1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:
奇数レスの人・・・・何かの事柄についての定義を考える
偶数レスの人・・・・すぐ上の奇数レスの人の定義の反例を考える。
(必死で当てはまらない事柄を考える)
それではどうぞ、俺は
「引き篭もり=2chネラーである」
まぁ、何ていうか頑張れ
3 :
おいおい。ちょっとぉぉぉぉぉ!:04/02/28 16:49 ID:K7QyUzcP
いくら2でもこれは・・・
って漏れ偶数なんだけど。
なにもないんでむりぃぃぃぃぃ!
>>1逝ってよし!
4 :
†666†:04/02/28 16:54 ID:1D+GnETt
>>3
だよなww
5 :
3です。:04/02/28 16:56 ID:K7QyUzcP
上の書き込みは無かったことにしといて下さい。
6 :
5です。:04/02/28 16:58 ID:K7QyUzcP
>>4さん
ありがd。
7 :
†666†:04/02/28 17:02 ID:1D+GnETt
>>6
でも、おれ>>1さんに誤っておきます!
スイマセンでした!!
何処の板にも一つはあるよな、こういうスレタイのスレ
9 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/02/29 00:08 ID:MpVMJ2mv
age
定義の判例ってなんだよ・・
定義はルール。決まりごと。だから判例もクソもない
11 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/02/29 00:11 ID:MpVMJ2mv
sirane
It said that you would become a star together but I don't want to die.
13 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/02/29 00:17 ID:851F4z0e
ていうか……イタチ害。
アンドロイドの眠りを妨げないで
アンドロイドの眠りを妨げろ。
子豚...狸...狐...猫...子豚...狸...狐...猫...
ジャンジャカジャカジャカジャン♪♪
こぉぶたぁの鳴き声が恋心を揺らすぅ〜
たぁぬきぃの仕草ぁああんでぇ〜鼻から牛乳ぅ
きぃぃつねぇは辛い花粉しょぉーう
ねこぉおも〜負けずぅぅ〜に〜どじょぉ〜うすくいぃ〜
突然だがうんこしたいんだけど
nurupo
gah
a
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∧_∧ <
Ш\ ( ´_ゝ`) \________
\ \/ \
\ /\ / ̄\
_| ̄ ̄ \ / ヽ \_
\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \__)
||\
||\|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄
|| || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
|| ||
25 :
K:04/03/28 22:34 ID:3fuWbHQR
30分前か
今だれかいますか
26 :
K:04/03/28 22:46 ID:3fuWbHQR
15ふん前
上はにぎやかだけど誰もこなそう
乗っ取りの瞬間をこの目で見れるとは。
漏れに構わずドゾ
28 :
K:04/03/28 22:51 ID:3fuWbHQR
おおおお
やっとおひとりさまが!
29 :
K:04/03/28 22:54 ID:3fuWbHQR
※注
前作と同様 DQだとは思わずに楽しんでくだはい。
のこり五分
<序の口>
京都 1865年(慶応元年)
血の雨が降りつづく京都の夜 その二人の剣客たちは両者互いを見据え
満月のもとで対峙する。
清志郎「お前が比佐小次郎だな。」
比佐「ほぅ、貴様が川澄清志郎か。」
清志郎「ついに会えたな比佐、ようやく復讐を果たせる時がきた。お前の命を貰い受ける。」
比佐「悪いが人から恨まれる心当たりはありすぎて貴様など名ぐらいしか知らん。」
清志郎「お前が知らなくてもこっちは忘れられない思い出が重すぎる、覚悟してもらおう。」
その侍はそう言うと刀を抜いた。
シャキン!
.
比佐「フン、貴様のような輩が何人もそう言っては私に挑んできた。私を狙うその理由を
聞いておきたいが、余計なおしゃべりは無用だな。」
シャキン!
やがて両者刀を抜き 満月の京都の夜 二人の侍が対峙する。
清志郎「比佐、死ぬ前に一つ面白い話を聞かせてやる。」
比佐「誰が死ぬって?貴様がか?」
清志郎「人は人生のうち最低三回は幸福の瞬間が訪れるそうだ。」
比佐「何の話だ、御託はいいからさっさとかかって来い。」
清志郎「俺の三つの幸福の瞬間を教えてやる。一つ目はお前とこうして対峙した瞬間、
二つ目はお前を斬ること、そして三つ目はお前を斬った後の充実感だ。」
比佐「……おい、貴様は私と闘いたいのか、それともおしゃべりをしたいのか。」
清志郎「俺はお前をずっと捜していた……この手でお前を斬るために今日まで生きてきた…。」
世は幕末という動乱の時代とは裏腹に 今ここに二人の私闘が繰り広げられようとしていた。
それは時代のためではなく 自分がこの世で最も愛した者のための戦い。
――――この物語は 動乱の世において ある一人の復讐の人生と
時代に戦いを挑んだ 志士たちを唄うエピソードである――――
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち
.
導かれし志士たち PAGE1
<壱の章>
〜復讐の志士 川澄清志郎〜
1863年(文久3年) 土佐
バシ! バシバシ!
ドタ!
清志郎「うあっ…!あいたたた…。」
師範代「ははは、どうした清志郎。もうへばったのか。」
清志郎「師範代、ぼくもう疲れちゃいましたよ…。」
師範代「なんだなんだ、だらしないな。そんなことではりっぱな志士にはなれんぞ。」
清志郎「だって…。」
師範代「いいか清志郎、今はただの竹刀の稽古だが、これが真剣だったらお前は何度も
死んでいるぞ。」
清志郎「いいよ、どうせぼく刀なんて持たないから。」
師範代「何だって?」
清志郎「だってぼく、サムライなんかになりたくないもん。」
師範代「おいおい…この国がどうなってもいいというのか?今は動乱の時代だぞ。
幕府を倒そうと数多くの志士が立ち上がって…」
清志郎「師範代、その話はもう聞き飽きました。」
師範代「かの坂本龍馬を見習って、お前も北辰一刀流を極めるんだ。」
清志郎「いやですよ、ぼく人なんか斬りたくないもの。」
師範代「まいったなぁ、せっかく才能があるってのに…。」
川澄清志郎(カワスミ キヨシロー)17歳の秋。
故郷は四国の土佐、現在でいうところの高知県にあたる。
かの有名な土佐藩、奇才・北辰一刀流の坂本龍馬の出身でもある。
世は幕末という動乱の時代に生まれ、半ば強引に剣術の稽古をつけられる毎日。
当時この時代は10代半ばにもなれば、刀を振り回す人斬りなどめずらしくもなかった。
幕府側の最強とうたわれる新撰組や、それに対する維新志士たちのほとんどが
10代後半から20代である。
だが清志朗のこころざしには、幕府も維新志士も関係なかった。
.
導かれし志士たち PAGE2
静江「あら清志郎、今日の稽古おわったの?」
清志郎「うん。」
静江「私も今野菜をつみ終えたとこよ。」
清志郎「そう、じゃ途中まで一緒に帰らないか。」
静江「そうね、じゃちょっと待ってて。」
清志郎の幼なじみ、榊原静江(サカキバラ シズエ)。
静江は小川のほとりの畑で取れた野菜をカゴをかつぎながら、
アザだらけになった清志郎に濡れた手ぬぐいを差し出した。
静江「はい、これで顔ふきなさい。」
清志郎「ありがと…静江。」
静江「さ、帰ろ。もう日が暮れるわよ。」
清志郎「うん。」
夕暮れの散歩道、カラスの鳴く美しい紅葉が舞い落ちる。
清志郎はいつものように、稽古帰りに静江と会話を交わしながら家路に向かう。
.
静江「清志郎、また師範代にシゴかれたのね。」
清志郎「もうやめたいよ、ぼく剣術なんか習いたくないのに。」
静江「……」
清志郎に刀を持たせたくないのは、静江も同じだった。
だがこのような時代では、倒幕のため一人でも多くの若者が出兵される。
静江「あなたもいずれは京都へ行ってしまうのかな…。」
清志郎「いやだよ、あんなとこ。今の京都がどういうところだか知ってるだろ。」
静江「知ってるわよ、あの町へ戦いに行って帰ってきた人は誰一人としていないわ。
京都には新撰組とかいう恐ろしい殺人集団がいるって聞いたし…。」
清志郎「どのみちぼくが京都に行ったところで、何の役にも立ちはしないさ。」
静江「……」
清志郎は剣術の才能はあったが、本人にはその気はまるでなかった。
.
支援
導かれし志士たち PAGE3
静江「ねぇ清志郎、いつかこの国も刀を必要としない時代がくるかしら。」
清志郎「さぁね、そんな時代があるんなら早く来てほしいよ。」
静江「私たちも安心して暮らせる時代が早く来るといいわね。」
清志郎「この国の幕府がどうなろうと、ぼくは絶対に刀なんて持たないよ。いくら新時代を
切り開くためとはいえ、刀で人を斬るなんてやだよ。」
静江「わかってるわよ、私だってあなたに刀なんて持ってほしくないもの。」
清志郎「父さんや母さんは、ぼくがりっぱな侍になることを期待してるけど…やっぱりぼく
いつまでもこの村に住んでいたいな、この村が好きだし。」
静江「私もよ、いつまでもあなたとこうして…」
清志郎「え?」
静江「い、いえ。何でもないの。」
.
清志朗は下を向いたままトボトボと竹刀をひきずって歩く。
静江はそんな清志郎を見て、明るい顔で清志郎のほうを振り返って言った。
静江「あ、そうそう清志郎。あなたこれ知ってる?」
清志郎「なんだい。」
静江「三つの幸せの瞬間よ。」
清志郎「は?」
静江「人はね、どんな人間でも人生のうち最低三回は幸福の瞬間が訪れるんだって。」
清志郎「ふーん。」
静江「清志郎の三つの幸福ってなに?」
清志郎「さぁね。ごはんを食べるとき、寝るとき、遊ぶときかな。」
静江「なによそれ、つまんない幸福ね。」
清志郎「だってほかにないもん。」
静江「ねぇねぇ、私の三つの幸福の瞬間を聞きたい?」
清志郎「べつに。」
静江「もう!なんでそうノリが悪いのよ。」
清志郎「なんだいノリって。食べる海苔かい?」
静江「いいから聞いて。私の幸福の瞬間はね…。」
清志郎「(話したいんなら最初からそう言えよ…。)」
静江「まず一つめは好きな人との出会い、二つめはその人と将来一緒になること。
三つめはその人と幸せな家庭を築くことよ。」
清志郎「なんだい、要するに男が欲しいだけじゃんか。」
静江「馬鹿、そんないやらしい発想じゃないわよ。」
清志郎「あっはっは。」
静江「あ、やっと笑ったわね。」
清志郎「え…。」
静江「うふふ、あなたの笑顔ここのとこずっと見てなかったから。」
清志郎「あーそうかい。…で、きみのその幸福はかなったのかい?」
静江「そうね、一つめの幸福はかなったかも。」
清志郎「ほほー、誰だい?」
静江「さーね。」
清志郎「なんだよ、教えてくれよー。」
当時はまだあどけない面影を残し 心の澄みきった17歳の少年 川澄清志郎。
だがこの翌日、この純粋な少年の心に‘鬼’が棲みつく事件がこの村で起こる。
それがきっかけとなり、川澄清志郎はのちに幕末を震撼させる復讐の人斬り志士となる。
そしてこの二年後――――清志郎は京都へ立つ。
あどけない17歳の少年は、魔物が棲みついた19歳の殺し屋と化す。
そしてゆく先々でのいくたびの戦いに身を投じ 何人かの同士との出会いが待ち受ける運命。
だがそれは 復讐という文字を背負った 闇の将来を追う旅となる。
「比佐 小次郎(ヒサ コジロー)」という名の 謎の侍を追って……。
<壱の章>
〜復讐の志士 川澄清志郎〜
完
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE4
<弐の章>
〜信州の芸者 江戸川真子と江戸川美音子〜
京都 1865年 料亭 円堂瑠にて
主人「これお前たち、そろそろ出番や。はよう支度しなさい。」
美音子「はい。」
真子「ふぁーい。」
美音子「姉さん、センス持った?」
真子「ちゃんとあるわよ。あーあ、仕事も楽じゃないな。さっさと終わらせて賭場に行きたい。」
美音子「姉さん、わかってると思うけど今夜は大御所のお大臣さまがこの料亭に来るのよ。」
真子「だから何よ。」
美音子「しっかり踊ってね、またこないだのときみたいにお客様に乱暴なんかしないでよ。」
真子「だってあのとき踊ってるあたしの胸にさわってきたじゃん、あの変態オヤジ。」
美音子「もう…そんなことだから次々にお仕事がなくなっていくんじゃないの。かせいだお金は
賭場につぎ込んでしまうし…。」
真子「美音子、あたしたちの目的はお金じゃないのよ。」
美音子「わかってるわよ…。」
真子「お父さんの仇はきっとこの京都にいるはずよ、そいつを捜すことが目的でしょ。」
美音子「とにかく今夜は馬鹿なマネはしないでね。」
真子「あんたこそ三味線トチらないでよ、あたしまでズッコケちゃうんだから。」
その二人は一卵性双生児の双子の姉妹。
名を江戸川真子(エドガワ マコ)とその妹、江戸川美音子(エドガワ ミネコ)。
彼女らは信州から上京してきた芸者である。だが生まれははるか南の島国・那覇(沖縄)で生まれ、
のちに家族と共に信州に住み、幼いころから芸者の道を学びながら育った。
といっても遊郭に出入りするような身体を売る芸者ではなく、あくまで
日本舞踊を主とする舞や、お酌をする程度の仕事をしながら生計を立てていた。
妹の美音子が三味線をかなでり、姉の真子がそれに合わせ踊る。
大臣「おいご主人、例の姉妹はまだか?」
主人「はいな、只今。」
大臣「はっはっは、酒のさかなとしてあの芸者の舞を見るのが楽しみでのぅ。」
主人「ほなお待たせいたしました、芸者の真子と美音子の登場でござります。」
大臣「よしよし、さっそく始めてくれ。」
美音子「よろしくお願いいたします。(ちょっと姉さん、頭下げなさいよ。)」
真子「あ、よろしくお願いします。」
やがて美音子が三味線を弾き始め、真子が舞を踊る。
ベン ベベン ベン♪
大臣「うんうん、いつ見てもええのぅ。」
主人「まま、お一つどうぞ。」
大臣「あぁすまん。…おっとっと。」
ベン ベン ベベン♪
二人の姉妹は一心に三味線をかなでり、舞を踊っていたが
実は頭の中は違うことしか考えていなかった。
姉妹の父親は江戸川佐助といい、鍛冶屋の仕事をしていた。
だが半年ほど前に人斬りに殺されたという。
下手人は比佐小次郎という名の謎の侍としか分かっていない。
彼女らは父の仇である比佐を討つべく、この京都へ渡ってきたのだ。
大臣「おいご主人、あの三味線の娘がええのぅ。名は確か美音子だったな。」
主人「左様でござりまする。」
大臣「うむ、決めた。すぐにワシの屋敷へ呼べ。」
主人「は?」
大臣「おい美音子とやら、三味線はもういい。ちこう寄れ。」
美音子「え…。」
真子「?」
主人「あ、あのぅ…お大臣さま。おそれながらこの二人は舞踊しか身につけておりませんゆえ…。」
大臣「だが芸者だろう、あっちのほうも知らぬとでもいいおるのか?」
美音子「あの…。」
大臣「さ、行くぞ美音子。」
美音子「ちょ、ちょっとやめてください!何をなさるんですか!」
真子「!」
美音子を連れていこうとした大臣を見て、姉の真子はいきなり三味線を取って
大臣を殴りつけた。
真子「このスケコマシが!」
ガツン!
大臣「うがっ…!」
主人「あぁっ!な、なんてことを…!」
美音子「姉さん!」
真子「あたしの妹に手を出すんじゃないよ!」
大臣「こ、この無礼者め!ワシを誰だと思っておる!」
真子「誰ってあんた、豚オヤジでしょ。違うの?」
大臣「ななななんたる無礼なヤツだ!たかが芸者風情の田舎娘どもがっ!」
主人「お大臣さま!まことにご無礼をお許しくださいませ!」
大臣「許さん!もう二度とこないな料亭には来んぞ!ワシは帰る!」
主人「お、お待ちくだ…!」
大臣は料亭を去っていってしまった。
主人「あぁぁぁ…。」
真子「ばーか、こっちから願い下げよ。二度とくんな!ボケ!」
美音子「姉さん!ちょ、ちょっと…!」
真子「あ…」
主人「お、お前たち…!」
美音子「あぁ…もうだめね。」
真子「ははは…ちょっとやりすぎちゃったかしら。」
万事このような調子で、江戸川姉妹にとって職を失うのは日常茶飯事だった。
姉の真子は踊りにかけてはずば抜けた才能を持っていたが、いかんせん短気な性格ゆえ
問題を起こすのは必ず真子の方であった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
支援
今初めて「戦場の花嫁」読んでいて、
何のためにK氏が乗っ取りを企図してたのかようやく知りました。
私がここに来たのは千夜一夜スレの最後の方だけ見て
「何が始まるんだろう?」と思ってだたフラリとやってきただけでしたが、
そういうことなら付き合いましょう。がんがってください。
導かれし志士たち PAGE5
島原の町にて
やがて職を失った二人の姉妹は、夜の島原をあてもなく歩いていた。
妹の美音子は姉の真子に一言も口を聞かず、スタスタと黙って歩く。
そのすぐ後ろから、姉の真子が申し訳なさそうにトボトボとついていく。
美音子「……。」
真子「ねぇ美音子…まだ怒ってる?」
美音子「……。」
真子「ご、ごめんね。だってあんたが連れていかれそうになったからつい…。」
美音子「姉さん!今月だけでいったい何回職を失ったと思ってるの!しかも私の大事な
三味線を…これじゃお仕事できないじゃない!私たちもう一文無しよ!」
真子「うえーん、ごめんなさーい。」
美音子「泣いたフリしてごまかしてもだめよ、もうその手には乗らないから。」
真子「ねぇ美音子、ほんとにごめんなさい。あたしが悪かったわ、三味線はあたしがお金
かせいで新しいの買ってあげるから…。」
美音子「そのお仕事がもうできないのよ。」
真子「でもねでもね、あたしの言い分も聞いて。あたしはどうなってもいいけど、
妹のあんたがワケのわからない輩にちょっかい出されるのが、あたしにとって
何よりもイヤなの。」
美音子「……」
真子「お父さんもいないし、妹のあんただけは守りたくて…。」
美音子「……」
真子「あ、その…あたし短気だからすぐ馬鹿やっちゃうけど…。」
美音子「わかってるわ、私だって姉さんが何よりも大切よ。」
真子「美音子…。」
美音子「さっきは助けてくれてありがとう、姉さん。」
真子「あはは…。」
ようやく美音子の表情に笑顔が戻り、真子は安心したように微笑んだ。
美音子「でも困ったわね、お父さんの仇を捜す目的があるけど、その前に私たち
どうやって食べていくか考えないと…。」
真子「よーし、あたしが何とかするわ。」
美音子「何とかするって…もう当分は三味線を弾けないのよ。」
真子「今から賭場に行くわよ、今日は絶対勝つ。」
美音子「…姉さん、けっきょく何も反省してないでしょ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE6
一方そのころ――――
京都 島原の町 裏通りにて
江戸川姉妹が町をうろついている同時刻、土佐から渡ってきた川澄清志郎が
すでに京都の町にいた。だがそのころ清志郎は、数人の侍に囲まれていた。
侍A「待ちな、若いの。」
清志郎「…誰だお前ら。」
侍B「へっへ、この道は通行料が要るんだよ。斬られたくなかったら有り金おいていきな。」
侍C「ケッ、こんなやつさっさと斬り捨てて金だけ奪っちまおうぜ。」
侍D「ふん、それもそうだな。」
侍たちは一斉に刀を抜いた。
シャキン! シャキシャキン!
清志郎「辻斬りか…確かに今の京都は無法者だらけだな。」
侍A「何をゴチャゴチャ言ってる、ここでは人を斬ることなんて当たり前だ。」
清志郎「そうだな、じゃあ丁度いい。お前らに一つ聞きたいことがある。」
侍B「うるせえ!聞きたいことがあるなら刀に聞いてみろ!」
侍C「死ねやああああああ!」
侍D「うおおおおお!」
だが清志郎が親指で軽く柄をはじくと、目にも止まらぬ抜刀術で斬り伏せる。
清志郎「雑魚が。(キン!)」
―――ッズヴァ! ビシュ! ズバズヴァ!!
侍A「う、うぉぉぉっ!」
侍B「ぉぉぉ…!」
侍C「がっ…!」
ドタリ バタリバタリ!
清志郎「いちいち刀を抜かないと物を尋ねることもできない町か、ここは。」
侍D「ひ、ひぇぇぇ…!お、お助けをぉぉお…!」
清志郎「残るはお前一人だ。」
侍D「い、命ばかりは…!ガクガクブルブル…。」
清志郎「だったら俺の問いに答えろ、比佐小次郎という名の志士を知ってるか。」
侍D「ぅぅぅ…!」
清志郎「フン、お前らに聞いたのが間違いだったな。とっとと失せろ。(シャキン!)」
清志郎は刀を鞘に戻し、その場を去ろうとした。だがそのとき…
侍D「馬鹿め!背を向けるとは間抜けな奴よ!」
清志郎「やれやれ…。(キン!)」
なんと清志郎は後ろ向きのまま小太刀を抜いて投げ飛ばした。
ヒュッ!!―――ッドス!
侍D「うげっ…!」
ドタリ
清志郎「チンピラ侍に道すら尋ねることもできないな、すでに京都は肥溜めの町だ…。」
川澄清志郎、京都に降り立つ。
このころは彼の頭にはすでに鬼が棲みつき、幕末の京都にその名を轟かせる第一夜となった。
間もなく清志郎は、この町で江戸川姉妹との出会いが待ち受ける。
それは同じ目的を持った同士との出会いと言っても過言ではない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
応援
導かれし志士たち PAGE7
飲み屋にて
京都の町をうろついていた江戸川姉妹は、結局二人ともこの夜は飲み屋で一晩明かすことになった。
真子「あーもうこうなったらヤケ酒よ。グビグビグビ…。」
美音子「姉さん、そんなに呑んだらまた吐くわよ。」
真子「もー、お父さんの仇は見つからないわ仕事はクビになるわ、やってらんないわ。」
美音子「はぁー、おまけに姉さんはヤケ酒おこすわ…やってられないのは私のほうよ。」
真子「美音子、あんたも呑みなさいよ。」
美音子「ねぇ…どうでもいいけど、もうちょっと控えて呑んでよね。お金だってもうあまり
残ってないのよ。だいたい私たち今夜どこで寝ればいいのよ、もう宿賃さえないわ。」
.
真子「仕方ないわ、こうなったらあたし祇園の遊郭で働くわよ。」
美音子「だ、だめよそれだけは…。」
真子「だってしょうがないじゃん。仕事もないし、あとは身体を売ってお金を稼ぐしか手がないわよ。」
美音子「待ってよ、何とかお仕事を探すから…。」
そのとき、飲み屋に清志郎が現れた。
ガラガラ!
主人「いらっしゃい。」
清志郎「おやじ、酒をくれ。」
主人「へいへい、じゃそのへんお座りくだせえ。」
清志郎「あぁ。」
清志郎は江戸川姉妹が呑んでいるすぐ隣の座敷へ座った。
清志郎「ふぅ…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
美音子「(姉さん、隣の人って剣客さんよ。)」
真子「(どれどれ……あら、けっこういい男じゃん。)」
美音子「(待って、お父さんの仇は人斬り剣客よ。ひょっとして剣客のことは剣客に聞けば
何か分かるかも…。)」
真子「(あの人にそんなこと聞くの?)」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
主人「へい、お待ちどうさま。」
清志郎「あぁ、かたじけない。」
主人「旦那、煮物でも持ってきやしょうか?」
清志郎「結構だ。」
主人「ではごゆっくりどんぞ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
美音子「(姉さん、あの人どう思う?)」
真子「(そうね…けっこう若そうだけどなんか暗いわね、嫌いじゃないけど
あんま遊びたくないタイプね。)」
美音子「(もう!そんなこと聞いてるんじゃないわよ。)」
真子「(じゃ何よ。)」
美音子「(血の匂いがするわ……。あの人、たぶんつい今しがた人を斬ってきたとこよ。)」
真子「(えぇ?あんたそんなことが分かるの?)」
美音子「(お父さんが殺された日から、私なんだかそういう血の匂いに敏感になってしまったの。)」
真子「(ま、まさかあいつが比佐小次郎だったりして!)」
美音子「(シー!姉さん!聞こえるわよ!)」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
清志郎「(ピク…)」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
真子「(ちょっと美音子、あいつ怪しくない?)」
美音子「(調べてみる価値はありそうね、人斬りのことは人斬りに聞くのがてっとり早いわ。)」
真子「(美音子、今すぐお店出るわよ。)」
美音子「(わかったわ。)」
姉妹は座敷を立ち店を出ようとした。
真子「おやっさん、おあいそお願い。」
主人「へいへい。」
すると清志郎も座敷を立った。
清志郎「おやじ、こっちも勘定を頼む。」
主人「ありゃ?旦那もうお帰りで?」
清志郎「あぁ、すまんが用ができた。邪魔したな。」
江戸川姉妹と清志郎は、飲み屋を出て行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE8
裏通りにて
真子「美音子、どう?」
美音子「彼、後ろから尾けてくるわ。」
真子「どうやらさっきの話、聞こえてたみたいね。あたしたちを斬るつもりかな。」
美音子「わからないけど…これは怪しいわ。」
真子「美音子、そこの角を曲がったらあんたは動かないで。あたしが彼の背後を取る。」
美音子「わかったわ…。」
姉妹はそう言うと、歩きながら袖から仕込み小太刀を抜いた。
シャキン! シャキン!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
清志郎「(ん…?あいつらどこへ…。)」
やがて角で待ち伏せていた美音子が清志郎に声をかけてきた。
美音子「お侍さま、どうかなされましたか。」
清志郎「おい、もう一人の女はどうした。」
美音子「何のことでしょうか。」
途中に感想を挟むのもどうかと思うので、「支援」だけにしときます
清志郎「とぼけるな、お前らさっきの店で二人で…」
だがその瞬間、背後から真子が清志郎の後ろを取った。
シャキン!
清志郎「!」
真子「ふふ、芸者のお尻を追っかけるからこういうことになるのよ。」
清志郎「何のマネだ、これは。」
真子「動くんじゃないわよ、でないとあんたのノド掻っ切るからね。」
美音子「あなた、どうして私たちを尾けてきたんですか?」
清志郎「おいお前ら、どういうつもりか知らんが、芸者ごときが刀を持つと
ロクな死に方しないぞ。」
真子「うるさい!あんた人斬りでしょ!」
清志郎「!」
美音子「お侍さん、あなたに聞きたいことがあります。」
清志郎「だったらその前に刀を引け、冗談が冗談ではなくなるぞ。」
真子「それはあんたの返答次第よ、いいから黙ってあたしたちの問いに答えな。
命が惜しくないのかい?」
清志郎「やれやれ…話の分からん芸者どもだ。(キン!)」
美音子「ハッ!姉さん伏せて!」
真子「!」
―――ッシュヴァ!
カラン カランカラン…!
真子「し、しまった…!」
美音子「姉さん!」
清志郎のたった一振りで、あっさりと真子の小太刀が払い落とされた。
清志郎「だから言っただろう、ロクなことにならないと。」
真子「うぐ…。」
美音子「ね、姉さん。この人かなりの達人よ…。」
真子「やっぱりこいつが比佐…」
清志郎「比佐のことを知っているのか?」
美音子「え…。」
真子「うそ、こいつ比佐じゃなかったの?」
清志郎「あんたたち、何者だ…?」
京都の島原で出会った江戸川姉妹。それは偶然にも同じ目的を持った同士だった。
やがて三人は落ち着きを取り戻し、両者ともども刀を引いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE9
真子「ふーん、あんたも比佐を捜してたんだ。そうならそうと早く言えばいいのに。」
清志郎「よく言うな、いきなり背後から襲ってきておいて。」
美音子「本当にごめんなさい、私たちも比佐を捜していて…。」
清志郎「ところであんたたちは何者なんだ。京の者ではなさそうだが。」
美音子「私たち江戸川といいます、こっちが姉の真子。私は妹の美音子です。信州から
上京してきた姉妹の芸者です。」
清志郎「ふーん、信州の芸者か。」
真子「で、あんたは?」
清志郎「俺は川澄清志郎だ、土佐から来た。」
美音子「まぁ、坂本龍馬さんの故郷ですね。もしやあなたのご流儀は北辰一刀流ですか?」
清志郎「あぁ、そうだよ。」
真子「ふーん、あんた土佐藩の志士だったんだ。」
清志郎「いや、特にどこも所属してない。」
真子「なんだ、ただの流浪人か。」
美音子「姉さん…失礼よ。」
清志郎「ところで比佐はあんたたちの親父さんの仇だと言ってたが、本当か。」
美音子「えぇ、実は比佐小次郎という名だけで、それ以外は何も分からないんです。
どこの藩の者かも不明だし…。まさか幕府の手先とは思えませんが…。」
真子「あんたは比佐について何か知ってるの?」
清志郎「俺も名ぐらいで詳しいことはあまり知らん、あんたたちが先の飲み屋で
比佐という名を口にしたからついてきただけだ。」
美音子「あの…清志郎さんはなぜ比佐を捜しているのですか?」
清志郎「……」
美音子「やはり誰かの仇でしょうか。」
清志郎「あぁ…。」
真子「ふん、どこの誰の仇だか知らないけど、あんただって人斬りじゃん。無所属とはいえ
どうせ今まで何人も斬ってきたんでしょ。」
清志郎「だったら何だ。」
真子「あたし人斬りって大嫌いなの、お父さんを殺した金で雇われたクズよ。」
美音子「ちょっと姉さん、やめなさいよ。」
清志郎「お前らだって比佐を討ちにこの京都へ来たんじゃないのか?」
真子「あぁそうよ、何か文句あるの?」
清志郎「やめとけ、はっきり言うがあんたらじゃ無理だ。」
真子「何ですって?」
清志郎「返り討ちになるのが関の山だ、田舎へ帰ったほうがいい。」
真子「こ、この…!」
美音子「やめなさいってば!姉さん!」
真子「あんたのような人斬りにあたしたち姉妹の気持ちは分からないわよ!たった一人の父を
無念にも斬り殺された気持ちが…!」
清志郎「俺は現実的に物を言っているだけだ、気にさわったのなら悪かったな。」
真子「気にさわったですって?あんたも身内を殺されれば少しは分かるわよ!」
清志郎「あぁ…痛いほどよく分かる。」
真子「え…。」
美音子「まさかあなたも身内を…?」
清志郎「身内どころの騒ぎじゃない、村ごと襲われたんだ…。」
真子「!」
美音子「む、村ごと…!」
清志郎「両親も友人も、俺に剣術の稽古をつけてきた師範代も……そして俺の幼なじみも…
俺を除く村人全員が比佐一派に殺された。」
真子「……」
清志郎「俺の出身は小さな村だったが、全部で53人が斬り殺された。」
真子「ご、53人?!」
美音子「…!」
清志郎「あんたさっき身内を殺された無念が分からないのかと俺に言ったな。では聞くが
53人の村人が殺された無念は分かるか?」
真子「……」
清志郎「人数の問題ではないが、俺もあんたたちの気持ちは分かっているつもりだ。
だが悪いことは言わない、仇討ちはあきらめたほうがいい。」
真子「そうはいかないわよ…。」
清志郎「あんたは比佐の恐ろしさをまるで分かってない。俺はヤツの剣こそ見てはいないが、
俺の師範代の話によれば比佐は魔物の腕前を持っているらしい。」
美音子「そんなに強い剣客なんですか…。」
清志郎「あぁ、ヘタすれば幕府最強の新撰組・沖田総司に匹敵するほどの強さだと言ってた。
維新志士の中に沖田にかなう志士がいるとは思えないが、比佐が相手だったら
けっこういい勝負するかもな。」
真子「で、村人たちが比佐一派に襲われてたとき、あんた何してたのよ。」
清志郎「……」
真子「ふーん、何もできずに怯えてただけか。」
清志郎「おいお前、さっきから俺につっかかってくるが、お前はその俺に一振りで
負けたんだぞ。それで比佐を討とうなんて身の程知らずもいいとこだ。」
真子「なんなら今一度勝負する?」
清志郎「……(キン!)」
真子「今度は負けないわよ。(シャキン!)」
美音子「ちょ、ちょっとお願いだから二人ともやめて。私たちが闘う理由なんてないわ。
目的は一緒じゃないの。」
清志郎「どういう意味だ。」
真子「美音子、まさかあんた…。」
美音子「取るべき道はただ一つ。私たち三人で力を合わせて、比佐小次郎を捜しましょう。」
清志郎「本気か?俺が芸者と組むだと?」
真子「美音子、何を馬鹿なこと言ってるのよ。」
美音子「あら、賢明な判断だと自負してるわよ。剣客は剣客として血の匂いに引かれて
新たな剣客を呼ぶわ。そして芸者は芸者なりの裏の情報網に長けています。
単独で捜すよりは協力して捜索したほうがはるかに早いと思うの。」
清志郎「なるほどな、妹のほうはわりと切れ者だな。」
真子「仕方ないわね、一時手を組むほかないか。」
美音子「これで決定ね。清志郎さん、よろしくね。」
清志郎「あぁ、お手柔らかにな。」
真子「よーし、じゃ比佐を見つけるまでは清志郎に養ってもらいましょ。」
清志郎「な、何だと?おいちょっと待て。」
真子「頼りにしてるわよ、清志郎。」
清志郎「な…」
美音子「うふふ、姉さんにかかったら人斬り侍もかなわないわね。」
.
こうして川澄清志郎は江戸川姉妹と一時手を組み、同士として新たな一歩を踏み出した。
共に比佐小次郎を追うため、京都の町に身を投じる。
やがてほどなく清志郎は、比佐に刀を売ったという商人「取猫 守」との出会いが待ち受ける。
それは江戸(東京)からやってきた有能な刀商人である。
その商人をきっかけに、比佐をつきとめるべく重要な手がかりになるだろう。
だが先はまだ長い道のりの上、ここは血の雨が降り続く幕末の京都。
人斬り比佐小次郎の情報を調べるということは、それは確実に闇へ近づいているということ。
川澄清志郎の旅は まだ始まったばかりだった……。
<弐の章>
〜信州の芸者 江戸川真子と江戸川美音子〜
完
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支援ありあと。
なんかすごく時間かかりそうなんで眠くなたら無理せずに寝てくだはい
今夜じゅうには終わらせます
応援
導かれし志士たち PAGE10
<参の章>
〜江戸の商人 取猫 守〜
京都 島原の町
翌日、清志郎と江戸川姉妹の三人は、とりあえず清志郎が泊まっていた宿屋で
しばらく身を落ち着かせることになった。
真子「へー、なかなかきれいな宿屋じゃん。」
美音子「すみません清志郎さん、私たちまで泊まらせていただいて…。」
清志郎「隣の客間を一つ借りたから二人はそこで寝ろ。俺はこの部屋を使う。」
真子「夜に私たちの部屋に忍んできたら、たたっ斬るからね。」
清志郎「たわけ、誰がお前なんか…。」
清志郎はそう言うと刀を持って座敷を立った。
美音子「あら、清志郎さん。どこかへ出かけるんですか。」
清志郎「俺のふところにはせいぜい一人分ほどの宿賃しかない、仕事を探しに行く。
この京都だったら護衛の仕事くらいあるかもしれないしな。」
美音子「護衛……つまり用心棒ですか。」
真子「用心棒なんてあまりいい仕事とは言えないけど、この際ぜいたくは
言ってられないわね。今はあんたを頼るしかないし。」
美音子「姉さん、私たちも悠長に清志郎さんばかりに甘えてられないわ。」
真子「わかってるわよ、芸者の仕事探さないとね。」
清志郎「なんなら遊郭で働いたらどうだ、あそこは藩士や大御所の大臣たちが出入りしている。
比佐のような人斬り志士の情報が何かつかめるかもしれないぞ。」
美音子「な…」
真子「やっぱそう思う?あたしもそうしたほうがいいかなぁって。」
清志郎「ほぅ、初めてお前と意見が合ったな。」
真子「ほんとね。」
だがそれを聞いた美音子は顔を赤らめて怒り出した。
美音子「だ、駄目だって言ってるでしょう!姉さん!」
真子「わわ……ご、ごめんなさーい。」
清志郎「どうしたんだ、何を怒って…」
美音子「清志郎さん!あなたも変なこと言わないでください!遊郭で働くなんて
絶対に駄目です!」
清志郎「わ、わかったよ…悪かった…。」
美音子「もう、二人して変なことばかり言って…。」
真子「(清志郎、美音子の前でこういう下品な話題は厳禁なのよ。)」
清志郎「(そ、そうなのか。以後気をつける…。)」
真子「(このコ変にマジメなとこがあるからさ、怒らせるとあたしよりも怖いわよ。)」
清志郎「(わ、わかった…。)」
美音子「何を二人でぼそぼそ話してるんです?」
清志郎「い、いや…。」
真子「は、ははは。何でもないわよ美音子。」
清志郎「あぁそうだ。出かける前にちょっと聞きたいんだが、この京都にいい刀商人はいないか?」
真子「さぁ…あたしたちも京都に来て間もないから、刀商人なんて分からないわよ。」
清志郎「そうか…。」
美音子「どうして刀を?清志郎さん刀持ってるじゃないですか。」
清志郎「あぁ、こいつもずいぶん刀こぼれしてな。最近斬れ味が悪い。」
美音子「そうですか…、私たちのお父さんが生きていたら叩き直してもらえたんですけどね。
残念ですが、私たち刀に関しては詳しくないんです。」
清志郎「まぁいい、どのみち金を稼がないと刀も買えない。とりあえず仕事を探してくる。」
真子「いってらっしゃーい。」
美音子「お気をつけて。」
清志郎は宿を出て行った。
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導かれし志士たち PAGE11
一方、こちらは京都祇園町。とある町の一角にて、ある商人が住んでいる家。
常「ねぇあなた、そろそろ起きないと。」
取猫「う〜ん…。」
常「あなたったら。」
取猫「おぉ…もう朝か。やれやれ…。」
常「やっと起きたわね。さぁ早く顔を洗ってお仕事に行かないと。」
取猫「うむ。」
やや小太りのその男はようやく床から起き上がり、庭の井戸で顔を洗う。
この男、名を取猫 守(トルネコ マモル)という。
出身は日ノ本の中心である江戸(東京)から渡って来た刀商人である。
妻の常(ツネ)と息子の実(ミノル)とで暮らす、ごく普通の三人家族だった。
.
実「おはよ、おとうさん。」
取猫「おぉ早いな実。もう起きてたのか。」
実「早くお店に行かないとまた親方さんに怒られるよ。」
取猫「はは、そうだな。」
常「あなた、はいこれ。お弁当。」
取猫「すまんな。」
常「家を出たら寝ぼけないでまっすぐお店に行くのよ。」
取猫「わかっている、そう子供扱いするな。」
常「今日のお帰りはどうなの。」
取猫「うん、たぶんそれほど遅くはならないと思う。」
常「そう、じゃあ今夜は少しぜいたくして牛鍋でもしましょうか。」
取猫「ほほぅ、それは楽しみだな。ついでに一本つけてくれないか。」
常「はいはい、ちゃんとお酒も用意しておきます。」
取猫「あぁそれからな、味付けは関東にしてくれよ。どうも京の料理は
うす味ばかりで食べた気がせん。」
常「いいわ、じゃあ帰りにお醤油屋さんに寄ってきてもらえる?」
取猫「うむ、わかった。では行ってくる。」
常「いってらっしゃい、あなた。」
(´ー`)y─┛~~
妻と一人息子を連れ、この京都へやってきてすでに三年が経つ。
自分の店はまだ持ってはいないが、彼はこう見えても京都で五本の指に入るほどの
有能な商人である。江戸にいたころでも、刀や鎧の知識に関して彼の右に出る者はいなかった。
しかも彼はすでに伝説の刀と語り継がれる幻の名刀を数本入手している。
かの有名な新撰組総長・近藤 勇の愛刀、「長曾祢虎徹(ながそねこてつ)」をも卸した経歴を持つ。
実は彼は一年ほど前に幻の名刀の一本を、あの比佐小次郎に売ったことがあるのだ。
取猫は幕府だけではなく、ありとあらゆる志士から一目置かれていた武器商人だった。
商人としてのその才能を認められ、幕府から何度も誘いを受けたが、彼はそのたびに断ってきた。
やはり取猫も徳川が仕切るような今の日本を忌み嫌い、新時代を切り開く維新のため
刀や鎧を追い求めてきた。
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導かれし志士たち PAGE12
刀屋にて
取猫「おはようさんです。」
主人「遅かったな、何をしてたんだ。」
取猫「申し訳ない。」
主人「じゃあ店番頼むぞ、私は下にいるからな。」
取猫「承知しました。」
いつものように彼は店番につく。
動乱の京都では武具は飛ぶように売れ、刀商人としては景気もわりと良かった。
刀の値段はピンからキリまであるが、この当時は一振りがだいたい十五両程度である。
現在の価格でいうなら約50〜60万円にあたる。
やがて一刻もしないうちに客人が店に訪れた。
雷安「御免。」
取猫「いらっしゃい。」
雷安「ご主人、この店に雷神の剣は置いてあるでござるか。」
取猫「ほぅ、お目が高いですな。しかし少々値がはりますよ。」
雷安「うむ、構わない。いかほどでござるか。」
取猫「二十両ですね。」
雷安「なかなか高いな…だが有り金はたいてでも買う価値のある刀であろう。」
取猫「ありがとうございます。」
雷安「いやぁ、いい買い物をした。また来る。」
取猫「毎度どうも。」
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客「ごめんよ。」
取猫「いらっしゃい。」
客「実は刀を売りたいのだが、よろしいか。」
取猫「では拝見させてもらいましょう。」
客「うむ、こいつなんだが…。」
取猫「ふーむ、なかなかいい太刀をしておりますな。だが少々コシが伸びてますな。」
客「はっはっは、お主にはかなわんな。」
取猫「五両で引き取りましょう。」
客「おいおい、もう少し上でもいいのでは?」
取猫「お客人、ここに刃こぼれがあるのが見えますか。本来ならば三両ですよ。」
客「わかったわかった、あんたにゃ負けた。五両でお願いする。」
取猫「ありがとうございます。」
客「お主はいい商人になる、ではまたな。」
取猫「毎度どうも。」
次から次へと客が訪れ、取猫は相変わらず忙しい日々を送っていた。
取猫「ふぅ、猫の手も借りたいくらいの忙しさだな。」
主人「おい取猫、悪いが町へ行って五寸釘を買ってきてくれんか。」
取猫「承知しました、じゃあ店番代わってもらえますかな。」
主人「わかった。」
取猫は店を出ていった。
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導かれし志士たち PAGE13
京都 四条河原町通り
取猫「えーと、雑貨屋は確かこの通りだと思ったが…。」
取猫は釘を買うため、通行人のにぎわう四条河原町通りまで来ていた。
取猫「まったく人が多いな、この通りは。早いとこ釘を買って……おや?」
そのとき、通りの片隅の広場に何やら人だかりの群れがあった。
20人以上の野次馬が集まり、ある二人の侍を中心に群がっていた。
取猫「何事だ?…ちょっと見てみるか。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
豪蔵「おらどうした、かかって来ぬのか?」
侍「うぅ…ガクガク…。」
豪蔵「ただじっとしていても一両はもらえんぞ?」
侍「う、うおおおおお!」
バシ! バシバシ!
侍「うあっ…!」
豪蔵「甘いな、出直して来い。」
侍「あいたたた…!」
元締め「はい残念でした!またどうぞー!」
町人A「つ、強えな…あの侍。」
町人B「化け物だな…。」
それはまるで熊のような豪傑な剣客であった。斧でも一振りすれば、大木をもまっぷたつに
できそうなほどの体格だった。
元締め「さぁさぁ!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!我こそはと思う者がいたら
木刀を取り、この豪蔵から一本取れば一両があなたのものに!」
.
豪蔵「おらどうした、誰ぞおらんのか。このワシから一本取ってみい。」
町人A「おい、お前やってみたらどや。」
町人B「冗談言うな、あんなゴツイやつと…。」
町人C「木刀とはいえ、あんなやつに叩きこまれたら無事じゃ済まなそうやな。」
取猫「ほぅほぅ、こんな真昼間から…。」
取猫は仕事を忘れ、しばらく見物することにした。
元締め「さぁさぁ!次なる挑戦者はおりませんか!」
町人D「誰がやるかってんだ、あんな豪傑相手に…。」
町人E「あいつもう12人も倒してるやで。」
すると野次馬の後ろのほうから、清志郎が名乗り出た。
清志郎「俺がやってみよう。」
町人A「おぉ!あんちゃん大丈夫か?」
町人B「頑張れよ。骨は拾ってやる。」
取猫「(ほぅ、あんな若い剣客さんが挑戦ですか。)」
.
支援
導かれし志士たち PAGE14
元締め「おぉーっと!次なる挑戦者が登場!なんと若い剣客さんです!」
豪蔵「フン、これはまた女々しい色男が出てきたものよのぅ。」
清志郎「一本取れば一両がもらえるんだな。」
元締め「左様、ですが参加料として十文いただきます。」
清志郎「わかった、受け取れ。」
元締め「毎度あり。では木刀をどうぞ。」
清志郎「木刀か…二年ぶりだな。」
元締め「では次なる勝負を始めましょう!」
清志郎は一両を賭けて豪蔵に挑戦を挑んだ。
豪蔵「ふふ、どこからでもかかって来るがいい。」
清志郎「……」
取猫「(むむ…あの若い剣客さん、ただ者じゃないな…。)」
まだ打ち合ってもいないのに、取猫は清志郎の腕を瞬時に見抜いていた。
.
87 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/03/29 00:33 ID:dZfyMqRe
おや、2人目の支援者がキタ(゚∀゚)ようですね。
取猫「(どこの誰かは知らないが、あの豪蔵とかいうやつ可哀想に…相手が悪すぎる。)」
そしてその勝負は、町人たちがまばたきするほんの一瞬の立ち合いだった。
豪蔵「おらどうした!ビビッて身体も動かぬか!貴様のようなひ弱な…」
―――ッヒュ! ビシィッ!!
豪蔵「な、何ィっ……!!」
清志郎「終わりだな。(ヒュッ!)」
豪蔵「バ、バカな…!このワシが!」
清志郎「おい、一両よこせ。」
元締め「あ、え?えっとその…。」
町人A「え?もう終わり?」
町人B「なんやなんや?何も見えなかったぞ、今の一本か?」
町人C「おいなんだ今のは!まだ勝負ついてないだろ!」
取猫「(何を言ってますか。今のは見事な胴払いだ…。しかも力をまるで入れてない。
あの尋常ではない速さと斬り込み方は、おそらく北辰一刀流だな。)」
清志郎「おい、約束どうり一本取ったぞ。一両払え。」
元締め「え、えっとその…い、今のは何をしたんでしょうか?何も見えませんでしたが…。」
清志郎「……。」
豪蔵「こ、この若造が!もう勘弁ならん!」
豪蔵は怒号して清志郎の背後から襲い掛かってきた。
豪蔵「このおおおおお!」
清志郎「やれやれ…。(ヒュッ!)」
なんと清志郎は今度はおもいきり木刀でなぎ払った。
―――ッズガン!!(バキン!)
豪蔵「うげぇっっ!」
木刀は折れ、豪蔵は10メートルも吹っ飛んだ。
ドガン!
清志郎「今度は見えたか?」
元締め「あ、あわわ……は、はい…。」
清志郎「では一両もらおうか。」
元締め「ま、毎度どうも…。」
町人A「す、すげええ!な、なんて侍だ…!」
町人B「い、今の見たか?あの巨漢をあんなに吹っ飛ばして…。」
町人C「何者なんやあいつ…。」
取猫「ほぅほぅ、たいしたものですな。」
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導かれし志士たち PAGE15
三条通りにて
清志郎「……。」
一両を手に入れた清志郎は、三条通りを歩いていた。
清志郎「……。」
だが突然、清志郎は立ち止まった。
清志郎「…おい、さっきから尾けてくるあんた。何か用か。」
取猫「!」
清志郎「気配が丸見えだ、出てきたらどうだ。」
取猫「こ、これは失礼…。参りましたな。」
清志郎「どこの者か知らんが、誰の差し金だ。」
取猫「ま、待ってください。私はただの商人ですよ。決して怪しい者ではありません。」
清志郎「商人…。」
取猫「先ほどの勝負は見事でしたな。いやぁ、まったく大した腕だ。」
清志郎「ふん、金が欲しかっただけだ。」
取猫「おや、あなたはどこぞの藩士の方ではないのですか。」
清志郎「流浪人だ。」
取猫「それほどの腕を持っておられながら流浪人とは…。」
清志郎「おい、用がないのなら俺についてくるな。」
取猫「いやぁしかしまったく見事な胴払いだった。…だが妙ですね、あなたほどの達人にしては
先ほどの胴払いを決める一瞬、右足の踏み込みがやや深すぎる気がします。」
清志郎「!」
取猫「もしやあなたご自分の刀に支障がありませんか。だから余計に踏み込まないと
斬りこめないクセがついたのでは?」
清志郎「あんた何者だ…。」
取猫「おっと申し遅れました。私は取猫という刀商人です、出身は江戸です。」
清志郎「刀商人…。」
取猫「久しぶりにあなたのような強い剣客さんに出会いました、勝手ながら尾いてきて
しまったことにお許しを。」
清志郎「……。」
取猫「あなたほどの腕を持ったお侍さんは一年ぶりです、私は強い剣客を見るとよけいな
おせっかいを焼きましてね。」
清志郎「あんた、ただの刀商人ではないな。太刀さばきを一度見ただけで見極めるとはな。」
取猫「はっは、時代のせいでしょう。私には剣術の覚えはありません、あくまで武具に関しての
知識と経験しかないので。」
清志郎「では俺の刀を見てもらえるか?」
取猫「いいでしょう。」
清志郎は取猫に刀を渡した。
取猫「ふむふむ、これは…。」
清志郎「わかっている、ひどいものだろ。」
取猫「なんとまぁくたびれた刀になりましたな。このまま使えばあと半月と持ちませんよ。」
清志郎「確かにな。」
取猫「だが無駄がほとんどない、全て真を狙って斬り込んできた刀ですな。」
清志郎「そこまで分かるのか…。」
取猫「ここまで刀を使いこなしてきた剣客は比佐どの以来だ。あの方もあなたのような
強い剣客さんだった。」
清志郎「何?今なんと言った?」
取猫「え…。」
ヽ(´ー`)ノ寝るまで支援します。
清志郎「今なんと言ったのかと聞いてるんだ。」
取猫「ど、どうしたんですか。私何か無礼なことを?」
清志郎「今あんた比佐と言っただろ、ヤツのことを知っているのか?」
取猫「え?あぁ、一年ほど前に…。」
清志郎「!」
突然清志郎は取猫から刀を奪い取った。
ヒュッ! シャキン!
取猫「うわわ!な、何をなさるんですか!」
清志郎「お前、比佐一派の者か?」
取猫「ちょ、ちょっと落ち着いてくださいよ!私は何も…」
清志郎「答えろ!お前は比佐一派の手先なのか!」
取猫「ち、違いますよ!私はただ一年ほど前に比佐という剣客に刀を売っただけで…。」
清志郎「……。」
取猫「お願いですから落ち着いてくださいよ、私はただの商人でして…。」
清志郎「……。」
やがて清志郎は刀を鞘に戻した。
ヒュッ シャキン!
清志郎「嘘をついている様子はなさそうだな。…悪かった、あんたを信用する。」
取猫「ふぅ…まいったなぁ。武器商人という職はこれだから…。」
清志郎「取猫さんといったな、名乗り遅れたが俺は川澄清志郎だ。悪いが比佐について
詳しい話を聞かせてもらえないか。」
取猫「なにやらワケありのようですな。」
清志郎「あぁ、充分すぎるほどワケありだ。」
取猫「ふむ、ではここではなんですから、私の勤めているお店のほうへどうですか。
良ければ店の刀などご覧になってはいかがです?」
清志郎「あぁ、では案内を頼む。」
取猫「あっとそうだ…その前にちょっと雑貨屋へ寄ってもかまいませんか?私そういえば
五寸釘を買いにきたんだった。」
清志郎「かまわん、付き合おう。」
取猫「では行きましょうか。」
町の一角で出会った刀商人、取猫 守。
比佐小次郎に刀を売ったという彼は、過去に比佐と接触しているということ。
清志郎は取猫の案内のもと、彼の勤める鍛冶屋へと向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE16
鍛冶屋にて
取猫「ただいま戻りました。」
主人「何をしておったのだ取猫、釘を買いにいくのにこんなに時間かかりおって。」
取猫「申し訳ない、途中でちょっと寄り道をしてしまいましてな。」
主人「まったく…おや、そちらの方は?」
取猫「あぁ、彼はお客様ですよ。」
清志郎「……。」
主人「これはこれは、どうぞ。お入りください。」
取猫「ご主人、ちょっと席を外してもらえますかな。店番代わりましょう。」
主人「あぁ。じゃあ釘をもらおうか。」
取猫「では確かに渡しましたよ。」
主人は店の奥へ入っていった。
取猫「さぁどうぞ清志郎さん、そのへんにお座りください。」
清志郎「すごいなこれは…、どれも名のある名刀ばかりだ。」
取猫「ははは、ゆっくりご覧になってください。」
その刀屋は店中にさまざまな刀や鎧が置いてあり、ざっと見渡しても200本はありそうだった。
清志郎「これは全てあんたが仕入れたのか?」
取猫「えぇ、中には出来損ないもありますが、だいたい名のある刀は仕入れました。」
清志郎「すごいな…しかしなぜこれほど商人としての腕を持っていながら、
幕府の武器商人として仕えない?」
取猫「ご冗談を。徳川の犬になる気なんぞ毛頭ありませんよ。私はあくまで新時代を
切り開く維新のために武具を追い求めます。」
清志郎「なるほどな。」
取猫「あぁそうだ、いいものをご覧に入れましょう。」
清志郎「?」
取猫はそう言うと、奥の間から一本の刀を持ってきた。
取猫「さぁ、これを抜いてみてください。」
清志郎「……。」
重々しい刀を手に取った清志郎は、柄をにぎってその刀を抜いてみた。
シャキン!
清志郎「こ、これは…。」
さっき間違えてageちゃいました。今他のスレをテキトーにageまくり中
取猫「いかがですかな、あなただったらこの名刀の良さがお分かりになると思いますが。」
清志郎「なんて太刀だ…。こんな刀は初めてみた。」
美しく白銀に光る太刀、黒い鞘には巨大な龍が巻きついているかのような刀だった。
取猫「私の自慢の一品、幻の名刀‘天神白龍’ですよ。」
清志郎「天神白龍?」
取猫「天から授かったような神のチカラを秘め、その一振りは古来言い伝えられる白龍が
舞い降りてくるかのごとく、神の太刀として言い伝えられています。」
清志郎「ほぅ…。」
取猫「ははは、もちろん言い伝えであって本当に龍が出現するわけじゃありませんが。」
清志郎「だがこれは確かに幻の名刀と言われるほどの刀だ。いいものを見せてくれて感謝する。」
清志郎は‘天神白龍’を鞘に戻し、取猫に返した。
取猫「はい、どうも。」
清志郎「見事な刀だ、比佐にも同じような名刀を売ったのか?」
取猫「比佐どのは‘天神白龍’にはまるで興味を示しませんでした。あの方の太刀さばきは
あなたとは正反対ですよ。」
清志郎「どういうことだ。」
取猫「清志郎さん、あなたのご流儀は北辰一刀流でしょう。」
清志郎「さすがだな、見抜いていたか。」
取猫「比佐どのの流儀は鏡新明智流です、たぶんご存知でしょう。」
清志郎「何だと…あの桃井道場のか?」
取猫「はい、確か宿敵でしたな。」
清志郎「そうか、つまりあいつは薩摩藩士というわけか。」
取猫「左様です。」
清志郎「維新三傑の一人、西郷隆盛の手先だったのか…。どうりで尋常の強さではないはずだ。」
取猫「比佐どのは先ほど見せた天神白龍とは正反対の、‘邪神黒竜’という幻の名刀を
買っていかれたのですよ。」
清志郎「邪神黒竜…。」
取猫「魔物のチカラを秘めた黒い竜が降臨するという言い伝えがあり、その一振りは
天をも恐れさせるという魔の刀です。」
清志郎「フン、ヤツにはお似合いの刀だな。」
取猫「比佐どのはおそらくあなたと同等の腕の持ち主ですよ、それに薩摩藩士といえば
仲間の志士が何人かいてもおかしくない。」
清志郎「ヤツがどこの藩士だろうと、この俺の仇には違いない。地獄の果てまで追って
必ずヤツを斬り伏せる。」
取猫「…清志郎さん、良ければワケを話していただけませんか。あなたがなぜ比佐どのを
追っているのかを…。」
清志郎「……わかった、あんたには比佐のことを色々と話してもらわないとならないしな。
まずは俺から事情を話そう。」
やがて清志郎は自分の過去の生い立ち、そして宿敵・比佐小次郎が自分の住んでいた村に
何をしたのかを取猫に話した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE17
取猫「……そうですか、そんなことがあったとは…。さぞおつらかったでしょうな。」
清志郎「俺は時代のために刀を持っているわけじゃない、ただ復讐を成し遂げるためだ。」
取猫「いやしかし、あの比佐どのが…。」
清志郎「何だ?」
取猫「い、いえ…こう言ってはなんですが、私には比佐どのがそんな罪もない村人を
斬り殺すとは思えないんです。」
清志郎「何を言ってる、現に俺の村は比佐一派に皆殺しにされたんだぞ。」
取猫「どうも信じられませんな。…あの、もう一度うかがいますが
下手人は本当に比佐小次郎ですか?」
清志郎「何だ、俺が嘘をついてるとでも?」
取猫「め、めっそうもない。」
清志郎「比佐に恨みを持つ者は俺だけじゃない、つい先日知り合った信州の芸者たちも
比佐を討つべくこの京都にいる。」
取猫「ふーむ、敵の多い方ですな。」
清志郎「取猫さん、そろそろ話してもらえないか。あんたと比佐の関係を。」
取猫「話してもかまわいませんが、その前に一つだけ教えてください。」
清志郎「何だ。」
取猫「清志郎さん、あなたはどうあっても比佐どのを討つ気ですか?」
清志郎「当たり前だ、さっき話しただろう。何度も言うがヤツは俺の村をつぶしたんだ。」
取猫「では今から私が話すことも信じてもらえますか?そしてその話を本当に聞きたいですか?」
清志郎「どういうことだ…。」
取猫「ふーむ、何と申し上げたらいいかな。つまりどうしても仇討ちをなさるつもりなら
このまま私の話を聞かずに、あなたはあなたの選んだ道を進んだほうがいいのではと。」
清志郎「話が見えないな、まずはあんたの話を聞かせてくれ。道はそれからだ。」
取猫「分かりました、お話しましょう…。」
やがて取猫は椅子に座り、仕方ないといった様子で話し始めた。
取猫「今から一年ほど前のことです。私がこの京都に住み始めて二年くらいでしたかな。
いつものようにここで刀を売っていました。」
清志郎「ふむ…。」
取猫「清志郎さん、信じてもらえないかもしれませんが、実は比佐どのは
私たち家族の命の恩人なのですよ…。」
清志郎「何だって?」
取猫「確かに人斬り志士でしたが、私にはあの方が真の悪人とは思えません。
あの方は私と、私の息子を助けてくださった恩人なのです……。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE18
あれは確か私の息子の実(ミノル)が店に弁当を届けにきた昼間のことでした。
実「おとうさん、おかあさんに頼まれてお弁当もってきたよ。」
取猫「おぉ、すまんな。」
実「おかあさん言ってたよ、まったく忘れんぼなんだからって。」
取猫「ははは、まいったな。」
息子がやってきて間もなく、一人の長身の男がこの店に入ってきました。
彼は漆黒の着物を身にまとい、切れ長の鋭い眼光をしていました。
比佐「御免。」
取猫「いらっしゃい。」
比佐「……」
取猫「どうぞごゆっくりご覧ください。」
比佐どのは店に入るなり、黙ったまま店に置いてある刀を一つ一つ見ておられました。
実「わー、かっこいいなぁ。お兄さんお侍さんでしょ。」
比佐「……」
取猫「こ、こらこら。お客様の邪魔してはいかん。」
彼はそのとき私たちには目もくれず、一心に刀をご覧になっていました。
するとさらに二人の剣客が店にやってきたのです。
剣客A「おい、取猫はいるか。」
剣客B「取猫!てめえこの刀どうなってんだ!こんなナマクラ刀を売りつけやがって!」
取猫「な、何ですかあなた方は…。」
実「おとうさん…。」
剣客A「とぼけるんじゃねえ!先日この刀を買った者だ!これ全然斬れねえじゃねえか!
てめえの目はフシアナか!」
取猫「そ、その刀はあなた方が代金もろくに払わずに持っていった刀じゃないですか…。
私に言いがかりをつけられましても…。」
剣客B「あぁ?てめえ客人に向かって何だ!こんな店ぶっつぶしちまうぞ!」
取猫「や、やめてくださいよ…。」
実「お、おとうさん…!」
比佐「……。」
その二人の横暴な剣客は店をつぶすと脅してきました。
どうせ刀を乱暴に扱ってボロボロにしたんでしょう、金もろくに払わずに
奪い取った刀に言いがかりをつけました。
(;゚∀゚)=3
剣客A「おい取猫!これは人どころかてめえのヒゲすら斬れねえぞ!この落とし前
どうつけてくれる気だ!」
剣客B「今すぐ金を全額返してもらおう!」
取猫「そ、そんな…最初から払ってないじゃないか…。」
実「おとうさん、怖いよ…。」
剣客A「まだ分かってないようだな。よし、よーく見とけ。てめえの息子で…!」
取猫「な、何をする!」
実「うわっ!」
剣客A「このガキで斬れるかどうか試してやる!」
取猫「やめてくれ!息子は関係ないだろう!」
剣客B「黙って見てろ!どうせ斬れはしねえんだよ!」
実「助けてーーー!」
私に言わせればこういう輩が真から腐った外道です。
息子を人質に取って、斬れるかどうかを試すなどと狂ったことを言い出しました。
いくらボロボロとはいえ刀は刀。子供など斬られたらひとたまりもありません。
だがそのときです……店の隅で一心に刀を見ていたはずの比佐どのが、
突然その剣客たちの前へやってきました。
支援だよぃっ
剣客A「なんだてめえは。」
比佐「私に貸してみろ。」
剣客A「あ?」
比佐「そのナマクラ刀を見てやろう。」
剣客A「な、なんだてめえは。関係ないやつはすっこんで…」
次の瞬間、比佐どのは目にも止まらぬ速さで刀を剣客から奪い取りました。
―――ッシュバ!
剣客A「?あ、あれ??」
比佐「フム、こいつがそうか。だが本当に斬れないのか?」
剣客B「な…!」
取猫「!」
剣客A「て、てめえ!死にてえのか!(キン!)」
その横暴な剣客が刀を抜こうするよりも前に、比佐どのはそいつらを斬り伏せました。
(キン!)―――ッズヴァ! ビシュ!
剣客A「あ…。」
剣客B「え…。」
比佐「ほぅ、貴様らの言うとうりだ。確かにナマクラ刀だ。(ヒュッ シャキン!)」
ドタリ ドタリ
取猫「な、なんと…!」
実「うわああああ!」
比佐「フン、犬畜生どもにはお似合いの刀だ。」
それはこの私でさえ、その太刀さばきはよく見極められませんでした。
斬り殺された剣客たちの傷口から見て、流儀は鏡新明智流だということぐらいしか
分かりません。何しろ一瞬の出来事でしたから…。
比佐「おい貴様。」
取猫「は、はい!」
比佐「この店で一番よく斬れる刀と、一番魔剣に近い刀を持ってこい。」
取猫「か、かしこまりました!」
その圧倒に気おされた私は、彼に言われるがまま「天神白龍」と「邪神黒竜」を
比佐どのに持ってきました。
取猫「こ、これなどいかがでしょうか…。」
比佐「何だ貴様、こんな名刀を隠し持っていたのか。」
取猫「い、いやその…。」
比佐「フム、こいつは二本とも近藤 勇の長曾祢虎徹に匹敵するほどの名刀だな。」
取猫「ははは…。」
比佐「こいつがいいな、これに決めよう。いかほどだ?」
取猫「そ、それは二本とも長屋が一軒建つほどの高価なものですが…。」
比佐「これで足りるか?」
ジャラジャラジャラジャラ!
取猫「な…!」
比佐「足りないか。」
取猫「い、いえ…!その…!ここここれはいったいいくらになるんで…?」
比佐「数えてないから私にも分からん、だが長屋は数軒は建つだろう。」
取猫「ままま毎度どうも…。」
比佐「邪魔したな。」
彼は「邪神黒竜」を買って店を出ていこうとしました。
私はそのとき、せめてお礼の一言をと思い…。
取猫「あ、あの!」
比佐「何だ。」
取猫「た、助けていただいてありがとうございました…。あなたは私たちの命の恩人です…。」
比佐「礼には及ばん、だがこの刀がナマクラだったら私も貴様を斬り伏せるぞ。」
取猫「ひぇぇ!」
比佐「冗談だ、いちいち本気にするな。」
取猫「あ、あの!せめて恩人の名をお聞かせ願いたいのですが!」
比佐「比佐小次郎だ、まだ何か聞く気か?」
取猫「い、いえ!ありがとうございました!」
そして比佐どのは店を出てゆき、それ以来彼とは二度と会うことはありませんでした…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
紫煙
導かれし志士たち PAGE19
取猫「お話は以上です、私が比佐どのについて分かるのはこれだけです。」
清志郎「……。」
取猫「清志郎さん、この話を信じてもらえるかどうかはあなたが決めることです。
しかしあなたにとって比佐どのは敵でも、私にとっては恩人です…。」
清志郎「この話を聞かせて、俺にどうしろと言うんだ。」
取猫「だから聞かずにあなたの選んだ道を進んだほうが良いと思ったのですよ。
おそらくこの話をしたら、あなたは仇討ちを迷ってしまうのではないかと…。
私には比佐どのも清志郎さんも、真の悪党とは思えません。」
清志郎「この俺がこの程度の話で剣がにぶるとでも?」
取猫「……」
清志郎「この際はっきり言っておく、俺も比佐も所詮は人斬りだ。いくら恩人だろうと
仇討ちだろうと、人を斬ってきたことには変わりない。人斬りの末路は
剣にくたばるか野垂れ死にだ。そんなことは復讐を誓ったときから覚悟はできてる。」
取猫「比佐どのを討ったとして、その後あなたはどうされるつもりですか。」
清志郎「……」
取猫「なるほど、自害なさる気ですな…。」
清志郎「俺にはこの国の将来など関係ないし興味もない。そういうことは坂本龍馬のような
有能な志士にまかせておけばいいと思っている。今の俺には比佐を討つ以外に
生きる理由がない。」
取猫「清志郎さん、私はあなたの仇討ちを止めようとは思ってません。ですがその後
あなたが生きる道はきっと他にもあるのでは…。」
清志郎「家族もいなければ帰る故郷もないんだぞ、どこに俺の生きる道がある。」
取猫「……」
清志郎「…まぁいい、どのみちこれは俺の問題だ。あんたは自分の家族を大事にしてくれ。
話を聞かせてくれて感謝する。」
清志郎は座っていた椅子から身を起こし、店を出ようとした。
取猫「清志郎さん、ちょっと待ってください。」
清志郎「何だ、もう話は終わりだ。俺の気は変わらないぞ。」
取猫「いえ…そうではなくて…。」
清志郎「?」
取猫は「天神白龍」を手に取り、清志郎の前へ差し出した。
清志郎「どういうつもりだ。」
取猫「私はあなたや比佐どのと、こうして出会ったのも何かの運命でしょう。
そしてこの天神白龍と邪神黒竜も、対決するべく運命だったのかもしれません。」
清志郎「取猫さん、まさかあんた…。」
取猫「ですが清志郎さん、死ぬのは簡単なことです。答えを出すのはもう少し考えてからでも
いいのではないでしょうか。」
清志郎「……」
取猫「この刀を受け取ってください、あなたの生きる道はこの刀とともに出してください。」
清志郎「すまないが俺にはこんな高価なものは…。」
取猫「お金はいりません、あなたに差し上げます。これは今のあなたにふさわしい。」
清志郎「取猫さん…。」
取猫「ははは、それとも月払いにしましょうか。」
清志郎「何十年と掛かりそうだな。」
取猫「はっはっは。」
清志郎「……本当にいいのか。」
取猫「はい。」
清志郎は少し考え、やがて取猫から「天神白龍」を受け取った。
清志郎「…ありがとう。あんたのためにも、道を探す努力をしてみよう。」
取猫「よかった……ぜひその刀を役立ててください。死ぬことではなく、生きるために…。」
禁煙
もはや対決は止められぬ運命にあった。
だが取猫から受け取った「天神白龍」により、清志郎の心にわずかな光が差し込めたようだった。
一方、私闘に身を捧げる清志郎を横目に、世では下関戦争が勃発しようとしていた。
本来ならば清志郎の大先輩と言うべき土佐藩・坂本龍馬は、このときすでに確実に
この国を変える人物として一躍名を轟かせつつあった。
だが龍馬はこの当時から新撰組などの幕府側から狙われており、いつどこで暗殺されても
不思議ではないほどだった。
そして清志郎はこののち、さらに新たな出会いが待ち受ける。
北は福島県の会津からやってきた、ある奉行の三人衆が京都へやってくる。
いくさ好きの活発な少女を筆頭に、その護衛の剣客が二人。
彼ら三人もまた、比佐を追うべくしてこの京都にやってくる。
川澄清志郎の心に また新たな兆しが 生まれようとしていた。
<参の章>
〜江戸の商人 取猫 守〜
完
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おおおおおおおおお
支援、めちゃくちゃ助かってます
ageてもsageてもどっちでもだいじょうぶだよ
第四章に突入
4章キター(゚∀゚)
(´ー`)y─┛~~ガンガレ
わくわく
導かれし志士たち PAGE20
<四の章>
〜奉行の三人衆 神崎杏奈 栗田信之助 無頼源二〜
東海道 ある山道にて
栗田「姫様、もう一山こえればじき京都です。いよいよ着きますよ。」
杏奈「あーあ、もう歩き疲れちゃった。カゴ屋でも探そうよ。」
栗田「しかしこの辺りの山道にはカゴ屋なんて通りませんが…。」
杏奈「もー、だから船で行こうって言ったのよ。京都なんて遠すぎるわよ。」
無頼「まったく…姫は文句しか言えんのですか。我らの目的をお忘れですかな。」
杏奈「わかってるわよ爺、薩摩藩士の比佐小次郎のことでしょ。」
無頼「左様、お父上は比佐一派に囚われておるのですぞ。一日も早く助け出さねばなりませぬ。」
栗田「そうですよ姫様、何しろあなたのお父上は幕府の会津藩。維新志士たちにいつ斬られても
おかしくはないですよ。」
杏奈「お父様は必ず助け出すわ。維新志士だろうと何だろうと、このあたしがぶっとばしてやるわ。」
無頼「はぁー、心配のタネは尽きんわい。あなたのようなおてんば姫が刀も持たずに
京都へ行くなど言い出さなければ、ワシはとっくに隠居している歳ですぞ。」
東海道を行くその三人衆、北は福島県の会津からやってきた奉行の使いである。
勇ましげに先頭を切るその少女、名を神崎杏奈(カンザキ アンナ)という。
彼女の父親は幕府・会津藩の家老、神崎右衛門。
その父親が維新の藩士に捕らえられて、すでに一ヶ月が経とうとしていた。
そのさらった志士はやはり比佐一派とのこと。
杏奈は父親を救い出すため、そして比佐を追うべく京都へ旅立ってきた。
そしてその護衛を務める二人の剣客、若いほうの名は栗田信之助(クリタ シンノスケ)。
老人のほうの名は無頼源二(ブライ ゲンジ)。
杏奈は剣客ではない上、一人で京都へ行くと言い出して聞かない強情な姫は
仕方なく栗田と無頼が護衛について旅を共にしていた。
栗田は杏奈にひそかに想いを寄せているゆえ、この旅に不満はないようだ。
だが無頼は隠居してもいい歳であるのに、仕方なく護衛についている上
いくさ好きの無鉄砲な杏奈には、たえず愚痴をこぼしていた。
杏奈「ねぇ信之助、比佐ってそんなに強いのかな。」
栗田「私も間近で見たわけではありませんが、武術会での噂を聞くかぎりでは
並大抵の剣客ではなさそうでしょう。」
杏奈「ふーん。」
無頼「比佐は剣客ですぞ、刀を持たない姫がどうやって志士と闘うと言われるのか。」
杏奈「あら爺、あたしは刀なんて持たなくても闘えるということは爺が一番よく
知ってるじゃん。」
無頼「無茶なことを…。いくら免許皆伝した姫の柔術とはいえ、相手は刀ですぞ。
命がいくらあっても足りん。」
栗田「姫様の身にもしものことがあったら、この栗田は…あぁ…。」
杏奈「心配しなくても大丈夫よ二人とも。あたしだって充分に修行したもん。」
無頼「やれやれ…おかげでワシらは充分心配かけさせられおるわい…。」
杏奈は剣術の覚えこそはないが、それに代わって生まれながらに持つ体術の才能に長けていた。
現在で言うところの空手や柔道を駆使し、その小柄な体格には想像もつかないほどの
必殺の一撃を会得していた。
この三人衆が京都にて清志郎と出会うのは、これよりまだ先こと。
今からこの三人はこの東海道にて、ある一人の剣客と激突する運命にある。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE21
一方こちらは京都 島原
宿屋にて
真子「へぇー、すごい名刀なんだ。天神白龍だっけ?」
清志郎「あぁ。まだ試し斬りはしていないが、おそらくこの国で十本ほどしかない
幻の名刀の一本だろうな。」
美音子「その刀が先ほど話した取猫さんという商人にいただいたのですか?」
清志郎「しかもタダでな。」
真子「すごいじゃん。その商人から比佐の情報はつかんだし、新しい刀は手に入ったし。
まさに一石二鳥ね。」
清志郎「比佐は薩摩藩士だと分かったからな、それだけで充分だ。」
美音子「清志郎さん、まさか藩邸に行くおつもりでは…。」
清志郎「無所属の俺が藩邸にノコノコ出向くような馬鹿はしない、追い払われるのがオチだ。
だいいち藩邸に比佐がいるとは思えないな。」
真子「え?比佐って西郷さんの護衛してるわけじゃないの?」
清志郎「比佐のような人斬り志士は、藩邸には滅多なことがないかぎり出向くようなことはしない。
それに西郷のような超大物人物も、比佐のような腕の立ちすぎる剣客は護衛には置かない。
幕府に嗅ぎつけられるからだ。」
美音子「なるほど、西郷さんにとって比佐はあくまで飛び道具というわけですね。」
清志郎「おそらく比佐一派は、新撰組や幕府の見廻り組を敵に回して最前線で戦っていると思う。」
真子「げげ、そんな戦いにあたしたち横ヤリ入れなきゃなんないの?」
清志郎「だがそうでもしないと比佐には会えないぞ。」
美音子「困りましたね、私たちが新撰組など相手にできるわけもないわ。」
真子「そうよね、あいつら狂気の殺人集団だもん。」
清志郎「何だお前ら、最初に会ったころの意気込みはどうした。」
真子「だってさぁ…。」
美音子「……」
清志郎「情けないな、親父さんの仇討ちはどうした。」
真子「もちろん忘れてないわよ。…でもさ、その取猫さんっていう商人の話によれば
比佐って薩摩藩士の志士で、流儀は鏡新明智流なんでしょ?それと何だっけ…
その‘邪神黒竜’とかいう幻の名刀を持った居合いの達人なんてさ…。」
清志郎「だから何だ。」
真子「気が遠くなるって言ってんのよ…。あんたはともかく、あたしたちじゃ逆立ちしても
勝てそうにないわよ。」
清志郎「お前らしくもないな、闘う前から弱音を吐くなんて。」
支援者は3人ですかね。自分含めて。
真子「くやしいけど、あんたや比佐のような化け物の戦いには参戦できそうにないわ。
たぶんあんたの足を引っ張るだけよ。」
美音子「そうね……残念だけど、姉さんの言う通りだわ。」
清志郎「じゃあどうするんだ。」
真子「……」
すると美音子が何かを決心したように言った。
美音子「清志郎さん。私たち、比佐とは実戦での闘いはあきらめます。彼を討つのは
あなたに委ねましょう。」
清志郎「……。」
真子「…そうね、それが賢明だわ。」
清志郎「いいのか?あんたたちだって親父さんの仇は自分らで討ちたかっただろうに。」
美音子「私たちのぶんも闘ってください、あなたがきっと仇を討ってくれると信じています。」
真子「頼むわよ、清志郎。」
清志郎「…わかった、あんたたちの親父さんの命も背負おう。…しかしどうでもいいが
今日はプレッシャーのかかる日だな…。」
真子「何のこと?」
清志郎「い、いや。何でもない。」
美音子「その代わりと言ってはなんですが、私たちにも戦いの協力くらいはできます。
こう見えてもただの芸者じゃありませんから。」
清志郎「ほぅ、頼もしいな。例えば何だ?」
美音子「姉さん、例の話を。」
真子「え?…あ、そうか。すっかり忘れてたわ。」
清志郎「何のことだ。」
真子「清志郎、朗報があるのよ。なんと比佐の仲間の一人を突き止めたのよ。」
清志郎「何だって?」
真子「ふふん、あたしたちだって何もしてなかったわけじゃないわよ。信州の江戸川姉妹を
甘く見ないでよね。」
美音子「うふふ、この情報をつかむのに苦労しましたけどね。」
清志郎「でかしたな。…よし、さっそく話を聞こう。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE22
場面は変わり、再び東海道 ある山道にて――――
栗田「あ、姫様。京都の町が見えてきましたよ。」
杏奈「いよいよ京都ね、腕がなるわ。」
無頼「姫様、もう一度念を押しておきますぞ。くれぐれも京都の町は充分に
お気をつけくだされ。どこに維新の刺客がいるか分かりませんゆえ。」
杏奈「わかってるわよ。」
無頼「我らは幕府側である会津藩、維新志士にしてみれば格好の餌食ですぞ。
いくら姫様が幕府につくのはイヤだとおっしゃっても、ワシらの身分は事実上幕府側。」
杏奈「あーもう!うるさいなー!あたしにとっては幕府も維新も関係ないの!」
無頼「これだ…お父上が聞いたら泣きますぞ。」
栗田「姫様!どうかそのようなことを言わないでください!」
杏奈「だってさー、どうせ徳川なんてもう死に絶えちゃうでしょ?」
栗田「な、なんてことを!」
無頼「姫様!」
雷安「左様でござる。」
杏奈「え…。」
栗田「!」
無頼「何奴…。」
杏奈たちの前に突然現れた、やや年配の一人の剣客。
それはまるで待ち伏せていたかのごとく、彼ら三人の行く手を阻むように現れた。
雷安「徳川幕府は終わりにする。そのお嬢さんの言う通りでござる。」
杏奈「あなた誰?」
雷安「拙者、薩摩藩士・雷安武義と申す。」
杏奈「え…。」
栗田「薩摩藩士!まずい!姫様下がってください!」
無頼「くっ…!さっそく現れおったか!」
栗田と無頼は杏奈をかばうように刀を抜いた。
シャキン! シャキン!
栗田「姫様には指一本触れさせない!」
無頼「おぬし、比佐一派の者じゃな。」
雷安「いかにも。」
無頼「ほほぅ…では姫様の父親、家老・神崎右衛門を捕らえたのも貴様らじゃな。」
雷安「?…何の話でござるか。」
栗田「とぼけるな!証拠は挙がっているんだぞ!」
雷安「拙者、確かに比佐どのと同じく薩摩藩士だが、お主たちの家老など…。」
無頼「ほぅ、ではなぜワシらを待ち伏せておったのだ?」
雷安「命令によりここで待機していたでござる、会津藩の使いの者が京都へやって来ると
聞いていたものでな。」
栗田「姫様!ここは私たちにおまかせください!」
無頼「老いたとはいえこの無頼、まだまだ剣はにぶっておらん。返り討ちにしてくれる。」
杏奈「ちょ、ちょっとあなたたち!あたしも闘うわよ!」
雷安「フ…剣客二人に少女が一人。だが拙者、どのような相手でも油断はしない。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
京都 島原の宿屋にて
清志郎「雷安武義?」
真子「そうよ、そいつどうやら比佐一派の剣客よ。」
清志郎「ついにヤツの仲間の一人を突き止めたか、だとしたらかなり腕はたつんだろうな。」
美音子「比佐ほどには及びませんけど、かなりの達人だそうです。比佐が薩摩藩士だということが
判明したので、とうぜん雷安も薩摩藩士ということになりますね。」
清志郎「よし、そいつをきっかけに比佐にかなり近づくことができそうだ。二人とも、でかしたな。」
真子「へへーん。」
美音子「お役に立てて光栄ですよ。」
清志郎「しかしどこでこんな情報をつかんできた?」
真子「芸者の仕事が見つかったのよ、そしたらそこに来るお客が藩士のお偉いさんが多くて。」
清志郎「ほぅ、遊郭か?」
美音子「清志郎さん!」
清志郎「す、すまん…。りょ、料亭だよな。」
美音子「もう…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE23
東海道 山道にて
キーン! ドス!バキィッ!
栗田「ぐあっ…!」
無頼「げっ…!」
雷安「両君ともなかなかの腕だが、その程度の剣術では京都で生き残れないでござる。」
栗田「うぅ…!ゲホッ!」
無頼「ぐっ…!しもうたな、緒戦からこんな強い剣客に出会ってしまうとは
まったくついておらんわい…。ゴホッ!」
杏奈「二人とも!大丈夫?!」
栗田と無頼は、雷安との闘いにおいて圧倒的にねじ伏せられていた。
栗田「く、くそ…!二対一でもまるで勝負にならない!しかしどうしてあいつ
みね打ちしかしてこない?」
杏奈「え?斬られてないの?」
無頼「き、斬られていたらワシらはとっくに死んでおりますわい…ゴホッ!」
うん多分3人だね^^
支援トリオ☆
雷安「無益な殺生は自ら禁じている、武士道として当然のことでござる。」
杏奈「あ、あなた…最初からあたしたちを殺すつもりじゃなかったの?」
雷安「これはあくまで拙者の戦い、生かすも殺すも拙者が決めること。」
杏奈「……」
雷安「神崎杏奈どのといったな。最後の忠告だ、そこにいる二人を連れて帰郷願いたい。
さすればこの戦い、ここで終わりにしよう。」
杏奈「え…。」
雷安「仲間には片付けたと言っておく、おとなしく引き下がってもらえんだろうか。」
杏奈「……」
栗田「ひ、姫様!薩摩藩士の言うことなど耳を貸してはいけません!あなたは逃げてください!」
無頼「そ、そうですぞ…!ワシらのことはかまいませぬ!あなたはお父上を助け出さねば…!」
杏奈「……」
雷安「神崎杏奈どの、返事を聞こう。」
杏奈「…ふふ、緒戦からあなたのような気持ちのいい剣客と出会えるとはね。」
雷安「む?」
栗田「ま、まさか姫様!」
無頼「やれやれ…こうなると思ったわい…。」
杏奈「仲間を置いてあたしが逃げるとでも?今度はあたしが相手よ!」
杏奈は戦闘態勢に入った。
雷安「む…お主、剣客ではないでござろう。そんな小柄な体格で…」
だがすかさず杏奈は雷安のふところに入った。
―――ヒュッ!
雷安「し、しまっ…!」
杏奈「ふん、スキだらけよ。」
杏奈は重心を深く取り正拳突きを放った。
ドスッ!!
雷安「うぐっ…!」
杏奈「もう一発!」
雷安「させん!」
雷安は雷神の剣を力いっぱい振り回した。
―――ッヴォン!
だが杏奈は身をかがめてかわした。
杏奈「はずれ。」
雷安「な…!」
杏奈「遅いわよ、ばか。」
杏奈は身体をひねって回し蹴りを放った。
――ヒュッ! ズガンッ!
雷安「うおおおっっ!」
ズザザザーーー!
杏奈「ふふん、刀を持ってないからって甘く見たのが間違いね。あたしの武器は
この身体そのものよ。」
雷安「うぐっ…!」
栗田「す、すごい!姫様あんなに強くなられていたのか!」
無頼「ワシは心配で見ておれんわい…。」
雷安「お、お主…体術の心得があるでござるか。」
杏奈「まだまだほんの一部よ、あたしの本領はこれからなのよ。それにあたし、
あなたの弱点もう見つけちゃった。」
雷安「何!」
杏奈「あなた剣客として力はかなりあるようだけど、いまいちスピードがないわ。
速さを得意とするあたしの体術に対して、あなたの剣は通用しない。」
雷安「こ、こざかしい娘め…!もう手加減しないでござる!」
杏奈「そうこなくっちゃ。」
雷安「ゆくぞ!」
今度は雷安のほうから仕掛けてきた。
――ッヒュ!
だが杏奈は突進してきた雷安の腕をつかみ、一本背負いを放った。
杏奈「やぁっ!」
雷安「バ、バカな…!ぬおおおおお!」
ッドガン!
雷安「ぐあっ…!」
杏奈「何度かかってきても結果は同じよ。」
雷安「な、なんという娘だ…この拙者が…!」
栗田「すごい!姫様万歳!」
無頼「栗田、はしゃぐでない。本当の勝負はこれからじゃ…。」
栗田「え?」
無頼「あの雷安とかいう男、実力の半分ほどしか出しておらん。」
栗田「何ですって?」
雷安「神崎杏奈どのよ。拙者、女を相手にお主をいささか見くびっていた。侘びのしるしとして
今から真剣勝負を申し願いたい。」
杏奈「だからさー、あたしは最初から真剣なんだってば。あなたもみね打ちなんて
セコイことしないでさ、本気でやりましょ。」
雷安「承知致した。(ヒュッ…パシ!)」
雷安はそう言うと、なんと刀を左構えに取った。
杏奈「!」
栗田「左構え?!まさか…!」
無頼「そうじゃ、あやつは最初から利き腕ではない構えでワシらと闘っておった。
あの男、おそらく本来は左利きじゃ。」
栗田「な、なんてやつだ…!」
雷安「神崎杏奈どの、武士としてこの雷安、真っ向から真剣勝負を挑むでござる。」
杏奈「いいわね、ますます面白くなってきたわ。」
だがそのとき、新手の剣客がやってきた。
桜井「なんだ雷安、まだこんなところで油売ってたのか。」
雷安「!桜井どの…。」
杏奈「?」
無頼「まずいのぅ…さらに新手がやってきおったわい…。」
栗田「ど、どうします?」
桜井「雷安、すぐに戻れ。比佐様がお呼びだ。」
雷安「!」
桜井「また壬生の新撰組が現れた、人手が足りないので応戦を要している。」
雷安「し、しかし拙者は今…。」
桜井「雷安、すでに比佐様は新撰組と戦っておられるのだぞ。お前も手を貸せ。」
雷安「ぐっ…。しょ、承知致した。」
桜井「そいつらはもう放っておけ。私は一足先に戻って応戦する、すぐにあとから来い。」
その剣客はそう言うと、足早に去っていった。
杏奈「な、何なの…?」
雷安「神崎杏奈どのよ、不本意だがこの勝負しばしお預けでござる。(ヒュッ シャキン!)」
杏奈「……。」
雷安「だが次に会ったときはこうはいかぬ。お互い心して用心しよう。」
杏奈「ね、ねぇ。ちょっと待って。」
雷安「何でござるか。」
杏奈「どうしてあなたのような人が比佐一派に…?」
雷安「拙者のような人とはどういう人でござるか。」
杏奈「だってさ…比佐はあたしのお父様を…。」
雷安「先ほどから何の話をしているのか拙者には判らぬ。貴君の父方など知らんでござる。」
杏奈「ど、どういうこと?」
栗田「何がどうなっているんだ?」
無頼「ふーむ、もしやワシらはとんでもない思い違いをしておったのかもしれんな…。」
栗田「どういうことです?」
無頼「……」
雷安「お主たち、比佐どのに何の恨みがあるのか知らぬが、あの方は会津藩にまで
手を下すようなマネはしない。比佐どのの敵はあくまで幕府最強の新撰組だけでござる。」
杏奈「だ、だって現にお父様は維新志士に捕らえられたのよ。あたしたち比佐小次郎という名を
突き止めてこの京都まで来たんだから。」
雷安「…拙者にそう申されても知らぬものは知らんでござる。すまぬが急ぐのでこれにて失礼する。」
杏奈「ま、待って!」
雷安はその場を去っていった。
杏奈「……。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(・∀・)人(・∀・)人(・∀・)
導かれし志士たち PAGE24
それから間もなく杏奈たちは京都の町へ降り、負傷した栗田と無頼を連れ
近くの宿屋を探した。
杏奈「二人とも大丈夫?すぐに宿屋を探すわ。」
無頼「ワシはたいした傷ではないですわい、だが栗田は足をくじいたようじゃ。」
杏奈「信之助、手を貸すわ。さぁつかまって…。」
栗田「お恥ずかしい…姫様をお守りするはずの私がこのような失態を…。」
杏奈「そんなこと気にしなくていいのよ。」
無頼「しかし比佐一派には雷安のような達人がまだゴロゴロいそうじゃわい。
先が思いやられるのぅ…。」
栗田「くそ!私たちだけでは役不足なのか…。誰か強力な味方がいれば…。」
杏奈「とりあえず宿屋で一休みしましょう、今後の行動はそれから決めたほうがいいわ。
あなたたちの傷の手当てもしなくちゃ。」
栗田「ところで姫様、この辺りに宿屋なんてあるのでしょうか。」
杏奈「ちょっと待ってて、誰かに聞いてみるわ。」
杏奈は通行人がいく一人の商人を呼び止めた。
杏奈「あ、すみません。そこの人。」
取猫「ん?」
杏奈「ちょっと聞きたいんですけど、この辺に宿屋ってあるかしら。」
取猫「あぁ、宿屋ならそこの角を曲がった……むむ、その人ケガをしてるじゃないですか。」
杏奈「えぇ、さっき山道で比佐一派に…あ、いえ、その、辻斬りに襲われて…。」
取猫「(比佐一派…。)とにかく手を貸しましょう、宿屋はすぐそこです。」
杏奈「あ、すみません。」
ただ事ではないと察した商人・取猫は、その三人を清志郎たちの泊まる宿屋へ案内した。
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導かれし志士たち PAGE25
宿屋 清志郎の部屋にて
清志郎「よし、とにかくその雷安という剣客を捜すことから始めるか。」
真子「そうね、あたしたちももう少し調べてみるわ。」
美音子「案外この近くにいるとも考えられ…あ!」
清志郎「どうした。」
美音子「シッ、誰か来たようです…。」
真子「え?」
清志郎「二人とも下がってろ、俺が様子を見る。」
清志郎は刀を持ち、障子の前に立った。
すると障子の向こうから誰かが声をかけてきた。
*「お休みのところすんまへん。ちょっとよろしいどすか。」
清志郎「何だおかみか。」
清志郎は障子を開けた。
ガラ!
.
しえん
清志郎「どうした、おかみ。」
おかみ「川澄はん、なにやら玄関のほうであなたにお客人が…。」
清志郎「客?俺にか?」
おかみ「はい、取猫はんと名乗る商人のお方が。」
清志郎「取猫さんか。わかった、すぐ行く。」
真子「なんだ、あんた取猫さんにここの宿屋のこと教えてたの。」
清志郎「あぁ、何か情報をつかんだときのためにな。…悪いがちょっと待っててくれ。」
真子「うん。」
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宿屋 玄関
おかみ「こちらどす、どうぞ。」
やがて宿屋の玄関前まで来た清志郎の前に、取猫と杏奈たちがいた。
取猫「おぉ、清志郎さん。」
清志郎「取猫さん、何かあったのか。」
取猫「えぇ、ちょっと。」
清志郎「その人たちは?」
取猫「けが人のようですよ。そこの道で宿屋を探しておられたんで、ここへ連れてきたんです。」
清志郎「それなら俺じゃなくておかみに言ったほうが…。」
取猫「いやそれがですな…。」
清志郎「どうした。」
杏奈「すみません、おかみさん。部屋を貸してもらえませんか。」
おかみ「これはこれはようこそおいでやす、さぁどうぞ。」
杏奈「信之助、ここに泊まることにしましょ。」
信之助「わかりました…あいたたた…。」
無頼「ゆっくり歩け、ここまで来ればもう大丈夫じゃ。」
やがて杏奈たち三人は、おかみに連れられ奥の間へと入っていった。
清志郎「ずいぶん身なりのいい三人だな、どこぞの奉行の者か?」
取猫「おそらく。」
清志郎「取猫さん、なぜ俺を呼び出した。」
取猫「ふむ、もう話してもよさそうだな…。」
清志郎「?」
取猫は辺りをうかがい、小声で清志郎に話した。
取猫「あの三人、例の比佐一派に襲われたようですよ。」
清志郎「何?」
取猫「さっきの三人のうちの女の子がそうこぼしていたのを聞き取りました。」
清志郎「……。」
取猫「あの身なりから察するに、彼らは幕府の者でしょうな。」
清志郎「あんたどう思う、彼ら比佐について何か知っていると思うか?」
取猫「さぁ…。どのみち私は関わりたくないですな、幕府の手の者は好かん。」
清志郎「しかし何か重要なことを知っているかもしれないぞ。」
取猫「なんならあなたが直接聞いてみてはどうでしょう。」
清志郎「……。」
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杏奈たちの部屋にて
杏奈「信之助、あなたは少し横になってなさい。町で薬を買ってくるわ。」
栗田「す、すみません姫様…。」
無頼「ではワシもお供をさせてもらいますぞ。」
杏奈「ダメよ、爺はここで信之助を見張ってなさい。」
無頼「なりませぬぞ、姫様がお一人で京都の町を歩くなど…。」
杏奈「あなただってケガしてるでしょ。それに宿屋とはいえ、動けない信之助を誰が守るのよ。」
無頼「しかし…。」
杏奈「大丈夫よ、薬を買ったらすぐに戻るわ。爺はここで待機していて。」
無頼「わかり申した。くれぐれもお気をつけくだされ…。」
杏奈「じゃあ行ってくるわね。」
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導かれし志士たち PAGE26
京都 島原の町
杏奈「えーと、薬はどこへ行けば売ってるのかなぁ。」
杏奈は薬を買うため、島原の町を一人探し歩いていた。
杏奈「しかしこれが京都の町なのねー、ずいぶんと人が多いわ。これだけ多ければ
薬売りの一人や二人くらいは…。」
幕末のころの薬局屋というのは現在と違い、店に出向くよりも家庭に訪問する薬売りや
町を徘徊する薬売りの商人もいる。例えば豆腐売りや納豆もそれの一つである。
やがてほどなく杏奈は、通りにいた薬売りを見つけたようだ。
杏奈「おじさん、薬売りですか?」
商人「あぁそうだよ。おじょうちゃん薬をお求めかね。」
杏奈「うん。お薬ちょうだい。」
商人「そうか、毎度どうも。…やれやれ、最近はめっきり客も少なくなったわい。
よっこらせっと…。」
その商人は重たそうな荷物を降ろした。
商人「どの薬が欲しいのかね。」
杏奈「軟膏薬と包帯だけでいいわ。」
商人「はいはい、ちょっくら待っておくんなせいよ。えーと…軟膏薬はと…。」
杏奈「ずいぶん色んな薬があるのね。」
商人「へへ、そりゃそうさ。良かったらこれなんかどうだい?」
杏奈「なにそれ。」
商人「パデキアの苗から取った特効薬だ。これを飲めば元気抜群、精力満々。」
杏奈「い、いらないわよそんなもの。軟膏薬と包帯だけでいいわ。」
商人「そうかい、じゃあこれがそうだ。十五文だよ。」
杏奈「はい、じゃあお金。」
商人「まいど!」
杏奈「さてと、薬も買ったし宿屋へ戻ろうかな。」
だがそのとき…
清志郎「おい、そこの人。」
杏奈「!」
清志郎「悪いがちょっとあんたに聞きたいことが…。」
杏奈「(剣客?!)」
杏奈はすぐさま戦闘態勢に入った。
支援。さっきからキリのいい所で上手く支援できなくてゴメンナサイ
杏奈「あなたさっき宿屋にいた人ね。どこの藩士か知らないけど、こんな町中で
いい度胸してるわね。」
清志郎「おい待ってくれ、俺はただ比佐のことを…。」
杏奈「比佐?!さてはあなたも比佐一派ね!覚悟!」
清志郎「ま、待て…!」
杏奈はすかさず回し蹴りを放った。
――ヒュッ! バシ!
だが清志郎は間一髪、腕で防御した。
清志郎「うぐっ…!」
杏奈「ほぅ、なかなかやるわね。じゃこれはどう?」
間髪入れずに杏奈は清志郎のふところに入り込む。
――ヒュッ!
清志郎「!(は、速い…!)」
杏奈は清志郎の着物をつかみ、上手投げを放った。
杏奈「やぁっ!」
清志郎「こ、この女…!調子に乗りやがって!」
だが清志郎は投げられる前に杏奈の首を取った。
ガツッ!
杏奈「!」
清志郎「なめるな!」
清志郎はおもいきり杏奈を投げ飛ばした。
ッブン!!
しかし杏奈は空中で一回転して着地する。
ヒュッ!…スト!
清志郎「何者だこいつ…。」
杏奈「ふふ、あなたかなり強いわね。さっきの雷安といい、今日はあたしついてるわ。」
清志郎「雷安だと?」
杏奈「さぁ、あなたもぼちぼち本気だしたら?そのゴツイ刀を抜きなさい。」
清志郎「待ってくれ、俺はあんたと闘りに声をかけたわけじゃない。」
杏奈「しらばっくれても無駄よ、あなた比佐一派の者でしょ。」
清志郎「誰がそんなこと…。俺はただ比佐のことを聞きたくてあんたに…。」
杏奈「え?比佐の仲間じゃなかったの?」
清志郎「やれやれ…俺はよく女に不意打ちを食らうな。」
杏奈「あなた誰なの。」
清志郎「俺は川澄清志郎というただの流浪人だ。藩士じゃない。」
杏奈「どうしてあなたが比佐のことを?」
清志郎「ワケを話すから、もう蹴りだの投げだの勘弁しろよ。」
杏奈はようやく構えを解き、落ち着きを取り戻したようだ。
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導かれし志士たち PAGE27
お茶屋にて
杏奈「そう…あなたも比佐を捜してたんだ。しかも仇だったとはね。」
清志郎「あぁ。」
杏奈「それにその信州の芸者さんたちや刀商人といい…。あなた、いや清志郎だっけ?
比佐について他に何か知らない?」
清志郎「悪いがヤツについて知っている情報は今話したこと以外にない。あんたたちのほうが
詳しいんじゃないのか。」
杏奈「薩摩藩士だということぐらいしか知らないの、何しろあたしが屋敷に戻ったときは
すでにもぬけの殻だったもん。あるのはこの一枚の宣戦布告状…。」
清志郎「それ、ちょっと見せてもらえるか。」
杏奈「いいわよ。」
杏奈は血に染まった一枚の宣戦布告状を清志郎に渡した。
それには筆でこう書かれてあった。
―――旧時代にしがみつく幕府のいかがわしい者 死に絶えるべし。
家老・神崎右衛門は当方の手によって捕らえた。
我は新時代を切り開く薩摩藩士 比佐小次郎―――
清志郎「これだけじゃ何も分からないな、だがヤツはそんな遠くの会津まで手を下していたのか。」
杏奈「うん、そうだと思っていたんだけど…。」
清志郎「?」
杏奈「あのね、何だかあたし…いえあたしたち、もしかしたら大きな思い違いを
してるんじゃないかなぁって…。」
清志郎「さっき話していた雷安のことか。そいつがあんたに何を吹き込もうが気にするな。
親父さんがさらわれたのは確かなことなんだろ?」
杏奈「うん…。」
清志郎「しかし比佐のやつ色んな土地で暴れていたようだな。次から次へと
ヤツを追う者に出くわすな。」
杏奈「昔あたしが江戸の武術会に出たとき、比佐も出たことがあったのよ。」
清志郎「本当か?じゃああんた比佐と闘ったことがあるのか。」
杏奈「ううん、それが闘う前に比佐は姿を消してしまったのよ。」
清志郎「どういうことだ。」
杏奈「そのころはまだお父様も維新志士に捕らえられてなかったのよ。あたしが順調に
決勝まで勝ち進んでいって、ついに決勝で比佐と当たったの。」
清志郎「で?」
杏奈「でもいくら待っても比佐は決勝戦の場に現れなくて、とうとう不戦勝であたしが
優勝してしまったの。」
清志郎「……。」
杏奈「そしてめでたく会津へ戻って帰ってきてみれば、屋敷はもぬけの殻…。
そしてこの宣戦布告状よ…。」
清志郎「よくわからんヤツだな、比佐は。」
杏奈「ねぇ清志郎、どのみちあたしたち同じ目的を持った同士でしょ。一緒に力を合わせて
比佐小次郎を捜さない?」
清志郎「たぶんそういう展開になると思った…。」
杏奈「旅は多いほうが楽しいもんね。」
清志郎「だがあんたたちは事実上幕府側だろ、俺の仲間には歓迎しない連中もいるかもしれないぞ。」
杏奈「あたしにとって幕府も維新も関係ないわ、お父様を助け出すだけよ。」
清志郎「なるほど、あんたの考え方は俺に近いかもしれないな。」
杏奈「よろしくね、清志郎。」
清志郎「あぁ、その柔術は大した腕だ。頼りにしている。」
杏奈「ふふん、こう見えても免許皆伝よ。」
清志郎「ところでさっき薬を買っていたな。ケガ人が待っているんじゃないのか?」
杏奈「あ、そうだった。早く宿屋に戻らないと爺がうるさいわ。」
清志郎「じゃあそろそろ戻るか。」
杏奈「うん。」
奉行の三人衆と出会い、そして新たな同士が仲間になった。
やがて宿屋へ戻った清志郎と杏奈は、お互い同士だということを仲間たちに説明し、
共に比佐小次郎を追うべく手を組んだ。
江戸川真子は自ら買って出て宴会を開き、この日の夜は宿屋で大宴会が催された。
七人の集う同士たちはしばし目的を忘れ、盃を交わす新たな仲間として賑わった。
――――だがこの夜、思わぬ人物が清志郎たちの前に現れることになる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ヽ(´ー`)ノガンガレ
導かれし志士たち PAGE28
宿屋にて
清志郎と真子と美音子、そして杏奈、栗田、無頼、取猫の七人は集い
宿屋の客間にて酒を交わしドンチャン騒ぎの宴会をしていた。
清志郎「おい真子、お前ほどほどにしないと吐くぞ。そんなに呑んで…。」
真子「なに言ってんのよー、まだ酔っちゃいないわよぉー。」
美音子「ちょっと姉さん、着物がずれてるじゃないの。足もそんなに出して…。」
真子「いいのいいの、へるもんじゃなし。」
栗田「め、目のやり場がないなぁ…。」
杏奈「信之助、なに赤くなってんのよ。」
栗田「べべべ別に、何でもありませんよ。ちょっと呑みすぎただけです…。」
無頼「やれやれ、若いもんは後先考えずに呑みおる。」
取猫「しかしなぜ私が幕府の者と飲み交わさないとならないのでしょうかねぇ。」
無頼「む、おぬし。それは我らに対して申しておるのか。」
取猫「他に誰がいますかな。」
無頼「ほほぅ、たかが商人の風情でワシらに文句があると?」
取猫「そのたかが商人のおかげであなた方幕府は武器や鎧を手にすることができているのです。
あなたこそ奉行の風情で徳川なんぞに…。」
無頼「なんじゃと?年寄りだと思ってそのような口をきくと後で後悔するぞ。」
杏奈「あーもう、こらこら。ケンカしないの。ここでは時代は関係ないのよ。」
真子「よーし!盛り上がったところでそろそろ踊るかな!」
杏奈「へぇー、真子さん舞踊を身につけてたんだ。」
真子「ほら美音子、ぐずぐずしてないで用意しなさいよ。」
美音子「姉さん、忘れてるようだけど、三味線は誰が壊したんでしたっけ。」
真子「あ…。」
杏奈「なんだー、踊り見たかったなー。」
美音子「ごめんなさいね、私の三味線は姉さんが壊してしまったの。」
真子「うぐぅ…。よ、よし!それじゃ脱ぐわ!こうなったらもうヤケよ!」
美音子「姉さん!そんなはしたないこと…!」
真子「美音子、あたしたちは芸者よ。芸者の本来の仕事は身体なのよ。ほらあんたも脱ぎなさい。」
美音子「ちょ、ちょっとどうして私まで…!」
栗田「げげげ!ひ、姫様!見てはなりません。このような下品な…。」
杏奈「なに言ってんのよ信之助、あたし女よ。」
栗田「し、しかし…。」
無頼「栗田、おぬしこそどこを見ておる。」
栗田「い、いや…だって目のやり場がないので…。」
清志郎「めちゃくちゃだな…こんなんで比佐を捜せるのか…。」
宴会は夜遅くまで続き、多少意見の合わない輩たちもいたが
七人の同士たちは共に酒を交わした。
しばらくすると清志郎は座敷を立ち、刀を持って部屋を出ようとした。
美音子「清志郎さん、どこへ行くんですか。」
清志郎「少し呑みすぎた、夜風に当たってくる。」
美音子「刀を持って?」
清志郎「俺はどこへ行くにも刀は手放さない。すぐに戻るからあんたはここで楽しんでてくれ。」
美音子「そうですか、お気をつけて。」
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支援⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡
導かれし志士たち PAGE29
宿屋前
清志郎「ふぅ、しかしあいつら底なしだな。呑むだけ呑んで…。」
夜風の心地よい島原の町、辺りは人影も見当たらない深夜になっていた。
清志郎「この京都のどこかに比佐がいる…必ず突き止めてやる…。」
宿屋では宴会がもよおされている中、清志郎は復讐のことで頭が一杯だった。
すると通りの向こうから一人の剣客がフラフラと歩いてきた。
清志郎「誰だ…?(キン!)」
清志郎はすかさず刀の柄に親指を突き立てる。
だが現れたその剣客は、なんと血だらけで息も絶々だった。
.
雷安「はぁ…はぁ…。」
清志郎「!」
雷安「うぐっ…!」
力尽きたその剣客は、ついにその場へ倒れてしまった。
ドタリ
清志郎「おい、どうした。大丈夫か。」
雷安「うぅ…。」
清志郎「ひどい傷だな…。む?これは…!」
それは刀で斬られた傷ではなく、鉄砲で撃たれた傷跡だった。
清志郎「鉄砲傷だと…?なぜこんな…。」
雷安「お、お主は…?」
清志郎「そんなことより傷の手当てをしないとこのままじゃ死ぬぞ。」
雷安「む、無用でござる…。それよりもお主、ちと頼みがござる…。」
清志郎「何だ、今そんなこと言ってる場合なのか。」
雷安「ど、どこぞの剣客どのか知らぬが…拙者を今この場で斬ってほしい…。」
清志郎「!」
雷安「た、頼む…!‘奴’に殺されるぐらいなら、いっそのこと見知らぬ他人の手で…。」
清志郎「おい、奴って誰のことだ!まさか比佐ではあるまいな!」
雷安「ほほぅ…お主、比佐どののことを知っていたでござるか…。ならば話は早い。ゴホッ!」
清志郎「おい!どういうことだ!お前はいったい何者だ!」
雷安「拙者、比佐一派の薩摩藩士・雷安武義と申す…。」
清志郎「!」
雷安「せ、拙者はあの方に仕えたことがそもそも間違っていたのか…ゲホッ!」
清志郎「あの方って誰のことだ!比佐小次郎か!」
雷安「見知らぬお方よ…比佐どのとどういう関係があるのか知らぬが、くれぐれも
比佐小次郎とは闘わないほうが身のためでござる…。」
清志郎「!」
雷安「愛する理沙様を失った比佐どのは、今や鬼人と化した魔物の剣客でござる…。ガハッ!」
清志郎「おい!何の話をしている!理沙って誰のことだ!」
雷安「た、頼む…!何も言わずに拙者を斬ってくれ…!武士の情けだと思って…。」
清志郎「……」
.
突然清志郎の前に現れた雷安武義。
だが何者かに鉄砲で撃たれ、息も絶々で清志郎のもとに倒れる。
これより時を少々さかのぼり、雷安武義の過去を追う章へと移る。
次なる戦慄が清志郎を待ち受けていると同時に、それはまた一歩、比佐小次郎へと近づく章となる。
<四の章>
〜奉行の三人衆 神崎杏奈 栗田信之助 無頼源二〜
完
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
長編だああああああああああああ
長編ですねええええええええええええ
そうですねえええええええええええ
導かれし志士たち PAGE30
<伍の章>
〜東の剣客・雷安武義〜
東は千葉県で生まれ育った薩摩藩士・雷安武義。
新時代を切り開くため、維新志士として武士道をつらぬく剣客。
比佐小次郎には及ばないが、左利きのその豪剣は目を見張るものがある。
母親「雷安さま!どうか私の子供を助けてくださいまし!」
雷安「承知致した。」
その昔、まだ無名の侍のころ、地元の土地でさらわれた子供を助けるために刀を振るった武士。
雷安「お主が子供をさらった者でござるか。」
侍「そうだ、子供は高額で幕府に売れる。死にたくなければ引っ込んでおれ。」
雷安「そうはいかぬ、お主から子供を助け出すためにここまで来た。覚悟なされよ。」
侍「田舎侍め!返り討ちにしてくれる!」
シャキン!
雷安「やってみるでござる。」
シャキン!
その当時から豪剣を振るい、チンピラ侍など相手にもならなかった。
侍「ぐぉぉぉっ…!」
雷安「みね打ちでござる、安心なされよ。」
侍「く、くそっ…!」
子供「おじちゃん!ありがとう!」
雷安「無事で良かった、さぁ母上の元へ帰るでござる。」
子供「うん!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
かくして雷安武義は京都へ渡り、薩摩藩士として戦いに身を投じる維新志士となる。
比佐「動乱はまだまだ続く、私と共に戦うこころざしがあるか。」
雷安「幕府を倒し、平和な世を取り戻すためなら…。」
比佐「幕府は並大抵の戦いでは倒せんぞ、命を捨てる覚悟でなければな。」
雷安「たとえ相手が新撰組であろうとこの雷安、命にかえても維新を貫くでござる。」
比佐「よかろう、貴様の力を大いに期待する。」
雷安「はっ…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
豪剣を求め、有能な商人のもとで刀を買う雷安。
雷安「御免。」
取猫「いらっしゃい。」
雷安「ご主人、この店に雷神の剣は置いてあるでござるか。」
取猫「ほぅ、お目が高いですな。しかし少々値がはりますよ。」
雷安「うむ、構わない。いかほどでござるか。」
取猫「二十両ですね。」
雷安「なかなか高いな…だが有り金はたいてでも買う価値のある刀であろう。」
取猫「ありがとうございます。」
雷安「いやぁ、いい買い物をした。また来る。」
取猫「毎度どうも。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
――――そして川澄清志郎が京都へやってきた年月。
雷安武義と神埼杏奈が戦った日のこと。
雷安「神崎杏奈どの、武士としてこの雷安、真っ向から真剣勝負を挑むでござる。」
杏奈「いいわね、ますます面白くなってきたわ。」
あくまで武士道をつらぬく雷安は、相手が女であろうと武士として挑んだ。だが…
桜井「雷安、すぐに戻れ。比佐様がお呼びだ。」
雷安「!」
桜井「また壬生の新撰組が現れた、人手が足りないので応戦を要している。」
雷安「し、しかし拙者は今…。」
桜井「雷安、すでに比佐様は新撰組と戦っておられるのだぞ。お前も手を貸せ。」
雷安「ぐっ…。しょ、承知致した。」
比佐一派の雷安と桜井の二人は、甲乙つけたがい両者No.2の座にある。
雷安「神崎杏奈どのよ、不本意だがこの勝負しばしお預けでござる。(ヒュッ シャキン!)」
杏奈「……。」
雷安「だが次に会ったときはこうはいかぬ。お互い心して用心しよう。」
杏奈「ま、待って!」
やがてこののち、雷安の身に思いもよらぬ疑いがかけられることになる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE31
京都 某所 比佐一派の隠れ家。
桜井「比佐様、お怪我のほうは…。」
比佐「たいした傷ではない。」
桜井「危ないところでしたな。あのまま闘っておられたらどうなっていたか分かりません。
しかし比佐様に傷を負わせるとは…新撰組はますます力をつけているようです。」
比佐「ところで桜井、私の名を騙る‘偽者の志士’の情報はどうなった。」
桜井「はっ。そ、それがまた新たな悪行を…。」
比佐「またか。今度は何をしでかした。」
桜井「確かな情報はまだつかんでおりませんが、北は会津藩の家老を捕らえたニセの
維新志士がいるとのことです。」
比佐「フン、それが私だと言うのか。」
桜井「は、無論そのような場所まで比佐様が出向くとは思っておりません。」
比佐「先日は信州の刀鍛冶を斬り殺したとかいう情報があったな。そして今度は
身に覚えのない会津藩の家老か。」
桜井「さらに…。」
比佐「何だ、まだあるのか。」
桜井「も、申し訳ありません…。」
比佐「お前が取り乱すことはない、この際すべて話してみろ。」
桜井「はっ、さらにこれは大事件とも言うべき悲惨な出来事が。」
比佐「やれやれ…。」
桜井「今から二年ほど前、土佐のある小さな村で大虐殺があったそうです。
村人は全員斬り殺され、全滅だそうです。」
比佐「なるほどな、どこのどいつか知らんが、どうやら私に敵をできるだけ多く作って
各地方から仇討ちをさせようとする策略だな。」
桜井「いったい何者が…。ま、まさか新撰組の仕業でしょうか。」
比佐「それはない、壬生の新撰組の中には私以上の剣術の達人たちがいる。やつらはこのような
手の込んだ策は使わん。狼どもは真正面から向かってくるやつらだ。」
桜井「では何者が?」
比佐「おおかた私に剣で勝てない者が、策略を使って殺そうという手段だろう。
はた迷惑もいいところだ。」
桜井「なんと身の程知らずの輩か……。」
そのとき、雷安武義が現れた。
.
雷安「遅くなって申し訳ない、新撰組はどうなったでござるか。」
比佐「やつらは一時退却した。」
雷安「なんと…。比佐どのがお一人で闘っておられたのか。」
桜井「おい雷安、比佐様は腕に怪我をなされてまで闘っておられたんだぞ。危うく
死にかけたところだった。お前今までいったいどこで何をしていた。」
雷安「せ、拙者は今しがたまで東海道の山道にて会津藩の者たちと戦闘を…。」
比佐「会津だと?」
雷安「左様でござる、あなたのご指示で…。」
比佐「私はそのような指示は出していないぞ。」
雷安「何ですと?」
比佐「どういうことだ、これは。」
桜井「雷安、お前いったい何を言ってる。」
雷安「お、お待ちくだされ。先ほど桜井どのは拙者と東海道で会ったでござろう。
そもそもこの指示は桜井どのから聞いたのではないか。」
比佐「桜井、お前がそんな指示を出したのか?」
桜井「私は何も…。」
雷安「な、何を言っておられる!桜井どのが…!」
比佐「雷安、貴様なぜ幕府の会津藩などと関わっていた。」
雷安「で、ですからあなたのご指示で…!」
比佐「私は知らん。」
雷安「ど、どういうことでござるかこれは!桜井どの!」
Σ(゚Д゚)
桜井「雷安…さてはお前、幕府の差し金だな…。この裏切り者め…。」
比佐「……」
雷安「違う!拙者はそのような…!比佐どの!信じてくだされ!」
比佐「……」
桜井「比佐様、よろしいですね。(キン!)」
桜井は刀を抜いた。
シャキン!
雷安「くっ…!(キン!)」
シャキン!
比佐「待て。」
桜井「!」
support
比佐「お前ら二人が立ち合えば良くて合い討ちだ、刀を引け。」
桜井「では比佐様が…。」
比佐「いいから引け、命令だぞ。」
桜井「…はっ。」
雷安「……。」
桜井は刀を鞘に戻し、やがて雷安も引いた。
シャキン! シャキン!
比佐「雷安、武士道をつらぬく貴様が裏切り者とは思えん。だが疑われた以上、
貴様にはしばらくおとなしくしてもらうぞ。」
雷安「ぬぬ…!」
比佐「疑いが晴れるまでは座敷牢でしばらく休んでいるがいい。」
雷安「し、仕方ないでござる…。」
桜井「ふん、命拾いしたな。」
比佐「桜井、雷安を連れてゆけ。」
桜井「はっ。」
やがて雷安は座敷牢に入れられた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE32
そしてその夜――――
座敷牢でじっと座り、黙祷をささげる雷安の前に桜井がやってきた。
桜井「雷安、そろそろ罪を認めるか。」
雷安「拙者、誓って幕府の手の者ではござらん。薩摩藩を裏切るようなマネはしないでござる。」
桜井「まだ言うか…。」
雷安「桜井どの、お主こそ見損なったでござる。何ゆえあのような嘘を申した。」
桜井「知りたいか。」
雷安「一応お聞かせ願おうか。」
桜井「いいだろう…。」
桜井はそう言うと、座敷牢のカギを外して戸を開けた。
ガチャガチャ…カチャン!
ガラガラ!
雷安「ふむ、やはり思った通りでござったな。裏切り者はお主でござろう。おそらく
比佐どのの名を騙り、各地で悪行を行っていたのもお主だな?」
桜井「比佐には剣ではかなわないからな、敵を多く作ればそれだけ有利になる。
だがそれだけではない、薩摩藩の情報を調べるためにも俺はこの比佐一派に入ったのだ。」
雷安「左様でござったか…。最初から幕府の手の者だったとは。(キン!)」
桜井「事のついでだ、冥土の土産にもう一ついい事を教えてやる。(キン!)」
雷安「おそらく言わずとも判っているが、外道の口から申されよ。」
桜井「比佐の愛人、理沙を殺したのもこの俺だ。」
桜井はそう言うと刀を抜いた。
シャキン!
雷安「ついに化けの皮が剥がれたな、武士の風上にも置けん畜生侍でござる…。」
雷安は怒りにまかせ、刀を抜いた。
シャキン!
桜井「いずれ比佐も始末してやるさ。まずはお前から死ね、雷安。」
雷安「……。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE33
彼ら二人の実力はほぼ互角。
だが怒りに震えた雷安の豪剣は、桜井の剣を見事に一蹴。
やがて桜井は雷安の前に倒れる。
桜井「バ、バカな…!この俺がぁぁあああ!ゲホッ!」
雷安「お主のような外道は生きるに値しない。」
桜井「ま、待ってくれ!お前は殺生は禁じているはずだろ!お、俺が悪かった…!」
雷安「この期に及んで命乞いでござるか…。」
桜井「比佐にも…い、いや比佐様にも全て本当のことを話す!だ、だから…!」
雷安「……」
桜井「た、頼む…!殺さないでくれ…!」
雷安「ますます憐れな畜生でござる、もはやお主は死ぬにも値せん。
二度と拙者の前に現れるな。(シャキン!)」
桜井「(ふふふ…。)」
雷安は座敷牢を出て、立ち去ろうとしたそのとき…
.
ッズダァーン!
雷安「うあっ…!」
ドタリ
桜井「ふ、ふふふ…!馬鹿め!どこまでも甘いヤツよのう!」
雷安「お、おのれ…!鉄砲を…!」
桜井「てめえはこの俺が何者だか判っておらん!」
雷安「うぐっ…!き、貴様はただの志士ではないな!鉄砲まで持っているとは…!何者でござる!」
桜井「フン、知る必要はない。てめえはここで死ぬんだよ。」
ッダァーン! ッダァーン!
雷安「うおおおおお!!くっ…!こ、この外道がっ…!」
桜井「まだ生きてるか、しぶとい野郎だ。」
雷安は最後の力を振り絞り、桜井に向かって体当たりした。
雷安「ぬおおおおお!」
桜井「!」
ドガンッ!
桜井「ぐぉぉっ!」
ズザザザーーー!
雷安「くっ…!」
そして雷安は足を引きずって逃げ出した。
桜井「こ、この…!逃がすか!」
ッダァーン!ッダァーン!ッダァーン!
カチッ カチッ カチッ!
桜井「く、くそ!弾が…!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
beistehen
導かれし志士たち PAGE34
京都 島原の町
雷安「はぁ…はぁ…。も、もはやこれまでか…。」
比佐の愛人・理沙という女性を斬り殺した桜井。
そして各地で起こっていた比佐の名を騙る人斬り桜井。
さらに会津の家老を捕らえた桜井。
全ての闇の首謀者が明らかになったというのに、雷安はもはや比佐の元へは戻れなかった。
雷安「ぐっ…!比佐どの…さぞ無念であろう…。理沙様を失って…。」
雷安「うぐっ…!」
力尽きたその雷安は、ついにその場へ倒れてしまう。
ドタリ
清志郎「おい、どうした。大丈夫か。」
雷安「うぅ…。」
清志郎「ひどい傷だな…。む?鉄砲傷だと?なぜこんな…。」
雷安「お、お主は…?」
清志郎「そんなことより傷の手当てをしないとこのままじゃ死ぬぞ。」
雷安「む、無用でござる…。それよりもお主、ちと頼みがござる…。」
清志郎「何だ、今そんなこと言ってる場合なのか。」
雷安「ど、どこぞの剣客どのか知らぬが…拙者を今この場で斬ってほしい…。」
清志郎「!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
比佐一派の隠れ家
比佐「逃げただと?」
桜井「はい、座敷牢を開けて飯を運ぼうとしたそのスキに…。」
比佐「お前も斬られたのか。」
桜井「たいした傷ではありません。だがこの桜井、必ず雷安を捜し出します。」
比佐「もう一度聞くが…雷安が私の名を騙るニセの志士だったのか。」
桜井「左様です。逃げる際に本人がそう言っておりました。ヤツが各地で悪行を行っていた
ニセの志士です。」
比佐「……。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
島原 宿屋前
清志郎「とにかく動くな、今人を呼ぶ。」
雷安「ま、待つでござる…!まだ話は終わっておらぬ…!」
杏奈「何してるの清志郎、そんなとこで…あ!」
清志郎「すぐにおかみを!手遅れになる!」
杏奈「そ、その人…雷安じゃない?!」
清志郎「杏奈!早くおかみを呼べ!とりあえず宿屋へ運ぶ!」
杏奈「わ、わかったわ!信之助も呼ぶからそのまま待っててね!」
杏奈の仲間である栗田は医学の心得があったため、雷安の傷を治療した。
そして雷安は何とか命をとりとめ、かなりの重傷であったが手当ても無事済み
清志郎の泊まる宿屋で寝かせた。
清志郎は他の仲間たちにも事情を話し、比佐一派の者だということも話した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE35
あくる日の朝――――宿屋 廊下にて
杏奈「信之助、雷安の具合どう?」
栗田「傷の手当ては済みましたが意識はありません。少し休ませましょう。」
杏奈「助かりそうなの?」
栗田「たぶん大丈夫でしょう、あの男は頑健です。」
美音子「しかし宿屋の外で倒れていたなんて…。」
真子「何よ何よ、あたしたちが呑んでる最中にそんなことがあったの?」
取猫「あの男も比佐一派の者ですな。」
無頼「ふん、ワシは同情などせんぞ。」
杏奈「爺、あの人はあなたが思っているほど悪人じゃないわよ。」
無頼「しかしですな、ワシらは実際にあの男に…。」
すると栗田が清志郎にそっと声をかけた。
栗田「清志郎さん、ちょっといいですか。」
清志郎「ん?あぁ…。」
杏奈「信之助、どこ行くの?」
栗田「すぐに戻ります、くれぐれも雷安どのの部屋前で騒がないようにお願いします。」
杏奈「わかったわ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
がんがってください
宿屋 外
清志郎「話なら部屋の中でもできるだろうに。」
栗田「清志郎さん、これをご覧ください。雷安どのの身体から出てきました。」
栗田は清志郎の前に鉄砲の弾を出した。
清志郎「分かっている…。鉄砲で撃たれたんだろ。」
栗田「どう思いますか、比佐の仕業だと思いますか。」
清志郎「いや…そうは思わない。」
栗田「では誰が?」
清志郎「俺が知るか、幕府と戦って撃たれたんじゃないのか。」
栗田「しかし私が彼の治療をしているとき、妙なことを言ってましたよ。」
清志郎「何を言ってた?」
栗田「‘桜井という剣客に気をつけろ。奴が全ての首謀者だ’と…。」
清志郎「桜井…?聞いたこともないな。」
栗田「清志郎さん、実は桜井という剣客も比佐一派の者ですよ。」
清志郎「確かか?」
栗田「間違いありません。私たちが雷安どのと戦ったおり、杏奈姫との闘いの最中に
突然現れた剣客です。」
――――なんだ雷安、まだこんなところで油売ってたのか。
!桜井どの…――――――
栗田「そのとき確かに雷安どのは‘桜井’と言ってました。」
清志郎「そいつが全ての首謀者とはどういうことだ。」
栗田「私には分かりませんが…なんとなく今回の一件、いえ、私たち三人だけでなく
清志郎さんもみんな、敵を間違えているのではないでしょうか…。」
清志郎「全ての仕業は比佐ではないと言うのか。」
栗田「おそらく…。」
清志郎「何の確信があってそう思うんだ?全てお前の憶測だろ。」
栗田「ですが清志郎さん、どのみちもう少し詳しいことを調べてから仇討ちを…。」
清志郎「雷安の意識が回復するのはいつごろだ。」
栗田「当分はだめですよ、相当な重傷ですから。」
清志郎「フン、ではヤツを叩き起こしてでも何か吐かせてやる。」
栗田「清志郎さん!いけません!」
栗田は清志郎の前を立ちふさがった。
だが比佐一派の一人である雷安を見つけた清志郎にとっては、本来ならば
今すぐ斬り捨てたい気持ちで一杯だった。
清志郎「どけ、栗田。」
栗田「おそらくこうなるだろうと思って、あなたを外へ連れ出したんです。冷静を装っていますが
今のあなたは人を斬りかねません。」
清志郎「栗田、お前はいったいどっちの味方だ。お前だってあの男にやられたんだろ。」
栗田「私は杏奈姫を信じています、雷安どのは悪人ではありません。」
清志郎「それはお前が杏奈に対する私情をはさんでいる、そこをどけ。」
栗田「では医者としてあなたを止めます、医者は手当てをした重傷の者を守る義務があります。
今のあなたを雷安どのに近づけることはできません。」
清志郎「俺を止めたければ刀で止めてみろ。(キン!)」
栗田「うっ…。」
清志郎「どうした、医者とはいえ剣客だろ。」
栗田「い、いいでしょう…。どうしてもと言うのなら、私を斬ってからにしてください。」
清志郎「……」
栗田「……」
栗田は何としても清志郎の前から動こうとしなかった。
清志郎「…フン、わかった。お前の勝ちだ。(パチン!)」
栗田「ふぅ…。」
清志郎「だが意識が戻ったらヤツに質問をさせてもらうぞ、比佐の居所を聞きださないと
ならないからな。」
栗田「わかりました…約束しましょう、その代わりあなたも約束してください。
私がいいというまで、決して雷安どのには近づかないと。」
清志郎「いいだろう、約束する。」
雷安の意識の回復を待つ清志郎、そして闇の首謀者が明らかになりつつある謎の剣客「桜井」。
どのみち清志郎と比佐の激突は避けられぬ運命の兆しがあった。
対決の時は近い。清志郎の最終戦はもう間近に迫っていた…。
<伍の章>
〜東の剣客・雷安武義〜
完
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ねむい人は無理せず寝てくだはい。
これは第七章まであります
長編ですな(*゚∀゚)=3ハァ
長編ですね(゚∀゚)
導かれし志士たち PAGE36
<六の章>
〜復讐こそ我が人生〜 川澄清志郎編 其の一
島原の町 宿屋にて
真子「雷安って人の具合どう?」
美音子「まだ意識は戻ってないわ、ずっと寝たままよ。」
雷安の眠る部屋から出てきた美音子は、水の入った洗面器と手ぬぐいを持っていた。
真子「美音子、あんた一晩中看病してたの?」
美音子「だって放っておくわけにはいかないでしょ。傷のせいで熱が下がらないし…。」
真子「雷安は比佐一派の仲間なのよ、わかってるとは思うけど。」
美音子「えぇ、わかってるわ。」
真子「だったらどうして…。」
美音子「姉さん…私もあの人が悪人とは思いにくいわ。とてもお父さんを殺した
仇の仲間とは思えないの。」
真子「たとえ雷安が悪人でないとしても、比佐は悪人よ。お父さんを殺したのよ。」
美音子「何だかそれも疑わしくなってきたわ…どうしてかしら。」
真子「何を言ってるのよ、ほんとどうかしてるわよ。」
美音子「ところで清志郎さんは?」
真子「寝てるわ。清志郎ここのとこ毎晩うなされてるみたいよ。」
美音子「大丈夫かしら…。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
清志郎「……。」
同じ夢を見る回数が増えてきた。特に血に飢えている時期はなおさらだ。
毎晩のように寝汗をかいて深夜にうなされる。
俺(清志郎)の村が襲われたときの夢を……。
母「清志郎、今日のお稽古は?」
清志郎「今日は休みだよ母さん。」
母「そう、じゃあ悪いけど父さんを呼んできてもらえる?そろそろお昼にしましょう。」
清志郎「父さんどこ行ってるの?」
母「小川で釣りをしてるわ。お願いね。」
清志郎「わかった、じゃあ行ってくるよ。」
あの日のことは今でもよく覚えている。忘れようったって忘れられない。
.
師範代「おぉ清志郎、何をしている。散歩か?」
清志郎「父さんを呼びに小川へ行くんですよ、師範代。」
師範代「そうか、ところでお前の幼なじみの静江のことだが…。」
清志郎「何です?」
師範代「またしかられてしまった、あまり清志郎をいじめるなと。」
清志郎「余計なことを…。」
師範代「はっはっは。…だがな清志郎、これもすべてお前のため。知ってるか?お前よりも
少し年上の剣客だが、剣術の腕を買われて維新志士になった侍のことを。」
清志郎「その話なら前に聞いたじゃないですか。比佐小次郎とかいうお侍さんでしょ。」
思えばこの当時から、こんな田舎村でも比佐の噂は耳にしていた。
だがその尋常でない強さと名ぐらいしか聞いていなかった。
.
師範代「比佐小次郎は強いぞ。いずれはあの新撰組一番隊組長・沖田総司に匹敵するほどの
剣客になるだろう。お前も負けるわけにはいかんな。」
清志郎「師範代、いい機会だからこの際はっきり言いますね。」
師範代「何だ。」
清志郎「ぼく今日かぎりで剣術は辞めさせてもらいます。」
師範代「……」
清志郎「ぼくはサムライなんかになりませんと言ったはずです。刀で人を斬るなど…。」
師範代「いいか清志郎、今は動乱の時代なんだぞ。お前の気持ちは判るが…。」
清志郎「いやだったらいやだ!剣術なんてクソ食らえだ!」
師範代「お、おい待て!清志郎!」
当時、俺は剣術にも時代にも何の興味もなかった。ただ安心して暮らせる時代があればそれでいい。
だが幕府を倒さねば平和な世は来ないことぐらいはわかっている。
それでも俺は刀を持つ気はなかった。
.
静江「あら清志郎、どうしたの?」
清志郎「別に…。」
静江「その顔はまた師範代に何か言われたのね。」
清志郎「そんなんじゃないよ。」
静江「ねぇ清志郎、私たちいつまでもこの村で安心して暮らしたいわね。」
清志郎「うん…。」
本当に大切な存在というのは、失ってから初めて気がつく。
想いと伝えられなかった者を失ったとき、それが心から愛する者だったと初めて気がつく。
父「おぉ清志郎か、どうした。」
清志郎「もうお昼だってさ、そろそろ帰ろうよ。」
父「呼びに来てくれたのか、すまんな。」
清志郎「帰ろ、父さん。」
父「うむ。」
とても父に剣術を辞めたなどと切り出せなかった。
何しろ親父は俺をりっぱな侍として期待していたからだ。
.
応援団1人脱落?
母「おかえりなさい、夕食のおかずは釣れましたか?」
父「いや、さっぱりだった。」
母「そんなことだろうと思いましたよ。」
父「すまんのぅ、とにかく昼メシにしてくれないか。もう腹ペコだわい。」
母「はいはい。清志郎、お前もお座り。」
清志郎「うん。」
父と母三人で暮らす小さなこの村、俺はここが好きだった。
いつまでもこの村にいたかった。
父「清志郎、剣術のほうはどうだ。」
清志郎「え…、うん。」
父「お前には才能があるぞ、いつの日かりっぱな志士となって戦いに行くのだろ。」
清志郎「……」
母「でもねぇ、今の京都は怖いから…。」
父「清志郎なら大丈夫だ、こいつはきっと坂本龍馬のような国を背負う志士になるわい。」
清志郎「あのね父さん、実は…。」
父「いやー、今から楽しみだ。お前の武勇伝をこの村で聞くのがな。」
清志郎「……」
俺はついに切り出せないまま、これが両親との最後の食事になってしまった。
.
村人「大変だ!侍の群れがこの村に!」
父「何だと!」
母「清志郎!早く隠れなさい!」
清志郎「で、でも…!」
父「心配いらん!父さんたちも隠れるから早く!」
清志郎「う、うん…!」
ヤツらがなぜこの村を襲ったのかは知らない。
ここは幕府も維新も関係ないただの村だというのに…。
清志郎「うぅ…!」
俺は納屋の馬小屋に身を隠し、一人ただ震えていただけだった。
.
*「うぎゃああああ!」
*「ぐああっ!」
*「ぎえっ!」
*「た、助けてくれーーーー!」
ザシュッ!ビシュッ!
ビチャァッ! ドシュッ!
次々に聞こえてくる悲鳴、そして血しぶきを上げる音。
俺は恐ろしくて目を閉じ、耳をふさいだ。
だが悲鳴は聞こえてくる。彼らの声は未だに頭から離れられない。
清志郎「うあぁ…ガクガクブルブル…。」
*「きゃああああ!」
*「ぐぉぉっ…!」
*「ぎええぇぇっ…!」
ビシュッ! ザシュッ!ズバッ!
.
清志郎「うぅぅ…!」
やがて納屋の外から話し声が聞こえてきた。
*「い、いったいお前らは何者だ!」
*「私の名は比佐小次郎だ。他に質問は?」
*「うわああああ!!」
――――ザシュッ!
*「ぎぇぇっ…!」
ドタリ
*「フン、これで全員か。」
*「そのようですな。」
*「よし、全員引き上げるぞ。」
*「はっ。」
ヤツらが立ち去ったのち、納屋から出た俺の目の前には信じられぬ地獄の光景があった。
清志郎「父さん!母さん!」
両親だけではなく、殺されたのは俺以外全員。53人の罪なき村人が斬り殺された。
清志郎「うわああああああああああああ!!」
俺は運良くヤツらに見つからずに助かった。
だが今でも俺はときどき思う。どうせなら自分も殺されれば、こんなつらい思いはしなかったと。
清志郎「うぅぅ…!」
そして一番見たくなかったものを、俺の目の前で見せられた。
.
清志郎「し、静江!生きてたのか!」
静江「き…清志郎…。あ、あなたなの…?」
清志郎「よかった!すぐ手当てしてあげ……ハッ!」
静江「き、きよしろ…。会いたかった…。」
清志郎「だ、だだ大丈夫だよ静江…たいした傷じゃないよ…うぅ…。」
胸を斬り裂かれて肺をやられ、目を斬られて足をやられ、‘たいした傷’ではなかった。
清志郎「うあぁぁん……お、お願いだからしっかりして静江…死んじゃやだよ…。」
静江「清志郎…どこなの…何も…見えない…。」
清志郎「ぼ、ぼくはここにいるよ静江……。どこにもいかないよ…。」
俺は血まみれの静江の手を握ること以外、何もできなかった。
.
静江「きよしろ……ずっとそばに…いてくれる…?」
清志郎「うぅ…。いるよ…ずっときみのそばに…。」
静江「き、きよし…ろ……。」
清志郎「静江!静江!」
血に染まった静江は、俺の見ている目の前で死んだ。
清志郎「静江ーーーーーーーー!!」
やがて俺は全滅した村人の墓を一人で掘り、死んだ師範代の持っていた刀を抜いた。
シャキン!
清志郎「………」
.
…。
53人の村人が殺された無念もあるが、一番腹が立ったのは何もできなかった自分に対してだ。
死にかけた静江を前に、俺は泣きながら手を握ってやることしかできなかった。
ともかく師範代の望んでいたとうり、これで俺に刀を持たせる理由ができた。
そして俺に新たな生きる道ができ、心に鬼が棲みついた記念すべき日である。
比佐小次郎という名の肥溜め野郎をこの手で血祭りに上げること。
そしてその仲間も全員見つけ出し、八つ裂きにしても飽き足らないほどブチ殺す。
それが済めばこの村へ戻り、めでたく俺は野垂れ死にする。
何がどうあろうと俺は 必ず復讐を 成し遂げる……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE37
比佐小次郎編 其の一
私(比佐)が薩摩藩士として幕府と戦い始めて、もう何年になるだろうか。
出身は自分でもよく分からない、物心がついたときにはすでに刀を持っていた。
髪と瞳の色が違うことから、どうやら私は異国人とのハーフだそうだ。
藩士A「比佐様、お疲れ様です。」
藩士B「お怪我はありませんか。」
比佐「あぁ。」
藩士C「お疲れ様です、比佐様。」
藩士D「比佐様、少しお休みになってください。もう十日以上も闘い通しです。」
比佐「そうはいかん、またいつ壬生の連中が襲ってくるか分からん。」
この京都にて、戦いを忘れた日はないほど日夜刀を振り回していた。
おかげで私は座ったまま寝ることを覚えた。その気になれば立ったままでも寝られるだろう。
何の自慢にもならない特技だ。とにかく私はここ何年か、熟睡というものを知らない。
藩士E「比佐様、西郷先生から伝言が。」
比佐「池田屋のことならもう知っている。壬生の新撰組の仕業だそうだな。」
藩士E「はっ。多数の犠牲者が続出して…。」
比佐「この借りは必ず返す、長州も黙ってはいないだろう。」
私にとって最大の強敵は幕府最強の新撰組。
そのほとんどが集団で襲い掛かる雑魚だが、中には恐ろしいほどの腕を持った剣客が数人いる。
今の私でさえ、一対一でも勝てるかどうかは正直自信がない。
.
比佐「おい、理沙はどうした。」
藩士F「奥の間にてお休みになられております。」
比佐「分かった。」
最前線での闘いに疲れ、私はときおり理沙に会いに行く。
比佐「理沙、おとなしくしていたか。」
理沙「比佐さま…。また人を斬ってらしたのですか…。」
愛人・如月理沙(キサラギ リサ)と初めて出会ったのは、動乱の京都においてだ。
幕府に売り飛ばされようとしていたところを、ちょっとした気まぐれでお節介にも助けてやった。
売人は私につっかかってきたので、とりあえず斬っておいた。
.
比佐「理沙、聞いてくれ。私は幕府を滅ぼすことに決めた。」
理沙「わかっております、あなたは戦いでしかご自分を癒せないのですから。」
比佐「それは皮肉か?」
理沙「はい。」
比佐「はっきり言うやつだな、だがそこがいい。欧州の娘はみんなそうなのか?」
理沙「どうでしょうか、妹は私とはあまり似てませんけど…。」
理沙の苗字の「如月」というのは、この日ノ本へ来てからついたそうだ。
何しろ理沙はもともと遠くの国で生まれた異国人らしい。
詳しくは知らんが、はるか北の欧州生まれで妹が一人いるそうだ。
比佐「動乱はまだ激化する。この国に平和が訪れるまでは、お前はここでおとなしくしていろ。」
理沙「比佐さま、無理を承知でお願いします。刀を捨てるわけにはいきませんか?」
比佐「それはできないと言っただろう、新時代を切り開くためだ。」
理沙「でも…。」
理沙には悪かったが、今の私は刀を捨てる気はなかった。
なぜなら刀を捨てるには、私はあまりにも人を斬りすぎた。
今さら後戻りはできない。
.
理沙「私と一緒にどこか遠くの国へ行きませんか。戦争のない国へ…。」
比佐「戦争のない国などあるわけがない。」
理沙「でもこのまま戦い続けて、あなたの身にもしものことがあったら…。」
比佐「心配するな、そう簡単に殺されはしない。」
理沙「私、聞きました。比佐さまを狙う剣客は新撰組だけではないということを。」
比佐「知っている、各地方から何人かの仇討ちが私を追っているらしい。」
私を追う仇討ちの噂はすでに聞いていた。
だが身に覚えのない輩ばかりで、どう考えても狙われるいわれがない。
理沙「あなたが片時も刀を離さずに座ったまま眠るその姿が、私にはつらいんです。」
比佐「お前が気にかけることではない、こうでもしないといつ誰が襲ってくるか分からんからだ。」
理沙「哀しいお人です…いえ、哀しい時代ですね…。」
比佐「安心しろ、いつの日かきっと平和な時代が来る。来させてみせる。」
理沙「比佐さま…。」
.
理沙の涙はもう見たくなかったが、その涙は美しかった。
まるで宝石のような輝きの涙だった。
この哀しげな涙を、いつの日か私は喜びの涙に変えてみせる。
だが平和な時代が来ないまま、私はこの最愛の理沙を失ってしまう。
桜井「比佐様!こちらです!」
比佐「いったい何事だ。」
桜井「も、申し訳ありません!気がついたらすでに襲われていて…!」
比佐「犠牲者は誰だ。」
桜井「はっ、数名の藩士と、それに…。」
比佐「理沙はどうした。」
桜井「お、お待ちください!見てはなりません!」
比佐「おい、まさか…。」
桜井「全て私の責任です!どうかご覧にならないほうが…!」
比佐「そこをどけ。」
桜井「比佐様…!」
比佐「どけ!」
桜井「お、お待ちください!」
比佐「!!…り、理沙…!」
下手人は未だに不明だが、理沙は何者かによって斬り殺された。
幕府の者とは考えにくい、だが必ず見つけ出して斬り殺す。
今の私は相手が幕府だろうと仇討ちだろうと、目に写るものは全て斬る。
もう時代のために人を斬るのはこれまでだ。今日から私は理沙のために人を斬る。
邪魔立てする者は片っ端から八つ裂きにする。
比佐「桜井。」
桜井「は、はい!」
比佐「お前が調べたその仇討ち…清志郎とか言ったな。」
桜井「はっ。」
比佐「私とどっちが強い。」
桜井「はっ、その…正直に申し上げて、比佐様と同等の腕前かと…。」
比佐「ほぅ。」
桜井「まさか比佐様、奴と…?」
比佐「理沙を殺した輩を見つけ出す前に、運良くそいつと出会えたらの話だ。どうせ私を
追っているのだろう?そのうち向こうからやって来るだろうな。」
桜井「……(馬鹿め、何も知らずに…。)」
.
理沙が死んでからというもの、私は血に飢えてしょうがなかった。
誰でもいいから斬らないと、いてもたってもいられなくなった。
比佐「桜井。」
桜井「は、はい!」
比佐「私はこのところ久しく人を斬ってない。」
桜井「は…?」
比佐「理沙のことを思い出すたびに血が騒ぐ、誰でもいいから獲物を連れて来い。」
桜井「(ゾクッ…)」
比佐「どうした、何を怯えている。」
桜井「ひ、比佐様。今のところ壬生の連中もおとなしいゆえ、あまり無茶は…。」
比佐「なんなら今すぐ新撰組本陣へ乗り込むか。今の私だったら沖田や永倉にも
勝てそうな気がする。」
桜井「ど、どうか気をお静めになられてください。そのような無鉄砲な…。」
比佐「ではお前が相手になってくれるか。」
桜井「!!」
比佐「冗談だ、そう怯えるな。」
桜井「う、うぅ……。」
.
実はこのとき、本気で私は新撰組本陣へ一人で乗り込もうかと一瞬考えた。
つまりそれほど血に飢えていたのだ。
願わくは 川澄清志郎とかいう剣客が私を楽しませてくれることを期待する。
そして 理沙を殺したやつと出会えることを祈る。
あわよくば 復讐を成し遂げたのち私を斬ってくれる輩の出現も願う。
私も導かれし志士の一人だとしたら 破滅の道へ導かれよう。
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応援
導かれし志士たち PAGE38
そして雷安武義が倒れてから二日後の夕方――――――
雷安「……」
雷安「む……」
栗田「気がついたようですね。」
雷安「お、お主は…!」
栗田「まだ動かないほうがいいですよ、手当てはしましたが完全には治ってないですから。」
雷安「拙者は…やはり死ねなかったのでござるか…。」
栗田「はい、お気の毒ですが。」
雷安「お主は医者だったのか。礼を言いたいがそうもいかぬ、せっかく武士の死に場所を
見つけたというのに…。」
栗田「何があったのか知りませんが、どうしてそう死に急ぐのですか。」
雷安「比佐一派を逃げ出してきた拙者は、もはや脱藩をしたのも同然。裏切り者扱いされ
外道によって手を下されるくらいなら、他人の手によって斬られてもかまわぬでござる。」
栗田「そんなに死にたければ勝手にどうぞ、しかしその前に治療費を払ってからにしてください。」
雷安「…ふっ、お主はまったく…。気が変わった、やはり礼を言うでござる。」
栗田「どうも。」
雷安の顔に少し笑みがこぼれた。
雷安「ところでお主の仲間たちは?」
栗田「みんな別室にいますよ。あなたの意識が戻ったら、真っ先に聞きたいことがある人が
首を長くして待ってます。」
雷安「おそらく拙者の首が欲しいのだろう。この雷安、逃げも隠れもせぬから斬りたければ
好きにしてくれと伝えてほしい。」
栗田「では比佐一派について全て話してもらえますか?」
雷安「うむ…よかろう。承知致した。」
栗田「よかった…。でも安心してください。会津藩の私が言うのも何ですが、あなたが
比佐一派の者であろうと、少なくとも私はあなたが真の悪人だとは思っていません。」
雷安「むぅ…。」
栗田「私や杏奈姫の目的はあくまで家老・神崎右衛門を助けること。」
雷安「……」
栗田「あなたは今死ぬべき人ではない、私たちは仲間ですよ、雷安どの。」
雷安「お気遣い、かたじけない…。」
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比佐一派の隠れ家にて
比佐「おい、桜井はどうした。」
藩士A「は、それが今朝方からずっとおられなくて…。」
比佐「……」
藩士B「おかしいですな、いつもだったら居るはずですが…。」
比佐「藩邸から戦闘指示を受けたか?」
藩士A「い、いえそれが何も…。」
藩士B「いったい桜井さんどこへ行ったのか…。」
比佐「……」
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導かれし志士たち PAGE39
だがその同時刻――――京都 三条小橋にて
三条小橋で戯れる小さな子供たちが数人、そこへ一人の少年剣客がやってきた。
沖田「やぁみんな、元気だったかい?」
子供A「あ、総司おにーちゃんだ!」
子供B「おにーちゃん、どうしてずっと遊んでくれなかったのー。」
沖田「ごめんよ、おにいちゃん最近ちょっと忙しくてね。」
子供C「おにーちゃん、マリつきしよー。」
子供D「ばーか、総司おにいちゃんは新撰組なんだぞ。マリつきなんて女々しい遊びなんか
するもんか。」
子供C「なによー、総司おにいちゃんはやさしいもん。」
沖田「あーほらほら、ケンカしないで。みんなで仲良く遊ぼうね。」
.
笑顔を振りまく子供好きのその少年剣客、かの有名な新撰組一番隊組長・沖田総司である。
幕府側最強である新撰組の中でも沖田、永倉、斎藤の三人は屈指の使い手。
そのあどけない表情とは裏腹に、沖田は幾人の維新志士たちを斬ってきた京都の治安を守る
特攻剣士である。
中でも特に長州藩はこの沖田を恐れ、常に警戒していた。
子供D「総司にいちゃん!おれに剣術教えてくれよ!」
子供E「あ、おれもおれも!おにいちゃんみたいに強くなりたいよ!」
沖田「ははは、まいったなぁ。ボクは…。」
子供C「ダメよー、あたしたちとマリつきするんだもん。」
子供B「そうよそうよ。」
子供D「女はすっこんでろ!総司にいちゃんはおれたちのものだ!」
沖田「こらこら、ケンカしちゃダメだって……ん?」
そのとき、三条小橋にやってきたもう一人の侍が沖田に声をかけてきた。
新撰組副長・土方歳三である。
.
土方「総司、すまんが本陣へ戻れ。急用がある。」
沖田「土方さん、よかったらあなたも一緒に遊びませんか。」
土方「冗談はよせ、いいから早く戻れ。」
沖田「はいはい。…あ、ところで土方さんはどちらへ?」
土方「私は用があるゆえ総長と共にしばらく屯所を離れる。お前はすぐに本陣へ戻って
永倉君の指示を待て。」
沖田「はーい。」
子供D「えーおにいちゃんもう行っちゃうの?」
子供C「ずるーい。」
沖田「ゴメンね、早く戻らないと土方さんに怒られちゃうからさ。明日はきっと遊ぼうね。」
子供A「約束だよ、おにいちゃん。」
子供D「明日はおれたちに剣術おしえてくれよ!おにいちゃん!」
沖田「うんうん、わかった。じゃあまた明日ね。」
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導かれし志士たち PAGE40
新撰組 本陣
永倉「遅かったな沖田君。何をしていた。」
沖田「ごめんなさい、ちょっと所用がありまして。」
斎藤「フン、おおかた三条小橋あたりで小童たちに遊んでもらってたんだろ。」
沖田「はは、斎藤さんにはかなわないや。」
本陣で沖田の帰りを待ちわびていた二番隊組長・永倉新八。
その横であきれた様子で横目に見る三番隊組長・斎藤 一。
沖田を含め、この三人は組の一、二を争うほどの剣術の達人たちである。
天才・副長土方が集めてくる剣客は京都において最強、そして最狂の集団だった。
事実上この三人の実力は、三人が三人とも清志郎や比佐と同等、あるいはそれ以上の腕である。
いくら清志郎や比佐が剣の達人とはいえ、幕末の志士は数多く上には上がいる世界であった。
永倉「沖田君、こっちだ。来たまえ。」
沖田「はーい。」
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〜〜〜〜
沖田「ねぇ永倉さん、どこまで行くんです?ボクに用って何ですか。」
永倉「道場のほうまで来てもらう。さぁほら、ぐずぐずするな。」
沖田「道場?今日の剣術師範のおつとめはもう終わりましたけど。」
永倉「そうではない、例の‘彼’が任務から戻ってきた。」
沖田「え?まさか…。」
永倉「あぁ、あの密偵の隊士だ。」
沖田「なーんだ、そんな用件か。」
永倉「まったく…剣の腕は超一流のくせして、統率力はまるで皆無だな。少しは近藤さんを見習え。」
沖田「ははは、だってボク子供と遊んでるほうが楽しいもの。」
永倉「ではなぜそこまで人を斬れるのだ?」
沖田「さぁ?」
永倉「……(相変わらず何考えてるのかわからんやつだな…。)」
沖田「どうしました、永倉さん。」
永倉「い、いや…何でもない。さぁ入れ。」
永倉と沖田は道場へ入っていった。
すると道場の中央に、黙とうをささげながら座る一人の隊士がいた。
.
永倉「桜井君、長いことご苦労だったな。」
桜井「はっ…桜井、只今任務から戻って参りました。」
沖田「薩摩藩と比佐一派のこと何かわかりました?桜井くん。」
桜井「はっ、充分に調べ上げました。ですが比佐は間もなく自滅します。」
沖田「どうして?」
桜井「比佐は川澄清志郎という名の剣客と対決する運命にあります、両者の力量はほぼ互角。
闘えば良くて合い討ち、しかしどちらか生き残ったとしても間髪入れずに私が始末します。」
沖田「相変わらずおそろしいこと考えるなー、桜井くんは。」
桜井「ふふふ…沖田先生が出るまでもありません。この私、一番隊隊士の桜井にお任せください…。」
それはまるで氷のような剣気を放ち、底なしの闇のような瞳をした隊士である。
比佐一派を裏切った真の首謀者、名を桜井切人(サクライ キリト)という。
その正体がついに明らかになった新撰組一番隊隊士・桜井切人。
この桜井が、のちに川澄清志郎と比佐小次郎の二人を地獄へ突き落とす首謀者だと
明らかになるのは、もはや明白だった。
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導かれし志士たち PAGE41
島原の町 宿屋
一方こちらは、意識を取り戻した雷安の部屋前にて、栗田は清志郎を呼び出したところだった。
栗田「いいですか清志郎さん、くれぐれも無茶なマネはしないでくださいよ…。」
清志郎「悪いが自信ない、ヤツの答え次第だ。」
栗田「そ、そんな…。」
清志郎「栗田、約束したはずだ。ヤツはもう話せるんだろう。」
栗田「そうですけど、しかし…」
清志郎「大丈夫だ、いきなり斬りつけるようなマネはしない。」
栗田「大丈夫かなぁ…。」
清志郎「信用しろ。」
栗田「わ、わかりました。じゃあそっと入ってください…。」
やがて栗田と清志郎は雷安の寝る部屋に入った。
ガラッ
.
栗田「雷安どの、お待たせしました。」
雷安「むぅ…そのお人は…確か拙者を助けてくれた…。」
清志郎「……。」
栗田「清志郎さん、どうぞ。」
清志郎「あぁ。」
雷安「お主、拙者になんぞ聞きたいことがあるそうでござるな。」
清志郎「……」
栗田「どうしたんです、清志郎さん。」
清志郎「……」
清志郎は栗田の手前もあって冷静を装っていたが、実は心の中では
今にも刀を抜きそうで必死に耐えていた。
雷安「どうかなされたか、何でも聞くでござる。…それとも今この場で拙者を斬るでござるか?」
清志郎「……では今からお前に二つだけ問う。本来ならもっと聞きたいことがあるが
今の俺にとって重要なことだけを聞くことにする。」
雷安「うむ…。」
清志郎「だがその前に言っておく。今から聞くことにお前が俺の前で真実を言おうが
嘘を言おうが、それを決めるのはこの俺だ。いいな。」
雷安「承知致した…。」
栗田「ハラハラ…。」
清志郎「まずは一つ目の問いだ、比佐一派の隠れ家を言え。」
雷安「うむ…。やむを得まい。」
栗田「ドキドキ…。」
雷安「木屋町 鴨川のほとりに、やや大きめの長屋がある。そこが隠れ家でござる。」
栗田「なんと…!新撰組本陣から目と鼻の先じゃないか!」
清志郎「なるほどな。河原に面した隠れ家なら、いつ新撰組に踏み込まれても
逃げられるような造りだ。…どうやら嘘ではなさそうだな。」
栗田「ほっ、よかった…。」
清志郎「では二つ目の問いだ、これが一番重要な質問だ。心して聞け。」
雷安「うむ…。」
清志郎「…今から二年前、土佐のある小さな村で大虐殺があった。
お前はその村へ行ったことがあるか。」
清志郎はしゃべりながら左手で刀の鞘を強く握りしめていた。
ギリギリ…
雷安「うむ…そのことでござるが、実は桜井という藩士が…。」
清志郎「おい、聞かれたことだけに答えろ。誰が余計なおしゃべりをしろと言った。(ギリ!)」
鞘を握る清志郎の手に、ますます力が入る。
栗田「き、清志郎さん…。」
清志郎「いいか、今の俺の前で嘘は通用しないと思え。死ぬ気で答えろ。」
雷安「…失礼した、では簡潔に答える。そのような村、拙者は行ったこともないでござる。」
清志郎「……」
栗田「…清志郎さん?」
次の瞬間、突然清志郎は刀を抜いた。
キン! シャキン!
栗田「うわああ!だ、だめですよ清志郎さ…!」
雷安「!」
なんと清志郎は寝ている雷安の顔すれすれに刀を突き立てた。
―――ッシュン! ドスッ!
雷安「うっ……!」
栗田「ひええええええええ!!」
清志郎「……フン、とりあえずお前を信用してやる…。死ねなくて残念だったな。」
栗田「ぅぁぁぁ…。」
雷安「……」
ヒュッ! シャキン!
清志郎「邪魔したな。」
清志郎は部屋を出て行った。
バタン
栗田「ちょ、ちょっと待ってくださいよ清志郎さん!例の桜井のことを…!」
雷安「追っても無駄でござるよ。」
栗田「え…。」
雷安「拙者、あのお人の目を見て分かった。もはや何を言っても聞かんでござる。」
栗田「し、しかし…。」
雷安「たとえ拙者が首謀者・桜井のことを話したところで、本人は信用しないでござる。
自分自身で確かめねばならぬというもの。武士とは所詮、刀でしか物が言えんでござる。」
栗田「雷安どの…。」
雷安「対決は止められぬ、これは宿命の戦いだったのかもしれんな。」
栗田「……」
雷安「あの清志郎というお人、何とも哀しい目をしている。愛する者を失ったような目だ。
比佐どのも同じ目をしていたでござる…。」
栗田「清志郎さん……どうかご無事で……。」
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そろそろ眠くなってきますた。
ごめんなさい。もう寝ます。ラリホー…
比佐小次郎を追って二年の歳月が経った今日。
杏奈「清志郎、どこ行くの?」
清志郎「……」
杏奈「ねぇ、ちょっと。」
無頼「姫様、もう止めても無駄ですぞ。」
杏奈「でも…。」
無頼「というか恐ろしくて止められんわい。」
清志郎「……」
世は幕末という時代とは裏腹に、私闘に人生を賭けた一人の侍。
真子「あら清志郎、こんな夜遅くに…。」
清志郎「……」
美音子「お出かけですか?清志郎さん。」
清志郎「……」
真子「な、何なの…?」
もはや誰にも止められぬ対決は、今宵満月の京都の夜に激突する。
取猫「おや、清志郎さん。」
清志郎「……」
取猫「…そうですか、やはり行くのですね。」
清志郎「……」
清志郎は「天神白龍」を腰に差し、比佐一派の隠れ家・鴨川へと一人向かった。
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導かれし志士たち PAGE42
木屋町 鴨川 比佐一派の隠れ家前にて
清志郎が鴨川のほとりへたどり着いたころ、辺りは月の出る夜空と化していた。
清志郎「ここか…。」
ついに清志郎は比佐一派の隠れ家までやってきた。だが門の前には見張りの藩士がいる。
清志郎「おい、お前ら。」
藩士A「あん?」
藩士B「誰だこいつ。」
清志郎「一度しか言わん、比佐小次郎を呼べ。」
藩士A「!…き、貴様なぜそれを!」
藩士B「何奴だ貴様!」
シャキン! シャキン!
清志郎「フン、お前らごとき刀を抜くまでもない。」
清志郎は刀を抜かずに鞘のまま藩士たちに挑んだ。
藩士A「死ねええええ!」
藩士B「うおおおおお!」
―――ヒュッ! ガツッ!ッバキ!
藩士A「うげっ!」
藩士B「うあっ…!」
ズザザザーーー!
清志郎「これで二度目だ、比佐を呼べ。次は刀を抜く。(キン!)」
藩士A「う、うぅ…!」
藩士B「な、何者だこいつ…!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
藩士G「比佐様!表で何者かが暴れているようです!」
比佐「……。」
藩士G「比佐様!」
比佐「…新撰組か。」
藩士G「い、いえ…違うようですが…。」
比佐「フフ、ではついにヤツがここを突き止めたということか…。」
比佐は「邪神黒竜」を腰にさし、門へと向かった。
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導かれし志士たち PAGE43
鴨川 河原にて
隣は鴨川の流れる河原にて、すでに藩士たちを一蹴した清志郎の前に比佐が現れた。
清志郎は今宵満月の夜、ついに比佐と対面した。
清志郎「お前が比佐小次郎だな。」
比佐「ほぅ、貴様が川澄清志郎か。」
清志郎「ついに会えたな比佐、ようやく復讐を果たせる時がきた。お前の命を貰い受ける。」
比佐「悪いが人から恨まれる心当たりはありすぎて貴様など名前ぐらいしか知らん。」
清志郎「お前が知らなくてもこっちは忘れられない思い出が重すぎる、覚悟してもらおう。」
清志郎はそう言うと「天神白龍」を抜いた。
シャキン!
比佐「フン、貴様のような輩が何人もそう言っては私に挑んできた。私を狙うその理由を
聞いておきたいが、余計なおしゃべりは無用だな。」
やがて比佐も「邪神黒竜」を抜いた。
シャキン!
清志郎「比佐、死ぬ前に一つ面白い話を聞かせてやる。」
比佐「誰が死ぬって?貴様がか?」
清志郎「人は人生のうち最低三回は幸福の瞬間が訪れるそうだ。」
比佐「何の話だ、御託はいいからさっさとかかって来い。」
清志郎「俺の三つの幸福の瞬間を教えてやる。一つ目はお前とこうして対峙した瞬間、
二つ目はお前を斬ること、そして三つ目はお前を斬った後の充実感だ。」
比佐「……おい、貴様は私と闘いたいのか、それともおしゃべりをしたいのか。」
清志郎「俺はお前をずっと捜していた……この手でお前を斬るために今日まで生きてきた…。」
――――北辰一刀流と鏡新明智流 白い龍と黒い竜――――
――――唯一共通しているのは 共に愛する者のための狂心的な剣――――
――――宿命の対決 川澄清志郎 対 比佐小次郎の私闘が 京都の夜に激突した――――
<六の章>
〜復讐こそ我が人生〜
完
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
もうみんな寝たと思うので大丈夫だと思うけど、一応報告。
これより先は最終決戦のシーンなので、支援はしばらくいいです。
それにこっから先はまとめて読んだほうがいいかも
導かれし志士たち PAGE43
<七の章>
〜鴨河原の決闘〜
清志郎「……」
比佐「……」
両者、刀を抜いたまま一向に動かずしばらく対峙。どちらも間合いを争っている。
清志郎「……」
比佐「……」
剣の達人ほど、その立ち合いは意外に短い時間で勝負がつく。
まして清志郎や比佐のような居合いを得意とする剣客は、なおさらその決着が早い。
長引けば長引くほど、お互い不利になるということを知っている。
清志郎「(間合いが近いのに一向に仕掛けてこないな……こいつまさか…。)」
比佐「(フン、貴様も剣客なら居合いで勝負してみろ……。)」
暗黙の了解と言うべきか、二人はしばらく対峙したのち刀を鞘に戻した。
抜刀術で決着をつけようという腹である。
清志郎「(ほぅ…顔に似合わず、わりと古くさい勝負が好みか。…面白い。)」
ヒュッ シャキン!
比佐「(やはり乗ってきたな…。)」
ヒュッ シャキン!
両者刀を戻し、さらに直立不動の構えで立った。
もはや間合いなど関係なくなった。なんと両者の間は刀が充分に届く距離である。
一瞬で決着がつく構えだ。
清志郎「……」
比佐「……」
月明かりにて両者を照らす、風は東から吹く。
どちらも月が雲に隠れるのを待っているようだ。先に影となった方が有利となる。
清志郎「……」
比佐「……」
その対峙はあまりにも長く、そしてあまりにも重かった。
落ち葉が風に乗って両者の前を横切り、満月はその対決の見届け人かのごとく清聴する。
遠い昔のようで、つい先日のような記憶が二人の脳裏によぎる。
清志郎「……」
……ねぇ清志郎、いつかこの国も刀を必要としない時代がくるかしら……
……さぁね、そんな時代があるんなら早く来てほしいよ……
……私たちも安心して暮らせる時代が早く来るといいわね……
……お、お願いだからしっかりして静江…死んじゃやだよ……
……きよしろ……ずっとそばに…いてくれる…?……
……うぅ…。いるよ…ずっときみのそばに……
……き、きよし…ろ……
比佐「……」
……比佐さま、私と一緒にどこか遠くの国へ行きませんか。戦争のない国へ……
……戦争のない国などあるわけがない……
……あなたが片時も刀を離さずに座ったまま眠るその姿が、私にはつらいんです……
……お前が気にかけることではない、こうでもしないといつ誰が襲ってくるか分からんからだ……
……哀しいお人です…いえ、哀しい時代ですね……
……安心しろ、いつの日かきっと平和な時代が来る。来させてみせる……
……比佐さま……
清志郎「……」
比佐「……」
そして長い対峙をしてから半刻 ついに満月の影は比佐を覆い
これよりわずか‘三秒間’で 決着がついた。
清志郎「(影が比佐の方に…!)」
比佐「(もらった!)(キン!)」
―――――その瞬間、時は刹那のごとく流れ始める―――――
0.00秒
まずは疾風のごとく比佐の「邪神黒竜」が清志郎を襲う。
―――ッシュヴァァ!!
0.14秒経過
清志郎「(くっ…!)」
だが清志郎は刀を抜かずに鞘のままそれを受け止めた。
ヒュッ!―――ッガキィンン!!
0.26秒経過
比佐「(何!)」
清志郎「(かかった!)」
比佐「(し、しまっ…!)」
清志郎は比佐の剣を鞘で受け止めたまま、ついに「天神白龍」を抜いた。
シャキン! 0.48秒経過
清志郎「(取った!)」
比佐「(チィッ…!)」
清志郎の‘横なぎ’が比佐の左わき腹を狙う。しかし比佐はあえてそれを左腕の甲冑で受け止めた。
――――ッズガァ!(バキン!)
1.25秒経過
だが「天神白龍」の威力は甲冑をも破壊し、血しぶきと共に比佐の左腕に食い込んだ。
比佐「(うぐぉぉっ…!)」
清志郎「(こ、こいつ…!左腕を犠牲にしやがった…!)」
比佐「(もらった…!死ね!!)」
比佐は片手で清志郎の心臓めがけ‘突き’の奥義を放った。
――――ッドシュッ!! 2.05秒経過
清志郎「(くっ…!)」
清志郎は間一髪身をよじらせて心臓をよけたが、左肩に比佐の剣が突き刺さる。
――――ッザン! 2.23秒経過
清志郎「(ぐぁぁっ…!)」
比佐「(し、しぶといヤツめ…!)」
なんと清志郎は肩に刀が刺さったまま、比佐に向かって突進した。
2.47秒経過
清志郎「(ぬぉぉおお!!)」
比佐「(こ、こいつ…!)」
そして両者、最後の攻防をもって決着がついた。
――――ッキーン! ――――ッズヴァ!
3.00秒経過
清志郎「……」
比佐「……」
時は動き出し、わずか三秒間の間に攻防を繰り出したのち
お互い刀を片手に 背を向け合ったままじっと立つ。
清志郎「……」
比佐「……」
そして背を向けたまま、比佐は刀を鞘に戻しながら言った。
比佐「たいした奴だ…。(ヒュッ シャキン!)」
清志郎「ぐ、ぐっ……!グハァッ…!」
ドタリ
清志郎は吐血して地に倒れた……。
比佐「……はぁ…はぁ…。」
清志郎「……」
比佐は倒れた清志郎を横目で確認すると、ようやくその場を立ち去ろうとした。
だが様子がおかしく、その足どりはフラフラとしていた。
比佐「はぁ…はぁ…。う、うぐっ…!」
比佐「こ、こんな奴に…!こんな奴ごときにこの私が…!」
比佐「う、うぐっ…!グハァ…!」
ドタリ
やがて比佐も地に倒れ、両者合い討ちとなった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE44
桜井「フン、やはり合い討ちだったか…。だが都合がいい。」
その決闘を影で見ていた桜井は、勝ち誇ったように現れた。
桜井「わざわざこの俺が手を下すまでもなかったということか。」
桜井は念のため比佐の死亡を確認しようとした。だがそのとき…
比佐「うぐっ…!や、やはり貴様か…!」
桜井「!!」
なんと比佐が再び起き上がろうとした。
桜井「こ、こいつまだ生きてやがったのか…!」
比佐「さ、桜井…!貴様が理沙を…!」
桜井「ほほぅ、その顔は…どうやら全てを察したようだな。比佐よ。」
比佐「う、うぐっ…!おのれ…!」
桜井「だがもう時すでに遅い、お前はこの俺の正体が分かるか?」
桜井はそう言うと袖から鉄砲を取り出し、比佐に狙いをつけた。
ジャキン!
比佐「て、鉄砲…?!」
桜井「そう、俺はもともと幕府の者だ。しかもお前がさんざん苦労して戦ってきた相手、
新撰組だよ。俺は密偵の任務として薩摩藩士となったのだ。だがその真の正体は
新撰組一番隊隊士・桜井切人だ。」
比佐「ぐっ…!」
桜井「お前のおかげで色々と情報を集められた、坂本龍馬暗殺計画も無事に進行中だ。」
比佐「な、何だと…!」
桜井「いい事を教えてやる、刀を必要としない時代は確かにやってきそうだ。だが刀に代わって
銃器の時代がやってくる。その時代を見れなくて同情するのぅ、比佐よ。」
比佐「うぐっ…!こ、この犬畜生が…!」
桜井「ご苦労だったな比佐、もうお前は用済みだ。理沙と来世で暮らすがいい。」
ッズダァーンン!!
比佐「うぉぁあっ…!!」
桜井「ふふふ…思えばお前も新撰組最強の三人、沖田・永倉・斎藤と一戦交えられなくて
まったくどこまでも不運なやつだ。お前には武士としてではなく、この鉄砲によって
殺してやる。今までさんざんこき使ってくれたな。」
比佐「お、おのれ…!」
桜井「死ね、比佐。(ジャキ!)」
だがそのとき、清志郎が起き上がって桜井の前へよろめき歩いてきた。
清志郎「はぁ…はぁ…。」
桜井「!!」
比佐「貴様…!」
清志郎「はぁ…はぁ…。」
桜井「ふ…ふはははは!!バカめ!生きていたのならおとなしく寝ていれば良かったものを!
比佐と共に死にたいらしいな!」
比佐「おい貴様…!バ、バカな真似はするな…!に、逃げろ…!」
清志郎「はぁ…はぁ…。」
桜井「川澄清志郎だったな。いくらお前が剣術の達人といえど、この鉄砲の前では…」
ヒュッ!――――ッキィン!
桜井「え?」
比佐「?!」
清志郎「どうした…その鉄砲がどうかしたか…。」
なんと桜井の鉄砲は真っ二つに斬られてしまった。
桜井「あひゃああああああああ!!」
清志郎「次はお前だ…。」
桜井「ま、まま待ってくれ!五十両…いや百両出す!…と、取り引きしないか?!
お前のことは幕府には黙っておこう!だ、だから…!」
清志郎「便所の糞溜りにも匹敵しない畜生め…俺を買いたければ貴様の首をよこせ…。」
桜井「く、くそおおおおお!!」
桜井は壊れた鉄砲を投げ捨て、刀を抜いた。
シャキン!
桜井「こ、ここここの死に損ないがあああ!!死ねえええええええ!!」
清志郎「……」
だが清志郎は一瞬のうちに三回も桜井を斬りつけた。
――――ッズヴァァ!ビシュ! バシュゥッ!
桜井「はぅぁぁあっ……!!」
ドタリ
清志郎「はぁ…はぁ…。」
比佐「フン…よ、余計なことを……。ぐっ…!」
ガクリ
清志郎「はぁ…はぁ…うぐっ…!」
ドタリ
やがて清志郎も比佐も意識を失い、地に倒れてしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE45
―――それから一刻ほどして
栗田「姫様!こっちですよ!」
杏奈「比佐一派だろうと何だろうと、このあたしが相手するわ!」
だが駆けつけた杏奈と栗田の前には、河原で気絶している何人もの藩士と清志郎と比佐、
そして桜井の死体が横たわっていただけだった。
栗田「うわわ!な、なんだこれは…!」
杏奈「あーあ、一足遅かったみたいね。」
栗田「姫様!こっちに清志郎さんが倒れてます!」
杏奈「ま、まさか死んでるの?!」
栗田「待ってください、診てみます。」
栗田は倒れた清志郎のそばへ行き、生死を確認した。
杏奈「どう?」
栗田「…はい、どうやらかろうじて生きてます。」
杏奈「よかった…。」
栗田「すぐに連れて帰りましょう、手当てをしないと。」
杏奈「ちょっと待って信之助、もしかしてこの人…。」
栗田「何です?」
杏奈は倒れている比佐を見つけた。
杏奈「なんか清志郎の刀みたいにゴツイ刀を持ってるわ。たぶんこの男が…。」
栗田「こ、こいつが比佐ですか!」
杏奈「……」
栗田「姫様、とにかく早く戻りましょう。清志郎さんの手当てを…。」
杏奈「待って。比佐もまだかろうじて息があるわ。彼も連れていきましょう。」
栗田「姫様!」
杏奈「何よ!」
栗田「……い、いえ…何でもありません…。」
杏奈「よし、それでいいのよ。」
栗田「はい…。」
杏奈「じゃあ今のうちに早く宿屋へ運ぼ。あたしが清志郎をかつぐから、信之助は比佐を。」
栗田「えぇ?」
杏奈「早くしなさいよ、ここがどこだか分かってるの?」
栗田「は、はい…。しかしこの男、いきなり目を覚ましたりしないだろうなぁ…。」
杏奈と栗田は負傷した二人をかつぎ、宿屋へと戻っていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE46
〜新たなる時代へ〜
――――それから数時間後。夜はすっかり明け、翌日の朝を迎えようとしていた。
清志郎「……」
清志郎「…うぅ…」
ようやく清志郎は意識を取り戻した。だがすぐ隣の床には比佐もいた。
清志郎「こ、ここは…。」
比佐「目が覚めたか。」
清志郎「ん……ハッ?!」
驚いた清志郎は、枕の横に置いてあった「天神白龍」を取った。
シャキン!
清志郎「比佐…!」
比佐「フン、そう怯えるな。何もしない。」
清志郎「お、お前どうしてここに…!」
比佐「私が知るか、いいから刀を引け。第一そんな身体で私と第二戦目ができるか。」
清志郎「う、うぐっ…!痛っ…。」
比佐「貴様の仲間が手当てしたようだ、よりによってこの私までもな…。」
清志郎「そうか…栗田たちが…。」
比佐「面白くはないが、どうやら私たちはお前の仲間に助けられたようだ。」
清志郎「そ、それより杏奈たちは…。」
比佐「お前の仲間なら隣の部屋で熟睡している。」
清志郎「……」
比佐「清志郎とかいったな。そんなに私を殺したいのなら、今のうちに斬るがいい。
私はもうお前のような奴とは立ち合いたくない。」
清志郎「……」
比佐「どうした、絶好の勝機だぞ。」
清志郎「…フン、俺もお前とは二度と御免だ。(ヒュッ パチン!)」
清志郎はそう言うと「天神白龍」を鞘に戻し、床に置いた。
比佐「やはりな…、貴様も真の首謀者の存在には薄々気づいていたんだな。」
清志郎「お前の仲間の雷安がそうこぼしていた。全ての首謀者は桜井だと…。」
比佐「ではなぜ私が犯人ではないと知っていながら、闘いを挑んできた。」
清志郎「……知るか、誰でもいいから八つ当たりしたかっただけだ。」
比佐「頭の切り替えの下手な奴だ…。貴様の仲間のほうがよっぽど利口だ。」
清志郎「お前こそ馬鹿だろ、自分の手下の悪行に気づかないで。」
比佐「フン、後先考えずに敵地に乗り込んできた阿呆の貴様よりはマシだ。」
清志郎「こ、この口の減らないやつめ…やっぱり今斬っておくべきかもしれないな。」
比佐「勝手にやれ、だが今の貴様は私どころか豆腐すら斬れん。」
清志郎「だったらお前は紙すら斬れないくたばりぞこないだな。」
比佐「おい貴様、いい加減にしないと本当に殺すぞ。」
清志郎「こっちの台詞だ、俺は寝起きが悪いんだよ。」
お互いつまらぬ意地を張り合う二人の間には、もはや殺気はなかった。
そこには目に見えぬ、わずかな絆が生まれたようだった。
するとその様子を、ふすまの間からこっそりと覗いていた仲間たちがいた。
栗田「だ、大丈夫かなぁ…やっぱり二人きりにさせないほうが良かったんじゃないですか?
今にもまた激突しそうですよ、あの二人。」
杏奈「あの様子ならもう大丈夫よ。二人ともつまんない意地張って照れてるだけよ。」
真子「しかしほんと、まるで子供の喧嘩ね。」
美音子「うふふ。いくら達人の剣客とはいえ、二人ともやっぱり人間でしたね。」
取猫「‘雨降って地固まる’というやつですな。」
無頼「やれやれ…。年寄りの心臓には悪いわい。」
雷安「拙者、生まれてこの方、これほどまでのお主たちの絆の強さには驚きましたぞ。」
幾人かの同士と出会い、そして成長し、川澄清志郎の旅はこうして幕を閉じた。
だがこの京都で出会った同士たちはいずれも、それは強い絆で結ばれた「仲間」というべきだろう。
余談ではあるがこの翌年1866年(慶応2年) 1月、世では坂本龍馬の活躍で薩長同盟が成立する。
西郷、桂などの維新の活躍によって新時代を切り開くことになるが、67年(慶応3年)11月に
坂本龍馬は幕府の見廻り組によって暗殺される。
龍馬を暗殺した下手人は現在でも謎に包まれている。
一説によると新撰組との噂もあるが、詳しいことは不明である。
幕府は15代目将軍・徳川慶喜を最後に倒幕され、ついに維新志士たちは
明治という新しい時代を切り開くことになる。
だがその後のこの国は、刀に代わって銃砲や鉄砲などの近代兵器を駆使した時代へと移り変わる。
武器が変わっただけで、結局のところ戦争の絶えない時代であることには、何ら変わりはなかった。
清志郎「おい比佐、どこへ行く。まだ傷は治ってないだろ。」
比佐「私は仮にも薩摩藩士だ、このような所でぬくぬくとしていられん。」
清志郎「まだ幕府と戦う気か…。新撰組はともかく、どのみちこの戦争はお前らが勝つだろ。」
比佐「死んだ理沙との約束があるのだ、新時代を切り開くまでは私は刀を捨てん。」
清志郎「何だ理沙って?」
比佐「……何でもない。ところでお前はどうするのだ、復讐はもう終えたのだろう。」
清志郎「俺は…。」
比佐「フン、まぁ私には関係のないことだ。もともと私の敵はお前ではない。ここでお別れだ。
お前とまた再び会うことがあれば、そのときは敵か味方か分からんな。」
清志郎「……」
比佐はそう言うと部屋を出て、宿屋を去っていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE47
そしてさらに数日後のこと――――
京都 島原
取猫「そうですか…みなさんやはり故郷へ戻られますか。寂しくなりますなぁ。」
真子「平和になったらまた京都へ遊びに来るわよ、取猫さん。」
美音子「ご商売、頑張ってくださいね。」
取猫「うんうん、二人ともお元気で…。お父さんもきっとうかばれることでしょう。」
雷安「杏奈どのたちも会津へ戻られるでござるか。」
杏奈「うん、桜井が捕らえていたお父様も、無事助け出されたって藩の使いの人たちが来たの。」
栗田「雷安どのはこれからどうするんです?」
雷安「動乱はまだまだ激化するゆえ、拙者はやはり戦いの場に…。」
無頼「つくづく武士道じゃのぅ、命は大切になされよ。雷安どの。」
雷安「お気遣い、有難く頂戴し申す。」
真子「ところで清志郎のやつ、一人でさっさと出ていっちゃって水くさいわよね。」
栗田「比佐もいつの間にかいなくなってしまいましたね。」
杏奈「きっと元気でやって行くわよ、二人とも。」
美音子「そうですね…。こんな時代だからこそ、そう願いたいものです。」
信州の芸者・江戸川姉妹は故郷へ戻り、その後は再び芸者としての道を進む。
父親の仇討ちを清志郎が成し遂げた今、姉妹は闇の人生から足を洗い、平和な日々を送った。
会津藩・奉行の三人衆である杏奈、栗田、無頼も同様に故郷へと帰っていった。
父親は無事に戻り、杏奈たちも平和な日々を取り戻していた。
だが慶応4年8月、官軍と会津藩軍の戦いによって会津藩は敗退し、降伏することになる。(会津戦争)
商人・取猫はいつもと変わらず、京都にて刀商人として家族三人で暮らす。
やがてほどなく彼は自分の店を持ち、鳥羽・伏見の戦いにおいての武器を大量に調達する。
東の剣客・雷安は最後まで維新志士として戦い、慶応4年1月に起きた戊辰戦争では大活躍をし、
その武士道を生涯貫いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして薩摩藩士・比佐小次郎のその後は―――――
藩士K「比佐様!壬生の新撰組が!」
比佐「下がっていろ、私が相手をする。」
藩士K「は、はい!」
沖田「やぁどうも、こんばんは。」
比佐「フン、貴様とこうして一対一で立ち合えるとは思わなかった。」
沖田「部下の桜井くんもやられちゃったし、結局ボクが相手することになっちゃいましたね。」
比佐「御託はいい、さっさとかかってこい。」
沖田「はーい。」
清志郎たちと別れたのち比佐小次郎は、強敵・新撰組を相手に戦い続け
戦いの場にてその生涯を終えた。
銃器によって倒れるよりも、彼は最後まで志士として果てることを選んだ。
だがその後の新撰組も、もはや壊滅状態に陥った。
一番隊組長・沖田総司は結核に倒れ、敗退を余儀なくされた幕府側にとって隊を抜け出す輩も続出。
のちに新撰組は官軍の銃撃隊によって、ついには消滅することになる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
導かれし志士たち PAGE48
――――そして川澄清志郎は……
土佐 ある田舎村あとにて
清志郎「……」
清志郎は故郷の村へ戻り、墓参りをしていた。
清志郎「父さん、母さん、終わったよ…。」
村はすでに解体され、畑や田んぼに変わっていた。
だが村人の墓は今でもまつられ、小さいながらも石牌が立てられていた。
清志郎「静江…これでもう思い残すことはない…。」
清志郎は当時、復讐を成し遂げたら自害するつもりだった。
だが旅の途中で出会った仲間たち、そして比佐との立ち合い、時代の行く末、
清志郎の心には闇はすでに消えていた。
清志郎「静江、きみが生きていれば、こういうとき何と言っただろうな。」
墓を前にした清志郎の顔に、昔のようなあどけない表情が一瞬戻りつつあった。
清志郎「もう死ぬことを考えるのはやめたよ…。生きるだけ生きてみる。
人を斬ったからといって、自害するのはずるいよな。」
清志郎は静江の墓の前で話しかけ続けた。
清志郎「誰かに殺されるのも運命、または老人になって死ぬのもそれもまた運命、
とりあえず俺は生きていくことを放棄するのはやめたよ…。」
季節は秋を迎えていた10月、空は紅葉の落ちる美しい夕焼けだった。
清志郎「静江、俺が死んだら…今度こそきみに幸せの瞬間をかなえさせてあげたいよ。」
やがて清志郎は立ち上がり、墓をあとに立ち去っていった。
清志郎「さよなら……静江…。」
癒されぬ傷は明日を見続けることで、清志郎の心に希望が生まれ始めた。
この日を境に川澄清志郎はこの国を去り、遠い異国の大陸へ旅立っていった。
いつの日か傷が癒えるときが来たら、また会いにくると約束した。
いつの日か平和な世が来たら、今度こそ刀を捨てようと決めた。
いつの日かこの国も、戦争のない時代が来ることを祈った。
――――導かれしままに この世の動乱に生まれ
我はうつせみの人にあらず 幕末の屍。
あまつさえ復讐に人生を捨てた 闇の残り香なり。
この先、名も無き外道侍に殺されるも また運命。
はては老人となって果てるも それもまた運命――――
――――罰は死ぬことにあらず 生きていくことにあり。
だが希望もまた失うことあらず 人生にあり――――
川澄清志郎がこの国をあとに、最後に残した句である。
導かれし志士たち
完
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
<付録>
はるか彼方、欧州の大陸 北のとある国にて
リース「<ハーイ、シンシア。>」
シンシア「<おはよ、リース。>」
リース「<どこ行くの?こんな朝早くから。>」
シンシア「<手紙を出しに行くのよ。>」
リース「<あら、あんたボーイフレンドなんていつの間にできたのよ。>」
シンシア「<そ、そんなんじゃないわよ。>」
リース「<ちょっと見せなさい、どれどれ…。>」
シンシア「<あ、やだちょっと、やめてよリース!>」
リース「<なーんだ、あんたの姉さんにか。>」
シンシア「<もう…。>」
リース「ニッポンとかいう国だっけ?あんたの姉さんがいるの。>」
シンシア「<そうよ、リサ元気かなぁ…。>」
そのとき、二人の女性の前に一人の男がやってきた。
清志郎「いったいどうなってんだ、この町の道は…。」
リース「<ねぇシンシア、見てあの人。>」
シンシア「<え?どれ。>」
リース「<野蛮人よ野蛮人、汚い格好ね。>」
シンシア「<東洋人じゃないの?>」
リース「<あれが?もしかしてサムライってやつ?>」
清志郎「おいそこの人、ちょっと道を尋ねるが…。」
シンシア「<はい?>」
清志郎「この辺りに旅館はあるか?」
シンシア「<ねぇリース、この子なに言ってるかわかる?>」
リース「<わかるわけないでしょ。相手にしないほうがいいわよ。>」
清志郎「おいお前ら、訳のわからん言葉使うな。それに何だその目の色は。
この国の人間はみんな宇宙人か。」
シンシア「<何を言ってるのかさっぱりわからないわ…。困ったわね。>」
リース「<ね、ねぇシンシア、この人ちょっとヤバイわ。早く行きましょ。>」
シンシア「<でも彼、何か困ってるわ。かわいそうじゃない、異国から来てきっと迷子なのよ。>」
シンシアはその男に、子供をあやすように言った。
シンシア「<こんにちは、ボク。私の名前はシンシア・アンドリュースよ。あなたのお名前は?>」
清志郎「おい、勝手に人の頭をなでるな。俺はまるで迷子か。」
シンシア「<あなたもしかしてニッポンジン?言葉わかる?>」
清志郎「もういい、お前らに聞いたのが間違っていた。失せろ白人女ども。」
その男は不機嫌そうに去っていった。
シンシア「<どうしたのかしら、何か怒ってたみたい。>」
リース「<ばーか、あんたが子供扱いするからよ。>」
シンシア「<……でもどうしてかしら。何だか私、彼に会ったことがあるような気がするの…。>」
リース「<なにそれ。>」
シンシア「<う、うぅん。何でもないわ。行こ。>」
リース「<ちょっとあんた、まさかさっきの東洋人に…。>」
シンシア「<いやぁね、何をバカなこと言ってるのよ。>」
リース「<あはは!あんたってああいう野蛮人がシュミだったとはね!>」
シンシア「<ち、違うわよ!変なこと言わないでよ!>」
――――――――<終劇>――――――――――
<おことわり>
薩摩藩士に比佐小次郎という名の人物は実在しません。あくまで物語のための架空の人物です。
壬生の狼・新撰組の桜井切人という名の隊士、及び会津藩の家老・神崎右衛門も同様に
実在しない架空の人物です。
また、実在した人物である沖田、永倉、斎藤、土方も本作で描かれたような記録はありません。
全てフィクションです。
ちなみに新撰組総長・近藤 勇の愛刀「長曾祢虎徹」は、近藤が江戸の刀屋で買い求めた説や
斉藤一が京都の夜店で買ってきたものを近藤に贈った説、または強盗を追い払ったお礼として
貰った説などがあるそうです。
本作の舞台となった幕末の京都において、年代とその時期に誤りはないとは思いますが
もし間違っていたら申し訳ないです。最後まで読んでくれた方々、ありがとうございました。
<導かれし志士たち 登場人物>
川澄清志郎
比佐小次郎
雷安武義
神崎杏奈
栗田信之助
無頼源二
取猫 守
江戸川真子
江戸川美音子
榊原静江
如月理沙
桜井切人
沖田総司
永倉新八
斎藤 一
土方歳三
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「戦場の花嫁」に続く、時代劇版DQ4を作ってみました。
設定をあるていど変えないと物語としてまとまりませんでした。最後のふろくは遊び感覚です。
ごめんなはい、読み返すともうドラクエとぜんぜん関係ない世界です。
板違いと言われようとどう思われようと、遊び感覚で楽しんで読んでもらえたら本望です。
今回は宮本武蔵と佐々木小次郎のような、超ベタな宿命の対決を描こうと思い
参考資料として映画「壬生義士伝」などをモチーフにしました。
現在放映しているNHK大河ドラマ「新撰組」とはかなり後の時代風景でした。
今回は前作の「戦場の花嫁」のような、重いテーマをひきずるような暗い物語には
させたくなかったけどやはりまだ暗い。いつかはもっと娯楽物語として楽しいものを描きたいです。
どうでもいいけど戦闘のシーンが書いていて一番冷める。ドス!バキ!シュバ!ガツ!とか
いちいち何々はどうした云々、ああした、こうした、よけた、斬った、死んだ。なんて
読んでいてすげえバカみたいだしテンポも悪すぎ。
本来なら無駄なセリフもほとんどカットして、雰囲気だけで伝わるようなものが作りたいです。
テーマはいちおう‘絆’とか‘仲間’といったものですが、毎回テーマを押し付けるような
説教じみた物語が多かったので、今回はあまり全面に押したてないようにしました。
しかし本当のテーマは「志(こころざし)」のつもりです。
復讐に人生を賭ける者、戦いに身を捧げる者、家族のために生きる者、それぞれ意志は違えど
共通するこころざしは自らの平和を取り戻そうと必死に‘生きる’ということ。
こころざしというのは現代の社会でも、たえず自分たちが大切にするものだと思ってます。
たとえ頭を下げ続けるサラリーマンたちも、彼らは彼らなりに生きるために日々を戦ってます。
自分の信じた道を歩む人たちは、今も昔も変わらず‘人生を戦う志士’だと思います。
正直言ってこの板には萌えだのエロだの801だのと、そういう物語ばかりが多いですけど
それを否定することはしません。
だいいち自分のは場違いな物語が多いので、こっちの方が否定されてもおかしくはないでしょう。
しかしどちらもDQやFFが好きだからこそ書くわけであって、内容が違えどお互い共通するものがあります。
こういうものがあってもいいのではないかと思うし、自分の書く物語は遊び感覚で読んでもらえたら本望です。
意外にも深く考えず単純に楽しんでもらえる人たちがいたことには驚いたし、うれしかったです。
この板でSSを書くみなさん、これからも頑張ってください。またいつか新作を書くようなことが
あるかもしれませんが、そのときはまたよろしくお願いします。
長々と失礼でした。とにかく今回も読んでくれたひとたちに感謝。ありあとうございました。
書き込みを協力してくれた人たちに多謝。
>>296 千一夜スレを覗いてみたらこんな長編が!
戦場の花嫁同様、夢中で読ませて頂きました。
お疲れ様です。
昨夜、自分にラリホーかけて眠った者です。昨日のID:dZfyMqRe
長編2作目お疲れ様です。
「戦場の花嫁」「導かれし志士たち」読ませていただきました。
両方とも、よく時代考察されて、なおかつそこに上手に
DQのキャラを組み込んでいると思います。
多くの人が命を落とし、しかもいたずらに死を急ぐ風潮の中で、
自分が生きるため、他人の命を守るために万策を尽くすことが、
現代人から見れば当然のように見えても、当時としてはいかに困難なことであったか…
リュカ、ビアンカ、トルネコ、クリフトなどからそんなメッセージを感じました。
見当違いだったらごめんなさい。
「戦場の花嫁」ではリュカとビアンカが合言葉(らしきもの)を言い合う場面、
「導かれし志士たち」では、最後がちょっと意外だった(清志郎と小次郎が協力して
倒幕のために戦うものと思ってました)のが、印象的でした。
ところで、昨夜の支援者の2人はどうされてるんでしょ。
昨夜の支援者その2で、3時頃まで読ませて頂きました。
「戦場の花嫁」と同様、「導かれし志士たち」も時代設定は違いますが
ドラクエのキャラとストーリーとをうまく結びつけられているので
気がつけば夢中になって読んでいました。
次の作品も楽しみにしてます頑張ってください。
300 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/03/30 02:46 ID:bRwGJKVT
!
なんだこのスレ?面白そうだ
>>301 要するに、「FF・DQ千一夜物語」のSS職人さんが、
長編をうpするためにこの糞尿スレを一時乗っ取ったんですよ。
保守。
保守。
ha!ha!ha!
ところでふろくの真意わかってもらえたのかな。
誰もつっこんでくれないから気になてしょうがない
すばらしい乾燥だ
人によって捕らえ方がいろいろあるのってたのしい
308 :
ぐ:04/04/01 02:56 ID:r5SEk1g3
比佐の恋人リサの友達ってことですかね??
ぶっちゃけシンシアとリースって聞いた事あるけど、よくわからない
いやそこじゃないんだ実は
DQに詳しくないとわからない?
気になってしょうがないのはこっちになってしまった
戦場の花嫁をよんでくれたひとにはわかりますよ
というかまじでみんあ気づいててしらんぷりしてるだろおおおおおお
なんかこう、あれだね。
ギャグをやって外したってんじゃなくて、ギャグに気づいてもらえなかったって感じの
めちゃくちゃはずかしいシチュエーションになっちゃた。
読み見直したけどわからない・・・・
しらんぷりしてねええええええええええええええ
わかたああああああああああああああああああああああ
ビ○○○あああああああああ
atariiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii
こめでとうございます
この間、自分にラリホーかけて眠った者です。
なるほど〜、そういうことでしたか。
チトーモ気付きませんでした。
戦場の花嫁とは全く別の作品だと思い込んでたもので…
いろいろ納得したところで、今日も寝ますぽ。ラリホー…
oyasuminahai
変な糞スレ乱立中。
保守。
面白かった!!
読んでる間日常を忘れたし、いつも近くに仲間がいるような暖かい気持ちになれた。
軽いタッチの人情物が共感できるし読みやすいし1番好きだな
元々DQ4が大好きだから、キャラが出てくるたびに名前の工夫に笑って嬉しくなった
特にアリーナ達のトリオかけあいは楽しかった。
一人一人ほんといい味出してました。ぐっちは何気比佐が1番好きだな。
敵同士だったのに、最後は味方になっちゃうっていう暖かさも、DQらしくてよかったです
最後の決戦で桜井があっけなく沈没した後、流れるように
終わってしまったので、そこはちょっとビックリしました。
でもだからこそ、読んだ後気持ちがよかったし、さっぱりしました。
なんてゆうか、これは今までで1番好きかもしれない。
読んだ後幸せな気分になれる小説は良いですね^^
読んでる間、凄く楽しかったです。ありがとう。
ぐっちゃんDQ4好きだったのか。初めて知った
Oノ
ノ\_・’ヽO.
└ _ノ ヽ
〉
323 :
:04/04/04 17:17 ID:yU4BKM8q
支援
戦場の花嫁・今回の作品ともハマッテ読みまくった。
どちらも甲乙付けがたい。おもしろい。
歴史ワケワカラン。でも楽しめた。
作者さんに感謝!
あえてどちらが好きか決めるとしたら、漏れは
導かれし志士たちの方が好みかな。雷安カッケー
感想かいてくれたひとたちありがとうございmした
まだちょっと先のことだけど、ゴールデンウィーク前くらいに
三作目を載せようとおもってます(予定)。今度はDQ6を使ったやつ。
「戦場の花嫁」「導かれし志士たち」に続く三部作最後の物語「幻の勇者」を
upします。今んとこだいたい半分くらいできたくらいだと思う。たぶん。
完成まじかになったらまた本スレに宣伝しにいきまs
>>327 ganbare-!
tanoshimidesu.
わくわく。
そんなことより
>>1よスレと思いっきり関係あるけどさ
なんで空白なの?
ほしゅ
からあげ
うおあおあああおあおあおあおああぼぼぼぼあああああああ牡馬おばおあばぼdhどぉおえgjれpげぽgrgr
こむらがえり
純粋なサイヤ人は頭髪が生後から不気味に変化しない
規制なんてされてないよ
あのね ここをみてる人たちにちょっとDQ6に関する質問さして。
あなたはどれに当てはまるですか。番号で教えて
1:プレイしたことがある。かなり好きだ
2:プレイしたことがあるが、こりゃクソゲーだ。
3:プレイしたことがあるが、正直どういうストーリーだったか忘れた
4:やったことない
なんだだれもみてねえや
3
4
auuu
1
新作楽しみにしてます。
お、新作の降臨ですか?
自分は1ですな。相当はまりますた。
ゴールデンウィーク前ってやくそくはちょっとむずかしくなってきました。
今んとこ四分の三くらいできた。
これは今までで一番大変なのでもうちょっとだけ待っててください。
かならず発表しまs
がんがって下さい。
待たされて怒るような椰子はいないと思うので、
焦らずゆっくり、ご自分でも満足できるものを是非。
>>338 4でs。ゴメソ。
のんびり待ってますよ…
もう一つ質問さして。
6の主人公って「イザ」って名前をよく見かけるんだけどこれは小説版の
公式なんですか。
だれか知っていたらおしえて。
350 :
1234567890 ◆6VG93XdSOM :04/04/29 22:52 ID:atlBdef4
agetemiyou
しかしこんな人大杉とかでてて、完成したときうpするのが大変そう
6主の名前
エニクス:ゲーム中オープニングデモで出てくる名
イザ(イズュラーヒン):組センセの小説での主人公の名。現実で分離してたほうは「イーザ」
ウィル:CDシアターでの主人公の名
ボッツ:6の漫画(神崎)での主人公の名
というわけで公式ってほどの名前はありません
352 :
1234567890 ◆6VG93XdSOM :04/04/29 23:02 ID:atlBdef4
そうなんだ。ありがとお。
エニクスはちょっとマヌケすぎるし、やっぱこのままイザでいくしかないや。
ボッツってかっこわるすぎだ。
353 :
1234567890 ◆6VG93XdSOM :04/04/29 23:08 ID:atlBdef4
あごめん。まだ聞くことがあるや。
>>組センセの小説
これなに?だれか6小説を読んだことある人いたらどんなものでもいいから
どういう物語だったか参考までに聞かしてもらえないかな。
めちゃくちゃ簡単にでも、あらすじを教えてもらえるとうれしい
感想とか。
>>354 あいがとう。一応そのスレに聞いてみたよ。
というかきみは教えてくれないのかい
答えてもらえた。
そうか基本的にはオリジナルを忠実に再現したものか。
よかった、自分が作ってるものとはぜんぜん違うや。
漏れはちょっと日付替わるまであっちのスレには書き込みにくい・・・
基本的に6小説はかなり原作準拠。まあ無駄に長くなったりやたら短く済まされるイベントもあるが
カップリングがあるとすれば主ミレも主バもテリバもあり(異論はあろうが)
向こうにも出てたけど、モンスター使いのアモスはオリキャラ(一応伏線あり)とケコーンし、ロンガデセオに居残り
冷静でオジン好みのミレーユは、ギンドロの娘シェリスタと親友。彼女の身代わりに王に献上されるが、
王妃によってすぐに牢に落とされ、パノンらの助けを借りて脱出。以後、魔術師ギルドの魔女に
コギャルっぽいバーバラは、ゲームでは没設定だった「黄金竜」の正体であり、
最終決戦で、実は魔王の目的はすべて彼女であったことを知るが、試練に打ち勝ち、
神に等しい存在としてゲームと同じく夢の世界に残ることに・・・と思いきや、最後はみんなとそろって旅に出る
まあK先生が書くようなSSとかぶるようなことはない・・・ハズ
なんだか354のスレを読むかぎり6小説は評判が悪いな。
それにしてもどうしてみんな「誰×誰」とかカップリングばかりにこだわってるんだろう。
そんなに‘萌え’が欲しいのか・・・
357 あらすじサンコス!
しかし少なくとも自分が書いてきた物語を読んでくれた人たちは
くだらん「萌え」とやらには興味ないはずだしょう。
やべえ。こういうこというとまた怒られる
>>357 あのね、実は今回はもう歴史物語じゃないんですよ。
こっちもファンタジー世界で挑戦してみる。
久美小説とはまったくぜんぜん違うけど。
おお、リアルタイムで作家さんがいるようでつな。
>>359 自分の本音としては、エロでも萌えでも硬派でも、
自分が好きなDQを題材にした面白いものが読めれば
それで満足、という感じです。
ただ、「戦場の花嫁」で、リュカとビアンカが再会した時みたいな感動は、
エロものや萌えもののSSではなかなかありませんね。
よかった。「戦場の花嫁」のリュカ・ビアンカ再会シーンのセリフのやりとりは
実は6回くらいボツにして何度も書き直したシーンだった。
たったあれだけの会話のやりとりだったけど当時はぜんぜん気に入らなくて。
そこに注目してくれた人がいたのはうれしい
そうだったのでつか。
あのシーンは秀逸ですた。
次はどのスレで書くの?
ここは容量が危ないと思いますが
そんとき立てるとおもう
かめはめはああああああああああああああああああああああああ
っドガァーーーーーーーーーン!!バガン!ズガン!ッドシュゥゥーーー!
バキ!ドカ!ズドッ!ばし!ビシ!ドカドカ!
きぃーーーーん!どがーーーーーーーーーーーーーーーん!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
「ファイル」→「プロパティ」で、このスレの容量を見ると、たぶん大丈夫。
512KBが上限ってことは、現在の3倍はおK。
ホッシュが無様にもおっちんだ後だったし保守
なぜ366をスルーするのかと小一時間r
批判に耳を貸さない作家のいるスレは荒れていくのが2ちゃんの常なので、
うわべだけでも良識のこもった返答をしておいたほうがいいと思われ
そうあですか
どうも相手を怒らせるのがすきなんだなきっと。わかいました。
でも何度もいうんだけど漢字がよめないんですまじで
ぐぐれやふれ辞書ひけ ←NGワード
>>どうも相手を怒らせるのがすきなんだなきっと
自分のことです
しかしうわべの返事ってやじゃないかい?
イタイSS作家のいるスレはここですか?
てなヲチ厨がなるたけ来ないようにする努力くらいはしてくださいね
あと、自分のキャラクターを切り売りしてネタにするには10年早いと思いましょうね
ふあ〜あ。寝よっと
もう400レスちかい・・
たぶん500レスぐらいいくや。
ここではむりだ
>>375 はあ?10年前はちょっとSS書いたって、
かなり元気のある奴は同人、ちょっと元気のある奴はパソコン通信て手があったが、
一般人は赤の他人に見せる場が全くといっていいほどなかったんだぞ
それに比べりゃ、住人にちょこっと媚びを売るくらい何でもないと思いなされ
謙虚であれとか自己を抑えろとは言わない。ただ、世渡りにはうまくなるべし
まあそれができれば2ちゃんねるなんかに来ないって話もあるが・・・
380 :
1234567890 ◆6VG93XdSOM :04/05/05 03:05 ID:HdNvRYMf
なにいってんだかわかんねえや
寝るんじゃなかったのか
寝ましたよ。7分ほど
さあて暇だからSSでも読んでけなしてやるか
書けたんならうpしてよ。読みたいから。
なんならスレ立ててもいいし。
読めない漢字ってどれよ?
漢字検定三級レベルの漢字しかないと思うぞ(w
つーか、新中君は、わざと難しい漢字や、表現使わないんだと思ってたんが、違ったんか?
まあ新中君のSSは期待している人が多いんだから、
批評キニシナイで、マイペースでガンガン上げてった方がいいと思う
これだけ感想のレスがつくSSも、この板だと珍しいと思うぞ
hai
漢字かー。確かに意識して必要以上に使わないようには意識してたよ。
でも実際読めない漢字ってけっこうあるや。
雑談スレでさえ読めない漢字が出てくるときもある
382
ごめんよ、もうちょっとまっててください。
最終章ができてないんで。
390 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/06/11 23:19 ID:p5/ms5Cl
392 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/06/29 02:21 ID:e84Vxk6X
でつ
↑
10秒以上見つめると
スヌーピーに見えてきます。
でつ てつ て゜つ
飛行帽をかぶったスヌーピーか。