正解であったと思うと同時に、空元気なのではないかという
新たな怪訝をセシルに抱かせた。
二人があそこまで怒りを露わにしたのは、出会ってから初めての事であった。
一日間を開けたとはいえ、直ぐにでも心の整理が出来たのであろうか?
また、前もって二人を気遣ってやれずに、セシル自身は激しい後悔をしていた。
次も同じ光景を見せるのは二人にとって残酷な仕打ちであろう。
何より、セシル自身もそんな事は許せなかった。
62名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/09(木) 18:37:39 ID:SMU97CQV0
FINAL FANTASY IV #0330 4章 5節 忠誠と野心(2)

「おいっ! セシル」
黙りを決め込み考え込んでいるセシルにテラが話しかける。
「此処は何処なのだ?」
先程と同じ趣旨の内容の疑問をセシルに問いかける。
「あっ……ええっと!」
その声に反応し慌てて視線を巡らす。だが、そんな必要も無かったであろう。
ぱっと一目見るだけで城の何処にいるのか分かった。
そこまでセシルはこの城に精通していたのだ。自分でも驚くくらいに。
「城の西側辺りだね……」
丁度、出国前日、部下達が追いかけてきてくれた所だ。
そう思うと、自然と彼らの顔が脳裏に蘇ってくる。
自分を慕い、国の為に自分を磨いた者達。皆、自分の大切な部下達だ。
別れ際にも、全員が敬意を持って送り出してくれた。
今は何処にいるのだろうか? 無事であればいいのだが……
63名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/09(木) 18:38:49 ID:SMU97CQV0
FINAL FANTASY IV #0331 4章 5節 忠誠と野心(3)

「牢屋の方は此処から近いね。上手くいけば簡単にシドを見つけられるかもしれない」
しばらく感傷に浸った後、セシルはすぐに頭を切り換えた。
「どうするのだ……」
テラが訪ねる。
前もって、この城に潜入するという事は決めていた。そして、その目標も。
テラが聞きたいのは今から具体的にどう行動するかなのであろう。
目標の一つであるシドの救出にしても、彼が捕らわれている場所は未だに明らかになっていない。
かといって、城のなかをくまなく探すというのは、あまりに骨が折れるし、リスクが大きすぎる。
当然、セシルもただ潜入すればシドを助ける事ができるとは思っていない。きちんと次の行動を決めていた。
「おそらく、捕虜にされたのならば牢屋に入れられているはずだ。まずは其処を当たるべきだと思う」
テラの質問があらかじめ予測していたかのように的確に答える。
「それにこの場所から牢屋は近い。上手くいけば誰にも見つからずにシドを助け出せるかもしれない」
口でいうのは簡単だが実際に其処まで上手くはいかないだろう。おそらく、牢には看守が目を光らせているだ
ろうし、町の人の様子やレッシィの言葉を聞く限り、シド以外にも沢山の民が閉じこめられているはずだ。
それだけの大人数を一気に救出する事ですら困難であろうし、ましてや
「じゃあ……テラ達は牢屋に行ってくれ、シドもそこに捕らえられているはずだ。それに……ミシディアの
人たちも」
セシルがクリスタル強奪の為にミシディアに攻め入った際、王の指令により、セシル自身が捕まえてきた者達だ。
何故そんな事をさせようとしたのかは不明だが、ミシディアの魔導技術を獲得する目的だったようである。
「ヤン、城内の事は分かるか?」
洗脳時の記憶をおぼろげながら持っているヤンならバロン城の基本的な構想を知っているだろうと思い訪ねる。
「ああ……詳しくは分かりませんが」
「じゃあ。頼むよ」
「セシル、お前はどうするのだ?」
セシルのその言動に違和感を感じたのかテラが訪ねる。
「王に会う……」
以前、近衛兵に向かい、決然と言い放ったその言葉を、今度は仲間に、静かに言う。
64名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/10(金) 00:07:44 ID:5yOPP2gK0
保守。
新作乙です。
65名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/10(金) 00:19:32 ID:hcwXwGUK0
そろそろあげる
66名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/10(金) 19:37:21 ID:UFHizspx0
FINAL FANTASY IV #0332 4章 5節 忠誠と野心(4)

「本気かセシル?」
テラが訪ねる。
当然、彼とて王との激突は避けられないと踏んでいたのだが。
だが折角穏便にシド救出が進みそうなのだ。無理して、王の元へ行かず、一旦引き返すのが
得策だ。そう言いたいのかもしれない。
「でも僕は確かめたいんだ……何故陛下がこんな事をするのかを」
国を追われ、再び戻ってくるまでずっと疑問に思っていた事。
此処で問わねば二度と分からぬのではないか。そしてこの国の為に、今の状態を終わらせなければ
ならない。
「分かりました」
答えは意外な所から返ってきた。
「ヤン……」
「私も国に仕える者……国を離れた今でもファブールの民であるという誇りは捨てていない。例え、自らの肉体を
他人に操られ、利用されようとも……」
その声は無意識にか力がこもっている。
「ファブールの民はクリスタルを奪われ、多くの者が犠牲となった。そのせいで数多くの者が心を痛めたであろう
……バロンの民も今は同じ気持ちなのであろう」
続く言葉を待った。
「だから私は引き留めはしない。以前にも言ったが志を共にする仲間だ。そんな友には無駄な追求は不要だ。
私はそう思っている」
67名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/10(金) 19:38:01 ID:UFHizspx0
FINAL FANTASY IV #0333 4章 5節 忠誠と野心(5)

「有り難う……君がいてくれて良かったよ」
そう言ってヤンの腕をぎゅっと握りしめる。
「はは、よしてください」
だが、ヤンの顔にも無骨ながらも笑顔が浮かんでいる。
「ですが、行くのなら……」
ヤンは何かを言おうとする。
突然、足音が聞こえた。
そしてその音はだんだんと大きくなっていく。
「誰か来る……」
そう判断し、身を隠そうと辺りを見回すが、咄嗟の出来事であった為、
その間にも足音はこちらへと近づいてくる。
(まずい……)
身を隠すには時間が無いと悟ったセシルは剣を抜こうとした。
「!」
曲がり角からやってくるその影には見覚えがあった。
「ベイガン……」
意外な人物の登場にセシルは立ちつくした。
68299:2006/02/10(金) 19:39:45 ID:UFHizspx0
FINAL FANTASY IV #0334 4章 5節 忠誠と野心(6)

「セシル殿……」
ベイガンは意外と冷静な声で呟いた。
「くっ……見つかってしまったのか……」
テラの声が聞こえる。
「いや、彼は……」
激突する事を覚悟し、呪文の詠唱に入ろうとしたテラをセシルが制した。
見知った人物だ。説得してみる。
そう小声でテラに話すと、セシルはベイガンに向かう。
「ベイガン、今は引き下がってくれないか? 君も今のバロンがどうなってるか分かっている
はずだ」
言いながらもセシルに不穏な可能性がよぎった。
ベイガンはバロンの軍団の中でもかなりの重要な役所を占める存在である。
王がゴルベーザを重用しているのだ。レッシィの話だと王に対抗する者は次々と何らかの処罰が下され
ているとの事。
今の閑散とした城もその為であろう。
しかし、ベイガンが此処にいるという事は彼が王に忠誠を誓ったという事だ。
「君もゴルベーザに……」
カインの様に操られているのか。
ならば戦わなくてはならないのか……半ば諦めかけたその時――
「はははははーーーーーー」
ベイガンが笑った。城全体に聞こえるほどに大きく。
「ベ……ベイガン……」
あまりにも突発的なその行為にセシルは先程までの緊張が一気に解け、脱力した。
「大丈夫ですよ……私は正常です」
それがセシルが一人呟いた疑問への回答であったのだろう。
「じゃあ……」
「ええ……何か疑われているようですが、私はあなたの良く知るベイガンですよ。安心してください」
「ふう……」
思わずセシルは胸をなで下ろした。
69299:2006/02/10(金) 19:41:03 ID:UFHizspx0
FINAL FANTASY IV #0335 4章 5節 忠誠と野心(7)

「すまない、ベイガン。疑ったりして……」
「いや、いいんですよ分かってもらえれば。それにしても、ご無事でしたんですね……本当に
良かったです……よ。本当にね……」
一人、嬉しみに浸るベイガンを見て、セシルは新たな疑問が湧き出る。
(じゃあ……何故こんな所に?)
そう、ゴルベーザに操られもしていないし、自分を捕らえもしないという事は王に協力的ではないという事
だが、そうなればベイガンとて無事ではないはずだ。
「私とて近衛兵を束ね、治める身。つまりは王の盾となる存在。バロンへの忠誠心は誰よりも強く持っていると
自負しております!」
力強く言い放ったベイガンは更に続けた。
「王への忠誠は決して曲げないつもりでいました……ですが! 今のこの国を見て私はこうも思ったんです。
今のバロンは何処かがおかしいっ! このままでは良くないと! だから今まで王へ何とか従っていましたが
もう限界です!」
セシルは今までこのベイガンの事を過小評価していたと思った。
以前のベイガンはどちらかというと部下には無駄に厳しく、王への態度はやけに謙虚であったのだ。
人によって態度を変えるというやつだろうか。
正直ベイガンのその態度をセシルはあまり快く思わず、王がおかしくなり始めた以降も態度を変えぬ時には、
嫌悪すら覚えるようになった。
だが、今の彼からは今までとは何処か違うものを感じられた。
何かを成す為に行動している。そう映った。
「それでまずは牢に捕まっている人々を助けようとした所、少し気配を感じまして……そしたらセシル殿が……」
「では、協力してくれるか、どうやら目的は同じだろうし」
君がいれば心強い!」
既にセシルはベイガン自身を完全に信頼しきっていた。
「分かりました……」
その問いに、ベイガンは満面にほほえみ、了承した。
70299:2006/02/11(土) 03:24:31 ID:QE6NCMgk0
FINAL FANTASY IV #0336 4章 5節 忠誠と野心(8)

「ベイガン、今城にはどのくらいの兵がいる?」
セシル達は技師の詰め所に集まっていた。
詳しい情報をベイガンに聞くためには、あの場所は得策ではないであろう。
落ち着いた場所に一旦、腰を下ろし、其処で話そうと思いセシルはこの場所を思い立った。
何故この場所を選んだのか。
先程の場所から近かったというのもあるが、出国時、見知った人物と最後に話したこの場所という理由も
あったのだろう。
いつもは技師達で賑わうこの場所もやはり、がらんどうとしていた。
未だ、技師達は残ってはいるのだろうが、意気消沈しているのは想像に容易かった。
この場所を一番賑やかしていた人物が、現在は牢にいるのだ。
当然、この場所もかつての賑わいを保つ事は出来ないのだろう。
「既に以前の軍団達は大幅に規模を縮小され、その中の殆どが行動できない状況です。今現在城の警備を
担当しているのは私共の近衛兵と後は……」
そこで一回口を潜めた。
「魔物達が城の警備にあたっています……」
驚きはしなかった。
カイポの時、リディアの引き渡しを要求してきた兵こそ人間であったものの、率いる兵は全て魔物であった。
ヤンと初めて出会った時、襲いかかってきた魔物は明らかに人の手が入ったものであった。
極めつけはファブール進行の折、攻め込んできた軍勢の過半数以上が魔物であった。
「驚きませんか?」
「既に何度かそう思わせる事態に出会っていたからね……それより……」
セシルは切り出す。
「僕は王に会いに行きたいんだ。そこまでの道はどうなっている?」
城内の構造は忘れもしない。しかし、ベイガンの言葉通り、魔物がうごめいているのであれば、
少し事情は変わる。
71299:2006/02/11(土) 03:25:38 ID:QE6NCMgk0
FINAL FANTASY IV #0337 4章 5節 忠誠と野心(9)

「はい、この西側こそ閑散としていますが、城の中央部分は既に幾ばくかの魔物が見張っています。
それも王の間付近は特に警備が厚く、王への面会する事はほぼ不可能となっています。かくいう私も
王と直接あったのはかなり前の出来事で……」
「そうか……」
思ったよりも警備が固い。そう思い、次の言葉を出す。
「ベイガン……」
「何でしょう?」
「案内してもらえるか? 君が一緒なら心強い」
いくら前々からベイガンの事を苦手に思っていても、彼の剣の実力は黙認できるものではなかった。
「はっ! 誠に嬉しい誘いですが……技師殿を救出しなければいけません……」
「そちらはヤン達に任せる」
それはベイガンに再会する前から決めていた事だ。
本来なら、王の元へは自分、一人で行くつもりであった。
だが、城の現状を聞く限り、誰かの助けを借りる必要があるだろう。
ヤンの助けも借りたいところだが、魔導士だけではいざ敵兵に見つかってしまった時に、前衛に立ち
守る者がいない。
万一の時を考えて、ヤンかベイガン――接近戦に長ける者をテラ達と同行させるのが常道であるとの算段だ。
「ベイガンは一度王に会った事がある。敵が何処にいるのかも大体見当がつくと思うし……」
「分かりました。では一緒に行きましょう」
72名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/11(土) 17:19:03 ID:0EdkOB0U0
FINAL FANTASY IV #0338 4章 5節 忠誠と野心(10)

最初に異変に気づいたのは、ヤンだった。かすかな地響き。
その音と振動は徐々に大きくなっていく。不安に駆られる一同。
「見ろ、壁が、壁が迫ってくる!」
シドが叫んだ。地響きの正体、それは迫りくる壁の仕掛けの作動音だったのだ。
「いかん、退け、退くのじゃ!」
一同は通路を引き返した。迫りくる壁のせいで、道幅はどんどん狭くなっていき、
通路の入り口に到着した時には、大人の肩幅程にまでなっていた。
「開かない。まずいぞ!」
入り口の扉をこじ開けようとしたヤンが、切迫した調子で言った。
セシルもシドもヤンに加勢したかったのだが、道幅がそれを許さない。
セシルの脳裏に「万事休す」という言葉が浮かびあがって来た。
その時、セシルは自分の足元を小さな影がすり抜けていくのを感じた。
パロムとポロムだ。二人は互いに背中合わせになって、壁を押す構えをとった。
「パロム、ポロム、何を・・・」
双子の真意が読めず、セシルは思わず問いを発した。
彼らは構えを崩さず、顔だけをセシルに向けて、口々に言った。
「あんちゃん、今まであんがとよ」 
「お兄様が出来たみたいで、とっても嬉しかったですわ」
喜びと寂しさの入り混じった、複雑な表情だった。そして言葉を続けた。
「あんたらをここで殺させやしない」
「テラ様! セシルさんをお願いしますわ」
先ほどとは打って変わって、断固たる決意がみなぎっている。
ここに至って、セシルはようやくパロムとポロムの意図に気付いた。
「よせ、やめるんだパロム、ポロム」
しかし二人はセシルに耳を貸す様子はない。
「行くぞ、ポロム!」
「うんッ! 」
セシルは絶叫した。
「やめろー!」
73名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/11(土) 19:45:47 ID:8XZFN/Kt0
>>299
ベイガンとセシルの一騎打ちかな?
楽しみですね
>>72
なんか前の方で見た文章ですね。
リレーだから投下できる時に投下するのがいいのではないですか?
74FF8er:2006/02/12(日) 02:09:46 ID:xRtAOsti0
FF8投下してみようと思うんだけど、途中からだとつじつま合わなくなりそうで
こわいな…。
最初から投下あり?
75名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/12(日) 02:11:57 ID:jEwoUFxQ0
>>74
ルール的には続きからだね。
やっぱりこのスレのコンセプトはリレー小説なわけですから。
まあとりあえず投下してみたら?
76FF8er:2006/02/12(日) 02:32:02 ID:xRtAOsti0
>>75
そっかぁ、そうだよなぁ。
投下したいのはやまやまだけど、一応ルールを守ったほうがいいかな。
ちなみにσ(・д・。)のはスコールの一人称なんだよな〜。そこがまず合わなそう。
77名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/12(日) 12:07:56 ID:mjAt+Pfw0
>>76
「こいつの作品気に入らないな。俺が一から書き直してやる」
そう言ってるように聞こえる。
78FF8er:2006/02/12(日) 12:31:43 ID:xRtAOsti0
>>77
すまんorz
そういうことじゃないよ。読んだ事ないんだ。まとめサイトにもないし。
79FF8er:2006/02/12(日) 12:33:39 ID:xRtAOsti0
と思ったら過去ログあったのね…。
読んで出直してくるorz
80名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/12(日) 14:35:30 ID:1VJfzlBq0
サイト更新してないもんなぁ……
ともかく期待しております

あと、?ヲの人も前半はスコール一人称だったよ
81名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/13(月) 01:35:50 ID:ux8neNBb0
保守ついでにage
82名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/14(火) 01:04:09 ID:m7mDGRbg0
保守ばかりもなんだから
時間できたらまとめるかな・・・
83名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/14(火) 02:54:29 ID:1+B047h70
FF8って学園長挨拶後でいいんだっけ?なら投下するけど。
84名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/14(火) 03:44:54 ID:SUylmUez0
>>82
どういう意味?
85名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/14(火) 21:16:39 ID:KaMqkX250
他の小説スレに統合するんじゃないの
86名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/14(火) 21:24:36 ID:SUylmUez0
統合するのは微妙だな。

千夜一夜もそんなに盛り上がっているわけじゃないし、そもそもジャンルが違うし。

87名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/14(火) 21:25:00 ID:Uep8EzA60
84の意訳
:もうまとめサイトあるんですけど
 それとも全然更新してないから代わりに作るってこと?
88名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/14(火) 21:42:06 ID:SUylmUez0
代わりに作るのはどうかねぇ。
現管理人さんが、サイト放棄を宣言してない以上、勝手に作るのは不味いと思うけど。
まとめサイトが乱立したら、混乱を招くと思うし。
8984:2006/02/14(火) 21:53:43 ID:m7mDGRbg0
違う違うw
その3から出てきた小説をwordで適当にまとめようと思っただけw
妙にレス進ませてごめん

まとめさんが大学合格して現役に復帰するまで待つさ
90名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/14(火) 21:55:18 ID:m7mDGRbg0
>>84じゃなくて>>82ですorz
91名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/14(火) 21:58:44 ID:SUylmUez0
>>89
なるほど、そういうことねw
こちらこそ早とちりして悪かった。
ちなみに、受験生は297さんだったはず。
92名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/14(火) 22:21:10 ID:INg+SKim0
まずは>>2の更新バージョンを貼っておくのも
新規参入者さんにはいいんじゃないかなと思う。
まとめサイトが機能していない以上、スレ内では
定期的な更新があった方がいいかなとも思った。
93名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/14(火) 23:38:40 ID:IeDTKpGI0
適当だが。分かりづらくてすまない。

・FF4 バロン城でベイガンと再会を果たしたところまで。(現行スレ>>71)
・FF5 マギサ、フォルツァと激突中。(4スレ目87)
    ジョブはバッツ『ナイト』ファリス『青魔道士』レナ『黒魔道士』ガラフ『モンク』
・FF6 エドガーとケフカが対峙し、会話を交わし終えたところまで。(4スレ目33)
・FF7AC クラウドが忘らるる都をたどり着いた後、何者かの襲撃してくるところまで。(4スレ目71)
・FF8 電波塔頂上でサイファーとビッグス、との対決。勝者サイファー。(4スレ目63)

FF7ACは未見なので間違ってるかもしれない。誰か補足を頼む。
まとめサイトで過去ログは全て閲覧可能なので詳細が知りたい人はそれを見てくれ。
94名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/14(火) 23:40:50 ID:IeDTKpGI0
最近、新作書く人が少なくなってきたので新規参加者がどんどん増えてくれると嬉しい。
あと、個人的な意見だが、以前から(最初から?)時々、明らかな悪意や悪戯が目的の作品投稿があるが、ああゆう
のはスルーすると決めた方がいいと思う。
95299:2006/02/15(水) 18:57:27 ID:FOY39qiT0
FINAL FANTASY IV #0339 4章 5節 忠誠と野心(11)

漠然としていたもの。忘れようとして忘れた。今はそう断言できた。
なのに今になって何故?
夢で見た場所。
其処が近いのだろう。そうとしか考えられない。
確かに、鮮明になりつつあるそれ――迫る白壁はバロン城のそれと似ていた。
だからと言って、そう結論づけるのは早計なのでは。
だが、急に明確になりつある理由はどう説明する。

王――良く知り、一番知らないその人物がすわっているであろう玉座の間には近づくに連れ、
魔物の警備が強くなっていった。
そしてセシルの目的地が魔物達の守るべき場所であり、其処に向かうには激突は必須である。
ベイガンの手並みは想像以上であった。
もしかすると自分と同じ、否それ以上かもしれない。
そう思わせるほど完全な太刀筋であった。
勿論セシルとて、負けてはいなかった。続く攻防に的確に対処した二人にとって戦局は極めて
有利に働いていた……
少し前まで、王の間へと続く、扉が魔物達の影から除いた時までは。
その扉が見てた瞬間、急遽セシルの頭にはあるものが思い出された。
96299:2006/02/15(水) 18:59:01 ID:FOY39qiT0
FINAL FANTASY IV #0340 4章 5節 忠誠と野心(12)

今朝方、見た夢。
内容は自分でも驚くほどすぐに記憶から消え去り、さらには、此処に来て、ベイガンとの再会した
事もあり、夢を見たという事実すら失念してたのであった。
しかし、思い出すどころか、その内容までもが蘇ってくるのは一体何故なのだろう?
あれは正夢になるのか……そしてそれがすぐそこまでやってきている……
そんな考えがよぎった。
そして、その考えは勢い余っていたセシルを、あっという間に戦意喪失させてしまうほどであった。
剣を持った腕はだらりとおろし、ふらつきながら壁にもたれた。
その姿はスキだらけである。
そんなセシルは相対する者、それも互いに勝利を駆ける者にとっては絶好に機会以外に
他ならなかった。
その者、つまりは魔物もそれに気づいたのか、ベイガンの方を相手にしていたものまでもがセシルに
標的を変えようとする。
通常ならばここまで、魔物は気づかないのだろうが、此処の魔物達は人の手が入ったもの。
おそらくはゴルベーザの手がかかったものである。習性だけで襲ってくる通常のものとは、比べものにならない
くらいに整った連携を仕掛けてきた。
当然、セシルも普段なら、どんな状況でも対処したはずだ。
しかし、今、不可解な出来事にすっかりやられていた。
誰かの制止する声。
それに……意を決した二人。
万事休すといった状況。
そこまで考えて首を振る。
声は複数であった。今は自分とベイガンしかいない……
ではあの夢は偶然で片づけられるものなのか?
考えるセシルにも魔物の攻撃は容赦無く迫ろうとしていた。
97299:2006/02/15(水) 19:00:28 ID:FOY39qiT0
FINAL FANTASY IV #0341 4章 5節 忠誠と野心(13)

「セ……シル……殿!」
揺さぶられ、声をかけられる。
そして、やっと自分が今どこにいるのか、何をしているのかはっきりと認知できる程に、意識が
鮮明とする。
「ベイガン……」
今にも消え入りそうな声で一声の返答。
見渡せば、あちこちに穿たれた、床や壁の破片、魔物の亡骸に、流れる血。
激戦を物語るような物証が目に入ってくる。
「助けられたのか……?」
普段の自分ならこんな失態は起こさないのに。単純な自責の念。そして、命の恩人に
対する感謝。
「ええ……此処で死なれたら私が困りますからね。私が拘りたいのは、あくまで私の手による目的の
達成。その為にはいかなる邪魔が入ることも許さない……」
剣を鞘から抜き出す。
「だが、過程はどうでもいいのですよ……大切なのはそれをやり遂げる事。本来ならもっと手の込んだ
やり方もあるとは思いましたがね……」
最前までの感謝がだんだんと、その形をセシルの中で失っていった。
98299:2006/02/15(水) 19:02:12 ID:FOY39qiT0
FINAL FANTASY IV #0342 4章 5節 忠誠と野心(14)

「何を考えていたのかは知りませんが、あなた、否、貴様もつくづくと焼が回ったものだな。
敵の真っ直中で考え事かあ……のんきな者だな!」
何時になく饒舌な言葉は、確実に自分に向けられたものだ。そうは断言できる。
ならばこの言葉の意図することは。
「じゃあな……」
言葉が終わらない内に剣閃が目前に見えた。
咄嗟、剣がセシルの肉体を切り裂く前に痛む体を何とか動かし回避行動する。
「なんだ、まだ息があったのか……」
しぶとい奴めと付け加え、もう一度剣で斬りかかってくる。
再び回避するセシル。
何度か、頬が傷つき、微量の銀色の髪が宙に舞う。
「一つ聞く。君は最初からこんな事を……」
セシルも普段とは違う、何時になく険しい口調で問いつめる。
「当たり前だろ! お前を倒す、殺す事こそが私の目的、いや使命なのだからな……」
「忠誠心があるといったのは嘘だったのか!」
だから手を組んだ。それなのに……
「今までが間違えていたのだよ……この国は! 今こそがこの国の真の姿! そうは思わないかね……」
「誰が……」
「残念だ、私は今、この国の為に尽くすのだ。其処に何の問題がある!」
「くっ……!」
「何故……僕を……」
「簡単だお前は今の国家に反抗する者だからさ! 一度この国を棄てた者が何をしに戻ってきたかと思えば
王を問いただすだと! 笑わせてくれる!」
99299:2006/02/15(水) 19:05:29 ID:FOY39qiT0
FINAL FANTASY IV #0343 4章 5節 忠誠と野心(15)

三度の剣閃。
回避するにはもう後が無い……
突如、目前に爆炎と大きな音、そしてベイガンが後方に大きく吹っ飛ばす。
「大丈夫ですか!」
慌てるように駆け寄ってくる小さな影。
「ポロム……」
とすると先程ベイガンを吹き飛ばしたのはパロム……の黒魔法。
「今、治療しますから!」
言って、治癒の為の詠唱に入る。
程なくして、笑われた緑の安らかな光に包まれながらも思った。
「何故ここに?」
痛みがひいていく中で訪ねる。
「あいつは元から怪しいと思ってたのさ」
パロムが言う。
「それにあの人は……」
「何故分かった!」
遠慮がちのポロムの言葉を遮り、起きあがったベイガンが訪ねる。
その様子からはこの二人が考えた事がずばり的中したという事か。そしてベイガンはその事を
隠し通していると思っていた。
「臭いさ」
パロムが断言した。
「臭うんだよ。魔物の臭いがさ……あんちゃんは騙せても俺たちは騙せないぜ!」
「そう、お芝居ならもうちょっと上手くやるべきでしたわね。大きな振る舞いの割には詰めが甘いですわ。
もうちょっと考えるべきでしたね……それに……」
一旦、口調を休めて、城の曲がり角、西側からこの中央、王の間までの道筋まで引き下がる。
100299:2006/02/15(水) 19:07:59 ID:FOY39qiT0
FINAL FANTASY IV #0344 4章 5節 忠誠と野心(16)

「力を手に入れたからと言ってあまりそれを見せびらかすものではないですわ……」
そう言って、角の方に手を引く。
そこから除かせた顔はセシルも知っていた。おそらくはこの状況を見ると、この場に全員が知っているのであろう。
「この人があなたの……正体を見たと言ってますわ」
擦り切れたエプロンドレスという出で立ち。
従順そうでありながら意志強さを感じさせる顔。
その娘を知っていたというよりは覚えていたといえばいいだろう。彼女とはそれくらいの会話しか交わして
いなかったのだ。
101299:2006/02/15(水) 19:08:48 ID:FOY39qiT0
FINAL FANTASY IV #0345 4章 5節 忠誠と野心(17)


ここより少し前の出来事――

「やはり、お主も感じておったか……」
セシルをベイガンを見送った後、テラが言った。
「私の思い違いという事ではないという事だったのか?」
それだけでヤンにはこの賢者が自分と同じ認識を同じ人物に抱いていた事を理解する。
そして、疑問は確信へと変わる。
「あのベイガンという者ですか……」
「そうだ」
あの立ち振る舞い、何か打算的なもので行動しているような素振り。
怪しいのは自分だけかと思っていたが、テラも同感だったようだ。
「では……どうしますか?」
例え、あの男が何かを隠している事が事実でも、その事を本人が簡単に露呈するとは思えない。
「早急に捕まっとる者を救出し、セシルに追いつくべきだろうな……」
少なくとも、自分たちがいればセシルに及ぶ危険は、減るだろう。そして今はそれしか策を
思いつかなかった。
「やはりそうするしか……」
「早く行くぞっ!」
促す口調は荒い。
おそらくはこの状況。目前に危機が接近しそれを感じ取ってはいるが、具体的にそれを指摘できぬ
現状に苛立ちを覚えているのであろう。
「どうか……ご無事で」
102299:2006/02/15(水) 19:10:34 ID:FOY39qiT0
FINAL FANTASY IV #0346 4章 5節 忠誠と野心(18)

そんな牢に向かう、二人を追いかけるように着いていたパロムが道中、突如立ち止まる。
「どう思う?」
前方、少しだけ先を歩くポロムを呼び止める。
「どうっていわれましても……」
「やっぱりなあ……」
「明らかに……」
ミシディアの子供達は先に出発した二人が抱いた者と同じ違和感を感じ取っていた。
そして彼以上に的確且つ、具体的にそれを理解していた。
「どうする?」
「後を追いたいところですけれど……」
「何か問題があるのか?」
「私たちが思っている事は、おそらくそう見て間違いないと思いますわ。
でも万一それが本当だとしたら?」
「なら?」
「私たちに対処できるかしら? ヤン様、テラ様と合流し皆が揃ったなら確実だと思いますが……」
「そうかあ……」
それも一理あると頷きつつも、何処か腑に落ちない素振りを見せる。
「それに急にいなくなると二人とも探すかもしれません。まずは私たちも、用事を済ませましょう」
「分かったよ」
まだ納得いかないようだが、渋々パロムは歩きだした。
「あのっ!」
そんな二人を呼び止める声が一つ。
「何か?」
どちらともなく声を重ね、振り返る。
「さっきの話、もう一回聞かせてくれる!」
そこには一人の女性がたっていた。二人にとって見知らぬ人物であった。
103299:2006/02/15(水) 19:13:07 ID:FOY39qiT0
FINAL FANTASY IV #0347 4章 5節 忠誠と野心(19)

「さっきの話って、それより……」
そう言って、パロムは目前の女性を怪しげに見る。
「あんた誰だ?」
ここが今は訳ありの場所だというのは、二人も気づいている。
そんな中に、登場の人物だ。誰もが疑ってかかるだろう。
「あっ……私は! この城の者です。ですけど……あの、いわゆる
あなた達の思っている悪い人ではないんです!」
当然、彼女も怪しまれないと思って此方に話しかけてきた訳ではない。
あらかじめ、用意していた言葉でなんとか自分の立場を明らかにし、自らへの疑惑を
取り除こうとする。
「悪い人って……何ですの?」
「あ……えと……」
口ごもる。あんな会話をしていたのだから当然、この二人も此処の異変に気づいていたのでは?
「その素振りだと……」
しばらく間をおいて、パロム――彼女はまだ判別をつけていないが、言った。
「どうやらあいつはとは違うみたいだな……」
試されたのか。あいつはとはベイガンの事であろうから、自分が何ものなのかを。
「信じてもらえた……のよね。ならっ!」
子供にからかわれたのにちょと悔しさを感じ、やや強気な口調で言った。
「大した事ありませんわ……あの人が魔物だって思っただけですわ……むしろ……」
まじまじと見つめてくる。
「何故あなたはそんな事を知ってるのですか?」
104299:2006/02/15(水) 19:20:25 ID:FOY39qiT0
FINAL FANTASY IV #0348 4章 5節 忠誠と野心(20)

「見る限り、あいつとは違う……普通の人間だ。なら、何故あおのベイガンって奴が
魔物だって思ったんだ?」
少なくとも、何かを勘づいている事は間違いなかっら。それなら何故そう思ったか?
疑問に思うのも無理はないだろう。
彼女とて、偶然――半信半擬ながらも予感はあったが、でなければ、城にそんな事が
起こっているとは知るよしもなかった。
「その……魔物になっているのを直接この目で見ましたから……」
嘘はつけないだろう。それにつく理由が全くない。彼女にとってこの二人は長らくの
不安を打ち消すために現れた救世主のようにすら見えたからだ。
「よし、そうと分かったなら急ごうか!」
「ええ、早くしませんとセシルさんが……」
「え! ちょっと!?」
またもや、新たな疑問がわく。
「セシルさんって……今此処に来ているんですか?」
「え……あんちゃんの事しってのか!」
その事にパロムは驚いたようであった。
「それならば私も連れて行ってもらえますか……」
合ってどうするのだ? 彼は自分の事など知らない。そういう間柄のはずなのに……
「どうする?」
「訳ありのようですわね……一緒にいきましょう」
そして答えが了承であった。
「はい!」
だが、今此処にセシルがいるなら猛烈に会いたい。そう思った。それだけであった。
そこにはそれ以上の理由も理屈も存在しなかった。
105名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/15(水) 19:23:18 ID:FOY39qiT0
FINAL FANTASY IV #0349 4章 5節 忠誠と野心(21)


「覚えていてくれたんですね……」
辿々しい、足取りで彼女はセシルに近づく。
「それに戻ってきてくれたんですね……ずうずうしいかもしれませんが私はあなたは絶対に返ってくると……
絶対にこの国を変えてくれると思っていました」
「君こそ……早く、離れるんだ」
その指示に彼女は黙って従った。
「さて、どういう事だ? ベイガン」
その姿を見送った後、セシルはまたもや厳しい口調で問いつめる。
「全て、その二人の思った通りだ。私は人間ではない……」
「君もゴルベーザに……」
「ゴルベーザと……我が主をそのような呼び方で呼ぶのは、あの方は私に素晴らしい力を与えてくださったのですよ。
こんなにもね!」
手が、ベイガンの両腕がゆっくりと異形の形へと変化していく。その手には目と口がある。
そして……ベイガン自身もその顔を魔物のものへと変えていく。
「では……ここからが本番だぁ!」
低く、淀んだ声でベイガンが言った。
「ベイガン……本当に、それでいいのか?」
セシルはそんな彼を哀れむように見て、聞いた。
「それは君の力でも何でもない。なのに……」
「ははは……主君の命じたからさ! そう、ゴルベーザ様の命ずるところ……忠誠の結果であろうか」
「でも、こんな事は!」
「間違ってると言い切れるのか! 見れば貴様も王の暗黒剣の力を捨てたのではないか……ならば私と同じでは
ないか!」
「そんな事は……断じて! 違う……」
最後まで、言葉の勢いを保つ事ができなかった。だが、この状況で何とか言い切った。
「僕は国の為に……かつてのこの国の為に戦う!」
「私も同じだ。この力を与えてださった者の為、そして今の国の為に……」
激突は避けられなかった。確かに、お互いに忠誠の為に戦う。しかし、その形は完全にすれ違っていた。
「ならば僕も……君を倒すしかないようだな……」
106名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/16(木) 07:26:35 ID:137CFSdb0
>>299
乙です。
遂にベイガンが真の姿を現しましたね。
4プレイした時も何気にベイガン戦は苦戦しました。
107名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/17(金) 00:14:45 ID:JFdEqtFT0
そろそろage
108名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/17(金) 12:53:23 ID:AkdLPUP40
「さあ、オヤジさんと涙のご対面だ。行けよ」
マッシュが僕の背中をそっと押しながら言った。
僕はおずおずと老人の前に出た。でも、何て言葉をかけたらいいのか。
僕が逡巡していると、目の前の老人が機先を制して口を開いた。
「何でい、またおめえか。ケツが痒くならぁ!
ふん、てめえみてぇな奴は、一晩泊まっていきやがれ!」
109名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/18(土) 00:03:32 ID:oklI5FkE0
就寝前に保守。
まとめサイト更新再開したね
110名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/18(土) 08:53:26 ID:2LENt/Od0
おぉ、ほんとだ
生存確認できてよかった、乙です

でも前の壁紙結構好きだったのになあ、竜の騎士団とかw
111FF8 ◆mgMQDUQocw :2006/02/18(土) 12:05:31 ID:tKJpiQ5e0
どうもFご無沙汰しております。
在外子会社や取引先のほとんどが12月決算のせいで、いままで仕事に忙殺されてました。
まるまる一ケ月以上もご無沙汰してましたが、これからぼちぼち進行していこうと思います。

>>FF8erさん
拙文とのリレーという形でよければ、いつにてもご参加ください。大歓迎です。
112名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/18(土) 18:38:25 ID:LNC8u5/X0
FF2書き始めたんだけど投下してもいいですか?
公式の小説でてるけど、読んだ人いないと思うし、ミンウはじいさんだし。
まあ俺も読んだことないから勝手に書いちゃおうと思ったわけです。
113名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/18(土) 19:04:50 ID:LNC8u5/X0
とりあえずちょっとだけ投下しますね
114名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/18(土) 19:05:33 ID:LNC8u5/X0
FINAL FANTASY II

序章 (1)

 生い茂る木々の間に身をかがめ、フリオニールはじっと息を殺していた。
静まり返った森の中に、舞い落ちた木の葉を踏みしめる足音が響いている。
その音は、ゆっくりとこちらに向かって近づいてくる。もう駄目かもしれないと彼は思った。
かたわらには幼いころから一緒だった三人の仲間がいる。それでも彼は心細かった。
(マリア、ガイ、レオンハルト…)
 四人で力を合わせ、追っ手の帝国兵を倒し、振り払ってここまで逃げて来た。
しかし、すぐそこまで来ている帝国の騎士にはかないそうになかった。
木の葉のすき間から、黒い騎馬にまたがってゆうゆうと闊歩しているようすがうかがえる。
手に持った長い槍から見ても、ここに来るまでに立ちはだかった歩兵と異質の強さであることは明らかだった。
 もしここに隠れていることが気づかれてしまったら、たちまち殺されてしまうだろう。
 考えをめぐらせているフリオニールの肩に、レオンハルトがそっと手をかけた。
「奴はまだ俺たちに気づいてはいない。逃げ出したりしないでこのままじっとしていろ。
大丈夫だ、俺がついてる。」
 レオンハルトは静かに言った。マリアの兄であるレオンハルトは四人の中の年長者であり、
他の三人は日ごろから彼を大変慕っていた。一行がフィンの町からこの森まで逃げてきたのも、
彼の導きなしでは到底なしえないことであった。
 レオンハルトの言葉のとおり、しばらくして追っ手の黒騎士は遠ざかっていった。
「ふっ…」
 マリアが、耐え切れなくなったように息を吐き出そうとしたが、レオンハルトがあわててその口をふさいだ。
「まだ安心はできん。この辺りの地理には奴らよりも俺たちのほうが詳しい。夜になってから逃げよう。」
 レオンハルトの言葉に、フリオニールたちはうなずいた。
115名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/18(土) 19:06:03 ID:LNC8u5/X0
序章 (2)

 やがて日が沈み、空から落ち込んだ影は木々をゆっくりと闇に飲み込んでいった。
フリオニールたちは帝国の黒騎士をやりすごした場所で、静かにそのときを待ちつづけていた。
湖のほとりに茂るこの森は、フリオニールたちにとって馴染みの深い場所だった。
「昔はよくここで遊んだよな…。」
「ガイが拾われたのも、このあたりだったんだよね…。」
 フリオニールとマリアが、ぽつぽつと言葉を交わすのを、レオンハルトは黙って聞いていた。
 レオンハルトにとっても、この森は思い出のたくさん詰まった場所であった。マリアと散歩をし、
フリオニールと剣の稽古をし、ガイと木登りの競争をした。ときにはみんなで語り合った。
 しかし今日、フィン王国の城下町に襲撃をかけてきたパラメキア帝国の兵士たちによって、
それらの思い出はあまりにも突然に奪われてしまった。彼の毎日見てきた家が壊され、燃やされ、
毎日顔を合わせていた人々が、目の前で容赦なく斬りつけられ、死んでいった。両親さえも。
遊び場であり、安らぎの場であったこの森は、今では死の影がまとわりつく恐ろしい墓場と化した。
(悲しんでいる暇など無い。俺にできることは、こいつらを無事に逃がしてやることだけだ。
 こいつらだけは…。)
 その時、不意にガイが立ち上がり、うめき始めた。
「ウウウ…」
「どうした、ガイ。」
「ケムリ…ケムリのにおい、する。火だ。」
 野生児として育ったガイは、言語などを自由に操れない代わりに、常人より何倍も
研ぎ澄まされた五感を身につけていた。フリオニールたちには煙の匂いなどまったく
わからなかったが、ガイの感覚が信じられるものであることは経験的に知っていた。
 ほどなく、遠くに赤いものがうごめくのが見えた。
「あいつら森に火を放ちやがったのか。まずい、すぐに逃げ出さないと!」
 走り出そうとしたフリオニールの肩を、レオンハルトがつかんだ。
「レオンハルト、急がないと!」
「奴らは俺たちをあぶり出す魂胆だ。森の外で待ち伏せしているはず。四人で逃げればまとめて殺されてしまうだろう。
俺はおとりになって奴らの気を引くから、お前らはそのあいだに逃げろ!」
116名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/18(土) 19:06:34 ID:LNC8u5/X0
序章(3)

「兄さん!」
 マリアはレオンハルトにすがった。つぶらな瞳から涙があふれ出た。昨日まで仲のよかった兄妹、
仲間が、なぜこうも突然に引き離されなければならないのか。受け入れるにはあまりにも過酷な現実だった。
「兄さんまで死んでしまったら私…」
「フリオニール、ガイ」
 レオンハルトは言いながらマリアの腕をほどき、背を向けた。
「マリアを頼むぞ。」
 フリオニールには、レオンハルトを止めることはできなかった。
 レオンハルトとマリアの両親に育てられてきた彼にとって、レオンハルトは兄であり、マリアは妹である。
レオンハルトの気持ちは、フリオニールにもよくわかっていた。また、帝国兵をうまくおびきよせて
くい止めるという役割も、レオンハルト以外にはできないことに思われた。
「俺たちは絶対にまた会える。だから生きろ!生きるために、逃げろ!」
 フリオニールはうなずくと、ガイとともに、マリアを抱え、レオンハルトとは逆の方向に走り出した。
こうしなければ、レオンハルトは妹を救うことができないのだ。自分はレオンハルトの代わりに
マリアを連れていくことしかできない。フリオニールは唇を噛み締めた。唇が裂け、血が流れ出た。
後ろの方でレオンハルトの叫ぶ声が聴こえた。そしてそれに寄ってくる、馬のひづめが
落ち葉を巻き上げる音。黒騎士だ。
 「レオンハルト…」
 振り返る余裕もなく、フリオニールとガイは走り続けた。マリアは彼らの腕の中で力なくうなだれている。
彼女にとって、兄を失うことは最後の肉親を失うことであった。両親が目の前で凶刃に倒れるさまが、今ふたたび頭のなかを巡っていた。
(兄さんもこれから同じような目に合うのだ…)
 一日にして家族をすべて失った衝撃が、彼女の気力を根こそぎ奪ってしまった。
 どれくらい走り続けただろうか。レオンハルトが刃を合わせる音を背後に置き去ってからからは何の音も耳に入らず、
いつの間にか彼らは森を抜け出ていた。
 しかし、彼らの耳に音が戻ってきたときには、すぐ背後までひづめの音が迫っていた。
「フィンからここまでよく逃げてきた。だがもう逃げられんぞ。」
117FF8er:2006/02/18(土) 20:00:43 ID:E22uoaCR0
>>111
読ませていただきました。拙文なんてとんでもない。
すばらしいですよ。コチラのは稚拙かもしれないですが、よろしくお願いしますね。
118名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/19(日) 10:05:03 ID:xMP0N+Q10
新作期待age
119名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/19(日) 18:51:07 ID:8DIFVT6o0
>>112
読んでないのに何でミンウがじいさんって知ってるのか疑問だよね。
でも上手いよね。
俺も書こうかと思ったけど書けなかったからがんばってこれからも書き続けてください。
応援します。
120名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/19(日) 19:36:37 ID:+TRHk6ts0
ネット上にあるFF大辞典というサイトに
小説版の2の詳細がのっている。
121名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/19(日) 21:28:04 ID:+TRHk6ts0
他にも、FF2の専門サイトでは小説の内容に
触れているところもある。
122名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/20(月) 20:58:14 ID:wHwojNXt0
小説版2は原作のイベントをかなり端折っていて、オリジナル要素が強い。
大戦艦とパンデモニウムの件は丸々カットされてるし、ラストも皇帝を倒して終わっていない。
また、アルテマ入手のイベントも無ければ、リチャードも登場しない。
公式ノベライズ小説とはとてもじゃないが言い難い作品。
123名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/20(月) 21:38:10 ID:ZMDseZ830
あと、ヨーゼフやシドも登場しないし、ゴードンとレイラは
途中で死んじゃうんだよね…。
124名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/20(月) 22:16:51 ID:wHwojNXt0
>>123
そうそう、フリオニール達を庇ってね。
125名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/21(火) 00:26:07 ID:+pkfyxkI0
しかし、シナリオ書いた人と小説書いた人は一緒の人だよね。
でも>>112
には書いてほしいけどね
126299:2006/02/21(火) 02:50:26 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0350 4章 5節 忠誠と野心(22)

地下牢は散在して壁に、備え置かれた松明の光が通路を照らしている。
それはまるで、誰かを迎え入れているようであった。
そして、看守として宛われた見張りの兵士は今では珍しくなってしまった人間の兵であった。
本来ならばこのような場所はもっと厳重にしておくに越した事はないのだが、バロン王は
反抗勢力を大多数を処分してしまっていた。
今現在、この場所に閉じこめられているのは比較的、王の逆鱗をかわなかったもの、
又は殺してしまうには惜しいと思われた者だけである。
最も、そんな者は少数派ではあった為、牢獄が満員になる事は無かった。
彼らにとって下手な脱獄は折角、処刑を免れた命を下手に捨ててしまうようなものだ。
脱獄を試みた者はいない。唯一人を除いては……
「誰だ!」
急に聞こえた足音に看守の男は久方振りかと言った感じで叫んだ。
現に、この場所は当分の間、誰一人として、近づいていない。
彼もしばらくの間は他の人間と会った事も話した事もなかった。
獄中の人間とも最低限の会話しか交わさない。いや、話せなかった。
彼らは、既に生気を失い、虚ろになっていたものが殆どであったからだ。
127299:2006/02/21(火) 02:51:15 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0351 4章 5節 忠誠と野心(23)

「ほう……お前さんは魔物ではないのか……ならば」
やがて現れた二つの影……その片方、小柄な男が言う。
「悪い事はいわん……今すぐそこを通してくれんかのお……」
「何をするつもりだ……」
「そこに捕らわれたものを解放するのです……」
もう一人、大柄な男の方が今度は言う。
「何を言っている……捕虜を逃がしたなんて言ったら……私の身に何があるのやら……
彼が恐れるのも無理はない。少し前に脱獄した者がいた。そして、その時の看守はその失態を
王に問われる事になった。
その後、すぐに彼が後任を任されるようになった。それだけで大体どんな事があったのか分かった。
「やはり無理か……」
「そういう事だ……悪いが――」
直後、看守の体に見えない一撃。
言葉も無く、看守は前側に倒れ込む――寸前にそれを一つの腕が支え込む。
「こうするしかないのか……」
支えた主。ヤンがため息混じりに一言呟く。彼の言葉に後悔の色が混じっているのは当然、看守を気絶
させた一撃もかれの所業であるからに他ならない。
「できるだけ衝突は避けたかったのだが……」
128299:2006/02/21(火) 02:52:24 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0352 4章 5節 忠誠と野心(24)

倒れ込んだ看守を通路の脇に寝かせた後、しばらく進むと、鉄格子が見えてきた。
「あれか……」
そう言って、懐から先程、看守から奪った、牢の鍵を取り出す。
「誰だ!」
急に声がする。
捕まった者達も此方にってくる影を察したのだろう。
「俺たちに何をするつもりだ!」
えらく、攻撃的な色を秘めている。長時間、閉塞とした場所に閉じこめられていたのだ。
自然と心は荒んでいったのだろう。むしろ、この者のように、まだ誰かと会話できる程の精力が
残っている者はまれに思える。
「私たちはあなた方を助けに来たのだ」
「何だと……」
ヤンの声に反応し、とらわれの者の一人から声が上がる。
「本当か……?」
「嘘ではないのか?」
「信じられん」
それに続くかのように明らかに疑いかかっている声がつぎつぎとあがる。
「でも……此処にいてもずっとこのままだわ。少なくとも今よりはましになるはずだわ」
と助けを受けようと言う声も上がった。しかし、その声は少なく、しばらくすると大多数の意見に
打ち消された。
129299:2006/02/21(火) 02:58:20 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0353 4章 5節 忠誠と野心(25)

「ええい……簡単に信じてはもらえんとはな!」
テラが少し、苛立ち混じりに声を発する。
「その声は。テラ様!」
急にそんな声が上がった。
「本当です……何で!」
続く声も同じく、広く造られた牢屋内部の、後方から聞こえた。
だが、その声は、反対派の勢いを押し返す力があった。
「皆さん……その方達は信頼に値する人物だと私は思います!」
中でも一際際だった声。凛とし、透き通る声がテラ達の潔白を証明しようと立ち上がり言った。
すぐさま、沈黙はざわめきに変わった。
「導師さんがいうのなら……私は信じるぞ」
一人の老人が声を上げた。それが決め手になった。
先程躊躇っていた者は勿論、信頼しなかったものまでが、老人の――魔導士の意見に同調し始めた。
まだ、意を唱えようとする者も残ってはいたようであるが、既に少数派である。
勢いを失ったその者達は黙り込んでしまった。
「すいません。テラ様……」
牢内部の人並みを掻き分けて、魔導士達がテラのところまでやってきた。
「いや、いいのだ……それよりも」
「はい……我々はミシディアの民。クリスタルの奪還の際にこの国まで連れてこられて……」
何故か。それはおそらく彼ら自身がまだ、処分されていないと言うことから、セシルが予想したとおり、
ミシディアの魔力を、バロンのものにしようとしての事だろう。
130299:2006/02/21(火) 02:59:12 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0354 4章 5節 忠誠と野心(26)

「まさか、再び会えるとは思ってませんでした……我々は誰もあなたの事を恨んではいなかったのに……」
「その話か……」
ミシディアでの魔法事故。
原因にテラが関与した事であり、ミシディアから彼が去ることになった切っ掛け。
「すいません。嫌でしたか?」
「まあな……」
「そうでしたか。ですがこれだけは言わせてください……あなたに教えられた事、それがあったからこそ
私たちは此処で大切な事を知ることができたのです!」
豪語する魔導士。
「この牢獄に入れられた時、私たちは、バロンの者に大きな憎しみを抱いたのです……おそらくは
残された民も同じ心境でしたでしょう……」
その推論は正解であった。この魔導士の知るところではないが、セシルが再来した時に住民は大きく迫害
する事となった。
「そして、バロンの者達が私たちと一緒に投獄された時、私たちは酷く嫌悪しました。傷つけられたもの
も中にはいました。その者が獄中で苦しみ、中には異を唱え、そのまま処刑されてしまう者もいました。
そんな者達を見ていく内に私たちは、彼とて苦しんでいると……そう思ったのです。だから、者達を治癒し
ていきました。彼らとて、同じ人でした……」
一旦言葉を切る。そして、隣の黒魔導士が続ける。
「思えば、俺たちは最初、相手と話す事すらしなかった。ただ、憎しみが増大するだけ……ですが、
それではいけなかったのです、例えどんな相手であろうと必ず、何処かに事情を秘めている。それを理解せねば
ならなかったのです」
「かつて……テラ様が言った事でした。来る者は拒まず。私達はそれを忘れていたのだ!」
「そうか……だが……」
テラは口ごもる。それは……ミシディアに伝わる格言であった。
131299:2006/02/21(火) 03:00:09 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0355 4章 5節 忠誠と野心(27)

「今の私には、そんな立派な格言をお前達に言うことすらできんよ……」
魔導士達を感銘させた教え。かつてはそんな事を言ったのか……既に.そんな事実はとうに失念してしまった。
そして、過去の自らの発言に驚かされることになろうとは思いもよらなかった。
それなのに……彼らだけには都合のいい事を教え込んでしまった。それに対して大層な自責を感じた。
何気ない一言が相手にどんなに多大な影響を与えるか。そして自分の発言に責任を持ち、最後までその
姿勢を貫く。困難な事だ。
そして今の自分は……
「だが! どうしても私には!!」
何の為だ! 娘の! アンナの為に此処まで……あの力! メテオもその為に!
その力を得るために自分は全てを手に入れた!
「テラ様……」
急な大声に魔導士達は揃ってたじろいだ。
「ああ……すまんな……」
「いえ……」
「あの、聞きたい事があるのだが?」
唯ならぬ雰囲気を覚って、その会話を中断しようとしてか、ヤンが魔導士に訪ねる。
「技師殿はおられぬのか?」
名前は知っていたが、ヤンとて初めて会うのだ。ましてやこの中から探すのは時間がかかりそうであった。
「そいつは……親方の事か」
声がする。魔導士達ではない。
「なら、此処にはいないよ……」
見ると、獄中の中の一人の青年だ。丁度、ヤンの部下達の中で最も若い者と同じくらいの年頃であろうか。
親方と呼ぶからには技師の一人だろうか。
132299:2006/02/21(火) 03:01:17 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0356 4章 5節 忠誠と野心(28)

「では!」
そこから先に発せられる言葉に、嫌な予感を感じ取ってか、声色には自然と力が入る。
「いえ……処分はされていないんですよ」
自分よりも一回りは大きいであろうヤンに迫られ、青年は少しおどけつつ、彼の抱く懸念を否定した。
「この先、少し行った先に……閉じこめられています」
「そうか、では……」
歩き始めようとしたヤンに、未だに立ちつくしているテラが、目に入った。
「行きましょう……」
その様子にそれ以上の促しは困難であった。
「ああ……」
そう言って、僅かに後ろにいる魔導士達を見ると、静かに歩き出した。
「あの!」
その一人が呼び止める。
「いくら、変わろうともテラ様はテラ様です……私達はあなたにどんな事情があろうと、
あなたを信じます。それが、自分達が間違えていても……」
「…………」
テラは無言であった。
それは彼らにしてみれば精一杯の励ましではあったし、その事に対しても深く、感慨を受けたテラであった。
だが、それに増す勢いで罪というのか、後悔意識が――彼らにそこまでの気概を抱かせた自身の中に募っていった。
133299:2006/02/21(火) 03:05:06 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0357 4章 5節 忠誠と野心(29)

しばらく聞いた事の無かった鉄格子の開く音。
「誰じゃ……」
もうこの場所に閉じこめられ、いくらの時間が過ぎただろうか。
外部との接触を完全に隔離され、小窓一つついていないこの場所からは
今が昼なのか、夜なのかも分からない。
ましてや日付の感覚などはとうの昔に消えている。
この場所――監獄の中でもひときわ重罪な罪を犯したものだけがいれられ
る特殊な牢。
最初はシド自身王に乱暴な進言をした時にはここまでの重罪とはみなされ
てはいなかった。
処刑される者も多かった中、彼に下された王の罰は軽いといってもいいくらいで
あった。
だが、そんな状況で彼は一つ、王を激怒させる事態をおこした。
まずは脱走。通常の格子ではこの怪力な技師を囲んでおくにはあまりにも
もろかったのだ。
そしてその力さえあれば、兵の目をかいくぐって城から抜け出すのも
容易であっただろう。
しかし、彼が脱走した理由。
娘同然に愛してきたものの消沈を打ち消し、愛する者への希望を持たせた事。
そしてその者の城からの脱出を助力した事。
ローザを逃がした後、少しでもローザの安全な時間を確保する為に、
城の兵士相手に奮闘したシドであったが、やはり数の多さに再び捕まって
しまった。
通常は間違いなく処刑される待遇であったが、シドの目論見は当たっていた。
飛空挺の技術は彼が発見し発展させてきたのだ。沢山の弟子を育ててきたが、
まだまだ彼自身しか知らない知識は数知れない。
ここで自分の損失は飛空挺の発展を遅らす、いや廃れさせてしまうと言っても
いい。
134299:2006/02/21(火) 03:07:30 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0358 4章 5節 忠誠と野心(30)

その為、彼自身の処刑は行われなかった。
しかし、脱獄者を放って事は当然されなかった。
そこで……用意されたのがこの特殊監獄であった。
通常の監獄は一つの牢を沢山の人間を閉じこめるのに使われる。しかし、この特殊牢はただ一人の人間を
閉じこめておくのに使用される。
部屋は普通の牢よりも格段に狭く、身動きをとるのがやっとといった感じであった。
造りも粗末なものであった。
「再びこの牢を使うとはな……やはり王は変わってしまった」
この牢の存在は昔から知っていた。しかし、今の王はこの牢獄を嫌い、使用する事はなかった。
おそらくは元代の王の時代、初めて使用されたのだろう。
そして、このような場所に閉じこめられていてはさすがのシドも日に日に衰弱を感じるようになっていた。
「誰だ……」
もう一度シドは呟く。
「お前さんがシドか……飛空挺をつくったという」
牢を開けてきたのは老人と明かりを一つ手に持った、屈強な体躯の男であった。
「何故、私の名を知っている。それに……」
城の兵士と思うには無理のある人選であった。さらにここは牢の中でも最も厳重に警備がいきわたっている。
「私たちはお前を助けにきたのだ」
「何!」
それはありがたい事だ。シドはいい加減この窮屈な場所から脱出したいと思っていた。
しかし、前の牢と違ってここは身動きを取るのがやっとであり、脱走を試みる事などは到底不可能であった。
「だが、お前さん達はだれなのだ?」
シドはこの二人を知らなかった。それなのにこの二人は自分を知っている、少なくとも、自分の肩書きくらいは
どのようなものか分かっているようである。
135299:2006/02/21(火) 03:08:49 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0359 4章 5節 忠誠と野心(31)

あなたの噂はセシル殿より伺っております」
今まで口を閉じていたヤン言う。
「セシルだと! ということは!」
「ええ……此処に来ています……」
「何処だ!」
慌ただしく、ヤンの後ろへ目を這わすシド。
「今は城の別の所にいます……」
「本当なのだろうな!」
「はい……証明することはできませんが……」
シドは目前の男をまじまじと観察した。その後。頭の中で少し考えこう言った。
「分かったよ。お前さん達を信じるよ。なかなか礼儀はわきまえとるようだからな」
それだけで断定するには早計かもしれないが、シドにはこの二人が自分を悪いように扱うようには
思えなかった。
セシルが当てにする理由も何となくだが、分かった。
「それと儂以外にも、牢に捕まっとるものが沢山いる。そいつらも助けてやってくれんか?」
「はい……そちらの方は既に終わっています」
「ほう……なかなかの手際の良さじゃな……どうじゃ、私の弟子になるつもりはないか」
弟子というのはもちろん飛空挺技師としてだ。
「すいませんが、遠慮しておきます。私は元々モンク僧という身。武を重んじ、日々の鍛錬に励む身です。
それに私はお国柄上機械に触れた事が滅多に無く……その機械オンチなんです」
やや恥ずかしがったかのような告白を、ヤンが言うのは初対面のシドでも可笑しく思えた。
136299:2006/02/21(火) 03:10:19 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0360 4章 5節 忠誠と野心(32)

「はは……良いのだ! だが、気が向いたらいつでも声をかけてくれ。それにしてもお前さんはファブールの
ものだったのか」
その国の名は大空を駆ける翼の創始者であるシドが知らぬはずはなかった。
シドの頭には常に世界中の地理が咄嗟に引き出せるほどの知識があるのだ。
「そう言えばまだ名前を言っていませんでしたね。私はヤンファンライデン。ヤンと呼んでもらって結構です」
「そうか。よろしくな」
差し出された手をがっしりと掴むシド。
元来シドはこのようなタイプ。セシルに似ているような人間は非常に好みであった。
「そちらの老人も紹介しておきましょうか……」
程よい握手を交わした後、ヤンがテラの方へ向く。
「こちらは……」
直後、シドが数瞬の間だけ宙を舞う。そして、近くの壁にたたきつけられた。
何が起こったのかは最初分からなかった。
だが、テラの方を見ると、その答えがあった。
「テラ殿……」
テラは拳を前に付きだした格好で止まっていた。
おそらくは彼がシドを殴りつけたのであろう。
「何故……」
そして今度は何故そのような行動に至ったのか。その理由が直ぐには思いつかなかった。
137299:2006/02/21(火) 03:15:06 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0361 4章 5節 忠誠と野心(33)

「お前はいきなりっ! 何をするんじゃ!!!!」
やはり、当然の反応をシドは示した。自分が初対面の人間に殴られる理由をシドは知らない。
「これくらいは我慢してもらわんと困るわ……」
テラ自体も自分のしている事が、いかに不条理で馬鹿げている事なのかも自覚しているのである。
ここで、この男を殴ったとしても更なる悲しみと空しさが襲いかかってくる。
しかし、どうしても止めることができなかった。
「アンナはもっと、もっと苦しい思いをしたんだからな……」
そこまで言ってやっとヤンにも意味が分かった。テラがシドを殴ったという事も含めて。
「アンナじゃとお……」
早くもテラに反撃の一撃を返そうとしていたシドであったが、それを聞いて、動きを止める。
その人物が誰なのかは当然分からない。
「あの時……娘さんがダムシアンにおられたのです」
ヤンはシドにそっと耳打ちをする。あの時という部分は敢えて説明しない。ここにいる者は誰でも
知っていると思ったからだ。
「そうなのか……」
それを聞いたシドには最前までの気力は消え失せていた。
それどころか、すっかりと消沈してしまった。
シドにとってもこんな事は初めてであった。自分の飛空挺が軍事利用されている事は重々に承知していたし、
そに事に遺憾とした気持ちを抱いていると自負していた、つもりであった。
だが、このようにその飛空挺によって、大切なものの命を失ったものには、初めて出会ったのだ。
138299:2006/02/21(火) 03:23:53 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0362 4章 5節 忠誠と野心(34)

「すまなかった! と言う資格は私にはあるのだろうか……」
シドは問う。
「もう……その話はいい。あの一撃で充分だ……私とて自分への責任がある。いつまでもこうではいかん」
それっきりテラは黙り込んでしまった。
「では……行きましょうか……今の状態なら上手く城を脱出できるはずです」
この緊迫した状況をい一変させるようにヤンは言う。
「待ってくれ、セシルは何処にいるのだ?」
歩き出そうとした時、シドが言う。
「あいつとはしばらく会ってはいないし。顔を見てみたいのだがな……」
多少の無理強いだと分かっても敢えてシドは提案する。
「王に会いに行きました。我々は先に脱出してくれえと言って」
「大丈夫なのか? この城の中は私も良くは知らないが、既に多くの魔物達が徘徊しているのだが……」
シドもその件は知っていたようであった。そして、セシルの身を案じていた。
「ベイガンという者がついているから大丈夫だと言っていましたが……」
「何!」
その言葉にシドは驚きを隠せなかった。いや、言葉ではなくその中に含まれていた人物の名前に。
「今、なんと言った!」
「はい……一緒に行くから大丈夫だと……」
「いや、違う、その前の! 誰がいるから大丈夫と言ったんじゃ!」
激しく問い返す、シドにヤンはたじろぎながらも返答する。その中で、心の中の消え去りかけていた、
不安が再び押し寄せてきた。
139299:2006/02/21(火) 03:24:57 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0363 4章 5節 忠誠と野心(35)

「ベイガンがいるから大丈夫だと……」
自分で言った言葉に自分で驚く事となった。
やはり自分の不安は的中したのだと。もっと強引に引き留めておくべきだったのだ。

「しかも、セシル殿は完全にその男を信頼しきっていました……あれでは」
何か妖しい部分があっても、気づかない可能性がある。そう思った。
「こうしてはおれん! 一刻も速くセシルに追いつかねばなら……ん――」
そこまで言って、辺りを見回す。
「そう言えば、あの二人を見てはおらぬか?」
あの二人というのは勿論、パロムとポロムの事であろう。
言われてからヤンも気づいた。てっきり付いてきてるものかと思ったのだが。
「此処に来る前には見たような気がしたのですが……」
「では、お前はあの爺と一緒に先にセシルの元へ急いでくれ。私は……」
子供達を探さねば。そう言おうとした時――
「待て、それなら私が探そう」
シドが口を挟む。
「しかし……」
「なあに! どうせ他にもやることがあったのだ! お前さん達は早く、あいつを助けに行ってやれ」
威勢良い言葉には初対面である二人の信頼を勝ち取るには充分過ぎたのか。
「よし……なら頼んだぞ!」
あっさりとその場を任せると二人は急いで駆け出した。
「そのベイガンという男だ。儂を此処に閉じこめるように王に提案したのは……軽く承諾した
王も王であるが、奴はバロンの兵士達の中でも、最近の王の考えに同調していたものだ」
「では……」
テラも気づいたのか、声を潜める。
「それも恐怖心から来るものでは無い。本心から今の体制に賛同しているその姿はまるで何かに
心酔しているかのようなのだ……そんな男が王の元に易々案内するとは考えられない。それに……」
「セシル殿は一度、国を追われている。そんな人物なら尚更、ベイガンの行動に違和感が出てくると
言うわけですか……」
最後はヤンが引き継いで言う。そして更に続ける
140名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/21(火) 03:27:13 ID:k/thnBwv0
>>139
投稿ミスです。
下に訂正します。
141名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/21(火) 03:28:33 ID:k/thnBwv0
FINAL FANTASY IV #0363 4章 5節 忠誠と野心(35)

「ベイガンがいるから大丈夫だと……」
自分で言った言葉に自分で驚く事となった。
やはり自分の不安は的中したのだと。もっと強引に引き留めておくべきだったのだ。
「そのベイガンという男だ。儂を此処に閉じこめるように王に提案したのは……軽く承諾した
王も王であるが、奴はバロンの兵士達の中でも、最近の王の考えに同調していたものだ」
「では……」
テラも気づいたのか、声を潜める。
「それも恐怖心から来るものでは無い。本心から今の体制に賛同しているその姿はまるで何かに
心酔しているかのようなのだ……そんな男が王の元に易々案内するとは考えられない。それに……」
「セシル殿は一度、国を追われている。そんな人物なら尚更、ベイガンの行動に違和感が出てくると
言うわけですか……」
最後はヤンが引き継いで言う。そして更に続ける。
「しかも、セシル殿は完全にその男を信頼しきっていました……あれでは」
何か妖しい部分があっても、気づかない可能性がある。そう思った。
「こうしてはおれん! 一刻も速くセシルに追いつかねばなら……ん――」
そこまで言って、辺りを見回す。
「そう言えば、あの二人を見てはおらぬか?」
あの二人というのは勿論、パロムとポロムの事であろう。
言われてからヤンも気づいた。てっきり付いてきてるものかと思ったのだが。
「此処に来る前には見たような気がしたのですが……」
「では、お前はあの爺と一緒に先にセシルの元へ急いでくれ。私は……」
子供達を探さねば。そう言おうとした時――
「待て、それなら私が探そう」
シドが口を挟む。
「しかし……」
「なあに! どうせ他にもやることがあったのだ! お前さん達は早く、あいつを助けに行ってやれ」
威勢良い言葉には初対面である二人の信頼を勝ち取るには充分過ぎたのか。
「よし……なら頼んだぞ!」
あっさりとその場を任せると二人は急いで駆け出した。
142名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/21(火) 03:30:23 ID:k/thnBwv0
以上です。
お手数ですが、まとめサイトに掲載する時、#0363は
>>141の部分でお願いします。
143名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/22(水) 07:59:51 ID:s8Gzi8PIO
揚げ
144 ◆XYZ.ReoI/2 :2006/02/22(水) 13:27:29 ID:Fllqf3wj0
FINAL FANTASY II   序章 (4)

 馬上から降ってきた声は、フリオニールがこれまで聞いたことのないものだった。
その声色は大きな獣のうなり声のように低く重たい響きを持って、えもいわれぬ戦慄を感じさせた。
 黒騎士に違いなかった。
 きっとレオンハルトがおびき寄せた奴だとフリオニールは思った。
(おそらくこいつは決死の覚悟でかかったレオンハルトをいとも簡単に殺し、俺たちを追ってきたのだ。)
 レオンハルトの死が、実感となってフリオニールの心に湧き上がってきた。それはそのまま、自分たちの死を連想させた。
(俺たちも死を受け入れるしかないのだろうか…。)
 ふと、左腕に抱えていたマリアがずしりと重くなったのを感じた。左に目をやると、ガイがマリアから手をはずし、
かわりに武器として家から持ち出してきた斧を握っていた。彼は、背後の黒騎士に気づかれないように、効き手に斧を持ち替えたのだ。
フリオニールはガイの考えを悟った。
 黒騎士の乗る馬の呼吸音が、じわじわと近づいてくるのがわかる。
 フリオニールは呼吸を整えると、腰にかかった剣を手に取りながら、マリアをゆっくりと降ろした。
「ほう、観念したようだな。」
 黒騎士のくぐもった声がうしろからとんできた。一人では明らかに逃げられないマリアを地面に降ろしたことで、
逃げる意志がないと判断したようだ。フリオニールたちが正面に下げた武器は、もちろん背後からは見えない。
馬を降りる音がし、人間の歩く足音が近づいてくる。
(狙い通りだ。)
 彼らのすぐ背後まで来て、黒騎士が歩みを止めた。
「どうした、怖くて身動きも取れんか…」
 黒騎士の言葉が終わる瞬間、フリオニールとガイはくるりと身をひるがえし、声の出どころめがけて一斉に武器を振り抜いた。
確かな手応えと衝撃音が二人の体を駆け抜けた。
「グオオッ!」
 二人の目に映ったのはやはり黒騎士だった。首から下だけになった甲冑の兵士がそこに立っていた。
「やった……!」
 二人が背後の声を頼りに振り向きざまに放った一撃は、見事に声の主の首をとらえ、跳ね飛ばしていたのだ。
145 ◆XYZ.ReoI/2 :2006/02/22(水) 13:28:28 ID:Fllqf3wj0
FINAL FANTASY II   序章 (5)

 首無しの黒騎士の姿はもちろん気味の悪いものであったが、二人にとっては
直面した死の脅威を退けたという安堵の方が大きかった。残された馬は暴れる気配はなく、
辺りをふらふらと歩きまわっている。知能が高くないようだ。
 しかし安心はできない。森に放たれた炎はどんどんと木々を侵食している。
帝国兵が森の外で待ち伏せしている可能性も大きく、無事に逃げられるという保障はない。
それでもレオンハルトの遺志を継ぎ、全力で逃げなければならないとフリオニールは気を引き締めた。
 マリアはいつの間にか気を失っていた。次々と襲い来る死の重圧に耐えられなくなったのだろう。
「ありがとうガイ。もう駄目かと思ったけれどお前のおかげで助かったよ。早くマリアを連れて逃げよう。」
「わかった。」
 二人が武器をしまってふたたびマリアを担ぎ上げようとしたときだった。
「これで勝ったと思うなよ!」
 不意に声がした。そのくぐもった低い声は、遠方に跳ね飛ばされた黒騎士の頭部から発せられていた。
フリオニールは自分の脚ががたがたと震えだすのを感じた。
「馬鹿が、死ねい!!」
 身構えたときにはすでに遅かった。
「ぐっ!」
 うめき声とともに倒れこんだガイの腹部には、拳大の穴が空けられていた。真っ赤な血が噴き出した。
 フリオニールとガイが黒騎士の首に気を取られている間に、黒騎士の体は槍を構えていたのだ。
(まさか…首から下だけで動くことができるなんて…!)
 フリオニールは絶望した。黒騎士は声だけでなく、根本的な肉体のつくり自体が人間のそれとは大きくかけ離れていた。
彼にとって正体不明であったパラメキア帝国の実態は、なおも得体の知れないおぞましい影となって、彼の心を支配した。
(俺たちの敵は、人間じゃない…)
 恐怖に動けなくなったフリオニールの体を、鮮血に染まった槍が貫いた。
 崩れ落ちていく黒騎士の胴体を見ながら、彼の意識はだんだんと遠のいていった。

<序章完>
146112 ◆XYZ.ReoI/2 :2006/02/22(水) 13:39:46 ID:Fllqf3wj0
いい忘れましたが、>>112です。初スレからちょこちょこ来てましたが。
これからよろしくお願いします。
147名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/22(水) 15:02:08 ID:QPcpuGbJ0
gj
>「これで勝ったと思うなよ!」
>「馬鹿が、死ねい!!」
台詞がファミコンっぽくて懐かしい
148148:2006/02/24(金) 19:46:55 ID:Bg2WXF/x0
何かIEだと上のレスが消えてるみたいなのでもう一回レス。
ついでにage
保守。
書き手が増えてこのスレもまた良い感じに盛り上がってきたな。
>>FF4
前回更新分から一気に読んだ。
パロム、ポロムの助太刀カッコ良い!
テラの気持ちも切ないね。
ただシドの自称が私になったり儂になったり少し分かりづらいので、統一した方が良いと思う。
それと時々299さんの名を騙った偽者が出るから、今後はトリップを付けてみてはどうでしょう?
>>FF2
冒頭からかなり衝撃的な展開。
黒騎士に対する主人公達の恐怖の描写が巧み。
次回作も期待。
149名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/26(日) 01:11:52 ID:pHeooM/VO
保守
150名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/26(日) 22:26:09 ID:fUNj9Lpr0
今日だけでお気に入りが二つ落ちたから
用心して保守しますね
151名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/27(月) 07:18:06 ID:7ArLhv2t0
保守
152494 ◆yB8ZhdBc2M :2006/02/28(火) 00:09:58 ID:uo4yiky50
どうも、まとめサイト管理人です。
現在FF7ACの保管を進めているのですが、NO01〜04にはタイトルがあるのに、05以降にはタイトルがありません。
そこで折角ですのでこのスレでNO05以降のタイトル案を募集したいと思います。
思いついた方はどんな物でも結構ですので是非レス下さい。
宜しくお願いします。
153名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/01(水) 00:00:11 ID:wXdeviaA0
今夜も保守
154FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/01(水) 16:50:23 ID:OSKK3mVA0

銃撃、銃撃、銃撃。

絶えることなく襲い来る銃弾を、フェンリルの車体を倒し、蛇行してなんとかかわす。
前方に目を凝らすと、数百メートル先に3つの人影が見えた。
黒い革のスーツに銀の髪…間違いない、あいつらだ。
3人のうちの2人が、短銃らしきものでこちらを撃ちまくっている。短銃で狙えるような距離ではないはずだが、2人の射撃は驚くほど正確だ。飛んでくる銃弾のほとんどはクラウドのすぐ近くをかすめるし、何発かはバイクに当たって甲高い金属音を響かせている。
道の両脇は白い木で覆われ、横に逃げる事は出来ない。道は一直線。完全に待ち伏せされたのだった。
回避は無駄と悟ったクラウドは、フェンリルの操縦を手動から自動に切り替え―――フェンリルにはオートクルーズ機能がついている―――さらにバイクのカウルを展開、右手にファースト剣を、左手には巨大な刃に柄が埋めこまれたような形状のセカンド剣を持つ。
そのまま刃の広い剣を振るい、銃弾を跳ね返しながら突進する。
距離が縮まるに伴い、敵の姿がはっきりと見えてきた。同時に、あるものが目に飛び込んできた。
3人の中で一際大柄な男の傍らに、マリンがいた。
マリンは銃を連射するロッズに右手で服の端をつかまれ、まだ距離があるのでよくわからないが、憔悴しきった表情でこちらを見ている。
クラウドの口元が怒りで歪んだ。
と、その時、とつぜん銃撃が止んだ。同時に、それまで何もせずにいた、中央の男が動き出した。
155FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/01(水) 16:53:14 ID:OSKK3mVA0

他の2人より頭一つぶん背が低いその男は、腰に帯びていた刀を抜き、妙な格好で指を振りながら前に出でくる。
その合図に応えるように、道の両脇に密集する青白い木々のむこうから、無数の影が飛び出した。かと思うと、3人とマリンの前に次々と着地していく。
子供だ。
カダージュ達がエッジからさらった数十人もの子供たちが、まるで壁のように密集し、クラウドの行く手を阻んでいる。
剣を持ったまま慌ててブレーキをかけるクラウド。だが、すでに加速し過ぎていて止まれない。
彼我の距離はもう20メートルもない。
だが、巨大な鉄の塊が迫ってきても、子供たちはまるで動揺しない。代わりに、色とりどりに輝く手をクラウドへと向けた。
バイクの速度をなんとか殺そうとしていたクラウドは、距離が10メートルほどになったとき、その光の正体に気づいた。
それは、マテリアの淡い輝きだった。

次の瞬間、魔法の光が辺りを包んだ。
156FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/01(水) 16:54:34 ID:OSKK3mVA0

重量にして数百キロに達するフェンリルが派手に横転し、黒塗りの車体が音を立てて地面を這う。
クラウドの体も宙を舞い、地面を無様に転がった。
魔法の閃光を受ける寸前、とっさに回避してなんとか直撃は防いだし、地面はほとんど砂なので叩きつけられてもそれほどのダメージにはならなかったが、それでも全身を鈍痛が走っていて起きあがれない。
クラウドが顔を上げると、先ほどの刀を持った男―――おそらく、この男がカダージュだ―――がこちらを見下ろしていた。
「やっぱり来たね!」
カダージュの声は甲高かった。その淡いグリーンの目には狂気が宿り、子供のような顔には狂気じみた笑みが浮かんでいる。
狂気の滲む目で睨まれた瞬間、左腕の星痕が灼けるように痛んだ。
「子供たちを迎えに来た」
呻き混じりでクラウドも言い返す。カダージュはやたらと嬉しそうな様子で、辺りをうろうろと右往左往し始めた。
「この人はねぇ!僕達の兄さんだ」
周囲を取り囲んでいる子供たちに向かって、甲高い声で叫ぶ。
「…でもねぇ、残念だけど」
かと思ったら、次に口を開いた時、その声は異様に重く、冷たくなっていた。言動のどれもが意味不明だ。
「裏切り者なんだよ」
言い放ち、クラウドの首筋に刃が2枚ある刀をつきつけた。
クラウドはカダージュの氷のような目を睨み返していた。応戦はできない。持っていた剣は転倒の際に投げ出されてしまった。
カダージュがゆっくりと刀を振りかぶる…
その時、一つの叫び声が状況を変えた。
「クラウド!」
マリンだった。
カダージュがその声に気を取られたのは一瞬の事だった。が、クラウドにはそれで充分だった。
カダージュのすぐ足下に、セカンド剣が転がっていたのだ。

即座に剣を拾い上げ、隙だらけのカダージュのわき腹を斬りつける。
が、カダージュはすぐに攻撃を察知し、真上に飛んで避けた。
子供たちの輪の外に着地するカダージュ。クラウドはすぐさま追撃しようとしたが、できなかった。

それまで無言で人垣を作っていた子供たちが、クラウドめがけて一斉に殺到きたからだ。
157FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/01(水) 16:55:43 ID:OSKK3mVA0

小さい体が、次々と飛びかかってくる。クラウドはとっさに剣を下に向け、背を丸めた。
これが余計に状況を悪くした。
無防備な状態のクラウドの上に、子供たちがのしかかっていく格好になってしまった。

数重人分もの体重に押しつぶされ、地面に這いつくばったクラウドは、それでも懸命に首だけを動かし、状況をうかがう。
そして最初に視界に入ってきたのは、自分を見つめる、子供達の無数の目だった。
奇妙に輝き、しかし瞳の奥底は虚ろで、生気がない。
それは、完全に正気を失い、意思を持つことを忘れてしまった眼。機械のような眼。すべての思考を奪われた眼だ。
相変わらず地面に這いつくばりながらも、クラウドはまたも怒りに口元を歪めた。カダージュ達が何をしたかは知らないが、それでも、子供たちをこんなふうにした行為が、どれだけ非道なものだったかはわかる。
剣を持っていない左腕に力を込め、強引に動かす。と、手が何か硬いものに触れた。
マテリアだ。子供の手に握られていたマテリアが、左手のすぐ近くに転がっている。
クラウドはとっさにそれを掴むと、マテリアに魔力を送った。

「クラウド!」
押さえつけるロッズの腕を振り解こうとしながら、マリンは懸命に声を上げる。
眼前には、カダージュ達に操られた子供たちが、クラウドに飛びかかり、のしかかり、山のように重なって押さえつける姿。
マリンの手が震える。寒さのせいではなかった。
目の前で繰り広げられる光景が怖い。今の状況全てが怖い。
マリンは何を考えるでもなく、小さい手でしゃにむにロッズの腕や脚を殴り、押しのけ、なんとか自由になろうとした。が、何をしても大男は石のように動かない。
ロッズも、その隣にいるヤズーも、銃撃をやめてからは棒のように立ち尽くしている。
マリンがもう一度、クラウドの名前を呼ぼうとしたその時、クラウドを中心に山のように折り重なっていた子供たちの隙間から、先ほどと同じ、魔法による光が漏れ出した。
同時に、それまで直立不動を決めこんでいたロッズがとつぜん動き出し、マリンをいきなり投げ飛ばした。
マリンはなす術もなく宙に投げ出され、悲鳴を上げる暇もなく。忘らるる都の硬い木々の陰に叩きつけられた。
158FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/01(水) 16:57:22 ID:OSKK3mVA0

催眠魔法スリプル。
クラウドが放った起死回生の魔法は、かなりの効果を発揮した。それまで強烈な力で押さえつけてきていた子供たちの重圧が、一気に弱まったのだ。
小さい体が次々と脱力し、地面に横たわっていく。
クラウドは背中にのしかかっていた子供をできるだけ丁寧に、かつ素早く払いのけると、銀髪の敵の姿を、次いでマリンを探す。
辺りを見回すまでもなく、こちらに猛然と向かってくるロッズの姿が視界に入った。
が、彼に捕まえられていたはずのマリンは見当たらない。どこにも見当たらない。
――くそっ!
クラウドは小声で毒づくと、右手のセカンド剣を大上段に構え、突進してくる大男めがけて振り下ろした。
ロッズはクラウドの眼前で止まると、左腕のデュアル・ハウンドで広い刃を受けた。甲高い金属音が響く。
次いで魔法で攻撃しようと左手のマテリアをつきつけたが、クラウドの動きを見ぬくや否や、ロッズは膠着状態を解き、大きく飛び退いた。クラウドも跳躍し、その場からできるだけ離れる。
意識を失った子供たちを、これ以上傷つけないためだった。

クラウドはひとまずその場から脱け出し、もう一度、二度と大きく跳躍。着地して、改めて周囲の状況を確認する。
クラウドはまずカダージュの姿を見つけた。彼は相変わらずの狂気じみた笑顔で、なにもせずに成り行きをうかがっている。
ロッズはこちらに走って迫ってくる途中。とりあえず、子供たちから注意を逸らすのは成功したようだ。
マリンを探してみる、が、やはりその姿は見当たらない。
先ほどまでロッズが立っていた地点に視線を走らせるが、そこには3人目の敵、ヤズーが立っているだけだった。
そう、短銃の銃口をこちらに向けたヤズーが。
159FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/01(水) 16:58:53 ID:OSKK3mVA0

銃声が響いた。
対応が一瞬遅れ、左手に持っていたマテリアが粉々に砕かれる。指から血が吹き出したが、幸いかすっただけだ。
さらに2発、3発と銃撃するヤズー。今度はクラウドも反応し、セカンド剣の広い刃で銃弾を弾く。
が、その場に足止めされる形となった。
この隙を逃さず、ロッズが再びクラウド目掛けて突進してくる。大袈裟な動作でジャンプし、蹴りを繰り出す。クラウドはセカンド剣の刃を盾にしてその跳び蹴りを受け、ロッズは反動で一瞬バランスを崩し、動きを止めた。
そこへ間髪いれずに振り下ろす。
が、次の瞬間、ロッズの姿がクラウドの視界から消えた。

セカンド剣の切っ先が、空しく砂の地面に突き刺さる。ロッズはいつのまにか、どうやったのか、クラウドの背後に立っていた。
すかさず振り向き、同時に回転の勢いをつけて剣を一閃させる。
剣はまたも空を斬り裂いたが、今度はロッズの姿を目の端で捉えた。
全身からマテリアのような青く淡い輝きを放ち、身体は半透明。足の動きに関わらず高速移動する様は、霊体系のモンスターかなにかを連想させる。
明らかに生身の人間の動きではない。
ロッズの動きを先読みしてなおも剣を振るうが、今度は左腕のパイルバンカーでいなされ、さらに首筋を乱暴に引っ掴まれる。
投げ飛ばされる寸前、ロッズの筋肉質な顔に明らかな嘲笑を浮かんでいるのがわかった。
160FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/01(水) 17:00:51 ID:OSKK3mVA0

宙に投げ出され、砂の地面に無様に転がるクラウド。
立ちあがり、周囲の状況をうかがう――子供たちからはまた離れた――と、すぐ近くにファースト剣が落ちていた。
即座に飛びつき、剣を拾う。同時に、今度はヤズーが木々の間を飛びまわって近づいてくるのが見えた。眼前に着地して左手に持った短銃、ベルベット・ナイトメアを振り上げ、剣を模した銃身を叩きつけてくる。
反射的に左手のセカンド剣でそれを受け、右手のファースト剣で斬り返す。避けられた。クラウドは2本の剣で追撃するが、ヤズーは身を翻してその攻撃をやすやすとかわし、さらに突き出された剣を足がかりにしてクラウドの頭上へと飛びあがり、背後に着地した。
人間離れした身軽さと素早さだった。
剣状の銃身が再び振り下ろされる。クラウドは振りかえりざまにそれを受け、反撃しようと空いている方の剣を振り上げる。
が、その動きはあまりにも遅かった。
「鈍いぞ、兄さん」
蔑みと嘲りの混ざったヤズーの声が聞こえたかと思うと、クラウドは腹にハンマーで殴られたような鈍痛を感じた。
「…かっ…」
あまりの痛みに耐えかね、その場にうずくまる。
腹に膝蹴りをくらったのだと気づいたのは、顎を蹴り上げられた時だった。

またも地面に叩きつけられ、砂にまみれながら横転する。が、今度は辺りを見回すような余裕はなかった。
ヤズーが追い討ちをかけようとすぐ近くまで迫り、そこへさらにロッズも加わってきたからだ。
慌てて立ちあがり、2本の剣で二人を迎え撃つ。が、2対1の条件下、しかもクラウドは疲労困憊、満身創痍。勝ち目はなかった。
二人の攻撃をかろうじて受け、かわしながら、クラウドはどんどん後退していく。そのうち、剣を持つ腕が鉛のように重くなり、全身の筋肉が痙攣し始めた。このままではなぶり殺しだ。
クラウドは後ろに跳んで二人から離れ、さらに背を向けて、忘らるる都の奥へと走り出した。大きく距離を取って体勢を立て直そうとする。

が、そんなクラウドの考えを読んでいたかのように、しばらく走った先にカダージュが先回りしていた。
161FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/01(水) 17:03:58 ID:OSKK3mVA0

狂気的な笑みをたたえたカダージュの手には、刃が2枚ある丈が短めの刀が握られている。
――くそっ!
クラウドはまたも毒づき、次に2刀流では不利ととっさに判断、ファースト剣の刃にセカンド剣をあてがう。
セカンド剣がパズルのようにファースト剣の刃に填めこまれ、一つの剣に合体した――クラウドの剣はこのようにして合計6本ある剣を一つに合体させることが出来る。こうすることによって、剣の重みと攻撃力を増すのだ。
一本になった剣を両手で持ち、走ってきたままの勢いでカダージュに斬りかかる。が、カダージュはそれを片手で持った刀で受け、細い腕からは想像も出来ないほどの腕力でクラウドを押し返した。
今度はカダージュの方から仕掛けてきた。手の上で刀を回転させながら、凄まじい俊敏さで斬撃を放ってくる。さらに刃が2枚あるせいで、目で追おうとすると視界が一瞬歪むのだった。
クラウドは最初にカダージュの一撃を防御した瞬間、彼もまた他の二人と同じかそれ以上の力を持っているのを知った。
カダージュはなおもクラウドを攻めたてる。クラウドはまたも防戦一方に陥り、じりじりと後ずさり始める。
「駄目だなぁ、兄さん」
両腕の感覚が麻痺し、2枚刃のトリックで視界が朦朧としはじめたころ、カダージュはクラウドをあざ笑った。と、いきなり顔を近づけ、クラウドの顔を睨みつけるようにして覗きこんできた。至近距離で目が合う。

瞬間、クラウドの左腕を、縦に裂いたような激痛が襲った。

「―――――――――――――!!!!!」
あまりの痛みに脳裏が真っ白に染まる絶叫を上げたが、声にならない。
その場に崩れ、地面をのたうち回る。朦朧とする意識の中で、後ろからヤズーとロッズが追いついてくるのを感じた。
カダージュが冷ややかにこちらを見下ろしている。何事か呟くと、2枚刃の刀を逆手に持ち、ゆっくりと歩み寄ってくる…

が、その時、白い木々の陰から深紅の影が現れ、クラウドを包み込んだ。

クラウドを包んだ影は一瞬、その場で渦を巻くように留まったが、すぐに飛び去ろうと形状を変えた。
ヤズーとロッズが銃撃するが、影の動きは素早く、かすりもしない。
カダージュが走り寄って追おうとする。が、もう遅かった。
影は木々の間をのらりくらりと飛び回ったかと思うと、忘らるる都の上空にその姿を消した
162FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/01(水) 17:05:24 ID:OSKK3mVA0
お久です。
本編とかなり違う流れになってます。媒介なしでマテリア使っちゃってますが、魔法の描写がどうしても欲しかったので…
文章をかなり変えてみましたが、逆効果だったかも…ボリューム配分の悪さは永遠の課d(ry

>まとめサイトさん
サブタイトルのことをすっかり失念していました。すいません。
オール英語じゃ前の人と整合性が取れないかもしれませんが、よければ下のを使ってください。
文法間違ってなきゃいいけど…(ボソ

 The black brothers(NO.5からNO.10まで) 
 Rufus ShinRa(NO.11からルーファウスとの会話が終わるまで)
 Each heart, Each thought(ティファとマリンが教会に来てからクラウドが丘で幻覚を見るまで)
 The shadow of brothers(ティファ対ロッズ戦からクラウドが教会で気を失うまで)
 Hesitate(セブンスヘブンの会話の最初から終わりまで)
 The strange children(忘らるる都のシーンの最初から終わりまで)
163名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/01(水) 22:39:05 ID:L/WDQHsR0
age
164299:2006/03/02(木) 02:37:42 ID:iPO//zTa0
FINAL FANTASY IV #0364 4章 5節 忠誠と野心(36)

戦いは長丁場になった。
セシルとベイガンの実力のほどは、殆ど一緒と言って良かった。
例え、魔物の姿に変わろうとも、セシルを圧倒する事は出来ないからだ。
だが、戦局はベイガンに傾きつつあった。
ベイガンはその手、怪物と化したその腕の左腕を広範囲に渡り、
展開させた。
下手に動けば、その腕に体を取られる事となる。しかし、回避だけでも体力を消耗する事となってしまう。
「どうした! セシル」
ベイガンは挑発しつつ、右腕を攻撃へと当てる。
セシルは特に何の返答もせず、黙ってベイガンを見据える。反撃のスキを伺っているのだ。
大きく旋回させてくる左腕を交わしさえすれば、一気に攻勢へと打って出られる。
ジリジリと続いた睨み合いの中、そう判断した。
「怖じ気づいたのか!」
一向に無反応なセシルにしびれを切らしたのか、やや荒削りり両腕を使い攻撃してくる。
今だ!
それを待っていた。一気に剣を持ち、ベイガンの傍らを剣と共に払い抜ける。
瞬時、ベイガンの片腕が宙を舞った。先端にある表情が微かに悶絶したように感じたのはセシルの
気のせいか。
「あ……ぐぁ!」
さすがにこたえたのか。ベイガン自身も痛みを訴えるかのような小声を漏らす。
それと同時に、わずかに体躯が揺らぐ。
もう一度だ……
更に、振り返りざま背後からもう一つの腕に一撃。
手応えを感じさせる太刀の重み。剣撃の鋭い音と共に、その腕も地にたたき付けられる。
「これで……」
その戦果に充分なものを感じたセシルは、背後から、元の位置へと走り去る。
「勝負あったか……」
あの腕さえ無くしてしまえば大分楽になるだろう。
が……振り返り、声を発した瞬間に見た光景に驚かざるを得なかった。
165299:2006/03/02(木) 02:38:42 ID:iPO//zTa0
FINAL FANTASY IV #0365 4章 5節 忠誠と野心(37)

ベイガン自身の腕先。先程セシルが切り落とした為、切り取られた断面が残っているだけだ。
そこから、何かが盛り上がっていく。それと同時に伺った、ベイガンの顔には追いつめられたという危機感も
無く、余裕の表情すら感じさせる。
盛り上がった腕先は更なる大きさを増し、赤色であったものに薄紫色が被さるようにその面積を増していく。
最後に、先端が裂け、牙を除かせる。そうすると見覚えのあるものになっている。
「再生したのか……」
見間違いでは無く、確かに切り落としたはずの腕が綺麗さっぱりと、元通りになっている。
「驚いたか……」
ベイガンが、焦燥しているセシルを笑う。両腕の表情も、表現できる限りに嘲弄し、けたましい笑い声を
上げている。
「そういう事だ。まずはこの腕を無くそう。悪い作戦ではなかったと思うぞ……しかし、相手が悪かったな」
言い終わらぬ内に、その腕を振るう。怒濤の勢いで右腕の顔がセシルへと突進してくる。
「あんちゃん!」
パロムの危機を知らせる声が響いた時には、セシルは横に跳躍しその攻撃を回避していた。
最初にベイガンの先制を許してしまったばかりだ。二度も、同じような目に遭うわけにはいかない。
だが、このままではいずれ負けてしまう。策を練り直すべきか。そんな猶予は何処にある。
第一、時間を確保できたとしても、良い作戦を思いつくか?
僅かの思考時間を要した後、セシルはとりあえず目前の状況に対して、全力で攻撃をかわすことだけに専念する。
そうしなければ、やられる。上手く考えがまとまらない。
戦局は不利に傾きつつあった。
166299:2006/03/02(木) 02:39:55 ID:iPO//zTa0
FINAL FANTASY IV #0366 4章 5節 忠誠と野心(38)

「今助けるぜ!」
だんだんと体力を奪われていく最中、後方で声が上がった。
威勢良く答えたのは、当然ながらパロムだ。見てはいられなかったのだろう。
後ろを向ける状況ではないので詳しく確認をとる事はできぬが、どうやら魔法の詠唱に入ったようだ。
すまない……
そう心で感謝しつつ、セシルは一つの疑問に駆られた。
ベイガンは気づいていないのか?
あれだけ助けると代々的に宣言したのに、それを聞いていなかったのだろうか?
パロムも反撃覚悟での攻撃のはずであろうし。
此方の攻撃に専念するあまりに自我を失いかけているのか。
そんなに都合良くは、第一周到なベイガンに限り……
散在した思考を打ち砕くかのように、魔法の完成を告げたかのような轟音が鳴る。
完成を見た、ファイアの魔法はその火球状になり指定したもの目がけて飛ぶ。
やはり避けない。
何故か、すぐそこまで迫っているのに。その魔法自体が存在しないかのように、ベイガンは
振る舞っている。
可笑しくなったか!
これを機会と思い、咄嗟に後方へと飛びつつ、セシルは思った。
再度、地面へと着地した頃合い、ついに目前へと迫った火球は周囲を赤く染め、ベイガンへと
一直線に――
167299:2006/03/02(木) 02:46:37 ID:iPO//zTa0
FINAL FANTASY IV #0367 4章 5節 忠誠と野心(39)

直後の光景をセシルはすぐさまは信じられなかった。
確かに、魔法は完全なもので、ベイガンへと向かっていた。
もちこの場に人がいたのなら全員がセシルと同じ考えを示すだろう。
しかし、魔法の対象者であったベイガンはおかしく笑っている。
その姿には、傷一つついていない。
「な……」
「何故だと聞きたいのだろう。だが、お連れの二人は知っているようだぜ!」
疑問を先読みし、促すように視線を這わすベイガン。釣られるかのようにセシルも同じ方向を向く。
そこには魔法の直撃を受けたパロム。
それを気遣うかのように側にいるポロム。
咄嗟の出来事にはやや戸惑い気味であった。ややで済んだのは、二人がこの原因を理解していたからである。
「教えてくれるか……」
何故……確かにベイガン目がけて放たれた魔法が唱えた本人であるパロムに……跳ね返ってでも
こない限りあり得ないのでは。
「白魔法リフレク。向けられた魔法を対象者の元にはじき返してしまう魔法です」
ポロムの答えは、セシルの予想通りであった。その為、よりいっそう衝撃が増す。
「そんな魔法があったのか……」
頷くポロム。そして更に言う。
「バリアと言っても、シェルやプロテス等の防御魔法と違い、何でも跳ね返すこの魔法は……時には
詠唱者に大きな負担を招いてしまいますので……通常時に用いられる事はあまりないのですが……」
今回の場合。自らの体を守るかのように存在する復元可能な両手。これにリフレクの魔法がついたら……
「死角なし……」
そんな訳はない。否定しつつも、段々と暗い気持ちが強くなる。
「しかも跳ね返された魔法は加速がましてるからさ……威力も速度も最初よりも増してるんだ……おいらも、
唱えたのが威嚇用に威力を落としていなければ、今頃どうなっていたことか……」
「パロム!」
弟を叱責するポロムの言葉には通常とは違った。
手負いの体なのだから喋るなと言ってるのか、それとも弱気な思考を否定しているのか、その両方なのか。
168299:2006/03/02(木) 02:48:53 ID:iPO//zTa0
FINAL FANTASY IV #0368 4章 5節 忠誠と野心(40)

「さて、お喋りはここまでだ!」
一時的に止まった戦いを、始める合図。見計らったかのような、ベイガンの怒声が辺りをうった。
「まずは……その二人から始末させてもらおうかな……」
怒声の次の声は、冷徹であった。
対象を変更した、両腕はパロムとポロムへと迫ろうとする。
「やめろ!」
叫び、その間にセシルは割って入る。
「がっ……」
どちらともつかぬベイガンの腕が、大蛇状のそれの牙がセシルの脇腹へと食い込む。
鋭いその牙は鎧をも食いちぎろうとする。
「なんと……庇うのか。ならば良い。お前から……」
そう言って、更にもう片方の腕をもセシルへと向かわす。
途端、セシルに痛みが、今以上の痛みが襲おうとしていた。
「う……ん」
セシルは拍子抜けする羽目となった。
予期した痛みがこない。確かに、新たに向けられた、牙の攻撃の感触はある。
だが、その痛みが大して堪えない。
「これは……」
セシルとベイガン。どちらともなく声が上がる。
「…………」
つまりはベイガンにもこの状況は予期していなかった。
「何をやっとる! 早く攻撃せんか!」
「あ……はい!」
聞こえた声に何故か律儀に答え、セシルは手にした剣を振るう。広範囲に向かって斬撃を払い、
一気に、二つの腕を切り落とす。
「ぬ……おぉ」
さすがにベイガンも堪えたのか。呻き声を上げて後ずさる。
それを一瞥した後、セシルは声の方向に向き直る。
「助かったよ」
169299:2006/03/02(木) 03:04:34 ID:iPO//zTa0
FINAL FANTASY IV #0369 4章 5節 忠誠と野心(41)

「テラ、ヤン」
「気づいていたか」
そう言って、物陰からテラとヤンが姿を現した。
「いいや、今気づいたんだ。でも、もう少しだけ早く出てきてくれると嬉しかったかな……」
「本来ならばすぐさま助太刀にまいりたかったのですが……」
「いいんだよ、それより……この魔法は?」
謝るヤンにそう言うと、テラの方に向き直る。
「ああ……プロテスの魔法だ」
プロテス。対象者の身に付けた防具に特殊な加工を一時的に施し、相手の攻撃に対抗する魔法。
防具を強化するという性質上、戦前で重装備する者程、効果が増す訳である。
まさしくセシルにうってつけの魔法である。
「お前が攻撃を受ける直前にだな……遠距離だった上に、急な出来事であったから間一髪であったが」
自らの腕がまだ衰えてはいない事が嬉しかったのか、少しばかり、自賛に満ちた声であった。
「またもや数が増えたか……」
話し込む三人の後方で、千切られた腕の再生を終えたベイガンが言った。
「だが、いくら人数を揃えようとも、私を倒すことなど……」
「それはどうかな」
相も変わらず自信に満ち足りたベイガンの言葉を遮ったのは、更に自信に満ちた短い声だった。
「どういう事だ……」
可笑しかったのか、少しの微笑を交え、ベイガンが声の主――テラに聞き返す。
170299:2006/03/02(木) 03:07:48 ID:iPO//zTa0
FINAL FANTASY IV #0370 4章 5節 忠誠と野心(42)

「実はな……先程から、お前さんとセシルの一戦を少しばかり陰から観察させてもらったんだ。
到着が遅れたのはそういった事情があってな……」
先程、ヤンが謝っていたのはそういう事か。駆けつけようとしたところをテラが引き留めたのだろう。
その情景を思い浮かべ、セシルは納得とやや不謹慎な可笑しさを感じた。
だが……何故?
「それはお前さんのある特徴に気づいたからだ……鉄壁だと思っている防御。それには大きな穴があるのだ」
そんなセシルを余所にテラは更に続ける。少しずれた眼鏡の縁を押さえ、不敵に呟く様はいつものテラとは違う雰囲気がある。
「ほう……見れば魔導士のようだがな……そんな者に私が倒せるとでも……」
その自信の根拠。おそらくはリフレク。あれではテラも……
「そんなお前さんに、一つ忠告だ。どんなに優れた魔法にもな、必ず穴がある。それを生かすも、殺すも、使う
もの次第……」
ベイガンの言葉を無視するかのように言う。
「な……!」
そこまで続いた言葉にさすがのベイガンも唯の虚勢で済ます事が出来なくなったのか、少し動揺の語気が
混じる。
「さて……どんな手を……」
「ヤン、セシル。少しあいつの気をひいてくれ……」
その指示に無言で頷くヤン。セシルも同じく頷く。
現状ではテラに任せるのが最良の判断だ。セシルはそう判断した。おそらくはヤンも同じだろう。
その二人を見送った後、テラは少し後ずさる。
171299:2006/03/02(木) 03:12:59 ID:iPO//zTa0
FINAL FANTASY IV #0371 4章 5節 忠誠と野心(43)

「パロム。少し手伝えるか?」
そう言ってテラが振り返る。
無言で頷く。彼には拒否する理由が無かった。
パロムにはこれからテラが何をするか。その事に興味を完全にひかれていた。ポロムも同感であった。
「では……少し魔法をかけさせてもらう」
詠唱に入るテラ。
平常時ならば、何の呪文をかけるんだ? とか疑問を漏らしそうではあるが、今回に限っては
黙ってテラの行動を待っている。
「よし!」
かけ声がする。呪文が完成したのだろう。
しばらくすると、緑色の円形状の障壁がパロムの前に現れた。
それは最初こそは、光り輝いていたが、少しの時間をいて、すっと消えてしまった。
「これは……リフレク。爺ちゃんも使えたのか!」
「ですが……」
どちらかというよりも、驚きというよりも疑問が二人を支配していた。
リフレクは、かけられた対象者の近づく魔法を関知し、瞬時に障壁を展開する。
そして、先程のパロムのように、詠唱者へと跳ね返ってくる。
なお、跳ね返る相手は、別に詠唱者だけでなく近くにいるものの可能性もある、集団で
戦闘を展開する際には時には仲間さえも傷つけてしまうケースさえもあるのだ。
更に不思議な事に、この障壁は普通の打撃には全く反応しない。その時には、直接視野で確認する事も
できないのだ。
172299:2006/03/02(木) 03:15:16 ID:iPO//zTa0
FINAL FANTASY IV #0372 4章 5節 忠誠と野心(44)

試しに、ポロムが突如消えた、緑状の障壁の所存を確かめようとすると、振動音だけを残して、腕が空を切った。
実際には、この手は、障壁を突き抜け、その前方にまで伸びているのだ。
「何を……?」
パロムもポロムと同じく疑問を口にする。
二人が疑問に思ったのは、リフレクを使って何をするのかだ。
「まあ、見ておけ……」
返答もそこそこに魔法の詠唱に入るテラ。
その様子に二人も実際に、何が起こるかまで黙っておくことにした。
「ポロム、少しパロムと距離をとっておけ、危ないぞ」
というような指示に、素直に従った。
もはや疑問を尋ねる事すら忘れ、これから起こる出来事に二人は集中しきっている。
「では……いくぞ!」
そう言って、魔法が放たれる。
それも時間のかかる高位クラスのもの。急遽、巻き起こった巨大な火球から、察するに、
炎魔法の最上級のファイガの魔法であろうか。
完成をみたファイガの魔法はただ、一直線にパロムの元へと突き進む。
だが、対するパロムの顔に怯えはなかった。そして、それを、テラの指示に従い、遠巻きに眺めるポロムにも。
それどころか、何か、納得したような気配さえある。
173299:2006/03/02(木) 03:17:06 ID:iPO//zTa0
FINAL FANTASY IV #0373 4章 5節 忠誠と野心(45)

ファイガが目前まで迫ったその時、パロムの目前に障壁が現れる。当然ながら、これはテラが唱えたリフレクの魔法だ。
発生した障壁――リフレクの魔法は、ファイガの魔法すらも容易にはじき返す。
リフレク接触前よりも更なる速度を得たファイガは、そのまま対象を変え、新たな対象に飛びかかる。
その先にいたもの――ベイガンにその魔法を避ける事はできなかった。もしかすると気づかない程の高速だったの
かもしれない。いや、気づいていても避ける事は困難であっただろう。
ファイガの魔法はベイガンに直撃した。
そのまま炎は爆発し、更なる連鎖爆発を起こす。
近くにいたセシル、ヤンは咄嗟に身を引き、屈め、爆風を凌いだ。
それほどまでに強大な魔法であった。
174299:2006/03/02(木) 03:20:02 ID:iPO//zTa0
FINAL FANTASY IV #0374 4章 5節 忠誠と野心(46)

爆風が消え、その跡が視界に入ってくる。
地面の石床は大きな円形に穿たれ、頑丈そうな壁も粉々に砕かれている。
何とか、爆発で壊れなかった床や壁も、黒く焦げていた。
その風景だけで、その攻撃を浴びた者の末路は安易に予想できた。
「終わりましたか……」
その予想に行き着いたヤンがため息一つと共に、そう言った。
「でもさ……一体どういう事だったんだ?」
同じ心境であろう、ポロムには、その事よりも、先程の事態。
何故、リフレクを張っていたベイガンに魔法が直撃したのか? という事が気がかりであった。
「リフレクの魔法は魔法に反応して、それをはじき返す。だが、あまり知られては
いないが、それでも跳ね返せない魔法があるのだ……」
「つまり、一度跳ね返された魔法ってわけか……」
「そうじゃ。あの者もその利用には気づいておらんかったのだろうな……」
「すげえぜ……」
そこまで言ったテラにパロムは尊敬の眼差しを見せる。
「いやいや、別に私が発見した訳ではないのだからな……古くから有名な手段として使われて
おるのだからな。だが……」
「それに?」
パロムが同じ言葉で問い返す。
「反射した魔法は、もしかすると私自身に返ってくるかもしれなかったのだ」
リフレクの反射魔法は詠唱者へと戻ってくるのが一般的だ。
「そこを何とかコントロールしてな、あの者へと当てたのだ。結構な賭となった」
「本当かよ! そんな凄いぜ、爺ちゃん」
そんな芸当を出来るのは魔法に熟練したもののみであろう。
「いや、私とてかつての腕はもうないぞ……」
謙遜してはいるが、テラは少し嬉しいようであった。
175299:2006/03/02(木) 03:22:05 ID:iPO//zTa0
FINAL FANTASY IV #0375 4章 5節 忠誠と野心(47)

そんなやりとりの中、セシルだけはまだ息を抜いてはいなかった。
彼には、まだベイガンが生きているのではないか? その考えが抜けきっていなかったからだ。
「!」
僅かながら、瓦礫の動く音。空耳ではないだろう。
一歩ずつ、その音の方向へと、セシルは近づく。
そこには……
「ベイガン! やはり……」
「ははは……まだ終わってはいないぞ……」
それが明らかに虚勢に変わりつつあるのが、セシルには分かった。もはや彼には戦う力は微塵も
残ってはいない事も。
「もうよせ! ベイガン」
そんな相手を倒す気もセシルには無かった。
「だが、私はゴルベーザ様に誓いをたてたもの……今更、貴様の考えに屈する気はない。それにこの
姿……否、例えどんな事があろうとも私は、ゴルベーザ様に……」
残った片腕の振りかざし、全力でセシルへと飛びかかる。
その勢いは既に無く、倒す事は容易に等しい。
(ベイガンを打つことは……!)
何かがセシルの中で引き留める。
「セシル殿……早く……」
後ろでヤンの声がする。おそらく、この死に体の敵をセシルが倒せる事等、周知しているのだろう。
その声には心配するよりも、加減するなという意味あいが強く感じられる。
(僕は……)
迷う暇は僅かしか与えられなかった。
そして……
横薙に払った、パラディンの剣はベイガンの腹部を綺麗なまでに一閃した――
176名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/02(木) 03:27:37 ID:iPO//zTa0
取りあえずここまで。
他の作者さん方、まとめサイト管理人さんもお疲れ様です。

>>148
忠告ありがとうございます。
トリップには一考してみたいと思います。
177名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/02(木) 09:59:49 ID:CT2/cDxP0
リフレク反射がGJ!
178名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/02(木) 11:06:37 ID:tAfTCxfL0
ベイガン最強キャラだなw
まー実際のゲームでもだいぶ苦戦したけどね
でもメーガス戦前にデルタアタック出しちゃってもよかったの?
179名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/03(金) 13:16:18 ID:504u14ow0
保守
180名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/03(金) 19:09:49 ID:QzmYLwvy0
どんどんかいてくれ!
181494 ◆yB8ZhdBc2M :2006/03/04(土) 00:39:36 ID:Jv3mAtxf0
>>162
レスありがとうございます。
他に投稿が無いようでしたら、そちらを使わさせていただきます。
182名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/04(土) 14:17:28 ID:U2Zh1UEs0
イイヨイイヨー
183名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/04(土) 20:55:48 ID:G6g4VMjXO
保守。
AC大量更新ですよ
184名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/05(日) 01:13:45 ID:GtYEYdQu0
保守しておきます
185名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/05(日) 21:04:58 ID:2TljYeO00
不安だから保守
186名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/05(日) 22:00:09 ID:GtYEYdQu0
最近思うんだけど、どうも昔に比べて感想のレスが減ったな・・。
昔はもう少し賑わっていたような。
みんなももう少し感想のレスが増えると、書き手さんもやりがいが出て良いと思う。
というわけで上手くは無いけど書いてみる。
>>FF7AC
戦闘描写がとても細かい。
よくあの早い戦闘をここまで文章化出来るなと思う。
マテリアのアレンジも良いと思う。
ACでは全く説明も無い展開だったからね。
映像作品のノベライズというのは中々難しいと思うけど、ここまで結構読み応えのある文章になっていると思う。
>>FF4
デルタアタックを使うまでの緊張感が伝わってくる。
プロテスの伏線も効いてる。
次回作にも期待。
>>178
メーガス戦は、また違うアレンジが出て来るだろう、きっと。

187名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/06(月) 00:49:01 ID:4Oqc6kuF0
保守
188名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/06(月) 21:03:04 ID:4Oqc6kuF0
やばい、最近保守カキコしかない
189名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/06(月) 23:14:15 ID:KQMwap1d0
取りあえずage
190名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/07(火) 00:21:14 ID:I6MIHo9f0
まとめサイト6が更新されてるね
191名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/07(火) 04:12:56 ID:z+W2bhPa0
あげ
192名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/07(火) 17:44:20 ID:qJ4PnHVE0
ポーションにつぶされかねないから保守
193名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/07(火) 19:55:49 ID:I6MIHo9f0
進行状況定期更新
・FF2 フリオニール達が黒騎士の襲撃に遭ったところまで。(現行スレ>>145
・FF4 バロン城でセシルがベイガンに止め?を刺したところまで。(現行スレ>>175)
・FF5 マギサ、フォルツァと激突中。(4スレ目87)
    ジョブはバッツ『ナイト』ファリス『青魔道士』レナ『黒魔道士』ガラフ『モンク』
・FF6 エドガーとケフカが対峙し、会話を交わし終えたところまで。(4スレ目33)
・FF7AC クラウドが忘らるる都で何者かに助けられたところまで。(現行スレ161)
・FF8 電波塔頂上でサイファーとビッグス、との対決。勝者サイファー。(4スレ目63)

>>192
確かにポーションスレ立ちすぎw
12が発売したらもっと凄いことになるんだろうなぁ・・・。
194名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/08(水) 00:06:37 ID:I6MIHo9f0
日付変わったので保守
195名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/08(水) 00:12:15 ID:jBQpu/WR0
そろそろ受験も終盤か?
196名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/08(水) 17:44:32 ID:NXZlBzkh0
ほす
197名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/08(水) 20:52:50 ID:ukFPlJLC0
>>195
297さんが確か受験生なんだっけ
198名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/09(木) 05:31:36 ID:YCuYSkQs0
199名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/09(木) 19:31:21 ID:rBmj+wwe0
死守
200名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/09(木) 23:42:31 ID:ThZ51sBd0
保守屋でございます。
201名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/10(金) 13:00:19 ID:3W6IrLH3O
保守!
202名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/10(金) 22:09:43 ID:/XcCzl9v0
ほす
203名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/11(土) 08:02:52 ID:JxWVhyIIO
職人さん来ないなぁ…。
204名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/11(土) 21:34:47 ID:LupUAXy90
凄い保守だぜ!!
205名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/12(日) 00:23:59 ID:CLsbZLdk0
今夜も保守。
新作投下まで要保守。
206名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/12(日) 12:07:51 ID:k6us72o+O
ホッシュル・ルー
207名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/12(日) 22:43:03 ID:CLsbZLdk0
まだまだ終わらんよ!
208名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/13(月) 09:43:31 ID:l/+a3+vb0
209名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/13(月) 18:07:09 ID:t3W7pC0H0
それにしても、まとめサイトのFF4が頑に更新しないのはなぜ?w
210494 ◆yB8ZhdBc2M :2006/03/13(月) 18:21:55 ID:nRg7f7Qo0
頑にってそんな事無いですよw
まあ何分にも量が多いので、旧ファイルを差し替えるのに時間がかかっていまして・・すみません。
もう少々お待ちください。
何か12の公式サイトみたいで申し訳ないです・・・。

211名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/13(月) 21:19:22 ID:Ol3s06aR0
>>210
おまいは勇者だ。がんばってくれ!
212名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/13(月) 22:13:00 ID:t3W7pC0H0
あ、こちらこそすいませんw
前に俺がうpしたFF4のまとめになんか不備があったかなー……とか思ってつい。
保管がんばってください(・ω・)
213名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/14(火) 02:42:41 ID:y3RVIzpO0
おす
214名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/14(火) 05:03:02 ID:oAhetG8U0
オラ
215名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/14(火) 11:21:51 ID:wZDV7JQF0
小泉孝太郎
216名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/14(火) 19:35:35 ID:DKFkg8gS0
12のノベライズが始まったら盛り上がりそうだな
217名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/15(水) 01:19:02 ID:pTMTpLLZ0
保守
218名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/15(水) 02:56:32 ID:TBC2ld9p0
>>216
そうなったら、このスレに入れねえw
219299:2006/03/15(水) 04:37:35 ID:WZsqGRpD0
FINAL FANTASY IV #0376 4章 5節 忠誠と野心(48)

「見事だな……セシル……」
「ベイガン」
その賛辞は再会時の虚偽な言葉とは違う、真意に満ちていた。
もはや、その口調は途切れ途切れであり、もう長くはない事を無意識に悟らされる。
「思えば……私が忠誠をゴルベーザ様に誓ったのは……貴様を倒したかったのだ。いつも貴様やカインが
いるせいで……私は日陰の存在になったのだ!」
「そんな事は!」
「ないと言えるのか! 貴様が!」
その言葉に声がつまった。
「王の寵愛を受けていたのは貴様だ……例え、貴様の地位が実力であったとしても、貴様のせいで。
犠牲になったものはいなくなないんだ!」
「…………」
「王のお前にかけた情熱は並々ならぬものだったたろうな!」
ベイガンの言葉はまだ続く。
「それにカインとて、貴様の陰に隠れた存在だっただろう……」
「何!」
その言葉は今まで、放たれたベイガンのどの言葉よりも衝撃があった。
ならばカインもベイガンと同じく……
「気づかなかったのか……奴も俺に似た存在さ」
「しかし、あいつは……カインは操られているだけだ! 決してお前のように……」
考えたくない可能性を煽るようなベイガンの言葉をセシルは否定する。
しかし、心の何処かでその可能性を捨て切れてはいなかった。
「もしかすると、望んでそうなったのかもしれないぞ、あいつは! まあ、俺ほど道を外しちゃあ
いないとは思うがな……」
その自分への戒めの言葉の後、ベイガンは高らかに笑う。
220299:2006/03/15(水) 04:39:46 ID:WZsqGRpD0
FINAL FANTASY IV #0377 4章 5節 忠誠と野心(49)

「そんな! 決して! 決してそんな事は……」
「そう思うか! ならばそれが正しいのかもしれんな。俺だってあいつの事を全て知っているわけではないし、
付き合いはお前の方が長いのだ! だが、あいつが今ゴルベーザの手の中にいる」
「僕は……カインを助けなければ……」
自然とそういう言葉が出た。
「あいつが、聞くかな? お前とあいつにある者は案外、深いのではないか?」
「とにかく、カインと会わなければ……あいつと話がもう一度したい……しなければ……」
「ならば……早く俺にとどめをさせ……まずは王に会うんだな……」
そう言ったベイガンに対し、セシルは無言で剣を向ける。
「勿論、そのつもりさ」
このまま放っておいてもベイガンの命は尽きるだろう。だが、自らの剣で止めを刺さねばならない。
半ば、強迫観念に近いものがその時のセシルを支配していた。
「そうさ、それでいい……」
「ベイガン、他に……ゴルベーザ達の事を何か知ってるか?」
「さあな、俺はただ、王からこの力を授けられただけ……それ以外は何も知らん」
「そうか」
それだけ言うと、セシルは剣を、再びベイガンの腹部へと突き刺さすとする。
「豹変した王やゴルベーザ様への忠誠等どうでも良かったのかもしれん。ただ自分の欲望、
野心の為に……その方が都合が良かったからだな……」
直前に呟いたその言葉に返答はしなかった。
その言葉の終わりを確認すると、セシルは剣を深々と突いた。剣が肉を抉り、引き裂く音が聞こえる。
だが、ベイガンからは悲鳴一つも漏れなかった。
剣を抜くと、もはやベイガンは微動だすらもしなかった。
後にはただ、血に濡れた剣を持つ、セシルが立ち尽くすだけであった。
221名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/15(水) 22:55:49 ID:ffWbEBr10
299氏GJ&明日からのFF12祭りに備えて保守
222名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/15(水) 23:06:17 ID:GbOLUATz0
久々に新作キタ!
乙です

いいなぁ・・・ここのセシルは・・・
ネタスレのセシルばっかり見てるから
カインに対しての反応が新鮮だったなw
223名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 00:20:52 ID:O4jJsuse0
新作乙です。
カインの裏切りには二つの理由があったとは・・・深いですな
224名前が無い@ただの名無しのようだ
通りすがりの保守屋です。