DQのギャルゲーを本気でプレイしるスレッド11

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881名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/09(土) 09:19:05 ID:K3ge2c3z
保守…。それは場つなぎ氏を呼ぶ儀式。
882名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/09(土) 18:30:03 ID:q9pax11m
hosyu
883名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/09(土) 22:03:09 ID:lwfOIBow
アルスは保守の呪文を唱えた。スレの寿命が1日延びた。
884名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/10(日) 14:43:16 ID:CPjmUSBR
「今夜あたり更新かな」と俺は思った。
885名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/10(日) 22:02:46 ID:N7MgP71V
今夜、来週か再来週あたりが更新だと思った。
886名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/11(月) 23:35:12 ID:OighKGnc
試験なんてなくなればいいのにと俺は思った。
887名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/12(火) 00:19:43 ID:X/4As8gq
クレスポ保守
888名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/12(火) 22:54:16 ID:s4rcfBjH
>>886 現代人として生きていく以上、試験は一生憑いてくる。野性に還れば
試練が憑いて回る。
889名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/13(水) 21:05:10 ID:Tx9FKeOG
大分早いけど保守しときますね。
890名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/14(木) 19:03:44 ID:uOorkq84
保守1
891名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/14(木) 19:51:10 ID:pHbSt77h
900までに更新されるかなあ。
892名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/14(木) 21:33:16 ID:hz0fIRAg
>>891
ねーよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
893名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/16(土) 00:32:58 ID:KmrioIkA
>>891
あるあるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
894名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/16(土) 01:32:38 ID:ipcmFz1W
やっと過去ログ読み終わた(´д`;)
このスレは場つなぎ氏の長編用のようだな

…サロン辺りで短編用立てたらプレイヤーやりたい人っている?
GMヤテミタイ(´・ω・)
ギャルゲでなくエロゲになりそだが
895名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/16(土) 03:47:48 ID:ga5+R2n5
そろそろGMやりたい人が出そうな時期だと思ってたら、現実に。

もうすぐ長期休暇の季節に入るし、人もそれなりに増えるだろうから、
この際新スレ立ててもいいんじゃね?GM練習用スレに使ってもいいし。
896場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :2005/07/16(土) 04:40:07 ID:wrtU2VqN
>>894
はいはーい!漏れプレイヤーやりたいでつ!(ぉ

正直申し上げて、このスレは実際ピンクサロン向けかもしれませんでつ
この板の二大DQギャルゲースレの鬼畜王スレさんですら、ハーレムシーンは別サイトで書かれるようになってしまいますたし
GMさんの描かれる物語にHシーンが頻出するのであれば、堂々とHの描けるピンク鯖に移るのがベストかもでつ
かくいう漏れも最初ソレ目的でこのスレにやってきたクチでつから

けれどそれはそれ、漏れは漏れ
漏れはこのスレを続けていきますです!更新いきまーつ!
と予め書いておくのは容量がヤバめなせいでつ・・・
容量オーバーになってしかも新スレ立てられなかったら、どなたか新スレよろしくです。。。
897場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :2005/07/16(土) 04:41:02 ID:wrtU2VqN
このまんま眠っちまうのは惜しいよな。せっかく二人っきりなんだから。
俺は、ガラスに映る紅茶色の巻き髪と実物とを交互に眺めた。このお姫様とサシできちんと話して誤解を解くにも、
俺がサントハイムに来た理由を俺の口から聞いてもらうのにも、ちょうどいい状況だ。しかし……。
それには、アリーナが俺の言うことにちゃんと聞く耳をもってくれる、という条件がつく。昼間の調子からいって、
話したところで無視、否定、拒絶。それでも続ければ怒って飛び出してっちまうだろう。この場から逃げ出せない、
嫌でも俺の話を聞かなきゃならないような状況に持ち込まなきゃならない。だがこのお姫様、ドアに鍵かけた
くらいじゃ蹴破って逃げるだろう。ハンパな手じゃ無理だ。椅子に縛り付けるとか(バーバラに変態呼ばわり
されそうだが)麻痺でもさせて動きを奪うとか……。難しいな。アリーナに弱点でもあればな。カタツムリ見ると
固まったり、くすぐり攻撃かけると機嫌直ったり……それほどのガキじゃないよなあ、あの王女様。
弱点か……。
そうなんだよな。アリーナの……“アルト”の弱点。教えてもらってあるんだよマーニャさんに。実技指導付きで。
すなわち、背後からの不意の抱きつき攻撃。相手に甘えたり誘ったりからかうために用いられるワザ。背の高い
人間に行うと首締めの追加効果もあり、ターニアとビアンカの得意技である。成否は、いかに相手に気付かれずに
後ろへ忍び寄れるか、反撃を受けないよう動きを封じられるかにかかっていて、そのためには敏捷さと大胆さが
必要となり……。
俺は前髪をつかみ、顔をしかめる。あれをアリーナにやるのはリスクでかすぎる。女が男にいきなり抱きつい
たって男が喜ぶだけだが、男が女しかも王女様さらにアリーナにやったら、交友的社会的身体的に何されるか
わかったもんじゃない。だいたい実際にアリーナの弱点なのかもわからない。マーニャさんは、本当にアリーナに
俺が実行するとまで考えて教えてくれたのか怪しい。あれもマーニャさんのいつもの悪ふざけかもしれないわけで。
なんでそれしきのことでアリーナが“なんにもできなくなる”のだろうか……マーニャさんを信じたいとは思うけど。
898 :2005/07/16(土) 04:42:05 ID:wrtU2VqN
振り返ってみる。俺の少々危険な考えなど知るはずもないアリーナが、背と右腕を上に大きく伸ばしていた。
手首から肘までの小麦色が二の腕の包帯の下に消え、包帯の絹よりも白い肌となって肩口にあらわれ、ローブの
中に隠れる。その白は左の肩から出て、徐々に茶色く色づき、肘からは完全な小麦色に戻る。真ん中のあの白が、
アリーナ本来の身体の色だろう。背中も腰も胸も腹も、きっとあんな真っ白だ。無性に抱きついてみたくなるほど
涼しげな白い背中……。
『……!?』
今俺に見えているのは、アリーナの……王女様の、ローブも何もまとっていない白い背中。それは――肌は
吸い寄せられそうなほど白く、光沢があり、その肌を左右に分けるまっすぐ美しく下るラインが引き締まった腰で
さらりとすべって消え、そのラインにもう少しで繋がりそうなへこみが、曖昧なすじになって、ぷくっと丸くふくれた
二つの肌肉の間に挟まれている――確かに、無性に抱きついてみたくなるような、涼しげで、寂しそうで、可愛い
背中だったのだ。俺は驚いてまばたきした。と、裸の背中は、焦茶色の椅子の背もたれと橙の地味なローブに
遮られた。そして、何事もなかったかのように、アリーナが腕を下ろした。
899 :2005/07/16(土) 05:06:39 ID:wrtU2VqN
『………』胸がぎゅっと高鳴り、膨らんだ血が肌を圧迫している。な、なんだ、今の……夢?運命?まさか。眠気は
あるが、ちゃんと目を開けてたはず。じゃあ何なんだ……もしや?周りを見回す。天井や壁が透けて外が見える
なんてことはない。やっぱただの妄想か……?
……いや。妄想だったにしてもだ。いつものドレスなら袖があるべき部分からのぞいている丸い肩のその白さは、
アリーナが今見たような背中をしてることを示している。違っていたとしても大差はないはず。抱きしめたてみたくなる
背中のはず。俺は唾を飲んだ。あんな吸い込まれるような背中だとしたら……実際に抱きしめてみたい。健康的に
日に焼けた腕や顔でなく、その背中を……白い身体を、この腕の中に抱きしめてみたい、抱きしめてやりたい、
やってみたい!
いいじゃないか、やったって。抱きつかれるってのがアリーナの弱点ならそれでいいし、弱点でなくたって、せいぜい
一発みぞおちに食らわされるだけだろ。そうして嫌われたとこで、今が最悪なんだからこれ以上悪くなりゃしない。
アリーナは親父さんに報告して法的な復讐をしてくるような軟弱な女じゃあない。言いふらされたって、マーニャさんが
教えてくれたことをやってみたんだという動機がしっかりとある。何の言い訳にもならない?どうでもいい。
そうっと一歩、前へ踏み出す。深呼吸を気付かれないよう2つ。相手はすばしっこい。ターニアやビアンカにやるの
とはわけがちがう。勝負は一瞬!
できる限り普通に歩み、アリーナの椅子の背後へ近づく。焦るな、焦るなよ。やられるにしてもやってからだ。今の
アリーナなら俺が間合いに入ってもひたすら無視してくる。なので殺気を悟られなければ先制攻撃は必ず成功する。
ちっ、俺を信用してないくせに、俺が何もしないと思ってるのか。世間知らずなお姫様め。
目標物に接近、距離、半歩前。振り向く様子なし。
いけるっ!
俺は、踏み込みながら身体を前に倒し両腕を差し出して、アリーナの上半身をすばやく巻き込んだ。
900 :2005/07/16(土) 05:07:52 ID:wrtU2VqN
肘を堅い肩が支え、手首に丸い鎖骨を感じ、胸に柔らかい髪と頭があたり、手のひらを温かいローブが受け止める。
「……!!」びくり、アリーナの肩が強ばり、震える。やばい!一瞬で俺は後悔した。肘打ちか殴り?あるいは頭突き、
背負い投げ?やばい、防御しようが、ない!
俺は腰を引きかけた、が。『……?』ありゃ?おい……反応、これだけか?
震えてるだけだ。ビアンカやマリベルなら、けたたましく抵抗するとこなのに。
もしかして……マーニャさんのこのワザ、本当にアリーナの弱点なのか!?こうされると、この男勝りのお姫様は
“なんにもできなくなっちゃう”のか?
どちらだっていい。ここまでしたら遠慮は無用!
ぎゅ。
俺は、おぶさるように、震えるアリーナを上から強めに抱きすくめた。うわ、細え……なのにやたら凹凸があって、
男の身体並みに堅い。無駄な肉がついてない。外見は普通の女の子と変わらないのに。そうとうこれ、引き締めて
あるんだな。普段は髪とマントに隠れてる首筋も、やはり肩と同じ、薄く黄色がかった白。やっぱ、さっき“見えた”
通りの身体……顔に似合う可愛い身体してんだ、アリーナは。
なんだか変な気分だった。別にヤラシー気分ってわけじゃなく……いやまあもちろんそういう気分にもなってるん
だが。そりゃあ性格はともかく可愛い王女様それもローブを巻いただけの身体を抱きしめてるんだからそんな
気分にならないほうがおかしい。俺の今感じてる気分はそれだけじゃなくて、なんつーか、違和感というか、
嫌悪感というか……。
901 :2005/07/16(土) 05:08:46 ID:wrtU2VqN
「………」お。アリーナの首がゆっくり動き出した。俺の腕を撫でていく巻き髪。少し濡れている。俺は特に身構えず、
待つ。「………」俺の右腕に沿うようにして、アリーナが見あげてくる。不可思議のあまり誰かと見合わせるような顔。
頬を白くし、わずか開いた小さな唇を小刻みに震わせている。男に抱きしめられてるのになんだろうなあ、強いはずの
お姫様の、この何にも知らないような表情は。
『アリーナ。お前、可愛いな』俺は笑った。
「……なっ」アリーナの顔がゆがみ、強ばりがわずかに緩んだ。今度こそ、くる。俺は腰を引いて足を開き、アリーナの
両肩、両の上腕を背もたれごと手と肘で抑えつけ、額をアリーナの右肩胛骨に押しつけた。薄い汗の匂いがした。
「な、なっ……なにするんだっ!」
ようやく暴れ出すアリーナ。だがもう遅い!「は、放せっ、ウィルっ!無礼者っ!」身体をひねり、前に横にもがく
アリーナに、脇を締め足を踏み出してしがみつく。ふっ。ガッチリ固める時間を与えちまったお前の敗北だ!
「放せ、このっ……てっ!」強引に下から出ようとし、俺の手首にあごをぶつけてうめくアリーナ。だから無理だっての。
『おとなしくしろよ』っと危ない!髪をつかみにきた手をすんででかわす。『おかしいな。こうするとアリーナはおとなしく
 なるって、マーニャさんに聞いたのに』
「マーニャにっ?」暴れ続けながらアリーナがわめく。「ちくしょうっ!何のつもりだ、そんな余計なことっ!」
『マーニャさんは、俺と君が仲直りす……あぶねーな!仲直りするための手を教えてくれたんだよ』
「な、何が仲直りだっ!こんな無礼をしといてっ!ボクを誰だと……」
『今は誰だか知ってる。けどな、お前と会ったときは知らなかった。クリフトっていう、かなり変わった、可愛い女の子だと
 思ってただけだ』
「う、嘘つけっ!知らなかったんならなんで……ちくしょっ、放せ、放さないと……っ!」
知らなかったから今こんなことできてんだけどな。もし知ってたら……いづっ!右の肘かわしそこねた。なんとか
押さえ込み直す。ほんと細いなアリーナって。あと少し横幅広かったら抱え直せなかったとこだ。
「うう、くそっ!」アリーナが悔しそうにわめき、暴れに暴れる。ったく、上品な王女様だ!
902名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/16(土) 05:19:29 ID:DV3+TSmH
更新中?
903 :2005/07/16(土) 05:21:16 ID:wrtU2VqN
この後ろから抱え込み攻撃は、反撃を遅らせるのには効果があったが、アリーナの力を減じるには役に立っていな
い。ま、座ってる相手には首と背中を押さえる時間があればどうにかなるので、それで充分。ひとつ言えるのは、
ベレスとの戦いで敏捷さと技のキレを見せたアリーナだが、こういう最終的なとこでの身を守り方はうまくないらしい。
フェイントしたりバランス崩そうとしたりせず、ただ力任せに暴れ、単純な攻撃を繰り出してくるのみ。本気の取っ組み
合いをしてくれる相手がいなかったせいかな。じゃあ俺が貴重な相手をしてやってるってわけだ。
『俺だってホルスの従者やってんだぞ。君が王女だってわかれば、さっさとアイサツしてるって』
「うるさい!とにかく放せ、このやろっ!」
とにかく目的は達した。そしてしっかり(大ざっぱな意味での“しっかり”だが)会話はできてる。でもやっぱ聞く耳
持ってくれない。アリーナが今さっき言った通り、この無礼千万な状態でいきなり本音を語り合うのは無理な話か。
いったん話を変えよう。俺が攻めていけるような、アリーナにとって引け目のある話題がいい。
『ところでアリーナ』にやりと頬をゆがめる。『どうして俺たちを尾けてきたのか、聞いてなかったな?』
「……!」アリーナの抵抗が一瞬止まり、「つ、つけてなんかない!」再開。ローブがあちこちでずれはじめたが、
気を遣っちゃいられない。
『お前、俺を嘘つき呼ばわりしたよな』声を低くし、言ってやる。『君のが嘘つきじゃないか』
「………」また、アリーナが止まる。やりやすいな。このお姫様、素直すぎ。
『もう一度聞くぞ。どうして……』
「ど、どうだっていいだろっ!ウィルたちだってボクを追いかけてきたじゃないかっ!」
何だよそりゃ。理由にも反論にもなってない。
『俺たちは、友達として、君の無茶を止めるために追ってきたんだが』俺はアリーナの小さな耳に口を近づけて、
ゆっくり言った。『アリーナも、か?』
「ち、ちがうっ!」アリーナが怒鳴り、頭を横に引いた。攻撃でなく回避だった。「そんなんじゃないっ!」
『じゃあ何なんだ。俺に用があったんじゃないだろ。ミネアさんと話でもしたかったのか?』
しまった。“そうだ”なんて肯定されたら先がない。「ちがう!」良かった、短慮短絡素直なお嬢様で。
904 :2005/07/16(土) 05:28:18 ID:wrtU2VqN
『それなら……』
あ。アリーナの首筋の生え際を見て思いつい……思い出し、アリーナの耳の後ろへ右手を動かす。この状態で
髪撫でれば、アリーナはもっとおとなしくなるんですよね、マーニャさん?
『どうして、だよ』
ささやきながら髪に触れ、指先ですっと掃く。「ひっ……」案の定、いやそれ以上に大きく、アリーナは弾けるように
震えた。怒りに赤くなった頬から血の気がひき、身体と腕を縮こまらせて硬直する。右腕が俺の肘から外れて自由に
なったはずなのに、何もしてこない。マジかこれ?
俺は、驚きながら、今度はそろえた指の腹で、子猫の毛並みを整えるようにそこを撫でつけてみた。
「や、やめろ!やめ……ぇ」アリーナが嫌がるように首を振り、ますます縮こまり、震えた。
俺にも震えがきた。うっひゃー面白れー!これ本当にアリーナか?これだけのことでほんとに何にもできなくなってる。
ようし、今までナマ言った、おしおき分だ!
『どーしたアリーナ?身体の具合でも悪くなったか?』
紅茶色の髪に軽く指を入れ、うなじごと静かに撫でつけてやる。まだ濡れているし汗ばんでるので、引っかからない
よう優しくしなければならず、感触そのものはそれほど良くないが、しかし、アリーナの髪だ。
「やめっ……やめぬか……っ」アリーナが、まったく力がこもっていない声でうめき、何かをこらえるように唇を噛んで
下を向く。俺が撫でている間は歯を食いしばって息を止め、放すと急いで呼吸する。「やめて、やめてくれっ」くーっ!
なんだよ、可愛いじゃんかよ。こんなアリーナを見て、もちろんやめられるわけがない。構わず髪と首筋を丁寧に
撫で続ける。マーニャさん、ありがとう!素晴らしい情報でした!
巻髪をかきわけて少し持ち上げ、下をのぞいてみる。前の首筋は黄味がかっているが、髪の下はやはり白い。
うー、生え際がなまめかしー。ここまでやっちまってんだし、いっそ頬ずりしてみたい、が……さすがにただの変態か。
そういうことは、本格的に仲良くなってから、正式な了解とってやらせてもらうことだ。柔らかそうな前髪も触って
みたいが、それも、そのときの楽しみってことで。
905 :2005/07/16(土) 05:29:41 ID:wrtU2VqN
『気持ちいいか?』背中のほうから髪の下に手を入れると、うぶ毛がふんわり触れてくる。『かゆいとこあったら言えよ』
「………」む。返事がない。やりすぎた……かな。
よりによって俺に、されるがまま髪をまさぐられるなんてのは、気の強いアリーナにとっちゃずいぶんな屈辱だろう。
もう少しいじってみたいとこだが、そもそも本来の目的はまともに話をするってことなんだし……このへんで勘弁して
やるか。
『アリーナ』髪から引いた右手をふたたび前にまわす。『俺たちを追ってきた本当の理由、聞いてないぞ』
「………」
あれ。まだ震えてる。こりゃ相当怒らせちまったな。こいつが本気になって怒り出したら俺には手をつけられなく……。
『……?』
へ?「……っ。……っ」この呼吸音、この肩と胸の震わし方……もしかして?
頭の血の流れが一瞬止まった。ばっ、莫迦な。アリーナなんだぞ、こいつは!
「ひっ……く……。か、かあ…さまぁ………っ」
『なっ!?』あわててアリーナをのぞき込み、『うわっ!?』その身体から手を放す。なななななななっ!?そんな、
嘘だ。こいつが?これだけで……?信じられん。
アリーナは泣いていた。その蒼白な顔は、追いつめられた子供のように――倒れる寸前のミネアさんのように――
恐怖に凍りついていた。ベレスと生死をかけて戦っていたときもまったく見せなかった絶望的な怯え。ミネアさんに
あってもアリーナにはありえない表情。涙。弱々しい姿。
『………』
呆然と後ずさりする。あのアリーナの泣き顔(可愛い!)……あのアリーナを泣かせられた(すげー俺!)………
……な、泣かせちまった!!!
まさか。泣くほどのことか?ばか。当然だろ。アリーナだって女の子だ。けど。アリーナだぞ?可愛い顔して俺より
ずっと強い。男勝りで生意気。思い込みが強くてわがまま。そのアリーナが、髪をいじられた程度で、泣きべそを
かいている……。
『あ、アリーナ』とにかくは謝っとかねーと。『……は、は、ははっ。調子に乗りすぎた。悪かったな』
な、なに笑ってんだ俺。だが冷静になろうとするほどおかしさがこみあげてきて、頬と腹がいうことをきかない。あの
アリーナがなあ。おかしくて仕方ない。アリーナを泣かせておいて、その姿を見ながら、俺は笑っている。ひでーな。
ははは……。
906名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/16(土) 05:35:48 ID:DV3+TSmH
容量大丈夫かな
907 :2005/07/16(土) 05:39:27 ID:wrtU2VqN
「うおあああああああぁあっ!」
バァーーーーン!!
ぎっ!?かかとから背、頭頂までの肉と骨に振動が突き抜けた。
アリーナが、立ち上がっていた。拳を叩きつけられたテーブルが、ぴしり、と変な音を響かせる。座っていたはずの
椅子は、消えていた。
『………』汗が止まる。唾を飲む。キレちまったあいつ……やばい……。
アリーナがこちらを向く。眉を逆立て、ぎりぎりと白い歯を噛みしめた怒りの形相。拳は握りしめたまま腰から少し
放して震わせ、脚を開けて仁王立ちしていた。周囲の空気が揺らぎそうなほどの怒り、完全な敵意……。
いつの間にか俺は、後ろへ足を引いていた。やばい。マジでやばい。何されるかわからない。逃げたほうがいい。
逃げたい。けれど……。
あいつを泣かせちまった。笑っちまった。それで逃げたりなんてしたら……俺は一生あいつに負い目を感じちまう。
友達だなんて言えなくなっちまう。そのくらいなら……。
逃げたがる足と腰、笑いたがる頬を引き絞って、俺は覚悟を決め、アリーナを見返した。くるならこいよ。ただし
殺さないでくれよ。やることあるんだから。
『……?』こない、な。どうしたんだ。
見つめ直してみて『……!』はっとなった。濡れた頬にまた一粒、光るものが落ちていっている……。
アリーナは、まだ、泣いていた。俺をにらんでいるのに焦点の合ってないような瞳。睫毛に涙をたっぷりためた、
泣き出しそうな瞳。哀しみを怒りで抑え、そのせいでいっそう哀しさが増した痛々しい瞳。
あれは……。俺は息が詰まった。あの瞳は……。
「………」その瞳が、前髪に隠れた。俺に気付かれたのに気付いたのだ。アリーナの膝が曲がり、腰が落ちる。
俺は待った。ほんのわずか。
「……くっそおおおおおおっ!」
アリーナが、吠え、突進してくる。その絶叫と形相に、思わず腰が逃げかかる。ひええ、怖ええ!!
なんとか踏ん張り、待ちかまえる。あいつ、どっか動き鈍いな。ミネアさんの裾の長いローブのせいか。蹴りはない。
打撃?投げ技?右肘が下がった!そ――。
左のあごに、衝撃。
《アリーナの意識に変化が起きた》
《アリーナの状態が変わった》
《アリーナの評価が大きく下がった》
908 :2005/07/16(土) 05:43:18 ID:wrtU2VqN

起きあがったとき、アリーナはいなかった。
倒れてる間にドアの閉まる音が聞こえた気がしたが、俺が床に落ちた音だったかもしれない。どちらにしろアリーナが
出ていってすぐってことは空気の冷たさでわかったし、どうでもいい。追いかけるつもりは、ないんだから。
まさか、アリーナを泣かせちまうとはな……しかも、あんな簡単に。
喧嘩で負かしたわけじゃない。傷つくことを言ったわけでもない。髪をほんのちょっといじっただけ。それで、“かあさま”
……かあさまだってよ、アリーナが!乳離れできない子供みたいに。
っと、待てよ。アリーナの母親だから、王妃様。王妃様はもう亡くなってるようなこと、誰か言ってなかったか?
そうすると……?
それに、あの瞳。泣き顔を見られたっていう屈辱の怒りだけじゃなかった。哀しい瞳だった。
あのときのマリベルの瞳を思い出す。そして、たぶん、俺の瞳。
もしかしたら……アリーナも、何か、持ってんのかもな……。
『………』
それにしても……………いっつーーっっ!!!
あいつ……多少は手加減したんだろうが、この激痛と俺を一撃で気絶させた威力、ランドのストレートの比じゃない。
台所の水瓶の水を借り、あごを冷やす。骨折してはいないが、ひびくらいは入ってるかも。腫れてきそうだな。舌には
血の味がし、口をすすぐと下唇の左に浸みた。背中全体と両手がしびれているのは、無意識に受け身をとってたん
だろう。それ以外は特に痛みはない。アリーナは、くたばった俺に追い打ちをかけるような真似はしなかったらしい。
お優しいことで。
居間に戻る。アリーナの怒りの最初の犠牲になったテーブルが、わずかだが真ん中でひしゃげている。あーあ、
ひび入っちまってる。安全のため燭台をマントルピースに置く。
暖炉の前には、アリーナの服や靴がまだ干してあった。どうすんだこれ?明日とりに来る気か?考えてるうち、自然に
目が白いもののほうにいってしまう。男の情けない性……いや、いいんだよ、見てくれと言わんばかりに干してある
ほうが悪い。今なら誰もいない。触ったって何したって俺の自由……。
おい、恥を知れよ。アリーナのものにそんな卑怯で卑猥なことできるような男か、俺は。
909 :2005/07/16(土) 05:46:30 ID:wrtU2VqN
息をつき、名残惜しくもテーブルに戻り、カップを片づける。つまりアリーナは、ローブ一枚で外飛び出してったわけか。
まっすぐ宿へ帰ればいいが。風の吹く音がしてるから、薄着だと身体を悪くする。
さて、どうするか。すっかり目が覚めちまってるんだが、寝ないと、まずいよな。
かねての用意通りに毛布を敷き、横たわ……ろうとして止める。こんな冷たくて気持ち悪い濡れた服着て床に寝たら、
俺のほうが具合悪くなっちまう。着替えでも借りたいが……男物なんてないだろうな、この家には。
あ、なんだ。俺、[旅人の服]もう一枚持ってるじゃないか。今朝、破邪の剣といっしょに割引で買ったやつ。
[ふくろ]から取り出し、肌着ごとさっさと着替える。よーし、壮快壮快!これで気持ちよく眠れる!
横になる。眠りたがっている脚や背中から眠気が広がってきた。このまま任せりゃ眠れるな……。
……………。
“かあさまっ”“うおああああっ!”……。
だめだ。目閉じると、あいつの泣き面と怒り顔を思い出しちまって、息苦しくなってくる。だよなあ。出会って一晩と
経たないうちに友達だって認めてくれた女の子を泣かせちまったんだ。最低だ。ほんと調子乗って遊びすぎた。
もう本格的に嫌われただろうな。明日からどうすっか。まさかアリーナが泣くなんて思ってなかったし、そういう系の
弱点だとは思わなかった。マーニャさん、知ってて教えたんだろうか?だとしたら恨みますよマジで。
どんどん心は重く、あごも痛くなってくる。俺に泣かせられたのも、俺に泣き顔を見られたのも、アリーナにとっては
相当なショックだったはずだ。この上もしミネアさんたちにまでそのこと知られたら、あいつは……。何とか隠し通さ
ないと。何しろ明日は命かけた戦いに出かけなきゃならない。俺たちに恥を感じてたら、冷静に戦えやしないだろう。
あー……明日の重大性考えたら、やっぱあんなことやるべきじゃなかったな………。
910 :2005/07/16(土) 05:53:57 ID:wrtU2VqN
後悔したってしょうがない。明日いのいちであいつに謝ろう。今日はそう決めるだけで充分。ハイこれでアリーナに
ついては終わり。何か楽しいことでも考えて、さっさと寝る!
楽しいこと。何がいい。あ……フローラさん。フローラさんか。
優しく微笑んでくれるフローラさん。あの“運命”が本当なら、フローラさんはいずれ俺を……いずれ俺のものか。
すごいな。俺のするがまま、湧水みたいな青い髪をさらさら撫でても(うっとり俺を見つめて)、小さくって肉薄な唇に
キスするのも(頬ぽっと赤くして)、ドレスの上から胸を手のひらで包み込んでむにむにさすのも(我慢して目と口を
きゅっと結んで)、すべらかそうな丸い肩にくちづけるのも(俺がそうしやすいように腕を引いてくれて)、なんでも許し
てくれる!ああ、なんていう幸せな未来!もうあのとき、“俺”とフローラさん、恋人として最後まで経験済みだった
のかな。“俺”けっこう手慣れてるって感じしたし、やっぱ、すでに、ああ、フローラさんと……あのフローラさんとか。
信じられないなこのやろ。いつどこでだ。清楚なフローラさんだからサンマリーノなんかの安っぽな宿屋は不可。
そのくらいなら外。いっそ教会でとか。教会!?なんだよそりゃ。教会はお祈りするとこだ。ここで遊んじゃダメって、
ビアンカにしょっちゅう怒鳴られただろ。そんな場所でそんな。でも教会、いいかも。フローラさんを説教台に乗っけ、
あの長いスカートの中に下から潜り込む。フローラさんシスターやってたから相当に恥ずかしがるだろうなあ。でも
そういうフローラさんを見たくてやるんだから……ああ、これ、ミネアさんにでもいいな。ミネアさんのがもっと恥ず
かしがりそう、でもそこをちょっと強引に……嫌われちゃうかな。でもそんなことないか。ミネアさんて、好きになった
人にはとことん尽くしちゃいそうな……きっとフローラさんも……でもあまり尽くされすぎるのも困るなあ…………。
《装備:[旅人の服]→[旅人の服]》
911 :2005/07/16(土) 06:13:35 ID:wrtU2VqN

『………!』
すぐそばで人の声が聞こえ、夢から覚めた。
……あれ?どんな夢みてたっけ。思い出せない。すっかり頭の中から消えちまってて、いいとこですげーもったい
ないことしたって気分だけが残ってる。こういう気分もいっしょに忘れればいいのにな。つっかえてしょうがない。
ん……?誰かがすぐ近くにいる気配。ターニアか?ビアンカか?いい夢を邪魔するのはビアンカで、悪い夢から
起こしてくれるのはターニアだ。じゃあビアンカか。ところで俺、昨日どこで寝たっけ?下、やたら固いけど。
『!?』いててててっ!
鼻をつままれ、『なにすんだビアンカ!』俺は飛び起き、ビアンカをにらみつけた。
『……あ?』
目の前にしゃがんで眉をひそめているのは、金髪で日焼け顔の見慣れた女性ではなく……髪は紫、顔は色黒、
フード付き外套の下はアクセサリーだけを身につけた褐色の半裸体、そのすべてが美しくそそるお姉さん!
『ま、マーニャさん!?』
眠気を飛ばして叫ぶ。マーニャさんの後ろには同じ色の髪と顔のミネアさんの姿。あっちゃー。ビアンカがいるわけ
ないじゃないか。ここはコーミズ村で、ミネアさんたちの家なんだから!
「おはよう、ビルくん」気を取り直すようにマーニャさんが笑う。「髪、大変なことになってるわよ」
『え?』反射的に髪に手がいく。あ、これひでえや。濡らしたまま寝ちまったからな。
「外行って、髪と顔、洗ってきたら?」
『は、はい』
あれ。なんでマーニャさんがいるんだろう?聞こうとしたが、ひとあくびしたマーニャさんは、寝室に入ってしまった。
眠るために……じゃないだろ、わざわざ。
912 :2005/07/16(土) 06:15:21 ID:wrtU2VqN
目をこすりながら立ちあがり、ひと伸び。う。だるー……床で寝たせいかな。慣れてるはずなのに。
「………」テーブルに座ったミネアさんが、俺を見据えていた。頭がふらつく様子もないし血色も普通。良かった、
元気そうだ。けど……な、なんでそんな、睨むような細い冷たい目してんです?
『おはようございます。ミネアさん』
「……!」細い眉がぴくっと動き、ミネアさんは驚いたように俺を見つめると、恥ずかしそうに顔を背けた。
『……?』気まずいな。今回は何だろ。あ、昨日倒れたの気にしてるんだ。別にしょげ込むことないのに。まあ日に
二度もとなるとちょっとあれだが。
「ビルくん、はい」
寝室のドアから、マーニャさんが綿布のタオルを放って寄越した。「顔洗ったら、すぐ戻ってきてよね」
『は、はい……』ということは、俺に何か用があって来たのかな。
勝手口から外に出る。うーん、朝の空気が涼しくて爽快なのは、どこも同じだな。前には昨日の夜見た通りの青い池、
そこに浮かぶ、少々不気味な、赤い島と黒い家、向こうには森、さらに向こうには霞のかかる山。そして、青空。まだ
日は昇っていないものの、すっかり明るい。今日も晴れることは間違いなし。
今日は、あの山に登り、ベレスと再戦。険しい峠だっていうし、ミネアさんの先導と、アリーナの腕にかかってる。
ひょっとしなくてもかなり危険な日になりそうだ。気合い入れないとな。
『………』アリーナ、か。顔洗って、マーニャさんの話が済んだら、さっさと謝りに行こう。たぶん、俺の顔見るのも
嫌だ状態なんだろうけど。ま、もう一発くらいなら殴られてやってもいいかな。
《ミネアの評価がちょっぴり下がった》

手を切りそうだが顔と頭には気持ちいい冷水と、微かに香水の匂うタオルで、まぶたと頭の奥に残っていた眠気を
すっきり消して戻ってくると、ミネアさんは台所でジャガイモを切っていたが(青菜も置いてあって鍋にお湯湧かしてる
から、スープでも作るらしい)、マーニャさんはテーブルに座って、俺を待ちうけていた。
「ビルくん。あの池の水、冷たくて気持ちよかったでしょ」
うなずいた俺の手からマーニャさんはタオルを取り、洗濯桶へ投げ込む。その音にミネアさんが振り返り、何のせいか気付いて
マーニャさんをにらんだ。マーニャさんは平然と椅子に座り直す。
913 :2005/07/16(土) 06:18:43 ID:wrtU2VqN
「じゃ、ビルくん、こっち座って」
テーブルの角を挟んで向かい合う椅子を俺に示してくる。少し上のほうから喋ってるような口調なうえに、少し早口。
急いでるらしい。よくわからないけど、お手柔らかにお願いします……。
「ビルくんて」腰をかける前に話しかけられた。「女の子のお友達、ずいぶん多いのね」
うえ。やっぱりビアンカのこと、素通りしちゃくれなかったか。
『えーと……ビアンカっていうのは、俺の家の隣の宿屋の娘で、俺が寝坊したりなんかすると起こしに来るんですよ。
 それでちょっと寝ぼけちゃって……』
「へーえ?その娘、歳はいくつ?」
『俺より2歳上です』
「あっそう……ふーん。仲良いんだ」
『そ……そりゃまあ、お隣でお世話になってますから。嫌でも仲良くしないと』
「婚約とかはしてる?」
『え?』ぎょっとなった。なんでマーニャさんが知っ……知ってるはずない!『えっと、ビアンカが、ですか?』
「してるわけね」うっ。とぼけようとしたけどマーニャさんには通じなかった。台所のミネアさんも、包丁持ったまま、
驚いた顔でしっかりこっち見てる……まずい。
『村の人が勝手に……』大きな声になってしまい、あわててひそめる。『勝手に、そういうウワサをしてるだけです。
 まだ正式にはしてません』あ、この言い方はまずい。『するつもりもないですよ。仲は良くても、そういう仲ってわけじゃ
 全然ありませんから』すぐに付け加える。
「そんなムキになんなくてもいいわよ、ビルくん」マーニャさんがくすりと笑った。「よくあることよ。あたしやミネアも、
 小さいときからよく言われたわよ。マーニャちゃんは誰々くんと仲良いから将来はどうとかね。ちょっと仲良くした
 だけで、すーぐそんな話になっちゃうから、こういう小さいとこは嫌なのよ」
『え。ええ。同じです』胸をなで下ろす。確かに。一緒に来ただけなのにミネアさんの婚約者にされた俺。この村も
見事にライフコッドと変わらない。
「まあ、あたしは、朝起こしになんて行ってやるほど、仲良い子はいなかったけどね」
『弟扱いされてるんですよ。昔から』肩をすくめる。『それで、何かとお節介やいてきて……』
914 :2005/07/16(土) 06:40:39 ID:wrtU2VqN
「ふーん。いいお姉さんじゃない」マーニャさんがそっけなく言う。興味を失ったらしくテーブルを指で撫ではじめている。
ミネアさんもすでに背中を向けている。ほっ。でもなんで俺はビアンカの説明するのにこんなに焦るんだ?やましい
ことなんてないだろうが。勝手に許嫁にされそうなこと以外……それだって別にやましくなんてない。
「それじゃあ、昨日の娘は?」
『はい?』聞かれて俺は頭を巡らす。昨日の娘……バーバラ?いやマーニャさんが知ってるはずない。ミレーユでも
ないはずだ。そうすると、サンディ?
『誰のことですか?』
聞くと、マーニャさんは、指についたほこりをフッと息で吹き飛ばしてから俺を見、またテーブルをこすり始めた。
「魔族に襲われてるとこ、変な魔女さんに助けてもらったんじゃないの?」
『え?』変な魔女、とくればバーバラだが。『どうして知ってんですか?』
「さっきミネアから聞いたのよ」事も無げにマーニャさんが言う。あ。ミネアさんが台所から、すまなそうに俺を見てる。
そういうことか。だけど、バーバラを“変な魔女さん”なんて、ミネアさんが言ったのかな?
『あの魔女は、バーバラっていう娘です。マーディラスの国の魔法研究所ってとこの所長で……サラボナで、マーニャ
 さんたちと会う前のよ……』っと。夜とは言えない。『日に、初めて会ったんですよ』
「すぐに仲良くなったわけね」
『ええまあ……』皮肉だと気付いたが言い返せない。あっちから勝手に仲良くしてきたんですよと主張したところで、
俺の株がさらに下がるだけだ。
『マーニャさんと同じようにルーラが使えるんです。昨日はそのおかげで助かりました』俺はできるだけすまして言った。
「その娘、まだノルザスさんとこにいるわけ?」
『ノルザスさん?』何度か聞いた名前……宿屋の主人だっけか。『いえ。昨日、さっさと帰りましたよ』
「そう。残念ね。会ってみたかったのに」台詞ほどには気のない調子でマーニャさんが言う。バーバラとマーニャさん
……どっちも火炎系の得意な女魔導師。案外気が合うかも知れない。一度会わせてみたい……けど、ライバル心
燃やして、どっちが世界一かって対決始めちゃったりして。まあ、マーニャさんが、バーバラみたいな小娘をまともに
相手するとも思えないけど。
915 :2005/07/16(土) 07:01:24 ID:wrtU2VqN
「ビルくん」ん……なんか急にマーニャさんの言葉に力がこもった気が。「なんか、隠し事してない?」
『え?』俺はマーニャさんを見つめた。マーニャさんは、指でテーブルをいじりながら、目を俺に向ける。意味ありげな
鋭い瞳、そして楽しそうに笑いを含んでいる口元。何か知ってるみたいだ……でも、何を?
『ビアンカと、バーバラのことでですか?』
「ん?そんな娘はどーだっていいのよ」マーニャさんがあっさり笑い捨てる。人に聞いといて……。「昨日、何か、
 イイコトあったでしょ?ビルくん」
どきりとし、背筋が伸びる。イイコトっていうと……アリーナを抱きしめたこと。泣かせちまったけど。だけどマーニャ
さんがそれ知ってるわけないよな。だとすれば、ミネアさんに占ってもらったことか?ミネアさんを2度も寝室に運んだ
ことか?もしかしてミネアさんに何かしたとでも思ってるんですか?
『……別に、何もないですけど』
やましいことは何もなかった。マーニャさんの知ってるようなことは。
「じゃあ、ビルくん」マーニャさんは、俺に向き直ると、テーブルに肘を置き、俺に顔を近づけてくる。真剣だが、どこか
笑っている顔。俺は少し首を引いた。不気味な予感……。
「昨日の夜、アルトに何したの?」マーニャさんが言った。「何しようとしたの、って聞いたほうがいい?」
な、な……ななななっ?
血の気がひく。顔が引きつる。腰が椅子から浮いている。『な、なんでマーニャさん、知ってんですか?』
あっ!今やっと気付いた。マーニャさんがさっきまで指で撫でていたのはテーブルに入ったヒビ……アリーナが拳を
叩きつけた跡……!知ってたんだ。何故っ!?
「ふふふっ」俺の顔を見て、マーニャさんがくすくす笑い出す。「アルト、ずいぶん暴れたみたいね。アルトを襲うん
 ならね、ビルくん、この家はよしてもらいたかったわ。それに、ちゃんとムードのあるところだったら、アルトもその
 気になったんじゃないの?」
『ち、違いますよ。そんなつもりじゃ……』最初はそんなつもりだった気もするが。『マーニャさん。なんで知ってん
 ですか?』
916 :2005/07/16(土) 07:30:57 ID:wrtU2VqN
思わずマーニャさんに身を乗り出し、迫る。頭が大混乱中。アリーナに謝ればそれで済むはず……アリーナと
俺だけの問題なはずだったのに。マーニャさんが知ってる。もしかしたらミネアさんも?まずい……まずすぎ。
「簡単よ」マーニャさんはおかしそうに笑っている。笑い事じゃないんですけど。「ついさっきね、あたしの部屋に
 飛び込んできたのよ、アルトが」
『え……』じゃ、あいつ、あれからマーニャさんの家行っ……『え??』マーニャさんの家って!?
『あい……アリーナ、モンバーバラまで行ったんですか!?』
思わず俺は声を上げた。真夜中、しかも半日かかるって道のりだぞ?
「そういうこと」マーニャさんもさすがに呆れたような顔をする。「驚いたわよ。誰かがドア壊そうとしてるからあわてて
 飛び起きて、誰だって叫んだら、アルトなんだもの。それも、あちこち、顔にまで怪我してるし、ローブ巻いたっきりで
 下なんにも着てないし。おまけに、顔は涙でもうぐしゃぐしゃ。何があったのかと思ったわよ」
『………』
前髪をつかむ。すさまじい行動力だ。モンバーバラへの街道は下りだから多少は楽だったろうし、月も明るかった。
それでも深夜、あの格好で、しかもあの怪我で魔物が出るかもしれない道を突っ走って……。
「で、部屋に入るなりあの子、なんでビルくんにあのこと教えたーって、つかみかかってきたのよ。すごい顔で泣きながら
 ね。何があったかすぐわかって、思わず笑っちゃったわ。ビルくん、あれ、アルトにやってみたんだなって」
やたらにニコニコして言うマーニャさん。あのう、マーニャさんはあの修羅場を知らないから笑っていられ……いや
違う!想像つくから笑ってんだ、このお姉さんは!
『ちょっと待ってください』マーニャさんに腹立ててもしょうがないがどうしても荒い声になる。『ああするとアリーナが
 泣き出すってこと、マーニャさん知ってたんですね。それで、俺に教えたんですね?』
917 :2005/07/16(土) 07:35:47 ID:wrtU2VqN
「そうよ」あっさりとマーニャさんはうなずいた。笑いながら。「ビルくんがアルトをおとなしくできる方法って、あれくらい
 しかないもの。機嫌悪いときのアルトって、ちゃんと話をしようとすると、すぐ逃げるでしょ。だから。ビルくんなら、
 ほんとーに焦ったとき、最後の手段でやっちゃうかもってね。さすがに、教えたその日にアルトにやってみちゃう
 とは思わなかったけど」
『………』ほとんどマーニャさんに読まれてたわけだ。『だ、だったら、おとなしくなるってだけじゃなくて、泣いちまう
 ってことも、教えといてほしかったですよ。ほんと、焦ったんですから』
あごをさすりさすり、恨み言。知ってたらやらなかった……はず。たぶん。
「まあ、ね」マーニャさんはそれでもくすくす笑っている。「アルトって普段があれだから、びっくりするわよね。あれ
 やられると泣き出しちゃうっていうの知ってんのは、たぶん、あたしとクリフトだけじゃないかしら。……ミネア、
 あんたも知らなかったでしょ?アルトの泣かせ方」
ミネアさんは、ちょっと前からずっとこっちを(というより俺を)見ていた。むきかけの芋と包丁を持ち、ものすごーく
誤解してそーな細目で。「………」急に話を振られてその目が開き、マーニャさん、俺、マーニャさんと探ってくる。
「なに?姉さん」ほんの少しトゲのある、咎めるような声音。
「なにって、聞いてたでしょ」マーニャさんが背もたれに手をかけてミネアさんを向き、言う。「アルトの泣かせ方よ」
「聞いてないわよ。あたし、忙しいんだから」むきになったような声で洗い場を向くミネアさん。
「あら、そう?地獄耳のミネアだから、しっかり聞いてると思ったわ」
「だ、誰が地獄耳よ!」ミネアさんがまた振り返って叫ぶ。「人聞きの悪いこと言わないでちょうだい!」
「ビルくんしかいないんだし、何言ったっていいじゃない。ビルくんてもう、あんたのことだいたい知ってんでしょ?」
マーニャさんが笑い、俺を見て内緒話するように手の甲を口の横に立てる。「ビルくん。ミネアの悪口は絶対に
 言っちゃだめよ。悪口なら、こことラインハットくらい離れてたってばっちり聞こえちゃうんだから。ミネアには」
「姉さん!」ミネアさんが目つきを鋭くし、怒鳴る。あの、マーニャさん、あまり怒らせない方が。ミネアさん包丁
持ってんですから。
918 :2005/07/16(土) 07:41:10 ID:wrtU2VqN
『それで、マーニャさん』話を戻さないと。『今、アリーナは、どうしてんですか?』
「泣きながら寝ちゃったわ。まだ寝てるはずよ。ついさっきだもの」
『マーニャさんの部屋で?』
「うん。いちおう言って頼んではきたんだけど……会いたい?」
『………』
アリーナと会うつもりだったけれど……事情が変わってきた。はるかモンバーバラまで突っ走って、第三者の
マーニャさんに泣きつくほどのショックだったんだから、俺の顔見れば一撃でコーミズまで吹っ飛ばすかもしれ
ない。落ち着くまでしばらく放って……でも今日は、悠長にはしてられないんだよな。
「とにかく、ビルくん」マーニャさんの手が俺の腕に触れた。「アルトに謝っといたほうがいいんじゃない?泣かせちゃっ
 たんだから。それから、ちゃんと、アルトを探しに来たわけ話してさ、アザあるかどうか見せてもらいなさいよ。
 これから連れてったげるから」
『え?………』探しに来たわけ。アザ……。それはそうなんですけど……。マーニャさんは、俺とアリーナが今どれ
ほど険悪か、知らないからな。謝った後にそんな話まで持ち出したら、またブチ切られそう。
「はい。そうと決まったら早く準備して、ビルくん」マーニャさんが勝手に俺を促し、椅子から立つ。「ビルくん?」
急かしてくるマーニャさんに、俺は言った―――

1.『わかりました。俺がきっちり話つけます』
 1−1.『でもその前に聞いときたいことが……』
  1−1−1.アリーナの弱点 1−1−2.ミネアさんが倒れた理由 1−1−3.マーニャさんの今日の予定
 1−2.『すぐ、連れてってください!』
2.『お気持ちはありがたいんですけど、俺が何言っても、どうせアリーナは……』
3.『朝食食べてからにしませんか?』
4.『……ミネアさんに占ってもらっていいですか?』
5.『アリーナが悪いんです。俺は悪くありません!』
919場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :2005/07/16(土) 07:52:18 ID:wrtU2VqN
なんとか完了。残り4kb。危なかったでつ
一ヶ月と10日以上、6週間もお待たせして、本当に申し訳ありませんですた
見放さずに保守してくださった皆さまには感謝をどれほどすれば足りるのか・・・
ありがとうございますた!!

各コメントは次スレでいたしますです。。。
920場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :2005/07/16(土) 10:25:57 ID:wrtU2VqN
次スレ立てましたです。。。
DQのギャルゲーを本気でプレイしるスレッド12
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1121473630/

選択はどちらでもOKでつ
921場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :2005/07/16(土) 23:57:31 ID:wrtU2VqN
アンカーが読みにくそうでつのでやはりここでコメントしまつ

>818 3−6は低確率でマホトーンか怒濤の羊を習得、2−2はアリーナに手紙を渡しますた
>819 寝かすのに1週間かかったなんて書けませんでつね・・・けっきょく上の通り妄想さして寝かしますたが
>820 練金といえば王斧でつからw ツンデレキャラはとにかくアメムチさせときゃいいんでつかね?
>822 そうなんでせうか・・・日本の男は大正デモクラシーの頃まで清楚で素直な女性ばかり製造してた気がしまつが
>823 さすがに殺しやしません。漏れとしても、怒ってアリーナが主人公をブン殴る、というだけだったのにナゼこんな展開に・・・
>824 5は単に着替えるだけですたが、アリーナの態度が若干変化しますた
>826 漏れも2−3選ばれたら面白いと思っていますた。なのになんでこうなりまつかね・・・
>827 普通に話せないからあれこれ策を弄したわけですて。そういう主人公でつから
>829 3−4は1/3くらいの確率でホイミを習得。ただ、主人公の魔力の関係で現時点では・・・
>830 今パーティに回復係2人いまつからね・・・けれどゲーム本編では序盤最も使う呪文でつ
>832 sageてくださらないとこの板ではあんなことやそんなことが描けませんでつ・・・
>835 主人公が敵役でつかw ・・・シマッタ!本読むとき内容も考えなきゃ・・・楽しそうw
>836 集計ありでつ!だいたい予想通りですた・・・のにこの体たらく_| ̄|○
>837-841,847-856,859-860,863-864,869-875,878-893,保守のため書き込んでくださった皆様
ゲームブックスレまで落ちてしまう厳しい板でひと月半も維持してくださったことに対し、漏れは下げた頭をいつ上げて良いやら
次スレでもご迷惑かけると思いまつ。しかし、しかし必ず・・・ッ!
>845 アリーナが入れてくれるんでつか?w なお、この主人公はカップ焼きそばくらいは作れまつ
>857-858 作るスレはこの板から飛躍して大活躍中でつ!とととりのも凄そうでワクワクしてまつ
>866-868 (つД`) スミマセソ・・・ソシテ アリガトウゴザイマツ!!
 漏れは書いてみないことには躓く箇所がわからないので、あと1時間で書き上がると思ったのがすぐ1日、1週間・・・
 せめて文章スラスラ書ければ・・・新GMさんがうらやますいでつ
922名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/17(日) 05:53:23 ID:jPysPT3v
ちょいとお聞きするが、次スレもsage進行でいくのかい?
923名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/19(火) 05:24:30 ID:ExAvZ1ii
sage進行推奨するなら、テンプレに
#本スレは基本的にsage進行となっております
ぐらい入れるべきかもなぁ
924名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/19(火) 23:27:03 ID:Hscssm24
GMの意見を聞かせて欲しい件
925場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :2005/07/20(水) 02:42:17 ID:9UoBPaIk
スミマセソ次からテンプレもう少し短くしますです。。。_| ̄|○ >>7 サンショウ
926名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/20(水) 21:05:10 ID:+5lGZYAH
漏れ恥ずかしいでつorz
927場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :2005/07/24(日) 23:49:49 ID:raRRQr+s
新GMさんのスレ今夜も楽しみにしてたらアク禁・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
928名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/25(月) 19:00:24 ID:a5+46H7i
このスレどうするん?
出来る限り保守か?
929名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/26(火) 14:18:03 ID:vtI9FMXa
保守で
930種 ◆MVv0xHy8TY
>>927
楽しみにしてて下さりありがたくっ!
中華、漏れは文章をスラスラかけるわけでなく、単に推敲をほぼせんから
早いだけでつよorz
漏れとしては場つなぎ氏の文章力を盗みたいでつ