1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:
1000。
hosyu
4 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/09/24 23:08 ID:zxkOSCAs
プレイしてみようかな。
まだ続いてたのか・・・なつかすぃ。
前スレ埋め立て終了(藁。1000は漏れじゃなかったけど
名スレの末勢が「5」で埋め尽くされてしまうのに忍びず、イタイ筆をふるってしまいました
この選択肢で何でこんな話になるんだ?というのが多々でしたが、すべては容量制限のせいでつ(アフォ
各ヒロイン評価
ターニア55、ビアンカ65、マリベル40(初期)、フローラ75、マーニャ未、ミネア未、
ミレーユ未、バーバラ未、アリーナ未、フォズ未、アイラ未、ローラ未、????未(+5)
あんな素人ヘボ文で良ければ、GMさん降臨までの場つなぎ程度&即死回避のため続きやりますが、
漏れは速記が恐ろしく苦手なため、鬼畜王さんのような入力システムになります
続きやってもいいよという無謀な方は名前決定をおながいします(日曜朝まで多数決。レスなければやめまつ)
1−1.リュカ 1−2.ケイン 1−3.テンソラ
2−1.イザ 2−2.ウィル 2−3.ボッツ
3−1.アレフ 3−2.アレン 3−3.アルス
4.その他
つーか早く進めないと、こちらも即死判定でないか?
選択肢は1-2
ずっと5を書き続けてきたのはきまぐれGM氏の物語の続きを読みたかったから。
それだけなんだ。きまぐれ氏がもう書かないとレスするまで、俺は5を選び続ける。
それはそれとして2-2。ウィル・ナイツ(・∀・)イイ!
3-2
選択肢が競馬みたい
保管所に、前スレ保管完了。
アドは
>>5。
>>7 すごい勢いで、続き希望。またーり頑張って下さい。はい。
んで、2-2。
「そうですか、ウィルさんとおっしゃるのですか。すてきなお名前ですわ」
俺が名を告げると、フローラさんは嬉しそうにニッコリと微笑んだ。
「では、改めて紹介しますわ。ウィルさん、こちらは私の友達のアンディ。アンディ、聞いてたと思うけどウィルさん。
とてもいい方よ。初対面なのに、私のことご存じだったの」
まだはっきりとアンディさんには不快の色が出ている。仕方ない、俺が下手になるか。
『ウィルと言います。御見知りおき、よろしくお願いします、アンディさん。』
俺が頭を下げ、手を差し出すと、アンディさんは拍子抜けた様子で、あわてて手を出して握手した。
「ど、どうも。その、アンディでいいですよ。ところでウィルさん、元気になったようですし、宿屋に移ったらどうですか。
ここはフローラの……ルドマンさんのお宅なんですから。ねえ、フローラ?」
アンディさんの言に、フローラさんは首を横に振ると、俺に掛かっているキルトに手を置いた。また、頬が紅い。
「いいえ、ウィルさん。ウィルさんさえ良ければ、ここに、遠慮なさらずに泊まってください」
「ふ、フローラ!」
絶句するアンディさん。本当にわかりやすい男だ。ま、アンディさんのことはさておくとして……そうだなあ、毎日、
フローラさんに世話してもらえるなら、このまま厚意に甘えさせてもらってもいいかな……。
って!何考えてんだ俺は。のんびりしてる暇などないじゃないか!!フローラさんにうつつ抜かして、すっかり忘れてた。
『フローラさん!気持ちはありがたいんですが、俺、すぐ旅立たなければならないんです!』
キルトを退けてベッドから下りかけた。『うっ!』床に足を突いたとたん頭の奥に痛みが走り、思わず呻いてしまう。
「ウィルさん!駄目ですわ、まだ横になっていないと」
『だ、だけど。俺、寝てるわけには……』
「ウィルさん……もしよろしければ旅の目的を教えていただけませんか。何か、チカラになって差し上げたいの」
せがむように、フローラさんが俺へ身を乗り出してきた。親切は嬉しいけど、どこまで話していいものか。
『実は―――』
1.『妹を、魔物にさらわれてしまったんです』
2.『わけあって、勇者を捜してるんです』
3.『故郷に大切な人を残しているんです』
4.『結婚するために、あるものを探してるんです』
3
ちょっと位冒険気分で2
2
暴走気分で4
「えっ……ゆ、勇者様を?」
フローラさんがきょとんとした顔になる。アンディさんも、ぽかんと口を開けた。そして、
「あはははっ、ウィルさん。勇者なんて、あんなの伝説、昔話ですよ。そんなあてもない旅をしてきたんですか」
声を上げて笑い出した。腹が立つが、俺も昨日までは半分くらいそう思ってたのだから、怒っても仕方がない。
「ウィルさん。私は、信じますわ」
俺が黙っていると、フローラさんがきっぱりと言った。アンディさんの笑いが止まる。
「だって、私の家には、勇者様がお使いになられたという盾が、伝わっているんです」
『えっ?』
驚いて、俺はフローラさんを見つめた。伝説の盾がルドマンさんの家に……初めて聞くことだ。
「ふ、フローラ!素性のわからない人にそんなこと教えたら!」
「アンディ、あなたは黙っていて!」
キッとして、フローラさんがアンディさんを睨み付けた。フローラさんて、こんな凛とした顔もできるんだ……。
『伝説の盾が……ということは、ルドマンさんは勇者の子孫なんですか?』
「いいえ。私の曾祖父の代に、商売のことで手に入れたんだそうです。それからずっと勇者様の出現を待って、
秘密に盾をお守りしてきたのですわ」
『そんな大切なことを俺に……』
二度驚いた俺が見つめると、フローラさんは少し恥じらうように目を伏せた。ずいぶん信用されちゃったな俺。
《フローラの評価がわずかに上がった》
《アンディの評価が下がった》
「ウィルさん!勇者が本当だとしてもです。こんな平和な世界で勇者を見つけて、どうするつもりなんです?」
アンディさんの叫びが割って入った。フローラさんも聞きたそうに顔を上げる。説明が必要か―――
1.さらわれた妹を助けるため
2.復活しつつある魔物を闇に葬るため
3.勇者の力を利用するため
4.勇者と結婚するため
これは誘われているなw
4
これ多数決制なの?
1
4にすれば勇者は女になるかも!
4
『勇者を見つけ出して……結婚するためです!』
「ええっ!?」
フローラさんとアンディさんが、あ然として目を丸くした。
『勇者の血筋ともなれば、きっと美しくて賢くて優しい人のはず。まさに理想の女性!そんな人と結婚できれば、
この世に生まれてきた意味があるというものです。だから!俺は、勇者を嫁にするために!』
俺は、ペラペラ喋りながら、調子に乗って拳を掲げた。うむ、かなりの名演技だ。
……フローラさんもアンディさんも、口を開けて黙ったきり。さすがに退いたかな。ツッコミ役がいないんじゃ、
せっかくの名演にも意味はない。俺は、振りあげた右手で頭をかきながら、舌を出して笑った。
『はは。もちろん、というのは冗……』
「じゃウィルさん!さっきルドマンさんが勇者の子孫かって聞いたのは、そういう意味だったんですか?」
俺の言葉を遮ると、アンディさんは俺に詰め寄ってきた。フローラさんが「えっ?」となって、口に手をあてた。
えーと、ルドマンさんが勇者の子孫なら当然フローラさんもであり、すると俺の結婚発言は…って深読みし過ぎだ!
『そ、それは考えすぎですよ。俺はそんなつもりで言ったんじゃなく……』
「じゃあどういうつもりなんですか?もし万が一フローラが勇者の子孫っていうことだったら、ウィルさんは」
「やめて、アンディ!」
フローラさんは大きく首を横に振ると、悲しそうにうつむいて唇を噛んだ。膝の上の手も、握りしめられている。
よくわからないけど……俺、がっかりさせちゃったのかも。
《フローラの意識に変化が起きた》《なぜか????の意識に変化が起きた》《アンディの評価が下がった》
「……ウィルさんの旅の目的はわかりました。その、すてきな理由ですわ。これも御縁ですし、私も応援いたします」
顔を上げたフローラさんが、さばさばした表情で言った。そして俺の姿を眺めると、
「そうですわ。いつまでもお父様の服で我慢していただくわけにはいきませんものね。アンディ、買ってきてくれる?」
「えっ、僕が?……わかったよ。ウィルさん、どんな服が欲しいですか?」
アンディさんが、あからさまに嫌そうな顔をしながら、俺に聞いてきた。服か――――
1.[旅人の服] でいい
2.[身かわしの服] が欲しい
3.アンディさんに任せる
4.その前に弁明する
2
うーん、3で。
3
ステテコパンツとか買ってきそうな
『アンディさんにお任せします。この街の店知りませんし、それにアンディさんと俺、体格似てますから』
「そうですか?うーん……わかりました」
俺が頼むと、アンディさんは自信なさげに顔をしかめた。悪い奴ではないらしい。
「アンディ。お金を渡すわ。ウィルさん、ちょっと待っていてください」
フローラさんが椅子から立ち、ドアへ歩いていく。アンディさんも、俺に会釈してから、後に続く。と、
ドアをフローラさんが開けたとたん、隙間から、リボンをつけた子犬が一匹、部屋に入ってきた。
「あら、リリアン!」
少し驚いたフローラさんだが、おかしそうにほほえみ、意味ありげに俺を見た。
『えっ、リリアン、て?』
「そうですわ。ウィルさんを見つけたのは、この子なんです。そうよねリリアン」
『犬が……そうだったんですか。ありがとう、リリアン』
頭を下げてみせた俺に、リリアンが戸惑ったように首を傾けた。その様子にフローラさんはクスッと笑って、
「ウィルさん、お腹空きませんか。何か、持ってきますね」
と言い、アンディさんと部屋を出て行った。リリアンも出て行きかけたが、ドアが閉まるのが早かった。
一人(と一匹)だけになった。俺は、ベッドに横になって、豪華なシャンデリアの吊られた天井を見上げた。
ふざけてみたせいで、とんでもない話になってしまった。ま、いつかフローラさんたちにも、本当のことを話す
機会があるだろう。それよりも……俺は、ターニアのことを考えた。無事だろうか。あれで、かなりの寂しがり
だから、今も牢の中で、泣いてるかもしれない。
それと、故郷ライフコッド。今頃ビアンカたちが心配してるだろう。一度、帰ったほうがいいかもしれない。
しかし……サラボナから帰るには、船で海峡を渡らねばならない。もちろん今の俺には船賃など全くない。
情けなくもそこまでフローラさんに面倒見てもらうか、あるいは……。
ふと、誰かの目線に気付いた。顔を上げると、床からリリアンが置物のように座って俺を見ていた。
犬とはいえ、考え事をしている最中に見つめられると落ち着かない。俺は―――
1.せっかくなので、リリアンに独り言を聞いてもらうことにした
2.気になって仕方ないので、あっちへ行けと追い払おうとした
3.所詮は犬なんだし相手にしてもな、と、放っておくことにした
お早い更新お疲れさまです。
ストーリーの先が読めない・・・1
1で
ま、この犬を相手に、今までのことを改めて言葉で整理するというのも、一興ってやつだろう。
『リリアン。さっきあんなこと言ったけど、勇者を捜す理由、実は違うんだ』
いきなり話しかけらて、リリアンが、びくっ、と身体を震わせた。
『本当は俺、妹と――ターニアって言うんだけど――魔物に捕まったんだ。それで、ターニアを人質にされて
勇者を捜して来いなんて言われて。嫌とは言ったんだ。けどアイツら、俺の前でターニアを……くそっ!』
俺は、あの光景を思い出して、拳を布団に叩き付けた。埃が、目の前を舞った。
『仕方なく頷いたら眠らされて……気がついたらここ。キミとフローラさんに裸見られるなんて不覚をとってね』
どんどん、饒舌かつ自嘲(じちょう)になる。リリアンは動かずじっと俺を見ているだけだ。
『だから俺、これから勇者を捜そうと思ってるワケ……けどなあ、勇者を魔物ンとこ連れて行くなんて、
世界中の人に対する裏切りだよなあ』
背負うものの重さを今更ながら感じて、俺はリリアンから視線を外し、両手を頭にベッドへふんぞり返った。
『といって、連れて行かなきゃ、ターニアがどんな目に遭わされるか……俺、どうすればいいんだろう』
大きく息をつき、リリアンを振り向いた。すると、リリアンがこちらに歩いて来、たん、とベッドに飛び乗った。
そして、悲しげな瞳で、キュンキュンと鼻を鳴らしながら俺の袖に寄せてきた。同情してくれてるらしい。
さすがフローラさんの犬。ペットは飼い主に似るって言うけど、優しさまで似るものなんだな。
《リリアンの評価が上がった》
リリアンの頭を撫でてやろうとしたとき、ドアの外で気配がした。
「ウィルさん。服を、アンディが買ってきてくれたの。どちらか、選んでくださる?」
どちらか……?怪しんでいると、フローラさんとアンディさんが、それぞれ一着づつ持って現れた。
「どうでしょうかウィルさん。花嫁探しってことだったんで、キマッた服をと思ったんです」
『………。』
[絹のタキシード]と[ハデな服]……やはり、嫌われてたかな。こんなの着て、どうやって旅しろと?
かといって、せっかくの厚意を無下にするってわけにもいかないか――――
1.[絹のタキシード]にする
2.[ハデな服]を着る
3.両方ともいらない
なぜ犬の評価が・・・・
選択肢は敢えて1
ところでドーミさん、保管所の前スレが見れないみたいなんですが。
リリアンはめんこいのう(*´∀`)
1!
『では、アンディさんが持ってる、そのタキシードをいただきます』
「そうですか!ウィルさんなら気に入ってもらえると思いましたよ。男はやっぱり、着こなしですからね!」
アンディさんが浮かれた声を出した。対照的に、フローラさんは、ちょっとがっかりしたように顔を曇らせた。
「そうですか。ウィルさんにはこっちのほうがステキだと、私は思ったんですけど……」
ハデな服が似合うって……俺、そんな顔してるかな。それとももしかしてフローラさん、野性的な男が好きなのか?
「じゃ、これはアンディ、あなたに差し上げるわ……あら?」
フローラさんが、俺のすぐそばに座っているリリアンを見て、意外そうに目をぱちぱちさせた。
「……リリアンが、私以外の人に懐くの、初めて見ました」
『そうなんですか?』
「ええ、特に男の人が嫌いで……お父様にさえ、触られると吠えるんです。ウィルさんが優しい人だからかしら」
俺は、ベッドの前のリリアンを見つめた。リリアンは、まるで照れたように頭を背ける。ひょっとするとリリアンは、
男の好みまで飼い主に似てて、俺のことを……いけないいけない。また俺、調子に乗ってるな。
《アンディの評価が上がった》《フローラの友愛がわずかに上がった》
「では、あの服は元気になったら着ていただくとして……お食事、お持ちしましたわ」
フローラさんが合図すると、メイド姿――メイドそのものだが――の女性が二人、食皿の並んだ台を転がしてやって
きた。料理はというと、子羊と貝のシチュー、魚の姿煮、豚肉と野菜の炒め物。果物のジュース。思いっきり庶民的だ。
「どうぞ、ウィルさま。冷めないうちに召し上がってください。お大事に」
まるで病人だな俺は。メイドさんにお礼を言って、食器を持つ。フローラさんたちも食事らしく、そろって部屋を出て
いった。見送ってから、魚肉を切り口に運ぶ。美味い。村でのターニアの料理もおいしいが、食材で上をいっている。
ふと足下を見やると、リリアンが、物欲しそうに見上げていた。俺が気付いたとわかって、さっと横を向いてしまう。
どうやら、腹が空いているらしい。見たところ痩せてるし、食事を分けてやっても文句は言われないだろう―――
1.鶏肉を切り分けてあげる
2.炒め野菜を半分皿にとる
3.魚の背骨を一本やる
1
訂正
>>33の料理に、地鶏の丸焼きを追加_| ̄|○ また選択肢改めるの忘れてた・・・
このままだとちまちまとしか話が進みませんな。何とか考えないと
そうか!! リリアンの正体は……いや、やっぱりただの犬か。
>>35 前スレ読んでないから、どういう展開で進んでいるのか分からないけど、
ここで、ルドマンさんの婿選びですよ!!と言ってみる。
切り取った鶏肉を二片、皿にとって、前に置いてやる。リリアンが、俺をまた見上げた。
『助けてくれたお礼だよ。それとも、それだけじゃ不満かい?』
俺が笑いかけてやると、リリアンは「キャン」と吠え、肉をおいしそうに食べ始めた。
可愛い仕草に、自然に、俺の頬が緩む。ターニアを助け出したら、犬でも飼ってみようかな。
ぼんやりと考えているところへ、フローラさんが入ってきた。
「リリアン。やっぱりまだここにいたの。よほどウィルさんが気に入ったのね、うふふ」
『勝手に、肉をあげてしまいましたが、構わなかったでしょうか』
「はい。もちろんですわ。良かったわねリリアン。さ、おいで」
リリアンが俺に向かってもう一度吠え、フローラさんのところへ駆けていった。
『可愛いですね。やっぱりペットは、飼い主に似るんですね』
「まあ、ウィルさん。またそんなことおっしゃって」
フローラさんが、リリアンを抱いてクスクス笑い「おかわり欲しかったらおっしゃってください」と
言って出て行った。……飼い主の心を射止めるならまずペットから、なんてな。
《フローラの友愛が上がった》《リリアンの評価が上がった》
目を覚ましたときは、真っ暗、つまり夜中だった。食事のあと、すぐ寝ちまったんだっけ。
俺は、ベッドから下り、ドアから漏れる灯りを頼りに歩いてみた。もう頭痛はない。体調も悪くない。
ドアを開けてみると、大きなホールだった。シャンデリアは消えているものの、いくつもある燭台のため、
だいぶ明るい。窓を見ると、ほとんど真ん丸の月が見えた。明日の晩が、満月らしい。
「おや、ウィルさま。どうなさいました?」
戸締まりをしていたメイドさんが、俺の姿を見て、声をかけてきた。どうするか―――
1.メイドさんと話をする。
2.外に散歩に行きたいと言う。
3.フローラさんの寝室の場所を聞く。
4.戻って寝る。
5
1
1
3
『すみません。突然俺みたいなのが降ってわいて。ご迷惑、おかけしています。』
「まあ、迷惑だなんて。すべて、お嬢様のお心ですわ。困っている人を見ると放っておけない方で」
笑顔の明るい、利発そうなメイドさんだった。歳は、俺より2つか3つ上だろうか。
『フローラさんて、誰にでもこんなにお優しいんですか?』
「ええ。昔からだそうです。もちろん、修道院にお入りになってたこともあるんでしょうけど」
『フローラさんて、修道院に行っていたんですか』
「はい。私はよく知りませんけれど、お嬢様は12歳のとき、ラインハットの近くの修道院に入られたそう
ですわ。それでひと月ほど前、旦那様が呼び戻されたのです。お嬢様にふさわしい花婿を探すおつもりで」
なにっ、花婿?あの白薔薇のフローラさんと結婚できる幸せな男……ああ、俺であってほしい!
『ルドマンさんは、今、ご在宅ではないのですか?』
「はい。旦那様は、奥様とご一緒にラインハットのお城へ招待されています。明後日、お戻りになられますよ」
明後日、か。明日にも発って勇者を捜すべきかとも思ったが、しばらく、この街に居たほうがいいかもな。
『そうすると……アンディさんは、フローラさんの婚約者か何かではない?』
俺が聞くと、メイドさんはぷっと吹き出した。
「まさか。お嬢様はどう思っているかわかりませんけど、旦那様はアンディさんがお気に召さないようですわ。
絵描きなぞに大事な娘をやれるかと、いつぞやおっしゃってましたから」
アンディさんて画家だったのか。しがない画家はルドマンさんの眼中にない。とすると俺にも望みが充分……。
ん?待てよ。立場は俺も似たようなものだ。一介の村人で、しかも身ぐるみ剥がされて転がってた男。ルドマン
さんにとっては、素性の知れてるアンディさん以下だろう。とても気に入ってもらえるはずがない。
おとなしく本来の目的を考えよう。俺が気落ちしていると、メイドさんがそばの燭台を吹き消した。そして、
「さっ、ウィルさま。そろそろ灯りを消します。お部屋にお戻りになって、ごゆっくりお休みください」
と言って、その隣の燭台の火も消す。もうそんな真夜中なのか。さて――――
1.外に行きたいと頼む
2.眠れないと訴える
3.屋敷の中をうろつく
4.ベッドに戻って寝る
1でお願いします。
5
3
「えっ、外にですか?うーん……困りましたね」
メイドさんが、眉を寄せて考えこんだ。
「門はもう閉めてしまっていますので、庭を散歩されるだけでしたら」
『あ、そうします』
俺はすぐに頷く。どうせ散歩したいだけだし、こんな格好じゃとても街中をうろつけないからな。
「それじゃ、こうしましょう。裏に、私たちが使ってる勝手口があるんです。その近くで私、本を読むことに
しますわ。お戻りになったらノックしてください。ただ、あまり遅いと私、寝てしまいますから」
メイドさんが親切に言ってくれ、玄関へと歩き出した。俺も従った。
『すみません、ありがとうございます。なるべく早く戻ってきます。あの、お名前は?』
「私ですか?私は、チェリと言います」
振り向かずに言われた言葉だが、冷たい感じは全くなかった。この屋敷の住人は、いい人ばかりだな。
《チェリの評価がわずかに上がった》
玄関を開けてもらって外に出ると、穏やかな夜風が吹き込んできた。月光に照らされた庭園には、門まで広い道が
開けていて、その両脇の花壇には、赤や桜色の花々が種類ごとに一列に並んで咲き誇っていた。その花壇から続く
花の列は、屋敷の東側の自然を模して植えられた花園と合流していた。その花園を切り開いたような小道が一本ある。
鑑賞するための遊歩道らしい。ちょうど屋敷の裏手へも通じていそうだし、ここを散歩させてもらうとしよう。
見上げると、満天の星空だった。村から見る夜空とはどことなく違う。場所が違うためか、それとも単なる気のせいか。
上ばかり見ていると花を踏んでしまうので、俺は周りにひろがる花を眺めて歩くことにした。整っていて、しかも無理
のない自然な植え方で、誰も踏み入ったことのない草原に迷い込んだ気分になる。フローラさんが手入れをしているの
かもしれないと何となく思った。水音に首を伸ばしてみると、草原の間に細い川が流れ、蛙の鳴く声まで聞こえてきた。
小道を進むと、木をくり抜いて作られた橋が小川に架かっていた。それを渡ろうと足を踏み出したとたん、
「危ないよーっ!そこの人どいてーっ!!」
いきなり、背後から女の子の悲鳴が降ってきた。何だ何だ?ここでどけって言われても―――
1.とっさに横に飛ぶ
2.頭を押さえてしゃがむ
3.動かず後ろを振り返る
3
5
1
うむ、3
5後ろに向かってせいけん突き
まあ3なんだけど
俺は、慌てず騒がず、さっと後ろを振り返った。誰もいない。たしかに後ろから聞こえたと思ったが……。
「どいてってばーっ!きゃああっ!!」
上?反射的に見上げた。何か大きなものが俺目がけて降ってくる。それが人だとわかった瞬間、
『うわわっ!!』
ぼすっ!俺は上半身全体に直撃を受け、花の中に仰向けにひっくり返った。
「あっ……あ、ありがと!受け止めてくれたんだ」
少女の声。痛みをこらえて目を開けると、紅い髪と、桃紫の大きな瞳がすぐ目の前に見えた。少女の顔だ。
「あれー?またここなの?もう、何でかな。このお屋敷って呪いでもかかってるんじゃないの」
たじろぐ俺に構わず、少女は俺の上から起きあがると、屋敷を見て物騒なことを言った。紺のドレス姿の小柄な娘で、
背は俺の肩までしかない。生姜色の髪をつむじのあたりでまとめ、さながら玉葱の葉のように四方に下げていた。
『き、君、いったい誰なんだ。どうして空から降ってきたんだよ』
「あたし?あたしはバーバラ。あまり話とかしてる時間ないの。そいじゃね!……ルーラ!」
少女が――バーバラが、呪文を詠唱して叫んだ。しかし、何も起こらなかった。
「あれっ?ぶつぶつぶつ……ルーラ!」
何度も同じことをやるが、やはり呪文の効果は顕れない。俺は呆然と、少女のすることを見守っていた。
「あーーーっ!そっか!!今日ドラゴラムして研究所壊しちゃって、直すのに魔力使っちゃったんだ」
頭を抱えた少女が、またも物騒なことを叫ぶ。ドラゴラムって竜に変身する上級呪文だよな。てことはこの娘、かなり
高位の魔法使いなのか。可愛い顔して恐ろしい……。
その少女が、くるりと俺のほうを向くと、いきなり手をとった。
「ね、ね?あなたここの家の人?ここであたし、少し休ませてもらえないかな」
俺の手をぎゅっと握って、愛嬌のある瞳で媚びるようにウインクしてくる。長い睫毛が、月光に光った。
『そ、そう言われても。俺、この家の人間じゃなくて、ただの客なんだよ』
「ええ〜っ、そうなの?だけど、お客さんが頼めば何とかしてくれるんじゃない?お願いっ!」
少女が、懇願するように、俺の手を引き頭を下げる。こんなに頼まれたら何とかしてあげたいところだが―――
1.チェリさんに頼む
2.俺には無理だと断る
3.とりあえず襲ってみる
殺されるの覚悟でといいたいところだが安全に1
1
5
3
1でお願い
3しかもう見えない
『わかったよ。ただし、断られても俺を恨むなよ。』
「ホント!ありがとう!うーん、あなたっていい人っ!」
はしゃいだバーバラが、俺の手をブンブンと大げさに振った。夜中なのにテンション高いなこの娘。
『その代わり、何で空からいきなり落ちてきたか、ちゃんと説明してもらおうか』
俺は、バーバラの手を振りほどくと、胸の前で両腕を組み、上から睨みつけた。
「うーん、それもそうね。実はね、これでもあたしって、マーディラスの魔法研究所の魔女なの」
『マーディラス?』
聞きながら、俺は小道を先へと歩き出した。バーバラも隣についてくる。
「えっ、知らないの?魔法と音楽の国で、治めてるのはとっても可愛いお姫様。ちょっと変わってるけどね。
一度、来てみたらどう?とっても賑やかで、楽しいところよ」
『ま、気が向いたら。それで?』
「うん。ラインハットの王様にお姫様の手紙届けて、いつも通り、魔法でマーディラスに帰ろうとしたの。
そしたらまた、この家の上まで来て急に魔法の力がなくなって落っこちちゃったの!もう!何でなのよ」
『あまり大声出すな。またってことは、前にもこんなことあったのか?』
「そうなの!これでこの家に落ちたの、三度目よ!イヤになっちゃう。前のときは魔力残っててね。も一度
ルーラして帰れたんだけど……あーあ、あたし絶対怒られちゃうよ。どうしたらいいかなあ?」
『あいにく、俺はそこまで面倒は見られん』
バーバラの元気の良さに、俺はため息をついた。こんな馴れ馴れしい人間ばかりなのかマーディラスは?
《バーバラの評価がかなり上がった》
喋っている間に庭園が終わり、屋敷の一角にぶつかった。壁に、勝手口らしい扉がある。ノックしてみると、
すぐに「ウィルさんですか?」という声がして扉は開き、チェリさんが顔をのぞかせた。
『チェリさん。実は、お願いしたいことがあるんです。……おい?何やってんだ。こっち来いよ』
俺が呼ぶと、離れて立ち止まっていたバーバラが、おずおずとやって来る。なんか、ずいぶん態度が違うな。
「えっ?ど、どなたなんですか?もしかして……」
チェリさんの探るような視線が、バーバラと俺を見比べた。何て説明しよう―――
1.ありのままを伝える。
2.友達と言う。
3.恋人だと紹介する。
2番ですね。
1
2
『こいつ、俺の友達でバーバラって言うんです。俺を捜してるうちに、ここの庭に迷い込んで、出られなくなってしまって』
「ウィルさんのお友達?けど、どうやって庭に入られたんですか?」
『えーっと……夕方、勝手に入ってきて、花壇の中でぼんやり昼寝してる間に、門が閉められてしまったらしいんです』
バーバラがむっとして何か言いかけるのを、俺は手で制しつつ説明する。
「そうですか。いったい、どこにいたのかしら?でもまあ、そういうことでしたら、お泊めしなければなりませんけれど……」
冷や汗ものの嘘八百だったが、納得はしてもらえたらしい。だがチェリさんは、難しい顔になっている。
「ただ、お屋敷にお客様を勝手に泊めることは、私にはできません。お嬢様に伺わないといけませんけど、もうお休みですし」
『そこのところ、何とかなりませんか。女の子なんで、外で野宿させるわけにはいかないんです!』
俺は、うつむいているバーバラを横目で見ながら、食い下がった。チェリさんは考え込んでいたが、はっと口を開いて、
「あっ、そうですわ。そこの塀を曲がると、この前まで庭師さんが住んでいた小屋があるんです。少し狭いのですが、毎日
お掃除はしておりますから、一晩くらいはお泊りになれると思いますよ」
と言うと、引き出しから鍵を取り出して、バーバラに渡してくれた。バーバラが、黙ったまま、頭を下げて受け取る。
『ありがとうございます!』
俺も、ほっと胸をなで下ろして、深く頭を下げた。これで、引き受けた責任は果たしたな。
《バーバラの評価が上がった》《チェリの評価がわずかに上がった》
「……ところで、ウィルさんはどうなさるんですか?」
チェリさんが、今度は俺に聞いてきた。どうなさるかって、俺はもちろん戻って寝……。
「ウィルは、あたしと一緒に寝てくれるのよね?」
なぬっ!?と横を見ると、バーバラが、潤んだ瞳で俺を見上げていた。何なんだこの娘は。俺はため息をつき―――
1.『……仕方ないな。』
2.『いくらなんでもまずいだろ。』
3.『ひとこと言っとくが、俺は男だぞ。』
3!
3
よし1だ
2
5
1
俺が言うと、バーバラは目を潤ませたまま、うつむいた。俺の手が、バーバラの手に握られる。
「そんなこと、わかってる。でも、せっかく会えたんだもん。もうあたし、寂しい想い、したくないよ」
こ、これ……“俺の友達”になりきった演技か?それとも本気か?俺は、ボーゼンとして黙り込んだ。
「そ、そうですか。あ、シーツはクロゼットの中にありますから。ウィルさん、バーバラさん。お休みなさい」
変に気を利かせたのか、チェリさんがさっさと扉を閉めてしまう。俺はあわてて『お休みなさい』と言うのが
精一杯だった。ったく何でこうなるんだよ?困惑して髪をかいていると、
「……ウィル」
バーバラがつぶやいた。何かを押し殺したような声だ。
『何だよ』
「エッチー!」
『なっ??』
「……ぷっ、きゃははは!」
バーバラが、もう我慢できないとばかりに腹を抱えて笑い出した。思わず、血が頭に昇る。
『あのな!先に一緒に寝ようとか言ったのは、バーバラだろうが!』
「だって、友達なんて言ってあのメイドさん信じると思う?友達じゃなくて、妹って言えば良かったじゃない。
それに何?俺は男って。一緒に寝るなんて言われて、すぐエッチなこと考えちゃうんだから。あはははっ!」
『だ、だからってな!』
怒鳴る俺に、バーバラが「静かに」と唇に指をあてた。俺は、歯ぎしりしてバーバラを睨み付けるしかなかった。
《バーバラの評価がわずかに上がった》
チェリさんは小屋と言っていたが、粗末なものではなく、立派な家と言っても良かった。入ってすぐに洗い場が
あり、水が取り替えられて新しい。バスタブもあったが、こちらには水は張られていなかった。
「庭師って、女の人だったんだね。男の人だと思ってた」
鏡台などの小物を見て、意外そうにバーバラが言った。あまりむさ苦しさを感じないのは、そのせいか。
クロゼットを開けると、カーペット、キルト、シーツがちゃんと二人分あった。だが、部屋にベッドは一つ……。
「ねえねえ、どうしよっか?このベッドって、二人並んでも寝られるよね」
バーバラがベッドに座って、ニコニコ笑いながら言ってくる。また俺をからかってるのか?さて―――
1.俺は床で寝る
2.バーバラを床に寝かせる
3.二人いっしょにベッドで寝る
1desu
3だろ?
「ウィル、寒いでしょ?意地張らなくていいのに」
バーバラが、ベッドから話しかけてくる。じっさい床は、敷物をしても堅く冷たかった。が、
『余計な心配はいい。だいたい気安く呼ぶな。ついさっき会ったばかりだろ』
「いいじゃない。あたしたちもうお友達なんだし……なんで、あたしのこと友達だなんて言ったの?」
『女が空から落ちてきたなんて言って、すぐ信じてもらえると思うか?信じたところで、下手すれば魔族と
間違えられるぞ。ついでに俺まで疑われちまう』
「ええっ、魔族に?あはは、そうかもね。それでウィルって、ここの人とどういう繋がり?」
『俺は……旅してて、たまたまお世話になっただけだ。明日には出て行く』
「そうなの。ウィルの家ってどこ?」
『ライフコッド。レイドック王国の村だ』
「らいふ、こっど……聞いたことない。レイドックには何回も行ったことあるよ。家族は?」
『……いい加減、寝ろよ』
家族と言われて、俺はターニアのことを思い出した。勇者捜しを考えれば、今晩はさっさと寝て明日に備えなけ
れば。魔女と無駄話してる時間ももったいない。バーバラに背を向け、目を閉じる。
「教えてくれたっていいじゃない。ケチ」
バーバラの拗ねたような声。それが、いろいろあった今日、最後に聞いた言葉だった。
《バーバラの評価がわずかに上がった》
翌朝。目を覚ましたとき、バーバラの姿はベッドになかった。布団も、きちんとたたまれている。
俺も布団を片付け、小屋の外に出た。日は昇り始めたばかりで、まだ肌寒い。
屋敷の中へ戻るため庭を歩いていくと、昨晩バーバラが落ちてきた場所の花が倒れたままになっていた。せめて
格好だけでもつけておこうと、俺は、袖をまくり、花壇を整えはじめた。畑仕事には慣れている。
「ウィルさん!ここにいらしたの。早起きなんですね」
顔を上げると、白いドレスを着たフローラさんが歩いてきた。俺は、あわてて手の泥を払って立ち上がった。
『すみません。ここの花、転んで倒してしまったもので』
「あら、このくらい構いませんわ。それより……私、ウィルさんに伺いたいことがあるんです」
と、フローラさんが、唇をきゅっと結んで、俺を見つめてきた―――
1.『何のことですか?』
2.『バーバラのことですか?』
3.『勇者のことですか?』
3
2
3
「ええ、その通りですわ。ウィルさんは、勇者様を捜す手がかり、お持ちなんですか?」
『手がかり?』
フローラさんの頬が少し紅潮していた。走ってきたからだけではない。表情に、何かの決意が感じ取れた。
「はい。あの……勇者様がどこに住んでいるかとか、お名前とか。あるいは、勇者様がおられたなら、必ず
お立ち寄りになるような場所……例えば、伝説の防具があるような街などを、ですわ」
『それはわかりませんが、俺は、探し出すあては心得ています。安心してください』
古の勇者ロトの血筋を受け継ぐ王家。それはこの世界の5つの国、すなわちレイドック、ラインハット、
マーディラス、ムーンブルク、サントハイムのうちのどこかのはずだ。これだけでもだいぶ絞れるだろう。
「……そうなのですか。そ、それでしたら、私、余計なことでしたわ」
フローラさんは、残念そうに顔を曇らせてうつむくと、俺に背を向けてしまった。何が余計なことなんだろう?
『フローラさん……?』
「ちょ、朝食ができてますわ。部屋にお戻りになって」
そう言うと、フローラさんは屋敷へとかけていってしまった。俺……傷つけるようなこと言ったっけ?
《フローラの意識に変化が起きた》
部屋に戻るとすぐに、チェリさんが、食事を運んできてくれた。俺一人かどうか、見回して確認している。
『チェリさん、ご迷惑かけました。バーバラの奴なら朝早く出ていったみたいです』
見てはいないが、急いでたようだから、魔力が回復してすぐ瞬間移動の魔法でマーディラスに帰ったのだろう。
「あっ……そうなのですか。良かった。私、今朝起きるの遅くて、まだお嬢様に話していないんです。それでしたら、
このまま秘密にしておいたほうが、よろしいですね」
チェリさんがほっとした顔になる。フローラさんにまで誤解されたくはないし、内緒にしてもらうのが一番だろう。
「ではウィルさんも、すぐにお発ちになられるのでしょうか?」
おっと、そう聞いてきたか。どうしよう―――
1.『はい。朝食が済んだらすぐ、この街を発とうと思っています』
2.『せっかくサラボナに来たことですし、しばらく街を見物してから出発します』
3.『できれば、明日まで泊めていただきたいのですが……』
2
今回、推敲ほとんどせずに投下してしまった・・・いつもに増して駄文でスミマセソ
>>73 早いご参加感謝しまつ
このままですとゲームブックスレと似通ってしまうので(てかそのまま)、
ギャルゲーらしい自由度のために、選択肢に気力パラメータを導入するか、
あるいは単に複数選択可能にするか考えています
プレイヤーさん決めずに自由度を増やすのは難があるのですが、
速打ちのできない漏れには多数決システムしかないので・・・
過去のGMさん達のように、プレイヤーに
ある程度自由に行動を決めさせる(他にあったらどうぞ、というやつ)
っていうのは駄目なんでつか?
「そうですね。それがよろしいと思います。ウィルさんは、この街は初めてなんですよね?」
俺が頷く。すると、チェリさんは食器を並べながら、さりげない感じで言ってきた。
「良かったら、その、私がサラボナをご案内いたしましょうか?」
『えっ……ええ、そうしてもらえるなら、ありがたいですが』
「そうですか!では、お掃除して参りますから、待っていてください」
チェリさんが、浮かれた態度と足取りで部屋を出て行った。街の観光案内が、そんなに楽しいとは思えないが。
《チェリの評価が上がった》
朝食を終えて、買ってもらったシャツとタキシードを身につけてみた。サイズはどうかと心配したが、ぴったり
だった。だがこれで街を歩いたり旅をしたりするのは、な。こういう礼服姿で歩いて渋さが出るのは40以上だ。
未成年の俺では、単なる派手好きにしか見えないだろう。……まあ、裸やパジャマよりはマシと思わなければ。
髪を整えていると、ノックがした。フローラさんだった。入って来るなり目を輝かせて、
「まあ!お似合いですわ。ウィルさん、これもどうぞ」
と、シルクハットとステッキを、俺に手渡した。フローラさん、かなりの徹底主義だ。まさかこれが普通の男の
平装だと思ってるわけじゃないよな?
「失礼します」
次に、チェリさんが大きな袋を担いで入ってきた。俺の姿を見て……やっぱり。チェリさん、笑いましたね。
「あの、お嬢様。私、午前中お時間いただきたいてもよろしいでしょうか。ウィルさまに、街のご案内をして
さし上げたいので」
「えっ?あなたが、ですか?でも……」
「はい。ウィルさまもご承知してくださいましたから」
怪訝そうに俺を見るフローラさんに、俺は、頷いてみせた。すると、フローラさんはキッとした目になって、
「それなら、ウィルさん。私がご案内しますわ」
と、俺を真っ直ぐ見つめた。頬がまた赤くなっている。俺もチェリさんも、あ然となった。
行き倒れで担ぎ込まれた厄介者のはずなのに、俺ってずいぶん人気あるよな。さて―――
1.フローラさんに案内してもらう
2.チェリさんに案内してもらう
3.二人とも断る
趣味で1
>>75 自由入力も慣れてきたらやりまつ。今はこれでいっぱいいっぱいなので
実を言うと、最初思いついたのはゲームブックスレと鬼畜王さんの中をとった形式で、
ウィル 一日目朝 サラボナ 気力30/50 仲間:ビアンカ、フローラ
1.情報収集(それぞれ消費気力5)
場所 1−1.酒場 1−2.街角 1−3.教会
聞く内容 A.勇者について B.魔物について C.その他(入力してください)
2.場所移動
2−1.ラインハットへ(消費気力50、翌日朝)、2−2.ポートセルミ(消費気力40、夜)
3.仲間と会話(それぞれ消費気力5)
3−1.ビアンカ 3−2.フローラ 3−3.ターニア
4.アイテム
4−1.キメラの翼(ライフコッドへ。到着は昼) 4−2.薬草
てな具合で気力を考えながら複数選択してもらうという、よくある(?)ものなのですが、
選択肢の先に選択肢がある場合ももちろんあるし、多数決には無理がある・・・
何かいい案あったらおながいします
なんだか物凄く計算がめんどくさそうな方式でつね。
その方式でやるなら、現鬼畜王方式と同様に
1.選択肢をあらかじめアップ
2.真っ先に志願した人をプレイヤーとして採用
3.一通りの行動決定をそのプレイヤー一人に行わせる
4.後日その結果をアップ
しかないでしょう。
4.二人に案内してもらうという選択肢はないんですか?
>>ゲーム方式
間を取るんじゃなくて、二つを並行して一緒にやってしまえばいいんじゃないか?
例えば、ある場面ではゲームブックスレのやり方。
違う場面では鬼畜王方式ですすめる。スレ住人は多いだろうから、今のままでも
いいとは思うけどね。
>>78 全然場つなぎじゃありませんな(w
これからも期待しておりますヾ(´ー`)ノ゙
>>30 今更ですが、迷惑かけてスミマセンデシタ。この場を借りて謝罪を。
ゲーム方式については、
気力があるなら、色々やってみると面白いかも。
ヾ(´ー`)ノ゙
ドーミ氏がこのスレを見てるとわかっただけで安心です〜
管理乙です〜
『そ、そうですね。ではお願いします』
見幕に負けて頷いた俺に、フローラさんはパッと明るく微笑んで、
「ありがとうウィルさん!では準備してきますわ」
先程のチェリさんと同じくらい軽いステップで、駆けていってしまった。
『……チェリさん、すみません。せっかくのお気遣いを』
「いえ。実を言いますと私、お仕事怠けたかっただけなんです。それから、ウィル様のそのお姿、何とかして
さし上げたかったのですけど……。ウィルさん、本当にその服で、旅をお続けになるんですか?」
『はは、次の街行ったら考えます。ところでその袋は?』
チェリさんが持っている袋は、見たこともない生地でできていた。
「これはただの[大きな袋]です。何でも入りますから、旅のお役に立つと思いますよ」
受け取ってみて、袋のあまりの軽さに驚いた。これなら一日中かついで歩いても疲れそうにない。
「ウィルさん、準備ができました」
ドアから声がして振り向く。手袋をして日傘を持ち、ヴェールのついた帽子をかぶり、藤色のマントを羽織った
フローラさんがニコニコして立っていた。俺のタキシードと張り合う気十分だ。
「さあ、それでは参りましょう」
促されるままフローラさんに従って部屋を出、俺は息を呑んだ。ホールから玄関の外まで、召使いさんたちが
ずらりと並んでいた。俺の後から出てきたチェリさんも、さっとその列に加わる。
『えっ、と……みなさんのご親切に感謝します。お世話になりました』
「ウィルさま。旅のご無事をお祈りいたします。またお越しください」
緊張しつつ礼を言った俺へ、一斉に頭を下げてくれた。老若男女さまざまで、俺と歳の近そうな娘も何人もいた。
失敗したなあ。明日までここに居れば良かった。
「ウィルさん?」
名残惜しくしている俺を、フローラさんが不思議そうに眺めてきた。
《フローラの友愛が上がった》《チェリの評価がわずかに上がった》
「ウィルさん、最初はどこに行きましょうか?」
門まで出てくると、笑顔のフローラさんが聞いてきた。……案内してくれるんじゃなかったんですか?
1.『まずはサラボナという街をひと通り歩いてみたいですね』
2.『情報収集ができるところというとどこでしょうか』
3.『買い物したいのですが』
4.『とりあえず、宿屋に行きましょう』
2で
3番
欲望をとめられない
4
3
1か
4
3
「お買い物ですか?それでしたら、街の南ですわ」
そう言ってフローラさんが歩き出す。門番小屋の老人が頭を下げてきたので、礼を返した。
『フローラさん。今日、リリアンは?』
「それがあの子、朝からいないんです。どうしたのかしら」
『えっ?それは……リリアンて、いつもはフローラさんと寝てるんですか?』
「はい。けれど、ドアにリリアンのための出口があるんです。きっと外へ行ったんですわ。私は、てっきり
ウィルさんのところへ行ったと思っていたのですけど……あら、おはようございます」
通りすがった商人が、あわてて挨拶してきた。気がつくと、周囲の街の人たちの目線は、フローラさんと俺に注
がれている。場違いな服装もあるのだろうが、俺が何者かと探っているんだろう。それほど大きな街でないから、
裸で行き倒れていたという俺の身上については噂になっているはずだ。そんな無一文の俺に、白薔薇のフローラ
さんが親切にしてるのだから、余計に俺の正体が気になるってわけだ。
……しまった!はっとして立ち止まる。無一文で買い物行って、どうしようってんだ俺は。
「ウィルさん、どうしたんですか?」
『すみません。その、俺……今、1ゴールドも持っていないんでした』
「あら。お支払いは私がしますわ。ウィルさん、遠慮しないでください」
フローラさんは、それが当然とばかりに、さらりと言った。
「私、お父様から、留守の間何あったときのために、お財布を預かってますから」
『ルドマンさんのって……俺のためなんかに使ったらマズイんじゃないですか』
「どうして?少しくらいならお父様も許してくださいますわ。ウィルさんは、私の大事な、お客様なのですから」
フローラさんの頬がほんのり赤くなっている。フローラさんにとっても、こういうことは初めてらしい。
どうしようか。この機会を逃さず、好意に甘えて旅支度を買い込んでしまうのも手だ。しかし、フローラさんは
ちゃんとルドマンさんに申告するだろうし、そうなるとルドマンさんは俺に良い印象は持たないだろう―――
1.フローラさんからゴールドを借りて買い物をする(複数可)
1−1.武器屋へ 1−2.防具屋へ 1−3.道具屋へ
2.ほかに行く
2−1.街を歩きたい 2−2.情報を集めたい 2−3.リリアンを探す 2−4.宿屋で休みたい
3番って書き込んでから気づいたけど、やっぱり無一文か
でも服までもらってるしな。毒皿で金も借りるか…
1−3
2−1 金はどこかに落ちているはず
2−1.街を歩きたいか
2-3 リリアンこそ王道
2-3
『あの、フローラさん。買い物の前に、やっぱり一度、街全体を歩いてみたいのですが』
「え?ウィルさん……そ、そうですか」
フローラさんがちょっぴり悲しそうな目をした。俺が遠慮したと思ったみたいだ。
《フローラの友愛がわずかに下がった》
『さっきから気になってるんですが、あの立派なお屋敷は、どなたのものですか?』
俺は、気を取り直すべく、川を挟んだ向こうにある三角屋根の家を指さした。
「あのお屋敷?あっ、あれは、私の家の別荘なんです」
『別荘?お屋敷のすぐ近くにある別荘なんて、何に使ってるんですか?』
「ええ、その……私が結婚したら、あの家に、住むことになっています」
ああ、なるほど。チェリさんが言ってたっけ。ルドマンさんは準備万端整えて、フローラさんを修道院から呼び
戻したってわけか。とすれば、夫婦でラインハットへ行ったのも婿選びが目的ではないのか。これはウカウカし
ていられないぞ。俺は焦りを覚えながら別荘を眺めた。すると、フローラさんが、川を指さして言った。
「この川、とても綺麗でしょう。街の北の森から流れてきてるんです。森には、エルフが住んでいるそうですよ」
覗いてみると、言うとおり透き通った水で、泳ぐ魚や川底の石がはっきり見えた。ライフコッドの水も澄み切っ
ていて、それは山の精霊様の恩恵だと言われている。が、このサラボナの水の美しさを見ると、山ではなく森の
精霊のおかげなのかもしれない。
街の中央の広場には、その水を引いた大きな噴水があって、周りで子供たちが戯れていた。
「この噴水、私の子供の頃からあるんです。アンディたちとよく遊びましたわ」
『へえ。昔から遊び場なんですね……あ、すると、フローラさんとアンディさんは、幼馴染みってことですか」
「えっ?ええ、そうなりますわ。アンディったら弱虫で、いつも男の子に泣かされてましたのよ」
幼馴染み、か。俺も、ビアンカやマリベルと、よく井戸のところで遊んだっけ。ビアンカの女の子らしからぬ体力
とマリベルのワガママには、俺も別の意味で泣かされてたなあ。つい一昨日のことのようだ……って、じっさい
一昨日くらいの話なんだが。いろんなことが起きすぎて、かなりの時間が経ってしまったような気がする。
そういや、ビアンカには家を頼むと言ったきりだ。きっと怒ってるな。
選択肢が無い _| ̄|○
広場の北側には、高い塔の教会が建っていた。広場を囲む他の建物と比較して、最も古く大きかった。重々しい
扉に、派手でも地味でもない、雰囲気に調和したステンドグラス。ルドマンさんの屋敷以外はそれほど見栄えの
ないこの街にあって、芸術にほとんど縁のない俺から見ても、魅力ある建物に見えた。
『立派な教会ですね』と俺が感嘆すると、フローラさんはニコリと笑って、
「この街は、この教会から始まったんだそうですわ。ここで式を挙げた夫婦は、生涯、添い遂げることができる
のだそうです。わざわざ遠くから、この教会まで来て式を挙げる方々もいらっしゃるほどですよ」
『そうなんですか。それなら俺の結婚式も、ここでやってもらいたいですね』
俺が笑って何気なく言うと、フローラさんは俺をちらりと見上げ、
「そ、そうですね、ぜひ。あの、そのときは、私も、お手伝い……」
フローラさんの声はだんだん小さくなって、最後は聞き取れなかった。何を言いたかったんだろう。
《フローラの友愛が上がった》
教会の隣は宿屋で、二階には酒場の看板がかかっていた。客が出入りしているので、昼間でもやっているらしい。
騒がれたくない、さっさと通り過ぎようと、足を速めた。「ウィルさん?」フローラさんが慌ててついてくる。
「こんにちは」
不意に、酒場への階段のそばにいた女性から声をかけられた。額に不思議なサークレットが輝き、あさ黒い肌の
女性で、手に持つ水晶玉、身にまとっている橙色ながら地味なローブからして、ジプシーらしかった。
「私は旅の占い師です。あなたがたの相性、占って差し上げましょうか?」
相性?嬉しい誤解をしてくれる。この占い師さんて悪そうな人には見えないしな。それどころか、穏やかでいて
彫りの深い顔立ち、細く澄んだアメジストの瞳は、かなりの美人と言える。サラボナって、綺麗な人が多いなあ。
「あ、相性なんて。ウィルさんと私は、そんな……ウィルさんに、ご迷惑です」
横を見ると、フローラさんが、日傘の下でうつむいている。これって、俺の承諾を求めてるのか。
『すみません。占いって、おいくらですか?』
「10Gになります。どうなさいますか?」
占い師さんが、俺とフローラさんを見比べる。10Gか。フローラさんは喜んで払ってくれそうだが―――
1.占ってもらう
2.断る
もちろん1!
1
『フローラさん。せっかくですし、お願いしてみましょうか』
俺の提案に、フローラさんは俺を見上げた。俺が笑ったのを見てちょっと顔を伏せ「ではお願いします」と、
ゴールドを差し出した。占い師さんが頷く。
「わかりました。ここでは太陽の光が強すぎますので、こちらに来てもらえますか」
フローラさんと俺は、占い師さんに従い、宿屋がつくる日陰へ行った。フローラさんは緊張しているようだ。
「では、この水晶玉を見てください。私がいいと言うまで、目を離してはいけません」
占い師さんが水晶玉を目の前に捧げ持つ。言われたとおりに俺は水晶を見つめた。水でも入っているかのように、
水晶の中が揺れている。フローラさんと俺、それに占い師さんの顔が交互に見える。
「はい、結構です。わかりました」
占い師さんの声に、俺は肩から力を抜く。よし、結果は?
「お二人の相性はかなり良いです。特に女性の気持ちが強く男性に向いています。ただ、それ以上に限りない
絶望も感じられます。想いは決して遂げられないと無意識に思い詰めた上で、せめて友人として男性に尽くす
ことによって心の慰めにしようとしているのですが、男性はそれに気付いていません」
俺は、ぽかんと口を開けて占いの結果を聞いていた。フローラさんが俺を?けど俺、フローラさんに昨日会った
ばかりで、特に何をしてあげたってわけじゃないのに……ということは、俗にいう一目惚れをされたのか俺は?
「そんな……そんなことはありませんわ」
浮かれる俺の耳に、フローラさんの上ずった声が聞こえた。彼女らしからぬ調子だった。そして、
「私は、私はただ……ウィルさん、に……」
震えながら首を振ったきり、うつむいてしまう。やっぱり大当たり?と緩む顔を、俺は慌てて引き締めた。
《フローラの意識に変化が起きた》《ルドマンの評価がわずかに下がった》
すっかり黙りこくってしまったフローラさん。占い師さんが、困ったように眉を寄せ俺を見る。さて――――
1.別のことを占ってもらう(2つまで)
1−1.勇者 1−2.妹 1−3.リリアン 1−4.ライフコッドの村 1−5.俺自身
2.占い師さんと話をする
3.ほかへ行く
3−1.街の南へ 3−2.情報集め 3−3.リリアン探し 3−4.宿屋で休憩
1−1、1−5
1-3,1-5
1−1.勇者 1−5.俺自身
1-1 1-5
1-1 1-5 練炭
『あと2つ占ってほしいことがあるんですが、よろしいでしょうか?』
「えっ?は、はい、何なりと」
俺の言葉に気を取り直し、占い師さんが水晶を構えた。
『勇者についてお願いします。今果たして……』
「勇者様ですって!?」
言いかける俺を遮って、占い師さんは急に甲高い声を上げた。そして、俺を上から下まで眺め、
「あなたが、どうして勇者様のことを知ろうとするのですか?」と、厳しい顔で問いつめてきた。
『いや、ちょっと深いわけがありまして……そんなに驚くなんて、どういうことですか?』
反対に聞き返すと、占い師さんはちょっと迷ってから、眉をキッとさせて俺を見つめた。
「実は……私たちも、勇者様を捜す旅をしてきたのです」
『ええっ!?』
俺は、フローラさんと顔を見合わせた。勇者の存在を信じている人が、ここにもいたのか。
「勇者様の行方について、私も、何度か占ってみたのです。そしてサラボナの街のあたりに勇者の光を感じて、
姉とこうしてやって来たのです。今のところ、まるで手がかりがなかったのですが……」
そこまで話して、占い師さんは、もう一度俺の姿を眺め回した。
「もしかするとあなたが……とにかく一度、あなたのことを占わせてください!」
有無を言わせず、占い師さんが水晶玉を俺の目の前に捧げた。俺は、思わぬ態度に驚いたが、どうせ占ってもら
うつもりだったから丁度いい。さっきしたように水晶を見つめた。やがて、占い師さんが口を開いた。
「……あなたの周りには、何人もの女の方が見えます。すでに出会った人、これから出会う人。うちの幾人かは、
あなたを愛し、あなたもその愛に応えることになるでしょう。その愛によってあなたの道が開けることもあれば、
その愛が悲しい結末をもたらすこともあるかもしれません。すべては運命。逆らうことはできません」
何人もの女?うわ、俺って世界的にはモテモテ(死語)なんじゃないか。これは村を出て正解だった(俺の意志
で出てきたわけじゃないけど)。きっと行く先々で出会う娘と俺は……。よーし、旅が楽しみになってきたぞ。
「どうやら、あなたは、勇者ではないようですね」
占いの見立てからか、あるいは俺の下品な心の内を読んだのか、占い師さんが拍子抜けしたように肩を落とした。
《ミネアの評価がわずかに上がった》
2
「では、次はあなたがお話になる番です……あら?お客さんでしょうか」
占い師さんが、わずらわしそうに俺の背後を見た。振り返ると、街娘が3人、俺の後ろに並んでいた。
「はい!あなたの占い、すごく当たるんですってね!」
「お金持って来たんで、お願いします!」
俺たちを押しのけて、女の子たちが占い師さんの前に横に並ぶ。占い師さんは、3人に待つように言ってから、
「あの、お名前は何というのですか?」
と、再び俺に聞く。俺が、この街ですてきな女性に名乗ることになるのは、バーバラも含めるとこれで三度目か。
『俺はウィル。占い師さんは?』
「私は、ミネアといいます。ウィルさんとは、まだお話したいことがいくつかあります。時間が空いたときに声を
かけてもらえますか。私はきっと、ここにいますから。今は、すみません」
ミネアさん、か。神秘的でいい名前だ。それに綺麗だし。事によると、いっしょに勇者を捜しましょうなんて、
言ってくれるかも。ずいぶん楽しい旅になりそうだぞ。
「あの、ありがとうございました」
フローラさんが礼を言う。しまった。フローラさんを放っておいたきりだった。まだちょっと蒼い顔をしている。
俺とミネアさんが話してる間ずっと黙ったきりだったけど、占いの結果、よほどショックだったのだろうか。
《フローラの友愛がわずかに下がった》
日なたに戻り、空を見上げた。もう昼近い時間となっている。今日街を出るなら、そろそろ焦らないとマズイか。
俺は、かなり昔になるが、一度このラインハットの国に来たことがある。港町のポートセルミからちょうど半日
くらいでサラボナの波止場、さらに半日でラインハット城の港だった。つまり、船を使うなら、東と西どちらに
行くにしても、今すぐにでも波止場へ行かないと、真夜中に街へ着くことになる。歩きなら、なおさらだ。
「…………」
といって、このままの雰囲気でフローラさんにサヨナラ言うのも気まずいなあ。どうしよう―――
1.フローラさんと話しながら、ミネアさんの客が終わるのを待つ
2.急いでリリアンを探す
3.宿屋に行く
4.ここでフローラさんとお別れをする
溜まってたレスを読み終わってリロードし忘れ、マジスマソ
1
1だな
時の流れを端折り過ぎた・・・トートツな展開に反省
>>110 いえ、投稿遅れてスミマセソ。参加していただいて感謝しまつ
以下遅レス
>>79>>80 やはりそうでつか・・・パラメータを導入すると、どうしてもややこしくなりますからね
ただ鬼畜王さんのシステムだと、漏れの書き速度からして1イベントに1週間はかかってしまう・・・
それに、できるだけ特定のプレイヤーさんというのを決めたくないんです。気楽に参加してもらいたいので
>>81 場つなぎを名乗ってる理由は、ストーリーが短いからでなく、とにかく長いから(藁
現に100レスまできたのにまだ旅立ってないわけで。スレをいくつ使うかわからない
何せこれ、漏れが以前作ろうとし、あまりの文章量に挫折したというWEBゲームノベルが元なので
え、それを早く言えですか・・・まあ、ちゃんとしたGMさんが来てくれれば、漏れはさっさと辞めますから
>>82 気力、本当にどうしましょう。採用するとすればHPやMPとは別物にしたい(HPも導入するか決めてないが)
とはいえ、戦闘をパラメータなしの選択肢だけで済ませるのは、かえってギャルゲーっぽくない
追々考えていきます。今後も、みなみなさまの意見をお聞かせ願えれば幸いです
・・・どこが場つなぎだとまた突っ込まれそうでつな
1
>>114 鬼畜王の方は1イベントに1ヶ月かかることもあるので安心しるw
(洒落になってねぇ・・・)
>まあ、ちゃんとしたGMさんが来てくれれば、漏れはさっさと辞めますから
ゲームが順調に進んでるときに、他のGMが乱入するのは
多分無い。そんな失礼な真似ができるわけがないので。
これからも頑張って下さいな。今はあなたが「ちゃんとしたGMさん」ですw
長くやってくれると初期からいる折れらは楽しいけど
途中から入ってくる香具師等がちと心配
宿屋と道を隔てて、小さな木立があった。暑くなってきたし、あそこで待つとするか。
『フローラさん。木陰で少し休みましょう』
「えっ……え、ええ」
フローラさんを伴い、道をわたった。木のかげに入ったとき、後ろで女の子のはしゃぐ声がした。ミネアさんの
客3人だった。一人が終わると次の一人、3人終わればまた一巡。しばらくかかりそうだ。
ふと、ミネアさんが、気休めを言うだけの占い師か、営業を考えずにハッキリものを言う人なのかと考えた。歳
は俺よりちょっと上くらいだが、手際も対応もかなり良いから、占い師のキャリアは長いとみた。だから、同じ
見立てでも人によって告げることを違えてるはずだ。俺やフローラさんにも、必要なことだけを言ったのだろう。
ただ、いま見てると、表情をつくるのを不得手そうにしている。勇者と聞いたときの態度といい、顔で嘘はつけ
ない女性らしい。俺は、何となく安心した。
「あの、さ、さっきの占いのことですけど……」
日傘の下から、小さな声がした。また隣のフローラさんを放ったらかしだ。俺って浮気者の素質抜群だな。
「その、あんなの、気になさらないで。占いなんて、その、ただの占い、ですから」
『フローラさん……じゃあ、ミネアさんの占いはハズレだということですか?』
「………」
ふたたび黙り込むフローラさん。日傘が、震えていた。嘘をつけない娘がここにもいる。言いたいことが言えず
迷ってるのではなく、どうすればいいのかわからずに心が混乱している、そんな様子だ。深窓のお嬢様と思って
いたが、フローラさんて簡単にのぼせ上がったり落ち込んだりするらしい。それとも。俺が相手だからだろうか。
まだあの3人娘は騒いでいる。フローラさんと別れ際の話をしたかったのに、無言の時間が流れていく。
『えーっと……いい、天気ですね』
「えっ、ええ」
それ以上言葉が続かず、またも沈黙。よほどのバカだな俺は。もう少し、入り込める話題を振らなければ。
『そういえばフローラさん―――』
1.『修道院に行っていたそうですね』
2.『リリアンのこと、心配ですね』
3.『近いうちに結婚するそうですね』
4.『アンディさんて、いい人ですね』
2
3
2
2
前を向いたまま話しかけてみたが、フローラさんからの返事はなかった。
『どこへ行っちゃったんでしょう。街の外に行ったなんてことは?』
もう一度言うと、ようやく日傘が動き、フローラさんが顔をのぞかせた。
「ウィルさん。そんなにリリアンのことが気になるんですか」
そんなことはどうでもいいと言うような、ちょっぴり悲しげで、とがめるような目だった。
《フローラの友愛がわずかに下がった》
『あの、フローラさん。リリアンが心配じゃないんですか?』
「心配ですわ。でも、今は……」
フローラさんは途中で言葉を止め、目を伏せた。別のことで頭がいっぱいらしい。そしてそれは、俺のこと、別れのこと
に違いなかった。でなければ黙りこくっているはずがない、そう思った。
高くのぼった陽、中断された街巡り。いよいよ別れが近いことにフローラさんも気付いたのだろう。加えて、あの占い。
尽くすこと……もしあの占いが本当なら、フローラさんは今も、俺へ何ができるのかを考えているのか。
俺が見つめていると、フローラさんは顔を上げ、目を再び俺に向けた。何か言いたげな瞳。唇が、わずかに開く。
急に俺は、フローラさんの言葉を止めたいという衝動にかられた。理由は自分でも全くわからないが―――
1.すぐにリリアンのことでも聞いて話を遮る
2.フローラさんの言葉を黙って聞く
3.とりあえず踊る
こんな夜中に・・・お疲れ様です。
2
2
2
3
「あ、あの……ウィルさん……」
フローラさんのあかい唇が開いては閉じ、なかなか言葉が聞こえてこない。それでも俺は待つ。ほんとうに俺の
ことを想っていてくれるのなら、それをちゃんとフローラさんの口から確かめておきたい。
『わっ……?』
不意に日傘が目の前に倒れてきて、そのまま、フローラさんと俺の間に落ちていった。
「ウィルさん!」
『は、はい!』
フローラさんが、小さく震えながら甲高い声を発した。俺が驚いて思わず姿勢を正すと、
「これを、持っていって!」
叫んだフローラさんが、何かを両手で俺の胸に押しつけた。反射的に手を出して受け取る。ずしりとした手応え。
これは……財布じゃないか?そう思って視線を下に向けた。そのとき、
「さよならっ!」
涙に光る瞳が見えたかと思うと、フローラさんは俺に背中をみせ、屋敷のほうへ駆け出していってしまった。
『あっ、フローラさん!』
追おうとした俺の足に、軽いものがあたった。さっきフローラさんが落とした日傘だ。どうしよう?―――
1.日傘を拾って、フローラさんを追いかける
2.日傘に構わず、フローラさんを追いかける
3.追いかけない
2
2
傘が気にはなったが、折りたたみができない日傘だから、持って走るのは面倒なだけだ。俺は日傘を脇へ退け、
フローラさんの後ろ姿に向かって走り出した。街育ちの淑やかな女の子が山道に慣れた俺の足にかなうはずは
なく、教会の前を過ぎたところで簡単に追いついた。
『フローラさん!』
声をかけたが止まってくれない。仕方なく、追い抜いて前に回り込む。それでやっと、フローラさんが諦めて
足を止めた。全力疾走だったらしく、下を向いて、かなり早い息をついている。
『フローラさん。これは、受け取れません』
フローラさんの前に財布を差し出す。が、フローラさんは、顔を上げようとはしなかった。
「もう、差し上げたもの、ですわ。ウィルさんはこれから、お金が、必要でしょう」
『それはそうです。けどこんな大金……それにこれ、ルドマンさんの、お父様のお金じゃないですか!』
「………」
『駄目です。俺には受け取れません。お返しします』
無理にでも握らそうと、フローラさんの手をとった。しかしフローラさんは、いやいやをするように、俺の手を
すぐさま払いのけた。そしてまた、俺の横をすり抜けて逃げだそうとする。俺は素早く右手を伸ばし、フローラ
さんの左腕をつかんだ。「放してください!」フローラさんが、空いている手で俺の手を離そうとする。俺を睨
むような、それでいて泣きそうな目。……これが、こんな頑固な娘が、サラボナの白薔薇と謳われる女性なのだ
ろうか。
俺は、思わずフローラさんに叫び返していた。『フローラさん!―――』
1.『わかりました、これは預かっておきます!』
2.『どうして、どうして俺なんかにここまでするんですか!』
3.『いい加減にしてください!迷惑なんですよ!』
4.『俺はお金なんかより、もっと他のものがほしいんですよ!』
4
1
2
ここでは3だな
2
1
4
4
「えっ?」とたんに、フローラさんが暴れるのを止めた。大きな目が驚いたように俺を見、すぐにまた伏せられる。
やはり、フローラさんは清楚だ。フローラさんの仕草に俺も平静を取り戻し、欲望を口走ったことを恥じる。
「ウィルさん……そうだったのですか。その、私ったら……」
『いや、フローラさんのお気持ち、俺は……』
言いかけて、俺は、幾つもの視線を感じて振り返った。街の人たち、広場で遊ぶ子供まで俺たちに視線を向けて
いた。ただでさえ目立つ服装で、しかも意味深な大声を出してしまったのだから、注目されてしまうのは当然だ。
『ふ、フローラさん。とりあえず中に!』
あわてて俺は、掴んだままのフローラさんの腕を引っ張るようにして、教会の中へ逃げ込んだ。
《フローラの友愛がわずかに上がった》
幸い、礼拝堂には誰もいなかった。外観どおりに広い教会で、色とりどりの模様が高くのぼった陽からステンド
グラスを通して床に落ちている。美しいが、あいにく鑑賞しているどころではない。
『これは、お返しします』
フローラさんの手に財布を渡す。フローラさんは、今度は黙ってすんなり受け取ってくれた。
『俺、フローラさんにこれ以上、ご迷惑をかけるわけにはいきませんから』
「でも……」心配そうにフローラさんが見上げるのへ、
『お金のことなら心配なく。ちょっとしたアテがあるんですよ』と、俺は笑ってみせる。
「そ、そうなのですか」
すまなそうにうつむくフローラさん。俺はホッと息をつき、背負っている袋の紐を直すと、『じゃあ出ましょう』
と、教会の扉に手をかけた。
「あの!」
フローラさんが、俺を見上げた。その紺碧の瞳は控えめながら何かを訴えるかのようだった。
「ウィルさんの欲しいものって、何でしょうか?」
『え?それは……』言い淀む俺を、フローラさんは、さらにまっすぐ見つめてきた。
「おっしゃってください。私にできることでしたら、何でも、さしあげますから」
『何でもって、フローラさん……』
「ええ、何でも、ですわ」
俺は、いったん目を閉じ、唾を飲み込んだ。今の俺が欲しいもの。それは―――
1.フローラさん 2.勇者 3.旅の仲間 4.妻 5.<<入力してください>>
5 愛人(肉奴隷でも可)
・・・などという冗談はこの話の流れだと通じない気がする。
でも敢えてやろう。
勇者は勇気ある行いをするから勇者なのだ。
143 :
961:03/10/12 20:12 ID:3trFB4HR
1
3
5 言えません
1
色々考えたけど
結局1って事に気付いた
5.力
3
『俺が欲しいのは……フローラさん、あなたです』
いま言っておかなければ必ず後悔する。俺は目を開き、ストレートに切り出した。
「え、ウィルさん?」フローラさんも、目を丸く大きく見開く。その頬に耳に、みるみる朱みがのぼってきた。
『何万何十万のゴールドより、俺は、フローラさんが欲しいんです』
もう一度俺が言うと、フローラさんは、真っ白な両手で口をおおった。身体が震えていた。
「そんな……ウィルさん、私を、か、からかって、いらっしゃるのね」
『違います。こんなこと、いくら俺でも冗談言えません。俺は……初めてあなたを見たときから、あなたを俺の
ものにすることができたらと思ってしまいました。けれど、あなたは世界中の男が憧れている女性です。ただ
の旅人でしかない俺には、到底手が届くはずもない……ですから、こんな片想いは隠したまま、お礼を言って
去ろう、そう思っていたんです』
俺は、心の中を整理しながら、さらに言葉を繋げた。
『さっきのミネアさんの占い。フローラさんが俺のことを……まさかとは思いましたが、本当であるならどんな
に嬉しいことかとも、思いました。だから俺、フローラさんから気持ちでなくてゴールドを渡されたとき……』
「ま、待ってください!」
フローラさんは、俺の言葉を止め、一歩後ろに下がった。逃げるのかと思ったが、俺が身を前に出してきたので
距離をとり直しただけとわかった。
「ウィルさん、でも……だって……」
震えながら俺を見つめているフローラさんの瞳には、涙がうっすらと浮かんできていた。そして、
「だって……だって、ウィルさんは、勇者様と結婚するために、旅をしているのでしょう?」
と、今にも崩れそうな痛々しく悲しい顔で、言った。確認するような聞き方だった。
そんなフローラさんに、俺は胸が塞がる心持ちがした。勇者と結婚……フローラさんて、それを気にしてたのか。
俺は、首を横に振ると―――
1.『実は、勇者を捜しているのには、もっと深いわけがあるんです』本当のことを話す決心をした。
2.『あはは、あんなの本気にしたんですか?』頭をかきながら、声に出して笑った。
3.『関係ありません。俺はフローラさんのことが……』ぐっと前へ身を乗り出した。
4.『ええ、そうですよ。問題ありますか?』開き直って逆に聞き返した。
1
3
1
1
自由選択のときは決選投票させたらよいかと
『フローラさん。これから俺が話すこと、よく聞いてください。』
と、俺はフローラさんの手をとって握った。「は、はい」フローラさんは驚きながらも手を引こうとはしなかった。
俺は、魔族にさらわれたこと、ターニアのこと、勇者を連れてこいと脅迫されたことを、かいつまんで話した。
「そんな……そうだったのですか。それならどうして、あんな嘘を?」
『巻き込みたくなかったんです。ここはセントベレス山の麓ですから、街の噂になれば、魔族があなたや街の人
に何をするかわかりません。それに何より……こんな話、信じてもらえるかどうか』
「いいえ。ウィルさんがおっしゃることですもの。信じます」
騙されていたのを知ったはずなのに、フローラさんには俺を疑う様子が全くなかった。それどころか、
「ウィルさん、私……ごめんなさい」と、目に涙を浮かべた。そして、
「私……ウィルさんのそんな苦しみにぜんぜん気付かなくて……。知っていたら私、もっと……」
と、悲しげに顔を伏せた。妹をさらわれた俺の心痛を、感じてくれているのだ。
『フローラさん。謝るのは俺ですよ。嘘をついた上、傷つけてしまって……』
「いいえ。傷つくなんて……。私、ウィルさんに打ち明けてもらって、とても嬉しいのに……」
『フローラさん……』
俺は、フローラさんの手をぐっと強く握りしめた。フローラさんへの隠し事は消えた。フローラさんが、勇者
のことを気にしていただけなら、これで答えを聞かせてくれるはずだ。俺は、期待をこめ、待った。
「ウィルさん……」
ところが、顔を上げかけたフローラさんは急に俺の手を放し、顔を背けてしまった。まさか?
「ウィルさん。あの……私、まだ、わからないの」
『な、何がです。さっきの話で何か……』
「違うんです。私……ウィルさんのお気持ち、とっても嬉しいんです。でも……まだ私、ウィルさんのことを
好きなのかどうか……気持ちに応えられるのか、わからないんです」
『そう、ですか』
「ウィルさん……ごめんなさい」
泣きそうな声で詫びるフローラさん。きっと、いろいろあって混乱してるんだろう。
残念だけれど仕方がない。フローラさんの答えは―――
1.こんど会ったとき聞くことにしよう
2.問いつめてでもハッキリさせよう
3.身体に聞くことにしよう
1
1
1
3だああああああああ
『フローラさん。いいんです。今は、焦る必要はありません』
俺は眼に熱をこめ、もう一度、フローラさんの手を握りしめた。
『ただし……次に会ったときには、きっと聞かせてください。あなたの気持ちを』
「……ええ。はい、ウィルさん、かならず!」
フローラさんは、頬を染めたまま、表情も口調もきっぱりと言い、俺の手に、そっと手を重ねてきた。
この態度、やはり期待してもいいってことですか?俺の心は、すでに舞い上がっていた。
《フローラの意識が変わった》《フローラの愛情が上がった》
「ウィルさん。旅の無事を、お祈りしていってください」
教会を出ようとして、フローラさんにせがまれた。こういうのが、修道女らしいってところなのか。
礼拝堂の十字架の前に跪いて、祈った。旅の無事、ターニアの無事、速やかな勇者の発見、そしてフローラさん
のいい返事、等々。欲張った上に心が浮つき、ほとんど心が入らなかった。神様がもし見ていたなら、かえって
罰を当てられそうだ。
『………』
息をつき、膝を立って隣を見ると、フローラさんは目を閉じて一心不乱に祈っていた。目を閉じ、唇をすぼめて
祈っている横顔は、服装からみると場にそぐわないが、それでも充分、美しく清らかだった。もしかして、俺の
ことを祈ってくれてるのか。フローラさんの願いなら何であれ、きっと神様も聞き届けてくれるだろう。
しばらくして、フローラさんが顔を上げた。俺が見つめていたことに気付き、ぽっと頬を染めて顔を背けた。
『行きましょうか』
俺は笑って声をかけ、歩き出した。うなずいたフローラさんが、俺のすぐ斜め後ろをついてくる。
ん?何かに似てるな。俺はタキシードでフローラさんはヴェールとドレス。並んで歩く道……バージンロードか!
いつか、フローラさんと俺、この教会のこの道をこうして歩くのだろうか。そうあってほしい!
「……ウィルさん?」
フローラさんが俺を不思議そうに見ていた。たぶん、にやついていたのだろう。あわてて、俺は顔を引き締めた。
《フローラの愛情がちょっぴり上がった》
フローラさんと並んで教会を出た。街の人が忙しそうにしている。陽の高さと暖かさも、まさに昼だと示していた。
「……ウィルさん。お食事、どうしましょうか?」
フローラさんが、思いついたように聞いてきた。俺との時間を少しでも長くとりたいのだろうか。けれど、もう
出発するには遅すぎるくらいの時間だった。俺もいい加減、決断しないと。
『フローラさん、もう、ここまでで結構です。ありがとうございました』
いくぶん大げさに頭を下げた。直接的すぎるが、やむを得ない。
「そうですか……」フローラさんが、しょんぼりとしてうなだれる。フローラさん。俺だって、フローラさんと
一緒にいたいんですよ。けれど、俺には俺の……などと勝手に葛藤していると、フローラさんが顔を上げた。
「あの!ウィルさんは、これから初めて、旅に出られるのですよね」
『えっ……はい。大勢での旅行は何度かありますが、一人旅は初めてです』
「でしたら、慣れないことで、いろいろ入り用になると思いますわ。やっぱりこれ、お持ちになってください」
そう言って、フローラさんは先程の財布を俺の手に置いた。堂々巡りかと顔をしかめる俺に、フローラさんは、
「差し上げるのではなく、お貸しするのですわ。いつか、返してくださればいいんです」と、微笑んだ。
『投資、ということですか?けど俺は……』
「ウィルさん……お願い。何もおっしゃらないで、持っていって」
フローラさんが、真剣な、せがむような瞳になる。さすがに今度ばかりは断れない。俺はしかめた顔のまま頷き、
『わかりました。お預かりしておきます』と、財布を丁寧に袋にしまった。
「ありがとうウィルさん!」
フローラさんが目を輝かせ、嬉しそうに笑った。俺も、苦笑する。この場合俺が礼を言わなきゃならないんですよ。
《50000ゴールドを手に入れた》《フローラの愛情が上がった》《ルドマンの評価がガタンと下がった》
せめて男の義務を果たそうと、俺は、フローラさんをお屋敷まで送ることにした。
『俺……フローラさんに何て言って感謝すればいいのか。本当に、ありがとうございます』
「そんな。私……私も、ウィルさんにいろいろとわがままを言ってしまって……」
フローラさんが、言葉を途中で切る。わがままなんて……親切の押し売りだったとでも反省してるのだろうか。
「……ウィルさん」
屋敷の塀と門が見えたところで、フローラさんが足を止めた。そして、俺に祈るかのように、胸の前で手を組んだ。
「いつとは言いません。必ずまたこの街にいらして。そのときは私、ちゃんと……」
『フローラさん。ご心配なく』
懇願してくるフローラさんの眼差しに、俺はニコリと笑ってみせる。
『長い旅になるでしょうし、お金も返さなきゃ。それに、フローラさんに街を案内してもらうっていうのも、途中
でしたよね。だから俺、きっとこのサラボナへ、あなたに会うために戻ってきますよ。約束します』
「ウィルさん……。はい。約束……ですよ」
フローラさんが切なそうに見上げてくる。まだ、不安なのだろう。フローラさんを安心させてあげるためには、
何かはっきりした、約束の証が必要だな―――
1.指切りをする
2.キスをする
2−1.優しくおでこに 2−2.もちろん唇に 2−3.キザに手の甲に
3.リボンをもらう
4.<<入力してください>>
4 自分の持ち物を何か渡す
>>163 素裸で倒れていた人が何を渡す(笑)ちょっと無理がありそうなので
1
何か俺を思い出させるような物でも渡しておこうと、持っている物を思い起こしてみた。
まず、袋の中には預かった財布しか入っていない。袖のボタンでも取って渡そうか。いや、このタキシード一式
もシャツも、フローラさんが買ってくれたものだから、俺からのプレゼントにはならない。あとは……男が毛髪
を渡すなんて縁起の悪いことは、逆ならいざ知らず、フローラさんだって嫌がるだろう。
さっき、ゴールドを借りてでも買い物しておいたほうが良かったかな。けど、それも結局は同じことか。
ん?持ち物といえば……たしか俺、ゲマの奴から何かを貰ったような気がする。何だったっけ……。
「………」
気がつくと、フローラさんは顔を伏せていた。目線が俺の後ろへいっている。はっと後ろを向いてみると、何人
かの顔が門に隠れるのが見えた。朝、俺を見送ってくれた、屋敷のメイドさんたちだ。たぶん、お昼ということ
でフローラさんの様子を見に行こうとでもしていたんだろう。
ギャラリーがいるんじゃ、もう何もできない。タイミングも逸したし……俺は肩を落として、また歩き出した。
考えてみれば、フローラさんならボタンだろうと何だろうと、喜んで受け取ってくれたかもな。失敗した……。
《フローラの愛情がちょっぴり下がった》
とうとう、屋敷の門の前まで来た。野次馬たちは門番を残して消えていた。俺は、フローラさんに向き直り、
『ではフローラさん。お身体に気を付けて』と、笑顔をつくりながら、別れの挨拶をした。
「ええ……ウィルさん、ありがとう。旅のご無事、私も、お祈りしています」
『ありがとう。それじゃ、また』
言葉が、終わった。けれど俺は、名残惜しくてなかなか動けなかった。フローラさんとは昨日会っただけなのに、
まるでずっと……ええい!男は度胸と決断だ。俺は踵を返し、街へと道を進み出した。さよなら、フローラさん。
塀が途切れたところで袋を背負い直し、門をふり向いた。フローラさんが、まだ俺を見送ってくれていた。俺が
ふり返ったのを見て、小さく、手を振ってくれた。俺も振りかえした。俺は今、フローラさんという心優しい女神
に見送られている。そう思うと、心が弾み、自信が湧いてきた。よーし、やってやるぞ!
《フローラの愛情が上がった》
屋敷からの道を降り、再び街の広場まで来た。今の気分のまま、早いところミネアさんに会って今後のことを考
えたい。さすがにもう占いは終わってるだろう。俺は、宿屋に向かって足を速めた。教会の前を通り過ぎると、
宿屋と酒場の看板が見えた。が、ミネアさんの姿は、なかった。
木陰でまた誰かを占っているのかと、建物の周りを探してみた。いない。どこに行ったんだろう―――
1.宿屋で昼食?
2.ひょっとして酒場?
3.俺を捜してるのかも?
4.まさかもう街にいないとか?
5.魔物にさらわれたなんてことは?
(ウィル 現在地:ラインハット王国サラボナ 所持金:50000G 装備:絹のタキシード+シルクハット 道具:なし)
1
3
<ヽ`∀´>2ダ
姉がいるかも
2
3
じゃあ2で
階段をのぼり、営業中を示す札がかかった、古びた木の扉を押し開けた。酒とは違う、香ばしい匂い。何だろう?
「いらっしゃい……?」
声をかけてきた中年のマスターが、眉をひそめて俺を見た。昼間の酒場に来るような格好じゃないからな。
店内は、床も壁も意外なほど清潔だった。カウンターではマスターが芋をフライパンで炒めていた。食事もやっ
てるらしい。肝心の客はと眺め回すと、男ばかり5人。つまり、ミネアさんはいない。
「えーっと、何にしますか?それともお食事ですか?」
『すみません。俺、人捜しをしてるんです』
ミネアさんの容姿を説明すると、マスターよりも早く、入り口のそばで飲んでいる男が、
「ああ。昨日からこの下ンとこで占いしてる、ジプシーのねーちゃんだろ。いなかったのか?」
と、声をかけてきた。俺が頷くと、今度はマスターが、料理を皿に盛りながら、
「それでしたら下の宿屋に行ってみたらどうですか。あの占い師さん、3日ばかりこの街にいるつもりと言って
ましたからね。今日も部屋をとってるはずですよ」
と、教えてくれた。この街の人、ずいぶん親切だな。あるいは、俺がフローラさんの客だったと知ってるからか。
『助かりました。ありがとうございました』
礼を言い、さっそく酒場を出ようとしたとき、「待てよ」と、いきなり最前の男に腕をつかまれた。
「せっかくだ、にいちゃん。一杯くらいやってけよ」
そう言って、新しいグラスにウィスキーを注ぎ、俺に突きつけてくる。酒は苦手なんだが―――
1.飲む
2.飲まない
2番。
『お気持ちだけいただいときます』
こんな昼間から酒の臭いさせて歩きたくはない。俺が丁重に断ると、男は面白くなさそうに、
「ちぇっ、いけすかねえ。昨日の女なら水みてえに喜んで飲んだだろうによ」
くだを巻き、自分で酒をあおった。酔っぱらいの相手してる暇はない。マスターにも頭を下げてから酒場を出た。
ミネアさんの姿は、やはりない。言われたとおり宿屋に行ってみよう。
「いらっしゃい!うちの宿は飯もベッドも最高だよ!」
扉を開けたとたん、カウンターから中年の男が元気よく声をかけてきた。この宿の主人らしい。
「おおっ!あんたか。旅の途中、盗賊に襲われたんだって?大変だったな」
俺が口を開く前に、男が大笑しながら言った。どうやら、勝手な噂を流されてるみたいだな……。
「まあ、この街の連中はいい奴ばかりだし、何たってフローラさんもあの通りの器量よしだ。しばらくこの街で
ゆっくりして行けよ。それで何の用だい?」
『……ミネアさんが、ここにお泊まりだと伺ったんですが』
気さくすぎる主人に圧倒されながら聞いてみると、さらに主人は機嫌良く笑って、
「おお、あの占い師な。何だい?あんた、あの姉妹と知り合いかい?へえー、うらやましいねえ」
と、俺をじろじろ眺めてきた。姉妹?そういえばこの街に姉と来たようなこと言ってたっけ。
『今、ミネアさんは部屋ですか?』
「んー?外で商売してなかったか?何、いない?ふーむ……おとなしそうな娘だが、あれで案外、姉妹そろって
酒飲みなのかもな。酒場は?いなかった?そうか。まあ、それなら姉さんのほうが部屋にいるから聞いてみる
といい。入って2番目の部屋さ。ついでに、昼食どうするか聞いてもらえないかな」
勢いで余計な用を頼まれてしまった。まあいいか。客室棟へ行き、教えられた部屋のドアをノックした。返事は
……ない。二度目。中で気配がする。三度目のノック。その瞬間、
「うっるさいわね何か用!?食事だったら、あたし今すっごーく気分悪いんだからあとにして。おやすみなさい!」
甲高い、言葉通りの声が飛んできた。これで頼まれた用は済んだが―――
1.さらに呼びかける
1−1.『ミネアさんの知り合いです』 1−2.『勇者のことで話があります』 1−3.『あなたのファンです』
2.外に戻ってミネアさんを探す
1-1
2
1−1
妥当に1-1
1-1
1-1
クリボーに突撃してそのまま一人減る
「ミネアの?だったらミネアに聞けばいいじゃないの。そのへんにいない?」
語尾の上がった、うっとおしそうな声が返ってきた。感じはミネアさんと似ているが、言葉と口調はまるで違う。
『それが、いないんですよ。宿の主人に聞いたら、お姉さんがここにいると……』
「はいはい。それがあたし。本当にミネアいないんでしょうね?宿屋の前で占いやってなかった?」
『ええ。その、いらっしゃいませんでした』
見幕に押されて卑屈になってしまう俺。どうも間の悪いときに声をかけてしまったらしい。
「ったく、ミネアったらどこで何やってんのかしら。それで、ミネアに何の用?」
『それが……ちょっとここじゃ、話しにくいことなんですよ』
「はあ?話しにくいって何なのよ?」
『ええ、ちょっと……難しい話で』
「ああもう、わかったわよ。ちょっと待ってて。しょうがないわね」
部屋の中から、せっかく寝てたのにだの飲み過ぎただのとブツブツ言う声が聞こえ、足音がドアに近づいてきた。
ガチャリ。ノブが回る。俺は、ドアから一歩下がり、シルクハットを脱いだ。ミネアさんのお姉さんか。どんな
人だろう。言葉から察するに、かなりキツそうな人らしいが……。
ドアが、少しだけ開いた。白い爪の浅黒い指、紫苑色の長い頭髪の次に出てきたのは、少し外側に垂れた目を不
機嫌に細めた、褐色肌で見るからに眠そうな顔の女だった。梳かれず散らばるままの前髪や、肌の色とあまり変
わらない唇、絡まった長い睫毛も、つい今し方まで就寝中だったことを表している。妹のミネアさんとはそれほ
ど似ていないというのが、俺の感じた第一印象だった。歳は、俺より半回りほど上か。
「な?なんなのよ、あんたは?」
俺の姿を一目見るなり、アメジストの瞳がせいいっぱい丸くなる。正装に驚いたらしい。瞼をぱちくりさせると、
頭を軽く下げた俺の髪から靴までを訝しげに眺め、
「ひょっとしてあんた、ミネアにプロポーズしに来たんじゃないでしょうね?」
と、眉をひそめて睨み付けてきた。いきなり突拍子ないこと聞いてくるよなお姉さん―――
1.『はい』
2.『いいえ』
3.『いいえ、あなたに』
2
185 :
キーファ:03/10/20 21:25 ID:axxi7L6R
>>1は 死ね・ウィルス・疫病神・病原体・汚染源・公害・猛毒・毒物・ゴキブリ・怨霊・死神・マスタードガス・土左衛門・異端者・妄想・邪宗・異教徒・恥垢・陰毛
打ち首・戦犯・絞首刑・斬首・乞食・浮浪者・ルンペン・物乞い・悪魔・切腹・デブ・邪教祖・悪もん・無礼者・へんたい・乱暴者・のろま・インチキ・弱虫・無礼もん・ブサイク・反逆者・毒薬・蜘蛛・無能・無脳・盗賊・どろぼー・殺人犯・アホンダラ!
2
2 ちょっと慌てた様子で
2で
2
俺は、手と首を大げさに振り、全力で否定した。俺にはフローラさんという大事な人が……。
「何そんなにむきになってんの。冗談よ冗談。けど、そんな必死なところが怪しいわねえ」
『違いますよ!俺、ミネアさんとは、この街でついさっき会ったばかりなんです』
「ふーん。じゃあ、何でそんなお堅い格好してるのかってところから、説明してくれない?」
『これは……ええっと』
まずどこから話したらいいものか。考え込んでいると、突然、女の目つきが変わった。
「ああわかった!この街のフローラってお嬢様の婚約者、あなたがそうなんじゃない?それで、結婚がうまくい
くかどうか、占ってもらおうって。そうなんでしょ?」
フローラさんの婚約者。その言葉に俺の顔色が変わってしまったのだろう。女は、得意げにニヤリと笑った。
「やっぱり!んふふ……世界一の商人のお婿さんなんだから、あなたもずいぶんなお金持ちか……もしかしたら
王子様かしら。さっきは失礼なこと言ってごめんなさい。許して、ね?」
さっきまでの眠そうな様子はどこへやら。まるで俺がタークワーズの原石かのように、うっとりと瞳をキラキラ
輝かせている。無意識に身を後ろに引いた俺へ、さらに、
「そうだ!お詫びに、このモンバーバラいちの売れっ娘マーニャちゃんが、あなたの未来を占ったげるわ!
ふふ、あたしの占い、ミネアなんかよりずっと当たるわよ。何たって年季入ってるもの。今日は気分いいから
特別にたったの500G!トーゼンやるわよね?じゃ、入って!」
と、俺に肯定否定させる間をとらせず、ドアの隙間から細く長い手を伸ばして、俺の袖をガッシリつかんできた。
ずいぶんきれいな腕だな……じゃなくて!このお姉さん、名前はマーニャさんというのか。どうもかなりのお天
気屋みたいだ。かなり法外な料金だけど、こんな性格で本当に占いなんてできるんだろうか―――
1.占ってもらう(所持金50000G)
2.ちゃんと事情を話す
3.逃げる
2番だ。金はすぐはいるかもしれんが……
2かなー
今までの主人公像からして嘘はつかないタイプだ
2
服装はなんとかしたほうがいいな
1
他にも色んな事してもらいたい
1 トラブルキボンヌ
∧∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(,,゚Д゚)<
>>1はこれ飲んで氏ね!
./ | \________
______(___/__
│01. 12. 11. /HE |
│_________│
/\ \
/ \ ネ オ 麦 茶 \
/ Λ_Λ \ NEW TIPE TEA \
/__( ´д`)_\____________\
| |ゲ.| │ |
| |.ロ | │ サソガリア |
| |ゲ.| │ 飲む 生物兵器 |
| |.ロ | │ 毎 日 腹 痛 |
|γ__ |ゲ.| │ ̄\ .腐食茶. / ̄|
| \ |.ロ | │. \___/ .|
| |ゲ.| │ .│
|__|__||_|)|.ロ | │ コ ッ プ 1 杯 │
|□━□ ) │ ( 約 200ml ) で . |
| J .|)/ ̄ ̄ ̄ |. 1 日 分 の * |
| ∀ ノ< ヒヒヒヒヒ │ 異 常 プ リ オ ソ |
| - ′ \___│ 2 分 の 1 |
| ) . │
|/ 捏 造 .│ │
| AA 朴李職人| 500ml
|____________|______________|
規制が明けて1
罪悪感に駆られたミネアを(;´Д`)
2
『な、なんか誤解があるようですが』
そう言って俺は、街の外で倒れていたのをフローラさんに助けられたこと、服をなくしてしまいタキシードを買
ってもらったこと、さらにひと晩泊めてもらっただけだということを(“だけ”に特に力をこめて)話した。
「なぁに〜ぃ?じゃあ、昨日酒場で笑われてた行き倒れが、あんたってわけ?」
マーニャさんは小馬鹿にしたように目を細め、さも白けた顔になって俺から手を放すと、
「……あーあ、オケラになんか媚び売って、損しちゃったわ」
と、ひとつ息を吐いた。オケラって……この街、いい人ばかりだと思ってたんだけどな。
《マーニャの評価が下がった》
「で?ミネアに何の用なの?知り合いだからってゴールドでも恵んでもらいにきたんならお断りよ」
マーニャさんが、面倒くさそうに髪をいじりだした。すっかり俺に興味をなくしたって様子だ。
『違います』
「だったら何なのよ。焦れったい」
『勇者のことについて……』
「勇者ぁ!?」
俺が切り出した一瞬で、マーニャさんは髪を放ると真剣な表情に戻った。言った俺のほうが驚いたくらいだ。
「何でそれを早く言わないの!とにかく入って!」
女とは思えない力で、俺は今度こそ部屋の中に引きずり込まれた。本当にコロコロ変わる人だな……?
『……!?』
俺は、目の前のマーニャさんの姿にぎょっとなった。彼女の着ているのはローブ一枚きりだった。しかも布地は、
ミネアさんの着るようなギトッとしたものでなく、かなり薄い絹だった。短い裾の下からスラリとした美しい脚
が伸びている。上のだらしない合わせ目からは艶やかな肌が盛り上がりまでのぞいていて、透けそうで透けない
絹が丸い膨らみをかたちづくっていた。こんなしどけない格好でマーニャさんは俺の、男の応対をしてたのか?
もし、こんな姿のビアンカやマリベルの鉢合わせようものなら、次の瞬間何が飛んで来るか知れたもんじゃない。
「突っ立ってないで、そのへん座ってよ。散らかってるけどさ」
マーニャさんは、まるで気にするふうもなかった。俺が目のやり場に困るのだが―――
1.どこかに腰掛ける
2.服装を気にする
2−1.『マーニャさんこそ、その格好は何ですか?』 2−2.『着替えるまで外に出てましょうか?』
4.とりあえず襲う
2-2
4も捨てがたいがベギラマあたりで返り討ちにされるとみた
1
こっちもタキシードなんだし
服装は気にしない
1
でも視線はマーニャで、それをマーニャに指摘されて慌てる勇者
2−2.『着替えるまで外に出てましょうか?』
2−2、かな。
しかし中々いい選択肢だよなあ毎回。
2−1
柄じゃないとわかっていながらも恥じらえ
膠着終結の為
2−2
停滞…?
俺が提案すると、マーニャさんはキョトンとまばたきしてから、何を思ったのかニヤリと笑って、
「そんな格好だからって紳士ぶることもないんじゃない?それとも」
と、袖が擦れ合うほどまで俺に近づいた。その一歩で薄衣の下の2つの双丘が揺れるのが、はっきり観えた。
「あんたまだ、大人の女の裸っていうの、見たことないとか?」
『そういうわけじゃ……』俺は、マーニャさんの胸元に行きかけた視線をあわてて天井に上げた。
「ふふっ。へーえ、じゃあ見たことあるってわけ?」
『………』
大人の女。俺はすぐビアンカが頭に浮かんだ。俺に対しいつも大人ぶってるからだ。が、彼女も村ではまだ子供扱い
されている。そもそもビアンカの裸を俺はまだ見たことないわけで。いや、ビアンカのことは今はどうでもいい。
『そういうことじゃなく。俺はこれから、ちゃんとした、真面目な話をしたいんで。だからその……』
「ふーん……まあ、いいわ」
やっと俺から離れたマーニャさんが、後ろのベッドに座った。唇は、まだ、笑っている。
「一応言っとくけどさ。あたしが身支度するとなったら長いわよ。その間、外で待ってるつもり?」
『仕方ないですよ。女性の当然の権利ですから』
これはマリベルの台詞だった。隣町シエーナへ行くとき、約束した場所で俺がさも待ちくたびれたなんて顔をしてる
と、決まって彼女がこう言う。そのくせマリベルは、俺の権利なぞはちっとも尊重しない。
こんなことをもちろん知るはずのないマーニャさんは「変な男ねえ」と息を鳴らした。
「…だけどあんた。昼食まだでしょ?」
『はい』ん?何でわかったんだろ。
「あたしも。というかさ今日まだ何も食べてないのよ。だから、食事しながらでも話聞こうと思ってたんだけど」
はあ。いらないとか言ってませんでした?マーニャさんの気分屋には、俺はすでに懲りかけだ。
「それでもやっぱり着替えるまで待っててくれるのかしら。別に、ここで見ててもあたしは構わないけど?」
挑発的に瞳を細めるマーニャさんに、またも俺はゾクッと唾を呑み込んだ。どんな神経してんだこの人は―――
1.『それならまず、食事を先にしましょうか』
2.『いいえ。部屋の外で待ってますよ』
3.『じゃ着替えてる間に、ミネアさんを探してきます』
4.『お言葉に甘えて、ここで見てます!』
先週に続いて、約一週間ぶりの更新。選択肢も前回と似てる・・・申し訳ない
リメイク5祭りに浮かれてたのと、
何故かいまさら村上ハルキにはまってしまい。
さらにマーニャ姐さんの行動をどうするか今にきて迷い出し・・・
結論は、ギャルゲーなんだからこっちの都合良くいったれと(オイ
現在のヒロイン評価
ターニア51▼、ビアンカ65、マリベル40、フローラ123○▼、マーニャ25、ミネア31、
ミレーユ未、バーバラ76、アリーナ未、フォズ未、アイラ未、ローラ未、????未(+?)
現在地:サラボナ
ラインハット王国の街。ラインハット城下町と外港ポートセルミを繋ぐ運河の中継地。
世界の海運王ルドマンの本宅がある。北にはセントベレス山がそびえ、その麓には森林が広がる。
3番
3人で話せそう
2
食事中に事件発生で二人で解決しに行く
1
場を混乱させてみるテスト
3番
2番
あえて4
4444444444444444444444
「あっそ。まあ、それがいいかもね」
マーニャさんが、ちょっと拍子抜けしながらも、納得したように何度も小さく頷いた。
『ミネアさんの行きそうなところ、心当たりありませんか?』
聞いてみると、マーニャさんは「んー……」と天井を仰いで考えるような仕草をして、
「そうねえ。この街にお墓とか洞窟、とにかく人がいないとこがあったら、あたしなら真っ先にそこ探すわね」
真面目な顔でそう言った。「……どうも」俺は肩をすくめる。こんなアドバイスがあてになるかどうか。
『じゃ、探してきます』俺が出て行きかけると、マーニャさんはベッドから立って、
「あ。食事ついでに頼んどいて。3人分。それからミネアがいてもいなくてもちゃんと戻って来なさいよ。あん
たは、やっと見つけた、だいっじな手がかりなんだから」
と、口元を笑わせたままで俺を睨み念を押してきた。俺のほうから来たんだから、見つけられたって覚えはない
んだが……。
《マーニャの評価がわずかに上がった》
宿の主人に食事を言付けてから、宿屋の外へ出た。ガヤガヤいう声に見上げると、水夫らしい男が3人、酒場の
階段をのぼっていた。食事か酒か。俺も、さすがに腹が減ってきた。
ひょっとしたらと宿屋の回りを見てみたが、ミネアさんはいなかった。簡単に約束を破る人には見えなかったけ
どな。あのお姉さんならともかく。
俺はまず広場に行った。一日でいちばん暑い時間だが、北から吹いてくる風のため涼しいくらいだ。
水桶を運ぶ女性や追いかけっこしてる子供たちに混じり、何人か旅の商人が往来していた。さっきの水夫とあわ
せて考えると、船着き場に船が着いたということのようだ。急ぐ必要があるかもしれない。
広場からざっと街を見渡してみた。どこを探そうか。フローラさんの屋敷に行ったならさっき会ったはずだ。酒
場でもなかった。小さい街だから、マーニャさんの身支度の間に2カ所ぐらいは見回れる。あるいは波止場か。
ちょっと遠くのようだが、走れば行って来られるだろう。
さて―――
1.街中を探す(2つまで。探す順番も)
1−1.宿屋周辺をもう一度 1−2.教会 1−3.武器屋と防具屋(街の南)
1−4.道具屋(街の南西) 1−5.ルドマンさんの別荘(街の南東)
2.波止場(運河)へ行く
・・・東と西が逆だ_| ̄|○
× 1−4.道具屋(街の南西) 1−5.ルドマンさんの別荘(街の南東)
○ 1−4.道具屋(街の南東) 1−5.ルドマンさんの別荘(街の南西)
1−4.道具屋(街の南東)
行ってから
1−2.教会
とか
2.波止場(運河)へ行く
洞窟とか墓場とかが選択肢にないのは何でだろ
1−2、1−1
1-2 1-5
これ決まらんような気がするなw
そうでつね・・・それでは、1を選んだ人は、
[最初探す場所(1−1〜1−5)から次に探す場所(1−1〜1−5)へ]を、2セット選んでください
例1)1−1から1−2へ、1−2から1−4へ
例2)1−1→1−3、1−1→1−4
例3)1−3to1−1、1−1to1−3
どちらを最初に行くかわかるようにしてください
ただし、まったく同じものは不可とします
例4)1−1から1−2、1−1から1−2 ×(この場合「1−1から1−2」の1票としてカウント)
選択方法は、1.か2.かで多い方をまず選び、
1.が多かった場合のみ、「最初探す場所」と「次に探す場所」を個別に選択します
例えば、上の例1〜3ならば、1−1(最多)→1−4(3と4同数だが先着順で4)とします
ということで、
>>219>>221>>222さん、申し訳ありませんが再入力おながいします
>>220 サラボナには洞窟も墓地もないので・・・
それでは
1−4.道具屋(街の南西)
↓
1−3.武器屋と防具屋(街の南)
↓
1−5.ルドマンさんの別荘(街の南東)
これで南の方を探してみる
>>224 _| ̄|○ 例が悪くてスミマセソ
例1)1−1から1−2へ、1−2から1−4へ
これは、1−1→1−2→1−4と探す、というわけではありません
単に、1.を選んだ場合は「先」と「後」の1セット、それを2回(合計4項目)選べるということでつ
例5)1−1から1−5へ、1−4から1−3へ
例6)1−2から1−1へ、1−5から1−4へ
例7)2.
ややこしくなってしまったお詫びに一つ
実際のサラボナの街とほぼ同じ建物配置だと思ってくださいです・・・
227 :
222:03/11/03 08:02 ID:yHs74fR+
大体墓地や洞窟に行ったらモンスターが出ると(ry
サラボナの配置なんて覚えてない。
1-1→1-2 1-4→1-5
選択肢を組み合わせるのは毎回混乱を出していませんか?
最初から方角とか決めて4択などにすればいいのに
1−2→1−3、1−4→1−1
俺は、ひとまず道具屋の看板目指して歩き出した。ミネアさん、買い出しにでも行ったのかもしれない。
先程フローラさんと話をした、小さな林。その脇を通り抜けると古い屋敷があった。フローラさんの屋敷とは比べる
べくもないが、酒場をやってるランドの家よりも広い、そこそこ大きな家だ。二階はベランダが大きくとってあり、植
物が無造作に蔦を垂らしていた。古くて大きいだけで、覇気がない。そんな印象の屋敷だ。
道具屋は、その家の隣だった。
「いらっしゃい。おや、あなたは?」
カウンターの40くらいの男が、俺を見て酒場や宿屋のときと同じような反応を見せた。すっかり街の有名人ってとこ
だな俺。町長選挙があれば、3位にはなれそうだ。
「どうしたいそんな格好で。旅の途中で海賊にやられたんだってな。同情するよ」
盗賊の次は海賊か。その次はたぶん、空賊あたりに俺は襲われるのか。
『どうも。この街に昨日来た占い師さん、このへんで見ませんでしたか?』
「占い師?……ああ、あのジプシーの。昨日うちに薬草とかを買いに来たけど、今日は見てないな。宿屋とか、酒場
には行ったかい?」
『行きましたが、いないんです』
「そうか。……だけど、なんであんたが探してるんだ。知り合いなのかい?」
『いえ、ちょっと占いを頼もうと。……ところで、そこのお屋敷は誰のですか?』
余計なことを言って変な噂を増やしたくない。俺はすぐ、話題を変えた。
「そこ?インガルスさんのお屋敷だよ」
『インガルスさん?』
「知ってるはずもないか。インガルス家はこの辺り一帯の大地主だったのさ。北の森から良い木が取れてね。インガ
ルスって焼印のついた木材が波止場へどんどん運ばれてたものだったそうだ。ところがいつ頃からか森に魔物が
出るようになっちまった。しかもこのへんの魔物なんかよりもずっと強くて凶暴な奴らがね。おかげで木を切るどこ
ろじゃなくなって、街も一時期すっかりさびれちまったって話だ。そのあと先々代のルドマンさんがあの豪邸建てて、
今みたいな街になったってさ。サラボナに残ってる建物で昔からのは、インガルスさんの屋敷と教会くらいだと、私
のひい爺さんがよく聞かせてくれたよ」
『そうだったんですか』
この道具屋さんのひい爺さんの話というなら、少なくとも100年は昔か。
230 :
:03/11/06 08:06 ID:+Sb0ZJHf
「ま、サラボナきっての旧家ってことで、今も王様やルドマンさんからは一目おかれちゃいるんだがね。跡継ぎだっ
た息子さん夫婦がそろって病気で亡くなっちまってからは、ひっそりしたもんだよ」
道具屋さんがしみじみと語った。サラボナきっての旧家か。“サラボナの白薔薇”フローラさんのせいか、サラボナと
つくと上品な印象を受ける。
「孫のアンディさんもよく家を空けてるしさ。アンディさんが結婚でもすれば、また賑やかにはなるんだろうが」
『え、アンディさん?アンディさんの家なんですか?』
「そうだよ。会ったのかい?ああ、ルドマンさんのお屋敷でか。フローラさんも、将来の相手を決めようってときに
よく平気で男をお屋敷にあげるなあ。……おっと、それはあんたもだったね」
道具屋さんがしまったとばかりに頭をかいた。俺は、気にしていないふうを装う。しかし、アンディさんが旧家の出
というのは意外だ。ただの画家だなんてチェリさんは言ってたけど、家柄じゃ俺より一歩も二歩もリードしてたのか。
「ああ、つい長話してしまった。ほかに何か用はあるかい。買い物は?」
ミネアさんを探しにきたんだから余計に時間を潰すわけにはいかない。礼を言って店を出ようとすると、
「これ持っていきな」と何か渡された。薬草1袋だった。俺はもう一度、お礼を言った。
《[薬草]x1を手に入れた》
宿屋のまわりをもう一度見てみようと、来た道を戻ることにした。アンディさん宅の隣を通り、林を抜けようとしたとき、
一本の木のかげに白いものを見つけた。近づいてみると、さっき落としたフローラさんの日傘だった。
風でここまで転がってきたのか。放っといたら街の外まで行っちまうな。
俺は日傘をひろいあげ、草や土を払い落とした。フローラさんの匂い……するわけないか。
届けてあげなければと思うが、ちゃんとしたお別れをしてきた手前、もう一度行くのは気がひけた。でも元は俺の
せいでもある。ミネアさんを見つけて話をしたそのあと、届けることにするか。
俺は、日傘をさして歩き出す。日傘を持ち運ぶ方法はほかにどうしようもない。タキシードとシルクハットに女ものの
日傘。道行く人たちが俺に近寄るのを避けるほど、俺の姿の滑稽さには拍車がかかっていた。
もし万が一マリベルがいたら、腹抱えて大笑いするだろうな……。
231 :
:03/11/06 08:07 ID:+Sb0ZJHf
宿屋に戻ってきた。もしかしたら行き違いかと宿屋の主人に聞いてみたが、帰っていないという。
俺はいったん外に出、日傘を建物の壁際に置いて、何か手がかりがないか地面や壁を調べはじめた。ひょっとした
ら合図のようなものを残しているかもしれない。ジプシーの人たちの合図を俺は知らないが、マーニャさんに聞けば
わかるだろう。そう思って、占いをしてもらった日陰から酒場の階段までを、じっくり念入りに探したが、とくに何もな
かった。せいぜい、草の間から5ゴールド硬貨を拾ったくらいだった。これとて今の俺にはラッキーだが。
「あの、おにいさん!」
元気な女の子の声がしたのは、しゃがみこんで地面をさらに観察しているときだった。顔を上げると、大きな瞳をし
た女の子が立っていた。その後ろにも2人いる。さっき、俺たちのあとでミネアさんに占いをせがんだ女の子たちだ。
「おにいさんて、占い師さんのお友達ですか?」
まず俺に聞いてきたのは、子供っぽい袖の長い布の服を着た、ぱっちりした瞳の女の子だった。長い栗色の髪を
頭の両サイドでまとめて腰まで垂らしていて、髪型だけなら俺よりもずっと目立つ。
『友達ってわけじゃないけど……きみたち、何か知ってるの?』
「うん、あのね。占い師さん、用ができたからしばらく待っててだって」
『え?』
一瞬どういう意味かわからなかった。ミネアさんから言付けか。
『ありがとう。あのさ。ミネアさんは…占い師さんは、どこに行ったのか知ってる?』
俺が聞くと、女の子は大きな目をパチパチさせて、
「えーっと、あっちかな」と、街の南西を指さした。その方向は、武器屋と防具屋の看板のちょうど間だった。
『あっちって言うと、ルドマンさんの別荘に行ったのかな』
「違いますよ」後ろにいた女の子が口を挟んできた。前髪をリボンで上げてキリッとした眉を見せた、勝ち気そう
な娘だ。「あの向こうにも街の門があるんです。街の外に行ったんだと思います」
街の外?俺はともかくマーニャさんに無断で街を後にするということは考えられない。この街の近く。おそらく波
止場へ行ったんだろう。けれど、何のために?
『ありがとう。他に何か気付いたことないかな。俺、ここで占い師さんと待ち合わせてたんだ』
もっと詳しいことを聞き出そうと、俺は、女の子たちを見回した。
232 :
:03/11/06 08:11 ID:+Sb0ZJHf
「うーん。じゃあ話すね、おにいさん」
まず言い出したのは、俺に初めに話しかけた娘だった。
「ええっと、ユルルね、いつ一人前のメイドさんになれるか占ってもらってたの。そしたら占い師さん、急にもう終わ
りだって言い出したんだよ。ユルルがびっくりしたら、お金返してくれてね。それで、もうすぐここにタキシードを着
た男の人と日傘持った女の人が来るはずだから、その人に、用ができたから待っててくださいと伝えてください、
って、ユルルに頼んで走って行っちゃった」
最後はちょっと怒った声で女の子は口を尖らせた。ミネアさん、占いを放り出したのか。これはよほど重大事だな。
「あの占い師さん、男の人を追いかけていったんですよ」
そう言ったのは、今まで黙ってニコニコしていた、ショートヘアのおとなしそうな女の子だった。
「エッコちゃん。何でそんなことわかるの?」
「占い師さん、ユルルちゃんの占いの途中で、すごくびっくりした顔したの。それで私、何か見たんじゃないかな
って後ろ見たの。そしたら男の人が、そこの道を向こうに行くとこだったよ。他に何も見えなかったから、たぶ
ん、その人のせいだと思うな」
『男の人?どんな?』男と聞いて、俺は勢い込んで聞いた。その女の子はびっくりしたように身を引いてから、
「あんまりよく見えませんでした」と、すまなそうに言った。「背が高くて、焦茶色の髪で、魔法使いみたいなロ
ーブを着てました」
それだけ覚えていれば上出来だ。魔法使いふうの男。ミネアさんと合うような、合わないような。
「そうだ!」最初の娘が声をあげた。「そのとき占い師さん何か言ったよ。ユルルそれで目を開けたんだもん」
『何かって?』
「うん。えっとね……バル何とか、だったよ。キッカ、聞いてない?」
「占ってもらってたのはユルルでしょ。ユルルに聞こえなかったなら、あたしたちも聞こえてないに決まってるじゃ
ない。ユルルっていつもぼうっとしてるんだから」
「むーっ!そんな言い方ないでしょ。キッカだってこの前……」
口げんかをし始めた女の子を『まあまあ』となだめる。これ以上の情報は聞けそうにないようだ。
233 :
:03/11/06 08:32 ID:+Sb0ZJHf
『どうも、いろいろありがとう。あ、そうだ』
ふと思いついて、俺は、壁に立てかけておいた日傘を手にとり、
『これ、フローラさんに届けてもらえないかな?』
女の子たちの前に差し出した。「えーっ?」驚いた3人が、顔を見合わせる。
「フローラさんかあ……ユルル、フローラさんに憧れてるけど、お屋敷は、ちょっと苦手なの」
「それはそうでしょ。お手伝い行くたび失敗してるものね、ユルルって」
「キッカちゃん!あ、だったら、チェリさんに渡しとけばいいと思うよ。服屋さんにまだいるんじゃないかな」
「そっか。うん、それがいいね。おにいさん、その傘、頼まれてもいいよ」
相談がまとまったらしい。俺はほっとして、ユルルちゃんに傘を手渡す。
『ありがとう。お願いするね。それと、これはお礼』
さっき拾った5ゴールド硬貨も、ついでにユルルちゃんに渡した。「わあっ、おにいさんありがとう!」ユルル
ちゃんが顔を輝かせ、俺に礼を言った。3人で5ゴールドだから、さらにケンカの種まいたようなものだけど。
「じゃあねー、おにいさん」「占い師さんにもよろしく」「早く会えるといいですね」
女の子3人は、交互に日傘を持ち替え、いじったり、さしたりしながら歩いていった。壊さず持って行ってくれと
付け加えたほうが良かったかな。
《ユルル・キッカ・エッコの評価が上がった》《チェリの評価がわずかに上がった》
女の子たちを見送ってから、俺はいい加減、腹が空いて仕方なくなってきた。
少し早い気もしたが、宿屋に入ってマーニャさんの部屋のドアをノックしてみた。すると、
「ああもう!まだよ!そんなすぐ終わるわけないでしょう。もう少し待てないの?」
またも不機嫌モードの声が返ってくる。たぶん、化粧瓶の蓋がなかなか開かなかったとか、ふきでものでも見つ
けたとか、とにかく気に入らないことがあったんだろ。ミネアさんのことを報告したいけど、この様子じゃ無理だな。
何をして時間を潰そうか―――
1.先に昼食をとることにする
2.部屋の前でおとなしく待つ
3.ミネアさんを追って波止場へ行く
4.鍵穴から部屋の中をのぞいてみる
3
3
3
あんたらも好きねぇ
4
『マーニャさん!俺、ちょっと波止場まで行ってきます』
俺はドアに向かって声をかけ、返事がくる前に駆け出した。マーニャさんの身支度はまだ時間かかりそうだし、
もし多少待たせることになってもミネアさんを探しに行ったと言えば分かって貰えるだろう……たぶん。
出会う人ごとに注意しながら、俺は広場を横切って港への道を急いだ。空っ腹で走るのは、キツイな。
波止場には、船が一隻だけ泊まっていた。船員、乗客、その見送りが歩き回ったり立ち止まったりしている。
敷地を広くとられた港で、あちこちに木箱や樽、木材が点々と積まれていた。けれど、レイドックの港のように
隙間なく壁となって並べられているわけでも、見上げるほど高く積まれているというわけでもない。ポートセル
ミからラインハットまで1日の船旅だから、水や食料をこの港で補給する必要がない。したがって、特に用が
ない船は寄港しないのだろう。この積まれた貨物も、サラボナの住人が使うぶんだけだということか。むやみ
に広いのは、木材で儲かっていた頃の名残なのだろう。
波止場への道すがら、行き交う人や馬車をもちろん観てきたが、ミネアさんはいなかった。
通り過ぎる人を確認しつつ、桟橋の近くに行き、船を見上げた。運河を通るにしてはかなり大きく立派な船だ。
出入りしている人や物から見て客船だろう。以前ラインハット城へ行ったときもあんな船に乗った気がする。
あれは確かヘンリーそれにホルスの奴と……いや、そんなことより。
桟橋を渡っている人の中やその周囲にも、ミネアさんの姿はなかった。まさかこの船に乗り込んだなんてこと
は無いとは思うが……と、俺は目をこらしてみたが、高い甲板の手すりから港を見下ろしている、数人の客の
顔を確認できただけだ。
乗っていないとすれば。この港、大して賑わってないとはいえ出店や倉庫は少なくない。俺一人でしらみつぶ
しに探すのは大変だ。空腹ももう限界だし、街に帰ってマーニャさんと相談するか。それとも……。
240 :
:03/11/08 13:44 ID:NVj3yDfH
考えながら視線を船から街のほうへ戻したとき、一匹の白い小さな犬が何かをくわえて道に向かってお座り
している姿が見えた。あれは、リリアンだ!どうしてこんなところに?
『リリアン!』
俺が近寄ると、リリアンも俺に気付いて走り寄ってきた。俺は、はっと目を見張った。
『り、リリアン?どうしたんだ?』
リリアンのリボンがなくなっていて、そろっていたはずの毛が汚れて乱れており、ところどころ縮れていた。
「クウーン」リリアンが、くわえていた橙色のものを俺の前に置いた。それは千切れて焼けこげた麻布だった。
しかも驚くことに赤い血が滲んでいる。この色、たしかに俺には見覚えがあった……フローラさんのものでは
ない。そうだ、ミネアさんのローブだ!まさか?
『リリアン!これ、ミネアさんのなんだな。ミネアさんはどこだ?』
俺のその言葉を理解したかのように、リリアンが走り出した。すぐに、後を追う。ミネアさんにいったい何が?
リリアンは港のはずれへ向かって走って行った。そこには使われなくなった小屋がいくつか並んでいた。その
うちの一つの小屋のところでリリアンが回り込む。俺も続こうとしたそのとき、
「おまえ、また来たのか!」
不意に、太い男の声がした。キャンキャンとリリアンが吠える声。俺は足音を消して小屋のかげに隠れ、そっ
と様子をうかがった。小屋の一つの扉が開いていて、そこからリリアンの鳴く声が聞こえる。あの小屋にミネア
さんがいるのか?もし監禁されているなら助け出さなければ。俺は、ふくろからステッキを出して握りしめた。
「キャン!」
突然、リリアンが勢いよく小屋から飛び出してきて、地面に転がった。蹴り飛ばされたのか?何て酷いマネを!
「しつこい犬だな」一人の男が小屋から出てきた。麻のベストと下履き姿で、肩が張った筋肉質の男だ。「悪く
思うなよ」男がリリアンの首をつかみ上げた。リリアンが足をばたつかせる。
リリアンが危ない。俺は、ぐっとこぶしを握りしめた―――
1.黙って見てはいられない。すぐに出て男と対決だ
2.手強そうな男だ。ここはこらえて、小屋に入る隙をうかがおう
3.仲間がいるかもしれないし、俺一人じゃ危険すぎる。助けを呼びに行こう
4.<<行動を入力してください>>
1
てか俺ならリリアンが蹴られる前に倒したね
1だな
4
後ろから不意打ち、男を昏倒させる
2
1
てか、多数決制で行動入力なんざ意味が無いと思うのは俺だけか?
>>245 確かに、行動入力したい人は真っ先に入力しなきゃ意味が無い。
>>245 長文ばっかりだと、容量オーバーで1000まで逝かなかったり。
だから、番号だけ書き込むコトにも意義はあるのだ。
>>246 そういう問題じゃないと思う。
行動入力(今回の選択肢だと4)の場合、
個々人によって書き込む内容が違うから意見割れして決まらない。
多数決制システムをとる限り、自由入力された行動が日の目をみることは無いってことだと。
>>多数決制システムをとる限り
いや、真っ先にレスした人の選択が反映される方式を前提に言ったつもり。
多数決制で無くとも、自分の意見を言い合ったりするコトにも決して意味が無いわけではない
ということを言いたかった。
んー、そろそろ、この制度自体を考え直さなきゃならん時期なのかもしれません。
251 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/11/12 19:11 ID:Oz4zHnZZ
とりあえずはこのまま多数決制でいいんじゃね?
1
『待て!リリアンを放せ!』
俺は地面を蹴って小屋のかげからおどり出た。今なら先制できる!と突きすすもうとした瞬間、男がこちらを向
くなり、リリアンの首をつかんで振りかぶり俺の胸元にブン投げてきた。
『なっ!?』
あわてて足を踏ん張り、ステッキを捨てて両腕でリリアンを抱きとめつつ一歩後ろに跳び退いた。それでもかな
りの衝撃が胸にあった。
「キャゥン!」
リリアンが悲鳴を上げる。完全には受け止めきれなかったか。
『ごめん、リリアン。だいじょうぶか?』
「だいじょうぶかじゃねえよ!その犬、お前の犬か。どういう躾してやがるんだ!」
男の声に、俺は顔を上げ、睨んでくる黄色い目をにらみ返す。こんな可愛い犬をまるで物のように蹴ったり投げ
たりするなんて……人の心を持ってないのかこいつは?
《リリアンの評価が上がった》
男の動きに気を付けながらリリアンを地面に下ろし、ステッキを拾った。リリアンは男に身構え、唸り声をあげた。
男は、さらに怒りに眉をぴくぴくさせながら、
「うるせえ!お前、今ンとこはガキだと思って見逃してやるから、その犬連れてさっさと帰んな!」
と、俺を野太い声で威圧した。この程度でびびっていられるか。俺はステッキを握り直し、男をながめた。俺より
一回りは大きい体躯。無造作に伸ばした焦茶色の髪。日に焼けた精悍な顔に黄色く光る目。
ん?こいつの髪の色……この男、エッコちゃんが言ってた魔法使いふうの男じゃ?
頭の中で男に魔道士のローブを着せてみた。こんな筋肉質な男でも青か緑の長衣を着れば魔道士には見える。
こいつをミネアさんは追って行ったのか?確かめてみよう。
『ミネアさん……』
「!?」
小さく、しかし男に聞こえるようにつぶやいてみると、男の顔に明らかな動揺が走った。やはり!
『ミネアさんがここへ来ただろう!ミネアさんをどうしたんだ!?』
「ミネア?はっ、そんな女は……」言いかけて、男は急に鼻を鳴らして笑った。ごまかしても無駄だと悟ったよ
うだ。ニヤニヤと俺を探るように見ると、
「お前いったい、ミネアの何だ?」と、楽しそうに笑みを浮かべた。
『何だっていいだろ。ミネアさんは今どこだ!』俺はかまわず怒鳴った。
「ミネアなら」男は俺の背後を指さした。「そこの海に浮いてる。早く行かないと沈んじまうぜ」
なんだってー(AA略
254 :
:03/11/14 14:16 ID:r2Ls9NVd
『なんだって?』俺が反射的に振り返りかけたとき、
「キャン!」
リリアンがいきなり男にひとつ吠え、俺を見て頭を横にふるわせた。まるで、嘘だと言っているようだ。
「どうした?ミネアが魚の餌になっちまってもいいのか?」
『その前にまず、そこの小屋の中を見せろ』
小屋の扉へ俺が一歩歩み寄ると、男はさっと間をさえぎった。
「おっと。なんのつもりだ?誰もいねえよ」
『だったら見てもいいだろう。それとも、海に浮いてるってのは嘘か』
俺は、男を見据えながら、両手でステッキを握って臨戦姿勢をとった。
「ヘッ!このガキ、そんなに痛い目をみたいのか。騒ぎはおこすなって言われたが仕方ねえ!」
男が唾を吐き、いきなり印を組んだ。メラの詠唱だ!俺が気付くよりも早く、男の指先には炎がのぼっていた。
『リリアン!』
とっさに跳びすさった俺とリリアンの間に火球が直撃し、地面を焦がして煙をたてた。
火炎呪文が使えるのか。しかも、俺の知ってる魔術師の誰よりも詠唱が早い。ゴツい外見のくせに呪文を使い
慣れてる。青ざめた俺に、男は、ニヤリと笑った。
「次は外さねえぜ。黙っておとなしく消えるんだな」
『くっ……』
俺が使えるのは、アイテムや宝箱を調べる呪文、インパスだけ。こんなことならもっと何か教わっとくんだった。
それでは腕力はというと……俺の力はランドの奴と互角ってとこだが、目の前の男はランドよりはるかに大柄で
筋骨隆々だ。武器はないらしいが、俺も軽い檜製のステッキのみ。力と力でも俺に分はなさそうだ。
だが。俺は小屋の扉に目をやった。ミネアさんはこの中にいるとみて間違いない。まずは隙をみてあの小屋に
入り、ミネアさんの状態を確かめた上で助け出さなければ。
あのぼろ切れのようになったローブ。いったいどんな目に遭わされたのか。血の染み通り方からいって、かなり
の出血だろう。一刻の猶予もない状態なのかもしれない。ミネアさんを救えるのは、今、俺だけだ。
『そこをどけ!』
俺は男めがけ突進した。リリアンもすぐ横を併走してくる。ここは――――
1.間合いに入ってステッキで正面から攻撃
2.ステッキを男の顔に向かって投げ、体当たり
3.リリアンに牽制してもらい、まっすぐ小屋に突入
4.大声で助けを呼んで威嚇
5.男を迂回してやり過ごし、逃走
またも約1週間ぶりでスミマセソ
>>253 ( ゜д゜) ポカーン
・・・296の大先生とかぶるなんて喜ばねば!(`・ω・´)
以下遅レス
>>228 おっしゃる通りでつ
ただ、リアルタイム形式でできないので、行動にコンボつけつつ話を手早く進めるためには、
一度に複数選択してもらう以外の考えが浮かばないので・・・
何かいいアイデアはないでしょうか
>>245>>246>>248>>250 これも難しい問題でつな
ほぼ同じシステムのゲームブックスレのほうは常に自由入力可能で順調ですが、
あいにく漏れのキャパにはそれだけの余裕がありませぬ
システムは住民のかたがたで話し合いをおながいします・・・
↓戦闘モードはこんなの考えてましたが無謀のようでつね。「さくせん」で好感度を上下させたかったのですが
>ウィル 体調:良好 精神:好調 武器:鋼鉄の剣 呪文:なし 特技:盗賊系、商人系
>ミネア 体調:軽傷 精神:不調 武器:銀のタロット 呪文:バギ、ホイミ、ラリホー 特技:占い師系
>マーニャ体調:良好 精神:高揚 武器:鉄の扇 呪文:メラ、ギラ、イオ 特技:踊り娘系
>
> 1.たたかう(A、Bそれぞれ1つずつ選択)
> A.さくせん(現在:バッチリがんばれ)
> A−1.ガンガンいこうぜ A−2.バッチリがんばれ A−3.いのちだいじに
> A−4.じゅもんせつやく A−5.おれにまかせろ A−6.じゅもんつかうな
> B.コマンド
> B−1.こうげき(打撃・攻撃系の呪文特技を重視) <<攻撃優先対象入力>>
> B−2.ぼうぎょ(護身・守備回復系の呪文特技を重視) <<護身優先対象入力(自身含む)>>
> B−3.どうぐ
> B−3−1.薬草x2(体調回復)<<使用対象入力>>
> 2.にげる
選択肢2
>戦闘システム
素で無理だと思う、それは。
ところでよく飽きないな、ここの人達
武器も無し防具も無し
道具は薬草が一つ
石でも拾っていけばよかった
4番
>戦闘
作戦と誰のサポートに回るかを決めるってのはどうでしょう
2番
ルールを覚えるまでが大変そう
1っと
選択肢1. 魔法使いなら、魔法で応戦してくるはず。詠唱の時間を与えず先手をとるべし。
>>255 リアルタイムでやるなら、その戦闘システムも悪くないと思う。
戦闘時のみ、リアルタイムでやるっていう方式を取ってみては?
あと、戦闘時のダメージ量とかは、解答者IDの数字によって左右される、
ってのも面白いと思う。固定ダメージ+IDの数値の合計=総ダメージ量とか。
「やる気か、おもしれえ!」
にやりと笑った男が、受けて立つとばかりに両腕を胸の前に構えた。俺は、男の目を睨んで走りながら、ステッ
キを背中に振りあげ、手の平に滑らせて末端を握った。そして、
『食らえっ!』
リリアンを投げられたお返しとばかり、ステッキに思いっきり縦の回転をつけ男の顔へ投げつけた。
「うっ!」
男がとっさに両腕でガードする。ぶつかったステッキが宙に大きく跳ね上がった。しめた!俺は身体を低くする
と、がら空きになった男のふところに飛び込んでいった。防御は、ない!
「ぐふっ!!」
充分すぎる手応え。俺の左肘が男のみぞおちに見事に突き刺さった。男がよろけ、後ずさる。効いた、いける!
続けて攻撃をと前膝に力を入れた瞬間、俺は殺気を感じ足を止めた。俺の鼻先を男の長い腕がかすめていった。
「こ、この……っ!」
男が前のめりになってつかみかかってくる。が、男の脚がふらついた。その隙に俺はすばやく間合いから逃れた。
危ない危ない。だがこいつ、筋肉つけてるわりには打撃慣れしてないな。
「このガキ……!」
男が呻きながらペッと唾を吐き、腹を押さえた。かなりのダメージのようだ。こんなきれいに決まるとは。
俺は、目を周囲に回した。リリアンはいつの間にか男の背後にまわり込んでいた。俺に呼応した攻撃をしようと
してるらしい。ペット犬なのに猟犬みたいな判断力だ。リリアン、どこでこんな訓練受けたんだ?
もう一つの俺の味方、唯一の得物のステッキは、男の左、少し離れた場所に転がっていた。小屋の扉とは反対側
だ。拾うのは簡単だが男に立ち直る時間をやることになる。一方、小屋の扉にはまだ男のほうが近い。駆け込む
ためには隙を作る必要があるし、ステッキを捨てることになる。
「………」
俺を睨みながらうずくまっている男に、目を戻す。先制攻撃は効いてるようだが、このまま素手で殴りかかって
も、リーチの長いあの腕に捕まっちまうな。
今のわずかなアドバンテージを有効に使うには――――
1.すぐにステッキを拾いに行く
2.足下の砂を男の顔へ蹴り上げ、ひるませてからステッキを拾う
3.砂を男の顔へ蹴り上げ、ひるんだところを素手で攻撃する
4.砂を男の顔へ蹴り上げ、ひるんだ隙に小屋に飛び込む
5.リリアンに牽制してもらい、小屋に飛び込む
こりは3ですな
実際の喧嘩は先に有効な一撃を放った方の勝ちですよ。
296の大先生みたく、流れるような戦闘が書ければなあ。ボキャ貧何とかしないと・・・以上反省
>>263 お早い参加ありがたう。まあこれは一応DQなんで・・・w
>>256>>258>>260>>261 うーん…
>>255の戦闘モード案で上3行を漏れ側のマスクデータにすれば、
プレイヤー側の困難は多少は解消される(複数選択の難しさは残るが)と思ったけど、
それはあまりにも反則かな
やはり今まで通り、体調(HP)や精神(MP)等、余計なパラメータはなくして、
好感度のみに依存するシステム(Kanon方式?)にするのがベストなんでしょうか
今やどこのゲームブックもダイスやシートは使わないわけだし
DQらしさの追及と戦闘が完全に漏れの思いつき(?)任せになるという危険性は増すけど(藁
それとリアルタイムはできません!いやその、TRPGでいろいろとトラウマがあるもので・・・(´・ω・`)
今のところは、
>>258さんの案のように、作戦+行動選択にしようかと思ってまつ
2
やはり、体格差を埋めるためにも今のうちに速攻でたたみかけるしかない。俺は男にニヤリと笑い、
『でかいのは口と図体だけかよ?』
挑発の台詞を吐いて、一気に男の間合いの寸前まで駆け寄り、靴先を砂にくぐらせ男の目へ蹴り上げた。
「うおっ!?」
ちょうど顔を上げた男の顔へ、もろに砂のかたまりが命中した。男が声をあげて目を覆う。
「ガキが……っ!」
やみくもに振り回される腕をかいくぐり、気合いをこめて男の体へ拳を繰り出した。一発二発三発。すべて命中!
男がたまらずに腹を押さえ、右膝をついた。俺はすかさず男の左膝の裏に蹴りを入れた。崩せたと思ったが、男
は地面に手をついてバネにし飛びかかってきた。しまった、かわしきれない!
「ぎぐぁっ!」
男が突然、悲鳴を上げた。リリアンが男のふくらはぎに噛みついたのだ。目の前で止まって格好のサンドバッグ
になった男を、俺は容赦なく拳で打ちすえた。どしん、と巨体が砂に倒れた。
「キャン!」
『ありがとうリリアン』
得意げに吠えるリリアンに礼を言うと、俺は這いつくばった男を見下した。口から黄色い液を吐き、呻いている。
こいつ結局見かけ倒しか。ランドのがよほど手強かった。まっ、俺の作戦勝ちというわけなんだろうけど。
「くそうっ……!」
男は四つんばいになって、気付けと砂を払うためか、頭を震わせた。隙だらけの姿勢だ。今、後頭部を一蹴りす
れば、気絶させられる。俺は男の左にまわった。
―――チリーン。
不意に、場にそぐわない爽やかな音が響いた。ガラスと陶磁器が触れあう、澄んだ音だ。
(えっ?おにいちゃん……?)
同時に、俺の頭の中にかわいい声が流れた。間違うはずのない、ターニアの声。
『ターニアっ!』
周囲を見回してみたが、いるのは、きょとんとしているリリアンだけだ。俺は、ふっと、ゲマの言葉を思い出した。
“では妹さんを解放できない代わりに、常に話ができるようにして差し上げましょう”
ひょっとして。俺は男の腰の道具袋を見た。この中にあの[風鈴]があるのか。しかしなぜ、こんな男が?
267 :
:03/11/20 01:50 ID:WOAmueDN
「………」
低い声がして俺は顔を上げた。男が顔を憎々しげにゆがませ、片手で印を結んでいた。火炎……ギラの呪文だ!
『リリアン、伏せろ!』
男の掌から紅の炎が吹き出した。とっさに俺は首をすくめた。かぶっていたシルクハットが炎の圧力で脱げて飛
び、一瞬のうちに燃え尽きた。ちっ、せっかくの一張羅が。体勢を立て直そうとした俺の前に、巨大な靴が現れた。
『うわっ!』
次の瞬間、俺は、砂の上に転がっていた。額をまともに蹴り飛ばされたのだ。
「なめた真似しやがって……」
頭を振り起きあがろうとした俺を、今度は男が見下ろしていた。しかもすでに呪文の詠唱に入っている。やられる!
と思ったが、それは男自身への呪文だった。ベホマ。傷を完全に癒してしまう最高位の回復呪文。なんてこった。
だったら俺に勝ち目など最初から……。
あぜんとする俺の胸ぐらを、男が掴み上げた。ぎらぎらと光る黄色い瞳がすぐそばにある。
「もう容赦しねえぞガキ!覚悟はいいか」
『ま、待て!……どうしてその[風鈴]を、あんたが?』
「風鈴だと?」
男は眉をひそめると、手を道具袋にやり、風鈴を取り出した。やはり、あの[風鈴]だ。
「お前、どうしてこいつのことまで?」
『そ、その[風鈴]は、ターニアと……妹と話ができるようにと、魔族が俺にくれたものなんだ!』
「何だと?」
男は、俺の顔をじいっと見つめた。そして、いきなり声を上げて笑い出した。
「するとお前がゲマ様の言っていた……ハッハッハ、こりゃあなんて巡り合わせだ」
高らかに笑う男に俺は呆然とした。こいつ、人間にしか見えないが……ゲマの?
『そ、それならあんた、ゲマを知ってるのか?』
「当然だ。おれはな、ゲマ様から、これをお前に渡すようにと命じられたんだ。ところがお前は見つからねえ上に、
まさかミネアがこの街にいて、お前と知り合いだったなんてな。教えてくれてもいいのにゲマ様も意地が悪いぜ」
男が俺から手を放した。げほげほ、と俺は詰まっていた息を吐いた。こいつがゲマの手下……俺に[風鈴]を渡
すことが目的……それなら、俺もこの男も、お互い戦う必要はなかったのか。
268 :
:03/11/20 01:57 ID:WOAmueDN
いや、そんなことはない。こいつはミネアさんを……俺は視線を尖らせて男を見据えた。
『お前、ミネアさんをどうしたんだ!』
「ミネアなら、お前が察した通りそこの中さ。もう少しお仕置きをと思ってたが、ま、お前も見つかったことだし、
これ以上騒ぎを大きくさすわけにはいかねえ。今日のところはこれで帰るとする……だが!」
男は笑いを消し、ぎらりと睨んできた。ゲマの配下だと知った今、俺にとってこの眼は先程と迫力が全く違った。
「あれだけやられといて黙ってるってのは、俺の腹の虫がおさまらねえな」
『……まだ、やる気か?』
男の言葉に、俺はまた身構えてみせた。だが恐怖に腕も脚も震えている。あんな妖しげな術を使うゲマ、その
手下だというなら、ほかにも呪文が使えるとみなければ。そんな奴に生身の俺が立ち向かうにはあまりに絶望
的だ。いっそのこと逃げ出したほうが……。
「安心しろよ。お前には手を出すなと言われてるんだ。だからな……」
そんな俺の心中を見透かしたように、男は低く笑った。そして[風鈴]を持ったままいきなり横を向き、印を結ん
だ。そこには唸り声をあげているリリアン。まさか見せしめにリリアンを?
『やめろっ!』
叫んだ俺にかまわず、男が詠唱をはじめる。最初に水の精霊ということばが聞こえた。とすれば氷の呪文だ!
『リリアン!』――――
1.リリアンの前に飛び出し盾となる
2.男に飛びかかって詠唱を止めさせる
3.できるだけ大声をあげる
4.インパスを唱えてみる
1
1
2
2
リリアンは逃げもせず、男の指がつくる印を見つめている。魔法が発動する寸前でかわそうとしてるのか。無理だ。
あの距離じゃどう逃げたって巻き込まれる。そう思ったとき俺は跳んでいた。リリアンと男との間へ砂に靴を滑らせ
割って入る。俺に手を出すなと言われてるなら、俺が前に立てばリリアンに攻撃できないはずだ……たぶん!
「キャン!」
砂煙がもうもうと立ちのぼり、リリアンの驚いたような吠え声、そして男から舌打ちが聞こえた。その瞬間、俺の左腕
を、突き刺すような冷気がかすめていった。背後で板が折れて倒れる音が聞こえ、続いてピキピキピキッと妙な響き
がした。振り返ると、後ろの小屋の一角が崩れ、その穴をふさぐように青白い氷が砂から生えていた。氷系、しかも
高位の魔法だ。背筋がぞっとした。あんな呪文をまともに浴びていたら……。
「やれやれ、お人好しだな。犬一匹のために身体張ってたんじゃ命いくつあっても足りねえぜ。ウィルさんよ」
あきれたように男が言った。どうして俺の名前……いや、ゲマの手下で俺を捜していたなら、当然知らされてるだろう。
『余計なお世話だ!その[風鈴]を渡して、あんたはさっさとゲマのところへ帰れよ』
「フン。お前のその下手な強がり、気に入らねえが……」
苦々しそうに顔をしかめながら、男は俺に風鈴を投げてよこした。受け取ったショックで鳴るかと思ったが、ことりとも
しなかった。あまりに強い振動だと鳴らないようにしてあるのか。ゲマの奴、親切設計なことで。
《[風鈴]を手に入れた》
《リリアンの評価がかなり上がった》
「……おっと危ねえ。忘れるとこだった」
男がつぶやくと、俺の鼻先に長い指を突きつけた。また呪文か?身体を強ばらせる俺に、男は笑って言った。
「ゲマ様からの言伝だ。お前のことは魔族、しかもごく限られた者しか知らない。だからそこらの雑魚どもは、普通の
人間と区別なくお前に狼藉に及ぶだろうから、邪魔するようなら遠慮なく殺してもかまわねえとよ。つまり、おれのよう
に話せばわかるような甘い魔物は、いないってことだ。せいぜい気を付けるんだな」
『……それじゃ、俺が途中で魔物に殺されたとしたら、妹はどうなるんだ?』
「妹?そんなこと知るか。だいたい、おれだってお前がどんな命令で動き回ってるのか知らないんだからな」
274 :
:03/11/21 01:48 ID:DzHQBzfI
『だったら、あんたはどういう人間なんだ?』
俺が眉をひそめて聞くと、男は意外そうに目を丸くした。
「なんだ。ミネアから聞いてないのか。お前こそミネアの……まあいいさ。ミネアに伝えておけ。今回だけは昔の誼で
いたぶるだけにしといたが、次におれに関わったら、遠慮なく命をもらうってな。それから……」
男は何かを言いかけてやめ、ふっと空を見上げた。こんなゴツい男には似つかわしくない表情だった。
「いや、何でもねえ。いいか。お前はとにかくゲマ様の用事をとっとと済ませろ。いいな」
そう言うと、男は道具袋から手早く白い羽根を取り出し、宙に投げた。キメラの翼だ。男の身体が舞い上がっていき、
あっという間に空に消えた。俺は、ぽかんとして男を見送ったが、
『は…………はぁー』
急に身体からどっと力が抜け、砂の上にへたりこんだ。緊張が解けたせいで、拳と腕のしびれや首の痛みが生々し
く感じられてきた。手のひらやシャツをぐしょ濡れにしている汗の冷たさにも、身体を震わせる。
『わっ?』
何かが俺の膝、それから肩に飛び乗ってきた。リリアンだった。瑪瑙のような瞳を嬉しそうに輝かせながら俺に鼻を
近づけると、ざらざらした舌で、俺の頬、あご、唇を舐めてくる。
『はは、やめろよリリアン』
はしゃいで俺の顔中をよだれまみれにするリリアン。ともに助かったって喜びを示しているんだな。俺はリリアンを捕
まえ、その小さな白い額に頬を寄せた。ああ、よかったよかった。
《リリアンの評価が上がった》
おっと、じゃれ合ってる場合ではない。俺はリリアンを地面に置き、小屋の中へと駆け込んだ。
『ミネアさん?ミネアさ……!!』
小屋の奥を見た俺の目に飛び込んできたのは、褐色の肌からおびたたしく流れる真っ赤な血だった。ミネアさんが、
壁にもたれるようにして倒れていたのだ。生気のない顔をがっくりと傾け、腕も脚もだらりと投げ出している。羽織っ
ていたはずの麻のローブもその下の綿の内着も、ずたずたに引き裂かれてまわりに散らばり、ほとんど身体を覆う
役に立っていなかった。
『ミネアさん!』
275 :
:03/11/21 01:55 ID:DzHQBzfI
いそいで走り寄って声をかけてみた。動く気配はない。血の毛が失せた唇からは、弱々しいが、息が規則正しく吐
かれている。よかった、眠っているだけだ。いや、あの男に眠らされたのか。
近くで見るとミネアさんの怪我はさらにひどいものだった。口元や肩、腹部には大きな傷口があり、さっきまで出血
していたらしく血がぬらぬらと輝いていた。はだけている胸元や腕、太股には火傷とおぼしき赤みがいくつも浮いて
いた。どれも命には関わらないだろうが、苦痛は相当なものだろう。
俺はふくろをのぞき、道具屋さんにもらった薬草を取り出した。たった1つしかないけど惜しんではいられない。気
付けの葉をミネアさんの口に差し込み、薬を傷口にふりかけた。ミネアさんが呻いて葉を噛みしめた。それでも瞼
はまったく開こうとしない。やはり、魔法で眠らされてるのか。
薬草はあっという間に終わってしまった。この傷に薬草1つだけじゃ応急処置程度にしかならない。早いところ医
者か治癒呪文の使い手を連れて来ないと。この街で俺が思い当たる人は、フローラさんしかいない。もとシスター
なら回復呪文が使えるはずだ。けど、サラボナの白薔薇をこんなところまで連れてきて、この凄惨な大怪我の手
当をさせるのは、俺としては気がひける。ここは港だから船医がいるはずだ。ひとっ走り行って呼んでこよう。
俺はタキシードの上を脱いでミネアさんの身体にかけた。血に濡れてしまうが仕方ない。体温を保たなければ回
復は遅くなるし、何より男の俺にとって今のミネアさんの姿は……ええい!消え去れ俺の妄念!
小屋を出かけたとき、どこからか犬の遠吠えが聞こえた。近くだ。俺ははっと足を止めた。万が一、この血の臭い
にひかれて野犬や魔物がやって来でもしたら……。ミネアさんが起きるまで待っていたほうがいいのか?
迷って、俺はミネアさんを振り返った。さっきと同じ無表情のままミネアさんは眠っている。さて―――
1.ミネアさんが目を覚ますまで待つ
2.リリアンに誰かを呼びに行ってもらう
2−1.港の人 2−2.マーニャさん 2−3.フローラさん 2−4.アンディさん
3.自分で波止場へ人を呼びに行く
4.[風鈴]を使ってみる
5.とりあえず襲う
2-3
2−2
修羅場回避
2−2
3
2-3
むしろ修羅場突入へ
やはり、重傷のミネアさんを一人にさせるわけにはいかない。それなら……俺は、眠るミネアさんの顔を心配そ
うにのぞき込んでいるリリアンを見やった。リリアンに、フローラさんを呼んできてもらおう。
この街で俺が頼れるのはやっぱりフローラさんだけだし、緊急事態だ。体面がどうのとかは言っていられない。
それにあの優しいフローラさんなら、困っている人、特に怪我人を助けることに、何の迷惑も感じないどころか
むしろ積極的なはずだ。ちょうど、俺にしてくれたように。
『リリアン』
声をかけると、リリアンは俺を振り向き、すぐに足下に寄ってきた。
『悪いけどさ。フローラさんをここまで連れてきてくれないか。俺は、ここで見張ってるから』
「キャウ……」
リリアンが変な声を出す。そうか、俺のことばなんてわかるはずもないか。フローラさんの匂いのするものを見
せてやらないと。俺は、ふくろから財布を取り出し、リリアンの鼻の前に差し示した。するとリリアンはつまら
なそうに目を背けて小さく横に首を振り、小屋の入口へゆっくり歩いてから、俺にふたたび向き直った。そんな
ことはわかってるからくどくど言うな、とでも言いたげな態度だ。リリアン、さっきも思ったけど、ただのペッ
ト犬にしておくには惜しい犬だよ、お前は。
あとは、フローラさんに状況を伝える手段だ。手紙をリリアンに持っていってもらえば一番いいが、ここにはイ
ンクもペンもない。そうだ。さっきの薬草の布に血糊で……。いや、書けたとしてもフローラさんのお屋敷に着
く前にリリアンの涎で文字なんか滲んじまうな。
今のこの状態が一目ですぐ知れるような物は―――
1.血の付いたローブの切れ端
2.焼けたシルクハットのつば
3.<<入力してください>>
4.何も持たせない
1
『リリアン。これを、フローラさんに』
ミネアさんの血が染み込んだローブの一片を拾い、リリアンにくわえさせた。先ほどリリアンが俺に見せたのと
ほぼ同じような麻布だ。これを見れば誰かが大怪我をしてるってことはすぐわかるし、占いのときのミネアさん
の姿をフローラさんが覚えてたなら、怪我人が誰だということも伝わる。
『頼んだよ。できるだけ早くフローラさんを連れてきてくれ』
「キュウ……」
リリアンは喉から声を出すと、外へ走っていった。今のリリアンの姿を見れば、飼い主のフローラさんなら何も
なくても異常に気がつくだろうけど……ま、急いで来てほしいからな。
《[シルクハット][薬草]を失った》
リリアンを見送ると、俺はミネアさんのところに戻った。タキシードを除けてもう一度腕や脚を調べてみる。裂傷
や打撲、火傷はひどいものの、骨折等はしてないようだ。
自分のシャツを引き裂いて包帯を数本つくり、ミネアさんの肩や足のひどい傷に(あまり見ないようにしながら)
少しきつく丁寧に巻いた。薬草が効いてきてるはずだし出血はもうないけど痛みの抑制くらいにはなる。さらに、
唇から頬にかけてついた濃い血を拭ってあげたが、そこに傷はなかった。血が溜まってただけか。
そうすると……?ミネアさんの寝顔、そして身体を観る。肩や胸には火傷もアザもこれだけあるのに、顔や頭
にはキズひとつないことになる。あの男が、呪文も打撃もミネアさんの頭部だけには外したとしか思えない。
あいつ、どうもすることがわからないな。
「……っ」
急に、ミネアさんの顔がゆがんだ。まずい。もう魔法の効果が切れかかってる?
これだけの傷だ。意識が戻ったとたんにミネアさんは怖ろしい痛みに苦しむことになるだろう。リリアンの足じゃ、
全力疾走して今やっとサラボナの街に入ったくらいだ。リリアンが屋敷に駆け込む。フローラさんたちが気付く。
そしてリリアンを追って、ここまで来る。やっと回復呪文。だいぶかかるな。もってくれるだろうか。
「うぅ……っ」
だめだ。今すぐにも目が開きそうだ。ミネアさんの苦痛をわずかでも和らげてあげたいけど、俺にできることは―――
1.手を握る 2.抱きしめる 3.[風鈴]を使う 4.襲ってみる 5.<<行動を入力>>(何もしない可)
3
血の匂いのする切れ端を加えさせて野犬がいるところにリリアンを放つのはちょっと危険だったかもね。
5:できるかぎりの応急処置。
5.舐める
>>285 5−1.できるかぎりの応急処置。
>>286 5−2.舐める
で決戦投票をおながいしますです・・・
5-1
初志貫徹でなめ・・・ず、5−1
「舐める」って文字通り、状況を舐めとんのか。
5-1
291 :
286:03/11/25 02:55 ID:umFpHqnZ
舐めるっていうか、唾液で消毒しようと・・・駄目ですかそうですか
292 :
286:03/11/25 02:57 ID:umFpHqnZ
あと火傷もあるから肌に潤いを、ということで・・・
>>291 舐めるだけで済む程度らしいからいいけど
と書きつつも
5-1で
保守
考えるよりもまず手を動かそう。俺は、あちこち引きちぎってぼろぼろになったYシャツを脱ぎ捨てると、傷の
手当に集中した。深い傷の包帯を縛りなおし、ミネアさんの頭や身体を見回して、大きく腫れあがるような箇
所がないのを確認する。火傷は冷たい水がないのでどうしようもなかった。海水を採りに行けばいいが、冷
やした後に乾いて塩が浮き出したときの痛みを考えると二の足を踏んでしまう。せめて気休めになればと、
薬草の袋に残っていたわずかな粉を選り分けて、傷のまわりに塗った。
そうだ。背中をまだ見てない。俺は、ミネアさんの身体を起こそうとしてなだらかな肩に手をかけた。床を見た
感じでは、身体の後ろからの大量出血はないようだ。
「う……?」
ミネアさんの背中を壁から浮かせた瞬間、ミネアさんの目が、ぱちりと開いた。
「……えっ?」
少しの間、ミネアさんは紫の瞳をしばたたかせていたが、すぐ目の前にある肌着一枚の俺の姿、それに肩
をつかんでいる俺の手を見たとたん、みるみる表情が驚きと恐怖にゆがみ、唇が震えだした。何だかわか
らんがまずい!俺は本能的に危険を察知して退こうとした。が、
「きゃあああああっ!!!いや、いやーっ!!!!」
『ぐえっ!』
あごに強烈な張り手を3発食らって、俺は後ろへひっくり返った。あの、ミネアさん。俺はまだ何もしてないん
ですけど……。
「あ……あら?あなたは、ウィルさ……うっ!」
気付いてぽかんとしたミネアさんだったが、すぐに、痛みのために表情と身体を強ばらせた。俺も、あごの痛
みをさすりながら起きあがり、何気なく包帯に目をやって、アッと息を呑んだ。いまミネアさんが暴れたせいで、
タキシードそれにローブの残りがずれ、ミネアさんの女のカラダが見えかかっているのだ。あとほんのわずか
下にずれるだけで……。俺は、内心どぎまぎした。けれどそれをミネアさんに悟られたら次はグーで殴られか
ねない。俺は気を落ち着かせ、視線と首の方向をミネアさんの顔に固定した。そして、
『動かないほうがいいですよ、ミネアさん。怪我にさわります』
ミネアさんをなだめようと、優しく声をかけた。幸いミネアさんは、自分よりも、場所と俺が気になってるようだ。
「ここは……ど、どうしてウィルさん、ここに……?」
296 :
:03/11/29 10:52 ID:AwDYsWIJ
『俺、ミネアさんを追って来たんです。いま人を呼んであります。傷、痛むでしょうが、しばらく我慢してください』
「いいえ。これくらいの傷なら……」
そう言ってミネアさんは、痛々しそうに身体を起こし、自分の胸のあたりに手をかざした。あ、これって。
「ホイミ!」
青白い光がすうっとミネアさんの掌から溢れ、身体全体にひろがった。包帯の巻けなかった裂傷や打撲、火傷
で赤く浮き出た皮膚もみるみる滑らかな肌に戻り、痕も残さず消えていく。
『………』
なんだ。ミネアさんて回復呪文使えたのか。それならフローラさんを呼ぶ必要なかったかな。
「ふう」
ミネアさんはひとつ息を吐くと、急に俺に顔を向け、
「ウィルさん。それで、バルザックは?」
と、真剣な瞳で聞いてきた。
『ええっと、帰りました』曖昧に答える俺。あいつ、バルザックって名前なのか。言いにくい名だ。
「帰った?いったいどこにですか?何て言ってました?」
ミネアさんは意外そうに細い眉をつり上げ、問いつめてくる。まいったな。これを説明するとかなり長い。それに
あいつが何もゲマのところへ帰ったとは限らないしな。
『場所は、何も。ただ帰るとしか……』
結局俺はそんなふうに茶を濁した。ま、詳しいことは落ち着いたあとで話すことにしよう。
「それならモンバーバラかしら?ああっ、このこと早く姉さんにも話さないと!」
俺の答えを聞いて、ミネアさんは高揚した様子で叫ぶと、いきなりサッと立ち上がった。
『ミネアさん!』
止めようとしたが遅い。乗っていただけの俺のタキシード、貼り付いていただけのローブ、糸一本でかろうじて
繋がっていただけの肌着が……落ちる!
『………!!』
見ちゃいけない。と思っても瞼と首は言うことを聞かず……俺の眼には、しっかりとミネアさんの肢体が焼き付
いてしまっていた。
「きゃああっ!」
一瞬の後、ミネアさんがまたも大きな悲鳴をあげ、あわててしゃがみこんだ。そして、『ミネアさん、これを』俺が
拾い上げ差し出したタキシードを、「早く貸して!」と穏やかなミネアさんとはとても思えない形相でひったくって
身体を隠した。とはいえタキシード一枚きり、隠せているのは前だけなので、後ろにいる俺からは褐色のつるり
とした肩や背の肌、その下の柔らかそうな……が丸見えだった。
297 :
:03/11/29 10:54 ID:AwDYsWIJ
「うっ、ウィルさん。こっちを見ないでくださいね?」
『はっ、はい。もちろん見てません』
俺はあわてて視線をそらす。頭に、心臓の激しい鼓動が響き渡っている。役得とはいえ、ミネアさんほどの美し
いひとのカラダをすぐ前で見られるなんて……しばらく、目薬は注さないでおこう。
『ミネアさん。さっきも言いましたけど人を呼んであります。その人に着替えを頼みましょう』
そう言ってミネアさんを安心させると、俺は横を向いたままYシャツも手渡した。フローラさんが来てくれたら、俺
の着替えもついでにお願いするとしよう。事情を話せばわかってくれるのがフローラさんだ。今度こそ、堅苦しく
ない、ちゃんとした旅相応な服を。
「………」
ミネアさん、落ち着いたかな。横目で気配をうかがうと、ミネアさんは、俺から受け取ったYシャツを身にまとおう
としたところで手を止めていた。そして、シャツそれにタキシードを腕や脚に巻かれている包帯を見比べて、急に
俺を振り向いた。
「ウィルさん……こ、こんな高価な服を?いいんですか、こんなにして」
『だけど、他にありませんから。むしろ、すいません。俺の着てたものなんか傷に巻いちゃって。ミネアさんが回復
呪文を会得してるとは思ってなかったもので。汚れてますから、そんな包帯、早く外しちゃってください』
「よ、汚れているなんてそんな。私のためにこんな勿体ないことするなんて……ウィルさん、すみません」
身体中に施された手当のあとを見回して、ミネアさんは俺に向き直り、瞼をうつむかせながら頭を下げた。
「……それに私、もしウィルさんが来てくれなかったら、あのまま、あの男にどんなひどいことをされていたか知れ
ませんわ。ああ、想像するだけで寒気がっ……」
ミネアさんが両腕で胸を押さえて身体を震わせた。…ってことは、ひどいことはされてないわけか。よかった。
「ウィルさん……私、このご恩は、決して忘れません」
『い、いやあ、恩だなんて。当然のことしたまでですよ俺は』
美女に感謝されるのは、快いが気恥ずかしい。申し訳なさそうな顔のミネアさんを横目で何度も見、そのたびに
頭をかいた。恩、か……もう、しっかりモトは取れたんだけどなっ。
《ミネアの評価がかなり上がった》
《ミネアの意識に変化が起きた》
《ウィルの装備が[ただの布切れ]になった》
298 :
:03/11/29 10:59 ID:AwDYsWIJ
「――ウィルさん。せめてこのシャツは、必ず買って返しますから」
俺のタキシードの上を羽織り、Yシャツを下半身に巻いているミネアさん。見ようによってはいいシチュエー
ションだ。俺としては新品よりも現物を返してもらったほうが、なんてな。
『あまり気にしないでください。この服は、俺も、もらったものなんです』
「え?もらった……これほど高い服をですか?」
『ええ。フローラさんから。さっき俺と一緒にいたお嬢さんですよ。ルドマンさんの、娘さんです』
「ルドマンさん……あのお屋敷のご主人ですね。それなら……あっ!もしかしてウィルさん、婚約の祝いとし
ていただいたのですか?ああ、どうしよう。そんな大事な服を、私、こんなふうにしてしまって」
勝手に誤解したミネアさんが勝手にあわてはじめる。そういやマーニャさんもそんなような発想をしてたな。
変なところで似てる姉妹だ。
『あっ、いえ。俺、着るものがなかったので買ってもらったんですよ。それに俺、ただ一晩あのお屋敷にご厄
介になっただけです。フローラさんと会ったのも、昨日が初めてです。フローラさんの、何でもないんですよ』
「え?そうなのですか。でも、さっきの占いでは……あのお嬢さんは確かに、ウィルさんに想いを持っていま
したけど……?」
ミネアさんが、眉をひそめて俺の顔をうかがってきた。いきなりこの話か。緊張が肩に走るのを感じながら
俺は―――
1.『それって本当ですか?実はその、俺もフローラさんのことが……』と、目を輝かせた。
2.『それが本当だとしても、俺はフローラさんのことを何とも思ってませんよ』と、首を振った。
3.『本当ですか?いやあ、モテる男ってこれだから辛いですね』と、髪をかき上げた。
4.『冗談でしょう。あのフローラさんが俺のことをだなんて』と、苦笑いした。
5.『ま、まあ、今はフローラさんのことなんてどうでもいいじゃないですか』と、誤魔化した。
何も考えずに1
無難に4
海水使ったら乾いた後の塩分で体内の水分が抜けて
傷口の周りが回復しても皺くちゃになる罠
3
4かな
>>296の大先生みたく、流れるような戦闘が書ければなあ。ボキャ貧何とかしないと
いや、大先生じゃないよ、私。
ボキャ貧は増やすんじゃなくてカバーするんだ。
用語辞典と類語辞典を常に用意しておくのです。
とりあえず、フローラよりミネアで4にしておくかな。
類語辞典。いいですよね。これ。
僕も、電子辞書新しいの買おうかなー。
>298
優柔不断は駄目と言いつつ、4.
『……ミネアさんはフローラさんをあまりご存じではないと思いますが、フローラさんは世界中の男が憧れ
る、優雅で気高い女性なんです。だいたい俺、フローラさんのために何かしたわけでも、カッコつけて誘
惑したわけでもないんですよ。昨日今日会ったばかりだっていうのに、フローラさんが俺を好きになるな
んてこと……』
「いいえ。私の占いに間違いはありません」
ミネアさんはいきなりキッとした目つきになり、俺に身を乗り出してきた。
「ウィルさん、よろしいですか。相性占いというものはですね、単純にその人とその人との気が合うかどうか
を占っているものと思われがちですがそうではありません。どんな占いでも、依頼者を含めた世界全体
の運命を、特殊な技法を用いてアイテムに……私は主にカードと水晶を使いますが……投影するもの
なのです。その上で、人と人の運命の結びつきを読みとり、結果を依頼者のの宿命に関わらないよう言
葉を選んで伝える、それが本当の相性占いです。ところが、伝えるということが、実は占いで最も難しい
ことなのです。経験の浅い占い師では、完全に運命を投影できたとしても、占いの結果をどう伝えるか
によって依頼者の運命を変えてしまうということがしばしばなのです。なぜなら、世界全体を考えれば、
当然そこに占い師本人の存在も含まれるからですが、自己の運命を自ら占うににはかなりの経験と修
練が必要なのです。ですから私のようにまだまだ未熟な者ではとても無理なのです。そのため私は、相
性占いのときは運命を占うのではなく、今現在の人の心、つまりお互い今の相手に満足しているかどう
か、不安か迷いを感じているか、不安があるとすれば何か。人のそういった心の内を占い、水晶のゆら
ぎに映し出しているのです。当たりはずれのない、確実な方法なのです」
『………』
俺は顔を引きつらせて説明を聞いた。要するにミネアさんは、最初言ってた“単純な占い”をそのままやっ
てるってことじゃないか?
「ああ……占いの技法について話してはならないと何度も言われてきたのに……私、なんていう愚かなこ
としたのかしら。いけない、いけない」
喋るだけ喋って、ひとりで反省してるミネアさん。何っつーか、扱いにくい人だなミネアさんって。
307 :
:03/12/04 12:39 ID:opDhdec6
「とにかくウィルさん」気を取り直したミネアさんがさらに話し始めた。「さっきも言いましたが、私が占ってみ
たところ、フローラさんの心はウィルさんに傾いています。そしてそれは、彼女自身も気付いているはずな
んです。あの占いについて詳しく説明しますけれど、まず、不安や恐怖という陰の感情は水晶玉の中の曇
りとなって現れます。これとは逆に、自信や勇気といった陽の感情は輝いた星として具現化されます。それ
は依頼者には見えず、占う私たちにしか見えません。というのは……」
『わ、わかりましたってミネアさん』俺は両手を抑えるように振り、ミネアさんの力説を止めた。俺は占い師で
もその見習いでもないんだから、占いのやり方なんてどうでもいい。
『ですが……ミネアさん。フローラさんて結婚するためにサラボナに戻ってきたんですよ。俺なんかより姿も
性格も家柄もずっといい男の人をたくさん紹介されてるはずです。なのに何でまた、ブザマに行き倒れ同
然だった俺を好きになるんですか。いくらミネアさんの占いとはいっても、そんなの、あり得なさすぎますよ』
なぜか俺は、本来小躍りして喜ぶべき占い結果を否定することに、なおも意地を張った。
「………」ミネアさんはまるで俺を呪うように目を細くしてにらむと、眉と唇を震わせた。
「わかりました。ウィルさんは私の占いなど信じないというのですね……ひどい。それなら占いなんて頼まない
でください!」
『え?いや、そんなつもりじゃ……』
あわてて俺は首を振ったが、ミネアさんはむくれた顔で俺から目を背けてしまった。あちゃー、怒らせちまっ
た。ミネアさんて意外に気位が高いというか頑固と言うか。俺も人のこと言えないけどさ。
《ミネアの評価が下がった》
『と……ところでですね。ミネアさんはどうしてあのバルザックとかいう男を……』
俺が本題に帰ろうとしたそのとき、『ん?』外でかすかな音が聞こえた。犬のパタパタという足音だった。リリ
アンだ。もうフローラさんを連れてきたのか、あんがい早かったな。さっそくミネアさんと俺の服を……!
『あっ!?』俺は自分とミネアさんの服装を考えて青くなった。ほぼ半裸の俺と布切れ二枚のミネアさん。この
どう見たって誤解される状況、フローラさんにまず何て説明しよう?
308 :
:03/12/04 12:46 ID:opDhdec6
「ここなの?」
うろたえる俺の耳に女の声が聞こえてきた。ん?きれいな声だけど、フローラさんとは音質が違うな。続いて
「キャンキャン!」と、俺に開けろというリリアンの吠え声。とするとお屋敷のメイドさんか誰かが代理で来たの
かも。よかった、それなら何とか言い訳ができる!……まあ、それはそれで面倒なことになりそうだけども。
俺は意を決して戸口に歩み寄ると、気配を探りながら慎重に扉を開けた。
「あら、突然失礼してすみません。ここで何かあったのかしら?」
そこには、背が高く、金髪で美しい女性が、リリアンを抱きあげて立っていた。
『えっ?びあん……?』
俺は、ぽかんとしてその女性を見つめた。息を呑むほどの美女であったのに加え、みごとなブロンドにビアン
カを思い出したからだ。けれどそれは一瞬で、ビアンカとは姿も様子もまったく違うことにすぐ気付いた。ビア
ンカと違って金髪を後ろで束ねているし、日焼けがちなビアンカに比べ顔も腕も開いている胸元も白い。顔
全体は上品で穏やかな感じだが、細い眉と切れ長の目、エメラルドの瞳や薄い唇のひとつひとつをとってみ
ると知的で冷静な印象を受ける。両肩の金具からひらひらとリボンのような布が後方へそれぞれ大きな輪を
つくり、両膝の後ろから華奢な腰に巻かれていた。その下は、綿製のゆったりとした長いズボンと爪先のとが
ったブーツだった。着ている服は高価ではないしアクセサリーも地味だが、どことなく神秘的で近寄りがたい
雰囲気の美女だった。
『あの……?』
「ああっ!あなたね。やっと見つけたわ!」
女は、俺を見てニコリと笑い、いやに親しげに話しかけてきた。誰なんだろう、と、俺は後ろのミネアさんを振
り返った。てっきりミネアさんの知り合いだと思ったのだが、ミネアさんのほうも俺を訝しげに見ているところを
みると、ミネアさんもこの女に見覚えがないらしい。
「ふふっ、もしかしてお邪魔だったかしら、ウィル?」
ウィル!?俺ははっと背筋を伸ばして女を見つめた。俺を、知ってるってことか?そういや誰かに似てるような。
『ど、どちらさまですか?もしかして―――』
1.『フローラさんの使いの人?』
2.『ゲマの手下?』
3.『ヘンリーのお姉さん?』
3.『ビアンカの生き別れのお母さん?』
4.『俺のおっかけ?』
さっそく訂正・・・_| ̄|○ モレ ダメポ
>>308選択肢
1.『フローラさんの使いの人?』
2.『ゲマの手下?』
3.『ヘンリーのお姉さん?』
4.『ビアンカの生き別れのお母さん?』
5.『俺のおっかけ?』
>>301 アドバイスありがとうございまつ。機会あらば早速そのネタ使わせていただきます!
>>304 いえいえ、この板で296の先生が書かれた話を読むたび、漏れの文才のなさに落ち込んでまつ(藁
実は以前から類語辞典買おうか迷ってたのですが、このレスで踏ん切りがついてやっとこさ購入!感謝!(?)
小説スレ等のお話、いちファンとして期待してまつ!
>>305 いつの日か、辞書に頼らずともコトバが浮かんでくるようになりたいものでつ・・・英語も
1
3
1
3
1
「フローラさんて、あなたがお世話になってたお嬢さんね。違うわ、私はミレーユ。おばあちゃんに頼まれて
あなたを捜しに来たの」
フローラさんのことまで知ってる!?俺は女の笑顔に薄気味悪さをおぼえた。まさか俺のすることなすこと
すべて見てたんじゃ……?
「ふふっ、びっくりすることはないわ。あのすごいお屋敷ならさっき伺ってきたの。それで、ここで何があった
のかしら?火と氷の魔法、それに血の臭いがするけれど」
女は笑顔を崩さなかったが、翠緑色の瞳だけは冷静な光で俺を探っていた。
『………』
どうしよう、と俺はミネアさんを振り返った。いきなり現れたこの不思議な女にバルザックのことを話してし
まっていいのだろうか。ミネアさんにしても、あの男に手ひどくやられたことは公言したくないだろう。
けど、この女がどこまで知っているのかわからないし、魔法についても詳しそうだから嘘はつけそうにない。
やはりありのままを話すことにしよう。俺はミネアさんに肩をすくめてみせてから、女に向き直った。
『ええっと、まずは……』
ミネアさんと後で話をする約束をしたこと、フローラさんを屋敷まで送ったこと(教会でのことは触れずに)、
あの三人娘にミネアさんのことを聞き、波止場まで来たこと、リリアンを見て追いかけたら、バルザックとい
う男が現れたこと、を話した。
「ふうん。それで、その娘を助け出すためにあなたは戦ったってわけね」
女が、急に咎めるような目で俺を見た。そして、
「ごめんなさい。失礼なこと言うけど無茶だったわよ。火と氷の両方が使えるのは魔法使いでも相当の魔力
の持ち主なの。その気になれば生身の人間を跡形もなく消すこともできたはずなのよ。その男、きっと何か
わけがあって、あなたを見逃したの」
『………』
俺は決まり悪くて首に手をやった。肉弾戦では引けを取らなかったんだけどなあ俺。結局は、あの男に
遊ばれてたのか、あーあ。
「で、でもウィル。そんな男に立ちむかって、その娘を助け出したんだから、立派よ。やるじゃないのウィル」
しょげかえる俺を、女があわてて持ち上げてくれる。悪い気はしないけど……なんだかな。
《ミレーユの評価が上がった》《ミネアの評価がわずかに上がった》
《なぜかフローラの愛情がわずかに下がった》
316 :
:03/12/06 16:22 ID:SFoWUqK6
『あの、ミレーユさん。俺から聞いてもいいですか』
「“ミレーユ”でいいわ、ウィル。ええ、何かしら?」
『で、ではミレーユ。なぜここがわかったんですか。それに、リリアンがどうして?』
俺は、地面にへたり込んだ姿勢で座っている(倒れてる?)リリアンを一瞥し、聞いてみた。
すると、ミレーユはしゃがみこみ、リリアンの頭を優しく撫でた。あれ?リリアンの傷が治ってるぞ!?
「あなたと同じよ。この子が教えてくれたの。お屋敷を訪ねた後、波止場に来る途中でこの子を見つけてね。
血のついた布をくわえてるからすぐ呼び止めてみたのよ、どうしたのって。そうしたら…賢い犬ね。私にこ
の布を渡して、ついて来いって走り出したのよ。それでここまで。けど、あなたがいるとは思わなかったわ」
『なるほど、そうだったんですか』
考えてみれば、血染めの布をくわえてボロボロな姿で走ってるペット犬なんて、どう見たって異常だしな。リリ
アンも、なるたけ早く人を連れて来ようと思って、ミレーユで間に合わせたのだろう。
そして、リリアンの選択は正しかった。
『ミレーユも、回復呪文が使えるんですね』
「ええ。この子も怪我してたからかけてあげたのよ。この子リリアンと言うのね。あなたの犬?」
『いえ、フローラさんの犬なんです。今朝からいなくなってて、心配してたんですよ』
俺の言葉に、リリアンが申し訳なさそうに頭を低くした。
『それから……ミレーユ。服を一枚、持ってませんか?』
「服?」
ミレーユは驚いた顔になったが、後ろですまなそうにしているミネアさんを見てすぐ察したらしく、さっと扉を閉
めるとミネアさんに歩み寄った。そして、
「ひどい目に遭わされたのね、かわいそうに……」
散らばっているローブや血を見て、いたわるように言い、ウエストバッグから絹のローブを取り出した。
「ひとまず、これを着て。私の部屋着なんだけど」
「すみません、お借りします」
頭を下げて受け取ると、ミネアさんはさっそく立ち上がって着替えようとした。と、二人が同時に俺を振り返っ
た。俺は頭をかいて背中を向けた。ちぇっ、ミネアさんの着替えシーンもう一度見られると思ったのに。
「外に出ていましょう、ウィル」
俺のよこしまな心を知ってか、ミレーユが横から俺の腕をつつき、ドアに手をかけた。
317 :
:03/12/06 16:27 ID:SFoWUqK6
外は、すでに西日がさしていた。昼にはこの街を発とうと思ってたのにな。とんだことになったものだ。
ミネアさんを追いかけて、あのバルザックって男と戦う羽目になって……。あいつがまだ油断してたうちにトド
メ刺してふん縛っておけば、いろいろ聞き出せたかもな。
俺は、投げつけてそのままだったステッキを拾い、少し迷ってからふくろに入れた。ただの檜の棒だが、俺の
今の武器はこれだけだ。
「そんなステッキで魔法使いに戦いを挑んだの?ウィル、あなたの勇気ってすごいわね」
俺を観察してたらしいミレーユが、そんなことを言った。誉めているのか皮肉なのか。笑顔だから、おそらく
誉めてくれてるのだろう。
『ありがとう。それでミレーユは…俺のことをどこまで知ってるんですか?』
「どこまでって?」
『その、フローラさんのこととか、俺の行動がずっと見られてたような気がして』
あの告白のことまで知っているのではと、俺は内心ヒヤヒヤして聞いた。するとミレーユはクスッと笑って、
「私は、おばあちゃんから、サラボナのルドマンさんというお屋敷にこういう人がいるはずだから、連れて来て
ほしいって頼まれただけよ」
『そ、そうなんですか……良かった』
ほっとする俺。ミレーユは訝るような目をしたが、何も言わずに運河のほうに目をやった。夕日の赤い光が
海面に反射し、きらきら輝いている。こんなのは俺には見慣れた光景だった。狭い運河よりも、ライフコッドの
絶壁から眺める海のほうがずっと綺麗だ。もう2日目の夜になる。村のみんな、どう思って心配してるんだろう。
考えていると、扉が開いてミネアさんが出てきた。占い師姿のときとはだいぶ雰囲気が違って見えた。白いロー
ブが浅黒い肌と紫の髪を浮き立たせていて、美しくもあり、コミカルでもあった。
「どうもお待たせ……ウィルさん、どうかしました?」
『あ、いえ。それじゃそのタキシードを……』
俺は手を差し出したが、ミネアさんは脇に抱えたタキシードを渡そうとはしなかった。
「いいえ。こんな汚れたままでは返せません。きちんと洗ってきれいにしてから返します!」
ミネアさんが、生真面目に細い眉をきりっとさせて言う。俺は仕方なく頷いた。きれいになんてしなくてもいいん
だけど……。
《ミネアの評価がわずかに上がった》
318 :
:03/12/06 16:31 ID:SFoWUqK6
「さあ、それじゃウィル。おばあちゃんのところへ行きましょう。きっともう待ちくたびれてるわ」
ミレーユがそう言って、1枚のキメラの翼を取り出し、俺に見せた。
『ちょ、ちょっと待って。おばあちゃんていうのは何者?まさか魔物じゃないですよね?』
俺がサラボナにいることを知っているのはゲマとその一味だけのはずだ。そう思って俺が聞くと、ミレーユは
おかしそうにクスクス笑った。
「だいじょうぶよ。おばあちゃんていうのは夢占い師グランマーズ。私のお師匠様で、恩人でもあるわ」
「グランマーズ!」
ミレーユの言葉が終わらないうちに、ミネアさんが声をあげた。
『ミネアさん、知ってるんですか?』
「もちろんです。グランマーズさんと言えば私たち占い師にとって憧れの御方なんです。ムーンブルク王国
お抱えの夢占い師で、今はどこかの島で隠棲されていると聞いていたのですが……」
ミネアさんの言葉に、ミレーユは大きく頷くと、ミネアさんに手を差しのべた。
「その通りよ。やっぱり、ミネアさんも占い師だったのね。よろしくね」
「あっ……こちらこそ。グランマーズさんのお弟子さんに会えるなんて、光栄です」
ミレーユとミネアさん改めて握手を交わす。そうか、ミレーユは誰かに似てると思ったが、何のことはない、
ミネアさんと似てるのか。肌も髪もまったく違うから気付かなかったのだが、今のミネアさんの姿を見てよう
やく気付いた。
「ウィルさん。さっきお話しました通り、私たちは人の運命を占います。けれど夢占い師は、人や物の夢の
世界をのぞき、それをもって世界や人の行く末をみるのです。グランマーズという御方は、その夢占い師
でも千年に一度と言われる霊力を持つ人なのですよ」
ミネアさんがまたも熱っぽく語る。そうか、それほどの人なら、俺が魔族に密命を受けて解き放たれたこと
を察知できるのかもしれない。しかし人の夢を覗くとは怖ろしい人がいるもんだ。見る夢はちゃんと選ぼう。
「ミレーユさん、差し出がましいようですけれど、私もグランマーズさんにぜひお会いしたいです。私も伺って
よろしいでしょうか?」
「ええ。おばあちゃんてお客さんと話をするのが好きだから、きっと喜ぶわ。でも……」
319 :
:03/12/06 16:39 ID:SFoWUqK6
ミレーユが、どうするの?と、視線を俺に送ってきた。決めるのは俺なのか。客が1人から2人に増えても差
し障りがないというなら、グランマーズという人の家でミネアさんと話の続きをするという手もある。それに何か
食事にもありつけるかも。実のところ、昼食とってないせいで、俺はもう腹減って倒れそうだ……昼食っ?
『あっ!』
忘れてた!俺、マーニャさんを待たせてるんだっけ!
あれからどのくらい時間が経ったか知らないが、まだ身だしなみをしてるってことはないだろう。このまま俺
がミネアさんも連れて行けば、マーニャさんだってさすがに心配しそう……その前に怒り狂いそうだけど。さ
すがに一度街まで戻って事情を説明したほうがいいかも。
それに、リリアンもフローラさんのもとへ届けなきゃならない。そう思いながらリリアンを見ると、リリアンは俺
の靴のすぐそばから、何かを訴えるかのような瞳で俺を見上げていた。もしかしてリリアン…おまえもグラン
マーズさんの家に連れて行ってもらいたいのか?けどフローラさんまでこれ以上心配させるわけには……。
「ウィル。まだし残したことがあるなら済ませてきて。翼はもう1枚あるから、私は先に行ってるわ」
俺の迷いを察したのか、ミレーユは優しく言うと、俺にキメラの翼を譲ってくれた。どうしよう―――
1.今すぐキメラの翼を使う(ミレーユ以外に連れて行く人物を選択。複数可)
1−1.ミネアさん 1−2.リリアン 1−3.(なし)
2.時間をもらう
2−1.いったんサラボナの街へ戻る 2−2.ミネアさんと話の続きだけする
3.ミレーユにキメラの翼を返し、断る
ウィル 現在地:ラインハット王国サラボナの港 所持金:50000G 装備:檜の棒+ただの布切れ
道具:ターニアの風鈴、キメラの翼(グランマーズの館行き) 体調:軽傷 精神:不調(空腹)
2−1.いったんサラボナの街へ戻る
キメラの翼って一度行ったことのある場所しか行けないんじゃないの?
ミレーユに先に行かれると困るんだけど。
1−2並びに1−1
ミネアは思慮深いと信じよう。多分後で巧く説明してくれます。と自己欺瞞。
なにはなくとも1−2。わたしがこれを選ばずにどうしようか?
1−1
1−1
2-1
2−1 あと風鈴でターニアと話したい
1−1 ミネアを連れ去ろう
1-2 ここでリリアンにヒ・ミ・ツ♪が明かされるはずっ。
2-1
『ミレーユ、ごめん。実はいま人を待たせてるんです。グランマーズさんの家にはその後で伺いますよ』
しばらく悩んでから、俺はぐっとキメラの翼を握りしめ、ミレーユに告げた。
「わかったわ」だいぶ待たされたのに、ミレーユはニッコリと微笑んでくれた。
「でもウィル、今日中に必ず来て。夜中までなら待ってるから。それと、その翼はおばあちゃんの島に直通なのよ。決して、
なくしたりしないでね」
俺に釘を刺すと、ミレーユはもう一つキメラの翼を取り出した。そして、バトンでも投げるかのように空へ大きく放り上げた。
「じゃあ必ずねウィル!ミネアさんも!」
ひとこと言葉を残し、あっという間にミレーユの姿は夕暮れの空に消えていった。ミレーユってけっこう気取り屋……?
「南東……ムーンブルクなら北のはず。いったいどこに行ったのかしら」
方角を確認したミネアさんが、首をかしげた。そういえばと俺は世界地図を思い出しながら空を見上げた。レイドックはここ
から南西で、その東には大陸はないはずだ。
俺とミネアさんは二人でしばらく考えこんでいたが、やがてミネアさんが俺を見た。
「ところでウィルさん。人を待たせているというのは?」
『あ。その俺、ミネアさん捜してる途中で、マーニャさんを訪ねたんです』
「えっ、姉を?」
『はい。で、昼食をいっしょにする約束をしてて……もう無理ですけど』
「昼食っ?も、もう夕方じゃないですか!それを早くおっしゃってください!ああどうしよう」
急にミネアさんがあわてふためきはじめた。お姉さんとの約束をすっぽかした俺に腹を立ててる……という様子では全くない。
「こうしてはいられないわ。ウィルさん、急ぎましょ!」
叫んだミネアさんがいきなり走り出した。どうしたんだろう。そりゃあ、急ぎたい気もわかるけど?
「ウィルさん何してるんですか!早く!」
『走れるかリリアン?』
「キャン!」
俺とリリアンも、ミネアさんを追って駆け出した。うっ、空きっ腹には辛い。
『あの、ミネアさん。どういうことですか?』
「姉さんが怒り出したら、私じゃとても手をつけられないんです。すぐに行って謝らないと!」
ミネアさんの顔が青ざめている。マーニャさんが怒る?手をつけられない?そんなことでミネアさんはあわててるのか?
331 :
:03/12/11 23:42 ID:SYQ9FgBa
女の怒った姿は何度か見たことがある。でも、ターニアやビアンカの場合は口をきいてくれなくなるだけ(それも辛いが)で、
マリベルは会うたびチクチク嫌味を言ったり村中に悪口をひろめたりする程度だ。妹が手をつけられない姉の怒り方って、
果たしてどんなものなんだろう?
横のミネアさんの困ったような表情を見ながら走っていた俺は、ふと、ミネアさんが脇に持っているタキシードに目をつけた。
そうだ、今なら!
『ミネアさん、そのタキシード貸してください。俺この格好じゃ街歩けませんし、ミネアさんも邪魔でしょう』
「そ、そうですね、どうぞ」
お姉さんのことで頭がいっぱいなのか、ミネアさんはタキシードをあっさり俺に渡してくれた。ラッキー!
気付かれる前にと、俺は走りながらすばやく着込む。袖を通すとき血の匂いがしたが、ミネアさんのなら大歓迎だ。
そうだ、リリアンはと振り返ると、俺の隣を同じ速さで走っていた。本来俺よりもはやく走れるはずだからだいぶ疲れてるのだ
ろう。リリアンこそ朝から何も食べていないはずなのだ。
俺はと言うと……むんむんとたち昇ってくるミネアさんの匂いに、空腹などすっかり忘れていた。消臭のコロンでもつけている
のか、香水も汗の匂いもそれほど強くない。けれど……ぐふふ、ミネアさんの身体ってこんな香りするんだな。
「キャンキャン!」
リリアンがいきなり吠え、俺は驚いて肩をびくっとさせた。リリアンにさえ気付かれるほど変態っぽい表情してたのか俺は?
《マーズの評価がわずかに下がった》
サラボナの街に着いたときには、夕闇があたりを包んでいて、どの家の窓からも灯りが漏れていた。
俺もミネアさんもさすがに疲れ、街の門をくぐったところで歩き出した。リリアンは足を引きずるようにしてさえいる。
「ウィルさま!」
不意に、名前を叫ばれた。振り向くと、灯りを持った若い女性が走り寄ってくる。顔に見覚えがあった。フローラさんのお屋敷
で見たメイドさんだ。
『こんばんは、今日はどうも』
「こんばんわ。ウィルさま、まだこの街にいらしたのですね……あら、リリアン!」
メイドさんが、なぜか俺の後ろに隠れるようにしているリリアンを目ざとく見つけ、叫んだ。
332 :
:03/12/11 23:45 ID:SYQ9FgBa
「リリアン、ウィルさまとご一緒だったのですか。お嬢様がずっと心配なさっておいでで、みんなで捜していたのです」
『すみません。港で見つけてから、ちょっと連れ回してしまって』
俺は申し訳なさげに頭をかく。本当は怪我までさせてしまったのだが。
「ウィルさま。それで今夜のお泊まりはどうなさるのですか?」メイドさんが聞いてきた。「もしよろしければ、今日もお屋敷に
おいでくださいませんか。ウィルさまがいらっしゃれば、お嬢様もお喜びになられます」
『あ……』
一瞬、心が動いた。フローラさんに会って、今日のことリリアンのことを細々話してみたい。そのあと、教会での俺の告白の
応えを聞きたい。けれど……。
『ご親切ありがとうございます。でも俺、これから行かなければならないところがあるので』
俺はメイドさんにきっぱり首を振った。これ以上、誰かとの約束を破るわけにはいかない。
「そうですか……」
メイドさんが残念そうに肩をすぼめると、しゃがみこんで、リリアンに腕を伸ばした。逃げようとする仕草をリリアンはみせたが、
すぐにあきらめてメイドさんの腕の中に抱き上げられた。
『じゃあな、リリアン。ちゃんと食べるもの食べろよ』
俺は、助けを求めるように見つめてくるリリアンに笑って声をかけ、頭を撫でてやった。今日は名犬リリアンだと大いばりでき
る活躍をしたんだから、ご馳走してもらえよ。
「キュゥ、キュゥー……」
リリアンは俺に甘えた声を出し、前足で俺の手を引っ掻くようにした。おいおい、そんなさみしそうな目をするな。俺になんか
ついて来たって、また怪我するだけだぞ。
「それでは、ウィルさま。お気を付けて旅を続けてください」
『ありがとう。フローラさんにもよろしくお伝えください』
頭を下げ合い、俺たちとメイドさんは、それぞれの方角へ歩き出す。
「クゥーン!」
街角に隠れるまでずっと、リリアンは、哀しそうに潤んだ丸い瑪瑙の瞳で、メイドさんの肩越しから俺を見つめていた。
《リリアンの評価がわずかに上がった》《フローラの愛情がちょっぴり上がった》
リリアン……やっぱり連れて行ってあげれば良かったかなあ。旅に相棒とか道連れっていうのもいいし。だけどフローラさん
が寂しがるだろうし。ま、次に来たとき、真っ先に会いに行ってやればいいことか。
333 :
:03/12/11 23:48 ID:SYQ9FgBa
「……あの子、可愛いし不思議な犬ね。ああ、ペスタはどうしてるかしら」
俺が思い悩んでいると、隣でミネアさんがつぶやいた。ペスタ?犬の名前かな。俺が見やると、ミネアさんはあわてて顔の前で
手を振った。
「あ、いいえ、何でもありません……そ、そんなことより早く、姉さんに謝らないと!」
ミネアさんが思い出したように叫んで、宿屋の扉へ突進した。宿屋の扉をはね飛ばすように開け、声をかけてくる主人にかま
わず客室へと急ぐ。
『あの。マーニャさんて、怒るとそんなに怖い人なんですか?』
「そりゃあもう!怒った姉さんて、それは恐ろしいんですから!!」
走りながらミネアさんがまた青ざめて身を震わせた。恐ろしいっていったい?昼会ったマーニャさんの感じからして、怒ったとき
にはマリベルのように言葉でねちっこくいじめそうな気もするが、その程度じゃ“恐ろしい”とは形容しないだろう。
と、とにかく。何なのかは知らないが、ここは男らしく、逃走の準備をしておかなければ。
いよいよ部屋の前に着いた。「………」ミネアさんはちょっとためらってから、ひとつ深い息をつくと、意を決してドアをノックした。
「た、ただいま、姉さん……………姉さん?」
が、その言葉に返事はない。もういちど声をかけても、反応はなかった。
「姉さん?いないの?」
たまりかねたミネアさんがドアをガチャガチャとやる。しかし中からは何の気配もなかった。
『いらっしゃらないようですね』俺は少しほっとしながら言った。『どこに行ったんでしょう。もしかして俺たちを捜しに?』
「いいえ。きっと……酒場です」
ミネアさんが、情けなさそうにうつむき、首を振りながら小さな声で言った。
『そうか。マーニャさんも昼食とってなければ、お腹空いてるはずですしね』
「……そういうことじゃ、ないんです」
ミネアさんがどもり、一つため息をついた。つまり、マーニャさんには夕方から酒場に行く習慣があるってことか。
だとしても、酒場に行ったとは限らない。俺は波止場に行くと声をかけたわけだし、どこかで俺たちと行き違いになったかも。
『俺、すぐ呼びに行って来ます。ミネアさんは支度をしていてください』
今度はマーニャさんが危険な目に遭っているのでは。そんな予感がふと頭を過ぎり、俺は廊下をいそいで駆け抜けた。
334 :
:03/12/11 23:52 ID:SYQ9FgBa
「……クーガン!オレはな、お前がいつかはやってくれると思ってたぜ!がんばれ!」
酒場への階段をのぼる途中で聞こえてくる声は、昼のそれよりはるかに賑やかだった。
「よーよー、いいぞクーガン!今夜こそ、その生意気な女に一泡ふかせてやれ!」
「おい嬢ちゃん。この瓶空にしたら本当にやってくれンだろうな?ちゃんとソレを脱いでだぜ」
「ふふん、このあたしに二言はないわ。た・だ・し、駄目だったらあたしの今晩の酒代、払ってもらうわよっ!」
……中でいったい何が起きてるんだ?ヒジョーに気になるようであり、また怖いようでもあり。
ためらっているヒマはない。そっと俺は酒場の木扉を開けた。店内の装いは灯りがいくつか点いているほかは、昼間見た
とおりだった。しかし……。
「クーガン!あと半分、あと半分、あと少し!」
「ぱーふぱふ!ぱーふぱふ!」
カウンターの奥の席で、一人の男が酒瓶をラッパ飲みし、数人の男がはやしたてていた。見た通り一気飲み、よい子は真似
しないでねってやつだ。マスターはハラハラと危なっかしそうに、ウェイトレスの女の子は呆れたように、男たちを眺めている。
「……ぷは、ぐ、ぐふうっ!」
やがて、一気飲みしていた男は口から酒をこぼし、噴水のように吐き出して床にぶちまけた。見るも無惨な失敗。
「あーあ。あとほんのちょっとだったのにな……ぱふぱふ」
飛び退いたまわりの男たちが、床に這いつくばって咳き込む男を見下ろし、残念そうに肩を落とす。
「だらしなーい。できもしないことしようとするからよ」
その中でひとり、ニコニコして壁際の席から立ち上がったのは、誰あろうマーニャさんだった。
「まっ、これで約束通り、今夜のあたしの飲み代はあんたもちね。マスター!ジャンジャン持って来て!」
『………!!』
すぐに声をかけようとした俺だったが、思わず立ちすくんだ。マーニャさんは胸当てとスコートだけという刺激的かつ危険な姿
だった。艶のある褐色の肌、なだらかな肩に鎖骨、引き締まった腹部に窪むへそ、照り輝く脚線美を惜しげもなくさらしている。
「げほげほっ……あの、マーニャさん。オレもこの店にツケためてんだから、ほどほどに……」
そんな勝ち誇るマーニャさんを、床から許しを請うように男が見上げている。うう、なんていいアングル。負け犬のくせに羨ましい。
335 :
:03/12/11 23:56 ID:SYQ9FgBa
「はぁ、何言ってんの?あたしは今日すっごく機嫌悪いの。どっかのガキがあたしに待ちぼうけ食らわしたうえに、あたしの
カワイイ妹を連れてっちゃってさ。あー、あのキザったらしい奴!会ったらギッタギタにしてやるわ!」
……間違いなく俺のことだよな?ギッタギタって、いったいどんな目に遭わされるんだよ?
「おや?お客さんは確か昼間の……。マーニャさん!お友達ですよ」
そうっと帰りかけた俺にマスターが気づき、ご親切にもマーニャさんに言いつけてくれた。
「何なのよ。今やっといい気分で……?」
振り返ったマーニャさんの瞳と、たじろぐ俺の目がちょうど合う。と、みるみるマーニャさんの眉がつり上がり、アメジストの瞳
がらんらんと燃えるように輝いた。とたんに俺は魔女に魅入られたかのように硬直した。
「あんた!いったいどこ行ってたのよ!」
マーニャさんはその形相のまま俺にツカツカと歩み寄り、ぐいっと俺のタキシードの襟をつかみ上げた。
『あの……』俺は震え上がりながらどうにか説明しようとしたが、目の前にいきなり炎が立ちのぼるのを見て息を呑んだ。マー
ニャさんがメラの火炎をマニキュアの先に燃えたぎらせているのだ。マーニャさんて魔法使い?こんな色っぽい姿形なのに?
「そ・れ・で。ミネアはどうしたの?波止場に行ったんでしょ。ちゃんと見つけてきた?」
『え……ええ。何とか、無事に』
「無事にって何よ?あっ、あんた!ミネアに何かしたわけ?妹に指一本でも触れたら、このあたしが黙ってないわよ!」
『な、何もしてません何も見てません!』
「変な言い方ね。やっぱり何かしたんでしょ!まあいいわ、あとでミネアに聞くとして……あんたみたいな男は徹底的にとっち
めてやんなきゃ!」
口は笑いながら目は怒りながら、火球を俺の顔の前に持ってくる。前髪が焦げる感覚と臭いがした。ひええっ、たしかにこの
お姐さん恐ろしい!!
「痴話げんかかいマーニャちゃん!ンな奴いいから、機嫌直してこっち来いよー!」
男どもから「ヒューウ!」と口笛が鳴るが、マーニャさんはまったく気にも留めず俺を楽しげに見つめ、
「さあ、どうしてもらいたい?ウェルダンかしら?それともレア?」
と、酒の臭いのぷんぷんする声を出してくる。逃げるか説得するかしないとと思うが、足も唇も震えて言うことを聞かない。
336 :
:03/12/12 00:01 ID:cPOZKEPL
「……あら?」
なおも口を開きかけたマーニャさんだが、ふと視線を握っているタキシードとその下の肌着に落とした。やっと俺の着ているもの
の変化に気がついたらしい。
「ちょっとの間に、何でこんなにしわくちゃになってんの?それにシャツどうしたのよ。あんた、変わった格好しなきゃなんない教団
にでも入ってんの?」
『いえ、これはその、いろいろと……』
「うわっ!何コレ血っ?汚いもの触らすんじゃないわよ!ホント気持ち悪い男ねえ」
指についた血を見て、マーニャさんがあわてて俺を突き放すと、すぐにグラスの酒で洗い落とした。汚いって妹さんの血ですよ。
わからなくて当たり前だけど。
「あ、あのお客さん……店の中で魔法、特に火を使うのだけは」
「うっるさいわね!ハイハイ気をつけます!あっ、ねえマスター!悪いけど、そこの瓶全部ちょうだい」
何を思ったのか、マーニャさんはマスターに酒瓶を何本か持って来させると、うちいくつかを無造作に自分のグラスに注いだ。
そして、
「じゃーん!どーお、マーニャちゃん特製カクテルよ」
上機嫌に声を上げ、俺に向かってかかげてみせる。特製って……ひたすら強い酒ばかりをただテキトーに混ぜただけのような
気がするんですが。
「はい、これを飲みなさい!もちろん、一息でよ」
『え?あ、あの、俺はお酒はちょっと。それに……』
「あのね、これで勘弁したげるって言ってるの。焼き鳥になりたくなかったら飲むの!……あ、それから。ほらここ、見えるでしょ、
あたしの、ル・ウ・ジュ。ちゃんとここんとこから飲んでよね」
ご丁寧にも唇のあとを指し示して、マーニャさんが俺にグラスを突きつけた。俺は酒はニガテだってのに―――
1.飲むだけ飲む
1−1.口紅のところから 1−2.別のところから
2.キッパリ断る
3.あいまいに時間を稼ぐ
4.とりあえずキス
またも約一週間ぶり・・・しかも長すぎの7レス12.7kb
メイドに会った時点でリリアンを連れて行くかの分岐をさせるつもりだったのですが、
間が空いてしまったので話を進ませてしまいますた。リリアンファン(?)の皆さまスミマセソ
本来なら最も多い1.→うち最も多い1−1単を選ぶべきでしたが、
これ以上更新延ばすわけにはいかず2−1にしてしまいますた
次からは決してこんなことないようにしますです・・・m(_♭_)m 謝罪
>>321 ゲームブックだと「特定の場所にしか行けないキメラの翼」がしばしば出てくるので使ってしまいました
説明不足ですみません
1−1
3
選ばれる事は無いと思うがお約束で4。
真っ赤になったマーニャとか見てみたい。
まあそれよりこっちが真っ赤になる(血で)可能性のほうが高いが。
4
モットイジメテ
面白そうなんで4で
俺は、黙って突き出されたグラスを見つめた。古今右に出る者がいないという夢占い師に、一杯ひっかけた状態で会うなどという
図太い心臓は、俺は持っちゃいない。といって、この酒を断れば火炎呪文で俺は丸焼きにされちまう。
とすれば。男が、調子に乗った女の口を強制的に封じる方法は、ただひとつ……!
俺は、グラスを受け取ると見せかけ、マーニャさんの細い手首を掴んだ。驚くマーニャさんをやや乱暴に引き寄せながら、さらに
右手をマーニャさんの肩のうしろへ回し、髪の中へ埋もれさせる。
「ちょっ……?」
大きく見開くマーニャさんの瞳。俺はその下の白銀のルージュに狙いをつけ、顔をすばやく近づけた。逃げようとするマーニャさん
の頭を、うなじにかけた手で押さえつける。マーニャさんの息が唇にあたり、化粧の香りが鼻をつき、前髪どうしが触れあった。
いよいよ……!と俺はなんとはなしに目を閉じる。そういえば、これが俺の人生における記念すべき初キッスってことになるんだな
……その前に、なんだか焦げ臭いよう、な……!?
「お客さんっ!!」
『うあっちっ!?』
突然腰に走った灼熱に俺は悲鳴をあげて飛び上がった。タキシードの右側に火がのぼったのだ。あわてて脱ぎ捨て、踏み消した。
見ると、マーニャさんの左手の指が火炎の印を結んでいた。こ、このお姐さん、本気で人間に向けてメラやりやがったよ!
「いきなり何すんのよ!こンのスケベっ!!」
俺の前に真っ赤なものが浮かび上がった。怒りにゆがむマーニャさんがかかげる両掌に、人の頭くらいの火球が渦巻いていた。
「お、お客さん、まずは落ち着いてください!店がっ……!」
マスターが真っ青になってカウンターから出てきたが、マーニャさんは炎から巻きおこる風に紫の髪をなびかせて、
「あんた、いい度胸してるわね。モンバーバラ劇場のトップスターマーニャちゃんの唇を奪おうなんて!」
と、いっそう火球を大きくさせると、俺にブン投げるべく足を踏み込む。やべっ、あんなの食らったらこの店や下の宿屋にまで…!!
『マーニャさん、ち、違います!俺は、そのっ!』
「何が違うっていうの!あんたみたいな男はやっぱり焼き肉になるといいわ!」
344 :
:03/12/16 02:09 ID:YzA/Qoz/
眉をピクピクさせて怒鳴るマーニャさん。もはや説得が通じるような形相ではない。マスターも客の男たちも、ふるえあがりながら
見守っているだけだ。今のマーニャさんを抑えられる人間は、もちろん俺も含め、ここにはいそうにない。
『………!』
後ずさりしていた俺の背中に、出口の扉が当たった。しめたと思ったが、引いて開けるドアだし、隙間を作って滑り込めたとしても、
あんな大火炎受ければこんな木の扉なぞ吹っ飛んで俺を直撃しちまう。逃げるのは無理だ。
俺は歯を食いしばると、観念して下を向いた。マーニャさんのサンダルが近づいてくる。
これも、俺の自業自得か。ああ、どうせこんなことになるなら、さっき躊躇せず口づけを……じゃなく、おとなしくあのカクテルを飲んで
おくんだった。カクテルのグラスを見、俺はため息をつく。そうだ今からでも飲んでみせれば、ってそれで許してくれるはずないか。
「……?」
マーニャさんの動作が止まっていた。つい今俺の見ていたグラスに目をやり、また俺に視線を戻したりしている。顔の筋肉から怒り
が消えかけていた。どうしたんだろ?
「ああ、ははーん。あんた、アレをやってもらいたかったってわけ?」
フッ、とマーニャさんは炎を消した。そして、わけがわからずまだ震える俺の顔をじっと覗き込み、
「子供だけどけっこーイイ男だし、トクベツにやったげるわ。あんたとは仲良くしなきゃいけなさそうだからね」
と、ひとりごちた。何なんだ?俺は拍子抜けして姿勢を正した。その俺の腕を引いてマーニャさんは俺を椅子につかせ、グラスを手
にとった。
「いい?ちゃんと飲み込みなさいよ。途中で吐くんじゃないわよ」
『は、はあ?』
なぜ雲行きが好転したのかわからないが、も一度チャンスをくれるってことかな。丸焼きになるよりマシだ、今度こそ素直に飲もう。
俺は、グラスを受け取ろうと、手を出した。
「いくわよ」
ところが、マーニャさんはグラスを俺に渡さず、自らぐいっと口にあおった。いくって、いったい何を?ぽかんとする俺の前で、マーニャ
さんはグラスを置くと、振り向きざまに俺の頬を両手で押さえつけた。こ、これってまさかっ!?
マーニャさんの肌が、長い睫毛が眼前いっぱいに近づき、再び俺の額に触れるマーニャさんの前髪。マーニャさんには、ためらいの間
は少しもなかった。
345 :
:03/12/16 02:15 ID:YzA/Qoz/
『うぐ……!』
俺の唇へ滑らかで生暖かいものが押しつけられる。マーニャさんの唇に違いなかった。さらに、唇の柔らかい肉の間から、何かが俺
の唇をつついた。尖ったそれは俺の唇を割り、俺の口に入りこんできた。とたんに痺れるようなむせかえるような液体――マーニャ
さん特製カクテル――が俺の舌の上ついで喉へと流れ落ちてくる。うっと息が詰まったが、俺は必死で喉奥を動かし、ごくりごくりと飲
み込む。頭が突き刺されるように強烈で温かったが、すばらしい美味きわまりなかった。俺が飲み終えると、先程唇を割ったぬめった
ものが俺の歯の裏や舌へ残液をなするようにしてきた。俺が思い切って舌を伸ばすと、ざらざらしたそれは絡みついてきた。マーニャ
さんの息が笑った。腕や背が無性に震え、気分がふわふわとし、周囲のどよめきも嘆息もまったく気にならなかった。
「はい、おしまい」
最後にマーニャさんは、俺の口の空気を吸い込んでチュッと音をたてると、唇を離した。
『あ……』
解放された俺は、頭の中で脈打つ血にぼんやりしつつ、舌をまだ口の中でさまよわせた。なんかスゲーことされた感覚……。
「ふふっ。あんた、飲めるんじゃないのよ」
そんな俺に機嫌良く笑うマーニャさん。そりゃあ、ですよ。とびっきりの美人にこんな嬉しいことされたら、酒でも薬でも飲まない男は
いませんて。
「まっ、200ゴールドで続きやったげてもいいけど、あんた文無しよね。残りは、自分で飲んで」
マーニャさんが半分残ったグラスを前に置く。200ゴールドだって?そんなはした金、いくら、で、も……。
『う……?』
身体がぐらりと傾きかけ、俺は足を踏ん張らせた。だがその足にも力が入らない。空きっ腹に強烈なアルコールを注がれたのと人生
初の口うつし(とディープキス)を経験したせいか、身体中の血が高温を発し、目の前が気持ちよくかすんでゆらいできた。
「ちょ、ちょっと?大丈夫なの?」
遠くで聞こえるマーニャさんの声。どんどんおぼろげになっていく視界。あ、やばい。俺ホント倒れるかも。
瞼を支える気力がなくなる寸前、俺は―――
1.カウンターに倒れ伏した。
2.マーニャさんにすがりついた。
3.立って外へ出ようとした。
4.カクテルをひと息にあおった。
5.<<入力してください>>の名を叫んだ。
3
1
1
4
3
2
てかマーニャたんとディープキス(;´Д`)ハァハァ
ってなってるのは俺だけなのか?
4
4
うーむ、やっぱマーニャに恥じらいを求めるのは無理があったか・・
でもこれはこれで大いに良し!好感度も減ってないのでさらに良し!
・・・・・どんなことでも言ってみるもんだなあ・・
いま倒れるわけにはいかない。今晩はミレーユと約束したんだ。何とか気をしっかりもたせないと。
そうだ、夜風にあたれば。俺は接いだばかりの木のようにぐらぐらする頼りない足で床に立ち、ふらふらと扉のほうへ歩き出
した。身体中の筋肉が失われたように力が入らず、頭や背をまっすぐ支えていられない。細い視界には床板しか見えなかっ
た。前のめりになってるってことだ。このままだと倒れる。すぐ前が、扉のはずだ。必死で腕を持ち上げ、手をついた。
『………?』
扉、のはずだった。だが、手のひらに触れたのはごつごつした堅い木の板ではなく、けばけばしていて丸い柔らかいものだっ
た。まあ何でもいいやと、下を向いたまま腕だけに力をこめて、手元のものにすがりついた。
「ひッ…!」間近で息を呑む音。同時に、むにゅ、という感触が手にした。麻にくるまったスライムをつかんだ感じだ。まさか
スライムが一杯引っかけに来たわけじゃないだろう。むにゅむにゅ。しかも二匹もなんて。むにゅむにゅ。じゃあ何なんだろ
これ?気持ちいいくらいやわらかいけど。むにゅむにゅ。あれ?ちょっと指先にかたいモンが…それになんだか震えてきた。
「あんたっ!ミネアにまで何してんのよっ!!」
後ろからマーニャさんの怒声。さらに「きゃあああぁっ!!」耳元で、本日2度目のミネアさんの悲鳴。
背中に何かが当たった。後頭部に何かが降ってきた。瞬間、俺は顔と腹を堅い床にしたたかに叩きつけられていた。
『ぐはっ……』
激痛とともに呼吸ができなくなる。胃から喉、口へぬるま湯が込み上げ、床の上にダラダラ流れる。ああ、これ、もったいない。
せっかく飲ませてもらったマーニャさんの特製のカクテルなのに……。けれど、そんな悔しさも苦しさも、急激に薄れていく。
だめだ、眠っちゃだめだ。俺は、まだ、今夜……何か、あるんだったっけ……?
《マーニャの評価がわずかに下がった》《ミネアの評価が下がった》
『う……?』
目が開いたとき、俺はベッドの中にいた。飛び起きようとしたが、とにかくひどい気分だった。動こうとすると関節がきしむ。
胸がムカムカする。吐き気はしないのは、何も食べてないからか。
やっちまった・・・_| ̄|○ リロード シナイカラ
>>355さんすみません。早いとこ4で書いてきますです・・・
359 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/12/20 23:37 ID:qXJhNx+a
(・∀・)
360 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/12/20 23:49 ID:nKZNALBu
ドラクエのギャルゲって普通のドラクエとどう違うんだ?
話す時に顔のCGが出るとか?それとももはやRPGジャンルじゃなくなるのか・・・。
いや、だめだ。今日は果たさなきゃならない約束がある。このままくたばっちまったら男の名折れ。俺は、気力を振り絞って
頭を上げた。目の前に、奇妙な色の液体が入ったグラスがあった。約束……そうだった。これを飲み干して、マーニャさんに
許してもらわなくちゃならないんだっけ。
俺はグラスをつかんで椅子から立ち上がり、両手を大きく上へかかげた。『いきますよー!』高らかに宣言して顔を天井に
向け、グラスを口に含むと、ひと息で喉へと流し込んだ。まるで水のようで、舌には何も感じなかった。さっきのおいしい味は
マーニャさんの味だったのかも。
『飲みましたよ、マーニャさん』俺はグラスを置いてマーニャさんを見下ろし、笑った。『これで、許してくれますよね』
あいにく、マーニャさんの反応は見えなかった。マーニャさんと俺の間に白くて濃い煙が立ちこめていたからだ。火事かと思
ったけれど臭いはしない。じゃあこれ霧か。その濃霧はもやもやと渦巻いて、俺の周りをすぐに完全な白い世界にしてしまう。
不思議に不安は感じなかった。むしろ爽快で、歓声をあげたいほどだった。体重が失われ、足にも腕にも、力が抜けていく。
雲の中に浮かんでいるようで、上も下も、右も横もなかった。
どうっ、といきなり俺の頬と肩に堅い板がぶつかった。かなりの衝撃だったけれど痛みは感じない。マーニャさんだな、霧の中
だと思ってこんないたずらをするのは……。
「う、ウィルさん!?しっかりしてっ!姉さん、また“お通り”やらせたのね!」
「ちょっと、何言ってんのよミネア。こいつが勝手に飲んだんじゃないの!」
女が二人、遠くでわめく声が聞こえる。せっかく男をキメたんだから拍手ぐらいしてほしいな。薄れる意識の中、俺は彼女たち
にそうささやいた。
《マーニャの評価がかなり上がった》
『う……?』
目が開いたとき、俺はベッドの中にいた。額に濡れた布が乗っている。身を起こそうとして割れるような頭痛に呻いた。関節が
きしみ、胸がムカムカする。吐き気はしないのは、胃に何も入ってないからか。
「ウィルさん。気がつきましたか」
どうにか上体をあげると、ほっとした顔のミネアさんが近寄ってきた。今はミレーユからもらった絹のローブではなく、最初に会
ったときと同じ、橙色の麻のローブという占い師姿だ。着替えちゃったのか。
363 :
:03/12/21 09:11 ID:nBL/7gGg
『俺……あれ、どうして?』
見回してみると、ここは宿屋のマーニャさんたちの部屋だった。昼間来たときよりも部屋は片づいていて、化粧品の匂いが強く
香っている。一つのベッドに俺は寝かされていて、少し離れたもう一つのベッドには、胸当てと腰巻きのツーピーススタイルの
ままのマーニャさんが腰掛け、眠そうにあくびをしながらこっちを見ていた。
「気分、大丈夫ですか?すみません。姉さんがひどいことを」
ミネアさんが咎めるようにマーニャさんを横目で見る。ひどいこと?俺は、頭を振って思い出そうとしてみた。酒場に行ってみた
らマーニャさんがいて、カクテル飲めと迫られて、それからマーニャさんを怒らせたと思ったら……。
『あ!』
俺は思わずマーニャさんを振り向いた。マーニャさんは眉をぴくっとさせ、少し目の下をあかくすると俺から目をそらした。あれ
って夢じゃないよな?俺の初キッスの相手はマーニャさんてことになる。すばらしい!
「姉さん、すぐ男の人に一気のみをさせるんです。危ないからやめてって、私は何度も言ってるのに」
どぎまぎしている俺に、ミネアさんがすまなそうに目を伏せた。男に一気飲みさせるって……あんな飲ませ方をマーニャさんは
誰にでもするのだろうか。それとも俺にだけ特別……?
いや、そんなことより。俺は目線をマーニャさんから天井に上げた。マーニャさんにカクテル飲ませてもらってから、俺、どうした
んだっけ。痛む頭で必死で考えたものの、その先がまるでわからない。真っ白なままだ。強い酒を衝撃的なやりかたで飲まさ
れたショックだろうか。
『だめだ。お酒ご馳走になってからこっち、思い出せません。何か、あったんですか?』
「あら、覚えてないの?」マーニャさんが口をはさんできた。もう顔の朱味は消えている。「…まあ、知らないほうがいいかもね。
あれから大変だったのよ。裸で店の中で踊り出したあんたを、ミネアが抱きかかえてここに運んで来たんだから」
「姉さん!」ミネアさんが怒鳴る。一瞬俺は青くなったが、カラカラと笑うマーニャさんの態度から冗談だと気付き、ほっとした。
「ウィルさんもお酒を一気で飲んで、倒れてしまったんです。それで、酒場のご主人さんに手伝ってもらって、ここに運んだんです」
『そうですか、やはり。すみません。ご迷惑かけて』
364 :
:03/12/21 09:12 ID:nBL/7gGg
「いいえ、元はと言えば姉さんのせいですから……。ところでウィルさん。ご気分はどうですか?」
『まあ…なんとか、平気です』
ベッドから降り、床に立ってみる。頭も身体の節々も痛むが、それさえ我慢すれば動き回れそうだ。
「それじゃウィルさん。急いでグランマーズさんをお訪ねしましょう。姉さんも話はグランマーズさんのところに行ってからにして」
はっとして俺はカーテンを少し開けた。まんまるな月が高くのぼっていた。もうかなり夜は更けている。耳をすましてみると、騒
いでいるのは虫だけだ。
『今から伺ってもいいんでしょうかね。もしもう、お休みになってたとしたら……。』
「わかりませんけれど、今日ウィルさんに来てほしいということはきっと、満月の夜しかできない儀式があるのだと思います。
ですから、今すぐに!」
俺をそうせっつくと、ミネアさんは俺に[ふくろ]を手渡した。そうか、今晩満月だっけ。気分は最悪だけど約束は約束だ。占い師
なら、頭痛薬や酔い覚ましの薬を持っているかもしれない。
「待ちなさいよ」翼を取り出そうとした俺の手に、褐色の手が乗った。マーニャさんの手だった。「あんた、そんなくたびれたカッコ
で行くつもり?」
言われてみれば、と俺は自分のなりを見直した。今の俺は、髪はめちゃくちゃで上は肌着一枚下は上等なスラックスといった
ヘンテコな姿だ。とても一国公認という大占い師にお目に掛かりに行くような装いではない。
『そ、そうですね。マーニャさん、すみませんが着替えか何か……』
「あるわけないわよ。こんなか弱いあたしたちのドレスやコートを、そんなイイ身体してるビルくんが着られると思う?」
『………』たしかに、頼む俺のほうが間違っている。
「会いに行くの、明日にしたら?明日の朝一番で服屋行ってさ。なんなら、あたしがビルくんに似合う服、選んだげるわよ」
マーニャさんは前かがみになって、俺の顔を覗き込んだ。さっき俺と合わせた白い唇が、誘うように笑っている。
「だ・か・ら、今晩はあたしたちとここに泊まりなさい、ビルくん」
からかうように微笑むと、マーニャさんは、俺の唇の下をひんやりした親指で撫でてきた。
365 :
:03/12/21 09:15 ID:nBL/7gGg
『ま、マーニャさん!』俺はぞくっと震え、頬を熱くして思わずたじろいだ。それを見て、マーニャさんは楽しそうに頬を緩ませた。
「じゃ、どっちのベッドで寝る?それ、ミネアのだけど。あたしのほうに来てくれてもいいわよ」
ニコニコして俺に顔を近づけてくるマーニャさん。この部屋で、本気で俺と一晩を過ごすつもりなのだろうか?
それはそうと、マーニャさんの言葉に出てくる“ビルくん”て俺だよな?3人だけだし間違いないけど、“ウィル”って発音しにくい
のかな。
「姉さん!余計なこと言わないでちょうだい!」また顔を染めたミネアさんが割って入ってきた。「私たち、今日中に行くってこと、
ミレーユさんと約束してるのよ!」
すると、マーニャさんは急に睨むような目つきになり、ミネアさんを見た。
「へーえ。じゃあミネア、あたしのことはどうする気だったのよ?まさか、あたしをこの街に置いてくつもりだったの?それとも、
あたしまでそのグランバーズとかいう人の島に連れてくつもり?言っとくけど、あたしはそんな退屈そうなとこ遠慮しとくわよ」
「それは……」
皮肉っぽい口調のマーニャさんに、ミネアさんが言葉を詰まらせた。マーニャさんは行く気ないのか。とすると困ったことになる。
「それにね、ミネア。そんなワケわかんない人より、あたしたちは、バルザックと勇者を捜すことのが先でしょう」
「だ、だけど姉さん。グランマーズさんというのは私たち占い師の間では伝説にまでなってる人なのよ。姉さんだって知ってるで
しょ、サントハイムの王様まで、自らはるばるムーンブルクまで行ってご自身の夢について占ってもらったのよ。それに……」
「ハイハイ。もうそれ聞き飽きた。言っとくけどあたしは行かないかんね。今日のぶんの宿代、払ってあるんだから。今夜はぐっ
すり休ませてもらって、明日さっさとモンバーバラに帰るわよ。もちろん、ビルくんの服買ってあげてからだけど」
「そんな、姉さん!勝手すぎるわよ!」
「勝手なのはあんたよ。あたしたちがはるばるラインハット来たのは、あんたの占いでこの街に勇者の手がかりあるって出たか
らなのよ。それってビルくんのことだって、あんたさっき自分で言ったじゃないの。見つけたんだからもうこの街には用なし。こ
れ以上、妙ちきりんなとこ行きたくないわ」
366 :
:03/12/21 09:36 ID:nBL/7gGg
もう話もしたくないとばかり、手と髪を振ってつんと横を向いてしまうマーニャさん。ミネアさんは唇を噛み、困りはてた顔で俺を
見た。やっぱり俺が決定権をもつのか。
ミネアさんとしたら念願かなって業界のカリスマに会えるのだから、今すぐにでも行きたいのだろう。俺としても、まさに勇者探し
の旅に出ようとするときにふって湧いた出来事だ。何かの手がかりを与えてもらえるかもしれない。なによりも、用を済ませたら
すぐに訪ねると俺はミレーユに約束した。マーニャさんは渋っているけど説得すればついてきてくれないとも限らないし、駄目な
ら、ミネアさんと二人、もしくは俺一人ででも行かねばならない。
けれど、マーニャさんの言うことも一理ある。このキメラの翼を使ったら果たして世界のどこに飛ばされるかわからない。わかっ
ているのは、世界第一の夢占い師(とミレーユ)が隠棲しているどこかの島だってことだ。絶海の孤島の火山の頂上へ片道切符
で現地解散なんて羽目になるやもしれない。加えて、城下へ行けば門番から即座に門前払いを食いそうな俺のこの風体、それ
に時間だ。ミレーユは真夜中でもいいと言ってたけど、さすがに礼儀ってものがある。あまつさえ俺は酒の臭いをプンプンさせて
いて、半病人の状態なのだ。グランマーズさんが無頓着な人ならいいが、厳格な人だったとしたら、呼び出しはなかったことにし
てくれと追い返されてしまう。だけれど、そもそも今日行かないということが重大なマナー違反になるわけで……。
『………』
とにかく、迷っている時間ももったいない。ここはすっぱり決めよう―――
1.今すぐ[キメラの翼(マーズの館行き)]を使う
1−1.マーニャさんを説得して3人で行く 1−2.ミネアさんと2人で 1−3.ひとりで
2.今夜は二人とサラボナに泊まることにする
2−1.マーニャさんたちと話をする 2−2.食事をとる 2−3.[風鈴]を使ってみる 2−4.すぐに休む
1−1.マーニャさんを説得して3人で行く
は、これに決まってるじゃないか! 金についてはおごれるし。
3−P.でお願いします (;´Д`)ハァハァ・・・
↑ってゆーのは冗談でやっぱ 1−1
1-1で
1−1
『あの……』俺は、そっぽを向いているマーニャさんに話しかけた。
「なあに、ビルくん。あたしのベッドで寝たいの?」
とたんにマーニャさんは声をがらりと変え、またも俺に身を乗り出してくる。なんなんだこのお姐さん。
『そ、そうじゃなくて。俺たち、やっぱり今日中に行かなきゃならないんです。約束は約束なので』
「へーえ」マーニャさんの瞳が俺から外れて上を向いた。「じゃ、あたしはのけ者ってわけ」
『いいえ。一緒に来てもらいたいんです。俺はまだ、マーニャさんたちに聞きたいことがありますから』
「聞きたいこと?だったらさ、ここでだって聞けるでしょ。はい、何かしら?あたしのスリーサイズ?」
マーニャさんが目線を戻し、ぐっと俺に顔と身体を近づけてくる。えー、それもじっくり聞きたいんですが今はちょっと。
『勇者と、バルザックについてですよ。そのことは、マーニャさんも俺に聞きたいのでは?』
「あっ、うん。そうね。あたしもそのこと、ビルくんに聞いとかないと」
『でしょう?だったらひとまず、俺たちとグランマーズさんのお宅へ行きませんか。何かあったら、俺が責任持ちます』
「へーえ……ビルくんが。そこまで言ってくれるんなら。ま、癪だけど、あたしも行くとしますか」
おっ。あっさりオーケーしてくれた。俺はほっと胸をなでおろし……かけたが、俺のその胸へ、不意に褐色の手が伸びた。
「……だけどね、ビルくん」マーニャさんの手が俺の肌着をつまむ。「この格好だけは、何とかしてもらえない?」
そう言ってマーニャさんは、俺の着てるものを再度じろじろ眺め出した。どうにも気恥ずかしい。
『気を遣ってもらえて嬉しいですけど、俺の格好なんて気にしなくていいですよ。笑われるのは俺なんですから』
と、俺は頭をかきながら笑ってみせた。するとマーニャさんは、急にむっと眉をつり上げた。
「わかんない?あたしが気にするっていうのよ。そんなカッコであたしの隣を平気で歩かれたんじゃ、あたしまでセンスが
ない女だって思われるじゃない。そういうのってすごく困るの。モンバーバラ劇場のマーニャちゃんて、顔も身体も綺麗
だけど男と服が選べないなんて噂立ったら、目の肥えたお金持ちのお客が減っちゃうわけよ」
373 :
:03/12/22 13:43 ID:2o1XSjpr
『………』
マーニャさんて……お客がどうのはともかく、ビアンカやマリベルとまるで同じことを言うな。特にマリベルだ。道でばったり
会って同じ方向だったとき、俺が似合わない服(あくまでマリベルの感性だが)を着ていようものなら、隣を歩くな話しかける
なの一点張りだ。そのくせビアンカと途中で会って俺と話しながら歩き出したりすれば、マリベルはだんだん俺に近づいて
きて、いつの間にか俺の隣を歩いている。わけがわからない。
あの幼児体型のマリベルと、この肉感的な肢体のマーニャさんとが同じ理由で、俺と歩くのを嫌うのか。
『あの…俺たちと行けない理由って、そんなことなんですか?』
俺が拍子抜けして聞くと、マーニャさんはさらに不機嫌に眉をぴくっとさせた。そして、分からず屋に言い聞かすような見幕で、
「そんなこと?あたしにとっちゃ重大問題なのよ!ビルくん、踊り娘っていうのはね、劇場のステージで踊ることだけが仕事
じゃないのよ!」
と、俺の肩をつかんですごんできた。俺は酒場でのマーニャさんのキレた姿が脳裏に浮かんで、びくついてコクコクと頷く。
フン、と息を鳴らして手を離すマーニャさん。あー驚いた。けど、マーニャさんて踊り娘だったのか。こんなタダで男の目を
保養するような姿さらして平気で酒場行けるのも納得。ただの露出狂ではなく、プロだったわけだ。
「……あんた、今ひどいこと考えなかった?」
『い、いえ。すみません、さっきの言葉は謝ります。でも俺のこれ、どうしようもないですよ。服屋はもう閉まってますから』
「そう。だから、明日にすればいいの」マーニャさんはもう笑顔に戻り、俺の膝に手を乗せてきた。「あたしがちゃーんと選
んだげるから。ビルくんをもっともっとイイ男にするような服をね。そのついでにさ、あたしのアクセサリーを1つか2つ、
おねだりしたいんだけどいいかしら。ビ・ル・く・ん」
ふうっ、とマーニャさんの息に頬をなでられ、俺は全身を震わせた。しかもマーニャさんの細い長い指が俺の膝をくすぐる。
俺の顔が熱くなる。ま、マーニャさんて、さっきからやけに俺に媚びてくるけど、どうしたんだろ。酒場でのことが原因だとは
思えないのだが。
『……!』マーニャさんの指が、俺の膝の内側へ落ちる……!
374 :
:03/12/22 13:44 ID:2o1XSjpr
『ダメですってマーニャさん!』これが普段の俺なら屈してしまっただろう。だが今の気分の悪さが、幸か不幸か、せっかくの
マーニャさんの誘惑も半減させてしまい、俺はどうにか抗しきった。『俺、約束したんですよ。ミレーユと。だから今すぐに!』
「あっそ。ビルくんは、そんなワケわかんない女のが大事で、あたしはどうでもいいってのね」
『そ、そういうわけじゃありません。ただ約束は守らないといけないから……』
「だからそれ、同じ事よ。あーあ、あたしもビルくんと仲良くなりたかったけど、残念ね」
マーニャさんはがっかりした顔になって首を振り、俺から手を離す。そして、
「あいにくだけど、あたしやっぱり遠慮しておくわ。せいぜいその女とミネアと楽しんできてよね、ビルくん」
俺はがっくり肩をすくめた。説得失敗。というより、マーニャさんのペースに逆に振り回されただけか。
《マーニャの評価が下がった》
《ミネアの評価がわずかに上がった》
『あの、それじゃマーニャさん、これから俺たちとグランマーズさんを訪ねるのは、どうしても駄目なんですか?』
諦めきれずに、俺はもういちどマーニャさんに聞いてみた。すると、
「ん、ビルくん、どうしてもとは言ってないわよ」
意外にもマーニャさんはニコリと笑った。どこか思わせぶりな目線を俺に送ってくる。これは何か企んでる女の目だ。
「ビルくん。そんなにあたしについて行ってほしいの、ん?」
『えっ、ええ。はい』
「だったら……そうねえ、2000ゴールド!」
マーニャさんが、いきなり指を2本、俺の目の前に立てた。
『に、にせん、ごうるど?何なんです』
「簡単。2千ゴールドで、ビルくんがあたしを1日雇えばってこと。それなら、しぶしぶだけどついてったげる。まっ、ビルくんの
その服装も、人前じゃ他人のふりしてればいいわけだし。どう?」
白い唇の先にえくぼを作りながら、マーニャさんがぱちんと片目をつぶってくる。長い睫毛のかげが揺れて、艶やかで引き込
まれそうなウインクだった。
『あ、あの、でもマーニャさんご存じでしょう。俺、そんな2千ゴールドなんて大金は……』
「あーら。嘘はいけないわよビルくん。その中、ずいぶん重いお財布入れてるじゃない」
アッと俺は息を呑んで、[ふくろ]に目を落とした。そうか、俺が寝てる間に!
375 :
:03/12/22 13:47 ID:2o1XSjpr
『マーニャさん!この中、覗きましたね!?』
俺が腹を立てて詰問すると、マーニャさんはさすがにバツが悪そうに斜め上を向いて、肩にかかる髪を指でくるくるさせた。
それから、
「着替えがないかどうか見てみただけよ。それがいけないことなの?ミネアだって一緒に見たんだから」
と、開き直ったようにミネアさんを見ながら言った。これを受けてミネアさんが目を伏せ、俺にすまなそうに頷いてみせた。
はあ、なんだ。マーニャさんが俺に色目使ってきたのはそういうことなのか。俺は内心ため息をつく。
このお金は借りたものだと言っても、マーニャさんはきかないだろうな。
「…そんな細かいことどうでもいいとして。ビルくん、どうする?あたしを雇う?このマーニャちゃんがたった2千ゴールドよ。
安すぎるくらいじゃないの」
マーニャさんが艶めかしく俺の顔をのぞき、また俺の膝を撫でてきた。どうしよう。3人で行くためには、2千ゴールドでマー
ニャさんを雇わねば……ん、待てよ。雇うってことは俺がパトロンになるってことか。とするとあんなことやそんなことも…?
「もういいです、ウィルさん。姉さんのこと放っときましょう」
莫迦なことを想像しはじめた俺へ、先程からそわそわしていたミネアさんが思い切ったように言い放ち、立ち上がった。
『ミネアさん。で、ですけど……』
あわてて、俺はミネアさんとマーニャさんを交互に見た。俺のつもりではまだ説得が終わってない。けれど、ミネアさんは
既にマーニャさんの同行を諦めてしまったようで、マーニャさんよりも時間を気にし、窓の月明かりにじっと見入っている。
「あらあら、ミネア。姉のあたしよりも、ビルくんのほうが大事ってこと?」
邪険に笑うマーニャさんに、ミネアさんはいきなりキッとなって睨むと、
「姉さん!姉さんこそ恥ずかしくないの!ちょっとお金持ってる男の人見るとすぐこれなんだから!」
と、怒鳴りつけた。今まで黙ってた不満をぶつけるような怒声だ。マーニャさんは妹の目線に対し、受けてたつように睨み
返したが、すぐふてくされて後ろのベッドに座り直し、肩の髪を後ろへ撫でつけた。
376 :
:03/12/22 13:48 ID:2o1XSjpr
「…はっ!ウィルさん、すみません。大声を出してしまって」
ミネアさんがあかくなって俺に謝る。いや、今の問題はそんなことじゃないんですが。
「姉さんのことで心配することはありません。姉さんは[ルーラ]の呪文が使えるんです。一人でもモンバーバラへ帰れます」
成り行きに驚いている俺にミネアさんは穏やかな笑顔に戻って教えてくれた。マーニャさんが舌打ちする。マーニャさんが
ルーラを使えるということは……なんだ。世界中どこへでもひとっ飛びなのか。
ところで、二人の話に出てくる“モンバーバラ”という地名。たしか、サントハイム王国の港町だ。街の中心に大きな劇場が
あって、夜ともなれば大勢の客で賑わうという歓楽の街という話だ。ヘンリーの奴がサントハイムを訪問するたびお忍びで
行き、話通りの街だったと以前俺に自慢げに話したことがある。マーニャさんとミネアさんはそんな街の出身なのか。言わ
れて見れば、それっぽい。
「さ、ウィルさん。行きましょう」
ミネアさんが、大きな袋を背負う。マーニャさんは俺たちには無関心のように目もくれず、髪をとかしはじめている。これ、
交渉決裂ってことなのかな。いや!お金を払えば来てくれると言ったんだから、少なくともマーニャさんの行く気はゼロでは
ないはず。俺は、一縷の望みをかけ、『マーニャさん……』と切り出した。
「あ、ビルくん」そのとき、横を向いたままのマーニャさんから、言葉が聞こえた。「ミネア連れて行くんなら、300ゴールド
払っていって」
『え?』俺もミネアさんもぽかんと口を開けた。ミネアさんの身柄が300ゴールド?けど、何でマーニャさんに払う必要が?
『それ、どういうお金なんですか?』
「決まってんじゃない」マーニャさんは、驚き呆れている俺たちに背を向けたまま、櫛で髪を整えている。
「口止め料よ。あたしはあんたたちが帰って来なくても明日モンバーバラに帰るつもりなの。それで、あんたたちが夜のうち
に帰って来なかったとするわね。そしたら明日の朝、ここの宿の主人に何て説明してほしい?正直に、ルドマンさんのお
屋敷に泊まってたウィルって男と駆け落ちしました、って話していいのかしら」
377 :
:03/12/22 14:02 ID:2o1XSjpr
落ち着いた口調でさらりと言うマーニャさん。それは困る!と俺は血の気がひいた。この街は噂がひろまるの早いから、
すぐフローラさんたちの耳にも届く。フローラさんは俺を信じてくれたとしても(それもかなりの希望的観測だけど)、問題
はルドマンさんだ。明日ルドマンさんはラインハットから帰って来るはずだから、マーニャさんが有言実行したなら、当然
ルドマンさんの耳にも入るだろう。そのときの俺の肩書きは、一宿一飯の世話になった上に5万ゴールドもの借金をし、
宿にいた旅の姉妹のうち妹を連れて逃げた男だなんていう最低のものになる。世界一の大商人でこの街の有力者でも
あるルドマンさんを怒らせてしまったら、その結果は推して知るべしだろう。
「もちろんあたし、モンバーバラに帰っても、ミネアのこと聞かれたら同じこと答えてやるわよ。どう、それでもいいの?」
『………』マーニャさんのあまりの理不尽さに呆れる、ミネアさんと俺。マーニャさんて、狡猾でたくましいというのか、転んで
もただでは起きないというか。こういうワガママも女の可愛さっていうのかな。俺は断じて認めたくないけど。
「姉さん、なんてことを言うの!…ウィルさん、姉さんの言うことなんてまともに聞く必要はないです。早く行きましょう」
「あっ、そう。それならそれでいいわよ、せいぜい仲良くやってよね」
マーニャさんが、しっしっ、と俺たちを追い払うように手を振った。怒ってるけれど、どことなくさびしそうだ。
あーあ、説得するつもりだったのに話がすっかりこじれちまった。俺もそろそろ焦ってくる。いい加減時間もない。よし!―――
1.ここはマーニャさんに折れることにして2000ゴールドを渡し、3人で行こう(50000−2000G)
2.行きたくないのに無理強いしたくない。300ゴールド払ってミネアさんと2人で行こう(50000−300G)
3.こんな守銭奴姐さんの言いなりになどなれない。金なんて絶対に払わず、ミネアさんと二人で行こう
4.借りたお金をやすやすと使うわけにはいかないし、マーニャさんを敵に回したくもない。ひとりで行こう
5.たった2千なんてけちけちせず、10000Gどんと置き、俺の言いなりになってもらおう(50000−10000G)
えーえわかってます、今回色々あって少々イタイです。言い訳はしませんと書くのが既に言い訳
第一、展開として1レスで済むところを書き込み杉でつね
も少し省略記法にすればと思うけど、ギャルゲーと思うと細かく書きたくなる・・・
前々回の選択、
>>345で3だったらゲームブックスレと展開かぶってしまってたので、
>>355さんに4にしてもらえてありがたかったでつ
あっちの職人さんのように質感ある描写ができればな〜。もっと本読もうっと(ナンノ?
以下遅レス
>>352>>353>>355 (;´Д`)してもらえてありがとうございまつ!
何とか魅力あるキャラクターが描けるよう精進してまいりまつ
>>358 ( ´Д⊂ヽアリガト・・・
◎アンケート◎
アリーナの性格はどんなんがよろしいでしょう?
A.リメイクPS型(「私」の一本気な女の子口調)
B.ゲームブック型(「あたし」なきゃぴきゃぴ口調)
C.組先生型(「ボク」で男まさり口調)
D.その他<<入力してください(藁>>
5A
1A
1
二兎追う者は一兎も得ず。
2
>378
A
5
A
388 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/12/23 07:07 ID:WGyiBUbI
1_C
監視の意味も込めて一緒に
てゆーかやっぱ久美佐織サイコー!
ぬうおぉぉぉぉぉ
ageっちまったぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー
390 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/12/23 07:33 ID:WGyiBUbI
と言うか佐織じゃなくて沙織だバカか俺は
↑またageてるし
1C
あれれ。Cが押され気味…!?
ということで、1_C。
この調子でいけば、容量オーバーせずに、ぎりぎり1000に持ち込めるはず。
偏見かも知れないが王女でボクはないだろと。
3A
しかし1多いな。
前回欲張って失敗したのにみんな全く懲りてない・・・これも男の性か。
3A
漏れも1C 男とは欲望の塊である。
で、中間集計
>377 「1」8 「2」1 「3」3 「5」2
>378 「A」8 「C」5
真面目に3A
1A
5C(藁
5C
「私」口調はありがちだからなぁ・・・ここはやはり個性化を図りたい
という訳で 1C
3.
D.「あたい」
3A
つーかいきなり増えたな人。
元々読んでるだけで投票してなかった人まで入れてるのかな?
アリーナ効果恐るべし・・・・
1A
多重投票してる奴いると思う
それはともかくまた集計
>>377 「1」11 「2」1 「3」7 「5」4
>>378 「A」12 「C」9 「D(あたい)」1
407 :
404:03/12/25 02:20 ID:A18su9E0
真面目にここらで投票打ちきったほうがいいんでない?
全投票数21票。
こんなに人が居る訳ねえじゃん。
これ以上続けても不毛な争いになるだけっぽい。
>>407 場つなぎ ◆Gp/A555JhQ 氏が
書き込むまで投票は続くからな
氏がどう結果を反映させるかは知らんが
ここまで投票数が増えるとかなり怪しいからな。
場つなぎさんは投票結果をあまり重視しすぎず
書きたいように書いてほしい。
410 :
388:03/12/25 14:31 ID:1PiHo+eh
ひょっとして俺がageちゃったせい?
だったら何か責任感じちまうなぁ
411 :
ほっしゅ:03/12/27 00:14 ID:czowaGkX
そして止まってしまったわけだが
『マーニャ、さん』
俺は、マーニャさんのそばに立って、ゆっくりと呼びかけた。このまま喧嘩別れしてしまうよりは、2千ゴール
ド払ったほうがはるかにいい。それに[ルーラ]が使えるなら辺鄙な場所へ飛ばされても帰って来られるしな。
「………」
が、マーニャさんはちらりと俺に向けた瞳をすぐ背けてしまった。すねた態度の矛先はミネアさんで、俺につ
いてはさほど怒ってはいないと思っていたのだが、甘かったらしい。どうするか。
怒ったままのマーニャさんの前に2千ゴールドぶら下げて、果たしてマーニャさんが素直にうんと言ってくれる
かどうかだ。2千というのも気まぐれな額だろうから、値上げして3千ゴールドだなんてふっかけられかねない。
考え込んで俺が思いついたのは、またもマリベルのことだった。あいつがすねてプレゼント受け取らなかった
ときが一度あった。あのとき俺どうしたっけ…って、あれか!あんなキザったらしいこと、俺、やったんだな。同
じことをマーニャさんにやってみたら…プロのマーニャさんには生意気に見えてしまうだろうけど、マリベルと
マーニャさんがの中身が同じ人種だとすれば、やってみる価値はある。それに相手がマーニャさんだと思えば、
マリベルと違って演りがいがあるしな。いっちょ賭けてみよう。
『マーニャさん』
声をかけておいて、俺は、マーニャさんの膝の横に千ゴールド銀貨を2枚、かすかに音をさせて置いた。マー
ニャさんの目線が動くのを確認してから、俺はマーニャさんの前に回った。
『どうか俺に、あなたを雇わせてください!』
と、胸に手を置いてひざまずき、頭を深く下げる。さらに、マーニャさんの右足が履くサンダルを両手で持ち、
足の甲を覆うストラップに接吻する。
「……ちょ、ちょっと?ビルくん?」
マーニャさんは丸く見開いた目で、あ然と俺を見下ろした。目の下がほんのりとあかく染まっている。
「う、ウィルさん!姉さんを甘やかしちゃいけません!」
ミネアさんの悲鳴じみた声が聞こえたけれど、かまわず俺は、下からマーニャさんを見つめ、
『お願い、します!』
とどめとばかり、高ぶった声を出して頭を垂れた。これでマーニャさんは怒り出すか、笑い出してくれるか。
413 :
:03/12/27 09:11 ID:qxypw07/
しばらく、沈黙が続く。ちゃりっ、と金貨が鳴る音が何度かした。
「もう……わかったから、ビルくん、立って」
顔を上げると、マーニャさんが、うんざりしたように髪をかき上げながら、笑みを浮かべていた。
「ビルくん。こんな大げさなことしなくても、あたしはお金さえもらえればついてくつもりだったけど?」
『俺のせいで姉妹げんかさせてしまいましたから。そのお詫びも含めてです』
俺はほっとしながらも、ぽかんとしているミネアさんを横目で見た。この俺の態度に、「はぁ?」マーニャさんはくす
ぐったそうな表情になって、
「ビルくん、変な気遣わないでよね。あたしたちこれで仲良くやってんだから。あははは、ねーえミネア」
と、ミネアさんの袖を引いて大笑いしてみせた。身を震わせたミネアさんが、瞳を天井に向けて呆れ顔になる。
「けど、よくわかんない性格ねえ、ビルくんて。まっ、こんなのは演技なんでしょうけど」
笑いながら、マーニャさんはどこからかハンカチを引き出し、唇に押しつけて湿すと、それで俺の口元を拭ってく
れた。嬉しいご褒美だった。間接だけど、今日二度目のマーニャさんとのキスになる。
『では、マーニャさん』
俺は立って背筋を伸ばし、マーニャさんに手をさしのべた。クスッと息を鳴らしたマーニャさんが、俺の手をとって、
ベッドから立ち上がった。
「ビルくん。あんまりいい子ちゃんぶると、いつか損しちゃうわよ」
『覚えときます』
「んー、よろしい。それと、2千って言ったけど、1千でいいわ。ビルくんとはお友達でいたいから」
そう言ってマーニャさんは、金貨を一枚、俺に返してよこした。
『え、いいんですか?』
「マーニャちゃんに二言はないの。だけど早くしまわないと、あたし気が変わっちゃうわよ」
矛盾してませんかそれ。ま、もっけの幸い。俺はおとなしく財布に金貨をしまう。
「さっ、ミネア。ビルくん待たせちゃ悪いから、荷物すぐまとめましょ」
「ね、姉さん……」
上機嫌に荷造りを始めたマーニャさんに、まだミネアさんはあっけにとられている。ともあれ、これで万事丸くおさ
まったわけだ。まっ、俺の人徳かな。
《マーニャの評価がかなり上がった》《ミネアの評価が上がった》
《所持金が49000G(−1000G)になった》
《商人レベルが[使い走り]に上がった》
414 :
:03/12/27 09:14 ID:qxypw07/
ミネアさんが宿の主人にわけを話してチェックアウトしている間に、俺は先に宿の外へ出た。人通りはまったくない。
階上の酒場も静まりかえっている。この街の人は健全な生活を営んでるんだな。
『わっ?』
不意に、俺は誰かに後ろから左腕をからめ取られた。あわてて振り向くと、マーニャさんの笑顔がすぐ前にあった。
俺の素腕は胸当ての革カップの間にはさみこまれていて、肘から下はマーニャさんの腹部にあたっている。女の
身体のなんともいえない感触に、俺の顔にはすぐ血がのぼってきた。
『…な、何するんですか、マーニャさん』
「あーら、ビルくんは今晩、あたしのパトロンじゃない。今さら照れちゃってんの?」
マーニャさんは片目をつぶってみせ、さらに俺の腕を引きつけた。サービスってことか。かなり嬉しいというかすご
くイイ感じだけど、俺とは離れて歩くんじゃなかったんだろうか。
「フケツ……」
ぼそっとつぶやく声が聞こえる。俺に言ったんなら誤解ですよミネアさん……。
『そ、それじゃ使いますよ。つかまってください』
「いいわよ、ビルくん」
マーニャさんがぎゅうっと俺の腕を抱え込む。俺の手が腰のあたりにあたってるのに、気にならないんだろうか。
俺は右手でキメラの翼を持ち、ミネアさんを振り返った。複雑そうな顔をしていたが、俺に近づいてきて俺の肩に手
を置いた。
「ミネア、あたしみたいに、ちゃんとビルくんにしがみつきなさいよ」
マーニャさんがからかったが、ミネアさんは取り合わずに、早くしてと目で俺に合図した。
「えいっ!」
俺は星空に翼を高々と放り投げた。俺がキメラの翼を使うのは、ラインハットから帰ってきたときと、レイドックの城
から帰るときホルスの奴から借りたのが2回。これが3度目になるか。
身体が軽くなって、地面が離れていく。周りに風を感じ、俺たちは翼が放った白い光に包まれた。
《マーニャの評価がわずかに上がった》
《ミネアの評価がわずかに下がった》
気がつくと足が土を踏みしめていて、俺たちは顔を上げた。風がびゅうびゅうと音をたてて、周りを吹き抜けている。
かなり強い風だが、サラボナよりも空気が暖かく、たいして寒くはなかった。
415 :
:03/12/27 09:18 ID:qxypw07/
「どこよ、ここ?」風で舞う髪を押さえながら、マーニャさんがあたりを見回す。
『海の近く、ですね』俺は、潮のにおいをかぎつながら言った。『たぶん、どこかの島の、高台みたいなところだと
思います』
「ふーん、ビルくん。よくわかるわね」
『俺の村も、ちょうど夜はこんな風が吹くんですよ』
喋りながら、俺も月明かりを頼りにして四方を見回してみた。ここは草原を通る道の上だった。それほど人が通らな
いのか、道のあちこちにも雑草が短く出ている。道の一方は下りで、その向こうには黒々とした海が見える。もう一
方の側は、小さな丘を覆う林へと続いていた。
「ウィルさん、姉さん。灯りが見えます!」
ミネアさんが叫ぶ。林の奥のさほど遠くない先に、オレンジ色にゆらぐ光が見えた。あれはろうそくの灯りだ。
「なんか、怪しそうねえ……けどほかには何も見えないし。早く行ってみましょ」
俺たちが少し速めた足で林の中の道を進んでいくと、切り拓かれた場所に出た。そこには盛り土がされていて、垣
根で囲まれた白壁の館が建っていた。家屋も庭も広く、平べったい館だ。
「ウィル。来てくれたわね!」
玄関の前でミレーユが手を振っている。そしてその隣には、ウイッチ・ハットをかぶり紫のローブに身を包んだ小柄
な老婆がいて、俺たちに微笑みかけていた。
「ほっほっ、あんたがウィル、それにマーニャとミネアだね。いきなり呼んですまなかったねえ」
と、その老婆は階段を上ってきた俺たちにはっきりした声で話しかけ、皺の奥に光る灰色の目で眺め回してきた。
この婆さんが世界第一の夢占い師グランマーズさんなのだろうか。それにしちゃ人が良さそうだし、俺の胸までも
ない背格好には威厳てものが全くない。
『お招きにより参上しました。失礼ですが、先生が、グランマーズ先生なのでしょうか?』
「いかにも。わしがグランマーズじゃよ。ほっほっ、こんなチンチクな婆だとは思ってなかったろ」
『いえ、そんなことは……』俺は否定しかけて無駄なこととだと悟り、黙って頭を下げた。
「ちょ、ちょっとお婆ちゃん!」かしこまる俺とミネアさんを押しのけるように、マーニャさんがびっくりした顔で進み出
てきた。「なんで聞きもしないで、あたしの名前わかったわけ?」
416 :
:03/12/27 09:21 ID:qxypw07/
「ね、姉さんてば!そんな聞き方失礼よ。グランマーズ先生なら、私たちが今日伺うことぐらい、夢でおわかりにな
るわ」
ミネアさんが青くなってマーニャさんをたしなめた。ところがマーズさんは、
「その通りじゃよミネア。じゃがな、そう堅くならんでもええ。わしは隠居した身じゃし、昔っから堅苦しいのは性に合
わんのじゃよ」
と、にこやかに笑った。寛容で物わかりいい人物みたいだ。俺の服装を気にするそぶりも全くない。杞憂だったな。
「さすが本当に立派な人って違うわね。劇場に来るサントハイムのお偉いさんなんて、何かにつけ偉ぶっちゃって
さ。あっちは羽目外してるのに、こっちがちょっとからかったりなんかするとすーぐ青筋立てちゃうのよ。そこいく
とどうよ、このグランバーズさんって。あいつらに、爪の垢煎じて飲ませたいわ」
「…グラン、マーズ」
ミネアさんが恥ずかしそうにささやいたが、マーニャさんの耳には届かなかったようだ。
「ねえお婆ちゃん。今度さ、あたしとカジノに行ってもらえない?未来のことわかるんなら、思う存分勝ちまくれる
わよ!」
「ほっほっ。カジノかい。わしも若い頃何度も行ったが、いくら占い師でも、あれは難しいものさ」
「へーえ、お婆ちゃんが?聞いたかしらミネア。やっぱり占い師でも偉くなるには頭が固いんじゃダメなのよ。いろ
んなことをやって、物事知っとかないと」
「えっ…ええ、姉さん」
まったく臆することなく大占い師の前で喋るマーニャさんを、気が気でない様子で見守っているミネアさん。俺も同
じくマーニャさんの無遠慮ぶりをあきれて見ていた。そばに気配を感じて振り向くと、ミレーユがいつの間にか俺の
隣に近寄ってきていた。
「彼女、ミネアさんのお姉さん?」
そっと聞いてきたので、俺は頷いてみせる。ミレーユは「そうなの」と、にっこりと微笑んだ。
「なんていうか、元気な人ね。おばあちゃんて、こういう楽しい人、大好きなのよ」
『そうなんですか。なんか、意外ですね。気むずかしい人と思ってたのに』
「占いのときは厳しい顔してるわ。でも普段はこんなふうにさっぱりした人よ。気を遣われるのが嫌いみたい」
『ふーん……ミレーユって』
いつからマーズさんの弟子なのかと聞こうとしたとき、ぱんという音が聞こえた。マーズさんが両手を打ったのだ。
417 :
:03/12/27 09:31 ID:qxypw07/
「おっとっと。今はあまりおしゃべりもしていられないんじゃ。いかんいかん」
首を振りながら、マーズさんはマーニャさんの横をすり抜けて、俺たちの前に立った。そして、
「おまえさんたち。月を見てごらん。何か、わかることはないかい」
と、夜空を指さした。言われた俺たちは、一斉にその指の先にある白く光る月を見上げた。少し西に傾きかけていて、
夜が更けたことがわかる。俺が気付いたのはせいぜいそのくらいだった。あとは、特に変哲もない満月だ。
「ミネア。どう見るね、あの月を」
「えっ?あっ、はい……」
「これこれ。水晶玉なぞいらん。見たままを答えるんじゃ」
背の袋を下ろしかけたミネアさんがあわてて手を止め、月を見上げて凝視した。俺は上を眺めながら、何ともなしに
ミネアさんの横顔に目をやった。月光を受けてティアラの緑宝玉が淡く光り、まるい額も照り輝き、夜風にさらさらと
紫の髪がなびいている。唇を結び、切れ長の瞳で真剣にじっと月を見つめる表情は、神秘的で、“占い師ミネア”さん
らしい姿だった。
「……私も、気になっておりました、グランマーズ先生、やはりムーンブルクに変事があったのでしょうか?」
やがて、ミネアさんはマーズさんを振り返った。俺に見つめられていたことには気づかなかったらしい。
「うむ。さすがじゃな」
マーズさんは満足げに頷くと、俺に歩み寄ってきて、下から俺を見据えた。
「ウィル、おまえさんも知っておろう。ルビス様がこの世界をお作りになった際、我々人間に2つの石を託した。ひとつ
は太陽の石、もう一つが月のかけらじゃ。太陽の石は火と土を、月のかけらは水と空気をつかさどり、この世界の平
和を守ってきた。この世界が魔界の者に幾度も侵略されながらも防ぎえたのは、この世界の自然が決して魔物の
側に利用されることがなかったからじゃ。太陽の石はサントハイム、月のかけらはムーンブルクで、何にも代えがた
い宝として、それぞれ厳重に保管されてきた」
『は、はあ……』
それは俺も小さい頃から何度も読み聞かされてきた昔話だった。ただ、俺の村では、二つの石はルビス様でなく山の
精霊様から授けられたことになってんだけど。ま、細かいことはいいか。
418 :
:03/12/27 09:35 ID:qxypw07/
「ところが、あの月を見よ。おまえさんにはわからんかもしれんが、本来もっと澄み切って青くたるべき満月が、白く濁
っておる。これはムーンブルクの月のかけらに何かが起き、水と空気がよどんでおる証なのじゃ。しかも、その月の
陰りが他にも影響を及ぼしはじめておる。人間にとっては実に忌むべき兆候なのじゃよ」
そう言われて、俺はもう一度じっと月を見つめてみた。そう言われてみれば、白っぽい気もする。
「一昨日の夜、わしはこのことを占ってみた。ムーンブルクに何が起きたかをな。ところが霧に包まれておって何も見
えん。王国に、魔力をもつ者が結界を張ったということじゃ。わしは恐れおののきながらも、それではと、今後、ムー
ンブルクの国に大きく関わる者を探ってみた。すると、じゃ。サラボナという街の一番大きな屋敷におる少年。つまり
ウィル、おまえさんが現れたんじゃよ」
そう言って、マーズさんは俺をぐっとにらむように見つめてきた。
「何度占ってみても、そのたびおまえさんが出てきた。じゃが、おまえさんとムーンブルクがどう繋がるのか、その結果
どうなるのかが全くわからん。それでミレーユを遣わして、おまえさんに来てもらったのじゃ」
『で、ですが俺……ムーンブルクになんて、いちども行ったことないですよ』
俺は戸惑って言った。俺が知っているのは、レイドックとラインハットだけだ。
「夢の見立てにも出とったよ。今のおまえさんとムーンブルクの国とは全く結びつきがないとな。だからこそ不思議な
んじゃ。なぜおまえさんが現れたのか。肉体にも精神にもさほどの力も感じられぬしのう。ほっほっ、これは余計じゃ
ったな、すまんすまん」
『………』
以前、誰かに似たようなことを言われた気がした。思い出そうとして頭をめぐらす。誰だったっけ?
「はくしょん!」
そのとき、マーニャさんがいきなりくしゃみをした。ミネアさんがまた顔を赤らめている。
「ふむ。夜風が冷たくなってきたようじゃな。ウィル、話の続きは家の中でするとしよう。ミネアにマーニャ、おまえさん
たちも入りなされ」
マーズさんが笑いながらミレーユに目配せすると、ミレーユがうなずいて玄関のドアを開けた。
「どうぞ、みなさん」
《ミレーユの評価がわずかに上がった》《マーズの評価がわずかに上がった》
419 :
:03/12/27 09:37 ID:qxypw07/
玄関を入ってすぐの部屋は、長椅子が両の壁際に並べられ、中央に燭台が2本立っているだけの部屋だった。占いの
客の待合室らしい。
奥の壁に張られた幕の間にあるドアを先頭のミレーユが開け、俺たちは次の部屋に入った。カウンターのような大きな
卓にこれも大きな水晶玉が置かれ、ろうそくの灯りを受けて赤く輝いている。その向こうにはやはり黒い幕が張られてい
た。両側の壁には戸棚が立ち、右側の戸棚と戸棚の間にドアが一つあった。ミレーユは、俺たち3人を卓の前に並んだ
椅子に座るように言ってから、そのドアの奥へと引っ込んだ。
「おもしろい匂いがするわね」
マーニャさんが鼻をうごめかしながら言う。たしかに、薬草と香草が混じったような、今まで嗅いだことのない不思議な
香りがたちこめていた。不快でも刺激的でもなく、吸っていると気分が落ち着いてくる。
「神経を抑える特別なお香じゃよ。わしの一族に伝わる秘薬の一つじゃ」
最後に入ってきたマーズさんが、水晶玉をはさんで俺の前の席に腰掛けた。ほぼ同時に向こうの部屋からミレーユが
出てきて、消えかかったろうそくを補充しはじめた。「ミレーユさん!」ミネアさんが急に立って、ミレーユを呼び止めた。
そして「これ、ありがとうございました」袋からローブを取り出し、ミレーユに差し出すと頭を下げた。「でもごめんなさい。
まだ乾いてないんです。どこかに干してください」
「えっ、ミネアさん……」ミレーユが瞼をまたたかせ、「わざわざ洗っていただいたんですか。すみません。ああ、こん
なに丁寧に洗ってもらえるなんて」気恥ずかしそうにローブを受け取った。この二人って、髪も瞳の色もまるで違うけど、
こうして薄暗い灯りの下で並ぶと実によく似ている。占い師になる女って、こういう顔立ちと性格の人が多いのかな。
「こほん。さて、と」
マーズさんが咳払いをしたので、俺たちは姿勢を正し、マーズさんに視線を注いだ。
「さっそくだけどウィル、いったいあんたの身に何が起きたのかを話してもらえないかね」
水晶玉ごしにマーズさんがじっと俺を見つめてくる。先ほどとはうって変わって、その眼光には人を決して逆らわせない
強さがあった。嘘を言ってもわかってしまうんだろうし、そうする理由もなかった。
『ええと、まずは。俺は、ライフコッドって村の……』
420 :
:03/12/27 09:52 ID:qxypw07/
俺は、一昨日から今日までに起きたことのうち、思い出せて人に話せる範囲をマーズさんに語った。
誕生祝いの晩、俺とターニアが魔物にさらわれたこと。
ゲマという魔族から、妹を質に脅され、勇者を捜して来いと命じられたこと。
気がついたら、フローラさんの屋敷にいたこと。
ミネアさんマーニャさんと出会い、ゲマの手下のバルザックという男と戦ったこと。
たった3日の物語で俺の活躍の場は残念ながらなかったが、ミレーユも、マーニャさんとミネアさんも、ときおり息を呑み
ながら、目を見張って聞いていた。
「なるほど……妹さんを、魔族にかい。大変な目にあったんだねえ」
俺が話し終えると、黙って聞いていたマーズさんが、まぶたを閉じて何度も頷き、俺を哀れんでくれた。
「そうすると、魔族もおまえさんから何かを感じ取ったようだね。ムーンブルクではなく勇者についての気のようじゃが…
…ま、結局は同じようなものじゃしな。ふうむ、しかし……」
マーズさんが考え込む。ムーンブルクと勇者が、結局は同じ?どういう意味だろう。
「そのゲマって魔族は、セントベレス山に連れて来いと言ったんだね。それは確かかい」
『はい、間違いありません』
「うーむ。セントベレス山にはたしかに魔族の気があるが……向こうさんから人間に危害を加えるなんて話は、ここ何十
年も聞いたことがないけどねえ。魔族の世界に何かが起きたのやもしれん」
そう言って、マーズさんは水晶玉に手をかざし、何かぶつぶつ呪文を唱えたりしていたが、
「だめじゃな、なんにも見えん。やはりあの山も結界に包まれておる」
と、あきらめて息をついた。俺は心底がっかりした。夢占い師の頂点に立つ人が無理なのだから、今のセントベレス山の
様子――特にターニアの消息――は誰にもわかりえないだろう。
「ところでウィル。そのゲマという奴、どんな面をしてたね?」
マーズさんが変なことを聞いてきた。ゲマの面?思い返そうとした俺は、真紅のマントの奥にひそむ、魚のように痩せて
青ざめたあの顔が脳裏に浮び、思わず身震いした。細くて高い鼻筋に、まがまがしく赤い瞳、耳まで裂けた紫の口元と、
まさに邪悪の化身の顔だった。思い出してみただけでぞっとする。いつか決着をつけなければならない奴だが、次に会う
ときは昼間明るいところでと願いたい。
421 :
:03/12/27 09:57 ID:qxypw07/
身振りを交えてマーズさんにそれを伝えると、マーズさんは意外そうに額に皺を寄せ、何度か俺に聞き直してから、
「ふーん……そうかい。いやなに、ひょっとしたら知り合いと思ったのさ。どうやら、思い過ごしのようだがね」
と、言葉を濁した。あのゲマを知り合いかもと思うほど、このお婆さんの交友関係て幅広いのか。あなどれん。
「これでおまえさんのことはわかったよ」マーズさんが気を取り直すように言った。「今度は、おまえさんがわしに聞く番じゃ。
この婆に聞きたいことがあれば、遠慮せず、何でも聞くがええ」
温かく微笑むマーズさん。ありがたい申し出だった。聞きたいことはたくさんある。まずは、俺を呼んだ理由である俺とムー
ンブルクとの関連について、何かわかったのかどうか。そして捜すべき勇者と救い出さねばならないターニア。それから、
俺のこれからの行く末についても助言をもらいたい。あとは…俺はマーズさんの脇にひかえているミレーユに目をやった。
宮廷お抱えの占い師なのにどうしてこんな辺鄙なところにミレーユみたいな美女と隠れ住んでいるのか。そのことも聞いて
みたい。
ほかには……考えながらふと隣を見てみると、ミネアさんが瞳をキラキラさせてマーズさんと水晶玉を見つめていた。ミネア
さんも、この占い師界の巨頭に教えを請いたいことが山ほどあるのだろう。会うことが念願だったみたいなこと言ってたし。
「ん、どうかしたかい。聞きたいことはないのかい?」
黙っている俺をマーズさんが促してくる。さて―――
1.マーズさんに質問する(2つまで可。順不同)
1−1.ムーンブルクのこと 1−2.勇者のこと 1−3.ターニアのこと 1−4.自分自身のこと
1−5.マーズさんとミレーユのこと
2.ミネアさんに場を譲る
3.食事をせがむ
4.休ませてもらいたいと頼む
5.帰りたいと言う
5−1.ライフコッド 5−2.サラボナ
ウィル 現在地:グランマーズの館 所持金:49000G 装備:檜の棒+ただの布切れ
道具:ターニアの風鈴 体調:軽症(アルコール) 精神:不調(空腹) <4日目・未明>
ようやく投下終了。今回もいい加減長すぎの10レス18.1kb。小説スレかよここはw
間が開いてしまったので、勝手ながら3分岐ほどトバしてます
世界観重視のターンでいつになく退屈だと思いますが、ドラクエらしさが欲しいので・・・
さて突然出てきた「商人レベル」ですが、特技と転職のために必要だと書いておきましょう
どうやって上げるかについては漏れの気まぐれ依存が大きいので、選択ではそれほど意識せずにどうぞ
>>379-411さんと、レスしていただいたのべ33人の方々、ありがとうございますです
アリーナの性格については引き続きアンケート続けますが、正直どうするかまだ迷ってます
正直「ボクアリ」のほうが書きやすいんですが、アレルギーのある方もいらっしゃるでしょうから・・・
彼女は選択によっては次の次あたりに出てきそうですが、今年中に書けるかどうか( ´Д⊂ヽ チヒツ スミマセソ
>>388-390=410
組先生の作品は漏れも好きです。没った7の小説読んでみたいなあ
>>392 毎回、レス容量ギリギリまで使っていてすみませんです。今後ともこのスレを見守りください
>>395>>406 同じ方でしょうか。集計ありがとうございます!助かりまつ
>>401 それなんですよ・・・とはいえ、「公式」のアリーナ像も壊したくないですし、難しいところでつ
>>402 「あたいアリーナ」!?そ、それもいいでつな(ヲイ
>>404=407
>>406 確かに急に増えましたね。漏れにとっては責任の重みが増え、気を引き締める嬉しい事態でつ
多重投票については、漏れの書く速度が遅いせいもありますので、何も言えませんです・・・
>>409 漏れの自由裁量を認めてくれてありがとうございます!これからもよろしくです
4
ホントは全部質問したいけど・・・
1−2と1−4で。
>>422 迷ったら自分の好きなようにやるのがよいと思われ
その方が筆も滑らかになるはず。
気に入らない奴は来るなってね。
選択肢
1-2 1-4
『まずは、勇者、それから俺のことについて教えてもらえませんか?』と、俺は切り出した。
『俺が探し出したい勇者は、この世界のどこにいるのか。勇者に会うためには、これから俺はどこへ行けばいい
のか。その結果、俺はどうなるのか。その助言をいただきたいのですが』
「……ふむ。それに答える前に、おまえさんの考えを聞きたい。おまえさん、多少は考えておるんじゃろう?」
マーズさんが逆に聞いてきた。一瞬、マーズさんの視線が鋭くなった気がした。
『は、はい。ロトの勇者の血筋を受け継ぐ王家が世界に一国あると聞いています。ですから、レイドック、ラインハ
ット、ムーンブルク、サントハイム、マーディラスの5つの国を巡って、王族の方がたに会ってみようかと。どこか
で、勇者を見つけられるはずです』
「ほう。会ってどうするんじゃ?誰が勇者なのか、おまえさんに見分けがつくのかね」
と、マーズさんが言った。意地が悪い口調だった。どうしたんだろうマーズさん。
『それは……。でも、勇者には身体のどこかに翼の形のアザがあるとゲマが言っていました。それを手がかりに
すれば、俺でも見つけられると思っています』
ひるまずに俺が自信をこめて言うと、マーズさんは高い声をあげて笑った。
「ほっほっ。じゃが、アザのあるのは身体のどこなのかわからんのじゃろ。まさかおまえさん、身ぐるみ剥いででも
調べる気じゃないだろうね?言っとくがな、ムーンブルクそれに北のマーディラス、東のサントハイムの世嗣は、
それは可愛らしい王女様なのじゃぞ」
ぽかんと口を開ける俺。3国とも王女様なのか。ラインハット王国のヘンリーとレイドックのホルスにはアザのない
ことは確認済みで(二人の性格からして、意味深な印が身体にあったらまず真っ先に俺に自慢してるはずだ)あと
は3国だけだと思ってたのだが。参ったな……。
気落ちした俺の肩を、「ヒューゥ!ビルくん、やったわね!」とマーニャさんが叩いた。「ちゃんと訳を話せばわかっ
てくれるって。で、王女様のカラダ、すみからすみまで調べたらいいじゃん」
「ね、姉さん、無茶言わないで」ミネアさんが青くなって叫んだ。「もし、あのアリーナ様にそんなことを言ったら、ウ
ィルさんがどんな目に遭わされるかわからないわよ!」
427 :
:03/12/29 20:25 ID:uMWHo8aW
恐ろしげに引きつるミネアさんの顔に、俺も事の大きさを想像して唾を飲み込んだ。だよなあ。一国のお姫様の
裸を見た奴を、王様や国民が放っておくはずがないものな。ひそかに頼みこむにしても、他国の村人にすぎない
ターニアのためにそこまで親身になってくれるような物わかりいい王女様が、3人もそろってるとは思えないし。
「けど、ウィル」ミレーユが口をはさんだ。「アザがあるのは一人だけなのかしら。勇者の血を継いでいるなら、王
族の人、みんなにアザがあるのかもしれないわ。だから王女様でなく、王族のどなたかお一人に頼んで……」
『あっ、そうか!』
それなら、その王族の親戚をあたるだけでいい。その中には、物わかりいい人もいるだろう。
俺がほっとしかけたところへ「それはないな、ミレーユ」マーズさんが静かに言った。
「勇者の刻印は、勇者の力を持つ、ただ一人の者にしか現れぬ。国の始祖の代で血を分かったのなら別じゃが、
あいにくそんな話は聞いておらん。それに、かつて現れた勇者ロトは弱冠16歳、彼の血をひく勇者アレフも16歳
じゃったと伝えられておる。いまこの時代に勇者が現れるとすれば、やはり16歳かそこらということじゃろう」
『16歳……じゃ、もしかして、3国の王女様とも、16歳っていうことですか?』
俺の質問に、マーズさんはどこか楽しそうにうなずいた。マジかっ?勇者の印が現れるのは王族のうちでただ一人
で、勇者の歳は16歳前後であり、よりによって王女様3人とも16歳!すなわち、3人の姫君のうちにしか勇者は
いない。ここはやはり、断罪覚悟でひん剥いていくしか……!
「ウィル。ひとつ教えておくとな。ムーンブルクの王女様には、翼のアザなどなかったよ」
絶望しかけた俺へ、マーズさんが事も無げに重大なことをおっしゃった。俺ははっと顔を上げた。ということは、勇
者はムーンブルクの王女では、ない!
「お婆ちゃん。何でそんなことまで知ってるのよ?」
「ほっほっ。わしは小さい頃からあの王女様になつかれておってのう。よく一緒に風呂にも入ったわい」
「へーえ、王女様とそんなにお近づきなんて、お婆ちゃんも……」
『と、ということは、ロトの血を受け継ぐ王家は、ムーンブルクではないってことですね!?』
428 :
:03/12/29 20:27 ID:uMWHo8aW
横路にそれようとするマーニャさんを遮り、俺は勢い込んでマーズさんを見つめた。これで候補が一つ減った。残り
は2国。当たって砕ける気になれば、王女様の裸くらい……。
「そうは言っておらんよ、ウィル」
ところがマーズさんは首を横に振ってみせた。えっ?違うのか?
「いいかね、ウィル。ゲマという魔族は、この世界には3人の勇者がおると言っとったんじゃろ?伝説によれば、昔
この国に現れた勇者には天、地、人、3つのタイプがあった。天の勇者は言うまでもなく天空人と人間の間に産ま
れし者。地の勇者は、かつて大地の精霊ルビス様を救い、その加護を受けし勇者ロトの一族。それから、はるか
古のことで居たということしか伝わっておらぬ、人の勇者」
これも俺たちが昔から聞かされてきた話だった。天、地、人、総勢6人の勇者だ。何百年周期かで魔界から魔王
が降臨するたびに現れ、これを滅ぼしたといわれている。もっとも、最後の勇者が誰で、それから何年経つかは
わからない。だから勇者は所詮伝説と片づける人も多いし、俺も3日前までは気持ち半分そう思っていた。
『それは俺も知ってます。けど、それとアザと、どう関係があるんですか?』
「アザのかたちじゃよ。翼とは天空人の証でもある。その刻印をもつ勇者とは、おそらく天の勇者のことじゃろ。そ
れなら、ほかの2人の勇者が、同じ形のアザとは限らんということじゃ」
『じゃあ、もう2人の勇者は、何か別の形のアザだってことですか?』
「まっ、おそらくはな。それにもう一つ。魔王現れしとき、勇者もまた目覚めん。いくら勇者の血をひく者であっても、
魔の存在なくばその血は眠ったままなのじゃ。したがって、勇者の証であるアザも、平和な時代には消えておろ
う。以前にアザがなかったからと言って勇者でないと決めつけることはできんのじゃよ。わしが王女様の裸を最
後に見たのは、そうじゃのう、3年以上も前にもなるかのう」
淡々と語るマーズさんの言葉を聞いて、俺は肩を落とし、どっと疲れた。そうするとヘンリーやホルスにも確かめて
みなきゃならないんじゃないか。しかもヘンリーもホルスも16歳前後にピッタリ合ってるし……候補が減るどころか
5人に増えた。人を喜ばせたり消沈させるのが趣味なのか、マーズさんて。
429 :
:03/12/29 20:29 ID:uMWHo8aW
俺が黙り込んでいると、「…あの、グランマーズ先生」ミネアさんが口を開いた。「先生は、勇者の血筋である王家が
どこなのか、ご存じではないのでしょうか?」
「もちろん、知っておるよ」
さらに重かつ大なことを、またもあっけからんとマーズさんは言ってのけた。俺、いやその場の3人が返す言葉なく
あっけにとられる。俺は今までおちょくられてたのか、この婆さんに!
『…そ、それなら早く言ってくださいよ。どの国なんですか?』
俺が腹立たしげに聞いたとき、「ふあーあぁ……」マーズさんはいきなり、ところどころ歯の抜けた口を開け、大きな
あくびをした。「おっと失礼。わしはそろそろ休むよ。夢占い師は、眠るのも仕事のうちでな。話の続きは明日という
ことにしよう」
『あの、先生!明日でなく、今お願いします!』俺は水晶玉のかげから身を乗り出し、噛みつくようにマーズさんに
迫った。しかし、マーズさんはひるみもせず、俺の目を逆ににらみ返した。
「ウィル。急いては事をし損じるというぞ。なぜわしが素直に教えてやらなかったのか、今晩、考えてみい」
『………』
何か、深い理由があるってことか。俺が座り直すと、マーズさんはどこか優しげに微笑んできた。そして、椅子から
飛び降りるようにして床に立つと、あからさまに眠そうなしょぼしょぼした目で、横に俺たちを眺めた。
「ウィル。ミネア、マーニャ。今晩はここに泊まりなされ。ミレーユ、あとは頼んだよ。おやすみ」
「はい。お休みなさい、おばあちゃん」
「おやすみなさい、グランマーズ先生」
ミレーユとミネアさんがお辞儀をする。俺も、いらつきながら頭を下げた。マーズさんはうんうんと頷くと、幕の後ろに
隠れていたドアを開け、その中に引っ込んだ。あんなところに部屋があったのか。
「残念、ビルくん。いいところで逃げられたわね」
マーニャさんがぽんぽんと俺の肩を叩いた。うなだれる俺に、ミネアさんも声をかけてくる。
「先生は、先生の考えがあってのことなのでしょう。明日の朝、伺えばいいことですよ」
430 :
:03/12/29 20:32 ID:uMWHo8aW
「しっかし、いい商売よね。寝るのが仕事なんてさ。それ知ってたらあたしもなりたかったわ、夢占い師……まあ、ミネア
見てると退屈で死にそうだから、やめとくけど」
怖い者知らずのマーニャさんを「姉さん!」とミネアさんがにらみつける。その様子に、俺もだんだん落ち着いてきた。
そうだな、ああおっしゃるってことは理由あってのことだろうし、わからなければ明日聞けばいい。
「それじゃウィル。それにミネアさんとマーニャさん。こちらへいらして」
ミレーユが、最初にろうそくを持ちに行ったときのドアのところへ、俺たちを連れて行った。
「ミレーユさん。私たち、泊めていただいてもよろしいんでしょうか?」
「遠慮しないで。大歓迎です。あんなに嬉しそうなお婆ちゃん、ひさしぶりだったのよ」
『でも、ずいぶん眠そうでしたけど……俺たちが来るのが遅かったせいかな。すみません』
「ううん、いつもこのくらいなのよ。気にしないで」
ニコニコしながらミレーユがドアを開ける。次の部屋は食堂で、部屋の真ん中に大きなテーブルといくつかの椅子が
あった。ミレーユはその隣を通り過ぎて、東側のドアを開けた。
「ほこりっぽいですが、今夜はこの部屋を使ってください」
ありあわせの部屋に泊められると何となく俺は思っていたのだが、そこは、ちゃんとした来客用の寝室だった。東側に
ベッドがちょうど3つ並んでいて、南には緑のカーテンが閉じる窓がある。書き物机や洗面台もあるし、掃除をしっかり
しているのか、言うほど埃くさくもない。
「ありがと。えーっと、ミレーユ?」
「はい。マーニャさん、どういたしまして」
ここでようやく、初対面だったふたりが簡単な自己紹介をすませた。タイプは違うけど、ミレーユもマーニャさんも、俺が
今まで出会ったなかでも最高級の美人だ。あ、もちろんミネアさんも含めてだが。
「あたしはこっちね。あたしって寝相悪いから、壁際じゃないと落っこちるのよ……んー、いい気持ち!」
俺が下らないことを考えているうちに、早決めしたマーニャさんが左のベッドに滑り込むように寝っ転がった。続いて、
ミネアさんが、俺を遠慮がちに振りむいてから、その隣、つまり真ん中のベッドに荷を下ろす。とすると俺は、いちばん
右、窓のそばのベッドってことか。
431 :
:03/12/29 20:37 ID:uMWHo8aW
「あらウィル……あなた、この部屋で寝るつもりなの?」
俺が[ふくろ]を置こうとすると、ミレーユが驚いたような高い声で呼び止めた。
「といってもあとは、今通ってきたダイニングと、さっきの占いをする部屋しかないんだけど……どうする?」
眉を寄せ、困った顔になるミレーユ。うっ。俺ははっとしてミネアさんとマーニャさんを見回した。未婚の、うら若き乙女
と同じ部屋に泊まることは、男の俺はさすがに慎むべきか。しかもとびっきりの美女姉妹と2対1で寝るなんて…むしろ、
俺の貞操のほうに危険があるのか!?
「あはは。いいじゃないビルくん、あたしたちと寝れば。ねえミネア、ビルくんとなら構わないわよね」
「えっ……ええ、その、はい」
マーニャさんの言葉に、ミネアさんが小さくうなずく。俺とならいい?期待しちゃっていいんですかっ?
「ミレーユさんはどこで休むんですか?」
「私は、私の部屋をもらってます。心配しなくてもいいですよ」
なんだ、ミレーユはちゃんと個室があるのか。残念だな、いろいろと。
それじゃ、どこで寝かせてもらおうか―――
1.二人の言葉に甘えて客間(マーニャさん・ミネアさんと同部屋)
2.やっぱり紳士らしく占い部屋
3.寝ようと思えば寝られる食堂
4.ここはひとつミレーユの寝室(ミレーユと同部屋)
5.考え事をしたいので館の外
今回もストーリー重視。妄想だらけでつが辛抱ください
帰省せねばならないのであと1ターン書けるかどうか
長ったらしい文章投下しといて何ですが、選択はお早めにおながいしますです・・・
>>423 一番乗りありがとうございまつ。4だと説明なしで寝室選びになる予定ですた
>>424 全部質問されたら何レス使うかわかりませぬw
もちろんこれが理由ではないんですが
>>425 ありがとうございまつ
ただ、やはり公共の掲示板でゲームやる以上は、
相容れないという人をできるだけ少なくしたいし、
なるべくみなさんの意見を取り入れていきたいので・・・
もっとも、そのうちこんな甘いことは書いていられなくなるかも
1
1
1
酔い冷ましで5
帰省先から 1
『ミレーユ。俺、やっぱりこの部屋で眠らせてもらいます』
俺はそう言って、ふくろを置き、ベッドに腰掛けた。
「………」ミレーユは細い眉をさらにしかめ、唇をちょっとすぼめた。「それは構わないけど……いいの?」
誰に聞いたのかわからない言葉だった。ただ、気のせいかミレーユの目は蔑むような感じで、俺を見ていた。
『う、うん。せっかくここにベッドがあるのに借りないってのも何ですから』
「そうそう、その通りよ。ビルくん」マーニャさんが俺のベッドへと歩いてきて、俺のすぐ隣に座った。「もっとも、
ベッドは2つだけでも良かったんだけど。ねえ、ビルくん」
意味ありげな視線を向けてくるマーニャさんに、『そ、そうですね』と俺は相づちを打つ。
「…わかったわ。ウィル、マーニャさん。ごゆっくり」
と、ミレーユが呆れ顔で投げやりに言った。ミネアさんが恥ずかしげに顔を伏せ、肩をすぼめている。
「隣のダイニングの北側にある部屋が私の寝室よ。何か足りないものとかあったら呼んで」
『わかりました。ミレーユ、いろいろありがとう。おやすみなさい』
「おやすみなさい、みなさん」
俺たちが口々に言うのへ、ミレーユがにこやかに一礼した。けれど眉はつり上がってぴくついたままだった。
《マーニャの評価がわずかに上がった》
《ミレーユの評価がわずかに下がった》
「さて、と。ビルくん」
ミレーユがドアに消えたとたん、マーニャさんは急に目を細め、真顔になって俺を見つめてきた。
「さっきの話の通りならさ。ビルくんてアイツの仲間なのよね?」
『えっ?』あいつ…バルザックのことか!『ち、違いますよ』俺はあわてて首を振った。『向こうからすれば仲
間ってことになるんでしょうけど、俺は無理矢理引き込まれたんです。あの男にだって今日はじめて会っ
たんですから』
「うん。それは聞いてたから知ってるわ。でも、アイツのこと、他に何か知ってることない?ビルくんたちの
親玉……ゲマだっけ?それが、何か言ってたとか」
『いいえ、ぜんぜん』
マーニャさんの怖さを知っている俺は、冷や汗を流しながら必死で否定した。
「ふうん……本当よね、ビルくん。もしそれ以上のこと知ってるんだったら、早く話したほうがいいわよ」
マーニャさんが、何かつぶやきながら、俺の目の前でパチンと指を鳴らす。その先には火が点いていた。
『や、やめて下さい!』俺は酒場でのことを思い出して悲鳴を上げた。『俺が知ってることは、もう全部話しま
したよ』
「そう。嘘だったら承知しないわよ、ビルくん」あのときと同じく、目は真剣に口元は微笑ませ、俺の顔をのぞ
き込んでくるマーニャさん。
「姉さん、やめて!ウィルさんは嘘をつくような人じゃないわ」
ミネアさんが割って入った。すると、マーニャさんは、あっさりと火を消して俺から身を退いた。
「まっ、そうね。変にカッコつけたりしようとするけど、ビルくんて、面と向かって嘘をつけるような顔じゃない
もんね。ごめんねビルくん。怒ってないわよね?」
『え、ええ。気にしてません』いい加減変わり身の早さには慣れかけているし、怒る気にもなれなかったので、
俺はマーニャさんに笑いを作ってみせた。『ところで』ここで俺は本題を持ち出した。『あのバルザックという
男、マーニャさんたちにとってどういう奴なんですか。どうして、危ない目に遭ってまで追ってるんですか?』
「……聞きたい?」マーニャさんが俺を見つめる。「そうよね。ビルくんの話も聞いたんだし、今度はあたした
ちが話す番ね」と言って、マーニャさんはミネアさんを見た。そして、ミネアさんが頷くのを確認してから、
「あたしたちはね。コーミズ村の、エドガンの娘なのよ」と、言った。そう言えばすべてがわかるといった口調
だった。だが、俺には何の心当たりもない。コーミズ?エドガン?有名な人なのだろうか。
『すみません。エドガンて、どなたでしたっけ?』
俺が申し訳なさげに聞くと、マーニャさんは眉をほんの少しぴくっとさせた。
「…ビルくん、知らないわけ?うーん、レイドックの村にいたんじゃ、知らなくて当然なのかもね。サントハイム
の宮廷錬金術師だった人よ。けっこう有名な人だったって思うんだけど」
440 :
:03/12/31 16:57 ID:fS8mIzCQ
『あ!』
そこまで言われてようやく俺は思い出した。サントハイムの城にはエドガンという錬金術師が出入りし、鉛を
金に代える研究をしているという。その本来の目的は達成されなかったが、古に失われてしまった技術を
再現し、鉄の塊を骨董品と見まごうほどの芸術品、あるいは名工も驚くほどの鋭い刃をもつ短剣に変えて
しまったという。その錬金術師エドガンを弟子の一人が殺し、彼一代の研究すべてを持ち去ってしまったと
いう話を、以前、どこかで誰かから聞いた。そうか、それで全部が見えた。
『失礼しました。エドガンさんの噂なら俺も聞いたことがありますよ。するとバルザックは、エドガンさんの弟子
だった男なんですね。それで、娘のあなたがたは、エドガンさんの仇を討とうとしてるんですね』
俺が言うと、マーニャさんとミネアさんはまた顔を見合わせ、うなずきあった。
「そういうことです、ウィルさん。5年前、私たちはお父さんが殺された後すぐ、バルザックを追って村を出て
モンバーバラの街に行き、小さい頃から教えこまれた芸で身を立てながら仇を捜していたんです。そして
半年ほど前、サランの街からの帰り、海岸を歩いているバルザックに偶然にも出会ったんです。私たちは
父の仇と戦いを挑みました。ところが……バルザックには、私たちの呪文も力もまるで通じずに……かえ
って、私たちは……バルザックの恐ろしいまでの魔法に、叩きのめされてしまっていたんです」
そう言って、ミネアさんは悔しそうに瞼をつむり、拳を握りしめた。
「ほんと、どうしようもないくらい強かったわ」マーニャさんも声を震わせた。「あれからあたしたちも呪文の
ワザを磨いたから、あのときよりはマシな戦いできると思ってたんだけど……」
「気がついたとき、私たちは海辺の祠で手当を受けていました」と、ミネアさんが話を続ける。「そして、その
祠のシスターにこう言われたのです。あなたたちの憎むべき敵は巨大な悪に守られている。仇を報ずる
ためには伝説の勇者を見つけ出し、勇者とともに立ち向かわねばならない、と」
『そうだったんですか。それで勇者を……』
441 :
:03/12/31 17:00 ID:fS8mIzCQ
「はい。もちろんその後もバルザックを探していました。そして、今日ウィルさんにお話した通り、サラボナに
勇者の光があると占いに出て、ウィルさんと会ったのです。けれどその後、バルザックが前を通り過ぎる
のを見かけて、私はすぐに、怒りに我を忘れて、あいつを追いかけてしまったんです」
「ったく、だからあんたはいつまでも一人前じゃないのよ」マーニャさんが怒った声で口をはさんだ。「あたし
と二人がかりで駄目だったんだから、あんた一人でかないっこないでしょ。バルザックを見たらすぐあたし
も呼ぶようにって、いつも言ってたじゃない」
「姉さん、その話はさっき充分聞いたわ。ごめんなさい。でも、私、どうしても許せなくて……いま見失ったら、
もうチャンスはないかもしれないって思えて……」
声をだんだん落としながら、ミネアさんがうつむいた。それを見たマーニャさんがあわてて、
「ミネア、言い過ぎたわ。そうね、あたしでもそうしたかもね。でもミネア、今度からは気をつけなさいよ。ビル
くんが駆けつけてくれなかったら、あんたはアイツに何されてたか、わからないじゃない」
「ええ、姉さん……気をつけるわ。ウィルさん、本当にありがとう」
ミネアさんが俺を見て、またも頭を深々と下げてきた。
『そんな。お礼はあのとき充分にしてもらったじゃないですか』
律儀なミネアさんに、俺も頭を下げかえす。おかげでミネアさんの裸も見ることができたし、こうして同じ部屋
で一夜を送ることになったわけなんだから、俺のほうから、お礼を言いたいくらいだ。
「じゃ、ビルくん。あたしからも感謝のしるし」
マーニャさんが俺の首に腕をまわし、チュッと音をたてて俺の頬に唇を押し当てた。そして腕をそのままに俺
の耳元に口を近づけ、
「それとも、ビルくんは、もっと別なことをしてほしいかしら」
と、吐息といっしょにささやいた。息を呑んだ俺に、さらにマーニャさんは長い脚を上げて、俺の膝の上に乗せ
てくる。もちろん素足だ。しかも俺の下腹部のかなり近くに乗せている。その感触に、俺の腰の奥がウズウズと
煮えたぎりはじめた。
「どうなの、ビルくん」
『えっ…?あ、あの……』
442 :
:03/12/31 17:02 ID:fS8mIzCQ
俺の心も、いよいよだと躍り出す。マーニャさん、妹さん見てる前でまずいんじゃないですか。それとも外に
でも連れ出すのか、あるいはミネアさんも交えてとか……俺の頭はグルグルと卑猥な角度に回転し、身体
じゅうを巡る血も熱を帯びてきた。
「……あははっ、冗談よ。もう、こんなに赤くなっちゃって、ビルくんて可愛いんだから!」
高笑いしたマーニャさんが、俺のあごをひと撫でしてもう一度俺の頬にキスしてきた。へっ、冗談?俺が胸
の高鳴りを抑えて振り返ると、マーニャさんはベッドからすでに立ち上がっていて、大きく伸びをしていた。
「話は終わり。さーあ、さっさと寝るわよ。ビルくん、おやすみ」
拍子抜けする俺に構うことなく、マーニャさんは言うに違わずに、まっすぐに自分のベッドへと駆けていって
しまう。それではと左を見ると、ミネアさんも横になろうとしていた。俺と目線が合い「おやすみなさい」と微
笑んでくる。俺は苦い思いで返事をし、やむなくベッドに潜り込んだ。それと同時に、ふっ、という息づかい
と同時に部屋が真っ暗になった。マーニャさんが燭台の灯りを吹き消したのだ。
どうやら、今夜はこのまま終わってしまいそうだ。九分九厘そうに違いないと思いながらも、俺はマーニャさ
んミネアさんと同じ部屋で寝ているのだという淡い期待を捨てきれなかった。もしかしたら、どちらかがこの
暗闇の中で誘いをかけてくるかもしれない。俺は目を閉じて眠ったふりをしながら、じっと気配を探った。
しかし、やがて聞こえてきたのは、すうすうという隣のミネアさんの寝息だった。マーニャさんのベッドでは、
ちょっとの間ごそごそする音がしていたが、それもすぐ聞こえなくなった。ベッドから出た様子もない。しば
らくして、ミネアさんとは別の寝息が聞こえてきた。
そうだよなあ……俺は情けなくなり、ひそかに笑った。今日会ったばかりの男に夜這いかけようって女が、
そうやすやすといるはずがない。むしろ、男の俺から誘いをかけるべきだったんだ。あいにく寝込みを襲
う気力は、今の俺にはなかった。相部屋なのだから、どっちを襲うにしても、前からあるいは横から火の玉
が飛んでくることは明らかだ。
443 :
:03/12/31 17:04 ID:fS8mIzCQ
あきらめた俺は、寝ようと努力することにした。頭痛と空腹の妨げはあったが、それ以上に疲れていたせ
いか、すぐに眠気は差してきた。
《マーニャの評価が上がった》《ミネアの評価が上がった》
『う……!?』
灯りをいきなり顔の前に押しつけられたようだった。俺はその灯りを払い除けようとしたが、手応えはない。
まぶしさに耐えきれず瞼を開けたとたん、強烈な光を感じた右目が反射的に閉じた。カーテンの隙間から
差し込んできた朝日が俺の目を射抜いていたのだった。
俺は手を伸ばしてカーテンを閉めようとしたが、思い直して目をこすり、ベッドから起きあがった。だいぶ日
が昇っているようだ。寝過ごしたかなと思って横を見ると、二つのベッドにひとつずつ褐色の寝顔があって、
未だ寝息をたてていた。
ミネアさんは、きちんとキルトを肩までかけ、仰向けで眠っていた。サークレットを外した額が、前髪を後ろ
にまとめているせいで広く見え、なまめかしい。表情は、ミネアさんそのままの穏やかで落ち着いていて、
女神が眠る姿を絵に描くなら最良のモデルになるだろうと思える寝顔だった。
隣のマーニャさんはと言えば、美味しいものを口に入れて止めたような、上機嫌な表情を浮かべていた。
キルトを半分くらいベッドの下に落としてしまい、残ったキルトを引き留めるように身体に巻いていた。右肩
右腕、それに右足がキルトからはみ出していたが、残念ながら、最初に会ったときのローブをいつの間に
か身につけていて、だらけた姿だが際どさはない。髪は、眠るためにまとめたのか、絡まったり散らばって
はいなかった。
『………』
マーニャさんはともかく、しっかりしてそうなミネアさんの寝顔を見ることができたのは意外だった。俺の眠り
が浅かったせいだろう。その眠りのうちに頭痛は消え、代わりに空腹の度合いが増していた。
何か食わせてもらおう。俺はベッドから降り、食堂へのドアを開けた。とたんに、スープのいい香りがした。
俺が誘われるように食堂に踏み込むと、台所にいたミレーユが振り返った。塩魚を切っているところだった。
「おはよう、ウィル。早いのね。よく眠れなかったのかしら?」
444 :
:03/12/31 17:07 ID:fS8mIzCQ
『はあ。ミレーユこそ……』
俺は言いかけて止めた。ミレーユは、ミネアさんに貸したような絹のローブを着、その上にエプロンを羽織
っていた。何の変哲もない姿なのだが、昨日あの奇妙な衣装で俺の前に現れたミレーユが、普段こういう
ありふれた格好をしているというのは、どことなく意表を突かれた思いがした。
「……ウィル、どうかしたの?眠いんだったら、寝ていてもいいわよ」
『いや、なんかその……見とれちゃって。似合ってますよ、そのエプロン』
ミレーユは料理の手を止め、目をぱちぱちさせて戸惑ったような表情を浮かべた。照れたという顔ではない。
といって俺を軟派な男だと軽蔑する瞳でもなかった。どうしたんだろう、と俺が前に一歩出かかると、ミレー
ユは、さっとまな板の上の魚へ視線の先を戻した。
「…ウィル。ミネアさんとマーニャさんに、朝食いっしょにどうですかって伝えてくれないかしら。もうすぐお婆
ちゃんも起きてくる頃だから」
『えっ、あ、ああ。はい』
俺、変なこと言ったのかな。ミレーユの態度に首をひねりながらも、俺は客間にとって帰した。
《ミレーユの評価がわずかに上がった》
少しは物音がしたはずなのだが、客間に戻ってみてもミネアさんたちの体勢に変化はなかった。洗面台で
顔を洗い、髪を軽く整えてきても、姉妹は幸せそうな寝顔を崩さない。朝食だそうだが、どうしよう―――
1.大声を上げて2人とも起こす
2.一人ずつ起こす(“まず誰から”“どうやって”起こすのかを選択。例:2−1−A−a)
2−1.ミネアさん 2−2.マーニャさん
A.ひたすら話しかける
A−a.『○○さん、起きて』 A−b.『○○さんは世界一の美人!』
A−c.『○○さんは俺のことが好きになる〜』
B.頬を指でつつく
C.布団をひっぺがす
D.目覚めのキスをする
E.<<入力してください>>
3.起こさない
えー今回、忙しさのため推敲も何もせず、頭の中のものをそのまま文にするという、
モノカキにあるまじき暴挙に走ってしまいますた
帰省のため、次回はおそらく日曜あたりになりそうです
誤字脱字ありましたら、その間にご遠慮ななさらずご指摘ください
9月に突然場つなぎで書き始め、結局GMになった漏れですが、
ここまで続けてこれたのも、見捨てることなく参加していただいたみなさまのおかげ
期待に応えるため、来年はセンス良く、読みやすく、もっと投下間隔短くと、
つたないながらもモノカキ、スレッドGMのはしくれとして、さらなる精進をいたしたいと思っております
追加してほしい攻略可能ヒロイン(キャラがはっきりしてる人に限らせてもらいますが)や、
登場だけでもさせてほしいキャラがありましたら、今のうちにリクエストをください
それと「アイラ」をヒロインとして出せるか少々微妙になってきますた・・・
そんなこと許さねえ!というご意見もありましたらどんどんどうぞ
ではみなさん、良いお年を!ノシ
2-2-c
2-2-d
あけましておめでとうございます。
今後ともよろしく!
そして、御年もこのスレの更なる発展を祈願しつつ、
場つなぎGMさんのご多幸をお祈りして、新年の挨拶終わり。
あけおめ
1
2−2 A−c
あけおめ!
今年もヨロシクおながいします。
場つなぎGM氏のさらなる活躍を祈りつつsage
ほしゅってみる
保守りん。
2-2-E.<<ダイビングボディプレス>>
2-2-E <<ダブルニードルプレス>>
2-2-E <<ムーンサルトプレス>>
楽しませて貰ってる身でこういうこと書くのはどうかと思うが、
アリーナの一人称わざわざ投票させた後でボクの方が書きやすいとかボク寄りのレスに同意したり
あからさまに自分の希望を述べるぐらいなら
投票なんかせずに自己判断で書いたほうが良かったのでは。
まあそれはともかくトぺとかどう考えても部屋でできないのを投票してプオタアピールすることに意味はあるのだろうか?
>452 ジャンプして腹から相手に乗っかる
>453 ジャンプして膝から相手に乗っかるんじゃないかと思うけどシラネ
>454 ジャンプして頭から相手に激突
>456 相手に背中向けてから宙返りして腹から相手に乗っかる
なので部屋でもできそう。
その結果は芳しくなさそうだがw
二人とも熟睡のようだから、ちょっとやそっとでは起きそうにない。かなりのショックを与えねばなるまい。
俺はまず、マーニャさんのベッドに歩み寄った。どんな楽しい夢を見ているのか、頬をゆるませた表情をしてい
る。どんな女でも寝顔は可愛いという。ましてマーニャさんだ。ルージュを落とした唇は赤く光り、長いまつげは
少し乱れていて、化粧をバッチリ整えたふだんのマーニャさんにはない日常の生活感があった。さっきミレーユ
を見たとき思ったのと似た感覚だ。
俺は、ちょっとの間その寝顔に見入ってから、マーニャさんが両手で抱え込んでいるキルトを手に持った。こん
なことをしたら後が怖いけど、マーニャさんなら笑ってすませてくれる気もする……たぶん。
『マーニャさん!』
声をかけておいて、俺はぐっとキルトを引っ張った。が、マーニャさんは身体に巻き込むようにしているので、な
かなかたぐり寄せることができない。しかたがない。俺は足を大きく踏み込み、腕の力に腰のひねりを加えて思
いっきり引っ張った。と、重い手応えに続いて、勢いあまったキルトが俺の頭にかぶさってきた。
ごろん。ずてん。
床が揺れた響きがし、あわてて俺がキルトを取りのけてみると、ベッドの脇にマーニャさんの白いローブ姿が転
がっていた。考えてみれば当然の結果だ。マーニャさんがキルトをあくまで放さなければ、マーニャさんの身体も
キルトの方向へ引っ張られることになる。ベッドがそこまで続いていようが、なかろうが。
「な、なに?何なに?なにがあったの!?」
眼を大きく開いたマーニャさんが、即座に飛び起き、ぶんぶん首を振って周りを見回す。すぐに、隣に立ってい
る俺に気づき、キョトンとした丸い瞳になった。そして、
「ビルくん……へーえ、大胆な起こし方してくれたじゃない」
腰をさすりながら、ニヤァッと唇の端を持ち上げるマーニャさん。ヤバイ、と俺の本能が訴えた。だがここで逃げ
たら、やましいことをしようとしたと、痛くもない腹(多少痛いが)を探られる。
「で?あたしをベッドから落っことしてまで起こすほどの急用って、何なの?」
『その……朝ご飯ができたから、一緒にどうかと、ミレーユが……』
「朝ご飯、ね。それだけ?」
『は、はい』
461 :
:04/01/09 04:57 ID:/BF9yLQ5
「あっそ。朝ご飯ねえ……」
マーニャさんの赤い唇と眉がぴくぴくと動いた。やはり、か。予感が当たって俺は妙な安堵をした。もちろん、その
次にはどうやってマーニャさんの怒りを抑えようかと必死で頭を働かせはじめたのだが。
「あーのーね!!!ビルくんのとこって、朝食ができましたってだけで人をベッドから突き落としてまでたたき起こす
習慣なわけ?もしあたしの腰とか足怪我して舞台に立てなくなってたらビルくん弁償してくれたの?鼻の骨なんか
折って二目と見られない顔になってたら、ビルくんが責任とってくれたの?ん?」
『せ、責任て。その、ついはずみの、不可抗力だったんですよ!』
火の点いたように怒鳴りはじめるマーニャさんの剣幕に押され、じりじりと俺は後ずさりした。もっとも、キルトを
はぎ取った行為については不問のようだから説明すればどうにかなる。朝食をとらなきゃ美容によくないだとか、
失礼になるとかいろいろと……。
『うわっ!?』
いきなり俺の足下が滑った。手に持っていたキルトに足をとられたのだ。俺はバランスを崩し後ろに倒れかけた。
悪いことに、後ろにあったのはミネアさんのベッドだった。さらに悪いことに、何かあったと思って俺が反射的に
後ろ手でひっつかんだのが、そのベッドのキルトだった。なんの引っかかりもないそれは引き寄せても転倒を防ぐ
たしにはならず、俺はキルト2枚を巻き込んで床にずてんと尻餅をついた。ほとんど受け身もできなかったため、
体重が背骨から頭を直撃する。
『いっつ……!』
痛みにうめき、腰をさする。図らずもこれでマーニャさんとおあいこってとこだ。まあ、この程度じゃ許してくれない
だろうけど。手に絡んだキルトを払うようにしながら彼女を見上げると、マーニャさんの目は俺でなく、俺の背後に
向いていた。何だろう。振り返った俺のすぐ前に、ミネアさんの寝ぼけた顔があった。
『わっ!』
「えっ?」
思わず俺のあげた声に、ミネアさんの目がハッと開いた。瞳が俺の顔を見、次に俺の手元にいって、そこで丸く
なって止まる。『え?』俺もつられて自分の手にあるものを見た。キルトといっしょに掴んでいる白いシルクの布、
三角形をしたもの……!
462 :
:04/01/09 05:06 ID:/BF9yLQ5
『げっ!』
俺はあわてて放り捨てた。寝る直前に脱いでキルトの中に埋もれさせておいたらしい。すると今のミネアさんは、
このローブの下、何もつけず何も穿かずなのか。俺が隣で寝てるのに下着を脱いで寝るなんて……俺にも多少
の信用があったらしい。だが……。
「………っ!!」
今のミネアさんは、汚いものを見るように俺をにらんでいる。怒りと恥に唇をふるわせ、頬を紅潮させている。
「ウィルさん!見損ないました!」
『あ、あの、ミネアさん。これには深いわけが……』
パシビシピシッ!
鋭い音が俺の耳をつんざき、両頬に痛みが走った。ミネアさんの平手打ちだった。そしてその手を伸ばしてキルト
を引き上げ、プイッと俺に背中を向けた。弁解しても無駄そうだ。俺は肩をすくめ、頬をさすりながら立ち上がった。
後ろでは、マーニャさんがいい気味だとばかりにカラカラと笑う声がする。
なんでこうなるんだよ。俺はただ、起こしてあげようとしただけなのに……。
《ミネアの評価が下がった》《マーニャの評価が下がった》
「ウィル。おかわりいくらでもあるから、終わったら言って」
『ありがとうございます』
ミレーユからスープ皿を受け取る。魚肉と青菜のスープ。朝食はこのスープとパン、海藻と野菜のサラダに黒魚の
マリネ。あり合わせのものという感じだが、味は申し分ないし、何より空腹の俺にはとびきりのごちそうだ。
「へえ、意外と美味しいじゃない」
マーニャさんがスープをすすり、感想を漏らした。マーニャさんの前の皿には野菜やフルーツが多めに取ってある。
面倒くさがりにみえて食事にも気を遣っているらしい。でなきゃこんなきれいな肌はしてないか。
そのマーニャさんの隣では、ミネアさんが、さっき俺を引っぱたいた元気さ(?)が嘘のような眠たげな顔をしている。
朝には弱いタイプのようだ。それでも前の席には憧れの大占い師がいるとあって、ときどき二人して専門用語を交
えた会話をしている。耳を傾けてみたが、俺まで眠くなりそうだったのでやめにした。
「ウィル。パン、もう一枚どう?」
『え?その、あるならもらえますか』
463 :
:04/01/09 05:14 ID:/BF9yLQ5
ミレーユはてきぱきと細やかに働いている。この中でいちばん睡眠時間が短いはずなのに、血色もいいし眠そう
なそぶりもない。髪は完璧に整い、軽い化粧もしてあって、俺よりずっと早く起きたのが見てとれる。きっと眠りが
ものすごく深い人なのだろう。便利な体質だよな、こういう人って。
「ほっほっ、ウィル、遠慮することなく、たんと食べるがええ」マーズさんが笑った。この人は、食事中だというのに帽
子を脱ごうとしない。「この家にはふたりだけしかおらんし、客も少ないのでな。蔵に食料が有り余っておるのじゃよ」
そのマーズさんは、ミネアさんやミレーユとちょくちょく話しながら、食事にも余念がない。俺はいつも食事が早いと
ターニアやビアンカによく言われるのだが、その俺より早く、マーズさんはすでにマリネもスープも平らげてしまって
いる。そのくせ上品に口元を拭いているし、食べ方もその跡もきれいで、テーブルクロスなどは全く汚していない。マ
イペースな人だけど、宮廷生活が長かったということは、こういうとこに現れてくるのか。
「お婆ちゃんたちって、ここで暮らし始めて何年くらいになるの?」
「んー、そうさな。来月で1年になるかのう。そうじゃったかな、ミレーユ」
「ええ、あれから…………そうね、一年になります」
不意に、ミレーユがほんのわずかの間言いよどみ、顔を曇らせた。嫌なことを思い出したって顔だった。
『ミレーユ、君も?』
「え、ええ。私も、お婆ちゃんの弟子になって、1年ってことになります」
つまりは、マーズさんとミレーユが会ったのもほぼ1年前ってことだ。それもあまりよくない出会い方だったというのは、
今のミレーユの硬い笑顔からわかった。1年前、ムーンブルクの国に何かがあったのだろうか。
聞いてみたかったが、やめにした。食事の場で話すようなことではないらしいと思ったからだ。マーニャさんもミレーユ
の様子に気付いたらしく、それ以上何も聞かずにフルーツをかじり始める。こういう空気は敏感に読める人なのだ。
俺も、食べることだけに集中することにし、黙々とパンを千切った。
自家製らしく少しぼそぼそとしたパンだが、特に文句はない。手作りでこれだけの膨らめば上出来だろう。
464 :
:04/01/09 05:39 ID:/BF9yLQ5
あ、そうだ。手作りパンと言えば。ビアンカが作るパン、あれが逸品なんだよな。ビアンカの家からパン焼きの匂いが
してくると、いつ彼女がお裾分けで持ってくるか、ターニアと二人でそわそわしたっけ。村に帰れたら、パンを焼いてくれ
と、ビアンカに頼んでみるか。
「ビルくん、こぼしてる。みっともないわよ」
マーニャさんがくすくす笑っている。気がつくと、ガキがそうするように、膝の上にパンくずが散らばせていた。あわてて
俺はそれらを拾い集める。ちぇっ、ビアンカのしっとりしたパンを思い出しながらぼろぼろのパン食べるとこうなるのか。
村に帰ったら、ビアンカにひとつ文句言ってやらねば。
《ミレーユの評価がわずかに上がった》
朝食のあと、俺はテーブルに座っていた。ついさっきまで客間にいたのだが、「あたしが身だしなみするとこ見たいの?」
とマーニャさんに言われて、追い出されてしまった。今日の身支度は昼食前に終わらせてほしいものだ。
台所では、どうしても手伝うといってきかないミネアさんが皿洗いをしている。ミレーユとマーズさんはそれぞれ自室に入
ったきりだ。きっと、着替えてるんだろうな。すると今頃は下着姿で……ミレーユって、どんなきれいな身体してるんだろう。
ミネアさんみたく着やせするタイプなのかな。ああ、ミネアさんがいなければ、あの鍵穴から……。
「ミネアさん、すみません。後は私がやりますから」
「いいえ。お手伝いさせてください」
考えたそばから、ミレーユが戻ってきた。そして「あ、ウィル」俺を見て近寄ってくる。何だろう。まさか妄想してたのがバ
レたのかと内心びくついたが、ミレーユは、「これ、着られるかしら?」と、丁寧にたたまれた、青い麻布を俺に差し出して
きた。これは、[旅人の服]だ!しかも、かなり新しい。
『ミレーユ……これを、俺に?』
「ええ。もらったものなんだけど、私には大きすぎるのよ。ウィルならちょうどいいんじゃないかしら」
ニッコリと微笑むミレーユ。なんだ。そういうことなら―――
1.『ありがとうございます!さっそく着てみます!』
2.『ありがとう。でも、お気持ちだけもらっておきます』
3.『ありがとう。でも、もっといい服ってありませんか?』
4.『ありがとう。でも、こんないい服よりも、ミレーユのお古をもらえませんか?』
遅くなってしまって申し訳ありません(鯖移転で迷ってたわけではありません)
あけましておめでとうございます
本年もお付き合い願えればありがき幸せに存じたてまつります・・・m(_ _)m
えっ、もう正月は終わりましたか、そうですか・・・
>>446 2003年最後のご参加、ありがたうございます!今年もよろしくです
>>447 あけおめっす!今年は勝負の年でしょうか。がんがってください
>>448 おめっと!
>>449 いえ、こちらこそどうぞよろしく、そちらこそどうかご活躍を
>>450-451 うう、漏れが遅筆なばっかりに、ご迷惑おかけいたしまつ・・・
>>452-454>>456 申し訳ありません、やってみたかったのですが(何)余裕がありませんですた
次の機会にご参加おながいいたしますです・・・
>>457 いえいえ。『楽しんで貰ってる』というお言葉だけで漏れは感涙ものでつ!
うーん・・・漏れの行状に問題ありですか。百人一首で詠み手が札取っちゃいけませんね
ただまあ「ボクアリ」もあり得るぞという発表ができただけでも良かったかなと・・・
アリーナのキャラはまだ迷ってます・・・幸い登場はまだしばらく先になりましたので一安心
>>459 解説どうもです。でもこれ、リング外でやったらどっちか氏にませんかねw
あ、DQだからべつに氏んでもいいのか(ヲイ
機会があったらこういうワザのシーンも書いてみたいですが・・・今回はすみませんでつ
1
1
1
1
4
1 といってその場で着替え始める
この好意を断る理由はない。俺は喜びいさんで受け取った。ミレーユとしたらこのカッコで館をあまり歩き回っ
てほしくないというのもあっただろうが、俺にとってありがたいことには違いない。
さっそく服の上から(上半身は肌着だけなのでそのままだったが)羽織ってみると、見事にぴったりだった。
「良かった、大きさが合って。ウィル、似合うわよ!」
感嘆してくれるミレーユに、俺は『ありがとう』と、もう一度礼を言った。これで俺は世界どこへ行っても恥ずか
しくない服装になったわけだ。マーニャさんも、俺の隣を気にすることなく歩いてくれるだろう。そう思っている
と、客間のドアが開き、女の魅力をふんだんに引き出す姿、つまり、昨日と同じく[踊り娘の服]を着こんだマー
ニャさんが現れた。そして俺を見るなり、
「わっ……ビルくん!?」
と、駆け寄ってくる。大きな瞳をキラキラさせながら、俺を肩から足下、背中まで眺め回す。
「へえー!サマになったじゃんビルくん!やっぱりビルくんって、そういうラフなカッコしてたほうがいいわよ。
んーん、こうして見れば、ずいぶんいい男じゃないの!」
『そ、そうですか?』
「あとはこれで長い剣なんて背負ったら、いい感じね」
俺のマント姿を、マーニャさんが絶賛してくれる。プロの踊り娘マーニャさんのお墨付きなら、俺の服装に文句
をつける奴がいたとすれば、そいつの目のほうがおかしいってことだ。
「もちろん、下のスラックス脱いでの話だけど。あたしはもういいから、脱いで来なさいよ」
言われて、俺はすぐ客間に駆け込むと、いったん服を脱いで腰巻きを、次いでスラックスを脱いでベッドに放っ
た。それからあらためて麻布の服とマントを着こみ、鏡の前に立ってみる。うむ、美女2人がそろってほめてく
れるだけあって、闊達で頼もしげな若者という装いだ。まっ、村じゃたいていこんなカッコなんだが。
服装に合うように髪型をちょいといじってから、俺は再び、食堂に出てきた。
「うん!いい感じよ。ふふっ、あたしの目に狂いはなかったみたいね」
473 :
:04/01/10 04:57 ID:/lr4T3qT
なぜか嬉しそうなマーニャさん。と、そこへやって来たマーズさんまでもが、
「おやおや、着てるねウィル。ほほう、見るからにええ男じゃのう。わしも惚れちまいそうだよ」
と、俺を見上げるなり目を輝かせる。あの、お言葉は嬉しいんですけれど、俺の守備範囲はせいぜいプラス
マイナス20歳くらいなのですが……。
「ミネアも、ビルくんに何か言ってあげなさいよ。ほらほら、鈍感なあんたが見たってカッコいいでしょ?」
「え、ええ……その、ウィルさん。とってもステキです、ね」
絞り出すような声だが、無理して言った世辞ではない。ミネアさんの顔、あかいからな。
やはり俺みたいな一介の村人には、堅苦しい礼服よりも気軽な普段着で勝負したほうがいいということだ。単品
なら絹のタキシードのほうが高いしカッコいいけれど、やはり着る中身に相応の服を選ぶべきだった。そもそも、
アンディさんが奇抜な服ばかり買って来たからいけなかったんだ。これだから良家のおぼっちゃんというのは勘違
いしてて嫌だ……あ。トーゼン、お嬢様は別。
「さてとウィル。そろそろ昨日の話の続きをしようかね。ミレーユ、ミネア。片づけはそのくらいにして、隣においで」
マーズさんがおもむろに言い、占い部屋へと歩き出す。俺たちはそれに従った。
《ウィルの装備が[旅人の服]になった》
《マーニャの評価がかなり上がった》《ミネアの評価が上がった》《ミレーユの評価が上がった》
俺はマーズさんの前、両脇にミネアさんとマーニャさん、その向こうにミレーユ。昨日と同じ席にめいめいが座る。
マーニャさんは俺のだいぶ近くに椅子を寄せて座った。この姿の俺を、気に入ったようだ。洗髪薬と香水の匂いが
漂ってきて、芳しさにふらつきそうになる。朝はあれだけ怒っていたのに。今はこのお姐さんの気まぐれが嬉しい。
「こほん、ウィル。おまえさん、あれから少しは考えてみたかい?」
唐突に――単に俺が惚けてただけだが――話しかけられ、俺はマーズさんを見直した。ええっと、考えてみたかっ
て、何のことだっけ?
474 :
:04/01/10 05:03 ID:/lr4T3qT
「おや、すっかり忘れた顔をしてるねえ。おまえさんにとっては、そんな軽いことだったのかい?」
しまった!マーズさんがなぜ勇者の国を教えてくれないのかという宿題を出されてたんだった!
「まあいいさ。おまえさん、頭はそれほど良くないにしても、想像力だけは豊かなほうのようじゃ。おそらく、漠然とは
考えておるのじゃろう」
『は、はあ……?』
何のことなのか。それに今ので褒められたのかけなされたのか、俺にはさっぱりだった。そばでかすかに息を鳴っ
たので、マーニャさんは皮肉と解釈したみたいだが。
「勇者の血をひく者がおる王国。どこなのか知りたいかね、ウィル」
『はい、もちろん、ぜひ!』
「教えてやってもいいんじゃがな。わしがいちばん聞きたいのは、そのあとのことなんじゃ」
『そのあと?』
「すなわち。首尾よく勇者を見つけたら、おまえさん、その勇者をどうするのかということじゃよ」
一転、マーズさんの顔が真面目に変わる。俺はその視線にたじろぎながらも、
『もちろん、わけを話して、すぐセントベレス山へ一緒に行ってもらいます。妹を、救い出すために』
と、何でもなく即答した。決まってるじゃないか。
「ほーう」マーズさんの目が、俺を責めるように鋭く光った。「では聞く。ゲマという奴が、おまえさんの連れてくる勇者を
どうするつもりだと思っておる?」
『それは……』
俺は言葉を切った。考えなかったわけではなく、考えるのを避けていたことだった。
「魔族が、勇者をあがめ奉るためにわざわざ探しているとは思えんではないか。よくないことに決まっておる。勇者は、
わしたちこの世界の人間にとって、魔界の者と闘い勝つための唯一の希望じゃ。勇者が魔界の側の手に落ちたとき
……そのあとどうなるかもわからんおまえさんでもあるまい」
475 :
:04/01/10 05:06 ID:/lr4T3qT
『………』
ようやく、俺はこの問題に対し本気になって頭を抱えた。魔物が勇者を捜し求める理由。そんなことは、たいして考え
なくともすぐわかる。この世界を征服しようとするたびに障害となってきた勇者を、事を起こす前に、ひそかに除いてし
まおうとしているのだ。さらに勇者を捜し出すのに人間を使ったなら、たいした騒ぎとなることもなく、勇者を抹殺できる。
そうすれば今後、人間に襲いかかる魔物たちの前に立ちふさがる者は、いなくなる。
「やはり、多少はわかっておったようじゃな。じゃが、敢えて問わねばならん。お前さんだけの問題ではないのじゃぞ。
それでも、妹さんの命と、世界の希望を引き替えるだけの覚悟、おまえさんにあるのかね?その結果、何が起き、
どう非難されても、後悔しないだけの覚悟がな」
『………』
ターニアを助けるということは、つまりはそういうことだ。今のうちは俺とターニアだけの問題、ライフコッドという村の
兄妹が二人失踪したってだけで済んでいる。しかし、俺が勇者を見つけた時点で、それはこの世界に関わる重大事
となる。勇者がすすんでセントベレス山に自らの意志で赴いてくれたにしろ、俺がターニアと勇者を引き替えようとする
ことは、魔界にこの世界を売り渡すも同じなのだ。
マーズさんが勇者の居場所を教えてくれないのも、これだろう。俺に手を貸すということは、勇者を魔物に渡すことに
間接的とはいえ荷担することになる。それは俺だけのため。俺以外の人間に対しては、裏切り。
『…………っ』
だけれど……俺は拳を握りしめた。ターニアは、今も一人ぼっちで、俺が助けに来るのだけを待っているはずだ。命は
保証するとゲマは確約したから(魔族が約束を守るとしてだが)食事と眠る場所は与えられているだろう。だが。兄の俺
が言うのも何だが、ターニアは、あれで胸以外は肉付きがいい。食いっぱぐれた魔物に、いつ襲われてもおかしくない。
それに、だ……いや、まさかそんなことは。あわてて俺は首を振ったが、脳裏には牛魔に弄ばれるターニアの苦悶が浮
かんできてしまっていた。魔物の慰み者にされる妹の姿。ゲマのつもりでは、俺に保証したのはターニアの命だけで、
そのこと以外は魔物どもの好きにさせてるかもしれないんだ。
476 :
:04/01/10 05:14 ID:LpvWdQdF
くっ。俺は歯がみする。俺は今まで何をぼんやりしてたんだ。二親を早くに亡くした俺にとってターニアはただ一人の肉親
で、かけがえのない妹。この世界すべて敵に回したところで守ってやらねばならない存在だ。この世界は他の誰かでも
守れるが、ターニアを守れるのは、俺しかいない。
『けれど先生、俺は妹を見殺しにはできません!死んだってできません!』
俺は叫び、マーズさんに詰め寄った。マーズさんは動じることもなく、哀れむような瞳を俺に向けている。
『それに。俺が勇者を一人連れて行ったとしても、まだ三人目の勇者がいるんでしょう?だったら、この世界は、そのもう
一人の勇者に任せて……』
「……それが、おまえさんの答えかい」
マーズさんは、やはり、じっと俺を見つめていた。その眼差しは、俺がガキの頃に屋根から落ちて足を折って悲鳴を上げ
ていたときに“痛いだろうが泣くんじゃない!”と叱りつけた、ビアンカのお祖母さんの目に似ていた。瞳の色も容姿も全く
似ていないのに今なぜこう思ったのか、俺は自分でわからなかった。
「あいにくじゃが、ウィル。わしはこれ以上、おまえさんに何も教えてやれんよ。わしは一介の占い師じゃ。おまえさんの妹
がために、王女様を……この世界を裏切れん」
低い声で、マーズさんは言った。予想通りの答えだった。だが、俺の頭に熱い血がのぼってきた。ここで、今すぐに聞き出
さなければ、ターニアが危ない!
『マーズさん!』俺は前に身を乗り出し、叫んだ。『あなたは、ターニアがどうなってもいいって言うんですか!?罪もない
人間が魔物に捕まっているのを、黙って見過ごすんですか!?マーズさんともあろう人が!』
マーズさんの返事はなかった。代わりに、横から俺の腕をつかんできたのは、ミレーユだった。
「ウィル、落ち着いて。お婆ちゃんの気持ちも、わかってあげて」
『落ち着いていられるか!』俺は乱暴にミレーユの手をふりほどいた。『君にはわからないだろうけど、ターニアは、俺の、
たった一人の……』
「わかるわ。でもね、お婆ちゃんが言いたいのは、あなたと妹さん二人だけの問題じゃないってことなの」
477 :
:04/01/10 05:16 ID:LpvWdQdF
『そんなことわかってる!』俺はミレーユに怒鳴りつけた。だが、ミレーユの表情は、マーズさんのようにまったく怯む様子
がない。哀しげに眉を下げ、首を少しかしげてじっと俺を見つめているだけだ。そんなミレーユの態度にも俺は腹を立て
かけたが、憐れむようなエメラルドの瞳をにらみ返しているうち、だんだんと落ち着きが戻ってきた。ここでミレーユに怒り
をぶつけても、仕方ない。
『……すみません、ミレーユ』俺は顔を背けてから、謝った。『けど俺は、どうしてもターニアを助けたいんです。ターニアを
助けられるのは、俺と、勇者しかいないんです』
「ええ、わかってるわ。それにあなたの気持ちも」ミレーユが優しく言った。「――私にもね、たった一人だけの弟がいるの。
その弟が危ない目にあっていたら、何をしたって助けたいもの。でもね。難しいでしょうけど、まわりをちゃんと見て、冷静
になって。人は誰にだって都合があるわ。あなたが妹をこの世界にかえても助けたいというのと同じくらい、お婆ちゃんに
も、あの国には、深い事情があるの」
『あの国……?』
ミレーユがはっとして口をつぐんだ。この様子、ミレーユも勇者の居場所を知ってる?だったら、ひょっとしてマーズさんが
ムーンブルクを出たことに関わりがあるのか。そうだとすれば、もしかして。いや、おそらく……!!
「ビルくん。あたしにはわかったわ」
俺の左横から別の声が割り込んできた。場の目がマーニャさんに向く。マーニャさんは俺に“まあ見てなさい”と言うように
ウインクした。俺は、黙って見守ることにした。するとマーニャさんは、
「お婆ちゃん!」いきなり叫んで、マーズさんの前にどんと手をついた。そして、マーズさんに顔を近づけると、今度はか細い
小さな声で言った。「ムーンブルク」と。
「ね?そうなんでしょ、お婆ちゃん」
一瞬、マーズさんが肩をぴくっとさせたのを、俺は見逃さなかった。ムーンブルク……勇者の血を伝える王家というのは、
やはりマーズさんがいた国、ムーンブルク王国か。
「ほっほっ。さあて、どうかのう」
だが、マーズさんはすぐに陽気な声で誤魔化した。この様子……どちらなんだろう。俺はかえって迷ってしまった。ずばりと
突かれて言い繕ったようにも、勘違いされてほっとしているようにも見える。
478 :
:04/01/10 05:19 ID:LpvWdQdF
「わかった?ビルくん。ムーンブルクよ、ムーンブルク!」
マーニャさんは鼻高々と腕を腰にあてて胸を張った。マーズさんの今の態度をみて独り決めしたのだろう。俺は、曖昧に彼
女に頷いてみせながら、マーズさんの様子をうかがった。けれど、マーズさんはニコニコ笑っているだけで、何の表情の動
きも見られなかった。俺はあきらめ、天井を見やる。結局、俺が自力で、確かめてみるしかないってことか。
《マーズの評価がわずかに下がった》《ミレーユの評価が上がった》
「では。代わりと言ってはなんじゃがなウィル」気を取り直したようにマーズさんが言った。「勇者について、わしよりも詳しい
者を紹介してやろう」
『は……』
俺は興味とともに、疑いが湧いた。ここでマーズさんがわざと間違った占いをし、俺を勇者に近づけまいとすることだってある。
マーニャさんの問いが図星だったなら、なおさらだろう。
「安心するがええ。わしは偽りは言わんよ」マーズさんは俺の心をすっかり見透かして、ニンマリと笑う。「占いなら特にな。かり
にもこれが、わしの長年の生業なんでな」そう言って、水晶玉に手をかざした。
まったく、何でこうも俺の心が読めるんだろう、この婆さん。俺は、決まり悪げに頭をかき、おとなしく座って占いの結果を待った。
「ふむ…ここからはるか北西、大きな神殿が見えるな……おお、どこかと思えばダーマ神殿じゃよ、懐かしいのう。その転職の
祭壇の上に、法衣をまとった小さな女の子が立っておる。その者が、勇者のことに詳しいようじゃ」
ダーマ神殿の、小さな女の子?俺は首をひねった。世界中の修行者が集まってくるというダーマ神殿とはいえ、そんな娘がどう
して勇者のことを知ってるんだろう。ことによるとその娘はエルフかホビットで、体つきは小さくても俺たちよりずっと年上なのか。
俺があれこれ考えていると、
「ほっほっ、信じるも信じないも、おまえさん次第なんじゃぞ」
と、マーズさんが笑い声をあげた。そうか。ムーンブルクは南なのだから、うがった見方をしたなら、“はるか北西”というのは、
ムーンブルクに近寄らせないための、この上ない場所になる。それなのにあっさり信じてしまった俺が、さも愉快なのだろう。
479 :
:04/01/10 05:26 ID:m3wuo69D
そう気付いたものの、マーズさんの予言は本当で、ダーマ神殿へ行ったほうがいいという思いが俺の中では強くなっていた。俺っ
て男は、人の言葉をいちいち疑って行動するような冷静な人間には、なれないらしい。
「さて、ウィル。おまえさんはもはや、ここには用はないはずじゃ」
『えっ?』
俺は驚いてマーズさんを見つめた。まだ、聞いてみたいことがたくさんある。
「ほっほっ。若い者というのは、あまりたくさんのことを知れば知るほど、何をしたらいいのか戸惑ってしまうものじゃからな。あとは
語るよりも行動じゃよ。それにおまえさん、今こうしている時さえも惜しいはずじゃろ。ずいぶんと妹さんが可愛いようじゃからな」
『………』
またもからかうように笑ってくるマーズさんに、疑惑とか嫌悪はもはや感じなかった。物言いには難があるにせよ、決して悪意は
ない人だ。少なくとも、凡人の俺なんかよりずっと深いところを見通して判断している。そのマーズさんが旅立てと言うのならば、
従うよりほかはない。
『わかりました、そうします』
俺が頷くと、マーズさんは「そうか」と優しくニコリと微笑んだ。それは母親が遊んでいる子に向けるような慈愛に満ちた微笑み
で、“おまえさんを見守っているよ”と言ってくれているような安心感を、俺に与えてくれた。
「では、ウィル。まずはどこに行きたいかね」
マーズさんが聞いてくる。俺が今から行きたい場所。それは―――
1.マーズさんのお告げに従って、ダーマ神殿
2.俺の運命と関わるという、ムーンブルク王国
3.フローラさんのいる、サラボナ(ラインハット王国)
4.ビアンカたちが待っている、故郷ライフコッド(レイドック王国)
5.マーニャさんミネアさんの街、モンバーバラ(サントハイム王国)
ウィル 現在地:グランマーズの館 所持金:49000G 装備:檜の棒+旅人の服
道具:ターニアの風鈴 体調:良好 精神:好調 <4日目・午前>
連投規制きついっすね・・・初めてホスト換えて書き込んでしまった
ようやくイントロダクションが終わろうとしております(何
DQ7で言うなら最初の石版がそろいかけたところ
今年じゅうに終わるものなのか本気で不安。遅筆なんとかしないと
>>470 ご参加どうもです。4だったら実は・・・・・・・・・ひと悶着ですた
>>471 そうしたかったのですが、野郎の裸なんて書きたくなくて(ヲイ
ここんとこギャルゲーっぽくないため、苦し紛れに公開
現在のヒロイン評価
ターニア49▼ ビアンカ65 マリベル40 フローラ123○▼ マーニャ73 ミネア55
ミレーユ59 バーバラ76 アリーナ未 フォズ未 (アイラ未) ローラ未 ????未
482 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/01/10 11:01 ID:JIi6bZ3N
5,いくら何でも檜の棒のままはやばそうだしここは武器防具連盟に
1
1
すばやい更新乙です。
>>473 ±20歳って、守備範囲広!!
主人公の年齢考えると
下は0歳、上は40歳?
主人公は炉利ですか
そうでつか…
炉利かつ熟女趣味
『ダーマ神殿に、行こうと思います』
胸を張り、俺は答えた。こうなったらとことんマーズさんを信じてみよう。それに噂に聞くダーマ神殿は一度
は行ってみたいところだったし、たしかマーディラス王国だから、マーディラスの城へ寄って王女様も拝見
できる。
「そうかい」
俺の返事に、マーズさんが今度もニッコリと微笑む。ふつう、このくらいの歳の婆さんに薄暗い部屋で微笑
まれると不気味なものだが、マーズさんにはそれがない。そんな上品な笑顔なのだ。
「ミネア、マーニャ。あんたたちはどうするんだい?」
マーズさんの目がマーニャさんたちに向く。
「んー……そう、ね」
聞かれたマーニャさんは、俺をじいーっと見つめてから、「ごめん、ビルくん!」と、顔の前で両手をあわせ、
片目をつぶってきた。
「ホントなら、あたしもビルくんと勇者探しに行きたいんだけどね。実は、あたしさ、今日ステージあるのよ。
モンバーバラ劇場あげての、月イチの満月の後のお祭り。あたしね、踊り娘になってこっち、今日だけは
外したことないの。食べ放題飲み放題、すっごく楽しいお祭りよ!」
マーニャさんは声を高ぶらせて言うと、軽いステップを踏み、くるんとターンしてみせた。だいぶ楽しみにし
ているお祭りみたいだ。するとマーニャさんとはここでサヨナラ?……ああ残念、実に残念!
「だからあたし、帰らなきゃ。ビルくん、許して、ね?」
『いえ。そんな、俺に謝る必要なんてないですよ』
「ほんと、ごめんね。……で、ミネア。あんたはどうする?ビルくんについてく?それともここに残って、お婆
ちゃんに弟子入りしたいかしら」
「その……」
ミネアさんは、細い瞳を俺とマーニャさんに交互に泳がせると、俺を見て、
「ウィルさん。私も、姉さんといっしょにモンバーバラに帰ります」
眉を落とし、頭を下げてくる。それじゃ、この美女姉妹ふたりともとお別れなのか?
489 :
:04/01/11 09:18 ID:Nkz3iZ1q
「なんじゃ……。おまえさんたち、ウィルと行ってやらないのかい。うーむ、それは困ったね」
それを聞いたマーズさんが、急に難しげに腕を組み、眉間に皺を寄せた。
「ウィル。マーディラスへのキメラの翼は、ここにあるんじゃがな……」
と言い、卓の引き出しを開けた。その中をのぞき込んだ俺は絶句した。その中には、キメラの翼がぎっしり
と詰まっていたのだ。ざっと100枚、2500ゴールド分はある!
どうやってこの孤島で生活してるのかと思えば、こんな移動手段を使ってるのか。おそるべしマーズさん!
「ほれ。この翼が、マーディラスの城への直行便じゃ」
マーズさんは、うち一枚の翼を取り出してこの高価な引き出しを閉め、俺の前にその翼を置いた。
『これ使えば、マーディラスまで行けるんですか?』
「まあな。ところが、マーディラスの城とダーマ神殿の間は少々離れとるんじゃ。道は広いから迷うことはな
いじゃろうが、あの王国の化物、これが凶暴な上かなり手強いときておるのじゃよ。ウィル、おまえさんは
せいぜい、そこらの動物に毛が生えたような魔物としか相手したことないのじゃろう?」
うっ……俺はたじろぐ。この婆さん、本当によくわかってらっしゃる。
マーズさんの言う通り、あいにく俺は、人間相手のケンカならともかく、魔物とはレイドック周辺の雑魚――
盾を持ったホビット(シールド小僧)や骸骨を常に持つカンガルーの化物(どくろあらい)等――程度としか
戦ったことがない。それも、だいたいはヘンリーや兵士とこちらも複数で、鋼鉄の剣を使っての話だ。
「手練れの者ならともかく、おまえさんのような素人が気軽に一人旅できるような土地ではないのじゃよ。
さあて、どうしたものかのう」
『そんなに、危険なんですか、マーディラスというのは?』
「うむ。若い頃、わしもさんざ手こずらされたからな。まあ、ムーンブルクよりはまだましなのじゃが」
ということは、ムーンブルクはそれよりもっと強い魔物がいると?ううっ、世界は広いなあ。
490 :
:04/01/11 09:21 ID:Nkz3iZ1q
「どうだね。それでもダーマ神殿に行くかね、ウィル」
マーズさんが俺を心配そうに見てくる。どうしようか。マーズさんの言い方では、俺ひとりでないなら何とかな
るようすだ。俺は、俺の横でやはり心配そうにしてくれている三人の女性を眺めてみる。マーニャさんの火の
呪文の威力は俺も身をもって知ってるし、ミネアさんもミレーユも回復呪文が使える。このうち誰か1人でも
いっしょに来てくれれば、ダーマ神殿までなら行けるかもしれない。
けど、危険な旅に巻き込むことになるわけだし、人にはそれぞれ都合っていうものがあるよなあ……。
どうしようか―――
1.ひとりでダーマへ行く
2.同行をお願いする(複数可)
2−1.マーニャさん 2−2.ミネアさん 2−3.ミレーユ 2−4.マーズさん
3.行き先を変更する
3−1.サラボナ 3−2.ライフコッド 3−3.モンバーバラ
1
も少し早く書き上げられたはずなのにPCの調子悪すぎ・・・
もう5年目になるからなあ。よくもったほうかも
>>482 サランの街ですね。魔法の鍵ないといい武器は買えなかったような
>>484 リアルタイムができない以上、
本来ならゲームブックスレやアドベンチャースレのように毎日定時更新したいでつ
守備範囲、広すぎですね・・・でもま、ギャルゲーだしw
>>485 そういうことになりますか、ただし0歳のヒロインはいませんよ
>>486 ロリをも越えてそう。語源は12歳でしたっけ
>>487 両極端をとらずにポアッソン分布くらいでw
>>491 早いご参加どうもです!
3-2
2−3.ミレーユ かなあ?
3-3
2-4w
3-3
お願いしたら、何とかなりそうなので、
2−2.ミネアさん 2−3.ミレーユ で。
隠れヒロインと見た!2−4!
3−3.モンバーバラ
祭りも気になるなあ
「ひのきのぼう」から「たけざお」に装備変更とか
2-2
ところで、
ゲームブックスレってのはわかるが、アドベンチャースレって何?
あれ、同じ串か?
3-3
3-2.
マーニャ萌えなので迷わず3−3
保守
ほっきんとっしゅ
『それなら……マーディラスは、やめておきます』
俺は決まり悪く言い、キメラの翼を前へ返した。旅の始まりでいきなり命の危険に遭いたくはない。ダーマ神殿
に勇者がいるのなら強行するが、あるのは情報だけだ。それに、その“法衣を着た女の子”だけが、この世界
で唯一勇者に詳しい人だとは限るまい。
「ふむ。おまえさん、若いのになかなか慎重じゃな。そんなら、どこにするのかね」
『はい。モンバーバラ……つまり、サントハイムに行こうかと』
言ってから、俺はマーニャさんとミネアさんをちらりと確認する。二人ともが、大きく目を見開いている。
「あはははっ!」
ひと笑いしたマーニャさんが、横から、俺の肩口に顔を寄せてきて、ニッコリと楽しそうに微笑んだ。
「ビルくん。あたしたちと離ればなれになるのが、寂しいってことなのね」
『ま、そんなところです』
モンバーバラ行きの理由の一つ、というよりいちばん大きな理由がそれなので、俺は言い訳せずに頷く。
「んーん、正直でいいわ。ビルくんが来るなら大歓迎よ。そうと決まったら、さっそく用意するわよ」
マーニャさんは、俺の襟を少し引っ張って整えてくれ、軽やかな足取りで隣室へのドアに走り、
「ほら、ビルくん。ミネア」
と、ニコニコして促してきた。うーむ、俺をお持ち帰りするのが、そんなに嬉しいのだろうか?
「ほっほっほ。ウィル、好く好かれるは男女の常じゃが、くれぐれも相手を泣かすでないぞ」
マーズさんがさも愉快そうに笑った。マーニャさんに好かれる……その通りなら嬉しいけれど、あのマーニャさん
が“相手”なのだから、そういう関係になれたとして、俺が泣かされる可能性のほうが、ずっと高い気がする。
「ウィルさん、姉さんの言うとおりです。これ以上、先生やミレーユさんのお時間を割くわけにはいきません。すぐ、
出立の準備をしましょう」
ミネアさんが、マーズさんに一礼してから、再び俺に向き直った。ちょっとうつむき加減なのは、まだ成り行きに
戸惑っているからだろう。それでも、俺を見てくる瞳は優しく穏やかだった。俺の同行が迷惑だとはミネアさんも
思ってないのだ。俺は、ほっとした。
510 :
:04/01/17 17:13 ID:QwTcwgEu
『それじゃ先生。俺、これにておいとまします』
俺も、マーズさんに頭を下げる。そのとき、マーズさんの後ろのミレーユが、細く冷めた目をしているのに気付い
た。俺と視線が合うと、ふっと横に瞳をそらす。勇者より女をとったような俺に呆れたのだろうか。それとも、何か
言いたいことがあるのだろうか。
もしかしたら……彼女は俺に、マーディラスへ行ってほしかったのかもしれない。なぜか、そんな予感がした。
「ウィルさん?」
ミネアさんが呼ぶ。まあいいや。俺は考えるのをやめ、マーニャさんについて客間へと急いだ。
《マーニャの評価が上がった》《ミネアの評価がわずかに上がった》
《ミレーユの評価が下がった》
「うわーっ!ここって、けっこうすごいところだったんじゃん!」
林を抜け、昨夜俺たちがキメラの翼で着いた地点まで降りてきたところで、マーニャさんが甲高い声をあげた。
『わっ……!』
俺も、周囲の景色を見渡すなり、立ちすくんだ。目の前、東も西も、水平線まで続く真っ青な海原に囲まれてい
たのだ。どう目をこらしてみても何の島のかげもない。ここは正真正銘、絶海の孤島なのだ。
「ビルくん、ちょっと来てみて」
道をさらに下ったところでマーニャさんがさし招いている。行ってみると、道が海まで落ち込む断崖でいきなり
途切れていた。昨日の夜、この道を知らずに下っていたら……と、内心ぞっとしながら、俺は崖下をのぞき込
む。波によって削られた岩に波しぶきが高くあがっている。少し離れたところには岩礁から続く岩場があって、
白い海鳥が何百匹もうごめいていた。
511 :
:04/01/17 17:15 ID:QwTcwgEu
『………』
こういう海岸ならどこもそうなのだろうが、ライフコッドの崖から見下ろした景色と似て見える。マリベルに突き
落とされかけたり、ランドとお互いをアッパーカットの実験台にしたりした……そして、4日前の夜、俺がターニ
アを追いかけていって二人してさらわれた、あの村はずれの崖だ。
ん?俺はハタと思った。俺の足跡があの崖に残っていれば、崖のすぐそばで忽然と消えていることになる。
そんな跡を見れば、人はふつう、そこで何者かに連れ去られたなんてことより、別のことを考えるだろう。
……まさか村の人たち、俺がターニアと心中したなんて思っていたりして。でもって、ビアンカあたりが涙なが
らに崖に花を投げたり……。想像をしてみて、俺は思わず吹き出した。はは、笑い事じゃないな。
「どうかしたの、ビルくん?」
マーニャさんが、おかしそうに俺を見ている。『何でもありません』と俺は手を振ってみせ、来た道を戻った。
「グランマーズ先生。ミレーユさん。お世話になりました」
登ってくると、ミネアさんが、見送りに出てきてくれた二人に幾度も頭を下げていた。ミレーユが俺たちに気づ
き、ニコリと微笑む。あのときの表情は、何だったのだろうか。
「ミネア、そう肩を張らんでもええと言ったじゃろう。わしは隠居の身じゃ。困ったことがあったら、いつでも力に
なるわい。ほれ、これを渡しておこう。ここへ来るための、キメラの翼じゃ」
「まあ……本当に、ありがとうございます」
うやうやしく翼を受け取るミネアさん。感激のあまり、今にも涙が出そうな顔をしている。
「ウィル。おまえさんにもじゃ。受け取るがええ」
マーズさんが、横にいた俺を振り向き、同じように翼を渡してくれる。
『ありがとうございます……』
見てもいないのに俺の存在に気付いてたらしい。この婆さん、無頓着なのか敏感なのか、さっぱりわからん。
おっと、こんなこと考えてたら、また心読まれちまうかな。
「ところで」マーズさんが俺を見た。ほら来た、と思ったが、マーズさんの眼孔の鋭さを見てはっと姿勢を正す。
「わしから、一つ頼みがあるんじゃが、聞いてもらえるかな」
512 :
:04/01/17 17:16 ID:QwTcwgEu
『…俺に、できることでしたら』
俺が言うと、マーズさんは「うむ」と頷き、マントの下から、絹紐で筒にした書状を取り出した。
「おまえさん、サントハイムに行って、あのお姫さんに会うつもりなんじゃろ?」
『え?』一瞬何のことかわからなかったが、『あっ。も、もちろんそうです』と何度も頷いた。そうか、俺はマーニャ
さんたちを追っかけて行くんじゃなくて、王女様が勇者かどうかを確かめに行くんだった……。
「実はな。わしは、サントハイムの王とは十年来の知己なんじゃ。昔、ちょっとした相談に乗ってやったことがあっ
て、それ以来書簡のやりとりなぞをしてたんでな。じゃから、おまえさんが勇者を捜しているということ、勇者の
証は身体のアザだということを、一筆したためておいた。これを見せれば、まあ、よほどおまえさんが城でおか
しな真似をせん限り、お姫さんが勇者かどうか調べてもらえるじゃろう」
『へっ?』
俺は、驚き呆れてマーズさんを見返した。だからそういうことは早く言ってくださいって!ホントこのお婆さん、人
を焦らすのが趣味なのか?
「あらら残念。ビルくんが蹴っ飛ばされるところ、見たかったのに」
マーニャさんが笑ってぼやく。蹴り飛ばされるって、どういう意味だろ?まさかそれ見たくて楽しそうにしてたわけ
じゃないですよね、マーニャさん。
「こほん。その代わりにおまえさんには、太陽の石を見てきてほしいのじゃよ」
『太陽の、石?』
「昨日も話したがな。サントハイム王国は太陽の石、ムーンブルク王家は月のかけらを代々護っておる。どちら
かの石に異変があれば、もう一つのほうにも影響があらわれるはずなのじゃ。そのこともこれには書いておい
た。おまえさんは王に太陽の石を見せてもらい、それからすぐにここに戻って、石の状態をわしに教えてくれ」
『すぐにってことは、石を見せてもらったその足で外に出て、これを使えということですか?』
キメラの翼を示すと、マーズさんが「そうじゃ」と頷き、「ことによると、国家の財宝だということでおまえさんには
見せぬかもしれん。そうであっても戻ってきて、そのことわしに伝えるんじゃぞ。わかったな」
513 :
:04/01/17 17:18 ID:QwTcwgEu
細かい注文だけれど、マーズさんはそれだけ、石がどうなっているのか早く知りたいのだろう。今のムーンブルク
を知る手がかりになるのだから。
「わしの頼みというのはそれだけじゃ。ああそれと。この手紙、決して落としたり、開いて中身を読んだりするで
ないぞ。王宮というのは、小さいことにいちいちこだわる癖がある奴らばかりなんでな」
なるほど。書状の紐の結び目には、厳重な封蝋に星のかたちの印章が押してあった。
「ビルくん、早く。お昼になる前に帰るわよ」
書状を慎重に袋にしまったところで、せっかちなマーニャさんが、俺の袖を軽く引いてきた。
「お婆ちゃん。いろいろお世話さま。次に来たときにはカジノに連れて行ってあげるから、ふたりでいっしょに稼
ぎましょ。それまで、元気でいてね」
「ほっほっ、どうかのう。マーニャ、おまえさんも元気でな」
マーニャさん、ここまできてもマーズさんに遠慮ってものがないなあ。うらやましい性格だ。
「ウィル」ミレーユが話しかけてきた。「サントハイムの魔物は、レイドックにいるのとは種類はだいぶ違うけど、
同じくらいの強さだって聞いてるわ。あなたなら何とかなると思う。危険があったら意地を張らずに逃げるこ
とね。それと、くれぐれも冷静でいて。お城で何て言われても、王様たちを怒らすようなことしちゃ駄目よ」
『う、うん?』お節介じみたミレーユの言葉だったが、ま、的確な忠告と言える。
『ありがとう、覚えておきます。ミレーユ、俺はすぐ戻って来るだろうけど、それまでお元気で』
「ええ。旅の無事、祈ってるわ」
美しい笑顔をみせるミレーユ。けれど、頬のくぼみ方や瞳が、どこか冷めた、儀礼的な微笑みの気がした。
「ミネアさん」
それからミレーユは、今度はミネアさんを呼び、別れの挨拶をはじめた。腰のバッグから星形の黄色い石の
ついた首飾りを取り出し、ミネアさんに渡している。ミネアさんは大喜びで受け取っていた。ちぇっ、俺にも何か
くれて良さそうなものなのに。
「ミネア、終わった?出発するわよ」
少し離れたところで、マーニャさんがサンダルをトントンさせながら立っていた。俺とミネアさんは、マーズさん
たちにもう一度頭を下げてから、マーニャさんのもとに走り寄った。
514 :
:04/01/17 17:22 ID:QwTcwgEu
「さ、ビルくん。[ルーラ]使うわよ。あたしにシッカリつかまってて」
『は、はい』
言われるがまま、俺はマーニャさんに手を伸ばした……が、踊り娘の服を着てる女の、どこにつかまりゃいい
んだろう?
「ビルくん、何してるの。置いてくわよ。ほら」
俺が戸惑っていると、マーニャさんはつかまれとばかり、右腕を曲げて腰に手をあてた。男女立場逆だが、仕方
がない。
俺はそっとマーニャさんの素腕を腕に巻き込んだ。マーニャさんがニッコリと笑う。
「それじゃ振り落されちゃうわよ。もっと、抱きつくようにしてくんなきゃ」
『こ、こうですか?』
言われるがまま、俺は両腕で、マーニャさんの腕にしがみつく。
「うん、そんな感じ。じゃ、いくわよ!」
マーニャさんが呪文を詠唱しはじめる。来たときとは逆の姿勢だが、マーニャさんの肌の香り(ほとんど香水の
成分だけど)を間近で嗅ぎながらというのは変わりない。くらくらするほどいい心持ちだ。
「………ルーラ!」
元気のいい叫びとともに俺たちの身体は浮かび上がり、すぐ、白い光に包まれた。
《マーズの評価が上がった》《マーニャの評価が上がった》
《[マーズの手紙][キメラの翼(マーズの館行き)]を手に入れた》《ミネアの装飾品が[星のかけら]になった》
「ビルくん。はい、着いたわよ」
マーニャさんの声に目を開けると、そこは短い草だけが生えた、だだっ広い平原だった。ところどころ、茶色い
土が剥き出しになり、白っぽく乾いていた。牛や羊を放すには最適の場所だ。
『ありがとうございました……?』
言いかけて、俺はマーニャさんの左側に立っているミネアさんに首をかしげた。半歩以上離れているから、マー
ニャさんに“しっかりつかまっていた”様子はない。しかも何となく、俺に蔑むような細い目を向けている。
ひょっとして。俺はあわてて腕を解き、頬を引きつらせてマーニャさんを見た。そういえば、別に術者に触れて
なくてもいいんじゃないか、[ルーラ]って呪文は!
「ふふ、ビルくん。あたしとふたりだけの空の旅、気持ち良かったかしら」
マーニャさんが、笑ってひやかしてくる。やっぱり。うう、お姐さんに見事に騙された……。
リアルタイムで遭遇したのでついでに支援
516 :
:04/01/17 17:25 ID:QwTcwgEu
「ほら見て。あれがモンバーバラよ。おもしろい街でしょ」
へろへろ肩をすくめながらも、俺は、マーニャさんの指の方向を眺めた。まず、“ようこそモンバーバラへ!”と
書かれた、俺の背丈よりずっと高い派手な看板が見えた。その向こうには土から生えてきたような白煉瓦の
建物が、さまざまな看板を出して立ち並んでいた。街のいちばん奥、つまり北には青い水をたたえた池があり、
橋がかけられた先には、丸く、赤い屋根をした“おもしろい”建物が見えた。
しかし何よりすごいのは、街の建物の間を、人という人があふれかえっていることだった。池の前の広場から
建物の間の狭い路地まで人の頭がひしめきあっている。箱の中に色とりどりの蟻を詰めて白や赤の石を置き、
横から眺めたというような感じだ。露店や屋台も、街中はもちろん、街の縁にまで軒を連ね、そこにも人が群が
っている。これほどにぎやかな街を、俺は見たことがなかった。
『すごい……人出ですね!』
「まあね。お祭りのときはいつもこうよ。何たってあたしたちの極めつけの舞台がタダで見れんだもの。通行税
ひとり10ゴールドでもとれば1年は遊んで暮らせちゃうのにねえ」
マーニャさんがさも残念そうに言う。よかった、タダなのか。ま、タダだからこそ、祭りか。
「あっといけない!」マーニャさんが陽を見上げ、甲高い声で叫ぶ。「そろそろリハ始まっちゃう。ビルくん、悪い
んだけど、あたし先に行くわ。夜、必ず見に来てよね。あたしのソロステージ!」
『はい。楽しみにしてます』
「約束したわよ。ミネア、ビルくんをよろしくね。それと服一枚貸して……うん、それでいい」
ミネアさんから毛皮のマントを受け取って羽織ると、マーニャさんは再び俺に歩み寄って、
「またねビルくん!」
と、俺の頬にチュッと音をたててキスしてきた。そして、俺がぽかんとするそばをすり抜けて走り出す。街の正面
をわざわざ避けるように、東へ回り込んで駆けていった。さすがにあの魅惑的な姿で人混みを突っ切るのは、
マーニャさんでも勇気がいるらしい。
「行きましょうか、ウィルさん」
ミネアさんが、ぼんやりマーニャさんを見送る俺に声をかけ、荷物を背負い直す。ミネアさんて、ああいうマーニャ
さんの大胆な素行には慣れてるみたいだ。
517 :
:04/01/17 17:28 ID:QwTcwgEu
俺も[ふくろ]を持ち直し、ミネアさんと並んで街へ歩き出した。
『ずいぶん人がいますけど……あれみんな街の人ってわけじゃありませんよね?』
ごったがえす街通りを遠目にしながら、隣のミネアさんに聞いてみる。ミネアさんは「いいえ」と首を振った。
「ほとんど、別の街や村からのお客です。マーディラスやレイドックから来る人も多いんです。今日は特に」
『そうですか。いつもの街も、あれと似たような感じなんですか?』
「いえ、あんなにまでは……。あの半分くらいです、ふだんは」
『半分?それでも多いですよ。みなさん、劇場目当てで?』
と聞くと、ミネアさんはわずかに眉をひそめ、俺に顔を向けた。
「ええ。モンバーバラには、劇場を除いたら何もありませんもの。ウィルさんて、サントハイムはほんとに初めて
なんですね」
『はい。俺が行ったことあるのは、ラインハットだけですから』
「そうですか……それで、アリーナ様のことも、知らないんですね」
『は?』
不意にミネアさんの口から女の名前が出てきて、俺は足を止めた。アリーナ様?
「どうかしました?ウィルさん」
『あ。その、アリーナ様、というのは?』
「ウィルさんが気にしていた、サントハイムの王女様です。グランマーズ先生のおっしゃっていた通り、今年16歳
になられるはずです。今まで黙ってましたが、アリーナ様は……きゃっ!」
ミネアさんがいきなり悲鳴をあげ、俺の手をひいて横に飛び退いた。四頭立ての豪華な馬車が向かってきたのだ。
馬車は勢いよく俺たちのそばを通過していった。円に十文字の紋章が側面に一瞬見えた。人を轢きそこなったと
いうのにスピードを緩めることもなく、街へと疾走していった。
『危ないなあまったく。どこの誰の馬車なんだよ』
「ウィルさん!あれは、サントハイム王家の馬車です。滅多なことは言わないようにしてください」
518 :
:04/01/17 17:46 ID:QwTcwgEu
俺が口走った乱暴な言葉を、あわてたミネアさんが注意する。あれがサントハイム王家の馬車?ってことは……。
『ミネアさん。じゃ、ひょっとしたら、あの馬車にアリーナ王女様が?』
「いいえ、まさか。アリーナさ…様が、この街に馬車でいらっしゃるなんてことは、まずありません」
『そうなんですか』がっかりして肩を落とす。『このお祭りで王女様と会えるかなと思ったんですが』
「あっ、そうではなく……馬車でいらっしゃるようなことはない、と言っただけです」
ミネアさんは、奥歯にチーズが引っかかったような言い方した。馬車では、ない。とすると、みずから馬の手綱
をとって騎乗して来るのか、どこぞの王子と二人乗りで……俺が考えついたのは、そのくらいだった。サントハ
イムは魔法の国として名高いが、まさか空飛ぶ絨毯に乗って来るわけじゃないだろう。
考えているうち、人のにぎわう声が大きくなってくる。やがて道が人の足に飲み込まれる寸前まできた。マーニ
ャさんの言ったとおり、通行税などとっている気配はない。外壁らしいものも一切なく、開かれた街という様子だ。
もっとも、今は人の波が外壁のようなものだが。
「ウィルさん!」
いつの間にか立ち止まっていたミネアさんが、大きな声を出して俺を呼び止めた。俺は、あわてて引き返す。
「ウィルさん。今のうちに、この街を案内しておきたいのですけど。夕方になれば、もっと混み合いますから」
『そう、ですね。そうしてもらえれば。ミネアさんのご都合が良ければですが』
「お気遣いはいりません。私、この街では、占いは夜からってことにしてるんです。ではまず……」
ミネアさんは、ちょっと背伸びをするようにして街を見渡していたが、はっと俺を振り返り、
「ウィルさん。もし、ウィルさんがしたいことがあるのでしたら、まずそこに行きますけど」
と、言ってくれた。この街で今したいこと、か―――
1.『ありませんよ。ミネアさんに任せます』
2.『買い物がしたいです』(複数可)
2−1.武器 2−2.防具 2−3.道具
3.『どこかで噂話とか聞きたいですね』(2つまで可)
3−1.酒場 3−2.教会 3−3.広場 3−4.街はずれ
4.『モンバーバラ劇場をいちど見てみたいかな』
5.『とりあえず、宿屋に行きましょう!』
2-1
2-2
2-3
先週末3日連続で書けたかと思えば、またも一週間ぶり。情けないでつ
ここんとこいろいろあって、漏れやPCのテンションが安定しない・・・
主人公の性格なんか前と違うぞと思った方、たぶん気のせいじゃないと思います。スミマセソ
>>498 ついて来てくれるかどうかは好感度にも依存しまつ
今回は・・・・・・・・・秘密
>>499 グランマーズをヒロイン?無理っす!
還暦後の女性とのラブシーンなぞ読んだことも書いたこともないんで(そういう問題か)
それはそうと、グランマーズの婆を落とそうと思う参加者さんて、おられるんでつかね
>>500 たけざお・・・たけざおっ?
5〜の竹の槍でなくあえて1の竹竿。もしや深い意味が・・・??
>>501-503 ( ゚д゚)・・・た、たまたまですか、それとも自演さんですか?
第5のゲームスレのマスターとして、A.I.さんにもがんがってほしいでつ
>>506 マーニャファンの皆さんが萌えるような「マーニャ姐さん」が書けているでしょうか・・・
>>507-508 せっかく来ていただいたのにお茶も出せませんで・・・毎度すみませぇん
>>515 さんくすです!ご参加お待ちしております
>>519 すばやいご参加ありです!
2-1 2-2 2-3
2-1 2-2 2-3
ギャルゲーの主人公だし、選択肢の関係上ある程度性格が変わるのは仕方ないかと。
個人的にはそれも踏まえて楽しんでますし、幹さえズレなければいいんでは。
2-1 2-2 2-3
この街での無駄遣いは避けるべきだがアリーナとは戦闘の予感!
2-1 2-2 2-3
祭りで無駄使いする可能性も有るけど
まずはまともな装備を施さないと
やっぱり装備を先にちゃんとしないとなあ。
ひたすら萌えに走りたい所だけど
ぐっと我慢して
2-1 2-2 2-3
「買い物をですか」
俺の言葉に、ミネアさんは、なぜか困ったように眉を寄せた。
『はい。武器防具それに薬草や毒消しとかを。これからお祭りと言っても何があるかわかりませんし、今の
うちに装備をととのえておきたいんです』
「装備を……」ミネアさんはさらに難しそうな顔になって、俺から目をそらした。
「その、ウィルさん。私もできればそうしていただきたいんですけど…この街って、剣とか鎧を作る職人さん、
そんなにいなくて。だから、たいした武器も防具も売ってないんです。ですから、ウィルさんほどのかたでし
たら、もっと、そういうのを作ってる街に行って、そこで整えたほうが……」
『そうなんですか…?』
言われてみれば、食品や酒場、皮革品を商う店の連なりに比べ、鍛冶屋の看板や煙突はまるで見あたら
ない。こんな見通しのきく平原にある観光地だから、魔物などに対してそれなりのものをあらかじめ携えて
やってくる客ばかりなのだろう。また、魔物が凶暴ではないということもうかがえる。
『でもミネアさん。武器防具屋の一件くらいはあるんでしょう?ダメもとでいいんで、行ってみたいんですが』
それでも俺は食い下がる。ミレーユのおかげで身なりはしっかりしたが、得物が、やたら上品な檜のステッキ
というのは、マーニャさんに言わせれば“みっともない”。それにちゃんとした武器なしで、この大陸の未知の
魔物たちとやり合うのはどうにも不安だ。せめて銅の剣の一本でもあれば、旅の男としてのカッコがつく。
「…あるにはあります。でも今日やってるかどうか、わかりません。お祭りの準備をなさってるかも」
さっきからミネアさん、どうにも気が進まないらしい。
『それならそれ、ですよ。俺、この街をくまなく歩いてみたいんで、どうせ同じことです。お願いします』
「……そうですか。わかりました」
俺が懇願し、ようやくミネアさんは歩き出した。街を避けるように、西へと。
『あれ、そっちへ行くんですか?』
「ええ」いぶかる俺に、ミネアさんは素っ気なく言った。「遠回りですけど、この人通りでは、街の外からまわ
ったほうが早いので」
527 :
:04/01/19 01:07 ID:zOhqiASt
ミネアさんの言うとおりだった。市壁も、垣根すらもないので、八方すべてがモンバーバラの入り口といっ
てよかった。街じゅうがいくら人であふれていても、外からぐるっと回り込めば南から北への移動は簡単だ。
それどころか、街と街の外との境界にはときおり花壇があったりするだけで、ほとんどないに等しかった。
人が大勢騒いでいるなら魔物は近寄って来ないだろうが、夜はどうするのだろうか。警備の兵が詰める小屋
も、ないようだけど。
俺がいらぬ心配をしているうちに、ミネアさんの足が街側に曲がった。煉瓦の家の間を抜け、広場へ出る。
この広場が群衆の中心のようだった。街のどこより人が集まり、外縁にはところ狭しと市が立っている。俺
の故郷近くの街シエーナでも年に4回バザーが開かれるのだけれど、人や店の数、加えて雑然さが、それ
とはまるで比べものにならない。シエーナではきちんと売り場が決められているが、ここでは各人が思い思
いに店を作ったり敷布を広げて商売をしている。なかには、道のど真ん中に屋台を構え、平然と野菜を売
っている農夫までいる。よく言えば自由な雰囲気だし、悪く言えば無秩序だった。そばでケンカじみた声が
して耳を傾けてみると、一件の店の客を隣の店の商人が無理に呼び込んだらしい。これだけ乱雑していれ
ば、ごたごたも日常茶飯事だろう。
ミネアさんはこの賑やかで不愉快な状況にはすっかり慣れているようで、さっさと人の間を縫うように進んで
いく。俺は、幾度も通行人とぶつかりかけながら、なんとか後を追った。
「ここです、ウィルさん」
やっと、ミネアさんが立ち止まる。前に武器と防具の看板を掲げた二階屋があった。この人出だし、客でにぎ
わっているかと思えば、まるで街の敷地がそこで途切れたように閑散としている。あれっと思い店をのぞいて
みると、武器屋はカウンターが閉まっているし、防具屋にも店番がいない。
『お店、やってないんでしょうか?』
「たぶん……」
それでもミネアさんが防具屋の扉をノックする。やはり、返事はない。休業なのかとあきらめかけたとき、
「お客さんかい?まあ、占い師さんじゃないか。どうぞどうぞ」
528 :
:04/01/19 01:09 ID:zOhqiASt
店の裏手から中年の女性が出てくると、ミネアさんに挨拶し、扉の鍵を開けてカウンターにまわった。
「ここんとこ見かけなかったけど、里帰りでもしてたのかい。え、それよりも買い物?失礼失礼。ごめんねえ、
うちの人、いつものことだけど祭りにかり出されちまってて。仕方なくあたしが裏で薪割りしてたのさ。おや?
そっちの人。占い師さんの知り合い?へえ、ずいぶんとまあ、いい男じゃないか。占い師してるだけあって、
男見る目は、しっかりしてるねえ」
勝手なおしゃべりをはじめる女店主。ミネアさんの頬があかくなっている。この店に来たくなかったのは、この
話し好きのおばさんも原因のひとつだったのか。開放的で他人を気にしない街のように見えるが、もともとい
る住人の間では、こうしたべたべたな付き合いがあるらしい。
「それで、そっちのお客さん。何の用だい?うちの人いないもんで武器は売れないけど、うちは防具から道具
まで手広く扱ってるよ。道具といっても、まあ、薬草だけだけどね」
『はあ……』
なんだ、武器はないのか。いちばん売ってほしかったものなのに。
道具まで扱ってるとわざわざ言ったところをみると、この街、ここのほかに道具屋がないようだ。劇場以外は
何もない街とさっきミネアさんが言ってたけど、誇張じゃなかったんだな。
「あっ、ただね。薬草はおひとり3個までしかお売りできないんですよ。みんなが買っていくものだし、多少残し
とかないと、ほら、お祭りで、もしもってことがあるかもしれないんでねえ」
うーん。3個だけか。これからの旅のために買いだめしたかったけどな。ま、俺も今は普通の旅の者だ。無理
に売ってもらうほどの理由はないので、ここは、従っておこう。
『防具を見たいんですが』
俺が言うと、女店主は扉を開け、店内に俺たちを入れてくれた。さっそく飾られている防具を見て回る。だが、
鎧どころか、金属を使った衣すらない。あるのは、ただ装飾が豪華なだけの分厚いコートや、どう見たって裾
を引きずりそうで歩きにくいドレスなど、実用にならない衣装ばかり。
『パーティ服しかないな』俺が思わずぼやくと、
「言いましたでしょう……」ミネアさんが、すまなそうにうつむいた。いや俺、ミネアさんを責める気は全然ない
んですが。
529 :
:04/01/19 01:12 ID:zOhqiASt
それでも、冒険で使えるような服も多少はあった。俺が今着ているのと同じつくりの[旅人の服]や、ミネアさん
たちの愛用している[絹のローブ]、丈夫ななめし革で織られた[皮のドレス]。それから、女の子の髪飾りにぴっ
たりの可愛い[ヘアバンド]……って、これほとんど女性ものばかりじゃないか!
かろうじて俺が身につけられるのは、[旅人の服]と、天井からぶら下がってる[皮の帽子]だけだ。頭部のほぼ
全体を覆うもので、値段も80Gと手頃だ。俺の今の服ともしっくりくるし、買ってもいいかな。
あ、そうだ。ミネアさんにも何か……と思ってミネアさんを振り返ったが、ミネアさんは落ち着かない様子で、前
に組んだ手の指を小刻みに動かしていた。店をすぐにも出たいらしい。5年も前にモンバーバラに来たと言っ
てたし、ミネアさんにとって目新しいものはここにはないか。それなら今は、俺だけの買い物だな―――
<選択肢A>
1.購入する(所持金49000G。複数可。ただし薬草以外は1点のみ。!は女性専用)
1−1.旅人の服70G 1−2.!絹のローブ120G 1−3.!皮のドレス350G
1−4.皮の帽子80G 1−5.!ヘアバンド120G 1ー6.薬草10G<<数量入力(最大3個)>>
2.冷やかすだけにする
礼を言って防具屋を出たとき、『あ!』俺は口を開けた。何も“この街の”店に行く必要などなかった。目の前
の広場には、これだけたくさんの市が立ち、数多くの露店や屋台が出ているのだ。なかには骨董品などを地
面に置いている商人も見受けられる。探してみれば、旅に役立つ物を売っている店も、見つかるだろう。
「ウィルさん。何かありました?」
続いて出てきたミネアさんにそのことを話すと、「…やめておいたほうがいいです」首を振られて一蹴された。
530 :
:04/01/19 01:15 ID:zOhqiASt
「食べ物ならまだいいんです。値段は店であまり変わりませんし、店の前で食べて何かあったら文句を言えば
いいんですから。でも、剣や鎧、それもちゃんとしたのとなると……。売ってる人たち、この街に立派なものが
ないことを知っていますから。鍛冶屋さんが捨てた剣を拾ってきて平気で売ってたりもしますし、ただの鋼鉄の
剣にとんでもない値段をふっかけてくる人もなかにはいるんです。もっと怖いのは、薬草や毒消し草などです。
何を混ぜて売ってるのか、売ってる人にもわからないって言われるほどなんです。この街に来たばかりのとき、
姉さんも私も、それでずいぶん苦労しましたわ」
ミネアさんがため息混じりに語る。そんなことがあったのか。マーニャさんがあれだけたくましい性格してるの
は、そういう、この街の悪い空気のせいなのかもな。
『………』
俺はまた広場を眺めた。ミネアさんの言うとおり、道端の店で値段のわからない物を買うのは危険だ。モン
バーバラみたいな、金を落とす観光客だけで成り立ってる街なら尚更だろう。だがそういう店だからこそ掘り
出し物があるかもしれない。それに、今の俺は魔物に対して丸腰同然だ。多少値段を高く釣られても、背に
腹は代えられない。
「ウィルさん。お腹、すいてませんか?」
『えっ?』考えているところに話しかけられ、はっと俺はミネアさんを振り返る。
「あ、いえその。ちょっと早いと思うんですが、お店が混む前に、食事にしませんか」
ミネアさんが、俺の態度に驚きながらも言って、前の建物に目をやった。そこには酒場の看板が出ていたが、
普通の食事もやっているようで、親子連れの客や年配の女性が行列を作っているのが見えた。
混む前に、か。俺は空を見上げた。日はまだそれほど高くない。ただ朝食が早かったせいで、まあまあ腹は
空いている。昨日はいろいろあって昼食も夕食も抜いちまったし、今日は旅に備え、食べられるときにはしっ
かり食べておきたい。
どうするか―――
<選択肢B>
ア.昼食にする
イ.露店を見て回る
A 1-1 1-6 <2>
B ア
まさか割り込んではいないよね…?
ということで今回、A,B2つの選択をおながいします。単に横着したかっただけですw
そうたやすく武器系は買わせません。未成年に剣持って街歩かせるなんて危なくてしかたない(ヲイ
さて、武器・防具の効用ですが、キャラの「攻撃力」「防御力」「かっこよさ」に関わってきます
それぞれの強さはだいたいはゲーム本編のイメージの通りです
細かいところは漏れの脳内依存ですが、きちんと数値表示したほうがいいですかね?
>>522 確かにギャルゲーによっては、選択やキャラシナリオによって、
主人公等が「こいつら中の人入れ替わってないか?」というのがありますが、
今怖いのは、ゲーム内容でなく漏れの精神状態によってイミなく主人公の性格がねじ曲がることで・・・
なるべくそんなことがないようにしてますが、詰まってきたら平気になるかも
と、今のうちに言い訳。こういうとこで漏れはヒヨッ子チキンっす
>>523 うっ・・・鋭い
それとも、アリーナみたいな娘との初顔合わせにバトルになるのはギャルゲーのお約束なのですかな
>>524 よ〜く考えよ〜、お金は大事だよ〜(藁
>>525 我慢は精神衛生によくないですよ・・・・・・って、序盤は我慢てのもトゥルーエンドのための鉄則?
>>531 深夜なのに一番乗り、ありがたうです
はい、もちろん今回のターンは終わってますよ
A. 1-4、1-6<<3>>
B. ア
やはり武器が心許ないなぁ・・・
A. 1-4、1-6 3個
B. ア
選択肢少ないのも町の性質を考えれば仕方なしか
A 1−2、1−6 3個
B ア
絹のローブは確かかっこよさが結構上がった気もするし
皮の帽子買うぐらいなら節約した方が良い気がする
いつか役に立つ・・・・・・・・・・・・・・・か?!
1-6-3
イ
>>254インパスが使えるらしいので
537 :
535:04/01/19 20:29 ID:oUObYje7
>>536 げっそういえば・・・・
イにしとくべきだったか・・・・・・・・
インパスと露店に何の関係が?
品物のよしあしを見分けられるかもっていうことでししょう
多分・・・
『そうですね。今のうちに食べておきましょう』
俺が頷くと、ほっとしたようにミネアさんは眉を和らげた。すでにミネアさんの足は料理店へと向いていて、俺
から前を向くなり、小走りで駆け出す。俺が走ってもなかなか追いつけないほどの速さだ。
そういえば……今日の朝食。ミネアさんはマーズさんの手前のせいか、せっかくの料理にほとんど手をつけ
てなかった(隣のマーニャさんは平気でぱくついてたが)。つまりミネアさん、実はかなり空腹なのかも。それ
なら言ってくれればいいのに……。
《ミネアの評価がわずかに上がった》
《[薬草]x3を手に入れた》《所持金が48970G(−30G)になった》
料理屋には、すでに長い列ができていた。ひと目で祭り見物とわかる客ばかりだ。子供と揃いの麻の服を着
た男は退屈そうな子を肩車などしてあやしていて、その前の男3人と女1人のグループは昼食代を賭けて指
のミニゲームに興じている。甘ったるい声に振り返ってみれば、若いカップルが笑いあったり互いを小突いた
りして、背後の旅の戦士をしかめっ面にさせている。独り身には目の毒らしい。
おっと、俺も自分の相方に目を向けなきゃ。そう思って隣のミネアさんはと見ると、胸の前で手の指を何本か
折ったり開いたりするのに没頭していて、俺に注意を払ってる様子はない。占いでもやってんだろうか。ううっ、
なんだか放置された気分……。
『すごいな。これが、毎月のことなんて』
しかたなく、周りを見回して独りごちってみる。すると、ミネアさんはすぐに「ええ」と顔を上げてきた。なんだ、
単にミネアさんも退屈を持てあましてただけなのか。
541 :
:04/01/20 00:03 ID:EEZvPqlw
『このお祭り、ミネアさんたちがここに来たときから続いてるんですか?』
「そうです。けれど、そんなに昔からではないそうです。劇場ができて、何年かしてから始まったそうです」
『へーえ』それほどたいしたいわれのあるお祭りじゃないのか。『そういえば、マーニャさんはソロステージをや
ると言ってましたけど、もしかしてミネアさんも、何かするんですか?』
「いいえっ!」ミネアさんは顔色を変え、ぶんぶん思いっきり手を振った。「私、子供の頃から、人前に出るの
苦手なんです。あんなにいっぱいの人の前で魔法を披露するなんてこと、もう絶対できません!頼まれたっ
てイヤだわ!!」
『そ、そうですか。失礼しました』
いやいやと首まで振って髪を散らすミネアさんに、俺は(周りの客も)あ然とする。以前、お祭りで何かやって
失敗したみたいだな。興味あるけど触れられたくないようなのでやめ。あとでマーニャさんに聞いてみよっと。
じゃあ話を替えよう。ミネアさんが落ち着くのを待って、
『えーと、ところで……モンバーバラの名物料理っていうと何なんですかね?』
俺が聞くと、「えっ?名物……ですか?」眉をしかめたミネアさん、下を向いたり街を見回したりしてしばらく考
えたあげく、「お米と海老なんかを鍋に入れて、オリーブの油とかで炒める…っていう料理が、ここの名物じゃ
ないでしょうか」
じゃないでしょうかって俺に聞かれても困るんですが……5年も住んでいる街の名物を知らないなんてきっと、
ミネアさんってとことん自炊派なんだな。
そうしている間に行列が進んでいき、店の入口の前までたどりつく。石段の上で給仕の女の子が客の注文を
聞きチケットを配っている。混み合っているときの合理的手段だ。それならメニューはどこかにあるのかと探し
てみると、開け放した扉板の内側に、紙切れが何枚か貼り付けてある。なになに…?
542 :
:04/01/20 00:07 ID:EEZvPqlw
「米と烏賊と海貝のガーリック油炒め」「牛肉とビーンの唐辛子煮」「鶏肉の野菜煮込み」「・・・以上各10G」
「トマトのスープ」「モンバーバラ特製ワイン」「柑橘ジュース」「・・・以上各5G」
大きな酒場にしては少ない品目だが、祭りに備えて材料を温存しているのだろう。店内をのぞいてみれば、手
鍋のような器に貝をいっぱい盛り上げた料理を給仕が運んでいる。あれが名物の油炒めなのだろう。美味そう
だがボリュームありすぎる気がするな。ええっと、他の料理はどんなかな、と……。
「………を」
俺の横で、ミネアさんが何かぼそっと言った。あ。俺たちの順番か。
振り向くと、ミネアさんに券を2枚、女の子が笑顔で渡している。どの料理券なのかは見えなかった。俺のぶん
まで頼んでくれたのかなと思ったのだが、
「はい。そちらのお客さんは、何にしますか?」
と、女の子が俺にもスマイル浮かべて聞いてきたところをみると、違ったようだ。さて―――
1.『えーと、これをください』(所持金48970G。複数可。各1点のみ)
2−1.油炒め10G 2−2.唐辛子煮10G 2−3.野菜煮込み10G
2−4.トマトスープ5G 2−5.ワイン5G 2−6.ジュース5G
2.『彼女と同じものをお願いします』
3.『ここに書いてあるもの全部ください!』(−45G)
4.『あとで注文します』
ウィル 現在地:サントハイム王国モンバーバラ 所持金:*48970G 装備:檜の棒+旅人の服
道具:*薬草x3、キメラの翼(マーズの館行き)、ターニアの風鈴、マーズの手紙
体調:良好 精神:好調 パーティ:占い師ミネア <4日目・昼>
男子たる者 3 で
まぁ当然 3 しかないわけだが
訂正・・・また何やってんだよ漏れ_| ̄|○
>>542 1.『えーと、これをください』(所持金48970G。複数可。各1点のみ)
1−1.油炒め10G 1−2.唐辛子煮10G 1−3.野菜煮込み10G
1−4.トマトスープ5G 1−5.ワイン5G 1−6.ジュース5G
今回はお食事です。あえてゲームのタブーに触れてみますた。好き嫌いはいけません
ところで。850レスオーバーしてるゲームブックと500前半のこのスレの容量がほぼ同じ
やばい本当に小説スレだ・・・きちんと完走はできそうにないでつ。すみません
>>533 DQは防具より武器にお金をかけたほうが戦闘スムーズですね
>>534 現実(?)のモンバーバラは移民探しに使える街ですけどね
>>535 DQ6,7の絹のローブのかっこよさ高杉。それを標準装備してるミネアとミレーユって?
実際のDQで使わない装備品を袋に入れてとっておくメリットは・・・?
>>536 Σ(゚д゚ ) 漏れもついこの前まで忘れてたのに(ぉ
よく読んでくださってるようで多謝
>>537 途中変更はIDが同じ場合に限らせていただきます。ダイヤルアップの方、ごめんなさい
>>538 出店に人食い箱が置いてあるとかw
>>539 インパスが鑑定に使えるのはDQ5と6だけでしたな
>>543 深夜早っ!一番乗りありでつ。3!?
>>544 こっちも早!しかも3・・・と、とにかく参加ありがたう
1−1 1−4
全食いはマーニャなら喜びそうだけど相手はミネアだからなあ・・
折角教えてもらったんだし、名物料理を食べよう。
1−1,1−3,1−6
ちょっと食い過ぎかも知れないけど全食いや昼間っからの酔っぱらいはマイナスになりそうな気がする
1-1、1-2、1-5
酔ったビルくんに期待
せめてサバイバルナイフいや、
聖なるナイフぐらいは持っておきたい
1−1
1−4
せめて聖水くらい…
聖水…マーニャたんの聖水…(´Д`;)
>やばい本当に小説スレだ・・・きちんと完走はできそうにないでつ
何気に爆弾発言。
まあ、確かに少々壮大過ぎて大丈夫かなあと心配してはいたが・・
とりあえず、もしストーリーのほうは完走できなかったとしても、できればギャルゲーとしてはしっかり完結させて欲しいなあ・・
とりあえずレス促進。
保守
>>553 完走っていうのは、容量オーバーで1000レスまで
行かないって意味では。
と希望的観測を述べてみるテスト。
「はええっ?ぜんぶですかぁ?」
目をまんまるにして、女の子が素っ頓狂な声をあげる。大げさだな、そんなに驚くようなことか?
「あーのー、ええっと、あとでお連れ様がいらっしゃるのでしょうか?」
『いいえ。俺たち、2人だけです』
「そ、そうですか……」女の子の目が、俺とミネアさんを行ったり来たりする。
「あの……」ミネアさんも驚いた顔をしていて、手の券をおずおずと俺に見せてきた。
「ウィルさん。私は私のぶん、ちゃんと、買いましたから……」
『知っています。実は俺いま、けっこう腹空いてるんですよ』
頭をかきながら、俺はひょいっとミネアさんの手の、ご丁寧にも俺に読みやすいようにまわして向けて
くれた食券を覗き見た。ジュースと……油炒め?自分で言った名物をなんでまた……そんなに美味し
いのかな。
『それに俺、次いつこの街に来られるかわかりませんから、今日のうちにできるだけ多くの料理の味、
覚えておこうかなと思って。もちろん、ミネアさんご推薦の料理も含めて』
「あ……そ、そうだったんですか。すみません、私、てっきり……」
俺の説明にならない説明に、なぜかミネアさんが謝った。だから、ここでなんで俺に謝るんですか?
「そういうことだったんですね。ありがとうございますです。では、えっと、全部の券です。えーとぉ、45
ゴールドになりますね。……はい。お釣りを受け取りください。おふたりとも、ごゆっくりどうぞです!」
不器用な手つきで数えられたチケットとコインを笑顔の女の子から渡され、俺たちは店の中に入った。
《ミネアの評価がわずかに上がった》
《所持金が48925G(−45G)になった》
『あっちゃー……混んでますね』
ここでも、先に入った人たちが席の空くのを待って列を作っていた。俺とミネアさんもやむなく加わる。
558 :
:04/01/24 22:22 ID:k8cLsk22
店内を見渡してみると、簡単な運動ができるくらい広い食堂に、テーブルと椅子がずらりと並べられて
いて、人が空席なく食事を楽しんでいる。いろいろなスパイスや酒の匂いが鼻をつき、食欲をますます
そそってくる。だが、賑やかさもいい香りも、待たされているこちらにとってはあまり愉快なものではなか
った。騒がしくて話もできる状態なので、俺もミネアさんも、黙って待たねばならない。
ようやくひとつテーブルが空いて前の1グループが席についたとき、俺たちの後ろにさらに10組ほど
が並んでいた。まだまだ時間かかるなあ。焦れながらミネアさんをそっと見ると、唇を噛み、手で腹部
をぎゅっと押さえていた。お腹、そうとう減ってるみたいだ。なんとか、ならないものか。
「お待ちのお客様……」
ボーイが声をかけてきたのは、さらに、前に並ぶ人のうちやっと2組が席につけた後だった。
「外にも、席をご用意いたしました。もしよろしければ、あちらにもどうぞ」
見ると、裏口らしい戸のむこうに、パラソルのついたテーブルが3つほど見えた。
外か。あれに座ってゆっくり食事をするのはなかなか勇気がいるが、街の外側だから、たいして人は
通らないだろう。前から数えて7番目の空席待ちの俺たちが今すぐ食事にありつけるチャンス。ここは
即断即決!
『ミネアさん、行きましょう!』
声をかけ、「え?ですが……」どもるミネアさんの手をひき、俺は、テーブルをかわしながら早足で裏口
のドアへと向かった。早い者勝ちだと気づいた他の客が追ってきたが、俺はさっさと外に出て、3台の
うち店内からも通りからも見えにくいテーブルにすばやく腰掛けた。ミネアさんは、迷うように二度ほど
後ろを振り返ってから、俺の前の席に荷物と腰を下ろす。
『よかった。座れましたね』
と、俺はミネアさんに笑いかけた。向こうでは、スタートダッシュに失敗した客たちが、残った2つのテー
ブルをめぐって小競り合いを起こし、あわてたボーイがもっとたくさんテーブルを持ってこいと叫んでい
る。まったく、人間というのは醜いなあ。
「……ウィルさんって、その」
『え?』
「……なんでもないです」
ミネアさんが、あきれたように一つ、ため息をついた。
559 :
:04/01/24 22:23 ID:k8cLsk22
本来はセルフサービスだが、外の席ということと食券の束をちらつかせたせいで、料理は店側が運ん
でくれることになった。
「あの、失礼とは存じますが、これすべてお二人で召し上がるのですか?」
『はい。お腹減ってるんで、一度に持ってきてください』
「かしこまりました」
うやうやしく礼をして引っ込むボーイ。こういう食堂の若い店員にしては作法がきちんとしている。昔、
どこかいいところに勤めていて、何かわけあってモンバーバラに流れてきた……なんて物語が頭に浮
かぶ。こういう街だから流れ者も多いだろう。
まもなく、3人のボーイとウェイトレスが、それぞれ3つの皿をどうにかトレイに乗せて運んできた。狭い
テーブルに次々と並べられていく料理を見て、さすがに俺はたじろぐ。各料理とも、器が大きいうえに
山盛りにしてあるので、一皿平らげるだけでも大変そうだ。三皿にオプションつきなんて、想像しただけ
で腹がふくれる。
ええい、注文しちまったものは仕方ない。出されたものは残さず食べるというのが我が家の家訓だ。
あ、美味い料理に限っての話だが。
調理したてらしくどの皿からも湯気がたちのぼり、食欲をそそるガーリックや唐辛子の芳ばしい香りが
たちこめる。野菜やレモン等がふんだんに使われていて色鮮やかな料理ばかりだ。どれから手をつけ
るか迷ってから、冷めたら不味い牛肉の煮物からにし、皿を引き寄せた。
『ミネアさん。では、いただきましょう』
「ええ」
俺が木のスプーンを手に持つのを見て、ミネアさんは待ちかねたように、前の鍋からスプーンで貝や
米をすくって口に運びはじめた。ほっとした様子なのは、やっと食事にありつけたからか。
俺も、スープ状の肉と豆をすくい、食べはじめる。甘くて辛くてジューシーで、何とも言えない味だった。
後が支えてるのだから、味わうのは最初だけにして、ちゃっちゃと食べることにしよう。
『ミネアさん。食べたいのあったら、テキトーにつまんでください』
それとなく、声をかける。ミネアさんは「ありがとう」と言いつつ、よそ見することなくゆっくり自分の料理
を食べている。あれ?今気付いたが、ミネアさんにと持ってこられた料理と、俺の油炒め。見比べて
みると何か違う。同じものを注文したはずなんだけど……?
560 :
:04/01/24 22:25 ID:k8cLsk22
まあいいや。食べ終わってから聞いてみよう。そうだ、この名物料理も温かいうちに味をみておかねば。
俺が、黄色く色づいた米に匙をのばそうとしたとき、
「ミネア先生じゃないか!」
背後からの声に、ミネアさんが、ハッと顔を上げて振り返った。心なしか引きつった、ゆがんだ表情だっ
た。視線の先に俺も目をやってみると、小太りの若い男が一人、こちらへ駆け寄ってくるのが見えた。
『……!?』
俺はその男の姿に驚き、次にはあきれてしまった。紫水晶のピアスやド派手な鰐皮と高級シルクの服
はまあ許すにしても、唇にはテカテカ真紅に光る口紅が塗られ、長い頭髪はギトギトに固められてトン
ボどころか小鳥だってとまれそうだ。あまつさえ顔から首筋に塗られた白粉にいたっては閉口するしか
ない。きっと、隔離された環境で、ソレ系の趣味のある女官ばかりに囲まれて育ったのだろう。でなきゃ、
こんなカッコで街中歩けやしない。
「……ラゴスさん。おひさしぶりです」
ミネアさんが立ち上がり、頭を下げる。俺も立ち上がろうとしたが、ミネアさんが「黙っていてください」と
言うように手で俺に合図したので、俺は腰をまた落とし、素知らぬ様子で食事を続けることにした。
「キャハハ、そんなかしこまんないでよ、ミネア先生」
男は、女みたいな高い声で笑うと、馴れ馴れしくミネアさんの両肩に手を置いて座らせ、自分も前の席
に座った。日にあたってドロドロに溶けたあめ玉を思わすような臭いと、鼻から頭を貫くような整髪剤の
臭いが混ざり、料理の味がまったくわからなくなってしまった。
「ミネア先生と会うの、ちょうど1ヶ月ぶりだよね」
「え、え。そうですね。この前のお祭りのときですから」
ミネアさん、こんな男と知り合いなのか。真面目で控えめな女性だと思っていたけど、考え直す必要が
ありそうだ。俺としては、世話になってる人の息子だったり、親友の友達だったり、そいつの妹がすごい
美人であったり……などといった“やむにやまれぬ事情”がない限り、こういう類の男とは付き合いを持
ちたくない。
561 :
:04/01/24 22:26 ID:k8cLsk22
「ミネア先生ってなんか、マーニャさんと旅に出ちゃったって聞いたんだけど嘘だったんだね。っていうこ
とはさ、マーニャさんも今晩ちゃんと出るんだね。ぼくいつも楽しみにしてるんだ、マーニャさんのダンス」
「そうですか。きっと、姉も喜ぶと思います」
緊張したミネアさんの口調。下をのぞいてみると、俺側に隠したミネアさんの右手が、ローブをぎゅっと掴
んだり放したりしている。不安なのか、いらついてるのか。
「ねえ。それでさ、ミネアさんにお願いがあるんだ。マーニャさんに、今晩は、ぼくだけと付き合ってもらえる
ように頼んでもらえないかな。お祭りの後って、いつもマーニャさんていなくなっちゃうから。ね?お金なら、
いくらでも出すからさ」
なるほどな。これがこの莫迦の目的だったか。世の中で最も莫迦な人間は小賢しい莫迦だ、と言うけれど。
「で、ですが、私から言っても、姉さんが聞くかどうか……」
「そんなことないよ。ぼくが待ってるって言えばいいんだ。マーニャさんなら、すぐ来てくれるよ。マーニャさ
んも劇場のみんなも、ぼくが声をかけると、いつも大喜びしてくれるんだ」
男が、鼻高々と胸を張る。こんな奴を歓迎しなきゃならないのか……踊り娘って商売も大変だな。
「…でも今、姉さん練習中ですし。練習中はいくら私でも話しかけるなって言われてるんです。それが終わ
ったらすぐに本番ですから……私がそのこと姉さんに伝える時間、あるかないかで……」
「えー、そうなの?しょうがないなあ。じゃあ今晩は、ミネア先生でいいや」
なにっ!?俺は、思わずギリッと奥歯を噛んだ。ミネアさんでもいい、だと?何考えてんだこいつは!
「ぼく今晩、宿屋の、いちばん景色がいいっていう部屋に泊まるんだ。でもさ、さっき見てきたけど、汚いし
古くさくて、あんまり気に入らなかった。それでもね、ミネア先生といっしょなら、何とか過ごしてやっても
いいと思ってたんだ。ね、今晩来てよ」
俺は頬を引きつらせた。こんな誘い文句に引っかかる女の顔、この世の中にいるものなら見てみたい。そ
れがもしターニアだとしたら、育て方を間違った責任をとって、ターニアを殺して俺も死ぬところだ。
「せ、せっかくですがっ……」
案の定ミネアさんも、今の奴の言葉には嫌悪の色が面に出、唇をふるわせる。
562 :
:04/01/24 22:28 ID:k8cLsk22
「私は、今晩も占いの仕事があるんです。お誘いするなら、どなたか別の方をお誘いください」
「占い?仕事?そんなの、どうでもいいじゃないか。ぼくがその何倍も、出してあげるからさ。ほら」
1000ゴールドコインを一枚、指先でぽいっと弾いてテーブルの上に転がす。くだらん小技だけは巧いん
だよな、こういう奴って。
「そうだミネア先生。今、どうせヒマなんでしょ?部屋、見せてあげるよ。来て」
奴がミネアさんの手首をつかもうとした。が、その手は空ぶった。ミネアさんが肩を引いてよけたのだ。
「あれ。どうしたんだよミネア先生?」拒絶され、奴の目が急に険しくなる。
「すみません。あの、今日は私、これから……」
ミネアさんの瞳がちらりと俺を見る。そろそろ、俺が口を出すべきか。
スプーンを皿に置き、俺は―――
1.『もういいでしょう。ミネアさんが困ってるじゃないですか』
2.『どなたか知りませんが、あいにくミネアさんは今晩、俺と約束があるんです』
3.『ミネアさん。人の食事中に話しかけてきたこの不作法な男は、いったいどこのどいつですか?』
4.『せっかくですミネアさん。そのお金、もらっておいたらどうですか』
5.とりあえず、ミネアさんにキス!
支援射撃
3
2
5
デート中のお約束の展開・・・ですかね?
年度末はテンションがまったくもって安定しない・・・それほど忙しいわけじゃないんですが
前回の選択、1の候補すべて出たようなので3にしますた
>>546 人に勧められたら素直にそれ食べるのがベストでしょうね
>>548 この後イベントが控えてるからその通り小食がいいかも。でも展開によっては・・・
>>549 酔わせたらまた何するかわかりませんがw
>>550 聖なるナイフでブッシュを切りひらいたりしてもいいんでせうか
>>551 メタル系はモンバーバラ周辺には出ませんよ。ってか出しませんよ
>>552 Σ(゚д゚lll) そっちかい!
>>553,556
誤解もたせてすみません。545の意味は556さんのおっしゃる通りです
スレ容量残り130kb。1レス1kbでも130レス。1000レス完走はとても無理でつ
0バイトスクリプトが来れば別なんですけど、そこまでして完走させるものなのか・・・
某大手ADSLを使ってる漏れは、そのときはおながいしますと頭下げるしかないでつ
>>547=554
ということわけなので、どうがんばっても無理です・・・アドベンチャースレ、楽しみにしてますです!
>>555,563
スミマセソ、そしてありがとう。今回もご参加お待ちしてます
>>564 お早い選択ありです。すごいIDですね
2
装備が不安だからもめ事は避けたい・・・
2
ラゴスって誰だっけ?と思ってしまった…
ラゴスって盗人じゃなかったっけ?DQ2
1
5
悪いなあ 他をあたってくれよ
あんた あの娘の何なのさ
♪港のヨーコ ヨコハマ ヨコスカ
2にしておこうか
>567
あーよく見てますねぇー。ちょっと驚きましたw
あと、別に1000まで行く必要はこれっぽっちもないので、
気にせずこれからも頑張っていって下さい。影ながら応援してますです。
>562
泥沼化に期待・・・ということで2w
ひたすらマーニャ萌え
あ、妙な勘違いしてどうもすんませんでした>553
1
言ってサッと席を立つと、ミネアさんをかばうように割って入った。
「ウィルさん!?」
「な、なんだよ、おまえ?」
ラゴスが驚き、俺をにらむ。こいつ、近くで見ると輪をかけてケバい顔してるよな。ほとんど同じ歳の男に対して
“ケバい”などという形容詞を用いるようなイベントが、俺の人生のうちでこんな早く起きるとは思わなかった。
「おまえ、いったい、ミネアの何だ?」
一瞬詰まりながら『友達ですよ』と、俺は答えた。
『ミネアさんには今日一日、お祭りを案内してもらう約束になってるんです。もちろん、明日の朝まで』
意味ありげに、横目を後ろのミネアさんのほうに向けてみせる。まっ、嘘も方便。もっとも、俺のつもりではあな
がち嘘ではないんだけども。
「おまえがミネアと!?ミネアはぼくと過ごすんだ!おまえ、何様のつもりなんだ!」
ラゴスが血相を変えて(厚化粧のせいで顔色はわからないが)怒鳴る。
『その前に。人にものを尋ねるときには、まず名乗っていただきたい』
俺は全くひるまず言い返す。ミネアさんの前で気取りたかったこともあるが、こんな生意気な奴に必死で気を遣
っていたミネアさんの態度も気になったからだ。
「ぼ、ぼくを、知らないというのか?」
ラゴスが口元を引きつらせてたじろいだ。それから気を取り直すように横髪を後ろに撫でつけ(わざわざこの部
分だけ固めてないらしい)、にやりと頬をゆがませた。
「それなら聞かせてやる。いいか、我が名を聞いてひれ伏せ!われこそは……」
胸を張りながら息をひとつ大きく吸い込み、
「われこそは、キャストミント山の黒竜退治の英雄大魔導師マジョルエを祖とする栄光あるサントハイム王家が
臣、病床の偉大なる国王より委任されサントハイムの国政をあずかるキテリョ大公ゲバニチェ=ストラルの子
にしてシュロッカ侯、ラゴーシュ=ストラルなるぞ!」
言い放つと、ラゴスは腰に手をあててさらにのけぞり大笑いした。
576 :
:04/01/27 10:01 ID:e7JniJmT
「ヒャハハハ!どうだ、恐れいったか!」
『そうですか』
俺は耳の後ろを掻き、空を見上げる。長ったらしい口上を聞いてさらにこいつへの嫌悪が倍増した。早い話が、
成り上がり大臣のボンボン息子。親の権力をかさに、今までもこんな人を人とも思わない態度で街の人を困ら
せてきたのだろう。だが、俺にとっちゃヘンリーやホルスに比べてはるかに格下な相手だ。二国の王子とタメ口
のきける間柄である俺には、こんな名乗りは脅しにもならない。
「おっおまえ。ぼくは名乗ったんだぞ!ぼくの名を知らないとでもいうのか?」
ラゴスが荒げた声を出す。俺が突っ立ったまま何の反応も示さないので、苛立ったらしい。
『存じません。俺は、ミネアさんとマーニャさん以外、サントハイムに知り合いはいないものでして』
俺はしれっとして言う。「な、なにぃ?」ラゴスはひるみながらも憎々しげに「この田舎者め…!」眉間と唇をわな
なかせた。いまにもつかみかかってきそうな目つきだ。いつでも踏み込みも退きもできるよう、俺は足の位置を
ずらした。
「ら、ラゴスさん、すみません!」そのとき、俺の前にミネアさんが飛び出した。
「その…ウィルさんはレイドック王国の人で、この国には、今日、来たばかりなんです。決して、ラゴスさんに逆ら
おうっていうわけじゃありません。ですから、どうか、お気を静めてください」
懇願する口調でラゴスに頭を下げてから、ミネアさんは俺を向き直った。
「早く、ウィルさんも謝ってください。ラゴスさんに!」
青ざめながらも、ミネアさんは怒っているかのように俺をキッと見つめてくる。
『けど……』
俺はラゴスをちらりと見た。ここで俺が引いたら、ミネアさんはこいつの言うことを聞かなきゃならなくなる。それ
に、俺はヘンリーとホルス、二人の王子の親友だということが頭にあった。何もこんな奴にペコペコしなきゃなら
ん義理はない。
577 :
:04/01/27 10:11 ID:e7JniJmT
「ウィルさん」俺が黙っていると、ミネアさんは俺に半歩近づいた。ひろい額に汗が浮かんでいた。
「グランマーズ先生に頼まれたことを忘れたんですか?サントハイムなんですよここは。今、ラゴスさんの機嫌
を損ねたら、お城で“太陽の石”を見せていただくことができなくなります!」
あ。俺は舌打ちする。こいつの親父、王に委任されてなんとかって言ってたな。この莫迦が父親に、俺のことを
あることないこと吹き込んだら……。こんな莫迦息子を野放しにしている親の器量、推して知るべしだ。俺が王
に取り次ぎを願ってマーズさんの手紙を差し出したとしても、王のもとに届く前にこいつの親の手で握りつぶさ
れかねない。無礼討ちで牢に放り込まれるおそれもある。そうなったら、ヘンリー王子とホルス王子の友達だな
んていう叫びはまともに取り上げられないだろう。ハッタリの常套文句にしか聞こえないはずだ。
『………』
俺は苦々しい唇を噛み、ラゴスをまた見やった。ちょうど目が合い、ラゴスは「何だよ」というように身構える。
他のときならともかく、今はこいつを敵に回したくない。とはいえ、謝罪には誠意とタイミングってのが……。
ミネアさんのこともある。ああ言った手前、ここで俺が身を退いたら、ミネアさんは今晩フリーということになる
のだ。ラゴスにもう一度口説かれたら、ミネアさんが返事に窮してしまう。
大事のためにプライドは捨てるか、それとも―――?
1.許しを請う
1−1.頭を下げる 1−2.地に頭を擦りつける 1−3.胡麻をする 1−4.ひとこと謝って逃げる
2.素知らぬ顔で食事に戻る
3.なんでもいいから一発殴る
4.やっぱり、ミネアさんにキス!
1月中に「モンバーバラ祭」までは書きたいですが指も思いつく表現も寒い・・・
今日も予想最高気温は一桁前半。暖房なしでキー叩くの辛いぽ
>>568 武器持って生身の人間と戦っちゃいけません
>>569 言われてみれば結局DQ2と4にしか出てきませんでしたね
>>570 そうです。奴の隠れ場所は知らなきゃまずわかりませんよ・・・
>>571 えー・・・お歳をうかがってもよろしいでしょうか?
>>572 2にしておきますたw
>>573 雑談スレとかもけっこうよく目を通すもので。稚拙な遅筆ですが、これからも見守りくださいまし
>>574 マーニャ姐さんはある意味DQ最強の女性キャラクターですね
いえいえ、変な書き方してすみませんですた。ストーリーもギャルゲーも完結できるようがんがりまつ
腹立ってきたのだが1−2
これで満足しないんなら対決と行きたいな
DQNには一撃見舞うべし 1-3
妥当なところで1-1
DQNには一撃見舞うべし 3
2
食事が冷める
店も混んでるわけだし
3
1-1
be coolで1-1
3
むしろ殺しちまえ
3
こうなりゃヤケだ。
馬鹿息子の親父は立派な人物という漫画的(?)な展開ないかな?
3
1−1
面倒起こして祭りでれなくなったらどーすんのよと。
2.
祭りで踊るのはマーニャだし
3
むしろ殴った方がアリーナの好感度上がりそうな予感
593 :
◆LbeDggmp36 :04/01/29 06:21 ID:K+6vZGMB
594 :
◆IyAdtY8Ydg :04/01/29 06:31 ID:RbwE2qwO
↑ ブラクラ
mailtoストームなので踏まない方がよいでしょう。
殴った方がGMの疲労度が上がりそうな予感で3
保守
1−1
耐えろ。
2
一発koで何事もなかったかのように飯を喰らう
あたしが許す。
3。
おいおい、だんだん文面が適当になってるぞ。
自演するのならするでしっかりやれよw
まぁ確かにこんなに読んでるとは思えんな・・・
おいおいなんでも自演かよ
ってやっぱり早く続きが読みたいよなあ
っていうか話が長過ぎでない?
いつまでたっても終わる気しないんだけどこれ
>>604 それはラブコメにおいて必然。
そして唐突に終わるのもまたラブコメ。
何にしても、面白ければそれで良しだと思うけど。
考えたあげくの結論。俺は半分閉じた冷ややかな目で、ラゴスを見据えた。
「なんだよその目は、ぼくに向かって……」
わめくラゴスへ、一歩で間合いを埋める。ラゴスが怯えた目つきで見上げてくる。
ドスッ!
俺は、ラゴスのベルトの上へ、握りしめた拳を斜め上に叩き込んだ。
「い……」
息が止まった呻きを漏らし、ラゴスは、腹を押さえて地面に崩れ落ちた。ヒイヒイと声を詰まらせ、苦しそうに
涙を目に浮かべる。丸虫のような情けない姿に、蹴りも一発くれてやろうとも思ったが、さすがにやめにした。
「ウィルさん、なんてことを!」
ミネアさんが俺の前に回り込み、険しい表情で俺をにらんだ。
『ミネアさん。こんな親のご威光で好き放題やってる奴、少し痛い目に遭わせたほうがいいんですよ』
とは言いながら、さすがにやりすぎた気もする。俺がこいつに謝罪する理由がないのと同じく、こいつにも俺
に殴られる理由はないはずだ。
「そんな。ウィルさんがこんな乱暴な人だなんて思いませんでした!」
言われて俺が決まり悪げに目をそらしたので、ミネアさんは、さらに俺を咎め、
「これでサントハイムのお城にも入れてもらえなくなったら、どうするんですか!王様にも、アリーナ様にも会
えなくなってしまいますよ。それでも、いいんですか?ミレーユさんにも言われたでしょう。どんなときも冷静
でいてくださいって」
声高に責め立ててくる。ミネアさんの怒るのはもっともだが、しかし……これってただのお節介じゃないか。
「ウィルさん。グランマーズさんとの約束も、勇者様を捜すことも、すべてだめになってしまいますよ。何のため
に、ウィルさんはこの国に来たんです?それまで忘れてしまったんですか」
『………』
俺は今度は、ミネアさんに腹が立ちはじめた。俺はラゴスを殴る理由はなかった。じゃあなぜ殴ったのか。
ミネアさんのために、決まってるじゃないか。
607 :
:04/02/02 06:49 ID:ZcjBe42U
「ウィルさん。今ならまだ間に合います。ラゴス様にきちんと謝って……」
俺の袖を引くミネアさんに、俺は一気に血を頭に上らせ、
『じゃあ、ミネアさん!』
まっすぐにミネアさんを見つめて怒鳴りつけた。『ミネアさんは、こいつの言いなりになってもよかったって
言うんですか?ミネアさんだって嫌がってたじゃないか!』
不意の俺の大声に、ミネアさんは眉をふるわせたが、すぐに、
「それは、私の問題です。ウィルさんには関係ありません!余計なお世話です」
『充分、関係ありますよ!』
俺は、ミネアさんのアメジストの瞳をじっと見据え、まくしたてた。
『わかってもらえないと思いますが、俺はあいにくと、こういう男なんです!目の前でですよ、ミネアさんみたい
に美人で魅力的な女性が、こンな奴からあんな遊び女みたいな扱いをされたのに黙ってるような真似、絶対
できない男なんです。守りたいと思ってる女性を侮辱されるのは、俺にとって、男として、最大級の侮辱なん
ですよ!』
「………」
『それを俺の勝手だとかお節介だとか言うのなら、そうでしょう。けど……』
そこで俺は言葉を切った。ミネアさんが、きょとんとしたように俺を見つめていた。切れ長の瞳を丸くして、
薄紅の唇を緊張したように横に結んでいる。頬には紅味までさしてきている。
『ミネアさん?』
「えっ、と……それってつまり、ウィルさんは………。で、でも、私……いきなりで、それに私、あんまり……」
しどろもどろになるミネアさん。どうしたんだろう。俺はすっかり怒気を消し、ミネアさんの態度を見守った。
「………」
ミネアさんは、黙り込んだ俺を上目で見るなり、あかくなって黙り込んでしまった。何なんだいったい??
『あの……?』
なにか俺変なことしましたっけ、とミネアさんに聞こうとしたそのとき、
「殺してやる!」
突然、男の甲高い声が響いた。
『……!?』
はっと目を上げると、ラゴスが、真っ白い顔を皺だらけにしてにらみつけていた。俺に突き出すように向けら
れた腕の上に細い車輪のようなものを乗せている。その車輪は半分だけで、またぐように銀色の矢が……。
クロスボウ――!?
『ミネアさん頭を低くして!』
俺は、あぜんとしているミネアさんの身体をひっつかんで背中の後ろへとかばった。
608 :
:04/02/02 06:51 ID:ZcjBe42U
ラゴスはすでに武器を顔の前に持っていっている。俺に狙いをつけている目は、怒りで真っ赤だった。
「ぼくをバカにしやがって!二人とも、死ね!」
やばい!こういうときはとにかく、冷静にさせなければ。
『ラゴス侯爵!今、何をしてるのかわかってるのか!』
声を張り上げて牽制すると、ラゴスはうっと目を見開いて動きを止めた。視線が、俺から手に持っているクロ
スボウとその矢に移る。しめた。
『ばかな真似はやめるんだラゴス侯爵!たった一時の怒りで、侯爵の名に、家名に、泥を塗るつもりか!』
「な、なに……?」
『侯爵の名に恥じない行動をするんだ!ラゴス侯は平気で人を殺すと、国中の噂になってもいいのか?』
「な、なにが侯爵だっ!いまさらぼくを持ち上げようったって、だ、だめだぞ!」
叫んで、ラゴスはボウガンを構え直してしまう。しまった、連呼しすぎた。
しっかしこの莫迦、こんな危ない玩具をどこに隠し持ってやがったんだ。知ってたら、気絶させとくんだったな。
「ど、どうだおまえ。さっきみたいな口、きいてみろよ」
ラゴスは、俺が一歩では飛びつけない距離でしっかり間合いをとっている。俺はラゴスの手元、引き金にかかっ
た指に注意しながら、何かないかと周りを見た。テーブルの上の料理には、ちょっと手を伸ばしたくらいでは届
かない。俺一人なら一足飛びでテーブルの陰に隠れるところだが、俺のすぐ後ろにはミネアさんがいる。いま
俺が横に身をかわせば、あわてたラゴスの指が動いて、流れ矢がミネアさんに命中するかもしれない。
「うわっ、危ねえ。ボウガンだ!」
「なんだなんだ、ケンカか?」
ラゴスの背後では、座っていた客が気付いて騒ぎたてたせいでギャラリーが集まりつつあった。何事かとボー
イやコックも店から飛び出して来、こちらを見て驚きあわてている。見てるだけでなくて何とかしろよ、と俺が
舌打ちしたとき、ボーイが一人、忍び足でラゴスの背後へ近づいてきた。取り押さえるのかと期待したが、
「あのう、ラゴス様。落ち着いてくださいませ……」
「う、うるさい黙れ、このぼくに逆らう気か!近寄ると、お前も撃つぞ!」
ラゴスに一喝され、すごすごと引き下がってしまう。おいおい。この危険な状況、相手が誰だろうと背後に寄っ
て羽交い締めにするくらいやれよ。客商売だろ。
609 :
:04/02/02 06:59 ID:ZcjBe42U
「ラゴスさん」
代わって説得を試みたのは、ミネアさんだった。俺の横に進み出て、ラゴスに語りかける。
「私とウィルさんの非礼はお詫びいたします。けれど、だからといってそのような邪悪な兵器を持ち出されるの
は宰相ゲバン様のご子息としてあるまじき行為です。今のラゴスさんのお姿を見たら、亡きお母上もさぞ悲
しまれますよ」
さすがミネアさん、こういうときも落ち着いた口調だ。ラゴスが、ぶるぶると震えはじめている。事の重大さに
焦ってきたな。
「ここであなたが事件を起こされれば、お父上のゲバン様にご迷惑がかかります。ご覧なさい、あんなにたく
さんの人が、ラゴスさんのなさることを見てるじゃないですか」
ミネアさんが指さす。つられてラゴスが傍観者たちを向いた。今だ!俺は地面を蹴り…かけたが、すぐにまた
ラゴスの顔がこちらに戻ってしまったために、とっさにミネアさんをかばって横に跳んだ。これで、テーブルから
三歩は離れてしまった。
「そ、そんな手に乗るもんか。あ、あんな奴ら、親父が何とかしてくれるよ!」
「けれど、ラゴスさん、あなたは……」
「うるさい!ミネア、それ以上喋ると、お前から撃つぞ!」
ラゴスが、さらに目を血走らせてボウガンを構えた。駄目だ。こいつは親にかかる迷惑など、これっぽっちも
考えちゃいない。
「ぼくは、いきなり、こいつに殴られたんだ。だから、こいつがぼくの前に這いつくばって謝らない限り、ぼくは、
これを下ろすつもりはない!」
俺にぴたりと照準を合わせ、ぎらりと俺をにらんでくる。俺は覚悟を決め、拳を握った。
おそらくラゴスは、俺が土下座でもして謝りさえすれば武器を下げるだろう。だがそれでは、次に同じような
ことがあったときも、ラゴスはこの危険きわまりない玩具を取り出す。その標的もまたミネアさんでないとは
限らないのだ。そうさせてはならない責任が、俺にはある。
610 :
:04/02/02 07:12 ID:/zy3HOls
俺は、ラゴスににらみ返すようにしながら、クロスボウをじっと観察した。木製の台に合金の弓をはめこんで
ある、魔物退治のための強力なボウガンだ。矢も木の軸に鉄の鏃がついた鋭いもので、スライム程度なら
たやすく貫通できる代物だ。しかし幸い連射式ではなく、矢は一本きり。つまり、第1矢で致命傷を防げれば、
次の矢を装填する隙に飛びかかってぶちのめせる。走りながら弓を引くのは相当腕力のある戦士でないと
無理だし、足さえやられなければ、あんな重心が下腹にありそうな体格のラゴスには追いつける。
『………』
頭部、喉、胸、股間。急所は外させるだけの自信はあった。腕のどちらか一本を犠牲にするだけでいい。多少
の怪我をしたところで、ミネアさんがいる。よし!
『ラゴス侯爵、撃てよ!』俺は低い声で言った。『せっかく武器を抜いたんだ。使わずにどうする!』
「な、なに?」ラゴスの表情に動揺が、ますますの怒りが走った。
「ぼくは、謝れば許してやると言ってるんだぞ。そ、それともおまえ、そんなに、死にたいのか!」
『ありがたいお言葉だが、俺は、お前に謝ってやる気なんてない。やるつもりなら、さっさとやってくれ』
「よ、ようし。やるぞ!ぼ、ぼくの手にかかることを、誇りに思うがいいさ!」
ラゴスが叫び、ぐっとボウガンを持つ手に力を込めた。くる!俺は矢の先を見つめ、拳闘をするように腕を左右
に構えた。
「………ラリホー!」
そのとき、気合いのこもった声とともに、俺の肩口の後ろから褐色の腕が突き出された。
「う……?」
たちまちラゴスがゆがんだ顔をゆるめたかと思うと、すうっと瞼を落とし、同時に膝をついた。からり。力のなく
なった手から、クロスボウが転がる。俺はすばやく駆け寄ってそれを拾い上げ、矢を外した。ラゴスがゆっくり
と俺の足下に突っ伏し、いびきをかきはじめる。ミネアさんの催眠の呪文が覿面に効いたのだ。しばらく目が
覚めないだろう。
『ミネアさん!』
俺は、安堵の笑みとともにミネアさんを振り返った。ミネアさんは、どこか申し訳なさげな表情だったが、それ
でもほっとした笑顔だった。普通の人間を呪文で殺傷したり眠らせたりすることは、よほどのことがない限り
禁じられている。けれど今のは誰が見ても“よほどのこと”だったと認めてくれるはずだ。
611 :
:04/02/02 07:13 ID:/zy3HOls
「ラゴス様!」
誰かが呼びに行ったのか、2人の騎士が青銅の鎧を鳴らしてあわただしく駆けてきた。
「ら、ラゴス様!しっかりなさいませ!」
ひとりは、倒れているラゴスを抱き上げて気をつかせようとする。もうひとりは俺とミネアさんをじろりと見、
「貴様たち、ラゴス様に何をしたんだ!」
高圧的な声を押しかぶせてきた。俺は、口を開きかけたミネアさんを制し、騎士の前に進み出た。
『はい。ラゴス様は、私たち二人が食事をしているところにいらっしゃって、突然、あまりにもひどい無理難題
をおっしゃったのです。失礼と思いつつお断りをいたしたところ、とたんにこのような恐ろしい武器を持ち出
されて。とっさの機転でミネアさんが催眠の呪文をかけてくれなければ、きっとラゴス様は、旅人を傷つけた
ということで“サントハイムの殺生侯爵”とでも終生渾名される御仁になっていたところでしたよ。私は、レイ
ドックから来た者ですが、宰相のご子息であられるラゴス様がこんな恐ろしい方だとは、夢にも思いません
でした』
クロスボウを差し出し、スラスラと説明してやる。“サントハイムの殺生侯爵”か。今思いついたのだから仕方
ないが、もう少し酷い蔑称にすりゃ良かったな。
「ううむ……」騎士は俺から弓と矢を受け取ると、ミネアさん、眠っているラゴス、そして背後のボーイたちを眺
め回した。
「おい店主、そうなのか?」
「は、はい。そのようです、はい」
年配のコックがびくつきながら答える。事の最初からは見ていないはずだが、それは問題じゃない。
「むむ……」
騎士は苦虫をかみつぶした顔を、俺とミネアさんへ戻した。
「お前たち。ラゴス様に無礼を働いた大罪、本来ならサントハイムの城へ引き連れてゲバン様の裁きを仰ぐ
ところだが、今日は祭りの日だ。これ以上騒ぎを起こさないというのなら、今日のところは解き放ってやる」
…これ以上騒ぎって、原因はラゴスだろう。そう思ったものの、俺にも四半分の半分くらいは責任があるので、
『はい、以後は気をつけます。寛大なご処置、お礼のしようもありません』と、丁重に頭を下げた。ここで変な
意地を張っても、意味はない。
612 :
:04/02/02 07:15 ID:/zy3HOls
「うむ、神妙だな。お前は旅の者のようだが、やたらとこのことを吹聴するではないぞ。もしそのような……」
『わかっております。ラゴス様を不当に貶めるような行為、決していたしません』
俺は、もう一度頭を深々と下げた。それで尋問は終わりで、騎士ふたりはラゴスを慎重に持ち抱え、ラゴスが
倒れた拍子に散らばったものを拾い集めてから、群衆を追い払いながら引き上げていった。もちろんクロス
ボウも回収していってしまった。ちっ、騎士たちが来なければかっぱらえたのに。
『ふー……っ』
俺は、大きく息を吐き、肩の力を抜いた。サラボナ、モンバーバラと別の街で二日続けて命の危機に見舞わ
れたわけか。退屈なんかとは無縁の旅になりそうだな。
「ウィルさんて……ああいう人たちの相手は、慣れてるんですね」
そんな俺に、ミネアさんがあきれたような様子で言う。俺は笑って、
『ははっ、そうでもありませんよ』
頭を掻いた。子供の頃からレイドックの城へ行ってホルスの遊び相手してやってその都度怪我をさせていれ
ば、いやでもあの程度の言い訳文句ぐらいは身につく。
『そんなことより、ミネアさん、ありがとう。おかげで助かりました』
ミネアさんにも丁重に頭を下げると、
「いいえ、昨日のお返しですよ、ウィルさん」
ミネアさんは、瞳をほそめてニッコリと微笑んだ。それは、マーニャさんがするような、得意満面の笑顔だった。
『お返し、ですか……それならもう俺、もらってたんですけどね』
「えっ?私、ウィルさんに何かしましたっけ?」
『ええ。あのとき、ばっちりミネアさんのハダ……ああっと!』俺はあわてて両手を振った。『その、ミネアさん
に頼らなくても、自分で何とかしたかったんですよ。女性に守ってもらうなんて、男の恥ですから』
言いつくろい、大げさに頭を掻く。だがミネアさんの左の眉がぴくりと動いていた。まずい、ごまかしきれなかっ
たか。
「あの、ウィルさん。そのことですけど……」
案の定、恥ずかしそうにミネアさんは下を向いてしまった。
「私、占い師ですから、相談とかはよくされますし、アドバイスして差し上げたりもするのですが、私、自分の
こととなると……あまり、その……ですから、ごめんなさい、今は……」
613 :
:04/02/02 07:19 ID:4Ys3SVtj
『は?』
てっきり怒られるか黙られるかと思っていた俺は、わけのわからないミネアさんの言葉に首をひねった。
占い師?相談?アドバイス??俺、別に占いなんて頼んでないよな?
『ミネアさん?俺は……』
「ああっ、ウィルさん。食事にしましょう。すっかり冷めてると思いますけど、もったいないですから」
ミネアさんが無理矢理な笑顔で俺に言い、椅子に腰掛けた。俺も、いぶかしがりながら席に戻る。
もしかして俺、ミネアさんにまた変なこと言ったか?今日は当然のことしか述べてない気がするんだが……。
《ミネアの意識に変化が起きた》《ミネアの評価がかなり上がった》
《ラゴスの評価がガタンと下がった》
「……でも、お腹、まだ空いているでしょう、ウィルさん」
『いや、けっこう食べましたから。夕食まではもちますよ』
店から出た俺たちは、大して目的もなく、街の外縁をぶらついていた。
まだだいぶ料理は残っていたのだが、すっかり冷めたりぬるくなったりしてしまい、また別の客やボーイたち、
通りすがりの連中がちらちら視線を向けてきたため、俺たちはとても落ち着いて食事ができず、結局、場所
を変えましょうというミネアさんの意見に従って、料理の始末を店に任せ、食事を切り上げてきたのだった。
『ミネアさんこそ、お腹空いてたはずでしょ。そのへんでパンでも買って食べましょうか?』
俺がからかい気味に言うと、ミネアさんはどきりとしたらしく、動きを一瞬止めた。
「えっ?……いいえ、お、お腹なんか、空いてませんでしたよ」
『そうですか?並んでるとき、お腹の鳴る音が聞こえましたが』
「ええっ?ウィルさんに聞こえたはずありません。抑えて鳴らないようにしてたんですから……あっ!」
軽くカマをかけてみただけなのに、ミネアさんは見事に引っかかってしまい、顔をまっかにしてうつむいた。
やっぱり、お腹空いてたから急いでたんだな。
『ははっ。冗談ですよ。ところでこれからどうします?俺は、出店を見てまわりたいんですけれど』
笑いながら街中を眺めた。昼過ぎで、手に果物や飲み物を持って歩いている人が目につく。街の外からは、
さらに幾人かの旅人がやってくる。やはり、買い物を街がこれ以上賑わう前にやっておきたい。
614 :
:04/02/02 07:24 ID:4Ys3SVtj
「ウィルさん。その前に……今晩のお泊まりのことですけど」
『えっ、お泊まり……?』
やにわにミネアさんが言った言葉に、俺は色めきたった。昨晩に続いて一つ屋根の下でミネアさんマーニャ
さんと枕を並べてお泊まり……。祭りの後で3人とも酒も入ってるだろうし、今度こそ、何があってもおかしく
ないよなあ。
「たぶん、もうジャグロさんのところ……あ、宿屋のことですが、部屋の空きは少ししかないと思います。です
から、部屋をとるなら、早めに行かれたほうがいいです」
『そ、そうですね』
俺は、街の入り口にある長細い宿屋を見やった。あの敷地の広さなら部屋数も相当あるだろうが、それでも
この人出のうちの半分も泊められないだろう。荷物も置かなきゃならないし、さっさとチェックインしとくか。
『ミネアさんもあそこで泊まるんですか?』
「え?いいえ、私は、この街で姉さんと借りているお宅がありますもの」
うっ。考えてみれば当たり前だ。ミネアさんとマーニャさんはここで暮らしているんだから、ちゃんと帰って休む
場所がある。けどそうなると今夜の俺は独り寝。それは寂しいなあ。
うーん、宿泊先、どうしようか―――
1.やはり宿屋に泊まることにする
2.いっしょに泊めてくださいとミネアさんに頼む
3.他の泊まり先を紹介してもらう
4.あとで決める
5.祭りの後すぐサントハイムへ出立する
ウィル 現在地:サントハイム王国モンバーバラ 所持金:48925G 装備:檜の棒+旅人の服
道具:薬草x3、キメラの翼(マーズの館行き)、ターニアの風鈴、マーズの手紙
体調:良好 精神:好調 パーティ:占い師ミネア <4日目・午後>
前回大言吐いておいて2月更新でスミマセソ・・・しかもまたも3つばかり選択を飛ばしてます
インフルエンザではないのですが、ちょっとばかし身体を壊してしまってますた
人間、歳はとりたくないもんですな。みなさんも健康には気を遣うだけ遣ってください
>>579 ノーセレクションで対決終わらせてしまいましてすみません
>>580 1−3でよろしいのでしょうか?3のような気が
>>581 上役には謝っとくのが妥当ですね
>>582 何かとうるさいご時世、殴るのは2次元だけにしておきましょう
>>583 2が「全部買い」の最も生きる選択肢だったのですが・・・
>>586 Cool it!等、coolにはいろんな意味がありますな
>>587 ひとごろしー
>>588 ギャルゲーは気持ちに正直にが基本ですが、やけを起こすとバッドエンドですぜ
>>589 親を手本に子は育つのか、親はなくとも子は育つのか・・・ゲームの場合後者?
>>590 一応、祭りには何を選んでも参加はできますた。その後の保証はありませんが
>>591 現在マーニャのダンスシーン執筆中でつ。楽しいけどむずいぽ
>>592 えー、アリーナの登場は今後の選択によります。ああどうしよう(ヲイ
>>584=595 ご参加とご注意、ありがとうございます
>>596 わかってるならやるなーヽ(`Д´)ノ・・・はっ、失礼しますたw
GMの疲労度増加は熟練への道。以後もどんどんどうぞ
>>597 毎度毎度すみません
>>598 ギャルゲーは成金と先輩と体育教師には耐えねばならない!・・・いつの時代だ
>>599 一発KO、つまり3とコンボってことですか
>>600 ど、どちら様で?
>>601-603 このレスの多さ・・・やっぱりみなさん自演していらっしゃるんでしょうか
けどこれは、漏れがさっさと続きを書いていれば起きない問題でつね
ううっ、漏れが遅筆なばっかりに皆さんを悪に走らせてしまっているのかと思うと・・・
>>604-605 はい。ストーリー自体はとんでもなく、とてつもなく長いです
ただしヒロインによっては細切れなシナリオなので何とかなるかと思ってたのですが、
現在フラグが立ってるヒロインはえーと・・・やっぱり、いつ終わることやらですなw
ちまたでは2ちゃんねる閉鎖なんて噂が出とりますがどうなんでしょう?
<アンケート>
さてここで、つかぬことをお聞きいたします
あなたは18歳以上ですか?
A.はい
B.いいえ
後一ヶ月と26日でA
それはそれとしてゲバンが父となればちんたらせずに5といきたいが敢えて2
取り合えずA
1とA
18どころか21も超えております
乙!
ここは4で宿が埋まって仕方ないから〜という算段で
アンケはA
3
A
アリーナ登場の予感
1−a
選択肢は3。
にしても、実は結構、人いるんじゃ?
未だにBはいないけどwあたしもA。
2……といきたいとこだが3で。新キャラでるかな?
アンケートはA
彼女らの生活の場を見てみたい
2
A
選択肢は夜の宿関係・・・・
そして十八禁アンケート・・・
ここから考えられる意味は一つ・・・!
2 A
4
気持ちはA
嬉しいハプニングを期待。
>>627 オイオイ 「気持ちは」とはどういう意味だw
4 A
まあ、折角仲良くなったんだし。
2A
630 :
617:04/02/03 21:16 ID:xZLSjTgr
あんまり意味有りませんが報告
計算違いです、本日から数えて五十一日後です
4-a リア工もいないんですね。それも寂しい。
| \
|Д`) ダレモイナイ・・オドルナラ イマノウチ
|⊂
|
♪ Å
♪ / \ ランタ タン
ヽ(´Д`;)ノ ランタ タン
( へ) ランタ ランタ
く
633 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/02/05 22:53 ID:6Xvf+mSH
これどこでプレイできるの?
脳内プレー推奨
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※┃
┃※┌────────────────────────────┐※┃
┃※│ ┬┳━━━━━┳┬ │※┃
┃※│ {. ┃ ∧ ∧ ┃/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ │※┃
┃※│ └┨ (・∀・) < 三桁達成おめでとう!すごいよ! │※┃
┃※│ \ Yattane !/. \_______________. │※┃
┃※│ \.__/ │※┃
┃※│ )_( 6 1 7 分 達 成 認 定 証 │※┃
┃※│ ) ̄( │※┃
┃※│ / ̄ ̄ ̄\ 認定番号 第
>>632号 │※┃
┃※│ |2ch.イマノウチ| │※┃
┃※│ |______| 617分達成を称え、ここに表彰いたします │※┃
┃※│ │※┃
┃※│ 平成16年 2月 2ch イマノウチ審査委員会 │※┃
┃※│ │※┃
┃※└────────────────────────────┘※┃
┃※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
保守&sage
『そのう、言いにくいんですが……今晩はミネアさんのところに泊めていただけないでしょうか?』
俺は頭を掻きつつ、決まり悪く笑った。
「えっ……な、なぜですか?」
ミネアさんが驚きの声を漏らす。冗談かそうでないか計りかねるように、紫の瞳が俺を探ってくる。
『宿屋には、あのラゴス侯爵が泊まってるはずです。中で鉢合わせでもしたら、あいつは俺がおとなしくしてい
たとしても突っかかって来るでしょう。そうなったら俺、今度こそ問答無用で牢屋行きですんで……。迷惑な
のはわかってますが、お願いできないでしょうか』
「そ、そうですね……でも、その」頬をあからめるミネアさん。「私たちの家、とても狭いんです。それに、旅で
空けてたせいでほこりっぽいでしょうし、急いで出発したんで、散らかってもいますし……」
『いえ。俺は、どんなところでも構いませんよ。戸口でも物置でも、一晩夜露をしのげさせてもらえれば……
それに、ミネアさんの暮らしてるところなんでしょう。散らかったりしてるとは思えませんよ』
マーニャさんだけならともかく、しっかり者のミネアさんの住まいだ。きちんと整理も掃除もされてるだろう。
「いえっ!あのっ……今夜は私、仕事に出ますし。きちんとおもてなしもできないのに、お泊めするわけには」
『ですから、おもてなしなんて……』
「そ、そうだわ。教会はどうでしょうか?モンドー司祭にお話すれば一晩くらい……あっ、でもきっと駄目ですね。
礼拝堂、今晩なんて怪我とか病気の人でいっぱいになっちゃうはずですから。あんもう、どうしよう」
『は……?』
ひとりで取り乱すミネアさんに、俺はあっけにとられた。家に泊められないよほどの理由があるのか、それとも
単に俺に信用がないのか……。
ミネアさん、もしかして今日の朝のことを気にしてるのかな。それにしては、怒ってる様子がないようだけど。
《ミネアの評価がわずかに上がった》
けっきょく俺は、ミネアさんの知り合いの人のお宅に泊めてもらうことになった。
「フレアさんという方です。私たちと同じ、コーミズ村の出身なんですよ」
638 :
:04/02/07 00:08 ID:WPoy2Z/1
道すがら、フレアさんの人物紹介を聞いた。たまたま村に立ち寄ったご主人(アレクスさんという、街々をめぐ
る商人の護衛の仕事をしていたそうだ)と出会って結婚し、以来モンバーバラで暮らすようになった。2年前に
ご主人が旅先で行方知れずになってからもこの街にとどまっている。ミネアさんとマーニャさんを村にいた頃
からよく可愛がっていて、今でも何かと世話をやいてくれてるということだ。
「私たち、この街に出てきて半年くらいの間、フレアさんのところに住わせてもらっていたんです」
『へー。子供さんなんかは、いらっしゃるんですか?』
「娘さんが一人います。コーミズのご両親のところで育てているんです」
『じゃあ、おひとりで暮らしてるってことですか。今は、何をなさってるんです?』
「フレアさんのお仕事ってことですか?今は、仕立て屋さんのお手伝いをしたり、野菜を作ったりしてます」
『そうなんですか……』
まっとうな仕事の女性が、この街で一人暮らし。いろいろと心細く危険だろうに……。
人ごみの増す街を南から東へ大きく回り込むと、一戸建てが並ぶ住宅街に出た。中流階級の地域らしく、ここ
だけは塀や垣根で家と家が区切られている。街の建物と同じつくりだが、じょうぶで良質な石が使われていて、
窓でひらひら舞うカーテンも色あせていない。
ミネアさんはそのうちの一件の敷地に入り、気配をうかがってからドアをノックした。
「はい、どなた?」
「私です、フレアさん」
「まあ、ミネアなの!?」
戸口が開いて現れたのは、背の高い、上品そうな女性だった。歳は30前後。垂れ目がちの大きな瞳ときりり
とした眉、まっすぐに通った鼻柱が、人の良さと誠実さを表している。化粧も薄く服装も簡素で、出しゃばらない
おとなしい女性のようだった。きっとあと10年すれば、ミネアさんがこういった婦人になるのだろう。
「帰ってきたのね。探してた人は見つけられた?あら、もしかしてこの人が……?」
笑顔のまま、フレアさんが俺を観察してきた。穏やかな笑顔だった。
「いいえ。この人は、サラボナで知り合いになった、ウィルさんという方です。フレアさん。実は今夜だけこの
方を泊めていただきたいんです。訳があって、ジャグロさんのところには泊まれないので」
639 :
:04/02/07 00:11 ID:WPoy2Z/1
「この方を…?」フレアさんが観察の目を強める。俺は、内心どぎまぎしながら、視線に耐えた。
「そうね。あなたたちの家は、男の人を入れちゃいけない決まりだったわね」
すぐにフレアさんは笑い声をあげた。俺はハッとしてミネアさんを見やった。そういうことだったのか。
でもミネアさん、どうして言ってくれなかったんだろう。別に隠す必要もないのに。
「いいですわ。ミネアの頼みというのなら喜んでお泊めします、ウィルさん」
『あ、ありがごうございます』
ほっとして俺は礼を言い、頭を下げた。これで教会で酔っぱらいと眠らずに済む。けど夫の留守に、宿に泊ま
れないようないわくつきの男を平気で泊めても、いいのだろうか。
「ウィルさん」俺が怪訝そうな顔をしたのだろう、フレアさんが笑って言った。「私にはわかりますよ。あなたは、
悪いことなど決してなさらない人です。それに、ミネアの紹介ですものね」
『は、はあ』俺は頭に手をやる。こんな簡単に人を信じてしまう女性がどうして、半分を歓楽街が占めるこの街
で女ひとり暮らしてゆけるのだろう。
「ウィルさん、お入りください。ミネアも、上がっていって。ちょうどお茶にしようとしてたところなの」
「いえ……はい」
遠慮しかけたミネアさんも、フレアさんの微笑みに促され、俺に続いた。
「ウィルさんの村、美しいところなんですね。私も行ってみたいわ」
『ええ。俺の育った村から見た景色、一度、お目にかけたいですね。屋根の上で寝ころんでいれば、首を曲げ
るだけで東の水平線から昇る朝日から西に沈む夕日まで見えるんです』
居間のテーブルに向かい合って座り、入れてくれる紅茶を飲みながら、俺はフレアさんと談笑していた。最初
は緊張して黙っていたのだが、人見知りすることなく話しかけてくるフレアさんに呑まれる感じで、レイドックや
ライフコッドのことを語り、気が付くとずいぶん打ち解けた雰囲気になっていた。隣でかしこまっているミネアさん
のほうが客に思えるほどだ。
『……で、まっすぐ帰っても良かったんですが、旅の縁てやつですし、モンバーバラのお祭りというのを見てみ
たかったもので。それでミネアさんたちに無理を言って、こうしてやって来たというわけなんです』
640 :
:04/02/07 00:13 ID:WPoy2Z/1
詳細を大幅に省いた旅の話を終えて、俺は、紅茶で口を湿しながらミネアさんを見やる。
「そうだったんですか。旅というのも、いいものですわね……」
と、どこか寂しそうにフレアさんは視線を漂わせてから、ミネアさんに向き直った。
「それで、ミネア。オーリンさんは元気なの?」
「えっ?」
ミネアさんの顔色が変わった。明らかに動揺している。オーリンは、男の名だが?
「い、いいえ。オーリンとはあれ以来、一度も会っていません。オーリンがどうしたんですか?」
「さっき、買い物しているときに見かけたのよ。いいえ、見かけたような気がするって言ったらいいのかしら。
声をかけようとしたのだけど、すぐ人の中に隠れてしまって。だから、あなたを見て、てっきりオーリンさんと
一緒に帰って来たのかと思ったんだけど」
「それ、どこでですか?」
ミネアさんが身を乗り出すようにして聞いた。オーリン……俺にとっては初めて聞く名だが、ミネアさんと関わり
の深い人物だということは、ミネアさんの真剣な表情から、よくわかった。
「そうね、ハミルさんのところに入るときだったから、宿屋のあたりかしら。荷物かついでたから、宿屋に泊まる
んじゃないみたい。だけれど……人違いだったかも。何しろ遠目で、横顔を見ただけだから」
「そうですか……」
顔を曇らせて、ミネアさんが座り直す。考え事をするように、ティーカップをじっと眺める。
「あらいけない。午後は、スーザンさんのところを手伝うことになってたんだわ」
急に、フレアさんが叫んで立ち上がった。テーブルを眺め、困った手振りをする。まだ3つのカップは紅茶が入っ
たままだった。察した俺は、すぐ飲み干そうとカップを手に取った。すると、
「フレアさん、ここは私が片づけておきますから」
ミネアさんの言葉に、フレアさんは「そう、助かるわ。お願いね」とほっとしたように言ってから、俺を見た。
「ああそうそう、ウィルさん。私は夕方には戻りますけど、夕食はどうなさいます?」
641 :
:04/02/07 00:16 ID:WPoy2Z/1
『あ、いえ。せっかくですが、お祭りを見に行きたいもので』
「そうですか。でしたら、ミネア、鍵持ってるわよね。それウィルさんに渡してさしあげて。ウィルさん、ばたばたして
すみませんけど、モンバーバラのお祭り、楽しんで行ってくださいね」
フレアさんは俺たちに微笑みかけ、コートを一枚引っかけて、あわただしく玄関を出て行った。
『………』
「………」
他人の家で、いきなり二人きりにされてしまった。俺も、そしてミネアさんも黙り込んでしまう。気まずいというより、
気恥ずかしい。
俺は、ひとまず紅茶を飲み干しながら部屋を眺めてみた。壺も陳列棚も、そこそこ値の張る調度品が並んでいる。
フレアさんの生活は苦しくないらしい。いくつも飾られている勲章や盾、旗は、旦那さんのものだろう。
「ウィルさん。まだ、いただきますか?」
『あ、いえ。もうこれで』
俺が首を振るのを見て、ミネアさんはいくぶんせっかちにカップやお菓子をトレイに乗せ、台所に運んでいった。
心なしか、ミネアさんの手つきも歩き方もそわそわしているように見える。
『………』
さっきの、オーリンとかいう男の話が気になるんだろうか。そういや、礼儀正しいミネアさんが、“オーリン”って呼び
捨てだったよな。いったいどんな関係の男だろう。弟がいるなんてことは一度も聞いてない。きっと―――
1.恋人に違いない!
2.仲の良いボーイフレンドだな
3.従兄弟とか親戚とか
4.昔いた召使いなのかも
5.……バター犬?
事実に一番近い(?)4
この程度の文章を5日ぶり。遅筆もここまでくると呆れますな(ジチャウ
フレアなんていう印象強いサブキャラを使おうか最後まで迷ってたことも・・・うう、言い訳はすまい
今の悩みは、こたつでパソコンやると想像力だけは働いて指は働かないことっす
>>617=630 つまり今はBですか。ゲバンの活躍をご期待あれ(ヲイ
>>618 ど、ども。次回は本編もご参加いただければ嬉しいですかなと
>>619 すなわち21禁もオーケーですね。線引きってどこなんだろう
>>620 ども、また遅れてしまいまして。確かに4だと泊めてもらえた・・・かも
>>621 あいにくとまだです。最速あと4ターンくらいでしょうか
>>623 前回もご参加多くて感動モノでつ。女性っているのかなあ。いるわけないか
>>624 はい、新キャラです。攻略できるかどうかは秘密
>>625 いずれ書いてみる機会もあるでしょうか。資料が全然ないケド
>>626 18禁だって・・・?何を言い出すんだこの参加者・・・w さあてどうでしょう
>>627 嬉しくないハプニングもありでしたw
>>628 実はIQがすごく高い人だったりして
>>629 仲良くなるほど・・・・・・なタイプの女性もいます
>>631 いらっしゃるとは思います。でもまあ、あと1ヶ月半で進級か卒業ですし
>>632,635 ううっ、すみませぇん更新遅くて・・・
>>633-634 ADVのゲーム様のことでしょうか
「DQのギャルゲー」でぐぐれば、サイトさんとログが引っかかります。そちらへどうぞ
ただしこのスレの内容とも漏れとも一切関係ありません。漏れは一般庶民の飛び入りGMでつ
>>636 ありがとう、そしてスミマセソ
>>642 お早いご参加に感謝。この選択肢だとそうなりますね
前回のアンケート。Aが14、Bはゼロ。つまりこれは・・・やっちゃってもいいってことでしょうかw
歴代GMさんのハーレムシーンに(;´Д`)ハァハァしまくってきた漏れですが、
このスレも長い停滞期間があり、少々不安になりまして(なにをいまさら)
というわけで常時sage進行でおながいしますです。。。
ここはひとまず2で行ってみるか
>>645 気にしない。何か色々あっても、色々と多めに見てくれるし。(謎
それに、ここで問題なのは精神面の話だから。ネットなんだし。
>>641 3.
5
ここでボケて!
1
話しかけたときの反応を予想すると
1
が面白そう。
ミネアの慌てる反応に期待して
1
>>644 l>やっちゃう
やっちゃう
やっちゃう
選択肢は普通に3
何はともあれsage
ホシュレット
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|Д`) ダレモイナイ・・オドルナラ イマノウチ
|⊂
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♪ / \ ランタ タン
ヽ(´Д`;)ノ ランタ タン
( へ) ランタ ランタ
く
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|ω’) ジー・・・ (イチニチジュウオドッテル・・・)
|⊂
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ヽ(´Д`;)ノ ランタ タン
( へ) ランタ ランタ
く
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┃※┌────────────────────────────┐※┃
┃※│ ┬┳━━━━━┳┬ │※┃
┃※│ {. ┃ ∧ ∧ ┃/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ │※┃
┃※│ └┨ (・∀・) < 四桁達成おめでとう!すごいよ! │※┃
┃※│ \ Yattane !/. \_______________. │※┃
┃※│ \.__/ │※┃
┃※│ )_( 1 4 0 7 分 達 成 認 定 証 │※┃
┃※│ ) ̄( │※┃
┃※│ / ̄ ̄ ̄\ 認定番号 第
>>655号 │※┃
┃※│ |2ch.イマノウチ| │※┃
┃※│ |______| 1407分達成を称え、ここに表彰いたします │※┃
┃※│ │※┃
┃※│ 平成16年 2月 2ch イマノウチ審査委員会 │※┃
┃※│ │※┃
┃※└────────────────────────────┘※┃
┃※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
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|Д`) ダレモイナイ・・オドルナラ イマノウチ
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♪ Å
♪ / \ ランタ タン
ヽ(´Д`;)ノ ランタ タン
( へ) ランタ ランタ
く
大人げないとか、これは騙りで偽物だとか、言わないでくれ。
すまん、止めたいんだ。止めないでくれ。漏れを。
俺はわかる気がする。
| \
|Д`) ダレモイナイ・・オドルナラ イマノウチ
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♪ / \ ランタ タン
ヽ(´Д`;)ノ ランタ タン
( へ) ランタ ランタ
く
そのあたりでいい加減にしておけと
ミネアさんが敬称なしで呼ぶくらいだから、弟ではないにしても、続柄も歳も近い身内だとみた。さっきの話の
様子だと、かなり長い期間、会っていないらしい。何かあって、生き別れになっていたのか。
『ミネアさん。さっき話していたオーリンさんていう人、どういったご関係なんですか?』
やがて居間に戻ってきたミネアさんに、俺は率直に質問をぶつけた。
「オーリン?」
ミネアさんが俺を見、すぐに顔を曇らせて、うなだれた。まずいこと聞いちまったのかな、俺。
「ウィルさんにはまだ話していませんでしたね。オーリンは、お父さんの弟子です」
『エドガンさんの?』
「ええ。ずうっと昔からの……いいえ。お父さんの、ただ一人の弟子ですわ」
『するとエドガンさんは、お弟子さんはオーリンさん一人しかとらなかったんですか?』
「そうです。長い間オーリンと二人だけで研究をしていました。……あの、バルザックが、現れるまでは」
ミネアさんの表情が険しくなり、強い怒りが光った。膝のところで、拳をぐっと握りしめている。
『ええと……』
俺は次の質問に困った。宮廷錬金術師エドガンの唯一の弟子だというオーリンさん。いったいどんな人物な
のか。聞いてみたいが、ミネアさんに、エドガンさんとバルザックのこと……哀しみと怒りとを思い起こさせて
しまう。迷ってから、
『そのオーリンさんて、エドガンさんが亡くなった後は、どこでどうされてるんですか?』
慎重に聞いてみた。「それが……」ミネアさんはうつむいたまま、向かい側の椅子に腰かけた。
「お父さんが亡くなった後、オーリンは、錬金術の研究を引き継いだんです。でも、うまくいかなくて……バル
ザックに資料を全部といっていいくらい持ち逃げされてしまったし、貯めておいたお金もすぐ底をついてしま
ったので……私も姉さんも励ましたりお金を工面したりしていたんですけど、けっきょく、1年もしないうちに、
オーリンは研究を打ち切ってしまったんです」
665 :
:04/02/12 16:09 ID:r0XSWpP1
『そうだったんですか……辛かったでしょうに』
「ええ。エドガン先生に十何年も仕えてきたのは何だったんだって、泣きそうな顔で嘆いて……。研究所を閉
めた後は、オーリンもこの街に来て、私たちと一緒にバルザックを探すようになりました。でも……しばらく
して、オーリンは、お父さんが生きている間は決して口にしなかったお酒を、ほとんど毎晩、飲みはじめたん
です。最初のうちは、私も姉さんも黙っていましたが、そのうち、街の人と喧嘩までするようになって……」
『なるほど』
「身柄を引き取りに行ったとき、私と姉さんでオーリンを問いつめました。そうしたら……オーリンは、こう言い
ました。私たち、特に姉さんが踊り娘をしてお金を稼いでいるのが、この上なく苦痛だと……先生のお嬢様
たちをこういう、その、いかがわしい街で働かせているのは、先生に申し訳ないと……。不埒な客に私や姉
さんが危ない目に遭わされそうになるのを、何度も助けてくれてましたから」
『責任感が強いかたなんですね』
「ええ。お父さんや私たちには絶対に忠実で、真面目で。その晩オーリンは、自分の故郷のミントスという街
に私たちを連れて行きたいと言い出しました。両親も健在だから、ミントスなら私たちを働かせずに面倒が
見られると。でも、姉さんが大反対したんです。ミントスなんていう田舎町に引っ込んでしまったら、仇討ちを
あきらめることになるって。私も、断りました。占いの仕事が好きでしたし……私も姉さんも、ジプシーとして
の誇りがありましたから。それで……翌日、オーリンは、この街を出て行きました……」
ミネアさんのため息につられ、『そうだったんですか……』俺も息をつく。
「それからもう、3年になります。噂を聞く限りでは、オーリンはミントスの生家に帰ったものの、すぐにまた旅
に出てしまったそうです。それからの消息はわかりません。半年前に私たちがバルザックと出会ってから、
何とか連絡を取ろうとしたんですがやはり無理で……。ああ、私たちがもっと早くバルザックを見つけ出して
いたら……噂のひとつでも聞いていたなら、オーリンはこの街に残って、私と姉さんを今でも手助けしていて
くれたと思います。いいえ、私たちがもう少し、オーリンの心の内を理解しようとさえしていれば……」
666 :
:04/02/12 16:11 ID:r0XSWpP1
『そんな後悔しても、仕方がないですよ』俺は、きっぱりとミネアさんに言った。『悪いのは、すべてバルザック
じゃないですか。あんな奴が引き起こしたことのために、ミネアさんが責任を感じることはありません』
「……ええ、そうですね」
眉と瞳に憂いを引きずったまま、ミネアさんが顔を上げる。「ありがとう、ウィルさん」
『いや、俺は……』言いかけて、口をつぐんだ。ミネアさんは、思い詰めたような顔で、テーブルの上に組んだ
手をぎゅっと握りしめていた。
フレアさんの話が本当なら、喧嘩別れみたいになっていたオーリンさんが戻ってきたってことだ。だったらすぐ
探しに行けばいいのにミネアさんはそうせず、迷ってるらしい。俺に遠慮しているのではないだろう。久しぶり
に会うオーリンさんに何て声をかけたらいいか決まらないのか、それとも……。
俺には、さっきのミネアさんの話に疑問があった。長年一つところに仕えていた、忠実で真面目で責任感の
強い男が、なぜあっさりミネアさんたちを放り出して旅に出てしまったのだろうか。エドガンさんに申し訳が立
たないことを気に病んでたにしても、それだけの人なら、黙ってミネアさんたちに従うのではないか。
まだ何か、オーリンさんがこの街から去った理由があるんじゃないかと思える。俺には話せないようなことが。
だからこそミネアさん、オーリンさんに会いにくいのでは。目の前の彼女の悩み方から、そう感じる。
けど、こんなにもミネアさんが思い悩むということは……。俺は、ミネアさんの美しい顔を見直した。オーリン
さんていう人、そこいらの親戚や友達なんかよりずっと、ミネアさんとマーニャさんの身近にいたってことなん
だろうな……。
《ミネアの評価が上がった》
667 :
:04/02/12 16:22 ID:r0XSWpP1
「ああ、ウィルさん、すみません。ウィルさんがいるのに、ひとりで考え事をしてしまって」
長いこと観ていた俺の視線と目が合って、ミネアさんはあわただしく笑顔を繕った。
『うらやましいですよ』
「え……何のこと、ですか?」
『オーリンさんが。何しろ、ミネアさんみたいな女性にこんなに心配されてるんですから。ずいぶん、気になっ
てるみたいですね』
意味ありげに俺が眉を動かしてみせると、一息ののち、ミネアさんの顔に赤みがのぼった。
「や、やだ、か、からかわないでくださいっ!お、オーリンとは、そんなんじゃありません!」
むきになって否定するミネアさん。うろたえる表情やあわてる仕草が、意外なほどあか抜けず子供っぽい。
俺は、思わず吹き出してしまった。
「何がおかしいんですか!」
『はは、すみません……でも、ミネアさんて』
言いかけて、俺はテーブルに伸びてきた影に気付いた。窓辺にあるヒスイの壺の影だった。この居間に通さ
れたときは、短かった。それが今テーブルの上にある。日が傾いてきたのだ。
お祭りが始まるまでにしておきたいこと、ミネアさんに聞いておきたいことが、まだまだある。そろそろ焦って
事を済ませていったほうが良さそうだな。
『ミネアさん―――』
1.『オーリンさんに俺も会ってみたくなりました。探しに行きましょう』
2.『ひとまず外に行きませんか?日が暮れる前に、出店を見て回りたいんです』
3.『来るとき話した、アリーナ姫様というのはどんな方か、教えてもらえませんか?』
4.『その……恋人とかは、いらっしゃるんですかね』
5.『寝室で一休みしませんか?』
ウィル 現在地:サントハイム王国モンバーバラ フレアの家 所持金:48925G 装備:檜の棒+旅人の服
道具:薬草x3、キメラの翼(マーズの館行き)、ターニアの風鈴、マーズの手紙
体調:良好 精神:好調 パーティ:占い師ミネア <4日目・午後2>
3
がむばれ
またもまたも間が開いてしまいました。しかも話中の時間はほとんど進んでないし・・・
ノベル形式の文章を書いている最中、本家のギャルゲーはやるもんじゃないすね
あちらとこちらの語りの違いに、これでギャルゲーのつもりなのかとギャップを感じて、キーが動かなくなる
といって集中しようとスレを読み直すと、すぐさま誤字脱字見つけて鬱になる。うぼぁー
>>645 WEB上だと店頭と違って18歳以上かどうかは自己責任決定事項なので、まあいいかと(いいのか?)
>>646 2だと、ついでにミネアの交友関係も聞けました
>>647=653
そうですね。そうあってほしいと希望的観測
>>648 ボケだけで終わったかどうかは・・・
>>650 1だと、反応するのはむしろ主人公のほうですた
>>651 あまり彼女をいじりすぎると、ミネアに先入観ない人がミネアの性格を誤解してしまうような
・・・いや、書いてる漏れは楽しいんですがw
>>652 ローラ姫スパイラル・・・とはちょっと違うか
過去のGMさんのように(;´Д`)ハァハァさせられるよう、がんがりまつ!
>>654,655-658,662-663
またも間が開いてしまって _| ̄|○ スミマセソ
>>659-661 漏れにも分かりません。上で踊ってる人と関連するのでしょうか
>>668 一番乗り、ありです。がんがりまつ!・・・え、漏れに言ったんじゃないって?
ここは気分を変えるために 2
好感度上げ狙って
1
>>669 ところでGMたんこれは同時攻略ありなんですか?ありならマーニャとミネアの姉妹丼で(*´Д`)ハァハァ
姉妹丼も捨てがたいがおてんば姫に早く謁見したいので
3
姉妹丼と聞いちゃあ黙ってられねぇ
1
2、な、何か道具でも武器でも何でも良いから欲しい!好感度も取りたいけど………
ちょっと影のある会話をしてしまったし、気分転換に連れ出そう。
2。
1
姉妹シナリオ一直線。
3
話題を変える。
1
最早姉妹丼しか見えない
ふと思ったんだが、この主人公確かフローラに告白っぽいことしてたような・・・
1でいってみるか。
>フローラ
まぁ、ミネアの占いでくいちらかすと予見されたしなぁ。
681 :
671:04/02/14 09:10 ID:SXZuhMqs
なんか漏れの何気ない発言で大変なことになってる気が………
GMたん迷惑かけてたらごめん。気にせずこれからもがんがってください。
てなわけで保守
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|Д`) ダレモイナイ・・オドルナラ イマノウチ
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♪ / \ ランタ タン
ヽ(´Д`;)ノ ランタ タン
( へ) ランタ ランタ
く タン
にょほほほ〜〜
妾の目を節穴とでもおもうたのか〜〜
更新。更新っと。
んー。もうあと一ヶ月もすれば、容量オーバーかな。
>>669 アリーナわっしょいなので、ものすごい勢いで3.
| \
|Д`) ダレモイナイ・・オドルナラ イマノウチ
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♪ Å
♪ / \ ランタ タン
ヽ(´Д`;)ノ ランタ タン
( へ) ランタ ランタ
く タン
いい加減上のAA貼るの止めないか?
誰もいないから止めようがない
現在約437KB
GMさん光臨待ち保守
保守ろうぜ、共に。
俺は椅子から立ち上がりながら言い、玄関へ向かった。昔からのミネアさんたちを知っている人だから、いろいろ
と聞けるかもしれない。それに、錬金術師ってどんなタイプの人間なのか、見てみたいしな。
「あの、ですから、オーリンとは……」
ミネアさん、後ろでなにやら小さい声でぶつぶつ言ってるけど、今は無視。
外に出てみると、日はかなり西に傾いていた。祭りが夕方からだとすれば、人捜しできる時間はわずかしかない。
『あ。こんにちは』
木戸を開けた俺は、槍を持った兵士とちょうど鉢合わせをし、挨拶した。
「何者だ!」
が、真面目そうなその兵士は叫ぶなり身構え、槍を向けてきた。「まず、持っているものを置け!」
『………』明らかに泥棒と間違われている。しかたなく、俺は言われるまま、[ふくろ]を地面に置いた。
「ウィルさん?」
そこへミネアさんが追いついてきた。兵士を見て、笑いかける。
「あら、スコットさん。この方は私の友人のウィルさんです。決して怪しい人じゃありません」
「こ、これはミネアさん。そうであられましたか。とんだ無礼を」
兵士は、ミネアさんを見るなり厳しい相貌を崩し、俺に一礼をもって詫びた。
「今日は月に一度の祭り。不逞の輩には気をつけるよう隊長から厳しく言われておるもので。ウィル殿、どうかお気
を悪くなさらず」
『いいえ。お役目、ご苦労様です』
妙だな。占い師と旅人相手の態度にしちゃ、丁寧すぎる。訝しく思った俺は、兵士に頭を上げるように手振りで示し
ながら、兵士を観察してみた。やっぱり。兵士の目は俺ではなく、ミネアさんを見ている。
「どうも。ミネアさん、今晩もお姉さんが人魚をなさるんですよね。楽しみにしております。それと……」
「ええ。ありがとうございます。さっ、ウィルさん行きましょう」
が、そんな兵士の熱い眼差しにはまったく気付かない様子で、ミネアさんは俺を促して歩き出した。
『あの兵士さん、知り合いですか?』
ちらと振り返ると、兵士はまだ門の前で、俺たちを見守るようにじっと立っている。
「スコットさん?占いのお得意さんですわ。私が卓を出している日はたいていいらして、明日の運勢とか、出世でき
るかどうかとか、尋ねてこられるんです。私の占いは、よく当たるからと」
692 :
:04/02/20 17:50 ID:dpYINyND
『そ、そうですか』
何でもないことのようにミネアさんが話すので、俺は苦笑した。この様子じゃ、気付いてないみたいだな。よほど気
の弱い男ならともかく、さっきの兵士のようなたくましい男が、翌日の運勢を気にするはずがないのに。
『毎日来るお客さんは、ほかにも?』
「ええ、おかげさまで。スコットさんのほかにも、バートさんラスタさん――」ニコニコしながら指折って数え出すミネ
アさん。やはり男ばかりだ。しかも十指に余っている。ずいぶんと競争率高いんだなあ……。
「こんな街なのに、みなさん、いい人たちばかりなんですわ。私は、一回につき10ゴールドいただいているんです
けど、毎日来る人が多いから、3日続けて来た方は8ゴールドでいいと言ってるんです。なのに今いった人たち
は、10ゴールドきちんと置いて行ってくれるんです」
『へーえ……』
また、俺は苦笑する。つまり男どもは、そろって持久戦てわけか。
ミネアさんて、こんなに美人なのに、自身の恋愛については相当奥手っぽいものなあ。少しからかっただけで子供
みたいに真っ赤になって全否定してたし。さらに生真面目ときてて、バックにはあの怒ると怖いマーニャさんがいる
んだから男とすりゃ口説きにくいことこの上ない。たぶん、後腐れない女だけを求めてる色男からは敬遠されて、
今の兵士みたいな、女を正面切って口説けないむっつりスケベだけが残り、いいカモに(ミネアさんにはそんなつも
りないんだろうが)なってるんだな。
「ウィルさん、聞いてます?」
『えっ?あ、すみません。何の話でしたっけ』
あわてて顔を上げ、横のミネアさんを振り向く。ミネアさんはちょっと表情を険しくした。
「宿屋に行ってみましょう、と言ったんです。オーリンが宿をとってるかもしれませんから」
『そうですね。でも…』確かフレアさんは、オーリンさんは宿へは泊まってないらしいと言ってなかったっけ。まあいいか。
俺たちは、街中を大きく東に迂回する道を戻って、南東にある宿屋へと向かった。
世界有数の快楽街でただ一件の宿屋のわりには、謙虚な建物だった。
693 :
:04/02/20 17:51 ID:dpYINyND
5階建てで横に長く、それなりに大きくはあるものの、白煉瓦も看板も派手ではない。とりたてて客引きをする従業
員もいない。にもかかわらず、玄関前は泊まり客でごったがえしていた。宿側が特に呼ぶ努力をせずとも、客は集
まってくるらしい。
ポーチの東の奥には厩舎があり、5頭の馬が顔を出していた。その前には馬車が何台も置かれている。俺たちが
来るときすれ違った、あの乱暴な馬車もあった。じっくり見てみると、奇妙なモールがぶら下がっていて車体はどん
な油が塗ってあるのか知らないがやたらにピカピカ光っている。派手な上、まことに悪趣味な乗り物だ。こんなもん
に乗る莫迦っていったい…………あいつに違いないって奴が、一人いるな。
『ミネアさん』なるべく静かにしていたかったが、周りがやかましくて自然に声が大きくなってしまう。『ラゴ……あいつ
にかけた呪文て、どのくらいで切れます?』
「呪文?」ミネアさんははっと口に手をあて、俺と同じように周囲を見回す。「もう、とっくに目が覚めてるはずです。
ラリホーマでなくて、ラリホーでしたから」
だろうな。あれからだいぶ経つし……中で運悪くあいつに出くわさないことを祈るばかり。ええい、ままだ。
人をかきわけながら玄関を抜け、フロントを目指す。と、「おや、ミネアじゃないか」ホールのほうから声をかけられ
て、ミネアさんが振り返る。小柄な老人が、にこにこして歩み寄ってきた。丸顔で頭の禿げ上がった、いかにも人の
良さそうな老人だった。
「ジャグロさん。いつもお世話になっています」ミネアさんが頭を下げる。この人が、ここの支配人か。
「いやいや。わしんところが儲かってるのも、あんたたち姉妹目当てで来る客が多いせいさ」支配人は、笑いながら
ミネアさんの右腕をぽんぽん叩いた。「しかし、ここんとこどこへ行っていたんだね?せっかく来たのに会えなかった
と客に文句を言われて難儀してたんだよ。……なに、オーリンがこの街に戻って来てる?うちに部屋をとってない
かって?……いや、見とらんな。確かですかと?何を言うのかね。わしは従業員に、一度泊まったお客様の顔は
もとより態度やクセまでしっかり覚えとけと、毎日のように申し渡しておる。そのわしが、昔この宿で雇ってた男を
忘れるものかね。ああ、間違いないよ」
694 :
:04/02/20 17:53 ID:dpYINyND
へー。するとオーリンさんは、この宿屋で働いてたことがあるのか。
「そうですか……ありがとうございます」落胆しながらもお礼を言うミネアさん。
「それはそうと、マーニャも帰ってきてるんだろうね?……そうかい、良かった良かった」支配人は安心したように
幾度も頷いた。「モンバーバラいちの舞姫抜きでの祭りになるんじゃないかと、冷や冷やしてたんだよ。ミネアも、
今晩いつものところかね?うん、それならいい」
やっぱ、マーニャさんとミネアさんてすごい人なんだな。しかも親父さんはあのエドガンさんだし。遺伝するものなん
だなあ、才能って。
「ん、用はそれだけなのかい?」
長居は無用と出て行こうとした俺たちを、支配人が呼び止めた。「そっちの人は、お客さんじゃないんですか」
『俺ですか?はあ、ちょっと別で厄介になることになってまして。この次に来たとき、お世話になりますよ』
「なんだ、そうですか。いやあ、実はもう満室だったんですよ。でもまあ、あと一人くらいは何とかなるかなと考えて
いたところなんで。それじゃ、次は必ず、この宿を」
『どうしましょうか』群衆のあふれかえる通りへ戻り、俺はミネアさんに聞いてみた。『こう人が多くっちゃ、すぐ近くを
歩いていてもわかりませんね。ところで、オーリンさんて、どんな顔ですか。あと体格とかは』
「そう、ですね。背はウィルさんより少し高いかしら。身体全体に筋肉がついてて、腕も脚も太くがっちりしてて、力
の強い人です……もちろん、錬金術師でしたから。髪は黒くてモジャモジャで、あごが丸くて2つに分かれてて、
眉が太くて、でも目は小さくて。鼻は細く尖っていて大きな口をしてました。髭は、生やしてはいなかったわ」
『なるほど……歳は?』
「歳。あっ、そうですね」ミネアさんが考え込む。「ええっと、私たちが助けられる1年前にお父さんに弟子入りして、
そのとき15歳だったって言ってたから……35にはまだなってない、そういう歳だと思います」
『え。そ、そんなに年上なんですか?』ミネアさんが呼び捨てにしてるから、高くてもマーニャさんよりちょっと上まで
だと思ってたのに。35といったら、5年前でも30。けっこうなオジンじゃないか。
695 :
:04/02/20 17:54 ID:dpYINyND
「年上……?」
ミネアさんが不可解そうに俺を見る。『その、俺、てっきり』えーとなんか言い訳をば。『ほ、ほら、よくあるじゃない
ですか。職人さんが有望なお弟子さんに娘を嫁がせて跡継ぎにするって話。だから……ああっ!?』何言ってん
だ俺。誤魔化そうとして、さらにひどくしたような。
「な、何てこと言うのウィルさん!」怒りと恥ずかしさで赤くなったミネアさんが、俺をにらみつけ、怒鳴った。
「お、お父さんは、そんな人じゃなかったわ!そんな気だったら、私たちにジプシーの仕事なんてさせるわけ、ない
じゃないですか。それに、オーリンだって!」
『す、すみません。そんなつもりじゃなく……ただ、ミネアさんの話し方が親しげだったんで、歳が近いのかなと思っ
てただけなんです』
しかたなく正直に話す。それでもミネアさんは俺にきつい目を向けていたが、
「オーリンは、お父さんのたった一人の弟子でした。それだけです」と、気を取り直すように空を見上げた。
『すみません。つまらないことを言ってしまって。あの、それで、ミネアさんたち、普段はどこに住んでるんですか?
もしかしたらオーリンさんが訪ねてきてるかもしれませんよ』
「……そうですね」
ミネアさんが頷き、歩き出す。俺は黙ってついて行った。実のところ、俺はたいして期待していなかった。ミネアさん
たちの自宅を訪ねるほど本気で会いたいのであれば、さっきのフレアさんの家にも来てたはずだ。しばらくこの街
で働いてたなら、ミネアさんたちがフレアさんと親しくしていることは、知ってただろうから。
しかし、35とは思わなかったな。ミネアさんたちとどのくらい違うんだ。ミネアさんが18,9だとして……。
ん?ミネアさん、変なこと言ったな。“私たちが助けられる1年前”。あれは、どういう意味だろう。
聞いてみたいが、前のミネアさんは不機嫌な顔のままで、とてもお伺いができる雰囲気ではない。俺は、首をかし
げながら、ミネアさんの小走りに歩調に合わせて、街を西に横切っていった。
《ミネアの評価がわずかに下がった》
ミネアさんに連れられてやって来たのは、魚問屋や八百屋が軒を並べる街路だった。一軒一軒が狭まり、長屋の
ようになっている。現に、二つ三つの別々の店が同じ建物から商われているのも見受けられた。
696 :
:04/02/20 18:00 ID:dpYINyND
ここも観光客が大勢おり、うち何人かは、買ったばかりの野菜や果物をかじりながら歩いている。
「おおや、ミネアさんお帰り。予定より、ずいぶん遅かったんだね」果物屋の一つで、中年の女に声をかけられ、
ミネアさんが足を止めた。いや、ミネアさんの足が止まるほうが早かったか。
「でも、無事で何よりだよ。お祭りに間に合わせて帰ってきたんだね。ラインハットはどうだったい?」
「ええ。キレスさん、ご心配かけてすみません。ところで……オーリンが、ここへ来なかったでしょうか?」
「オーリン?ああ、エドガンさんのお弟子さんの。さあ、いつ頃の話だい?えっ、今日?見てないねえ。ちょっと
待ってね。コニー!」女性は店の奥に声をかけた。「今日、オーリンさん見なかったかい?そう、オーリンさん
だよ。えっ、もっと大きな声で言いなさい。見てない?ああそう……ミネアさん、来てないみたいだよ」
「そうですか」ミネアさんが眉を落とす。それから俺を見て、「荷物置いてきます」と言うと、その果物屋と隣の八
百屋の間の狭い路地へ入っていった。ミネアさんたち、こんなところに住わせてもらってるのか。
「お兄さん。食べないかい」路地をのぞきこんでいると、女性が、笑ってリンゴを差し出して。俺は遠慮して首と手
を振ったが、「待ってる間退屈だろ」無理に押しつけてきたので、やむなく受け取った。
『ど、どうも。ミネアさんて、ここにお住まいなんですか?』
「うん、うちの北半分を貸してるんだよ。ここらの店はだいたいそう。二階だけ貸すって家もあるけどね」
『男の人を泊めてはいけない、って聞いたんですが』
「当たり前じゃないか。うちは息子が1人と娘が2人いるんだ。いくら分けてあったって同じ家だ、壁ひとつ向こう
で勝手に男連れ込まれてお楽しみされたんじゃ教育に良くないだろ。貸すときに、そういう取り決めをしたんだ
よ。その代わり、うちの商品のつまみ食いを許す、ってね」
怒るような口調で話しているが、顔は笑っていた。「それ、食べないのかい?」
しゃりっ。かじってみると、甘く酸っぱく、たっぷり蜜の入った新鮮なリンゴだった。
「それで、オーリンさんがどうかしたって?」
『ええ、今日この街で見たという人がいるんです。それで、あちこち探してるんですよ』
697 :
:04/02/20 18:04 ID:dpYINyND
「ふーん。オーリンさんも気の毒な人だよねえ。もう少しエドガンさんが長生きしてくれてたら、えらい先生になれた
はずなのに」きっと、俺もオーリンさんをよく知っているのだと思って喋っているのだろう。「でも、だからってお酒
飲んで暴れたりしちゃいけないよ。それでミネアさんやマーニャさんに迷惑かけてたら、恩返しどころじゃないもの
ねえ。今頃、何やってるのかねえ」
だいたい、ミネアさんから聞いたままの話だった。ま、ミネアさんが嘘をつくとは思えないけど。
「すみません、お待たせしました」俺がリンゴを半分ほど食べ終わったところで、ミネアさんが出てきた。別の荷物
を背負っている。
『リンゴ、いただきました』
俺が申し訳なさげに言うと、ミネアさんはくすりと笑い、「いつもすみません」と女性に礼を言った。
「ご紹介してませんでした。ウィルさん、こちら、キレスさん。私と姉さんが借りてる部屋の、宿主さんです。キレスさ
ん、レイドックの国から来た、ウィルさんです」
「レイドックの!じゃあ、サンマリーノって港町の、町長さんの息子さん、知ってるかい?」
『ああ、ジョセフさんのことですか?』いきなりレイドックの話をされて、ちょっと俺は焦った。
「そうそう、ジョセフさん。実はねえ、その町長さんとこにはサンディちゃんていう、そりゃあ可愛いメイドがいたんだ
よ。それがある日、その家の飼い犬に毒を盛ったんじゃないかって疑いをかけられてね」
サンディ。1,2度見かけたことがある娘だ。色白な肌で、大きな瞳にそばかすの浮いた顔の可愛いメイドだった。
たまたま通りかかった俺たちに、優しい声で挨拶してくれたな。ランドと二人で、思わず見とれちまったっけ。あのと
きはマリベルも一緒で、“あんたたちってこういう趣味があんのね”と、呆れられたんだよな。
『その話なら知ってます。ペロって犬なんですよ。それで町長がホント烈火のごとく怒って、サンディさんを旅のキャ
ラバン隊に売り飛ばしてしまったんですよね』
「そうそう!やっぱりレイドックの人だ、知ってるねえ。でも、その先は知らないだろ?」
698 :
:04/02/20 18:06 ID:dpYINyND
『その先……?』
俺は訝しげに女性を見つめ、身を乗り出す。女性は楽しそうに笑った。「サンディちゃんが、どうなったかさ」
この先……ジョセフさんが、何を思ったかサンディを取り返すと叫んで家を飛び出し、しばらくしてサントハイムの
ハバリアって港町で、町長の親戚だかに捕まって、サンマリーノへ連れ戻されたと聞いたが。
ひょっとして、このキレスっておばさん、サンディの行く末を知ってるのだろうか。興味が湧いてきたな。
「あの……」と、ミネアさんが割り込んできた。「キレスさん。その、すみません。私たち、お祭りまでにオーリンを探
したいんです。お話は、今度ということにしてください」
「そうかい」キレスさんはむっと顔をしかめたが、すぐに笑った。「じゃあ、ウィルさん。この続きは、今度来たら話し
てやるよ。あともう少しで日が沈んじまう。人探しなら急ぎな」
『は、はい』背中を押されるようにして、俺たちはキレスさんの店をあとにした。サンディの話、続きが気にはなるけ
ど、今は、今しなきゃならないことがある、か。
陽は、はるか東の森へもう落ちかけている。オーリンさん、日が暮れる前に、見つけられっかな。
《キレスの評価が上がった》
あとオーリンさんが立ち寄りそうなところは、ということで、昔からミネアさんが辻占に立っているという裏通りへ向
かった。オーリンさんなら働いてるところを確かめに来る可能性があるという、ミネアさんの意見に従ってのことだ。
途中、なるべくきょろきょろしながら歩いていたのだが、オーリンさんらしい男は見あたらなかった……というよりも、
候補が多すぎて、まったく区別がつかなかったのだ。35前で、がっちりした身体で、ミネアさんが言ったような顔つ
きの男なんて、ざっと視界に入る人間20人のうち、2人はいた。
少し離れて歩いているミネアさんは、人にぶつからないよう身をひねりながら、ときどき人の波に合わせて後ろを
振り返っていた。後ろに背負った荷物が人をかすめそうで危なっかしく、はらはらしながら見ていた俺のほうが、
何度か通行人にぶつかりかけた。
「ここです、ウィルさん」
699 :
:04/02/20 18:08 ID:dpYINyND
大通りから少し入った狭い脇道、問屋街に抜ける路地の街灯の下で、ミネアさんは荷物を下ろした。なるほど、す
でに同業者が卓を広げている。両側の壁は街灯ですすけているが、地面は掃除が行き届いているのか、目立つ
ゴミ屑などは落ちていない。
「私は準備しますので、ウィルさん、周りを見ていてください」
言われて、俺は壁に寄りかかって首を左右に振り、大通りともう一方を監視する。オーリンさんがこの辺りへ来ると
すればミネアさんの姿を確認するためだろうから、わざわざこの小道を振り返っていく人のうちにいるはずだ。そう
絞り込んでみると、今度は該当する人物は、全く見あたらない。
晴れ渡る空に小さく浮かぶ雲の赤さが、陽の沈みかけているのを知らせている。広場の方角から、大勢の人間の
歓声が聞こえた。日没を待たずに始まってるんじゃないだろうな?
「あっ」
ミネアさんの声とともに、足下のほうで何かが転がる音が聞こえ、靴に何かがあたった。下を見ると、両端が木片
で閉じられた、細長い金属の棒が転がっていた。それを、前屈みになったミネアさんが拾い上げ、集める。占いを
する卓の足らしい。
はっと、俺は目を見張った。体中があわ立った。ミネアさんは、今、前のめりになって卓の足を拾っている。そして、
着ているものは左肩から右の脇の下へかけたローブなのだ。むろん、引き締めてはいるが、上端がわずかに緩み、
垂れ下がってしまっている。つまり……浅黒いの肌に浮き上がるまっすぐきれいな両の鎖骨、銀のネックレスから
下がった青玉、その下がはだけて……肌の下に大きなリンゴをふたつ入れたような丸い膨らみと、タテ棒一本の
谷間が、俺の目の前にのぞいていた。しかも、ミネアさんが腕を動かすたびに、ふるふると揺れるのだ。
ごくり、と俺は唾を飲み込んだ。普通なら、スースーするとかして気になるはずなのに。ミネアさんて、いつもこんな
無防備な姿で占いしてるのか?しかも、下には何もつけていないように見える。これなら固定客がつくのも無理な
いよな……。
「お前、キャストミント越えしてきたなんて嘘だろ。ほーらやっぱり!!」
『わっ!?』
「え?」
通行人の不意の大声。驚いて思わず声をあげてしまった俺を、ミネアさんが見上げてきた。
700 :
:04/02/20 18:10 ID:dpYINyND
『あ、じ、邪魔してすみません。えと、人違いだったみたいです』
顔に血をのぼらせながら、俺は大通りを見張っていたフリをした。ミネアさんは「そうですか」と、また作業に戻る。
ふー、危なかった。俺の信用をまた落としちまうところだった。
けど、こんな道に入ってくる人もいるんだな。そう思っていると、また20歳どうしくらいの男女二人連れが前を通っ
ていく。若い奴らには用はない。と、今度も若い連中ばかりが数人、まとまって入ってきた。俺は無視して、大通り
を行き交う人だけを見張る。耳は彼らに向いているので、通り過ぎがてらの話は聞こえてくる。
「今度は馬一頭にも税金をかけるってさ。王様、いったい何を考えてんだろうな」
「まったくだ。しかも、ハバリアからマーディラスに行く船が打ち切られるってさ」
「キャストミントの森の中で、何者かに滅ぼされた村が最近見つかったそうだ」
「ああ、またそのようなことを。どうか、このわたくしめに免じて、明日はお戻りください」
「うっるさいな!いくらおまえに言われたって、ボクは城になんか帰らないぞ!」
『……?』
喧噪に混じって聞こえてきた女の声に、俺は足を止め、振り向いた。聞き覚えがあると思ったのだが、見覚えのあ
る後ろ姿をした者はいない。ハテ、前はどこで聞いたんだっけ……そもそも、女の声だったか?
頭をひねりつつ、大通りに目を戻した。人の流れが一瞬途切れ、通りの向こうに並んだ家々が現れていた。と、そ
の一つ、煉瓦屋らしい家の陰に、顔じゅう髭だらけの旅装束の男が、身を半分隠すようにしていた。そして、顔の
わりに小さな目で、じっとこの路地を……俺たちを、見ていた。
「………」
男は、俺と目が合い、さっと身を隠す。髭面で髪も伸ばし放題だったが、歳格好は似ている。ひょっとして?
『ミネアさん!あそこへ!』
声をかけておいて、俺はその家へ走り出した。幸い、まだ前は開けている。角を曲がると、さっきの男が、広場に
群がる人混みをかき分けていた。
「ウィルさん、急にどうしたんですか?」
男に指をさしてみせると、ミネアさんは大きく目を見開いた。「オーリンだわ!」
『オーリンさん!』
声を張り上げ呼びかけてみたが、男は振り返ろうとしない。たちまち群衆の中に消えてしまった。
701 :
:04/02/20 18:14 ID:dpYINyND
「間違いなくオーリンだったわ」ミネアさんがほっと息をつく。「やっと帰ってきたのね。無事で良かった」
『どうも、向こうからは会いにくいみたいですね』言いながら、そっとミネアさんを観察してみる。
「3年も会わなかったものだから、きっと恥ずかしいんじゃないかしら。気にすることなんてないのに」
安心と呆れが混じったため息をもう一度つく、ミネアさん。戸惑ってはいるが、特に後ろめたさなどは表情から感じ
られない。オーリンさんが街を出たほかの理由があると思ったのは、俺の考えすぎだったのか。
『もしかすると、俺がいたせいでしょうか』
「そんなことはないと思います」すぐ、ミネアさんが言ってくれる。「律儀な人だから照れてるだけでしょう。でも、オー
リンたら、今晩はどこに泊まる気なのかしら」
ミネアさんが、心配そうに首をかしげる。そういえばそうだ。宿屋もいっぱいだったし、教会にでも泊めてもらうつも
りなんだろうか。まあ最悪、野宿すればいいわけだが。
『でも、ミネアさんがここにいるってことを知ってるってことですし、今夜会いに来るかもしれませんよ。それに、俺が
お祭りでばったり出会うってことも。もしそんなことがあったら、話して、連れてきます』
「そうですね。お願いします、ウィルさん」ミネアさんが微笑む。「すみませんでした、ウィルさん。こんなことをするた
めに、サントハイムに来たんじゃないのに」
『気にしないでください。俺、昨日からこっち、ミネアさんとマーニャさんにお世話になりっぱなしなんですから』
俺が笑うと、ミネアさんもつられるように笑った。
「私は今晩、ここで占いをしています。もし何かあったらおっしゃってください。お祭りが終わってもしばらくは、いる
つもりですから」
『わかりました。じゃ、そのときに』
「モンバーバラ祭、楽しんでくださいね」
あたたかく微笑むミネアさんに見送られ、俺は何度も振り返りながら路地を出た。また、人にぶつかりかけた。
《ミネアの評価がかなり上がった》
ミネアさんと別れた俺は、劇場へ続く道を急いだ。マーニャさんが出演するんなら、祭りの会場はまず劇場だろう。
立ち止まれば押し潰されそうな人波に流されて、俺は大通りから広場に出た。
人の流れは、そこで別の人垣にとどめられ、幾重にも分かれた。
702 :
:04/02/20 18:16 ID:dpYINyND
何だろうと思い、壁際にあった木箱に昇って広場を眺めてみた俺は、ぽかんと口を開けた。
劇場の前に池がある。どこから持ってきたのか、その池を囲むように何百もの長椅子が並べられていた。そこに、
冬眠している天道虫のように人々が隙間なくぎっしりと腰掛け、劇場を、というより劇場の前の、池に十字にかかっ
た橋を向いていた。椅子に座れない連中で身軽そうな奴らは、街灯や近くの建物の屋根に昇って高見の見物を決
め込んでいる。街中にあふれていた人をこの池の前にぎゅっと圧縮したような光景だ。
橋の上では、頭にうさぎの耳をつけ、バストアップを大きく出すスーツ、黒網タイツの女の子が4人、そろって何かを
やっている。と、4人の手元から白鳩が現れ、空へ舞っていった。前座のショーらしい。簡単な手品だったが、
池の水に白波が立つかのような歓声が上がった。女の子たちは一礼し、さらに別の手品を始める。メイン会場は
劇場の中ではなく、この橋の上ということか。
そういえば、ここにあれほど立ち並んでいた露店は一つもない。片づけてしまったのかと思って見回すと、建物の隙
間や、人が行かないような場所――たとえばあの武器防具屋のある一隅――に追いやられていた。そのほとんど
は、めでたく売り切れたのか祭りに集中したいのか主がいない店となっているが、うちいくつかは未だ営業中のよう
で、通りかかる人を呼びとめる声が聞こえてくる。もちろん広場の外の出店は健在だ。いろいろあって武器を探せず
じまいだったけど、まだ望みはあるか?
「いよいよか?」
「はじまるぞ!」
手品をしていたバニーたちが、拍手に送られながら劇場へ入った。入れ替わりに出てきたのは、立派な礼服を着
た年配の男。もう一度拍手が巻き起こって、うやうやしく頭を下げた。開催の挨拶でも述べるのか。
前に広がる人、人、人のため、橋の中央に立っている男の姿はここからだと腰から上までしか見えない。十字橋の
いちばん手前に立たれたら、おそらく顔も見えなくなる。あの橋の上でメインイベントとなるなら、もう少しいい席が
ほしいところなんだが―――
1.このまま見物する
2.なるべく前に席を探す
3.近くの建物の屋根に昇る
4.即行で露店を見てくる
5.いったんフレアさんの家に戻る
懲戒処分受けても文句は言えない8日ぶり更新。残り容量を全く考えてない22KB
テンションをナチュラルハイで止めてしかも身体に影響ないって薬はないものですかね
完全に地と会話で説明してたたき込んでるし。コンスタントな文を書けるようになりたいでつ・・・
>>670 2だと一人になるのが早くなりますた。もちろん気分も変わりますがw
>>671=681 同時攻略はありですが、同時にラブシーンは・・・って想像したら書きたくなってしまうじゃないの
迷惑だなんてそんな。でも責任はとってもらいますよ(何?
>>672 ところで姉妹丼って、姉妹に手を出すだけ?それともやっぱり1対2・・・?
>>673=686 はい。3だと早めにアリーナに気付きました。二喬より孫尚香というところでしょうか
>>674 えー・・・ご期待に添えることができるようがんがります
>>675 人材コレクターよりアイテムコレクターです
>>676 気持ちが内向きのときは外に出ましょう。でもPS版でミネアが喜ぶのは墓場だったり・・・
>>677 1が一番近かったように見えて実は・・・
>>678 この主人公、話題コロコロ変えてばっかりですけどね
トチ狂って5を選ぶ
>テンションをナチュラルハイで止めてしかも身体に影響ないって薬はないものですかね
脳内麻薬がお勧めでつ
>>679 はい、フラグ立ったままです。ふと思ったんですが、DQ5でビアフロは姉妹丼になるんでしょうか
>>680 食い散らかしたっていいじゃないかギャルゲーだもの
>>682-689 ううう、しみましぇんm(_ _;)m。・・・更新のたび謝ってばっかりだ。次こそは・・・ッ!
>>684=690 結局アリーナはこうなりました。えー、今回アフォやったんであと40kb。よーし今月中に・・・無理か
>>704 一番乗りありです。そのエンドロフィンが出ないから困ってるんで・・・_| ̄|○
露店も見てみたい 4.
3
多分自分ならこうする
3
1と2はスリが怖い
現状に甘んじることなく、より高みを目指すべし。
3
4,とにかく装備
上から見れば何か他に何か(オーリンとか)見つかるかもしれないから
3
保守るべし
ほしる
ほとばしる俺の
| \
|Д`) ダレモイナイ…
|⊂ イマノウチ…
|
.||
Å
/ \
( ヽ
∪ ノ
∪∪
中途半端な位置からでは見たうちに入らないし、さりとて前に行っても見えるようになるとは限らない。
山育ちで、木登りは得意な俺だ。上から、悠々と祭りを楽しむとするか。
広場周辺の建物を見回す。1階建ての商店や屋上のあるアパートなどからは、すでに多くの顔が見える。昇って
みたら酔っぱらいの宴会場だった、などというのは御免こうむりたい。人が昇りそうにない建物は……と探すと、
広場の東側に、5階建ての、ただいま建設中のアパートがあった。外装はきちんと仕上がっている。ここから見た
感じでは、平べったい屋根の上には、誰もいない。
混雑を横切って近寄ってみると、勝手に宿泊所として利用されないようにするためか窓や扉は閉ざされていた。
中や上に人のいる気配はない。うまい具合に、角のところで煉瓦が互い違いに組まれていて、よじ登るのは(俺
ならば)楽だ。足をかけてみると、思ったより足場になる面積は狭いものの、頑丈な煉瓦で、漆喰もしっかりして
いる。
よし、いってみるか。
俺は、意を決して壁を昇り始めた。人々は劇場前でおどけながら話をする男に夢中で、俺に注意を払おうという
者はいなかった。万一とがめられたら、このお祭りに初めて来た旅人ってことで、見逃してもらおう。
途中、欠けた煉瓦に指が滑ってぞっとすることもあったが、比較的すいすいと登れ、男の話が終わらないうちに
壁のいちばん上に着いた。
あとわずかで屋上。しかし困ったことに煉瓦の壁が腕の太さほど外へ出っ張っていて、手を伸ばしても上まで届
かない。これ以上昇れば後ろへ剥がれ落ちる限界まで身を乗り出してもリーチがほんのわずか足りない。まず
いな。こんな不安定な場所からなんて見物したくない。ピッケルでもあれば……。
ピッケル?そうだ。
俺は背負った[ふくろ]に手をやり(下に誰もいないのを確認しつつ)ステッキを引っ張り出した。柄の部分をしっか
りと握り、鍵状の部分を煉瓦の上に引っかける。高級品だから丈夫なものだ、と信じよう。
俺は、ステッキを持った左手に体重をこめ、身体を引き上げながら右手をいっぱいに伸ばした。指が煉瓦の上面
にかかる。やった。笑ったそのとき、左手に振動が走った。ステッキが煉瓦を滑っている!
717 :
:04/02/25 17:30 ID:CdzKg/Xn
『あっ!』
引っかけ直そうとするより早く、ステッキは煉瓦からずり落ちていた。全体重のかかることになった右手の中指が、
あっさりと煉瓦から外れる。両手が引っかかりをなくしたため、身体は後ろに傾いていく。上半身がふわり浮かぶ
ような感覚。
『うわあっ!!』
思わず、俺は悲鳴を上げた。必死で両手を振ったが、手のひらもステッキも壁を擦るだけで、とても体重を支えき
れない。なんてこった、落ちる!落ちちまう!この高さからじゃまず命はない、間違いない!!
がちっ。
観念してつぶりかけた目に、上からにゅっと伸びステッキを掴む手が、映った。身体の傾きが止まる。俺は一瞬
あっけにとられたが、俺の両脚は反射的に足場を確保し直し、右手は身体をしっかり壁にへばりつかせた。
『う……?』
助かったのか?助かった。安堵とともに、汗が全身を冷やした。歯ががたがた震える。俺の落ち損なった下では、
俺の悲鳴を聞いたらしい幾人かが俺を見上げ、なにやら叫んでいた。危ねえな気をつけろ、程度の言葉だろう。
「早く上がれ!」
上から、怒鳴る声がした。「祭りがはじまっちまうだろ」
ぞんざいな言葉遣いだったが、少女の声だった。これ、さっきミネアさんのとこで耳に入った、女の声……?
あわてて俺は屋根を見上げた。とたんに目を見張り、ぽかんと口を開ける。俺でなくたって驚くだろう。高すぎて
誰も昇らないだろうと思っていた建物の屋根から一つの顔――あどけない少女の顔が俺を見下ろしていて、俺
の命、俺の体重を捕まえてくれているのが、その少女の細腕なのだから。
『あの……?』
「早く上がれって!」少女が呆然としている俺をにらみつけ、怒鳴った。「それとも、下に降りたいのか?」
『………』
俺は、少女が掴んでいるステッキに慎重に体重を加えてつつ、右手を伸ばした。恐ろしいことに、少女は俺が屋根
に取り付いて引き上がるまでずっと、平気な顔で俺の重さに耐えていた。なんなんだ、この女の子は?
《????の評価がわずかに下がった》
718 :
:04/02/25 17:33 ID:CdzKg/Xn
「むちゃだな。そんな滑りやすいの使うからだ」
ようやく手すりを乗り越えて這いつくばる俺に、少女が言いはなつ。俺は、苦々しくステッキを見、[ふくろ]に黙って
しまって、起きあがった。そして、目の前の小柄な命の恩人を、未だ驚嘆の思いで眺めた。
変わった形の、露草色のとんがり帽子。陽の光をたくわえて輝いているような亜麻色の髪。自然にカールして額
を覆う前髪。その下にのぞく日焼けした顔はと見れば、凛とした長い眉に、ぱっちりと大きなガーネットの瞳。細く
まっすぐな鼻柱の先は丸く尖り、唇は幼く紅い。マスタード色の皮のドレスを身につけた身体は、いくぶん丸みを
帯びてはいるものの、腕も脚も腰も(残念なことに胸も)ほっそりとして、“鹿のように華奢”な女の子の理想体の
ような姿だった。
こんな、顔も身体もガキっぽい女が俺を持ち上げてたのか?魔法でも、使えるんだろうか。
ん?俺は、少女にさらに目を凝らした。……この娘、やっぱりどっかで見たような……?
「何、じろじろ見てるんだ」
少女が不機嫌そうに言い、俺をにらむ。
『ありがとう』俺は、はっとなって、頭を深々と下げた。『君が助けてくれなかったら、どうなってたことか。本当に、
ありがとう。恩は一生忘れないよ』
「……大げさな奴だな」少女は指の先で頬を掻いた。
『命を助けてもらったんだから、このくらい。あ、俺はウィル。君は?』
「ボクは……いや、名乗るほどのもんじゃない」
少女は面倒くさそうな表情で帽子に手をやると、「もうはじまっちまうじゃないか」広場側に歩いていった。
なんだよ、可愛げのない。俺は肩をすくめた。
……にしても、この娘。腕力にも驚くけど、俺でさえ命の危険を味わってここへ昇れたってのに、どうやって。俺
以上に木登り壁登りがうまいってことか?そんな女、山奥のライフコッドにすら……。
あ、ビアンカがいたか。そもそも俺の木登りのワザはビアンカに仕込まれたんだ。思い出し、ちょっと苦笑する。
だとしても、だ。俺は、少女の帽子とマント姿を見直した。ビアンカは俺より年上だからいいが、この娘はどう見た
ってターニアと同じかその下ってとこだ。本当に一人でうまく壁を昇って来たというのなら、なんか悔しい。
719 :
:04/02/25 17:37 ID:CdzKg/Xn
それに、この娘。絶対どこかで会ったことあるんだけどな。向こうは俺を覚えてないようだけれど。果たして、
いつ、どこでだったか。えーと……そうだ。ヘンリーと一緒のときだった気がする。すると、ラインハットでか?
『おっ?』
俺の思案は、下からのドッという歓声に中断された。続いて、割れんばかりの拍手。
「どうしたんだ。はじまるぞ」
少女が振り返り声をかけてくる。我に返った俺は、すぐさま手すり際に駆け寄った―――
1.少女の隣から祭りを見物する
2.少女とは離れて祭りを見物する
3.隙ありとばかりトンガリ帽子を奪う
4.とりあえず襲う
ウィル 現在地:サントハイム王国モンバーバラ 所持金:48925G 装備:檜の棒+旅人の服
道具:薬草x3、キメラの翼(マーズの館行き)、ターニアの風鈴、マーズの手紙
体調:良好 精神:好調 <4日目・夕方(モンバーバラ祭)>
何も考えずに3を選ぶ。
大口叩いといて5日ぶりの更新。ようやく9人目のヒロイン登場。やっとサントハイムシナリオがスタートっす。
1月中にお祭り開始させると言っといて2月ももう終わる・・・
春に向け思い切って髪を短くしたら、とたんに風邪ひいた。いつの間にこんなヤワになったんだ漏れわ
>>706 檜の棒よりはマシなものが買えました
>>707 でもこんな泥棒はだしの行為まではしないかな?
>>708 おおスルドイ!というよりお約束なのかなあ。
>>709 建設的ですね。自分の能力に釣り合わない野心も考えものですが
>>710 もうあとはタンスや壺をあさるしかない・・・?
>>711 いろんな人を見つける予定で〜す(ネタバレ)
>>712-715 m(_ _)m もはや無言で土下座
>>720 一番のりthx!フィーリングで選ぶのは構いませんが覚悟は決めといてくださいねw
まだ死にたくないので1w
んじゃ 2
1にしようか
1
必要以上に接近したまえ
あえて離れる
2
よ……
……。
……1。
焦らなくてもまだまだ大丈夫よ。うん。
3
・・・でいけば正体がわかりそうだが危険な香りがするから
1
1
わざわざ離れる必要はないだろう
1,1,1,1,1!1!!1!!!1!!!!!!!!!
我々は3年間m(ry
保守らねば
俺は、少女のすぐ左隣、手を伸ばせば肩を抱けるほど近くに立ち、少女がそうしているように手すりへ肘を乗せ
た。
「………」
少女は、ちらと横を見たが、わずかに肘を退いただけだった。夕日を受けて赤く染め、楽しそうに前を眺めている。
俺も、前方の景色を見渡した。拓けたステップ草原と森の先、西に横たわる山々に陽が沈みかけ、赤から暗の
夕闇が街を包み込んできている。しかし祭りの会場である広場とその池は、いつの間に火が灯されたのか高低
さまざまな松明が何十本も輝き、そこだけ昼が残っているように明るい。
照らし出されるステージ、池の十字の橋に、さっきの男に代わってぞろぞろと出てきたのは、赤や青の薄絹を体
に巻いた女の子たち、ざっと10人。マーニャさんはいないかと目を凝らしてみたが、みな色白の、幼げな顔立ち
の女の子ばかり。一列に並んで一礼し、音楽に合わせて脚を高く上げ、横にきれいにそろったダンスを踊りはじ
める。遠目から見ても合格点を与えられるような可憐な娘たちの舞台に。観客たちが歓声を上げ、口笛を吹く。
きれいな踊りだけど、“モンバーバラ祭り”のイベントにしては、物足りないな。
そう思って見ていた俺は、彼女たちは前座なんだと、ようやく気付いた。よく観れば、そろったように見える踊りも
何人かがもたついたり、一人だけ早く足を上げたりしている。観客たちはむしろ面白がって、逸れた動きをした
女の子に激励の声援を送っている。すると失敗した娘は顔を赤らめて、ますます、ぎこちなくなる。それを見て、
さらに笑い声があがる。
まったく、よくない趣味だ。駆け出しの踊り娘にわざと失敗をさせて楽しむとは……。
『あ!』
何度も野次を飛ばされていた右から二番目の女の子が、開脚したまま尻餅をついた。「おぉーっ!」前列の観客
が目を見張り、ほうっとした息を混ぜて歓声を上げる。あわてふためいて女の子がきゅっと膝を閉じる。ま、まさ
か……見えた、のか?
「おい、そんな前に出るな。また落ちるぞ」
半身を手すりから乗り出した俺は、少女に肩をつかまれ、後ろへ引き戻された。
733 :
:04/02/28 19:57 ID:4VIaDFkq
「んーとに懲りないやつだな」
呆れ顔で少女が言った。『ど、どうも』俺は、卑猥な方向に傾いていた頭を振り払って、気を取り直す。
『………!?』
俺は、はっとなって少女を見つめた。前にもこんなことがあった。今度こそ、確かだ。後ろから女の子に肩を引っ
張られて……いや、あのときは襟首だった。その娘も、こんな赤っぽい髪で、くりっとした目をしていて……違う、
男の子だったような??なんだよ、思い出せたと思ったのに!
「ボクの顔に、何かついてるのか?」
見つめられている少女が、わずらわしそうな目つきを返してきた。
『………』
ここまで思い出しかけてるのに出てこないのは、どうにも心持ちが悪い。やむを得ん、失礼を承知で聞こう。
『変なこと言うようだけどさ。きみ、俺に会った覚えはない?』
「そなたと?」少女は探るように目を細め、じいっと俺を見つめた。
そなた!?俺は首をひねる。なんでこの娘の口からそんな上品な言葉が……いったい何者なんだよ?
『覚えがない』少女は、やがて首を振った。「ボクは、物覚えがそんなによくないんだ。今まで会った人を、いちい
ち覚えていられやしない」
『そ、そうか。……ラインハットの城に行ったことは?』
「ラインハット?」少女が眉をひそめた。「なんで聞くんだ、そんなこと」
『じゃあ、レイドックには』
少女の質問には答えず、聞いてみる。すると少女は目を大きく見開き、まぶたをぱちぱちとやって、
「レイドックなら、ある」と、間を置いて答えた。
『やっぱり!いつ頃?何年前?』
俺が勢い込んで聞いたので、少女はあっけに取られた顔になり、ちょっと身を退いた。
「3年くらい前だな。うちのオヤジがどーしてもって言うから、行ってやったんだ」
『それ、たしか?』
「嘘言ってどうすんだ」
3年前。そんなに昔じゃないな。俺が、しょっちゅうレイドックの城に遊びに招かれてやっていた頃だ。城内、もし
くは道中で、すれ違ったことがあるのかもしれない。ヘンリーの奴が来るたび、メイドやシスター、旅の娘の品定
めなんかして、可愛い娘には声かけたりもしてたしな。
……?それなら覚えてそうなものなのに。何でこんなに思い出すのに時間がかかるんだ?
734 :
:04/02/28 19:59 ID:4VIaDFkq
『レイドック行ったのは1度きり?その前にも、ってことはないか』
会ったのはもっと以前かもしれない。そう思い確認すると、急に、少女はむっと顔をしかめた。
「一回だけだ。誰が、あんなつまんない国に二度も行くもんか」
『……つまらない。だって?』
ぴくっ。聞きとがめ、俺は少女を見やった。レイドックの国民として、今の言葉は聞き捨てならない。
「強い奴がいなかったからな。みんな腰抜けな奴ばっかでさ」
ため息混じりに言う少女に、俺はかちんときた。『腰抜けばかり、だと?』
「ああ。兵士も騎士も魔術師も、ボクとまともに手合わせしようって奴は一人もいなくてさ。ほんっと、退屈だった。
それにシエーナって街へ……」少女は言いかけ、途中でやめた。
『………』
俺は、少女に腹を立てながらも、レイドックの兵士たちを思い起こした。レイドックで最強の兵と言えば何たって
ソルディ兵士長だが、誇り高いソルディさんだし、兵士達の手前もあるから、こんな小娘相手に手合わせすると
は思えない。槍を持たせればレイドック一と言われる近衛第二隊長のホリディさん、弓の名手の都督ネルソン
さんは、逆にレイドックの国柄のせいか謙虚で、俺たちにはその腕を見せてくれたことがない。ホルスの剣の指
南役フランコさんは、教育係も兼ねてる文官型の人で、手合わせでホルスが俺や相手だとあからさまに手を抜
く。ホルスがあんな小賢しい軟弱者に育っちまったのも、半分以上はまともな手合わせをさせなかったフランコ
さんたちの責任だ。まあ、本来仕付けられるべきホルスを押しのけてフランコさんに剣を教わってた俺やランド
にも、万分の一かの責任はあるのだが。
『……言うなあ、きみ』俺は苦笑いしつつ、少女に諭した。『でも、レイドックには弱い奴ばかりじゃない。その気に
なれば、君なんて簡単にねじ伏せられる人だって、何人もいるよ』
735 :
:04/02/28 20:00 ID:4VIaDFkq
「いーや。どいつもこいつもひ弱すぎだ」少女は肩をすくめ、舌打ちした。「ボクがちょっとにらんで見せるだけで、
さっさと逃げちまうのばっかりで。あれで兵士やってるなんで、給料ドロボーもいいとこだよ。いちばん最悪なの
が、あっこのホルスって王子。ボクが女だと分かると偉そうな態度になっといて、腕試しに組み手でもするかっ
てことになったら、腹が痛いとか勉強があるだのって。まっ、鈍くさくて弱虫で、どー見たってボクにかなうとは
思えなかったけどさ。あれなら、ゲバンの莫迦息子のが、ずっとマシだ」
『何だとっ?』
俺は思わず引きつって少女をにらんだ。ホルスより、あのラゴスのがマシだと?俺は別にホルスの奴をかばう気
は全然ないが、あいつは少々優しく生まれつきすぎただけだ。人を人とも思わない態度で女に言い寄って、いざ
となると飛び道具持ち出すような卑劣な奴より、はるかに無害で人間的にも上に決まってる。
『だったら……』俺は怒りを抑えながら、言った。『俺と勝負してみるか?俺も、レイドックの人間だ』
「そなたが?」少女は、俺に燃えるような瞳を向けたが、すぐに首を振った。
「やめとく。ボクは、弱い者いじめはしないんだ」
『な、なっ?』
俺は目をむいた。カッと頭に血がのぼる。拳が震える。ここまで小馬鹿にされて黙っているのは男の恥!―――
1.正々堂々、キッパリ決闘を申し込もう。
2.生意気な女の横顔に無礼討ちで左フック!
3.飛びかかって床に押し倒し、男の怖さを思い知らせてやる!
4.いや、小娘相手に喧嘩ふっかけるのも男らしくない。ここはこらえよう。
5.こんな女ともう関わりたくない。離れたところから見物するとしよう。
どうせ勝てないのだから2や3は選ぶだけ無駄か。4、5も逃げたと思われるだろう。
と言うわけで消去法で1でやられることを選択します。
迷うな…
1は好感度が大幅に上がるか下がるか…まさに天国か地獄かって感じだ。
いいや、1にしようw
そういや、アリーナの一人称は結局「ボク」になったのでつね(・∀・)
あと20KB。GMの分際で漏れはスレ立てできないホストなので、そのときにはどなたかおながいしまふ
大規模なユーザー情報が漏れたところなんですが、ネット繋げなくなるなんてことないだろうな子系さん
>>722 えっ?どうして彼女の正体がバレてるんだろうw
>>723 2だと、あまり会話なく祭りが進みますた
>>724 はい、1にしますた
>>725 彼女に接近しすぎる者にはどこからか死が・・・
>>726 上にあるとおり、祭りに集中する選択肢ですた。実はそれなりに重大(ネタバレ)
>>727 賢明なるご判断ですたw
>>728 急いては事をし損じる、でつね
>>729 そうなんでつが、男の防衛ラインが半径1メートルって女性もいますんで
>>730 3年間・・・お待ちになったのでしょうか。彼女攻略はまだ待たせるかもしれませんです
>>731 今回は3日で更新でつ!・・・全く威張れたことじゃないな_| ̄|○
1、断られたらその時はその時
黙っているよりはこっちの方が良さそうな気がしないこともないが
喧嘩好きと見られるのもやだなぁ
未だにボクには違和感があるが、皆はそうでもなさそうだな。
以外とメジャーなのか?
ま、それはともかく
1
で、男を見せろ。
男らしく
1
たぶん戦闘はまた選択になると思う(?)からうまくいけば勝てるかな?
5
DQNに関わりたくない
1 だな。
やられはするけど根性見せて好感度うp。
彼女の武勇伝を聞く選択肢は無かったか…
1
ラッキーパンチに期待して 1
『今の言葉、取り消してもらおう!決闘だ!』
叫んで、少女から飛びすさる。両拳を顔の前で構え、少女をにらみつける。
あの、女の子のものと思えない腕力。レイドックじゅうの兵士に喧嘩をふっかけたという物言い。腕にそこそこ
の自信があるとみえる。きっと、女相手ということで本気でかかって来られたことがないのだろう。だが、俺は
違う。
大人げない、男らしくないと言われるだろうが、ホルスと出自の国、それに俺まで侮辱されたんだ。たとえ女だ
ろうと、一発痛い目にあわせてやらなきゃ気が済まない。
「待て。どーしてもボクと戦いたいっていうなら、祭りが終わってからにしてくれ」
手すりを背にした少女が、肩をすくめ、なだめるように言ってきた。
『ふざけるな!』
少女の言葉よりも態度に、俺は怒鳴った。嬉しそうに口をほころばせる少女の顔が、俺の背後から昇る月の
光に、はっきりと映し出されている。完全に、馬鹿にしてるな。
『さっさと構えろ。それとも、さっきレイドックについて言ってたこと、謝るか?』
「なんでだ?ほんとのことじゃないか」
不敵な笑みのまま少女は事も無げに言い、さらに睨みをきかす俺を見て、眉をしかめ、帽子に手をやった。
「そりゃー、ボクもたまにはウチの兵士以外と戦ってみたいんだけどさあ……今はちょっと。約束があるから」
『どんな約束だ?破門でも食らって、魔法を封印したとでも言うのか』
「なに言ってんだ」少女が首を振る。「ボクは、魔法なんて使えやしない」
内心、俺はほっとした。今度こそ体と体だけの勝負ができそうだ。バルザックみたいな魔法使いとまた戦うのは、
俺も何かしらの呪文を覚えてからにしたい。
748 :
:04/02/29 23:43 ID:kD0YWYcM
『好都合だ。俺も魔法は使えない。だったら、約束って何だ』
「何でもいいじゃないか。とにかく、ここは抑えて、おとなしくダンスを見よう。その後でなら、いーっくらでも相手
してやるから。な?」
少女が、胸の前に手を合わせ、片目をつむってみせる。俺が普通の精神状態であれば可愛いと感じたろうが、
今の俺には、おちょくってる態度にしか見えなかった。“馬鹿にするんじゃねえ!”思わず出かかった言葉を飲み
込むと、俺は、気をできるだけ冷静にさせ、少女に言った―――
1.『……わかった、いいだろう』
2.『男が一度抜いた拳を下ろすことはできない。かかって来い!』
3.『だったら、ちゃんとその帽子を脱いで謝るんだな』
4.『じゃ、とりあえずキスさせろ』
1
容量残り14kb!ようこそ3月!(意味不明)
>>736 一番乗りどもども。消去法使うような選択肢ですみませんです
>>737-738 ご安心を。好感度は下がってもわずかです。何せまだ好感度一桁しかないんで
はい。いろいろありましたが結局アリーナはボ・・・えっ、な、何のことですかぁ?
>>740 彼女は三度の飯より喧嘩好きなのでご心配なく
>>741 漏れも数年前初めて読んだときは吐き気を催しましたが、慣れというのはおそろしい
>>742 もちろん戦闘も入力制です。そしてもちろん、簡単に勝たせやしませんw
>>743 一応ストーリー的には関わらざるを・・・げふんげふん
>>744 根性って言葉が廃れて久しいですが、メディアの中には残ってほしいものでつ
>>745 いや、あまり語らせると正体がバレますです。え、何を今更って?
>>746 ラッキーパンチも普段の練習の賜物と、どなたかが言っておられたような
2
今宵の虎鉄は血に飢えておるぞ
4
突発的な言動で相手を惑わし、煙に巻くか隙を突く方向で
2
Just Bring It!(かかってこいや!)
正直、ここまで渋るとは思わなかったから迷うな・・・
じゃ1で。
3 正体さらしてやる
1
他選ぶとマーニャのダンスも見れない予感
テンプレ案誰かよろしく。
漢として友を侮辱させられ黙っているわけにはいかぬ、が人間として舞を解さぬのも嫌だ
と言うわけで3
頭に血が上ると勝てる喧嘩も勝てん。頭を冷やす意味で1
スレ立て無理でしたーー。
誰かよろしく
漏れも無理だった。だれかヨロ。
みゅりですた
ほしゅ
容量も最下層までもあと少し
次の更新は次スレでかな。
>765
小説スレは最下層にたまりやすい。一度スレッド一覧で見てみるといい。
怒りを飲み込んで構えを解き、腕を下ろした。少女の言うことにも一理ある。それに、女と決闘してたがために
マーニャさんの檜舞台を見逃したとあっちゃ、またマーニャさんに何されるかわからないからな。
『一時休戦だ。ただし、今の言葉、忘れるなよ』
少女に釘をさしてから、俺は手すりに寄った。橋の上で、女の子たちが拙いダンスを続けている。
「そなた、なかなか物わかりいいじゃないか」
『あのな』笑う少女に、俺は苦々しく顔をゆがませる。『俺も祭りが見たいだけだ。……それに、さっき助けて
もらったばかりだからな。そっちの都合を優先しなきゃ、恩知らずってことになる』
「なんだ」少女はつまらなそうに鼻を鳴らした。「あんなことで、恩だとか言われたくないんだけどな」
『それは俺の勝手だ。だいたい、どうしてきみは、こんなところに上ってきたんだ?』
「大騒ぎされたくなかったし、下だと、あの莫迦がうるさいから」
『あの莫迦?』
「なんでもない。だったら、そなたは?」
『俺は、落ち着いて祭りを見たかっただけだ』
「ふーん。それなのに、ボクと決闘したがったのか」
『まだ、その気だぞ』混ぜっ返してきた少女を、俺はにらみつけた。『今からでもやるか?』
「そう怒るなよ。そなたもお祭り見たいんだろ?だったら、ボクと同じじゃないか」
『………』少女がまた片目をつぶってきたので、俺は唇を噛み、黙った。
「ここはさあ、仲良くマーニャのダンスを見ようぜ。そなたを見てたら、そなたとの決闘、ボクもなんだかわく
わくしてきた。ボクも我慢するから、そなたも頼むよ」
何だそりゃ。俺は怒りを半分呆れに変え、無邪気な笑顔から目を背けた。仲良くって……この娘、自分の侮辱の
言葉により俺を怒らせたんだという肝心なことを、果たしてわかっているのだろうか。
『……仲良くしたいんなら、名前くらい教えろ』
俺は、目をそらしたまま言った。すると少女は笑いを止め、「なんで?」また、俺を探るように見つめた。
『祭りが終わったあとトンズラされたら、探しようがないだろ』
「逃げやしないよ」
『あいにくだが、逃げる奴ってのは、たいていそう言うからな』
「ボクが逃げると思ってるのか?」
『逃げたいのか?』
「ぶ、無礼だぞ!」少女が眉をつり上げた。瞳に炎が沸き上がる。
771 :
:04/03/07 13:46 ID:/RBi6MJX
「おまえ。ボクが逃げるなんて、本気で思ってるわけじゃないだろうな?」
『待て。決めつけたわけじゃない。俺は、きみの名前を聞きたいだけだ』
俺は、すぐ手を振って少女をなだめた。危ない危ない、今度はあっちから決闘を申し込まれそうな勢いだった。
せっかく共通の目的のもと結んだ休戦協定、こんなにすぐ破棄したくない。
『教えてくれないか。言いたくないなら、それでもいいから』
顔を見つめながら真面目に聞くと、少女は一転、眉を下げて唇を結び、困ったような表情になった。頭の帽子を
直しながら、俺を見たり目を泳がせたりしている。それほど隠さなきゃならないことなのか?
「よし」やがて、少女はなにやら意味ありげに笑い、言った。
「ボクの名は、クリフトだ。よーく覚えとけ」
『クリフト!?』俺は驚いてぽかんと口を開けた。いやに男っぽい、いや、男そのものの名前だ。
『それ……本当に、きみの名前か?』
「そー。いい名だろ?」
少女――クリフトが、ニカッと笑った。楽しげな、不気味な笑いだった。
俺は首をひねる。言いたくなかったのはこのせいなのか?それにしちゃ態度が妙なのだが……。こんな小生意気
な性格に育ったのは、こんな男名をつけられたためなのだろうか。こんな可愛い顔の娘にクリフトなんて名付け
て男っぽく育てた親とは、機会があったら一度、じっくり話しあってみたい……。
俺が考え込むのを見て、クリフトはにやついたまま、舌の先をちょろっと出した。
《クリフト?の評価が上がった》
「さー、もういいだろ。マーニャを見よう、マーニャを!」
クリフトが、手すりにもたれて池をのぞき込む。納得いかなかったが、俺も、舞台を見た。
踊っていった女の子たちが手をつなぎあい、客に礼をしているところだった。太鼓やハープを持った連中が池の
脇からぞろぞろと出てきて、頭を下げながらおのおの楽器を構える。彼らに拍手したのは近くにいた人たちだけ
で、九割を超す観客は「マーニャちゃんはまだか!」と幾人かで連呼しながら、期待するように劇場の扉に顔を
向けている。扉の前では、踊っていた女の子たちが二列に分かれて両側に並び、汗だくの顔にせいいっぱいの笑
顔を作って、まとっていた絹をひらつかせている。楽団の一人が銅鑼が鳴らした。同時に、劇場の扉が開いた。
772 :
:04/03/07 13:51 ID:/RBi6MJX
「マーニャちゃわぁーん!!」
「いよっ、サントハイムの黒い向日葵!」
通ぶった掛け声が聞こえ、ワーッと、俺たちの建物をも揺るがすほどの大歓声があがった。扉から銀の胸当て
やアクセサリーを身につけた5人の踊り娘が、体を左右に振りつつ一列に歩み出てきた。マーニャさんなんて
いないじゃないかと思っていると、
「女王様の、お出ましだな」
クリフトが身を乗り出したので、俺もそれにならう。クリフトの言うとおりだった。5人のあとに現れたのは、前と
同じ5人の銀色の踊り娘を従えた、ほかならぬマーニャさんだった。松明の光を受けて虹色に輝くティアラを紫
髪にかざり、輪を幾重に組み合わせた金色の胸当てをつやつや光る褐色の肌に巻き、その下に小さな宝石を
ちりばめたスコートをつけ、両の手首、足首とも、小手のように幅の広い金の腕輪とやはり金のアンクレットで
飾っている。月と炎の光の中、10人の踊り娘を従えて毅然と微笑みを浮かべているマーニャさんのきらびやか
な金色姿は、まさに異国の女王そのものだ。
「マーニャちゃん!待ってたよ!!」
「こっち向いてー!!」
「今日こそ脱いでくれーー!!」
彼女が登場するなり、座っていた観客の前半分が立ち上がり、すぐに後半分も立ち上がった。ピーピーとさか
んに口笛を鳴らす者、大声で卑猥な歓声を上げる奴、両手で大げさな投げキッスをする者、ただひたすら拍手
をする者。広場を埋め尽くしている観客だが、いま、行動で分類するとこの4パターンしかいない。おかげで、
ステージではマーニャさんがウインクしながら手を振って何かしゃべっているのに、俺にはほとんど聞こえてこ
ない。いらだっていると、舌打ちの音がした。クリフトも、観客を見渡し、目を細め頬をぴくつかせている。手を
拡声のため口にあてている客を見つけては、噛みつくような顔で拳を振り上げる。うむ。ほんと、他人を考えず
欲望にだけ従う客どもだなあ。
773 :
:04/03/07 13:59 ID:/RBi6MJX
『あっ……?』
うんざりしながら人々を見渡していた俺は、その中にオーリンさんを見たような気がし、あわてて目を凝らした。
しかしその男は服装と髪が似ていただけで、顔も体の印象も違う。なんだ、人違いか。
とはいえ、観客の中にオーリンさんがいても何の不思議はない……というより、いる可能性のほうが高い。かつ
てのお師匠の娘さんの晴れ姿なのだ。わざわざ祭りの日に戻ってきたということは、マーニャさんを見に来たの
かもしれない。もしそうなら、マーニャさんの舞台の間は、この広場のどこかにいるはずだ。それなら見つけ出
して会ってみたいし、ミネアさんたちと感動の再会をさせてあげたい。ちょうど物見にはもってこいの場所にい
るわけだから、マーニャさんの見物がてら、オーリンさんを探してみるか。
ただ、あの体格、服装、髪型の男は数多い上、松明の明かりの届かない場所もある。観客もあちこちと動き回っ
ているので、眺めるだけでは無理で、一人一人確認してみないとわからない。本気で探すとなれば、どうしても
マーニャさんのダンスのほうはおろそかになってしまう。どうしよう?
悩みながら池を見ると、マーニャさんが左腕をすっと左に開いた。すると、笛の音とともに東側の踊り娘たちが
そろってダンスの一小節を踊り、ポーズを決めたままで止まった。さらに右手、西の踊り娘たち。あれほど騒が
しかった観客が、ざあっと波が引くように静かになった。いよいよ開演。さあ―――
1.マーニャさんに集中!
2.オーリンさんを探せ!
2−1.ひとりで 2−2.隣に協力を求める
3.クリフトに突撃タックル!
どうにか収まったと思いきや、改行がめちゃくちゃ・・・_| ̄|○ フォントヘンコウ ワスレテタ
みっともなくて読みにくいですが、このスレ最後の更新でつ
では、
>>765さんに感謝して、急いであらすじを書いてきますです。。。
>>774 更新乙です。
ところで今度の選択はむこうに書いた方がいいんですか?
>>775 どちらでも構いません。あと2KB程度残ってるはずなので
容量オーバーでもしばらくは見れるはずだし
こっちでいいや。
埋めがてら選択 1
見ないと後が怖いから
1
1,クリフト(wの好感度上げたいが3はやばそうだし
1.
ここに来て踊り見ないのは嘘だろ
踊り見てクリフト?との対決忘れたりして(笑
1
さぁあと少しかな。
1
ついに一番下まできたな。
784 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/03/08 16:37 ID:m1pOPdcP
1
しかないっての!
ついでにマリア(X)を攻略キャラに入れて欲しいといっておく。
正直これ以上攻略対象増やしても収拾がつかないだけでしょ
冷めてるなあんた。
これ以上増えるとGMさんの寿命が縮まると思う
これで容量オーバーかな。