まずい。
次々と繰り出される斬撃をかわしながら、クジャは頭の片隅で呟いた。
この展開はどうしても避けたかった。
なぜなら、セフィロスは近距離での戦いを最も得意とするからだ。
破壊の剣でも持ってこない限り、本職の武器である刀を持ったセフィロスに接近戦で勝てる者はいない。
魔法主体の戦いを得意とする自分ならなおさらだ。
事実、接近戦に持ちこまれた後のクジャは防戦一方だった。
ほとんど一方的に繰り出される攻撃をかろうじてかわしてばかりだ。
それならと、クジャは自分からさらにセフィロスに肉薄する。
懐に飛び込めば、逆に刀に斬られる心配は無い。
そして、セフィロスが彼を間合いに入れる為にバックステップする前に、
クジャは左手に宿したホーリーの光を、彼の腹に至近距離で放った。
強烈な衝撃を受けて、セフィロスは後ろの木にそのまま吹き飛ばされる。
クジャも次の魔法の詠唱に入り、一気に追い討ちをかける。
といってもそれはフレアやホーリーのようなものではない。
今のクジャに使える中で最強の魔法、フレアスターだ。
セフィロスも周囲に鮮やかなオレンジ色の炎が出現するのを見て逃げ出そうとしたが、
体を強打し、その動きは遅々としたものだった。
次の瞬間、彼を中心に円を描くようにして、次々と爆発が起こった。
「………」
フレアスターを放った体勢のまま、クジャは微動だにしないでその場に立っていた。
手応えからして、ほとんど直撃だっただろう。
さらに範囲をかなり狭め、その分威力を高めたので、いくらセフィロスでも生きてはいないように思えた。
「…やった、か?」
呟いて構えを解き、彼がいた辺りの地点に近づく。
そこはフレアスターによって薙ぎ払われ、倒された木によって埋め尽くされていた。
そしてその木の内の一本に足をかけたのが、そもそもの命取りとなった。
突然だ。
突然足下の木が派手に舞いあがったかと思いえば、次の瞬間には黒い影と、
紅い閃きが目に入った。
クジャは咄嗟に左に跳び、致命傷を回避する。
しかしその代償はあまりにも大きいものだった。
グチュリ。
嫌な擬音が、左から聞こえた。
いや、正確に言えば、自分の右腕から。
もっと正確に言えば、自分の右腕があったところから。
クジャの女性のように白く華奢な右腕が、肩から斬り飛ばされて宙を舞っていた。
「―――うあああぁぁぁあああぁぁっっっ!!!!」
あまりの苦痛に、絶叫を絞り出すクジャ。
着地したその場に倒れこむ彼の耳に、何か重いものが地面にぶつかる音が響いた。
それは、セフィロスが嘆きの盾を、怒りに任せて足下に叩きつける音だった。
フレアスターの炎に呑みこまれる直前、丁度ハッサンとの戦いのときと同じように、
盾を取り出してその身を守ったのだった。
とは言っても、あの時ほど上手くいったわけではない。
自慢の銀髪は先が黒く焼け焦げ、黒いコートも所々裂けていてボロボロだ。
そして、彼の顔はその怒りによって燃えているかのような凄まじい形相だった。
その怒りの表情を浮かべながら、セフィロスが刀を手にこちらに向かってくるのを、
クジャは痛みと出血でぼやけがちな視界に捕らえていた。
「…あああぁぁあ!!」
また叫んで必死の思いで立ち上がり、残った左腕にフレアの炎を宿す。
…が、その左腕も、彼に向けた瞬間手首から切り落とされた。
「―――!!!」
今度は声を上げる間もなく、クジャは蹴飛ばされ、背後の木にぶつかった。
「お前には」
辛うじて木に寄りかかるクジャの体を横に斬り裂きながら、セフィロス。
「本当に」
次は縦に。
「がっかりさせられた」
今度は斜めに。
「…こんなところで、私を裏切ろうとはな」
ああ、結局、ダメだったか…
セフィロスにメッタ斬りにされながら、クジャは妙に冷静な頭の中で呟く。
死が近い。
結局、自分にセフィロスを止める事は出来なかった。
見い出した償いを果たせず、死のうとしている。
自分の屍さえも乗り越え、セフィロスはどこまで殺人者の道を歩みつづけるのだろう。
自らの最後を迎えるまでか?それとも最後の一人となるまで?
どちらにせよこの二つ以外に、彼の道に終わりをもたらすものはなさそうだ。
ジタンは自分が死んだのを知って、どう思うだろうか?
少なくとも自分には、この犬死にを「死んで詫びる」などと言うのは、あまりに都合が良過ぎる気がする。
「さてと」
かれこれ十数回は斬りつけ、クジャがもう半ば意識を失った頃に、
セフィロスはようやく彼の首に刃を向ける。
「そろそろ逝ってもらうか」
言って、彼は大きく村正を構え、振り下ろした。
が、その刃はクジャではなく空を斬った。
ドンッ、という、それまでとは違う痛みと振動に、クジャは瞑っていた目を開く。
と、すぐ目の前にジタンがいた。
首をはねられる寸前、彼がクジャを助け出し、森の外まで連れ出したのだった。
「やあ…すまないね、ジタン」
やっとのことで、それだけ言ってみる。
すると、彼は悲しみと、少々の怒りを込めて言った。
「何が…なにがすまないだよ!死に急ぐなってあれだけ言ったろ!」
「ハハ…手厳しいね。僕だってなにも死ぬつもりは無かったさ」
ケホッと小さく吐血しながら、続ける。
「僕だって…君の言う通り償おうとはしたさ。その結果が…カハッ、これだけどね。
僕だけにできると大口叩いといて…このザマとはね…」
「…?」
「彼は…セフィロスは僕ですら止められない…
ジタン…早く逃げるんだ。でないと、君、まで、死、死ぬ事に、なるから」
途切れ途切れにそこまでクジャが言うと、ジタンはやっと彼の行動の真意を悟った。
そういえば、森でクジャを斬り刻んでいた男。
あれは、サイファーに顔写真を見せてもらったあの凶悪なマーダー、セフィロスに間違い無い。
「馬鹿野郎…」
「そうとも。僕が…僕がバカだった、のさ。僕は…また、気付くのが…遅すぎた。
もう逃げろ…じきに、彼が来るだろう…」
クジャは消え入るような声で言い終えると、ゆっくりと目を閉じた。
そして、それに気付いたジタンがなにか言葉を発する前に、彼は死んだ。
当のセフィロスが森のなかから荒荒しく現れたのは、それから間もなくの事だった。
彼は息絶えたクジャを見、そしてジタンを認めると、刀を構えてその場に立ち止まった。
「…さっきはよくも邪魔してくれたな。誰だお前は?」
訝しげに言うセフィロスに、それまでうつむいていたジタンは立ちあがり、はっきりと答えた。
「俺はジタン。ジタン・トライバルだ。
兄貴の仇をとらせてもらおうか、セフィロスさんよ」
彼は腹の鞘から短剣を抜き払い、無謀にすら思える戦いの準備を整えた。
【ジタン
所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7) グラディウス
第一行動方針:セフィロスを倒す
基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【セフィロス(HP 1/6程度)
所持品:村正 ふういんマテリア 攻略本 いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠 グリンガムの鞭 ブラスターガン 毒針弾 神経弾
第一行動方針:ジタンを殺す
基本行動方針:黒マテリアを探す
最終行動方針:生き残り力を得る】
【クジャ 死亡】
【現在地 カズス北西の森、最南端】
408 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/18(土) 23:36:50 ID:lnWZwk0a
保守
409 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/18(土) 23:46:53 ID:vY3KIZdH
図らずもはぐりんを倒し、多大な力を手に入れたウィーグラフは進む。
その足が森に差し掛かった瞬間、目の前で凄まじいばかりの光と爆音が響いた。
何事かと驚くウィーグラフを余所に、続いて空から幾十もの星が降り注いだ。
余りにも凄まじい閃光は、ウィーグラフの理解を超えており、
それが戦闘に使用された魔法だと気づくのに、暫くの時間を要した。
この先で戦闘が行われている、おそらくは私の理解を超える連中の戦い。
魂を売り渡し得た魔人の力すら、人の身で退けるあの男。
ともすれば戦闘の渦中にいるのは我が仇かもしれない。
そう考えたウィーグラフは、足早に戦闘の行われている場所へと向かった。
目の前に人影を確認したウィーグラフは、立ち並ぶ木々の陰に身を隠し戦闘の様子を伺う。
そこで戦闘を行っていたのは、半身を血にまみれた銀髪の男と尻尾の生えた金髪の男。
そのすぐ側に派手な格好をした銀髪の男が倒れているのも見える。
ボロボロに切り裂かれたその様子から、おそらく既に息はないだろう。
ウィーグラフはその場に仇の姿がない事を確認すると、不満とも安心ともとれるため息をついた。
ウィーグラフは戦闘に目を移す。
尻尾の生えた男は、素早く機敏な動きで敵を翻弄しながら、隙をうかがいヒットアンドウェイを繰り返している。
それを受ける血まみれの男、その血には返り血も含まれているのだろうが、その半分近くは彼自身のものだろう。
遠くからでもその男の消耗は激しさは見て取れた。
それでも、その男の技量は凄まじい。
素早く動く男とは対照的にその場から動かず、迫り来る攻撃を受けながら反撃の刃を返す。
仇がこの場にいないことを確認した時点で、すぐにでもこの場を去るべきなのだろうが。
彼はこの戦闘に目を奪われてしまった。
念のためブロードソードを構え、ウィーグラフはその戦闘を傍観した。
さて、どうしたものか。
素早く動き回るジタンを横目に、セフィロスは思考をめぐらす。
アリアハンからの幾たびにも及ぶ戦闘に加え、先のクジャとの戦闘。
流石に消耗が激しい。
目の前の男も雑魚ではない、このままでは少し分が悪いだろう。
最低限、回復手段が必要だ。
ジェノバ細胞の自己治癒力があるが、これは時間がかかりすぎる上に微々たるものだ、頼りにするには弱い。
戦闘を行いながら自らを回復する。そんな都合のいい物が存在しないだろうか?
セフィロスは一通り目を通した攻略本の中身を思い出す。
そして、一つのアイテムに思い至った。
そういえば、手に入れたアイテムの中に、そんな物があったはずだ。
飛び掛ってきたジタンの攻撃を、刃で受け全力で弾き返す。
重量の軽いジタンの体は吹き飛ばされ、軽々と宙を舞う。
ジタンは空中でクルリと回転し、両の足で地面に着地する。
その間にセフィロスは村正をザックにしまい、代わりにおかしな形をした剣を取り出した。
その行動の真意が掴めず、ジタンは僅かに戸惑い状況をうかがう。
セフィロスは軽くその剣を振ってみる。
愛刀正宗に良く似た形状の村正と違い、西洋剣のフォルムであるこの剣は少し扱い辛い。
この剣では先ほどからすばしっこく動き回るあの男に、攻撃を当てるのは難しいだろう。
それは戦闘を続けて十分に理解した。
――ならば。
セフィロスを中心に竜巻が巻き起こった。
それは、セフィロスが生み出したトルネドの魔法。
竜巻は壁となり、セフィロスとジタンの間を分かち視界を奪う。
激しく吹き回る竜巻の中、セフィロスはジタンがいた方向とは違う、明後日の方向に駆け出した。
セフィロスは気づいていた、先ほどからこの戦闘を見つめる傍観者の存在に。
物陰から隙をうかがうハイエナか、それとも何も知らぬただの見学者か。
そんなことはどちらでもいい。そこに存在するのならば、私の糧となって貰おう。
セフィロスは風の壁を破り、傍観者に向かって切りかかった。
突然竜巻が巻き起こり視界を奪われたかと思うと、その風の壁を破って血塗れた銀髪の男が飛び出してきた。
完全に不意を突かれたウィーグラフは、その攻撃に反応できない。
放たれた斬撃に、攻撃を行ったセフィロスはおろか、ウィーグラフ自身も完全に死を確信した。
しかし、ウィーグラフの体はその攻撃に反応した。
咄嗟に後方に体をそらし、その刃を紙一重でかわしきる。
それはウィーグラフですら予想外の超反応。
確実な死を持っていたはずのその刃は、彼のザックを掠めるにとどまった。
ウィーグラフは確実な死を避けきった己に呆然とし、反応が遅れる。
その隙を逃さずセフィロスはそのザックを回収した。
「盗賊の証!」
竜巻も晴れはじめた後方からの声。
同時に、二人の目の前に突然宝箱が出現した。
その中から光が飛び出し、二人に向かい襲い掛かる。。
セフィロスは素早くその光をかわす。
ウィーグラフも同じくそれをかわすが、その回避行動も彼の意思ではなく、それを超えた本能による回避だった。
自分の身に起きた急成長に、ウィーグラフは戸惑いその場に立ち尽くした。
攻撃をかわしたセフィロスは、再度ジタンと対峙する。
後方に引けば逃げられただろうが、彼の中に撤退はあれど逃走はない。
戦闘を始めた以上、その終焉はどちらかの死しかない。
セフィロスは片腕に奇跡の剣を、もう片腕に先ほど回収したザックを持ち、ジタンを警戒しながら横目でザックの中身を確認する。
この剣での回復はままならなかったが、思わぬ収穫を得た。
この中に回復アイテムがあるかもしれない。
その中にあったのはエリクサー、そして…
「…ククク」
唐突にセフィロスは笑う。
「ククク…黒マテリア…」
笑いながらザックから拳大の黒い球体を取り出した。
完全にその球体に意識が向いているのか。
今のセフィロスは隙だらけに見えた。
そう思ったジタンは釘バットを片手に、セフィロスに向かい殴りかかる
しかし、走り寄るその視界は、空中にばら撒かれた沢山のカードのようなものに遮られた。
完全に標的を見失ったジタンに、死角から放たれた強烈な前蹴りが命中した。
吹き飛ばされ、地面をゴロゴロと転がり地面に伏す。
「大人しく見ていろ、面白いものを見せてやる」
それを一瞥し、セフィロスは己の手の内に全魔力を集中した。
セフィロスがマテリアを発動させるのに、媒介など必要ない。
ジェノバ細胞がセフィロス自身を最も適した媒体に変化させる。
そして、黒マテリアが怪しい輝きを放ち始めた。
空に浮かんでいるはずの浮遊大陸が大きく揺れた。
それは魔女のせいなどでは無い。
その場にいたジタンやウィーグラフはおろか、参加者全員が一様に空を見上げた。
セフィロスは発動したメテオを見上げる。
セトラの民であるあの女が死んだ今。
唯一メテオを破壊しうる可能性のあるホリーを発動できる者はいない。
この大陸に白マテリアの発動方法を知るものは、古代種の知識を得た自分しかいないのだから。
たとえ発動できたとして、あのメテオを破壊できるほどのホーリーを呼ぶことは叶わないだろう。
つまり、あのメテオを止めることは、もはや誰にもできない。
「…ククク…ハハハハハ!」
セフィロスは笑う、彼には珍しい高笑い。
それは勝利を確信した者の笑いだった。
「…テメエ、あんなもんが落ちてきたら、どうなるかわかってるのか!?」
痛むわき腹を押さえ、立ち上がりながらジタンは咆える。
「…? どうなるだと? 決まっている、全ては死滅し私は勝者となるのだ」
笑いを止め、平然と答えるその答えに、一切の迷いはない。
「勝者? こんなゲームに勝ち残ってなんになるってんだよ」
「なに、確かにこのゲームはくだらない遊戯だが、得るものもある。
このゲームに勝ち残り、私は神となるなのだ」
迫り来るメテオを背に、セフィロスは両腕を広げ唄う。
その様は翼を広げた神の如く。
「神だと…お前はそんな下らない事のために皆を…クジャを殺したのかよ!?」
「そうだ、他者など己の糧に過ぎん。そんなものを殺すのに理由など必要ないだろう」
「違う…」
俯き、歯を食い縛るジタンの体が、輝き光を帯びる。
「許せねえ…お前だけは絶対に許せねえ!」
輝きを帯びた青い瞳がセフィロスを射抜く。
「…ハハ、楽しませてくれるじゃないか」
その姿を見てセフィロスは笑った。
【ジタン(HP 4/5程度)(トランス)
所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7) グラディウス
第一行動方針:セフィロスを倒す
基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【セフィロス(HP 1/6程度、魔力0)
所持品:村正 ふういんマテリア 攻略本 いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠 グリンガムの鞭
暗闇の弓矢 プレデターエッジ エリクサー×10 レーザーウエポン ブラスターガン 毒針弾 神経弾
首輪×2 研究メモ フラタニティ 不思議なタンバリン 黒マテリア
第一行動方針:ここにいる奴等を皆殺しにする
最終行動方針:生き残り力を得る】
【ウィーグラフ(急成長) 所持品:ブロードソード
第一行動方針:不明
第二行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先) 第三行動方針:生き延びる、手段は選ばない】
【現在地 カズス北西の森、最南端】
【メテオ発動】
416 :
希望 1/2:2005/06/19(日) 17:28:23 ID:U9qciSdM
「アレを知っているのか、シド?」
「…ああ、知ってるぜ、嫌ってほどにな…!」
空に浮かぶメテオを見て、忌々しそうにシドは言い放つ。
「アレはオレ様の世界をブッ壊そうとした、セフィロスってクソッたれが呼びやがったメテオだ」
「…それは、その世界ではどうなったんだ?」
「オレ様達が…いや、エアリスって嬢ちゃんがぶっ壊しくれた、命懸けてな…」
そう言ってシドは目を伏せる。本来は気を使う場面なのだろうが、今はそれどころではない。
「…どうやってアレを破壊したんだ?」
「ホーリー…白マテリアだ」
「白マテリア…? それを使えばアレを破壊できるのか?」
「いや…無理だ、アレを使えるのは嬢ちゃんだけらしいからな、その譲ちゃんも…」
目を伏せ、万策尽きたといった風に、座り込み地面を殴る。
「……諦めるな」
座り込んだシドを見てアルスが言う。
「可能性が有るというのなら諦めるな、絶望するのは全部やりつくした後でも遅くはない」
そう言い、シドの腕をつかみ立ち上がらせる。
「探そう、白マテリアを」
「…このゲームにそれがあるかどうかすら判らないんだぜ?」
その問いにアルスは答えない。
「…シド、メテオが何時ごろ落ちてくるかわかるか?」
「…アリャ馬鹿でかい分、動きが遅せえ。多分それなりに時間はあると思うが…」
「そうか…なら急ごう」
そう言って、アルスは歩き出した。
「チッ、そうだな、簡単に諦めるなんてオレ様らしくねぇもんな!」
頭をかきむしり、シドはアルスを追って歩き始めた。
417 :
希望 2/2:2005/06/19(日) 17:30:24 ID:U9qciSdM
【アルス 所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘 官能小説3冊
第一行動方針:白マテリア及び発動方法を探す 最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】
【シド(左肩負傷) 所持品:ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) ロープ
第一行動方針:同上 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:カナーンの村に向かい移動中】
>>410-
>>417は無効でお願いします。
多大なご迷惑をかけまして、申し訳ないです。
急ブレーキの音が聞こえた。
それはあの軽トラからだった。
そして登場していた人間たちが、その音を合図にしたかのようにぞろぞろと降りる。
ここはカズスの街の入り口。
時間をかけて走った先に、この街の入り口が見え…そして止まったのだ。
そして早速全員が街に入ろうとする。が、それをフルートが止めた。
「あの〜中にどんな人がいるのかも分かりませんし、一度偵察してみてはどうですか?」
珍しくフルートは、的確なことを言った。
確かにこんな大人数では目立ってしまう。もしも殺人者がいたら即行で目をつけられるだろう。
状況が状況だけに、この案には反対する理由は無かった。
「じゃあ言いだしっぺですし〜、私が行きましょうか?」
全員が案に賛成した瞬間、フルートはこんな事を口にした。
その瞬間場が凍りつく。当然だ、彼女だったら絶対見当違いな場所に進んで道に迷うのが落ちだ。
そしてそれを代表して代弁するように、ロランが前に出た。
「じゃあ僕も行くよ。1人くらい増えても何も心配はないだろうし」
ロランがそう言ってフルートの手を引こうとすると、サックスが待ったをかけた。
「待ってください!フルートさんが行くなら僕も行きます」
ロランはその彼のあからさまな態度に、心底微笑ましい…と苦笑した。
そしてやはり少しでも少人数であった方が楽だという事をやんわりと伝えようとしたが、
「どうやら…というか地図を見ると確実にここは……僕たちが住んでた世界なんです。地の利は必要でしょ?」
先手を打たれてそう言われてしまった。しかもその言葉には嘘偽りもなさそうだ。
「じゃあ、3人で仲良くいきましょう〜」
そう言って、フルートは何故か運転席に乗っていた。
いや、いやいやいやいやいやいやいやいや!?
ほぼ全員が心の中で、彼女の奇行にツッコミを入れた。
先程まで偵察がどうとか言っていたのに何故目立つ車で移動しようとするのか。
というかフルートさん君車運転できるのできないのできないでしょ本当に何考えて―――――
混乱するロラン。どこからツッコむべきなのだろうか。
サックスはサックスで何故か納得して助手席に座っている。
「だって、誰がいるかも分からないんですよ?これの方が安全ですよ〜。
大丈夫ですよ〜、ゼルさんの真似をすれば良いだけですし。きっと私にも出来ます!」
頭が痛い。ロランは心底そう思いまた苦笑する。
だがこのフルート節はちょっと止められる自身が無い。
彼は観念して荷台に乗った。そして他の全員を見ると、全員が全員苦笑して手を振っている。
「気をつけろよ?」
「気をつけてくださいね?」
いくつかのその問いに、ロランは片手を上げて答えた。
「じゃあ、行ってきます……」
そしてフルートはエンジンを吹かし、
「では、出発進行で〜す」
そう言って、思いっきりアクセルを踏んだ。
そして、制御できなくなった車は偶然にも鉱山の入り口方面へと向かい、
そして、そこの近くの民家の壁にぶつかり、
そして、大きな音を立てて幸運にも炎上せず、
そして、止まった。
サックスは失神ギリギリだったが何とか助手席から降り、
ロランもふらふらになりながら何とか荷台の上から降り、
フルートは「失敗失敗」と少しだけ教訓しながら降りた。
目の前には男が一人、少女が一人、少年が一人。
非常に気まずい状態だ。
しばらく睨み合いが続いた。
張り詰める空気。
サラマンダーも、唐突なこの状況に手を出せないでいた。
だが、確実に構えは取る。
ロラン達もそのサラマンダーの殺気に気づいていた。
だが隣の少年と少女の存在が解せない。
「おい……俺はゲームに乗っている。逃がすつもりは無いが、逃げるなら今のうちかもしれないぞ」
サラマンダーが、唐突にそう話しかけた。
「そうか。でも君達がゲームに乗っているとわかった以上は……君たちを倒さないと」
ロランがそう答え、ガイアの剣を構えた。それに続くようにサックスも草薙の剣を構えた。
バーバラはイクサスにここから離れるよう説得している。だが、イクサスは動かない。
サックスは、その瞬間この状況を理解した。
少女はこのゲームには乗っていない。男はこちらを殺す気マンマン、そして少年は……きわどい。
だが邪魔をする者を全て排除するような、そういう冷たい目を持っている。こちらの出方によっては…敵になるか。
こういう不確定要素が多い時は、できるだけ冷静に事を運びたい。
だが、今の自分にはそれが出来そうに無い。彼のかつての友ならそれができただろうに。
「はぁ…ギルダーだったら……こういう状況はどうやって打破するんだろ」
サックスは、溜息をつきながら…確かにそう呟いた。
そしてそれを聞いたイクサスが、躊躇いも無くサックスに向かってラケットを振った。
風の塊がサックスを襲う。
そして近くにあった道具屋の壁に叩きつけられる。
「サーックス!」
「余所見をしていて良いのか?」
「な……ッ!!」
それを呆然と見ていたロランも、サラマンダーの斬撃に襲われた。
間一髪避けはしたが、傍で爆発が起こり顔を青くする。
フルートはその唐突な暴力を見て、腰が砕け目に涙すら浮かべていた。
バーバラの方はというと、できるだけ離れ余計な戦いをしないよう心がけている。
「ギルダー!?ギルダーだったら…今そう言ったか!?言っただろ!!
ふざけるな!あれか!?ギルダーの仲間なのかお前は!!人殺しの仲間なのか!?」
イクサスが怒り狂って叫び、サックスを罵る。
サックスには、彼の言っている言葉の意味が分からなかった。
「人殺しの仲間……?」
「とぼけるな!ギルダーは俺の仲間を殺したんだぞ!2人も、2人もだ!!」
「嘘だ……あいつは……っ!!」
覚悟はしていたつもりだった。
だがこの少年は嘘を言っているわけではないだろう。彼自身に嘘を言う余裕などなさそうに思える。
もしそれが本当だとしたら……自分はどうすれば…………。
サックスは立ち上がれなかった。
戦意を全て失い、座り込んでしまう。
ロランもその話にショックを受け、どうすれば判らなくなってしまった。
目の前の男を倒さねばいけないのはわかる……だが動けない。
「おいどうした!立てよ!お前も俺を殺したいんだろ!?
なんせ殺人者の仲間だ!!俺の首を狙ってるんだろ!?来いよ!人殺し!人殺し!!」
イクサスの罵声が響く。ロランとサックスは動かない。
だが、その時……。
「うるせええぇえぇぇぇえぇぇええぇえぇぇぇぇえぇぇえぇえぇぇえええぇえぇえ!!!!」
それよりも大きな怒号が、辺りを支配した。
声の主は…そう、フルート。「あの人格のフルート」だ。
「さっきから聞いてりゃ!ぁあ!?こっちが何も言わなかったら調子乗りやがって!!
これだから餓鬼は嫌いなんだよ!!殺してやろうか!?いや、そんな質問じみた事は言わねぇやらねぇ企まねぇ!!」
辺りの雰囲気が一気に変わった。
ここにいる全員が、フルートに気圧されている。
「いいか餓鬼!人に喧嘩を売ったら自分も死ぬことを考えておくのが基本だ!!判ってるよなぁ!!
剣を取れば戦いだ!!魔力を溜めれば戦いだ!!人のモン盗めば戦いだ!!命の賭け合いだ!!
だからよぉ……今からあたしがてめぇをぶっ殺しても!!なんッッッッッッの文句もねぇよなぁ!!!!」
イクサスはそう言われ、気圧され、先程のサックスのように動けなくなっていた。
そして目の前の彼女の言葉を聞きながら、彼は目を疑うことになる。
なぜなら最後の怒号の直後、
フルートが両腕で意図も簡単に、
「あの鉄の塊」を
, , ,, , , , ,, , , , , ,
軽トラを真上に持ち上げたのだ。
「フルート……さん?」
サックスが「信じられない」という言葉を形容した目でフルートを見る。
だがその目はすぐに、羨望の眼差しへと変わっていた。
一方ロランが彼女の姿を見るのは2度目だ。本人はまたあの人格を見ても多少は驚きはしないと思っていた。
だが、目の前の光景には驚かない方が異常だと思う。
「な……なんだっ、お前は!」
イクサスが幾分小さくなった声を搾り出して言う。
だがそんな震えた声にフルートは興味を持たない。
「あたしの仲間をなんの意味も無く……体だけじゃねぇ!心まで傷つけやがったのが許せねぇ!!
だからこれが!あたしから渡すてめぇへの引導だ!!神の裁きみたいに小奇麗じゃねぇが喜んで受け取れ糞餓鬼!!!!」
そして軽トラは、奇麗な放物線を描いて宙を待った。
それをじっと見つめるイクサス。諦めにも似た感情が身を襲う。
だがそれをみたサラマンダーが急いでイクサスの手を引き、軽トラの着地地点から退避した。
そして先程イクサスがいた位置に、軽トラが着地した。
そのショックで軽トラは形が崩れ、そして爆破を起こし、炎上した。
「な……何が起こりやがった!?」
「爆発音ね…しかもなんか凄い!」
「まずいんじゃないですか?行った方が!」
一方の街の入り口前では、その軽トラの爆破音を聞いて仲間たちが動き出した。
恐ろしい人間がいたのかもしれない、そう思い全員が走っていった。
そしてまた舞台は「恐ろしい人間」がいる場所に戻る。
軽トラの焔が辺りの気温をぐっと上げ続けている最中、フルートはサラマンダーに怒号を上げていた。
そう……アリアハンにいた時に、彼女たちは彼の静かな襲撃を受けていたのだ。
「これがてめぇへの一方的な思いだろうが何だろうが関係ねぇ!!あン時の借りを返してやるよ!!」
「あン時の……ああ、そうか」
サラマンダーは彼女の言葉を理解した。
そして動けないイクサスを離れたところに避難させ、剣を構えた。
そしてサックスもロランも同じく剣を構えていた。どうやら一応は立ち直ったらしい。
いつかのレーベの景色を小さくしたかのような焔が、彼らを見守っていた。
【フルート 所持品:スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣】
【ロラン 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート】
【サックス 所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り】
【第一行動方針(三人共通):サラマンダーを倒す
第二行動方針(三人共通):なるべく仲間を集める
最終行動方針(三人共通):ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】
【サラマンダー(疲労) 所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣
第一行動方針:目の前の敵を殺す 第二行動方針:アーヴァインを探して殺す
基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】
【イクサス(人間不信 軽いショック?)
所持品:加速装置、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、拡声器、
紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×3、各種解毒剤
第一行動方針:避難? 第二行動方針:アーヴァインを探して殺す/ギルダー・スコール・マッシュを殺す
基本行動方針:アーヴァインの仲間であるソロ達を殺す/生き残る】
【バーバラ 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
第一行動方針:避難 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する
最終行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】
【現在地:カズスの村・ミスリル鉱山入り口】
【リルム 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪 ブロンズナイフ】
【ゼル 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト】
【ユウナ(ジョブ:白魔道士) 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子】
【プサン 所持品:軽トラック、錬金釜、隼の剣
第一行動方針:ゼル達と共に行動する 第二行動方針:ドラゴンオーブを探す
基本行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人や心正しい人は率先して助ける 最終行動方針:ゲーム脱出】
【第一行動方針(四人共通):フルート達の元へ向かう
第二行動方針(四人共通):なるべく仲間を集める
最終行動方針(四人共通):ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】
【現在地:カズスの村入り口】
プサンの所持品から「軽トラック」を削除します。
失礼しました。
ジダンと別れて、リュカたちはは西へ西へと歩み続けていた。
目の前に森が広がろうと、その速度は落ちることはない。
付き従うリノアに歩調をあわせることさえ忘れて。
少しでも、息子を殺した仇敵から距離を離したかった。
自分が助けた、あの男から。
あまりに感情が高ぶっていて、リュカは地図を見ることさえ疎かにしていた。
だからぱっと視界が開けたとき、森を抜けたということに気づくのに、
森の中で広がった瞳孔が適当な大きさに縮むまで、待たなくてはならなかった。
草原には、今は誰もいなかった。
銀髪の剣士も、神殿騎士も。
ただそこにあったのは…。
銀色に輝く、モノ。
それが何なのか、リュカは知っている。
あるいは知っているような気がする。
自分が知っているモノと、今そこにあるモノは、同じである可能性がある。
けれどその可能性を、出来れば否定してほしい。
リュカは恐る恐る、ソレに近づいた。
銀色に輝く、液体のような、固体のようなモノ。
優しく触れれば柔らかに、激しく叩けば硬く固まる。
命の灯火を失っていても、その性質は変わらない。
そう、命を失っている。
深く矢が刺さったままに。
「うぅ…、ぁあぁ……」
嗚咽。
彼の名を呼ぶことも出来ずその場にうずくまる。
悲しみと憤り。
助けられなかった。
また。
また。
また。
叫んでしまえばどれほど楽か。
感情に身を委ねればどれほど楽か。
だがそんなことは出来ない。
身に危険を呼ぶわけにはいかない。
まだ、大切な人々は、確かに生きているはずだから。
ソレは照らされる太陽の熱のためか、あるいは大地に茂る草々の生命力に吸われているためか、少しずつ体積を減らしている。
もともとの小さな身体は、日没までには跡形もなく消え去っているかもしれない。
リュカはそこに土を盛る。
ソレがもし消えてしまっても、自分になら、彼がどこに眠っているのかが分かるように。
これからどうしよう。
もしここでソレを見つけることがなかったら、そのままこの草原を、やはり西へ西へと歩んでいたに違いない。
リュカはようやく地図を見た。
そしてまた、ようやくリノアと目をあわせ、言葉を掛けた。
東には、つまり自分が歩んできた道の方向に村がある。
北西に森を進めば城がある。
このまま西へ行き、山脈を回って東に行けば、大きな山と村がある。
どこでもいい。
どこに行けば会えるのかだけを考えて、行く先はリノアに決めてもらった。
リュカたちは北西に進路を取る。
はぐりんに、一度だけ振り返り、別れを告げて。
おやすみ
ごめん、誤爆
433 :
銀の別れ:2005/06/20(月) 02:11:29 ID:Tnz1fqZ2
【リュカ 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ スナイパーCRの残骸
基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【リノア 所持品:賢者の杖 ロトの盾 G.F.パンデモニウム(召喚不能)
基本行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【第一行動方針(共通):北西の城(サスーン城)に向かう】
【現在地:西の森西の草原→サスーン城へ】
434 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/20(月) 03:04:31 ID:QXIQ+5cA
リノアはリュカの落ち込みように冷や汗を画いた、なんとなく殺気の様な物まで感じる。
このままでは最悪、リュカに殺されてしまうかもしれない。
(それは駄目!私はスコールに会うんだもん!!)
リノアはひとつの決心をした、そしてリュカに「私ちょっとトイレに行ってきます」と言うと
校則で画けた。賢者の杖ですれ違う人を撲殺していく。
「リュカさん!私あなたのためにこんなに殺しました」
リュカ「ご苦労だったね」
そして色々たくさん死んだ
【サックス・フルート・リルム・サラマンダー・イクサス・レナ・ファリス・ギルガメッシュ・フリオニール・ソロ・ヘンリー・ロック・バッツ・ローグ・サンデ・ウネ・アリーナ 死亡】
【残り50人】
リュカがマーダーになったらなったで新鮮だがな。
そしたら今度はピエールが命をかけて止めそうだ。
ごめん感想スレと間違えた。
以前いたアリアハンから時と場所変わって浮遊大陸。
風の鳴る大地という言葉が真っ先に浮かぶ。
「やけに静かだと思ったらあいつがいないわけか」
ファリスは遠景を見ながらつぶやいた。
傍らのテリーもそれにうなずく。
あいつというのは勿論ラムザで、旅の扉から出てきたとき既に彼の姿はなかった。
「扉のなかで無理やり喋りだすからこういうことになるんだよ全く。
移動中はちょっとしたことで時空芯のズレが起こりやすいっていうのに」
「そうなのか……?オレも知らなかった」
テリーは目を丸くしてファリスの顔をのぞきこむ。
「な、なんだよ」
煙たがるファリスにテリーは笑いかけた。
「姉さんも冗談がうまくなったなぁ。それを教えてくれたのは姉さんじゃないか」
テリーはにこやかにファリスの肩をぽんと払う。
もう何か家庭での会話だ。
とても殺伐とした殺し合いの舞台でのやりとりとは思えなかった。
「このままずっとこの調子でいくのか……」
戦闘局面と今現在のギャップがありすぎて、レナたちを見つける前に疲れてしまいそうだ。
ファリスは命のやりとりとは別に重たいものを背負ったような気がしてならない。
テリーはそんなことはお構いなしに明るい声を出す。
「ところで地図を見ると町や城があるみたいだけど、とりあえず一番近いところへ行こうな。
となるとここだ」
テリーが指差した場所はカナーンの村だ。
「ああ、そこだな」
ファリスは間延びした口調で答える。
地図をほんの一瞬みただけで、大して確認もしなかった。
それほど気が抜ける。
テリーは地図をたたむと前を向いた。
「よし、行こうか」
その声は弾んでいた。
ラムザがいなくなって、二人だけになれたのが嬉しいのかもしれない。
ファリスはそう思うと余計安息できなくなった。
【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(七割回復)
所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
行動方針:『姉さん』(ファリス)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】
【ファリス(MP消費) 所持品:王者のマント 聖なるナイフ
第一行動方針:レナとバッツを探す 第二行動方針:カナーンへ】
現在位置:浮遊大陸最南端(岩山付近)
タイトル入れ忘れ。
「うらおもて浮遊大陸」
とでもしておいてください
「それでボクの妹の名前はアルマって言って…って、あれ?」
旅の扉からベラベラと喋りながら、一人の男が現れた。
その男こそ騎士の名門ベオルブ家の末弟、ラムザ=ベオルブである。
ラムザはあたりを見渡す。
周りは岩に囲まれ、すぐ近くに外の景色が見える。
どうやらどこかの洞窟の入り口近くのようだ。
それはいいとして、一緒に旅の扉を潜ったはずのテリーとファリスの姿が見当たらない。
いったいどうしたことか?
ラムザは原因を思い出してみる。
『お前に兄弟はいないのか?』
旅の扉を潜る直前、珍しくテリーのほうから話しかけてきた。
そこは悲しき職業病か、思わず反射的に思い切り喋りまくってしまった。
そのまま喋り続けていると、最初に潜った時とは違う空間の歪みを感じた。
どうやらそれが原因のようだ、旅の扉と言うのはそれほどデリケートなものなのだろう。
しかし喋りすぎが原因とは…
このジョブになってから説得などで一時的に仲間は増えたが、何か違う気がしてきた。
(ジョブ変えようかな…)
なんだかこのままこのジョブを続けていたら、自分が自分じゃなくなってしまいそうだ。
そう思いながら、ラムザはトボトボと洞窟の出口へと向かった。
洞窟を抜け、目の前に広がるのは輝く一面の湖。
湖の中心には小島がポツンと浮かぶのみで、橋のようなものは見えない。
左右を見渡しても、高い山脈が見えるばかりで、とても越えれそうにない。
どうやらここは、他から遮断された場所のようだ。
考えようによっては安全な場所なのかもしれないが。
「はぐれたテリー達が心配だな…。結局アグリアスさんとも合流できてないし…」
この状況がテリーの意図したものだったのか、そうでないのか。
それはテリー本人にしかわからないが、少なくともラムザはテリーを微塵も疑ってはいなかた。
「一気には渡れないかも知れないけど、あの小島までなら届くかな…」
そういいラムザは、力を込め大地を蹴り、空高く宙を舞った。
その体は、大きな放物線を描きながら小島の頂上へと着地する。
「ん?」
着地したすぐ近くに、ぐったりと倒れこむ存在に気づいた。
『大丈夫かい?』
ラムザは近づいてゆき、屈みこみ視線を合わせ話しかける。
『…あなたは…?』
『僕はラムザ=ベオルブ。さあ、これをお食べ』
そう言って、ザックからパンを取り出し分け与える。
『ああ…ありがとう、あなたは、私の言葉が解るのね?』
そう言う彼女の姿は、人ではなく犬。
ラムザは話術士のアビリティである『まじゅう語』の効果によって彼女の言葉が理解できた。
『うん、だから安心して。きみの名前は?』
『私はアンジェロ、ありがとうラムザ』
パンを食べ終わり、ふらつきながらアンジェロは立ち上がる。
『どうしてアンジェロは、こんな山の上にいるんだい?』
『…わからないの。お爺さんに助けられて、いろんな所を彷徨って、
結局気づいたときにはここで力尽きてしまったの…。会いたい…リノアに会いたいわ』
『リノアって言うのは、きみのご主人様かい?』
『ええ、大切な友達よ』
『…よし、それじゃあボクと行こう。ボクもはぐれた仲間を探してるところだからね』
『本当に?』
『ああ、一人でいるより、そのほうがいいだろう?』
『ええ、ありがとうラムザ』
『よそ、まずは向こう岸に渡ろう。僕の背中に乗って』
そういいラムザは背を向け、アンジェロがその背に乗る。
(当分はこのジョブのままかな…)
アンジェロを背負い、対岸の岸を見つめながらラムザは一人ごちた。
(なんか頭の上が騒がしいな…。どうしようかな思い切った話しかけてみようかな…)
頭上の二人の知らぬところで、水辺の小島に扮したブオーンは苦悩していた。
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)
所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド アンジェロ
第一行動方針:仲間を集める(テリー、ファリス、アグリアス、リノア優先)
最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【現在位置:ブオーンの頭の上】
【ブオーン 所持品:くじけぬこころ、魔法のじゅうたん
第一行動方針:話しかけようか考え中 第二行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:封印の洞窟南の泉の真ん中】
唸る拳、放たれる斬撃、人を護り続ける盾。
そしてそれらを打ち倒すために起こる拳と、もう一つ……突風。
それら全てがカズスの街を支配していた。
「ッッらああぁぁあぁああぁぁぁあああぁぁぁあぁ!!」
相変わらずフルートは拳をサラマンダーに叩き込もうとする。
だがそれはイクサスの風に邪魔され、成功させることは出来ない。
また同じようにサラマンダーも、フルートに上手く攻撃をすることが出来ない。サックスの盾に塞がれ、思うように動けないのだ。
また、イクサスもラケットの突風で援護をするのだが、ロランの攻撃が自分に向かってくるが故に集中出来ない。
そしてロランも、その風によってイクサスへの攻撃が思うように出来ない。
そういう泥沼の状況だった。
しかしロランは、先程から言いたかったことをフルートに話す事にした。
「さっきはありがとう。僕たちを仲間だと言ってくれて」
「……言ったか?ンな事。覚えてねーよ、あたしは。いいから戦え!」
「そうか……覚えてない、か」
でも、否定はしないんだ。そうくすりと微笑んで思う。
嬉しかった。あの人格の彼女が自分たちを「仲間」だと言ってくれたあの瞬間が嬉しかった。
だからサックスとともに、絶対にフルートを護って戦いを無事に終わらせよう、そう思っていた。
だが。
フルートが、急に膝をついた。
そして唐突に息を切らし、苦しみ始めたのだ。肩で息をし、汗も沢山吹き出ている。
ロランとサックスは、ようやくそれを見て、彼女の力の秘密に気付く事となった。
そう、あの彼女の「限界を超えた力」の裏に。脳が彼女に許可を出した「全力」のデメリットに。
そして心配そうに、サックスがフルートへ近づこうとしたその刹那――――
「隙だらけだ!」
イクサスの放った風の塊が、フルートの身を襲った。
そして吹き飛ばされた彼女の体は、宙を舞いそのまま後方にある民家の壁へと叩きつけられた。
「かは……っ!…ぁぅ…ぐ……」
言葉にならない叫びにも似た声を上げると、フルートはそのまま前に倒れた。
ロランはそれを見て、あの光景を思い出した。
そう、あのアリアハンの彼女の痛々しい姿。
今にも倒れそうに青白い顔をしていた、彼女の姿。
「ははっ!ははは!ははははは!!どうだ見たか!正義は勝つんだよ!!」
浮かれ、体で喜びを表すイクサス。
それを見て唇を噛み締めるサックス。そこからは血が滲んでいた。
そしてロランは、今度はサラマンダーとの一進一退の攻防を続けている。暇は無いが、振り返ってしまいたい。
だがサックスとロランの心配を余所に、フルートはすぐに立ち上がった。
しかし足取りは覚束ない。今にも倒れそうだ。攻撃を喰らった分があるとは言え、ここまでの反動なのか。
だが良く考えてみれば彼女は、竜の腕を吹き飛ばし、数十分も疾走し、そして先程は鉄の塊を持ち上げているのだ。
ここまで反動が無いとおかしい。否、これ以上の反動があったとしても何の違和感も無く自然だ。
「くっそ…あの餓鬼……あぐ……ッ!」
そう、そしてやはり彼女は痛みに耐えていた。
壊れそうな体を、未だ怒りに任せて動かそうとする。
「フルートさん……!動かないでください!危険すぎます」
「うるせぇ!」
駆け寄るサックスに怒りを込めて叫び、彼女は自分自身に向けて回復呪文を使い出した。
しかしこのゲームの状況下では、たとえベホマといえども彼女の体を完全に回復させるには至らない。
だが彼女は呪文を1回唱えただけで、すぐに中断させて歩き出した。
「そら治った治った!…もう、大丈夫だ……ッ」
「嘘でしょう!?良いから大人しくしてください!!」
「うるせぇ!あたしはあの餓鬼をぶっ飛ばすんだよ!!」
そう言ってフルートは痛む体に鞭を打ち、イクサスの元へと走っていく。
それを見てイクサスは、彼女を煽る様に走り出した。その先にあるのは、鉱山。
イクサスが鉱山に入ったのを見て、フルートは更に急いで追いかける。
しかしサラマンダーはそれが気に入らなかった。ロランから目標を変え、フルートに狙いを定める。
だが、それを一つの盾がその攻撃を止めた。
それはサックスの持つ水鏡の盾だった。
「ロランさん、任せました!僕はフルートさんを追います!!」
「わかった!!」
そうしている内に鉱山へと入っていったフルートを追いかけるため、
サラマンダーから急いで距離を取り、そして自分も鉱山へ走り出すサックス。
それを見てロランは微笑み、サラマンダーに問う。
「任されて、1対1になってしまった。折角だしこのまま僕の相手になってもいいんじゃないか?」
サラマンダーの答えは、意外に早く返ってきた。「無言でロランに剣を構える姿」が、答えの代わりだった。
一方サックスが鉱山に入ると………フルートは先程のように倒れていた。
しかもこれまた先程のように壁沿いに。
そして砂埃が全てフルートの倒れている場所に集中している。それを見てサックスは確信した。
そう。あの子どもが、またも彼女を傷つけた。
過去の映像がフラッシュバックする。
家族を殺した魔物。妹を見殺しにした自分。護れなかった自分。
今の映像が脳を支配する。
仲間を襲った敵。フルートに牙を剥いた敵。護れなかった自分。
それが重なり、サックスに怒りが芽生えた瞬間。
その瞬間にイクサスが姿を現した。どうやら息を潜めて待っていたらしい。
「よぉ、人殺し」
「やぁ、人殺し」
彼らの皮肉に満ちた挨拶が重なり合った。
そしてその刹那イクサスがまたも風を起こした。今度の目標は、サックス。
だが今度はサックスはそれを避け、そして急いでフルートに近づいた。
彼女の生死を確認する。意識を失ってはいるみたいだが、息はしている。
そして急いでフルートの体を背負い、彼はすぐに鉱山の奥へと走っていった
それを見て、イクサスはラケットを構えながら彼らを追い始めた。
「大切な人を護るためにナイトになった……そうだろサックス!絶対護るんだ……絶対!」
そう言いながら、彼はイクサスを奥へ奥へと誘い込むために走る。走り続ける。
そしてサックスは、奥にある小部屋の一つに身を潜めた。
苦しそうに息をするフルートに「少しだけ…待っていてください」と告げ、イクサスの到着を待つ。
そして、目当ての人物は現れた。目当ての人物――イクサスはサックスを殺すためにラケットを握り、明らかに怒りを抱いている。
だがそれも気にせず、サックスは突然イクサスに肉薄した。それを見てイクサスは焦りを感じる。
そうだ、さっきまで自分の攻撃を容易く受けるか、盾で人を護りながらこそこそ動く事しか出来なかった(様に見えた)彼が、突然大胆な行動に出たのだ。
そしてそのまま、サックスはイクサスの右肩に向けて斬撃を放った。
イクサスは避けられなかった。彼の斬撃を喰らった右肩が激しく損傷する。
「ぐ……痛い…痛いっ!くそぉ!ぐぅぅぅぅうぅぅ!!」
痛みを感じるがままに叫ぶイクサス。それを見てサックスは怒りを込め、叫ぶ。
「これが、僕の仲間を…フルートさんを……そして、ギルダーを傷付けた罰だ!」
そう叫ぶサックスの目は確かに、魔王を倒した光の戦士の……正義に満ちた目だった。
そしてその目でイクサスを睨む。睨み続ける。
そうしていると、またもラケットから風が巻き起こった。
今度こそサックスは吹き飛ばされてしまったが、手負いの人間の攻撃の所為か威力が些か低い。
サックスは立ち上がると、またイクサスへと走る。
多少のフェイントも入れ攪乱する様に近づき……そして見事に、草薙の剣の刃をイクサスの首に突きつけた。
「………ッ!あああああああああああッ!!」
しかしそれにも関わらず……恐怖心に侵されたイクサスは左腕で支給品袋を掴み、それをサックスの肩へとぶつけた。
だが当然そんな攻撃が効果的なはずも無い。叩いた拍子にバラバラと支給品が落ちていくだけだった。
「効かない。そんな下らない事、効かない」
サックスはそう言って、落ちた支給品のいくつかに目を通す。
見ると薬の様なものがいくつか落ちている。フルートに飲ませれば……容態はどうなるだろうか。
頭にそんな考えが浮かんだが、それはやめた。不確定要素が多すぎる。
「僕が怪我した時、一生懸命傷を癒そうと頑張ってくれた彼女を傷付けるのは許さない。
僕の事を信じて一緒に行動してくれたあの大切な仲間を傷付けるのは許さない。
そして……僕の兄弟の様な、僕の最高の親友の名を人を傷付ける口実に使う君を許さない!!」
サックスの剣を握る力が強くなる。
そして逆に、イクサスのラケットを握る力は皆無に等しかった。
だがイクサスは未だに怒りを持ち続け、サックスに叫ぶ。
「煩い……煩い煩い煩い!俺は!俺は裁くんだ!!お前が何を言おうが……俺は仲間を殺した人殺しを―――――」
「そうか。じゃあ、さよなら」
イクサスの首に突きつけられた刃は一度は退いた。
そして次の瞬間には彼の左胸を一直線に貫き……彼の最期の言葉と、息の根を止めた。
「…痛……っ……サックス……お前……」
そして、フルートが目覚めた。どうやらあの人格のままのようだ。
随分と苦しそうだが……命に別状はなさそうだ。
「すみません……気分が悪くなりそうなので、別の小部屋に移動しましょう。そこで、話します」
薬の様な物以外を拾い集めながらそう言うサックスに、フルートは何も言わなかった。
そしてまた文句を言ったにもかかわらず背中に乗せられ、別の小部屋へと移動していった。
そしてそこには……サックス達とは形こそ違えど、正義を愛していたのかもしれない少年の遺体が残されていた。
一方、サラマンダーはイクサスの身を案じていた。
バーバラは目の届く範囲で避難している。大丈夫だろう。だがあの少年は……果たして感情的なあの性格が災いしていないだろうか。
まぁ、まずはこの目の前の男を片付けなければならない。
そしてサラマンダーは、ロランを静かに見据えた。
【サックス
所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り 加速装置 ドラゴンオーブ シルバートレイ ねこの手ラケット 拡声器
第一行動方針:別の小部屋で休憩 第二行動方針:なるべく仲間を集める
最終行動方針:ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】
【フルート(重傷) 所持品:スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣
第一行動方針:同上 第二行動方針:同上 最終行動方針:同上】
【現在地:ミスリル鉱山内部・1F小部屋】
【ロラン 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート
第一行動方針:サラマンダーを倒す
最終行動方針:ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】
【サラマンダー(疲労) 所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣
第一行動方針:ロランを殺す 第二行動方針:アーヴァインを探して殺す
基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】
【バーバラ 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
第一行動方針:避難 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する
【現在地:カズスの村・ミスリル鉱山入り口】
【イクサス 死亡】
【残り 72名】
>>449 イクサスの首に突きつけられた刃は一度は退いた。
を
イクサスの首に突きつけられた刃は一度退き、
に変更してください…細かいけど。