まりすみぜる
私たち 純真無垢のドラクエ幼馴染みカプオクテット
ゆりかごからお墓まで いつまでもラブラブし続けますわ!
+  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
. _ . ,; =:ー、、 love love
. ,'´ .__ _ヽ _ _. + 〃,;:三三) +
i /メ))ヘゝ´, -、ヽ , ' ,.⌒;ヽ卅゙卅! )ヽ.〃二 、.⊆⊇. ∠,  ̄ 丶、 ;.'ニニヽ +
+ .(ソゞ(.^ヮ^ノ.川―゚ー!| ! ノノ"ヾ)ヮ^ノ )ノ;>O<,'.==、.ヽ / ,,、=y、,i ハ( )从ハ
. K゙ヽY/ス|!(|^ヮ^ノl ゞ ,リ゚.ー^どミ) 彡ン(,.゚.ヮ〈ノハヾ、i.l ヾ/ ;´(フノ! (’n.’;リノ、
U〉-l=ト!m)|ト-チiつ(y)ブ(つ-cE! + "K丶-"从ー^.iフi. "(つ∀,!つと)'i:l"《つ))
love /エ_iイi_〉ソリ゙/iヾi! (y)ソ_i_」,〉ヾ、;,ゝ. 〈仁∪=0=iJ⊂)゙ノリ /__Å_ゝ / |;|_ ヾ''
|-/|-| んレ';_!_リゝ ’".(_ノノ=/|=l Lヽ_ゞ. i.__ゞ. し'.!_ノ ~じじ~´ +
 ̄  ̄ +  ̄  ̄ し'`J じヽ.) love
hosyu
>1さん超乙!
昨日からホスト規制にひっかかって書き込みすらできなかったんだよ。
今も携帯からだし。
保守代わりにプチネタ置いて行きます。
「今日は『着せ替えみーちゃん』で遊んでみようと思います」
「エイトったら…またそういうこと。どうしてそんなことばっかり思い付くの」
「ミーティアがいかに可愛くて素敵かってことを知ってもらいたくて」
「もう、そんなこと他の人に知ってもらわなくてもいいの。エイト一人で充分なの。分かった?」
「そっか…じゃせっかく探してきたこれも無駄になっちゃうんだな…」
「なあに?」
つ【危ないビスチェ】
「エイト、それゼシカさんのものでしょ?返してきなさい!」
「違うよ。これはまたメダル集めて貰ってきたんだ」
「そ、それだったらいいかしら」
「じゃ、はい、これ着て」
「えっ、そんなこと言ってないわ」
「言ったでしょ、『それならいい』って」
「違うわ、そんなこと…」
「あーあ、苦労したのに水の泡か…一回死にかけたのにな…」
「…分かったわ。着るわ」
「やった!」
「ちゃんとあっち向いていてね。振り返ったら怒るわよ」
「はいはい(怒り顔もかわいいんだけどね)」
ごそごそ
「んっ?紐が絡まってしまったわ…」
ごそごそ
「うーん、胸元が…集めてみたら何とかなるかしら?」
(ドキドキ…)
ごそごそ
「………」
「いい?ミーティア?」
「あっ、エイト、まだ見ちゃ…」
「あっ…………ぶっ」
「エイト?エイト?…そんなにひどかったのかしら…」
(返事がない、鼻血を出して気絶しているようだ)
>1-6
烈しく乙です!
>>1 乙です!
そしてバカポーネタ(・∀・)イイ!
主姫スレもついに4か…。
そして8が発売されてからもうちょっとで1周年。
職人さん方の記念SSをこっそり楽しみにしております。
ところで前スレはどうするの?
>エイト、それゼシカさんのものでしょ?返してきなさい!
姫ずれてるよ姫w
そこがみーたんらしいといえばらしいんだけどさ。
保守。
ネタ的に時期外れになっちゃったんですが、お一つドゾー。
今夜はトロデーンの仮面舞踏会だ。と言っても最近は単に仮装して楽しもう、という感じなん
だけどね。
せっかくだし僕たちも仮装を、と思ったんだけど
「奇抜な格好では下々の者に示しがつきません」
とお付きの方々に止められてしまった。本当はミーティアにレティシアの人の服を着て貰おう
と思っていたのに…仕方ないので二人で仮面だけ着けて庭に出る。
トロデーン城の庭はもう、着飾った人々で一杯だ。ドレスに仮面を着けた貴婦人もいれば、何
だか怪し気な仮装の人もいる。あっちにいるのはデスセイレスだな…あっ、あれ、ゼシカだ!
「あっ、気付かれちゃった」
そう言ってぺろりと舌を出す。
「お化粧頑張ったんだけどな」
「でもすごいわ。こだわっていて、とてもいいと思うわ」
「ええ、結構苦労したのよ。ほら、あのモンスターって海の上でしか遭えないでしょ?うちの
定期船に毎日乗って、目を皿にして海を見続けたわよ」
「それは大変だったね」
「全くよ。時々船員は誘惑されちゃうし。そう言えばエイ…」
「あっ、ゼシカ、あっちにキングスライムがいるよ!」
実際キングスライムの格好をした人がいたんだけど、本当は話がまずい方向へ逸れて行きそう
だったから。あまり大きな声じゃ言えないよな、戦闘中に誘惑されたなんて。
「あれ、もしかしたらヤンガスなんじゃない?」
「そうかも。おーい、ヤンガス!」
手を振るとちゃんとぼよんぼよんと弾みながらこちらへやってくる。
「うわー、よくできているなあ」
青いぷよんぷよんの身体を再現しているのはもちろん、頭に乗っているのは本物のスライムの
冠だ。
「いやー、苦労したでがす。こんなに苦労したのはついキングアックス作ってしまった時以来
でげすよ」
そうそう、つい好奇心で適当に材料ほうり込んで錬金したのはいいけれど、その直後店で売ら
れているのを見て、激しく落ち込んだんだっけ。
「すごいわ」
「うん、本当にすごいよ」
「兄貴にそう言っていただけると苦労した甲斐もあったってもんでげす」
ヤンガスも嬉しそうだ。
「エイト、ちょっと」
ゼシカがあまり指差したくなさそうにしつつも指し示す先に見覚えある人影がある。仮面で顔
を隠しているものの、みんながドレスや礼服なのにその人だけ鎧だ…あっ、あの形はもしや!
「よう」
やっぱり。ファントムマスクにダンシングメイルのククールだ。
「なんっつーかこう、もっといい仮装すりゃいいのに」
「これが一番落ち着くんだよ。それにいいだろ?これ仮面だし」
ああククール、僕が悪かった。最後の最後までその格好させてて。
「おっ、ゼシカもしやそれは!?ぜ、是非オレにぱふぱ…」
「ラリホー」
「むにゃむにゃ…」
一瞬でも可哀想とか思わなければよかった。よく考えたらあいつ、本当に嫌だったら絶対着な
いし。不格好な鎧なんてどんなに性能良くても拒否してたっけ。
とりあえずこんな場所で寝ていると邪魔になるな。隅の方へ引き摺っていって城壁に立て掛け
てやっているとあちらで巨大な影が立ち上がった。
「うわっ、竜だ!」
「すごい、よくできているなあ」
「何人か組んでやっているんだろうなあ」
客は皆、仮装だと思って呑気ににしている。でもあれは本物だ。あんなことするのは一人しか
いない。
「お祖父さん!」
急いで傍に行き、小声で注意した。
「人界でその姿になったらまずいんじゃなかった?竜神王様に怒られるよ」
竜はこちらを見て明らかに笑い(でも普通の人が見たら吠えようとしているように見えただろ
う)、空に向かってピンク色の炎を吐いた。
「おおっ、すごい!中に魔法使いが入っているのか?」
「ピンク色の炎なんて初めて見ましたわ」
周りはやんやの大喝采だ。それに気を良くしたのか、色んな色の炎を吐いて見せる。でもその
強さときたらゼシカが気合を溜めて打ったベギラゴンにも匹敵しそうな勢いだ。最後に「ふう」
と鼻息を出すと、それはハート形の煙となって夜空へ消えて行った。
拍手喝采の中、僕は竜と目が合ったような気がした。僕と同じ茶色がかった黒い眼だった。そ
の中に少し寂しそうな光が見えたような気がしたんだけど、すぐ翼を広げ飛んで行ってしまっ
たのだった。
「あれ、グルーノさんよね」
「何だか色んな芸をしてくれたでげすなあ」
「でもよかったのかしら…人と関わってはいけない、って聞いたわ。だってそれで…」
ミーティアの疑問はもっともだ。それで僕の両親は引き離されたのだから。
「そうだよね、それに何がしたかったんだろう。今度里に行った時にそれとなく聞いてみるよ」
「ええ、そうね」
「むにゃ生ぱふ…はっ、オレとしたことが!ところで何で皆盛り上がっているんだ?」
漸くククールが目を覚ます。
※ ※ ※
「ん?ワシゃずっと里におったぞ」
あれからしばらくして竜神族の里に二人で行った。早速祖父を問いつめたんだけど…
「大体何じゃ、そんな楽しそうなことがあったとは。呼んでくれればよかったのに」
と拗ねられてしまった。
「ごめんなさい…」
「じゃああれは誰だったのかしら」
「里の者でもないぞ。その日は皆おったでな」
「作り物だったのかなあ。それにしてはよくできていたし」
「火を吐いたり空を飛んだりしたんじゃろ。それができる呪文の使い手なんぞそうそうおらん
ぞ。ほれ、お前さんと一緒に旅していたナイスバディーのお嬢さん、あの子が使う呪文くらい
の威力があったんじゃろ」
そうだよなあ、あれくらい威力のある呪文を操れるのはゼシカぐらいだよなあ。それに彼女に
したって炎の色は橙色一色だったし。
「じゃあ一体誰が…」
「まさか…」
ずっと黙って僕たちの会話を聞いていたミーティアが急に口を開いたのでびっくりした。
「何?どうしたの?」
「ううん、大したことではないの。ただ、あの宴って元々は亡くなった人々の魂が戻って来る
日だから、さり気なく紛れ込めるように皆仮装してお祭り騒ぎしましょう、っていうことだっ
たから。だから、もしかして…」
「…」
「…」
僕と祖父は顔を見合わせる。
「じゃああれは…」
「…そうじゃ」
何か思い出したのか、ぽんと手を打つ。
「色んな色の炎を吐く者を知っておった」
「『知っておった』?」
「そうじゃ。懐かしいのお。一番最初に竜に変化した時、あれは口から出た青と橙の炎に驚い
て、すとんと転びおった…」
懐かしさに目を細める。
「…そうだったんだ」
その人はきっと、僕にとっても大切な人。
「じゃあ僕たち、そろそろ行くよ。お墓にも寄りたいし」
「うむ。またおいで。おいしいチーズを用意しておくからの」
「はい」
「はい」
挨拶して外に出た。里には緑が戻り始めている。元の姿を取り戻すのももうすぐだろう。僕の
母さん─母上が子供だった頃のような里の姿を。
(終)
トロデーン版お盆のお話にホロリと来ました(ノД`)
デスセイレスの仮装で生ぱふぱふ…。ククールなんて恐ろしいことを。
お盆キター
そういやキリスト教では11月が日本のお盆にあたるんだっけ?
感想どうもありがとうございました。
本当はハロウィンネタで書いていたんですが、間に合いませんでした…
実際ハロウィンに仮装するのはみーたんに話させた理由から、らしいですね。
前スレから見始めたけど面白かった。最後の方の子供時代のがとても良かった。
私も何か書こうかなと思ったけど話を忘れてしまった。
色んな書き手さんの作品が読めるようになればいいなぁ。
SSも読みたいけど、主姫好きさんたちと萌え語りもしたいなあ。
>22
ネタを振ってみるんだ!
決定的に主姫萌えになったのはどんなエピソード?
個人的には鳥Get後の「疲れてはいませんか〜」がすごく好きだ。
ここのSS読んでるとなぜか無性にDQ8をやりたくなってくるんだが・・・
ゲーム自体に主姫をにおわせる会話が少ないのが残念だ
じゅうぶん主姫だと思ったが
少なくとも姫→主だし
水飲ませた後の少ない時間で必死に語ろうとする姫様萌え
馬姫にも萌えるようになった俺は末期症状ですか
主→姫が最後しかないからな〜
主人公が動かないのはDQの伝統だから仕方ないのだけど・・・
だからまとめサイトで脳内保管しまくりですよ
主姫萌えのきっかけか…。
トロデーン城で「ある貴族の日記」を読んで、主姫の可能性に
気付いた時、かな。
「そうか、主人公は姫に気に入られてるのかー」って、嬉しくなった
のを憶えている。
「姫と王子」よりも主従関係にある恋、っていうシチュが好きなんだよね。特に姫と姫に仕える騎士。エイトの場合、両方に該当するけど。
自分も主従関係に萌える。
だから真EDより通常EDで、その後をいろいろ妄想するのが好き。
主姫萌えになったのは、初めて泉でみーたんの姿を見たときかなあ…。
ひとめぼれだったv
1日以上書き込みがない・・・・・・テラサミシス
遅ればせながら決定的に主姫萌えになったエピソード。
サザンビークに到着した時だった。
宿屋のおばあさんのお話を聞いた後、
城に行ったらクラビウス王が立ち上がって
「お、お前は…!」
この瞬間、本当の運命の人 キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
ちなみに泉には未到達だったので、姫への期待感は鰻登りですた。
おつまみドゾー
漸く図書館に辿り着いた。
思えばあの夜、あの方と…ミーティアと別れた後に図書館横の扉から中に入って、内側から鍵
を掛けてしまったのが苦労の元だった。あんなことしなければ苦もなくここに入ることができ
たのに。でもあれは、きっと自分の心の疚しさからきた行為。後ろ手に鍵を下ろしながら、あ
の時の僕は踏み入ってはならない領域へ入りかけたことに戦いていた。今まですっかり忘れて
いたけど、今こうして本棚の間を通るとあの時の感覚が甦る。
それにしてもここに来るまでが大変だった。城内を確認しようとあちこち寄り道したのもある
けど、崩れた柱や倒れた彫像で通路は塞がれ、絡み付く茨によってあちこちの扉は固く閉ざさ
れていて回り道を余儀無くされる。十年もこの城にいた筈だったのに、まるで初めて入る迷宮
のようだった。
「兄貴、大丈夫でがすか?」
ヤンガスが心配して声を掛けてくれた。
「うん。ただ、あまりにも感じが変わってしまっててさ…」
「そうよね…」
背後で呟いたのはゼシカだ。
「ああ、ここに来ること自体は初めてよ。でもお父様から聞いていたの。トロデーン城は千年
以上もこの地にそびえ立ち、優雅で華麗な姿をしておりながら威容を示し続けているって」
「よく知っているね」
「アルバート家はトロデーンから封土を賜っている、ということになっているから。トロデ王
が即位した時はお父様も封土の儀式のためにここに来たらしいわ」
「それが一瞬でこれか」
「…うん」
ククールの言葉に頷く。
「許せねえ…許せねえでげす!兄貴のお家をこんなにするなんて!」
「こりゃ、ここはワシの城じゃぞ!」
あちらでヤンガスと王様が口喧嘩している。でも言われるまでもない。この旅は城の全てを元
通りにするために始まった。それが例えこの大きな城を一瞬のうちに廃虚となさしめるような
強大な魔力の持ち主と対峙することであったとしても。でも倒しさえすれば呪いは解ける。こ
の城も、あの方も、皆元に戻すことができる。ドルマゲスに呪いを解く意志がないのならその
一命を以て償わせるまで。そのために僕たちはここに戻ってきたんだ。感傷に浸ってはいられ
ない。
意識を本棚の方に向ける。トロデーンは錬金に力を入れており、特に先代トロデーン王は名人
だったとかで図書館の蔵書もその関係のものが多い。
「おっ、この本懐かしいな」
ククールが一冊の本を手に取った。
「オレの記憶が間違っていなければ、マイエラの写字室で作られたもんだぜ、これ」
「へえ、そうなんだ」
「お布施以外の収入では写本が一番実入りがよかったからな。写字は修行の一環で僧侶がやっ
てて雇わなくてもいいだろ?絵の描ける奴や、古代語から現代語への翻訳ができる奴もいたし。
製本もやっていたんだ」
そうだよなあ、一字一字人の手で写していくしかないんだよなあ。そう思うとかつてミーティ
アと一緒に本の余白に落書きしてしまったこと、申し訳ない。
「それにしてもたくさんあるのね。これは探すのも大変だわ」
「あるとしたら旅行記とか地誌の棚かな。あ、でも…」
と僕は図書館入り口─今は茨によって破壊されている─の方を見た。
「あそこにあったらどうしよう」
そこはかつて、前に司書が座って厳しく貸し出しが制限されていた禁書の棚。ずっと昔、
「おもしろそうな題の本があるな」
と何の気無しに司書さんに頼んで取って貰おうとしたら、
「えー、うぉっふぉん、その本の貸し出しは禁じられておる」
と眼鏡の奥からじろりと睨まれてしまった。
「んじゃ、こっちは?」
僕も負けずに食い下がったんだけど、
「そっちもまだ駄目じゃ。難し過ぎる」
「辞書を引きながら読むよ」
「字が難しいのではない。内容が難しいのじゃ。お前さんの頭はそこまで理解できる程成長し
ておらん。そんなことよりほれ、外で遊んでおいで」
と追い払われてしまった。あの後、兵士になる訓練を受け始めて本をじっくり読む暇なんてま
すますなくなっていったから、すっかり忘れていた。
それにしてもあの本棚はカウンターの周りに倒れ込んだ柱や絡み付く茨で、今もなお僕たちの
接近を拒んでいる。
「どれどれ」
ククールがそう言ってカウンター越しに本棚を覗き込んだ。
「…『反魂術のすべて』あー、こりゃ確かに禁書モノだな。その隣は…『黒死病、その猛威』
必要以上に挿し絵がグロかったな。…『教会史』ん?何でだろう?弾圧されていた時代の記述
がまずかったのかな。それと…ぷぷぷっ、『愛の宴』あー、名高い詩人の手によるエロ詩集か」
「あんた随分片寄った読書をしていたのね」
一々題を読み上げて内容をかいつまんで話してくれるククールにゼシカが呆れたような声を出
す。
「修道院は依頼さえあればどんな本でも写していたからな。ま、一応見習いにある者はそういっ
た類の物は読んではいかん、とは言われていたけど、実際は読み放題だったし」
成る程、そういう理由があったのか。
「『異端審問』そりゃそうだ。『長寿の秘訣』あのぶっとんだ方法で若さを保つやつか。未だ
かつて成功した話を聞かないアレだな」
「一人で納得してるとは人が悪いぜ」
「ああ、ヤンガスならいいか。…ごにょごにょ…」
「…ハレンチでがす!ハレンチでがすよ!」
「そう怒るなって。文句は書いた奴に言ってくれ。んでその隣はと…ああ、何っつーか恋愛物
だな」
「あら、きっと素敵なロマンスよ」
「いーや、夢を打ち砕いて悪いが、目の毒、耳の毒な話だぜ。さすがのオレでも口にするのも
憚られる」
「…」
それは禁書かも。でも何でこんな本まであるんだか。
「歴史のある場所だとどうしても自然に溜ってくるもんだしな。さて、後は…まあそういった
話とか黒魔術関連の話だ、な。…ん?」
「何かあった?」
「いや…解剖学の本があったから。あれは別にまずくないだろうと思ってさ。医者にとっては
必要なものだろうに」
「そうだよね。…まあいいや、ありがとう、ククール。じゃ、きっと他の棚だね」
「薄暗くなってきたし、早く探しましょう」
随分ここの本を読んだと思っていたけど、まだまだ読んでない本があったんだな。しかし口に
出すのも憚られるってどんな内容なんだろう。
「エイト、にやにやしとらんでさっさと探さんかい」
…集中、集中っと。
探していた本までは後少しだった。
(終)
ぬわーっ!題とトリ忘れてた!
名前欄の通りです。すみません。
ぬわーっ!・・・って5主・・・
何はともあれGJ
主姫分が薄くてもこういうのも好きだ
感想どうもありがとうございました。
そしてまた投下…何か降りてきたようです。
やっと馬姫様と馬車をゲルダのやつから取り返して、あっしらはパルミドに戻ってきやした。
ドルマゲスの野郎の行方はさっぱり分からねえし、ここは一つ情報屋のダンナの力を借りよう
と思ったんでげす。
「ワシは外で待っておるからな」
トロデのおっさんはすっかりこの街の心証を悪くしちまって、街の中には入りやせんでした。
注意さえしていりゃあそんなに悪い街でもないんでがすがねえ。でも仕方ないと言えば仕方ね
えでがす。おまけにククールの野郎、これ見よがしに身体を掻きむしりやがる。あっしには妙
に小綺麗なところよりよっぽど落ち着くんっでがすがねえ。
やっと情報屋のダンナを捕まえて、ドルマゲスの野郎の情報を手に入れたんでがすが、そこで
とっぷりと日が暮れてしまいやした。新しい情報に新たな意欲を掻き立てられたのか、街の外
で待つおっさんと馬姫様が気になるのか、兄貴はすぐに出発しようとしたんでがす。夜の旅は
危険だというのに。
「ちょ、ちょっと待て。今日は一日、あの洞窟からここまで歩き詰めでオレはもうへとへとだ
ぜ。今夜はもう、休んだ方がよくないか?」
最初に異議を唱えたのはククールでげした。あいつの回復呪文にはしょっちゅう助けられてい
るんでがすが、正直ひ弱なやつだと思うことがあるでがす。
「何寝ぼけたことを言ってんのよ。ドルマゲスは西の大陸に行ったんでしょ?だったらこんな
ところでぐずぐずしている暇はないわ。追い掛けるのよ」
ゼシカの姉ちゃんはこんな時も元気でがす。最初は生意気なだけのあまっこだと思っていたん
でがすが、時には野宿もある長旅なのに愚痴の一つも言わないで付いて来るのには感心してい
るでがすよ。
あっしはと言えば休みたかったでがす。ずっと野宿が続いていやしたし、たまにはちゃんとし
た寝床で休みたかったんでげすよ。でも兄貴が「出発だ」と言えば一にも二にもなく従うつも
りでいやした。
「…そうだね」
兄貴はあっしらの顔をぐるりと見回したでげす。
「今日はここで宿を取ろう。疲れたままで旅をすれば、事故の元だし」
威勢のいいことを言うゼシカの姉ちゃんも含め、あっしらは疲れ切っていやした。兄貴は特に
先頭に立っていたんで装備も綻んですっかりくたびれた様子だったんでがす。
「じゃ、宿を取ってくる。ヤンガス、すまないけど酒を買ってきてくれないか」
でも決してそれを表に出さないんでがすよ。いつも率先してあっしらの為に宿を取ったり武器
屋や防具屋を巡って新しい装備を整えたりしてくれんでがす。おまけに宿を取ったら酒を持っ
て街の外で待っているおっさんと馬姫様のお相手までして…頭が下がるでげすよ。
※ ※ ※
宿の部屋に通されると、もうさっしらはバッタンキューでげした。兄貴も意外に早く部屋に戻っ
てきたんでがすが、寝床に倒れ込んだかと思うともう熟睡状態でげした。
ああ、こりゃ今夜は兄貴もゆっくり休めるでがす、と安心してあっしも眠りに就いたんでがす。
が、明け方、小用で目を覚ましたら隣の寝床で寝ている筈の兄貴がいねえではありやせんか。
おまけに錬金で作ったとかいう新しい槍も消えていたんでがす。
慌てて探したんでがすが、すぐに見つかりやした。うっすら白む夜空の下、兄貴は宿のテラス
に出ていたんでがす。
「兄貴…どうしたんでがす」
「あ、ヤンガス。ごめん、起こしちゃった?」
あっしの声に振り返った兄貴の手には新しい槍が握られていやした。ずっと稽古をしていたの
か、かいた汗が湯気のように白く立ち上っていたでがす。
「休める時に休まねえと身体に毒でげすよ。槍の稽古なんざいつでもできるじゃねえでがすか」
「そうだね」
あっしの言葉に兄貴はちょっと笑ったようでがす。息が白く吐き出されやした。
「でも練習しておかないと実戦で使えないだろう?」
「で、でも兄貴、ちゃんと槍を扱っているじゃねえでがすか。何も今更練習しなくたって」
あっしは何とか休ませようと食い下がったんでがす。
「うん。まあ一対一なら何とかなるんだけどさ、ほら、洞窟でマミーの群れに囲まれたことが
あっただろ?」
「ああ、あったでげすな。あの時は正直きつかったでがす」
「あの時思ったんだ。槍で複数の敵を倒す方法はないかって。ブーメランに持ち替える暇もな
かったりするし」
「そうだったんでがすか…」
確かに兄貴は槍を水平に薙ぎ払うような動作を繰り返していたんでがす。でも槍の重さに体勢
を崩してよろけたり槍を飛ばしてしまったりしていやした。
「兄貴ならいつか必ずできるようになるでげすよ。だから今は休んだ方が…」
「うん。でもちゃんと練習しておかないと急には実戦で使えないよ」
「そんなもんでがすかねえ」
日が昇り始め、兄貴の髪に光が当たって茶色く透けていやした。
「昔、ある方に言われたんだ。『どんなに練習しても全然弾けないフレーズがあっても、ある
日突然弾けるようになることがあるの』って」
「へえ…」
「でもそれは毎日練習を積み重ねているから起こることで、何もしないではいつまでも絶対に
できないのよ、っておっしゃっていたんだ」
…誰がそう言ったのか分かったような気がしたでげす。兄貴が敬語を使うのはあの二人だけで
がした。そして特定の人の話題の時だけとても優しい顔をするんでがすよ。そう、今も優しい
顔をしているでがす。
「…ああ、夜も明けちゃったね。戻ろうか」
照れ隠しなのかそうやって別の話題を振るのも、いつものことでがした。
「そうでがすね。そうそう、牢獄亭の朝食は結構いけるでがす。トロデのおっさんにも持って
行ってやりやしょう」
「そうなんだ。きっと冷えていらっしゃるから喜ばれると思うよ。一眠りしたら僕たちも出発
しよう」
「合点でげす」
やっぱりこの人を兄貴と仰いで正解でげした。常に鍛練を怠らない、さすがエイトの兄貴でが
す。
それにしても兄貴にそんな顔をさせるなんて、どんなご面相なんでがしょうねえ。おっさんは
「ワシに似て美しい姫じゃ」
なんて言ってやしたが、あんな魔物の面じゃあ想像もつかねえでがすよ。
ま、ドルマゲスの野郎をぶちのめせばはっきりすることでがす。追い掛けるでがすよ!
(終)
出遅れているうちに2作も来てたー!
禁書:修道院で写本という着眼点が面白かったです。
もっとおどろおどろしい「禁書」を想像していたのに、オチが(・∀・)イイ!!
新たなる技を求めて:こういう日々の鍛錬が、レベルアップに繋がるわけですな。
エイトの顔が優しいと思うヤンガスもきっと優しい顔をしているんだろうな、
と思わせてくれる心温まる短編でした。
早速の感想どうもありがとうございます。
「禁書」の元ネタは薔薇の名前だったり(写字室の話とか読んではいけない本とか)。
さすがにあんなやばい本は置きたくなかったのとちょっと後々のためにああいう話にいたしました。
それにしても誤字が…本当に申し訳ありません。
何か降りて来ているのはいいけど誤字はまずいですね。
気をつけます。
GJ!
今回も乙です
>>45 新作GJでした
>「ワシに似て美しい姫じゃ」
いや、トロデ似てないからwwww
トロデの奥方が気になる今日この頃・・・・・
てか、こうトロデが言った時にエイトはどう思うのかが知りたいww
>47
確かにみーママは気になる。
アスカンタのイベント時に「妃は美しく賢い女性じゃった」みたいなことを言っているんだよね。
みーたんにも似ているとも。←多分こっちが本当に似ている方
でもみーたんの話には全く出て来ない。
前スレでも色々考察されていたけど謎だよなあ。
1、ミーティアが覚えてないほど幼い頃に亡くなった
2、ミーティアが生まれた時に亡くなった
どちらかなんだろうけど、お祖母さんのことは覚えているから
お祖母さんよりもミーティアの母の方が先に亡くなった可能性は高いよね。
お祖母さんの容姿についての言及って何かあったかな。
でも多分美人だろう(w トロデは父親似なのだろうか。
だとしたら恐らくは男前だったであろうクラビウスの父親との結婚を諦めて
トロデ似の夫と結婚するのは辛かったかもしれない。
ところで、ミーティアの祖母は王女だったのだろうか?だとするとトロデの前は女系?
>49
>お祖母さんの容姿についての言及って何かあったかな。
なかったとオモ。
ずっと前どこかのスレで色々考察していたけど、
ミーティアの祖母が実はトロデ似、エルトリオ&クラビウスの父がチャゴス似、っつーのがあったw
つまりトロデ顔の姫様とチャゴス顔の王子様のラブロマンスw
ま、みーたんに似ているかどうかは別として美人だったという方が絵面はいいよな。
サザンビーク王子の方はエルトリオ似・クラビウス似の好みの方で。
>ところで、ミーティアの祖母は王女だったのだろうか?だとするとトロデの前は女系?
サザンビークの宿で聞ける話「先代の王がトロデーンの姫と恋に落ちて云々」と、
泉で聞けるみーたんの話「お祖母様は叶わなかった恋を悲しんで云々」
から総合してそうじゃないかと思ってた。
婿貰って王位継承したんじゃないかと。
でもその相手がトロデ似のチンチクリンだったら…生まれた子供もアレだし…
結婚して子供をもうけるのが王族の国事行為とは言え納得いかなかったかも。
そういえば妻のことは言っていても、トロデ王が母親のことに言及していた覚えはないな。
孫娘を授かったからって早速サザンビークに嫁にやるような約束をする母親なので
最後までちんちくりんな夫を愛することが出来ず、その夫にそっくりなトロデにも
あまり愛情を感じていなかったのかもしれない。
チャゴスを嫌いながらも結婚式の日までやっぱりやめたと言い出せなかったのは
ミーティアをサザンビークへ嫁にやると決まり喜んでくれた母の思いを裏切ることで
母の自分への最後の愛情を失ってしまうような、そんな気がしていたのでは、、、
なんて考えたらちょっと切なくなってしまった。
そろそろDQ8が発売されて一年経つ訳だが、小説はいつ頃出るんだろう・・・。
そもそも小説出るのか分からんけど、いつまでもシークレット扱いのみーたんが公式もので見たいんだよー(ノД`)
でもさ、パルプンテな事が起こりえるから。小説は。
主姫じゃなかったらヤダ
パルプンテか…
「とてつもなく恐ろしいもの」だったらとてつもなく嫌だ。
昔DQ2のシドー戦でローレとサマル棺桶、ムーン黄色字の大ピンチに唱えて全員完全復活、
ってことがあったっけ。
そういうんだったらいいw
ゲームでは普通に主姫だったんだと思うんだけど、その主姫を覆してまでパルプンテなことが起こりえるかな・・・。
でも、確かに現にパルプンテなこともあったから何だか怖くなってきた・・・orz
パルプンテはんたーい
そういうことは小説が出ると決まってから心配すればいいんじゃないのか。
ゲーム内で確定鉄板カプを、小説でわざわざ壊すとは思えないけど…。
>>57はDQ小説の黒歴史の数々を甘く見ている!
カプ覆しまでいかなくても、わざわざ姫を嫌な女にしたり
断じて恋愛じゃないただの主従関係の延長って強調したりする可能性だってあるよ。
個人的には下手に変な捏造しちゃう人に書かせるくらいなら出さなくていいってくらい
DQ関係の小説にはロクな思い出がないや。
だよな…。鉄板が崩される事もあるし、ありえないカプ作られたりもするから恐い。
……崩された鉄板カプって何よ?
なんだかねえ・・・
t4re
>>63 DQ6に鉄板カプなんてあったっけか?
てか、DQ2〜3、6〜7の場合、パーティの誰と誰がくっついてもくっつかなくても、鉄板崩れにはならんやん。
それに小説版でも、明確にくっついてるカプなんぞ皆無のような。
(あとがきでごちゃごちゃ書いてるがあんなの無視して結構。編集つきの商業の作品は作品だけ見なさい)。
だいたい、あれで黒歴史なんて言ってたらガンダムの小説版なんて読めません(しかもあっちは作った当人が書いてたりするから始末に悪い)。
小説版というのは、ゲーム本編とか漫画とかで描写できないものとかを書くことに意義があるから、どうしても印象が違ってくる。
コツコツ忠実に活字にしたって面白くもなんともない。そのくらいならWEB作家にだってできる。
その作家の持ち味や発想、補足や裏、取捨選択が加味されてないと。
新書版DQ7小説のラストにもあるでしょ。「本作品は上記原作をもとにつくられたオリジナルストーリーです。」って。
ま、オリジナルの度合いによって「原作厨」が暴れ出すわけだけど。
いくらなんでも主姫が崩れることは無いと思いますがね。
「むりやり恋愛譚にしてみました」的なカプと違って、ストーリー的に一本貫いてるものなんだから。
というより……DQ8書くのか誰か?次の日曜で1周年なのにそんな話まるで出てこないわけだが。スクエニ出版部今年赤字だからなあ。
あのストーリーとキャラクターはどう書いたって思いっきりラノベになる(1〜7の比じゃない)から偉い先生も呼べないし……。
とにかくスクエニに頼みたいのは、出すなら上製本でなく最初から新書版か文庫版で、挿絵満載で出してくれってことだ。
その挿絵を誰が描いたかでさらに一悶着ありそうだが……。
ドラクエに限らず、ゲームノベライズには地雷が多いんだよな。
>コツコツ忠実に活字にしたって面白くもなんともない。そのくらいならWEB作家にだってできる。
>その作家の持ち味や発想、補足や裏、取捨選択が加味されてないと。
その通りなんだけど、そこがあんまり面白くないというか、捏造に感じられちゃう部分でもあるんだよね。
ゲームで描かれている世界を理解しつくして、厚味のある裏づけをしてくれるような神小説には
巡りあった事がない。
どこの同人作家の二次創作だよそれ、と呆れる作品が多すぎて、やたらと手を出すのもはばかれる。
それでも8の小説が出れば買ってしまうんだろうけど、出そうな気配もないし期待はしていない。
姫の姿は公式メディアで見たいが、漫画版DQ7みたいに変なカプ捏造されるようなら、このままでいいような気もする。
正直、ノベライズは全然楽しみじゃない。
作家の持ち味とやらが主姫でない方向に向いていく予測ばかり立ってしまう。
ハーレム状態で主人公男にもモテモテに
そんな8イヤン
なんでミーティアたんの萌えスレがないの?
昔はあったよ。
清楚カワイイだっけか
主人公のほうが年上なんだよな。
エルトリオが死んだのが20年前だから19〜20歳。
見えね〜
童顔やね
そうかな〜?
泉での話で「同い年」って聞いたような気がするんだけど。
童顔なのは同意だw
多分真EDで結婚するから日本での話に合わせたんじゃないかって気がする。
>エルトリオが死んだのが20年前
これってどこかではっきり分かるセリフがあったんだっけ…?
そして「同い年」という話はアテにならないと思われ。
(城に来た時の本当の年齢は不明なため)
しかし、そういやそうだなぁ。
日本の法律で男も16歳から結婚出来るんだったら
主人公とミーティアの年齢は16歳になっていただろうね。
>>73 はじめて竜神の里にいったとき
「そういや前に人間見たのは20年前だったな
そいつ見つけたときにはもう死んでたけど」みたいな話をする里の人がいる
「日本での話に合わせた」って、北米版でのネタなの?>主の年齢。
あの顔で20代なのかー!
いつの間にか姫と同い年だと思い込んでいたけど、
主人公は小さい時の記憶がないわけだから、
自分の年齢も知らないはずなんだよね。
姫よりも2つ3つ年上なのが萌えるので個人的には嬉しい。
ごめん…リロードすれば良かったorz
>>74 ありがとん。
>>76 乙w
自分も意味が分からなくて30秒くらい考えちゃったよ。
ついでに泉での会話で
「主人公はミーティアにとってはお兄様のような存在」
なんて言われるのもある。
黒犬倒して煉獄島にブチこまれる前に
錬金狙いで海辺の教会〜泉を往復しまくってたら聞けた。
日本では女性16歳、男性18歳から婚姻可能。
いわゆる中世的な考え方だとみーたん18歳で初婚は行き遅れに近いよ。
マリー・アントワネットが結婚したのは14歳だった筈。
しかしエイトの年齢も謎だよね。
てっきりみーたんと同い年だと思ってた。
竜神族の妊娠期間が人と同じとは限らないという理由で。
神仙の妊娠期間は三年半っつー話をどこかで聞いたことあったし。
あのほっそり体形のウィニアさんが数ヵ月も妊娠に気付かなかったのはそのせいだ!と。
すまん、もたもたしてたら話題に合わなくなってしまったorz
申し訳ない。
行き遅れって…そりゃあんまりヒドス(´・ω・`)
確かに昔の人は結婚早かったかもしれないけど。
自分は通常ED派だから、結婚はあんな唐突じゃない方が良かったな。
じっくり愛を育てて、2年後くらいにみんなに祝福されて〜てな展開が
いいなー。でもそうしたら、みーたんは完全に行き遅れ…(つД`)
結婚なんて形式に過ぎんよ。
大丈夫だ、エイトがいるじゃないか。
つーかその気満々だと思うw
みーたんみーみーしすぎ
フィクション世界の主人公はヒロインより年上、つうのが個人的に理想なので
エイトが年上なら最高
今日はDQ8発売一周年前夜だ!
っつーことでお土産ドゾー
「よくお休みになられますよう」
メイドさんたちは私にそう言ってくれる。この頃は特にそう。でも毎朝毎朝、身支度のために
鏡の前に座る度、その言葉の空しさを感じずにはいられない。
もうずっと、眠りが私の元を訪れることはなかった。泣いてはいけないと思うから、床の中で
涙が零れそうになる度、ピアノを弾く。言葉にしてはならない想いならば、せめて音に託そう
と。
もう何年もピアノが私の言葉代わりだった。人に知られてはならない想いならば、想いを音に
溶かして解き放つしかない。心の奥底に降り積もった想いが澱んで変質してしまう前に。そう
いう曲想なのだと言えばいくらでも言い逃れできるのだから。
身を起こすと寝台の帳をそっと持ち上げて滑り下り、枕辺に置かれたガウンを羽織る。暖炉の
火はもう熾きになって部屋の中は大分寒くなっていた。音を立てないように隣室へ行き─これ
からピアノを弾こうというのにどうしてこんなに他の音を立てないように神経を遣っているの
か分からなかったけれど─ピアノの蓋を開けた。
カーテンの隙間から溢れる月の光で部屋は真っ暗ではなかった。でも暗くても何の不自由もな
い。何年も弾き続けた楽器、目を瞑ってだって弾ける。
指を鍵盤に乗せ、音を発した。夜の静寂に予想以上に響いて身震いする。思わず自分の想いを
叫んでしまったような気がして。
エイト、会いたい。一緒にいたい。どうして私を避けるの。もうすぐ私たちは大海を隔てて離
れ離れになってしまうのに、と。
弱音ペダルを踏んで辺りを憚りつつも、想いは真直ぐエイトの心に向かっていた。せめて今だ
けエイトへの想いを歌わせて。
いつか私がこの国に帰ってくるその日にはもう、想いを歌うこともできないのだから。何年先
のことか分からないけれど、あなたはきっと、他の誰かと結婚して幸せに暮らしている筈。私
は玉座からあなたを遠く眺めるしかないの。
何て悲しい音。泣いているみたい。これでは他の人に知られてしまいそう。誰かに恋してはな
らない、結婚しているも同然の身なのだから、と思ってずっと自分の心を抑え付けてきたけれ
ど、あなたに向かって想いが駆け出して行くのを止められない。ならばせめて、表には出すま
いとしていたのに。
エイト。
エイト。
大好きなエイト。
ただ名前を想うだけなのにどうして涙が零れるの。誰かに恋するって楽しくて幸せな気持ちに
なるものだと思っていたのに。あなたを想うと胸が締め付けられそうに苦しくて泣いてしまい
そうになるのはなぜ?
こんなことでいいのかしら。大海に遠く隔てられてしまったら、エイトと繋がる切れそうに細
い何かが切れて私の心を形作るものが壊れてしまうに違いないわ。
逢いたいの。傍にいたいの。多くは望まない、ただお散歩の時のようにちょっと離れたところ
を歩くエイトの足音を聴くだけでいいの。それだけなのに。
その日が来てしまったら、私の心はどうなってしまうの…
※ ※ ※
ずっと夜勤が続いている。でもそれは僕自身が望んだことだ。それにどうせ夜になっても眠れ
はしないし。
昼勤なら必ずあの方の警護をすることになってしまう。それだけは避けたかった。こうなって
しまった今、あの方の─ミーティアの側にいることが苦しい。他人のものも同然のミーティア
が僕に向かって微笑みかける。翻る裾からいつも使っている香水が薫り立つ。軽やかな足取り
で先を行き、時々小さく溜息を吐く。どれもこれも辛かった。なのにそれらなしではいられな
い。
己の弱い心故のこの辛さから逃れようとした筈だった。今夜は三階封印の間前での警備。すぐ
そこにあの方がいらっしゃる。それは辛いけれどどこか幸せだった。ミーティアの安らかな眠
りを守っているのだと密かな満足を感じていただけだったのに。
突然夜の静寂を破ってピアノが鳴った。何事か訴えるかのように。ああ、ミーティアがピアノ
を弾いている。最初の音の後は弱音にしているけれど時々洩れ聞こえてくる。その音はまるで
泣いているかのようだった。僕の覚えている限りそんな音でピアノを弾いていることなんてな
かったのに。いつまでも幸せを溶かし込んだ優しい音色で楽器を弾いていて欲しかった。
泣かないで。泣かないで、ミーティア。できることなら飛んで行って慰めて差し上げたい。で
もそれは許されぬこと。どうかもう、泣き止んで。
耳を塞いでも音は僕の身体を突き抜けていく。魂までも揺さぶって身体の中を駆け巡る。
止めてくれ、止めてくれ、ミーティア、お願いだから止めてくれ。でないと諦めようと心の奥
底に押し隠した想いまでも表に出てしまうそうだ。
ミーティア。
ミーティア。
好きだ、ミーティア!
いっそ僕の想いを伝えてしまいたい。でもそれは決して許されぬこと。一国の王位継承者に、
それも許嫁者のいる王女に恋い焦がれているなんて誰にも知られてはならない。
やべぇ半年近くラスボス前で止めてたからみーたんの顔覚えてない
僕に許されているのはただ、心からの忠誠をあの方に捧げることだけだ。ミーティアのためな
らいくらでもこの身命を捧げよう。あの方を守るためならどんな汚名だって着てみせる。何の
見返りもいらない。魂だけの存在になっても守り続ける。
でも違うんだ、それとこれとは。主君への忠誠とはまた別のものなんだ。恋しく思うあまりど
んな愚行をしてしまうか分からない、そんなあってはならない僕の想い。
これからはただひたすらあの方の名を胸に抱き続けよう。遠く海を隔てた地で幸せに暮らして
いるだろうミーティアへ、想いを叫んでいよう。決して口には出さず、ただ心の中だけで。
明日も夜勤。確か三階西側テラスだった筈。直に会うのは辛いけど会えないのも辛い。でも近
くにいるんだと思えば少しは楽、かな…
(終)
前夜故にトロデーンが呪われる前の晩の話で。
二人とも悲しすぎ・・・orz
>>92 GJでした
大聖堂に行く前夜かと思って読んでいたんですけど
呪われる前の晩だったんですね
その後過酷な旅に出なくてはならないわけですがエイトとミーティアには
ある意味幸せな旅路になるのが救いですね・・・
クリアして半年経って、みーたん美化しすぎて
思ったよりカクカクしてた事にびっくりした俺も常駐してますよ
なんかNHKの人形劇思い出したのは秘密だ。
みんなごめん。
実はDQ8、クリアどころか買いもしなかった俺がこのスレの初代1なんだ。
でも今年の春に買って真ED見たから許して
>>96 何だか凄いネタフリじゃね?wwww
普通に笑ったんだがwwww
ネタに振られてみるぞ!
去年の今頃、ちょうどオクトリーチ戦ぐらいだったと思う。
その頃はまだ、こんなにも主姫にどっぷりはまってしまうとはちらとも思っていなかったw
99 :
96:2005/11/27(日) 23:55:53 ID:Xr23HeAv0
ネタじゃないから。マジだから。
ネタバレで姫いいなと思ったのに発売から1月近く経っても
誰も立ててくれないから立てたんだ。
発売日からちょうど一年だし、もうバラしてもいいかなって。
オクトリーチ?
101 :
98:2005/11/28(月) 00:12:41 ID:WnOD+lirO
オセアーノンだったorz
確かに主姫で萌えてたけど世間は全く別のカプ全盛で肩身狭かったよなあ。
スレができて嬉しかったよ。
>99
何はともあれ乙でした!
主姫スレ立ててくれてありがとう。
ちょうどクリスマスの日だったよね。
聖夜にスレが立って嬉しかったからよく覚えてる。
あああそうだったそうだった。恋人達の夜にせめて立ててみる
って言い回しが好きだったんだよ〜。まだやってなかったのかwワロタ
ここ見てたらまたゲームやりたくなって昨日からやりはじめたよw
5の主フロや7のアルマリは書いたことあるけど8の主姫は未経験だ。
ゲームやって何か思いついたらSS投下させてくださいな(・∀・)
おお、いらっしゃ〜いw
二周目にはまた別の新たな感慨があって楽しめるはず。
ssお待ちしておりますよ。
ここのところオレたちはあちこち走り廻っては泉へ行く、ということを繰り返している。
「錬金で強い武器や防具が欲しいし、宿代勿体無いから」
なんて言ってるけど、本当は違うだろ。隠さなくてもいいんだぜ?
今日も一日走って泉へとやってきた。疲れを癒すその横で、エイトが姫様に泉の水を飲ませて
いる。そら、お前の大切な姫様が元の姿に戻ったぞ。
「ありがとう、エイト。そしてみんな。こうやってお話できて嬉しいわ」
ま、美女に感謝されるのは悪くはねえけどな。
「あのね…エイトに謝らなければならないことがあるの」
おっ、何だ何だ。いきなり深刻な話だな。
「何でしょうか」
相変わらず堅苦しい奴だ。まあ、トロデ王もいるし仕方ないか。
「ずっと前に『青い薔薇が欲しい』って言ったことがあったでしょう」
「はい。そんなこともありましたね」
「あの時のこと、本当にごめんなさい。わがまま言ってしまって」
そうだよなあ、それは確かにわがままだろうなあ。青い薔薇なんて不可能なことの象徴みたい
なものだし。
「いえ、いいんです」
エイトも忠義だね。まあ、そういうオレだって気に入っている女の子の言うことだったら何で
も聞いてしまうけどな。
「でも持ってきてくれたのよね、青い薔薇」
何だと?!
「ありがとう、エイト。あの時は本当に嬉しかったのよ。ちょっと咳が出るから、ってお部屋
に閉じ籠っていなければならない時だったから、余計に。そして後で本当のことを知ってもっ
と嬉しくなったの」
「えっ、ほ、本当のことって」
「うふふ、後でね、庭師のじいやに聞いたのよ。エイトがね、白薔薇をたくさん集めていたっ
て。ほら、お城の庭には色んな色の薔薇があったでしょ。深紅の薔薇に雪のように白い薔薇、
お日さまの光を溶かしたような金色の薔薇に薄紅のかわいらしい薔薇、一つの枝に赤と白の花
を付ける薔薇もあったわ。でも青い色だけはなかったのよね。だからどこから摘んできてくれ
たのか気になって」
「…申し訳ございません」
「あら、謝ることではないのよ。あの青い色は、白い薔薇を青いインクの中に挿しておいたか
らだったのよね」
「…はい」
「ありがとう、エイト。それを知ってからずっと感謝していたの。でもなかなかお礼を言う機
会がなくて」
「そんな、いいんです。だってあれは白い薔薇に青い色を吸わせて作っただけのものですよ。
本物じゃないですし」
「ううん、いいの。だってあれはエイトが作ってくれたたった一つだけの特別なものなんです
もの。
花が終わるまでずっと大事にお部屋に飾っていたけれど、最後まで綺麗な空色をしていたわ」
だんだん姫様の身体が光に包まれてきた。そろそろ時間切れか。それにしても何だよ、結局惚
気かよ。ここに来る度そういう話ばっかり聞かされているような気がするぞ。
「お花の全部を取っておくことはできなかったのだけれど、花びらを一枚だけ、本の間に挟ん
で押し花にしたの。ずっと青い色をしていて、とても綺麗だったわ。
今もミーティアのお部屋の本棚に、ある筈よ…」
馬の姿へと変わっていく姫様を、エイトは無言で見詰めていた。オレたちには背中を向けてい
たから表情は分からなかったが、さっきのことを茶化すのは憚られるような雰囲気が漂ってい
た。
「さて、行こうか」
振り返ったあいつはもう、元気ないつもの顔だった。
「あ、そうそう、新しくできたこれ、ククールが持っていてよ」
ん?何だこれ。タンバリンか?
「強敵が増えてきたし、これからはそれを使って一気に片を付けるようにしていこう」
「そうね、それがいいわ」
「戦いが長引けばあっしらが不利になるでげすしなあ」
「ちょ、ちょっと待てよ。オレは?オレはどうなんの?こっ、この新調のオーディンボウは?」
「それは止めに使えばいいさ。ククールが一番適任だよ。でないと大したことのない相手でも
ジゴスパークとかグランドクロスとか使いたがるし」
くそう、エイトの奴!ちょっとぐらい大技使ってもいいじゃねえか。それを何だ、ひでーじゃ
ねえかよ。
「行こう。今度こそ黒犬を倒してラプソーンの野望を挫くんだ。そして杖を取り戻す」
「ええ」
「合点でがす」
「…」
「あれ、ククールは?」
「お、おう」
さっきの話でやる気になったのかよ。それはいいけど何でオレが。
ちきしょーっ!やっぱり野郎に情けは無用だったぜ!
(終)
「楽しいひととき」今回も被害者はククールw
泉でいろんな話をしてくれるのは呪われていても城とは違ってどこか自由だったからなのかな、
と思った次第。
>>93 どうもありがとうございました。
あの話は以前に書いたものの伏線だったり。それに大聖堂の話は前に書いちゃったし。
それにしてもみーたんのテーマ曲は必要以上にせつない風味になりやすいなあ。
青い薔薇でブラッド+が思い浮かんだのは俺だけでいい
>くそう、エイトの奴!
ワロタw
ククールにはタンバリン持たせていたけど、彼には他にも色々やることあるし
忙しそうだった覚えがあるなぁ。それこそ大技放つ隙もないくらい。
クックルは育て方で印象が360度変わるんだよな。
見た瞬間「ああ、こいつの(戦闘的)ポジはチャモロか」と思って
まず杖+余ったらカリスマ+余ったら弓という育て方をしてたうちのクックルは
大技なんて見たこともないw
全体攻撃はゼシカ嬢がいるし、
コストパフォーマンスでもMP1/2を持ってる8主に及ばないもんな。
直林すな、と漏れが言っても説得力ないが。
ヒント:+は飾りじゃありませんぜ。
すんまそん…
反転で隠れてんのは分かるんですが、それでもダメポ
漏れ、ダメだわ…
カタカナ4文字をローマ字にする能力と、小学1年生の算数の知識があればわかるハズ。
とりあえずパス晒せや
ヒント:年齢ではなく名前
114じゃないけど入れた(*´Д`)
チョコボは探さんでもなんとかなりそう
ゲーム画面ではミーティアのほうが背が高いんだよな
というか主人公はゼシカと横に並んで同じくらいだし
長身のククールとは丸一頭身(推定20cm)も違う
ククールが185だとしても165前後ってところか。
でもEDでは何故か逆転しており微妙に主人公のほうがデカい
ミーティアは普段ブーツ履いてるのか?馬轍?
でも主人公もブーツ履いてるよな・・・
ということは素の状態では二人とも同じ身長なのかもしれない
同じく入れた
素直に考えたら楽だったかも
>>121 旅の間または旅の終了後数ヶ月の間に背が伸びたと言ってみる。
あ、そうだったら萌えるなあ。みーたんが主人公をちょっと上目遣いで見て、
「エイトまた背が伸びたみたい」
まだまだ伸びてほすぃ。
>>121 ミーティアは普段ハイヒール履いてるんじゃないかな?
履くとしたら5cm以上だろうから、素で僅差だとしても主人公より
見た目高くなっている可能性はあると思う。
以前どこかでキャラを並べてテレビ画面で測ったデータを見たんだが、
主人公を1とした場合にククールは1.078倍になるんだそうな。
このデータを使うと主人公が165cmだとククールは178cmに、
ククールが185cmだと主人公は171cmになる。
漏れは主人公が小柄で華奢なのはハーフゆえと妄想してるもんで、
165cmの方がしっくり来る数字かな。(クク185cmはデカすぎな気もするし)
ついでに、常人より微妙に成長が遅いんじゃないかとも妄想してるから
>>124の
>>みーたんが主人公をちょっと上目遣いで見て、
>>「エイトまた背が伸びたみたい」
なんてシチュはめっさ萌えってことで!長文スマソ。
主人公165cmって低くない?170cm辺りがいいなぁ
ククールの185はちょっとイメージ外かなとFF系住人が言ってみるテスツ
唐突ですんませんが
FF7ヴィンセントが公式記録184です
竜神族とのハーフで成長が遅くて小さいてのは
なんかみょーに納得できますた
ククールより背が高いグラフィックは結構いるから
一部の1メートル以下の小人体型以外は世界的に男性の190以上が珍しくないと思うよりは
主人公が165だと思う方が違和感ないかな、どのみちあの世界じゃ小柄には違いないんだし
あと主人公170だとするとほぼ等身長の姫がちょっと大きすぎる気がする
ED後にメキメキ伸びて170になってくれるのならばっち来い
ミーティアのヒールが5cmあるとして見た目170。
主人公のブーツはそんなにカカトあるようにも見えないので2cmとして見た目170
つまり!
ミーティア 165cm
主人公 168cm
漏れはこれでファイナランサー。
ゼシカって身長低いよな
ドルマゲスは2メートル15センチくらいになるのか?
1.
「やあ、ククール」
気侭な日々を満喫していたオレはある日、急にトロデーンに呼ばれた。見るとオレだけじゃな
くてゼシカやヤンガスもいる。これはいつものお茶会か?と思ったんだが、どうも様子が違う。
いつもエイトにくっついている姫様がいない。
「どうしたの?エイトの方から呼び出すなんて珍しいじゃない」
「そうでがす。何かあったでげすか?」
「みんなごめん。急に呼んだりして。実はその…」
とエイトが口籠った。
「何だよ。遠慮するなって」
「そうそう。気にしないで。村での生活は時々退屈なの」
「兄貴のためなら例え地の果てからだって飛んで来るでがす!」
「みんな、ありがとう。ちょっと相談したいことがあってさ」
エイトはちょっと言葉を切った後、続けた。
「実はもうすぐミーティアの誕生日なんだ。何かいいプレゼントをあげたいんだけど、どんな
ものをあげたら喜んでくれるのか分からなくて。それでみんなの知恵を借りようと…」
「馬鹿か、お前」
阿呆らしい。そんなことでオレを呼ぶなっつーの。
「そんなもの決まっているじゃねえか。女が喜ぶものっつったら熱い一夜、これだな」
「ハレンチでがす!ハレンチでがすよ!」
「…馬鹿は死ななきゃ治らない、ってやつね」
周囲の冷たい反応と違い、エイトは聞いてきた。
「ゼシカ、メラゾーマはやめてね。…それで、例えばどんなの?」
「あっ、兄貴!こんな奴の言うことなんて聞いちゃいけねえでがすよ!」
「こんな奴で悪かったな。…そうだな、うーん、………とか、………とかってやつかな」
まあゼシカもいたし、大声で言える程オレもハレンチじゃねえ。エイトに耳打ちしてやった。
どうせ知らないだろうから詳しく説明してやるつもりで。
「ああ」
ん?何だその薄い反応は。
「どっちも、やってるよ。時々だけど」
「なんだとーっ!」
やられた!初心な顔してどこでそんな知識仕込んだんだ。あーっ、これだから新婚は嫌なんだ
よ!
「去年は旅の中で誕生日だったし、その上呪われていただろ?『お誕生日のディナーは、雑草
でした…』って言われた時はもう泣きそうだったんだ」
「そうよねえ…草以外の食べ物は受け付けない身体になっていたとは言え、あれは気の毒だっ
たわ」
茫然自失のオレを無視して話は勝手に進んでいく。
「それで今年はその分の埋め合わせもしてあげたくてさ。そりゃ何でも喜んでくれるんだけど、
もっと喜ばせてあげたいんだ」
「それなら兄貴、宝石なんてどうでげしょ?古今東西、宝石の嫌いな女なんて聞いたことがね
えでがす」
「そうよね、ゲルダさんもそうだったしね」
「ゲっ、ゲルダの奴は関係ねえ!兄貴も何か言ってくだせえ」
お、オレを無視して話を進めるな。
「あの時は苦労したよなあ」
「ほーんと。あの時のエイトの顔ったら」
「う、うるさいな。心配だったんだから仕方ないだろ」
「そうだな、宝石なら喜ぶんじゃねえのか?」
漸く復活して口を挟む。
「うーん、でも伝来の物とか一杯持っているみたいだし。それに僕はそんなにお金持ってない
よ」
「えっ、でもトロデーンの王族でしょ?宝石の一つや二つ、買うくらいのお金なんていくらで
もあるんじゃないの?」
「そりゃあるけど、それは国のお金だから。僕のものじゃないし」
はあー、そりゃご立派だね。
「すごい武器とか貰っても嬉しくないだろうし、チーズだの薬草だのも困るだろうなあ…」
そりゃそうだ。ここはやはり女の子の意見の方が参考になるんじゃないのか?
「ゼシカはどうなんだ?」
「は?」
突然話を振られてすっとぼけた声を出すゼシカに畳み掛ける。
「ゼシカだったらどんなものを貰ったら嬉しいのか、ってことさ」
「うーん、そうねえ…月並みだけど、やっぱりお花かしら。たくさん貰ったらすごく嬉しいと
思うわ」
「へえ…お花か…そう言えばミーティアの部屋にはいつもお花が飾られていたっけ」
エイトが感心している横でオレもこっそり納得する。道理で上手く口説けない訳だ。よし、今
度は…
「……」
何だ?妙にじっとりとした視線が…
「ふん、大方酒場の女の子口説く時に使おうとか考えていたんでしょ」
「ちっ、違う。誤解だって。おい、エイト、助けてくれよ」
でもエイトの奴、ヤンガスと何か話し込んでいてこっちには目もくれやしねえ。
「分かったわ。ちゃんと送り届けてあげるから安心して。…がっちり縛り上げてね」
「待ってくれ、話せば分か」
「ラリホーっ!」
なんで、こう、なる…
(続く)
最初に書いておくのを忘れてたことが。
・今回の話はお約束に抵触しない程度のちょっとだけアレな内容を含みます。
・以前に書いた話と関連している部分があります。
それから泉の小景への感想、どうもありがとうございました。
遅くなってしまってすみません。
ククールがエイトに何を囁いたのかとっても気になる。
教えてエロい人。
エロい人は大抵想像がついてますが
口に出さないのがエロい人でもあるんです
口に出したらエロくなくなってしまうのです。
単なる下ネタになってしまうのです。
↑そゆことです
【結論】
コドモはククールの囁きなんぞ気にせずに
そろそろ寝なさいつーことです
140 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/07(水) 23:47:42 ID:5H/rywhT0
保守
>>132-134続き
今回もお約束に抵触しない程度の内容があります。
その上バカップル全開w
ご注意ください。
2.
それに気付いたのはある夜のこと。
私の頬に触れているエイトの指先が不自然に黒くなっていた。
「あら、これどうしたの、エイト」
不思議に思ってその手を取ってじっと見てみる。それは爪の間に挟まった土のようだった。
「ミーティア」
目を上げるとやや不満そうなエイトの顔があった。
「そんなのどうだっていいじゃないか」
「だって」
言い募ろうとする私の唇にエイトの唇が重なる。
「…もう」
誤魔化さないで、という言葉もまた唇の中に消えた。
「…昼間、兵たちの訓練に付き合っただろ?その時入ったんだよ」
漸く私を解放して、そんなことを言う。
「それでそんなに汚れたの?」
「本当だよ」
エイトったら、瞬きばかりしているわ。それは、嘘吐いている時の癖。それに嘘って決めつけ
た訳でもないのに「本当だよ」って、どういうことなのかしら?
「疑っているの?」
エイトの両手が私の頬を包み込む。
「気になるだけよ」
「だから嘘じゃないってば」
そう言いながら顔が近付いてくる。身を捩ったけれど、躱し損ねて唇の端に唇が当たる。
「エイトったら!」
「逃げるから追いかけたくなるんだよ」
そんなことを言いながら今度こそ、としっかり頬を挟まれて口づけされた。
「…だって、本当のことを言ってくれないんですもの」
深い口づけに何もかも搦め取られそう。でも言わなくちゃ。
「土いじりしたんでしょ?昔泥んこ遊びした時のようになっているわ」
「訓練場に埃が立つから、って水を撒いたらしいんだけど、ちょっとやり過ぎちゃったみたい
なんだ。だからだよ」
胸にきつく抱き締められる。耳を啄むようにして囁くその声に、何だか、胸の奥が、きゅっ、
としてしまう…
「だって…」
「いつまでもそんなことを言う唇なんて塞いでしまうから」
もう何も答えられない。何も考えられない。でも何を隠しているのかは絶対、確かめる、わ…
(続く)
眼下にエロパロ板が見えてきそうです
子供は寝る時間ですよ フフフ
いまいち意味が分からなかった…
エイトは花の種でも植えてきたの?
ちょっと悪乗りしちゃいましたかね…
「人はチューでどこまでハアハアできるか」みたいな内容だったんでやり過ぎてたら申し訳ない。
今回みーたん目線なので曖昧な部分があります。
次回で終わりなのでそれまでお待ちください。
明日の夜にはうpできるよう頑張ります。
みぃー
3.
でもエイトはなかなか秘密を明かしてくれない。あまり追求し過ぎるのもよくないと思ったの
であれ以後は面と向かって聞いてはいないのだけれど、絶対何か隠している。
爪が真っ黒だったのは一度だけで、その後は気を付けて手を洗うようにしているのか、土が入っ
ていることはなくなった。でもやっぱり土いじりはしているみたい。だってこの前なんて服の
縫い目から古い葉っぱの欠片が落ちたんですもの。同じようなものを昔庭師のじいやが薔薇の
木の根元に掛けてやっているのを見たことがあるの。
「こういう土に還りかけている葉っぱには栄養がありますでな、薔薇のような肥料食いにはもっ
てこいなのですじゃ」
って言っていたわ。
庭師の仕事を手伝っているのならそう言えばいいのに。隠そうとするから追求したくなってし
まうのよ。
結局何も聞き出せないまま時は過ぎ、私の誕生日がやってきた。
この城で誕生日を迎えられるなんて思ってもみなかった。去年の誕生日が最後のものになるの
だと思っていたから…
そして隣にはエイトがいる。去年は旅の中、呪われた姿だったから草しか食べられなかったけ
れど、傍にエイトがいてくれた。でも今はこうして、私の夫として傍にいてくれる。
「おめでとうございます、姫様!」
そして旅の間で親しくなった人たちもいる。色んな人とお話しすることがこんなに楽しいなん
て思ってもみなかった。呪われた事は辛かったし、茨に取り込まれ悪夢の中にあった人々のこ
とを思うと胸が痛んだけれど、あの自由な空気を知ることができたのは嬉しかった。そして傍
にはいつもエイトがいて、先を示していた…
これからはずっと、エイトと同じ未来を見続けていくのね。
「…嬉しい」
小さな呟きはエイトの耳にも届いたらしい。
「どうしたの?急に」
「ううん、何でもない」
と言ったけれど、エイトは首を傾げて答えに満足していない様子だった。
「…あのね、ただ嬉しいの。こうしていることが」
こんな答えでいいかしら。ぴったりした言葉が見つからない。でもエイトは笑ってくれた。
「…そうだね。何となく分かるような気がする」
そう、何となくなの。蝋燭の炎に手を翳すとほんのり温かいような、大好きな人たちの作る優
しい空気。本当は儚いことなのかもしれない。この場を離れたらあっという間に消えてしまう
ささやかな幸せ。でもきっとそれが一番大切なことのような気がする。
「後でさ、」
突然エイトが口を開いた。
「見せたいものがあるんだ」
「何?」
「まだ秘密。後のお楽しみ」
悪戯な笑いを浮かべている。エイトってこんな笑い方したことあったかしら?
「もしかしてあのこと?」
「秘密だって。ほら、ダンスだよ」
そうやって話を逸らす。
「もう」
「練習したんだよ、メヌエットのステップ。今日はばっちりだから」
にこにこしながら私の手を取る。
「待っていれば必ず分かるから。今は一緒に踊ろうよ」
夜も更けてきてお酒が回り始めると無礼講の様相を呈してきた。あちらでは三角谷からはるば
るやってきてくれたバーテンさんがお得意のカクテルを振る舞っている。
「そろそろ戻ろうか」
「そうね」
場の雰囲気を壊さないようにお父様にだけこっそり暇を告げて広間を出る。でも、
「こっち」
エイトの足の向く先は部屋ではない。
「どこに行くの?」
聞いてもにこにこしているばかりで何も答えてくれない。けれども重苦しい空気はなかった。
「…覚えているかな?」
突然エイトが口を開く。
「何?」
「昔、二人で城の中を探検したこと」
トロデーンの歴史は古い。幾多の戦乱や海賊の横行に晒された城には今は使われていない秘密
の抜け穴がたくさんあった。敵に攻め込まれた時のために。
「ええ、覚えているわ。本当に楽しかったわね。あの時まで自分のお家がどうなっているのか
知らなかったのよ」
「埃だらけになって、よく怒られたっけ」
言葉に懐かしそうな響きが混じる。
「あの時はごめんなさい。ミーティアのわがままだったのに、エイトまで怒られてしまって」
「ううん、いいんだ。僕も楽しかったんだし」
と言った後、ちょっと躊躇ってから付け加えた。
「そういう記憶がないせいもあるんだろうけど、同い年の友達がいて、遊んだりするのってす
ごく楽しかったんだ。今思えば大したことないのかもしれないけど、真っ暗で誰も知らない場
所にいるのって大冒険しているような気がしてさ」
「…ええ、分かるわ」
大人になってしまえば大したことのないことでも、あの時の私たちにとっては冒険だった。城
の中を歩くだけでも知らない場所、というだけで緊張したし、ましてそれが城の外だったりし
た時はもう、それこそ大冒険を果たした、というような顔で城に戻ったものだった。
「その時その時で冒険していたのよね、ずっと」
「うん」
エイトの手に導かれるまま、いつの間にか古い通路を歩いていた。前に通った時はもっと埃っ
ぽかったのだけれど、今は綺麗に掃除されている。
「あら、この通路…」
「うん、そうだよ」
かつてエイトと見付けた古い通路。うんと子供の頃、エイトはトーポに掛けられた疑いを晴ら
したくて、私は困っている友達を助けたくて足跡を追った場所。その先には…
「どうぞ、こちらに」
大袈裟な身振りでエイトが扉を開く。そこは海側からの敵を見張るための場所─
「あっ」
ではなかった。崩れかけた石組みや雑草は綺麗に取り除かれ、意外に広かったその場所は小さ
な庭になっている。
「エイト」
エイトは嬉しそうに笑ってみせた。
「僕からの誕生日プレゼント。ほら、去年は何もできなかったでしょ?だからその分込みで」
月明かりに照らされたその庭はとても美しかった。この季節なのに薔薇が咲き乱れ、貝殻で縁
取りされた花壇にはかわいらしいお花が咲いている。小さな椅子とテーブルまで据え付けられ
ていた…
「…」
私はもう何も言えず、かがんで足元に咲いていた薔薇の花をそっと撫でた。ほころびかけたそ
の花から香しい薫りが広がる。
「ミーティア…」
振り返るとエイトが不安そうな顔をしていた。
「気に入らなかった?」
「ううん、違うの」
でもそれ以上言葉が出てこない。胸が一杯になってしまって、思いが頭の中を廻っているばか
り。
「…ありがとう、エイト。嬉しいわ。言葉では言い尽くせない程。エイトと一緒にお誕生日を
迎えることができただけでとっても嬉しいのに、こんなに素敵な贈り物を貰って」
一生懸命心の中を探って、浮かび上がる言葉をそのままエイトに差し出す。言っているうちに
涙が零れてしまった。とても嬉しかった筈なのに。
「ずっと大切にするわ。今までも大切な場所だったけれど、これからはもっと…」
「僕たち二人で大切にしていこうね」
嗚咽に途切れた私の言葉をエイトが続ける。涙を拭う手が取られ、エイトの唇が涙を吸い取っ
た。
「よかった、喜んでくれて。このためにずっと頑張ってきたんだから」
その言葉にふと、あの時の手を思い出した。
「ここの土いじりしていて爪に泥が入ったのね」
「うん」
そのあっさりとした物言いにちょっと拗ねた口調で言ってみた。
「どうして言ってくれなかったの?」
「びっくりさせたかったから」
と無邪気に笑う。
「…僕にとってもここは大事な場所だったんだ」
しばらくしてからぽつんと呟いた。
「うんと小さい時の記憶ってないからさ、ここに来てからの思い出の一つ一つがすごく大事だっ
た」
無言で頷く。あの時エイトは呪いのせいでここに来るまでの記憶がなかった。
「ここで色んなことがあって思い出が増えてきてすごく嬉しかったんだ。それが全部ミーティ
アとの思い出でさ、一時すごく苦しかったことがあったけど、でも今はそれでよかったって思っ
ている」
「そうね」
こんなことがあったね、って話し合えるのってこんなに素敵なことだったのね。
「思い出を共有できるのって、素敵なことね」
「うん」
「同じ未来を見ることも」
「うん」
肩を抱き寄せられる。目を閉じた私の額に口づけが落とされた。
「…ずっと、一緒にいようね…」
エイトの囁きに深く頷く。ずっと、一緒に…
「くしゃん」
急にくしゃみが出てしまった。顔を見合わせるとどちらともなく吹き出す。
「戻ろうか、寒くなってきたし」
笑いが収めながらエイトが言った。
「ええ」
と頷いた私の横で身を翻す。
「エイト?」
「部屋まで競争!」
と言っている間にもう数歩先を走っている。
「あっ、ずるいわ!」
急いで後を追う私に向かって手が差し伸べられた。手を取ると半歩先のエイトが微笑む。
「一緒だよ」
「一緒よね」
私も笑い返す。そうよね、ずっと一緒なのよね。春も夏も、秋も冬も…
(終)
GJ!
実はチャゴスと結婚したら自殺しよう
と思ってたミーティアガク((゚д゚))))ブル
あのDQ[からここまでのSSを作れる
作者は神だとオモタよ(^ω^)
!
言われてみればそうとも解釈できるな>自殺しようと
そんな深い意味はないつもりダターヨ。
多分みーたんはその選択肢を選ばないんじゃないか、って気がする。
エイトに助けて貰ったものなんだし。
乙です。以前の舞台設定が活かされていておおっと思いました。
>多分みーたんはその選択肢を選ばないんじゃないか、って気がする。
自分はプレイしながら「チャゴスと結婚したらミーティア自殺するんじゃ…」
って思ったよ。
主人公もそう思いつめて飛び込んだんじゃないか、と受け止めているんですが。
みー
確かに主人公はそう考えたかも。
ミーティアもそのことは考えたことがあったとも思う。
でもEDのミーティア姫の姿はそれこそエイトが命懸けで取り戻したものだし、
そんな大切なものを簡単に捨てることはできないんじゃないかと。
ちょっと感じは違うけど「君に慣れにし我が身と思へば」みたいな風に。
なるほどー
ところで前スレようやく埋まりましたな
意外に埋まらないもんだと結構じりじりしながら見ていたよw
みーたんは絶対に自殺なんか考えないと思うよ。
優しくて強い人だからこそ自分の命の価値を知ってるし、
決められた運命の中で最良の選択をして生きていこうとする人だと妄想している。
後半の泉や夢での会話でそう思った。チャゴスのこともなるべく前向きに考えようとしていたし。
主人公は好きだけど、たとえ結ばれなくても強く生きていける人だと思うな。
そういう強い姫が好きだ。
って、主姫スレでマジレスぶっこいてスマソorz
いや、むしろバッチコーイ!だよw
いろんな人のいろんな意見が聞けてとても参考になってる。
こういった話題で盛り上がるのはいいんじゃないのかな。
マジレスは大変結構だけど、同じゲームをプレイしても
世の中には色んな感想や考えを持つ人がいるのだから
「絶対に〜」なんて言い切っちゃうのは如何なものかと。
だよな。
「絶対に」っつーのは言い過ぎた。
あくまでも個人的印象。
俺の好みにしか過ぎない訳であって。
だけど仮にも王族なんだからさ、
好きな男と結ばれないからって、周りを省みず、
軽率な行動とるような姫じゃないと思いたいんだよなー。
天然でふわふわした印象だけど芯は強い、というか。
そんな女の子だったらなーと、妄想してる訳だ。
そういう姫が好き、ってとこにはちょっぴり賛同。
ところで以前投下したSSの続きが完成しましたので投下してみます。
ラブ度低め、そしてかなり捏造設定が多いかと思いますが、広い心で受け入れてやってください。
今年の春は少し早く訪れた。
例年ならこの時期はまだ、兵舎の食堂の夕食メニューは暖かいものが人気な頃だ。
だが今年に限っていえば、訓練を終えた兵士達がこぞってカウンターで注文するのは冷えた飲み物あるいは酒で、
汗に濡れた身体のままその場でぐいぐい飲み始める。
「おい、泉の丘の桜が今見頃らしいぞ。」
ジョッキ一杯に並々と注がれた麦酒を一気に飲みながら、隣の席の壮年の兵士が言う。
「へえ、今年はずいぶん早いんだな。」
「今年の冬はずいぶん暖かかったからなあ。散っちゃう前に早いとこ花見に行っとこうぜ。」
「いいなー、それ。」
兵士の一人が口火を切ると、お祭り騒ぎが大好きな廻りの兵士たちが便乗して騒ぎ出す。
「いつにしようか。思い立ったらなんとかで、早いほうがいいぞ。」
「そうだなー。男ばっかりで騒いでもつまらんから、彼女のいる奴は彼女同伴で、独り者も寂しい思いをしないように、メイド連中にも声掛けてみるか。」
「そりゃあいい。………おい、エイト。」
食事を終え席を立とうとしたエイトは、先輩兵士に「今年の花見はお前も出席するんだぞ。」と声を掛けられ、食事の乗ったトレイを持ったまま、はあ、と気の抜けたような返事をした。
「はあ、じゃない。だいたい花見はこの兵舎恒例の春の行事なんだ。お前去年もなんだかんだ理由をつけてでなかっただろ。」
「しかし俺は酒も飲めませんし。」
「何言ってんだお前。酒なんて訓練しだいでいくらでも飲めるようになるんだぞ。日頃の鍛錬が足りんのじゃないか。とにかく絶対に出席しろよ。」
ふたたび苦笑混じりの生返事をするエイトに、別の兵士が側から助け船を出す。
「酒なんて飲めんでもいい。可愛い女の子もたくさんくるんだし、お近づきになる絶好のチャンスじゃないか。」
そうだそうだ、と賛同の声が挙がる。
「お前は練習熱心なだけあって、剣や槍は同期の中では一番の腕前だ。だが浮いた噂のひとつもあるでなし、正直つまらん男だと評判だぞ?
せっかく春がきたんだしさ。恋の一つでもしてみなきゃ。」
「おい、まじめな青少年を堕落させるんじゃねえぞ。」
「俺でよかったら、指南してやろうか?」
「エイト、こいつに頼むのだけは止めておけよ。剣や槍だけじゃなくてそっちの方でもへぼい腕前なんだから。」
どっと笑い声があがる。エイトは今やすっかり酒の肴だ。
「でもよ。もうじきミーティア姫様のお誕生日じゃねえか?メイド連中、準備で忙しそうだぜ。都合つくかなあ?」
思いがけずその名前を耳にして、エイトの心臓はとくんと跳ねた。
「大丈夫だろ一晩くらい。そういや姫様ももう十七歳になられるんだったなあ。随分とまあお美しくなられて。」
「何だお前。姫様を近くで見たのか?」
「まさか。俺らみたいな一般兵が姫様のお側近くで拝めるわけねえだろ?だが遠目でもよくわかるぜあの美しさは。
さすがはトロデーンの至宝と謳われるだけのことはある。」
「それにミーティア様って訓練の最中とか、よくこっちをごらんになってらっしゃるよな?」
「そうそう、それ。実は俺も気になってたんだ。姫に見られてると思うと緊張するよなあ。」
ミーティア様。
兵士達が何気なくその名を口にするたびに、エイトの鼓動は激しくなる。
動揺を悟られぬうちに、噂話で盛り上がる兵士たちに背を向けそっと立ち去ろうとした。
「そういえば知り合いのメイドに聞いたんだけど…。今度の姫様の誕生パーティーな、
その時に正式に婚約のお披露目をされるそうだぜ。」
「例の大国の王子とだな。いよいよか。」
「ずいぶん延び延びになっていたが、ついに決められたんだな。めでたいことだ。」
生まれながらにして決まっている姫の結婚相手が遠く離れた大国の王子だということは、この城の者なら知らぬ者はない。
「おい、どうしたエイト。ぼーっとして。さっきの返事、まだきいてないぞ。」
先輩兵士に声をかけられ、ようやくエイトは我に返り、不審げな彼に向けて硬い笑顔を返し、
「じゃあ、出席させていただきます。」とだけ言葉を返した。
「おう、そうこなくっちゃ。」
先輩兵士は笑って立ち上がり、親しげにエイトの肩を叩いた。
「期待してろよ。お前のために綺麗どころをたくさん揃えてやるからな。」
※ ※ ※
(変なことになっちゃったな…。)
エイトは丘に続く道を歩きながら呟いた。
花見に参加すると返事をしたのち、先輩兵士の計らいで段取り良く日にちが決まり、
参加する女の子も集まり、いよいよ開催という時になって先輩兵士から命じられたことがあった。
「花見の場所を確保しておけよ。」
「ええっ?俺がですか?」
「お前は知らないかもしれんが、場所取りは毎年新人がすることになってんだよ。」
でも桜の咲いている丘は城のすぐ側だし、結構広いし、場所ったっていくらでも。
そう言いかけたが、先輩の有無を言わせぬ表情に、出かけた言葉を引っ込めた。
(いろんな慣例があるもんなんだな。)
伝統といえば格好はいいが、要するに使いっぱしりだ。
正直花見にも興味はないし、大勢で酒を飲んで騒ぐのもあまり好きな方ではない。
もちろん当日参加する女の子とお近づきになりたい、とかいう思惑もない。
でもこれが兵士仲間での伝統だっていうんだからしかたがない。
日々訓練ばかりの単調な生活の中、こんなちょっとした行事がみんなの気分転換になるのだし、
だからこそ無下に断るわけにはいかないこともわかっていた。
それに彼らに仲間扱いされることが実は嬉しかった。
そういえば昨年の今頃は、兵士の生活に慣れ、厳しい訓練についていくのが精一杯で余計なことを考える暇もなかった。
訓練の合間に同期の兵士たちと冗談を言い合ったりふざけあったりする余裕が生まれたのは、ごく最近のことだ。
そしてこれは決してエイトひとりの自惚れではなく、同期も先輩の兵士も武器を扱う自分の成長ぶりを認めてくれている。
実戦経験こそまだ無いものの、確実に一人前の兵士に近付きつつある。
そんな多少の自負さえ芽生え始めていた。
思ったよりも長くなりそうなので続きます。
兵士になってから2年目の春を迎えた新米エイトのお話です。
季節外れの花見ネタですみません…。
いやいやw SSに季節は関係ありませんよ。
日本列島が大寒波に襲われているというニュースを聞きながら
花見のお話を読めるなんて、素晴らしいじゃありませんか!
続きを楽しみにしています。
寒い時でも心は暖かくって感じで
続き楽しみに待ってます
なんか出遅れてたら面白そうなssが!
楽しみにお待ちしております。
>>171-173 ありがとうございます。
日本列島大寒波か…道理で寒いはずですね。
こっちでも雪がどんどん積もってます。
続きいきます。
目当ての桜の樹は、城を出てすぐ前方にある泉のほとりの小高い丘の上に立っていた。
丘を登るにつれ、少しずつ風が強まる。春先とはいえ夕刻はまだ冷える。
もう少し厚着してくるんだった。
そんなことを思いながら、まだ誰一人来ていない丘の上に立ち周囲を見渡した。
(いい景色だな。)
海の向こうに日が没するまでにはまだ少しの間があり、夕暮れ間近の橙色の光に照らされ、
エイトの立つ高台からはトロデーン城の周囲ほぼ全容が見渡せた。
城の裏手はすぐ後ろが切り立った崖になり、その先は果てなく広がる海。
海は城の西と北側をも取り囲み、東側には急峻な谷が対岸地域との交流を阻んでいる。
戦になった場合、東の谷の橋を落とせば敵来襲の可能性があるのは正面からのみ、
しかも国境から城までは見通しを遮る深い森も山もなく、平野に長い一本道が延びているだけ。
そのため急襲をかけられた場合でもかなり早い段階で敵の動きを知ることができる。
春霞のかかる美しい景色の中で、エイトは一兵士の目で城の構造を見ていた。
平和な国トロデーン。長い年月の間戦らしい戦も起きていない。
だが今より遡る事先々代の王の時代には、かの大国と一触即発の紛糾状態にあり、
国境付近では血生臭い小競り合いも幾度となく勃発したと伝えられている。
エイトにとってそれはすべて読書や教練の過程で得た知識にすぎず、はるか遠い昔の出来事でもあるために現実味は薄い。
しかし兵士となった今、国というものは大国小国を問わず、ほぼその過去において争いの歴史を、
そして未来においてはその火種を包括する、そういう宿命を持つものだとおぼろげながらにも理解していた。
トロデーンも多分その例外ではないのだろう。
平和の象徴の如き穏やかな早春の風景。
その中に佇んでいると過去の凄惨な歴史など忘れてしまいそうになる。
しかしこれさえも歴代の王により人為的に守られてきた平和なのだとしたら、本当の生まれ故郷ではないものの、
この地を守るために兵士としての道を選んだ自身の決意は正当なものだったのだ、と胸を張っていえるような気がした。
風に吹かれながら丘の上を振り仰ぐ。
一本の桜の古木が丘全体にかかるほど広く枝を張っている。
枝がたわむほどに咲き誇った白い花が密集している様は、まるで樹の上に大きな雲が乗っかっているようだ。
その黒く太い樹幹の側に、誰のものか白い人影が立っているに気付いた。
(誰だろう?まだ時間は早いのに。)
近付いてその姿が誰なのかを認めた瞬間、エイトの心臓はうるさいほど激しく鳴り始めた。
「姫様…。」
あれは姫様か?どうしてこんなところに姫様が?
護衛の兵士を両側に付き従え、重たく花をつけた枝の間から透かしみるように空を見ているその姿。
青いマントが海からの風を孕んではためく。間違いなくミーティア姫だ。
エイトの視線に気付いたミーティアが首を巡らし、こちらを見た。
「エイト。来たのね。」
ミーティアは特に驚いた様子も無く、まるで待ち合わせをしていたかのように親しげに名を呼び微笑みかける。
そして、敬礼することも忘れ立ち尽くす彼を不審げに見遣る傍らの兵士に穏やかに声をかけた。
「あなたたち、しばらく外してくださいませんか。ほんの少しの時間でいいのです。エイトと二人でお話したいの。」
「しかし姫様。」
「心配しなくていいのよ。この人は…エイトは。この城の兵士なのだから。そしてミーティアのお友達だった人なの。
少しの間でいいから…お願いです。」
「姫様、どうか自重くださいますよう…正式なお披露目の日も近いのですから。」
「わかっております。私を信じてください。」
そこまで言われては返す言葉もなく、二人の兵士はしばらく顔を見合わせていたが、改めてエイトに目を向けた。
頭から足元まで、果たして自分が信頼するに足る人物なのかどうか確認する厳しい視線に晒され、身がすくむ思いだった。
この二人は近衛兵だ。身なりこそ一般兵士とはさほど違わず、影の如くその存在感を消してはいるが、
王族側仕えの彼らは兵士の中でも厳選されたエリートであり、その立ち居振る舞いひとつをとっても、
選ばれた者の誇りと自負に溢れていた。
実力に裏付けられたその毅然とした佇まいは、エイトの心に芽生えた微かな自信を砕くに十分なものだった。
この二人のうちどちらかと一対一で戦う機会があったとしても、勝てるとは到底思えない。
「久し振りですね、エイト。」
「姫様…どうしてこのような場所に。」
「メイドから聞いたのよ。今日はこちらでお花見の宴が開かれるのですってね。
それを聞いたらミーティアも急にお花見がしたくなっちゃったの。いけなかったかしら?それにね…。」
ずっとエイトとお話がしたかったのよ。そう言って悪戯っぽく微笑むミーティア。
これは偶然などではなく、ミーティアはエイトが今日ここにくることを知り、待っていてくれたのか。
「少し背が伸びたのではありませんか?」
そう言いながら顔を覗き込んで微笑むミーティアが眩しく、つい目を逸らす。
こうして親しく言葉を交わすことなど、もう二度とないと思っていたのに。
「お話…って、なんですか?」
自分の方こそ、話したい事はたくさんあるはずなのに。
だらしのない事に姫の側に立っているだけで胸がつかえ、言葉が何も浮かばない。
自然とぶっきらぼうな物言いになってしまう。
「あなたのその剣…見せてくださいますか?」
「剣?」
不審に思いながら、エイトは背中にしょっていた剣を外し求められるまま姫の手に渡した。
「随分と重いわ。前からこんなものだったかしら?」
ミーティアは両腕で捧げ持つように剣を持った。
「エイトはいつもこの剣で訓練しているのね。」
「姫様…もうよろしいでしょう。兵士の剣などあなたの手には似合いません。」
華奢な白い腕と使い込まれて柄がぼろぼろになった無骨な剣。
その対比が痛々しく、剣を取り戻そうと手を伸ばすが、ミーティアはドレスの裾を軽やかに翻してそれを避けた。
「エイト、覚えていますか?あなたが兵士になるって言った時、ミーティアが大泣きしてあなたを止めようとした事。」
「ええ。覚えています。」
「あれから二年近く経ってしまったのね。早いものですね。あなたはすっかり立派な兵士になってしまって。」
「いいえ、そんなことは…。俺などまだまだ未熟者です。」
「あの時、本気でこれが最後のわがままだと思ってお願いしたのに、エイトはついに聞き届けてはくれませんでしたね。」
「……。」
「誤解しないで。決して責めているのではないのよ。」
姫は腕に剣を抱いたまま、どことなく儚げな表情で微笑む。
エイトは複雑な思いで姫を見つめた。──姫は随分大人っぽくなられた。二年前とは違う。
俺は背ばっかり伸びて、未だに一人前になったとは言い難い。だが、姫は。
眩しいくらい美しく気高く成長された。艶やかな黒髪は真っ直ぐ腰まで届き、透き通るような肌の色と、赤い唇。
緑の瞳は幼い時よりもずっとしっとりと輝き、見つめられるたびに心惑わされる。
そして一国の王女として相応しい気品と教養を身に付けられて…もうすぐ嫁いで行かれるのだ
「美しくなられましたね、姫」
「は?」
ミーティアが、きょとんとエイトを見つめる。
「え?」
(し、しまった。脈絡もなく何を口走ってるんだ俺は。)
胸の中でこっそり呟いただけのつもりだったのに。
エイトは焦った。途端に頬が燃える様に熱くなった。
ぱっちりと見開かれた姫の瞳には、真っ赤な顔をした自分が映っているのに違いない。
ついに彼女までが頬を染めて俯いてしまい、会話がとぎれ微妙な空気が流れる中、エイトの焦りだけが募っていく。
「い、今のは…ですね。兵士仲間でもずいぶんお美しくなられたとの評判なので…。
俺がそう思った、というわけじゃなくて…いや、実際お美しくなられたと思ってはいるんですがその…。」
「そ、そうなのですか。でも…嬉しいですわ。ありがとう。」
ミーティアは恥らいを含む笑顔を見せる。その頬にはまだ桜色の名残がかすかに残っている。
「見てエイト。本当に見事に咲いているわね。いつもの年よりずいぶんと早いわ。ミーティアのお誕生日の頃にはまだ蕾が固いのに。」
ミーティアが照れを振り払うように背を向け桜の古木を見上げた時、折からの強い風が長いドレスの裾を翻らせた。
風に煽られその身体がくらりと揺れた瞬間、エイトは咄嗟に手を伸ばし、彼女の肩を支えていた。
「あ……ありがとう。ごめんなさい。剣が重かったものだから。」
目の前にミーティアの艶やかな髪が流れている。エイトは目を逸らすこともできず息を飲み込む。
華奢な肩。細い腰回り。腕から伝わるその身体の温もり。
「……風がかなり強くなりましたから…お体に障ります。もう、お城に戻られたほうがよろしいかと。」
言葉とは裏腹に、エイトは彼女の肩から手を離すことが出来ずにいた。
「ええ。そうしますわ。せっかくのお花見なのに、散ってしまわなければいいのに…ね。」
ミーティアがさりげなく身を捩り、エイトの手から離れようとする。そんな所作ひとつに彼女の怯えが伝わってくる。
いつの間にか、肩に置いた手には力が籠もっていた。
続きます。
>180
またいけずなところで止まって…
某主じゃないんだからそんな焦らしプレイ勘弁してw
続きとても楽しみにしています。
情景描写がいいですねー!目に浮かぶようです。
同じく続きを楽しみにしています。
>>181 焦らしプレイすみません。
この先の展開に悩んだもので。
某主って誰のこと??7主かwwwww!?
>>182 情景描写〜
ありがとうございますー。
読み返してみてミスに気付きました。
(6)と(7)の間に次の一文が入ります。
「わかりました。それでは近くで控えておりますので。」
依然警戒の姿勢を崩さないまま、兵士達はその場を離れていった。
彼らの後姿が遠ざかっていくのを確認し、ミーティアは改めてエイトに笑いかけた。
近衛兵退場→二人きりで会話、の流れで。
今頃気が付くなんて我ながら超がつく間抜けです。
どうもすみません。
続き書けたので投下します。
たぶんこれでラストになるはず。
次の風が海からやってくる。草を波立たせ、枝をしならせ、花弁を散らす。
すぐ目の前にあるミーティアの肩に、黒髪に、薄桃色の花弁が散りかかる。
エイトはその髪に触れようと指を伸ばす。…なんでもない。髪に散り掛かった花びらを取って差し上げるだけだ。
どうってこともない。それなのに──胸苦しいほどに鼓動が早くなるのは何故なんだ。
今なら。エイトは息をのんだ。
互いの身分の違いなど意識もせず、転がるように遊んでいた幼い時に戻って…そして、姫に。
「ねえエイト。」
「はい。」
ぎくりとして、指を止めた。
ミーティアは白い指を伸ばして目の前に散る花びらを受け止める。
「雪って…こんなに美しいものなのかしら?」
「さあ……俺も見たことはないので。」
「本で読んだのだけど、遠い北の国では冬の間中ずっと雪が降っているのだそうよ。
丘も草原も街もみんな白一色になって、雪の合間の晴れた日にはお日様の光を浴びてきらきら光るのですって。
どんなに美しいのかしら。見てみたいとは思わない?」
「でもきっとすごく寒いですよ。」
そうよね、とミーティアは微笑む。
「この世界にはミーティアやエイトが知らない国がたくさんあって、いろいろな人が暮らしているの。そう思うと何か楽しくなりませんか?
ミーティアはもっと…自分の目でたくさん見てみたかったわ。本の中だけでなく。」
「姫様……。」
「でもね。ミーティアはきっと世界中のどこにいても、生まれ育ったこの国が一番好きだと思うの。
それは多分、これからもずっと変わらないのよ。この地に生きる人も動物も草も木もみんな大好きよ。
トロデーンは平和でとても美しい国ですもの。そして…。」
ミーティアは言葉を切って俯いた。
「これからどんどん暖かくなって、花や緑でいっぱいになって…一年中で一番美しい季節を迎えるのね。
春が大好きよ。ミーティアはこの季節に生まれて良かったと思います。」
でもそれは──春の訪れを祝うのには相応しくない沈んだ声。
エイトは兵士達の噂話を思い出した。
そうだ…。もうすぐ開かれる誕生日を祝う宴で、姫は正式にご婚約を発表されるのだ。
「ミーティアは近い将来、この国を離れなければなりません。」
「ご婚約が近々…整われるそうですね。お、おめでとうございます。」
「だからもう時間があまりないの。」
独り言のように呟き、やがて思いを断ち切るようにミーティアが言った。
「そろそろ戻らなくては…。あの者達が心配するわ。その前にエイト、あなたにお詫びがしたいのです。」
「お詫び、ですか?」
姫に詫びられることなど何も。戸惑うエイトに向き直り正面から見つめ、ミーティアは口を開く。
「ごめんなさいエイト。ミーティアは馬鹿でした。」
「姫様…。」
「あなたの気持ちをわかろうとせず、泣いて駄々をこねて。あなたの目にはさぞ子どもっぽく写ったことでしょうね。」
ミーティアは手に持った剣をエイトに返した。
そのまま彼が胸に抱えた剣から手を離そうとはせず、剣を支えたエイトの手に、そっと自分の指を重ねる。
「いつまでも子どもではいられないって、エイトは言ったわよね。あの後、あなたの言葉…その意味を何度も何度も考えたの。
……エイトは大人になってしまった。ミーティアよりも随分早く。もうお友達ではいられないのだわ、って、私ひとり置き去りにされたようでとても寂しかった。
幼なじみのあなたに、心を許して…甘えすぎていたのねきっと。
でも本当は私だってあなたと同じなのよ。いつまでも幼いわがまま姫ではいられないの。
…だから、泣いてばかりいては駄目なのです。随分と遅くなってしまったけどようやく気付いたのよ。
エイトと離れてから、ミーティアはいろいろな本を読んで、先生のご講義もまじめに聞いて、たくさん考え事をしたわ。
そしてようやく心を決めることができたの。あなたが兵士になることを望んだように、私はトロデーンの王女なのですもの。
この国のために、私は私に出来ることを…出来る限りの力をつくそうと、そう決めたのです。」
ミーティアの瞳が強く煌き、手に添えられた指に力がこもる。
「エイトはしっかりとこの剣を握っていてくださいね。そして、強くなって。
でも私は…あなたがこの国の兵士である限り、この剣を鞘から抜かせはしません。──決して。」
エイトは何も言えないまま、剣を握った手に重ねられた白い指を見ていた。
久しぶりに触れあった指。昔と変わらない優しい温もり。
でも。
なんて小さな手なんだろう。俺の知っているミーティアの指は、こんなに頼りないくらい細かっただろうか?
力を込めて握りしめれば折れてしまいそうな指。俺の手とはこんなにも違う。
「……エイト。もうひとつだけミーティアの願いを聞いていただきたいの。本当にこれが最後のわがままですから。
…ミーティアがこの国を離れる日まで、嫁いでいくまでのわずかな間、エイトに…私の側にいて私を守っていただきたいのです。
どうか…。ねえ、聞き入れてくださいますか?」
「俺はいつだって…姫様の側にいます。」
その言葉の真意を測れぬまま、エイトは頷いた。
「良かったわ。ありがとう。」
ミーティアはにっこりと微笑む。
その笑顔をエイトは悲しく思った。
姫様。心を決められたのですね。
生まれた時から定められていたこととはいえ、姫は今、はっきりと自分の意思でその道を選ばれたのだ。
馬鹿だ俺は。
何を期待していたんだろう。あの頃にはもう二度と戻れるはずがないのに。
「もうお友達じゃない、って言われた時は悲しかったわ。でもエイトとミーティアはずっと一緒よ。
だって同じことを望んでいるのだから。大切な人にずっと幸せでいて欲しい。そうでしょう、エイト?」
違います。
違います姫。
俺が望んでいるのはそんなことじゃないんです。
今の俺は、あなたをこの手から離したくない。それだけしか望んではいないのです。
そう告げて、その手を握りしめることができたなら。
でも言えない。それだけは言ってはいけない。なぜなら少女だった姫を泣かせたのはこの俺だから。
あの時の決意を思い出し、自身の誇りにかけても言ってはならない。
ミーティアの指が離れた。
エイトは彼女の温もりの消えた指で剣を硬く握り締め、思いの全てを封印するため、胸に剣を押し付けた。
そして言った。
「姫をお守りいたします。この剣に誓って。」
白い指が再び剣に触れ、硬く結んだエイトの拳をなぞるようにすべり、そして離れる。
「時間ですわ。」
太い幹の向こう側から黒い影がふたつ現れ、ミーティアは躊躇うことなく身を翻す。
数歩進んだのちに足を止め、その背を見送るエイトを振り返り微笑んだ。
「楽しいお花見になるといいわね、エイト。」
自身が桜の精のような少女の姿は、闇にまぎれすぐに見えなくなってしまった。
いつの間にか宵闇は濃くなっていた。
その姿が消えてからも、エイトは手に血の気が無くなるほど剣を握り締め闇の中に目を凝らしていた。
枝が風に触れるたびに髪にも肩にも枝から零れた花弁が散りつもり、あるいはまだ見ぬ雪の欠片のようにほの白く輝きながら虚空に消えていく。
しんと冷たく、身に凍みていくようだった。知らなかった。───エイトは胸の内で呟く。
知らなかったんだ。春の訪れが、泣きたくなるほどに──こんなに切ないものだなんて。
どれほどの間、そうして立ち尽くしていたのか。
いつの間にか風は凪ぎ、磨かれたような春宵の空には星が煌きはじめていた。
(終)
これで終わりです。
だらだら長く、しかも捏造満載(みーたんを勝手に春生まれにしちゃった等)
ですが、ここまで読んでくださってありがとうございました。
>>190 乙です
春と成長と旅立ちと
ssってこういう風に書くんだなと
他スレで爆裂長編になってしまい凹んでる俺へのいいお手本となりますた
目に見えるような情景のいいお話 ありがとうございますた
思春期のエイトに胸キュンでした。また素敵なお話を読ませて下さい。
ミーティアを護るために兵士になるエイトと
エイトを護るために王女であろうとするミーティアにきゅんとしたよ
かなり感動した。マジで。
いいもの読ませてくれてありがとう。
乙でした。
抑えた文章表現、いいね。
二人の気持ちが伝わって胸が痛くなった。
姫の「この剣をしっかりと握っていて〜」の台詞が好きだ。
健気で泣ける。
またなんか書けたら読ませてね。
期待してるよ。
GJ!
とてもいい話でした。待たされた甲斐もあったというものw
また投下してください。次も楽しみにしています。
保守代わりにお一つドゾー
トロデーン城、肖像の間。
城には多くの絵が飾られているけれど、細長いこの部屋には特に歴代の王、女王の肖像が置か
れている。
トロデーンの歴史は古い。この城自体、千年程前に原形が作られて、以後、少しずつ増築や改
修を繰り返してきた。その間幾度の戦乱や自然の脅威に曝されつつもこの地に根を下ろし、今
に至る。
三十余代に及ぶトロデーンの王統。お父様で三十七代目だったかしら?揺り籠の中で王位を継
ぎ、十になる前に亡くなられた方、王位継承に異議を申し立てて対立王朝を開いた方、世継ぎ
欲しさに何度も王妃を取り替えた方など、たくさんの王、女王が玉座に有った。それらの方々
の戴冠式のお姿やご成婚の際の記念の肖像が残されている。
古い時代のものは色が褪せ、顔料も剥落してどのようなお顔だったのか窺い知ることは難しい。
けれども最近の絵は色鮮やかに王たちの面影を伝えている。回廊のようなこの部屋の、ごく最
近の絵の前に立って見上げた。
私のお祖父様とお祖母様、そしてお父様とお母様の肖像だった。どちらも戴冠式のもののため
か、皆厳めしい顔をなさっている。お祖母様は記憶の中ではすっかり銀髪になられていたけれ
ども、この絵ではもちろん美しい黒髪でいらっしゃった。王権と王位の象徴とも言うべき王笏
と宝珠を持ち、王冠を戴くその隣にはお父様そっくりのお祖父様がいらっしゃる。
王婿として某公家から入られたお祖父様には一度もお会いしたことはない。私が生まれる何年
も前にお亡くなりになっておられたから。けれども、ご夫婦の間はうまくいっていなかったら
しいことは漏れ聞いている。
お祖母様は本家直系の姫であると誇り高くおわし、トロデーン王家の血を引くとはいえ傍系の
出だったお祖父様と打ち解けることは生涯なかったという。それにお祖母様には慕わしく思っ
ていらっしゃる方がいらっしゃった。
サザンビークの王子、現王クラビウス様のお父君。私はかつてそのお姿を見たことがある。他
でもない、お祖母様のロケットの中に。
お祖母様が亡くなられた後、そのロケットをどうするかで一悶着あった。ご遺言で、
「一緒に柩の中へ入れるように」
とあったのだけれど、お父様は中々頚を縦に振らなかった。でもお祖母様に長年お仕えしてき
た女官さんたちもご遺言を盾に一歩も退かず、結局お祖母様は願い通りロケットを胸に先祖代々
の眠る霊廟へお入りになった。お祖父様の眠る場所とは別のところで。
その時分、よく意味が分かっていなかった私は、
「どうしてお祖母様のお願いを聞いてあげないの」
と疑問に思ったし、それをそのままお父様に聞いたりもした。いつも可愛がってくれ、大好き
だったお祖母様のために、ただ、何かしてあげたかったから。今にして思えば、お父様はとて
も複雑な顔をなさっていた。その当時は幼くて変な顔をなさっている、としか思わなかったの
だけれど。
「ご遺言だから全部言う通りにする、という訳ではないのじゃよ」
とだけ仰ったお父様の横顔が寂しそうだったことを覚えている。
そう、お父様とお祖母様がお話ししているところをみたことがない。実の親子であられた筈な
のに。
いつものお食事はお父様とだけ、いつものお茶の時間はお祖母様とだけ。週に一度の正餐の時
だけお二人が揃ったのだけれど、大きなテーブルの端と端にお座りになって会話もない。
いえ、お食事中はお話ししてはいけないのだからそれはいいのだけれど、それにしても厳めし
い雰囲気しかなくて寂しかった。どちらも大好きだったから、仲良くして欲しかった…
お母様、私には全く記憶の無い方。どんな方だったのか聞いてみても誰も答えてはくれない。
お父様も何も仰ってはくださらない。こうして肖像でみる限り、とても美しくて優しそうな方。
こちらも戴冠式のものだけれど、お祖母様のものと違ってどこか和やかな空気が漂っている。
「とっても仲がよかったんでしょ?」
これはずっと昔にエイトが言ったこと。何かの話の拍子に聞いたことがたった一つのお母様に
ついての情報だった。どんな方だったのか知らなかった私はあれこれ追求してみたのだけれど、
それ以上のことは言ってくれなかった。「よく分からない」と。
本当は色々聞いていたのでしょう?でも私には何も言うな、と堅く口止めされていたのよね。
政略結婚でこちらに嫁いでいらっしゃったお母様。けれどもお父様とはとても仲の良かったお
母様。政略結婚で婿をお迎えになったお祖母様。王族の義務だけを果たして後はご自分の過去
に閉じ籠っていらしたお祖母様。
私は一体どうなるの?いくら好きな人を忘れられないからといって一生自分の中にいるその人
とだけ語らい続けるだけなんて寂し過ぎる。でも…
「チャゴス様は金髪の巻き毛に青い眼の、それはご立派な体格の王子様でいらっしゃいます」
とサザンビークからの勅使は言う。実際送られてきた肖像もそのようなお姿で描かれている。
だからといって慰めになる訳でもない。私が欲しているのは見た目の美しさではないのだから…
「お会いすれば必ずや姫様にも正しいと思えるような情愛をお持ちなられましょう。ご案じ召
されますな」
そんなに簡単に人を好きになることってできるのかしら。確かに私は色んな人が好き。世話を
してくださるメイドさんたち、色々なことを教えてくださる先生方、トロデーンのお城で働く
皆が、大好き。その方々と同じくらいには好きになることは可能だと思う。結婚する、ってそ
んな程度でできてしまえるものなのかしら。
私には分からない。色々な物語の中では心から慕い合っている人同士で結婚することが最良と
されていた。ならば、私の…大好きな…
いいえ!それは絶対にないわ。もしも私が王位継承者でなければ可能だったかもしれない。で
も現実には私はトロデーンの王位継承者。チャゴス様との結婚が決まっていなくともどこかの
公家辺りから婿を迎えることになっただろう。お祖母様のように。
ならばせめて、自分の心を強く持って好ましく思うよう努力しよう。あの人に似ている部分を
探し出すようにして。
お父様も、お祖母様も皆大好きだった。でも時々思うことがある。もし、私がただの娘であっ
たなら、大好きなあの人と結ばれることができただろうか、と。
(終)
以前スレで話題になったみーたんと祖母、母の関係に思うところがあって、書いてみますた。
またもや主姫度薄目ですみません。
みーたんが出てくるだけ ええじゃないか
あの人って誰だ!6主か!?
6主?!
あれ、奴が出て来たことってあったっけ。
前スレでエイトからギガデイン食らわされてたけど。
なぜに6主?
>>200 GJでした
好きな人と一緒にいられることができないと姫が認識しているあたりに
悲壮感が漂っているのがナイスです
締めで強い心を持とうとする姫が好き・・・
遅くなりましたが、SSに感想下さった方々どうもありがとうございました。
>>200 乙でした!
「チャゴス様は金髪の巻き毛に青い眼の、それはご立派な体格の〜」
って…あの肖像画は詐欺ですよねw
体格が立派、ってとこだけは間違ってないが。
ところでひとつ疑問が。
姫の母である亡くなった王妃について、エイトが口止めされたのは
どういう理由でなんだろう?何かの伏線かな?
O
206 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/20(火) 19:41:13 ID:Zz4znjIg0
保守
子供ヤンガスが主役の新作に子供ミーティア出ないかな?
208 :
200:2005/12/20(火) 23:14:55 ID:lj7FNuvT0
色々感想をどうもありがとうございました。
>「チャゴス様は金髪の巻き毛に青い眼の、それはご立派な体格の〜」
そこは笑うところw一応勅使は嘘はついてません。
みーたんとエイトについて、まだ書いてはいないけれど自分の中で決まっている設定はあります。
特に出会うまでのこととか、エイトの竜化能力の有無とか。
その辺りは(今回のも含め)おいおい書いていく予定です。
ちょっと他所のスレにエイトxミーティアの欝系SS投稿してみました。
痛みがある恋愛耐性がある人だけ見てください。
今夜は舞踏会なのだという。
見習い兵士に過ぎない僕は武術の稽古を免除になり、厨房の手伝いをしていた。十二の時に兵
士になろうと決心するまでずっと細々とした雑用をしてきた僕にすれば、むしろこちらの作業
の方が慣れている。芋の皮を剥いたり水を汲んだり、火焚き人夫のおじさんのために薪を持っ
ていったりと厨房での仕事はいつも忙しい。そんな混乱にも近い厨房を、料理長さんががっち
り統率して素晴しい料理を作っていく様はいつ見ても感心するばかりだ。
「おう、エイト」
大量の茹で上がった芋の水切りをしていると、その料理長さんが話し掛けてきた。
「どうだ、兵舎での暮らしは。何だったらこっちに戻ってきてもいいんだぞ。料理人としても
いいセンいくんじゃねえか?」
「ありがとうございます」
気持ちだけはありがたく受け取った。随分この人にはお世話になっているし、案じてくれてい
ることは素直に嬉しかったので。
「でももう決めたので。やれるところまでは頑張ろうと思っているんです」
そう言うと料理長さんはにやりと笑い、
「男に二言はないものな。まあ、しっかりやれよ」
ぽんと一つ肩を叩くと、
「芋はその台の上に置いておけ。それから火力が落ちている。火焚き人夫のところに薪を持っ
ていけ。それが終わったら大広間のシャンデリアの蝋燭を新しいものに替えてこい」
矢継ぎ早に指示を寄越してあちらへ行ってしまった。
その指示に従うべく、急いで芋を置いて薪を運んだ。シャンデリアの蝋燭を替えるには手間も
時間も掛かる。早くしないとお客様を待たせてしまうことになる。
新しい蝋燭を倉庫から出して大広間に向かった。人手が足りないらしく、今回は僕一人でしな
ければならない。
シャンデリアを下ろす。かなりの重量の物なんだけど、滑車が上手く組み合わされているおか
げで重さは感じない。これが全部魔法仕掛けになっていれば簡単に灯りを点すことができるの
に、と思わなくはないけど仕方がない。それにそうなったらそうなったで使用人が減らされて
しまうし。
吊り下げる鎖が傷んでいないか、シャンデリア自体に不都合はないかよく確認して蝋燭を交換
し始めた。一歩間違えば大事故になってしまう。こんな重い物の下敷きになってしまったら、
と思うと身の毛もよだつ。特に今日は他国からのお客様も来るらしい。気を付けて点検した。
幸い不都合なところはなく、僕は新しい蝋燭に取り替えて上から順々に点火していった。と、
広間の入り口に人影がある。誰だろう、花を活ける人かな、と思って気にも留めずにいたんだ
けど、それにしてはずっとこちらを見続けている。さすがに気になって、顔を上げてそちらを
振り返った。
「エイト」
「ミー…姫様」
僕と眼が合った瞬間、あの方の─ミーティアの顔がぱっと輝いた。眩しくてつい、眼を逸らし
たんだけど、それにはお構い無しに傍に寄って来る。
「灯りを点してくれていたのね。どうもありがとう」
「あ、いえ…」
言葉少なになってしまったのはそれが恥ずかしかったからというのもあったんだけど、最近ど
うも声が出し難いというのもあったから。気付かれたくなくて、ついぶっきらぼうな物言いに
なる。
「あら、どうしたの?声が変よ。風邪を引いたのかしら」
でもやっぱり気付かれてしまった。
「いえ、だ、大丈夫です」
慌てて否定したんだけど、首を傾げてこちらを見ている。
「だって頬も赤いわ。熱があるんじゃないかしら」
そう言って手を差し伸べ額で熱を計ろうとしてくる。
「ほっ、本当に大丈夫です。こんなに蝋燭があると熱いんです。そそそれだけです」
それだけは止めて欲しかった。そんなことをされて平静でいられる自信はない。
「そう?ならいいのだけれど…」
「とっ、ところで何かご用事でございますか?」
また声が裏返ったけど、何とか持ちこたえて用件を聞こうとした。こうやって二人でいるとこ
ろを見られたらどうなるのか。一使用人に過ぎない僕がこの城の王女様と話しているところを。
「あのね、今日のためにお父様が新しいドレスを作ってくださったのよ」
そう言ってミーティアはくるりと一回転してみせた。服のことなんて全然興味なくて、どれが
どういいのかさっぱり分からないんだけど、今彼女が来ているドレスがいつものものと違って
いることだけは分かる。
「今日いらっしゃるお客様の国で流行っている型なんですって」
一瞬ミーティアの口が震えたが、そのまま何気ない風を装った。それに僕は気付いたけど、何
もなかったふりをして仕事に戻ろうとした。
「そうなんですか。…よくお似合いです」
この時程紋切り型な言葉があって助かったと思ったことはない。いつものドレスは身体の線が
あまり出ないんだけど、深緑の生地に小粒の真珠で縁取りされたこのドレスは、上半身がぴっ
たりとしていて身体の線を隈無く見せている。ほっそりとした腰から、膨らみかけた胸の辺り
につい目が行ってしまって慌てて視線を上げた。夜会用のドレスのため、大きく開いた襟元に、
何の宝石かは分からないけどきらきら輝く首飾りが映え、そして─
「メイドさんたちにお願いして、髪も巻いてもらったの」
真直ぐな黒髪は丁寧に巻かれて結い上げられていた。それはとても可愛らしかったんだけど、
剥き出しになったうなじが妙に気になって仕方ない。
「…変だったかしら…」
僕の顔が余程変だったらしい。気にしたように問いかけられた。
「いえ、そんなことは…」
白い肌に後れ毛がはらりと掛かって何て言うか、その…ええと…えい、言ってしまえ!どきど
きしてしまったんだ。じろじろ見てはいけないと思うのに、目が吸い付いて離れない。触れた
らきっと滑らかでしっとりした感じなのかな、とか色々つまらないことを思ってしまう。
「…」
はっと我に返るとミーティアは俯いていた。
「あっ、あの…」
「いいえ、いいの」
慌てて取り繕おうとした僕を遮る。
「ごめんなさい、気をつかわせてしまって。…どうぞ仕事を続けてください。ご苦労様です」
しょんぼりと肩を落としてミーティアは部屋を出て行ってしまった。引き止めようとしたけど、
でも僕がそんなことはできない。一礼して顔を上げた時、遠離っていくミーティアが髪に指を
掛け、懸命に巻き毛を伸ばそうとしている様子が見えた。
ごめんなさい。本当はすごく似合っていたんだ。でもそれをどうやって言葉にすればいいのか
分からなかった。
『似合うね、かわいいよ』
とさり気なく言えたらどんなによかっただろうに。僕の心の中の邪な物さえなければ簡単だっ
たはず。そう、昔のように。
あの頃に帰れたら。もう戻れない子供の頃に。
(終)
出歩こうとはとても思えないような寒い日が続いているおかげか、色々ネタが思い付きます。
主姫13〜4歳ぐらいの話です。
いいなぁ みーたんのうなじ 俺もみたいなぁ
>膨らみかけた胸の辺り
ちょっと目線がじじいっぽくないかい?(w
みーたんのドレス姿、綺麗だろうなぁ(*´ー`)うなじ見たい。
217 :
214:2005/12/23(金) 00:03:07 ID:K0UD5mVP0
みーたんのうなじ人気だなw黒髪だしきっと映えるだろうなあ。
>ちょっと目線がじじいっぽく
はい。じじっぽいです。本当n(ry
いわゆる西洋風のドレスって絵とかで見ると結構胸が開いてて、普段そんな格好じゃないみーたんが
そんなドレス着てたらつい目がいくんじゃないかと。
バロック〜ロココ期(ルイ14世〜フランス革命直前)の絵で半チチ見えとる!なのも見たことあるし。
そこまでとは言わないけどドレス姿見たいなあ。どこかにないかなあ。
初代スレからはや一年か…
それにしても初代1の衝撃の告白にはワロタよw
幼馴染でありながら身分違いな関係に萌えだったっけ。
そして好き好きビーム出しまくりなみーたん、やっぱりかわええw
そうか、初代スレが立てられたのはクリスマスイブだったよね。
一周年おめでとうフォー!
エンディングは何回も何回も見たけど、城の中を二人で歩き回るところは
何度見ても萌え死にそうになるよ。
1
これから始まる つらい旅
ドルマゲスに 馬にされ
エイトの幼なじみ ミーティアたん
今日はバースデー でも雑草
走れ走れ ミーティアたん
ドルマゲスを 追いまくれ
飲めや飲めや ミーティアたん
泉の水を 飲みまくれ
2
ラプソーン倒し 戻れたよ
チャゴスと結婚 マジ勘弁!!
アルゴンリングで 主人公と
めでたく二人は 結ばれる
ズコバコズコバコ ミーティアたん
優秀なサラブレッド 産(ツク)るため
あんやめていやんはぁん ミーティアたん
タネ馬同然 主人公
少年ヤンガスに小っさいみーたんとエイトが出てきたら神ゲー
お願い出して(*´Д`)
確かになあ…
つーか本編で主姫の子供時代見たかったよ
トラペッタお出かけ篇とか
ある寒い朝のことでした。
城の中とはいえ使用人の住まう辺りは暖房も行き届かず、明け方には冷え込みます。雪のほと
んど降らないトロデーンですが、その分冷たい風が吹き付けて底冷えするのでした。石造りの
城壁はしんと冷えて、敷物や壁掛けのほとんどないこの辺りはとても寒く、毛布を何枚掛けよ
うと朝にはすっかり冷えてしまいます。
「はっくしゅん」
なので、その朝エイトが自分のくしゃみで目を覚ましたのも無理はありませんでした。
(もう起きなくちゃ)
使用人の朝は夜明け前から始まります。特に夜明けの遅い冬場など真っ暗な内から作業を始め
なければなりません。王様やミーティア姫様が目覚める前にはもう、準備が整っていなければ
ならないのですから。
(でも寒いなあ。出たくないよ)
いくら暖房がないとはいえ、寝床の中には温もりがありました。寒い外に出るのは勇気が要り
ます。目が覚めてむずむずし始めたしもやけの足をきつい靴に押し込む辛さを思うと、どうに
も躊躇してしまうのでした。
(こうしていたって仕方ないや。えいっ!)
心の中で気合を入れ、勢い良く起き上がります。一番下っ端のエイトがぐずぐずしている訳に
はいきません。
と、その時枕元で何かががさごそと音を立てました。
(えっ?!)
聞き慣れない物音に驚いて枕の辺りを探りました。すると眠る前には確かになかった何かの包
みが置かれていたのです。エイトは急いでその包みを開きました。
「あっ」
包みの中身は靴下だったのです。薄暗がりの中でよく見ようと持ち上げたところ、カードがは
らりと落ちました。
エイトへ
しもやけが痛いと聞いたのでくつ下を作りました。
いつもお仕事ありがとう。
とってもかんしゃしています。
ミーティア
カードにはそのように書かれていました。夜中にこっそりここまで降りてきたのでしょう。そ
れにこの靴下の色は見覚えがあります。前にミーティア姫の部屋で遊んだ時に隅に置かれてい
た毛糸玉のものです。そういえばその時に「しもやけで足が痛痒い」と言ってしまったことを
思い出しました。暖かい姫の部屋に入って、痒くなった足を掻いていたのを見た姫に問い詰め
られたのです。
エイトは深く感謝してその靴下を履きました。毛糸は柔らかく温かで、しもやけも我慢できそ
うです。後で姫にお礼を言って、履いている靴下を見せてあげました。
それからずっと、エイトはその靴下を履いていました。おかげでしもやけの痛痒さも随分楽に
なりました。
でも一つだけ、ミーティア姫に言わなかったことがあります。その靴下は右と左でちょっぴり
大きさが違っていたのです。おかげで働いているといつの間にか片方がずり落ちてしまうので
した。
(終)
おつまみありがとー
なかなか勿体無くて履けない主人公
色が女の子ぽかった?等と色々履いてくれない理由を考え悶々とするミーティア姫
そんなんもいいなぁ
しもやけエイトたん(;´Д`)ハァハァ
違うかw
かわいいです。こういうの大好き。
感想どうもありがとうございました。
確かにそれもいいなあ>勿体なくて
エイトがもう少し大人だったらありだったかも。
今年最後の保守
来年も主姫で萌えまっしょい
あけましておめでとうございます。
今年も主姫萌え!で行きますぜ。
連載になりますがss置いて行きます。
嵐の後の朝のことだった。
港町ポルトリンク近くの海岸を一人の男が歩いている。散策という風ではない。男は岩場の陰
まで隈無く目を配っていたが、ふと、アーチ形になった岩の向こう側に何か自然の物ではない
ような物体を見付けた。
(しめしめ)
彼は防具屋であった。色々と工夫を凝らした防具を作るため、様々な物が漂着する海岸を─特
に今朝のような嵐の後に─歩くことを常としていた。もしかしたら竜のうろこのような優れた
材料、あるいは遠い異国で作られる強力な防具や武具かもしれない、と期待しながら近付く。
が、
(おやおや、土左衛門のようだな)
それは明らかに人の形をしていた。昨夜は大嵐だったし、難破した船があってもおかしくはな
い。嵐でなくともうっかり船から落ちてそのまま溺れてしまうこともある。
実際、男はそうした遺体に何度も遭遇していた。
(ならば葬ってやろうか。ここに置いておけば魔物を呼ぶだけだ)
放置すればそれが呼び水となって魔物が暴れ出す。遺体は食い荒らされ、道行く旅人にも被害
が及ぶ。
弔ってやろうとさらに近付くと、その死体は子供であることが分かった。庶民が着るようなく
すんだ青の麻のチュニックにズボン、短い黒髪が男の子であることを物語る。
(気の毒になあ。親御さんも悲しかろうに)
子供はアーチ形の岩の陰に引っ掛かるようにうつ伏せに倒れていた。手を合わせた後、仰向け
にしようと身体に手を掛けた時、微かな違和感を感じた。
(ん?これは?)
冷えきってはいたものの、身体にはまだ微かな温もりが残っていた。手首を取れば弱々しいな
がらも脈が触れる。
(これは大変だ、何とか助けてやらんと)
男は子供を抱え上げ、ポルトリンクへの道を急いだのだった。
※ ※ ※
男の子が目を開くと、見覚えのない天井が映った。
「気がついたかい」
聞き覚えのない声、心配そうに覗き込む人の良さそうなおばさんの顔も記憶にはない。
「ここ、どこですか…?」
ずいぶん掠れてはいたが、どうやら自分の声のようだ。ちょっとだけ安心して辺りを見回す。
縄やら何に使うのかよく分からない道具がところ狭しと、けれども整然と並んでいる部屋だっ
た。
「ポルトリンクだよ」
ポルトリンク?聞いたことのない地名に男の子は顔を顰めた。
「昨夜の嵐で事故に遭ったんだろ?お前さんは運がよかったんだよ、溺れ死んでしまわないで
海岸に打ち上げられたんだから」
そうか、と男の子は納得した。思い出せないけど自分は船に乗っていて嵐に遭い、海に落ちて
流れ着いたのだ、と。
「名前は言えるかい?歳は?」
意識が戻ったとなるとおばさんは矢継ぎ早に聞いてくる。
「エイト…です。八歳です」
知らない大人だし、お世話になっているのだからきちんとしようと男の子─エイトはできるだ
け丁寧に答えた。
「そうかい、そうかい、エイトって言うんだね。それでエイトはどこから来たんだね?ご両親
の名前は言えるかい?」
「僕…」
ふと、脳裏に何かの映像が浮かぶ。けれどもそれはあっという間に駆け抜けて消えていった。
後にはただ、空白ばかりが残る。
「…分かりません」
「分からない?何も覚えていないってことかい?」
眉を顰めて問うおばさんの言葉にエイトも困惑した。できることなら答えたかったのだが。
「…はい」
おばさんは深刻そうにエイトの枕上を見遣った。するとこつこつと音がしてもう一人の人物が
エイトの視界に入って来る。
「気分はどうじゃな」
優しい口調で問い掛けてきたのはかなり年老いた神父だった。齢のせいか手がわなわなと震え、
同時に言葉までも震える。
「はい、大丈夫です」
「うむ、良きかな良きかな…あれ程の嵐で生き残っただけでも神のご加護というものじゃて」
「嵐…」
先程から「昨夜は嵐」と聞かされてきたが、そんな記憶はない。昨日は確か…
「痛っ!」
鋭い痛みが頭を刺す。こめかみを押さえ、蹲るエイトの額に神父が手を載せる。
「波間を漂ううち、どこかで頭を打ったのじゃろう。何も覚えておらんのはそのせいじゃな」
そこで言葉を切り、エイトの頭を撫でた。
「今日はゆっくりお休み。どうすればいいのかはそれから考えればいいことじゃ」
※ ※ ※
一見ネズミのような生き物が、先程エイトが助け出された海岸の辺りをうろうろしていた。大
人の掌程度の大きさで、茶色の毛皮に黒い毛が鬣のように流れ、尾の先に毛がふさふさと生え
ている。餌でも探しているかのように時々立ち止まって辺りを見回してはまたちょこちょこと
走り出す。
と、そこへ一人の男が街道から波打ち際へ下りてきた。男は波打ち際を跳ね回っているかのよ
うに見えるそのネズミに目を留めると
「ややっ!」
と声を上げ、駆け寄った。そして辺りを注意深く見回し
「誰もいませんぜ」
とネズミに向かって囁く。するとネズミは男に向かって感謝の意を示すかのように頷き、白い
煙に包まれたかと思うと、老人の姿になった。
「やっぱりグルーノ老だったんですね」
「うむ、久しぶりじゃの…っと旧交を温めあっておる場合ではないわ!お主、里からの連絡は
聞いておるはずじゃな。我が孫がこの海岸に難破を装って漂着することになっておったのじゃ
がおらんのじゃ!」
老人─グルーノは地団駄を踏みながら喚く。
「実際昨夜はこちらもひどい嵐でして…あの小屋を出てこちらに向かった時にはもう、この海
岸には誰もいなかったんですわ。砂浜には大人の足跡が一つ、残っているばかりでして」
と男は頭を掻きながら答えた。
「ど、どこに行ったか分からんのか?!」
食い付かんばかりの勢いでグルーノは詰問する。
「はっきりとは…何せ草地には足跡が残らないもので」
「よ、よし、すぐに捜し出さねば。すまんがお主、ちょっとワシに付き合ってくれんか。何し
ろ人界の者とは関わってならんことになっておるでな、ネズミの姿のままでは隣街まででさえ
何日かかるか分からんのじゃよ」
一気にまくし立てるとグルーノは再びネズミの姿に変わった。そして「早く行こう」とばかり
に男の足を突く。
「へえ、元はと言えば俺が遅れたのがいけなかったんですし」
男はネズミをポケットの中に入れてやると歩き出した。
(続く)
エイトとみーたんが出会うまでの話の予定です。
あちこちの話で小出しにしてきたエピソードをまとめていくつもりです。
お年玉かい。
豪儀だね。
>>235 お年玉ありがd。
チーズおじさんナイスw 続きも楽しみにしています。
╋┓"〓┃ ●┃┃
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┏ゞ人┯∧从┯〆━┓
ゝ\冫。、〃Ν゙△"ゞ┃
┃<× ∧_∧゙ ∠">
┠Σ○<`∀´>○そ┨
▽< ヽ、 ノ 乙≧
┃ Σ (⌒ヾ |、 てく
┠-ム ヽ_ノ ノゞァΖ┨
`。、i/o レ'了"x个o
┃ `、~"+√▽!ヽ◇┃
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ゝ\冫。、〃Ν゙△"ゞ┃
┃<× ∧_∧アイゴ-!!
┠Σ○< #>○そ┨
▽< ヽ、○ ノ 乙≧
┃Σ/(⌒(⌒ノ、-──
┠-┼ ノ ノ ノゞァΖ┨
`。/<_<_7"xo\┃
┃////▽!ヽ◇o\
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< >カキイイィ─ン!
/V\
>>238-239 8主とミーちゃんがいちゃいちゃしているところに現れて、
邪魔されたことに怒ったSHT8主にたたき出されたわけだな。
感想どうもありがとうございました。
お年玉…そうか、そうだったな、その存在をすっかり忘れてたよw
>>231-234続き行きます。
街を出たところで変な生き物に襲われた。角の生えたやけに大きなウサギで、エイトの姿を見
るなり突進してくる。慌てて逃げようとして転びかけ、そこにウサギがぶつかってきて息が詰
まる。今は大丈夫だったがもしあの角が刺さったら大怪我してしまう、そう思ったエイトはと
にかく必死になって逃げ出した。
走りに走り、突進するウサギをぱっと躱して木に激突させて振り切ったところで漸くエイトは
一息吐いた。
エイトは先程出てきた街で「リーザス村には大きなお屋敷があり、そこならば子供の働き手を
探しているかもしれない」という話を聞いて、そこに行こうと決めたのである。ポルトリンク
─今出てきた街の名だ─の港もそのお屋敷の主人の持ち物で、何かあればすぐに連絡が行くこ
とになっているらしい。
「もし坊やのご両親が来たらすぐに知らせてあげられますよ」
とおばさんは言っていた。ポルトリンクはいい街だったけど子供では足手まといにしかならな
いらしい。邪魔者扱いされるよりは、と小さな頭で考えて追い出される前に街を出たのである。
おばさんがチーズと堅パンのお弁当を、神父様が聖水と薬草を持たせてくれてリーザス村まで
の短い旅になるはずだった。街の人も「ずっと海沿いに進めば夕方には着くよ」と言っていた。
なのにどうしたことか。街を出てすぐに魔物に襲われて無闇に逃げ惑って方向感覚をなくし、
今は山間の道を進んでいる。日も暮れかかり薄暗くなってきて心細さは倍増した。
と、行く手の丘の上にちらちらと光る物が見える。灯だ!きっと村なんだ、道は間違っていな
かったんだ!元気づけられたエイトの足は速まった。途中変な岩がこちらを見てにやにやとし
ていたように思ったが、見ないようにして丘を登る。
が、辿り着いた先には古い小屋が一軒あるばかりだった。落胆しつつもここがどこなのかだけ
は知っておかなければならない、エイトはそう思って小屋の扉を開いた。
「あの…ごめんください」
「ややっ、これはまた小っこいお客さんだべ。どうした、坊や?一人か?」
小屋の主と思われる男が声を上げる。小屋の中は意外にこざっぱりとして居心地がよさそうだっ
た。
「あの、ここ、どこですか?」
「なんだ?迷子になっただか?ここは荒野の山小屋だべ。この先には荒野が広がっていて何も
ねえだべよ。子供一人で行くような場所じゃねえべ」
「えっ、そうなんですか?リーザス村じゃないんですね」
男の言葉にどっと力が抜ける。へなへなと座り込んでしまった。
「坊や、しっかりするだ。今水やっから、な?」
コップがエイトの口許に当てがわれた。とても香しい、おいしい飲み物だと思ったが、すぐに
それはただの水だと分かる。それでも半日歩き通しで飲まず食わずだったエイトはごくごくと
飲み干した。
「坊や、どこから来ただ?リーザス村はな、ポルトリンクの反対側だべよ。ここからだと大人
の足でも二日、さね」
男の説明にエイトはさらに落胆した。
「そんなに遠くなんだ…」
それにあの街の近くには変なウサギがいる。また追い回されたら…と思うと気が滅入った。
「そうさね、この先は荒野で何もねえが、ずっと進んで洞門を抜けると旅人の教会があって、
その北に大きなお城があるべさ」
「お城…」
「この辺りもそこの領地だべ」
「へえ」
行ってみようかな、とエイトは思った。追いかけられるくらいなら荒れ地なんて、とつい思っ
てしまったのである。
「トロデーン城まで大人の足で二日ぐらいだべ。荒野を無事抜けられたならだがよ」
リーザス村もトロデーンも、どちらもエイトの知らない場所だった。けれども村は何となくど
んな場所か見当がついたが─覚えている訳では無いのだが、自分はもともとそういう場所にい
たのかもしれない─、お城は見たことがない。多分。
「僕みたいな子供でも働けますか?」
どんなお城なのか早くも心に描きながら問う。
「おやまあ、気の早いことだで。ま、お城っちゅうもんはいっつも人手の欲しい所らしいから、
坊やでも働けると思うけどよ…
大体坊やの親御さんはどこにいるんだね。まさか孤児かい?」
苦虫を噛み潰したかのような顔で問いかけられ、エイトははっと我に返った。
「親…」
ポルトリンクで聞かされた話を思い出しながら男に話す。
「あの…乗っていた船が難破したみたいで…親とはそれっきり…」
どうも腑に落ちない。でもこれしか自分の置かれている状況を説明することができない。
「何と、おらんのか!そりゃ気の毒に…」
男は腕を組み、考え込んだ。
「この先の荒野には本当に何もねえ。大の大人でも道を見失って行き倒れることも多いだよ。
まして子供ではひとたまりもねえ。
悪いことは言わねえ、お城に行きたけりゃ今来た道を戻ってリーザス村から回った方がいいだ」
「そうですか…」
「今夜は泊まってけ。お代は心配すんな、こんな子供からは取れんから」
※ ※ ※
不毛の地。太陽の光が凶悪に感じられる程無慈悲に照りつけ、容赦なく身体の水分を奪ってい
く。
(ウサギの方がましだったかな)
小屋での忠告を聞かずに荒野へと出てしまったエイトはたちまち後悔した。戻ろうにも起伏の
多い地形は行く手を見失わせ、地中から現れる手が足を掴んで人を地面の中へ引き摺り込もう
とする。どうやらその魔物は人の臭い、というよりは重みで獲物の存在を感知しているらしく、
身の軽いエイトは幸いにもそれにほとんど遭遇しなかった。それでも休もうとついうっかり砂
地に座り、足首を掴まれた時は肝を冷やした。叫び声を上げれば他の魔物を呼び寄せる。無言
のまま必死の思いで手近な尖った石でその手を殴る。手が離れた隙に岩の上に避難して事無き
を得た。
それからは岩伝いに歩き砂地は駆け抜けるようにした。しかし一定の速さで歩けない上に足場
の悪い岩場を歩くためにひどく消耗する。
漸く日陰の岩を見つけて休むことができた。小屋でリンゴを一つもらっていたのを思い出し、
袋から出して齧る。
(まだ続くのかな…)
パンとチーズは取っておいた方がよさそうだ。
(こんなに暑いんだったら夜、歩いた方がいいかも)
その考えが良いもののに思い、涼しくなるまで昼寝することに決めたのだった。
やがて日が陰り夕風が吹き始める頃、エイトは目を覚ました。一つ伸びをして立ち上がろうと
したが、身体が重い。硬い岩の上で寝たせいなのか節々が軋み喉が乾いてぺたぺたと貼り付く
ような感じすらある。
(今夜のうちに荒野を抜けてしまおう)
そう決心したエイトはポルトリンクから持ってきたパンとチーズを慎重に半分だけ食べ、水筒
の水で喉を潤す。いざという時のために水は残して立ち上がった。
幸い月夜で、目が慣れてしまえば視界には何の問題も無い。夜露が降りてきて昼間よりも呼吸
が楽なくらいである。
エイトはせっせと足を動かし続け─途中、パンとチーズの残りを全部食べてしまったが─払暁、
漸く荒野を抜けたのだった。
(続く)
更新されてるね。
エイトー泥の手や岩のいる地帯に入るならウサギのほうがましだぞー。
>必死の思いで手近な尖った石でその手を殴る。
リアルに想像すると、無数に出てきた泥の手に引きずり込まれそうになる様は相当怖い!
一方その頃、不運な行き違いの連続でエイトに会えずにいる、ネズミの姿のグルーノを連れた
男が漸く荒野の山小屋に到着した。
「おやおや、千客万来だべ」
小屋の主人が出迎える。
「こんな辺鄙な場所に昨日、今日と人が来るとは」
その言葉にはっとしたグルーノがポケットの中から男に合図を送る。
「おや、繁盛しているのかい。そいつは羨ましい限りだぜ」
心得た、とばかりに何気ない風を装って尋ねた。
「まあ、タダで泊めてやったから儲かったわけじゃねえんだが…子供が一人、迷い込んで来て
よ、最初はリーザス村に行こうとしていたらしいんだが反対方向だと知るとこの先のトロデー
ン城に行く気になっちまって」
「ほう」
男は深刻な視線をグルーノと交わし合う。
「まあ知っての通りこの先は荒野で何もねえ。悪いことは言わんから戻った方がいいぞ、と言っ
て送りだしてやったんだべ」
「なる程な」
しかし二人は子供とはすれ違わなかった。この小屋までは山間の隘路で、目を配りながら進ん
で行き違ってしまうことはまずない。どうやらエイトは忠告を聞かずに荒野へと出て行ってし
まったようだ。
「いや、こちらも先を急ぐ旅でね。ちょっと道を確かめたくて寄らせてもらったのさ。どうも
ありがとよ」
一人と一匹は主人に会釈して小屋を出た。そして荒野へと下り、小屋からは絶対に見えないだ
ろう、というところでグルーノが人形へ戻った。
「まずいことになったな」
「へえ、左様で」
「荒野で行き倒れようものならまず助からんぞ」
グルーノは腕組みして思案したものの、良い策などすぐに浮かぶはずもない。男もつられて腕
組みして視線を地面に落とした時、ある物に気付いた。
「ん?これは?」
「どうした?」
男はかがみ込んで砂地の痕跡を調べる。
「足跡…ですかね、子供の」
「しめた!」
グルーノは男の言葉にぽん、と手を打った。
「砂地じゃから足跡が残ったんじゃな。よし、跡をつけるぞ」
※ ※ ※
荒野を何とか通過できたものの、今度は「飢え」がエイトの身に襲いかかる。幸い小さな流れ
を見つけることができたので喉を潤すことはできたが、食べられそうな物は何もない。足元に
はコケモモが群生していたが、まだ季節ではなく甘酸っぱいその実を食べることはできなかっ
た。
蜂がぶんぶんと飛び、花が咲く緑の草原。けれども食べられるものは何もない!エイトは座り
込み、傍の花の上を蜂が飛び回る様を呆然と眺め遣った。
(蝶や蜂だったら花の蜜で生きていけるのに)
とその時手近に薄紫の花、釣鐘草が咲いているのに気付いた。これは確か…
(これ、蜜を吸えるんじゃなかったかな?)
思い付いたら手が勝手に花を摘み花柄を口に含んでいた。すると花の香しい蜜が口の中に流れ
込む。その甘味は疲れた心を癒した。もちろん飢えを満たすことなどできなかったが、「生き
よう」という気力を取り戻すには十分だった。
手当たり次第花を摘んでは蜜を吸う行為を繰り返し、漸く立ち上がることができた。
落ち着いて辺りを見回すとそれなりに食べるものはあった。近くの潅木には木いちごが真っ赤
に熟れていたし、手前の草むらはスイバの物だった。
(ええと、若い芽はちょっと酸っぱくて食べられるんだっけ)
近寄りながら思い出した時、エイトは立ち止まった。
(こういうことは覚えているのに、どうしてもっと大切なことが思い出せないの?)
例えば自分の親とか。住んでいた場所とか。船に乗ってどこへ行く予定だったのか、とか。分
かるのは自分の名前と年齢、そして日常生活に必要な細々としたことばかり。
助け出され連れて行かれた街には子供がいた。その傍らには両親が立ってその子を見守ってい
る。行き違う旅人にも子供連れがいた。子供一人で歩いているのは自分だけだった…
(お父さん、お母さん…)
※ ※ ※
エイトの足跡を追っていた二人だったが、あっという間にそれを見失ってしまった。岩陰に続
いていた足跡が急に乱れ、地面にたくさんの窪みができている。何者かによって襲われた印だっ
た。
「いかんな」
「この辺りには土中に人を引きずり込む魔物が出るんですよ。それに襲われたのかも」
その言葉にグルーノは土を一握り掬い取り、臭いを嗅いだ。
「血の臭いはせんな…魔物に喰われてはおらんようだ」
「でもお孫さんは竜化できるんでしょう?」
「いや」
男の問いにグルーノは首を横に振った。
「できんはずじゃ。というよりワシがそのように仕向けた」
「そんなことが可能なんですか?竜神族の血を半分も引いておれば竜化することは可能だった
と思いますが」
「よいか、我々にとっての竜化とはヒトが言葉を覚えることによく似ておる。子供が見様見真
似で何かの拍子に変化し、やがて自らの意志で竜化呪文を操れるようになるのじゃ。決して本
能ではない。
ヒトは言葉を覚えるべき時期に外界から切り離されれば言葉を失ってしまう。それと同じよう
に、竜化を覚え始める時期にワシはあれをそうさせなかった」
「なぜです?このように人界追放の可能性もあって、竜化できた方が安全だったでしょうに」
「ヒトは竜を恐れる」
「そんなことよりも身の安全でしょう」
「身の安全を考えたら竜化だけは断じてならんことじゃった。通常我々が竜に変化する時、体
力と精神力を消耗する。しかしそれは一時のこと。休めばすぐに回復し、特に障害が起きるよ
うなことはない。
じゃがあれは半人、身体の中を流れるヒトの血が竜化の際に得られる力に耐えられん。竜化す
れば生命を削る。
おぬしも聞いたことがあろう。かつて里が人界に在った頃、当時の竜神王がヒトと通婚し、得
られた子が竜化の度に生命を削って酷く短命となり、その家系は途絶えたという話を」
「ええ。それから一族の長は世襲ではなく最も優れた者から選ぶようになった、と」
グルーノの言葉に男は深く頷いた。
「まあ、そういうことじゃ。いくらあれの父親が里への道をほぼ踏破できる程の力の持ち主で
あったとて所詮ヒトはヒト。竜化の際の消耗に耐えられん。かつてはヒトの中にも強大な魔力
も以てして竜化呪文を操る者もおったらしいがの。
それに…」
グルーノは悲しそうな顔をした。
「ウィニアは耐えられんかった。竜神族の妊娠期間は三年半、ヒトより長く胎におることによっ
て力に堪え得る能力を身につける。ヒトの器がまず形作られその後竜の能力が備わるのじゃ。
じゃがエイトはそこまでおられんかった。竜化の能力はまずないと思ってよい」
「と言うことは竜の炎にも?」
「無論。辛うじて雷に耐える力は備わったがの。我々の中ではかなり珍しい性質じゃが。見た
目が細い割に力が強く、身が軽いなどの竜神族の特徴を受け継いではおる。じゃが中身はヒト
と同じと言っても過言ではないんじゃ」
小高い砂丘の上まで来て、グルーノは立ち止まった。じりじりと照りつける太陽と熱を帯びた
砂ばかりが続く荒野、見渡す限り生きて動いているのはグルーノたち二人だけだった。
「早く見付け出さなければ…」
二人の間には焦燥の色ばかりが濃い。
(続く)
ところで姫はいつ出てくるの?
まぁそうあせるな
>>253 姫は今出番に備えて身支度をしておる
セリフの確認やら発声練習
3年も腹の中にいたらエッチするとき困るな
旦那の浮気をどうするか
みーたん早く早くー(・∀・)ワクワク
荒野を探索すれども少年の姿は影も形もない。運悪く雨風の強い日があって、足跡が残ってい
たとしてもすっかり消されてしまっていた。
「見事なくらい何の気配もないですな」
数日後、お手上げといった雰囲気で男は言った。
「血の臭いもなく、行き倒れた様子もない。これは何とか荒野を抜けられたんじゃろうか」
グルーノは西の岬へと続く荒野を抜ける隘路の方を見遣った。一見切り立った断崖が行く手を
阻んでいるように見えるが、一際鋭く突き出した崖の横に通れる場所があるのである。
「行ってみますか。確かあの小屋でも『トロデーンに向かった』と言ってましたし」
「うむ、そうじゃったな」
男の言葉に頷いて二人はその細い通路を辿り始めた。
「ところでの、」
しばらく無言で歩いた後、グルーノがおもむろに口を開いた。
「荒野を抜けたら後はワシ一人で行った方がいいと思うのじゃ」
「しかし」
「竜神王様は『人界に関わってはならぬ』と仰っておいでじゃった」
男の反論を遮って続ける。
「この姿で歩き回ってもう随分になる。ヒトの前に姿を現してはおらんとはいえ、そろそろ限
界じゃろう。それにお主にも仕事を中断させてしもうた」
「いいんですよ、監視の仕事は時に退屈で。それなりに楽しませていただきましたし。同じ里
の者と話すことができて嬉しかったですよ」
「元々この大陸を選んでエイトを下したのも、お主がおるからということもあったんじゃ。南
の大陸は未だに伝染病が蔓延しておるし、西の大陸、あれの父祖の国では身元が明らかになれ
ば不都合があろう。王位継承争いに巻き込まれては不憫じゃしの」
砂地だった地面が徐々に固くなり、所々に草が生えてきた。もうすぐ荒野を抜けられるだろう。
「西の大国の王子として幸せに暮らす筈じゃったあの子の両親を奪い、せんでもよい苦労をさ
せることになってしまったのじゃ、せめてあの子自身が選んだ人生を歩ませてやりたい。それ
が娘の最後の願いでもあったのじゃし」
グルーノはそう言った後、無言のまま歩を進めた。
角を曲がった途端、青草の匂いが清々しく鼻腔に広がった。荒野を抜けたのである。
彼方に人影を認めて二人は潅木の茂みに隠れた。
「どうやらここまでのようじゃの。ここからはワシ一人で行く」
「どうぞお気を付けて」
「なあに、簡単にくたばったりせんわい。猫なんぞ一睨みで追い払ってくれるわ」
と呵々と笑い、すぐ真顔に戻って言った。
「長く付き合わせてすまなかったの」
男は頷き、短く答えた。
「落ち着いたら連絡を」
「もちろんじゃ。お主のおかげで随分助かった。礼を言う。
それからの、迷惑ついでにチーズを一欠片分けてくれんか。この様子じゃとまともなものは食
べておらんじゃろし」
「お安いご用でさ」
袋からチーズを出す間にグルーノはネズミの姿へと変化した。男がチーズを渡すと口に加え、
感謝のつもりなのか前足をちょんと上げる。
「ご幸運を、グルーノ老」
男の呟きに振り返りもせず、ネズミとなったグルーノはちょこちょこと草叢の中へ走り去って
行ったのだった。
※ ※ ※
エイトは何日もかけて辿り着いた先をゆっくりと探索した。ここは西の方に突き出た岬でほと
んどが草原だった。初めは何もない、と思っていたが意外にフェンネルやチャービルなどの食
べられるハーブ類が生えていて辛ろうじて飢えをしのぐことはできる。
雨風を防ぐ程度には木立もあり、水もあって、何とか食べる物がある。
(ここにいてもいいかな)
変な魔物も少しはいたが気になる程ではなかったので、エイトはそんな気持ちになった。
しかし、それはつかの間のことであったのである。
ある朝のこと、木立の中で目を覚ましたエイトはよく知っている生き物が草地をうろついてい
るのに気が付いた。
(牛だ!)
牛乳が飲めるかもしれない、そう思って牛を驚かさないようにそうっと近付いた。運のいいこ
とにそれは子牛を連れた乳牛だった。人懐っこくこちらを見る母牛に安堵して撫でてやろうと
手を伸ばした瞬間、罵声が響く。
「こらっ、あっちさいげっこの。この牛泥棒が!」
牛に気を取られ気付かなかったがどこからともなく少年─エイトより数歳年上だった─が現れ、
エイトを怒鳴りつける。
「ぼっ、僕ちがいます。ど、泥棒じゃありません」
慌てて訂正しようとしたが、それは無駄だった。
「おめ、他所もんだろ。他所もんは泥棒に決まってるだ。出てげ、ほれ、ぶたれねえうちに出
てげ!」
手にしていた棒を振り回し、こちらへと迫る。
エイトは仕方なく逃げ出した。
走りに走ってもうあの少年からは見えないだろう、という所まで来て漸くエイトは一息吐いた。
(どうしよう)
居心地の良かった岬での生活には戻れそうもない、あの少年が度々来るのならば。新しい場所
を探さなければならない。
とぼとぼと海に沿って歩いていると山の向こう側に何かの建物がちらりと見えた。すっかり忘
れていたが、山小屋のおじさんは「荒野を抜けるとお城がある」と言ってなかったか。
(そうだ、行ってみよう)
だがしかし、海は断崖、そして急斜面の山が行く手を遮っていてあちらへは行かれそうもない。
途方に暮れたその時、腹が鳴った。そう言えば今日は朝から何も食べていない。牛に気を取ら
れ、その後は逃げることに必死でささやかな荷物も木立の中に置いてきてしまったようだ。
と言って戻ればまた追い立てられる。今度こそ打たれてしまうだろう。捕まって牢屋に入れら
れてしまうかもしれない。エイトは荷物を諦めることにした。諦めたと同時に疲れがどっと出
て、座り込む。近くのせせらぎから水を掬って飲むとたちまち睡魔が襲ってきて、その場で眠
り込んでしまった。
それから数刻が過ぎただろうか、エイトはくしゃみして目を覚ました。どうも草の葉が鼻をく
すぐったようである。伸びをしながら起き上がると、足元に変わった毛色のネズミが一匹ちょ
こんと座っていた。目が合うとネズミは恐れる風もなくこちらを見返す。
(食べられるかな)
そう言えば肉なんてもうずっと食べていない。このネズミくらいだったら捕まえて食べること
ができるかもしれない。エイトはそう考えた。
そんな不穏なことが考えられているとは露知らず、ネズミは足を駆け登ってきた。よく見ると
口にチーズが一片、くわえられている。思わずエイトが手を出すとネズミはチーズを掌の上に
落とした。
「くれるの?」
自分に渡すかのような行動を不思議に思って訊ねるとネズミは短く「チュ」と鳴く。それを「い
い」という返事に受け取ってエイトはそのチーズを食べた。
チーズを最後に食べたのは何日前だっただろう。人の作る食べ物がこんなに美味しいなんて、
と思いながらあっという間に平らげた。
「どうもありがとう。おいしかった」
人心地ついてネズミにそう言う。どこから持ってきたものだったのか、とても美味しくて懐か
しい味がした。
「行かなきゃ、夜になっちゃうし。ネズミさん、さようなら」
エイトは立ち上がって歩き出そうとしたが、ネズミは足元をぐるぐる回って離れようとしない。
「…お前、どうしたの?」
足を踏み出せず、仕方なく問いかける。元より人の言葉など分かるはずもないと思っていたの
だが、ネズミは回るのをやめこちらを見上げた。小首を傾げる様子は物言いた気で、人ならば
何か言ったかもしれないが生憎その姿はネズミのもの、口から出るのは「チューチュー」とい
う鳴き声ばかりだった。
「…一緒に来る?」
手を差し伸べるとネズミは掌に飛び乗った。
「僕、エイトだよ。お前の名前…どうしよう」
手の上のネズミを見ながらエイトは思案した。
「チロル、は何か変だし、プックルも違うし…そうだ、トーポはどうかな?どう?」
返事のようにネズミ──トーポは「チュ」と鳴いて答え、それからの旅の友となったのだった。
西の岬からトロデーンへは山肌をくり抜いて作られた随道がある。しかし運悪くエイトの目線
からは潅木の茂みに覆われていて見つけ出すことができず、結局崖をよじ登ることとなった。
トーポが先に進路を示してくれたし、身の軽かったエイトは苦労しつつも何とか山越えに成功
した。
山を下りきった時、雨が降り出した。飲まず食わずで山越えしてきたエイトは喉の乾きが治まっ
てほっとしたが、今度は雨に体温が奪われて冷え始める。どこかで雨宿りしなければ、と思っ
たものの身を寄せる岩陰も大きな木も見当たらない。
いや、正確には道を逸れれば木立があり、旅人のための教会もあって助けを求めることができ
たはずなのだが、雨に顔を俯けていた上に募る雨足に煙って見付けることはできなかったので
ある。道沿いには潅木があるばかりで何の足しにもならなかった。
それでももう少しでお城が見えるからそれまで我慢しよう、と何の根拠もない期待で心を奮い
立たせて足を動かし続ける。でもそれも限界だった。
雨風を防げるはずもない大きさの潅木に身を預けるようにして座り込むと、もう動けない。何
も食べていない上、ずっと歩き通しで疲れ切った身体に冷たい雨が降り注ぐ。けれどもそれを
防ごうという力はもう残っていなかった。
手足を投げ出すようにして座るエイトにポケットの中からトーポが顔を出し、注意を促すよう
に小さく鳴く。
「トーポ…」
ポケットの中から出してやると手の中に収まった。動物のふかふかした手触りが心を慰める。
「ありがとう…」
もう動けないだろう。子供ながらもエイトは悟った。さっきからトーポが手の中にいるのに全
然温まらない。トーポも寒そうに震えている。
「トーポ、ありがとう。もういいよ、ポケットにお戻り」
手の中にいるよりはましだろう、とポケットの中に帰そうとしたがネズミは暴れて剥き出しの
項に駆け登り、襟巻きか何かのように巻き付いた。
「ごめんね、トーポ…」
もう温もりも感じられない。意識がだんだん遠離っていく。
「お…父さん、お母さん…どこに、いるの……」
※ ※ ※
「やれやれ、ひどい降りになってしまったのう」
トロデーン城の主、トロデ王は領地の見回りの帰りに雨に降られていた。
「もうすぐ城門でございます。今しばらくのご辛抱を」
「うむ。早く帰って姫と熱いお茶を飲みたいものじゃ」
馬車の中で近従とそんな会話がされていた時、急に馬車が止まった。
「何事です?」
近従が窓から身を乗り出して御者に問いかける。
「はっ」
護衛に従っていた近衛兵が駆け寄ってきた。
「どうやら子供の行き倒れがいるようでして…」
「斯様な者など放っておきなさい」
「待て」
権高な近従の言葉をトロデ王が遮る。
「我が領内でそのような者が骸を曝すことはワシが好まぬ。最早事切れておるのならば埋葬し、
まだ息があるのならば助けてやるように」
「ははっ」
王の言葉に兵は急いで子供の所へと向かった。そしてその身体を抱きかかえて戻ってきた。
「どうじゃ?」
「はっ、まだ辛うじて息はあるようでして…子供を守るようにネズミが首廻りを温めておった
のがよかったようでございます」
トロデ王は兵の腕の中にいる子供に目を遣った。黒っぽい髪、痩せてずぶ濡れで、頬は蒼ざめ
ている。歳の頃はただ一人の娘と同じくらいであろうか。難儀な旅をしてきたのか手足は傷だ
らけであった。ポケットの中から件のネズミがこちらを窺っていたが、トロデ王と目が合うと
すぐに頭を引っ込めて隠れてしまった。
「…馬車の中へ」
あまりの不憫さに目頭の熱くなった王は一瞬言葉を詰まらせた。
「お、王様、ですが」
「見てみい、こんなにずぶ濡れになって。見れば我が姫と同じ歳の頃ではないか。助けてやれ
るものなら助けてやろうぞ」
「ははっ」
近従が席を移って片側を空けてやり、兵が馬車の中に運び入れようとした時、子供が呟いた。
「お父さん…」
「むっ?」
だが子供は再び意識を失ってしまった。トロデ王はしばしの間顔を俯かせていたが、
「さっ、早う城に戻るぞ」
と務めて明るく周囲に命じ、馬車は目前のトロデーン城目指して走り出したのであった。
(エイト篇・終)
これでエイト篇は終わりです。
次からみーたん篇です。
良かった良かった無事エイト拾ってもらえたよ
心変わりしてバッドエンドになったらどうしようかとオモタヨ
>>266 書いてみた
「どうやら子供の行き倒れがいるようでして…」
「斯様な者など放っておきなさい」
「うむ。そうじゃな」
ドラゴンクエスト8 完
完っていうか始まってすらいないw
「よくもわしの孫を見殺しにしてくれたな」
ドラゴンデストロイヤー〜序章〜
いやありえな(ry
「よくもぼくを見殺しにしてくれたね」
ドラゴン・オブ・ザ・リビングデッド
〜一つの城の崩壊は、人類滅亡への序章だった。
初プレイだが、主人公×ミーティアにはまったYO!
早く真のEDが見たい・・・。
272 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/12(木) 17:16:46 ID:3aH0pCsBO
ミーティアたん・・・ww
何だか変なところで盛り上がってしまったな…
それはともかく、ミーティア篇行きます
トロデーン城、三階西側テラス。
少女が一人、ぽつんと座っていた。絶えず吹き付ける海からの風に裾が翻り髪が乱れることも
気に留めず、飽くことなく空を見上げている。
「姫様」
声が掛かり、「姫」と呼ばれた少女は振り返った。
「お寒うございましょう。どうぞ中にお入りくださいませ」
メイドのお仕着せを身に付けた女が肩にストールを掛けてやる。
「…はい」
姫はおとなしくそう答えて立ち上がると、名残惜し気にもう一度空を見上げた。
視線の先には二羽の鷹が大空に舞っている。
「何をご覧になられていらっしゃったのでございますか」
メイドの手に促され、少女はストールに包まれたまま扉へ向かった。
「あのね、鳥を見ていたのよ。とっても高いところを飛んでいたの」
「まあ、左様でございますか」
「あんなに高いところを飛べたらどんなにすてきかしら。ミーティアも鳥になってみたいわ」
無邪気なその言葉にメイドはつられたように微笑んだ。
「ですが姫様、そのように高いところにおいでになって、落ちてしまわれたらどういたしましょ
う」
「だって鳥ですもの。落ちたりなんてしないのよ」
両手を腰に当てて得意気に言ったのだが、あっさりあしらわれてしまった。
「鳥になるなんて考えただけでも恐ろしいことでございますわ。あんなに高いところに昇った
ら目が眩んでしまいます」
「そうかしら…」
釈然としていない様子のミーティア姫を連れ、メイドは城内への扉を開けた。
「それにお勉強のお時間でございましょう。先生をお待たせさせては申し訳ありませんもの」
「そうだったわ。ええと、ピアノだったわよね。ちゃんと練習していてよ」
二人は話しながら長い回廊を歩いていく。
「本当に姫様はピアノのお稽古にご熱心で…ですが先生にも言われましたように、一日に一時
間以上練習してはなりませんよ」
「ええ、ちゃんと守っていてよ。でももっと弾けたらいいのに。いっぱい練習したいわ」
不満気な姫にメイドは諭した。
「姫様のお手はまだ、お小さくていらっしゃいます。何時間もピアノを弾いたら悪くされてし
まうでしょう。それにこの前も練習のし過ぎでお熱を出されたでございましょう?」
「だってあれは風邪を引いていたんですもの。お外に出てはいけない、って言われてお部屋の
中にいなければならなかったのよ。ご本もみんな読んでしまったし、刺繍も出来てしまったし。
ピアノを弾くことしかできなかったんですもの」
「ご無理はなさいませんよう」
そう答えながらメイドの心は痛んだ。ミーティア姫には兄弟姉妹がいない。同じ年頃の親しい
友人もいない。たくさんの家臣にかしずかれて大切にされているものの、それは大人ばかりの
世界であり、さらに主人と使用人の関係であった。王たるもの、並び立つ者のない孤高の存在
であるとはいえ、まだ子供であるミーティア姫にそれを強いることはあまりに憐れ。せめて二
親揃っておればまだよかったのかもしれないが、姫の母親は身罷って久しかった。漸く成長し
た世継ぎの御子を麻疹で失い、その衝撃で流産してしまった姫の母后は周囲の反対を押し切っ
て身籠り、何とか月満ちて姫を産み落とした。だがやはりそれがいけなかったのか産褥熱で亡
くなってしまったのである。
父トロデ王は深く悲しみ、後添えも迎えずただひたすら亡き妃の忘れ形見である姫を掌中の珠
のごとく慈しんでいた。姫もまた父王を慕っていたけれども、一国の主人である王には娘と親
しむ時間などほとんどない。せめて食事が一緒になればまだ良い方で、不測の事態が起これば
一日中会えない時すらあった。
それでも姫が四つの時までは姫の祖母─先代のトロデーン女王が姫を可愛がっていた。息子が
成人すると同時に退位して気楽な隠居生活を送っていた先の女王は、漸く授かった孫娘を目の
中に入れても痛くない程可愛がりつつもトロデーン王女として恥ずかしからぬように躾を施し
た。それは単にいずれトロデーンの国主になるであろうミーティア姫が女王として困らぬよう
に、ということだけでなく、かつての約束を果たすための布石でもあったのである。
先のトロデーン女王は若かりし頃、西の大陸にあるサザンビーク王家の王子と恋に落ちたこと
があった。身分違いということもなくすんなり婚姻が成立するかと思われたが、当時両国は小
さな島の領有を巡って険悪な状態にあり(それ以前に両国国王の間に感情的な確執があったら
しいが)婚姻による同盟など思いも寄らぬことだった。そのため二人は両国の国王の手によっ
て仲を引き裂かれ、それぞれ世継ぎを得るために結婚させられたのである。
二人は別れ際に
「いつか必ず両国の血を一つに」
と誓っていた。しかし子の代では両国には男子しか生まれず、その約束は次代へと持ち越され
た。そして巡り合わせのよいことにサザンビークには王子が、トロデーンには王女が生まれた
のである。王族同士の政略結婚に年齢などは考慮されないが、歳が近いに越したことはない。
二人はほぼ同じ年頃でもあるということでトロデーンの先の女王は欣喜雀躍として婚約を申し
入れたのである。
かつてとは状況が異なっており、二つの大国の間には特に不穏な要素もなかった。サザンビー
ク王もこの縁組を了承し、ミーティア姫は揺り籠の中で婚約することとなったのである。
「今日はどんな曲を弾くのかしら」
その声にメイドははっと現実に引き戻された。姫の世話の手抜きをトロデ王は決して許さない。
姫を溺愛する父王は自ら教育に当たれない分、周囲の者にその旨厳しく申し渡していた。
「大国の王位継承者の教育を疎かにしてはならぬ。そのような行為をした者は即刻暇を出す」
と。
「楽しい曲だとよろしゅうございますね」
何気ない風を装いながら答える。
「ええ。楽しみよ。うまく弾けるようになったら、聞いてちょうだいね」
と姫は花にも喩えられる可愛らしい笑顔を向けた。子供らしいその無邪気な様子を見るにつけ、
ミーティア姫自身は全く気付かずに内包している悲しみに思い当たってメイドは物悲しくなる
のだった。
※ ※ ※
天気の悪い日はテラスにすら出ることはできない。ミーティア姫は恨めし気な顔で窓越しに外
を眺め遣った。
日々の日課である散歩が特に好きという訳ではなかった。むしろ嫌いだったと言ってもよい。
いくら整備されているとはいえ、外を歩けばドレスが汚れる。冷たい風やじりじりと照りつけ
る日射しもある。散歩の度に服を着替え、帽子を被ってメイドや警備の近衛兵をぞろぞろと従
えて歩かなければならない。綺麗な花を見ることは好きだったが、長く立ち止まればその分周
りの大人たちの仕事の邪魔になってしまう。それに花ならば摘み取って部屋に飾ればよい、と
なれば自然に外へ行こうという気は薄れてしまうのだった。
一部の大人たちは躍起になって姫を外に連れ出そうとした。室内だけで過ごすことは子供の身
体には勿論の事、心の成長にもよくない。風邪を引きやすいのは身体を鍛えていないからだ、
と。
実際姫は頻々と風邪を引いた。どこで貰ってくるのやら、何かあるとすぐ咳をして熱を出す。
侍医や典医などが結核を疑う程であった。幸いにしてそれはなかったのだが。
風邪を引けば大事になる、周囲の者は自ずと過保護になっていった。散歩に出て冷たい空気に
咳をすればメイドたちの手によってストールに包まれ、ちょっとでも走ったりしようものなら
乳母が慌てて引き止める。
七つ、八つの子供がただ歩くだけの散歩を楽しいと思うだろうか。結果として散歩の時間は退
屈でつまらないものになってしまったのである。
それでも雨降りの天気にがっかりしたのはテラスに出ることもできず、もし外を窺うことがで
きたとしても鳥が空を飛んでいる様子を見ることができないからだった。トロデーン城は海に
囲まれていたため、海鳥が餌を捕っている様子が見える。運がよければ遠くの山に棲まう鷲や
鷹が上空を舞うこともある。その様子を下から見上げることが姫のささやかな楽しみだった。
何が見えるのか、どんな気持ちなのかと思いを馳せながら。
(あの山の向こうには何があるのかしら?夕日の中をどこまでも飛んで行けたらどんなに素敵
でしょう)
そうやって空想の世界に遊ぶ時だけは子供らしくのびのびとできるミーティア姫なのであった。
(続く)
リアルタイムでキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
やっと登場した小さいみーたん。
続きはエイトとの出会いでしょうか。
楽しみに待ってます。
おお、続きが来ているぅ!
エイトとの出会いが楽しみです。
続きが楽しみです。楽しみにしてますね。
ワクワクテカテカ(゚∀゚)
子供みーたん人気だな
どこかに某主の工作が入ってんじゃないのかと思ってしまうよw
続きがワクテカ
王もまた、姫がひとりぼっちで置かれることのないよう、彼なりに気を遣っていた。常に予定
を入れ、何もせず部屋に一人でいることのないようにしていたものの、それは結果的に一日中
勉強ばかりということになってしまったのである。姫もまた文句一つ言う訳でもなく従ってい
たため、周囲には何の不満もないものと見なされてしまっていた。
そんなある日のことだった。どんなに細かく予定を組んで勉強三昧の日々であるとはいえ、教
える側も教えられる側も生身の人間である。文法の先生が体調を崩してその日の講義が休みと
なった。いつもならば代わりの講義が入るのであるが、たまたま他に手空きの者はおらず、全
くの休みとなったのである。
「どうしたらしいのかしら」
初めての事態にミーティア姫は戸惑った。今までは周囲の者が予定を組んでくれてその通りに
しているだけだったため、急に休みになっても何をしたいのか、何をすればよいのか分からな
いのである。
「せっかくでございますし、いつも時間がなくてできないことをなさってみてはいかかでしょ
うか」
助け舟を出すつもりでメイドがそう言うとミーティアは首を傾げた。
「何かあったかしら…」
「そうでございますねぇ…ああ、そうそう、前に図鑑が見たいと仰っておいででしたけど、図
書館に新しいご本が入ったそうでございますよ」
「まあ」
「それは美しい挿絵が描かれているのだとか。そんなご本が幾冊もあるのだそうでございます」
メイドの言葉にミーティアの目が輝いた。
「見てみたいわ。読ませてもらえるかしら」
その様子にメイドはにっこりとして答えた。
「勿論でございますとも。姫様でございましたらお望みになればなんなりとお読みになられま
しょう」
「じゃあ、今日の午後は図書館に行くわ。どんなご本なのか楽しみよ」
※ ※ ※
世界で一番の蔵書を誇るこの図書館の司書は扉の開く重々しい音に顔を上げた。視線の先、城
内からここへ入る扉の前で心細気な顔でこちらを窺っているのはこの城の王女、ミーティア姫
であった。
「姫様、いかがなされましたか」
司書は急いで立ち上がり、礼を取った。王族の前でのうのうと座っている訳にはいかない。館
内にいた数名の学者も驚いて顔を上げ、司書に倣った。
「あ、あの、…ごめんなさい、どうぞお勉強を続けてくださいね」
館内の者が一斉に立ち上がったことに驚いて、ミーティア姫は慌てて言った。そして学者たち
がまた勉学の世界に戻っていくのを見届けた上で司書の方へ向き直った。
「今日はお勉強がお休みになってしまったの。なので図書館へご本を読みに来たのよ。新しい
ご本が入ったと聞いたのでそれを読みたくって」
「左様でございますか。お聞き及びの通り素晴しい写本を数冊、入手いたしましてございます。
どうぞこちらへ」
無類の本好きでもある司書は同じように読書を好む者を喜んだ。この幼い姫が読書を好むとい
うのなら末頼もしいことであると。世の中には本を読むことを好まぬ者もいる。とある大国の
王子に至っては勉強自体が大嫌いで一字たりとも本を読もうとしないという。
そのような主君ではなく、本を読みたい、と言う王女に仕えることができたことを喜んだ。そ
して深く考えずに新しい本が並ぶ本棚の前へ案内したのである。
「中には珍しい写本もございます。どうぞお気をつけて扱っていただけますよう」
本は大変貴重な物だった。一字一字間違い無いよう人の手によって写され、挿絵もまた絵師が
直々に描く。さらに字を書いていくそこは羊皮紙、羊の革を非常に薄く鞣したものである。分
厚い書物などは羊を何頭も必要とした。
「ええ。もちろんよ」
姫はそう答えて早速本棚から一冊、抜き出した。世界の珍しい植物の図鑑である。司書は足台
やクッションを用意して姫が読みやすいようにしてやると仕事に戻った。
しばらくの間、図書館の中はしんと静まり返り、頁を繰る音とペンを走らせる音ばかりが響い
ていた。ミーティア姫も嬉しそうに本を眺めていたのだが、しばらくすると読み終わったのか
立ち上がり新しい本を取り出した。司書はどの本を取ったのかあまり気に留めずにいたのだが、
「はっ」と激しく息を飲む音がして顔を上げた。
視線の先で姫が恐ろしいものでも見たかのように顔を強張らせている。
「いかがなさいましたか」
という司書の問いに、
「な、何でもないわ」
と震える声で答え、急いで本をしまう。そして
「どうもありがとう、お邪魔しました」
と口早に言って図書館から出て行ってしまった。
その様子に、はて、と司書は首を傾げたものだったが、その時はついそれ以上の追求はしなかっ
たのだった。
※ ※ ※
その夜のことだった。
ミーティア姫を寝かし付ける役目のメイドが
「おやすみなさいませ」
と寝台の帳を下ろして部屋を出ようとした時、啜り泣くような物音を聞いたのである。
「姫様?」
気になってそっと帳の内を窺うと姫が身体を起こし、枕を抱えている姿が透けて見えた。
「いかがなされましたか?」
その声にちょっと顔を上げたが、すぐまた俯いて枕に顔を埋めてしまった。
「お加減がよろしくないのでございますか」
心配になったメイドが帳を上げ、脈を取ろうとした時、姫が急に抱きついてきた。
「ひ、姫様?!」
「ふえっ、ぐすっ、こわっ、こわいのっ」
「な、何も怖いものはおりませんですよ。お城はちゃんと近衛兵さんたちがお守りしています
から」
初めての事態に驚いて、メイドは吃ってしまった。姫は仕えるようになってこのかた、今まで
一度も物に怯えて泣いたりしたことがなかったからである。
「ちがっ、ちがうのっ、お、おばけなの」
「お化けでございますか」
規制回避!
メイドは恐る恐る辺りの様子を窺った。が、部屋はいつもと全く変わり無い。暖炉では熾火が
静かにはぜ、灯火が揺らめいているばかり。
「何もおりませんですよ、姫様。ご安心くださいませ」
気持ちを落ち着かせるよう、ゆっくり優しく言い聞かせる。しかし姫は一層しがみついて、
「だって、だっているんですもの。ぐすっ、目をつぶるとっ、見えるの」
と言い募る。けれどもメイドはその言葉にはっとした。
「姫様、昼間に何か怖いものをご覧になられたのですか」
「み、見たわ。ぐすっ、図書館で、ご、ご本、ふえっ、怖いご本、ぐすっ、がいこつがっ、い
やっ、ふえええええええええん!」
その時の恐怖を思い出したのか、一層激しく泣き出してしまった。
「が、がいこつがっ、こっ、こっちに来るの。ふえっ、きちゃだめって、ぐすっ、追い払って
も、こっ、こっちに来るのっ!」
しゃくりあげながら懸命に話す姫に、メイドは引き付けでも起こしたらと気が気では無い。
「さあさあ姫様、こんな大きなお城にはそんな魔物は出てこられないのでございますよ。出て
きたとしても兵隊さんたちが追い払ってしまいます」
「ほ、ほんと?」
メイドの言葉に姫は泣き止んだ。
「本当でございますとも。それでもご心配なのでしたら朝まで付いておりますよ」
ミーティア姫はしばらくの間黙ってメイドの顔を見詰めていたが、やがてこくりと頷いた。
「…ごめんなさい…」
気持ちが落ち着いたのか小さな声で謝る。
「姫様がお休みになられるまでこちらにお付きいたしております」
メイドがそう言うと、姫は恥ずかし気に微笑んで、
「ありがとう」
と呟いたのだった。
夜が明けると図書館ではすぐに作業が始まった。幼い姫の眼に触れては不都合があるであろう
本を集め、司書の背後の本棚に隔離するのである。残酷な描写のある本は勿論のこと、あから
さまな恋愛表現のある本も集められた。その中には昨日ミーティア姫が読んでいた本もあった。
それは解剖学の本であった。扉絵に人体の骨格図が描かれていたのである。この絵に姫が怯え
たのだった。
(続く)
>>288 連投回避どうもありがとうございました。
GJ!!
みーたんかわいいなぁ、ホントに
和む・・・
>ふえっ
かわええ〜(*´д`) ちっさいみーたん、和みますなぁ。
小さいみーたん再び大人気!
続きを楽しみにしていますv
こんなことゆうたらあれだけど子供のうちから束縛されすぎじゃない?
こんな生活してたら歪むよ
あんな素直には育たんと思う
>>294 そこで8主の登場ですよ
いかんなぁ。某主人公スレの影響で8主としか呼べんようになってしまったw
>295-296
あ、分かるそれ。
でもここでは「エイト」だなー。
「8主」は某スレ限定だw
>>297 ウチはセーブデータまで「ハッシュ」なんだよww
300 :
東別院:2006/01/17(火) 22:50:03 ID:R+ln+SE00
鰈に300get!
ほしゅ
今日、泉に行ったらバースデーに雑草の話が聞けたよ〜。
ミーたんかわええ・・・。
一日の終わり、トロデ王は愛娘と正餐の食卓に着いていた。親子とはいえ王たる身、食事の時
ぐらいしか一緒にいることができない。そのため王はこの時間を何よりも大切にしていた。
王族とはいえ、常の食事はそんなに豪華なものではない。盛大な晩餐会ならいざ知らず、質実
剛健を旨とするトロデーンの食卓は割合地味なものであった。それでも幾皿も並ぶことには違
い無い。今夜の食事は蟹のポタージュに甘海老とブロッコリーのサラダ、鱒のポワレ*に牛頬肉
のシチューのパイ包みだった。
食事のマナーは厳しく躾けられていたものの、親子二人水入らずの食事である。口喧しく言わ
れることもない。二人は向かい合って座り、会話しながら心楽しく食事していた。
デザートが並ぶと、王は
「こちらにおいで」
と手招きした。その言葉に姫は嬉しそうな顔になり、隣に座る。そして父王がオレンジとチョ
コレートのクレープを食べている横で牛乳をたっぷり使ったココアを飲み始めた。
「姫や」
その様子を、目を細めて見ていたトロデ王だったが、ふと言わなければならないことを思い出して口を開いた。
「なあに、お父様」
姫が隣の父王を振り仰ぐ。楽し気な光を湛えた今は亡き母后譲りの碧の瞳を見て、これから伝
えることがそこに影を落とすことになるかもしれぬ、と思うと王の心は痛んだ。
「明日からワシは領地の見回りに出なければならん。明後日のお茶の時間には戻ってくるが、
それまでお留守番できるかの?」
できる限り優しく言ったつもりだったが、案の定ミーティア姫は悲しそうな顔になってしまっ
た。
「そうなの…」
それでも大好きな父に心配を掛けまいと懸命ににっこりしようとする。
「ちゃんとお留守番できるわ、お父様。でも早く帰ってきてね」
「そうじゃな、なるべく早く帰ってくるからの」
姫のいじらしい言葉に王は髪を撫でてやりながら答えた。
幾度この小さな娘の存在に救われてきたことか、と王は思う。妃を失い、闇の中にあるも同然
の自分の生活に真直ぐに差し込んできた春の光のような我が娘。無心に己を慕ってくれる存在
が、生きて自分に課せられた王としての責務を全うしようという気力を取り戻させてくれたの
である。
そんな何物にも替え難く大切な我が子の顔が悲しみに陰ることのないよう、王は悲しい話や恐
ろしい話がミーティア姫の目や耳に入らないようにしていた。いつかは話さねば、とは思いつ
つも亡き妃の話を一切していなかったのもそのためである。自分の誕生と引き替えになったか
のように母が亡くなった、と聞いたらさぞ悲しむだろうと思うと、トロデ王にはとても話すこ
とができなかった。
しかし、姫のために聞かせない、というのは真実の半分だけだったのかもしれない。王自身、
亡き妃について語ることが未だにできずにいたのだから。亡き妃の面影は王の心に深く刻み込
まれている。亡くなって幾年が過ぎようと、色褪せることはない。何か一つ、思い出を語れば
心の中のもの全てを曝け出し、自律を失って取り乱してしまうのではないかと恐れていた。そ
れが王たる者に相応しいとは到底思えないが故に。
ごく小さな頃は、母について何も聞かせてもらえないことに不思議そうな顔をするだけだった
ミーティア姫も、今ではそれに気付いていた。そして「何も聞かなければお父様が悲しむこと
はないのだ」と幼いながらも悟って何も言わずにいたのである。
「そうじゃ、何か欲しいものはあるかの?何でもよいぞ、お土産にしようぞ」
しんみりとした雰囲気を払おうとトロデ王は明るい声で話を変えた。
「お土産?」
「そうじゃ、何がいいかの。お人形かの、それともご本かの?」
そう、姫には片親しかいない、ならば自分がその分余計に可愛がっても悪いことはあるまい、
とトロデ王は考えていた。できる限りのことはしてやりたい、世界で一番幸せにしてやりたい、
と。
「ん…」
「何でもよいぞ。新しいドレスが欲しいなら仕立て屋を呼ぼうぞ」
その言葉に姫はしばらく考え込んでいたが、やがて顔を上げて王を振り仰いだ。
「あのね、お父様。今ミーティアはお兄様かお姉様が一番欲しいの。そうしたらお父様がいらっ
しゃらなくても寂しくないと思うわ」
王は絶句してしまった。他意のない、無邪気な言葉だったが故に、重かった。
「ひ、姫や…それはちと…」
何とか絞り出した答えにミーティア姫は一瞬訝し気な様子を見せたが、王の表情から何かを感
じ取ったのだろう、さりげなく表情を改め、
「そうなの?じゃ、何もいらないわ。その分早く帰ってきてね、お父様」
と言った。
「勿論じゃとも。ちゃんと姫と一緒にお茶を飲むからの」
そう答えて王はまた姫の髪を撫でた。
(こんな子供にまで気を遣わせてしまって、まだまだじゃな)
「はい、お父様」
※ ※ ※
次の日、トロデ王は馬車に乗って出掛けて行った。ミーティア姫も城門まで見送って手を振る。
馬車が見えなくなると姫は、
「さっ、お留守番なんだから」
と呟いて自分の日課へと戻った。父がいないことは寂しかったが、姫も姫なりに期待に応えよ
うと思っていたのである。「お留守番頼むぞ」と言われたのだから。
それでもやはりどこかにぽっかりと穴が空いているような間隔は否めなかった。一生懸命ピア
ノの稽古をしても聞かせる相手がいなくては何の張り合いもない。世話係のメイドたちは皆忙
しく、のんびりピアノを聞いている訳にはいかなかった。大人たちは皆、仕事を持っている。
自分のわがままでそれを邪魔してはいけないということをミーティア姫は充分承知していた。
王が帰って来る日、ミーティア姫は心配で勉強が手に着かずにいた。まして冷たい雨の降る日
であったから。
トロデ王への願いは姫の本心だった。慣れていたとはいえ、たった一人で大人ばかりの世界に
いるのはとても寂しかったのである。同じ年頃の子供と遊んだことのないミーティア姫には
「友達」という概念が思い付かなかった。それで「お兄様かお姉様」と願ったのである。
けれどもその願いは叶いそうも無い。その時の父王の顔を思い出せば。
ミーティア姫は小さく溜息を吐いた。それは妙に大人びていて、自分でもはっとしてしまうぐ
らいに部屋に大きく響いた。
(お父様、早く帰っていらして)
窓に打ち付ける雨の音を聞けば、ますますそう思わずにはいられない。お茶の時間はとうに過
ぎていたが、王の帰還を告げる先触れの声はしなかった。
(こんな雨ですもの、きっと冷えていらっしゃるわ)
と姫は考え、メイドに父王の部屋をよく暖めておくように頼んだ。厨房には帰ってきたらすぐ
に熱いお茶が出せるように指示を出す。そうやって動き回ることで心細い思いを我慢し続けて
いた。
(お父様、どうか無事で帰っていらして)
手練の近衛兵が護衛についていたが、もし魔物の大群に遭っていたら、と心配の種は尽きない。
と、階下で扉が開く音がした。たくさんの人が動き回る気配がする。どうやらこの城の主人が
帰ってきたらしい。
「お父様!」
ミーティア姫は立ち上がり、父を出迎えるために部屋を駆け出して行ったのだった。
(ミーティア篇・終)
*ポワレ:肉や魚に衣を付けずに油脂を塗って焼く調理法のこと
姫という立場と子供な部分と・・・
(ノД`)ウワァァァン
みーたん おぢさんが遊んであげるよぉ
や やだなぁ ハァハァはしませんよ しませんとも
むっ? これは
>>308の成れの果てか?
斬殺された様だが、切り口が放電している?
いったいどうすればこのような傷ができるのだ?
なんてこった
今日はガラガラじゃないか!
感想どうもありがとうございました。
今回微妙なところで終わってしまいましたが、次へ続く予定です。
が、諸般の事情によりちょっと遅くなるかも。
本当にすみません。
乙彼です。
かわいいちっさいみーたんをどうもありがとうございましたv
気長に待っておりますので、ご自分のペースで更新してくださいね。
初めて真ED見たけど、普通EDの方が萌えた。
真EDのほうが好きだな〜。堂々とくっつきましたって感じが。
普通EDの方があの後どうなったのか、いろいろ想像できるよね。
もちろん真EDも大好きだけど。
317 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/22(日) 07:37:43 ID:TpMKl5eGO
あけ
というか、8主の出生の謎はメインストーリーに組み込むべき話なのに、
なぜおまけ扱いにしたのだろう?
8主とみーたんがケコーンできたのは
8主の血統とは関わりないところにある訳だし
あれはおまけでいいと思う。
実は王子だったから許婚になって助けました、より
一兵士が愛の力だけでお姫様を救い出しました、に萌える。
表EDは昔の少女漫画、真EDは最近の少女漫画って感じがする。
でも真EDがないと8主が歴史に残る犯罪者になっちゃうから
おまけはおまけでも必須のおまけ。
両方のEDとも好きなんだけど、感じ方は微妙に違う。
通常EDはその先を色々考える余地がある。
望んではいなかったとは言え国家間の問題になり得る結婚式ぶち壊しをしてしまったエイトの苦悩とか、
それを乗り越えようとするみーたんとか。
真EDはお約束的安心かな。
決着ついてよかったねーみたいな。クラビウスも納得してるし国家間の問題にはならないだろうし。
まあそれはそれでサザンビークの王位継承はどうなるんだという問題を孕んではいるんだけど。
表と真とではミーティアの挙動が異なる
(表では自発的に逃げるが、真では……)のも議論を醸すところだよな
心配なのはクラビウスが倒れた後
チャゴスがちょっかいだしてきて
最初のうちは人間でも何とかできる範囲だったのが
段々魔物とか絡んできて
その内 魔王と契約するチャゴス
ラスボスは嫉妬と恨みの力で魔王を取込むチャゴス
妄想です
>>323 でもラプソーンより簡単にヌッコロせそうだな
>325
甘い!
通常の状態でチャゴスのHPは20000だったはず(どこだかのスレで見た)
それにチャゴスパーク、チャゴスラッシュ、チャゴマズン、チャゴンテ、チャゴ呼び、
チャゴクロス、そしてチャゴパフなどを駆使して主人公一行を苦しめるw
エイトは勝てるのか?!そしてミーティア姫の運命やいかに?!
coming soon!
…なんちゃってw
とりあえず、チャゴマズンが一番嫌。嫌杉。
>>327 俺はチャゴパフがなんかイヤ
メガチャゴス
ギガチャゴス
テラチャゴス
こんな感じでパワーアップ
チャゴスは チャゴパフを はなった!
エイトは 悶絶した
ヤンガスは 対抗心を 燃やしている
ククールは 吐いている
ゼシカは 馬鹿にしたような 笑みを浮かべている
▼
「エイト、しっかりして!」
ミーティアは パフパフした!
なんと エイトが 復活した!
チャゴパフってやな響きだな…。
どこでパフ×2すんの?
腹?まさか…おし(ry
なんかいつの間にやらチャゴススレww
もちろんきん(ry
そうか!男のパフパフがどうやってやるのか長年疑問だったけど、やっとわかったぞ・・・。
ありがとう、みんな!
・・・・そう思って、YやZをプレイするとナニでパフパフするハッサンや
メルビンが浮かんできて気持ち悪くなったジャマイカ。
ミーたんのパフパフがいいよ〜!
主姫出会い篇行きます。
「お父様!」
雨に降られたり子供を拾ったりで困難な道中になり、漸く自分の城に帰り着いて旅装を解いて
いると、ミーティア姫が部屋に駆け込んできた。
親子とはいえ普通ならば先触れを出し、お付きの者を従えてしずしずと部屋を訪問するものな
のだが、余程不安だったらしい。一人で部屋に入ってくるなり王に抱きついた。
「おお、姫や。会いたかったぞ」
姫の子供らしい仕草に目を潤ませながらも、王も抱き返す。
「お父様、ミーティアはとっても心配だったの。中々帰っていらっしゃらないから、もしかし
たら魔物に遭われているんじゃないか、馬車が壊れてしまったんじゃないかって」
「それは心配させてすまなかったの」
姫の父王を案じる言葉が嬉しく、頭を撫でてやる。
「じゃが魔物ぐらいどうということはないぞ。近衛兵もおるし、いざとなったらこのワシが蹴
散らしてくれる」
「ええ、…」
俯くミーティア姫の心細さを拭い去るかのように一層強く抱いてやった。
「姫が立派にお留守番してくれたおかげでワシも気持ちよく帰ってこられた。感謝しておるぞ」
「ありがとう、お父様」
そこへ熱いお茶が運ばれてきて、遅い午後のお茶となった。親子二人で会えなかった分の積も
る話をしていると、ふと思い出したかのようにミーティア姫が口を開いた。
「あのね、お父様」
「何じゃ?」
「おとうさまがお出かけになられる前の晩、ミーティアはわがまま言ったでしょ?」
何やらもじもじとしたかと思うと、そんなことを言う。
「はて、わがままなんぞ言ったかの?」
「言ったわ。『お兄様かお姉様が欲しい』って」
「おお、そんなことも言ったかのう」
首を傾げて思い出すふりをしたが、実は忘れてはいなかった。この短い旅の間、姫のあの言葉
は心にずっと引っ掛かっていたのである。
「ごめんなさい」
と姫は頭を下げた。
「いいんじゃよ。気にせんでも。もともとワシが『何でもよい』と言ったんじゃし」
そう気軽な風に言って自分の皿から姫の皿へ苺を載せてやるのだった。
トロデ王はふと、先程拾った少年を思い出した。その子の顔と亡くした我が子の顔が重なる。
生きておれば姫の良き兄になったであろう、王子を。
(我が妃も、我が子も、生きておれば…)
乳幼児の死亡率は高く、たくさん子供が生まれてもその半分は病気で亡くなると覚悟しなけれ
ばならない。だが分かっていても親の情として納得できようか。
(せめて同じ年頃の友人でもおれば…)
それでも先程拾った少年を姫の友に、とは考えつかななかった。それはトロデ王が冷たいから
ではない。暗殺等の可能性を考えれば、身の周りに身分賤しく素性の知れない者を置く訳には
いかないのである。ミーティア姫とて同じこと。むしろトロデーンの王位継承者として尚更身
辺に気を付けねばならないのだ。王位算奪は歴史に幾度も繰り返されている。その可能性は少
しでも減らさねば、とトロデ王は王として考えていた。
それでも人としての情はある。行き倒れていた少年の容態が気になっていた。
(できるだけのことはしてやりたいものじゃのう。命あっての物種なのじゃし)
愛おしい姫の顔を見るにつけ、王は強く思うのであった。
※ ※ ※
助け出された男の子は余程弱っていたのだろう、城に運び込まれてからずっと、熱に浮かされ
続けていた。王宮付きの神父や子供を育てたことのあるメイドなどが代わる代わる看ていたが、
容態は捗々しくない。夢現の状態で白湯を口にし、細々とした世話をしてもらう、ただそれだ
けだった。
「このままでは身体が持ちませんぞ」
拾われてから三日目の日も暮れ、下がる気配を見せない熱に神父は不安そうに言った。
「そうか…」
相槌を打つのはトロデ王の近従、丁度王がエイトを拾った時に馬車に同乗していた者である。
「王様も気に掛けておいででな。今日も『あの者の様子はどうじゃ』とご下問になられた」
「珍しいですなあ、王様が斯様な下々の者にお目を掛けられるとは」
近従の言葉に神父は珍しそうに応えた。
「私も立場上、王様を差し置いて『助けてやれ』とは言い難いじゃないか。なのに薄情者扱い
だ。『放っておけ』と言ったばかりに」
苦笑混じりの愚痴に神父は一つ、近従の肩を叩いた。
「これも宮仕えの気苦労の一つですな」
「ああ」
二人で顔を見合わせ、にやりとする。
「それにしてもこんな子供を気になさるとは…」
笑いを収め、神父は眠り続ける少年に目を遣った。
「近くで見ていたんだが、どうもこの子が王様に向かって『お父さん』と言ったらしいのだ」
「ほう」
「もしかしたらその時に亡くなられた御子を思い出されたのかもしれん。ご健在であられたら
このように成長遊ばされたこともあったかも知れん、とな」
ちょっとしんみりとした口調の近従に神父は頷いた。
「あの時程自分の不甲斐無さを実感したことはございません。健やかにお育ちでございました
のに、麻疹に伴う髄膜炎であっという間で」
「故王妃様もあれさえなければ今もご健在であらせられただろうに」
「全くです」
二人で傍らの少年を眺め遣った。エイトは顔を紅潮させ、苦し気な息遣いをしている。
「元気になって欲しいものだ」
「本当に…少しはお気が晴れるでしょう」
※ ※ ※
次の朝、白湯を運んできたおばさん─メイド長は、寝床の中の少年の目が開いていることに気
付いた。
「気が付いたかい?」
近付いて床の中を覗き込むと子供の大きな眼がこちらを見返す。
「はい」
だがしかし、少年の眼からは何の感情も窺えない。視線も逸らされた。
「気分はどう?もう三日も眠り込んでいたもんだから、心配していたんだよ」
少年の様子には頓着せず、おばさんは矢継ぎ早に問いかける。
「はい。…あの、もう大丈夫です」
そう答えてエイトは身体を起こした。が、その途端視界がぐるりと回る。
「ああ、無理しちゃ駄目だよ。あんたは三日間、何も食べていなかったんだから。そこでじっ
としておいで」
けれどもエイトは忠告も聞かず、そろそろと立ち上がってゆっくりと火の側にある椅子に移動
した。
「…まあ、動けるのなら動いた方がいいけど。じゃあそこにおいで。今飲み物をあげるからね」
おばさんは少年の眉の間にある厳しい雰囲気に気付いたが、まずは口にするものを、と白湯の
入ったマグカップを渡した。
「ありがとうございます」
少年はやや堅苦しく礼を述べた。そしてカップを口に運ぶ。それはただの白湯だったにも関わ
らず、とても美味しく甘いもののようにエイトには感じられた。
「美味しいかい?」
おばさんの問いかけにエイトは深く頷いた。
「そうかい、それはよかった。じゃあ神父様をお呼びしてくるから、それを飲んで待っておい
で」
さらにお湯を注ぎ足してくれるとおばさんはせかせかと部屋を出て行った。
誰もいなくなったので、エイトはじっくりと自分が今居る場所を眺め回した。先日─随分前の
ことのように思えたが─助けられて目を覚ました場所とは感じが違う。床には目の粗い敷物が
敷かれ、石造りの壁にはどこかの風景画が掛かっていた。高いところに窓があって、そこから
穏やかな日射しが射し込んでいる。エイトが寝ていた寝床の他にも同じような床がいくつもあっ
たが、皆空だった。この時エイトは知らなかったが、簡素だが中々気持ちのよいこの部屋はト
ロデーン城の傷病者用病室だった。今はたまたま病気の者も、怪我人もいなかったのでエイト
が専有しているような状態だったのである。
窓の外で鳴き交わす鳥の声を聞くともなしに聞いているエイトの顔は曇っていた。どんなに気
持ちのよい場所であっても、居るべき場所ではない。自分の記憶がないと知った時の大人たち
の顔を何度も見てきた。疎まし気な、困惑した視線を投げかけられたことを思い出すと、身が
竦む。ここもそうなるに違い無い。追い立てられるのか、それとも自分からなのか、いずれに
せよここから出ていかなければならないだろう。そう思うと図らずも重い溜息が洩れた。
(僕は誰なんだろう。どこに行けばいいんだろう)
ふと、足に何かふかふかしたものが触れた。トーポだった。エイトのたった一人の─動物だっ
たが─友達。そっと掌に掬い上げ撫でてやる。
「トーポ…これからどうすればいいのかな…」
(続く)
エイトも目覚めて良かった良かった
寂しいけどみーたんも遊び相手ができそうだ・・・
だから ハァハァはしてませんってば したかったけど
乙です。
王様とかお城の方々がいい雰囲気を醸し出してますね。
出会いも楽しみです。
最近6主がここに出入りしているような気がするんだ…
気のせいだよな、うん、気のせいだw
感想どうもありがとうございました。
>334-338続き行きます。
「男の子が目を覚ました」とのメイド長の報らせに、神父は急いで病室に向かった。戸口から
そっと部屋の中の様子を窺うと、男の子は炉の側の椅子に座って、ネズミを抱いたままうつら
うつらしている。が、ネズミはこちらの視線を感じたのか素早く物陰に隠れてしまった。
「あれ、また寝てしまったみたいだね」
メイド長が側に寄る。
「こんなところで寝てしまったら、また風邪がぶり返してしまうのに」
と言いながら抱え上げると寝床へ運んでやった。
「しかし気の毒なくらい痩せて…私でも楽々運べるんだから相当なものですよ」
「まあ、三日間何も食べていないのですし。それに行き倒れていたということはそれまで碌な
物を食べていないのでしょう」
「本当に気の毒にねえ…一体親御さんは何をしているのやら。自分の子供を放り出して」
枕元であれこれ話しているうち、少年の目が開いた。メイド長が話し掛ける
「目が覚めたかい。あんなところでうたた寝してはいけないよ。また風邪が振り返してしまう
じゃないか」
「すみません」
そう言いながら少年は寝床の上に起き上がり、頭を下げた。
「今はそこにおいで。無理して起きなくていいからね」
メイド長は手際よくクッションを積んで背中に当ててやった。
「これで起きていられるだろうね…お腹は空いているかい」
と言った途端、お腹が鳴って少年は顔を赤らめた。
「空いているようだね。じゃあお粥をあげようね」
そう言って出された器にはごく薄い麩(ふすま)の粥が入っている。
「あんたはもうずっと何も食べていないんだよ。すぐに固い物を食べたら死んでしまうよ」
不思議そうに碗の中を見る少年にメイド長が諭してやると、
「いただきます」
と礼儀正しく答えてお粥、というよりは重湯を啜った。その様子を物陰からネズミが窺ってい
る。
「トーポ」
と呼ぶとネズミは駆けてきて少年の横にちょんと座った。
「あんたのネズミかい?随分懐いているんだねえ。寝ている間もずっとあんたの側を離れなかっ
たんだよ」
珍しそうに言われ、少年はやや表情を緩めトーポの顔を覗き込んだ。
「そうなの?」
「チュ」
「あんたの手からでないと駄目なのかねえ、餌も食べてくれないしどうしたものか困っていた
んだよ。ほら、ビスケットの残りがあるから、おやりよ」
メイド長が前掛けのポケットからやや堅くなったビスケットを出してやる。
「ありがとうございます」
だがしかし、人に対する時の顔は強張っていた。人の好意に甘えまいとするかのように。
「ところであなたの名前を聞いていなかったですね」
トーポにビスケットの欠片を与えている少年に、今まで黙っていた神父が話し掛けた。
「…エイト、です」
少年の顔がさらに強張る。
「ああ、そんなに緊張しなくてもいいのですよ。何もあなたをどうこうしようという訳ではな
いのですからね」
少年─エイトの緊張を和らげようと神父は努めて穏やかな調子で話し掛ける。
「見たところお一人のようですが、他の人は?」
エイトは黙って頭を振った。
「ずっと?」
「あの、トーポが」
「ああ、トーポですね。お友達ですか?」
「はい」
「とても賢いネズミのようですね。あなたが倒れていた時、頚を温めていたんだそうですよ」
神父は優しい目でネズミを見遣った。
「でも他に誰もいなかったのですか。お父さんやお母さんは」
エイトは頚を横に振ると俯いてしまった。
「あの」
蚊の鳴くような小さな声で続ける。
「何も覚えていないんです」
「何も?」
「はい。あの、海でそうなんして、ポルト…なんとかっていう街の近くで助けてもらったんで
す」
「あれまあ」
メイド長の相槌に促され、ぽつぽつとながらエイトはここに来るまでの話を他の人の憶測も交
えながら話した。微かな違和感を抱きながら。けれどもエイトにはそれが何なのか言葉にする
ことができず、結局語られず終いとなってしまった。
話が終わると、案の定大人二人は顔を見合わせた。
「あの…僕、もう治ったからここを出ていかないと」
やっぱり、と思いエイトが怖ず怖ずと付け加えた。その途端、
「何言ってんだよ、身寄りのない子供をそのまま放り出すもんかね」
とメイド長に一喝される。
「左様。ここに辿り着いたのも神の思し召しでしょう。それを追い出すようなことはいたしま
せん。どうするにせよ、きちんと身の振り方を考えねば」
と神父も頷きながら言う。
「ここで働きたいっていうんだったら、歓迎するよ。下働きの者が足りなくてね…でもまずぼ
うやが助けられた街に連絡しないと。ご両親の消息が届いているかもしれないし」
「そうですな。それまではゆっくり身体を休めておきなさい。随分弱っているんですよ。まだ
治っていないのです」
※ ※ ※
二日後、ポルトリンクへ遣った使いが帰ってきて、エイトの語った話の内容が裏打ちされた。
どうやら嵐の海に投げ出されて記憶を失い、本当に自分の名前程度しか覚えていないらしい。
その後も何の音沙汰もないため多分両親もその時亡くなったのではないか、と。
城の内部に素姓の知れない者を置く訳にはいかない。それがもし盗賊や刺客の手引きだったら
大変なことになるため身元の確認は厳しく、その上誰か貴族の紹介が必要だった。
普通ならば身寄りもなく素姓の知れないエイトが働くことなど不可能に近いのだが、運の良い
ことに拾われた時に馬車に乗っていた近従―彼は某伯爵家の五男だった―が身元保証人になっ
てくれたのである。恐らくあの時に心ならずも冷たい台詞を言わざるを得なかったことが、自
分の中で引っ掛かっていたのだろう。
元気になったエイトはめでたくトロデーン城で働くこととなった。朝から晩まで細々とした雑
用をこなさなければならないが、衣食住の心配が無くなったことは大きい。城内で働く者が見
苦しい形をしていては王家の威信に関わる。エイトはこざっぱりとしたチュニックとズボン、
その替えが与えられた。食事も、豆と野菜のスープ、それとパンとチーズのような簡素なもの
であったが、ちゃんと一日に三度出される。決まった寝床があって、雨風に曝されることも無
く、何者かに追い立てられることもない。日々忙しくはあっても、自分の居場所が保証される
安心のある生活によって物に怯えたように強張った顔をしていたエイトも、少しずつ表情を緩
めていった。
それでもおよそ子供らしい愛嬌とは無縁だった。言い付けはきちんとこなし、よく気が回って
働き者だったが、他の使用人たちの雑談には応えようとしない。笑っているところを見た者も
なかった。そもそも自発的に喋らないのである。
若いメイドたちがあれこれ話し掛けて何とか身の上を聞き出そうとしていたが、それも無駄だっ
た。ポルトリンクに流れ着いた話をすることはあったが、それ以上は首を横に振るばかり。無
理はない、語りたくとも語る物を持っていなかったのだから。それにエイトは他の人と話すこ
とで自分が記憶喪失であると再認識させられることが辛かったのである。
その日、昼食の後片付けが終わり夕食の仕度までの休憩時間にエイトが外に出たのはそんな理
由もあったからだった。厨房にいれば必ず誰かに話し掛けられる。答えられない質問に困惑す
るのは目に見えていたから。丁度庭師が植木の剪定をしている筈である。それを手伝わせて貰
おう、と。
エイトは庭師の仕事を見ることが好きだった。庭師長は話し好きな老人で、こちらが何も話さ
なくてもよいのも好きな理由の一つだった。
庭に出ると、城門から城への広場の植木の刈り込みが行われている。エイトは早速庭師長と話
して下に落ちた枝や葉を集め出した。
と、その時である。先触れの声が聞こえてきた。その声に庭師たちは急いで物陰に引っ込む。
「どうしたの?」
一緒に近くの物置きに移動しながら、エイトは尋ねた。
「しっ、これから姫様のお散歩の時間なんだよ。我々の作業でお邪魔してはいけないから、こ
うして引っ込んでいるんだ」
「ふうん…」
何となく釈然としないながら、エイトはおとなしく座った。そして熊手に挟まった枝や葉を取っ
ていると、やがてさやさやとした衣擦れの音や近衛兵の持つ武具の物々しい音がして散歩の一
団が前を通りかかった。あちらからは見えないのをいいことにエイトは爪先立って様子を窺う。
一団の先頭と殿にきらびやかな制服の近衛兵がいて警護している。メイドが数人と、色とりど
りの衣装を着けた貴婦人たちに囲まれて、日傘を差し掛けられ真っ白なドレスを纏った少女が
歩いていた。エイトはこの城の主人、トロデ王やその娘姫に目通り適ったことはない。そのよ
うな身分ではなかったが故に。だが、誰に教わった訳でも無いが周りの様子からその少女こそ
この城の王女、ミーティア姫であると知れた。
少女はおつきの人々の言葉に穏やかな微笑を以て応えていたが、エイトにはそれがどこか寂し
気に見えた。王女として満ち足りた生活を送っている筈なのに。
(変なの)
あんなにたくさんの人が周りにいるのにどうして誰も気付かないのか、エイトには不思議で仕
方ない。
(でも関係ないや)
ミーティア姫を楽しませるのはおつきの人々の役目。エイトの仕事ではない。身元の知れない
自分が下働きならいざ知らず、王族の近くに寄ることなど思いもよらない。大体王様も姫様も
嫌がるだろう、下々の者と話すことを、とエイトはひっそり思った。
香水の匂いを残して、姫の一団は前を通り過ぎて行く。エイトは目を離し、手の内の熊手の手
入れを再開した。
(続く)
348 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/29(日) 18:38:20 ID:OHqNq3KIO
ウィッザティッサ!
349 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/29(日) 18:39:11 ID:OHqNq3KIO
ウィッザティッサ!
まったり働いてますな、エイト君
次回!みーたんを襲う全裸の男!
『トンガリヘアーはシスコンの香り』
うわ何をするやめくぁwせdrftgyふじこ
>>351 ほんとに萌えスレかよってなスレタイだなwwww
353 :
1/3:2006/01/31(火) 16:46:13 ID:jgC11G3J0
1主 「最近6主が挙動不審な点について」
7主 「昨日僕の道具袋を勝手にいじってたんだ。『何してるの?』って聞いたら慌てて逃げてった」
3主 「何かとられなかったか?俺はあいつに袋いじられた後、変化の杖が見当たらなくてな」
7主 「うん。後で見たらきぼりの人形が無くなってたんだ」
1主 「でもそれって何の役に立つんだ?ご先祖の変化の杖ならわかるが」
2主 「この前8主に殴りかかっていたぞ。『お前さえいなければ!』とか叫んでいたな」
4主 「まああいつのいつもの言動を見ていたら自業自得のような気もするが…でも気になるな」
5主 「ふっふっふ」
4主 「何だよ急に。無気味だな」
5主 「6主の行動パターンなどお見通しだ。あいつが何か始めるきっかけ、それは…」
3主 「あ」
1主 「なるほど」
4主 「…妹か」
5主 「その通り」
7主 「じゃあ今までの情報を整理するね。変化の杖ときぼりの人形を持ち去った。8主に殴り掛かった」
1主 「8主の世界の者で妹キャラはいないか?」
3主 「何せブラコンクエストだからな…お兄様大好きキャラは多いぞ。ゼシカにユッケ、ククールだ」
4主 「赤い人は違うだろ」
2主 「ククールは女だったのか?」
3主 「さりげなく爆弾発言だなおい」
7主 「でもみんなちゃんとお兄さんがいて、6主の割り込む隙はないよ」
1主 「うーん」
5主 「そう言えば最近、あいつに妖精の城の絵についてやけに細かく聞かれたな」
1主 「それだ!」
3主 「え?どういうこと」
1主 「我々は現在の妹キャラで探していた。が、あいつは過去の中で妹候補を探していたんだ」
5主 「……ミーティアさんか。血の繋がった兄はいないが8主を『お兄様』と呼んでいたはずだ」
8主 「それが狙いだったんですね」
4主 「うわっ、どこから湧いて出た」
8主 「さっき寝込みを襲われて、簀巻きにされてました。『ふはははは、俺こそがお兄様だ!』と叫んでましたよ」
354 :
2/3:2006/01/31(火) 16:46:53 ID:jgC11G3J0
2主 「大丈夫か?」
8主 「どうってことないです」
2主 「どうってことないよな」
1主 「つーことは6主はミーティアさんを妹にしようとしている、で確定だな」
5主 「妖精の城の絵から過去に行ったんだな」
8主 「追いかけますよ!」
〜トロデーン城〜
2主 「ここがトロデーンか」
3主 「おまえ、いたりしないよな」
8主 「分かりません…僕が僕に会ったら面倒なことになりますね」
4主 「どうでもいいがここにこんなに不審な奴がいたら見つかるぞ」
7主 「あ、あれ、ミーティアさんじゃない?」
5主 「おお、この頃からかわいいな」
8主 「5主さん!」
5主 「俺を見くびるな。自分の娘と同じ年頃の子供に欲情したりするか。
……ああ、でもうちの娘もあんな時代があっただろうに!見たかった!お父さんは見たかったぞ!」
3主 「6主はいないな」
4主 「見当違いか」
8主 「でもあの絵の前にいた妖精さんは間違いないって断言していましたよ」
1主 「あっ、いたぞ!あの木の陰に何か派手な色合いの奴が!」
6主 「おいで〜おいで〜ミーティアちゃ〜ん。お兄ちゃんと一緒に遊ぼうよ〜」
8主 「何やってんですか!歴史を変えないでください!」
6主 「げっ、8主!それにお前ら!
→逃げる」
1234578主 「しかしまわりこんだ!」
イモウトモエモエギガブレイクメエメエギガデインイモウトモエモエバギクロスジゴスパドラゴンヌッコロス
6主 「ぜえぜえ…お前ら無茶し過ぎ」
8主 「当然です。…ってどさくさに紛れて何で僕まで攻撃されるんですか」
4主 「気にするな。日頃の行いが悪いからだ」
3主 「それはそうと何故ミーティアさんを?お前にはターニアちゃんもバーバラちゃんもいるだろうが」
355 :
3/3:2006/01/31(火) 16:48:48 ID:jgC11G3J0
6主 「お兄様と呼ばれたい。そのためにお人形と、好まれる外見にするため変化の杖を用意した。
大体8主、お前新入りのくせに何だ、『8主お兄様』とは。そのポジションは俺のものだ。
だから8主とミーティアたんが出会う前にこうしてお兄様になるべく待ち構えている」
ミー 「お兄様たちはだあれ?どうしてここにいるの?」
8主 「!!」
6主 「お、お兄様……ぐふっ」
3主 「俺たちは、その、あやしいものじゃない」
1主 「そうそう。旅のものだよ、お嬢ちゃん」
5主 「ああっ、うちの娘もこんなにかわいかったんだろうか!くそう、ジャミ!許せん!」
ミー 「あの目がチカチカする色のお兄様はどうしたの?死んじゃったの?
それに紫色のターバンのおじさんはどうして苦しんでいるの?」
5主 「おじ…」
7主 「子供って正直だね…」
1主 「それはともかく、気絶しているうちに6主を回収して帰るぞ」
2主 「おう、そうだったな。(よっこいせ)」
4主 「ごめんね、お兄さんたちは道に迷ったんだ。お城の人には黙っていてくれるかな」
ミー 「ええ、もちろんよ、半魚人みたいなお兄様」
8主 「半魚人……ww」
4主 「どいつもこいつも……後で表へ出ろ」
ミー 「んー……このお兄様見たことあるかしら?8主お兄様そっくりよ」
8主 「(ギクッ)さ、さあ、会ったことはないと思うよ…」
3主 「(6主無駄足だったな…)そろそろ行こうか。5主、ここを出るにはどうすればいいんだ?」
5主 「思い出になっている場所から離れればいいんだ」
1主 「そうか。なら簡単だな。じゃあね、お嬢ちゃん」
ミー 「さようなら、お兄様たち」
356 :
おまけ:2006/01/31(火) 16:49:20 ID:jgC11G3J0
1主 「どうやら解決したな」
3主 「あのバカ王子が」
7主 「ところで5主さんは?」
1主 「家族サービスしにグランバニアに帰ったぞ。エロ親父だが父親だからな」
4主 「待ちやがれクソ竜!半魚人とは何だ!」
8主 「それはみーちゃんが言ったことですよ!何で僕が斬られなくちゃならないんですか!」
4主 「てめーが代わりに斬られろ!」
2主 「4主と8主は仲がいいな」
48主「 よ く な い ! 」
主人公雑談スレの住人じゃないと面白くもなんともないところが苦しいが、
住人の漏れは笑いあり萌えありで堪能させてもらった。GJ!
>>357 うむ。だが、あのスレの住人な自分は楽しませてもらった。GJ!
359 :
353:2006/01/31(火) 22:20:46 ID:mZe0tfS50
つい出来心でやった。
反省はしていない。
最近6主が暗躍しているのでつい作ってしまったよ。
主雑スレ見てない人、すまんかった。
今まとめサイト見てきたら更新されてた!
中の人、乙!
雑談スレ好きだがここでやるなよと思う。
ただの変態でロリコンの6主にはうんざりしてるんだ。持ち込まないでくれ。
他スレネタも否定的発言も、困るのはここの職人さんだと言うことに気付こうね?
で、関係ない話はここで終了ってことで。
面白いっていう人もいるんだから他スレネタでもいいんじやない。
うん、いい。職人スレじゃないし職人らしい人居ないし。
さあ皆さんご一緒に
ミーたんハアハア
まとめサイトの方、いつもありがとうございます。
誤字脱字が多く、申し訳ありません。
>>334-338、
>>343-347 ラスト行きます。
が、かなり長いです。
お許しください。
一番人手が足りなかったのは厨房だったので、必然的にエイトは調理の手伝いをすることが多
くなった。王族と重臣の分だけは料理長自らが作るのだが、その他城で働く全ての者の食事を
賄うのである、一回に使う食材だけでも大変な量だった。葉物野菜は洗って刻み、豆は煮込み、
芋は洗って皮を剥く。石釜に焼べる薪も、調理に使う水も、全部水場なり薪置き場から運んで
こなければならない。パンやパスタを作るのも小麦を挽くところから始まる。それらを手際よ
くこなさなければならないのだ。その苦労は並大抵のものではない。人手は必要だが、同時に
気の利く者でないと勤まらない。
そんな厨房でのエイトの仕事は専ら芋の皮剥きだった。火を扱う仕事は子供には危険だったし、
パン作りはコツが要る。簡単だが手間の掛かる芋の皮向きがうってつけなのであった。
厨房での作業が一段落着くと今度は城内の清掃だった。兵舎とその近傍は出入りが激しいので
毎日よく拭き掃除する必要がある。綺麗に拭いた直後に兵士が戻ってきて泥だらけの長靴で足
跡を付けられて泣くに泣けない時もあった。
リネン係のメイドに従って行って、部屋の家具類に艶拭きをかける仕事もあった。王族の部屋
の調度には一々細かな彫刻が施されているので、エイトのような子供の手が重宝されていた。
足りなくなったリネンを取りに行ったり、汚れた布巾を片付けたりと忙しくはあったが、エイ
トはこの仕事が割合気に入っていた。普段入ることのできない場所へ入ることができるからで
ある。勿論部屋の主と顔を合わせることはない。彼ら、彼女らが部屋にいない時間を見計らっ
てリネンの交換と清掃が行われるからである。それでも持ち主の使う豪華な調度を見るのは楽
しかった。どんな人なのかと思いを馳せながら。
その日は月に一度の客用寝室の清掃日だった。客人が来なければ使われないこの部屋だったが、
閉め切ってばかりでは内装も調度も傷んでしまう。時々風を入れる必要があった。
「あら」
でも今朝は様子が違っていたようだ。リネン係のメイドが首を傾げる。
「誰か入ったのかしら」
言われてエイトも不思議そうな顔になった。長い間人の入らない部屋というものは埃っぽい、
乾いた臭いがするものである。なのにその部屋の空気はちょっと湿っぽかった。
「まあいいわ。エイト、窓を開けるから手伝ってちょうだい」
「はい」
そう答えてエイトは早速部屋の掃除を始めた。
重いカーテンを端に寄せ、窓を開くと新しい空気が部屋に入り込む。人のほとんど入らない部
屋なので埃はあまりないが、それでも家具の彫刻には汚れが溜っているし、寝台の天蓋を支え
る銀の柱は曇ってきている。どれもこれも細かな細工のため掃除には手間が掛かった。
掃除はあらかた終わり、最後の仕上げに磨き込もうとエイトは箪笥の金具に手を掛けた。が、
その途端把手が外れ、ころころと転がって寝台の下に入り込んでしまった。
「あら、取れてしまったの?困ったわね、まだまだ仕事は沢山あるのに」
「すみません」
メイドの言葉にエイトは項垂れた。
「取れてしまったものは仕方ないわ。私は先に行っているから、元通り戻しておいて」
やれやれ、といった風に言うと、メイドはいそいそと部屋を出て行った。
エイトは足覆いを跳ね上げて寝台の下に潜り込み、把手を探り出した。幸い、ネジが弛んでい
ただけのようである。早速取り付けようと箪笥の扉を開いた。が、その途端喉の奥で「ひっ」
と息の音だけをさせて固まってしまった。空っぽの筈の箪笥の中には何か白い、小さな人の形
をしたものが蹲っていたのである。あまつさえその白い人影─女の子のようだった─は不意に
明るくなったことに気付いてこちらを振り返った。─―目が合った。
「あっ」
エイトはそれが誰であるか知っていた。直接会った訳ではないが。
「子供がいる!」
何とこの状況と懸け離れたことを言うんだ、それに自分だって子供じゃないか、とエイトは思っ
た。賢明にも口には出さなかったが。
「この城に子供がいたなんて。あなたのお名前はなあに?」
「え、エイトです」
呆気に取られつつも何とか答える。答えた後でそれが礼に適ったものかどうか不安になった。
「エイトっていうのね。あた…わたしはミーティアよ。いつからここにいるの?」
少女はあっけらかんと名乗り、矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。が、幸いエイトにも答えら
れる内容だった。
「いっ、一ヶ月ぐらい前から…です」
「まあ、全然知らなかったわ…」
そう言いながらミーティア姫は箪笥から出てきた。
「あの、どうしてそこ…そちらに」
混乱しつつもこれだけは聞いておかないと、とエイトは思った。箪笥から人が出てくるなんて
普通なら考えられない、それもこの城の王女様が。
「あのね、」
と姫は急に俯いてしまった。
「今朝起きたら歯がぐらぐらしていたの。でもそんなことお話ししたら抜かれてしまうでしょ?
それで黙っていたのだけれど、朝食の時にお父様に知られてしまったの。それでやっぱり抜く
ことになってしまって。怖いから隠れていたの」
エイトは「ふうん」とも「はい」ともつかない、変な鼻音を立てた。こんな時にどのように相
槌を打てばいいのか分からなかったのである。
「エイトは歯を抜かれたことある?」
いきなりミーティア姫が質問してきた。
「んーっと、あの、あるような、ないような…」
「えっ、どういうこと?」
「あの、歯を抜いたんじゃなくて、歯が抜けたんです。ぐらぐらしている歯を舌でちょんちょ
んって突いてやると」
「もご」
思い出し思い出し語るエイトの言葉を早速実践しているようだ。姫の頬の辺りが膨らんでいる。
「痛くないくらいで動かしていたら勝手に抜けたんです」
「…………あっ、抜けたわ!」
と、口の中から歯をつまみ出した。
「全然痛くなかったわ。どうもありがとう。エイトは何でも知っているのね」
「いえ、あの…」
エイトはもごもごと口籠った。照れくさいのもあったのだが、それ以上に記憶が無いことを話
した方がいいのか迷ったのである。だが目の前の姫が興味津々でこちらを見ている。仕方なく
話すことにした。
「僕、何も覚えていないんです。家のこととか、そういうの全部」
「まあ、でも痛くない歯の抜き方は知っていたわ」
「そういうことは知っているんです。でも…」
と、言いかけた時、背後から声が掛かった。
「エイト、終わったの?……まあ、姫様!どうしてこのような場所に?」
メイドが戻ってきたのである。開いたままの戸口からこちらの様子を唖然とした様子で見てい
る。
「あのね、今エイトとおともだちになっていたところなのよ」
天真爛漫にそんなことを言う姫にメイドは頭を抱えた。
「そんな…ああ、このことが王様に知れたら私は一体…」
「あら、お父様は別に何も仰らないと思うわ。それよりエイト、ミーティアのお部屋に来て。
さっきのお話の続きが聞きたいわ」
「あの…、まだ仕事がありますし…」
しどろもどろになりながら、エイトは答えた。何だかあまりよくない風向きになってきたのを
感じながら。
「そうなの…」
がっかりしたような声を出して姫は俯いてしまった。その様子に慌てて、
「あの、昼食の後片付けが終わったら少し時間が…」
と付け加えると(メイドは恨めし気にエイトを見ていた)、ぱっと嬉しそうな顔になった。
「じゃあ一緒にお茶を飲みましょ」
姫の横でメイドが控え目に声を掛ける。
「姫様、どうかお戻りに…」
「ええ、戻るわ。じゃ、エイト、お昼過ぎにミーティアのお部屋に来てね。約束よ」
そう言うと楽し気な足取りで部屋を出て行った。
「…あのう、よかったんでしょうか」
姫が出て行った後、エイトは怖ず怖ずと口を開いた。果たして今のことはよかったのか、それ
ともメイドの様子から窺う限り、行かない方がいいのかと思いながら。
「…まあ、仕方ないでしょう。約束ならこちらから破る訳にはいかないし」
はあ、と溜息を吐きながらメイドは言った。
「さっさと後片付けを済ませるしかないわ。汚れていない服を着て伺うのよ」
※ ※ ※
言い付けられた通り、昼過ぎにエイトは城の三階にあるミーティア姫の部屋に向かった。汚れ
ていない服に着替えた筈なのだが、どうにも落ち着かない。それもその筈、この区域は王族の
居住区であって廊下と言えど絹製の絨毯が敷き詰められ豪華な雰囲気が漂っている。掃除の時
ならいざ知らず、これから姫の部屋を訪問するには使用人の自分がいかにそぐわないかという
ことを思い知らされた。
絨毯を汚さないように端を歩き、ミーティア姫の部屋の前に着いた。部屋の扉の前では近衛兵
が立ち、警護している。
「あのう、恐れ入ります。エイトと申しますが、姫様は…」
びくびくしながら呼び掛けると、兵士は振り返り、足元の子供を見た。
「ああ、今日の午後ここに来ることになってた子だね。姫様がお待ちになっていらっしゃるよ」
意外に気安く話し掛けられ、ほっとしながらエイトは扉を開けた。
「エイト!」
部屋に入るなりミーティア姫が小走りに寄ってきた。
「待っていたのよ。一緒にお茶を飲みましょう」
「お、お邪魔いたします」
掃除で入るなら何ということもないが、因りによってお客として入らなければならないとは。
しかしもじもじしていても埒が開かない。エイトは覚悟を決めて足を踏み入れた。
部屋の真ん中には大きなピアノが置かれていて、それを避けるように小さなテーブルとソファ
が用意されている。その上には砂糖で覆われた焼き菓子とクリームを添えたシフォンケーキ、
チーズと赤いつぶつぶしたもの(エイトは初めて見たので知らなかったが、イクラであった)
が乗った小さなクラッカーまである。紅茶のポットにはふわふわした覆いが被せられ、身に過
ぎる程立派なお茶会だった。
どうしよう、とエイトが身を竦ませていると、
「こっちよ」
とミーティア姫が手を引く。
「ここに座るの」
案内された先はそのテーブルの真ん前、ふかふかのソファだった。姫はただ、にこにこしてこ
ちらを見ている。こうなったら仕方ない、とエイトはそのソファの端に座った。もう何回覚悟
を決めたのか分からなくなりながら。
「ではエイト殿、ただ今お茶をお煎れいたしますわ」
姫は急に畏まった口調になり、ポットの覆いを取ろうとした。
「あっ、僕がいたします」
慌ててエイトは言ったが、
「いいの。一度こうやってお客様をおもてなししてみたかったの」
と姫は危なっかしい手付きながらも何とか紅茶碗に茶を注いだ。
「はい、お茶をどうぞ」
さりげなくエイトにお茶を渡すミーティア姫だったが、本当は緊張していたのだろう。紅茶碗
と銀の匙がカチカチと音を立てた。
「ありがとうございます」
受け取った茶碗は意外に重い。それにエイトも緊張していたので、手の内でますますカチカチ
と鳴った。
「…重かったらテーブルの上に置いてね」
と姫はエイトの隣に座った。
「は、はい」
「本当はミーティアも重いの」
「そうなんですか?」
姫はこっくりと頷いた。
「でも先生はね、『お茶碗とお皿を別にしてはいけません。いつもお皿は左手で持っていらし
てくださいませ』ってきびしく言うの。だからいっしょうけんめい持っているのだけれど」
そこで何か思い付いたのか、にっこりと笑う。
「でも先生はいらっしゃらないし、おともだちと二人きりなのよね。
お作法きちんとしなくてもいい?」
「あ、はい、姫様」
「ミーティアって呼んで。だって、おともだちでしょ」
堅苦しく答えるエイトに、顔を覗き込むようにして言う。
「……」
エイトは先程厨房で、
「ちゃんと姫様とお呼びするように」
「きちんとした言葉遣いをするように」
「姫様のお言い付け通りにするように」
と厳しく言われたことを思い出した。が、姫は
「ミーティアと呼んで」
と言っている。どうすればいいのかエイトは困ってしまい、ただ俯いてしまった。
「それでね、さっきのお話の続き、聞かせて。エイトはどうやってここに来たの?」
「…はい。あの…」
話題が変わったことにほっとして、エイトはここに来るまでの出来事を話した。いつもはその
話をすることが嫌だったのだが、今日は不思議にそうは感じない。話を聞く者はたいてい哀れ
むような眼差しをこちらに向けてくるのだが、それがエイトには堪らなく嫌だった。でも姫は
ただ興味深そうにこちらの話を聞いているだけである。何か面白い冒険潭でも聞いているかの
ようなので、話す側としても気楽だった。
「トーポってネズミなの?とってもかしこいのね」
話の途中何度も出て来たトーポにミーティア姫は興味を示した。
「助けてくださった方から聞いたんですが、僕の頚回りを暖めてくれてたんだそうです」
「まあ、すごいわ。ミーティアも見てみたいわ。今は一緒ではないの?」
「えっ、でも、ネズミですよ」
姫の反応にエイトは驚いた。普通の人はネズミを見ると驚いたり怖がったりするものである。
掃除で城内を回っている時にネズミが出るとたいていメイドが怯えてエイトが追い払うことに
なるのだった。そういう周りの人々のネズミに対する反応を見ていると、「大人にとってネズ
ミは嫌われる者なのだ」と悟るには十分だった。なのにこの姫は。
「だってエイトのおともだちでしょう?きっとかわいいに違いないわ」
実はミーティア姫は現実のネズミを見たことがなかったのである。部屋にネズミが出てメイド
が騒いだこともなかったし、嫌なものであるという認識はなかった。ただ単に生き物を間近で
見たことがなかったので見てみたいと思ったのである。
「はい、じゃあ。……トーポ、おとなしくしておいでよ」
小声で注意しながら、ポケットからトーポを出して自分の掌の上に乗せた。エイトの言葉が分
かったのかトーポはおとなしく掌の上で姫の方を見ている。
「まあ、かわいい。ね、なでてみてもいいかしら?」
姫はとても嬉しそうだった。眼をきらきらさせてエイトを見上げる。
「えと、あの、…はい。トーポ、じっとしてるんだよ」
トーポが嫌がって逃げたり、噛み付こうとしたらどうしようと思ったのだが、そんな眼で見ら
れては逆らえない。尻尾の辺りをさり気なく押さえて姫の方に差し出した。
姫もまた、恐る恐る人指し指で毛並みに沿って頭を撫でてやる。すると、トーポは気持ちよさ
気に「チュ」と鳴いた。
「本当にかわいいわ。こんな生き物がいたなんて」
「大事なともだちなんです」
エイトの言葉に不思議な響きが混じったことに姫は気付いた。このネズミは単に可愛らしいだ
けでなくエイトにとってとても大切な存在であるのだ、と。そして同時に、
「エイトにとって大切なものなら、自分にとっても大切なものなのだ」
と急に悟ったのである。
「トーポがなつくなんて」
エイトは驚いたように言った。いつもは他の人が触ろうものならぱっとポケットの中に隠れて
しまうのである。
「うれしいわ、なついてくれて。クッキーをあげたら食べるかしら」
「あの、チーズが一番好きなんです」
でも何だかとても嬉しかった。自分の大切にしているネズミが姫に懐いてくれて。
「そうなの?じゃあ、ミーティアたちと一緒にお茶を飲みましょ、トーポ」
「チュ」
※ ※ ※
「姫や、今日はとても顔色がよいし、ご機嫌のようじゃの」
正餐の時、トロデ王は娘と顔を合わせて驚いた。普段のミーティア姫は穏やかに淑やかに微笑
むばかりで頬に赤みが挿すこともないのに、今日は桜色の頬に溢れんばかりの笑みを湛えてい
る。
「ええ。とってもいいことがあったの」
余程いいことがあったのだろうと王は思い、嬉しくなった。娘の喜ぶ顔を見るということは父
親としての喜びだったのである。
「何があったのじゃ?お父様にも聞かせてくれるかの?」
新しい曲が弾けるようになったのか、楽しい本を読んだのか、できるなら今後も継続できるよ
うにしてやりたいと思った。が、姫は思いがけないことを言ったのである。
「あのね、今日ミーティアにおともだちができたのよ」
「なぬっ?!」
驚いた王は持っていたフォークを落としてしまった。
「お父様、おぎょうぎが悪くってよ」
「おお、すまんすまん」
替えのフォークを貰いながらませた口調の娘に詫びる。
「それで、何じゃ、その、友達ができた、とな?」
「ええ、色んなお話をして、とっても楽しかったの。あんなにたくさんおしゃべりしたの、初
めてよ。おともだちができて、とってもうれしいわ」
話をした?と王はますます難しい顔になった。最初は人形か何かを友達に見立てているものと
ばかり思っていたのだが、どうも違うようだ。だが城には今、姫と同じ年頃の子供はいない筈
である。廷臣たちの子供は皆、姫より大きいか生まれたばかりであった。
「この城に子供はおったかのう」
疑問をそのまま口にした王に姫はあっさり答えた。
「あら、いるのよ。エイトっていう男の子。ミーティアと同い年なんですって。お誕生日が分
からないって言うから、じゃあ今日をお誕生日にしましょ、って二人でお誕生日のパーティー
をしたの」
王は内心頭を抱え込んだ。エイトの存在をすっかり失念していたのである。保護した者として
身の振り方は気に掛けていたし、この城で働くことに最終的な裁可を出したのは王自身であっ
た。色々報告を聞いており悪い子ではないと思ったが、それにしても姫が貴族でもない子供、
それも使用人の子と友達になるとは。
だがそれを言えばどうなるのだろう。姫はただ無邪気な眼をしてこちらを見ている。
「…そうか」
その顔を曇らせるには忍びない。今だけ、今だけは許してやろう、その子を。
「そうじゃな。じゃが姫や、姫はこの城の王女であることを忘れてはいかんぞ」
親心からつい一言付け加える。
「はい」
ミーティア姫は一瞬怪訝そうな顔をしたが素直に頷いた。
「それで、どんな話をしたのじゃ」
その代わり何があったのか逐一聞くことにしよう、と王は決心した。何か問題があっては困る
のだから。
「あのね、エイトはね、……」
そう言った事情も知らず、姫はエイトの話を王に聞かせた。
(特に問題な点はなさそうじゃな)
姫の話を聞きつつ心の奥でほっと溜息を吐いた。この分なら許容範囲かもしれない、と話を聞
き続ける。それにより王は図らずもエイトの身の上を詳しく知ることになったのだった。
※ ※ ※
次の日の午後、いつもより多かった片付け物にぐったりしていたエイトは、不意にパン職人の
おばさんから呼ばれて跳び上がった。
「エイト!」
「はいっ、何でしょう」
慌てて振り返るとおばさんが手招きしている。
「あの」
「お客様がお見えになっておられるよ」
お客様?と怪訝な顔をしたが、そのおばさんの膨らんだスカートの後ろからひょい、と覘いた
人影が全てを解決した。
「こんにちは、エイト」
「姫様!どっ、どうしてこんなところに」
「ミーティアたちのお食事はここで作られているのね。いつもありがとう」
「いえ、そんな勿体無い…姫様のお言葉が私どもの励みになるでしょう」
呆気にとられるエイトを後目におばさんとミーティア姫はのんびり会話している。
「エイトをちょっとお借りしたいのだけれど、いいかしら」
「ええ、勿論ですとも」
話は勝手に進んでいる。
「あの、でも、僕」
異議を唱えようとしたエイトをおばさんは一睨みで黙らせ、
「行っておいで。でもちゃんと姫様、とお呼びするんだよ」
と小声で付け加えて姫の方へ押し遣った。
「行きましょ」
と歩き出した姫に従って厨房を出てからエイトは姫に声を掛けた。
「あの…どうして…」
もじもじとしているエイトにミーティア姫は笑いかけた。
「昨日はとっても楽しかったわ。エイトは?」
「僕は…」
ふとエイトの頬が緩んだ。
「うん…はい、とても楽しかったです」
ずっと忘れていた、幸せな感覚。声をあげて笑うこと。自分を受け入れてくれること。些細な
ことだがエイトはそれを欲していた。自分が何を望んでいるのか分からぬままに。
ミーティア姫と一緒ならばそれが得られる。と、言葉にできないままにエイトは姫に笑顔を向
けた。
ミーティア姫もそれは同じだった。王女として蝶よ花よと慈しまれ大切にかしずかれていても、
意識しないままに何かが欠落していた。それがエイトと出会い会話するうちにその部分が何か
で埋められていくのを感じたのである。
「今日は何しましょう」
「あの、今朝水場で大きなでんでん虫を見たんです」
「でんでん虫?かたつむりよね?見たことないわ。どんな生き物なの?」
「貝がらがぐるぐるうず巻いていて……」
二人は楽しく話しながら廊下を並んで歩いて行くのだった。互いに子供の会話ができる楽しさ
を感じながら。
(終)
みーたん友達できたねー よかったよかった
上の歯なら床下に 下の歯なら屋根の上に投げると
雑草だって普通に食べられる位立派な歯が生えてくるよみーたん
>>職人様
携帯から超GJ!!
細かいことだが、なるべく全部のレスにコテ付けて欲しい
前にも出たけど何かに、誰かに似てないか?これからも書き続けるならまた気をつけられるか?安直嫌いなんだろうから斬新なのを頼む。
それよりも笑える作家希望。他スレネタに限らず。
完結お疲れ様でした!
エイトとみーたんの出会いをそれぞれの視点から丁寧に書き上げていかれたのはお見事でした。
それにしても携帯からって・・・。まさか一文字ずつ打ち込んでるわけじゃないよね?
斬新て‥人を必要以上に引き付けない空気みたいな文章でないと公共の場‥とくに萌えスレでは危なくないか?荒れるよりは安直な方が良い
安直嫌いだとしたらここに居てもメリット少なくない?「面白い、凄い」と不特定多数の人に思われる所までは良い。でも多くの人がスラスラと感想を書ける文はどこか安直でしょ。読み手に媚びてるとも言われそう
でもそれが職人のわかり易さだとも思う。安直嫌いなんて職人じゃなくてアーティストのセリフ
>>382 論旨がずれてると思う。斬新なものを、というのはただのイヤミかと。
要するに笑えるものが読みたいってことでは。
>>380 何様?
なにその「読んでやってる」みたいな態度。
380は短い物でもいいからまず自分で何か書いてみるといいよ。
人目に晒す作品を形にするのがどんなに大変なことか分かると思うよ。
せっかく完結したのになーんか雰囲気悪くなったな・・・。
作品が気に入らないからって、わざわざその事を書き込むのもどうかと思うけど。
そんな言い方されたら、職人は次に作品投下しようとも思わなくなるぞ。
まぁなんつーか、
>>380が求めている作品は ス レ 違 い 。
>>367-377 自分はとても楽しませてもらった。GJ!
エイトとみーたんが微笑ましくて萌えました。
チャゴス並みのおバカ様が1匹いるような気がするけど見なかったことにしよう
>>367-377 乙でした、いつも感想書かずにいてスマソ
スレタイにふさわしい、いい話をありがとう
次回作はどのあたりの年齢になるんでしょう?
無責任ながら期待してます!
前からいるよな。同じ奴か?
気に喰わないssは何でもみんな某氏に似ていると言って叩けばいいと思ってんだろ。
マンセー意見の多いssに批評(でも的外れ)ができる俺様カコイイイ!なんじゃないのか?
それにこのスレで斬新な展開って主姫と見せ掛けておいて主ゼシとかクク主ってかw
このスレは主姫萌えと若干のみーたん萌えで成り立っております。
恐れていた事は現実だった!
このスレはミーティア寄りだ!
トーポ可愛い。正体がアレだが、エイト以外はみーたんだけに懐いてた設定イイ!
続きが楽しみです。
その某氏って人を全く知らない人間からしたら、某氏か?だの某氏化しているだのと
いちゃもんを付ける人が現れて、その度にスレが荒れるのが
鬱陶しくて仕方がない。これで一体何度目なんだよ。
今のはメラではない・・・・・・
スルーだ!
みーたんに懐いたのはウィニアに似てるからじゃね
紙芝居がそっくりだったし
紙芝居は爺さん男前のインパクトが強くて覚えてねぇなぁ
みーたんはカーチャンに似てるのか・・・
あまりにちっちゃいもんなぁ 父ちゃん
剣の方はかなりの実力をお持ちのようだが
え?そんなちっちゃかったっけ?>父
トロデはどう見ても小さい
ごめん。かみ合ってなかった…orz
エイト父のことだと思ってた。
>398は紙芝居はエイトの父母の話じゃまいか?と考えたのではなかろうか
>◆JSHQKXZ7pE氏
毎回楽しみにあなたのSSを見させて頂いてますこれからも頑張って下さい
400 :
366:2006/02/04(土) 23:23:29 ID:Gb/L1eX60
たくさんの感想、本当にありがとうございました。
寒い立春の日に暖かいみなさんのお言葉が身に沁みます。
>全部のレスに
確かにそうですね。後でPCから見直すと自分でも何だか分からない時があります。
今後注意していこうと思います。
>>378 特別サービス「抜けた歯の行方」w
「下の歯が抜けたのよ。だから屋根の上に投げればいいのよね。
…………あのね、お城の屋根はとっても高いところにあるの……ミーティアじゃ届かないの……」
一つもめ事があると感想書く人増えるなやっぱり。
書く量多すぎたせいで感想貰えて良い物も貰えて来なかったかもな。
SSが無いこのスレの方が好きな人居るかも知れないからトリップは最低限のマナーか?
いちいちトリがあると今までよりずっとウザく見えてしまうだろうが書きたいなら仕方ない事なんだろうなー。
わ、本人キテター。萌えは次レスに任す↓
トリ付けろってそういう意味か・・・
>401
君は毎回SSを書いてくれる作者の大切さがわかっていない
確かに煽りがあればレスはつく、しかし、作者さんがいなければ全体の80%以上のレスが消えるんだぞ?
>>400 おぉ レスきとる
つーか城に床下あるかな?って思ってかいとったが
届かなかったか みーたん
「下の歯が抜けたのよ。だから屋根の上に投げればいいのよね。
…………屋根の上に投げようとしたんだけど……
壁に穴あけちゃってお父様に怒られたの……」
マッシヴなオチじゃなくて良かった・・・ほんと良かった
>>401 なんだかんだでこういうカプ萌えスレには職人さんの存在はとても大切だと思うよ。
書く量多いのは気にならないし、むしろ萌えSSたくさん読ませていただいてありがたい。
SS投下とは別に雑談を楽しみたい人は気にせずそうすればいいんだし。
一人の人が多量に投下するから他が書き込みにくいとか、そんな雰囲気では無いと思うが…。
でも揉め事があるといきなり書き込み増えるってのはどうなんかな。正直微妙。
揉め事に便乗するより、萌えネタに便乗して欲しい、と感じることはある。
407 :
404:2006/02/05(日) 03:31:41 ID:em6ex1wYO
大分検討違いなレスをしてしまったなスマヌorz スルーしてくれ
詫びにお粗末ながら…
「姫様、…僕には城の構造がわかりませんが、高い所の窓から投げれば、屋根に届くのではないでしょうか。」
ミーティア「エイトがね、ミーティアの代わりに投げてくれたの!でも何度投げても戻ってきちゃう…
どうしてなのかしら?」
「……ごちそうさま」
「まあ姫様、まだニンジンが残っていましてよ?」
「ミーティア、ニンジンきらいです!」
「姫様、好き嫌いはよくありませんわ。ニンジンには栄養があって……」
「でもいやなの、ニンジンきらい!」
「おお、わがままを言うでない。何でも残さずに食べなくてはの」
「王様、いつの間に!」
「でもニンジンはいやなの……たべられないの……」
「ミーティアや、そのニンジンはの、エイトががんばって皮をむいておったのじゃぞ」
「え?」
「わしらのために一生懸命にむいてくれたのじゃ。
エイトだけじゃない、それはみんなが心をこめて作ってくれたシチューなのじゃぞ」
「……」
「ニンジンを残したらエイトはどう思うかのぅ。きっとがっかりするであろうなぁ」
「……(パクッ)」
「エイト、にどとニンジンのかわをむいちゃだめよ!」
「えっ!?」
エイトくん、わがまま姫様の躾のだしにされるw
王様は別に厨房のぞいたりしてませんが、
大体一番下の小間使いが何やらされるかくらい知ってるかと。
>「エイト、にどとニンジンのかわをむいちゃだめよ!」
そっちかー!
でもみーたんがかわいかったから好き嫌いしても許すw
そして十年後、$髷の呪いでお馬さんにされてしまい嫌いなニンジンを毎日食べる羽目に・・・。
というオチだと思った、スマソ。バースデーが雑草じゃ悲しすぎるよ、み〜たん〜(つДT)
>410
かーいいなぁ〜!
王様いつの間にワロスw
416 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/08(水) 01:42:02 ID:Io8UDnTO0
ミーティア可愛いから好き。8のエンディングはもう最高だった
保守あげ
>>413 でももしかしたら呪いのせいでにんじんが好きになるかもしれないよ
「ミーティアは なんだか とっても にんじんが 好きになりました」
……みーたん絵板のにんじん抱いているあの絵、かわいかったなあ
もう長編は無理くね?
ネタ出尽くしたっしょ
そーかなー?
それは書いている人次第なのでは?
それにネタが被ったっていいんじゃない?ED前夜なんて思いっきり被ってるし
他の人が書いたトラペッタお出かけ篇とかも見てみたい
それこそネタは書き手の数ほどあるんだから
この前から気になってたんだが、このスレの住人の萌え傾向は何?
主姫萌えはもちろんだけど、8主=エイトたん萌え、とかみーたん萌えとか。
エイト単品萌えって人はみな数字系かと思ってたんだけど主姫にも多いのかな。
こちらは主姫、エイト、みーたんそれぞれに萌えている。
普段はゼシカ萌えだが、カプの話となると途端に主姫萌えになる俺。
どっちかっていうと、みーたんにより多く萌えている。
エイト単品だとあまり魅力を感じない。
カプは主姫オンリー。他カプには興味なし。
数字系などもってのほかだwww
なんか人がいない…
保守がてらプチネタ置いて行きます。
以前書いた「トロデーンのメイドさんの語る」「十五の思い」に関連した話です。
春まだ浅い、トロデーン。
日射しは日に日に暖かくなってはきているものの、風は刺すような冷たさだ。
そんなトロデーンの兵舎で、僕は困り果てていた。
「お前随分苦闘しているなあ」
同僚の苦笑混じりの言葉もあながち的外れではない。昨日近衛兵に昇格したばかりの僕は、着
慣れない制服に悪戦苦闘していたのである。
「あの、すみません。お見苦しいところをお見せして」
「ああ、堅苦しいことはここでは抜きだ」
彼は確かに同期なのだが歳が若干上だったし、何より某男爵家の出であった。兵の間に変な身
分関係を持ち込まないように、とのお達しはあるのだがそれに甘えていると痛い目を見るかも
しれない。ただでさえ破格の若さなのに、僕は本来近衛兵になれるような身分ではない。どこ
で妬みを買っているのか分からないのだから気をつけるに越したことは無いと思っている。
「あの、ついうっかり紐を解いてしまって」
でも変に堅苦しくしているのもまたそれはそれでいびりの対象になりやすい。その辺の匙加減
が難しい、かな。
「何だ、解いてしまったのか。それな、解くものじゃないんだ。下にホックが付いているだろ。
それを引っ掛けるだけなんだよ」
「あっ、本当だ。すみません、助かりました」
それにしても何だろう、この制服の複雑怪奇なことといったら。飾りボタンやら房飾りやらが
ついていて、どこを外せばいいのか最初は見当も付かなかった。これが通常の近衛兵の制服な
のだというから恐れ入る。昨日着ざるを得なかった儀礼用の制服ともなれば肩章とマントが付
く。兜には羽飾りだ。
初めて袖を通して鏡で自分を見た時にあまりに板に着いてなくて、借り着にしか見えなかった
のにがっくりしたっけ。……この先なるべくそういう式典に出席せずに済むことを祈ろう。
「さっさと着替えろよ。姫様をお待たせしては申し訳が立たんからな」
「へっ?!」
思わず声が裏返る。
「何だ、忘れていたのか?昨日、午前中は護衛だって言われていただろう」
危なかった。どうやら予定をうっかり忘れていたものと思ってくれたようだ。
「ほら、早く行け」
何とか着替え終わった僕の肩がぽんと叩かれ、部屋を追い出された。
それにしてもまだまだだな、と思う。武官なればこそ、感情を剥き出しにしてはならない筈な
のに、不意にあの方の名を聞くと動揺してしまう。あの方が──ミーティアが視界に入ろうも
のならもう、心臓が破裂せんばかりに肋を打つ。
絶対に表には出すまい、と深く心に刻んでいた筈だった。けれども宣誓式の時につい、ミーティ
アの顔をまじまじと見詰めてしまった。そして見てしまったら、もう眼が離せなかった。怪し
まれる、気付かれる、僕の中にある不埒な想いを、と必死に逸らそうとしたのに、吸い付いて
しまったかのように離すことができない。
宣誓する時も、ずっと必死だった。僕はこのトロデーンに身命を捧げるんだ、この国の国主た
るトロデ王様に誓うんだ、と思っていた筈だったのに!
…今更言い訳したって仕方ない。僕はただ、この国の為に剣を取る。僕を育ててくれたこの国
の為に。それが恩義に報いることなのだから。新しい制服に身を包んだ今、改めて誓う。
※ ※ ※
が、ミーティアの部屋の前まで来ると僕の決心はあっさり揺らいだ。普通ならどうということ
のない室内への取次ぎですら、動揺してうまく言葉が出ない始末。さらに部屋から出てきたミー
ティアと眼が合った時、棒立ちも同然の状態になってしまった。柔らかそうな白貂のフード付
きケープと、手には同じ素材のマフをはめ、まるで雪の精のようなミーティア…
「行きましょうか」
動揺する僕に対し、ミーティアは常と変わらない平然とした声で言い渡し、身を翻した。その
言葉にはっと我に返る。勤務中なのだ、私情に流されるな、と。
先を行くミーティアは何も言わない。こちらを振り返ることもない。それでもここ数年では考
えられない程の近さにあの方がいる。翻る裳裾も触れそうな程に。もうそれだけで身体が震え
そうになる。やっと得た、貴重な一時。ミーティアは、このことをどう思っている…?
でも庭に出ても状況は変わらなかった。行き交う人々の礼を受け、ふと足を留めて足元の日溜
まりに咲く小さな花を愛でる。僕はただ、何も言わず従うだけ。その素っ気なさに自分の心の
内の葛藤が恥ずかしかった。
そのうちいつもと違うことに気が付いた。訓練場からミーティアが散歩している姿が見えるの
で知っているんだけど、この寒い時期の散歩は早々に切り上げている。なのに、普段よりずっ
と長く散歩している?
「あの…恐れながら申し上げます。お寒くはございませんか」
思わず言ってしまったのには訳がある。海を見遣るミーティアの横顔、その頬の赤味が薄れて
いる。それに晴れて日射しはあったけど空気は冷たく、時折風花が舞うような天気だった。
「いいえ。…大丈夫です」
寒くない訳がない。現に声が震えている。
「ですが」
「お願い。もう少しだけ」
その声は必死だった。僕がこの瞬間を手放したくなかったのと同じように、ミーティアもまた
手放したくなかったのだ。
僕にはもう、何も言えずただ側に控えることしかできなかった。冷えきったミーティアの髪に
絡む風花を見詰めながら。
冷たく乾燥した空から落ちてきたそれは、目で見てもちゃんと六華の形をしていて、冷たく、
美しく、あの方の黒髪を飾っているのだった。
(終)
うむ。確かに回想シーンで出てきたエイトの兵士姿は
あまり板に着いていなかった。けれどそれが萌え所でもある。
というわけで、GJ!
428 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/12(日) 13:12:27 ID:WybmXZdzO
( ゚∀゚) <ageチン
( )
| 彡つ
し∪J
429 :
423:2006/02/13(月) 21:25:29 ID:DibBTl1yO
感想どうもありがとうございました。
特に、きちんとはしているけど粗末な物しか着たことがないかもしれないエイトが
近衛兵が着るような派手制服(画面じゃ区別ないけど)着たら最初は恥ずかしいんでないかな、
なんてことを高校の制服売り場を見て思った次第。
。
個人的にエイトにもみーたんにも単品で萌えてたり。
今回はややエイト寄りだったかな。
異世界であることは分かっているけど、DQ世界にバレンタインデーがあったら
どうなるんだろう?
トロデーンのエイト隊長ファンクラブのメイドさん’sからチョコレートを
もらいまくるエイト
ちょっぴりやきもち風味のみーたんかな?
みーたん手作りケーキがもらえて(゚д゚)ウマー
トロデ王がすねはじめて(゚д゚)マズー
「ええのう、エイトは。
わしのもらったケーキより大きいのう……」
チョコを作ろうと奮闘するみーたん萌え
>>431 「お、お父様はお歳なのですから
あんなに大きなケーキ食べたら
病気になってしまいます!
なんかみーたん風味にならんなぁ
一生懸命チョコを作るみーたん
でもちょっぴり失敗しちゃったみーたん
「ちょっとほろ苦くて美味しいよ」
みーたんの作る物なら何でも美味しいと思っているエイト
…本当は焦げてて苦いチョコ
ほんとうに美味しいと思ってる?
上目づかいに心配そうにエイトを見つめるみーたん。
──ほんとうだよ。
──無理しないでね。
──無理なんかしてないよ。でもね。
みーたんの頬に散ったチョコをちゅっと舐めとるエイト。
今のがいちばん美味しかったな。
……ばか////
ごめん。甘すぎて胸焼けしそうだ…orz
>435
激甘ですな!w
だ が そ れ が い い
保守
みーたんスレ落ちちゃったね・・・。
最近ものすごい勢いでスレが立っているからね…
それもほとんどが一発ネタの駄スレ。
どうやらスレの総数が670前後になると圧縮かかるらしい。
こちらはまったり保守して行けばいいんでないかな。
一ヵ月後はもっと大変なことになるよ(FF12発売)
そうだね…
どうなるんだろうなあ。一日一保守でも間に合わなくなるかもしれん。
怖っ・・・。続行には半日に1保守とかか。
みーたんスレ復活したみたいなんだけど…
スレタイがアレ過ぎw
そんな、ひどいw
445 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/18(土) 13:44:12 ID:amtHCZLu0
今日は意味なく2回もED見たぞ。
初EDと裏後ED・・・どっちも見てしまった;
ていうか竜神装備主人公ワロスww
保守
みんなどこへ…
小間使いの少年は今夜も疲れきって部屋へ戻ってきた。すると、その城の姫君で彼と同い年になる女の子が、ドアのところで待っていたのである。
少年は驚いて言った。
「まだ起きていらしたのですか?もう遅いですよ。早くお戻りを」
「エイト。寝る前に聞きたいことがあります」
「なんでしょうか?」
「エイトは、1日にどのくらいお金をもらってるの?」
「……姫様には関係ないことですよ」少年は遠慮して言った。「どうしてそのようなことをお訊ねになるのですか?」
「どうしても知りたいだけなの。1日いくらなの?」姫君は手を前で組み、嘆願するように聞く。
「その……10ゴールドくらいでしょうか。それでも僕には多すぎるくらいですよ」
「わあ」姫君は笑った。「ねえ。それならエイト、私に2ゴールド貸してくれませんか?」
「何ですって?」少年はヘトヘトに疲れていたせいもあって声を荒げた。「姫様にお金をお渡しなんてしたら、僕が王様に叱られちゃうじゃないですか!」
姫君は、悲しそうにうつむくと、黙って自分の部屋へ帰っていった。
すぐに少年は後悔した。きっと姫様はどうしても買わなくてはならないものがあったのかもしれない。王様には内緒で……。
姫様は今まで、我が儘に何かをねだることは決してしない方だった……。
少年は姫君の部屋へ行き、そっとノックした。
「その……もう、お休みでしょうか?」少年は小さな声で聞いた。
「ううん、まだよ」姫君の声がした。少し涙声だった。
「えっと……その、今日は遅くまでお皿洗ってたんで、少しその、イライラしてしまったんです。5ゴールド持ってきましたので、お渡しします」
とたんにドアが開き、姫君が顔を輝かせて少年の手を握りしめた。「ありがとうエイト!」
そして部屋にとって返し、枕元のバスケットに小さな手を入れ、数枚のゴールド硬貨を取り出した。
少年はちょっとびっくりして言った。「あの……だいぶお持ちじゃないですか」
「足りなかったんです。でもこれでいいの」姫君はニッコリ笑うと、20ゴールドと8ゴールドを少年に差しのべた。
「エイト。ここに30ゴールドあります。これで私、3日間エイトを買えますよね?」
448 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/20(月) 14:40:52 ID:JOuLqeAo0
>>447 イイヨイイヨー
一応ついでにageとく
下のほうにあるとなんか不安だw
なんか不安とかいう理由で定期的に上げるのかw
荒れても知らんぞ
>447
みーたんは三日間エイトと何したかったんだろう?
ぶっ通しでお人形遊びだったらキツイw
>448
ageないでも大丈夫なんだよ。書き込みさえあれば。
ここは一日〜二日に一度は書き込みあるし、もっと気を付けたいのなら
スレ総数が670近くなったら保守すればいい。(670前後で圧縮かかる)
今はまだ大丈夫、今はまだ…
人身売買みたいで萌えれない
たまに上がってるくらいで荒らされるのなんだのと、もうそのやりとりやめませんか?
やりとり?
荒らされてもしらんぞ、って書いてあるだけじゃない?
プチ話投下
以前書いた「アスカンタにて」のちょっと前くらいの話です
オレたちはドニの街を出てアスカンタの方へ進んでいる。
何でこのオレがこんな怪し気な奴らと旅をしなければならないんだ。かったるいったらありゃ
しねえ。色男の仕事は女に愛嬌を振り撒くことだろう?魔物相手に剣を振り回すことじゃない
んだぜ?
いや、それはあまり正確ではないな。一行の中には女もいる。それも飛び切りの。でもやけに
お固くて百戦錬磨のこのオレが擦りもしねえ。
やれやれ、育ての親も同然のオディロ院長を目の前で殺され、体よく修道院を追い出され、つ
いにヤキが廻ったのかな…
いやいや、こんな程度で非観的になってどうする。追い出されたおかげで自由を手に入れたし、
素敵なレディもいることだ。旅がいつまで続くのか知らんけど、諦めずコナは掛け続けよう。
振り向かせる、というのもまた新鮮なことだし。
寄り道ばかりするあいつのせいで、アスカンタ領に辿り着く前に日が暮れてしまった。
この辺りはオレも来たことがない。地理に不案内な状態で闇の中を歩くのは危険だ、という話
になって今夜は野宿になってしまった。
真ん丸なオッサン─ヤンガス、だっけか、が見掛けに寄らず器用な手付きで何かのスープを作っ
ている。その横でゼシカ─あの胸は反則だろ─が火を熾そうと躍起になっていた。手伝おうと
したんだけど、追い払われてしまった。別に何の下心もなかったんだが…オレって信用ないの
な…
自称王様の緑の魔物は火の側でうとうとしている。そもそもここで野宿する羽目になった張本
人、エイトは向こうの方でせっせと馬の手入れをしていた。二匹─いや、二人か、は元々人間
でエイトの主君なのだという。どうにも胡散臭いがまあ、マシな連中ではあるかな。人の皮を
被った化け物もいるからな、世の中には。
そんなことを思いながら背後からエイトに声を掛けた。
「よう、エイト」
「わっ!な、何?」
…何だ?
「何か手伝うことはないか?」
「あ、ありがとう。ででででもこっちは大丈夫だから」
何を焦っているんだ?ただ馬の埃を払い、ブラシを掛けてやっているだけじゃねえか。その馬
だってそしらぬ顔であっち向いているし。耳だけはこちらに向けているが。まあ、いいか。オ
レは前から気になっていたことを聞くことにした。
「ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「何?あ、姫様のお世話しながらでもいいかな。ちょっと蹄の具合を見たいからさ」
「ああ、オレは構わないぜ」
幸い辺りには人もいない。これは好都合だ。
「なあ、お前、ゼシカをどう思う?」
「どうって?」
あれ、何だこのあっさりとした反応は。もっとこう、もじもじしたりするかと思っていたんだ
が。今までの会話からして。
「好きか嫌いか、ってことさ」
「ああ、そういうこと。うん、好きだよ、普通に」
そう言いながら蹄の具合を見ている。少し蹄鉄が緩んでいるようだった。
「ヤンガスも好きだし、トロデ王様も尊敬申し上げている。それと同じさ」
けろりとしてそんなことを言う。蹄鉄を外し、蹄を削るその姿からはさっきまでの動揺は全く
感じられない。
「…お前、本当に男か?」
つい、思っていたことが口に出てしまった。
「は?」
「あれ程のイイ女を前にして口説かないってどうなんだよ。失礼にあたると思うぞ」
…まあ、うまく行ってないイライラもあったんだけどな。
「僕は見境なく女の人を口説いたりしないだけだ」
ちょっと気を悪くさせちまったかな。口調の中に微妙な棘を含んでいるような気がする。
「ああ、悪い悪い。気を悪くしたならすまなかった。お詫びと言っちゃなんだが、いい口説き
文句を教えてやるよ」
「はぁ?何でそういう話になるかな」
「いや、カリスマ剣士のオレからすればお前はどう見てもひよっこだ。ちょっとぐらい飛ぶ練
習に付き合ってやりたい、ってとこかな」
我ながらお節介な奴だな。最初エイトは呆れ顔で馬の世話に戻ろうとしたが、ふと手を留めた。
「…それ、例えばどんな風に使うの?」
お、乗ってきた。
「そうだな…例えば初めてその女の前に立ったとする。とびっきりの美女だ。これは褒めなけ
れば男じゃねえ」
「美女…」
「そうそう。女っつーのはな、基本的に褒めて欲しい生き物なんだよ。顔を合わせたらまずは
褒める。これだな」
「ふうーん…」
何だか満更でもなさそうだ。これは教え甲斐があるぞ。
「まずはその人の外見から入る。髪の色とか、眼の色とか。肌の美しさなんていうのもいい」
「でもさ、美しい黒髪、美しい碧の眼、では何かいまいちな気がするんだけど」
「そんな直線的な表現じゃ言っている本人がこっぱずかしいだけだって。そういうのはな、宝
石や花、星のような自然の物に喩えるんだよ。『ぬばたまの夜のごとき黒髪に、緑柱石の瞳』
とか」
オレもかなり調子に乗ってきた。自分で言っていても中々いい感じの口説き文句が出てくる。
「ぬばたまの夜のごとき黒髪に、星を宿した緑柱石の瞳、肌は真珠にも似て…」
「おいおい、どこ向いてしゃべってるんだ。馬を口説いてどうする。でも真珠の肌、ってのは
いいな。今度使わせてもらうぜ」
変な奴だ。それに馬も、耳だけはしっかりこっちに向けているのにますますそっぽ向いている
し。
「あ!そ、そうだ、そろそろ夕飯の仕度ができたんじゃない?行こうか」
あれ、何かまずいこと言ったかな。でもエイトは馬の肩に手を遣って促すとさっさと他の連中
の方へ歩いていく。
「おーい、待ってくれ!」
こんな黄昏時に一人になるのはちょっと嫌だぜ。待ってくれよ。
(終)
まあ、最下層にあるとageずにはいられない人もいるってことでw
3〜4年2ch覗いてるが、最下層でも落ちないって知ったのは
去年の秋。
スレdat「落ち」と言う言葉も良くないんだろう
なんとなく下から消えてくってのを連想する
2chに来たばっかの頃は、ひとつスレが立つごとに
一覧の一番下からひとつスレが消えていくのかと思ってた
>>456 ククールの一人称小説好きだな〜
タイトルの通りエイトは何気にくどき上手なのかもしれない、
とか思った今日この頃。
>>1の注意書きの一番上に書いてあるのにな
皆もしかしたら
>5.エロSSや画像をうpする時は注意書きをしてください。
しか見てないのかもしれんw
464 :
24歳:2006/02/22(水) 21:14:49 ID:V3XUSOGP0
>>463 そこは一番大事な所だろうさ
エロとンコには異常反応する年頃だからな
ククールの一人称小説(・∀・)イイ!
>「でもさ、美しい黒髪、美しい碧の眼、では何かいまいちな気がするんだけど」
めちゃめちゃ姫のことだと姫本人には丸分かりで、ワロタ。
466 :
456:2006/02/22(水) 23:20:51 ID:BkJzYyLO0
感想どうもありがとうございました。
目の前にあった酒瓶(本当にそういう名前の日本酒がある)と
化粧水の広告紙(真珠のエキスでつやつやお肌に!)から思いついた
一発ネタに近いものだったり。
エイトはみーたんに対してのみ、くどき上手だったりして。
>めちゃめちゃ姫のことだと姫本人には丸分かりで
はい、そこが一番書きたかったところだったw
ここって萌えネタより全く関係のない雑談の方が盛り上がるのなw
そうなんだよな。
もしかしてアンチしかいないんじゃねえ?って思うくらい。
公式カプだっていうのに、常駐している他のカプスレとの温度差に呆れている。
みんなもっと萌え話プリーズ!!
>>459 ノシ 自分もその一人だ。他にも2〜3人いるっぽい。
>>468 本当にそうなのかもな
荒んだ空気を嗅ぎ付けて便乗書き込みしてんじゃね?
SSを見事にスルーしてる辺りトリでアボーンしてんだろう
「全部のレスにトリ」ってそういうことだろうし
今読み返したら「SSには必ず感想書け」とも取られる内容だな
そう言う意図はないんで最後の行はなかったことにしてくれ
まぁまぁ、蒸し返さずに。
穏やかにマターリと萌えを語り合おうではありませんか。
いまやもうおれは主姫はさておき◆JSHQKXZ7pE氏萌えなんだが
475 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/26(日) 07:10:40 ID:4Zx4OlEx0
今月号のアフタヌーン「げんしけん」
なぜか笹荻と8主とミーちゃんと被ったんだが
476 :
sage:2006/02/26(日) 20:37:50 ID:4OD/q8kx0
>>474 それだったらネタ(SS)は二行くらいにおさめて、名無しで雑談してもらった方が
実のある事じゃないか。
すまん、名前にsage
>476
おい、レス「二行」って短すぎw
「エイト…」
「ミーティア様…お慕い申し上げております…」
こんな感じ?
>>そーゆーこと書いたら、またアンチが暴れるよ?
>478
そう。二行もあれば読み手の喜怒哀楽を引き出すのは可能。
それが出来なければ、その二行を雑談の力で面白くしていくとか。
……単にキミが携帯厨なだけじゃない?
いちいちトリ付けるよりは名無しの方が良いじゃない。ネタがアボーンもされにくいし。
トリ付け免れる方法の一つに短さがあるんじゃないかと。
読みたい奴は読めばいいし、読みたくない奴はトリでアボーンでいいじゃねえか。
ここんとこ本当に萌えじゃない雑談ばっかだな。
いい燃料を投下したいがネタがない。
みーたんスレを大事に大事に保守しまくりたいがネタがない(ノД`)
エイトとのラブラブな日常を描いてくれるだけでも私は一向に構わん!
シュバルベ>>シューティングスター>>>>>>>>>>>>ミーティア
ラブラブな日常…読みたい。
どっちかって言うと、切ない主従関係よりも幼馴染みで仲良しな二人の方に
萌えるんだなー。
ラブラブな日常とはちょっとちがうかもしれんけど。
姫にうっかり話を振ってしまったら最後
エイトの話が延々続きそうな気がする。
それこそ惑星間のろけ攻撃級の破壊力な気がする。なんとなく。
エイトはそんなにベタベタとのろけ話をしないけど
たまに真顔で爆弾発言炸裂させてそうな気がする。なんとなく。
どっちにしても聞かされるほうはたまらん気がする。
たまらんなー萌えるなーv
天然バカップルにはかないませんなーv
「姫様はエイトと喧嘩したりすることあるのですか?」
「いいえ、喧嘩なんてしたこともありませんわvあっ、でもこの前喧嘩しましたのよ。
卵が先か鶏が先かって。エイトったら鶏がいなかったら卵は産まれないって言うのですけど、
卵がなかったら鶏も産まれませんわ。絶対卵が先だと思いますの。
それにね、エイトったらこの前牛の反芻の物真似したんですの。それも謁見中に。
〜〜〜〜〜〜云々」
「………(もういいよ…っていうかこれ何の罰ゲームだよ…)」
質問
主人公の名前エイトじゃなくてもいいですか?
>>1にも書いてないので、どうしたものかと思いまして
エイトでお願いしたいです。
エイトきぼんぬ
つか態々エイトじゃなくする意味がわからん
できればエイトだなあ。
完全オリジナルな名前ならともかく、何か別の話のキャラの名前だったら眼も当てられん。
前にもオリキャラで別のシリーズに出ていた名前が使われたことがあって、
ちょっと物議を醸したことがあったし。
どうしても、というのなら最初に注意書きをしてもらえればありがたい。
496 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/01(水) 16:15:22 ID:OzdH+GyE0
主人公のデフォ名は5はリュカ、8はエイトで大体固まってるな
8はまだしも、5はもうほぼリュカで統一されてるような希ガス
じゃなきゃ○○とかどうだい
とりあえず6主とか1主じゃなきゃなんでもいいぉ
議論の途中ちょっとお邪魔しますよ。
プチな話置いて行きます。夜も更けたことだし。
【注意】
微妙なラインですが性描写を含んでいます。
互いの身体を清め合った後、ミーティアが枕元のテーブルに置かれていた薄物に手を伸ばそう
とした。
「駄目」
その手を搦め取り、身体をしっかりと胸に抱き直す。
「エイト、離して。このままでいたら風邪を引いてしまうわ」
何とか離れようともがくミーティアをますます強く抱き締める。
「寒くないよ。むしろ暑いくらいなのに」
「だって」
「寒くない、でしょ?」
ややあって、微かに頷く気配が胸に伝わる。そして僕の胸に身体が預けられた。その柔らかく
滑らかで優しい重み。
「ミーティアの肌って、すごく気持ちいい…」
思わず呟いてしまった言葉に腕の中の身体がぴくりと反応した。
「だから?」
「うん」
抱き合ったまま、言葉を探す。
「何だかとっても安らかで幸せな気持ちになれるんだ」
「…分かるような気がするわ…ミーティアも、エイトの肌、好きよ…」
そのままじっとしていると、ふと腕の中のミーティアが笑った気配がした。
「何だかね、子供に還ったみたいな気がするの」
「子供はこんなことしないよ」
「うふふ、そうよね」
ミーティアがさらに笑う。胸に縋り付くことで僕の手の悪戯を封じて。
「可笑しいわよね。子供の頃は、こんなことするなんて思いもよらなかったのに」
「こんなことって?」
それくらいで封じられるもんか。
「…いじわるな人!」
「でも分かるような気がする」
さらに肌を上気させたミーティアを抱き締めつつ、耳元で囁く。
「え?」
息を整えていたミーティアが怪訝そうな声を上げた。
「さっきのこと。ほら、子供に戻ったみたい、っていうの」
何だか二人きりでいる時って妙に無邪気な気持ちになるんだよね。素直になるって言うか。意
地悪言ってみたりもするんだけど。
「ああ……あのことね……分かってくれて嬉しいわ…」
ちょっと消耗させてしまったみたいだ。元はと言えば僕のせいなんだし、少しでも楽になれば、
と癒してあげようとすると、
「あ…エイト…大丈夫だから」
と断られた。
「でも」
「本当に大丈夫……あのね、その代わりこのままでいて…」
本当のことを言うと、まだミーティアが欲しい。眉根を寄せている様子すら、愛おしい。でも
無理はさせたくない。
改めて抱き直し、こつんと額を合わせるとどちらともなく笑いが洩れた。鼻先で互いに突き合っ
て、小鳥が啄むような接吻を交わす。
「エイト」
「ミーティア」
「大好き」
「僕も、大好き」
(終)
イイヨイイヨー(・∀・)
これまた珍しく直球な話だね。
でも好きだ・・・(*゚∀゚)=3ハァハァ
お約束の仲良しイチャイチャカップルですね。
ところでいよいよ再来週にFF12の発売が控えているのだが…
自治スレ覗いてみたらどうもスレ保有数を増やすことはないらしい。
ということは下手すると圧縮が数時間おきにかかる可能性が高い。
気付いた時には保守するけど、落ちた場合や避難所に一時避難する等といったことを
話し合っておいた方がいいんじゃないかと思うんだが。
皆さんどうでしょう。