1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:
ブッシュが魔王の城に空爆
2 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/14 23:55 ID:TLFly10s
ブッシュ自体魔王扱いされてるだろ
3 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/14 23:55 ID:E3GIWY/y
阿呆スレの2ゲトー
4 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/14 23:56 ID:VVaAIeXR
5 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/14 23:57 ID:+qPZEJFe
バラモス城の所在地はジパングの西の半島
6 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/15 00:05 ID:Mvemv8lz
ブッシュはウサマを倒した
なんとウサマが起き上がり仲間になりたそうな目でみている
7 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/15 00:08 ID:SkADoUFq
ウサマはうれしそうに牢屋に走っていった
*「おお 三馬鹿よ
人質に されてしまうとは なさけない!
ラーミアが鳥インフルエンザに感染
10 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/15 00:10 ID:Mvemv8lz
古賀潤一朗が現れた!
魔物はいきなりおそいかかってきた!
古賀潤一朗はアメリカに逃げ出した!
0ゴールドを獲得
0ポイントの経験値を獲得
良スレになるかも
13 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/15 00:14 ID:SkADoUFq
14 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/15 00:15 ID:2vUs5iGo
>>1のIDがすごい
母者がメラやらデインやらで光熱費節約
16 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/15 00:18 ID:2vUs5iGo
メガンテ自殺
17 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/15 00:24 ID:zbizHIny
現実とゲームの区別もついてないのか。かわいそうな奴らだな。
18 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/15 00:26 ID:BhB0nZ5G
理科の時間に魔法の授業
ちょっとレムオル状態のままで銭湯行ってくるよ。
錬 金 術 の お 勉 強
おお
>>17 ネタとくべつがつかないとは
なんという かわいそうなやつじゃ
とりあえず
>>1は病院行きだな。
FCDQ3発売あたりに、俺の小学校の頃の親友が
ゲームの世界と現実の世界の区別がつかなくなって、学校に全く来なくなったんだ。
「僕は勇者だ!バラモスを倒すんだ!」
と、本気の顔で言っている姿は今でも忘れない。
ぱふぱふ専門雑誌創刊
24 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/15 00:38 ID:LXsi1s78
>>18 そうとも限らない。
ホイミ系 厚生族が阻止
ルーラ 道路族が阻止
4の3章 郵政族が阻止
26 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/15 00:49 ID:ZF6R022Z
ジパングとオロチの洞窟の場所が入れ替わる。東京一極集中マンセー。
27 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/15 00:52 ID:BhB0nZ5G
じゃあ犯罪者はリレミトができないようにされるな…
家に帰ってきたら、タンスが荒らされてた・・・・・・
あれ?これって、ドラクエ限定じゃないじゃん!
29 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/16 10:37 ID:7OjBw3gy
ドラクエをしてというより、
小説を読んで、
理想のタイプがビアンカになった。
まあこんな女性、現実世界では滅多にお目にかかれないけど。
保守
いいねいいね
こーゆーすれおもろい
壷や樽を壊すたびに損害賠償請求が発生。
メタル狩りやはぐれ狩りは
ワシントン条約に反するのでやめましょう
動物虐待イクナイ
ガーデンブルグで無実が証明された後、名誉毀損か何かそこら辺で国を訴える。
アラスカから北西へちょっと行くと、喜望峰が見えてくる。
東京のどこかにある井戸の中に、巨大なすごろく場がある
d
38 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/21 13:04 ID:YQMJLPHZ
保守
ついでに
ペットショップで魔物が販売される
血統書付きのはぐれメタル
高値で取引されそうだ
リアルな話、近所に鍋のフタを装備しているチビっ子がいるぞ
40 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/21 15:25 ID:NBbIBcvs
卒業論文が『スライムとスライムベスの交配実験の過程とその結果』
そこのきみぃー
戦闘中に
悟りの書読むの
ヤメナサァーイ
42 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/24 04:38 ID:hgNQhDEd
アメリカ軍の空爆がすべて爆弾岩
良スレage
職安の酒場へ行き、社会で浮いてる仲間を3人そろえる。
魔王の城へ良心的なモンスター達へのボランティアへ行き、
不覚にも悪いモンスターに捕まってしまう。
自分の身柄と引き換えに、軍隊や勇者一行を
撤退させるように要求されるが全世界は断る。
断られた事に妹(武道家Lv50)と弟(商人Lv40)がキレて、
群集を相手に闘いのドラムを鳴らすが逆に気味悪がられる。
仲間の家族も必死にパルプンテを唱えるが何も起こらなかった。
>>22のバラモス倒すってやつ
なかなかいいヤツではないか。
45 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/24 11:53 ID:F/d2S8AL
46 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/24 13:28 ID:bX5E7cha
2ちゃんやってる奴らを獲物に、狩り殺す。
楽しそうだ。
最近、蘇生技術に革命が起きて、誰でも簡単にザオリクを使えるようになりました。
そのため、病院や葬儀屋次々と倒産してます。
でかい病院や葬儀屋は公的資金という名目で税金が使われていくので、
何か嫌な世の中になりました。
あと、食料難の時代が来そうで、非常に不安です。
もう病院の時代は古い。
これからは宿屋です。
宿屋に泊まれば死にかけでも一日で健康、
便利な呪文を使うにも、MPが無ければはじまりません。
生活に欠かせない宿屋をよろしく。
49 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/27 23:30 ID:0eTlk6v/
面接官「特技はイオナズンとありますが?」
学生 「はい。イオナズンです。」
面接官「イオナズンとは何のことですか?」
学生 「魔法です。」
面接官「え、魔法?」
学生 「はい。魔法です。敵全員に大ダメージを与えます。」
面接官「・・・で、そのイオナズンは当社において働くうえで何のメリットがあるとお考えですか?」
学生 「はい。敵が襲って来ても守れます。」
面接官「いや、当社には襲ってくるような輩はいません。それに人に危害を加えるのは犯罪ですよね。」
学生 「でも、警察にも勝てますよ。」
面接官「いや、勝つとかそういう問題じゃなくてですね・・・」
学生 「敵全員に100以上与えるんですよ。」
面接官「ふざけないでください。それに100って何ですか。だいたい・・・」
学生 「100ヒットポイントです。HPとも書きます。ヒットポイントというのは・・・」
面接官「聞いてません。帰って下さい。」
学生 「あれあれ?怒らせていいんですか?使いますよ。イオナズン。」
面接官「いいですよ。使って下さい。イオナズンとやらを。それで満足したら帰って下さい。」
学生はイオナズンを唱えた。
面接官Aに154のダメージ。面接官Aをやっつけた。
面接官Bに147のダメージ。面接官Bをやっつけた。
面接官Cに146のダメージ。面接官Cをやっつけた。
面接官たちをやっつけた。
気が付くと布団の中にいた。どうやら学生は夢を見ていたようだ。
51 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/28 03:45 ID:ZnXHLv6u
通勤ラッシュ時、電車や道路がガラガラになる。そのかわり、ルーララッシュで空が人で埋まる。30分ほど、都心の
オフィス街には太陽の光が届かなくなる。
ルーラ未修得で、職探ししている人は、「交通費(キメラの翼代)はでるのか!?」が、重要になる。
こういうの、おもろいな〜w age
俳優、伊●英明(25)が、友人と自宅で合法魔法のメダパニをかけ、
幻覚症状で病院に担ぎ込まれる騒動があったことが11日までにわかった。
近所の住人らの話によると、伊藤は10日未明、
自宅に近い東京・世田谷区上用賀の防具屋に、
「ダックカイトに(メダパニを)かけられた。助けてくれ」
「キラーピアスで突いてくれ」などと叫びながら駆け込んだ。
どの国に言っても言葉や通貨は同じか・・・
仲間探しはルイーダの酒場や旅の途中とかで出会うのではなく
ネットだろ
一緒に天空の装備を探し、デスピサロを倒してくれる人を探しています。
ご連絡ください。
yuusha@ybb.....
55 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/05/03 09:24 ID:dwAnnXBl
ムツゴロウは魔物使い
イラクの人質3人を救出したのはアリーナ一行
伊藤家の食卓で、メガンテをマホカンタではね返して炎を吐く裏技が紹介される。
MMRが1999年に地獄の帝王と戦ってたりする
ムカついた香具師にメラゾーマ投げつけてやりたい。
ルーラによって瞬間移動が可能になったため、都会と郊外の交通の便による差がなくなり、
土地や物価が安い地方に人や物が流れるようになる。
過疎過密解消かw
ついに、東京にカジノができる。
しかし、コインは景品にしか換えてもらえず、
どうしても、現金が欲しければ、景品をカジノ隣の道具や売らなければならない。
あれ、よく考えたら、文鎮を専門に買い取ってくれるところが現実世界にもあったか。
消え去り草使ってタシーロ、
でも時間切れでバレて逮捕。
hahaha
あれ?だれもこないな
支援してますよん
_ _
∧ / 人丶
丿ヘヽ/ ノ=v= )
(( / /# ゚O゚ノ| 職人というのは孤独なものよ!
ヽくy と)_∀(つ 他人の支援をあてにしないでよね
彡 ソノ_ィ个l_ゝ
ひJ
幻の勇者 PAGE9
神はエデンという美しい楽園を創った。
そこに棲むあらゆる動物たちと共に、神は土から「人間」を創った。
最初の人類をアダムとイブという。
この楽園に永遠の子孫を残そう。
この楽園に永遠の平和を。
この楽園に永遠の愛を。
神は言った。
「炎よりいでし 命あるすべてのものよ。小川のせせらぎより 聖なる水で清め
東から吹き上げる風とともに 緑豊かな この楽園の大地に根をおろすがいい。
だが禁断の果実を食してはならぬ。
それを食せば おまえたちは 永遠の‘欲望’に 侵食されるだろう。」
しかしイブはある日、禁断の樹木を前に、一匹の蛇に出会う。
蛇はイブを誘惑した。
「この禁断の果実こそ知恵の実。
神は人間に対し、自分よりも賢くなることを恐れている。
神は無限の可能性を秘めた人間を、恐れている。
今こそ神を越えるとき。
それを食せば、あなたたちはすべての生けるものの頂点に君臨する。」
イブは禁断の果実を食す。やがてそれを知ったアダムもまた食す。
だが食したとたんにアダムとイブは、新たなる感情が芽生え出した。
それを見た神は、アダムとイブに言った。
「わたしの忠告を無視した人間よ。
この世の善悪を知ってしまった人間よ。
おまえたちは 自分たちの手で やがて迎える 恐ろしい歴史を つくりだす。
おまえたちは 自分たちの子孫で やがて迎える 大いなる災いを ひきおこす。」
そしてアダムとイブは、たくさんの子を宿す。
長男のカイン、次男のアベルにつづき、たくさんの子孫を残す。
だがある日、長男のカインは、羊飼いのアベルを自らの手でその命を奪う。
実の弟のアベルを激しい嫉妬により、自らの手で殺す。
人類最初の殺人が起こった、記念すべき日である。
そして人は、さらなる知恵を働かせる。
「草や木の実よりも 肉のほうが よっぽど美味 うまい。」
「うん 肉おいしい これからは 肉もエサとして食べよう。」
「おい おまえの土地のほうが おれの土地よりもエサある。それ よこせ。」
「勝手なこと言うな ここ おれの土地。おまえこそ立ち退け。」
「なにお お前ばかり ずるいぞ。」
「まぁ待て ではこうしたらどうだ ケンカしてどちらか勝ったほうが 土地をもらうというのは。」
「おまえ 頭いいな それ すごくいい。」
「おれも賛成 戦って勝つ そして土地はおれのもの。」
人は争うことを覚え、譲り合うことよりも、奪い取ることを学んだ。
支援
「おれ 今やこの土地のボス 子分たくさんふえた さからうやつ 皆殺し。」
「ばかめ おまえなんか この石ヤリで殺す。」
「すごいぞあいつ。とがった石で ボス殺した。」
「今日からボスは このおれ。とがった石ヤリ 無敵。」
そして人は歴史と共に、いかに戦いに勝つかという知恵を働かせる。
素手が石に、石がヤリに、ヤリが剣に、剣が鉄砲に。
破壊の歴史を繰り返し、気づいたころには、この世で最強の武器は‘人差し指’となった。
それはたった指一本で、国を滅ぼすことのできる核ミサイル。
スイッチ一つで、あっという間に何千万人を殺せることのできる、すばらしい武器である。
人はエデンの楽園では飽き足らず、ついに宇宙へ進出するほどの無敵の知恵を身につけた。
それを見た神は言った。
「おまえたちの子孫は 無限の知恵により あらゆるものを 学びとった。
おまえたちの子孫は 無限の知恵により あらゆるものを つくりだした。
おまえたちの子孫は 知恵の神より学びとった 科学の歴史を つくりだした。
だがカインの子孫は 欲望の神より学びとった 破壊の歴史を つくりだした。
知恵を身につけたおまえたちは 無限の可能性を その未来に捧げる。
そして欲望を身につけたおまえたちは 自らの力にて その身を滅ぼすだろう。」
だがすでにこの頃 神の声は もう人類には届かなかった…。
――――そして人類は 世界の終焉を 迎えることとなる――――
幻の勇者
〜サイエンス・ワールド編〜
幻の勇者 PAGE10
大魔王「フン、やはり来やがったか。伝説の勇者。」
勇者「大魔王デスタムーア……これで終わりにする。」
――――狭間の世界なる嘘数空間にて、その「勇者」と「大魔王」は対峙する――――
大魔王「何を終わらせるってェんだ、すでに終わっちまったものを。」
勇者「前に会ったときと言葉遣いが変わったな。確かお前は老人のようなしゃべり方をしていたはず。」
大魔王「おかげさんでジジくせェ言葉遣いは解消できた。若さも手に入ったしな。ご覧の通り今やオレは
適齢期の身体だ。大魔王のレベルは超えたぜ、もはやオレは魔神に近い力を持つ。」
勇者「……」
大魔王「だいたい‘今のお前’が‘今のオレ’を倒すことは不可能だ、それはお前もよく知ってんだろ?」
勇者「それでもボクはお前を倒さないと…。」
大魔王「たとえオレを倒すことができたとしても、もう遅ェよ。幻の大地は滅びちまったしな。
世界終焉は避けられねェ運命だったのさ。」
勇者「わかっている……。」
大魔王「人間の破壊兵器ってのはすげぇな、そう思わねェか?おかげでオレの四匹の部下は
核ミサイルで跡形もなく消滅させられちまったしよ。」
勇者「……」
支援
大魔王「この世で最強というのはオレのような魔族でもなく、テメェのような勇者でもねェのかもな。
オレが思うにこの世で世界最強の存在は、何だかんだ言ってやはり人間だな…。
神が人間を恐れた理由がようやく分かってきた。」
勇者「そうかもしれないな…。」
大魔王「人間は‘人差し指’たったの一本で世界を消滅させる恐ろしい存在だ。お前も人間なんかの
肩を持つのはやめて、オレと手を組まねェか。奴らは破滅の道をたどるだけだ。」
勇者「人は失敗しても立ち直ることができる、過ちを犯してもそこから何かを学び取ることができる。
絶望の淵に立たされても希望を捨てないかぎり、人に未来は残されている…。」
大魔王「…下らねぇ、マジでバカだ。てめェは幻の大地の住人が今までどれほどの過ちを犯してきたか
分かってんのか。未来はもうねェんだよ、あるのはオレという一個人の未来だけだ…。」
勇者「未来はあるよ、少なくともボクは最後まであきらめない…。」
大魔王「もういい、てめェのくせェ青春野郎の台詞を聞いてると寒気が走る。何かを終わらせたいのなら
オレがここで終わりにさせてやる、お前のタマを引っこ抜いてその口へ押し込んでやるよ。」
勇者「やってみろ、けどそう簡単にはボクは死なない…。」
大魔王「笑わせるヤツだ、ではどれだけ耐えられるか見ものだな。(ギィィン!)」
勇者「……(ターニア…ごめんよ…約束は果たせられないかもしれない…。)」
――――勇者と大魔王は 全世界の雌雄を決する 最終決戦を迎えようとしていた――――
キィィーーーーンン…!
*「クリス……ねぇクリス……」
*「うぅ……」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE11 <エピソード2 四匹の怪物たち>
〜第一の事件〜
ロサンゼルス 西暦2007年 7月 am1:32
ミア「クリス、クリス…。ねぇ起きて。」
クリス「ハッ…!」
ミア「大丈夫?うなされてたみたいだけど。」
クリス「こ、ここは…?!」
ミア「目が覚めた?ここは車の中よ。」
停車している車内で、ようやくクリスは目を覚ました。
クリス「……な、なんだ。夢だったのか…。」
ミア「うふふ、怖い夢でも見てたのかしら?」
クリス「……」
車の外はどしゃぶりの真夜中であった。
エンジンを止めた車内の中でも、外の雨音は容赦なく響き渡る。
ミア「無理もないわね、ここのとこ事件も多いし仕事も絶えないし…。」
クリス「そ、そうか。僕たち張り込み中だったんだっけ…。」
この日、ロス市警のクリス・レイドック巡査は、麻薬取引現場を押さえるため張り込み中である。
そして同僚の美人婦警、ミア・ランディーノ巡査と共に警察の車で待機していた。
もう一人の同僚であるハリー・サンバード巡査は、取引現場の近くを捜索に向かっていたため
クリスはその間につい仮眠をしてしまったのである。
クリス「はぁー、でも少し寝たら頭もスッキリしたよ。もう大丈夫だ。」
ミア「ねぇクリス。ところで彼、どこまで見に行ったのかしら。ずいぶん遅いようだけど。」
クリス「そういやそうだね…。麻薬売人もまだ来る気配がないな。ハリーのやつ
またムチャしなきゃいいけど。」
ミア「大丈夫かしら…。」
クリス「しかしどうでもいいけどさっきの夢、変な夢だったなぁ…。」
ミア「どんな夢を見てたの。」
クリス「い、いや…どうせ笑われるから話したくないや。」
ミア「気になるわね、笑わないから教えて。」
クリス「ホントに笑わない?」
ミア「えぇ。」
クリス「わかった…。実はさ…僕が剣や魔法を使って大魔王と戦う夢を…。」
ミア「は?」
クリス「世界を救うために、人類の代表として僕が…。」
ミア「うふふ、あなた大丈夫?」
クリス「ほら笑ったじゃないかー、嘘つきミアめ。」
ミア「ごめんなさい、でもずいぶん子供っぽい夢を見るのね。まるでアニメや映画の世界だわ。」
クリス「何だよ、僕は好きでこんな夢を見たわけじゃないんだ。」
ミア「いいじゃない、かわいい夢よ。とても大統領のご子息には見えないわ。」
クリス「ほっといてくれよ…。」
クリスの父親はジョン・F・レイドックといい、なんとアメリカ合衆国大統領である。
ワシントンDCに滞在する父親とは別居して、クリスはここロサンゼルスに住んでいた。
幼い頃から空軍パイロットになることを夢見ていたが、残念ながらロス市警として
身をとどまらせることが精一杯だった。
父親の力を借りれば空軍に入れたかもしれないが、本人はそれをガンとして受け付けなかった。
ミア「ねぇクリス、ところで最近地震が多くないかしら。こないだだって立て続けに…。」
クリス「そうだね。確かにここのとこ変な色の雨ばかり降るし、ニュースでも異常気象の現れだと
言ってたよ。」
ミア「ロスだけじゃないわ、世界各地でもいくつか異常現象が起こってるのよ。何かの前兆かしら…。」
クリス「人間がむやみにオゾン層を破壊するからさ、そろそろ地球の資源も使い果たしたんじゃないかな。」
ミア「自然現象だけは警察でさえ手も足も出ないわね、私も転職を考えようかしら。」
クリス「ははは、警官を辞めて地球ボランティアでもやるってのかい?」
ミア「いいえ、占いよ。」
クリス「そうかい、じゃあこのロスの街にいる全犯罪者を挙げてからにしなよ。そしたら占い師でも
何でもやればいいさ。」
ミア「うふふ、一生かかっても無理そうね。」
クリス「しかしキミも占いなんて変な趣味を…。」
ミア「シッ…待って、誰かこっちへ来るわ。ハリーかしら。」
backup
どしゃぶりの中を一人の男がクリスたちの車へ駆け寄ってきた。
同僚のハリー巡査である。
ガチャリ
ハリー「いやー、すごい雨だ。ずぶ濡れになっちまった。」
ミア「ご苦労さま。」
ハリー「いったい何だこの雨は?なんかベトベトしてるぜ。」
クリス「ハリー、どうでもいいけど早くドア閉めてくれよ。雨が入ってくるじゃないか。」
ハリー「おっと、すまん。」
バタン
ミア「で、どうだったの?」
ハリー「あぁ、ちょっと周りを見てきたが、やっぱり間違いなさそうだ。バイヤーは中にいる。
今夜中に大きな取引があるぜ、麻薬売人もじきに来るだろう。」
クリス「いよいよだね、一味ともども逮捕できそうだ。」
ハリー「よっしゃ、売人が来たら一気に突っ込もうぜ。」
ミア「待って、警部補は見張るだけでいいって言ってたわ。」
ハリー「そんな指示に従ってたらヤツらを逃がしちまうだろ。」
ミア「命令違反をしたら今度は始末書だけじゃ済まないかもしれないわよ、ハリー。」
ハリー「だ、だけどよ…みすみす取引現場を…。おいクリス、お前はどうなんだ。」
クリス「僕も突入に賛成だね、ここを逃したら逮捕のチャンスはなくなるよ。」
ハリー「さすが兄弟、お前ならそう言うと思ったぜ。」
ミア「…仕方ないわね、でもくれぐれも油断しないようにね。」
ハリー「任せとけ、この銃があれば…。」
クリス「ハッ…!まずい!ハリー伏せろ!」
ハリー「ど、どうした?」
やがて黒いベンツが取引現場の工場へ横付けした。
ハリー「おいクリス、まさかあの車…。」
クリス「うん、バイヤーじゃないな。たぶん売人だよ。」
ミア「間違いなさそうね、車内から黒いケースを持った男が出てきたわ。」
ベンツから降りてきたその黒服の男は、怪しげなケースを片手に取引現場へ入っていった。
クリス「なるほど。あの男が指名手配中の麻薬売人、ディル・フェニックスだね…。」
ハリー「ロスの暗黒街でも特に名の売れてるヤツだ、吐き気がするぜ。」
ミア「ディルは麻薬売買どころか、4件の殺害容疑もかかっているわ。正真正銘の悪党よ。」
ハリー「よし、じゃあ行くか。」
クリス「ミア、キミは裏口へ回ってくれ。僕とハリーは正面から突入する。」
ミア「待ってよ、敵が何人いるかも分からないのに。突入するならせめて応援を呼んでから…。」
クリス「今押さえないとディルを現行犯で逮捕できないよ!…ハリー!行こう!」
ハリー「よっしゃ!」
ガチャリ
ミア「ま、待って…!」
クリスとハリーはどしゃぶりの中、車から出て現場へ向かった。
バタン!
ミア「もう…!しょうがない人たちね!」
仕方なくミアも車を降りて裏口へと向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この三人組はあの三人か・・・?支援
支援
幻の勇者 PAGE12
正面口
クリス「(ハリー、中の様子見えるかい?)」
ハリー「(あぁ、どうやら取引の真っ最中だ。…売人のディルを含めてたったの三人だ。)」
クリス「(よし、じゃあドアを蹴破ってくれ。一気に突っ込もう。)(ジャキン!)」
ハリー「(じゃあ行くぞ…。)(ジャキン!)」
クリスとハリーは銃を抜き、正面口のドアを蹴破った。
ドガンッ!
クリス「L.A.P.D.だ!全員そこを動くな!」
ハリー「おとなしくしろ!ブっ放されたいか!」
A「ゲッ…!サツが来やがった!」
ディル「ロス市警のヤツらだと?!」
B「かまわねえ!撃ち殺せ!(ジャキン!)」
ダァーン!ダァーン!ダァーン!
クリス「うわっ…!」
ハリー「チッ!やっぱり向こうも武装してやがったな!クリス!応援なんか待ってられない!
こっちも応戦するぞ!」
クリス「OK!」
クリスとハリーは応援を待たずに発砲した。
ダァーン!ダァーン! ッズダァーン!
ハリー「クリス!ここは俺が援護するからお前はヤツらに近づけ!」
クリス「わかった!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE13
A「く、くそ…!なんで警察に嗅ぎ付けられたんだ!」
B「おいディル!てめえ尾行されやがったな!」
ディル「し、知るか!お前らの足がついたんじゃねえのか!」
A「この能無しめ!取引はキャンセルだ!(ジャキン!)」
ディル「ま、待て…!」
ッズダァーン!
ディル「うあっ…!」
ドタリ
麻薬売人のディルは、あっさりと射殺されてしまった。
A「おい!ケースを持て!さっさとズラかるぞ!」
B「あ、あぁ…!でも裏口もヤバイんじゃ…。」
A「そんなこと言ってる場合か!ぐずぐずしてると…!」
だがそのとき、突然目の前に黒い空間が暗黒の霧とともに出現した。
――――ッシュゥゥーーーー!ッヴァン!!
A「?!」
B「な、何だこりゃ…!」
その黒い空間から出現した暗黒の霧は、しばらく空中をさまよっていると
やがて先ほど撃たれたディル・フェニックスの身体の中へ入り込んだ。
―――ヒュゥゥーーー!
ディル「……」
A「いったい何だこの黒い霧は…?!」
B「お、おい!見ろ!こいつ目を開けやがったぞ!」
A「!」
ディル「フゥ……。」
>>88 マズかったらスマソ
実は携帯からも…ゲフンゲフン
いずれにせよ、ちょっと抜けます。
射殺されたはずの麻薬売人・ディルは立ち上がり、ゆっくりと辺りを見回した。
だがもはや‘それ’は、ディル・フェニックスではなかった。
A「ど、どうなってんだこりゃ?!こいつ殺したはずなのに!」
B「うわぁぁぁ!!」
ディル「お前たちは……人間か。」
A「はぁ?」
B「お、おい。こいつヤバイぞ!」
A「うるせえ!こ、今度こそぶっ殺してやる!(ジャキン!)」
ディル「!」
ッズダァーン!(パシ!)
ディル「?これは……何だ?」
黒い霧に取り憑かれたディルは、なんと弾丸を瞬間的に手でつかんでいた。
A「な…!」
B「バ、バケモノだあああああああ!!」
ディル「私の名は……デュランだ……。バケモノという名ではない…。」
A「うわあああああ!!(ジャキ!)」
ッズダァーン!ッズダァーン!ッズダァーン!ッズダァーン!ッズダァーン!
カチッ!カチッ!カチッ!カチッ!
A「た、弾が…!」
B「こ、こりゃいったい何の冗談だああああ…!」
ディル「フム、面白い武器だな。だが放出する物体の軌道があまりにも直線的で芸がないな。」
デュランと名乗る男はそう言うと、つかんだ弾丸を床に落としてみせた。
バラバラバラ……
A「うああああああああ!」
B「に、逃げろ!こいつ人間じゃねえ!」
ディル「……(ギィィン!)」
だがデュランは逃げようとしたその二人に向かって、稲妻の超能力を放った。
バリバリバリ…!――――ッズガァン!!
A「ぎぇぇえぇっ…!」
B「うげっ…!」
ドタリ ドタリ
ディル「なんともろい生命体だ…。これが人間という生物か…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE14
クリス「ハリー!こっちだ!」
ハリー「おう!」
ジャキン!
クリス「動くな!もう観念し……あれ?」
ハリー「どうした?」
クリス「な、何だこれは…!」
駆けつけたクリスたちの目の前には、黒コゲになった二人の男の死体が横たわっていただけだった。
クリス「ハリー、キミが撃ったのかい?」
ハリー「俺じゃねえよ、だいいち銃でこんな黒コゲになるわけないだろ。」
クリス「ディル・フェニックスがいない…。まさか逃げたのかな。」
ハリー「くそ!もう少しだったのに…!」
クリス「待てよ、もしかしたら裏口から出たのかも。」
ハリー「何?…ってことは…。」
クリス「まずい!裏口にはミアが待機してるよ!」
ハリー「や、やべえ!急ごうぜ!」
クリス「うん!」
クリスとハリーは急いで裏口へと向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
裏口
ッドガン!
ミア「L.A.P.Dの者です!両手を上げなさい!(ジャキン!)」
クリス「うわああ!ま、待ってくれミア!僕たちだよ!」
ハリー「ひええ!」
ミア「……なんだ、あなたたちだったの。驚かさないで。」
クリス「ミア、ここにディルが逃げ込んでこなかったかい?」
ミア「いいえ、誰も来なかったわ。」
ハリー「どうなってんだ?逃走経路はここしか残ってないのに…。」
クリス「……」
ミア「いったい何があったの?ディル・フェニックスは?」
クリス「そ、それが…。」
死因不明の黒コゲになった男の死体が二つ、そして姿を消したディル・フェニックス。
だが謎の黒い霧に取り憑かれたディルは、もはや人間というべき存在ではないということを
クリスたちはまだこのとき知る由もなかった。
その男は、のちにデュラン・ディル・フェニックスと名乗る稲妻の魔物であり
異世界からやってきた 四匹の怪物のうちの一人‘破壊のデュラン’である。
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幻の勇者 PAGE15
―――あくる日 クリスたち三人は麻薬課のトム・ジョーンズ警部補の呼び出しを受けた。
ロサンゼルス警察署
トム「ハデにやってくれたな、三人とも。」
クリス「す、すみません…。」
ハリー「……」
ミア「しかし警部補、合点のつかない部分がいくつかあるんです。例えば…」
トム「黙れミア、私は張り込むだけでいいと指示を出したはずだ。誰が戦争ごっこをやれと言った。」
ミア「……」
トム「ディル・フェニックスはまんまと逃がし、おまけに犯人たちを二人も黒コゲにするなど…。
お前たちのしたことは警官の域を超えている、犯罪者と同じだ。」
ハリー「だから警部補、それは俺たちじゃねえって。」
トム「証明できるのか?ハリー巡査。」
ハリー「……」
トム「ミア、もう一度聞くが本当に裏口からディルが出てこなかったのか?」
ミア「はい、確かです。私はずっと裏口を固めてましたから。」
トム「それはそうと、なぜクリスたちの突入を止めなかった。私の命令を無視したのか。」
ミア「す、すみません…。」
クリス「警部補、彼女を責めないでください。僕たちが勝手に飛び出したんです。」
ハリー「そうだぜ、悪いのは俺たちだ。」
クリス「停職処分にするのなら僕たち二人だけにしてください、警部補。」
トム「クリス・レイドック巡査、あなたは大統領のご子息です。いくら私の部下とはいえ
あなたを停職処分にさせたら私のクビはあっという間に飛びます。」
クリス「父は関係ないですよ、僕はただの巡査ですから。」
トム「ゴホン…とにかくあなたにも言っておきますぞ。これ以上ムチャなマネをすれば、
私の立場だけではなく上層部にも影響が及びます。マスコミにも何と発表すればいいか…。」
クリス「すみません…。」
トム「今後そのような無鉄砲な突入は避けていただきたい、大統領閣下もあなたの身を
ご心配されているに違いありません。」
クリス「(ロクに会ってくれもしない父さんなんて…。)」
トム「何か?」
クリス「い、いえ。本当に申し訳ありませんでした。以後気をつけます。」
トム「うむ、三人とも下がってよろしい。処分は始末書だけでいい。」
ハリー「うひょー!やったぜ!」
ミア「ほっ…。」
クリス「あ、ありがとうございます!」
トム「こらこら、うかれている場合ではないぞ。捜査は引き続き頼むぞ。」
クリス「はい!」
ハリー「了解、警部補。」
ミア「では失礼します。」
停職処分をまぬがれたクリスたちは、トム警部補のデスクを出て行った。
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幻の勇者 PAGE16
麻薬課
ハリー「いやー、助かったぜ。お前のおかげだよ。」
クリス「なんで僕が?」
ハリー「決まってんだろ、お前はなんといっても大統領閣下の息子だもんな。たとえ相手が署長でも
お前と一緒に仕事をしていれば安心だ。」
クリス「やめてくれよ、僕はそんなつもりで…。」
ミア「クリス、お願いだからもう無茶なことはしないでね。…あなたもよ、ハリー。」
ハリー「す、すまん。ミア。」
クリス「ごめんよミア…。元はと言えばキミの言うとうりにしておけば良かったんだよね。」
ミア「あなたたちの気持ちも分からないわけでもないけどね。」
ハリー「しかしハラ減ったな…。そろそろ昼だし、いつものバーガーショップに行こうぜ。」
クリス「いいねぇ。…ミア、キミも行かないか。」
ミア「そうね、じゃあ私も付き合おうかしら。」
三人は昼食を取りに署を出ていった。
そしてオフィスには誰もいなくなり、つけっぱなしのテレビに写るニュースだけが流れていた。
TV「では次に世界各地のニュースです。
ヨーロッパのイタリア・ローマでは、ある不可解な事件が話題を独占しています。
謎の少年が銀行強盗と激突。少年は見事、強盗を退治して街の英雄に…。」
TV「しかしその直後、この少年はなんと不思議なことに、空中を浮遊して街を逃走するという
奇怪な出来事が…。」
TV「ローマの市民の一人が偶然にもデジタルカメラで撮影したものを再生します。
ご覧頂けるでしょうか。画像が少々乱れておりますが、市民に囲まれたこの謎の少年は
一瞬にして空中を飛び…。」
なんとテレビに映るその少年は、歳は若いがクリス・レイドック巡査にそっくりだった。
TV「現在のところ、この少年の身元は不明です。しかし街の市民は超能力少年の出現だとパニックに
陥る人々もおり、一刻も早く少年の身元を…。」
TV「警察側は謎の少年の行方を追うとともに、なぜこのような不可思議な現象が起こったのかを…。」
このロサンゼルスにて第一の事件が起こったとともに、第二の事件はヨーロッパで起こりつつあった。
クリスに似た謎の少年は、ローマでは超能力少年の出現だと世間を騒がせ、あっという間に
イタリア全土に新聞や報道関係すべての話題をさらった。
これより時を少々戻し、ローマにやってきた謎の少年の出現を追うエピソードに移る。
それは信じがたいことに 彼もまた異世界からやってきた 不思議な力を持つ少年である。
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支援
ちょっと抜けます。またあとでつづきを再開しまs
乙です
ローマのイザ?編も楽しみ
幻の勇者 PAGE17
<第二の事件>
イタリア ローマ 公園広場 pm01:10
ローマの午後の街はいつものように、優雅な昼食を楽しむ市民や
ショッピングをする人々、あるいは宗教の布教を宣伝する者もいた。
市民A「<この服もいいですわねぇ。>」
市民B「<あら、奥様のような方だったらこっちのほうがお似合いじゃなくて?>」
市民A「<少しハデすぎないかしら、私にはとても…。>」
市民B「<いいえ、奥様はエレガントでいらっしゃるから、これくらいの明るい色のほうが。>」
市民A「<おほほほ、お上手ね。>」
信者「<市民の皆さん、真実は聖書と共に導かれるでしょう。私たちと共にしあわせの国へ
行こうじゃありませんか。そこには何の苦しみもなく、何の悲しみもない世界へと…。>」
子供「<おじちゃん、アイスくださいな。>」
主人「<はいよ、どのアイスにするかね。おじょうちゃん。>」
子供「<ブルーベリーちょうだい。>」
主人「<よっしゃ、ちょっと待ってておくれよ。>」
午後ののどかなローマの街のひととき。だが突然屋台のアイス屋の上に、奇妙な空間が出現した。
バチバチバチ……ッギュン!
主人「<ん?なんだ…?>」
なんと空間から一人の少年が屋台の上に落ちてきた。
イザ「うわあああああああ!!」
ッドガン!! ガッシャァーーーン!
主人「<うおお!…な、何事だ?!>」
子供「<あははは!お空から人がふってきたー!>」
イザ「あいたたた…。」
主人「<こ、このガキ!いったいどこから落ちてきやがった!屋台がめちゃくちゃじゃないか!>」
イザ「ん…?」
子供「<おにーちゃん、だいじょうぶ?>」
イザ「あ、あれ…?ここはどこだ?」
主人「<どうしてくれるんだ!品物が台無しだぞ!弁償しろ弁償!>」
イザ「あ、あの…ここはどこでしょうか。」
主人「<な、なんだこいつ。外国人か?>」
イザ「何を言ってるんだろこの人…。まさか言葉が通じない国がまだあったなんて…。」
子供「<ねぇねぇ、おにーちゃんだあれ?お空からやってきた宇宙人?>」
イザ「ご、ごめんよ…。何を言ってるのかさっぱりわからないや。しかし思い切り腰を
打っちゃったなぁ…いたたたた。」
主人「<おい待て兄ちゃん、外国人だろうとこれはただでは済まんぞ。弁償してくれるんだろうな。>」
イザ「あ…もしかしてこれ、ボクのせいなのかな。」
主人「<今すぐに弁償してもらおう、さもないと警察に突き出すぞ。>」
イザ「ごめんなさい。ボク今これだけしか持ってないんですけど、足りますか?」
イザはそのアイス屋の主人に350ゴールドを出した。
主人「<な、なんだこりゃ。オモチャの金じゃないか!ふざけるのもいい加減にしろ!>」
イザ「まいったなぁ…。いったいどうすればいいんだ。だいたいここどこなんだよ…。ん?」
そのときイザは街の車道に走る車を見て驚いた。
イザ「な、なんだあの乗り物は??」
主人「<おい、聞いてるのか兄ちゃん。全部で20万リラ弁償しろ。>」
イザ「ちょ、ちょっとおじさん!あれ見てくださいよ!何ですかあれは!」
主人「<き、聞いてるのかこいつ…。>」
イザ「す、すごい…!中に人が入ってるみたいだ!馬も使わずにひとりでに走る乗り物なんて
初めて見た…!」
主人「<こいつ車ごときで何を驚いてやがんだ…。>」
イザ「よく見たら町の建物も奇妙な形をしてるな…。いったいここはどこの町なんだろう。
ま、待てよ…なんか見覚えがあるな。夢の中で見た世界とすごく似ている気が…。」
主人「<兄ちゃん、どうでもいいが弁償できないのなら私と一緒に警察へ行こう。あんた
どのみちこのままじゃ帰さないぞ。>」
だがイザは全然聞いてなかった。
イザ「おっとこうしちゃいられない、早く元の世界へ戻らなきゃ。精霊の冠を買わないと。」
主人「<おい待て、どこへ行こうってんだ。こっちへ来い。>」
イザ「な、何をするんですか。ボク急いでるんですよ。」
主人「<警察に突き出してやる、観念しろ。>」
イザ「ちょ、ちょっと…!」
イザはアイス屋の主人に連れられ、警察に突き出された。
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幻の勇者 PAGE18
ローマ警察署
警官A「<外国人の少年ってのはどいつのことだ。>」
警官B「<あそこだよ、さっきからワケのわからんことをずっとほざいてる。>」
警官A「<ふーん、何だかハデな格好してるな。何かのコスプレか?>」
警官B「<だが少年がしゃべっている言語は英語だ。たぶんアメリカ人だろ。>」
警官A「<うちの署で英語しゃべられるやつっていたか?>」
警官B「<大丈夫だ、今ジミーが取り調べをしている。>」
イザはローマ警察署にて、ジミー・ブルーバード巡査という警官に取調べを受けられていた。
警官J「ではもう一度聞く、きみの出身を教えてもらえるかな。」
イザ「だから何度も言ってるじゃないですか、ボクはライフコッドの住人ですよ。」
警官J「あのなーきみ。ライフコッドなんて国や市は聞いたこともないぞ。」
イザ「そんなわけないですよ、確かに田舎の村ですけど…。」
警官J「きみはアメリカ人だろ?住所も言えんのか?」
イザ「なんですかアメリカって?」
警官J「…もういい、じゃあきみの名を教えてくれ。」
イザ「イザです。」
警官J「それは苗字か?それとも名前か?」
イザ「なんですか苗字って?」
警官J「おい、ふざけてるのか。」
イザ「ふ、ふざけてなんかないですよ。」
警官J「苗字もミドルネームもないのか?イザという名だけでは調べようがないぞ。おまけに
パスポートも持ってないときた。…何か身元を証明できるものを持ってないのか。免許証とか。」
イザ「メンキョショ?」
警官J「参ったなぁ…どういう子なんだこいつは…。」
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幻の勇者 PAGE19
一方その頃 ローマの街のある銀行裏にて
ビッグ「<おいスモッグ、用意はいいか。>」
スモッグ「<へい、ビッグのアニキ。>」
ビッグ「<段取りは分かっているだろうな。>」
スモッグ「<もちろんでさ。>」
ビッグ「<じゃあ復唱してみろ。>」
スモッグ「<えっと…まず銀行へ入り、非常ベルを無効にして、そんでもって人質を取り
金庫のカギを奪い、そんですばやく逃げる。>」
ビッグ「<バカヤロウ、手ぶらで銀行を出てどうする。金を奪って出るんだよトンチキ。>」
スモッグ「<あ、そうか…。>」
ビッグ「<何しに銃を持って銀行へ行くと思ってんだ。てめえ本当に大丈夫なんだろうな。>」
スモッグ「<す、すんませんアニキ。>」
ビッグ「<いいか、失敗したらブタ箱行きだぞ。ぬかるんじゃねえぞ。>」
スモッグ「<へい!>」
ビッグ「<よし、じゃあ行くぞ…。>」
ビッグとスモッグは覆面をかぶり、マシンガンを持って銀行へ入っていった。
彼ら二人は兄弟でタッグを組むローマの犯罪者である。
兄のビッグ・マック、そして弟のスモッグ・マックの二人は強盗・誘拐・窃盗の容疑で
指名手配中のローマの小悪党たちだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE20
銀行
銀行員A「<いらっしゃいま…>」
ジャキン!
ビッグ「<全員動くな!ハチの巣にされてえか!>」
銀行員A「<きゃああああ!>」
銀行員B「<何事だ?!>」
スモッグ「<死にたくなければ動くんじゃねえやい!全員手を見える位置に挙げろ!>」
銀行員C「<ご、強盗だぁぁ…!>」
銀行員D「<あわわ…。>」
ビッグ「<おい!今のうちに非常ベルを無効にしろ!>」
スモッグ「<へい!ビッグのアニキ!>」
ビッグ「<バ、バカヤロウ!名前で呼ぶんじゃねえ!>」
スモッグ「<あ…。>」
銀行員E「<(おい、コンピューターを無効にされる前に非常スイッチを押せ…。)>」
銀行員F「<(わ、わかった…。)>」
銀行員Fは強盗たちに気づかれないように、こっそりとデスクの裏の非常スイッチを押した。
ピッピッピッピ…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
警察署にて
警官J「あのな、このままじゃきみは留置所に入れられるぞ。身元も分からないんじゃ
どうしようもないだろ。」
イザ「さっきのおじさんにはちゃんと弁償しますよ、でも今ボク350ゴールドしか持ってないんです。」
警官J「こんなオモチャのお金で我々をからかうのか?」
イザ「オモチャじゃないですってば。ちゃんとしたゴールドですよ。」
警官J「ドル札さえ持ってないのか?」
イザ「どる??ドルって何です?」
警官J「……」
そのとき、通報を受けた警官が慌ててやってきた。
警官A「<おい!この先の銀行で強盗が入ったらしい!緊急出動だ!>」
警官J「<な、何だと!わかった、すぐ行く!>」
イザ「?」
警官J「おい、きみはここで待っていなさい。我々は出動せねばならない。」
イザ「帰ってもいいですか?」
警官J「駄目だ、ここにいろ。いいな。」
イザ「……」
警官J「こりゃあおとなしく待っている気はなさそうだな…。」
イザ「な、何ですか。」
警官J「仕方ない、きみも一緒に来たまえ。」
イザ「ちょ、ちょっと…今度はどこへ行くんですか。」
警官ジミーはイザも同行させ、パトカーに乗せた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE21
パトカー内
イザ「うわわ!す、すごい…!こりゃ馬車なんかよりもずっと速いぞ!なんて便利な乗り物だ!」
イザは初めて乗る車に感動していた。
警官J「おい、あんまりはしゃぐな。…まさかきみは車に乗るのは初めてなのか?」
イザ「クルマ?これクルマっていう乗り物なんですか。」
警官J「おいおい…。」
イザ「これって原動力は何です?やっぱり熱でしょうか。」
警官J「バカなことを言うな。気球じゃあるまいし、ガソリンも知らんのか。」
イザ「がそりん…。」
警官J「(まるで原始人だな…。)」
イザ「ところでボクをどこへ連れていく気なんですか。」
警官J「別に連れていく気はなかった、残しておけばきみは逃げる気だったろう?」
イザ「ははは、読まれてたか。」
警官J「やはりな…。」
イザ「ねぇ、どこへ向かっているんですか。」
警官J「いいかよく聞け、今から我々は襲撃されている銀行へ向かう。その間きみは
この車の中で待っていろ。」
イザ「強盗…。」
キキキィッ!
警官J「さぁ着いたぞ、おとなしく待っているんだぞ。いいな。」
イザ「はーい。」
ガチャリ バタム!
警官ジミーはパトカーを降り、銀行前へ走っていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE22
銀行前
警官J「<遅くなってすまない、状況は?>」
警官A「<人質を取って銀行内に立てこもっている、幸いにもコンピューターを無効にされる前に
銀行員の一人が非常スイッチを押してくれた。>」
警官J「<犯人グループの人数は?>」
警官A「<ここからではよく見えんが…おそらく二人ほどだな。覆面をかぶっている二人組だとすれば
指名手配中のマック兄弟かもしれん。だがやつらマシンガンを装備している。>」
警官J「<まずいな…。無線で応援を要請したほうがいいんじゃないか。>」
警官A「<ジミー、悪いがお前のパトカーの無線で呼び出してくれないか。>」
警官J「<了解。>」
警官ジミーは再びパトカーへ戻っていった。しかし…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
パトカー内
ガチャリ
警官J「<ハッ…!あの少年は…?!>」
パトカーで待っていたはずのイザは、どこにもいなかった。
警官J「<くそっ…!してやられた!手錠でもかけておくんだった!>」
警官J「<やむをえん、とにかくまず応援を呼ばなくては…。>」
警官ジミーはひとまず応援を要請しようと無線のスイッチを押した。
だがそのとき、パトカーの前に突如黒い空間が霧とともに出現した。
――――ッシュゥゥーーーー!ッヴァン!!
警官J「<?!…な、なんだ…?!>」
黒い霧は空中をしばらくさまよい、やがて警官ジミーの口の中へ入り込んだ。
ヒュゥゥゥーーー!
警官J「<ゲ…!な、何だこりゃ…!うわ!ゴホッ!ゲホッ…!>」
警官J「<ゴホッ!ガハッ…!……ん?>」
警官J「………」
やがて‘それ’は、ジミー・ブルーバード巡査ではなくなった。
警官J「フゥ……。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE23
そして銀行内では――――
ビッグ「<ち、ちくしょう!誰が非常スイッチを押しやがったんだ!おかげで完全にサツどもに
包囲されちまったじゃねえか!>」
銀行員A「<うぅ…。>」
銀行員B「<……>」
スモッグ「<ア、アニキ…!もうヤバイよこりゃ…!>」
ビッグ「<バカヤロウ!そもそもてめえがモタモタしてるからこんなことに…!>」
イザ「強盗ってキミたちのこと?」
ビッグ「<?!>」
スモッグ「<だ、誰だこいつ?>」
なんとイザがすでに銀行内に侵入していた。
ビッグ「<て、てめえ!どこから入ってきやがった!侵入口は全部閉めたはずなのに!(ジャキン!)>」
スモッグ「<アニキ!ぶっ殺しちまいましょうぜ!(ジャキン!)>」
ビッグ「<バカめ、どこのどいつか知らんが正義の味方気取りのガキが!死ね!>」
イザ「!」
ズダダダダダダ!
だがイザは目にも止まらぬ速さでビッグたちの背後へ回った。
――――ヒュッ!
ビッグ「<あれ?>」
スモッグ「<ん?>」
イザ「ここだよ。」
ビッグ「<ゲッ!いつの間に…!>」
イザは檜の棒を左右に振り回し、ビッグとスモッグを吹き飛ばした。
(ヒュッ!)――――ッドン!ッバキィ!
ビッグ「<うげっ…!>」
スモッグ「<ぐほっ…!>」
二人はウィンドウガラスを突き破り、外まで吹っ飛んだ。
ガッシャァーーーン!
イザ「あ、あれ…?そんなに力入れてなかったのに…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
銀行前
警官A「<やったぞ!犯人たちを逮捕した!>」
警官B「<おとなしくしろ!>」
警官A「<やはりビッグ・マックとスモッグ・マックの二人組だ、ようやくこいつらを捕まえたぞ。>」
ビッグ「<うぐぅ…!>」
スモッグ「<アニキ…いてぇよお…。>」
警官C「<ところで誰がこいつらを?>」
警官D「<わからん、いきなり吹っ飛んできたから…。>」
銀行強盗のビッグとスモッグは逮捕され、しばらくするとイザが銀行から出てきた。
イザ「大丈夫でしたか?その二人。」
警官A「<お、お前は…!まさかこの少年の仕業なのか?>」
警官B「<なんでこいつここにいるんだ、ジミーはどうした。>」
警官C「<おいきみ、署で待っていろと言われなかったのか。>」
イザ「な、何を言ってるのかさっぱりだ…。」
するとこの事件を目撃していたヤジ馬たちが駆け寄ってきた。
市民F「<この兄ちゃんが犯人たちをやっつけたのか!>」
市民G「<すげーな、きみはアメリカ人か?みかけに寄らず強いんだな。>」
市民H「<記念に撮影させてくれ、ちょうどデジカメを持ってたんだ。>」
イザ「あ、あの…。」
市民I「<お兄さん強いのね、ステキ。>」
記者「<ちょっとすみません。私記者の者ですが、偶然にも今の事件を目撃しました。
あなたのことを記事にしてもいいですか?>」
市民J「<ひょっとしてこいつスパイダーマンだったりしてな。手から糸を出すのか?>」
市民K「<なぁなぁ、うちのボクシングジムへ来ないか?お前なら世界を取ることができるぞ。>」
イザ「ああああああ!もうワケわからない!(キィィン…)」
イザはたまらなくなり、ついにルーラの呪文を放った。
キィン!――――ッドヒュ!
市民F「<うわわ!>」
市民G「<と、飛んだ…!>」
市民H「<す、すげええええ!なんだ今のは…!>」
市民J「<やっぱりスパイダーマンだ!>」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE24
ローマ 公園広場
イザはルーラの呪文で、先ほど落ちてきた空間前までやってきた。
ヒュッ… スト!
イザ「あれ?やっぱりここに来ちゃったか。」
イザ「元の世界へ戻るつもりだったのに…。どうやらルーラの結界は異世界を
またぐことはできないみたいだ…。」
「ルーラ」とは瞬間移動に近い魔法の一種である。
後になって戻りたい場所に‘ルーラの結界’というものをあらかじめ張っておくと、
たとえ離れた場所でもこの結界へ瞬時に飛び戻ることが可能である。
だがこの結界は例外があり、物体をすり抜けて移動することはできず、
あるいは異次元の空間をまたぐことは不可能なのだ。
イザ「まずい!空間が閉じかかってる…!」
イザは元の世界へ戻ろうと空中に開けられた空間に入ろうとしたが、空間は閉じかかっていた。
イザ「は、早く帰らないと…ん?」
だがそのとき、ジミー巡査がイザのもとへやってきた。
警官J「ほほぅ。翼もないのに空中を飛んできたところを見ると、どうやら魔法を使えるようだな。
お前ただの人間ではないな。」
イザ「あ、やば…。見つかっちゃった。」
警官J「…むぅ、微力とはいえ潜在能力は普通の人間の倍以上だな…。お前まさか上の住人か?」
イザ「?!」
イザはその警官から異様な妖気を感じ取った。
イザ「お、おかしい…あなたはさっきの人とはまるで別人だ…。」
警官J「まるで別人ではない、正真正銘の別人だ。」
イザ「何だって…?!」
警官J「なるほどな、上の世界の穴からやってきたのか。だがお前のようなヤツがこの世界に
いてもらわれると困る、自分の世界へ帰れ。」
イザ「お、お前はいったい何者だ!」
警官J「俺の名はジャミラスだ。この世界で言うならジャミラス・ブルーバードか。だが名前など
どうでもいい、消えろ。(ギィィン!)」
ジャミラスと名乗るその警官は、イザに向かって風の超能力を放った。
ッドヒュゥゥーーーー!!
イザ「うわあぁぁ!」
警官J「上の住人にしては非力なヤツだな、この程度の風で身動きできんとは。俺の本来の
チカラはこんなものではないぞ。」
ジャミラスはイザをまるで操り人形のように空中であやつり、そして奇妙な空間へと放り込んだ。
イザ「うああああああ!」
――――ッギュン! シュゥゥ……
空間は閉じ、イザは跡形もなく消えてしまった。
警官J「非力なヤツめ、二度とここへ来るな。」
すると小鳥の群れがジャミラスの周りに集まり、まるで仲間かのようにジャミラスの肩に止まった。
警官J「ん…?ほぅ、この世界にも鳥がいたのか。」
*「チュンチュン。」
警官J「翼を持たない人間とは不便な生き物だな、もっとも今の俺も人間の身体を借りているが。」
*「チュンチュン。」
警官J「さてと…ぼちぼち仕事に取り掛かるか…。」
ローマの街で起きた第二の事件、それは人々には気づくはずもないが
このジミー・ブルーバード巡査は、もはや人間と言うべき存在ではなかった。
黒い霧に取り憑かれたこの男は四匹の怪物のうちの一人、ジャミラス・ジミー・ブルーバードと名乗る
異世界からやってきた風の魔物である。そして別名‘裏切りのジャミラス’という。
そして第三・第四の事件はこれより三ヵ月後に起こる。
第三の事件は日本列島・首都東京。第四の事件はアジアにて。
世界各地で確実に闇の事件が起こり始め、世界終焉の日まで刻一刻と迫る……。
またちょっとぬけます。つづきはのちほお
原作に忠実な上と現代の下をどうつなげるのか?支援
かきこみありがと。再開します
幻の勇者 PAGE33
――――三ヵ月後
ロサンゼルス ハリウッドにて am01:20
一匹目の怪物、デュラン・フェニックスが降臨したその後、彼は人間の姿のままハリウッドの街に
身を隠していた。真夜中のロス街にて、デュランは他の仲間たちの降臨をじっと待つ。
ディル「残りの二匹もぼちぼちこの世界に降臨する頃合だろう…。とりあえずジャミラスに
連絡を取ることにするか。」
デュランが幻の大地に降臨して早三ヶ月。
頭脳も優れている彼は、すでにこの世界の環境に慣れ、なんと携帯電話まで使用できるようになった。
デュランはひとまずローマにいるジャミラスに連絡を取り始めた。
プルルルル…プルルルル…プツッ
*(警官J)「…ん?えーと、もしもし。誰だ?」
ディル「私だ、デュランだ。」
*「あぁ、あんたか。どうした。」
ディル「フ、お前も電話というものをようやく使えるようになったか。」
*「俺たち魔族は魔法で通信できるはずだ、なぜわざわざ人間のアイテムなど使うんだ。」
ディル「ヘタに闇のチカラを使えばそれだけ本来の力が戻るのが遅れるぞ、それでなくてもすでに
三ヶ月も経っているのだ。」
*「やれやれ…。俺はあんたのように柔軟じゃないんだ。だいたいここは見たこともないアイテムだらけだ。
幻の大地の住人たちは恐ろしいほどの頭脳を持っているな。」
ディル「そう驚くことでもない。我らのように魔法が使えない分、科学力という知識に
長けているだけだ。…もっともやつらの知能に関しては上の住人の数倍は進化しているがな。」
*「なるほどな。…ところで用件は何だ。」
ディル「うむ、残りの二匹がそろそろこの世界に降臨してくる。」
*「ムドーとグラコスか。」
ディル「そうだ、二匹が降臨したら例の‘計画’を実行に移したいが、その前に大魔王さまからの
緊急指令が下った。」
*「何だ。」
ディル「‘幻の勇者を捕獲せよ’。どうやらこれは最優先任務だそうだ。」
*「幻の勇者だと?何者なんだそいつは。」
ディル「上の住人の中で我らの降臨に感づいた者たちがいる、どうやらこいつらが私たちの最大の
敵となりそうだ。その中の一人に伝説の勇者がいる。」
*「何だと?ってことは…。」
ディル「そうだ、やつらも私たちのように融合しようともくろんでいる。」
*「勇者同士が融合したら大変なことになるぞ、俺たちはもちろん大魔王さまさえ
おびやかす存在になってしまう…。」
ディル「その通り、伝説の勇者と幻の勇者を会わせてはならん。これだけは食い止めねば。」
*「わかった、融合される前に非力な方の幻の勇者を始末しろってことだな?」
ディル「そういうことだ。」
*「…ところでその幻の勇者の名前や顔は判明しているのか。」
ディル「名までは分からんが、容姿は割れている。勇者イザという者とそっくりの人物だ。
つまりこいつが幻の勇者ということだ。」
*「な、何?今なんと言った?」
ディル「イザという者の本体だ、どうかしたか?」
*「しまった…あのとき殺しておけばよかった…。」
ディル「まさかお前は勇者イザをすでに見かけたのか?」
*「あぁ、そいつは三ヶ月前にここローマへ来た。俺が融合したこの人間の脳にイザという記憶がある。
…すまん、そいつが伝説の勇者だとは知らなかった。」
ディル「まぁいい、本体を捕らえるほうが先だ。」
*「あんた気をつけろよ、いつ勇者一向が襲ってくるか分からんぞ。」
ディル「余計な心配は無用だ、私もだいぶ力が戻ってきた。必ず幻の勇者を始末する。」
*「分かった…、じゃあムドーやグラコスが降臨してきたら、やつらにも伝えておこう。」
ディル「ムドーはともかくグラコスは頭が悪い。かえって話をややこしくさせ兼ねん。やつらには
今はおとなしくしてもらっていたほうがいい。」
*「それもそうだな。第一あの二匹に携帯など無用の産物か。」
ディル「以上で報告は終わりだ。…では通信を切るぞ、また何かあれば連絡をする。」
*「ま、待ってくれ。この通信を切るときはどうすればいいんだ。」
ディル「…たまには説明書というものを読め、この程度のアイテムごときで魔族の名が泣くぞ。(ピッ)」
デュランは携帯電話を切った。
ディル「やれやれ、環境に馴染むことに慣れん仲間を持つと苦労するな…。」
ディル「…しかし人間の身体というのは扱いにくい、生殖器の創りまで違うようだ。
24時間以内に最低一度の食事をせねばならんとは……ん?」
するとデュランの前に、一人の謎の少女が現れた。
ルーシー「ぷぷぷ…。身体は人間の姿とはいえ、なんか魔族が携帯電話を使うなんて滑稽ね。
つい聞き入っちゃった。」
ディル「誰だ、お前は。」
ルーシー「そのうちあんた写メールとかやっちゃいそう、考えただけでも笑えるわ。」
ディル「貴様は誰だと聞いている、答えろ。」
ルーシー「あたしが誰かよりも、あんたにとっては‘なぜあたしがここにいるのか’のほうが
重要じゃない?デュラン。」
ディル「!貴様なぜ私の名を知っている…。何者だ、大魔王さまの使いか?」
ルーシー「さぁね。(キィィン!)」
その少女はそう言うと、問答無用でデュランに向けて魔法のエナジーコロナを放った。
――――バリバリバリバリ!!
ディル「ぐぉぉおお!!こ、この力は…!まさか貴様!」
ルーシー「ばいばい。」
コロナは爆発を起こし、半径20フィートが吹っ飛んだ。
――――ッズガァァーーーンン!!
ルーシー「…ふぅ、まさか四匹の怪物の中でも最強・デュランを最初に仕留めちゃうとは…あれ??」
だが爆発した痕跡の中にデュランの姿はなかった。どうやら間一髪で逃げられてしまったようだ。
ルーシー「しまった…。逃げられちゃった。」
デュラン・フェニックスの前に突然現れた謎の少女。
だがデュランは間一髪で逃走、再びロスの市街へと潜伏した。
謎の少女は他の怪物たちを追うべく、これより舞台は日本列島へと移り変わる。
同時に第三の事件、三匹目の怪物の降臨となる…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
支援
幻の勇者 PAGE34
<第三の事件>
日本 首都東京 東京地方裁判所
裁判長「[被告人は前へ。]」
須藤「[……]」
地方裁判所にて、ある一人の男の裁判が行われようとしていた。
この被告人、かつて日本全国を震撼させた某宗教団体の教祖である。
被告の名を須藤庄司(スドウ ショウジ)という。
盲目であり大柄で太ったその体格。だがその男は常人では想像もつかないほどの野心と
卓越した話術を兼ね備えた人物であり、自分の配下の者に平気で殺人をも犯させる狂人であった。
裁判長「[ではこれより199X年平成Y年●月▽日に起こった事件の最終弁論を行います。
まず検察側からどうぞ。]」
検察官「[はっ、では簡潔に述べます。…被告、須藤庄司。この男は宗教を建前とした布教を装い
9X年の地下鉄事件を始め、数多くの殺人事件に関わり、その事件の首謀者として…。]」
検察官が淡々と述べる中、須藤被告は一向に動じることもなく不気味に立っているだけだった。
須藤「[……]」
裁判長「[被告人、何か申し立てることは?]」
須藤「[……]」
裁判長「[何も供述しないということは、全ての罪を認めるということですか。]」
すると須藤被告はゆっくりと口を開いた。
須藤「[私は…そのような事件にはいっさい関わっていない。]」
検察官「[この期に及んでまだそんなことを!いい加減に罪を認めろ!]」
裁判長「[検察官、大きな声を出すと退場を命じますよ。]」
検察官「[し、失礼…。]」
裁判長「[被告の弁護側から何か申し立てることは?]」
弁護士「[いえ…特にありません…。]」
須藤「[……]」
裁判長「[では最終弁論は終了いたします、判決は明日の午前10時ということで本日は閉廷します。]」
ダン!
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幻の勇者 PAGE35
留置所 面会室
弁護士「[もう弁解の余地はないぞ、どうしてそこまで犯行を否定するんだ。]」
須藤「[私のような高尚な思考を持つ者は、所詮あなたがたには理解されないでしょうな。
この世は能無しの集まりだ。]」
弁護士「[自分のしたことが判っているのか、お前は殺人を犯したんだぞ。]」
須藤「[殺人か…。ではあなたにお聞きしたい、ブタや牛を殺して食すのも罪ですか?]」
弁護士「[私はそのような下らん質問に答えるためにお前の弁護を引き受けたわけではない。
どのような犯罪者でも弁護士を雇う権利があるのだ、でなければ私だってお前のようなやつに…。]」
須藤「[あなたは最初から非協力的だ、いったい私を弁護する気があるのですか。]」
弁護士「[こんな状況で何を弁護しろと言うのだ、罪はもはや明白だぞ。]」
須藤「[私に罪があるとすれば、あなたたちにも罪はある。]」
弁護士「[…もういい、お前と話しているとこっちまで頭がおかしくなりそうだ。]」
須藤の弁護士は、あきれた様子で面会室を出て行った。
バタム!
須藤「[……フン、雇うだけ無駄だったな。能無し弁護士めが…。]」
須藤はゆっくりと立ち上がり、留置所へ戻ろうとした。だが…
――――シュゥゥゥーーーー!ッヴァン!!
須藤の目の前に、例の暗黒の霧が出現した。
だが彼は盲目のためそれが見えず、不気味な気配しか感じ取れなかった。
須藤「[なんだ…?変な匂いがするな。]」
黒い霧はしばらく面会室の中をさまよい、やがて須藤の鼻の中へ潜り込んだ。
ヒュゥゥーーーー!
須藤「[うっ…!ゲホッ!ガハッ!な、なんだこれは…!]」
須藤「[は、鼻の中に何かが…!ゲホッ!]」
そして‘それ’は、もはや須藤庄司ではなくなった。
須藤「フゥ……。」
だが様子がおかしい、どうやら目が見えないことに疑問を持っているようだ。
須藤「む…。なぜ視力がほとんどないのだ…。融合は完璧なはずだ。」
すると面会室に看守が入ってきた。
ガチャリ
看守「[おい須藤、面会は終わったのだろう。さっさと出ろ。]」
須藤「[…おい、今ワシに声をかけた者、貴様は目が見えるか?]」
看守「[あん?]」
須藤「[どうやらこの身体は目が不自由らしい、貴様の視力はどうだ?]」
看守「[何をワケのわからんことを言ってる、いいからとっとと面会室を出ろ。]」
リアルタイムで読めてうれしい。
支援しマース
だが須藤は突然その看守をカベに押さえつけた。
―――ヒュッ! ッダン!!
看守「[うぉおお!な、何をする…!]」
須藤「[受け取れ、貴様の眼球代だ。]」
看守「[?!]」
須藤は看守を押さえつけたまま、ポケットからアメ玉を取り出して看守の口の中へ入れた。
看守「[な、何をする気だ…!]」
須藤「[貴様の眼球をもらう、アメはその代金だ。釣りは要らん。]」
看守「[や、やめろ…!うわああああああああ!!]」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
やがて須藤は、くりぬいた看守の眼球を面会室のテーブルの上に置いた。
ちなみにその看守は、すでに須藤に胸をつらぬかれて死亡している。
須藤「さて、急がないとこの眼球も死んでしまうな…。」
須藤は今度はなんと、自分の眼球をくりぬき始めた。
グチャ! グリグリグリ…ブチ!
須藤「こいつは使い物にならん。」
そう言って自分の眼球を床に捨て、次に看守の眼球を自分の眼窩へはめ込んだ。
グチュ! グリグリグリ…
そしてさらに自ら顔に魔法をかけ始めた。
ギィィン! シュゥゥーーーー!
須藤「……ふむ、まだ少々慣れないが、光が戻ってきおった。」
なんと須藤の視力が戻り、顔の傷口がみるみるふさがっていく。
須藤「さて、急ぐとするか。……ところでここはどこなのだ。」
須藤「ふむ、警備の厳重さや鉄格子を見るに…どうやらワシは囚われの身か。まずはここから
脱出することから始めるか。(ギィィン!)」
須藤はそう言うと、炎の超能力を部屋全体に放った。
―――――ッドヴァァァーーー!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE36
看守B「[いったい何事だ!]」
看守C「[面会室で火災が起こった!早く火を消すんだ!]」
看守B「[な、なぜ火災が起こったのだ?!須藤はどうした!]」
看守C「[わからん!とにかく火を…!]」
だが須藤が炎に包まれた面会室からゆっくりと出てきた。
看守B「[す、須藤!お前の仕業か!]」
看守C「[こ、こいつ火災の中を平気で歩いて…!]」
須藤「むぅ、かなりの人間が警備に当たっておったのか。邪魔なやつらだ。」
看守B「[須藤!そこを動くな!(ジャキン!)]」
看守C「[動くと発砲するぞ!(ジャキン!)]」
須藤「[正確に言うとワシの名は須藤ではない、今やムドー・庄司だ。]」
看守B「[は??]」
看守C「[こ、こいつ何を言ってんだ…。だいたい盲目のくせにどうしてまっすぐ歩けるんだ!]」
須藤「あいにく貴様らの質問に一つ一つ答えているヒマはない、ワシはこれから忙しい。(ギィィン!)」
ムドーと名乗るその男はそう言うと、両手から炎の弾丸を放った。
ッドン!ッドン!――――ザヴァァ!
看守B「[うげぇっ…!]」
看守C「[ぐぉぉっ…!]」
ドタリ ドタリ
須藤「それにしても他の三匹はどこにおるのか…。とにかくワシも急がねば。」
ルーシー「ううん、その前にあんたこの世界から消えて。」
須藤「!」
すると突然ムドーの前に、再び謎の少女が現れた。
須藤「お前は?」
ルーシー「あたしはあんたにとって、とてもやっかいな存在。」
須藤「なんだこいつは…。」
ルーシー「デュランは逃がしちゃったけど、せめて四匹のうち一匹くらいは仕留めないと
あたしの顔が立たないわ。」
須藤「デュランだと?…おい、なぜ貴様がデュランを知っておる。何者だ。」
ルーシー「さぁね。」
須藤「こいつ…どこのどいつか知らんが、命が惜しくないようだな。(ギィィン!)」
ムドーはその少女に向かってメラゾーマの弾丸を放った。
――――ッドヴァァ!
だがすかさず少女はマヒャドの呪文で相殺する。
――――ッビシャァ!
須藤「なに?!」
ルーシー「あちちち…!ひどいわね、女の子に向かって。手がヤケドしたじゃないの。」
須藤「き、貴様はただの人間ではないな!上の住人としてもケタ外れのチカラを感じる!
いったい何者だ!」
ルーシー「バカね、今さらそんな古くさい呪文なんて効かないわよ。今度はあたしの番。(キィィン!)」
須藤「(む!こ、この力は…!)」
その少女は空中に光の魔法陣を描き、ムドーに向けてマジックドレインの波動を構えた。
ッキィィィンン……!
須藤「バ、バカな…!なんという魔法力だ!こ、こんな…!」
ルーシー「まずはこれで一匹目。」
――――ッシュヴァァァーーー!
須藤「ま、まずい…!!」
勝ち目はないと判断したムドーは、炎を使って地下へ逃げた。
ッズガン!…ゴゴゴゴゴ…
ルーシー「あああああ!また逃げられた!もう!」
第三の事件、それは日本列島の首都東京より出現した。だがまたしても謎の少女の出現…。
無論‘それ’も四匹の怪物のうちの一人、ムドー・須藤庄司と名乗る炎の魔物である。
そして別名‘恐怖のムドー’という。
では続けてアジアのマリアナ海溝より、最後の怪物の出現を見せる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE37
<第四の事件>
アジア マリアナ海溝 海底800メートル地点
海溝の裂け目から噴出したガスと共に、その黒い霧は出現した。
ゴボッ ゴボゴボッ…――――ッブシュゥゥーー!
まずは海底に潜む巨大な鯨の体内へ‘それ’が入る。
鯨「ブクルルル……。」
黒い霧に取り付かれた鯨は、海上付近まで浮き上がる。
鯨「ゴボゴボ……。」
次に手近なホオジロザメに黒い霧が乗り移る。
サメ「ゴボッ…ブクルルル…。」
やがてサメは海上へ浮き上がり、今度はカジキマグロに‘それ’が乗り移る。
カジキ「ギギギ…。」
そして次々に‘それ’は移動を繰り返し、ついには海岸までたどり着く。
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幻の勇者 PAGE38
海岸にて
老師「{チャンよ、船の整備はそのへんで切り上げたらどうじゃ。}」
チャン「{はい、おじいさん。}」
海岸沿いのある村に住むアジア系のその少年、名をチャン・リーという。
村の船を整備しながら、アルバイトで学費を稼いで勉学に励む少年である。
そしてその祖父、グラン・リー老師。
中国三千年の歴史の中で、彼らは太極拳や気功術を伝統とする家系に生まれ
癒しの気功によりケガや病人を治療してしまう奇跡の力も身につけていた。
老師「{あぁそうじゃ、お前に通知が来ておったぞ。例の大学からじゃ。}」
チャン「{結果はどうでしたか。}」
老師「{ははは、そんなこと聞かなくても分かっておるじゃろ。もちろん合格じゃ。}」
チャン「{そうですか。}」
老師「{少しは喜んだらどうじゃ、相変わらず眉ひとつ動かさんヤツだな。}」
チャンは若干15歳にして、すでに博士号を取れるほどのIQ:170の頭脳を持つ天才少年である。
英語、日本語、広東語、フランス語など、チャンは四ヶ国以上の言語を身につけるほどの
学力の才能を開花していた。
それゆえにチャンは年齢に似合わず大人びた風潮があり、口調や思考も理屈的で
少々カタブツな変わった少年だった。
チャン「{ところでおじいさん、最近妙な異常気象が世界各地で起こっているのをご存知ですか。}」
老師「{知っておる、何でもアメリカでは粘液の豪雨が降ったというニュースも見た。}」
チャン「{そろそろ私も修行の旅に出ても良いでしょうか、この現象は何かの前兆だと思うんです。
修行の環境にはもってこいです。}」
老師「{しかしな、お前はまだ…。}」
チャン「{四ヶ国以上の言語も身につけ、気功術はすでに出家できるほどの技をみがきました。
我が家系は悟りの旅に出るという伝統があります。}」
チャン・リーの家系は15歳になれば、武者修行の旅に出るという洗礼があった。
それは代々伝わる気功術の悟りの旅でもあり、この科学文明に未だ残っている古くさい伝統だった。
そして世界各地で起こっている異常な現象に気づいたチャンは、一日も早く修行の旅に出たがっていた。
しかしチャンの育ての親でもある祖父グラン・リー老師は、なぜかその旅に反対だった。
老師「{確かにお前は世界中どこへ行っても生きてゆけるじゃろう、だが修行の旅はまだ早い。}」
チャン「{なぜです、私は幼い頃からあなたのもとで…。}」
老師「{いくら能力があるとはいえ、お前には世界に足を踏み入れる動機が未熟じゃ。}」
チャン「{動機が未熟とはどういう意味です、言葉が矛盾しております。おじいさん。}」
老師「{では聞こう、お前は何を得るために世界を旅するのじゃ。}」
チャン「{はい、己の身体と精神を鍛え上げ、さらなる学を追い求め、最終関門として
我が代々伝わる気功の悟りを開くためであります。}」
老師「{うむ、よくわかった。お前はまだ未熟だ、旅は許さん。}」
チャン「{ど、どうしてですか。私の何がいけないんです?}」
老師「{さぁ、ぼちぼち帰ろう。幼い子供たちが待っておるぞ。}」
チャン「{待ってください、話はまだ終わっておりません。}」
老師「{今夜は久しぶりにキムチ鍋だそうじゃ、楽しみだのぅ。}」
チャン「{おじいさん、明確な理由を述べてください。でないと私は…。}」
納得いかないチャンは、老師の肩に手を置いて引きとめようとした。だが…
老師「{愚か者め!(ヒュッ!)}」
チャン「{!}」
老師はチャンの胸に向けて気功の奥義を放った。
―――ッズン!
チャン「{うわっ!}」
ズザザザーーー!
なんと胸に手を当てただけでチャンは吹き飛ばされてしまった。
これが中国三千年の歴史より伝わる、太極拳である。
チャン「{あいたたた…。}」
老師「{チャンよ、お前は何も分かっておらん。なぜこのワシが旅に出るのを反対するのかをな。}」
チャン「{ではあなたを倒せば、旅に出ても良いと?}」
老師「{ほぅ、そう思うのなら好きにするがいい。}」
チャン「{………}」
チャンは起き上がって老師に近づいた。しかし…
チャン「{……}」
老師「{どうした、お前の答えはワシを倒すことではないのか。}」
チャン「{…いえ、やはりやめておきます。}」
老師「{ふむ、少しは分かってきたようじゃの。}」
チャン「{我が家系に伝わる気功術は、決して人を傷つけるためではありません。}」
老師「{その通りじゃ、わざとお前に攻撃してやった甲斐があった。これで理解したか?}」
チャン「{いいえ。}」
老師「{……}」
チャン「{おじいさん…いえ、グラン・リー老師。私は今日まであなたに育てられ、そして
あなたのもとで努力してきたつもりです。学問だって大学卒クラスです、いったい
私の何が気に入らないのでしょうか。この際はっきり申し上げてくれたほうが
私のためでもあります。}」
老師「{むぅ…。}」
チャン「{おじいさん、私以外の若者だって旅に出たはずです。どうして私だけが…。}」
老師「{うむ…チャンよ、そこへ座れ。}」
老師とチャンは、海岸のそばの岩に座った。
老師「{よいかチャン、学問とは何だ?}」
チャン「{え?}」
老師「{人はみな学校へ行ったり、あらゆる学問を自ら学ぼうとする。お前にとって学問とは何だ。}」
チャン「{そ、それは…やはり私は学生の身。学生の本分は勉学です、そして学問とは人が
生きてゆくための必要なものでもあります。人は学ぶために生きるという私の持論です。}」
老師「{それが大きな思い上がりというのだ、チャンよ。お前は自分だけが旅に出られないことに
嫉妬しておるだけじゃ。}」
チャン「{ではお教え下さい、学問とは?}」
老師「{よいか、この世ではお前のように一日中机に向かっておるような若者ばかりではない。
つい50年前までは、お国のために出兵する若者がいたり、字もろくに書けん少年が
家族のために昼も夜も働いておる子だっているのじゃぞ。}」
チャン「{わかりません、その話に学問と何の関係があるのでしょうか。}」
老師「{人は義務教育だけでりっぱに生きてゆける、それ以降の学問は自分のためなのだ。
例えば自分の夢のため。}」
チャン「{夢?}」
老師「{さよう、人は将来の夢を持ってこそ生きる価値がある。自分の夢に向かって努力しようと
するじゃろう?そしてその夢を実現させるために学問があったり、身体を鍛えたり
するのじゃ。お前にはその夢が感じられん。ただ世界が異常だからという理由だけで
格好だけの旅に出ようとしておる。}」
チャン「{……}」
老師「{もし仮に今世界の危機だとしても、お前一人が出張ったところで、この世の中を変えられるほど
世界は甘くない。}」
チャン「{それはそうですが…。}」
老師「{おそらくお前はさらなる学問を身につけたくて世界に出たいのではない。それをやっていないと
自分が落ち着かないだけじゃ。パソコンをいじっていないと不安で仕方ないだけじゃ、違うか?}」
チャン「{……}」
老師「{よいか、きついことを言うがもう一度言うぞ。生きてゆくために学問があるのではない、
人生のためにあるのじゃ。自分の将来のためじゃ。}」
チャン「{人生…。}」
老師「{うむ、少なくともワシにとって学問とはそういうものじゃな。}」
チャン「{……}」
老師「{さぁさぁ、年寄りの説教なんぞもうこのへんでいいじゃろ。早く帰って晩ご飯を食べよう。
子供たちも待っておる。}」
チャン「{はい…。}」
老師「{ははは、久しぶりに今夜は一杯飲むとする……ハッ!」
チャン「{?}」
その瞬間、チャンの背後から例の黒い霧が襲い掛かってきた。
シュゥゥゥーーーー!
老師「{な、なんじゃこれは…!}」
チャン「{どうかしましたか?}」
老師「{チャン!危ない!}」
ドン!
チャン「{うわっ…!}」
老師はチャンをかばい、なんと自分が黒い霧に包まれてしまった。
老師「{うぐっ…!こ、これは…!}」
チャン「{おじいさん!}」
老師「{うぉぉお!か、体が…!どうなっておるのじゃこいつは…!}」
チャン「{老師!大丈夫ですか!な、なんだこの霧は…!}」
黒い霧は老師の体内に入り込み、ついにそれはグラン・リー老師ではなくなった。
老師「{……}」
チャン「{だ、大丈夫ですか!老師!}」
老師「{フゥ……。}」
チャン「{老師?}」
老師「{げはっ!げははははは!海底からここまで苦労したのぅ!だがこれで融合完了だ。}」
チャン「{な、何を言っておられるんですか、グラン老師…。}」
老師「{ん?わしのことか?}」
チャン「{な、なんだこの異様な気は…!こ、こいつはおじいさんじゃない!グラン・リー老師じゃない!}」
老師「{ほぅ、キサマは人間にしてはなかなか鋭いガキだな。わしの名は今やグラコス・リーだ。}」
チャン「{?!}」
グラコスと名乗るその老人の口から、海水がこぼれていた。
チャン「{おじいさんに何をした!}」
グラン「{うるさいやつじゃの、わしはお前のようなガキと遊んでいる場合じゃない。
海水浴でもしてろ。(ギィィン!)}」
グラコスは水の超能力をチャンに向けて放った。
ッシュヴァァァーーーーー!
チャン「{うわあああああ!!}」
チャンは吹き飛ばされ、海へ落ちてしまった。
ッザバァァーン!
グラン「げはははは!げは!げは!」
グラン「げは…ありゃ?ところでわしは何をするためにここへ来たんだっけか。」
グラン「まぁいい、そのうち思い出すじゃろうて。」
グラコスはゲハゲハ笑いながら、アジア大陸に向けて去っていった。
その水の魔物の名はグラコス・グラン・リー。そして別名‘嫉妬のグラコス’と呼ぶ。
これで四匹目の怪物がこの世界に降臨してきたことになる。
そして…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE39
海上にて
チャン「{ぶはぁっ!う、うぐ…!}」
海に放り出されたチャンがようやく浮かび上がってきた。
チャン「{し、しまった!僕は泳げないんだぁぁぁ!だ、誰か…!}」
カナヅチのチャンは水面でもがき、陸に上がれずにいた。
チャン「{誰か…た、助けて…!ゴボゴボッ…!}」
チャン「{ゴボッ…ゴボッ…}」
泳げないチャンは再び海の中へ沈んでしまった。だがそのとき…
竜「ギャァァォォォ!」
なんと上空から翼の生えた巨大な竜が飛んできた。
チャン「{ゴボッ……}」
竜「ギャァァ…!」
そしてその竜は溺れかけたチャンを後ろ足でつかみ、海岸まで運んでいった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE40
海岸にて
竜「グググ…。」
チャン「{げほっ!ごほっ!}」
どうやらチャンは何とか助かったようだ。
意識を取り戻した彼は海水を吐き出し、ようやく状況をつかもうとした。
チャン「{ど、どなたか知りませんが…助けていただいてありが…}」
竜「ググ…。」
チャン「{うわああああああああ!!な、なんだこの…この…このバケモノはああああ!}」
その巨大な竜を見て腰をぬかしたチャンは、後ずさりするように怯えた。
驚くのも無理はない。それはまるで恐竜が復活したかのごとく、ティラノサウルスレックスのような
翼の生えた巨大なドラゴンが海岸に降臨している。
チャン「{バ、バケモノだぁぁぁぁ…!}」
竜「ギャァァァア……!(キィィン…!)」
だがその竜の身体が輝き始め、みるみる小さくなっていった。
キィーーーーン…! シュゥゥゥ…
チャン「{な、なんだ…?!}」
竜「ググググ…。」
黄金の竜はみるみる小さくなり、人間の身体ほど縮むと…
シュゥゥゥ…!
ルーシー「ふぅ……」
なんと竜は少女の姿になった。
ルーシー「あんたねぇ、助けてあげたのに何コシぬかしてんのよ。」
チャン「{あ、あなたは…誰ですか?!}」
ルーシー「あれ?言葉が通じない…。どこの国かな。」
チャン「{英語を話しているようだ…。この女の子アメリカ人かな。し、しかし今の竜は…}」
ルーシー「ねぇ、あたしの言葉わかる?Can you speak?」
チャン「Ye,Yes…I can.(は、はい…。)」
チャンはオドオドしながら、英語でその少女と話し始めた。
ルーシー「あのさ、さっきここに水の魔物が来なかった?入れ違いだったのかな。」
チャン「水…!そ、そういえば…!」
ルーシー「あ、やっぱ来たんだ。一足遅かったか…。」
チャン「いったい何なんですか?!あなたは人間ですか?!さっきの水の魔物とは?!
お、おじいさんはどうなったんです!」
ルーシー「あーもう!一度にいろいろ聞かないでよ!」
チャン「あ、あなたは…?」
ルーシー「あたしはルーシー。本名はバーバラ・ルーシー・カルベローナよ。」
チャン「ず、ずいぶん長い名前ですね。私は…」
ルーシー「知ってるわよ、あなたチャモロでしょ。」
チャン「は?違いますけど…。」
ルーシー「あ、そうか。この世界では名前が違うのよね。」
チャン「何の話を…。」
ルーシー「何でもないわよ、それであなたの名前は?」
チャン「わ、私はチャン・リーと申します…。ただの学生ですよ。」
ルーシー「ぷぷぷぷ…!学生だって!チャモロらしいわね。」
チャン「何ですかそのチャモロって…。」
ルーシー「まぁそれは置いといて、とりあえず本体を見つけたことをチャモロに伝え…」
チャン「ま、待ってくださいよ!この不条理な出来事はどう説明がつくというのでしょうか!」
チャンはこの状況が全くつかめず、頭が混乱していた。
チャン「ちょ、ちょっとルーシーさんという方!こ、これはいったいどういう状況として
把握せねばならないのでしょうか!僕は頭がおかしくなってしまったのですか!」
ルーシー「別におかしくなってないわよ。…まぁこの世界のあなたにとっては
ちょっと刺激が強かったかもね。」
チャン「ちょっとどころじゃありませんよ!あなたは先ほど翼の生えた恐竜だったじゃないですか!
そ、それに水のバケモノだか何だか知りませんが、おじいさんは…グラン・リー老師は
どうなってしまったのですか!」
ルーシー「ちょ、ちょっと落ち着いて。順を追って説明するからさ…。」
チャン「ああああああ!これはきっと夢です!そうだ!夢に違いない!理屈の合わない現象が
起きている可能性として95%の確率でこれは夢です!」
ルーシー「あのね…。」
チャン「何とかして下さいよ!おじいさんはどこです!どうしてあんなバケモノに…!」
ルーシー「や、やだちょっと服を引っ張らないでよ。これ魔法で編んだ特殊な布なんだから…。」
チャン「何なんですかあなたは!これは夢なんですか?!」
ルーシー「あああああ!うっとうしい!じゃああたしの目を見なさい!(キィィ…ン!)」
チャン「え…。」
ルーシーはチャンに向けて、目から催眠魔法を放った。
キィィーーン…!
チャン「あ…。」
チャンはラリホーの術中に落ち、眠ってしまった。
ドタリ
チャン「ぐぅ…。」
ルーシー「…ふぅ、ワケを理解してもらうにも、これじゃあ時間がかかりそうね。とりあえず
現状報告でもしよっかな。」
するとルーシーは、海岸の砂浜に大きめの魔方陣を描き始めた。
ルーシー「あーあ、けっきょく四匹の怪物の一匹も仕留められなかったわ。これじゃみんなに
顔向けできないよ、イザだってあんなに強くなったってのに…。」
ルーシーはぶつぶつ言いながら、今度は異界通信の魔法を唱え始めた。
――――キィィンン…!
ルーシー「ぶつぶつぶつ……。(シュゥゥ…!)」
すると魔方陣の中心に奇妙な空間が出現した。
………ッギカォォ!
ルーシー「ねぇチャモロ、聞こえる?あたしだけど…。」
すると空間の中から声が聞こえてきた。
………バーバラさんですね、どうしましたか………
ルーシー「ご、ごめん…けっきょく失敗しちゃった…。デュランたち四匹は町の中へ逃げたみたい。」
………気にしなくていいですよ、そもそも一人でヤツらと戦うなんて無茶です………
ルーシー「あ、そうそう。その代わりと言ってはなんだけど、あなたにうれしい知らせがあるよ。」
………何です?………
ルーシー「チャモロの本体を見つけたよ、ここに一緒にいるの。彼、いま寝てるけど。」
………そうですか、ありがとうございます。これで私も本来のチカラが出せるというわけですね………
ルーシー「うん、ところでそっちの状況は?」
………はい、ジェイク・ランディーノを発見しました。彼はテリーさんの本体です………
ルーシー「ってことは、あとイザ、ハッサン、ミレーユの三人だけだね。」
………えぇ、彼ら三人の本体の場所も占い師グランマーズさんが発見しました。その世界で言うなら
アメリカという国のロサンゼルスという町に三人ともいるそうです………
ルーシー「げ、それってあたし行ってきたよ。あの町にいたなんて…。」
………でしたらすぐにロサンゼルスへ戻ってくれませんか。どうやらデュランが彼ら三人を
狙っているようなのです。手遅れにならないうちに………
ルーシー「わ、わかったわ。ルーラですぐに戻るよ。…ところでこの子どうする?チャモロの本体。
チャンとかいう少年だって。」
………もちろん彼はこちらへ来てもらいます、私と融合せねばなりませんから。…ですが彼をそのまま
夢の世界に連れてきたら大変なことになります。分かっているでしょうが………
ルーシー「わかってるわよ。幻の大地の住人が夢の世界へ来れば、二度と現実へは戻れないんでしょ。」
………その通りです、‘夢見のしずく’を彼にふりかけてからこちらへ送ってください………
ルーシー「うん、じゃあまた後でね。あたしはチャンをそっちに送ったらすぐにロスへ戻るわ。」
………バーバラさん、くれぐれも気をつけてください。デュランはかなり力を取り戻したようです………
ルーシー「大丈夫よ、まかしといて。」
………ではのちほどお会いしましょう、それでは………
ルーシー「じゃーね。」
魔方陣は跡形もなく消え去った。
シュゥゥゥーーーー!
謎の少女ルーシーとアジア少年チャンの今後の行方は、のちに追って紹介する。
なぜこの少女は不思議な力を持っているのか、そしてなぜ竜の姿をしていたのかも
今後のエピソードで明らかになるだろう。
今はそれよりも‘四匹の怪物’のほうが重要である。
ロサンゼルスより「デュラン・フェニックス」。
イタリア ローマより「ジャミラス・ブルーバード」。
日本首都東京より「ムドー・庄司」。
そしてアジアより「グラコス・リー」。
幻の大地に降臨した四匹の怪物は、これより‘幻の勇者抹殺計画’を企てる。
<エピソード2 四匹の怪物たち>
完
※(ここまでの旅を冒険の書に記録します。ウィーン ウィーン…
セーブが終わりました。)
※(ここまでを読んだ方は、引き続きこのまま「サイエンス・ワールド編」をご覧下さい。
幻の勇者抹殺計画と共に、謎の少女ルーシー編を始めます。)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
うっうっうっ・・・
幻の勇者 PAGE41
<エピソード3 魔法使いルーシー>
ロサンゼルス あるバーにて pm21:00
ハリー「久しぶりだな、ミアと一緒に飲みに来るのは。」
ミア「そうね。」
ハリー「クリスも来ればよかったのによ、あいつ今日はまっすぐ家に帰っちまったからな。」
ミア「彼、なんだか最近やつれたわ。仕事のしすぎじゃないかしら。」
ロスの高層ビルのあるバーにて、仕事を終えたハリーとミアが飲みに来ていた。
マスター「お待ちどうさまです、バドワイザーの方は?」
ハリー「あぁ、こっちだ。」
マスター「ではブラッディ・マリーはこちらですね。」
ミア「ありがとう。」
マスター「ではごゆっくりどうぞ。」
ハリー「んじゃ乾杯。」
ミア「えぇ、セーラちゃんのご冥福を祈って。」
ハリー「え?」
ミア「ハリー、今日はクリスの妹さんの命日よ。」
ハリー「あ、そうか…。」
ミア「私たちは会ったことはないけど、彼にしたら今日は一年に一度のつらい日なの。」
ハリー「そうか、まっすぐ家に帰るわけだ。」
ミア「…ねぇハリー、最近クリスの様子が変だと思わない?」
ハリー「変って何が。」
ミア「彼、近ごろ奇妙な夢をよく見るらしいんだけど、仕事も上の空で夢のことばかり
気になっているようなの。」
ハリー「ふーん、どんな夢なんだ。」
ミア「これ内緒にしろって言われてたんだけど…。」
ハリー「何だよ、教えてくれよ。」
ミア「うふふ、それがすごく面白い夢なの。彼が剣や魔法と使って、魔王と戦って世界を救う夢ですって。」
ハリー「マジで?」
ミア「子供のような夢ね。つい私も笑ってしまったんだけど。」
ハリー「ぷぷぷぷ…!こりゃバカにするネタができたな。」
ミア「ダメよ、特にハリーには言うなって言われてたのよ。」
ハリー「ミア、お前も案外口が軽いな。俺はもっと軽いがな。」
仕事帰りのひとときを楽しんでいる二人。
だがそこに思わぬ人物が彼ら二人を標的にバーへやってきた…。
マスター「いらっしゃいませ、お一人様ですか。」
ディル「……」
マスター「あのぅ…。」
ディル「(あの二人か…。)」
なんとデュラン・フェニックスが突然バーに現れ、カウンターで飲んでいるハリーとミアに
目をつけたようだ。
ディル「(フ…やつらも上の住人の本体、つまり幻の勇者のことを知っているはずだ。)」
デュランはバーへ入るなり他のものには目もくれず、まっすぐにカウンターへ向かい
まるで無表情でハリーとミアに声をかけた。
ディル「そこのお前たち、せっかくのひとときを邪魔して悪いが…。」
ハリー「ん?」
ミア「え…。」
ディル「お前たちに聞きたいことがある。」
ハリー「!!ディ、ディル・フェニックス!」
ミア「!」
ハリーはとっさに銃を抜いた。
ジャキン!
ハリー「動くな!動くと…!」
―――ッビシィ!
ハリー「え…。」
ディル「私にそんな武器は通用せん。」
一瞬のうちにしてハリーの銃ははじき飛ばされた。
ミア「ハリー!逃げて!」
ハリー「こ、この野郎!上等じゃねえか!」
バキッ! ドカッ!バス!
ディル「何だそれは。」
ハリー「…!(こ、こいつ…!)」
ハリーはデュランの顔を殴ったが、まるで効いてなかった。
ディル「人間の闘いというのはさっぱり理解できん、拳を連打したところでたいしたダメージには
ならんぞ。」
デュランはハリーの首をつかんで片手で持ち上げた。
ガツッ! グググ…!
ハリー「う、うぐっ…!こ、こいつ!離せ!」
ミア「ディル・フェニックス!ハリーを下ろしなさい!さもないと発砲します!(ジャキン!)」
マスター「うひゃあああ!こ、こんなとこで事件かよ…!」
ミア「店にいる人はすぐに出てください!私たちは警察です!」
客A「うわああああ!」
客B「に、逃げろーーーーー!」
客C「ひええええええ!」
やがてバーにいた客は全員あわただしく逃げ出した。
ディル「さて、よく聞くがいい。この質問に答えられなくば貴様は死ぬことになる。」
ハリー「こ、このクソッタレが…!離せって言ってんだろ!」
ミア「ディル!彼を離しなさい!」
ディル「答えろ、幻の勇者はどこにいる。」
ハリー「?!」
ミア「…?」
だがハリーたちには何のことだかさっぱり分からなかった。
ハリー「ミ、ミア…!撃て!こいつを…!」
ミア「…!」
ディル「お前は聴力が働かんのか?幻の勇者はどこにいるのかと聞いている。(ギリギリ…)」
ハリー「うおおおお…!」
デュランはハリーをつかんだまま投げ飛ばした。
ヒュッ!
ハリー「うあああああ!」
ッガシャァァーーーン!
ミア「ハリー!」
ディル「質問に答えられないのなら拷問に変更しよう。お前たちが吐くまで続けるぞ。」
ミア「くっ…!(ジャキ!)」
ッダァーン!ッダァーン!ッダァーン!ッダァーン!
ディル「…その武器は私には通用せんと言ったはずだ。」
ミア「そ、そんな…!」
デュランはミアの撃った弾丸を全て素手でつかんでいた。
ハリー「こ、こいつ何なんだ…!バケモノかよ!」
ディル「私の名は今はデュランだ。デュラン・フェニックスと呼ぶがいい。だが自己紹介をしても
何の意味もない。もう一度言う、幻の勇者はどこだ。(ギィィン!)」
デュランは右手にライデインの電撃を溜め込んだ。
バリバリバリバリ!!
ハリー「な、なんだこりゃああ!」
ミア「な、何者なの…?!これはディルではないわ…!いえ、人間じゃない…!」
この状況にわけがわからず、ハリーとミアは身動きできなかった。
ディル「人間の身体はもろく壊れやすい、私もできるかぎり手加減はしているつもりだが
この電撃にお前たちが耐えられるかどうかは正直自信がない。」
ハリー「こ、こいつ何を言ってんだ?!っていうか何なんだこれは!夢か?!」
ミア「ハリー!逃げるのよ!」
ハリー「ち、ちくしょう!…ミア!銃を貸せ!」
ハリーはミアから銃を奪った。
ミア「ダ、ダメよハリー!殺されるわ!」
ハリー「何が何だかわからないが…このバケモノめ!ぶっ殺してやる!(ジャキン!)」
ディル「分からん人間だな…。」
ッズダァーン!ッズダァーン!ッズダァーン!
ハリー「バ、バカな…!」
ディル「……」
ッズダァーン!ッズダァーン!ッズダァーン!ッズダァーン!ッズダァーン!ッズダァーン!
カチッ! カチッ! カチッ!
ハリー「く、くそおおおお!こりゃいったいどうなってんだ!ドッキリカメラか!」
ディル「気は済んだか?」
ミア「ハリー!逃げて!」
ディル「フン、ではそこの女、お前に聞くことにしよう。」
ハリー「うわわ!何すんだこの野郎…!」
デュランは再びハリーをつかみ、電撃の魔法をハリーの顔へ近づけた。
バリバリバリ!!
ハリー「うおおおお!や、やめろ…!このキチガイめ!」
ミア「や、やめて!」
ディル「女、幻の勇者の居所を吐け。さもないとこの人間は焼け死ぬことになる。」
ミア「な、何の話だか分からないわ!ハリーを放して!」
ディル「大魔王さまの情報によるとお前たちの仲間に幻の勇者がいるのだ、隠しても無駄だ。」
ハリー「くっ…!勇者だとかワケのわからねえことほざきやがって…!殺すならさっさと殺せ!」
ディル「そうか、では死ぬがいい。(ギィィン!)」
ハリー「ミア!お前は逃げろ!」
ミア「ハリー!」
だがその瞬間、デュランの背後から何者かが襲いかかってきた。
ガツッ!
ディル「?!」
ルーシー「ようやくつかまえた♪」
ディル「貴様!」
現れた少女はデュランの腕をつかみ、片手で投げ飛ばした。
―――ッブン! ッズガァァン!!
ハリー「な、なんだ…?!」
ミア「誰…?」
ルーシー「……(キィィン!)」
さらに少女は投げ飛ばしたデュランに向かってマヒャドの弾丸を連発で放った。
ッヴァシュ!ッヴァシュ!ッヴァシュ!ッヴァシュ!ッヴァシュ!
ディル「ぐっ…!」
デュランは氷の魔法に足をとられ、身動きできなくなってしまった。
ルーシー「……(キィィン!)」
間髪いれずに少女はさらに魔法のエナジーコロナを放った。
キィィンン…!
ハリー「こ、この女の子は何だよ!またバケモノか!」
ルーシー「二人とも伏せて、危ないわよ。」
ハリー「え?」
ミア「?!」
コロナは大爆発を起こし、デュランはビルの外まで吹き飛んだ。
――――ッズガァァァーーーーーンン!!
ハリー「うわああああ!」
ミア「きゃああああ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ビルの外
なんとデュランはビルの16階から吹き飛ばされ、地面へ叩きつけられた。
ディル「shit…!」
――――ッドガァァンン!
市民F「なんだなんだ?!人が落ちてきたぞ!」
市民G「またリストラされた自殺者か?」
ディル「……」
地面に落ちた際にコンクリートの道路が割れ、信号機まで破壊された。
だがデュランは無表情で起き上がり、再びビルの上を向いた。
ディル「……」
市民F「お、おいあんた!大丈夫なのかよ!」
市民G「ゲ!こ、こいつこんな高さから落ちて平気で…!」
ディル「おのれ人間め…。もう勘弁ならん。」
なんとデュランは猛スピードでビルを90度の角度で駆け昇った。
――――ッダン! ダダダダダダダダダ!!
市民F「はぁ??」
市民G「ななななんだあいつは…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ルーシー「やだ、あいつ力がかなり戻ってきてるじゃん。これだけ攻撃してもビクともしないなんて…。
っていうかビルを駆け昇ってきてるじゃん!」
ハリー「お、おい!お前いったい何なんだよ!あのバケモノを吹っ飛ばして…!」
ミア「あなたはいったい…?!」
ルーシー「二人とも今のうちに逃げて、またあいつが襲ってくるわよ。」
ハリー「だ、だってあの野郎はもう死んだだろ?」
ルーシー「バカ、これくらいで死なないわよ。ハッサン。」
ハリー「は、はっさん??」
ルーシー「何でもないわよ、とにかくミレーユも逃げて。」
ミア「??」
ルーシー「ああああもうややこしいわ!いいからここを離れなさい!あいつすぐそこまで…!」
だがビルを駆け上ってきたデュランが舞い戻ってきた。
ヒュッ!――――ッダン!
ディル「……」
ルーシー「ほら!ぐずぐずしてるから戻ってきちゃったじゃないの!」
ハリー「お、おい!ここ16階だぞ!こいつどうやってここまで…!」
ディル「カルベローナの末裔か…。どうりでケタ外れの魔力を持っているはずだ。だが今度は負けん。」
ルーシー「二人とも逃げて!あたしがこいつを押さえているから…!」
だがデュランはすかさず少女に向かってギガデインの呪文を放った。
バリバリバリ!!
しかし少女には効いていない。
ルーシー「なにそれ。」
ディル「!(やはり魔法は通用せんか…。)」
デュランは少女に向かってムーンサルトの体当たりした。
ッドン!―――ッズガァンン!!
ルーシー「うぐっ…!」
ハリー「やべえ!あの子殺されるぞ!」
ミア「!」
ディル「フ、魔法が効かんのならこれはどうだ?」
ルーシー「!ちょ、ちょっと何すんのよ。セクハラで訴えるわよ。」
デュランは少女の首根っこをつかみ、なんと店の鉄筋コンクリートのカベに叩きつけ始めた。
―――ッドガン!―――ッバガン!―――ッズガン!―――ッドガン!
ルーシー「ぐ…!」
ミア「や、やめなさいディル!その子は関係ないわ!」
ハリー「ひ、ひでぇ…!」
少女の頭をカベに叩きつけるたびに穴が開いていく、それはもはや尋常ではない腕力だった。
―――ッドガン!―――ッバガン!―――ッズガン!―――ッドガン!
ディル「大魔法使いといえど、さすがにこれは効いたか?」
ルーシー「……(キィィン!)」
ディル「む!」
魔法を使おうとした少女に気づき、デュランは少女を再び投げ飛ばした。
ヒュ!――――ッドガン!
ディル「油断もスキもないヤツだ、だがそうこなくては面白くない。さぁ立て、もっと私を楽しませろ。」
ルーシー「…ふん、けっこうやるようになったわね。デュラン。(ペッ…ビチャ!)」
少女は頭を何度もカベに叩きつけられたのにも関わらず、口から唾と一緒に血を吐き出し
デュランの前に起き上がった。
ディル「ほぅ、魔法使いにしてはなかなかタフだな。」
ルーシー「ああああああ!歯が一本折れちゃったじゃないの!どうしてくれんのよ!」
ディル「……」
少女は手鏡を出して自分の折れた歯を確認していた。
ハリー「(お、おいミア…。あいつらいったい何なんだ…。)」
ミア「(わ、分からないわ…。とにかく今のうちに逃げたほうがいいわ…。)」
ハリー「(し、しかしあの女の子はどうする?放っておくのか。)」
ミア「(あの子も人間じゃないわ、見てれば分かるでしょ。)」
ハリー「(そ、そうだな…こりゃ早く家に帰って頭を冷やしたほうがいい。きっとこれは夢だ…。)」
ハリーとミアはバーを逃げ出した。
ディル「しまった…!待て!」
ルーシー「おっと、そうはいかないわよ。(キィィン!)」
ディル「む!(鏡の魔法か…!)」
少女は手鏡を持ったまま、アイテム魔法の呪文を唱えた。
ルーシー「テクマクマヤコン テクマクマヤコン この世で一番かわいい女の子はだぁれ?」
ディル「?」
*「お答えします、それはターニアたん。」
ルーシー「キィーーー!何よこれ!ぜんぜんウソっぱちじゃないの!」
ディル「……」
少女は戦闘とは関係のない魔法を唱えていただけだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
地下駐車場にて
ハリー「ミア!俺の車に乗れ!」
ミア「わかったわ!」
バーから逃げ出したハリーとミアは、車に乗って逃げようとした。
ブルン! ブロロロロ…!
ハリー「よっしゃ出すぜ、つかまってろ。」
ブォォーーー! キキィィ!
どうやら二人は無事にビルから脱出できたようだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
16階 バーにて
ディル「幻の勇者の情報をつかもうとしたが…どうやらさっきの二人には逃げられてしまったようだ。」
ルーシー「そうみたいね、残念でした。」
ディル「だが貴様は生かしておけん存在だ、ここで始末してやる。」
ルーシー「あたしもそうしたいんだけど、仲間の本体を確保するほうが先だわ。」
ディル「フ、それだけは絶対にさせん。これ以上お前のような強敵を増やすわけにはいかん。
まして伝説の勇者と幻の勇者との融合だけは避けねばならん。」
ルーシー「実はあたしも幻の勇者ってどこにいるかわからないのよね、イザと同じ人物だとは
聞いてるんだけど。」
ディル「ほぅ、ではお前に聞いても無駄というわけか。ならば用はない、ここで死ぬがいい。」
ルーシー「あははっ!あんたもバカねー。あたしがさっきの二人をそのまま逃がすと思った?」
ディル「何?まさか…。」
ルーシー「そうよ、実はルーラの結界をさっきの男…えっとハリーだっけ。その人に結界を
張っておいたの。」
ディル「くっ…!油断のないヤツめ、ならばなおさら生かしてはおけん…。」
ルーシー「ごめんね、この決着はまた今度。」
ディル「ま、待て…!」
少女はそう言うと、破れた窓からビルを飛び降りた。
―――ダンッ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ヒュゥゥーーーーー!
ルーシー「はぁ…、デュラン以外の魔物も強くなってるのかなぁ。」
少女は落下しながら空中でルーラの呪文を放った。
(キィン!)―――――ッドヒュ!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE42
ハリーの車にて
ハリー「ふぅ、ここまで来ればもう大丈夫だ。」
ミア「ハリー、あなた大丈夫?ケガしたんじゃない。」
ハリー「あぁ、実はあばらを少しやられちまった。まぁたいしたことはないが…。」
ミア「いったいどういうことかしら…。あれはディルなの?」
ハリー「分からない…。」
ミア「それにあの女の子…。彼女大丈夫かしら、あそこに置きざりにしてしまったけど…。」
だがそのとき、走っているハリーの車の上に少女が降り立った。
ッドン!
ハリー「うお!な、何だ?!」
ミア「何か上に落ちてきたわ!」
ルーシー「ハーイ。」
ハリー「ゲ!お前…!」
ミア「さっきの子じゃない!ど、どうしていつの間に…!」
ルーシー「ねぇ、ここ開けて。」
ミア「ま、待って。いま窓を開けてあげる。」
ハリー「お、おいミア…。」
ミアは車の窓を開けてやり、少女を車内に入れてやった。
ルーシー「ありがと。はぁー疲れた。」
ミア「あなた…よく無事だったわね。」
ハリー「おいお前!いったいこれは何が起きてるんだ!説明してくれ!だいたいお前ここまで
どうやって来たんだよ!」
ルーシー「さっきあんたにルーラの結界を張っておいたの、そうすればあなたたちを逃がしても
あとからルーラで追いつけると思ったから。」
ハリー「??」
ミア「……」
ルーシー「ところでこれどこへ向かってるの?あたしちょっとお腹すいちゃった。
どっかで食事でもしない?」
ハリー「お、おいお前!」
ルーシー「お前じゃないわよ、あたしの名はルーシーよ。」
ハリー「う…。」
もう何が何だか分からなくなったハリーは、ついにぶちきれた。
ハリー「ル、ルーシー!いいかよく聞け。俺は宗教にも入ってないし、税金だってちゃんと払ってる。
家賃は一ヶ月滞納しているが、これでも俺は近所では毎朝ゴミをきちんと分別して出す
好青年としてけっこう評判もいい。」
ルーシー「あぁそう。」
ハリー「俺はミステリーサークルとかエリア51とかロズウェル事件には一切関わってねえよ!
お前ら宇宙人なのか!」
ミア「ハリー、落ち着いて。」
ハリー「何なんださっきのドカーンバカーンは!手からキィーンとかズドーンとかよおおおお!!
16階から落ちたあの野郎はなんで死ななかったんだよ!ヤツはバットマンか!」
ルーシー「うん、そんであたしはバットガール。」
ハリー「そうかなるほど!これで説明がつく!そうかお前はスーパーヒーローだったのか!
だったら俺はジョーカーだよ!お前ら宇宙人のクセに英語でしゃべんじゃねえよ!!」
ルーシー「ねぇ、あたし立て続けの戦闘で疲れてんのよ。あんま大きな声出さないで。」
ハリー「うるせえ!!さんざん暴れて次は何する気だ!サングラスでもかけて内ポケから妙な機械でも
出すか!そんで怪しいピカッて光るやつを放って‘今まで見ていたのは夢です’とかほざくのか!」
ルーシー「なにそれ。」
ハリー「俺は何も見てねえよ!ピカッはやめてくれピカッは!!」
ミア「ハリー、とりあえずその辺のマクドナルドにでも入って。お互い頭の中を整理しましょう。」
ハリー「……」
このような状況でも、ミアはさすがに落ち着いていた。
ミア「ルーシー、私はミア・ランディーノという者よ。ロス市警の巡査よ。」
ルーシー「よろしくねミレー…じゃなかったミア。」
ミア「話はあとでゆっくり聞くわ、私も今夜の出来事はとても信じられないけど。」
ルーシー「さすがミレーユの本体ね、こんな状況でも落ち着いてるわ。」
ハリー「もう何でもいいや、好きにしてくれ…。」
ハリーたちはとりあえず近くのマクドナルドへ入っていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE43
マクドナルド
ハリー「こ、こいつよく食うな…。ビッグマック四つ目だぞ。」
ルーシー「もぐもぐ…魔法っへのはわりと体力ふぉつかうのよ。もぐもぐ。」
ハリー「食いながらしゃべるんじゃねえ、汚ねえな。」
ルーシー「もぐもぐ…しかひこの世界の食べ物っておいひいよねー、ハンバーガー大好き。」
ハリー「そりゃよかったな。お気に召して光栄だ。」
ミア「ねぇルーシー、いろいろ聞きたいことがあるけど、まずはあなたの話を聞くわ。私たちにも
分かるように説明してもらえる?」
ルーシー「もぐもぐ…いいわよ。何でも聞いて。」
ハリー「いやそっちから話せよ。俺たちゃ今や不思議の国のアリスの世界にいるんだからよ。」
ルーシー「あはは、その本あたしも読んだよ。アホくさい童話ね。」
ハリー「んなことはどうでもいいよ…。」
ミア「じゃあまずはあなたのことから聞くわ、あなた何者なの?」
ルーシー「バーバラ・ルーシー・カルベローナ、職業は魔法使い。魔法クラスでいえば超一級の
幻魔導師クラスよ。こう見えても偉大なる大魔法使い・バーバレラさまの跡継ぎなんだから。」
ハリー「うさんくせえ女子高生にしか見えないな…。お前は魔女だとでもいうのか?」
ルーシー「そうとも言えるかな。」
ハリー「ははは、こりゃいいや。16世紀の魔女の生き残りか。」
ルーシー「なにそれ。」
ミア「さっきのディル・フェニックスは何者なの?どうしてあんなバケモノに?」
ルーシー「あのね、あいつもう人間じゃないよ。デュランって魔物が取り憑いた四匹の怪物の一人なの。」
ハリー「??」
ルーシー「あたしの任務はあなたたちを保護するためにこの幻の大地へ来たの。ハッサンやミレーユの
本体であるあなたたちを連れに来たってこと。実はアジアですでにチャモロの本体も
見つけたけどね。」
ミア「…さっぱり分からないわ。」
ハリー「おい、分かるように説明しろよ。」
ルーシー「んー、あたし説明がヘタだからなぁ。でも説明なんかしなくたって融合すれば理解できるわよ。
それに本体と融合しないとあたしたちだけじゃヤツらに立ち向かえないもん。」
ハリー「分からん、さっぱり分からん。融合って何だよ。」
ミア「私たちを連れに来たって言ったわね、それはどういうこと?」
ルーシー「あそうだ!大事なことを忘れてたわ!」
ハリー「いや聞けよ、人の話。」
ルーシー「ねぇねぇ、幻の勇者の居所わかる?」
ハリー「は?」
ミア「ディルも同じことを聞いてたわね、それってどういうことなの?」
ルーシー「えーとね、イザと同じ顔してる人のことよ。」
ハリー「イザって誰だ?」
ルーシー「ああん、もう!だからー、こういう顔よ。」
ルーシーは紙に幻の勇者の似顔絵を描いてみせた。
だがあまりにも似てないどころか、それは人の顔にも見えなかった。
ハリー「なんだこれ。こりゃ人なのか?」
ルーシー「うるさいわね、どうせあたしは絵がヘタよ。」
ミア「待って、誰かに似ているわ…。」
ルーシー「ほんと?」
ミア「この髪型といい…まさかこれって…。」
ハリー「な、なんだ。誰なんだよミア。」
ミア「ク、クリスだわ…。」
ハリー「マジかよ!」
ルーシー「やったぁー!ついにイザの本体見っけーーーー!」
謎の少女ルーシーと共に、幻の勇者という存在が明らかになっていく。
そしてその同時刻、クリス・レイドックは…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE44
ロサンゼルス クリスのマンションにて 705号室 pm21:30
クリス「ただいまー。」
…おかえりなさい、お兄ちゃん…
クリス「ははは、誰もいるわけないよな。ただいまなんて言っても意味ないや。」
ロス市警のクリスは家に帰るなり、冷蔵庫を開けて缶ビールを出した。
食事もろくに自分では作れず、いつもピザやハンバーガーばかり買って食べていた。
しかもマンションの部屋はたくさんの資料や脱ぎっぱなしの服も散乱しており、
かなり散らかった部屋だ。
クリス「ごくごく…。ぷはー。」
ともかく父親とは別居しているクリスは、ここロスの街で一人暮らしをしていた。
結婚をするにはまだ早い歳だが、奥さんでもいればこの汚い部屋も少しはマシになるだろう。
だが本人には当分その気はなかった。
クリス「……」
クリスはリビングルームのソファーに座り、缶ビールを片手にそばに飾られてあった写真立てを取った。
クリス「セーラ…。」
写真はかなり昔のもので色あせており、それは7年前に病気で亡くした自分の妹の写真だった。
クリスは毎日この写真を眺めては、妹セーラのことを思い出していた。
クリス「あれからもう7年か…キミがもし生きていたら21歳だね。きっとキレイな娘になって
いたんだろうな。しかしこの汚い部屋を見たらきっと怒るだろうな…。」
実は今日は妹の命日だった、クリスはこの日が来るたびに憂鬱になっていた。
クリス「セーラ……どうして僕を残してキミは死んだんだ……。」
クリス「……」
さすがに仕事疲れがたまっていたのか、クリスはそのまま座り込んで眠ってしまった。
クリス「ぐぅ…」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―――やがてクリスは夢を見始めた―――
ソルディ「よくぞ試練の塔を乗り越えた。よし、お前をレイドック城の兵士として採用する。」
イザ「ありがとうございます、ソルディ兵士長。」
ソルディ「これからの活躍に期待するぞ、しっかりやれ。」
イザ「はい。ところでレイドック王は?」
ソルディ「王様はすでにお休みになられている。」
イザ「めずらしいですね、全く寝ずに有名だったレイドック王が寝ているなんて。」
ソルディ「…すまんが私も少し休ませてもらうぞ、なぜか急に眠くなってきた…。」
イザ「そうですか、お疲れさまです。」
な、なんだこれは…僕は夢を見ているのか…
ハッサン「おーい、待ってくれよぉ。」
イザ「あれ?キミは確か試練の塔で会った…。」
ハッサン「あぁ、覚えてるか?ハッサンだよ。」
ハリーじゃないか、なんか変な格好してるな…
ハッサン「レイドック城の兵士に採用されたんだってな、まずはおめでとうよ。」
イザ「ありがとう。」
ハッサン「ところでお前、もしや暴れ馬を捕まえに行こうと思っちゃいないか?」
イザ「よくわかったね、やっぱり旅は馬車がないと不便だし。」
何の話だよ…。
ハッサン「だがな、一人ではムリだ。ここはオレも手伝ってやる。いいだろ?」
イザ「う、うん…。じゃあお願いしようかな。」
ハッサン「よぅし決まった、今日からオレたちは兄弟分だ。よろしくな、イザ。」
イザ「うん、よろしくね。えっと…ハッサン。」
ハッサン?誰だそれ…。イザって何だよ。
ハッサン「イザ、ところでお前の肩に乗っかってるそいつは?」
イザ「あぁこれ?なんかボクになついちゃってね、ルーシーっていうんだ。ボクが名づけたんだ。」
竜「ギギギ…。」
ハッサン「竜の子供か、かわいいな。」
イザ「今じゃすっかり友達だよ。おかげでボクのリルルのサンドイッチみんな食べられちゃった。」
ハッサン「ははは、食いしんぼだな。こいつ。」
竜「ギー。」
な、なんだこの翼の生えた爬虫類は…。
――――キィィーーーーンン!……
ミレーユ「これからは私も一緒に旅を共にさせていただくわ。」
ハッサン「そりゃいい、美人は大歓迎だ。」
イザ「よろしくね、ミレーユ。」
ミレーユ「力を合わせて謎の穴の原因を突き止めましょう。」
竜「ギィー!」
ハッサン「ところでよ、なんか最近町の住人たちが働かなくなったって知ってるか?」
ミレーユ「えぇ、知ってるわ。突然みんな眠たがってしまっているの。どうしたのかしら…。」
イザ「えぇ?…なんか急に周りの人たちが眠い眠いと言い出した気がするなぁ。」
ハッサン「これも巨大な穴のせいなんかな。とにかく早いとこ他の穴も探さないと…。」
どうしてミアが…。っていうか穴って?
――――キィィーーーーンン!……
イザ「キミは誰だい?」
バーバラ「あたしバーバラっていうの、でも覚えてるのはそれだけで…。」
ハッサン「どうするイザ、この娘も連れていくか?」
イザ「うん、そうするしかないね。」
ハッサン「だろうな兄弟、お前ならそう言うと思ったぜ。」
ミレーユ「そうね、こんなところに一人で置いていくわけにもいかないわ。」
バーバラ「やったぁー、よろしくね。」
誰だよバーバラって…。
竜「ギャァー!」
バーバラ「な、なによこいつ。あたしを見て騒いでるようだけど…。」
イザ「どうしたんだよルーシー、バーバラを見て何をそんなに驚いて…。」
竜「ギィーーー!」
バーバラ「わわ!な、なんなのこれ…!(キィィン!)」
竜「グググ……(キィィン!)」
イザ「な、何だ…!」
いったい何が起こってるんだ…。
――――キィィーーーーンン!……
うわわ、今度は何だよ…
チャモロ「おじいさん、この人たちは誰ですか?」
長老「うむ、何やら神の船を貸してくれと申してのぅ。じゃが安心せい、はっきり断ってやった。」
チャモロ「そういうわけでみなさん、船はお貸しできません。」
イザ「ま、待ってよ。そこを何とか…。」
ハッサン「おいおい、そんなこと言わないで貸してくれよ。船くらいケチケチすんなよ。」
チャモロ「しかしそう言われましても…。」
ルーシー「けちー。」
ミレーユ「この世界に四つの巨大な穴を開けられたの、ゲント族だってご存知でしょう。
船がないと海を渡ることはできないわ。」
チャモロ「しかし…。」
この少年は誰だろう…。いったい何の話なのか…
チャモロ「おじいさん、この人たちに船を貸すことにしましょう。私も一緒に行きます。」
長老「ど、どうしたのじゃ突然。」
チャモロ「今、神の声が聞こえました。どうやら私も共に旅に出る宿命があるようです。」
長老「まさかこのイザという者が伝説の勇者だと?」
チャモロ「そうかもしれませんし、そうでないかもしれません。しかしこの世界にどのような影響を
及ぼしているのか…幻の大地に何が起きているのかを、この目で確かめたいと思います。」
長老「うむ、よくぞ言った!ワシはもう何も言わん。」
チャモロ「では旅の許可をいただけますね。」
長老「うむ…。好きにするがいい…ふぁ〜。」
チャモロ「どうしました?おじいさん。」
長老「すまんがワシは少しベッドに横になる、なぜか眠くてのぅ…。」
――――キィィーーーーンン!……
テリー「オレの名はテリーだ、最強の剣を探して旅をしている。」
イザ「あぁそう。」
テリー「余計なお世話かもしれないが、あんたらそんな武器に頼ってるようじゃまだまだだな。」
イザ「ほんと余計なお世話だよ、ボクたち剣なんかよりも穴を探すことのほうが重要なんだよ。」
テリー「魔王は強いぜ、今のオレでも勝てるかどうかだ。」
ハッサン「生意気なヤツだな、こんなやつほっといていこうぜ。」
イザ「そうだね。」
ミレーユ「待って。」
イザ「え?」
ミレーユ「お願い、待って…。」
ハッサン「なんだよミレーユ、どうかしたか。」
ミレーユ「やっぱりそうだわ…。テリー、私がわかる?」
テリー「フン、誰だか知らないがあんたにテリーと気安く呼ばれる筋合いはないぜ。」
ミレーユ「そうね…。普通なら忘れてもおかしくないほど時間も経ってしまったわ…。でもあなただって
覚えているはず…。ガンディーノの城のことや、私のことも…。」
ガンディーノ??ランディーノの間違いでは?
テリー「ま、まさかそんな…。いや、ミレーユ?ミレーユ姉さんか!」
ミレーユ「テリー…!」
イザ「え?もしかしてこの二人姉弟?!」
ハッサン「まじかよ!」
ルーシー「いやーん、ミレーユにこんなカッコイイ弟がいたなんてあたし困っちゃうなー。」
チャモロ「僕はチャモロといいます、よろしくお願いしますよ。えっと…テリーさん。」
いや、姉弟とか言われても…
――――キィィーーーーンン!……
ランド「ターニア、近ごろ何だか少しやせたな。」
ターニア「そう?」
ランド「やっぱ旅に出たアニキのことを考えてるのか?」
ターニア「……」
セーラ!セーラじゃないか!い、生きてたのか…!
ランド「アニキが旅立ってからもう三ヶ月か…。今ごろどうしてるんだろうな。」
ターニア「そうだね…、お兄ちゃん食べるものちゃんと食べてるかなぁ。」
ランド「ははは、そんなこと心配してたのか。」
あれ?よく見るとセーラとは少し違うような…。この子は誰だろう…
ターニア「だってお兄ちゃんったらいつも洗濯物もベッドに放り出したままだし、ゴハンだって
自分でろくに作れないんだもん。」
ランド「まるでアニキというよりターニアの子供だな、母親が子供の心配してるみたいだ。」
ターニア「やだ、変なこと言わないでよランド。」
ランド「オレがいつかまともな職につけたら、アニキもオレたちの結婚を許してくれるかな。」
ターニア「またその話?私は今そういう気分じゃ…。」
ランド「わかってるよ、もうこれきりで結婚の話はしない。世界に平和が訪れてオレが一人前の
男になれたら、そのとき改めてきみに…。」
ターニア「ランド…。」
ランド「それまではオレがアニキの代わりにきみを見守っているよ、それくらいならいいだろ?」
ターニア「ありがとう、ランド…。」
な、なんだよ…セーラに似てる子とはいえ、面白くないシチュエーションだな。
っていうかどうでもいいけどワケわかんない夢だなぁ…。
ターニア「…なんだか私眠くなってきちゃった。疲れてるのかな。」
ランド「ふぁ〜、なんだきみもか。実はオレもさっきから眠くてさ…。」
ターニア「やだ、こんなに眠くなったの初めてだよ…。そろそろ帰りましょ。」
ランド「そうだな…オレもぶっ倒れそうなくらい眠いよ…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
四匹の怪物が幻の大地に降臨してきた影響により、間もなく夢の世界では
早くもその異変が起き始める。
なんと夢の世界の住人たちが、次々に深い眠りに陥ってしまうという
不思議な現象が各地で起こった。これも巨大な穴が原因なのか、そしてそれも怪物たちの仕業なのか。
これより時を再び戻し、ライフコッドの村を旅立った勇者イザのその後のエピソードに移る。
勇者イザは旅の行く先で出会った仲間たちと共に、巨大な穴の謎を追っていくことになる。
夢の世界と幻の大地との関係は何なのか。
だがその全貌が明かされたとき、幻の大地は‘世界終焉の日’を迎えることとなる…。
<エピソード3 魔法使いルーシー>
完
幻の勇者 PAGE50
日本 首都東京 六本木 某ビル屋上 pm15:20
ジェイク「……」
某ビルの屋上にて、向かいのホテルの一室に向けてライフルを構える男。
息をひそめ標的を狙っている。
ジェイク「(うまい具合にヤツは一人か…。この距離でも充分だ。)」
日本人の政治家に雇われたアメリカ人の暗殺者、名をジェイク・ランディーノという。
標的は向かいのホテルの一室にいる大柄な太った男。
ライフルのスコープにはしっかりと男に向けて照準を定めている。
ジェイク「(フン、400万円でも高すぎた仕事かもな。楽勝だ…。)」
======三日前======
政治家「お前が有名なスナイパー、ジェイク・ランディーノか。」
ジェイク「ジャップのくせに英語を話せる政治家とはな。」
政治家「そうつっかかるな、いい仕事をくれてやろうと言うのだ。」
ジェイク「標的は?」
政治家「須藤庄司、盲目の元教祖だ。お前も知っておろう。」
ジェイク「ほぅ、あの有名な某宗教団体の教祖か。昔テレビで見た。まだ死刑になってなかったのか。」
政治家「裁判中だったがヤツは逃走してこの東京にいる、須藤を消してもらいたい。」
ジェイク「5万ドルで手を打とう。」
政治家「ここは日本だぞ、300万円でどうだ。」
ジェイク「チッ…300万円といえば約3万ドル、悪いが他を当たってくれ。」
政治家「待て、わかった。400万だ、それならよかろう。」
ジェイク「少し足りないが…まぁいいだろう、この依頼引き受ける。」
===============
ジェイク「(よし…照準は完璧、これで終わりだ…。)」
暗殺者ジェイクはゆっくりとライフルの引き金に手をかけ、標的を撃ち抜いた。
――――ピシュッ! パリーン
ジェイク「……」
微音を立て、向かいのホテルの窓が割れる音がかすかに聞こえた。
どうやら成功したかのように見えた。だが…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
グランドホテル 1205号室
須藤「む…。」
ムドー「な、なんだこれは…どうしてワシの額から血が…。」
頭を撃ちぬかれたのにも関わらず、ムドー・庄司は倒れなかった。
須藤「だ、誰じゃ!このワシに向かってくだらんマネを…!ん?」
ムドーはようやく向かいのビルの屋上から自分を狙っていた者の存在に気づいた。
須藤「ほほぅ、あやつの仕業か。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
某ビル屋上
ジェイク「な、なんだあいつ…。おかしい、確かに手ごたえはあったのに。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
グランドホテル 1205号室
須藤「人間の風情でこのワシを暗殺か、身の程知らずもはなはだしい。」
なんとムドーはホテルのベランダに向けて走り出し、向かいのビルまでジャンプした。
ダダダダダ!―――――ダンッ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
某ビル屋上
ジェイク「バ、バカな…!」
60メートルはある距離を、あっという間にムドーはジェイクの前へ降り立った。
――――ッズダァン!
須藤「フハハハ、お前がワシを撃ったのか。真昼間から仕事熱心には感心するぞ。ご苦労ご苦労。」
ジェイク「くっ…!(ジャキン!ジャキン!)」
ジェイクはすばやく二丁拳銃を抜いて発砲した。
ッダァーン!ッダァーン!ッダァーン!ッダァーン!ッダァーン!
須藤「うおぉっ…!や、やられた…。ハハハ!冗談だ。(ギィィン!)」
ジェイク「!!」
ムドーはメラミの呪文を放ち、ジェイクのライフルを焼き払った。
ッゴォォーー!
ジェイク「な、なんだこれは…!」
須藤「すまんのぅ、ワシはデュランのように弾丸を受け止めるほどのチカラはない。邪魔な武器は
全て始末させてもらう。」
ジェイク「お、お前は人間か?!」
須藤「いや、ワシはサンタクロースだ。」
そしてムドーはジェイクの身体をつかみ、担ぎ上げた。
ガツッ!
ジェイク「くっ…!何をする!離せ!」
須藤「あぁ、離してやるからおとなしくせい。」
ジェイク「や、やめろ!冗談だろ!」
ムドーはジェイクを屋上から放り投げようとしている。
ジェイク「こ、このデブオヤジめ!オレを落とす気か!」
須藤「では聞こう、誰に頼まれてワシを狙った?」
ジェイク「!」
須藤「まさか幻の勇者ではあるまいな、お前はヤツの仲間なのか?」
ジェイク「な、何の話だ!」
須藤「ほほぅ、お前は確かにプロの暗殺者だ。依頼人の名は決して口にしない。気に入ったぞ。」
ジェイク「は、離せって言ってるだろ!ブタ野郎め!」
須藤「ハハハ、今のうちに飛べるよう努力しろ。人間は鳥になりたいのだろう?」
ムドーはジェイクを担いだまま、ついに屋上から放り投げた。
ッブン!
ジェイク「うわあああああああああ!!」
だがそのとき…
キィィーーーーンン! ―――ガシィッ!
イザ「ふぅ、なんとか間に合ったみたいだね。」
ジェイク「?!」
なんとイザが空中でジェイクをキャッチした。
ヒュッ!――――ッダァン!
イザ「ケガはなかった?」
ジェイク「だ、誰だ…?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
須藤「ん?なんだあいつは…。余計なことをしおってからに…。」
ハッサン「おい。」
須藤「え?」
ムドーの背後から近寄ってきたハッサンは、渾身の力を込めて正拳突きを放った。
――――ッバゴァァ!!
須藤「ほげぇっ―――!!」
ムドーは三軒先のビルまで吹き飛んでいった。
ッガシャァァーーーンン!
ハッサン「ふぅ、危ないところだったぜ。」
ミレーユ「テリーの本体は?」
ハッサン「あぁ、イザが何とか助けたようだ。」
ミレーユ「そう、よかったわ。」
やがてイザがジェイクを担いで屋上へ戻ってきた。
ヒュッ スト!
イザ「さぁ、もう大丈夫だよ。」
ジェイク「……」
ジェイクはすでにあっけに取られ、言葉も出なかった。
ハッサン「どうした、何か言ったらどうだ。礼の一言もなしか?」
ジェイク「……」
イザ「えっと…そういやキミ名前はなんていうの?」
ジェイク「お、お前ら…!いったい何者…ハッ!」
ジェイクはミレーユがいることに気づいたようだ。
ジェイク「まさかミア?!…姉さんじゃないか!」
ミレーユ「あ…。」
ハッサン「まずい、始まっちまったな…。」
ジェイク「いつ日本へ…?い、いや待て、そうか分かったぞ。」
ミレーユ「?」
ジェイク「姉さんオレを逮捕しに来たな、ロス市警が日本まで来るとは思わなかったぜ。」
ミレーユ「いえあのね、私はあなたの姉じゃ…。」
ジェイク「こいつら二人は同僚か?お前ら警官のくせにずいぶんハデな格好してるな。」
イザ「いやボクたちは…。」
ハッサン「やれやれ、まるでテリーとそっくりだ。おいイザ、こいつに何て説明したらいいんだ。」
イザ「ミレーユ、キミに任せるよ。」
ミレーユ「テリー…いえ、あなた名前は?」
ジェイク「フン、たった一年会わなかっただけで弟の名も忘れたか。」
ミレーユ「ごめんなさい、名前を教えてもらえるかしら。」
ジェイク「オレはあんたの弟だろ、ジェイク・ランディーノだよ。」
ミレーユ「そう、よろしくねジェイク。」
ジェイク「なんだその初対面的な挨拶は。」
ミレーユ「ジェイク、私はあなたの姉ではないの。私はミレーユよ、そしてこっちが勇者イザ。
彼は武道家ハッサンよ。」
ジェイク「??」
ミレーユ「あなたには突然すぎるかもしれないけど…実は協力してほしいことがあるの。
とても説明しにくいことなんだけど。」
ジェイク「姉さん、仕事のしすぎでついにイカれたか。」
ミレーユ「困ったわ、どう説明すればいいのかしら。」
ハッサン「有無を言わさず夢の世界へ連れていきゃいいんだよ、テリーと融合させるためだ。」
ミレーユ「無理強いはよくないわ、理由も分からず彼を連れて行くのはダメよ。」
するとイザがジェイクの持っている銃に興味を示した。
イザ「ねぇジェイク、ところでそれ面白い武器だね。なんていうの?」
ジェイク「な、なんだお前。気安くジェイクなんて呼ぶな。これはお前のようなガキに扱える
代物じゃないぞ。」
イザ「便利な武器だね、遠く離れた敵も倒せるアイテムなのかい。」
ジェイク「あのなお前、いきなりやってきてワケのわからんことばかり言って…。」
イザ「ボクたちは本体と融合するためにこの幻の大地へ来たんだよ、キミはテリーの本体なんだ。
彼と融合してもらえないかな、世界を救うために。」
ジェイク「…姉さん、このイカれた少年は何だ。」
ミレーユ「うふふ、ジェイク、イカれてるかどうか彼に向けてその武器を使ってごらんなさい。
そうすれば少しは理解できるわ。」
イザ「!」
ハッサン「お、おいミレーユ…。」
ミレーユ「平気でしょイザ?」
イザ「う、うん…やってみる。」
ジェイク「ははは、こいつら頭おかしいな。そんなに撃たれたいのか、オレはプロの暗殺者だぞ。」
イザ「いいよ、ためしにその武器でボクを狙ってみて。」
ジェイク「本気かこいつ…。」
イザ「……」
イザはラミアスの剣を抜いて構えた。
シャキン!
イザ「……」
ジェイク「……(ジャキン!)」
ッダァーン!(ッキン!)
ジェイク「?!」
イザ「ふぅ、ちょっと危なかった…彼の手元を見てなきゃやられてたかも。」
ハッサン「いや上出来だ、さすが勇者だな。」
ジェイクの撃った弾丸は真っ二つに斬り裂かれていた。
ジェイク「こ、こんな…!バカなことが…!」
ミレーユ「どうジェイク、これで少しは私たちの話を真面目に聞いてもらえるかしら。」
ジェイク「……」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一方、ハッサンの一撃で吹き飛ばされたムドーは…
須藤「ぬぬぬ…!油断していたわ、まさか上の住人が三人もやってくるとは…。」
須藤「まさか依頼人が伝説の勇者だったとは…いやそんなことはどうでもいい、ヤツを幻の勇者と
引き合わせてはならん…。」
ムドーはひとまず退却することにした。
須藤「この借りは必ず返すぞ…全員まとめて地獄へ落としてくれるわ。」
(ここまでの旅を冒険の書に記録します。ウィーン ウィーン…
セーブが終わりました。)
※(ここまで読んだ方は、「ウィザーズ・ワールド編」のPAGE51へ移って下さい。
下のURLが‘旅の扉’です。)
旅の扉
http://game6.2ch.net/test/read.cgi/ff/1081947191/l50#tag168 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE53
ロサンゼルス 某所
ディル「チィッ…。私としたことがとんだ失態だ…。」
ルーシーを逃がしてしまったデュランは、あれからロス街のあちこちを捜し回っていた。
ディル「これでは大魔王さまに顔向けできん、幻の勇者の捕獲命令が下っているのに…。」
夜のロス街、それは犯罪と暴力のうごめく暗黒街といってもいい。
あてもなく街をさまよっているデュランに、一人の男が突然拳銃を抜いて現れた。
男「おいボンクラ、金を出せ。(ジャキン!)」
ディル「何か言ったか?」
男「聞こえたろ?とっとと金を置いて失せろ!ファッキン野郎!」
ディル「私は今機嫌が悪い、お前のようなゴミまで相手にしてしまいそうだ。死なんうちに
とっとと失せろ。」
男「あん?てめえ死にてえのか!」
ディル「……」
だが目にも止まらぬ速さでデュランの裏拳が炸裂した。
――――ッバゴ!
男「ふごぉっ…!」
ッガシャァーーーン!
ディル「…チィ、私ともあろう者が人間相手についムキになってしまうとは…。」
そのとき、突然デュランの脳に何か信号のようなものが聞こえ始めた。
キーン キーン キーン キーン
ディル「何だ…?」
キーン キーン キーン キーン
ディル「ま、まさかこれは…!」
………‘破壊のデュラン’よ、このワシの声が聞こえるか………
ディル「だ、大魔王さま!やはりあなたでしたか。」
………幻の勇者はどうなったのだ、任務は完了したのか………
ディル「は、現在捜しているところです。」
………お前ともあろう者がずいぶんと時間が掛かっておるな、たった一人の人間も捜せんのか………
ディル「も、申し訳ありません。途中で邪魔が入ってしまって…。」
………言い訳無用、ぐずぐずしておると勇者どもが追ってくるぞ………
ディル「しかし私たち四匹は未だに本領のチカラを発揮できません、しかもまだ人間の姿のままです。
どういうことでしょうか?もうすでに三ヶ月も経っているのにも関わらず…。」
………何じゃと?…そうか、まだ‘奴’が邪魔しておるのだな………
ディル「‘奴’とは?」
………愚か者め、デュランよ。‘奴’はあの魔法使いの小娘と融合しておるではないか。
なぜそれに気づかなかったのだ………
ディル「ま、まさか…!」
………お前たちのチカラがいつまでたっても戻らんのはそのためだ、何しろ‘奴’は………
ディル「このデュラン、一生の不覚であります。まさか‘奴’がカルベローナの末裔と
融合していたとは気づかずに…。」
………よいか、こうなったら標的変更だ。幻の勇者はいったん後回しにするぞ………
ディル「ではカルベローナの魔法使いを?」
………魔法使いの小娘はこのワシが自ら始末する。お前は他の三匹と連絡を取り
チカラが戻り次第、幻の大地を消滅せよ。全世界を無に返し、夢と現実を我が物にする………
ディル「まさか大魔王さまがじきじきにこちらへ…?」
………まぁよい、ワシも少々退屈しておったとこだ。たまには人間の身体を借りて観光でもするわい。
そして魔法使いの小娘の中におる、あのいまいましい‘奴’を引きずり出してやるわ………
ディル「かしこまりました、では私は残りの三匹に連絡を取ります。」
………ふふふ、デュランよ。もうすぐじゃぞ、じきに幻の大地は我らのものとなる………
ディル「はっ、幻の大地の未来にかけて…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE54
ロサンゼルス マクドナルド
ハリー「そんでお前クリスに何の用があるんだよ。」
ルーシー「クリスっていうの?っていうかその人だけでなく、あなたたち二人にも夢の世界へ
来てもらわなきゃなんないのよ。」
ミア「どういうことなの、詳しく話してもらわないと分からないわ。」
ルーシー「あのねー、言っとくけどこのままじゃ大変なことになるわよ。さっきのデュランのような
バケモノがまだ他にも三匹もいるのよ。」
ハリー「おいおい…。」
ルーシー「ゼニス王が言ってたよ、幻の大地は間もなく‘世界終焉の日’を迎えることになるって。」
ミア「!」
ルーシー「それを止めることができるのは融合した勇者しかいないの。大魔王の野望を阻止できるのは
夢の世界と幻の大地の人間が融合するしかないのよ。つまりあなたたちも選ばれた戦士なのよ。」
ハリー「おい、それってまるでクリスが見た夢の中の出来事みたいだな…。」
ルーシー「え?」
ミア「いやだわ、何だか私この子の話がウソとは思えなくなってきたわ…。」
ハリー「お前もかミア、それにこのところ異常気象が目立つしな。何だか俺も頭がおかしくなってきた。」
ルーシー「ようやくあたしの話を信じてくれたわね。」
ミア「はー、とにかく今夜は色々あって疲れたわ。」
ハリー「ミア、もう一杯コーヒーでも頼んだらどうだ。」
ミア「そうね。…あ、すみません。」
店員A「はい、何かしら。」
ミア「コーヒーもう一杯いただける?」
店員A「OK、ちょっと待っててね。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
カウンター前
店員A「コーヒー追加よー。」
店員B「あいよー。」
店員Bはカップにコーヒーを注いでいたが、実はそのコーヒーの中に黒い霧が一緒に
入っていることに気づいていなかった。
店員B「ほらよ、コーヒー。」
店員A「サンキュー。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
kakikomenai uaaaaaaaaaaaaaaaaaaaannnn
そして…
ルーシー「だからさー、そのためにもハッサンやミレーユと融合してくれない?」
ハリー「なんか気持ち悪いな、宇宙人と合体するなんてゴメンだぜ。」
ルーシー「あたしたち宇宙人なんかじゃないわよ、だって言葉が通じるでしょ。」
ハリー「しかしな…。」
店員A「お待たせ、コーヒーの追加はあなただっけ?」
ミア「えぇ、ありがとう。」
店員A「ではごゆっくり。」
店員Aはミアの前に追加のコーヒーを置いて去っていった。
そしてそれを何も知らないミアは…
ミア「とにかくまずはクリスと合流しましょう、彼も狙われるといけないわ。」
ルーシー「そうよそうよ、ミアの言うとうりだわ。」
ハリー「うるせえよバカ。」
ミア「彼まだ起きてるかしら、ちょっと連絡してみるわ。」
ミアは携帯を出し、クリスの自宅に連絡を取ってみた。
プルルルル…プルルルル…プルルルル…(プツッ)
*(クリス)「もしもし…。」
ミア「あ、クリス?私よ、ミアだけど。」
*「…ミアか…なんだい。」
ミア「ごめんね、寝てたのね。」
ミアは携帯を持ちながら、コーヒーカップを取って口につけようとした。
ミア「クリス、寝てるところ悪いけど…。」
*「何か用かい…。」
そう言いながらミアは、ついにコーヒーを飲んでしまった…。
ミア「……」
*「…もしもし?」
ミア「……」
*「ミア、どうしたんだよ。何か僕に用があるんじゃないのか。」
ハリー「おいどうした、ミア。」
ルーシー「?」
ミア「…いいえ、何でもないわ。」
*「もしもーし。」
ミア「ごめんねクリス、またあとで掛けなおすわ。」
*「え?な、なんだよ。ちょっと待っ…(プツッ)」
ミアは携帯を切ってしまった。
ミア「……」
ルーシー「何で切るのよミア、これじゃ彼を呼べないじゃん。」
ハリー「急にどうしたんだ?」
ミア「…ねぇ、クリスと会う前に、私そういえばやることがあったんだわ…。」
ルーシー「?」
ハリー「何だよ。」
ミア「あのね、私…。」
だがそのとき、ルーシーの頭の中の何者かが呼びかけた。
キーーーーンン!
ルーシー「?!(だ、誰?)」
竜(バーバラよ、その女性は人間ではない。繰り返す、人間ではない。)
ルーシー「(ま、まさかあんた…!)」
竜(そう、私はルーシー。…バーバラ、その女性から離れよ。繰り返す、女性から離れよ。)
ルーシー「ハリー!ミアから離れて!」
ハリー「え…。」
ミア「チィッ!(早くも見破りおったか…!)」
見破られたミアはハリーを片手でつかんで持ち上げた。
ガシィッ!
ハリー「うお!な、何すんだミア…!」
ルーシー「や、やめなさい!」
ミア「吹っ飛べ、モヒカン男。」
ハリー「うああああああ!」
ミアはハリーを店の窓から放り投げた。
ッブン!――――ッガシャァァーーン!
店員A「きゃあああ!な、何事?!」
ミア「次はお前だ、魔法使い。」
ルーシー「こ、この…!やったわね!」
ミア「!」
ルーシーはミアの髪の毛をつかみ、思い切りテーブルに叩きつけた。
――――ッドガァン!ッバガン!ッズガン!
客A「うへっ!女同士のケンカか?!」
客B「な、なんちゅう馬鹿力だ…。」
ルーシー「……(キィィン!)」
そしてルーシーはすかさず左手にマジックアローの魔法を呼び起こした。
ギリギリギリ…ッキィン!
ルーシー「あんた何者よ、いつの間にミアの身体へ入ったの。」
ミア「くっくっく…。」
だがミアは頭から流血しながらも、不気味にルーシーの前へ起き上がった。
ミア「またもや‘奴’が邪魔しおったわい、だが今度はそうはいかん。」
ルーシー「‘奴’?」
ミア「お前と融合した忌々しい‘奴’のことじゃ。」
ルーシー「あんた何者よ!答えなさい!さもないと打ち抜くわよ!」
ミア「まぁ好きにするがいい、少しはお前のチカラも見てみたい。」
ルーシー「あぁそう。」
ルーシーは表情一つ変えずに、至近距離でミアに向けて魔法の矢を放った。
―――ッドシュ!(ビシィ!)
ルーシー「!?」
ミア「遅いのぅ、あくびが出る遅さだ。」
だがミアはその矢を指でつかんでいた。
ルーシー「こ、こんな至近距離で魔法の矢をつかむなんて…!」
ミア「どれ、ちょいと失礼するぞ。(ギィィン!)」
ルーシー「し、しまっ…!」
ミアは目にも止まらぬ速さでルーシーの腹を素手で突き破った。
――――ッザン!!
ルーシー「うあっ…!!」
ミア「フォフォフォフォ…。さて、悪い子はどこにおるかな。」
ミアはルーシーの腹の中を探り、何かを取り始めた。
ルーシー「あぁぁぁ…!」
ミア「…出てきおったわい、こいつがそうか。」
竜「ギャァァォォォ…!」
なんとルーシーの身体から小さな竜が出現し、バーバラ・ルーシー・カルベローナの融合は決裂した。
シュゥゥゥ……
バーバラ「うぐっ…!し、しまった…!」
竜(バーバラ、仕方ありません。早く私を殺しなさい…。)
バーバラ「だ、だめよ…!だって…あなたは…!」
竜(殺しなさい、私が封印されてしまえば、四匹の怪物は本来の力を…。)
バーバラ「だ…だめ……!」
ミア「フハハハ!これで貴様も終わりだ!」
竜「ギャァァォォーー!」
ミアはその竜をつかみ、精霊封印魔法の呪文を唱え始めた。
シュォォーーーー!
バーバラ「ル、ルビ…ス…さま…!ご、ごめんね…!あなたを…守れなかったよ…。」
竜(ルビス)「バーバラよ…あとを頼みます…。幻の勇者に全てを託すことにしましょう…。」
ミア「精霊ルビスよ!今度は貴様が封印される番だ!!(ギィィン!)」
やがて精霊ルビス=ルーシーは、水晶玉の中へ封印されてしまった。
ギィィン! ……ッギカォ!
ミア「やったぞ!封印完了じゃ!」
バーバラ「あぁぁぁ…。」
ミア「フハハハハ!さぁこれで邪魔者はいない!四匹のしもべたちよ!今こそチカラを
解き放つがいい!」
ルビスが封印されたとたん店の外は空一面に雷雲が覆い、それはまるで合図かのごとく稲妻が鳴り始めた。
ゴゴゴゴゴゴ……ッズガァーン!
店員A「きゃあああ!」
客D「うわっ!なんで突然カミナリが…!」
客E「お、おい外を見ろ…!」
幻の勇者 PAGE55
2007年7月10日 ロサンゼルス時間pm23:05
ついに暗黒の雲は一斉に空を覆い、四匹の怪物たちは目覚め始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ディル「フ…どうやら精霊ルビスは封印されたようだな。大魔王さまのおかげで
全エネルギーが戻ってきたようだ…。」
デュラン・フェニックスの身体が徐々に大きくなり、全身の筋肉が発達し、
さらに皮膚は灰色に変色、そして闇の力が膨れ上がった。
ッヴァシュゥゥーーーー!!
デュラン「すばらしい…これこそ本来の私の力だ…。」
漆黒のはぐれの甲冑を身にまとい、真紅のマントをなびかせる稲妻の魔物。
ロスの街に降臨した悪魔、これが真の‘破壊のデュラン’である。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
イタリア ローマ
警官J「ぬおおおお!あふれんばかりの闇の力が戻ってきたぞ!」
ジャミラス・ブルーバードの身体は徐々に大きくなり、背中から巨大な翼が生え
鳥のような体毛が全身を覆った。
ッヴァシュゥゥーーーー!!
ジャミラス「これが本来の俺の力だ!人間どもよ!時は来た!世界終焉はもう目の前だ!」
ローマに降臨した風の魔物、翼を広げて竜巻と共に‘裏切りのジャミラス’が復活した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
日本 首都東京
須藤「フハハハハ!勇者など恐れるに足らず!幻の大地は我らのものとなる!」
ムドー・庄司の身体が徐々に膨れ上がり、青い皮膚に変色した大柄なモンスターへと変身した。
ッヴァシュゥゥーーーー!!
ムドー「全世界を焼き尽くしてやるわ!恐怖に怯えるがいい!人間どもめ!」
日本列島に降臨した炎の魔物、マグマを呼び起こして‘恐怖のムドー’が復活した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アジア
グラン「げは!げははははは!げは!…えーと、げは!」
老人の姿をしたグラコス・リーは瞬く間に皮膚の表面がウロコ状になり、巨大な半魚人と化した。
ッヴァシュゥゥーーーー!!
グラコス「げははははは!人間どもめ!…えーと、バーカ!」
マリアナ海溝より降臨した水の魔物は、巨大なヤリを振りかざして‘嫉妬のグラコス’が復活した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
もうずっと書けませんよニヤリが何回出てきただろうか・・・
なんかいやな予感がするなー 最後までアップできるだらうか。
とりあえず今日はここまでにします。。。
(・∀・)イイ!!支援
ロサンゼルス
ミア「さて、次はいよいよ幻の勇者だ…。」
ミアは持っていたハンドバッグの中を探った。
ミア「ワシが乗っ取ったこの人間の女は幻の勇者と精通しておるはず、きっと何か手がかりが…。」
すると中から警察の住所録が出てきた。
ミア「確かクリスだったな、これを見れば…。」
ミア「くっくっく…。ついでに身体を交換するか。」
するとミアの口から黒い霧が出てきた。
シュゥゥゥーーーー!
ミア「……」
ミアの身体は倒れ、黒い霧は再び別な身体を求めて去っていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE56
ロサンゼルス
やがてハッサン、ミレーユが幻の大地へやってきた頃、すでに街は大混乱に陥っていた。
ハッサン「何だ何だ?町の住人たちが慌しいぞ。」
ミレーユ「まずいわ、手遅れだったかも…。」
市民G「早く警察を呼べ!あのバケモノが追ってくるぞ!」
市民H「何なんだあいつは!そこらじゅうの建物を破壊しまくってるぞ!」
警官R「市民の皆さんは早く避難してください!」
警官H「十番街から被害報告が入った!そこらじゅうで火災が起こっている!」
市民J「おい!あんたら何とかしろよ!」
警官R「本署応答せよ!大至急救急車と消防車をありったけ呼んでくれ!」
ハッサン「どうやら一足遅かったみたいだな、たぶんデュランが暴れてるんだろ。」
ミレーユ「バーバラが心配だわ、まさか彼女がやられるとは思え…」
そのとき、ミレーユはかすかにバーバラの声が聞こえたような気がした。
ミレーユ「バーバラ?!」
………ミ、ミレーユ…ここだよ………
ミレーユ「ハッサン!こっちよ!早く!」
ハッサン「どうした!」
ミレーユたちは近くのマクドナルドへと向かった
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ぜんぜん書き込めない
もう頭きたまじで。
本日中止
幻の勇者 PAGE57
マクドナルド
ミレーユ「バーバラ!」
バーバラ「お、遅かったね…待ちくたびれちゃった…。」
ミレーユ「しっかりして!今助けてあげるわ!」
すでに息も絶々のバーバラは、店を荒らされた床に倒れていた。
バーバラ「あ、あのね…あなたたちの本体を…見つけたよ…。」
ミレーユ「何もしゃべらないで、じっとして…。」
ミレーユはバーバラの身体にベホマの治癒魔法を施した。
キィィーーーン…!
ミレーユ「だ、だめだわ…肉体よりも精神ダメージがひどすぎる…。いったい誰にやられたの?
しかもあなた能力が半分以上も低下しているわ。」
バーバラ「ご、ごめん…ルーシーが…ルーシーがヤツに…。」
するとハッサンが店の外からやってきた。
彼はすでに気を失っているハリーとミアをかついでいた。
ハッサン「おい!外にこいつら二人が倒れていたぞ!オレたちの本体だ!」
バーバラ「!」
ミレーユ「私とハッサンの本体だわ、二人とも生きてる?」
ハッサン「あぁ、気絶しているだけだ。心配ない。」
バーバラ「ハ、ハッサン…!その女の人から離れて…!」
ハッサン「ん?」
だがミアからはすでに邪悪な妖気は感じられなかった。
バーバラ「あ、あれ…?もう出ていっちゃったのかな…。」
ミレーユ「バーバラ、動かないで。まだ治癒魔法が終わってないわ。」
バーバラ「ミレーユ、あたしはいいから…その二人を治してあげて…。」
ミレーユ「まずはバーバラの治癒が先よ、あなたが一番重傷だわ。」
バーバラ「ほんとにごめんね…。四匹の魔物は完全に力を取り戻しちゃった…。あたし失敗ばかり
しちゃってほんと役立たずよね…。」
ミレーユ「そんなこと気にしないで、無事だっただけでも良かったわ。」
ハッサン「そういうことだ。それにお前、ちゃんとオレたちの本体を守ってくれたじゃねえか。
自分の命に代えてでもな。」
ミレーユ「そうよバーバラ、本当にありがとう…。」
バーバラ「あはは…。」
やがてハリーとミアが目を覚ました。
ハリー「う〜ん…。」
ミア「うぅ…。」
ハッサン「お、意識が戻ったか。」
ハリー「な、何だ…俺はどうして…。」
ハッサン「オッス。」
ハリー「うおおああ!な、なんで俺がもう一人…?!」
ハッサン「ん?…おいバーバラ、こいつらにはまだ説明してなかったのか。」
バーバラ「う、うん…いちおう説明はしたんだけど…。」
ミア「私どうしたのかしら…なぜ倒れていたの…。」
意識を取り戻したミアに、ミレーユが近づいてきた。
ミレーユ「初めまして、私はミレーユよ。あなたが私の本体ね。」
ミア「!」
ハリー「こ、こいつらまさかルーシーが言ってた宇宙人か!」
ハッサン「宇宙人か…。ひでぇ言われようだな。」
ハリー「ミアにそっくりな女までいるじゃねえか!」
ミア「……」
だがミレーユの本体・ミアは落ち着きを取り戻し、どうやらこの信じがたい状況を受け入れたようだ。
ミア「…あなた、ミレーユっていうの?」
ミレーユ「そうよ、あなたは…ミアだっけ。」
ミア「今夜は次々に信じられないことが起きて、正直私も頭が混乱しているわ…。だけどそこに
倒れているルーシー…、おそらく私のせいで彼女がやられたんだと思う…。」
ハッサン「はは、オレの本体と違ってこいつは冷静だな。さすがはミレーユの本体だ。」
ミレーユ「ミア、何があったのか知らないけど、あなたが気にすることはないわ。」
バーバラ「そ、そうだよ…。ミアは悪くないもん…。」
ハッサン「いいからお前は寝てろ、傷口が広がるぞ。」
ミア「私…今はとても頭の中を整理できないけど…これだけは言えるわ、クリスが危ないの。
私が今こうして無事でいるのは、私を操っていた者が今度はクリスを狙いに行ったんだわ…。」
ミレーユ「…わかったわ、あなたもだいたいの話はバーバラから聞いているのね。でも大丈夫。
あなたたちと私たちが力を合わせれば、まだ希望は残っているのよ…。」
ミア「一つだけ教えて、ミレーユ。」
ミレーユ「何かしら。」
ミア「私たち合体したら、もう二度と元へは戻れないの?」
ミレーユ「…いいえ、あなたが望めば別れることもできる。あなたが望めば融合を拒否することもできる。
でもあなたが望めば共に生きてもゆける…。例えば人は結婚もできれば、離婚だってできるわ。
重要なのはあなたが‘願い事’を持つということなの。あなただって小さいころは
夢を持っていたでしょう?」
ミア「……」
ミレーユ「いくら私が強要して融合したところで、心は一つにはなれないわ。あなたが拒否を望むのなら
私はそれでもかまわない。」
ミア「……」
ミレーユ「人は誰しも‘理由’を求め‘結果’を恐れて夢を受け入れない。…けどあえてお願いするわ、
世界のためではなく…私たち自分たちのために…。」
ミア「もういいわ、わかった…。」
ミレーユ「ミア……。」
ミア「ハリー、聞いたわね。」
ハリー「あぁ…分かってるよ。」
ミア「クリスのためでもあるわ、もう止めても無駄よ。」
ハリー「誰が止めるなんて言った、俺を見損なうな。」
するとハッサンとミレーユの身体が輝き始めた。
キィィーーーーンン…!
ハッサン「うお!まさかこれは…!」
ミレーユ「ミア、ありがとう…。」
ミア「礼を言うのはまだ早いわ、この街はすでに破壊され始めているの。」
ハリー「俺たちは警官だ、お前ら敵を倒すことよりも街を守ることを忘れるんじゃねえぞ。」
ハッサン「あぁ、よーく頭に入れておく。」
ミレーユ「……」
やがて彼らは合体し、融合を完成させた。
ッシュバァァァーーーー!!
バーバラ「す、すごい…!すごいよ二人とも…!ついに…!」
ハッサン「……」
ミレーユ「……」
ハッサン・ハリー・サンバードはLv.260に上がり、ゴッドハンドの極意を身につけた。
そしてミレーユ・ミア・ランディーノはLv.248に上がり、天地雷鳴師のクラスへ昇進した。
ハッサン「…おいミレーユ、オレたち何か変わったようなとこあるか?」
ミレーユ「そうね、着ている服が二人分になったわ。」
ハッサン「そうか、どうもブワブワすると思った。服まで融合するわきゃねえか。」
バーバラ「ぷぷぷぷ…!あんたたち融合した感想がそれ?」
二人はイソイソと上に着ている服を脱ぎ、本来の姿になった。
バーバラ「ふぅ…。ま、あとはみんなに任せるか…。あたしは少し休ませてもらうわ…。」
こうしてイザ以外の仲間たち全員が融合を完成させた。
肝心の勇者イザの融合だけが成されてないが、実はこのときクリス・レイドックの身に
大魔王の手が伸びていることに誰も気づいていなかった…。
ここまでの旅を冒険の書に記録します。ウィーン ウィーン…
セーブが終わりました。
※(ここまでを読んだ方は夢の世界「ウィザーズ・ワールド編」へ戻り、
PAGE58へ移ってください。)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Kタソ乙
支援支援
274arigto
どうなってんだこれ。ほんとぜんぜん書き込めない。
こんなんじゃいつまでたっても終わらないや。
完成してるのにうpできないってつらいなあ。
だれかいたら一文字でもいいから書き込んでもらえませんか
幻の勇者 PAGE59
ロサンゼルス クリスの自宅にて
クリスが寝ているところを、先ほどのミアから電話が掛かってきた時間から始める。
プルルルル…プルルルル…
クリス「…なんだよ、寝てたのに…。」
クリスは眠そうに掛かってきた家の電話を取った。
ガチャ
クリス「もしもし…。」
*「あ、クリス?私よ、ミアだけど。」
クリス「…ミアか…なんだい。」
*「ごめんね、寝てたのね。…クリス、寝てるところ悪いけど…。」
クリス「何か用かい…。」
*「……」
クリス「…もしもし?」
*「……」
クリス「ミア、どうしたんだよ。何か僕に用があるんじゃないのか。」
*「……」
クリス「もしもーし。」
*「ごめんねクリス、またあとで掛けなおすわ。」
クリス「え?な、なんだよ。ちょっと待っ…(プツッ)」
プーッ プーッ プーッ
電話は切れてしまった。
クリス「何なんだいったい…。」
クリスは受話器を戻し、再びベッドに横になった。
クリス「ぐぅ…。」
だがまた電話が掛かってきた。
プルルルル…プルルルル…
クリス「あああああもう!しつこいな!」
ガチャ!
クリス「もしもし!またミアか!」
*「クリスか、私だ…。」
クリス「?」
だが今度はミアではないようだ。
*「久しぶりだな、元気か…。」
クリス「と、父さん?」
*「今日は確かセーラの命日だったな、今年も墓参りには行けなかったが…。」
クリス「何の用だよ。」
*「そうつっかかるな。たまには父子同士、じっくりと話し合おう。」
クリス「僕は話なんてないよ、何か用があって電話してきたんだろ。父さん。」
*「そうか…、では用件のみを言う。すまんが至急ワシントンへ来てほしい、大事な話がある。」
クリス「は?」
*「飛行機のチケットの手配はこちらで済ませておく、明日の午後にワシントン・ホワイトハウスへ
来てくれないか。」
クリス「ちょ、ちょっといきなり何を言ってるんだよ。どうして僕が…。」
*「…今それを話している暇はない、いいから明日すぐにこちらへ来るのだ。いいな。」
クリス「あのね、僕はあんたの子だけど、息子として僕はあんたにどうこう命令されるのは…。」
*「では大統領としてもう一度言う、明日ワシントンへ来い。以上だ。(プツッ)」
プーッ プーッ プーッ
クリス「……」
クリス「ばかやろ、誰がワシントンなんか行くか。ホワイトハウスなんてケツに突っ込め、バカ。」
クリスは受話器を電話には戻さず、放り投げた。
ガシャン!
クリス「…まったく、たまに電話があるとこれだ…。親父のやつセーラの墓参りにも行かずに
仕事仕事…、一生ホワイトハウスにいればいいんだ。」
クリス「ぐぅ…。」
〜〜〜〜そして約一時間後〜〜〜〜〜〜〜
今度はクリスの家に誰かがやってきた。
ピンポーン♪
クリス「なんだよもう…電話はかかってくるし、夜中に誰かやってくるし全然寝られないよ…。」
ピンポーン♪ピンポーン♪ピンポーン♪
クリス「はいはい、今出ますよ。誰だよいったい…。」
*「クリスー、あたしよ。あ・た・し。」
クリス「その声は…。」
ガチャリ
ジュリア「ハーイ、こんばんわ。」
クリス「やっぱりジュリアか、なんだいこんな時間に。」
ジュリア「上がってもいいかしら?」
クリス「どうぞ、どうせ上がる気でいたんだろ。」
ジュリア「お邪魔しまーす。」
ジュリア・デインズ。クリスの友人ランディの恋人である。
ジュリア「あら、もしかして寝てた?」
クリス「もうすっかり目が覚めちゃったよ、電話がやたら鳴るしキミは来るし…。」
ジュリア「何よ、そんな冷たい言い方することないでしょー。」
クリス「うわ、もしかしてキミ飲んでるだろ。ランディはどうしたんだよ。」
ジュリア「ふん、あんな女遊び野郎なんて知ったことじゃないわ。」
クリス「やれやれ…。ちょっと待ってて、今コーヒーでも入れてくるよ。」
ジュリア「ねぇクリス…あたしと結婚してくれるって約束、覚えてる?」
クリス「は?僕がいつそんな約束を?」
ジュリア「え?言わなかったっけ?…うふふ、でもそういう慎重なとこも好きよ。」
クリス「キミにはランディがいるだろ。」
だがジュリアはだんだんクリスを誘惑してきた。
ジュリア「ねぇ…あたしってさ、どうして今まで気づかなかったんだろ…。」
クリス「ちょ、ちょっと離せよ。抱きついてくるなよ…。」
ジュリア「あなたの魅力に気づかなかったあたしがバカだったわ…。」
クリス「お、おい…。」
ジュリア「ねぇクリス、正直に言うわ。…あたし、あなたが欲しい…。」
クリス「……」
ジュリア「あなたの‘命’が欲しいの…。(ギィィン!)」
クリス「??」
ジュリアの様子がおかしい。クリスに抱きつきながら、右手に凍てつく冷気の魔力を溜め込んだ。
ッギュォォォオオ!!
クリス「うわああ!な、何だそれは…!」
ジュリア「くっくっく…。幻の勇者よ、これで終わりじゃ…。」
クリス「?!」
だがその瞬間、窓をぶち破って何者かが現れた。
ガッシャァァーーーンン!
ジュリア「?!」
クリス「うわ!こ、今度は何だ…!」
イザ「そこのキミ!早く逃げるんだ!」
クリス「はぁ??ぼ、僕がもう一人…。」
ジュリア「チッ、早くも現れおったか!伝説の勇者!」
イザ「大魔王!覚悟!(シャキン!)」
イザはラミアスの剣を抜いて、猛突進しながらギガソードを放った。
バリバリバリバリ!!――――ッズガァァンン!
ジュリア「うぐっ…!」
イザ「もう一発!」
ッズガァァーーーン!!
クリス「うわああ!へ、部屋が壊れるよ…!」
電撃の剣が放たれるたびに、部屋は騒音を立てて崩れ始めた。
ジュリア「こ、この小僧…調子に乗りおって…!」
イザ「悪いけどこの人に手出しはさせないよ、ボクの大事な本体なんだ。」
さらにイザはジュリアをつかみ、なんと7階の窓の外へ放り投げた。
―――ッブン!
ジュリア「バカめ!ワシは空中を浮遊できる能力を…!」
イザ「……(キィィン!)」
だがイザはジュリアに向けてバギクロスの魔法でさらに吹き飛ばした。
ッガォォォーーー! ッズザン!
ジュリア「うおおああああああ!!」
ジュリアは7階から落ち、下のゴミ捨て場に叩きつけられた。
――――ッドガァァン!
イザ「ふぅ、戦いというのは後手よりも先手がものを言うんだよ。大魔王。」
クリス「な、何だよいったい…!何なんだキミたちは!っていうかなんで僕がもう一人…?!」
イザ「説明しているヒマはない!とにかく逃げるんだ!さっきのヤツはこれくらいじゃ死なないよ!」
クリス「ちょ、ちょっと…!」
イザはクリスの手を引っ張り、マンションの部屋を逃げ出した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
エレベーター前
イザ「急いでこの建物を脱出するんだ!階段はどこ?!」
クリス「ま、待って!階段よりもエレベーターを…!」
イザ「えれべーたー??」
クリスはエレベーターのスイッチを押し、イザを中に入れてやった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
エレベーター内
イザ「な、何だよ!こんな狭い部屋にいたって無駄だよ!早く逃げなきゃ!」
クリス「何を言ってるんだよ!キミこそ落ち着け!」
イザ「え?」
チーン
クリス「ほら着いたよ、さぁ降りよう。」
イザ「あ、あれ??どうしていつの間に地上に降りてるんだ…?!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
駐車場
クリス「とりあえず僕の車に…。」
イザ「あ、これボクも一度乗ったことあるよ。」
クリス「何だかワケが分からないけど、とりあえず乗って。」
イザ「ねぇ、ボクに操縦させてくれない?」
クリス「免許あるのかい?」
イザ「?」
だがゴミ捨て場から再びジュリアが現れた。
ッドガァン!
ジュリア「勇者どもめ…。」
クリス「うわ!ま、また来た…!」
イザ「早く乗って!とりあえずキミが操縦を!」
クリス「わ、わかった!」
クリスとイザは車に乗り、猛スピードで発進した。
ブロン!ブロン! ブロロロロロ…!
ジュリア「逃がさんぞ!」
ジュリアはクリスの車に向かって走って追跡し始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE60
車内にて
クリス「ちょ、ちょっとキミ!あれはジュリアじゃないのか?!どうしてバケモノになってるんだ!
っていうかキミは何だよ!僕には弟がいたのか!」
イザ「いいからこのまま走らせて!ワケは後で話すよ!」
クリス「な、何なんだよ…!それにいったいこの雷雲は何だ!さっきから稲妻がビカビカ光ってるぞ!」
イザ「そんなことよりも早くボクと融合しよう!心を解き放つんだ!」
クリス「は??」
イザ「早く!このままじゃ二人とも殺されるどころか、世界をヤツらに滅ぼされる!」
クリス「な、何を言ってるのか…。」
クリスは心の準備も気構えもできていなかったため、イザとは身体も心も波長が合わなかった。
イザ「く、くそ…!まるで心の応答がない!これじゃ融合できないよ!」
クリス「突然現れていったいキミは何を言ってんだ!」
イザ「キミにはとても信じられないかもしれないけど、これは現実なんだよ!頼むからボクと融合を…!」
クリス「映画の観すぎだ!セラピーでも受けろ!僕の主治医を紹介してやるから…!」
だがそのとき、クリスはバックミラーに写る一人の走っている女性に気づいた。
クリス「うわああああ!ジュ、ジュリアのやつ走って追いかけてくるぞ!!」
イザ「!」
その脚力は女の足とは思えないほど、猛スピードで追いかけてきた。
ピシュンピシュンピシュンピシュンピシュン!!
ジュリア「くっくっく!このワシから逃げられると思ったか!」
ジュリアは車に追いつくとジャンプし、車の上へ着地した。
ヒュッ!――――ッズダン!
クリス「な、なんだこいつは!時速60マイルでも追いついてきたぞ!」
イザ「くそ!しつこいヤツめ!」
ジュリアは車の上から攻撃し始めた。
ッドガン!ッドガン!ッドガン!ッドガン!
クリス「や、やめろ…!これ買ったばかりなんだぞ!」
イザ「キミはこのまま走らせるんだ!ボクが何とかする!」
クリス「どうするつもりだよ!」
イザ「よいしょ…よいしょ…、なんだこれ。どうやって開けるんだ。」
イザは車の窓を必死に手で開けようとしていたが、さっぱり分からなかった。
クリス「な、何してんだよキミ!窓を開けるにはそこにあるボタンを…!」
イザ「あああああもうめんどくさい!」
イザは窓をヒジでぶち破った。
ッガシャァン!!
クリス「な…!」
イザ「キミは操縦に集中するんだ!このまま走らせて!」
イザは割れた窓から身を乗り出し、車の上へと上がった。
クリス「ああそうだよ!そうやってヒジで窓を開けるんだよ!よく分かったな!
そうさ勝手に壊すがいいさ!ちくしょうまだローンも払い終わってないのにいいいいい!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE61
〜時速60マイルの闘い〜
イザとジュリアは時速60マイル(約100/km)で走る車の上で戦闘を開始した。
ジュリア「ふん、人間の身体を借りているせいか、さっぱり力が出んわい。だが今のお前を殺すには
これでも充分すぎるくらいじゃ。」
イザ「そうかい、じゃ試したらどう?」
ジュリア「フォフォフォフォ…あの魔法使いの中におった忌々しいヤツも始末してやったぞ。」
イザ「何!」
ジュリア「無論、魔法使いの小娘も死んだはずじゃ。確認はしておらんがな。」
イザ「こ…この外道め!よくもバーバラを!(キィィン!)」
ジュリア「おっと。(ヒュッ!)」
魔法を放とうとしたイザの腕をジュリアがすかさずつかんだ。
ガシィッ!
イザ「く、くそ…!離せ!」
ジュリア「ふふふ、知っておるか?一般に使用される魔法のほとんどが血液の流れに関係するものじゃ。
だがこうして血管を押えてしまうと魔力は外へ放出されん。不思議じゃのぅ。」
イザ「こ、この…!」
ジュリア「今のお前など風前の灯火、闇の魔力など使わんでも始末できるわい。」
ジュリアは渾身の力を込めてイザの腹をヒザ蹴りした。
ッドガァ!ッバガァ!ッドス!
イザ「うげぇっ…!(な、なんて力だ…!)」
ジュリア「バカめ!女の身体だからって甘くみるな!」
ッドガァン!
イザ「うぐっ…!」
ジュリア「くっくっく…、さぁどのようにして殺されたい?言ってみるがいい。」
ジュリアは車の上に倒れたイザにまたがり、ノドを押えて締め上げた。
イザ「ぐぐぐ…!」
ジュリア「くっくっく、人間の女に殺される気分はどうじゃ?興奮してきたか?ん?」
イザ「こ、この変態め…!」
ジュリア「お前はマゾの気はあるか?だったら望むようにしてやってもよいぞ?」
イザ「うおおあああああ!!」
イザは力を振り絞ってジュリアを巴投げの技で放り投げた。
ッブン!
ジュリア「ぬおおおっ…!」
さらにジュリアは対向車からやってきた大型トラックにはねられた。
―――――ッバン!!
ジュリア「ふごっ…!」
ズザザザザーーーー!!
イザ「はぁ…はぁ…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
車内
クリス「ど、どうしたんだ…、まさかあの少年やられてるんじゃ…。」
イザ「た、ただいま…。」
クリス「うわ!だ、大丈夫かいキミ…!」
イザ「と、止めて…。」
クリス「え?」
イザ「は、早く…!彼女が手遅れになるよ…!」
クリス「ま、まさかジュリアは落ちたのかい!」
クリスはとりあえず車を止めた。
キキキィィィ!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE62
やがて車から降りた二人は、道に落ちたジュリアを捜していた。
イザ「こ、この辺りに落ちたと思ったけど…。」
クリス「いた!あそこに倒れてるぞ!」
イザ「気をつけて!まだヤツが身体の中にいるかも…!」
イザとクリスは倒れているジュリアのそばへ近寄ってみた。
ジュリア「……」
クリス「うげ…全身血だらけだ…。こりゃもうダメか…。」
イザ「いや、ちょっと待って。」
イザはジュリアの身体に触れてみた。
クリス「ど、どうなんだい…死んでるのかい?」
イザ「どうやらヤツは去ったみたいだ。…でも彼女はまだ間に合う、ちょっと下がってて。」
イザはジュリアの身体にベホマの治癒魔法を施した。
キィィーーーンン!
イザ「ふぅ、よかった…。何とか間に合ったよ。」
ジュリア「ん…?あれ、あたしなんでここに…。」
クリス「な…!」
ジュリア「あれ?クリスじゃん、どうしてここに…って、きゃああああ!な、なんで二人も?!」
イザ「あ、しまった。」
ジュリア「はぁ〜…。」
ジュリアは再び気絶してしまった。
ドタリ
ジュリア「……」
イザ「あーあ、バカだな。いきなり大声出すからだよ…。」
クリス「だ、大丈夫なのかい?彼女また気を失ってしまったじゃないか。」
イザ「治癒魔法ってのは傷口や骨折を修復できても、出血した血までは元に戻せないんだよ。」
クリス「??」
イザ「おそらく血が足りない上に、いきなり大声張り上げたから貧血で倒れたのさ。まぁ心配ないよ。」
クリス「ちょ、ちょっとキミ!何度も同じ質問するけど…!」
イザ「‘キミはいったい何者なんだ’でしょ?」
クリス「そ、そうだよ。僕にそっくりだけど…。」
イザ「ボクの名はイザ、職業は勇者。ライフコッド出身だよ。」
クリス「イザだって?」
イザ「そうだよ。」
クリス「そ、そうか…。どうも気になると思ったら…あの夢はただの夢じゃなかったのか…。」
イザ「夢?」
クリス「僕はクリス・レイドック、ロス市警の巡査だよ。」
イザ「クリス?まさか夢に出てきた…!」
クリス「やはりキミも見たのか…不思議な夢を…。」
イザはようやく本体のクリスと合流できた。
だが彼ら二人は心の波長が合わず、融合できないまま自宅へも戻れずにいた。
ジュリアは近くの病院へ運び、クリスたちは寝泊りするところを探した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE63
クリスの車にて
イザ「今度はどこへ向かっているんだい、クリス。」
クリス「とりあえずどこかのホテルでも借りて身を隠そう。家にいたらまたさっきのヤツが
誰かに化けて襲ってきたら大変だ。」
イザ「早いとこ融合しないとまずいんだけど…。」
クリス「それよりもさっきのキミの夢の話を聞いて驚いたよ、本当なのかい?」
イザ「何が?」
クリス「ほら、世界が闇に覆われて、人類の最終兵器で人々もろとも消し去るって夢だよ。」
イザ「うん、三ヶ月前に見た夢だけどね。確かボクが旅に出る前のことだよ。
…よく分からないけど恐ろしい夢だったよ。人々の悲鳴が叫び渡って…真っ白い閃光と共に
地上に天使が舞い降りたかのように光ったんだ…。あんな恐ろしい夢は初めて見た…。」
クリス「それはおそらく核ミサイルのことだ。…そうか、さっき父さんから電話があったのは
もしかしてその夢に関係しているのかも…。」
イザ「核ミサイルって何?」
クリス「国を滅ぼすことのできる恐ろしい兵器さ、一瞬にして何千万人の人間を消してしまう
破壊兵器といっていい。」
イザ「げ…。そ、そんな恐ろしいものまで作れる知識があるのか…。幻の大地の住人は
ボクたちの世界よりもはるかに頭脳が優れてる…。」
クリス「だんだん分かってきたぞ…。僕が見た夢もつじつまが合う、死んだはずの妹が
生きている夢も見たんだ。それにハッサンだのミレーユだのバーバラだの…。」
イザ「ま、待って。それってボクの仲間の名前じゃないか。」
クリス「そうか。つまりこういうこと?この世には科学の世界と魔法の世界があったってことかい。」
イザ「そういうことになるけど…。正確に言えば現実の世界と夢の世界なんだよ。」
クリス「…カンベンしてくれ、僕はまだドラッグに溺れるほど落ちぶれちゃいない。」
イザ「ドラッグ??」
クリス「まったくどうなってんだ…。ワケの分からないことばかり起こるな…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ロサンゼルス モーテル
クリスとイザは、とりあえずあまり目立たないモーテルに泊まることにした。
受付「お泊りかい。」
クリス「えぇ、二人です。」
受付「50ドルだ。」
クリス「カードでお願いします。」
受付「あいよ。」
イザ「クリス、今渡したカードはなんだい。」
クリス「クレジットカードだよ。」
イザ「?」
クリス「…何でもない、キミは気にしなくていい。ここは僕が払うから。」
受付「ほらカギだ、4番の部屋を使ってくれ。」
クリス「どうも。」
受付「あんたたち双子かい?よく似てる弟さんだな。」
クリス「……」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE64
イザ「へぇー、幻の大地の宿屋ってこういう部屋なんだ。」
クリス「シャワーはそっちだよ、トイレはこっち。」
イザ「シャワーって何?」
クリス「おいおい、キミはどこまで何も知らないんだ?」
イザ「色々教えてよ、この世界について。」
クリス「頼むから教えてほしいのはこっちだよ、僕は頭がおかしくなりそうだ。」
イザ「ずっと不思議に思ってたんだけど、どうして夜なのにこんなに部屋が明るいんだい?」
クリス「電気があるからさ、当たり前だろ。」
イザ「たいまつじゃなさそうだね…。火も使わずに灯りを作り出しているのか…。」
クリス「……」
あらゆる物に興味を示しているイザを横目に、クリスはホテルのテレビをつけた。
ピッ
TV「ジャジャーン!ついに新登場!あなたのご家庭に一台いかがですか?新規搭載の…」
イザ「うわ!な、なんだこれは!」
クリス「テレビのCMだよ、何を驚いているんだ。」
イザ「てれび…。」
TV「では次のニュースです。ロサンゼルスでは謎の異常気象と共に、停電事故が相次いでいるようです。
しかもカリフォルニア州では毎分3回の微震が起こり始め…。」
イザ「ちょ、ちょっと。この人なんでこんなとこに閉じ込められているんだい。」
クリス「おい頼むよ、ボク疲れてるんだからさ。そんな原始的な質問はやめてくれ。」
イザはテレビに映るニュースキャスターを、箱に閉じ込められたものだと勘違いしていた。
クリス「これはテレビといって、映像を世界に中継しているだけだよ。…っていうか僕もなんで
こんなバカバカしいこと説明してんだ…。」
イザ「すごいや、占い師が水晶玉に光景を写すよりもきれいに写ってる…。」
TV「ロスの街では謎の怪物の出現に大パニックに陥っています。このマントをなびかせた謎の男は、
街の建物を次々に破壊し…。」
そのニュースに流れる実況中継の中に、デュラン・フェニックスの姿が写っていた。
イザ「デュランだ!こいつたぶんデュランだよ!」
クリス「デュラン?」
イザ「しまった…、とうとうパワー全開になってしまったのか。これは早いとこボクも融合を
しないと…。」
TV「同時にイタリア・ローマ、日本、アジアでも街を破壊する謎の怪物が出現し、警察側だけでは
歯が立たず、軍が出動すると共に…。」
イザ「まずいな…もう世界が滅ぼされるのも時間の問題だ、急がないと。」
クリス「は?」
イザ「ねぇクリス、お願いだから融合に協力してよ。このままじゃ世界は滅びてしまうんだよ。」
クリス「……」
イザ「ゼニス王が言ってたよ、キミは幻の勇者という貴重な存在なんだって。」
クリス「僕は勇者じゃない、巡査だ。」
イザ「聞いてくれよクリス、キミの友人もたぶん融合に協力してくれたはずだ。ボクの仲間たちが
きっと彼らと…。」
クリス「ハリーのことかい?冗談やめてくれ。」
イザ「どうして現実から目をそむけるんだ、さっきも見ただろ?キミからしたら明らかに人間ではない
ヤツが襲ってきたじゃないか。」
クリス「…きっとこれは夢だ、夢に決まってる。」
イザ「夢なんかじゃないんだよ!世界終焉はもうそこまで来てるんだよ!」
クリス「……」
だがクリスは目の前の現実を認めようとしなかった。
イザ「分かってるぞクリス!キミは本当はこの状況を一番理解している!けど怖くて認めたくないだけだ!
怖くて現実から逃げているだけだろ!」
クリス「……」
イザ「クリス…!ボクだって守りたいものがあるんだ!妹がいるんだよ!けどこの幻の大地が滅びれば
夢の世界だって消えてしまうんだよ!」
クリス「…イザだっけか。キミに守るものがあっても、僕にはないよ…。」
イザ「……?」
クリスはそう言うと、ペンダントを外してイザに見せた。
イザ「これは?」
クリス「中を開けてみなよ。」
イザ「……」
イザはそのペンダントを開けてみた。
カパッ
イザ「(ターニアがいる…。)」
クリス「死んだ妹の写真だよ、14歳だった…。」
イザ「…(ターニアと同い年か…。)」
クリス「キミの話が本当だとすると、さぞかしキミは妹と幸せな日々を送っているんだろうな。
おかげで僕は結婚もせずに仕事三昧さ。」
イザ「……」
クリス「父さんは合衆国大統領だけど、息子はほったらかしで国のことばかり…。」
イザ「あのね、何を皮肉にそう言ってるのか知らないけど…。」
クリス「分かってるよ…、でも実際にはキミの言うとうり怖いんだよ…。キミが僕になるのか、
僕がキミになるのか、それとも全く別の人間になってしまうのか…。」
イザ「世界を救ったあとに決裂したければすればいい、でも最初から拒否した心構えだと
融合はできないんだよ。心を一つにしないと…。夢を受け入れてくれないと。」
クリス「そりゃ無理だと思う、何せ僕は妹を失ったその日から夢はどこかに置いてきたからね。
小さいころ空軍パイロットになるのが夢だったんだけど…。」
イザ「妹のせいにするなよ、キミ自身の問題じゃないか。」
クリス「…けど今思えば空軍なんかに入らなくて良かったと思ってる、戦争の歴史に加わるなんて
狂気の沙汰じゃない。」
イザ「クリス、とにかく時間がない。早くしないと…。」
クリス「うるさい!ガキのくせに僕に命令するな!」
イザ「クリス…。」
クリス「…どうせ僕たちの次世代にはいずれ起こることだよ…。怪物なんていなくても、人間は
いつでもどこででも戦争を起こせるのさ…。キミの世界では戦争はあるかい?」
イザ「戦争っていうか、魔王なら何匹か出現した記録があるけど…。」
クリス「こっちは何匹どころじゃないんだ、国同士が‘人差し指’をスイッチに手を掛けて
発射準備をいつでも整えている態勢さ。」
イザ「……」
イザは仕方ないといった様子で、今度は自分が折れて話し始めた。
イザ「…分かったよ、じゃあ聞くけどキミはどうしたいんだ。キミの望むことを言ってくれ。」
クリス「……」
イザ「何か望むことはないのかい。ボクに協力したくないのなら、じゃあキミはどうしたいんだ。」
クリス「もういいよ…頼むからそっとしておいてくれ…。」
イザ「人は願い事を持っているはずだろ、そもそもボクたち夢の住人は幻の大地の住人たちの
‘夢’から生まれた存在なんだよ。そして同時に、あの四匹の魔物も幻の大地の住人の
‘心’から生まれたもの…。」
クリス「バケモノたちを生んだのは僕らのせいだと言うのか。」
イザ「責任はないよ、けど事実は事実なんだ。」
クリス「…イザ、とりあえず僕は明日ワシントンへ行く。父さんの言いなりになるのはしゃくだけど、
ホワイトハウスで何をしようとしているのかを問いただしてみる。キミは朝になったら
タクシーでも拾って帰るんだ。お金を少し貸しておくから。」
イザ「そんなことより質問に答えてよ、キミの望みを言ってくれ…。」
クリス「うるさいな!そんなに聞きたいのなら言ってやるよ!僕の望みは死んだ妹だよ!
彼女を返してくれ!なぜキミたちだけが平和に暮らしているんだ!こんなの不公平だよ…!」
イザ「ク、クリス…。」
クリス「犯罪者を逮捕しても次から次へと沸いて出る…!いっそこんな世界滅びてしまえばいいんだ!」
イザ「……」
もはやクリスに何を言っても無駄だった。
クリスはベッドに横になり、カベの方を向いて無視するだけだった。
イザ「…わかったよ、もう何も言わない…。好きなようにしてくれ、それがキミの望みなら…。」
クリス「……」
イザ「キミはボクの本体だ、それが望みならボクは従うよ…。心を開いてくれるまで…。」
やがてイザもベッドへ入り、二人とも疲れた身体を横にした。
しばらく沈黙が続いたが、クリスがカベの方を向きながらイザにそっと声をかけた。
クリス「……イザ、キミの世界の妹は…」
イザ「え?」
クリス「彼女、元気かい…。病気とかしてないか。」
イザ「うん、元気だよ。」
クリス「そうか…。くれぐれも身体には気をつけてほしい…。」
イザ「…クリス、自分で言ったらどうだい。」
クリス「……」
イザ「ボクはかまわないよ…。妹に会いたくなったら、いつでも言ってほしい…。」
クリス「……」
イザ「…クリス?」
クリス「……」
イザ「寝たのか…。」
真夜中の窓から漏れる稲妻の光に照らされ、二人はわずかな時間を眠った。
そしてクリス・レイドックはこの翌日、ワシントンへ飛ぶことになる。
無論イザはそれで引き下がるわけもなく、クリスのあとをこっそりと尾けて
同じ飛行機に潜り込んで共にワシントンへ向かうこととなる。
ホワイトハウスにいるクリスの父親、合衆国ジョン・F・レイドック大統領のもとへ…。
※(ここまでの旅を冒険の書に記録します。ウィーン ウィーン…
セーブが終わりました。)
※(ここまでを読んだ方は夢の世界「ウィザーズ・ワールド編」へ戻り、
PAGE65へ移ってください。)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE67
<エピソード5 世界終焉の日>
――――翌日の昼
クリスは予定どうり、飛行機に乗ってワシントンDCへ到着した。
ダレス国際空港 pm01:20
クリス「さて、急ぐとするか…。ホワイトハウスへ行くにはバスのほうがいいか。」
クリス「それにしてもイザのやつ、ちゃんと帰ったかな…。」
だがクリスの後方の影から、イザはこっそりと尾行していた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
イザ「ははは、このまま帰るボクだと思ったか。融合するまで彼から離れるもんか。」
イザ「オェッ…。し、しかし飛行機ってやつは気球と違ってすごい揺れたなぁ…。何だか
船酔いしたような気分だ…。」
そしてこのとき、クリスを尾けていたイザの前に、事態は思わぬ方向へと向かうことになる。
側近A「おい、あそこだ。」
側近B「うむ、どうやら無事に空港へ着いたようだな。」
スーツにサングラスの二人の男が、イザに近寄ってきた。
側近A「坊ちゃん、お疲れさまです。」
イザ「?」
側近B「車はすぐそこです、お荷物はないですか?」
イザ「?あんたたち誰?」
側近A「お忘れですか、我々はシークレットサービスです。」
イザ「しーくれっと…何?」
側近B「大統領閣下より空港であなたを迎えるようにと指示を受けており、ここで待機してました。
すぐにホワイトハウスへ行きましょう。」
イザ「ちょ、ちょっと待って。ボク今それどこじゃ…。」
側近A「クリス様、大統領閣下がお待ちです。さぁ行きましょう。」
イザ「ちょちょっと!あんたたち人違いしてるよ…!」
イザは男たちに連れられ、リムジンに乗せられてしまった。
するとそれを見ていた市民が…。
市民T「おい、今のやつって確か…。」
市民U「そうだよ、大統領の息子だよ。テレビで見たことがある。」
市民T「こんなとこで何してたんだろうな。」
市民U「ホワイトハウスへ向かったんだろ、大統領の呼び出しじゃないのか。」
市民T「そうか…、もしかしてニュースでやってた怪物たちと戦うんじゃ…。」
市民U「お、おい。不吉なこと言うなよ。ロスの街にミサイルでも落とそうってんじゃないだろうな。」
市民T「けどよ、息子がワシントンに来るなんておかしいと思わないか?」
市民U「まさか…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
リムジンの車内にて
側近A「楽にしていて下さい、ホワイトハウスまでの辛抱です。」
イザ「あ、あのね、ボクはクリスじゃないんですよ。そりゃ似てるけど…。」
側近B「シャンペンはいかがですか、それともワインに?」
イザ「い、いやそんなことよりもさ…。」
有無を言わさずリムジンに乗せられ、イザはクリスと間違えられホワイトハウスへ直行した。
イザ「まいったな…。」
側近B「坊ちゃん、しばらく見ないうちに少し雰囲気が変わったように思えますが…。」
イザ「そりゃそうだよ、別人だから。」
側近B「ずいぶんとその…若くなったというか、まるで少年のような感じに…。」
イザ「…(そういや年すこし違うのかな、クリスはちょっと大人っぽいし…。)」
側近B「それに服のご趣味も変わりましたね、それは何かのコスプレですか?」
イザ「コスプレ?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一方クリスのほうは…
クリス「さて、ペンシルヴァニア行きのバスは…。」
すると空港にいた市民がクリスに声をかけてきた。
市民T「あれ?あんた戻ってきたのか。」
クリス「え?」
市民T「あんた大統領のご子息だろ。」
クリス「そうですけど…。」
市民「さっきリムジンに乗って走っていったと思ったのに、もう帰ってきたのか。」
クリス「!」
やがてクリスはその状況を悟った。
クリス「(し、しまった…。親父の側近が空港へ来てたのか…。)」
クリス「(待てよ、僕が車に乗って行っただと?…ってことは…。)」
クリス「(そうかイザだ!あいつ僕のあとを尾けてこんなとこまで来ていたのか…!)」
クリスはやむを得ずタクシーを呼びとめた。
クリス「すみません!ホワイトハウスまで!」
運転手「あいよ。」
クリス「急いでください!緊急を要するので!」
運転手「あれ?あんたもしかして…。」
クリス「いいから早く!」
運転手「は、はい!」
ブロロロロ…!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE68
ワシントンDC ペンシルヴァニア街1600番地 ホワイトハウス
側近A「坊ちゃん、着きました。」
イザ「うわー、すごいきれいな建物だ…。」
6万4,748平方メートルの柵に囲まれ、芝生の敷地の中央にそびえ立つ純白の砦のような建物。
イザの目には、ホワイトハウスはまるで神の城のように見えた。
イザ「世界が大変なときに不謹慎だけど…これはすごいや。ゼニス城もすごいと思ったけど
色はこっちのほうがきれいだな。まるで神さまのお城みたいだ。」
側近A「大統領がお待ちかねです、おそらく会議は終わっているとは思いますが。」
イザ「(クリスもこっちへ向かってるといいけどなぁ…。)」
側近「さぁ坊ちゃん、中へ入りましょう。」
イザは側近に連れられ、ホワイトハウスの中へ入っていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ホワイトハウス内
すでに世界は怪物たちに襲われている中、ホワイトハウス内はまるで戦場だった。
参謀長官「ロシア大使館より連絡があった!とりあえずソ連軍も参戦の予定とのことだ!」
部下A「ローマでは鳥の怪物の出現により街は大混乱に陥ってます!」
参謀長官「とりあえず他国のことは置いておけ!ロスの被害報告はどうなっている!」
部下B「ロスの街は今や戦場です!空軍の要請を!」
部下C「アジア・中国では巨大な半魚人が街を大洪水にしているとのことです!」
部下D「日本から応戦の要請が!アメリカ軍の助勢を求めています!」
参謀長官「副大統領と幹部はただちに緊急会議だ!使えるものは海軍でも陸軍でもかまわん!」
将軍「警戒態勢をレベル3にしろ!全軍はただちに出動だ!」
イザ「な、なんだこの慌しさは…。」
側近A「クリス様、こちらへどうぞ。閣下はじきに…。」
周りをキョロキョロしているイザの前に、国防長官がやってきた。
国防長官「クリス様、久しぶりですな。」
イザ「?」
国防長官「お忘れですか、私は国防長官のゲバンですぞ。」
イザ「ゲバン…?」
国防長官「とにかく挨拶は後回しにしましょう、閣下が部屋でお待ちです。」
イザ「……」
国防長官「さぁ坊ちゃん、こちらへ。」
イザ「は、はい…。(まいったな、今さらボクがクリスじゃないなんて言えなくなってきたぞ…。)」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE69
大統領 寝室
コンコン
国防長官「閣下、クリス様がいらっしゃいました。」
*「入れ。」
国防長官「はっ。」
ガチャリ
国防長官「さぁどうぞ、坊ちゃん。」
イザ「……」
国防長官に連れられ、ついにイザは合衆国大統領と対面した。
大統領「クリス…久しぶりだな、来てくれると思っていた。」
イザ「あの…。」
大統領「おい、しばらく下がれ。」
国防長官「はっ。」
バタム
大統領「その辺に座れ、少々ファックスなどで散らかっているが。」
イザ「…(こ、この人がクリスの父さんか…。)」
大統領「会議会議で休むヒマもない、そのうえ世界は今大変な事態になっている。お前も知っておろう。」
イザ「は、はい。」
大統領「?どうした、何をよそよそしくしている。」
イザ「い、いえ…。」
大統領「…ずいぶんハデな格好をしているな、お前はそういう趣味があったのか?」
イザ「?」
大統領「仕事のときも革ジャンにジーンズだったお前が…。」
イザ「何ですかそれ…。」
大統領「…まぁいい。いきなり呼び出してすまなかったな、だが急を要したのでな。」
イザ「……」
大統領「クリス、まずはこの写真を見ろ。」
イザ「?」
大統領はそう言うと、四枚の衛星写真をイザに見せた。
イザ「これは…?」
大統領「NASAから取り寄せた衛星写真だ、異常気象は大きく分けて世界の四つの地点を中心に
活動していることが判明した。」
イザ「(どれも夢の世界に開けられた穴とほぼ一致している…。)」
大統領「謎の四つの生命体は未だにその正体が不明だ、だが私の科学顧問の調査によれば
これは他の天体からやってきたものらしい。」
イザ「い、いや違いますよ…。」
大統領「被害報告は膨大だ…。すでに空軍の第一軍を攻撃に差し向けたが、謎の生命体は驚くべき
生態系をしているそうだ…。」
イザ「そりゃそうですよ、ヤツらは今や魔王クラスにまで進化しましたし…。」
大統領「何の話だ。」
イザ「あ、あのですね。実はボク、クリスでは…」
大統領「いいか、お前をここへ呼んだのは他でもない。今は※DEFCON3(警戒態勢3)の状態だが、
万が一の事態に備えて※クリスタルマウンテンへ避難してもらうためだ。」
イザ「クリスタルマウンテン?何ですかそれは。」
※クリスタルマウンテン
それはホワイトハウスの地下にある核シェルターのようなものである。
その目的は基本的には大統領を守るために作られたシェルターだが、幹部や大統領の家族などを
避難させるためでもある。一番の例として、敵国に核攻撃をされたときのためである。
※警戒態勢(DEFCON)
レベル1〜5までの警戒態勢は、平常時ならレベル5である。
これは非常事態につれて、レベル1に近づいていく警告のサインでもある。現在のレベルは3。
ちなみに最高レベル1とは、第三次世界大戦に等しい最悪の事態である。
大統領「謎の生命体はいずれこのワシントンにも攻撃し兼ねん、まさか核戦争のときのために作られた
シェルターがこのような形で使われることになるとは…。」
クリス「いったい何をする気なんですか…。」
大統領「クリス、よく聞け…。攻撃に向かった第一軍が全滅すれば、私は最後の決断をする他ない…。」
イザ「最後の決断?」
大統領「無論、私もその決断に至ることがないことを祈る。だが万一ということがあるのだ。」
イザ「……!(ま、まさか…)」
イザはクリスの言葉を思い出した。
………それはおそらく核ミサイルのことだ。…そうか、さっき父さんから電話があったのは
もしかしてその夢に関係しているのかも………
………核ミサイルって何?………
………国を滅ぼすことのできる恐ろしい兵器さ、一瞬にして何千万人の人間を消してしまう
破壊兵器といっていい………
イザ「(ま、まさかそんな…!ボクが見たあの夢は実際に起こる出来事なのか…!)」
大統領「ロサンゼルスは街を捨てて避難を始めている市民がいると聞いた、できるだけ住人を
街から遠ざけたほうがこちらのためでもある…。」
イザ「ま、待ってください。あなたは知らないかもしれませんが、実はボク…いやボクたちは
ヤツらと戦うためにこの幻の大地へ来たんですよ。」
大統領「?」
イザ「それにもし仲間たちが四匹の魔物と戦いに…ハッ!」
大統領「どうした。」
イザ「(ま、まずい…!もしかしてみんなボク抜きで戦いに向かったんじゃ…!)」
大統領「クリス、どうかしたか。」
イザ「……!」
イザの予感どうり、実はこのときハッサン、ミレーユ、チャモロ、テリーの四人は
四匹の魔物との戦いに備えている頃だった。
イザ「まずい!核ミサイルなんて使ったらボクの仲間たちまで巻き添えになってしまうよ!」
大統領「…何を言ってるのか分からんが、ともかくまだ核を使うと決断したわけじゃない。
お前は余計な心配せんでもいい。」
イザ「で、でも…。」
大統領「最悪の事態にならんよう私も祈っている…。‘人差し指’はこの世で最強・最悪の武器なのだ。
…かつて世界を掌握しようとしたアドルフ・ヒトラーが今の時代に生まれていなくて、
心の底から良かったと思う…。」
イザ「ヒトラー?」
大統領「知っているだろう、あの男ならおそらく‘人差し指’を何のためらいもなく使う独裁者だ。」
イザ「……」
大統領「…余計な話をした、ともかく核とはそれほど恐ろしいものだ。犠牲者が百単位で済むのなら
私もためらいなく‘人差し指’を使うのだが…。」
イザ「……」
まるで人を数字のように話す大統領の言葉に、イザは魔物以上の恐ろしさを感じた。
イザ「(クリス……ボクは魔物と闘うことはできても、人間の恐ろしさだけは止められないよ…。)」
イザ「(これがキミの父さんなのかい…。どうりでボクには父さんがいないと思ったよ…。キミは
自分の父親を心の中から消してしまったんだね…。)」
そのとき、奥の部屋から一人の美しい婦人が現れた。
シェーラ「クリス…お帰り。」
イザ「!(この人は…。)」
シェーラ「あら…?しばらく見ないうちにずいぶんと変わってしまいましたね。」
その女性は大統領夫人、そしてファーストレディーのシェーラ・レイドックである。
イザ「(そうか、クリスのお母さんだな…。)」
シェーラ「お話は聞きましたね、これからは私たち家族はここで一緒にいましょう。」
イザ「あの…実はボクあまりのんびりとしてもいられないんです。」
シェーラ「あなたの気持ちは私たちも分かっているつもりです、けど父さんの気持ちも分かってあげて。
このような非常事態こそ、せめて家族一緒に…。」
大統領「シェーラ、こいつはまだ私の話を信用していない。人類史上初の異星人との遭遇に
少々戸惑っているのかもしれんが。」
シェーラ「無理もありません、私だって最初は信じられませんでしたから。」
イザ「……(二人とも何も分かってないな…。)」
シェーラ「クリス、少し休みなさい。今紅茶でも入れてきてあげるわ、たまには母ともお話しましょう。
あなたの警官としての話も聞かせてちょうだい。」
シェーラはそう言うと、再び奥の部屋へ戻っていった。
イザ「…(何となくボクも記憶があるな…、確かボクの母さんはターニアを産んで間もなく死んだはず…。
クリスの心には母親の面影を少しだけ残していたのか…。)」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ホワイトハウス前
一方そのころ、ホワイトハウスの前にようやく本物のクリスがやってきた。
運転手「着きましたよ。」
クリス「どうも!お釣りはいいです!」
運転手「こりゃどうも。」
クリスはタクシーを降り、ホワイトハウスの門へ走っていった。
クリス「まったく…!イザのやつ勝手なことしてなきゃいいけど…!」
すると先ほどのシークレットサービスが門へやってきた。
側近A「あれ?坊ちゃん?」
クリス「ちょ、ちょっと!今ここに…!」
側近A「いつの間に外へ?閣下とのお話は済んだのですか。」
クリス「いいから聞け!今ここに僕が来なかった?!」
側近A「は?」
クリス「ばかやろ!そいつがルパ…じゃなかった、そいつは偽物だよ!」
側近A「クリス様、いったい何をおっしゃってるのか…。」
クリス「と、とにかく父さんに会わせてくれ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE70
大統領 寝室
コンコン
大統領「誰だ。」
*「ゲバン国防長官です。」
大統領「入れ。」
ガチャリ
国防長官「失礼します。」
側近A「……」
国防長官がシークレットサービスを連れてやってきた。
国防長官「閣下、ちょっと…。」
大統領「何だ?」
イザ「?」
国防長官は大統領を呼び寄せ、ボソボソと小声で話していた。
大統領「(…本当か?)」
国防長官「(えぇ、外にクリス様が…。)」
大統領「(まさか…ではここにいるクリスは誰だというのだ。)」
国防長官「(分かりません、外にいるクリス様がおっしゃるには偽物だと…。)」
大統領「……」
イザ「あのぅ、どうかしましたか。」
すると国防長官がイザを見据えるように言った。
国防長官「坊ちゃん、このようなことを申し上げるのは非常に気が引けますが…。」
イザ「?」
国防長官「あなたは本当にクリス様ですか?」
イザ「だ、だからそれは…。」
大統領「……」
国防長官「坊ちゃん、一つだけ質問をお許し願いたい。」
イザ「は?」
国防長官「私とて信じたいのですが、このような非常事態です。今一つ確信を持ちたいのです。」
イザ「な、何を聞くって言うんですか。」
国防長官「あなたには幼くして亡くした妹さんがいましたな、閣下の一人娘でもありました。」
イザ「!」
国防長官「この質問に答えることができれば、私はあなたに謝罪します。…よろしいですね閣下。」
大統領「うむ…。」
国防長官「坊ちゃん、あなたの妹の名をおっしゃってください…。」
イザ「え…。」
国防長官「お願いします、答えてください。」
そしてイザは当然のように答えてしまった。
イザ「ボクの妹の名はターニアですけど…。」
大統領「お、お前…!」
国防長官「!…閣下、お聞きになりましたね。本物のクリス様なら、あれほどかわいがっていた
妹の名をお忘れになるわけがありません。」
イザ「あ、あのね。言わせてもらうけどそっちが勝手に間違えたんじゃないか。」
国防長官「おい。(パチン!)」
側近A「はっ。」
国防長官が指を鳴らすと、シークレットサービスがイザを部屋から連れ出した。
側近A「さぁ来るんだ、偽者め。」
イザ「な、何するんだ…!離せ!」
側近A「本来なら犯罪者だぞ、クリス様の名を騙るスパイめ。」
イザ「ばかやろ!あんたたちが勝手に勘違いしたんだろうが!」
国防長官「そいつをホワイトハウスから放り出せ。」
側近A「はっ。」
イザ「こ、この…!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ホワイトハウス 正門前
ドタン!
イザ「うわ…!」
側近A「二度と来るな、次は国外追放だぞ。」
側近はイザを放り出して去っていった。
イザ「ふん!無理やり連れてきてえらそうに言うな!あいたたた…。」
クリス「…やはりついて来ていたのか。」
イザ「あ!」
クリス「家に帰れと言ったはずだ、これ以上僕にかまうんじゃない。」
イザ「クリス…!そんなことより大変なことが!」
国防長官「あなたが本物のクリス坊ちゃんですね、お待ちしておりましたぞ。」
クリス「ゲバンか…。」
国防長官「さぁお入りください、改めて閣下にご挨拶を。」
クリス「そのつもりだよ、僕も父さんに用がある。」
国防長官「ではどうぞ、こちらへ。」
イザ「クリス!ボクの話を聞いてくれ!キミの父さんは恐ろしいことをしようとしている!」
クリス「……」
クリスはイザを無視してホワイトハウスへ入っていった。
イザ「クリス!ボクとの融合なんてもうどうでもいい!けど仲間が…!このままじゃ仲間たちが
危険なんだよ!お願いだから…!」
国防長官「行きましょう、坊ちゃん。」
クリス「あぁ…。」
イザ「ク、クリス…!」
だがクリスはホワイトハウスに入る際、ペンダントを落としてしまい
気づかずにそのまま行ってしまった。
イザ「これは…。」
イザは妹の写真が入ったペンダントを拾い、改めて中を見てみた。
イザ「クリスの大事にしていたペンダントか…。バカだな、落としたことに気づかないで…。」
イザはとりあえずペンダントをふところにしまい、預かることにした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE71
ホワイトハウス 会議室
国防長官「閣下、本物の坊ちゃんがいらっしゃいました。」
クリス「……」
大統領「話は聞いた、さっきのやつはお前の偽物だったそうだな。」
クリス「そうだよ。」
大統領「…ふむ、やはりお前は私の息子だ。間違いない。」
クリス「間違えたくせに何を言ってんだか…。」
シェーラ「クリス、父さんに向かってそういう言い方はおやめなさい。」
クリス「母さん…!元気そうだね。」
シェーラ「えぇ、セーラが死んでからもう7年も経っているのよ。そういつまでも落ち込んでも
いられないわ。」
クリス「……」
大統領「シェーラ、すまんがしばらく下がっていてくれないか。実は攻撃に向かった第一軍が
ぼちぼちロスへ着くころなのだ。」
シェーラ「そう…やはり軍が出動したのね。」
大統領「向こうの戦況をこちらの回線へ回す、お前には少々刺激が強すぎるかもしれんのでな。」
シェーラ「わかりました、けど会見のほうはどうしましょう?記者が待っているわ。」
大統領「戦いはこれからなのだ、お前が出席して適当に発表しておいてくれ。」
シェーラ「そう言うと思いました。…わかったわ、じゃあ私が行ってきます。」
大統領「頼む。」
シェーラは会議室を出て行った。
バタム
大統領「よしゲバン、回線をこちらへ回せ。」
国防長官「はっ。」
大統領「クリス、お前も座れ。いよいよ我が軍の攻撃開始だ。」
クリス「……」
国防長官「本部、応答せよ。こちらホワイトハウスだ。」
*「ピー…ザーザー…こちら空軍本部、予定どうり戦闘準備完了です。5分後にロサンゼルス上空へ
到着するとのことです。」
国防長官「分かった、戦況をこちらの電話回線に繋げろ。ホワイトハウス会議室だ。」
*「了解しました。(ピッ)」
国防長官「閣下、電話回線をスピーカーホンに切り替えました。これで向こうの戦況報告が聞けます。」
大統領「うむ…。」
クリス「父さん、ところでこっちの戦力は?」
大統領「とりあえずロサンゼルスにF-15戦闘機を三機向かわせた。」
クリス「たった三機…。」
国防長官「クリス様、ご心配には及びません。我が合衆国の誇る空軍ですぞ。」
クリス「……」
その未知なる生命体に対し、まずはアメリカ空軍がロサンゼルスの
デュラン・フェニックスに先制攻撃を仕掛けることになった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE72
ロサンゼルス ハリウッド
すでにハリウッドの街は戦場と化し、住宅街・警察署・消防署・学校・図書館・デパートなどの
あらゆる建物は‘破壊のデュラン’によって崩壊され、街の半分が廃墟と化していた。
デュラン「ほぅ。地上での戦闘ではかなわないと判断し、次は空からの攻撃か。面白い。」
やがてF-15戦闘機が真昼のロス街を高速で飛び、デュラン・フェニックスに攻撃を開始しようとしていた。
パイロットA「こちら一号、目標を肉眼で確認した。マントの男はユニバーサルスタジオの屋上にいる。
繰り返す、未確認生命体は010時の方角、ユニバーサルスタジオの屋上だ。」
パイロットB「こちら二号、確認した。目標を照準に合わせる。」
F-15戦闘機はビルの屋上に君臨しているデュランの目の前を、すさまじい速さで横切った。
ゴォォオオ…!――――ッヴァシュゥン!!
デュラン「フム、なかなかの速さだ。興味深い乗り物だな。」
耳をつんざくように目の前を何機も飛び交うF-15を前に、デュランは少しも動じずに
腕を組みながらその光景を眺めていた。
デュラン「まぁもっとも暗黒魔界の闇ドラゴンの飛行速度に比べたら、この程度の速さはまだまだだな。」
今から攻撃されようとしているデュランは、この状況をまるで楽しんでいるかのようにいた。
パイロットA「二号応答せよ。この辺りの地区はすでに避難を終えている、ビルごと攻撃しろ。
三号は旋回して待機せよ。」
パイロットB「こちら二号、目標ロックオンした。攻撃を開始する。」
パイロットC「こちら三号、了解。」
F-15はついにデュランに向けてミサイルを発射した。
――――ッドン! シュゥゥーーー!
パイロットB「目標に向けて発射した、3秒後に標的に到達。二発目は待機する。」
パイロットA「了解。」
デュラン「…建物ごと攻撃か、まぁそれが賢明だろう。」
だがデュランは向かってきたミサイルの軌道を素手で弾き飛ばした。
――――ッヴァシュゥゥ!!
パイロットB「バ、バカな…!」
パイロットA「二号機!ミサイルの軌道を変更されたぞ!そちらへ向かっている!回避せよ!」
ミサイルは軌道を変えて二号機に向けて突進してきた。
ッゴォォォーーーー!
パイロットA「高度を上げろ!追いつかれるぞ!」
パイロットB「だ、駄目だ…!回避できない!」
まずは二号機が破壊された。
ッズガァァーーーーンン!!
パイロットA「お、おのれ…!よくも…!」
デュラン「フム、わりと破壊力を持っている武器だな。魔法で言えばイオナズンの2.5倍くらいか…。
だがその程度の爆発ではどのみち当たったところで私は倒せんな。」
デュランはそう言うと、今度は屋上から思い切り助走をつけて大空高く舞い上がった。
ダダダダダダダ!! ――――ッダン!
パイロットA「本部応答せよ!応答せよ!二号がやられた!攻撃が通用しない!大至急応援を要請する!
繰り返す!二号機が…!」
パイロットC「おい一号!ヤツがお前の機に…!」
パイロットA「何!」
なんと高速で飛ぶF-15に、デュランが機体の上に飛び乗ってきた。
――――ッズダン!!
パイロットA「!!」
デュラン「フ、なかなか良い眺めだ。これで攻撃しやすい。」
パイロットA「こ、こんなバカな…!」
パイロットC「一号!機体を揺らしてヤツを振り落とせ!外から攻撃されるぞ!」
パイロットA「すでにやっている!振り落とせないんだ!」
機体を宙返りさせてもデュランは振り落とされず、そのまま攻撃態勢に入ろうとしている。
デュラン「さて、次はあれを落とすか…。(シャキン!)」
デュランは一号機の上に乗ったまま、はぐれの剣を抜いて闇のクリスタルの力を溜め込んだ。
ッギュォォオオ…!
パイロットA「やむを得ん!三号!こうなったら私の機ごと撃ち落とせ!」
パイロットC「バ、バカなことを…!そんなことできるか!」
パイロットA「かまわん!早く撃ち落とさないと…!」
デュラン「よし、照準に捕らえたぞ…。」
パイロットC「援護するから待て!何とか目標だけを狙ってみる!」
パイロットA「よせ!こちらへ近づくな!ヤツは何かやろうとしている!」
パイロットC「な、何だと?!」
デュラン「フ、もう遅い。(ギィィン!)」
デュランは一号機の上に乗ったまま、向かってきた三号機に向けてアルテマソードの奥義を放った。
ッバリバリバリバリバリ!!―――――――ッズガァァンン!!
パイロットA「こ…こんなバカなことが…!F-15を二機も撃ち落としただと…?!」
デュラン「これで終わりだ。(ギィィン!)」
さらにデュランは乗っていた一号機にも攻撃した。
ッズガァァン!
パイロットA「く、くそ…!エンジンをやられた!つ、墜落する…!」
シュゥゥゥーーー!!
パイロットA「本部応答せよ!戦闘不能!戦闘不能!」
デュラン「なかなか楽しめたぞ、次はもっと速い乗り物を用意してこい。」
デュランは墜落しかかっている一号機を飛び降りた。
――――ッダン!
パイロットA「うわあああああああ!!」
そしてF-15戦闘機は全て撃ち落とされた。
……ッズガァァーーーーーンン!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ホワイトハウス 会議室
*「こちら本部!F-15応答せよ!一機も残っていないのか!おい!どうした!」
*「ピー…ザーザー…。」
*「ちょ、長官!全滅です…!信じられない…!」
国防長官「バカな!相手はたった一匹だぞ!」
大統領「なんてことだ…。」
クリス「……」
国防長官「閣下、すぐに第二軍の出動を!」
大統領「よせ、また全滅するぞ。」
国防長官「し、しかし…!」
大統領「それで敵はどうしている。」
国防長官「お待ち下さい。…おい本部、応答せよ。敵にはダメージを与えたか。」
*「ピー…ザーザー…こちら本部、敵はまるで無傷です。繰り返します、敵は無傷です…。」
国防長官「……」
大統領「…予想以上の強敵だ、これではたとえミグ戦闘機を10機向かわせても無駄だ…。」
国防長官「くそ!我が軍の誇るF-15が…!」
クリス「……」
圧倒的な戦力の違いを見せつけられ、もはや希望は残っていないかのように見えた。だがそのとき…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE73
ロサンザルス ハリウッド
デュラン「フ、次の攻撃を仕掛けてくるまで、またヒマつぶしでも…む?」
テリー「よぅ。」
デュラン「お前は…?」
F-15戦闘機を一掃したデュランの前に、テリー・ジェイク・ランディーノが現れた。
テリー「お前の空での戦いぶりを見せてもらった、次はオレが相手だ。」
デュラン「貴様は何者だ。」
テリー「オレはあんたのヒマつぶし相手だ。」
デュラン「……」
ロスの廃墟の街にテリーとデュランが対峙する。そしてその同時刻、他の国でも…
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幻の勇者 PAGE74
イタリア・ローマ
市民A「<な、なんだよこの突風は!家が破壊されていくぞ!>」
市民C「<きゃあ!ス、スカートが…!>」
市民B「<逃げろ!鳥のバケモノが襲ってくるぞ!>」
市民D「<うお!な、なんだあの竜巻は…!>」
ローマの街に半径100フィートの巨大な竜巻が襲い、その竜巻の中心に‘裏切りのジャミラス’がいた。
ジャミラス「人間どもよ!全て吹き飛ぶがいい!」
ッゴァァァアーーーーー!!
中尉「<あそこだ!一斉射撃するぞ!>」
部下A「<了解!>」
部下B「<な、なんだこりゃ…!>」
部下C「<げ!竜巻が…!>」
ジャミラス「フン、懲りずにまた来たのか。攻撃できるものならやってみろ!」
中尉「<撃てェ!!>」
ズダダダダダダ!!!
だが竜巻が弾丸をはじき飛ばし、まるでジャミラスには効かなかった。
ジャミラス「<馬鹿め!今さらそのような攻撃が通用するか!少しは学習しろ!>」
部下A「<中尉!まるで通用しません!>」
中尉「<く、くそ…!装甲車はどうなっている!まだ着かんのか!>」
部下B「<ようやく来ました!後方より進行中です!>」
中尉「<全員下がれ!>」
ジャミラス「ほぅ、今度はさらなる武器を用意してきたか。では俺もガードを解いてお相手しよう。」
ローマの街に戦車が現れ、ジャミラスに向けて攻撃を開始した。
――――ッドォン! ッバガァァーーーンン!!
ジャミラス「…なんだ、やはりこの程度か。カスリ傷一つ与えられんぞ。」
装甲車の攻撃はジャミラスの身体を少しのけぞる程度だった。
部下C「<ちゅ、中尉…!あいつまるで無傷です!>」
中尉「<こ、こんな…!装甲車の攻撃が通用せんだと?!>」
ジャミラス「もういい、つまらん戦いはこれまでだ。吹き飛べ。(ギィィン!)」
ジャミラスは風を使ってマジックトルネードを呼び起こし、装甲車を吹き飛ばした。
ッゴァァーーーー!!
中尉「<バカな…!>」
部下A「<せ、戦車が…!>」
吹き飛ばされた戦車はローマの博物館に激突した。
―――――ッドガァァーーーンン!!
ジャミラス「俺を倒したくば三日前に都合を聞け!フハハ!メールでも予約受付中だぞ!」
ミレーユ「では私が予約しようかしら。」
ジャミラス「む?!」
そのとき、ジャミラスの前にミレーユ・ミア・ランディーノが立ちふさがった。
ジャミラス「お前は何者だ、まさか女が俺の相手になるとでも?」
ミレーユ「女は募集してないのかしら、レディースデイでも設けたら?」
ジャミラス「…フン、それもまぁ悪くないな。書類手続きは無用だ、早速かかってくるがいい。」
ミレーユ「…あなたたちの野望もこれまでよ、もう好きにさせないわ…。」
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幻の勇者 PAGE75
日本列島 首都東京 渋谷 ハチ公口前
市民O「[消防車はまだかよ!街中が火事じゃねえか!早く消してくれ!]」
市民P「[109が火事だ!消防車はまだかよ!]」
市民R「[バケモノがそこらじゅうに炎を吐いてる!誰か何とかしてくれ!]」
警官G「[おい!あのバケモノはどこへ行った!]」
警官H「[ヤツはJR山手線を狙っている!]」
警官G「[な、何だと…!電車はこちらに向かっているのか!]」
警官H「[市民の皆さん!駅から離れてください!脱線の恐れがあります!]」
JR山手線にて、内回りのホームに炎の魔物‘恐怖のムドー’が降臨していた。
ムドー「フハハハハハ!地獄の業火に焼き尽くされよ!全て灰にしてやるわ!」
すでに渋谷駅を炎で包み、ムドーは前方からやってくる電車を待ち構えていた。
ムドー「ガハハ!レール上でしか動けん乗り物め!来るならこい!」
車員「[うおああ!前方にバケモノがいます!]」
車掌「[非常ブレーキだ!早くブレーキをかけろ!]」
キキキィィーーー!
ムドー「無駄だ!…ふんっ!(ギィィン!)」
ムドーは足元の線路にマグマを呼び起こした。
ッガォォーーーー!
車員「[車掌!線路が…!]」
車掌「[な、何をする気だ…!]」
なんと前方の電車に向かって線路が溶けていった。
ゴガガガガガ…!!
車員「[せ、線路が溶けています!]」
車掌「[こ、こんな…!]」
ムドー「ヌハハハ!これでも走っていられるか?!」
車掌「[ふ、伏せろ!!脱線するぞ…!]」
車員「[うわあああああ!!]」
山手線の電車は、その車体を大きく横転させ脱線してしまった。
ッドガァーーーン! ズガガガガガガガ!!
ムドー「イイイイイッヤッホーーーーーーーー!!気分爽快だ!!」
だが勝ち誇っているムドーの前に、ハッサン・ハリー・サンバードが現れた。
ハッサン「オッス。」
ムドー「?!」
ハッサン「ずいぶんとハデに暴れてくれたな、だがそれもこれで終わりだ。」
ムドー「!お、お前は…そうか!思い出したぞ!確か先日ワシを殴った人間だな!」
ハッサン「あぁ、そういやそうだったな。」
ムドー「フハハ!のこのこ殺されに来たのか。だが丁度いい、この間の礼をせんとな。」
ハッサン「ビールでもおごってくれるってのか?」
ムドー「あぁ、お前を焼き殺してビールのつまみにする。」
ハッサン「面白い冗談だな、最近の魔王はジョークのセンスまで身につけたか。」
ムドー「お前にはかなわんかもしれんがな。…さぁ、とっととかかって来い!虫ケラめ!」
ハッサン「以前と違うのはお前らだけじゃねえぜ、前のオレと同じだと思ったら大間違いだ…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE76
アジア 中国
グラコス「げは!げははははは!」
海岸から巨大な津波を巻き起こし、中国大陸を飲み込もうとする‘嫉妬のグラコス’。
市民K「{うごっ…!ゴボゴボッ…!}」
市民P「{だ、誰か…!助け…!}」
市民I「{み、水が襲ってくる…!うぐっ…!}」
グラコス「げはははは!魚のように泳げ!そうすれば助かるぞ!げはははは!」
街を大洪水に陥り、大人も子供も水に飲まれていった。
子供「{お母さん…!た、助けて…!おぼれる…ゴボッゴボボ…!}」
子供「{ゴボゴボッ…!ゴボッ…!}」
だがそのとき、一人の少年が溺れかけた子供を水中から助け出した。
チャモロ「{もう大丈夫ですよ。}」
子供「{だ、だれ…?あなた神さま…?}」
チャモロ「{私は神ではありません、一人の人間です。}」
子供「{……}」
グラコス「ブクルルルル…!なんじゃキサマは!」
チャモロ「あなたのような半魚人に名乗る名などありません、おじいさんの仇を討ちにきました。」
グラコス「?!そうか、どうも見覚えがあるとおもったら…げはははは!あのときのガキか!」
チャモロ「他の三匹と違ってあなたは知能が遅れている、良かったら通信教育でも受けますか?」
グラコス「う、うるさい!ガタガタぬかすとお前もたらふく海水を飲ませるぞ!ブクルルルル…!」
チャモロ「私は水泳が苦手でしてね、一ヶ月ほどスイミングスクールにでも通います。」
グラコス「げは!げはははは!ではこのわしが水泳コーチをしてやろう!さぁ来い!
エラ呼吸もできん虫ケラの人間め!」
チャモロ「老師…今こそあなたの仇を…。」
ロサンゼルスよりテリー対デュラン。
ローマよりミレーユ対ジャミラス。
東京よりハッサン対ムドー。
そしてアジアよりチャモロ対グラコス。
人類には気づかない彼らの決戦が、世界各地で雌雄を決することになった。
だが しかし…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE77
ワシントンDC ホワイトハウス
国防長官「閣下、すでにロスだけでなく他国の被害も出ているそうです…。」
大統領「……」
国防長官「第二軍を差し向けますか?それとも…。」
大統領「……」
クリス「?」
大統領「…クリス、お前は今すぐ避難しろ。」
クリス「待ってよ父さん、いったい僕を呼んだ理由ってのは…。」
大統領「いいから避難するのだ、何度も言わせるな。」
クリス「…これだ、何かあるとすぐ…。」
クリスは呆れた様子で会議室を出て行こうとした。
だが部屋のドアを開けたとたん、息を切らせてやってきた科学顧問の学者とぶつかってしまった。
ガチャリ ドン!
クリス「うわ!」
学者「あ…!も、申し訳ありませんクリス様。急いでいたもので…。」
クリス「だ、大丈夫です。」
学者「失礼、ちょっと閣下にお話が。」
クリス「……?」
クリスは少し気になったが、会議室から出て行った。
バタム
学者「大統領、お話があります。」
大統領「どうした、何を血相変えて…。」
学者「ようやく情報が入ってきました。ロサンゼルス、日本、アジア、ローマでの謎の
生命体のことですが…。」
大統領「被害報告ならそこのファックスの山を見ろ、全部読む時間さえないんだ。」
学者「ヤツらの生態系は驚くべき構造をしています。基本的には人間とほぼ変わりはありませんが、
原始的な動物が進化し、知能の発達した…」
国防長官「おい、閣下はそんな話を聞いている暇はない。学会にでも発表しろ。今はヤツらを
どう倒すかが問題なのだ。」
学者「人類初の異星人との遭遇なんですよ、貴重な標本として…。」
国防長官「おい正気か!世界で犠牲者が多発しているのだぞ!」
学者「大統領、まさか一掃作戦の決断をなさるおつもりではありませんな?」
大統領「……」
国防長官「もはやそれしか方法はないだろう!あとは閣下の許可だけなのだ!」
学者「貴重な生物なんですよ!もしかしたら未知のDNAが採取できるかもしれないじゃないですか!
これからの文明の大きな発展に繋がる!」
国防長官「このような状況で何を寝言を言っている!お前はおかしいぞ!」
学者「うるさい!あんたは黙ってろ!」
国防長官「な、何だと…!国防長官に向かって…!」
学者「大統領!核を使えば市民だって犠牲になるんですよ!ヤツらは生け捕りにすべきです!」
大統領「……」
国防長官「貴様!とっとと出て行け!こっちまで頭がおかしくなりそうだ!」
学者「むしろこれはチャンスだと考えるべきだ!一度に四体の未確認生物が出現したんですよ!」
国防長官「気が狂っている!お前は口を挟まずに研究室で試験管でも振ってろ!」
学者「えらそうに言うな!あんたは国防長官のくせにF-15を三機も無駄にしたじゃないか!」
国防長官「もう許さん!貴様を科学顧問から任を解く!国外追放だ!」
学者「できるものならやってみろ!」
大統領「うるさい!二人とも黙れ!!」
国防長官「…!」
学者「大統領…!」
大統領「……二人とも出て行け。」
国防長官「閣下…。」
学者「大統領!」
大統領「しばらく一人にさせろ、少し考えさせてくれ…。」
学者「しかし…!」
国防長官「おい、閣下が下がれとおっしゃっているのだ。」
学者「……」
国防長官「閣下、見苦しいところを見せて申し訳ありませんでした…。」
大統領「私だって何とかしたいのだ…。」
学者「……」
国防長官「では閣下、我々は隣室でお持ちしています。じきにミセス・レイドックも会見から戻って
くるでしょう、それまでにご決断を…。」
大統領「あぁ…。」
国防長官「おい、行くぞ。」
学者「……」
国防長官と学者は、会議室から出て行った。
バタム
大統領「……」
そして大統領は一人になると、会議室の窓の外を眺めた。
空は一面に雷雲が覆い、稲妻がワシントンの街を照らしている。
大統領「クリス、シェーラ、そして…セーラ。私を許してくれ…。」
大統領「もはやこの手段しか方法はない…。」
大統領は静かに目を閉じ、最後の決断に迫っていた…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ホワイトハウス 中央ホールにて
クリス「ゲバン、父さんは?」
国防長官「じきにご決断を下されます。」
クリス「?どういうことだ…。」
国防長官「すぐに分かります、クリス様。」
クリス「そんなことより外を見てくれ!雷雲の直撃が建物を襲っている!」
国防長官「……」
クリス「もう避難するしかない!ホワイトハウスを脱出しよう!ここも危険だ!」
国防長官「無理です、大統領を置いて私たちは避難できません。」
クリス「ゲバン!父さんのやついったい何をしようとしてるんだ!」
国防長官「……」
クリス「何か知ってるんだろ!教えてくれ!」
国防長官「坊ちゃん、閣下は人類史上最もつらい決断をなさろうとしているのです…。」
クリス「…?!」
国防長官「じきに正式に記者会見で発表なさるでしょう。私たちは祈ることしかできません…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE78
一方そのころ、勇者イザは…
ホワイトハウス前
イザ「な、なんて空だ…!まるで魔界の空みたいに暗黒の雷雲が覆っている…!」
イザ「ちくしょう!とにかくみんなに知らせないと…!まさかあの夢が正夢だったとは…!」
イザ「ゼニス王ーーーーーーーーーー!!」
イザが空に向かって叫ぶと、やがてイザの頭にゼニス王が呼びかけた。
ッキィィーーーン!!
………勇者イザ、話は分かっておる。ハッサンたち四人を戦いに送ってしまったこのワシの責任じゃ。………
イザ「ゼニス王!そんなことより対策を!」
………すぐにこちらへ帰って来い、他の仲間たちを呼び戻すのだ。………
イザ「は、はい!!」
するとイザの前に不思議な空間が出現した。
…ッギカォ!
………さぁ空間を開けた、戻れ。………
イザ「くそ…!間に合うといいけど…!」
イザは空間へ入り、夢の世界へと戻っていった。
四匹の魔物と戦いに行ってしまった仲間たちを呼び戻しに…。
ここまでの旅を冒険の書に記録します。ウィーン ウィーン…
セーブが終わりました。
※(ここまでを読んだ方は夢の世界「ウィザーズ・ワールド編」へ戻り、
PAGE79へ移ってください。)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE80
ロサンゼルス
高速で剣を交差させるテリーとデュラン。その闘いは熾烈を極めていた。
ッキーン! ッズガン!ッバシュゥ!!
デュラン「面白い、お前はなかなかの腕だ。もっと私を楽しませてくれ。(ギィィン!)」
デュランは地獄の雷を召喚し、ジゴスパークの特技を放った。
ッバリバリバリバリ!!―――――ッズガァァーーーーンン!!
テリー「くっ…!」
デュラン「頼むからこのくらいで倒れるな、お前も本気を出せ。」
テリー「そうか、じゃあこれならどうだ?(キィィン!)」
テリーは引くことなく、雷鳴の剣にバトルオーラを溜め込んだ。
ッギュゥゥーーー!
デュラン「(これは…!)」
テリー「吹き飛べ、メタル野郎。」
テリーはデュランに向けて闘気グランドクルスの奥義を放った。
ッゴォォォーーーー!―――――ッズガァァーーーーンン!!
デュラン「うぐっ…!」
テリー「ぶっ倒れるまで続けようぜ、お前と闘うことができてオレも楽しい。」
デュラン「フ、そうこなくては…。」
両者の力はほぼ互角。いかに融合を完成させたテリーでも、デュランを相手に苦戦を強いられていた。
だがその激闘の最中、何者かがテリーに呼びかけた。
ッキィーーーン…!
テリー「?!(な、何だ…!)」
………テリー!テリー!聞こえるかい!………
テリー「(そ、その声は…まさかイザか?!)」
………よかった!届いた!………
テリー「(イザ、今オレは忙しい。お前がなかなか帰ってこなかったから戦いを始めているぞ。)」
………テリー!聞いてくれ!今すぐ闘いを中止してそこを離れるんだ!………
テリー「(?何を言うかと思ったら…。)」
デュラン「おいどうした、もう闘う気がないのか。」
テリー「フン、誰が。」
………テリー!今すぐ街を出るんだ!キメラの翼くらいは持ってるだろ!早く逃げるんだ!………
テリー「(イザ、今お前と話しているヒマはない。こいつを倒したら脱出する。)」
………聞けよ!!核ミサイルが四つの地点に向けて発射されようとしてるんだ!………
テリー「(な、何だと…?!)」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE81
イタリア ローマ
ミレーユ対ジャミラスの闘い。ジャミラスの周りには、すでに無数の召喚獣が取り囲んでいた。
ミレーユ「……(キィィン!)」
ジャミラス「く、くそ!まだ召喚する気か…!」
ミレーユ「えぇ、もう私でさえ数えられなくなってきたわ。」
ミレーユは召喚術の奥義を使い、なんと287匹目の幻魔獣を召喚した。
ッキィィーーーーン! ッガォン!
幻魔獣156「アキャァァァーーーー!!」
幻魔獣050「クォォーーー!」
幻魔獣187「ギァァァーーー!」
幻魔獣120「シュォォーー!」
幻魔獣005「ギギギギ…!」
幻魔獣097「フォォーー!」
幻魔獣251「シュゥゥ…!」
幻魔獣150「ォォォォ!!」
幻魔獣270「ッシャァァーーーー!」
幻魔獣046「ウォォォオオーーーー!」
幻魔獣287「ギェェェェェェ!!」
ジャミラス「ち、ちくしょう!いったい何百匹召喚すれば気が済む!」
ミレーユ「そうね、もうこのへんでいいかしら。(キィィン!)」
ジャミラス「なに!」
ミレーユ「幻魔獣たちよ、一斉攻撃をかけなさい。」
術師のミレーユが命令すると、幻魔獣たちは一斉にジャミラスに攻撃した。
ジャミラス「う、うおああああああああ!!」
幻魔獣156「アキャァァァーーーー!!」―――ッズガン!
幻魔獣050「クォォーーー!」 ―――ッヴァシュ!
幻魔獣187「ギァァァーーー!」 ―――ッガォン!
幻魔獣120「シュォォーー!」 ―――ッズバァァ!
幻魔獣005「ギギギギ…!」―――ッビシィ!
幻魔獣097「フォォーー!」 ――――ッガツ!
幻魔獣251「シュゥゥ…!」 ――――ッギシュゥ!
幻魔獣150「ォォォォ!!」 ――――ッザン!
幻魔獣270「ッシャァァーーーー!」 ―――ッドォン!
幻魔獣046「ウォォォオオーーーー!」―――ッカァァ!
幻魔獣287「ギェェェェェェ!!」 ――――ッバガァン!
ジャミラス「う、うぐぉぉ…!こ、この女ァァァァ!!もう許さんぞ!!」
ミレーユ「許さないのはこちらです。(キィィン!)」
ミレーユはさらに両手からイオナズンの魔法力を溜め込んだ。
キィィーーーン!
ジャミラス「イ、イオナズンを二発も放つ気か!こしゃくなマネを…!」
ミレーユ「いいえ、二発じゃないわ。10発よ。」
ジャミラス「じゅ、10発だと…?!そ、そんなバカなマネができるわけが…!」
ミレーユ「両手で二発だと思ったのかしら?今や私は指一本でイオナズンが使えるわ。十本の指で
計10発のイオナズンを同時発動することが可能です。(キキキキーーン!!)」
ジャミラス「こ、こんなバ…カ…な…!」
ミレーユの魔法力で大地が震え始めた。
ゴゴゴゴゴゴ…!!
ミレーユ「あなたの風はもう役に立ちそうにないわね、この音速を超える爆風の前では…。」
ジャミラス「うぐっ…デ、デスタ…ムーア…さま…!」
ミレーユ「これで終わりです。(キィィン!)」
だがそのとき、ミレーユの頭の中に誰かが呼びかけた。
ッキィィーーーン…!
ミレーユ「?!(だ、誰…?)」
………ミレーユ!すぐにそこを離れるんだ!街を脱出しろ!………
ミレーユ「(イザ?!あなた今どこなの?!)」
………ゼニス城から呼びかけてるんだ!とにかく早く移動魔法で街を出てくれ!………
ミレーユ「ど、どうして急に…!?」
………核ミサイルが発射されようとしているんだ!大陸ごと破壊される!………
ミレーユ「(何ですって…?!ま、待って!じゃあ街の人たちはどうなるの!)」
………も、もう避難させている時間はない!残念だけど…!………
ミレーユ「(そ、そんな…!)」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE82
日本首都東京 渋谷 ハチ公口前
ハッサン「どうした、もう終わりか。」
ムドー「お、おのれェェェェェ!このムドー様を怒らせたな!もう勘弁ならぬ!」
ハッサン「そのセリフはもう聞き飽きた、たまには他のことを言ったらどうだ。」
ハッサンはムドーを一蹴し、もはや力の差は歴然だった。
ムドー「こ、この虫ケラめ!地獄の業火に焼き尽くされよ!(ギィィン!)」
ムドーは高熱のメテオを召喚し、ハッサンに向けて発射した。
ッガォォーーーーンン!!
ハッサン「ふんっ!」
だがハッサンはそれを蹴飛ばして跳ね返した。
ッドガァン!!
ムドー「え…。」
跳ね返ってきたメテオはムドーに直撃した。
ッズガァァーーーーンン!
ムドー「うぉぉああああ…!!」
ハッサン「自分で召喚した技で自分に当たるとはな。」
ムドー「お、おのれ…!な、なぜこうも力の差が…!ワシは今や魔王クラスだぞ!」
ハッサン「お前が魔王ならオレは何だ?大魔王か?」
ムドー「ふ、ふふふ…!いい気になるなよ!いかに強くなったところでデスタムーアさまには及ぶまい!
こ、このワシを倒したところでどのみち幻の大地は滅びるのだ…!」
ハッサン「いいからさっさとかかって来いっつーの。」
だがハッサンの頭の中に何者かが呼びかける。
キィィーーーン…!
ハッサン「(うお!な、何だ…?!)」
………ハッサン!聞こえるかい!イザだよ!………
ハッサン「(お、お前…!今までどこに…!どこから呼びかけてるんだ!)」
………いいから聞いてくれ!今すぐその街を出るんだ!………
ハッサン「(は??)」
………クリスの父さんが核ミサイルを発射しようとしているんだよ!その街も危険だ!………
ハッサン「(な、何だと…?!)」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE83
アジア 中国
グラコス「げは!げははは…はは…は…。」
チャモロ「どうしました、もう水の攻撃はやめたのですか。」
グラコス「ブクルルルル!こ、こんなバカなことが…!」
大洪水になっていたはずの街は、チャモロの火柱によって海水は蒸発していた。
チャモロ「これで街の住人たちは安全ですね、では今度は私の番ですか。(キィィン!)」
グラコス「うがああああああああ!!わ、わしの水があああああ!」
チャモロはさらに火柱を立て、グラコスの周りを取り囲んだ。
ッドン! ッゴァ! ッヴォァ!ッヴォァ!ッヴォァ!ッヴォァ!
グラコス「ぐおおああああ!熱い…!み、水が…!水が蒸発してゆく…!」
チャモロ「これで終わりです。」
だがそのとき、チャモロの頭にイザが呼びかける。
キィィーーーン…!
チャモロ「?!(これは…!)」
………チャモロ!ボクだよ!イザだ!今すぐ闘いを中止して街を出ろ!………
チャモロ「(イザさん?!いったい何事ですか…!)」
………もう時間がない!そこは危険なんだ!すぐに脱出するんだ!早く!………
チャモロ「(し、しかし…!)」
それぞれが四匹の魔物と闘っている中 イザは必死に仲間たちに警告する。
だがしかし 彼の必死の呼びかけが届くには 少々遅かった…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE84
国防長官「閣下、もう時間がありません。そろそろ…。」
大統領「……」
ワシントンD.C. pm15:06
――――それは 暗黒の雷雲とともに 全世界を覆った――――
TV「番組の途中ですが速報ニュースをお伝えします。ここ数週間で起こっていた謎の停電事故・及び
カリフォルニア地震は、この異常気象が原因だと判明しました。すでに街を避難する市民も
続出しておりますが…。」
国防長官「大統領閣下、決断のときが迫っています。」
大統領「わかっている…。」
国防長官「このままでは我が合衆国だけでなく、世界が滅びます…。」
大統領「……」
――――空は暗黒の雲に包まれ、暗闇の世界と化していた――――
プップーーー! パーッ!パパー!
市民A「おい!早く行けよ!何やってんだ!」
市民B「バカヤロ!この先5マイルも渋滞してんだよ!進みたくても進めねえよ!」
市民D「な、なんて空だ…!稲妻が鳴り響いている…!」
子供「ママー!お空が真っ暗だよぅ!」
母親「危ないからおうちへ入ってなさい!」
――――稲妻の光は街を照らし、まるで神が下界の写真を撮るかのように光る――――
TV「ワシントンDC、ニューヨーク、LA、合衆国三大都市はすでにハイウェイだけでなく、全ての下りが
渋滞にみまわれています。また、マンハッタンでは6件目の旅客機の墜落事故が起こり…。」
消防士A「住民を避難させろ!そこらじゅうで二次火災が起こっている!」
消防士B「早く火を消せ!中に人がまだ残っているんだぞ!」
消防士C「生存者はいるか!いたら返事をしてくれ!」
TV「ロサンゼルスでは雷雲の直撃を受けた犠牲者が次々に続出しています。市民の皆さん、くれぐれも
外で携帯電話を使用しないようご注意下さい。電源は必ず切って街を避難してください。」
ゴゴゴゴゴゴ…!
市民C「うわ!ま、また地震だ…!だんだんひどくなるな…!」
市民D「軍は何をしてんだ!こんなときに頼りにならない連中だ!」
TV「この一週間で犯罪件数は昨年の3倍に上がりました。パニックに紛れて銀行強盗、窃盗などが
街の各地で相次ぎ、暴動事件は各地で起こっています。また、信者でない市民も教会へ逃げ込み
世界の終焉を唱える者も…。」
クリス「父さん!まだこんなとこにいたのか!」
大統領「クリス…!お前まだ避難してなかったのか!」
クリス「ホワイトハウスにいたって無駄だよ父さん!早く逃げなきゃ!」
国防長官「クリス坊ちゃん、閣下はこれから記者会見があるのです。」
クリス「こ、こんなときにそんな会見なんか…!」
TV「アメリカ・カリフォルニア州、ヨーロッパ州、マリアナ海峡、日本列島。この異常気象は
大きく分けてこの四つの地点を中心に襲っていることが判明しました。その中心部に存在する
各四つの謎の生命体は容赦なく街を攻撃、それに対する各国の軍の出動を要請しましたが…。」
クリス「父さん!世界に何を発表する気だよ!」
大統領「やむを得ん、一掃作戦の決断をしたと発表する…。」
クリス「ま、まさか…!」
大統領「仕方あるまい…相手は人間じゃない、こうでもしないと…。」
TV「世界を闇が覆う中、間もなく合衆国大統領の記者会見が始まろうとしています。
ワシントンDCよりホワイトハウスから実況生中継でお送りします。」
クリス「まさか核を使う気か!そんなことすればどうなるかぐらい分かってるだろ父さん!」
大統領「クリス、お前は避難しろ。ワシントンには影響はないがロスは間もなく砂漠と化す。」
国防長官「さぁ坊ちゃん、こちらへ…。」
クリス「ま、待ってよ!核ミサイルなんか使ったらヤツらも死ぬけど世界まで破滅だよ!」
――――合衆国大統領は、その未知なる生命体に対し 最後の手段を取るときがきた―――
大統領「全アメリカ国民の皆さん、合衆国レイドック大統領です。
まことに残念な報告をしなければなりません。四つの大陸を襲う中心部に存在する謎の生命体は、
現在もその活動を続けています。すでにこの生命体に攻撃をかけた空軍・海軍・陸軍ともに
第一軍は全滅いたしました…。」
国防長官「おい、南太平洋にいる第二軍の艦隊に伝えろ。」
部下「はっ、電文をどうぞ。」
国防長官「‘各四つの地点へ向けてトライデントミサイルを発射せよ’。これは大統領命令だ。」
部下「了解。」
クリス「そ、そんな…!」
大統領「私は不本意ながら、最後の決断を下さねばならないでしょう。だが相手はこの作戦にて
必ずや消滅します。」
クリス「ちょっと待てよ!核弾頭の威力の恐ろしさはあんたたちが一番よく知っているだろ!」
国防長官「トライデントミサイルを使います。かつて日本・広島に投下された7倍の威力があります。」
クリス「と、父さんはヤツらと一緒に何千万人の人々まで消す気か…!」
国防長官「やむを得ません、閣下も悩んだ末の決断なのです…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
南太平洋 海底
副艦「艦長、ワシントンDCより海軍指令本部から緊急連絡が。」
艦長「むぅ…やはり一掃作戦か。…で、発射の許可は下りたのか。」
副艦「はっ。アメリカ・カリフォルニア州、ヨーロッパ州、マリアナ海峡、日本列島。各四つの
地点へ向けてミサイル発射の許可が下りました。大統領閣下の決断です。」
艦長「そうか…非常に残念だ、あのバケモノたちを倒すにはこれしか手段がないとは…。」
――――その最終兵器は 科学力最大にして最強の武器――――
艦長「ただちに正式命令の確認、発射コード確認をせよ。」
水兵「暗証番号読み上げます。ロミオ、チャーリー、デルタ、オスカー、タンゴ、タンゴ、リーマ、アルファ。
認証番号、2、2、7、0、0、9、8、デルタ、リーマ、アルファ。命令確認、発射コード確認。」
副艦「正式命令を確認しました、ミサイル発射準備を行います。」
艦長「よし…。目標確認後、すぐに発射だ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
大統領「全アメリカ国民の皆さん、私は合衆国を代表して宣言します。
敵は‘四人’と呼ぶべきか‘四つ’と言うべきかは分かりませんが、たとえ相手が何者だろうと
我が合衆国…いや、この地球上すべての人民の命は、むやみに奪ってはなりません。
しかし私は不本意ながら、多少の犠牲を払ってでも世界を救うことを選びました。
この作戦終了後、私は大統領の権限を破棄します…。」
クリス「や、やめろ!そんなことさせるか…!」
国防長官「クリス様、もう手遅れです。警戒態勢はレベル1に達しました、誰にも止められません。」
クリス「直撃を受けなくても放射能汚染で世界は終わりだよ!バケモノと一緒に自滅だ!」
国防長官「ご安心を。私の計算によると世界人口の四分の一ほどの市民が犠牲になるだけです。
すでに街を避難した市民がほとんどですので、最小限の犠牲で済みます。」
クリス「く、狂っている…!」
国防長官「それともクリス様、他に手があるとでもいうのですか。」
クリス「ぐっ…!か、彼らに頼めば…!」
国防長官「彼ら?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
副艦「艦長、ミサイル発射の準備が整いました。」
艦長「うむ、四基ともども同時発射だ。」
副艦「了解。」
水兵A「熱量よし、目標確認、異常なし。」
水兵B「ミサイル発射キーをセットします。」
艦長「諸君、合衆国大統領から一掃作戦の命令が下った。我が艦はこれより四つの地点に向けて
トライデントミサイルを四基発射する。多少の犠牲を払ってでも、これは世界を救うためである。
もうバケモノたちのいいようにはさせん、これで全てが終わる。」
水兵A「発射キー準備よし、三秒後にセット。合図と同時にキーを。」
水兵B「了解。」
水兵A「3、2、1、セット。(ガチャン!)」
水兵B「発射準備完了、秒読み開始。20秒前。19、18、17、16、15、14、13、12、11、10秒前…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
クリス「父さん!取り返しのつかないことになるぞ!」
国防長官「連絡が入りました、どうやら秒読みを開始したそうです。」
クリス「そ、そんな…!」
――――人類はこの世で最大・最終兵器を駆使して、その未知なる四つの生命体に攻撃する――――
水兵A「5秒前。4…3…2…1…発射。(カチッ!)」
…………ッドォォーーーーンンン!!…………
副艦「ミサイル発射しました!目標に向けて進行中!」
艦長「了解…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
大統領「我が人類の子孫にかけて…その未来のために…。」
――――その破壊兵器は真っ白な閃光とともに 地上に天使が舞い降りてきたかのようだった――――
クリス「うあああああああああああ……!!」
――――西暦2007年 10月11日 純白の閃光 四基の核弾頭が投下された――――
ドンッ…!
<エピソード5 世界終焉の日>
完
ここまでの旅を冒険の書に記録します。ウィーン ウィーン…
セーブが終わりました。
※(ここまでを読んだ方は、新たな異次元世界へ移動します。
「イリュージョン・ワールド編」というスレッドへ旅立ってください。)
※(ただしここでちょっとしたクイズを始めようと思います。
次のエピソードは新たなスレッドですが、今度は旅の扉を貼らずに、あなた自身でそのスレッドを
探してください。どのスレッドがイリュージョン・ワールドかを探し当てましょう。
探し当てないと次の話から読めないことになります。)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
owatta-
こっちもあとでまた使うな・・
幻の勇者 PAGE108
<エピソード10 世界の明日 >
ニューヨーク 東三番街 西暦2007年 11月 一ヵ月後
ジェイク「おいお前ら、ほんとに大丈夫なんだろうな。」
ビッグ「任しといてくだせえ、オレたちゃローマではちょっと名の売れた犯罪者なんですぜ。ダンナ。」
スモッグ「窃盗・強盗・ポン引き・カツアゲ・幼女誘拐、何でもやりますぜ。ジェイクのアニキ。」
ジェイク「ここはニューヨークだ、ローマとは違うぞ。狙いはフォートノックスの金塊だ。」
ビッグ「へい!」
スモッグ「がってんでさ!」
暗殺者ジェイク・ランディーノはその後、ローマから逃亡してきたマック兄弟と手を組み
相変わらず闇の世界で生きる犯罪者だった。
姉のミアとはときどき会うようにはなったが、ミアは警官ということもあって
自分から連絡するようなことはなかった。何せジェイクは12件の殺害容疑で指名手配中だったのだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幻の勇者 PAGE109
アジア 中国
チャン「{おじいさん、船の整備終わりました。}」
老師「{うむ、ご苦労。少し休んだらどうじゃ。}」
チャン「{はい。}」
老師「{しかしチャンよ、あの話は本当か…?}」
チャン「{あの話とは?}」
老師「{ほれ、ゆうべお前が話していた夢の話じゃ。}」
チャン「{あぁ、おじいさんが半魚人になっていたって話ですか。}」
老師「{うむ…不思議だがワシも同じ夢を…。}」
チャン「{やだなぁ、ただの夢ですよおじいさん。私たちこうして無事でいるじゃないですか。}」
老師「{ま、まぁそうじゃが…おかしいのぅ、核ミサイルで世界が滅んだのも夢じゃったのだろうか。}」
チャン「{おじいさん、ヤムチャでも飲みますか?今入れてきてあげますよ。}」
老師「{あぁ、すまん。}」
アジアのチャン・リーはその後、高校を卒業したのち大学へ進学。
彼はのちにアフリカへ移住して、難民を救うボランティア活動に生涯を捧げた。
その後何冊かの本も出版し、16ヶ国に訳された本が世界中に売り渡るようになった。
中でも有名になった本のタイトルの一つに、こういうフレーズがある。
「たった一つの生命を救うことが 世界を救うことに発展する。」
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幻の勇者 PAGE110
ロサンゼルス ハリウッド
そしてクリス・レイドックのその後は…
TV「ニュースをお伝えします、ここ何週間で犯罪件数が急激に下がり始めました。
また、何ヶ月間も雨が降らずに日照り続きだった地方に雨が降り始め…」
TV「地球の温暖化はやや下がったようです。しかしこれは止まったわけではなく、現在でも
汚染された大気は浄化しておらず、相変わらず科学工場建設に反対運動が続き…。」
TV「ダム建設の企画は白紙に戻されたようです、彼らの懸命な反対運動により、森を切ることが
いかに動物たちの住みかを奪うこととして…。」
TV「合衆国大統領の辞任が取り下げられました。彼の再選は確実となり、これからも
わが国の代表として世界貢献に尽くして…。」
クリス「おはよう。」
ハリー「オッス、クリス。」
ミア「おはよう、めずらしく遅刻しないで来たわね。」
クリス「そりゃそうだよ、だって最近ぜんぜん事件起こらないし。」
ハリー「だよなー、テレビ見ろよ。明るいニュースばっかだぞ。」
ミア「けっこうなことじゃない。事件はないにこしたことはないわ。」
ハリー「まぁそうだけどよ、たまには大事件でも起きねえかな。」
クリス「ははは、もう世界の大事件はこりごりだよ。せめて街の事件にしてくれ。」
ハリー「せっかくオレの銃、新調したってのによ。活躍の場がないな。」
ハリー・サンバード巡査とミア・ランディーノ巡査は、その後もロス市警として
街を守っていたが、やがてそれぞれは別の道へ歩むことになった。
ハリーはその後32歳でようやく巡査長に。ミアはF.B.I.に引き抜かれ、麻薬捜査官として活躍する。
ワシントンDCよりホワイトハウスは、大統領の辞任を取り下げ。
ジョン・F・レイドック大統領は現在も健在である。
そしてクリス・レイドック巡査は、新たな夢として政治家を目指すようになる。
いつしか父レイドック大統領を継ぐ、未来の大統領にもなれるだろう。
しかしこれはまだ先のことであり、彼ら三人は今はまだ警官の職に赴く。
トム「おいお前たち、新人を紹介する。」
クリス「え?」
トム・ウィリアムス警部補が、一人の若い女性を連れてやってきた。
トム「今日からこの署で務めることになったルーシー・バレンタイン巡査だ。」
ルーシー「よろしくねー。」
クリス「!」
ハリー「げげ!お前…!」
ミア「ルーシー…?!」
ルーシー「え?なに?」
トム「なんだお前たち、彼女とは知り合いか。」
ルーシー「あたしこの人たち初めて会うんだけど…。」
クリス「え…?」
ハリー「まじかよ、すげえ似てるな。」
ミア「……」
ルーシー「ルーシーって呼んでね。」
クリス「キミは…。」
ルーシー「ん?」
クリス「(なるほど…バーバラの本体が生まれたってわけか。)」
ルーシー「なによあんた、あたしのカオじろじろ見て…。」
クリス「い、いや…。」
ルーシー「ははーん、さてはあたしに一目ぼれしちゃったとか。」
クリス「……」
ハリー「なんだこいつ、性格まであいつとそっくりだな。」
ミア「うふふ、これからよろしくね。ルーシー。」
だがそのとき、事件はさっそく訪れた。
トム「お前たち、挨拶はその辺でいいだろう。実は連絡が入ったのだ、ハリウッド四番街で
麻薬が発見された。すぐに現場へ向かうぞ。」
イザ「!」
ハリー「うひょー!久しぶりの事件だぜ!」
トム「のん気なこと言ってる場合じゃないぞ、ディル・フェニックスがらみの大事件だ。」
ミア「分かりました、では今度こそ彼を捕まえましょう。」
ハリー「よっしゃ!ようやくオレの銃が活躍するぜ。」
クリス「(ディルか…やっぱり魔物に取り憑かれていた人たちも無事だったんだな…。)」
ルーシー「ねーねー警部補、あたしも行っていい?」
トム「何?しかしきみは就任してまだ初日めだぞ…。」
ルーシー「大丈夫ですよ、あたしも銃くらい持ってるもん。(ジャキン!)」
ハリー「お、おいお前…むやみに銃を出すんじゃねえよ、危な…」
ッズダァーン!
ハリー「うお!」
イザ「うあああ!な、何だよ急に…!」
ルーシー「あはは、ごめんごめん。安全装置が解除されたままだった。暴発しちゃった。」
トム「やれやれ…こんなんで大丈夫なのだろうか。」
ハリー「冗談じゃねえぞ、こんなやつと一緒に仕事したらこっちが殺されちまう。」
ルーシー「大丈夫だって言ってんでしょ、信用しなさいよ。」
イザ「ははは、とんでもない娘が来ちゃったね。」
ミア「警部補、とにかく現場へ急がないと…。」
支援
トム「おっとそうだった、では行くぞ。相手は武装しているかもしれん。くれぐれも油断するな。」
ハリー「おう!」
ミア「了解、警部補。」
ルーシー「了解ー!」
クリス「……」
トム「…どうした、クリス。」
クリス「あ、いえ。何でもありません、…さぁ行きましょう。警部補。」
トム「うむ。」
クリスの表情はすっかり晴れ、それは街を守る一人の警官として生まれ変わっていた。
トム警部補率いるクリス、ハリー、ミア、そしてルーシーの四人は、事件現場へさっそうと向かい
今日も街を守る「幻の戦士たち」が出動した。
幻の勇者 PAGE111
世界を救うというのは 結局のところ 誰かが手を取り合って始めていくものだ。
それは一つ一つ、そして少しずつではあるかもしれないが、希望はそこから生まれるもの。
神に奇跡を頼る前に、みんなで手を取り合って、助け合うことが世界を守る第一歩。
自分たちの住む世界は、自分たちで守り抜くことに人々はようやく気づき始め、そして学んだ。
過ちを犯しても 人はそこから何かを学び取ることができる。
絶望の淵に立たされても、希望を捨てない限り、明日の未来は訪れる。
たまには歴史を振り返って、今一度自分たちのしたことを反省してみるのもいいかもしれない。
だがそれは教訓として、明日に生かせるものとして学習するだろう。
人には誰しも夢があり、願い事を持たない人間などいない。
中には欲望に負け、私利私欲に溺れる輩もいるかもしれない。
人間とは善と悪を兼ね備えた、あらゆる複雑な感情を持つ、孤独で非力な生き物である。
幻の大地は、確かに破壊の歴史を繰り返してきたかもしれないが、人はそれでも一つずつ学んでゆく。
「壊れたものは元には戻らないが、もう一度みんなで作り直そう。
自分が始めれば、きっとみんなも協力してくれるはずだ。」
「切ってしまった森は、もう一度みんなで苗から植えよう。
時間はかかるかもしれないが、きっと動物たちは帰ってくる。」
「汚れてしまった空気は、これ以上汚さないようにしよう。
車もいいが、たまには自転車にでも乗るか。」
「川にゴミを捨てる輩を注意する前に、ゴミ箱というものを置いてみよう。
きっとみんな、ここに捨ててくれるはずだ。」
「何かを争う前に、譲り合うことを始めてみよう。
きっといつか、戦争というものがなくなるさ。」
こうして人は、誰かが始めれば一人また一人と、手を取り合って 世界の未来を守る。
誰かが勇気を出して始めれば きっと周りにも伝わるはず。
人間とは 欲望と絶望の狭間で戦い続ける 希望を宿した生物である。
そして人間とは ある意味 すべての者が「勇者」である…。
______. _________
/`'‐- 、,_ !‐-、 ,.-‐!. !‐-, ,.-、 ,-‐! /\,.-‐、
ヽ ヽ ~"'‐- 、 ヽ ヽ / / | | ,、-‐'"~ / >
ヽ `"、 、,__ `.、゙、''‐‐-、.,ヽ__ ヽ / /. | | _ ,,,,,,,.....、,-‐'"~>/ ./'7"i/ /
`'''、 ヽ ヽ `、 ヽヽ ヽ>ヽ| ヽ,.i'"ニ,`ii'""゙ii'''ヽi'''i .レ"゙ヽl"ll~ |/,......// ./Lノ/,'/ / i-、/
ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ、 _.〈.| l、.v. |i-=i || .| ` .| l || .|| .|| ./ '''''7ヽ、""`\/ | ./ /
ヽ ゝ ヽ-゙ .ト、.ヾ、.| " ヽ.!.! | !! | !、 .| | !! || .|| / /二/'// ./ .7 >|<./
ゝ ヽ _イ ヽ..ヽ-!-"゙'=゙===゙'ニニ!ニ! ニ! 7 ''-'|─/- ..,,/i___,/ < /.| />
ヽ /二/ `'"" ̄ ̄ ヽ / ゙| ̄ | `''''''''''`‐- ,,, |/ |/
` ヽ / | | `.x /.|
ヽ./ i-‐' `‐-i
∨  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
――――幻の勇者――――
完
<幻の勇者 登場人物>
クリス・レイドック
ハリー・サンバード
ミア・ランディーノ
チャン・リー
ジェイク・ランディーノ
デュラン・フェニックス
ジャミラス・ブルーバード
ムドー・庄司
グラコス・リー
ジョン・F・レイドック大統領
シェーラ・レイドック夫人
セーラ・レイドック
ゲバン国防長官
トム・ウィリアムス警部補
ジュリア・デインズ
ビッグ・マック
スモッグ・マック
イザ
ハッサン
ミレーユ
チャモロ
テリー
バーバラ
ターニア
ランド
ジュディ
ゼニス王
精霊ルビス
大魔王デスタムーア
魔神ダークドレアム
<あとがき>
こんな長ったらしい物語を書いた自分も自分ですが、最後まで読んでくれた方々、
本当にありがとうございました。
これにて鬼畜兄貴DQ小説・三部作は完結です。お疲れさまでした。
「戦場の花嫁」から始まって「導かれし志士たち」、そして今回の「幻の勇者」。
三作に共通するテーマと舞台は‘戦争’というものでした。
暗かった一作目から徐々に明るくなり、最後ではハッピーエンドを迎えられたことに関しては
良かったと思ってます。何しろ今回だけはどんなことがあっても、最終的には
人間の死亡者ゼロ、犠牲者ゼロを目指していました。
やはり犠牲者がないにこしたことはないので。
偽善者をきどるような物語はもともと嫌いなんですが、世界平和というものを自分なりの解釈で
書いたらどうなんだろうと思い、今回の「幻の勇者」を作ってみました。
それから‘もしも魔法の世界と科学の世界が混合したら…’というガキっぽいベタな発想です。
お疲れさま!! そして支援
だいぶ前にしたらばの某板で「世界交換」という、DQ2を舞台にした似たような物語を連載したんですが、
これがまた最高につまらねえ作品になってしまい、未完のまま中断させました。
だから今回だけは何としてでも完成させたかったのであります。
今作のテーマは「夢と現実」のつもりでしたが、改めて読み直してみると他にも
さまざまな要素を詰め込みすぎた気がします。これはもう読む人の感じるままに任せたいと思ってます。
世界観として映画「インデペンデンスデイ」のような世界破滅のようなSFを描きたかったのですが、
やっぱり文字だけだと伝えきれない表現があるし、そもそも自分の表現が未熟な点が多いです。
(特に戦闘シーン)
この物語は「夢の住人VS魔物たちVS人類」というような三角関係の戦争を仕掛けてみましたが、
結果は核ミサイルを投下させた人類側の圧倒的な勝利、でした。
実際このような戦争が仮に起きたとして、自分としてはやはり凶暴な人類が勝つと思ってます。
最後は夢オチかよ、と呆れた人もいるかもしれませんが、今回に限ってはただの悪夢で
終わらせたつもりはないです。人は失敗から何かを学び取ることができると思うので…。
ちなみにこれだけ長ったらしい物語でしたが、カットしたエピソードはかなりあります。例えば…
・イザと仲間たちの出会い
(ゲームで知っている人もいると思うので大幅にカット)
・クリス・レイドックの私生活
(主人公なのに私生活を描いてるのがイザが多すぎた…。クリスの誕生日シーンもあったのに
本編の邪魔になるだけだったのでカット。)
・バーバラの過去
(なぜ彼女だけ本体がなかったのか、というエピソードを泣く泣くカットしました。
バーバラばかりに集中すると主人公が目立たなくなってしまうので。というわけで
かなりの量を書いたのにボツ。これが一番痛かった…。)
・謎の竜の正体
(これも本編とはさほど関係ないのでカット)
・ゼニス王と精霊ルビスの関係
(これもずっと暖めてきたアイディアがあったのにカット。でも最後で少し表現できたからいいや。)
・天界の使徒
(かなり前にドラクエ4外伝を作ったとき、天界の使徒六人VSエスタークというのを書いた覚えが
あります。全知全能の神の部下である使徒を紹介すると、またそれだけ長くなってしまうので
ラストで少し登場させるだけで、これも大幅にカットしました。)
・ムドーの日本シーン
(ムドーが渋谷で暴れていたシーンは、当初は渋谷ではなく新宿でした。
新宿アルタにやってきたムドーが「笑っていいとも」の本番中に殴り込み。というシーンを
書いたんですが、あまりにも寒いギャグシーンになりカット。)
・デュラン・フェニックス
(実はデュランは核ミサイルを受けたのにも関わらず半死半生で生き残り、人類に捕らえられ
エリア51で生体実験をされ、デュランはモルモットとしてどうたらこうたら…というエピもカット。
ちなみにこいつを書いてるときが一番楽しかった。自分としてはデュランというのは、他の三匹と
違って感情をむきだしにしないタイプであり、無表情で任務を完了させるターミネーター的な
キャラとして戦闘させました。…もっと活躍の場があったのに、それもカット。)
・大魔王デスタムーア
(じじい口調の大魔王はあまり好きじゃないし、第一ムドーやグラコスも年寄りのような口調なので
どうにかしゃべり方だけでも変えたかった。というわけでクリスと融合させちまった。
大魔王が四匹の魔物の封印を解く冒頭シーンをカット。)
・魔神ダークドレアム
(こいつははっきし言って強すぎるので、戦闘シーンは最初から書かないつもりでした。ただ彼が
人間として生きていく私生活を描きたかった。バーバラとの共同生活も面白そうだと
思ったんだがなぁ。エピローグで長くなりすぎるのも問題なので、人間としての
ドレアムのシーンを大幅にカット。代わりにナレーションだけで短縮させた。)
下らない厨房のようなノリでしたが、読んでいる側も想像すればするほど
いくらでも物語は作れるはず。もしもみんなだったら今回の物語でどういうシーンやアイディアを
出したんだろう…。かなり興味があります。良ければ教えてくださいな。
ともかく時間はかかったけど、無事に物語をアップさせることができて良かったです。
今まで読んでくれた人たちに多謝。そして協力してくれた人たちに感謝。
あとがきでも長くなっちまいました。せっかくなので良かったら何か感想や意見を募集します。
たまにはガキのつもり書いた怪獣ごっこ物語も、書いていて本人なりに楽しめたので…。
オワッタ…なにもかも…
まじつかれた。何がってうpが!!!!!!!!
このクソ板まじむかつく!!!!!!!!連続連続うっせーんだよ!!!
みなさんあいがとうございまひた
三部作執筆お疲れ様でした!かなり楽しませてもらい感謝です。
幻の勇者は三部作の最後を飾るにふさわしいスケールのでかい(そして長い)話だったと思います。
バーバラの過去とかの削ったエピソードも是非読みたかったw
あと個人的には融合体の二人が最終的にわかれるときの部分なんてのも読んでみたかった気がします。
また気が向いたら作品書いて欲しいな、などと勝手なことを思っている自分でありました。
最後にもう一度言わせてもらいます。お疲れ様でした!
>>412 こちらこそ、素晴らしい作品をどうもありがとうございました。
三部作全て読ませて頂きました。大変お疲れ様でした。
今回のは前二作を遥かに上回る量で、とても読みごたえがありました。
DQの仮想世界と現実世界の融合という、他に類を見ない独特な話で凄く面白かったです。
感動した!すげーよ!
416 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/06/07 11:07 ID:SoQhH9Mh
まったくだ
Kさんは神だ・・・。
感動しすぎて、言葉では言い表わせません。
幻の勇者、一気読みしましたよ。
とても途中で読むのをやめることなんてできなかった。
製本されてもおかしくない出来ですよ。
前二作品もぜひ読みたいです(どこにあるんだ・・?)
本当にお疲れさまでした。
心から感謝と敬意を込めて・・。
419 :
417:04/06/14 08:40 ID:i11fAruh
421 :
417:04/06/15 09:24 ID:VOBG3cGr
>>420 作者殿ですね?三部作全て拝見させていただきました。
泣けました。゚。(ノд`)。゚。
これからも良作をたくさん生み出してください、期待してます。
では、また新作を楽しませてもらうとします。
422 :
保守マン:04/07/15 13:24 ID:4C8wCYwU
良すれ保守
イーブル→フセ
ゲマ→オサ
おもしろかった…
425 :
K:04/07/23 02:37 ID:J80qdMYV
oo!
426 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/07/29 12:07 ID:GiPqqyfW
…
427 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/07/29 12:52 ID:gnxxRw1i
モンスターと戦ってお金がっぽがぽ
バーバラタソレイープ
トルネコにパフパフ
430 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/08/20 09:06 ID:rUvAW859
本日未明、ヒミコ様暗殺を企てたテロリストを警備にあたっていた陸上自衛隊第一空挺団
所属の空挺レンジャーが射殺しました。テロリストによる犯行声明等は出されておりません。
431 :
オブシダンソード:04/08/20 11:37 ID:dIfkmVsl
イリュージョンワールドどこにあるんすか〜?(TT)
おねがいしますだれかおしえてください(TT)
ほんとおねがいします!(TT)
大変だ!人がひき逃げされたぞ!
早く救急車をよべ!
ぴーぽーぴーぽーぴーぽー
しびれくらげ「安心してください。ゴッドハンドとよばれた私の触手で、お子さんはきっと生存させてみせます」
433 :
オブシダンソード:
おねがいします
だれかおしえて(TT)