1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:
('A`)
+基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員には、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><着火器具・携帯ランタン><参加者名簿>が支給される。
また、ランダムで選ばれた<武器>が1つから3つ、渡される。
<ザック>は特殊なモノで、人間以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る。(FFUのポシェポケみたいなもの)
・生存者が一名になった時点で、主催者が待っている場所への旅の扉が現れる。この旅の扉には時間制限はない。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。
+首輪関連+
・参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・放送時に発表される『禁止技』を使ってしまうと、爆発する。
・日の出放送時に現れる『旅の扉』を二時間以内に通らなかった場合も、爆発する。
・無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
・なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
・たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止魔法が使えるようにもならない。
+魔法・技に関して+
・MPを消費する=疲れる。
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる敵と判断された人物。
・回復魔法は効力が半減します。召喚魔法は魔石やマテリアがないと使用不可。
・初期で禁止されている魔法・特技は「ラナルータ」
・それ以外の魔法威力や効果時間、キャラの習得魔法などは書き手の判断と意図に任せます。
+ジョブチェンジについて+
・ジョブチェンジは精神統一と一定の時間が必要。
・10-2のキャラのみ戦闘中でもジョブチェンジ可能。
・ただし、スペシャルドレスは、対応するスフィアがない限り使用不可。
・その他の使用可能ジョブの範囲は書き手の判断と意図に任せます。
+戦場となる舞台について+
・このバトルロワイヤルの舞台は日毎に変更される。
・毎日日の出時になると、参加者を新たなる舞台へと移動させるための『旅の扉』が現れる。
・旅の扉は複数現れ、その出現場所はランダムになっている。
・旅の扉が出現してから2時間以内に次の舞台へと移らないと、首輪が爆発して死に至る。
━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活は認めません。
※新参加者の追加は一切認めません。
※書き込みされる方はCTRL+F(Macならコマンド+F)などで検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。
※参加者の死亡があればレス末に、【死亡確認】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。
みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであれば保管庫にうpしてください。
・自信がなかったら先に保管庫にうpしてください。
爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない保管庫の作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
・巧い文章ではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
できれば自分で弁解なり無効宣言して欲しいです。
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・極力ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
■参加者リスト
FF1 4名:ビッケ、ジオ(スーパーモンク)、ガーランド、アルカート(白魔道士)
FF2 6名:フリオニール、マティウス(皇帝)、レオンハルト、マリア、リチャード、ミンウ
FF3 8名:サックス(ナイト)、ギルダー(赤魔道士)、デッシュ、ドーガ、ハイン、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 7名:ゴルベーザ、カイン、ギルバート、リディア、セシル、ローザ、エッジ
FF5 7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、クルル、リヴァイアサンに瞬殺された奴、ギード、ファリス
FF6 12名:ジークフリート、ゴゴ、レオ、リルム、マッシュ、ティナ、エドガー、セリス、ロック、ケフカ、シャドウ、トンベリ
FF7 10名:クラウド、宝条、ケット・シー、ザックス、エアリス、ティファ、セフィロス、バレット、ユフィ、シド
FF8 6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー、リノア、ラグナ
FF9 8名:クジャ、ジタン、ビビ、ベアトリクス、フライヤ、ガーネット、サラマンダー、エーコ
FF10 3名:ティーダ、キノック老師、アーロン
FF10-2 3名:ユウナ、パイン、リュック
FFT 4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、アグリアス
DQ1 3名:アレフ(勇者)、ローラ、竜王
DQ2 3名:ロラン(ローレ)、パウロ(サマル)、ムース(ムーン)
DQ3 6名:オルテガ、アルス(勇者)、セージ(男賢者)、フルート(女僧侶)、ローグ(男盗賊)、カンダタ
DQ4 9名:ソロ(勇者)、ブライ、ピサロ、アリーナ、シンシア、ミネア、ライアン、トルネコ、ロザリー
DQ5 15名:ヘンリー、ピピン、リュカ(主人公)、パパス、サンチョ、ブオーン、デール、レックス(王子)、タバサ(王女)、ビアンカ、はぐりん、ピエール、マリア、ゲマ、プサン
DQ6 11名:テリー、ミレーユ、イザ(主人公)、サリィ、クリムト、デュラン、ハッサン、バーバラ、ターニア、アモス、ランド
DQ7 5名:主人公フィン、マリベル、アイラ、キーファ、メルビン
DQM 5名:わたぼう、ルカ、イル、テリー、わるぼう
DQCH 4名:イクサス、スミス、マチュア、ドルバ
FF 78名 DQ 61名
計 139名
■生存者リスト
FF1 1/4名:アルカート
FF2 3/6名:フリオニール、マティウス、レオンハルト
FF3 8/8名:サックス、ギルダー、デッシュ、ドーガ、ハイン、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 4/7名:カイン、ギルバート、リディア、エッジ
FF5 5/7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、ギード、ファリス
FF6 9/12名:ゴゴ、レオ、リルム、マッシュ、エドガー、セリス、ロック、ケフカ、トンベリ
FF7 7/10名:クラウド、ケット・シー、ザックス、ティファ、セフィロス、ユフィ、シド
FF8 6/6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー、リノア、ラグナ
FF9 7/8名:クジャ、ジタン、ビビ、ベアトリクス、フライヤ、サラマンダー、エーコ
FF10 1/3名:ティーダ
FF10-2 3/3名:ユウナ、パイン、リュック
FFT 4/4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、アグリアス
DQ1 0/3名:全滅
DQ2 2/3名:ロラン、パウロ
DQ3 5/6名:オルテガ、アルス、セージ、フルート、ローグ
DQ4 7/9:ソロ、ピサロ、アリーナ、シンシア、ミネア、ライアン、ロザリー
DQ5 12/15名:ヘンリー、リュカ、パパス、ブオーン、デール、レックス、タバサ、ビアンカ、はぐりん、ピエール、マリア、プサン
DQ6 10/11名:テリー、ミレーユ、イザ、サリィ、クリムト、デュラン、ハッサン、バーバラ、ターニア、ランド
DQ7 4/5名:フィン、アイラ、キーファ、メルビン
DQM 4/5名:わたぼう、ルカ、テリー、わるぼう
DQCH 3/4名:イクサス、スミス、ドルバ
FF 58/78名 DQ 47/61名
計 105/139名
話し声の主は、割とすぐに見つかった。
楽しげに談笑する、五人組の少年少女たち。
まだこちらには気付いた様子もなく、塔の中を歩いている。
けれどもイザが声をかけようとしたとき、ドルバが服の裾を噛んで引き止めた。
「……イザよ。すまぬが、あやつらと手を組む気にはなれぬ」
「どうして?」
返事はない。変わりにドルバはイザを引っ張り、遠く離れた壁の影へと連れ込もうとする。
そうこうしているうちに、彼らは階段を降りていってしまった。
「ねぇ、どうしたんだ?」
問いただすイザにドルバはそれでも黙っていたが、五人の声が聞こえなくなった頃、ようやく口を開いた。
「我は竜王様に仕えし竜だと言ったはずだ。主亡き今でも、忠誠を変える気はない。
ニンゲンに協力する程度ならまだしも……竜王様の仇と共に歩くなど、できぬ相談だ」
その言葉に、イザは驚愕を隠せなかった。今の五人組は、無闇に相手を殺すような人物とは思えなかったからだ。
「仇って……あの人たちが? そんな悪い人達には……」
イザの台詞に、ドルバは諦めたように答えた。
「仕方のないことだ。
本来、我らとニンゲンは交われぬモノ。特にロトの血脈を受け継ぐ者達と魔物の王たる竜王様は、な。
奴らも竜王様もその摂理に従ったに過ぎぬ。そして強き者が力の劣る者を屠るのもまた、摂理の一つ。
恨みはしない。……仕方のないことなのだからな」
そう言って、ドルバは一瞬だけ塔の外へ目を向ける。
その眼差しは、痛切な哀しみに満ちていた――『仕方ない』で片付けてしまうには、あまりにも大きな。
けれども、ドルバはすぐにぐるりと向きを変え、棒立ちになったままのイザを見上げた。
「ここにはまだニンゲンがいるようだ。そやつらと交渉してみたらどうだ?
あやつらほどの力を持っているかどうかはわからぬが、役に立つ者もいるかも知れぬぞ」
「あ、うん……そうだね、そうしようか」
【イザ 現在位置:ナジミの塔一階 所持品:きんきらの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
【ドルバ 現在位置:ナジミの塔一階 所持品:不明
第一行動方針:協力してくれそうな人を探す 最終行動方針:同志を集め、ゲームを脱出する】
一方くだんの五人組は、竜王戦で負った傷の治療もあらかた済ませ、地下通路を通ってアリアハン城に向かおうとしていた。
先導者はもちろんアリアハン出身のフルートだ。それにサックスが、方位磁針を片手に隣を歩いて補佐している。
……磁針の北と南を取り違えていることに気付いていないのは、どうかと思うが。
そして天然モードのフルートの先導も信頼できるものではない、ということを付け加えておく。
「多分こっちですよ〜。遅れないで下さい〜」
「はーい」
フルートの言葉に、元気に返事をするリルム。
ロランはそんな二人に、いつも先に立って歩いていた少女と、彼女の後を追う少年の姿を重ねていた。
そして、先ほどの放送を思い出し、無意識に唇を噛みしめる。
少女は――もういない。その事実は認めがたいことであったけれど、赤線の引かれたリストを見た時、受け入れるしかないのだと悟った。
悲しみは、自然と足を遅らせる。彼の隣を歩く者の足も。
前を行く三人と、後ろを歩く二人の間が開きつつあることに気付いて、リルムが叫んだ。
「おい、イケメン兄ちゃんにトサカ頭! チンタラしてると置いてくぞー!」
「……イケメン……」
「ちょっと待て。なんでこいつがイケメンで俺がトサカなんだよ? 納得いかねぇぜ!」
「じゃあ、ニワトリ頭ね」
「その呼び方はもっと止めろっ、イヤなこと思い出すじゃねーか!」
「え〜と、ゼルさんがニワトリ頭だと、私のあだ名は何になるんでしょう〜?」
「えっ。フルートさんはフルートさんのままでいいんじゃないかなぁ。
あと、できれば僕もサックスのままがいいんですけど」
「サックスさんも元のままですか〜。お揃いですね〜」
「お揃い……お揃いかぁ」
フルートの言葉に何故かデレデレするサックス、そんな彼を見てゼルが肩をすくめる。
「なんだありゃ。バカップルは、どっかの誰かだけで腹いっぱいだっての」
その台詞に、ロランは思わず苦笑する。
『どっかの誰か』が誰なのかはわからなかったが、なんとなくその人たちの姿が想像できるような気がした。
賑やかな会話は続く。大切な人を失った悲しみも、一時の間忘れさせて。
【サックス(軽傷) 所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り
【フルート(MP減少) 所持品:スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣
【リルム 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪
【ロラン(軽傷) 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート
【ゼル(軽傷) 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト
現在位置:ナジミの塔→地下通路(洞窟内部)を移動中
第一行動方針:なるべく仲間を集める 最終行動方針:ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】
「オレはもう、嫌だ」
ランドは辟易して呟き、ザックスを横目で睨みつけた。
「だから街に残るべきだと言ったんだよ!」
「いまさらしょうがないだろ。いつまでもグチグチいうなよ」
ザックスがめんどくさそうに言うと、ランドは更に忌々しげに言葉を軋らせた。
「愚痴も言いたくなるだろこれじゃあ。あんたのせいだぞ、どうしてくれるんだよ!」
「どうして欲しいんだよ。言ってみろ」
「ケンカは後でいいですからお二人さん。それよりどうするんです!?」
このまま延々と言い争いを続けそうな二人にシンシアはぴしゃりと言い放った。
その刹那、シンシアの顔のすぐ横にあった木の枝が乾いた音を立てて弾けとんだ。
ザックス、シンシア、ランドの三人組は、夜を森で身を潜めるべくアリアハン北部の森林地帯に向かっていた。
そしてザックスの計画通り、日が暮れる前に到着したまでは良かったのだが、
森に入ってしばらくした所で何者かに銃による襲撃を受けていた。
しかもマシンガンによる広範囲の無差別銃撃というものだからたまった物じゃない。
少し大きめの木の影にザックスとシンシアの二人が、そこから二メートルほど離れた木の影にランドが
前方から飛んでくる銃弾から身を守っているという図式だった。
「いいからお前もそのボウガンを撃ち返して、相手の足を止めてろ!」
「ちっくしょう!死んだら化けて出てやるからな!」
悪態をつきながらもランドは銃撃の合間に木の影から身を出して、
オートボウガンを襲撃者がいると思しき場所に乱射した。しかし当てずっぽうな攻撃が当たるはずもなく
お返しとばかりに銃弾が再び飛来してきた。
一方ザックスはシンシアが手に持つ対人レーダーをちらりと確認した。
レーダーには相変わらずザックスたち以外の反応はなかった。
銃撃が始まった時からレーダーには三人の反応しかなく、現状が維持されているのだった。
これはつまり襲撃者はザックスたちから十五メートル以上は離れていることになり、そこから動いていない事となる。
この事実からザックスはこう推測した。
(――相手は戦い慣れしていない人間、それともただの素人だ)
普通マシンガンほど速射に優れた武器を持つ場合、相手の足を止めつつ間合いを詰めていくのが定石だ。
それをしないということは、襲撃者には戦闘経験はほとんどないと言ってもよかった。
そこまで戦況を分析したところでザックスの顔からおどけが消えた。
十代半ばにして神羅の精鋭部隊ソルジャーに選ばれ、瞬く間にその最高ランクであるソルジャー1stまで登り詰め、
あの伝説の英雄セフィロスの片腕を務めていた、強者の顔がそこにはあった。
ザックスは木の影から顔を半分だけ出して、銃弾が飛来してくる方向を一瞥した。
マシンガンによる攻撃のポイントを少しでもそらせることさえなんとかすれば、決して絶望的状況ではない。
――ならばどうする、と考えて、それが不可能に近いとはザックスは思わなかった。
そしてザックスはシンシアから煙幕を一つ受け取ると五メートルほど前方に転がす。
あっという間に白い煙が森の一帯を包み込み、視界が取れなくなる。これならば木の影から動いても
襲撃者には確認出来なくなった。
しかし襲撃者は、これまで攻撃していたザックスたちがいる場所を中心にして、
大きく扇状に銃弾をばら撒いてきた。攻撃の範囲をさらに広くして煙幕による逃亡を阻止するつもりのようだ。
「どうすんだ、これじゃよけい動けねえよ!」
「お前のその腰の物を左側にあった茂みに思いっきり投げ込め!」
ザックスはランドのベルトに挿してあったミスリルスパナを指差し、ランドへと指示を出した。
「…くっ!でえぇぇい!!」
ランドはザックスの言った通り、茂みめがけてミスリルスパナを投げ込んだ。
スパナはぶんぶんと回転しながら茂みへ突っ込み、バキバキガサガサと音を立てる。
その瞬間マシンガンの銃撃がスパナが突っ込んだ茂みの方向へと移動した。
襲撃者は攻撃対象が逃亡の際に発した音だと思い込み、茂みに攻撃を集中させたのだった。
「よし、今だ!逃げるぞ!」
ザックスの言葉と同時に三人は銃撃の反対方向へと一斉に駆け出した。少し行けば木が特に密集している地帯があった。
そこへ逃げ込めばいかにマシンガンだろうと木々に阻まれ攻撃は届かない。
シンシアは木の密集地帯に入る直前、今まで身を隠していた木の影に向かって振り向きざま呪文をはなった。
「イオラ!」
逃亡に気づいた襲撃者の追撃を阻むように、シンシアたちの後方で爆発が立て続けに連続して起こる。
煙幕の煙で白く煙っていた森が爆発による発光で更に白く染め上げていった。
数分後、煙幕の煙も晴れつつある先程まで戦闘が行われていた森の中で、
ザックスたちを攻撃した襲撃者…デールは盛大に舌打ちをしていた。
――なんという失態。不意をつくため森で潜み、先に三人の攻撃目標を見つけ、奇襲を仕掛けたというのに
結局誰一人仕留めることが出来ずに逃げられてしまうとは…。完全に自分のミスだ。
次からはもっと引き付けてから奇襲しなければな。
リュカ一家や兄のヘンリー夫妻のため悪役となることに決めたデールは先程の戦闘を思い出し
興奮冷めやらぬ顔で手にしたマシンガンを見つめた。
デール自身は気づいていなかったが、彼はもうリュカたちのためにゲームに乗ってはいなかった。
すでにこのゲームに魅了されていたのかもしれない。
――あぁ、悪役も悪くないかもな。
【ザックス 所持品:スネークソード 毛布
現在位置:アリアハン北部の森入り口付近
第一行動方針:襲撃があった場所から離れる 第二行動方針:主催者に一泡吹かせる】
【シンシア 所持品:万能薬 対人レーダー 煙幕×2 毛布
現在位置:同上 行動方針:ザックスについて行く】
【ランド 所持品:オートボウガン 魔法の玉 毛布
現在位置:同上 行動方針:ザックスたちについて行く】
【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)
現在位置:アリアハン北部の森の中
行動方針:兄夫婦&リュカ一家以外の参加者を殺す(?)】
※デールはリュカ一家やヘンリー夫妻も殺害対象になってしまった可能性があります。
17 :
理解不能:04/11/27 11:22:42 ID:HKbWvQTj
世に名を知られた賢者とて、理解できぬ事柄はある。
例えば、いま目の前にある光景のように。
「助けてー!」「誰かー!」
「……」
横倒しになったまま、茂みの中に突っ込んでいる大きな壷が喋っている。
どうやら中に誰かが入っているようだが……とりあえずは助けてやるべきだろうか。
そう考えた彼は、支給された杖を振るって壷を叩き割る。
「わぁっ!」「きゃぁっ!」
「……」
破片を浴びながら出てきたのは、やはり人間だった。
それも同じ顔、同じ服、鏡写しのようにそっくりな二人の少女だ。
「あー、助かったー」「このまま出られなかったらどうしようかと思ったわ」
彼女らは手を取り合ってはしゃいでいたが、やがて彼の姿に気付くと、揃って頭を下げた。
「ありがとう」「おかげで助かったわ」
「……ああ、いや、大したことはしていないのだが。
その、君たちは、双子か何かなのか?」
「ううん」「違うよ」
「分裂の壷で自分を増やしたの」「一人より二人の方が便利だから」
「…………」
――世に名を知られた賢者といえど……理解できぬ事柄も、ある。
【アリーナ(分裂状態) 所持品:なし 行動方針:不明】
【クリムト 所持品:力の杖、プロテクトリング
第一行動方針:不明 最終行動方針:ゲーム脱出】
【現在位置(共通):レーべ南東の山岳地帯、南の茂み】
18 :
修正:04/11/27 11:33:41 ID:HKbWvQTj
>>17 ごめん間違い直し忘れた。
>横倒しになったまま、茂みの中に突っ込んでいる大きな壷が喋っている。
↓
「横倒しになったまま、薙ぎ倒された樹木の傍に転がっている大きな壷が喋っている。」
【現在位置(共通):レーべ南東の山岳地帯、南の茂み】
↓
【現在位置(共通):レーべ南東の山岳地帯近くの、南の森】 に修正します。
「く、クルルが…ッ!?」
静寂に包まれた薄暮の森の空気を、意図せずともファリスは乱した。
金髪の少女の、あどけない笑顔、時折見せる寂しい表情。
そのどちらもが失われた、と感じたから。
ふらふらと一人胡坐で座り込み、参加者リストを開く。
目に入ったのはクルルの輝く金髪ではなく、その名の上に引かれた朱色の線だった。
レナの髪のような薄明るい桃色でも、カルナックの勇気の炎のような鮮やかな赤でもなく。
ただ滲んだ血のようなその色が。
呆然としたままリストを眺めていたファリスは、先程の男の写真を見つけた。
素顔を晒す事は無く、黒装束に身を包んだ姿を。
そして、その名前にも違わずに朱色の線が引かれていたのを。
(何故だ?)
あの男はただで死ぬ男ではないと思っていた。
だが、彼は死んだのか。
数時間前に自分に忠告をした男が。
パタンと力なくそのリストを閉じ、ザックにしまう。
「……!?」
先程とは違い、背後の気配にすぐに気づいた。
立ち、振り返ると、其処には剣を手にした武人らしき人物。
――薄暮の中でも輝く、血に濡れた剣を。
「…ヤる気かッ!?」
ファリスは咄嗟に叫ぶ。
男の長剣に比べてあまりに頼りないナイフを構え、男を睨みつけた。
「待て、話を聞くんだ」
男は、諭すように冷静に言った。
「私の名はレオ。戦う気は無い。だが聞きたいことがある。…顔にペイントのある男を見なかったか?」
「俺が今まで見たのは焼けた死体と黒い覆面の男とあんただけだ!」
ファリスの叫びに、レオは予想外の反応を見せる。
「黒い覆面…。そうか、シャドウと会ったのか」
男の声に、ファリスも一瞬戸惑う。
「何だって…?」
思わずナイフの構えを解く。そしてやっと、レオも構えを解いていた事に気づいた。
「黒い覆面の男は知っている」
レオはフッとため息をついた。
「放送で名があった。シャドウという男だ」
「知り合いなのか…?」
「まぁ、知り合いといえば知り合いか」
レオは一寸空を見上げる。
「暗殺者だったがな…強い奴だったのだが」
視線をすぐに戻し、話を繋いだ。
「まぁいい。先程言ったペイントのある男、私の知っている男だが…このゲームに乗っている」
レオの口調が急に厳しくなる。
「奴は私が始末せねばならない。フザけた精神の持ち主だ。何をしてくるかは予想も出来ぬが…」
レオは、再び剣を構えた。剣先に殺気が纏う。
「この近くにいる。姿を消して潜んでいるようだ。今すぐにこの場から逃げたほうがいい」
レオの口調はなんとなく事務的で。
それでも、覚悟を秘めたその声を、ファリスは受け取った。
何故この男を信用したのか分からない。だが、この男は正しいことをしていると、本能的に悟った。
「…それを聞いたら離れるわけにはいかない。俺の名はファリス。腕には自信が…」
「奴を殺すのは私の義務だ。手助けなどしてくれるな」
レオは、ファリスに背中を向ける。相変わらず、表情は険しい。
「…手助けじゃない。あんたと共通認識を持っただけだ。…生かしておくべきじゃない」
ファリスは、きっぱりと言い、ナイフを再び構えた。
レオの目の前に突如出現した、不気味な笑みを浮かべた人型の靄を睨み付けて。
まさに先程のレオの言葉の如くに、何かを企んでいる様なその表情に嫌悪感を覚えながら。
薄暮の森に、殺気による静寂が訪れた。
【レオ 所持品:吹雪の剣 鉄の盾 神羅甲型防具改
第一行動方針:ケフカ殺害 第二行動方針:ゲームに乗らない】
【ファリス 所持品:王者のマント 聖なるナイフ
第一行動方針:レオと共に闘う 第二行動方針:仲間を探す】
【ケフカ(負傷) 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール
第一行動方針:企んでいる事を行動へ 第二行動方針:ゲームに乗る】
【現在位置:レーベ南の森南東部】
22 :
判断ミス:04/11/28 19:22:42 ID:+hCyQf+i
「フライヤさん、本当に赤いローブのおじいさんはあっちに?」
先行くアルカートが振り返り、フライヤに問う。
「わしの見間違いでなければ良いのじゃが…確かにこっちの方角じゃった」
フライヤは森の方向を指差す、確かにそれは正しかった。
だが彼らが森につく少し前に、大陸を揺るがす地震が彼らの行く手を阻んだのだ。
「な、な、なんだよ!この地震はぁ!」
「身、身動きが…と、取れないです!」
「クッ…二人とも!手をわしの方に!」
地震で体制が上手く保てない二人が必死の思いで差し出した手をフライヤは思い切り引っ張り、それと同時に跳んだ。
そして、その地響きの音がやみ始めた頃に、華麗に着地していた。
「ふぅ、危なかったのう…わしも内心ヒヤヒヤものじゃったよ」
額を拭うフライヤ、アルカートとフィンは腰を抜かしていて立てないようだ。
そこに、あの忌々しい声が聞こえてきた…このゲームの主催、魔女アルティミシアの。
23 :
判断ミス:04/11/28 19:23:50 ID:+hCyQf+i
彼らは走るのをやめた、疲労感からではなく悲しみからである。
…一律の沈黙は悲しみという風をより強いものにする。
「ジオさん…私、ジオさんの分まで生きようと思います。だから…」
アルカートはその先を言えなかった、いや言わなかったのかもしれない。
重い空気を打ち払うようにフライヤが無言で立ち上がる、アルカートもそれに続いて立ち上がる。
だが走ろうとした時、フィンがそれを止めた。
「…アルカート、フライヤ。やっぱり泣きたいときは泣いたほうが良いと思う。
後でこっそり泣かれるのも嫌だし、無理して隠されるのも嫌だ。
だから俺は……………今泣いてる、自分に正直に」
フィンが顔を起こす、その顔は…涙でびしょびしょだった。
アルカートは耐えられなかった、そして…無言で涙を流した。
二度と聞きたくなかった大切な人の死、それは何を意味するのだろう。
彼女の脳裏にジオと仲間と色々な事が映る。
――でも、もう帰ってこない、それを考えると涙が…何時までも止まらなかった。
フライヤも、片手を顔に押し付け、泣いていた。
そして、怒っていた。ガーネットや仲間達をこんなフザケた場所へ招待した魔女に。
泣き声だけが、響く。
24 :
判断ミス:04/11/28 19:24:36 ID:+hCyQf+i
その後、彼らは一つの決心をした。
「フライヤさん、フィンさん…私、ちょっとだけ、行きたいところがあるんです…だから、少しの間だけ離れることになると思います」
目をスーツで隠しながら、アルカートは言った。
「仲間の…所へ?でもどうやって行く――」
フィンのその言葉の先を遮るようにアルカートが手を出す。
そして、顔を横に振る。目はやはり見えないが。
「私だってわかりません、でも…なんとなく分かるんです」
「じゃあ、此処で三人とも別行動…という事になるのじゃな?」
別行動?とフィンが聞き返す、フライヤはゆっくりと頷いた。
「アルカートは仲間を…探しに行く。
フィンはご老人の元へ行く。
わしは…先ほどから感じるのじゃ、竜の気を…だからそこへ行ってみようと思うんじゃ」
フライヤが三人の中心の位置へ剣を突き刺す。
柄の上に手を置き、二人に確認を取る。
「フィン、アルカート。
死ぬでないぞ、必ずまた生きて会うのじゃ」
ああ、と言い返しフィンも手を置く。
はい、必ず。アルカートも言い返す、だが顔を上げてはくれなかった。
そして、三人は散らばった。
だがフィンとフライヤは知らなかった、いや知る由も無かった。
アルカートと別れ、そのアルカートが城の方向へ向かって行くのが後に悲劇を招くことと。
アルカートの目が、まるで死人のような目をしていたことを。
去り行く二人には知ることは無かった。
25 :
判断ミス:04/11/28 19:25:22 ID:+hCyQf+i
【フライヤ 所持品:アイスソード えふえふ(FF5)
現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原>アリアハン北の橋から西の平原へ
第一行動方針:竜の気(カインの所)へ行く】
【アルカート 所持品:ナッツンスーツ グラディウス 白マテリア(ホーリー)
現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原>アリアハン城へ
第一行動方針:ジオの元へ行く(?)】
アルカートは少し自我を失っています。もしかしたらジオしか見えないモードかも
【フィン 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)
現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原>ドーガの元へ
第一行動方針:ドーガの所へ行く
第二行動方針:仲間を探す】
26 :
企み 1/4:04/11/28 20:30:37 ID:YXVfCIpF
中年の剣士が二人、闇に包まれようとしている森の中を歩いていた。
言うまでも無く、パパスとオルデガである。
放送直後は、二人とも何事も無かったかのように振舞っていた。
だが、オルデガはパパスの表情の変化に気づいていた。
パパスが自分からそれを話すまでの間、オルデガも黙って歩いていたのだった。
そうして十分くらいだろうか。パパスが口を開く。
「サンチョは有能な召使だった。息子を任せても大丈夫な唯一の存在だったのだが…惜しいことで亡くしたものだ」
静かに嘆く。
オルデガはその言葉を受け取ると、話題を転換する。
自ら人に話せるようになれば、覚悟はついたのだと捉えることが出来たから。
「息子さんは確か…」
「ああ、未だ五歳の子供だった筈なのだが…」
パパスは参加者リストを回想した。
マーサと同じ澄んだ瞳をして、其処に載せられていたリュカの写真を思い出していた。
「…立派になった。知らずに大人となっていたか」
――勿論、妻や子供がいる事など、知る由も無かったが。
「成る程。私も息子の生まれた姿しか知らずに過ごし、次に会ったときには16歳だったのだが」
「親が無くとも子は育つ、か」
「寂しいものだな」
二人の偉大なる父親は、互いに笑みを浮かべる。
それは、何処か寂しさを帯びた笑みだった。
そして、その笑みを破ったのは、彼らに助けを求める声だった。
27 :
企み 2/4:04/11/28 20:33:02 ID:YXVfCIpF
「ケフカよ。観念するんだ」
レオの声は、大地を揺るがすかの如く力強く。
「あんたが何をした奴なのかは知らんが、少なくともあんたはレオさんの敵だ」
ファリスの声は、揺らめく炎の如く勇ましく。
それでも、月明かりの薄暮の中完全に姿を現したケフカの不気味な笑みは消えることは無かった。
「覚悟するんだね、レオ将軍」
ケフカは言い放つと、先程レオにつけられた肩口の傷口に思い切り爪を立てる。
当然の如く傷口が開き、血が滴り落ちてきた。
「何を企んでいる、ケフカ!」
「すぐにわかるよ。しかし相変わらずのマヌケだねぇレオ将軍」
ケフカはそう言うと、レオ将軍に背中を向けて走り始めた。
「逃げるのか、ケフカ!」
レオも、当然後に続く。
「待ってくれよ!」
ファリスは咄嗟のことに出遅れてしまった。
(僕の計画通りだ…)
バニシュ状態で確認しておいた。この先にいる二人の剣士。
(アレは強いよ…レオなんてコテンパンだろうねぇ)
月光に照らされたその影が見えてきた。
「助けてクダサーイ!」
ケフカは叫んだ。二人は振り返る。…完全だ。
28 :
企み 3/4:04/11/28 20:34:22 ID:YXVfCIpF
「どうしたのだ!?」
男の一人が、咄嗟に剣を構えて尋ねる。
「変な奴が後ろから追ってくるんです!」
出来るだけ自分がマトモに見えるように、表情や声に緊迫感を持たせる。
演技力に自信が無いから傷を広げてまでこんな状況を作り出したのだ。相手も信用してくれる筈だ。
ケフカが指差す方向には、乾いた血の付着した剣を持つレオ将軍。
濛々とした殺気が溢れている
そしてケフカの肩口には、鋭い切り傷。
これだけ有れば、二人の剣士が判断を誤るには十分だった。
「この男を助ける!あの男を止めねばなるまい」
「了解だ!」
二人の偉大なる父親は、レオの前に立ちはだかった。
「何故そのような事をしようとする。そなたも名の知れた武人ではないのか」
パパスが、諭すように言う。
「止めてくれるな。これが今の私のすべき事なのだ」
レオの言葉は、二人の剣士に本当の意味で届くことは無く。
「力づくでも止めて見せるぞ。いざ!」
パパスは剣を構え、オルデガは斧を構える。
「否、私の狙いはその男だけだ。通してもらえぬか」
レオは再び言ったが、
「何を言う。尋常に我等と勝負せい。あの男を殺すのは我等に勝ってからだ」
オルデガは言い放つと、斧を振りかざした。
29 :
企み 4/4:04/11/28 20:35:35 ID:YXVfCIpF
パパスとオルデガの後ろで、ケフカは不気味な笑みを浮かべて後退し始めた。
(後は勝手にやっていているんですね、レオ将軍)
月明かりの下、彼の姿が森の奥に消えた事に気づいた人は、誰もいなかった。
【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント
第一行動方針:レオを止める
第二行動方針:アルスを探す
最終行動方針:ゲームの破壊】
【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
第一行動方針:レオを止める
第二行動方針:仲間を探す
最終行動方針:ゲームの破壊】
【レオ 所持品:吹雪の剣 鉄の盾 神羅甲型防具改
第一行動方針:この状況を抜ける
第二行動方針:ケフカ殺害
最終行動方針:ゲームに乗らない】
【ファリス 所持品:王者のマント 聖なるナイフ
第一行動方針:レオを探す
第二行動方針:ケフカ殺害(?)】
【ケフカ(負傷) 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール
第一行動方針:逃げる
最終行動方針:ゲームに乗る】
現在位置:レーベ南の森南東部
ファリスはレオを見失ってます。ケフカは逃げました。
深い闇の中に、ピエールは佇んでいた。
ここがどこなのか、何故こんなところにいるのか考えることもない。
けれど、何かを忘れてしまったとだけ感じていた。
忘れてしまった何かが、彼を苦しめていた。
(いったい…)
視線を下に落とす。そこには、青くて丸いものがあった。
だが手を伸ばして掴もうとすると、その物体は勢いよく飛び跳ね、
ピエールの手をすり抜けていった。
それさらに跳ね続け、どんどんピエールから離れていく。
なんとはなしに、ピエールはそれを目で追っていった。
(あ…)
すると、先程まで闇ばかりであった空間の一角が裂け、強い光が降り注ぐ。
青い物体はそこに向かい、そしてたどり着いたとき、こちらを振り返った。
振り返ったと思ったのは、青い表面に、よく知る同属の顔がスライドしてきたから…。
(ス、スラリン…、お前達……!!)
いつの間にか光の中にはスライムだけでなく、キラーパンサー、ドラゴンキッズ、
ばくだんいわ、ホークブリザードなど、彼とともに戦ってきた多くの戦友達が姿を現していた。
(お前達何故、何故ここに…?)
何故ここに、ゲームには参加していないはずなのに。
そこまで考え、ピエールは愕然とする。
自分がどこで、何をしていたか、はっきりと思い出したのだ。
(では、だからこそ何故、お前達がこんなところにいるんだ?)
声を出して叫びたかったのに、思いは音を伴うことはなかった。
(ここはいったいどこなんだ。何故声が出ない…)
戦友達はじっと光の中で動かない。何かを待っているかのように。
(待っている、私を待っているのか?)
光に、戦友たちに意識を集中すればするほど、体は自然に光のほうへ向かう。
ゲームに参加していない彼らは、きっと迎えに着たのではないか。
あの光をくぐれば、平和なグランバニアに帰れるのではないかとさえ、考えてしまう。
だが、ピエールは一歩も二歩も進まぬうちに、動くことを止めてしまった。
こちらを見つめ、じっとしていた仲間達が僅かに揺れる。
(すまないが、私は戻れない。否、逝けない)
やはり声にはならなかったが、伝わっていることに確信があった。
なぜならここは、どこでもない世界。光の向こうはこの世でない世界。
彼らは戦友たちではなく、自分自身の思考。
(私はリュカ様を本当の元の世界に帰して差し上げねばならない。
それがすんだら、私はそちらへ逝こう。待っていてくれるな?)
たとえ仲間達でなくとも、その姿を借りているのであれば、きっとわかってくれるはず。
「ピキーー!!」
初めて、その世界に音と呼べる者が響いた。
「ピキ、ピッキ、ピキピキーーーー!!!」
スラリンの言葉は、先程のピエールの問いの返答ではなく…。
(ハヤク キケン オキテ ハヤク)
聴覚を刺激する音の意味を、ピエールは理解した。
意識が、闇の世界から混沌の世界へと戻る。
振り下ろされる雷鳴の剣を、ピエールは間一髪のところで避けた。
ほとんど無意識に攻撃者に向かい鋼鉄の剣を構える。だが、その動きは遅い。
「ふん、まだそれだけ動けるのか」
テリーは、それだけをはき捨てるようにいい、間をおかず飛び込んできた。
テリーはレーベの村を南に出て、この森に行き着いた。
途中誰にも会うことなくここにたどり着き、すでに事切れた男と瀕死の魔物を発見したのだ。
瀕死だからといってテリーは容赦するつもりはなかった。
彼は自分の力を試したいとは思っているが、ただ強い奴と戦いたいと考える、
例えばデュランのような思考とはまた少し違う。
殺せるときに殺しておこうという、合理的な考え方ぐらい出来る。
息も絶え絶えなスライム部を狙って、雷鳴の剣が空気を切り裂く。
テリーはもちろん、スライムナイトの基本的な体の構造を知っている。
ピエールも防ごうと鋼鉄の剣を動かすが、
どう考えても体力の差で力負けしてしまうのは明白であった。しかし…。
「バギマッ!!」
真空の刃が、テリーの行動を遮る。
ピエールの魔法ではない。木々に隠れた脇から放たれた。
そこには、金髪の女性。
「まだ追ってきていたのか。しつこい奴だ」
「テリー。あなたを止めるわ。手加減抜きで」
ミレーユは表情に、暗い決意を秘めていた。
※現在位置:レーベ南の森(南部)
【ミレーユ 所持品:月の扇 エルメスの靴
行動方針:テリーを止める(手加減抜き)】
【テリー(DQ6) 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼 リフレクトリング
行動方針:自らの力を試す=ゲームに勝利する】
【ピエール(瀕死)
所持品:鋼鉄の剣 ロングバレルR 青龍偃月刀 いかずちの杖 魔封じの杖 ダガー 祈りの指輪
第一行動方針:回復をしつつ、戦況を見守る
基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
34 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/11/29 00:08:00 ID:BggmJL8X
ピサロは気配を感じたのだ。
その数分前・・・
ティーダはピサロのところに行っていた
近くにいたロックとフリオニールとレナとエリアとギルバートとギルガメッシュとわたぼうとサリィも行っていた
ティファは撃った。
たくさん大変だった・・・
ティファは帰った。クラウドを探すの。
【ピサロ・ビビ・ターニア・ティーダ・ロック・フリオニール・レナ・エリア・ギルバート・ギルガメッシュ・わたぼう・サリィ:死亡】
【残り93人】
俺には夢があった。
銀幕で見た魔女の騎士のような、最高の英雄になってやる。そんな夢が。
だから、あの日魔女の手を取った。それなのに――
全てが終わった後、魔女の騎士の本当の意味を知って愕然とした。
結局、俺は一度も魔女の騎士なんかにはなれてなかったってわけだ。バカバカしい。
それから俺は、夢をすっぱり諦めてオトナって奴になろうとした。
風神雷神とバラムの海で釣りなんかやったりしてよ。
平和で退屈な毎日ってものに慣れようとしていた。
――今から思えば、それもバカバカしい話だったな。
俺はやっぱり、後ろなんか見ずに突っ走ってる方が性に合う。
いつかゴールに辿りつくその日まで、戦い続けてやる。
「どうした骸骨野郎! そっちから吹っかけてきたんだ、もっと楽しませろよ!」
「吠えるな、小僧が!」
骨野郎の手から、氷塊混じりの凍てつく冷気が放たれた。俺は剣を振りかざし炎を呼び出す。
二つのエネルギーはお互いを相殺し、風と水蒸気だけを残して消滅する。
生死を賭けた緊張が生み出す高揚感を抑えながら、俺は呟いた。
「全く便利な剣だぜ。こいつは」
魔力剣なんて代物、映画や小説の中だけの存在だと思っていたんだがな。
だがまあ、後ろにいる嬢ちゃんよりはよっぽど現実味があるか。
何せ、異世界の魔王の恋人様だというんだから。
普段なら頭がイカれてるで片付ける所だが……『ルビーの涙』なんてものを見せられれば、さすがに信じるしかない。
「サイファーさん!」
嬢ちゃん――ロザリーは、さっきからすぐそこの建物の影に隠れている。
本音を言えば邪魔だ。もう少し遠くに逃げてほしいが、彼女にしてみればそれも危険か。
実際、さっきから数人の気配と視線を感じる。どうも人の試合を観戦してる連中がいるらしい。
いかにもか弱そうなロザリーを狙うつもりなのか、機に乗じて俺を仕留めたいのか、
ゲームに乗った骸骨野郎の隙を窺っているのかはわからないが……どのみち、ロクな連中じゃないだろう。
「サンダラ!」
奴の詠唱とともに、青白い光が輝く。
「ちっ!」
俺はとっさに、剣を地面と電光の間に向かい投げつけた。
金属の刃に突き刺さった雷撃が、激しいスパークを撒き散らす。
光に思わず目が眩んだ、その僅かな隙を突かれ、奴が刃を振りかざす。
「血を、我が怒りの炎を静めるための血を流せ!」
剣を中心に強風が渦巻いた。剃刀のように研ぎ澄まされた氷を孕んで。
(そっちの剣も特別製ってワケかよ)
炎魔法で壁を作ろうにも、ドローが間に合わない。剣は迫り来る風の向こう側だ。
(くそったれが、調子に乗りやがって!)
俺は真正面から風に突っ込み、剣を拾い上げた。
油断して勝ち誇る骸骨野郎に、強烈な一太刀を浴びせてやるために。
「生憎だが、一方的に負けてやる殊勝な人間になった覚えはねえっ!」
薄氷が突き刺さり、生暖かい血が至るところから吹きだす。切り刻まれた腕と足と胴体とが、痛みという悲鳴を上げる。
だが、俺は気にせず疾る。野郎の姿はもう目の前だ。
「くらえ!」
掌に生まれた火炎を、奴の顔面に向けて放つ。その後を追うように、剣を一閃させる。
タイミングは完璧だ。あんな死にぞこないのアンデッドにかわせるはずもない、そう思った。
――だが、甘かった。
ゆらめく炎の向こうで髑髏が笑い、紫電の光が再び灯る。
「人はどうしてこうも愚かな間違いを犯すのだ?
貴様にも教えてやろう。余に炎など効かぬわ」
その言葉を聞き終わる前に、痺れと身を焦がす激痛が視界を白濁させた。
気付いた時には、忌々しい骸骨野郎が地に伏した俺の喉元に剣を突きつけていた。
「チェックメイトだな。
さぁ、覚悟を決めろ。血と涙を流し、無様に命乞いをするがいい!
絶望の表情を余に見せるのだ!」
「ふざけるなぁっ!」
――叫んだのは、俺じゃなかった。
町の入り口で出会ったガキ二人の片割れが、不釣合いに大きな剣を野郎の真上から振り下ろす。
氷の刃の一閃で弾かれたものの、その金髪の子供は器用に宙を飛び、わずかな隙さえ窺わせず着地した。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「……ガキに心配されるほど落ちぶれちゃいねえよ」
抜けきらない痺れを無理やりねじ伏せ、俺は体勢を立て直す。
「邪魔だ、どいてろ。こいつは俺の獲物だ」
「嫌だ。僕だって戦えるよ。僕は、天空の勇者なんだ」
勇者ときやがったか、このガキ。
だが上等だ。少なくともどこぞのチキン野郎よりかはよっぽどいい根性してるぜ。
「フン、勝手にしろ……ただし、止めを刺すのは俺だからな!」
【ハイン 現在位置:アリアハン城下町 所持品:破壊の鏡、氷の刃、ルビーの指輪
第一行動方針:サイファー、レックスを殺す 第二行動方針:殺戮】
【サイファー(負傷) 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能)
第一行動方針:ハインを倒す 第二行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【ロザリー 所持品:不明
第一行動方針:隠れる 第二行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【レックス 所持品:ルビスの剣 オーガシールド
第一行動方針:ハインを倒す 第二行動方針:家族を探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ 黒マテリア(メテオ)
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ
第一行動方針:ロザリーを守る 第二行動方針:わたぼうを探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
現在位置(全員共通):アリアハン城下町
*バッツとローグが近くで、セリスとパウロが城下町東側民家二階で様子を窺っています
「ん?…あそこに丁度いい影があるな、あそこで休むか……」
マティウスは小さな山陰を見つけ、そこへと目指し歩く。
本当に、何故自分は蘇ったのか?もしかして此れが本当の死後の世界というものなのか?
幻覚?それもあるかもしれない、ただ分かるのは自分が此処に居るということ。
「お…また久しぶりにお客が現れたな」
気がつけば、山影の近くまで来ていた、そこには派手な衣装を来た男?女?よく分からないが人が立っていた。
「俺は物真似師ゴゴ、今まで物真似をして生きて来た。
お前は今何をやっているのだ?」
何だこの男は?物真似師?それに言っていることも理解できないな。
私のやっていることか…そうだな、今私がやっていることか…。
「自分が何故此処にいるか、その答えを探している」
ゴゴと名乗る男は考え始めた、目しか見えないというのはなかなか恐怖感があるな。
「そうか、なら俺も自分が此処に居る答えを探すという物真似をやってみるとしよう」
正気か?私の感想は正直なところ、その一言だった。
だがこの男からはどうも先ほどから只者ではない気を感じる。
「そうだな、先ず私が何をしてきたのか、それから話をするとしよう」
覆面の男と向き合い、私は静かに語り始めた。男は静かに私の話を聞いていた。
【マティウス
現在位置:レーベ南西の山脈地帯(ブオーンの背中)
所持品:ブラッドソード
第一行動方針:ゴゴと話す
最終行動方針:何故自分が蘇ったのかを知る
備考:非交戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ゴゴ
現在位置:レーベ南西の山岳地帯(ブオーンの背中)
所持品:ミラクルシューズ ソードブレーカー
第一行動方針:マティウスの物真似をする】
ぼんやりと星空を見上げていたレオンハルトでも、その気配にはすぐに気付いた。
静かな夜風の吹く平原の中で、その昂った気配はあまりにも異質だ。
そしてそれは確実に、迷わずにこちらに向かってきている。
レオンハルトは背筋が寒くなった。死への恐怖からではない。
その女の、まるで何も映していないかのような、それでも狂気一色に染まっている瞳は、
今すぐ血を見せろと、惨劇を見せろと言っているかのようであった。
レオンハルトには、殺されることの恐怖感はなかった。死を受け入れようとしていたから。
しかし、そんな彼でも――その女から放たれる威圧感は、恐ろしかった。
裁かれる時がきたのか、とレオンハルトは思った。
心の狂った、血に餓えたこの相手に、残虐的に殺されるとしたら。
それがどんなに惨めで、痛みと苦しみを伴う死に方だとしても――それが自分の罪の重さなのだと。
相手が一歩動いたその時が、身体を切断され骨を砕かれ、血飛沫を上げて殺されるときなのだろうと。
だが、相手は予想外の行動をとった。
今にも振り上げそうな剣を握った右手を、昂った感情を無理矢理抑えるかのように震わせながら
ゆっくりとレオンハルトに剣を向けたのだ。まるで、今からお前を斬るぞ、という意思表示のように。
その一瞬だけは、先程までの狂気に満ちた威圧感がやわらいで。――騎士の誇り高き血を感じた気がした。
レオンハルトははっとした。女の震える右手の指に、その指輪を確認したから。
月明かりに照らされた指輪に、古く痛々しい血痕がついているのが見えた。
…まさか、とは思った。しかしこの行為を見ればわかる。この女にはちゃんと、誇りがあるのだと。
(――こんな時、あいつならどうする…
相手を傷つけぬよう逃げるか、自己を守るため戦うか?
それとも――)
「…わかった、相手をしてやる。命に代えてでも止めてやろう」
レオンハルトがロングソードを抜きながら答えると、
ベアトリクスは弾かれたように、再び狂気に満ちた剣を一気に振り下ろした。
【レオンハルト 所持品:ロングソード、消え去り草
第一行動方針:ベアトリクスを止める 第二行動方針:死を待つ】
【ベアトリクス(精神を乗っ取られた状態) 所持品:血のエンゲージリング、君主の聖衣、アルテマソード
第一行動方針:レオンハルトを殺す 基本行動方針:参加者を見つけたら殺す】
現在位置:レーベ西の平原
死にたい。
深い闇の中から意識を取り戻した時、思ったことはそれだった。
生きていても、彼には……クラウドにはもう会えない。
会う資格を無くしてしまったから。こんな醜い顔、見せたくないから。
だから私は、勇気を出してナイフを拾い上げて、自分の首筋に当てた。
でも――
「何やってるのっ!?」
私が刃を滑らせようとしたとき、『彼』が現れた。
彼は私の手からナイフを奪い取ると、少し離れた地面へ放り投げる。
「ねぇ、どうしたんだい? 一体何があったの?」
手を握り締められたままそう聞かれたけれど、私は答えず……代わりに顔を上げた。
あまりに醜い、焼けただれた顔に、彼は眼を見開く。
でも、視線を逸らそうとはしなかった。まっすぐ私を見て、彼はこう言った。
「……痛いかもしれないけど、少し大人しくしてて」
それから彼はコートのポケットからハンカチを取り出し、水で湿らせて、私の顔に当てた。
「ここまで重度の火傷だと効くかどうかわからないけど、何もしないよりはマシだと思うからね」
私は彼をじっと見た。それで何を勘違いしたのか、彼はすまなさそうに頭を下げた。
「ごめんね。僕が、回復魔法とか使えればよかったんだけどね……」
「――ッ」
たまらなかった。
何でこの人は、私みたいなやつに優しくしてくれるんだろう。
私には、そんな価値なんかないのに。
「……ほう……て、おいて……」
ハンカチのお陰で痛みが多少和らぎはしたけれど、口は思うように動かない。
でも、喉の奥から声を出すことはできた。
「わたし……なんか、ほう…ておいて。優しくしな…で。
わたし、エアリス、殺しちゃ…た……もう、死ぬ…かないよ……
クラウドに…こんなかお、見せられな…よ……生きる価値、ない…」
発音は不明瞭で、内容は無茶苦茶で、聞き取りづらいなんてものじゃなかったと思う。
それでも、彼は全て察してくれたらしかった。
「だからって、自殺したって誰も救われないよ」
悲しげに目を伏せ、彼は静かに言った。
「自殺ってのはね、逃げることと同じなんだ。
死ねば、確かに罪悪感から解放される。でも、償ったことにはならないよ。
君が本当にその人達のことを思うなら、辛くても生きなくちゃだめだよ」
彼は私の肩に手を回し、軽く後ろ髪を撫でた。子供をあやすように。
「死んでしまった人の分まで生きるんだ。今、生きている人たちのために生きるんだ。
罪を償うっていうのはね、そういうことなんだよ。
それに会わせる顔がないだなんて決め付けないで。
全てが君のせいばかりじゃない。きちんと話せば、わかってくれるよ」
それから彼は、ふと、何かを思い出したように私に尋ねた。
「ねぇ。クラウドって人、もしかしてこの会場にいるのかい?」
私は首を縦に振る。彼は少し迷った様子を見せ、やがて口を開いた。
「そうか……なら、一つ、彼のためになりそうなことがあるよ」
(クラウドのためになること?)
「向こうの山の中にね、このゲームに乗った連中がいるんだ。
黒髪の女剣士と、金髪の格闘家と、黒尽くめの男の三人組だけど。
奴らは強い。クラウドさんって人が連中に見つかれば、殺されてしまうかもしれない」
(クラウドが、殺されるかもしれない?)
有り得ない。けど、そうなったら? 嫌だ。そんなのは嫌だ。
「でも、君には拳銃がある。見つかる前に不意打ちすれば、きっと倒せるよ。
そうすれば、奴らにクラウドさんが殺されることもなくなる。君が、彼を助けたことになる」
(私が、クラウドを助ける……)
「僕は、この先の村に仲間が待ってるから、一緒には行けないけど。
何もしないで死ぬぐらいなら、彼のためにがんばってみたらどうかな。ね?
そうすれば彼も――エアリスだっけ? その子もきっと許してくれるよ」
彼はにっこり微笑み、ナイフを拾ってくれた。ウェーブのかかった茶色の髪が優しく揺れる。
それがエアリスを思い出させて、だから、私は彼の言葉を受け入れる気になれたのかもしれない。
私はゆっくり頷いてナイフを受け取った。それからもう一度頭を下げて、走り出した。
――もし微笑むことができたなら、一緒に言いたい言葉があったのだけれど。今の私には言えなくて。
でも、またどこかで会えたなら、その時こそ必ず伝えようと思った。
「ありがとう」、と。
「ふー。やれやれだねぇ」
少女が去った森の中で、青年は一人肩をすくめる。
その表情には、先ほどまでの優しさなど微塵も残されていない。深青の瞳は冷徹な輝きだけを孕んでいる。
(上手く信じ込んでくれて助かったね。僕も手荒な真似をしないですんだ)
月光に照らされたコートの右袖口が、鋭いきらめきを放つ。
もし彼女が青年の企みに気付いた素振りを少しでも見せれば、袖の中に仕込んだナイフで首を掻き切るつもりだった。
肩を抱いて髪を撫でたのも、実のところ逃げ場を封じるためでしかない。
全ては偽りだ。話の内容も、彼女に見せた優しさも。
(銃声と叫び声が聞こえたから、危険を承知でこっちに来て……
いきなり自殺を始めたぐらいだから、きっと精神的に参ってるんだな〜ぐらいには思ってたけど。
付け入りやすい理由でよかったよ。
もー。スコールとユカイな仲間たちの相手なんか、まともにしてられますかっての〜)
上手く行けば、スコール達はこれで片がつく。失敗しても足止めにはなる。
その間に自分はレーベに行って、回復用品を仕入れておこう。あるかどうかはわからないが。
服も着替えた方がいいだろう。一目でそれとはわからなくても、臭いはする。最初に殺めた少女の血の臭いが。
それに体力も限界に近い、なにせ一気に山を駆け抜けてきたのだ。
少しでも暖かい場所で食事を取りたい。眠らなくてもいいから休みたい。それが彼の正直な気持ちだった。
ともかく、こうして少女は生きる希望を見つけた。そして青年は『時間稼ぎの駒』を手に入れた。
どちらにも不満はなく、問題もない。
あるとすれば――方向性が誤っているということだけで、それすら二人にとってはどうでもいいことでしかなかった。
【ティファ(顔面に重度の火傷) 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
現在位置:レーベ東の森中央付近→南の山岳地帯へ 行動方針:スコール達を倒す】
【アーヴァイン (HP4/5程度、疲労中)
所持品:キラーボウ 竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) エアナイフ グレートソード ミスリルの小手 食料+ランプ等(マリベルから回収)
現在位置:レーベ東の森中央付近→レーベの村へ
第一行動方針:休息を取る 第二行動方針:ゲームに乗る】
「…息の根を止めて来い」
ピサロの言葉に、ビビは耳を疑った。
「えっ…?」
「殺せと言っている」
ピサロの声は、いつもの通り冷たくて。
自分の放った魔法が女性の顔を醜いものとしてしまったことを、話した。
その女は死んだのかというピサロの問いに、ビビはわからないと答えた。
その次のピサロの言葉が、「息の根を止めて来い」と…
「どうして…?」
「言うまでも無いだろう。その女は、やがてお前やこの小娘を殺しに来る」
ピサロの前に並んで座ったビビとターニアに向けて言い放つ。
「そうなる前に殺すのが妥当というものだ」
全身が影になっているピサロの表情は、二人には読み取れなかった。
だが、口調に変化は無く、殺すことに躊躇いが無いのだろうと思わせた。
「でも…」
ビビは、なんとなくピサロの方から目を逸らし、隣のターニアを見た。
ターニアの表情もまた、ビビからは影となっていて読み取ることは出来なかったが。
「その女は不思議な武器を持っていると聞いた。轟音を立て瞬時にして人体を貫く武器をな。そうだな?」
「…はい」
ターニアは震えた声でそう答えた。
エアリスが殺された時の事は、既に話してあった。
「そのような武器は見たことが無い。防ぎ方も知らん。そんな武器を持った女を放置しておく訳にはいかぬだろう」
「じゃあ武器だけを…」
言いかけたビビは、また口を噤まなければならなかった。
「その女はこれまで何人殺したか知らん。放置すればお前の仲間も犠牲になるかも知らん。それでもよいのだな?」
ピサロの声は、有無を言わせぬ響きがあって。
「…うん…わかったよ…」
ビビは、呟くように言った。
「その女が目を覚ましていたら躊躇わず魔法で攻撃するのだ。そうでなければ殺されるからな。
目を覚ましていなければその女の持ち物を奪ってそれで息の根を止めろ。使い方が分からなければ手持ちの武器でも構わない」
ピサロは語勢を変える事無く言い切り、ターニアにその目を向けた。
「小娘、ついて行きたいか。仲間の仇を討つのを見たいか」
ターニアは、俯いて、目を伏せて、首を横に振る。
「…そうか。…ビビ、行って来い」
「……」
ビビは、一言も喋らずに、ランプをかざして、森の奥へ消えた。
先程とは違う。誰かを守るのではなく、誰かの命を奪うために、少年は歩き出した。
「どうしてあなたは行かないの…?」
ランプが遠ざかって見えなくなると、ターニアはピサロに聞いた。
「…ビビから聞いてないのか。とても身体を動かせる状態ではない」
忌々しげに、吐き捨てるように言った。
「多少は回復はしたが、未だ動くには十分ではない」
「…血は?」
ターニアの声が震えていた。
「血か。一先ず止まったようだが…。小娘、血が怖いか」
コクリと頷くターニア。
「血を見ると…頭が混乱して…」
「…成る程。ならば…」
唐突に、ピサロはターニアの額に右手の人差し指を向けた。
「暫く寝ている事だな」
カクリと糸が切れたように地面に上半身を倒したターニアを一瞥し、ピサロは目を閉じた。
――正直、ビビが私の言うとおりに動く可能性など、半分くらいだと思っている。
殺さないとしたら、女を逃がすのだろう。
未だ、人間の正義を信じているのか。
…それでも今、私は待つしかないのか。
どちらにしても。
――問題はこの小娘だ。
血を見ると混乱するか…厄介なものを背負い込んだ。
私の血は止まったがこの辺は血塗れだ。
人間の眼は闇の中では利かぬからまだいいが、朝になれば何れ血を見てしまう。
一先ずは眠らせておくのがいい筈だ。
何にしろ私が動けるようになるまではどうしようもないのだからな。
そこで、思考の中で苦笑する。
――フン、この身体が治らぬ限り、何も出来ぬか。
ならば先ずは回復を優先する他あるまい…
ピサロは、久々に自分を襲った睡眠欲に身体を委ねる事にした。
【ピサロ(睡眠) 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可)、爆弾(爆発後消滅)
行動方針:ビビの帰りを待つ、ある程度回復するまで待機】
【ターニア(睡眠) 所持品:微笑みの杖 行動方針:?】
【ビビ 所持品:不明 行動方針:ティファの息の根を止めるorティファを逃がす。ティファがいなくなったのを知ったら…?】
現在位置:レーベ東の森中央付近
カーン カーン
金属音が断続的に響く。
わるぼうは何をするでもなく、夢中で鍛冶を続けるサリィをぼんやりと見つめていた。
その足元には、ところどころに赤いラインのひかれた参加者名簿。
――普段は悪態をついていても、いや、だからこそ、心が痛む。
ほんの数日前までは、モンスターに囲まれて笑顔を見せていたイルが、もういないなんて。
(そういや、ルカの奴もここにいるんだったか…)
名簿をもう一度開いて、ルカの写真を見てみる。いつもと変わらない顔が、そこにはあった。
「――おい、大丈夫か?」
唐突に声をかけられて顔を上げる。サリィが手を止めてこっちを見ていた。
「あたい、こういうのって上手く言えねえけどさ…その…」
上手く言えなくてもその顔をみりゃわかる――と思った。元気出せって言いたいんだろう。
そんなに落ち込んでるように見えたのか?
「…何言ってんだ、大丈夫に決まってんだろ!それより、その剣はどうなんだ?」
そう訊ねると、サリィはぱっと顔を輝かせた。
「ああ、やっぱこいつはすげぇ剣だぞ!見てろ、きっと朝までには終わらせてやるからよ!」
サリィはそう言うと、頬を叩いて気合を入れ直してから、ふたたび鍛冶に取り掛かり始めた。
「…おい!いつまでしょぼくれてんだ!」
少し元気の出たわるぼうは、黙って拳を握り締めているギルガメッシュを叩いてみる。
「……うるせえよ」
ギルガメッシュは静かににわるぼうを睨みつけた。
放送が終わった時に『嘘だろ…クルル』と大声で叫び、力任せに地面を殴りつけてからはずっとこんな調子である。
「いい加減にしやがれ!自分だけが悲しいとか思ってんのかてめえは!!」
わるぼうはイラつきながら怒鳴り――ギルガメッシュは、力を込めて地面を叩いた。
「俺が悲しいとかそんなんじゃねえ!!クルルは死ぬはずじゃなかった…!」
「そんなん、イルだって一緒だっつの!弱虫ヤロー!!」
「なっ…んだと!?この…ッ!」
思わず跳びかかるギルガメッシュだが、わるぼうが避けたため勢いよく地面に顔をぶつけてしまう。
わるぼうは呆れ顔で言った。
「だったら何だ?お前そのまま後追って死ぬつもりなのか?幸せな奴。
俺様はあのクソババアに一発ぶちこまないと気がすまないっつってんだ、バカ!」
「…誰が!いつ!んな事言った!てめぇの話は何か飛んでんだよ、バカ!!」
「んだとお!!?」
「やんのか!!?」
「うるせーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
バキッ ドカッ
サリィの拳骨が二人の脳天を直撃した。
「…人が集中して仕事してんのによ、ちっとは静かにしやがれ!」
「「……す、すいません…」」
頭を抑え震える二人をよそに、ぶつぶつ言いながらも再び鍛冶を続けようと金槌を握るサリィ。
目の前で倒れているお互いを見て、わるぼうもギルガメッシュも、やりきれない苦笑いを浮かべた。
サリィはまだこちらを見ている。…これは、彼女なりの励まし方なのかもしれない。少々痛いが。
(俺がこんなんでどうすんだ…)
自分が酷く不甲斐なく思えて、ギルガメッシュは溜息をついた。
こんなんじゃ、バッツやレナやファリスにも会わせる顔がないってもんだ。
(しっかりしねえとなあ…)
冷たい夜風が、頬を撫でていく。今は鍛冶の金属音もしない。
数秒の間だけ戻る夜の静けさは――ギルガメッシュにある音を伝えた。
―――― …キィン…
「…あれ?」
倒れたまま、きょろきょろと辺りを見渡すギルガメッシュ。
今の音は?もしかして…
「どうしたワル?」
「…何か…聞こえねえか?」
「え?」
―――― …キン…カキィ…
(…やっぱり、剣の音じゃねえか!)
微かな、それでも確かな音にギルガメッシュは瞠目する。
わるぼうとサリィは相変わらず疑問符を浮かべているが、自分には間違いなく聞こえた。
誰かが剣を交えている。多分、そんなに遠くない場所で。しかし、一体誰が?
(まさか…バッツ…じゃあねえだろうな…?)
ありえない話ではない。
一度そう思うと、気になって仕方がなくなってきた。ギルガメッシュは勢いよく立ち上がる。
「すまん、ちょっと様子見てくるわ!すぐ戻るから待ってろ!」
そう言うや否や、夜の平原を全力で駆け出した。
わるぼうの「おい!?待て!!」という声を、背に聞きながら。
【ギルガメッシュ 所持品:厚底サンダル 種子島銃
現在位置:レーベ北の平原→レーベ西の平原、レオンハルトとベアトリクスの所へ
第一行動方針:様子を見に行く 第二行動方針:剣が鍛えられあげるのを待つ】
【わるぼう 所持品:ビームライフル (後何かを所持)
現在位置:レーベ北の平原 第一行動方針:剣が鍛えられあげるのを待つ、ギルガメッシュが戻るのを待つ】
【サリィ 所持品:鍛冶セット ボロい剣(伝説系の剣) 光の鎧(装備不可)
現在位置:レーベ北の平原 第一行動方針:不思議な力を放つ剣を鍛えなおす、ギルガメッシュが戻るのを待つ】
ドーガは夜の川原で一人、目を閉じて集中していた。
彼の脳裏には、そこからはずいぶん離れた場所の景色がぼんやりと映っている。サイトロの魔法だ。
ドーガは、手負いのギルダーはおそらくすぐには行動せず、そんなに遠くないところに身を隠すだろうという考えから
がむしゃらに追うことはやめ、相手の位置を確認できればと思いサイトロを続けていた。
…しかし、どうも上手くいかなかった。あまり魔法の範囲を広げられない上、景色もぼんやりとしか映らないのだ。
これは自身の病のせいか、怪我のせいか、それとも精神的なものか…。
数十分続け、向こう岸の森林内などでは数人の姿を確認する事が出来たが、肝心のギルダーは未だ見つからない。
――ギルダーがなぜあんな行動をとったのか、ドーガは理解できなかった。
彼は光の戦士であるということを除けば、あとは至って普通の少年だったはずだ。
落ち着いた性格で冷静な彼が、殺し合いという恐怖に負けたとも思えない。
しかし何か理由があるとしても、クリスタルの力を悪用するならば放っておくわけにはいかない。
道を踏み外しそのまま堕ちていくならば、その前に…。殺すことになったとしてでも――
「あのー…」
唐突に声をかけられて、呪文と思考が中断する。いつの間にか、背後に先程助けた少年が立っていた。
少年はフィンと名乗り、遠慮がちにドーガへと頭を下げる。
「ええと…さっきは危ないところを助けてくれたみたいで、本当にありがとう」
ドーガはいや、と首を振った。
「あいつはわしの知り合いじゃ。すまなかったな…」
「そうですか…」フィンは、ドーガのおそらくは複雑であろう心情を察し表情を暗くする。
「…怪我のほうは大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫じゃ。このくらいなら放っておけばそのうちに治る」
その答えに少々驚いた様子のフィンに、ドーガは「人間とは治癒能力が違うからの」と付け足すと、再びサイトロの詠唱を始めた。
「何してるの?」
フィンの問いに、ドーガは魔法を続けながら答える。
「魔法で周りの様子を見ているんじゃ。わしはあいつを止めなくてはならないからな」
「…遠くが見えるんですか?」
ああ、とうなずくドーガにフィンは少し目を開き、少々勢い込んで言った。
「じゃあ、僕の仲間…金髪の王子っぽい人と、赤いマントの綺麗な女の人と、白い髭のおじいさんなんだけど
この近くにいたりしない?」
仲間のことを説明し――マリベルのことを思い出して少々悲しげな表情になるフィン。
ドーガはそんなフィンを見て、
「…わかった、ちょっと待て。今探してやろう」
それだけ言うと、再び思考を呪文に集中させ始めた。
【フィン 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可) 第一行動方針:仲間を探す】
【ドーガ(負傷) 所持品:不明 第一行動方針:サイトロ使用中(フィンの仲間とギルダーを探す) 第二行動方針:ギルダーを止める】
*現在位置:大陸中央の川原(北の橋東側付近)
アグリアスは必死の形相で森の中を彷徨っていた。
時折――普段の彼女からは考えられぬことだが――、木の根や草に足を取られてはバランスを崩し、手や足に擦り傷を作る。
疲れのせいではない。夜という時のせいでもない。
瞳を覆う闇と、死神のように後を追いつづける気配のせいだ。
さて、話は数時間前に遡る。
焔色の髪を持つ男・サラマンダーとの戦いは、完全な膠着状態に陥っていた。
双方ともに一歩も退かず、隙を見せない。例え千日の時を掛けても決着はつかぬだろう。
二人がそのことをうすうす悟り始めた――その時、異変が訪れた。
「ぐぁっ!?」
サラマンダーが突然のけぞり、構えを崩す。
あまりに唐突だったので、対峙するアグリアスも剣を振るうことを忘れてしまったほどだ。
だが我に返り、今が絶好のチャンスだと気付くと、勝負を終わらせようと一気に間合いを詰めた。
それが失敗だった。
「うっ!」
風を切る音と共に、何かが深々とアグリアスの肩を貫く。
同時に、緑あふれる森が、新月の夜空にも似た闇色に染められた。
(これは――?)
木々の輪郭さえ判別しがたい、半ば閉ざされた視界の向こうで、サラマンダーとは別の薄ら寒くなるような気配を見つける。
「久しぶりだな、アグリアス・オークスよ」
男の声が森に木霊した。聞き覚えのある、そして二度と聞くことのないはずの声だった。
「貴様は……ッ!」
「私の目的はラムザ一人と言いたいが……
奴に組した者を見逃すわけにもいかぬし、ここで朽ちる気もない。
死んでいった仲間たちのためにも、我が妹ミルウーダのためにも、な」
「ウィーグラフッ!」
バカな。ルカヴィと融合し、魂さえも闇に飲まれ、魔人ベリアスとして滅びたはずの男が……
どうしてここにいる? いや、それ以前になぜ生きている?
幾つもの疑問が頭に浮かぶが、答えを考えている暇はない。
重要なのは、奴が自分を殺すつもりであるらしいという事実だけだ。
「くっ……勝負は預けるぞ!」
矢の飛んできた方向の反対へ飛び退りながら、サラマンダーに向けて言い放つ。
舌打ちの音が聞こえたが、追撃はなかった。恐らく彼も視界を奪われているのだろう。ウィーグラフの放った矢によって。
「邪魔が入ったな……次は仕留める、必ずだ」
サラマンダーの捨て台詞を背に、アグリアスは走り出した。
――そうして、今に至る。彼女は未だに逃げ続けている。
森の中を。暗闇の中を。ずっとついて回る、凍るような殺気の中を。
(私をなぶり殺しにするつもりか……)
日が沈んだことはわかっている。闇が濃くなったことに気付く前に、放送が流れた。
当たり前だが、とうに体力は尽き果て、走るどころか歩くこともおぼつかない。
つまり殺そうと思えば、いつでも奴は自分を仕留められるはずなのだ。
それをしないということは、限界までなぶってから殺すつもりか、あるいは――
(あるいは、私はエサなのか?)
ふと、そんな考えが脳裏に閃く。
広間でのラムザと自分のやり取りは、ウィーグラフも見ていただろう。
『向こうで落ち合おう』
あの時、彼は確かにそう言った。もしあのラムザが幻影などではない、本物のラムザであるなら――
(ラムザは私を探しているはずだ……私を餌にラムザをおびき寄せる、それが、奴の狙いか)
冗談ではない。だが、この状況では打つ手もない。
アビリティを付け替えて暗闇を回復しようにも、気付かれたら一巻の終わりだ。
(焦るな……機を待とう)
チャンスは必ず訪れる。今の彼女には、そう信じるしかなかった。
【サラマンダー(暗闇) 現在位置:岬の洞窟入口近辺→移動 所持品:ジ・アベンジャー(爪)、他は不明
第一行動方針:暗闇が治るまでどこかで待機 第二行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?)】
【アグリアス(暗闇+疲労) 現在位置:岬の洞窟入口近辺→北へ 所持品:クロスクレイモア、ビームウィップ、もう一つは不明
第一行動方針:逃げながら反撃の機会を窺う 第二行動方針:生き延びる】
【ウィーグラフ 現在位置:岬の洞窟入口近辺→北へ 所持品:暗闇の弓矢、残りは不明
第一行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先) 第二行動方針:生き延びる、手段は選ばない】
*暗闇は時間経過で自動治癒します
大地震、放送。
それすらも、彼らの闘いを止める事は無かった。
依然として、デュランとメルビンの闘いは続いている。
だが、その力の差を一瞬一瞬メルビンは噛み締める。
(これでは…負ける…)
いまや相手の剣の一閃を避けるのに全ての神経を費やすしかない。
剣を失った。魔力も底をついた。
対して相手は魔族の強みである無尽蔵な体力と強烈な破壊力を誇る剣を前面に押し出しメルビンを圧倒する。
それでも未だ生を失っていないのは、ある意味仲間達のおかげかもしれない。
――メルビン、次の職業どうしようか?
フィンの声がした。
――メルビン、踊り子なんてどう?
アイラがクスクスと笑う。
――ウェー、おっちゃんの踊り、またステテコダンスか?
ガボが吐く真似をする。
――まぁ、少しは若返りの効果があるかもね。私は見たくないけど。
マリベルの声だけが、少し霞んで聞こえた。
――身かわし脚とか、受け流しとかさ。結構使えると思うんだよね。
フィンが言ったソレが、今の自分の生を保っている。
「うぉぉぉっ!」
一声吼え、再び襲い掛かる剣をかわす。
直後に起きる爆発は予測済みだ。一寸後ろに飛び跳ねればある程度は避けられる。
「貴様、しぶといなっ!」
デュランのほうが圧倒的有利である筈だ。
だが、魔王の剣に完全には捉えられること無くここまで来た。
…あの日、皆にからかわれながら踊り子などという職業に就いた。
それが、今、彼を魔王の剣から救っているようで。
(なかなか、捨てた物じゃなかったでござるな)
…だがそれはある意味強がりだった。
魔王の振るう剣はかわせても、その後に襲い掛かる爆発を完全にかわすことは出来ない。
今や彼の身体中には無数の傷が刻まれている状態だ。
それは少しずつ彼の動きを鈍くし、最後にはデュランに捉えられてしまう事になるだろう。
魔王の剣を再びかわした時、彼の目にある物が映った。
直後の爆発による閃光で、一瞬だけそれを捉えることが出来たのだ。
…やはり、それしかあるまいな。
メルビンは大きく飛び上がり、ムーンサルトを放つ。
これも、メルビンをスーパースターに仕立て上げたなんとも微笑ましい仲間達のおかげだった。
「貴様の攻撃はもはやその程度か!」
デュランはそれを悠々と避ける。
だが、それはメルビンの期待通りだった。
別の理由があったのだ。デュランの反対側に移動したのは。其処にあった物を、拾うために。
膝を突き、メルビンは着地する。同時に、右手でそれを拾い握り締めた。
「戯けた事をするものだな!」
デュランは振り返り、剣を構える。どうやらそれには気づいていないようだ。
メルビンは立ち上がり、デュランを睨み付ける。
…右手は、デュランに見えない様に。
デュランはメルビンめがけ突撃を開始した。
デュランは今、魔力に頼る気は無かった。最後まで真剣勝負だ。
思い切り剣を振りかぶる。
「避けられるかッ!?」
「…避ける気など無いでござるよ」
――英雄の役目は、魔王を倒し平和をもたらすこと。
――フィン殿、アイラ殿…真に倒すべき敵は任せたでござるよ。
――神よ!これがメルビン最期の生業でござる…!
デュランの剣がメルビンの胸を切り裂くのとほぼ同時に、
メルビンの握り締めた、刃だけとなり落ちていた鋼の剣が、デュランの喉に突き刺さっていた。
「これが、英雄として願った最期でござるよ」
それは、魔王と相討ちする事。
身を捧げて平和をもたらす事を夢見た。
神の加護は、きっと――
デュランとメルビンは、同時に、背中から地面に倒れていった。
「避けられたはずだ…」
喉に剣の先が突き刺さっている状態で、デュランは呟く。
魔族は喉を突いても言葉を発することが出来るのか、とメルビンは思った。
「…魔王など、生かしておくワケには行かないでござるよ…英雄として。だから決断したのでござる」
メルビンは、自らの切り裂かれた胸の前で、両腕を十字に組む。
「フフフ…いい勝負だった…が、まだ引き分けというところだな」
クッ、とデュランは苦痛に表情を歪めた。
「あの世でもう一度手合わせをしたいものだ」
「…魔族は地獄、正しい人間は天国へ逝くと相場は決まっているでござる…」
メルビンは、自分の声が少しずつ小さくなっていくのを感じた。
「…だから、それでは戦いなど出来ないでござるよ」
「フッ、そうかも知れぬな…」
デュランは皮肉を帯びた笑みを浮かべる。
「…ゴホッ…おぬしは地獄へ…」
「…フン、貴様も…天国へ行くのだな…」
「神の元へ…」
擦れていった声に耳を傾けるのは、森の木々のみ。
二人の猛者は、何処か満足したようにゆったりと意識を闇に溶かしていった。
そしてもう、何も聞こえることは無かった。
【デュラン メルビン 死亡 残り103人】
現在地:岬の洞窟北西の森 ラミアスの剣放置。
58 :
虚無の襲撃者:04/12/04 21:19:29 ID:uL9CmQaG
クラウドは逃げた。夢中で走った。
−大きな建物と町らしいものが見えてきた頃、地鳴りと轟音が彼を転倒させたが、
それが彼をかえって落ち着かせた。
虚空のスクリーンに現れた魔女が、次々に死者の名前を読み上げてゆく。
「バレット…エアリスも」
彼は地面に膝をついたまま、拳を握り締めた。が、悲しむ余裕など無いのも
わかっていた。
ユフィ、シド、ザックス…そしてティファ。彼らは果たして無事だろうか。
早く探し出さねば。その思いが彼を立ち上がらせる。追ってきたはずの
セフィロスと、もう一人はどうした?
辺りを注意深く見回すと、遥かに見える岩山のほうから、一人の黒髪の女が
歩いてくるのが見えた。
「この辺は危険だ!早く…」
逃げろ、と言おうとして彼は息をのんだ。女の瞳を、見てしまったから。
赤い瞳にあったのは、殺意でも、狂気ですらなく。−ただ、深淵。
クラウドは、悪寒を覚えて飛び退った。彼の中の何かが
「危険だ」
と告げる。彼がアルテマウェポンを油断なく構えると、女−パインは、無言で
アイスブランドを振りかぶった。
(くそ!近くにセフィロス達が居るかもしれないってのに!)
彼は内心で舌打ちをして、最初の一撃を迎え撃った。
【クラウド 所持品:おしゃれなスーツ アルテマウェポン
現在位置:アリアハン城下町南の入り口付近
第一行動方針:パインと戦う
最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】
【パイン(ジョブ:ダークナイト)所持品:うさぎのしっぽ 静寂の玉 アイスブランド
ドレスフィア(ダークナイト)
状態:凶暴化(何かの衝撃で正気を取り戻す可能性あり)
現在位置:アリアハン城下町南の入り口付近
行動方針:全員殺害。正気を取り戻した場合は不明】
※近くにセフィロス&クジャが潜んでいる可能性があります。
「殺ス、ソノ三人組ヲ殺ス。クラウドノタメニ…」
夢中で山道を駆け抜けるティファの頭は、それだけしか考えられないほど錯乱していた。
三人組には意外と早く追いついた、なにやら立ち止まって話をしている。チャンスだ。
「アノ三人組ヲ殺セバクラウドはラクニナル。」
狙いをつけて引金に指を掛ける…
「マッシュ、どうした?いきなり立ち止まって。」スコールが声を掛ける。
「いや、なんかザックの中が熱いんだ…。なんだろ。」
ごそごそとザックをまさぐるマッシュ、その時スコールは異様な殺気を感じた。振り返ると背後に銃を構える人影。
「みんな!伏せろー!!」
「ぱん、ぱん、ぱん」
山道に銃声が木霊する。
「ぐはあ!」「きゃあ!」立ち上がっていた二人は、即銃弾の餌食となった。
「えっ。2人ともどうした!」
マッシュはザックの中身を確認するために、あらかじめ低い姿勢になっていたので銃弾から逃れることが出来た。
彼はすぐに2人のそばに駆け寄り、傷の確認をする。
「うっ…、私は何とか大丈夫。それよりスコールを…。」アイラは足に銃弾を受けたが、意識ははっきりとしていた。
「おい、大丈夫かスコール!返事をしろー!」それに対してスコールの傷は最悪だった。
右脇腹に一発、そして左胸の心臓の下あたりにもう一発。いや、もしかしたら心臓を傷つけてしまったのかもしれない。
現に彼は意識がなくぐったりしていて、その顔面は蒼白だった。
「動かないで。」
気が付くと背後に顔が焼け爛れてしまっている女が一人、銃口をマッシュの方に向けて立っていた。
「殺ス、ソノ三人組ヲ殺ス。クラウドノタメニ…」
夢中で山道を駆け抜けるティファの頭は、それだけしか考えられないほど錯乱していた。
三人組には意外と早く追いついた、なにやら立ち止まって話をしている。チャンスだ。
「アノ三人組ヲ殺セバクラウドはラクニナル。」
狙いをつけて引金に指を掛ける…
「マッシュ、どうした?いきなり立ち止まって。」スコールが声を掛ける。
「いや、なんかザックの中が熱いんだ…。なんだろ。」
ごそごそとザックをまさぐるマッシュ、その時スコールは異様な殺気を感じた。振り返ると背後に銃を構える人影。
「みんな!伏せろー!!」
「ぱん、ぱん、ぱん」
山道に銃声が木霊する。
「ぐはあ!」「きゃあ!」立ち上がっていた二人は、即銃弾の餌食となった。
「えっ。2人ともどうした!」
マッシュはザックの中身を確認するために、あらかじめ低い姿勢になっていたので銃弾から逃れることが出来た。
彼はすぐに2人のそばに駆け寄り、傷の確認をする。
「うっ…、私は何とか大丈夫。それよりスコールを…。」アイラは足に銃弾を受けたが、意識ははっきりとしていた。
「おい、大丈夫かスコール!返事をしろー!」それに対してスコールの傷は最悪だった。
右脇腹に一発、そして左胸の心臓の下あたりにもう一発。いや、もしかしたら心臓を傷つけてしまったのかもしれない。
現に彼は意識がなくぐったりしていて、その顔面は蒼白だった。
「動かないで。」
気が付くと背後に顔が焼け爛れてしまっている女が一人、銃口をマッシュの方に向けて立っていた。
「くっ…。」
これで終りか、マッシュはふと思った。
しかし、焦点のはっきりしない泳いだ彼女の瞳を見たとき、彼は直感でこう思った。
もしかしたら彼女は錯乱しているだけなのかもしれない、ゲームに乗った誰かによって焼かれてしまった自分の顔を見て。
現に彼女は今から人を殺そうとしているはずなのに、
何かにすがりたいような、ひどく頼り無く悲しい目をしていた。
マッシュは目の前の女性に気付かれないように、しずかにザックの中を探り始めた。
そしてさっきから熱を発している物体、ティナの魔石を強く握り締めて念じた。
かつて現世でピンチになったとき、魔石から幻獣を呼びだすのと同じ要領で。
「力を貸してくれ!ティナ!」
魔石はマッシュの手を離れ、空中に舞い上がる。そして、暖かい光を放ち始めた。
しかしその光は目を刺激するようなものではない。その場にいる者たちを優しく包み込んでいた。
マッシュはなぜか、モブリスの村で幸せそうに子供達と戯れるティナの姿が頭に浮かんだ。
そして次の瞬間、魔石から『妖精』が飛び出した。
桃色の肌に長い髪、それと美しい羽を広げて。
それは魔石になったことにより、完全に幻獣化したティナの姿。
彼女の発するまばゆく暖かい輝きで、もう辺りは昼間のように明るかった。
「傷が…。」
アイラの足を掠めた銃弾による傷が、みるみるうちにふさがっていく。
「うっ…。」スコールも眼を覚ました、そのとき銃撃による傷はもうふさがりかけていた。
そして三人が見たものはいつのまにか仰向けに倒れている女性の、焼け爛れた顔面を治療するティナの姿だった。
皮膚がただれ落ちてしまっているその両頬に、彼女は両手を当てた。掌からは溢れんばかりの優しい輝きが発せられている。
ティナは、三人を見て言った。
「大丈夫…、この人は悪い人じゃない。意識を取り戻したら必ず力になってくれるはず…。」
スコールは納得がいかない、といった表情でそれに反論する。
「俺達を殺そうとしたんだぞ?そいつは。」
「スコール、気持ちは分かるけどここはティナを信じてやってくれないか。」
「しかし…、!」
彼は反論する言葉を失った。今まで見たこともないような、マッシュの真剣なまなざしを見て。
「いいじゃない。」アイラも彼に言う。
「私はあの娘が間違った判断をするとは思えないわ。」
スコールは再びティナのほうを見て気付いた、彼女の強力な魔導の力に。
それはアルティミシアの悪しきそれとは違う、希望に満ちた力。彼女がいれば、奴とも対等に闘えるような気さえした。
「…分かった、信じよう」表情を変え、スコールは言った。
「ありがとう、三人とも。」治療を終えたティナは笑顔を浮かべて言う。
「私はいつでもあなたたちを見守ってる…、アルティミシアを倒してこの人殺しゲームを終わらせるまで!」
そう言ってティナは魔石に吸い込まれるようにして、消えていった。
まだ光が消えずぬくもりが残っている石を拾い上げて、マッシュは呟いた。
「そうだよな…、おまえはまだ死んでなんかいないよな…。」
「この石には…、一体どんな力が?」
「ああ、話そう。この娘もまだ目を覚まさないし。」
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
【アイラ 所持品:ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ
第一行動方針:ティファが目を覚ますまで魔石についての説明を聞く
第二行動方針:ゲームを止める
現在位置:アリアハン東山岳地帯、森と祠の中間地点】
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石
第一行動方針:ティファが目を覚ますまで魔石についての説明をする
第二行動方針:ゲームを止める
現在位置:アリアハン東山岳地帯、森と祠の中間地点】
【ティファ(気絶)所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
現在位置:同上 行動方針:?】
度々すいません、連投もごめんなさい。次から気をつけます
レーベの村の南の森、さらにその奥深く、姉弟は対峙した。
一人はそれと知らぬままに…。
雷鳴の剣がうなる。
ミレーユの金髪が何本か、宙に舞った。
一撃を放った後の隙。そこに彼女の正拳突きが炸裂する。
「くっ…!!」
細身の腕から繰り出される予想外の威力に、テリーは顔をしかめた。
今度は距離をとり、体勢を立て直す。
だが、たったそれだけの短時間に、ミレーユは呪文を一つ唱え終えていた。
「バギクロス」
狙いはテリーではない。
彼が呪文をはじくことは、先の戦闘で思い知っている。
ではどこを狙ったのか、それは周囲にそびえる木々。
バギ系最大の呪文は、竜巻となって森の木々をなぎ倒す。
倒れる先には、血に飢えた肉親。
これ以上、弟に罪を重ねてほしくない。
止めなければならない、ただ一人の姉なのだから。
例え、殺してしまってでも…。
雷鳴の剣がいかに優れた剣であっても、全方向から倒れる木々全てをなぎ払えるものではない。
怒涛のごとき破壊の後、そこには張り詰めた沈黙が流れた。
はぁ、はぁ、はぁ…。
息が荒い。
倒れた木々から目を離せない。
あそこには、弟がいる。
助けて、ダメ、助けては、振り切りなさい、ミレーユ!!
何かを振り払うように、ミレーユは己で行った破壊の結果に背を向けた。
そして視界に映るのは、すでに事切れた男と瀕死の魔物。
ミレーユには、それは弟のもたらした破壊の結果だとしか映らなかった。
ならば、それまでに止められなかった自分にも責任があるのではないか。
私は、責任を取らねばならないのではないか。
弟が手を下そうとした魔物はまだ生きている。
彼女は手を差しのべてしまった。
事実は、彼女の結論とは多少ずれている。
けれど、ミレーユにそれを知るすべはない。
「大丈夫。…ごめんなさい」
そのとき、ピエールの意識は、またしても闇に囚われかけていた。
テリーの殺気により、主に対する忠誠心による気力のみで覚醒を果たし、さらには身を守る動きも出来た。
だがそれも限界に近づいてきている。
そこに、あたたかい、やわらかい光が降り注ぐ。
本来なら、どんな重傷の者でもたちどころに癒してしまう魔法の光。ベホマ。
今現在ではそこまでの効力もないが、ピエールの意識を完全に呼び戻すだけのことは可能であった。
「…よかった」
死より救い出してくれた女性は、ピエールの目にとても美しく映る。
けれど、彼の成すべきことは、一つ。
そっと、ザックの中に手を伸ばす。
その時…。
空に雷鳴が響き渡る。
と同時に眩いばかりの光とともに、天から一筋の雷が降り注ぐ。
雷は倒木を砕き、砂塵を撒き散らす。
それが晴れたとき、そこには一人の男の姿がある。
テリーは雷鳴の剣を高く掲げていた。
何をしようとしているのかはわかる。
雷鳴の剣をもう一度使うつもりだ。
選ばれし勇者しか扱えぬ雷の力を従えるつもりなのだ。
ミレーユは唖然と弟を見つめていた。
彼女とて雷鳴の剣の効力ぐらいは知っている。
けれど、手を下したはずの弟がまだ生きていることへの感情が、
喜びなのか悲しみなのか、あるいは恐怖なのかわからず、混乱している。
それが、彼女の行動を遅らせた。
テリーが雷鳴の剣を振り降ろす。
雷が落ちる。
ピエールはとっさに、しかし冷静に、伸ばした手の先のザックの中からいかずちの杖を取り出し、放り投げた。
その杖には雷鳴の剣と同じく、魔法の力が込められている。性質は多少違うが。
雷は宙に投げられたいかずちの杖に引き寄せられるように直撃した。
雷の力と炎の力が衝突する。
二つの魔力は集束し、そして大爆発を引き起こした。
「なっ…!!」
「あっ…!!」
「……」
爆発に怯むテリーとミレーユ。
しかしピエールはこの結果を予測している。
「今です!!!」
いまだ把握と理解と納得を出来ていないミレーユに、ピエールは言い放つ。
重傷を負っている自分では、怯んだ隙をうかがっても敵に一撃たりと入れられない。
ミレーユの混乱は、そしていまだ完全には整理の言っていない心は、まだ迷いの淵にいる。
けれどピエールの言葉は、迷いを持ったままのミレーユを決断の崖へと追い立てた。
もう、後戻りは出来ない…。
昔、魔王ムドーを倒し、ダーマ神殿を復活させたとき、ミレーユは願った。
仲間を守りたい。 …そして僧侶となった。
守り続ける力が欲しい。 …そして武道家となった。
二つの職を極めた彼女は、最後にこう願った。
守っていきたい。ずっと。だからもっと、力を。
(上級職たるパラディンならば、その願いをかなえられることもできよう)
(では、神官様。お願いします)
爆発による熱風は、まだ吹き荒れている。
テリーは体勢を立て直し、またこちらに向かってくる。
だが隙がある。
本人がそれと気づかず焦っている。
ミレーユは、胸の前で十字を切った。
(私は、守りたい。…テリー、あなたを…)
聖なる十字架、グランドクロス。
魔法ではない思いの力。
どうかこの光が、彼の闇を消してくれますように…。
光が晴れた。
砂煙も晴れた。
テリーは地に臥している。
息は、ある。
ミレーユは彼の元で膝を折った。
「何故、止めを刺さない…?」
「あなたを殺したいわけじゃない。止めたかったの。こんな方法しかなくて」
「…止めるだと?」
テリーは鼻で笑う。その行為さえ苦しそうだ。
「いったい何が目的だ?」
「テリー、思い出して。私は、あなたの…」
何か、鈍い音が聞こえた。
その音がしたとたん、ミレーユは言葉を紡がなくなった。
喉に剣が生えていては、人間であるミレーユは言葉を発することは出来ない。
剣が抜かれ、金の髪が舞う。
彼女は崩れ落ちる。
スライムナイトが、真新しい血を滴らせる鋼鉄の剣を持っている。
昔どこか見た光景だ。
細かくは違う。
その時彼女は喉から剣など生やしていなかったし、そこにいた魔物はスライムナイトでなかったと思う。
しかし感じた絶望は、同じ。
「…姉さん?」
その時倒れた女性を呼ぶ。
今倒れた女性と同じ、美しい金の髪を持っていた。
「…姉さん」
呼んでも返事がないのも同じ。
「姉さん!!!」
ピエールは、また別の血を求めて、鋼鉄の剣を振り下ろした。
何かが体を走る。
痛みではない。もっと熱い何か。
振り下ろされた剣は、先程までテリーの頭があったところに正確に破壊をもたらした。
テリーは避けた。
生への執着心が反射的に命を守った。
しかし代償を払ってだ。
リフレクトリング。魔法をはじく実用性の高い装備品。
それをはめた左腕。
もう、ない。
目の前にある金の髪。
その髪を持つ女性の命も、
もう、ない。
「う、わぁああああぁああぁぁーーーーーー!!!!!」
テリーは走った。逃げるために。
命を狙う魔物からではなく、失ったという事象それ自体から。
逃げても、逃げ切れるはずがないのに。
右手には、最強の部類に入る雷鳴の剣を握ったままだというのに。
ピエールは追わない。
そんな体力など残っていない。
だが体を引きずるながら、アイテムの回収もせずその場を去った。
初めは竜巻、そして雷、爆発。
全く派手にやったものだ。
どこでもいい、とにかくすぐにでも身を隠せる場所を探して。
※現在位置:レーベ南の森(南部)
【テリー(DQ6)(左腕喪失&重傷) 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
行動方針:逃げる(走る)】
【ピエール(重傷)
所持品:鋼鉄の剣 ロングバレルR 青龍偃月刀 魔封じの杖 ダガー 祈りの指輪
第一行動方針:身を隠し、回復に徹する
基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
【ミレーユ 死亡 残り102人】
※ミレーユの所持品は放置
戦闘音は激しく、レーベ村から南の橋あたりまで何らかの異変に気づけます
71 :
映像 1/2:04/12/07 23:58:05 ID:6m+xuZxM
突如の地震。
ただ広い夕焼の中に浮かび上がった、邪悪な魔女の姿。
彼女が告げたあまりに多い犠牲者の名前の中に、リディアは有る筈の無い名前を聞いた。
「セシル…ローザ…どうして!?どうしてよ!?」
リディアは、泣き叫ぶ。それが何の効果をも彼女には与えてくれない事を知りながら。
邪悪な魔女の姿なんて見たくもない。
それ以上に、血に塗れた二人の姿も、見たくはない。
それでも、最も見たくない映像を、彼女の心は創り上げてしまっていた。
恐怖に震えるローザ。
彼女の前に、彼女を庇おうと立ちはだかるセシル。
そして、血に濡れた槍を振りかざし、無表情のままにそれを二人に突き立てるのは、
――彼女のよく見知った姿だった。
「いやぁ!」
頭を抱え、その場に座り込むリディア。
まさか、とは思う。
でも、拭えない。
カインが二人を殺すという、何の裏付けも無い映像だけが、彼女の心の中で繰り返し流れていた。
72 :
映像 2/2:04/12/07 23:59:15 ID:6m+xuZxM
「そんなはず…無いよ…そんな…」
魔法を唱詠するかのように口の中で繰り返す。
自分の考えを否定したい。
いっそ思考すら止めてしまいたい。
カインが殺したのだと思う自分が、憎かった。
それはカインに対する冒涜だから。
カインを信じていないことになるから。
仲間で有る筈のカインを…
『俺に構うな』
空虚なカインの声が、心の奥底に沈んでいった。
フラフラと、リディアは歩き出す。
誰に誘われた訳でもないのだけれど。
南へ。
セシルとローザの遺体が放置された、その場所へ。
何を感じたわけでもない。
ただ運命が彼女にそうしろと告げただけ。
リディアの瞳の中を、白い霧が揺らめいた。
【リディア(ショック状態?) 現在位置:アリアハン西の海岸→南へ 所持品:いかずちの杖、星のペンダント
第一行動方針:南に行く 第二行動方針:カインを止める(?)】
荒らさないで下さい。
「魔石、か……」
緑色に輝く石を見つめ、スコールは小さく息を吐いた。
ティナの魂が宿るそれは、安らぐようなぬくもりを残したまま、静かに明滅を繰り返している。
――人を殺した少女の化身とは、とても思えない。
(ティナ……誰があんたを狂わせたんだ?)
答えはない。それ以前に、問い掛ける気になれなかった。
聞いたところでどうしようもないし、何より、自分の考えを肯定されたくないというのもある。
「……ともかく、それを使えば彼女を幻獣として召喚できるわけだな?」
頭に浮かび続ける陰鬱な思考を振り払うために、スコールは今までの話題を思い返して言った。
「ああ。ただ、ティナ自身の意思が応じてくれた時じゃないと無理だ。
無闇に呼んだら、ティナに負担がかかっちまう」
「でも、すごい力よね。あれほどの傷を治せるなんて……」
アイラが呟いた。(もっと早く気付いていれば……)と思いはしたが、言葉にはしない。
マリベルのことは、仕方が無かったのだ。
割り切れるわけではないが、そう思わないとやっていられなかった。
「う……ううん」
「おっ、お嬢さんのお目覚めだぜ」
マッシュの言葉に、アイラが顔を上げる。
「私が相手をするわ。二人は少し離れててくれない?」
「何故だ?」「なんで?」
首を傾げる男たち。彼女は大きくため息をついた。
「なんていうか、外見的に、ちょっとね。
錯乱してる相手をこれ以上怯えさせたりしたら、余計に話がこじれると思うから」
「…………」
スコールとマッシュは憮然とした表情で顔を見合わせたが、反論はせず、大人しく後ろに下がった。
アイラの説得は、まあ、上手くいった方だろう。
少なくとも自分たちが敵ではないことを飲み込ませ、戦意を解く事には成功したのだから。
けれども、ティファが完全に納得したかと言えばそうでもない。
「火傷を治してくれたことにはお礼を言うし、戦う気がないってこともわかったわ。
でも、あなたたちは人殺ししても生き延びるつもりなんでしょ? それで信用しろって言われてもね」
きっぱりと言い放つティファに、アイラも、話を聞いていたスコールとマッシュも眉をひそめる。
「人殺し? 俺たちが?」
「そうよ。黒髪の女剣士に、金髪の格闘家に、黒尽くめの男の三人組。
あなたたちのことでしょ? 他に誰がいるっていうの?」
彼女がそこまで言った時、急にスコールが前に進み出て、彼女の胸倉を掴んだ。
「……もしかして、あんたにそれを教えたのは、コートを着てボウガンを持った茶髪の男か?」
呆れとも悲しみとも怒りともつかぬ表情で、スコールが問い掛ける。
剣幕に圧されながら、ティファはスコールの腕を振り払って答えた。
「確かに、コートに茶髪だったけど、ボウガンなんて見てないわ……その人がどうしたっていうの?」
「人殺しはそいつの方だ」
その意味が飲み込めなかったのか、彼女はぼんやりとスコールを見る。
それからしばらくして、苦笑を浮かべた。
「……嘘」
スコールは声を抑えて言葉を続ける。
「嘘じゃない。アーヴァインは、四人……最低でも二人は確実に殺してる」
「人違いよ、きっと。あの人はそんな人じゃないわ」
ティファは力なく反論したが、スコールの話は止まらない。
「そうかもしれないな。だが、俺とマッシュとアイラが一緒にいることを知っている人間は三人しかいない!
そのうち二人は奴に殺された。生きているのは、あいつだけだ!」
「……嘘よ。本当に人殺しなら、私が生きてるわけないじゃない!」
「あんたに俺たちを殺させるために、わざわざ生かさせたんだ。
その方が効率もいいし、手間も掛からずに済むからな!」
「違う! あの人はそんな人じゃない!
だって、あんなに優しくて……火傷の手当てまでしてくれて……生きろって励ましてくれた!」
「騙されてるんだ、あんたは! いい加減に理解しろ!」
苛立ちのあまり、スコールは見えない壁に叩きつけるように拳を振った。
マッシュとアイラが、慌てて二人の間に割って入る。
「落ち着け、スコール! 彼女に当たってどうなるってんだ!」
「ティファさんが言うように、人違いって可能性もあるわ。
もしかしたら、彼によく似た格好の人が、近くで私たちのことを見ていたのかもしれない」
(そんなこと、あるわけないだろ!)
スコールは唇をかみ締め、泣きそうな顔のティファを睨みつける。
――正確に言うなら、ティファの後ろに立つアーヴァインの幻影を。
「ともかく、早く戻りましょう。
ラグナさんとイクサス君とエーコちゃんだったかしら、その人たちも心配していると思うわ。
……マリベルとティナの名前は、放送で聞いただろうしね」
「ああ」
アイラの言葉に、スコールは歩き出した。
少しばかり進んでから、唐突にぽつりと呟く。顔を前に向けたまま。
「……すまない。言い過ぎた」
「……」
「ただ、これだけは信じてくれ。俺たちは人を殺す気はない」
「………」
「生きるために剣を取ることはあっても、自分から誰かを殺そうとは思わない。
例外は――アルティミシアが相手の時だけだ」
ティファは何も答えない。
ただ、彼女はゆっくりとスコールたちの後ろを歩き始めた。
――今は、それだけで十分だった。
それからどれほど歩いただろう。闇は濃さを増し、星はますます冴え渡った光を放つ。
ようやく、道の向こうに広がる木々の群れが見え――だが、四人の足はそこで止まった。
ぼんやりと光るランプの灯と、三つの袋を抱えた子供の影を認めて。
「イクサス!?」
スコールとマッシュが声を上げる。それが聞こえたか、人影は立ち止まった。
少し遠いが見間違えはしない。影の主は、確かにイクサスだ。
けれども、彼の口から返ってきた言葉は、誰もが予想しないものだった。
「近づくな、人殺しの仲間が!」
子供のものとも思えない、敵意に満ちた声が夜の森に響く。
「お前らを信じようとしたオレがバカだったよ……
そうさ、人殺しの仲間は人殺しなんだよな! みんな……お前らのせいで殺されたんだ!」
「――みんな?」
嫌な予感が二人の背筋を捕える。
イクサスは憎しみのこもった視線を投げつけ、叫んだ。
「そうだ! マリベルも、エーコも、ラグナさんも!
みんな、みんな死んだんだよ! お前らが見捨てたせいでッ!」
――時が凍りついた。ただ一人、イクサスを除いて。
「何でもっと早く戻ってこなかったんだ!? どうして、あの時行ったんだよ!
みんな、お前らの帰りを待ってたのに……マリベルはお前らを心配して行ったのに……信じてたのに!」
「お前らがずっとここにいれば、みんな死なずに済んだ! お前らはオレたちを見捨てて、みんなを殺したんだ!」
「お前らの仲間も、お前らも、同じだ――人殺しだ!!」
「返せよ! マリベルを、エーコを……ラグナさんを返せよッ!!」
そして、どうしようもない悲しみと、やり場の無い怒りと、全ての憎悪を込めて、イクサスは言い放った。
「もう、他人なんか信じるもんか……お前らなんか死ね! 消えろ! 二度と姿を見せるなッ!」
誰も、彼の後を追うことはできなかった。
スコールも、マッシュも、アイラも、ティファも、イクサスの小さな影が闇に飲まれていくのを見守るしかできなかった。
森の中、ギルダーは静かに剣を拭いていた。
刀身を濡らす血糊は、髪飾りをつけた少女と、中年の男のものだ。
この二人と、逃げた少年。詳しいことはよくわからないが、どうも自分を助けようとしたらしい。
誰かに襲われて気絶した被害者だと思い込み、魔法まで使って手当てをしたようなのだ。
本当は、疲れのあまり気を失っていただけで――誰かに襲われたも何も、襲撃者は自分だと言うのに。
全くバカな連中だ。
しかし、失われた体力も戻り、おまけに二人も仕留められたのだから、そこは感謝するべきかもしれない。
少年を逃したのは残念だったが……
『マリベルに頼まれたからなぁ! イクサスまで殺させるわけにはいかねぇんだよ!』
――ふと、男の最期の言葉が脳裏に浮かぶ。
武器も何もないくせに、少年を逃がすためだけに自分に挑みかかった男の言葉が。
少女を殺された時点で大人しく逃げ出していれば、もしかしたら助かったかもしれないのに。
「……本当に、バカだな。あんたも、そこのお嬢ちゃんも」
ギルダーは呟いた。その声には、少し、疲れたような響きが混ざっていた。
「はは……俺の方がもっと大バカか。なぁ、サラ、サックス。
……でも、止まるわけにはいかないし……もう、止まれないよ」
ギルダーは帽子を被りなおし、立ち上がる。
夜という狩り場で、犠牲者という名の新たな獲物を探すために。
【イクサス(人間不信) 所持品:加速装置、ピクニックランチセット、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット
行動方針:一人で生き残る 現在位置:アリアハン東山脈中央部→北へ】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
【アイラ 所持品:ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石
第一行動方針:不明 第二行動方針:ゲームを止める】
【ティファ 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
第一行動方針:スコールたちについていく(?) 第二行動方針:不明】
【現在位置(四人共通):アリアハン東山脈中央部の森】
【ギルダー(MP消費) 所持品:ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×3・ミスリルボウ
現在位置:アリアハン東山脈中央部の森・川辺付近→移動
第一行動方針:ゲームに乗る 最終行動方針:生き残りサラの元へ帰る】
【ラグナ 死亡】【エーコ 死亡】
【残り100人】
(*金の髪飾りはラグナ&エーコの死体と共に東山脈中央部の森・川辺付近に放置)
紙と鉛筆、参加者一覧ファイルに地図。
それを一度に閲覧し、メモに紙に書きなぐり、そしてまた考える。
セージはこの作業を延々と続けていた。
「とりあえず、母親のビアンカさん、父親のリュカさんは生きてる」
「…うん」
「魔物のピエールとやらも生きてる。あと君の兄のレックスも生きてる」
「うん」
「全員には会いたいけれど…」
「難しい?」
「短期間ではね。でも大丈夫だ、絶対見つける」
自分の見解が当たっていたことに安堵した彼は、
その言葉で問いを止め、大きく背中を伸ばした。
「とりあえず、そろそろ寝る準備をしよう
タバサはベッドを使いなよ。僕は適当に突っ伏しとくよ」
「え?で、でも…」
「大丈夫大丈夫、僕は馬鹿じゃないけど風邪はひかないしね」
そう言うと、セージはベッドの上を掃除し始めた。
埃が少し飛ぶ。だが本当に「少し」で済んだ様で、すぐに掃除は終わった。
と、その時。
ドンドンドン!!
五月蝿いノックが聞こえた。
「……は?」
ドンドンドン!!
まだノックしている。どうやらなんとしても開こうとしているらしい。
何故ここに人が来たのか。セージはそんな事も考えたがとりあえず扉に近づいた。
「隠れてなよ。なんか凄く嫌な予感がするから」
「ど…どこに?え?え?」
「適当に」
そう言ったのを合図にしたのだろう。言葉と同時に扉を開いた。
するとそこには―――息を切らした金髪の女性が居た。
必死に走ってきたのか、息を切らしている。
だが、セージの姿を確認するや否や、素早い動きで鞭を振るい始めた―――
「うわっっ!あっぶないな!」
良いモノを見つけた、と言わんばかりに薄ら笑いを浮かべて攻撃する女。
そしてタバサの方に近づけぬように器用に立ち回るセージ。
それを遠くからタバサが見守ろうと、テーブルの下から身を乗り出した瞬間、彼女は叫んだ。
「お母さん!!」
「はぁ!?」
攻撃を避けながらつい叫んでしまったセージ。
そのまま相手の顔を見ると、「成程」とつい呟いてしまった。
「彼女がビアンカさんか…似てるんじゃないの?結構」
「お兄さんお願い!お母さんを傷つけないで!」
「判ってる!」
緊張した空気の中、タバサを傷つけぬように鞭を振るうビアンカの目には、
何故自分を襲うのかと淡々と考えているセージの姿が映っていた。
数時間前。
フリオニールの攻撃を喰らったビアンカは、操りの輪の意思のままに走っていた。
何かにとり憑かれたように、そこが森だろうが平地だろうが関係なく走っていた。
そして疲労を回復しようと隠れ家を探していた矢先に、地下へと繋がる祠を発見する。
だがそこは鍵がかかっており、やっと開いたと思ったその時―――
「心の優しいお母上じゃなかったの!?」
「うん!お母さんは凄く優しくて…だからこんな事はしないわ!」
最愛の娘と、そして男が居た。
家族以外の人間には死を。操りの輪によって、悲しくも彼女はそんな業の道を取った。
だから今…彼女は疲労を押して、男をなんとしても殺そうと鞭を振るっている。
「とりあえず…タバサには攻撃しないんだねぇ。賢い賢い。
ならそれを利用して頂こうか……」
微苦笑を浮かべてセージがそう呟くと、素早く距離をとった。
そして、嘲笑にも似た表情を浮かべ――
「モシャス」
静かにそう言った。
そしてそのまま、不思議な現象が起こった。
彼の体が一瞬光ったと思いきや、一瞬にしてタバサの姿へと変わっていた。
小さな少女の姿。隣の"本物の"タバサは驚愕を隠し切れない表情を浮かべた。
「…お母さん」
驚くべきことに、声すらも同じだった。
だが「本物」が驚く暇も与えず、タバサの姿をしたセージは続ける。
「お母さん止めよう。あたしはそんなお母さんは見たくないよ。
お願い、元のお母さんに戻ってよ。ねぇ……お願い!」
ビアンカの動きが止まった。
が、それは一瞬。ビアンカはすぐに、且つ的確に"偽者の"タバサを狙って攻撃を放った。
「あらー…やっぱ目の前でモシャスしてもムリだよねぇ」
セージは、誰にでも聞こえる様な大きな舌打ちのオマケ付きでそう言った。勿論タバサの姿で。
そしてもう姿を偽る必要が無いと知ったやいなや呪文を解いた。元の彼の姿に戻る。
そしてまた元の展開に戻ったのだが……。
「あれ?」
タバサが口を開いた。先刻と同じように攻撃を避けながら、セージが反応する。
そして視線も向けずセージが問うと、タバサはハッキリと言った。
「あの頭の輪っか……何?前お城にいたときはあんなのしてなかったよ」
「さぁ、僕は知らないね。どっかで拾ったんじゃないの?」
「違うと思う」
「何でさ」
「お母さんの趣味じゃないもん、あんな変な輪っか」
「…………何それ」
だが、言われると余計に気になってくる。
実の…しかもこんなしっかりした性格の娘が言うのだから間違いはほぼ無いはずだ。
セージの頭の中で、ある一つの仮定が完成した。
あの頭のアレか。
アレがビアンカを駆り立てているのだろう、とセージは勘付いた。
ならば簡単な話だった。頭の輪を外せば良い。そうするには丁度良過ぎる道具もあった。
その道具は袋の中に眠っている。セージはそこまで考えると袋に手を伸ばし、道具を取った。
「はりせんってやつ!」
強調してそう言うと、すぐさま相手の攻撃を待った。
来た。鞭が撓る。避ける。隙が出来る。今だ。
「傍から見ると不思議だよねぇ…この状況」
その呟きを聞いたのを最後に、ビアンカの意識は途絶えた。
何故なら、ハリセンを振り上げたセージの上を、
あの操りの輪が飛んでいたから。ついでに、地面に墜ちて「バキッ」という嫌な音を立てていたから。
目の前の女性はただ気絶しているのだ、という事を確認した後
セージはビアンカの体を持ち上げた。そして、ベッドに体を寝かせる。
ほっと胸を撫で下ろすと、タバサの方を向いて微笑を浮かべた。
「お客様、ベッドの空きが無くなりました。なんてね」
「大丈夫、不都合は無いですよ。なんてね」
2人は安心した様子で、言葉を交わした。
【セージ 所持品:ハリセン ファイアビュート
現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋 行動方針:部屋で夜を過ごす】
【タバサ 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑 現在位置:同上 行動方針:同上】
【ビアンカ(暴走状態回復:多大な疲労) 所持品:なし
現在位置:同上 第一行動方針:不明 基本行動方針:不明】
※:ファイアビュートはセージが預かりました
操りの輪は壊れました
夕暮れの森が広がっていた。
赤く染められた木の葉の向こうで、ラグナさんとエーコが笑っている。
『へぇ、イクサスも王子様なのか。いい感じにお似合いじゃないか、エーコ姫さま?』
『ヤダ、変なこと言わないでよね。
イクサスには悪いけど、エーコにはジタンっていう最高にカッコいい王子様がいるんだから』
『それじゃイクサスがカッコ悪いみたいじゃないか、なぁ。
言ってやれ、後でオレの最高にカッコいいとこ見せてやるかんな! ってよ』
ラグナさんはそう言って、オレの頭を撫でた。
それから、辺りが急激に暗くなった。
薄闇の下で、エーコは今にも泣きそうな顔をしていた。
オレとラグナさんが止める間もなく、彼女は走り出す。一人で泣ける場所を探しに。
残されたラグナさんは、近くにあった木を思いっきり殴りつけた。何度も、何度も殴りつけた。
『どうしてなんだ? スコール達より先に、あいつらに会っちまったってのか?
ちくしょう! 俺が、あの時止めていれば……!』
オレは何も言えなかった。
その代わり、しばらくして、エーコがこっちに戻ってきた。
『大変! 向こうで人が怪我してるの!』
また、場面が切り替わる。
水音が聞こえるあの場所で、エーコが嬉しそうに叫ぶ。
『あっ、気付いたの?』
オレとラグナさんが振り向くと、飛び跳ねるエーコの後姿が見えた。
『よかったぁ』
多分胸を撫で下ろしたのだろう。エーコの頭が少し俯く。
――それと同時に、音が聞こえた。
柔らかいモノを貫く音。喉から込み上げる液体を咳き込む音。
それが何なのか悟る前に、エーコの背中から、赤く濡れた剣先が覗いた。
ラグナさんが、自分とエーコの荷物をオレに放り投げ、叫ぶ。
『イクサス、逃げろ!』
ああ。あの時リチャードが言ったのと同じ言葉だ。
リチャードは帰らぬ人になってしまった。ラグナさんも、また。
『イクサスまで殺させるわけにはいかねぇんだよ!』
叫びに続いて聞こえた、ぞぶり、という低い音。一生耳から離れないだろう、あの嫌な音――
――そして、暗闇が世界を塗りつぶした。
オレの前には四つの死体があった。
全身を切り刻まれて絶命しているリチャード。傍には、緑髪の女がいた。
矢を突き立てられたマリベル。隣には、コートの男がいた。
心臓を正面から貫かれたエーコ。肩から袈裟懸けに斬られ、真っ二つになったラグナさん。
二人の間に、赤い羽根帽子をかぶった男が立っていた。
四人の声が悲しげに響く。
『逃げろ、イクサス!』
三人が冷笑しながらこっちへ歩いてくる。
『お前も死ぬんだ、イクサス』
怖くなって、オレは後ろを振り向いた。
すぐそばに、スコールとマッシュがいた。
二人は広間の魔女のような邪悪な笑みを浮かべて言い放つ。
『いずれお前もこうなるんだよ、イクサス――』
「――うわぁああああああああああっ!!」
オレは跳ね起きた。夜の山の中で。
「……夢?」
ちょっと休むだけのつもりだったのに、いつの間に寝てしまったのだろう?
とにかく、回りには誰もいない。死体も、殺人者も、スコールとマッシュも。
時折吹く風と梟の声だけが、淋しげに木の葉を揺らす。
時間はそれほど経っていないらしい。夜空に浮かぶ月は相変わらず、煌々と輝き続けている。
オレは涙を落としながら呟いた。
「ちくしょう……ちくしょう……!」
死んでたまるか。あいつらの思い通りになってたまるか。
緑髪の女はもういない。
でも、コートの男と、赤帽子の男と、スコールと、マッシュは、まだ生きている。
「……殺してやる。きっと、殺してやる。
いつまでも笑ってられると思うなよ……」
オレだって医術士だ。薬と毒のことなら、誰より良く知ってる。
そこらへんの野草や雑草にだって、強力な毒を持っているものがある。
上手く使えば、非力なオレでもあいつらを殺せるはずだ。
リチャードとマリベルの仇。そして、エーコとラグナさんの仇。
直接手に掛けていようが、いなかろうが、全員同罪だ。あいつらのせいでみんなは死んだ。
――だからオレが裁いてやる。奴らを裁いてやる。医術士イクサスの名にかけて。
【イクサス(人間不信) 所持品:加速装置、ピクニックランチセット、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット
第一行動方針:植物採集&毒薬作り
第二行動方針:ギルダー・アーヴァイン・スコール・マッシュを殺す/一人で生き残る
現在位置:アリアハン東山脈北部】
90 :
魔物:04/12/10 02:32:04 ID:O9Ckkzyd
先程の三人組に追いつけないのはわかっていた。少し走って、茂みを抜けたところでデールは
一旦立ち止まった。心臓が早鐘を打っている。なんだろう、この興奮は……。
ふと右手を見ると、森で枝か何かで斬ったのだろう、一筋の切り傷が出来ていた。
マシンガンも悪くはないが、ナイフの方が楽しそうだ。
うっとりと見つめていると、手首に血液が一筋つたった。
デールはそれを、舌で舐めとった。どんよりと塩辛く、そして鉄がさびたような匂いが
口の中に広がる。飲み込むと陶酔感がじわりと広がっていき、
麻酔のように全身を痺れさせた。
「壊したい」
そう呟いた瞬間、デールの中で何かが弾けた。
腹の底から押し寄せてきた衝動をはき出すように、デールは笑った。大声をあげ笑った。
彼を支配したのは壊れない物を壊してしまう快感かもしれない。
「さあ、誰が一番頑丈だ?」
鋼の肉体も鉄腕も、全て壊してやる。デールの目が燃えていた。
彼はもう、狂った人間でさえなかった。
それであるならば正常な、ごくごく普通の、「魔物」になっていた。
(笑い声……?)
エドガーは顔を上げて、上を向いた。
(……気のせいか)
エドガーとデッシュは首輪の解析に没頭しており、周りへの注意力が散漫になっていた。
それ故、背後に魔物が迫っていることなど、全く気づいていなかった。
【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)
現在位置:アリアハン北の森
行動方針:皆殺し】
【エドガー 所持品:バスタードソード 天空の鎧 ひそひ草 ラミアの竪琴 イエローメガホン 首輪×1 紙や鉛筆など
【デッシュ 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 首輪×1 紙や鉛筆など
現在位置:アリアハン北の森 第一行動方針:首輪の研究 最終行動方針:ゲームの脱出】
「ジオさん?そっちですか?もう少し待っててくださいね」
アルカートは死んだ筈の男の名前を呼び、フラフラと歩いていく。
「ジオさん、そっちで良いんですね、もう少しで着きますから待っててください」
何もない空間に語りかける彼女、そこにはジオの幻影が浮かんでいたのかもしれない。
「なんだよアンタ…アンタも俺の邪魔をしようって言うのかよ?」
気が付けば少年の声がした。
「俺は忙しいんだよ、どっか行ってくれよ」
つっけんどんにアルカートを追い払う、だが彼女は前へ進もうとする。
「だから…邪魔だって言ってんだろ!早くどっかいけよ!」
つい猫の手ラケットを持って、アルカートを吹き飛ばす。
少年の力とはいえ、そのラケットに秘められた力は凄い物だ。
何度も吹き飛ばされる、だがアルカートは幾度となく起き上がり、進んでくる。
その異常な体力とローブに付いた紫の血は、イクサスに有る一つの
「ああ、そうかよ。アンタもあいつらの仲間だって言うのかよ!」
イクサスが、アルカートを殴り倒す、ラケットの力はやはり凄い。
「………って言ってるんです…」
「何言ってんだよ!わかんねぇよ!」
ドカドカとラケットで何度も殴り倒す、その音は何度も高く響いた。
ラケットから血が滴る、女性は動かない。
「はぁ…はぁ…ヘッ、たいしたことないじゃん、俺にも人が殺せる。
それを…あいつらに分からせてやる」
そして、彼は猛毒を持つ植物から作る、半分出来掛けていた毒薬を再び作り始めた。
声がする、まだ生きていたのか?後ろを向いたときはもう遅かった。
「邪魔だって言ってるのが聞こえなかったんですか?」
その冷徹な声と共に最後、イクサスが見たものはアルカートの邪悪に染まった飲み込まれそうな目を見た。
恐怖がイクサスを包んだ、そしてその恐怖はイクサスを死後の世界へ連れて行ったのだ。
爆音が木霊する、唯一殺傷能力を持つ白魔法、ホーリー。
その爆発はフレアにも匹敵する、だが彼女が普段出している全力のホーリーは白マテリアのほんの一部力でしかなかった。
ケアルを唱えるよりも簡単に、ホーリーが唱えられたのはそのお陰だ。
アルカートは、頭から流れる血を、片言の魔法で直す、傷が塞がっただけで痛みはまだあるが。
怪しい音を立てる薬と己の血に染まったラケットを拾う。
自分が殺したイクサスの方を見る、何故邪魔をしたんだろう?
いやそんな事はどうでも良かった、ジオの元に行くまで、誰にも邪魔はさせない。
どこに居るんですか?何で私より先に死んだんですか?
ジオさん?答えてくださいジオさん、ジオさん………。
ジオは何も答えない、だがどんどん遠ざかっていくのは分かる。
そのジオをとにかく追った。
【アルカート(頭を負傷+微流血) 所持品:ナッツンスーツ グラディウス 白マテリア(ホーリー) ネコの手ラケット 猛毒薬(約10人分)
現在位置:アリアハン近く北の平原>アリアハン城へ
第一行動方針:ジオの元へ行く、邪魔するものは殺す】
【イクサス 死亡 残り99人】
死体の場所:アリアハン北の平原(アルカートが今居るところより結構離れた場所
所持品:加速装置、ピクニックランチセット、ドラゴンオーブ、シルバートレイは放置。
93 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/10 16:57:46 ID:mPHqjzlp
ガギッ!
クラウドとパイン、それぞれの持つ刃がぶつかり合って嫌な音を立て、また離れる。
…もうこうして幾度、攻防が続いたことだろうか。クラウドの体の芯には、
澱のように疲労が溜まり始めていた。
(それでも…俺は負けるわけにはいかないんだ。)
参加者名簿に、死んだはずの彼女の名を見つけたとき。
死んでいるはずの彼女が、何故?と疑問が脳裏をかすめたのは一瞬で。
あとは、喜びのほうが大きかった。
今度こそは、死なせずに済むかもしれない。
今度こそは、守りきれるかもしれない−
−だが、その望みは、僅か半日足らず。魔女が彼女の名を呼んだ瞬間に潰え去った−
また、守れなかった。
また、死なせてしまった。
その事実が、何よりも痛切な悔恨となって、彼自身をさいなんだ。
悔しい。心が痛い−もうこんな思いは、嫌だ−
だからこそ、残された仲間たちは、守らなければ。
(ザックス…ユフィ…シド…ケット・シー…ティファ。待っててくれ!)
大振りな一撃をバックステップしてかわし、続いて急所を正確に狙ってくる
刃を、アルテマウェポンで受け止める。
クラウドは躓いたと見せかけてわざと隙を作り、パインの剣を誘った。
すかさずパインが彼のがら空きになった首筋を狙って、アイスブランドを振り被る。
−狙い通り。そこにできた僅かな隙を、クラウドは見逃さなかった。
下から上へ、掬い上げるような一撃を見舞う。
…パインの身体には縦一文字に深い傷が刻まれ、どさり、と音をたてて
ゆっくりと前のめりに地に臥した。そのパインをちらとだけ見下ろして、クラウドは
眼前にそびえる大きな建物と、狭くないらしい町を見やった。町ならば。人が集まるだろう。
現に耳を澄ませてみれば、複数のものらしい人の声も、風に乗って聞こえてくる。
あるいは守るべき人も、そこにはいるかもしれない。セフィロス達から身を隠すにも、
建物の多い町はうってつけだろう。そう判断したクラウドは、倒れたままのパインには
目もくれずに、身を翻して駆け出した。
−だから、彼は気が付くことはなかった。
地に臥した彼女の指先が、僅かに慄いたことに。
それは彼女の持てる生命力か、スフィアに宿った魔物の妄執が成せる業か。
指先が土を僅かに握り締め、腕に、足に少しずつ力が入り−這うようにして身を起こしたことを。
【クラウド(疲労)所持品:おしゃれなスーツ アルテマウェポン
現在位置:アリアハン城下町南の入り口付近→町へ
基本行動方針:仲間を見つけ、守る
最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】
【パイン(重傷)(ジョブ:ダークナイト)所持品:うさぎのしっぽ 静寂の玉
アイスブランド ドレスフィア(ダークナイト)
状態:凶暴化(何かの衝撃で正気を取り戻す可能性あり)
現在位置:アリアハン城下町南の入り口付近
行動方針:全員殺害。正気を取り戻した場合は不明】
※近くにセフィロス&クジャが潜んでいる可能性があります。
あれからどれだけの時間がたっただろう。
日は沈み、悪夢のようなあの声も聞こえなくなって、今はただ、薄暗い草原の中を佇んでいる。
ここにいるのは俺とフリオニール、二人だけだ。
レーベの村に戻る理由は、もうない。
俺は決めた。こいつと、フリオニールと共にここを生きると。
もちろん、それは俺なりにいろいろ考えて決めたことだ。
フリオニールが飛び出したとき、咄嗟に後を追った。追わなければならないような気がした。
いや、そんなことを考えるまでもなく、俺の体は動いていた。
あいつ足の速さには、トレジャーハンターの俺も驚かされる程で、追いついた時にはレーベの村からだいぶ離れていたと思う。
でもそれも、実はあまり自信がない。
もしかすると、追いついたのは案外レーベの近くだったのかもしれない。
どちらにしても、今となってはそれも関係がないこと。
今は、レーベの村からひとしきり離れたこの場所にいるんだから。
フリオニールを捕まえると、あいつはそのままぐったりとして、何の抵抗もしなかった。
俺はというと、捕まえてどうするということも考えてはいなかったんだけれど、
ただなんとなく手持ち無沙汰で、とりあえずレーベの村へ連れて帰ろうと思った。
だけど、レーベの村のほうへ行こうとすると、腕を振り払って、あいつは頑なに動こうとしなかった。
正直、意外だった。
それは多分、あいつがみせた初めての意志表示だったからだと思う。
そのときに、俺はフリオニールが人形じゃないことを知った。
どうして行きたくないのかと考えてみても、心当たりはヘンリーとのことしかない。
俺は、あの行動を攻めることは出来ない…ああしなければ、なにも出来なかっただろうから。
だからヘンリーとのことは気にするなといった。
それでも、フリオニールは動こうとしなかった。
あのときはわからなかったけど、ヘンリーに会いづらくて拒んでいたわけじゃなかったんだろう。
多分、そういうことを考えられるほどの感情が、今のフリオニールにはない。
俺が思うには、ただ怖かったんじゃないかと思う。
フリオニールの悲痛な叫び声は、今でも覚えている。
たしかにあのときあいつは、「死ぬ」という言葉に過剰な反応を示していた。
フリオニールはその言葉から逃げている。
それを思い出さないために、あの場に戻ろうとしない…でもそれも、結局は俺の頭の中で考えたことだ。
真意はわからない。
まあとにかく、俺はこれからどうするかを考えなければならなかった。
意志表示をしたといっても、状況は酷い。話しかけても、機械的な言葉さえ返さないんだから。
かろうじて開かれていた心が、閉じかかっている。
俺は辟易した。
そんなときに…あの、アルティミシアの声が聞こえた。
読み上げられていく名前の中にあったのは、俺も良く知った名前が二つ。
シャドウと…ティナ。(正直、シャドウに関しては、最初の場で名前が呼ばれたときも驚いた…あいつは死んだはずだったから。
でも、ケフカやレオもいるこのゲームは、それ自体不思議なことじゃないのかもしれない)
あの呆然とした感じは、今まで味わったことがないものだ。
自分の仲間が死ぬ現実。そして皮肉なことに、あいつらの死こそが、俺自身の生還への道となっているという事実。
といっても、そのときの俺にはそんなことを考える余裕もなくて、
口をだらしなく開いたまま、焦点の合わない目を動かすだけだった。
そんなときでさえ、フリオニールは相変わらずぼーっとしていた。
今読み上げられた中に、仲間や知り合いはいなかったのだろうか?
いたのかもしれないけれど、それすら理解することもできないのだろうか。
俺はなんとなくフリオニールの横顔を涼しげな眺めていて、そしてはっとして気づいた。
気づいたというよりは、俺が聞いたフリオニールのもう一つの叫び声を、突然に思い出した。
一番最初に、誰よりも早く死ぬことになったあの女の、すぐそばにいた男の――
「フリオニール、おまえは…」
不意に、口から言葉が漏れたけど、そのあとに言葉は続かなかった。
覚えていないはずはないのに、どうして気づかなかったんだろう?
でも、俺はそのときに、自分のおかれた状況を悟った。
フリオニールはきっと、俺の未来の姿なんだと思う。
俺の望みは、セリスと共に――もちろん、仲間もいることがベストだが――生きること。
そのセリスがこのゲームでいなくなったときの俺の姿が、今のフリオニールの姿に重なって見える。
(ティナの死も、俺のこの想いに大きな影響があるのかもしれない)
共に行動することを決意したのは、このときだった。
それまで俺は、何をすればいいのかもよくわかっていなかった。
だけど、はっきりとした。
俺はこのゲームの鎖の中では、生きることができない。
この鎖から抜け出す、この狭い世界から。それこそが、俺の、俺たちの生きる道なんだ。
そんな俺の決意も素知らぬようで、当のフリオニールはといえば、時折するまばたき以外に動きが見受けられない。
フリオニールは、このゲーム最初の犠牲者だ。
もしフリオニールが立ち直って、再び前をむき始めたなら――そのときが、レジスタンスの始まりだと、そういう気がする。
…俺がこれだけいろいろなことを考えたのは、どれだけ久しぶりだろう。
コーリンゲンの、レイチェルの家の前で待っていた日々以来じゃないだろうか。
このいかれたゲームに不似合いな、退屈がいけない。
世界一のトレジャーハンターとして、退屈は一番の敵だ。
いつまでも感傷浸ってはいられない。
これから、手探りで鎖を解き放つ方法を見つけださなければならないんだから。
ふと、フリオニールが歩き始めた。そして、止まった。
俺は思った。
どんなことでも、起きてくれればいいと。
そう思いながら、フリオニールがじっとひとつの方向を見ていることに気づいた。
何もない。
そう思う。
でも、フリオニールはその方向を見ている。
見ている…?
俺は目をつむった。
断続的な金属音が聞こえる。
俺は思わず、目を見開いた。
そして、叫んだ。
「フリオニール、行くぞ!」
言い終わる前に、二人とも走り出していた。
【フリオニール(感情半喪失) 所持品:銅の剣 現在位置:レーベ西の平原 行動方針:レオンハルトたちの場所へ】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 現在位置:同上 第一行動方針:金属音の方向へ 最終行動方針:ゲームをぶち壊す】
――彼は変わっていない。
兄とよく似た風貌も、聡明さを象徴するかのような瞳も、人々の心に静かに響く優しい声も。
外見だけならば、彼は何一つ変わっていない。
――彼は変わってしまった。
昔の彼は、優しすぎるぐらいに優しい人間だった。
他人を傷つけぬために、自分を犠牲にすることができる人間だった。
けれども今はどうだ。人を傷つけることも、命を奪うことさえも楽しんでいる。
――彼は狂っていない。
狂人は待つことを知らない。いつでも真理と結果のみを求め、浅薄な妄想の世界に浸ろうとする。
彼はそうではない。機を待ち、慎重に事を進めることの大切さを知っている。
ハイになっても、いざとなれば冷静に判断することができる。そうするだけの自制心も持っている。
――彼は狂っていた。
血に餓えた獣に、いや、それ以下の存在に成り果てていた。
獣は生きるために殺すが、彼は違う。生きるためではなく、快楽のためだけに人を殺す。
それ以外に理由はない。あったかもしれないが、もうどうでもよくなってしまった。
少しずつ、少しずつ。風の音に紛れるように、少しずつ。
さやけき月光が、姿を照らし出さないように。ターゲットに気付かれないように。
少しずつ、少しずつ、距離を詰め、間合いを計る。
込み上げる笑いと高揚感を抑え、トリガーに指をかけたまま、前に進み――
「エドガー!」
唐突に、二人組みの片割れが叫ぶ。
気付かれたか? まあ、ここまで近づけばどうでもいい。
一気に引き金を引く、それが舞踏会の始まりの合図だ。
昼間の男のようにワルツを踊れ。パートナーは死神、楽曲は銃声。悲鳴が伴奏で、流れる血潮が葡萄酒の代わり。
そして壊そう。壊してしまえ、何もかも。肉も骨も、血も涙も、花のように散らせてしまえ。
さあ、最高のワルツを僕に見せろ。死を、血を、僕に捧げろ!
壊れろ、踊れ! 僕のために! もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと……
「もっと……もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっともっともっともっと
もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと
もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと!!
もっと、僕を楽しませろ!!」
若者の哄笑を聞きながら、エドガーとデッシュは舌打ちした。
「どうしてこんなに近づかれるまで気付かなかったんだよ?」
「生憎、熱中すると回りが見えなくなる性分でね。相手が美しいレディなら話は別だったのだが」
「おいおい……本当、これでよく蜂の巣にされずに済んだよな」
そう、本当に幸運だったとしか言いようがない。
デッシュが叫ぶより早く、エドガーも襲撃者に気付き、デッシュの身体を抑えながら地面に伏せたこと。
襲撃者の反応が予想よりも遥かに鈍く、木陰に隠れられるだけの時間が生まれたこと。
そして相手が、二人の頭があった位置を――つまり割と上の方を狙って銃弾を撃ちこんできたこと。
これらの要素が重なったお陰で、多少の手傷を負っただけですんだ。
「しかしどうするよ? 首輪とメモとひそひ草が……」
デッシュが囁く。研究成果とバーバラへの連絡手段は、全て弾幕の向こう側だ。
最も、首輪がらみのことは二人の頭の中にきちんと残っているが。
「取りに戻れると思うか? それより、今は逃げることを考えろ」
「説得……は、絶対に無理だよな……」
「アレを相手にするぐらいなら、ケフカと一対一で会談する方がまだマシだ」
エドガーはデッシュの手からウィンチェスターをもぎ取り、声の方に撃ち込みながら言う。
「いいか、今から三数えるから、そうしたら一気に走れ」
「何言ってんだ! そんなことしたら、ネズミが食うチーズみたいになっちまうだろ?!」
「私を信じろ! いいか、三……二……一、今だ!」
自棄になってデッシュは走り出す。エドガー自身も後を追う。
だが、攻撃は来なかった。
疑問のあまり振り向いたデッシュの目に、唇を噛みしめる若者の姿が映る。
そう、まるでおあずけを喰らった犬のような、撃ちたいと思いながらも命令に抗えない兵士のような……
「……クッ。付け焼刃では、やはり効き目は薄いか……!」
エドガーが呟く。その手に握られた銃が、わずかに光を帯びている。
(マテリアか!)
ようやくデッシュは思い当たった。それと同時に、途切れていた銃声が再び響き渡る。
けれども生い茂る木々と夜の闇が、彼らの身を守る盾となった。
これでは、もう銃弾は届かない――
デールは苛立たしげに銃口を下ろした。森に静寂が戻る。
アラームピアスの音色も途切れた。せっかくの獲物を、完全に逃してしまったのだ。
彼は追撃を早々に諦め、立ち去ろうと銃を背負う。
その時、奇妙なことに、どこかから女の声が響いた。
『どうしたの? ねぇ、エドガー、何があったの!?
すごい音がしたけどどうしたの? ねぇ、返事をして! エドガー!』
――デールはすぐに声の正体に気がついた。首輪と共に放り出されたままの、見たことのない草。
直感に従って草を拾い上げ、落ち着いた声音で話し掛ける。
「もしもし。私の声が聞こえますか?」
すると、彼の予想通り、草自体から返事が返ってきた。
『……あなた、誰?』
「失礼しました。私の名はデール、ラインハットという国に住む者です」
一国の主に相応しい、穏やかで丁寧な言い回し。
その様子に、女性の声も警戒を緩めたのか、デールに聞いてきた。
『あたしはバーバラっていうの。ねぇ、そっちで何があったの?』
「詳しいことはわかりませんが、戦闘があったようですね。
死体はありませんが、木々が派手に薙ぎ倒されています。
……そういえば、ツンツン尖った髪型の若者が、大きなものを抱えて走っていくのが見えました」
『ツンツン尖った……? じゃあ、エドガーでもデッシュでもないわ。
そいつが襲撃者なの?』
「わかりません……何分、辺りも暗くて」
『そっか、夜だもんね』
「お役に立てず、すみません」
デールがいかにも申し訳なさそうに言うと、バーバラは『いいのいいの』と笑って答えた。
『死体がないなら、きっとデッシュもエドガーも無事だろうから。
それよりデールさん。今、どこにいるの?』
「お城の北の森です」
『あー……本当に、二人とも全然動いてなかったのね。
もう。ちょっとくらい、こっちに迎えに来てくれたっていいのに……女の子の気持ちをわかってよ』
ため息と一緒に聞こえた言葉に、デールは反射的に問い返した。
「こっち、とは?」
『今は原っぱにいるの。半日掛けて、山を越えて歩いてきたのよ。
エドガーは無理するなって言ってたけど、ずっと一人でいるって嫌だから……
えっと、地図で言うと、多分レーベって村の東の方だと思う』
「レーベの東、ですか……私でよろしければ、迎えに行きましょうか?」
『え!? ホント?』
「ええ。実を言いますと、私も一人で心細い思いをしていたのです。
兄と義理の姉が広間にいたのですが、二人に声も掛けられぬまま、こんな場所に放り出されてしまって……
……どうでしょう、バーバラさん。お互い、一人よりは二人の方が安心できると思います。
レーベの村というところで落ち合いませんか?」
『わかったわ。あたし、赤い髪を一つに結ってるの。だから見ればすぐにわかると思うわ』
バーバラの嬉しさに満ちた承諾の声に、デールは笑いを押し殺していた。
赤い髪の少女。彼女の悲鳴はさぞ聞き応えがあるだろう。白い肌を伝う血は、きっと上質のワインのようで。
ああ、ナイフがあれば存分に味わえるのに! まぁいい、彼女には華麗な踊りを見せてもらえば……
――そんな歪みきった思いをおくびにも出さず、彼は理知的な声で告げる。
「わかりました。会えるのを楽しみにしています」
【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)、ひそひ草
現在位置:アリアハン北の森→レーベへ移動
第一行動方針:レーベでバーバラと会い、殺害する 第二行動方針:皆殺し】
【エドガー 所持品:バスタードソード 天空の鎧 ラミアの竪琴 イエローメガホン
【デッシュ 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる)
現在位置:アリアハン北の森 第一行動方針:デールから逃げる/首輪の研究 最終行動方針:ゲームの脱出】
【バーバラ 所持品:ひそひ草、その他様々な種類の草がたくさん入っている(説明書あり)
現在位置:レーベ東の平原→レーベへ
第一行動方針:デールとレーベで会う 第二行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】
(首輪二個と研究成果のメモはアリアハン北の森の中に放置)
そこには、無かった。横たわっている筈の、顔の焼け爛れた女性の姿が。
それが分かったときに、ビビは不思議な気持ちに襲われる。
心のどこかで安心して。心のどこかで不安で。
あぁ、生きていたんだね。どこかに行ったんだね。
ボクが来る前にいなくなっていて、よかった。人を殺すのなんて嫌だから。
でも、あのお姉ちゃんがもし悪い人だったら、死んじゃう人は増えるかもしれない…
そうしたらボクが殺さなかったせいなんだ…
「ねぇ、悪い人じゃ、無いよね…?」
虚空に問いかける。
「ちょっと、怖かっただけよね…?」
何故かそこに女性が立っている光景が思い浮かぶ。
「本当の悪い人なんて、いないよね…?」
女性は、焼け爛れた顔で、ビビを見下ろした。
「ボクはお姉ちゃんを許してあげられるから…だから」
女性の表情に変化は無い。火傷のせいで表情を表せないようにも見える。
「ボクも…ごめんなさい…」
ビビは、大きく頭を下げた。
…頭を上げると、女性の幻影は消えていた。
対象のいない会話が、何らかの利益を彼に与えるとは思うわけが無く。
「火傷、ボクには治せないけれど、ここから抜けられたら魔法で治せると思うんだ…」
ただ、そうせずにはいられないと彼が思ったから、そうしたのだった。
「ボクの仲間に、白魔法が使えるエーコって人がいるから…」
もう一人彼の頭に浮かんだ人がいた。だが、もう、その人はもういないから。忘れようと、頭を振った。
「だから、えっと、お姉ちゃんも、生きてここを抜け出して、火傷を治そうね…」
あの女性のことを考えれば考えるほど、彼女が善人だったように思えてくる。
自分が魔法を放ったのは間違いじゃないかという、後悔も共に。
ゆっくりと顔を上げ、月を見上げる。
「月、綺麗だよね…。お姉ちゃんも、エーコも、みんな、そう思うのかなぁ…?」
誰も返事をする事が無いのを知りつつ、問いかける。
そして、振り返り、尖がり帽子を両手で調整すると、元来た道を戻り始めた。
「なんスか、一体…?」
彼の行動の一部始終を、木の陰から見ている青年がいた。
思わず口に出してしまったその言葉どおりの心境だった。
やってくるなり闇に向かって話しかけ、謝り出した少年。
彼の言うお姉ちゃん、とは一体誰なのか。許す、ということは何か悪事を働いた女性か。
気になる。聞いてみたい。でも、この一連の動きが罠だという可能性も、否定できない。
さっきは目の前でエアリスが殺されたのだ。
自分もああなるかもしれないという事を考えると、正直恐怖で立ってさえいられなくなる。
それが、彼に行動を起こすことを自粛させている。
それに彼にはもう一つ、やらなければならない事があった。
ターニアを探さなければ。
きっと何処かで震えているから。暗闇を、きっと怖がっているだろうから。
エアリスの血を見てしまった彼女が、今心配で。
ちょっと空を見上げた。
少年の声が、何故か耳の中で反響しているから。
「本当に…綺麗な月ッスね…」
呟くと、歩き出した。
なんとなく、南へ。少年とも、そしてターニアとも、違う方向へ。
少年とターニアが同じところにいることなど、当然、気づく事は無く。
相変わらず、月は見ているだけ。誰の味方も、しなかった。
【ティーダ 所持品:鋼の剣 青銅の盾 理性の種 ふきとばしの杖〔4〕 首輪×1
第一行動方針:南へ 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【ビビ 所持品:不明 第一行動方針:ピサロの元へ戻る 最終行動方針:ゲームから脱出】
現在位置:レーベ東の森中央付近
それは日が沈む少し前。
アリアハン城地下牢。そこに断続的に銃声が響いていた。
「うん。八割方当るようになった」
リュカとケット・シーは洞窟を抜けた先にあったこの地下牢で、
休憩を兼ね、リュカにとっては初めて使う武器である銃の練習をしていた。
地下牢に直接通じる兵宿の扉が閉まっていれば、銃声の音は完全に遮断され、城内に誰かいても気づくことはない。
そしてその扉はご丁寧に以前ここにいたキーファ達が閉めていたので、リュカは心置きなく練習が出来たのだ。
「リュカさんって飲み込み早いんやなぁ。すぐにヴィンセントにも追いつきそうや」
「ヴィンセント?」
「ボクの知ってる限り、その銃使うとった人や。このゲームには参加してへんけど」
「そう…」
よかったね、というべきなのかと、リュカは一瞬迷った。
しかしヴィンセントという人物がどんな人なのかがわからない以上、下手なことはいえない。
そして思う。
リュカはケット・シーに家族や仲間のことを話したが、ケット・シーのことは全然聞いていない。
何とはなしに聞いてみると、ケット・シーはこそばゆそうに頭を掻き、だが口を閉ざしはしなかった。
「う〜ん、知り合いゆうてええんか、ちょっとわからんのですよ。
僕は知ってる人たちなんですけど、クラウド達は本当は部長の仲間やったわけですから」
「どういうこと?」
そしてケット・シーは語った。かつて星を救った者達の冒険のことを。
その冒険でリーブと言う男が、遠隔操作でロボットを操り参加していたことを。
「そのロボット言うんが『ケット・シー1号、2号』なんや。
ボクはその時の記録データをインストールされた『自立行動型ケット・シーVol 7.03』量産型の一体なんです。
せやから、クラウド達には直接会ったことなくて…」
「へ、へぇ…」
リュカは決してバカではない。
しかし耳慣れない単語をふんだんに含んだ話というものは、人間の脳みそを一時的に混乱させてしまうものである。
「まぁ外見は全く一緒やし、記憶とか能力とかもほとんど違いはありません。
性格も、部長の人格まんまの人工知能やから、多分クラウド達に会っても絶対見分けつかん自信ありますよ〜」
そんな時、地震のような揺れとともに、あの魔女の声が響いた。
銃声も漏れぬ密閉した地下牢にも、何か魔法でもかかっているのかその声はよく響いた。
そして、それが終わったとき、再び戻ってきた静けさは、もう以前のものとはかけ離れていた。
まだ、耳に魔女の声が残る。
「サンチョ…、ピピン…」
口にするのは簡単で、ついに再会することは叶わない。
幼いときから見守ってくれていた人。
尊敬のまなざしでいつもみてくれて、声をかけただけで歓喜してくれた人。
ふと、隣を見る。
魔女が口にした名前の中には、ついさっきケット・シーが話してくれたばかりの人たちもいた。
「…バレット……、…エアリス……」
とても小さい、場所がこんなところでなければ多分気づけなかったであろう程小さな声。
会ったこともないのに記憶だけある人物。
一体自分はどういう感情を持てばいいのか…。
「そろそろ行きましょ。リュカさんの腕も相当上達したし、もたもたしてたら本当に家族に会えへんことになりますよ」
それでもケット・シーは、まだ生きている、記憶だけの知り合いに会いたいとは言わない。
「うん」
リュカはただ、頷くだけだった。
【リュカ 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ
【ケット・シー 所持品:正宗 天使のレオタード
現在位置 アリアハン城地下牢
第一行動方針 移動開始
基本行動方針 リュカの家族、及び仲間になってくれそうな人を探す】
僕、疲れてたんだよね。
何せ四回もバトルして、山を走り抜けてこの村までやってきたんだ。
おなかは空いたし、息は上がるし、足もガクガクするし……
最悪のコンディションで、当然のことながら注意力も散漫になっていた。
だから、その赤い草のような物が何なのか、一目ではわからなかったんだよね。
(ナニ、コレ?)
家の影からにょきっと伸びたそれに気を取られ、僕は反射的に近づいてしまった。
今から思えば、さっさとボウガンを撃ち込むべきだったんだよ。
でも、僕が武器を構えることを思い出した時には、もう遅かった。
「ラリホーマ!」
その不思議な言葉を聞いた途端、僕をものすごい睡魔が襲った。
口を開く間もなく、視界はフェードアウト。僕の意識もブラックアウト。
ちょこっとだけ、悪戯っぽく微笑む赤髪の女の子の姿が見えて……それで、おしまい。
――そうして気が付くと、僕はベッドの上にいた。
首を横に回してみると、すぐ隣のベッドに緑色の髪をした男の人が横たわっている。
僕より十歳は年上だろうか。オジサンとお兄さんの中間って感じのオジサ……もとい、お兄さんだ。
「よぉ、気が付いたか」
「ここは?」
「村の宿屋だよ。道端で眠ってたお前を、ソロの奴が連れてきたんだ。
風邪引いて死なれたら、寝覚めが悪いからってさ」
道端で? 眠ってた?
「しかしお前もドジだな。支給品の食料どっかに落としてくるなんてよ」
食料? 落とした? そんなはずは……
「……あーーっ!?」
あの赤い髪の女の子!!
「な、なんだよ、大きな声出して」
「ほ、ほほほ、本当に僕の袋なかったの?」
「袋はあったぜ。空っぽだったけどな。お前の横の壁にかけてある」
「僕、袋以外に何か持ってなかった?」
「全部、そこのテーブルの上に置いてある」
テーブルの上って……置いてあるのはグレートソードと、ランプと地図だけなんだけど。
……やられたよ。あの女の子、今度見つけたら絶対に殺してやる〜!
でも、もう近くにはいないだろうな……第一、探しに行く気力も体力も残ってないよ。
「盗まれたのか?」
「ラリホーマって声が聞こえて、赤い髪の女の子が見えて、そのまま眠っちゃった」
「ああ、そりゃ眠りの呪文だな。ま、生きてるだけでもマシってことにしとけ」
……確かに、普通ならそのまま殺されても文句言えない状況だけどさ。
まさか、ティナのボウガンも、ナイフも、ミスリルの小手も、食料も、全部盗られるなんて!
竜騎士の靴は、履きっぱなしだったせいか無事だけど……
ディアボロスは盗りようがなかったんだろう、ジャンクションされたままになってるけど……
「食料なら心配しなくていいぞ。今、ソロが夕飯作ってるところだ。
他にも缶詰や瓶詰で良ければここにあるし、パンと水は俺たちのを分けてやるよ」
ありがとう、親切なオジサン。
でもね、僕が心配してるのはそういうことじゃないんだ……
これから先、不得手な剣一振りでどうやって相手を仕留めるかってのと、
スコール達が追ってきたらどうやって切り抜けよう、ってことであって。
けれど、本当の事なんか口が裂けても言えない。
うう……銃かボウガンが手に入るまで、この人たちと一緒に大人しくしてるしかないか。
二人ともかなりのお人よしみたいだし、少しは僕のことも守ってくれるはずだ。
――もし、この人たちに僕の正体がバレたら?
その時はその時で考えよう。今はボウガンを盗られたショックが強くて、考える余裕なんてない。
今日はもう、疲れちゃったよ……セフィ……
大・成・功ー!
まさかこんなに上手く行くなんて!
苦労して、盗賊と魔法使いの修行を積んだ甲斐があったってものよね。
ボウガンに、ナイフに、小手にー……食料もたくさん。
これだけ物が揃えば、当分の間は心配することなんかないわ。
デールさんも一・二時間程度で来ると思うし、もう矢でも鉄砲でもムドーでも、どーんと来いって感じ。
……でも、あのお兄さんには、悪いことしちゃったかな。
ううん、きっと大丈夫だよね。
ランプと地図と、一番強そうな剣は残してきたし……食料だって、村の中にあるし……
もしバッタリ会っちゃったら、素直にゴメンナサイって言えば許してくれるよね?
……無理かなぁ。
けど、こっちだっていつまでも草束抱えてウロウロするわけにもいかないじゃない?
ひそひ草や薬草、毒消し草、満月草、山彦草は便利だけど、攻撃に使えるわけじゃないし。
他は、使ってどーするの? 何に使うの? って物がほとんどで、不安だったのよ。
だからアレだけ武器を持ってるんだし、少しぐらい分けてくれてもいいよねー、って……
……ごめんなさい、コートに帽子のお兄さん。
今度偶然出会ったら、きちんと謝って返すから。
それまで、ちょっとの間だけ貸したってことにしておいてね。
【バーバラ 所持品:ひそひ草、他に様々な種類の草たくさん(説明書付き)
キラーボウ エアナイフ ミスリルの小手 食料二人分(マリベル+アービンの分)
現在位置:レーベの村・民家
第一行動方針:デールが来るまで待つ 第二行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】
【アーヴァイン(HP4/5程度、疲労中) 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) グレートソード
第一行動方針:休息/銃かボウガンを手に入れる(それまでは大人しくしてる) 第二行動方針:ゲームに乗る】
【ソロ(MP消費・疲労) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
第一行動方針:ヘンリーに付き添う/自分の休息】
【ヘンリー(負傷) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可) 第一行動方針:傷の治療】
現在位置(共通):レーベの村・宿屋
魔物には純粋な魔界の住民や、宝石から作られたクローンも含まれているが、
物体に怨念が宿ったり、普通の生物が邪気、症気、狂気に取り込まれて巨大化、凶暴化したものも多い。
ある雪国で伝えられる邪なる狼の群れや、ある町の伝説に残る巨大植物などはその最たる例である。
そして、それは、人間とて例外ではない。
人間のように強い意志を持つ生物は、魔物化に2通りのパターンがある。
一つは、願いをかなえるために自ら心を捨てたもの。
例えば、強さを求めて魔物と化した、ならず者の町の格闘家、魔法の極意を極めるために魔王に魂を売った魔法使い。
主君への忠誠心があまりにも強く、魔物となってまで主を守ろうとしたものもいるし、殺しに快感を覚え、魔物となったものまで、様々である。
中には果てしない野望を持ち、魔族を束ねる王にまでなったものさえいる。
もう一つは、邪気、症気に取り込まれたために、心も体も魔物と化すものである。
例えば、邪神の生け贄にされた人間、恋人に裏切られ、失意のまま死んだ人間の魂、邪神の邪気に触れたさる灯台守。
異世界の歴史を紐解けば、アーガス神官長やマイエラ修道院長といった最高位の聖職者ですらいとも簡単に魔物化している。
これらの魔物は、本能(というと語弊があるかもしれないが)的に他者を仲間に引き入れようとしつこく行動する。
ブリザードが頻繁にザラキを唱えたり、ゾンビ系モンスターが集団で現れ、倒しても墓からやたらと復活するのはそのためだ。
意志を持ったまま魔物化した場合も、基本行動は同じである。むしろ、状況判断力が付く分たちが悪い。
それでは、人間の魂を魔物の体に移すとどうなるのだろうか。これを転生というのだが、
基本的に魔物の力を得て、なおかつ精神はそのまま、という状態を得ることが出来る。
純粋に力を求める場合、最も手っ取り早い方法であるが、人を魔物に転生させられる者自体、世界で数えられるほどしかいない。
そのうえ、重大な欠点もある。負の力に対する耐性が弱くなることである。
普通に生活する分では問題ないのだが、例えば恋人を突然失ったり、戦場の空気に触れたりして、
自我を著しく欠いた場合、特に負の力の大きい場所においては、邪気に支配されてしまうことがあるのだ。
魔物は純粋な生き物、周りの環境によって、180度性質が変わる。
邪気を取り除くことが出来れば、本来の意志を取り返すこともできるかもしれない…
ここはアリアハンの書庫。3人がそれぞれ本で調べものをしている。
「っああ〜!性に合わねぇー!」
ジタンが本を投げ出し、歩き回る。
「どうだ、リノア。何かいい情報は見つかったかい?」
「ううん、さっぱり。呪術の本や工学の本は一通り見たけど、難しくて…
あ、そうそう、その怖い顔したお面は呪われてるから着けちゃいけないからね」
「ああ、分かった。といっても、こんなもの着けたいって思うやつもいないだろうけど。
キーファ、そっちは?…ってどこ読んでんだよ。『コラム:魔物と人間の考察』?なんだこりゃ?」
「いや、ちょっとな。さっき墓作った女の人いただろ。あの人知り合いだったんだよ。
俺がまだ小さいときだったからほとんど覚えてない、ってか、今思い出したんだけどさ。
それでその人に彼氏いたんだけど、その彼氏…モンスターでさ、大丈夫かなって気になったんだよ。それだけだ。
……あ〜!さて、調べに戻るか!」
【ジタン 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面 第一行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 第二行動方針:ゲーム脱出】
【リノア 所持品:不明 第一行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 第二行動方針:仲間と合流しゲーム脱出】
【キーファ 所持品:攻略本 第一行動方針:首輪解除の手段を探す 第二行動方針:フィンと合流しゲーム脱出】
現在位置:アリアハン城裏の図書館 (コラムは攻略本の一部、3人とも図書館で本読んでいます)
あの放送を聞いたとき、彼の思考といえるものは途絶えた。
彼にとって、彼女は自分の命よりも大切な存在。一度は魔物と化した彼の心を人間の心に戻してくれたのは、他でもない彼女。
だから、彼女を守り続けようと思った。死ぬにしても、二人一緒に、同じ時間、同じ場所で死のうと思っていた。
それなのに、現実はどうだろう。一言も言葉を交わすこともなく、姿を見ることもなく、彼女はこの世からいなくなってしまった。
彼にもう生きようという気力はなくなってしまった。
脳裏に邪悪な闇の化身が迫ってきた。
邪神が存在していたとき、何度も味わった感覚だ。僕は、彼女がいるから、ただそれだけの理由でこれを拒否してきた。
けど、彼女はもういない。この世にとどまる理由もない。だから拒否する理由もない。
仲間は生きているけれど、この世にとどまる理由にならない。
来るものすべてを受け入れよう。自分が壊れてもいい。もう、何もする気にならない。今日はもう、疲れた。
マチュア…僕も今、そっちに行くよ…
彼の心は空っぽになった。醜い外見でありながらも、光を宿していた目、今はただただ漆黒の闇が広がるばかり。
もはや彼の抜け殻をつき動かすのは、魔物としての本能と、会場を取り巻く狂気のみ。
彼の抜け殻が求めるのは、人の血肉と、自らの肉体の滅びのみ。
【スミス(腐った死体) 所持品:無し 現在位置:レーベ北東 行動方針:魔物の本能に従う(無心状態、理性無し)】
所持品(紫の小ビン、拡声器)はすべて放置、腐った死体に変身の状態です
苦渋の末の決断だった。
確実に待ち受ける死と、可能性として存在する死。
葛藤の果てに、エッジは『確実な死』を防ぐことを選んだ。
「マリアさん、すまねぇ……すぐ戻るから、それまで無事でいてくれ!」
エッジは唇を噛みしめながら波動の杖を受け取り、走り出す。
彼の後姿を、マリアはどこか安心したような表情で見送った。
――実のところ、マリアの運命はこの時点で決まっていたのだが、二人には知る由もない。
エッジがそうしたことで、カインの判断も決まった。
確かな実力を持つ旧友と、疲弊しきった女。
ターゲットは二つだが、リスクは少ない方がいいに決まっている。
自分の目的は生き残ることだ。殺人は手段の一つに過ぎない。
(回復魔法もアイテムもない以上、下手に手傷を負うのはまずい……慎重にならねばな)
いくら騙し打ちや奇襲をかけたところで、エッジほどの実力者相手に無傷というのは難しい。
だが、見るからに非力そうな、あの女性なら。
自分でも卑劣な考えだとは思うが、場合が場合だ。そんなことを言う余裕は無い。
(ここは見晴らしもいい……気付かれて邪魔に入られても困る……エッジが去るまで、もう少し待つか)
カインは槍を携え、静かに機を窺う。
――けれども、カインがマリアに槍を突き立てることは、ついになかった。
どれほどの時が過ぎただろう。
十分? 十五分? それとも三十分? あるいは五分か?
ともかく、エッジが過ぎ去った後しばらくしてからだ。
樹上のカインは、一人の若者が森の中を歩いて来るのに気がついた。
華奢な身体に貴族風の服を纏った、高い教養と知性は窺われるけれど、戦いの才能はなさそうな……
数度だけ会ったダムシアンの王子を思い起こさせる、いかにも大人しくて無害そうな若者だった。
それでもカインが襲撃に移らなかったのは、若者の持つ奇妙な武器と、背筋を走り抜けた予感のせいだ。
出て行ってはならないという、確信に近い直感。何故かはわからない。
だが、カインは自分の勘を信じることにした。
草原にしゃがみ込んだままの女性の姿に気付いたのだろうか。
若者は足を速め、森から平野に出た途端、一気に走り出す。
若者が叫んだ。「マリアねえさん!」、カインにはそう聞こえた。
女性は面を上げ、若者に手を伸ばす。二人はお互いの身体をしっかりと抱きしめあう。
姉と弟なのだろうか? だが、それにしては似ていないし、髪の色もずいぶん違う。
「兄さんは? 一緒にいないんですか?」
また、若者が言った。良く通る声だ。これだけ離れているのにはっきり聞こえる。
身なりといい、育ちの良さそうな感じといい、演説馴れした貴族か王族なのかもしれない。
女性は首を横に振る。
「ヘンリー」「先に名前を」、「デールさん」「会っていないの?」という部分だけが辛うじて聞き取れた。
「はい……でも、ヘンリー兄さんは簡単に死ぬような人ではありませんよ。
兄さんも、きっとねえさんを探してるはずです……あの人は、貴女を誰よりも愛しているから」
――ここまで聞いて、ようやくカインにも理解できた。
若者は兄弟の弟で、女性は兄の嫁なのだろう。『姉さん』ではなくて、『義姉さん』と言っているのだ。
「マリア義姉さん、歩けますか?」
若者は義理の姉を心配し、手を貸そうとする。しかし女性は再び首を振る。
「疲れ」、「足が」、「動かない」、「やすま」――『疲れて足が動かない、少し休まないと』。
その返事に、若者は困ったように夜空を仰いだ。そして何を思ったのか、唐突に女性に問い掛ける。
「……そうだ。刃物か何かを持っていませんか?」
(――刃物?)
若者の言い方に、カインは少し違和感を覚えた。
自分なら、「剣を持っていないか?」という風に聞くだろう。少なくとも刃物とは言わない。
けれども女性は気にとめた様子もなく、一振りの大剣を渡した。
「これしかなくて……」
済まなさそうに頭を下げる女性を余所に、若者は剣をじっと見つめ、何度か素振りをする。
筋は決して悪くないが、素人だというのが丸判りだ。
若者自身もわかっているのだろう。「兄さんならもっと上手く扱えるだろうに」と一人ごちる。
その通り、疲れて動けない女性を守るには、あまりにも頼りない。
(俺の勘も鈍ったか?)
カインは自嘲した。
若者の武器が何かは未だにわからないが、わざわざ剣を受け取る辺り、役に立たない代物なのだろう。
そしてあの腕前では、自分の敵になれなどしない。
彼から感じた危険は全て気のせいだ――己の迷いが生んだものだったのだろう。
カインがそう考えた時、若者の声が夜空に響いた。
「でも、贅沢は言えませんね……切れ味は良さそうだし、壊すのには向いていそうだ」
(――壊す?)
カインがその言葉の意味を理解する前に――
若者の剣が、女性の肩に突き刺さった。
「――っ――!!?」
カインの叫びは喉の奥で止まる。女性の絶叫は声にならず、それでも空気を震わせる。
何だ? 何が起きた?
混乱する二人の前で、若者だけが静かに笑う。
剣は真下にゆっくりとすべり、鈍い音と共に腕を断ち切った。
「壊れてください、マリア義姉さん」
若者はそう言った。嫌になるほど落ち着いた声で。
血濡れの刃が右足に潜り込み、今度こそ、女性は絹を裂くような高いソプラノの悲鳴を上げた。
「綺麗な歌ですね。修道院で覚えたのですか? もっと、聞かせていただきたいのですがね」
ぞっとするような呟きと共に、また赤い飛沫が咲く。左足に、左腕に。
女性は涙と血を流しながら、必死で若者を見上げる。
「どうして、デールさん? ……止めて、止めて……!」
若者は止めない。義理の姉を、兄の妻を、あれほど親しそうにしていた相手を、笑顔で切り刻んでいく。
(狂っている……)
カインは呟いた。呟かずにはいられなかった。
誰が誰を思い起こさせるだと? どいつが無害そうだと? 何が頼りないだと?
勘が鈍っていたのではない。俺の目が曇りきっていただけだ!
「最初はね。可愛いコリンズとラインハットのために、戦おうと思っていました」
若者は不意に手を止めて、女性を見つめた。
「けれど途中で気付いたのですよ。僕の望みに。僕自身が、何を望んでいたのかに……」
泣き崩れる恋人を慰めるように優しく頬に手を触れ、指先を唇へと滑らせる。
「僕はずっと、人の夢を叶えてやることばかり考えていました。
でも、生まれて初めて、自分自身の望みを叶えてみようと……そう、思ったのです。
僕の願いを……人間を、生命を、何もかもを壊したいって願いをねぇ!」
ざくり、と嫌な音がして、剣先が女性の肺へ突き刺さった。
飛び散る血の量を減らすためか、長くいたぶりたいがためなのか、やけにゆっくりと。
女性の口から血が溢れる。若者の指も同じ色に染まる。
「邪魔をする者も、逃げる者も……! バーバラって小娘も、リュカさんも、ビアンカさんも!
僕が! この手で! 壊してやるんですよ! 最高でしょう!?
それが僕の願いなんですよ、義姉さん!」
若者は女性の身体に何度も刃を突き立てながら、愉快そうに笑った。楽しそうに笑い続けた。
それが再び、唐突に止んだ。
「……神に感謝します。僕を、ここで、貴女と引き合わせてくれたことに。
ヘンリー兄さんと貴女だけは、他の誰にも殺させたくなかった……
貴方たちを壊すのも、その最期を看取るのも……できるならば、僕でありたい」
果たして、若者は笑っていたのだろうか? それとも泣いていたのだろうか?
カインからは見えない。ただ、重なる二つの影だけがはっきりと見えた。
「……愛しています。マリア義姉さん」
――カインは込み上げる吐き気に口を抑えた。
彼でなくても、真っ当な神経の持ち主ならば誰だってそうする。あるいは、恐怖とおぞましさで卒倒するかだ。
そんなカインの胸中を知らない若者は、女性の身体を離すと紅色に濡れた唇を舐めながら言った。
「誰か、いるな」
それが自分に向けられたものだとカインが気付くには、数秒が必要だった。
「壊されたいか? 僕に」
若者は周囲を見回しながら、剣ではなくあの奇妙な武器を構える。
「これでも女性と待ち合わせをする身だ、あまり時間は割けぬ。
剣は使ってやれないが、何、鉛球と共に踊るのも楽しいものだぞ?」
若者の持つ武器が、突然硝煙を吐き出した。鉄筒の直線状に位置する木に、無数の穴が穿たれる。
剣や槍など比べ物にならぬ破壊力だ。そしてあの速度、避けることも弾くことも難しい。
「さあ、出て来るがいい」
若者は空を仰ぎ、静かに告げた。ほんの一瞬だけ、カインの目は若者の顔を捕え――
(――くそっ!)
カインは跳んだ。挑むためではなく、逃げるために。
あの未知の武器のせいか。それとも、常軌を逸した言動のせいか。
どちらにしてもカインには若者が容易く倒せる相手とは思わなかった。
純粋な実力からすれば、カインの方が優位に立つにも関わらず、だ。
(アレは、人間じゃない)
カインの脳裏に、若者の表情と瞳が浮かぶ。
予想したような血走った目ではない。焦点を結ばぬ濁った瞳でも、狂人のへらへらした表情でもない。
逆だ。
真珠のように綺麗な目、確固とした一点を捉える澄んだ瞳。理性と威厳さえ感じさせる、ひどく冷静な表情。
――間違いなく狂っているはずなのに、正気であるとしか思えない。
(アレは人間じゃない。俺のような殺人者でも、狂人ですらない……)
アレを一言で形容するならば、邪悪だ。
このゲームが、ソレを作り出すためだけに用意されたとしても納得するぐらいに、邪悪な化物だ。
けれども、元は。たった半日前までは、アレも人間だった。
恐らくは兄夫婦を慕い、他人を気遣いながら生きてきた、優しい心を持つ青年だったのだ。
(ここで生き延びようとする限り、俺も、いつかは……ああなってしまうのか?)
その問いに答えられる者も、そうでないと断言できる者もいない。カイン自身を含めて。
【ユフィ(瀕死) 所持品:プリンセスリング フォースアーマー 行動方針:死を待つ】
【エッジ 所持品:風魔手裏剣(30) ドリル 波動の杖
現在位置:アリアハン北の橋から西の平原→東へ移動
第一行動方針:波動の杖の向く先(アルカートのところ)へ走る 第二行動方針:仲間を探す】
【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)、ひそひ草、アポカリプス+マテリア(かいふく)
現在位置:アリアハン北の橋から西の平原→レーベへ移動
第一行動方針:レーベでバーバラと会い、殺害する 第二行動方針:皆殺し(ヘンリーが最優先)】
【カイン(傷はほぼ回復) 所持品:ランスオブカイン
現在位置:アリアハン北の橋から北西の森の中
行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【マリア(DQ5) 死亡】
【残り 99人】
レックス達のいる場所が修羅場と化している時。
バッツとローグは、少し困っていた。
戦場の近くで余計な事はしたくない。故に動けない。しかも巻き込まれると困る。
近くでの観戦は拙かったな…とローグが舌打ちした。
実はローグには一つ、やりたい事があったのだ。
それはできるだけ人のいない安全な場所でやりたかったが――まぁ仕方が無い。
とりあえず短く用件を伝えて実行することにした。
「バッツ…悪ィけどちょっとよーく戦いを見守っててくれ。やりたい事があるから」
「はぁ?こんな修羅場で何をするんだよ……」
「ちょっと近辺の状況を見る。近くに実力者やゲームに乗った奴がいるかもしれないしな」
その言葉を聞いたバッツが、困惑したように気の抜けた声で答える。
無理は無い、バッツはローグの「あれ」を知らない。説明が必要ではある。
だが時間が無い。納得させる時間が惜しい。無視だ。
「大丈夫、俺には優秀な"鷹"が付いてる」
そう言うと、ローグは静かに目を閉じた。
一呼吸置こう。集中だ、そうしないとこれは使えない。
いつもはセージが
「真面目にやってよね?変な道案内より困った物は無いんだし」
と悪態をつくがそれが今は無い。大丈夫だ、集中―――――
ローグが眼を開いた。
見開いた眼に宿る鋭い眼光は、全てを見通してしまうのだろうとさえ思わせてしまう。
本当に、見違えるほどに、誰の目にも明らかな変化が起こっていた。
『鷹の眼』
平たく言えば、空を飛ぶ鷹のように遠くのものを見渡すローグだけのスキル。
伝説の勇者ですら使えない、ローグの特権。
「な…お前……なんだそれっ!」
「アリアハン北西に…誰か……あれは……」
驚くバッツの声が聞こえてないのか、ローグは眼を凝らす。
その直後、ローグは背筋が凍ったような感覚に襲われた。
「なんだありゃ!あれは…あれは…」
「おい、何があった!」
「あんなの……あんなのまでいるのか…ここには!」
ローグの目は「普通」に戻った。
何かに怯えながら、今度は見た事を頭で整理することにした。
ローグが見た…いや、見てしまったもの。
それは体を切り刻まれた女性と、その近くで微笑んでいる男。
男の部分部分には血が付いており、女性を殺した犯人であろう事が想像できる。
信じたくは無かった。
見た目は、優しそうな男性。だが、女性を酷く惨殺したのもあの優しそうな男性なのは、確か。
あの男の目に多大なる自信と高揚感があるのも、確か。
殺している瞬間を目にしたわけではないが、わかる。
これ以上無いまでにそう確信できるものが揃っている。
「ふざけんな……とんでもないモンを呼びやがったなあの女は」
ローグは、大きな後悔と恐怖を同時に抱え込む事になった。
【バッツ 現在地:アリアハン城下町 所持品:チキンナイフ、ライオンハート、薬草や毒消し草一式
第一行動方針:様子見を続行 第二行動方針:レナ、ファリスとの合流】
【ローグ 現在地:アリアハン城下町 所持品:銀のフォーク@FF9
第一行動方針:様子見を続行 第二行動方針:首輪を外す方法を探す】
※近くでサイファー達が交戦状態です(
>>35-37)
目が覚めたのは、痛みのせいだった。
ゲームが始まってすぐに負った重度の傷は、未だ治る兆しを見せない。
無造作に投げ出された足を枕にするように、少女がスースーと無防備な寝息をたてている。
木に寄りかかり、それまで眠っていた男―ピサロは、顔をしかめながら辺りを見回した。
周りは暗く、凝視しなければ何がどこにあるのかも判らない。
ビビの姿は見当たらない。あの得体の知れない武器をもった女を探しているか、さもなくばもう殺されているかだろう。(…動けるか?)
全身を走る痛みに耐えつつ、ゆっくりと体を動かしてみた拍子に、肩にかけたままの焼け焦げたザックから、
ボトッという少し重い音と共に、彼の足元に握り拳よりもすこし大きいぐらいの石が落ちた。
(?)
訝しげに手を伸ばし、触れた瞬間、石はピサロの手の中で淡く輝きだし、まるで生きているかのような温もりを発した。
驚いて思わず手を離し、もう一度、慎重にに触れてみる。
すると再び石は輝きを発し、彼の手に温かい何かを伝えた。
「これは一体…?」
ピサロは右手で石を暫く持ちつづけ、石から感じる「何か」の正体を探ろうとした。
温もりは手の中に広がって腕を伝い、体全体を満たしていく。
「何か」が体を巡る感覚は実に心地がよく、それまで彼を包んでいた痛みをも忘れさせるほどだ。
「もしや…この感覚は…」石を凝視し、口に出して行ってみる。
「魔力…?」
彼の疑問に答えるように、魔石バハムートは一際強い輝きを発した。
満身の力をこめ、傷口にむかって自分が知る限りの回復魔法を唱えた。
それでも左手から放たれる癒しの光はどこか頼りなく、傷口を完治するには至らない。
「しかし、まあ、これで戦えるようにはなったな。」
一人呟き、頭上に広がる星空を見上げる。
「ロザリー…」
彼の愛する人の名…なぜ彼女までゲームに参加して、否、させられたのだろう。
ピサロの足元には、武器をその小さな手に持った事すらないであろう少女が眠っている。
あの邪悪な雰囲気をたたえた魔女は、なにを考えているのだろう。弱い物をゲームにいれた所で、ただ死ぬだけなのに。
いや、それが狙いなのかもしれない。
ゲームの参加者にとって大切な人が成す術もなく死んで行く姿を見せるためか?
例えば、ビビが親しい人―ガーネットと言ったか―を失ったと知った時、ひどくうなだれたように。
例えば、今自分がロザリーの死を何よりも恐れているように。
ある者は、ゲームに乗り狂ったように他の参加者を殺し、
ある者は、迫り来る死から泣き叫びながら逃げ惑い、
ある者は、親しい人を亡くしてしまったことに絶望する。
「傍から見れば、究極の娯楽ということか。」
しかし、その中に放りこまれた者達はたまったものではない。
ロザリーはまだ―少なくとも日が沈む前までは―生きている。何としても今一度再会し、護ってやらねばなるまい。
このゲームの、邪悪な思惑の通りにならないように…
ピサロがそうこう考えていると、近くで足音がした。
ゆらゆらと揺れるランプの灯火に、ふらついているような妙な足取り―ビビだ。
「お姉ちゃん…いなかった」
ピサロの元に辿りつくや否や、幼い黒魔導師は肩で息をしながら言った。
「ターニアちゃんは?」
「気が動転していたので呪文で眠らせた。」
「あ、そう…」
それからしばらくして、彼に起こった変化に気がついた。
あんなに苦しそうに息しながら、木に寄りかかっていたピサロさんが――立ってる。
「あれ?傷はもういいの?」
ビビが首を傾げると、彼は「ああ」と言い、懐から例の石を取り出し、「お前も触ってみろ」と手渡した。
ビビの手に触れた瞬間、魔石は輝きと魔力を発し、黒魔導師はうわあ、と声を上げて石を取り落とした。
「この石の魔力のおかげでなんとか回復できた…完全ではないがな。」
ピサロはそう言うと、深刻な眼であらぬ方向を睨んだ。
「それよりもあの女は逃げたか…厄介な事になりそうだ。ここから離れねばな。」
呟くと、足元でガサガサと紙を広げる音がした。
「あのね、ピサロさん。考えがあるんだけど」
ビビはいいながら、地図に記された森を指差す。
「ここがボク達が今いるところなの。それで、ここから西に、レーベっていう村があるんだ。」
「…それで?」
「今日はここで休まない?村ならちゃんとしたベッドもあるだろうし。」
「なるほどな。では、そうするとしよう。」
ピサロは言うと、眠ったままの少女を担ぎ上げ、ビビと並んで歩き出した。
村なら、他の参加者も集まるだろうな…ロザリーも来るだろうか?
歩きながら、そんなことを期待する。
しかし、彼女に気を取られていたせいか、ゲームに乗った者が村に現れるという可能性までは頭が回らなかった。
【ピサロ(HP3/4程度) 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可) 行動方針 レーベ村へ行き体を休める】
【ビビ 所持品:不明 行動方針 同上】
【ターニア(睡眠) 所持品:微笑みの杖 行動方針 ?】
現在位置:レーベ東の森をレーベに向かって移動中
んが、ミスった。
>>124 ×満身の力をこめ、傷口にむかって自分が知る限りの回復魔法を唱えた。
○そういえば昔、古い文献で読んだことがある。
「幻獣」と呼ばれる特殊な魔物が死する時、その身を小さな石に変えてしまうと。
石には膨大な魔力が秘められ、その魔力は半永久的に尽きることがないと。
「ほう…あの伝説は誠だったか。しかし全身にみなぎるこの魔力、尋常ではな…」
そこまで言って、ピサロは突然閃いた。
今ならできるかもしれない。体が魔力に満たされている今なら。
満身の力をこめ、傷口にむかって自分が知る限りの回復魔法を唱えた。
ジダンとリノアが本を漁っているとき、キーファは一人だけ攻略本を読んでいた。
コラムの欄もそうだが、沢山の参加者も目を通しておきたかったからだ。
色々な名前と特技などの特徴が詳しく書き込んでいるそれは、何故か頼もしく思えた。
沢山の人間の膨大な記録。全てを読むには難しいが、ランクの高いものは頭に入れるべきだろう。
そう必死にページをめくっていると、隣からリノアの声がした。
「これ。なんかこの国の近況の本だって」
「ふーん。それを何で俺に?」
「この攻略本に、もしかしてこれと同じことが載ってたりしないかなって」
「どういう事だ?」
リノアの話はこうだった。
この国がもし、元々「あった」のだとしたら、
この国に住んでいた人物がこのゲームに参加していたら、
その人物と合流することによって有利に立てるのではないか。
そういう事だった。
「成程…な」
キーファは、リノアの持ってきた本を早速開いた。
なかなか豪勢なつくりをしている。だが、意外にも薄い。
「近況」だからな…とキーファは思った。
ぺらりぺらりとめくって行く。そして、あることに気付いたのだった。
「オル…テガ?」
あるページにハッキリと書かれていた。
「勇者オルテガが妻と息子を残して魔王バラモス討伐の旅に出る…。
数々の街を回り、バラモスに後一歩と近づくも火山の河口に落ち戦死を遂げる。
兵士達により弔いが行われる中、妻が息子を勇者として育てると決意」
続きがある。
「息子アルス、16歳となり父と同じく魔王バラモスを討伐せんと旅に出る。
賢者セージと盗賊ローグ、そして僧侶フルートと共にバラモスを討伐するがゾーマの存在を確認。
ゾーマ討伐を決意し、その際にギアガの大穴の地下にて広い世界を発見。
最終的にゾーマを討伐するが、大穴が閉じ帰郷が不可能となる。だがある力により帰郷が可能となる。
神たる龍に挑んだ後、勇者オルテガも帰郷。世界に平和が戻った。
※尚、3行目以降についてはアルス一行本人の報告によるものである」
アルス、セージ、ローグ、フルート、オルテガ。
どれもこれも見覚えがある。
強い人間を確認しておこうとがむしゃらに呼んでいた時に見た気がする。
キーファはもう一度、攻略本を手にした。
「オル…テガ?」
あるページにハッキリと書かれていた。
「勇者オルテガが妻と息子を残して魔王バラモス討伐の旅に出る…。
数々の街を回り、バラモスに後一歩と近づくも火山の河口に落ち戦死を遂げる」
続きへと紡がれている。
「息子アルス、16歳となり父と同じく魔王バラモスを討伐せんと旅に出る。
賢者セージと盗賊ローグ、そして僧侶フルートと共にバラモスを討伐するがゾーマの存在を確認。
ゾーマ討伐を決意し、その際にギアガの大穴の地下にて広い世界を発見。
最終的にゾーマを討伐するが大穴が閉じ帰郷が不可能となる。だが、ある力により帰郷が可能となる。
神たる龍にに挑んだ後、勇者オルテガも帰郷。世界に平和が戻った。
尚、3行目以降についてはアルス一行本人の報告によるものである」
アルス、セージ、ローグ、フルート。
どれもこれも見覚えがある。
もう一度、攻略本を手にした。
「おいおいおい……マジかよ」
つい、驚きを声に出してしまった。
だが無理も無い。
なんと、名前の出た人間の中でAランクが2人。そしてBも2人。
エリートの中でも更に篩を掛けた様な人間。
ページを開いてみる。誤植でなければ化け物揃いだ。そう実感する。
詳細を読む。やはり、その強さを認識するだけで終わってしまった。
・アルス 強さ:A
仲間:セージ・ローグ・フルート 性格:正義感溢れる。芯が強いが、むっつりスケベな部分も
所持特技:デイン系呪文・アストロン・ベホマズン・剣技
対策法:最強の呪文と類稀なる才能に恵まれた剣術で攻撃してくる。
魔法はあまり得意ではないので遠距離から攻撃しよう!剣ではまず無理だ!
・セージ 強さ:A
仲間:アルス・ローグ・フルート 性格:プライドが高く自信家。斜に構える部分があるが意外に社交的(?)
所持特技:魔法使いと僧侶が習得できる呪文全て メラ系、ヒャド系、ホイミ系、全てを扱う。
対策法:無尽蔵の精神力・魔力と恐ろしい量の呪文を使い分ける遠距離の鬼。
接近戦には自信がないので、肉体的な体力で差をつけよう!呪文で煽っても死ぬだけかもね!
・ローグ 強さ:B
仲間:アルス・セージ・フルート 性格:柔軟な思考で状況を打破する。仲間に理想を持ちすぎ。
所持特技:鷹の目・盗賊の鼻・フローミ・レミラーマ・忍び足
対策法:状況に応じて素早く対応し、サバイバルな状況では生き残れそうな状態。
一度に騒ぎを起こして混乱を起こすといいかも!ただし大概は逃げられるかもよ!
・フルート 強さ:D
仲間:アルス・セージ・ローグ 性格:天然。おおよそ戦闘には向いていない。
所持特技:ホイミ系の回復呪文、支援呪文。
対策法:この状態であれば殺すのは楽だ!しかしストレスを与えない方が良いぞ!
刺激を与えずになるべく気付かれないように攻撃すると良いかも!一撃で殺さないと。。。
・オルテガ 強さ:B
仲間:アルス(子) 性格:勇敢。強大な敵にも一人で立ち向かう勇気を持っている
所持特技:バギクロス・ベホマ・斧術
対策法:パワーと体力があるので持久戦ではまず勝ち目はないぞ!
相手の精神力を削るか、遠距離で即効ケリを付けろ!
「どうしろと…」「スキがねーよ、なさ過ぎる」「おいおい…それができれば世話ないって……」
「え?なんだこりゃ…え?怖……ッ」「おいおいおいおい…勇者だぜ?」
読んだ。突っ込みながら読んだ。
殆どがエリートだ。恐ろしく強いのはわかった。
だが…。
問題はフルートだった。
あの奇妙な伏線を残した遠まわしな書き方。
エリート揃いの中で一人だけランクが低い理由が不明。
一言で言うと「仲間として相応しくないはず」だと思った。
暫く考えながらページをめくっていると、別項を発見した。
その別項には…特集か?と言わんばかりにある人物がピックアップされている。
そう、フルートだった。
キーファはまたそのページを凝視した。
そして、「信じられないことが発覚してしまった」と心底思った。
・フルート(裏) 強さ:A(ある意味Sかも!?)
仲間:いないと思っているかも!? 性格:凶暴。好戦的。
所持特技:僧侶系呪文・武闘家時代に修練した拳技、脚技・会心の一撃
対策法:おおよそ人類が生み出した中でも凶悪な人間。防御力なんざ無視の肉体の攻撃が唸る!叫ぶ!轟く!
これもキューソネコカミに頼るしかないかも!使う隙があればの話だけどね!!
なんだこりゃあ!!
はぁ!?誤植じゃないのか!?そうだ、誤植だ間違いない。
キーファはこの本に少し疑問を覚えてしまった。
だが多少間違いがあったとしても、真実というものは埋もれているもので。
キーファは嘘のようなその事実を受け止めきれず、腑に落ちないまま本を閉じることになってしまった。
【ジタン 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面 第一行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 第二行動方針:ゲーム脱出】
【リノア 所持品:不明 第一行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 第二行動方針:仲間と合流しゲーム脱出】
【キーファ 所持品:攻略本 第一行動方針:首輪解除の手段を探す 第二行動方針:フィンと合流しゲーム脱出】
現在位置:アリアハン城裏の図書館 (参加者解説は攻略本の一部、3人とも図書館で本読んでいます)
デールは、レーベへと真っ直ぐ歩いていた。
壊したいという感情だけで動く体は、疲れを知らない。
高揚した感情に有り難味を覚える。
こんな素晴らしい事に出会わせてくれた、この素敵な世界に感謝をした。
―――さぁ、壊そう。
僕はもう何も怖くは無い。僕はもう何にも邪魔されない。
僕は壊すんだよ、そう…壊すんだ。
醜く命乞いをする人間を壊して、僕は最後に生き残るんだ。
生き残って何をしよう。
そうだ、政治の形態を思い切って変えてしまおうか。
住人達は「恐怖政治だ」と言うだろうが、もう僕には関係ない。
僕が王なんだ、僕が皆を育てたんだ。孝行してくれても良いはずだ。
絶対生き残って、僕の為に命を捧げる人間を増やすこととしよう…そうだ、それがいい。
鈍く光る「刃物」に、どす黒い感情を圧縮したような微笑が映っていた。
【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)、ひそひ草、アポカリプス+マテリア(かいふく)
現在位置:アリアハン北の橋から西の平原→レーベへ移動
第一行動方針:レーベでバーバラと会い、殺害する 第二行動方針:皆殺し(ヘンリーが最優先)】
【昼前】洞窟の中を捜したが、ご主人はいなかった。
外に行ってみよう。
【まだまだ昼前】草に話しかけながら歩いている女の子がいた。電波?
【多分お昼ごろ?】緑髪の女の子と帽子のお兄さんが、騎士風の人の死体の傍で荷物を漁っていた。
見つかりそうになったので木陰に隠れた。怖かった。
【昼過ぎ】道に迷う。ここはどこ?
【夕方】お兄さんとおじさんとお姉さんが、お墓を作っていた。
「リチャードさん」なる人と、金髪の女の子のお墓も作りに行こうかと相談していた。
悪いと思ったけど、三人がどこかへ行った後で、こっそりお墓を掘り返させてもらった。
茶色の巻き毛の女の子で、僕の知っている人じゃなかった。
良かった……のかな。ともかく、ご冥福をお祈りします。
【放送】……サンチョさんの焼いたケーキ、もう一度食べたかったのに。
ピピンさん、ご主人たちと一緒にオンセンってところに行く約束してたのに……
【日没後、しばらくして】顔が爛れたお姉さんがものすごい勢いで走ってきた。怖すぎ。夢に出てくるかもしれない。
【夜】あとちょっと、平野まで出ればこっちのもの……って、アレ、ビアンカ様じゃない?
話し掛けようとしたけど、そのまま走って行っちゃった……僕、忘れられてるのかな。
【その後で】青髪の女の子をおんぶしためちゃめちゃ強そうな魔族の人と、とんがり帽子の子を見かけた。
魔族の人が僕を睨んだけど、それ以上は何もされなかった。
でも怖いものは怖いから、全力で走って逃げた。
【完全に夜】村の中で、さっきの帽子のお兄さんが緑髪のお兄さんに引きずられていた。
宿屋に入っていったので中を見ると、ご主人のお友達のヘンリーさんが寝ていた。
声を掛けようかと思ったけど、向こうは僕のことあまり知らないだろうし……
ここはご主人探しを優先させることにしよう。
他の家も調べてみたけど、さっき草に話し掛けていた女の子や、
綺麗なお姉さん二人と気弱そうなお兄さんぐらいしかいなかった。
【まだまだ全然夜】森の中でピエールさんらしき人を見かけた。すごい怪我だ。
助けたかったけど、僕は回復呪文はメガザルしか知らない……
ごめんね、ピエールさん……ご主人に会ったら伝えるから、それまで生きてて……
【その後、すぐ】見覚えのあるお兄さんが、女の人の死体の傍で、血まみれの腕をいじっていた。半端なく怖い。
どうも指にはめられた指輪を取りたいみたいだけど、硬直して取れないらしい。
早くレーベに行かないと、とか呟いてて、最後には指ごと切り落として取ってた。
当然、話し掛けずに逃げた。
……そうだ、思い出した。あの人、ヘンリーさんの弟の、ラインハットのデール王だ。
何やってんの? あの人……
【さらにその後】平野で死体を見つけた。その傍で、ネズミ風の人が穴を掘っていた。
近づいて顔を見た。……ヘンリーさんの奥さんのマリアさんだった。
ネズミ風の人が僕に気付いて、知り合いかと聞いてきたのでうなずいた。
一緒にお墓を作るか? と言われたので、僕も手伝うことにした。
ヘンリーさんに知らせに戻ろうかと思ったけど……あの惨殺死体じゃ、逆に知らせない方がいいよね。
そういや、そろそろデールさんもレーベに着いてる頃かな。
【夜が更けてきた】森の中で、首輪とメモを拾った。
何が書いてあるのかわからないけど、ご主人なら読めるだろう。持っていこう。
【それにしても】大陸一周してるのに、ご主人にはまだ会えない。
どこにいるんだろう……?
【はぐりん 所持品:エリクサー×10 ブロードソード レーザーウエポン 首輪×2 研究メモ
行動方針:仲間との合流(リュカを最優先、戦闘はできるだけ避ける)
現在位置:アリアハン北の森の中】
【エリア 所持品:妖精の笛、占い後の花
第一行動方針:休憩中 第二行動方針:サックスとギルダーを探す】
【ギルバート 所持品:毒蛾のナイフ
第一行動方針:休憩中 第二行動方針:リディアを探す】
【レナ 所持品:不明
第一行動方針:休憩中 第二行動方針:バッツとファリスを探す】
【現在位置:レーベの民家(バーバラとは別)】
【フライヤ 所持品:アイスソード えふえふ(FF5)
現在位置:アリアハン北の橋から西の平原
第一行動方針:竜の気(カインの所)へ行く】
【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)、ひそひ草、アポカリプス+マテリア(かいふく) リフレクトリング
現在位置:レーベ入り口
第一行動方針:バーバラと会い、殺害する 第二行動方針:皆殺し(ヘンリーが最優先)】
137 :
嵐の前の:04/12/15 09:58:22 ID:DakYKSua
レーベの村で一番背の高い民家、その上に降り立つ影がひとつ。
ふわり、と音をたてず華麗に着地する様だけならば、いつもとなんら変わりない。
しかし、竜のよう着地した彼はそのままふらつき、口を抑え激しくせきこんだ。
月明かりに照らされる、病人のように青い頬を伝わるのは冷たい汗。
普段は高い誇りと強い精神を持つ彼も、今だけは、まるで傷ついた竜のように。
「げほっ、げほ…く、くそっ…」
――死体や、殺人現場を見たこと事態にはもちろん抵抗などない。
ただ、あまりにも異常なアレは。
アレが引き起こした、あまりにも異常な出来事は。
どうにも、気分の悪さが収まらなかった。
(駄目だ、こんなことでは…)
そう思う。しかし、おぞましい声は呪いでもかけられたかのように耳から離れずに、心に圧力をかけていく。
(これが…人間であることを捨てた、アレの力なのか?)
自分は人として人を裏切り、罪を犯す。
しかしアレは違う。すでに人ではないので、人としての罪を負わないのだ――
138 :
嵐の前の:04/12/15 09:59:32 ID:DakYKSua
(…?)
カインはふと立ち上がり、東の方向へと目を向けた。ふいに、風に乗って届いたのは声き覚えのある声。
「…エリア、レナさん、ちょ、ちょっと…待って…はあ、はあ…」
「…ギルバート。なんであなたが私より疲れてるの…」
「ふふ。もう少し体力をつけるべきかもしれないわね」
(ギルバート王子か…)
一見すると三人組の女性にも見えるが、カインはその内の一人を知っていた。
もっとも、彼はセシルと仲が良かっただけなので、カインと直接会話したことは数えるほどしかないが。
三人は屋根にカインがいることなど全く気付かずに、会話を交わしながら民家へと入っていった。
(……いいんだ。ここは人が集まる。チャンスはまだまだある…今は、)
静かな夜風に身を預けて、汗が乾くのを待とう。
――ただ、逆に気がかりなのは今のこの静けさだ。
嵐が目前に迫っていなければいいのだが。
【カイン 所持品:ランスオブカイン 現在位置:レーベの村・レナたちのいる民家の屋根上
第一行動方針:気分を落ち着かせる 基本行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
二人が夕飯を食べて寝静まってから、どのくらいたっただろうか。
彼は剣を片手に、敵が来ないか警戒しつづけていた。
体は疲労感につつまれ、正直言って眠い事この上ないが、3人ソロって寝転がるんじゃ無防備過ぎる。
幸か不幸かここは宿屋。たぶん、夜が更けて行くことを考えるとこの先何人かここを訪ねてくるだろう。
それが自分達と同じくゲームに乗ろうとしない人なら願ったり叶ったり、仲間は多いほうが心強い。
喜んで協力を求め、一緒にここを守ってもらおう。相手も同じ事を考える筈だ。
しかし、もしもゲームに乗ったのが来たら…?
ふと、剣を握る手が小刻みに震える。…やめよう。そんなこと考えるのは。
「…寒いなあ…」
だれにともなく、呟いてみる。
勿論、誰も答えない。心細さを紛らわそうと言ってみたが、逆効果だった。
それからしばらくして、来訪者は突然やってきた。
不意に目の前のドアが開いた。
ソロはとっさに剣を構え、「誰だ!」と吼える。辺りが暗く、顔がよく見えない。
それから睨み合うこと十数秒。ふと、影の足元から小さい、妙な帽子を被った子供が歩み寄ってきた。
「安心してお兄ちゃん。ボク達は戦うつもりは無いよ。」
子供がそういうと、影の方もゆっくりとこちらに歩いてきた。
ランプの光に照らされて、ゆっくりと顔が露わになる。鋭い目つきをしたそいつは―――
「ピサロ!」
なんてこった。こんな奴までゲームに参加しているなんて。
「…あまり大きな声を出すな。どこにだれがいるのか判らんのだぞ」
ピサロは名を呼ばれるや、冷静に言った。
考えてみればそれもそうだ。つい今しがた、この宿屋に何人もの人が来るかもしれないと考えていたのは自分じゃないか。
「まあ、それは置いておいて…我々もここで休ませてはくれないか?」
言った。いきなり言った。
ソロが予想したなかで、多分最悪な要望。
しかし、小さい子供が一緒にいるぐらいだ。少なくともこちらに対する戦意はなさそうだ。
それに、ピサロの力はこの状況下では無視できない魅力だ。
「お願い、お兄ちゃん。」
足元の子供はすがるように懇願してくる。「せめて、ターニアちゃんだけは休ませてくれないかな?」
そう言われて初めて、ソロはピサロの小脇に抱えられた少女に気がついた。
「ターニアちゃん…?」
「そうだ。殺されそうになっている所をビビが助けた。血を見ると気が動転するらしい。」
ターニアというらしい少女は、スースーと可愛い寝息を立てている。が、あまりにも弱弱しい。
か弱い、無防備な少女と、子供の懇願するような眼差し…ソロは、ついに折れた。
「…分かりましたよ。でも代わりと言ったらアレだけど、僕の代わりに見張りやってくれません?」
ピサロは少し考えるような素振りを見せたが、やがて「…良かろう」と頷いた。
今夜ロザリーを捜すのは諦めよう。
傷はまだ回復していないし、暗い中無闇に歩き回るのは危険過ぎる。
夜明けに再び魔女が現れた時、ロザリーの名が告げられないことを祈る他無い。
ソロは呪文を何度も使って疲れていたせいか、あれからすぐに眠ってしまった。
目の前ではビビがドアの方を向いて佇んでいる。そこで初めて、ピサロはある事に気がついた。
彼が「おい」と言うと、ビビはピサロを振り向き、「何?」と歩み寄ってきた。
「お前…自分がどんな武器を与えられたか分かっているか?」
言われて初めて気づいたようで、ビビは肩からぶら下げたままのザックを床に下ろした。
「…爆発しないよね?」
ビビが冗談交じりに言うと、ピサロはフンと鼻で息をし、微笑した。
(あ…笑った…)
黒魔導師が知る限り、始めて見る彼の笑顔だった。
恐くて、冷たくて、ちょっと嫌な人だけど…ほんとは優しい人なのかな?
そんなことを考えながら、ザックの中身を探り出した。
初めに出てきたのは、細長くて、刃が曲がってる剣だった。自分はこの類の武器は扱えないので、ピサロさんに預けた。
二つめに出てきたのは、ビビも見たことのある、真っ黒なローブ。どうせだからこれに着替えなよと、これもピサロさんにあげた。
それで、最後に出てきたのは―――
「なんだこれは?」
ピサロが訝しげに最後の武器を手に取った。自分の見たことの無い、なにやら奇怪な道具を。
「棒…いや筒?どっちにしろ使い物にならんな。」
そう言って”使い物にならない道具”をザックに戻す。
「じゃ、ボクもう寝ちゃっていい?疲れた…」
眠そうなあくびをして、ビビはベッドに歩いて行った。
まあ、爆弾ではなかったな…一人残された男は、ビビから受け取ったローブを身に着けた。
しかしこの時、ピサロもビビも気がつかなかった。
最後にザックから出てきた「役立たず」…それが、ある意味では非常に恐ろしい爆弾になりうることに。
【ビビ(睡眠中) 所持品:スパス
第一行動方針:寝て疲れを取る 第二行動方針:仲間達と合流】
【ピサロ(HP3/4程度) 所持品:天の村雲、スプラッシャー、魔石バハムート黒のローブ
第一行動方針:宿屋に誰か来ないか見張りつつ、傷と疲れを癒す 第二行動方針:ロザリーを捜す】
【ターニア(睡眠中) 所持品:微笑みのつえ第一行動方針:?】
【アーヴァイン(HP4/5程度、睡眠中) 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) グレートソード
第一行動方針:休息/銃かボウガンを手に入れる(ビビが銃を持っている事を知ったら…?) 第二行動方針:ゲームに乗る】
【ソロ(MP消費・睡眠) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
第一行動方針:ヘンリーに付き添う/自分の休息】
【ヘンリー(負傷、睡眠) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可) 第一行動方針:傷の治療】
現在位置(共通):レーベの村・宿屋
パウロは、目覚めてからやさしい女性の笑顔を見た。
本当に怖かった、でも彼女なら大丈夫と、恐怖がどんどんとなくなっていったのだ。
不思議だった、自分でも。
その後、自分のことを話した。ロランのこと、ムースのこと、シドーとかについて。
彼女、セリスもいろいろ話してくれた、大切な仲間のこと、空駆ける不思議な船のこと、ケフカという狂人のこと。
いろいろな話を聞いている途中だった、アリアハン中に響く一つの悲鳴と一つの叫び。
思わずパウロは持っていた紅茶を慌てて置く。
「セリスさん!今の声…もしかして」
「ええ、そうね。考えたくないけど……」
セリスもそこで言葉を切る、恐らく先ほどの声の主はもうこの世には居ないだろう。
ゲームに乗った人物が、自分の知り合いではないこと。
それだけを切に願っていた。
しばらく後、あの邪悪な魔女の声が聞こえた、死者の名前が読み上げられる
その中に居たティナと、シャドウ。
仲間が二人…死んだ。嘘だ、そんなことがあるわけが無い、そう思いたかった。
「ムース…なんで?」
パウロも同様だったらしい、先ほどの放送で呼ばれた名前の中に、仲間が居たのだ。
それ以降、顔を下に向けてずっと呟いている。
ふと、参加者のリストを見る。ティナ、そしてシャドウのところに赤線がびっしりと敷かれている。
二人が死んだということを、もう一度思い知らせるような、現実という剣だった。
自分の中からこみ上げるやるせなさが彼女を包み込んだ。
少したってからだろうか、キィン!という一律の音が鳴る。
外から聞こえる金属音に反応し窓から外を見る、骸骨の怪物と自分と同い年ぐらいの青年が戦っている。
見るからに青年が劣勢だ、自分に出来ることならあの怪物を倒す手助けをする。できれば情報が聞きたいけれど…
セリスは、袋から樫の杖を取り出す、武器はこれしかない、だが無いよりかはマシだ。
杖を握り、セリスは青年たちを援護しに行かんと家から出ようとする、が。
そのセリスをパウロが慌てて止める、だがセリスはその手を振り払う。
「無茶ですよセリスさん!あんなでかい怪物とそんな杖で闘うなんて!」
その顔は、会った時の臆病な顔に戻っていた、セリスは冷たく言い放つ。
「パウロ?貴方は勇者でしょう?なぜ怪物と闘うことから逃げるの?」
刺すようなセリスの一言、パウロは下を向く。
「だって僕は…いつもロランとムースの後ろから援護してるだけだった。
あの二人が居たから、僕は戦って行けたんだ…あの二人が居ない僕なんて―――」
バシィッと高く音が響く、パウロが思いっきり吹き飛ばされる。
頬が赤く腫れる、痛い、ズキズキする、でもそれは痛みじゃない別の何かが。
「じゃあ貴方は勇者なんかじゃないわ、ただの臆病な戦士よ」
え?とパウロが顔を起こす、セリスの顔は子供を叱るような母親のような顔になっていた。
「本当の勇者って言うのは一人でも、どんな危険があっても、誰かを助けようとするの、例えそれが見知らぬ人でもね」
痛い、ズキズキする。叩かれた頬より心が。
何本もの槍で突き刺されているような気分だ。
「本当に、貴方が勇者の内の一人なら…私に着いて来て、そしてあの怪物と闘って」
最後の槍をパウロの心に突刺し、セリスは民家から出た。
その言葉を受けてからパウロは少し呆けていた。
(――ロラン、僕は…僕は一人で戦えるかな?
君なら戦えるだろうけれど僕は―――)
パウロはじっと己の手を見つめた、その手に託された可能性を見つけるため。
一回頷く、ゆっくりとドアに手をかけ勢いよく開けた。
破壊神を滅ぼした三つの光のうちの一つの光が、今もう一度目覚めようとしていた。
【パウロ 所持品:破壊の剣(使う気0)
現在位置:アリアハン城下町東側の民家二階
第一行動方針:サイファー達に加勢 第二行動方針:ロランを探す】
【セリス 所持品:樫の杖 シャナクの巻物
現在位置:アリアハン城下町東側の民家二階
第一行動方針:サイファー達に加勢 第二行動方針:ロックを探す】
オルテガの振り下ろした斧をレオは軽く飛び跳ねて避け、哮った。
「何故邪魔をする!」
パパスは剣を構えていった。
「そなたは、自分のしようとしていることがわかっているのか?」
レオは、吹雪の剣を二人に向けて叫んだ。
「ああ、よくわかっているとも、だから、邪魔をしてくれるな!」
それをきき、パパスは唇を噛み締めて嘆く。
「事情はわからぬが、そなたほどの者が…その行為、止めねばなるまい」
パパスは瞬時にして間合いに入り、その剣をおろす。
レオはそれを受け止め、腰をかがめてパパスを抜きさる。
その先に待ち受けるオルテガの斧を、間一髪で避ける。
しかし、攻撃を連続してかわしたためか、足が縺れ体勢を崩してしまった。
捕らえようとオルテガが襲いにかかる。
レオは刹那、眼をつぶったかと思うと、次の瞬間に剣を振り上げて飛び出した。
「ぬぉぉッ!?」
剣から激しい衝撃波が生み出され、不意を突かれたオルテガはそのままひざまずく。
「貴様、いったいなにを!?」
続いてパパスが剣を振り上げた。
先の渾身のショックで、レオはうまく立ち上がることができない。
しかし、それでも再び剣を持ち直し、防御とカウンターの機会を狙う。
パパスの鋭い斬撃がレオを襲う…はずだった。
それは、ひゅんと音を立て、眼前に突き刺さったナイフに止められた。
「誰だ!?」
出てきたのは、中世的な顔立ちをした若者――パパスには、その性別の判断がつかなかった――ファリスであった。
「おっさんたち、何してるんだよ!」
ファリスが怒鳴り込むと、レオは落ち着き払ってこういった。
「ファリス、感謝する。私は再び、ケフカを追う!」
そして、今度はすっと立ち上がると、森の奥の方へと走りだした。
「なっ!?」驚きの声が三つ重なる。
「待て、どこへ行く!」ショックの傷により追うことのできないオルテガの周りを、真空の刃が巡る。
その刃は瞬く間にしてオルテガを離れ、レオに向かって動き出した。
「何をするんだ!」ファリスはそう叫ぶと、大きな火球をそれに向かって打ち出す。
「む、むううん!」
空気の断層が火をひきちぎり、真空の刃は火にうち消された。相殺。
「貴様ッ!」
パパスが怒鳴った。ファリスは向き直っていった。
「おっさん、どうしてレオを襲ったんだ?」
「あの男は、無実の人を殺そうとしたんだぞ」
ファリスは興奮していった。
「無実の人だって?誰のことだいそりゃ!レオが倒そうとしているのは、妙な男一人だけじゃねえか!
レオがああいってるんだ、あいつはきっといますぐにでもぶっ倒さなきゃならないようなやつなんだよ!」
「何を根拠にそういうのだ?」
そういわれて、ファリスはふと言葉に詰まった。
レオとは、今会ったばかりである。レオのことなど、何も知らない。
「なんで、って…」口ごもるが、それでもファリスは、レオのことをなんとはなしに信用している自分に気づいた。
「…たしかに、戦いの途中、彼から邪気は感じなかった」
少し離れたところから、オルテガが口を挟んだ。
「オルテガ…大丈夫なのか?」
「ああ、まだ少し痛むがな。とにかく、私も彼をなかなか悪人とは思えないことも事実だ」
「邪気を感じない、ということには同意しよう。しかし…」
「まあ、待て。あの男の、あの状況にして咄嗟にだした一撃…予想だにしなかったこととはいえ、ものすごい威力だ。
相当に名のある武人に違いない。そしてあれは、少なくとも暗黒の力ではなかった」
「そうかもしれぬ。さりとて、簡単に信用できるものでもない」
「ならば、あの傷ついた男のいうこともまた、鵜呑みにするべきではないだろう」
「…なるほど」
パパスはここにきて、うんと唸った。
ファリスはこの壮年の二人がいったいなんの話をしているのか、よくわからなかった。
どうも風向きが変わったなとだけ、感じ取った。
不意に、パパスが口を開いた。
「私の名はパパス。向こうにいるのはオルテガだ。そなたの名は、何という?」
「俺か?俺は…ファリスだ。信用してくれたのか?」
「いや…そなたのいうことも一理あると思っただけだ。真実はわからぬ。おそらく、そなたもそうであろう」
「…ああ、でも…」
「この状況だ、何があってもおかしくはない。裏切られる、ということもあろう」
「……」
ファリスは押し黙った。
「知り合いはいるのか?」
ふと、オルテガがたずねた。
「…いるよ。だけど、もう、一人…」
皆までいわずとも、どういうことかははっきりとわかる。
「そうか…。それで、おまえはこれからどうするつもりなんだ…?」
「残りの仲間を探す。妹と、あいつ――」
「妹、か…」パパスが言った。
「このゲームでは、まずわかっていなければならないことがある。
仲間だから信頼できるのではなく、信頼できるから仲間なのだ。
それがわからず、取り返しのつかないことになる者もいよう…いや、既にいるのかもしれぬ。
その意味で、血の繋がりというのは…格別だ」
「…バッツは、信用できる」
「すまない、血の繋がらない仲間は信用できないといったわけではない」
もちろん、ファリスのレナに対する信頼は、血の繋がりが大きく影響しているのは間違いがない。
…しかし、バッツに対してはどうなのだろう。
バッツへの信頼感の源は、なんなのだろうか。
―――バッツ?レナたちと宿屋にいたんじゃなかったのか?
―――ちょっと逃げてきた。まったくあいつら、口を開けたら止まらないんだよ。
―――ああ、わかるぜそれ。なんていっていいんだかわからないんだよな。
―――ほんとにな。女ってのはみんなああなんだから、どうしたもんだろ。
―――……
―――ん?どうしたんだ、ファリス。
―――バッツ……
―――うん?
―――俺も、女なんだけど…
―――……ああー、そういえばそうだったな、わりぃ、忘れてた。
―――ガスッ!
―――痛ってーー!やっぱおまえ男じゃないのか!?
―――うるせえ!ぶん殴るぞ!
―――もう殴ってるじゃねーか!
―――うるせえ、うるせえ!俺はもう寝る!
―――なっ、ちょ、ちょっと待て、待てったら………ファリス………………
なんとなく、思い出した。
覚えているのは、男扱いされて怒ったことなど、なかったから…。
でも、どうして今こんなことを?いや…
ファリスの思考を、雷鳴が遮った。
「なんだ…?」オルテガが呟く。
今度は、崖崩れが起きたかのような爆発音が聞こえた。
「…行こう」「ああ」二人はその方向へと駆けだした。
「お、おいっ!」
ファリスの呼びかけに呼応したわけはないだろうが、パパスが振り向いた。
「妹がいるといったな」
「あ、ああ…」
「このゲームで…命を懸けても、守りきるのだ。いいな」
そういうと、パパスは踵を返して、レオとは反対方向の、森の奥へと消えていった。
ファリスはぼんやりと、パパスの言葉の重さも知らないで、ただなんとなく、
姉じゃなくて兄に思われてるのかなあ…と考えていた。
【レオ 所持品:吹雪の剣 鉄の盾 神羅甲型防具改
第一行動方針:ケフカ殺害 基本行動方針:ゲームに乗らない】
現在位置:レーベ南の森南東部→奥
【ファリス 所持品:王者のマント 聖なるナイフ
第一行動方針:? 第二行動方針:仲間を探す】
現在位置:レーベ南の森南東部
※ファリスがオルテガたちの後を追うかどうかはわかりません
【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント
第一行動方針: 第二行動方針:アルスを探す
最終行動方針:ゲームの破壊】
【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
第一行動方針:レオを止める 第二行動方針:仲間を探す
最終行動方針:ゲームの破壊】
現在位置:レーベ南の森南東部→音の方向(南部、ピエールたちのいる場所)
151 :
覚悟1/2:04/12/16 18:58:38 ID:qmIoh3ho
――殺された、自分達のせいで。
――もういない、ラグナもエーコも。
「畜生…!」
(フン、負け犬の遠吠えだな。)
マッシュの頭の中で誰かが応える。
―兄弟子のバルガス。
まだダンカン師匠に弟子入りしたての頃、何度試合をしても奴にはかなわなかった。
(畜生…!なぜだ、なぜ…勝てない?)
打ちのめされ、傷だらけで地面を這いながら何度も俺はそう呟いた。
そしてそんな俺に、何度も奴はこう吐き棄てた。
(ふふ…、才能の差だ。俺は師匠の実の子だからな。赤の他人であるお前とは違う。)
――こんな時にあの頃を思い出すなんて。修行不足なんて言葉じゃあ…済まされないな。
2人の亡骸を前にして跪いたマッシュの目に、とめどなく涙が溢れた。
152 :
覚悟2/2:04/12/16 19:01:29 ID:qmIoh3ho
「弔って…、やらなくちゃね。」声が、震えていた。
アイラは平静を装ったつもりだった、こみ上げてくる言いようの無い怒りと悲しみをこらえて。
(恐らく2人ともすぐには立ち直れないでしょうね、さっき助けた彼女も頭を抱えて震えているし…
ここで私がしっかりしなきゃ…、…?)
――それは取り越し苦労だった、涙を払いながらゆっくりと立ち上がる2人。
―彼等は強い。
話を聞いたわけでも、本を読んだわけでもない。
それぞれの世界で、それぞれの困難に立ち向かいそれを打破した者たち。自分と同じその力を彼女は感じ取っていた。
物からではなく人々の記憶からでもなく、今目の前に息づくそれそのものの存在から直に。
「そうだな、人殺しの…せめてもの罪滅ぼしだ。」
スコールは言った。何か吹っ切れたような、清廉な表情で。
「とりあえずアイラは脅えてるそいつに付いててやってくれ、あとは俺達がやる。」
そう言って振り返ったマッシュの目は、ティナを信じたあの時と同じ光が宿っていた。
「ええ、分かったわ。私もくよくよしていられないわね。」
アイラは、励まそうとした二人に逆に励まされた気がした。
(もうこれ以上誰も殺させない、仲間は俺達が守る。)
2人の覚悟が宿った表情を、青白い月灯りがより洗練なものにしていた。
153 :
覚悟:04/12/16 19:02:40 ID:qmIoh3ho
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石
第一行動方針:2人の弔い 第二行動方針:ゲームを止める】
【アイラ 所持品:ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ
第一行動方針:ティファの介抱 第二行動方針:ゲームを止める】
【ティファ 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
第一行動方針:不明】【現在位置(四人共通):東山脈中央部の森・川辺付近】
死闘から一寸時を刻んだ後…
セージはビアンカの支給袋を勝手に弄っていた。
本人の許可が無いのは気が引けるが、疲弊している女性を起こすのはもっと気が引ける。
何か武器が無いかと探していると……何かを掴んだ。
「なんだか同じような手順を踏んでる気がするけどねぇ…」
またハズレなのか、という思いが脳裏を駆け巡る。
実際、中の手触りは紙だ。もうその時点で武器ではない。気分は最悪。
一気に手を出すと、その手に握られていたのは…とても見知ったものだった。
「うわ、懐かしいなまた」
出てきたのは、巻物。
開くとやっぱり。小難しいことが書かれている。
「お兄さん、これは?知ってるものなの?」
「ああ、もう懐かしすぎてたまんないね。
これは悟りの書といって、僕が賢者となる為に手に入れなければならなかった道具なんだ。
これを"神に選ばれし人間"が理解して、特別な修行をすると"賢者"を名乗れるようになる」
タバサに手渡すと、最後にこう付け加えた。
「早い話、僕の為の魔法教法」
タバサはセージの言葉を聞いた後、静かに悟りの書を開いた。
「セージがかつて使っていた魔道書」と言う肩書きに惹かれたのだ。
要するに、深い探究心と好奇心だった。
―――なんだろう。
理解はできないけど、何か不思議な感じがする。でも嫌な感じじゃない。
この本が魔力を持ってるのか…内容に秘密があるのか…
それはよくわからないけれど、凄い物だと思う。
「魔力という概念」「魔術師と僧侶の力の根底」「"呪文"の定義」
「"悟り"とは何か」「魔力と全ての生物の関係」「魔道の光と闇」
軽く流して呼んだだけでもこれほどの事がかいてある。
本格的に読み取ってみると、もっと細かい知識が詰め込まれている。
グランバニアの本には書いていない話が、
グランバニアの魔術師が教えてくれない経験が、
グランバニアの…いや、全ての世界の本や魔術師が「知らない」領域が、
その全てが、この巻物に詰め込まれているとすら感じてしまって―――
「…〜い…バサ……タバサ〜、ねぇタバサ。お〜い…」
「………え?ええ…え!?あ、はい!!」
周りの音が聞こえないほどに、没頭してしまった。
「面白かったかい?」
「うん…何か知らなかった事が多すぎて、私の世界の人も知らないことがあって…」
「魅力を…感じた?」
「うん!凄く!ねぇお兄さん、もし良かったら…これ貸して!お願い〜!」
「え?ああ、良いよ。理解できなくても暇つぶしにはなるだろうし、少しでも理解できたら儲けものだしね」
「ありがとう!」
タバサが子どものように…いや、この姿が正しいのだろうが、はしゃいで喜んだ。
そしてすぐに、また巻物を開いた。熱心に読んでいる。並みの子どもは持っていない集中力だ。
それを見た後、セージがベッドに視線を移した。
静かにビアンカが寝ている。汗が引き、静かに眠っていた。
「とりあえず越えたね…峠は」と、安心した様子で視線をタバサに戻すと…
「あらら、寝てるじゃん。まぁ子どもだもんねぇ…はは、仕方ない仕方ない」
セージは軽く楽しそうに笑い、
寝ているタバサの隣にある袋に手を伸ばした。
そして悟りの書を、そっとタバサの袋の中に入れてあげた。
そして思う。
あの子は確かに、そして明らかにあの巻物の内容について答えた。
勿論浅くだろうが…内容を読み取れるという何よりの証。
更にあの子は、あの書に魅力を感じた。
この世の理すらも書き連ね、優秀な魔術師も根を上げる程の…あの書の重みも感じなかった様だった。
もうこれは、才能という領域を超えているのかもしれない。
何が「少しでも理解できたら儲け物」だ。
この書を持ったものは、神に選ばれし者を除いては全て「理解できない」のだ。
「少し勉強になったかも」とか、そんな中途半端な感想は絶対に得られない。
「ナルシストだ」と言われようが、自分に非は無い。
本当に賢者は「神に選ばれし者」だ。そしてあの書を理解できるものもまた「神に選ばれし者」だ。
かく言う自身も…この世界で神に選ばれ、そうなるべくして世に生を受けた様なものだ。
だが、あの子は別の世界で生まれた。その世界で「天空の勇者」と呼ばれた人間の子孫として…。
この子は特別だ。そしてもう、その道の軌道に乗っている。
「兄が勇者なら妹は賢者…か?
だけどこの子…僕の様な魔道に詳しい人間が教授すれば……化けるぞ」
そこまで思考を進め、彼は眠る事にした。
明日はどんな修羅場が待ち受けているのか。
そしてこの子がどう成長していくのか。
そう考えながら。
【セージ 所持品:ハリセン・ファイアビュート
現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋
第1行動方針:睡眠 基本行動方針:タバサの家族を探す】
【タバサ 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑・悟りの書
現在位置:同上
第1行動方針:同上 基本行動方針:同上】
【ビアンカ(疲労回復) 所持品:なし
現在位置:同上
第1行動方針:睡眠中 基本行動方針:不明】
だそうです。
159 :
殺人嫌悪:04/12/16 23:13:29 ID:N/m/9JYs
「うっ、がぁっ、ゲホゲホッ」
胸の中が熱い。胃の中の物が込み上げる。
思わず中のモノを吐き出す。誰かに見られていては出来ないことだが。
――冗談じゃない。アレは…何だと言うのだ!
自分にあるのは生き残りへの願望だ。
それは正しい。人間である者に平等に与えられた欲望だ。
――だが、アレは何だと言うのだ!
生き残るために手段を選ばないのなら、分かる。
――だが、アレは何だと言うのだ!
見た目は貴族風だったと思う。
否、寧ろ王族のようだった。
それが、何をした?
生き残るために誰かを殺したのではない。
己の本能、欲望、そして…快楽。
そのために人を殺したか。
――アレは何だと言うのだッ!
認めるか。
確実に、このゲームは、人の心を蝕んでいるのだと。
そして、狂気に満ちたあの『怪物』の存在を。
自分の見た映像が心から早く消え去ることを祈った。
知らずの間に己に芽生えた殺人に対する嫌悪感などに、気がつくはずも無く。
「未だ、様子を見る必要があるか」
未だ拭えない吐き気を抑えながら、再び大地に目を向けた。
【アルガス(視覚聴覚向上) 所持品:無し 現在位置:ナジミの塔最上階
行動方針:偵察し、使えそうな人物をこのステージの間に捜す
第二行動方針:多くのアイテムを集めておく
最終行動方針:どんな手を使ってでも生き残る。但し、本人は気づいていないが殺人に対して嫌悪感アリ】
鳥の鳴き声が途絶えたのはいつだったか。
けたたましく、響きわたっていた、フクロウの声はどこへ消えたか。
ザックスは上方を仰いだ。
さくり、と草を踏む普段は気にもならないような音がやけに騒々しく聞こえる。
ザックス達3人はマシンガンによる奇襲者から少しでも距離を稼ぐべく、
さらに樹々の間隔がせばまった感のある 森の奥地へと入り込んでいた。
押しつぶされそうに濃い緑の間からもれる月の光は、ほんのわずかしかない。
「……静かですね」
シンシアがささやくように言った。互いの呼吸音さえ鮮明に聞こえる程の静寂の中で、地声は不要だった。
「そうだな…」
しん、と澄みわたる空気に、自分の呟きが吸い込まれていくような。
そんな錯覚をおぼえながらも、ザックスは別のことを考えていた。
「ザックス?」
自分の緊張が伝わったのか、ランドが不安そうに声を揺らした。
「……知ってるか、ランド」
肩に引っかけたザックを、わざと音を立てて担ぎなおす。
「音のない森には何もいないんじゃない。何かがいるんだ」
森に住む生物は、食物連鎖の上位に立つ存在を確認したとき、いっせいに息を潜める。
ここに餌になるものは居ないのだと、主張するかのように。
「それってつまり…」
「…ああ、オレ達の他にも誰かがいるってことだ。それも割と近くにな」
ランドの喉が緊張のためかごくり、となった。
――そしてシンシアの持つ対人レーダーに新たに2つの反応を捕えることになるのは、
間もなく数秒後のことだった。
【ザックス 所持品:スネークソード 毛布
現在位置:アリアハン北部の森奥地
第一行動方針:襲撃があった場所から離れる 第二行動方針:主催者に一泡吹かせる】
【シンシア 所持品:万能薬 対人レーダー 煙幕×2 毛布
現在位置:同上 行動方針:ザックスについて行く】
【ランド 所持品:オートボウガン 魔法の玉 毛布
現在位置:同上 行動方針:ザックスたちについて行く】
冷えきった夜風が顔を叩きつけ、その拍子にハッと目が覚めた。
どうやらうたた寝していたらしい。辺りを見ると、世界はすっかり闇に包まれている。
なんてこった。屋根の上などという見晴らしのいいところで、堂々と居眠りするなんて。
目を凝らし、闇に目を慣れさせようとすると、あの忌々しい記憶がに再び蘇った。
悲鳴を上げ、混乱して泣き叫ぶ女性。
わけの分からないことを言いながら、その女性を八つ裂きにする若者。
カインは頭をぶんぶんと横に振り、なんとか振り払おうとした。
しかし、あの光景が鮮明に目に焼きつき、脳裏から離れようとしない。
―――いつまでもこんなところにいるのは危険だ。どこかに身を隠してゲームの様子を伺おう―――
混乱し、しかしどこか冷静な頭がそう告げる。
彼がそれに従い、屋根から移動しようとした、その時だった。あの魔物の声が聞こえたのは。
「見ぃつけた」
カインは凍りついた。あいつが、いや、アレが、まさかこんなにも早く自分の前に再び現れるとは。
今一番見たくなかったアレが…もはや魔物に、いや、それよりも醜い存在であるアレが!
震えあがるカインを正面に見据え、デールは続ける。
「お前はマリア義姉さんを壊した時にいたな?…あの時の続きだ。こいつと戯れろ。」
あの時自分を襲った得体の知れない武器。
それが再び金切り声をあげようとする寸前、カインは咄嗟にジャンプして回避した。
一瞬前まで自分が座り込んでいた屋根が無数の鉛に襲われ、蜂の巣のようになっていくのを尻目に、
着地して最初に視界に入った民家のドアを蹴破り、中に逃げこむ。
テーブルを倒し、その裏側に隠れた瞬間、またも鉛の風が先ほど蹴破ったドアの方から吹き荒れた。
鼓膜が破れそうなほどの轟音がし、家の中にある全ての物が破壊されて行くなか、アレが狂った叫び声を上げた。
「逃げるなああ!僕に壊されて死んでしまええぇぇぇぇえぇえ!!!」
ぞっとするような、悪魔の雄叫び――――それを聞きながら、カインはこの劣勢を打開する策を練っていた。
この状況下で、相手の不意をつき、かつ自分にできる確信がある行動…竜騎士には、短時間では一つの策しか思いつかなかった。
相手の周りはさっきから謎の飛び道具を乱射しつづけたせいで、白い硝煙と火薬の匂いに包まれている。
そのせいでこちらの動きはまったく見えない筈だ。だとすればやるなら今しかない。
槍を垂直に上へ向かせ、自らも真上へ飛びあがった。
ランスオブカインは天井を屋根を貫き、一気にレーベの村の上空まで使い手を舞い上がらせた。
今度は逃げるためのジャンプではない。挑むために。あの魔物の息の根を止めるために。
上昇がとまり、村への落下が始まるのを確認した上で槍を真下に向け、狙いを定める。
硝煙で出来た白い塊めがけて、一直線に降下し…
ガシャッという妙な音がした。
槍があの得体の知れない飛び道具を貫き、破壊したのだ。
これさえなければ後は簡単、剣に関しては素人のあいつに負ける筈はない。…はずだった。
辺りにはあの魔物の姿は見えなかった。
恐る恐る、足元に転がった武器を見てみると、カインは目を見開いた。
武器を握っていたのはあいつじゃない。指輪をはめた、細い指…それが柄に巻きついているだけだ。
武器の方も両側の壁から紐で固定され、丁度人が持っている高さに合わせてあった。
なんてこった。相手の動きが見えていないのは俺も同じじゃないか!
気づいた所でもう何もかもが遅い。
背後からの殺気に振り向く間も無く、槍を持った左腕は根元から斬り落とされた。
「っっっぐああああああぁああぁぁああっっ!!!!」
なにが起こったかわからない。
ただ確かなのは、左腕を失った事、自分が痛みに絶叫を上げた事、そして…魔物が背後に立っている事。
「…綺麗な声じゃないか。マリア義姉さんの歌を真似たのかな?」
言いながら、デールは彼の右足に剣を突き刺す。
「ぐッく…か…」
「結構結構。鈍くて太くて、義姉さんとは違う良さだ。もっと聞かせておくれ。」
今度は左足を刺した。
…俺って、駄目な奴だな…
バロンにいたころも常にセシルに上に立たれ、ローザにも告白できずにいた。
――ドウシタ?モット聞カセテオクレヨ―――
その劣等感からか、ゴルベーザの誘惑から逃れられなかった。
裏切り者の汚名を着せられる代わりに、セシルを超える力を得た。
――壊レタワケジャナイダロウ?ソノタメニ手加減シテヤッテルンダカラ…
そのくせ、あっさりとセシル達の本に戻ったんだよな…
彼等の敵になりきれず、どっちつかずの中途半端な立場に立ちつづけて。
――…オイ!ナントカ言エ!―――
だから再び彼らを裏切ってしまった。そして、またもあっさりと寝返った。
それでも、セシルは俺を許してくれた。
親友として育っていながら常に敵対意識を持ち、二度も裏切った俺を。
――ナントカ言ッタラドウナンダ!エエ!?――
その時、俺ははっきりと悟った…セシルには勝てないと。
こいつは、俺よりも遥かに大きい人間だと。
それに引き換え、ゼロムスを倒した後も山に篭り、あいつの顔を見る事すら出来ない俺…
そして今、殺人者にもなりきれず、途中で倒れてしまう俺…
――…シネ…――
俺 っ て 、 駄 目 な 奴 だ な …
【デール 所持品:リフレクトリング(マリアの指にはまったまま)、アラームピアス(対人)、ひそひ草、アポカリプス+マテリア(かいふく)
現在位置:レーべの村
第一行動方針:バーバラと会い、殺害する 第二行動方針:皆殺し(ヘンリーが最優先)】
【カイン 死亡】
銃声や悲鳴はレーベ村周囲まで響いてます。
【21:06】
アーヴァインは、ベッドの中で必死に眠りにつこうとしていた。
元来のナイーブな性格、そして状況が状況ということも手伝い、睡眠状態に入っても三十分程度で目が覚めてしまう。
それを何度も繰り返した挙句、彼はついにベッドから身を起こした。
眠れないといっても休むことは休めたし、夕飯も食べたので、疲労感は大分減っている。
帽子をかぶり、相変わらず血のついたままのコートを羽織って、額を抑えながら扉をくぐった。
見張りをしていたピサロは、寝室から出てきたアーヴァインを一瞥したが、沈黙を続ける。
「オジサン、誰〜?」
アーヴァインは微妙に眠たそうな声で、わざとらしく目をこすりながら話し掛けた。
「……ソロの知人だ」
ピサロは不機嫌そうに答える。
人間への感情がそうさせたのか、オジサン呼ばわりが不服だったのか、どちらが原因かはわからない。
けれどもアーヴァインは気に留める様子もなく、いつものように微笑みながら言った。
「ふーん。ソロ、知り合い多いんだね〜。
やっぱり人柄って奴かな。すっごい親切だし、色々できるし、きっと女の子にもモテモテなんだろね〜」
「………」
「あ、そうだ。オジサンさぁ、銃とか持ってない?」
「ジュウ?」
ピサロには聞きなれない言葉だった。それで初めてアーヴァインに興味が湧いたらしく、彼の顔を見る。
「ジュウ、とはなんだ?」
「知らないの? うーん……説明しづらいけど、鉄製の筒にボウガンみたいな引き金がついてる奴だよ。
火薬入りの弾を込めて、筒の中で火薬を爆発させて、その勢いで弾を撃ち出すって武器なんだ」
「鉄製の筒……ビビの袋に入っていた、アレのことか?」
ピサロの呟きに、アーヴァインは目を輝かせる。
「持ってるの?!
僕、もともと剣より銃の方が得意なんだ。持ってるなら譲ってほしいんだけど」
ピサロは答えない。その顔には、拒否の意思が露骨に表れている。
「この剣と交換でも、ダメ?」
「悪いが間に合っている。それに、見ず知らずの人間に武器をくれてやるほどお人よしになった覚えはない」
「そっか……それもそうだね。ゴメンナサイ、わがまま言っちゃって」
アーヴァインはあっさりと引き下がり、頭を下げた。それから突然思い出したように言う。
「そうそう。目が冴えちゃって眠れないから、少し外に行ってきてもいいかな?」
「勝手にしろ」
どうしようもなく突き放された返事だったが、それでもアーヴァインは笑顔を崩さない。
「うん、そうするよ。でも、帰ってきたら五回ノックするから、そうしたら中に入れてね」
ひらりと身を返すアーヴァインに、ピサロはふと、顔を上げる。
「待て。朝になる前に、その服をどうにかしておけ。連れの娘が目覚めたときに騒ぎ出す」
「え、服? 騒ぎ出すって……あ、もしかして血が怖いとか?」
「そうだ」
「わかった。ついでだし、着替えも探してくるよ」
飄々と外に出て行くアーヴァインを、ピサロは相変わらずの冷めた視線で見送った。
【21:43】
ギルバートは、一人でベッドに寝そべっていた。
彼もどこぞの誰かと同じように、眠れぬ意識を闇に沈めることに全力を注いでいたのだ。
けれども、彼もやはりシーツを捲って飛び起きることになる。
ただしアーヴァインとは違い、ギルバートは窓の外から鳴った音に反応しただけだ。
こんこん、という、風の揺れでは有り得ないノックのような音に。
「誰か、いるのか?」
その言葉に答えるかのように、再びこんこんと音が鳴る。
ギルバートは身をかたかたと震わせながら、それでも窓に手をかけた。
【22:01】
待ちくたびれてテーブルに突っ伏していたバーバラは、ノックの音で跳ね起き、慌てて扉を開けた。
戸口に立つ青年を見て彼女は首を傾げ、すぐに何かを思い出したようにポンと手を打つ。
そして、彼女は青年を家の中へと招き入れた。
【22:05】
エリアとレナは同じ部屋の中で、修学旅行中の女学生のごとく、仲良くお喋りをしていた。
そこへ寝室にいたギルバートが、「外に行ってもいいかな?」と聞いてきた。
臆病なギルバートが夜に一人で外に出て行くなんて……
珍しいこともあるものだと思いながらも、レナは「気をつけて」と返事をした。
ギルバートが去ってから、エリアが「明日、雨が降るかもね」などと呟いたが、二人ともそれ以上は気にしなかった。
【22:12】
カインは、赤い髪の少女と青年が揃って民家を出るのを確認した。
二人は一旦別れ、赤い髪の少女が小走りでどこかへと向かう。
それを見て、カインは冷笑を浮かべた。
【22:14】
一人の若者が、町の入り口に立っている。彼は羽飾りのついた帽子をかぶりなおし、静かに歩き出した。
【22:16】
空を見上げるアーヴァインの背後に、一つの影が近づいていく。
影は彼の耳元で何事かを囁く。アーヴァインは目を見開いて、人影を振り返った。
【22:21】
宿屋の外で血飛沫が上がったが、誰も気付かない。
宿屋の中からでは直に見ることができない場所で、静かに行われた出来事だったので。
そして見張り役のピサロは銃に興味を持ち、色々といじりまわしていたので。
【22:25】
カインの目が、逃げるバーバラと追うデールの姿を捉えた。
鬼ごっこが始まったようだ。さて、彼女はどこまで頑張れるか。
【22:27】
顔の半ばまでをマントで覆い、赤い羽付き帽子を頭にのせた男が
血溜まりに落ちたカウボーイハットを見つめている。
その傍には数mほど何かを引き摺ったような跡が、砂に滲んだ赤い線とともに残されている。
【22:34】
カインは屋根の上に佇み、あの時と同じように下界の様子を眺めている。
彼の眼下で繰り広げられる光景も、あの時のソレと良く似ている。
いや、似ているどころか、二人の登場人物のうち片方はあの時の『アレ』だ。
最も、もう片方の赤い髪の少女は、無抵抗どころか必死の形相で逃げ回っているが……
そろそろ痺れを切らした『アレ』が、マシンガンを撃ち始めるだろうとカインは読んだ。
第一、そうしてくれなければ彼としても困ることになる。
【22:36】
タイプライターにも似た銃声が、レーベの夜空を震わせた。
【22:37】
宿屋の屋根の上に、赤い羽つき帽子をかぶった人影が立っている。
彼の眼下では、ソロとビビとピサロが険しい視線を赤い水溜りに向けている。
ソロが青ざめた表情で、大きな切り傷のついた帽子を拾い上げた。
彼の中で、山奥の村での記憶と目の前の光景がオーバーラップする。
帽子からこぼれた、やはり血濡れの茶色の髪に、彼は虚ろに呟いた。
「なんで……どうして、こんな……」
【22:39】
エリアとレナは、地面の上に倒れたギルバートの傍にくずおれていた。
彼の胸は何かで刺し貫かれていて、そのくせ出血は殆ど無く、はたから見れば道端で眠っているだけのようにも見える。
けれども彼が既に息絶えていることは、間違いようのない事実なのだ。
二人は泣いた。その涙が、蝋人形より白く変わった頬に落ちて弾けた。
【22:43】
バーバラは窮地に追い込まれていた。
足はいい加減に限界に近い。けれども止まれば、すぐに銃弾が彼女の胸を撃ち抜くだろう。
彼女は涙をいっぱいに溜めながら叫んだ。
「ひどいよ――約束が違うよぉ!!」
その言葉が、本当は誰に向けられたものなのか。真意を知るのはバーバラと、二人だけ。
【21:15】
ピサロに言われたとおり、店で服を探して適当なモノに着替えたアーヴァインは
夜風の涼しさを身に受けながら、地面を蹴って屋根の上へと飛び上がった。
目的は二つ。周辺の地理を確認し、いざという時の逃走経路を確立するためと……
先ほどの赤い髪の少女、あるいは彼女の行き先を知っていそうな人物を探すためだ。
そうして高みに飛び移った彼は、自分と同じように月下に佇むカインの姿を捉えた。
カインも彼に気付いたか、無言で槍を構える。アーヴァインは剣を抜く――わけもなく、わざと大げさな身振りで両手を上げた。
そのポーズのまま宙を跳び、カインの近くへ着地する。
「まだ起きてる人もいるし、こんなところで戦ったら絶対に聞こえるよ。
寄って来られても困るし、面倒でしょ? ここはちょっと、休戦ってことにしてくれないかな」
「……」
カインは一瞬の躊躇を見せたが、勘が目の前の男も自分と同じ人種なのだと告げたか。
あるいは、先ほどのショックが未だ抜けきれていないがためか。
ともかく彼は槍先を静かに下げ、「何の用だ?」と聞いた。
アーヴァインは自分の名を名乗ってから、手短に用件を告げる。
「赤い髪の女の子を探してるんだ。見かけたなら、どこへ行ったか教えてほしいんだよね〜」
「赤い髪……この家に一人いるが、女の子という年齢ではないな。写真はないのか?」
アーヴァインは自分の袋から参加者リストを取り出し、ページを開いてカインの足元へ滑らせる。
「その子だよ。名前はバーバラっていうらしいね」
「ッ……バーバラ、だと?!」
カインの声に、驚愕と、ほんのわずかな恐怖が混じる。
「知ってるの?」
「アレが呼んでいた名だ」
「アレ?」
「見た目は貴族か王族風の男。中身は人を壊すことしか考えない化物だ」
「コワ、ス? コロスじゃなくて?」
首を傾げるアーヴァインに、カインは先ほど見たことの一部始終を語った。
話が進むにつれ、アーヴァインの顔に「聞かなきゃ良かった」という色がありありと浮かんでいく。
「わーぉ……本当にサイアクだね、ソレ。
僕も人のこと言えた義理じゃないけどさ……でも、さすがにそこまではやれないし、やらないよ。
――で、ソイツがバーバラって名を呼んで、しかも女性と待ち合わせしてるってコトは……」
「言い方からして、以前からの知り合いというわけではなさそうだった。
それに奴が歩いてきた方角と、待ち合わせ場所になる施設を考えれば」
「答えは一つしかない、ね」
カインはうなずき、大きく舌打ちした。一方、アーヴァインは顎に手を当て考え込む素振りを見せる。
「ねぇ、モノは相談なんだけどさ」
その瞳に宿る輝きは、大胆不敵にして冷徹な、プロの狙撃手のものだ。
「多分、僕とオジサンって同じこと考えてるクチだと思うんだよね。
だから正直に話すけど、バーバラは僕の武器を盗んで逃げた。
そして今の話からすると、まだこの村にいる可能性が高いってことになる」
「……取り戻すのに手を貸せ、と?」
カインは鋭い眼光をアーヴァインに向けた。アーヴァインも、微動だにせず視線を受け止める。
「盗られたのは小手とボウガンとナイフ。小手はオジサンに譲るよ。
僕はボウガンが戻ればそれでいい。
それともう一つ――どうせ目的が同じなら、いっそのことこれから先も手を組んだ方が早くない?
二人で力を合わせれば、この状況を利用して一気に人数を減らせるかも……ってね〜」
カインはアーヴァインの言葉を黙って聞いていたが、やがて、にやりと唇の端を吊り上げた。
【22:42】
「どうだ、そっちは?」
カインは、背後に降り立ったマントの若者に声をかける。
「イイ感じ。でも、難しいのはここからだけどね。
あ〜あ、やっぱりきちんとした銃がほしいな〜。後で奪ってこようかな〜」
緩いウェーブのかかった茶色の髪。そして、真冬の海を思わせる、深い青の瞳。
ギルバートの帽子とマントを纏ったアーヴァインは、シニカルに笑う。
最初にバーバラに会ったのはアーヴァイン。
彼女にカインから聞いた話を伝え、デールを引き付ける囮となるように説得したのだ。
窮地になったら助けると言いくるめて――もちろん本当に助けてやるわけも、そうするだけの義理もない。
ボウガンと小手はその時に返してもらっている。信用させるために、ナイフは彼女にくれてやった。
そして、ギルバートを外へ誘き出し気絶させたのは、数度だが面識があったカイン。
彼を宿屋の前で始末したのはアーヴァインだ。
心臓を貫いた死体を民家の前に運んだ後で、彼は自分の帽子と一束の髪を斬り、
ギルバートの血痕と組み合わせて自身の死を印象付ける小道具に仕立て上げた。
もちろん姿を見られてはまずいから、ギルバートのマントとついでに帽子を奪い、簡単に変装をして。
銃声を聞かせて、余裕と冷静さを奪う。直後に人の死を見せ付けて、平常心と判断力を奪う。
ここまでは上手くいった。だが、問題はこの先だ。
それとは知らずに陽動役を果たすデールを――忌々しいが――多少は援護しないといけないし、
ある程度戦力が分断したら、さらに騒ぎを起こして混乱させなくてはならない。
そうしてパニックが広がりきったところで、本格的な襲撃に移る――そこまでが、二人の『計画』。
だが、果たして九人の標的がこの先どう動くか。こればかりは予測がつかない。つけようもない。
【アーヴァイン(HP4/5程度) 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
第一行動方針:村にいる人間を襲撃し、殺害する 第二行動方針:ゲームに乗る】
【カイン 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手
第一行動方針:村にいる人間を襲撃し、殺害する 第二行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【現在位置:レーベの民家(バーバラがいた家)の屋根の上】
【ビビ 所持品:スパス
第一行動方針:ピサロについていく 第二行動方針:仲間達と合流】
【ピサロ(HP3/4程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
第一行動方針:不明。宿屋に残るか、銃声の方に行くか… 第二行動方針:ロザリーを捜す】
【ソロ(MP消費) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
第一行動方針:不明。宿屋に残るか、銃声の方に行くか…】
【現在位置:レーベの宿屋前】
【エリア 所持品:妖精の笛 占い後の花
第一行動方針:レナについていく 第二行動方針:サックスとギルダーを探す】
【レナ 所持品:不明
第一行動方針:不明 第二行動方針:バッツとファリスを探す】
【現在位置:レーベの民家(バーバラがいた家とは別)の前】
【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)、ひそひ草、アポカリプス+マテリア(かいふく) リフレクトリング
第一行動方針:バーバラを殺害する 第二行動方針:皆殺し(ヘンリーが最優先)】
【バーバラ 所持品:ひそひ草、他に様々な種類の草たくさん(説明書付き) エアナイフ 食料一人分(マリベル)
第一行動方針:とにかくデールから逃げる 第二行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】
【現在位置:レーベの村の外れ】
【ギルバート 死亡】
【残り 98人】
>>173 追記
【ターニア(睡眠中) 所持品:微笑みのつえ
第一行動方針:?】
【ヘンリー(負傷、睡眠中) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可)
第一行動方針:傷の治療】
【現在位置:レーベの宿屋・寝室】
「アハハハッハッハハハハハハハッハハ」
村の外れに笑い声が響く。デールはマシンガンを放ちながらバーバラを追い詰めていく。
「驚いただろ?理知的な紳士が実はこんな狂人だったなんて。アハハハハハハ。悪いけど、私はね狂っているつもりはないんだ。
皆が踊りを楽しむように、食事を楽しむように、私には殺しが楽しいのだよ。私はあなたが叫ぶ声を聞きたいのだよ。
ははは、叫べ叫べもっと叫び声を聞かせておくれ。もっともっと絶望に満ちた声をもっと…」
デールはそう言いながら逃げるバーバラの右足を打ち抜く。バーバラは糸の切れたマリオネットのように地面に倒れた。
(…いやだ、私死にたくない、死にたくない、助けてよ、約束でしょ、助けて助けて助けて)
バーバラは知っていた。あの二人が助けに来ることはないことを。
「アハハハ、もう鬼ごっこは終わりみたいだね。」
月光が二人を包む。二人を邪魔するものは誰一人いない。バーバラの所持品が先ほどの銃撃でこぼれ落ち、あたり一面に様々な草がばら撒かれていた。
(…あたし死ぬのかな。死んだらどうなるんだろう。あのとき消えてしまうのとおなじなのかな。…月が綺麗。
いろんな草が月に照らされて輝いてる。特にあの真ん中の草。とても輝いてる。手、届くかな。届くみたい。この草…)
「そろそろお話は終わりだ。」
銃声が響く。
胸を打ち抜かれたバーバラの死体が月に照らされている…
はずだった。
「いない、どこへ消えた!小娘どこへどこへ!」
バーバラが目の前から消えてしまった。デールには今何が起きたのかわからなかった。
「くっ、逃げられたか。次にあったときは必ず壊してやる」
実はバーバラはあの時手にとって草を食べてみた。よく理由はわからなかったが、死を前にして食べるのが正解だと思ったのだ。その草は…消え去り草だった。
(あたし、何で生きてるの?目の前でデールが私を探している。でもあたし、もう動けないや。さっきの銃で左足も打ち抜かれちゃった…)
バーバラの意識は闇に飲まれていった。
【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)、ひそひ草、アポカリプス+マテリア(かいふく) リフレクトリング
第一行動方針:次の獲物をさがす 第二行動方針:皆殺し(ヘンリー、バーバラが最優先)】
【バーバラ(透明化、両足負傷、気絶) 所持品:ひそひ草、他に様々な種類の草たくさん(説明書付き) エアナイフ 食料一人分(マリベル)
第一行動方針:? 第二行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】
【現在位置:レーベの村の外れ】
177 :
正義の戦士:04/12/18 21:57:31 ID:4zf3c725
ライアンは深い溜息をついた。
昔、少年ばかりを誘拐した卑屈な魔物と対峙した時と同じような、深い憤りと怒りを感じて。
かつての仲間…トルネコやブライが死んだ事。
三十人もの人間が、この数時間で殺された事。
そして何より、あの邪悪なる魔女がこのゲームを楽しんでいる事。
そのどれもが、彼にとって許されない事であるはず。
…だがそれを許してしまった。
剣を振ることも地を駆ける事も無く、幾多もの命が失われた後で感じるのは。
――己の無力。
認めたくない事ではある。
だが、認める以外に無いのだ。
――歯痒い。あまりにも。
今も誰かが生命を懸けた闘いをしているのかもしれない。
誰かが命の危機に脅かされているのかもしれない。
彼は、今もまだ、そんな誰かを救いたいと思っている。救えると信じている。
だから彼は歩みを止めない。
その掌には、一振りの剣。
その指には、生命を象る指輪。
導かれし戦士は、歩みを止めない。
たとえ僅かな希望しか見えなくとも、それに懸けたいと思うから。
その足跡を、大地と心に刻み続けて。
【ライアン 所持品:レイピア 命のリング
現在位置:レーべ南東の森北部
第一行動方針:仲間を探す 第二行動方針:マーダーを減らす
最終行動方針:アルティミシアを倒す】
ピサロは、険しい目で足元の血溜まりを凝視していた。
外から突然けたたましい音が聞こえ、宿屋から一歩出るとそこには惨劇の跡のようなものがあった。
傍らではソロが泣き崩れ、ビビが小刻みに震えている。
血溜まりと一緒に残されていたのは、大きく切られた帽子とコート…のみ。
血痕は紅の円を形成した後、数メートルにわたってひきずられたような跡を残している。
恐らく、ジュウなる武器を欲しがっていた若者――アーヴァインというそうだが――を殺した犯人は、
その後死体をどこかへ持ち去ったのだろう。
しかし、そんな事をして何の得がある?
見せしめのつもりなら死体も宿屋の前に放置しておけばいいし、持っていた武器を盗むにも死体ごと持って行く必要はない。
おかしい。
あまりにも不可解過ぎる。アーヴァインを殺した者の行動が。
そこまで考え、彼はある仮説が浮かんだ。
…そもそも、奴は本当に死んだのか?
自らが死したように思わせるために、アーヴァイン自身がこんな事をしたのかもしれない。
宿屋の前まで誰かを誘い出して殺し、自分の衣服を適当に傷つけて死体を目の届かぬ所へ運び去る――
しかし、なんのために?なぜそうまでして姿をくらませた?
…我々の不意を突くため…
考えられる理由はそれしかない。自分が死んだと思わせれば、後に不意打ちをしやすい事この上ない。
しかも襲われた側から見れば死んだ人間が突然襲いかかってくるのだから、動揺するに決まっている。
だが理由はそれでいいと言う事にしても、誰が代わりに死んだのかという疑問は残る。
アーヴァインは本当に死んだのか?死んでいないとするなら、誰が死んだのか?
少し、調べてみなければなるまい。
「ソロ、ビビ」
ピサロが口を開くと、二人はハッと気がついたように彼を見上げた。
…やはり浮き足だっている。目には戸惑いの色が強く写っている。
彼は今しがた考えた自分の憶測を伝えると。
「この状況、どうも不自然だ。少し村の様子を調べたい。」と言う。
「うん、わかった。」
ビビも言うと、キョロキョロと周囲の様子をうかがい、ソロも剣を構えて警戒の態勢をとった。
「待て。」
ピサロが二人を交互に見ながら続ける。
「お前たちは宿屋に残って眠っている二人を守れ。」
ソロが疑問の目でピサロを見つめる。ビビも反射的に「え、なんで?」と問う。
「…戦う事の出来ない者を放って行くわけにはいかないだろう。
それに何人も固まって動くと、かえって目立ちやすく、危険だ。」
冷静な眼で答える。二人は釈然としないような表情だったが、やがて宿屋の入り口に戻った。
「ピサロ」
不意にふりむきながら、ソロ。
「もし…もしだよ?お前が死んでも、こっちがそれを知る事はできない。そうなってしまったら…」
「そうだな…」
黒いローブを身にまとった彼は、刀を抜きながら、
「半刻経っても戻らなかったら、私はすでに亡き者と思え。」
答えた。
二人が扉を閉めるとほぼ同時に、ピサロは妙な”影”を眼の端で捉えた。
建物の屋根から屋根へ、足音もたてずに飛び移って行く影――
「メラ」
最低級の呪文を用いて”影”を牽制し、動きを止めさせると、それはどうやら人のようだった。
ピサロも刀を構え、一直線にそれを見据える。一瞬、刀身が月光に反射し、影の顔を照らし出した。
こちらを鋭い眼で睨む、兜を被った屈強な男――
男も持っていた槍の切っ先をピサロに向け、暫くの間二人とも微動だにしない。
月光に輝く槍と刀。
睨み合う二対の眼。
遠くで未だに響く悲鳴と銃声。
両者の緊張の糸が千切れんばかりに張り詰め、殺気が限界まで高まったその時、村の外れの方から奇声が聞こえた。
「いない!いないぞ!小娘、いったい何処へ!何処へ!」
槍を構えた男はその声を聞くと、なにやら混乱したような表情を浮かべたが、チッと舌打ちし、声が聞こえた方へと飛び去ってしまう。
あとには刀を手にしたピサロのみが残された。
アーヴァインが殺されたとするなら、犯人はあの男で間違いないだろう。
そう考えながら、なおも村を探索して回る。
数分後、どこからともなくすすり泣くような声が聞こえた。
声の正体は、二人の少女だった。
ピサロが近づくと、二人ともヒッと小さく悲鳴を上げ、逃げるように後ずさる。
構わず、大股に二人がすがりついていた死体の所まで歩き、その周辺を詳しく調べる。
一見眠っているようにも見える。しかし目に生気はないし、体はすでに冷たい。
そしてなにより、この死体のそばにも引きずったような血跡が認められた。
まるで、どこかから運んできて、そのままここに放置したような――
「小娘」
ピサロが少女の方を振り向くと、二人は恐怖に目を見開き、体を寄せ合って震えた。
彼は握られたままの抜き身の刀を見やり、「安心しろ」と鞘に収める。
「ここで何があった。正直に教えろ。」
刀を収めた鞘を壁に立てかけ、静かに訊いた。
すると片割れが泣きながら
「ギルバート…ウッ、そこに…そこに倒れてる人が、ヒック、突然外に出たの…
そ、そ、そしたら、あの大きな音が…あ、あなたにも、聞こえた、で、しょう?あの音…
それで慌てて、外に、出たら、ギルバートが、彼が…」
と答えて、また泣き出す。
どうもおかしい。どんな危険が潜んでいるかも知れない外に、立った一人で?
まさか…
「そのギルバートという男は、誰かに呼ばれているような素振りを見せなかったか?」
「え?い、言われてみれば、確かにそんな感じも…」
だとしたら話は早い。
アーヴァインはやはり死んでおらず、代わりに殺されたのは――こいつだ。
ピサロはアーヴァインの事を話して適当に説得すると刀を拾い、宿屋へと急いだ。
ピサロさんが帰ってきたのは、あれから20分ぐらい後のことだった。
ソロお兄さんと一緒に心配しながら待ってたら、人を二人抱えて戻ってきた。
ちょっとビックリしたけど、どうしたの?って聞くと、ピサロさんはこう言った。
「アーヴァインは裏切り者だ。誰かと手を組んで私達を皆殺しにする気だぞ」
【ビビ 所持品:スパス
第一行動方針:ピサロについていく 第二行動方針:仲間達と合流】
【ピサロ(HP3/4程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
第一行動方針:宿屋に立て篭もる 第二行動方針:ロザリーを捜す】
【ソロ(MP消費) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
第一行動方針:同上】
【レナ 所持品:不明
第一行動方針:宿屋にいる。とにかく泣く。 第二行動方針:バッツとファリスを探す】
【現在位置:レーベの民家(バーバラがいた家とは別)の前】
現在位置:レーベの宿屋前
【カイン 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手
第一行動方針:デールとバーバラの様子を確認する 第二行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
現在位置:レーベ村を跳びながらデールのところへ移動中
183 :
ベアトリクス:04/12/19 00:49:51 ID:YvtSFiBq
激しい戦いは続いていた、月の下で、何度も何度も触れあう剣、しかし、誰の目にも明らかなことがあった。
(アルテマソードとロングソードだとやっぱり差があるか。。)
そう、レオンハルトは押されている、レオンハルトは舌打ちした。
このままでは不味い、そう思った瞬間だった。
「女性に手を上げるとは何て男だ!」
赤いマントの男が居る、乱入したギルガメッシュによって、レオンハルトは倒された
死ぬ前にレオンハルトが思った事はーー止められなくてすまないベアトリクス、、そして、
満足そうなギルガメッシュ、しかし、ギルガメッシュにもちゃんとミスが有ったのだ。
ベアトリクスに殺されるギルガメッシュ、その目には涙が溜まっていた。
しかし、皮肉にもベアトリクスは元に戻っていた。
「ごめんなさい、ありがとう。ト」
レオンハルトが命懸けで元に戻してくれた、しかし皮肉にも、そのレオンハルトはもういない、
ベアトリクスは辛い思た、しかし、同時に、生き残ろうと思った、ーー人を殺さないでも生き残ろう。
【ベアトリクス 所持品:君主の聖衣、アルテマソード
行動方法:ジタンを探す。戦いは裂ける。】
【死亡:レオンハルト、、ギルガメッシュ】
【残り96人】
184 :
直す:04/12/19 01:16:05 ID:YvtSFiBq
激しい戦いは続いていた、月の下で、何度も何度も触れあう剣、しかし、誰の目にも明らかなことがあった。
(アルテマソードとロングソードだとやっぱり差があるか。)
そう、レオンハルトは押されている、レオンハルトは舌打ちした。
このままでは不味い、そう思った瞬間だった。
「女性に手を上げるとは何て男だ!」
赤いマントの男が居る、ギルガメッシュ、すごい早さでレオンハルトに近付いた、ベアトリクスよりも早く。
そして、レオンハルトが構えるよりも早かったのだ。
心臓を貫かれ、地に伏せるレオンハルトは、
(フリオニール、会えなくてすまない。)死んだ
「これが、バトルロワイアルだぜ」
満足そうなギルガメッシュ。しかし、ベアトリクスは方を振るわせている、
私を元に戻してくれた、レオンハルト、それを殺したギルガメッシュ
答えはひとつだった。
「ごめんなさい…ありがとうレオンハルト」
レオンハルトが命懸けで元に戻してくれた、しかし皮肉にも、そのレオンハルトはもういない、でも敵は売った!
ベアトリクスは辛い思いをした、しかし、同時に、生き残ろうと思った、ーー人を殺さないでも生き残ろう。
【ベアトリクス 所持品:君主の聖衣、アルテマソード
行動方法:ジタンを探す。戦いは裂ける。】
【死亡:レオンハルト、、ギルガメッシュ】
【残り96人】
もう夜になって数時間経っただろうか。
辺りは暗くなり、空には月が出ているものの、さすがに、はっきりと周辺を見回すことはできない。
目薬草はものを見る際の集中力を高める効力なのであり、人間の限界を超えた視力を手に入れられるような効果ではない。
昼間さえ見えにくかった城下町はさらに見えずらく、森は木々が邪魔でまったく見えない。
偵察の意味は薄まっている。
「そろそろ動くべきか」
床に置かれてあった剣を取り、これからの経路を考える。
(あの狂った『魔物』は北へ行ったようだが、公爵様似の銀髪男たちは王城方面へ、さらに禍々しさを漂わせる女もその周辺、か。
ここは離れ小島、この塔に軍事的な意味があるとすれば、1階のどこかに小型の船があるはずだ)
一応戦闘準備はしていたものの、アルガスは誰とも遭わず、一階まで降りてきた。
この塔にはもう誰もいないのかと思ったとき、どこかからささやくような、そんな小さな声が聞こえる。
――この子も不憫じゃて…まだ幼いというのに、こんな理不尽な出来事に巻き込まれた上、妹まで亡くしてしまうとは…
ほれ、目の周りが真っ赤じゃろ。泣き疲れて眠っておるわ…
――僕も妹を亡くしていますから、この子の気持ちもよく分かりますよ
それに、もう一人の妹までもがこのゲームとやらに参加させられているんです。
絶対にこんなゲームは絶対に止める。大切な人を失いたくもないし、命を奪いたくもない…!!
――イザよ、少し静かにしろ、そして落ち着け。
(地下に少なくとも4人、少なくともゲームには乗らない、か…)
――…上に誰かいるな。ニンゲンの匂いがする…
――…様子を見てきます。
どうもこちらに気付いたらしい。地下の二人がこちらに向かってきているのが分かる。
ゲームに乗る気がない上、脱出を企んでいる、接触しておいて損は無いだろう。
アルガスは剣をしまい、相手に先に声をかける。
「まずは武器をしまってくれ。俺はヤル気なんかねぇぜ。ゲームを止めるんだろ?詳しく話を聞かせてくれ」
「…まずはこっちへ」
イザがアルガスを宿屋に連れ込んだ。
ドルバは部屋の隅に位置し、ギードは机の上に陣取り、ルカは眠っているが、ときおり人の名前をささやいている。
「ガキにカメにドラゴン、か。妙な組み合わせだな。で、まずはどうやって脱出するんだ?メドは立ってるのか?」
「実は…まだ全然なんじゃ。首輪は魔法で制御されているのではないか、とは予測は付くんじゃが…確証が持てん」
「首輪を使って色々試してみればいいじゃねぇか。死体はその辺にごろごろあるだろ?」
「実は…刃物も無いんだ。それに、首輪の構造自体もまだよく分かっていないんでね…」
「つまり、まだ何も進んでねぇってことだな。話にならねぇ、時間の無駄だったか。
結局は自分では何も出来ない烏合の衆ってか」
「なんじゃと!?お主、少し言い過ぎじゃぞ!」
「ギードさん、抑えて下さい、ルカ君が起きてしまいますよ」
相変わらず、ルカは眠っている。ときおり、「イル…」とささやくのが何とも痛々しい。
イザがアルガスに向き直って言う。
「確かに僕たちはまだ何も成果を出してはいない、けれど、一人一人のささやかな抵抗の波が、やがて大きな波につながると信じています。
一人一人が動かないと、何も変わらない」
「まるでラムザみたいなヤツだな。甘チャン同士、ウマが合うと思うぜ?…まあ、一応期待はしておくか」
アルガスが参加者名簿を開く。
「銀髪は全員ヤバイと思っておけ、あとこの赤魔道師と貴族、それからこの女も危険だ。
一応情報はやったからな、まぁ殺されないようにせいぜい頑張ってくれ。それから、脱出方法が見つかったら、俺にも知らせてくれよ」
再び一階に戻り、塔を出たアルガス。塔内部に船が無いため、外壁に立てかけられていないかと探し回っていたのだ。
一周まわる内に見つけた、りゅうおうの死体と、カンダタの死体。もとの臭いに加え、時間が経っていることもあり、悪臭が立ちこめている。
そしてカンダタの周りには、オールと小さなカヌーが散らばっている。
「お、あったあった。船はたったこれだけか?まあいい」
アルガスは湖の向こう、セシル達の遺体の放置場所へと船を漕いでいった。
船はさざ波に揺れながら、ゆっくりと進んでいった。
【ルカ(睡眠中) 所持品 霜降り肉、ほしふりのオーブ】
【ギード 所持品 不明】
【イザ 所持品:きんきらの剣、エクスカリパー、マサムネブレード】
【ドルバ 所持品:不明】
現在位置:ナジミの塔宿屋 第一行動方針:協力してくれそうな人を探す 最終行動方針:同志を集め、ゲームを脱出する
【アルガス(視覚聴覚向上) 現在位置:ナジミの塔東 所持品:カヌー(小型折りたたみ式、元カンダタの支給品)、兵士の剣(カンダタの支給品)
第一行動方針:多くのアイテムを集めておく。 最終行動方針:どんな手を使ってでも生き残る。もちろん、脱出に便乗もアリ】
『アーヴァインは裏切り者だ。誰かと手を組んで私達を皆殺しにする気だぞ』
『どういうこと、ピサロさん?!』
『殺されたのはこの小娘達の仲間だ。宿屋の前に呼び出して殺し、その血痕を利用して自身の死を偽装したのだ』
『そんな……アーヴァイン、僕やヘンリーさんとも気軽に話して……ゲームに乗ってるようには見えなかったのに』
『お前がお人よしだからだ、と言いたいところだが……相当な食わせ者だな、あの男は。
奴が行動を起こさなければ、私ですら欺かれ続けたかもしれぬ』
(あーあ、もうバレちゃったのか。自信あったんだけどなぁ)
三人の会話を聞きながら、アーヴァインは声を出さずに笑う。
灯台元暗しというが、彼の居場所はまさにその言葉通り。
実のところ、ピサロ達と二十メートルも離れていない。彼がいるのは宿屋の真裏だ。
(予想以上に頭いいね、ピサロさん。
腕も立つみたいだし、こりゃ〜僕も本気でかからないとね)
息を潜めて三人の会話を聞き取りながら、彼はこれから取るべき行動を模索する。
(みんなは宿屋に篭城ってワケか。
ギルバートさんと一緒にいた女の子たちもいるけど、泣いてて戦力にはなりそうもないね。
七人中、まともに戦えるのはソロとビビって子、それからピサロさんの三人だけか……
オーケー、ここまでわかれば十分だ)
彼は物音を立てぬよう距離を取り、十二分に離れたところで建物の屋根へと飛び上がった。
――どうして誰もアーヴァインに気付かなかったのか?
それは彼が持つ支給品のせいだ。
G.F.ディアボロス。その能力の一つ『エンカウントなし』。
バニシュや消え去り草と違い姿を隠すことはできないが、それらで消せない『気配』を完全に絶つことができる。
血に餓えた野獣や魔物ですら、目の前を歩く獲物の存在に気がつかなくなる――ある意味で最強のアビリティ。
もっとも、気配より視界に頼ることが多い人間相手では、そこまで強力な効果は期待できないが。
だが今は光源の少ない夜。加えて、これ見よがしに宙を飛ぶカインの姿。
夜目が利けば利くほど、気配を察知する能力に長けていれば長けるほど。
派手に動くカインに気を取られ、近くにいるアーヴァインの存在に気付けない――
(キスティスも言ってたっけ、そういえば。
囮や陽動みたいな使い古された手は、効果があるが故に使い古されるんだ、って……本当だよね。
さて、と……みんな宿屋に入った。作戦F、開始と行きますか)
逃亡、戦闘、篭城。今の状況において、標的が取れる行動はこの三つしかない。
本来の計画は、戦闘組と篭城組の二手に分かれさせ、
片方をパニックに陥らせてから潰すというものだったが……
(カインさんはどっかの竜騎士団長。
僕もガーデンで基礎的な戦術は一通り学んでる。
要するに僕達もプロだってこと、全員篭城って可能性ぐらい考えてるもんねー)
アーヴァインは屋根の上に這いつくばる。そしてマントの端を掴み、剣で切り裂き始めた。
(『例のアレ』とバーバラの方は、カインさんに任せてオーケー。
この作戦、思いっきり人目につくけど仕方ないよね。ここは一人でもいいから減らしたいし)
そう計算しながら、アーヴァインは切れ端を矢の先に巻き、支給品のランプに入っていた油を染み込ませる。
ランプはマリベルから奪った分と合わせて二つある。片方の燃料が切れたところで困りはしない。
そうして何本かに細工を加えた後、アーヴァインはまず何も加工していない矢をボウガンに番えた。
人差し指を口にくわえ、空にかざして風を確認する。
北西の風、三メートル以下。目標への距離は、直線で六十から八十前後。問題なし。
意識をターゲットに集中させる。アーヴァインの身体から漆黒の波動が生まれ、矢に注がれていく。
(ピサロさん。何だかんだ言ってたけど、あんたもソロと同じで相当お人よしだと思うよ。
悪いけど、あの時教えてくれたコト、利用させてもらうよ!)
「何で気付けなかったんだ……くそっ、リュカだったら……」
自分の枕を殴りつけるヘンリーを横目に、ビビがうつむく。
「アーヴァインってお兄ちゃん、本当に……僕達を、殺すつもりなのかな」
「……」
「信じたいよ。僕、お兄ちゃんのことも、みんなのことも信じたい」
ビビは窓辺から空を見上げた。何も知らずに輝く月を、見上げた。
「俺も信じたいさ。だが、もう疑いようがない。
あのコートの血も……あいつの血とばかり思っていたが、誰かを殺した返り血だったんだろう」
疲れたような呟きを、ビビは静かに聞いている。
「食事の時も楽しそうに喋ってはいたが、どこか落ち着かない様子だった。
それも奴がゲームに乗っていたからだとすれば、納得がいく」
ヘンリーはそう言いながら、自分とビビの間にあるベッドで眠っているターニアを見やった。
眠ったままというのも危険だが、血液恐怖症の彼女をこの状況で叩き起こすわけにもいかない。
ヘンリーは視線をビビに戻し、言葉を続ける。
「アーヴァインの奴は間違いなくマーダーだ。だが……多分、それなりの理由があるんだろう。
俺には、奴が完全な悪人とは思えない。それ以上に、好きで人を殺してる奴がいるだなんて考えたくもない」
ビビはしばらく外を見ていたが、やがてヘンリーを振り返り、淋しそうな声で聞いた。
「ねぇ、ヘンリーさん。本当に悪い人なんていないよね……?」
「ああ――」
ヘンリーが、それに答えようと口を開いたその時――
ビビの横にあった窓が弾け、何かが宙を切り裂いて、ターニアの右腕に突き刺さった。
「……っいやぁああああああっ!!」
激痛が、魔法の眠りからターニアの意識を強制的に浮上させる。
矢に纏わりついた漆黒のオーラが、傷口を広げ痛覚を倍増させる。
そして流れ出した血が駄目押しとなり、彼女は完全なパニックに陥ってしまう。
「ターニアちゃん、落ち着いて!」
ビビの言葉も通じない。異変に気付いて寝室に飛び込んだソロが、逃げようとするターニアとぶつかる。
「ヘンリーさん! こ、これは!?」
狼狽したソロが叫ぶ。ターニアは彼をも跳ね除けて、入り口の方に行ってしまった。
ピサロの声がする。何とか捕まえたらしいが、彼も手を焼いているようだ。
「わからねぇ、窓からいきなり矢が……ッ、危ねえ!!」
呆然とするビビを、ベッドから跳ね起きたヘンリーが床に押し倒した。
黄色いとんがり帽子の横を掠めて、一条の炎がターニアのベッドに命中する。
そして立て続けに窓ガラスが割れ、ヘンリーのベッドに、テーブルに――
テーブルの上のランプに、そして床にこぼれた油の上に――火矢が突き刺さり、炎を広げていく。
偶然ではない。明らかに宿屋の間取りを把握して、狙っている。
そんな芸当ができるのは、ただ一人――
「ふざけるな……前言撤回だあの野郎ッ!」
怪我の痛みすら忘れて、ヘンリーは外に向かって叫んだ。
(ヘンリーさん……前言撤回って、ナニ言ってたの?)
アーヴァインは首を傾げながらも、最後の火矢を番える。
(良くわからないけど、まぁいいや。とりあえずこれで、青髪の女の子は混乱状態。
パニックって伝染するし、僕を追ったり攻撃したりする余裕はないよね。
火矢も、中だけじゃなく外にも撃ち込んでる。このままじゃ大火事決定だよ。
……さあ、みんな、どうする?)
ガルバディアガーデン一のスナイパー。Seedでも魔女でもなく、アルティミシアと戦った唯一の男。
アーヴァインはトリガーを引く。その経歴に相応しい実力を、冷酷に、存分に発揮して。
【ビビ 所持品:スパス
【ソロ(MP消費) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
【ヘンリー(負傷) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可)
第一行動方針:状況を打開する】
【現在位置:レーベの宿屋・寝室(火災発生中)】
【ピサロ(HP3/4程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
第一行動方針:ターニアを取り押える 第二行動方針:ロザリーを捜す】
【エリア 所持品:妖精の笛 占い後の花
第一行動方針:不明 第二行動方針:サックスとギルダーを探す】
【レナ 所持品:不明
第一行動方針:不明 第二行動方針:バッツとファリスを探す】
【ターニア(パニック。右腕を負傷) 所持品:微笑みのつえ
第一行動方針:とにかくどこかへ逃げる】
【現在位置:レーベの宿屋・入り口近くの部屋】
【アーヴァイン(HP4/5程度) 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
第一行動方針:宿屋にいる人間を狙撃 第二行動方針:ゲームに乗る
現在位置:レーベの村・民家の屋根の上】
ヘンリーとビビが話すその横で、赤く目を腫らしたレナが、エリアに泣きながら語っていた。
その言葉は不明瞭でまとまっておらず、聞き取りづらかったので、少しわかりやすくまとめる。
「ねえ、エリア…私、何もできなかったわ。本当に、駄目よね…。いったいどうして気づかなかったのかしら。
あんな臆病な人が、この状況で一人で外を歩き回るなんて、ありえないのに。
本当に、どうして気づかなかったのかしら。
この村に、私たち以外誰もいないなんて、ありえないのに。ゲームに乗った人がいたって、おかしくなかいのに。
ねえ、私、何もできなかったのよ。
そう、いつだってそうだった。私は、人の命を救えたことなんてないの。
たくさんの人が、何かのために、私の目の前で死んでいったわ。
一度でも、それを止めることはできなかった。
…そういえば、普段野宿するときなんかも、たいていは姉さんとバッツが見張りをしてくれた。
危ないときは、いつも二人が私を助けてくれた。言ったかしら?私とバッツの出会いを。
それなのに、どうして私は何もできないの?
あのとき、私はギルバートを止めるべきだった。
ううん、それどころか、あたりを常に警戒してしかるべきだった。
そもそもここにきたのだって、誰かに会う為じゃない。危険を承知できたのに…。
それなのに、ああ、私、本当にバカだった。忘れてたのね、完全に。
ねえ、エリア。私、あなたと楽しくおしゃべりできて、本当に嬉しかった。
なんだか、クルルと話してるみたいで。
でも、クルルはもういないのよね。
私、わかってなかった。全然。逃げてた。死を受け止めてなんていなかったの!
ああして、目の前で、冷たくなった彼を見るまで…わかっていなかった…
ううん、わかろうとしていなかったの。
ヘンリーとビビが話すその横で、赤く目を腫らしたレナが、エリアに泣きながら語っていた。
その言葉は不明瞭でまとまっておらず、聞き取りづらかったので、少しわかりやすくまとめる。
「ねえ、エリア…私、何もできなかったわ。本当に、駄目よね…。いったいどうして気づかなかったのかしら。
あんな臆病な人が、この状況で一人で外を歩き回るなんて、ありえないのに。
本当に、どうして気づかなかったのかしら。
この村に、私たち以外誰もいないなんて、ありえないのに。ゲームに乗った人がいたって、おかしくなかいのに。
ねえ、私、何もできなかったのよ。
そう、いつだってそうだった。私は、人の命を救えたことなんてないの。
たくさんの人が、何かのために、私の目の前で死んでいったわ。
一度でも、それを止めることはできなかった。
…そういえば、普段野宿するときなんかも、たいていは姉さんとバッツが見張りをしてくれた。
危ないときは、いつも二人が私を助けてくれた。言ったかしら?私とバッツの出会いを。
それなのに、どうして私は何もできないの?
あのとき、私はギルバートを止めるべきだった。
ううん、それどころか、あたりを常に警戒してしかるべきだった。
そもそもここにきたのだって、誰かに会う為じゃない。危険を承知できたのに…。
それなのに、ああ、私、本当にバカだった。忘れてたのね、完全に。
ねえ、エリア。私、あなたと楽しくおしゃべりできて、本当に嬉しかった。
なんだか、クルルと話してるみたいで。
でも、クルルはもういないのよね。
私、わかってなかった。全然。逃げてた。死を受け止めてなんていなかったの!
ああして、目の前で、冷たくなった彼を見るまで…わかっていなかった…
ううん、わかろうとしていなかったの。
ねえ、エリア…私が今泣いているのは、何も彼の死が辛いからじゃないのよ。
もちろん、ギルバートの死は悲しいわ。
でも、それよりもっと、もっともっと…私は怖いの。
だってそうでしょ?死ぬかもしれないのよ。ギルバートみたいに…クルルみたいに…
そして、今周りに姉さんはいないの…バッツもいないの!
前にも一度、こんなことがあったわ。そのときは、飛竜が助けてくれたっけ…。
…言わなかったかな、飛竜のこと。私、助けられてばっかりよ。
ねえ、今、誰が私を助けてくれるの?
あの人?あの森で、あなたたちを殺そうとした?そんなはずないじゃない。
私はあの人の言葉に従って、この宿屋にきたわ。
けれども、本当のところ、私はあの人のことを信用なんてしてない。
当たり前じゃない。殺そうとしてたのよ、あなたたちを…。
それでどうして、あっさりということをきいたかわかる?
誰でもよかったのよ…ただ私に、手をさしのべてくれるなら、その言葉に従おうと思ったの。
でもね、これはやっぱり駄目。全然安心できない。
…エリア、私ね、強いんだよ。剣だって。
そりゃバッツや姉さんには負けるけど…城の近衛兵なんかより強かったんだから。
バッツに教えてもらってからは、本当に強くなったのよ。
それに、魔法ならバッツにも勝つ自信があるし。
それでも、私、何もできなかった。
ねえ、エリア…これじゃいけないのよね?ううん、いけないの。
私、決めたわ。
姉さんと、バッツを探すつもりだった…。
でも、それは多分、無理なのね。今の私じゃ、絶対に会えないと思った。
だから、やめる。探さない。
それが、きっと二人にあえる一番の方法なのよ。
大丈夫、バッツも姉さんも、私なんかと違って、本当に強いから…」
エリア頷いて答えた。その答えも、涙混じりで、やはり不明瞭であったが。
「レナさん、まず、あまり自分を責めないで下さい。
あなたがいなければ、私もギルバートさんも、あの森の中で死んでいました。
それに、私とギルバートさんこそ、あなたに甘えていたんです。
…ただ、あの人は、ほんとうに私たちのことを殺すつもりだったのか…
いえ、そりゃあ、あのままいけば、間違いなく殺されていたでしょう。
でも、私は思うんです。
レナさんが来る前に、あの人は私たちを殺せたはずだと。
しかし、そうしなかった。何故かはわかりませんが…何か、迷っていたのかもしれません。
とにかく、私がそのとき感じたのは、今のような恐怖ではなく、むしろ生への欲求でした。
本当に、あんなことは初めてでした。
使命だとか、そういうのとは無関係に、がむしゃらな生への欲望…。
いったいどうしてなのか、私にもわからないのです。
…レナさん、私は一つ、隠し事をしています。いっても信じてもらえないだろうと…
いいえ、本当に怖いのは、信じて貰ったときのことかもしれませんね。
久しぶりなんです、私と同じくらい…といっても、四つも年上ですけど…
それでも私にとっては、同じくらいといえるんです……
…すみません、話がずれてますね。言います。
私は、一度死んでるんです。あ、やっぱり驚きますよね。
冗談でも、嘘でもないです。
光の戦士をかばって、矢に射抜かれ、存在を消されました。
なんか、逆ですよね、普通。でも私は、それを当然のことだと思っています。
それが、私の使命だったからです。
レナさん、私がここにきて、一番不安だったのは何だと思いますか?
それは、どうしてここにいるのかが、わからなかったことです。
おかしいですよね。私は生前…なんだかこの言葉もおかしいな…
ええ、私にははっきりとした使命がありました。
水の巫女としての、使命がありました。
ですが、ここはいったい何なのでしょう?
私は何故ここにいるのですか?
私が今泣いているのは…そう、その意味じゃレナさんと同じです。
ギルバートさんの死が悲しいからばかりじゃなくて、そのことが急に現実のものとして、私に問いかけてきたのです。
この問題は、私にいい知れない恐怖を与えます。今、この瞬間も。
人はみな、何かのために行き、何かのために死んでいくと…そう思いこんでいました。
事実、私のまわりにいたのは、そのような人たちばかりだったんです。
それで、この状況は何なのでしょう?
ギルバートさんは、何故生き?何故死んだのでしょう?
それを考えたとき、私は怖くなりました。涙が溢れて、止まらなくなりました。
…でも、少しわかった気がします。
烏滸がましいかもしれないけれど、ギルバートさんは…私たちと出会うために、ここまできてくれたのではないでしょうか?
レナさんは、とても強い意志を得ました。
…すみません。私、こんな風にしか考えられないんです。
そのように育てられ、生きてきたんです。
でも、もしそうだとしたら…私は、今、なんのたまに、ここにいるんだろう…」
そのとき、ターニアの叫び声が、辺りに響いた。
レナはそれを一瞥して、続けた。
「エリア…あなたは、水のクリスタルの巫女、よね。私は、クリスタルに選ばれた戦士…。
もし、私が何かのためにここにいるのなら…
エリア、あなたは私に勇気をくれた。
私は戦う。エリア、あなたを死なせない…」
続いて、カルナック城を彷彿とさせるように、あたりを火の手が囲んだ。
レナは立ち上がった…その手に、聖剣エクスカリバーをもって。
【エリア 所持品:妖精の笛、占い後の花
第一行動方針:現状打破 第二行動方針:サックスとギルダーを探す】
【レナ ジョブ、アビリティは次の人が適当に。
所持品:エクスカリバー、他は不明
第一行動方針:現状打破 基本行動方針:エリアを守る】
【現在位置:宿屋】
4/5修正
最終行 たま→ため
こういうとこミスると悲しい
200 :
急襲者:04/12/19 21:14:23 ID:SmMNE5/a
「あれ?確かこっちでお城だと思ったんですけど…」
天然のフルートと磁針の使い方を良くわかっていないサックスのガイドは城に向かうどころか洞窟を出てしまったのだ。
城は遠く離れた場所にドッスリと建っている。
「おいおい、どぉすんだよお。城はあっちだぜ?」
ゼルが二人に問いかける、すると。
「あっ、そういえば洞窟からお城に行くには盗賊の鍵が要るんでした。
だからお城には入れなかったわけですし、結果的にOKだと思いますよー」
ヘラヘラと笑いながら言うフルートに、もう呆れて物も言えなくなったゼルである。
「それで、どうすんのサ?」
「そうですねー、泳ぐことも出来ませんしねぇ。この近くにレーベって村が有りますから、そこを目指すとしましょーかー?」
やはり此処は出身者に任せるべきであろう―――相当不安だが。
そうして、再び不安なガイドの元、五人は歩き始めた。
「くっ…厄介な暗闇だぜ…」
ほんのりと見えるようになってきたが、やはりこの闇は辛い。
かすかに見える中、袋の中を捜してみる。幸運なことに目薬らしき物がある。
それを掴み、蓋のような場所を探し、開けて中の液体を目にかける。
視界を覆っていた暗闇が晴れるように消える、もう一度袋を覗き込むと一振りのナイフのような物がある。
投げて使えば…不意打ちには使えるかもしれない、サラマンダーの口が嫌味に曲がる。
「あーもう邪魔くさいなーぁっ!ファイラ!」
道を邪魔せんとばかりに生える木に、リルムが火柱をぶつける。
ボゥォッ!っと勢いよく燃え上がる。その木が倒れ、近くにいたゼルが慌てて避ける。
「うわぁっ!アブねぇなぁっ!」
「そっちがボケッとしてたんでしょ〜?」
「んだとコラァッ!」
今にも喧嘩が起こらんばかりの勢いで繰り広げられる口論。
そんな二人を見て、やれやれといった顔をするロランとサックス。
ふと、ロランがフルートにある事を聞く。
「そうだフルートさん、前に武闘の経験とか…ある?」
フルートがその言葉を聞き、すこし考え込んだような表情になる。
「そうですねぇ…前は武闘家をやってましたけど…あまり上達しませんでした、本も好きでしたし、僧侶になろうって考えたんです」
あまり覚えていない、その言葉に疑問を覚えるロラン。
あの時、竜王と闘ったあのフルートの動きはかなり熟練されたものだった。
武闘家時代に訓練したなら分かる、だが本人は覚えていないと言う。
なにか引っかかる…そういえばあの時は別人のように変わっていたような………?
「でも私、小さいときから記憶が飛ぶんです。さっきはお城に居たのに気がついたらお城から離れた草原に居ました…見たいな感じです。
そう…あの時だって」
「あの時?」
ロランとサックスが声を揃えてフルートに聞く、フルートはええと咳払いをしながら答える。
「魔王ゾーマの決戦の時ですよ、私魔王に驚愕して気絶しちゃったらしくって…アルスが光の玉を使った後は覚えてないんです」
へぇ、と相槌を返すサックス。気絶していた、と本人は言うが実際は違う。
フルート本人が、魔王の台詞にぶちギレ、そしてその後は…という話である。
「でも凄いね、フルートはやっぱり強いよ」
何時の間にか背後にいたリルムが言う、後ろではゼルがぜーぜーと息を切らしている。
そして、今度は唐突にサックスが口を開いた。
「そうだ、ロランさんはやっぱり何かしら凄い事してるでしょう?」
「え?何故だい?」
唐突にそんなことを聞くサックスに疑問を覚えるロラン。
「うーん、それは僕の第六感…って奴かなぁ?よく当たるんですよ、人が何をして来たかって言うのが」
「確かに、僕は…言っても分からないだろうけど、嘗て破壊神を破壊した今の………いやなんでもない、とにかく当てられてビックリしたよ」
何かにつっかえたのが気になったが、予感が的中したサックスはニコリと笑った。
「僕もですね…実は――――」
そこから先は一本のナイフに遮られた。胸に刺さる一本のナイフ…サックスの胸から血がぼたぼたと流れ出る。
「い…………いつの……まに?」
「喋らないで下さい!いま回復呪文を…」
回復呪文を唱えつづけるフルート、だがそれに追い打ちをかけるように今度は黒い衝撃が二人を襲った。
体に走る重い衝撃、自分はともかくサックスが…なぜこんなことに?見えないところからの急襲、卑怯者、許さない許さないゆるさないユルサナイ…。
彼女の思考が怒り一色に染まった、そして…………。
「っらぁぁあああっ!何所のどいつだぁっ!」
顔が豹変する、そしてナイフの飛んできた方向を目掛け、駆けた。
「待て!フルート!貴方がいなくなったら…!!」
しかし、もうロランの視界にはフルートはいない、ロランがフルートを急いで追おうとする。
「ゼル!リルム!サックスを頼む!僕は急いでフルートさんを連れ戻してくる!」
「おい!ロラン!」
「もし……………」
ロランが振り向きながらゼルに言う。
「もし僕がこのまま戻らなかったら…二人は頼むよ」
そう言い残して、彼もまた闇夜の森に溶け込んでいった。
ゼルは血塗れのサックスを見る、いまはドローしてある回復魔法はおろか、ポーションの一個すらない。
「ちくしょう!俺には何もできないって言うのかよ!」
ゼルが地面を叩く、ふと気づけば隣で魔法が聞こえる。
上級回復魔法、ケアルガ。大きな光が段々サックスを包んでいく。
だが出血は止まらない、意識も戻らない。どくどくと胸から血が流れ、目を閉じたままげほげほと血の混じった咳をするサックス。
「だめだ…あたしの魔力じゃサックスの傷を塞ぐ事すら出来ないよ…」
それでもリルムは回復魔法を止めなかった。
すこし…人の気配がする、ゼルは咄嗟にリルムを守るように構えた…だが。
「だ、大丈夫ですか!」
思いもしなかった声と共に現れた少し奇抜な格好をした女性と酒場にいそうな男性がこちらに駆け寄ってくる。
目線は…サックス。
【フルート(MP減少、プッツン) 所持品:スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣
【リルム(MP減少) 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪 ブロンズナイフ
【ロラン 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート
【ゼル 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト
【サックス(瀕死) 所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り
現在位置:岬の洞窟から北西の森(デュラン達とは離れた場所
第一行動方針:ナイフを投げた奴の元へ(フルート)
フルートを追う(ロラン)
フルートを待つ、微力ながら治療(リルム、ゼル)
死にかけ、フルートを待つ?(サックス)
第二行動方針:なるべく仲間を集める
最終行動方針:ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】
#ロランがフルートを連れ戻すのに時間がかかればサックスは死亡します。
【サラマンダー 現在位置:岬の洞窟から北西の森、フルート達から少し北
所持品:ジ・アベンジャー(爪) ナイフ
基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?)
備考:目薬は使用済み】
【ユウナ(ジョブ:魔銃士) 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子
【プサン 所持品:
現在位置:岬の洞窟から北西の森(デュラン達とは離れた場所
第一行動方針:サックスの治療(?)
第二行動方針:ドラゴンオーブを探す
基本行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人や心正しい人は率先して助ける
最終行動方針:ゲーム脱出】
205 :
修正:04/12/19 21:58:02 ID:SmMNE5/a
【サラマンダー 現在位置:岬の洞窟から北西の森、フルート達から少し北
所持品:ジ・アベンジャー(爪)
基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?)
備考:目薬は使用済み】
「ちくしょう!俺には何もできないって言うのかよ!」
ゼルが地面を叩いている中、リルムがサックスのナイフに手をかける
「ちょっと痛いけど…我慢してね…」
ズブリと音を立てナイフを引き抜く、サックスが口から血を大量に吐く。
すかさず魔法を唱える、上級回復魔法、ケアルガ。大きな光が段々サックスを包んでいく。
だが出血は止まらない、意識も戻らない。どくどくと胸から血が流れ、目を閉じたままげほげほと血の混じった咳をするサックス。
こっから先は同じです。
>>175-176 「ひどいよ――約束が違うよぉ!!」
バーバラは走りながら叫んだ。
その声は虚しく街の外れの闇に消えていった。
「最高だ! あなたは僕が壊すのにふさわしい。僕に悲鳴を聞かせてください。その雪のように白い肌からワインのような赤い血を出してほしいんですよ。あなたの叫ぶ声を聞かせてください。もっともっと絶望に満ちた声をもっと…」
一発の銃声が響き渡る。
デールの放った銃弾がバーバラの右足を貫通した。
「………っ!!!!」
バーバラは声にならない悲鳴をあげ、まるで糸の切れたマリオネットのように地面に倒れた。
(…助けて、あたし死にたくない。助けてくれるんじゃなかったの?いやだ、死にたくない!!)
バーバラはアーヴァインと名乗った男に騙されたということは感じ取っていた。
そして自分は助からないことも。
「そろそろ鬼ごっこは終わりみたいですね」
月光が二人を包む。
二人を邪魔するものは誰一人いない。
バーバラの所持品が先ほどの銃撃でこぼれ落ち、あたり一面に様々な草がばら撒かれていた。
(…あたし、もうここでおしまいなのかな。死んだらどうなるのかな。…月が綺麗。…まだ死にたくないよぉ…)
「…まだ逃げる気でいるのですか。ではこうしたらどうでしょう?」
デールはバーバラの左足も撃ちぬいた。
月光が恐怖と絶望と激しい痛みに歪めたバーバラの顔をうつし出していた。
それを見てデールは光悦とした表情を浮かべる。
バーバラは逃げ出そうと地面を這いずった。
「それではそろそろチェックメイトにしましょう。最高の悲鳴を聞かせてください、至高の踊りを見せてください、さぁ!!!」
銃声はすぐには鳴り響かなかった。
デールがバーバラを壊そうとした瞬間目の前から姿を消してしまったのだ。
なぜなら、ばら撒かれた草の中に消え去り草があり、こぼれ落ちた際に噴出した粉がバーバラの這いずった地面にちらばっていたからだった。
「いない、どこへ消えた!小娘どこへどこへ!」
デールは錯乱してあたり一面にマシンガンを撃ち放つ。
幸いにもバーバラには当たらなかった。
「…はあ、はぁ。くっ…この近くにいるのはわかっているのですが…僕は貴方から流れ出る鮮血が見たいのです。恐怖に歪めた顔を見たいのです。そして踊る姿が見たいのですよ」
デールは地面に落ちた説明書を手に取った。
「…なるほどそういうことでしたか。どうやらその効果は歩き回らないと消えないみたいですね。もし貴方が先ほどの銃撃で死んでいないのならば今回は見逃しましょう。次会った時には貴方の壊れる姿を見せてもらいます。」
バーバラの意識は安堵と両足の激しい痛みから夜の闇へと消えていった。
月光はデールの歪んだ笑みを照らし、そしてデールの行き先を照らしていた。
【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)、ひそひ草、アポカリプス+マテリア(かいふく) リフレクトリング
第一行動方針:次の獲物をさがす 第二行動方針:皆殺し(ヘンリー、バーバラ[非透明]が最優先)】
【バーバラ(透明化、両足負傷、気絶) 所持品:ひそひ草、他に様々な種類の草たくさん(説明書付き) エアナイフ 食料一人分(マリベル)
第一行動方針:? 第二行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】
【現在位置:レーベの村の外れ】
「焔か…ふふ、焔だ」
デールは呟きながら、レーベへとまた走っていた。
大規模な火事が起きてしまったあの地で、混乱に乗じて人を壊すのも容易い。
だが、もしどこの馬の骨ともわからない人間が刃を研いでいたら…。
他の人間が僕の壊すはずだった人間を壊してしまったら…。
そう思うと、戻らないわけには行かなかった。
バーバラは逃がしたが、今はもう良い。逃げたとしても恐らく疲弊しているだろう。
美味しいものは後に取っておくのもたまには良いかもしれない。
幸い、バーバラを追って出た場所は見渡しも良い。
更にそんなには走っていなかった。
故に、すぐにレーベの村へと到着できた。
何処だ、僕に壊されたいのは何処だ。
何処なんだ、僕に壊されるべき人間は何処なんだ。
焔が感情を湧かせる。人の叫びが耳には心地良い。
暫く走っていたデール。
そして、彼は見てしまった。あの怒鳴る翡翠色の髪の青年を。
もっとも心待ちにしていたメインディッシュが、すぐそこではないが見える。
「見つけた…。準備をしないといけないな」
ニヤリと笑みを浮かべると、マシンガンへと視線を落とした。
「非常に拙い事になったね…」
「ああ、こりゃヤバすぎる。くっそあの野郎!」
すぐにヘンリーが燃えている部屋から飛び出した。そしてソロもビビも続く。
今外に出るのは危険だが、焼け死ぬよりマシだ。
外でもやはり混乱が生じていた。狙撃が煽る恐怖感が辺りを包んでいる。
「まだ病み上がりですらないってのに…ツイてねーな俺も」
舌打ちついでにヘンリーがそう呟き、ふと視線を移した。
そして、彼は見てしまった。あの立っている翡翠色の髪の青年を。
弟として共に歩んできた相棒が、すぐそこではないが見える。
だが、ヘンリーはすぐに視線を戻してしまった。
単純に「気のせいだ」と思っただからだ。思っただけで、見落としてしまった。
そこにはちゃんとデールがいたのだ。すぐに体を隠してしまったが。
「ピサロ!」
「なんだ」
「一旦二手に分かれよう!俺は西に行く。そこからレーベを脱出しよう」
「そうか…では我々は南に大回りしてからそちらに行く。…くたばるなよ」
ピサロにだけそう伝えると、ヘンリーは走り出した。
至極当然のように、ソロとビビの腕を引っ張って。
「ちょっと!あなたはまだ怪我が…」
「そ、そうだよ。それに危ないよ」
「お前らを死なせたら…仲間に怒られるだろ!?生きるためだ…行くぞ!」
滲む汗も構わず、ヘンリー達は走った。
逃げたか…。
デールは静かにしたうちをすると、あの焔を呪った。
ヘンリー達の会話は当然聞こえていない。
残った5人組を狙撃しようとは思ったが、明らかにやり手そうな奴が1人いる。
そして今自分が壊したいのはヘンリーのみ。
何かの策を練ってバラバラにしておこうか。
会うならヘンリー一人で、1対1の状況で会いたい。
デールも思考を中断させ、西に走った。
そして…見知った者から壊す対象として見るために、実感するために
「待っていろ兄さん…いや、ヘンリー!!」
名を、叫んだ。
アーヴァインにも勿論見えていた。
そしてヘンリーの動きを確認すると、一旦狙撃の手を休めて、溜息をつく。
一旦は泳がすつもりなのか―――それは本人にしかわからない。
「やっぱり2手3手にわかれるつもりか…」
だが確かな事は、アーヴァインが敢えてピサロ達が動くのを待っている事だった。
ピサロが全員に何かを話している。そしてそれに同意したらしい、動いた!
「さぁて、カインに報告しないとねー」
西へと走るヘンリー達。
そして南から迂回しようと走るピサロたち。
それを潰そうとカインに状況を伝えようとするアーヴァイン。
この者達が、デールの存在に気付いていないことは…
幸なのだろうか…不幸なのだろうか……。
焔が、静かに見守っていた。
【ビビ 所持品:スパス
【ソロ(MP消費) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
【ヘンリー(負傷) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可)
第一行動方針:レーベ西へと走る】
【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)、ひそひ草、アポカリプス+マテリア(かいふく) リフレクトリング
第一行動方針:まずはヘンリーを殺す 第二行動方針:皆殺し(ヘンリー、バーバラ[非透明]が最優先)】
【現在位置:レーベの西へと疾走中】
【ピサロ(HP3/4程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
第一行動方針:ターニアを取り押える・ヘンリーの事情・案を説明 第二行動方針:ロザリーを捜す】
【エリア 所持品:妖精の笛 占い後の花
第一行動方針:不明 第二行動方針:サックスとギルダーを探す】
【レナ 所持品:不明
第一行動方針:不明 第二行動方針:バッツとファリスを探す】
【ターニア(パニック。右腕を負傷) 所持品:微笑みのつえ
第一行動方針:とにかくどこかへ逃げる】
【現在位置:南から迂回して西へと疾走中】
【アーヴァイン(HP4/5程度) 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
第一行動方針:カインに状況報告、各個撃破を提案 第二行動方針:ゲームに乗る
現在位置:レーベの村・民家の屋根の上を疾走中】
【ヘンリー(負傷) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可)
第一行動方針:レーベ西へと走る】
【ビビ 第一行動方針:同上 所持品:スパス
【ソロ(MP消費) 第一行動方針:同上 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)、ひそひ草、アポカリプス+マテリア(かいふく) リフレクトリング
第一行動方針:まずはヘンリーを殺す 第二行動方針:皆殺し(ヘンリー、バーバラ[非透明]が最優先)】
【現在位置:レーベの西へと疾走中】
【ピサロ(HP3/4程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
第一行動方針:南から迂回し、西へ走る 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【エリア 第一行動方針:同上 所持品:妖精の笛 占い後の花 基本行動方針:サックスとギルダーを探す】
【レナ 所持品:不明 第一行動方針:同上 基本行動方針:バッツとファリスを探す】
【ターニア(パニック。右腕を負傷) 第一行動方針:同上(?) 所持品:微笑みのつえ】
【現在位置:南から迂回して西へと疾走中】
【アーヴァイン(HP4/5程度) 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
第一行動方針:カインに状況報告、各個撃破を提案 第二行動方針:ゲームに乗る
現在位置:レーベの村・民家の屋根の上を疾走中】
にorz
【プサン 所持品: 不明
現在位置:岬の洞窟から北西の森(デュラン達とは離れた場所
第一行動方針:サックスの治療(?)
第二行動方針:ドラゴンオーブを探す
基本行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人や心正しい人は率先して助ける
最終行動方針:ゲーム脱出】
何やってんだろう俺…
リディアは、呆然とその惨劇を見つめていた。
その瞳に映るのは、幾多もの死体。大地を染める血。
そして、見知った者の成れの果て。
その全てが、眩しいほどの月に照らされ、彼女の瞳に映りこむ。
見たくないと思った。でも、目を逸らせない。
月光がそれを許さないから。それをいつまでも照らし続けているから。
最も見知った男が横たわるその横で、彼女は腰が抜けたように座り込む。
「嘘でしょ?」
これが、現実。わかっているのに。
「目を覚ましてよ…」
二度と目を開けることは無い。わかっているのに。
「ほら、月がすっごい綺麗でしょ?」
意識も何も、空っぽになったんだ。わかっているのに…
「ね、行こうよ…まだ終わってないから…」
彼らはもう、動かない。わかっているのに!
――涙は枯れることはないんだと、思った。
また、止め処ない涙が彼女の頬を濡らしていたから。
放送のときに理解したはずなのに。
どうして、目の当たりにすると、また悲しくなるのだろう。
彼らを死に至らしめたのが槍で貫かれた傷ではないことも、今はどうでもいいこと。
幾多もの横たわる死体の真ん中で、彼女は、泣いた。
大声で。無防備に。悲しみを隠す事無く。
薄情な月はまだ、惨劇を照らすのを止めない。
涙を流す少女の瞳にそれが映り続けるのを望むかのように。
【リディア 現在位置:アリアハン南の平原 所持品:いかずちの杖、星のペンダント
第一行動方針:泣く 第二行動方針:カインを止める(?)】
――おじうえ、見て見て!
――うわぁ!? すごいなコリンズ、呪文が使えるようになったのか。誰に教わったんだい?
――ちちうえだよ。一緒にレンシュウしたんだ。
――いいなぁ。僕も兄さんやコリンズみたいに呪文が使えたらなぁ。
――オレが教えてあげるよ。トックンすれば、おじうえだってきっと使えるようになるよ。
――ありがとう、コリンズ。……お前は良い子だね。
――へへっ……おじうえとははうえだけだよ、そう言ってくれるのはさ。
――兄さ……父上は? 言ってくれないの?
――だめ。いっつも『お前は誰に似たんだよ』ってため息ついてばかり。
――はははは、兄さんらしいや。……コリンズはね、子供の頃の父上にそっくりだよ。本当に。
――悪いな、コリンズがまた邪魔したみたいで。全く、遊び相手は他を探せって言ってるのによ。
――邪魔じゃないよ、あの子はとても良い子だ。僕でよければいつでも相手になるよ。
――おいおい、執務があるだろう。それにイイ子どころか、昔の俺に輪をかけた悪ガキだと思うんだが。
――あはは。そうだね、子供の頃の兄さんを思い出すよ。悪戯好きなのも、優しいところも。
――誰が優しいだ、誰が。第一、そういうことを真顔で言うな。聞くこっちが恥ずかしい。
――いくつになっても素直じゃないね……でもね、僕は思うんだ。
――あ? 何が?
――あの子は、僕なんかよりずっと優れた王になれるよ。
――そいつはどうだかな。俺が言うのもなんだが、王向きの性格とは思えないぜ。
――いや、僕よりも向いてるよ。なんと言っても、兄さんとマリア義姉さんの子供なんだから。
(ちっくしょう……昼間の銀髪も、アーヴァインの野郎も、次に会ったら絶対一発ぶん殴る!)
そんなことを考えながら、ひたすら西へとヘンリーは走った。
時折、ビビを抱えたソロが、自分についてきているかどうかを確認しながら。村の外れへと走っていた。
だが――
「うぉっ!?」「わぁっ!!」
突然のことだ。いきなりヘンリーの周囲で小さな爆発が起きた。
煙と砂が巻き上がり、後ろにいた二人の姿が覆い隠されてしまう。
さらに、紫がかった霧までがあたりに立ち込めた。
自然現象であるはずがない。爆破の呪文と幻惑の呪文だ。
(くそっ!! あの野郎か? それとも他に襲撃者がいるのか!)
身構えるヘンリーの手を、何者かが掴む。
反射的に振り解こうとしたヘンリーは、しかし煙の向こうに立つ若者の姿に、動きを止めた。
「兄さん!」
「デール!?」
いるはずのない弟の姿が。いや、先ほど見かけたような気もするが――自分の弟が。
目の前にいて、自分の手を引いて走ろうとしている。
「早く! 早く逃げないと殺されるよ!」
「お、おい、待て! 俺の連れがまだ……」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ、兄さん!」
デールは走る。ソロとビビを案じるヘンリーを、半ば無理やり引き摺るように。
「ヘンリーさん!」
二人の声を、遠くにして。ヘンリーはデールに導かれて走る。
そうしてどれほど走ったか、村の外れに来たところで、二人はようやく立ち止まった。
「良かった。兄さんが無事でよかった……」
涙目をこする弟に、ヘンリーは呼吸を整えてから質問する。
「デール……お前、なぜ、ここに?」
「探してたんだよ、兄さん。ずっとずっと探して歩いてたんだ。
そうしたら、炎が見えて……宿屋の前に兄さんがいて……兄さん、僕に気付いてなかったろ。
手を振ったのに、走っていってしまって、必死で追いかけてきたんだよ」
言われて記憶を辿る。そうだ、間違いなくあの時デールの姿が在った。
状況が状況だったし、気のせいということで片付けてしまったが……
「そうか……すまん」
ヘンリーが頭を下げると、デールは「いいんだよ」と首を振った。
「兄さんが無事だった。僕はそれだけで十分なんだ」
デールはそう言って、穏やかに微笑む。それからふと、何かを思い出したように袋の中に手を入れた。
「そうだ。兄さんにプレゼントがあったんだ」
「――プレゼント?」
「ああ、受け取ってよ。銃弾を」
ヘンリーの記憶にあるソレと同じ、気弱で、優しげな微笑を浮かべたまま。
デールは、何の躊躇いもなく、袋から出したマシンガンのトリガーを引いた。
立ち込める硝煙。激しい銃声。レーベの事件の始まりを知らせたあの音を、ヘンリーは聞いた。
「兄さん、いや……ヘンリー。僕のために、壊れろ」
その呟きを、確かに聞いた。
「おや?」
デールは見た。晴れゆく煙の向こうで。
月明かりに照らされて、地面に穿たれた銃痕よりも大きく左に跳んだ位置で。
呆然とした表情で自分を見つめる兄の姿を。壊れているべき者の姿を、確かに見た。
「デール」
兄は呟く。どこか虚ろな目を、弟に向けて。
「どうしたんだよ、お前……あの呪文も、お前なのか?」
「ああ、あれは僕だよ。コリンズと一緒に練習して、なんとか覚えたんだ。
いつか二人で貴方を驚かせようと思ってね。
時間が中々取れなくて、大したものはまだ使えないけど……でも、役には立ったね」
「役に立ったって……どうして、こんなことを?」
弟は答える。普段と何ら変わらない瞳を、壊すべき者に向けて。
「壊したいからさ、ヘンリー。貴方を、誰にも邪魔されずに、壊したい」
「……デール?」
ヘンリーは縋るような視線をデールに向ける。聞き間違いであってほしいと言わんばかりに。
デールは嘲けるように、小さく笑う。
「そう、壊したい。悲鳴を聞きたい。血を見たい。きっと綺麗だろうね。僕の兄さんなんだからさ」
「デール……」
「ねぇ、いいだろう? 一度ぐらい、僕の頼みを聞いてくれたってさ」
「……何があったんだよ、お前に」
「別に何も。僕がしたいからこうしてるんだ」
「……狂って、しまったのか……?」
いっそ、感情も顕に否定してくれれば、まだ救いはあったのかもしれない。
けれどもデールはどうしようもないぐらいに冷静だった。静かにヘンリーを見つめたまま、彼は言った。
「そうかもしれないね。僕は狂っているのかもしれない。
でも、どうでもいいことじゃないか、そんなことは」
ヘンリーが叫ぶ。耐え切れなくなったように、懇願するように。
「デール、止めろ。止めてくれ!」
けれどもデールは言葉を続ける。
「僕は壊したい。この衝動を抑える気もない。
だから、僕は壊すんだ。それだけの話だよ、ヘンリー」
――デール!
ヘンリーは叫んだつもりだった。声が出なかった。喉の奥で詰まってしまった。
「いい表情だね……それを見たかった」
反対に、デールは晴れやかに笑いながら言った。
「もっと見せてよ。ねえさんみたいに、素敵な表情を」
その言葉に、ヘンリーの思考が一瞬フリーズする。
――ねえさん、みたいに?
「綺麗だったよ? 赤い口紅をつけて、今の貴方のように僕を見上げた」
――今の、俺のように?
「そうそう、歌も聞かせてもらったんだ。美しいソプラノの賛美歌だよ」
――ソプラノの、賛美歌?
「それからね……最後まで、貴方の名前を呼んでいた」
――俺の、名前を、呼んでいた?
「……あ……」
――まさか。有り得ない。嘘だ。冗談だ。不可能だ。そんなことあるはずがない。
止めろ。止めてくれ。言うな。頼むから言うな。言わないでくれ! 頼むから!!
「貴方も壊してあげるよ。マリア義姉さんみたいに」
今度こそ。ヘンリーの思考も、身体も、完全に停止した。
ゆっくりとデールの持つマシンガンの銃口が向けられる。
けれども翡翠の瞳は虚ろなままだ。マネキンのように固まったまま、運命の時を待つだけだ。
逃げる気力も、そうするだけの意思も。今のヘンリーには残っていない。
「安心してよ。貴方の子供は、僕が守って育てる。
あの子は壊さない……何故だかわからないけど、あの子だけは壊したくないんだ」
デールは笑った。今までとは明らかに違う、淋しげな笑顔で。
もしかしたら、それは彼に残された最後の正気であり、良心だったのかもしれない。
けれども――デールは、トリガーに指をかけ――
「止めろ!」
引き金を引くより早く、投げられた盾が、彼の手を弾いた。
振り向いたデールの視界に、緑髪の少年と、小さな子供の姿が映る。
ソロとビビは一瞬目を見開き、睨みつけるデールと棒立ちになったままのヘンリーを交互に見つめた。
「え……ヘンリー、さん? 二人……?」
邪魔が入った。デールは大きく舌打ちし、身を翻す。
この状況で二人を追い払うのは不可能だ。ここは一先ず退くしかない。
「あ……ま、待て!」
ソロとビビが後を追うが、それはマシンガンの弾幕によって阻まれた。
「ヘンリー! いいか、次に会うまで何があろうと生き延びろ!」
硝煙と夜の帳の向こうで、ヘンリーに良く似た声が響く。
「誰にも殺されるなよ……貴方を壊すのは僕なのだからな!」
ソロとビビは、呆然とその言葉を聞いていた。何がどうなっているのか、混乱する二人の耳に虚ろな声が届く。
「なぁ、ビビ。お前、俺に聞いたよな……本当に悪いやつなんかいないよね、ってさ」
「ヘンリーさん……?」
棒立ちになったまま。弟の去った方を見ながら。ヘンリーは機械的に呟く。
「俺もいないと思ってたんだ。好きで人を殺す奴なんかいないと……思っていたんだ……
でも、違った……はは、あいつがマリアを殺したってさ。
俺の弟が、俺の最愛の妻を殺したんだってさ。壊したいから殺した、ってさ」
「悪い奴だな、俺は。弟を殺したいなんて考える兄貴は、悪い奴に決まってる。
でもな……でもなぁ! あいつは、デールは、あんな奴じゃなかったんだよ!」
翡翠色の瞳が揺れる。涙が、ヘンリーの目からとめどなく零れ落ちる。
「俺の弟はあんな奴じゃなかった! あんな狂った男じゃなかった!
ガキの頃から俺の後追っかけてよ! いつも人の事ばっか心配しててよぉ!
どうしようもなくトロくて! ソロ、お前みたいにお人よしで!
俺なんかよりずっと……優しくて……イイ奴で……」
ソロもビビも、何も言えなかった。なんと言葉をかければいいのかわからなかった。
ただ、黙って聞くしかできなかった。
「俺の知ってるデールは、あんな奴じゃない。デールは、もう、俺の知ってるあいつじゃないんだ。
マリアを殺して、俺も殺して、みんな殺すつもりで……あの、デールが……
それで、俺は、あいつを殺すんだ……殺してでも止めるんだ……
俺はあいつの兄貴で、親分で、だから俺が、殺してでも止めないといけない……俺が殺すんだ、弟を」
「ヘンリーさん……」
「なぁ……ソロ、ビビ、教えてくれ。誰でもいいから教えてくれよ。
どうして、こんなことになっちまったんだ……
なんでこんなことになっちまったんだよ……教えてくれよ、頼むから。
誰か、俺に教えてくれよ!! なんでこうなっちまったのかをよぉ!!」
慟哭は風に乗り、夜空へと散る。
答えられぬ問いと、硝煙の匂いと、長い沈黙だけが。いつまでもいつまでも残されていた。
【ビビ 所持品:スパス
【ソロ(MP消費) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
【ヘンリー(負傷) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可)
第一行動方針:ピサロ達と合流するまで待機 第二行動方針:仲間を探す(ソロ、ビビ)/デールを殺す(ヘンリー)】
【現在位置:レーベの西】
【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)、ひそひ草、アポカリプス+マテリア(かいふく) リフレクトリング
第一行動方針:一旦退く 第二行動方針:皆殺し(バーバラ[非透明]とヘンリー(一対一の状況で)が最優先)】
【現在位置:レーベの西→移動】
221 :
修羅場近影:04/12/21 00:23:02 ID:vXPoy0KY
「やっぱり見誤ったね。だから僕はやめようと言ったんだ」
「ふん、だがまぁ…人に会わずには済んでるだろう?」
アルスとシドは山間部を静かに歩いていた。
なるべく気配を勘付かれないように、静かに静かに。
数時間前。
放送を聞いた二人はショックを隠しきれない様子だった。
特にシドは…エアリスの死が悲しみを際立たせていた。
だがその悲しみを振り切ったのか、すぐに移動をしようとあっさりと提案した。
……だがその時に、2人の意見は真っ二つに分かれていた。
「まずは平野に下りてアリアハンまで歩こう。歩きやすい道では迎撃もしやすい」
「いや、山間部で静かに歩いてるほうが良い。
普通の人間はこんな場所は避けるからな。だから村近くに行くぞ、村」
そして結局、じゃんけんで勝った方の提案で進むことになって。
そしてその数時間前から今まで、レーベに向けて山間部を歩いているわけで。
「目的はなんだったか覚えてるか?」
「レーベ近くまで今日中に歩いて野宿、だろ?僕を舐めないでくれないか、不愉快だ」
「そう怒るな、確認をしたんだよ確認を」
そして実は、2人のノルマは今達成されようとしている。
村が修羅場と化していることを知らずに、
山間部とは言えどその近くに行く事に、
何の抵抗も無く進んだ2人故のノルマ達成だった。
この後、2人は何かを見るのだろうか。
222 :
修羅場近影:04/12/21 00:24:10 ID:vXPoy0KY
【アルス 現在位置:レーベ近くの山間部
所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘 ダーツの矢(いくつか)
第一行動方針:レーベ近くまで進む 最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】
【シド 現在位置:同上 所持品:ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) ロープ
第一行動方針:同上 第二行動方針:PKを減らす 最終行動方針:ゲームの破壊】
ミネアは爆発のするところへ歩いていった。
しかし、歩いていくうちに気になっていたことがあった。
爆発するたびに、爆発の威力が下がっているようなのだ。
このことによりミネアは、もしかしたら戦いではない、と思い、少し安心した表情を浮かべた。
「でも戦いではないとしたら…?なんなの…?」
ミネアの疑問は、深まるばかりだった。
そしていよいよ爆発の際に生じる煙がミネアの視界を阻むような距離のところで、爆発は止んでしまった。
「爆発が…止んだ…?」
あたりは、煙が舞っていた。
前はよく見えないし、これ以上無用心に近づくと爆発に巻き込まれる恐れもあるので、ミネアはいったん足を止め、煙が晴れるのを待った。
そして煙が晴れた先に見えたのは…変わった形のした鎧を装備している大男がうずくまっていた。
どうやらこの大男が爆発の中心地となっていたようで、その大男はひどく体力を失っていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
ミネアはすぐさま大男に近づき、回復呪文をかけた。光がその大男、ハッサンを包んでいく。
「す、すまねぇ…助かるぜ…」
神秘の鎧の効果と相乗し、比較的体力は回復した。といっても、満足に歩ける状態ではないが。
ハッサンはうずくまった状態でミネアに話しかけた。
「…これをみてくれ…」
ハッサンは右手をミネアに見せた。ミネアはすぐさま、一際目立つエメラルドの指輪に気が付いた。
「まさか、この指輪…?」
「そうみたいだ…こいつのせいで、何歩か歩くたびに爆発しやがる…しかも外せねぇ」
その言葉で、ミネアは呪いのアイテムだと判断した。・・・自分のアイテムよりも見分けにくく、残酷な効果をもたらすとんでもないものだと。
「…そんな…」
「…へへ…これじゃあオレはどっちみち死んじまいそうだな。でも、オレは、あんたに会えて感謝してる。
…こんなオレを助けようとしてくれたんだからな。ありがとうな。それに、オレの仲間たちは強い。あの魔女を絶対倒してくれる。…オレなんかいなくてもな。
さあ・・・もう行きな。こんなとこにいたら、ゲームに乗った奴が来るかもしれないぜ。それと・・・よかったら、俺のこの剣を持ってってくれ。」
そう言って、ハッサンは奇跡の剣を差し出した。しかし、ミネアはそれを受け取らなかった。そして、ミネアはゆっくりと立ち上がった。
「…ここで待ってて。助けを呼んでくる。」
「お、おい…」
「目の前で消えかけている命を見捨てる、そんなことはできないわ。それに、大切な仲間もいるんでしょう!」
ミネアはそう言って、走っていった。方角は南、つまりもともとミネアがいた方向である。
なぜ南を選んだのかは、ミネア自身もわからなかった。しかし、この南という選択が、幸運を呼ぶのであった。
険しい山道を超えていく途中、放送を聞いた。
「ブライさん・・・・・トルネコさん・・・・・」
ミネアの足が止まった。深く悲しみ、涙を流した。
しばらくして気が付くと、あたりは完全に夜になっていた。ミネアは、また走り出した。
今、やれることをやる。ブライさんもトルネコさんも、いつまでも泣いてることを望んではいないだろう。
そう思い、ミネアは走った。
しばらく走ると、祠を見つけた。
ミネアはその祠へ入った。祠の中には、地下へと続く階段があった。そこを降りると、扉があった。しかし、鍵がかかっている。
だが、明かりが灯されているようであった。つまり、人がいるということである。
その扉の向こうにいる人が、ゲームに乗った人でないことを祈りながら、ミネアは扉を少し強めにノックした。
「誰かいますか!?」
セージ、タバサ、ビアンカは眠っていた。しかしセージは、どこからか音がするのに気づき、目を覚ました。
音のする先は、扉だった。
「・・・また、危険な来客かねぇ・・・」
セージはタバサを起こし、警戒するようにいった。そして、扉を開けた。するとそこには女性がいた。
「戦う気はありません、お願いです、私の仲間を助けてください!」
突然のその言葉に、セージとタバサは少し唖然とした。しかしその女性、ミネアに事情を聞き、納得した。
「よし、そこに案内して。タバサ、お母さんを頼むよ。」
タバサは頷いた。そして、ミネアとセージはハッサンがいたところへ走った。
険しい山道を再び超えると、ハッサンはまだうずくまった体勢でいた。けれど神秘の鎧の効果で、だいぶ体力は戻っているようだ。
「どこにその呪いのアイテムを装備したんだい?」
「この指輪だ・・・」
ハッサンは右手を差し出した。
「これだね。よし・・・」
セージは意識を集中し、呪文を詠唱した。ミネアとハッサンはそれを見守った。
「・・・・・・シャナク」
すると、爆発の指輪は、音もなく崩れ去っていった。
こうして、ハッサンはようやく爆発から解放されたのであった。
【セージ 所持品:ハリセン ファイアビュート
現在位置:いざないの洞窟西の山岳地帯
第1行動方針:祠に戻る 基本行動方針:タバサの家族を探す】
【ハッサン(HP2/3程度+α) 所持品:奇跡の剣 神秘の鎧
現在位置:同上
第1行動方針:不明 基本行動方針:仲間を募り、ゲーム脱出】
【ミネア 所持品:いばらの冠 嘆きの盾 悪魔の尻尾
現在位置:同上
第1行動方針:不明 基本行動方針:不明】
【タバサ 所持品:ストロスの杖 キノコ図鑑 悟りの書
現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋
第1行動方針:セージを待つ 基本行動方針:家族を探す】
【ビアンカ(疲労回復) 所持品:なし
現在位置:同上
第1行動方針:睡眠中 基本行動方針:不明】
>>215-217 (くそっ……まさかバーバラが奴から逃げ切るとは)
カインは舌打ちし、一人高みを駆けていた。その視界の端で、不意に赤い輝きが灯る。
宿屋が炎上している――アーヴァインが作戦を実行に移したのだ。
(奴にも、火の手が見えているはずだな)
カインはデールの動きを推測し、そちらへと向かう。
そして何度目かの跳躍をした時、眼下に三人の男の姿が映った。
先頭を突っ走る、アレに良く似た緑髪の男。
やや遅れて、アーヴァインと同年代の青年が、黒魔道士姿の子供を抱えて後を追っている。
「……」
カインは跳んだ。後続の青年と子供に向かって、流星のように。
「!!」
青年がカインに気付く。子供をかばいながら、白銀に輝く盾で受け止めようとする。
カインは槍と足に全力を乗せて、二人を容赦なく蹴り飛ばした。
「ソロ、ビビ!」
盛大な物音に男が振り返り、カインに迫ろうとする。
だが――
「兄さん!」
――カインの耳に、二度と聞きたくないと思っていた、アレの声が届いた。
そしてその一瞬の隙を突かれ、地に伏した青年が大きく手を振りかざす。
「イオラ!」
爆発と煙が辺りを包んだ。だが、爆風よりもわずかに早くカインは中空へ跳び、屋根へと逃げる。
着地した彼の目に、こちらへ向かい大きく手を振る若者の姿が飛び込んだ。
カインは若者――アーヴァインを一瞥してから、ちらと下を見る。
アレが、緑髪の青年を引っ張り、どこかへ連れて行こうとしている。
(そうか……あの男がアレの兄、か。
……フン。奴らがどうなろうと、俺の知ったことではない)
カインは地を蹴った。アーヴァインと合流し、残りの標的を潰しに行くために。
そう、これからどのような悲劇が起ころうと――最早、彼の知ったことではなかった。
――おじうえ、見て見て!
――うわぁ! すごいなコリンズ、呪文が使えるようになったのか。誰に教わったんだい?
――ちちうえだよ。一緒にレンシュウしたんだ。
――いいなぁ。僕も兄さんやコリンズみたいに呪文が使えたらなぁ。
――オレが教えてあげるよ。トックンすれば、おじうえだってきっと使えるようになるよ。
――はは、僕にはそんな才能はないさ。でも、気持ちだけでも嬉しいよ。本当に……お前は優しい子だね。
――へへっ……おじうえとははうえだけだよ、そう言ってくれるの。
――兄さ……父上は? 言ってくれないの?
――だめ。いっつも『お前は誰に似たんだよ』ってため息ついてばかり。
――はははは、兄さんらしいや。……コリンズはね、子供の頃の父上にそっくりだよ。本当に。
――悪いな、コリンズがまた邪魔したみたいで。全く、遊び相手は他を探せって言ってるのによ。
――邪魔じゃないよ、あの子はとても良い子だ。僕でよければいつでも相手になるよ。
――おいおい、執務があるだろう。それにイイ子どころか、昔の俺に輪をかけた悪ガキだと思うんだが。
――あはは。そうだね、子供の頃の兄さんを思い出すよ。悪戯好きなのも、優しいところも。
――誰が優しいだ、誰が。第一、そういうことを真顔で言うな。聞くこっちが恥ずかしい。
――相変わらず素直じゃないね……でもね、僕は思うんだ。
――あ? 何が?
――あの子は、僕なんかよりずっと優れた王になれるよ。
――そいつはどうだかな。俺が言うのもなんだが、王向きの性格とは思えないぜ。
――いや、僕よりも向いてるよ。なんと言っても、兄さんとマリア義姉さんの子供なんだから。
(ちっくしょう……昼間の銀髪も、アーヴァインの野郎も、次に会ったら絶対一発ぶん殴る!)
そんなことを考えながら、ひたすら西へとヘンリーは走った。
時折、ビビを抱えたソロが、自分についてきているかどうかを確認しながら。村の外れへと走っていた。
だが――
「うぉっ!?」「わぁっ!!」
突然のことだ。いきなりソロとビビが、何者かに蹴り飛ばされた。
アーヴァインではない。槍を携えた、屈強な騎士風の男。
(くそっ!! アーヴァインと手を組んだって相手か?!)
助けに行こうと駆け寄るヘンリーの手を、何者かが掴んで引き止める。
反射的に振り解こうとしたヘンリーは、しかし相手の姿に気付き、目を見開いた。
「兄さん!」
「デール!?」
いるはずのない弟の姿が。いや、先ほど見かけたような気もするが――自分の弟が。
目の前にいて、自分の手を引いて走ろうとしている。
「早く! 早く逃げないと殺されるよ!」
「お、おい、待て! 俺の連れがアイツに……助けに行かないと!」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ、兄さん!」
デールは走る。ソロとビビを案じるヘンリーを、半ば無理やり引き摺るように。
「ヘンリーさん!」
二人の声を、遠くにして。ヘンリーはデールに導かれて走る。
そうしてどれほど走ったか、村の外れに来たところで、二人はようやく立ち止まった。
「良かった。兄さんが無事でよかった……」
涙目をこする弟に、ヘンリーは呼吸を整えてから質問する。
「デール……お前、なぜ、ここに?」
「探してたんだよ、兄さん。ずっとずっと探して歩いてたんだ。
そうしたら、炎が見えて……宿屋の前に兄さんがいて……兄さん、僕に気付いてなかったろ。
手を振ったのに走っていってしまって、それで必死で追いかけて、途中で何とか先回りしてさ。
……良かった。間に合って。兄さんがあいつにやられたら、どうしようかと思ったよ」
言われて記憶を辿る。確かに、あの時デールの姿が在った。
状況が状況だったし、気のせいということで片付けてしまったが……
「そうか……すまん」
ヘンリーが頭を下げると、デールは「いいんだよ」と首を振った。
「兄さんが無事だった。僕はそれだけで十分なんだ」
デールはそう言って、穏やかに微笑む。それからふと、何かを思い出したように袋の中に手を入れた。
「そうだ。兄さんにプレゼントがあったんだ」
「――プレゼント?」
「ああ、受け取ってよ。銃弾を」
ヘンリーの記憶にあるソレと同じ、気弱で、優しげな微笑を浮かべたまま。
デールは、何の躊躇いもなく、袋から出したマシンガンのトリガーを引いた。
立ち込める硝煙。激しい銃声。レーベの事件の始まりを知らせたあの音を、ヘンリーは聞いた。
「兄さん、いや……ヘンリー。僕のために、壊れろ」
その呟きを、確かに聞いた。
「おや?」
デールは見た。晴れゆく煙の向こうで。
月明かりに照らされて、地面に穿たれた銃痕よりも大きく左に跳んだ位置で。
呆然とした表情で自分を見つめる兄の姿を。壊れているべき者の姿を、確かに見た。
「デール」
兄は呟く。どこか虚ろな目を、弟に向けて。
「いきなり、なんだよ……どうして、お前が……?」
弟は答える。普段と何ら変わらない瞳を、壊すべき者に向けて。
「壊したいからさ、ヘンリー。貴方を、誰にも邪魔されずに、壊したい」
「……デール?」
ヘンリーは縋るような視線をデールに向ける。聞き間違いであってほしいと言わんばかりに。
デールは嘲けるように、小さく笑う。
以下、
>>218に続きます
>220の修正
【ビビ 所持品:スパス
【ソロ(MP消費) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
【ヘンリー(負傷) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可)
第一行動方針:ピサロ達と合流するまで待機 第二行動方針:仲間を探す(ソロ、ビビ)/デールを殺す(ヘンリー)】
【現在位置:レーベの西】
【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)、ひそひ草、アポカリプス+マテリア(かいふく) リフレクトリング
第一行動方針:一旦退く 第二行動方針:皆殺し(バーバラ[非透明]とヘンリー(一対一の状況で)が最優先)】
【現在位置:レーベの西→移動】
【カイン 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手
【アーヴァイン(HP4/5程度) 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
第一行動方針:ピサロ+レナ達のグループを襲撃する 第二行動方針:殺人者となり、生き残る/ゲームに乗る
現在位置:レーベの村・民家の屋根の上を疾走中】
「ちくしょう……早くしないと」
白魔導士は未だに見つからない。エッジに負ぶわれたユフィは、浅い呼吸を静かに繰り返している。
もう時間がない――近くにいるはずなのに。マリアを置いてまでして、ここまでやって来たのに!
エッジが歯を食いしばったその時、波動の杖が奇妙に揺れ動いた。さらに不意に木々が揺れ、二つの影が目の前に現れる。
「おや、どうしたんだい?」
反射的に身構えたエッジに、影の片割れである老女が問い掛けた。
その言葉に敵意がないことを悟り、彼は背中のユフィを二人に見せる。
「あんたたち、回復魔法は使えないか!? このままじゃこいつが死んじまう!」
死に瀕した少女の姿に老女は顔色を変えた。それから、連れの年齢不詳の男を見上げる。
「ザンデ。力を貸してくれるかい?」
「……ふん。わしの領分ではないが、いいだろう」
「よし、それじゃあ若いの。その子を横にさせな」
言われるままにエッジはユフィを下ろし、地面に横たえさせた。
「若いの、何か回復用の道具は持っているかい?」
「ハイポーションは使っちまった。白魔法の力を持つ剣があったけど、別の場所で待ってる仲間が持ったままだ」
「そうかい。ザンデ、あんたの支給品は?」
「剣と妙な機械だが、どちらも癒しに役立つものではない」
「まったく……使えそうなのはあたしの杖だけかい」
老女はぶつくさ文句を言いながら、その杖とやらを袋から取り出し、ユフィの上に掲げる。
不安げに二人を見つめるエッジに、老女はにやりと笑った。
「安心しな、若いの。ノアの弟子が二人も揃っているんだ、これで助からないわけがないさ。
あんたも疲れたろう。大船に乗った気分でゆっくり休むといいよ」
【ユフィ(瀕死) 所持品:プリンセスリング フォースアーマー 行動方針:死を待つ】
【エッジ 所持品:風魔手裏剣(30) ドリル 波動の杖
第一行動方針:ユフィの回復を待つ 第二行動方針:仲間を探す】
【ザンデ 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
【ウネ 所持品:癒しの杖、残りは不明
第一行動方針:ユフィを助ける 第二行動方針:ドーガを探し、ゲームを脱出する】
【現在位置:アリアハン北の森、橋の近く】
「あいつがあんな所で出てくるなんてね〜」
屋根から屋根へと身軽に跳びながら、軽い調子でアーヴァインが言った。
「全くだ。しかし惜しい事をした。」
惜しい事をした。あの場から離れてカインがすぐに思ったことだった。
デールよりももう少し早く3人の存在に気づけていれば、帽子を被った子供ぐらいは簡単に始末できたのに。
「ま、運が良かったと考えようよカイン。アレに任せておけば向こうも少しは傷つく。」
実際、デールはすでに3人から離れているのだが、彼らはそれを知る由もない。
「僕達はもう一組を確実に排除すればいい。もう一組…居た!」
アーヴァインは突然立ち止まり、闇に向かって真っ直ぐに指を指した。
カインも傭兵のとなりに着地し、目を凝らすも全く見えない。
「みえないのかい?僕が指してる方向、距離はざっと120ってところだよ。」
しばらく凝視するうち、カインにも見えてきた。村の道を走る、三つの影が。
「流石だな。この暗いなかでこうも簡単に見つけるとは。」
スナイパーは「でしょ?」と笑いかけると、ボウガンを掲げ、「健闘を祈るよ」と言った。
竜騎士も応えるように槍をくるりと一回転させると、笑顔でアーヴァインを見やった
ピサロ達は村の南へとひたすら走った。
ターニアは放っておくと何処かへ飛び出しそうだったので、また呪文で眠らせてエリアが背負っている。
宿屋に連れてこられた時は泣きながら何かを話し合っていたレナとエリアだが、
それからというもの目に吹っ切れたような、強い光を湛えている。
「ピサロ…さん?一応確認しておくと、村の南から出た後…」
「大きく迂回して村の西へ向かい、ヘンリー達と合流する。いいな?」
レナの質問にピサロが短く答え、さらに続ける。
「もっとも、順当にそこまで行ければの話だがな。」
実際、このまま何事も無く目的地まで辿りつける確立は千に一つも無い。
宿屋を襲撃したアーヴァインや、村を調べた時にみかけた騎士のような男が妨害してこないわけが無いからだ。
問題は、妨害がいつ来るかだ。今すぐに襲われてもおかしくは―――
「来ました!」
エリアが怒声を上げるが早いか、紅い影が3人の頭上をよぎり、背後に着地した。
影はマントを派手にはためかせ、ピサロ達に振りかえると――目にも止まらぬ早さで黒い矢を撃ち出した。
ピサロとレナの二人もすぐに剣を抜き、踊るように身を翻して矢を叩き落す。
両手が塞がっているエリアは、体を屈め、横に跳んで矢をかわす。
迫り来る矢を見ていると、あの時あの瞬間を思い出す。
矢を身体に受け、一度絶命したその瞬間を――
「エリア!」
レナの怒声に、彼女ははっとふりかえる。
「あなたはターニアちゃんを連れてヘンリーさん達にこの事を!」
「ですが…」
「行って!ここは私たちがくいとめるから!」
矢を弾きながらレナが怒鳴ると、最後ににこっとエリアに笑いかけた。
エリアもしばらくして小さく頷くと、一目散に走り出す。
その時、民家の影から蒼い影が飛びだした。
影は槍を携え、一直線にエリアに迫り――
「メラゾーマ!」
突如眼下から上がった火柱にて妨げられ、やむなく真下に着地する。
その頃にはアーヴァインも攻撃の手を止め、数歩後ろにあとずさっていた。
「やはりアーヴァインと手を組んでいたはお前か…」
火柱を起こした男、ピサロはカインを睨みながら呟く。
竜騎士はふっと笑うと、応えた。
「俺の名はカイン・ハイウインド。あの時の続きと行こうか。ピサロ殿。」
「奇襲失敗、だね。」
肩をすくめて言うアーヴァインをレナが睨みつけた。
目の前のヘラヘラした男が身につけている帽子に、マント…間違い無い。彼のだわ。
「あなたが、ギルバートを…」エクスカリバーの柄を強く握り締め、やっとのことでそれだけ言う。
「そうだよ〜。それがどうかしたの〜?」
アーヴァインが軽い笑顔を崩さず、血に染まったマントをひらひらと持ちあげるのを見て、レナは一層怒りが込み上げた。
「…君みたいにかわいいコを殺しちゃならないなんて、残念だなぁ〜」
彼はそういうと、剣とボウガンを構える。
カインとピサロの武器が甲高い音を立ててぶつかり合うのと、再び撃ち出された矢をレナが弾き返したのは、同時だった。
【ピサロ(HP3/4程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
第一行動方針:カイン達を追い払う。可能ならば今この場で始末する。
第二行動方針:ヘンリーたちと合流する
最終行動方針:ロザリーを捜す】
【レナ 所持品:エクスカリバー
第一行動方針:ピサロに同じ
第二行動方針:ピサロに同じ
最終行動方針:バッツ、ファリスを捜す】
【アーヴァイン(HP4/5程度)
所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
第一行動方針:ピサロ、レナを始末する
第二行動方針:エリアを追う
最終行動方針:ゲームに乗る】
【カイン 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手
第一行動方針:アーヴァインに同じ
第二行動方針:アーヴァインに同じ
最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
現在位置:レーベの村、南側出口付近。
【エリア 所持品:妖精の笛 占い後の花
第一行動方針:ヘンリーたちと合流し、ピサロ達が襲撃されている事を知らせる。
第二行動方針:サックスとギルダーを探す】
【ターニア(右腕を負傷) 所持品:微笑みのつえ
行動方針:不明】
現在位置:レーべの村の西へと疾走中
無数の星が散らばる星空の下で、剣と剣が交わっていた。
耳を劈くような金属音が、闇の中に幾度となく響く。
「くっ……」
レオンハルトの息遣いは若干荒くなっていた。
それでも、相手の女は顔色一つ変えることなく、冷たい表情のまま剣を振り下ろしてくる。
(このまま続けば・・・長くは持たないな…)
そう判断したレオンハルトは、防御から攻撃に転じた。
女の剣を受け止めたと同時に、そのまま足を強く大地に踏み込み、腕に力を込め全体重をかけた。
女も同じように力を込め、踏み止まる。
互いに自分の持つ全ての力を込め、剣と剣が押し合う。
両者とも、大地を揺るがすようなすさまじい気迫での睨み合いが続く。
だが、ここは男性と女性の腕力の差であろうか。
キィン、と軽く剣が唸ると同時に女の体勢が崩れる。
(――今だ!)
レオンハルトはすかさず剣を振った。
普通なら、これで勝利は決まっていただろう。
だが女は崩れた体勢のまま、レオンハルトの剣を受け止め、すぐに体勢を立て直した。
それは、並の人間では到底出来ない、まさに神業と呼ぶに相応しい鮮やかなものだった。
百人斬りのベアトリクス。そう呼ばれた彼女の強さは、剣術だけではなかった。
(なんという騎士だ…これほどの騎士を狂気に満ちた殺人鬼にしたくない。
なんとしても止めないと…)
そう思う内に、ベアトリクスの剣が妖しく光っていた。
すると次の瞬間、その光はレオンハルトの体から溢れ出る。
気が付くと、レオンハルトの背中は大地についていた。
ロングソードは、手の届かぬところへ。
――聖騎士のみ使える聖剣技、ショック。
皮肉なことに血を求めている残虐者となった騎士が、聖剣技を繰り出してきたのだ。
ベアトリクスは倒れているレオンハルトに、剣を向けた。
月光により、剣は嫌味に輝く。
(…これまでか)
死を覚悟したレオンハルトは、静かに目を閉じた。
レオンハルトは素直に受け入れようとした。これが、自分の罪に対する裁きなのだから。
そう思っていたが、不可思議なことに何時まで経っても剣は自分に振り下ろされなかった。
レオンハルトは目をゆっくりと開けると、そこで見たのは今にも振り下ろしてきそうな剣を持つ右腕を震わせている女。
さらに、今までの冷たい表情は失い、まるで追い詰められているような表情だった。
かつて、主君に仕えていたとき。
彼女は主君の言うままに動いていた。罪のない者を殺す。そんな騎士として、以前に人として有るまじきこともしていた。
もちろん彼女は人を殺すために技を磨いてきたわけではない。
――散々、迷った。だが、彼女は決められなかった。
そんな中、同じ主君に仕えていたもう1人の騎士は、己の意思を優先していた。
その騎士のおかげで、自分は間違っていた道から抜け出せたのだ。
――そして今もまた、自分は間違った道を走ってるではないか。
同じ過ちを、二度と繰り返したくない。
炎のごとく熱い意思を持つ彼女は必死で自分自身と戦っていた。
騎士としての誇りを味方にして。
「待て、そこの女!」
ふと、闇の中から声が響き渡った。
目線を上げると、前から2人の男と、その2人から少し離れている方向にもう1人の男が此方に向かって来るのが見える。
「……くっ!」
ベアトリクスはそう一言残すと、剣を鞘に納め、踵を返して走り去った。
やりきれない思いを携えながら。
【レオンハルト(負傷) 所持品:消え去り草
現在位置:レーベ西の平原
第一行動方針:ベアトリクスを止める 第二行動方針:死を待つ】
【ベアトリクス(精神を乗っ取られた状態) 所持品:血のエンゲージリング 君主の聖衣 アルテマソード
現在位置:レーベ西の平原
第一行動方針:逃げる 第二行動方針:参加者を見つけたら殺す】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
現在位置:レーベ西の平原 第一行動方針:レオンハルトの場所へ 最終行動方針:ゲームをぶち壊す】
【フリオニール(感情半喪失) 所持品:銅の剣
現在位置:同上 第一行動方針:レオンハルトの場所へ】
【ギルガメッシュ 所持品:厚底サンダル 種子島銃
現在位置:レーベ西の平原
第一行動方針:レオンハルトの場所へ 第二行動方針:剣が鍛えあげられるのを待つ】
(ロック&フリオニール、ギルガメッシュはもうすぐレオンハルトのところに着きます。
ロングソードはレオンハルトの側に落ちています)
「しかしながら、あたしも恵まれたもんだねぇ」
そう呟きながら、ウネは杖を使った。
ユフィの傷が回復していく。流石は癒しの杖、と言ったところだった。
「さて、これで大丈夫だね」
「ありがとう、じゃあ俺はそろそろ…」
「もう行くのかい?せわしないねぇ…」
仲間を待たせてあるので、と付け加えると、
エッジはまたユフィを担いだ。そして走り出そうとしたとき、
「ちょっと若いの。これを持って行くと良い」
「…な、何だ?支給品?」
「この杖以外はどうもあたしには必要なさそうだからね。貰っていくと良いよ」
そう言うとウネは、自分の袋の物を出した。
一つは、刃が波状になっている両手剣。近くに落ちた解説書には「フラムベルグ」と書いてある。
そしてもう一つは銃。だが大きい。恐らく地面に固定して打つタイプのマシンガンだろう。三脚もある。
「……いいのか?」
「貰ってくと良いって、聞こえなかったのかい?」
ウネはそう言うと「若いの」の袋に難儀しながら支給品を入れていった。
そして一言
「行ってきな」
エッジは急いで元きた道を戻ろうと走り出した。
【エッジ 所持品:風魔手裏剣(30) ドリル 波動の杖 フラムベルグ 三脚付大型マシンガン
第一行動方針:マリアの元へ戻る 第二行動方針:仲間を探す】
【ユフィ(回復) 所持品:プリンセスリング フォースアーマー 行動方針:同上】
【ザンデ 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
【ウネ 所持品:癒しの杖
第一行動方針:見送る 第二行動方針:ドーガを探し、ゲームを脱出する】
【現在位置:アリアハン北の森、橋の近く】
>>243 ×エッジは急いで元きた道を戻ろうと走り出した。
○エッジは感謝の意をウネに伝え、すぐに急いで元きた道を戻ろうと走り出した。
で、脳内補間を…宜しく……。
エッジは静かに見ていた。
ウネが何をするのか、静かに。
殺されるとは考えにくいが、やはり警戒はしてしまう。
人間が腕を喪失してしまう程の状況なのだから。
「しかしながら、あたしも恵まれたもんだねぇ」
エッジを尻目にそう呟きながら、ウネは杖を使った。
ユフィの傷が少しずつ回復していく。流石は癒しの杖、と言ったところだった。
だが少し頼りない。腕も再生をするわけでもなく…まぁ、それは最初から期待はしていなかったが。
ウネの魔力が低いのかと考えたが、それにしても頼りない。
更に、エッジは気づいていなかったが、癒しの杖に少し悪い異変が起こっていた。
それほどまで、この世界には強力な回復という手立てが貴重すぎたのだ。
まだそれにはエッジは気付いていない。否、少し冷静さを欠いている今の彼が気付くはずも無かった。
だが、それでも少しずつ少しずつ腕の傷が治っていく。
時間を掛けていくと、腕が千切れ飛んだ様には見えない程に傷は閉じていた。
どうやら混濁していた意識もマシにはなってきたらしい。顔色も戻りつつある。
だが、少し時間を掛けすぎた。マリアが心配だ。
「さて、これで体の方は大丈夫だね」
「ありがとう、じゃあ俺はそろそろ…」
「もう行くのかい?せわしないねぇ」
仲間を待たせてあるので、と付け加えると、
エッジはまたユフィを担いだ。そして走り出そうとしたとき、
「ちょっと若いの。これを持って行くと良い」
「…な、何だ?支給品?」
「この杖以外はどうもあたしには必要なさそうだからね。貰っていくと良いよ」
そう言うとウネは、自分の袋の物を出した。
一つは、刃が波状になっている剣。近くに落ちた解説書には「フランベルジェ」と書いてある。
そしてもう一つは銃。だが大きい。恐らく地面に固定して打つタイプのマシンガンだろう。三脚もある。
「……いいのか?」
「貰ってくと良いって、聞こえなかったのかい?」
ウネはそう言うと「若いの」の袋に難儀しながら支給品を入れていった。
そして一言
「行ってきな」
その言葉を聞いて感謝の意を示すと、エッジは急いで元きた道を戻ろうと走り出した。
マリアへの報告と合流を急いで済ませるために、早く早く走った。
「はぁ…」
暫くしたあと。
静かに溜息をつくウネの手には、ヒビが入った癒しの杖があった。
【エッジ 所持品:風魔手裏剣(30) ドリル 波動の杖 フランベルジェ 三脚付大型マシンガン
第一行動方針:マリアの元へ戻る 第二行動方針:仲間を探す】
【ユフィ(傷回復/右腕喪失) 所持品:プリンセスリング フォースアーマー 行動方針:同上】
【ザンデ 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
【ウネ 所持品:癒しの杖(損傷 使い続けると壊れるかも)
第一行動方針:エッジが見えなくなるまで見送り 第二行動方針:ドーガを探し、ゲームを脱出する】
【現在位置:アリアハン北の森、橋の近く】
三人を硬直から解き放ったのは、空を焦がした火柱だった。
少しばかり離れた場所で、高く、高く炎が上がる。
「あれは……ピサロの呪文……?」
ソロの呟きに、ヘンリーが振り向く。
涙のせいで真っ赤にはなっていたが、瞳には明らかな理性と意思が戻っていた。
「あの騎士野郎か……って、待てよ。
少し早過ぎないか? お前ら、あいつと戦ってたんだろ?
……それとも、アーヴァインが一人で向こうに行ったってのか?」
「それがね、ヘンリーさん」
ビビが説明する。あの時自分とソロを蹴飛ばした男は、すぐにどこかに行ってしまったということを。
けれども、ソロが使ったイオラが視界を遮ってしまい、結果ヘンリーを見失ってしまったのだということを。
「……ソロ。お前、バカだろ」
「まさかあんなにあっさり退却するとは思わなかったんですってば!」
ソロが抗議するが、ヘンリーは聞いていない。
「ともかく、そういうことなら向こうは騎士野郎とアーヴァインの総攻撃を食らってることになるな」
「そ、それって大変じゃない?」
うろたえるビビの肩を、ソロが叩いた。
「大丈夫、僕が行くよ。ビビ、君はヘンリーさんを頼む」
「え……ボ、ボクが?」
「ちょっと待て。普通逆だろ。俺がビビを頼まれるんじゃないか?」
「ヘンリーさんは怪我人だし、何事も無鉄砲すぎるんですよ。
ビビの方が慎重で、魔法も使えるし、よっぽど頼りになります。
いいですか、大人しくビビの言うこと聞いていてくださいね」
納得がいかん、という表情のヘンリーを背に、ソロは歩き出す。
その裾を、ビビが唐突に掴んだ。
「どうしたの?」
しゃがみこむソロの顔を、ビビはおどおどと見上げる。
「あの……アーヴァインってお兄ちゃん、どうなるの?」
「え?」
「アーヴァインってお兄ちゃん、ギルバートさんを殺した悪い人なんだよね。
放っておけば、もっとたくさんの人が殺されちゃうんだよね……
……でも、本当に、殺さないといけないの?」
――ボク、どんな悪い人でも、誰かが死ぬのを見るのは嫌だよ。
ビビの言葉に、ソロは優しく彼の頭を撫でた。
「人殺しだからって、殺さないといけないなんてこと、あるもんか。
例え人殺しでも、家族や友達の仇でも、敵対し続けた相手でも……
あの魔女やエビルプリ―ストのような本当の邪悪以外は、僕は、殺さないよ。
僕だって……誰かが死んで誰かが悲しむのは、もう嫌なんだ」
ビビはしばらくソロを見つめていたが、やがて小さくうなずいた。
遠くからエリアの声が聞こえる。
ソロは面を上げ、ターニアを背負って大きく手を振っている彼女の元へと走り出した。
カインは攻める。鍛えぬいた槍の技と、竜騎士だけが持つ飛翔力を存分に生かし。
ピサロに魔法を使わせる余裕を与えぬために、一瞬たりとて手を抜かず、攻めて攻めて攻め抜いている。
だが――敵もさるものだ。
反り身の刃で弾き、時には踊るように身を翻して、カインの攻撃を完全に捌いていた。
(まずいな)
カインは優れた戦士だ。だからこそ、わかる。目の前の男の技量がどれほどのものなのか。
今はまだ、精神的にゆとりを持つカインが戦いの主導権を握っている……が。
亡き親友に勝るとも劣らぬ剣の冴え。それに加えて、先ほど見せた魔法の威力。
純粋な実力では、間違いなくピサロの方が上を行っている。
(この機を逃して勝てる相手ではない……隙を見つけねば)
槍を構え、カインは宙へ飛ぶ。その視界に、唐突に青い輝きが生まれ出た。
ピサロの身体から湧き出すように。
「これは――?!」
戸惑うピサロに生まれた一瞬の隙を見逃さず、カインは流星となって疾る――
「許さない……あなただけは許さない!」
怒りに満ちた一閃をバックステップでかわしながら、アーヴァインは軽口を叩く。
「別にいいよ〜。許してもらおうなんて思ってないし」
彼は笑いながら、闘牛と相対するマタドールのように、血染めのマントを大げさに振った。
完全な挑発だ。隙を作らせ、かつ動きを見切りやすくするための。
レナもそれに気付いてはいるのだが……だからといって、湧き上がる激情を抑えられるわけがない。
「ふざけないで!」
振り上げられた刃がアーヴァインの肩を捉えた。が、浅い。
「あーあ。着替えたばかりなのにな、このコート。コレ探すの大変だったんだよ?」
アーヴァインは真後ろに飛び退りながら、余裕たっぷりの表情を崩さずに笑う。
だが、決してレナを甘く見ているわけではない。
真実はその逆――動揺を悟られないために、精一杯演技をしているに過ぎない。
(何なのこの人!? さっきまでピーピー泣いてるだけだったのに、強すぎじゃない?)
感情に身を任せながらも、鋭さを失わない太刀筋。並みのSeedをも上回る身体能力と技量。
GFの力に頼らずして、GF装備者と同等以上の戦いを繰り広げる……
相手がソロやピサロなら、まだ納得できたかもしれない。
だが、正直役立たずとばかり思っていた女性が、これほどの強さを秘めていたとは。
(も〜誤算続きだよ、さっきから。ま、仕方ないけどさ……)
「――全部が思い通りに行くなら、誰も苦労はしないよね。
ほら、人生はいつだって問題と解決の連続だって言うしさぁ!」
レナと間合いを取ったアーヴァインは、あらぬ方向へ手をかざす。
同時に、少し離れた場所にいるピサロの身体から、魔力の光が浮き上がった。
「ドロー、ファイガ!」
アーヴァインの手に収縮した輝きが、巨大な焔となってレナに襲い掛かり――
『甘い!』
ピサロとレナ、二人の声が唱和した。
ピサロは無造作に手を振る。レナは剣を投げる。
そして放たれた真空波が炎をかき消し、投じられた聖剣がカインへと走った。
「くそっ!」
カインは槍で剣を弾き飛ばしたが、体勢を崩してしまう。
不安定な姿勢で着地した彼の目前に、ピサロが迫る。
避け切れない。カインが思った、その時――
「させないよ!」
暗黒の波動を乗せた矢が、天の群雲を弾き。
「――良くやった」
カインがにやりと笑う。
「良くやった、アーヴァイン」
殺人者の名を冠した槍は、ピサロの身体を深々と貫いていた。
レナが目を見開く。アーヴァインが勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
だが――当のカインは、槍を引き抜くと同時に宙へ飛び、大きく舌打ちした。
「まずい……アーヴァイン! 撤退だ!」
それだけを叫び、カインは身を翻す。
「え?」
アーヴァインは首を傾げ、レナと共にピサロを振り返った。
そして、見てしまった。
血のように赤く輝く瞳を。――氷のような怒りに満ちた、魔王の瞳を。
「あ……あ、ああ……」
レナががたがたと震える。アーヴァインは死人のように青ざめた表情でソレを見る。
もはや敵も味方も関係なく、二人は同じ事を思い、同じ事を悟っていた。
目覚めさせてはいけないものを、カインの一撃は目覚めさせてしまったのだ。
今、目の前にいるのは、宿屋で見張りをしていたソロの知人ではない。
あの時、宿屋に来るよう自分とエリアを説得していた男でもない。
人の姿をした絶望。死、そのもの。――『魔王』。
「報いを与えねばな」
竜に睨まれた蛙のように。立ちすくむ二人の耳に、静かな呟きが届く。
「然るべき、相応しき報いを、あの男に。……そして」
真紅の輝きが、アーヴァインの青い瞳を捉える。
「アーヴァイン。貴様にも受けてもらわねばならんな」
隣で聞くレナでさえ、身動き一つ取れないほどの威圧感と言い知れぬ恐怖を感じた。
まして、真正面から相対するアーヴァインは――
「うわぁああああああああああああああ!!」
絶叫と共に、トリガーを引く。生命力を暗黒の波動に変え、撃つ。
ピサロは避けなかった。矢は狙い違わず身体に突き刺さり、破壊の力を解放する。
それでも顔色どころか表情一つ変えない。
邪悪に、静かに微笑み、彼はゆっくりとアーヴァインへ近づく。
然るべき報いを。血ですら償えぬ罪を贖わせるための、然るべき報いを。
「来るな……来るな来るな来るなぁっ!」
追い詰められたアーヴァインが再び叫ぶ。
その腕がかすみ、弦の音が夜空に木霊する。
レナは見た。瞬きすら終わらぬ一瞬の間に、六本の矢がピサロを捉えたのを。
アーヴァインの全力のショットが、胸と喉と両手と両足を正確に貫いたのを。
けれども、矢は何事もなかったかのように呆気なく地面へと落ち、ピサロは歩みを止めなかった。
赤い光が邪悪に歪む。掲げられた白刃が、月明かりを怜悧に映し出す。
アーヴァインは見た。刀が真っ直ぐ自分に振り下ろされる、その瞬間を。
そして――彼の意識は、そこで途絶えた。
(僕は、死ぬのか? こんなところで。
学園長にママ先生、キスティに……セフィ……
みんなに会いたくて、みんなのこと守りたくて、それで、僕は人殺しになったのに。
こんなところで僕は死ぬのか。……誰も守れずに……僕は、死ぬ、のか)
(寒い。胸が痛い。暗い。
ここって天国なのかな? ううん、そんなわけないか。
僕が行くのは地獄だよね。あんなに人を殺したんだからさ。
ま、後悔なんてしないけど。そんなことしたら、殺した人に失礼だし。
……あれ、なんだろう。話し声みたいなものが聞こえる。
何か言ってるけど、聞き取れないや……殺した人の声かな、きっと)
(胸が痛い。体が冷たい。寒い……風が、吹いてる。寒い)
――ピサロは冷たい目で、眼前に立つ男を睨みつけた。
「貴様も大したお人よしだな、ソロ。
――その男が何をしたかわかっているのか?」
天空の盾で刃を、緑の瞳で真紅の視線を受け止め、ソロは答える。
「ギルバートさんを殺した。もしかしたら、他にも殺してるかもしれない。
……でも、ここでアーヴァインを殺してどうなる?
誰も生き返らない。死人が一人増えて、魔女が喜ぶだけだ」
その台詞に、レナはゆっくりとアーヴァインを見やった。
気を失って倒れたままの、自分より少し年下らしき青年を。
「こいつを生かした所でどうなる。後で死人が増えるだけではないか」
嘲笑する魔王に、勇者は言う。
「僕がさせないよ。誰も殺させないし、これ以上誰も死なせない」
そしてソロは最後に「竜の神様と、天空の勇者の名にかけて」と付け加えた。
「……何故、こんな人間に肩入れする? それほどの価値がある男か?」
ピサロの言葉に、ソロは(決まってるだろ)と言わんばかりの表情を浮かべた。
「どんな悪人だろうと、一緒に食事を取った相手に死なれるのは嫌だ」
「――前々から思っていたが、貴様は正真正銘の阿呆だな。救いがたいお人よしだ」
ピサロが呆れたように呟く。いつの間にか、瞳に宿る赤い光は消えていた。
だから、ソロは笑って答えた。
「ありがとう」と。
【ビビ 所持品:スパス
【ヘンリー(負傷) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可)
第一行動方針:ピサロ達と合流するまで待機 第二行動方針:仲間を探す(ビビ)/デールを殺す(ヘンリー)】
【エリア 所持品:妖精の笛、占い後の花
【ターニア(右腕を負傷、睡眠中) 所持品:微笑みのつえ
第一行動方針:レナを待つ 第二行動方針:サックスとギルダーを探す(エリア)/不明(ターニア)】
【現在位置:レーベの西】
【カイン 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手
第一行動方針:一時撤退 第二行動方針:ゲームに乗る】
【現在位置:レーベ→移動】
【レナ 所持品:エクスカリバー
第一行動方針:エリアと合流 基本行動方針:エリアを守る】
【ピサロ(HP1/2程度、MP消費) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
第一行動方針:ヘンリーたちと合流する 最終行動方針:ロザリーを捜す】
【ソロ(MP消費) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
第一行動方針:ヘンリー達と合流 第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【アーヴァイン(HP1/3程度、気絶) 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能)
第一行動方針:不明】
【現在位置:レーベの村、南側出口付近→レーベの西へ移動】
もう、どれだけこうしているだろうか。
早くこんなところ立ち去りたい。
でも、いつまでもここにいたい、いなくちゃいけない、という気もする。
大小二つの小山を見つめ、アイラは溜息をついた。
死ぬべきじゃない人達が、死んでいく。
この山の下に眠る二人も、そう。
その悲しみ。その怒り。
きっと、それを味わう事無く過ごせた日々は幸せだったのだろう、と思う。
この数時間のうちで、誰もが、何か辛い体験をしたと思う。
この、隣で無防備に寝ている少女も、きっと、そう。
でも、彼女の心の声に耳を傾け、自分の心と向き合わせたとき、気づいた。
彼女の瞳にはちゃんと残っていた。
――誰かを正しく愛する心が。
彼女に信用されているということより、彼女にそれが残っていることのほうが、嬉しかった。
思わず、上半身を後ろに倒し、上を見上げた。
綺麗な星空に、満月。
血が染めていないのはあそこだけなのかもしれないと、そんなことを考えた。
あの日、自分が新たな人生を歩み始めた夜。
仲間達と、川辺で同じように寝転がって月を見上げていた。
あの時もそう。綺麗な星空、満月。
気持ちいい空気の中で、見上げていた。
今は、どこか違う。
同じように見上げているのに。
どこか、違う。
「眠れないのか?」
急に後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこにはマッシュが立っていた。
「マッシュ?スコールはどうしたの?」
二人を弔った後、男性と女性で寝る場所を変えようと提案したのはアイラだ。
この少女の不安を取り除く方法の一つだと思ったから。
「アイツは寝たよ。まだ若いから、しっかり寝ておかないと、な」
マッシュはちょっと寂しい笑いを見せると、アイラの隣にドッカと座り込む。
そう、マッシュも、スコールもそうだった。
目の前で、何も出来ないまま、大事な人の一人を失った。
――私も、そう。
――理不尽な罪悪感に苛まれる。
「ティナは、幸せだったのか…?」
マッシュは唐突に口にした。
「え?」
「いや。俺達には…わからないよな」
また、寂しげな笑いを見せる。
笑顔は子供っぽくて、怒った顔は熊みたいで…
きっと、そんな風だったのね?
でも、私が見ている彼は、泣き顔や悲しそうな顔、そして寂しげな笑顔だけ――
「そういえばアイラの話、全然聞いてないよな…?」
マッシュは不意にそんなことを聞いてきた。
「え…?」
「聞きたいんだ。アイラはどういう道を歩んで来たのか…」
マッシュは、アイラの目をじっと見ていた。
――彼の目に月が映りこんで、キラキラと輝きを放っていた。
「いいわ。話すとちょっと長いけど…眠れない夜にはちょうどいいわね」
マッシュが静かに立ち去った後、スコールは静かに目を開けた。
やがて、マッシュとアイラの話し声が聞こえてきた。
皆、それぞれに苦悩している。
マッシュはそれを、アイラと話をすることで紛らわそうとしているのだろう。
そしてアイラも、それに応じることで紛らわそうとしているのか。
…自分はどうか。
寝たふりをして、マッシュがいなくなるのを待っていた。
一人になりたかったのだろうか。自分でも気づかぬうちに。
――リノアがいたら。
やはり彼女を、心のどこかで求めている。
マッシュとアイラの会話に背を向け、もう一度目を閉じた。
眠れる気がしなくても、そうしていたかった。
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石
第一行動方針:アイラの話を聞く 第二行動方針:ゲームを止める】
【アイラ 所持品:ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ
第一行動方針:マッシュに話をする 第二行動方針:ゲームを止める】
【ティファ(睡眠) 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
第一行動方針:不明】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
第一行動方針:出来れば寝ておきたい 第二行動方針:ゲームを止める】
【現在位置:東山脈中央部の森・川辺付近】
イクサスは山を下り、レーベの村へ向かっていた。
森の中は暗く、対象の植物を見つけづらいのと、毒薬の調合には、ある程度の設備が必要だからだ。
草をすりつぶしたり、加熱したり、乾燥させたり、溶解液を作るにあたって、支給品の着火器具や水では足りない。
それに、作れたとしても、液体状や粉末状の毒薬を直接持ち歩くわけにはいかないのだ。
できれば、入れ物も複数欲しい。
視界が開けてきた。レーベの村が向こうに見える。
「火事…」
おそらく戦闘が行われているのだろう。一段落するまでここで待つことにしよう。
と、袋が放置されているのを見つけた。食料も支給品もそのままだ。
紫の小ビンに、拡声器、あと、何かの説明書。それには、いくつかのモンスターの種族名が書いてあり、
【注:期限あり】とも書かれている。しかし、その説明にあたるアイテムは無い。それだけを持ち去ったのだろうか。
ふと、異臭を感じた。さきほどまで感じなかった臭い。
イクサスは思わず飛び退く。イクサスがいたところに、容赦無い一撃がたたき込まれた。
「くそっ、モンスターまでいるのか!」
腐った死体。体力と力が非常に高い上、痛覚がないため、倒れる直前まで攻撃を仕掛けてくるモンスターだ。
動きはのろいので、加速装置を使えば逃げ切れる相手だ。
だが、その腐った死体には首輪が付いており、その顔は…
「…スミス?」
イクサスの動きが止まる。そこ目がけて、スミスは腕を振り上げ、爪を立てて、振り下ろしてきた。
しかし、動きはゆっくりで単調なものだ。戦闘見学経験しかないイクサスでもかわすことができた。
「スミス、俺だ、分からないか!?イクサスだよ!」
スミスには何の反応も無い。まるで、人形のように無表情。
イクサスは先ほどマチュアの名前が呼ばれていたことを思い出した。
スミスにとって、マチュアの死は衝撃的なことだったに違いない。
「そうか、お前も…」
スミスは相変わらず無表情のまま、魔物の本能に乗っ取って襲いかかってくる。
魔物の姿はしていたけれども、強くて、気さくで、名物バカップルの片割れだった、かつてのスミスの面影はもうどこにもない。
イクサスは、加速装置をセットし、そこから凄まじいスピードで駆け出した。
スミスは追いかけることはしなかった。ただ、人間が一人去っていくのをうつろな瞳で眺めるのみだった。
このゲームで、大切なものを次々と失っていく気がする。
たった半日前に出会ったばかりの、リチャード、マリベル、ラグナ、エーコ、スコール、マッシュ、
みんな、ずっと昔からの仲間だったように思える。
キーファ、マチュア、スミス、ドルバ、彼らはみんな仲間だ。
でも、この半日の間に5人は死に、2人は裏切り、2人は自分の知らない姿になってしまっていた。
キャラバンで世界中を旅していたころに、リチャードと二人で話し合っていたときに、
ピクニックセットを囲んで談笑しながら3人の帰りを待っていたあのときに、できることなら戻りたい。
思えば、先ほど自分に襲いかかってきたスミスに話しかけたのも、思い出を取り戻したいと思ったからなのかもしれない。
でも、村で赤々と燃えあがる火柱や、血や、死体をみると、思い出はすべて幻想では無かったのか、
今までの生活すら偽物だったのではないかとさえ思えてしまう。
…幻想にふけるのはやめよう。今はあの4人を殺し、生き延びることだけを考えよう。それが、きっと死んだみんなへの報いとなる。
どうせ、ここには敵か悪人しか残っていないんだ。どんな方法で生き延びても、たとえ人を殺したとしても、みんなは許してくれるよな?
【イクサス(人間不信) 所持品:加速装置、ピクニックランチセット、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、拡声器、紫の小ビン
第一行動方針:器具調達&植物採集&毒薬作り 第二行動方針:ギルダー・アーヴァイン・スコール・マッシュを殺す/一人で生き残る
※戦闘はなるべく避けます 現在位置:レーベの村近く】
【スミス(腐った死体) 所持品:無し 現在位置:レーベ北東 行動方針:魔物の本能に従う(無心状態、理性無し)】
底知れない恐怖。
長らく感じていなかった死の恐怖。
それは自分を操っていたゼムス、そいつが憎しみが生み出した「もの」と対峙したときに感じた恐怖と似ていた。
いやな汗が背中を走る。
夜風に草が揺れてざわめいている。
ゼロムスという物体と戦っているとき俺は幾度も裏切りの衝動にかられた。
目の前にある恐怖から逃げ出したくなった。
俺が裏切ったのは本当に操られていただけだったのか。
途端に俺は自分が信じれなくなった。
だから俺は試練の山に篭った――俺自身の弱さを克服するために。
(…俺は変わっていなかったな。セシル。ローザ。過去を捨てて修羅の道を歩むと決めたのに、俺はこんなことで生き延びられるのか?)
…ふと、裏切ってしまった友に、そしてもういない友に、問いかけていlる自分が嫌になる。
ただ先ほどの『化け物』との圧倒的な戦力の差を見せ付けられるとといろいろと考えずにいられなかった。
カインはあの『化け物』は多分人外の者だろうと推測できた。
そしてこのゲームにあのような実力の者がいるという事実に驚いた。
(つまり、魔女アルティミシアはあれほどの者でさえも手中に入れられるということか…。所詮は俺は駒の一つでしかないわけだ。……どうも、こんな思索にふけっている場合じゃないみたいだな)
カインは前方から近づいてきた一つの気配に気づく。
そしてその気配が自分と同じような竜の気をまとっていることに気づき身構える。
「お主も気がついておるようじゃな。主もわしと同じように竜騎士であるか?」
気配の相手も身構えているようだった。
「…少し考え事をしていたとはいえ、俺に今まで気配を感じさせなかったとは相当の使い手みたいだな。そうだ、俺の名はカイン。竜騎士だ。」
「…!!お主はあのランスオブカインに名を残した伝説の竜騎士か!?わしの名前はフライヤじゃ。わしには戦意は全くないんじゃが、お主はどうなんじゃ?」
カインは竜騎士同士、力を試したかった。
そして彼女に対しては闇夜に紛れて相手を討つというまねはできないと思った。
だから、包み隠さずこう言った。
「悪いが俺は人を既に殺している。先ほども人を殺そうとしていた。どうも、お前の世界では俺が有名のようだが、こんな殺人者で悪かったな。とにかくお前とは一戦交えてみたい。同じ竜騎士として、そしてこのゲームの勝利者になるために!!」
フライヤは悲しそうな声で続ける。
「この状況をゲームといってしまうんじゃな。わしは戦う気はなかったんじゃが、どうもお主を止めなくてはならないようじゃ。剣しか持ってないのじゃが、仕方ないみたいじゃな。お主にもう一度正しい竜の気を纏わせてやらねば。同じ竜騎士として、そして一人の者として!!」
そういうと二人は同時に地面を強く蹴った。
【フライヤ 所持品:アイスソード えふえふ(FF5)
第一行動方針:カインと戦って止める】
【カイン 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手
第一行動方針:フライヤと戦う
最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【現在位置:レーべ南】
「私はパラメキアという場所の皇帝だった。
フッ、それももう昔のことだがな。
私は生まれつき強大な魔力を持っていた。
そして私はその力で皇帝になったのだ。」
皇帝は少しずつ話をし始めた。
ゴゴが続ける。
「わしは水没したウォルスの塔にいたのじゃ。
ちッ、ちッ ちッ、それもやつらに免許皆伝するまえのことじゃ。
わしは性格上人の真似しかできなかったのじゃ。
そしてわしはその力で溺れ死にかけたのじゃ。」
「ははは、お前は本当に物真似師というものみたいだな。
私はその強大な力で世界征服を目論んだんだ。
しかし、私の野望は四人の若者によって挫かれたのだ。」
「ははは、君は本当に凄い魔力もってそうじゃ。
わしはその性格の力を強めるためにウォルスの塔のクリスタルのかけらを手に入れることを目論んだんじゃ。
しかし、わしの野望は四人の若者によって挫かれたのじゃ。」
「なんか鏡に向かって話しているみたいだな。
私はその後地獄で悪魔に魂を売ったのだ。
そして、より究極の力を得て蘇った。
しかし、そのときにはもう破壊への欲望しかなかったんだ。
いやこう言うと語弊があるかもしれんな。
私は地獄に落ちる前に既に悪魔に魂を売ったも同然だった。」
「なんか皇帝とは程遠い一般人に向かってはなしているみたいじゃな。
わしはその後まいったんじゃ。
そして、やつらに物真似師のジョブ与えてさらばした。
しかし、そのときにはもう生への欲求しかなかったんじゃ。
いやこう言うと語弊があるかもしれんな。
わしは負ける前に既に物真似を放棄していたも同然じゃった。」
「一般人か…そうだな、あの力をもっと違うことに生かしていたらよかったかもな。
魔女アルティミシア…やつもまた魔力に溺れたものであろう。
此処に居るのもあの頃の自分を止める代わりに奴を止めろということなのか…?」
「鏡か…そうじゃな、この力をもっと違うことに生かしていたらよかったのかも。
………わしみたいな力に溺れた奴いないな。
むしろわしが溺れかけた。
此処に居るのも君みたいな人の物真似をして奴を止める手助けをすることなのかもね。」
「クッ、これが魔女の魔力か。
私も竜巻でいくつもの街を破壊したが、このように離れた場所からも力を行使できるとは!
果たして私の魔力はどこまで通用するのだろうか。
とにかく、奴に私を生き返らせた理由を直接聞こうとしよう!」
「わたーしの名前 ゴゴ!
もーのまねー 名人よー もーのまねーの ごくいは……
まねするーこと だから わたしーは きみーが やること まねーするよー
奴を止める には 奴を止めるで 聞くにはには聞くでこーうどうー!
わたしーが まねー すれば かならず かてるよー」
夜の静寂ににゴゴの歌声が響き渡った。
その時地面が大きく揺れた。
「クッ、これが魔女の魔力か。
私も竜巻でいくつもの街を破壊したが、このように離れた場所からも力を行使できるとは!
果たして私の魔力はどこまで通用するのだろうか。
とにかく、奴に私を生き返らせた理由を直接聞こうとしよう!」
「わたーしの名前 ゴゴ!
もーのまねー 名人よー もーのまねーの ごくいは……
まねするーこと だから わたしーは きみーが やること まねーするよー
奴を止める には 奴を止めるで 聞くにはには聞くでこーうどうー!
わたしーが まねー すれば かならず かてるよー」
夜の静寂ににゴゴの歌声が響き渡った。
「………。」
(俺様でも夜は寒い…。
早く上の人たちどいてくれないかな、はあ。)
さっきの地震がブオーンの身震いだったのは秘密だ。
【マティウス
現在位置:レーベ南西の山脈地帯(ブオーンの背中)
所持品:ブラッドソード
第一行動方針:アルティミシアを止める
最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
備考:非交戦的だが都合の悪い相g手は殺す】
【ゴゴ
現在位置:レーベ南西の山岳地帯(ブオーンの背中)
所持品:ミラクルシューズ ソードブレーカー
第一行動方針:マティウスの物真似をする】
【ブオーン 現在位置:レーベ南西の山岳地帯に同化中 所持品:不明
第一行動方針:動かずやり過ごす】
「おいおい…ここでも戦闘か。うんざりするな。」
独り愚痴りながら目の前で行われている戦闘を物陰から眺める。
戦っているのは3人。骸骨の魔物に、白コートの青年と剣と盾を構えた子供だ。
傍から見ると、骸骨のほうが優勢だ。力で強引に二人を圧倒している。
先ほど戦闘したばかりだし、ずっと走ってここまで来たのでなんとかやり過ごしたい。
俺はそう思い、民家のドアに手をかけた、筈だった。
俺がノブに手をかける瞬間、ドアがいきなり開き、中から金髪の女性と緑色の服を着た少年が跳ぶように出てきた。
ドアを開けたら、すぐ目の前にチョコボのような髪型の男が立っていた。
男は私達を認めるや、肩にかけてあった巨大な剣を構え、バックステップで後ろに下がって私達を睨みつける。
――戦い慣れしてる。
彼の動きを見て、私はすぐにそう思ったわ。
私達を見た時の反応速度。その後のステップの速さ。付け入る隙を全く見せない、油断の無い構え。
どれをとっても並みの戦士とは違う冴えだ。
私ももっていた杖を構えて、パウロと共に数歩後ずさる。
接近戦に持ちこまれたら勝ち目はないけど、魔法主体の戦いにできれば勝機は――
「俺は戦いには興味は無い。」
「…え?」
地面に剣を置きながら言う彼に、呆気に取られて声を上げる。
「俺はこんな狂ったゲームに乗るつもりは無いし、あんたらと戦うつもりもない、そういうことだ。」
――戦い慣れしてるな。
少年のほうはともかくとして、女性の動きを見て彼はすぐにそう思った。
向こうから襲ってくると言う気配もないし、さっきの奴と違って正常なようだ。
できるなら戦闘は避けたい。
敵意が無いことを告げると少し呆気に取られたようだったが、やがて「あー…名前は?」と切り出した。
「…クラウド。クラウド・ストライフ。自称元ソルジャーだ。」
クラウドが名乗ると、「自称元ソルジャー」という響きにまたも呆気に取られたようだが、やがて
「私はセリス。セリス・シェールよ。」
と名乗り、「それより」と続ける。
「ね、貴方は実戦の経験もあるようだし、一緒にあの怪物を」
「俺はそれをしたくないから建物の中に隠れようとした。」
セリスの頼みを聞かないうちに、クラウドはぴしゃりと返した。
「彼らが負けたら、今度は貴方が襲われるかもしれないのに?」
彼女はなおも粘る。
「いい?見ればわかるけど、あの二人は怪物に押されてるわ。
でも私達3人が加勢すれば、戦況は5対1。無勢に多勢なら、きっと勝てる!だから協力して!」
かつて崩れ去った世界に絶望したギャンブラーに再び希望を持たせたように、辛抱強く続ける。
「それと、ゲームに乗らないつもりなら仲間にならない?
あの2人も恐らくそうだろうし、私達が協力すれば仲間に引き込めるだろうし。」
どう?決して悪い話じゃないと思うけど?とセリスは締めくくった。
(仲間、か…)
確かに、彼女の言う通りだ。
自分と同じように非好戦的な仲間はいればいるほど心強い。
それになにより、今戦闘を繰り広げている骸骨は明らかにマーダーだ。狂った光を湛えた目がそれを語っている。
下手に野放しにしたらクラウドの仲間にも危害を加えるかもしれない。
「負けるね。あんたには。」
ならば、答えは一つ。
「いいぜ。俺も手を貸そう。」
畜生め。
剣で化け物の魔法を振り払いながら、サイファーは独りごちる。
ガキが加勢に入ったのは助かったと言えば助かったが、戦局はあまり変わっていない。
もちろん、ガキが弱いわけではない。自分で「勇者だ」と名乗るだけあって筋も通っている。
ロザリーの方ももう一人の方のガキと一緒に居たトンベリ(なんでトンベリ?)が守っているから心配は要らなくなった。
だがそういう細かい事抜きに、目の前の化け物が強すぎるのだ。さっきにもまして攻撃の威力が上がっている。
「ぬるいわ、小僧どもめが!」
化け物が怒鳴り、派手な剣の一閃で2人はまとめて吹っ飛ばされた。
サイファーは民家の壁に半ばめり込むように衝突し、レックスはそのすぐ近くの地面に投げ出される。
サイファーが顔を上げると、誇らしげに化け物が立っていた。
「こんどこそチェックメイトだな。小僧…」
全身を走る痛みのせいで動けない、ガキの方を見るが、気絶しているらしくぴくりとも動かない。
ロザリーの「サイファーさん!」という叫びが聞こえるが、どこか遠くから響いているように聞こえる。
余裕ぶった化け物が得意げに手を上に掲げるのもやけにスローに見える。
畜生、ここで終わりなのかよ。畜生…
らしくもなく諦めたような言葉が頭をよぎる中、化け物は魔法の詠唱を完成させつつあった。
「…死「ファイガ!!」
骸骨が何かを言おうとするが早いか、突然巨大な焔が化け物を貫き、包んだ。
サイファーは目を見開き、全身を撫でる炎に悶えるハインを凝視した。
次の瞬間、3人の人影が飛び出してきて、その内一人が剣を手に化け物へと向かって行く。
あとの2人はサイファー達の元に走りより、それぞれ回復魔法を唱えた。
魔法の効果は薄く、頼りない物だったが、レックスは再び起き上がり、サイファーも立てる状態まで回復した。
レックスが剣を構えなおし、再び化け物に向かって行くのを横目に、
コートの汚れを払いながらは目の前の金髪の女に話しかける。
「今までのうのうと見てやがって。来るならもう少し早く来いよ。」
高飛車に言い放った。
実際はかなり危ない所を助けられたのだが、それは敢えて口にしないのが彼である。
「お前ら!その化け物に止めを刺すのは俺だぜ!それを忘れるな!」
威勢のいい咆哮があたりに轟き、青年の目に再び戦意が宿った。
【ハイン(HP5/6程度) 現在位置:アリアハン城下町 所持品:破壊の鏡、氷の刃、ルビーの指輪
第一行動方針:目の前の参加者を殺す 第二行動方針:殺戮】
【サイファー(HP2/3程度) 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能)
第一行動方針:ハインを倒す 第二行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【レックス(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣 オーガシールド
第一行動方針:ハインを倒す 第二行動方針:家族を探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【クラウド 所持品:おしゃれなスーツ アルテマウェポン
第一行動方針:ハインを倒す
基本行動方針:仲間を見つけ、守る
最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】
【パウロ 所持品:破壊の剣(使う気0)
第一行動方針:ハインを倒す
第二行動方針:ロランを探す】
【セリス 所持品:樫の杖 シャナクの巻物
第一行動方針:ハインを倒す
第二行動方針:ロックを探す】
【ロザリー 所持品:不明
第一行動方針:隠れる 第二行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ 黒マテリア(メテオ)
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ
第一行動方針:ロザリーを守る 第二行動方針:わたぼうを探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
現在位置:アリアハン城下町
火の勢いが弱まってきたことに気付いたオレは、ゆっくりと村の方へ歩いていった。
それで、もうすぐ村の中に入るぞ、って辺りで、突然何かにつまずいたんだ。
転んだ拍子に荷物はぶちまけるわ、膝はすりむくわ……オレは苛立ちながら、周囲を見回した。
でも、不思議なことに、躓けるようなものは見当たらなかった。
その代わり、少し離れたところに妙な草がたくさんと、ページが開かれたままの小さな冊子が落ちていて。
オレは冊子を手にとって読んでみた。
「……消え去り草?」
聞いたことのない草だった。効果は……名前のとおり、姿を消し去って透明になる。
つまり、オレがつまずいたのは透明になった奴の身体だってことだ。
ちくしょう。そいつは姿を隠してオレの命を狙ってるんだ。オレを転ばせて、笑ってるんだ。
「出てこいよ、このヤロウ!」
オレはラケットを掴み、様子を伺いながら数歩歩いた。
そうしたら丁度オレがつまずいたところで、何かを踏んだんだ。
柔らかくて、硬くて、やけにベットリした――何かを。
「……?」
オレは、それに触れてみた。ソースのかかった生肉のような、妙な触感が指先に伝わった。
けれどそれはまだ生暖かくて、わずかに震えてて、そのくせ動く気配を見せない。
それにこの、何度嗅いでも嗅ぎなれない、鉄さびのような臭いは……間違いなく、血だ。
透明になったものの、怪我をして動けないのだろうか? あるいは気絶しているのか。
「……フン。まぁ、どうでもいいさ。
どのみちオレにはカンケーないね、勝手に死ねばいいんだ」
オレは踵を返して、ばらまかれた荷物を袋に入れなおそうとした。
その時だ。
突然、竜の紋章の入ったオーブが――ラグナさんの持っていたオーブが、ころころ転がり始めたんだ。
オレの方に…・・いや、透明の奴に向かって。
そして、奴の足元らしきところまで転がった時、オーブが強烈な光を放った。
「うわっ!?」
オレは反射的に目を覆おうとして……途中で止めた。
――気のせい、だったのかもしれない。オレの願望が生んだ、幻だったのかもしれない。
でも、オレは見た。眩い光の向こうに、見覚えのある姿が、ぼんやりと浮かんでいるのを。
「リチャード……ラグナさん!?」
光の中に立つ二人は、少し哀しそうな表情でオレを見つめていた。
それで、オレが何か言おうとした時、頭の中に二人の声が響いたんだ。
今度は気のせいなんかじゃない。確かに、オレは二人の声を聞いた。
『――イクサス、お前は医術士だろう? 人を救うのが仕事のはずだ』
『この子を、みんなを助けてやってくれよ。俺たちも、この珠っコロも、それを望んでる――』
……オレは言い返そうとした。ふざけるな、って。
あのギルダーとかいう赤帽子の奴でわかっただろ、他人なんか助ける義理なんてないんだ、って。
けれど、その前に光は消えて。一瞬の、泡沫の夢のように、リチャードとラグナさんの姿も消えて。
後には夜の闇と、足をずたずたに撃ちぬかれた赤髪の女と、静かに瞬くオーブだけが残された。
「……くそっ!」
正直なところ、助けたくない。
本音を言えば、見殺しにするか今のうちに止めを刺すのが一番だと思ってる。
けれど、今の声が本当に二人の意思だというのなら……無視は、したくない。
「今回だけだ……今回だけは助けてやるよ。ちょうど薬草類もあるみたいだしな」
オレは地面に落ちた草を拾い集め、冊子で使えそうなものを確かめながら、手当てを始めた。
「ひそひ草に毒消し草、満月草……ここらへんは意味無いな。
あ、でもコレとコレは使えそうだし、もらっておくか。
で、薬草に……雑草? それにいやし草? 弟切草?」
……良くわからないものが多いが、回復効果があるらしい草を中心に、適当にすりつぶしてみる。
それを半分は傷口に直接塗って、半分は水に混ぜて無理やり飲ませた。
最後に、キャラバンの頃から常備していた包帯を足に巻いてやって、治療完了だ。
これで少なくとも失血死することはないだろう。運が良ければ、歩ける程度には回復するかもしれない。
「さてと、行くか」
オレはオーブを拾い上げ、さっき選んだ草――飛竜草とラリホー草を、袋にしまって歩き出した。
見た目に似合わず、猛毒を持つらしい飛竜草。
これは毒薬の原料に使えるかもしれない。
それに、投げつけることで相手を眠りに陥れるというラリホー草。
エーコのラケットと組み合わせれば、相当に有用な武器になる。
――医術士は人を助けるのが仕事……確かにその通りだ。
けれど、オレは、あいつらだけは許せないし、許さない。
リチャードやラグナさんがなんと言おうと……これだけは譲れない……
あいつらは……あいつらだけは、絶対にオレの手で……!
【イクサス(人間不信) 所持品:加速装置、ピクニックランチセット、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、
拡声器、紫の小ビン、飛竜草、ラリホー草
第一行動方針:器具調達&植物採集&毒薬作り 第二行動方針:ギルダー・アーヴァイン・スコール・マッシュを殺す/一人で生き残る
現在位置:レーベの村の外れ→中へ】
【バーバラ(両足負傷、気絶) 所持品:ひそひ草、他に様々な種類の草たくさん(説明書付き) エアナイフ 食料一人分(マリベル)
第一行動方針:? 第二行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出
現在位置:レーベの村の外れ】
「また、新しい奴らがきたな」
バッツが落ち着いた様子で呟く。
これ以上戦況が不利になるようであれば、助太刀も仕方なかったというだけに、この状況の変化は大きい。
今の俺たちの心境としては、正直なるべくよけいなことには関わりたくない。
「なあローグ、さっきの話、本当なのか?」
バッツがふと話しかけてきた。さっきの話とは、なんのことだろう。
「あの、頭のおかしいやつの話だよ」
「ああ、あれか」 思い出したくないものを思い出すのは、気分が悪い。
「そうだな、嘘だったらどんなにいいだろうよ」
苦笑いしているのが、自分にもわかった。
「そいつはどこにいて、どこにむかったんだ?」
「アリアハンの北西にいたことはわかったけれど、どこに向かったかまではみてねえな」
「そうか…それじゃあ、はやくここをでたほうがいいんじゃないか。
そんな血に飢えたヤツが次にくるとしたら、ここかレーベの村ってところだろ」
俺は、少し不思議に思った。
それはその通りで、目当ての人も周辺にいない以上、
どこか別のところにいったほうがいいかもしれないというのは、俺も考えていたことだ。
しかし、あいつらはどうするんだ?今、あの骸骨野郎と戦っているやつらは?
それを聞くと、バッツは「状況は確実に好転してるし、大丈夫だと思うぜ」と笑っていた。
腑に落ちない。
俺とバッツは、半日行動を共にしただけだ。
だが、このゲームで半日行動を共にするのは、日常を半月共にするより大きい。
俺は、バッツのことをある程度わかったつもりでいる。バッツもそうだろう。
俺の知る限り、あいつはこの状況なら、すぐにでも飛び出してもおかしくない。
それが、ずっとここで様子見。一度あの金髪の男が絶体絶命のピンチになっても、動かない。
あげくにここを離れようってのは、どうも俺の考えていたバッツとは少し違う。
俺は、あとちょっとで飛び出るところだったが、バッツはそんな素振りもなかった。
やはりこれは、まだ尾をひいてるんだろうか。「仲間の死」というのが。
(そういや、いってたなあ)
―――俺さ、あいつらに会って、初めて、仲間ってのができたんだよ。
(仲間…か。俺も、あいつらが初めての仲間だった。結局最後まで、性格は‘一匹狼’だったけど)
何故アルスが俺のことを選んだのか、俺にはわからなかった。まさか勇者に指名されるとは、思いもよらなかった。
(最初の頃は、三人のことをまったく信用してなかったっけな)
今、俺が丸くなったのも、あいつらのおかげなんだろう。
もしかすると、バッツも似たような感じだったのかもしれない。自分のような鋭さはなかったかもしれないが。
(初めて得た仲間と、誰にも会えないで、知らないうちに死んで、か…)
俺は、あいつに従来から正義感があることはわかるが、今は人情に、いまいちかけるように思った。
俺も、アルスやセージ、フルートが死んでいったら、元に戻っていくのだろうか。
簡単に死ぬようなやつらだとは思わないけれど。
…ただ、気にかかるといえば…フルート、かもしれない。
ある日、フルートが魔物の奇襲に例によって怒り狂い、魔物を撃退した。
それが終わると、フルートはけろっとして「あれー?なにかあったんですかー?」と、いつも通り。
「まいるねえ、ほんとに…」セージが頭をかきながらいった。
「ほんとにな。しっかし、あれじゃいつ俺たちに攻撃してきてもおかしくないよなあ…」
「うーん?もしそうなっても、別に怖くないけどね」
その答えが、俺は少し意外だった。少し考えて、
「あ、おまえは魔法使えるし、遠距離攻撃には弱そうだもんな」
というと、「そういうことじゃなくってね」とセージははにかんでいった。
「たしかにぶちギレた彼女は強いよ。理性のかけらもない。
あの強さは、だからこそのものなんだろうけど、それだけに危険っていうか…」
俺は、少し苛立って言った。
「何がいいたいんだよ」
「人間ってのはね、常に力を全開になんてできないんだよ。人間に限らずだろうけどね。
フルートは、理性だとかそういうのをなくして…もうひとつの人格を表して、
自分のもっている力を完全に解放し、戦っているようなものなんだよ」
「えーと、つまり、だからなんなんだ?」
セージは横目で俺をみると、「まだわかんないのかい?おばかさんだねぇ」と毒づき続けた。
「長期戦になったら、自滅するってことだね。彼女の体がもたないんだ。
だから、もしあのフルートが見境なく僕らのことを襲いにかかったら、逃げればいい。
放っておけば、むこうが勝手に負けるから」
セージは「だから」と続けた。
「フルートはね、仲間が必要なんだよ。自分を見てくれる仲間が。ローグ、ちゃんとお守りするんだよ」
「ああ、わかっ…って、なんで俺が!」
「そりゃー、僕やアルスの手には負えないからねえ。ローグなら、似たもの同士扱いやすいでしょ」
「俺のどこがあいつに似てるんっつーんだ!!」
「ほら、すぐ怒る」
「うっ…くう、てめえ…」
「あはは。…でもね、強ち冗談でもないんだよ………」
……「ローグ?」
バッツの声が聞こえる。「ああ」と返事をして、再び目の前の戦いに目をやる。
…明らかに、戦況は変わっている。彼らは、あの骸骨野郎を殺すのだろうか。
このまま、新たな参入者が出ない限り、もう勢いは変わらない。あの狂ったやつがこない限りは。
さっき鷹の目をした限りは、誰もいなかったが――鷹の目そのものは、アルスの家でもやっていた。
城の中に人がいることもわかったが、自分たちの探している人物はいなかった。
事情を説明をするのも面倒くさかったので、バッツには特に何も言わなかった――
まったく見逃していないとは限らない。なにせ、あんな変なものを見てしまったから。
「…ここをでるとして、次はどこにいくつもりなんだ」
「それが問題だなあ。でもやっぱり、レーベの村かな」
「あの男がいるかもしれないぞ?」
「でも、レナやファリスがいるかもしれない」
「…そうだな」
俺たちは、気づかれないように南出口へと向かった。
あいつらには、気づかれなかった。たしかに。
「…ま、生きてりゃいろいろあるよね」
「いうことはそれだけか!?」
二人が出口に向かうと、そこには一人の女がいた。
その女は、縦に真一文字の深い傷が体に刻み込まれ、そこからだらだら深紅の血が流れている。
なぜたっていられるのかと疑うほど、その傷は見るだけでも痛々しく、よくみると左腕が変な方向に曲がっている。
それでもなお、女はふらふらと歩み続け、眼光鋭く二人のことを睨み付けると、呻るような声をあげ、剣を構える。
「話せばわか…らないよねぇ、やっぱり」
セージのように呟いて、ローグはぽりぽりと頭をかいた。
【バッツ 所持品:チキンナイフ、ライオンハート、薬草や毒消し草一式
第一行動方針:事態の処理 第二行動方針:レーベの村へ 第三行動方針:レナ、ファリスとの合流】
【ローグ 所持品:銀のフォーク@FF9
第一行動方針:事態の処理 第二行動方針:レーベの村へ 最終行動方針:首輪を外す方法を探す】
【パイン(重傷)(ジョブ:ダークナイト)所持品:うさぎのしっぽ 静寂の玉
アイスブランド ドレスフィア(ダークナイト)
状態:凶暴化(何かの衝撃で正気を取り戻す可能性あり)
行動方針:全員殺害。正気を取り戻した場合は不明】
現在位置:アリアハン城下町南の入り口付近
気づけば、闇の中で佇んでいた。
何もない、虚空の中で。
誰も、いない。
声がするだけ。自分を責める声が、するだけ。
――あなたはエアリスさんを殺したの…
蒼い髪の女の子の冷たい声が。
――次に会ったら…仇をとる。
暗い響きを帯びた、金髪の青年の声が。
――なんだ…まだ死んでいなかったの?
火傷を作った、顔も見ていない少年の声が。
――誰も殺せてないんだねぇ。役に立たないなぁ。
コートを着た男の声が。
――人殺しの仲間なんだな!
失意の少年の声が。
微塵にも優しさのこもっていない、それらの声。
自分の心の中で作り出した声。
私は殺人者だから?
エアリスを殺したから?
…誰からも許される事無く。
…誰からも愛される事無く。
――ティファ、なんて事をしたんだ!
あぁ、クラウド、ごめんなさい…
――謝って済むと思っているのか!?
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…
怒る事で忘れてくれるなら、そして忘れさせてくれるなら、心の限り怒って――。
消えない…いつまでも。
血。この手に、銃に、心にこびり付いた、エアリスの、血。
顔の火傷は治っても、治すことのできない傷。
この心と、エアリスの胸に刻まれた傷。
――ティファ、私は許してあげるわ。
…エアリス?
――そのかわり、どんな力でも治せない傷を背負うの。
嫌ダ。忘レサセテ…。オネガイ、オネガイ…。
――忘れさせたりなんかしない。
――私はいつまでも消えないであなたの心の中にいるから。
――血に濡れたまま、ずっと、あなたの傍にいるから。
――あなたの影となって。
…私ヲ、呪ウノ?
――私があなたを呪うんじゃない。あなたがあなや自身を呪うの。
――消えることの無い自身への恨みを、あなたは一生背負い続けるの。
エアリスの胸に、穴が開く。
確実に、自分が撃ち抜いた場所に。
一瞬後に、彼女の身体は粉々に砕けた。
恐ろしいくらいに、綺麗に。
真っ赤に。粉末のように。
――自分のした事から目を逸らさないで――
エアリスの声は、痛い。自分に突き刺さるようで。
「…どうしたの?大丈夫?」
私の身体をゆする人がいる。
眼を開ければ、黒髪の女性がいる。
「アイラ…」
「凄い魘されていたんだぜ…?」
その横に、マッシュ。
二人が、私の顔を覗き込んでいる――
「…大丈夫」
…何が、大丈夫?
「ちょっと…夢を見ただけ」
身体の震えが止まらない。
「寒くない?大丈夫?」
アイラの優しい声も、今はちょっと耳障りで。
「大丈夫だから、放っておいて…」
打ち明けたくは、ない。こんなもの。
誰に共有されることもない、私の、罪。
嫌だ。忘れてしまいたい。
でも、忘れることはできない。
「…そう。話がしたくなったら、いつでも聞いてあげるから。
えっと、今、私の話をしてるんだけど、聞く?」
アイラは、優しい。
だからこそ、話したくない。
捨てられるのは嫌だから――
今、捨てられた子猫の気分が、わかる気がした。
辛さに耐え、震える身体を抱えて――
小さく頷いて、アイラの話に耳を傾ける。
まだ、この長い夜は、明けない。
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石
第一行動方針:アイラの話を聞く 第二行動方針:ゲームを止める】
【アイラ 所持品:ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ
第一行動方針:話をする 第二行動方針:ゲームを止める】
【ティファ 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
第一行動方針:アイラの話を聞く】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
第一行動方針:出来れば寝ておきたい 第二行動方針:ゲームを止める】
【現在位置:東山脈中央部の森・川辺付近】
288 :
長い夜 :04/12/29 11:02:06 ID:bE3AH2wF
あなや自身→あなた自身 に修正お願いします…
何やってんだ漏れ…
デールは、ヘンリーの下から撤退した後、近くの山間部の方向へと走っていた。
疲労がたまるので、別に馬鹿正直に山間部に行こうとは思わない。
しかしその近くまでは行く予定だ。灯りも無い場所は潜伏が容易だからだ。
だが……
「もうすぐ尽きるのか?」
愛用していたマシンガンの残り弾数に気がついたのだ。
見るともう1/3ほどしかない。これではしばらく長期戦など無理だ。
アラームピアスがあるが、やはり心強かったこのマシンガンに不安があるのは頂けない。
「この武器も、少しはしゃぎ過ぎたかな……」
銃弾を補給したいが、レーベの村に戻るのも危険だ。
というか、この世界には銃弾というものが無いのかもしれない。
デールも説明書を読んで理解しただけだ。ラインハットと同じような技術力で、こんなものがあるとは考えにくい。
「まぁいい。今の僕に出来ないことは何も無い。この刃物だけでも十分壊せる」
それに、同じような弾を持っている人間もいるだろう。
ならば奪ってしまえば良いだけだ。
「まずは思案だ。明日の朝に使える良い策を考えなければ…」
そう呟いた後、デールは止まった。
これ以上の疲弊は危険すぎる。それに狙い通り、山間部には近い。
闇の中に、ただ、ただ、紛れることにした。
その顔に…冷たい笑みを浮かべて。
【デール 所持品:マシンガン(残り弾数1/3)、アラームピアス(対人)、ひそひ草、アポカリプス+マテリア(かいふく) リフレクトリング
第一行動方針:闇に紛れて夜を過ごす 第二行動方針:皆殺し(バーバラ[非透明]とヘンリー(一対一の状況で)が最優先)】
【現在位置:レーベの西の山間部付近】
「おいおい…まずいんじゃないか?」
冷や汗を流しながらバッツが呟く。
「この女、正気じゃないぞ…」
剣を構えた女と睨み合う格好で、ローグ。
淡く輝く、凍てついた刃を持つ剣を構えながら、暗黒の女剣士はゆっくりと歩み寄ってくる。
彼女の身体の傷からは紅い血が絶えず流れだし、息をするたびに吐血している。
そんな状態でもなお鋭さと狂気を失わないその眼光に、2人は蛇に睨まれた蛙の如く一歩も動けないでいた。
「…どうする、バッツ?」
ローグが眼だけを自分に向け、小声で言う。
「どうするっつったって…」
話し合いはどう考えても無理だし、逃げようにもこの女はエクスデスよりしつこく追ってきそうだ。…なら。
「やるっきゃないぜ、ローグ。」
背負ったザックに手をかけ、ライオンハートの柄を見せてローグを見やると、彼も懐に隠してあるフォークを握り締めた。
次の瞬間、2人の首を狂気の刃が襲った。
バッツが後方に下がり、ローグがその場にしゃがみこんで一撃を逃れると、アイスブランドが追うように次の一撃を見舞ってきた。
半ば狂ったように、半ば機械のように冷徹にパインは剣を振り回すが、
身体を一文字に裂いた傷はかなり深いようで、その動きは鈍く、重い。
しかし、2人の攻撃には異常なほど素早く反応する。
バッツのガンブレードの一閃を軽々と受け止めると、そのままの体勢から彼のわき腹を蹴り、顔面を殴って叩き伏せた。
その隙をつき、ローグが銀に輝くフォークを女剣士の右肩に突き刺した。
ダークナイトは苦痛にひきつるような表情を浮かべたがそれも束の間、
狂気を湛えた顔に再び戻るとフォークを握るローグの手を掴み、そのまま力任せに彼を投げ飛ばす。
狂気の成せる技か、スフィアの力か、その腕力は女の、いや人間の、それも手負いの物とは思えなかった。
大地に叩き付けられ、石に頭をぶつけて気絶したローグに、彼女は剣を手に迫り――
その足を蒼い光を発する刃が深深と貫く。
パインはけたたましい悲鳴を上げ、即座に振り向くと、そこにはライオンハートを彼女の脚に突き刺しているバッツの姿。
女剣士が怒りに満ちた眼でアイスブランドを振りかぶる中、
(確か…敵を斬りつけたり突き刺したりしている時に…)
彼は奇妙な形の柄を持った剣と一緒についていた説明書の内容を思い出していた。
(柄についた引き金を…)
氷の剣が振り下ろされる。
(引く!!)
凍てつく刃がバッツを捉えんとするその瞬間、轟音とともにパインの左足が大髄から粉々に砕けた。
金切り声とも悲鳴ともつかない叫びが耳を突き刺し、粉塵となった血が肉片がバッツの顔に身体に飛び散る。
狂気の剣士はその場に崩れ落ち、バッツは気絶しているローグへ走り寄った。
「おい…おい!ローグ!」
顔を叩き、身体を揺すると、思いの外たやすく彼は意識を取り戻した。
「…ひどい顔だな…」
「薬草を…」
「よせよ。この位の傷で勿体無い。」
ローグが起きあがると、視界に片足を失い、苦しそうに息をする女が入る。
「お前が?」
「ああ、そうだ。にしても…」
バッツは言いながら、右手に握られたままのガンブレードをまじまじと凝視した。
「凄い威力だな。一撃であんな致命傷になるとは思わなかった。」
一発で脚をバラバラに?そりゃ凄い、と呟きながら、ローグは彼女から所持品を奪い取り、
「行こうぜ。急がないと」と言って歩き出す。
バッツも重い体を引きずり彼に続こうとすると、不意に瀕死の女剣士と目が合った。
その目に狂気は無い。あるのは、困惑の光のみ。
彼はとっさに体を屈め、その眼を凝視した。
戦っていた最中のように狂った眼ではない、その眼を。
暫くして、「私…は…何故…こ、こ…に?」と弱りきった声を出す。
何故ここに、だと?訝るバッツに、彼女は「た…助け…」と言いかけた。が、
「バッツ!」という、ローグの叫びに遮られる。見ると、彼はもう数十メートルは先を歩いていた。
「いつまでそいつにかまってる!早く来い!」
多少の怒りが込められたその声に、バッツは鞭をうたれた馬のように歩き出す。
もしかしたら、俺は大変な事をしたかもしれないという思いと、血に染まった体を引きずって。
何がどうなっているのかわからない。
ただ確かなのは、自分が今死に行こうとしている事だけ。
全身を走る苦痛と沈み行く意識の中、パインは何故こうなったのか、懸命に記憶を辿った。
…確か、死人からダークナイトのドレスフィアを手に入れて、一か八かでそれにドレスチェンジしてみて…
その後の記憶は、ない。
寒い風が顔を叩き、傷口を容赦無く吹きつける中、近くを誰かが通る足音が聞こえた。
やがて目の前に現れる、ニ本の足。彼女はそれに手を伸ばし、助けを求めようとした。
次の瞬間、彼女の意識は完全に途絶えた。
「…城下町か…」
倒れていた女剣士の首に突き刺した刀を引き抜きながら、セフィロスは眼前のやや広い町を見据えた。
「町のように大きく隠れやすい所には人が多く集まる…いい狩り場を見つけたね。…それにしても」
セフィロスの後から歩いてきた男は、大げさにパインの亡骸を見下ろしながら続ける。
「この女の君に助けを求めようとする姿!まるで地を這うウジのように無様だったねぇ。ここまで醜い末路は…」
男―クジャの酔うような喋り口調を軽く聞き流しながら、セフィロスは城下町へと無言で歩を進める。
獲物を求めて。
【バッツ 所持品:チキンナイフ、ライオンハート、薬草や毒消し草一式
第一行動方針:事態の処理 第二行動方針:レーベの村へ 第三行動方針:レナ、ファリスとの合流】
【ローグ 所持品:銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ 静寂の玉 アイスブランド
第一行動方針:事態の処理 第二行動方針:レーベの村へ 最終行動方針:首輪を外す方法を探す】
現在位置:アリアハン→レーベへ移動中
【セフィロス 所持品:村正
第一行動方針:城下町に居る参加者を皆殺しに
最終行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘】
【クジャ 支給品:ブラスターガン、毒針弾、神経弾、
第一行動方針:城下町の参加者を殺害
最終行動方針:最後まで生き残る】
現在位置:アリアハン城下町、南の入り口
【パイン 死亡】
296 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/12/31 09:47:25 ID:Bu+id1I5
123
傷を負った身であったが、彼は平野へと逃げ道を求めた。
理由は二つ。
祈りの指輪を使いながらベホマを唱え続けたことで、辛うじて走れる程度にまで回復することができたため。
そして先ほど――ある人物が、じっとこちらを見つめているのに気が付いたためだ。
(はぐりん……?)
月光の下、銀色にきらめく液体金属のような姿。
何をするでもなく、ただ哀れむような視線をこちらに向けて。
草むらに半ば隠れるように、はぐりんはいた。
けれども、ピエールと視線が合った次の瞬間には――はぐりんの姿は、遠くへと消え去ってしまっていた。
顔見知りで、争いを好まない平和主義者のはぐりんだったから助かったのだ。
あれが他の人物であったなら。ましてや、殺し合いに乗った人物であったらどうなっていたことか。
(ある程度、戦場からは距離を取ったとはいえ……
はぐりんのように戦闘音を聞きつけた者が通りかかるかもしれない。これ以上、この森にいるのは危険だ)
彼がそう考えたのも、当然の帰結であった。
そうして彼は平野に……その向こうにそびえる山脈に逃げ道を求めた。
少なくとも見晴らしがいい平野なら、逆説的に不意打ちされる危険は減る。
無理に戦おうとせず、かつ周囲の警戒を怠らなければ、山脈まで辿りつくことは決して不可能ではない。
また、日が落ちてから山に分け入ろうとする人間も居まい。
北に行けば村があるのだから、余程のことがない限り、大抵の者はそこで休息を取るだろう。
あるいは爆音と雷に引き寄せられて、森にやってくるか――そのどちらかであるはずだ。
そう計算した彼は、ヒビの入った祈りの指輪を握りしめて、静かに歩き出した。
結果的に言えば、彼の賭けは成功した。
誰に会うことも、見られることもなく、彼は無事その山の麓まで辿り付くことができたのだから。
彼は、茂み(というより、ごく浅い森)の向こうに広がっていた獣道に入り込み、人気のなさそうな場所で足を止める。
そして生えていた大木の幹にもたれ掛かり、身体を預けて――ふと、ソレに気が付いた。
「……袋?」
少し離れた場所に、口が開いたままの袋が二つ。盛られた土の傍に、供えられるかのように遺されている。
(墓……のようだな。誰かがここで死んだのか……)
そう思いながら、彼は疲れた身体を引き摺り、袋を手に取った。
片方には目ぼしいものはなかった。片方は――妙なものが二つ、残されていた。
(水と、指輪?)
共通支給されている飲料水に似ているが、良く見ると『アモール』と書かれた小さなラベルが貼られてある瓶。
それと、妙にくすんだ紫色の指輪。単なる古い指輪にも見えるが、奇妙な魔力を感じる。
さらに袋を探っていると、折り畳まれた紙切れが三つ出てきた。
どうやら支給品の説明書のようだ。彼は周囲に人の気配がないことを確かめて、ランプを灯した。
最初の紙には『ドラゴンシールド』と記されていた。だが、それらしきものはいくら探しても見当たらない。
多分、墓を作った人間が、もう片方の袋の中身と共に持っていってしまったのだろう。
何せアレは相当に強力な盾だ。彼自身もかつて愛用していたから、良く知っている。
悔しいが、この状況で見過ごすマヌケもいない……ということか。
二枚目は、小瓶に入った液体の説明書だった。
『アモールの水』。どう見てもただの水だが、なんと薬草以上に体力を回復する効果があるという。
どうしてこれほど有用なものを置いていったのか、首を傾げたが……
恐らくラベルに気付かず、ただの飲料水と思い込んでしまったのだろう。
彼は早速蓋を開け、中身を飲みながら、三枚目を手に取った。
前の二枚と違い、こちらは誰かが読んだ形跡がある。
乱雑に折られたそれを広げ、中の文章にざっと目を通す。
「……なるほど。持っていかなかったわけだ」
全てを読み終わった後、彼は指輪を見つめ、一人ごちた。
『死者の指輪』――その名の通り、身に付けた者を生ける死者に変える、悪夢のような指輪。
まともな神経の持ち主ならば、こんなもの捨て置くに決まっている。
しかし考えようによっては、これほど厄介な代物もない。
(気は進まないが……万が一誰かに拾われて、アンデッド化されても困るな)
自分の指に嵌めるためではなく、他の参加者に使わせないために。彼は指輪を袋に入れた。
それから彼は木陰に戻り、ぼんやりと空を見上げた。
ここで眠るつもりはない。ある程度体力が戻ったら、もっと人目につかない所へ移動するつもりだ。
ただ……何をするでもなく茫洋と月を眺めていると、何故か殺めた人々の姿が脳裏に浮かぶ。
自分が辿ったかもしれない、別の結末の光景と共に。
もし、最初に出会った少女に、祝福の杖やいかづちの杖が支給されていなければ。
もし、紫髪の女が、暗殺者の男と別れていなければ。
もし、日没の放送で『セシル』という名が呼ばれなければ。
もし、あの美しい金髪の女性が現れなければ。
もし、暗殺者の男が祈りの指輪を持っていなかったならば。
いずれが欠けても、ここに自分はいなかっただろう。
そして今もまた――『幸運にも』、誰かがアモールの水を見過ごしたおかげで、体力を回復することができた。
これは運命の加護なのか?
未来に待ち受ける不幸の代償として与えられた、泡沫の奇跡なのか?
それとも、幾つもの偶然が、恐ろしいほどの確率で、たまたま積み重なっただけなのか?
正解は彼にもわからない。ただ、確実に言えることが一つある。
どのような理由にせよ――生きている限り、命ある限り、彼は誰かを殺し続けるだろう。
リュカが生き延びる。それだけが彼にとって重要な事実であり、絶対の真実なのだから。
【ピエール(HP1/3程度)
所持品:鋼鉄の剣、ロングバレルR、青龍偃月刀、魔封じの杖、ダガー、祈りの指輪(半壊)、死者の指輪
第一行動方針:身を隠し、休息する 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
【現在位置:レーベ南西の山脈地帯最南部】
300 :
299修正:05/01/01 19:51:47 ID:bKCiYh3d
×:いずれが欠けても、ここに自分はいなかっただろう。
○:そのどれか一つでも該当していれば、ここに自分はいなかっただろう。
逆に言えば、全ての要素が『幸運にも』重なったからこそ、こうして自分は生きている。
以上の文章に脳内修正お願いします…
のけぞる怪物に、さらに斬撃を叩きこんで追い討ちを加える。
怪物のタフさには正直恐れ入る物があるが、やはり多人数でかかれば勝てない相手ではない。
「人間どもが……調子に乗りおって!」
骸骨のような怪物、ハインが斬りかかってくる3人を強引に剣の一閃で弾きとばし――
「ファイラ!」「べギラマ!」
――その後方から二つの紅い閃光が迫り、ハインの体を再び火で包んだ。
接近戦用の武器を持っていないセリスとパウロが後方から魔法と呪文で援護しているのだった。
「そろそろ終わりだ!化け物!」
体を包む炎に骸骨の視界が塞がった一瞬を狙い、レックスが右脚を斬りつける。
ルビスの剣は怪物の脚を切断し、ハインは太い悲鳴をあげた。
半ば崩れた姿勢から、レックスめがけて怒りに染まった氷の刃の一撃を見舞うが、クラウドが受け止める。
「よしお前ら!そのまま動くなよ!」
サイファーは威勢良く吼えると右手に持った剣を片手で回転させ、やがて淡いグリーンの円が完成し…
「雑魚ちらし!」
剣から魔力で創られた円が飛び出し、骸骨の左腕を根元から斬り落とした。
ハインがこの世の物とは思えぬ唸り声をあげるのも構わず、
白いコートを羽織った彼はそのまま骸骨へ走りより、今度は自らが激しく回転しながら跳びあがる。
全身を貫く苦痛のなか、ハインは怒りと憎しみの入り混じった眼で目の前を舞う白い影を凝視した。
…おのれ、人間どもめ……おのれ、小僧め…
「おのれエエエエェェェェッ!!」
断末魔ともとれる怒号を、サイファーの鬼斬りが切り裂いた。
「…案外、簡単だったな…」
上半身と下半身が完全に別れた亡骸を見下ろしながら、クラウドが呟く。
「まあ、これだけ大人数でかかればね。」
魔法を使い過ぎたせいか、少し荒い息をしながら、セリス。
見ると、パウロも同じように疲れた様子でその場に座り込んでいる。
「レックス!大丈夫か?」
建物の影からテリーが飛びだし、そのあとからロザリー、それにトンベリ(トンヌラ)も出てきた。
レックスに走り寄ろうとすると、途中で足がもつれて転び、ロザリーが助け起こす。
彼はへへっと笑いながら立ちあがるが、その拍子にザックからゴロッと何かが転がりでた。
物音にクラウドがふりかえり、ゴロゴロと自分の方に転がってくる球体を目にした瞬間、彼は目を見開き、急いでそれを拾い上げる。
玉を手に取り、まじまじと凝視する。
握り拳より少し大きい、黒色の輝きを発する水晶――間違い無い。アレだ。
「ごめんごめん、それ返してくれる?」
「…これは俺が持っておく。」
玉を自分のザックにいれてしまうクラウドに「え、なんで?」とテリーが問うと、彼は子供の肩に手を乗せ、答えた。
「これはな、”黒マテリア”って言って、とても危険な代物なんだ。」
テリーはそれでも納得がいかないのか、不服そうな顔をしている。
サイファーはそんな彼らを横目に見ながら、
「で、お前らはこれからどうするんだ?」目の前にいたセリスに訊く。
彼女が「ああ、そのことなんだけど――」と、本題を切り出そうとしたその瞬間、すぐ近くに巨大な雷が落ちた。
穿たれる地面、舞い上がる粉塵。
油断していた彼らめがけてサンダガが放たれたのだ。
「誰だ!?どこから?」
「クソっなにも見えねえ!」
突然の攻撃、しかも土埃が煙幕のように漂って何も見えないせいで状況が掴めない。
そんな中サイファーは、土埃の中を黒い影が駆けぬけるのを見た。
影は自分めがけて一直線に迫り、その手には剣らしきものが握られている。
見えた時には既に遅過ぎた。
影は身構える間も無く肉薄し、彼の肩から腰にかけて、真一文字に斬撃を浴びせる。
すぐ近くにいたセリスも容赦無い一撃を受け、大地に倒れ伏した。
「…他愛の無い」
薄れ行く土埃の中、セフィロスは倒れた2人を見下ろしながら呟いた。
コートを着ているほうは何かに守られているらしくまだ死んではいないが、放っておけば力尽きるだろう。
セフィロスは刀についた血糊を拭き取りながら、一旦その場から走り去った。
一度に狩るには多すぎる。焦ることなく、少しずつ混乱させながら仕留めれば良い。
【セフィロス 所持品:村正
第一行動方針:城下町に居る参加者を皆殺しに 最終行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘】
【クジャ 所持品:ブラスターガン、毒針弾、神経弾、
第一行動方針:城下町の参加者を殺害 最終行動方針:最後まで生き残る】
【サイファー(瀕死) 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能)
第一行動方針:不明 第二行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【クラウド 所持品:おしゃれなスーツ アルテマウェポン
第一行動方針:不明 基本行動方針:仲間を見つけ、守る
最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】
【パウロ 所持品:破壊の剣(使う気0)
第一行動方針:不明 第二行動方針:ロランを探す】
【ロザリー 所持品:不明
第一行動方針:不明 第二行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【レックス(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣 オーガシールド
第一行動方針:不明 第二行動方針:家族を探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ 黒マテリア(メテオ)行動方針:不明
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ
第一行動方針:不明 第二行動方針:わたぼうを探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【現在位置:アリアハン城下町、南の入り口】
【ハイン 死亡】【セリス 死亡】
・サンダガの音はかなり大きいです。アリアハン内や周辺にも聞こえています。
【セフィロス 所持品:村正
第一行動方針:城下町に居る参加者を皆殺しに 最終行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘】
【クジャ 所持品:ブラスターガン、毒針弾、神経弾、
第一行動方針:城下町の参加者を殺害 最終行動方針:最後まで生き残る】
【サイファー(瀕死) 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能)
第一行動方針:不明 第二行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【クラウド 所持品:おしゃれなスーツ アルテマウェポン 黒マテリア(メテオ)
第一行動方針:不明 基本行動方針:仲間を見つけ、守る
最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】
【パウロ 所持品:破壊の剣(使う気0)
第一行動方針:不明 第二行動方針:ロランを探す】
【ロザリー 所持品:不明
第一行動方針:不明 第二行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【レックス(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣 オーガシールド
第一行動方針:不明 第二行動方針:家族を探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ 行動方針:不明
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ
第一行動方針:不明 第二行動方針:わたぼうを探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【現在位置:アリアハン城下町、南の入り口】
【ハイン 死亡】【セリス 死亡】
「はっ……はっ……はっ……」
時折ぶり返してくる肩の鈍痛を堪えつつ、彼女はいつしか山道を駆けていた。
若干の回復傾向はあるものの、未だ視点の定まらない視界。
著しい体力の低下と出血に伴う嘔吐感。
それらを懸命に誤魔化しながら、鍛えられた強靭な精神の力でふらつく足取りを制御する。
――あまりにも迂闊ッ。
神に仕える高潔な魂こそ失っているが、同等の聖剣技を扱う男。
万全であったとしても勝利を収めるのは難しい、卓越した技量を誇る強大な敵。
そんな相手に対し、負傷した状態で反撃の機会などそうそう訪れるものではない。
ここまで疲弊させられる前に覚悟を決めるべきだったのだ。
執拗に背後から忍び寄る冷たい殺意の持ち主――ウィーグラフはすぐそこまで迫っていた。
「頃合だな」
男は満足げにつぶやくと、番えた矢を発射した。
放たれた一撃は狙い通りの軌跡を描き、対象の頭部を――僅かに逸れて――岩壁に突き刺さる。
それだけで逃げきれないと悟ったのだろう。
獲物はザックから長大な剣を取りだし、こちらに向き直った。
月光に照らされた表情は、平時の端麗な容姿とあまりにもかけ離れている。
――最愛の妹ミルウーダは、このようにしてラムザに殺されたのだろうか。
そう考えると、追っている相手がアルマ・べオルブでないのがつくづく残念なものに思えた。
「仕方あるまい、か。今はこの女で妥協するとしよう」
手にした弓矢をザックに放りこみ、替りにプレデターエッジを引っ張り出すと、
男はゆっくりと歩み始めた。
「さて、神へのお祈りとやらはもう済ませたか? 弱き人間よッ!」
緩慢ではあるが、間断なく襲いかかる刃。
剣を合わせる毎に残り僅かな体力がじわじわと削られていく。
「ククク……とうに限界を迎えているのだろう?」
絶対的優位に立つ者の余裕だろうか、ウィーグラフは嘲笑の笑みを浮かべた。
凌いでいるのではなく――凌がされている。
誇りを踏み躙り、魂を汚し、全てを砕かんがためだけに。
命があろうとなかろうと――諦めてしまった時点で私は終わるのだ。
だからこそ、この絶望的な状況でも屈するわけにはいかない。
歌が、響いた。
内容は理解できないが、場違いな程に明るい歌が。
高台を見上げた私は、そこに二人の人間を認める。
極彩色の衣装に身を包んだ者と――
(あれはッ、あの剣はッ!)
もう一人の仮面を着けた人間が手にしている剣。
傷つけた者の生命を吸い取り、所有者の活力へと変換する紅き剣。
かつて、私と対極に位置する騎士が我欲を満たすためだけに振るわれたもの。
歪んだ視界の中であっても、それだけは奇妙なほど明確に映っていた。
まるで、何かを私に伝えるかのように。
(そうか。……そういうことなのかもしれないな)
人を信じることができず、ただ私欲のために剣を振るう。
生き残ることが全てだと考える今の私と何が違う? ――違いはしない。
唾棄すべき対象だった黒騎士は、未来の己の姿。
それを認識することで、この世界に来てから晴れることのなかったわだかまりが消えていくような気がした。
「あの二人が邪魔となる存在かどうかは分からぬが……
遊んでいる時間がなくなってしまったことは確かだ。
そろそろ殺してやるとしよう。
なに、心配することはない。ラムザには貴様の首でも切り取って渡しておくさ。
奴の表情が再会の喜びで変わる様を楽しむためにな」
「仰ぐべき主君を戴き、その元で正しく力を振るってこその騎士。
仕えるべき主も持たず、この狂った世界で死ぬ訳にはいかないッ!」
守るべきものもなく道を見失った相手に遅れをとることなどあってはならないのだ。
クロスクレイモアを正眼に構え、精神を集中させていく。
残った体力では二撃目を繰り出す余裕はない。この一撃で全てを決してみせねばならなかった。
今の私に主はいない。
ならばせめて、私の知る正しき者を生かすためにこの技を捧げるとしよう。
アグリアス・オークスという存在――その全身全霊を懸けて。
「大気満たす力震え、我が腕をして閃光とならん! 無双稲妻突き!」
――後は任せるぞ、ラムザ。この忌むべき世界を打破してみせろッ!
聖剣技が放たれたのは同時だった。
両者の持つ剣から雷がほとばしり、暗き空を照らすように中空で激しくぶつかり合う。
だが、決して互角ではない。
雷が激突する度に、一方の力は着実に衰えていく。
劣勢に立たされているのは――アグリアス。
「あの女騎士、面白いことを言っていたな。
『仕えるべき主も持たず、この狂った世界で死ぬ訳にはいかない』と。
しかし、先ほどの攻撃は言葉と裏腹に刺し違えてでも倒すという覚悟が感じられた。
……実に興味深い」
二人の戦いを見下ろしながら、マティウスが口を開く。
「異界の皇帝よ。しばしその剣を貸しては貰えぬだろうか?
この短剣よりもそちらの方が具合が良さそうだ」
ザックから取り出したソードブレイカーを見せながら、傍らのゴゴが言う。
「……あやつを助けるつもりか?」
「言っただろう。私はお前の物真似をするとな。
それによってお前が答えに近づけるならば、やらねばなるまい」
マティウスは何も言わない。
ただ、ブラッドソードを手渡しただけだ。
ゴゴは飛ぶように駆けていく。
ヘイストの力を秘めた魔法の靴――ミラクルシューズの力を借りて。
雷が降り注いだ爆心地の中央で、アグリアスはそっと口元をゆるめる。
ウィーグラフの技に押し負けはしたが、不思議と悔いはなかった。
やれるだけのことはやった。そんな達成感があったのかもしれない。
「貴様は今から死ぬのだぞ。なぜッ、そんな目をして私を見ることができるッ!」
「哀れだな、ウィーグラフ。そんなこともわからないとは」
クロスクレイモアを杖代わりにして、ようやく立っていられる満身創痍の人間。
そんな者が、どうしてこの状況で恐怖を感じることもなく平然としていられるのか。
それだけではない。目の前の相手は、憎悪すらしていないように見えた。
昔の彼ならば――あるいは理解できたのかもしれない。
理想を掲げ、祖国を救うために結成した骸騎士団の団長であった時代。
信じるもの、愛する者を失う前の――彼にならば。
「減らず口をッ! そんなに死に急ぎたければ止めを刺してくれよう!」
ウィーグラフはプレデターエッジを握り直し、アグリアスの下へ猛進していく。
ゴゴがブオーンの背を下り、二人の元へ辿り着いたのは正にその時だった。
ブラッドソードを正眼に構え、精神を集中させてゆく。
ものまね師の真骨頂は、見様見真似によって全てを再現することにある。
それは選ばれしホーリーナイトの聖剣技ですら例外足り得ない。
「大気満たす力震え、我が腕をして閃光とならん! 無双稲妻突き!」
血で塗られたような刀身が鮮やかに輝き、幾筋もの雷光がウィーグラフに襲いかかった。
――それから先はよく覚えていない。
――確かなのは、捨て台詞を吐いてウィーグラフが去ったこと。
――そして、誰かが私の傍にいること。
――あたた……かい……な…………
やわらかな二つの光に包まれながら、アグリアスの意識は闇へと落ちていった。
「そんなことも可能なのか。物真似師とは器用なものだな」
マティウスは感心していた。
先程の剣技もそうだが、今もまた、自分の真似をしてケアルをかけている隣の男に。
「物真似は万能だが、完璧という訳ではない。
わかるだろう? 同じケアルであっても、その効力はお前のそれより劣っていることが」
ゴゴの言う通りだった。
マティウスの手から漏れる癒しの光は、ゴゴのそれよりもかなり大きい。
「個人の持つ資質、魔力のように見えないものまでは真似ることができないのさ。
もっとも、最終的にはそれも克服したいんだがね」
「フハハハハッ、やはり面白い男だな。
そんな途方もないことを思いつくのは貴様みたいな者だけだろうよ」
マティウスは高らかに笑う。
生きている間には得られなかった、友という対等なものを得られたような気がして。
「まだ名乗っていなかったな。私の名はマティウスだ」
「もう名乗ってしまっていたな。私の名はゴゴ。
今はマティウスという男の物真似をしているところだ」
やや遅れて。
愉快に笑う二人の声が山脈に木霊した。
「…………」
(やっとどいてくれたのは嬉しいが……。
こんな所で目立つような戦いなんかするなよ、ほんとに)
深夜になってもまだまだブオーンは耐えている。
【マティウス 所持品:ブラッドソード
第一行動方針:アルティミシアを止める 第二行動方針:アグリアスの観察
最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
備考:非交戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ゴゴ 所持品:ミラクルシューズ ソードブレーカー
第一行動方針:マティウスの物真似をする】
【現在位置:レーベ南西の山岳地帯】
【アグリアス(極度の疲労による気絶+重傷) 所持品:クロスクレイモア、ビームウィップ、もう一つは不明
第一行動方針:生き延びる(意味合いが異なっているかもしれません)】
【現在位置:レーベ南西の山岳地帯】
【ウィーグラフ 所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ
第一行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先) 第二行動方針:生き延びる、手段は選ばない】
【現在位置:レーべ南西の山岳地帯→どこかへ移動?】
【ブオーン 所持品:不明
第一行動方針:動かずやり過ごす】
【現在位置:レーベ南西の山岳地帯に同化中】
313 :
策無し:05/01/04 15:57:19 ID:0/wv/LD/
「ではどうすればいいのでしょう…」
ミネアは、目の前の男に問いかけた。
その男は、体中に傷を作り、そこに座っている。
「…呪いを解くには神父に頼むしかないぜ」
男、ハッサンは、そう呟いた。
彼を見つけたのは、ちょうど放送の途中だった。
というのも、彼の「うぉぉぉ!アモッさん!」という雄叫びと再度の爆発音が、その付近を捜していたミネアの耳に入ったからで。
その場所を見極めて、このように座っているハッサンを見つけたのだ。
そしてハッサンに一部始終を聞いたわけだ。
「身体へ振動を加えると爆発を促すらしいぜ」
ハッサンは静かに言って、指輪を恨めしげに睨んだ。
どうやら、アモッさん、と叫んだ拍子に再び爆発を引き起こしたらしかった。
「だがそのおかげで、これからの仲間が見つかってよかったぜ」
ガハハと笑うハッサンに、とりあえず笑顔で応じるミネア。
…笑い事じゃない。危険すぎる。
トルネコやブライが死んだことを考えても、このゲームに乗った人がいるのは確実だ。
そうすると、爆発を引き起こす事は危険を呼び寄せるということになる。
とりあえず絶対安静に、と彼に言い聞かせ、ミネアは考えをめぐらす。
呪いは神父でしか解けないという私たちの常識は通用しないかもしれない。
可能性は、ある。
私よりも運の無いこの人を、どうにかして助けなくては。
しかし、これといった作戦も思いつかぬまま、ぼりぼりと頭をかく男と自分の掌を交互に見つめるミネアだった。
【ハッサン(HP残り1/8+α) 所持品:E奇跡の剣 E神秘の鎧 E爆発の指輪(呪)
行動方針:指輪を外す 最終行動方針:仲間を募り、脱出】
【ミネア 所持品:いばらの冠 嘆きの盾 悪魔の尻尾 行動方針:ハッサンの指輪を外す
【現在位置:いざないの洞窟西の山岳地帯】
城下街で悲劇が起こる中、ジタン、リノア、キーファの三人組は未だ本を読み漁っていた。
「あ〜〜!みつからねー」
読んでいた本を投げ飛ばし、キーファは横になった。
すでに横になっているジタンは俺の攻略本を読んでいた。
『邪法の心得』、『呪いにおける精神分析』、…etc.
呪いのことは書いてあっても解除手段についてはどれもぼかしたような表現しかない。
しかも、呪いの効果は使用者によってまちまちのようで、魔女の呪いなんてたまったものじゃない。
「ーっ、なんだこれ!?こんなものまであるのかよ!」
攻略本を読んでいるジタンがいきなり声を上げた。
「何が書いてあったんだ?」
キーファはジタンの持っている攻略本を覗き込む。
すると、アイテム紹介の欄にこう書かれていた。
えふえふ【左手装備】
形状不明の謎のアイテム。
一説によると、戦っている間に時間がおかしくなると出てくる異次元の装備。
その防御力は直接攻撃無効化という優れもの。
注)自分で装備を外してしまうと、二度と装備できない役立たずになるぞ!!気をつけろ!
おいおい、攻撃無効化かよ!!
こんなものを装備した奴が襲ってきたらまず勝ち目はないじゃねーか!!
キーファはこの内容が誤植であることを切に願った。
「…まてよ。これが間違いかどうかは別として、こんなかけはなれた効果を持つアイテムが存在するなら、首輪の解除に役立つアイテムが存在するんじゃないかな?」
「それじゃあ、その攻略本についているアイテムの効果を二人で全部読んでくれない?こっちの方もなんかわかりかけてきた気がするわ。」
リノアはようやく解決への糸口が見えてきたような気がした。
―――同時刻
レーべの村の南で、二つの影が空中で交錯する。
(フッ…ジャンプ力は俺の方が勝っているみたいだな。)
飛び上がった男は自らの槍を女の喉下へ突き立てる。
勝負は一瞬で終わる……はずだった。
ギィーーーン
鈍い音が響く。二つの影が地面へと落ちていく。
男は女を凝視する。
(無傷か…仕留めたと思ったんだが)
再度男は飛び上がる。そして標的を定め降下する。
(無傷とは…やられたと思ったんじゃが)
「竜剣!!」
女はアイスソードを振る、竜騎士カインにめがけて。
(くっ…多少くらったようだな…しかし、これで止めだ!)
今度は外さないように槍を女の頭上へと精確に突き下ろす。
フライヤは自分が不利なことを知っていた。
竜騎士としての力量は戦う前からわかっていた。
剣対槍ではかなりの差ができるし、空中戦では歯が立たない。
そして今の竜剣をもってしても次の瞬間の死を避けることはできないようだった。
(…フラットレイ様、わしは…)
ギィーーーン
カインの槍がフライヤを捕らえた。
そして、最後の反撃を避けるために後方へと飛んだ。
「フッ…俺の勝ちのようだな。」
もう応える筈のない女に語りかける。
カインはその場を去ろうとした…が、その時のことだった。
「なぜ、わしにとどめをささないんじゃ!?」
(…!?)
驚いて振り返る。そこには無傷のフライヤが立っていた。
(…手ごたえはあった――なのに、なぜ倒れない!)
カインは目の前の出来事が信じられなかった。
しばらく考え、こう言った。
「同じ竜騎士を殺すのは忍びない。俺はこのゲームで親友を失った。
親友の仇を討つために人を殺してきたが、そろそろ俺はこの呪縛から解放されたいんだ。
すまないが、カインという愚かな人物がいたことを胸に留めて置いてくれ。」
そう言って自らの名をもつ槍を自分の胸にと突き立てた。
「さらばだ」
カインは目を閉じる。
「お主が死ぬことはない!!」
フライヤはそう言ってカインの槍を奪う。
「お主はまだ生きねばならぬ。殺した人への罪滅ぼしにも!」
「………。」
「とにかく、わしの仲間を探そう。もし、お主を恨んでいる者が居ればわしが説得する。」
「………すまない。」
(フッ……とんだ三文芝居だ。所詮こいつもセシルと同じだな。
とにかく、奴がなぜ俺の攻撃をかわしたのかを知らなくては。
先ほどの人外のものに出会っても、こいつを盾にすればいい。
裏切るのはそれからだ。裏切るのは俺の得意分野だからな)
フライヤの左手には腕輪状のえふえふが光を放っていた。
【ジタン 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面 第一行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 第二行動方針:ゲーム脱出】
【リノア 所持品:不明 第一行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 第二行動方針:仲間と合流しゲーム脱出】
【キーファ 所持品:攻略本 第一行動方針:首輪解除の手段を探す 第二行動方針:フィンと合流しゲーム脱出】
現在位置:アリアハン城裏の図書館 (3人とも図書館で本読んでいます)
【フライヤ 所持品:アイスソード えふえふ(FF5)
第一行動方針:カインと仲間を探す】
【カイン 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手
第一行動方針:フライヤについていき、攻撃の効かない原因を探る
最終行動方針:フライヤを裏切り、殺人者となり、ゲームに勝つ】
【現在位置:レーべ南】
320 :
えふえふ:05/01/04 17:50:51 ID:vClY+UIT
【カイン(HP 5/6程度) 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手
第一行動方針:フライヤについていき、攻撃の効かない原因を探る
最終行動方針:フライヤを裏切り、殺人者となり、ゲームに勝つ】
修正です
夢を見ていた。昔の夢だった。
旅をしていた頃。僕がまだ魔法使いから賢者になりたてだった頃。
僕は皆と火を囲んで談笑していた。
昔のことを話して、笑って、大変だったんだねと答えてみたり。
皆が腹を割って楽しく過ごした時間。
その時に、みんなの過去も聞いた。僕の過去も曝け出した。
アルスは父親が死んで、でも熱心にその後を追った。
ローグは両親とも既に死んでしまっていて。でもがむしゃらに生きていた。
フルートは昔武闘家だったらしい。でも今は癒し手として頑張っている……一応。
そして僕。
僕は昔両親を無くして、遠く離れた街で暮らしていた。
敵討ちとでも言うように魔道にのめりこみ、アリアハンへと渡った。
その頃から既に賢者への道を理想と掲げていた。
そして今は…言うまでもないのだけれど、理想へとたどり着いた。
更なる理想は、僕やアルス、ローグの様な人を一人でも多く無くす事。
魔王を倒すことで、僕等はそれを成しえた。
火を囲んで笑う僕等。
他愛も無い話。昔の話。これからの話。
僕の心には氷で出来た鋭い棘があったはずなのに。
それを溶かしてくれた皆、それを折ってくれた皆。
―――絶対に、これは壊させやしないと誓おう。
そこまでが、セージの夢だった。
目が覚めた。少し寝ぼけてはいるが、多少の寒さで完全な覚醒を手伝ってくれた。
まだ夜中だ。
でもあのまま眠ってしまっていたら、見張りが出来ない。
眠ってしまった事が既に不覚だが、マシだとは思った。
「……昔の夢なんて、あまり見ないクチだけどねぇ」
夢に出てきた仲間達は大丈夫だろうか、とふと不安になる。
大丈夫かもしれないが、もしもの事があったら…。
再会できるかわからない。地味に広いこの大地で、どうなるのだろうか。
そこまで考えて、ふと前を見た。今もやはりタバサは寝ているのだろうか…?
ふと前を見ると……見ると……。
いなかった。
え?嘘でしょ流石に。
もしや自分が寝ている間に拉致された?または殺されてどこかに棄てられた?
気分が暗いのが相まって不安を掻き立てる。
不安を隠しきれない顔で今度はベッドを見た。
もしやビアンカさんまで手に掛けられているのではと思ったからだ。
ベッドに近づいた。そして覗き込むと、
タバサがいた。
じゃあビアンカさんは……。
「寒いだろうから私が移動させたの。ごめんね驚かせて」
「…ああ、お気遣い有難う。確かに少し冷えるよ」
さっきの不安は既になくなっていた。
どうやらタバサをベッドへと移動させたのはビアンカだった。
彼女はセージよりも前に起きていて、そしてタバサを自分の寝ていたベッドに…という事だったのだ。
「容態は大丈夫なの?随分汗だくだったからねぇ」
「ええ、大丈夫。これでも旅をしてたから体力は自信があるのよ」
「なら良いんだけど…。ああ、そうだ。今の状況を説明したいんだけど…いいかな?」
「私からもお願い。正直ちょっと困惑してるの。記憶もないし…」
「わかった。できるだけ簡潔に纏める様努力するよ」
そしてセージは今までの出来事をビアンカに話した。
タバサと自分が出会ったときのこと。それからした行動の事。ビアンカと自分が繰り広げた死闘のこと。
そして…ピピンとサンチョが死んだこと。
「彼らに関しては、タバサから話は聞いてたからね。どうやら惜しい人だったらしい」
「うん、2人ともとても素敵な人だった…」
「……だろうね。僕も話を聞くだけでそう思えた」
「そんな事が起きてるのに…私はもっと犠牲者を出そうとしてたのね」
母親失格かもね、とビアンカは笑って言った。
声が少し涙混じりだ。かけがえの無いものを失ったのだ、当然だろう。
それを見て、セージは静かに語りだした。
「タバサはピピンさんが死んだと知って、悲しんでいた…。
サンチョさんも死んでいたけれど、何故か僕の前で呟いた名前はピピンさんだけだった。
2人の死は平等に悲しいはずなのに……なのに目の前で悲しんだ理由を1人で片付けようとしていたんだ。
更にあの子は泣きもしなかった。涙一つ出さずに僕に前向きに話しかけてきた。
……やっぱりね、僕を心配させないようにさせないように、気を使ってるんだと思う。
あの子は強い。とても強い。
でも、今死んでいく人すら護れない僕が…彼女がもし強さを挫いてしまった時に…護れるのか判らない。
僕は結局他人だから…上手く立ち上がらせる事は出来ないかもしれない。でも…」
溜息を付き、一呼吸置いて、そして、
「母親であるあなたなら、できる。僕と違って確実にできるんだ。
だから、無理を言ってすまないけど…こんな事であなたに挫けて欲しくは無い」
こう、言った。
ビアンカは黙っていた。
黙って涙を拭いて、セージを見た。
そして、答える。
「ありがとう。そうね、あなたの言う通りだと思う。
あの子の母親は私だし…ここで暗い顔見せちゃ怒られちゃいそうだしね。
…頑張るわ。うん、絶対頑張る」
そして、ビアンカはセージと同じように溜息を付いた。
そして一呼吸置く。
「でもね…あなたの言ってることが1つ間違ってる気がする」
「どういう事?」
セージはつい反射的に答えてしまった。
気付いたセージが苦笑して「ごめんごめん、続けて」と言った。
「あなたはさっき『護れるのか判らない」『立ち上がらせる事はできないかもしれない』って言った。
でもね、今のタバサの寝顔を見てると……わかるの。とても安らかに眠ってる。
こんなふざけた戦場なのに…この子は不安の一つもなく眠ってる。
それはあなたのおかげ。だから、あなたも…きっと大丈夫。
タバサをこれだけ護ってくれたんだから、きっと他の人たちも護ることが出来る。
タバサがもし落ち込んだ時も、きっとあなたも手を指し伸ばせることが出来る。そう思う」
―――だから、あなたも暗い顔を見せないでね。
と…最後にビアンカはそう言って締めた。
「結局、お互い自信を失う機会なんてのは存在しないわけだ」
「そういう事。落ち込みたくても落ち込めないのよ、私達は」
そう言って2人は、静かに笑った。
静かに、でも子どもの様に笑顔を浮かべる。
「本当に強い人揃いだね、そっちは」
「あなたも相当強そうよ」
「魔道には自信あるよ?強いよ?」
「私はお料理には自身があるわよ?調味料の暗記にも強いわ」
「そりゃありがたい。携帯食料くらいでげんなりしてた」
「まだ食べてないんだけど、そんなにマズイの?ちょっと気になるかも」
「やめといたほうが良いよ〜?一時のテンションに身を任せると良いことが無い」
灯りを囲って、2人は談笑していた。
笑って止めるセージを無視して、携帯食料を食べたビアンカが微妙な顔をする。
「私ね…実は子ども達の10年間の成長を見てないの」
「なんで?」
「私は夫と一緒に…魔物の罠にかかって石像にされちゃったの」
「あ〜、それで10年経っちゃったんだ」
「ええ。夫の方は2年早く解放されたんだけどね」
「………通りで若いと思った。明らかに10歳の子どもがいる人じゃない」
「あなたと同年代かちょっと年上ってところかな?」
「そうだね、実は勢い余って惚れてるから…今」
「それ本当?」
「すみません、冗談を言ってしまいました」
「私じゃなかったら怒ってるかもね〜」
「あはは、ごめんごめん。でも冗談だとわかってくれたら結構」
灯りを囲んで談笑をする僕らの姿は、
以前の仲間達との談笑を思い出させてくれた。
この優しい心の火を、僕はもう消さない。
命という燃える炎を、僕はもう消させやしない。
【セージ 所持品:ハリセン・ファイアビュート
現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋
第1行動方針:談笑ついでに見張り 基本行動方針:タバサの家族を探す】
【タバサ 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑・悟りの書
現在位置:同上
第1行動方針:睡眠 基本行動方針:同上】
【ビアンカ 所持品:なし
現在位置:同上
第1行動方針:談笑 基本行動方針:不明】
失礼
>>323の
どうやらタバサをベッドへと移動させたのはビアンカだった。
の「どうやら」を消して読んでください…orz
『早く起きよう。起きようよ』
(起きたくない。もう、何もしたくない)
『ダメだよ。戦わないでどうするの? 誰も代わりにならないよ。僕がやらないと』
(無理だよ。僕一人じゃ勝てっこない。魔女にも、あのヒトにも)
『彼女に生きて会いたいだろ? なら、戦って生き残るか、首輪を外すとかしないとさ』
(外せるわけないだろ。僕は機械に詳しくもないし、監視カメラや盗聴器が仕込まれてるかもしれない。
それにもう、戦いたくないよ。ずっとこうして寝ていたい)
『寝てたって、殺されるだけだよ』
(先のことなんか、考えたくない)
『彼女はどうするの? 誰が魔女のコト伝えるっていうの?
誰がみんなを守るの? 誰が僕の代わりにゲームに乗るっていうの?』
(……)
『人に任せてどうなるものでもないだろ? だから起きよう。起きて、戦おうよ』
(イヤだ。僕が戦ったって、生き残れるわけないよ。
僕の力じゃ、あのヒトには勝てない。勝てたとしても、あのヒトより強い奴がいるかもしれない)
『……』
(生き残れるなら……彼女に絶対会えるなら、僕はいくらでも殺せるさ。例えスコール達でも。
でも、わかったんだよ。無理なものは無理だ。努力だけじゃ、どうにもならない壁があるんだ)
『……可能性は0じゃない。諦めたら終わりだけど、諦めない限り0にはならない』
(100でもない。50どころか1ですらない。限りなく0に近い。それって、不可能と同じだよね)
『でも、死にたくないだろ? 会いたいだろ? 帰りたいだろ!
大切な人と、一秒でも長く一緒にいるために……そのためには戦わないと!』
(そうやって、ずっと戦ってきたよ。もう子供じゃない、黙って離れ離れにされるのは嫌だから。
でも、それでどうなった? 僕はここにいる。彼女と離れ離れにされて。
頑張ったってどうにもならないんだ。僕の力じゃ、どうにも……)
『諦めてどうするの! 二度と会えなくなるだけだよ!』
(もういいよ。これ以上考えたって辛くなるだけだ。頑張ったって無理なんだ。
……いっそ、ラクになるのも一つの手かな。そうしたら、こんな思いしなくて済むよね。
こんな苦しい……辛い思いなんか……そりゃ、自分で死ぬ勇気もないけどさ)
『……』
(どうなったっていいよ……僕はもう、何も考えたくない……)
レーベから北西に進んだ海岸の近くで、三人は静かに焚き火を囲んでいた。
正確に言うなら八人なのだが、残りの五人は眠っている。
ターニア……彼女は未だに深い眠りに落ちたままだ。
もっとも、怪我はレナが治療したから、目が覚めても暴れだすことはないだろうが。
レナは……精神的に参りかけていた上、戦闘で溜まった疲労もあったのだろう。
白魔法で全員の手当てを終えた後、ころっと寝てしまった。
ピサロは、自分の傷を治していたと思ったら、勝手に眠っていた。
ソロが「しばらくは僕が見張りをするよ」と宣言していたせいかもしれない。
ビビは、ソロと一緒に見張りをするといって起きていたのだが、いつの間にか寝息を立てていた。
何せ、ベッドに入って二時間もしないうちにあの騒動で叩き起こされたのだ。
きっと、本当は眠くて眠くて仕方がなかったのだろう。
そして……
「本当にどうしたんだよ。コイツは」
ヘンリーが、地面に横たわらせたままのアーヴァインを見やった。
彼は、あれから意識を失ったままだ。蒼白な顔を歪め、浅い呼吸を繰り返している。
「まったく……これじゃ殴ってやることも、問いただすこともできやしねえ」
ヘンリーは苛立ちを紛らわすように、揺らめく炎に向かい小枝を投げた。
こんな状況で焚き火をするというのも目立つが、どうせこの大所帯だ。
何もしなくても十二分に人目を引くし、
いっそこちらから明りを灯して人数差を教えてやった方が、相手も戦意を喪失するかもしれない。
――それとは別に、寒いのが嫌だとか、真っ暗闇だとうっかり眠ってしまいそうだという理由もあったが。
「そういえば」
ふと、ソロが顔を上げた。
「ヘンリーさんもエリアさんも、眠って構わないんですよ?
僕が見張ってますし、何かあったらちゃんと起こしますから」
その言葉に、エリアは首を横に振り、ヘンリーはわざとらしく舌打ちをする。
「いえ……私は平気です。それに、少し目が冴えてしまって」
「傷が痛くて眠れないんだよ。第一、眠気自体もどっかの誰かのおかげで吹き飛んだしな」
そう言って、ヘンリーはまたアーヴァインを見た。
しかし彼の場合、口で言うほどアーヴァインを恨んでいるわけではないようだ。
だいたい、本当に嫌いな相手なら、話題に出そうとすらしないだろう。
彼がデールの事を一切喋ろうとしないように。
……エリアが、アーヴァインのことについて何も触れないように。
それで、ソロは二人に気付かれないよう、小さくため息をついた。
――そのはずだったが、
「……ソロ?」
突然名を呼ばれ、反射的にビクっとしてしまう。
けれども――声の主は、ヘンリーでもエリアでもなかった。
険しい表情で一点を見つめる二人、その視線の先にあるものに、ソロはようやく気付く。
いつの間に意識を取り戻したのか。アーヴァインは瞼を薄く開けて、炎を――
その先にいるソロを、じっと見つめていた。
ソロが声をかけるより早く、彼は疲れたような声で呟く。
「僕は……生きてるの?」
「ああ、そうだ。ソロとエリアとそこで寝てるレナに、よーく感謝しとけよ。
ソロが言い出さなければ……それで二人が納得しなかったら、お前は生きてなかっただろうからな」
ヘンリーの言葉も、アーヴァインの耳には届いてはいないようだった。
彼はただぼんやりと炎を見つめ、そして、また目を閉じてしまう。
「おい待て、寝るな! 起きろ! こっちには聞きたいことがあるんだよ!」
ヘンリーは苛立ったようにアーヴァインの襟首を掴み、肩を揺さ振った。
「……ナニ?」
眠いというより、億劫そうに彼は目を開けた。その声にも瞳にも、奇妙なほど生気が感じられない。
――まるで、レーベにいたフリオニールのように。
ヘンリーも彼のことを思い出したのか、どこか後ろめたそうな口調で聞く。
「お前は……どうして、あんなことをしたんだ?」
アーヴァインはしばらくぼんやりとしていたが、やがて身を起こし、乾いた笑みを浮かべた。
フリオニールと違い、そこにははっきりとした意思の色があった。――ひどく沈んだ、闇のような意思が。
「あんなこと? あんなことってどんなこと? 金髪の女の子を、不意打ちして殺したこと?
あーんな重たい剣で戦おうとしたオジサンを、ティナと一緒に殺したこと?
邪魔になったティナを、ボウガンで撃ち殺してやったこと?」
くすくすと笑いながら、世間話でもするかのように。凍りつく三人を前にして、彼は言葉を続ける。
「あ、マリベルとかいう頭巾の女の子のことかな? 止めはさせなかったけど、放送で名前が呼ばれてたしね。
それとも、自殺しようとしてた女の子を騙して、スコール達を殺させに行かせたこと?」
「……お前……」
「あ、そっか。そこの人のオトモダチを殺したことか。
お人よしだよね、あの人も。いくらカインが顔見知りだからって、ホイホイ着いていくなんてさ〜。
まー、おかげで僕も楽できたけどね〜」
「いい加減にしろよテメエ!」
湧き上がる怒りに任せて、ヘンリーは彼の胸倉を掴んだ。
しかしアーヴァインは顔色一つ変えず、暗く沈んだ瞳で彼を見る。
「ムカツイた? なら殺せば? 構わないよ、それでも」
「……何?」
「別にどうだっていいよ。聞きたいなら答えるし、聞きたくないなら僕も喋らない。
殺したいなら殺せばいいし、生かしておきたいならそうすれば? 僕はどうだって構わないからさ」
ヘンリーは思わず手を離した。エリアも、ソロも、何も言えずに立ちすくんでいる。
それでもアーヴァインは逃げようとしない。武器を奪い取ろうともしない。
何をするでもなく、大人しく座ったまま、自嘲とも冷笑とも取れる笑いを浮かべている。
「アーヴァイン……」
ソロはようやく気が付いた。彼の心に宿ったものの正体に。
フリオニールのような虚無ではない。デールのような狂気でもない。
彼が抱えてしまったのは、多分――『絶望』という名の、病。
「どうしたの? 殺さないの?
……ああ、僕がどうして殺し合いに乗ったか知りたいんだっけか。長い話になるけど、いい?」
「あ、ああ……」
ソロがうなずいたのを確かめて、アーヴァインは他人事のように話し出す。
果てしない闇を湛えた瞳で、揺らめく炎を見つめながら。
自分が凶行に走った理由を――彼と、仲間達と、魔女に纏わる全てを。
【ビビ(睡眠中) 所持品:スパス
基本行動方針:仲間を探す】
【ターニア(睡眠中) 所持品:微笑みのつえ
第一行動方針:不明】
【レナ(睡眠中) 所持品:エクスカリバー
基本行動方針:エリアを守る】
【ピサロ(HP3/4程度、MP消費、睡眠中) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ヘンリー(負傷、6割方回復) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可)
【エリア 所持品:妖精の笛、占い後の花
【ソロ(MP消費) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
第一行動方針:アーヴァインの話を聞く/周囲の見張り
第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す(ソロ)
デールを殺す(ヘンリー)
サックスとギルダーを探す(エリア)】
【アーヴァイン(HP1/3程度) 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能)
第一行動方針:殺し合いに乗った理由を話す 第二行動方針:『どうでもいい』。成り行きに任せる】
【現在位置(全員共通):レーベ北西の茂み、海岸付近】
俺達は走る、闇夜をただ走る。
かなり涼しい。暑過ぎず寒すぎずで疲労し辛いから丁度良い。
俺たちは走る、寒空の下を走る。
状況が状況の所為か、少し肌寒くも思える。これだから人が傷つくのを間近でみるのは嫌だ。
次の一手を考えないと、死ぬと思った。
バッツは戦闘には長けている。きちんとした作戦、段取りを考えれば安全だろう。
レーベに着いたらまずは宿屋で潜伏しよう。そして一手を考える。それができなければ…その時、か?
俺はやっとローグの走りに追いついた。
あいつは走りながら何かを考えているようだった。
器用な奴だ。凄いスピードで走ってるのにそれでまだ考える余力があるなんて。
アリアハンには大勢の人間が居た。
しかも手負いの者は居れど、強い人間は揃っている。
全員が俺たちを追いかけることは…あいつらの行動から見れば大丈夫だろうが。
問題はあいつらの元にゲームに乗った奴が闖入した場合だ。もしそうなればあそこは修羅場確定。もう戻る事が出来ないだろう。
俺たちはかなりの距離を走っている。
レーベまで早く着くと良いんだが、問題はこのペースだ。
休憩もなしに今も走りっぱなしだ。足が疲れる。
橋は越えた。アリアハンはもう見えない。なら少し休憩を取りたいと思った。
アリアハンからは離れた。もう影も見えない。
幸運にも人の姿は目撃していない。恐らく大丈夫だ。
しかしこのままレーベに行けるかどうかが微妙だ。
バッツを俺個人の考えでひた走らせてしまった。
仲間に迷惑をかけるのはよくない。酷使すれば信頼も戦力も崩れてしまう…よし。
さっきからローグは凄い汗を流している。
考えることに集中している所為でもあるが、疲労の所為か足に躓きそうにもなっている。
俺はまだ体力はあるし…いや、実は微妙だ。かなりキツい。
さっきの女も足を怪我したし…大丈夫だろう、追ってくることは無い。
問題はこいつだ。ああ、もう見てられねぇ。
「ローグ、休憩するぞ!もう……アリアハンは…影も形を見えないしな…」
「ありがたい…俺もそれを提案しようと……思ってたから…よ!」
【バッツ 所持品:チキンナイフ、ライオンハート、薬草や毒消し草一式
第一行動方針:闇夜に紛れて休憩 第二行動方針:レーベの村へ 第三行動方針:レナ、ファリスとの合流】
【ローグ 所持品:銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ 静寂の玉 アイスブランド
第一行動方針:闇夜に紛れて休憩 第二行動方針:レーベの村へ 最終行動方針:首輪を外す方法を探す】
現在位置:アリアハン西の橋の更に少し西
336 :
状態文訂正:05/01/06 00:06:41 ID:O2n6Sy/d
【バッツ(多大な疲労) 所持品:チキンナイフ、ライオンハート、薬草や毒消し草一式
第一行動方針:闇夜に紛れて休憩 第二行動方針:レーベの村へ 第三行動方針:レナ、ファリスとの合流】
【ローグ(多大な疲労) 所持品:銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ 静寂の玉 アイスブランド
第一行動方針:闇夜に紛れて休憩 第二行動方針:レーベの村へ 最終行動方針:首輪を外す方法を探す】
現在位置:アリアハン西の橋の更に少し西
ギルダーは目の前にある不利な状況に、舌打ちをした。
数時間前。ギルダーは山沿いに東南方向へと向かっていた。
地図によると近くに湖があるらしいという事が判ったからだ。
飲み水の心配が無くなりそうではあるし、何より戦いで有利そうだ。
闇夜に紛れて湖の中へと放り込む等の、基本的で効果のありそうな策が使える。
だが、そんなギルダーは見つけてしまった。
近くにあった地下へと続く階段。闇に紛れて見逃しそうな建物にそれはあった。
中には地下室への扉がある。丁度良い。何か良い物があるかもしれない。
しかも誰かが潜伏していれば…急襲をかけて殺せば良い。
ギルダーは決心した。
中へ入って、良さそうであればそこでの潜伏も考えよう。
「成程ねぇ。全く、今日はお客さん多すぎだっての」
「セージさん、私も手伝うわ」
「いや、僕一人で良いや。タバサを頼んだよ」
無理矢理鍵を破壊して扉を開いたは良いものの、
そこには人間が3人もいた。だが女性が2人に軟弱そうな男が1人。
まずは軽く牽制をするかとサンダーを撃った物の、奇妙な魔法で跳ね返された挙句…。
「ここは狭いしねぇ…特に僕らみたいな魔道の者には」
そう言うなり奴はバシルーラとかいう奇妙な魔法で、俺を外に押し出したのだ。
なんとかそれ以上吹っ飛ぶのは堪えたが、室内での奇襲は失敗に終わってしまった。
そして今に至る。
「降参した方が良いんじゃないの?幸先悪いし」
「それは無理な相談だ。もうしわけないがお前達には死んでもらう」
「子どもを騒音で起こしておいてそんな言い草は…もう駄目だね君」
殺すわけにはいかないからねぇ…とセージは呟いた。
一応奇襲を受けたはずだが、あの余裕。ギルダーは少し妙にも思えた。
魔力を感じる故に、魔法に自信があるのだと思った。只者ではないと思った。
「仕方ない。全身全霊で行くぞ」
「ねぇ、もしかして既に人殺したりしてるの?」
セージの問いには一切答えずに、ライトブリンガーを持ってギルダーは突進した。
それを刹那で避けるセージ。左腕に少し傷が出来た。
だがセージがそれを気にする暇も与えずギルダーはまた近づいてくる。
「まずはさ、何か言いたい事とか無いわけ?」
「下らないことを言うな!」
またも斬撃。だが、今度は避けた。
やはり早く済まそうと思うと単調な攻撃になってしまう。
ならば次は間合いを取って魔法を使うか…と、集中しだした瞬間…セージが口を開いた。
「仕方ないねぇ…久々に本気出すか。『ピオリム』」
その言葉を最後に、ギルダーの視線からセージは消えた。
しまった、速度上昇魔法か!
ギルダーは間髪いれずに気配を察そうと、神経を研ぎ澄ました。
どこか遠くに行ったか。背後を取ろうとしているかもしれない。
その時。
遠くから、何か朱いものが飛んでくるのに気付いた。
大きい、熱い…あれは……。
ギルダーは思考を止め、前に足を踏み込んだ。
そして手榴弾のピンを外し、火球が飛んできた位置へと投げた。
「ありゃ、当たってないや。流石になめてたかな…でも今の炎の光で位置はつかめた」
先刻ギルダーを襲ったのはセージのメラミの火球だった。
祠から少し離れ、狙いをつけて唱えたのだった。
それがギルダーと祠から外れたのを確認すると、次はその彼が居るはずの場所に走っていった。
そしてその後に、先ほどセージがいた位置で手榴弾が炸裂した。それにより微妙にセージの影が光によって見えた。
ファイアビュートを構えるセージの姿が見える。
手榴弾の光で位置は確認し、走ってくるルートを推測。更に目が慣れた為にもう狙撃は効かない。
またライトブリンガーを構え、じっと相手を待つ。
近づいてきた。カウンターを合わせる…今だ!
セージの動きに合わせて切り裂くよう手を動かした。
だが、何故か攻撃は当たらかった。また避けられたのか。
―――だが、真実は違っていた。
ただ単にピオリムの効果が切れ、急にスピードが遅くなったためカウンターが失敗しただけなのだ。
自分の予想していた位置よりも少し向こうに相手が居ることに落胆するギルダー。
だが、それならば今度はこちらから攻める番だ。
「行くぞ男!次はこちらの番だ」
「『ブリザガ』!!」
ギルダーの詠唱は思ったより早く完成し、すぐさま発動させた。
氷と吹雪が一帯を支配する。凍てつく寒さと冷たい氷がセージを襲う。
はずだが…
「なんでそんな気合入って叫んでんの?………『ベギラゴン』」
セージのいる方角から強烈な閃光が発せられた。
と、同時に広範囲に火炎が広がり、バリケートのようになっていた。
そこにブリザガが突撃してしまった。二つの相反するものが消えうせ、水蒸気が発生する。
しかもこれはただ事ではない。霧の様に辺りを覆い尽くし、何も見えない。
「殺さない様にしておいてあげるよ…『メラ』」
「何!?」
セージが水蒸気の中から姿を現した。
既に避けられないほど近くにいる。ギルダーはあっさりとメラを喰らってしまった。
だが根性で、刹那にライドブリンガーを振った。その所為かセージの右の脇腹から鮮血が飛ぶ。
「っていうか本当疲れるねぇ。……『イオラ』」
「………っ!」
だが彼は、それを尻目に間髪いれずギルダーの上空に爆発を発生させる。
衝撃波にやられギルダーは地面に打ち付けられる。
「詠唱速度が速過ぎる……馬鹿な…」
「だから言ったじゃん。もう終わりだよ、ゆっくりとお休み――。『ラリホー』」
手負い、集中力を乱している彼はあっさりと睡魔を受け入れた……。
霞んでいく景色の中で、ギルダーは吹っ飛んだ自分の帽子を被ってみるセージを見た。
「はいはい、起きる起きる。『ザメハ』」
「…………?」
ギルダーが目を覚ますと、そこは先ほど突貫した地下室だった。
ベッドに寝かされている。状況を把握しすぐに身を起こすと彼はすぐさまファイラを唱えた。
だが、発動しない。何度唱えても発動しない。目の前ではセージがニヤニヤしている。
「マホトーン。呪文を封じ込める為の呪文だ。寝てる間にちょっと耳打ちしておいた。
あとやっぱ君の攻撃は効いたなぁ。今さっきベホマ4回くらいやってやっと傷塞いだよ」
ふはははははは!とワザトらしく高笑いをするセージをよく見ると、
後ろ手にライトブリンガーを持っていた。すぐに取り返そうと身を乗り出すが、ひょいひょい避けられる。
「返せ!…というより、何故俺は生きているんだ……」
「生きててよかったじゃないか」
「そうじゃない!確かに俺は生きてやらなければならないこともある…だが!」
無視してセージはギルダーの支給品を全て自分の袋にしまい込むと、椅子に座った。
隣にはビアンカが座っている。灯りの前で2人が奇妙に座っている。
「話そう。とりあえず君は僕の向かいね」
「なんのつもりだ…敵だぞ俺は!!」
イライラしてしまうが、手負いで魔法も武器も無い今、丸腰で相手できる状態ではない。
言われるがままにセージのとなりの椅子に座った。
「本音を語るには灯りを囲むのが一番だと、どっかの息子さんが言ってたものでね」
「敵と楽しく談笑か?」
「僕と2人っきりでね。他の人たちは疲れてるだろうから寝かせることにした」
成程、見るといつの間にか2人は寝ていた。タバサの方は素晴らしい。ちゃっかり布団を占領している。
そんな2人を尻目にセージは口を開いた。
「仲間にならない?君だったら凄い戦力だよ。」
奇妙な事を口走る、ギルダーは心底そう思った。先ほど殺し合いをした相手に言うことではない。
「敵でもなんでもどうでも良い。どうせ君、生き残るために仕方なくやってたんでしょ?
君が生きてやりたい事があるなら、もう少し別の方法があるんじゃないかと言いたいんだ」
ギルダーは、静かに自分の行動を思い返した。
会いたい人に会う為に、殺しを決意した自分。決意を胸に遂に人を殺した自分。
そして、今ここに敗北者として座っている自分。ここの世界に来る前の自分と照らし合わせると…とても悲しくなって。
「………もう俺は既に人を殺している。罠として使った女性に兵士風の男、そしてあのベッドの子どもくらいの女の子に長髪の男だ」
そして何故か、打ち明けてしまった。
「兵士風の男を殺して名簿を見ると、紅い線が引かれていた…これで俺は殺したことを実感したよ」
「名前は?」
「……ピピン、だ」
「そっか。後で2人にやんわりと、それなりに伝えておくよ」
「知り合いだったのか、そこの2人の」
「とっても素敵なお城の兵士さんだったってさ。その辺のよりはまぁ強いんじゃない?」
「……そうか。ならなおさら俺はお前と相容れることが出来そうに無いな。あの女達が許しはしないだろう」
そう言うと、ギルダーは机に突っ伏した。
そのまま静かにセージの方を見るように顔を上げ、うつろな表情を浮かべる。
「会いたい人がいた。絶対に会いたい人がいた。だから俺は殺した」
「僕にだって会いたい人はいるけどねぇ…でも殺しをしてないんだよねこれが」
「俺は…前に世界を救ったけれど……既に人殺しの犯罪者だ」
「僕だって前に世界救った賢者だけどさ。やっぱり殺しはしてないんだよねぇ」
「…おちょくっているのか?」
「いや?君と僕を照らし合わせてるだけ。いやぁ、似てるね。特技もやってたことも」
「……君と僕は鏡に写った様なものだ。一歩間違えれば僕もそうなっていた」
「……そうなのか?」
「ああ、重圧に押しつぶされて逃げ道を作ったら…君みたいな事になっただろう」
「俺はもう手遅れだ。殺人という道に走って、こんな醜態を晒してしまうほどじゃ…たかがしれている……」
絶望と悲しみに潰されてしまったように、
ギルダーは顔を上げなくなった。
「おい、お前…」
「セージだ」
「じゃあセージでいい……お前は、これから俺に何を求める?」
「その前に君の名前は?」
「ギルダー…」
「OK。とりあえず僕はギルダーに仲間になってほしい。そして彼女達を僕と護るんだよ」
ギルダーは答えなかった。
耳にタコが出来るほど聞いて呆れたのか、答える気力が無くなったのか…それはわからないが。
「彼女達だけじゃない。かつての君の仲間も護れば良い」
「………」
「生きて、やりたい事があるのなら…僕らみたいに殺しなんかせずに生きてみると良い」
「…………おそらくあの魔女は強いぞ…抗う気か」
「仲間を募ってからね。その時にはいいリーダー格とかも現れて、団結するんじゃない?」
「俺を殺しに来たやつが、お前らにも襲い掛かってくるかもしれないぞ」
「大丈夫、君と僕の実力でちょちょいのちょい」
同じような調子で答え続けるセージを見て、ギルダーには奇妙な感情が生まれた。
―――俺が必死になって、したいことをする為に人を殺めてきた間、
こいつはずっとあの仲間達を護っている……。もう阿呆らしい、俺はもう決断も覚悟もしない方が良いのか。
それで悲劇が生まれるのなら…もういい、自分のために孤独に戦うのは疲れた……。
「………もういい。もう自分が阿呆らしく思えてきた…それにもう俺が何をしていけば良いのか判らない」
そう言った上で、ギルダーはこう続けた。
「あの2人に…俺が殺しをした事を直接教える。
ピピンとやらがあいつらにとって大切だったのなら、俺が言うべきだ。
それから先は、もう俺が何をしたいのかさえ見当がつかない……。
2人に言った後に仇として殺されるかもしれない、あっさりと許されるかもしれない…。
まぁ、もしその後に俺が生きていたら……とりあえず、お前と一緒に行動してみることにしよう。
何がしたいのか、何をすれば良いのか判らなければ……それが判るのを生きて待とう。
だが俺が殺した奴の仲間が俺の命を奪いに来たら、静かに奪われることにする」
そういうと、ギルダーは立ち上がった。
扉を静かに開けて階段を見るようにして座った。
「……階段の見張りは俺がする。あいつらはお前の役目だ、そうだろう?」
「………ストレスに押しつぶされて終わると思ったけど…上出来だね。
たださ、死にたがり願望は止めなよね。とりあえず僕がなんとか説得するしさ」
「………そうか」
ギルダーは、生きて何をするかを探そうという。
この先もし彼に仇討ちを望むものが出たら…その時は一応ギルダーは護っておこう。
だが、その先なんとかして殺されないような道を取ってほしい。
セージは、そう思った。
セージは俺に新たな道を指し示そうとしている。
穢れた俺に、殺人者にそんな事を言い始める。
酔狂だと思った。なんで俺みたいな人間にそこまでするのか…。
ギルダーは、そう思った。
夜は、長い。
【セージ 所持品:ハリセン・ファイアビュート・ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×2・ミスリルボウ
現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋
第一行動方針:見張り 基本行動方針:タバサの家族を探す】
【タバサ 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑・悟りの書
現在位置:同上
第一行動方針:睡眠 基本行動方針:同上】
【ビアンカ 所持品:なし
現在位置:同上
第一行動方針:睡眠 基本行動方針:不明】
【ギルダー(MP消費) 所持品:なし
現在位置:同上
第一行動方針:見張り 第二行動方針:ビアンカとタバサに全てを説明する
基本行動方針:セージと行動し、存在意義を探す・自分が殺した人の仲間が敵討ちに来たら、殺される】
気付くとヘンリーの手は再びアーヴァインの胸倉を掴み上げていた。
「やめろっ、さっきも言ったろう!こいつを殺したところで今更何が…」
ついさっきのものとは違う明確な殺気。
それに気付いたソロはあわてて彼とアーヴァインとの間に割って入り、彼を抱きかかえるようにして動きを封じた。
「ハァ…ハァ…」
聞こえるのは荒い息遣い、それと海が近いせいか微かに響いている波の音だけ。
それ以外は風の無い静かな夜だった。焚き火もいつの間にか消えてしまっていた。
「いや、変わるぜソロ」
そう言って彼は地面に突き放すようにしてアーヴァインから手を離した。
まるでカエルのように受身の一つもせず地面に転がり込むアーヴァイン、その顔には相変わらず冷たい笑みを浮かべている。
「なぜならな、こいつはもうどうしようもないくらい汚れちまったんだよ、兄貴のようにな!」
「そんなことはまだ分からないだろう!可能性はゼロじゃないんだ」
「今更こいつが周りの人間の言う通り『はいわかりました』なんて奇麗事をし始めたとしてもこいつだけは信用できない」
―あいつはそう言った。
「こいつは絶対にいつか裏切る、理屈とかそういう問題じゃない。分かるんだ、なんとなく」
―そう言い切った。
『そうか。もうどうしようもないのか、こいつは』
可能性はゼロではない、と誰かが言った。しかしそれは限りなくゼロに近い。
意識とは別のところでアーヴァインの中の「誰か」が納得した。
『じゃあいいや。ゲームとか逢いたい人とか仲間とか、もうどうでも。好きにしなよ』
「だから、殺す。更なる不幸が生まれる前に」
「そんな!」思わず大声を出すエリア。
「落ち着け!ヘンリー」必死で止めに掛かるソロ。
しかし次の瞬間、武器関係のグッズを満載したソロのザックを手にしたのは怒りに我を失ったヘンリーではなかった。
誰も彼の事を見ていなかった、
そして誰の言葉も彼には届かなかった。なぜならそれらはすでに自分の中の誰かと交わした内容の反復にすぎないから。
今だけではない、思えばずっとそうだった。
独りだった。物心ついたときから。
昔はそれがさみしかった、でもいつからかそれを自ら望むようになった。
(ボクハモウコワイモノハナイヨ)
ザックの中からボウガンを取り出し引金を三回引く――また辺りは静かになった、さっきよりもずっと。
彼の足元には喉から鉄棒が生えた死体が三つ。
前の彼の性格を形づくっていたのは人一倍強い自制心―言い換えれば人一倍強い自分の中の誰か―であった。
しかしその人物はもう影をひそめた、人間らしい感情は寝ていた時に手離してしまった。
彼を止めるものはもう無い。
「今ので起きたヤツいるかな」
辺りを見渡すが聞こえるのは波の音だけ。
鬱陶しい荒い息を吐き出しながら意味の無い言い争いをする奴等もいない。
「良かった…」
そう言って溜め息をついた後、神経を集中した。
G.Fディアボロスの能力の一つ、エンカウントなしが発動する。
気配を完全に絶つことができ、モンスター達は獲物の存在に気付かなくなる。
人間は気配よりも視界で相手を認識するために効果は薄い。
しかし今この場に目を開けている者はいるだろうか、眠っている彼等にとって
アーヴァインの存在は今自分達を支配する闇そのものだった。
「バイバイ、みんな」
もう一度引金を三回引く。手許を狂わせる外的要因も内的要因もなかった。
ピサロを除いた三人の喉を正確に鋼の矢が打ち抜く。闇が完全に、そして永遠に三人を支配した。
「ピサロ、いつか必ず殺しにいくからね」
そう言って彼は全員の荷物から役に立ちそうなものを選ぶと、辺りの闇に溶けるようにしてその場を後にした。
行くあても無く進んだ彼は見晴らしのいい砂浜に出た。
ピサロはあんな矢ごときで死ぬはずも無い、それどころか剣で衝いても死なないだろう。それは自分が一番よく分かっている。
「考えなくっちゃな…、アイツをどうするか」
ふと夜空に目を移した、澄み切った空に輝く星達と優しい光を放つ月。あそこではこんなきれいな夜空は見れないと彼は思った、
さっきと同じ波の音だけが一層大きく響いている。
「僕はもう怖いものなんて無いよ」
小さな声でそう呟いた。殺す、誰の為でもなく自分の為に。心にそう強く誓った。
瞳に絶望という名の光と明確な意思を湛えたスナイパーの姿がそこにあった。
【ピサロ(HP3/4程度、MP消費、睡眠中) 所持品:魔石バハムート 黒のローブ 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【現在位置:レーベ北西の茂み、海岸付近】
【アーヴァイン(HP1/3程度) 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) スパス エクスカリバー 天の村雲 キラーボウ
基本行動方針:皆殺し、ピサロを倒す方法を考える】
【現在位置:レーべ北西の海岸からどこかへ移動】
【ビビ、ターニア、レナ、ヘンリー、エリア、ソロ 死亡】
350 :
作者:05/01/06 18:38:38 ID:DSeX1o2w
一人と一体は、数時間前地下牢にいた男女と、ほとんど同じ行動をしていた。
台所で、そしてこの階段前の廊下で、このゲームの被害者を目撃したのだ。
もう、物言わぬ被害者を。
彼ら…リュカとケット・シーの行動と、彼ら…キーファとリノアが辿った軌跡との違いといえば、
被害者の墓を作るのではなく暴いたことと、この廊下で尻尾の生えた若者に会わなかったこと位だ。
リュカ達が、わざわざ作られた墓を暴いたのは、探し人がいるから。
丁寧に埋葬された状態では、それが誰なのかはわからない。
暴いた墓の主は、探し人ではなかったけれど。
「昔、墓を荒らした魔物を退治したことがあったんだ」
リュカはそんなことを漏らしていた。
その行為は気持ちがいいものではない。けれど墓の主のほうは、そんなことではすまされないだろう。
確認を終え、墓を元の状態に戻した後、そんなことで墓荒らしの罪が消えるわけではないけれど、
とにかく放置するわけにもいかずに元に戻した後、ケットー・シーは言った。
「悪いことですよ。けど、必要なことや。なんもかんも理想通りにはいかんのや。人も、会社も…」
二箇所目の墓を直し終えて、彼らは今後どうするかを決めなければならなくなった。
「この建物には俺達以外の何者かがいる。少なくともいたはずだ」
「殺した人と、墓を作った人やな」
「うん。そこで、少しこの建物を調べようと思う。二手に分かれて」
一瞬、ケット・シーの顔が強張った。
「分かれな、あきまへんか?」
墓を作るような、それなりの道徳観を持った人物ならともかく、殺人者のほうもまだこの建物の中にいるかもしれない。
「一階だけだよ。一時間たったらこの階段のところに戻ってくるんだ。ね、大丈夫だから」
リュカのおだては根拠がなかったが、ケット・シーは結局折れてしまった。
別にケット・シーの意思が薄弱なのではなく、どうも逆らえないという感じを起こさせてしまう。
しかも、それは悪い感情でないのだから、むしろたちが悪いと、ケット・シーは思った。
そして、一時間後、階段前廊下。
彼らの運は、いいにはいいなりに働き、悪いには悪いなりに働いた。
その頃殺人者たるハインは城の外に出ていたため、ケット・シーの杞憂は外れてくれた。
けれど一時間、二手に分かれてまで必死になって探したのに、現在この城の中にいるキーファ達と出会わなかったのだ。
キーファ達もリュカ達の存在を気づいていないのだから、相当運が悪いといっていい。
ちなみに、外の戦闘音はこの時点ではまだ城の中まで伝わっていない。
「収穫ゼロか」
「もう誰もいへんのやないですか?」
わかったことは、ここが結構広い城であること。外には城下町が広がっていること。
しかし日が沈んでだいぶたったため、肉眼で様子を確認するには困難があるということ。
「とりあえず、二階も調べてみる?」
「はぁ。けど、次は一緒に探しましょよ」
「うん」
彼らが二階に上がったのは、丁度ハイン戦にクラウドらの援護が来、そしてバッツ、ローグの二人が城下を出た頃だった。
階段の先は王室。広いが見晴らしがいい。パッと見、誰かがいるようには思えなかった。
「ココもハズレか。…ん?」
歩きながら辺りを見渡していたリュカの足に、何かが当たった。
拾ってみると、それは自分の持ち物によく似ている。
「ねえケット・シー、これも銃?」
「え、ああ、そうです。どうしたんです、それ?」
「ここで拾ったんだ。へぇ、これも銃かぁ」
「使い方はほとんど同じです。けど、デスペナルティより命中率があるんや。その分破壊力は落ちますけど」
引き金には十分注意して、リュカは興味津々にスナイパーCRをながめ、そしてそれを懐にしまった。
そんな時だ。光と音が、窓から襲ってきたのは。
土埃が、晴れた。
その人たちは、赤い血を流していた。
「お姉ちゃん、お兄ちゃん!?」
レックスはサイファーに走り寄る。真一文字に切り裂かれた、ひどい傷だ。ベホマを唱えているのに傷がふさがらない。
三度目を唱え終わったとき、ようやくサイファーの意識は回復した。
「大丈夫?」
「ああ、どうってことねぇ。くっ、不意打ち喰らって餓鬼に助けられるなんざ…ッグ」
意識が戻ったことに安堵のため息をついたレックスは、魔法を唱え続けながら、視線を横にスライドさせた。
そこには、倒れている女の人とその人を抱きしめる男の人がいる。
「…お姉ちゃんは?」
「……ない、……ないんだ」
パウロは、何かを言っている。レックスにはそれが聞き取れない。
けれど、パウロが面を上げたとき、その頬に伝っているのが涙だと、闇夜の中でもはっきりと認識してしまった。
「効かない、効かないんだ。ベホマも、ザオリクも…」
彼はそう言った。
レックスは呪文を唱えるのを止めた。
「くそ、くっそおおおーーーー!!!」
音としては、先程のサンダガに比べるまでもないが、思いのこもったその叫びは闇夜を振るわせた。
レックスは駆ける。
「レックス!!」
「止めろ、単独行動はまずい!!!」
テリーが、クラウドが止めようが、止まるはずがない。
レックスは勇者である。そうあるように育てられた。人々の希望を背負い、悪を討つ。そうしなければならない。
そして、金色の髪を持つ勇者の少年は、闇に飲まれた。
光も、音も、今はもう去り、また闇が夜を支配しだした。
窓により、こちらの姿をさらさぬようリュカ達は城下に目を凝らす。
光が大きかった所為か、闇はいっそう増しているように感じられた。
「自然の、雷じゃないね」
「サンダー系の魔法や。誰か、戦っとる」
ケット・シーはそういうが、リュカの世界では、雷の魔法は、勇者とごく一部の魔物しか使えない魔法である。
そして勇者とは、彼の息子。
目に映るのは闇ばかり。
けれど、もしあの雷がレックスのものだったらと考えると、何か手がかりでもと必死にならざるを得ない。
そして、掴んだ手がかりは、目からではなく耳からであった。
「声?」
リュカの左手はケット・シーの口元に、右手は耳にそれぞれ伸びた。
闇を震わす微かな、けれど確かな声。
「レックス」
音が消え、リュカがそう呟くと、彼はすでに次の行動に出ていた。
「あの声が、レックスさんなんですか……ってええーーー、何やっとるんやーーーリュカさーーん!!!??」
リュカは窓の淵に手をかけ、今にも飛び降りようと身を乗り出している。
「行ってくる。ケット・シーは隠れてて」
それだけ言うと、リュカは勢いよく窓を蹴り、夜の闇にはばたく。
「せ、せめて階段使いなはれーーー!!!!」
突然のことについ突っ込むべき箇所を見誤ったケット・シーだが、あわてて窓から身を乗り出して下を見、
傷一つなく地面に着地したのか元気よく手を振っているリュカを確認すると、どっと力が抜けた。
(あ、あかん。あの人、多分えらい強いと思うし、銃の腕もそこそこやけど、どっかずれとる。
絶対、家族のためならえらい無茶するはずや。ほおっておけんやろー、もう)
動くのは危険だが、ここでリュカがやられでもしたら、今後がさらに危険になる。
そういう利己的な計算も無きにしも非ずだが、むしろ説明しがたい、保護欲のようなものを掻き立てられる。
部長が星を守らなければならないと、そう思ったときと、もしかしたら同じ感覚なのかもしれない。
【リュカ 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ スナイパーCR
第一行動方針:レックスを探す 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【現在位置:アリアハン城外】
【ケット・シー 所持品:正宗 天使のレオタード
第一行動方針:リュカのもとに行く 基本行動方針:リュカを守る】
【現在位置:アリアハン城二階、王室】
【レックス(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣 オーガシールド
第一行動方針:襲撃者(セフィロス)を倒す 第二行動方針:家族を探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【現在位置:アリアハン城下町、南の入り口付近から城方向へ】
【サイファー(瀕死) 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能)
第一行動方針:不明 第二行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【クラウド 所持品:おしゃれなスーツ アルテマウェポン 黒マテリア(メテオ)
第一行動方針:不明 基本行動方針:仲間を見つけ、守る 最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】
【パウロ 所持品:破壊の剣(使う気0)
第一行動方針:不明 第二行動方針:ロランを探す】
【ロザリー 所持品:不明
第一行動方針:不明 第二行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ 行動方針:不明
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ
第一行動方針:不明 第二行動方針:わたぼうを探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【現在位置:アリアハン城下町、南の入り口】
そして、一時間後、階段前廊下。
彼らの運は、いいにはいいなりに働き、悪いには悪いなりに働いた。
その頃殺人者たるハインは城の外に出ていたため、ケット・シーの杞憂は外れてくれた。
けれど一時間、二手に分かれてまで必死になって探したのに、現在この城の中にいるキーファ達と出会わなかったのだ。
キーファ達もリュカ達の存在を気づいていないのだから、相当運が悪いといっていい。
ちなみに、外の戦闘音はこの時点ではまだ城の中まで伝わっていない。
「収穫ゼロか」
「もう誰もいへんのやないですか?」
わかったことは、ここが結構広い城であること。外には城下町が広がっていること。
しかし日が沈んでだいぶたったため、肉眼で様子を確認するには困難があるということ。
「とりあえず、二階も調べてみる?」
「はぁ。けど、次は一緒に探しましょよ」
「うん」
彼らが二階に上がったのは、丁度ハイン戦にクラウドらの援護が来、そしてバッツ、ローグの二人が城下を出た頃だった。
階段の先は王室。広いが見晴らしがいい。パッと見、誰かがいるようには思えなかった。
「ココもハズレか。…ん?」
歩きながら辺りを見渡していたリュカの足に、何かが当たった。
拾ってみると、それは自分の持ち物によく似ているものが、壊れた残骸のように見えた。
「ねえケット・シー、これも銃?」
「え、ああ、そうです。ひどいな、つぶされてるやん」
「ここで拾ったんだ。へぇ、これも銃かぁ」
「壊れてなかったら使えるんに。ここで、戦闘でもあったんやろか?」
残骸とはいえ、銃に興味を持ち出しているリュカは興味津々にながめ、そしてそれを懐にしまった。
そんな時だ。光と音が、窓から襲ってきたのは。
【リュカ 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ スナイパーCRの残骸
第一行動方針:レックスを探す 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【現在位置:アリアハン城外】
【ケット・シー 所持品:正宗 天使のレオタード
第一行動方針:リュカのもとに行く 基本行動方針:リュカを守る】
【現在位置:アリアハン城二階、王室】
【レックス(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣 オーガシールド
第一行動方針:襲撃者(セフィロス)を倒す 第二行動方針:家族を探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【現在位置:アリアハン城下町、南の入り口付近から城方向へ】
【サイファー(瀕死) 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能)
第一行動方針:不明 第二行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【クラウド 所持品:おしゃれなスーツ アルテマウェポン 黒マテリア(メテオ)
第一行動方針:不明 基本行動方針:仲間を見つけ、守る 最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】
【パウロ 所持品:破壊の剣(使う気0)
第一行動方針:不明 第二行動方針:ロランを探す】
【ロザリー 所持品:不明
第一行動方針:不明 第二行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ 行動方針:不明
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ
第一行動方針:不明 第二行動方針:わたぼうを探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【現在位置:アリアハン城下町、南の入り口】
一
テリーがレックスのあとを追いかけようとするのを、クラウドが止めた。
「何するんだよ!」
「死にたいのか!今、ばらばらになったら、ここにいるみんな、どうなるかわからないぞ!」
「じゃあ…ほっとくのかよ!レックスを…!」
「今はこうするしかない!」
「……」
テリーは黙った。そして、クラウドの背中に手をあてて、しがみついた。
「…お姉ちゃん、ほんとにもう…?」
その答えはわかりきっている。
いったいどこに、路上で、息もせず居眠りをする女がいよう?
クラウドの肩が震えるのをみながら、テリーは、悲しげに視線を落として、闇にむかって叫んだ。
「レックスーーー!戻って来るんだ…はやく、戻って…!」
ややあって、静かに、しかし力強く、クラウドは武器を構えた。
いる…間違いなく、強力な何者かが、この近くに潜んでいるのだ。
レックスは今、姿の見えない敵を探しているのだろう。
あちこちから、何かを壊すような音が聞こえる。
助けに行きたいが、この場を離れることはできない。
「おい」
サイファーがふいに、クラウドに話しかけた。
「…あまり喋らない方がいい」
「ふん、問題ねえ。それよりも、あの、ちびっこいトンベリの野郎が、さっきからずっと同じところをみてるぜ」
「…?」
「モンスターってのは、俺たち人間より、こういうことは得意だろうな」
「なるほど…」
「それとな…これはあんたじゃなくて、おまえだ」
サイファーが、呆然と佇立しているパウロに向かっていった。
パウロはうつろな目で、サイファーを見た。
「なに、ぼーっとしてんだよ」
サイファーはそういうと、せき込んで、よろよろと剣を持った。
二
セフィロスは、前方の一匹のモンスターを忌々しげに覗き見た。
どうも、気づかれているらしい。やはりモンスターというのは、人間に比べ格段に察しがよい。
あの少年はあさっての方向で暴れている。勝手に体力を消耗してくれればいい。
クジャは今、別の場にいた。
人数が多いのを知って、少しずつ減らしていこうと提案すると、クジャは了解して、その方が有利だからと別行動になったのだ。
よって、ここにいるのは一人彼のみである。
まともに戦えるのは、せいぜい三人か四人。それだけならば、一人でもなんとかなろうか。
しかし、セフィロスが今突入しないのはわけがある。
今、クラウドの顔には表情がない。
それは、激しい怒りの裏返しでもある。
下手につっこめば、使ってくるかもしれない…かつて、自分にトドメをさしたあの技を。
そのうえ、クラウドのもつ武器は、持ち主の生命力に呼応するあの究極の武器である。
さらに、クラウドはさほどの傷を負っていない。
もし、あの技をくらえば、とても無事ではいられないだろう。
そういった打算から、セフィロスは慎重に期を窺った。
そしてこのときに初めて、今この場にいないクジャのことを思った。
あのナルシストな男の、独りよがりな語りを道中ずっと聞いており、正直なところうんざりしていたのだが、
戦闘に関しては、恐らく自分と同等の力をもっている数少ない者であり、ある意味で信用のできる男である。
セフィロスは改めて、この状況をみた。
なるほど、クジャの動きを待つのもよい。だが、それは躊躇われた。
「上から…いくか」
セフィロスはみつからぬよう、闇に紛れ、台を伝い屋根の上へと飛んだ。
「なんだ?あいつは…」
城から、一人の男が飛び出ている。
ちょうどいい、あの男の叫び声をもって、再び混乱を生じさせるとしよう。
だが、それはセフィロス自身も予想できなかったことにより、遮られた。
三
大きな雷鳴を、クジャは聞いた。
「ふふふ…とりあえず、うまくいったみたいだね」
クジャは城下の混乱を愉快そうにみると、歩きながら、誰に向かってということもなく、語りだした。
「皮肉なものだねぇ…みているかい?ジタン。僕は今、この大地に生をうけてたっているよ…。
ふふ…これがいったい何を意味するのか、僕にもわからない。
ただ、今の僕にあるのは、破滅への欲求、それだけさ。
ジタン、このゲームに君がいるのは知っているんだよ…その仲間もね。
是非もう一度、君に会いたいよ…そして、この手で息の根を止めるんだ。
あはは、それはきっと、とても愉快だろうね…。
君の悲鳴を考えただけでぞくぞくするよ…ふふふ…それだけさ、生きる欲求なんて、いまさら僕にあるはずもないんだから。
目の前にいる敵を蹴散らしていくだけ…ごみを始末するようにね」
クジャの視界に、サイファーにベホマをかけるレックスの姿が見える。
「ああ、死に損ないが、汚い地面には這い蹲って、それでもまだ生きようとしている!
生への執着の、なんと醜いことだろう!…ふふ、それは、僕には言えた義理ではないかもしれないね。
でも、だからこそわかる、彼らの絶望が…癒しの光も決して彼には届かないだろう。
届く前に、この僕がその明かりを遮ってしまうんだから!
無理矢理に立ち上がったところで、しょせんは風前の灯火、僕がふっと息を吹くだけで消え去ってしまう、脆い存在なのさ…」
クジャはふと、視線を落とした。そして、今までとは少し調子の違う声で、語り始めた。
「セフィロスは癪に障る男だけれど、きっと僕と同類なんだろうね。
いや、わかるさ…彼は僕と同じなんだ。行き場を失った、絶望そのもの。
…でも、戦闘の好みが僕とはだいぶ違うみたいだね。
少しずつ、じわじわと殺していく…それも気分のいい最高のアトラクションの一つであるのに違いはないさ。
でも、あの女を一瞬で切り捨ててしまうなんて…。なぜもっといたぶらないんだろう?
あの男の、この光景、この醜さ、見ているだけで心が躍るようじゃないか。
僕は今、華やかな血の惨劇がみたいんだ…慌て惑い、恐怖に絶望の色で顔を染めた、
虫けらのようなやつらが、何の存在意義も見いだせず、ただただ滅び行く様を」
クジャは歩みをとめて、空を見た。レックスの声が聞こえる。
「くく…正義の戦士様はお怒りのようだ…それにしても、あの声の醜いことだよ。
…さあ、頃合いかな。これには、セフィロスも驚くだろうね。彼には悪いけれど、今の僕はこんなまどろっこしいことはしたくないんだ。
僕はすぐに、今すぐに聞きたいんだ、彼らの悲鳴を…きっと醜い声を出すんだろう。醜悪な姿を晒して」
「…そういえば、彼は、あのとんがり頭の彼のことを、彼は随分警視していたね。
ことによると、僕とジタンのような間柄なのかもしれない。
ふふ、だとしたら、彼が慎重になるのも仕方ないのかもね。
でも、このままじゃらちがあかないよ。…ふふ、近づいてきたよ、おばかなネズミが一匹、自分から舞い込んできたよ…。
第一幕、破滅への序章の始まりだ…!」
四
「くそおおおおおお!!」
レックスは叫んだ。力の限り、叫んだ。
そして、視界にはいるものすべてを壊し、標的を探す。
「どこだ!?どこにいる!隠れてないででてこい!」
ルビスの剣を振りかざして、叫ぶ。
テリーの警告も、耳に届かない。
レックスはひたすら突き進んだ。
そして、アリアハンのある一角で、見た。
光を。
光?
レックスは何だろうと思った。
だが、その考えは次の瞬間、止まった。
リュカは聞いた。
大地の劈くような響きを。
その中に微かな、掻き消されそうな叫び声を。
リュカは見た。
ライフストリームのような、大きな光を。
その中にいる、息子を。
光は、やがて炎になって、また、新しい光が次々と生まれ、それが爆発した。
爆発の連鎖は、向こう側から断続的に起こり、家という家は音をたてて崩れ落ち、ついには自分の後ろでも、爆発を始めた。
城が激しい爆撃を受けるのを、リュカは惚けてみていた。
次の瞬間、我に返って叫んだ。息子の名を、炎に向かって。
【リュカ 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ スナイパーCRの残骸
第一行動方針:レックスを探す 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【現在位置:アリアハン城外】
【レックス(フレアスター直撃) 所持品:ルビスの剣 オーガシールド
第一行動方針:襲撃者(セフィロス)を倒す 第二行動方針:家族を探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【現在位置:アリアハン城の手前】
【サイファー(瀕死) 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能)
第一行動方針:事態処理 第二行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【クラウド 所持品:おしゃれなスーツ アルテマウェポン 黒マテリア(メテオ)
第一行動方針:襲撃者に備える 基本行動方針:仲間を見つけ、守る 最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】
【パウロ 所持品:破壊の剣(使う気0)
第一行動方針:? 第二行動方針:ロランを探す】
【ロザリー 所持品:不明
第一行動方針:不明 第二行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ 行動方針:襲撃者に備える
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ
第一行動方針:不明 第二行動方針:わたぼうを探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【現在位置:アリアハン城下町、南の入り口】
【セフィロス 所持品:村正
第一行動方針:城下町に居る参加者を皆殺しに 最終行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘】
【現在位置:アリアハン中央あたり】
【クジャ 所持品:ブラスターガン、毒針弾、神経弾、
第一行動方針:皆殺し 最終行動方針:最後まで生き残る】
【現在位置:アリアハン城近く】
クジャ暴走によりアリアハン半壊中。
城にも直撃。崩れはしないが、中にいる人も気づかないはずはない。
アリアハン周辺に聞こえる可能性はあり。
荒れ狂う炎と閃光に包まれ、町は次々と破壊されていく。
暴風が吹き荒れ、あちこちで爆発が起こり、あたりを瓦礫が飛び交い、クラウド達を襲う。そんな中、
「みなさん、早くこちらへ!」
武器防具屋の中へ、ロザリーがみなを呼び寄せた。
建物の中は淡く、赤く光っており、中央に小さな魔方陣が組まれている。
その中央には、破壊の鏡、両脇には2つのルビーが安置され、そばには、ぶ厚い本が置かれていた。その背表紙には…
『素人から熟練者まで、これ一冊ですべてが分かる!決定版!世界結界全集』
と書かれている。
「これは…?」
「あの怪物との戦いに有利になるように、あと、休めるようにと作った簡易結界です。簡易といっても…」
ロザリーは破壊の鏡と、二つのルビー…支給品である守りのルビーと、ルビーの指輪…つまり力の指輪、
…余談だが、アンデッドとはいえ、魔道師のハインが剣で二人の人間を串刺しにし、二人の人間に対し優勢に戦えたのは
この指輪のおかげであるところも大きいのだが、
その二つを指さす。
「この二つのルビーの効果を中央の鏡が増幅させ、さらに魔方陣の効果を高めるようにはたらいています。
さらにこちらのルビーには守りの効果が、こちらのルビーは力の上昇の効果が、さらにルビーの光に魔法を弱める効果があります。
ですから、それなりの効果はあるはず…です」
「あるはず…かよ」
サイファーが突っ込む。
「うん…きっと効果はあるよ。結構大きな魔力を感じるから…」
パウロはフォローを入れるが、先ほどまでと同様、その声はどこか暗く、重い。
「ロザリーお姉ちゃん、骸骨とみんなが戦ってるときからずっと、これを描いていたの?」
「ええ、私もお役に立てないか、と思って…でも初めてだから描くのに手間取って…ごめんなさい、もう少し早く完成させていれば…」
「あんたが気に病むことはない。斬り方からして、襲撃者はおそらくセフィロスという男だ。
俺があいつらのことをすぐに話すべきだった。…この結界、どれくらい持つんだ?」
「…」
ロザリーは世界結界全集をめくる。代わりにパウロが答える。
「媒介が強力みたいだから、結構耐えられると思う。でもそんなこと聞いてどうするの?まさか…」
「ああ、元凶を取り除く。このままここでじっとしていても変わらないからな」
「だったら俺も…」「ぼ、僕も…」
サイファーが立ち上がろうとする、パウロが勇気を持って参戦しようとする、が、
「あんたたちはここにいろ。怪我人は足手まといになりかねない。それに、このトンベリ一匹で3人も守れないだろう。俺一人でいい」
クラウドが扉に手をかけようとしたとき、ロザリーがみなに声をかける。
「まだ、何かあるのか?」
「はい、町の外に救援を要請しましょうか?」
「できるのか?」
「呼びかけることはできます。ただ、誰も来ないかもしれませんし、危険な人物が来ることも否定できません」
「今より状況が悪くなることはないだろう。頼む。だが、あいつとの戦いは俺のけじめでもあるんだ。それに、まだレックスが外にいる」
「分かりました。どうかお気を付けて…」
ロザリーは窓のそばで祈り始めた。
(みなさん、私の声が聞こえますか…)
【サイファー(重傷) 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能)
現行動方針:休む 基本行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【パウロ(精神不安定) 所持品:破壊の剣(使う気0)、シャナクの巻物、樫の杖
現行動方針:武器屋内の人間を守る、結界の管理 第二行動方針:ロランを探す】
【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー(ルビーの指輪)、破壊の鏡、もう一つ不明
現行動方針:祈り、呼びかける 第二行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ 行動方針:襲撃者に備える
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ
現行動方針:テリー達を守る 第二行動方針:わたぼうを探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【クラウド 所持品:おしゃれなスーツ アルテマウェポン 黒マテリア(メテオ) 、氷の刃
第一行動方針:レックスを探す 第二行動方針:セフィロスを追い払う 基本行動方針:仲間を見つけ、守る 最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】
以上、攻撃力、防御力、魔法防御上昇
【現在位置:アリアハン城下町、武器屋】
※武器屋に結界が張られています。媒介は鏡とルビーとなっています?ハワードの最初のやつみたいなものです。
※ロザリーの祈りは、イムルのみたいなやつ。眠っているキャラに届くかもしれません。
※なお、セリスの遺体も武器屋内部に。
「そろそろ大丈夫か…。デッシュ、後ろはどうだ?」
ザックを肩にかけ、ウインチェスターを手にしたエドガーがデッシュを振り返り、言った。
デッシュはかぶりを振った。注意深く、今しがた歩いてきた後方の道のりを睨み付ける。
「……大丈夫みたいだな。追ってくる気配はねぇ」
「そうか…」
エドガーはデッシュの返事に軽くうなずき、地図を広げた。
先程、マシンガンの襲撃を受けた場所から反対の方角へと逃げてきたが、
いつの間にか森のかなり奥地に入り込んでしまったようだ。このまま更に北に行くと、
大きな川 ── すなわち見通しの良くなる川岸だろう ── にたどり着くらしかった。
(広いところには出ないほうがいいな……)
そう考え、決めた進路を頭にたたきこむと、地図を折りたたんだ。
エドガーが考えをよぎらせていた、その時…急に嫌な感じがした。敵が襲い掛かってくる直前のような。
目の前の木陰から!?
前方にウィンチェスターを向けるのとほぼ同時に木陰から人影が飛び出してきた。
その人影は全く無駄のない動きでエドガーの間合いに入り、首筋に緑色の剣を突きつける。
エドガーは襲撃者の方を伺うと、凍り付くような鋭い視線とぶつかる。黒い髪のまだ若い青年だった。
「…動くな!」
黒髪の青年が警告する。
「キミも死ぬぞ?」
エドガーもウインチェスターを青年の心の臓にゼロ距離でポイントしている。
まさに一触即発。
お互い少しでも手元を動かせば相手を殺害できる状態にある。
「エドガー!!」
「…大丈夫だ」
背後でデッシュが叫ぶがエドガーは落ち着き払った声で答える。
(この状態なら最悪、相打ちに持ち込むことができる。そうなれば少なくともデッシュは助かる…)
その考えこそがエドガーに心理的優勢をもたらせていた。パニックに陥ることなく。
その状態でどれほど硬直していただろうか。
時間にして僅か数秒だったのだが、エドガーには半刻ほどにも感じた。
デッシュの方は一触即発の雰囲気に呑まれ、とてもじゃないが動ける状態ではなかった。
しかし事態は動き出す。
「う…う、動くな!」
デッシュの背後の木陰から、エドガーにとってはとても見慣れた武器を構えた金髪の青年と、
ピンク色の髪の女性が現れたのだ。
(…やれやれ、こちらは囮だったか)
金髪の青年が持つオートボウガンはエドガーとデッシュの背中をポイントしており、
そちらに武器を向ける余裕がないエドガーはただ唇を噛むことしか出来なかった。
「武器を捨てるんだ」
「…分かった」
黒髪の青年の言葉に対し、エドガーは実にあっさりとウインチェスターを手放し両手をあげる。
首筋に剣を突きつけたまま姿勢で青年はエドガーの顔と地面に落ちたウインチェスターを交互に見ていたが、
やがて首筋から剣を放し、鞘に収めた。
この行動に驚いたのがオートボウガンを構えた金髪の青年だった。
「お、おいザックス!何してんだ!?」
黒髪の青年――ザックスはエドガーが手放したウインチェスターを拾い上げ、金髪の青年に掲げる。
「まあ落ち着けランド。少なくともさっき俺たちを襲った奴はこの人達じゃねえよ。確かに銃をもってたけど
こいつはショットガンだ。さっきのマシンガンの野郎とは違う」
「けどよ!まだこいつらがゲームに乗ってないと断定できた訳じゃ…」
もっともな反論を返す、ランドと呼ばれた金髪の青年の言葉を遮り、エドガーが二人の会話に割り込む。
「マシンガン?…そうか、キミ達も奴に襲われたのか」
この言葉にいち早く反応したのがザックスだった。
「キミ達も、って…あんた達もあのマシンガンの野郎に?」
「そういうことになるかな。そこのデッシュとこのゲームについて話し合っていたら背後から突然な。
我ながらよく無傷で逃げ切ったと思うが、相手が予想以上に鈍かったせいで助かったというか」
あの時の状況を思い出しながら、苦虫を噛み潰したような表情して語るエドガーはさらに言葉を紡ぐ。
「我々はゲームに乗る気は無いし、デッシュと脱出方法も考えていたのだ。
…どうだろう?キミ達も見たところゲームには乗っていないみたいだしここはお互い協力するというのは?」
「ああ、いいぜ」
ザックスのあまりの即答ぶりに逆にエドガーが驚いた。
「いいのか?」
思わずもう一度聞きなおしたエドガーの言葉にザックスはコックリと頷いた。
「ありがとう・・・」
「断る理由はないしな。こっちとしても仲間が増えるのは大歓迎だ」
ランドはまだ納得いかなげな表情をしながらもオートボウガンをおろす。
とりあえずザックスの決定には従うようだ。
その横ではシンシアが「大丈夫ですか?」と言いながら、
緊張感から開放され腰が砕けたデッシュに手を伸ばしていた。
そしてお互い簡単な自己紹介を終えるとエドガーがあることに気づく。
「ところでミス・シンシア、その手に持っているものは?」
エドガーがシンシアが持つ対人レーダーを指差す。
「…あ、これは、自分達に近づく参加者の人達に反応する道具みたいです。
どういう仕組みなのかはよく分からないですけど…」
「こいつのおかげでさっきあんた達の背後を簡単に取れたわけだけどな」
ザックスとシンシアの言葉にエドガーとデッシュは顔を見合わせた。
「エドガー、こいつは…」
「ああ…いけるかもしれんな」
エドガーとデッシュは思ってもみなかったヒントをを手に入れた。
そして森で運良く出会えたザックス達とともにゲームを壊すためにその場を後にしたのだった。
【エドガー 所持品:バスタードソード 天空の鎧 ラミアの竪琴
イエローメガホン ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる)
【デッシュ 所持品:なし
【ザックス 所持品:スネークソード 毛布
【シンシア 所持品:万能薬 対人レーダー 煙幕×2 毛布
【ランド 所持品:オートボウガン 魔法の玉 毛布
現在位置:アリアハン北部の森奥地 第一行動方針:森で夜を明かす 最終行動方針:ゲームの脱出】
「あー、あたしもあたしも!」
「やっぱりそうだったか! 衣装があまりに似てたからよ、きっとお仲間だと思ってたぜ。
で、忍術はどれぐらいマスターしてるんだ? 火遁ぐらいは使えるのか?」
「……かとん? なにそれ?」
「おいおい。忍者たるもの火遁は基本だろ。
水遁、雷迅まで扱えるようになって、ようやく忍者としては一人前! ってやつだ。
そこまで到達するのに俺も色々と壁を乗り越えてよ……へへっ……」
「あれ? ちょっとしんみりムードになってない?
もしかして触れてはならない禁断の落ちこぼれメモリーだった?」
「ば、馬鹿いってんじゃねーよ。
火遁もできないエセ忍者がそんな口を利くのは百年早いぜ!」
「な、なんだとぉー!」
「うわっ、よせ! 人の背中で暴れんな!」
「ええーっ!? 風魔手裏剣にしてはちょっと小さすぎない?
なんかマテリア穴もみあたんないし」
「まてりあ? なんだそいつは。
……いや、待てよ? たしかどっかで……なんとなく覚えがあるんだが……」
「ふっふーん。知らないならこの1st級マテリアハンターであるユフィ様が教えてしんぜよう。
マテリアとは、様々なエネルギーを秘めた球体の名称である。
炎や雷、はたまた治癒といった魔法的な力を扱えるようになるものもあれば……」
「それだ! マリアさんが持ってたバカでかい剣に付いてた玉っころの説明書!
……そういえば今頃どうしてっかな。ちゃんと待っててくれればいいんだが。
ここはひとつ、確かめてみるとするか」
「人がせっかく説明してあげてんのに、いきなり自己完結しちゃってるし。その態度はアリ?」
「杖が反応しない……移動しちまったのか?」
「ちょっと、聞いてるエッジ?」
「あ……ああ。わりぃなユフィ、聞いてなかった」
「ちょーむかつく! こんな美少女を無視するなんてさ!」
「口数が少なくなってないか」
「んー、ちょっとやんごとなき事情でグロッキー気味。克服できないってのは辛いね。
エッジこそあんまり喋らなくなったじゃん」
「……そうかもな」
「あたし、そろそろ自分で走ろうか? 命の恩人二号様に元気な姿を見せたいしさ」
「今は体力温存しとけ。目的地はすぐそこだ」
「それがこうしているだけで消耗しちゃ……っ!?
この匂い、微かだけど……もしかして……!」
「くそっ!」
――彼女は待っていた。
赤と白で彩られた細く美しい腕が浮かぶ血溜まりの中央で、頭上に輝く月を仰ぐように色を失った目を見開いて。
無論、マリアの体内から流れ出た体液は時間の経過と共に乾ききっている。
それでも二人の目には――それが真実だった。
エッジはしばし呆然とその光景を見詰めていたが、唇に触れた辛い感触を通じて我に返る。
涙があふれていた。
情けなかった。悔しかった。許せなかった。
こんな優しい人の命を奪った人間を、失わせてしまった自分を。
ユフィもエッジの背で泣いていた。
別段の面識があったわけではない。死の淵へ沈み行く際に、おぼろげながら彼女の記憶があるだけだ。
他愛もない世間話。王宮での生活。夫に対するおのろけ。
命を救われたことも勿論だが、移動中にエッジから聞かされたそれらの会話を思い出すと……それだけでたまらなかった。
無言でエッジの背から下り、よろよろと歩き――やがてバランスを失いその場にへたりこむ。
「ごめん……あたしのせいだよね……あたしのせいで……ごめっ……さい……」
冷たくなっているマリアの左手を握り締め、かすれた声を絞り出すように嗚咽する。
許してくれとは言わない。だが、ケジメだけはつけると約束するぜ……!
エッジが吼えた。力の限り、心の中で。
「……やめとけ。きっと、喜ばねぇよ」
ユフィの提案をやんわりと制し、マリアの遺体に土を被せていく。
「でも……あたし、こんなことぐらいしかしてやれないよ」
プリンセスリングを手にマリアの姿をじっと眺める。
支給品の水で顔と髪を洗い、苦労はしたが目も閉じさせた。
だが、それだけだ。
体は傷ついたままで、衣服はボロボロの状態。
感傷だとわかっていても、せめて少しでも綺麗に着飾らせて天上へ送ってやりたかった。
二度と伝える機会のなくなってしまった、お礼代わりに。
「うまく言葉に出来ないが……気持ちは届くぜ。絶対にな。
だからその指輪はユフィ、お前が持ってろ」
ユフィはしばらく俯いて動かなかったが、不意に面をあげた。
泣き腫らして真っ赤な目を決意の眦に変えて。
埋葬を終えると、エッジはどうしても移動中には切り出せなかった出来事を語った。
ユフィが意識を失っている間に行なわれた――放送のことを。
「……マリベル。おそらく、これで全部だ」
微かにユフィが震えていた。
やはり、挙げた名前の中に親しかった者が含まれていたのだろう。
それでも取り乱したりはせず、表情も変えないで押し寄せる悲しみから耐えている。
傍から見れば数時間前の俺の姿と重なるのかもしれない。
まだマリアさんと一緒に行動していた頃、空から聞こえてきた二人の名前から生じた動揺を
必死で見せまいとする、自分の姿に。
忍術だとか、そんなものは関係ない。
こいつは正真正銘の――忍ぶ者。頼りにできる一人前の仲間。
心の底からエッジはそう思うのだった。
「まずはあの剣を所持している奴を探す。
マリアさんを殺して奪い取ったのか、たまたま通りかかっただけの人間が持ち去ったのか。
それを確かめるんだ」
ユフィがこくんと頷く。
「よし、それじゃ――」
手持ちの風魔手裏剣をユフィのザックに分けながら、エッジは続けた。
「特訓が先だ。片腕でもちゃんと動けるようにな」
「あたしなら大丈夫だってば。ホラ!」
シュッシュッシュッっと、左拳が空を切る。
しかし――
「そら見ろ。それだけで態勢崩れてるじゃねぇか」
「うー、片腕がないだけでこんなに影響あるなんて……」
失った腕を偲ぶように、右肩をなでながらユフィは独りごちる。
「急がば回れ、だ。無理すんなよ」
「りょーかーい」
……リディア。
知っての通り、俺は馬鹿で不器用だ。二つのことを同時になんてやれやしねぇ。
セシルもローザも逝っちまったらしいこの世界で寂しい思いをしているだろうが、もうすこしだけ辛抱してくれ。
必ず――必ず迎えに行く。それまで待っててくれよ。
二人の忍者は歩き出す。新たな誓いと命を背負って。
【エッジ 所持品:風魔手裏剣(10) ドリル 波動の杖 フランベルジェ 三脚付大型マシンガン
第一行動方針:マリアの仇を討つ 第二行動方針:ユフィの特訓 第三行動方針:仲間を探す】
【ユフィ(傷回復/右腕喪失) 所持品:風魔手裏剣(20) プリンセスリング フォースアーマー
行動方針:同上】
【現在位置:アリアハン北の橋から西の平原】
「なんだ!?あの音は!」
今まで城下町で繰り広げられている交戦に気付くこともなく、城裏で調べ物をしていた3人、キーファ、ジタン、リノアは凄まじい爆発音と振動によりようやく外の異変に気づいた。
「城下町の方だ!!行ってみるぞ!!」
そう真っ先に告げ、ジタンが走り、それに並んでキーファとリノアが続く。
城門から外を見ようとしたその時、目の前が一閃し、それに続くように激しい爆発が次々と起き、辺りは爆発の際に生じた硝煙により包まれた。
そのせいでろくに辺りを見渡せなかったが、とんでもなく強い奴が襲撃している、ということは容易に判断できた。
煙が晴れ、うっすらと視界が良くなったその時、彼らは観てしまった。
銀髪で、異様な雰囲気を携えた男――攻略本で見た強さSの男、クジャの姿を。
「嘘だろ…あいつがやったのかよ!」
キーファはそう悪態をついた。――最悪だ。Sという強さを目前として蒼白な表情にならざるをえなかった。
だが、それ以上に驚愕の表情を浮かべた者がいた。
その当事者、ジタンは2人に何1つ言わず、飛び出していった。
「バカ!一人で行くな、やられるぞ!!」
「待って!一人でいっちゃ駄目よ!」
2人が咄嗟にそう叫んだが、一瞥することもなく走り去ってしまった。
――何故だ。
俺はアイツを助けたのが間違えたのか。
だがあの時アイツは、確かにこう言ってくれた。
ジタン、生きるんだ……、と。
その言葉には確かに偽りが無かった筈だ。
いや、それだけではない。
密かに瀕死の状態にも関わらず、仲間達の脱出の手助けもしていた。
アイツは確かに、人を殺すのも平気で行なっていたし、テラとガイアを支配しようともしていた。
でも、最後には――自分の仕出かした行為に深く後悔をもしていた。
つまり、アイツはまだ人としての心があった。
だから俺は助けた。
――こういうと、誰かを助けるのに理由がいるかい、ってアイツに言ったのが嘘になっちまうな。
それよりも、今こうしてるということはあいつは所詮口先だけの善人だったのか。
だとしたら、それに見抜けなかった俺自身も許せないが、何よりもクジャを許せない――
「あいつが行っちまったんじゃ仕方ないな…。よし、加勢しに行こう!」
先程の表情を消し気持ちを切り替え、威勢よくリノアに告げた。なんだかんだいって、好奇心が人一倍強いのが彼だ。
未知の敵と戦ってみたい、というのもあるし、僅かに開き直りもあるだろうか。だが、他にも理由があった。
(確かに相手は強いだろう、ひょっとすれば死ぬかもな。
でも、ここに居ても助かる見込みは無いだろう。ならばやれるだけやるってもんだ。
それに、あの本には俺の強さがDと表記されていた。
どうしても納得いかねぇ。だから今ここで、俺の強さがDでは無い事を証明してみせる――)
それと同時に、キーファはある重大なことに気づいた。
「そうね、行きましょう!」
リノアも迷い無く快諾したが、キーファの返答は今さっきとは打って変わってやや力の抜けた声だった。
「…すまん、今の俺には最低限の武器もないことを忘れてた…」
そう言うと、キーファは袋から攻略本を取り出した。
「本一冊じゃいくらなんでも戦えねえよ…」
「………」
確かに、もっともの話である。
そう沈黙し合う2人であったが不意に背後から何者かに声を掛けられた。
敵か、と2人は素早く警戒の体勢をとったがその姿は敵とは思えぬ姿である。
その敵とは思えぬ姿、縫い包みのような物に乗っている猫は、2人に叫んだ。
「そこのお二人さん、ボーッとしとらへんで加勢してくださいな!」
何故ケット・シーがここにいるかと言うと、先程ケット・シーはすぐさまリュカに加勢しようとするため、城下町に向かっていた。
しかし城に出てすぐに、フレアスターによる凄まじい爆風、つまりジタンが城外に出るよりも前に再びアリアハン城に飛ばされ、そして今偶然キーファ達と鉢合わせしたというわけだ。
今まで互いに人がいることに気づかなかった理由は、全ては爆発の際に生じた硝煙であった。これにより互いに姿が今になるまで確認できなかったのだ。
そんな事も露知らず猫が喋った事に2人は口を開けて驚いたが、すぐに我に返りキーファがその言葉に答えた。
「そうしようと思ったんだけど、武器がないんだ」
「何いうとんですか、ボクだってありませんよ」
もっとも、ケット・シーはデブモーグリに乗っている限り武器が無くとも戦えるのだが。
「あ…そういえばまだ私の支給品見てないわ。もしかしたら貴方に役に立つ物もあるかも」
そう言って、リノアは袋の中へと手を入れた。
入れてすぐに袋の中から、何やら硬い物の手応えがあり、それを引っ張り出した。
しかしその引っ張り出した物を見て、2人は目が点になった。
「………釘バット?」
その通り、そこにはビッシリと釘が打ち込まれたバットだった。
2人はそれを呆れがちに見ていたが、ケット・シーだけ反応が違っていた。
「おお、あんさん方運いいやなー、それ見た目はごっついですがそこらの剣より強いですよ」
その意外な言葉を聞いて釘バットに希望を持てたのかは分からないが、黙ってキーファに手渡した。
キーファはそれを黙って見詰め、
「……ハハ…まあ背に腹は変えられないよな…」
と苦笑混じりに言いながら釘バットを頂戴し、自分の袋に入れた。
事実、その武器はそこらの剣より確かに強いことを知らずに。
「えっと…他に何かあるかな…?」
再びリノアは袋の中に手を入れようとしたが、その行動は咎められた。
「ちょっと、こんなのんびりしとる場合じゃないんや、残りの支給品はあとで見とって下さい!」
そう言うとケット・シー(デブモーグリ)は強引に2人を掴んだ。
「え…お、おい!」
「きゃっ…ちょっと!」
二人の反対も聞かずに、ケット・シーは2人を掴んだまま駆けていった。
【キーファ 所持品:攻略本 釘バット(FF7)
現在位置:アリアハン城門→城外へ
第一行動方針:ジタンに加勢 第二行動方針:フィンと合流しゲーム脱出】
【リノア 所持品:不明(2つ以内、何も無い可能性もあり)
現在位置:アリアハン城門→城外へ
第一行動方針:ジタンに加勢 第二行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【ケット・シー 所持品:正宗 天使のレオタード
現在位置:アリアハン城門→城外へ
第一行動方針:リュカのもとに行く 基本行動方針:リュカを守る】
【ジタン 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面
現在位置:アリアハン城門→クジャの場所へ
第一行動方針:クジャを倒す 第二行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
381 :
修正:05/01/07 14:55:20 ID:Aul9rbk/
>>376 2行目を
俺は間違えていたのか。やはりアイツは心底悪なのか…?
に修正します。
武器防具屋を出ると、クラウドはレックスが走り去った方へと急いだ。
それにしても、先ほどの爆発の威力は凄まじい。
見渡す限りの建物は黒く焼け焦げ、ひどいものは崩れ落ちて原型すら無くしている。
さっき落ちた雷といい、この大爆発といい、どうもセフィロスの他に、誰か強力なマーダーがいるようだ。
しかもあの2人が斬られた時のセフィロスの動きからして、彼らは手を組んでいる。
だとしたら厄介な事この上ない。結界に守られているとはいえ彼らもいつまで大丈夫かわからない。
そのためにも、早くレックスを探し出して、彼らの所へ連れ戻して…
―――!!
あと数百メートルで一部半壊した城へと到達しようとした地点で、クラウドは背後に気配を感じた。
閉ざされた氷のように冷たく、研ぎ澄まされた剣のように鋭く、魔晄に浸された魔物のように邪悪なあの気配を。
立ち止まり、ゆっくりと振り向く。
思った通り、そこにはあいつが立っていた。
ご自慢の正宗よりも短い刀を手に持ち、不適な笑みでこちらを見ている。
「セフィロス」
クラウドが呟くと、彼は村雨を構え、歯を見せてにやりと笑った。
「会えて嬉しいぞ、クラウド。」
かつての英雄は、そう言って一歩彼に近づく。
「俺は全然嬉しくないがな。セフィロス」
クラウドもアルテマウェポンを構え、答えるように一歩前へ出る。
セフィロスのほかに、誰か潜んでいるようには感じられない。彼一人で現れたのは、余裕の表れだろうか。
暫くの間、そのまま2人は睨み合った。
互いに鋭い眼光で直視しあい、今にも千切れそうなほどに緊張の糸が張り詰めて行く。
冷たい夜風に煽られて木の葉が地面に落ちるのを合図に、2人は同時に斬りかかった。
ガギィィン、と甲高い金属音が響く。
「くっ…」
技量こそセフィロスが勝っているとはいえ、大剣アルテマウェポンの剣圧には流石に圧されてしまう。
彼が仰け反ったのを見計らい、クラウドが次の一撃を見舞おうとすると、セフィロスは横に大きく跳んで交わす。
チョコボに似た髪形の彼がそれに追いすがり、
再び大剣を振るうと、今度は村雨の切っ先をその刃に合わせて威力を殺した。
「な…?」
「図に乗るな」
訝るクラウドに冷たく言い放つと、セフィロスは彼の腹に満身の力を込めた蹴りを見舞った。
クラウドは数歩後ろに勢いよく飛ばされたが、空中で一回転して体制を整え、2本の足で着地する。
アルテマウェポンを片手で一回転させると、再びセフィロスめがけて突進した。
セフィロスに走り寄る最中、クラウドのアルテマウェポンが金色の輝きを発する。
セフィロスにもそれが何を意味するか判っていた。恐らく、とうの昔にリミットブレイクしていたのだろう。
「超究!武神覇斬!!」
クラウドの怒号とともに、幾つもの斬撃がセフィロスを襲う。
剣風で周囲の木は残らず切り落とされ、民家は八つ裂きに切り刻まれていく。
だが――
「それがお前の切り札か?クラウド。」
当のセフィロスは余裕を湛えた、厭な笑みを浮かべながら、次々と襲い来る斬撃を軽々とかわしている。
最後の一撃を刀で受け止め、当惑したような表情のクラウドにむかって言い放った。
「この私に、何度も同じ技が通じるとでも?」
事実、セフィロスはかつてこの超究武神覇斬でクラウドに一度葬られている。
「言った筈だ。図に乗るなと!」
村雨にてアルテマウェポンを持った手を斬りつけて弾き、クラウドの胴体めがけて容赦無く斬りつけた。
濃密なワインのように紅い血が辺りに飛散し、悲痛な叫びを上げながらクラウドが地面に崩れ落ちる。
セフィロスは冷たい眼で彼を見下ろしている。
と、彼の喘ぐような苦しそうな息が、やがてせせら笑うような、気味の悪いものに変わってきた。
見ると、片手を肩にかけたザックの中に突っ込んでいる。
「…何を隠している?」セフィロスが警戒しながら聞くと、彼は「これさ」と答え、ザックの中の手をおもむろに引き出した。
瞬間、セフィロスは目を見開いた。
クラウドの手の中で妖しい光を放っている丸い玉は…間違いない。かつて自分も血眼になって探していたあれだ。
「お前、それを何故…」
「みんな、ごめんな。」
クラウドが最期の言葉を言い終えると同時に、黒マテリアが一層強い輝きを発した。
かつてセフィロスが呼んだものよりも遥かに小さい隕石が、
しかしそれでもかなりの大きさの隕石が降ってきた。
クラウドが最後の力を使い、メテオを発動させたのだ。
慌てて跳び、場を逃れようとするが早いか、炎に包まれた巨大な岩塊がすぐ近くに落下した。
天を焦がす火柱が上がり、辺りの物全てが粉々に吹き飛ばされて行く。
爆風が辺りを叩き、隕石の破片や瓦礫が無数の投げナイフとなってセフィロスを襲う。
彼らが居た地点から半径数十メートルが完全に破壊され、灰燼と帰した。
「少し、驚かされたな。」
瓦礫の山の中から、セフィロスが姿を現した。
黒いコートは焼け爛れ、頭からは細い血の筋が垂れているが、メテオの直撃から逃れたのは流石と言うべきか。
体に刺さった細かい破片を抜き取り、火傷に湿らせた布をあてがってとりあえずの手当てを施す。
幸い大した怪我はしていないようだし、所持品にも目立った傷はない。
「まあ、お前にしては頑張った方じゃないか。」
彼はクラウドがいた辺りを一瞥し、歩き去った。
【セフィロス(HP1/2程度) 所持品:村正
第一行動方針:城下町に居る参加者を皆殺しに 最終行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘】
【クラウド 死亡】
・メテオの攻撃範囲は割と狭いですが、爆発その物はかなり目立ちます。
・クラウドの所持品が瓦礫の中に埋もれている可能性があります。
386 :
修正:05/01/07 22:31:59 ID:4vxWDAWR
>>382 クラウドが呟くと、彼は村雨を構え、歯を見せてにやりと笑った。
>>383 再び大剣を振るうと、今度は村雨の切っ先をその刃に合わせて威力を殺した。
>>384 村雨にてアルテマウェポンを持った手を斬りつけて弾き、クラウドの胴体めがけて容赦無く斬りつけた。
の部分の「村雨」を「村正」に脳内変換お願いします…
アリアハンの鳴動が図書館に届く少し前のことである。
「おいおい、こんな物もあるんだってよ…」
ジタンが本の一頁を指差し、キーファとリノアに見せた。
「分裂の壷…この壷は、入れられた対象の物質的性質をそのままコピーし複製を作り出す…」
「つまりどういうことだよ」
キーファが頭をボサボサ掻いて言った。
「つまり、アイテムをコピーするって事?一つのアイテムを二つに…」
リノアが口を挟んだ。
「多分そうだろうな」
「じゃぁ、キューソネコカミとか言う武器をそれで二つにすれば、いや、無限に増やせるじゃないか!」
「無理だな。一個の壷では限度があるし、入れたものは割らないと取り出せないらしいぜ」
一瞬で気落ちするキーファを尻目に、リノアは別の質問をした。
「分裂の壷なのに、分裂するんじゃなくてコピーするの?」
「あぁ…ここには、オリジナルとコピーの見分けがつかない為に分裂と呼んでも構わないから…と書いてある」
それを聞くと、リノアはもう一つ気になる事を聞いてみた。
「ねぇ、それって…人間もコピーできる?」
「さぁ…書いてないしなぁ…」
ジタンは少し腕組みをして考え、こう結論付けた。
「無理だと思うな。物質的性質をコピーするって書いてあるだけだから、このアツ〜いハートまではコピーできないと思うな」
自分の心臓を指差し、ニヤリと笑った。
「もしコピーできても、きっとそれは…ハートが未完成だと思うぜ?」
「まさか、自分を分裂させようとか思う人はいないだろうけどな」
キーファの一言に、頷く3人だった。勿論、本当に自分を分裂させた人がいるなどと知らずに。
そして、直後に彼らを襲った爆音と振動によって、彼らはそれをすっかりと忘れることになった。
――それは突然の出来事だった。
クリムトは死亡者通知を一通り話した後、二人のアリーナと向かい合うように座った。
膝を抱え泣く二人のアリーナを見て、少し気を許した瞬間だった。
片方の――クリムトから見て右側だったと事以外もう一人と何の違いも無かった――アリーナが、いきなり顔を上げた。
そして、一瞬の間に彼女は立ち上がり、彼女の指は目の前に座っていたクリムトの両目を抉っていた。
「ぐ…がっ!」
「ちょ、ちょっと何すんの!」
クリムトの呻きともう一人のアリーナの声が重なった。
「何…何って、決まってるじゃない。生き残るために殺すの」
アリーナの声で、アリーナらしからぬ台詞を彼女は吐いた。
アリーナは(便宜上こちらを以降アリーナ2と呼ぶことにする)クリムトの目から指を勢いよく引き抜く。
ぼたぼたと滴り落ちる血とその中に落ちた眼球、倒れ顔を手で押さえて呻くクリムトを一瞥しアリーナ2はアリーナに対し話を続ける。
「あなたも一緒に闘わない?あたし達が力をあわせれば絶対にこのゲームに勝ち残れるよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
自分の分身であるはずの彼女の凶行に、まだ思考がついていかない。
「決断はお早めにね」
ケラケラと、アリーナ2は笑って見せた。
「さっきまであたしと同じようにしていたのに…!」
思わず本音が出た。自分と同じ様に動いてくれる分身だと思っていたのに、という本音が。
「あのねぇ。相手の隙を作ってそこを狙うって、基本中の基本じゃない」
狂ってる、とアリーナは思った。
これは自分の分身。それでも、まるで自分とは違う人物のよう。信じられなかった。
――ジタン曰く、ハートが未完成。
そして、分裂の壷が生物には向いていない事をこのとき初めて悟った。
「あたしはゲームになんか乗らないわよ!」
「わからないの?あたしとあなたが力をあわせればこのゲームに勝て…」
「冗談じゃないわよ!」
思わず声が裏返った。怒りで、自分への怒りで、今、一杯だ。
「あなたはあたしの分身だけど、あたしじゃない!今ここであたしと勝負して!」
「嫌よ。あたしは勝ちたい。勝ち残りたいの」
アリーナ2は当然とでも言うように胸を張って言う。
アリーナの声で、彼女らしくない冷静な声。
癪に障る言い回し。
「あなたに正義は無いの…!?」
「…あたしの正義は、勝利を得ること」
アリーナ2はまた高らかに笑って見せると、アリーナに背中を向けた。
「あなたに勝つ気が無いなら、あたし一人で他の奴ら片付けてくる。甘い考えに付き合っている暇は無いの」
言うなり、アリーナ2は走り出した。
クリムトに止めを刺す事無く、アリーナらしからぬ高笑いを響かせて。
運が良ければ最後に闘うことになるかもね、という捨て台詞すら吐いて。
「…何と言うことだ…ッ」
クリムトが、ようやく上半身を起こした。
「あっ…大丈夫!?」
アリーナが駆け寄る。
「う、む…眼をやられた…これでは動き回ることは出来まい…」
クリムトは二、三言呟き回復の呪文を自らにかける。
何度か繰り返すうちに血は止まったが、眼が見えるようになる訳ではない。
表情を――といっても眼が無いのだからそれはかなり制限されたものだったが――歪めたクリムトを見て、アリーナは決意した。
自分の罪は自分が償わなくてはいけないと。
しかし今は、この人の身を守らなくてはならないと。
闇の奥に消えた自身の分身を思い、深く溜息をついた。
【アリーナ 所持品:なし 第一行動方針:クリムトの安全確保 第二行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】
【クリムト(両目重傷、失明) 所持品:力の杖、プロテクトリング 第一行動方針:不明 最終行動方針:ゲーム脱出】
【現在位置(共通):レーべ南東の山岳地帯近くの、南の森】
【アリーナ2(分身) 所持品:なし 第一行動方針:出会う人の隙を突いて殺す 最終行動方針:勝利する】
【現在位置:レーベ南東の山岳地帯近くの、南の森から移動中】
2/4
上のセリフ群はそのままで、以下を全改定。
不自然に堆く盛られた土。申し訳程度に添えられた一輪の花。
これが何を意味するのかは考えるまでもないだろう。
問題は、これが誰のために作られたものなのか。
その一点だ。
思案の末、二人は掘り返すことにした。
淡い希望と、押し潰されそうな不安を胸に。
最初に現れたのは腕だった。汚れてはいるが白くて華奢な――腕。
時が凍りつき、心臓を握られたような圧迫感が急速に押し寄せる。
もうやめたかった。――やめるわけにはいかなかった。
程なくして再会は果たされることとなる。
双方が望まぬ――残酷な形で。
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支給品の〜 → 支給品の水で顔と髪を洗い、こびりついた血は拭った。
埋葬を終えると → 再度の埋葬を終えると
修正
>>390 アリーナ2の行動方針を修正です。
【アリーナ2(分身) 所持品:なし
第一行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
最終行動方針:勝利する】
「レックス!レーックス!!」
リュカは必死に息子の名前を叫んだ。
炎が支配する地を駆け、息子の姿を探す。
だが、城門も建物も崩れていく中で見付かるはずもなく。
目を焼くような激しい炎の中で、声が届くはずもなく。
轟音と炎が支配するのみ。
絶望と恐怖が支配するのみ。
「どこだ!どこだ!レックス!!」
『求めれば必ず会えます。しかし、大切なものを失います』
という言葉を思い出す。
大切なものを失うのであれば、この状況だろうと嫌な思いが駆け巡る。
その思いを抱いたまままた一歩炎の中に踏み出そうとしたとき、後ろから声が聞こえた。
「リュカさーん!」
ケット・シーだった。
リュカが会ったことがない人と一緒に走ってくる。
そして何かを話した後、ケット・シーだけこちらにやってきた。
「リュカさん!こんなんやと危なすぎます…離れましょ!」
「でも…僕の息子が!!」
「どちらにせよこの状況で探すんは自殺もんです!!冷静になってアレの犯人を「でも!!」
ケット・シーが最後まで言い終わる前に、リュカの声が遮った。
「でも……やっと…やっと会えたんだ!ここに来る前に!やっと……っ!!」
リュカの声には、涙が混じっているように思えた。
ケット・シーと男が何か口論している。
キーファ達が見ている映像からはそれくらいの情報しかわからなかった。
リュカを見るなり「ちょっと待っといてください!」と行って駆けてしまった。
そして今は口論。混乱させる状況を見事に揃えた敵には反吐が出る。
キーファが心底そう思っていると、リノアが話しかけてきた。
「ねぇ、中の物を確認したんだけど…」
「ああ…何が入ってた?」
「えっと…」
中に入っていたのは、茶色い木の杖に蒼い宝石を埋め込んだシンプルな物に盾。
説明書を見ると「賢者の杖」「ロトの盾」と書かれてある。
杖の方は高い攻撃力と癒しの効果を持ち、盾の方は持ち主を選び力を発揮する、と書かれてある。
「そういえば…持ち主を選ぶ装備があるって攻略本に書いてた様な……」
「じゃあこれがそうかな…通りで何か頼りなさそう……」
「真の持ち主がいれば良いわけだな。それも血が濃い奴」
「血……?」
キーファの話はこうだった。
持ち主を選ぶ剣は意思を持っているかの如くその力を変える。
どうやら持ち主の血脈に反応しているらしい。
かつて勇者の末裔が伝説の剣を持ってはいたが…それを越える剣が存在したという事例まであるらしい。
その装備を自在に操るには、その血脈が流れるもののみ。
あえて特別な事例を言うなら…その装備自体が力を貸してやろうとした時だけだ。
「信じられない話だけど…もしそうだとしたらこれは……」
「当たりかもしれないな。しかもかなりの値打ちものだ。あとこっちの杖も多分」
2人の会話はそこで終わった。ケット・シーが急いで走ってきたからだ。
名残惜しそうに、悔しそうに、息子がいる筈の場所を眺めながら走ってくるリュカと共に…
【キーファ 所持品:攻略本 釘バット(FF7)
現在位置:アリアハン城門→城外へ
第一行動方針:ジタンに加勢 第二行動方針:フィンと合流しゲーム脱出】
【リノア 所持品:賢者の杖 ロトの盾
現在位置:アリアハン城門→城外へ
第一行動方針:ジタンに加勢 第二行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【ケット・シー 所持品:正宗 天使のレオタード
現在位置:アリアハン城門→城外へ
第一行動方針:キーファ達と行動を共にする 基本行動方針:リュカを守る】
【リュカ 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ スナイパーCRの残骸
第一行動方針:ケット・シーと行動する 第二行動方針:レックスを探す
基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
※レックスは未だに生死不明です