「ね、ねぇ!今の聞いた!?」
ビビが、興奮したように喚く。
「当たり前だ。聞こえないほうがおかしい」
「誰か襲われているんだと思う…助けに行かなくちゃ…」
ピサロの視線と、ビビの視線が合わさった。
「行くのなら勝手に行け。私は動けぬし、人間を助ける義理など無い」
素っ気無いその声にも、ビビは嬉しそうに返事をした。
「うん、助けに行くよ。あの悲鳴、絶対に悪い人のじゃないと思うから…。それで、一つだけ約束して欲しいの」
「何だ?」
「もし人が逃げて来ても、殺したりしないでね。それはきっと、ボクが守った人だから…」
「…いいだろう」
「元々は人を殺すために作られたボクだけど…人を助けることも出来るんだって…ジタンやガーネットが教えてくれたから…」
ビビの声は、純真だった。
「それにジタンなら、女の人が襲われてるのを黙って見てるなんて出来ないと思うから…」
ビビは、それが笑ったというのなら…目を細めて…笑った。
「じゃぁ行ってくるから…約束忘れないでね」
最後には声を掛けることも出来なかった。
ビビの尖がり帽子が森の奥に消え行くのを。ピサロは最後まで見送った。
――どうしてあんなに穢れなくいられるのか。
自分も柄にも無いことを考えるようになった、と再び嘲笑した。
【ピサロ 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可)、爆弾(爆発後消滅)
行動方針:ある程度回復するまで待機】
【ビビ 所持品:不明 行動方針:銃声のした方へ様子を見に行く】
現在位置:レーベ東の森中央付近
夕方になった。
夕焼けが綺麗だ、2人は心底そう思った。
殺し合いの場で持つには奇妙じゃないかとも思ったが…これが唯一の癒しのようにも思えた。
「そろそろ誰かいても良い頃だと思うんだけどねぇ…」
「…結局、誰にも会わなかったね……」
"裸マントの殺人鬼にでも会いたかったかい?"とセージは口にしそうだったが、やめた。
流石に傍らにいる少女にかける言葉としては不自然だ。
ローグになら言っただろう、確実に。そう思ってしまってセージは苦笑を浮かべた。
悪態をつく相手がいないのも寂しいなぁ…と、そう呟きながら目を閉じた。
それと同時に、彼の脳裏には思い出が蘇る。
しっかりしてるけど、確実にR-指定の道へとスライディングしそうなあの勇者。
いつも自分に悪態こそつくけど、楽しい話には事欠かなかったある盗賊。
思い出したくは無い過去はあるが……まぁ頼りになった僧侶。
仲間……なのかは知らないけれど、「勇者」の代名詞だろうと思えたある父親。
ついでに裸マント。名前は忘れた…ダンカタ……だったか。違う、カンダタだ。
そしてすぐさま考えを今の状況に戻し、自分を奮い立たせた。
そして、タバサもまたそうしている様だった。
それが、悪かった。
ドオオォォォォン――――――――!!!!
突然地鳴りにも爆発音にも似た音が鳴り響いた。
そしてそのまま、この世の出来事とは思えぬほどの地震が起こる。
「ちょ…これはないんじゃない!?これで死んだらどうしろって言うんだよ!」
「お…ッお兄さん!!大丈…夫っ!?」
「あまり…こういう経験…ないからねっ!でも大丈夫!」
「…だ、だいぶ落ち着いてきたかも……」
ふと、不思議なまでにその地震は止んだ。
だが空は黒く裂けてゆく。セージは苦笑を、タバサはある種の恐怖を浮かべてそれを見ていた。
そして、名前が呼ばれていく。
死んだものの名が虚空に響く。
静かに…ただ静かに見ていたが、タバサの顔からは"恐怖"は消えていた。
"恐怖は"だが。
「ピ…ピン……さん………」
彼女が住むお城には、ある兵士がいた。
王子や王女にも親しく接していた兵士がいた。
王達と共に旅をし、至福の表情を浮かべていた兵士がいた。
名を、"ピピン"といった。
知り合い…か。と、セージは心の中で呟いた。
傍らでは、タバサの焦点の合っていない様な…だが透き通っている目が空を見ていた。
放送が終わった後も、暫く空を見上げていた。
「……あのさ」
「大丈夫!」
セージが何か、慰めの言葉か何かを発そうとしたと同時にタバサの声が響いた。
「大丈夫。ここで挫けてたら…お兄さんに迷惑かかっちゃうし。
それに、これからもきっと…こういう事があるんでしょ?
その時に何回も何回も挫けてたら…会える人にも会えない、しね」
「……そうか、強いね」
本当に強い。セージはそう思った。
それと同時に、この子の為に必ず家族を見つけてあげようと…そう思った。
「おにいさん、早く安全そうな所に行こうよ。暗いから危なくなっちゃうよ?」
「ああ、そうしよう」
そう言って、二人はまた歩き始めた。
「ん?もしかしてあれは…」
本当にほんの少し歩いていると、セージは建物を見つけた。
明かりが灯っていない。人が潜伏している可能性があるが、子どもを置いての野宿は危険だ。
その建物にお邪魔する事にし、2人は建物へと歩いていった。勿論警戒は解かずに。
建物の中には階段があった。地下へと下る暗い階段だった。
そしてその階段を下ると、扉があった。
開けようと試みる。鍵がかかっている。開かない。
タバサが困ったように押したり引いたりしていると、
「ちょっと下がって。こういう時は…"アバカム"」
カチッ!
鍵が開く音が聞こえた。
そして二人が部屋に入ると、何の気配も無かった。
きちんとドアを閉める。この間に尾行されて侵入されたわけでもない。
「……ビンゴだ」
そう言ってセージは灯りに火を灯すと、数人分ある椅子に座った。
タバサも続く。椅子に座ると、机に突っ伏すように上半身を倒した。
「トイレもバスルームもないっぽいけど…我慢してくれないかな?」
「私は大丈夫。でも、ラッキーだったね。」
「そうだね。とりあえず野宿にならずに住んだ。今日はここで夜を明かそう」
そう言うとセージはこの後の事を必死に考える事にした。
アナリーゼを行う音楽家のように、必死に危険から回避する方法を組み立てようとしていた。
【セージ 所持品:ハリセン
現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋 行動方針:部屋で夜を過ごす】
【タバサ 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑 現在位置:同上 行動方針:同上】
515 :
1/5:04/11/22 21:51:30 ID:YuTBgmvG
三人――レナ、エリア、ギルバートは、存外早く意気投合することができた。
それは、「クリスタル」という共通の話題があったことが大きい。
話してみれば、それは明らかに違う世界のものであったが、
それでもこの状況で、絆を結ぶのには十分なものだった。
「ここにいても仕方ないわ。誰かと合流したいなら、危険はあるけど人の集まるところにいかないと」
レナが提案すると、にわかに元気を取り戻したギルバートが頷いた。
「そうだね、僕もそう思う。この近くなら、レーベの村だろうね」
「けっこう遠いですね…」
「なに、日没あたりにはつくさ」
そんな会話をしながら歩き出して、しばらくのことである――あの声が聞こえたのは。
あの忌々しい声はあたりから消えた。青年たちに暗い影を残して。
死者の名前が告げられたとき、最初に反応をおこしたのはレナであった。
手頃な岩に座って、綺麗な唇に手を添え、じっと耳を傾けていた彼女は、
「クルル」と呼ばれた瞬間目を見開きだんと立ち上がり、その変わりかけの空を見上げた。
次に反応を起こしたのは、ギルバートだった。
一見すると女性に見紛う端正な顔立ちの彼は、雪のように白い肌をますます青白く、
唇をがたがたと震わせただ一点を見つめていた。
その姿を見れば、唯一反応を示すことのなかったエリアにも、
彼らに何があったのかは容易に想像がつき、その心痛を察すれば、なんと声をかけてよいかもわからない。
………
放送の少し前のことである。
「水のクリスタル…」
エリアの口からその言葉が発せられたのに、レナは驚きを隠せなかった。
自分たちのいた世界とこの世界は、まったく別の次元のものに思っていたからである。
いや、実際のところはそれで正しいのだが、そのようなことがわかるはずもない。
「たしかに、私は水のクリスタルの加護を受けているわ。でも、どうしてそれが?」
「私は水の神殿の巫女です。わかります、心の中にあるその光は、クリスタルに選ばれた…」
「水の神殿?」
エリアの話を遮って、思わず聞き返した。
「水の神殿…そんなのあったかしら。風の神殿じゃないの?」
「風の神殿…?いえ、水の神殿ですよ」
レナは記憶を辿ってみたが、それらしきものは思い当たらない。
水のクリスタルがあったのはたしかウォルスの塔である。
そこのことだろうか?しかし、巫女がいるという話は聞いたことがなかった。
「ウォルスにあったよね、水のクリスタルは」
「ええ、ウォルス?そこどこですか」
「知らないんだ」
共通の話題を話しているはずなのに、話がまったく噛み合わない。
「あの…ちょっと、いいかな?」
申し訳なさそうにギルバートが口を挟んだ。
「水のクリスタルはミシディアにあるんじゃなかったかな?
それに、クリスタルに選ばれた戦士っていったいなんのことだい?」
「ミシディア?」
「…もしかして、ううん、やっぱり…知らないのかい」
三人は顔を見合わせると、この奇妙な状況に押し黙った。
………
エリアはふっと息をついた。
「クリスタル」という象徴的なものを共有する人間に会えたと思ったのも束の間、
それはまったく別の世界のこと。それと同時に、深い感銘もうけた。
自分の元いた世界以外にもクリスタルが存在し、
同じようにクリスタルに選ばれた戦士がいるという事実、
その人と水の巫女たる自分が会えたことに、運命の力を感じたのだ。
現に、彼女――レナの中にクリスタルの輝きを感じたのだから。
しかし――今その戦士の一人が死んだとするならば…。
それもまた運命なのだろうか?
それとも、運命だとか、もはやそのような力では抗えない状況なのだろうか。
手持ち無沙汰で、エリアは名簿をめくった。
エリアはあっと声をあげそうになるのをやっとの思いでこらえた。
つい先まではなんの変哲もなかったその名簿に、
血の滲んだような朱色の線が、ところどころに引かれているのである。
よくみてみれば、それはどれも先に名前を呼ばれたものたちの欄に引かれていた。
やるせない怒りにも似た哀感が、エリアを襲った。
名簿を閉じ、潤んだ瞳を閉じて――それは場の空気に影響されてかもしれないが――刹那、場違いな明るい声が響いた。
「いきましょう!さっき話し合った通り、レーベの村に」
いきましょう、というのが、どういう意味なのか少しエリアは迷ったが、それはどうでもいいことだった。
「今、名前で呼ばれた中に、クルルっていたよね。その子、私の仲間なんだ。…まだ、14歳なのにね」
「そうだ…セシルとローザも、死んだ!」
ギルバートは吐き出すように叫んだ。
「ローザは…セシルの恋人だった。二人とも、いっしょに…いったのかな」
ギルバートは震えの収まらぬ膝頭をおさえて、遠くを見つめていた。
レナはもう落ち着いた表情向かうべき方角に体を向けている。
その冷静な挙措の中に、固く握りしめられた拳を、エリアは見逃さなかった。
「ええ、いきましょう。クリスタルの光を、信じて」
他に言うべき言葉が見つからなかった。
【エリア 現在位置:レーベ東の平原 所持品:妖精の笛、占い後の花
第一行動方針:レーベへ 第二行動方針:サックスとギルダーを探す】
【ギルバート 現在位置:同上 所持品:毒蛾のナイフ
第一行動方針:レーベへ 第二行動方針:リディアを探す】
【レナ 現在位置:同上 所持品:不明
第一行動方針:レーベへ 第二行動方針:バッツとファリスを探す】
台所には、不気味なほど安らいだ表情のまま首を切り落とされた男女がいた。
今いるここ、階段前の廊下では、男が女を背負ったまま串刺しにされていた。
そして死体の傍に、尻尾の生えた若い男が立っている。
「最低だ」
硬直するリノアとキーファの前で、男――ジタンはぽつりと呟く。
「アルティミシアとかいう魔女も、あの骸骨野郎も、命をなんだと思ってるんだ」
拳を固く握り締め、肩を奮わせる。
ジタンには許せなかった。殺し合い自体はもちろん、こんなゲームに乗って人を殺す連中がいるということが。
もちろん、頭の中では理解していたし覚悟していたことだ。進んで殺し合おうとする奴がいることぐらい。
だが、実際に『その場面』を見た途端、抑えきれない怒りが胸に沸いた。
数分前には生きていたはずの二人を助けられなかった、自分への苛立ちと共に。
十数分経った今でも、その感情は消えない。
二人と一人の間に、長い沈黙が落ちる。
不意に、ジタンは横に立つ二人組、リノアとキーファを振り返った。
射竦めるような視線を真っ向から見据え、意思表示代わりにキーファは支給品の本と袋を床へ投げる。
「オレも……いや、オレ達もあんたと同感だ」
「戦う気なんてない。殺し合いなんて、したくない」
そう言ってリノアもキーファに従う。
二人の言動に、ジタンはようやく相好を崩した。
「そうか……
……なぁ、やりあう気がないなら少し話さないか? どっか落ち着ける場所でさ」
リノア達は一瞬顔を見合わせ、すぐに大きく頷いた。
「…うむ、何か成果があがったら連絡するよ、レディ。期待していてくれたまえ」
エドガーは一旦、ひそひ草での会話を切った。
――バーバラが信頼できる少女であることはわかった。
お互いの仲間の情報などを交換し、これからのことについても随分話した。
位置が近ければ合流していたのだが…地図を見る限り、合流するには大陸をほぼ一周するしかない。
そこまで歩くのはお互いに危険だ。次のステージで近くなる事を祈るしかない。
そして何より、大事な用事があり自分はここから動けない。そう、バーバラに話した『成果』とは――
「あれ、もういいのか?」
「ああ、ずっと話しているわけにもいかないだろ。研究が進んだらまた連絡をとる事にするよ。
ちなみに、期待しておいてくれ、と言っておいたから」
「げ、責任重大じゃねえか…」
エドガーの目の前で青年――デッシュが、銀色に輝く首輪と鉛筆を手にごちゃごちゃしたメモを取っている。
あの騒ぎに城下町から脱出してすぐ、後ろから走って追いかけてきたデッシュ。
話によれば彼はエンジニアで、首輪をはずす方法を考えているという。
デッシュはエドガーを護衛として仲間にしたかったようなのだが、エドガーも機会関連ならお手の物であり、
首輪を外し脱出という研究は、エドガーにとって護衛だけでなく最大限に協力できるものであった。
かくして、二人で協力して研究をすることになった。
今、デッシュとエドガーが手にしている首輪は、身を潜め研究できる場所を探し、
森へとやって来た二人が、偶然見つけた死体から外したものだ。
少女と兵士。見知らぬ二人の死体は今、少々離れた場所に埋葬されている。
死体の首を切断するという行為はとても気分の悪いものだったが…それは、どうしようもない。
――それから、三人は小さな裏庭のそばに作られた小部屋へ移動した。
話すことはそれぞれにあった。
キーファは、グランエスタードの友人達と、支給された攻略本について話し。
ジタンは、ダガーを始めとする仲間と、この忌々しいゲームをどうにかしたいという思いを語り。
そしてリノアは、頼もしい恋人と、仲間達と、共に倒したはずの魔女アルティミシアについて知ること全てを伝えた。
だが、話の内容がたくさんあるからといって、収穫があるとは限らない。
結局、三人とも仲間達の行方はわからないまま。ゲームを抜ける手段も、攻略本の活用方法も思いつかないまま。
謎だけが、一つ増えた。
「魔女と時間圧縮ねぇ……一体、アルティミシアって奴は何がしたいんだ?」
「私にはわからないけど。でも、きっと理由があってこんなことをしてるんだと思う」
「あのな。理由もナシにこんなことされたらこっちがたまらないぜ」
キーファの言葉に、ジタンが「そりゃそうだ」と頷き返す。
それから、急に真顔になって二人を見つめた。
「なぁ。リノア、キーファ。正直なところどう思う?」
「どう、って?」
「だから魔女の目的だ。この殺し合いをさせる目的だよ」
「いや……突然振られてもなぁ」
ジタンの言葉にキーファは腕組みをし、リノアは頬に手を当てる。
それからしばらくして、キーファが顔を上げた。
「パターンとしてはやっぱり『娯楽』じゃないか?
昔の君主や貴族には、そういう悪趣味な見世物を楽しむ奴がいたそうだからな」
「うーん。それもありそうだけど……
前に読んだ本でね、集めた動物を殺し合わせて、生き残ったやつを使う呪いっていうのが出てきてたんだ。
もしかしたら、そういう呪いとか、何かの儀式なのかもしれない」
と、リノアが続ける。
「娯楽に儀式か……」
ジタンは天井を睨みながら、首輪に手を当てた。
スミマセン、割ってしまいました…お先にどうぞ
――キーファが言ったように単なる娯楽目的なら、首輪の解除自体は可能である確率が高い。
なぜって、その方が見世物として面白いからだ。
『こうすれば解除できる』のに、それに気づかず殺しあう参加者達。それほど難しくない解除方法が見つかるのは、数多の友や仲間の血で両手を染めた後のこと。
この手の演出も、あの冷徹な魔女ならやりかねない。
けれどももし、リノアが言う通りに『何かの儀式』であるなら……首輪を外すなんてさせてくれないはずだ。
殺し合いが止まればその時点で目的が達成できなくなる。
――どちらにしても、自分たちに殺し合いをさせることが目的ならば、滅多なことでは首輪を爆破したりしないだろうが。
そこまでジタンが考えた時、突然轟音が鳴り響いた。
音が外からと気付いた三人は、慌てて中庭に飛び出す。
彼らは見た。天空に浮かぶ魔女の唇が、忌々しい言葉を紡ぎ上げていくのを。
そして……全ての放送が終わった時、三人の表情は蒼白なものに変わっていた。
世間知らずなお姫様だけれど、優しく芯の強い女性だったガーネット。
口は悪いけれど、根は真っ直ぐで正義感に溢れていたマリベル。
死ななくてはいけない理由なんて、どこにもなかった。
いや、他の人たちにも、同じことがきっと言えるはずだ。
「ねぇ、キーファ、ジタン」
リノアが口を開いた。
「こんなの、間違ってるよ。こんな形で人が死んでいくなんておかしいよ。
ねぇ、止めよう。止めさせようよ! こんなゲーム、続けさせたくない!
一緒に力を合わせて、止める方法見つけようよ!」
――それは理想だ。確固とした計画もなく、ただ思いに任せただけの言葉。それだけで人を救うことは決してできない。
けれども、人を動かすことはできる。理屈ではなく感情から生まれた言葉だからこそ、心に訴える力を持つ。
「そうだな……マリベルだって、きっとそうしろって言うよなっ」
「こんな下らないゲーム、エーコやビビのためにも早いところぶっ壊してやらないとな!」
瞳に拭い去れない哀しみと決意の色を宿らせて、三人は立ち上がる。これ以上の悲劇を生まないために。
【ジタン 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面
第一行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 第二行動方針:ゲーム脱出】
【リノア 所持品:不明 第一行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 第二行動方針:仲間と合流しゲーム脱出】
【キーファ 所持品:攻略本 第一行動方針:首輪解除の手段を探す 第二行動方針:フィンと合流しゲーム脱出】
現在位置:アリアハン城・裏庭
>>522 お待たせしてしまってごめんなさいorz
(
>>520の続き)
「で、俺がレディと話してた間、君の研究の成果は?」
笑いながら質問するエドガーを見ながら、デッシュは鉛筆を動かす。
「とりあえず、今わかったのはこんなとこ」
(…やっぱりな)
『予想通り盗聴器が内臓されてる。
分解ができないからまだ断定はできないが、爆発の仕組みは機械的なものじゃなくて魔法を使用しているかもしれない』
手渡された紙には、走り書きでこう書かれていた。
盗聴器のほうは、デッシュも書いたように二人の予想通りである。盗聴はずっと警戒していた。
二人は今まで"首輪を外す"という具体的なことは一度たりとも口にしていない。バーバラにも既に遠まわしに警告してある。
まあ、決定的なことを口にしなくても、研究だなんだと言い続けていればそのうち主催者にはバレるかもしれないが…。
「つーかさ、大分暗くなってきたよな。ランプ付けてくんねえ?」
「おい、そのぐらい自分で付けろ」
気さくなデッシュの性格のおかげか、二人のウマが合うのか。
一歩間違えば主催者に殺されるような重要な仕事をしているにも関わらず、二人の空気は明るかった。
――その時までは。
死者の名を並べた放送が流れたのは、それから暫くしたころ。
エドガーは、その中に知っている名を聞いた。
「…ティナ…」
呆然と名前を呼ぶ。…それに、シャドウ。
――エドガーは、唇を噛み締めうつむく。
まさか、信じられない。…なんて現実味のない…事実なんだ。
悲しみよりも、言いようのない怒りが心を満たす。
なぜ、こんな形で生涯を終らせられなければならないのか?
暫くの間呆然としていたエドガーだが、ふと視線に気がつき顔を上げる。
心底心配そうに、少しだけ困ったようにこちらを見ているデッシュと、視線が交錯した。
…デッシュは何か声をかけようとするが、それよりも早くエドガーが声を出した。
「…大丈夫だ」
そう、夜空を見上げて…言い聞かせる。
本当は、大丈夫じゃない。まだ、怒りと悲しみで身体は震えている。
だがそれでも、今すぐにでもやらなくてはならないのだ。
(犠牲となったティナ達のためにも…)
きっと。
【エドガー 所持品:バスタードソード 天空の鎧 ひそひ草 ラミアの竪琴 イエローメガホン 首輪×1 紙や鉛筆など
【デッシュ 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 首輪×1 紙や鉛筆など
現在位置:アリアハン北の森 第一行動方針:首輪の研究 最終行動方針:ゲームの脱出】
>>524 本当に申し訳ないです…もっとリロード気をつけます。
「わかった?クラウドが知ったら私はもう終わり…。だから、知られないようにあなたを殺すわ」
一方的に喋り尽くすと、ティファは未だ呆然としたままの少女を見た。
月明かりが木々の間から差し込んできて、ティファは容易に少女の瞳に視線の圧力をかける事が出来た。
ターニアの表情は、恐怖に包まれていた。
当然だった。好きな男に嫌われたくないだけのために人を殺そうとする女が、目の前にいるのだから。
「でも、話さないと約束するならあなたを生かしてもいいわ…」
取引だった。しかも、あくどい取引だ。
そんなこと、わかっている。でも…
今、クラウドに換えられる物など無くて。
「…嫌だよ」
少女は、震える声で言った。
「おかしいよ!?どうかしてる!」
座ったまま、怒鳴るようにティファに声を浴びせる。
「そんなの…おかしいよ!クラウドって人に好かれたいから、人を殺すの!?そんなの…!」
「……」
「そう!あなたは人殺し!エアリスさんを殺した!」
喚き叫ぶターニア。
ティファの脳裏に、再び、エアリスが浮かび上がる。
(ティファ…止めて…もう…)
エアリスの声が、何故か酷くしゃがれて聞こえた。
刹那、そのエアリスの胸から血が噴き出した。
やったのは…自分。
「いやぁぁぁぁ!!!!!!」
ティファは、銃の引き金に手を掛けた。
そして、視界が赤く染まった。
だが、視界が赤くなったのは、ターニアの血のせいではなかった。
何処からか飛んで来た炎の玉が、ティファの顔を焦がしたのだ。
「きゃぁ!」
のけぞるティファ。その隙にターニアは立ち上がった。
「お姉ちゃんこっち!!」
森の茂みの奥から、10歳にも満たなそうな少年が顔を出していた。
「逃げなきゃ!あっちにピサロさんって人がいるから!」
少年の声に従って、ターニアは走り出した
あの時と同じように助けられた、という少しの驚きをもって。
ビビは、再び茂みの中に隠れた。
あのお姉ちゃんが逃げるまで時間を稼ごう…
そう思ったからだ。だが、それは無用だった。
炎を顔面に喰らった女性は、転げまわり、手で顔を掻き毟っている様だった。
まさかここまでダメージを与えているとは、ビビも思ってなかった。
…やりすぎたかな。
ビビの不安が的中したようだった。
女性は、呻く事無く仰向けに倒れると、動かなくなった。
「し、死んじゃったの…?」
後悔した。殺すつもりは無かったから。
ゆっくりとそれに近づく。
そして、彼女の顔を覗き込んで…
「ひゃぁぁぁぁっ!」
思わず、叫んだ。
無我夢中で、ピサロの元へと走り出した。
「あなたが…ピサロさん?」
ターニアは、木の根元にもたれ掛かっている影を見て、言った。
さっきの場所から、そう遠くは無かった。
運がいいのか、彼の姿は月明かりが届かないため影となっていたので、ターニアは彼の体中にこびり付いた血を見ることはなかった。
何処か不思議なオーラを放つその影は、冷たい響きのする声で言った。
「そうだ。小娘、…ビビはどうした?」
相手が人間だから、言葉はどうしても冷たくなる。
それでも殺す気にならないのは、ビビの言葉のせいか。
…それとも、先程泣いているビビを見てからロザリーの姿がちらつくのが原因か。
「ビビ…?さっきの男の子…?その子は私を助けてくれたの…それで」
ターニアは言葉を止めた。説明は不要だった。
「ひゃぁぁっ!」
悲鳴を上げて、ビビがターニアに突っ込んできたから。
「…落ち着け」
闇でも利くその瞳を、倒れたビビと巻き添えを喰らったターニアに向けながらピサロは言った。
「う…うん…」
ビビの声は震えていた。
「何かあったのか」
「う、うん、さ、さっきの女の人が…」
ビビは、話し始めた。
かつて多くの死を見てきた彼でも、衝撃を受けた事を。
自分の放った魔法の生み出した結果を。
――ちょうどその頃。
ティファの右腕の指先が、ゆっくりと動き始めた。
不思議ではない。顔以外は、無傷同然なのだから。
…そう、顔以外は。
ショックと苦痛で、意識を失ったようだった。
(痛い…)
声に出したそう言ったつもりが、ただの苦痛となって彼女を刺激した。
目をゆっくりと開けてみた。
月の明かりが差し込んでいた。
(綺麗…)
ぼんやりと月を眺め、痛みを堪えて彼女は立ち上がる。
近くに落ちていた銃を拾い上げた。
その近くには、もう一つの支給品、エアナイフが落ちていた。
月明かりを反射して、キラキラと輝いていた。
拾い上げようとした。
…だが、出来なかった。
ナイフの刃に、月明かりで自分の顔が映し出されたから。
――醜い顔が其処にはあった。
唇は焼け爛れ、左の頬は溶けているかのようで。
左頬から顎にかけての皮膚が、全て無くなっていた。
剥き出しにされた肉から、血が滴り落ちていた。
鼻は焼けて、ズルリと垂れ下がっているようで。
「……!!」
悲鳴を上げようにも、唇が無いから、上げられなかった。
醜鬼にも似たその顔が、今の自分の顔で。
それは自分の内面を具現化したものだと、思った。
…そして、再び気を失った。
【ピサロ 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可)、爆弾(爆発後消滅)
行動方針:ビビの話をとりあえず聞く、ある程度回復するまで待機】
【ビビ 所持品:不明 行動方針:ティファの状態について話す、その後はピサロに従う】
【ターニア 所持品:微笑みの杖 行動方針:ピサロとビビに従う】
現在位置:レーベ東の森中央付近
【ティファ(気絶、顔面に重度の火傷) 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ(未だ拾ってません)
行動方針:?】
現在位置:レーベ東の森中央付近、ピサロ達より若干西。
突然、地震が起こった。
「これは、、、震度18!!ばかな」
アルティミシアが叫んだ。
ゲームを始めたことにより起こったエネルギー。
そのエネルギーによる予想外の事態…そして、それが終わりだった…
死んだ
FFDQバトルロワイアル 完結!!
しかし再会!!!!
終了!!!
再開!!!
終了!!!
再開!!!
終了!!!
再開!!!
終了!!!
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
536 :
気配:04/11/24 19:02:29 ID:GcFK8hf2
忌まわしい放送が終わり、イザは唇を噛んでうつむいた。
「アモス…」
許せない。アモスを殺したものも。許さない。こんな『ゲーム』を仕組んだ魔女も。
「竜王さま…」
ドルバも気づいていたとは言え、改めて聞くと、こみあげるものがある。
「ニンゲンにも強い者がいるようだな」
「ああ。人間だっていざとなったら、強い。あんな魔女にも負けないさ。だから、
こんなゲームに乗っちゃいけない」
イザが自信に満ちて言った、その時。
「…ニンゲンの声がするな」
ドルバが首をもたげて階段の方を見やった。
「人の声だって?」
イザには聞こえなかったようだ。ドラゴンは人間より感覚が優れているらしい。
「ああ。間違いない…複数のニンゲンの話し声だ」
イザはすかさず身を翻した。階段をテンポ良く駆け上がる。
「行ってみよう!もしかしたら、協力してくれる人たちかもしれない」
ドルバは黙って頷くと、イザの後に続いた。
【イザ 現在位置:海底通路(ナジミの塔への階段付近)
所持品:きんきらの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
第一行動方針:人の声がした方を確認する
最終行動方針:同志を集め、ゲームを脱出する】
【ドルバ 現在位置:同上 所持品:不明 行動方針:イザに協力する】
空に浮かんでいた魔女の姿が消えた。再び、夜空が戻ってくる。
『ゲームの脱落者』として並べられた名前、それは同時に死を意味している。
自分の殺めた老人の名もあったのだろう。確認はしていないが、おそらくは。
「――セシル…ローザ…」
皮肉なものだ。
裏切り者の自分はまだここに生きているのに、セシルはもう逝ってしまった。
ただそれだけを思う。…涙を流す理由など、もう無いから。
所詮、現実とはそんなものなのだろう。正しい者が勝つとは限らない、生きるとは限らない。
…今回は、俺が生き抜いてみせよう。
カインは目を閉じて一度深呼吸をすると、空高く跳び上がった。
「エッジ…さん、すみません…待って下さい…」
「お、おい!大丈夫か!?」
膝をつき座り込んだマリアに、ユフィを担いだエッジが慌てて駆け寄り――瞠目する。
月明かりに照らされた彼女の真っ青な顔、頬を汗が伝わって地に落ちるのを見て。
(――何て馬鹿野郎なんだ…俺は!)
エッジはとにかく必死で走っていた。まだ助かるはずの、瀕死のユフィを助けたい一心で。
それでもマリアがついてこれるスピードは保っていたつもりだったし、
実際に彼女はすぐ後ろをしっかりと走ってついてきていたのだ。
しかしついて来れているからといって、彼女が忍者である自分と同じ体力を持っているはずが無いのだ。
きっと彼女も、ユフィを助けたい一心でここまで無理していたのだろう。
…それに気付けなかった自分が情けない。エッジはぐっと拳を握りしめる。
そんなエッジに、マリアは少しばかり困ったような表情で言った。
「ごめんなさい…エッジさん、先に行って下さい」
「なっ…」
「本当は私も行きたいんですが…ごめんなさい、立てそうになくて…
…随分走りましたし、きっともう近くまできています。これを持っていって下さい…」
マリアは呼吸を整え、持っている波動の杖をエッジに差し出した。
しかし、エッジはそれを受け取らない。受け取るわけにはいかない。
(マリアさんを置いて行ける訳がねえだろが…
…しかし、どうする…?一刻も早く処置しないとこいつは死んじまう…)
エッジは迷った。今、迷っている時間こそ勿体ないことはわかっている。
それでも――決断は難しい。
エッジ達三人よりも少々離れた場所で、カインは手頃な木を見つけると音を立てないよう着地した。
もちろん、三人の存在に気付いた上での行動である。
(相変わらずだな、エッジ…)
カインは一目で状況を理解した。エッジの背中に片腕を無くした女がいることを見れば一目瞭然。
おそらくは、あれを助けてくれる人間でも探しているのだろう。もう一人も…仲間だろうか。
(さて、どうするか)
エッジの強さはカインもよく知っている。そして今は、どんな武器を持っているかもわからない。
二対一ということも含め、確実に倒すには…真っ向から行くのは得策ではないだろう。
相手の手負いを利用するか、あるいは騙まし討ちでもするか。
…しかし、それでいいのだろうか?仮にもかつての仲間だ――と、そこまで考えて首を横に振った。
(いや、そんな事は関係ない…。 ……あっちは、まだ俺には気付いていないか)
さあ、どうする。
【ユフィ(瀕死) 所持品:プリンセスリング フォースアーマー 行動方針:死を待つ】
【エッジ 所持品:風魔手裏剣(30) ドリル
第一行動方針:悩み中(波動の杖の向く先(アルカートのところ)へ走る) 第二行動方針:仲間を探す】
【マリア(疲労) 所持品:波動の杖 アポカリプス+マテリア(かいふく)
第一行動方針:休息(ユフィを助ける) 第二行動方針:夫を探す】
現在位置:アリアハン北の橋から西の平原
【カイン(傷はほぼ回復) 所持品:ランスオブカイン 第一行動方針:様子見 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
現在位置:エッジ達のすぐ北、森の入り口辺りの木上
__,, , , , _ 、 ,,, ... ,, _ ..,_
ー=、 、ー-、`ヽ、、ヽ`!i' , ,i",r'",-'"=ミ
`ヽ`ヾ`、 ! ヽ ! l! i! !_i_/_<'"``
`,ゝ、iliー'" "、,"、', i, リ
!/!,li ,;;-=o=-,ッィ=。ゥィ
__ i、`!', '; `ー /;;!i、''; ,!
ー''`ヽ`,ーi'`''"!、ヽ , `一'、 / __
`il `i ! ヽ、  ̄ ̄ / iヽ、/ ,.ヽ_
i! !` `ーァ、-ー' ! ノ!トi,!'",ノ-、
,..=、i! iヽ-、 rィ',;'!ヽー-、! `/_,i' _,.!'、
ーニー-、._ `ヽゞニ-、.;' i! ! , `ト_ノ`x-'" ノ
=ニヽ、 , `, /ヾ=ソ ノ !/ !、`ー`''イ、
-ー-、 `i, / / ヽ `イ_, i -'" ̄`! ! ヽ
ゝノ /-'" ` ' ! ヽ !
まとめサイトへいくんだな
おまえたちはおれをしらなすぎるだろう……
ttp://guile.fc2web.com/
誤爆スマソ
魔女の放送前、ティーダはエアリスの死体をぼんやり眺めていた。
元々胸部に受けた弾丸が致命傷だったのだから、それ以外は全く外傷は無かったのだが。
彼女の死を確信したときは、美しいも何もあるか、と考えたものだが、その死体は、まるで眠っているようで。
――あまりに綺麗で、今にも起き上がりそうで。
だが、そんなときに放送はあった。
それは、確実にエアリスの死をティーダに認めさせた。
…そして、もう一人。
「アーロン…!?そんな…」
最も頼れる男だった。
その存在こそ、死人という存在であったけれども。
悪い夢だと、思いたかった。
自分の本当の姿も、自分の生まれ生活した世界でさえ夢だったのだから。
これも、誰かが召還した、悪い夢なんだと――
「エアリス…ごめん…」
気持ちが落ち着くと、ティーダは鋼の剣でエアリスの首を切り落とした。
ほとんど眠っているのと変わらないその姿に傷を付けるのは、やはり気は引けたが。
「きっと誰か…首輪の解除方法を研究していると思うから…」
許しを請うように呟くと、鋼の剣についた血を近くの草で拭き取る。
そして、重くて使えなかったゴディアスの剣をエアリスの身体の横の地面に突き刺し、麦わら帽子をそれに乗せた。
アーロンの墓のつもりだった。だが、本当にそれがアーロンを示しているようだったから、
「わかったよ…泣かないッスよ」
一人、噛み締めた。
そして、ランプを片手に、森の中を東へ向かって歩き始めた。
【ティーダ 所持品:鋼の剣 青銅の盾 理性の種 ふきとばしの杖〔4〕 首輪×1
第一行動方針:東へ 最終行動方針:ゲームからの脱出】
現在位置:レーベ北東の森→東へ
それは、わりかし突然の出来事であったように思う。
わりかし、というのは、予想の範疇だったからだが、それでも突然おきたのは変わりないのだし、
それはそこにいる人々にそれなりの衝撃を与えた。
とはいっても、それはそれまでにおきたことによる部分が大きい。
このゲームというのは、なにせ非現実的であるから、現実を認識しなければ、夢のようにさえ思える。
たいていの場合、そのことに気づくのは、現実の冷酷さに直面したときである。
夢は現実から逃れた、戦いからの猶予期間、休息でもある。
とはいえ、こういわれても事情を知らぬ事には、なんのことやらさっぱりであろう。
ここに至るには幾重もの変遷があったのだから、
まずはそれについてある程度述べておかなければなるまい。
放送より大分前になる。
バッツとローグは、カインとリディアについて一通りの話をしたあと、ひとまずの休憩に入った。
何か食料はないかと、駄目もとで台所に向かったローグは、
この場所は案外居心地の良いところだ、ということを間もなく知ることになる。
少なくとも、保存のきくものに関してはまったく問題がなかった。
生ものでさえ普通に食べられそうだ。もっとも、さすがに抵抗が大きかったので手をつけなかったが。
支給品の無味乾燥なパンも、ジャムやマーガリンをつければこそである。
そうして予想外の豪華な食事にありつくことができたわけだが、バッツは不思議に思った。
恐らく、このゲームで町や村に入ったら誰もが思うことである。
それを口に出さなかったのは、あまりに非現実過ぎて、違和感すら感じ得なかったのかもしれない。
しかし、この状況において束の間の休息を得たバッツは、なんとなしに呟くのであった。
「この町に住んでた人は、どうなってるんだろう」
猫舌なのか、ローグは湯気が立ち上るコーヒーの波紋をただ漫然と見ている。
「さっき俺が煎じて飲んだ薬草は、道具屋みたいなとこにあったんだ。
家には飯がおいてあるし…ここ、やっぱり誰かが住んでたのか?」
「そうともいえるし、そうともいえないんじゃねーかな」
「なんだよ、それ」
ローグは相変わらず、波の抑揚を見つめている。
「俺はもともとこの世界にいたんだよ」
それをきくと、バッツは「へえ?」間抜けな声をあげた。
「ここは多分、あの女のつくった仮想の世界だと思う」
あの女――アルティミシアのことを、バッツは久しく思い出した。
「わかんないけどな。でも、それ以外に考えられないだろ?」
「ううん…」
「それともなにか。あの女はこの町の住民の存在をそっくり消しちまったとでも?」
考えられないことでもないとバッツには思えたが、何も言わなかった。
「ま、なんにせよここまで再現してくれてるってのは、まったく気がきいてるぜ。
そうだ、近くに仲間の家があるんだ。どうせなら、そこにいかないか?」
バッツは外の様子を窺いながら、「いいよ」と短く答えた。
二人は、注意深く民家の外にでると、アルスの家へと向かった。
「あった、あった!やっぱりあったぜ」
ローグは、笑いながらベッドの下から何か本をとりだし、それをみると、バッツは思わず吹き出した。
「ッぷはは、エロ本かよ!…うわ、すっげえ内容…」
「そりゃ、神竜秘蔵のエロ本だからな!」
「へ?」
「いやいや、こっちの話だ」
ひとしきり笑ったあと、バッツはローグにこの人物について聞いた。
第一印象こそこうであったが、話を聞けば、その人物――アルスの芯の強さとか、
いかに頼りがいのある心優しい人間かということがよく伝わってくる。
何より、時々毒づきながらも、なんだかんだで、アルス――仲間のことを大事に思っているんだということがバッツには感じられたし、
この状況でもローグがそう話すことを嬉しく思った。
そのあと二人は、どうにかして首輪を解除できないかという話に移った。
そこでバッツは、ためしに魔力を軽く首輪にあててみる。
危険はあったが、この程度であれば大丈夫であろうというのが二人の見解であった。
実際、この程度の魔力に反応するようでは、首輪としての機能をまっとうできないだろう。
首輪を無理にはずす行為というほどのものでもない。
ならば、魔力をあてて反応を見るくらいはまったく問題あるまい。
さて、ここまで長々と放送前の出来事を書いた理由のひとつは、
このときにシンシアたちとランドが、アリアハンにて出会ったことにある。
シンシアとザックスは、バッツとローグがアルスの家に入って暫く後に、アリアハンで偶然出会った。
二人はしばらくの問答の後、共に行動することに決め、アリアハンの城下街を彷徨った。
城下街はバッツたちの戦闘でところどころ崩れてはいるものの、
時間がたったこともあり、ほぼ全体の調和の中に溶け込んでいた。
そして二人はランドに出会った。
シンシアは、ランドが近づいていくのを対人レーダーでキャッチした。
賢明なものなら、ここでふと疑問に思うであろう。
なぜ、バッツたちやパウロにレーダーは反応しなかったのか?
それを説明することが今回の話における目的の一つである。
まず、レーダーの感知範囲が狭いことがあげられる。
パウロに反応しなかったのはそのためだ。
しかし、いくら狭いとはいえ、ランドが近づくのを捉えるくらいの能力はある。
ならば、アリアハンの広さを考えても、バッツやローグに関しては感知していてもおかしくないのではないか。
実際のところ、この二人に関しては感知範囲であった。
レーダーが反応しなかったのは、バッツが魔力を放っていたことにある。
対人レーダーと名前はそうなっているが、レーダーは、人はではなく首輪に反応する。
(したがって、死体にも反応を示す)
だが、首輪周辺に魔力などにより磁場が異常をきたしていれば、レーダーは感知しない。
そのため、バッツとローグを感知することはなかったのである。
逆に言えば、このレーダーを調べることは首輪について何かしらの情報を得ることができるのかもしれない。
とはいえ、今のところシンシアたちがそのことに気づくことはないであろう。……
外の騒ぎに、バッツとローグは気づかないわけではなかった。
しかし、声を聞き、お互いに目で知り合いかどうかを教え、
二人ともそうでないとわかったあとは、特に行動をおこさなかった。
それは、目的の人物に会うのにあまりよけいなことをしたくなかったのもあるし、
彼らの会話から、魔法が得意な人のようにも思えなかったからでもある。
三人はほどなくしてアリアハンを後にした。
あとはセリスが来て、サイファーとロザリーが来て、テリーとレックス、トンベリが来た。
ここまでは承知の通りである。…
放送があったのはそれからいくばくもしないころだったろうか。
空の色が変わり、星が見え始めた頃に、アリアハンにいる八人と一匹は、
同じ地響きを聞き、そして同じ声を聞いた。
放送が終わって、バッツはこみ上がってくる爆発しそうな感情をこらえるのに必死だった。
「クルル…クルル…!なんで…どうして……クルル……」
壊れたレコードプレーヤーのように、同じ単語をひたすら口の中で繰り返していた。
手は硬く、目尻をよせ、口元は大きく歪み、痛みすら感じぬほどに唇を噛んだ。
ローグはその様子を悲しげに見て、いつのまにか名簿に引かれた朱色のラインにしかめっ面をしていた。
(誰が死んだかよくわかるように…ってか。本当に、気の利いた主催者様だ!)
できることなら叫びたい。
しかし、二人はこの町にいるのが自分たちだけではないことに気づいていた。
バッツの漏れた声の一部を、ローグは聞いた。
「なんで…俺が生き残って…あいつが…死ぬんだ…。クルル……」
ローグははっとした。
もうひとつの民家でも、二人、項垂れていた。
パウロは「ムース…」と念仏のように唱え続ける。
セリスのほうは、震える手をおさえながら空の色を見ていた。
だが、現実は否応なく、彼らをさらなる衝撃へと突き落とす。
セリスの耳にはっきりと、女の叫び声が聞こえた。
ついで、男の哮るような声が聞こえた。
「バッツ…大丈夫か?」
「…ああ」
バッツとローグは、音の発生源の近くまできていた。
そこには、金髪の男と…頬に肉のない――骸骨がいた。
「また、おっぱじまったみたいだ」
ローグは舌打ちをして呟いた。
「短い息抜きだった…いや、それは違うな。こんな息抜き、冗談じゃないぜ」
「…また、殺し合いか」
「バッツ」
ローグは落ち着いた声で呼びかけた。そして、淡々と語った。
「俺の、おふくろは俺を生んだときにしんじまったらしい。難産だったんだな。
親父は、俺が7歳のときに死んだ。魔物に襲われたんだ。
親父は俺をかばって、俺が逃げてる間に、親父は囮になって殺された。
それから、俺は盗賊になったんだ。生きるためには、それしかなかった。
生き残るために、それからも俺はいろんな人を犠牲にしてきた。
どういうわけか、勇者だとか名乗るやつに拾われて、世界を救う旅なんてのもしたけどな。
バッツ…俺はな、何があっても生き残ってみせる。生きたいと思う奴が生き残るんだ。絶対に諦めない」
「…ああ」
バッツは戦いの方を一瞥した。
「あいつらの様子をみるか。…ああ、わかってる。わかってるよ。でもな…」
バッツはそれ以上のことは言わなかった。
クルルが死んだのに、自分が生き残った――意味があるのだろうか。
バル城の跡継ぎたるクルルが死に、天涯孤独――であった、自分が生き残ること。
―――でも、ローグのいいたいことはわかる。
今はただ、目の前の事態をどうするかである。
同時にそれは、気を紛らわす目覚めへの延長でもあった。
【バッツ 現在地:アリアハン城下町 所持品:チキンナイフ、ライオンハート、薬草や毒消し草一式
第一行動方針:様子見 第二行動方針:レナ、ファリス、クルルとの合流】
【ローグ 現在地:アリアハン城下町 所持品:銀のフォーク@FF9
第一行動方針:様子見 第二行動方針:首輪を外す方法を探す】
【サイファー 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能)
【ロザリー 所持品:不明
現在位置:アリアハンの城下町
第一行動方針:ハインを倒す/隠れる
第二行動方針:ロザリーを手助けする/ピサロを探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【パウロ(気絶)所持品:破壊の剣
現在位置:アリアハン城下町東側の民家二階
行動方針:ロランを探す】
【セリス 生存確認 所持品:樫の杖 シャナクの巻物
現在位置:アリアハン城下町東側の民家二階
第一行動方針:外の様子を窺う
第二行動方針:ロックを探す】
【ハイン 現在位置:アリアハン城下町 所持品:破壊の鏡、氷の刃、ルビーの指輪 行動方針:殺戮】
アリアハンのどこかに、テリー、レックス、トンベリがいます。
恐らく、この事態にも気づいています
勝負はあっけなかった。
地を蹴っていたピエールがそれに気がついたときには、既に体制を立て直す事も、防御をする事も間に合わない。
ラムザのブレイブブレイドは、上空からピエールの本体――緑スライムの部分を貫いた。
ピエールは頭から倒れる。緑色の液体がスライムから流れ出し、ラムザとゴルベーザの靴を汚した。
ゴルベーザは怪訝そうな表情でラムザを見る。
「……なぜ、助けた?」
「え?」
「助けてくれと頼んだ覚えはないぞ」
その言い方は少しばかり気に触るものがあったが。
「この怪物は明らかに危険でしょう。だから」
ラムザは正直に答えた。ラムザは元々、ゴルベーザを助けるつもりではなかったのだ。
ゴルベーザはたまたま現れチャンスを作ってくれただけであって、助けることになったのは…
「そうか…一応、礼は言っておこう」
「…いえ、不可抗力ですから」
そう、不可抗力である。
ゴルベーザは特に反応はせず、淡々と続けた。
「すまないが、白いマントを着た銀髪の剣士を見なかったか?」
「いえ…見てません。あの、金髪の…騎士風の女性を見たりしませんでしたか?」
ゴルベーザは静かに首を横に振った。その返答にラムザは少しばかり気落ちする。
――もうすぐ日が落ちるというのに、未だにアグリアスに会えない。落ち合おうといったのは自分なのに…。
ラムザは「ありがとう」と軽く会釈すると、ゴルベーザに背を向けまた森を駆け出した。
ゴルベーザはラムザの姿が森に消えていったのを確認すると、その場で溜息をつく。
…柄にもなく、周りが暗くなるにつれて不安が大きくなる。セシルが無事でいるという保証は、ない。
……。
ゴルベーザはピエールの動かない体を一瞥し、立ち去ろうとした――その時だった。
轟音と共に大地が大きく震動した。空が割れ、魔女の姿が映し出される。
そして――死者の名前を呼びはじめた。
ゆっくりと。
『…「アモス」……「ローラ」…』
しっかりと空を見上げ、一人の名前も聞きのがさまいとする。
『…「ゲマ」……「バレット」…』
人数が多いな…予想以上だ。
『…「宝条」……「ローザ」…』
――ローザだと?まさか…ローザ=ファレル。
『…「ムース」…「シャドウ」…』
セシルもこれを聞いているだろう。恋人の死を聞かされ、どれだけ悲しんでいる事か…?
『…「ティナ」…「ガーランド」…』
……。
『「セシル」』
ゴルベーザは目を見開いた。
「セシル―――――」
思わず弟の名前を口にして――しかし。
彼が理解したのは『セシルが死んだ』という事実の、内容だけとなった。
その先の思考は既に、停止していたから。
彼が弟の名前を口にしたと同時に、背後から後頭部に撃ち込まれた弾丸によって。
ロングバレルRを手にしたピエールが、物言わぬ死体となったゴルベーザの後ろでゆっくりと起き上がった。
ドロドロとした緑の体液が、また地面に落ちていく。ピエールは…まだ、生きていた。
ラムザもゴルベーザも、ピエールは完全に絶命したと思っていた。
本体であるスライムがほぼ真っ二つになっているのだから、当たり前である。
いや、ピエールの身体はラムザに貫かれたその時、確かに停止していた。
脅威としかいいようがない。魔物だからとか、そういった次元ではないほどの生命力。
それもまた、あまりに高すぎた主人への忠誠心からきたものなのか。
ピエールは何も考えず、生と死を彷徨う身体で祝福の杖をふりかざした。
何度かそれを繰り返すうちに、あまり傷の回復を実感できないまま、杖は音を立てて壊れた。
「……」
ピエールは壊れた杖を投げ出すと、そのまま草の上に倒れこんだ。
【ラムザ(見習い剣士 アビリティジャンプ) 現在位置:レーベ南の森から移動
所持品: アダマンアーマー ブレイブブレイド
第一行動方針:アグリアスを探す
最終行動方針:ゲームから抜ける】
【ピエール(瀕死) 現在位置:レーベ南の森(南部)
所持品:鋼鉄の剣 ロングバレルR 青龍偃月刀 いかずちの杖 魔封じの杖 ダガー 祈りの指輪
第一行動方針:?(動けない)
基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
※動ける状態ではありません、このまま死亡する可能性があります。
祝福の杖は壊れました、ゴルベーザのアイテム(グリンガムの鞭 皆伝の証 浮遊石)はそのまま放置。
【ゴルベーザ 死亡】
残り105人
>>549を修正します
【バッツ 現在地:アリアハン城下町 所持品:チキンナイフ、ライオンハート、薬草や毒消し草一式
第一行動方針:様子見 第二行動方針:レナ、ファリスとの合流】
気づいたのは大分前なのですが、
なかなかこれませんでした、申し訳ないです。
今回こそはと見直したんですが…鬱
またまた失礼しますorz
再び
>>549です。他の若干の修正を交えてやります。これで完璧のはず…。
ムースを消してすっかり安心していました、本当に申し訳ない…orz
どうもいつも最後の状態確認が甘いようです。
指摘してくれた人ありがとう。
【バッツ 現在地:アリアハン城下町 所持品:チキンナイフ、ライオンハート、薬草や毒消し草一式
第一行動方針:様子見 第二行動方針:レナ、ファリスとの合流】
【ローグ 現在地:アリアハン城下町 所持品:銀のフォーク@FF9
第一行動方針:様子見 第二行動方針:首輪を外す方法を探す】
【サイファー 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能)
第一行動方針:ハインを倒す 第二行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【ロザリー 所持品:不明
第一行動方針:隠れる 第二行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
↑共通現在位置:アリアハン城下町
【パウロ 所持品:破壊の剣
現在位置:アリアハン城下町東側の民家二階
第一行動方針:? 第二行動方針:ロランを探す】
【セリス 所持品:樫の杖 シャナクの巻物
現在位置:アリアハン城下町東側の民家二階
第一行動方針:外の様子を窺う 第二行動方針:ロックを探す】
【ハイン 現在位置:アリアハン城下町 所持品:破壊の鏡、氷の刃、ルビーの指輪
第一行動方針:サイファーを殺す 第二行動方針:殺戮】
557 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/11/28 16:23:01 ID:wCP6xbLa
(;´Д`)スバラスィ ...ハァハァ
何となく保守