DQのギャルゲーを本気でプレイしるスレッド10

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1名前が無い@ただの名無しのようだ
1 :天沼 ◆GM/KlEM2 :02/05/14 01:54 ID:???
本気ですか?

>プレイしる
 プレイしない

これが全ての始まりだった・・・


前スレ
DQのギャルゲーを本気でプレイしるスレッド9
http://game5.2ch.net/test/read.cgi/ff/1064347773/

ログ保管所(過去ログはこちらにあります)
http://members.at.infoseek.co.jp/dqgg/index.html
2名前が無い@ただの名無しのようだ:04/03/05 12:37 ID:hhU1pJJb
2ゲット ⊂(´∀`⊂⌒`つ≡≡ツルッ♪
3名前が無い@ただの名無しのようだ:04/03/05 12:37 ID:Ez5RVKp1
学校行けよオマエラwwww
4名前が無い@ただの名無しのようだ:04/03/05 12:38 ID:hhU1pJJb
今日試験だったからw
5伝通院モラコラシム ◆AmzUKMGOOc :04/03/05 12:39 ID:uNt4WzC1
俺は山形大学を中退したヒッキーですが、何k(ry

まあ、オナニーでもしながらのんびり議論しようよ。ね。
6名前が無い@ただの名無しのようだ:04/03/05 13:07 ID:4PHuhtSP
>場つなぎGM氏
これまでのあらすじとか書いておいてくれませんか?
7名前が無い@ただの名無しのようだ:04/03/05 17:06 ID:cXVW7dOt
| \
|Д`) ダレモイナイ・・オドルナラ イマノウチ
|⊂
|

     ♪  Å
   ♪   / \   ランタ タン
      ヽ(´Д`;)ノ   ランタ タン
         (  へ)    ランタ ランタ
          く       タン

   ♪    Å
     ♪ / \   ランタ ランタ
      ヽ(;´Д`)ノ  ランタ タン
         (へ  )    ランタ タンタ
             >    タン
8名前が無い@ただの名無しのようだ:04/03/05 18:58 ID:piXBA5ss
|д・`)
9 ◆WkDN/W0HOE :04/03/06 15:48 ID:NfdHg2s0
9げと。
もう10スレ目かぁ。よくここまで来たもんだなぁとしみじみ。
とりあえず10ゲト
今度の更新はこっちなんだろうか?
GMさん、むこうでも書きましたが今回の選択はこっちに書いた方いいんですか?
スレは移る方向でいいと思われる。
というわけで1。
13場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/07 16:35 ID:/RBi6MJX
-あらすじ-
平和なレイドック王国の山村ライフコッドの一少年ウィルは、誕生日の夜、妹のターニアとともに魔族ゲマによ
りさらわれてしまう。ゲマがターニアの身柄の引き替えとして要求したのは、世界の救世主である伝説の勇者
を見つけ出してセントベレス山へ連れて来ることだった。やむなく受け入れたウィルが次に目覚めたのは、ラ
インハット王国サラボナのとある屋敷。彼を助けたのは、大商人ルドマンの娘で白薔薇と謳われる女性フロー
ラと、彼女の愛犬リリアンだった。その夜、ウィルは屋敷の庭でマーディラスの魔女バーバラと出会い一晩を
同部屋で過ごす。翌日、ウィルは、街の案内をかって出たフローラがジプシーの占い師ミネアによる相性占い
の結果に動揺したり5万ゴールドもの大金を彼に無償で貸そうとしてくれるのを見て、彼女の並ならぬ想いを
確信。愛を告白した上で旅の本当の目的を明かす。再会のときには必ず返事をする、というのが彼女の答え
だった。フローラに見送られてルドマン邸を後にしたウィルは、ミネアを追って港へ。謎の男バルザックに捕ま
っていたミネアを、リリアンの助けを借りて救い出す。そこにミレーユという女性がウィルを訪ねてやってきた。
ウィルは、ミネアの姉マーニャをどうにかミネアと説得して、3人で孤島へと飛ぶ。ここで元ムーンブルクの宮
廷占い師グランマーズから、ムーンブルク王国が危機にあるという兆しと、天、地、人の3人の勇者の伝説を
聞く。また、勇者は体のどこかに特徴あるアザがあること、地の勇者ロトの血をひくのは5つの王家の王子王
女5人のうちの誰か一人だということも知らされる。さらにその晩、相部屋となったマーニャとミネアから、彼女
らがサントハイム宮廷錬金術師エドガンの娘で、父の仇であるバルザックを倒すために勇者を捜していると
打ち明けられる。翌朝、勇者を捜す旅の最初の目的地をサントハイムと決めたウィルは、姉妹に連れられて
モンバーバラへ。ひと月に一度の祭りに賑わう街でウィルは大臣ゲバンの息子ラゴスとトラブルを起こすもの
の、ミネアの機転で難を逃れる。また、3年前に街を出て行ったエドガンの弟子オーリンを街中で見かけるが、
オーリンは人混みに逃げてしまった。ミネアと別れ、祭り見物のため上った建物でウィルは、「ボクの名はクリ
フト」という少女に出会った―――
14場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/07 16:38 ID:/RBi6MJX
主人公(ウィル):レイドック王国ライフコッド村の村人。妹はターニア。両親を早くに亡くす。
 ラインハット王子のヘンリー、レイドック王子のホルスとは親友。

行程:レイドック王国ライフコッド→???→ラインハット王国サラボナ→グランマーズの館
    →サントハイム王国モンバーバラ

状況:4日目・夜1(モンバーバラ祭)
現在地:サントハイム王国モンバーバラ
所持金:48925G(フローラより5万ゴールド借用中)
装備:檜の棒(ステッキ)+旅人の服
職業:商人(レベル2)+盗賊(レベル1)
呪文:インパス
道具:薬草x3(体調回復)、キメラの翼(マーズの館への場所移動)、ターニアの風鈴(ターニアといつでも
 どこでも話ができる)、マーズの手紙(グランマーズからサントハイムの王へあてた手紙)、大きなふくろ
体調:良好
精神:好調
15場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/07 16:53 ID:/RBi6MJX
-メインヒロイン-
ターニア:好感度49。ウィルの妹。ゲマにさらわれて人質に。風鈴で会話できる。現在使用回数ゼロ。
ビアンカ:好感度65。ウィルの幼馴染みでお隣さん。最初の晩に1度抱きつかれたきり。
マリベル:好感度40。ウィルの幼馴染み。ライフコッド村長の娘。初期状態のまま。
フローラ:愛情123。父はサラボナの大商人ルドマン。告白済みで返事待ち。5万ゴールド借金。
バーバラ:好感度76。マーディラスの魔法研究所の魔女。1度出会ったきり。
マーニャ:好感度91。モンバーバラ劇場の踊り娘。エドガンの娘。ウィルのファーストキスのお相手。現在お仕事中。
ミネア :友愛97。マーニャの妹。モンバーバラの占い師。オーリンを探す。現在お仕事中。
ミレーユ:好感度49。夢占い師グランマーズの弟子。
アリーナ:好感度?。サントハイム王国の王女。
他、未知のヒロインx4

-サブキャラクター-
ゲマ:魔族。突如ターニアをさらい、ウィルに勇者を探し出してくるよう脅迫する。
ルドマン:大商人で大金持ち。フローラの父。ウィルのサラボナ滞在中は夫婦でラインハットの城へ出かけていて留守。
リリアン:フローラの愛犬。ペット犬らしくない行動力を見せる。
チェリ:ルドマン家のメイド。バーバラとウィルの出会いを唯一知る。
ユルル・キッカ・エッコ:サラボナの3人娘。チェリの知り合い。ウィルにミネアの行き先を教えてくれた。
エドガン:サントハイム王国宮廷錬金術師。マーニャ、ミネアの父。5年前、バルザックに殺害された。
バルザック:エドガンの弟子。師匠を殺し研究成果を奪う。サラボナの港でゲマの手下としてウィルの前に現れる。
グランマーズ:ミレーユの先生。元ムーンブルク王国の占い師で、孤島で隠居中。ウィルをムーンブルク王国に関わ
 りのある者と見立て、館へと呼び寄せる。
ラゴス:サントハイムの大臣の息子。ミネアを口説こうとしてウィルに殴られ、クロスボウを使う。モンバーバラの宿屋
 に宿泊中。
フレア:マーニャ、ミネアの知り合い。モンバーバラでのウィルの宿泊先。
オーリン:エドガンの愛弟子。3年間行方不明だった。
キレス:マーニャ・ミネアの下宿の女家主。果物屋。ジョセフとサンディについて知る。
16場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/07 18:12 ID:HawFMEiH
-ゲームシステム(場つなぎ ◆Gp/A555JhQの場合)-
ドラクエキャラクターによるオリジナルストーリーです。
SSの最後にある選択肢を選んでください。
一人一回という以外、参加者の人数に制限はありません。
選ばれた複数の選択肢が同じ数だった場合は、先に書き込まれたものが優先されます。
(複数選択可能のときなどは一時ルールを決めることもあります)
GMである私へのご意見ご希望も書き込んでいただければ参考にさせていただきます。
なお、「ドラクエのギャルゲーを本気で作る会」様制作のゲームとは、一切関係ありません。


-参加者規約-
とても言えないことにより、参加者は以下の3つを遵守できる方のみとさせていただきます。
・18歳以上で、自己の行動に責任がもてる
・常時sage進行
・他の参加者を罵倒しない
17場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/07 18:17 ID:HawFMEiH
-久々に来られた方、ならびに住人の方々へ-
かつてのGMの方々は、プレイヤーを一人選んで毎日1時間リアルタイムで話を進めるというものでしたが、
現GMである私の諸事情により申し訳ないながら複数参加者による多数決制としていただいております。
さらに、あり得ないほど長いストーリー、拙筆遅筆、誤字脱字連発、自力でスレ立てもできないなど、
就任以来、参加者のみなさまに迷惑をかけっぱなしという歴代最悪最弱のGMではありますが、
ご期待に背くことのないよう精進していきたいと思っております。
今後ともお付き合いのほど、よろしくお願いいたしまつ。
*私から連絡が2週間なかった場合、すみやかに新しいGMさんを募集してください。
 もちろん、そのような事が決してないよう努めるつもりです。
スレ立て乙、and場つなぎGMあらすじ乙。
そういや、ターニアの風鈴使ってないのね。
ムゴイアニダ・・・
保守
初めて見ました。こんなスレがあるんですね。
まず過去ログでもゆっくり拝見します。
また来るかもしれません。
その時はどうぞよろしゅう。
22場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/11 19:41 ID:QxCEfL2W
ま、あとでいいや。この人の内にオーリンさんが必ずいると決まったわけじゃないし。
俺は、舞台へ視線を戻した。マーニャさんは、十字橋の真ん中で両腕を斜めに上げ、空を見あげたままだ。
後ろから現れた二人の女の子がその腕に赤橙色のローブを通し、再び劇場に引っ込む。ローブはするりと
腕を滑り、マーニャさんの身体に落ちる。背後の松明の明かりに、蝉の羽のような薄い絹を通してマーニャさ
んの体のラインがくっきりと透けている。
マーニャさんが腕を頭の上に伸ばし、左の膝を曲げてさし上げた。脇の楽団から、音楽が静かに流れ始める。
横笛と弦楽の、波を立たせずにさらさら流れる小川のようなメロディ。太鼓と木琴の山彦のように長いテンポ。
横に並んだ銀の踊り娘たちが息のあったステップを踏み始める。歓声と口笛でまた観客は大騒ぎ。
マーニャさんも舞いはじめた。外側へ下がった眉と大きな瞳を半分閉じたまぶた、緩い唇。長い脚をしなやかに
伸ばし、一歩一歩、ゆったりとステップする。音もなく飛び、音もなく着地する。薄いローブがふわふわと宙を泳い
では、なにか別の生きもののようにマーニャさんの腕や細い胴に絡みつく。遅いけれどまったく無駄のない動き
が観ている者の目を反らせない。
眺めていた俺も、思わずほうっと息をついた。曲に反して鼓動が高鳴ってくる。感じる色気が、前座でやみくもに
踊っていた女の子とは全く違っていた。決して腰を振ったり脚を開いたりなどしない、さっきのよりはるかに上品
なダンス。なのに、マーニャさんの身体に巻きついてはマーニャさんの肌に本来のオレンジ色を影のように示す
ローブによって、目に見えない鮮やかな雲のようなものがマーニャさんをもてあそんでいるように見えるのだ。し
かもその雲はマーニャさんの周りだけでなく会場全体に広がっているかのようで、吸い込んだ観客のため息が
重ね合わさって、けものの遠吠えのように会場に響く。
すごいな……マーニャさんて、あんな素敵で優雅なダンスを踊るんだな。モンバーバラ劇場のトップスターだと自
負してただけのことはある。
23 :04/03/11 19:42 ID:QxCEfL2W
ただ、俺は、どことなく拍子抜けもしていた。怒ると手のつけられない気性を秘めるマーニャさん。派手な金色の
装身具を身につけているマーニャさん。それなのに、優美で、甘い、穏やかな動きのダンスを舞っている。変な
言い方だが、印象からして踊っているのはミネアさんじゃないかと思うくらいだ。マーニャさんなら、もっともっと激
しくて、攻撃的で、情熱あふれるダンスをするかと思ってたんだけれど。
しばらく観ているうち、マーニャさんの表情が、動きが変わってきた。微笑みが消え、眉が寄り、唇がどこか悲し
げに噛みしめられている。ステップが重くなり、手の平が物憂げにくねる。と、マーニャさんは必死な涙目で何か
に取りすがるように両手を伸ばし、取り逃がして、崩れるように倒れた。両脚を横にそろえて座り込み、うつむい
て胸にローブを抱きしめる。左右の娘たちがサーッと離れて池のたもとに寄り、舞台中央にはひとり、マーニャさ
んが残された。
「………」
観客は静まりかえった。茫然としつつ目を大きく開け、次に何が起きるのかと見守っている。
俺は、あごに手を添えて考えこみながら、両手をついて座ったままのマーニャさんを見つめた。このダンスって、
何かの物語を表しているのだろうか。
そのとき。
「ウィル〜!!」
静けさを破った声に、俺は飛び上がった。すぐ下のほうからだ。クリフトも驚いた顔で俺を振り向いている。
これって俺が呼ばれたんだよな?そう思って下をのぞき込んでみたが、知り合いらしい人間は見あたらない。
たしかに女の声だったが、ミネアさんやミレーユとは全く違う、どちらかと言えばクリフトと似た子供っぽい声だっ
た。まあ、“ウィル”は珍しいというほどの名前じゃない。ウィルって名前で俺みたいな顔の男がこの街にいること
を知ってるのは、隣のクリフトも含めて世界でたった5人だけのはず。同名異人とみるべきだろうか。
「ウィルっ!」
また、聞こえた。ん?この声は……変だな、またどっかで聞いた気がするぞ??―――

1.初めての街で知己と出会うなんてことが何度もあるはずがない。気のせいだろ。
2.もしやと思うが、誰か知り合いがこの街に来てたのかもしれない。よく探してみよう。
3.気になるけれど、マーニャさんから目を離したくない。手だけ下に振ってみるか。
24場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/11 19:47 ID:QxCEfL2W
新スレ初更新。4日も経ったのにゲーム内経過は全く進んでないな……。
リメイク版DQ5発売まで2週間。さらにDQ8のキャラクターまで発表されて板が盛り上がってまつね
漏れもDQ5買いたい・・・でもPS2が動かない。こないだ分解してみたけどボリュームいじる勇気がわかず

前スレ751 近藤さん、私怨で人を斬ってはなりませぬ
前スレ752 4だと楽しい展開にもなったんですけどね。あくまで漏れ的にですが
前スレ753 よっ大統領w。2だともちろんバトル突入ですた
前スレ754 この主人公、迷うたびに流れに流されるような・・・
前スレ755 実は3でも戦闘突入だったりw
前スレ756 その通りでつ、と書くのは微妙にネタバレかも
前スレ757 歴代GMさんの紹介なんかも欲しかったような・・・あ、漏れが書かなならんのか
前スレ758 あと2ヶ月で2年になるんですね。そのスレのGMできるなんてなんて光栄な
前スレ759 一石二鳥か虻蜂取らずか。なかなか前者はありません
前スレ760 冷静なギャルゲーの主人公っていうのも考えものですけどね
前スレ761,762,763 スレ立て試行乙です。漏れも無理ですた
前スレ764 最下層にあるのが理想なのですが、落ちやすいんでしょうか?
前スレ765 かなり遅くなりましたが乙彼でつ!感謝感激雨はいいけど霰はもう降らないで
前スレ767 他はともかくこのスレに関しては最下層にたまってもらったほうがw
 小説スレパート2で新しいゲームブックが始まったようですので一度行ってみてくださひ
25場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/11 19:51 ID:QxCEfL2W
前スレ777 2kb残したというのが微妙でしたね
前スレ778 そうです、後が怖いですよw
前スレ779 そうです、すごくやばかったですよ・・・いろんな意味で
前スレ780 ストーリー上はお祭りよりクリフト?のほうが重要だったりしますが、攻略とは別ですしね
前スレ781 ありでつ。いろいろ忙しくなられるでしょうが次スレもお見守りください
前スレ783 と思ったらageられますた。一番下を上げるスクリプトでもあるんでせうか
前スレ785 ここまで1ばかりだとは……オーリンて人気ないすねw
前スレ786 当初の案ではマリアもヒロインですた。DQ5をギャルゲーにしたいというのがもともと動機だったので
 没ったのはフローラとの魅力や話し方の差別化が難だったため。それでも登場させる予定ではありますが
前スレ787 ヒロイン12人てのはギャルゲーとしては多い気がしますしね・・・妹ゲーを除いて
前スレ788 冷めてるといいますか、787さんの述べたのは事実ですから
前スレ789 縮まるでしょうねw
前スレ790 スレのラストカキコ、おめでつ!
26場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/11 20:13 ID:QxCEfL2W
>>1 重ね重ね乙彼様でつ。感謝感激雛あられはもう1週間も前。なのに明日は寒くなるそうです
>>6 あらすじは目をつぶってでも書けなきゃならなかったんですが・・・漏れもすっかり詳細忘れてたり
>>7 今スレでも警告(?)よろしくです
>>9 10スレ、すごいですよね。漏れがROMしはじめたのは4〜5あたり。あの頃の活気をもう一度といきたいものでつ
>>10 あいにく向こうですた。資源は大切にということで・・・
>>11 今後は、容量が続く限り更新したスレにひとまずは決めましょうか
>>12 事実上の一番乗り、ありでつ!
>>19 どうもです。使うという選択肢を入れるスキがなかなかないのも問題かなあ
>>20 新スレ初保守、ありでつ。次こそは保守られないように・・・と毎回書いてる
>>21 今は拙いGMがやっとりまつが、ぜひまたいらしてください。お待ちしてまつ!
ちゃんと見ておかないと後でマーニャに怒られそうだし、かといって無視してもやばそうなので

バーバラかな
2で逝ってみる

マリベル?
気になるけどクリフトから目を離したくない。
けど2

マリベルの回想シーンはめちゃ萌えた。
でも俺はマーニャ萌え。
とりあえずマーニャでいってみるか
新スレ乙
2
下をのぞき込んでいないということは同じく屋根に登っているはず。
ということはビアンカの気がする。

でも選択は3w
踊りがここから本番っぽいので
俺はビアンカかと思った
エヘヘ、ここからだと踊り子さんの胸が覗けるんですよ。

全然関係ない上に覗けませんね。はい。
夢中で見てます。
→3
呼んでいるのがだれだろうが・・・
私はいっこうに構わん!!
39名前が無い@ただの名無しのようだ:04/03/13 12:55 ID:19dTdTnC

相手によっては、キレたしぐさもかわいいかも
好感度はさがるが・・・
あげちまったー!GMスマソ

吊ってきます
なんか急に人が増えたな。何ごとだ?
努力が実った、ということですよ。
場つなぎ氏に敬礼!

3.
同じく敬礼!

44K ◆6VG93XdSOM :04/03/14 02:44 ID:6Hg9fAzP
このスレまだ健在してたんか めちゃくちゃなつかしい
10スレもいってる
保守
46場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/16 16:33 ID:Nt7l8yKh
俺は、左の手のひらを声がしたとおぼしき方角に向けて横に振りつつ、ステージを見守った。
マーニャさんはうずくまったままだ。長いまつげを松明に切なげに揺らがせ、結わえた髪を下に
落としている。劇場入り口の扉が、両側に開いた。出てきたのは、肩の出る白いドレスをまとい、
マーニャさんより豪華な、王様のかぶるような冠をした女性。背丈だけならミネアさんと同じくら
いか。しかし恰幅は……肉だの野菜だのをいっぱいに詰め込んでぱんぱんにふくれた食料樽
が歩いてきたとでも言おうか。ここまで丸々と太るためにはむしろ努力が必要、と思えるほどの
巨体だった。
女は、のっしのっしとマーニャさんに歩み寄っていく。まさか踊るんじゃないだろうな。こんな人
が飛び跳ねでもしたら、橋なんてまっぷたつになって、マーニャさんまで池に落ちちまう。
「ウィル」
隣から声をかけられた。びくっとして右を向いたが、もちろん、クリフトだった。
「それ、なにやってんだ?」
俺の左手を見つめ、怪訝そうに聞いてくる。さっきから気になっていたらしい。
『………』
なんとなく気恥ずかしくなり、俺は、振っていた手を引っ込めた。クリフトはますます不思議そう
に瞳を細めると、手の振られていた先、下の群衆を、ひょいっとのぞき込んだ。
「なんだ。あの娘、そなたの連れだったのか」
娘?言われて俺はクリフトの視線を追った。ストローハットと野良着の中年女、頭に紙ナフキン
を置いた前掛け姿の焦げ茶髪のメイド、恋人らしき若い男の肩にこめかみを乗っけている黒髪
の若い女、すべて赤の他人だった。
47 :04/03/16 16:38 ID:Nt7l8yKh
『誰のことだ?』俺が聞き返したとき、クリフトはなぜか目を大きく開けていた。羊の群に、一匹
ファーラットが混ざっているのに気づいたような顔だ。
「……いや、なんでもなかった。気にするな」
はあ?今度は俺がいぶかしがる番だった。クリフトは決まり悪げに指であごをなぜながら口を
曲げ、さっさと顔をステージに向けてしまった。何なんだよ。
ひょっとしたら、俺のではなく彼女の知り合いがいたのかも。俺は舞台に目をやってマーニャさ
んに変わりがないのを確認してから、最後にと下を眺め回した。が、俺の知り合いならまだしも、
クリフトの知り合いがいたとしたら、俺にわかるわけがない。あきらめて顔を上げかけたとき、
人と人の間、メイドの女のかげに、赤い髪が揺れるのが見えた気がした。小柄な娘だったので、
今まで人波に遮られていたのだ。顔を見ようとしたものの、またすぐ隠れてしまって、二度と見
つけることはできなかった。
ピーマンみたいに赤い髪のポニーテール……小さい女の子……ごく最近、どこかで会ったって
気分なんだが……??
《????の評価が下がった》《クリフト?の評価がわずかに下がった》

おっと。そんなことよりマーニャさんは、と。
マーニャさんは、相変わらず舞台中央でしゃがみこんだきりだ。その肩に、さきほどの切り株み
たいな身体の女性が、手をかける。音楽が変わった。女性が観客を向き、演説でもするかのよ
うに一つ息を吸い、

太陽の子よ 大地の姫よ わがむすめよ
おまえと踊り たわむれ 契りを結びし男は
異形の界 修羅の地獄 魔の国の者

と、高い声を朗々と響かせて唄いだした。俺はあわてて耳をすまし、歌詞を聴き取る。

闇に乱されしその心 灰に汚されしその身 わが天空に 置くわけにはゆかぬ
おまえの女神の力と 悪と舞踏せし脚を ふたつの石に封じて 混沌の海に落とす
下界にゆき ふたつの石を探しあて わが天にささげよ
あわれなる娘よ そのとき おまえの罪を赦そうぞ
48 :04/03/16 16:45 ID:Nt7l8yKh
ところどころ聞き取れなかったが、だいたい、こんなような内容。もちろん、俺は初めて聞く歌
だった。きっと、何かの言い伝えを吟遊詩人が歌にして語り継いできたのだろう。すると、マー
ニャさんのこの舞台は、その伝承をダンスにしたものなのか。天女の舞だったとすれば優雅で
おとなしめだったのも頷ける。
ただ、歓楽街の祭りの出し物としてはどうだろうか。これが、俺の村ライフコッドの精霊祭とか、
シエーナのバザーでなら、ぴったりなのだが。
そうだ。今年の精霊祭の歌を唄ったのは、ターニアだった。あのときはホント驚いたよなあ――
まずその姿。精霊の使いに扮して村長の家から出てきたターニアに、俺を含めた村中が茫然
として息をのんだ。ふだんから可愛い子だとは思っていたのだが、日に焼けた顔に白い化粧を
施し、長い髪をたばね、淡い若葉色のドレスを着て歩んでくるところは、まさに俺たちが想像す
る麗しき山の精霊様そのもの。今思えば、マーニャさんやフローラさんと張り合ったって決選投
票に残りそうなほどの美貌だった。兄の俺でさえも見惚れちまったほどだ。ランドなんか、あご
がはずれちまったみたいに口をポカンと開けた上、がたがた震わしてたっけ。
もっと驚いたのは、毎年、精霊の使い役が唄うことになっている、古代語だかの歌だ。
一昨年はビアンカ、去年はマリベルが唄ったのだが、ビアンカですらときどきつっかえてはあわ
てて歌い直していたし、マリベルに至っては、半分ほどで声が止まってしまい(練習を怠った自
業自得)、べそをかきかけて歌詞を見せてもらっていた。精霊に捧げるための“歌”だと昔から
伝わってきてはいたものの、本当に歌なのかは、村の誰も、司祭様さえも知らなかった。ター
ニアが、唄うまでは。
実のところ俺はかなり不安だった。ターニアが練習してる様子を見てなかったからだ。前夜さす
がに不安になって聞いてみたが、心配ないよと笑った。じゃあ唄ってみせろと言っても、「おにい
ちゃんこそ明日は冠を買いに行くんでしょ。早く寝なきゃ!」と誤魔化されてしまった。もしかす
るとマリベル以上の失態をしてしまうかも、そうなったときの兄としての行動や慰めの言葉を考
えながら、祭壇に上がる精霊の使いを見送ったのだが……。
49 :04/03/16 16:50 ID:Nt7l8yKh
あかい小さな唇が動き、流れ出てきたことばに、教会に集まった村人は驚愕することになった。
まぜこぜに文字を並べただけだったあの歌詞が、誰も正確にわからず前任者から教わってき
ただけの旋律が、命を吹き込まれたかのように本来のものとなって美しくあふれてきたのだ。
意味のわからない歌詞、まるで聞いたことのない曲なのに、己が心の正しさ誠実さをほめられ、
邪欲を諭されて、勇気とか自信とか希望をかき立てられるかのよう。しかもターニアの歌唱たる
や、レイドックやラインハットで聞いたどんな歌手や合唱隊が童謡に聞こえるほど素晴らしかっ
た。俺が驚いたんだから、村の人はなおさらだったろう。歌声に混じって合奏のような調べが聞
こえてきたので、何の楽器もないのにと不思議がってみれば、なんと、外からのカッコウやフク
ロウなどの鳥、こおろぎ、きりぎりすなどの虫の鳴き声、さらには吹き抜ける風の音までがター
ニアの唄に調子を合わせていた。村を包む山の自然がターニアの楽団だった。ターニアと山と
の合唱は、俺たちの心の奥に無垢で清らかな水として流れ込み、よどみを溶かして洗い去って
くれた。緑に萌える春の草原で横になっているのだと錯覚してしまうほど身体も安らぎ、身も心
も爽やかな空気となって消えてしまいそうな、そうなることを望むような心持ちだった。
「……はいっ、終わりましたっ!」
歌い終わったターニアが、頬を染め、てへっと笑った。そのターニアを、村人たちがいっせいに
取り巻いて拍手をあびせかけた。俺も拍手しながら真っ先にターニアに駆け寄り、すごいじゃな
いか、と声をかけてやった。ターニアはますます真っ赤になり、照れ隠しに俺に飛びつき、顔を
俺の胸に隠した。歌姫が急にいつもの恥ずかしがり屋なターニアに戻ったので、一同がどっと
笑った。
すぐあとのフォークダンスのときも、ターニアはビアンカや村の子供たちからもう一度唄ってほし
いとせがまれ、マリベルの羨望と憎悪の視線を浴びながら一節だけを披露し、またも拍手を受
けては紅くなっていた。なぜかランドの奴は、祭りが終わるまでずっとしかめっ面だったが。
――んで、家に戻って、得意げに胸を張ったターニアを一発小突いてやって、いっしょに寝たん
だっけ。
50 :04/03/16 16:56 ID:Nt7l8yKh
『……はーあ』
思い返していた俺は、ため息をつき、首を横に振った。あれは、遠い村の、二ヶ月も前のことだ。
今頃、ターニアはひとりぼっちで俺の助けを待ち、村では、ビアンカたちが俺を心配しているは
ずなのだ。なのに……成り行きとはいえ、俺はここで、お祭りなんぞを楽しんでいる。早く王女様
と会って、勇者なのかどうかを確かめねばならないというのに。
俺は、四たび観客に目を移していた。もし、この中にお姫様がいるなら、すぐにでも。
……って、そういや顔も姿もぜんぜん知らないんだよな。俺はもうひとつ、息をついた。お祭り
に一国の姫君がいらっしゃるとあらば特別席が用意されてるはずだし。
下の観客たちは、歌に対して目を閉じたり、鼻息と指でリズムをとって歌声に聞き惚れている。
もっともそれは半分ほどの客で、退屈さをあくびではばかることなく示したり、座ってひそかに
菓子を食べ始めたりする者もいる。さらには、歌の最中なのに肩車から下ろしてほしいと騒ぎ
出す子供、休憩時間とみなして手鏡を取り出して髪を整える女たち。いくらきれいな歌声だと
いっても、マーニャさんの刺激的なダンスのあとだから、気を散らかさないでいられる客は少な
いようだ。気分が冷めてしまった俺も、[ふくろ]を背負い直した。
「ふあーあ」
隣のクリフトも深呼吸をし、背筋を伸ばしたり肩の関節を回したりしている。暇をもてあましてい
るらしい。歌を聴いてうっとりするような性格だとは思えないしな、この娘。
なんとなく彼女の仕草を見ていると、クリフトのほうも横目で俺を見てきた。“何か用か?”とで
も言い出しそうな瞳になっているものの、俺の目線をさほどうっとおしそうにしていない。むしろ、
彼女のほうから見返してくる。
さて―――

1.黙って歌を聞き続ける
2.クリフトに話しかける
 2−1.『きみ、サントハイムの王女様に会ったことないか?』
 2−2.『このお祭り、前にも来たことある?』
 2−3.『……腹、減ってない?』
3.クリフトから話をさせる
4.[ターニアの風鈴]を使う
4
流石にそろそろ使わんとな・・
52場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/16 17:47 ID:Nt7l8yKh
業務用ノーパソより更新。自宅PCが壊れますた・・・。
HDDクラッシュではないようだから付け直せばいいんですが、書きためたデータが_| ̄|○ ヨメナイ
ああこんなことならバックアップしとけばと後悔しても遅い。みなさんもお気をつけくだされい

>>27 判断は正しいと思いますがどのみち失うものも当然ありまして
>>28 うっ・・・だ、誰なんでしょうw
>>29 登場していて好感度が変わってないのはマリベルだけですね
>>30 それなのに2ですか
>>31 回想シーン?ありましたっけ。マーニャ重視だとけっこう楽かなあ・・・
>>32 マーニャ相手は気合い入れたほうがいいかも
>>34 見えなかった理由はこういうわけです
>>35 まだ本番でなくてすみません
>>36 ビアンカも一度しか登場してませんね
>>37 それはまた別の・・・げふげふ。ひとまず小休止
53場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/16 17:56 ID:Nt7l8yKh
>>38 その態度、すがすがしい!
>>39-40 上からではキレた様子も見えなかったりします。まだageげても平気・・・かな
>>41 みなさん休暇中なのでしょうか。とにかく、ありがたい限りでつ
>>42 ありがとうございます。でもまだ敬礼していただくには早すぎますです
>>43 何のヤマもなかったのに半年も来てくれた参加者さんたちに敬礼いたしたい所存です
>>44 未だにがんがっておりますです。またどうぞ〜
>>45 ありです。うう、昨日には書けたはずだったのに
>>51 一番乗りthx! 場合によってはこれが最後の・・・・・・。(更新じゃないですよ、念のため)

※お断りしておきますが、ゼシカ登場の予定は現在ございません
2−1

核心を突け
ターニアよりクリフトw
と言うことで2−1といきたいが一応喧嘩中なのを考慮して1

つーかバーバラを探せ
4かな
てかターニアと一緒に寝たって、(*´Д`)ハァハァ

最後と言われたら選ぶしかないわな。
4
お兄ちゃんを呼ぶ声が聞こえる…
2−1
ひどい兄貴w
4 最後なのかYO!!

流れでクリフト?に事情を話せば、いい感じに・・・なるかも
ここだっ!!ここで保守るんだ!!
63 ◆WkDN/W0HOE :04/03/21 20:36 ID:4zO066uX
2-1

遅くなりましたが、前スレ保管完了しましたー。
>>63
保管乙〜。
ここで保守らなきゃいつ保守る
 ≡c( ・∀・)/ホシュ
GMさんこない
(´・ω・`)
68場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/25 07:52 ID:/Y47BwHy
俺は樽女コンサートへ目を移し、クリフトの期待のこもったような眼差しを避けた。唄を聞き流しながら、背負っ
た[ふくろ]の底にそっと触れる。
この[ふくろ]には、遠いセントベレス山にいるターニアと話ができる道具が入っている。勇者探しの対価とし
てゲマから獲得したものの一つで、昨日バルザックから受け取ったものだ。今も泣いているだろう寂しがり
やのターニアのことを考えれば、もらってすぐにでも使うべきだったが、思いがけない事が立て続けに起きた
ため、いつの間にか忘れていたのだ。しかし今、ミネアさんたちと別れて独り身な上、時間も空いている。使っ
てみる、いい機会だろう。
俺は、クリフトをちらりと見た。ここでやってみせれば彼女は驚くだろうし、不思議な道具を持っているという
ことで多少は俺を見直すかもしれん。だが、この娘とは今日ここでたまたま会っただけだ。妹のために勇者
を捜すという崇高すぎる志を話そうものなら、きっと大笑いされてしまう。だいたい、これから決闘しようって
相手に、わざわざ弱みを見せてやることもない。
俺は、クリフトから離れて屋上の隅まで行き、クリフトに背を向けるようにしてしゃがみこんだ。
「どうした。お弁当でも食べるのか?」
こちらを向いてくるクリフトを、
『荷物を整理するだけだ』
と、睨むように見返す。
「なんだ」
クリフトは残念そうに肩をすくめ、俺に背を向けた。彼女が振り返らないのを確認してから、俺は、[ふくろ]の
口を開ける。えーっと、あの青い風鈴は、と。あれ?お、おい、おいおい嘘だろ。ないぞ!?
焦って[ふくろ]の中をぶちまけようとしたとき、檸檬色に熟した果物が奥に転がっているのに気づいた。こん
なもの、入れたっけか。
『……??』
首をひねりながら引っ張り出してみれば、それは形といいぶら下がった白い羽根といい、間違いなく[風鈴]
だった。鐘の色だけが違っているのだ。青い風鈴だったというのは俺の思い違い?いや、元は絶対に青かっ
た!ターニアの髪留めからこの風鈴は作られたのだから。そうすると、これはいったい……?
69 :04/03/25 07:53 ID:/Y47BwHy
ま、いいか。使ってみればわかる。
俺は、指先に風鈴をぶら下げた。さーて。どうやって使うんだっけ?ゲマの奴もバルザックも、これをどう使え
ば話ができるのかまでは、教えてくれなかった。最初のときに一度、これを使ってターニアと話をした。あの
ときゲマは、やはり指にこうやって下げていた。俺が見てると、この羽根が、勝手に回り始めて……。
俺は、風鈴そのものであればそうするように、妖精のもののような羽根を、指先で軽く揺らしてみた。
『あっ!?』
チリチリチリ……陶器がこすれるような音がかすかにし、あのときのように白い羽根がくるくると回りはじめた。
とたんに頭の中で壺型の空洞が開き、そこから甘い黄金色に輝きつつも熱々しく溶けた蜜蝋が溶け出すよ
うな感覚がした。熱っ!?なんだこれ。前はこんなことなかったぞ。
蜜蝋は冷めることなく脳の奥に広がっていく。苦痛に、俺は身を震わせ、目を閉じた。するとそのとき、耳に、
弱々しくやわらかい音が聞こえてきた。
「すぅ……すぅ……」
それは、寝息のような、のんびりした呼吸音だった。しかも温めたミルクのような匂いまでする。それは、俺
にとって最も聞きなれた音、嗅ぎなれた匂いだった。
『……ターニア』俺は目をあけると、うわずった声で風鈴に呼びかけた。『ターニア。俺だ。聞こえるか?』
ひっと息を呑む喉の音。そして。
「おにい、ちゃん……?」
懐かしい声――4日前まではいちばん身近にあった声――を、風鈴は発した。
『ターニア!おまえなんだな?』
「おっ、おにいちゃんっ!おにいちゃんなんだよねっ!?」
もちろん、俺もターニアも、第一声を聞いただけで相手が誰なのかわかっていた。
『ああ。俺だよ。元気だったか?』
「うんっ!わあ、おにいちゃんの声だぁ!おにいちゃん、無事なんだよね?怪我とか病気、してないよね?」
ターニアにしては早口の、はしゃいだ声だった。つかえがないので、今まで泣いていたわけではなさそうだ。
発音もはっきりしている。この様子なら酷い目には遭わされてないな。俺は、胸をなで下ろした。
『俺?もちろん、無事さ』ターニアに聞こえるよう、わざと笑い声をたてる。『ぴんぴんしてるよ』
「よかったぁ……」風鈴の向こうでほっとした息を吐くターニア。たぶん、俺のそれも、彼女に聞こえただろう。
70 :04/03/25 07:56 ID:/Y47BwHy
『ターニアこそ、無事か?飯、ちゃんと食べてさせてもらってるか?』
「うん。ちゃんともらってる。今日の夕食はね、お豆の野菜スープだったよ」
豆に野菜?……魔物が出す料理にしては、いやに栄養を考えた料理だな。
「おにいちゃんは、何食べたの?」
『俺は、夕飯まだだ』
「えーっ!?おにいちゃんのが駄目じゃないの。もしかして、朝ご飯も食べなかったんじゃない?」
ターニアが、いきなりいつもの口調のひとつ――俺をたたき起こしたり、畑仕事をさぼってランドと遊興の計
画なんかを立ち話していると飛んでくる声――に戻り、問いつめてきた。俺、この口調、苦手なんだよな。
『まさか。朝と昼は、しっかり食べたさ』
「ほんとかなあ……ちゃんと食べないとだめだよ、おにいちゃん。おにいちゃんて、忙しいときとか、すぐご飯
 とか抜いちゃうんだから」
『そんなことないよ。心配するな』とはいえ、昨日がまさにそうだったか。『ターニア、俺のことはいい。腹が減っ
 たってファーラットでも捕まえれば食えるんだから。それで、今どんなところにいるんだ?寒くて狭くて、暗い
 とこにいるんじゃないか?』
「ううん。ちゃんと窓もあるよ。お月様が見えてる。それに、お布団もベッドも貸してもらえたんだ。すごくね、
 ふかふかのベッドなの。このベッド、おにいちゃんにも寝かせてあげたいな」
『そ、そうか。それは良かったな』あっけにとられる俺。監禁されてるってのに何故おまえはこんなに明るい
んだ?『じゃ、着るものとかは?』
「うん。それもね、貸してもらってる。今着てるのがそうなの。ぶかぶかで手が隠れちゃうけど、ちゃんと織っ
 てあって、あったかいよ。それに今日はね、お洗濯の道具持ってきてもらって、自分で服洗って干したの。
 お日様の光ちゃんと入ってくるし、ぽかぽかしてたから、すぐ乾いちゃった。明日ね、お料理もわたしが作り
 たいって、お願いしてみようと思ってるの」
『……そ、そうか。そりゃあ良かった。安心したよ』
めそめそ泣いてるんじゃないかと心配してたのだが……恐るべき順応性。さすが、俺の妹。
71 :04/03/25 07:59 ID:/Y47BwHy
「うん。だけどね……おにいちゃん」急に、ターニアの声が小さくなった。「ほんとはね、わたし……昨日はずっ
 と泣いちゃってたの」
『ターニア……』やっぱり、か。いきなりひとりぼっちにされたんだから、当たり前だよな。
「昨日ね、ちょっとだけ、おにいちゃんの声がね、聞こえたときがあってね」言葉を逐一飲み込むようにしなが
ら、ターニアが話し出す。「だから、すぐおにいちゃんのこと呼んでみたの。だって昨日、あっ、一昨日かな?
 おにいちゃん、何にもないのにわたしに話しかけてくれたでしょ。だから、それかなって思って……。でも、
 いくらおにいちゃん呼んでも、何にも聞こえなくて……」
『………』昨日の昼、バルザックをぶん殴ったときだ。俺にも聞こえた。
「空耳だったのかなあって思ったんだけど、そのあとで、シンシアさんが、おにいちゃんはわたしとお話でき
 る道具を持ってるから、それを使ったんじゃないかって教えてくれて……。でもそれ、ウソじゃないかなって
 思っちゃって……シンシアさんと、喧嘩みたいなこと、しちゃったの。だって……」
ターニアの言葉が途切れた。ぐすっ、と涙をすする音。
『………』
そのシンシアさんて誰なんだと聞きたかったが、あとまわしにし、黙って続きを待つ。
「……だって、そんな便利なものがあるんだったら……おにいちゃん、わたしとすぐ、お話しようとしてくれる
 はず、だもん」
ぎくっ。ターニアの言葉に俺はたじろいだ。『そ、それは……』
昨日、バルザックから風鈴を受け取った直後はそれどころではなかった。ミネアさんが大変なことになってた
から。しかしそれから今まで、この風鈴を使うチャンスは皆無だったかというとどうだろう。一人きりなれるチャ
ンスはいくらでもあったし、第一、マーニャさんやミネアさん、マーズさんに隠すほどの物ではないのだから。
なぜ使わなかったのかと問われれば、いろいろあったから、としか答えようがない。
72 :04/03/25 08:01 ID:/Y47BwHy
「けど、シンシアさんは、おにいちゃんは勇者探しに忙しいんだろうって……ひろい世界から一人の人を見つ
 けるのは大変だからって。だからわたし、ちょっぴり怒っちゃったの。どんなに忙しくたって、おにいちゃんは、
 わたしのこと考えててくれるはずだって……だから、すぐに話しかけてきてくれるはずだって…ぐすっ……。
 そう、シンシアさんに、くってかかっちゃったの」
ああターニア。どうしてそう、兄に罪悪感をかきたてさせるようなことを可愛い声でおっしゃるんだ。
『あー、えーと、それはだなターニア。俺ももちろん、おまえとすぐ話はしたかったんだぞ。だけど、その、こう
 ……とにかく。決して、おまえのこと忘れてたわけじゃあ、ない。それは解れ』
「うん、わかってる……おにいちゃんが、わたしのこと忘れるはず、ないもんね」
『あ、当たり前だろ』俺は大げさに笑った。ターニアの涙声に、後ろめたい汗を、たらたら流しながら。『そ、そ
 うだターニア。えーっと、その……何か俺にしてほしいことって、あるか?』
「え?……してほしい、こと?」
『ああ。俺にできることなら何でも……』う。しまった。ターニアには、こうして話をする以上のことは、今の俺
にはできないんだ。せいぜい、できるだけ早く勇者を見つけだしてターニアを助け出してやることくらいしか。
「えっ、と……おにいちゃん、何でもいい?」
『ん、ああ。その、俺にできる範囲なら』
「えへっ、じゃあ、お願いしちゃうよ」さな、甘えたような声になるターニア。「あのね……家に帰れたら、また、
 おにいちゃんと、いっしょのお布団で寝ても、いい?」
とぎれとぎれに聞こえてきた言葉に、俺は笑いをこらえた。やっぱり、ターニアだな。
『なんだ。そんなことか』
「う、うん。だめ、かなあ。おにいちゃん」
『ったく、甘えんぼめ』からかってやる。『ほかにもいろいろあるだろ。シエーナで買い物したいとか』
「ううん。いっぱい頼んでも、おにいちゃん忘れちゃうもん。だから……」
73 :04/03/25 08:03 ID:/Y47BwHy
『あのな。忘れやしないって……わかった。じゃ、それ、約束な』
「うん!わあっ、ありがとうおにいちゃん」嬉々とした声ではしゃぐターニア。精霊祭のときと同じだった。何か
ほしいものないかと聞いたら「今晩、おにいちゃんのお布団で寝たい」と、頬を真っ赤にして、言ったのだ。
俺と一緒に寝るのがそんなにいいものなんだろうか。ガキの頃よく俺と並んで昼寝していたビアンカによれ
ば、“ウィルって寝相悪くて蹴飛ばしてくるからぜんぜん眠れなかった”そうなのだが。
「あっ、それとね、おにいちゃん」
『ん、ああ、何だ?やっぱり買い物行きたいか?』
「そうじゃないよ。ハナおばあちゃんに、機織り行けなくてごめんなさいって言っておいて。帰ったら、その分
 織るからって。それから、庭のお花に水あげておいてほしいな。雨降ったときはいいから。あと、できたら
 でいいから、鳥さんたちにご飯、あげてくれないかなあ」
ふむ。そういう頼み事してくるのはかまわないが、たぶんターニア、誤解してるな。
『ターニア。あいにくだが、ここ、ライフコッドじゃないんだ。レイドックでもない。帰ったときに伝えとくよ』
「え?」案の定、びっくりした声だ。「じ、じゃあ、おにいちゃん。今、どこにいるの?」
『サントハイム王国。レイドックのずっと西の国だ。そこの、モンバーバラっていう街』
「えええっ、さんとはいむ?おにいちゃん、なんでそんな遠くに行っちゃったの?」
ターニア、おまえのいる場所のがずっと遠くだと思うのだが……。
『今日、この街で一ヶ月に一度っていうお祭りをやっててさ。もしかしたらこのお祭りに勇者様が現れるかも
 しれないんだ。それで……』
話しながら、俺は広場のほうに顔を向けた。ん?何やってんだクリフトの奴。落ちそうなほど思いっきり身を
乗り出して、手を叩いてる。耳をすましてみたが、ターニアの息づかいがよく聞こえるようになっただけだ。ど
ういうわけか、唄さえも聞こえてこない。休憩時間か。それにしちゃいやに静かすぎるぞ??―――

1.クリフトに声をかける
2.もう少しターニアと話す
3.切り上げて祭り見物に戻る
74場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/25 08:42 ID:/Y47BwHy
すみませんすみません。とうとうDQ5発売日に更新となってしまいました。どうか見捨てないでくださひ・・・
かくいう漏れももちろん購入したいけど、寿命のせいかPS2がDVD読まない。んで分解したままほかしてあったりする
PCも未だに直ってない。どちらを優先すればいいのやら・・・あ、更新をまず最初に考えろですか

>>54 ここではまだバレ・・・いや、核心て何のことですかw
>>55 ターニアよりクリフトですか?変わってらっしゃいますね(おい)
>>56 バーバラとの再会はかなり後になりそう・・・かも
>>57 あの一文だけで萌えていただけるなら、漏れとしては非常に楽でつw
>>58 あいにくですが、風鈴使える最後の選択ってわけでもありませんです
>>59 呼ばれて振り返るたび違う妹が現れ・・・るなんていう話にはなりませんので
>>60 現実だと、妹にほとんどかまわない兄のほうが多いでしょうね
>>61 そうはGMが卸しません。でもこんなに更新遅くなるならストーリー進めたほうが良かったっすね・・・
>>62,65,66,67 ご迷惑をおかけしますた。今年度のうちに何とか巻き返さねば
>>63 ありがとうございます。うう、過去スレ読むたび修正すべき箇所が3つは見つかってしまう。鬱
当然と言うかなんと言うか2

>>74
それは先にPCを直せw
ばらしたままだとホコリ入るよー

うーむ、マーニャの踊りが再開したのか?
見とかないと、あとで何言われるやら・・・ 

「蜜蝋」読めん・・・_| ̄|○
全てクリフトのために。
2か3か迷ったが、祭りはブービートラップの危険性があるので
ここで中断したら兄失格だべ

許せ
多少後が怖いが……
2だ
そういえば俺18歳になったんだった。
それはどうでも良しとして保守
ドラクエXに夢中になっててすっかり忘れてた
保守だ ヽ(`Д´)ノ
84場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/30 05:35 ID:dvVtyOVC
「……おにいちゃん?何か、あった?」
おっと。今はターニアと話し中だったんだ。
『いや、何でもない。男だか女だかわからないのが身投げしようとしてるだけだ』
「えーっ、それ何でもなくないよっ!は、早く、止めてあげて!」
『冗談だ』妹の予想通りの反応に、俺は笑った。『ま、そのくらい、にぎやかな街ってことさ』
「あ……。んもう!おにいちゃん、ひどい、ひどいよっ!」
ターニアが怒った声を出す。きっと今、ふくれっ面だろう。
「おにいちゃんっ!そういう、ひとの命に関わるような冗談はぜったい言っちゃダメって、前、おばあちゃんに
 言われたでしょ!」
『んー、そうだったっけか?』
「そうだよ、忘れちゃったの?おにいちゃんて、叱られたことすぐ忘れちゃうんだから」
『いや、そんなことはない。ターニアに叱られたことはちゃんと覚えてるぞ。胸のことは言わないでとか、下着を
洗うのは今度から絶対に……』
「お、おに、おにいちゃんっ!!」
ターニアが甲高い声になる。心なしか、ブンブンと腕を振り回す音も聞こえてくる気もする。子供の頃からずっ
と同じ反応をしてくれるので、ターニアをからかうのは実に楽しい。
ま、刺激しすぎず、本気で怒り出す前にほどほどで切り上げるのが、妹で遊ぶときの兄として守るべき鉄則。
『ところでターニア』語調を下げ、真面目に聞く。『さっき言ってた、シンシアさんていうのは誰なんだ?』
「えっ……シンシアさん?」ターニアは、発音にはまだ尖った調子を残していたが、「うん、わたしにご飯とか、
 お布団とか持ってきてくれる人。すごーくきれいで、優しい人なの」と、しっかり答えてくれた。
『人?人間、なのか?魔族とか、魔物じゃなくて』
「ううん、人間……だと思う。普通の人じゃない雰囲気だけど」
どっちなんだ。まあ、ターニアが言うのなら人間なんだろ。女らしく勘だけはいいからな。
『そうか。それで……シンシアさんと、昨日、喧嘩したって言ってたよな』
「うん……」
『そのせいで、いじめられてないか?』
「え?まさかあ、そんなことないよ。オトナだもん、シンシアさんて」
『大人?』
「うん。おにいちゃんやビアンカさんより、ずうーっと」
誇るような物言いだった。今し方からかわれたこと、まだ怒ってるな。
85 :04/03/30 05:38 ID:dvVtyOVC
『俺より上?歳、いくつぐらいなんだ』
「シンシアさんの歳?えと……たぶん、ビアンカさんと、同じくらい」
『それだったら、なんでビアンカよりずっと大人なんだよ』
「だって、ひどいこと言っても、ぜんぜん怒らないでわたしの話聞いてくれてるから。おにいちゃんとかビアンカ
 さんみたいに、すぐ怒ってすねちゃったりなんてしない人だもん」
……ターニア。それはおまえも同じだろ。つい今、軽い冗談で怒り出してたくせに。
普段だってそうだ。口紅塗りを失敗した顔を大笑いされたくらいで夕食をセロリづくしにするし(自分だって嫌
いなくせに)、俺が買い出しでシエーナに行ってたまたまマリベルと会って荷物持ちさせられて帰って来ようも
のなら、デート行ったんだとか言って一日口きいてくれなくなる(隣でマリベルが必死になって否定するから話
がややこしくなる。ビアンカならうまい言い訳をしてくれるのだが)。
もっとも、ターニアの場合は、ちょっとしたことにすねたりムキになったりしても、まだまだ子供だからで済むは
ずの年頃なんだけど……変に、大人ぶるからなあ。女の子がそんなに急いで大きくなりたがったって仕方な
いだろうと、兄としては思う。
『あのな。ビアンカはともかくだ。俺が、いつすねたりなんかしたんだよ』
「この前、ランドから聞いた話をビアンカさんに話したら、おにいちゃん、すごーく怒って、げんこつで頭ぶった
でしょ。そのあとも、夕ご飯まで口きいてくれなくなっちゃったじゃない」
は?俺がターニアの頭をぶった?指でちょっと小突いたりはするけど、グーで叩いたりはここ数年はしてない
はず。いつのことだろう。過去の記憶を巡らしてみてから、思いあたり、苦笑した。
『ターニア。この前ってな、あれは何年だ、もう4年くらい前の話だろうが』
「でもでも、わたしは覚えてるよ。余計なこと言わなくていい!って、すっごい大声で怒られたんだもん」
ターニアがむきになって言ってくる。そんなに鮮烈な思い出になってるのか。それは、俺にとってもだけれど。
86 :04/03/30 05:40 ID:dvVtyOVC
やはり、4年ほど前だ。レイドックの城にどっかの国の王女様が来てると聞いて、ホルスの相手をランドに任
せて、俺はヘンリーと寝室をのぞき…探りに行った。でまあ、いろいろあって大騒ぎになっちまい、村に帰っ
た後でそのことをランドの奴がターニアにペラペラ話し、かくのごときとなったと。
不幸中の幸いは、ターニアが話したのが、ビアンカだけだったってことだ。あれがもし、蟻一匹の話を大きな
山の壮大な話にしてしまうマリベルだったらと思うと、ぞっとする。
しっかし、そんな前の話を参考にされてもな。ターニアにとってはあの頃の俺のまんまなのかよ、今の俺は。
……何の話をしてたんだ。そうだ、シンシアって人間の話だ。
『とにかく。ターニア、じゃ、シンシアさんに、仲良くしてもらってるんだな』
「えっ?う、うん。すごくね、優しい人だよ。お洗濯の板とかお水とか、お願いするとすぐ持ってきてくれるし、干
 すのも手伝ってくれたの。さっきの夕ご飯もね、一緒にご飯食べたいって言ったら、わたしの前でいっしょに
 食べてくれたんだよ」
『ふーん……』
あのゲマの部下にそんな優しい女性がいるとは信じられない。ターニアの世話をさせるためにどこかから連
れて来られたのか、あるいは、魔族側についた人間――邪教の信者――なのか。どこかの山の奥で邪神を
崇拝してる連中がいると聞いたことがある。その山がもしかしたら、セントヘレズ山なのかもしれない。
げ。そうだとしたら非常にまずい!ターニアって、何でも信じちまう娘だからな。
『ターニア。そのシンシアさんから、変な話を聞かされたことはないか?』
「変な話……どんな話なの?」
『どんなって……神様とか、お祈りとか、その……。そうだ、シンシアさんって、どんなもの着てるんだ?』
「え、普通だよ?白いブラウスと青いスカートはいてて……今日は、髪にヘアバンドつけてたかな」
実に平凡で健康的な服装だ。これが真っ黒なローブをすっぽりかぶってるとかだったら危なかったのだが。
『そのヘアバンドだが、変な色の宝石とか入ってないか?サークレットみたいに』
「ううん。ビアンカさんとかがしてる、木でできてる普通のだと思う。……おにいちゃん、どうしてシンシアさんの
 こと、そんなに聞くの?」
87 :04/03/30 05:49 ID:dvVtyOVC
『ん。そ、そりゃあ、ターニアがお世話になってるんだからさ。もし会うことがあれば、お礼言っとかないと』
俺は誤魔化して答えた。ターニアはずいぶんシンシアって女に肩入れしてるようだから、俺が疑ってるのを知
れば、また口喧嘩になっちまう。
「……それだけ、なの?」
『それだけだが……何か、あるのか?』
「う、ううん。何でもない」
どことなく疑ってるような口ぶりだった。俺が、そのシンシアさんに手を出すとでも思ってるのか?まったく。
少しは兄を信用してほしいもんだ。いくら美人で優しい人でも、そんな魔族に使われてるような女をなんて…。
そんなのは、実際会ってみてから決めることじゃないか。
《ターニアの評価が上がった》

『あとは……そうだ。バルザック、って男に会ったり、名前聞いたことはないか?』
シンシアって女がゲマの手下なら、仲間のバルザックとも関わりがあるかもしれない。そう思って聞いてみた。
「えっ、バル、ザック……知らない。どなたなの?」
『いや。知らないならいいんだ』
ターニアに説明するとなると長くなりそうだからな。あとは、あれからゲマが現れたかどうかを聞いて……?
とん、とんとん。
『!?』
不意に背後から肩を叩かれた俺は、ビクッとなって振り返った。
「………」
すぐ目の前の闇に、クリフトの顔があった。
『うわっ!?』
俺は反射的に飛び退く。敏感さは人並みの上くらいはあるつもりなんだが、彼女が近寄ってくる音や気配は
全く感じなかった。忍び寄って俺とターニアの会話を聴いてたのか?この女、どうもよくない趣味があるな。
『び、びっくりさすなよ。なんか用か?』
聞きながら、跳ね上がった鼓動を落ち着かせる。クリフトは言葉を発しなかった。代わりに聞こえてきたのは、
「お、おにいちゃん?どうかしたの?」という、同じくあわてた様子の、ターニアの声。
『シーッ!邪魔が入ったんだ。ターニア、またな』
あわててターニアを黙らせる。それほど小声ではなかったはずなのに、聞こえなかったのかわざと無視したの
か、クリフトには変化なし。
88 :04/03/30 05:52 ID:dvVtyOVC
変化なしといっても、さっきから彼女は、
「………!」
明らかに苛立っていて、俺をにらみつけ、きれいに並んだ白い歯をちらつかせながら、唇をさかんに開いたり
伸ばしたりしていた。呪文の詠唱をしてるにしては、表情が激しすぎる。何やってんだ?俺に伝えることでもあ
るんだろうか。あいにく俺は、読唇術なぞできないぞ。
『何だよ。言いたいことがあるなら、言葉に出して言え』
焦れったくなってクリフトに言ってやったが、クリフトはさらに眉をぴくつかせると、唇の動作をかなり大げさに
して繰り返す。噛みつくような形相だが、やはり、その口から声は出てこない。
『なんなん……!?』
と、顔の皮膚がざわつくような感触がした。これは……なんだ?人の息。空気の震え。
ひょっとして!?
風鈴に目を戻す。蜂鳥のように目まぐるしく動いている羽根を、指で挟んで止める。そのとたん、
『うっ!!』
夜空をぶち破るほどの騒々しいざわめき、快活な音楽、さらに、
「なにやってんだ!口がきけなくなったのか!?」
クリフトの怒声が、俺の耳をつんざいた。やはり!この風鈴を使ってるときは、外の音が完全に聞こえなくな
るのか。万が一街の外なんかで使ったら、魔物が近づく音が聞こえずやられちまうところだった。ゲマの奴、
渡す前に、そういう大事な説明をちゃんとしろよ!
と、待てよ。ということは、だ……もしや?
『クリフト!祭りは……マーニャさんの踊りはどうなった!?』
「なんだ、しゃべれるじゃないか。マーニャのダンスなんてとっくに終わったぞ。ボクが何度も呼んでやったの
 に無視しやがってさ。いったいおまえ、何やってたんだよ?」
『終わった!?』
俺は、一呼吸凍り付いてから、血の気の引く身体で広場側の手すりへ飛びついた。
舞台にはマーニャさんもあの太った女性もおらず、脇役だったはずの楽団たちが勢揃いして楽器を奏でてい
た。その前では何人かの踊り娘が曲に合わせたダンスをしているものの、むろんマーニャさんはいない。広
場には、長椅子の間に食卓が何百も持ち込まれていて、人々が思い思いに大騒ぎしながら飲み食いしてい
る。乾杯を叫んだり、焼いた肉を奪い合ったり、はぐれた仲間を呼び合ったり。どう見ても、すべての催しもの
が終わった後の、社交的かつ自由な宴の場だった。
こんな時間におつです支援
90 :04/03/30 05:58 ID:dvVtyOVC
『あ……』
顎と手をわななかせて茫然自失する俺。いつの間にか消えていた物音や歓声、それに先程のクリフトの態度。
もっと早く風鈴の効果に気づくべきだった。ああ、俺の友人にしてモンバーバラ劇場の花形マーニャさんの舞、
楽しみにしてたってのに。見られたのは最初のたったあれだけだとは……。
「いつ見てもすごいよな、マーニャは。あの水ん中からのジャンプ、どうやったんだろう」
クリフトが池を見ながらつぶやいている。水ん中からジャンプだって!?そんなことやったのかマーニャさん!
是が非でも見たかった……俺はいったい何をしにサントハイムまで来て、何を見るためにこんなとこに苦労し
て登ったんだ……。
「で、どうするんだ?」
クリフトが聞いてくる。俺の死んだ目とは対照的に、わくわくと瞳を輝やかせている。
『……何が?』
「何がって、決闘に決まってるじゃないか」
決闘……ああ、そんなのもあったな。けど、今の俺は、とてもそれどころじゃない……。
『その前に……マーニャさんのダンス、どんなのだった?説明してくれないか』
聞きたくなかったが、あえて聞いた。「マーニャのダンス?んなの、口で説明したってわからないと思うぞ」クリ
フトは呆れたように息を鳴らしてから、今は演奏台となっている橋を見た。
「あのあと、マーニャ、つけてたごーせーなもん全部ほっぽって、池の中に飛び込んで人魚のダンスをやった
んだ。水から手とか脚だけだして踊るやつをさ。それから、水面滑りをやったんだ。あれは、すごかったぞ。
ほんとうに水に浮いてるみたいだった」
『水面滑り?』
「知らないのか。でっかい板を池に浮かべて氷みたいにして、その上で踊るんだ。クルクルっと回転したり、ん、
 わざと転んでみせたりもしたっけな。すごかったぞ。で、最後に、橋の上でいつもの踊りやって終わり。いつも
 のって言ったって、そこはマーニャだからな。こうやってグルグル回るステップ踏みながら池の端から端まで
 糸つき人形みたいに動いたりして、ボクも見とれちゃったよ。そなた、そんなに見たかったなら、なんであんな
 とこで、後ろなんて向いてしゃがんでたんだ?あれを見逃すなんて、ずいぶんな間抜けだぞ」
91 :04/03/30 06:07 ID:dvVtyOVC
『………』
腹は立たなかった。身振りを交え、瞳をキラキラさせてクリフトが語った内容に、俺はさらにがっくりきていた
のだ。クリフトが列挙してくれたマーニャさんの動作は、俺にとってそのどれもが新鮮ですばらしいものになっ
たはずなのに……。
このこと、マーニャさんにはなんて言えばいいんだろう……。せっかく連れてきてもらったのに肝心のステージ
を見てなかったとなれば、当然怒られるだろうなあ。良くて火だるま、悪くて黒焦げにされた上で絶交か……。
「で、だからどうすんだ、決闘。えーっと、ウィル」
クリフトがせっついてくる。あまりの落胆のせいで、この娘に対する怒りはどこかに消えてしまっていた。彼女
のあの侮辱的な台詞を思い出せば、多少の怒りはまた沸いてくるだろう。しかし今、俺の頭は別のことでいっ
ぱいだった。こんな動揺して意気消沈した状態で決闘などやったら、ホルスにだって負けちまう。心を落ち着
かせ、気合いを入れ直す時間がほしい。
「んー、あんま気乗りしない顔だな。前までの威勢はどこ行った?」クリフトはくすくすと笑った。「ああ、そなた、
 腹減ってるんじゃないか?それならさ、下降りて、何か食わないか?」
彼女の提案に、俺は―――

1.まさに渡りに船とばかり『よし。その話のった!』と、無理に笑いを返した。
2.わずかな気力を奮い立たせながら『いや、今ここで決着をつけよう』と、クリフトを見据えた。
3.『……正直言って、そうしてもらえると助かる』と、肩をすくめ、ため息をついた。
4.『それもいいな』うなずいてみせつつ、ひそかにクリフトの隙をうかがった。


ウィル 現在地:サントハイム王国モンバーバラ 所持金:48925G 装備:檜の棒+旅人の服
     道具:薬草x3、キメラの翼(マーズの館行き)、ターニアの風鈴(本日使用済)、マーズの手紙
     体調:良好 精神:不調              <4日目・夜2(モンバーバラ祭)>
92場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/03/30 06:26 ID:dvVtyOVC
DQV買ったはいいけどPS2未だ直らず。立ったばかりのVスレが数時間で埋まっていくのを見るの辛いぽ
と書いてたらDQ5のCM。やはりPS2買い直すべきか・・・
会話スレを見ると、よくこんな激萌え台詞を思いつくなあと感嘆してしまう。考えた人の雲脂でも煎じて呑みたひ
けどフローラたん・・・あんなはっちゃけた性格なら、コレの冒頭で登場さすんじゃなかったなあ

>>75 おかげさまでPCは直りました。やはり使い慣れてる画面とキーボードというのはいいですな。
 それと、バラしたままなのはPS2のほうでつ。上下のレンズ拭いても読まない・・・
>>76 マーニャに関しては正解でしたね。「蜜蝋」常用漢字じゃないけど、読めない人は18歳未満とみなします(嘘)
>>77 本物のクリフトだったらどうするのかと(ry
>>78 伏線なしで地雷仕掛けたりなんてこと・・・けっこうやってるかも。今回もほとんどそうですね
>>79 どっちにしろ会話の打ち切り方で兄失格でつね。また次でフォローしてやってください
>>80 3だと踊りのクライマックスは見られますた。書くのが大変になりましたがw
>>81 ご要望の通り(?)怖い展開になりますた
>>82 アリアdそしておめ!よーし、これで気兼ねすることなく書ける(何を?)
>>83 ゲームにお忙しいところthx! ウラヤマスイ・・・_| ̄|○
>>89 こんな時間に支援ありでつ!

ていうか腹減ってないだろ
流れに変化を期待して3

しかし恐れていた結果になってしまった
夢の姉妹丼が……(;´Д`)

アリフトwと語り合いたい

勝負を控えているので、軽く済ます方針で

追記
「蜜蝋」18歳未満でも読めますが何か?
ていうかそのままだろ
そのまま=みつろう
みつろうだろ。
100σ・∀・)σゲッツ

保守
3つろう

追記
「蜜蝋」18歳以上でも読めませんでしたが何か?
前の方でいつの間にかターニアとの思い出にひたっていることに
最初気づかなくて???って感じだった。
場面が大幅に変わるときは1行空けたりしてくれるとありがたいんですが…

3 察しろクリフト
蜜蝋は蜂の巣から採れる成分で、
ミルキーローションとして使われる。

なんとなくイメージできたかな。
保守。あぶないので。
105場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/04/02 14:45 ID:v5zB4XY0
「……なんだよ。急にくたびれた声出して」
クリフトが、大きな瞳を不機嫌そうに細めて、俺をにらんだ。「そんなに、腹減ってるのか?」
『そういうわけじゃない』
俺が首を振ると、クリフトは眉間に眉を寄せ、いっそう苛立った顔になった。
「ったく。んーな意気でこのボクとやりあうつもりなのか。がっかりだな。やめたくなってきた」
『それは困る』
再度、俺は首を振った。決闘の中止の条件は、この娘が先の俺やホルスへの侮辱を謝罪することだ。俺側
の事情で打ち切りにすることなど、あってはならない。そう俺の男としての誇りが訴えてくる。
ただし、心と身体がついてくるかどうかについては、まったく自信がないのだけれど。
「だったらもっと気合い入れろ。さっきまであれだけ元気だったじゃないか。なんか、わけでもあるのか」
クリフトが俺をじっとのぞきこんでくる。俺はちょっと迷ったが、渋面を深めて、
『実は、マーニャさんと約束してたんだ。今晩のステージ、必ず見るって』
と、打ち明けた。するとクリフトは、目を大きく開け、笑いをこらえるように下唇を張り、
「あっちゃあ……そりゃご愁傷様だ。マーニャを怒らせたら大変だぞ。今のうちに覚悟を決めとくんだな」
言ってから、じっと俺を見つめてきた。
「っていうことはだ。そなた、マーニャの友達か?」
『ああ。旅の途中で偶然会って。お祭りがあるってことで、今日この街に連れてきてもらったんだ』
「ふうん。[ルーラ]で?」
『あ、ああ?ミネアさんと』少し驚く。マーニャさんが[ルーラ]の使い手だと知ってるのか。
「なんだ。そうだったのか。あれ気持ちいいよなっ。ふわって浮く瞬間とか、空中で風切ってる感じとかさ」
『ま、まあな』
頬をほころばす彼女に、あいまいにうなずく。[ルーラ]にまで、便乗したことあるんだな、この娘。
俺も“マーニャさんのルーラ”が気持ち良かったことには同意見だ。しかし、クリフトが言う気持ちよさを感じる
余裕はなかった。なにしろマーニャさんに抱きついた状態で飛んできたんだから。マーニャさんの身体のあの
すべすべの肌触りに、頭の奥をとろけさすような芳香……今思い出しても背筋がぞくぞくっと震えてしまう。
106 :04/04/02 14:46 ID:v5zB4XY0
そうだ、[ルーラ]!明日は、マーズさんの手紙を渡すのと王女様と会うためにサントハイムの城へ行かなけ
ればならない。なのにマーニャさんを怒らせてしまった。マーニャさんにお願いできないとなると、この街から
サントハイムの城まで、徒歩で向かうことになる。どのくらい離れているかわからないが、時間もかかるし、
魔物も出る。なんとかマーニャさんに許してもらわなければ……。
とはいっても、どうしよう。約束を破られるのがいちばん嫌いなマーニャさんだ。説得するにはよほどの理由
が必要になる。[風鈴]で妹と話してましたと正直に言ったところで、なんで踊りの最中にそんなことをしたのか
って話になってしまう。テキトーな嘘。そうだ、バルザックらしい男を見つけて追いかけてたってことに……。
だめだ。俺はため息をつく。マーニャさんの前でそんなきわどい嘘をつける自信がない。
「よし」
思い悩んでいる俺に、クリフトがニッと笑ってみせた。「そういうことなら、マーニャに謝りに行くとき一緒に行っ
 てやるよ。マーニャの友達なら、ボクの友達でもあるものな」
『へ?』思いがけない言葉に、俺は目を大きく開けてクリフトを見つめた。この娘もマーニャさんの友達だった
のか。マーニャさんとクリフトが並んで歩いてる姿を想像してみた。どちらも細身で手足の長く、かたや華やか
な絶世の美女、かたや飾り気なしの凛々しい美少女だから、絵にはなる。それに行動派どうしだから気も合
いそうだ。けど、マーニャさんが、一回りくらい年下の女の子に“友達”と呼ばれているのは、意外な気もする。
踊り娘仲間だというならわかる。だがクリフトの物言いや態度には、そんならしさがまったくない。
『きみ。本当にマーニャさんと友達なのか?』
「もちろん。だからって、口添えしたり話を合わせてやるってわけじゃないぞ。そういうのは苦手だから。けど、
 ボクがいればマーニャの態度も少しは違うと思う。たぶん、魔法使ったりはしないだろ」
『しかし……』
ありがたい申し出だった。いくらマーニャさんでも、別の友達の前となれば扱いも変わってくるだろう。
けれど、この娘は俺がこれから決闘する相手なのだ。その彼女に、もう一つ借りができてしまうことになる。
107 :04/04/02 14:49 ID:v5zB4XY0
「遠慮するなよ」黙っている俺に、クリフトが笑った。「今のそなたと手合わせしたとこで、ちっとも面白くないか
 らさ」
『………』そういうことか。俺は、空を見上げ、クリフトを見、また夜空を見た。一片の雲にも隠されることのな
い満天の星空に、丸い月が静かに蒼く照っていた。
『それなら、お願いする』
苦々しさを噛みしめ、彼女に言った。『埋め合わせは、必ずする』
「んな、気にするな。どうせマーニャには会いに行くつもりだったしさ」彼女は帽子を直した。「そなたは、借りが
 どうのってうるさすぎるぞ。ボクは別に、恩を売ろうってわけじゃないんだ」
『そんなのは俺の勝手だ』彼女から目をそらす。『こういうのは、女のきみにはわからないだろうけどさ』
「………」
クリフトがなぜか引きつった顔をし、唇を噛んだ。一瞬、彼女の瞳の奥に鈍い光がきらめいた気がした。
「じゃあ、勝手にしろ」言い捨てるような口調だった。「ただ、ボクはそういうの嫌いなんだ。こんどそういうこと
 があっても、口には出さないでくれ」
『ああ……?わかった』戸惑いながらうなずく。どうしたんだろう。俺の言い方に気に障るものがあったのか?
《クリフト?の評価がわずかに上がった》

「よ、よしっ。そうと決まれば、早いとこマーニャのところへ行こう」
クリフトが気を取り直し、叫んだ。何が気に障ったのか聞いておきたかったが、ま、それは彼女の勝手ってこ
とになるのかもしれない。
『じゃ、下に降りるか。きみは、どこからどうやって登ってきたんだ?』
初めて会った瞬間から聞きたかったことの一つを聞いてみる。すると、
「こっちだ」
彼女は、南東の角へ歩き出した。俺は[風鈴]を[ふくろ]に丁寧に入れてから、彼女について行った。彼女が
立ち止まったので、下をのぞき込んでみる。月明かりに見えるのは、互い違いの煉瓦、上で外側にせり出し
た壁。俺が登ってきたところとほとんど違いはない。ここを彼女は無事登ってきたが、俺は落ちかけて彼女
に助けられた。ううむ、やはり複雑だ。
『何か道具使ったのか?ロープとか、ピッケル』
「使うわけないだろ。このくらい、登れないでどうする」クリフトは息を鳴らした。うう、癇に障る女だ。
108 :04/04/02 14:53 ID:v5zB4XY0
『じゃあ、先に降りてみせてくれ』
「わかった。けど、その前に」クリフトが俺の左手を指さした。「それが何の道具なのか、教えてくれないか?」
ハッと左手を見る。しまった、まだ[風鈴]を下げたままだった。隠そうとしたが、見つかった以上は仕方がない。
あきらめて、顔の前にその青い[風鈴]を持ち上げた。
『……!?』
青い!?俺はあぜんとした。[風鈴]の鐘が、青色に戻っている。どういうことだ、これは。
「それ、さっきは黄色だったな」クリフトも好奇心に瞳をキラキラさせて見つめている。「何かの魔法がかかっ
てるってことか」
『ああ。これは……』言いかけて、迷った。本当のことを話そうかどうするか。話すにしても、どこまで明かす
べきか。額に手をやり、考える。とても悪女とは思えない娘だけど、いきなりすべてを話すわけにもゆかない
だろう。妹と会話をするための道具とだけ説明するのが一番いいか。いや。余計な情報を与えた場合、クリ
フトがマーニャさんの前で良心的かつ余計な口出しをしてこないとも限らない。言い訳してる最中に横から余
計なことを言われてせっかく組み立てた話をこじらされるのは、マリベルだけにしておきたい。何も教えない
のが、お互いのためにいいだろう。
『察しのとおり、魔力を帯びた道具だ。けど、使い道は、今はまだ話せない』
クリフトはむっとしたように唇を尖らせたが、すぐに戻し、
「そうか。大事なものみたいだな。しまってくれ。さっさと降りるぞ」
あっさり言って、下の路地をのぞき込んだ。相手が言いたくないことには深い詮索をしない……この娘、かな
り、いい女かもしれん。
「お先にっ」
クリフトが屋上の縁に内向きになってしゃがむと、煉瓦の端に手をかけ、片足ずつ下ろし、屋上にぶら下がっ
た。ここまでは俺と同じ、というか普通だ。問題はこの手をどうやって放すかだ。壁が出っ張っているせいで、
足場がどうしても不安定になるのだ。体重を支えられる足場を確保するまでは長いリーチが必要だが、俺の
腕では短すぎた。体の小さな彼女ならなおさらだろう。俺はいつでも助けを出せる構えで、彼女を見下ろした。
109 :04/04/02 14:55 ID:v5zB4XY0
『へ!?』
彼女は、右足を煉瓦の壁に引っかけていた。その壁にはご丁寧にも漆喰が上から塗りたくってあって、引っ
かかりなど何もないはずだった。左足をいっぱいに開き、やはり何もないはずの壁に伸ばしている。さらに、
右足のあったところへ左手の指をかけ、次は右足、そして左足と、身体を横向きにしたり、ときにはなんと壁
を背にしたりして煉瓦の張り出した部分を通り越し、またたく間に角の煉瓦に取り付いてしまった。
「な。簡単だったろ?」
クリフトがにやりと笑い、手早く降りていく。
俺はぽかんと口を開けていたが、クリフトが下に着くとすぐに、彼女が指をかけ足場に使ったでっぱりを調べ
てみた。どれもが、漆喰からわずかにはみ出た煉瓦の角で、人の犬歯の先くらいのほんの小さなかけらだっ
た。いくら丈夫な煉瓦とはいっても、こんな小さな面積に重さをかけらればすぐに欠けてしまうはず。並ならぬ
身軽さとバランス感覚を持った者でなければ登るにも降りるにも使えないし、使おうとも思わない。よほどの
自信があり、こういうことに慣れてるってことだ。しかしあの娘、船乗りにしては日焼けが甘いし、軽業師とは
雰囲気が違う……ほんと、何者なんだろう、あいつ。
「どうした。早く降りてこい」
無茶言うな。俺は頬をゆがませた。あんな芸当は俺にはできない。
ステッキは滑っちまうことが実証済みだから、使えない。何かないものかと見回してみる。作りかけの建物と
いうことで、隅に余り物の材木が転がっていた。その材木は麻紐でまとめられている。引っ張ってみて、かな
り丈夫な紐だとわかった。こいつを使わせてもらおう。
俺は、麻紐を一本解いて引き抜くと、輪をつくり、手すりに引っかけた。試しに体重をかけてみる。耐えられそ
うだ。よし!
輪に思い切って両手をかけ、足を下ろして吊り下がった。紐からいやな音がする。すぐ、突き出た煉瓦に足
を伸ばした。何とか左のつま先が乗り、右足を引き寄せる。身体をひねり、左手で煉瓦をつかむ。ふう。煉瓦
に取り付き、息をつく。肩の筋がわずかに痛む。俺、柔軟性をもうちょっと鍛えなきゃならんな。
110 :04/04/02 14:59 ID:v5zB4XY0
目の前の白い漆喰にはちょうど、クリフトが降りるとき使った、赤煉瓦のでっぱりの一つが浮き出ていた。指
で触れてみたが小指の先もかからない。よくこんなモンを手がかりにできたよなあ。
感心しながら下をのぞくと、そのクリフトが、ニヤニヤしながら俺を見上げていた。俺は舌打ちし、世話になっ
た紐を手すりから外して、屋上に投げた。命綱を使ってもいいだろ、俺は関節硬いし身体も重いんだから。
俺は呼吸を整え直すと、慎重に煉瓦をつたって壁を降り始めた。ときどき下を見ると、クリフトはなぜかそわ
そわして道や路地を見回していた。見張りをしてくれてるのだろうか。それにしちゃ、通り過ぎる人には見向
きもしてないようだが。
「うわっ!まずい。ウィル、いそいで降りろ!」
中ほどまで俺が降りたところで、急にクリフトがあわてはじめた。いったいなんなんだ。俺は首を伸ばし、彼女
の視線の先を確かめようとしたが、
「ばか!止まるな。急げって言っただろ!」
怒鳴られた。いまさら腹立てる気にはならないが、もう少し顔に見合った言葉遣いをできないもんかねえ。
「あーっ、ウィル!だめだ、そっから飛び降りろ!」
クリフトが叫んだ。と言われてもまだ三階だ。着地にしくじったら足を折りかねない高さ。どうする?―――

1.言われた通り、すぐに飛び降りる。
2.安全な高さまで下がってから、飛び降りる
3.彼女のあわてている原因を探る
111場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/04/02 15:39 ID:v5zB4XY0
今年度初更新。いつもながら3選択ほどすっ飛ばし。今月中にサントハイムは終わらせないとさすがにまずい

>>93 そのへんはギャルゲーの得意技、パラレルご都合主義ですw
>>94 ですからマーニャ狙いならば気合い入れてくださいと
>>95 まだまだ語り合うほどの好感度じゃない・・・はずなのに仲良くなってるような
>>96 軽く済ませなくてすみません。読める方には読めますね
>>97=99 はい、そのままです
>>98 そう書くとどなたかの名前みたいでつね
>>100,104 5スレの乱立に加えて昨日は鬱騒動。保守してもらってる方に感謝&謝罪
>>101 ここまで話題になる前に、おとなしく蜜蝋(ミツロウ)としたほうが良かったでしょうか
>>102 申し訳ありません。書き方をどうしようか迷ったあげくダッシュで誤魔化したのですが、
 ますますわかりづらくなってしまいました。一人称SSの回想はやはり誰かと会話しつつに限ると反省
>>103 補足ありです。へえ・・・そういうものだったんですか、勉強になりますた(おい)

ままよ
1、アリフトのたっめならえーんやこら♪

ふーじこちゃーん

主人公は絶対に死なないッ!
1 クリフトにサイコクラッシャー
118場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/04/03 23:44 ID:1FiQQVFp
何に焦ってるのか知らないが、俺に危険を承知で飛び降りろということは、それと同程度の危険が迫っていると
いうことだろう。
俺は、身体を反転させて路地を向いた。家の屋根に林檎や桜の木……この程度の高さからは何度も飛び降り
たことがある。いつも通りにすれば怪我をすることはない。息をつき、地面を見つめ、壁を蹴った。
『お、おい!』
そのとき、落下点にクリフトが走り寄ったのが見えた。『どけっ!!』叫んだが、彼女は俺を見上げたままだ。頼
むから何もするな。そのほうがお互い怪我をしない。俺にはその自信があるんだって!
待てよ。彼女の真剣な顔つきを見、俺はすばやく頭を切り替える。三階から落ちてくる人間をまともに受け止め
ようとするほど、あいつも莫迦じゃないはずだ。とすれば。彼女の踏み込みは?左足。ということは右に流す気
か。この際だ、クッションに利用させてもらう。彼女なら、平気だろう!
着地。両足に衝撃が走る瞬間、クリフトが俺の両肩をつかみ、右に投げようとした。ようし、いい娘だ!俺も同時
に彼女の肩と腰に手を回した。「なっ?」そのまま彼女を巻き込みながら横に倒れ込む。腰、背中、そして彼女
の背中を地面に打ち付け、二回、三回と、派手に転がった。
『ふう……』
止まったところで、顔を上げた。『つっ!』右の足首と膝が痛んだが、激痛というほどではない。たいしたことはな
さそうだ。
口の中の土ぼこりを、ぺっと地面に返す。「……ぶ」うめく声に下を見ると、互いの息がかかるほど間近に、俺を
にらみつけるクリフトの顔があった。そのガーネットの瞳と同じくらい頬と耳を紅潮させ、唇をわななかせている。
襟首の奥に月光がさしこんで、そこに細い鎖骨が小麦色の肌にくっきりと浮かんでいた。
「無礼者っ!な、何をするかっ!」
彼女が叫び、こぶしを振り上げる。俺は、すぐさま彼女に巻いた手を抜き取り、飛び退いた。
119 :04/04/03 23:48 ID:1FiQQVFp
『すまん。怪我はないか?』
俺が差し出してやった手を、クリフトは見向きもせず跳ね起きる。俺は苦笑し、やり場をなくした手をすぼめた。
その手に――身体全体に、彼女の肉体の感触が残っていた。見た目通り子供っぽく骨張った身体だったが、
肩の線や腰つきは丸くなりかけていて、猫の腹みたいに柔らかかった。ターニアも、こんな感じだったかな。
「ぼ、ぼ、ボクを誰だと思ってるんだ!」にやついていると、クリフトが紅い顔のまま怒鳴ってきた。右手でこぶし
を作り、左の腕で胸を隠すようにしている。「いっしょに転がってやるなんて言った覚えはないぞ!」
『ちょうど手近にきてくれたからな』俺は頭をかきながら、ぺこりと深く礼をした。『ありがとう。助かった』
「……ったく……ボクは、こんなつもりで……」
俺の態度に、クリフトはぶつぶつ言いながらも顔をしかめて怒りをおさめ、服についた泥を払った。
「あっ!」
思い出したように彼女はぎょっとなり、西を、通りの方角を向き、後ずさった。そういえば何かを気にしてたっけ。
つられて、俺もそちらを向いてみる。
すぐそば。5歩ほど前に、背の高い痩身の男が立っていた。晩夏の山のようなくすんだ濃緑色の僧衣をまとい、
頭には塔のように高い帽子をにょきっと生やしている。顔は帽子のつばに隠れてわからず、高く尖った鼻先と
三角のあごだけが月に光っていた。背中に長剣を背負っていて、一見、剣士のようだった。しかし、首にロザリ
オを下げているし、それにあの変わった長い帽子は、たぶんサントハイムの神官戦士だ。俺も見るのは初めて
だけど。
「な、な……」
その神官戦士は、泣いているかのようにあごを、握られた両のこぶしを、びくびくと小刻みに震わせていた。頭
や身体の向きからして俺たちを見ているはずだ。いったい、何の用だろう。
そうか、クリフトの知り合いか?俺はちらりと彼女を見た。彼女は憮然として神官から目を背けていたが、
「逃げるぞ、ウィル」きびすを返し、北の劇場のほうへ駆出そうとする。おいおい、神官から逃げるっておまえ……
ひょっとして、なんかやらかしてたのかよ?
120 :04/04/03 23:53 ID:1FiQQVFp
「くっ!」
ところが、彼女は左足から崩れ落ちてしまった。危ない!とっさに出した俺の手を今度はつかんでくれたため、
彼女はどうにか倒れずに済んだ。「くそっ!」もう一度彼女は足を踏み出しかけ、また転びかける。先ほど曲芸
を披露してくれた彼女とは思えない。見ると、左の足首を引きずるようにしている。怪我させちまったのか!
「ちくしょう!」
クリフトが、俺を振り向く。これは俺のせいだぞと言うような、厳しい目つきだ。
俺は唇を噛んだ。つい彼女の運動能力を過信しすぎた。それにだいいち――忘れてたわけではないけれど――
彼女は女の子なのだ。最低だ、俺。
「………」
低い声。振り返ると、緑の神官戦士が呪文を詠唱していた。口元に結んだ左手の印もその文句も、初めて見聞
きする呪文だ。きっとクリフトの怪我に気づいて、回復魔法を唱えてくれているのだろう。
『!?』
ほっとしかけていた俺は、息を呑み、身構えた。違う!神官の声音は、村のシスターのように暖かいものではな
く、昨日のバルザックのように低く冷たいものだった。こんな、殺気を放ちながら唱えている呪文が、回復魔法で
あるはずがない!
まさか、攻撃用の魔法?しかし、善良な一村民である俺を、なぜ一国の神官が。
呆然としながら、クリフトに続いて後ずさりする。その俺に向かって……間違いなく俺だけに向かって、印をさし
上げた。一瞬見えた帽子のつばの下で、青い瞳が憎々しげに燃えていた。ヤバイ!―――

1.魔法使いはもうこりごりだ。クリフトと一目散に逃走!
2.神官なら話せばわかるはず。説得して穏便に解決。
3.俺の考えすぎかもしれない。成り行きに任せよう。
4.攻撃は最大の防御!蹴り一発食らわせて気絶させてしまえ!
5.とりあえず、クリフトを抱きしめてキス!
121場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/04/04 00:07 ID:4Cshv4+J
ぎりぎり翌日更新。でもゲーム内で経った時間はわずか。いい加減さっさと進めないとと言い続けて数ヶ月

>>112 一番乗りの1、ありです!
>>113 ままのほうが漏れとしては書きやすいでつ
>>114 変な名前がついてしまいましたな。本気でクリフトに燃えてもらっても困るんですがw
>>115 なぜルパン??
>>116 あいにくですが漏れは主人公だろうと平気で殺します。死んだ場合どうするかはそのときに
>>117 ストIIですか。今の格ゲーってどうなってるんですかね
唾棄行為はちょっとなぁ。
なんでこうなるんだってくらい最悪な選択だったのか。
予想に反しまくり。そこが面白いんだろうな。

3 メダパニ食らって切腹しろ

「神官」が唱えているのは、間違いなくザで始まる危険な呪文だッ!
((((((;゚д゚))))))ガクガクブルブル
5の「クリフト」はどっちを示すんだ?w

選択肢は2
5,にしたいけど嫌われたくもないし
ロケット帽子の兄ちゃんに謝りながら4
無難に2
無難に1
死なないために4で。
せめてバギマ程度で勘弁…と思ったがクリフトはバギ系使えないんだったな(;´Д`)
迷うが 4
予備動作が少なく出が速い股間蹴りの方向で
5・・・と言いたいが危険なので(色んな意味で)

1。愛の逃避行
これ場つなぎ氏が貼る直前に選択肢変わったらこまるな(w
時間制限が必要になった場面はないのかな?

3にしてみる
4だとクリフト(?)の評価が下がりそうだから
1
3が面白そう。
3
とにかく1はやばいって!
背中に直撃食らうぞ。
1で。

アリフトを背負って(おぶって)一目散にダッシュ!!!
アリフトがいるから、背中に魔法の直撃くらうことはまずないでしょう。
ザキとかはやばいけど。
しかしクリフトが使える攻撃魔法は
ザキ系だけのはずである。
じゃあ3で
ここは保守だな
保守ルカ。
保守かな?
最下層ですな。
142場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/04/12 06:01 ID:BBqMC+no
まさかな……攻撃呪文のはずがない。
及び腰になりかけた姿勢をしゃんと正し、息を吸い込んで大きく吐く。冷静になろう。読んで字のごとく神に仕
えている神官が、魔物でも悪魔でもないどう見たって人間の俺にいきなり火だの氷だのをぶつけてくるような
理由はない。どこの国でも、そういう危険な呪文を正当な理由なく人に対し使えば、誰であろうと罰せられる
のだ。俺でさえ知ってるんだから、神官たる者が知らないわけはあるまい。しかも攻撃用の呪文なんて……。
俺の考えすぎに決まってる。やはり回復呪文なのだろう。いくら神官さんが目に怒りをぎらぎら燃えさせてたっ
て、仇にでも遭ったみたいな顔で歯をぎりっと食いしばってたって、怖じ気づきそうなほど強烈な殺気を感じさ
せてたって……。
……いや、どう考えたってヤバイだろ!!
俺は、楽天的になりかけた頭をすぐに振り切って、神官を見据えた。
いま唱えている呪文が攻撃用か回復用かより、なぜそれを怪我してるクリフトでなく、俺にかけようとしてるか
だ。俺も少しは足が痛むし、転がったから土ぼこりが身体についている。しかし、クリフトのほうが怪我はひど
いことくらい、見ていたならわかったはずだ。もちろん俺には解毒や破邪の呪文も必要ではない。
支援のための呪文でないなら、あとは、俺に危害を与える呪文しかないじゃないか!
『……くっ』
どうする?この距離でかわせるか。だめだ、逃げるにはもう遅すぎる。メラやヒャドなら何とかなる。それ以上
の呪文だったら……この近さじゃ、子供だって外さない。ああ、ミネアさんがいれば、また[ラリホー]してもらえ
るのに!
「この莫迦、やめろ!」
そのとき、俺の横から青いものが飛び出した。それがクリフトだと気づいたときには、彼女はすでに神官の鳩
尾に拳を叩き込んでいた。「ぐ……っ!」神官がうめき、地面に膝をつき、うつぶせに倒れた。
「いいか。帰って、父上に伝えておけ」クリフトが神官を見下ろし、言った。「ボクは元気でやってるから、早く
 元気になってくれってさ」
それから、俺のほうをくるりと向き、笑顔になる。「さあウィル。さっさとマーニャんとこに行こう」
143 :04/04/12 06:02 ID:BBqMC+no
『あ、ああ……』
彼女のあまりの早業に、俺はぽかんと口を開けた。跳躍のあのスピード、それに身構える隙も与えずに急所
に一撃を叩き込む技……あいつ、足を怪我してるはずだよな。地面にはいつくばる神官を彼女の足下に見
ながらぞくりと身を震わす。俺、あんな奴と決闘の約束しちまったのかよ。
「わわっ?」
クリフトが、こちらへ歩きかけ、急に後ろへ仰け反った。
「お、お待ちください!」
見ると、気絶したと思った神官が、クリフトのマントをつかんでいた。片手で印を結び、呪文――今度こそ俺
の聞き慣れた回復呪文――を唱えた。青白い光が神官の身体を覆う。初歩の回復魔法[ホイミ]だ。
「クリフト、放せっ!」
は?俺はまたもあぜんとして口を開けた。怒鳴ったのは、ほかならぬクリフトだったからだ。
「おまえ、諦め悪いぞ!もう一度痛い目にあいたいのか」
俺はクリフトと神官を見比べる。もしかしてこの二人、どちらもクリフトって名前なのか?ありそうでないようで、
ありうる話の気もする。だめだ、わけがわからなくなってきた。何なんだよこの娘は!
「放せっ!」
「いいえ、放しませぬっ!」
マントの引っ張り合いをしているクリフトとクリフト。俺は、どっちに加勢してやればいいんだろう?
さっきのクリフトの台詞を考えると、神官のクリフトはクリフトの父親に命じられて彼女を連れ戻しに来たらし
い(ああややこしい)。となれば。神官に協力してクリフトをとっ捕まえれば、その親から礼金でももらえるかも
しれない。今現在5万ゴールド近くの金を持っているけれど、すべてフローラさんから借り受けた、いわば他
人の金だ。それにゴールドはいくらあっても困るものじゃない。
しかし……俺はクリフト(女)を見やった。この娘には義理があるし、これから決闘をしなけりゃならない。それ
にマーニャさんの友達だ。ダンスを見逃したことを弁明するとき是非ともいてほしいし、もしここで俺が神官側
に手を貸して、そのことをマーニャさんが知れば……俺、劇場の前で吊されて見せ物にされるかもしれん。
結論。男らしく女のほうに加勢。
以上、考察終わり。あとは出た結論にのっとって行動するのみ!
144 :04/04/12 06:05 ID:BBqMC+no
俺はしゃがんで乾いた土をすくいとると、マントを千切れんばかりに引いている無防備な神官に走り寄り、顔
に目つぶしを一閃した。「うわっ!」あわてて神官がマントを放し、顔を覆う。
「ば、莫迦っ……つっ!」だが、悲鳴を上げたのは神官だけではなかった。クリフト(もちろん女のほう)も、身
体が後ろに倒れかけて腕をばたつかせていた。やはり、左足が踏ん張れないのか。
『クリフト!』
叫び、踏み込んで手をさしのべてやる。がしっ。女にしては恐ろしい握力で俺の手が掴まれる。
『逃げるぞ!』
クリフトの手を握り返し、引きずるように駆け出した。
「う、ウィルっ!ち、ちょっと待て」
やめてくれ、と懇願するような声。はっと気づき、俺は足を止めて彼女を支えた。彼女が手で左のブーツを押
さえ、額に冷や汗を浮かべて歯を食いしばっている。相当な痛みのようだ。これじゃ走って逃げるのは無理か。
神官はと見ると、顔中の土を払いながら、すでに起きあがっていた。
「ぺっぺっ……きっきさまっ、何者だっ!どうして私の名を?」
そうだった。こいつもクリフトって言うんだっけ。“クリフト”は男の名だから、どっちかと言えばこの神官のほう
にふさわしい名ではある。
神官に対し身構えようとして、周りに人々が集まり始めているのに気づいた。ここで神官様とやりあったら、
女を守っての戦いといっても、完全に俺は悪役になっちまう。一発でカタをつけてすぐ逃げればいいが、神官
戦士相手にとてもその自信はない。クリフトがもう一度あの当て身をすれば、と横を見れば、彼女はいまいま
しげに足を押さえていて、立っているのも辛そうだ。素早い跳躍はもはや無理だろう。さりとて逃げるにしたっ
て、あいつのあの足じゃ……。
ええい、もう、こうなりゃ自棄だ!
『失礼!』
「あっ!?」
クリフトの脚を払い、膝裏と背中に手を差し入れて腕に抱きかかえる。胸も腰も細いくせに、意外に重い。
まあ、ターニアやマリベルよりはずっと軽いけれど。
「ば、莫迦!放せ!この無礼者っ!!」
うろたえるクリフトを、
『走れないんだろ?捕まりたくなきゃおとなしくしろ!』
顔に力を入れ必死の形相で一喝する。ついでに、『膝はなるべく伸ばして上げてろ。傷に障る』優しい言葉も
かけてやった。
「………」それで、彼女は黙った。
145 :04/04/12 06:17 ID:oaA2WTPN
「な、何をする、きさまっ!」代わって叫びだしたのは神官だった。「そ、その方をどなたと思って……」
口上など聞いていられない。俺は神官に向き直り、右手(クリフトの膝下)で印をつくると、ぐっと突き出しなが
ら、目をカッと開いた。
『……ギラ!』
「うっ!」
神官が、ハッと腕で顔と身体を守り、さっと身を翻した。何も起こらない。当然だ。俺はギラの詠唱をしてない、
というより、知らないんだから。
この隙に、俺はクリフトを抱えて走り出していた。こうなれば、あの神官がレイドックの図書館にいるような本
からそのまま生えてきたモヤシじみた修道士たちと同類の虚弱体質であることを、俺は祈るのみだ。
「マヌーサ!」
その俺の背後から、気合いのこもった高い声が響いた。『うわっ!?』とたんに眼前に赤紫の霧が立ちこめ、
俺はひるんで足を止めた。その霧の中から何人もの神官が現れ、俺に対し剣を抜いてくる。
ち。幻影呪文か!
主に僧侶が得意とする魔法で、霧を使い自分や仲間の姿を何人にも見せ、敵を惑わせる魔法だ。かけられ
るのはもちろん、見るのも初めてだった。しかし効果は聞いたとおり。紫の霧の中、東西南北前後左右、どち
らを向いても神官がいる。総勢10人以上。この中に本物は一人だけなのだ。
ホンモノは一人だけ……?
俺は思わず吹き出しそうになる。すなわち、本物に当たる確率のほうが低い。攻撃するならまだしも逃げだそ
うっていう俺にとっちゃ、分のいい勝負なのだ。俺は地面を蹴り、目の前の神官にまっすぐ突撃した。予想通
りそれは幻。緑の僧衣を突っ切り、たちこめた霧を難なく抜け、前が拓けたところで全力疾走にうつる。
今度はどんな呪文かけてくるかわかりゃしない。呪文の効力の及ぶ外に早く出ないと。
146 :04/04/12 06:18 ID:oaA2WTPN
「し、しまった!」
あわてる声と、追ってくる足音。術が簡単に破られたとみて小細工なしで捕まえることにしたようだ。
「待てっ!」
待てと言われて待つ奴がいるとすればターニアくらいだ。路地を駆け抜け、通りへと出る。北か西か。迷う暇
なく北に直進。背後の足音はみるみる追い上げてくる。山で鍛えられた俺の足とはいえ、女一人の体重が加
わってる。このままで振り切れるわけがない。俺一人なら雑踏へ飛び込んで隠れるのだが、クリフトを抱えた
状態じゃ人をかき分けていくのは無理だ。それに、あの神官が頭のいい奴で“泥棒”“人さらい”なんて叫ぼう
ものなら、俺はすべてを敵に回しちまう。くそっ。ダメもとで走るよりほかにないのか。
「もういい。下ろせ!」
クリフトが俺の胸ぐらをつかみ、叫んだ。できるならそうしたいが、今はその下ろしてる時間だって惜しい。俺
は応じずに、
『きみ、どっかから家出してきたのか?そういうことは早く言え!』
「ん、んなわけないだろっ!」
怒鳴りつけるように聞くと、クリフトも元気に怒鳴り声を返してくる。
『じゃあどういうことだよ。あの神官はどうしてきみを追って来る?きみの恋人なのか』
「こ、こいびっ!?ば、莫迦、違うっ!」
クリフトが真っ赤になって暴れ出す。まったく洒落も皮肉もわからん奴だな。
『だったら、あの神官はいったい何なんだ?』
「あ、あの間抜けは、ボクの、その……め、召使い、みたいなもんだ」
召使いみたいなもの……神に仕えてる神官を召使い扱いかよ?どうも複雑な事情がありそうだな。
けれど、本当にクリフトと追っ手が主従の間柄であるなら、撒くのは簡単!
『クリフト、悪い。帽子借りるぞ』
言うと同時、というよりほとんど事後承諾で、俺は彼女の三角帽子をとって左へ思いっきり放り投げた。すぐ
背後まで迫っていた足音が止まり、左側へ遠ざかっていく。かかった!召使いなら、主人の道具一つだって
捨てたままにはできないからな。
『つかまってろっ!』
今が勝負とばかり、俺は次の角を曲がり、その次を左折し、そこからとにかくひたすら走った。右足の痛みと
腕の痺れを脚への集中力で消し飛ばし、驚きの視線を注いでくる往来に目もくれず、井戸の脇を抜け、人が
ごった替えしている建物の左をすり抜け、街を北へと突っ走った。
147 :04/04/12 06:19 ID:oaA2WTPN
なぜ北か?たまたま南風が吹いてたからという以外の理由はない。逃げるときは風下へが鉄則……って、
それは魔物から逃げる場合か。何にせよ、逃げられればいいんだ、逃げられれば。
《クリフト?の評価がわずかに上がった》
《????の評価が下がった》

どこをどう走ったか。気がつくと俺たちは林の中にいた。前に見えるのは橙色の屋根の丸い建物、つまり劇
場だ。ただしこれは裏側。朝、街全体を眺めたとき、北の劇場の背後に緑の林が見えた。今いるのはその
林だろう。
『ぜー、ぜー……』
一本のカシの木に寄りかかり、息を整える。
「おい」
顔のすぐ横で、クリフトが紅いまま、いらついた目で俺を見ていた。あわてて腰を落とし、彼女を下ろす。
『立てるか?』
「平気だ」彼女が草の上に立つ。「おまえこそ、腕は?」
『腕?何でもない、このくらいなら』両手をぶらぶらさせてみせてやる。『それにきみ、ずいぶん軽かったから
な。ちゃんと飯食ってるのか?』
茶化した俺に、彼女は、当然だろ、と言わんばかりにむっと唇を突き出した。それから、辺りを見て、
「ずいぶんこっちに来ちゃったもんだな」
呆れたように言う。「そなた、マーニャんとこへ行くんじゃなかったのか?」
『あのな。俺はきみを抱えて夢中で逃げてたんだぞ。そこまで考えてられっか』
「逃げるにしたってさ。あの間抜けの行動を考えながら、死角をたどって逃げれば良かったじゃん。それを、
まっすぐ走ってきちゃって。あれじゃ、追いかけて来いって言ってるようなもんだぞ」
彼女がそっけなく言う。誰のために俺は必死で逃げたんだよ。心を逆なでする奴だなこの娘……。
『悪かったな。今度きみを抱えて逃げるときは、指示してもらいながら逃げることにするよ』
俺は苦々しく口を曲げた。といっても、次もクリフトを抱えて逃げ切れる自信はまったくない。強がってはみせ
たものの、ホント言えば腕はかなり痺れかけていた。
「さ、行くぞ。マーニャを探しに行かないと」
クリフトがさっさと街側へ歩き出したので、あわてて後を追った。
『おい。足は大丈夫なのか?』
「平気だと言っただろ。おかげで、だいぶ良くなった」
148 :04/04/12 06:24 ID:oaA2WTPN
彼女の足をそれとなく見てみた。やっぱり、ぎこちない。無理に普通に歩こうとして左足を右足がかばい、不自
然な動きをしている。とても走れやしないだろう。もし関節が腫れてきたら、歩くことだってままならなくなる。
俺は[ふくろ]の紐に手をやった。昼間買った[薬草]がある。手当をしてやれば今夜くらいはもつだろう。
といっても、この場で治療してやるのは危険だ。あの神官はしつこそうだったし、街を見回ったついでにここ
まで来ないとも限らないからな。
見回してみると、劇場と林の木々との間に、大人4人が定員というほどの狭い小屋が10軒ほど並んでいた。
俺は小屋のうちの一軒に走り、扉を開けてみた。舞台用の装置や道具が転がっている。倉庫らしい。
「ウィル、何やってんだ?」
クリフトが不思議そうに聞いてくる。
『ひとまず、ここに入れ』俺は彼女の腕をつかんだ。
「な、なんで?」クリフトが驚き、反射的に身を引く。
『その足じゃ今度見つかったら逃げられん。[薬草]持ってるから、せめて応急処置だけしてやる』
「構うな。平気だと言っただろ。見つかったら見つかったときさ」
クリフトは首を振り、俺の腕をふりほどこうとする。聞き分けのない女だな。俺はぐいっと腕を引き寄せた。
「何をする!」彼女が俺を一瞬にらみ、「うっ!」すぐに倒れかける。ほれみろ。
『クリフト。その怪我は俺のせいだ。せめて手当くらいさせてくれ』
「べ、別にそなたのせいじゃ……お、おい、待て!」
有無を言わさず、彼女を倉庫に引っ張り込んで扉を閉めた。天窓から差し込む月の明かりで灯りの必要は
ない。よかった。こんな静かな林でろうそくでもつけていれば、すぐに見つかってしまう。
うまい具合に椅子があったのでそれにクリフトに座らせ、俺は彼女の前にしゃがみこんだ。
『ほら。足、見せてみろ』
「………」
クリフトが探るように俺を見る。「おまえ、医者なのか?」
『医者じゃないが、たいていの足の怪我なら診てきてる。いいから、見せてみろって』
それでもクリフトはしかめた顔をし、俺の瞳をにらむように見据えてきた。「ウソじゃないだろうな?」
『嘘ついてどうすんだよ。きみが歩けないと俺も困る。決闘が俺の不戦勝でいいなら、構わないがな』
149 :04/04/12 06:32 ID:oaA2WTPN
「………」
クリフトは初めての料理を味わうように目を宙に泳がせてから、やっと思い切ったようにブーツに手をかけた。
足を引き抜き、ぽいとブーツを脇へ捨てる。
汗の臭いが鼻をつんとつく。見とれるほどほっそりと引き締まった脚だ。黒いタイツに包まれて際だてられた
ラインは、鍛えられた馬のそれのように力強く美しい。思わず、ごくりと唾を飲み込んでしまった。
「……?」
おっと、今は妙なことを考えてる場合じゃない。目を閉じて平常心に戻してから、彼女を見上げた。触れるぞ、
と合図に指を一本立ててみせ、足の裏に軽く手をやった。じわっとした温かく湿っぽい感触。彼女が口をきゅ
っと結んで、顔をそらした。恥ずかしがるような足じゃないと思うけどな。
『痛かったら言えよ』
注意しておいて、くるぶしの前あたりをそっと押さえた。
『いつっ!!』
クリフトが悲鳴を上げる。こりゃあ筋をやっちまってるな。そのうち盛大に腫れてくるだろう。縛って冷やす、
本格的な手当が必要だ。
彼女の脚を放し、額に手をやる。舌先で上唇をなめる。この際だ、仕方ないだろ。
『クリフト』彼女のふくらはぎを軽く叩いて、言った。『これ、脱げ』
「な、なにっ!?」
クリフトが目をむく。耳まであかく染まっているのは、怒りか恥ずかしさか。
『誤解するな。こんなもん履いてたんじゃ包帯できないだろ。あとでミネアさんかきみの召使いに魔法かけても
 らうにしても、歩けなきゃ仕方ない。外に出ててやるから脱ぎ終わったら教えろ。包帯巻くから』
「包帯くらい、ボクが自分でやる」
『できるのか?』
「で、できるっ!」クリフトがうわずった。「足をひねるなんてこと、ボクは珍しくも何ともない」
それもそうか。あんなに軽々と壁を上下できるんだ。こうした怪我を少なからず経験しながら鍛錬を繰り返して
きたに違いない。
それに、まだ寒い季節でもないのにこんな黒タイツを履いているのは素足を見せないためだろう。一年中長い
ドレス着っぱなしのマリベルみたいにお上品ぶってるのか、それとも、傷だらけの凄まじい足なのか。
『わかった』
俺は立ち上がり、[薬草]の袋を出して、ひとまず中身を確認した。この街では何を売りつけられるかわからな
い、というミネアさんの言葉を思い出したのだ。さすがにちゃんとした普通の薬草だった。
150 :04/04/12 06:37 ID:oaA2WTPN
『クリフト。薬草の使い方もわかるか?』
「傷の上から塗るだけだろ」
『それじゃ駄目だ』俺は苦笑し、薬草袋を前に開いてみせる。『血が出てる場合なんかは塗るだけでいいんだ
 が、皮膚の下を怪我してる場合は違う。まず包帯をちょっと口で湿して、そこに粉薬をかけて溶かす。そうす
 ると氷みたいに冷たくなる。で、怪我した場所にあてて巻くんだ。こっちのラスーズンの葉を口に含んでいれ
 ば、そのうち痛みはひく。わかったか?』
「ああ……何だって?」
目を丸くしたクリフトが小首をかしげる。ったく、何にも知らないんならちゃんと聞いてろよ!
いや、俺のほうがバテてるせいで早口すぎたんだろ。
俺は彼女に、もう一度、なるべくゆっくり説明を繰り返してやった。
「そうなのか。けど、クリ……」途中で彼女は口ごもり、うつむいた。「その……ボクは、薬草のそういう使い方、
見たことないぞ。足をひねったって、肩が外れたって、塗るだけで全部治るんじゃないのか?」
俺は首を振った。そうした薬草もあるにはある。たしか、アモールの水とかいうものに数年浸して作った薬草
だ。しかし貴重な代物であるため、値段がハンパじゃない。
『あいにくだが、そういう便利な薬草が使えるのはお城の王様や貴族くらいだ。そこらの道具屋で売ってるの
は、簡単な治癒魔法がかかってるだけのモンさ』
「ふうん」クリフトが俺を見上げ、にっこり笑った。「ウィル。おまえ見かけによらず、けっこう物知りだな」
『よせよ。こんなこと、俺の村なら誰でも知ってる』俺は顔をそむけ、頭をかく。さっきはありがとうとさえ言わな
かったくせに、こういうときだけ褒めるな。
『んじゃ、俺は外に……』
彼女に[薬草]と包帯(昨日のシャツの余り)を渡し、扉を向いたとき、小屋の隅に3つほどの手桶が転がって
いるのが目に入った。そうだ、水を汲んできてやろう。
『クリフト。それ脱いでも包帯巻くのはちょっと待ってろ。最初は、水で冷やしたほうがいい』
彼女の答えを待たず、手桶を一個ひっつかみ、外へ出た。
えーっと、水は、と。扉を後ろ手に閉め、街の遠景を思い起こしてみる。河川はなかった。さっき逃げてる最中
に井戸を見た気がするが、あそこまで戻るのは危険だ。水、どこかになかったっけか。
151 :04/04/12 06:40 ID:oaA2WTPN
……そうだ。肝心なところを忘れてた。劇場の前の、あの池だ!
俺は、林の中を、劇場の壁に沿うようにして駆け出した。
《クリフト?の評価が上がった》

劇場の南面側(円い劇場なので厳密には真ん中の線から南なのだが)に出たところで前がひらけ、あわてて
俺は木のかげに身を隠した。
橋の上では楽団がゴキゲンな音楽を奏で続け、広場では謝肉祭が開かれている。骨付き肉片手に乾杯を叫
ぶ声が何度も聞こえてくる。きっと、これが一晩じゅう続くのだろう。池の前には、最初に挨拶をしていた座長
らしき男と、薄布姿の踊り娘たちの後ろ姿も見えた。マーニャさんの菫色の髪は、ない。そして、広場で騒い
でる連中にも、池の西側で大騒ぎしているグループにも、すぐそばで煙草をふかしたり二人で肩を組み歩い
ているまばらな人影にも、あの神官はいない。兵士たちが警戒網を布いている気配もない。
それでも、木に隠れながらそれでも慎重に池に近づく。池の近くは遮るものなく、丸見えだからな。
水際が見えたとき、池のほとりに若い男が二人いるのに気づいた。様子をうかがってみると、池の水をすくっ
ては顔の前にもってきてしばらく見つめ、口に運び、不気味にニヤニヤしている。いったい、何をやってんだ。
『……何を、なさってるんですか?』
ていねいに声をかけてやったのに二人とも飛び上がって俺を振り向いた。ひょろ高く針金のように痩せた男
に、舞台で唄ってた女よりはるかに肥えた男、の2人組だった。痩せたほうはバンダナを巻いた船員らしい
服装だ。
「な、なにをしてるって……」その痩せた船員があわてたようにもう一人と視線を見交わした。が、俺の右手の
手桶に気づいたとたん、急にニヤリと笑った。
「ぼくらは、きみと同じことをやってるだけだよ」
『同じ事?』
もちろん、俺には見知らぬ男たちだった。まさかこいつらがクリフトのことを知ってるわけもない。そう思いつ
つも、つま先に力を入れて警戒する。
「いやいや、とぼけなくたっていい。マーニャちゃんが浸かった水、汲みに来たんだろ?一ヶ月に一度の楽し
 みだもんねえ、マーニャちゃんの浸かった水を飲めるのって。けど、汲むときは他にゴミとか入れないよう
 にしてよね。その桶、汚れてない?ちょっと貸して」
152 :04/04/12 06:51 ID:oaA2WTPN
俺はあっけにとられ、言われるがまま桶を渡した。マーニャさんが浸かった水を飲むって……じゃあこの二人
は、何百万分の一くらいに薄まったマーニャさんの汗(とか)の残り香や味を確かめて悦に入ってたのか?
ぞっと寒気がする。マーニャさんの人気がうかがえるものの、ここまでやる奴に会うとさすがに気色悪い。
「あーあ、こんなにホコリが溜まってるじゃないか。ちゃんときれいにしてから持ってきてよねえ」
呆れている俺に構わず、二人組は手桶をごしごしと洗ってくれている。桶を池に入れることなく、水をわざわざ
手ですくい上げて桶にかけている。マーニャさんの残り水が目当てなら、桶より自分の手を入れたほうが汚れ
るという発想は、この二人にはないのか。
「はい、これでいいよ。あんまり持っていかないでね。少なくなっちゃうから」
『はあ……どうも』
ふとっちょがニコニコしながら手桶を返してくれるのを受け取って、池のたもとに寄った。こういう連中と関わり
合いは避けたい。俺はさっさと池の水をすくった。思ったより冷たく、しかも驚くほど透き通った水で、池の底に
敷き詰められた小石の一つ一つがはっきりとわかる。見渡しても水草がまったく生えていないし、魚の姿もい
ない。人工的に作った池で、しかも毎日きっちり掃除がされているらしい。開放的な街には似つかわしくない、
どっちかというと城の中庭にあるような池だった。
「ねえねえ。ぼくらこれからマーニャさんに会いに行くんだけど、いっしょに来る?」
水桶を持って立ち去ろうとした俺に、二人が声をかけてきた。
『いえ、せっかくですが……』
連中のなれなれしさに辟易しつつ、首を振る。今すぐはマーニャさんと会いたくないし、会いに行くにしてもこの
二人と行く気にはなれない。
そうだ、マーニャさんの情報は聞いておこう。
『マーニャさんがどこにいるか、ご存じですか?』
「うん、知らない。だからこれから探しに行くのさ。じゃあね」
ちぇっ。なんだ知らなくて言ってるのか。使えない奴らだな。
俺は二人組と別れ、来た急いで道を戻った。桶の水からのぼってくる冷たさに、何となく鼻をうごめかす。も
ちろんマーニャさんの匂いなどするはずもない。
俺がマーニャさんに抱きついてこの街に来たと知ったら、あいつらどうしたかな?
《レオンの評価が上がった》
153 :04/04/12 06:52 ID:oaA2WTPN

『……??』
あちこちからひそひそしたような声が聞こえ、何度か振り向いてみる。何かが動くような気配がすることもあ
れば、しんと静まったままのときもあった。こんな暗い林に誰かがいるのか?内心びくびくしながら木々の間
を駆け抜けた。魔物や動物なら大声を出せばたいてい逃げるけれど、人間相手はタチが悪いからな。
倉庫の一群が見え、ほっとしながら近づく。えーっと、クリフトがいる倉庫は、確か横にスコップがいくつも立て
かけてあった小屋だから……ほら、あれだ。
『ん?』
ふと、足をとめる。ごく小さな、息づかいの音が聞こえてきたからだ。
耳をすましてみる。明らかに小屋のほうからだった。動物の息か、苦痛に耐えている人間のくぐもった声のよ
うだった。
もしかして、クリフトか!さっきはそれほど痛みがあるようには見えなかったのだが。冷やすのが遅れたので
腫れてきたのか。あるいは他の原因……。
俺はあわてて小屋に突進した。あれ?クリフトがいるはずの倉庫は目前、なのに声は左側からしてくる。左
にも同じようなつくりの倉庫があり、声はその中からのようだ。俺、勘違いしてたか?
「う……ん、んっ……」
うーむ。声の主は間違いなく左の小屋だ。まあ、両方とも見てみればいいのだが、まず―――

1.前の扉を
 1−1.ノックする 1−2.いきなり開ける
2.左の小屋の扉を
 2−1.ノックする 2−2.いきなり開ける
3.クリフトの名を大声で叫ぶ
154場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/04/12 07:03 ID:oaA2WTPN
前回翌日更新で今回9日ぶり更新。申し訳ありません。細切れにしたほうがいいのはわかってるのですが・・・
この板のドラクエ5祭りも落ち着いてきましたが漏れの5は未だにリアル展示物。PS2買い換えるまでガマン

>>122 唾棄行為・・・「ぺっ」てやつでしょうか。そういえば昔、登場人物に煙草を吸わせて顰蹙を買ったことがありますた
 組先生だとキャラが嘔吐しまくってるのでいいかなあと思ったのですが
 選択が予想外なのは、漏れの場合、意外性を狙ってるわけでなく単にひねくれて考えすぎるせいでつ
 ところでメダパニ使えるのはご老体のほうじゃ・・・あ、若い神官なんて一言も書いてないw
>>123 さて何だったんでしょうか。「ザ」・・・明と暗がありますね
>>124 えー・・・漏れにそのケはないのでご安心ください
>>125 5だとそこそこ面白かったんですけどね。書く漏れがですがw
>>126 無難ですな。2だと神官と仲良くなれたかもしれませんです
>>127 1だと前置きなく普通に逃げてました。いちばん書きやすかったでつ
>>128 荒っぽいですね。ここでは4が最悪のケースですた・・・
>>129 バギマもけっこう危ないですな。使い手の彼女を怒らせないようにしてください
 蹴り一発で気絶させるには・・・彼相手だと延髄も飛び膝もやりにくいのでしぜん金的になりますかw
>>130 1ではありませんでしたが、愛の逃避行と言えなくもない?
>>131 ええまあ、実は今回困りますた・・・同数の場合今度から好きな方選ぼうかな(おい)
155場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/04/12 07:07 ID:oaA2WTPN
>>132 ご明察通りですた
>>133 ご期待に添えましたでしょうか?
>>134 そのへんは弱みを盾にすれば・・・いえ何でも。呪文受ける部位って関係あるんですかね?
>>135 うっ、ほとんど展開が予測されてしまった。ザキでなくザラキだったら・・・まさかね
>>136 えーとそれはどっちのクリフトでしょうかw
>>137 よって選択が3に決定しますた。でも>>136さんのを受けて「じゃあ」なんでしょうか。怖!
>>138-140 今回もお世話になりますた・・・すみませそ
>>141 これでやっと書けまつな。ぐふふ(挙動不審)
お初です。
偶然このスレ発見しました。面白いっすね〜。

とりあえず1-1で。
オレは自分から面倒事に首突っ込むような真似はしませんw
どうせこういう喘ぎ声っぽいのはフェイクに決まってる。
ここで大声張り上げるのもなぁ。

てことで主人公らしく迂闊に1-2。
み、見たい!!!!!
しかし!俺には彼女が全てなのさ。
1−1
>>157
なんたって主人公だからな
1−2
おいおい、ここでへまなんかやってられるカヨ。
1−1
うむ、アリフトが苦しんでるから
早いとこ治療してやらんとな
1-2
え〜。
素直に2-2で。
163p3196-ipbffx02kyoto.kyoto.ocn.ne.jp:04/04/12 23:09 ID:wTHmvCp7
test
無難に
1-1
となりはマーニャな予感
>>156が最下層にあるこのスレをどうやって
「偶然」発見したのかが気になるw
キーワード「ギャルゲー」で検索でもかけたか?
>>165
最下層ならかえって発見しやすいのでは?
167場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/04/14 04:15 ID:07hj4zms
いや、たしかにこっちだ。じゃあ隣は?首をひねりつつも、コンコン、と拳で前の扉を叩いた。
スッと内で何かが動き、扉のそばに寄る。この警戒ぶりは、クリフトだ。
『クリフト。水持ってきてやったぞ』
声をかけたとたん、扉が開いた。クリフトの顔が一瞬見えた。桶を見せて笑おうとしたとき、にゅっと出てきた
白い腕に胸ぐらを掴まれ、俺は小屋に引きずりこまれた。あわてて桶を水平に保とうとしたものの、四分の一
ほどのがこぼれ、床を濡らしてしまう。
『いきなり何……ぐっ!』
クリフトが手で俺の口を押さえた。「静かにしろ」
真顔でにらまれ、俺はわけもわからずにうなずく。まるで強盗にでも脅されてるみたいだ。
「ウィル。誰かいるのに気づかなかったか?」
彼女が手を放し、ひそめた声で聞いてきた。俺は驚いて彼女を見つめる。何か知ってるのだろうか?
『姿は見てない。ただ、林に人のいる気配はした』
「林じゃない。すぐ近くだよ。男と女の二人。今もいるはずだ。見なかったのか?」
『いや』言ってから、俺は左の壁を見た。『そうだ。隣の小屋から声がしてる。きっと誰かがいる』
「やっぱりな。それでわかった」クリフトがそっと扉を開け、辺りをうかがった。「ついさっきこの前を通っていっ
 たんだけど、遠ざかる足音が聞こえなかった。小屋の中に入ったんだな」
『それよりきみ……足は?』
彼女の左足を見てみると、しっかりブーツを履き直していた。黒いタイツも履いたままだ。
「足音聞いたとき、すぐに包帯巻いた。それがさ、そなたに言われたとおりにやってみたら、すごいな、すぐ痛
 くなくなったよ。代わりに、風邪引きそうなくらい冷たいけどな」
『………』
俺は右手の水桶を見た。何のために汲んできてやったんだよ。まあ、痛みがひいたならいいか。
168 :04/04/14 04:21 ID:07hj4zms
「そうか、水持って来てくれたんだよな。少しくれないか」
クリフトが桶に手を伸ばす。渡してやると、ためらいもせず口にもっていく。
『おいおい。それ、マーニャさんの水だぞ』
彼女の手が止まる。「マーニャの水?なんだそれは」
『あ、いや、違う。池の水と言おうとしたんだ』
「わかってる。人魚姫が見やすいように、祭りのときの池の水はすごくきれいにしてあるからな。飲んだって
 あたるようなことはないだろ」
そう言って、クリフトは水を滴らせてうまそうに飲みはじめた。俺は顔を引きつらせる。小川やわき水の池なら
ともかく、街中の池の水を、よく平気で飲めるな。
「ほら。ウィルも飲んでないんだろ?」
クリフトが口元をぬぐって、半分に減った水を俺に差し出す。「残り、全部やるよ」
『いや、俺はいい』拒否する。ここで俺も飲んだら、あのマーニャさんの追っかけ二人と同じになっちまう。
「なんで?あれだけ走ったんだから喉乾いてるだろ」彼女は真剣な眼差しで水桶を押しつけてくる。「ほらあ、
 素直に飲んでおいたほうがいいぞ」
ったく、人の気も知らないで…知ってもらいたくもないが。
『……わかったよ。もらっとく』
彼女の瞳に圧され、やむなく俺は桶を受け取り、口をつけた。苦みも臭みもない、透明で味のない水だった。
俺は口に含める分くらいを飲んでから、口をすすいだ。フレアさんのところで紅茶をもらったきりで実際喉は
カラカラだから、飲んで正解だったかもしれない。
「ほんとだ」その間に外に出ていたクリフトが、俺を手招きした。「こっちの小屋の中にいるな」
俺は桶の水を捨て、クリフトについて左の小屋の前に行ってみた。喉の奥から絞り出すような苦しげな声が
まだ聞こえてくる。響きからして女のものだ。クリフトは二人いると言っていた。もう一人はどこへ……と思っ
ていると、
「…まだ、痛いのか?」
別の声が聞こえた。男の、気遣うような言葉だった。これ誰の声だったっけ?ホルス……なわけないか。
「怪我してるのかもな」クリフトも俺と同じことを考えたらしい。眉を寄せ、俺を見る。「ウィル。薬草、もう一つ
 持ってるか?」
『[薬草]?ああ、2つほど』俺は[ふくろ]を叩く。昼間3個買い込んでおいたから、まだあるはずだ。
「それなら、そなたが手当してやってくれ。構わないだろ?」
169 :04/04/14 04:26 ID:07hj4zms
クリフトが俺に片目をつぶってくる。あのな、お節介は女に共通する特質だから仕方ないとしても(俺の偏見
かもしれんが)、何で俺まで巻き込まれなきゃならん。
とはいえクリフトの[薬草]についての無知ぶりを知ってしまったし、[薬草]だけ放り込んでやって何も言わず去
るなんてキザったらしい真似もしたくない。
しぶしぶ俺がうなずいてやると、クリフトは「よし」とかすかに笑って、扉に歩み寄る。
彼女の後に続いた俺は、扉の横でじっと聴覚をとぎすませ、中の様子を探ろうとした。
「んくっ……。ふぅ、ふぅ、う、んぅっ……んっ……!」
おい待て。こ、これってまさか……?
聞こえてきた息づかいに、“怪我をしてうめいてる娘とそれを解放する男”とは全く異なる、ある卑猥なイメー
ジが沸き上がる。全身の毛が逆立ち、下半身がびくっと疼いた。いや、しかし、こんな場所で……。
ドン、ドン。
戸惑う俺に構わず、クリフトが扉を叩く。ちょ、ちょっと待て、と止めようとしたがもはや遅い。
「そなたたち、怪我をしてるんじゃないか?[薬草]を持ってる。手当してやろう」
わずかな間。口笛に失敗したような音が二つ。そして静まりかえる。
「おい?どうしたんだ。何かあったのか?」
クリフトが二度三度と声をかけ、扉を叩いた。小屋の中はしんとしたままだ。
「おい!」
ぴくりと眉を動かすクリフト。屋上で見た、焦れったさに耐えきれなくなったって顔だ。
「せっかく言ってやってんだぞ。聞こえないのか!」
怒鳴ったクリフトが扉をつかみ、一気に引き開けた。とたんに、兵士宿舎のトレーニングルームのような臭い
が流れ出してくる。予感が当たったか!?鼻と口を押さえつつ、俺はクリフトの肩越しに小屋をのぞき込んだ。
170 :04/04/14 04:37 ID:07hj4zms
まず見えたのは、うつぶせに倒れこんだ男の青白い背中だった。筋肉よりも贅肉の多い貧弱な背筋に、ゆで
卵を並べたような尻。その下から伸びる男の丸っこく短い脚の両脇を、足環のはまったもう一人の脚、白い
ほっそりとした太股が挟み込んでいる。その向こうには、ぎょっとして振り返っている男の顔と、その下になっ
ているがくぜんとした表情の女の子。二人とも、何も身につけていないのは、下着ともども床に乱雑に散らばっ
た衣服からもわかった。やっぱ……大当たりかよ。
「あ……」
濡れ場を目撃されたカップルも、目撃してしまった俺とクリフトも、茫然としてしばらく声も出なかった。
こういう場面に出会うのは初めてってわけではない。サンマリーノの夜の港で、これぞ海の男という髭もじゃ
で筋肉質の船員とスイカを二つ肩からぶら下げたようなでかい胸をしたバニーが戯れているのを目撃したこ
とがあるし、バザーの最中のシエーナで俺と相部屋になった若い商人夫妻が、当時13歳の純情な少年が隣
のベッドで寝てる(フリをしてた)にもかかわらず夜の営みってやつをおっぱじめてしまい、隣で俺は悶々と一
夜を過ごす羽目になったこともあった。しかしどれも盗み見盗み聞きの程度であり、真っ最中の当事者とばっ
たり鉢合わせしたのは、俺も初体験になる。
「お……おまえらっ!」
やっと男が甲高い叫びを発し、飛び起きて散らばった衣服をかき集める。この、男のくせにやたら高い声……
聞き覚えあるぞ!
171 :04/04/14 04:41 ID:07hj4zms
はっとなって俺は男を見下ろした。満月に光る茶色の髪と気味悪いほどに白い肌。そいつは紛れもなく……!
「ラゴスっ!」
『ラゴス!』
俺は、クリフトと同時に叫び、立ちすくんだ。よりによってこいつか。しかもこんな場面で会うとは。
そのとき、焦りとともに俺に湧いた感情は、妬みに似た悔しさだった。自慢じゃないが俺は未だに経験てもの
がない。酔って前後不覚になったビアンカにしなだれかかられたり、たまたま下着姿だったグロリアさん――
ランドのお姉様――に迫られたりなど直前までいったことは幾度かあるもののすべて寸止め。もちろん健全
な俺は売春街に踏み込んだことなどただの三度しかない(目的は知的好奇心を満足させることで結果も同じ)。
そもそも、俺の人生初のキスすら、ようやく昨日マーニャさんに達成してもらったところなのだ。
なのに……こんな親の権力を頼り飛び道具を使うような卑怯で粗暴で軟弱、けばけばしい女みたいな化粧を
し、毛をむしりとったファーラットのようにずんぐりむっくりの男が、こうやって女の子とカラダ重ね合ってるなん
て……この世界作りそこなってないか、精霊様!
「な、なんだおまえら!ぼ、ぼくをラゴスと知っててこんな無礼をしたのかっ……ゆ、許さないぞ!」
アンダーシャツで身体を隠しながら悲鳴じみた声を上げるラゴス。昼間ブン殴られた相手だとは気づいていな
いようだ。
さあて、どうしてやるか―――

1.嫌な奴だが、女とお楽しみのところを邪魔するほど俺は野暮じゃない。ここは立ち去るってやるとしよう
2.ミネアさんと同じようにこの娘も無理矢理口説いたに違いない。徹底的にとっちめてしまえ!
3.お金で買った女に決まってる。うまく言い寄ればおこぼれがまわってくるかも……?
172場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/04/14 05:00 ID:07hj4zms
一日おき更新。でも時間はぜんぜん進んでない
今後漏れもさすがにリアルが忙しくなってくるので、今回みたくベタな展開が多くなりそう・・・

>>156 ようこそ。お世辞でも面白いと言ってもらえて嬉しいでつ。今後ともどうぞよろしく
 ギャルゲーは面倒事に体当たりしてかないとイベントが進みませんよw
>>157 喘ぎ声っぽく聞こえたでしょうか。書いてていちばん恥ずかしい部分でつ
>>158 彼女重視ならここはそのとおり1−1が無難でした
>>159 なんたって主人公ですからねw
>>160 たまには意外な行動に出るのも・・・え、この主人公いつも意外すぎるって?
>>161 で、いきなり開くんですかw1−2だと主人公が治療される羽目になりました
>>162 見たいものは見たいですよね。2−2だといろいろ面倒なことになったり
>>164 ご期待に添えませんで・・・ヒロインクラスはそうやすやすとは出せません
>>165 この板は「ギャルゲー」と名の付いたスレが他に2つほどありまつね。関連は全くないけど
 「DQ」「ギャルゲー」「本気」でぐぐってもこのスレはなかなか出てこない。ほっと一息(?)
>>166 スレ一覧をIEで見ると、最後尾でけっこう長いスレタイなのでかなり目立ちますね
なんとなく1
とりあえずいやがってる声じゃないようだし1

面倒には巻き込まれたくない。
ていうか早く、ア・・クリフトの反応が見てみたいな。
2
気に入らないヤツは殺っちゃえ〜♪
キャハッ♪
2 そろそろクリフトが追いつく頃か?
無難に1
……3
家臣の醜態を見て、王女が易々と引き下がるかどうか・・・・・・
とりあえず1。
GMさん毎回更新乙です
無難に
1
あとでこのネタがどうなるかだな
182名前が無い@ただの名無しのようだ:04/04/14 23:02 ID:BrMQcq/3
   ∞\,,,
   (*´-`) ・・・・アゥウウィ・・キヒィイィィ
   |⊃;;⊃・・・・ゥアァアァ・・・ウジィィィイ・・・
  .-|;;; ;;|
   .(/|∪
  ⊂ ∴ ⊃ しー
  ⊂ ⊃
"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""
1
184場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/04/15 05:47 ID:zAVacZU1
ラゴスを軽蔑をこめた目線で見下してから、フン、と鼻を鳴らし、顔を上に背けた。
漢の情けだ。見なかったことにしてやる。それが、俺とこの莫迦との、人間の違いだ。
俺は、未だ目をまんまるにしているクリフトの右腕をそっとつかみ、後ろへ引いた。とたん、びくっ!と彼女
は肩を震わせ、まるで子供がいやいやをするように腕をぶんと振り、俺の手を払いのけた。
「ら、ら、ラゴスおまえっ!」彼女は耳まで真っ赤になっていた。へ?なんでこんなに怒り出してるんだ?
『クリフト?』再度俺がかけた手を「うるさい!」と振り払い、彼女はずかずかと小屋に上がりこむ。眉をつり
上げ、額に青筋を走らせている。さらには体中から小屋を揺るがすほどの殺気を放っていた。へたに止め
ようとすれば俺まで巻き込まれそうな怒りだ。この凄まじさはマーニャさん以上かもしれん。
「!?ま、まさか……?」
ラゴスはクリフトを見るなり仰天し、全身を震わせて「な、なん…こ、こ、こん……」言葉にならない声を出す。
こいつの怯え方も尋常じゃない。この莫迦とクリフト、いったいどんな関係なんだ?
「ラゴス、何してやがんだっ。またうちの親父に恥かかすつもりかっ!」
クリフトがラゴスを大声で怒鳴りつける。おい、いくら莫迦でも、一応こいつは侯爵だぞ。そんな言葉遣
いすればこいつの親の大臣だかが……俺も他人のことは言えんけど。
「おまえ、貴族らしく身を慎むってことで親父から侯爵をもらったはずだろっ!なのにまた、こんなとこで、女
 と、そんな、その」クリフトが言いにくそうに口ごもる。「んーなことしてやがってっ!この……うわっぷ!」
急に目を背けたクリフトに、ラゴスはぽかんとし、あわてて股間を隠した。この野郎!クリフトみたいな娘に
そんな汚物を見せるなんて、それだけで万死に値するぞ。
185 :04/04/15 05:49 ID:zAVacZU1
「こ、これは、その……ぼ、ぼくは、あの……」ラゴスがあごをがたがた震わせながら抗弁する。「そう、ぼく
 は、る、ルナにそそのかされて。そ、そうだなルナ?」
わめきながら、ラゴスは後ろの女を振り返った。スコートで前を隠して震えている小柄な娘。その女の子を
まるで問いつめ責めるような言い方だった。
『なにっ!』
奴の態度に俺もさすがに我慢ならなくなった。よりによって女のせいにするとは。それでも男か!
『ラゴス侯爵!』
こんな奴に漢の情けなぞかけてやる価値もない。床を踏み抜かんばかりに小屋に入り、クリフトと入れ替わっ
てラゴスに詰め寄ろうとした。すると、
「待ってください!」女がラゴスをかばうように前に進み出た。「ラゴス様のおっしゃった通りです。あたしが、
 あたしが……ラゴス様を誘惑したんです。悪いのはあたしなんです」
あ、この女は……前座に出てきた踊り娘の一人だ。それも、いちばん多く失敗して転んでた女の子だ。こう
して近くで見ると、ターニアと同じくらいの歳で、ターニアのように顔かたちも表情もおとなしく垢抜けないよう
すの可愛い女の子だった。貴族を誘惑して引っかけるような女にはどうしたって見えない。明らかにラゴスを
かばっているのだ。
「そなた、ルナじゃないか」
クリフトがびっくりして目を見張っている。こっちの女の子とも知り合いなのか。クリフトも顔が広いな、と俺が
感心しかけた、そのとき。
186 :04/04/15 05:54 ID:zAVacZU1
「は、はい。ルナです」女の子が深々と頭を下げ、言った。「おひさしゅうございます、アリーナ姫様」
……!?
今、この女の子、なんて言った?どうも、“ありーなひめさま”って聞こえたんだが。
ありーな……。
アリーナひめさまだあああ!?
ラゴスとルナって女の子のことなど彼方へやって、俺はクリフトを振り向いたきり硬直した。た、し、か、に、
言ったよな。アリーナひめさま、ありぃなヒメさまって。俺の耳が突然幻聴をきたしたとかじゃない……よな。
「ルナ。こんな奴をかばってもしょうがないだろ。ほんとうのことを言っていい。ボクが聞いてやる」
うーわ、クリフトの奴ぜんぜん否定しないよ。普通に話して諭してるよ。ほんとうのこと言ってほしいのは俺だ
よクリフト……いや、クリフトじゃないんだろうけどさ。
この、可愛い顔してるくせにがさつで男まさりで生意気な女が、サントハイムの王女、アリーナ姫……。
信じられん。だが、それなら合点のいくことも多い。荒々しくもどこか高貴な言葉遣い。踊り娘や船乗りのよ
うな業を披露してもまったく下品さを感じさせない雰囲気。隠しごとをしてるような態度。あの召使いだという
神官。それに薬草のこともだ。高級な薬草しか使ったことがないようなことを話したときに感づくべきだったん
だ。この娘、いやお姫様と俺の、住んでる世界の差を。
しかし、しかしだ……なぜこの祭りにお付きの者も連れず平民の姿でやって来たんだ?どういうわけで俺に
“クリフト”なんて名乗ったんだ?そして何よりも、国中の女性の手本となるべき王女様ともあろう御方が、
どうして山村育ちの俺より腕力が強くてビアンカ以上に身が軽いんだよ。それだけは納得できん!
187 :04/04/15 05:57 ID:zAVacZU1
「いいえ。かばっているわけじゃございませんです!」
涙まじりの声。あ、今は俺、クリフト、じゃなく王女と、ラゴスの莫迦を問いつめてるんだっけ。
現実に返った俺の目が、拝むように見上げている女の子の目線と合う。「あたしが……あたしが、ラゴス様
 をだましたんです。で、ですから、ラゴス様は、何も悪いことなさっておりません。おっしゃるなら、あたし、
 牢屋にだって入ります。ですからどうか、ラゴス様だけは」
頬に涙を流している女の子。あんな男をここまでかばい立てするとは、なんて健気な女の子なんだ。
それか、ラゴスに何か弱みをつかまれているのかも。あの莫迦だ、ありうるな。
「………」
クリフトが、いやアリーナ王女が、ギリギリと歯をかみ合わせ、ラゴスと女の子を交互ににらんでいる。
そうか。ようやく飲み込めた。彼女にとってラゴスは臣下だ。臣下の不祥事は王家の恥。サントハイム王家
はこいつのために何度も恥をかかされてきたに違いない。何しろ、平気でクロスボウを抜くような莫迦だから
な。城や城下町でも騒動を起こし続けてきたのだろう。
そして今回は踊り娘の一人、しかも入りたての女の子に手を出すとは……なんてヤツだ!
「そ、そうだ。ぼくはなんにも悪くないんだ。わかったら、と、とっとと城に帰れ、王女様」
王女と俺の厳しい視線に耐えられなくなったラゴスが、おののきながら吠えるように叫んだ。
こいつ、いったいどこまで腐ってやがる!
ぶちっ、と切れたのは俺の理性の糸だったか、それとも王女の額に浮き出ている血管だったか。
「このぉ……ひきょう者めっ!!」
アリーナ王女が先ほどから握りしめていた拳をついに振りかぶる。「ひっ!」ラゴスがすきまっ風みたいな声
を出し、泣き顔になって這いつくばり、頭を抱えた。俺は―――

1.なんとかアリーナ王女を止める
2.王女より先にラゴスの奴を殴る
3.成り行きを見守る
4.とりあえず、女の子を襲う
188場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/04/15 06:09 ID:zAVacZU1
翌日更新。明日もこういきたいけどさすがに無理だろうな。努力はしますが
と思ってたらageられてる・・・最下層をキープするのも大変てことですね
まあビア萌えスレでもageでSS投稿されてたし構うことないかも(だから何を?)

>>173 1番乗りの1をthx!!
>>174 合意の上の行為と合法的な行為とは別物ですよ
>>175 というわけで今回でアリフトは終了。評価が高ければ選択通り立ち去ることができますた
>>176 ドラクエの世界でもさすがに殺人は御法度でつ。ただし窃盗は微妙
>>177 それはどっちのクリフトでしょうか、と聞くのも今回が最後でつねw
>>178 選択は無難でしたが主人公の思った通りにゆかないこともありますです
>>179 3だと・・・漏れがサイコロ転がすことになったかも
>>180 またも見透かされてしまいますた。それだけ自然な展開ということでせうか
>>181 そちらこそご参加どうもです。あとでこのネタが・・・役に立ったり役に立たなかったり
2
正拳突きで。
2
ギャラクティカファントムで。
アリーナの好感度を挙げそうなのは………………3?
1 主人公の役立たずっぷりが嫌でSNOW
2!
嗚呼、やっとラゴスをボコれる(感涙)
4を選ぶとどうなるのだろうか
4
レベルアップを狙え
196195:04/04/15 19:48 ID:/B/y0iUk
間違った(;´Д`)
2
だった
何のレベルアップ狙うつもりだよ漏れ _| ̄|〇
男のレベルをあげるわけかw

選択は3で。
姫の手を汚させるわけにはいかないからな・・・・フッ

とか言ってキザに決めようぜ。2
4でレベルアップだ!
緊急保守
4にしてもアリーナには勝てそうもないし…。
なので2。
2
とりあえず王道かと
2かな?

でもルナって子の言ってることがホントだったらどうしよう?
文中にヒントは有りますが、GMのワナだったら・・・
やっぱここは罪をかぶるべきか
2で
1 アリーナを止める振りして胸揉み
ここで保守だー!!!
マー(゚∀゚)ーダ?
sage
ま、のんびり行きましょー。
復旧してよかった。
早くしないとアリーナを押し倒すぞ
まあまあマターリいこうぜ
GMさんも大変なのさきっと




そうですよね?
213場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/04/23 12:15 ID:gNPochuv
すでに、彼女よりも一歩はやく踏み込んでいた。
『ラゴス!』
奴がぎょっとして振り向く。王女ばかりに気をとられ、俺に対し完全に無防備だった。
ビチーン!
爽快な音。グレートペリカンじみた間抜け面になったラゴスが「ぐえっ!」並べられていた馬の頭のマスクやハ
リボテの鎧を巻き込んで、見事にひっくり返った。
ざまあみろ。俺は痺れた左手を振りつつ、奴を見下ろした。贅沢を詰め込んだ腹をさらして七面鳥みたいに
のびているラゴス。気絶してやがる。手加減して平手にしてやったのに。まったく軟弱な男だな。
「ラゴス様っ!」
ルナさんが悲鳴をあげてラゴスにすがりつき、「ちぇっ」アリーナ王女が憮然として拳を下ろした。
「ウィル、余計な手出しするなよ。前からこいつを一発殴りたかったんだから」
『お言葉ですが』俺は意味ありげに眉を上げ、にやりと笑った。『あなたがこの侯爵を殴れば、いろいろ面倒な
 ことになるんじゃないですか、姫君』
「……?」王女は、きょとんとしてから、チッと舌打ちした。「……バレちまったか」後ろ髪をかき上げながら、靴
のつま先でラゴスの足を突っつく。「よりによって、この莫迦のせいで」
「おやめくださいっ!」
ルナさんが金切り声をあげて王女を見上げた。頬の涙が月光を受けて白く輝いている。
「ルナ。今こいつは眠ってる。心配することはない。ほんとうのことをボクに話してくれないか」
「ですから、申し上げております。あたしがラゴス様をっ!」
「まだ言うのか……」王女が呆れたように顔をしかめる。「どうしてこんな奴をかばうんだ。こいつの行状はそな
 たとて知ってるだろう。弱っちいくせにボクの城を大いばりで歩いてて、サランに行けば店のものを平気でかっ
 ぱらうし、わがままし放題。しかも……」王女はちらと小屋の奥を見た。ラゴスが昼間ミネアさんと俺に向けた
クロスボウが転がっていた。「人を殺したってウワサまであるじゃないか。そんな奴をかばったって、なんにもな
 らないだろ」
214 :04/04/23 12:16 ID:gNPochuv
「違います!ラゴス様は殺してなどおりません!」
突然、ルナさんの子供っぽい顔が険しくゆがみ、鋭い目で王女をにらんだ。「何もご存じないのに、おっしゃら
 ないでください!」
「なんだと」王女も眉をつり上げている。「ボクが、なんにも知らないと言うのか?」
俺も、このルナさんの頑なな態度に驚き呆れた。これは金とかそういうんじゃない。結婚を約束されたとか、そ
ういう類の騙され方だな。
こういう娘を正気に戻すのは、男の正体を教えてやるのが手っ取り早い。
『ルナさん』王女に代わり、俺はできるだけ優しくルナさんに呼びかけた。『ラゴス様は、あなたではなくマーニャ
 さんに会うためにこの祭りにいらっしゃったはず。今日の昼ご自分でおっしゃっておりました』ち。あんな莫迦
 に対して敬語使わなきゃならないとは。『しかもマーニャさんが駄目なら妹のミネアさんでもいいとまでおっしゃ
 り、宿屋の部屋へといざなったのですよ』
嘘ではないというように、俺はルナさんの夜烏のような瞳をじっと見つめた。これで、目が覚めるだろうか。
「それはきっと、あたしのことで、マーニャさんに相談をなさろうとしたんです」
ところが、ルナさんはあっさりそう言い切った。
『な……なぜ、相談だとわかるんですか』
「次にモンバーバラに来たときはマーニャさんと相談なさるおつもりと、ラゴス様は以前おっしゃっておられまし
 たから」
緊張はあるものの動揺はまったくみられないルナさん。俺は閉口する。相談だとしても、女を宿屋へ連れ込む
ための恰好の言い訳じゃないか。ラゴスの奴、この幼気な踊り娘をよほどうまく仕付けたらしいな。
「ルナ」俺が黙り込んだのを見て、再びアリーナ王女がルナに詰め寄った。「どうしてそこまで、こんな莫迦を信
 じるんだ。騙されているとは、思わないのか」
「お言葉ですが、姫様やみなさんはラゴス様を誤解なさっておいでなのです。ラゴス様は本当はお優しいんです。
 ただ、お母様を亡くして、一人ぼっちでお寂しいのだけなんです」
215 :04/04/23 12:21 ID:gNPochuv
ルナさんがラゴスの腕にそっと触れる。「く………」態度を変えないルナさんに、王女は、結んだ唇をもどかし
そうにもごもご動かした。憤懣やるかたないといった様子だ。
そして、俺も怒りに唇を噛みしめていた。母親を亡くして寂しいだ?母親がいなくて可哀想な男だから何しても
いいってのか?なに甘っちょろいこと言ってやがんだ。俺とターニアなんか……。
「姫様。重ねて申し上げます」ルナさんが、王女にすがるように両手を床につけた。「ぜんぶ、あたしのせいな
 んです。ラゴス様は無実なんです。捕まえるのならあたしを捕まえてください。どうか、ラゴス様は……」
「くそっ!」
王女が、歯がみをし、足下のラゴスの貴族の服を蹴り飛ばした。ルナさんがあわててそれを抱き取る。
「ルナ。ボクはそなたのことを、しっかりした、いい子だと思ってた。なのにボクよりもこの莫迦のほうを信じるの
 かっ。それならいい、好きにしろ。ボクは……」王女は言葉を切り、何かをこらえるように拳を握った。「ボクは、
 もう何も言わない、何も言ってやるもんか!じゃあな!」
言い捨てると、くるりと回れ右をして、開け放したままの扉から外に出て行った。
敗北、というには大げさだが、負けたという悔しさを俺も感じていた。負けた相手はルナさんか、それともラゴス
か。俺は、裸の二人を見下ろし、苦々しく鼻を鳴らした。王女様に楯突いてまで信じる価値がラゴスにあるって
のか。それなら、勝手にするがいいさ!
俺は無言で二人に背を向け、扉の前で一つため息をついてから、アリーナ王女のあとを追った。
《アリーナの評価がわずかに上がった》
《ルナの評価が下がった》

小屋から出てみると、王女の姿はなかった。
置いて行かれたか?焦って見回すと、西、俺が水を取りに行くとき走った道に、王女の後ろ姿があった。肩を
いからせ、大股でずんずん歩いていく。地団駄を踏みながら前に進んでいる、そんな歩き方だ。
216 :04/04/23 12:25 ID:gNPochuv
苦笑してから、彼女を追って走り出した。驚いたな、あれで王女様っていうんだから。そりゃあ蔑むべき男に弄
ばれているのに全く気づかないルナさんに腹を立てているんだろうし、それは俺も同じだ。けど、だからといっ
て、一国のお姫様があんな豪快な歩き方をしてもいいってことはない。お父上はどんな王様で、どんな教育係
が育てたのか。ますます顔を見たくなった。
まあ、王女様らしからぬ王女様だとしても、知ってしまったからには挨拶しとかないとな。
王女の斜め後ろに駆け寄る。王女が気づいて、ちらりと振り返った。目は細く頬も赤く、まだまだ不機嫌そうな
顔だ。ためらったが、今しかないと思い、さっと彼女の前にまわった。
『姫君。姫君とは存ぜず失礼をいたしました。数々の無礼、どうかお許しを』
ひざまずいて、恭しく頭を下げた。ホルスの遊び相手ということで城にあがるとき、村長、つまりマリベルの親父
さんがまず最初に稽古してくれた、年季の入った作法だ。
「ウィル、よせ」舌打ちが聞こえて見上げると、彼女は退屈そうに横を向いていた。「許すも許さないも、ボクは、
かたっくるしいのが嫌いなんだ」
それでも、彼女は手の甲への接吻を許してくれた。こんな元気なお姫様に使われているわりには、荒れたとこ
ろのないきれいな手だった。その彼女の手に触れながら、立ち上がる。
「……あーっ、腹立つなラゴスの奴。あの莫迦がいるとわかってりゃ、あの小屋ごと蹴り倒してやるんだった。
そうしてりゃバレることもなかったのにさ。それに、ルナもルナだっ!城にいたときは、妖精みたいに可愛い子
だったのに、な、なんで、ら、ラゴスなんかと、あん、あんなコトっ」
『お気を静めください』俺は言葉を選び、語りかけた。『人には事情というものがあります。ルナさんが侯爵に身
 を捧げるのも、何かよほどのわけがあるのでしょう』
「………」敬語を使い出した俺に、王女は軽蔑するような目つきをした。「おまえまでクリフトみたいなこと言うん
 だな。お説教なんて、たくさんだ。これだから、王女だってバレるのはイヤだったんだ」
クリフト……あの神官のことか。神父や神官は説教するのが仕事だし、そうでない俺でも、彼女を見てると意見
してやりたくもなる。
217 :04/04/23 12:28 ID:gNPochuv
『しかし、姫君。最初からご身分をおっしゃってくださっていれば、私も、あれほどまでに無礼を働くこともなかっ
 たのですよ』
騙されていたという悔しさに、今更ながら頭をかく。まあそうは言っても、知っていたって俺は決闘を申し込んだ
し、王女様を抱き上げて逃げもしたけどな。
「ウィル」王女は目を細め、俺のなりを見返した。「そなた、レイドックの貴族か何かなのか?」
『とんでもございません。レイドックはライフコッドという片田舎の村の出にて、一介の農民に過ぎません』
「それにしちゃ、ずいぶん、背中がむずがゆくなるような喋り方をするじゃないか」
咎めるような鋭い目で、王女が言う。「ボクに嘘をつくと、承知しないぞ」
あのですね。隠し事してたのはそっちじゃないですか……と言ってもはじまらない。
『はい。ゆえあって私は、レイドックの城にも出入りしております。ホルス殿下とも親しくさせていただいておりま
 す』こういう物言い、最初の頃はかゆくなるどころか蕁麻疹が出るほどだった。これも慣れだ。
もっとも、さっきまで普通に話していた彼女にいきなり敬語を使うというのは、当然ながら違和感を感じる。
「なるほど、そうだったのか。それで決闘って言い出したんだな。おまえ、あいつと友達なのか?」
『はっ。僭越ながら、幼少の頃より御伽小姓としてご寵愛をいただき、互いを友と呼び合う間柄とお認めくださっ
 ております』実際は、こっちが呼んでやってるんだが。
「御伽小姓?ああ、クリフトと同じか。しっかしあんな奴のか……そりゃあ大変だな」王女が腕組みをしてうなず
く。「ふーん、そうすると、もしかするとレイドックで見たことあるかもな。そなたを」
俺は、びっくりして姿勢を正した。
『姫君も、そうお思いになられますか』
「ああ。ボクは物覚えが悪いから、そうだとしても覚えてないけどさ」
なんだ。思い出したわけじゃないのか。俺は肩をすくめる。やはり、自力で思い出すしかない。
3年前、レイドック。クリフト=アリーナ王女。条件を整理して再び回想してみる。そのときレイドックの城に来た
王女様というと……。
218 :04/04/23 12:29 ID:gNPochuv
俺は、王女様という身分の女性に二度ほど会ったことはある。しかし4年前と、7年以上昔。アリーナ王女とは
時期があわない。まさか、レイドックの城にまでこんな平民のなりして来たわけじゃないだろう。
『姫君。レイドックには3年前、いらっしゃったとおっしゃいましたよね』
「うん?」
『失礼ながら、間違いはございせんでしょうか。たとえば、そのさらに1年前とか』
「いや、そんなことはない。あのすぐあと、くそいまいましいゲバンとラゴスがうちの国に来やがったんだからな」
王女は、またしかめっ面になった。
『そうですか……』
彼女の記憶違いではないらしい。それもそうか。4年前会った王女様は、いま目の前にいる男まさりな女の子
とは全く違う、態度も衣装もいかにもお姫様って感じの娘だったものな。
……待てよ。
ふと思いついて、俺は頭の中で、アリーナ王女に、あの王女様が着ていたような上品で豪華なドレスを着せて
みた。さらに髪に冠をつけ、クセっ髪を結ってみる。唇に紅をさし、睫毛を色っぽくはねさせる。
一瞬、俺は凍り付いた。ま、さ、か、この娘は……。
「……にしても、ちくしょう、ラゴスの奴!」王女が、思い出したようにわめき出した。「いったいルナに何しやがっ
たんだ!城に戻ったら、絶対に一発、殴ってやる!」
『それはちょっと……』相づちを打ちつつ、彼女の横顔をしげしげと眺めた。長い睫に強調されてぱっちり大き
く開いたガーネットの瞳。クセをもてあまし気味な、赤いカップに注いだカフェオレみたいな色の髪。可愛い外見
をしていながら無茶苦茶をやる、快活で無頓着なこの態度。ドレスアップさせた、俺の頭の中での彼女の姿。
『げっ!』
やっぱり、たしかにあの娘だ!
つかえが取れた気分とともに、苦々しい思い出がよみがえってきた。彼女こそ、3年前、レイドックの東の塔の
螺旋階段で、ヘンリーと俺に蹴り食らわせて逃げてった、あの女の子なんだ!
219 :04/04/23 12:36 ID:gNPochuv
「ウィル、聞いてるのか?」
王女の苛立った声に、『は、はい。おっしゃる通り』あいまいに返事をし、聞き流す。
クリフト(もはやこの呼び名は意味がない)が王女だったことも驚いたけれど、あのときの娘がクリフト、という
より王女だったなんて2度びっくりだ。あのあと聞いてみても、東の塔にはどこかの国の王様の一行の誰か、
としか教えてもらえなかった。ヘンリーは“美少女だったし、あがりたての侍女じゃないか”と言い、俺は“あの
蹴りは王宮騎士の娘か何かだろ”だと考えた。そして、今度出会ったときにはたっぷりお返ししてやる、という
ことで意見が一致したのだ。その娘が、王女だったとは。ヘンリーが知れば俺以上に仰天するだろう。必ず教
えてやらねば。
「ウィル!」
怒鳴り声が耳元をつんざいて、俺はビクッと背筋を伸ばし、回想から戻った。
「おまえ、またあの変な道具使ってるんじゃないだろうな」
彼女が俺の手元を探る。『いいえ!』すぐ両手を上げ、何も持っていないことを示す。俺に反応がなかったので
[風鈴]を使っていたと誤解されたらしい。『すみません、考え事をしておりました。何のお話でしたでしょうか?』
「だからなあ。あいつをおまえが一発でのしちまったから、あれ以上締め上げられなかったんだぞ」語気を荒げ、
拳を俺に見せた。「どうしておとなしく、ボクにあの莫迦を殴らせなかったんだって聞いてるんだ!」
俺は内心呆れた。今になってそのことか。少しは、自覚してほしいよな。
『それは―――』

1.『あなたが王女様であられるから』
2.『あなたが女だから』
3.『あなたが可愛い女の子だから』
1、どうかアリーナが聡明でありますように
と言うか一番乗りだ初めて
更新乙
3で
乙ー
あそこまでラゴスのことを信じているとはなあ
「信じる心」でも使われたのか?

選択は3で
2はいくなさそうなんで1で
3でもいいけど
更新乙です
2はアリーナの怒りに触れそうだな
よって 3
お疲れ様でーす。
1で。無難っぽい。
226場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/04/23 17:06 ID:d+CJ7JPj
翌日更新の次はやはり8日ぶりの更新。このペースであと一週間じゃとてもサントハイムは終わらん。はぁ
漏れの場合、時間書けても“巧遅”にならない・・・思う様をスラスラと文章にできるようになりたひ

>189 主人公はあいにくと武闘家じゃありませんです
>190 KOFはあんまり知りません。すみません
>191 3だと2よりも好感度は上がりました。が・・・
>192 ギャルゲーの主人公なんて序盤はヘタレなもんです。終始ヘタレなのもいますが
>193 奴を追いつめると後々怖いですよ
>194 どうなるってそりゃあもちろん好感度激減、その代わりに・・・
>195-196 レベルアップ?そういやそんなエロゲーもあったような。と思ったら単なる番号違いですか
>197 上がるのはレベルでなくむしろ熟練度っぽいでつね
>198 それが今回の選択肢でつ。ご参加お待ちしております
>199 レベルというパラメータはこの話ではマスクデータ・・・というよりあまり考えてません
>200,206 お世話になりまつ。4月だというのに何故荒らしが頻発するんでせうか
>201 いやべつにアリーナを襲うわけでは・・・あ、わかってますか
>202 乱暴な王道でつなw
>203 考えすぎでつ・・・と思いましたがどうでしょう。漏れにもわからない(?)
>204 上でも書きますたが、動機については今回決まりまつ
227場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/04/23 17:13 ID:d+CJ7JPj
>205 知りませんよどうなってもw
>207-209 遅くて申し訳ありませんです。ちょっとばかり別板に浮気してたもので(おい)
>210 1週間鯖落ちと聞いて( ゚д゚)ポカーンですたが、ほっとしますた
>211 アリーナとバーバラを押し倒すときは覚悟を決めてからにしたほうが・・・
>212 大変というほどではありませんです。今回も3べん書き直して結局はこの程度の出来
 展開おかしい場面数カ所、改行方法間違えてる箇所多数・・・なんでいつも投稿してから気づくんだらう_| ̄|○
>220 一番乗りの1さんくす!アリーナは小説なんかだとそこそこ頭いいけど、PSでは・・・
>221 ご参加ありです。どれだけ票が割れるかGMとしては楽しみでつ
>222 人を信じるのに理由がいるかい?・・・あ、ゲームが違う
>223 どっちやーーー!!
>224 序盤ですから怒らせたほうが後々いい展開ということも
>225 無難な展開だと漏れとしてはテキスト量少なくていいんですが、攻略は進みませんぞ

レス書いてる最中にブルースクリーン・・・安定性がウリのWindows2000なのに何故?
単に殴りたいから殴っただけなんだけどな

win2Kだろうと不良コンデンサの
トラブルは回避できんよフェフェ

3

かな、王道っぽいし。
1は堅苦しいのが苦手なアリーナに嫌われる悪寒
3でいくますよ
3

敬語使ってるウィルがもどかしくてならんぜ


ここはパターンっしょー。
一応ギャルゲーなんだし3だな
3.

あのさ、あんまし関係ない話なんだけど、
GMさんとしては、もっと読んでくれる人とか増えて欲しい??
>>235
宣伝する気ならやめれ
今の状態でも多いほうだと思うぞ。
GMさんがレスするのも大変になるから宣伝はしなくていいのでは
あんまり人多いと荒れるからこのままマターリいこうぜ
(´ー`)y─┛~~
239235:04/04/27 19:48 ID:Voxpqnqg
大々的な宣伝はもとよりするつもりはないけど、(厨が増えるし)
物語の書き手としてはより多くの人に読んでもらいだろうから、
そこら辺どうなのかなーっと思って。
金になるんなら多くの人に読まれた方がいいんでしょうけどね…
ハッシュ
保守だべさ
俺の経験としては大勢に読まれたくはないものだ。
5〜6人で部室の隅でひそひそしながら読むのがいい
保守や
保守
あと三日で弐週間ルールが適用されてしまふ。
おおもうすぐ弐週間とはなにごとじゃ
まあ鯖落ちもあったし、場つなぎ氏のPCも調子悪そうだし、
マターリ待ちましょうや。
せっかくの連休だからみんな休もうよ
251場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/05/06 05:50 ID:nGByAZP3
「なっ……??」
王女は、大きな目をさらに見開いた。
『あなたが可愛い女の子だから、ですよ』俺は繰り返し、言った。
さすがに王女は驚いたようだった。目をまんまるにしてから、右下へ視線をそらす。
こういう照れるところは、やはり女の子だな。俺の見込んだとおり、可愛いところもしっかりある。
そう感心したとたん、「……チッ」舌打ちが聞こえた。そして俺を見上げてきた王女の顔は、不機嫌だった。
「やめろ、ウィル」
冷えた夜風がシュッと林を吹き抜け、王女の亜麻髪を掃いていった。
「ボクは」王女が斜め向こうに顔を背けた。「そういうお世辞は聞き飽きてるんだ。侍女も兵士も、お美しい姫
 だの愛くるしい姫君だの、ボクに好き勝手な呼び名つけやがってさ。ちぇっ、そう言ってボクがおしとやかに
 なると思ってるなら、大間違いだぞ」
お世辞って……何を疑ってるんだ、このお姫様は。
そりゃあお城の人間なら平気で媚びも売る。けれど俺の場合は出会いからして違う。この王女様が“クリフト”
の頃から可愛い娘だと思っていたのだから。
それに城の連中にしてもだ。アリーナ王女に対して、美しい麗しいはともかく、可愛らしい、いたいけ、愛くるし
いという類の形容詞を用いるのは、あながち媚びだけではないはずだ。
彼女がこのことに気づいてないのなら、臣下を信用してないってことで王女様失格と言えるのでは……。
『いいえ、王女様』嘘ではない、という思いを込めて、俺はまっすぐ王女を見つめた。『他意はございません。
 本日、あなたとあの屋根の上でお会いしたときから存じ上げていることです!』
王女は息を呑んだが、すぐ、うっとうしげに手を振った。
「わかったわかった、ウィル。もう言うな」
252 :04/05/06 05:52 ID:nGByAZP3
『いいえ!王女、あなたは』俺は歯がみして、王女へ身を乗り出した。王女って肩書きがなくとも、自分がどれ
だけ男にとって危険な女の子なのか、ここらでわからせてやらないと。
『鏡をご覧になったことがないのですか?臣下がみなあなたに追従しているとお思いですか?いいえ、あなた
 は真実、鮮やかで可憐、世の女らがうらやむ美姫であられる。少なくとも、俺』ためらいつつも、そのまま続
ける。『俺が今まで見てきた女性の中でいちばん美しい女性にまさるとも劣らない。あなたはそれほどの佳人
 であられるのです、アリーナ姫』
「やめろと言ってる!」
王女が顔を赤くし、怒鳴った。「だ、だから何だ。それと、おまえがラゴスを殴ったのと、どう関係があるんだ?」
『あなたがその手でラゴス候を殴れば、あの男のことです、陰険な方法を使ってあなたに復讐してくるかもしれ
 ません。それがためにあなたに災いが降りかかることになれば側にいた者の責任。ですから、俺が代わりに』
うなじのあたりが痒くなるのを我慢して説明する。そんな俺に、
「それで、おまえが代わりに殴ったってのか?余計なお世話だ!」王女が顔をしかめ、叱りつけるように言った。
「あんな弱虫が、ボクに立ち向かえるわけないじゃないか。だいたい、レイドックの人間のおまえが、ボクにそん
 な気遣いしたってしょうがないだろ」
『レイドックもサントハイムも、関係ございません!』俺は左の拳を握りしめた。『あなたを、お守り、いや』表情
を崩さず、叫ぶ。『守ってやりたかったんです。守ってやりたいんです。あなたを可愛い女の子と思えばこそ!』
口にしてしまってから、ほんの少しの後悔に身体が震えた。これって相当重い台詞のような……まあ、言っち
まったものは仕方ない。
「………」
しかし王女の表情に変化はなかった。むしろ「……守ってやる、だって?」さらにぴくりと眉をつり上げていた。
「ウィル。おまえ、ボクよりも強いと思ってるのか?」
なんでそこだけに反応するんだよ……。
253 :04/05/06 05:54 ID:nGByAZP3
『否、決してそういうわけでは。あなたがこの世界で並ぶ者なしの女戦士であられたとしても、俺は、同じことを
 いたしたでしょう』
ここまで逐一説明してやらなきゃわからんのか。単に“可愛い女の子だから”で済むハナシなのに。
「おかしいじゃないか。弱いくせに、なんで強いやつを守ろうとする」
『ですから、それは、男の性分と申しますか……とにかく、男ってのは、自分が可愛いと認めた女にふりかかっ
 てくる災難ぜんぶを、身を挺して防ぎたいって思うものなのです、ございます!』
いけないと思いつつもさすがに苛立ってきて、言い捨てるような口調になった。
「そうまでボクを守りたいなら、うちの兵士にでもなればいいじゃないか。そのつもりなら、雇ってやってもいい
 ぞ」
しかし、やはり平然と筋違いをのたまわれる王女。俺はいいかげん頭痛がしてきた。この王女様ってずいぶん
と……いや、言うまい。
『それとこれとは違います。兵士があなたを守るのはですね……』
「ああ、もういい!」俺の言葉の途中で、王女が突っぱねた。「ボクは、りくつっぽいのがだいっ嫌いなんだ」
『………』
こんだけ恥ずかしい説明してやって、その答えはこれか。
シエーナからの帰りの山道を二人で登るたび“危ない目にあったら、あんたは可愛いあたしの身代わりになる
のよ”と口癖のように言うマリベルのほうが、よっぽどかわいげがあるじゃないか。
俺は、たまらずに横を向いた。怒りと後悔にゆがんだ顔を王女様に見せたくなかったので。
「ウィル。この話はこれで終わり。いいな?んじゃ、さっさとマーニャんとこ行くぞ」
立ちつくす俺を置いて、王女が歩き出した。
言われたくたって二度とするもんか。忌々しく思いながら俺も一歩を踏み出したとき、
「ウィル」王女の声が聞こえた。「こんど何かあっても、ボクのこと、守ってくれなくていいから」
254 :04/05/06 05:56 ID:nGByAZP3
『………』
俺ははっとなって、姿勢を正した。さっきまでの、早口で詰問するような口調ではなかった。はっきりした言葉で
はあったけれど、喉を震わせて、絞り出すように発した言葉だった。
今になって“照れ”がきたのか?いや……ひょっとすると。
俺の言った理屈が本当はわかっていて、わかってて、無理にとぼけてたのだろうか。
首をひねりながら、彼女を追った。実にわけのわからんお姫様だな。
《アリーナの意識に変化が起きた》
《アリーナの評価がわずかに上がった》

“男は女を守ってやらねばならない。男として産まれてきた意味の半分はそこにある!”
林を東へ、王女と少し間隔を置いて歩きながら、俺はその言葉を思い出していた。グロリアさん(ランドのお姉
様)の酒場で、武器屋のジュラックさんが酔っぱらったときよく叫ぶ台詞だった。
俺も、男と女ってのはそういうものだと思ってきた。ターニアは何かにつけおにいちゃんおにいちゃんとすがっ
てくるし、ビアンカなんかも力仕事や護衛が必要だとすぐに俺に頼るし、マリベルに至っては露骨に“あたしを
守りなさい”と命令してくる。変な言い方だが、男の俺がわざわざ守ってやらなくても、彼女たちが勝手に俺を
盾にしてくる。
そのことに腹は立たない。男の義務と思っているからだ。兄妹や友達どうしも、恋人とか夫婦ってのも、けっ
きょくは、そんな義務みたいなものの上にあるものだと、俺は思いこんでいた。
けれど、ラゴスはどうだ。あいつは、ルナさんを守ってやることもできないくせに、ルナさんの純情さにつけ込ん
で、思いのままにしている。しかも俺に殴られて、女を残したままあっさり気絶してしまう情けなさ。俺とあいつ
が同じ男という人種だというのを認めたくないほどだ。ルナさんにとってどんな魅力がラゴスにあるのか知らな
いが、今夜のことだけでもラゴスに肘鉄食らわせたっていいくらいだ。なのに、どうして……。
255 :04/05/06 06:27 ID:IVnjrVOm
それに。俺は前の王女の後ろ姿を見やった。この王女様もだ。俺のしたことは、そりゃあ自分の手であいつを殴
りたかった彼女にとっては余計なことかもしれない。だが、彼女に女ってことや身分をわきまえる自覚があるなら、
少しは俺の行為を認めてくれたっていいはずだ。感謝しろとまでは言わないが、あれだけ説明してやったんだから、
少しはわかったような顔をしろよ。何にも知らない世間知らずなお嬢様ぶりやがって。
考え思い起こすたび、むやみに腹が立ってきた。空腹というのも手伝い、俺は、さっきの王女のように、大股で歩
き出していた。
『あ!?』
と、立ち止まっていた王女の背中にぶつかりかけた。何やってんだ。怒鳴りたくなって彼女をのぞき込んでみれば、
あんぐりと口を開け、頬を引きつらせている。森の中でマッドロブスターの群れにでも遭ったような表情だ。
俺は、彼女の視線の先を見やってみた。とたんに、立ちすくんだ。
ほんの十数歩先に、呆気にとられる光景――もちろんマッドロブスターの群れなんかではない――が、あった。
「んっ、んんん……っ!はっ、はぁっ、ああ……」
小柄な女が、劇場の煉瓦壁にすがるように手をついている。その女の後ろから痩せた男が女の胸元と腰に腕を回し、
身体を密着させながらカラクリの人形のように前後に揺れていた。下半身を覆うはずの女の下着と男のスラック
スはそれぞれの足下にずり落ちていて、互いの臀部と太股が直接ぴたりと合わさっているのがわかる。
今夜、2度目に見る情景だった。ただし前回の家屋内と違い、野外だ。どのような体勢で交わっているかも、女の尖っ
た桃色の胸先も、髪から飛び散る汗も、月明かりの下、はっきりと見えている。耳をすませば、肌と肌がぶつかる淫靡
な音まで、かすかだが聞こえてくる。
「ほらほら、足りないんなら、ここを、こうっ!」
男は腰を揺らしながら長い指の手を触手のように女の身体に這いまわし、
「そ、そこはぁっ……ひゃあうんっ!」
女は、そのたびに顔を短い髪ごと跳ね上げ、嬌声をあげている。聞く限り、無理矢理ではない……らしい。
見て聞いている俺も、目と目の間が熱くなり、鼻血が出てないかと確かめてみるほど、血が高ぶってきた。
256 :04/05/06 06:30 ID:IVnjrVOm
「んっ、んっ……あぁ、き、気持ちいいですぅ」
あの変な訛り言葉は……もしかしてあの娘、昼間、食堂の前で食券を配ってた、ウェイトレスの女の子か!?
短い髪と、人形みたいな手足。きっとあの娘だ。俺に食券を渡すとき、そばかすの浮かんだ顔でニッコリ微笑
んでくれた、無邪気そうな女の子だった。ルナさんといい、この街の女の子は経験するのが早いのか?
「フフ……そろそろ、本気でいくぜ、セルシア」
「はぁはぁ……こ、これ以上なんてぇ……だめぇえ……」
「なに言ってるんだ。こんなに、腰、動かしてんじゃないか」
相手の男のほうも誰なのかわかった。同じ食堂にいたウエイター。それも、客(俺とミネアさん)が凶器を向けら
れているときに何もできなかった、あのボーイだ。若い男だったが、それでも俺よりひとまわりほど年上だった。
「ふっ、ふっ、セルシアっ!ほら、がんばって、僕を満足させろっ!」
「ああ、あんっ、ああんっ、だめっ、だめぇっ!」
『………』
あぜんとして見守ってしまっていた俺だが、あのボーイがラゴスに怒鳴られてあっさり引き下がる姿を思い出し、
それと眼前の行為に重ね合わせて、いっそう怒りが燃えはじめていた。
あのボーイも、ラゴスも、女を守る力も勇気もない、軟弱で臆病な男だ。
そんな男の風上にもおけない奴らでさえ……こうして、絶対に釣り合わないだろうステキな女をもてあそんでい
る。
なのに……ミネアさんをバルザックから救った勇敢なる俺は、アリーナ王女の罪をかぶってやった騎士たる俺
は、サラボナの白薔薇フローラさんに身分を顧みず愛を告白した勇気ある俺は……まだ、ミネアさんにもアリー
ナ王女にもフローラさんにも、なあんにもしてないんだぞ!ぜんぜんまったく!
もちろんそんなつもりで彼女たちにそうしたわけじゃない。今感じてる怒りだって、ひがみねたみそねみそのも
のだろう。
でも、とにかくあいつらは今夜、女を好きなように抱いていて、一方、俺は……。
257 :04/05/06 06:31 ID:IVnjrVOm
俺は両手の拳を握りしめ、うつむいた。下に小石があった。蹴飛ばそうか迷った。親指の先ほどの石だが、お
楽しみ中の男女の邪魔をするには十分な大きさだ。
「ああっ、ろ、ロイドさぁんっ……うっ、んっ、んんーっ!!」
女の悲鳴のような声が聞こえた瞬間、俺は、足を蹴り上げていた。
小石は、そのままだった。さすがにそこまで俺も野暮ではない。ラゴスにさえ、邪魔をしてしまったことを憐れも
うとした俺なのだから。
このどうしようもない苛立ち、なんとか抑えないと。星空を見上げる。木の葉の間から木漏れ日のように星が瞬
いていた。そして、あちこちから清らかな虫の声が、リンリン、ガチャガチャ、アンアン、と………??
「あ、あ、あんっ、あんんっ……」
「ひぃ、ひっ、ひゃっ、ひぁっ……」
虫の声に混じって、あきらかに人間がうめく声……目の前の女の子が出しているのと種類を同じくする声が、近
くの木陰、藪の中、草むらから反響するように聞こえてくる。もちろん、場所によって違う人間の声だった。男の
声もあれば女の声もある。聞いただけで、声の主のしている行為がわかる声だ。
そうか……俺は気まずさの汗を流しながら、納得した。水を持ってきたときに感じた、まるで見張られているよう
な気配。その気配が今、あからさまな吐息、あからさまな衣擦れの音となっているってことか。
つまり、この林――祭りの裏手の林――は、カップルが大胆で開放的な逢瀬を楽しむ場だったのだ。
そして、俺と王女様は今、そんなカップルたちのど真ん中にいる。
「………」
その王女様は、さっきからぼーっとして立ちすくんでいた。あちらこちらから声が聞こえるため、前にも進めず横
にも行けず、進退きわまっている。隠れんぼで隠れるところがなくて、やむなく木のフリをしてる子供のようだ。
世間知らずの王女様には、ちょっとばかりきつい状態かもしれない。俺にとっても、まったくもって不愉快な状況
だけれど。
258 :04/05/06 06:36 ID:IVnjrVOm
『姫君』
そっと王女の隣に立つと、王女も、俺をゆっくり振り向いた。
どきりとした。
頭頂でほんの少しはねた(寝癖?)丸い赤髪。戸惑って下半分だけ開いた、上目遣いの瞳。満月に影を落とす
長い睫毛。上気して紅に染まった頬。かすかに震えている、半開きの濡れた小さな唇。
可愛い女の子が、ちょっとの間に、年齢以上の艶めかしい色香を漂わす娘になっていた。
俺の胸奥にゾクッとするものが走った。心、そして身体が彼女に引き寄せられるようだった。両腕は彼女の肩を
抱きたがり、唇は彼女に吸い付きたがり、脚は彼女の足を払いたがり、そして胸と腰は、彼女のそれと重なりた
がっていた。いっそ求めるまましてしまえとささやく奴が俺の心に現れ、それはまずいだろと叫ぶ誰かに蹴飛ば
され、さらにその誰かを別の誰かが蹴飛ばす。うずきだした下半身が、やるならやっちまえと一方に加勢する。
そうだ。ラゴスやあんなボーイでさえあんな可愛い娘とよろしくやってんだ。俺だって……。
左の手のひらに、温かい何かが触れる。それを指がぐっと握りしめ、こちらへ引き寄せようとする。
「……ウィル?」
声に、俺ははっとなった。王女が右腕を一瞥し、怪訝そうに眉をひそめて俺を見上げていた。
『あ……』
彼女の表情の変化に、俺は息を呑んで、左手をさっと引っ込めた。無意識に彼女の腕を掴んでいたのだ。
顔を上に向け、まぶたを二度三度強く閉じた。何考えてたんだ俺は。この娘は、王女様だぞ。
こんな淫乱な連中のいる場所からは一刻も早く離れるに限る。でないと、健全な俺たちまでおかしくなっちまう。
『ひ、ひめぎ……』
うわずった声を出してしまい、あわてて気を引き締める。
『姫君っ。走りましょう!』
「あ、ああ」
王女が周りを見回しながら、紅いままの顔でうなずいた。
俺たちは、二人とその他に気づかれないよう道を選んで、そっと走り出した。
《アリーナの意識に変化が起きた》
《アリーナの評価がわずかに上がった》

武器防具屋の建物が見えるところで、俺たちは木陰に隠れて足を止め、呼吸を整えた。高ぶった胸の鼓動を
抑えるためだった。濡れ場を2度も見聞きした上に、王女様への卑猥な衝動……これも、モンバーバラという
歓楽街と、祭りの雰囲気のせいだろうか。
259 :04/05/06 06:39 ID:IVnjrVOm
「ったく……」
一息ついた王女が、後ろ髪をかきながら顔をしかめる。また、頬は紅い。
「あ、あんなとこで、あんなとこしてる奴が、あんなにいるなんてな……」
『それだけ、平和だということですよ』型にはまった台詞を言ってしまい、俺は苦笑いをした。まだ動揺が残って
て、気の利いた台詞が浮かばなかったのだ。
「平和、か。そうかもな」王女がひとつ息をつく。「親父が……王が病気でも、人びとには関係ないもんな」
『ご病気、なのですか。お父上は』そういや神官も、昼間のラゴスも、そんなようなことを言ってたっけ。
「おまえ、知らなかったのか?まっ、そうだろうな。ゲバンの奴が、他国には知らせないようにしてるしな」
『それなら……』城に帰って看病されたほうが、と言いそうになって、俺は言葉を止めた。そのくらいのことは、
俺が言わなくても、たとえばあの神官が口を酸っぱくして言っているはずだ。だから、
『姫君のご心痛、お察しします』とだけ俺は言い、頭を下げた。
つまりは彼女は、病の父王を放り出して祭りに来ている親不孝な娘ってことになる。しかし、ときどき見せた複雑
そうな表情から考えて、きっと彼女には彼女なりの考えか悩みがあってこうしてるのだろう。そう思うことにしよう。
「ば、莫迦、かたっくるしいことするな。ボクがボクだってこと、バレちまうだろ」
王女があわてて、行き交う人から顔を隠す。
「顔知ってる奴は、この街にはそんなにいないだろうけどさ。大騒ぎされるの苦手なんだ」
いろんなことが嫌いな王女様だな……。
「とにかく、まずは早くマーニャに会おう。それと、んー、なんか食べたいな」
王女がそっと腹部に手をあてた。俺もさすがに腹ぺこだ。一段落ついたら食事にしてもいい。広場に行けばタダ
で料理は食べられるようだし。
「行くぞ」
王女が、それとなく人々を探りながら、そっと木陰から出た。
「ウィル。おまえは右を見張ってくれ。間違ってもあの莫迦に見つかるなよ」
あの莫迦……ラゴスじゃないな。俺たちを追いかけた、あの神官のことだ。
背の高い男だったし、それにあの帽子だ。群衆の真ん中にいたってすぐに見分けがつく。
それでもできるだけ細かく人々を見回しながら、俺は王女の後ろについて歩き出した。
1回だけ支援
261 :04/05/06 06:43 ID:IVnjrVOm
月は真上に上がっているというのに、未だに祭りの場から人の減る気配がない。食卓に使っていた机に薄衣だ
けの踊り娘が数人のぼり、音楽に合わせてゆったりとした動きの舞を披露している。男たちは歓声を上げ、机
の脇にしゃがみ込んでいい角度を探す。若い女たちは恋人の醜態に辟易し、母親たちは子供の目を覆ってい
る。まだ夕食を食べ足りない者たちは、まだ食皿の残っている卓に集合して、全員が知己知友どうしのようにグ
ラス片手に歓談している。
王女は、そんな第二の舞台と化した広場を避けて、大通りのほうへと向かっているようだ。この先には、ミネア
さんと昼食をとった酒場がある。
なるほど。サラボナでもマーニャさんは酒場にいた。マーニャさん、あそこにいるのか。
と思っていたのだが、王女は酒場を素通りし、東へ足を転じた。なんだ、違うのか?
このまま大通りに行くのなら、宿屋、教会、そしてミネアさんが占い卓を開いている裏通り。あとは、ミネアさんと
マーニャさんの下宿先のあの果物屋だ。けど、そのどれもが、祭りの終わらないうちにマーニャさんが行くような
場所ではない気がする。
俺は足を速めて王女に追いつき、思い切って聞いてみた。
『姫君。マーニャさんの居場所、ご存じなんですか?』
「知らない。そのへんにいるんじゃないか?」
『は……』
肩を落とす俺。知らなくてずんずん歩いてたのかよ……。
「じゃあウィル。おまえは、どこか心あたりあるのか?」
むっとしたように王女が聞いてきた。俺に振られても困るんだが。マーニャさんの行きそうなところは―――

1.当たりをつけ、行ってみる(2つまで。順番も)
 1−1.酒場 1−2.劇場 1−3.踊り娘の控え棟 1−4.広場 1−5.マーニャさんの下宿先
 1−6.教会 1−7.フレアさんの家 1−8.宿屋 1−9.林の中 1−10.街の外
2.アリーナ王女に任せる
3.ミネアさんに相談しに行く
常識的に3としたいが意識に変化があるならば
1−3、1−9
263場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/05/06 07:45 ID:IVnjrVOm
はあ・・・投稿終えて嘆息。2週間もらってこれ。細切れにすればいいのに欲張りすぎ、と毎回思うのに結局・・・
しかも安っぽくなるのを承知で主人公に語らせたり野外プレイに遭遇させて無理に話を進めたり。まさに手抜きだなと脱力
このままでは5月使ってもサントハイムシナリオどころかモンバーバラ祭りすら明けない。こういうのを自己責任という
漏れは平日よりもなぜかGW中のほうが忙しかったりして。肝心のPC修理もできずじまい。こちらもいったいいつになるのやら

>228 うっ・・・本当のところ5つ選択肢で4あたりに「ただ殴りたかった」が入る予定だったんでつが
 万が一選ばれてしまった場合話がぜんぜん進まないことになるのであえて外しますた。スミマセヌ
>229 実はこのコメント書いてるとき2度も落ちますた・・・おっしゃる通りハード面の原因だとしか思えんな
>230 ここでの正解は実は2だったりするのですが誰もいらっしゃらなかったっすね(好感度は下がりますたが)
>231 1だと、アリーナに「ふーん、あっそ」で流されますた。特に下がりもしない代わりに何も起こらないと
>232 そのうちまたタメ口調に戻るかも。てか戻してもらわないと書いてる漏れのがもどかしくてしょうがないw
>233 ギャルゲーのパターンですが、果たしてパターン通りいったかどうかは・・・
>234 DQでギャルゲーらしさというのが何なのか、漏れは未だ模索しながら書いとりますです
 そういえば18OVER DQさんのほうはいよいよ今年の夏発売でつな〜
>235=239,236-238,240,243-244 読者が増えると嬉しいというのは本音ですが、やはり分相応ってのがあります
 駄文書きの漏れは、大きすぎる期待をプレッシャーとして変換してしまうような軟弱人種ですし
 金になるならなんてとんでもなく、金払って書かせてもらってるんだという心構えで書いてまつ
 この板にもSS批評スレが立ってますたが、このスレはスルーしてもらってるようでほっと一息(弱)
 ともかくも、スレを覗いてくださってるみなさんのご期待には添えるよう、日々精進していきたいでつ
 その上で自信がついたら漏れ自身が宣伝に走るかも・・・ってそれとドラクエ8発売とどっちが早いかって話ですがw
264場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/05/06 07:49 ID:IVnjrVOm
>241,242,245,246 毎度毎度の上に今回はなんと約2週間お待たせ・・・ひたすら、すみません
>247-249 ああ>17を書いてわずか2ヶ月なのにもうギリギリ更新になってしまうとは
 次の更新は今週末に間に合うようにしまつ!・・・ところで週末って日曜も含みますよね?(おい)
>250 今年のGWも終わってしまいますた。他のスレなどで書き込みが少なかったのは鯖落ちしまくったせいでつかね
>260 支援ありです。今回も2000が落っこちたおかげで1レス書き直す羽目に・・・
>262 連れ込むおつもりでつかw 「意識」も大切ですが「好感度」が伴ってこそですので、考慮の上おながいしまつ

今回、1.を選ぶ場合のルールとしては、
最初行く場所で最も多かったもの(1つだけのもの)
次に行く場所で最も多かったもの
を選択といたします(同数の場合は総数、先着、の順に優先)
なお、最初に行った場所でマーニャが見つかった場合、次の場所へは行きません
1-3→1-1
ついでにアリーナに酒飲ましちゃえ

あんまり動くとデカイ帽子被った変な人に見つかるかなぁ。
1−3
1−5

この辺かなぁ…?
普通に3にしとく
更新キター
1−1、1−3で。
3
そろそろミネアたちにも出番を
1-3→1-1

普通だなぁ
そろそろウィルの言葉使いをなんとかしてほしいなーあ
選択肢選ぶのが面倒なんで2
1-3 , 1-9
無難に保守
保守
保守
一週間ぶりに来たけどまだ更新されてないね。
補修工事。
保守
保守
GMさんのパソコンが早く直るように祈りの合掌
(-人-)ナムナム
もうすぐ、その…2週間経ってしまうのではないか、と…
284場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/05/19 23:29 ID:C8gBl19K
『姫君。劇場の踊り娘の控え室がどこか、ご存じでしょうか?』
「ああ。それならあれだ」
王女が指さしたのは、俺たちの登っていた建設中アパートの向こうにある4階建ての細く高い建物だった。
あれって……さっき、入り口のとこで人が群がってた建物だよな。
「言っとくが、あそこにはマーニャはいないと思うぞ。マーニャが劇場にいるのは、いつもダンスの前だけだ」
『そうですか……』俺は、それでもじっとその踊り娘の控え棟を見つめた。いつも、と王女は言ったけれど、
あてにしていいものか。この娘を信じないわけではないが、王女様がそんなしょっちゅうこの街に来てるはず
もない。マーニャさんにとっては“例外”の日が、王女様にとって“いつも”の日かもしれない。
考えててもはじまらないな。ともかくは行ってみよう。
『姫君。それでもやはり、最初はあれに伺ってみましょう。他に探すあても思いつきませんし』
「ん……それもそうだな」
うなずいて、王女が再び俺の前を歩き出す。
「でも気をつけろよ。まだあの莫迦があのあたりをうろついてるかもしれん」
『はい、わかっております』
もし今見つかったとして、あいつから逃げられるか。俺は彼女の後ろ足を交互に観察してみた。健康な人間
の本来の脚の動きではない。しかし、怪我をしているんだと注意して見てやっとわかるぎこちなさだ。この様子
であれば、彼女なら人並み以上の速さで走れるはずだ。早めに薬草を使わせておいてよかった。
バーベキュー会場を避けて、俺と王女は広場の外縁をまわった。いい匂いがしてきて辛いけれど、今は無視。
「………」
王女が行き交う人からしきりに頭に手をやっている。何をしてるのかと思ってすぐ気づく。髪を隠しているのだ。
こうまで見事な金髪とクセッ髪をもった少女は、世界中探したってこの王女くらい。あのトンガリ帽子よりもよほ
ど珍しい。この人混みの間だろうと、知る人が見れば彼女と見分けられてしまうかもしれない。
何かないかなと考えてみたものの、思いつかなかった。いま俺が持っているもので頭にかぶれるものというと
この[ふくろ]くらいだが……仮装行列じゃあるまいし、王女様にこんなものをかぶって歩いていただくわけにも
いかない。
285 :04/05/19 23:34 ID:C8gBl19K
昼間、帽子でも買っておけば良かったか……ちらりと防具屋を振り返って、肩をすくめた。
《アリーナの評価がわずかに上がった》

『お祭りのときいつも、ここはあのような様子なのですか?』
「ああ。夜中までな」
控え室入り口の人だかりは、さらに増えていた。口々に踊り娘らしい女性の名前を叫んでいる男たちは、大半
が平凡な服装や船員だが、中には祭りと舞踏会を勘違いしてやって来たような花束を持って髪を固めたスーツ
姿のキザな男や、今じぶん出歩いていれば不良少女と言われても自業自得という歳の女の子たちのグループ
もある。その人々を、二人の女が扉の前でにこやかに応対しており、花束や小箱、手紙を受け取っては後ろの
娘に流している。
『あの様子だと、マーニャさんがいたとしても会わせてはもらえませんね』
じっさい、聞こえてくる声は「マーニャさんにも一度」とか「マーニャさんにこれを」「いくらでも払うからマーニャと!」
などと、マーニャさんについてがいちばん多い。それをベテランらしい女二人がうまくあしらっている。
「ただ見てたってしょうがない。とにかく行って、聞いてみるぞ」
『あっ、お待ちください』
木の陰から出て行こうとする王女を、俺は手を伸ばして制す。さすがに、あんなむさ苦しい集団の中に一国の
王女様を飛び込ませられん。
『あの中に割って入るとなると、誰かしら、姫君を見知った人間とぶつかるかもしれません。まずは俺が一人で
 行ってまいります。マーニャさんがいたら合図いたしますので、姫君はそのとき』
「わかった。油断するなよ」
俺は、王女と入れ替わるように木陰から通りに出、人のかげに隠れながら、押し合いへし合いしている連中に
近づいた。神官の帽子は、ここにも見えない。
ようし、それなら臆さずにいくか。俺は[ふくろ]を背負い直し両拳を握り、人塊へ突撃した。
286 :04/05/19 23:35 ID:C8gBl19K
……が。
すぐに無理だとわかった。
なんとか隙間を見つけて押し入ろうとしても、前や横の人間たちも俺と同じかそれ以上の力で前に進もうとして
るのだから、どうにもならず弾き出されてしまうのだ。扉の前の女にやっと会えてプレゼントを渡すことで妥協し
た男たちが、一人として戻ってこられないほどだ。動けるのは俺を含めた外側第一層にいる連中だけで、押し
くらまんじゅうの中にいる連中は進むも引くもできず、しかたなく声を張り上げている。しばらくこの八方ふさがり
の状態は続きそうだ。
「はいはい。ちゃんとマーニャに届けといてあげるから心配しないで。次の人……まあすばらしい櫛ね。これは
 誰に?え、ルナ?ええ、渡しておくわ。はい次」
こんな状況にも慣れているのか、控え室前の女はてきぱきと贈り物をさばいている。聞いていると、目当ての踊
り娘がいるともいないとも言っていない。マーニャさんについてもしかり。この棟の中にマーニャさんたちがいると
思っての人だかりが、なかなか消えないのだから、いるように思わせるフリをしているのだろう。
さて、俺にとって大切なのは、マーニャさんが本当に中にいるのかいないのかだが……ここから中に声は届か
ないし、聞こえたってこの状況、果たして出てきてくれるかどうか。
俺は、いったん王女の隠れている木を振り向く。思った通り、この群衆の中には兵士らしい体格の男も何人か
いた。もし王女がこの状況にしびれを切らして出てきたら、たちまち大騒ぎだ。
お姫様、まだおとなしくしていてくれよ。
心でささやいてから、ふたたび人塊に向き直る。もう一度だけ、アタックしてみるか。
「きみきみ」
そのとき、右から声をかけられた。俺か?と振り返ってみると、水を汲みに行ったとき池のところで会ったあの
痩せた船員が、ニコニコして立っていた。
「なんだ、きみもやっぱりマーニャさんを探しに来たんじゃない。」
まずいところで変な奴に会ったな。そういやもう一人のでぶっちょは……と探したが見あたらない。食事にでも
行ったか、まだ池の水を飲んでるのか。いくらマーニャさんのエキス水だからって池ごと飲み干さなきゃいいが。
「けどあいにくだったね。マーニャさん、中にはいないよ」
支援
288 :04/05/19 23:53 ID:YDwbiNad
『え。どうしてわかるんですか?』
欲しかった情報に驚いた俺が姿勢を正すと、船員は得意そうに笑った。
「マーニャさんが舞台終わったあとでここの裏口から出ていくのを、僕の友達が見てたんだ。いつもそうなんだよ
 マーニャさんて。きっと、秘密の特訓でもしてるんじゃないかな」
『そうだったんですか』
王女の“いつも”はマーニャさんの“いつも”だったのか。
ここにはマーニャさんはいないと決めてよさそうだ。王女に言ってほかを探すとしよう。
『ありがとう。助かりました』
「いやいや、気にしないでいいよ。それより、一緒にマーニャさんを探さないかい?」
『すみません。ひとを待たせているので、俺はこれで』
「あ、そう。うん、いいよ。ぼく一人で探すから」
気落ちする男を置いて、俺は王女の待つ木のほうへと走った。
あとマーニャさんがいそうなところというと、やはり酒場だな。行ってみて、マーニャさんがいてもいなくても、軽い
食事くらいはとりたい。昼間の騒ぎのことがあるからちょっとばかり入りにくいけど。
『……?』
前の木の後ろから、王女の手だけが出ていた。指先を俺へ向けたり、縦に振ったりしている。
何やってんだ王女様?
俺は首をかしげ、何となく立ち止まる。と、背後に、ブーツの足音が走り寄った。かすかな金属音。
しまった!!
俺はとっさに振り向いて身構えようとした。しかし、
「うごくな。逃げようとすれば刺す」
すでに、鋭く尖った冷たいものが心臓のうしろに押し当てられていた。
「……姫様を、どうした?」
低い、震えた声。あの神官戦士に間違いなかった。
289 :04/05/19 23:55 ID:YDwbiNad
『く……』
木陰の手は消えていた。俺は歯がみをする。さっきの手振りは、“後ろを見ろ”“逃げろ”というサインだったのか。
うかつだった。情報を得たことで、警戒せずにまっすぐ戻ってきてしまった。
『し、神官殿が、こんな街中で抜刀してもよろしいのですか?』
「私の役目はアリーナ姫様をお守りすること。そのためなら、どんな手段を用いてでも」
奴の声には度胸がすわり、冷静な怒りがこもっていた。本気だな。この様子だと大声出して人を呼んでもまず動
じないだろう。俺がそうしようとしたとたん腕を切り落とすくらいは、やりかねない。そういう恐ろしい響きだ。
「もう一度お聞きする。姫様は、どこだ?」
さらに冷たい神官の声。こいつは魔法も使う。黙っているとまずい。
冷や汗たっぷりの手を握りしめながら、俺は必死で頭をめぐらせた。いま王女を連れ帰ってもらうと困る。ここは
まず、王女が逃げる時間を稼ぐ。それから見当はずれな場所を教えてやり、なんとか隙をみて逃げる。隙ができ
なかったら……そういう最悪の事態はそのときになったら考えよう
『姫様って、誰のことですか』
「とぼけるのか」
『うっ……』チクリと痛みが走った。剣の切っ先がマントごしに背中に触れたのだ。
「陛下のただお一人の姫ぎみにしてサントハイム王国第一王位継承者であられるアリーナ王女。きさまが先ほど、
 その汚らわしい手でさらっていった御方だ。さあ、知らぬとは言わせない。姫様をどこへお連れし……いったい
 姫様に今まで、な、な、何をしていたのか……」
冷たく低かった声が、急に甲高くなってきた。背中の剣が震えて、俺の背に切り傷が入る。痛みよりもぞっと恐怖
が湧いた。いま激昂にかられてひと突きされたら命はない。
俺は、王女が隠れているはずの木を見やった。もう逃げたか、まだいるのか。どちらにしろ、神官をこの場から離
さなければ。
『姫君なら』答える俺も震えた。『あっちの林の、倉庫の中におられますよ』
290 :04/05/19 23:56 ID:YDwbiNad
「林だと?真実だろうな」
『ええ本当です。教えたんですからさっさとその剣をおさめてくれませんか』
俺はさりげなく身体を反転させようとした。しかし、剣は俺の背に突き当たったままだった。
「では案内してもらおう。もし偽りであれば、あなたには神のもとへ懺悔の旅に行っていただく」
この声……ラゴスなんかと比べてはるかに迫力がある。本気だな。
背中の剣に二度背を突っつかれ、俺は黙って林のほうへ歩き出した。
「立ち止まるとき、走るときはその前に私に言うこと。でないと……わかるよな」
通り過ぎる人が驚いて立ち止まり、俺たちを見送っていく。くっ、かなり屈辱。
背後にぴったりくっついてるってことは、なんとかステッキを使って横に払えば、逃げる間合いくらいつくれるな。
俺は[ふくろ]の紐を握りしめる。ダメもとだ。汗で落としたフリをして……。
「クリフト、何をやってる。剣をしまえ!」
王女の声がした。後ろの足音が止まり、背中の剣が離れる。
しめた!俺は地面を蹴って左前方へ転がり、すばやく神官に向き直った。
神官は斬りかかってはこなかった。剣を俺に向けたままで後ろを向いている。
視線の先には、腰のところで腕を組み、憮然としている王女がいた。逃げ出す様子はなく、近づいてくる。
どうして逃げないんだ、と考えてすぐに答えは出た。このお姫様もターニアビアンカマリベルに劣らずお節介焼き
なんだっけ。俺は複雑な思いで彼女を見つめた。やれやれ、借りが溜まる一方だ。
「姫様!ああ、よくご無事で!」
神官が剣を投げ出し、彼女に駆け寄って跪く。「姫様?」「姫様だって」いつの間にか遠巻きに集まっていた野次
馬がざわめくのもお構いなしだ。いま王女が“逃げろ!”とでも行ったら、真っ先にこの神官の帽子に蹴りを入れ
てやるのだが。
「大事に姫君をお守りできず、申し訳ございません。もしも姫様に何かあれば、このクリフト、どう生きていったら
 ……いや!陛下に、どうお詫びをすればよいのか」
「いいから、頭を上げろ。大騒ぎになっちまう」
王女がしかめっ面で言う。「生きるとかお詫びとか……んーとにおまえ、いつもいつも大げさな奴なんだからな」
291 :04/05/19 23:57 ID:YDwbiNad
「いいえ。姫様が、御身の大切さをおわかりになっておられないのです!」
怒ったような声で叫ぶ神官。俺と王女はあわててギャラリーを見回す。
この神官、本当に蹴り入れたくなってきた。周りを見てものを言えっての!
「よろしいですか。いくら腕に覚えがおありとはいえ、お一人で出歩かれるのは危険すぎると何度もお止めいた
 したでしょう。それに姫様だとわからずとも、このようないかがわしい街には不逞の輩が必ずいるもの。その
 ような男どもに取り囲まれれば、姫様とて……あああっ!」
側頭部に両手をやり、悲鳴じみた声をあげた。なんなんだ。と俺が思ったとき、神官はいきなり俺へ向き直った。
「姫様を手にかけたこの者、成敗して見せしめにいたさねば!」
おいおい。誰が誰を手にかけたって……そりゃあこの王女様なら俺も手にかけたいけどさ。
「覚悟!」
叫ぶなり、神官が剣を横に薙いできた。『っと!』俺は飛びすさってかわす。なんだ、神官戦士というわりには、
剣はそれほどうまくない。フランコさんの剣のほうが、踏み込みも振りもよほど鋭い。
「よせ莫迦。剣を退け!」
神官を怒鳴りつけ、王女がさっと俺の前に立つ。「少し変なところはあるが、ウィルは悪いやつじゃない」
どっちがだ。
「しかしこの男は……」
未だ険しい目つきで俺を見据える神官。と。
「………?」
急にその表情のまま神官が固まった。目は大きく見開き、口がゆがむ。
いったい、どうしたってんだ?
「あ、あ、あなたは、もしやあの……。ホルス殿下の……たしか、ウィル殿とおっしゃるのでは!」
『え?……そうだけど』
俺は、思わず王女と顔を見合わせた。どうしてこの神官が俺のこと知ってるんだ?
「やはりそうでしたか。ああ、知らぬ事とはいえ大変な無礼を。申しひらきもございません」
神官が片膝をつき、帽子を脱いで罪を謝してくる。
俺は茫然としてその神官を見下ろした。俺の顔と名前、ホルスの友達ということを知ってるってことは、俺と会っ
たことがあるってことだ。しかし、まるで思い出せない。
『あの……ええと、どういうことですか?』
「お忘れですか。3年前。レイドックの東の塔にて、私にお会いになったはず」
292 :04/05/20 00:01 ID:RP4th8CP
『へっ?』
3年前、東の塔。俺の記憶とぴったりだった。しかし……。
『じゃあ、そちらの王女様に蹴飛ばされたとき……?』
「はい!思い出されましたか。まことに遅くなりましたが、あのときの無礼、どうかお許しください」
神官がさらに頭を深々と下げてくる。まいったな。俺は額に手をやった。王女に蹴飛ばされたことは思い出した
が、あのとき、こんな背の高い神官に会ったっけ?
『その、クリフト殿でしたか。申し訳ないが、あなたをまるで俺は覚えてないんだが』
「えっ?そうなのですか。しかし、私の名をご存じでいらしたようですが」
『それは……』
神官の横で腕組みをして首をかしげてる王女を俺は見やる。自分の名を王女が偽名に使ったと知ったら、この
神官どうするだろうな。
それはそうと、いまこの神官は、あのとき俺たちに無礼を働いたようなことを言った。あのとき俺たちに無礼をし
た人間は……そもそも王女自身の行為が最大の無礼なんだが、そのあとのただ一人。「――様を侮辱なさるの
 か!」と俺の襟首を引っ張った、あのチビしかいない。どんな奴だったっけ。緑色のガキにしちゃ重苦しい
服を着ていて、髪は曇りの海みたいな濃い青で耳のところで切り揃えられてた。鼻が高くてあごが尖ってて、意志
の強そうなまっすぐな眉と藍色の瞳――ちょうど目の前の神官のような……!?
『じ、じゃあ!』思わず甲高い声になった。『あんときのチビ……いや召使い、じゃなくて、神官見習いが?』
「はい。おっしゃる通りです。私です」
ぽかんと俺は口を開ける。俺の肩ほどまでしかなかったあのガキが、俺より頭一つ大きい背の神官に……。
「私といたしましてはウィル殿そしてヘンリー王子ご本人にも直接謝罪したいところでしたが、なんでも、あのあと
 ご体調を崩されたとか。もしや姫様の所行のためではと気をもんでおりました。しかも私め、それをすっかり忘
 れていたあげくの先ほどの愚行……重ねて、お詫びいたします」
『いや、そこまでしなくても。誰にでも誤解というのはありますよ』
こうまで何度も跪かれるとギャラリーがうるさい。俺は神官をを助け起こしてやった。立ち上がって背を伸ばすと、
やはり俺よりもずっと高かった。
293 :04/05/20 00:04 ID:RP4th8CP
3年でこんなに背って伸びるものなんだなあ。俺もあれからかなり伸びたつもりなんだが、この神官にはかなわな
かったってことか。ヘンリーと会ったら話さなきゃならないことが、また一つ増えた。
『でも、俺もヘンリーも、蹴飛ばしてった姫君もクリフト殿も、いったいどこの誰なのか知らなかったんですが……。
 クリフト殿は、ご存じだったんですね』
「はい。あのときは気づきませんでしたが、そのあとで私たちの警備にあたっておられた兵士に特徴を並べて聞い
 てみたところ、ラインハットのヘンリー殿下、そしてホルス殿下がご親友のウィル殿とわかったのです。大あわて
 で陛下のお耳に入れた上で、レイドック大帝陛下、ラインハットの使節の方々とに謝罪をいたしました。さいわい、
 寛大なる対応をされ、私はこうして生きながらえております」
『………』
そのせいか。東の塔の人物について箝口令ひかれたついでに、俺とヘンリーが東の塔に数日軟禁されたのは。
サントハイムの王女が泊まってる塔に俺たちがいたってことになれば、レイドックの城の人間なら誰だってすぐ
前の年の大騒ぎを思い出しただろうからな。閉じこめられたときは何も言われなかったけど、やっぱ、バレてたっ
てことか。
「なんだよ。ふたりして、ボクをのけ者にして」
アリーナ王女がムッとした顔で割り込んできた。「クリフト。じゃ、おまえ、ウィルを知ってたのか?」
「姫様。姫様こそウィル殿を覚えておいでではありませんか?」
「ボクが?」
「はい。3年前、レイドックへ陛下と行かれたときですよ。姫様が私たちの隙をみて塔のお部屋から例のごとく
 お逃げあそばして階段を滑ってゆかれたとき、運悪くのぼって来られた男児二人を蹴飛ばしあそばしたことが
 おありでしょう。そのときのお二人のうち一人はラインハット王国第一王子ヘンリー様だったとはあのときお話
 いたしましたが、もう一人が、ここにおられるウィル殿なのです」
294 :04/05/20 00:10 ID:RP4th8CP
説明を聞くなり、王女はまぶたを大きくつり上げて、俺をまじまじと見つめてきた。
「なにっ、ほんとうかウィル?じゃあ、あのときのスケベ面した男が……ふうん、そうだったのか」
スケベ面……否定できないのが悲しい。あのとき俺らは性懲りもなく、“どこかの国の王女”の部屋をのぞきに
行こうとしてたんだから。
「初めて行った国だったから、どーしても見物に行きたかったんだ。けどいくら頼んでも、親父もクリフトも聞く耳持
 たずだったからさ。抜け出せたはいいが、すぐ追っかけられて……急いでたもんだし、止まろうにも止まれなかっ
 た。怪我は、なかったのか?」
『はい。幸い、俺もヘンリーも打ち所がよく……』
「そりゃあ良かった。勢いのまま思いっきり蹴飛ばしちまったから、気にはしてたんだ。すまなかったな」
『いいえ。昔のことですし、恨みにも思っておりません』
ま、閉じこめられてる最中はヘンリーも俺も蹴飛ばした相手に文句も言ってたしてたけど、けっきょくは仕返しが
てらもう一度会いたいってことでまとまったな。俺にとってもヘンリーにとっても、彼女はそれほど鮮烈で魅力的な
女の子だった。
「ところで、ウィル。おまえ、ホルスの奴だけじゃなく、ヘンリーって王子の友達でもあるんだな」
『はい。ヘンリー王子とも親友の間柄でございます』
「ふーん。するとウィルは二つの国の王子と友達なのか。いいな、そういうのって」
頬をゆるませ、どこか子供っぽい瞳で、王女が俺を見つめる。
『……そうですね。一介の村人の俺がヘンリーとホルスに出会え、友達となれたこと、じつに幸運と思っております』
ライフコッドの山で迷っていたヘンリーとホルスを俺が助けたのが最初だった。あれも幸運と言うなら幸運か。
「ウィル。おまえ、ホルスもヘンリーも普通に呼んでるんだな。王子なのに」
『ああ、はい。それは友達ですから』
それの最初は“友達”ではなかった。ヘンリーに親分と呼べと言われて、俺が断固拒否して、取っ組み合いになって、
けっきょくお互いに怪我させて……。村長にこっぴどく怒られてきた俺に、待ちかまえていたヘンリーが今度こそ子分
になれと言ってきて……以後繰り返し。ホルスはそばでおろおろして見てただけ。
それが今やヘンリーとは親友、ホルスともまあ友達どうし。考えてみれば不思議な縁だ。
295 :04/05/20 00:13 ID:RP4th8CP
「よしっ、ウィル」王女が思い切ったように言った。
「そういうことなら、ボクのこともアリーナって呼んでくれないか」
『え?』
俺は驚いてアリーナ王女を見つめ返した。彼女は、ニッと笑って、片目をつぶってきた。
「ひ、姫。いくらなんでも、それは」
神官が、あわてて口を出してくる。
「いいじゃん。ボクだけを様づけで呼ばせてたら、友達の王子ってのが文句つけてくるかもしれないだろ」
「そうですが、それは他国のこと。なにも姫様までがお付き合いなされなくとも」
「べつに合わせてやるってわけじゃない。ウィルとは、初めは普通に喋ってたしさ。元に戻るだけだ」
「そ、そうだとしてもです。ウィル殿は……」
「うるさいな。おまえには聞いてないぞ。ボクは、ウィルに聞いてるんだ」
そう言って神官を黙らせると、王女は俺に向き直った。
「な、いいだろウィル。それとも……ボクとそういうのは、いやか?」
唇をすぼめ、切なげな探り目で、王女が俺を見上げてくる。
『………』
可愛い!と俺の心臓が跳ね上がった。こんな甘えるような顔もできるんだな。元気なお姫様ってだけじゃなかっ
たのか。
「コホン!」
俺が答えようとしたとき、横の神官がわざとらしく咳払いをした。いろいろと気にくわなそうな顔で、俺をじろりとにら
むようにしている。
ま、俺の返事は決まってるんだが―――

1.『姫君がそれでよろしいとおっしゃるのであれば、そういたします』
2.『そうさせてもらえるならありがたいと存じていたところ。お言葉に甘えてしまう阿漕さをお許しくだされば……』
3.『いいえ。ありがたきお言葉なれど、そのような無礼な物言いはとても』
4.『そうか。じゃあ遠慮なく呼ばせてもらうよ、アリーナ』
5.『あいにくですが、俺にも友達を選ぶ自由というものがありますので』
>「な、いいだろウィル。それとも……ボクとそういうのは、いやか?」
>唇をすぼめ、切なげな探り目で、王女が俺を見上げてくる。

(*´Д`)/lァ/lァ 誰か絵描いてくんないかな

1ね
4
なんつーか、別にいいんだがそろそろ他キャラに行って欲しいなあ…
4

これからどうなるか楽しみ。
4で

場つなぎ氏乙
更新キター
4で。
>297
ま、のんびりってのもいいんじゃないの?
301場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/05/20 00:57 ID:RP4th8CP
見栄切っておいてまたも2週間ギリギリ。外は台風で内は自己嫌悪の嵐
どうも他のPCからこの2000マシンを介してネットに接続すると2000が落ちるらしい
今回も書き込んでる最中3度も落ちて結局あきらめ。自由度がだいぶ低くなるけれど仕方なひ
スレは300レスで約200kb。今スレも完走は無理ぽそうでつな・・・

>265 小説だと平気で酒飲んでましたねアリーナ。15歳の小娘の分際で・・・
>266 はい見つかりますた。ちなみに2でも見つかりますたw
>267 3だと事件発生
>268 最初に1−3選ぶ方多かったでつね。見つかる選択肢だったんだけど
>269 この場合の普通は3なんでせうか。3だと話をけっこうすっ飛ばせますた
>270 今回も遅くてスミマセソ。最初1−1ではとりたてて何も起きませんですた
>271 ミネアってこの板であんがい人気ですよね。地味なのにw
>272 普通がイチバンかもしれませんですよ・・・って前と書いてること違うような
>273 それが今回の選択肢でつ
>274 め、面倒だからって・・・そりゃたいていのギャルゲーは3択ですけれども
>275 2度目の行き先1−9だと、やはり事件発生ですた
>276-281 お世話になりまつ!保守してもらうたび張り切ってキーを叩き始めるも数分でダウン・・・なぜだああ
>282 普通に使うぶんには一切問題ないんでつ。更新遅いのは漏れが欲張りすぎるからでつ
>283 今回もギリギリというか半アウトですた。平謝り m(_ _)m
>296 一番乗りありでつ!これ好感度高い場合にとっといた表現で反則なんでつよ。サービスってことで
>297 漏れも書きたい・・・けど遅筆と優柔不断がそれを許さない。ともあれ次でマーミネ再登場でつ
>298 4だと・・・まあ別に漏れとしては構いませんよどうなっても( ̄ー ̄)
>299 。・゚・(ノД`)・゚・。 ここまでお待たせしたのに温かいお言葉ありがたう
>300 うう、あまりのんびりもしてられません。今年中に終わらない・・・
 サントハイム編を3月には終わらせて4月から新シナリオという予定を1月過ぎた時点で立ててたのに・・・狸の皮だらけ

ところでまだ先の話で念のためなんでつが、バッドエンド(or攻略不可)もありなんでつよね?
4

>バッドエンド(or攻略不可)もありなんでつよね?
エー


八方美人(・A・)イクナイ
おいらはアリーナ一筋、4
4だろ主人公なら
1かな
で、直って無いじゃんと突っ込まれる。
かろやかに4
5
微妙に修羅場?
4 つーかさ、なんでクリフトこんな強いの
あいつ魔法系じゃないんか
ノリで
4
>>309
たんに主人公が弱いだけだと思われ

無難に言ってみる。
4かな。
主人公は最終的に何股かけることになるのか。
4 何ヶ月も先の予定を立てられる場繋ぎ氏は偉いね。

結果はともかく。
保守
保守
保守してもいいかのう・・・
まじやばい
ヤ バ い ん じ ゃ な い の か こ れ は
明日で2週間やね
320場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/06/03 02:40 ID:xdjpSVbC
さらりと言い、『あらためてよろしく』と、彼女に手を差しのべる。
ふうー、これで窮屈な喋り方から逃れられるぞ。
「………」
ところが、俺の差し出した手を彼女は見ようとしなかった。一瞬肩を震わせ、眉をひそめただけだった。唇を少し
突き出すように結び、服が似合ってないと言われたときのマリベルみたいな表情で、俺を見上げている。
頼んできたのはそっちだろ。慣れてないからっていまさら無礼者だなんて騒ぐなよ、お姫様。
「ななな、なんという無礼な物言いをっ!」叫び出したのは、隣の神官だった。
「姫様をお名前でお呼びするとはなんとうらやましい……いえ、なんという身をわきまえぬ所行!いくら姫様のお許
しがあればとて、身分をはばかるのが臣下の身たるもの。たとえ姫様のお言葉であろうと、慎むべきです!」
いや、俺はサントハイムに仕官したつもりはないんだが……。
俺は辟易しつつ、神官のときどき声の裏返った説教を、
『……と神官殿はおっしゃってるが、どうなんだ。アリーナ』
直接、彼女に受け流した。すると、
「………」まばたきの下でガーネットの瞳が泳ぎ、「ふっ………」頬がゆるんで、「あはははっ!」彼女は、笑い出
した。
「悪いウィル。いきなり名前で呼ばれたもんで、びっくりしちまってさ」
愉快そうにぽんぽんと俺の肩を叩いてきた。
「ここんとこ、親父以外の奴に呼ばれたことなかったからさ。心の準備、できてなかった」
『そうだと思ったよ』
ヘンリーもそうだった。“おまえに名前で呼ばれっとなんか変な感じなんだよな”って、呼ぶたびに身構えてたな。
「あーあ、ウィルがこういう奴って知ってりゃウソつくことなかったな。最初から王女だって名乗ればよかった」
『しかし、こちらの神官殿はご不満のようですよ。お城の方がいらっしゃる場では臣下の礼をとりましょうか?』
半ばからかい気味に聞くと、アリーナは、睨むような目線を隣にやった。
「よせよ、ウィル。この莫迦のことなんか気にするなって……クリフトおまえ、んーとに余計なことばっか言うよな」
俺に目線を戻しながら後ろ髪に手をやる。「こいつ、ガキの頃からどーしよーもなく頭かたいやつでさ。どこへ行っ
 ても身分だシキタリだって、ほんっとうるさいんだ」
321 :04/06/03 02:43 ID:xdjpSVbC
「姫様!」神官は、さすがにむっとしたように眉間をぴくつかせた。「私はですね、陛下より、亡き王妃様より、
 姫様の守り役という身に余る大役を仰せつかった身。たとえ姫様がなんとおっしゃろうと……」
「ほら、な」アリーナが肩を落とし、首筋をなでる。「まっ、こんなんでもボクの側仕えなんだ。仲良くしてやってくれ
 ないか」
『それなら』俺は神官を振り向き、さっと手を差し出した。『クリフト殿。アリーナの側近であるあなたのことも友人
 と扱うこと、お許しください』
「………」神官は苦々しげに頬を引きつらせ、俺と俺の手を睨むように見、
「どうぞウィル殿のお心のままに」
手袋をしたままで俺の手を握った。触ったといったほうが正確だ。いやならいやと言えばいいだろうに。
『なら、ウィルでいいですよ。俺も、クリフトと呼ばせてもらいますから』
「それは……ご勘弁ください。ウィル殿は姫様のみならず、レイドック、ラインハット両王家と親しい御方。とても
 私などがお名前をお呼びできるお人ではございません」
クリフトは首を振り、俺の手を放した。
「ウィルがせっかく言ってるんじゃないか、クリフト」
「いえっ、いくら姫様のお達しでも、私にはこのような厚遇、とても」
と、恭しく礼をする。アリーナと俺は顔を見合わせ、やれやれと同時に息を鳴らした。重症の宮廷人間だな。
「ったく……すまない、ウィル。こういうとこさえなきゃ、あんがい役に立つ奴なんだ。頭もいいし」
『いや、気にしてない。けど……女のクリフトのほうは、はじめからちゃんと名前で呼んでくれたんだけどな』
意味ありげな視線を送りながらぼやくと、「あはは」アリーナが吹き出した。
「あれ、な。男の名前言って、からかおうと思ってさ。ウィルの驚いた顔、面白かったぞ」
322 :04/06/03 02:47 ID:xdjpSVbC
『ったく、あんがい意地が悪いんだな。それになにも、わざわざ自分の側近の名前、名乗ることはないだろ』
「そうか?いい考えだと思ったけどな。もしはぐれても、ウィルがクリフトって名前をたよってくれば、またボクに
 会えるじゃん」
ああなるほど。そういうことだったか。意外と機転がきくんじゃないか、この王女様。
「あの……?何のお話ですか。私の名前が、何か」
「こっちの話だ。な、ウィル」
『ああ』
怪訝そうに眉を寄せるクリフトを、アリーナも俺も笑い飛ばした。
「あっと、ウィル。握手がまだだったな」
アリーナが、下げたままの俺の右手を両手でとり、
「よろしくなっ!」
ぎゅうっと握りしめてくる。俺の胸の前から見上げてくる笑顔は、太陽の国サントハイムの王女の微笑みらしく、
熱っぽくて無邪気で、気持ちいいほど快活だった。
『こちらこそ』
俺も、彼女にできるだけの楽しそうな笑顔を向けながら……唇の下で歯を食いしばった。
可愛い女の子、それも王女様に手を握られるのは大歓迎なんだが……少しは腕力を加減してくれ。
《アリーナの意識に変化が起きた》《アリーナの評価がものすごく上がった》
《クリフトの評価が下がった》
《レオンの評価が下がった》

「よろしいですか!マーニャさんとの話が終わり次第、すぐお帰りいただきますからね!」
「わかってるって。大きい声出すなよ」
「だいたい、どうして姫様までマーニャさんに謝らねばならないのですか。お優しいにもほどというものが……」
事情を知ったクリフトがぼやくのを聞き流しながら、俺とアリーナは酒場へ向かっていた。
「ウィルも、レイドックじゃあんな感じなのか?おまえも、ホルスの側仕えなんだろ」
アリーナが、とんでもないことを聞いてきた。
『まさか。俺はむしろ、祭りなんかがあったときホルスを連れ出すほうだ』
なにしろ、そうしてやらなきゃホルスの奴、一日じゅう部屋から出ようとしないからな。まったく手のかかる奴。
支援
324 :04/06/03 02:53 ID:xdjpSVbC
「へえー、おまえ、いい側仕えだなあ。クリフトにも、見習ってほしいもんだ」
『そうは言うけどなかなか大変だぞ。あとでバレて怒られるのは、俺ひとりなんだからさ』
まあ、王様や村長に叱られてくどくど説教を聞かされるだけで、牢屋に入れられるなんてことはないから、いつも
平気で連れ出してるわけなんだが。
「いいよなあ。ボクなんか、何かして怒られるのはいつもボクだ。ついてくるこいつは、なーんにも言われない」
『アリーナじゃ、そりゃそうだろ』
「どういう意味だ」
眉を下げたアリーナに、『ん?あ、いや、何でもない』手を振る。さすがに率直すぎたかと思っていると、
「ふっ……あはは」アリーナが声を上げて笑った。「ウィル。ほんっとにおまえ、正直でいいよな」
寛大な王女様でよかった。ほっとしながら『悪い、言い過ぎた』うなじの髪をかく。
「いいって。ほんとのことだし。いっそ逆だったら良かったのにな。こいつが王子で、ボクが側仕えで」
『けどそれじゃ、怒られるのはどっちにしろ君だぞ』
「そうだなあ。だったら……こいつと』アリーナが後ろを指さす。『ウィルを交換ってのはどうだ?」
『で、二人いっしょに怒られるわけか?』
「あはは、そうなるだろうな。いいじゃないか。ウィルの代わりに、こいつにレイドックに帰ってもらって」
「ひっ、姫様っ!そんな」
後ろから悲鳴が上がり、二人で笑った。
こんな真面目な奴が側近てのは息がつまるだろうが、代わりにからかう楽しみがあるのはいいよな。
『ところで、アリーナはなんでこのお祭りに来たんだ?やっぱりマーニャさんの舞台か』
「ああ。ここんとこマーニャたちと会ってなくてさ。モンバーバラに行くっていう荷馬車があったもんだから、それ
 に3日乗って」
俺は呆れて夜空を見上げた。どんな荷馬車か知らないが豪快な移動手段だ。お姫様のやることじゃない。
325 :04/06/03 02:57 ID:xdjpSVbC
『君もマーニャさんと友達って言ってたよな。お忍びでこの街に来たとき知り合ったの?俺みたいに』
「いや。マーニャたちとはずっと前からなんだ。よく親父さんたちにくっついてウチの城に来てて……そうか!」
アリーナがぱちんと手を打った。「ウィルは、クリフトと同じじゃなくて、マーニャたちと同じなのか」
マーニャさんと同じ……?俺はダンスなんてやったことないぞ。城に出入りするなら覚えろとは言われてるけど。
「さいしょっからボクのこと、ちゃんと呼んでくれてさ。こいつみたいなうるさいことぜんぜん言わずに、遊んでくれ
 たんだ」
『ああ、そういうことか』
納得。マーニャさんて細かいこと気にしない人だからな。アリーナと気が合うだろう。
「子供の頃からマーニャにはあちこち連れてってもらったよ。そのせいかなあ、ボクがこんなふうになったの」
「ぜったい違います……」後ろが、ぼそりとつぶやく。初めて、同意見だな。
「ウィルは、どこでマーニャたちと会ったんだ?ボクのときみたいに、レイドックでか?」
『つい昨日。ラインハットのサラボナって街で、偶然会ったんだ。そのあと、いろいろあってね』
ん?なんか重大なことを忘れてる気がする。なんだったっけ?
「そうか。マーニャたち、誰かを捜して旅に出たって聞いた覚えがあるな。えーっと……」
「お父上の仇ですよ」後ろから助言。
「そうそう。親父さん殺したあの弟子、バルザックな。んで、見つけたのか?」
『ああ。見つけたはいいんだけど、ミネアさんが……』
言いかけて、しまったと後悔した。マーニャさんと子供の頃から友達なら、ミネアさんともそうだろうからな。
「ミネアが、どうしたんだ?」
『……その、ミネアさんと俺が追いかけて、戦ったんだけど、逃げられたんだ』
誤解されるのを承知で、俺は言葉を濁した。
「なんだよ。おまえもいたのに逃げられたのか?ボクがいっしょだったら、あんな奴一発でぶちのめしてやった
 のに」
アリーナが拳を握る。アリーナと、バルザックか。魔法を唱える前に打ち込めれば、まずアリーナが勝つ。
326 :04/06/03 03:08 ID:xdjpSVbC
『面目ない……それできみは、バルザックと会ったことあるのか?』
「もちろん。といってもずっと前で、やっぱり親父さんと一緒に来てたときだけどさ。そのときは、あまりいやな奴
 とは思わなかったよ。よく冗談言ってボクたちを笑わしてた覚えあるし。もう一人のほう……」
「オーリン」
「うん。オーリンのが喋らないし近づくと睨むし、ずっと不気味な男だった。いい奴だってマーニャとミネアは言って
 たんだけど……だから、親父さんが弟子に殺されたって聞いたときは、てっきりボク、オーリンが殺したのかと
 思ったんだよ。この前そう言ったら、ミネアに本気で怒られちまった」
ふーむ……くそ真面目で責任感の強い男ってのは、子供からは退屈だと思われるからな。
ちょうど今、後ろでぶつぶつ言ってる奴みたいに。そういやときどき歯ぎしりが聞こえてくる気がする。また呪文
なんて唱えてないだろうな?
《アリーナの評価が上がった》
《クリフトの評価が下がった》

酒場は、昼間以上に賑わっていた。中央の大テーブルにウェイターたちが運んでくる料理や酒を、客がおのおの
テーブルに持っていく。大げさに騒ぐ客はそれほどいないものの、建物の中なので話す声が外よりもやかましい。
立食パーティ中の広場と同じく、ここもタダなのかと思っていたら、
「食べ放題。1人30ゴールド」
と張り紙がある。さっそくウェイターが寄ってきて「3人様ですか?」聞いてきた。
『すみません。人を捜しに来たんです』断ろうとすると、
「いいじゃんウィル。ついでだしさ、食べていこう。クリフト。払っといてくれ」
クリフトがすぐに100ゴールド金貨をウェイターの手に弾く。よかった俺。王女様と知り合えて。
327 :04/06/03 03:21 ID:xdjpSVbC
さて、マーニャさんがいるかいないか。できるだけ背を伸ばし、酒場じゅうを、外のテーブルを見渡す。
「……いないな」
『いると思ったんだけどな』
「ボクも」
酒場にいないんじゃ、まいったな。気まぐれなマーニャさんだ。酒場以外は、どこを探したって、見つけ
られる確率に大して差はない。
「マーニャさんのことです。劇場で踊りの練習でもしておられるのでは」
クリフトが口を出してきた。部外者が何を言い出すのかと思ったが、考えてみれば、アリーナがマーニャ
さんと子供の頃からの友達だったら、クリフトだってマーニャさんを知ってるはずだ。
けど、いくらマーニャさんがトップスターだとしても、お祭りの間まで閉じこもって真面目に感想戦か何か
をしてるとは思えないな。それに、あの追っかけの男の話のこともある。ここは……。
『ミネアさんに聞いてみようか』
「いや。ミネアだって知らないと思う。ここで食べながら待ってれば、そのうち来るんじゃないか」
「ですが……もしここにはいらっしゃらずに、マーニャさんがご自宅に帰ってお休みになってしまったら」
三人そろって考え込む。どうしようか―――

1.ここで食事をしながら待つ
2.ミネアさんに聞きに行く
3.クリフトをミネアさんのところに行かせ、その間に食事をとる
4.別の場所へ探しに行く(1つだけ)
 4−1.劇場 4−2.広場 4−3.マーニャさんの下宿先 4−4.教会 4−5.フレアさんの家
 4−6.宿屋 4−7.林の中 4−8.街の外
4−3

とりあえず突撃
329場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/06/03 03:55 ID:xdjpSVbC
とうとう2週間オーバー・・・。次こそ日曜に更新!絶対!確実!無理だったらGM降りる!
実は、漏れなんかがかからないと思っていた病気に感染してしまいました・・・いわく、5月病
新しい職場ってわけじゃ全くないのに何故だらう。知り合いがほとんど移って行ったせいかも
そんなこんなで鬱状態。考えど考えどギャルゲーっぽい小ネタが全然浮かんでこないのが辛い
テンション上げようとゲームをやればテキストに翻弄されて自分の文章書けなくなるし・・・ハァ
とまあ、愚痴はいいからとっとと書きやがれですね

>302 ここまで引っ張っといてですが、しかし、ギャルゲーは非ハッピーエンドあってこそ
 漏れは自他共に認めるハッピーエンド症候群だけど自分で書くぶんには楽しいでつバッドエンドってw
>303 このストーリーは同時攻略可能。ただしそれなりに大変です・・・書く漏れが
>304 アリーナ攻略のカギは実は・・・
>305 こういう性格だったのかこの主人公は(おい)
>306 1だと意識変化なし好感度上昇わずかですた
>307 かろやかという言葉の響きが何となく好きな漏れでつ
>308 5だと決闘になってたりしまつ。ならなくて正解ですたが
>309 たぶんこの時点でレベル20くらいなんでしょうw
>310 主人公ほとんど成長してないですし・・・というかまだ4日目か
>311 ここでいちばん無難なのは2だったりします
>312 理論上は11股くらい可能かもしれんです。リアルで何年かかるやらですがw(笑い事じゃネエ)
>313  ||
   ∧||∧
.  ( / ⌒ヽ
   | |   |
   ∪ 亅|
    | | |
    ∪∪


>314-316 次こそ保守なんてしていただくもんか!見てろ見てろ(びくびく)
>317-319 申し訳ありませんですた・・・漏れは生存しておりますのでどうかよろしゅう
>328 見捨てず支援&一番乗り感謝!そうきますたか。はてさてどうなりますやら
4-1
3 クリフトの好感度があるってことは
こいつともラヴになれるの?
あぁー3にしてぇー けどアリーナのために1
クリフトっておじゃまキャラのような気がするし

人探しは諦める
4-3かな。
最悪そこで待ってればいつかは来るだろう。
腹減った!1
もう金出しちゃってるし、1で。
2で。
ミネアさんに占ってもらえば即解決!
4−3
長かった…頼むからここにいろよマーニャ!
なんつーかもう落ちそうだよ
一番下にあっても定期的な書き込みさえあれば落ちないという事を知らないのか
むしろ最下層というのは魅力的
342場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/06/06 22:45 ID:qZ3Ve3Yh
『マーニャさんたちの下宿に行ってみよう。もしいなくても、そこで待っていれば来るはずだ』
俺の提案に、クリフトは「そうですね」うなずいたが、アリーナは、
「んー、マーニャのことだから朝にならないうちに帰って寝るなんてことないと思うぞ。それより飯だメシ!」
勝手に決めつけて、食皿の積まれたテーブルに走っていってしまう。
ずいぶん腹減ってるみたいだ。それは俺も。けど、今晩中にマーニャさんに謝らねば、俺の気が済まない。
『アリーナ』
アリーナは口に川海老をくわえ、早くも皿を3つほど持ち出そうとしていた。
「ウィル。どれがいい?ここの酒場の料理、けっこう美味しいぞ。城の、味のしないのなんかより、ずっと」
楽しそうにもごもご言ってくるアリーナに、
『アリーナ。食事にしたいのはわかるんだけど……俺、どうしてもマーニャさんに会わなきゃならないんだ』
頼み込むように、頭を少し垂れる。
「………」不平そうにアリーナは目を細めたが、「ったく。わかったよウィル」海老の尻尾をぺっと吐き出し、
音をたてて皿を置いた。代わりとばかりに、通りかかったウェイターの盆から骨付き鶏肉を2本ひったくると、
「ほらよ、ウィル」
うち一本を押しつけてきた。『ああ。ありがとう』戸惑いながらも礼を言い、一口かじる。しっかり火も味も通
してあって、香ばしく美味い。
かじりながら歩き出そうとして、はっと手を止める。歩きながら食事するなんて下品なこと、ビアンカにも行儀
悪いわねと言われるんだから、王女様の前じゃ、さすがにやめとこう。
そう思ってアリーナはと見ると……俺の隣を歩きながら、なんの遠慮もなく、肉を前歯で引きちぎっている。
「ん?どうしたウィル。食べないのか」
このお姫様に気を遣おうとした俺が莫迦だった……。
女の子、ましてや王女様らしさのカケラもない。まるで猛獣みたいな食べ方だ。城でも、こんなふうに食事し
てるのだろうか。
横を見ると、クリフトも額に手をやっていた。俺と同じか俺以上にやれやれな気分なのだ。この姫様にマナー
がどうのと説教することはすでに諦めているらしい。従者の苦労がわかるよ、ほんと。
《アリーナの評価がわずかに下がった》
《クリフトの評価がわずかに上がった》
343 :04/06/06 22:51 ID:qZ3Ve3Yh

「ウェル。おまぃえ、マーニャのすんでるとこ、しってるにゃか?」
先頭で酒場を出た俺にアリーナが聞いてきた。右手に持った、クリフトにくすねさせた三本目の鶏肉にぱく
ついている。しかも左手にはもう一本。
もはやこの王女様に、食べながら喋るなとか、食い意地がどうのととは、言うだけ気力と体力の無駄だな。
『果物屋さんの二階だろ。昼間、ミネアさんに教えてもらったよ』
「へえー、マーニャたちってそんなとこに住んでるのか。いいな、果物が食べ放題なんて」
『知らなかったのか?』
「ああ。一度泊めてもらおうとして、ミネアに、汚いところだからダメです!なんてすごい顔して怒られちゃって
 さ。だから、この街に来たときはフレアんとこに泊まることにしてる」
フレアさんか。ミネアさんて、お客をみんなフレアさんのところに連れて行くんだろうか。あまり考えたくないが。
『そうだったのか。実は俺もミネアさんにフレアさんの家を紹介してもらって、今日、泊めてもらうことになって
 るんだ』
「へえ。なんだ。マーニャたちの家教えてもらったのに、泊まるんじゃないのか」
『はは、俺も断られたよ。男を泊めちゃいけない決まりなんだってさ』
「ふーん。じゃあ、なんでボクは駄目なんだろうな」
アリーナが唇に手をあて、首をかしげる。そりゃあ―――

1.『充分なもてなしができないからとか?ほら、ミネアさんてそういうこと気を遣う人だから』
2.『きみみたいな男まさりの娘を泊めたら、何壊されっかわからないからだろ』
3.『アリーナには見せられないものが部屋にあるんじゃないかな』
4.『きみが王女様だからだろ。それに、君を泊めるとなれば、こっちのお友達まで泊めなきゃならないし』
5.『俺に聞かれてもな。そんなことより、とりあえず今晩は、フレアさんの家にいっしょに泊まらないか?』
安全に1
345場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/06/06 23:11 ID:qZ3Ve3Yh
さあ書き上げるぞとキーに向かったものの、どうしても数カ所埋まらない。
うち一カ所は冒頭。これでとうとうGM陥落か・・・と悩んでいたのですが、
困ったらそこを選択肢にしてしまえ!と開き直った結果が今回でつ
次の更新は明日明後日の予定なのでお早めにどうぞ

>331 なれません。いちおう「ギャルゲー」ですから
>332 3だと・・・ちょっとした騒動。クリフトがどういうキャラになるかは主人公次第
>333 マーニャが見つからないと大変なことに・・・はなりませんのでご安心を
>334 消極的ながら堅実な判断ですな
>335 すでに真夜中ですからさすがに主人公もアリーナも空腹状態でつ
>336 バイキングで金払っといて何も食べずに出る法はないでつね
>337 ミネアってどうしてゲーム本編じゃ運勢や人生とかいう大きなことしか占ってくれないんでしょう
>338 すみませんでつ。今回もマーニャ未登場。アリーナにまだお付き合いくださひ
>339-341 最下層っていうのは何書いても一目につきませんからねえ・・・ふふふ
>344 一番乗りの1をどうも。このスレのみなさんて安定志向なんでせうか?(今更聞くな)
馬鹿だな。更新につまったときは適当にイベント出してお茶を濁せばいいんだよ
ここは4で。面白そう。
ここは5で行って見よう。
3で。
アリーナの好奇心をくすぐってみるテスト
アリーナには聡明に育って欲しいので4
2で。
これくらいの冗談は分かってもらいたいところ。
無難に1辺りをば
どれでもいいが、面白そうなのは3
今回は投票がバラバラだ。いい選択肢じゃないか(w

5 あとはクリフトを撒いて(略
もはや俺には5しかみえない
反応を見たいから5で。

泊 ま ら な い か ?
俺は流されない
4
358場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/06/11 16:46 ID:/GJi5/92
「と、と、とんでもないっっ!」俺の提案に、アリーナより早く、クリフトが反応した。
「ウィル殿、何を考えておられるのですか!姫様と、いっしょに、と、泊まるなどっ」
「いいじゃないか」
あっさり、アリーナがうなずく。「ウィルの話、もっと聞きたいし、フレアにも会いたいからな」
『そ、そうか。よかった』事も無げなアリーナに驚きながらも『フレアさんも、喜ぶと思うよ』俺は、内心ほく
そ笑んだ。アリーナは、まったく警戒していない。このぶんなら、酒を勧めるなり口説くなりすれば、楽に
同じベッドで眠れて……今日のこと話しながら、ラゴスや林の中の乱交パーティのことなんかを思い出さ
せたりして、“あんなことして気持ちいいのか?”って台詞をこの世間知らずのお姫様から引き出せれば
……あとは、どうなってもおかしかないよなあ〜。
「ウィル殿!何をにやけてるんですか!」
はっと俺は表情を引き締める。アリーナは……鶏肉食べるのに夢中で気づいてないな。よしよし。
「姫様っ」クリフトが甲高い声を出した。「この真夜中に行かれれば、フレアさんにご迷惑がかかるでしょ
 う。ウィル殿だけでお泊まりいただくことにして、姫様は、宿へ参りましょう」
「同じことじゃないか」アリーナが、じろりと、咎めるようにクリフトを見る。「だいいち、ここの宿屋の奴ら、
 ボクのこと知っちまってるだろ。この前、おまえが余計なこと喋ったせいで」
「あ、あれは……すみませんでした」クリフトが前へ帽子を傾ける。何があったのか知らないが、毎回こ
 んな平気で姫様姫様と連呼する奴を連れてこの街に来てたとしたら、何もなくてもバレるだろう。
「し、しかし、それとこれは別っ!人の家に厄介になるよりも、きちんとした宿に泊まられるべきです!そ
 れに、もうすでにお部屋はとってあるのですから。どうか、私めの顔を立てて」
クリフトが必死に訴える。ときどき牽制するように横目を俺に向けるところを見ると、こいつの考えたこと
 は、だいたい察しがつく。神官も、俺と同じ、男ってことか。
359 :04/06/11 16:48 ID:/GJi5/92
「んーなの、おまえが泊まれば済むことだろ。ボクは逃げやしないから、クリフト、たまにはゆっくり寝たら
 どうだ?」
幸いにもアリーナは、従者の心中など知るよしもない、眉をしかめた面倒くさそうな表情で、じろりとクリフト
を見上げた。いいぞ、アリーナ。
「姫……そ、そんな」クリフトがまだ何か言おうとしたが、手振りだけで口をもごつかせただけだった。
気味悪いほど都合のいい展開になってきた。俺の日頃の行いのなせる業だな。こうなれば、話は早い。
『それじゃ、どうするかな』俺は考え込むフリだけし、『マーニャさんの家を訪ねて、もしいなかったら、フレア
 さんのとこに行こう。もう、真夜中になるしな』夜空を見上げて、もっともらしく言った。
「いいのか?おまえ、今日中にマーニャに謝りたいって言ってたのに」
『いやあ、いかがわしい夜の街での探索に、夜更けまで姫様にご一緒してもらうとなると、こちらの御方が
 お冠になられるでしょう』と、クリフトに目線を送りながら、皮肉たっぷりに言ってやる。『それに俺も、さす
 がに今日は疲れたよ。そろそろ、どっかで落ち着きたい』
「……だからぁ、ウィル、この莫迦に変な気を遣うなって」隣で歯がみしているクリフトに気づかず、アリーナ
が眉をしかめて言う。「もう少し遊びたいところだけど……まっ、ウィルがそう言うなら、ボクは構わないぞ」
アリーナが、右足をちょっと地面に滑らせる音がした。擦らせたのか。薬草が効いていれば痛みはほとん
どないはずだが、腫れかけて、違和感があるのかもしれない。それなら、早く休ませてやらないとなっ。
「………」クリフトが目に侮蔑と憎しみを込めているのに気づき、あわてて俺は顔のにやけを戻す。こいつ
がアリーナに言われたとおりにおとなしく宿屋へ引き下がってくれればいいが、そう簡単とは思えない。
どうにかして、追い払えないもんかな。
考え込んでいると、「ウィウ」骨だけになった鶏肉をしゃぶりながら、アリーナが俺の腕をつついた。
「しょろしょろ、ミニャアも仕事終わらしゅ頃らろ。呼びに行っへみないか」
360 :04/06/11 16:52 ID:/GJi5/92
『え?』思わず聞き返した。『ミネアさんも、連れてくのか?』
まずい。ミネアさんともいっしょにお泊まりってことになったら、“しょうがなく同じベッドで寝る”は、実現しに
くくなっちまう。
「ウィル……そのつもりじゃ、なかったのか?」アリーナが、眉を寄せ、いぶかしげな顔になって俺を見上げ
てきた。
うっ。変に疑わせたら、いくらアリーナでも俺の下心に勘づくかもしれない。そのほうが、まずい。
『あ、ああ、もちろん。できたらマーニャさんも見つけて、フレアさんと一緒に話したいね』
言いつくろうと、アリーナは「ん。いるといいんだけどな」満足そうにうなずき、鶏の骨をぽいっと投げ捨てた。
ま、いいか。予定変更。二人ないし三人、できればフレアさんも加えた四人で、パジャマパーティとしゃれ込
もう。でもってあとは、状況次第ということで。
そのためには、やはり、こっちの忠実すぎる莫迦が邪魔だ。消えてもらうしかないな……。
「姫様!ウィル殿っ!」
そのクリフトがいきなり叫んだので、内心ぎょっとして震えた。が、クリフトは、目を大きく開き、手で北東を
示している。俺の心を呼んだわけではなく、何かを、見つけたらしい。
指された方角を振り返ってみて、俺もアリーナも、あ、と口を開けた。
顔の筋肉をでれでれとゆるめた男たちの一団(少数ながら女もいる)が広場のほうからやってくる。そして、
その先頭にいるのは、月光にサークレットを輝かせ、肩もへそも太股も惜しげなくさらす舞台衣装に身を
包んだ、褐色の踊り娘。
「んー、ありがっとー!あたしの踊りをわかってくれる人がいてくれて、ほんと感激しちゃうわ」
マーニャさんだった。左手に酒瓶を持ち、右手で後ろに引き連れたお供に愛敬を振りまいて、さも愉快そ
うに高笑いしていた。
「マーニャ!」
『マーニャさん!』
声をかけるのは一瞬遅れたものの、アリーナよりも俺は三歩はやく駆け出し、一歩はやくマーニャさんの
前に立っていた。
「んん?ビルくんじゃない!ここにいたんだ」
『マーニャさんを探してたんですよ』
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃないのビルくん。どう、お祭り楽しんでる?んで、そこに連れてる子は?」
361 :04/06/11 16:55 ID:/GJi5/92
「マーニャ!ボクだ」
アリーナが、俺を押しのけ、クリフトに両手の鶏肉を押しつけ、前に出た。
「まっ、アルト!来てくれてたんだ!」
「マーニャ、久しぶりだな!」
美女とお姫様が同時に両腕をひろげてお互いに飛びつく。俺も、マーニャさんのお供たちも、呆気にとられ
て見守った。
「アルト、元気そうねえ。お父様の具合、どうなの?」
「ああ。良くも、悪くもなってない。口うるさいのも変わってないよ」
アルト……俺が“ビル”で、アリーナは“アルト”なのか。一般人の前でも名前を直接呼ばなくていいという
知恵なのか、それとも単にマーニャさんの趣味なのか。アリーナに“アルト”なんていう男でも女でも通る
名前つけてるのと、マーニャさんの性格から考えて、ただの趣味っぽいな……。
「そりゃ、良かったわ。クリフトもお久しぶり。あはっ、あんた、あんがい食い意地張ってるのね」
「え?こ、これはですね……姫さ、い、いえ、何でも」
クリフトが、アリーナを目で非難しながら、手の鶏肉を背中に隠す。群衆を前にしてさすがに“姫様”と言う
のが憚られたらしい。
「マーニャ。今までどこ行ってたんだ?ボクら探してたんだぞ。ウィルが、マーニャにどーしても話があるん
 だってさ」
アリーナが俺の肩を叩く。おい、いきなり本題を持ち出すな。まだ俺は心の準備してないし、遺言も書いて
ないんだ。
「ん〜ん、ヒミツよ。ビルくん、あたしに話って何?」
『えっと……』
後ろ髪をつかみ、口ごもる。“マーニャさんのダンスを見られませんでした、すみません”単純な話なのだ
が、それに続く言い訳の微妙な内容を考えると、ギャラリーがこんなに多い場では、あまりふさわしくない。
それに、マーニャさんの踊りを見なかったとあれば、マーニャさんよりもまず、この親衛隊に私刑されかね
ない。
362 :04/06/11 16:57 ID:/GJi5/92
俺が言いにくそうにしていると、マーニャさんは急にニッコリ笑い、おどけたように両手を広げた。
「んー、結婚してくれって話なら、悪いけど遠慮するわ。年下は好みじゃないっていうつもりはないけどさ、
 ビルくんて月いくら稼いでるっけ?あいにくあたし、貧乏な夫をかげでささえる良妻賢母っていうのはシュ
 ミじゃないし、合わないと思うのよねえ。それにさ、あたし、まだまだ遊び足りないし、だいいち、あたしに
 は、ここにいる大事なみんなが、いるんだからね」
『??』
いきなりまくしたてたマーニャさんに、俺はぽかんと口を開けた。結婚て?まさか、あのときのキスがプロ
ポーズってことになっちゃうのか?
だったら、こないだの晩、俺はビアンカとあやうく結婚しかけたってわけで……。
「そうだそうだ。100年早いぞ坊主」
「青二才。帰って母ちゃんの乳でもしゃぶってろ」
どっと笑った男たちから、聞くに堪えない冷やかしの文句が飛んできた。俺はさすがにむっときて、マーニャ
さんを非難をこめた目でにらむ。すると、マーニャさんがゴメンゴメンというように手を振り、片目をつぶって
きた。それから、
「ごめーん、みなさん。実はあたし、今晩この子たちの子守頼まれちゃってるんで、今夜これでハケまーす」
と、笑顔で宣言する。とたんに俺への冷やかしに代わってため息と不平不満の合唱となったが、マーニャ
さんが劇場の宣伝文句を並べつつところ構わず投げキッスをし手前の若い男に酒瓶をプレゼントといって
渡すと、場はその瓶の奪い合いになってしまった。
「さあさ、ビルくん、アルト、行きましょ」
俺が呆気にとられていると、マーニャさんがにんまりと笑って袖を引き「ひどいこと言っちゃってごめんねっ」
頭を撫でてきた。子供扱いされて俺は顔をしかめてみせたけれど、マーニャさんだと思えば悪い気はしない。
子分どもを追っ払うための口実だったのだと思えば、かえって感心もする。
よーし、マーニャさんも加わったところで、さあ、美女と朝までパジャマトークだ!
363 :04/06/11 16:59 ID:/GJi5/92
「どこ行くのよビルくん。酒場で飲みなおすんじゃないの?」
ミネアさんのいる小路へと歩き出しかけた俺は、マーニャさんに呼び止められてあわてて立ち止まり、振り
返った。マーニャさんも、アリーナもクリフトも、足がすでに酒場へ向いている。あれ……?
『あの、俺たち、今、酒場から出てきたところなんですけど……』マーニャさんに訴えると、
「あらそう。でも、あたしぜんぜん飲み足りてないのよ。お酒あげちゃったしさ」
『けど……その、もう夜も更けてますし、酒場というのは』
「んーん。夜はこれからじゃない。そこの酒場、朝までやってるのよ。あたしにあのひとたち(連れていたファ
 ンのことだろう)お断りさせたんだから、付き合ってくれるわよね。ビルくん」
ウィンクしながら頬を突っつかれ、黙らせられてしまった。
「ボクも食い足りないとこだったんだ」アリーナが、いつの間にかクリフトから受け取った鶏肉をかじっている。
「金払ったこと、店が忘れちまわないうちに行こう」
おい、アリーナ。さっき賛成してくれたじゃないか。けっきょく、食欲かよ!
「それがいいですね」クリフトが、賛同しながら、一瞬、哀れむような視線を俺に向ける。
くう……ちくしょう、なんか悔しい……。歯がみしながら、俺は三人に従った。
《マーニャの評価がわずかに上がった》《アリーナの評価がわずかに上がった》
《クリフトの評価が下がった》

もう西を向いて月を見上げる時間なのに、酒場の客はさらに増えていた。広場で立ちっぱなしで食事して
いた連中が落ち着こうとやって来ていると見え、ほとんどがすでにできあがっている。
「……席、ありませんね」いちばん背の高いクリフトが、結論づけた。「どうします?宿屋へでも行きましょう
 か。部屋、ありますから」
こいつ、したり顔で何を言い出すかと思えば……女二人を宿屋へ連れ込もうなんて破廉恥なこと、よく平
気で言えるよな。
「そうねえ。あたし一人なら空けてもらえるんだけど……あっ、そうだ。ちょっと待ってて」
364 :04/06/11 17:06 ID:/GJi5/92
マーニャさんは、店を見回し、厨房の前に駆け寄っていった。そこには初老のウェイターがいた。マーニャ
さんが近づいてくるのに気づくと、かすかに頬をぴくつかせ、すぐに丁重に頭を下げた。マーニャさんが何
か話すと、さらにぺこぺことお辞儀をした。
俺は、疲れたフリをして壁によりかかり、それとなく聞き耳をたててみた。
「ねー、上の部屋ひとつ貸してもらえる?」媚びでも高飛車でもない、ごく単純な喋り方だ。「え、いっぱい?
 けど、リンダの部屋は空いてるじゃない。あたし、リンダの友達なんだからいいでしょ。……んもう、細か
 いこと言わないの!明日、お客さんいっぱい連れてきてあげるからさ。……はい、ありがと!」
半ば予想通りの、強引説得だった。マーニャさんて、この街全体では好かれてるのか畏れられてるのか、
どっちだろう。
「んーじゃ二階行きましょ。部屋貸してもらったから」戻ってきたマーニャさんが、鍵を壁でコツンと鳴らした。
二階……この酒場に階段あったっけ?外から見て三階建てだったから、あるはずだ。
探してみると、南の酒樽の並んでいる壁に扉がひとつ開け放してあって、奥に階段が見えた。あのドア、
昼間は閉まってた覚えがある。と、すると?
「に、二階って……」クリフトが甲高い声を上げ、首を横に大きく振った。「いけませんマーニャさん!姫様
 を、あのような場所へなど!」
あのような場所……夜しか開かない扉……酒場の二階……なるほど。
「あーらクリフト。あんた真面目な顔して、ここの二階がどんなとこか知ってるんだ」
マーニャさんがにやりと笑う。「そ、それは……」クリフトは真っ赤になって、助けを求めるように……おい、
なんで俺を見る?
『もしかして、ぱふぱふ宿ですか?』声をひそめて確認すると、
「なあんだ、ビルくんも知ってんじゃない」
マーニャさんが楽しそうに俺の肩に手を置く。「ビルくん、もう上に行ってきたの?相手、誰だった?」
『まさか。行ってませんよ』笑いながら否定し、『俺には、マーニャさんと、アリーナがいますからね』切り返す。
365 :04/06/11 17:08 ID:/GJi5/92
「……んふふ、ビルくん。あたしと王女様と二股かける気?高くつくわよー、あたしも、アルトも」
『いやあ、お二人と付き合える権利をゴールドで買えるなら、一生かけたって貯めますけどね』
「言ったわね。そんじゃあ、ビルくんに本当に貯めてもらおうかしら、この国買えるくらいのお金。アルトも、
 相手がビルくんなら、文句ないでしょ」
瞳をぱちくりさせながら聞いていたアリーナが、一気に紅潮した。
「う……ウィルもマーニャも、冗談はそのくらいにしろ!」
「そうですよ!もし姫様のそのような権利が売りに出されれば、私がどんなことしてでも買い占めます!」
かんかんになって叫ぶ主従に、俺とマーニャさんはたまらず吹き出す。
「何がおかしいんだっ!」顔を背けてしまうアリーナを、『悪い、アリーナ。そういう意味で言ったんじゃない
 んだ』俺は手を振ってなだめた。
「じゃ、どういう意味なんですか!いくらウィル殿でも、言っていい冗談と悪い冗談が……」
「クリフトちゃん、そんなに鼻の穴大きくして怒らないの。はい、ここじゃほかのお客様のご迷惑だから、とっ
 とと二階行く行く」
クリフトを回れ右させて、階段へと押しやるマーニャさん。クリフトは何かごちゃごちゃ言ってるようだが、気
にするマーニャさんではない。俺も、アリーナを振り返ると、どうぞと手で促し、さらに頭を下げてみせた。
「ウィル。ふざけるにも、ほどってものがあるぞ」
『怒ったか、すまん。ヘンリーとはいつもこんな感じなんで、つい』
「………」
俺が笑いを消して頭をかくと、アリーナは、下唇を巻き込んで目線を上に向け、「……それなら、いい」と、
小さな声でつぶやいて、マーニャさんたちを追って歩き出した。
何が、いいんだ?俺も苦笑しながら、アリーナのあとに続いた。
《マーニャの評価が上がった》《アリーナの評価がわずかに上がった》
《クリフトの評価がわずかに下がった》
366 :04/06/11 17:11 ID:/GJi5/92

階段の踊り場まで上ったとき、俺は『うっ』と袖で鼻を覆った。何かのお香か、甘ったるい花と爽やかな草
を混ぜて煮詰めたような匂いが立ちこめ、汗だの垢だのの人の体臭が混ざって漂っている。正常な人間
を拒絶するかのような空気だ。前のクリフトもアリーナもしかめっ面で顔に袖やマントをやっている。しかし、
マーニャさんは慣れたものらしく――顔を覆えるものを身につけてないせいもあるだろうが――すたすた
と階段を上がっていった。
二階の廊下には、アパートのように両側の壁に扉が並んでいた。各扉の前で、何人かの男が聞き耳を
立てたり、貧乏揺すりのように身体を小刻みに動かしたりして列をつくっている。奥では、マーニャさんほ
どではないにしても大胆に胸元を開けた女性が、太った男と楽しそうに談笑中。そのうち、俺たちに、とい
うよりマーニャさんに気づいた者は、気づかなかった者を突っつき、本来の目的そっちのけになって、マー
ニャだ、マーニャさんだと、ひそひそ声でささやきあう。さらに、ほぼすべての扉の向こうから、強い香りと
ともに、妖しい息づかいが聞こえてくる。
「胸くそ悪いな」アリーナは露骨に嫌な顔をし「何でこんなところに……」クリフトもぶつぶつ文句を言う。
やはりマーニャさんだけはひそひそ声もあやしい声もまったく気にせず、俺たちを連れて廊下を進み、
いちばん奥の部屋の扉を開け、俺たちを手招きした。
あまり使われていないのか、かびくさく、ほこりっぽい部屋だった。あるものといえばテーブルと椅子、ベッ
ドと小さな衣装タンスだけ。さらに廊下の空気が流れ込んできて、居心地悪く、入りにくい部屋だ。
マーニャさんは俺たちに座るように言ってから、いったん外へ行き、酒瓶と食皿を持ったウェイターを連れ
てきて、それぞれテーブルに並べさせ酒を注がせ、追い返した。
「それじゃ、出会いと再会を祝してっ……」おもむろにグラスを差し上げるのを見て、俺たちも立った。
「かんぱーい!」
チン、と4つ心地よい音を鳴らし、グラスを口に運ぶ。俺とクリフトは少し口をつけただけだが、マーニャさ
んも、そしてアリーナも、その一度だけで半分以上を減らした。ふらつく様子はない。これだと、酔わせよう
とすれば、俺がまず先につぶれちまうかも。
367 :04/06/11 17:13 ID:/GJi5/92
「アルト。いちおう、ビルくんの自己紹介、しとこっか?」
「んー……だいたいのことは聞いたからいい。ボクも、ウィルに話したし」
「へえ。王女様ってことも、もちろん話したのよね?」
「ああ。ま、それにはちょっとばっか、変なことがあってさ」アリーナが、指で頬をかきながら顔をしかめた。
ラゴスか。あいつまだ伸びてるってことは、ないよな。そこまでヤワじゃないはずだ。
「変なこと?へえ、何……あ、そうそう、それより先に」
と、マーニャさんは不意に俺に向き直った。きた。俺はひそかに鼻で深呼吸した。落ち着かせるつもりだっ
たのだが、淀んだ空気を思い切り吸い込んでしまい、かえって胸が悪くなってしまった。
「ビルくん。あたしに話って?」
マーニャさんが、ろうそくの灯りにルージュを光らせ、微笑みながら聞いてくる。プロポーズとまではいかな
いまでも、ダンスが素晴らしかったとか、俺がご機嫌なこと言うと期待してるのだろう。うう、スミマセン……。
『その……マーニャさんの、ダンスのことなんですけど……』
「ん、ビルくん。あたしの踊り、どうだったかしら。気に入ってくれた?」
マーニャさんのご満悦な笑顔に、俺は口ごもり、ちらとアリーナと目線を合わせた。アリーナが、声を出さ
ず唇だけを動かした。
は、や、く、い、え、よ。
……そうだよな。マーニャさんのご機嫌を損ねるのは気が引けるというか怖いけれど、言わなきゃならな
いよな。
俺は、マーニャさんを見つめ返してから、ひとつ息をついて、目を閉じ、うつむいた。
『それが……』

「はあぁぁ〜!?」
マーニャさんが頓狂な声を上げて立ち上がり、俺を上からぐっとにらみつけた。
「なに、じゃあー、ぜんっぜん見てなかったってことじゃない!」
『ぜんぜんてわけでも……最初は、ちゃんと』下手な言い訳だな……。
「いっしょよ!最初なんてあんなの、ずーっと昔からの言い伝えを下手な踊りと歌にしたってだけの、ただ
 の儀式みたいなモンよ。ミザベラさんのために、しょーがなくやってるのよ」
ミザベラ……あの樽みたいな女性か。
368 :04/06/11 17:16 ID:/GJi5/92
言われてみれば、優雅で端麗で、活気あふれるモンバーバラのお祭りらしからぬアトラクションだった。
うちの村の精霊祭の精霊使いの儀みたいなものだろうか。ただ、ライフコッドの場合、その儀式そのもの
がメインイベントなのだけど。
『し、しょーがなくって言いましたけど、今まで俺が見てきた中で、いちばん素晴らしい踊りでしたよ……』
「あったりまえでしょ。あのね、ビルくん。あたしはね。どんなつまんない踊りだってやるからには手なんて
 抜かないわよ。女神様が男に騙されて捨てられるっていうイヤーな伝説でも、親の仇に惚れちゃうようなお莫迦な娘の話だろーと、真剣
 にやるに決まってるじゃないの」
『そ、そうでしょうね。すみません』褒めるつもりだったのに……マーニャさんのプロ意識を逆なでしちまっ
た……。
「んじゃあ、あたしが人魚のカッコしてるのも見てないわけね」
『は、はい』呆れ顔で腕を組むマーニャさんを上目で見つつ、俺は小さくなってうなずく。
「じゃあ……この、とっておきのも見なかったワケ?」
と言うと、いきなりマーニャさんが両手を俺の前に振った。ぱちん。左右の指が鳴る音。同時に、
『うわっ!?』
瞳を焼くようなまぶしい光が熱風とともに両耳の脇を通り過ぎた。トマトよりも真っ赤な細長い炎が、絞首
用のロープのように俺の頭のまわりを取り巻いていた。
『ま、ま、マーニャさん!』
俺は思わず悲鳴を上げてしまう。マーニャさんが今度は両手を左右に交叉させるように振った。ひゅっ。
すると、その奇妙な炎は、ボウッというさらに明るく輝いたかと思うと、跡形もなくかき消えてしまった。
な、何だったんだ今のは?俺は、今になって吹き出した冷や汗に身震いしながら、肌や服に残った熱に
幻術でなかったことを確かめる。炎を操ったとしか思えない。もしかして、マーニャさんて、魔女?
「すごいよなあ。こんなのを、水からジャンプしながら、やっちまうんだから」
「マーニャさんの炎の技は、いつ見てもすばらしいですね。手品みたいだ」
アリーナが感嘆し、クリフトも、好奇心に輝いた目でマーニャさんの手元をのぞき込む。
「手品?そんな簡単なもんじゃないわよ。呪文の練習してたらグーゼンできたの。ギラの呪文をちょーっと
 だけ、いじったんだけど」
369 :04/06/11 17:21 ID:/GJi5/92
あれがギラの応用!?炎をあんな形に操れる人は、レイドックにも、おそらくラインハットにもいない。ビア
ンカもマリベルも閃光呪文の練習してるけど、これほど器用な技、ビアンカはともかく、マリベルじゃ一生
かかったって絶対できない芸当だ。
『ま、マーニャさん、いったいどんな特訓したんですか。こんなの、俺も初めて見ましたよ』俺は、素直に褒
めそやした。
「んー、特訓というよりも、あたしたちジプシーはさ、ほんの小さい頃から呪文教えこまれるの。あたしみた
 いに舞台で使ったり、ミネアみたいに誰かの怪我治したりするために……って、そんなことはどうだって
 いいのよ!ビルくん」
マーニャさんが再度声を荒げ、俺をキッとにらみつける。ひーん、怖っ!俺は、震え上がって、姿勢をしゃ
んと正した。
「ビルくんが見てるって思ったから、張り切って踊ってあげたのに。あーあ、虚しいぃっ!」
グラスを乱暴にあおり口をぬぐうと、マーニャさんは前の椅子にどっかと座り、相変わらず火を出しそうな
瞳で俺を突き刺してくる。
「さあビルくん、説明してもらおっか?ほかの女の子が気になってたとか、寝過ごしたとかだったら、今すぐ
 あたしのこの街から出てってもらうわよ!」
うっ……。真実そのままを喋ろうとして、俺はぐっと言葉に詰まった。ほかの女の子(ターニア)が気になっ
てたと言えばそうだし、あの風鈴の効果(音声遮断)は寝過ごしたに近い。まさに今言った、モンバーバラ
追放の該当要件になってしまう。
とはいえ。もっともらしい出まかせを言ったところで……ここには、目撃者がいるんだよなあ。
『そ、それはですね……』
俺は、言いよどみながら、ふたたび横目でアリーナを確認する。アリーナも気づいて「ん?」と眉を上げ、
ふっと笑い、あごをしゃくってみせた。見ていてやるから、ちゃんと話せという合図だろう。そうだ、マーニャ
さんが怒り狂ったところで、こっちには王女様がついてるんだ。やっぱり正直に話そう。
「ん?んん?なに、あんたたち」
マーニャさんが俺と俺の目線の先を見比べる。ふふ、俺とアリーナの親密なお友達関係、いま気づいても
遅いですよ。
370 :04/06/11 17:25 ID:/GJi5/92
『実は……』
「あはっ、なあんだ。そうよねえビルくん、そのために来たんだもんね」
急にマーニャさんが表情をゆるめ、説明しようとした俺の肩をぽんと叩いた。
どうしたんだろう。わけがわからず、みたび俺はアリーナを見やる。アリーナも、意外そうだった。
『あの……?』
「わかってるわかってる。ぜんぶ言わなくたっていいわ。アルトをこんな早く口説き落とすなんて、ビルくんも
 やるわねえ」
口説き落とす?な、なんでマーニャさん俺の心がわかるんだ……じゃなくて、何のことなんだ。
「で、ビルくん。アルトのカラダにあったの?なかったの?」
話が飲み込めずに顔をしかめていると、マーニャさんが、赤紫の瞳を興味津々に輝かせて、聞いてきた。
あったのなかったの……まさかマーニャさん、アリーナが本当に女なのかどうかなんて聞いてるわけじゃ
ないよな。俺とアリーナは今日知り合ったばっかりで、そういうチェックができるような関係じゃ……。
『なんのこと……でしたっけ?』
「なんのことって、ビルくん何とぼけてんの。この王女様に会いにサントハイムに来たんでしょーが」
王女様に会いに……ハテ、そんなこともあったような……?
『!!』
すっかり忘れてた!
俺は、ゲマの命令で、勇者の血を受け継いでる王女様(か王子)を見つけださなきゃならないんだった。
ターニアと話をしてるときまでは覚えてた気がするのに……まさか、アリーナがお姫様だとは思わなかっ
たし、知ってからは、騒動があったり、浮かれたりしてたからな。
だけど、マーニャさんが覚えてて、なんで俺が忘れてるんだ。ターニア、ごめんよ……。
「ビルくん、よくアルトのこと、知ってたわね。あたしもさ、この子ひょっとしたらお祭りに来るんじゃないかな
 って思って、踊ってるときもそれとなく探したりしてたんだけど。まさか、ビルくんのがアルトを先に見つけ
 るなんて、思ってなかったわ」
『はあ。その……ちょっと昔、レイドックで会ったことがあって』
「へえー!そうだったの。良かったじゃない。ビルくんもあんがい、やることはやってたのね」
371 :04/06/11 17:28 ID:/GJi5/92
マーニャさんが高い声でからかうように笑う。どういう意味ですか。俺が、レイドックを訪れる娘に見境なく
片っ端から声をかけてたとでも?人聞きの悪いことを考えてもらっちゃ困ります。俺たちは、ちゃんと節度
を守って、よっぽど可愛いと思った女の子にだけにしてましたよ。
「まっ、これで、ビルくんの目的はあっさり果たされたってわけか。じゃ、どうする?今から、おばあちゃんの
 とこ戻る?」
『いいえ。マーズさんに頼まれたことがありますし、それに……』
まだアリーナの身体を確認したわけじゃない、と言おうとしたとき、横から肩をつかまれた。アリーナだった。
「……マーニャ、ウィル。どういうことだ?」
眉を寄せながら、アリーナは、疑うような眼差しを俺に向けていた。
どういうこと……ぜんぶここで話したら長くなっちまうな。とっさに返事をできないでいると、
「どういうこと、って?」マーニャさんが聞き返した。
「ウィルがボクに会いに来たとか、ボクの、その、身体がどうのって、いったい何のことなんだ」
「んー、ビルくんはね。そりゃあ可愛い妹さんを悪い奴らから助け出すために、世界中の王女様と会って、
 カラダ見せてもらわなきゃならないのよ。んで、最初にアルト、あなたを選んでここに来たってこと。……
 って、ビルくん、まだアルトに話してなかったワケ?」
『ええまあ……そんなこと、すっかり忘れてて』
かといって、アリーナが王女だとわかったときに思い出していたとしても、このことを話せていたかどうか。
アリーナだって仮にも女の子なんだから、俺が身体見せてくれなんて言い出そうものなら、明日の朝モン
バーバラの林の中で若い男の死体が発見されて犯人は皮のドレス姿の娘と神官ふうの若者、なんてこと
になっていただろう。
ま、でも、友達になれたことだし、好奇心旺盛なアリーナのことだから、ちゃんと話をすればわかってもら
えるはず。俺みずからが確認しなきゃならないってことでもないし、マーニャさんに頼めばいい。
もちろん、本当なら、俺がやりたい。
ガチャチャッ!
部屋に大きな音が響き、俺とマーニャさんはびっくりして振り向いた。
アリーナが、立ち上がりながら椅子を蹴飛ばした音だった。
372 :04/06/11 17:36 ID:/GJi5/92
「じゃ、じゃあウィル……はじめからぜんぶ、芝居だったんだな!」
眉間をぴくつかせ、怒りの形相でにらみつけてくる。
『え?』俺はたじろぎ、身を引いた。芝居?……俺が見たかったのは、芝居じゃなくてダンスだぞ。
「さいしょに会ったときから、ウィルは、ボクが王女だって知ってたんだろ!それをとぼけて、どこかで会っ
 たような気がするだなんて言って、あのくそったれと会ったときに初めて気づいたよーなフリしやがって」
『は?ちょっと待てって。俺は、きみが王女だなんて知らなかったし、どこで会ったか、思い出せなかった
 んだ。そう言っただろ』
「ウソつけ!だったらなんで、ボクのいるとこにわざわざ登ってきた?あのとき、ボクのタイツ、脱がせよう
 としたんだ?」
拳を震わせて、アリーナが詰め寄ってくる。げ。この王女様、完全に誤解してる……。
「そうですね。このお祭りで偶然出会って友達となられた方が、実は探していた姫様というのは、都合が良
 すぎますよね」
クリフトまでもが、腕組みしながら、冷ややかに余計なことをつぶやく。
いや、だからその都合のいいことが起きたんだって。俺は日頃の行いがいいんだから。
『違うって、アリーナ。誤解してるようだけど、俺は本当に……』
「気安く呼ぶな!ボクのことだましやがって!ボクに何の用か知らないけど、ぜったい聞いてなんかやらな
 いからな!」
言い捨てたかと思うと、アリーナはドアを蹴り壊すような勢いで開け――というか鈍い音がしたから実際壊
れたと思うが――俺とマーニャさんを振り返りもせず、飛び出していってしまった。
『あ、アリーナ!待て!』
あわてて腰を浮かせる俺の前を、「姫様!お待ちを!」叫んだクリフトが続いて走り出していく。
どうする?アリーナのあの脚力じゃ、今すぐ追いかけなきゃつかまえられない!―――

1.アリーナを追う
2.マーニャさんを責める


ウィル 現在地:サントハイム王国モンバーバラ 所持金:48925G 装備:檜の棒+旅人の服
道具:薬草x2、キメラの翼(マーズの館行き)、ターニアの風鈴(本日使用済)、マーズの手紙
体調:良好 精神:不調(空腹)            <4日目・深夜(モンバーバラ祭)>
373場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/06/11 17:49 ID:/GJi5/92
火曜更新といいつつ今日になってしまいました。臆面もなく25kb。記録更新?
推敲がなってないのはいつものことですが、この文章スタイル考えなおしたほうがいいのかなあ・・・
ここ数日の漏れの精神状態を狂わせてたのが、深夜アニメ
一昨日の某ミッション系アニメ(思い出したくもない)は救済の余地のないバッドエンドだったし、
昨日(今日)の某妹萌え鬱アニメは大丈夫だろうと思いきやそこまでやるかのショッキングな内容
しばしボーゼンとなってしまい、結果、昨日書き上がってたコレを手直しする暇もなく、本日遅刻
自律神経の状態が精神に大きく関わるとすれば、深夜アニメの時間帯に起きてる時点で終わってる気もするw
関係ないですが、あれだけ情報量が無駄に多いアニメって媒体をノベライズできる作家さんは、ほんと尊敬に値しまつ

>346 先生!!はい、おっしゃる通りでございます、が・・・
 実はその手を今までやりまくってきて今に至るので。だから話が進んでないw
 流れるような文章に憧れる身として、ゲームブックスレの更新を毎日楽しみにしておりますです
>347 4だと特に変化はなし。前回は好感度変化だけが主で、伏線はほとんどありませんですた
>348 5でいってみますた。ご期待には・・・添えてないでしょうね今回も
>349 アリーナみたいな娘の好奇心を刺激しすぎると暴走して大変なことに
>350 けど聡明なアリーナに萌えられかどうか。もちろん彼女も歳食えばアレでしょうが
>351 2だとアリーナ評価微減、クリフト評価上昇。あとあとを考えると・・・
>352 1だとミネアの話題になりますた。アリーナの好感度がわずか上昇
>353 3ではマーニャとミネアの過去の話が続きますた。好感度変化なし
>354 どれも良くて迷うというより、どれだっていいってことでせう。漏れもそのつもりで作ったんで
>355 5はたいていギャンブル性の高い危険なものなんですが、前回は大したことなかった・・・かも
>356 泊まれるかどうか、それも誰とかは、以後の選択次第でつ
>357 流されたほうがいい場合も悪い場合もあります。前回はどっちでせう
2択か、珍しい。

2で
当然追う

ここで追わなきゃ男じゃない。

1
1だね。二択なら。
「そのうちわかってもらえるよね。」って開き直るのも
ありかとは思ったけれど。
ここは結構大事な選択では?
うちは1でアリーナルートを選択しまつ。

ところでクリフトの評価が下がり続けているが、
あんまり下がり過ぎると、ザキ一発でやられたりしないだろうな・・・
どうせ2選んでも「男なら追わなきゃ!」とか言っておんなじだと思うので

1
1
381場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/06/12 06:11 ID:fbNxi15K
俺も、椅子を蹴りとばすようにして、部屋から駆け出た。「ビルくん!――」マーニャさんが何か言った気がする
けど聞いちゃいられない。そもそも、マーニャさんの勝手な誤解からはじまってるわけだし。
外では、男女が廊下の壁際に貼り付き、何人か倒れている。アリーナ(とクリフト)の暴走の巻き添えを食った
らしい。あの勢いで飛び出して行ったんだから、他人なんて見ちゃいないだろう。つくづく迷惑なお姫様だ……
などと呆れてる暇もない。前方を見ると、廊下の突き当たり、つまり階段に、緑の長い帽子が揺れながら沈ん
でいくのが見えた。まずは、あいつに追いつかないと。
向こうからサッとよけてくれる人の間を突っ走り、階段を一気に踊り場まで飛び降りた。壁を叩くように体勢を
切り替え、ちょうど上ってきた男女が驚く脇をすり抜け、一階の宴会場を横切って酒場を飛び出した。いた。
といっても、アリーナでなく緑の僧衣のクリフトだ。あわてた様子で右、左と見回していて、すでにアリーナを見
失ったらしい。
「………」
俺の足音に振り返ったクリフトが、俺を憎々しげににらんできた。せっかく見つけた姫様に逃げられたのは俺
のせいだとでも思ってるのか。冗談じゃない。勝手にアリーナが誤解したんだ、俺のせいじゃないっての!
見失ったとあっては、街じゅうを巡って探すよりほかにないが……ついさっき、その苦労を味わってたばかりだ。
それはずっとアリーナを探してたクリフトも同じはず。こうなりゃ、あいつと手分けして探すか。
『クリフト――』
声をかけた瞬間、クリフトはふいっと前を向くと、酒場の右の道、すなわち南西へ向かって走っていってしまった。
あの道をまっすぐ行けば大通りにぶつかって、その先は宿屋のはずだ。当てずっぽうか、それとも奴なりに思い
当たることがあるのだろうか。
俺も、右から左を見渡してみる。アリーナの姿は、やはり、ない。どうするか―――

1.クリフトの後を追う。
2.街の北東方向(広場−劇場−フレアさんの家)を探す
3.街の北方向(武器防具屋−劇場裏手の林)を探す
4.街の南方向(ミネアさんの占い卓−教会)を探す
5.戻って、マーニャさんに文句を言う
382場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/06/12 06:12 ID:fbNxi15K
さくっと久々の(書いてて恥ずかしい)翌日更新。今日は鬱アニメなかったものでw

>374 2だと・・・・・・・・・・・・って今回も選べるけど
>375 逃げる女は追いかける。当然ですね
>376 逃げる女を獣のように追いかける。ギャルゲーの常道ですね
>377 まあ2だとだいたいそんなような感じですかね・・・・・・たぶん
>378 その予定だったのですが、選択肢からいくと今回が最終決断になりますね
 ご安心ください、ザキかけてくるのはも少し進んでか・・・いや何でも
>379 と思いますか?ふふふ・・・
マジでワカラン、1
神頼みか3辺りもしたいがザキの可能性が出てきたと考えると……
3にしよう。
4
ミネアに占ってもらうことができればいいんだが
じゃあ2で。
勝負で3。
3だな。
1かな
3で。
見つけたときに邪魔者いない方がいいだろうし。
5で。

ここはあえて深追いはしない。
1番(殺される)リスクが少ない気がするし。
ゲボべぼ
4ってことで
ここは勝負
1でよろ
2かな
1日1レスこれ基本。
無難じゃねぇけど3と見た。
エロゲーじゃないの?
シコシコしたいんだけど
猛者達は妄想でシコシコしてるよ
場繋ぎ氏にはシコシコさせられるような話を期待している
あせるなあせるな。
404場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/06/20 17:57 ID:Dep1peWy
……よし、北だ!
俺は、クリフトとはほぼ逆の方角へ走り出した。
はっきりした理由はない。せいぜい、数時間前にアリーナを抱えて走ったときと同じく、“南から北へ風が吹い
てるから”だけだ。獣や魔物に追われたときの逃げ方だから、獣でも魔物でもない俺(やクリフト)からの逃げ
かたとしてはまったく合理的じゃない。
ただ、走っているうちに、別の理由も思い浮かんできた。東も南も人が多い。アリーナは騒がれるのが嫌い
なタチだから、無意識に人がいない方角を選んだかもしれない。また、アリーナがあの勢いのまま酒場から
飛び出したとすれば、2階の廊下と同じく数人は轢き倒してっただろう。東にも南にも倒れてる人はいなかっ
た。いっぽうこちらの北には、人はまばらで、ぶつかる心配なく全力疾走できる。消去法なら、北が有力だ。
もちろん、全力で逃げられるとなれば、追いかけるこちらも全力で走らなればならない。俺は、そのまばらな
人にさえもぶつかりそうになりつつも、月明かりを頼りにできるだけ周囲を見回し、走った。
ターニアと俺の命運を握っている王女様。勇者であるかどうかを確かめるまで、逃がすわけにはいかない。
それに、せっかく仲良くなって、友達だと認めてくれた女の子と、誤解されたまま別れるのは、辛いし悲しい。
薬草を買った武器防具屋と劇場の間をすり抜け、劇場の北にひろがるあの林に再び入った。一仕事終えた
らしい何組かのカップル、また、これからお楽しみに向かう連中を、何組か追い越す。この林が今どういう状
況か知っていて飛び込むのは気が引けるが、やむを得ない。
『………』
林に入ってまもなく、俺は足を止めた。アリーナを見つけたわけでなく、藪に突き当たったからだ。
さっきは気づかなかったが、下草を切り拓いてあるのは劇場の周りのせいぜい20歩程度で、外側の林は雑
草や低木の生い茂る手つかずの藪になっている。いくら猪突猛進型のアリーナでも、この藪を、傷だらけに
なるのを承知で突っ切っていくはずはない。
405 :04/06/20 17:58 ID:Dep1peWy
とすれば、道は二つ。傍若無人のカップルたちがたむろする林を抜けて街の北東側に出るか、あるいは引き
返すか。アリーナなら、どうしただろう。赤面しながら東へ抜けていったか、舌打ちして引き返したか。前者が、
どちらかといえば、ありそうな気がする。
また恋人どものお邪魔虫になるのは気まずいが、しかたない。一つ深呼吸して東を向く。
『……?』
壁のような前の藪を左から右に眺めて見て、途中で暗い切れ間があるのに気づいた。
近寄ってみると、そこだけ藪も木も一直線になくなっていた。下の土がところどころ露出している。獣道にして
はできすぎている。人が使っている道だ。しかも、つい今し方、人が通っていった気配が感じ取れた。
こういう感覚は、俺やビアンカにはよく備わっている。ターニアやマリベルにはまるでない。マリベルが“あんた
たちってどっかおかしいんじゃないの?”と呆れるのを聞くと、俺たちがそろって不思議な力を持っているよう
で、ちょっと得意になる。もっとも、一度、ホルスの奴が“踏まれた草とか土が元に戻るときの小さい音が、お
まえらには聞こえるだけだろ”と、現実的な説明をしたことがあった。ホルスに同意するのはしゃくだが、そん
なところなのかもしれない。
その道を、他に同じような道がないのを確認してから、進み始めた。
真夜中に、暗い森に入る道を使う大胆な奴は、そうはいないはず。刺激を求めるカップルだって敬遠するだ
ろう。魔物や動物のカップルなら別だが。
この小道は、方向からして、森を抜けて、街の北西の街道と合流するはずだ。世界地図の中のサントハイム
を思い出してみた。街道は、大陸中央の山脈を避けてモンバーバラからいったん北のハバリアって港町へ行
き、そこから再び南へ曲がって峠を越え、城へと続いていた(ヘンリーが、モンバーバラではいろいろあっただ
の、城へ行く途中で可愛いお姉さんに声をかけただのと、いちいち自慢したから覚えている)。だから、アリー
ナが街を出てサントハイムの城へ戻ろうとすれば、北へのこの道がいちばん近道になる。
406 :04/06/20 18:00 ID:Dep1peWy
森の木々の間の道は暗く、場所によっては月明かりが届かず、目を閉じても変わらない真っ黒なところもあっ
た。しかし夜道を一人で歩くのは慣れているという自信が俺にはある。シエーナへ買い出しに行って、帰りが
真夜中になることなんかしょっちゅうで、暗いながらも勝手知ったライフコッドの山道より、遅くなったことをター
ニアに怒られるほうが、よほど怖い。まして、街のすぐ近くなんだからな、ここは。
これでビアンカと一緒なら歌でも唄いながら、マリベルとなら反対側の肩にそっと触ってやって悲鳴を上げさせ
たりして夜の散歩を楽しむところだけれど、一人だとどうしようもない。さっさとアリーナに追いつ……。
キュワタタタタッ!
『うわっ!?』
すぐ近くからの音に、俺は思わず悲鳴を上げてしまった。聞いたことのない鳴き声だが、羽音からして夜烏か
何かだ。ふう、びっくりさせやがって。
『………』
はっと、俺は息を呑んだ。ここは、ライフコッドの山でも、レイドックの森でもない。サントハイムだ。俺の知らな
い鳥がいて、知らない木があって、見たことのない動物や、正体のわからない魔物がいる。暗闇から飛び出し
てくるのが、大声を出せば逃げてしまうようなファーラットやテンツクとは限らない。はるかに凶悪な魔物かもし
れないのだ。
ああ、なんでこんなこと気づいちまったんだ。急に俺は一人でいるのが恐ろしくなってしまい、前にいる(と思わ
れる)アリーナに早く合流したいと、自然に、早足になった。今の俺をマリベルが見たら、ここぞとばかり、弱虫
弱虫とあざけまくるだろうな。
森の木々と茂みのトンネルが続き、いっこうに拓かれる様子も、また前を歩く人影も見えない。風による木々
のざわめき、小動物が藪をかさつかせる音にさえ、身がすくんでしまう。けれど、女のアリーナだって今この道
を歩いてるはずだ。この先に、アリーナがいるんだ。言い聞かせ、勇気をふるい、小道を進む。
ここまできて、もしアリーナの行き先が違っていたら……いや、そういうことを考えるのは、やめよう。
407 :04/06/20 18:02 ID:Dep1peWy
『……?』
不意に足の裏に違和感がして、立ち止まった。何か踏んだわけでもないが、今までの道とは違う感触がした。
……なんだろう。しゃがみ込んで、木漏れ日でなく木漏れ月光を頼りに調べてみる。
道の土と下草が、乱れていた。草が倒れている方向を見ると、右の茂みへ続いている。藪の雑草もそこだけ
が倒れ、臨時の獣道のようになっていた。なにものかが、道から藪へ入った跡だ。倒れた草に触ってみると、
草の汁が指についた。つい、さっきのものだ。
深夜、こんな藪の中に平気で入って行くようなのは……。
「フ……フウッ……」
小さいが荒々しい息づかいが聞こえたのは、そのときだった。
まさか……魔物か!?
はっと立って、身構える。南風。つまり、風上から俺は歩いてきたことになる。魔物が俺の近づく気配に気づい
て、夕飯にするために待ち伏せしていてもおかしくない。
どうする。今の俺の武器はステッキ一本だけ。人間相手ならまだしも、魔物に対しては丸腰同然だ。サントハ
イムの魔物はレイドックの魔物と大差ないとミレーユは言っていたが……そうだとしても、細い木の棒だけで
怪我せずに追っ払う自信はない。
相手は、気づいているのか、気づいてないのか。俺は目を走らせ鼻をうごめかせ、気配を探った。
ガサッ。
かすかな、草の動く音。やはり草の倒れていた先だ。俺は[ふくろ]のステッキをひっつかみ、すばやくそちらへ
向き直った。
藪から飛び出す様子は、ない。しかし呼吸の音はたしかに聞こえてくる。人のものに似ているが、俺ではない。
逃げるにしろ戦うにしろ、相手の正体がわからきゃどうしようもない。テンツクのように足の速い、あるいは鼠
コウモリのように空を飛べる魔物なら、俺が背中を向けた瞬間、襲いかかってくるはずだ。
『………』
しばらく、姿の見えない敵と、にらみ合った。
「うン……」
もう一つ、別の声がした。喉から息を絞り出したような声だ。同じく、目の前から。別のなにものかがいる……
それじゃ、1対2なのか!
ステッキを握りなおす。手が震えている。頼むから、スライムかファーラットくらいの魔物であってくれ。
408 :04/06/20 18:10 ID:Dep1peWy
「チイックショウッ!」
野太い、吐き出すような声。びくっ!背肩腕脚に震えが走り、俺は反射的に身構えなおした。が、それは魔物
のではなく、人間の、男の声だった。
なんだ、人間だったのか……。
安心、次に疑問、そして恐怖が湧いた。夜中、こんなところで、いったい人が、何をしてるんだ?
魔物が夜中藪にひそむのは、恐ろしいが不思議ではない。しかし、人がそうしているというのは何か目的あっ
てのことだ。へたな魔物よりも、そちらのほうが、ずっと怖い。
ぐっと歯を食いしばり、思い切って俺は、一歩進んで雑草の向こうを覗きこんだ。
藪を越えたすぐ前、木のかげに、腰をかがめてうずくまっている男の影が見えた。肩幅の広い、かなり大柄な
男だ。こちらを向いているが、月光をさえぎる木の枝のせいで、顔は見えない。
『そ、そこにいるのは……』
声をかけようとしたとき、いきなりその影は動いた。前屈みの姿勢で……まっすぐ、俺に突進してくる!
しまった。道にいて月光を浴びてる俺の姿、相手からは丸見えじゃないか!―――

1.とにかく、直撃だけは避けなければ……。
2.かわすのは無理だ。受け止めるしかない。
3.動きを止めなければ。ありったけの大声をあげてみるか。
4.何をしたって無理だ。ダメもとで何かの呪文を唱えてみよう!
5.《入力してください》
409場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/06/20 18:16 ID:Dep1peWy
たったこれだけを書くだけで1週間・・・
6月もあと10日。DQ8の発売までに終わるんかな、このサントハイムシナリオ(おおい)

>383 大丈夫ですってまだ先ですからw
>385 実のところ漏れは4が一番多いかなと思ったのですが・・・4だとさらに分岐しますた
>387>395 3、多かったでつね。けど結果の雰囲気はご想像とだいぶ違ってますねきっと
>391 ご期待に添えませんで。アリーナは当然どれか一方向だけにいる、という選択肢ですた
>392 5だと・・・面白かったんですがもはや遅い、とGMにあるまじきことを書いてみる
>398 さんくすです。千夜一夜スレとかでそのタイプの保守レスを見かけますが元ネタあるんでせうか
>399 3はある意味で正解。もちろん今後の選択によりけりな話
>400-403 この話、シナリオとしてはどちらかと言うとギャルゲーよりもエロゲーに近い気がしまつ
 今まで二度ほどHシーン(偶発系)に突入しかけたことがありましたが、幸い回避されますたw
 ちなみに。漏れの書く濡れ場はこの文体のまんまなので、たいていの場合ひたすら長くなってしまいまつ
 こないだ○ォ◇のHシーン試しに書いてみたんですが・・・それだけで280行21kb。アフォかw
普通に考えると1だが
ここは4を選ぶ
3
ガイアか
3.相手は小物かもね。

○ォ◇のHシーン、試しにうpしてみない?
5.相手より低い姿勢で突っ込み相手の下からのパンチを封じる
幕のう(ry

ザムデイン
5、焼け付く息を吐く……というのは冗談で跳び箱の要領でかわす
3だね。
おたけび攻撃ですくませよう。
5 カウンターで正拳突き
419場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/06/24 16:35 ID:GtroZcoj
ようし!こうなりゃ……俺は、鼻をいっぱいに広げ、大きく息を吸い込んだ。
ここで普通に“わー”とか“ぎゃー”なんて叫んだんじゃ、逆になめられる。もっと男らしく……って、くだら
ないこと考えてる場合か。とにかくひるませりゃいいんだ。目を大きく見開き、腹に力を入れ、ことばを、
男にぶつけるように吐き出した。
『ビ ア ン カ ーーーーっっ!!!!』
げ。おい、いくら思いつきだからって……よりによってなんてコト叫んでんだ俺!
「!?」
すぐ目前で男の突進が止まった。ぼさぼさの頭と黒い目がギョッとしたように左右に動いている。
しめた!こいつ、俺に連れがいると思ってやがる。
俺は、ステッキを引き抜き、その柄を男の顔面へ思いっきり叩きつけた。「ぎゃおっ!」男が獣みたいな
悲鳴を上げ、顔を覆ってのけぞった。バーカ。踏み込みざま、がら空きになった腹に右の拳を突き込ん
だ。腹筋にはじき返されることなく、ドスッと気持ちよく突き刺さる。
「がうっ……」
男が、あっけなく膝をついた。すかさず顔にステッキを突きつける。なんだ、ただの見かけ倒しか。俺より
ずっと大柄で筋肉もついてるくせに、戦闘には慣れていないようだ。
鼻からの血を手で覆ったまま、男が俺を見上げた。頭をぼさぼさの髪、顔の下半分を無造作なヒゲで覆っ
た、中年の男だった。指の間から、一見気弱そうな小さく丸い目が、俺を憎々しげににらみつけている。
『ここで、何をしていた?』
道側から藪の暗闇へじりじり動きながら尋ねる。男は、「は……」うめいただけだ。頭部も背中も完全に
無防備。喉の奥を鳴らしていて、呼吸が止まったらしい。
どうしてやろうか。俺としては、こんな男放り捨ててさっさとアリーナを追いたいのだが。
「……み、み、見逃して、くれ」
男がかすれた太い声を出した。ということは、やはりこの男は、何か後ろ暗いことをしていたのだ。
『何をしてたのかって聞いてる。話はそれからだ』
俺は、男が隠れていた藪のほうに目をやった。まだもう一人か一匹がいるはずだが、何も動きはない。
420 :04/06/24 16:40 ID:GtroZcoj
「か、金ならやる。だから……」男がひいひいと声を詰まらせながらゴソゴソと手を動かし、銀貨の音をさ
せる。こいつ、すっかり怯えてやがる。でかい図体して命乞いか。プライドを捨てないラゴスのがまだマシ
……ま、似たようなモンだ。
『金なんかより、まずは……』いらつきながら言いかけた俺に、男の顔が笑うようにゆがむのが見えた。
手には光るものを持っている。くっ、油断した!俺が後ろへ飛び退くのと、男が何かを投げつけるのと、
同時だった。
『うわっ!?』
バシャッ、と俺の顔に何かがかかった。液体、何の匂いも味もしない。なら、ただの水か。水筒の水でも
ぶっかけたか?痛くもかゆくもないものの、隙をやっちまった。顔の水をぬぐいつつ、左手でステッキを
二度、横に薙いだ。棒きれ一本当てたところで男の体当たりは防げないが、牽制くらいにはなる。
『あ……?』
前に見えたのは、攻撃をしかけてくる男の必死の形相ではなく、よろよろと一目散に小道を走っていく男
の背中だった。
『待てっ!』
追おうとして、足が何かを蹴った。聖水のビンだ。するとあの水……あのな。聖水ってのは魔を払うため
の水だろうが。俺は魔物かっつーの!
『これ、返すぞっ!』
ビンを拾い上げ、男の頭めがけて投げつける。それたビンは男の左の頬のそばを通過し、「ひいっ!」
飛び上がった男が、駆け出し、何かに転びかけ、よろけながら闇に消えていった。追えば追いつけるが、
あんな奴を捕まえてとっちめても、何の自慢にもならない。
あ。でも、アリーナがこの先にいたら。あの男、前のアリーナに追いついて、悪さでもしなけりゃいいが。
心配になって一歩踏みだしかけ、考え直した。いま俺たちが時間食ってた間にアリーナはかなりの距離
を行ってしまっただろうから、追いつけたところで森の外の広い街道だ。よしんば森の中であの男が追い
ついてアリーナに下心を持ったとしても、アリーナならあんな体格だけの男、多少ハンデがあってもすぐ
ノシちまうな。
それに……さっきまで自信があったはずの、小道を人が通っていったという気配は、ここから先に感じな
くなった。アリーナはここを通ってないんじゃないか?そんな予感が強くなってくる。こういうときは直感に
従ったほうがいい。引き返すか……。
421 :04/06/24 16:41 ID:GtroZcoj
っと……その前に。あの男、こんなとこで何をしてたんだ?
俺は、ふたたび藪をのぞき込んだ。耳をすますと、かすかな呼吸音が聞こえる。やはり、何者かがまだ
いる。
『誰かいるのか?』
声をかけたが、返事はない。俺は、ステッキで前の草を叩きながら、藪の中に入ってみた。人間がいた
以上、もう一人も魔物ではないはず。男か女か。もしかして俺、暗闇の危険な刺激がひたすら大好きっ
ていうバカップルの邪魔しただけってことは、ないよな?
パチッ。
ステッキの先に、何か硬いものが当たった。手で探ると革の感触が触れた。形状を調べてみようと手を
軽く叩くように動かしてみる。革に隙間があり、そこに指を入れると、さらりとした温かいものに触れた。
この感触は……人の肌、人の足の指だ。身動きもしないところをみると、眠っているのか。
まさか……アリーナじゃ?
ぞっとして、その脚を手のひらで上にたどってみる。黒タイツの感触じゃなく生の脚だ。手当てをしたとき
の感触と比べてみると、アリーナの脚にしては筋肉が少なく柔らかい。つまり……ぜんぜん関係ない女
(か、すね毛処理してる男)の脚ということだ。ほっと安心。
さらに手探りをする。これは……ザラッとした布。麻布だ。これでますますアリーナの可能性は小さくなっ
た。あのお姫様は、けっこう高級な皮のドレス姿だった。こんな庶民っぽい、あるいはミネアさんが身に
つけるような、麻のローブは着ていない。
『……?』
ミネアさん……?
俺は、手を止めた。はは、まさか……ミネアさんじゃ、ないよな?
ミネアさん、まだ、占いのお仕事、してるはずだ。わざわざこんな人っ子二人しか通らない道にやってき
て占い卓を出すほど、ミネアさん、間抜けじゃないだろう。
422 :04/06/24 16:45 ID:GtroZcoj
身体に触ってるときに気付かれたら面倒なことになりそうなので、麻布の周辺を探りしながら、徐々に女
の頭の方向へ両手を動かしていく。ん……さらさらした堅めの絹糸、じゃない、髪の毛か。手触りのいい、
かなり長い髪だ。色は、黒っぽいという以外、見えない。ミネアさんの髪は紫……だから、ミネアさんじゃ
ないっての!
『いてっ?』
ギザギザした硬いもの。なんだこれ?拾い上げようとして、輪になった細い紐がついているのに気付く。
たぐるようにその先へ手を伸ばすと、再び、やわらかい女の肌が指先に触れた。この骨のカーブ……頬骨だ。
すると、このすぐ前に女の顔があるはず。どういう人だろう。どうせ知り合うなら、アリーナやミネアさんみ
たいな美人だといいんだけどなあ……。
そのとき、森を風が吹き抜け、葉陰から差し込んだ月光が、俺の眼前の暗闇に揺らいだ。
『……ミネア、さん……?』
わずかな光に俺がかいま見たのは、紫の髪に浅黒い肌と、広い額に大きなサークレットだった。
それは、たしかにミネアさんだったのだ。
口が開き、あごが震え、立ちすくむ。うそだ。どうしてミネアさんがここに。しかも、気を失って!
『ミネアさんっ!!』
抱き起こそうと身体に手を回す。ミネアさんのじわりと濡れた背の肌のねばつきと肩骨の硬さが、直接、
俺の腕に重なった。はっとミネアさんの身体の前を見ると、水母のようなぷくっとした膨らみがふたつ、
何かに濡れて丸く光っている。ローブが、胸部から下半身全体を覆っていたはずのローブが、腰巻きの
ように腹部だけに巻かれている。その下では……白い下着があるべき場所からかなり膝側にずり下ろ
され、両脚も、控えめなミネアさんなら絶対に自分からしないほど大胆に、大きく広げられている。
何をされようとしてたか――あるいはされたか、一目瞭然の姿だった。
423 :04/06/24 16:53 ID:GtroZcoj
『………』
倒れてくるかのように木々がざわめき、揺れた。俺は、息を止めたまま、ミネアさんを見下ろしていた。
なんで、ミネアさんが……昨日、バルザックに、あれだけのことされたばかりなのに、今日もこんな……。
でも、なぜなんだ。魔法使いのバルザックならともかく、さっきの男はでかいのは体格だけで力もスピー
ドもあの程度だった。腕力ではかなわないにしても、ミネアさんには呪文があるはずだ。昼間、ラゴスの
奴を眠らせたときのようなことが、どうして、できなかったんだろう。それに、街角で占いをしてたはずな
のに、どうしてこんなところにいたんだろう。街の人ごみやこの小道の状況からいって、気絶させられて
街からここまで引きずられてきたはずがない。ならば自分の意志で来たことになるけど……魔物だって
出そうな暗い森の中まで、ひとりで来るなんて。いや、ことによるとあんな男と一緒にか?ミネアさんて、
ほんとに……ほんとに、何考えてんだ!!
眼前がぼやけるのは、怒りのせいか、それとも……。
『………』
唇を噛んで、首を振った。今は、とにかく、冷静にならなきゃ。
ミネアさんの口元に、鼻を近づける。薬を飲まされた様子はない。首を絞められた痕もない。昨日のよう
に魔法で眠らされたのでもなさそうだ。おそらくは……胸を突かれるか腹を殴られたかした、打撃による
失神……。
肩と肘がこわばる。ちっくしょう。あの男、女になんて酷いマネを。知ってたら、半殺しにしてやった。もし
ミネアさんにそれ以上の事をしていやがったら……そのときは、そのときは……!!
まぶたをぎゅっとつぶる。とにかく、俺が今まずすべきことは―――

1.何とかミネアさんを気つかせてあげないと……。
 1−1.平手打ちする 1−2.活を入れる 1−3.キスする
2.このままミネアさんを街まで運んで、マーニャさんかクリフトに相談したほうがいいか。
3.あの男、やはり許せん!いまからでも追いかけていって、罪を償わせてやる!
4.……いま、何かしても、あの男のせいに、できるよな……?
424場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/06/24 17:06 ID:GtroZcoj
更新しようとしたら昨日の夜から鯖落ち・・・今も調子悪いので急いで返信
水母(海月。くらげ)は、みなさん読めますでしょうか・・・?

>410 ここでは4が正解ですた。伏線皆無なんでどれ選んだってコケたりはしませんが
>411 あの超音波はDQでいうとなんて技なんでしょう?最も近いのが「おたけび」ですがそれでは情けなひw
>412 さて小物なのか大物なのか
 ○ォ◇のHシーン・・・お読みになりたければ、サンプルとして1、2レスぶん程度うpりましょうか?
>413 ・・・そのあと巻き込まれて下敷きになりそうでつ
>414 はい?なんでしょう・・・??
>415 選択は違いましたが似たようなことやらせてみますたw
>416 それは1に含まれるのではと・・・
>417 今回もご期待に添えませんでw
>418 走ってくる相手に正拳してタイミングずれたら腕折れまつ。まあそんな細かいこと考えてないけどw
1−2辺りでミネアなら死にかけるような気もするし、アリーナ一筋の身としては無難に1−1?
1−2
アリーナ一筋の人はお腹一杯でいいっすね…
あえて3を選ぶ
じゃあ2にしとく
活を入れるって殴るの?そりゃやばそうなので…。

1−3にしてみよう。
2 クリフトはあたふたするのか普通に助けるか
  個人的には友達になって欲しい
やっぱ4で
2
困ったときのマーニャさん
男はオーリンだと思うんだが、その場合追った方がいいのか?
………とりあえず無難に
2
434場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/06/28 01:06 ID:7HeUfBaQ
こういう場合どうすればいいのかわからないけど……この現場で目を覚まさせたら、きっとミネアさんをさらに
傷つけてしまう……。
目を開き、両拳を握りしめ、あの男への憎しみとミネアさんへの疑問をひとまず捨てる。ミネアさんが気付く前
に、どこか落ち着ける場所へ運べるといいんだけど……。
と……この姿のまま街まで連れて行くわけにはいかないか。
両手で、ローブの端をミネアさんの両脇から持ち、ひっぱり上げた。何か(わかってるけど…)に引っかかり、
すぐにするりとその上を通過して、ローブが肩におさまる。それから……わずかな月光に白く見える、ミネアさん
の膝の布きれに目をやった。やっぱ、あれも戻してあげねばなるまい。
大股になっていた脚を静かにそろえてやり、なるべく足側を見るようにして、その白い絹きれに手をかけた。
朝見たときは三角形をしていたそれは、ひどくねじれて膝に引っかかっていた。あの男め……ぐっと唇をかみ
なおし首を振ってから、それをほぐしにかかる。手先の不器用な俺にはかなりの難事だった。身につけている
状態の女の下着に触れたうえ、それを着せてやるというイベントは……たぶん、子供の頃にターニアが風邪
ひいたとき以来だ。しかも、いまミネアさんが目覚めたり、万が一前の道を人が通りかかるなんてことがあった
ら……と、余計な緊張も加わって、なかなか思うようにいかなかった。
ようやく元の三角形になった絹を、ゆっくりと元の位置へ引き上げる。途中、かすかな塩辛い香りを嗅いだ気
がして、あわてて呼吸を止めた。ん?そういや……あの生臭い匂い(健康な少年ならまず知ってるアレ)がし
ない。すると俺は、寸前でミネアさんを助けられたのか。……いや、そうとも限らない、か。
最後に、ローブの裾をくるぶしまで下ろしてあげ、見かけ上、ミネアさんを健全な格好に戻した。これで、目を
覚ましたときにはミネアさんはきれいさっぱり忘れてる……なんてことならいいんだけどなあ。
435 :04/06/28 01:08 ID:7HeUfBaQ
『よっ……』
ミネアさんを腕に抱え上げる。さっきもアリーナをこうやって運んだっけ。疲れてるせいかもしれないが、
アリーナよりもかなり重く感じる。胸とお尻の重さぶんかな。
一日のうちに美女をふたりも腕に抱けるなんて、俺ってけっこう幸せな男かもしれん。
……不謹慎なこと考えてる場合じゃ、ない。
ざわざわと風がうるさく騒ぎたてる藪を出、なるべくミネアさんを揺らさないようにして、街への帰路についた。
《アリーナの評価がガタンと下がった》《クリフトの評価が下がった》

街の灯りが近づくにつれ、ミネアさんの体がはっきりと見えてくる。
聖母のように穏やかだった表情が、青ざめ、気絶させられたときそのままを固めたようになっている。整えた
つもりでも不自然さを残してしまった身なりのあちこちに土や草をこびりつかせ、脚はだらりと力無く垂れ下
がっている。呼吸のためにかすかに胸が動き、腕に鼓動を感じなければ、ミネアさんが果たして生きている
のかどうか俺でさえ疑うだろう。また、この状態を見れば、ミネアさんに起こった災難について、ある程度の
察しはついてしまう。
だから、暗い森から抜けて、人の姿……やはり無邪気に騒いだカップルだったが……を見たときは、ほっと
しつつも、すぐに立ち木の陰に身を……ミネアさんを隠した。
どこに運び込むのが一番いいだろう。今日このモンバーバラを歩き回った結果を思い描いてみる。マーニャ
さんのいる酒場に寄ってからミネアさんの下宿に行きたいところだが、南は人も多いし、ミネアさんはちょっと
した有名人だから、大騒ぎになるのは間違いない。その結果はミネアさんにさらに深い傷を負わせることに
なる。
そうすると……。俺は劇場の向こう側を眺めた。この林を突っ切って、街の東、中流地区のフレアさんの家に
行ったほうがいい。そのあとマーニャさんを呼んできて……ついでにクリフトも探して、意見を聞こう。アリーナ
は……まあ、どこかでうまいこと会えれば……。けど、会えたところで、おとなしく話聞いてくれるだろうか。
436 :04/06/28 01:09 ID:7HeUfBaQ
肩に頬が乗るように、ミネアさんをそうっと抱え直す。この姿なら、ちょっと見なら、具合の悪くなった娘を搬送
しているかのごとくだ。カップルどものいる林を歩いても、何もとがめられることはない。
というか、この非常事態に遠慮とか気恥ずかしさなど、かまってる場合じゃない。
本日3度目(くらい)になる祭りの裏手の道を早足で進み出す。ミネアさん、ここで起きないでくださいよ……。

何組かのカップルに鉢合わせしながらも林を抜け、未だファンの集まる踊り娘さんの棟を避けつつ、昼に行っ
たフレアさんの家を目指した。モンバーバラでもこの辺りになるとさすがにまとも(?)な人たちが住んでいるら
しく、出歩いている人はまばらで家の灯りもほとんど消え、レイドックやシエーナの居住区と大差のない閑静な
住宅街になっている。そのため道が暗く、家並みもよく見えない。
えーっと、フレアさんの家は、と……探しながら、俺は膝まで使ってミネアさんを幾度も抱えなおす。さすがに
もう腕力に限界がきている。足はどんなに疲れても気合いで何とか動かせるが、腕ってのは感覚がなくなっち
まったらそれっきりだからな。ミネアさんを、早く、どこかに寝かせてあげないと。
「そこで何をしている!」
何件目かの木戸の表札を確認していると、いきなり後ろから怒鳴られた。ん、この声は……振り向いてみると、
昼間もこのへんで会ったスコットとかいう兵士が、槍を構えていた。
「おっ?おまえは確か……ん?……みっ、み、ミネアさんっ!」兵士は俺の抱えている人を見たとたん目を丸く
し、「貴様っ、ミネアさんに何をしたんだ!」覆いをつけたままの槍を、俺の顔前に突きつけてきた。
やっぱり。俺は肩をすくめる。この兵士だと気付いた瞬間、誤解されるだろうと予想がついた。
『ひとまず、フレアさんの家はどこですか。それから、説明しますから』
「いいから、とにかくミネアさんを下ろせ貴様!」
似たようなやりとりをついさっきもした気がする。普通にわけを話したって聞きそうにないし、腕がもたない。
437 :04/06/28 01:12 ID:7HeUfBaQ
『あなたはミネアさんがどうなってもいいんですか!フレアさんの家、教えてください!』
兵士をまっすぐにらみつけ、怒鳴り返した。ひるんで槍を引いたのを『早く!』たたみかけて圧倒すると、兵士
は髭の下の口をもごもごさせてうなずき、こっちだというように俺を向いたまま歩いて、一軒の木戸を指さした。
そうだここだ、フレアさんの家。ジロリと目配せして兵士に木戸を開けてもらい、玄関口に急いだ。一階のひと
間に灯りがあるので、起きていてくれたらしい。呼び鈴をこれも兵士に鳴らせると、すぐに中で音がして、ドア
が開いた。
「ウィルさん、お帰りなさい。早かったですね」あまり眠そうな様子もなく昼間と同じ笑顔で出迎えてくれたフレア
さんだが、「……あら?」俺の腕のミネアさんを見て息を呑み、眉が斜めにつり上がった。
「ミネア?どうしたんですか?」
『話はあとです。とにかく、ミネアさんを』
上がり込もうとした俺に、「わかりました」フレアさんが前に立って、両手を差し出してきた。は?意味がわから
ず立ち止まっていると、フレアさんは一歩前に出ていきなりミネアさんを俺から奪い取った。ぽかんとする間に、
フレアさんは、やすやすとミネアさんを居間の奥へと運んでいく。ミネアさんてそんなに軽かったか……?
首をかしげ、しびれた腕を振りながら、俺はフレアさんの後について客用の寝室に入る。兵士も、心底心配そ
うな顔をして、続いて入ってきた。
フレアさんは、ベッドにミネアさんをそっと寝かせると、髪の汚れを二つつまんで捨てた。それから、俺たちに向
き直り、
「お二人とも、外に出ていてもらえますか」
と、笑顔ながらも、きっぱりと言った。
『……はい』
今度の意味は、すぐにわかった。俺は、首を伸ばしてミネアさんを見てから、回れ右をして寝室を出た。
438 :04/06/28 01:20 ID:7HeUfBaQ
「では話してもらいましょうか。いったい、何があったんです?」
居間まで戻ったところで、いっしょに出てきた兵士が、俺の前に回り込んで、勢い込むように聞いてきた。
『はい。それが……』
言いかけて、口をつぐむ。待てよ。今ここでこの兵士――スコットさんに、話すべきだろうか?
警備兵でしかもミネアさんに好意を寄せているらしいスコットさんに話してしまえば、スコットさんの対応によっ
ては祭りの警備がいきなり厳しくなり、街中はたちまち物々しくなって、自然とミネアさんのことも知れ渡ってし
まうかもしれない。
ここはやはり、マーニャさんに知らせて意見を仰いだほうがいいかもしれない。ミネアさんが怪我をしてるって
ことも考えて、クリフトも呼んで来たいところだ。あれでも神官だから回復呪文は使えるはずだし、アリーナ姫
の従者っていう立場の人間だからスコットさんたち警備兵にも影響力があるだろう。彼に協力してもらえれば、
理由は秘密のうちにあの男を捕まえることもできる。
ただ問題は、果たしてクリフトが俺の話を信じてくれるかどうか……何しろ、アリーナのことがあるからなあ。
どうしよう?―――

それぞれの行動を選んでください。 例:A−1,B−2
誰: A.俺 B.スコットさん
行動: 1.マーニャさんを呼びに行く 2.クリフトを探しに行く 3.アリーナを探しに行く 4.ここで待機
(*二人同一行動可)
(*スコットの行動は、そうしてもらうように主人公が頼む)
439場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/06/28 01:21 ID:7HeUfBaQ
は、話がぜんぜん進まなひ・・・これで7月突入はかなりまずい
「一日」のテキスト量がこんなに無駄に多いギャルゲーがあってたまるかってところですな
とにかく次の更新でモンバーバラ祭りはようやくに終了・・・かも

>425 1−1だと普通に起きる予定ですた。が・・・
 今回これだけされても起きないのに平手打ちくらいで起きるのは無理ありますかね。まあパラレルなんで
>426 引っ張りすぎました。反省。とはいえ実はサントハイムシナリオ≒アリーナ攻略編でして・・・
>427 3だともう一つマーミネ関連のイベントが発生ですた
>428 ということで2ですが、結局また選択を先延ばししてしまいますた
>429 「活を入れる」とは背中を突いて脊髄に刺激を与えて蘇生させることでつ。シを書き忘れるとえらいことになりまつw
 実はここでは1−3がベストだったり・・・あくまでここでは、でつが
>430 現在クリフトの好感度はゼロ。どうなりますやら
>431 4は・・・・・・まあ終わったことですから次行きましょうか
>432 トラブルメイカーが窮地になると最も頼れるキャラになる、というのもドラマのお約束?
>433 はてさてどうでしょう。みなさんミネアについては安全路線ですな
乙です
Aー1
Bー2
441名前が無い@ただの名無しのようだ:04/06/28 05:28 ID:7hc89H+B
《アリーナの評価がガタンと下がった》←カナシイ

でもここはA−1、B−2しかないなあ。クリフト少しは役に立ってほしい。
A-3
B-1
《アリーナの評価がガタンと下がった》←血涙

A-3 B-1

クリフトとデートへの道は遠いな
A-3
B-4
なんとしてもありぃなの評価を取り戻す!!
ええい、ヒントディスクはまだか?!!
悪魔召喚は!!!?
というのはおいといてとりあえず適切に行動していればクリフトみたいな真面目人間の評価が下がることもあるまい





えっ、ゼロ?
Aー1 Bー3
そろそろマーニャ
A-1 B-2

さようならアリーナ
こんにちわマーニャ
A-1 B-2
まぁとりあえずマーニャ
保守してみる。
ほ・・ほ・・ホックシュン
保守&七夕
更新されますように
アリーナと一緒に七夕の夜空を見上げたかったな…
七夕の願いって流れた後にかなうんだよねえ。

このスレは流れないようにカキコ。
Xデーまであと三日!? ほっしゅ。
逝きてるか〜い?
455場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/07/11 21:34 ID:hlLnJFEP
申し訳ありません
27時間の〆切延長をお願いいたしますです。。。

 (´Д`;)、 スミマセンスミマセン コノトオリデス
   ノノZ乙
逝きてるならいいよん。
更新が長引きそうな時は、生存カキコしていただけると、安心できりゅ。
書き込んでくれれば忘れられてないってことだから待てる
一週間に一回ぐらいは、顔だけでも出すようにしませう
つまりそろそろキターーーになるわけですな。
既にリミットブレイクだが…
>>455があるからにはやる気なんだろう。
期待保守
461場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/07/14 23:49 ID:RgfyGqM1
『その前にスコットさん。ひとつ、お願いがあります』
俺は、背を伸ばし脚をそろえて、兵士を正面から見据えた。
『いま、この街の宿屋には、アリーナ王女様の従者であられるクリフト神官殿がお泊まりになっておられます。
 ご存じの通りミネアさんはアリーナ王女のご親友、当然クリフト殿とも面識があります。ミネアさんに危急の
 事態が起きたと申せば必ず来てくださるはず。スコットさん、これからすぐ宿に行かれて、クリフト殿をここへ
 是が非でもお連れしてください。よろしいですね』
悪いとは思ったが、ソルディ兵士長がするような、ハッキリした有無を言わさぬ口調で、押しかぶせた。
「クリフト殿を……あ、あの、私が、呼びに参るのですか?」
『もちろん。ミネアさんのためです。では、俺はマーニャさんを呼んで来ます。クリフト殿のこと、頼みましたよ』
「は、はい!」
彫刻の兵士のように姿勢を正したまま固まったスコットさんを放って、さっさと俺は玄関から駆け出した。
これが、最善だろう。俺が呼びに行ったんじゃ来てくれっかどうかわからないからな、あの神官様は。
《フレアの評価がわずかに上がった》

広場の人出はさすがに減っていたが、酒場は未だ繁盛していた。
マーニャさん、一階に降りてきてるかな。それともまだ上か。怒ってどこかほかへ行っちゃってたら……この街
を探し回るなんて体力、もう俺にはない。
「うーん、あなたいい感じじゃない。あー、ちょっと誰か、このお酒もう一本持ってきて!」
……心配は無用だった。店内ほぼ中央にできた人垣を覗いてみると、マーニャさんが、店のほぼ中央の椅子
にふんぞり返って腰掛けていた。前には円形のスペースができていて、茶色い髪の若者が踵を床に打ち鳴ら
しながらダンスを披露していた。俺が見てもそれほど巧いとは思えないダンスだが、マーニャさんも含めすっか
りできあがっている観客たちは、機嫌よく調子はずれの拍手を若者に送っている。
462 :04/07/14 23:50 ID:RgfyGqM1
「すっごく良かったわよ。あなたネッドって言ったっけ?どこで習ってきたのそれ?あたし、あなたの足さばき見
 てて、ほんとゾクゾクしちゃった。んー、もう1年くらいマジメに練習すればうちの劇場で雇ってもらえっかもよ。
 みんな、ネッドちゃんにもう一度拍手してあげてー!はい、次のひとー!」
飛び入りダンスコンクールの司会と審査委員長をやっているらしい。きっと主催者も兼ねてるんだろう。
知らないこととはいえ、妹さんの緊急事態に悠長なことで……。
『マーニャさん』
人をかき分け、どうにかマーニャさんの後ろに近づいて声をかけた。
「んー?」振り返ったマーニャさんが、俺を見とめ、なにやら楽しそうに微笑む。
「あぁら、ビルくん!いいとこに来たわね!」
いきなり、腕を抱え込まれる。『え?』ちょ、ちょっと何すんですかマーニャさん?
「はい、みなさーん、注目っ!」
抵抗する間もなく、舞台の真ん中へ引っ張って行かれてしまった。まさか、俺を使って何か余興やらせようって
わけじゃ……?そんなことしてる場合じゃ……!!
「この子、知ってる人もいるでしょうけど、あたしの大親友でね、ビルくん、ていうの。レイドックの……なんてっ
 たっけ?そうそう、ライフコッドって村の人なんだけど、ちょっとしたワケがあってね、世界中旅してんの。その
 ワケっていうのが、もう語るに涙聞くに涙。子供にゃ興味ないけど根は優しいマーニャちゃん、もうボロボロ泣
 いちゃった。そーゆーことで、この国にいる間はあたしが面倒見るってことにしてるのよ。みなさんも何かあっ
 たら、ビルくんに手を貸したげてね」
饒舌に俺を紹介してくれたマーニャさん。「おー!マーニャちゃん任せとけ!」観客の一人が返事のように叫ぶ
と、「俺もオレも!」次々に唱和し、「ビルくんとやら。女ならいくらでも都合つけてやるぜ」進み出てきて俺に握手
してくる男までいる。呆れながらもなんとか愛想笑いをしていると、マーニャさんに後ろから首をつかまれ、四方
八方の客たちに、無理矢理お辞儀させられた。
マーニャさん、俺の役に立とうとしてやってくれたんだろうけど……でも、今は、俺のことよりも……。
463 :04/07/14 23:51 ID:RgfyGqM1
「以上、あたしからみなさんへのお願いでした。はいビルくん、戻っていいわよ。それとも何かヤる?」
マーニャさんが、にやにや笑いながら、グラスでも捧げ持つように指で俺のあごを撫でてくる。そののんびりした
手の動きに、
『マーニャさん!』
俺はさすがにカチンときて、振り払った。
『そんなことより大変なんですよ!』
「大変て何が?アルトのことなら放っときゃいいのよ。そのうち……」
『違います!耳、貸してください』
ためらってなどいられない。手をマーニャさんの耳にあて、口を近づけた。周りから口笛や怒号が聞こえるが
無視。
『ミネアさんが、襲われたんです!』
告げた瞬間、マーニャさんは目をむいた。「襲われたぁ?何に?」まるで俺が襲った犯人であるかのように、
俺の胸ぐらを両手でつかみ、前へ引っぱり込んでくる。意外にマーニャさんて腕力強い……。
『わ、わかりません。大柄な男ってことくらいしか……』
「男っ!?ビルくんなんでそれ早く言わないの!ミネア今どこ?」
『フレアさんの……』
聞くが早いか、マーニャさんは、「どいて!」と前の人混みを跳ねとばし、あっけにとられる観衆を置き去りにし
て酒場を飛び出していった。
あのあわてぶり……いつもはあんなでも、やっぱりミネアさんのお姉さんなんだな。
なんとなくほっとしながら、俺は、マーニャさんの後を追った。
《マーニャの評価がわずかに上がった》

フレアさんの家に到着すると、マーニャさんは走っていたそのままの勢いで蹴り破るように木戸と玄関をノック
もせず立て続けに開けて駆け込んだ。知り合いの家とはいえ乱暴な……まあ、ビアンカやマリベルも似たよう
な感じで俺の家に押し入ってくるんだけど。
「どこの部屋?」
俺を振り返り、にらみつけるような目で聞いてくる。『そこの客間です』俺が指さすと、やはりマーニャさんはノッ
クせずドアを開け、飛び込んだ。
ミネアさんは、ベッドでまだ眠っていた。フレアさんはいなかった。
464 :04/07/15 00:25 ID:XLo4If9r
「ミネアっ!」
ミネアさんに走りよったマーニャさんが、「ミネ……」口を開きかけて止め、顔をのぞき込んだ。酒場でのはしゃ
いでいたときとは全く違って、眉を下げ唇を結びまぶたを細めて瞳を震わせている。今にもミネアさんにすがり
ついて泣き出しそうで、それでいて、今にもミネアさんをひっぱたいて怒り出しそうな表情。そんな眼差しのまま、
手を伸ばしてミネアさんの耳に、頬に、指先でそっと触れはじめた。
『………』
俺は、そのマーニャさんの悲痛な様子を見て、立ちすくんだ。気まぐれで、いつも陽気におちゃらけてて、機嫌
をクルクル変えるひとなのに……いや。だからこそ、心配するときはとことん心配できる人なんだな……。
「ウィルさん。マーニャ。ミネアは、だいじょうぶです」
いつの間にか、フレアさんがドアのところに立っていた。ニッコリと笑っていて、湯気がのぼる洗面器に白い布
を入れたものを持っている。お湯を沸かしてきたらしい。
「だいじょうぶ……?」
「ええ、だいじょうぶですよ。ウィルさんのおかげでしょうね」
俺のおかげ……?あっ!驚いて俺はフレアさんを見つめた。
だいじょうぶ……だいじょうぶ……そうか!ミネアさん、だいじょうぶだったんだ!
『本当ですか?』
「ええ」
ほっとして俺は大きく息をつき、肩をゆるめて前のめりになる。助けられたんだ。良かった……。
「さあ、ミネアの身体拭きますから、ウィルさんは出ていてください」
フレアさんに言われて、あわてて一礼し、部屋を出た。
本当によかった……胸をなで下ろすと同時に、もしあの道を俺が通らなかったら……と考えて、ぞくりと震えた。
俺がミネアさんを助けられたのは、かなりの偶然が重なってのことだ。誤解したマーニャさんに、勝手に怒り出
したアリーナ。そしてあの小道を発見できて。そんな偶然の連続がなければ、ミネアさんはきっとあのまま、あの
男に……。
再び、安堵のため息をつく。占い師のミネアさんたちに言わせれば、これも運命なんだろうか。とにかく、よく助
けられたモンだよ、俺……。
465 :04/07/15 00:26 ID:XLo4If9r
ほっとしたら急に身体の力が抜けてきた。いや、疲れが出てきたのか。
考えてみりゃ、今日は歩き回ったり、全力疾走したり。しかも女を二人も抱えて運んだんだ。当然だな。
居間のソファに倒れ込む。まだいろいろと片づいてないことがある気がするけど、今は、この気分のまま、休み
たい。
『……?』
目を閉じかけた俺は、誰かがそばに立っているのに気付き、あわてて起きあがった。
「ビルくん」マーニャさんだった。「さ、話して。いったい何があったの?」険しい目で、俺を見下ろしてくる。
あ、そっか。マーニャさんにもフレアさんにも、まだ何にも説明してなかったんだっけ……。

「ビルくん、なんでそいつ、とっ捕まえなかったのよ!」
話し終わったとたん、マーニャさんは俺に食ってかかってきた。
『すみません。相手がよくわかりませんでしたし。それにまさか、ミネアさんだとは、思わなくて』
「……ふう。まあ、いいわ」
マーニャさんが息を鳴らし、すとんとソファに腰を落とした。腕組みをして、じっと考え込んでいる。今まで俺が
説明してる間も、どこか落ち着かない様子だった。もちろん、ミネアさんが心配だからだろうとは思うが……。
「で……どんな奴だったの?でっかい図体で、ヒゲ面で、髪がぼさぼさだったって言ってたけど、それだけ?着
 てたものとかは、わかんない?」
『たぶん……着てたのは、俺のこれ(旅人の服)と大して変わらないと思います。マントはありませんでしたけど』
「つまり、男なら誰でも着てるような服なわけね。ほかに何か……顔の特徴とかは?」
『と言われましても。髭だらけだったって以外、これといった特徴は……暗かったですしね』
俺は、すまなそうに肩をすくめる。もう一度会えばこいつだとわかるだろうが、あの髭を剃って髪を整えられたり
したら、正直、見分けがつくかどうかわからない。
「ふーん……」
マーニャさんが難しそうな顔をして、膝の上で手を組んだ。それから、思い切ったように俺を見た。
「実はね……さっき、ビルくんが出てったあと……あの子……ちょっとうなされたみたいになって……」
ちょっとためらってから、マーニャさんは俺を見つめて、こう続けた。
「バルザック……って、言ったのよ」
バルザック?ミネアさんが、言ったのか。だとしたらあの男はあいつ……?
466 :04/07/15 00:30 ID:XLo4If9r
……いや!絶対に違う!
「あいつじゃ……なかった?」
『いいえ!』
俺は即座に首を振った。あいつがバルザックだったはずはない。大柄で、筋肉質で、ぼさぼさの髪というのは
同じだけれど、顔も着ていたものも、それに身のこなしなんかもまったく違っていた。バルザックなら俺の腹へ
の一発でのされるわけがないし、第一、あの男がバルザックなら、“同僚”の俺を見て何かリアクションしたは
ずだ。暗かったとはいえ、俺だとわからなかったはずはないんだから。
「そう」それを聞いて、なぜかマーニャさんはほっとしたように表情をゆるめた。「それならいいの」
何か、引っかかる言い方をして、マーニャさんは頭の後ろに手をやり、ソファにもたれかかった。
それならいい……何が、いいんだろう?バルザックだとしたら、今夜、本気で襲ってくるかもしれないと危惧し
てるんだろうか。それにしては警戒してる様子もなかったんだけど……?
「んー。けど、よくやったわ、ビルくん!」
マーニャさんは、起きあがると、急に明るい声を出して俺の背中を叩いた。「昨日もよね。ミネアを助けてくれた
 のって。さいしょ見たときは何この変なヤツと思ったけど、やるじゃない、ビルくん」
そうして俺の肩に左手を回すと、マーニャさんは微笑みを浮かべて俺のすぐ目の前に顔を寄せてきた。
『あ、あの……マーニャさん?』
こんなときに……と言いかけたが、うっとりしたように見つめてきた紫の瞳に吸い込まれるように、俺は鼓動を
跳ね上がらせて固まってしまった。
「ビルくんて頼りになるのねぇ。次は、あたしのことも……守ってくれるかしら?」
ますます身体を近づけてくると、右手で俺の頬を撫でてくる。吹きつけられる吐息からは酒の、香水が消えか
かった身体からは汗の匂いがしてくる。右腕に当たってるぽよぽよしたのは……。
「これは、あたしからのごほ〜び♪」
チュッ。頬にキスされる。チュッ。もう一度。
濡れた、やわらかい唇の感触に、さらに俺は硬直する。
「ふふっ、ビルくん、真っ赤になっちゃって。強いのにほんとカワイイんだから」
あ、あの、マーニャさん、すっごく嬉しいんですけど、すぐ後ろの扉の向こうにはフレアさんとミネアさんがいま
すし、ですから、あの……。
467 :04/07/15 00:37 ID:XLo4If9r
リーン!
そのとき、不意に呼び鈴が鳴った。俺もマーニャさんもびっくりして飛び退いた。
リンリーン!
再び鈴の音。「はーい!」フレアさんが部屋から出てきて、俺とマーニャさんに笑いかけてから、玄関に行く。
マーニャさんは不機嫌そうに玄関を見たが、俺は内心ほっとした。ミネアさんが襲われた晩にマーニャさんと
イチャついてるところをフレアさんに見られたら、フレアさんにもミネアさんにも顔向けできなくなったところだ。
とはいっても……ちょっと、いや、かなり残念なんだけど……。
「あら。スコットさん?」
あ、そうか、忘れてた。クリフトを呼びに行ってもらってたんだ。
俺もすぐに立ち上がり、玄関に急いだ。しかしそこには、スコットさん一人だけだった。
『スコットさん。クリフト殿は?』
「それが……申し訳ありません。何でも、宿で今アリーナ王女様がお休みだそうで……その護衛のため、離れ
 られないと」
ってことは、クリフトの奴、アリーナを見つけたのか。いったい、どうやったんだ?
「クリフト殿は、あなたによろしくとおっしゃっておりました」
ちっ……きっと、イヤミだろうな。まあ、ミネアさんはこれといった大きな怪我もしてなかったようだし、今となっ
ては、神官殿が来たところで直接の用はないんだが。
「私はこれから王女様のことをステファン隊長に知らせに参らねばならないのですが、その前に……ミネアさ
 んは大丈夫でしょうか。何があったんですか?」
『あ。えっ、と……ミネアさんは無事です。それがですね……』
どうしよう。首尾良くクリフトを連れてきてもらったら、うまく取りなしてもらおうと思ってたのに……。
「スコットさん。ミネアのことでしたらご心配ありませんよ」
すると、フレアさんが進み出てきて、スコットさんにニッコリと笑いかけた。
「は。しかし……あの様子は……」
「スコットさんはご存じでしょうが、女というものには、殿方にはおわかりになられないコトがあるのですよ」
フレアさんの言葉に、スコットさんがはっと顔を伏せた。フレアさんて機転が利くなあ。俺と同じで。
468 :04/07/15 00:43 ID:XLo4If9r
「さ、早く行かれたほうがいいですよ。ステファンさんはしっかりした人ですから、報告が遅れれば遅れるほど、
 いい印象はなさらないと思いますわ」
にこやかに言ってのけたフレアさんに、スコットさんは「はっ!では失礼します!」敬礼をし、駆けていった。
『ありがとうございました』玄関を閉めて鍵をかけたフレアさんに、俺はすぐお礼を言った。
「いいえ。でもウィルさん。どうして、クリフトを呼んだりなんてしたんです?」
『その……ミネアさんが怪我をしてるかもしれないと、思ったもので。それに、あの男を捕まえるのに、クリフト
 の力が借りられればと……』
あ。フレアさんにはまだ、何があったか話してなかったんだっけ。
『実は……ミネアさんは、街の北の森で……』
「ウィルさん。説明しなくてもいいですよ。だいたいのことはわかっていますから」
ニコニコ笑うフレアさんに、俺は首をかしげる。わかっている……あのミネアさんの状態を見ればおよそのこと
はわかるだろうけど、より詳しいことを聞きたいと思わないんだろうか。それに、俺のことを疑っても不思議じゃ
ないのに……。
あれ?そういやさっき、“クリフト”って、呼び捨てにしてたよな?フレアさんて、どういう人なんだ?
居間に戻ると、マーニャさんが寝室から出てくるところだった。ミネアさんの様子をのぞきに行ったらしい。
「まだ寝てるわ。そろそろ叩き起こしてやろうかしら」
マーニャさんがぶすっとして言う。寝たフリしてるときマリベルに同じことを言われた覚えがあるが、マーニャさ
んのこの強がりは心配の裏返しだろう。
「きっと疲れてるのよ。あなたたち、昨日までラインハットに行って来たんでしょう?マーニャ。あなたも疲れてる
 んだから、今夜は休みなさい。二階の私のベッド、使っていいわ。ミネアは、私が引き受けるから」
「え?い、いいわよ、あたしが……は、はい」
遠慮しようとしたマーニャさんが、フレアさんに微笑みかけられて、素直にうなずく。
うーむ。マーニャさんをこんなにあっさりうなずかせるなんて……フレアさんという人物の謎、深まるばかりだ。
469 :04/07/15 00:45 ID:XLo4If9r
「ウィルさん」フレアさんが、今度は俺を振り向いた。
「そういうことで……申し訳ないですけれど、今晩、ちゃんとしたベッドでお泊めすることができなくなってしまい
 ました。こんな夜も更けてからですみませんが、お代は私が払いますので、今晩は宿屋に泊まってください。
 ジャグロさんに私の名前を出せば、予備の部屋を空けてくださるはずですから」
フレアさんがすまなそうに頭を下げてくる。
『………』
この申し出に、俺は内心呆れた。ベッドが貸せないからと宿代まで出すなんて、いくらなんでも気を遣いすぎで
は?ミネアさんといい、コーミズ村出身の人はみんなこうなんだろうか?あ、反証が隣にいらっしゃるか……。
『フレアさん―――』

1.『お気遣いなく。ベッドなんて。俺は、そのソファさえ貸していただければ充分だと思ってましたから』
2.『そうですか……わかりました、宿屋に行くことにします。だけど、お金なんていりません』
3.『ご心配いりませんよ。今夜は、マーニャさんと一緒に寝かせてもらいますので』
470場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/07/15 01:12 ID:XLo4If9r
2度もの期日破り。申し開きもございません・・・と言いたいところですが女々しく(差別?)言い訳
ノーパソって真夏の昼間は使えなくなるものなんでせうか_| ̄|○
このところの猛暑のせいか、よく物理的に壊れないなと思うくらい落ちまくりました
自動更新のないテキストエディタで書いてる漏れにとって、これこれははかなり辛い事態ですた
しかも自宅でネットに繋げようとすればいつものブルースクリーン
これは、GM、モノカキとしての漏れに天が与えた試練に違いない!と叫んでもPCは直らず・・・

更新を待っていてくださった住人のみなさん。遅れに遅れて、本当に申し訳ございませんでした
お詫びの方法は思いつきませんが・・・とにかく、次は日曜までに更新!破ったら・・・好きにしてください

>440 1番乗りありです。17日も待たせてしまいすみません。お見捨てなくご参加のほどを
>441 クリフトの使い道は・・・回復以外では、アリーナとあともう一人にちょこっと
>443 アリーナ評価の回復は、1度だけなら案外楽です。クリフトとデートしてどうすると?
>444 攻略のヒントとしては、クリフトとは仲良く、そしてアリーナとの決闘は最後まで・・・ゴニョゴニョ
>445 マーニャを登場させるとなぜかこういう流れになってしまう。書いてて楽しいキャラでつ
>446 どちらにしろ、サントハイムにいる限りはすぐ再登場しますんで、はい
>447 こういうシーンばかりならいいんですが・・・誰かとラブラブ状態のマーニャ、というのは想像に難い
>448-450,453 お世話になるものかと決めていたのに結局は・・・ありがとうございますた!
>451-452 DQの世界に七夕ってあるんでしょうか。ここの萌えスレではお祝いしたりもしてますが
>454,456 漏れは肉体的には健康そのものでつ!・・・と言いたいところですが今から夏バテ気味。あづい
>457-458 うう、どうも。けど書き上がってないのに顔見せだけというのは、心苦しくてなかなかできませんでつ
>459-460 2日も遅れてしましますた。最後に、見捨てず見守ってくださった方々に感謝、そして謝罪
更新乙です。

2で一人になってすずを使いたいなあ。


俺はソファーじゃ寝られない
宿屋にいく途中になにか出てくることを期待して2
要するにマーニャ&ミネアかアリーナか
というわけだな兄弟

1で
人の好意は素直に受け取る、そしてアリーナとクリフトの同時攻略を、、、1
3を選びたいがどうせ無理っぽい…なら1だ。

女が集まるとなんか嫌な空気だ。
自分だけ知らないって感じが。
女はいくつも秘密を持ってるって
言うしなぁ。信じられるのは妹だけだ…
2

やっぱ色々あった方が面白い
2で
アリーナとの出会いないかなぁ…
3

無難な選択肢なんて選んでもつまらんw
2
外で一波乱
483場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/07/18 23:56 ID:rDDJGz0z
「そういうわけにはいきません。今夜はお泊めすると約束していたのですから」
フレアさんは、財布から50ゴールドコインを取り出して、俺の手をとった。
『……??』
すぐに引っこめようとしたのだが、かえってフレアさんに引き寄せられてしまい、無理やりコインを押しつけら
れて握りしめさせられる。そのあまりのフレアさんの握力に、俺は呆然となった。この力……俺よりも、ひょっ
としたらアリーナよりも、強いかもしれない。
さっきまではただの人の良い未亡人と思ってたのに、さらに、謎が増えてしまった。
『で、ですが、泊めてくださいとお願いしたのは俺ですし……』
コインを乗せられた手をそのままに、どうしたらいいものかと迷う。この過度の気遣いに甘えないためには、
テーブルにコインを放り出してすかさずおいとまするというのも手だが、そこまですると遠慮というよりただの
礼儀知らずだ。といって、今日借りておいて後日お返ししますというのも変か。いま俺は、それだけの金は、
持ってるのだから。
「ビルくん。困ってるんだったらさ、宿屋になんか行かなきゃいいじゃん」
ソファに座ったマーニャさんが、髪を梳きながら、悪戯っぽく瞳と口元を笑わせて、俺を見上げてきた。
「あたし今晩ここで(と言いながらクッションを叩いた)寝るからさ。ビルくんが上のベッド使ったら?……んー
 それとも、また、あたしといっしょに、寝よっか?」
『え?』
「一度いっしょに寝ちゃったんだから、二度目も、もちろんいいわよね?」
『あの……』
あの、マーニャさん、誤解されるようなこと言わないでください。いっしょにって、昨日、同じ部屋に泊まった
だけでしょう、ミネアさんも含めて。
「マーニャ!」フレアさんが呆れ顔でたしなめた。「あなたもウィルさんも疲れてるんだから、今晩は二人とも、
 ぐっすり眠らないと駄目。マーニャ、あなた明日も舞台あるんでしょう?」
「やーね。冗談だってば。からかっただけ」
あわてた様子もなくマーニャさんが高笑いする。また俺、頬が熱くなってる。たぶん赤面してるな……。
484 :04/07/19 00:12 ID:EB1VwiD0
「けど、ビルくん、ほんとに宿屋行っちゃうの?なんなら、あたしもついてったげよっか?」
マーニャさんがにこやかに片目をつぶり、指先で唇をすっと撫でた。
この意味ありげな仕草……もしかして今度はマーニャさん、本気かも!?
「マーニャ」フレアさんがまたもたしなめる。さっきより優しい声だが、これは次には怒るというサインだ。
「ミネアが気付いたとき、あなたがいてあげなくてどうするの。ミネアが気付いたら起こすから、早く寝なさい」
「……はい、はい、わかりました。あーあ残念。今晩こそビルくんと遊べると思ってたのに」
マーニャさんは頭の後ろに両手を回し、すねたように唇を尖らせて、ソファから立ち上がった。
本気にしても冗談にしても、妹さんが酷い目に遭って寝込んでるときの台詞じゃないな……。
「じゃあビルくん。また明日ね。おやすみっ!」
俺にさらにウインクを飛ばして、マーニャさんは居間を出て行った。
「では、ウィルさん。宿屋までご案内します」
階段を上る音が聞こえてきたとき、フレアさんがまたもとんでもないことを言い出した。
『い、いえ。俺、場所はわかってますから。留守にしますと物騒でしょう。今晩はこれで』
俺があわてて断ると、フレアさんはちょっと困ったように手を頬にあてた。
「そうですか。それなら、街の外をまわって行ってください」
街の外……昼、ミネアさんとここに来たときに使ったルートか。
けど、いまは真夜中だし、魔物が街のすぐ近くをうろついてるなんてことは……。
「ご心配なく、ウィルさん」
俺の不安を見透かしたように、フレアさんが笑った。「お祭りでにぎやかな間は、魔物はこの街に近づいては
 きません。たとえ寄ってきても、人の足音を聞くと、すぐ逃げてしまいます」
『あ……そ、そうなんですか』
このへんの魔物ってそんなに軟弱なのか。それじゃやっぱりうちの村辺りの魔物と大差ないんだな。
『わかりました。ご親切ありがとうございます。明日の朝、また来させてもらいます。おやすみなさい』
丁重に礼を言い、フレアさんに見送られて、俺は玄関を出た。たしかに街からはまだ騒ぐ声が聞こえてくる。
だけどこのへんて、本当にそんな弱い魔物ばかりなのだろうか?
485 :04/07/19 00:13 ID:EB1VwiD0
木戸を開けてから、フレアさんの家を振り返ってみた。あれ?二階の窓に誰かいる……マーニャさんだ。
マーニャさんは、薄いネグリジェをまとい、窓際から俺を見下ろしていた。俺が気付いたので嬉しそうに微笑み、
手を振ってきた。大げさでなく、顔の横で手を軽く振っている。それがかえって色っぽくて親しげだった。
『おやすみなさい』
聞こえたはずはないけれど、マーニャさんはニッコリ笑って「おやすみ」と、唇の動きで返してくれた。
わざわざ見送ってくれてるなんて……マーニャさんらしいと言えるし、意外とも思える。
どっちにしろ、嬉しいことには変わりない。俺は、マーニャさんに手を大きく振り、疲れも忘れて駆け出した。
《マーニャの評価がかなり上がった》《フレアの評価が上がった》

目の前に輝いている月は、もう顔を上げなくても見える高さにある。今夜もずいぶん夜更かししちまったな。
ん?月は前。ってことは……やべ!西に走ってきちまった。
あわてて俺は足を止めた。ちょっとばっか浮かれてた……。
街の南側を見渡してみる。南西の、建物の向こうにぼんやりと見える高くて長い建物が宿屋だ。フレアさんに
言われたとおり、街を東から回り込むには少し引き返さなければならない。魔物が出るかでないかはフレアさ
んを信じるにしても、調子に乗って走ってきた道を戻るというのは、気持ち的に疲れる。
それよりも、いったん西の広場に出てそれから大通りを使って正面から宿屋に行く、正規の道を使ったほうが
早いな。あのにぎわいじゃ、魔物なんて絶対に出ないだろう。
さらに早いのは、ここから直線で宿屋に向かう道だ。目の前には商家らしい建物が固まってはいるが、間は
路地になっている。路地裏をぬって行けば、最短距離で宿屋に着ける。ただ、灯りが届かず、暗がりばかり
なのが難点になる。変な奴らが、いなきゃいいけど。
どう行こう?―――

1.フレアさんに言われたとおり、街の外周を回って宿屋に向かう
2.広場から大通りに出るルートを選ぶ
3.路地裏を抜ける近道を行く
486場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/07/19 00:23 ID:hPoFwXxQ
日曜更新と宣言しておいてこれ・・・ヘッドスライディング同時セーフでしょうか。スミマセソ

>471 これ以上この夜のイベントを増やせと・・・
>472 旅慣れた人間はどこでだって寝られると言いますね。単なる睡眠不足の人もそうらしいでつが
>473 うっ・・・そのとおり。どのルートを選んでも何かが出てきますです
>474 おっしゃるとおり、1を選んだ場合マーミネに有利になりますた
>475 なんか選択肢と書いておられることが違うような
>476 無難路線は順当だとはいえたまには冒険も・・・もちろん爆弾もありますがね
>477 せめて妹だけは信じたいからヴァーチャルシスターに逃げるのが今のリアル世界なのかも
>479 はい、いろいろありますよ。ルートによっては大変なことになるかも
>480 それは宿屋に着いてからの話でつ
>481 3だと実はなんと・・・あーあ、また書き損なった(意味不明)
>482 滑り込みの2でつね。今回の選択もどうぞおながいしますです
夜も深いし、フレアさんを信じて安全な 1
何かあるだろうと信じて 1
一番何も無さそうな

イベントが起こらなくて何がギャルゲーですか

2
さっさと寝たい。

絶対何かあるだろうけど3で。
裏道だな。いろいろあったし。また裏には…。

で3。
よし、変な奴と言えばロケット帽子だろうから3
3でストリートファイト
1で
3で
そろそろ保守の季節だな
ho
ホッキンガッシュ
保守
ホッキンダッシュ
ホッキンメッシュ
バッキンガムを思い出した。
なんかもう
ホッキンラッシュ
だな・・・
505場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/08/02 07:46 ID:QdBCRI7i
ここはあえて近道を行こう。広場の人混みをかき分けて走るのは、もううんざりだからな。
俺は、遠くに見える宿屋の方向と月の位置との角度を確認してから、走り出した。アリーナと屋上で観劇をした
建てかけのアパートの東を抜け、煙の色と匂いが染みついた鍛冶屋街の壁の間を駆けた。
たいして行かないうちに密集地に入り込み、壁と壁の間がかなり狭まる。外灯もないし月明かりも入らない路地
は洞窟の中のように真っ暗闇だ。
しかし。いくら暗いといってもここは森でなく街中だ。両側は茂みでなく壁なんだから、魔物が不意に襲ってくるこ
とはありえない。怖がることはない。そう気持ちを奮い立たせながら、早足で路地を抜けていく。
『……!』
何本目かの路地に入ったとき、思わず俺は足を止めてしまった。前の闇に赤い点が右に2つ左に1つ浮かんで
いたのだ。煙草の火だった。
まずいな。身体中の毛穴からどっと冷や汗が湧き出た。祭りのさなか、こんな暗がりでわざわざ一服してる奴が
3人。まっとうな人間じゃないと考えていい。
こういう奴らは、レイドックやサンマリーノでも現れる、街でも平気で現れる魔物みたいなものだ。ランドとふざけ
て裏通りに入ったときなんかに出てくる連中……喧嘩好きか、辻強盗かのどちらか。たとえそこにいた目的が
そのつもりでなくても、奴らにとって気に入らない態度をこちらが見せただけでどちらかに豹変する奴らだ。人間
並みの頭があるぶん、弱い魔物よりもよほどタチが悪い。
1対3。相手にしたくない。俺は、道を間違えたかのように装い、踵を返した。こんなとき来た道を引き返すのは
あまりいい対応ではないが、いったん足を止めて“ビビリ”を見せてしまった以上、そうせざるを得ない。
ザッ。背後で何かが動く音がした。振り返ると、赤い点がすべて、地面に落ちている……まずい!
瞬間、俺は駆け出していた。すぐ、複数の足音が追ってくる。“待て”とも“誰だ”とも言わず、無言で追いかけて
くるが、まさか森で落としたイヤリングを親切にも俺に渡そうと追いかけてきてるわけじゃないだろう。そもそも、
俺はイヤリングなぞ、してないし。
506 :04/08/02 07:49 ID:QdBCRI7i
『うっ!』
突然、行く手の建物の影から2人の男が飛び出し、俺の前に立ちふさがった。手に光るものを持っている。3人
のうちの誰かが先回りしたか、別の仲間を合図を送って呼んだかだ。それじゃ、こいつらは強盗のほうかよ!
左右をすばやく見る。両側の壁は……だめだ、登れそうにない。前の2人が縦に並んで近づいてくる。強行突破
させないためだ。
くそっ。俺はやむなく足を止め、壁を背にして後ろ手にステッキをつかみ、前後に目をやった。追ってきた2人も、
ナイフを抜いている。おぼろげに見えるその姿は、4人ともが、そこそこいい身なりをした、ごく普通の顔立ちの
若者だった。
『な、なんなんだ、あんたらは』
意味のない台詞を言ってみると、4人は一瞬足を止めたものの、獲物を追いつめた似非狼のように視線を交わ
してニタニタと笑った。うち、趣味の悪いバンダナを頭に巻いた一人が、幅広のナイフを俺の鼻先にスッと突き
つけて、
「なあに。その袋を置いてってくれればいいのさ」
と、さも楽しそうな視線を送ってきた。
『くっ』
この[ふくろ]には、フローラさんから借りた金とターニアの[風鈴]、マーズさんの[手紙]が入っている。絶対に渡し
てやるわけにはいかない。
何とか金をいくらか出して解決……いや、取り出そうと背中から[ふくろ]を下ろしたところを丸ごと奪い取られる
のがオチだ。両手両脚を一人ずつで押さえ込まれたら、どうしようもない。
ならば……強硬手段のみ!
俺は、男の肩越しに、東側の路地の暗闇を見やった。「……?」4人の視線がそちらを向く。
『スコットさん!』
叫ぶと同時に、ナイフを突きつけていた男の手をつかみ、腹を蹴り飛ばした。「ぐえっ!」若者の身体が曲がり、
前に倒れる。『スコットさんっ!』もう一度叫びつつ、次に俺は隣の男の横面を殴りつけ、できた間隙をすり抜け
て来た路地を走り出した。背後の二人は、あわてふためいた顔で、俺と東の路地を交互に見てるだけ。もちろ
んスコットさんなんていやしない。こんな見え透いたハッタリに引っかかるなんて、それほど大した奴らじゃないな。
507 :04/08/02 07:50 ID:QdBCRI7i
「ま、待ちやがれっ!」
騙されたことにようやく気付き3人が追ってきたが、俺は足には自信がある。塀ではなく建物の壁による路地だ
から、シエーナやサンマリーノのように入ってみて行き止まりってことは、まずない。先回りされないよう直進の
道を選べば振り切れるはず。大通りに出てしまえば、もう手は出せまい。
『……!?』
動かしていた脚が、急にもつれた。転びかけるのを踏みとどまろうとして、転んでいた。あわてて跳ね起き、再び
走る。だが加速がつかない。あっという間に背後の足音が近づいてくる。
何が起きたんだと身体の感覚を探り、あっさり答えを出した。単なる、空腹と、脚の酷使だ。昼からこっち何も食
べてない上に、今日、いろいろと無茶をやりまくったせいだ。おまけに右足に鈍い違和感。これは、アリーナめが
けて飛び降りたときのダメージが何かの引き金で効いてきたのだ。ちっ。さっき蹴り飛ばしたときか。
「この野郎!」
すぐ後ろで声がした。反射的に右に飛び退く。何かが……おそらくナイフの先が、左肩の後ろをかすめた。
殺す気か!冗談じゃない。こんなとこで、こんな莫迦どもに殺されてるヒマなんかないんだぞ俺は!
「てめえ!」
「いいかげん、待てや!」
追いつかれかけている。とても大通りまでは行けない。といって戦うにしても、片足が使い物にならないのでは、
いっせいに飛びかかられて終了。恥も忘れて頭ついて謝ったところで、殺される代わりに身ぐるみ剥がされて顔
をズタズタにされるだけ。無理を承知で、逃げるしかない。
『……ぐっ?』
俺は、うめくような、悲鳴のような声を思わず上げた。建物の上から前の路地に、男が一人、降ってきたのだ。
肩幅からして、かなり体格のいい男だった。あいつらの仲間……むしろボスか?
508 :04/08/02 07:52 ID:QdBCRI7i
絶望で脱力しかかる心を奮い立たせると、俺は痛む脚に加速をかけた。こうなりゃ破れかぶれだ。
覚悟を決め、突進する。戦いを挑むわけじゃない。ここは、体当たりするとみせかけ、寸前で脇をすり抜けて逃
げる。今の足でできるかどうか怪しいところだが、それしかない。
ところが、男は顔を伏せてうずくまるように膝をつくと、右手を地面に突いた。倒れ込んだようにも見える。カッコ
つけて飛び降りたとき足でもくじいたのか?俺は冷や汗をかきつつ思わず笑いかけて『……!?』絶句した。
地面と右手掌の間に丸く赤い光が現れた。その光は燃えさかる火炎となって空に吹き上がると、二筋の蛇のよ
うに鎌首をもたげて、俺を見下ろしてきた。
『あ……』
驚きのあまり、俺は足を止めるしかなかった。これはまさかマーニャさんがやってみせたような炎の呪文の応用
……じゃない!この火炎は魔力でわき起こった炎じゃない。燃焼している“純粋な炎”だ。魔物が吐き出してくる
ような……。
『……!』
炎の蛇が、俺に狙いをつけ、急降下してきた。駄目だ、よけられない。髪をマントで隠して身を伏せたとたん、背
後で悲鳴が続けざまに上がった。振り向くと、強盗3人が、炎に包まれていた。俺じゃ、なかったのか……?
「た……」
若者のひとりが苦悶の表情で俺に手を伸ばすのが見えた。すぐにその手も顔も炎に包まれ、真っ黒い煙が吹き
上がる。髪と生肉の焦げる臭いに、俺は鼻を押さえ、目をそらした。
次に見たとき、地面には、えぐるような焦げ跡が3つと、いくつかの黒い塊が残っただけだった。うち1つは、尖っ
たナイフの形状をとどめている。吹き抜ける夜風で3人の最後の臭いすらも消えていく。
殺しちまいやがった……。
俺はゆっくりと男を振り返った。男は立ち上がって、近づいてくる。俺は自然に後ずさった。どうする。この場合、
俺を殺そうとしていた奴を殺してくれた奴に、俺は、感謝すべきなのか?それとも、非難して、警備兵に通報した
ほうがいいのか。これほど簡単に人を殺してしまう奴に関わってしまうのは……だが、助けてもらったのは事実
……。
509 :04/08/02 08:07 ID:QdBCRI7i
対応を決めかねている間に、男が俺の前に立った。俺よりもかなり背が高く、黒の麻のベストを着た男だった。
黒っぽい前髪の下から、細くて黄色い目が、俺を見下ろしていた。
『……?』
あっ!?こ……こいつはっ!
身構えようとあわてて足を引くより早く、巨大な拳が振り下ろされてきた。
『うあっ!』
重さのついた拳を頬にまともにかぶせられて、俺は突き倒されるように地面を転がる。後ろに引きながらだった
ので、たいした痛みはない。土まみれになっただけだ。すぐさま跳ね起き、蹴りの間合いの外に飛びすさる。
ちっ。あんな遅いパンチ、右足が息災なら軽く受け流せたのに。
『何をするんだ、いきなり!』
「だらしねえなあ、ウィルさんよ」
男が――バルザックが、下あごをつきだし、嫌味をこめて笑った。
「あんな奴らに手を焼いてるようじゃ、ゲマ様の命令を果たすことなんてできやしねえぜ?」
『余計なお世話だ』後ろ手にステッキをつかみ、叫ぶ。『あんたが来なくたって、俺一人でどうにかしてた』
「ハッ、そんな棒一本でか。それにその小回りきかねえ足じゃ、後ろから刺されて終わりだったぜ?」
『……く』
見抜かれている。たしかに言うとおりだった。この足と今の体力じゃ、武器がこんなステッキでなく鞭であったとし
ても、前後の敵を同時に相手するのは無理だったろう。
「わかったんなら、助けてもらった礼ぐらい言え」
『だ、誰が礼なんか。なんであんたがこんなところに……?』
言ってから、俺ははっとなってバルザックを見据えた。俺を監視してたんじゃ?ゲマの命令で。それなら、俺を
助けたのも、邪魔なあいつらをためらいなく消したのも、納得がいく。
「お互い様だ。オレはオレでこの街に用があっただけさ。お前が来てるとは、知らなかった」
『信じられるか。ゲマに言われて、俺を見張ってたんだろう』
じっとにらみつけ、表情をうかがう。だが、
「はっ。そんなんじゃねえよ」
バルザックは、おかしげに鼻を鳴らしただけだった。「オレはこれでも、いろいろと忙しいんでな」
ふざけた言い方だが、嘘を吐いた様子はない。……じゃあ、偶然なのか?
510 :04/08/02 08:12 ID:QdBCRI7i
「だけどな……実を言うと、今はおまえに一つ用があって、探してたところなんだ」
そう言って、バルザックが俺に歩み寄ってくる。俺は油断なく踏み込みを確かめ、ステッキを握りしめた。そんな
俺の様子に、バルザックはふっとまた鼻を鳴らして、腰につけた道具袋に手をやる。
また、俺に渡すものがあるのか。昨日[風鈴]を受け取ったのを思い出して、俺は奴の道具袋に目をやった。瞬
間、視界の端でバルザックの脚が動くのが見えた。
「さっきの、礼だ!」
しまった!と思うよりも早く、腹に丸太で殴られたような痛みと衝撃を食らった。身体が宙に浮き、背中が地面に
叩きつけられる。息ができない。くそっ、ちくしょう!魚のように口をぱくつかせて必死にもがき、どうにか呼吸を
回復させる。同時に跳ね起き、後ろへと飛び退いてバルザックに向き直った。
「えらいぞ。気絶しなかったな」
バルザックのせせら笑う声が、耳鳴りのせいで小さく聞こえる。莫迦にしやがって。
『この野郎っ!さっきの礼って、何のことだ?』
「ミネアに言っておけ。知ってる奴だからって、簡単に人を信じるなってな」
『ど、どういう意味だ』
「世の中には[モシャス]っていう便利な呪文があってな。それを使えば、誰にだろうと変身ができるのさ」
と、バルザックがニヤリと顔をゆがませた。「誰にだって、な」
モシャス……?
変身、誰にだって……?
……!!そ、それじゃ……“さっきの礼”ってのは!
そうか……ミネアさんの言ったことは正しかったんだ。あれは……あの男は、こいつだったのか!
『てめえっ!ミネアさんに!!』
たまらず俺は激発した。ステッキを[ふくろ]から抜き放ち、殴りかかった。かわされる。返し上げようとして、腹と
足に鈍痛が走った。くっ!よろけそうになった両脚に力を入れ、踏みとどまる。だが、
『ぐっ!』
次には胸を地面に貼り付けられていた。背中へ蹴りを食らったのだ。また、息が止まりかける。くそっ!叫ぼう
とした声が『うう……』獣じみたうめきになってしまう。痛みのせいか、それとも土が入ったのか、目が開かない。
黒く透明な幕が、暗闇にゆっくりと下りてくる。
511 :04/08/02 08:21 ID:QdBCRI7i
「ふははっ。昨日は油断したけどな。お前なんか、呪文使わなくたってオレは相手できるんだぜ」
すぐ近くで声がした。その声と、続いてわき上がった怒りが、薄れかけた意識がつなぎとめた。
『くそ……っ』
目をこじ開けると、左手がまだステッキを握りしめているのを確かめ、杖代わりにして身体を地面から引きはが
した。胸、さらに膝も打っていて、力を入れようとすると痛みが頭の中を揺さぶる。目は霞がかかったようにまだ
はっきりと見えない。
だが、立たなきゃ。こいつは平気で人を殺す。女も犯す。こんな非道な奴にくたばらせられてたまるか!
「昨日も、それに今日のあンときも、こうやってお前をのしちまえば良かったぜ。そうすりゃゆっくり、ミネアをモノ
 にできたってのによ」
『なん……だとっ』
気配がするほうをにらみつけ、声をなんとか絞り出す。じゃあ、あのときは、はじめから俺と気づいていて、ワザ
とやられたフリでもしたってわけか。
『てんめえ……っ』
なめやがって。歯を食いしばり、振り絞った力を全身にこめる。俺のためにもミネアさんのためにも、一発はこの
野郎を殴らなきゃ、気が済まない。
「おいおい。まだやるのか」
ステッキを振りかぶった俺を見て、バルザックは笑いながらあごを指で掻く。
駄目だ。俺はこいつに勝てない。だが……怒りが、止められない!
『シャーッ!!』
ステッキを腹の前で構え、ほとんど無意識に、俺はバルザックに突進していった。
バルザックが笑い、前に印を結ぶのが見えた。とたんにステッキが焼け火箸のように熱くなった。それでも俺は
突っ込んだ。バルザックの姿が消えた。勢いのまま、地面に顔から倒れた。起きあがれなかった。手も足も痺
れたように動かなかった。まぶたが落ち、頭の中で綿菓子のような甘い灰色の雲が気持ちよく渦を巻く。催眠の
呪文。気付いても抗うことができない。灰色の雲が、ますます甘ったるく、濃くなってきた。
「オレなんかに関わってるヒマがあったら、お前はお前の用をさっさと済ませるんだな」
バルザックの声が、吟遊詩人の歌う詞のように、遠く優しく聞こえた。
512 :04/08/02 08:23 ID:QdBCRI7i

――目を開けると、森の中だった。街の北のあの森と、なぜかすぐわかった。
地面の感触も草のにおいもしなかった。木も草も横に生えているので、横向きで寝ているのだけははっきり
している。起きようとしても力が入らない。何度もやってみたが無理だった。麻痺させられているのだ。身動き
できない恐怖に、俺は助けを呼ぼうと視界を巡らせた。すると、いつの間にか目の前に誰かが立っていた。驚
いて見上げてみると、それは、ミネアさんだった。幽霊のように力の抜けた姿勢で、眠っているのか目を閉じて
いる。呼びかけようと口を開いたが、声が出なかった。おかしい。舌まで麻痺させられているにしても、呼吸は
できてるのだから声は出るはずだ。だが何度も繰り返してみても、ハッハッと犬のそれのような静かな息が出
るだけだった。救いを求めてミネアさんを見つめたが、目を開ける気配はない。もどかしさに腰のあたりが震え
てくる。
ザッ。前で足音がした。ほっとしたのもつかの間、ミネアさんの背後から現れた男を見て、俺はがくぜんと目を見
張った。バルザックだ。あわててミネアさんに逃げるよう叫ぼうとしたが、やはり声は出てこない。いっぽう奴は、
ニヤニヤと俺に笑いかけながらミネアさんの両肩に手をかけた。そして、ミネアさんの胸元のローブに手をかけ
ると、躊躇もなくそれを紙のように引きやぶいた。ミネアさんの浅黒い乳房が鞠のようにぶるりと二つ転がり出る
のを見て、俺は息を呑む。そのまろやかなふくらみと、油絵の具を筆先でちょんとつけたような薄紅色の花を、
食い入るように俺は見つめてしまった。胸が高鳴り、血がのぼったのか興奮で目の前がぼやけた。しかしバル
ザックの大きな手がミネアさんの下着にすべり入るのを見たとき、ようやく俺の肌を拒絶と恐怖が走り抜けた。
ミネアさんを助けなければ。俺はもがこうとした。バルザックの手がもぞもぞとミネアさんの下着を膨らませてそ
の下を動き回る。「うっ」ミネアさんが呻いた。バルザックはニヤリと笑い、ミネアさんの両腕をつかんで横向き
にし、前の煉瓦壁――いつの間にかそこに在った――に手をつかせて前のめりにした。あの野郎、やる気だ!
513 :04/08/02 08:29 ID:QdBCRI7i
俺は動かない身体を動かそうと必死で悪あがきを続けた。そんな俺を、バルザックはもはや見ようとしなかった。
無造作にミネアさんの下着に指を入れ、引き下ろす。つるんと光った、まるい褐色の曲線が現れる。やめろっ!
出ない声で叫んだとき、「ひっ!?」ミネアさんが目を開け、バルザックを振り返って、「いやーっ!!」悲鳴をあ
げてその腕から逃げようとした。いつの間にかその手首には鎖が巻かれ、壁に繋がれていた。その鎖を引きち
ぎれるほど鳴らし、押さえ込もうとするバルザックの手を避けて暴れているうち、ミネアさんは俺に気付き、目を
見開いた。「助けて、ウィルさんっ!」すがるような瞳でミネアさんが叫んだ。俺は返事をしようとし、懇願どおり
のことを行動に移そうとした。無駄だった。ミネアさんはなおも叫び続けたが、バルザックの両手にがっしりと腰
をつかまれてしまうと、はっとバルザックを振り向き、「ああ」と絶望のため息を漏らした。バルザックがこれ以上
ないくらい楽しそうに笑った。反射的に俺は目を背けようとしたが、それさえもできなかった。「ああっ」一瞬だっ
た。美しく肉付いたミネアさんの腰に、バルザックの骨ばった逞しい腰が隙間なく重なっていた。ミネアさんが瞳
から涙をあふれ出させ、舌をもつれさせながら苦痛と抵抗のことばを叫んだ。バルザックは逆に笑みを増やし、
ぐいぐいと腰を前に突き出し、両手をすべらせてミネアさんの乳房を揉み上げた。「あああっ」ミネアさんは深呼
吸でもするように口を開いてあごをわななかせながら俺を振り向いた。涙をいっぱいにためたその紫の瞳は、
俺に見ないでと言っているようでもあり、なぜ助けてくれないのと非難するようでもあった。ミネアさんから見れば
俺はただ怯えて震えているだけに見えるかもしれないのだ。違うんですミネアさん。俺は泣き出しそうになった。
せめて目をつむりたかった。穏やかで、控えめで、笑顔の優しいミネアさんが……ちょっと変わってて、ときどき
子供みたいにむきになるところが可愛いかったミネアさんが……俺の知る最も卑劣な男に、ミネアさんにとって
は憎むべき親の仇に、俺の目前で犯されている。なのに、何もできない。怒りと無念で涙でも出たのか、目の前
がぼやける。
514 :04/08/02 08:31 ID:QdBCRI7i
「――ああっ、ああ、あんっ」
いきなり聞こえはじめた、あえぐような声に、俺はびっくりしてミネアさんを見直した。ミネアさんではなかった。
その声、振り乱される長い髪から見えるその顔……そして、背後から踊り娘の胸当てをつかみ上げられている
その身体は、マーニャさんのもの。いや、ミネアさんは完全に消えていて、それは紛れもなくマーニャさんだった。
しかも……マーニャさんは、その顔に歓喜の笑みを浮かべ、その美しい褐色の身体を弄ぶバルザックの手に、
むしろ手を添えて押しつけるようにし、バルザックに胸ごと抱かれて背中を伸び上げさせては、口づけを交わし、
舌を絡ませていた。「もっと、もっとよ。そうっ、ステキっ」さらに両腕をバルザックの首にまわして叫びながら背を
弓のようにのけぞっている。俺は呆然とした。吐き気がした。ある意味、先ほどの陵辱されているミネアさんの姿
よりも見せつけられたくない、異常で気持ちの悪い情景だった。
「これが、ほんとうのマーニャよ」
どこからか、聞き覚えのある女の声がした。マーニャさんでもミネアさんでもない、その場以外の者からの声だ。
「ほうらウィル。もっと見てみなさい」
言われなくても見ざるを得なかった。マーニャさんは再び壁――でなく木の幹に手をついているが、腕の力がな
くなってきたのか、髪が地面に散らばるほど頭の位置を低くしていた。「ああっ、も、もうっ……」それでも尻はバ
ルザックに差し出され、ひきしまった膝を伸び縮みさせてバルザックに腰を押しつけている。バルザックは、じっ
とりと汗を浮かべて、無表情でからくり人形のように腰を振っている。マーニャさんの脚の内側に、汗とは違う水
がいくすじも流れ落ちているのに気付いた。「ああっ、おねがい、はやくきてっ」マーニャさんから求めているのは
明らかだった。俺は次第に腹を立て始めた。マーニャさん、こんな男にさえ媚びるのか……。侮蔑が心に湧き上
がった。
515 :04/08/02 08:36 ID:QdBCRI7i
「わかる?これがこの娘の正体。汚らわしい女なのよ」
声に、俺は同意しかけた。そのときふと、眠るミネアさんをのぞき込んだときのマーニャさんの眼差しを思い浮か
んだ。あの表情は本物だった。そうだ。本当は妹のミネアさんを大切にしているマーニャさんが、父親を殺した男
にすすんで抱かれるはずは、ない!
俺は、マーニャさんへの侮蔑を振り払い、後悔した。マーニャさんを信じよう。これは夢だ。単なる俺の卑猥な夢
だ。そうに違いない。それならこの異常な情景も目が覚めるまでしか続かない。そうとわかればもう怖さはなかっ
た。ほら、俺、さっさと目を覚ませ!
「――おにいちゃん。私のことは、信じてくれてる?」
別の声がした。ターニアの声だ!瞬間、マーニャさんとバルザックの姿が消え、木漏れ日のような光がさしこみ、
灰色の奇妙な塊が浮かび上がった。それはゲマの手下の、あの牛のような魔物だった。魔物は小さく白いもの
にのしかかり、俺には一切無関心で、氷柱のような牙を生やした巨大な口に涎をしたたらせてさかんに息をつき
ながら、おもちゃにじゃれつく犬のようにそのいびつな巨体を動かしていた。何をやってるんだ、とその白いもの
を見やった。とたんに心臓が凍り付いた。ターニアだった。青い髪と白い腕と白い脚を投げ出し、丸い肩やその
下の――女である部分を魔物にしゃぶりつかれながら、涙の枯れ果てた濁った瞳でターニアは俺を見つめてい
た。太ったヒルのような魔物の舌に頬や首をなぶられても、ターニアは、俺に――兄の俺に助けを求めようとし
なかった。背を引き上げられたり、揺さぶられたり、魔物にされるがまま、ただ虚ろな瞳で、俺を見つめていた。
「おにいちゃんが早く探してくれないから……私、汚されちゃった……」
あまりのことに息を止めてあぜんとしていた俺は、その声にはっと身体を震わせた。前のターニアの唇はかすか
に開いたままで動いていない。だが、それはたしかにターニアの声だった。
「おにいちゃんが、私のことなんかどうなってもいいって思ってるから、私、汚されちゃった……」
516 :04/08/02 08:37 ID:QdBCRI7i
違うっ!と俺は頭の中で叫んだ。夢であろうとなかろうと絶対に見たくなかった姿だった。俺は、目を覚ますため、
あるいは麻痺している身体を元に戻すため、夢中で全身に力をこめた。わずかでも動くことができればすぐ魔物
に飛びかかってターニアから引き離してやる。そのために魔物に喰い殺されたところで、この絶望と屈辱をかみ
殺し続けなければならないのに比べればはるかにましだ。あごをぐっと噛みしめ、手足の筋肉に意識と力を集中
する。動け、動けっ!呪文のように頭の中で叫び続けた。頼むから動いてくれ、俺の手足っ!せめて出てくれ、
俺の声っ!叫べっ、動けっ……!
『動けーーっ!!!』
出た!?………………………………動いた!!!!
『ターニアッ!!』
叫びながら跳ねるように起き上がった。そのとたん、ターニアもミネアさんも、バルザックも魔物も消えた。代わ
りに、虹色の光が、俺の眼前に広がった。
『……あっ!?』
その輝く光に浮かび上がったのは……やさしく微笑む女神様…………を絵付けた、ステンドグラスだった。
ガヤガヤと大勢の人の話し声が聞こえ、森のものではない滞った空気が肌に触れた。はっとなって、俺は目を
こすり、左右を見た。ここは森の中でも、また路地でもなかった。どこかの大きな建物の、大きな部屋の中。その
床に細長い麻布が敷かれていて、その上に、俺はいた。
……夢…………。
本当に夢だったか……良かったぁ…………。
ほっとして、大きく息を吐く。俺、なんつーイヤな夢、見ちまったんだ。
涙のあとが頬を冷やし、寝汗がべったりと服に貼り付いている。服をつまみバタつかせて乾かしながら、俺は何
度も深呼吸をして、悪夢が残していった嫌な気分を胸から追い出した。
517 :04/08/02 08:44 ID:fGSLFxTs
そうしながら部屋を見渡す。俺の家がすっぽり入ってしまいそうな、広くて天井の高い部屋だ。部屋というよりも
ホールと言ったほうがいい。壁には大きな窓がいくつもついていて、床に敷き詰められた布は何十枚もあって、
うちいく枚かの上で人が横になったり、座って食事をしたりしている。俺が寝床に使っていたこの麻布もその中
の一枚だ。
2年ほど前、フランコさんに兵士の遠征訓練に同行させてもらったとき、山の中の小屋でランドや十人ほどの兵
士たちとこうやって寝たことがある。……まあ、ここで寝てる連中は、老夫婦や明らかに二日酔いの男たちばか
りで、とても兵士には見えないけども。
「おはようございます」
顔を右に向けると、藍色の僧衣を着て、右手にパンかごを下げた女性が、こちらに歩み寄ってきた。
『あの、ここは……』聞いた瞬間、答えがわかった。教会だ。
「はい。ここは迷える子羊が訪れる場所……教会です」
女性が――シスターがニコリと笑う。女にしては背が高く、細面で、躑躅色の卵型の瞳を長細い眉がつり上げて
いる、頭の良さそうな娘だ。
『俺、どうしてここに?』
「道に倒れていらっしゃるのを、お友達がここへ運んできてくださったのです」
へ?お友達??
俺は首をひねった。運んできてくれたって……マーニャさんやフレアさんじゃ、ないよな。すると……?
『それって……男の方でした?女の方でした?』
「え?はい、男性の方でしたけど」
なんだ、男か。アリーナじゃなかったか。残念というか、良かったというか……。
「あの方……お友達ではなかったのですか?ずいぶん、心配しておられたようですけど」
シスターが怪訝そうに聞いてくる。心配してた?いったい誰だ?
この街にいる男で俺のことを知ってる奴。思い当たるのは、アイツか、あの莫迦か、あの野郎だが……3人とも
俺のことなぞ、一切心配しそうにない。
518 :04/08/02 08:45 ID:QdBCRI7i
そうだ。昨日、酒場でマーニャさんが俺を紹介したとき、そこにいた人なのかもな。
『知り合いかもしれません。その友達っていうのはどういう方だったでしょうか?背格好とかは』
「はあ。歳は……そうですね、30歳くらいかしら。背が高くてがっちりした御方で、旅人ふうの方でした」
旅人ふう……あの莫迦は貴族の格好してたし、アイツは同業者なんだから教会のシスターに旅人ふうとは絶対
に表現されないだろうし……。て、ことは?
『黄色い眼で、茶色っぽい髪でした?』
「え?ええ……言われてみれば、そうでしたね」
『………』あの野郎、か。
あれだけ俺を痛めつけておいて、教会に担ぎ込むとは。どういうつもりなんだ?
「やっぱりお友達だったのですね。良かったわ」
シスターが、独り決めして胸に手をあてている。あの野郎をお友達だとみなされるのは嫌だが、説明するとやや
こしい。誤解されたままにしとくか……。
「今、パンを持ってきます。ここでお待ちください」
シスターが意外にすばしっこく駆けていくのを見送ってから、俺はあくびがてら、腕と背筋を上に伸ばした。固い
ところで寝てたせいか少々痛いが、おかしいところと言えばそれだけだ。あと多少は腹が減ってるのを除けば、
ケガ一つない健康そのもの。
ん……?怪我一つ、ない?
はっと、腹や胸、膝を探ってみる。おかしい。2発は蹴り飛ばされたんだ。一晩たっても痛みが残ったり、アザに
なっているのが普通なのだが。しかも、脚の痛みすら消えていた。ちゃんとした手当しなきゃ治るものじゃないは
ずだが……。
519 :04/08/02 08:51 ID:QdBCRI7i
『まさか!?』
一昨日のことを思い出した。あの野郎、たしか[ベホマ]なんていうご立派な呪文が使えたよな……?
シスターがパンかごにパンを足して戻ってくるとすぐ、『俺、どこか怪我してませんでしたか?』と聞いてみた。する
と、シスターは、
「特に、お怪我はなさっていませんでしたよ。なさっていたなら、私たちが手当しますもの」
と首を振ると「どうぞ。パン屋のケネス様からお分けしていただいた、すばらしいパンですよ」ジャムをはさんだパ
ンを俺に渡してくれた。ありがたく頂戴し、座ってぱくつきつつ考えてみる。バルザックは……俺を眠らせてすぐ、
俺の傷をわざわざ回復させたってことか。
なぜか。すぐ、思いついた。あの野郎は、俺には手を出すなとゲマに言われていたはずだ。だから、俺を痛めつ
けたあと元通りに回復させて……プラスマイナスゼロ、なかったも同じ、ってことにしたってわけだ。
『あの野郎……』
この屈辱。ならず者3人に身ぐるみ剥がされて朝まで転がされてたほうが、よほどマシだったかもしれない。
パンを食べ終え、俺は立ち上がった。あんな変な夢見ちまった以上、ゆっくりしている時間はない。
ん?あれ、[ふくろ]は!?
ぎょっとして周りを見回す。ない。顔から血の気が失せる。もしや……?
「お発ちですか?」
あわてていると、先ほどのシスターが聞いてきた。
『あ、はい。その……俺の荷物は……』
「お預かりしております。すぐ持って参りますので、お待ちください」
なんだ。安心して腕をぶらんと下げた。間もなく、シスターが[ふくろ]をかついでやってきた。
「これ、ですよね?」
『はい。ありがとうございました。あの、それで……』
教会に泊めてもらったりしたときは寄付をいくらかしなければならない。が、財布を取り出した俺に、シスターは
微笑み、俺の手を止めた。
「お友達からメルバ銅貨2枚(20ゴールド)をご寄付ということで受け取っております。あなたからも受け取ってし
 まったら、私たちは欲深い者として神から罰を下されてしまいます。どうぞ、お構いなく」
520 :04/08/02 09:07 ID:QdBCRI7i
お友達から?あわてて財布を確認したが、中身は減っていない。情けをかけたつもりなのか、それとも20ゴー
ルドをはした金だと思うほど、ゲマの奴から給金をもらってるのか。そうだとしても、ああいう奴がわざわざ自腹
を切ったとは信じられない。どうも、やることがイマイチわからないな、あの野郎は。
『それでは、お世話になりました』
「神はいつでもあなたを見守っております。助けがほしいときにはいつでもおいでください」
型どおりの挨拶を受けて頭を下げた俺だが、ふと、シスターがわずかに目を伏せたのに気付いた。
『……あの?まだ、俺に何か?』
「あっ、いいえ。そういうわけでは。ただ……」
口ごもってから、シスターは赤い瞳で、俺を探るようにじいっと見つめてきた。どきりとしたが、俺は顔を背けず
見つめ返す。何だろう?いきなり愛の告白なんてわけはないだろうけど。
「実は……あなたを旅の方とお見受けして、お頼みしたいことが……その、初対面の方にこのようなことを頼む
 のは、ぶしつけなのは承知しておりますが……お聞きくださいますか?」
頼み事か。しかも教会関係でなく、個人的なものらしい。でなきゃこんな後ろめたそうな顔はしないはずだ。
『いえ、泊めていただいたんですし、俺でよければ伺いますよ。何でしょう?』
なんでもないというふうな笑顔で先を促す。こくりとシスターはうなずくと、
「はい。ではお願いしますが……旅先で、もしクロービスという神父にお会いになることがありましたら……あの
 先生もすでに亡くなられたのだからいつでもこの街に戻って来られる……と、お伝えしていただけませんか?」
と、赤い瞳で俺をまっすぐ見つめ、はっきりした口調で言ってきた。
『……わかりました。クロービス神父、ですね。お会いすることができたなら、必ず伝えますよ』
「ああ、ありがとうございます!あなたに神のお恵みがありますように!」
嬉しそうに微笑んだシスターが、両手でギュッと俺の手を握りしめた。「私、マゴットといいます。まだまだ僧侶見習
 いの身ですが、あなたの旅の無事を、今日から毎日、お祈りすることにいたします!」
521 :04/08/02 09:11 ID:QdBCRI7i
シスター・マゴットの明るい笑顔に見送られ、つられてにこやかな笑顔のまま、俺は気分よく教会の門を出た。
……先生が死んだからいつでも戻れる、か。どうも奇妙な伝言だな。ま、ともかく引き受けたんだ。覚えておこう。
《????の評価が上がった》《マゴットの評価が上がった》

東を見ると、太陽が、すでに宿屋の屋根の上まで昇っていた。通りにはすでに開いている店も少なくない。
[ふくろ]を背負い直す。あれ?何かが足りないような……。
ステッキだ!忘れたのかと教会に戻ろうとして、昨夜の最後の記憶を思い出す。おぼろげだけど、バルザックに
打ちかかったとき、魔法か何かで燃やされちまったように思う。
あーあ。俺は首を振り、前髪をつかんだ。フローラさんに買ってもらったものをまた一つ失ってしまった。バルザッ
クをブン殴る理由が、また一つ、増えたわけだ。
さて、今日のこれからだが―――

1.ミネアさんが心配だ。すぐ、フレアさんの家に行こう。
2.アリーナはけっきょくどうしたんだろう。宿屋で聞いてみよう。
3.ターニアに嫌われてないか気にかかる。[風鈴]を使って朝の挨拶をしておこう。
4.装備を整えなければ心許ない。武器屋で買い物をしよう。


ウィル 現在地:サントハイム王国モンバーバラ 所持金:48925G 装備:旅人の服
道具:薬草x2、キメラの翼(マーズの館行き)、ターニアの風鈴、マーズの手紙
体調:良好 精神:好調                          <5日目・午前1>
522場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/08/02 09:24 ID:QdBCRI7i
またも2週間お待ちいただいた上に、やたらめったら長ったらしい文章で申し訳ありませぬ・・・
17レス27KB・・・書くより削るほうがモノカキにとっては大変だということを思い知った今回の更新
焦って頭に浮かぶまま書いてしまったものとわかっててもなかなか削れない
以上はただの愚痴。ここで言いたいことは、
 今回キワドイというかそのままのシーンをほとんどボカさずに書いてしまったので、
 18歳未満の方は読み飛ばしてください
・・・何を今更&後レスじゃ意味ないってば
そして、今後ともsage進行でおながいいたしますです。。。

>487 1がまったく無傷で宿屋に着けるルートですた
>488 この選択自体ではほとんど何もありませんでしたが、宿屋に着いてから何かあったかも・・・
>489 なんと2が進行上の大イベント。理不尽と言われるくらいにすっ飛ばしますた
>490 誰に会ってどうなったかはヒミツ。伏線はほんのちょっとだけありますた
>491 ただ逃げて戦闘して夢オチなだけですから、なんかあったうちに入るかどうか(おい)
>492 ご期待とはまたも違ったかもしれませんが・・・似たようなものでせうか
>493 奴は「変な奴」という部類に入るんでしょうか・・・もちろん変な奴には違いないでつが
>494 お読みになっておわかりになられると思いますが、戦闘の描写がむっちゃ苦手な漏れでつ
>497-504 おっせわになりますた♪(完全に開き直り)

なお、
「(この話で)シスターと僧侶と神官と神父ってどう違うの?」
という質問には明確にお答えできかねますです。ドラクエワールドですのでw
本心では1か3だが…、捻くれ者のオレはあえて4で。
疲弊していたとはいえ、たかがチンピラに殺られそうになるのは宜しくない。
せめて武器くらいはいい物を。
素直な俺は1
アリーナ萌えなので2
しかし忍伝並みの妄想だな
俺じゃあるまいに
先に武器買っておく
アリーナに専念ってことで2
3
武器なら股間に付いている 1
女の尻追っかけてばっかってのもあれなんで
こ、ここまで来てようやく装備が………けどアリーナのために2、正直評価取り戻せていないだろうし
そろそろかまってあげた方がいいかな 1
まるごし、旅人、袋(金持ち)なんてカモじゃん…。
こちらからならともかく、相手に襲われるのは嫌なので4。
4.弱さは罪なのさ・・・
アリーナにもう一回会いたいので2で
うおおおおおい!保守!!
DQで武器がないなんて馬鹿 4
しかし、このスレも長いなぁ・・・
伝統あるスレになりつつありますね。といいつつ、ホッキントッシュ。
とりあえず1
541場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/08/10 12:17 ID:2D3F7Vr6
申し訳ありません・・・選択肢は4に決定ということでご参加は打ち切りとさせてください

行きつけの喫茶店でノートパソコン持ち込みを禁止されてしまったGMですた・・・_| ̄|○
がんばってくださいな。って事で保守してみる。
保守
544場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/08/12 15:17 ID:GONTJJZN
武器防具屋に向かって、大通りを北に歩きはじめた。
見てろ。今度会ったときには、俺だっていい武器さえ持てばあの野郎なんて相手にもならないってことを、思い
知らせてやる。
街は、朝まで続いた祭りの後そのまま、道ばたに酒瓶が川のように転がり、たまにその持ち主までもが一緒に
転がっている。両脇の屋台や露店も、ほとんどが片づけられていない。それどころか今日も営業している店も
ある。売れ残りをさばいてしまおうというのだろうけど、いくらモンバーバラとはいえ、紙風船や緋扇は、素面の
街では売れないと思う。綿菓子やイカの丸焼きに至っては……誰が食うんだ朝っぱらから?
剣を扱ってる店はないか。思いついて探してみたが、全く見あたらない。武器とか防具とかのマトモなものを売
りさばく商人てのは、こういう酔った客や喧嘩の多い賑やかな祭りは、敬遠するのかもしれない。
広場まで来た。昨日あれだけ人波で埋まっていたのに、今は目の前がすっかり開けていて、澄み切った水の
池にもそれにかかる十字橋にも、丸い壁の劇場にも人を気にせず簡単に近づいていける。ここも大通りも、
人の数が昨日に比べてだいぶ少ない。レイドックやサンマリーノに比べればこれでもずっと多いとはいえ、世界
一等のモンバーバラのお祭りが一晩でシエーナのバザーのレベルに格下げになった、という印象だ。ま、平時
でもバザー街並みなのだから、さすが世界一の歓楽街だとも言える。
その広場を横切って、目的の武器防具屋が見えてきたが……。
あちゃー……。
両方とも、閉まっちゃってる。それもそうか。まだ、朝早いからなあ。
それでもと、武器屋のカウンターに近づいて気配を調べる。いま開ける準備をしてる様子なら待ってみようと思っ
たのだが、物音ひとつしない。
しょうがない、あきらめて別の用を済ませて来るか……。
545 :04/08/12 15:21 ID:nOkaQse2
「何しとるんだね、お前さん」
声をかけられて振り向くと、皺だらけで、腰の曲がった老人が、怪訝そうに俺を見ていた。
『はい。武器を売ってもらえないかと来たのですが……まだ、のようですね』
答えると、老人は「なんじゃ。客か」とうなずき「待っていなされ」と店の裏に消えた。間もなく人の声がして、昨日
の女店主を連れ、戻ってきてくれた。
「あれま。あんたかい」
俺を見て、女店主が眉を上げる。顔、覚えていてくれたらしい。
「昨日は薬草を買ってもらってありがとね。今日はミネアさんは一緒でないのかい。何かあったかい?」
『あ……』俺はギョッとなったが、この店主がミネアさんのことを知るはずもない。『……いいえ。まだミネアさん、
 寝てると思います』
「おや、そうかい。すると……ふーん……」おばさんが意味ありげにニンマリ笑う。変なこと言ったかな、俺。
「なんじゃ、ダリナさん、知り合いだったのかい?」先ほどの老人が口を挟む。
「いいえ。昨日も来たお客さんなんですよ。でもそれがね、このお客さんを連れてきたのが、ミネアさん」
「ほほう!占い師様かい。ふーん、なるほど、よく見れば、若いくせに女を泣かしてそうな面構えじゃわい」
老人もおばさんも、ますます俺の顔を興味津々に見てきた。こう言われた場合、喜んだほうがいいのか?
『あの……買い物をしたいんですが』
「買い物?おや、そうだったかね。トムさん、ありがとう。今日も教会かい?無理するでないよ」
老人を見送ったあと、おばさんは鍵を取り出し「今開けるからね」と、防具屋のカウンターに差し込んだ。あのう、
昨日と同じく、開けてほしいのはそっちじゃないんですけど。
『あの……』
「今のお爺さんねえ、トムさんていって、この街いちばんのお金持ちって言われてたこともある人なんだよ。けど、
 息子さんていうのがそりゃもう不良で、悪い仲間とばっかり付き合って……もう2年になるかねえ、街を飛び出
 したっきり音沙汰なしさ。それまではトム爺さんもまだ腰はしゃんとしてたんだけど、今じゃあの通り。いくらお金
 持ちでも、いい息子は買えないからねえ」
546 :04/08/12 15:23 ID:nOkaQse2
「あたしゃ、武器のことまるでわからないんだけど……まあ、損したって、うちのバカのせいだからね」
ため息をつきながら言い、おばさんは、武器屋のカウンターとその脇の扉を開け、俺を入れてくれた。
さすがに世界一の繁華街の武器屋、危なそうなものがずらりと並んで……は、いなかった。こん棒に銅の剣、
それにブーメランと、あるものはサンマリーノの武器屋なんかとほとんど違わない……というより、同じ。せめて
鋼鉄の剣、せめてチェーンクロスでもないかと品物表を見てみたが、新しいものは女性が護身用に持つ聖なる
ナイフだけ。少々、いやかなりがっかりした。サントハイムの魔物はレイドックとそう違わないとミレーユが言っ
てたが、魔物のレベルが同じなら、こういうところも同じってわけか。
まあ、ないよりましだ。そう思って並んだ武器をもう一度見直す。
この中でいちばんいい武器というと、やっぱり値段の高いブーメランてことになる。不器用な奴には扱えない得
物だが、これの扱いについてはランドの親父さんが達人というほど巧い。俺もランドも小さい頃から教え込んで
もらったから、今では空中の鳥を落とすことなんて簡単だし、複数の敵を一度に攻撃するという芸当だってでき
る。ただし剣ほどのダメージは与えられないし、手の皮が厚い、男だけの武器だ。
次に俺が扱えるものはと言うと、銅の剣。ライフコッドの男なら誰でも持っていて、俺も一本、家に置いてある。
研いでもすぐになまってしまうので剣と名がついていても棒に近い。それでも体重を乗せられるぶん、接近戦な
らばブーメランを投げつけるより確実にダメージを与えられる。村の近くに現れる植物の魔物のマンドラゴラや
オニオーンを退治するには充分な武器だ。俺もだいぶお世話になってきた。
いちばん安いのが、こん棒。ごつい木の枝に釘を打ち付けただけの代物だ。太く短いから、昨日まで使ってい
たステッキよりは敵に打撃を与えられるだろうが、それ以上がない。第一、持っていてカッコ悪い。
どうしようかな……俺はしばらく、壁にぶら下げられたブーメランと銅の剣を見比べていた。
547>>545の続き:04/08/12 15:25 ID:nOkaQse2
聞きもしないのに喋ってくれながら、おばさんは防具庫の扉を開ける。「はい、見てってくださいな」
笑顔のおばさんに、俺は少々いらつきながら『武器がほしいんですけど……』告げた。
「なんだい。武器が欲しいのかい?だったら早く言っておくれよ」扉が閉まり、すぐに「ほらあんた!お客だよ!」
と、どやすような声が二階から響いてきた。ほっ。今日は、売ってもらえそうだ……と一時は思ったのだが、次の
声が「なんだいそれは。昨日も来てくれたお客なんだよ!」。起こすのに難儀しているらしい。「だから、あんたは
 だらしないって言うのさ!」がんばれおばさん、俺は祈るような思いで二階を見上げていた。しかし、その声は
「……しょうがないねえ」嘆く声で終わった。ちょ、ちょっと。俺は、しょうがないで済ませてほしくないのに……。
「お客さん。お待たせしちゃって言うのも何だけどねえ……まあったく、どうしようもない男だよ!」降りてきたお
ばさんは、客の前というのに怒りを隠さなかった。「うちの主人ときたら、飲み過ぎたから今日は店を休むなんて
 言っててさ。あたしは武器のほうはぜんぜん見目ないもんでね。すまないけど、今日も武器は売れないねえ。
 防具と薬草で良ければ商売してあげるけど、どうする?」
『駄目ですか……』やっぱり……今日も諦めか……いや!思い直し、俺は懇願の目でおばさんを見つめた。
『今日じゅうに俺、この街を発って、お城に行かなきゃならないんです。なのに、何も武器になるようなもの、持っ
 てないんです。この国、初めてなんです。どんな魔物が出るのかもわからないし……。ですから、無理を承知
 でお願いします。こん棒でもいいですから、売ってもらえませんか』食い下がった。商売人としての非があっち
にあるんだから、客のこちらの無理が通ってもいいはずだ。
「そりゃあ……お困りだねえ」おばさんが肩をすくめ、「うーん」考えはじめる。俺は目でおばさんに懇願し続けた。
やがておばさんはため息をつき、「わかったよ。それじゃあしょうがない」渋い顔のまま、別の鍵を取り出すと、
武器屋の側へまわった。
やった!小さく俺は拳を握る。あきらめなくてよかった。
548>>547の続き:04/08/12 15:32 ID:nOkaQse2
「あたしゃ、武器のことまるでわからないんだけど……まあ、損したって、うちのバカのせいだからね」
ため息をつきながら言い、おばさんは、武器屋のカウンターとその脇の扉を開け、俺を入れてくれた。
さすがに世界一の繁華街の武器屋、危なそうなものがずらりと並んで……は、いなかった。こん棒に銅の剣、
それにブーメランと、あるものはサンマリーノの武器屋なんかとほとんど違わない……というより、同じ。せめて
鋼鉄の剣、せめてチェーンクロスでもないかと品物表を見てみたが、新しいものは女性が護身用に持つ聖なる
ナイフだけ。少々、いやかなりがっかりした。サントハイムの魔物はレイドックとそう違わないとミレーユが言っ
てたが、魔物のレベルが同じなら、こういうところも同じってわけか。
まあ、ないよりましだ。そう思って並んだ武器をもう一度見直す。
この中でいちばんいい武器というと、やっぱり値段の高いブーメランてことになる。不器用な奴には扱えない得
物だが、これの扱いについてはランドの親父さんが達人というほど巧い。俺もランドも小さい頃から教え込んで
もらったから、今では空中の鳥を落とすことなんて簡単だし、複数の敵を一度に攻撃するという芸当だってでき
る。ただし剣ほどのダメージは与えられないし、手の皮が厚い、男だけの武器だ。
次に俺が扱えるものはと言うと、銅の剣。ライフコッドの男なら誰でも持っていて、俺も一本、家に置いてある。
研いでもすぐになまってしまうので剣と名がついていても棒に近い。それでも体重を乗せられるぶん、接近戦な
らばブーメランを投げつけるより確実にダメージを与えられる。村の近くに現れる植物の魔物のマンドラゴラや
オニオーンを退治するには充分な武器だ。俺もだいぶお世話になってきた。
いちばん安いのが、こん棒。ごつい木の枝に釘を打ち付けただけの代物だ。太く短いから、昨日まで使ってい
たステッキよりは敵に打撃を与えられるだろうが、それ以上がない。第一、持っていてカッコ悪い。
どうしようかな……俺はしばらく、壁にぶら下げられたブーメランと銅の剣を見比べていた。
……ん?
その壁の下に置かれている大きな空の箱。それと壁との隙間に、長細い箱が落ちているのに気づいた。
549 :04/08/12 15:38 ID:nOkaQse2
長さと幅、蓋に描かれた模様からして、剣を入れる箱だ。中身は、あるんだろうか。
『すみません、これは?』
おばさんに声をかけながら、拾い上げてみた。ずしりと重い、上等な箱だった。隅なのにほこりまみれになって
いないから、最近ここに置いたらしい。あるいは、隠していたのか。
「なんだい、それは?」
おばさんも不思議そうな顔になり、箱をカウンターに置くと「うちの宿六、こんな高そうなもの仕入れてたのかい」
ぶつぶつ言いながら、蓋を開けた。
『あっ!』
中にあった剣を見て、俺は声を上げた。青白く輝く十字刃、城に飾られた燭台のように凝った造りの鍔。柄など
にいくつもあしらわれたクロス。見たことはない剣だった。だが、銅の剣なんかは言うに及ばず、レイドックで貸
してもらった鋼鉄の剣よりもずっと素晴らしい剣だと、すぐわかった。
「ずいぶん高そうな剣だねえ……」おばさんが顔をしかめる。「また、変な商人にでも売りつけられたんじゃない
かねえ」
『す、すみません。貸していただけますか?』そっと剣の束に触れてみた。剣に封じられた魔力が指先に伝わっ
てくる。よし、あれをやってみよう。思いきって俺は、手をかざし目を閉じた。
光よ……そのすべてを見通す力をもって……この剣の秘めたるものを我に告げん……。
『インパス!』
目を見開いて剣を見据えた。剣を包み込む白い光。その光の中に真っ赤な炎が巻き上がり、炎の印をかたど
るのが見えた。これは[ギラ]の印だ。それに、この、聖なる力を示す白い光……つ、つまり。これは、この剣は
……[破邪の剣]なんだ!!
「へーっ!あんた、その呪文、使えたのかい」
感心したようにおばさんが言うが、俺は驚きと期待のあまり震えっぱなしだった。神に認められた名工だけが創
ることができ、選ばれし名高い勇士だけが用いることを許された剣、[破邪の剣]。こんなすごい剣が手に入れば、
バルザックが呪文を唱えてきたって対抗できる……。
『すみませんっ!この剣、俺に売ってもらえせんかっ?』
勢い込んでおばさんに詰め寄った。「な、なんだい急に」俺の剣幕に、おばさんは身を引いた。「といって
 も、いくらで買ったんだか値段がわからないからねえ。どこかに書いてないものか……」
550 :04/08/12 15:39 ID:nOkaQse2
棚から帳簿を抜き出し「えーっと……」調べはじめる。そのおばさんと剣とを交互に見、俺は、焦れる心を抑え、
待った。
「ああ、これだねきっと……破邪の剣、3800G!まあ、どこにこんな金あったんだい!あの人ったら、あたし
 に相談もしないんだから」
やっぱ[破邪の剣]か。3800Gか……鋼鉄の剣の倍近い値段だ。そりゃ、そのくらい、するだろう。
「うーん、どうしようかねえ。うちの主人が見つけたものだから聞いてみないと……といってももう寝ちまってるだ
 ろうし……」
『そこを何とか!』俺は頼み込むように手を合わせた。『お金なら、出しますから!』
「そうかい……それなら、そうだね。うん、3800の倍の、7600Gで、売ってあげるよ」
『え?』
倍!?一気に血の気が引いた俺に、おばさんが意味ありげに頬をゆるませた。
「鑑定したあんたがそこまで言うからには、ホンモノで、相当いい剣のようだからねえ。この街には剣が好きな
 金持ちが多いから、倍くらいなら喜んで買ってってくれるよ。うちの人も、そうするつもりで仕入れたんだろうし」
『………』
「その値段で買えないなら、そこらにある安いので我慢してもらうよりほかにないよ。どうするね」
げ。俺に武器がないからって、足下見られちまってる。泣き落としなんて、かけなきゃ良かった。
「そうそう、武器だけじゃなくて、防具も、薬草ももちろん売ったげるよ。そうだねえ、いろいろと面倒かけちゃっ
 たからね、防具のほうは全品2割引にしとこうかね」
言いながらも目元にしわを作るおばさん……この防具屋さん、意外と商売上手かもしれない―――

<選択肢A>
1.購入する(所持金48925G。複数可。ただし薬草以外は1点のみ。bは男性専用、gは女性専用装備)
 1−1.bこん棒30G 1−2.銅の剣100G 1−3.g聖なるナイフ200G 1−4.bブーメラン420G
 1−5.破邪の剣7600G
 1−6.旅人の服56G 1−7.g絹のローブ96G 1−8.g皮のドレス280G
 1−9.皮の帽子64G 1−10.gヘアバンド96G 1ー11.薬草10G<<数量入力(最大3個)>>
2.冷やかすだけにする
551 :04/08/12 15:44 ID:nOkaQse2

礼を言って店を出、広場へ戻ってきた。
日が昇ってきて往来する人も増えてきている。一日の仕事が本格的にはじまる時間だ。
俺は、どうしようか。
ミネアさんが心配。アリーナも気にかかる。特にアリーナは、放っといたらまたどこかに行ってしまいそうな気が
する。うーん、だけど、バルザックのことをマーニャさんたちに話すことも大事のような……。
考えながら行き交う人を見ていると『……?』その中に代わった姿の人を見つけた。兵士だが、スコットさんの
ような警備兵の服装とは違う。僧侶のような服に、腰の剣、尖った帽子。たぶん、近衛兵だ。クリフトと同じで、
アリーナを連れ戻しに城から来たのだろうか。
まずいな……敵が一人、増えちまう。
探るように見つめていると、急に兵士のほうも俺に顔を向けた。あれ!?あの人は!
「!」
俺が驚くと向こうも驚き、すぐ、駆け寄ってきた。やっぱりシロンさんだ!
「こりゃあ驚いた。ウィル君じゃないか」
『シロンさん!』
俺が知る、数少ないサントハイムの人間の一人、シロンさんだった。
「ウィル君、ようこそサントハイムに!お祭り見物に来たのかい?」
『は、はい……そんなところです』俺は言葉を濁した。『もしかして、シロンさんもですか?』
「ははは、それなら良いんだけど、私はあいにくお役目さ」
頭をかきながら笑うシロンさん。俺より半回り年上なだけなのに、サントハイムの王様にはもちろん、レイドック
王にも気に入られている人だ。名門のご子息という家柄もあるけど、それ以上に人柄だと思う。王様の手紙を
届けるというのがレイドックに来たときのお役目で、それが終わった後、酒場でフランコさんたちにとても接待と
は思えない扱いを平気で受けているし、俺やランドが頼むとすぐ木刀持ち出して手合わせしてくれる。ちなみに
美人で年上の奥さんと、今年で2歳の娘さんがいる。なぜ俺が知ってるかというと、フランコさんに今度連れて
来いと言われて、ほんとうにレイドックまで連れてきたことがあるからだ。
552 :04/08/12 15:46 ID:nOkaQse2
『お役目というと、この街のどなたかに御書簡、ですか?』
手紙を届けるだけなら、済んだ後、この国の詳しい話を聞いたりできるかもしれない。
「そうじゃないんだ。その……ゲバンどののご子息に、すぐお城にお帰りいただくようにとの仰せでね」
シロンさんが疲れたように肩を落とす。近衛兵なのに、用があるのはアリーナじゃなく、あの莫迦なのか。
「すまないね。それがなければ、せっかくサントハイムに来てくれたんだから、あちこち案内してあげるのに」
『いえっ、お役目の邪魔をするつもりはありません。俺、お城にも行くつもりでいますから、そのときに』
元気よく言った俺に「……城にね」なぜかシロンさんは眉をひそめた。「今のサントハイムのお城は……」と西を
向いてつぶやき、すぐ首を振った。「あ、何でもないんだ。ウィル君が来てくれたなら妻も娘も喜ぶよ。お城に来
 たら、ぜひ、私の家に寄ってくれ」
『はい。きっとお伺いします。ありがとうございます』うなずいた俺にシロンさんは、
「必ずね」笑って握手をしてくれ「じゃあ、そのときに」と、大通りへと駆けていった。
なんだか自信が湧いてきた。知らない国で知ってる人に会うと、ほっとするなあ。
それにしてもシロンさん、妙な言い方したな……サントハイムの城で、何か、起きてるのだろうか。
……と、そんなことより。
俺はシロンさんの走っていった方角を見た。宿屋にはラゴスもいればアリーナとクリフトまでいる。シロンさんが
行けば、いろいろ大騒ぎになりそうだ。そこに俺がのこのこ行ってラゴスとはち合わせでもしたら、俺に恨み重
なるあの莫迦のことだ、俺を牢屋に放り込めと叫びだしかねない。しばらく、宿屋には行けないな。
ならば答えは一つ!俺は、広場を東に走り出した。もちろん、フレアさんの家を目指して。
ミネアさん、もう、起きてるだろうか……起きてたとして、元気だろうか。
《ウィルの商人レベル&盗賊レベルが上がった!》

「ウィルさん、おはようございます。待ってましたよ」
玄関をノックすると、すぐ、フレアさんが出迎えてくれた。焦燥したりやつれた様子はない。まずは安心。
居間へ通される。『あ……』ソファに、絹のローブを着たミネアさんが、マーニャさんと並んで座っていた。
553 :04/08/12 15:52 ID:nOkaQse2
「遅いわよ、ビルくん」
マーニャさんが不機嫌そうに俺を見る。「………」それにつられるようにミネアさんも俺を見上げ、すぐうつむい
てしまう。姿勢よく背を伸ばしているのでどんな顔かは見えるのだが……感情のまるでない、しかし今にも顔を
覆って泣き出すのではという予感をさせる瞳で、じっと、膝に置いた手の甲を眺めている。元気かそうでないか、
聞かなくてもわかる状態だった。
……重症だな。
俺は、どうしてあげたらいいのだろう。何もされてない、というのはマーニャさんたちが言っただろうし、それに
そういうのって、女の子なら自分でわかるものかもしれないし。
「何やってたのよビルくん。昨日いちばん早く起きたくせに、今日は寝坊?」
一方、隣のマーニャさんのほうは、あからさまに不機嫌モードだった。
「昨日、あれからちゃんと、まっすぐ宿屋に行ったんでしょうね?」
『あっ……それが』俺は口ごもる。『実は、その、あれから……』
バルザックのこと、[モシャス]の魔法のこと。あれから起きたことを話しておかなければ。
でもな……ここにきて、俺は迷いはじめた。ミネアさんにも伝えていいことなのだろうか。あれがバルザックだと
知れば、ミネアさんは親の仇に汚されかけたってことだし、その親の仇に、“まったく何もされなかった”わけじゃ
ない……。
「まあいいわ。そうそう、さっきクリフトが来たのよ。アルトと、ビルくんが来てないかって。ビルくん、アルトは一緒
 じゃないのよね?」
『え?』急に話題を変えられ、『いいえ、あれから会ってません』あわてて、首を振った。
「でしょーね。クリフトったらさ、いきなり上がり込んでここの家中探しといて、隠すとためになりませんよ、なんて
 言うのよ、あたしに!!しかも、この子がこうしてる目の前で!ほんとに腹立ったから、蹴飛ばして追い出して
 やったわよ」
『あ、そうだったんですか』なんだ、またアリーナの奴、逃げたのか。ま、シロンさんと、はち合わせることがなく
て良かった。そうなって困るのは、シロンさんだからな。
554 :04/08/12 15:55 ID:nOkaQse2
「だいたいアルトもアルトよ。昨日は勝手にビルくんのこと誤解しといて、今日また迷惑かけられたわよ。たぶん
 ハバリアにでも行ったんでしょーけど……お祭り終わったら、お姫様はおとなしくお城に帰ればいいのよ、まっ
 たく」
マーニャさんがアルトにも文句をまくし立てる。たしなめる役柄のミネアさんは黙ってうなだれたきりだし、フレア
さんは台所に行ったまま。この愚痴は俺が止めるしかないか。
『まあまあ、アリーナもクリフトもマーニャさんに悪気があったわけじゃ……それより』俺は、マーニャさんがまた
何か言い出す前にマーニャさんの前に座り、『ミネアさんて……けっきょく、ケガとかは、なかったんですね』と、
遠回しにミネアさんを励ますつもりで、聞いた。
「なかったわよ。ちょっとばっかすりむいてたとこもあったけど、そのくらい、その気になればこの子、自分で治
 せるでしょ」
マーニャさんは、呆れた顔でミネアさんを見ながら頭の後ろに両手をやる。ミネアさんのほうは、眉を寄せ唇を
結んで、何かに耐えるような表情になっていた。昨日の記憶を、思い出しているのだろうか。
「この子さ、起きても、何があったのかとか、ぜんぜん話さないのよ」
俺がミネアさんを見つめていると、マーニャさんが横から言って、
「ほうら、ミネア。命の恩人には、何があったかくらい、ちゃんと話すのが礼儀でしょ」
肘でミネアさんの頭をつついた。『い、いいですよ』俺は、あわてて手を振って止める。『ミネアさん、話したくない
 んでしょうし……それに俺、命の恩人なんてほどのことは、してませんから』
「何いってんの。ビルくんが通りかからなかったら、この子、あの男にメチャクチャにされてたわよ」
マーニャさんは、声を荒げさせて俺に言うと、ミネアさんに向き直り、
「ミネア、まずは、ビルくんにお礼くらい言いなさい。それから肝心なこと、ちゃんと話しなさいよ。なんであんなと
 ころに行ったのか、それから、誰にヤられそーになったのか」
胸で腕を組み、左膝に乗せた脚でミネアさんの足をつついた。
「……すみませんでした、ウィルさん」
ミネアさんが、俺を見て頭を下げる。ミネアさん……こういうときは、謝罪じゃなくて感謝でしょう。
555 :04/08/12 16:02 ID:nOkaQse2
「すみませんじゃないわよミネア。助けてもらってありがとうございました、でしょ」
マーニャさんが俺の代弁をしてくれる。「それから。アイサツだけじゃなくて、ちゃんとビルくんに説明する!」
せっつかれても、ミネアさんは目と唇をきゅっと閉じ、震えるように小さく首を振っただけだった。
もしかして……俺は、あの夢を思い出した。思い込みの強いミネアさんだから、俺の夢と似たような想像をして
しまって……未遂だと頭でわかっていても、されてしまった気分になっちゃっているのかも。
「ほら、黙ってたんじゃわかんないでしょ。どーせ何もされてないんだから、いいじゃないの」
『マーニャさん!』
思わず俺はマーニャさんをにらんだ。今日のマーニャさん、不機嫌なせいか、やたら無神経だな。
ミネアさんの口から聞かなくても、俺には犯人はわかっている。いや、ややこしいことに、むしろ被害者のミネア
さんのほうが犯人を知らないって可能性が高い。あの男がバルザックだと気付いてるなら、マーニャさんに秘密
にする理由は、ないからな。
そうすると真実を知ってるのは、あの野郎と、俺だけになるってことになるが―――

<選択肢B>
ア.バルザックのことを話す。
イ.黙っている。

(*入力例 1−1,1−2,ア または A:1−1,1−2 B:ア)
1-4 1-5 イ
もうアリーナとは会えない気がしてきた。
しかし長いな…俺もこれぐらい長くレポ
書けるようにしたいね。大事なことしか
書かないからめっさ薄くなる。
557 :04/08/12 16:44 ID:nOkaQse2
長い・・・しかも論理がぐだぐだ。なんでここでシロンを登場させたのか書いた漏れにも判らなくなってきた

>523 人間は複数に囲まれれば普通は負けまつ
>524 世知辛い世の中、ゲームの中くらい素直がいちばんでつね
>525 妄想でなく夢・・・大して変わらないか
>526 イベント進める前にお買い物はRPGの基本。けどDQ8では街でも時間が進むそうでつが
>527 2でもアリーナに会えたかどうかは・・・
>529 中華キャノン?それとも土偶門番大魔導砲・・・って知ってる人いるかなあ
>530 たまにはドラクエ本来(?)の楽しみもいいですね
>531 はい、アリーナ評価はガタ落ちなままでつ
>532 さみしいよ光線を出してるキャラは誰でせう・・・
>533 逃げるが勝ちという最大の武器がありますが
>534 ゲームの主人公の辛いところでつな
>535 アリーナともそのうち会える・・・と思いまつ
>536,539,542-543 伝統あるスレを廃れさせないようがんがりまつ!
>537 先生・・・1週間経って意地悪をしないでくださひ・・・
>538 正拳突きとかは素手ではないのでせうか
>556 _| ̄|○ ムダガオオクテ スミマセン・・・ともあれ1番乗り、ありでつ!
548と546ってなんかおかしくない?
つか、546余計な気がする。と思ったら名前欄に書いてあるね。
1−5〜11×3全部 と ア で。
559場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/08/12 18:15 ID:nOkaQse2
>>558
肝心なこと書き忘れてますた。おっしゃる通り>>546は余計でつ。スミマセソ

次回更新は・・・明日でなければ来週の水曜あたり・・・
選択肢A
1−4、1−5、1−6、1−7、1−11×3個
選択肢B


破邪の剣ヤホーイ!
1−3 1−4 1−5
1−9 1−11*3


聖なるナイフは装備出来なくても
色々使い道がありそうなので。銀製らしいし
A 1-4 1-5 1-6 1-11×3
B ア
1-3 1-4 1-5 1-11×3 イ
なんで聖なるナイフが女専用なの?
A
1-4、1-5、1-6、1-9、1-11×3
B


金は天下の回りもん
1−5、1−3、1−4

ゲームのドラクエなら破邪だけだがやはり飛び道具と小道具は必要だろう。
つか評価取り戻せるようなシーンがまだこないな。
ふぁす
567名前が無い@ただの名無しのようだ:04/08/17 13:13 ID:Oed4wmcA
age
568場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/08/19 01:20 ID:qX9cpHdw
『ミネアさん』
俺は思い切って、ミネアさんに呼びかけた。
『俺、たぶん、ミネアさんが知らないことを、知っていると思います』
ミネアさんが顔を上げた。マーニャさんも「どういうこと?」眉を寄せて、横から聞いてくる。
『実は俺……昨日、ここを出たあと、バルザックに会ったんです』
「えっ!?」
マーニャさんとミネアさんが同時に息を呑んだ。
「あ、あいつに?そ、それで、ビルくん、無事だったの?」
マーニャさんが、あわてたように机の向こうから身を乗り出して、俺の腕や肩に触ってくる。
無事とは言えなかったけど……どうも大げさだな。俺は、ここでこうして話ができてるのに。
『俺は大丈夫、ケガはないですよ』と、マーニャさんを落ち着かせる。ま、今は、なんだけど。
『それでですね、そのときあいつが言ってたんですが……』
バルザックが自慢げに話していたことを、二人に話しはじめた。
[モシャス]の呪文について触れたとき、ミネアさんの目が大きく見開き、かたく結んでいた唇をかすかに開いた。
やっぱり、ミネアさん、気付いてなかったんだ。
『……て、ことです。そのあとは、こてんぱんにやられちまって、覚えてません。気がついたら、教会でした』
「そうだったの……大変だったわね、ビルくん」マーニャさんがソファに背を伸ばす。「けど、ビルくん。あいつだっ
 たのなら、なんで昨日さ、あんなはっきり違うって言ったのよ?」
『それは……バルザックにしては姿も声も違うし、それに弱っちかったですから……それにまさか、[モシャス]な
 んて呪文がこの世にあるとは、俺も知らなくて……』
頭の後ろに右手をやり、弁明する。森でぶつかったときはあまりに軟弱だったからな。あの男とバルザックとを
結びつけるのは、たとえ[モシャス]の存在を知っていても不可能だったろう。
「[モシャス]かあ。そんな呪文までアイツは……どこまで、ずる賢い奴なのかしら」
マーニャさんが、顔をしかめ、目にかかる前髪を横に撫でつけた。そして、黙ったきりのミネアさんを見やり、
「つまり、ミネア。あんた、あいつにまんまと騙されたってわけね」唇をゆがめ、息を鳴らした。
569 :04/08/19 01:21 ID:qX9cpHdw
「私……。騙された……の?」
ミネアさんはまだ飲み込めていないらしい。さっきはわかったような顔したのに。
もう一度説明してあげたほうがいいかな、口を開きかけたが、俺より早く「あたしの想像だけどさ。あんた、昨日」
マーニャさんが、喋りはじめた。
「たぶん、あんたのよーく知ってる男にあの森に連れてかれて、襲われたんじゃない?だから、さっきから黙って
 んでしょ。けど、その男はね、あいつが化けてたってこと。あんたを信用させて、おびき出すためにね」
「……だ、だけど……」反論するようにマーニャさんを見返してから、ミネアさんは言葉を止めた。「……じゃあ、
 あ、あの人、バルザックだったの?」
「だったのって、さっきから、あたしもビルくんも、そー言ってるじゃないの」
ミネアさんは、それでも信じられないというように息を呑んだまま、表情を止めた。無理もない。[モシャス]なんて
呪文があるなんて、俺だって信じられないんだから。
けど、もしそんな呪文を使えたとしたら……何だってできちまうな。あんなことや、そんなこと……。
「ウィルさん。それ……本当、なんですね?」
あわてて、妄想を打ち消す。と、ミネアさんの頬に血色がもどっているのに気付いた。しかも、どこかほっとした
顔なのは……気のせいだろうか。
『本当だと思います。バルザックの奴が、わざわざ俺に嘘をつく理由は、ありませんから』
言いながら、俺はなぜか妙な違和感がした。何がとははっきり言えない何かがおかしく、気持ちが悪い。ミネア
さんの態度が変と言えばまあ変だけど、それとは別のような……何だろう?
「で、ミネア。あいつ、誰に化けてたわけよ?」
マーニャさんがソファにくつろいだまま、聞いた。俺もそれを聞いてみたい。俺でないことは確実だから、安心。
「その……」ミネアさんはうつむき、まぶたと唇をきゅっと閉じた。短い沈黙。
「……オーリン、だったわ」
570 :04/08/19 01:23 ID:qX9cpHdw
「オーリンっ!?」
その答えを聞いて、マーニャさんが笑い顔になった。「ったく!よりによって兄弟子に化けるかぁ、アイツ!」声を
上げて、笑い出す。
「ええ、そうよ……オーリンだったわ」ミネアさんが悔しそうに唇を噛んだ。「14人くらい占いをして、次のお客さん
 と思って顔を上げたら、“ミネアお嬢様”って。髭だらけだけど、顔も声も、たしかにオーリンで……私、思わず
 泣きそうになったわ。元気でいてくれたのね、って……」
「オーリンじゃないってことが見抜けないなんて、ミネア、あんたそれでも占い師なの?」マーニャさんはまだ笑っ
たまま。「第一、あたしたち、オーリンと何年いっしょに暮らしてたのよ。中身が違ってるってこと、なんであんた、
 わかんなかったのよ?」
「だ、だって、仕方ないじゃない。4年ぶりだったんだし……」
『ミネアさん。それで、どうしたんですか?』しょげかえるようにさらに下を向いたミネアさんに、俺が先を促す。
「え、ええ。どうしてたのかって聞いたら、ムーンブルクにいたって言ってました。そのあと急に、お父さんのことで
 内密な話があるって言われて……それで……」
「それであんな森の中についてったってわけ?」マーニャさんが笑いを止め、呆れたように手を振った。「あんた、
 莫迦よ。ほんとにお莫迦さんよ。この街に5年も住んでるってのに、まだまだ世間知らずのネンネお嬢ちゃん
 だったのねえ!」
「そっ、そんなに言うことないじゃない、姉さん!」
高い声で言い返したミネアさんへ、
「莫迦としか言えないから言ってんじゃないの!」マーニャさんが指を突きつけた。「夜中、だあれもいない森の中
 に疑いもせず連れ込まれるなんて、それじゃ何されたって文句言えないわ。いい?ミネア」目を細めて、早口で
喋り出す。「男ってのはどんな奴でもね、いい女見たらまずヤラシーことしたいって思うの。それをじーっとこらえて、
 おしゃべりしたり食事したりしながらチャンスをうかがってるわけ。で、女に隙ができた瞬間、いただきます、ごち
 そうさまでした、ってわけよ。どんな男でもね」
保守ってみる。
572 :04/08/19 01:34 ID:qX9cpHdw
「そ、そんなことないわ」首を横に振るミネアさん。「姉さんの周りはそんな男の人ばかりかもしれないけど、でも、
 世の中って、そんな人ばっかりってわけじゃないわよ。父さんやオーリンは、そんな人じゃ、なかったじゃない」
「だからあんたは何にもわかってないって言うのよ!」マーニャさんは急に大声を出した。「父さんだって……んー、
 その、若い頃だってあったわけだし……」が、すぐに取り直して、小馬鹿にするような口調に戻った。「オーリン
 なんかさ、まだまだじゃない。だいたい、世の中は男と女しかいないのよ。女は子供産めるけど、男は産めない。
 じゃあどうするかって、女に産ませるわけでしょ。そういう本能っていうやつ持ってない男がいたら、そんなの男
 じゃないわよ。あたしたちだってそうやって産まれてきたんでしょーが。それにさ、真面目ぶってる男に限って、
 裏で信じられないことしてたりするのよ。いま、あんたのまわりには真面目な男ばっかってんなら、そのほうが
 よっぽど怖いわよ」
真面目ぶったりなんて、俺は、してない……よな?それなら、俺のことではない、と。
「物事一辺倒なのはどっちよ!姉さん、どうしてそうやって、よく人を知りもしないのにすぐ決めつけられるの?
 ヒトっていうのは、ちゃんと話を聞いて、表情の動きとか癖、態度なんかを観察して、やっとわかるものなのよ。
 占い師でもないのに一目見て人を見抜けるのは、神様だけだわ」
占い師ってそういうのを見てるのか、ミネアさんもミレーユも。あんがい抜け目ないんだな……気をつけよう。
「だったらさ、マーズのおばあちゃんにそういう男の夢の中を見てもらったら?絶対あんたひっくり返るわよ。そう
 いう男の頭の中で、あんたがそいつらに何されてるか、わかったもんじゃないんだから」
ぎくっ。内心震え上がる。今朝、俺がどんな夢を見てたのかバレたら、一生、この美女姉妹から軽蔑されそう。
マーズさん……まさか俺の夢、覗いてないですよね?
573 :04/08/19 01:38 ID:qX9cpHdw
「あ!だ、だけどね、ビルくんは違うわよ」
マーニャさんがはっと俺を見て、あわてて両手を振った。取って付けたようなセリフだけど、必死っぽい態度から
いって、皮肉ではない、たぶん。
それから急にマーニャさんは笑顔になり「そうそう、ミネア。ビルくんはね、エライ人なのよ」からかうような言い方
で俺をもちあげる。「ミネア、ビルくんとなら、どんなとこ行っても安心してていいから。あたしが許すわ」
『………』
フォローしてるのかな。けど、こう認められて人として喜ばしいような、でも男としてけなされたような。
「あのねミネア、あんたがさ、ほとんど真っ裸に剥かれてたっていうのにね、ビルくん、何もしなくて、すぐ着てるも
 の直してくれて、まっすぐここへ運んで来てくれたのよ。すんごーくキトクな人じゃないの。ねっ?ビルくん」
さらにマーニャさんは、まるで見てきたように説明し、俺に促すように目線を送った。そのマーニャさんに笑いを
返して頭をかきながら、俺は複雑な気分になる。キトクだとかどうのより、あのとき俺はただ、ショックがはるか
に大きくて性欲なんて呼び起こしてる余裕がなかっただけだ。というか、普通の男なら、ああするのが当然なの
では……。
「………」
マーニャさんの説明を聞いて、ミネアさんが真っ赤になってうつむく。唇を波形に結んで、もじもじするように膝の
間に手を握って重ねている。
『あの、ミネアさん』俺はすぐ言った。『……その、だいたいマーニャさんの言った通りですけど、あの森、真っ暗
 でしたから。だから……ぜんぜん、何も、見えませんでしたよ』
「そ、そう……ですか」
『そうですよ』
きっぱりと言う。ミネアさんが、うつむいたままで俺に目をやった。嘘がないか探っているんだろう。そんなミネア
さんに、俺は、一つ小さくうなずいた。ほっとしたようにミネアさんは顔を上げた。そして、
「ウィルさん」まだ紅に染まった頬を柔らかくゆるめると、
「ありがとうございました」と、あらためて、俺に頭を下げてきた。
『どういたしまして』
俺も、あらためてお辞儀を返す。よかった。いつものミネアさんに戻ったかな。
574 :04/08/19 01:42 ID:qX9cpHdw
そう思いながら俺が上げると、ミネアさんが、見守るような眼差しで俺を見つめていた。
「………」
目が合ったとき、ミネアさんは、どこか嬉しそうに、俺に微笑んできた。
『……?』不思議になりつつも微笑み返す。すると、ミネアさんはハッとしたように眉と頬を引き締めて、またも
頬を赤くすると、
「お手伝いしてきます」
つぶやいて、席を立ってしまった。
『あの……?』
台所に行くミネアさんを見送っていた俺だが、マーニャさんが楽しげにニヤニヤしているのが見え、すぐ姿勢を
正した。
目の前のマーニャさんの笑いよりも、俺の目にはなぜか、さっきのミネアさんの嬉しそうな笑顔が、残像のように
焼き付いていた。
《ミネアの評価がかなり上がった》《マーニャの評価が上がった》

「それで、ビルくん、今日はどうすんの?」
グリーンサラダを皿によそいながら、マーニャさんが聞いてきた。
フレアさんが用意してくれた遅い朝食。俺は教会でパンを食べたんだけど、“パンだけじゃダメよ!”と三人に口を
そろえて言われてしまったため、俺も仕方なくありがたくいただいている。
『そうですね……』
スープをすすりながら、考えてみる。マーズさんの手紙を届けたほうがいいか、それともアリーナを探すのが先か。
アリーナがサントハイムの城に帰ったなら、どちらにしてもサントハイム城に行くのがいい。
「マーニャさん。サントハイムのお城まで、行けますか?」
「[ルーラ]で、ってこと?あったりまえよ」マーニャさんが得意そうに胸を張る。「サントハイムに行くんだったらさ、
 あたしが、連れてってあげるわ。おばあちゃんに手紙頼まれてたんだもんね、ビルくん」
『はい。それとついでに聞いておきたいんですが、どこまで、行けるんですか?」
「どこまで……サントハイムの国なら、どこへだって行けるわよ。コーミズもハバリアも、あとテンペ。あっと、ミント
 スには、行ったことないから無理ね。それから、こないだ行ったポートセルミと、サラボナ。そんなとこかしら」
575 :04/08/19 01:44 ID:qX9cpHdw
サラボナ……そうか、マーニャさんに頼めば、いつでもサラボナに行けるんだな。
しぜんと俺の心に、フローラさんのやさしく可憐な微笑みが浮かび上がった。あれから2日くらいしか経ってない
けれど……もし今日行って会ったら、フローラさん、返事、くれるだろうか……。
「あ。だけどねビルくん」マーニャさんの言葉に、あわてて我に返る。
『なんですマーニャさん?』
「あたしさ、今日から舞台なのよ。だからお昼までなら付き合ってあげられるけど、そのあとは駄目」
『そ、そうですか』城へ連れてってくれるにしても、俺を送ってすぐ帰っちゃうのか。残念。
「ほんとなら休みたいけど、テーターさんてお祭りの後だってのにお休みくれなかったの。ま、ずっと休んでたから
 しょうがないんだけどね。ミネア、あんたはどうするの?」
「私は……」ミネアさんが、迷った様子で俺をちらりと見た。「その、私も、夕方まででしたら……」
「ビルくん」ミネアさんの言い終わらないうちに、マーニャさんが俺に笑って言った。「ミネアが、80ゴールドで、明
 日の朝まで付き合ってくれるって」
「ね、姉さん!勝手に、何言ってるの?」
にらみつけてくるミネアさんを、「いいじゃないの」マーニャさんが手を振って軽くあしらう。
「一晩のあんたの稼ぎなんてそんなもんでしょ。ビルくんにその分払ってもらうなら、文句ないじゃん」
「そんな問題じゃないわ。私は占い師よ。占いの仕事以外でお金はもらわないわ。それが……」
「そういう物事いっぺんとーだから、あんたっていつまでたっても世間知らずなんじゃないの」マーニャさんは食器
を置き、ミネアさんを見つめ返す。「少しは占い以外のことも覚えきゃ駄目よ。前からあんたに言おうと思ってたけ
 ど、あんたがその歳とその顔で男っ気ゼロってことで、ぞっとする噂がされてんの、知ってる?」
フレアさんがくすりと笑った。それを見て俺にも察しがつく。男に興味がないなら、ってことだ。ミネアさんがほかの
女の人、たとえばマーニャさんと……うっ!想像しようとしただけで、のぼせてきた。
「噂って何よ?」
ミネアさんがきょとんとする。わかってないのは、ミネアさんだけか。
576 :04/08/19 01:48 ID:qX9cpHdw
「何って、あたしとあんたがさ……」言いかけて、マーニャさんは身震いするかのように両肩を押さえた。「ああっ!
 気持ち悪くって、とてもあたしの口からは言えないわ。とにかく、そのせいであたしまで迷惑してんの。だからさ、
 ミネア、せっかくビルくんていう優しい男の子と友達になったんだから、いろいろ、試してみたらどう?」
「試す……って?」
「たとえば、男に楽しい女だと思われるにはどうすればいいかとか。それと、男を喜ばすにはどうしてあげればい
 いかとか。お嬢様なあんただって、多少のことは知ってんでしょ?ぱふぱふ、とか、ぺろぺろ、とか」
ぺ、ぺろぺろ?ぱふぱふは俺もまあ知らんこともないが……ぺろぺろって、何だ?
「な、なっ、なんてこと言うのよっ!」
ミネアさんは、耳まで真っ赤になり、席から立ち上がってマーニャさんを怒鳴りつけた。「姉さんといっしょにしない
 でちょうだい!」
ミネアさん……“ぺろぺろ”の意味、知ってるみたいだ。あとで聞いてみようかな……。
「まあまあ、ミネア。座りなさい」この場に及んでも、フレアさんはにこにこしていた。「マーニャ、ミネアをからかう
 より、ウィルさんの心配をしてあげなさい。もしウィルさんがサントハイムに行くなら……あら?」
リーン!
呼び鈴が鳴って「すみません」フレアさんが席を立った。スコットさんが心配して来たのかなと思ったが、聞こえて
きたのは、甲高い男の声だった。
あいつか……。会いたくはないが、ちょうど話をしたかったところだ。
玄関のほうへ顔を上げると、クリフトが、血相を変えて食堂に飛び込んできた。「マーニャさん!」一直線にマー
ニャさんに駈け寄り、叫ぶ。「今すぐ、ハバリアへ飛んでもらえませんか?」
577 :04/08/19 01:57 ID:qX9cpHdw
「なによいきなり。飛んでもらえませんかって、あたしはキリキリバッタじゃないわよ」
マーニャさんがうっとおしげにクリフトを見上げる。「見てわかんでしょ、食事中。用は、終わったら聞くわ」
「そんな悠長なこと言ってる時間はっ……!?」ここでようやくクリフトが俺に気付いた。「ウィル殿っ……やはり、
ここにおられたのですか!」
表情を一変させ、俺をきっとにらみつけてきた。「ウィル殿、あなたのせいで姫様は!」いきなり、背中の剣に手を
かける。また、俺のせいかよ。
息を呑む音、たぶんミネアさん。それを合図に俺は席から飛び退いて身構え、買ったばかりの剣を握りしめた。
それならそれで、おもしろい、破邪の剣の切れ味、試させてもらおう!
「なっ!?」
が、クリフトは剣を抜けなかった。後ろから伸びた手が、がっしりとクリフトの腕を掴んでいるのだ。
「クリフト!ここで何をするつもりです?冷静になりなさい」
フレアさんだった。クリフトはフレアさんを振り向き、「し、しかし……」ぶつぶつ何か言いかけたが、フレアさんに
睨まれて、手を下ろした。それを見て俺は姿勢を正す。クリフトを抑えちまうなんて……フレアさん、ほんとほんと、
何者なんだ?
「クリフトさん」ミネアさんが、ほっとしながらクリフトに話しかける。「姉さんさっきいろいろ言ってたみたいだけど、
 アリーナさんがハバリアに行ったと決まったわけじゃありません。まだこの街にいるかもしれないし、キメラの翼
 を持っていて、お城に帰ったってことも、ありうるんじゃないですか」
「し、しかし、万が一ということが。ハバリアからは、レイドック、それにマーディラス行きの船が出てるんです。もし
 姫様がそのような船に乗られてしまったら……ああ」
クリフトが青い顔になって天を仰ぐ。「そのようなことになったら、私は……どう責任を……」
こいつにはクビにでもなってもらったほうが、俺としては都合がいいんだけどな。
578 :04/08/19 02:00 ID:qX9cpHdw
「でもクリフトさん。ほかの国に行く船に乗るには、王様の許可証がいるんじゃないですか?」
「甘い、ミネア」マーニャさんが手に持ったフォークを横に振る。「アルトはあれでもお姫様よ。頭が回るなら許可証
 くらい自分で書いちゃえるだろーし、そこまでやんなくても、ちょっとその気になれば、定期船に忍び込むくらいの
 こと、あの娘なら簡単よ」
同感。モンバーバラに来るときも荷馬車に隠れてきたと言ってたからな。密航だってやりかねない。そして、やろ
うと思えば、彼女なら簡単にできてしまう。船員以上に身軽だからな……あの王女様は。
「そ、そんな……密航なんてしてもし見つかったら……」クリフトがさらに蒼白になる。「荒くれの船員どもに、何を
 されることか……あああっ!」
なんだ、どんな想像したかと思えば、そっちか。俺としては、見つかって騒がれて、面倒とばかりに船を乗っ取って、
もと王女様の女海賊の誕生……ってことのほうがありそうだし、楽しいんだがな。
「姉さん。なんでいちいちそんな怖いことばっかり言うのよ」神官を見て楽しそうに笑っているマーニャさんを咎め
ると、ミネアさんは、クリフトに向き直り、キッと真面目な顔になった。
「クリフトさん。それでしたら、私がアリーナさんの居場所、占ってみますわ」
それを聞いて「え!?」頭を抱えていた神官はたちまち血色を戻すと、
「では、お願いします!」
長い帽子がテーブルに当たるくらい、ミネアさんに深々と頭を下げた。
俺も、心の中でほっとした。アリーナの行き先は、俺も知りたい。クリフトが来なきゃ俺がミネアさんに頼みたいと
思ってたところだ。
……でも、ミネアさん。プロなんだからタダ働きはいけませんよ。料金、ちゃんと請求しないと。

「では、はじめます」
ミネアさんが俺たち4人を見渡す。そのミネアさんの前には、ぎりぎりまで水を注いだグラスが置かれている。
「クリフトさん。このコップの水面を見つめてください」ミネアさんがグラスの口を指し示した。「水そのものでなく、
 水面をです。そしてアリーナさんの姿を思い浮かべるのです。目をそらしてはいけません。フレアさんと姉さん
 も、お願いします。頭の中で、できるだけはっきりと、アリーナさんの姿を想像してください」
579 :04/08/19 02:02 ID:qX9cpHdw
言われた通りにする三人。それを確認してから、ミネアさんも、グラスに両手をかざし、同じように水面を見つめ
はじめた。
ありゃ??……俺だけ、仲間はずれ?
そうか、ミネアさんは俺とアリーナが友達ってこと知らないんだっけ。がっくり。
けど、アリーナの姿を想像するってだけなら、俺が参加したって問題はないはずだよな。それなら。
俺も、グラスの水を凝視し、アリーナの姿を思い描いてみた。“ボクの名はクリフトだ。よーく覚えとけ!”と夕日を
浴びながら颯爽と笑ったアリーナ。“莫迦、放せ、無礼者っ!”と俺の腕の中で真っ赤になってもがいたアリーナ。
“よろしくなっ!”と、俺の手を思いっきり握りしめてくれたアリーナ。どこにいるか知らないが、絶対に無事でいろ。
このまま喧嘩別れしたままなんて、俺だって辛いぞ。そういえばさ、決闘の約束なんてしたよな。あれってまだ、生
きてるよな?
「アリーナさんが見えます」やがて、ミネアさんが、つぶやくように、しかしよく聞こえる声で言った。「……草原……
 小さな丘を越える細い道を歩いています。お一人です。方向は、ここから真西」
「西っ!?」クリフトが叫んだ。しっ!とマーニャさんが口に指をあてる。
「……この道……そう、間違いないわ。モンバーバラとコーミズの間の道……」
そこでミネアさんは顔を上げ、もういいですよ、と俺を除く3人に言ってから、クリフトに向き直った。
「アリーナさんは、コーミズに行くつもりのようです。意識もはっきりと西にあります。なにか強い決意が感じられま
 す。その決意は、自らの内なるもの、しかも負のもの……たとえば自己嫌悪によって引き起こされたものです。
 そういう決意を持っている人間は……特にアリーナさんのように意志の強い人は、自身で迷いにとらわれたり、
 誰かの忠告を聞いたからといって、簡単に目的を変えたりはしませんわ」
「つまり……コーミズ村、ということですか」クリフトが表情を緩めた。「し、しかし……」
「朝出たとしたら、アルトの足ならコーミズに昼過ぎには着くわね。寄り道しなきゃだけど」
言うマーニャさんは、すでに食事を再開している。
580 :04/08/19 02:07 ID:xrrF1a8M
「し、しかし、姫様がコーミズに何の用なのでしょう?あの村は特にこれといって何もありませ……」言ったとたん、
その“何もない村”出身の3人にギロリとにらまれ、クリフトは口をつぐんだ。「……その、平和でのどかと言います
 か、姫様がコーミズに行かれるのはマーニャさんたちをお訪ねになられるときだけでしたから……姫様の目的
 とは、何なのでしょうか?」
「んー、アルトのことだし、その先があるんじゃないの?」
「先……?」
「コーミズ通って、お城に帰ろうとしてんじゃないのってこと」
マーニャさんの言葉に、クリフト、それにミネアさんが顔色を変えた。
「ま、まさか……キャストミント峠を越えて、サントハイムにお戻りになるおつもりだと!?」
「いくらアリーナさんでも無茶だわ。一人で、あの峠を越えるなんて……」
キャストミント峠……サントハイム大陸のど真ん中にあるのがキャストミント山脈で、夏でも雪が解けない山が連
なっているって聞いたことがあるけど……峠ってことは、その山を越える道があるのか?
「ウィルさん。キャストミント峠というのは」不思議そうな顔を俺がしてたのだろう、横のミネアさんが教えてくれた。
「コーミズからキャストミント山脈を越えて、サントハイムへ直接行く山道です。距離は近いのですが、雪が残って
いるし険しい崖ばっかりなんです。しかもこの辺りよりずっと強い魔物が棲んでいて、滅多に通る人はいません。
そういう人が来たら、コーミズ村の人たち、いつもやめさせてるんです」
『へえ……そんな道なんですか』ライフコッドの山道なんかより、はるかに大変そうだな。『アリーナは、その峠を
 以前に通ったこと、あるんですか?』
「いいえ!とんでもない!」クリフトが叫んだ。「実を言うと、私も姫様がキャストミント峠に興味をお持ちなのを存じ
 てました。ですから、サラン側の麓の関所には人改めを厳重にするようにと伝えておいたのですが……西から
 とは。私は何といううかつ……」
「クリフトさん。嘆いている時間はありません」ミネアさんが立ち上がった。「すぐ、アリーナさんを止めないと!」
581 :04/08/19 02:08 ID:xrrF1a8M
「そ、そうですね!」クリフトが、真面目な顔に戻って姿勢を正すと、マーニャさんを振り返った。「コーミズ村に先
 回りしましょう。マーニャさん、[ルーラ]を、お願いします!」
が、頼まれたはずのマーニャさんは、クリフトを一瞥しただけで、しゃりっと梨をかじった。
「マーニャさん!姫様が、心配でないんですか?」
「いいじゃない放っとけば。アルトなら、大丈夫じゃない?」
「姉さん!キャストミント峠の険しさ、姉さんだって知ってるでしょ!アリーナさんて、道も知らないんだし、無理よ」
「ああもう、わかったってば、ミネア」
ミネアさんに肩を揺さぶられて、マーニャさんはやっと梨を皿に置いた。そして、
「ビルくん」なぜか急に、俺を見た。「どうする?」
『え?』
いきなり話を振られ、俺は戸惑ってマーニャさんを見つめた。
「ビルくんの行きたいとこに連れてってあげるわ。コーミズでも、サントハイムのお城でもね」
マーニャさんは口元を吹きながら、俺に片目をつぶり、にっと笑った。
『マーニャさん……』
アリーナよりもまず俺を優先してくれるってことだろうか。それとも、クリフトに貸しを作らせてくれるのか……。
「サントハイムへなど私のキメラの翼で行けます!どうか、コーミズ村に!」
「そうだわ。ウィルさん」
クリフトとミネアさんのせがむような目が、今度は俺に向けられる。特にクリフトは、さっきまでの殺気をこめた目を
すっかり控え、おやつをせがむ子供のような瞳になっている。こいつにこんな目をされるのは、不気味としか言い
ようがない。
アリーナを追うか、それとも?―――

1.『マーニャさん!ではすぐ、コーミズへお願いします!』
2.『俺たちも歩いてコーミズへ行ったほうが、いいんじゃないですか?』
3.『俺は……それと別に、連れて行ってもらいたいところがあって……』
 3−1.サントハイム城へ 3−2.ハバリアへ 3−3.テンペへ 3−4.サラボナへ
4.『悪いが、まだ俺はこの街に用が残ってるんだ。後にしてくれないか』
5.何はともあれ、クリフトをぶん殴っとく。
582場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/08/19 02:43 ID:qX9cpHdw
今回もまたまたひたすら長い。しかし前回と比べると必要があって長いという感触もしますがどうでせう
GMやらせていただいてあと1ヶ月で1年。しかしシナリオの一つも終わってない・・・実に申し訳ない限りでつ

漏れの場合、どれを選べば展開や好感度はどうなるかは決まってるんでつが、繋ぎの文の表現が出てこない
基本的にギャルゲーの画面(背景+キャラ絵+メッセージウィンドウ)を思い浮かべて書いているのでつが、
SS等を書いた経験のある方ならおわかりの通り、出ないときはほんとに出ない
例えば、主人公に対してこんなことを心で想ってるこんな性格のヒロインは、どういう行動をとってどういう表情をするか
確認のため意味もなくデパートをぶらついたり、喫茶店で客を観察したり(追い出されるわけだ)心理学系の教養書を読んだりして補ってまつ
そうした基本をやっても出来はこの程度・・・嘆息。過去のGMさんの文才、耳かき一杯分でいいから分けていただきたいものでつ

などと読んでくださるみなさまにいちいち愚痴ってしまう人間に、良い文章を書けるはずもないか・・・

>560 絹のローブは金銭目的ですか?それとも誰かにプレゼントしようと・・・王道っ!(何の?)
>561 聖なるナイフは聖なる物ですので投げたりリンゴの皮をむいたりはできませんです
>562 Aの選択肢は過半数に達したものを選びますた
>563 男に持たせたくないから!そういえば7ではアサシンダガーはなぜかマリベル専用でしたな
>564 いまモンスターを倒して手に入れたゴールドは、さっき旅の商人から薬草買ったとき払ったお金・・・とかw
>565 この物語、空中の魔物には専用武器がないと打撃攻撃は不可なので、みなさま賢い選択かも。アリーナ評価回復は合流後
>566 今回8割方の話できあがってたのに・・・遅くなってすまんこってつ
>571 支援ありでつ!参加のほうもおねがいしますです


*コーミズは、ゲーム上ではモンバーバラの北ですが、この物語ではモンバーバラの西にとりました
さらにその西が、サントハイム城とサランの街です
5をすんげー選びてええええええええええ

まあ無難に1お願いします
更新乙
5!

…やっぱり1にします
1かな
ここは2だな。なんとなく。
焦るこたーない。
やっぱ飛び道具がないと後で困るのか
選択肢は1で,いじょ
やっとアリーナに会える♪
5で「姫の護衛ともあろうものがうろたえるんじゃない!!」
とか適当なこといってぶん殴っといて1.

だめなら普通に1.

ミネアタンニペロペロ(*´Д`*) サレタイヨ
1

しかしウィルは健全な男子なのにぺろぺろの意味が分からんのだろうか
読んでないけど1 とりあえずアリーナとの仲が回復するよう祈る
592場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/08/22 07:13 ID:LVhfJfwS
「ありがとうございます!」
マーニャさんに俺が頼んだとたん、伏し拝むようにクリフトが大きく頭を下げてきた。
勘違いするな。俺だってアリーナが心配なだけだ。
「じゃあ、しょうがないわね。行きましょ」
マーニャさんが、ジュースの残りをぐっとあおり「ごちそうさま」フレアさんに言った。俺もあわてて、取り皿
の料理をスープといっしょに腹へ流し込み、席を立つ。
「あ、だけどビルくん。あたし、さっきも言ったと思うけど、お昼から今夜の練習やんなきゃなんないのよ。
 だから、ビルくんたちをコーミズに連れてったらすぐ、ここに戻ってくるつもりなんだけど、いい?」
『え?あ……は、はい』
予想していた通り。でも、やっぱり残念。
……ん?それじゃ、帰りは、歩いてこの街に戻って来なきゃならないのか?
「ミネア。あれ、ちゃんと持ってるわよね?」
「あれ?ええ、あるわ」
言われて、ミネアさんが腰の袋に触れた。この街へ戻るためのキメラの翼だろう。それなら安心。
「では、すぐお願いします!」
急かすクリフトを、マーニャさんは横目で睨み、うるさいわね、と唇だけ動かした。マーニャさんもクリフト
が嫌いなのか。やはり俺とマーニャさんって気が合う。
「それでは、フレアさん、いろいろありがとうございました」
ミネアさんがお礼を言っている間に、マーニャさんとクリフトが食堂を出て行く。俺も一礼してから、後を
追おうとした。すると、
「待ちなさい、あなたたち」
ハッと俺たち全員は歩みを止め、フレアさんを振り返った。フレアさんの声には逆らえない威圧感があ
る。まるでビアンカの声みたいだ。そう思ってるのは世界中で俺だけだろうけど。
「ミネア。アリーナが歩いていたのは、コーミズ街道のどのあたりだったの?」
「え?ええと……あと少しで道しるべの看板が見えてくる丘でした」
「それなら、アリーナがコーミズへ着くまでには、まだまだ時間あるわ。お弁当作るから、持って行きな
 さい」
593 :04/08/22 07:16 ID:LVhfJfwS
「………」
フレアさんの申し出に俺たちは顔を見合わせた。そりゃあお昼までにはまだだいぶあるけれど……。
「ま、それもそうね」
マーニャさんは髪に手をやりながら黙って何度か小さくうなずき、ミネアさんはやや下を向いて肩をすく
めている。この二人に反論がないなら、土地勘のない俺は、黙るほかない。
しかし、クリフトはフレアさんに向き直ると、
「フレアさん、お弁当など」甲高い声で叫んだ。「もし途中、姫様に何かあったら」
「クリフト」
そのクリフトを、フレアさんは冷ややかに見つめる。「神官ともあろう者がなんですか。少しは落ち着き
なさい。急いだって何にもならないこともあるでしょう」
「し、しかし……」
なおも口ごたえしようとしたクリフトだが、フレアさんの見下ろすような視線(クリフトのがずっと背が高
いはずなのだが)に、不満そうな表情を残しながらも、押し黙る。
フレアさん。クリフトはもちろん、アリーナさえ呼び捨てにしてたな。平民でアリーナを呼び捨てにできる
のは俺だけだと思ってたのに、ちぇっ。
……って!そんなこと気にしてどうすんだ。それより……クリフトやアリーナとも親しいとすると、フレア
さんて、お城にいたことがあるってことか。
アリーナも、友達の知り合いにしては、フレアさんについて親しそうな物言いしてたからな。
「お弁当作ってる間に、クリフト、宿からあなたとアリーナの荷物を持って来なさい。ミネア、あなたもね」
「荷物?」
クリフトは眉をひそめ、ミネアさんは眉を上げ、二人とも不思議そうにまばたきする。フレアさんは笑って、
「あなたたちがあっさり連れ戻せるような娘ではないでしょう」
と言う。まあ、ごもっともな意見だ。あのアリーナを説得するには、じっくり腰を据えて、夜通しで諭すくら
いの覚悟がいる。それに、逃げられたら次にどこ行かれるかわからない。険しいというキャストミント峠
で追いかけっこってのは、できることならやりたくない。
「ふふ、確かに、無理でしょうね」
そろって苦々しそうな顔をしている俺たち三人をからかうように、マーニャさんが笑い声をあげた。
いいなあ……自由放任主義の人って。
《ミネアの評価がわずかに上がった》《マーニャの評価がわずかに上がった》
《クリフトの評価が上がった》《フレアの評価が上がった》
594 :04/08/22 07:18 ID:LVhfJfwS

コーミズ村、か。マーニャさんたちの故郷。どんなところだろう。ライフコッドみたいな、のんびりした村
かな。でも俺がいなくなったわけだし、今はあまりのんびりはしてないかも。それでものんびりしてたら、
嫌だな……。
俺は、居間のソファに一人で座って、ぼんやりとライフコッドのことを思い出していた。
ミネアさんとクリフトは言われたとおり荷物をとりに行き、フレアさんは台所でお弁当づくり。マーニャ
さんもあのあと台所へ行ったままだから、お手伝いでもしてるのだろう。
そうだ、こういう時間を使って、ターニアに話をして……。
そう思って[ふくろ]に手を入れかけたが、マーニャさんが台所から出てきたので、手をひっこめた。
「ビルくん、1個いる?」
マーニャさんは、歩きながらさっき食べかけだった梨をかじり、さらにもう2つ、器用に左の手のひらに
乗せていた。「はい、受け取って」一つを、俺が返事をしないうちに放ってきた。
『あ……どうも』
両手で受け止める。もう1つをどうするのかと見ていると、交互にかじり出した。豪快だな……リンゴ好き
なビアンカだって、こんな意地の張った食べ方はしない。マーニャさんのファンが見たら泣きそうだ。
ん?そういや、昨日も女で似たようなことをする奴がいたな。もしかして、あの王女様がやけに意地汚
いのは、お友達のマーニャさんから伝染したのかもしれん。
「どうかした?その梨、何かついてた?」
『いや、何でもありません』
あわてて、いただいた梨をかじる。マーニャさんが俺の左隣に半身ほど離れて座った。背もたれに寄り
かかりながら、両腕を大きく伸ばす。
「ビルくん」
『はい?』
「ミネアの裸、きれいだったでしょ」
ぎょっとするようなことを言われて、俺は口の中の梨のかけらを吐き出しそうになった。
『な、何いきなり言い出すんですか?』
「やっぱ見たのね。あんなこといって」マーニャさんが笑った。「まっ、それもそーよね。2回も同じことが
 あったんだし」
『………』
マーニャさんの探るようなニヤニヤ笑いに、俺は憮然となって梨をかじる。
『しょうがないでしょう。それに、見たかもしれませんが、ちらっとです。覚えてませんよ』
と言ったが、もちろん嘘だ。でなきゃ、あんな鮮明な夢、見られるわけがない……。
595 :04/08/22 07:25 ID:LVhfJfwS
「ちらっと、ねえ……。こんな感じ?」
何気なしにマーニャさんを振り向いた俺は、『へ?』目を見張り、『ぐっ!』今度こそ吹き出しそうになっ
た梨を、どうにか手で抑えた。
マーニャさんが、肩ひもを2本とも肘に流し落とし、両手で胸を抱くようにしていた。しかも、手の間の
胸当ての前の留め具が外れ、左右のふくらみの隙間が、見えている。
『な、なっ、何やってんですかマーニャさん!』
「んー、はいっ!」
マーニャさんがカップを押さえていた手をぱっと離した。アッと思ったが、俺は目をそらせられなかった。
……あれ?落ちない?
「あははははっ!」マーニャさんが高笑いする。「ビルくんもやっぱり男の子ねえ」笑いながら前を留め、
肩ひもをかけ直した。
「これね、ビルくん。もし紐が切れちゃったりしても落ちないようにしてあるのよ」
『そ、そうなんですか』ほっ、がっかり。
「そうよ。そうでなきゃ逆立ちするたびに落ちちゃうじゃん。んふふー、ビルくんの今の顔、ケッサクよ」
『か、からかわないでください』
ぷいっとテーブル側を向いた俺に、
「んふふふっ、強がっちゃって。カワイー!!」マーニャさんが後ろからのしかかってきた。
『やめてください!酔ってるんですか?』
俺はソファを横に滑ってマーニャさんを引き離そうとした。背中にあたる柔らかい感触とかが気持ちいい
……けど。俺は、あの夢を思い出していた。ここまでふしだらで安っぽい悪ふざけを平気でしてしまうのが
マーニャさんなら……俺、嫌いになっちゃいそうだ……。
でも、もしこういうところまでアリーナに伝染ってたとしたら……?
もし、背中に押しつけられてくるこの感触が、アリーナのそれだったら……?
そんなことが頭をよぎり、想像してどきりとしたものの、すぐ俺は首を振った。アリーナが突然こんなことし
てきたって、俺は、嬉しくない!
596 :04/08/22 07:44 ID:edTJgYqs
「ねっ、ビルくんてさ」
マーニャさんが、俺の首に手をかけ、顔を下から見上げてきた。
『……何です?』
しかめていた顔を背けようとして、俺は、はっとなった。おもしろがるような口元や頬はそのままなのだが、
マーニャさんの薄紫の瞳は、まっすぐ、俺の目をのぞき込んでいた。
「ミネアのこと、どう思う?」
『へっ……?』
な、なんでそんなことをこんなときに聞いてくるんだろマーニャさん?―――

1.『頼りになりますよね。占い師さんですし、それに回復呪文も、使えますし』
2.『そうですね……お姉さんと同じくらい美人ですけど、でもどっかにカゲ持ってるような……』
3.『ど、どう思うって……別に、俺は何とも』
4.『その……控えめで……か、かわいい人、ですよね……』
5.『………』(無言)
6.『意外とムネ大きいですよね。マーニャさんよりも』
597場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/08/22 07:45 ID:edTJgYqs
好感度条件による前フリなしの重要選択。といっても攻略フラグが立つかってだけでつが(それが重要?)

>583 漏れは十中八九5が選ばれると思ってたのですが・・・みなさん自制したんでせうかw
>584 5だとアリーナシナリオ的に楽になったかも。残り2人を考えなければ
>586 2を選んだ場合は、マーニャとはここでお別れですた
>587 でも考えてみたら破邪の剣は使うとギ・・・げふんげふん
>588 アリーナ登場は早くて次の更新になりますです
>589 5は元々そんなような展開ですた。で1だと主人公の代わりにサブキャラがやってまつ
>590 メディアというのがほとんどない世界ですし学校もあるのかどうか・・・どうしてるんでせう?
>591 いくら長い駄文でも、読んでからご参加くださいよう(つД`)
今回の更新の感想
さすがフレアさん!俺達に出来ないことを平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるゥ!


今回の選択は難しいなあ
悩んだけど2でお願いします
4にしておくかね
3

お姉さんにからかわれるのとか大好き
くそ真面目、且つ的確に2
とりあえずおっぱいを揉ませろ 4
迷うな…。
こんな時こそマイダイスの出番。




4で。
6で胸関連の話を引っ張って、もむ。
605場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/08/27 10:06 ID:N7bzlhXq
答えながら、俺の顔は自然とマーニャさんとは逆の右斜め上を向いてしまった。声も、かすれている。
何を焦ってんだ俺。“控えめで可愛い”なんてこと、ミネアさんに会って話をすれば誰だって思うことじゃないか。
『う!?』
頬にマーニャさんの手がかかり、顔を無理に戻された。
『な、何すんですかっ』だめだ俺。まだ焦ってる。
その俺を、マーニャさんは眉を下げ唇をすぼめて、じいっと見つめてきた。
今度は笑っていない。うっかり眼鏡を落としたミサミさん――ライフコッドの教会に来たばかりのシスター――
に声をかけたときのような目つきだ。
俺がバルザックじゃないかって急に疑いだしたのか?……そんなわけないか。
『………』
マーニャさんの鋭い視線と沈黙に耐えかね、俺はたじろいで身を引いた。
すぐ近くで小さな金属音が鳴った気がした。なんだろう、と俺が考える前に、マーニャさんが下を向いた。いぶ
かしそうに細めた目を、俺の腰のあたりにやっている。やがて右手を俺の頬から下ろして俺の膝に乗せ、指先
で何かをコツンと弾いた。
「ビルくん」見ると、マーニャさんが剣の柄を撫でていた。「これ、なに?」
『あ。えっと。[破邪の剣]です』この剣の音か、さっきのは。
「昨日はこんなの下げてなかったわよね。どうしたの?」
『ええ。ここ来るとき、武器屋で買いました』
説明した瞬間、マーニャさんの紫の瞳が、険しくにらむように光った。俺はぎょっとなって身構えかけた。また
メラかギラを飛ばしてくるんじゃ……。しかし、マーニャさんは、すぐ表情を緩め、
「ふうぅ〜ん」
わざわざ声に出して息を吐くと、俺から離れ、背を伸ばした。
『あの……なんなんですか?』その意味深な態度に、俺は不安を覚え、聞いてみた。が、
「だから、ふーん、てこと」マーニャさんは、両手のマニキュアを交互に調べながら、冷めたように言っただけ
だった。
『はあ……?』
いったい何が言いたいんだろ。からかわれてる感じじゃ……ないんだけど。
606 :04/08/27 10:07 ID:N7bzlhXq
内心首をひねった俺に、
「ビルくん。ちょっとさ、それ、見せてもらえる?」
マーニャさんが再び笑みを浮かべ、剣を指さしてきた。
『あ、はい』
言われるがまま[破邪の剣]を渡した。マーニャさんは両手で重そうに剣を持ち、眺めたりいじったりしてから、
「へーえ」感心したような声を上げた。
「これって、すごい剣なんじゃないの?炎の呪文を封じてあるじゃない」
『わかりますか?』
「わかるわよ。あたしはね、炎の呪文関係についちゃ天才、この国一よ。もしかしたら世界一かもね」
『そうなんですか』
「そうよ。あたしはね、3つでメラ覚えて、5歳の頃にはギラだって使いこなせてたのよ。サントハイムの城の
 由緒正しい魔術師サマたちが、あたしに、どうか秘訣を教えてくださいなんて頭下げてくるくらいだもん。
 ビルくん、また何か、やってみせたげよっか?」
『い、いいえ、今はちょっと』
俺は、引きつった笑いを作って両手を振った。
でもすごいな、5歳でギラか。ビアンカがギラを使えるようになったのは10歳のときで、この歳で覚えられた
のは天賦の才だと魔法使いの先生に誉められ、ガラにもなく照れてた記憶がある。ちなみにマリベルは、
2年も勉強して、まともにできるようになったのはついこないだだ。その後1ヶ月ほど、毎日のように人の家
に来ちゃ、さんざ見せびらかして帰ってった。調子に乗りすぎて危うく火事になりかけ、さすがに怒鳴りつけて
やってからは、やらなくなったが。
「そう?残念。けど、この剣持ってれば、ビルくんでもちょっとした炎、操れるわよ。あたしの炎ほどじゃない
 けど」マーニャさんは、剣を鞘から抜き、軽く宙を舞わすようにしてから「はい、ありがと」テーブルに置いた。
「ビルくん。朝からいい買い物、したじゃない。あんがい抜け目ないのね」
『でしょう!』
世界一(かもしれない)の炎術士のお墨付き。俺は得意になって、剣をマーニャさんの前で構え、大げさに
胸を張ってみせた。
『無理して頼んで、売ってもらったんですよ。だいぶ高かったんですけどね』
607 :04/08/27 10:08 ID:N7bzlhXq
「そう」
マーニャさんは、かすかに息を鳴らすと、正面を向いた。
「ビルくんは、ミネアより、お買い物のが大事だったってわけね」
『は……』
マーニャさんが何でもないように言ったその言葉に、俺は、笑ったまま顔を強ばらせた。
マーニャさんに、笑みはもう、カケラもなかった。
「あいつがまた誰かに変身して、ミネアやあたしをどうかしようとしてるかもって、考えなかったわけね」
言い放つと、マーニャさんはソファから立ち上がった。一瞬の俺への横目に、軽蔑の色がこもっていた。
これが“ふーん”の意味だったのか。
言われてみればその通りだった。たとえば俺に化けたバルザックがここを訪ね、何とか言ってミネアさんを
連れ出して[キメラの翼]なんかを使えば……あの夢どおりのことが起きていた可能性だってあるのだ。
『あ、あの。そういうわけじゃ……』
歩き出したマーニャさんを追うようにして腰を浮かしながら、言い訳になるようなことを必死に探した。だめだ、
思いついてこない。
「ちょっと上に行ってるから。ミネアたち来たら、呼んで」
『………』
俺は、唯々諾々、うなずくのがやっとだった。マーニャさんはそんな俺を振り返りもせず、後ろ髪をかき上げ
ながら、居間を出て行った。
独り残されて、俺は突っ立ったまま、階段をのぼる静かな足音を聞いていた。
幻滅させちゃったみたいだ……。
やっぱ俺、朝起きてすぐ、真っ先にここへ駆けつけるべきだったのだろうか……。
《マーニャの意識に変化が起きた》
《マーニャの評価が下がった》
608 :04/08/27 10:10 ID:N7bzlhXq

南の窓から入る日差しの作り出す窓枠の影が、細く、くっきりとしてきた。
クリフトもミネアさんも、まだ来ない。あれだけ急いでたくせに何やってんだろ。アリーナが思いのほか早足で、
コーミズを通過しちまってたら、どうするんだ。
ソファにどっかともたれかかり、左の足首をテーブルよりも上で右足に乗せた姿勢。もしビアンカがいたら蹴飛
ばされそうなほど図々しい態度で、俺は梨の果肉をむしりとるようにかじっていた。
クリフトもミネアさんもだけど、さらに腹立つのがマーニャさんだ。
ミネアさんより買い物のが大事?誰がそんなこと言いました?武器をなくしてしまったんですから、まず戦える
手段を確保してから行動するのが普通でしょう。でなきゃ万一のとき、誰かを守るどころか、ただの足手まとい
になっちまう。だいたい、取り立てて急いで駆けつける必要は実際なかったわけだし、昨日の夜バルザックと
やり合って大変だったんですよ。少し遅れたところで、誉められこそすれ、ですよ。それをあんなふうに、持ち
上げてからグサッと指摘しなくても、いいじゃないですか……。
『ちっ』
今頃になって、こんな後付けで勝手な理屈をこねている俺自身に、いちばん腹が立つ。
苛立ち紛れに俺は食い終わった梨の芯を指で弾いた。梨はテーブルの上を思ったよりも勢いよく転がっていっ
た。『……!』あわてて伸ばした俺の手より早く、絨毯の上に落ちてしまう。
梨にも莫迦にされたか。奥歯を噛みつつ喉を鳴らすと、梨を拾って今度はテーブルにしっかりと置く。
どうにもイライラしてしかたない。気分直しに―――

1.外の空気を吸ってくる。
2.[ターニアの風鈴]を使う。
3.剣の素振りをする。


ウィル 現在地:サントハイム王国モンバーバラ 所持金:40819G 装備:破邪の剣、旅人の服
道具:薬草x5、キメラの翼(マーズの館行き)、ターニアの風鈴、マーズの手紙、ブーメラン、旅人の服
体調:良好 精神:好調                          <5日目・午前2>
609場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/08/27 11:09 ID:PP65md4p
今回の更新、なんでこうなるのと非難浴びそうですが、ギャルゲーですからこらえてくださひ
ついでに選択のヒント。風鈴使用中は音が聞こえなくなるので、呼び鈴が鳴ってもわかりませんでつ
それから、前々回、1−6の旅人の服を加えるのを忘れていました。謝りつつ訂正

>598 そのためのサブキャラですから。悩んでいただけるのはGM冥利に尽きまつ。
>599 4は条件さえそろってたら姉妹シナリオ的にベストだったんですが・・・そうはGMが卸しませんw
>600 3ですと・・・特に変化なく、マーニャと会話継続ですた
  純真な(?)少年をからかうお姐さんというのは漏れも好きなんですが、漏れが描くとただの痴女っぽい・・・
>601 2だと、マーニャが問題なく応援についてくれた・・・かも
>602 なのになんで4?
>603 ギャルゲーでサイコロ運に頼っちゃいけません!
>604 似たような展開は可能だったかもしれませんです・・・今は昔
3?
アリーナ派としてはこの調子で行ってくれればと 2
おかしいですよマーニャさん!

イライラした時は体を動かすに限る。

つーわけで3。
剣を振った数だけ強くなる。

3

外見を取り繕った後は、心身を鍛えるべし

せっかくいい武器も手に入ったし使いこなせるようにならないと。
とにかく今は強くならないとね。
3 そして突然入ってきたクリフトに改心の一撃が
2派があまりいないなあ。
でも2。
1
新展開に期待して2
鍛えて何ぼ、で3
もうほぼ確定っぽいが一応2で
ターニアが寝返るようなシナリオは勘弁ってことで2
どうも大人し過ぎるんだよあの娘は。
どこぞの王女みたいになっちゃいそうで怖い。
ターニアタン…2で
625場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/08/31 23:52 ID:6CaQv3xg
俺は窓のそばに立ち、二度ほど深呼吸してから、[破邪の剣]を抜き、構えた。
美術品としても通用しそうな、装飾の見事な剣。いつも俺が使っている、型に流し込んで作るだけの銅の剣など
とは、比べるのももったいないくらいだ。しかも、柄を握りしめると、使い慣れている剣のように、しっくりと馴染ん
でくる。
1回、2回と、振ってみた。長さは鋼鉄の剣よりも少し短いだけだが、はるかに軽く、また細い。鋼鉄の剣は腕力
で振り抜いてたたっ斬るのが快感だったけれど、この剣では、そういう戦い方はできそうにない。この剣で敵に
致命傷を与えるには、ナイフのように、体重を乗せて正面から突き刺すのが確実だろう。軽さと十字刃を考えれ
ば、斬り付けるだけで倒れるような雑魚や、囲まれたりしたときに左右からの攻撃を片手で打ち払いながら敵の
ボスに肉薄……っていうのには適している。というよりも、そのための剣なのだ。
そうか、この剣は、俺が今まで持った剣――銅の剣と鋼鉄の剣――とは、ぜんぜん違う戦い方をしなきゃならな
いのか。
それなら、練習あるのみ。[破邪の剣]を構え、前に見える騎士の鎧を敵に見立てると、踏み込み、突き、払い、
斬り、の動作を何度もやる。どうにも軽すぎて頼りない。炎の力が封じてあるのなら、敵に対したときは何かの
効果を発揮するのかもしれないが……切れ味は抜群らしく、しならせて空気を切り裂くと、気持ちいいほど鋭い
音がする。
マーニャさん、見ててくださいよ。決してマーニャさんたちをないがしろにして買い物に行ったんじゃないってこと、
この剣で、示してやる!
そしてバルザック。覚悟しとけ。次に遭ったらお前の首にこの剣を突きつけて、許しを請わせてやるからな!
それから……突如、俺の脳裏で、フローラさんが髪を宙に舞わせて振り返り、微笑んでくる。なんでフローラさん、
あなたが……。うす青く光る刀身の残光があなたの流れるような髪に見えたせい?それとも、この剣を買った
お金はあなたから借りたお金だという後ろめたさから?何でもいいです。あなたのその笑顔思い出したら、なん
だか落ち着いてきました。次にお会いできる日、楽しみにしています……。
626 :04/08/31 23:53 ID:6CaQv3xg
頭の中で独り言をつぶやきながら149回目の素振りをしたとき、
リーン!
呼び鈴。やっと、きたみたいだ。
俺は、もう1度だけ振ってから腰の鞘におさめた。このくらいの運動だと、汗なんかほとんどかけない。
「ウィルさーん。すみませんが出てください」
フレアさんの、忙しそうな声がした。『わかりました』返事をして玄関へ出て行く。
どうせクリフトかミネアさんだろうけど……もし違ってたら、俺はなんて自己紹介しよう。遠い異国から訪ねてきた
親戚だとでも言っとくのが無難か。そんなことを考えてから、ドアをそっと開いた。
「こんにちはー、お久しぶりです」
やけに明るい少女の声。もちろん、クリフトでもミネアさんでもない。質が何となく似てるけどアリーナでもない。
ただし、ごくごく最近どっかで聞いた声だぞ?
開きかけた扉を途中で止め、考え込む。すると、
「あれー?どうかしましたー?」
……こ、こ、この声っ!まさか!!!
思わずドアを開け放つ。小柄な少女がそこに立っていた。真っ赤な髪。牡丹色の大きな瞳。紺色の皮のドレス。
「あら」俺を見て、少女がニンマリと笑った。「また会ったね、ウィルっ!」
『な、な……?』二の句が継げない。『バーバラ。なんでここに……』
「なんでここにって、あたしのが聞きたいよ。ウィル、なんでここにいるのー?」
言葉ほど驚いた様子もなく、バーバラは楽しそうに笑った。
「ウィルって、家はレイドックって言ってたよね。あたしみたいに[ルーラ]使えるわけじゃなさそーだし……」
『俺は……あれから、いろいろあったんだよ』
俺は顔をしかめて横を向いた。『話すと長い。そっちから話せ』
「話すも何も、あたしは……」言いかけて、バーバラはわざとらしくきょろきょろし、「ね。こういうとこでヒミツの話
 するの嫌だから、入れてよ」そう頼むが早いか、俺の横をすり抜けようとする。
『おい、ここ、俺の家ってわけじゃないんだぞ』
「知ってるよ」
止めようとしたのだが、バーバラはずかずかと上がり込んでしまった。仕方ないなと、後を追う。
627 :04/08/31 23:56 ID:6CaQv3xg
「ここ、フレアさんのお家でしょ。あたし、しょっちゅう来てるから、だいじょうぶ」
『しょっちゅうって、そんなにこの街に来てるのか?』
「うん。3回目くらいかな」
『3回じゃ、しょっちゅうとは言わないぞ』
「そーお?だったら5回目に訂正」
早くもうんざりする俺。こういう娘と調子合わせて喋るのは、こちらのテンションも高いってときだけにしたい。
そのバーバラは、結んだ髪を右左と動かしながら居間に入り「おじゃましまーす」元気よく挨拶したものの、誰も
いなかったためにちょっと肩をすくめた。それから、ソファにすとんと腰を下ろして、
「どーぞ。ウィル」手で前の席を示す。
『あのな』
呆れながらも言われたとおりに座る。フレアさんとは知り合いだってからいいけど、マーニャさんが降りてきたり、
ミネアさんが来たりしたら……こいつのこと、説明しにくいな。
「でも、びっくりしちゃったよ」俺の不安にかまわず、バーバラがしゃべり出した。「手紙渡すついでにさ、ちょうど
 お祭りだから遊んでいこーって思って歩いてて、上見たら、ウィルがいるんだもん。思わず目こすって、目薬さ
 して、レミーラ唱えたくなっちゃった。それから、ほら、他人のそら似っていうのあるじゃない?あれかなと思っ
 たりしたけど、なんとなーくほんとのウィルだって気がしたのよね。でさ、昨日サラボナであたしと一緒に寝てた
 ウィルが、今日またあたしの目の前にいるってゆーことは、これってもしかして運命っ?神様が、この人に惚れ
 ちゃいなさい!っておっしゃってるのかとか思っちゃって、なーんかドキドキしてきちゃったよのね。それで……
 あ、そーだ。えいっ!」
『?いてーっ!?』
すねをいきなり蹴飛ばされて、俺は飛び上がった。『何するんだ!』
「だって、あたしが何回も声かけたのに、ウィル、ぜんぜん気付いてないフリしたじゃん!」
『俺が?気付かなかった?……さっきから、いつの話してるんだ。昨日のお祭りの最中か?』
痛む足を撫でながら確認すると、バーバラが「何聞いてんの。当たり前でしょ」ぷっとむくれた。
628 :04/08/31 23:57 ID:6CaQv3xg
「それで、よーく見たらさ、ウィルの隣に、すっごい可愛い女の子がいんの!しかも誰かと思えば、サントハイム
 のお姫様!……あっ、えっと、お姫様みたいに可愛い女の子ってこと!」
『聞いたよ。アリーナ王女様だろ』
「あ、なんだ。先に言ってよ。あのお姫様ってさ、いつもお姫様だってこと隠したがるんだよね。それに、昨日は
 そうでもなかったけど、男っぽいカッコしてるし。それに……」
『いいから、続きを話せ』今はあまり、アリーナのことについて触れたくない。
「んーっ、それでさ、ふたりして並んで舞台見ちゃって、いー雰囲気だったよね?あーあやっぱりあたし勘違い、
 神様のお達しでもなんでもなかったなって諦めて、だったら、ジャマしちゃいけないなーって、ひとりで遊ぶこと
 にしたの。えらいでしょ?」
そういえば、アリーナと屋上から舞台を見てるとき、声かけられたような気がしたっけ。バーバラだったのか。
『えらいと言うか……それより、悪かったな気付かなくて。本当にわからなかったんだ。騒がしかったしさ』
「うん。さっきあたし見てすっごい驚いた顔してたから、そう思った」
バーバラがにこにこ笑う。「ウィルって、驚くと、ホイミスライムみたいな顔になるんだね」
『ほっとけ』そんなこと初めて言われたぞ。『で、それだけか?肝心のこと、まだ聞いてないが』
「かんじんなこと?えーっと、人魚してた女の人、すっごい美人で、あたしが見とれちゃったくらいダンス上手だっ
 たなあ。しかもよ、あの炎の呪文の使い方!ライバルがこんなとこに!って思って、あたしもぼんやりしてらん
 ないなーって、あたしの魔女としての血が燃えてきて……」
『そんなことじゃない』マーニャさんのダンスについても触れたくない。『なんで、モンバーバラの街にいるのかっ
 てことだ。マーディラスの魔法研究室だかの魔女じゃなかったのか?』
629 :04/08/31 23:59 ID:6CaQv3xg
「そうよ。研究室じゃなくて研究所。あたしこれでも所長さんよ。すごいでしょ?」
『一人か二人しかいない研究所じゃないだろうな』
「失礼ね!」バーバラが腰を浮かして俺をにらむ。「魔女はあたし一人だけど、魔法使いが50人、僧侶も50人、
 魔法戦士が9人、賢者だって4人もいるのよ。お城の隅っこで、おじいちゃんおばあちゃんがついでにやってる
 みたいなのと、いっしょにしないでほしいな」
『………』
レイドックの魔法研究室が、まさにそれだ。ベネットさんとマドルエさん……まだ、生きてるかなあ。
『で……その所長様が、モンバーバラに何の用事でいらっしゃったんですか?』
「普通に喋ってよ。キモチワルイ」
『いいから答えろ』
「何それエラソー。それが人に何か聞くときの言い方かしら?」
『はぁ……』俺はうなだれてため息をついた。俺から話したほうが早かったな。
「冗談。ごめん。もしかして怒った?」
『いや』
皮肉っぽく首を振る。マリベル、マーニャさん、それにバーバラ(あとアリーナも加えとく)、こういうペースの早い
娘には、怒るだけ無駄、けっきょくは不毛だ。
「ウィル。でね、あたし、実はちょっとお願いがあるんだけど」
『なんだよ』
「のど乾いちゃってるの。なんか、もらってきてくれないかなあ?」
あん?にらみかけた俺だが、前の少女が、すまなそうに、泣き出しそうに、細めた瞳を輝かせているのを見て、
『わかった、待ってろ』
しぶしぶ、立ち上がった。ほんと俺って、こういう娘に甘いよな……。

「おいしーっ!生き返っちゃったあー」
バーバラが、両手に持った梨にかぶりつき、しゃきしゃき小さな口を動かしながら嬉しそうに感嘆した。
フレアさんに言って、食堂のテーブルの籠からもらってきた梨だ。フレアさん、例によって何にも聞かなかった。
「あたしね、ずうっと今日魔法使ってばっかりで、喉カラカラだったの。朝起きてベギラマ10回くらいやってみせ
 て、それから同じくらいヒャドやって……それで[ルーラ]でしょ。魔女だからって、こき使われてんのよ」
『大変だな、所長さんも』
630 :04/09/01 00:03 ID:Er9MtF0z
「バーバラでいいってば。ウィルは食べないの?美味しい梨だよ」
『俺はさっきいただいた』
「でも、果物だし、いくら食べてもいいと思うよ?半分あげよっか?」
『いいって。気にせず喉を潤してくれ』
「うん。ありがと。やっぱり優しいね、ウィルって」
バーバラがにっこり笑う。俺は苦笑して天井を見上げた。何が、やっぱり優しいだ。本当にゲンキンな娘だな。
ま、でも、女の子に素直に喜んでもらえるってのは、嫌いじゃない。
「それでさ、ウィル。お姫様、ここにいないの?」
『お姫様?ああ……あいにくとな』
「え、もしかしてお城に帰っちゃった?やだ、あたし、また行き違いなの?」
『お城じゃなくて、別の村に歩いて行ったらしい。お姫様に、何の用だよ』
「別の村ってどこ?あたし、あんまりサントハイムは詳しくないの。こことお城しか来たことないし」
『コーミズっていう、この街から西にある村って言ってたな』
「知らない。なんでウィル、お姫様といっしょじゃないの?ケンカでもした?」
ぎくりとしたが、俺は努めて平静を装う。普通の、単純な発想だ。
『……昨日、特に約束もせずに別れたし、泊まったところ別々だったからな』嘘はついてないぞ俺は。
「え、そうなの??じゃあ、ウィルって……お姫様と、どこまでいってんの?」
『どこまでって、ともだ……』
俺は言葉を止めた。友達ならなんで今日は一緒じゃないの、と堂々巡りになる。友達になれたはいいが勘違い
があって喧嘩別れした……と本当のことを話したら、どんな勘違いなのかと聞かれるだろう。勇者探しのことに
ついてまでは話したくないし、話してこいつにからかわれるのも嫌だ。テキトーに誤魔化しとこう。
『どこまでって、昨日会ったばかりだ』厳密には違うが。『ちょっと話をしただけだ。クリフトもいたしな……クリフト、
 知ってるよな?』
「うん。あのカッコいいけど、頭かたい神官さんね」バーバラがうなずく。カッコいいかはともかく、アタマが堅いっ
てのは、あいつに会った人の共通認識らしい。
「でも、お姫様ってことは教えてもらったんでしょ?だったら、信用してもらえたってことじゃない」
『たまたま王女様だってこと知ってる奴に出くわしたんだよ。それで、仕方なくって感じで』
「なーんだ、それだけなの?心配して損しちゃった」
631 :04/09/01 00:04 ID:Er9MtF0z
バーバラがニヤニヤ笑いをつまらなそうに解く。心配って、何を心配したんだ?
「それでウィル。お姫様、追っかけてかないの?」
『……これから、クリフトたちにつきあって、追いかけるところだ』
「ほんと?良かったあ。じゃ、もうひとつ、お願いしていいかな」
『梨もう1個か?』
「もう!そんなことじゃないってば!」
頬を膨らますと、バーバラは隣に置いていたデイパックの口を開けた。
なんだかゴロゴロ硬いものが転がる気配がする。いったい、何が入ってんだ?魔法研究所所長だから……
魔法を封じ込めてある危険物なんか、持ち歩いてんじゃなかろうな?
「あっダメ!えっち!」
のぞき込もうとする俺を見て、バーバラがぱっとデイパックをふさぐ。
「ウィルって、そういうシュミあったんだ」
『[爆弾石]でも出すんじゃないかって、気になっただけだ』
「あ。よく持ってるってわかったじゃん」そう言って取り出したのは、魔法の印を刻んだ青い石。
[爆弾石]そのものじゃないか!背もたれいっぱいに身を引く俺。やっぱそんなもん持ち歩いてたんかい!
「何怖がってんの。だいじょうぶだよ。投げて念じないと爆発しないから」
おかしそうに笑いながら、バーバラが危険物を前に差し出してくる。やめろ、近づけるな!
「あ、そーだ。梨もらっちゃったから、これ、代わりにあげる」
わわわっ!放り投げられた[爆弾石]を両手が反射的に受け止める。ほっ。俺の運動能力もダテじゃない。
「だから、だいじょうぶだってば。ウィルって意外とおくびょーもんなんだね」
『もしものことがあったらどうすんだ!この家、吹き飛んじまうじゃないか!』
「それ作った魔女が言ってんだから、信じてよ」バーバラが腰に両手をあてる。「あたしの[イオラ]が入ってる石
 なのよ。あたしだと思って、大事に使ってよねっ、ウィル」
放り投げて爆発させる[爆弾石]を、女だと思って、どう大事に使えばいいんだ?
「それでね、ウィル。これなの」バーバラが手紙を俺に見せた。「あたしの国の、グレーテ王女様からのお手紙。
 これ、ここの王女様に、渡してほしいんだけど」
『ラブレターか何かか?』
「なんでお姫様がお姫様にラブレター出すのよ」
バーバラが口を尖らせる。そういうことも世の中にはあるんだぞ。増えすぎると男の需要が減って困るけど。
632 :04/09/01 00:06 ID:Er9MtF0z
『だったら、なんでお城じゃなく、モンバーバラまで来たんだ?』
「モンバーバラにいるかもしれないって話、お城でこそっと聞いたから。で、昨日、誰かさんと一緒で、いつの間
 にかいなくなっちゃってたから、今日も、来てみたのよ」
『そりゃあ二度悪かった。けど、そういうのって、お城の代理人か誰かに渡しとけばいいんじゃないか?』
「前はね、そうしたんだ。でもね。お返事が来たのずっとあとで、送った手紙については何にも書いてなかった
 みたいなの。それでグレーテ様がさー、お姫様は受け取ってないんじゃないかっておっしゃるのよ。今度は、
 直接お姫様と会って、渡すようにって」
『ふーん、そういうことか』
そのグレーテお姫様だかの思い違いじゃないか?アリーナが、そうそう手紙書く気になるとは思えないし、いち
いちもらった手紙について書くっていう気遣いをするかどうか。
でも、いくらなんでも“この前は手紙ありがとう”くらいは、人間として書くはずだよな……。
『ちょっと待てよ。直接渡せって言われといて、なんで俺に頼むんだ?』
「んー……なんでだろ?ま、あたし、忙しいから。なんたって所長さんだもん」
胸を張るバーバラを無視して、俺はテーブルから手紙を取り上げた。へったくそな字だな……“アリーナ姫へ
グレーテより”と何とか読めるが、先入観なきゃまずわかりゃしない。中の文面もこんな字だとしたら、アリーナ
にも読めなくて、それで中身について書きようがなかったんじゃないか?
「ウィル。開けちゃダメよ」ひっくり返そうとすると、バーバラが釘をさしてきた。「女の子の手紙を盗み見るなん
 て、サイテーの男がすることだからね。そんなことしたら、あたし一生、ウィルを軽蔑しちゃう」
マリベルの日記を拾って(なんであいつは人の家に日記を落として行くんだ?2度も)届けてやったとき飛んで
くる台詞を和らげて翻訳したら、こんな言い方になるな。
『そう思うなら頼むなよ』無礼者は嫌いだ。俺は、手紙をテーブルに戻した。
「あ、ごめん。信じてるからそんなこと言わないで。ねっ、ウィル、お願い。[爆弾石]あげたでしょ?」
バーバラが手を合わせてくる。まあいいか。どうせアリーナには会わなきゃならないんだ。断る理由はない。
『わかった。これ、アリーナに渡せば、いいんだな?』
633 :04/09/01 00:08 ID:Er9MtF0z
「うん。おねが……」うなずきかけたバーバラが、目を丸くして俺を見上げた。
『どうかしたか?』
「おっどろいた!アリーナなんて呼んでんじゃーん!あたしでさえ“お姫様”なのに」
しまった。最後の最後で……。
「ふんふん、隠してたってことは、これはそーとーふかーいカンケイだよね」
『隠してたわけじゃない。面倒だっただけだ』
「グレーテ様にちゃーんと報告しないと。アリーナ王女様にはもう、カッコいい恋人がいますって」
俺の弁明などまるで聞いてないバーバラが、どこからか羽根ペンと手帳を取り出し、さらっとペンを走らせた。
メモ魔な性格には見えないから、ただの悪ふざけのポーズだろう。
『……呼び捨てで呼んだくらいで恋人になるのか?』それでも俺は抵抗を試みる。『だったら俺は、バーバラの
 恋人にも、なるんじゃないか』
「うーん……もー少し痩せてて、もーちょっと強くて、もーちょっとクールだったら、考えるんだけどなー」
『悪かったな』
俺が“もーちょっとクール”だったら、バーバラの相手なんてしてやってないぞ。
「あっ。あたしそろそろ帰んなきゃ」バーバラがソファから立ち上がる。「んじゃ、お願いしたからね。恋人さんに、
 ちゃんと渡してよね。でなきゃまたあたし、怒られちゃうから」
『俺としては、そっちのが愉快だな』
「ウィル。そーゆーひどいこと言うと……」
バーバラが梨の芯を右手に取る。宙に軽く投げ上げ、ピッと人差し指を立てた。「こうしちゃうからね!」
『……!?』
梨は空中で消えていた。一瞬炎に包まれたようにも見えたが、灰すら残っていない。さすが魔女……。
「どう?」
『お見それしました、魔女どの』
「んー、よろしい」
ニンマリと笑うと、バーバラは両手を後ろで結び、さっさと玄関へ歩いていった。
外に出て、俺は戸口のほうを見てみる。あれからだいぶ経つが、開ける者も開けた者も、いない。
「あっ」バーバラが、しまったという顔で俺を振り返った。
『どうした?』
「ウィルがなんでここにいるのか、聞いてなかった。でもいっか。次に会ったら聞こっと」
『次、あるのかよ』
「二度あったことって三度目も必ずある、って言うじゃん」
『どっか違うぞ。でもまあ……ひょっとしたら俺、バーバラの国にも、行くかもしれない』
634 :04/09/01 00:10 ID:Er9MtF0z
アリーナが勇者の子孫でなかったら、行かなきゃならない。そういや昨日、危うく行きかけたんだっけな。
「ほんと!?だったらウィル、マーディラスに来たら魔法研究所だからね。忘れちゃわないでよねっ!」
ルビーの瞳を輝かせたバーバラが、俺の左手を両手でギュッと握ってくる。やめんか。人が見たら誤解される。
「そんじゃっ!お姫様によろしくねっ!」
『ああ』
放された手をお義理で振ってやる。バーバラは笑い、呪文を唱えた。小さな身体が白い光にくるまれ、ぽーんと
空中に跳ね上がっていき、すぐに消えた。
『………』
俺は息をつくと、家の中に戻り、テーブルの上の手紙を改めて見てみた。
マーディラス王家という紋章の入った厚ぼったい封筒。厳重な封蝋。そして中身は、年頃のお姫様から、同じく
お姫様への、おそらく私的なメッセージ。
こんな、いろんな意味で重要書簡を俺に託すとは……俺、ずいぶん、あいつに信用されちまったらしいな……。
《バーバラの意識に変化が起きた》
《バーバラの評価がかなり上がった》
《[グレーテの手紙][爆弾石]を手に入れた》

リーン!
『……?』
手紙を[ふくろ]に丁寧にしまい、座ろうとしてすぐ、またも呼び鈴が鳴った。あいつ、戻ってきたのか。
『どうしたんだよ。忘れ物でもしたか?』
勢いよくドアを開けた俺は、あやうく男の神官服に顔を埋めそうになった。
「な……何ですか?」
クリフトが顔を引きつらせ、後ろに一歩下がる。
『気にするな。身長のギャップがありすぎただけだ』
「は?」
おっとやばい。バーバラと喋ってたときのテンションそのままだった。
『……ミネアさん、一緒じゃなかったのか?』
「え。まだいらっしゃってないんですか?」
クリフトが顔をしかめ、街のほうを振り返った。
あ!俺は同じように街側を向いた。ミネアさんを独りにさせちまったけど……大丈夫だろうか?
『ちょっと、俺、見て来る』
走り出しかけたとき、木戸が開き、ミネアさんが姿を見せた。ほっとして足を止める。
635 :04/09/01 00:12 ID:Er9MtF0z
「ごめんなさい、遅くなってしまって」
ミネアさんの息が弾んでいる。走ってきたらしい。
どこか嬉しそうな顔をしているので、『何かあったんですか?』聞いてみると、
「ええ。これ、スコットさんが拾って、届けてくれたんです」
にっこり笑って、ネックレスを俺に見せる。星の形の石の首飾り。昨日、ミネアさんがミレーユからもらったもの
だ。ミネアさんを運んでるときどこかに落としたんだろうか。そんなはずはないんだが……。
どこで見つけたと言ってたのか聞いてみたかったけれど、森の中だとしたらミネアさんに嫌なことを思い出させ
てしまう。気になるけど、やめ。
「姉さんは?」
『あ、上にいます。呼んできます』
気の進まない仕事だったが、マーニャさんが頼んだのだから、しなければならない。
俺は居間を抜け、廊下に行く。階段は、すぐ見つかった。
「マーニャさん。お二人とも来ましたよ」
下から二階に声をかける。返事はない。ま、聞こえたろう。降りて来なかったら、ミネアさんに頼もう。
居間に戻ると、台所からフレアさんが出てきていて、5つの弁当箱をテーブルに並べていた。
「これがクリフト。はい、ミネア。それとこれはアリーナのぶんね。渡してあげて。はい、ウィルさんの分」
弁当箱はずっしり重かった。サンドイッチの類などではない。本格的な料理らしい。
『ありがとうございます。お昼まで気を遣ってもらってしまって……』
「気にしないでくださいな。それからウィルさん。これも念のために、持っていってください」
と、フレアさんが取り出したのは、非常食用の[大きな薫製肉]だった。
『これ……もらってもいいんですか?』
「ええ。この先、何があるかわかりませんでしょう?私には必要ないものですから遠慮なさらずに」
フレアさんがニコリとして肉の包みを差し出し、俺は丁重に受け取る。何の肉だかわからないが、持ってみると
意外に軽い。大きいとはいっても[ふくろ]に入れても少し膨らむだけ。邪魔にはならなそうだ。
「ふあーあ……あんたたち、遅かったわね」
そこへ、あくびをしながらマーニャさんがやってきた。眠そうだけど、それほど不機嫌では……ないと、思う。
636 :04/09/01 00:14 ID:Er9MtF0z
「じゃ、早いとこ行ってきましょ」
最初に俺と目が合ったのだが、マーニャさんは俺の前を素通りし、後ろにいたクリフトとミネアさんの肩を叩き、
居間を出て行った。
気まずいな……。こういうときって、謝っといたほうが、いいんだろうか。
けど、謝るほどのことはしてないって気もするしな……。
あとでミネアさん……は駄目だ、アリーナに相談……。
て、アリーナと仲直りするほうが、ずっと大変そうだなあ……。
悩んでいるうちに玄関をくぐっていた。フレアさんも俺の後から外に出てくる。
『それじゃ、フレアさん、お世話に……』
「ウィルさん」
挨拶しようとして呼ばれ、下げかけた頭を途中で止めて、俺はフレアさんを見上げた。
「ウィルさんのように、腕力に頼る斬り付け方をしていたら、[破邪の剣]とはいえいつか折れてしまいます。慣れ
 るまでは、敵を間合いに入れず、剣の魔力を頼るようにしてください」
『!?……あ、ありがとうございます』
剣さばきについてのアドバイス……フレアさん、いったいどこから、俺の素振りを見てたんだろ。
「それから、いまのうちに、あなたがたの[作戦]を決めておいたほうがいいでしょう」
『作戦……?』
「魔物に出会ったときの戦闘方針です。突撃して一気に決めてしまおうとか、誰かをかばいながら戦うか、呪文
 をできるだけ控えるとか」
『それは……あの、俺ももちろん知ってますが……』
「むろん、魔物が現れてから決めるのも構いません。しかし待ち伏せされたときなどではその余裕はありません。
 魔物が現れる場所を何人かで歩くときは、そういうときのために前もって決めておくべきですよ」
なるほど確かに。俺、ヘンリー、ランドで3人パーティ組んで東の洗礼のほこらまで遠出したときも、なんでもいい
から作戦決めて、それから行けと、フランコさんか誰かに言われたっけ。
『作戦て、[ガンガンいこうぜ]とか[いのちだいじに]とか、ですよね』
「そうです。地域や迷宮の魔物の強さを推し量って決めてください。それと、人により好きな作戦と嫌いな作戦
 があります。嫌いな作戦だからといって力が衰えたりすることはありませんが、戸惑ってうまく戦えなかったり
 します。本当に大嫌いな作戦が布かれたときは、リーダーであるウィルさんへの信頼が損なわれるかもしれ
 ません。」
637 :04/09/01 00:16 ID:Er9MtF0z
『はあ……』フレアさん、やたら詳しいな……って。『リーダーって、俺が、ですか?』
「いいんじゃないの?」マーニャさんが口を挟んできた。「ちゃんとした目的あって旅してるのって、ビルくんだけ
 なんだし。ミネアもクリフトも、ビルくんがリーダーで、文句ないわよね」
「ええ」うなずくミネアさん。
「構いませんが、しかしなぜリーダーを決める必要が……」言いかけたクリフトが、マーニャさんににらまれて黙
りこむ。
パーティのリーダーか。思いがけない大役を押しつけられたぞ。
けど、ということはクリフトもミネアさんもマーニャさんも、なんでも俺の命令通りしてくれるってことか……ぐふふ、
わくわくしてきた。クリフトの奴をこき使って、その間にミネアさんたちと……。
「……ウィルさん。では、作戦を決めてください」
俺の妄想を見透かしたように、フレアさんがどこかトゲのある声で促してくる。
『あ……えっと』何がいいだろう?『あ、でもその前に、みなさんの意見聞いとかないと。俺、サントハイムの魔物
 のことほとんど知りませんから』
「そうですか。賢明な判断です」フレアさんが一転、にこりと笑った。
「では、私の意見ですけど、コーミズの辺りならあなたがたにかなう魔物はいません。ただし、森や茂みなどが
 多いので、注意しながら進める[呪文節約]がいいでしょう」
「あー、それ、あたしは苦手よ」と、マーニャさん。「魔物相手くらい、パーッと呪文使いたいじゃない。やっぱさ、
 [ガンガンいこうぜ]。これよこれ!」
マーニャさん、ヘンリーと同じことを言うなあ……俺も呪文使えたなら、ほぼ同意見だったろうけど。
「姉さん!はじめからそんな危ない作戦じゃ怪我するわ!……ウィルさん、フレアさんの言う通りです。コーミズの
 へんに出てくる魔物なんて、私でも武器で戦えますから、呪文なんてそれほど必要ないと思います」
ミネアさん、頼もしいこと言ってくれる。でも武器を持って戦うミネアさんて、想像しがたい……。
「そうですね。それに小物ばかりだと油断していると、思わぬ不覚をとるかもしれませんし」
最後に、偉そうにクリフトが常識を語る。何が不覚をとる、だ。誰のせいでコーミズまで行かなきゃならないんだ?
以上がフレアさん、マーニャさん、ミネアさん、クリフトの意見。さて、[作戦]は―――
638 :04/09/01 00:20 ID:Er9MtF0z
(*作戦入力。別レス参照)

『では、いろいろとありがとうございました』
「こちらこそ。モンバーバラに来たら、ぜひ寄ってくださいね」
おのおのフレアさんとの挨拶を済ませて、マーニャさんを中心に集まる。
俺たち3人に確認をとるようにうなずいてから、マーニャさんが呪文を唱えはじめた。
やっぱり今回は抱きつかせてくれなかった……それが[ルーラ]では当たり前なんだろうけど。
「……ルーラ!」
気合いのこもった掛け声と同時に、俺たちの足は地面から離れた。

降り立った場所は、平野のモンバーバラとはうって変わって、山の中だった。
見渡すと、東を除く三方が高い山に囲まれ、うち西方には、雲をかぶり岩肌の目立つ鋭い山が南北に連なって
いる。これが、キャストミント山脈か。たしかに険しそうだ。ライフコッドをいただく山とは、ものが違う。
そして、コーミズ村。尾根に挟まれた盆地に作られた集落で、広さも家の数も畑の枚数も、ライフコッドとほぼ同
じくらい。クリフトがうっかり口をすべらした通り、農業以外取り立てて産業のなさそうな村だ。ただ、斜面の多い
山頂のライフコッドに比べれば、畑を耕すのも家の行き来もずっと楽だろうし、無理に木を拓かなくても新しく畑
にできる土地は余っている。それに北から南へ大きな河(ミネアさん曰く“ユルミール川”というそうだ)が流れて
いるから、食料を自給するには、ライフコッドより恵まれている。
ま、他と比べて恵まれてないからこそ、うちの村にはライフコッド織っていう立派な名産品が、あるんだけどな。
「ビルくん」
独りで田舎自慢していた俺の腕を、マーニャさんがつついてきた。「じゃ、あたしはこれでおいとまするから」
「でも姉さん。せっかくだし、少しだけでも、おばさんたちに会っていったら?」
引き留めるミネアさんに、マーニャさんが「大騒ぎされるのが面倒なの」あっさり首を振る。残念……。
「それじゃクリフト。ミネアのこと、どうかよろしく頼むわね」
「え?は、はあ……?」
クリフトはきょとんとしてミネアさんを見、ミネアさんは眉をひそめてマーニャさんを見た。
事情が飲み込めているのは俺だけ。マーニャさん……俺へのあてつけだろうな。
( ´・ω・`)
640 :04/09/01 00:43 ID:wqZDnwAo
と思っていたのだが、マーニャさんは今度は俺に向き直り、さらっと“いつも通り”頬の下を撫でてきた。
「ビルくんも、アルトとうまくやってよね」
『あ……ええ、善処します』
「仲直りできたら、アルト連れて遊びに来て」
マーニャさんがニコリと笑ってくる。うーむ、もう機嫌直してくれたんだろうか?
「そうだビルくん。アルトの弱点、教えてあげるわ」
『え?』近くの緑の神官服の襟がぴくっと震えるのが見えた。
「ちょっとさ、じっとしててよね」
クリフトにかまわず、マーニャさんは俺の背後に回る。と、俺の肩先から腕をまわし、俺の首を抱きしめるよう
にしてきた。
『ま、マーニャさんっ!』
悲鳴じみた声を上げてしまう。今は、ミネアさんが見てるんですよ!
「アルトってね、こうやって背中からぎゅって抱かれると、なんにもできなくなっちゃうのよ」
耳元でマーニャさんがささやく。「ついでに髪撫でてあげれば、猫みたいにおとなしくなっちゃうわ」
『そうなんですか?』
後ろから抱きしめられておとなしくしてるアリーナ……どうも、信じられない。
『それって、マーニャさんだけになんじゃ……?』
「さあ?それは保証できないわね」くすっと笑うマーニャさん。んじゃ、駄目じゃないですか!
そのとき。「ビルくん」マーニャさんが不意にトーンを落とすと、突き刺すような声で言った。「ミネアに何かあっ
 たら、今度はすぐ、あたしに知らせなさいよ。いいわね?」
『え?は、はい!』
「よろしい。わかったならビルくん、しっかりっ!」
マーニャさんがやっと俺を解放し、背中をぽんと叩いた。マーニャさんてワケが分からん……。
「それと、ミネア。急いで帰って来なくてもいいわよ。せっかくビルくんとクリフトを両手に花なんだから、可愛がっ
 てもらってきなさい」
「ね、姉さん!」ミネアさんが顔を赤くして怒鳴る。
「あはは。そんじゃね!……ルーラっ!」
マーニャさんが右手で空を指し、ダンスの一回転をしながら呪文を唱えた。次の瞬間マーニャさんの姿は奇術
のようにかき消えていた。空を見上げても、すでにいない。
すごい演出だけど……あのままだとしたら、くるくる回転しながら飛んでってるんじゃないか、マーニャさん。
想像して、吹き出す。けど……マーニャさんて、どっか謎めいてるなあ……。
641 :04/09/01 00:45 ID:wqZDnwAo

マーニャさんを見送った俺たちは、ひとまず、村に向かう街道を登っていた。
東から伸びてきた街道は、村の手前で北にわずかにそれ、急激に細くなって森に入り、山へと消えている。
街道沿いには、左も右も畑ばかりがあるのだが、一軒、2階建ての長屋のような宿屋が建っており、その宿屋
に寄り添いあうように民家が並び、村がはじまっていた。何軒かの家には牛舎または厩舎がついていて、外の
柵の中をみすぼらしい家畜が散歩している。のどかという以外誉めようがない村だ。ライフコッドとの対抗意識
かもしれないが。
「あっ」
先頭を歩いていたミネアさんが突然立ち止まると、道の左の畑に駈け寄って「フロッカさん!」声をかけた。
「誰だい、あたしを呼んだのは?」
青菜の中から、初老の女性が顔を上げ、こちらを向いた。とたんに、
「おや、ミネアちゃんじゃないか!」驚いた様子で青菜をかき分け、近づいてきた。「こんな時期に帰ってくるなん
 て、どうしたんだい?おや……こりゃどうも、ご苦労様です」
親しげに話しかけようとして、クリフトが立っているのに気づいて、日焼け避けの帽子を脱いで礼をした。
「いいえ。私のことはお気遣いなさらず。ところで、ここを姫様が……ぐっ!?」
俺はすばやくクリフトの脚を蹴り飛ばした。ったく。こんな村じゃすぐ騒ぎになっちまうだろうが。
「フロッカさん。私たち、友達を追いかけて来たんです……知りませんか、茶色い髪で……たぶん皮のスカートを
 履いてる女の子なんですけど」
「さあねえ……ノルザスさんとこに画家だっていうのが2,3人泊まってるけど、そんな娘はいないね」
『村に行かずに、直接山へ行ったかもしれないんですが』
俺が口を出すと、おばさんはとんでもないと言わんばかりに手を振った。。
「山って、峠にかい?バカお言いでないよ、そんな女の子が越えられるような……おっとっと。ミネア、こちらの
 いい男は、どちら様なんだい?」
「ウィルさん。私のお友達です」
「へーっ!?ミネア、あんたにも男の友達がいたのかい!そうだねえ、あんたもそろそろ身を固めなきゃならな
 い年頃だものねえ……なに、そんなことはどうでもいい?うーん、ちょっとお待ち」
642 :04/09/01 00:48 ID:wqZDnwAo
おばさんは、赤くなるミネアさんから、道を降りてきた農夫へと、視線を移した。
「そこ歩いてくるのサゴタさんじゃないか。サゴタさん、今日さ、誰か峠のほうへ行かなかったかい?行ってない?
 やっぱりねえ。……ミネア、お聞きの通りだよ。いないってさ。それでウィルさん、あたしゃ初めて見る顔だけど、
 どこの産まれだい?歳はいくつで、仕事は何してるんだい?ミネアはね、気だても優しいし、本当に立派な子
 なんだよ。二親を亡くして、エドガンさんに……」
「ふ、フロッカさん、ありがとう、助かりました」
ミネアさんが真っ赤になっておばさんを追い返す。どこの田舎も、こういうおばさんばかりなんだな。
「すみません、ウィルさん」ミネアさんが両手を前でもじもじしながら、うつむいた。「フロッカさんと言って、私たち
 が子供の頃からずっとお世話になってる人なんです。ただ、少しだけお喋り好きなので……」
『あの、気にしないでくださいミネアさん、慣れてますから』
うちの村のハナ婆さんのが、よほどうるさい。何しろ“俺とマリベルができちまってる”と信じ込んで、男女の付き
合い方から口説き文句に逢い引き場所、果ては……とにかくいろんなことを聞きもしないのに喋ってくる、どうに
もしょうがない婆さんなのだ。そのため、俺とマリベルには、普通の話をしていようとケンカの最中だろうと、ハナ
婆さんの姿を見た瞬間に20歩ずつ合計40歩互いに離れるという連携技(?)が、身に付いている。
『となると、アリーナはまだ来てないと思っていいみたいですね。どうしますか?』
俺が腕組みしながらミネアさんとクリフトを見やる。すると、
「もちろん!いらっしゃっていないのであれば、すぐお迎えに参りましょう!」
クリフトが単純思考で街道へと歩き出すのを『ちょっと待て』すぐさま、止めてやる。
643 :04/09/01 00:52 ID:H+n0UPv2

『迎えに行って、途中で姿を見つかって、どこかに隠れられたり逃げ出されたらどうするつもりだ。こんな山の中
 でアリーナを追いかけ回して、捕まえられる自信、あるのか?』
「……じゃあ、どうしろとおっしゃるんですか、ウィル殿」
クリフトが振り返り、不満そうに俺を見る。ミネアさんも右手を左腕にかけ、空を見上げて考え込んでいる。
ここは―――

1.『街道の両脇に隠れて、アリーナが通りかかるのを待って挟みうちにしましょう』
2.『宿屋の部屋を借りて、そこから街道を見張りましょう』
3.『全員で行くと目立ちすぎます。誰か一人が迎えに行きましょう』
 3−1.俺 3−2.ミネアさん 3−3.クリフト 3−4.コーミズ村のどなたか
4.『遠くからではアリーナに見分けがつかないよう、服を借してもらって、変装しましょう』
5.『とにかくクリフト。お前はどっかに隠れててくれないか。俺とミネアさんで何とかするから』


<作戦変更>
G.ガンガンいこうぜ (全体攻撃重視・攻撃呪文&特技多用・速攻系)
V.バッチリがんばれ (攻撃呪文&特技&道具多用・連携系)
L.いのちだいじに  (防御重視・回復&防御系呪文多用・慎重系)
 <<パーティ全体で庇護するキャラを1人入力。指定しなくともよい>>
S.じゅもんせつやく (直接攻撃重視・間接攻撃系呪文&特技多用・慎重系)
M.おれたちにまかせろ (攻撃人数限定・攻撃支援系&防御系呪文多用・連携系)
 <<攻撃担当者を2人まで入力。残りの仲間は支援に専念。指定のない場合は主人公だけで攻撃担当>>
T.じゅもんつかうな (直接攻撃重視・精神力絶対維持・特技&道具多用・速攻系)

*速攻系:敵の先手をとり、戦闘を早めに終わらせる。敵の攻撃を受けやすい。
*連携系:仲間どうしが協力しあい、攻撃と防御に無駄がなくなる。ただし仲が悪いときは逆効果。
*慎重系:敵の攻撃を見極めやすく、フィールドで不意打ちされることが少なくなる。敵の後手に回りやすい。
S。ミネアの評価上がるかな。

ここは普通に2だね。

マーニャさんいなくなっちゃうし、Sで。

2かなぁ、やっぱ
3-1 残りは街道で見張ればいい

作戦は…あれ〜いろいろやろうぜがないぞ〜?
クリフトの斬新な戦術が見たいのにな〜
しょうがないのでSで。
5S

バーバラキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
648場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/09/01 01:41 ID:5+PG419r
つーか漏れヴァカだろ・・・と思いたくなる18レス32kb更新。これをほぼ2日で書いたんだからさらにアフォ
選択2が追いついてきたために急いで更新してしまい削る努力をしてないのが最大の原因、次がバーバラ・・・

作戦についてゴチャゴチャ書いてありまつが、単に、ここまで決めてあれば漏れが書きやすいため
パラメーターなど一応決めてはありますがミュレーションまでする気になれない・・・
それほど考え込まず決めてくださいませ。変更もほぼ随時できるようにしますので

>610 ややこしくなるので?は付けないでくださひ・・・
>611 2だとバーバラが来たのに気付かず・・・という展開ですた
>612 おかしいでしょうか?実は漏れもそれほどはっきりした答えを持ってませんが
>613 でも貧乏揺すりはみっともないのでやめませうw
>614 ドラマだと練習量より才能の世界でつね。練習は大前提ってことでしょうけど
>615 心・技・体。でも体と技の違いがイマイチわからない。喧嘩はしないでくださひ
>616 主人公が強くなるには・・・何よりもまず漏れの気まぐれでレベルアップイベントが起きるか起きないかw
>617 すぐ呪文で反撃受けそうでつが・・・。説明はだいぶ後ほどに
>618 結果的にターニアかバーバラかという選択だったわけですが・・・伏線弱すぎでつな
>620 ということでどれを選んでも大した新展開にはなりませんでつた
>621 3を選んでいただいた方々の期待をだいぶ裏切ったような気が
>622 この時点では2がこれほど追い上げてくるとは思いもよらず・・・
>623 一応妹なんで、兄に愛想をつかすことはあっても敵に回ることは・・・あるかもw
>624 ターニアとバーバラが、今いちばん書きやすいキャラクターでつが・・・媚びすぎでつかね?
>639 スミマセソ。いつものことで画面が真っ青になっただけ・・・クーラー点けてるのに
>644 作戦で上下する評価はごく微量でつが、戦闘するたびにその微量が積もっていきます
>645 めげずにご参加ありでつ!この時点でマーニャがいると戦闘楽すぎてしまうもので
>646 無駄に容量食いそうでしかもギャグのセンスが必要そうな作戦が嫌だっただけでつ・・・
>647 次のバーバラの登場はリアルでまた1年後・・・てなことがないようがんがりまつ!
たださえクリフトと仲悪いんだし協力行動のため1
Sで2
バーバラ久々だなぁ
1sでいってみる。
Sで2だ
4のMで。
攻撃役は主人公とクリフト。
SMで。

じゃなくて4とSで。何か楽しそう。
クリフトにけんかを売ってみるってことで
5とS
4s。
クリフトが目立ちそうなんで返送
5G アリーナをやっつけろ♪
とりあえずホシュ
ホッキンダッシュ
保守
661名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/10 16:57:15 ID:Nqz7FKQT
よお、オレ保坂守。
通称保守だ。
よろしくな。
662名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/11 01:23:31 ID:ZW4Ld6De
保守
663場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/09/11 08:06:43 ID:FYcvVurx
「宿屋……あの宿屋からですか?」
『ああ。道側の部屋を借りられれば、見つからずに見張れる』
「しかしそれでは、姫様が村を素通りされた場合、逆に私たちが姫様を峠へ追い込むことになりますが……」
あっと。それは考えてなかったな。
「クリフトさん。アリーナさんは、お弁当とか携帯食、持ってました?」ミネアさんが聞いた。
「え?いえ、おそらくお持ちではないと思います。朝食は、召し上がっておいででしたが」
「でしたら、きっと、この村で食事をとって行かれると思いますよ」
はっきりした口調でミネアさんが言った。なるほど。昨日も事あるごとに腹空いたって言ってたからな。
それに、いくらアリーナが物事考えない奴といったって、食料も調達せず山越えしようとするほど無謀じゃない
だろ。
『ミネアさん、この村で食事をとるなら、どこになります?』
「やっぱり、あの宿屋なんです。ノルザスさんの。1階が食堂になってるんです」
それは実に好都合。よし、いいアイディアがひらめいたぞ。
『それなら早く行って部屋をとっておきましょう』
言ってから、クリフトをじろりと見た。神官は、不満そうに顔をしかめながらも「では、そうしましょう」しぶしぶ、
うなずいた。
《ミネアの評価がわずかに上がった》

「あれまあ。どこのべっぴんさんが来たかと思ったらミネアちゃん。元気なようで、なによりだね」
「ありがとう。おじさんも元気で、よかったわ」
「お帰りミネアちゃん。マーニャちゃんがいないようだけど、達者なのかい?」
「ええ、おかげさまで、姉さんも元気です。今日は、舞台があるので」
「ミネアちゃんもマーニャちゃんも、早くこっちに戻ってくればいいのに……。バルザック、まだ見つからない
 のかい?」
「ええ……はい」
通りがかる村人がみな、ミネアさんに親しそうに話しかけてくる。ミネアさんも笑顔で受け答えしている。
モンバーバラではちょっと強ばった感じだったミネアさんの顔の肌が、故郷ということで安心して緩んでいる
ように見える。ミネアさんて、性格からして、騒がしいモンバーバラより静かな田舎のほうが向いてると思う。
ま、ミネアさんがくわをふるって畑仕事したり、船で網を引き上げたりしてる姿は、あまり見たくない気もする
けど。
664 :04/09/11 08:07:37 ID:FYcvVurx
街道から村側に道を曲がってすぐが、宿屋の玄関だった。料理中らしく、味噌のいい香りがどこからか漂っ
てくる。
遠目から見たとおり、木造で、マリベルの家とたいして変わらない高さ、広さの建物だった。大きめの家を
宿屋に仕立てたのだろう。一階が食堂で宿泊は二階だけとすれば、多くても8部屋程度。それで充分なら、
この村はそれだけ旅人が少ないってことになる。もっとも、ライフコッドのビアンカのとこにしても、4部屋しか
ないし、泊まり客が月に5人来ればその月は大忙しだったってくらいの宿屋なんだが。
玄関をくぐると、広いロビーはなく、すぐ廊下がはじまっていた。カウンターらしき場所が脇にあったが、誰も
いない。「御用の方はこれを鳴らしてください」という札のついた紐が垂れ下がっているだけだ。
紐を手にとり、ミネアさんを振り返ると、ミネアさんは少し奥のほうを見てから、俺にうなずいた。
ガラガラガラガラ!
錆び付いた鈴のような音……というかそのもの……の音が響きわたる。
「私が出ます……はーい!すみません」
女の声がして奥の戸のひとつが開き、ナフキンをかぶりエプロンを羽織った、女の子が、飛び出してきた。
「コーミズ村にようこそ。3名様ですね。お食事ですか、お泊まりですか?」
『……!?』
俺は、思わずじいっとその女の子を見つめた。俺とほぼ同じ歳、ぽっちゃりとした愛嬌のある顔立ちに、
鳶色の大きな瞳、肌は日焼けして薄く色づいているが、額や袖口を見ると元はかなりの色白らしい。
この顔、この声。この娘、どこかで会ったような……。また、俺、デジャヴかよ!
「あの……?」女の子が大きな目をぱちぱちさせ、不思議そうな目線を俺から俺の後ろへ移す。「あっ!
 ……ミネアさんですね!お久しぶりです。その節はどうもありがとうございました」
「こんにちは、サンディさん。私たち、わけがあって、すぐ部屋を借りたいんですけど……」
サンディさん?
そうだ!“こんにちは。サンマリーノにようこそ”って笑顔で俺に声をかけてくれた、あのメイドだ。
サンマリーノの町長のとこで働いてて、飼い犬に毒を盛ったということでキャラバン隊に売っ払われたって
聞いたっけ。何度か見たことがあって、俺もランドも気になった女の子だけど、感じがだいぶ違ってて、わ
からなかった。
665 :04/09/11 08:09:04 ID:FYcvVurx
「休憩ということですね。ええと、空いてるお部屋は2つです。どうぞ、ご案内します」
『あ。ああ、はい、お願いします』
サンディが廊下を歩き出す。俺には、気付かないらしい。それもそうだ。数回顔を合わせたことがあるとは
いえ、サンディから見れば、俺は通行人の一人に過ぎなかったから。
そういえば昨日、ミネアさんの下宿主のキレスさんが、ジョセフ(町長の息子)とサンディがどうのって言って
たっけ。あれは、サンディが、コーミズで暮らしているっていうことだったのか。
サンマリーノのメイドが、サントハイムのこんな田舎の村で……いったい、どういう経緯があったんだろうか。
階段を上がる。狭い廊下をはさんで、右と左に3つずつ、計6つのドアが、並んでいた。
「空いているのは、こちらと、こちらになります」
サンディが示したのは、廊下のつきあたりの、左右2部屋だった。左が街道側、右が村側だ。
俺は二人を振り返る。街道を見張るだけなら左だけでいいけれど……ミネアさんが、着替えとかしたくなる
かもしれない。
『では二部屋ともお願いします』言いながら、異論のないのを確認した。
「わかりました。それでは……こちらの部屋の鍵が、これになります」
真鍮製の鍵を一つ、サンディから取り出し、俺に手渡した。
『ありがとう』
「それで、こちらの部屋が、この鍵になります」
横のミネアさんにも別の鍵をサンディが差し出す。その横顔に目が行く。こうして近くで見ると、サンディに
間違いないけれど、感じがだいぶ違う。サンマリーノで会ったときは礼儀正しいけれど表情も仕草も歳相応
に子供っぽかったのが、今は俺よりも年上のように、しっかりして見える。何があったのか、気になるところ
だ。
「恐れ入ります」
と、ミネアさんより先に、クリフトが、鍵に手を伸ばした。「……?」サンディがびっくりした様子でクリフトを見
上げ、なぜか、俺が持った鍵、そして俺、ミネアさんの順に目を走らせてから、口元に手をやった。頬も、
わずかに赤くしたようだ。
『?』なんなんだろ……?
666 :04/09/11 08:11:21 ID:FYcvVurx
そんなサンディの態度にまるで構わず、クリフトは鍵を受け取り、「失礼ながら、これを」と、銀貨を代わりに
サンディの手に乗せた。「いいえ、このようなお金は……」サンディは、再三遠慮してから「ありがとうござい
 ます」頭を下げてその銀貨をしまい、「昼食は、下の食堂になります。ごゆっくりどうぞ」俺とミネアさんにも
一礼し、階段を下りていった。
「ウィル殿。早く、開けてください」
サンディを見送る俺を急かしながら、クリフトが、鍵をポケットにしまおうとした。
『!』
そうか、さっきのサンディの態度の意味は……。男が2人、女が1人の客。2部屋の鍵を男2人がそれぞれ
受け取ったということは、女は必ず、どちらかの男の部屋に……。
『クリフト。そっちの部屋、一人で使うつもりか?』
「え?いいえ。姫様がいらしたらお使いになっていただくためですよ」
クリフトが、当然のことだといわんばかりに、無表情で俺を見る。
『だとしても、お前が鍵を受け取る必要はないだろう。ミネアさんに渡してやれよ』
ミネアさんに、俺が首をしゃくってみせる。「は?」クリフトは驚いたように目を丸くした。
「なぜですか。ミネアさんは、休まれるならご自宅があるでしょう」
あ、そうか。こいつはそう解釈したのか……。
『……まあいい。けどたぶん、あの娘に誤解されたぞ』
「誤解?何のことです?」
『お前にゃ、説明するだけ無駄だ』
「はあ……?」クリフトが釈然としない面持ちで、ミネアさんと顔を見合わせる。首をかしげたところをみると、
ミネアさんも、わかってない。
……俺の考えすぎか。サンディも、ミネアさんに家があるのを思い出して、赤面したのかもしれない。
うーん、でも、ミネアさんと二人部屋、か。そうなれたらいいなあ……。
ただそうなると、アリーナがクリフトと同部屋……。どちらをとるか。色男の悩むところだ……。
「ウィル殿」
はいはい。うるさいな。
ガチャリ。ドアの鍵を開け、まず二人を中へ通した。クリフトはすっ飛んで行って窓を開け、街道を見渡す。
後ろからケリでも入れたくなるような無防備さだ。アリーナを見つけたとたん呼びかけるなんて真似は、しな
いとは思うが……心配だな。
ミネアさんに続いて部屋に俺も入ろうとしたとき、『……?』目線を感じて、振り返った。
667 :04/09/11 08:25:17 ID:FYcvVurx
『!?』
ぎょっとなった。いつの間にかすぐ隣のドアが開いていて、隙間に、男の顔があったのだ。細い黄色い目と
尖ったあごの三角顔。こういう顔の奴も普通にいないわけじゃないが、ホビットかエルフの種族の血が入っ
てるんじゃないかと聞きたくなるような顔だ。俺と目が合った瞬間に、そいつはドアを閉めた。すぐ、鍵をか
ける音が聞こえた。
「ウィルさん。どうか、しましたか」
『あ、いいえ』
全身から冷や汗が湧き出している。あんな不気味な奴が隣なのか……。相部屋とかにならなくて、ほんと
良かったよ。
《サンディの評価がわずかに上がった》

二つ並んだベッドに、中央のテーブル。南面の窓。衣装ダンス。左にある扉は、バスルームだろう。宿屋の
ツイン・ルームとしては、ひとそろいそろっていた。どれも高級品とは言えない代物ばかりだが、それは仕方
ないだろう。
部屋に入ってまず俺がしたことは、クリフトを窓から引き離すことだった。
「何するんですか!」
『本気で見張るつもりなら、せめてその帽子は脱げ』
指摘してやると、ばつが悪そうにしてクリフトが帽子を外した。
『で、クリフト、ミネアさん。お願いがあるんですが』
街道にまだ旅人のかげもないことを確認し、テーブルにクリフトとミネアさんを集めた。
『アリーナがここに来たとして、まず、どうすると思います?』
「え?……それはもちろん、食事を頼むんじゃないでしょうか」
ミネアさんの意見に、クリフトもうなずく。「私たちがお弁当をいただいたことなんて、知らないはずですからね」
当たり前だ。
『となると、下の食堂でアリーナを捕まえなくちゃならなくなります。けど、食堂には他の客もいて騒ぎになるで
 しょうし、もし外へ逃げられたらどうしようもないんで、できれば、この部屋に誘い込みたいんです』
「……しかし、どうやって?」
クリフトが腕組みをし、聞いてくる。俺はうなずき、さっき思いついた考えを話した。
『サンディ……さっきのウエイトレスさんに、頼むんだ。アリーナが来たら、食堂は村の人用で、外のお客さん
 は部屋でお願いしますだとか言ってもらって、この部屋で待つように仕向けてもらう』
668 :04/09/11 08:30:08 ID:FYcvVurx
「なるほど。それはいいお考えです」
「そうしましょう、ウィルさん」
二人が、感心したように俺を見る。どうだ、だてにホルスを城から無断で連れ出しまくってるわけじゃない。
『頼む理由は何でもいいけど、サントハイムの姫様だなんて言うなよ。態度がかしこまりすぎて、アリーナに
 バレるかもしれない』
帽子をかぶり直すクリフトに、一応、釘をさしておく。「わかっております」と答えたが……本当かねえ?それ
が、この計画で、唯一心配だ。
『じゃ、俺はここで見張ってるんで、すぐ、頼んできてもらえますか?』
二人は、すぐ部屋を出て行き、俺が魔物の姿がないかと空や森を探っている間に、戻ってきた。
「サンディさん、言うとおりにしてくれるそうです」
『そうですか。良かった』
村の人間のミネアさんと、城の神官のクリフトが頼みに行ったんだから、うまく話はつくとは思っていた。こう
いうのは、いくらいい考えで理屈が通っていても、相手に信用してもらえるかだからな。
『それじゃ、アリーナが来たときどうするかですが……』
三人で段取りを話し合い、俺とクリフトがドアを、ミネアさんが窓をふさぐことにした。アリーナは、俺やクリフ
トにはともかく、ミネアさんに対しては、乱暴してまで押し通ろうとはしないはずだ。
そんな事前の打ち合わせを終えると、俺たちは窓べりに立ったり座ったりして、見張りについた。
陽は、だいぶ上に昇っている。マーニャさんの言ってたことが本当なら、そろそろ来るはずなのだが。
「やはり、姫様に何かあったんでしょうか?」
心配性のクリフトが、俺とミネアさんを見る。たく、俺たちに聞いたって、しょうがないだろ。
『何かありそうなこと、あるのか?アリーナでもかなわない魔物がいるとか、山賊が出るとか』
「い、いえ。サントハイム領内の治安は万全ですから、山賊などは。ただ……」
『ただ?』
「狩人が、キャストミント山脈で、今まで見たことのない、恐ろしい魔物を目撃した。という話が、つい先頃に
 ありまして」
クリフトが小声で話す。「このこと他言無用に願います。噂に過ぎませんから」
『キャストミント山脈でっていうと、どのあたりなんだ?』
俺が聞くと、クリフトは「キャストミント山脈がこうありまして、この村が東のこのへんになります」指で壁に絵
を描いた。
669 :04/09/11 08:41:45 ID:FYcvVurx
「魔物を見たというのは、サランの街の関所から東に入った山奥だそうですから、ここから山を越えた反対
 側……このへんですね。その狩人の話では、悪魔のような魔物が、森の上を飛んでいたんだそうです。
 この国に棲む魔物のほとんどを見聞きしているがあんなのは初めて見たと……。で、すぐ調査隊を派遣
 して探してみたのですが、そのような魔物は、発見できませんでした」
『ふーん……悪魔のような姿か』俺の知ってる、空飛ぶ悪魔のような魔物というと……犬に羽根の生えた
アロードックぐらいなものだが、あのくらいで大騒ぎしてるわけじゃないだろう。あんな奴、俺でもやっつけら
れるし。
「そういえば、私も聞いたことがあるわ」ミネアさんが言い出した。「この前、グレッグさんが山菜採りに行っ
 たとき、大きな翼があって、ぎらぎら光るものを持った悪魔が、山から山へ飛んでいくのを見たという話を、
 人づてに聞きました」
「やはり!」クリフトが甲高い声を上げた。「ですから、もっとよく調べるべきだと私は言ったのですよ。なの
 にゲバン様が中止しろと……。ウィル殿、姫様を迎えに行くべきです。そのような恐ろしい魔物に襲われ
 れば、いくら姫様でも!」
クリフトが窓から顔を出し、あたりを見回す。俺は肩をすくめた。心配性な奴だな。一人か二人しか見たこ
とないなら、見間違いかもしれないじゃないか。遠くの山を見ているとよくある。飛んでいるものの大きさの
見当がつきにくいのだ。
とはいえ、俺も心配になってきた。昼を過ぎてもアリーナが来ないようじゃ、探しに行ったほうがいいな。
「あっ!」
いきなり、クリフトが声を上げた。窓の外を見ている。すぐ俺も、窓から顔を半分だけ出した。
女の子が一人、街道を登ってくるのが見えた。青い三角帽子から赤茶色に見える髪をのぞかせ、黄色の
皮のドレスと、黒いタイツ。
きた。アリーナだ。
口に甘草をくわえ、木の枝を振りながら、鼻歌でも唄ってるのか機嫌良く頭を左右に動かして、村へやって
くる。さして警戒している様子はない。
さっと窓際から離れ、二人に口に指をあててみせる。うなずきあって、段取りどおりの位置につく。
670 :04/09/11 08:46:12 ID:FYcvVurx
あとは、サンディが、うまくここにアリーナを連れてきてくれるかどうかにかかっている。クリフトたちがどう話
したのか知らないけど、つい余計なことを喋ってしまったりしたら、いくらアリーナでもバレてしまう。頼むよ。
『!?』
窓のほうを見ると、タンスのかげのミネアさんが、パンくずを床に投げていた。な、何してんだ、ミネアさん?
「ミネアさん!何しておられるのですか!」
クリフトも、あわてるような小声で聞いた。だが、ミネアさんはにこりと笑い、窓の外を向いてチュッチュッと
口を鳴らす。と、屋根から小鳥が飛び降りてきて、パンをついばみはじめた。1羽が来ると、2,3羽と続く。
すぐそばにいるミネアさんを怖がることも……いや、ミネアさんの手ずからパンをもらってる鳥までいる!
『………』
俺は、あっけにとられて、小鳥たちとミネアさんが戯れるのを見守っていた。意外と、いろんな特技がある
人だなあ……。
「ミネアさん!こんなときに何を遊んでるんですか!」
たまらず窓際に一歩踏み出したクリフトを、俺が首を振って制した。「しかし……」渋顔をつくるクリフトに、
再度、首を振る。
訳がわからないが、ミネアさんは考えなしに何かする人じゃない……お姉さんとは違って。
『……!』
足音が近づいてきた。二人だ。クリフトもぴくっとなり、さっと壁にはりつく。それを見たミネアさんも、手の
小鳥を放し、タンスのかげに退いた。
「こちらで、お待ちください。すぐにお持ちします」サンディの声。そして、
「ああ。すぐに頼むよ。お腹ぺこぺこなんだ」
間違いなくアリーナの声。そして、遠ざかる足音が一つ。サンディだろう。うまくやってくれたな。感謝。
ドアノブがまわった。扉板が前に出てくる。が、少し開いただけで止まった。
間。
もしかして気付かれたか?飲めない唾が、口の中にたまる。
そのとき、窓べりの小鳥がピッと鳴いた。俺も、そしてドアの反対側に隠れているクリフトも、息を呑んだ。
だが、一瞬ののちドアが完全に開き、アリーナの上体がぬっと現れた。
「なあんだ。おまえたちか」
思わずどきりとしたが、アリーナは、飛び跳ねている小鳥を見て瞳を輝かせて笑みを浮かべると、忍び足
で部屋に入って来、鳥たちのそばへ歩いていく。
671 :04/09/11 08:48:33 ID:FYcvVurx
今だ!
俺は、クリフトとうなずきあってから、パチッと指を鳴らした。
タンスの陰から、ミネアさんがゆっくりと出てきた。小鳥を踏まないようにしながら、窓の前に立ちふさがる。
「ミネア!?」
アリーナがぎょっとして立ちすくむ。すかさず俺は、クリフトと両側から飛び出し、ドアを閉めた。
「ウィルっ!?クリフト!」
アリーナが俺たちに向き直り、眉を立ててにらみつけてきた。
「ちくしょうっ!そうか、マーニャだな!」
「姫様!さあもう逃がしませんよ」すかさずクリフトが詰め寄る。「このまま私と、お城へお帰りください!」
「いやだと言ったろ。ボクには、ボクの用があるんだ。邪魔をするな!」
「またそのようなわがままを。どうか、ご病気の陛下のことをお考えになってください。陛下のご病気を治す
には、姫様がおそばにいるのがいちばんのはず。それに、陛下が政務をおとりになれない今、姫様が代理
としてこの国を統治なさらねばならないのですよ!」
「ボクがいたって、親父は治りゃしないじゃないか」アリーナが言い返す。「それに、ボクは政治のことなんて
 知らない。ゲバンの奴が、ボクがわかりゃしないの知ってるくせに、税金の比率がどうだとか新しく作る水
 路がどうのとかっていう説明、聞いてるだけで嫌だ」
「だからといって、このように勝手にふるまわれていいというものではございません。姫様はいずれサントハ
 イムのお継ぎにならねばならぬのですよ。それをこのように逃げ回っていては……」
「クリフト!おまえ、ボクが、逃げてるというのか?」
「そ、そうは申しませんが……しかし、姫様、まずは城に戻り、お立場というものを充分にお考えください。
 姫様は……」
「だから、帰りたくないって言ってるじゃないか」
駄目だこりゃ。主従どうしのくせに、ただの口げんかをやってる。けっきょく堂々巡りしてるだけだ。
『アリーナ』
クリフトが次に何か言い出すより早く、俺はアリーナの前に進み出た。とたんに、
「ウィル。お前まで何しに来たんだ」アリーナがそっぽを向いた。「ボクは、お前に用はない」
ずいぶんと嫌われたもんだが、嫌い方が、まるで子供だな。
672 :04/09/11 08:58:25 ID:FYcvVurx
『けど、俺は君に用がある』できるだけ淡々と、はっきりした声で語りかけた。『ミネアさんもマーニャさんも
 いないのに、この村にわざわざやって来たってことは、アリーナ、この先の峠に行くつもりなんだろう?』
俺の言葉を聞いて、アリーナはさっと顔色を変え、後ずさった。マーニャさん、大正解です!
『やっぱりな。だからミネアさんと俺は、友達として、それを止めさせるために追ってきたんだ』
「そうよ。アリーナさん」ミネアさんも口添えしてくれる。「キャストミント峠は、険しすぎて、この村の私たちも
 ほとんど通ったことがないんですよ。道も知らないアリーナさんが一人で行くなんて……。いくらなんでも
 無茶すぎます!」
「ちぇっ」アリーナは、苦々しそうにミネアさんを振り返り、舌打ちした。
『アリーナ。俺は』そんなアリーナに、俺は一歩踏み込む。『クリフトみたいに、城に帰れとは言わない。君が
 さっき言った通り、君には君の考えがあるんだろうし、それに俺はサントハイムとは関係ない、レイドックの
 人間だからな。けど、危険に踏み込もうとしてるのは、黙ってるわけにはいかない』
「………」唇を震わせながら、アリーナがキッと俺をにらむ。「ウィル!よくそんなこと平気で言えるもんだな。
 どうせお前は、ボクの身体だけが、目当てなんだろ!?」
お前こそ、誤解されるようなことを平気で叫ぶな。ここの二人とも事情知ってるからいいとして。
『違う……とも言えるが、そうとも言える。だけどなアリーナ。お前のことを心配なのは本当だ』
「ウソだ!」
アリーナが体を斜めにしながら、両手の拳を前に出す。やれやれ。ここまで嫌われたのか、俺は。
『ウソだと思うならそれでいいさ。だったら、俺でなくミネアさんの心配を考えろ』俺は、手をミネアさんのほう
へ大きく振った。『アリーナ、お前の友達が、一人で危険な山の中へ行こうとしてたら、お前ならどうする』
逆に、アリーナをぐっとにらみつけた。アリーナは唇を結び、俺から目をそらして黙り込む。
『追いかけて、止めて、止めらんなきゃ、せめて理由を聞こうって思うだろ?』自然に、俺は大声になった。
『だから、俺たちが今聞きたいのは、なんでアリーナお前、峠に行きたがってるのかってことだ。ちゃんとした
 理由、あるんだったら、言ってくれ』
673 :04/09/11 09:03:23 ID:FYcvVurx
「………」アリーナは、唇を開きかけた。だがすぐ、すねるように天井を向き、またもだんまりを決め込んで
しまう。ああ、いらいらするなほんとうに!
『ないのか?ただ腕試しをしたいだけだってのかよ?』頭の中が熱くなってくる。こうなりゃヤケだ。『もしそう
 なら、お前をサントハイムの城へ送り返すぞ。3人で、押さえつけて、呪文で眠らせてな』
さらに一歩踏み込むと同時に、腰の[破邪の剣]に手をかける。「!?」驚いて目を大きく開いたアリーナが、
さっと飛び退いた。
「やれるなら、やってみろ!」俺そしてクリフト、ミネアさんに目を配りながら、アリーナが身構える。「ボクは
 ……お前たちなんかに、簡単に捕まったりしない!」
『……アリーナ。頼む』俺は、大きく息をはくと、剣から手を放した。『わけがあるなら、話してくれないか。
 俺だって、君を城に無理に帰すようなこと、したくない。場合によっちゃ、力になってもいい』
「………」だが、やはり、アリーナは黙ったきりだった。
だめか。俺は、ため息をつき、ミネアさんを見た。あと、お願いできます?
「アリーナさん」気持ちが通じたらしく、ミネアさんが話しかけはじめる。「ウィルさんの言った通り、何か
 わけがあるんですか?」
「………」
アリーナはミネアさんを振り返ると、息をつき、黙って一つうなずいた。やっぱ、あるのか。
「姫様!わけとは何なんですか?」たまりかねてクリフトが出てきた。やめろ、お前が出てくると話が振り出し
に戻っちまう。
「でしたら、アリーナさん」ミネアさんが、ベッドの後ろに隠した荷物を引っ張り出した。「私たち、フレアさん
 からお弁当をもらったんですよ。アリーナさんのぶんもあります。食べながらでも、話してください」
微笑みながら、テーブルに弁当箱を並べる。そういや、お昼はもう過ぎてるんだな。
「ウィルさんたちは?」
言われて、俺とクリフトは、牽制するような視線を交わしてから、弁当を置いて、テーブルにつく。
最後に、ようやくアリーナも、ふてくされたように唇を突き出しながら、ミネアさんの差し出す弁当箱を受け
取った。
《アリーナの意識に変化が起きた》《アリーナの評価がわずかに上がった》
《ミネアの評価が上がった》《クリフトの評価がわずかに上がった》
674 :04/09/11 09:04:58 ID:FYcvVurx
『ライフコッドじゃ、平らな畑がほとんどないんですよ。だからとれる作物の量なんて、村の人全員が食べて
 いくのがやっとなんです。けど、代わりに、織物とか木彫り細工を作ってて、これが評判良くて、高く売れる
 んですよ』
「そうなんですか。ここの名産は、野菜と果物です。それをモンバーバラの市で売って、暮らしてるんです」
『昨日のお祭りで果物を売ってる人をたくさん見ましたけど、コーミズ村の人たちだったんですか?』
「中には……でも、ほとんどは、ハバリアの港から運んで来るものです。コーミズ村のがいちばん新鮮なの
 で、すぐ売り切れてしまうんですわ。あ、キレスさんの店の果物は、全部コーミズ村のものですけど」
『じゃあ、あの林檎、コーミズ村の林檎なんですね。どうりで、美味しかったですよ』
「うふふ。ありがとう、ウィルさん」
弁当を食べながらの俺とミネアさんの互いの村自慢を、アリーナはまだ不機嫌そうにしながらも聞いてはい
るようで、ときどき何か言いたげに顔を上げたり、もったいぶった顔をしたりしている。だいぶ腹が減っていた
らしく、食べるのはいちばん早い。一方クリフトは、時折俺たちの話に口をはさみながら、アリーナの様子を
何度となく見やっている。
驚いたのは、俺やアリーナはハンバーグや鶏肉に緑野菜など重いもの中心、ミネアさんがパンと野菜、クリ
フトが米と卵の料理と、めいめいの弁当の中身がそれぞれ違っていたことだった。しかも、冷たいのに味は
申し分ない。フレアさんって、何でもできるんだなあ。
『そういえば……フレアさんて、どういう人なんですか?』
「どういう人って?」
『この村の出身で、旦那さんを亡くされたっていうのは昨日聞いたんですけど……アリーナやクリフトのことも
知ってましたし、何かと、頼りになりそうでしたから』
「ええ。フレアさん、結婚する前、サントハイムの兵士をしてたんです」
『兵士!?』
女兵士ってやつか。フレアさんが兵士……ぴったりのような、違和感ありありのような。でも、納得。
「それも、姫様を護衛する兵士だったんです」クリフトが顔をしかめる。「姫様にせがまれるまま、武術の稽古
 をつけておられましてね。私も、ついでとばかりに、さんざしごかれまして……」
675 :04/09/11 09:10:28 ID:FYcvVurx
じゃ、アリーナの先生!?うわ、やっぱりフレアさんて、すごい人だったんだ……。
『て、ことは。フレアさんて、アリーナよりも強いのか?』
「……ああ。ボクなんか、まだとても」
アリーナがうなずき、つぶやいた。それから、はっとしたように顔を上げて俺を見、すぐにそっぽを向いた。
こうやって無理して無視してるのは、すねたときのターニアそっくりだ。ターニアの場合は、後ろから抱きしめ
てやって、ごめんなってささやけば、向こうから泣いて謝ってくるんだけど……。アリーナにそれをやったら、
交尾した後のカマキリになっちまうだろうな。
「……アリーナさん、そろそろ、どうですか」
ミネアさんがおもむろにアリーナを見た。「話して、もらえますか?」
「……ああ」アリーナがうなずき、フォークを置いた。弁当箱はもう空だった。
「実は、その……ルナのことなんだ」
「ルナさん?踊り娘の、ルナさんですね」
「ああ。あの娘、素直でいい娘だと思ってたんだけどさ……その」アリーナが俺をちらりと見た。「昨日会った
 とき、あの娘、ラゴスの莫迦にひどい目に遭わされてたのに、ラゴスの奴を変にかばうんだ。逆に、ボクに、
 文句まで言って」
「姫様に?なんという無礼な!」クリフトが、ハムをからめたフォークを手に持ったまま、叫ぶ。「そういえば、
 ラゴス殿を宿で見かけましたが、私からこそこそ隠れるようにしていたのは、そのせいだったのですね」
「それでさ、腹が立ってさ、何でかって考えてみたんだ。あの娘、ミネアも知ってると思うけど、キャストミント
 の山の中の村で暮らしてて……何年前だかに、親もお兄さんも、村の人がみんな魔物に殺されて、弟と
 いっしょにサランに逃げてきたって言ってたんだ」
すると……ルナさんて、みなし子だったのか。俺とターニアと同じだな。
『じゃ、その弟さんも、モンバーバラにいるのか?』
「………」アリーナが黙ってしまう。まだ俺は空気扱いなのかよ、お姫様。
「ルナさんは、ラゴス殿の紹介で、小間使い見習いに雇われたんです」クリフトがしゃしゃり出て説明しはじ
めた。「しかし、宮廷に慣れない方でしたし、弟さんがいなくなってからは、ぼんやりするようになってしまい
 ましてね。ある日、ゲバン殿の足に紅茶をこぼして火傷させてしまい、解雇されてしまったんですよ」
676 :04/09/11 09:21:09 ID:FYcvVurx
それでルナさんは、アリーナが誰なのか知ってたのか。
けど、ラゴスの紹介っていうのはどういうことだ?あのラゴスが、孤児を拾い上げて城で雇ってやるなんて
慈善事業してるとは思えない。それに、弟さんがいなくなったっていうのは……何かありそうな気がする。
例えばラゴスの奴が、いろいろ、いじめたとか。
「そのあと、たまたま城に遊びに来ておられたマーニャさんが、踊り娘にするとおっしゃってモンバーバラに
 連れてゆかれたんです。ちゃんとした踊りができなくても、こういう可愛らしい娘は、舞台で踊ってるだけで
 絵になると言われて」
『ふーん……え、マーニャさんが?』俺は、昨日のルナさんが言ってたことを思い出した。ラゴスがマーニャ
さんを呼び出そうとしたのは、マーニャさんに相談するためだという理屈つけてたけど……それに説得力が
出てきたことになる。ま、ラゴスのことだから、ただそれを言い訳に使ったって可能性のが高いが。
「姉さん、ルナさんを気に入ってるみたいなんです」ミネアさんがサンドイッチを持って、楽しそうに言った。
「姉さんだけじゃなくて、踊り娘の人たちみなさんに可愛がられてて、男の人が酒場でルナさんを変にから
 かったりすると、みなさんが怒り出して、その人を追い払ったりしてますよ」
言われてみると、ルナさんて、かばいたくなるような、素直でおとなしそうな顔立ちと体つきをしてた。しかも、
アリーナを前にして一歩も退かなかったから、誰かに媚びたりしない、芯の強い娘らしい。ああいう娘は、
もちろん男にもだが、お姉さまがたにも可愛がられるのかもな。
そうすると……俺はアリーナを見やる。もしかして、アリーナもそのお姉さまがたと同じような気持ちなのか。
守ってやりたい、っていうような。
『で、ルナさんと、キャストミント峠と、どう関係があるんだ?』
「それは……」言いかけて、またも俺を見て口をつぐむ。
俺は苦笑し、ミネアさんに目で頼む。うなずいたミネアさんが「アリーナさん、話してくれませんか」と、促して
くれた。
「……ルナの故郷の、滅ぼされた村っていうのに行ってみたくなったんだ。もしかしたらキピンがそこに戻っ
 てるのかもしれないし……ルナが、ラゴスの言いなりになってる理由が、わかるかもしれないと思って」
677 :04/09/11 09:23:44 ID:FYcvVurx
『キピン?』
「ルナさんの弟さんです。突然、城からいなくなってしまったんです」クリフトが俺に耳打ちするように言い、
「そうですか……滅ぼされた村に、ですか」腕を組み、考え込んだ。
「実は、ルナさんの村がどこであったのか、どなたも知らないのですよ。山に入る狩人たちも、峠を行き来し
 たことのある旅人に聞いても、ルナさんのような子供が暮らせるような村が、あの険しいキャストミント山脈
 にあるはずがないと言っておられましたし……。けれど、キャストミント山脈には隠者の村があるという話を、
 私は昔、城の図書室で読んだことがあるのです。深き森の中、人も魔物も寄せ付けず、一族のみでひっそり
 と暮らし、古より何者かを守護している村だとか。ルナさんたちがその村の人で、その村が魔物に滅ぼさ
 れたというのは、あまり考えにくいのですが……もしそうだとしたら、私も興味が湧くところですね」
クリフト……お前の興味はともかく、アリーナを止めたいのか峠に行かせたいのか、どっちなんだ?
「ですが、姫様。それならサランの側からお登りになられればよいのでは……そちらからのほうが近いはず
 ですし」
「ボクに関所破りをしろってのか?」アリーナが息を鳴らした。「やってもいいけど、あの関所、どうも最近厳重
 になっちまって、隙がないと思ってさ。だから、こっち側から登ろうと」
「あ、それは……」クリフトが顔を引きつらせる。アリーナを峠に行かせまいと関所を厳重にしたのは、こいつ
だからな。
『ふーん、ルナさんのことでか……』
俺も、興味が出てきた。ラゴスがルナさんの弱味を握っているとすれば、手がかりがその村にあるってことも
考えられる。ルナさんみたいないい娘をあんな奴の魔手から救うことができれば男としての面目躍如ってやつ
だろう。それに、今まで誰も知らなかった伝説の村というのも、面白そうだ。この場にヘンリーがいたら、すぐ
飛びついてきて、探しに行こうと言い出すだろうな。
『ミネアさんは、そういう村があるかどうかってことを、聞いたことないですか?』
「……それは、ありません。ただ……」ミネアさんが顔を上げて、窓に広がる山を見た。「峠を通るたび、大い
 なる力を秘めた誰かがこの山にいる……そういう感じはしました」
678 :04/09/11 09:27:21 ID:cMx3rrx/
『そうですか……えっ?』俺はミネアさんを見つめた。『ミネアさん。あの峠を越したこと、あるんですか?』
「え、ええ……昔、父さんたちとサントハイムのお城へ行くときに何度か……でも、何年も前です」
じゃあ、ミネアさん、峠の道案内ができるんだ。それは好都合!
……。俺、止めに来たのに、行く気マンマンになってるな……。ミイラ採りがミイラってやつか。
「ほんとうか、ミネア!」アリーナが目を輝かせた。同じことを考えたな。「だったら、案内してもらえないか?」
「姫様!」クリフトが顔色を変え、テーブルに手をついてアリーナに身を乗り出した。
「お話は伺いましたが、そのこと何も姫様がみずから確かめられなくてもよいこと。ルナさんの村については、
 城より調査隊を派遣して調べさせますので、姫様は峠に行くなどという無茶はなさらず、城にお帰りください
 ますよう!」
「それじゃ、何にも面白くないじゃないか。ボクは、自分の目で、ルナの村を見てみたいんだ」
「お気持ちはわかりますが、そのようなことでは君主というものが務まりません。部下に任せるという度量あっ
 てこそ……」
「またそれか。誰かに任せられないことだってあるだろ。それにボクは……」
「まあまあ、アリーナさん」
ミネアさんが手を振って、二人の喧嘩を止めた。「それなら、今日一日、この村で、落ち着いてじっくり考えて
 みたらどうですか。その間に、クリフトさんの気持ちも、変わるかもしれません」
俺は驚いてミネアさんを見つめた。ミネアさん、目も口元も笑ってる……しかも、瞳をきらきらさせて。
……いける!ミネアさんもミイラだ!
「気持ちが変わるなどということはありませんが……そうですね、では今日は、この村で一泊しましょう」
クリフトが言ったとたん、ミネアさんがかすかに口元を緩ますのが見えた。たぶん、俺もだっただろう。
「ただし、姫様。今度逃げ出すようなことがあればもう言い訳など聞きませんからね。無理やりにでも、城へ
 戻っていただきます」
アリーナは、チッと舌打ちをし「わかったよ」うなずく。
「アリーナさん。私にも約束してください。決して一人で、峠に行ったりしないって」
「ああ」アリーナがうるさそうに横を向きながら答えた。1人で、ですか。じゃあ2人や3人ならいいわけですね?
679 :04/09/11 09:28:21 ID:cMx3rrx/
『クリフト』俺は、渋面をつくっているクリフトを見た。『キメラの翼、ミネアさんに預けといてくれないか』
「は?な、なぜです?」
『お前が別のほうに気を変えて、アリーナをいきなり城へ連れ帰ろうとするかもしれないだろ。その可能性が
 あると、アリーナだって落ち着いて考えられないじゃないか』
「しかし……」
『それとも、ミネアさんも信用ならないってわけか?』
「いえ、そんなことは……。わかりましたよ。ミネアさん、これを。決して、姫様に渡さないようにしてください」
クリフトが顔をますます苦々しくしながら[キメラの翼]を道具袋から取り出し、ミネアさんの前に置いた。
「そういうことでしたら、お預かりしておきます」
ミネアさんが、にっこり笑って翼をしまった。
うまくいった。さてこれであとは、どうやってクリフトを出し抜くかだ。
……なんだか、俺たちがここに来た理由と、今の俺の心中、方向性が思いっきり変わってきたような。
ま、どっちにしろ、友達として、アリーナ姫様を危険な峠に行かせるわけにはいかないからな……1人では!
《ミネアの評価がわずかに上がった》《クリフトの評価がわずかに上がった》

お弁当の箱や包みを片づけ終わると、四人ともがそれぞれの位置と用を見つけ、なんとなく黙り込んだ。
アリーナは窓のふちに座り、にこにこしながら屋根を眺め、手を出したりしている。小鳥がいるのだろう。その
アリーナをはらはらするように見守りながら、クリフトはテーブルで荷物の確認をしている。ミネアさんも、テー
ブルに座ったまま、鏡を見ている。
俺は、ベッドに座り、特にすることもなく[破邪の剣]に触ってみたり、道具袋をのぞいたりしていた。本当は、
アリーナと話をしたかったのだが、できればクリフトがいないところで話したい。
話すったって、何を話す?峠越えを一緒に行こうなんて言ったら、また変に勘ぐられるな。まずは誤解を解か
なきゃ。でもどうやって?俺がアリーナを最初は知らなかったということを証明するには……ヘンリーを連れ
て来れたとしても無理だろうな。反対に、アリーナをあのとき蹴っ飛ばしてきた女の子だと一発で見抜いて、
ますます誤解を深めてしまいかねない。女を見る目に関しちゃ、ヘンリーは俺のはるか上をいくからな……。
680 :04/09/11 09:29:30 ID:cMx3rrx/
ガタン。
考えていると、ミネアさんが椅子を立った。しぜん、俺や残りの二人の目が、ミネアさんにいく。
「私、ちょっと家に行ってきます。荷物、置いて行きますので、お願いしますね」
『家に、ですか』
「ええ。せっかく帰ってきたことですし、掃除をしてきたいので……」
俺は―――

1.『でしたら、俺も手伝いますよ』
2.『そうですか。終わったら、すぐ戻ってきてくださいね』


現在地:サントハイム王国コーミズ村 所持金:40819G  <5日目・昼>

ウィル(村の少年) 職業:商人2+盗賊2 現在の作戦:呪文節約(慎重)
 打撃3 防御2 敏捷3 魔力0 (各MAX15、装備による補正は含まない)
 体調:良好 精神:好調
 装備:破邪の剣〈ブーメラン〉+旅人の服〈旅人の服〉
 道具:薬草x5、爆弾石、キメラの翼、(マーズの手紙)(グレーテの手紙)(ターニアの風鈴)
 呪文:(インパス) 特技:砂煙、力ため
681場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/09/11 09:37:46 ID:FYcvVurx
今回も厭になるほど長い32kb。しかも無駄に伸ばした話ばかり。これでも2イベント削っ・・・言い訳か
ギャルゲーだから会話がダラダラ続いてもいいなどと、緊張感が足りなくなってるかもしれませぬ
次の更新は水曜日・・・としたいのでつが、このところ不意の予定が入ってばかりなので努力目標ということで・・・

一気に次スレが必要な容量にまでなってしまいますた。立てられる方、どなたかお願いしますです。。。

>649 1ですとサンディと会わないままアリーナ捕獲。クリフトでなくミネア評価がなぜか上昇
>650 ほぼ1年ぶりかでしょうか。個人的には事あるごとに出したいキャラでつ
>653 主人公とクリフトに今の段階で連携組むと・・・書く漏れが非常に楽でつ
>654 4だと三人そろって農作業するハメになって楽しいことになったかも
>655 5だと、クリフトと喧嘩したついでに再度選択肢となりますた
>656 けど背の高さは隠せなかったり・・・それでも気付かないアリーナだったりw
>657 ガンガンいくクリフトとミネア、見てみたいような気も・・・書きにくいけど
>658-662 次は皆様にお世話にならないようがんがりまつ!
682名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/11 10:45:31 ID:rYIRubIq
フレアはそう言う設定かいw、2
683名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/11 12:10:14 ID:+njZuDAm
1。
ミネアさんゲッツ!
684名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/11 16:28:34 ID:323aPwo3
2
685名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/11 17:26:53 ID:+jIluSoB

ミイラ同士で話をしてみる
686名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/11 17:46:26 ID:mTSFkTo5
ここは1がいいな。ミネアについてく。
破邪の剣でクリフトを一刀両断にもしてみたいけれど…。
687名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/12 06:26:28 ID:VqG+MQdw
2
迷うが、二人きりで残すのはイヤン
688名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/12 10:05:19 ID:JbBnQstc

また逃げるかもしれんし、峠越えするにしても
アリーナとの関係を修復しておかないと。
689名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/12 16:59:18 ID:P5/xXWAM
1 百鬼ブラァイ
690名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/14 17:25:48 ID:1mWHLHpP
現在のプレイ時間:一年

GM氏に拍手を!
691名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/15 02:45:49 ID:rmdc1MB0
なんと、もうそんなになっていたとは。
完結したら文庫本が作れるよね。これだけ書けるのはすごい。
692場つなぎ ◆Gp/A555JhQ :04/09/15 06:19:31 ID:AdeXiXT8
立てますた
DQのギャルゲーを本気でプレイしるスレッド11
http://game8.2ch.net/test/read.cgi/ff/1095196097/

>>680の選択はこれをもちまして終了とさせていただきますです。。。
693名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/15 15:25:57 ID:RYkzVC87
agew
694名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/16 12:24:09 ID:BfFQDwYB
んで、こっちは何に使おうか。
695名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/16 13:25:27 ID:6Wj5jNer
場繋ぎ氏を応援しよう
696名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/16 19:08:42 ID:BfFQDwYB
これまでの歴史とかキボンヌ
697名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/17 01:22:21 ID:8iy7uCap
もうじき書けなくなる。
698名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/17 01:28:18 ID:eUD6CRNn
あとどれくらいかけるの?
699名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/17 14:40:32 ID:mNY8/kqx
4〜5レスがせいぜいかと
700名前が無い@ただの名無しのようだ:04/09/17 16:11:56 ID:6KNH5M2D
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701名前が無い@ただの名無しのようだ
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