+基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員には、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><着火器具・携帯ランタン>が支給される。
また、ランダムで選ばれた<武器>が1つ、渡される。
<ザック>は特殊なモノで、人間以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る(FFUのポシェポケみたいなものです)
・最後の生存者のみが、安全に帰宅することができる。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。
+首輪関連+
・参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・日没時に発表される『禁止技』を使ってしまうと、爆発する。
・日の出時に現れる『階段』を二時間以内に降りなかった場合も、爆発する。
+魔法・技に関して+
・初期で禁止されている魔法・特技は以下の通り↓
「レイズ」「アレイズ」「リレイズ」「フェニックス(転生の炎)」
「ザオラル」「ザオリク」「ザオリーマ」「メガザル」「メガザルダンス」「精霊の歌」その他、復活系の魔法・特技
・全体攻撃の範囲は「攻撃側から見えていて、なおかつ敵と判断した相手全て」。
※現在の禁止技:
復活系の魔法・特技。
ルーラ、バシルーラ、テレポなどの転移呪文・魔法。および、リターン、デジョン、ラナルータ
アストロン、メテオ、コメテオ、コメゥト、クエイク
ミニマム・トード・カッパー・ブレイク、ポーキー・ゾンビー
2
+戦場となる舞台について+
このバトルロワイヤルの舞台は日毎に変更される。
毎日日の出時になると、参加者を新たなる舞台へと移動させるための『旅の扉』が現れる。
旅の扉は複数現れ、その出現場所はランダムになっている。
旅の扉が出現してから2時間以内に次の舞台へと移らないと、首輪が爆発して死に至る。
現在の舞台はロンダルキア(DQ2)
ttp://xb_lim.tripod.co.jp/dq/2rondarukia.png ━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活は認めません。
※新参加者の追加は一切認めません。
※書き込みされる方はCTRL+F(Macならコマンド+F)などで検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。
※参加者の死亡があればレス末に、【死亡確認】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。
みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・DQ板は連投規制が厳しいです。話の途中で止まっていても書き込み最後の現状報告が終わるまでマターリお待ちください。
・UPされた作品は、原則的に修正は禁止です。
うpする前に本当に前レスと矛盾がないか、誤字脱字がないか推敲してください。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
できれば自分で弁解なり無効宣言して欲しいです。
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・極力ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
・主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。
【リュック :所持武器:なし 現在位置:エビマジの研究室 行動方針:なし 】
【ザックス 武器:バスタードソード
現在位置:ロンダルキアの洞窟3F(休憩中)
第一行動方針:体力回復】
第二行動方針:エアリス・ティファの捜索】
【パパス 所持:アイスブランド
現在位置:ロンダルキアの洞窟3F(休憩中)
第一行動方針:体力回復
第二行動方針:バッツと双子を捜す。
第三行動方針:ゲームを抜ける】
【トーマス 所持:鉄の爪 薬草×10 手紙 碁石(20個くらい)
現在位置:ロンダルキアの洞窟3F(休憩中)
第一行動方針:パパスについていこうと思っている】
【オルテガ 所持武器:危ない水着 グレートソード 覆面 水鉄砲
現在位置:大陸北部山脈・西の湖周辺
第一行動方針:アルスを探す
第二行動方針:不明
最終行動方針:未定】
【ゼニス 所持武器:アンブレラ 羽帽子? 現在位置:神殿南の山地を下山中
行動方針:神殿へ行く、物見遊山】
【サマンサ:所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1
現在位置:現在位置:ロンダルキア中央西よりの山地、雪原との境界線付近
第一行動方針:神殿に向かう(速度は遅め)
第二行動方針: ?
第三行動方針:生き残る】
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド
現在位置:ロンダルキア東部の森
行動方針:占いで見た人に会う(ロック、エリア)】
【とんぬら(DQ5主人公) 所持品:さざなみの剣 現在位置:湖の祠
第一行動方針:夜明けを待って、島から出る方法を探す
第二行動方針:クーパー・パパス・ライアン・アイラをみつける】
【王女アニー 所持品:マインゴーシュ 現在位置:湖の祠
備考:意識を失っています
第一行動方針:とんぬらについていく】
【エーコ&モーグリ 所持武器:なし 現在位置:湖の祠
備考:エーコは意識を失っています
第一行動方針:バッツたちと合流/ジタンを捜す】
【ヘンリー 食料多、支給ランプ×2(リバスト・アグリアスから回収)
所持武器:ミスリルアクス イオの書×2 スリングショット まどろみの剣 なべのふた
ブラッドソード リフレクトリング 弓矢(手製)
現在位置:大陸北部山脈・西の湖近くの洞窟
第一行動方針:とんぬら達を追う(遭遇すれば他のキャラも倒す)
第二行動方針:皆殺し
最終行動方針:マリアの元へ逝く】
【セリス(記憶喪失) 所持武器:ロトの剣 現在位置:大陸北東の祠の湖のほとり
行動方針:不明】
【アーロン 所持武器:折れた鋼の剣 現在位置:大陸北東の祠の湖のほとり
第一行動方針:体を癒す
第二行動方針:仲間を探す】
【アルス/ティナ/エドガー:所持武器:対人レミラーマの杖・天空の剣・黄金の腕輪/プラチナソード
チキンナイフ/ボウガン&天空の鎧(装備不可)スナイパーアイ ブーメラン
現在位置:ロンダルキア中央砂漠西山地
第一行動方針:野営中、朝まで動かず。
第二行動方針:仲間を探す】
【アイラ 所持武器:ダイアソード 死者の指輪
現在位置:東の平原、北上
行動方針:ゾンビ状態中はとんぬらを探していく。死者の指輪が外れたら???】
【アリーナ 所持武器:イオの書×4 リフレクトリング ピンクのレオタード
現在位置:地下通路(大陸中央付近) 】
第一行動方針:次のフィールドまで身体を休める
最終行動方針:ソロを止める
(軽傷、一晩休めば体力は回復・片目失明状態)
【クラウド:所持武器:ガンブレード 現在位置:地下通路(大陸中央付近)】
第一行動方針:次のフィールドまで身体を休める
最終行動方針:責任を感じアリーナを最後まで守る
(軽傷、一晩休めば体力は回復・錯乱状態から回復・記憶はあり)
【バーバラ(負傷):所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・ペンダント・メイジマッシャー】
第一行動方針:次のフィールドまで身体を休める
最終行動方針:テリーを救う
【ティーダ/エアリス/モニカ 現在位置:ロンダルキア南東の森・野営地
所持武器:吹雪の剣・いかづちの杖・参加者リスト/
エドガーのメモ・マジャスティスのメモ/ エドガーのメモ(ボロ)
第一行動方針:アーロンを探す
第二行動方針:ゲームから抜ける】
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本・
現在位置:ロンダルキア南東の森・野営地
第一行動方針:魔法使いを探す
第二行動方針:腕輪を探す・偵察
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
現在位置:ロンダルキア南東の森・野営地
第一行動方針: デスピサロに同行する
第二行動方針:ソロを探す
第三行動方針:不明】
【ジタン:所持アイテム:仕込み杖、グロック17、ギザールの笛 グレネード複数
試験問題・解答用紙複数(模範解答も含む)、時計
現在位置:神殿ハーゴンの自室
第1行動方針:バッツ達と情報交換
第2行動方針:魔法使いを探す、エーコを探す
最終行動方針:ゲームから脱出 】
【リディア(気絶中)所持品:なし
現在位置:神殿ハーゴンの自室
第一行動方針:?
第二行動方針:エーコ、バッツたちと合流
第三行動方針:仲間(セシル?)を捜す】
【カイン:所持武器:ビーナスゴスペル&マテリア(回復) 現在位置:神殿ハーゴンの自室
第一行動方針:ジタンに同行、セシルを止める 】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個、裁きの杖/現在位置:神殿ハーゴンの自室
第一行動方針:クーパーの治療、ジタンと情報交換
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【ピエール 所持武器:珊瑚の剣 エストック 現在位置:神殿ハーゴンの自室
第一行動方針:クーパーの治療
第二行動方針:とんぬらたちを探す】
【クーパー 所持武器:天空の盾 現在位置:神殿一階廊下
第一行動方針:導師を追いかける
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【導師(MP0) 所持武器:天罰の杖 首輪 現在位置:神殿一階廊下
第一行動方針:不明
第二行動方針:不明
最終行動方針:不明】
11 :
1/4:03/07/26 22:37 ID:ZSp/o+TK
緊張が解け、幾分友好的な雰囲気になった、
そんなときだった。導師が部屋に駆け込んできたのは。
ハーゴンの部屋の中に複数の人がいることに顔面を蒼白にさせる、
そして、バッツの顔を見て完全に凍りついた。
「あ…あ…」
「…導師か?どこに行ってたんだよ…おっさんは」
知己の顔に、気楽に話しかけるジタン、だが他の三人はいっせいに身構える。
と、同時に裁きの杖がうなりを上げた。
「エリアの、仇!」
「!」
バッツの顔が凍りつく。それが、回避のタイミングを遅らせてしまう。
バッツを、裁きの杖から生まれた波動が飲み込む。
だが、もう一人、巻き込まれたものがいた。
カインだった。
彼はこのロンダルキアに来る前に拾った不思議な兜を拾っていた。
ただでさえ見た目に反して重い代物だったが耐えられないほどではないし、
不思議な加護もあるような気がした。
それが突然、凶悪なまでに重くなったのだ。まるで彼を否定するように。
とっさにリディアを手放して逃がしたものの、彼自身は間に合わなかった。
防御するまもなく、まともに攻撃を受けた二人は部屋の隅に弾き飛ばされた。
倒れて動けなくなる。不意を付かれて一時的に気を失ったのだ。
カインの頭からその兜…天空の兜が落ち、カラカラと音を立てて転がっていく…
「おい、どういうつもりだ!?」
非難の声を上げるジタンに、導師は血走った目を向けて睨む。
「こいつは…エリアを殺したんだ。ティファさんも、みんな殺したんだ!」
実際にティファを殺めたのはキラーマシンなのだが、視野狭窄に陥っている導師には理解できない。
そして、ジタンにはそれを否定する根拠を何一つ持っていなかった。
12 :
2/4:03/07/26 22:38 ID:ZSp/o+TK
「ティファ…あの子まで?おい、どういうことだよ…?」
ピエールをみる、そしてバッツをみる。その瞳に怒りが篭り始める。
ジタンは人の生き死にを見すぎていた。自分が目を話したスキに死んでいく様を見すぎた。
彼自身も、視野狭窄に陥っていた。
「こいつ、まさか…さっきのは嘘で、おっさんを殺したのもこいつなのか…?」
「それは違「そうに決まってる!」
ピエールの冷静な言葉を、導師の熱の篭った言葉が跳ね返す。
そして、ジタンは…
「そういうことかよ…騙されるところだったぜ」
導師の言葉を信じた。
「く…」
「フライヤと一緒にいたから、あんたは信じてたんだけどな…」
武器を抜くジタン。ピエールは歯噛みする。
バッツは戦闘不能、自分が逃げれば確実に殺されるだろう。
エリアを殺してしまったバッツの自業自得といえばそうかもしれないが、
ピエールはクーパーのために必死になっているバッツを知っている。
戦うしか、なかった。
ピエールは剣を抜き、ジタンは戦闘態勢に入る。
そんなときだった。
「あ、あの!…え?ええ!?」
「クーパー様!」
部屋に飛び込んできたクーパーに気取られてしまうピエール、
その隙をジタンは見逃さない!
13 :
3/4:03/07/26 22:41 ID:ZSp/o+TK
「ぐっ…!」
「ピエール!!」
鎧の下から血飛沫が飛ぶ。一瞬遅れていたら、首を飛ばされていた。
自分が不利に立っていることは認めざるを得なかった。
だが…負けるわけにはいかなかった。クーパーが見てる前ならなおさら!
ピエールはじりじりとクーパーのほうによりながら、ジタンに剣を向ける。
息苦しいその状況が、クーパーには堪らない。
「何なの?どうしてこんなことになってるの!?バッツ兄ちゃんは?エリアお姉ちゃんは!?」
「バッツ殿は…そこに」と、部屋の隅を指すピエール。
「エリアは、そいつに殺された!」と、バッツを指差す導師。
「君は?」と、自分のことを知らずに逆に聞き返すジタン。
ますますクーパーは混乱した。
わかることは、バッツが倒れていること、エリアはいないこと、ピエールを傷つける見知らぬ男がいることだけだ。
「…わからないよ。どういうこと、なの?」
ピエールは答えられない。導師はバッツのことを悪し様に詰る。
ジタンは、いかにも可哀想に、といった感じでクーパーに言った。
「お前…騙されてたんだよ。この男に」
その一言に、
クーパーは、キレた。
「もういい!バッツ兄ちゃんから直接聞く!」
「おい…!」
「来るなっ!」
怒鳴るクーパー。ジタンはその声に怯む。
目の前にいるのは十ぐらいの少年である、それなのに、この威圧感は。
紛れもなく鋭い刃を持つ戦士のそれだった。そのギャップに、ジタンは戸惑ったのだ。
14 :
4/4:03/07/26 22:42 ID:ZSp/o+TK
今がチャンスだと、ピエールは思った。
そしてこの隙をつくことが、彼らとの間を決定的にすることも理解できた。
どうするのか、迷っている暇はない。
そして、ピエールは………
【ジタン:所持アイテム:仕込み杖、グロック17、ギザールの笛 グレネード複数
試験問題・解答用紙複数(模範解答も含む)、時計
現在位置:神殿ハーゴンの自室
第1行動方針:バッツたちを倒す
第2行動方針:魔法使いを探す、エーコを探す
最終行動方針:ゲームから脱出 】
【導師(MP0) 所持武器:天罰の杖 首輪 現在位置:神殿一階廊下
第一行動方針:バッツを殺す】
【リディア(気絶中)所持品:なし
現在位置:神殿ハーゴンの自室
第一行動方針:?
第二行動方針:エーコ、バッツたちと合流
第三行動方針:仲間(セシル?)を捜す】
【カイン 所持武器:ビーナスゴスペル&マテリア(回復) 現在位置:神殿ハーゴンの自室
第一行動方針:ジタンに同行、セシルを止める 】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個、裁きの杖/現在位置:神殿ハーゴンの自室
第一行動方針:?
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【ピエール 所持武器:珊瑚の剣 エストック 現在位置:神殿ハーゴンの自室
第一行動方針:ジタンたちの隙をつく?
第二行動方針:とんぬらたちを探す】
【クーパー 所持武器:天空の盾 現在位置:神殿一階廊下
第一行動方針:バッツから事情を聞く、邪魔をするならジタンと戦う
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
バッツとカインは一時的な昏倒状態です。
気合一発で治る程度のものです。
なお、天空の兜は帝国領で拾っています。何故かスルーされてますけど。
一応調べましたが、捨てた描写もないし、単に書き漏らしていただけかと思います。
ちなみに重くなったのは正統な主であるクーパーがすぐ側に来たからです。
カインが兜を装備できたのはアルスが天空の剣を使えるのと同じことでしょう。
主の元に行くまでは協力してやるってことです。凄いけど重いという描写は共通しています。
こういうことを書くのは野暮かもしれませんが、念の為。
ピエールはすかさずイオを放つ。使い慣れた呪文なだけあり、手馴れたものだった。
なぜかジタンを狙わず、ジタンとクーパーの中心の空間から爆発が起こる。
普通に考えるとクーパーも爆発に巻き込まれるだろう。
ギャッと叫びジタンは少し吹き飛び、こけた。
「うわ!ピエール…何を…ッ!?」
半ばパニックのクーパーを見てもピエールは動じない。
しかしクーパーの手に握られた美しい盾がクーパーを護った。
そう、魔法をはじき返す天空の盾が。跳ね返る爆発は部屋のいたるところに飛び散る。
導師の横の壁がえぐれ、天井から埃が舞い、古本の山が燃え出す・・・。
そしてバッツのもたれかかっている壁にも轟音が生じた。
バッツはその衝撃で目を覚ます。
「いてて…ん?ク…クーパー!!生きてい…」
「バッツ兄ちゃん、これは一体どういうこ…」
二人の言葉を制するようにピエールが叫ぶ!
『バッツ殿!クーパー様をつれ、お逃げ下さい!クーパー様、これを!』
ピエールはクーパーに珊瑚の剣を捧げる。
その時、爆発で倒れたジタンが起き上がり、仕込み杖を抜きながらバッツに切りかかった。
「おっさんの仇ぃ!!」
ピエールはエストックを構えながらジタンに飛び掛る。ジタンは舌打ちしながら標的をピエールにかえた。
「バッツ殿!早く!」「ピエール…すまないっ!」
バッツは起き上がりクーパーを抱えて走り出す
クーパーが涙を流しながら叫ぶ。
「ピ…ピエーーーール」
仕込み杖をエストックで止めながらピエールは言う。
「すぐに追いついてみせましょう。ではまた!」
バッツは一度振り返り、部屋から出た。
その時後頭部に衝撃が走る。背後から導師の杖が襲ったのだ。
気が遠くなりながらピエールはつぶやく。今にも消えそうな声で…
「もう一度、二人で散歩でもしたかったですなぁ…。」
ピエールの願いは二度と叶わない。なぜなら彼の体は切り刻まれることになるのだから…。
【ジタン:所持アイテム:仕込み杖、グロック17、ギザールの笛 グレネード複数
試験問題・解答用紙複数(模範解答も含む)、時計
現在位置:神殿ハーゴンの自室
第1行動方針:バッツたちを追う
第2行動方針:魔法使いを探す、エーコを探す
最終行動方針:ゲームから脱出 】
【導師(MP0) 所持武器:天罰の杖 首輪 現在位置:神殿一階廊下
第一行動方針:バッツを追いかけ、殺す】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個、裁きの杖/現在位置:神殿ハーゴンの自室
第一行動方針:クーパーに事情説明
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【クーパー 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 現在位置:神殿一階廊下
第一行動方針:バッツから事情を聞く、ピエールを助ける
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【リディア(気絶中)所持品:なし
現在位置:神殿ハーゴンの自室
第一行動方針:?
第二行動方針:エーコ、バッツたちと合流
第三行動方針:仲間(セシル?)を捜す】
【カイン 所持武器:ビーナスゴスペル&マテリア(回復) 現在位置:神殿ハーゴンの自室
第一行動方針:ジタンに同行、セシルを止める 】
【ピエール 死亡】
【残り32名】
20 :
1/2:03/07/27 10:17 ID:KJMwL/iM
クーパーを抱えて、幾つかの角を曲がったところで、バッツは立ち止まった。
それまで呆然と身を任せていたクーパーが暴れだしたのだ。
逃げるにしても、戦うにしてもこれ以上離れてはピエールと合流できなくなる、という判断もあった。
「バッツ兄ちゃん、どういうことなの?説明してよ!」
「………」
激しく詰め寄ってくるクーパーに、バッツは目を伏せる。
口先だけで誤魔化すこともできるだろう。だが、一時的なものに過ぎない。
いつかは本当のことを知って…そして、そのときの衝撃は今話したときの非ではないだろう。
バッツは、全てをクーパーに話すことにした。
エリアの料理に毒が含まれており、クーパーは石化してしまったこと。
騙された、と思ったバッツはエリアを殺害してしまったが、騙したわけではないことをピエールから聞いたこと。
何とかしてクーパーの石化を解こうとしたが、自分たちではなんともならなかったこと。
手がかりを求めて入った書斎の奥にいた老人とその死。
やってきたジタン、カイン、リディア、そして自分を「仇」と呼ぶ少年…
バッツの話に、クーパーは驚いたり、悲しそう表情をゆがめたり、悔しそうに唇を噛んだりした。
「全ては俺から始まったんだ。エリアの言い分を聞かなかった俺が」
「でも…どうして、殺しちゃうんだよ……」
「理由は、いくらでもある。無害を装って近づいて命を狙ったんだって、そのときは思ったんだ」
「でも、違ったんでしょ!?」
それは結果論だとバッツは思ったが、口には出さなかった。
もしエリアが自分たちの命を狙っていたとするなら、話を聞くことは更なる危険を招くだけである。
加えて言えば、エリアは弁明もせずに逃げてしまったのだ。エリアの考えを問う余地はなかった。
あの状況において自分の選択自体は、ベストでもベターでもないが、間違っていないと思う。
だが、実際は彼女は自分たちに悪意を持っていたわけではなかった。
その事実を知った以上、自分は間違っていたとしかいえない。だから、口には出さない。
何も言わないバッツから視線を外すと、クーパーは呟く。
「………お父さんなら………」
痛い、とバッツは思った。これまで積み上げてきた信頼が崩れたことを感じたから。
21 :
2/2:03/07/27 10:19 ID:KJMwL/iM
何も言わないバッツから視線を外すと、クーパーは呟く。
「………お父さんなら………」
痛い、とバッツは思った。これまで積み上げてきた信頼が崩れたことを感じたから。
だが、クーパーは廊下の向こう…自分たちが来たほうを凝視して、バッツに気付かない。
「バッツ兄ちゃん、戻ろう」
「………え?」
クーパーは振り返ってバッツの目を見る。
「あの人たちがエリアお姉ちゃんとどういう関係だったかはわからないけど、でも、ちゃんと話さないといけない、と思う」
そのまっすぐな目に、バッツは口ごもった。
「でも…ああなっては…」
「このままじゃ、駄目だよ…何をするにしても。ちゃんと話せば、まだ間に合う、と思う」
エリアの最後を聞いたというピエールの言葉なら、彼らに届くかもしれない、とクーパーは思う。
そして、ピエールの生死が、自分たちとジタンたちの関係を決定付けるとも。
生きていればよし、殺されてしまったら…もう、戦うしかない。
「………クーパー」
「もし、戦うことになったとしても……」
「結論を出さないと。決着をつけないと。自分が納得しないと、いけない。
あの時ああしていれば…って、そんな後悔を引きずって生きるのは辛いから」
魔界に向かうときの、父の言葉だった。
妻…自分の母を助けた後、父の母…自分の祖母から来るなといわれたとき、
父は辛い旅を捨てることもできた。だが、父はそれを選択しなかった。
今だって同じだと、クーパーは思う。
戦うにしても逃げるにしても自分が納得しないといけない。
クーパーはバッツの返事を聞かずに踵を返した。
一人でも行く、という意思の表れだろう。クーパーを止めることはできない。
「わかったよ。そうだな、ケリを…付けないとな」
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個、裁きの杖/現在位置:神殿ハーゴンの自室
第一行動方針:ジタンたちと決着をつける
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【クーパー 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 現在位置:神殿一階廊下
第一行動方針:ジタンたちと決着をつける ピエールを助ける
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
23 :
1/3:03/07/27 11:14 ID:esH1JNCm
「バッツ兄ちゃん!いったい何なんだよ!ピエールを助けてよ!」
クーパーが叫ぶ。バッツの抱きかかえたクーパーが叫ぶ。
バッツの手の中でもがきながら、叫ぶ。
どうして逃げるの?助けなきゃ。ピエールを助けなきゃ。
ピエールを助けることくらい、出来なきゃいけない。
みんなで逃げるんだ。ココから。絶対。生きてるみんなで。全員で!
助けに戻ろうよ!でって、だって、コレじゃあ…。
「ボク、何にも出来ないじゃないか!母さんの時だってッ!」
何も出来なかった。突然死んでいた。何が勇者だ。何が…。
「当たり前だッ!お前だけで、俺だけで何が出来るんだよ!」
クーパーの思考が、バッツの絶叫で…いや、悲鳴でかき消された。
そう、悲鳴だった。神殿の廊下を駆けながら、バッツは悲鳴を上げていた。
「待ちやがれ!」
後ろから声が聞こえる。ジタンの声が聞こえる。殺意と怒りに満ちた声で。
「誰が…待つかよぉっ!」
バッツは叫び、空いている片手で何かをジタンに向かって放る。
バッツの投げつけた黒い塊…グレネードが、ジタンの目の前で踊る。
(…!)
悲鳴を上げるヒマもない。目の前で死が炸裂し、ジタンは…
死ななかった。
グレネードは金属音を立てて地面に落ち、止まる。ピンが抜かれていないので当たり前だが。
ジタンはハッとして、バッツ達が逃げていった方を見る。
居なかった。廊下の外に面した窓ガラスが割れている…逃げられた、ようだ。
ジタンはくそっ、と毒づき、放られたグレネードを拾い上げる。
ピンを抜かれたら死んでいた…間違いなく。では、何故ピンを抜かずに放った?
抜くヒマもなかったと言う辺りなのだろうが、しかし、何かズレている…。
「ちくしょう…!」
ぐちゃぐちゃになる頭をかきむしりながら、ジタンが振り返る。どうやら導師も追いついてきたようだ。
さて、これからどうするか…。
24 :
23:03/07/27 11:17 ID:esH1JNCm
25 :
1:03/07/27 18:32 ID:oxwAln1I
もう一度来た道を引き返す二人。先頭のバッツの目には、もうハーゴンの部屋の扉が見えている。
バッツはここを通る覚悟がもうできている。だが、
「クーパー、来るな!」
ストップ、と言えばクーパーの足は止まっただろう。時空魔法を使ってでもバッツは止めたかったのだ。
「ピエール!」
だがクーパーは駆け寄った。自分の目で確かめた、ピエールの死を。
「ピエール!!」
クーパーは騎士の体を揺さぶるが、返事をするはすがない。
「ピエール!!」
何度でもクーパーは叫ぶ。
こうなることは予想できただろうに、実際にピエールの死を目の当たりにしたクーパーは
思考が飛んで感情だけの生き物になってしまっていた。
もはや話し合うことなど、頭の片隅にもなかった。
ピエールの体がバラバラになって辺りに四散していれば、そうなるのも無理はなかった。
「こんな酷い、酷い、なんでこんなことできるんだ!」
「おっさんを殺したお前たちが言えたことかよ!」
バッツは違うと言いたかったが、とても聞く耳を持っているとは思えなかった。
相手が魔物だから残酷とも言える殺し方ができたのかもしれないが、それにしても
酸鼻を極める光景だった。バッツは頭を激しく振って身悶えた。
「許せない、ピエールをこんな風にしてええ! お前なんか死んじゃえよっ!」
バッツがはっとなったときにはクーパーが走っていた。
「クーパー、危ない」
バッツがジタンの異変に気付いた。
26 :
2:03/07/27 18:33 ID:oxwAln1I
「ふざけるな、そう簡単に死ねるか!」
ジタンの精神の高まりはそのまま目に見える形で具現化され、弾ける。全身から糸のように伸びる
青白い光は、だが急速に収縮し、次の瞬間には、光だけを纏う衣服も無い獣のジタンがそこに出現した。
「ストラサークル!」
盗賊の裏技。
「ファイブッ」
不可思議なリングが突然クーパーの足元に現れた。リングはいくつも連なりその体を包み込んだ。
ちょうど何枚ものフラフープを体に通したような形になって。
「よせーー、やめろ!」
「ミールツイスター!」
虹色光線が巨大な十字を切って、リングの力で浮かび上がったクーパーの体を貫いて爆発する。
伝説の英雄メルビンが得意としていた、グランドクロスという技に似ていた。
「……くそっ、こんな武器じゃパワーが引き出せない」
盗賊の裏技は全て武器依存である。どれだけの力を発揮できるかは、手に収めた武器によって変わる。
今のがマサムネかアルテマウェポンによるものだったなら、クーパーの体は跡形もなく消し飛んで
いたはずだ。
吹き飛んで壁に背中からぶつかったクーパーは、浜に打ち上げられた魚のように口をパクパク開けて
呻いている。
結局クーパーは死ななかった。仕込み杖ではたかが知れていた。
27 :
3:03/07/27 18:34 ID:oxwAln1I
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個、裁きの杖/現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:ジタンたちと決着をつける
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【クーパー(重症) 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 現在位置:神殿一階ハーゴンの自室の前
第一行動方針:ジタンたちと決着をつける
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【ジタン(トランス中):所持アイテム:仕込み杖、グロック17、ギザールの笛 グレネード複数
試験問題・解答用紙複数(模範解答も含む)、時計
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第1行動方針:クーパーを倒す。
第2行動方針:魔法使いを探す、エーコを探す
最終行動方針:ゲームから脱出 】
(ハーゴンの部屋には導師が控えています、カイン気絶中)
>>25訂正
>ピエールの体がバラバラになって辺りに四散していれば、そうなるのも無理はなかった。
↓
ピエールの体に数百とも思える傷が刻み込まれていれば、そうなるのも無理はなかった。
29 :
1/3:03/07/27 21:20 ID:745tBJJm
「クーパーッ!?」
「次は、お前だ!」
ジタンの刃がバッツを襲う。
早い!ギリギリ弾く事はできたものの、力もスピードも自分より段違いだ。
勝てない、ニ度三度打ち込まれて、バッツはそれを認めざるをえなかった。
こんな所でやられる?このまま、この男に殺されるのか?
バッツは思う。認めたくはなかったが、何か手を打たなくては現実になってしまう。
考えろ。考えろ。奴だって絶対じゃないんだ。
もしもジタンに漬け込む隙があるのなら、
それはジタンの能力が確実にバッツを勝っている事だった。
だが、油断はしないだろう。この狂人は、確実に殺すことのみを狙ってくる。
バッツは間合いを離すと魔法を唱え始めた。
ジタンは追い討ちをかけない。その代わりにジタンを覆う光がより一層力を増した。
さっきの技を使うつもりか。それはわかったが、バッツは魔法を止めない。
もしも、自分にこいつより勝るものがあるのなら――――
ジタンの放った光は容赦なく、自分を貫く。と、同時に魔法が完成する。
やられた、決定的な一撃をもらってしまった。吹き飛ばされながら、魔法を発動させる。
壁に叩きつけられる、胸から血飛沫が散った。立ち上がろうともがいてみるが、すぐに無理だとわかった。
顔だけ上げると、トランス状態から解放されたジタンがこちらに歩いてくる。
なるほど、あの状態は一定時間しか持たないらしい。それも連続発動は無理ということか。
「終わりだな。おっさんの仇を取らせてもらう」
「…俺は、殺していない、といっても、問答無用か」
「当り前だ!よくも騙してくれたな!」
「誤解、といっても聞くつもりはないんだな…エリアを誤解で殺めた俺は、誤解で殺されるわけだ」
ぴくり、と。ジタンの表情が揺れる。
30 :
2/3:03/07/27 21:22 ID:745tBJJm
バッツはジタンをじっと見つめる。そして吐き出すように言う。
「誤解が誤解を生んで、人が死んで。憎しみと悲しみが生まれて…それが消えることはない」
「………」
「延々と繰り返して。それを断ち切るにはどうすればいいんだ?」
はあ、バッツは溜息を付いた。視線を下に向けると、腹部から真っ赤な血が広がっているのが見える。
少し、眩暈がした。
ジタンは刃を振り上げた。
こいつの言葉を聞いてはいけない、聞けば、引きずられる。
自分は、いつも騙されて、それを非難して、騙したことに理由があることに気付いて、後悔した。
そして後悔するたびに、人が死んでいった気がする。
また――――同じことを?
そんなことが思い浮かんだから、ジタンは早くこいつを殺そうと思った。
思考を停止して、自分を守ろうとした。
それが、自分の命も停止させた。
「ギガディン!!」
…クーパーは、全身を抱きしめながらバッツの元へ向かった。
息は荒いが、傷は塞がっている。バッツがあの時使ったのは、クーパーへのケアルガだった。
自分がジタンより勝っていること、それは一人ではないということだ。
クーパーは子供だが弱くない。むしろ強い。精神的にも、純粋な戦闘能力も。
ジタンは隙を見せない、ならば作ればいい。
憎しみに捕らわれた奴が自分を殺そうとする一瞬を作ればよかったのだ。
「結局、どちらが消えるまで続くんだろうな…殺すことでしか、憎しみは消えない」
消し炭になった「彼」を見る。強烈な電撃を受けた仕込み杖は、ボロボロに崩れている。
顔を上げると、部屋の奥から導師が出てくるのが見えた。
31 :
3/3:03/07/27 21:24 ID:745tBJJm
【バッツ(重傷)(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個、裁きの杖/現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:ジタンたちと決着をつける
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【クーパー(後遺症あり) 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 現在位置:神殿一階ハーゴンの自室の前
第一行動方針:ジタンたちと決着をつける
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【導師(MP0) 所持武器:天罰の杖 首輪 現在位置:神殿一階ハーゴンの自室の前
第一行動方針:バッツを殺す】
【ジタン 死亡】
32 :
1/3:03/07/28 10:11 ID:V80D2qy1
「お前達…また殺したなァ!」
導師が叫ぶ。喉が壊れるのではないかと言うほどに。
彼は狂ってはいない。ただひたすらにまともで、正常で、善人だった。導師自身が分かっている。自分は正常だ。
だからこそ、許せず、怒り、殺す。
導師がぶん、と天罰の杖を振り上げる。耳障りな音を立てて風が唸り、クーパーを切り刻もうと吠えた。
「お前が言う事かよぉっ!」
クーパーは絶叫し、天空を司る盾を高く掲げた。
クーパーの力を吸い、天空の盾が唸る。吠える風を叩きつぶし、ソレを無害なただの風に変えた。
クーパーが珊瑚の剣を構えた。彼が父と同じくらい尊敬する戦士の、形見を。
「あ゛ああぁぁぁぁっ!」
走る。走る走る走る走る走る走る!導師に向かって一直線に、走る!
自分は、狂っているのかも知れないと、クーパーは感じた。
今ならヒトを殺せる。復讐の刃で、ヒトを。
ぐん、と導師の胸に刃が伸びる。導師はソレをかろうじて杖でたたき落とすと、クーパーの顔面を左手で掴んだ。
「ぐっ…」
捕まれた腕をふりほどこうとクーパーがもがく。だが、導師は離さない。
導師が脚を伸ばし、クーパーを転ばせる。二人はもつれ合うように転び、やがて導師が馬乗りの格好になった。
「汝清浄なる光に願おう。汝滅びの光に願おう…」
導師が、何かをブツブツと呟き出す。虚ろに。
杖を投げ捨て、両手を顔面にかけ、つぶやきはなおも続く。
「我が悪しきと認めし者よ。今こそ消えよ。全てより消えよ…」
クーパーの顔面を掴んだ両手が輝き始める。導師が目に見えて衰弱を始める。それでも、導師は異様な力でクーパーを離さない。
詠唱が終わる。クーパーもバッツも、導師ですら、神殿ですら消え去るだろう。導師の生命をかけた魔法で。
33 :
2/3:03/07/28 10:12 ID:V80D2qy1
“ホーリ…!”
ざく
止まる。導師の世界が止まる。胸から剣が生えている。
「…大丈夫か?」
バッツが呻いた。バッツの手の中に、剣がない。剣は導師の胸から生えている。
どうして?どうしてなんだ?僕が何をしたんだ?エリアが死んで、僕が死ぬ?
なんで、どうしてなんだよ?理不尽だ。死んでたまるか。あいつらが死ななきゃ。僕は死ねない。
後一声、それだけでいい。叫ばせて、叫ばせて…!ッ!
導師が倒れた。クーパーがその下から這い出る。
ぜえぜえと息をあえがせて、バッツの元へ行こうとして、クーパーは見た。
竜の鎧を身に纏った男…カインが、導師の死体の向こうで槍を構えて立っていた。
(死んだ…!)
覚悟する。死ぬ。槍の一閃で二人とも死ぬ…。
「…悪いな。裏切りは俺の専売特許なんだ」
カインの奇妙な言葉に、クーパーとバッツは眉をしかめた。
よく、導師を見る。後頭部に深い裂傷…槍の刃先による裂傷が見えた。それが直接導師の命を奪ったのか?
「どうして…?」
「長く生き延びそうな方に恩を売っておく事にした…それだけだ」
バッツの問いに、カインが答える。
セシルを探し、止めるためには協力者が居る。そしてソレには死にかけた導師よりもこの二人の方が相応しい。
カインは目覚めてからこっそり様子をうかがい…そう決めたのだ。
34 :
3/3:03/07/28 10:15 ID:V80D2qy1
カインは導師の持っていた天罰の杖を拾い…代わりに重くて役立たずになった天空の兜を放り捨てる。
「そ、その兜…!」
「知ってるのか?俺には使えん、くれてやる」
カインはそう言って、捨てた兜と、ついでに導師に刺さっていたブレイブブレイドをクーパーの足下に向かって蹴っ飛ばした。
カインはそのまま背を向けて、ハーゴンの部屋の中へと歩いていく。
「あ、ありがと…」
「感謝してもらえるなら、セシルという男を見つけて…知らせるか止めるかしてくれ。ソレが俺の目的だ」
そうだ、止めなければ。自分の手で、アイツを。でも。自分に止められないのなら…
クーパーはソレを聞くと頷き、カインに背を向けた。バッツを早く治療しなければ…。
そうしてクーパーはバッツの元に這いずりよって治療に集中し始めたから。
カインがリディアを背負って外に歩いていった事に、気づかなかった。
35 :
状態:03/07/28 10:16 ID:V80D2qy1
【バッツ(重傷)(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個、裁きの杖/現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:傷の手当て
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【クーパー(後遺症あり) 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜現在位置:神殿一階ハーゴンの自室の前
第一行動方針:傷の手当て
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
(2時間ほど傷の治療に専念すれば、動けるようにはなります)
【リディア(気絶中)所持品:なし
現在位置:神殿ハーゴンの自室から外へ
第一行動方針:?
第二行動方針:エーコ、バッツたちと合流
第三行動方針:仲間(セシル?)を捜す】
【カイン 所持武器:ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
現在位置:神殿ハーゴンの自室から外へ
第一行動方針:セシルを止める 】
【導師 死亡】
【残り30人】
「メルビン」「ティファ」「ソロ」「テリー」「エリア」
「セシル」「ロック」「ラグナ」「ガウ」「マリベル」
「ギルガメッシュ」「セフィロス」「ハーゴン」「アグリアス」
「ピエール」「ジタン」「導師」
の17名。他の方が放送入れないのなら明日にでもいれます。
あと、デッシュが上のリストに入っていなかったので追加。
【デッシュ 所持武器:首輪 現在位置:ハーゴンの神殿
第一行動方針:首輪を調べる
第二行動方針:エドガーに会う】
>36
サマンサとゼニスが書かれるまで待って。
リュックと違って行動中のキャラだし、
一応フォローしないと後の辻褄合せが取ってつけたようになってしまう。
今日は別のを書くから無理だけど、
誰も書かないなら自分が書きますから。よろ。
38 :
1/7:03/07/28 23:57 ID:2trymh9V
デスピサロとライアンは地下通路から神殿に向かっていた。
ジタンと合流する必要もあったし、ハーゴンという人物を見定める必要もある。
その両者は既に亡き者だが、さすがのデスピサロもそれを知ることはできない。
そんなわけで、二人の目的地は神殿だった。
戦闘の後だったが、二人の状態は悪くない。
セフィロスとの戦いで多くの命が奪われたが、二人とも無傷だったし、
逆にガウのホワイトウィンドが疲労を回復させていた。
デスピサロは満点に更に上乗せした結果を出せたことに満足し、
ライアンはガウたちの犠牲を無駄にしてはならぬと思っている。
そんな二人の足取りは軽かった。
地下通路を進んで暫くして。
デスピサロは不意に足を止めた。
「どうしたのでござるか?」
「いや…確か、この辺りかと思ってな」
怪訝そうなライアンに、デスピサロは苦笑のような微笑を漏らす。
「知り合いに会えるかも知れぬぞ」
クラウド、アリーナ、バーバラの三人は休息を取っていた。
基本的にクラウドとアリーナは傷を抱えているし、バーバラもこれまでずっと動き回っていた。
全員が疲労困憊だった。近くをジタンが通って、バーバラも来たことが何を意味するのか、考えることも出来ないくらい。
それでも、気配に気付いたのは経験か、訓練の賜物といったところだろう。
「起きろ…誰か、くる」
クラウドは近付いてくる気配に、眠りこける少女たちを呼び起こす。
ガンブレードを手に取り、すぐに立ち上がれる状態を取るクラウドに、
少女たちはハッと我に返ると、臨戦態勢を取った。
39 :
2/7:03/07/28 23:59 ID:2trymh9V
「ほう、生きていたのか」
「デスピサロ…え、ライアン!?」
デスピサロの隣りにいるライアンの姿に、驚くアリーナ。
それはライアンも同じだ。
「アリーナどの、無事で何よりでござる!」
「ライアン…どうして!?」
どうして、という言葉に首を傾げる。はて、自分は何かおかしなことをしているだろうか。
そんなライアンを横目に、デスピサロは冷笑を浮かべた。
「彼は私に協力している。だから同行しているのだ」
その言葉に、アリーナの表情が凍った。全身が震え、程無く爆発する。
「どういうことよ!何で魔族なんかに!」
アリーナは魔族嫌いだった。ブライ老の教育の結果に加え、サントハイムの悲劇が拍車をかけている。
それ故に、アリーナの中では魔族=悪であり存在そのものを認められない異物なのだ。
そしてそれは、ライアンがもっとも嫌う考え方だった。
「アリーナどの、魔族だからというのは理由にならないでござるよ。
悪しき人もいれば、心優しき魔物もいる。種族の違いだけで全てを拒絶するのは些か短慮でござろう。
そして、こんな状況だからこそ、一致団結する必要があるのではござらぬか」
「だけどっ!」
不満げなアリーナにライアンは更に言おうとしたが、デスピサロが遮る。
「よせ。人も魔物も簡単には変わらぬ。この場合、お前のほうが特殊だ」
「む…」
「それに彼女とは一戦を交えているのでな。交渉は決裂済みだ。
私に協力するつもりはさらさらないだろうし、私とて背中を預けるのは御免こうむる」
「当り前じゃない、あんたのせいでどんな目にあったのか!」
片目を押えながら憎々しげに唸るアリーナを、デスピサロは一瞥する。
「ならば、ここで決着をつけるか?」
40 :
3/7:03/07/29 00:02 ID:gHbjSFhS
全員の間に緊張が走った。
彼がそれを実行に移したら、一瞬で終わる。
それはアリーナもわかっていた。わかっていたから…答えられない。
「はい」と答えれば自分の気持ちは守れるが、クラウドは死んでしまう。
だからといって「いいえ」と答えて命乞いをするのは彼女のプライドが許さなかった。
さすがにライアンも黙っていられず、彼等の間に割って入る。
「ピサロどの!」
「邪魔な芽は早めに摘まないと後になればなるほど悪影響を及ぼす。
無害であるのならば放置しても良いが、彼女の牙は鋭すぎる。
あの男…セフィロスのようにな」
「セフィロスだと!?…アイツがいるのか、この近くに!?」
思わず声を上げるクラウド。
「正確には『いた』だ。我々が奴を倒した」
「そんな、信じられない。あの男が…死んだ、なんて」
クラウドはガンブレードを取り落とした。それぐらい、彼は呆然とした。
「だが、その犠牲はけして小さくはなかったでござるよ…」
「また…誰か、死んだの…?」
怖々と訊ねるバーバラに、ライアンはうむ、と肯く。
「10人がかりで挑んで、生き残ったのは我ら二人と、ティーダどのにエアリスどのだけ…」
「待って!待ってくれ!エアリス、エアリスって言ったのか!?」
クラウドは思わず立ち上がった。セフィロスが死んで、エアリスが生き残った?
なんだ、それは。
「そう言えば、エアリスどのは人を探すと言っていたが」
「………俺、なのか?」
クラウドは視界がクラクラと揺れているのを感じた。
乗り物によって気絶する前とよく似ている。気を抜いたらイッてしまう、そんな感じ。
41 :
4/7:03/07/29 00:05 ID:gHbjSFhS
唐突に精神不安定になったクラウドを横目で見ながら、デスピサロは自分の発言を続ける。
「この先に何があるのかは私にもわからぬ、なればこそ不安要素は排除しておきたい…」
と、そこで。デスピサロは言葉を止めた。
視線の先には…
「え…な、なに?」
突然見つめられて、驚き戸惑うバーバラ。
「………」
「あ、あの?その…」
デスピサロはじっとバーバラを見つめた後、つかつかとバーバラの側まで歩み寄る。
「顔を上げろ」
「え?は?」
「目を逸らすな」
「は?はぁ?」
「…なるほどな」
デスピサロはにやりと笑うと、アリーナたちに言った。
「気が変わった。この娘を寄越すなら見逃してやろう」
42 :
5/7:03/07/29 00:07 ID:gHbjSFhS
「………………」
場の空気が凍りつく。バーバラはなんとなく、周囲を見回した。
ライアンはコチンと硬直し、不覚に陥っていたクラウドは途端にギギッと顔を上げる。
アリーナは唖然とした後で、大きく息を吸い込んだ。
「な、な、な、ナニ破廉恥な事いってんのよ!」
「そういう趣味だったのでござるか…?」
「ロリ…いや、ペドか…」
男たちの独り言に、デスピサロのコメカミが微妙に張る。
「貴様等…恐ろしく無礼千万な想像をしているな…」
まるっきり状況がわからなかったバーバラだったが、それで大体状況を察したようだ。
顔を真っ赤にしながら、たずねる。
「あのー、どゆこと?」
「言葉通りだ。お前が我々に協力するなら、この場は彼らを見逃そうというのだ」
デスピサロはヒソヒソとなにやら話し合っているクラウドとアリーナを視線で威嚇しながら答える。
「でも、何で…あたしなの?」
「我々は故あって、魔法使いを集めている。この馬鹿げたゲームを覆すためにな」
「なるほどね…そんな事だと思った」
あの時見ていたのは魔法の力、あるいはカルベローナの血なのだろう。自分ではない。
まずほっとして、それからちょっと…ほんのちょっぴり残念だとバーバラは思った。
「私が行けば、二人に手出ししないんだよね?」
「約束しよう」
と言いながらも、デスピサロはアリーナたちに殺気のこもった視線を向けている。
先程の冷徹なものではなく、随分と生々しいけれど。
「わかったわ。一緒に行く」
「ちょ、ちょっと!?」
「大丈夫だよ。アリーナたちの考えているような事はないから。多分」
「絶対だ」
即座に言うデスピサロにバーバラは、あはは、と軽く笑う。
アリーナが言うほど悪い人じゃないみたい。そう思ったから。
43 :
6/7:03/07/29 00:08 ID:gHbjSFhS
こうしてデスピサロとライアンはバーバラを加えて神殿に向かう事になった。
「今回は見逃そう、だが次はないを思え」
デスピサロは約束を守り、二人に何もしなかった。
後にはまた、クラウドとアリーナが残った。
「あの子、大丈夫かな」
「利用価値があるうちはあの男が守るだろうさ」
「なくなったら?」
「………」
クラウドは答えなかった。ただ、彼等がやってきた東のほうを見る。
東の地で、彼等はセフィロスと死闘を繰り広げ…そして彼女は生き残っている。
「クラウド?」
「なんでもない。それより場所を移そう。ここは、人が通り過ぎる」
「…うん」
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本・
現在位置:ロンダルキア南東の森・野営地
第一行動方針:魔法使いを探す
第二行動方針:腕輪を探す・偵察
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
現在位置:ロンダルキア南東の森・野営地
第一行動方針: デスピサロに同行する
第二行動方針:ソロを探す
第三行動方針:不明】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・ペンダント・メイジマッシャー
第一行動方針:デスピサロに同行する
最終行動方針:テリーを救う】
44 :
7/7:03/07/29 00:10 ID:gHbjSFhS
【アリーナ 所持武器:イオの書×4 リフレクトリング ピンクのレオタード
現在位置:地下通路(大陸中央付近) 】
第一行動方針:次のフィールドまで身体を休める
最終行動方針:ソロを止める
(軽傷、一晩休めば体力は回復・片目失明状態)
【クラウド:所持武器:ガンブレード 現在位置:地下通路(大陸中央付近)】
第一行動方針:次のフィールドまで身体を休める?
最終行動方針:責任を感じアリーナを最後まで守る
(軽傷、一晩休めば体力は回復・錯乱状態から回復・記憶はあり)
>>37 了解でつ。
ロリペドピサロワロタ。
でもロザリーがロリっちゅう話を聞くから案外真実かも…
うあ、貴様ッ!なんでここn
46 :
1/5:03/07/29 11:13 ID:55/3wbKa
「コレじゃ結局俺がただのマヌケじゃないか…くそっ、ハーゴンのおっさんに笑われるぜ」
デッシュは呑気にぼやきながら。スクラップの山を後にした。
結局、収穫は完全にゼロだった。
鍵文字…つまりは、鍵となる呪印。ソレがデッシュの出した結論だった。
簡単に言えば、パスワードだ。管理のために首輪を制御するパスワード。違うのは、ワードを探すのではなく“ねじ込む”という一点だ。
複数のセキュリティの内何か1つでもを解いたとたん爆発してしまうと言う仕組みなら、セキュリティの全ては関連づけられているはずだ。
魔法ならば呪印。機械制御なら、多分“ぷろぐらむ”と言う言語を鍵文字に関連付けられている。
あとは、その鍵文字を書き変えてしまえばいい。例えば、1つセキュリティを解除したら、他のも同時に無効化する、と言うように。
そこまでは分かった。だが、そこまでだ。魔法的な、もしくは機械的な検索装置を作って鍵文字を探そうとしたのだが。
「スクラップが古くさすぎるんだよなぁ…ったく」
そう、材料が足りない。文化があまりに違いすぎ、手も足も出ない。
結局は…ハーゴンにもう一度相談するしかないのだった。
そして、神殿の一室、スクラップの部屋の出てからしばらくして。
二つの死体と、二人の半死人を見つけた。
最初に見つけたのは、炭人形だった。
顔も服装も、男か女かさえ判別出来ない炭の塊。
デッシュは眉をしかめ…結局ソレは無視した。
恐らくは、導師辺りがやったのだろう。身を守るためならしょうがあるまい。
しかししばらく歩いてから見つけた1つと2人を見たときには、そうは思えなかった。
何しろ死んでいるのが当の導師本人で、見知らぬ男2人がそこに座っていたので。
47 :
2/5:03/07/29 11:14 ID:55/3wbKa
「…誰?」
「こっちこそ聞きたいな。コレは…どういう事だよっ!」
2人の内の1人…クーパーに問いかけられて、デッシュは叫んだ。
同時に動こうとしたバッツをけん制するように、右腕を2人に向ける。
「動くなよ…俺の魔法ならお前ら2人を一瞬で消し炭に出来るぜ?」
デッシュは堂々と大嘘を付く。だが、こうでもしなければ斬り殺される。コイツラは半死人だが、強い。自分は、弱い。
「説明してもらおうか?コレは誰がやったんだ?」
「…俺だよ。そこに転がってるのは両方俺だ。奥にいた爺さんは勝手に死んだよ」
デッシュの脅しに屈したか、元々隠す気もないのか…後者の理由で、バッツは答えた。
正確には、ジタンはクーパーが殺し、導師にトドメを刺したのはカインだが、きっかけは全てバッツの行動に、ある。
「てめぇ…!何で!」
「誤解だよ。俺のせいで、誤解が始まったんだ」
激怒するデッシュに対してバッツは淡々と…言葉の裏に後悔を詰めて、言った。
「殺し合った結果がコレだよ。因果応報だな」
「誤解ってのは…何だ?何なんだ?」
デッシュが問う。戸惑いながら問う。コイツが導師を殺したって?くそ、もう少し凶悪な奴だったら…
…凶悪な奴だったら、怒りをぶつけられるのに。
「俺が誤解でエリアを殺した。だから、ソイツが俺を殺そうとした」
何でコイツはこんなに落ち着いて、こんなに後悔しているんだ?
バッツと、それを補足する形でクーパーが『誤解』の内容を語る。
デッシュはソレを聞いていた。黙って、聞いていた。
なまじ力が在れば、話も聞かずに2人を殺していただろう。だが、デッシュに力はない。
だから聞いて、聞き終わってから…泣いた。
48 :
3/5:03/07/29 11:16 ID:55/3wbKa
「何だよそれ…出来すぎじゃねぇか!笑い話じゃないんだぞ?!」
デッシュが怒鳴る。信じたくない。バッツとクーパーの言葉が真実だなんて。
だが、本当だとしたら。誰を憎めばいい?
エリアか?バッツか?クーパーか?導師か?ハーゴンか?それとも…ゾーマか?
「出来すぎだと思うよ。でも嘘は言ってないつもりだ」
「ふざけるなッ!んな事が本当でたまるかよッ!」
怒鳴り、憎しみの方向を固定する。バッツに向けて。ココにいるのはコイツラだけだ。
「止めろぉっ!」
クーパーの叫びが、バッツに殴りかかろうとしたデッシュの身体を押しとどめる。
クーパーが立ち上がる。痛む身体を引きずって。
「バッツ兄ちゃんの言った事は本当だよ…僕のせいだよ。バッツ兄ちゃんのせいだよ。エリアの、アイツラの…」
クーパーの声は段々掠れて、聞き取りにくくなって…聞こえなくなる言葉の代わりに、きっとデッシュを睨め付ける。
「でも、僕もバッツ兄ちゃんもまだ死ねない。死んでたまるもんか。だから…」
クーパーが珊瑚の剣を構える。震える両手で。
「僕が相手になってやる…こんなのイヤだけど…相手になってやる!」
49 :
4/5:03/07/29 11:20 ID:55/3wbKa
クーパーの気迫にデッシュが気圧される。
バッツが呆然とクーパーを見る。
そんな状態が数分間続いて…デッシュから、動いた。ただし、攻撃にではなく。
「殺したくて殺したんじゃない…んだな。お前らは…」
「「当たり前だ」よ」
2人が同時に言う。ソレと一緒に、デッシュが肩を下ろした。
分かってしまった気がする。憎むべき相手はココにはいないと思った。
何を憎めばいいか、結局分からない。恐らくは、運命だろう、憎むべきは。
デッシュは導師の遺体を抱き上げた。埋葬しなければ。
「…そこの部屋に、爺さんが言ってた呪術の道具がある」
「そうか」
デッシュは落ち着いた声でそう言って、ハーゴンの部屋へ入っていく。
デッシュは、ハーゴンの呪術用具一式を纏め、出ていく。
バッツは彼に導師の持っていた裁きの杖を放ってやり、言った。
「その子に謝っておいてくれ」
「……謝るくらいじゃ許しゃしない」
「分かってる。いずれ報いは受けるさ」
バッツ達を許した訳じゃない。だが、信用はした。
少なくとも、敵じゃないとは思った。
50 :
5/5:03/07/29 11:28 ID:ir+WPII3
「クーパー…」
バッツがクーパーに問いかけた。何を?何かを。
「バッツ兄ちゃん。僕、怪我を治してる間、ずっと…自分で考えてみた。
僕、今は、バッツ兄ちゃんを信じるから、だから…さっきは、ごめん」
何故か分からないけど、さっきまでバッツがどこか傷ついているのが分かった。
考えたらすぐに思い当たった。「お父さんなら」…クーパーはあの時言った。だから、信用されてないと思ってしまったのかも知れない。
ソレは悲しい事だ。そんな事で喧嘩なんかしたくない。誤解なんかしたくない。だから、謝った。
言い出すタイミングがつかめなかったけど、今なら言えた。彼の、デッシュのおかげだ。
「いや、ありがとう。信じて、くれてさ…」
バッツとクーパーが、お互いに笑顔を向けた。仲直りの、印。
2人は再び怪我の治療を始めた。
【バッツ(重傷)(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個/現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:傷の手当て
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【クーパー(後遺症あり) 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜現在位置:神殿一階ハーゴンの自室の前
第一行動方針:傷の手当て
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
(2時間ほど傷の治療に専念すれば、動けるようにはなります)
【デッシュ 所持武器:首輪 裁きの杖 ハーゴンの呪術用具一式 現在位置:ハーゴンの神殿の外へ
第一行動方針:導師の埋葬
第二行動方針:首輪を調べる
第三行動方針:エドガーに会う】
51 :
1/3:03/07/29 22:30 ID:O9llHdb+
サマンサが神殿に入ったのは、ソロたちが神殿に入ってから間も無くである。
そして、すぐにソロたちの死体を目の当たりにすることになった。
床に滲んでいく血は、まだ殺られて間もないことを示している。
つまり、それは神殿はとても安心できる場所ではないと言うことである。
サマンサは入り口の側、死角になるところでレムオルを唱えた。
姿を消す呪文。気配察知に優れるエルフなどには無意味だが、人間の目は十分だませる。
距離が離れているならとにかく、体力が貧弱なサマンサは、こうしてデスピサロたちが来るのを待っているしかなかった。
そして暫くして――――入り口に人が現われた。
「うう、サブイサブイ」
老人。身なりがいいところを見ると、富豪か何かかもしれない。
(…あるいは王族か。よくこれまで生きてこれましたね)
当然自分に気付く事はなく、老人…ゼニスは奥へと進んでいく。
少し気になったので、サマンサはその後をつけることにした。
ゼニスはソロたちを死体を見つけるとまず驚き、続いて祈りを捧げだした。
(随分と余裕のあること…)
祈り終えると、何事もなかったかのように奥へと行ってしまう。
(危機感がないというか…さて、どうしましょうか)
先程のように入り口の側に戻り、ジっと身を潜めて待つというのも一つの手だろう。
だが、神殿の中を探索したいという気分もあった。
彼の後をついていけば、たとえ「ゲームの参加者」がいても、まず彼を狙うだろう。
その間に自分は逃げればよい。神殿内を見て回る絶好の機会といえないだろうか?
52 :
2/3:03/07/29 22:33 ID:O9llHdb+
結局、サマンサはゼニスに付いていくことにした。
ゼニスはやはり危機感のない様子で不用意に歩き回っている。
そのおかげで、サマンサも神殿内の様子を見て回る事が出来たのだが…
(他にも…犠牲者がいた。やはり、この中に参加者がいる…)
サマンサは背筋に寒いものを感じた。早く…デスピサロに会いたい。
ゼニスはとある部屋に入っていた。
他の部屋と違って何故か明かりがついている。
(………!)
サマンサは息を飲んだが、ゼニスの断末魔は何時まで経っても聞こえてこない。
そろそろと部屋の中を覗いてみると…部屋の中にはゼニスしかいなかった。
「ほうほう、上手そうな料理よな。シチュー…いや、リゾット、というのかの」
無造作にコンロの火を入れ、鍋の中をかき回す。
熱が通るに連れて、良い匂いが漂い始めていた。
(何と、こんな状況で食事とは…大胆というか)
呆れるサマンサだったが、直後オナカが小さな音を立てる。
よく考えたら、自分もほとんど食事を取っていないことに気付いて、サマンサは赤面した。透明になっててわからないけど。
ゼニスは適当な皿にリゾットを盛り、食べ始めた。
サマンサは食べたくて仕方がない自分の気持ちに気付いて非常に情けない気分になった。
服の下に隠れているキツネリスも抗議するかのようにバタバタ動いている。
と、そのときだ。
53 :
3/3:03/07/29 22:34 ID:O9llHdb+
(…え?)
ゼニスの体が灰色にくすんでいく、そしてあっという間に石になってしまった。
触ってみるが、正真正銘の石である。
(ワナ…ですか?何ともしょうもない…)
と、湯気を立てる料理を見る。
(…と、言う事もありませんか。外の寒さに疲弊した体には何とも魅力的です)
とりあえず、ここにいても仕方ないのでサマンサは引き返すことにした。
(これは始末しておきましょう。別に食べてしまいそうだからではありませんよ?)
鍋の中身を流しに捨てた。流しの中が具で詰まってしまったが、知ったことではない。
(料理なんてしませんから問題ないです。別に苦手と言うわけではありませんよ?)
こうしてサマンサは石になったゼニスを残して食堂を出た。
途中レムオルを何度かかけ直し、周囲を探りながら無事戻ることが出来た。
サマンサが入り口から離れている間にジタンがやって来て、そして争いがおこったのだが…
彼女はまだそれを知らない。
【サマンサ(レムオルで透明化) 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1
現在位置:神殿入り口付近
第一行動方針:デスピサロが来るのを待つ
第二行動方針: ?
第三行動方針:生き残る】
【ゼニス(石化) 所持武器:アンブレラ 羽帽子? 現在位置:神殿南の山地を下山中
行動方針:神殿へ行く、物見遊山】
(毒を大量摂取してます)
【ゼニス(石化) 所持武器:アンブレラ 羽帽子? 現在位置:神殿食堂
行動方針:物見遊山】
(毒を大量摂取してます)
やっちまった…ゼニスの状況を上のに修正。
ともあれ、
これで自分の中では放送入れてもいいかな、と。
雑談スレはどうなった?
ゼニスって色々知ってそうだから使いようによっちゃ使えるキャラになると思うけど・・・
職人の方 期待してまつ
>>55 その辺にころがってる糞スレを再利用するという手もある。
つい昨日、自分も糞スレ立てたばかり。
>57
新しく建てるぐらいならそのほうがいいな
59 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/07/31 00:59 ID:lTklaJ1c
ボストロール出現記念パピコ
記念カキコ
放送入れるの?
いい感じの糞スレだね
糞スレ乗っ取りか、懐かしいな
じゃあこれからなるべく感想はそこに書くことにするか?
どうするよ?
>>65 今書いてる。
特に意見が無ければ死亡者報告とゾーマ側の事をちょこっと書くだけになると思う。
>>69 賛成。とりあえず放送はいったんそっちに書いておこうと思うんだけど、いい?
糞スレ乗っ取りか、ハカロワを思い出す。
ボコボコと気泡が上がっていくのが見える。
暖かい。気持ちいい。ココにいたい。ココに。ずっと。
でも、行かなきゃ。はやく、出なきゃ。でも、何処へ行くのだ。
ココは誰?私は何処?
…別にふざけているわけでもない。言語と思考の混濁が進んでいる。ただ、それだけの事だ。
エビルマージは油断無く、培養槽の中のリュックをにらみ据えていた。
究極生物の欠片。ヒトにしてヒトを超え、未だヒトとしての意志を残した異形を。
(切り札にもなり得る…か?)
意志を持たぬ究極生物よりは、あるいは…。
リュックは、まだ目覚めない。目覚めているのに、覚醒めない。
「…時は巡り、日は巡った。最後の瞬間を楽しむ用意は出来たか?
最後まで楽しむがいい。血の宴を楽しみ、自ら溺れていくがいい…
「メルビン」「ティファ」「ソロ」「テリー」「エリア」
「セシル」「ロック」「ラグナ」「ガウ」「マリベル」
「ギルガメッシュ」「セフィロス」「ハーゴン」「アグリアス」
「ピエール」「ジタン」「導師」
これだけの者が溺れ、快楽を貪った。……貴様らも、じきにそうなる。じきにな…」
ゾーマは独り言のように言い終えると、部下の魔物に放送を切るよう眼で命じた。
バラモスは他の仕事で忙しく、エビルマージは完全に姿を見せない。
ゾーマは何を考えているのか、玉座に座したまま動かない。まったく、動かない。
【リュック :所持武器:なし 現在位置:エビマジの研究室 行動方針:なし 】
(時間が0時を回りました)
73 :
1:03/08/02 16:36 ID:fv/ha1Vw
「背中見せて。多分傷が残ってるから」
クーパーはそう言って背中と壁の間にもぐり込んできた。バッツは体を動かすのが億劫で
上半身を軽く前にずらすにとどめた。
時間的にそろそろ放送があるはずだ。クーパーの治療の手を感じながら考えていたが、
温かい背中とは逆に冷気が衣服の下に侵入してくるのもあちこちに感じた。
「そういえば年じゅう同じ服着てたな……、随分擦り切れてボロくなってら。
それでさっき背中を打ったとき、決定的に破いちまった」
クーパーは顔だけ前に出して、へえ、とか、そう、とか頷いている。
バッツも横を向いてクーパーと視線を交わした。
「そんなに気に入ってるんだ。僕もこの服お母さんに繕ってもらってからずっと着てるよ。
ビリビリに破いて怒られると思ったのに、全然そんなことなかった。優しいんだ、お母さんは。
バッツ兄ちゃんの服も、きっといい思い出があるんだね」
「いや、金がなかったから……」
クーパーはしゅんとなって口をへの字に曲げた。全然違う言葉が返ってきたらしい。
何だか非難めいた目でこちらを見ていた。
「すまん、そんなこと聞いてるんじゃなかったな」
クーパーは背中の方から出てくると聞いてきた。
「これからどうするの?」
「とりあえずあの男が戻ってくるまでここにいよう。その後で、どこか落ち着ける所で休むか。
魔力も尽き掛けてるしな」
肩に手をおこうとしたが、クーパーが突然立ち上がったので手の行き場を失った。
「じゃあそれでいいよ」
納得しているようでしていないような曖昧な返事だった。
バッツはやり場のない手を戻し首の辺りに添えた。
「クーパー、さっき仲直りしただろ」
「別に僕怒ってないよ」
「そうかしら。なんだか冷たいぜ」
クーパーはそれには答えずにそっぽを向いた。それから二、三歩歩き出して天を仰いだ
「お母さんのこと思い出したら……僕」
クーパーは足を踏み外したように一瞬体をぐらつかせたが、そのまますぐ走っていってしまった。
74 :
2:03/08/02 16:37 ID:fv/ha1Vw
バッツは走っていく後姿を見ながら呟いた。
「子供にも満足なこと言えないのかな、俺」
放送が聞こえてきたのはそのすぐ後だった。
【バッツ(ダメージあり)(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個/
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:デッシュを待つ
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【クーパー(後遺症あり) 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜現在位置:神殿一階ハーゴンの自室の前
第一行動方針:デッシュを待つ
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
75 :
訂正:03/08/02 17:22 ID:+rrppLaE
失礼します。
>>73の文章の前にこれ↓が入るはずだったんですが
間違えて途中からうpしてしまいました。
クーパーはもう落ち着いていた。ピエールの死で立ち直れないほどの精神的な傷を負う予感も
あったが、そんな素振りは見せていない。強い子供なのだ。
もちろん灰になった男のことを気にしていることもないだろう。クーパーはあの男を死ぬまで明確に敵だと
認識していたはずだから。
そう、あの男が最後まで敵であってくれたことは良かったとも言える。
倒さねばならない恐ろしい敵であると思い込まねば、人を殺したという事実だけが残り、
一生その重荷を背負って生きねばならなくなる。そんな目にあわせたくない。
クーパーはまだ子供なのだ。
76 :
1/6:03/08/03 00:26 ID:Ni104M+S
デスピサロたちは、放送の時刻に合わせて近くの出入り口に来ていた。
大陸中央部と神殿の間、ちょうどティナ、アルス、エドガーたちの野営地から岩山一つ挟んだあたりである。
流れてきた放送に、三人とも表情を凍らせた。
人数があまりにも多かった事もある。だが、それ以上に知己の死が衝撃を与えた。
「バカな…ソロどのが?それにメルビンどのやガウどのまで」
「テリー…そんなぁ…!」
愕然とするライアンとバーバラ。デスピサロは零度の瞳を東に向ける。
「…神殿。神殿で何かあったな!」
はっと、バーバラの顔が強張る。
「そ、そう言えばテリーたちを最後に見たのは神殿の南だったわ。
私は嫌な予感がして引き返したんだけど」
「賢明だったな。ともあれ、一刻の猶予も最早ない。行くぞ」
言うと同時に、デスピサロはひょいとバーバラを小脇に抱えた。
何をされたのかわからず頭に疑問符を浮かべるバーバラ。
次の瞬間、デスピサロは物凄いスピードで走り出す。
「わああ!ちょ、ちょっと!」
「黙ってろ、舌を噛む」
「そうじゃなくて、おろしてよぉ!」
「一刻の猶予もないといったはずだが」
「だからってこんな、モノみたいな運ばれ方…ひやぁぁぁぁッぁぁ!!??」
スピードを落とさず角を曲がる。
遠心力で体が横に流され、岩壁スレスレを通った。
77 :
2/6:03/08/03 00:27 ID:Ni104M+S
「危ない!危ない!やだ、怖いってば。やめてよー!」
「黙っていろと言っている!」
「……楽しそうでござるな」
「何か言ったか!?」
ギロリと、後ろについて走るライアンを睨むデスピサロ。
ライアンは生真面目な表情で口元を引き締めた後、なんとなく顔を伏せる。
「その…ワシには理解できぬ趣向でござるが、それも一つの個性ならば認めなければと」
「…なんだそれは」
「案じられるな。お互いの気持ちが邪ならぬ限り、ワシは温かく見守るでござる」
ライアンは顔を上げると半分凍りついた笑みを浮かべた。
何故か、ライアンの瞳が男らしく光った…気がしたような。
それがデスピサロの癇に障った。
「キサマ、今、物凄い勢いで私を虚仮にしたな!?」
「滅相もない、でござる」
「だから降ろしてよー、バカなこと言ってないでさぁー!」
既にバーバラの声は涙混じりである。
こうして、デスピサロたちは数倍の速度と数十倍の賑やかさで地下通路を突き進んだ。
そして到着した出口。その側に、人影があった。
壁にもたれて、力無く座り込んでいる男。その側に一筋の槍が転がっている。
「何者だ?」
デスピサロは二人を見る。ライアンとバーバラは首を横に振る。
「なにやら落ち込んでおられるようでござるな」
そんな声が聞こえたのか、男は視線を上げた。その瞳に、力はない。
「誰だ?」
「質問しているのはこちらだ。答えろ」
睨みあう二人。割って入るのはライアンだ。
78 :
3/6:03/08/03 00:31 ID:Ni104M+S
「そんなケンカ腰ではまとまるものもまとまらなくなるでござるよ。
失礼仕った。ワシはライアンと申す。バトランドが王宮の戦士でござる」
「バトランド…聞いたことがないな」
「で、ござろうな。こちらはピサロどの。脇がバーバラどのでござる」
「………脇って」
バーバラがなんとも情けない声を上げたが、とりあえずスルーして。
「あんた…もしかしてデスピサロか?」
男の言葉に、デスピサロの視線が更に鋭くなる。
と、その時。デスピサロはこの男が意外なモノを抱えている事に気付いた。
「何故、貴様がその娘を連れている」
「あんたの事はジタンから聞いた」
答えになっていない。だが、デスピサロだけはそれが何を意味するかがわかる。
この男は何らかの縁でジタンから少女を託されたのだ。
「話せ。洗いざらいな」
デスピサロたちはその男、カインから神殿での出来事を教わった。
回避できたはずの戦いを繰り広げて、3名の死者を出した。
それぞれがそれぞれの感情で、何も言えずに口を噤む。
「そうして、オレは神殿から出た。だが、今の放送だ。
止めなきゃいけない親友は、既に誰かの手にかかって死んでいた。オレは、どうすればいいんだ…」
「………一つだけ、聞かせろ。その少女を貴様が引き受けた時、ジタンはなんと言った?」
「ん?……確か、『頼む』と」
「そうか。あの愚か者め、これを手放して自分の責も手放したな」
淡々と言うデスピサロの口調は、どこか乾いて虚しいとライアンは思った。
まぁ、脇に少女を抱えているのでとっても道化じみているのだが。
79 :
4/6:03/08/03 00:32 ID:Ni104M+S
そんなことを考えているうちにデスピサロは踵を返すと歩いていく。
「ピサロどの?」
「神殿に急ぐぞ。ハーゴンが死んだ以上、儀式の施行が難しくなった。
何をするつもりだったのか調べた上で、今後の行動を決めねばならん」
「しかし、彼は?」
デスピサロは立ち止まると、カインを一瞥する。
「捨て置け。腑抜けに用はない」
デスピサロは出口から外に出て行こうとしている。
カインは自嘲的に「腑抜けか」と呟いている。
何となく似たような状況があったな、と思いながらライアンは言った。
「カインどの、親友を手にかけたものを探してみてはどうでござるか?」
「セシルを…殺した」
「何らかの事情があったのかも知れぬし、このゲームに乗った者の仕業かも知れぬ。
自分が為すべき事を代行したものに会うことで、迷いが開けるのではないか、と」
「………」
「それだけでござる。では、ワシはこれで」
「待ってくれ」
デスピサロの後を追おうとしたライアンをカインは引き止める。
「ム?」
「あんたは…多分信頼できる人だ。一つ、頼まれてくれないか」
「ワシにできることだったら良いでござるよ」
あっさりと答えるライアンに、カインは胸に抱いている少女、リディアを差し出す。
「この子を、守ってやってくれないか。目覚めるまで」
「それは構わぬが、おぬしはよいでござるか?」
「目が覚めた時にオレが側にいるのは不幸なことだからな。その子とはそういう関係だ」
どこか自嘲の混じった声。それが何を含んでいるのかはわからないし、
触れてはいけないことだろうとライアンは思う。
だから、黙ってリディアを受け取った。
80 :
5/6:03/08/03 00:33 ID:Ni104M+S
「頼む。それと…セシルが死んだこと、隠しておいてくれないか」
「……承知したでござる」
こうして、カインはデスピサロたちと別れ、新たな目的のために動く事にした。
リディアを引き取ったライアンは、合流したデスピサロから散々嫌がらせを受けるのだが、
それはまぁ、自業自得。
81 :
6/6:03/08/03 00:37 ID:Ni104M+S
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本・
現在位置:神殿周辺、地下通路の出入り口
第一行動方針: 神殿に行く
第二行動方針:魔法使いを探す・腕輪を探す・偵察
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・ペンダント・メイジマッシャー
現在位置:神殿周辺、地下通路の出入り口
第一行動方針:デスピサロに同行する
最終行動方針:?】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
現在位置:神殿周辺、地下通路の出入り口
第一行動方針:デスピサロに同行する
第二行動方針:リディアの保護
第三行動方針:不明】
【リディア(気絶中)所持品:なし
現在位置:神殿周辺、地下通路の出入り口
第一行動方針:?
第二行動方針:エーコ、バッツたちと合流
第三行動方針:仲間(セシル?)を捜す】
【カイン 所持武器:ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
現在位置:神殿周辺、地下通路の出入り口
第一行動方針:セシルを殺したものを探す】
82 :
1/4:03/08/03 17:24 ID:yX79D/Cb
鼻先に、指が突きつけられている。
ただの指。軽く払えばそれだけで済む。
だが動けない。動けば、どうなるか?
デッシュはちらりと足元を見た。導師のために作った墓が見える。
動けばこうなる。目の前の女は魔法が使える。さっき喰らいかけて肝を冷やしたばかりだ。
とんがり帽子の魔法使い…サマンサに睨み据えられて、デッシュはぴくりとも動けなかった。
「動かないでくださいね……痛いですよ?燃えると」
指をひらひら踊らせながら、サマンサはからかうような調子で言った。
「どっから出てきやがったんだこのヤロォ…」
デッシュの方はと言えば、冷や汗を掻いて、やっとそれだけを呻く事が出来た。
右手に裁きの杖を握ってはいるが、コレを振りかざすよりは相手の魔法の方が早いだろう。死ぬ。
「さて…幾つか聞きたい事がありますが…貴方、何してたんですか?」
「見て分からないのかよ…墓だ、墓」
以前余裕のある…だが決して油断はしていない態度で、サマンサ。
その態度に多少イライラしながら、デッシュは足下の導師の墓を指さした。コレを作っている途中に襲われたのだ。
「…では次です。この神殿の中に生き残っている人間はいますか?」
「2人。俺くらいの男とガキがいる」
「ほぅ…で、敵ですか?味方ですか?その人達と、貴方は?」
「さぁな、定義によるよ……あいつらは寝首をかくようなヤツらには見えなかったがね」
デッシュは吐き捨てるように言った。そう、そんな卑怯で卑劣なヤツらではないような気がする。ハッキリいい奴とは言えないが、絶対に。
「そうですか…ではココまでですね。さようなら」
サマンサは、また明日会う友達に言うように、死刑宣告を放った。
味方として役立ちそうにはない。ならば…
「っと…ちょっと待てよ…!ゲームの脱出方法…知りたくないか?」
デッシュの口から“切り札”が放たれた。
83 :
2/4:03/08/03 17:25 ID:yX79D/Cb
「なん…ですって?」
サマンサの動きが止まる。指先に灯った紅蓮の欠片が消えた。『切り札』の威力は抜群だ。
「脱出方法だ…しかも、手段は二つ」
デッシュはニヤリと笑って、手にしたバッグ…呪術用具の入ったバッグを掲げてみせる。
「呪法と鍵文字…どうだ、乗らないか?」
バッグをふらふらと振る。サマンサが、静かに腕を下ろした。
(大丈夫…みたい)
神殿入り口の柱の陰に隠れたクーパーが、ほっと息を付いた。
バッツに悪いと思いながら、神殿の入り口まで何となく駆けてきて…遭遇した。デッシュとサマンサに。
慌てて柱の陰に隠れて様子を見ていたが…どうやら、和解したように見える。
…何度か飛び出して助けようかとも思ったが、出来なかった。気まずくて。
デッシュの仲間を自分たちで殺したのだから。自分達で。
サマンサとデッシュは二言三言会話を交わす。もう険悪な様子は見られない。
と、雪原の向こうから何かが歩いてくるのが、クーパーに見えた。
直後にはサマンサも気づいたらしい。そちらの方に振り返り…にっこり笑って手を振った。彼女の味方だろうか?
向こうから歩いてくる影は2人。
クーパーは片方の…若い男の方に見覚えがあった。そう、この忌々しいゲームの初日に出会った、バッツを追いかけていた男だ。
ハッキリ覚えている。闇の色をしたその姿。魔と冷酷さに溢れたその瞳。
ただ、あの時とは印象がまるで違う。襲いかかる敵ではないせいか、瞳から冷酷さはそのままに魔の色が抜け落ちかけているせいか?
…多分、小脇にやかましい女の子を抱えているせいだと、クーパーは結論づけた。
その後ろには、剣士がいる。大体パパスと同じくらいの歳か。その背中には…
「!ッ、リディアッ!」
その背中に、緑の髪の少女がいた。クーパーは、思わず入り口から飛び出した。
84 :
3/4:03/08/03 17:26 ID:yX79D/Cb
飛び出してきたクーパーを見て、デッシュは思わず叫んだ。
「何やってんだお前ッ!」
傷の治療をしているんじゃなかったのか?いきなり飛び出すなんて何考えているんだ!
あのデスピサロとか言うサマンサの仲間に狙撃されたって文句は言えないぞ?!
くそ、導師の仇だが、ここで見殺しにするのも目覚めが悪い、どうする…?
サマンサは、声が聞こえた瞬間に後ろに跳んだ。
ピサロとデッシュと飛び出してきたクーパーの3人を視界に入れて立ち止まる。
あの飛び出してきたのは、どうやらデッシュのいっていた子供か。どうやら、敵対者ではないようだが。
(さて…どうします?ピサロ卿…)
「あ…!」
しまった、とクーパーは思った。
思わず飛び出しはしたが、それからどうするのだ?不味い、この状況は不味い…。
悪意こそ抜けているが…バッツを襲っていたのはアイツだ。だが自分はまだ傷が…くそ…どうすれば?
「リディアッ!」
ピサロから多少離れた位置で立ち止まり、もう一度叫ぶ。返事はなかった。
「ピサロどの…?」
ライアンの問いかけ…あまり意味のない問いかけを無視して、ピサロはクーパーを見つめた。
天空の盾と…兜?天空の勇者しか装備出来ない伝説の武具。
ソレを扱える子供がいて、ソロが死んだ今も生き残っている。しかもリディアを知っていて、ゲームに乗ったようにも見えない。
「使える…かもしれんな」
ピサロはニヤリと、笑った。
85 :
4/4:03/08/03 17:27 ID:yX79D/Cb
【デッシュ 所持武器:首輪 裁きの杖 ハーゴンの呪術用具一式 現在位置:神殿入り口外
第一行動方針:首輪を調べる。この場をおさめる。
第二行動方針:エドガーに会う
第三行動方針:ゲーム脱出】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1
現在位置:神殿入り口外
第一行動方針:デスピサロに従う
第二行動方針:生き残る】
【クーパー(多少の後遺症) 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜 現在位置:神殿入り口外
第一行動方針:思案中
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本・
現在位置:神殿入り口外
第一行動方針:不明
第二行動方針:魔法使いを探す・腕輪を探す・偵察
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・ペンダント・メイジマッシャー
現在位置:神殿入り口外
第一行動方針:デスピサロに同行する
最終行動方針:?】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
現在位置:神殿入り口外
第一行動方針:デスピサロに同行する
第二行動方針:リディアの保護
第三行動方針:不明】
【リディア(気絶中)所持品:なし
現在位置:神殿入り口外
第一行動方針:?
第二行動方針:エーコ、バッツたちと合流
第三行動方針:仲間(セシル?)を捜す】
86 :
1/5:03/08/04 11:34 ID:au8lUc62
「で?俺達にどうしろって言うんだ?」
言葉に皮肉な調子を込めて、バッツは目の前の闇の貴公子に問いかけた。
バッツの横では、バーバラが一生懸命ホイミを唱えながらダンスを踊っている…何故ダンスなのだろう?
そのダンスのおかげで体力が戻ってきている事には、さすがにバッツも気づかない。
クーパーは壮年の剣士…ライアンと何やら話している。恐らくリディアの事だろう。
デッシュとサマンサも、隅の方でひそひそと脱出方法について語り合っている。
ハーゴンの自室の前に、それだけの人間が集合し、そして協力しあおうとしていた。
「嫌われたものだな…脱出したくはないのか?」
ニヤリと笑った闇の貴公子…デスピサロの言葉に、バッツは無言で両手を上げて見せた。
降参のポーズ。実力でも話術でも、どうにもこの男にかなわないような気がする。
「なに、簡単な事だ…役立たずを預かって好きにしてくれればいい」
そう言いながら、デスピサロはリディアを眼で指し示す。
「その過程でゲームに乗った奴でも殺したら、この儀式を行え」
デスピサロは一方的に手にしたメモを押しつけた。クーパーとともに来た彼らは、脱出の方法を知っていると言うが…。
「何々…首を切って魂を封印…?正気か?」
「ハーゴンとやらの呪術にはもう一つ首が必要なのでな」
デスピサロは当然のように言い放つ。彼はデッシュの持っていた呪術用具とハーゴンの残した説明をバッツから聞き、ソレを実行に移す事にしたのだ。
「…うまくいくのか?」
バッツは体力の戻った身体を確かめるように動かした。治療に使った魔法力の消耗はあるが…問題はないだろう。
バッツはバーバラに礼を言い、立ち上がった。そしてデスピサロに問いかける。
「この老人は巧妙だよ。うまくいくだろうな」
そう、巧妙だ。儀式の内容、実行の仕方。そして“罠”。生きていればさぞ役に立っただろうに。
87 :
2/5:03/08/04 11:36 ID:au8lUc62
と、デスピサロ達の背後でわあっ、と歓声が上がった。
振り返ると、リディアとクーパーがニコニコ笑いながら手を握りあっている。どうやらようやく眼を覚ましたらしい。
これでいい。とピサロは思った。こいつらもジタンと同じ、守るべき者を持つ事で真価を発揮するタイプだ。
特にクーパーに関しては、子供っぽい恋愛感情も相まって非常によい動きをしてくれるに違いない。
いい加減、足手まといを抱える余裕もピサロにはないわけだし。一石二鳥、と言うところか。
「さて、これからの動きだが…」
デスピサロは小さく呟いてから、顔を伏せて独り言を始めた。何かを考え始めたらしいが。
と、バッツの隣に立っていたバーバラがさっきまで…ダンスを踊っていた時に浮かべていた元気いっぱいの笑顔を潜めている。
「貴方…バッツって名前だったよね?」
「ああ…」
「レナって人…知ってる?」
バッツの顔が強ばった。叫び出しそうになる喉を押しとどめ、バーバラにつかみかかりそうになるのをギリギリで自制する。
「ああ……知ってる。よく知ってる」
「私、レナお姉ちゃんと一緒にいて…最後にコレを、受け取ったの」
バーバラはバックを探ると、中から飛竜を象ったペンダントを取りだした。レナの、ペンダント。
「……っ…っくっ…!」
涙が出そうになる。レナの笑顔が脳裏を駆ける。彼女はもういない。ペンダントだけを残して…。
「ねぇ、バッツ…1つ、聞きたい事があるんだけど」
「あ、あぁ…何だ?」
数分して落ち着いたバッツに、バーバラは深刻な顔で、聞いた。
「下で…死んでいる人が2人…いたでしょ?」
「…あぁ、俺が殺した。」
バッツの頬でぱあん、と、激痛が弾けた。
88 :
3/5:03/08/04 11:38 ID:au8lUc62
「っ…!」
「あ…」
その場にいた全員がこちらに注目する。バーバラが呆然と自分の手を…思わずバッツをぶった自分の手を見つめた。
バッツは自分の頬を押さえ、バーバラの方をじっと見る。
「理由くらい言ってくれ…どっちが、知り合いだった?」
バッツは冷静に言った。レナのために泣いて、泣いて、今は頭がスッキリしている。
バッツ、落ち着いて、とレナが言っている気がした。その通りだ。落ち着いて、誤解を生まぬように、なんとか…
「テリー、まだ子供だったのに…なんとか……何とかならな…っ!」
自分の手を見つめたまま、バーバラが言った。
動揺で、バーバラの声が詰まった。テリー…子供のテリー。何とかならなかったのか?
レナを殺した殺人鬼と一緒にいたとは言え、助けてやれなかったのか?子供なのだ。説得して、何とか…何とか出来なかったのか?
バーバラが揺れる。“レナが好きだった(と思う。多分)バッツ”と“テリーを殺したバッツ”が、同時に目の前に存在する。
どちらを見る?どちらに目をつぶる?
「…悪い。俺、レナほど優しくなれない。レナみたいに誰も彼も助けられない」
バーバラが顔を上げた。バッツは、頬を押さえて独白する。
「ああするしかなかった…って訳じゃないけど…ああしないと…子供でも…誰かを殺せるから」
言葉がまとまらない。どう言えばいい?どう償えばいい?
「俺はああした。俺にはもう、余裕なんて、無かった」
「……」
バーバラはしばらく無言でバッツを見つめ、真っ赤に腫れたその頬にホイミを使った。
「…ごめん」
バーバラはやっとそれだけ言って、バッツのそばから離れた。
悪い人じゃない。でもテリーを殺した。でも、ソレは間違っているのか?
間違ってると思いたい。間違ってると思いたくない。
テリーを裏切りたくない。レナが好きだったバッツを裏切りたくない。
バッツは仕方なく殺したんだろう。でも、完全に割り切る事は出来なかった。バッツはいい人だ。でも、人を殺した。
頼るモノが無くなる感覚を感じて、バーバラは体が震えたような気がした。
子供達は不安そうな顔で2人に歩み寄り、大人達はそれぞれの思考の渦へと戻っていく。
脱出のための戦いが、始まる
89 :
4/5:03/08/04 11:40 ID:au8lUc62
【バッツ(魔法力やや消耗)(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント/
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:クーパー達と共に行動する。
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【クーパー(魔法力やや消耗) 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜 現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:バッツと行動する
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【リディア 所持品:なし
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:バッツ達と行動する
第二行動方針:エーコと合流
第三行動方針:仲間(セシル?)を捜す】
【デッシュ 所持武器:首輪 裁きの杖 ハーゴンの呪術用具一式 現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:首輪を調べる。ピサロを手伝う?
第二行動方針:エドガーに会う
第三行動方針:ゲーム脱出】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:デスピサロに従う
第二行動方針:生き残る】
90 :
5/5:03/08/04 11:41 ID:au8lUc62
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本・
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:呪術の実行
第二行動方針:魔法使いを探す・腕輪を探す・偵察
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:デスピサロに同行する
最終行動方針:?】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:デスピサロに同行する
第二行動方針:不明】
91 :
1/2:03/08/05 16:56 ID:2RvgXl+F
「大丈夫?」
クーパーが、バッツのの足下に歩いてきて心配そうに聞いてきた。
ただ頬を叩かれただけなのに、何だか不自然に慌てている。
「…平気さ。ちょっとした痴話喧嘩だよ」
「え?ち、ちわ…なんて?」
「……」
どうやら冗談で言った言葉の意味が分かっていないようだが。
とにかく、クーパーはほっとして胸をなで下ろした。何しろ彼らを連れてきたのはクーパーだ。
何か、致命的な事があったら完全に自分の責任である。
正直、デスピサロをここまで連れてきた事に、クーパーは未だ不安を感じていた。
あの時、デスピサロとサマンサとデッシュとクーパーとが睨み合いに入った時、ソレを止めたのはデスピサロだった。
「全員、少し黙っていろ」と、彼は放った。冷たく、低い一声を。
リディアの名を叫んでいたクーパーも、クーパーを助けようとしたデッシュも、デスピサロを呼んだライアンも。
神殿の前は一瞬で静寂に包まれ、デスピサロだけが静寂をかき乱した。
サマンサから事情を聞き、デッシュを説得する…説得と言うより半ば脅迫だったが。(何しろ「教えるか死ぬか、どちらか選べ」が説得の内容である)
そして最後に、クーパーに歩み寄り、彼は言った。
背筋が凍るような瞳でこちらを見て。
「手を貸せ。天空の勇者」
簡単な、そして、冷徹な一言。ソレを聞いてクーパーは迷った。頼りになりそうだがしかし、彼は…
「…あの娘を取引の材料にしてもいいんだぞ?」
続けて放たれたその言葉は…ストレートな脅迫だった。クーパーはそうだと確信した。
協力しなければリディアを殺す…そう言う意味にしかとれなかった。
92 :
2/2:03/08/05 16:59 ID:2RvgXl+F
クーパーは、結局その脅迫に屈する事にした。選択肢は、無い。
バッツの所に案内する間に、バーバラやライアンが「それほど悪い人ではない」とフォローを入れてはいたが、どうにも、不安だ。
自己紹介で少し話しただけだか、バーバラとライアンは信用の出来る人だとは思う。
その2人が信用しているのなら、大丈夫だろうと、クーパーは思いこむ事にした。
別に、リディアの「命」を取引に使うと言ったわけではないのだし(身柄の引き渡し、程度の意味だったかも知れない)
だが、今その思いこみが揺らいでいる。
(…大丈夫だよね。多分)
頭を振ってイヤな考えを振り払う。そうしてから、彼はリディアの方に歩き出した。
リディアが、震えるバーバラの横でオロオロしている。早く助けなければ…
【クーパー(魔法力やや消耗) 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜 現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:バッツと行動する
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
保守
94 :
1/4:03/08/09 00:07 ID:ON6v8kTc
「おちついた?」
クーパーはリディアに声をかけた。
リディアはおろおろとしながらもコクリと肯く。
ある意味それは素っ気無くてクーパーはちょっとがっかりしたが、へこたれなかった。
自分たちがここに来た経緯と、ここであったこと…ジタンたちとの戦闘は誤魔化した…を話す。
ひとしきり話した後で、リディアのこれまでを聞いた。
リディアは途端に涙ぐんだが、それでも祠であったことを話し出した。
祠の前で起った争い、祠に侵入してきた者、
命がけで自分を助けようとしてくれたピピン、なのに掴まってしまった自分、
自分のせいで抵抗も出来ず炎の中に消えていくピピン、そして今度はターバンをかぶった男が脅されて…
「ターバンをかぶった!?」
そこで、クーパーが大声を上げた。
リディアの話を隣で聞いていたライアンも反応する。
「とんぬら殿か。やはり北に流されたようでござるな」
「お父さんのこと知ってるの!?」
お父さん、という言葉にリディア、ライアン、側にいたバーバラも目を丸くする。
ライアンはなるほど、と肯いた。
「うむ。そう言えばとんぬら殿は子供を捜していたでござる」
「お父さんが…あそこに」
クーパーはフラフラと二歩三歩した。それからぺたんと座り込む。
もしも…もしもなどないということは承知しているが――――もし、祠に残っていたら。
そして祠に戻っていたら。自分には、戻る機会が与えられていたのだ。
なのに…自分は神殿に来て、そして自分たちが神殿に来たことで人が死んでしまった。
ピエールだって、死ぬことはなかったはずだ。
失敗した。自分は誤ってしまったのだ…
クーパーの目の前は真っ白になった。
95 :
2/4:03/08/09 00:11 ID:ON6v8kTc
しばらくして、デスピサロは静かに顔を上げた。
「ハーゴンは死んだが、幸いにしてノウハウと必要な道具は一通り揃っているようだ。
儀式は行う。ただ、今すぐというわけには行かぬ」
「何か問題でも?」
側に控えたサマンサが問うと、デスピサロは一瞥して答える。
「純粋に術者が儀式のことを知らない。サマンサ、この儀式はお前が仕切れ」
サマンサはその言葉に驚いた。完全を求めるデスピサロのことだ、彼自身が執り行うものと考えていたが…
「その小娘は相当消耗しているので、朝まで休ませる。
お前は朝までに儀式の全容を把握し、小娘の回復を待て」
「小娘小娘って…私にはバーバラって名前が!」
そんなバーバラの抗議をあからさまに無視して、サマンサは問う。
「しかし、ピサロ卿はなにをされるのです?」
「私は他にやることがある。マジャスティスを完成させねばならん」
『マジャスティス…?』
サマンサ、バーバラが唱和した。
デスピサロは肯くと、
「上手くいけば、ゾーマの結界を剥ぎ取れるかも知れぬ呪文だ。完成すれば必ず役に立とう」
「そのようなものを…承知いたしました。儀式は私にお任せください」
感嘆の色を滲ませながら恭しく答えるサマンサに、デスピサロは薄く笑みを返した。
「頼むぞ」
デスピサロはライアンを横目で見る。
「何があるのかまだ油断できぬ、側でサマンサたちを守ってやれ」
「承知でござる」
次にデッシュ。
「貴様の用事は私が聞こう。こちらにもやることがあるから、片手間になるがな」
「それでも十分だ。助かるぜ」
96 :
3/4:03/08/09 00:16 ID:ON6v8kTc
そして、最後にバッツたちを見た。
「お前たちにはジタンの役割を引き継いでもらう。魔法使いを探し、連れてくるのだ。
とはいえ、その体ではロクに動けぬだろうから明け方までは体を休めろ」
「…ああ。クーパーもそれでいいな?」
クーパーは即答しなかった。よろよろと立ち上がると、
「僕は…祠に戻る」
「クーパー?」
そして何かを言おうとしたデスピサロに先制して言い放つ。
「お父さんは、失われた古代魔法を復活させることを手伝った事もあるんだ。
勿論、魔法だって使えるよ!」
とはいえ、復活させた魔法はデスピサロたちの時代には普通に使えていたルーラだが。
そんなことをデスピサロは知らないので、
「心当たりがあるということなら、構わん」
「私も…行く」
そういうリディアに、デスピサロは平然と言い放つ。
「好きにするがいい」
「リディア…」
「ごめんなさい、でもピピンに謝りに行きたいの…どうしても」
「………わかった。一緒に行こう」
「ありがとう、クーパー」
バッツはそんなやり取りをする二人を見ていた。
さっき名前を聞いたからだろうか…大人しいのに芯が強く、自分を曲げないリディアの姿が、レナと重なった。
サマンサはそっとデスピサロに尋ねた。
「よろしいのですか?あの娘の同行を認めても」
「かまわん。あの手の輩は意のままに動かすより、裁量に任せた方がいい。
ある程度譲歩すればこちらへの融通を利かせるだろう。
逆に人質をとろうものなら、我等を敵に見なす可能性もある」
97 :
4/4:03/08/09 00:18 ID:ON6v8kTc
それに…デスピサロは思った。あの娘の魔力は枯渇している。
器の大きさは凄まじいが、何らかの理由で魔力の源を潰してしまったようだ。
当り前だが、源は回復魔法では癒えない。
おそらく、あの娘は一生魔法は使えないだろう。
そんな子供を確保していても、こちらの負担になるだけだ。
ならば、クーパーに押し付けてしまったほうがよい。
デスピサロは一瞬冷笑を浮かべ、そして全員に言った。
「以上だ。各自、行動を開始しろ」
【クーパー 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜 現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:明け方まで休憩、祠に戻る
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【リディア(魔法使用不可) 所持品:なし
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:明け方まで休憩、祠に戻る
第二行動方針:エーコと合流
第三行動方針:仲間(セシル?)を捜す】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント/
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:明け方まで休憩、クーパー達と共に行動する。
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1 ハーゴンの呪術用具一式
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:デスピサロに従う・儀式の準備
第二行動方針:生き残る】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:朝まで休憩
最終行動方針:?】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:サマンサ、バーバラを守る
第二行動方針:不明】
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本・
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:呪術の実行・マジャスティスを完成させる
第二行動方針:魔法使いを探す・腕輪を探す・偵察
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【デッシュ 所持武器:首輪 裁きの杖 現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:デスピサロに手伝ってもらって首輪を調べる。
第二行動方針:エドガーに会う
第三行動方針:ゲーム脱出】
99 :
1/3:03/08/10 10:08 ID:FEvU1Qx6
「行っちゃ、駄目」
アリーナは、吐き出すようにクラウドに言った。
地下通路の奥。人が通らないだろうと見当を付けた通路の奥の奥。
そこに2人が、アリーナとクラウドがたどり着いたとき、アリーナはそう言った。
「…なんだ?突然?」
「行きたいんでしょ?探しに」
アリーナらしからぬ平坦な声音。アリーナは傷ついた身体を地下通路の壁に背中を預けると、続きの言葉を吐きだした。
「行ったって、何にも出来ないよ。こんなに、ボロボロで」
「…」
「こんなに、傷ついて…このまま行っても役立たずだよ…」
「…」
「それに、セフィロス…って奴は死んだんでしょ?もう危ない事なんて、ほとんど無いと思うから…」
アリーナは淡々と喋る。クラウドは黙り、立ったまま彼女の話を聞いた。
アリーナは喋りながら、自らの言葉の嘘の多さに苦笑したくなっていた。デタラメだらけで、穴だらけの言葉。
危ない事が無くなるなんて、絶対にない。このゲームの中でそんな事はあり得ない。全員が殺人者になる可能性があるから。アリーナだって、もう殺した。
傷ついている。2人とも傷ついている。だけど、何とでもなる。かなり長い間休んで体力は上々と言ったところ。彼方此方の傷だって、無理すれば何とかなる程度だ。
でも、行かせたくない。クラウドに無理をさせたくない。危ないところに出て欲しくない。2人で生き延びたい。
そんな“理由”がいくつも頭を回り、その内、1つに纏まってわかりやすい言葉に変わる。
その言葉を認識して、アリーナは自分を殴りつけたい衝動に駆られた。そんな、こんな気持ちでいるのだろうか?自分は?
嫉妬と言う言葉が、アリーナにクラウドを止めさせた。
自分よりその人を気にかけている様子を覗かせるクラウドを見て、エアリスと言う人物にアリーナは、嫉妬していた。初めての、感情だった。
100 :
2/3:03/08/10 10:10 ID:FEvU1Qx6
クラウドは、迷っていた。
アリーナの言う事ももっともだ。セフィロスという最大級の敵が消えた今、危険は少ない。だが0ではない…。
クラウドが悩んでいるのは、しかしそれよりももっと簡単なところだった。
どちらの責任を放棄するか。その一点。悩んでいるのは、その一点。
責任がある。アリーナを守るべき責任が。だけど、エアリスを守るべき責任も、ある。
あの時、忘れらるる都で、もう少し、もう少しだけ自分が強ければ。エアリスの知っているソルジャーファーストでいられれば。
…そうでなくてもいい。とにかく強ければ、セフィロスに逆らえれば。かりそめでもいいから強さを持っていれば…彼女は死ななかったかも知れない。
自分の責任(せい)だ。だから、こんどこそ…。
だけど、今は、どうすればいい?どちらかを捨てなければならない。どちらも捨てられない。
クラウドは座り込んだ。座り込みながら考えていた。悩んでいた。
しかしアリーナはその行動を、『行くのを止めた』と解釈したようだ。ほっとして…そしてほっとした自分に怒りを覚えながら、アリーナは体を休め始めた。
放送は、それからしばらくして始まった。
2人はそれを黙って聞いて…そして思考を停止した。
止まり、しばらく経って、ようやくアリーナはまともな思考を取り戻す。
ソロが死んだ。ソロは止まった。それは、喜ぶべき事なのか?それは分からない。分かるはずもない。分かりたくもない。
しかし、今は、まさか、ひょっとして…?
具体性のない言葉の羅列がアリーナを支配する。そして…視界の端で、クラウドが立ち上がるのが見えた。
101 :
3/3:03/08/10 10:12 ID:FEvU1Qx6
クラウドはもう、何も考えていなかった。
責任だとか、そう言う事はすでに頭の中から消え去っている。クラウドが、それを無責任だったと後悔するのは多分、ずっと後だろう。
ティファが死んだ。冗談みたいな話だ。彼女が死ぬなんて、そんな。
だが死んだ。自分がぬくぬくと体を休めている間に、死んだ。
そして、その後も人は死んでいる。危険が、在る!
「うあああああああぁぁっ!」
クラウドは叫んだ。悲鳴を上げた。失った哀しみ、そして、失うかも知れない恐怖。
クラウドはもう、何も考えていなかった。
今はただ、立ち上がり、走る。止まらない。探す。エアリスを!一直線に、東へ!
「まってよ!」
アリーナは立ち上がり、クラウドを追いかける。
走る内に、頭がぐちゃぐちゃになっていく。クラウドが選んだのは、エアリス?嘘だと言って欲しい。だが。
アリーナももう、何も考えていなかった。
今はただ、立ち上がり、走る。止まらない。追いかける。クラウドを!一直線に、東へ!
【アリーナ(軽傷・片目失明状態)所持武器:イオの書×4 リフレクトリング ピンクのレオタード
現在位置:地下通路(大陸中央付近)から出て東へ】
第一行動方針:クラウドを追いかける
最終行動方針:不明
【クラウド(軽傷・錯乱に近い状態):所持武器:ガンブレード 現在位置:地下通路(大陸中央付近)から出て東へ】
第一行動方針:エアリスを探す
最終行動方針:不明
ほしゅ
103 :
1/4:03/08/13 09:22 ID:uW5DSoYK
指先の感覚はもう無い。喉の奥がじっとりとして詰まる。眼の奥はどうしようもなく冷たい。
でも、あの時と同じだった。同じ感情だった。彼女が、死んだときと。
どのように死んだ?どうして死んだ?
クラウドは声にならない声を上げ、走っていた。いや、本人は走っているつもりだったが、それは歩いているも同然の速度だった。
一体、どれくらいの時間走ったのか?雪をかき分け、クラウドは走った。目の前の光景も見ることなく走った。
彼が見ているのは、黒髪の美しい女性の姿の、幻影。
彼女はこちらを見ていた。ただ見ていた。何も言わずに、自分を見つめていた。
責めない。慰めない。庇わない。恨まない。怒らない。
いつも、そうだった気がする。ただティファはこちらを優しく見つめて…そう、何も言わなかった。
言葉なんて要らない。2人で一緒にいれば、きっと何も言わなくても分かる。
…そう、2人で一緒に居さえすれば。
一緒に居られなかった。死んでしまった。ティファは死んでしまった。どうすればよかった?俺は、どうすればいい?
目の前の、幻影のティファが倒れ込む。クラウドは両手を広げ、それを抱き留めた。受け止めた反動で身体が止まる。
手の中のティファの胸には、剣で刺し抜かれたような傷が付いていた。ちょうど、あの時のエアリスと同じ具合に。
「…!」
もう声も出ない。クラウドは無言で、その場に膝を突いた。
ぬちゃり
そんな、嫌な感覚がクラウドの膝にまとわりついた。その冷たい感覚が、クラウドの意識をまともな方向に引きずり戻す。
(……ここは…何処だ?アリーナは……俺は…何をやっているんだ!?)
思考が正常になり、猛烈な後悔が襲い来る。責任は何処へ行った?自分は何を考え、何をやっている?
「くそ…!」
クラウドは地面を殴りつけた。ティファを守れなかった自分に腹が立ち、アリーナを見捨てた自分に頭が来た。
殴りつけた地面からびちゃりと何かが撥ねて、彼の顔を汚す。雪では、無い。
クラウドは不思議に思って地面を見た。
104 :
2/4:03/08/13 09:24 ID:uW5DSoYK
クラウドがその場に立ち止まったのは、『ソレ』に蹴躓いたためだった。
その衝撃を、クラウドは幻影のティファを受け止めたと、勘違いしたのだ。
転がっているのは挽肉だった。ただ、ほんの僅かだけ挽肉でない部分が残っている。
鎖骨から上の部分。焼けた顔面。銀色の髪。知っている顔。英雄。片翼の天使。
「セフィロス…」
一度正気に戻ってしまえば、もう再び狂う事もない。クラウドは案外冷静に、その物体を見つめていた。
そうか、ここで死んだのか。ここにエアリスが居たのか。
頭が冷めていく。2人のセフィロスがクラウドの頭を覚ましていく。
英雄はニヤリと笑って落ち着けと言い、片翼の天使はクククと笑ってこちらを見ている。その姿が、クラウドに落ち着きを取り戻す。
2人のセフィロス。憧れと憎しみ。ソレがクラウドの判断力を再構築する。何かが、戻っていく。
クラウドは立ち上がり、振り返った。
探したい。今すぐエアリスを探したい。だけど、だが…。
クラウドは、アリーナの所に戻るべく歩き出した。
その途中、何かが脚にこつんと触れる。クラウドが足元を見ると、それは、正宗だった。
半ばで折れた正宗の、柄。クラウドはソレを拾い上げ、しばし迷ってから…ザックに納める。
今持っている銃のような剣よりは使いやすそうだという判断もあった。
だがそれ以上にその刀は忌々しく、そしてソレにもまして懐かしかった。
今すぐ放り捨てたいと思い、それ以上に持っていたいと思った。
そこから少し離れた野営地で、エアリスは仮眠を取っていた。
見張りにティーダが起きているが、疲労からか注意力はやや落ちている。一緒にいるモニカも、眠っていた。
…あんまりにも意地が悪い、すれ違いだった。いや、幸運だったのかも知れないが。
105 :
3/4:03/08/13 09:26 ID:uW5DSoYK
あの、セフィロスの遺体から地下通路の方にしばらく歩いた場所。ちょうど中間地点まで来たところで、クラウドは遠くに何かを見つけた。
「…アリーナ?」
クラウドは小さく呟いて、前方から駆け寄ってくる影を見た。
暗くて少々分かりづらいが、そのレオタード姿は間違いなくアリーナだ。
……今まで意識していなかったが、寒そうだ。
「クラウド〜ッ!
と叫ぶアリーナは見る見るうちにこちらに駆け寄り、目の前まで来ると立ち止まる。
彼女はぜぇはぁと息をあえがせながら、こちらを見ている…何も言わない。
「…悪かった」
クラウドの小さな詫びに、アリーナは何となく違和感を覚えた。
落ち着いて、いる。さっきまで錯乱していたとは思えないほどに。
「…ううん」
なにがううん、なのかは分からないが、とにかくアリーナは返事をした。
それからしばらく見つめ合う。何も言わなくても分かる、なんて訳じゃない。ただ、そうやって分かり合いたかった。
「どうしようか?…これから?」
「…興味ないね」
「へ?」
「冗談だ…勝手に飛び出した俺が言うのも何だが、何度も人が往復する通路に居るのも危ないと思う。体力を消耗しないよう目立たないところに移動しよう」
「う、うん…」
返事をするアリーナは、クラウドに奇妙な違和感を感じていた。冷静になっただけではない。何かが、変わった…?
(なんだが、取っつきづらくなっちゃったかも…)
106 :
4/4:03/08/13 09:27 ID:uW5DSoYK
(感謝するぞ…セフィロス)
進む方向を思案しながら、クラウドは心の中でセフィロスに感謝した。
彼のおかげだ。彼の死を認識して冷静になる事が出来た。
エアリスを殺した彼への憎しみが、責任から逃げる事を拒否した
英雄だった彼が、冷静にならねば生き延びられないと言った気がした。
…今の彼は、ソルジャー1st・クラウドだった。
かりそめではあっても、冷静で強く不敵な、ゲームを生き延びる事の出来るクラウドだった。
…本当の自分は、今はいない。子供のように怯える自分は、今はいない。
エアリスとアリーナとを助けるため、彼はソルジャー1st・クラウドになった。
ティファを見殺しにした自分には、そうするしかないと思ったから。
二度と間違わないためにはそうするしかないと思ったから。
もう、東の空はほのかに白くなっていた。
【アリーナ(軽傷・片目失明状態)所持武器:イオの書×4 リフレクトリング ピンクのレオタード
現在位置:地下通路入り口(大陸中央付近)とエアリスの野営地の中間地点
第一行動方針:クラウドと行く
最終行動方針:不明】
【クラウド(軽傷):所持武器:ガンブレード 折れた正宗
現在位置:地下通路入り口(大陸中央付近)とエアリスの野営地の中間地点
第一行動方針:人気のないところに移動
第二行動方針:アリーナを守る。出来ればエアリスも探したい(?)
保守
108 :
1/4:03/08/14 13:11 ID:usmBfN6b
「ライアンよ…頼みがある」
廊下でデスピサロはライアンを呼びとめる。
「もし私が死ぬようなことになれば、その時はお前が私に代って指揮を取ってくれぬか」
デスピサロの口から出た意外な言葉にライアンは面食らった。
「突然何を…わしはそんな器ではないでござるよ」
ライアンの否定の言葉をさえぎるようにデスピサロは続ける。
「お前の力量は私が1番よく知っている、お前がいなければ我々は易々と勝利を手にしていただろう」
デスピサロは考える、自分たちは勇者がいたから破れたのではない、勇者はいわば神輿にすぎない、
肝心なのはその担ぎ手だ。
その生まれも違えば目的も境遇も違う担ぎ手たちを、上手くまとめたのはライアンの力あってのことだ。
これは剣の腕や魔法に長けているからといって出来ることではないし、修行したとて身につくものではない。
そう、何者にも惑わされない公正な心を持ち、人望を集める力こそが、
ライアンの生まれ持った真の能力であることを、デスピサロは見ぬいていた。
「それに重ねてお前には頼みたいことがある」
デスピサロは胸ポケットから懐中時計を取り出して、文字盤を開く。
「あの大広間で奴らに武器を奪われたとき、とっさに飲みこんだ…それよりも見ろ」
デスピサロはライアンに時計を見せる。
「!!」
文字盤を見たライアンは驚きを隠せなかった、なんと時計の針が常識では考えられない速度で、
ぐるぐると回っているのだ。
「これがおそらく本来の世界での時間だ…ここにいるのはせいぜい23日だが」
そこで言葉を切り、デスピサロはもう1度時計を見る。
「元の世界ではもう半年…いやそれ以上の時間が経過しているだろう」
「ピサロ殿が心配しておるのは、ブライ殿のことでござるな…」
暗い表情でライアンが云う。
109 :
2/4:03/08/14 13:12 ID:usmBfN6b
ブライの挙動がおかしいことはライアンも悟っていた、やたらと方々に連絡を取っていたし、
それになにやら怪しい一団と密かに会合を持っていたというのも知っていた。
だが…正直多寡を括っていたのだ。
自分たちが睨みを聞かせている限り、いかに彼といえども暴発は出来ないだろうと…
しかし、こうして自分たちが異界に流され、しかも半年以上の時間が経過しているとなれば話は別だ。
あの老人の力ならば、事を起こすには充分過ぎる時間だ。
そしてブライが何をたくらんでおり、そして今何をしているかも彼らは手に取るように理解できた。
「クリフトとマーニャではブライを止められまい…せめてお前かトルネコが残ってくれさえいれば」
デスピサロは嘆くように呟く。
今の魔族の勢力で人間と戦っても勝ち目は無い、だからこそ自分がいなければならない。
自分ならば一族を守れる、いや王として守らねばならない。
いや…自分がいたとて同じ、か。
所詮、運命は個人の奮闘では止める事は叶わない、もはや自分たちの命運は、
宿敵である人間の動向にかかっていることをデスピサロは痛感していた。
手が無いわけではない…が。
(進化の秘法、か)
それとて一つの種を滅びから救うには膨大な年月が必要だ、そしてそれが達成される日が来たとして、
もはや自分はこの世にはいないだろう。
だからこそ、ライアンには生きて帰還してもらいたかった。
トルネコのいない今、人の側から魔族の命運を託せうるのは彼以外にはいなかった。
個人の出来うることなぞ、細い蜘蛛の糸にも等しいことだというのに、それでも彼はライアンに賭けるしかなかった。
いや、賭けるしかないのではなく、賭けてみたいというのが正直なところなのかもしれないと、
デスピサロは思っていた。
ロザリーはマーニャが命に代えて守ってくれるだろう、あの踊り子は自分には憎まれ口ばかり叩くくせに
ロザリーとは何故か仲が良い…彼女はロザリーのことを親友とさえ言っているのである。
そのことを1度トルネコに尋ねたことがあるが、トルネコはにやにや笑うだけで答えてくれなかった。
ただ、ピサロさんもロザリーさん以外のことになると鈍感なんですねと言われたのみだ。
110 :
3/4:03/08/14 13:12 ID:usmBfN6b
(もし…ロザリーが討たれたとして、私はまた人を憎むのだろうか?)
憎むには憎むだろう…しかしそれはかつての憎しみとはまた種類が違うことになると思えた。
今度は種の生存をかけた戦いである、そこにはかつての怨恨なぞもはや存在しないし
存在する余地も恐らくはないのであろう。
(思ったよりも冷静だな…しかし、それでも願わくば生き延びて、もう1度我が妻をこの手に…)
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:サマンサ、バーバラを守る
第二行動方針:不明】
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本・
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:呪術の実行・マジャスティスを完成させる
第二行動方針:魔法使いを探す・腕輪を探す・偵察
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
111 :
(外伝):03/08/14 13:13 ID:usmBfN6b
そして彼らの今いる世界とは異なる…そう彼ら本来の世界では何が起こっているのだろうか?
海辺に面した小さな村の一角でクリフトはブライと対峙していた。
ソロたちが忽然と姿を消してから半年以上がもう経過している、
「クリフト…ワシはお前には期待しておった…何故人類全体の幸福を願うワシの心が理解できぬのだ」
悲しげに問いかけるブライだったが、クリフトはそれを拒絶する。
「何が…人類の幸福ですか、あなたのやっていることは幸福どころか破滅そのものだ」
「破壊無くして再生はありえん、辛い事じゃがな」
ソロらが消えうせてから何が起こっていたか…それはブライ率いる1派による魔族狩りである。
しかし、こと行動を起こして見るとブライらは拍子抜けした、すでに多くの魔族たちの姿が地上から、
消えうせていたのである。
それはブライらの動きを寸でのところでキャッチした、クリフトとマーニャの手によってのことであったが。
だが別に魔族の味方をしたというわけではない、ただ彼らは世界の混乱を防ぎたかっただけである。
だがそれでも、2人で出来る事には限界がある、結果的にやはり多くの魔族たちが討たれてしまった。
そして表向き地上から魔族は存在しなくなった、これで終わったと誰もが考えた。
討つべき対象がなくなれば、こんなことも起こるまいと…しかしそれは甘い認識だった。
そう、彼らの魔手は魔族だけにはとどまらず、次はその矛先を同朋たる人類に向けたのだった。
もうこの半年で世界の人口の1/5が彼らによって処刑された。
まずは先天的障害者や精神病患者といった社会的弱者がその対象となり、
そしてさらには肌の色が違う、瞳の色が違うなどというおおよそ常軌を逸した理由によって、
次々と人々は「浄化」されていった。
しかし、人々も彼らのやることに表立って異を唱えることはなかった。
それだけ人々にとって魔族は脅威だったのである。
まあ、たとえ異を唱えたとして、世界規模である彼らの一団に逆らう事などできなかったし、
逆らえばその瞬間「人類の敵」として「浄化」されてしまうのである。
人々はただ黙って嵐が通り過ぎるのを待つしかなかった。
112 :
(外伝):03/08/14 13:15 ID:wdip47lJ
ブライは揺るぎ無い自信を持ってクリフトへと叫ぶ。
「間違い無くこのブライの名前は後世、悪鬼羅刹として残る事となるじゃろう、だがそれでも構わん!
誰かがやらねばならぬのじゃ!この世界から全ての魔族を抹殺し、人間の世界を取り戻すためならば
ワシは喜んでその悪名を受けようではないか!」
「だからといって肌の色や瞳の色が違うだけで三族皆殺しは無いでしょう…
まして3歳で九九が出来ることや、7歳でベギラマを唱える、それだけでも魔族ですか!?」
クリフトの言葉は正論だが、そんなことで動じるブライではない。
「今は人間でもその子供、その孫が人間として生まれてくるとは限らん!たとえ僅かでも異質たるものは
浄化せねばならん、災いの芽は1本たりとも残すわけにはいかんのだ!…」
さらにその口から恐るべき言葉が次々と飛び出してくる。
「そう、全ては青き清浄な世界を作るための尊い犠牲じゃ!、それを乗り越えてこそ世界は我らの手に戻る、
そして至福の千年王国が、ユートピアが、人間の人間による人間のための楽園が生まれるのじゃ!」
「どうじゃ!完璧じゃ!そこには苦しみもない、争いもない!永遠に滅びない!至福が、楽園が誕生するのじゃ!」
「狂ってる…」
クリフトの傍らにいたマーニャが化け物を見るような眼でブライを見る。
「いいえ、この人は正気です、でなければこんなことは考えない」
悲しげに呟くクリフト。
113 :
(外伝):03/08/14 13:16 ID:wdip47lJ
「さあ!ロザリーの居場所を吐け!…ロザリーをギロチンにかけて、デスピサロめをおびき出すのじゃ」
「言せません!」
「クリフト…失望したぞ、貴様もトルネコやライアンの毒気にあてられおったか…」
「魔族だから、人間だから…そんな理由なんかじゃない、この世界に生きる住人として、私はあなたを許せない」
「ならば貴様らは人類の裏切り者だ」
ブライの声と共に、白い頭巾をかぶった騎士たちが進み出る、ブライが密かに組織していた実戦部隊だ。
その時であった、猛スピードで馬車が彼らの方へと突進してくる。
騎士たちが一瞬それにひるんだスキに2人は馬車に飛び乗り、瞬く間に脱出していた。
馬車の中でクリフトは突如現れた救い手に戸惑いつつも感謝の言葉をかける。
ライアン団長からもしものときはよろしくといわれていたもので、と手綱を取る若い騎士は応えた。
とりあえず難儀は逃れた…だが、クリフトは頭を抱える。
敵は人間ばかりではない、魔王の妻であるロザリーを担ぎ出し、未だ無益な抵抗を試みようとする、
魔族たちからも彼らは逃げなければならないのだった。
彼らの行く手に、未だに未来は見えなかった。
あぼーん
あぼーん
116 :
1/4:03/08/16 17:43 ID:ujMHWEJ1
カインは地下通路を北東に向かっていた。
アリーナに聞いた話では、エッジは彼女たちを逃がすために囮になり、そして戻ってこなかったそうだ。
彼らを襲撃したのはセシルで、エッジは気を抜いた瞬間に殺られたのだろう。
そして、アリーナは南下する途中で襲撃にあったということは、おそらく北上していた。
彼等が襲撃を受けてから、セシルがどれだけ北上したかはわからない。
だが、そこで何かの手掛りを得ない限り、セシルを殺めた奴を見つけ出すことはできない。
ひたすら同じ風景の並ぶ地下通路に土地勘を失いながらも、北東目指して進む。
夜が明ける手前に終着点にたどり着くことができた。
地下通路を出ると暗闇の中に木々が見える。どうやら森の中らしい。
風がこない場所なのは幸いだが、潜む場所も多い。
「まずは、人を探すか」
寒さに身を震わせながらカインは周辺の探索を始めた。
まずいと感じたらすぐに引き返して、少しずつ調べていく。
朝が白み始めた頃には、自分が東の平原から北の森に抜ける山道の、北の終着点周辺にいる事がわかった。
神殿から一直線に北東へと進むとこの辺りになるので、ほぼ間違いないだろう。
東の空に朝日が昇る。それを眩しそうに眺めたカインは、不意に人の気配を察知した。
117 :
2/4:03/08/16 17:46 ID:ujMHWEJ1
さて、と。行動を再開した早々に人と出くわしたヘンリーは木陰に身を隠しながら考えた。
相手は武器を持った男。単独行動。だが…おそらく自分よりも強い。
正面から立ち塞がっても返り討ちに会うだけだ。
体力に自身はある…皮肉にも辛い奴隷生活が彼に日々の健康の大切さを教えていた…が、
武器を持って戦う世界から離れて久しい自分は、パパスやとんぬらに比べて弱い。
これまでの戦闘の中で、哀しいほど実感した事だ。
しかし、勝てないといわれればそんなことはない。
彼等が旅の空で戦っていたのならば、自分は政治の世界を渡り歩いていたのだ。
戦うことで明確な白黒をつけたがる単純な連中を出し抜いて、
背後から咽喉元を切り裂けばこちらの勝ちだ。
アグリアスがいれば手っ取り早いのだろうが、その手札は既に失っている。
一つ、深呼吸すると、ヘンリーは笑顔を浮かべた。
満面の笑み。それが作り笑いだという事は、生死を共にしたとんぬらにしかわからない。
「どなたですか。私はあなたと敵対するつもりはありません」
よく響く、穏やかな口調。自分を目の前にして緊張する民にかけるのと同じ質。
暫くして返事が返ってくる。
「こちらも戦うつもりはない。ただ、聞きたい事がある」
ヘンリーは、軽く手を上げながら木陰から出た。
今、攻撃されたら何も出来ずに終わってしまう。
だが、この程度の賭けに勝てないようでは生き残る事などできないだろう。
そして…ヘンリーは勝った。
118 :
3/4:03/08/16 17:50 ID:ujMHWEJ1
手を上げて無抵抗を示すヘンリーに、カインは攻撃を仕掛ける意志を持たなかった。
一見善良であるヘンリーの底を見破る事ができなかった。
「人を探している…いや、探していた。セシルという男だ」
目の前にいる人物が何をやってきたか、当然カインには知りようもない。
セシルのことを話すカインに、ヘンリーは真剣そうな表情のまま、内心苦笑し続けた。
おいおい…親友を殺した奴を探しにきたって?
何を見ているんだ、そいつは目の前にいるだろう?
そう思いながらも考える。こいつは、使えないか?新しい駒として。
ヘンリーは少しだけ考えると、さも気の毒そうな表情を作る。
「ここから岩山沿いに行った所に、洞窟があるんです。そこに……」
「セシルがいたのか!?」
カインの問いに、神妙そうに肯く。
「既に事切れていました。そういえば、何か妙な手紙がありましたよ。『助けるつもりはない』とか『ここで死んだところで関係ない』とか…」
「その手紙は?」
洞窟に置いてきた。そう答えると、カインは肯いた。
彼は洞窟に行くだろう。そして洞窟に残された鎧を見て親友の死を受け入れ…
…そして殺した『と思わしき』者を狩りに行く。自分以外の誰かを。
「ありがとう、助かった」
「いえいえ、こんな時ですから…そうだ、私も聞きたい事があるのですが、いいですか?」
人がたくさんいそうな場所を教えろ。
と言うのはさすがにまずいと思ったので、こう言った。
「実は私も人を探しているんです。とんぬらといって、私の親友です」
嘘は言っていない。お互い殺そうとしているが、探しているのも親友なのも嘘ではない。
いや、むしろ親友だからこそ探して、殺しあうのか。ならばやはり嘘ではない。
119 :
4/4:03/08/16 17:51 ID:ujMHWEJ1
「すまない、聞いたことがないな。…そうだ」
カインは、ヘンリーに地下通路のことを教えた。
この白い世界の地下に張り巡らされた抜け道の存在にヘンリーは演技抜きで驚いたが、
「それを使えば、とんぬらを探すのも容易かもしれませんね。ありがとう」
嬉しそうにお礼を言って、その場でカインと別れた。
こうして、カインはセシルが倒れた場所を知ることができた。
だが、セシルを殺した存在を知ることはなかった。
そして、ヘンリーはカインを殺さなかった。
だが、地下通路の存在を知った。
【カイン 所持武器:ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
現在位置:祠の湖、西の山脈北部
第一行動方針:セシルが死んだ洞窟に向かう
第二行動方針:セシルを殺したものを探す】
【ヘンリー 食料多、支給ランプ×2(リバスト・アグリアスから回収)
所持武器:ミスリルアクス イオの書×2 スリングショット まどろみの剣 なべのふた
ブラッドソード リフレクトリング 弓矢(手製)
現在位置:祠の湖、西の山脈北部
第一行動方針:地下通路で移動(とんぬら達を追う、遭遇すれば他のキャラも殺す)
第二行動方針:皆殺し
最終行動方針:マリアの元へ逝く】
「聞いたか」
「……なに、今、起きたとこ」
横になっていたザックスは上半身を起こしてこめかみを指で押さえた。
洞窟内の空気は眠りに付く前と同じく、埃っぽく冷たい。喉が水を欲しがって喘いでいる。
「なんだか頭がズキズキする……。こんな暗いところじゃ朝が来たって実感もないなぁ」
そう呟いたとき、トーマスがひょっこり顔をもたげて空きっ腹に向かって顔をもぐり込ませようとしてきた。
「わ、なんだよ。俺の腹は食うとこないぞ、うっ」
ザックスはまた頭を押さえた。声を出すと頭の中で木霊するように響く。
ザックスの気のない返事に、トーマスは寂しそうに一声鳴いてそっと離れていった。
パパスも体を起こし肩を鳴らしている。
「体があちこち悲鳴を上げておるわ、やはり草地で寝るのとは違って堪える」
洞窟の中で寝てる間、パパスの背中は痛み続けていた。当然寒さも原因であっただろう、
体はこわばったまま緊張感がなかなか解れず、とても安らげる空間とはいえなかった。
「まあ、歳のせいでもあるか」
そこでようやくザックスが顔をあわせてきた。暗い中でも彼の目が充血しているのがわかった。
「君もよく眠れなかったようだな」
「ああ、ベッドが欲しかったよ」
ザックスは壁にもたれかかりながら欠伸をした。
「ところで、放送は深夜と今の二回とも聞かなかったのか?」
「ああ、眠ってて気付かなかったよ。大事なこと言ってたかい」
パパスは一度深呼吸してから再び声を出す。
「……君が夕べ言っていた、女の子の名前が」
「嘘だろ!?」
「嘘など言わん」
パパスがザックスを見据えている。事実を告げて目の前の若者がどんなに悲しむか、
それをわからずにいるパパスではない。ただ、いつまでも心に秘めておくべきことではないのだ。
先延ばししても事実は変わらない。
ザックスが頭を抱えたままでいるのを見てパパスは、彼から動こうとするのを待った
【ザックス 武器:バスタードソード
現在位置:ロンダルキアの洞窟3F
第一行動方針:?】
第二行動方針:エアリス・ティファの捜索】
【パパス 所持:アイスブランド
現在位置:ロンダルキアの洞窟3F
第一行動方針:旅の扉へ向かう
第二行動方針:バッツと双子を捜す。
第三行動方針:ゲームを抜ける】
暖を取るための囲いの中の火はすっかり消えうせ、黒ずんだ薪の燃え滓だけがそこに残っていた。
とんぬらたちは囲いの前で座り込み、うっすら囁く眠りの声に負け眠りに引き寄せられていた。
エーコもモグも一緒だ。一度夜中に目の覚めたエーコは、傍に居たモグを枕代わりにして
再び眠りに着いた。朝が来るまで何も起きなければいい、皆そう思っていた。
早朝。とんぬらはふと目を覚ました。自分に体を寄せていたアニーの体が熱いことに気付く。
直感的にアニーの額に手を当てる。
「すごい熱だ……」
アニーが高熱を出してうなされている。随分前から症状が出ていたのだろうか、
とんぬらは今まで気がつかなかった自分を呪った。
「アニー、大丈夫か」
頬はりんごのように赤い、暗い中でそれがわかるのだ。とんぬらはアニーの肩を抱いて無駄とはわかり
つつも、回復の呪文を唱え出す。
尋常じゃない熱だ、ただの風邪なんかじゃない。何とかして措置を講じなければアニーは死んでしまう。
だが、とんぬらは呪文の詠唱を続けながら思った。
ここには医薬品などはない。体を横たわらせるベッドもない。回復呪文も全く効果はない。
とんぬらは昨日の出来事を思い出す。投げ出された湖の冷たさ、心臓が凍りつくような気がしながら
必死でアニーを抱え、ロープにしがみついていたことを。自分はそれでも良かったが、子供には過酷すぎた。
アニーは小さな歯を鳴らして震えている。目は空を泳いで、誰かが呼んでいるのを聞き止めようと
しているかのようだった。今にも闇の裂け目から白い骨の手が伸びてきて、アニーをさらって行って
しまう、そんな予感がした。
とんぬらは黒い染みのある天井を睨みつけて、心の中で叫んだ。
死神よ、アニーを連れて行こうだなんて、僕が許さない。絶対に許さない。
「おにいさん、何とかならないの?」
とんぬらは、はっとこわばった顔を崩して、声がした方を見た。
エーコがいつの間にか起き出して、心配そうに見つめていた。
潤む瞳はとんぬらに力一杯訴えかけるものがあった。
「自分の子だ。何としても助けるさ」
とんぬらの言葉にエーコは深く頷いた。
【とんぬら(DQ5主人公) 所持品:さざなみの剣 現在位置:湖の祠
第一行動方針:アニーを救う
第二行動方針:クーパー・パパス・ライアン・アイラをみつける】
【王女アニー 所持品:マインゴーシュ 現在位置:湖の祠
備考:高熱を出して意識は朦朧としています。手をうたなければ死の可能性
第一行動方針:とんぬらについていく】
【エーコ&モーグリ 所持武器:なし 現在位置:湖の祠
第一行動方針:バッツたちと合流/ジタンを捜す】
※まだ朝の放送前の話 午前四時頃?
124 :
1/4:03/08/17 23:01 ID:4AWd3ITC
体調が最悪になる事は、最初から承知していた。
熱湯で暖められていたとはいえ、それまで湖に漬かっていて、暖められた後は半渇きの服を着る。
そんな状況で、平然としていられる道理がなかった。
「私は行くわ」
自分と助けてくれた女性、セリスは朝日が登る前にそう言い残すと、立ち去っていった。
彼女の挙動は深夜の放送を聞いた時からおかしかった。
おそらく親しいものが亡くなったのだろう。悲しんでも泣いてもいなかったが、何となくわかった。
内から来る衝動に理解できず、かといって夜中の強行軍が無謀であるということを判断する理性はあり…
悶々として、ろくに眠れなかっただろう。夜明けを前にして彼女は行動を再開した。
セリスが自分の異変に気付かないのは…仕方ないことだ。だから、自分は黙って彼女を見送った。
自分は一人になっていた。高熱があることは測るまでもなく、わかる。
意識が白濁するなかで、これからのことを考える。
死人でも体調を崩すのだな、そんなことを考えて口元を歪めた。
当り前だ、内部構造は同じなのだ。苦痛を感じもすれば、食事を取る事もできる。
ただ、とても脆く、すぐに消えてしまいそうな、曖昧で不完全な存在であるだけだ…
アーロンは恐ろしく重く感じる体を立たせた。
それだけで物凄い疲労が溜まる。だが、このままここで黙っているわけにもいかなかった。
何もしなければ、何も変わらない。それが、これまでの在り方で見出した、アーロンの答えだった。
125 :
2/4:03/08/17 23:04 ID:4AWd3ITC
…それから暫くして。
森に三人の人影が現われた。
「地上だ。地図では大体湖の北の森にいる事になるんだが」
地下通路の出入り口の側にある雪を蹴り崩しながらバッツは言う。
「バッツ兄ちゃん、こっちから湖が見えるよ!」
「あ…ホントだ」
子供たち、クーパーとリディアは湖の方にかけていく。
元気なことだ。しかし、いいことなのだ。二人の後姿を追いながら、バッツは剣を抜いた。
「魔法剣、ファイア!」
剣に炎の魔力が宿る。それを確認して、バッツは出入り口すぐ側の木に大きく×印をつけた。
出入り口の場所を見失わないようにする処置である。
バッツ、クーパー、リディアは夜明けより一、二時間早めに神殿を出立した。
目的地は湖の祠。そこにクーパーの父親であるとんぬらがいる…かもしれない。
三人はこのゲームを覆すために術者を探すという目的をもっているが、
クーパーには父に会いたいという気持ちがあるし、バッツもクーパーの望みをかなえてやりたい。
三人は湖沿いを西に進んだ。向こうには、湖の中央へと伸びる一本道が見える。
バッツとクーパーは神殿へと向かうとき、あの道を通っていった。
そのことを思い出したのか、クーパーはバッツに言う。
「なんだか、なつかしいねぇ」
「そうだな…つい、昨日見た風景なんだけどな」
そうして、三人は湖中央へ延びる道に辿り着いた。
126 :
3/4:03/08/17 23:08 ID:4AWd3ITC
そこで…人影を見つけた。
赤い服装で、脇に折れた鋼の剣を置いて座り込んでいる。
中年の男で、いかにも苦しげだった。
「あの、大丈夫ですか?」
一番好奇心旺盛で、恐いもの知らずのクーパーが訊ねると。
「…いや。ダメだろうな」
そう答える。唖然とするクーパーとリディアの後ろから、バッツは訪ねた。
「で、あんた何もんだ?」
こうして、アーロンはバッツたちと出会った。
先日、湖の祠でバトルが起り…結果自分は湖に放り出されたこと。
何とか生き長らえ、祠周辺の様子はどうなったのか、自分の連れはどうしているのか確かめたいと思っているが、祠に通じる橋が落ちていること。
それでイカダを作ろうと戻ってきたはいいが、そこで力尽きてしまったこと。
一通り状況説明が終わった後、バッツはアーロンの側に屈むと、額に手を当て…すぐ離した。
「こんな状況でよく意識を保っていられるな…普通、意識がとぶぞ?」
「ああ。だから…ダメだといっているだろう?」
心配そうに見上げるクーパーに、バッツはぽん、と頭に掌を乗せる。
「相当ヤバい。絶対安静だが、まだ間に合うさ。祠についたら、薬を作ってやるよ」
幸い、神殿である程度の物資を補給している。
その大半はクーパーの石化を直す薬を作ろうとした際に、勝手に接収したものだが。
「じゃあ、はやくイカダを作らないとね」
「そうだな。手伝ってくれ、クーパー。リディアはおっさんの面倒を見てやってくれ」
「う、うん。でも大丈夫かな…祠。昨日、あんな事があって…」
不安そうなリディア。あんな目にあったのだから無理はない。
「どの道、こんなところじゃ調合できないし、体を休める事もできない。
祠に行くしかないんだ。そうでなきゃ、どの道…」
死ぬ。といおうとしてバッツは留まった、がリディアはそれを察して泣きそうになる。
127 :
4/4:03/08/17 23:09 ID:4AWd3ITC
そんなリディアに、アーロンは気にすることはない、と心なしか優しく言った。
「こうなったのは全て自業自得だ。にも関らず助かる機会が与えられたのなら感謝こそすれ恨む筋合いなどない」
「………うん」
「それじゃ、早速イカダを作ろうよ!」
「よし、行こうクーパー。剣を貸せよ、炎の属性をつけるから」
「それで木を焼き切るんだね。でも燃えたりしないかなぁ?」
「葉っぱに、しかも広範囲につけない限りは大丈夫さ」
【セリス(記憶喪失) 所持武器:ロトの剣 現在位置:祠の湖から移動して今は??
行動方針:不明】
【アーロン 所持武器:折れた鋼の剣 現在位置:祠の湖北口
第一行動方針:祠の湖へ、体を癒す
第二行動方針:仲間を探す】
【クーパー 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜 現在位置:祠の湖北口
第一行動方針:祠の湖へ
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【リディア(魔法使用不可) 所持品:なし
現在位置:祠の湖北口
第一行動方針:祠の湖へ
第二行動方針:エーコと合流
第三行動方針:仲間(セシル?)を捜す】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント/
現在位置:祠の湖北口
第一行動方針:クーパー達と共に行動する
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
カインという男の話で聞いた地下道は薄暗くて殺風景だった。
しんと静まりかえり、雑念を振り払ってくれそうなところだ。
移動するには便利だが、誰といつ鉢合わせになるかわからない点では難がある。
もっとも今は人の気配は感じない。人がいなければただの風の通り道に過ぎないだろう。
ヘンリーは右の壁沿いに手を伝いながら歩き進めた。
壁には木の板を目張りしてあるように貼り付けてある場所や、岩肌がもろに露出したところなど様々だった、
人間が手を加えて掘ったトンネルといった感じだが、ところどころ天然のままの姿も見られた。
しばらく歩いたところ、やけに明るくなっている場所にさしかかった。
氷柱が垂れ下がった一角。長い時間をかけて水滴が滴り落ちた結果の結晶だ。
氷柱の少し奥の天井は厚い氷の幕でできているらしく、そこには光が差し込んでいる。
もう完全に朝だ。まだ放送が聞こえてこないのだから、この地方は夏なのだろう。
ヘンリーは前に進み掌を上に向け、降り注ぐ雫の只中に立った。落ちてくる水滴がヘンリーの体を
叩き濡らしていく。冷くて体の芯から心にまで染みていく。
何かを告白したい、洗いざらいぶちまけたい、そんな想いに駆られた。
ふと、正面奥に、人の姿を見たような気がした。ヘンリーは間に合わないかもしれないと承知で
後方にある窪みに身を滑りこませ僅かに顔を覗かせた。天井は岩肌でここには露は落ちてこない。
氷混じりの泥地で足を滑らせないように足をしっかり支う。もし見つかっているのなら今すぐ決断しなければ。
遠くの影はゆっくりとこちらに近づいてくる。人間に間違いない。
ヘンリーは斧を右手でしっかりと握りいつでも飛び出せる用意をする。
人影はさらに速度を落として僅かな歩を進めつつ、光が差し込んでいる位置までくると、止まった。
金色の髪が沸き立つように鮮やかに輝いていた。顔は上向き加減で視線を落とし、何かに感じ入っている
風に立ち続けていた。透き通った瞳は何を見ているのか知れないが、自分を見ているのだという考えに
ヘンリーは何故か至らない。ヘンリーは別のことを思っていた。
130 :
2:03/08/19 00:59 ID:43jHLCci
アグリアスもあのように一人で感傷に浸ったりすることもあったのだろうか、と。
もういない女の顔が頭の中に浮かんでヘンリーは苦笑いを浮かべる。
金髪というだけで、アグリアスを思い出したのだ……
女の口元が緩く動いている。何か呟いているのか。聞こえはしないが、小さな精霊が甘美な声で歌っている
ような印象があった。
ヘンリーの頭がそれに応じて、脳内に幻の声を鳴り響かせる。
亡き妻の、声。いつも近くにいたはずの、今は手の届かない遠い処にいるマリアの声。
それがヘンリーの内部に貫かれて激しく全身を揺さぶる。マリアが必死で自分に訴えかけてくる。
自分のしていることを否定しているように聞こえる。飽くまでも情の篭った声色で。ヘンリーは揺れ動いた。
女……殺めてもいいのだろうか……
そしてまた別の感傷が沸き起こる。拳をぐっと握り締める。
俺が憎んでいるのはゾーマだ。当然だ、奴はマリアを殺した。ゾーマは憎い。殺して八つ裂きにしなければ。
だが、それができない、できないんだ。力があまりに違いすぎる。人間の力が及ぶ相手じゃない。
だから、殺せる奴だけを皆殺しなんだ。憎悪の対象をずらして力の劣る者に憎しみをぶつけるのだ。
そうでもしないと狂ってしまう。マリアの死に何の意味があったのか。根本的に無意味な死だ。
あまりに可哀相だ。いったい、あんな無残な死に方をした妻を真近で見た夫はどうすればいいと言うんだ。
もうこれしかないんだ。そう決めたんだ。だからマリアよ……
手の上でミスリルアクスが共鳴したかの如く震えた。ヘンリーの気負いが生んだ指の震えかもしれないが。
そんなことに構わずヘンリーは目を大きく見開いた。
――マリアよ、俺の邪魔をしないで欲しい――
一瞬悲しげなマリアの顔が脳裏に浮かび上がって、消えた。
突然、女が後ろを向いた。ヘンリーにとっては油断が生んだ無防備な体勢という他はない。
最大のチャンスが生まれた。
背を見せればそいつは負け。ここは戦場。常に敵が居るところだ。
俺という殺人者の目の前でそういう行動に出るんだから、もうどうしたっていいわけだ。
ヘンリーは口元にむりやり笑みの形を作ると、窪みを音を立てずによじ登った。
女と同じ高さの凍土に立つと、おもいきり振りかぶってミスリルアクスを投げつけてた。
勿論ありったけの憎しみを込めて。斧は一直線に飛んだ。銀色の斧が女の長い髪に吸い込まれていく。
ヘンリーは目を見張った。女は振り返ろうともせず、取り出した曲刀でいとも簡単に払いのけた。
「なっ……」
ミスリルアクスは宙を回転しながら落ちていき、凍土に突き刺さった。
力のない脆くて儚い女だと思っていたのに、実力は自分より遥かに上だと知る。
ヘンリーは怒りに似た激する感情を剥き出しにした。
「まだあんな奴がいるのか!」
女は振り向いた。瞳にこれといった力は込められていなかった。
だが、女は右手をかざすと、いきなり巨大な火炎を投げつけてきた!
「うおおおっ」
ヘンリーは炎に飲み込まれた気がして一瞬意識を失った。
「く、くそ……」
気がついた時には、ヘンリーの下半身は圧し掛かる大量の土砂に埋もれていた。
激しい痛みが足を襲い、呻き声を上げる。無理やり足を土砂から抜こうとするが、どうしても動かない。
口の中に血の味がしみて、絶望的になった。まったく、無防備な状態になっている。
目の前で氷柱がぐしゃぐしゃになって散らばっていた。綺麗な自然の創り物も無残な姿を晒していた。
132 :
4:03/08/19 01:03 ID:jeVQvITd
「畜生、こんなところで!」
向こうからこつこつと音をたて近づいてくる者がいた。あの女だ。
ヘンリーのザックは女の手に握られていた。中身も全て回収しただろう。
ヘンリーは流れる汗を止められずに、それでも女を睨みつけた。
「俺は死なん、マリアのためにまだ死ねないんだ!」
がたんと足の上の岩が崩れた。たちまちヘンリーは苦痛の顔に歪む。
「死ねないんだっ」
ヘンリーは絶叫して爆発呪文を唱えた。光の弾が女に命中する。
だが、女の体に届くか届かないかのところで幕らしきものがヘンリーの呪文を弾いてあらぬ方向に飛ばしていった。
爆発の音がする。また壁が崩れた。女は身動き一つしていない。
ヘンリーは全身をうち震わせて、己の絶叫に身を任せた。
「マリア! 俺の妻だったマリア! 可愛くて誰からも愛されたマリア! いつも傍に居てくれたマリア!
何故死んでしまったんだ! こんなゲームで何故死んでしまったんだ!」
「私も弟を殺されたわ……」
女の声が被さって耳から離れなくなった。
ミレーユが曲刀を振り上げた。それと同時に危ういバランスで高みに居続けた天井が一斉に崩れ落ちた。
地下道全体が崩壊するような轟音を鳴り響かせて、天井は次から次へと落ちていった。
ミレーユは振り上げた腕をそっと下ろし、その大音響に背を向けると、一路足を西に向けていった。
ヘンリーの体は押しつぶされていった。
体だけでなく、過去の楽しかった思い出も、何かが狂って生み出された憎しみも、記憶も全て
降り注ぐ岩と土と氷の雨に潰されて無となった。
133 :
5:03/08/19 01:04 ID:jeVQvITd
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド 、
支給ランプ×2(リバスト・アグリアスのもの)
所持武器:ミスリルアクス イオの書×2 スリングショット まどろみの剣 なべのふた
ブラッドソード リフレクトリング 弓矢(手製)
現在位置:地下通路、中央からやや西より
行動方針:占いで見た人に会う(ロック、エリア)】
【ヘンリー、死亡】
ミレーユって地下通路の存在知ってたっけ?
存在を知らない人間が偶然見つけて入りましたって展開、いい加減萎えるんだけど……しかもそれで一人殺してるし。
あと、リフレクトリングを持っているヘンリーが、メラゾーマでダメージを受けるのもどうかと思う。
前の持ち主だったセシルも、マリベルの呪文平気で反射してたのに。
…魔法剣士マスターって言っていたし、ミレーユが放ったのってメラゾーマだよな?
レンジャーの火柱なら反射しなかったのも納得行くけど。
>134
激しく同意だが、>66のスレに書くべきかと。
>135
スマソ、66のスレに素で気付かなかった……首吊って逝ってきます
保守
139 :
1/3:03/08/23 19:54 ID:Q5L9KySm
部屋の中に現われた人影に、サマンサは軽く会釈をしながら言った。
「おはようございます」
「ああ」
部屋を出て行ったときと同じ姿のデスピサロと、やつれたデッシュだった。
あれからハーゴンの部屋の前から離れ、徹夜で別の場所で研究をしていたようだった。
デッシュがやつれているのも無理はないだろう。デスピサロが平然としているのはさすがというべきか。
同じく徹夜空けの自分はつい先程化粧を整えたばかりだ。何とか見れる姿になっていると思いたい。
「儀式の準備は終わりました。そちらの首尾は如何ですか」
「マジャスティスは完成した」
「すごーい」
あっさりというデスピサロに、素直に感嘆するバーバラ。
疲労が抜けてすっかり元気になったようで、瑞々しい肌がなんとも悔しいサマンサだったりする。
勿論デスピサロにそんな女性の機微がわかるはずもなく…わかったとしても気にするはずもなく。
「ただ、一つ問題がある。この呪文はかなり特殊で、私には使えぬ」
「ピサロ卿にも?」
「ある種の資質を備えた人間だけが使える魔法だ。勇者と呼ばれる特殊な資質がな」
「うーん…一人心当たりがあるけど、巻き込まれてないんだよね」
デスピサロの言葉にバーバラは呟く。
サマンサは少し考えた後、意を決して口を開く。
「ピサロ卿、以前アルスと言う少年にあったことを憶えていますか?その者ならば、あるいは…」
140 :
2/3:03/08/23 20:00 ID:Q5L9KySm
「え?サマンサとアルス君は知り合いなんだ?」
バーバラの何気ない問いにサマンサは若干表情を歪め、すぐに能面に戻す。
「ここに来る前の…知己です。ここに来て袂を分かちましたが」
「ふーん…とにかくアルス君たちの協力を仰げれば心強いと思うな。
なんなら、私が勧誘しに行ってこようか?」
サマンサではなくデスピサロに言うバーバラ。デスピサロは少し考えた後、
「いいだろう、だが放送が会ったらすぐに戻ってくること」
「わかった」
そして、部屋の隅で壁にもたれているライアンに視線を向ける。
さすが鍛えているだけあって、徹夜明けでも王宮の戦士の姿に陰りはない。
「ライアン、小娘の護衛を頼む」
「承知したでござる」
「だから、私は小娘じゃないって…」
こうして、ライアンとバーバラは外出していった。
それを見送りながら、サマンサはふと、もう一つの成果が気になって訊ねてみた。
「そう言えば、あなたのほうはどうだったの?あまり…芳しくないみたいだけれど」
「ああ…ま、首輪にかかってる魔力的なのに関しては検討がついた。
けど、肝心の鍵の生成方法が見当もつかない。複数の魔法を同時に封じるモノがあれば」
「そんな便利なもの、この世に存在するとは思えませんが…」
直球で痛いところをついてくるサマンサに、デッシュは渋い顔になる。
そんな二人を横目で見ながら、デスピサロは言った。
「マテリア、と言うものがあるらしい。術式やら、知識…そう言ったものの結晶体で、
媒体にして魔法を具現させる事もできるそうだ。それが生成できれば、あるいは…」
「どの道、現状ではなんともならないと言う事ですね」
そうなんだよなあ、とデッシュは肩を落としたのだった。
141 :
3/3:03/08/23 20:01 ID:Q5L9KySm
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー
現在位置:神殿から外へ
第一行動方針:アルスたちの勧誘
最終行動方針:?】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
現在位置:神殿から外へ
第一行動方針:バーバラを守る
第二行動方針:デスピサロに協力する】
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本・
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:儀式を行う、バッツたちの帰還を待つ
第二行動方針:腕輪を探す
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1 ハーゴンの呪術用具一式
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:デスピサロに従う・儀式を行う(準備完了)
第二行動方針:生き残る】
【デッシュ(寝不足) 所持武器:首輪 裁きの杖 現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:首輪の解除法を探る、マテリアの生成方法を調べる?
第二行動方針:エドガーに会う
第三行動方針:ゲーム脱出】
(マジャスティスは完成しました。ただし、使えるのはアルスとクーパーだけです)
ほしゅ
保守
保守
145 :
山崎:03/08/28 00:06 ID:qzSAaazH
山崎保守
146 :
1/3:03/08/29 22:16 ID:vSGf5gfc
「サマンサ、儀式はどの程度の規模と時間がかかる?」
「用意は既に出来ていますから…儀式自体は10分程度で終わります」
突然尋ねてきたデスピサロに、サマンサは答える。
振り向くと、デスピサロは紙に何かを書き記していた。
「儀式の効果は?予想でいい」
「そうですね…我々に干渉するゾーマの魔力は無くなるでしょう。もしかしたら、旅の扉による空間転移にも影響が出るかも知れません」
「どういうことだ?」
床に座り込んでパンをかじっていたデッシュが問う。
「あなたには実感が無いかもしれませんが、我々の魔力は確実に削がれています。
強力な魔法ほど、その効果が制限されるのです。
理由は幾つか考えられますが…もっとも有力なのはゾーマが我々の力を抑制しているとことです」
「何でだ?力を制限しないほうがむしろ…ゲームは早くなると思うぞ」
「だが、それでは単純に力の強いものが勝つ。そして弱いものは抵抗を考えなくなる。
これが奴の言う通り、絶望を集めるための座興だと言うのなら、些か都合が悪かろう?」
そう言って、デスピサロは鼻で笑った。
明らかに弱体しているはずなのに、そう言いきる彼の姿は強い。
「まだ放送がないのが気がかりだが…旅の扉が出現してから1時間後に儀式を始めるぞ。
儀式の説明で30分、それから実行だ。」
「あの少年と小娘のことは…?」
「戻ってくればよし。戻ってこないならそれはそれでいい。
参加者は多いほどよいが、我々だけでも出来るのだろう?」
「ピサロ卿は、彼等は戻ってこないと仰るので?」
サマンサの言葉に、デスピサロはちらりと彼女を一瞥する。
クーパーに関しては、実はあまり期待していない。彼は父親に会いにいったからだ。
もし見つからないのなら、儀式そっちのけで探すだろう。
見つかったのなら、親がここに戻ることを止めるかもしれない。
天空の勇者とはいえ、年端もいかぬ子供だ。彼を使うのはメリットもあればデメリットもある。
147 :
1/3:03/08/29 22:18 ID:vSGf5gfc
バーバラにはライアンをつけた。
彼ならばしっかり護衛するだろうし、もしバーバラに気の迷いがあっても振り払ってくれるだろう。
アルスたちとの交渉も自分が出向くより上手くいくと思う。
難しい事を考えるのは向かないが、彼の実直さをデスピサロは評価している。
それらの思いをひっくるめて、答えた。
「仮定で物事を判断するのは嫌いでな。どう転んでも次の手を打つことを考えるだけだ」
彼等が戻ってくるかはわからない。だが、戻ってこなくてもよいといえるだけ準備はしておけ。
デスピサロの言葉からそんな意味を感じ取って、サマンサは言った。
「儀式にかかる時間は増えますが…それでも30分あれば問題なく」
一方その頃…
「とりあえず、丸太は用意できたけど…どうしよう?」
中途半端に湖に使った4本の丸太を見ながら、クーパーは訊ねる。
バッツは丸太を作る際に切り落とした枝を拾うと、丸太の先にあてがった。そして、
「魔法剣、ブリザド!」
冷気を纏った剣が枝を凍りつかせ、丸太同士を繋ぎとめる。
「と、まあこうするわけだ」
「凄い、さすがバッツ兄ちゃん!」
「はっはっは。まあ黒魔法が使えるなら普通に凍らして固められるけどな」
アビリティを変更するのは少し手間なので手抜きをしたのだ。
それを知ってか知らずか、クーパーは明るい声で言う。
「ならアニーは簡単にできちゃうね」
「………まあ、とにかく」
バッツは振り向くと、後ろにいるリディアとアーロンにいう。
「行こうか。湖の祠に」
148 :
3/3:03/08/29 22:21 ID:vSGf5gfc
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本・
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:儀式を行う、バッツたちの帰還を待つ
第二行動方針:腕輪を探す
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1 ハーゴンの呪術用具一式
現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:デスピサロに従う・儀式を行う(準備完了)
第二行動方針:生き残る】
【デッシュ(寝不足) 所持武器:首輪 裁きの杖 現在位置:神殿ハーゴンの自室の前
第一行動方針:首輪の解除法を探る、マテリアの生成方法を調べる?
第二行動方針:エドガーに会う
第三行動方針:ゲーム脱出】
【クーパー 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜 現在位置:祠の湖北口
第一行動方針:祠の湖へ
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【リディア(魔法使用不可) 所持品:なし
現在位置:祠の湖北口
第一行動方針:祠の湖へ
第二行動方針:エーコと合流
第三行動方針:仲間(セシル?)を捜す】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント/
現在位置:祠の湖北口
第一行動方針:クーパー達と共に行動する
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【アーロン 所持武器:折れた鋼の剣 現在位置:祠の湖北口
第一行動方針:祠の湖へ、体を癒す
第二行動方針:仲間を探す】
規則他正しい連続音。杖が反応している。ティナの魔力で作り出した対冷気の防護壁の中でまどろんでいた
アルスは、それを聞いて飛び起きた。
「誰か来る!」
エドガーとティナを急いで起こし、自分も一発頬をはたいて眠りに落ちかけた脳を覚まさせる。
むっくりと起き上がったエドガーはさっそく髪を整え始め、ティナのために気をつかい出した。
アルスは周囲に意識を拡散し、向かってくる者にいつでも対応できるよう気構えした。
辺りは静かなものだった。朝になっていることは陽射しからわかるが、放送の時間にはまだ至らないらしい。
「アルス、今反応があったばかりか?」
岩の横に立てかけてあるレミラーマの杖を横目に、アルスは答える。
「うん、つい今……あれ、消えた」
反応は消え、杖はいつも通りの、もの言わぬ棒切れに戻ってしまった。
「おかしいな」
アルスは杖を握りしめてみた。ピッ、杖は再び光をたたえて反応し始めた。
「よし戻った。間隔からしてまだ遠くにいるみたい、あ、また!」
杖はまた無言になってしまった。杖を睨んでいぶかしんでいるアルスを見ながらエドガーは
「ふむ、丁度ぎりぎり範囲内のところをうろついているんだな」
と的確な事実を言ってアルスを唸らせる。
ティナも体を二人の方へ動かして様子をうかがっていた。
「魔法は解くわ」
解除の呪文を呟くと、淡い光の防護壁はとたんに色を失い、空気と混ざり合うかのように消えた。
足元が痺れるほど冷たい。魔力が消えて、今まで羽根布団のようだった白い雪が、重く足に取り付き
べたつく粘着質なものに変わった感じがする。
杖の反応も変わった。音のする間隔が狭まっていく、何者かはこちらに近づいているというわけだ。
「いつでも来い」
剣を抜き、向こうのごつごつとした岩場を、そしてさらに遠くを睨んだ。
アルスはエドガーより一歩前に出る自分を、誇らしいものだと思いたかった。
【アルス/ティナ/エドガー:所持武器:対人レミラーマの杖・天空の剣・黄金の腕輪/プラチナソード
チキンナイフ/ボウガン&天空の鎧(装備不可)スナイパーアイ ブーメラン
現在位置:ロンダルキア中央砂漠西山地
第一行動方針:待機
第二行動方針:仲間を探す】
保守っとく
揚げる
153 :
山崎:03/09/06 21:15 ID:XtPqQ0ct
【山崎渉 死亡 残り9人】
154 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/09/11 03:49 ID:885d5xcP
s¥ほあゆ
保守(・_・)
156 :
山崎:03/09/14 09:40 ID:LHjQebik
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保守
保守
159 :
山崎:03/09/19 00:15 ID:0pcKOorr
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マンセーマンセーマンセーマンセーマンセーマンセーマンセーマンセーマンセーマンセーマンセー
160 :
1/4:03/09/20 02:24 ID:Isb9+Fh0
地下通路を抜け、バーバラとライアンは神殿の東、岩山を越えた向こうの山地に来ていた。
既に東の空から太陽が姿を見せている。寒く澄んだ空気に、バーバラは少し震えた。
「地図からすると、アルス君たちと別れたのはこの辺りなんだけど」
「ちなみにそれは何時頃でござるか?」
バーバラは少し考えた後、
「昼過ぎ…かな。別れてから南に向かって、偶然地下通路の入り口を見つけたの。
そのときにはもう日が暮れ始めてた」
「ならば、既に移動してしまったかもしれぬでござるな」
ライアンの言う事はもっともである。だが、
「まあね…でも、そんなに悩んじゃいないんだ」
「何か策があると?」
「アルス君たちは相手の居場所がわかる杖持ってるからね。
私たちが近くに来たことはすぐわかるはずだよ」
ティナが使えば、相手の名前もわかる。だから自分を敵と誤認される事はないはずだ。
そう言った説明を受けて、ライアンは納得したようだった。
山地周辺を歩き回ることしばらく。
「…誰か、いるでござるな」
「アルス君たち?」
「ワシは彼らのことは知らぬのでわからないでござる。だが複数いるのは間違いないでござるな」
とにかく呼んでみようと、バーバラは大声を上げた。
訓練を受けたバーバラの声は周囲に響き渡っていく。
こんな技が何の役に立つのだろうと以前考えたこともあったが、何がどうなるか、人生わかったのもではない。
やがて、三人の男女が姿を現す。
「バーバラ!」
「ティナ、アルス君、あと…エドガーさんだっけ?お久しぶり!」
バーバラの声に、アルスはふう、と一息ついて剣を収める。
「それはこっちのセリフだよ。とにかく元気そうで安心した」
161 :
2/4:03/09/20 02:25 ID:Isb9+Fh0
「ところでそちらの御仁はどなたかな?」
エドガーの鼻に掛かった少し甘ったるい声を聞き流しながら、バーバラはライアンを振り返る。
「そうだね、今ちゃんと説明しておいた方がいいかな」
スゥイートボイス(自称必殺技)があっさり無視されてエドガーはやや落ち込んだが、
そんな彼は置いといてバーバラはこれまでの経緯と神殿での儀式について話した…
「…そうか。彼は、酬いを受けてしまったか」
エドガーは大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出していく。
ティナは顔を伏せ、自分を殺そうとしていた少年のことを思って後悔していた。
そしてアルスは…
「サマンサと…あの男が、そんなことを」
呟いて、空を見上げる。
デスピサロとはアリアハンで既に会っていたが、いきなり殺し合いだった。
帝国領でも戦い、サマンサの出現で慌てふためき、逃げざるをえなかった。
そしてロンダルキアでも再会の機会が来ようとしている。
「………それでね、出来れば三人にも協力してもらいたいのよ。特にアルス君」
「え?」
突然の指名に、視線を降ろす。
「実はね、なんか特殊な魔法が解読できたんだけど、普通の人には使えないんだって」
「勇者であるアルス殿なら使いこなせるやも知れぬ、というわけでござるよ。
どうか、力を貸して欲しいでござる」
力強く善良そうなライアンの言葉に、アルスは考え込んだ。
バーバラやライアンのような人物が参加している事からして、デスピサロは本気でこのゲームを覆そうとしているのだろう。
それはいい。
不利な状況を覆すために過去の因縁を捨てて一致団結すべき。
それもわかる。
だが、自分はデスピサロと剣をかわしている。その剣にかけて断言できる。
デスピサロは危険だ、生かしておけばそれだけ血が流れる。と――――
162 :
3/4:03/09/20 02:27 ID:Isb9+Fh0
「アルス?」
ティナの声にはっと我にかえる。
自分が思考している間に、二人は前向きな方向で返事をしてしまったようだった。
残るのは自分だけ、ということらしい。アルスはもう一度考えた。
神殿には…行くべきだろう。自分ひとりが単独行動しても仕方ない。
ならば神殿で何をすべきか。それは――――
「わかった。僕も行くよ」
「決まりね!それじゃいきましょ」
顔を輝かせるバーバラと満足そうに肯くライアン。一方アルスは無表情だった。
地下通路を通ればすぐだから、と言うバーバラの先導で5人は歩き出したが、なおアルスは無口である。
「どうしたの?なにかあった?」
さすがに気になったのか、さりげなくアルスの隣りに並んで訊ねるティナ。
前方ではエドガーのリップサービスにバーバラが笑顔で応じ、ライアンがやたら真面目そうに聞き入っている。
なんとものどかな光景だった。それだけにアルスの雰囲気は異質だった。
「…いや…なんでも」
それ誤魔化そうとしたアルスだったが、途中で思い直す。
最悪の事態を避けるためにも、この少女には言っておいたほうがいいかもしれない。
「以前のフィールドで、さっきの話で出てきたデスピサロと…僕は、戦ったことがある」
「え…?」
「印象は…一言でいえば最悪。不倶戴天と感じた。それは今も変わってない」
「………」
「だから、少し警戒してる。それだけだよ」
ティナはアルスの顔をじっと見たあと、微かに肯いた。
それが何を意味しているかはわからないが…アルスは決意を新たにする。
デスピサロの真意を確かめなくてはならない。
…いざと言うときは、命をかけてでもデスピサロを仕留める、と。
そして五人が地下通路の入り口まで辿り着いたとき、放送が始まった。
163 :
4/4:03/09/20 02:40 ID:DWF2ZjnU
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー
現在位置:ロンダルキア中央砂漠西山地
第一行動方針:神殿に戻る
最終行動方針:?】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
現在位置:ロンダルキア中央砂漠西山地
第一行動方針:バーバラを守る、神殿に戻る
第二行動方針:デスピサロに協力する】
【アルス 所持武器:対人レミラーマの杖 天空の剣 黄金の腕輪
現在位置:ロンダルキア中央砂漠西山地
第一行動方針:神殿へ、デスピサロの真意を探る
第二行動方針:ゾーマを倒す】
【ティナ 所持武器:プラチナソード チキンナイフ
現在位置:ロンダルキア中央砂漠西山地
第一行動方針:神殿へ、儀式に参加?
第二行動方針:仲間を探す】
【エドガー 所持武器:ボウガン 天空の鎧(装備不可) スナイパーアイ ブーメラン
現在位置:ロンダルキア中央砂漠西山地
第一行動方針:神殿へ、儀式に参加?
第二行動方針:首輪の解除方法を探す】
164 :
1/2:03/09/20 20:00 ID:mQMOOiuc
朝。ティーダ、エアリス、モニカの三人は、日の出と共にロック、ラグナ、ガウ、マリベルの遺体を弔い、その後で北の湖に向かって出発した。
静まり返った朝の空気は清浄である。だが、だからと言って清々しい気分にはなれない。
手を取り合った仲間達はもういないということは、辛い事だった。
しかし、だからと言って悲しみくれていても仕方がない。
悲惨な状況でも、諦めないであがき続けるということ。
ティーダとエアリスはそれが出来る人である。
「橋が落ちてるね」
「このままじゃ祠にはいけないなぁ。さて、どうする?」
「泳いでいけないかな?」
向こう岸まで100,200メートルと言ったところか。距離的には無理ではない。
だが、エアリスの言葉にティーダは頭を横に振る。
「それ、やめといたほうがいいッスよ。この寒さじゃ凍死するって」
氷の浮いているような海は浸らせるだけでもショック死しかねない寒さだし、
そんな中で普通の人が泳げるわけがない。
「私たちが使っていたイカダは?」
「それッス!」
モニカの言葉に、びしっとティーダは指をさす。
不躾な行為で少し不快だったが、そんなことに拘っても仕方ない事もわかるので口にするのはやめた。
「多分…この湖岸のどこかにイカダがあるはずです」
165 :
2/2:03/09/20 20:04 ID:mQMOOiuc
こうしてティーダたちは祠に向かう道から外れて湖岸を捜索することにした。
ちょうど入れ替わるように、その場に一人の女性が現われた。
土色の肌に色を失った瞳、片腕の肘から先が消え失せている。
アイラだ。
「………」
彼女は何も考えていないようだった。一度向こう岸を見てから、ふわりと宙を舞う。
ザブン、と小気味のいい音と共に、アイラは水中に身を投じた。
【ティーダ/エアリス/モニカ 現在位置:祠の湖の南岸
所持武器:吹雪の剣・いかづちの杖・参加者リスト/
エドガーのメモ・マジャスティスのメモ/ エドガーのメモ(ボロ)
第一行動方針:イカダを探して祠へ
第二行動方針:アーロンを探す
最終行動方針:ゲームから抜ける】
【アイラ(ゾンビ・左腕欠損) 所持武器:ダイアソード 死者の指輪
現在位置:祠の湖の南口
行動方針:ゾンビ状態中はとんぬらを探していく。死者の指輪が外れたら???】
保守
ho
保守・・・
保守
170 :
1/4:03/09/27 03:15 ID:QRI9Xoo0
「おーい、あんまり先に行くなよー」
アーロンに肩を貸しながら、バッツは前に向かって呼びかける。
わかってるー、と返事はあるが一行に速度が遅くなる様子はない。
しかし、それも無理はないだろう。この先にずっと捜し求めていた父がいる可能性が高いのだから。
アーロンは、この島にターバンを被った、クーパーと同じ青い髪の少女を連れた男がとり残されたと証言した。
容姿からも、おそらくアニーを連れている事からも、父である可能性は高い。
それが自然とクーパーの足を速める。
こうして、クーパーはほとんど駆け足で先へと進んでいった。
その後をリディアが続く。ほんの少しリディアは大変そうだったが、気遣えるほどクーパーは大人ではなかった。
すぐに、祠の側まで辿り着く。そこでクーパーたちを待ち受けていたのは…
「なに、これ」
祠周辺で嵐が巻き起こったような…実際正にその通りなのだが…有り様に、クーパーは息を飲む。
リディアは呆然と祠の方を見ていた。不思議な力で見えなくなっていたはずなのに、今はその祠の姿がはっきりと見える。
それはつまり、祠を覆っていた加護が消えてしまったと言う事で…
クーパーは溜まらず大声を上げた。
「お父さん、アニー!誰か、いないの!?」
雪原に響き、それに呼応するように祠の中から人影が現われる。
引き締まった長身、頭にはターバン、漆黒の瞳を持つ青年。
「お父さん!」
「クーパー…よく無事で!」
少年は雪を蹴って駆け抜ける。そして思いっきり青年の胸に飛び込む。
それを青年はしっかりと抱きとめて、そして力強く抱きしめる。
こうして、子供たちは父親に再会することが出来たのだった。
171 :
2/4:03/09/27 03:17 ID:QRI9Xoo0
暫くして、バッツたちも到着した。
一目で、クーパーの側に立つ青年が彼の父だということがわかる。
それだけ、クーパーは青年を信頼しきっていた。
少し妬けるな。そんなことを考えていると、青年がこちらにやってくる。
「初めまして。とんぬらと申します。クーパーとアニーがお世話になりました」
「バッツだ。その…別に礼を言う必要はないよ。俺のほうこそ二人には世話になった」
そう言うと、とんぬらは一つ肯き、アーロンを挟んでバッツの向こう側に回る。
「あなたも…あの時はありがとうございました」
「気にするな。お前は間違っていない」
アーロンはかすかに表情を緩めたようだ。とんぬらはアーロンの腕を自分の肩にかける。
アーロンをバッツととんぬらで支え、その後をクーパーとリディアが続く。
こうしてバッツ、クーパー、リディア、アーロンは祠に入った。
「クーパー!」
「アニー、良かった無事で!」
双子は手を取り合ってお互いの無事を喜び合う。
それを微笑ましそうに眺めてから、バッツは視線をもう一人の少女に向けた。
エーコ。神殿で命を取り合ったあの男を仲間だといっていた。信頼しているようだった。
だから、話さなくてはいけない。神殿での顛末を。
「エーコ…真夜中の放送は、聞いたか?」
「え? …ううん、目が醒めたら日の出だったから」
「そうか。なら…知らない、んだな?」
神妙なバッツの態度にエーコは思わず口を噤む。
歓声を上げていたクーパーたちも、バッツを見た。
そして、バッツはゆっくりと口を開き、神殿での出来事を語り始めたのだった。
172 :
3/4:03/09/27 03:19 ID:QRI9Xoo0
――――全員、言葉がない。
クーパーが自分が仕出かした事にじっと床を見つめ、
そんなクーパーにアニーとリディアは何ともいえない視線を投げかける。
バッツはじっとエーコを見据え、エーコは…泣き出しそうな、今にも怒り出しそうな、
何をどうしたらよいのかわからない、そんな表情だった。
「そんなの、ないよ…ジタンは、そんなのないよ」
「すまない」
「謝らないでよ! 誰も悪くないじゃない! ジタンだって…悪くない!」
怒りながらも、目から涙が溢れて落ちる。そしてそのまま、泣き出すエーコ。
そんなエーコを、ただ見守ることしか出来ないバッツ。
「それよりも、この人の治療を」
気まずい雰囲気を強引に打ち切ったのはとんぬらだった。
アーロンの額に手を当て、アニーにあるだけ毛布を持ってくるように指示する。
まるで何ごともなかったかのように振舞う父にクーパーは批難の視線を向けるが、
「顔を上げるんだ、クーパー。後悔するのも、自分を呪うのも好きにすればいい。
ただし、諦めるな。絶望するな。前を見て、今、何をすべきかを見るんだ」
アーロンを部屋の中央に横たえ、アニーが持ってきた毛布を掛ける。
「死ななくてもいい人が苦しんでいる、そんなときに黙って立っているのが正解なのか?」
バッツは大きく息を吐いた。
「そう…だ。まずはおっさんだ。薬を調合して、それからゆっくり話そう。それでいいか?」
「……私は、話すことなんて、ない」
涙声のエーコに、バッツは小さく肯く。そんなわけはないだろう、バッツに怨嗟を投げつけたくてたまらないはずだ。
なのに、小さなこの体は必死に我慢している。
準備するからしばらく待ってくれ、と言い残してバッツは部屋を出て行った。
173 :
4/4:03/09/27 03:20 ID:QRI9Xoo0
【とんぬら(DQ5主人公) 所持品:さざなみの剣 現在位置:湖の祠
第一行動方針:アーロンの治療を見守る、島から出る方法を探す
第二行動方針:パパス・ライアン・アイラをみつける】
【クーパー 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜 現在位置:湖の祠
第一行動方針:とんぬらについていく、儀式に参加する?
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【王女アニー 所持品:マインゴーシュ 現在位置:湖の祠
第一行動方針:とんぬらについていく】
【リディア(魔法使用不可) 所持品:なし 現在位置:湖の祠
第一行動方針:アーロンの治療を見守る
第二行動方針:仲間を捜す?】
【エーコ&モーグリ 所持武器:なし 現在位置:湖の祠
行動方針を喪失しました】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント/
現在位置:湖の祠
第一行動方針:クーパー達と共に行動する、アーロンの薬を調合する
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【アーロン 所持武器:折れた鋼の剣 現在位置:湖の祠
第一行動方針:体を癒す
第二行動方針:仲間を探す】
174 :
1/2:03/09/27 23:30 ID:h6J6E4I1
ジョブチェンジで薬士になったバッツは早速調合を始めた。
他の者は、火を熾して雪を溶かしてお湯を作りはじめたが、それ以外にやることはない。
空いた時間で、とんぬらたちは自分の知っている情報を交換し合うことにした。
ここに来て出会い、行動を共にした面々のこと、
ヘンリーがゲームに乗ってしまっていること、
そして神殿で行われようとしている儀式……
「ゲームを覆す儀式か……あからさまに怪しいね」
「お父さんも、そう思う?」
クーパーの問いにとんぬらは肯く。
「これだけ大掛かりな舞台を整えているのに、そう簡単に行くものか甚だ疑問だな」
「じゃあ、神殿には行かないの?」
尋ねてくるアニーに、とんぬらは少し考えた後で、
「いや、行くつもりだ。今のところ僕たちはまったく脱出方法の検討が付いていない。
しかし、儀式を行う者たちは付いていると言うのなら、話だけでも聞いてみたい」
父の言葉に、クーパーは肯く。アニーは最初からとんぬらについていくつもりだ。
とんぬらはエーコとリディアを見ると、
「彼の治療が落ち着いたら、僕たちは神殿に向かうけれど、君たちはどうする?」
二人の少女はお互い顔を見合わせた。
神殿はお世辞にも安全とは言いがたいだろう。だが、何かが起こるのも間違いない。
その上で、神殿に行くか、行かないか……
まだ年端も行かぬ少女には厳しい選択だが、自分自身で決めなくてはいけないことだ。
そんなときだった。旅の扉の出現を告げる放送が聞こえてきたのは。
175 :
2/2:03/09/27 23:32 ID:h6J6E4I1
【とんぬら(DQ5主人公) 所持品:さざなみの剣 現在位置:湖の祠
第一行動方針:アーロンの治療を見守る、神殿へ
第二行動方針:パパス・ライアン・アイラをみつける】
【クーパー 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜 現在位置:湖の祠
第一行動方針:とんぬらについていく、神殿へ
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【王女アニー 所持品:マインゴーシュ 現在位置:湖の祠
第一行動方針:とんぬらについていく、神殿へ】
【リディア(魔法使用不可) 所持品:なし 現在位置:湖の祠
第一行動方針:アーロンの治療を見守る、神殿へ?
第二行動方針:仲間を捜す?】
【エーコ&モーグリ 所持武器:なし 現在位置:湖の祠
第一行動方針:神殿へ?】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント/
現在位置:湖の祠
第一行動方針:クーパー達と共に行動する、アーロンの薬を調合する
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【アーロン 所持武器:折れた鋼の剣 現在位置:湖の祠
第一行動方針:体を癒す
第二行動方針:仲間を探す】
176 :
山崎:03/09/29 20:58 ID:yFomyyIo
【山崎渉 死亡 残り9人】
エビルマージはゾーマのいる王の間に向かっていた。
本来ならば日の出と共にあるはずの次のフィールドへと誘う放送が、未だにないことが気になったからだ。
静まり返る回廊を抜け、王の間に辿り着く。
そして、そこにはゾーマはいなかった。
「遅かったな」
バラモスブロスがいる。魔王バラモスの兄弟。しばらく姿を見せていなかったが…
エビルマージはどこで、何をしていたのか聞こうとした。
その前に、バラモスブロスは手に持ったそれをエビルマージの前に投げ捨てる。
「…ヒッ!」
「次のステージに行く前に、貴様に知らせておけとのゾーマ様の恩情だ。
本来ならばこれは貴様の役目だが、私が肩代わりした」
アークマージの馴れの果てを目の当たりにしたエビルマージはほうほうの態で王の間から出て行った。
それを見送るバラモスブロス。エビルマージを始末しろとは、命令されていない。
それにしても、主は何を考えているのか。
翻意が明確なエビルマージを煽るためだけに、放送時間をずらすこと。
なにやら歯向かおうとする参加者たちを放置すること。
どれも、ご自分の身を危うくするだけではないか。
と、そこでバラモスブロスは自分の発想の馬鹿馬鹿しさに冷笑した。
どんな策を弄しようが、それで我が主を揺らがせる事など出来るものか。
ゾーマは絶対にして絶望の王だ。自分はそれを信じればよい。
さて、と。バラモスブロスは主から与えられたもう一つの役目を果す事にした。
「これより旅の扉の出現場所を伝える。
「ロンダルキアの洞窟」「湖の祠」「ハーゴンの神殿」
以上」
178 :
1/2:03/10/01 23:17 ID:p7Qi/dl+
放送が流れてから少し後。
カインはヘンリーに教えてもらった洞窟を発見した。
慌てる気持ちを抑え、洞窟へと向かう。そこで見たのは…
洞窟の床に横たわる男と、その側に立っている筋骨隆々とした男だった。
その男、オルテガは放送が流れる前に、自分が放置した男がどうなったか確認しに洞窟に訪れた。
正確に言えば、改心したか確かめに来たのだ。
そして、できることならば心を入れ替え、正義のために戦って欲しいと……
そんなオルテガの思いは、最悪の形で裏切られることになった。
洞窟に残る血痕。幾つかなくなっている所持品。破壊されている機械。
洞窟の周囲を調べたオルテガは、冷たく凍ってしまったセシルの遺体を発見した。
命を落としても仕方ないとは確かに書いたが、本当にその結果を招いてしまうとは……
そうして悔やんでいるところに、カインは現われた。
カインは大きく目を見開き、二度三度、息を吸ってから……
「お前が殺したのか」
オルテガは、直接手を下したわけではないにしろ、状況を作ったのは自分だから……
「そうだな」
二人の間に乾いた空気が流れる。
カインは、口元を強張らせながらゆっくりと言葉を紡ぐ。
「そいつは、セシルは参加者を殺して回っていた。以前の仲間も手にかけた。
だから…あんたがセシルを殺したとしても、恨むつもりはない。ただ……」
そして……ゆっくりと槍を構えた。
「それでもセシルは親友で、それは俺の役目だ」
179 :
2/2:03/10/01 23:19 ID:p7Qi/dl+
「だから許せない、か?」
「恨んでるわけじゃない。ただ、セシルを倒したあなたに勝つのは、セシルに勝つということだ。
騎士の誇り、俺の意地、全てを賭けて、あなたに挑戦する」
オルテガはカインをじっと見た。カインの申し出は意味のない行動かもしれない。
受けて立てば危険な事もわかる。だが…断る事は、出来なかった。
オルテガの戦士の血が、それを許さない。
「いいだろう。相手になる」
【カイン 所持武器:ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
現在位置:祠の湖、西の山脈北部
第一行動方針:オルテガを倒す】
【オルテガ 所持武器:危ない水着 グレートソード 覆面 水鉄砲
現在位置:祠の湖、西の山脈北部
第一行動方針: カインを倒す
第二行動方針:アルスを探す
最終行動方針:未定】
180 :
1/2:03/10/02 23:46 ID:wg6lm08G
頭を抱えたまま動かないザックスをじっと見ているパパス。
暫くして、ザックスはかなり疲れた様子で立ち上がった。
「まあ……とにかくここでじっとしても仕方ないわな」
「この洞窟のどこかに旅の扉が現われたらしい。まずはそれを探すつもりだ」
パパスの言葉に肯くザックス。トーマスも盛んに尻尾を振る。
こうして何とも色気のないパーティが行動を開始した。
広いロンダルキアの洞窟をしばらく彷徨った後。
どうやら下層に旅の扉はないようなので、二人と一匹は地上付近を捜すことにした。
降るよりもはるかに険しい登りの道を、苦労して進む。
そして、地上付近の通路に旅の扉を見つけた。
「あ……」
旅の扉を挟んで向こうには、青年と女性がいる。
青年は壁にもたれたまま身動き一つせず、女性は男二人の姿に困惑していた。
「あんた、以前会ったよな。まだ、その男といるのか?」
ザックスの言葉に女性、リノアはややムッとしたようだが、それについては何も言い返さなかった。
かわりに、
「あの時は、ごめんなさい」
そう言って、いまだ動かないスコールの隣りに座り込む。
スコールのあまりの生気のなさに、さすがのパパスも思うところがあったようだ。
「我を失ったか。哀れな」
「今は、疲れてるだけです。疲れて休んでいるだけ。スコールは、まだ立てる」
そういうリノアの表情は自愛に満ちている。
きっとこの二人の絆は誰にも割り込めないほど深いのだろうと、男二人は思った。
181 :
2/2:03/10/02 23:48 ID:wg6lm08G
そして静寂が訪れる。
次の世界へ向かう旅の扉を前にして、それぞれが各々の思いで時が過ぎるのを待っていた。
そしてどれくらいの時間が経ったか。
ジャリ、と金属が鳴る音に全員がそちらを見た。
これまでまったく動かなかったスコールも微かにそちらを見たことに、誰も気付かない。
暗闇の中から現れたのは、クラウドとアリーナだった。
【ザックス 武器:バスターソード
現在位置:ロンダルキアの洞窟1F・旅の扉前
第一行動方針:パパスに同行
第二行動方針:エアリスの捜索】
【パパス 所持:アイスブランド
現在位置:ロンダルキアの洞窟1F・旅の扉前
第一行動方針:旅の扉の前でギリギリまで待つ
第二行動方針:バッツと双子を捜す。
第三行動方針:ゲームを抜ける】
【スコール(気絶) 所持:真実のオーブ
現在位置:ロンダルキアの洞窟1F・旅の扉前
第一行動方針:なし?】
【リノア 所持:妖精のロッド・月の扇/アルテマ×1
現在位置:ロンダルキアの洞窟1F・旅の扉前
第一行動方針:スコールに着いていく】
【アリーナ(軽傷・片目失明状態)所持武器:イオの書×4 リフレクトリング ピンクのレオタード
現在位置:ロンダルキアの洞窟1F・旅の扉前
第一行動方針:クラウドと行く】
【クラウド(軽傷):所持武器:ガンブレード 折れた正宗
現在位置:ロンダルキアの洞窟1F・旅の扉前
第一行動方針:次の世界へ
第二行動方針:アリーナを守る。出来ればエアリスも探したい(?)】
182 :
山崎:03/10/05 21:25 ID:+3pzVPP5
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183 :
1/3:03/10/05 23:02 ID:YZL85CiN
セリスは東の雪原に来ていた。
あの時、死亡者を告げる放送を聞いてから、自分は明らかにおかしくなった。
自覚はあったのだ。だが、止められない。気が付いたら、病人を置いて飛び出していた。
凍てつく山地を抜ける間も、ずっと自分を駆り立てるものは何か、考えていた。
そして、一つの名前に行き着いた。理由はわからない。だが、その名前を口するだけで胸の奥がシクシクと痛む。
それが、今の彼女をかきたてる全てだった。
ミレーユは、キャンプ地点で放送を聞いた。
特に定まった目的地があったわけでもないし、下手に動くよりは旅の扉の場所を確認してからでも良い、そう思ったからだ。
放送後、地図で一番近い場所を確認する。北の湖か、南の洞窟か。
そして、どちらかと言えば近い南の洞窟に向かう事にした。
途中、彼女は雪原を歩く女性の姿を発見したのだった。
その女性の様子は何となくおかしかった。
一見して武術を嗜んでいるようなのに、ほとんど警戒する様子がないのだ。
よほど自身があるのか、それとも……
ミレーユは少し考えた後、声をかけてみることにした。
普段なら関らないところだが、それでは何も変わらない。まず、自分が動かないといけない。
「おはよう。はじめまして、かな」
「………誰」
やはり、その女性の様子は変わらず無防備だ。
どこか線が細く儚げで、女性の自分から見ても掛け値なし美人だと思う。
まあ、そう思ってるミレーユ自身もそんな表現が似合うタイプの美人なのだが。
184 :
2/3:03/10/05 23:05 ID:YZL85CiN
「私は、ミレーユ。占い師の見習をやっているわ」
「そう。何か用?」
冷たい、というよりは素っ気無さ過ぎる態度だった。
自分も言い寄ってくる男にはこんな態度を取るので、ミレーユは苦笑した。
「用というか、あなたが一人でいるようだから声をかけたのだけれど。
見ての通り、私も一人だし、もし良かったら一緒に行動できないかしら」
女性は興味なさそうにミレーユから視線を逸らした。そしてこんな事を呟く。
「……ロック」
「え?」
「彼を探している。何故かはよくわからないけれど……会わなきゃいけない」
ロック、その名前は自分にとって少なからず意味を持っていた。
占いで知って、会おうとして……そしてつい先程、失望を味わった。何故なら彼は……
「その人……前回の放送で亡くなったと」
「死んでいない」
その女性は射殺すような視線をミレーユに向けた。
「彼は死なない。殺しても死ぬような人じゃない。生きてる。絶対生きてる」
ミレーユは息を飲む。女性の瞳は純粋なものだ。純粋で、それでいて……
意思の色が見えなかった。現実を否定するあまりに盲目になっている、そんな感じ。
関ってしまった事を僅かに後悔しながら、ミレーユは口を開いた。
言葉を選んで、慎重に語りかける。
「あなたが言うのならそうなんでしょうね。もしも……いえ、彼は旅の扉に向かっていると思うわ。
もうじきこの世界は崩壊するから」
「……そう」
「ここから南にある洞窟に旅の扉は出現したわ。行きましょう?」
微かに肯く女性。
185 :
3/3:03/10/05 23:06 ID:YZL85CiN
今は見守るしかない。彼女が現実を受け入れるまで。
ミレーユはそう思う事にした。それから、一つ、聞いておく事に気付いた。
「あなたの名前は?」
「セリス」
「そう。よろしくね?」
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド
現在位置:東の平原
行動方針:セリスと共にロンダルキアの洞窟へ】
【セリス(記憶喪失) 所持武器:ロトの剣
現在位置:東の平原
行動方針:ロック(セリスは死んだ事を認めていない)を探す】
186 :
1/2:03/10/07 23:25 ID:YCeuKHEz
とんぬら、クーパー、アニー、リディア、エーコ、バッツ、アーロンは湖の祠の中で、旅の扉の放送を聞いた。
放送後、何時しか彼等がいる部屋の中心から淡い光が広がっていく。
青い燐光が周囲に立ち込め、周囲の景色が揺らぎ始めた。
「まさか…!」
とんぬらは慌ててクーパーとアニーを両手に抱える。
クーパーはそばにいたリディアの手を握り、アニーはエーコの服を引っ張る。
バッツは慌ててアーロンの元に駆け寄ると、彼を抱き起こそうとした、瞬間!
「うわぁっ、ま、間に合わない!」
「バッツ兄ちゃん!?」
「お、お父さんっ!」
「きゃああああっ!」
「嘘、やだぁ!」
「クーパー、アニー!リディアとエーコも僕にしっかり掴まって!」
「…また落ちるのか。やれやれだな」
一瞬で広がった底なし沼のような旅の扉に全員飲み込まれ、
次の瞬間、祠から人の気配が消えたのだった。
187 :
2/2:03/10/07 23:27 ID:YCeuKHEz
【とんぬら(DQ5主人公) 所持品:さざなみの剣 現在位置:次の世界へ
第一行動方針:子供たちを守る
第二行動方針:パパス・ライアン・アイラをみつける】
【クーパー 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜 現在位置:次の世界へ
第一行動方針:とんぬらについていく
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【王女アニー 所持品:マインゴーシュ 現在位置:次の世界へ
第一行動方針:とんぬらについていく】
【リディア(魔法使用不可) 所持品:なし 現在位置:次の世界へ
第一行動方針:アーロンの治療を見守る
第二行動方針:仲間を捜す?】
【エーコ&モーグリ 所持武器:なし 現在位置:次の世界へ
第一行動方針:?】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント/
現在位置:次の世界へ
第一行動方針:クーパー達と共に行動する
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【アーロン 所持武器:折れた鋼の剣 現在位置:次の世界へ
第一行動方針:体を癒す
第二行動方針:仲間を探す】
保
手
190 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/10/11 17:58 ID:1NfTwKNU
今だ!190ゲットォォ!!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄
∧ ∧∩
(゚Д゚ ) ≡≡≡
⊂/ / ≡≡≡
_/ / ≡≡≡
⊂/ ^∪ (´⌒;;
(´⌒ (´⌒(´⌒;;
ズザーーーーー
191 :
1/4:03/10/11 20:52 ID:kZIFQZnR
クラウドはその人影にまず驚いた。
エアリスが生きてそんざいしているのだから、おかしなことではない。
だが、彼の格好、彼の仕種、彼の存在そのもの、それを前にしたとき、
「1stソルジャー・クラウド」の存在は彼そのままに、あるいは粗悪に、移したものに過ぎない。
そういった意味で、彼の存在はクラウドにとって禁忌としか言いようがなかった。
もっとも、そんな事情など、当の本人であるザックスには何も知りうるものではない。
彼にとってのクラウドは、友人の神羅兵。それ以外の何者でもないのだから。
だから、彼の最初の挨拶はこんな感じだった。
「よう、クラウド…だよな?久しぶりっつーか、生きてて何よりだ」
「ザ…ックス…?」
そのとき、リノアは隣のスコールの異変に気づいていた。
これまでまったく身動きしていなかったスコールが、クラウドを見ている。
クラウドを?彼に何かがあるというのだろうか?
言いようのない不安が、リノアの内を巡る。
「クラウド、知り合い?」
アリーナが尋ねると、クラウドはゆっくりと肯く。
あまり親しくないのだろうか、とも思ったが、ザックスは親しげな態度である。
事情がわからず、ただクラウドの出方を見守るのみだ。
「ザックス。セフィロスが、死んだ」
「…マジか!?」
クラウド踵を返し、背中に収めていた折れたマサムネをザックスに見せる。
ザックスはそれが本物のマサムネであることに唸り……
リノアは、あっと声を上げた。
192 :
2/4:03/10/11 21:12 ID:s54Svdk+
クラウドにとって不運だったのは、そこにザックスがいて気を取られた事だった。
そして、洞窟の中ゆえに薄暗い事、ザックスのいる場所から離れていた事、
「彼」が敵意のない女性の隣りにいた事も、視野から外してしまった原因である。
それは致命的な隙だった。
「てめえっ、ナニやっている!?」
ザックスの声に、クラウドは呆気にとられる。
それが自分に向けられたものではないと気づいたときには、彼は既に背後に回りこんでいる。
クラウドはあわてて振り向こうとする。それに合わせて彼も自分の背後に回る。
そして彼はクラウドの背中に手をやり、「ソレ」を握った、
瞬間!
「ガッ!!」
強烈な振動にクラウドは腹の底から声を上げた。
背中の肉が弾け飛んだ様でもある。吹き飛ばされていく最中、クラウドは彼の手に「ソレ」が握られているのを見た。
以前、気弱そうな少年から譲り受けた、使い方のよくわからない武器「ガンブレード」をもつスコールの姿を。
「クラウド――――っ!!」
青い光の中に落ちようとする自分を支えようとするザックスの手。
消え行く意識の中で、世界から消えていく感触の中で、クラウドは意識を手放した。
リノアはその光景を呆然と見ていた。
スコールの手には、彼が愛用していたガンブレードがある。それだけで、頼りなかった彼の存在が引き締まった気がする。
「あんた、あんたはぁっ!」
旅の扉から漏れる青い光に照らされた彼の顔を見て、アリーナは拳を握った。
どこかヒヨワな、だが間違いなく勇敢な優男の顔が思い浮かぶ。
あの時ギルバートを殺し、そして今大切な人を殺そうとした!その激情がアリーナの理性を奪った。
アリーナがスコールに殴りかかる。
だが体調も悪く、視力もかなり失っている彼女の拳は、かなり心もとない。
ガンブレードの腹であっさりと拳の威力は流され、返すスコールの反撃がアリーナを捉える。
193 :
3/4:03/10/11 21:15 ID:s54Svdk+
「ッ!?」
普段ならかわせたかもしれない。だが、酷使し続けたアリーナの体は、主の意思に答えなかった。
スコールと間合いを外そうとしたものの、ガンブレードの刃が閃き、
右の方から左の腹まで、強烈な衝撃がアリーナを体を切り裂く。
爆発するような音が響き、アリーナの体はボロキレのように吹き飛んだ。
ここで追い詰めれば確実にアリーナを仕留められる。
だがスコールは踏みとどまった。パパスが剣を抜いて殺到してくるのを感じたからだ。
ガキィン!!パパスのアイスブランドとスコールのガンブレードが交錯する。
「少年、それが答えか!!」
スコールは答えない。ただ、全力でパパスの剣を押し返すのみ。
その力に、パパスはスコールが先程までの腑抜けた彼ではないことを認めざるを得なかった。
鍔迫り合いの後、パパスの剣を逸らしたスコールはすばやくその場から離れ、
「ス、スコール!?」
リノアの腰に手を伸ばして抱きかかえると、そのまま旅の扉の向こうに消えた。
元からそうするつもりだったかのような、まるで澱みのないプロの動き。
パパスはその後を追おうとしたが、
「………チィッ!」
以前の経験……双子と逸れた時……からして、このタイミングでは間に合わないと思い踏みとどまった。
自分にも目的がある、無闇な行動をして、あるはずの機会を逃すわけにはいかない。
それにしても、あのスコールの変貌振りはどうだろう。
無気力だったあの青年がまるで歴戦の戦士のようだった。
あの剣がソレをさせたのだろうか。風変わりな、扱いそうな剣だという印象しか、パパスにはなかったが。
194 :
4/4:03/10/11 21:21 ID:s54Svdk+
それにしても、あのスコールの変貌振りはどうだろう。
無気力だったあの青年がまるで歴戦の戦士のようだった。
あの剣がソレをさせたのだろうか。風変わりな、扱いそうな剣だという印象しか、パパスにはなかったが。
パパスは剣を収めると、アリーナの元に向かった。
傷口を見る。すぐに、手遅れだということは見て取れた。
「…クラウド、は…?」
虚ろな瞳で尋ねる少女。
「何か、伝えたいことがあるかね?」
パパスは逆に問う。
「伝えたいこと、は…あるよ…で、も、ソレ、は…私が、私の口から、告げること、なんだ……」
「そうか」
パパスは何も言わない。彼女の思いが何であるかわかるがゆえに、答えない。
ベホイミを唱えた。何の意味もないただの気休めだけれど、
「ちゃんと、伝えなきゃいけないんだ…だから。私は死ねない…まだ、死ねない………」
それでも、何もないよりは、よい。どうせ最後が避けられないなら、安らかなほうがよい。
「好きだって。ちゃんと言うんだ……」
そしてそれっきり言葉を発しなくなる。
「過去を追及しても詮無き事だが……あの時少年は殺しておくべきだった。
ワシの失態だ。許せとは言わん、だが次あったときは必ず仇は取る」
物言わぬ少女の瞼を、そっと閉じ、パパスはそう誓ったのだった。
【ザックス 武器:バスターソード
現在位置:次の世界へ
第一行動方針:クラウドを助ける
第二行動方針:エアリスの捜索】
【クラウド(重傷):所持武器:折れた正宗
現在位置:次の世界へ
第一行動方針:次の世界へ 】
【スコール 所持:ガンブレード 真実のオーブ
現在位置:次の世界へ
第一行動方針:リノアをゲームの勝利者にする】
【リノア 所持:妖精のロッド・月の扇/アルテマ×1
現在位置:次の世界へ
第一行動方針:スコールに着いていく】
【パパス 所持:アイスブランド
現在位置:ロンダルキアの洞窟1F・旅の扉前
第一行動方針:旅の扉の前でギリギリまで待つ
第二行動方針:バッツと双子を捜す、スコールを殺す
第三行動方針:ゲームを抜ける】
【トーマス 所持:鉄の爪 薬草×10 手紙 碁石(20個くらい)
現在位置:ロンダルキアの洞窟1F・旅の扉前
第一行動方針:パパスについていこうと思っている】
【アリーナ 死亡】
アリーナが…。
保守
197 :
1/4:03/10/12 23:03 ID:tO04sxOm
共に行動する事にしたミレーユとセリスは南の洞窟に向かっていた。
最も、共に行動するといってもセリスの行動にミレーユがついていくというのが正しい。
セリスの頭の中にはロックを探すという意識しかない。その純粋さは、とても危うい。
今は何を言っても聞かないだろうが、一刻も早く自分を取り戻す事を祈るのみだ。
平原をまるで警戒する様子もなく進んでいく彼女を見ながら、ミレーユはそっと溜息をついたのだった。
一方その頃、クラウド達からやや遅れて地下通路から洞窟側の平原に現われたものがいる。
「一体どこに出たんだ?居場所がわからないのが欠点だな」
ヘンリーだった。とんぬらはおそらく南に向かったのでは、と予想したのだが、
障害物のない地下通路を歩き続けた結果、こんな場所まで来てしまったのだ。
周囲の地形からそのことを判断して、ヘンリーは溜息をつく。
今更戻るわけにもいかないし、この世界でとんぬらに会うのは無理だな……
それしても、ヘンリーは思う。とんぬらに会ってどうしようと言うのか。
殺す?殺せるか、アイツを?どうやって。冷静に考えれば無茶だ。
自分が勝っているとしたら、政治的な裏取引ぐらいしかない。後は笑顔で嘘をつく厚顔か。
どちらも殺し合いで役に立つものではない。とんぬらには取引も嘘も効かない。
ならば、どうする。自分は、何のために……
そこで、ヘンリーの思考は中断された。
北から誰かがやってくる。隠れるような場所はない。
走っていけば、彼等がやってくる前に地下通路に逃げ込めるだろうが、
それでは自分が怪しいと宣伝しているようなものである。
結局、ヘンリーはその場に留まり……ただし何時でも逃げられる準備だけはして……待ち受ける事にした。
198 :
2/4:03/10/12 23:11 ID:tO04sxOm
その人影を見て、ヘンリーは舌打ちした。
近付いてきたのは二人、両方とも類い稀な美女である。
そして、一方は一度あったことがある。その名前は、ヘンリーの亡き妻の名と同じだった。
彼女は自分がゲームに乗っていることを知っている。敵対は避けられない。
ヘンリーは逃げる事にした。だが、背を向けて走り出すわけにはいかない。そんな事をすれば後ろから狙いたい放題だ。
じりじりと後退し、不意をついて地下通路に逃げ込む、危険だがこれしかない。
だが、彼女はヘンリーの姿を確認してもまったく敵意を見せてこなかった。
それどころか警戒する様子すらない。連れの女性はやや警戒しているようだが、
敵意を剥き出しにしているわけではない。
これはどういうことなのか。それを知る前に、連れの女性がヘンリーに話し掛けた。
「おはようございます。あなたも、このゲームに巻き込まれた人ですよね?」
それ以外に誰がこんな所にいるのか。とは思ったが、社交辞令としてヘンリーは肯いた。
「私はミレーユといいます。占い師です。彼女はセリス」
「セリス…?」
マリアじゃなくて?そう言おうとして、ヘンリーはギリギリ思いとどまった。
見るからに、セリスの様子はおかしい。自分の事を覚えていないようだし…
あの時マリアと名乗った女性とは別人なのだろうか。それも考えにくいが。
「ロックを探している」
セリスは感情のない声でそう言った。
ロック……その名前には聞き覚えがある。そいつは確か……
ミレーユは憂いを秘めた目でこちらを見ている。目が合うと、ミレーユは困惑したように一つ肯いた。
ヘンリーは状況を把握した。ロックというのは彼女の大切な人で、
そいつが死んだことに彼女は絶えられず、精神を崩してしまったのだろう。
だから、自分の事も意識の内に入らない……
199 :
3/4:03/10/12 23:24 ID:tO04sxOm
ヘンリーは、少し笑った。おかしかったからだ。
「ああ、その人なら」
何がおかしいって。それは。
「北に向かいましたよ」
一番殺しづらい相手を、自分の手にかけずに始末できるからだ。
ヘンリーの言葉に、セリスは即座に踵を返し、北に歩き出した。
ミレーユはヘンリーに信じられない、と言った目を向けた。
「あなた、何てことを!ロックって人はもう死んで…!!」
「そうだな」
もう一度、ヘンリーは笑った。はっと、ミレーユの表情が変わる。
「あなた……わざと、嘘をついて。彼女が旅の扉に辿り着けないようにしたのね!?」
「そうだな。で、どうする?今なら追いかければ間に合うかもしれないぞ?
もっとも、彼女があんたに従うかどうかは別問題だけどな」
「……クッ」
ミレーユはようやく気付いた。自分は、最悪の相手に声をかけてしまったのだと。
200 :
4/4:03/10/13 00:10 ID:ocOUW8ct
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド
現在位置:東の平原、洞窟そば
行動方針:セリスを止める?ヘンリーと戦う?一人旅の扉に向かう?】
【セリス(記憶喪失) 所持武器:ロトの剣
現在位置:東の平原、洞窟そばから北へ
行動方針:ロック(セリスは死んだ事を認めていない)を探す】
【ヘンリー 食料多、支給ランプ×2(リバスト・アグリアスから回収)
所持武器:ミスリルアクス イオの書×2 スリングショット まどろみの剣 なべのふた
ブラッドソード リフレクトリング 弓矢(手製)
現在位置:東の平原、洞窟そば
第一行動方針:セリス、ミレーユを殺す
第二行動方針:皆殺し(とんぬら優先)
最終行動方針:マリアの元へ逝く】
201 :
1:03/10/14 00:13 ID:VP9qcsSH
ミレーユは、考える時間も勿体無いと思った。目の前の男に時間をとっていたら、セリスには追いつけなくなる。旅の扉も、いつその口を閉じてしまうか予想がつかない。
「まあ、このまま洞窟に進もうが、あの女を追いかけようがどちらにせよ俺は邪魔をさせてもらう」
男の声がなんとももどかしい、だがその間にも、セリスがますます自分から離れていくのを
強く感じとって、焦りが募る。
後ろを振りむかなくてもわかる。セリスはきっと走り出している。
一旦事を決めた彼女は立ち止まらない。機械仕掛けの人形のように、何かにぶつからない限り
動くのをやめようとはしない。
そして、進み往く彼女の壁になってくれるのは、恐らく愛しているはずのロックという
生身の体を持つ男性だけだ。
なのに彼は死んでしまった。
彼女は、もう会えない人の幻影を追って、死ぬまで前進をやめないだろう。
「だから私が連れ戻さなければ、セリスさんは!」
それが返答だった。
マヌーサの呪文を、後を振り向くために軸足を180度転換した瞬間に、ぶつけた。
「ぬわっ!?」
男が足を滑らすのを物音だけで感知して、あとは顧ず、白肌の大地を駆け出した。
「くそっ、待て」
男が体勢を整える時間が一秒でも伸びることを祈るのみ。
202 :
2:03/10/14 00:15 ID:VP9qcsSH
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド
現在位置:東の平原、洞窟そばから北へ
行動方針:セリスを止める】
【セリス(記憶喪失) 所持武器:ロトの剣
現在位置:東の平原、洞窟そばから北上中
行動方針:ロック(セリスは死んだ事を認めていない)を探す】
【ヘンリー 食料多、支給ランプ×2(リバスト・アグリアスから回収)
所持武器:ミスリルアクス イオの書×2 スリングショット まどろみの剣 なべのふた
ブラッドソード リフレクトリング 弓矢(手製)
現在位置:東の平原、洞窟そば
第一行動方針:ここに留まるか、ミレーユに攻撃するか
第二行動方針:皆殺し(とんぬら優先)
最終行動方針:マリアの元へ逝く】
203 :
1:03/10/15 00:05 ID:CgVgq9RT
ヘンリーは憤慨しながら腰をあげると、ミスリルアクスを右手に掴んだ。
「マヌーサごときでっ」
呪文が見せるいくつものミレーユの幻を打ち払うべく、斧をふりまわす。呪文の効果はあっけなく途切れた。
髪をふり乱して走り行く、ミレーユの後ろ姿だけが遠くに残った。
ヘンリーはすかさず斧投げの体勢に入った。
だが斧を握って振りかざす右腕が、頭上でとまる。
ミレーユに投げつけるには、距離がありすぎるからだ。体勢を戻すのに時間のかかったヘンリーは
追撃の機会を逃がした。軽く舌打ちする。
「いいさ、次は万全の状態でやってやる」
肩で大きく息をして腕を下ろす。視線の先の雪景色には、足跡がくっきりと一本の筋道となって残っていた。
彼の目からは既に、ミレーユは黄色い点であった。
また雪は降ってきた。足跡もじきに消えてなくなってゆく。
旅の扉の位置を把握しなければならないし、早めに行くべきだと思ったヘンリーは、後方でそびえる
山脈のふもとで暗い口を開ける、ロンダルキアの洞窟に足を運ぶことにした。
追撃がないことに安心しつつも、セリスを説得できる自信が揺らいでいることにミレーユは悩む。
そして、やっとの思いで、ステップを踏むような走り方をしているセリスに追いつくと
「セリスさん、止まって!」
荒い息づかいも抑えずに、彼女の手をつかんだ。セリスの手はひどく冷たかった。
「なぜ? ロックが北にいるというのに」
セリスは足を止め、奥底にある力を感じさせない灰色の瞳で言って返した。
「あの男は邪魔な私たちを消すために嘘をついたのよ、北には誰もいないの!」
自分を取り戻してほしいから、ミレーユは熱のこもった声を出す。
204 :
2:03/10/15 00:08 ID:CgVgq9RT
セリスは反応を見せない。ただ、茫然と降りしきる雪の数をかぞえるように、表情を崩さす横を向いている。
ミレーユはセリスの正面にまわると、両肩を手で押さえて顔を見つめた。セリスは目を逸らそうとする。
「戻りましょう、距離的に洞窟の旅の扉以外は多分間に合わないから。だいじょうぶ、女同士力を合わせて
真っ正面から闘えば、あの男なんかに負けはしない」
そう言ってセリスの方を揺さぶった。
「でももしかしたらロックはまだここに……」
言いよどむセリスにも変化の兆しはあった。葛藤しているのだ。決定的に異なる願望と現実、その合間に
苛まれて。
「目を覚まして! どこを探しても彼はもういない!」
ミレーユはしきりに叫んだ。正気に戻って、自分を取り戻してと。
そして手にぐっと力を込めた。右手を肩から離すと、セリスの頬を一発はたいた。
「ロックさんは死んだのよ」
ミレーユは静かに言った。
「あなたには可哀相だけど、しっかりと目を開いてほしい。現実を受け入れてほしい。
どうしようもなく、辛いことでしょうけれど……」
セリスがその場に崩れて膝をついた。忌まわしい現実をのみこんだ瞬間だった。
「行きましょう。このゲームは悲しいことがありすぎる。早く止めさせなければいけないのよ。
……私も、苦しみを味わったから」
セリスの肩を抱いて、涙を見せる彼女を優しく立たせてあげた。
放送を聞いたあとには、誰もが絶望を与えられる等しさがあり、狂いに向かってひた走る可能性が
あることをよく理解できるために。
ミレーユもまた、夜中の放送を聞いているのだ。
205 :
3:03/10/15 00:09 ID:CgVgq9RT
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド
現在位置:東の平原、東の平原
行動方針:洞窟の旅の扉へ】
【セリス(記憶喪失) 所持武器:ロトの剣
現在位置:東の平原、
行動方針:ミレーユとともに行く】
【ヘンリー 食料多、支給ランプ×2(リバスト・アグリアスから回収)
所持武器:ミスリルアクス イオの書×2 スリングショット まどろみの剣 なべのふた
ブラッドソード リフレクトリング 弓矢(手製)
現在位置:東の平原、洞窟そば
第一行動方針:洞窟へ行く
第二行動方針:皆殺し(とんぬら優先)
最終行動方針:マリアの元へ逝く】
『ソレ』は、新たな持ち主を待っていた。
魔族の手を離れ、氷雪と共に強大な魔力に吹き上げられ、この針葉樹に引っ掛かってから半日……
何人かの人間が『ソレ』の近くを歩いていったが、誰もがソレに気付かぬまま、通り過ぎた。
なぜなら、『ソレ』は緑色の材質で作られていたため、遠目では木の葉と同化してしまうし
何より、半分以上が雪に埋もれてしまっていたからだ。
よほど目ざとい者が通りがかるか、奇跡ともいうべき幸運が訪れない限り、
『ソレ』はこの雪の大地と共に、終焉を迎えることになるのだろう……
――だが、奇跡は起きた。
どざぁっ!
雪崩を思わせる妙に重たい音が、ヘンリーの行く手から響いた。
緊張を解いていなかったヘンリーは、武器を構えながら飛び退り……
……その正体が、少し離れた木の枝から滑り落ちた雪であることに気がついて、胸を撫で下ろす。
おそらく、再び積もり始めた雪の重みに耐え切れなくなって落ちたのだろう。
それに良く良く考えれば、こんな開けた場所で奇襲をかける馬鹿もいるまい。
少なくとも自分なら、身を隠しやすく、寒さも凌げる洞窟内部で待ち伏せる。
「……ん?」
警戒を解き、雪の脇を通り過ぎようとして、彼は気がついた。
雪の間からわずかに飛び出た、細長くねじくれた杖に。
――人を騙すためだけに作られた、変化の力を持つ『ソレ』に。
【ヘンリー 食料多、支給ランプ×2(リバスト・アグリアスから回収)
所持武器:ミスリルアクス イオの書×2 スリングショット まどろみの剣 なべのふた
ブラッドソード リフレクトリング 弓矢(手製)
現在位置:東の平原、洞窟そば
第一行動方針:洞窟へ行く(雪に埋もれた杖(変化の杖)を回収するか、無視して先を急ぐか)
第二行動方針:皆殺し(とんぬら優先)
最終行動方針:マリアの元へ逝く】
ヘンリーの動きがピタリと止まる。
棒切れなんて見つめてなにやってんだ俺は
そう、それは大事なものにはとても見えないのだ
「だけどどうも、気になる」
独り言を言ってみて、棒切れに誘われているような感じだと思いつく。
ヘンリーはそれを掴みとった。こびりついている雪を振り落とし、腕をぐっと伸ばして高くかざしてみた。
「……」
なにも起こらない。
「あたり前か」
ヘンリーはため息をつき、杖を放り捨てようとした。
なのにそれができなかった。
手放したくない気持ちがなぜか芽生えたからだ。
少しの間とはいえ、棒切れなどのために無駄な時間を費やしたことを後悔したにも関わらず。
不思議な感覚である。
誘われているようだと感じたのも、ひょっとして杖が何かを発しているからなのか。
ヘンリーはあることを思い出した。
所持者の心を操る物が存在するという。私を放すな、お前とは一心同体だ、などと
まるで人間のように語りかけて。
するとこれは魔法の品か、あるいは呪いでもかけられているのか、
しかしそれほどの力が込められている杖にはどうしても見えない。
舞い落ちてきた粉雪が目に入って、目覚めたところに急な決断を迫られたような圧迫感を感じた。
ぎりりと唇を噛んで、自分自身を促す。
たかが棒切れに決断も何もない、持っていけばいい
固く杖を握りしめ、もう無駄なことは考えまいと、洞窟をめざして歩きだした。
パパスは扉の前に腰を下ろしていた。
息絶えたアリーナを埋葬して落ち着いたところだ。
アリーナの手には無数の傷があった。格闘家特有の筋肉のつくりかたをしていた彼女だから、
戦士としての儀礼を尽くし手厚く葬った。彼女の持っていた淡い輝きをもった指輪だけが、
なんとも乙女らしさを残していたけれど。
「ふう」
旅の扉は馬車一台が入るほどの口を開け、青白い光を放ち、鍋のスープをかきまぜるように
ゆらゆらと回転している。
となりでトーマスが耳を立て、両足を前に出してかしこまっている。わんとも吠えようとしない。
「さて……」
洞窟の入口から足音が響いてきた。
パパスはまた立ち上がった。トーマスはじっとしている。
「彼らだと良いがな」
そうであれば、パパスは剣を振らずに済む。
かつ、かつ、と一定のリズムで足音は聞こえる。
パパスは旅の扉を盾代わりにしようと、扉の後ろにまわった。これで相手は突きかかってこようとも、
扉を避けるため迂回しなければならない。
パパスは息を止めた。近づく影がだんだん大きくなってくる。
ひょっこり顔をだした青年。輪郭が扉の光の影響で揺らいで見える。
「何?」
青年は驚きの表情でパパスをみつめた。
「敵ならば闘おう、そうでなければひとつ、穏やかに情報交換といきたい。どうかな」
言ったパパスも、どこかで会った気がすると首をかしげた。
「何故、あんたが生きているんだ」
青年は、無防備にも武器をおいて駆け寄ってきた。旅の扉には目もくれていないようだ。
トーマスはそれを見て、喉を鳴らした。
「私のことを知っているのか?」
パパスは近寄ってくる青年には警戒心が沸かなかった。子供が駆けてくるように見えたからだ。
「嘘だろう……あんたは、あのとき俺たちの目の前で……」
「すまない、君は一体誰だったかね。確かに全くの他人とは思えない、どこかで見覚えがあるような」
青年は、どこか悔みきれないことを引きずっているようだった。顔色が青白く見えるのは、
扉の光のせいだけではないらしい。
【ヘンリー 食料多、支給ランプ×2(リバスト・アグリアスから回収)
所持武器:ミスリルアクス イオの書×2 スリングショット まどろみの剣 なべのふた
ブラッドソード リフレクトリング 弓矢(手製)
現在位置:東の平原、洞窟そば
第一行動方針:パパスのことで悩んでます
第二行動方針:皆殺し(とんぬら優先)
最終行動方針:マリアの元へ逝く】
【パパス 所持:アイスブランド
現在位置:ロンダルキアの洞窟1F・旅の扉前
第一行動方針:旅の扉の前でギリギリまで待つ 、ヘンリーの相手をする
第二行動方針:バッツと双子を捜す。
第三行動方針:ゲームを抜ける】
【トーマス 所持:鉄の爪 薬草×10 手紙 碁石(20個くらい)
現在位置:ロンダルキアの洞窟1F・旅の扉前
第一行動方針:パパスについていこうと思っている】
保守
保守
212 :
1/3:03/10/22 23:30 ID:3xj7y6bq
「なるほど、君の言うことはわかった」
パパスはヘンリーの説明を受けて一つ肯いた。
彼が、ラインハットのヘンリー王子だということ。
王妃の奸計でヘンリーと息子のとんぬらは奴隷になり、自分は死んだということ。
8年後、逃亡に成功して自由の身になり、ヘンリーはラインハットに帰ったこと。
息子には妻と同じ、魔物を仲間にする才能があり、共に旅を続けたこと。
旅の果てに、自分の本当の身分を知り、グランバニア王に即位したこと。
20年の時間を語るヘンリーの言葉を、パパスは否定する事が出来なかった。
話は整合性が取れていたし、なにより、自分しか知らないこと…
正確にはそれが誰かに知れるのは自分が死んだ時だけのことも、彼は知っている。
彼の言葉は真実だ。ならば……
「私と君の時間は違う、と言う事か」
「そうとしか考えられない。あんたの時間はどこから始まっているんだ?」
パパスはフム、と唸ると、
「ヘンリー王子…つまり君に部屋から追い出されて、とんぬらに様子を見てきてくれと頼んだ。
とんぬらが戻るのを待っていたのだが…」
「俺は隠し通路から部屋を抜け出していた。そこでならず者に攫われたんだ」
パパスは軽く溜息を付く。やはり聞いていてあまり気持ちのいいことではないのだろう。
「ともあれ、私にとっては未来の事だ。ここから生きのびてからでも、遅くはあるまい。
それで、君はこれからどうするつもりかね?」
ヘンリーは、ようやく自分がココで、何をしているのか思い出した。
パパスを見る。引き締まった体躯、揺るぎない姿。
殺せるのか、これを?
213 :
2/3:03/10/22 23:33 ID:3xj7y6bq
ヘンリーの脳裏に、自分を助けに来たパパスの姿が浮かぶ。
牢をこじ開け、父の自分への思いの丈を語ろうとした、男の姿が。
もしも、が許されるなら。それは二度と繰り返してはならない光景だった。
自分は、パパスの死が無駄ではない事を証明するために、苦しい奴隷生活を生き抜いた。
その思いは絶望しそうになったとき、自分を奮い立たせる最後の命綱だったのだ。
それなのに、俺は殺せるのか?この、男を。
ヘンリーは、深く考えた。そして大きく深呼吸をして、決めた。
「俺は、次の世界でも参加者を殺す」
「………!」
パパスの表情が一瞬で厳つくなる。
それが逆にヘンリーの覚悟を完了させた。
「妻のマリアが死んだ。理不尽に殺された。それが悔しくて殺しまくった。
殺しても何もならない、そんな事わかっていても。もう、続けるしかない」
パパスは強烈な威圧感とともにヘンリーを睨みつける。
「腑に落ちんな。何故私に宣言する」
「あんただからさ。俺の命はあんたに救われたものだ。だからもう一度あんたに預ける。
ここで殺すも良し、抵抗はしない。見逃したなら、次からはあんただろうと殺す」
「………」
それだけ言うと、ヘンリーは旅の扉に向かって足を踏み出した。
ゆっくりとゆっくりと。パパスが駆ければ一瞬で立ち塞がれる、そんな遅さで。
「そうそう、昨日とんぬらに会ったが…あいつならすぐに殺すことを選ぶだろうよ。
あいつは何が最良で、どうすれば後悔しないか、よくわかってる奴だからな。
親父のあんたはどうする」
214 :
3/3:03/10/22 23:34 ID:3xj7y6bq
【ヘンリー 食料多、支給ランプ×2(リバスト・アグリアスから回収)
所持武器:ミスリルアクス イオの書×2 スリングショット まどろみの剣 なべのふた
ブラッドソード リフレクトリング 弓矢(手製)
現在位置:東の平原、洞窟そば
第一行動方針:生殺与奪をパパスに預ける
第二行動方針:皆殺し(とんぬら優先)
最終行動方針:マリアの元へ逝く】
【パパス 所持:アイスブランド
現在位置:ロンダルキアの洞窟1F・旅の扉前
第一行動方針:旅の扉の前でギリギリまで待つ ヘンリーを見逃す?殺す?
第二行動方針:バッツと双子を捜す。
第三行動方針:ゲームを抜ける】
【トーマス 所持:鉄の爪 薬草×10 手紙 碁石(20個くらい)
現在位置:ロンダルキアの洞窟1F・旅の扉前
第一行動方針:パパスについていこうと思っている】
215 :
1/7:03/10/22 23:44 ID:1zdN6+GG
洞窟の外に出た二人は、距離をとって向かい合った。
「まだ名乗っていなかったな。我が名はカイン・ハイウィンド。バロン王国の竜騎士」
「私はオルテガ。アリアハン王国の戦士だ」
騎士の礼に則って互いの武器をいちど打ち合わせる。
誇り高き二人の戦士の決闘の始まりだった。
「セシル、また賊を取り逃がしたそうだな。いったいどうしたというんだ。
そんなふぬけたことでは騎士の名が泣くぞ」
「カイン…あの賊は家族がいると言っていた。家族を養うためにやむを得なかったと。
彼は心から反省していた。きっとこれからは立ち直って、まっとうに生きてくれると思う」
「甘すぎるぞ。どのような理由があっても法を犯していいことにはならん」
「僕は…法は人を裁くためでなく、人を守るためにあるんだと思う。騎士だって同じさ。
僕たちの剣は誰かを切る為にあるんじゃない。大切な人を守る為にあるんだ」
「……」
腰溜めに構えた槍を裂ぱくの気合と共に繰り出すカイン。
体を開いてそれを避けると、オルテガは無言で両手に握ったグレートソードを振り回した。
最短距離を突いて迫る剣先を身を沈めてやり過ごすと、お返しとばかりにカインも槍を真横になぎ払う。
オルテガは引き戻した剣の根本で穂先を受け止め、そのまま力を込めて押し返した。
カインも押し負けないように踏ん張るが、じりじり押し切られてしまう。
(どうやら、力ではかなわんようだな……だが!)
刃が体に届く直前に、カインは竜騎士の専売特許である跳躍力で刃を飛び越え、そのまま頭上から
オルテガに襲いかかった。急激な縦の変化によってオルテガの視界からカインの姿が消える。
それでも瞬時の判断でオルテガはカインの居場所に見当をつけて上に向けて剣を突き出した。
その頃にはカインも槍をオルテガの頭部に向けて繰り出している。
216 :
1/7:03/10/22 23:46 ID:1zdN6+GG
一瞬の交錯。どちらも急所に向かった攻撃は、両者がわずかに身をひねったことにより
必殺の一撃の資格を失ってはいたが、それでもダメージを与えるには十分だった。
カインは脇腹をえぐられ、オルテガは左の二の腕を貫かれる。真っ赤な血がしぶき、純白の雪の上に
きれいな文様を描いた。それでもふたりはまったくひるみもせずに再び対峙する。
「カイン、君は誰かを好きになったことってある?」
「ずいぶん唐突だな。俺たちは未だ半人前の身だ。女にうつつを抜かす暇などあるまい」
「やっぱり、そうだよね……うん」
「だが確かに、お前との付き合いも長くなるがそういう話が出たことはなかったな。
なんだ、話を振ってきたってことは、気になる女でもできたのか?」
「そ…そんなことは…うん、ない…よ」
「顔に書いている。俺相手に隠し事など無駄だぞ。で、どんな女だ?」
「…他の人には絶対に内緒にしてくれよ?」
「誓おう」
「ローザっていう、宮廷の白魔道士見習いの子なんだ」
(それからしばらくして、俺は偶然セシルとローザが並んで歩いているのを見かけた。
仲睦まじく、幸せそうなローザに俺は心を奪われた。あれほど美しい女を見たことがなった。
人に恋するとはこういうことなのだと知った。だがこれは禁断の恋なのだ。なぜなら彼女は
他でもない、親友であるセシルの恋人なのだから。すぐ後にセシルからローザを紹介された。
『僕の親友のカインだよ』
『はじめまして。ローザと申します』
『カインだ。よろしく』
ローザと会話を交わせるだけで心に暖かいものが満ちていくのがわかった。彼女の言葉の一つ一つが
かけがえのない宝物だった。彼女にしてみれば俺は『恋人の親友』に過ぎなかっただろう。
だがそれで、それだけでよかったんだ。この想いは悟られてはならない。親友を裏切ってはならない。
この想いが伝わっては、セシルだけでなくローザも苦しめることになってしまう。
そう、思っていた……あの時までは)
今度はオルテガから仕掛けた。上段から打ち下ろされる攻撃を瞬時に見切り、カインは半歩だけ身を引いた。
顔をかすめるように剣が通り過ぎていき、雪の中に食い込む。がら空きの胴体に向けて突き出された槍は、
こちらも同じくギリギリで見切られ、脇を通り過ぎていった。
両者共に小回りの効かない獲物を使っている分、一撃一撃が重い。
そして力勝負ならば、オルテガの方に分があることは先程の邂逅で明確になっていた。
引き戻されようとしていた槍の柄を左手で掴む。それは万力で締められたようにびくともしない。
カインは両手で槍を握っていたにもかかわらず。片手でカインを圧倒する膂力を見せたオルテガは、
そのまま右手でカインの頭蓋めがけてグレートソードを振るった。
手を離せばこの攻撃を避わすことはできる。
だが武器を失うことはこの決闘の敗北を意味していた。
だからカインは逃げなかった。手を離さなかった。それどころかさらに踏み込んだ。
もちろんその程度で切っ先を避わせるはずもなく、相手を叩き切ることを目的として鍛えられた
グレートソードが兜にめり込む。金属音を響かせてカインの兜が弾け飛んだ。
鮮血と共に綺麗な金髪が宙を舞った。しかしそれでも、顔面を血に染めながらもカインは生き残り、
オルテガの懐に入り込んだのだ。
「セシルよ、お前いったい何を考えている?もう一月もローザを避けているそうじゃないか。
今日彼女に相談されたぞ。お前に嫌われてしまったのではないかと。涙を浮かべていた。
騎士叙勲を受けた頃は毎日のように逢っていたのに、何故だ?」
「放っておいてくれ…」
「そんなわけにはいかん。俺はお前の親友だ。誰よりお前をわかっているつもりだ。
優しいお前のことだ。ローザを想ってそういう態度をとっているんだということはわかる。
だが、いったい何の理由があってそんなことをしている。このままではお前たち……」
「……自信がないんだ」
「なに?」
「このままローザを守っていく自信がないんだ……」
「なにを馬鹿なことを。出自は孤児でも、今のお前はバロンの空挺師団長だぞ。
ローザを娶るのに何の不足がある」
218 :
4/7:03/10/22 23:50 ID:1zdN6+GG
「僕は、ずっと騎士には優しさが必要だと思ってきた。人々を守る為に強くなる。
それが昔からの誓いだった」
「覚えている」
「でも、今の僕はどうだい?口では偉そうなことを言っていても、結局はただの殺人鬼さ。
昨日も賊を三人切った。昔だったら見逃していたのに、今じゃ躊躇なく皆殺しさ」
「それが騎士たるものの務めだ。お前が気に病む必要は……」
「暗黒騎士とはよく言ったものさ。僕の心はどす黒く染まってしまった。
この手だってもう血で真っ赤だよ。わかってしまったんだ。僕ではローザにはふさわしくない。
彼女を汚してしまうだけだろうから……」
「馬鹿な……それでは彼女の気持ちはどうなる!わかっているはずだ。彼女はお前を……」
「もう……いいんだ」
(俺の心の中はセシルを哀れに思うのと同じくらい、セシルに対する怒りが湧き上がっていた。
ローザにはふさわしくない?
お前はそれでよくても、ならば彼女の気持ちはどうなるのだ?
彼女はお前を……誰よりもお前のことを愛しているというのに。
なぜお前は、知っていながらその気持ちに答えようとしない?
なぜお前は、時には優しさが人を傷つけるということに気付かない?
なぜお前は、俺の……お前たちを想って身を引いた俺の気持ちを踏みにじろうとする?
俺は、お前のためにローザへの想いを内に秘め続けてきたというのに。
お前がローザを守れないというのなら、お前がローザを遠ざけるというのなら……
俺は……!)
両者共に武器を封じられた状況で、カインは迷うことなく足を選択した。
鍛え抜かれた脚力で膝を踏みつける。続けて腹を、顎を。
219 :
5/7:03/10/22 23:53 ID:1zdN6+GG
「むおっ!」
顎を蹴り上げられて脳を揺らされ、初めてオルテガは後退した。槍を掴んでいた手が緩む。
その隙を見逃さず、カインは最後の勝負に出た。竜騎士のみに許された闘法。手の届かない上空から
落下し、敵を貫く一撃必殺の技。切り札を繰り出したのだ。
全身のバネをフルに使ってカインは跳び上がった。相手の視界から消え去り、目標を定める。
未だオルテガはカインの姿を見失っている。落下が始まり、カインは槍を構えた。風を切って
猛烈な勢いで落下する。その勢いに自らが突き出す力を加えて『ジャンプ』は完成された。
心臓めがけて繰り出された穂先は、正確にオルテガの厚い胸板に突き刺さった。
(そして、俺は親友を裏切った。彼女を自分のものにしたい、その一心で。
そんな俺をセシルもローザも、みんな赦してくれた。
だから俺は誓った。お前の…お前たちの為に闘うと)
(セシル!これでやっとお前の敵が討てるぞ!お前を止めることはできなかったが、
お前を殺した奴を、この手で!これがお前にしてやれる最後の―――)
ぬるり
押し込めなかった。このまま押し込めば、オルテガの心臓を串刺しにできるというのに。
手が―――滑った。何で?血で。オルテガが槍を掴んだ時にべったりとついた、彼の二の腕から流れた血で。
「な……なぜ……?」
信じられない思いでカインは自分の手を見つめた。
オルテガの目がギラリと光った。その瞬間を見逃さなかった。
あいた右手で剣を握りなおし、全身全霊を込めて真一文字に切り裂く。
(セシル……俺は……)
こうして雪原の決闘は終わりを告げた。
220 :
6/7:03/10/22 23:57 ID:1zdN6+GG
「あなたの勝ち……だな」
静かな調子で話しかけるカイン。激痛が走ったのは一瞬で、今では寒さと出血で感覚が麻痺している。
確認するまでもない、致命傷だった。
「君は強かった。手が滑ったのも神の気まぐれに過ぎんが、それだけならばまだ私は死んでいた。
これが最後のお守りになってくれた」
槍を引き抜き、止血をしながらオルテガは答えた。
ゆっくりとカインに歩み寄りながら胸ポケットから何かを取り出す。
小さな、本当に小さな子供用の水鉄砲だった。槍の穂先が食い込み、もはや使い物にはならない。
「息子への土産にしようと買っていたのだ。息子が助けてくれたのだろうな……」
「そいつが、あなたの守りたい人か?」
「……うむ。このゲームにも参加している。今まで何ひとつ父親らしいことをしてやれなかったが、
命に替えても守らねばならない、私の息子だ」
「そう、か。きっとその差なんだな。あなたには生きる目的がある。守らねばならない人がいる。
俺には……もう、いない……誰も、いないんだ……」
涙が溢れてきて、カインは目を閉じた。
まぶたの裏に映るセシルとローザの幻影は、もはや手の届かない遠くに去ってしまっている。
「何か言い残すことがあれば、聞こう」
「言った、だろう。もう、俺には…何もないんだ……
行って…くれ。時間…も、残り少ない。あなた…には、や…らなければ、ならない…ことが…ある」
「わかった……竜騎士カイン。君のことは忘れない」
「息子さん、に…会え、る、こと…を祈って…いる。
俺…みたいな…こと、に、は…なら…ない…で、くれ……」
これが最後の言葉だった。あえぐような呼吸が緩やかになり、
大空に向かって見開かれた瞳が光を失い―――竜騎士カインは逝った。
「ああ……この剣にかけて誓おう」
しばしの間黙祷し、孤高の男の冥福を祈ったあと、オルテガは背を向けて力強く歩き出した。
まだ見ぬ最愛の息子を目指して。
221 :
7/7:03/10/23 00:00 ID:yHJI+/Pc
【オルテガ 所持武器:危ない水着 グレートソード 覆面 壊れた水鉄砲
ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
現在位置:祠の湖、西の山脈北部
第一行動方針:祠の旅の扉から次の世界へ
第二行動方針:アルスを探す
最終行動方針:未定】
【カイン 死亡】 残り28人
【オルテガ(負傷) 所持武器:危ない水着 グレートソード 覆面 壊れた水鉄砲
ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
現在位置:祠の湖、西の山脈北部
第一行動方針:祠の旅の扉から次の世界へ
第二行動方針:アルスを探す
最終行動方針:未定】
【カイン 死亡】 残り28人
負傷入れるの忘れてました。申し訳ありません。
ものの数分もしないうちに三人は首尾よく岸につながれていたイカダを見つけると、それに乗って
祠の孤島を目指した。流氷がイカダに何度もぶつかってそのたびに揺れる船体を押さえつけるはめになり、
水上の進軍は地味ながらも波乱を帯びていた。
ティーダは杉の木の棒をつかみ、危うい舵取りでイカダを漕いだ。
「みんないるといいけど」
ティーダは汗を手の甲で拭きとりながら言った。
エアリスとモニカも同じ気持ちだった。
何とか無事島にまでたどりついた三人は、岸に降り立つとそのままの足で向かいの祠へ歩んだ。
「ここにいるのかアーロンは」
ティーダは灰色にくすんだ祠の壁に寄りつくと、さび付いている入口を力任せに開いた。
まわりを見回す。旅の扉が中央にあるのみ。他には目立ったものはない。
「だれもいないっス」
部屋の隅のいろりに向かうと、使い古された鍋のふたを掴む。
ずいぶんと埃をかぶった年代物の鍋だ。埃が舞って、ティーダはくしゃみをする。
「ちょっと来るのが遅かったみたいね」
エアリスも中に入ってきて、がらんとした内部の様子を見渡した。
「会えるのは次の世界ね」
「アーロンさんも扉を通って……?」
後から入ってきたモニカがふたりに訊いた。
ティーダはうなずくと
「他には考えられない、アーロンもきっとそうだと思うっス」
「私たちも行こうか」
エアリスは言った。ティーダは大迎しく両腕を拡げる。
「そうやって簡単に言えるエアリスさんの性格、いいっスね」
暗い表情をつくるモニカをよそに、ティーダは人をからかう笑いを浮かべた。
224 :
2:03/10/23 21:31 ID:/UCnNWsN
こんな軽口には容赦なく突っかかるのがエアリスなのだが、今の彼女はふくれっ面どころか能面だった。
「だって他にないじゃない……ここでずっと待ってろとでも言うの」
「いや、別に責めてるわけじゃ。俺だってそれしかないと思うけど」
セフィロスとの戦いで死んだ仲間たちの記憶はまだエアリスにとって真新しいものだった。
エアリスの反応にティーダが戸惑っている間にも、モニカは扉に飛び込む決意をかためた。
彼女の拳が硬く握りしめられる。その掌の内で感じる熱いものは、探し人の熱い抱擁の感触だ。
モニカは後れ毛のかかった横顔から瞳をのぞかせた。
「私は行きますが、あなたたちも来ますよね」
「え? そりゃ……もちろん」
モニカがかしこまった顔をして、扉の前に立っている。
それを見てティーダは余計に戸惑ったが、すぐに気を取り直した。
目の覚める思いだった。モニカにうなずき返し口元を引きしめた。
「……そうっスね、もうこんなことしてる場合じゃないし、ごめん」
ティーダが詫びるとエアリスもうなずいた。
ふたりは急いでモニカの両脇にいく。光に吸い寄せられる小さな羽虫のように。
扉の前に立つと何故だか肩が震えてしまう彼ら。自然と体を寄せあわせる。
先には希望が見えないから? それともゲームの終わりを予感して?
まだ見ぬ世界に三つの心は不安に揺れる。
三人は不安を打ち払うべく、呼吸を合わせひとつのリズムをつくった。
「アーロンは俺も会いたいし、絶対見つけてみせるッス!」
「そして、もう誰も死なせはしない。そうだよね?」
「……どうか我らにご加護を」
モニカが神に祈ったのち、彼らは大口をひろげる旅の扉へと身を投げ出した。
225 :
3:03/10/23 21:33 ID:/UCnNWsN
あとになって祠へと足を運ぶもの、それはアイラ。
ティーダたちからは確認できない位置。彼女は泳いで島にたどりついた。
生きる死人だからこそできたことだ。
肌を焼くほどに冷たい湖水も、冷え切った心には何の感覚も与えなかった。
漂流する氷を邪魔そうに退けると、片腕だけで水の中から這い出て、その生気を失った体を陸の上に晒した。
濡れて直下する長い黒髪に、振りおちた雪がはりつく。雪化粧をしたようで、髪に光が帯び始めた。
アイラはしばらくそこにいた。遠くをじっと見つめ、眉ひとつ動かさすに立ち尽くして。
天から舞い落ちる雪は、動のない彼女の精神を反映するかのように、強まるとも弱まるともいわず
同じ勢いを保ち続けていた。
【ティーダ/エアリス/モニカ 現在位置:祠の湖の南岸
所持武器:吹雪の剣・いかづちの杖・参加者リスト/
エドガーのメモ・マジャスティスのメモ/ エドガーのメモ(ボロ)
第一行動方針:次のフィールドへ
第二行動方針:アーロンを探す
最終行動方針:ゲームから抜ける】
【アイラ(ゾンビ・左腕欠損) 所持武器:ダイアソード 死者の指輪
現在位置:祠前
行動方針:旅の扉に入る。ゾンビ状態中はとんぬらを探していく。死者の指輪が外れたら???】
226 :
1/4:03/10/25 01:04 ID:a1eWXCcA
ついに、次の世界へ移動を促す放送がされた。
旅の扉が出現したのは湖の祠、洞窟、そして神殿。
つまり今、自分達がいるところである。サマンサはデスピサロを見た。
「雪だらけの世界だ、ここが出現ポイントになる事はほぼ間違いないと見ていた。
儀式を始める前に旅の扉を探すぞ」
「御意」
畏まるサマンサと、何となくついてきたデッシュを引き連れて、デスピサロは神殿の中を巡る。
程なく、旅の扉は見つかった。一階の回廊中央に青々とした光が溢れている。
これまで同様、旅の扉は見つけにくい場所には配置されなかったようだった。
「急げば儀式の間から数分で辿り着けるな。お前たちも最短の道順は覚えておけ」
デスピサロの言葉に肯く二人。と、入り口のほうから騒がしくやってくる音が聞こえる。
デスピサロは念の為、サマンサとデッシュに柱の陰に隠れるよう指示すると、
自身はその場で乱入者を待ち受ける事にした。
「おっ。お出迎えごくろーさま!」
やってきたのはバーバラ、ライアン、ティナ、エドガー、そしてアルスだった。
「首尾よく、アルス殿たちの助力を得ることが出来たでござるよ」
胸を張るライアンに、デスピサロはフ、と口元を和らげる。
「まずは無事で何よりだ。ご苦労」
「ああ!!」
その時、柱の陰から声が上がる。全員がそちらを見て、
「……デッシュ!」
エドガーが声をかけた。デッシュは柱から飛び出すと、エドガーに向かって走る。
227 :
2/4:03/10/25 01:06 ID:a1eWXCcA
それをエドガーは………ひらりと回避して、ついでに足をかけた。
ゴロゴロゴロ!もんどりうって回廊を転がっていくデッシュ。
何となく、冷たい空気が流れた。
エドガーは一つ咳きをすると、
「まずは無事で何よりだ。どうでもいいが、俺は男に抱きつかれて喜ぶ趣味は持ってない」
「だからって足を払う必要はないと思うぞ…」
どこかでぶつけたらしく、頭を撫でながらデッシュは立ち上がる。
「まあ、いいや。エドガー、色々わかった事があるんだ」
「奇遇だな、俺もだ。ま、今は儀式の話を先に聞きたいところだが」
エドガーは一歩前に出て、デスピサロを見た。
強烈な威圧感とカリスマ性。王として国を統べているエドガーですら底が見えない。
デスピサロはそんな男だ。小細工も何も聞かない。人目でそれがわかったから、
「信用していいんだな?」
単刀直入にそう聞いた。デスピサロは全く動じず答える。
「現状を打破する方法として最も実現可能な手段だ」
尤もな様で何とでも意味を取ることができる言い様だ。これを玉虫色と言う。
責任のある立場の者ほど無責任な断言はしないものだ。結果、このような口調になる。
権力者であるエドガーにはそれがわかったから、あえて追求せず引き下がった。
「では、儀式の間に向かうぞ。そこで儀式の説明と…」
デスピサロは、自分に敵意に満ちた目を向けるアルスを一瞥する。
「マジャスティスを教えてやる。いいな?」
そこで、ティナが恐る恐る手を上げた。
「あの……入り口にいた子を、弔ってあげたいのだけれど」
バーバラとエドガーは表情を歪める。その子は、冷たくなり、もう動かない。
先日までは生きていたと言う記憶と、死と言う現実が、重く心に圧し掛かる。
228 :
3/4:03/10/25 01:08 ID:a1eWXCcA
それを知ってか知らずか、デスピサロの返答はにべもない。
「じきにこの世界は崩壊する。今は一刻の時も貴重だ」
「それは……わかる。けれど」
「このゲームは何なのか。この世界は何のなのか。そして我等は何をすべきなのか。
答えを探し、見つけ、為すべき事を為せ。感傷はそれからだ」
そうして、デスピサロは踵を返すと歩き出した。
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本・
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式を行う
第二行動方針:腕輪を探す
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1 ハーゴンの呪術用具一式
現在位置:神殿
第一行動方針:デスピサロに従う・儀式を行う(準備完了)
第二行動方針:生き残る】
【デッシュ(寝不足) 所持武器:首輪 裁きの杖 現在位置:神殿
第一行動方針: 儀式を見守る
第二行動方針:首輪の解除法を探る、マテリアの生成方法を調べる?
第三行動方針:ゲーム脱出】
229 :
4/4:03/10/25 01:15 ID:a1eWXCcA
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式を行う
最終行動方針:?】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式を見守る
第二行動方針:デスピサロに協力する】
【アルス 所持武器:対人レミラーマの杖 天空の剣 黄金の腕輪
現在位置:神殿
第一行動方針:デスピサロの真意を探る
第二行動方針:ゾーマを倒す】
【ティナ 所持武器:プラチナソード チキンナイフ
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式を見守る?
第二行動方針:仲間を探す】
【エドガー 所持武器:ボウガン 天空の鎧(装備不可) スナイパーアイ ブーメラン
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式を見守る?
第二行動方針:首輪の解除方法を探す】
230 :
1/3:03/10/25 23:30 ID:O5MyMk/0
デスピサロを先頭に、サマンサ、バーバラ、ライアン、デッシュ、エドガー、ティナ、アルスの八人は儀式の間に向かった。
部屋は既に準備が整っていた。儀式の内容を把握するついでに、サマンサが準備を整えたのである。
あとは燭台に火を燈し、供物を台座に添えるのみだ。
もちろん、供物というのはヒトの首である……
「では、儀式を始めるにあたって、内容について発表してもらおうか」
「それは構いませんが、あの少年たちを待たなくとも良いのですか?」
一応問うサマンサ。デスピサロは構わん、とだけ返した。
天空の武器を使う少年、クーパーたちが向かった湖の祠にも旅の扉が発生した。
目の前に扉があるのに、時間を押してわざわざ神殿まで戻ってくるか、疑問だからだ。
「わかりました。では、始めさせていただきます」
サマンサはそう言うと颯爽と一礼した。
アルスはそれを複雑な気持ちで見ていた。そこには自分の知らない、かつての仲間の姿があったからだ。
苦楽を分かち合い、共に戦ってきた仲間の事を、自分はどれだけ理解していたのだろう…
「まずは、この世界の成り立ちについて話します。最初に言っておきますが、これは儀式の企画者、ハーゴンが考察し、その断片を書き記し、あるいは口頭で伝え残した『情報』を、私の中で再構成したものです。
ですから、これから言う事をハーゴンが考えていたのかどうかはわかりません。
それだけはご了承ください」
サマンサの正面にいるデスピサロとエドガーはすぐさま肯いた。
それにつられてエドガーの隣のデッシュとバーバラも首を縦に振る。
ライアンはバーバラの後ろにいるが、既に怪しい様子だ。
そしてアルスとティナは集団から一歩下がった場所でその様子を見ている。
231 :
2/3:03/10/25 23:34 ID:O5MyMk/0
「まず最初に。このゲームの最初、全員が一堂に集められ、武器や道具を破壊された事はまだ記憶に新しいと思います。
ここで問うべき事は、どのように、武器や道具だけを、所持者に傷を負わせずに破壊したのか、と言う事です」
「よくわかんないけど、ゾーマの魔法じゃないの?」
バーバラの答えに、サマンサは首を横に振る。
「正解でしょうが、適確ではありません。
例えば、一般に使われる物理干渉の魔法では所持者を全く傷付けないことは不可能です。
正確には呪いと言うべきでしょうね…まあ、呪いと一口で言っても非常に広義ですが。
例えば、情報の変質、誤差の誘導、認識の反転、仮想の書き換え……」
「要は物理的干渉の結果、武器を破壊するのではなく、直接武器を破壊したということだろう」
サマンサはデスピサロのフォローに肯く。
「私は専門外なのでわかりませんが、手間と膨大な魔力をもってすれば実現可能ということです。
ですが、情報の直接的な書き換えは下手をすれば術者のほうが存在そのものを抹消されかねない諸刃の剣です。
そこで利用されるのが仮想空間です」
「仮想空間?」
「要は、世界の上にもう一つ世界を作ることで擬似的な直接干渉を行うわけです」
???マークを頭に浮かべる一堂(デスピサロ除く)。
「つまり……どういうことだ?」
尋ねるデッシュに、サマンサはやや興奮しながら言う。
「つまり、この世界はゾーマの魔法によって作られた仮想世界なのです」
「それじゃ、あのアリアハンは…!?」
思わず口に出すアルス。
「私たちがいたアリアハンではありません。別の世界です」
232 :
3/3:03/10/25 23:36 ID:O5MyMk/0
「確かに帝国領は不自然に人の気配がなかった…だが、それだけでは」
「理由はまだあります。このゲームには世界が異なっている者達が集められています。
そして、それぞれの世界の魔法を普通に使っている。
ですが、法則や魔力の在り方自体が違うのに使える、それ自体がおかしいんです」
「…なるほどな。ここで我等が使う魔法は、仮想世界によって擬似的に発動しているのか」
「おそらく。ですから、元の世界に比べて効果が変わっていたり、弱体するのです。
魔力を制限されているのではなく、そもそも魔法は発動していないのです。
仮想世界が「魔法を唱えた」ことに対してアクションを返しているから魔法が使えると誤解しがちですが、仮想世界が「魔法を唱えた」ことにアクションを返さなくなったら、魔法は使えなくなるんです。
そして、アクションを返すかどうかの決定権は、ゾーマにある……」
奇妙な沈黙が周囲を満たした。頭を掻きながら、デッシュが呟く。
「なんと言うか、凄まじいな……そんな凄いヤツが相手じゃ、抵抗する気もなくなる」
「ですが、完全じゃありません。確かにこれだけの仮想世界を構築するのは並大抵の技ではありませんが、それは綱渡りのようなバランスの上に成立しているのです。
仮想世界を構築する上で元となるモノがあると思いますが、それが内包する情報…例えば「夜間に雨が降る」…といったスケジュールを変えることは出来ないようですしね」
「…あの雨は、ゾーマが降らしたわけじゃない、と言うこと?」
「ええ。放送で言ったのは、そういった気象の変化ですら制御している事をアピールするためでしょうね。
実際は、昼夜逆転させるラナルータの呪文だけで崩れてしまうような、危ういものです。
ですから、付け込む隙はあります」
【続く】
233 :
1/3:03/10/28 00:13 ID:4XZjeD4s
「つまり、まとめるとこういうことだな。
我々のいる世界はそれぞれの世界によく似た別の世界である。
この世界では我々本来の魔法は使えない。だが、擬似的に偽者の魔法が発動する。
そしてこれは俺の予想だが・・・擬似的な魔法ではこの世界を崩壊させることは出来ない」
エドガーの説明に、うなずくサマンサ、バーバラ、デッシュ。
デスピサロは黙ったままで、そんな彼をアルスはまだ睨み付け、それをティナが不安げに見守っている。
そしてライアンは、ウムムと唸っていたが、とりあえず誰も気にすることはなかった。
「現状ではそうでしょうね。唯一、ラナルータが世界を崩壊させてしまうバグを秘めていたわけですが…」
「それに気づいた主催者側が、すぐさま禁止魔法にした。あの不自然なタイミングでの放送はそれが理由か」
「その通りです。それゆえに、ハーゴンなるものはこの世界そのものが虚実であり、幻のようなものだと考えたようです」
そこで、バーバラが手を上げた。
「ちょっといい?あのね、私の世界でも魔王が幻の世界を作ったんだ。
夢が集まる世界を具現化させて、形を持った夢を消し去ってみんなを絶望に包もうとしたの」
「夢の世界か・・・なんかメルヘンチックだな」
デッシュの何気ない言葉に、バーバラを首を横に振る。
「そうでもないよ……夢の世界は、個人個人で独立してるわけじゃないから。
思いが弱い人は夢の世界でも弱いし、逆に強い人はベッドですら空を飛ばすことが出来るのよ」
「それで、そのときはどうやって魔王に対抗したのだ?」
デスピサロの言葉に、バーバラは、
「うーん、なんていったらいいのかな。夢見の雫っていって、夢を具現化するアイテムがあったの。
それのお陰で、夢と現実を行き来することができるようになったんだけど」
「その状況を我々に当てはめるなら、この仮想空間からゾーマの世界に行く方法を探さなくてはならない。
n次元の存在は、n+1次元の存在を知ることは出来ても触れることも出来ません。
だから、我々がとるべき道は、ゾーマと同等になるか、ゾーマを我々の舞台に引き釣りださないといけません。
そして、この儀式は……」
「仮想空間を破壊することで、ゾーマを我々の舞台に引き釣り出すということか」
234 :
2/3:03/10/28 00:21 ID:4XZjeD4s
周囲を静寂が満たした。
とりあえず、これからなすべきことはわかった。
ゾーマを引き釣り出すというこの企みが、一体どんな結末をもたらすのか。
もし成功したとしても、ゾーマと戦うことになるのか。あの、恐怖の塊のような存在と…
事の重大さと、今から感じる大魔王の戦慄に、一堂の背筋に冷たいものが走る。
が、影響を受けていない人物が約一名いた。
「まあ、なんにしてもそれが成功すれば良いことでござるな」
ガクリ、と皆が脱力する。バーバラはジト目を背後の戦士に向けた。
「お気楽なもんねー。成功してもそれで全部解決って訳じゃないのよ?」
「ワシには難しくて詳しいことはわからぬが、ゾーマが剣の届く所にくるのなら、歓迎するでござる。
いくら剣を振るおうと、アヤツにそよ風一つ与えられぬ今よりはよっぽどマシでござるよ」
しれっと言い放つライアンに、唖然とする一同。
「……クッ。ハハ、ハッハッハ!」
デスピサロは軽く震え、それから大きく体を揺らして笑い出した。
一見すると冷徹なイメージのデスピサロの哄笑に、他の者は更に唖然とする。
「その通りだ、ライアン。何もしなければゾーマに一矢報いることもできず、殺しあうのみならば。
私は認めぬ。ゾーマに作られたような運命は否定する!」
「ワシも否定するでござる。これまで奪われた命、それが無駄ではなかったことの証のために!」
ライアンの言葉に肯き、デスピサロはその場にいる者たちを見回す。
「お前たちも覚悟を決めるがいい。この場に残ってもけして後悔せぬという者のみ残れ。
引止めはしない。己が選択せよ!」
235 :
3/3:03/10/28 00:25 ID:4XZjeD4s
真っ先に口を開いたのはアルスだった。
「ゾーマと戦えるというのなら、僕は残る」
「アルス君!?」
「もしも僕が選ばれた勇者だというのなら、ゾーマを倒すことが僕の使命だから」
力強く言うアルス。デスピサロを信用してはいない、いまだ警戒している。
それでも、倒さなくてはならない相手がゾーマだ。そんな決意は、ティナにも伝わってきた。
「そう、なら私も残る。大切なことから逃げる、そんな後悔だけはしたくないから」
「私も残るよ。テリーのような子を、これ以上増やすわけにはいかないわ」
こうして、ティナとバーバラも参加表明した。
「さてと、俺はどうするかな」
「…おい、エドガー?」
デッシュの非難がましい言葉に、軽く指先を振って見せる。
「別に儀式を否定しているわけじゃないさ。だが、儀式を成功させたとしても難関を一つクリアするだけだ。
依然としてこの首輪は残るし、方法は他にもあるかもしれない。
第一、俺にできることなんてなさそうだ。なら、黙って見てるよりも出来ることをやろう」
「それは、……そうかもしれない」
気を落とすデッシュの肩をポンポン、と叩いてからエドガーはデスピサロに言う。
「そういうことだ。色々準備もあるし、しばらく考えてみるが期待しないでくれ」
「好きにするがいい」
「勿論、私は聞くまでもないでしょう?」
「そうだな。サマンサ、魔法が使えるものたちに儀式の詳細を伝えてやれ。
アルス、貴様にはマジャスティスを使えるようになってもらうぞ。
時間がない故に手荒い、覚悟しておけ」
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本・
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式を行う 、マジャスティスの伝授
第二行動方針:腕輪を探す
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【アルス 所持武器:対人レミラーマの杖 天空の剣 黄金の腕輪
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式を行う、デスピサロの真意を探る 、マジャスティスの習得
第二行動方針:ゾーマを倒す】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1 ハーゴンの呪術用具一式
現在位置:神殿
第一行動方針:デスピサロに従う・儀式を行う(準備完了)
第二行動方針:生き残る】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式を行う】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式を行う
第二行動方針:デスピサロに協力する】
【ティナ 所持武器:プラチナソード チキンナイフ
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式を行う
第二行動方針:仲間を探す】
【エドガー 所持武器:ボウガン 天空の鎧(装備不可) スナイパーアイ ブーメラン
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式不参加?デッシュと情報交換
第二行動方針:首輪の解除方法を探す】
【デッシュ 所持武器:首輪 裁きの杖 現在位置:神殿
第一行動方針: 儀式不参加?エドガーと情報交換
第二行動方針:首輪の解除法を探る、マテリアの生成方法を調べる?
第三行動方針:ゲーム脱出】
ピサロは儀式の準備をしていた
失敗した
ピサロ「うわあああああああああー」
ピサロは儚く散っていった
ピサロ死亡
ピサロ死亡 残り300人
祠の手前の島の、朽ち果てた橋の手前。
そこに雪原から顔を出した岩に腰をかけて向こう岸を見つめている一人の男がいた。
その服の胸の部分は大量の血で汚れてはいたが、魔法で治療したのか、
その裂け目から見える皮膚には傷跡は残ってはいなかった。
「橋が落ちてしまっていたとはな…。迂回している時間は残ってはおらんな。
一応手は打っておいたが、もし来なければコレをかぶるしかないだろうな…」
その男は手に持った覆面をしげしげと眺めながらつぶやいた。
「…とりあえずもう一度やっておくか」
男はそう言うと、意を決して覆面を鼻に当てると、その香りを肺一杯吸い込んだ。
甘く酸っぱいすえた香り。常人には悪臭にしか感じないそれは、
オルテガの脳内の奥深くを刺激し、やがて脳はヤバイ物質を分泌し始めた。
まるで極上の阿片を吸ったかのように、オルテガの目は官能と快楽によって虚ろに染まった。
心臓はその鼓動を急速に加速させ、全身に溶岩のように熱い血液を全身へと巡らせる。
指は鼻の部分を強く押さえながらも頭から覆面を被せようと動き始め……
「…くっ、ううっ。ガアッッッ!!!」
オルテガは息を荒げながらも、強力な自制心によって覆面を顔から引き剥がした。
そして朦朧とする意識の中から自分の必要としている『情報』を見つけると、
鉛のように重たい腕を動かしてソレを実行した。
―――澄んだ口笛の音色が雪に白く彩られた森と湖に響き渡った。
覆面にこめられた荒くれ達の記憶。そしてその能力の一つ、口笛。
「クエーーーー♪」
「…遅かったな」
さほど遠くない場所から聞こえた返事にオルテガはか細く呟いた。
オルテガは気力を振り絞って立ち上がると、荷物を背負い、
氷上をこちらへ向かって走ってくるチョコボに向かって歩き出した。
【オルテガ(チョコボ) 所持武器:危ない水着 グレートソード 覆面 壊れた水鉄砲
ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
現在位置:祠の湖、西の島
第一行動方針:祠の旅の扉から次の世界へ
第二行動方針:アルスを探す
最終行動方針:未定】
保守
242 :
1/3:03/10/31 23:33 ID:WkEp2+sf
儀式の開始を1時間後として、その場は一旦解散となった。
デスピサロ、アルスは共に外に出て行き、
サマンサはバーバラとティナに儀式の方法を講義する。
それを子守唄にライアンは舟をこぎ始めた。
エドガーとデッシュは書庫に移動した。
エドガーは首輪の詳細な機構について、デッシュは鍵文字とマテリアについて話す。
デッシュの話を聞き終えたエドガーは、
「ま、ハーゴンとやらが言うことが正解だな。想像の域を超えないし、
マテリアの生成方法がわからない限り手の打ちようがない」
「それは…そうかもしれないが」
「俺としては首輪の呪いは今回の儀式に期待したいところだな。
これに掛かっている呪いがどんなものかはわからないが、発動しなければそれでいい」
いまいち不満げなデッシュに、エドガーは肩を竦めてみせる。
「その情報が無駄だといっているわけじゃない。ただ、今は何もできないから先走るなってことさ。
次の世界でマテリアの生成情報は探してみよう」
エドガーの話を聞いたデッシュは
「なんにしても、テストがいるな。ぶっつけ本番なんて危なくて仕方ない」
「そうだな。まあ、四つか五つ…せめて三つ欲しいところだな」
「どうやって調達するんだ?…そういえば、ハーゴンが幾つか持ってたけど」
エドガーは、小さくため息をついてから視線を逸らす。
「この神殿の入り口にある」
「………!」
デッシュは息を呑んだ。そこには、かつて人だったモノがある。
そこには、確かに首輪はあった。けれど、それはそのモノの首にあった。
「エドガー……」
「死者に対する冒涜だ。おぞましい、人のやることじゃないのかも知れん。
だが、俺たちは生きている。生きて、足掻き続けているんだ。……わかるな?」
243 :
2/3:03/10/31 23:35 ID:WkEp2+sf
エドガーの真剣な口調に、デッシュは俯き……そして、ゆっくりと首を縦に振った。
かつて、自分の手が汚れることを忌避した事をやらざるを得ないことに、デッシュは苦いものを感じた。
首を切るという為をしたくない癖に首から切り離した首輪を欲しがった、
罪を背負うことを恐れ、自分は汚れていないと幻想に浸りたかった…これが、その報いなのだろうか。
「…よし、では神殿の中を探索して、死者から首輪を戴いてこよう。刃物がいるな…」
エドガーはそういって、儀式の間に戻っていく。
デッシュはその後姿をじっと見ていた。俯いてはいけないと、彼のプライドは叫んだ。
その頃、サマンサから講義を受けていたバーバラとティナだったが、
ハーゴンやサマンサの使う魔法と系統が似ているバーバラは問題なかった。
問題は、ティナだった。感覚で魔法を使役する彼女には、理論的な内容を理解できなかった。
「まあ、あなたは魔力の根源が並外れて多いようですし、私たちのサポートをしていただければ結構ですよ」
やや落ち込んだティナにサマンサはそうフォローする。
「そう言えばさ、私たちが使う魔法って、ゾーマの世界によって擬似的に発生してるモノだよね?
儀式の魔法は大丈夫なのかな?」
「魔法が使えなくとも、魔力が枯れた訳ではありませんから。
この儀式はその魔力を元に死者の念を共振、肥大化させるんです」
バーバラはうなずいて、ティナの背中を叩いた。
「つまり、あたしたちの真似をしていればいいってことだよ。大丈夫、何とかするから!」
ティナはうん、とうなずく。実際、真似をすることは出来るのだ。
魔法に対する感覚は誰よりも優れている。ただ、理論が追いついていかないだけで。
244 :
3/3:03/10/31 23:37 ID:WkEp2+sf
と、部屋にエドガーが入ってきた。
チキンナイフかプラチナソードを貸して欲しいというエドガーに、プラチナソードを渡すティナ。
エドガーは部屋にいる三人の女性にウィンクして出て行ったが、その表情が翳っていることに、ティナだけが気付いた。
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1 ハーゴンの呪術用具一式
現在位置:神殿
第一行動方針:デスピサロに従う・儀式の説明
第二行動方針:生き残る】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式の説明を受ける】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式を行う (休息中)
第二行動方針:デスピサロに協力する】
【ティナ 所持武器:プラチナソード チキンナイフ
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式の説明を受ける
第二行動方針:仲間を探す】
【エドガー 所持武器:ボウガン 天空の鎧(装備不可) スナイパーアイ ブーメラン
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式不参加?首輪を回収する
第二行動方針:首輪の解除方法を探す】
【デッシュ 所持武器:首輪 裁きの杖 現在位置:神殿
第一行動方針: 儀式不参加?首輪を回収する
第二行動方針:首輪の解除法を探る、マテリアの生成方法を調べる?
第三行動方針:ゲーム脱出】
保守
保守
ホッシュ
248 :
1/4:03/11/04 22:51 ID:9dMJq3ju
エドガーとデッシュは神殿の中を探索した。
まず、入り口側で倒れている少年と青年の遺体を回収して中庭に運ぶ。
それから、酷く荒らされた部屋の入り口側の壁に力無くもたれかかっている女性と、台の上で眠るような少女も中庭に持っていく。
儀式の間に近くの書庫に二つの死体があったが、何故か二つとも首なしで首輪は打ち捨ててあったので、これも首輪を回収して遺体は中庭に運んだ。
首はハーゴンが儀式の触媒にと回収されたのだが、エドガーとデッシュは知る由もない。
かつての自分の仲間の首が、祭壇に捧げられているのを見た、サマンサの気持ちも。
「とりあえず、これで一通り、か?」
導師は自分が中庭に葬ったし、バッツたちも彼等の連れを葬っていた。
一通り見回り、この神殿で命を落とした者の遺体を全て回収したことになる。
セーラ、マゴット、ソロ、テリー、ティファ、エリア、ピエール、導師。
よくよく、これだけの人が死んだものだと、そう思いながらデッシュは口を開く。
「ああ。ハーゴンは塵になったそうだし、ジタンってヤツは消し炭になったそうだしな。ああ、そう言えばハーゴンも首輪を集めてたから、持っていたかもしれない」
「…待て、デッシュ。今何といった?」
「?…だから、ハーゴンが首輪を持っていたかも」
「そこじゃない」
エドガーは鋭い視線をデッシュに向ける。
「ジタンは消し炭になって…首輪はどうなった?」
「だから、電撃をまともにくらって首輪も消し炭に……あ!」
249 :
2/4:03/11/04 22:53 ID:9dMJq3ju
エドガーは肯く。
「爆発しなかったんだな?」
「ああ…そ、そうみたいだな。でも人を問答無用で消し炭にする程の電撃だぞ?」
「わかってる。だが、効果を最小限に絞り、最小範囲のみ高圧電流がかかるようにすれば」
デッシュも肯く。
「上手くいくかもしれない…!」
エドガーとデッシュは若干表情を明るくしながら儀式の間に戻った。
エドガーたちは神殿探索中にエンハンスソード、ミスリルナイフ、死神の鎌、アサシンダガー、ミスリルシールド、加速装置といったアイテムを回収していた。
このうち、エドガーがエンハンスソードとミスリルシールドを、デッシュがアサシンダガーと加速装置を持ち歩く事にした。
ちなみに回収したアイテムにはスーツケース核爆弾と言う物騒な代物もあったが、デッシュがその危険性にすぐ気付いたので、中庭の隅にさりげなく隠してある。
とにかく、別の刃物が手に入ったので、プラチナソードを返しに行ったのだ。
ついでに、使う当てのないミスリルナイフと死神の鎌を三人に委ねる。
突然武器を持って現われた二人に女性陣は驚いたが、武器があっても困らないと言うわけで受け取った。
「私はプラチナソードを返してもらったから…二人で使って」
「あたしはナイフ持ってるし、鎌はちょっと使えないなあ」
「では、このナイフは私が。鎌は…そうですね、ピサロ卿に献上しましょう」
それから、エドガーとデッシュは中庭に戻ろうとしたのだが、ある部屋で奇妙なものを見つけた。
その部屋は食堂のようだったが、そのテーブルに一人の男性が付いてる。
と、言っても動く様子はない。どうやら、石のようだ…
「……不自然だな。石にされたのか?」
エドガーはエスナをかけてみたが、石は石のままである。
誰かはわからないが、直らないのでは放置するしかなかった。
250 :
3/4:03/11/04 22:56 ID:9dMJq3ju
中庭に戻ったエドガーとデッシュは早速作業を開始した。
エドガーが首輪を回収し、デッシュが穴を掘って遺体を葬る流れだ。
首のない遺体に、デッシュは咽喉の奥から込み上げてくる酸っぱいものを感じる。
おぞましい。いや…おぞましいのは、こんな事をしてまで首輪を手にしようとする自分たちか。
デッシュは首を振ると、スコップ代わりの木の板を地面に突き立てた。
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1 ハーゴンの呪術用具一式 死神の鎌(デスピサロに献上予定)
現在位置:神殿
第一行動方針:デスピサロに従う・儀式の説明
第二行動方針:生き残る】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー・ミスリルナイフ
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式の説明を受ける】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式を行う (休息中)
第二行動方針:デスピサロに協力する】
【ティナ 所持武器:プラチナソード チキンナイフ
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式の説明を受ける
第二行動方針:仲間を探す】
251 :
4/4:03/11/04 22:57 ID:9dMJq3ju
【ゼニス(石化) 所持武器:アンブレラ 羽帽子? 現在位置:神殿食堂
行動方針:物見遊山】
【エドガー 所持武器:エンハンスソード ミスリルシールド ボウガン 天空の鎧(装備不可) スナイパーアイ ブーメラン
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式不参加?首輪を回収する
第二行動方針:首輪の解除方法を探す】
【デッシュ 所持武器:アサシンダガー 加速装置 裁きの杖 現在位置:神殿
第一行動方針: 儀式不参加?首輪を回収する
第二行動方針:首輪の解除法を探る、マテリアの生成方法を調べる?
第三行動方針:ゲーム脱出】
何ごともなければ、エドガーとデッシュは
セーラ、マゴット、ソロ、テリー、ティファ、エリア、ピエール、導師の首輪と、
ハーゴン、導師が一つずつ持っていた2個の首輪、計10個の首輪を入手します。
保守
「よし、これで全員だな…」
首輪を切り離し、遺体を地面に埋め終えたデッシュは土で汚れた手で額を拭った。
当然、そこは黒くくすむ。エドガーはそれがわかっていたので、汗を拭わなかった。
この事態ではどうでもいいことかもしれないが、こんな時だからこそ、自分のポリシーを貫く事も大切だとエドガーは思う。
「首輪はちょうど10個だ。お互い5個ずつ持とう」
「ああ……」
デッシュは首輪を受け取ると、それを道具袋にしまい、そして遺体が埋まっている場所の前に立った。
深い穴を彫ってやる余裕はなかったので、埋めるというよりは土をかけたといった程度のものでしかない。
それでも墓標があれば、墓らしく見えるかもしれない…そんな事を考えながら、胸の前で十字を切る。
彼等がそんな神を信じていたかは知る由もない。ただ、冥福を祈って。
それからどれだけたったか…
デッシュはふと、周囲の空気が変わっている事に気付いた。
エドガーは神殿の向こう、儀式の間の方向を見て呟く。
「儀式が始まったらしいな…」
「どうする、エドガー」
儀式の間に行ったとて、出来ることなどないと言うことは先ほど確認した通りだ。
だが、儀式の結果は気になる。出来れば、見届けたい思いもある。
「よし、まずは旅の扉の前まで行こう。そこで儀式が終わるのを待つ」
「そうだな…万が一の場合は次の世界に移動すればいいし」
こうして、エドガーとデッシュは旅の扉の前で儀式が終るのを待つことにした。
【エドガー 所持武器:エンハンスソード ミスリルシールド ボウガン 天空の鎧(装備不可) スナイパーアイ ブーメラン 首輪×5
現在位置:神殿 (旅の扉前)
第一行動方針:儀式が終わるまで待機
第二行動方針:首輪の解除方法を探す】
【デッシュ 所持武器:アサシンダガー 加速装置 裁きの杖 首輪×5 現在位置:神殿 (旅の扉前)
第一行動方針: 儀式が終わるまで待機
第二行動方針:首輪の解除法を探る、マテリアの生成方法を調べる?
第三行動方針:ゲーム脱出】
255 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/11/13 03:16 ID:Exm5hlqZ
きになるあげ。
256 :
保守ひと:03/11/15 03:00 ID:8E0rVITH
保守
257 :
1/2:03/11/15 23:11 ID:R7E+KOpj
立ち塞がる人影に、ああやはり、とヘンリーは思った。
ただの戦士、一兵でしかないのなら、誇りを大切にするだろう。しかし、彼は王だ。
個人の幸せでなく、全体の幸せを見据え、己の手を汚す事を辞さない。それが王。
とはいえ、妃を救うために単身国を出た男だから、実は言うと少し不安だったが…
「見誤らなかったな。あんたは」
ヘンリーは楽しそうに口元を歪めた。そんな彼の首筋に、アイスブランドが当っている。
「アイツに会うのか」
「わしの知っているアレはまだ十にも満たない幼子だ。とはいえ、我が息子がどのように成長したかは気になる」
「誉めてやれよ?あいつはそのためにずっと旅を続けていたんだ」
ヘンリーから抵抗する意志は感じない。
むしろ穏やかで、何もかも受け入れているといった印象がある。
彼は、このゲームが始まってからずっと人を殺してきたといった。
そんな男に、出来る表情なのか?これが……
パパスは胸の奥から湧き上がってくるやりきれなさを押し殺して、最後にこう尋ねた。
「何か、誰かに伝えたい事はあるかね?」
ヘンリーは、少し上を見た。
俺もアイツも、この糞ッタレなゲームで妻を亡くした。
俺はパパスに殺され、アイツはパパスと共に戦うのだろう。
どこで間違ったんだろうな――――
ふう、と一息つく。
「アイツにあったら、オレがあんたに殺された事をちゃんと教えてやってくれ。
どうやって死んでいったかは言う必要は無い。アイツなら言わなくてもわかる」
自分たちが殺してしまったはずの、親友の父親を最後に見て、目を閉じる。
こうして、数多の命を奪った男は、己の死を静かに受け入れた。
258 :
2/2:03/11/15 23:12 ID:R7E+KOpj
【パパス 所持:アイスブランド
現在位置:ロンダルキアの洞窟1F・旅の扉前
第一行動方針:旅の扉の前でギリギリまで待つ
第二行動方針:バッツと双子を捜す。 とんぬらに会う。
第三行動方針:ゲームを抜ける】
【トーマス 所持:鉄の爪 薬草×10 手紙 碁石(20個くらい)
現在位置:ロンダルキアの洞窟1F・旅の扉前
第一行動方針:パパスについていこうと思っている】
【ヘンリー 死亡】
保守
まとめサイトはないんですか?
5も過去ログ行っちゃってるんで。
>261
ありがとうございます。
早速行ってきます。
263 :
1/5:03/11/19 23:47 ID:bhGD3pZ+
不自然な静寂がその場を包んでいた。
その場にいる誰もが、これから起るであろうことに慄然たるモノを感じる。
もっとも、一人寝こけている戦士は別だけれど。
廊下の向こうから、二人の人影が儀式の間に入ってくる。
デスピサロとアルス。勇者と魔族の王という珍妙極まる男たちが訪れたと同時に、
その時間が来た。
サマンサはエドガーから譲り受けた死神の鎌をデスピサロに渡す。
デスピサロはそれを一度二度振り回してから、トン、と石突を床で鳴らした。
その拍子にライアンが目を覚ます。デスピサロは一堂を見回して口を開く。
「それでは、儀式を行う。サマンサ、頼む」
「お任せください」
サマンサは恭しく頷き、バーバラも緊張した赴きで頷く。
ティナは入り口側のアルスの方を見て……彼が頷いたのを確認してから、はい、と答えた。
デスピサロは儀式を行う中央に歩いていき、代わりにライアンがアルスの側に移動する。
真剣な目でデスピサロを睨みつけるアルスに、ライアンは穏やかに話し掛けた。
「ご苦労様でござる。して按配は如何でござるか?」
「……理論は教わりました。ただ、思いのほか魔法力を使ってしまう呪文なんで、
まだ一度も試してません」
「つまりは、ぶっつけ本番でござるか。まあ、アルス殿なら大丈夫でござるよ」
根拠のない保証だったが、ライアンが言うと妙に説得力がある。
アルスはようやく、ほんの少しだけど表情を崩して、笑った。
264 :
2/5:03/11/19 23:48 ID:bhGD3pZ+
その間にも、儀式は始まっている。
部屋の中央に置かれた楕円形の台。その上に何かが乗っているが、白い布で覆われている。
台の両端にはそれぞれ燭台が炎を燈し、ゆらゆらと揺れている。
その台を中心に、床には円……複雑な魔方陣が書かれている。
その円の線上に、四人は等間隔に並んで台を囲んでいた。
サマンサが何かの呪文を唱え、バーバラとデスピサロが唱和する。
次第に三人の体を淡い光が包み、やや遅れてティナの体も光が覆った。
「おお…」
「すごい」
外野の二人が小声で呟く。
サマンサから伸びた光がバーバラとデスピサロとティナへ。
バーバラから伸びた光がデスピサロとティナへ。
デスピサロから伸びた光がティナへと……
光は四人を頂点として正四角形を書き、対角線が交差するその中心に台がある。
光の集まる台はぼんやりと揺らぎ、奇妙な色彩をかもし出していた。
……最初におかしい、と気付いたのはティナだった。
こんな儀式、見たことも聞いたこともない。はずなのに何だ、このどこかで感じた気配は。
自分はどこかでこれを感じた事があるはずだった。
次にデスピサロとバーバラも何かがおかしい事に気付いた。
説明によれば、この儀式は魔力の増幅によって結界を砕く事にあるはず。
なのに、魔力が膨れ上がる様子は全くない。それどころか――――
265 :
2/5:03/11/19 23:49 ID:bhGD3pZ+
その間にも、儀式は始まっている。
部屋の中央に置かれた楕円形の台。その上に何かが乗っているが、白い布で覆われている。
台の両端にはそれぞれ燭台が炎を燈し、ゆらゆらと揺れている。
その台を中心に、床には円……複雑な魔方陣が書かれている。
その円の線上に、四人は等間隔に並んで台を囲んでいた。
サマンサが何かの呪文を唱え、バーバラとデスピサロが唱和する。
次第に三人の体を淡い光が包み、やや遅れてティナの体も光が覆った。
「おお…」
「すごい」
外野の二人が小声で呟く。
サマンサから伸びた光がバーバラとデスピサロとティナへ。
バーバラから伸びた光がデスピサロとティナへ。
デスピサロから伸びた光がティナへと……
光は四人を頂点として正四角形を書き、対角線が交差するその中心に台がある。
光の集まる台はぼんやりと揺らぎ、奇妙な色彩をかもし出していた。
……最初におかしい、と気付いたのはティナだった。
こんな儀式、見たことも聞いたこともない。はずなのに何だ、このどこかで感じた気配は。
自分はどこかでこれを感じた事があるはずだった。
次にデスピサロとバーバラも何かがおかしい事に気付いた。
説明によれば、この儀式は魔力の増幅によって結界を砕く事にあるはず。
なのに、魔力が膨れ上がる様子は全くない。それどころか――――
266 :
3/5:03/11/19 23:50 ID:bhGD3pZ+
「……おかしいわ」
儀式は既に安定域に入っている。一度火が入れば何もしなくとも焼き尽くすように、この儀式は自動的に動いていく。
止められない、そんな焦燥がティナの内から溢れた。
「一体何が起こっているの?」
ハーゴンの記した書き物を読んで、その理論を理解した筈のサマンサが、最後に気付いた。
ギリギリになって気付いた。何かが足りない。魔力を集中させ、ある波長で供物に注ぐ。
後は台に組み込まれたサーキットが自動的に魔力を変換し、それを放出する。
どこに?それは――――
「私、知ってる……これは……」
不意に、部屋…神殿…世界全体が、激しく鼓動したようだった。
台を中心に、風が巻き起こった。最初は弱く、次第に強く、やがて暴風へと。
外部で見ていたアルスとライアンも、何か様子がおかしい事に気付く。
そして風は、台を覆っていた白い布を剥ぎ取った。
「キャァ―――――ッ!!」
バーバラ、ティナは悲鳴を上げた。サマンサも息を飲んだ。
現われたのは四つの首、いずれもまだ若い女性。ちょうど儀式を行っているのも四人。
四つの首は虚ろな目で正面の術者を見ながら口を開く。動いているのに全く生きている様子はない。
その四人の口から、何か煙のようなものが漏れて、天井に登る。
煙…いや、それは暗闇と言うのが正確だろう。
267 :
4/5:03/11/19 23:51 ID:bhGD3pZ+
それは、空中に渦巻いて、凝り固まっていく。
周囲が歪み、空間が歪む。
それを見ながら、ティナは瞳にいっぱいの涙を浮かべ、怖々と、呟いた。
「……召喚……この子達、召喚してる……」
空間から何かが這い出してくる。
形を持っているような、いないような。
人のようでもあり、雲のようでもある。
空間を這いずって動き回る。
生きているようでもあり、死んでいるようでもある。
何をしているのか、何がしたいのか。
単純なようでもあり、複雑なようでもある。
それは一つなのか、それとも全であるのか。
誰も知る由もないし、それを語れる者はもういない。
ただ、識る者がいれば、それはコレをこう呼ぶだろう。
――――「暗闇の雲」と。
268 :
5/5:03/11/19 23:51 ID:bhGD3pZ+
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本 死神の鎌
現在位置:神殿
第一行動方針:?
第二行動方針:腕輪を探す
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1
現在位置:神殿
第一行動方針:?
第二行動方針:生き残る】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー・ミスリルナイフ
現在位置:神殿
最終行動方針:?】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
現在位置:神殿
第一行動方針:?
第二行動方針:デスピサロに協力する】
【アルス(マジャスティス習得) 所持武器:対人レミラーマの杖 天空の剣 黄金の腕輪
現在位置:神殿
第一行動方針:?
第二行動方針:ゾーマを倒す】
【ティナ 所持武器:プラチナソード チキンナイフ
現在位置:神殿
第一行動方針:儀式を行う
第二行動方針:仲間を探す】
【暗闇の雲】が召喚されました。
ほ
し
271 :
1/4:03/11/22 14:01 ID:2vZGf0Ar
「し、召喚ッ…!」
目の前に生まれた暗闇を見て、エドガーが驚きに叫んだ。
それは半ばカンのようなモノだったが、直後のティナの言葉が、ソレを補完する。
何かが喚ばれた。しかも、デスピサロすらソレを理解していないように見える。つまりは、失敗?
エドガーは、終わった、と感じた。
旅の扉に逃げ込むべきかとも思うが、ソレすら出来ないと感じる。
圧倒的すぎる、闇。ソレは自分達にとっての永遠を意味しているのだろうか?
自分達は闇に捕らわれて、永遠に…
闇に立つ覇王、デスピサロは驚きを強引に押さえ付け、その闇を見つめていた。
恐怖に背筋が凍るが、理性がすぐにソレを溶かし、元に戻す。
蠢く暗闇の雲は未だその目的を明確にしない。
ピサロは、その目的を推察しようと必死で頭を回転させていた。
儀式にミスはない。間違いない。力の流れを計算し、一点に力を収束し…
…収束された力が、結界に穴を開けるはず、だったのだが…。
ミスはない。ならば、コレがハーゴンの目的なのか?コレが脱出の方法なのか?
ふと、ピサロの脳裏に閃くものがあった。特にきっかけがあったわけでもないが、何かが閃いた。
“罠”を何故仕掛けたか?それは、監視するゾーマの目を逃れるためだ。役に立たない儀式だと思わせて、目眩ましをするために…
ならば、目眩ましのためならば、“罠が1つでは不十分ではないか”?
ミスがあって完成し得ない儀式。裏を返せば、ソレさえ修正すれば完成する儀式。
それに目をつぶらせる、理由…。
「儀式の結果そのものがトラップか…!」
儀式は、ひょっとしたらそれ自体は脱出の方法になり得ないのではないか?
この状況を見るに、それどころではなく致命的なモノな可能性がある。+αがなければ、意味がない?
普通に考えれば、自滅。ならば、運営側は干渉しない…。
「…だとすれば最悪だな」
思わず呻いた。この闇が自分達を殺す…もしくは消し去るまでに、コレを利用して逃げ出す方法を考えなければならない。
ハーゴンの宿題をとくには、時間が、足りない。
272 :
2/4:03/11/22 14:03 ID:2vZGf0Ar
暗闇の雲は、自分の存在を理解し始めていた。
彼を『召喚』したと言う表現は、実は正確ではない。彼は、この世界で生き物が死んだときから存在していた。
喚ばれたのではなく、概念でしかないモノが現出した。
死、怨嗟、苦痛、暗闇に属する心。死に際に希望を抱いた者でさえ、希望という光が影という闇を作る。
そんな概念的なモノが、ゾーマの世界という特殊な環境で寄り集まり、儀式をきっかけに現出した。
魂を闇に捕らえるゾーマの世界でなければ、たかだか百人程度の闇で、暗闇の雲は生まれなかっただろう。実際、エリアの世界では千年単位の時間が必要だった。
百人の闇では、千年の闇には及ばない。力がない。でも、彼の目的を達成するのには十分だ。
彼の目的は復讐。自分という不必要にして最悪そのものを生み出した世界への復讐。
エリアの世界では異なる世界に無を求め、その世界をそこに押し込めて消し去ろうとした。
しかし、このゾーマの世界ではそんなモノを求める必要も、無い。
不安定なこの世界ならば、ちょいと力を加えるだけで容易に崩れ落ちるだろう。もっとも、「ちょいと」というのは暗闇の雲のスケールで見た場合だが。
暗闇の雲は復讐を開始した。まずは、最初に消すモノは…。
暗闇の雲が身をよじると、この世界への干渉を防いでいる結界を壊し始めた。
273 :
3/4:03/11/22 14:05 ID:2vZGf0Ar
変化はゆっくりと始まった。
未だハッキリとした形をとらぬ暗闇の雲の周りの、色が抜け落ちていく。
「な…!」
そのうめきは誰のモノだったか。何しろその変化には全員が驚いていた。
雲の中心からドーム型に、境目が広がる。その境目の内側の色が、抜け落ちて白黒の世界へ変わっていく。
「ッ!イオナズンッ!」
「ベギラゴンッ!
反射的にピサロは破壊呪文を解き放った。同時にサマンサも閃熱を放っている。
まだ変化が始まるには早い。くい止める必要がある…!
身体から魔力が抜けていき、代わりに爆風と熱線が雲を襲う。
…そして、大事な…生き延びる事を決定づけた、全ての結果から見れば大事な一瞬がやってきた。
暗闇の雲の周りとピサロ達を隔てる色の抜け落ちた壁に触れた瞬間、爆風はあっさり消え失せた。
それ自体はピサロも予測してはいたのだが…
ずっ、と再び力の抜ける感覚がした。消えた呪文が壁の向こう…目的の場所で再構成され、“現実”となる。
現実となった爆裂呪文は、暗闇の雲の一部を吹き飛ばした。
「?!」
2人は同時に驚愕する。一度の呪文で二度の魔力放出。そして、消えた呪文の再構築。
ピサロとサマンサは考え…そして、サマンサが先に気づいた。
何しろ、こういう理屈の分野は彼女の得意とするところだったので。
「ピサロ卿ッ!」
サマンサが叫んだ。ピサロは内心の焦りを押さえそちらを向く。
274 :
4/4:03/11/22 14:07 ID:2vZGf0Ar
サマンサは、落ち着いていた。ピサロより、ずっと。
喜んでいた。彼女は、踊り出したいほどに。
コレで助かる。と言う思いはあまり無かった。
ソレよりも、彼と共に考え、自分の力でこの結論を出し…多分、彼を助ける事が出来る。間違って、いなければ。
ピサロを助ける事が出来る。つまりそれは、彼と対等と言う事。彼の隣を歩けると言う事。
それに歓喜しつつ、彼女は叫んだ。
「全員を一箇所に集めてくださいッ!マジャスティスの、用意をっ!」
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本 死神の鎌
第一行動方針:?
第二行動方針:腕輪を探す
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1
第一行動方針:?
第二行動方針:生き残る】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー・ミスリルナイフ
最終行動方針:?】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
第一行動方針:?
第二行動方針:デスピサロに協力する】
【アルス(マジャスティス習得) 所持武器:対人レミラーマの杖 天空の剣 黄金の腕輪
第一行動方針:?
第二行動方針:ゾーマを倒す】
【ティナ 所持武器:プラチナソード チキンナイフ
第一行動方針:儀式を行う
第二行動方針:仲間を探す】
以上、現在位置:神殿
ミスなので
>>271冒頭のエドガ―の部分を削除という風に修正したいと思います。
230さん指摘ありがとう
全員が集まっていく。サマンサの立っている場所へ。
「ライアン、あの2人がいません!連れてきてください!
残りは全員固まって!アルスの盾になるんです!」
サマンサは杖を振りかざして全員に指示を出す。
彼女の指示に、全員が的確に動く。
この最悪の状況を打破出来るかも知れないと言う期待が彼らを動かす。
「「サマンサ…」」
暗闇の雲の周りに広がる色のない空間、ソレを見つめながら、2人の男がサマンサに声をかけた。
1人はロトの勇者、1人は黒い貴公子。
「……僕はやれる事をやる。だから、頼むよ!」
「自信が有るようだな…必ず成功させて見せろ」
2人の激励の言葉を受けて、サマンサが頷く。
その顔は、こんな状況にもかかわらずどこか嬉しそうだった。
「どうした!何がッ……!」
ライアンと共に部屋に駆け込んできたエドガーは、己の色が抜け落ちた事に絶句した。
部屋の中に、色がない。使い終わったパレットを水で洗い流したかのように、色が抜け落ちている。
それは、エドガー自身ですら例外ではない。部屋に踏み込んだ瞬間、彼の身体は一瞬で白と黒の2色に塗り替えられる。
「おいっ!なんなんだよこいつは!」
エドガーの後ろからデッシュが飛び出し、ピサロに詰め寄る。
しかし、彼の身体は途中でサマンサの腕に遮られた。
「逃げますよ。全員こっちに来てください」
彼女はキッパリ、そう言った。
全員が、アルスの周りに立っていた。色のない世界で彼らは暗闇の雲と相対している。
すでに神殿全体の色は抜け落ち、目が痛くなるような白黒の世界が広がっている。
しかし、その光景を誰も見てはいない。
アルス以外の人間は、暗闇の雲しか見ていない。儀式の行われている部屋の中心にわだかまる雲、じっと見つめている。
アルスはじっと目を瞑っている。彼の口から漏れるのは呪文。真を暴く、零に返す。その呪文。
雲が蠢く。敵を睨め付ける。呪文を唱える。色が消える…。
ソレが数十秒続いた。彼らにとっては、ほんの一瞬の事としか感じられなかったが。
アルスの口から小さく漏れだしていた呪文が、止まる。
サマンサの叫びは、ソレとほとんど同じタイミングで放たれていた。
「全員、お互いにしがみついてください!アルス、呪文を!」
真っ直ぐに雲を睨め付けたままサマンサは叫び、ソレが終わるよりも早くアルスは呪文を解き放っていた。
全員がお互いの身体を掴んだのはその直後。閃光に目を焼かれながら、だった。
「マジャスティス!」
アルスの凛とした声が響く。部屋に、神殿に、ロンタルギアに、世界に。
ざぁっ、と、色の抜け落ちた空間内に黄金色の光が満ちる。
暗闇の雲のプレッシャーと足下の確かな感覚が同時に消失するのを感じながらサマンサは自分の用意していた呪文を唱えていた。
「ルーラ!」と。
「む…?」
寒風に吹かれながら、オルテガふと振り向いた。軽く手綱を引いてチョコボを止める。
祠の孤島。旅の扉まで後少しと言うところで、彼は見た。
遙か遠くから…神殿がある場所から、光の柱が空に向かって伸びていく。
目の覚めるような、神聖でも邪悪でもないニュートラルな零の光。
「クェェェ…」
チョコボがその光を見て鳴いた。その鳴き声には、恐らく意味はなかったが。
オルテガは、じっとその光を見つめてからふいと正面に向き直った。
気にはなる。が、時間はない。
それから十分ほどして、オルテガは何の問題もなく旅の扉に飛び込んだ。
【オルテガ(チョコボ) 所持武器:危ない水着 グレートソード 覆面 壊れた水鉄砲 ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
現在位置:次のフィールドへ
第一行動方針:アルスを探す
最終行動方針:未定】
そして、神殿があった場所には…すでに、もう、何も、無かった。
黒いポッカリとした穴が空いているだけで、もう何もなかった。
現世にある無を『穴』と単純に表現して良いのならば、ソレは間違いなく穴だ。
実際には、ソレを指し示す言葉など存在はしないのだけれど。
【神殿が丸ごと消失しました】
広間の壁面に彫り込まれた、様々な邪教の神達のレリーフ。
周囲を取り囲む浅い池からは、ヒトの死体の手足とおぼしきモノが屹立している。
最初に見た、この悪夢の最初に見た。その光景。
そこに最初に現れたのは、エドガーとアルスの2人組だった。
彼らは虚空から突然現れると、石畳の地面に綺麗に着地する。
そして、2人は息をぴったりと合わせて、正面に手を伸ばした。
多少遅れて、ティナとバーバラが現れる。
こちらはバランスを崩しているようで、背中をしたにした体勢で空中に現れて地面に落下し…
アルスとエドガーの腕の中に綺麗に収まった。
エドガーは手の中のバーバラに女性用スマイルを投げかけ、ウインクなどしてみせる。
アルスも受け止めたティナに笑いかけたが、こちらは照れてはにかんだ、多少ぎこちない笑みだった。
2人はありがとうと言って2人の手を離れて地面に立つ。
バーバラが照れたり恥ずかしがったりと言った反応をとらない事に多少がっかりしながら…自分はひょっとして女性にもてないのではないだろうかと思いながら、
エドガーは肩を竦めて見せた。
その直後、エドガーとアルスは空から振ってきたライアンとデッシュに押し潰されて悶絶した。
「あ、あ〜…生きてるか?エドガー?」「こ、コレはかたじけない…」
埃をはたきながら、デッシュとライアンは申し訳なさそうに立ち上がる。
その後ろで、残った3人が現れるのをティナは見た。
「…3人?」
ティナが目の前の光景に疑問の声を上げる。残りは、サマンサとピサロの2人組では…?
「お、おぉ?ココは何処じゃ?」
きょろきょろと辺りを見回すゼニスを見ながら、ピサロとサマンサは胡乱げに眉をひそめた。
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本 死神の鎌
第一行動方針:不明
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1
第一行動方針:不明
第二行動方針:生き残る】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー・ミスリルナイフ
最終行動方針:不明】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
第一行動方針:不明
第二行動方針:デスピサロに協力する】
【アルス(マジャスティス習得) 所持武器:対人レミラーマの杖 天空の剣 黄金の腕輪
第一行動方針:不明
第二行動方針:ゾーマを倒す】
【ティナ 所持武器:プラチナソード チキンナイフ
第一行動方針:不明
第二行動方針:仲間を探す】
【エドガー 所持武器:エンハンスソード ミスリルシールド ボウガン 天空の鎧(装備不可) スナイパーアイ ブーメラン 首輪×5
第一行動方針:不明
最終行動方針:ゲーム脱出】
【デッシュ 所持武器:アサシンダガー 加速装置 裁きの杖 首輪×5
第一行動方針: 不明
最終行動方針:ゲーム脱出】
【ゼニス 所持武器:アンブレラ 羽帽子?
行動方針:物見遊山?】
以上、脱出?
「え?あ、あれ、ここって…」
ふと辺りを見回したバーバラは、そこが何処であるか気づいた。
「うん、最初の場所だ」
アルスは答えながら、油断無く辺りを見回した。
どうしようもなくもなく不気味な光景だが、敵はいないようだ。
目の前の玉座にも、あの邪悪な大魔王ゾーマの姿はない。
「う、うん。アレ、いないみたいだけどさ…」
バーバラも、吐き気を堪えてちらちらと辺りの様子をうかがう。
部屋の端の、いくつも突きだしている手足が動いているような気がする。
壁に掘られた悪魔のレリーフがこちらを見てはいないか。
入り口に立っている巨人の石像があんぐりと口を開けてこっちを見ていないか。
「…あれ?」
バーバラは入り口…この広間と外を結ぶであろう出入り口に、石像が立っているのを見た。
驚いたように…実際驚きながら石像がこちらを見ている。口をあんぐりと開けて…。
「きっ、貴様ら、どこから…!」
ごん
何事かを叫びかけた石像…動く石像が、突然ゆっくりとした挙動で倒れ伏す。
その後ろには、丸太みたいな腕を振り下ろすポーズをしたライアンがいた
「いや、危なかったでござるな。叫ばれていたら敵を呼び寄せるところで…」
そこまで言ったところで、ようやく石像が地面と接触した。
石像が倒れる。耳が痛くなるくらいの大音響を立てて。
全員が固まる。ピシリと音を立てて。空気も一緒に、固まる。
「あの…ごめんなさい。どこから、その、あの…突っ込めばいいのかしら?」
「本末転倒、と言う言葉を知っているか?」
心配そうで邪気のない…それ故にキツいティナの言葉と、ピサロの呆れたようなセリフが、ライアンには痛かった。
「兎に角、身を隠すぞ」
ピサロはそう言うと入り口の方に向かって駆けだした。
倒れた石像を乗り越える際に、その後頭部に威力を絞った破壊呪文を叩き込んでとどめを刺しておく。
次いで、残った全員がそれを追う。状況がつかめずボケッと突っ立っているゼニスの首根っこを、ティナが慌てて掴んで引っ張り出す。
5分も歩かぬ内に、ピサロが1つの扉を蹴破ってその中に飛び込む。
続けてライアン、サマンサと次々に飛び込んでいく、最後にゼニスを引っ張っているティナが少し遅れてそこに飛び込んだ。
サマンサは蹴破った扉を立てて元に戻すと、バーバラを呼んで扉と壁を火炎呪文で溶接しようと試みた。
一点に集中したメラで扉の縁の部分を形作っている金属を溶かし、壁とつなぎ合わせる。
5分ほどで、扉は壁とほぼ一体化した。ちょっとやそっとでぶち破られるような事はないだろう。
…「ちょっとやそっと」どころでは無い敵だと言う事はこの際考えないでおく。やれる事はやったのだし。
「…見つかっちゃったかな?」
ぜえぜえと息を荒らげていたバーバラが、やっとそのセリフを絞り出した。
しかし、あまりにも笑える出来事だったためだろうか?その言葉に悲壮感はまるでない。
「問題はない。どのみち逃げ出した瞬間にばれているはずだ」
ピサロすら僅かに息を乱している。汗の流れる、鉄の輪で拘束された首元を腕で拭っている…。
(あれ?)
バーバラはふと自分の首に触ってみた。金属の感触。
「くっ?くっくっくっ首輪!?」
バーバラの、耳が痛くなるくらいかん高い声を聞いて、ほぼ全員がハッとなって首元をまさぐる。
すっかりあの危険物の存在を忘れていた。外れていなければ、コレは致命的なミスなのだが…。
全員の首に、忌々しい首輪があった。
「しまった…」
デッシュは眉を顔の真ん中に寄せながら絶望的に呻いた。
こいつがあれば、ゾーマは自分達をいつでも殺す事が…。
「問題有りませんよ。…ほら」
そんなデッシュの目の前で、サマンサは平然と首輪を引きちぎって見せた。
元々細く、脆そうな首輪である。彼女の細腕でも千切る事は容易い。
「っぁっ!?!」
デッシュは口をパクパクさせながらサマンサを指さした。
あれだけ苦戦していた首輪を、そんな、いともあっさりと…。
「コレまでの推測を合わせた上での結論です…多少、危険な賭でしたが」
ほっと胸をなで下ろしながらサマンサ。その額には冷や汗が細く流れている。
「どっ、どどど、どういう…」
どういうコトだ、とデッシュは言いたかったのだろう。声がガクガク震えて言葉にはならない。
だがサマンサは、彼の言葉の意図を明確に酌み取って…目の端をキラリと輝かせた。
「では説明しましょう。多少長くなるけれどいいですか?」
そう言う彼女は、脱出の時とは別次元で嬉しそうだ。説明したくてしょうがなかったのだろう。
「まずは、脱出方法からですね。
…あの、儀式で召喚されたモノがハーゴンの意図したモノである場合、アレの行動の推測は難しくはありませんでした。
アレだけのモノが呼び出されて行う事はそう多くはないと思います。何かを…あるいは何もかも壊すためだとか」
サマンサは身振り手振りを交え、講義を行うかのように説明を続ける。
「けれど、あの世界では内側に存在する生き物が仮想空間を壊す事は出来ません。
疑似魔法の発動によって威力が制限されてしまいますからね。
そこで、あの雲は発想を変えました。仮想空間全てをうち砕くのではなく、ソレを守るモノを1つ1つ、薄皮を剥くように壊すと言う事。
広く見れば完璧でも、何処までも細かく見ていけば穴は見つかります…人間にはまず分からない、細かいモノでしょうが」
そう。そして、雲は法則を1つ…疑似魔法の法則の穴を見つけ、砕いた。
あの色のない空間は“法則の外の空間”なのではないかというのが彼女の結論だった。
あの時の、空間を乗り越えたときの呪文の再構成は、つまり“法則の壁を乗り越えた”のだろう。
「疑似魔法が発生すると言う法則がなければ、不安定なあの世界を壊すなど造作もない事な訳です。
マジャスティスも、仮想空間の中では発動すらしない恐れがありました。
しかし法則の外でなら、間違いなく、ありとあらゆる“マヤカシ”をうち破る本来の姿として発動したのです。
そうして仮想空間が壊れてしまえば、禁止呪文を使うことも簡単です。ルーラを使ってココまでとんでくる事が出来ました。
ココは多分仮想空間の外。さっきの不気味な部屋は、仮想空間の入り口ではないでしょうか。ルーラは目的の場所の“入り口”まで転移する呪文ですから。
…この計画を立案したハーゴンはマジャスティスを知りませんでしたが、恐らく同じようなコトを考えていたはずです」
「ま、待てよ、その、どの過程で首輪を?」
デッシュは焦った調子で聞くが、サマンサは「慌てるな」とでも言いたげに人差し指を立てて左右に振ってみせる。
…恐らく、楽しんでいる。
「こちらは疑似魔法の法則を思いついたときに考えついたのですが…
この首輪に、本当の魔法を防がせる必要は、実は全くありません」
「疑似魔法だけ防げればいい…と言う事だ」
サマンサの持って回った言い方を聞いて、ピサロが横からさっくりと結論を押し込む。
「………そう言う事です。仮想空間で戦う事が前提ですから、本物の呪文に対抗する手段など
そもそも必要ないわけです。マジャスティスは法則の外で発動したわけで、よって首輪の呪いはマジャスティスで祓われる事になりました。
呪いさえ解けてしまえば後は問題はありません。カラクリの上から呪いをかけた…つまりカラクリだけでは不完全なわけですから」
「ち、ちょい待ち!も、もしもゾーマが用心して首輪に本物の魔法を防がせてたら…」
「エリアオーバーで我々の首は残さず吹き飛ばされる事になりますね。しかし、他に手が有りましたか?」
あっさりと危ない事を言うサマンサに、デッシュが閉口する。
たしかに、もう一度儀式を行うのは難しいし、そもそもあの雲を何とか出来たかと言われると、厳しい。
「さて、コレで説明は終わりですが…ピサロ卿?」
サマンサは喋り続けて乱れた息をただしながら、ピサロの方に振り返った。
今後の方針を決めるつもりだろう。
「さっきも言ったが、どのみちヤツらには脱出がバレている。打って出るのも良いが…アルス。」
アルスは名前を呼ばれてはっとピサロの方を見た。ピサロが自分を呼ぶ理由は、1つくらいしか思い当たらない。
「マジャスティスでだいぶ魔法力を使ったけれど…問題ないよ。普通の魔法なら問題ない」
「ならば普通でない呪文が使えるようになるまでココで休息をとる。見つかったら出発だ」
アルスの気丈な返事をあっさり流して、ピサロはその場に座り込んだ。魔界の王たる彼も、相当に疲れているらしい。
ゼニスとライアンが、ごそごそとバックをあさくって、残ったパンを引っ張り出した。
残りのメンバーもそれにならい、最後になるかも知れないまずい食事を開始した。
デッシュとエドガーは何やら支給されている携帯ランタンをいじくり始めた。
バーバラは手持ちぶさたになって、全員の荷物の整理を始めた。
決戦が近い事を全員が感じていた。ソレがあまりにも絶望的な事も、感じていた。
だが同時に、諦める事のない強さも、そこに感じられた。
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本 死神の鎌
最終行動方針:ゾーマ打倒】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1
最終行動方針:ゾーマ打倒】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー・ミスリルナイフ
最終行動方針:ゾーマ打倒】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
最終行動方針:ゾーマ打倒】
【アルス(マジャスティス習得) 所持武器:対人レミラーマの杖 天空の剣 黄金の腕輪
最終行動方針:ゾーマを倒す】
【ティナ 所持武器:プラチナソード チキンナイフ
第二行動方針:ゾーマ打倒】
【エドガー 所持武器:エンハンスソード ミスリルシールド ボウガン 天空の鎧(装備不可) スナイパーアイ ブーメラン 首輪×5
最終行動方針:ゾーマ打倒】
【デッシュ 所持武器:アサシンダガー 加速装置 裁きの杖 首輪×5
最終行動方針:ゾーマ打倒】
【ゼニス 所持武器:アンブレラ 羽帽子?
行動方針:物見遊山?】
288 :
1/3:03/11/30 00:33 ID:Vik4qEj3
神殿で儀式が為されると、その影響は遠く離れた洞窟にも来た。
自分が殺めた青年と、自分が見逃した青年に殺された少女を弔ったパパスもそれを感じ取った。
洞窟内、いや世界そのものを揺るがすかのような振動に、彼は眉を顰める。
「崩壊が始まったのか。随分と早いな」
何らかの理由があって、主催者側がタイムリミットを縮めたのか。
それとも他に理由があるのか。
何にしても、すぐに旅の扉から次の世界に行かないといけない。
パパスは走って旅の扉に向かう。
青く濁った泉の前まで来ると、トーマスが自分に、わん、と吼えた。
「む?」
見ると、トーマスは何かに噛み付いて、引き摺ろうとしている。
それは道具袋だった。おそらくヘンリーのものだろう。
「ふむ……まあ、回収しておくか。中身はあとで確かめよう」
パパスは道具袋を拾うと、トーマスに旅の扉に入るよう仕種をする。
トーマスは一度吼えてから躊躇なく旅の扉に飛び込んだ。
パパスもすぐに続く。
視界が青い光で満たされていくなか、次の世界でバッツや双子たちに再開することを、パパスは願った。
大人として、親として成長したとんぬらと再会することも。
289 :
2/3:03/11/30 00:36 ID:Vik4qEj3
――――こうして、誰もいなくなった洞窟は静寂に包まれた……わけではなかった。
止まないどころか強まる一方の振動で壁の一部が崩れ、
天井から落ちる塵や石が床にぶつかって音を立てる。
今はまだ、洞窟そのものが崩落することはないだろうが、それも何時まで持つか。
一体、何が起こったの――――
ミレーユは尚早に駆られながら、洞窟内に入った。
背後にはセリスがついてきている。彼女は自分より体のこなしが優れており、
この足元が定まらない中で走る事に、さほど苦労をしていないようだ。
むしろ自分に合わせて速度を落としている節も見受けられる。
しかし、だからと言って意識がはっきりしているわけでもない。
現実を突きつけられ、涙を枯らした後に残ったのは、抜け殻。
彼女は現実を受け止めるだけの器をとうに埋め尽くしているのだろう。
辛うじて自分のいう事に従ってくれるようだが、夢現で焦点が定まっていない。
仕方ないこととも思うし、危険な状況で頼りないとも思う、
そして彼女を導かなくてはいけないという思いも、ミレーユにはあった。
旅の扉はすぐに見つかった。
周囲に人の気配はない…というか、世界を揺るがす振動の音で、感じるどころではない。
まあ、あの男とてこの状況では身の安全を優先するだろう。
残って待ち伏せしているとは考えられない。
そう判断して、ミレーユは一気に旅の扉に駆け込んだ。同時にセリスも駆け込む。
無事、次の世界に行けることに、ミレーユはほっと一息ついたのだった。
290 :
3/3:03/11/30 00:37 ID:Vik4qEj3
【パパス 所持:アイスブランド ヘンリーの道具袋
現在位置:次の世界へ
第一行動方針:バッツと双子を捜す。 とんぬらに会う。
第二行動方針:スコールを倒す。
第三行動方針:ゲームを抜ける】
【トーマス 所持:鉄の爪 薬草×10 手紙 碁石(20個くらい)
現在位置:次の世界へ
第一行動方針:パパスについていこうと思っている】
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド
現在位置:次の世界へ
第一行動方針:セリスを導く
第二行動方針:ゲームを覆してテリーの仇を取る】
【セリス(記憶喪失・自我薄弱) 所持武器:ロトの剣
現在位置:次の世界へ
第一行動方針:ミレーユとともに行く】
儀式によって生まれた振動は止まることがなかった。
白い世界を揺るがし、崩し、散らしていくその振動は、
世界の理をも外し、存在する故を失ったそれはただ闇へと消えていく。
白く静寂なる世界は、黒く静寂なる無へと。
それは、あるべき姿へと帰っていったのだった。
【ロンダルキア:消失】
292 :
1/2:03/12/03 23:26 ID:U9U5B5C1
青い光を放つ旅の扉に飛び込んで、ふと気がつくと、もうそこは別の世界。
これまでもそうだったし、今度もそうだった。
ティーダ、モニカ、そしてエアリスの三人は揃って同じ場所に現われた。
「ここは…どこッスか?」
床の材質は自然に作られたものではない。
周囲は腰程の壁に囲われており、壁の上には金属の手すりがある。
何となく、ティーダは近くの手すりに掴まって下を覗き込む。
「ザナルカンド?……じゃあないよな」
科学技術はこれまでのフィールドに比べると近いかもしれないが、何かが違うと思う。
そんなティーダの行動を真似たモニカは下を覗き込んで小さく悲鳴を上げてあとずさる。
これまで体験した事がない風景に目が眩んだからだ。
「ここは……」
エアリスは戸惑いながら、それでも何かを確かめるように、ティーダの側に歩み寄った。
はるか下に広がるのは、自分たちのいるビルを中心にして円状に広がる機械仕掛けの街。
そして壱から八まで刻印された、緑の煙を上げる炉……
「帰ってきたんだ……ミッドガルに」
「ミッドガルって、じゃあココのこと知ってるのか?」
ティーダの問いにエアリスは頷く。
「ここには……私の家もあるから」
その言葉に、ティーダはほっとした表情を浮かべる。
見ず知らずの場所というのは不安になる。先の案内人がいるのは心強い――――
「ずっと、ずっと下の方に、だけどね」
293 :
2/2:03/12/03 23:29 ID:U9U5B5C1
「……下?ってことはこのビルを降りなきゃいけないとか?」
「うん。このビルを降りて、プレート…ココから見える表面部分を更に潜った、下」
「マジッスか」
自分たちがいるのはビルの屋上、その高さにゲンナリしなからティーダは呟く。
それでも何とか気を取り直して、
「でもさ、ココいらのことは詳しいんだろ?」
「プレートの下ならね。このビルには一度来たきりかな」
「マジですか」
再び打ちのめされてティーダは唸る。
しかしまあ、登るならとにかく降りるのだから、アクシデントさえなければ苦労もしないだろう。
再度気を取り直して、ティーダはエアリスと、そしてモニカに言った。
「とにかく、ココでじっとしてても仕方ないし。アーロンたちを探しに行くッスよ!」
「そうね。ビルの中を探索しながら下に行って、それから私の家に行きましょ。それでいい?」
【ティーダ/エアリス/モニカ 現在位置:神羅ビル・70階(ヘリポート)
所持武器:吹雪の剣・いかづちの杖・参加者リスト/
エドガーのメモ・マジャスティスのメモ/ エドガーのメモ(ボロ)
第一行動方針:ビルを降りてエアリスの家へ
第二行動方針:アーロン、クラウドを探す
最終行動方針:ゲームから抜ける】
294 :
1/3:03/12/04 23:31 ID:K/1UfawP
「ここは…酒場、か?」
周囲を見回してバッツは呟く。
カウンターに椅子が並び、その向こうにビンが陳列している。
部屋には幾つかテーブルがあって無造作にビンが放置されていた。
アーロンはそのビンを手にとって撫でまわす。
「埃一つないな。人の気配などまるでないのに」
「お父さん、ここは…」
息子のクーパーの言葉に、頷くとんぬら。
「ああ。次の世界のようだ」
「そっか……」
クーパーは少し肩を落とした。神殿に戻る事が出来なかったからだ。
不可抗力だったとはいえ、約束を破ってしまったことは少年にとって納得が行かない。
「お父さん、これからどうするの?」
父親の服を掴みながら見上げるアニー。
そんな娘の頭を優しく撫でながら、
「まずは、ここがどんなところなのかを調べないとね。病人もいる事だし、休憩できる場所を探さないと」
「俺の事は、気にするな」
ぶっきらぼうにそう言い放つアーロンに、リディアは泣きそうな目で首を横に振る。
「無理したって何にもならないでしょ。病人は寝てなさい」
エーコはやれやれと、どうも憎めない憎まれ口を叩く。
さすがのアーロンも子供二人に気遣われては、何も言えない。
とにかく、周囲の確認だけはしておこうという事になった。
病人のアーロンと薬師のバッツ、念の為にクーパーとリディアが酒場に残り、
とんぬらとアニー、そしてエーコが外の探索をすることになった。
295 :
2/3:03/12/04 23:33 ID:K/1UfawP
最初はクーパーも探索に行くと立候補したのだが、
エーコがどうしても行きたいと強硬に主張したことと、
とんぬらがクーパーに酒場でみんなを守れ、といったことからこの組み合わせが決まった。
酒場の外は、何となく薄暗かった。
瓦礫やガラクタを組み合わせたバラックが幾つか立ち並んでいるのも、その印象を強める。
天井を見上げても、空は見えない。すっぽりと金属の天井に覆われている。
これまでいたロンダルキアと違い、暖かくて暮していくには問題ない気候だが、
空気が澱んでいるような、そんな錯覚さえ覚える。
酒場を出てちょっと進んだところで、エーコはアニーに囁く。
「ごめんね、親子水入らずの邪魔して」
「……わかってるから、気にしないで」
正直言えば、確かにエーコに邪魔をされたという気分はある。
けれど、エーコが外に行きたがった理由……
正確には、彼の側から離れたい理由はわかったから、非難するつもりはなかった。
「でも、今だけだよ?」
だが、何時までも引きずってもらっては困る。
バッツは『いい人』だ。それだけにエーコの葛藤が深いことも理解できるが、
それでもなるべく早く答えを見つけ、彼に対する態度を決めなくてはいけない。
そんな事はエーコもわかっているから、何も言わずにひとつ、頷いた。
とりあえず、三人は酒場の近くの探索を行った。
人の気配はない。誰かが住んでいたと思われる家には生活観がない。
まあ、これまでのフィールドも同じことだったが、やはり不気味だ。
「何にしてもベッドがあることだし、使わせてもらおうか」
この家の住人は多分女性と思われるが、この際割り切ってもらおう。
周囲に危険がない事を確かめ、三人は一旦探索を打ち切って酒場に戻る事にした。
296 :
3/3:03/12/04 23:34 ID:K/1UfawP
現在位置:七番街スラム
【とんぬら(DQ5主人公) 所持品:さざなみの剣
第一行動方針:子供たちを守る
第二行動方針:パパス・ライアン・アイラをみつける】
【クーパー 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜
第一行動方針:とんぬらについていく
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【王女アニー 所持品:マインゴーシュ
第一行動方針:とんぬらについていく】
【リディア(魔法使用不可) 所持品:なし
第一行動方針:アーロンの治療を見守る
第二行動方針:仲間を捜す?】
【エーコ&モーグリ 所持武器:なし
第一行動方針:?】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント/
第一行動方針:クーパー達と共に行動する
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【アーロン 所持武器:折れた鋼の剣
第一行動方針:体を癒す
第二行動方針:仲間を探す】
目の前に整然と並べられたカードを前にして、女性は気持ちを整えた。
おもむろに、伏せられたカードをめくる。
カードに書かれていたのは…落雷で壊れた塔。
「塔の正位置。突然の事故、災厄、危険……」
はあ、とミレーユは溜息を付いた。
無事、次の世界に辿り着いた二人だったが、そこは見た事もない場所だった。
まず、室内のようだが壁が木でも石でもない。
灯りは火を焚いているわけでもないのに煌々と明るい。
長椅子はふかふかだが、羽毛が使われているわけでもない。
あまりにも、自分が親しんでいる文化とかけ離れていた。
それで、方針を決める意味を込めて、今後どうなるのか占ってみた。
ちなみに道具は、自分たちがいる場所の上の階にある売店のタロットを拝借している。
それが理由かどうかはわからないが、結果は前述した通り。
一度頭を振ると、ミレーユは側にいるセリスを見た。
彼女はぼんやりとした表情のまま、向こう側にある光の壁を見ている。
何とも頼りなく、だからこそ守らなきゃいけないと思う。
ミレーユはカードをかき集めると、もう一度並べ始めた。
自分たちが、向かうべき場所を占うために。
現在位置:神羅ビル・一階ロビー
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド
第一行動方針:セリスを導く
第二行動方針:ゲームを覆してテリーの仇を取る】
【セリス(記憶喪失・自我薄弱) 所持武器:ロトの剣
第一行動方針:ミレーユとともに行く】
298 :
1/2:03/12/07 09:52 ID:pqLVDO9k
「次の世界、だよな?ココは」
ザックスはきょろきょろと周囲を見回す。
瓦礫とガラクタの街並み。澱んだ空気。なじみのある雰囲気だった。
「って、それどころじゃない!おい、クラウド!」
腕に抱いたクラウドに呼びかけるが、反応はない。
あの時、スコールはクラウドの背後で何かをした。
その結果、クラウドの背中の肉が醜く抉れ、血がボタボタと落ちている。
どうすればこんな傷になるのか……気にはなるが、今は些末な事だ。
「とにかく、止血しないと。クラウド、動くなよ」
ザックスは手早くクラウドの上着を剥ぎ取ると、帯状に切り裂いてクラウドの上半身にきつく巻きつける。
本来ならばきちんと消毒して、清潔な布で縛るべきなのだが、この際仕方ない。
ザックスはクラウドを背負って近くの家屋に入ると、中に人がいないことを確認してから目立たない場所に、クラウドをうつ伏せに横たえた。
「待ってろ、今何か治療するもの持ってくる」
そう言うと、ザックスは室内から出た。それをクラウドはぼんやりと眺めている……
周囲を色々探索しているうちに、ザックスはココがどこなのかがわかった。
「ミッドガル、伍番街か……」
ザックスはその方向を見た。ここからでは見えないが、あちらにあの子の家がある。
しかしまあ行くにしても、クラウドの治療を済ませてからだ。
299 :
1/2:03/12/07 09:53 ID:pqLVDO9k
ザックスは清潔そうな布と、アルコールを見つけた。
ポーションや武器等は例によって全くなかったが、何故かマテリアはあった。
「こんな状況だ、使えるかどうかはわかんないけどな」
一応「かいふく」のマテリアを頂戴して、ザックスはクラウドの待つ家屋に戻った。
現在位置:次の世界へ
【ザックス 武器:バスターソード 「かいふく」マテリア(使用できるかは不明)
第一行動方針:クラウドを助ける
第二行動方針:エアリスの捜索】
【クラウド(重傷):所持武器:折れた正宗
第一行動方針:? 】
300 :
1/3:03/12/07 16:12 ID:6cf5cCFj
悪くない部屋だ、とリノアは思った。
内装は質素だが趣味は悪くない…と言うか、ハッキリと良い趣味をしている。外の毒々しい街とくず鉄の山に埋もれているのはもったいないほどに。
昔、エアリス=ゲインズプールと名乗る女性が母と共に住んでいた家に、リノアは居た。
柔らかなカーテンをそっとなでつけてから、外を見る。
大地はなく、くず鉄の山がある。青空はなく、鉄板の屋根がある。
ありとあらゆる“自然物”を排除したゴミ捨て場の中。そんな中に、この家は建っていた。
彼女らが現れたのは、この家の二階。元々エアリスの部屋だった部分だ。
ココに現れてから、スコールはほとんど動いていない。ざっと辺りを見回してそれっきり、ベッドに腰掛けて動かない。
ガンブレードを右手に掴んで、うつむいて、どっしりと座ったまま動かない。
せわしなく部屋をあさくっていたリノアは、外の光景を確かめたのを最後に動きを止めた。
しばらく立ちつくし…スコールを見て…ふと、背筋に冷たい物を覚える。
分かっているし、死体はいくつも見たし、決意もした。
しかし、あの瞬間の宙を舞う女性の姿だけは、どうにも、思い出すだけで気分が悪い。
飛んでいた。ガンブレードのトリガーを喰らったにもかかわらず派手に臓物をばらまくような事もなく、ただふわりと舞うように飛んでいた。
ただ、その瞬間、“彼女が死ぬ”だろうと言う事ははっきり分かった。何というか、宙を舞う彼女の目を見て。
その前の金髪の男の時とは、何かが違った。あの男の方は、まだ決定的な何かが切れては居ないようだった。
怖かった。目の前で、スコールに、殺された人を見て、恐怖した。
スコールは、今はスコールじゃない。彼の意志はなく、ただひたすら殺すだけ。そんな存在。
自分だって…いつか殺されるかも知れない。スコールに限ってそんな事無いなんて言えない。
どちらにしろ、生き残れるのは1人なのだから最後には…。
301 :
2/3:03/12/07 16:13 ID:6cf5cCFj
最後には?
リノアはハッと我に返った。
そうだ。生き残れるのは1人なのだ。すっかり、忘れていた。
後何人生き残っているかは分からないが、最後に生き残るのは自分達だろうと、リノアは確信している。
何しろ、スコールがいる。ガンブレードを持ったスコールが居る。スコールは絶対誰にも負けない。
そうなると、残るのは自分とスコールの2人。生き残れるのは、1人。
どうなるのだ?スコールを殺すか?自殺するか?タイムアウトで2人とも死ぬか?
…全部違う。正解はすでに知っている。
そう、自分は、スコールに殺される。さっき不安に思った通りに。
それに気づいた瞬間、リノアはその場にへなへなと座り込んだ。
何だ。迷う必要なんて無かった。答えは最初から決まっていたんだ。
スコールはそうする。だったら、それでいいじゃない?
スコールは私のヒーロー。最高にかっこいいヒーロー。こんなところで死ぬはずがない。
なら私が死ぬ。当たり前の事。だったら、それでいいじゃない?
私はスコールが大好き。だから彼に付いてきた。人殺しだってする。彼のためにする。
彼のため。そうだ。彼のためだ。私は彼が、スコールが大好きだ。だから彼に付いていく。
スコールは優秀なSeeDで、私の大好きな人。だから…。
302 :
3/3:03/12/07 16:14 ID:6cf5cCFj
リノアは力抜けた膝を叱咤してゆっくりと立ち上がった。
「スコール、私、ちょっと下に行って食べ物探してくるね」
リノアはいつもの調子で軽く、手をパタパタ手を振って歩き出す。
すぐ其処にあるドアに手をかけ、まるで恐れることもなく開いた。
普通の家なら台所があるだろう。二つ前の世界でココアを振る舞ってもらった覚えがある。ここにも、そう言ったモノが残っているかも知れない。
リノアは平然と、下へと下りていった。
自分が死ぬ事など考えていないかのように。
あるいは、自分が死ぬことが当然であるかのように。
【スコール 所持:ガンブレード 真実のオーブ
現在位置:エアリスの家二階、エアリスの部屋
第一行動方針:リノアをゲームの勝利者にする】
【リノア 所持:妖精のロッド・月の扇/アルテマ×1
現在位置:エアリスの家一階へ
第一行動方針:スコールに着いていく】
保守
捕手
足元が柔らかかった。
訳が分からないまま周囲を見回してみると、何故か部屋のすみに風呂のようなものがある。
自分を取り囲む壁は品のない原色で彩られ、天井には灯りらしきものが一つ。
そこでようやく、自分が室内にいて、ベッドの上に立っているのだと気付いた。
「……む」
パパスはベッドから飛び降りた。もう一度ベッドを見ると、自分が立っていたあたりが埃で汚れている。
それ以外の場所は、洗濯したあとのように綺麗だった。
しかし……何故このベッドは円形なのだろう?
そもそも何故ベッドと風呂が一つの部屋にあるのだ?
犬のトーマスはベッドから降りずにその場でお座りしていた。
ふかふかで快適そうだ。あまりよく寝ていないパパスも寝転びたい気分になる。
しかし……理由はよくわからないが、長居をしたくない気分もあった。
どこか甘ったるい蜂蜜の香りがするからだろうか?
「まあ、とにかく。この辺りに危険はないようだし、今のうちに彼の荷物を確かめるとしよう」
そう呟きながらパパスは床の絨毯の上に胡座をかくと、ヘンリーの荷物を広げた。
現在位置:ウオールマーケット・蜂蜜の館
【パパス 所持:アイスブランド ヘンリーの道具袋
第一行動方針: ヘンリーの道具袋を調べる
第二行動方針:バッツと双子を捜す。 とんぬらに会う。スコールを倒す。
第三行動方針:ゲームを抜ける】
【トーマス 所持:鉄の爪 薬草×10 手紙 碁石(20個くらい)
第一行動方針:パパスについていこうと思っている】
山吹色の地肌に黒い羽、しなやかな鞭を握った悪魔たちの控え室。
黒い霧につつまれる中、魔物たちは大勢でテーブルを囲んでトランプ遊びに興じていた。
「バラモス様は休息中の奴らに攻め寄る必要はないと申しておられたが、はて?」
一匹のバルログがハートのAを置いて声をあげた。
「きっとご自分の獲物にするんだろうさ、久しぶりの侵入者だもんなぁ」
傍にいたサタンパピーがそう言って頬をふくらませる。
「いつもおいしいところを取っちまうんだから。あのカバみてえなでけえ口開いて全部いただきますかよ、
オレたちは残り物すらもらえねえんだぜ!」
また一匹のサタンパピーがトランプを握った手をテーブルにたたきつけた。
「おいおい、今の聞かれたら大変だぞ。昔バラモス様に体重が増えたことをやんわりと告げた仲間が
目の前で焼き尽くされたのを見たんだから。俺もあやうくとばっちりを受けそうになった。
そういうことはいうんじゃない」
少し離れたところで聞いていた別のサタンパピーが口をはさんだ。
テーブルを叩いたサタンパピーは鼻を震わせ眉をつりあげる。
「なにビクビクしてんだ、聞こえるわけねえよ、愚痴くらい言わせろや」
憤りのあまりつい悪い口が出た。
「はぁ?誰もビビってねーよ、忠告しただけだろが」
魔物同士の間に火花が散る。
「まあまあ、そう喧嘩しないで」
隅の方でかしこまっていた、獅子の変種マントゴーアがのそりとつぶやいた。
「たまには俺たちにも遊ばせろよっていいたい」
「そうだな、いつもいつも掃除だ飯炊き見回りだ、そんなのだけってのはなぁ。体がやわになっちまう」
「ああ、ネズミどもと遊んでやりてえなあ」
周りで退屈そうにトランプ遊びを見ていた仲間たちがぐちぐちの文句を言い出した、
バルログは足元からクラッカーを取り出すと、不平不満でいっぱいの部屋内を大きく見渡し
「しかし、絶対今回もバラモス様が一人占めだろう。そして我々はそれに物言いをつけられる立場では
ないということだ。仕方がないことだ、あきらめるしかない」
手にした愛用のクラッカーを鳴らせ合わせはじめた。
307 :
2:03/12/11 22:10 ID:4mOc2dNS
誰も何も言えなくなった。正論だから文句はでない、わかりきったことだった。室内は急にしんとなる。
しかし、あるサタンパピーが口を開く。
「いやまて、こういうのはどうだろう。回線が不通だったので命令が出たことを知りませんでした、っていうのは」
「ん?」
「そうか、機械が故障しちまったことにすればいいわけか」
いつもバラモスは部下たちに、一方通行の回線をつかって命令を伝えるのである。
「おお、その手があったか」
バルログも思わずうなずいた。
「いいね、これならバラモス様も仕方ないなって言ってくれるよ」
「じゃあいいわけだな? よっしゃああ、今すぐ行こうぜ」
サタンパピーたちは手を取り合い喜んだ。
「いこういこう、そうしよう」
他の者たちも口々に言いあい、腰を上げ始めた。
「まて、いくらそれでも勝手に人間たちを倒していいものかわからんぞ、少なくとも手を出していいという
命令は出ておらんのだから」
しわがれた顔を伸ばしてマントゴーアがゆっくりと口をひらいた。
「いいじゃんよお、どうせ殺しちまうんだろ、後でやっても今やっても変わりゃしねえよ」
「そうだそうだ! おまえ黙れ!」
魔物たちはマントゴーアを指差した。
「しかしなぁ……」
言いよどんでいたところに、傍らの一匹が手をかざし火炎をとばした。
轟音を立てて床が焼け焦げる。マントゴーアは四肢を折り曲げて床の上に這いつくばった。
「わ……かった、もう何もいわん」
マントゴーアがそのまま動かなくなると、魔物たちは円陣を組んだ。
「おし、俺たちの手で連中をぶっ倒そう」
「おーっ」
「旗でも立てていくか?そうすりゃ目立つぜ。人間どもも驚くぞ」
「観客もいないのに目立ってもしょうがないじゃん」
「でもちょっといいかも」
「おいどんもその提案に賛成するでごわす」
「よし、おまえ変わり者だから旗持つ役な」
バルログが指図すると、一番若年のサタンパピーが部屋内にある古びれた棚に向かい、中から旗を取り出す。
赤を基調とした縁取りが金枠の旗を、先ほどのサタンパピーに手渡す。
「なんだよ、持っていくことに決まっちゃったのかよ」
「えーっ、本当に旗なんてもっていくんですかぁー?」
「うるさい、もう決めたんだよ!」
魔物たちは騒ぎだした。気分がすっかり別の方へ向かっている。
「おいどんは頑張り申す!」
ある一匹と一匹の会話。
「どういう基準であいつに決めたんだ?」
「もし万が一反撃食らったとき、いい的にされるだろ。そのスキに俺たちはより多くの人間をやる」
「なるほりょ、あいつならそういう役どころだってこと気づかなそうだもんな」
バルログが高い声を出す。
「よーし、そろそろいくぞ。この旗に続け」
悠々と旗を掲げたサタンパピーを先頭に隊列を組む。
「とっつげきいぃ」
魔物たちはドアをあけて、次々と廊下に流れ出ていった。床を踏み鳴らす音とともに、ろくに掃除もしなかった
床から埃が舞い乱れた。
「どうなっても知らんよ、わし」
見送るマントゴーアは、全員が出ていくと頭を垂れた。
こうしてバルログとサタンパピーの軍団は、大仰な旗をたなびかせて行進していった。
なお、力強くかかげられた旗には大きく「成金」を意味する文字が刻まれていた。
もちろんその言葉には何の意味も無い。
刻一刻と決戦の時が近づいているというのに、バーバラは落ち着いていた。
大抵こんなときはあたふたして、傍にいる中間たちに潤んだ視線を投げかけているのが常だった。
でもいまは心安らかに時がたつのを追っている。それかもしかしたら心は空っぽなのかもしれない。
ピサロは鋭敏な耳の奥で、どたどたと騒がしい足音をあげながら大勢のものが近づいてくるのを
感じとった。両びんに垂れた銀の髪がそれに反応するかのようにざわめいた。
いったいどこの間抜けどもだ、と。
サマンサは無防備で休んでいられることを幸せに思う。
ピサロが傍にいるから安心していられる。こんなに気持ちを安定させてくれる男は他にいない。
身をゆだねることができるということ、少年のアルスにはそういうところが、ないのです。
ゼニスはいびきをあげていた。完全に眠りこけていた。おそらく戦闘になるまで眠っているでしょうこの人は。
ティナは怯えた。研ぎ澄まされた感覚で、猛獣にも似た遠くから響いてくるうなり声をキャッチして
頭の中が一瞬、錯綜状態になった。
そのあとで電撃に打たれたような衝撃が身体中を駆け巡り我にかえる。「ティナ、大丈夫か」
エドガーはティナに気をかけながら、頭の中で別のことを考える。
せめてドリルは欲しかったな、このボウガンも結局大した改造はできなかったし。
決戦にはドリルが必須、とはエドガーの口癖。
デッシュは首をふりまわして、異変がおこったことを確信した。
「なにか来るそ」
わざとらしいほど滅茶苦茶な並びの足音が扉の向こうから近づいてきていた。
アルスとライアンは立ち上がって、まず何よりも勇者、戦士としての役目を果たそうと先頭に立った。
彼らは自分の役どころをよくわかっているのである。
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本 死神の鎌
最終行動方針:ゾーマ打倒】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1
最終行動方針:ゾーマ打倒】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー・ミスリルナイフ
最終行動方針:ゾーマ打倒】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
最終行動方針:ゾーマ打倒】
【アルス(マジャスティス習得) 所持武器:対人レミラーマの杖 天空の剣 黄金の腕輪
最終行動方針:ゾーマを倒す】
【ティナ 所持武器:プラチナソード チキンナイフ
第二行動方針:ゾーマ打倒】
【エドガー 所持武器:エンハンスソード ミスリルシールド ボウガン 天空の鎧(装備不可) スナイパーアイ ブーメラン 首輪×5
最終行動方針:ゾーマ打倒】
【デッシュ 所持武器:アサシンダガー 加速装置 裁きの杖 首輪×5
最終行動方針:ゾーマ打倒】
【ゼニス 所持武器:アンブレラ 羽帽子?
行動方針:最後まで物見遊山?】
―――私はどうして生きているのだろう。
ビルのロビーに置かれたソファーに身を預けながらセリスは虚空を見つめながら思った。
―――私にはもう何も残っていない。
『ロック』という人の死がもたらした喪失感。以前にも感じたことがあるような気がするソレは、失ってしまった記憶の1ページを浮かび上がらせた。
海に浮かぶ孤島。小さな家。眠ったように死んでいる老人。
床に落ち、痙攣している生気の無い魚。窓から見える海に突き出した崖。
青い布を巻いた一匹の鳥。そこに浮かび上がる『ロック』という名前。
―――生きていく理由なんかもう…。
セリスは音も無く立ち上がると夢遊病者のように歩き出した。
「これは…」
ミレーユは最後に裏返したカードを見て、そう呟いた。
(どういう意味なの…?)
考えられる可能性を頭の中で並べながらこのカードの意味を模索した。
しかし、どれも的から大きく外れているような気がした。
一旦思考を止め、軽く溜め息を吐く。
そして、この時初めて先程までは無かった違和感に気付いた。
「…セリス?」
振り返ったソコにはあの儚げな女性の姿は無かった。
(しまった…。)
ミレーユは歯噛みした。占いに集中しすぎてセリスの事を忘れてしまうなんて。
足元に置いた荷物を拾い上げ、ミレーユはセリスの姿を探した。
(…いた!!)
視線の先。まるで意識があるかのように開閉するガラスの扉をくぐるセリス。
「待って!!」
声を張り上げてミレーユはセリスを追おうとした。
しかし、最初の一歩を踏み出した時に背後から聞こえた電子音が、
ミレーユを振り向かせた。
現在位置:神羅ビル・一階ロビー
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド
第一行動方針:セリスを追う
第二行動方針:ゲームを覆してテリーの仇を取る】
【セリス(記憶喪失・自我薄弱) 所持武器:ロトの剣 現在位置:神羅ビル外
第一行動方針:とりあえず高い所へ】
<<神羅ビル60階>>
「あ、ここのドアは大丈夫みたいッスよ」
ティーダは後ろから階段を下りてくるエアリスにそう言うと、
ドアの横に据え付けられたコンピューター・パネルの黒い半透明の薄いプラスチック板に蓋をされたスイッチを押した。
するとパネルは軽い電子音の後に、ソコについていたランプがにい光を灯した。
すると自動ドアは正面に立っていたティーダを感知し、軽い駆動音と共にそのドアを開いた。
「よかった。このままビルの中に閉じ込められる事にならなくて」
エアリスは軽く安堵の表情を浮かべていた。
神羅社。
この世界を支える唯一無二の大企業。
その中枢にあたるこの新羅ビルには最先端の技術が使われている。
その一つがカードキーを用いた鍵の開錠システム。
この森羅ビルの60階から上の扉は全てこのシステムによって支配されているのだ。
ただ、防災上の事情からか、『機能的に内側』にあたる部分にこういった
コンピューター・パネルが付けられていたのだ。
社長室を荒らしまわってもカードキーを見つけられなかったティーダ達三人は
その機能を使ってこの階段部屋まで来たのだ。
もちろん、他の各階の扉には付いていなかったため入れなかったのだが。
「あとはこのエレベーターで下の階にいけるわ」
エアリスはそう言うとエレベーターのスイッチを押した。
エレベーターは69階に止まっていたのか、程なくしてベルの音を鳴らし、
両開きの扉を開いた。
「キャッ」
モニカはその扉の向こうの景色に軽い悲鳴を上げた。
「高所恐怖症ッスか?」
ティーダはそのガラス張りのエレベーターから見える景色を見てモニカに言った。
「いえ…。ただこんな高い所に来た事なんて無かったものですから…」
「大丈夫よ。落ちたりしないから」
エアリスはモニカを安心させる為、軽く笑って見せたが…。
(なかなかいい性格みたいね)
モニカの瞳が未知の文化に対する期待に輝いているのを見て、エアリスは彼女の評価を改めた。
「とりあえず一つ下の階にいこ。流石に直接一階に行くのは無用心だし」
急に下降を始めたエレベーターに、モニカは楽しそうな悲鳴をあげた。
<<神羅ビル59階>>
「ここからは外の非常階段を使おうと思ってたけど…」
緑の電灯の灯る扉を開けたエアリスはソコを使うという考えを改めようと思った。
もちろんこの非常階段が使えないという理由ではないのだが、
それでも選択肢から外さなくてはいけない理由があった。
「あとはこのエレベーターで下の階にいけるわ」
エアリスはそう言うとエレベーターのスイッチを押した。
しっかりしているが簡素な作りの鉄製の階段は慎重に踏んでもある程度音を出してしまう
し、地表までずっと身を隠す壁も無いため誰かに発見される可能性も、襲われる可能性も高い。
そしてなにより―――
夜からずっと歩き詰めだったため正直疲れていたのだ。
「こっちから行くよりエレベーターを使った方が危険度は低いと思うんだけど、
なにか意義のある人は…」
ティーダとモニカはそろって首を横に振った。
「それじゃあ、決定ね♪」
そして三人はエレベーターに乗り、1と書かれたボタンを押した。
【ティーダ/エアリス/モニカ 現在位置:神羅ビル・59階(エレベーター)
所持武器:吹雪の剣・いかづちの杖・参加者リスト/
エドガーのメモ・マジャスティスのメモ/ エドガーのメモ(ボロ)
第一行動方針:ビルを降りてエアリスの家へ
第二行動方針:アーロン、クラウドを探す
最終行動方針:ゲームから抜ける】
保守
318 :
1/4:03/12/18 14:28 ID:CoBSMA2P
暗闇の中に、玉座が1つポッカリと浮かんでいる。
その上に、何かが1つ座っていた。
髑髏のような顔をした、何か。ヒトではない。魔物でもない。生物ですらないのかも知れない。
それは全てを憎む魔より来たりしモノ。ゾーマという名を持った、何か。
ゾーマの前に三つの魔が、目の前の存在に怯えるかのように小さく、立っていた。
実際怯えているのだろう。彼らは取り返しの付かないミスを犯した。
全身をすっぽり覆うローブを身に纏ったエビルマージが、一番怯えていただろう。
この場で消し飛ばされたとて、文句は言えない。
腐肉を引きずるバラモスゾンビ、太った龍のような頭をしたバラモスブロスも真っ青な顔をしてゾーマの前に立っている。
ブロスの部下が独断専行で動いたらしい。無駄に駒を失うような事が有れば彼もただでは済むまい
残るはバラモスゾンビだが…まあ、ゾンビの顔色は最初から真っ青だ。彼自身に落ち度は無いので堂々としたモノである。
「エビルマージよ…」
「はっ、はいぃっ!」
エビルマージはゾーマに名を呼ばれ、上擦った声で返事をした。
クソ、いくらヤツらにゲームを脱出されて気が動転していたとは言え、素直に出てくるなんてマヌケな真似をしてしまった。
殺される。間違いない。コレを口実に自分を消す気に違いない。自分ならそうする。
クソ、クソクソクソクソクソ!納得行かない。畜生…!
「あ、あの、これは…アークマージ老が…」
「エビルマージ、バラモスゾンビと共にサタンパピーの部隊を援護せよ」
何か、愚にも付かない言い訳を言おうとしたエビルマージをゾーマの言葉がピタリと止める。
「…は?」
「ヤツらを捕まえ、もう一度ゲームに放り込め。いいな?」
淡々と命じるゾーマをしばらくきょとんと見つめてから、エビルマージはローブの下でいやらしい笑みを浮かべた。
口は綺麗な三日月型なのに、瞳は真ん丸で笑っていない、そんな笑み。
319 :
2/4:03/12/18 14:29 ID:CoBSMA2P
余裕のつもりか?自分など眼中にないのか?そこまでしてこのゲームを続けたいか?
…まあいい。どうでも良い。それならそれでいい。時間を稼げるなら此方も万々歳だ。
「御意」
エビルマージは大げさに、わざとらしく頭を下げると振り返って歩き出す。彼の姿はすぐに闇に消えた。
バラモスゾンビは腕組みをして、ふんと鼻を鳴らす。そのまましばらく待ち、ゾーマが何も言ってこないのを確認してからそれを追った。
「…ゾーマ様」
「惜しい駒ではない」
何事かを聞こうとしたバラモスブロスに、ゾーマは重々しい声で答えを先回りさせた。
惜しい駒ではない…それは、サタンパピーの部隊か?エビルマージか?バラモスゾンビか?恐らく、全部だろう。
「…お前は、兵力の確保だ。1時間以内に出来うる限りの兵力を確保しろ」
「御意」
バラモスブロスは真っ青な顔のまま頭を下げた。
どうやらお咎め無しだというのに、彼の顔には絶望が張り付いたままだった。
バラモスゾンビですら惜しい駒ではない。同等の立場の自分も、恐らくはそうだろう。
…つまり、失敗すればそこまで。惜しくもない駒をわざわざ助けはしないだろう。この闇の帝王は。
不必要な、けれどわざわざ自分の手で壊す事もないような…そう、例えるなら飽きたオモチャ。自分達は、飽きられたオモチャ。
何となく、ゲームの参加者の絶望が理解出来たような気がする。
この瞬間、バラモス達とピサロ達は間違いなく…多少の差異はあるにせよ、同じライン上に立った。
お互いの価値が完全に等価な、殺し合いのスタートラインに。
その差異も、ほんの些細なモノだ。
役に立たない手駒が有るか無いか、たったそれだけの違いだ。たった、それだけの。
320 :
3/4:03/12/18 14:31 ID:CoBSMA2P
「何も言う事はないのか?エビルマージよ」
「死に損ないの負け犬に言う事はないがね。世の中、生き延びた者勝ちだ」
石畳の廊下を歩きながら、エビルマージとバラモスゾンビは真っ正面を睨み付けていた。
お互いの口から漏れるのは鋭いナイフのような呟き。
「勝てば官軍、か。さすがはインテリだな。狡猾さは魔界一だ」
「お褒めに預かり恐悦至極」
そのセリフを最後にバラモスゾンビはむすっと押し黙り、エビルマージは口の端に僅かな笑みを浮かべた。
バラモスは生きていた事については多少驚いたが…生きているならしょうがない。また利用するまでだ。
だが、コイツの骸は究極生物に利用したはずだ。後で調べて置かねば。
ゾーマはくい、と片手を上げるとその指先に小さく魔力を込めた。
「ピエロよ、エビルマージの研究室に制御を移す。ゲームは貴様が管理しろ」
呟きは魔力と1つになり、消える。言葉はエビルマージの一つ目ピエロの元に届いたはずだ。
ゾーマは腕を下ろし、そのまま静止…しなかった。
ゾーマの身体が震え出す。
寒いわけではない。辛いわけではない。寂しいわけでもない。
「クックックックックックッ…ここまで、とはな…ククククッ」
ゾーマは笑っていた。だが、何故笑っているのだ?
参加者に逃げられた事も、エビルマージ達の無能ぶりも、この魔王にとっては面白い事ではないはずだ。
それが、どうして、なぜ、笑うのだ?
ゾーマは、自分がいつ生まれたのかを覚えてはいない。覚えている必要もないので。
ただ、遙か昔からと言う事だけは覚えている。
幾度か、肉体が永劫の時間に飲み込まれ朽ち果てそうになった事もあったが、そのたびに、いつぞやに習得した肉体交換の呪法で新しい身体を得てきた。
321 :
4/4:03/12/18 15:03 ID:CoBSMA2P
その内、彼は大魔王になった。なるべくして、全てを憎む魔の者、大魔王ゾーマに。
その間、彼は幾度も身体を取り替え、己は永遠の魔王だと信じるようになった。実際その通りだった。つい、最近までは。
肉体を取り替えれば永久に存在出来る。ソレが、間違っていた。
魂の摩耗。無限の時と、幾度もの肉体交換と、魔王として存在している事それ自体が強靱な彼の魂を僅かずつ削り取っていったのだ。
人間ならば、八十年、九十年程でたどり着く境地。「生き疲れた」という思いに、彼はようやくたどり着いたのだ。
だが、彼は認めなかった。自分は魔王だ。魔王が滅んでいいはずがない。全てを統べる魔界の王。だから、魔王。それが生き疲れただと?
冗談ではない。だが、もういいと思う。だけど、それを認めるわけには行かない。だが、もう疲れた。
そんな、矛盾した考えを統合するために…このゲームはある。
ゾーマは片手を上げると、五つの指先で器用にルーンを描く。
ゾーマの目の前に闇の檻が現れ、その中に輝く何かが無数に現れる。無形の何か。魂と呼ばれるモノ。
ゲームの参加者の魂。強靱で、柔軟で、力強い。絶望のトッピングに彩られた魂。
そう、ココにある魂は強い。例えゲームが始まったとたんに死んでしまった者であっても、例え心を壊した者であっても、魂の強さは常人とは比べ者にならない。
何しろ、メンバーの選考理由はその一点にある。
ゲームを抜け出して自分と戦おうとする者など、それこそ全ての並列世界に置いて最硬の魂を持つだろう。
彼は、ゾーマは、それらを取り込むつもりだった。
すり減った自分の魂を、他人の強靱な魂で補完する。絶望を糧にそれらを飲み込み、ゾーマは完全になる。
ゲームを最後まで生き延びた全並行世界最強の肉体に、若返り強く強靱になった魂を納め、ゾーマは真なる大魔王となるのだ。
ピサロ達の脱出の際に、かなりの絶望や闇を吸い上げられてしまったようだが、この程度ならば問題ない。
322 :
もう一つ:03/12/18 15:05 ID:CoBSMA2P
こんな物を取り込む必要はないと思う。そうすれば、魂が摩耗している自分は倒されるだろう。魂の根本的な強度で、負けている。
戦いを決めるのは意志。それが摩耗している自分は勝てない。それで楽になるが…
そんな事は許されない。自分は魔王なのだから。
魂を取り込もうとすると、ゾーマの眉間がピシリとひび割れた。
脆くなった肉体が頑丈な魂を支えきれない。だが、問題はない。すぐにヤツらを倒してしまえば問題はない。
負けるはずはない。何しろ彼は魔王なのだから。
まsねー
死守
死守その2
「うむむ、どうも不気味な場所だな…」
「クェ」
チョコボは、オルテガの感想を肯定した。
地面に張られた2対の鉄の棒。その上にある、車輪のついた長方形の物体。
おそらくはこの鉄の上を走る乗り物なのだろう。車輪は荒れた道には弱いが、このように硬くて平坦な上を進むのは向いている。
それはわかるのだが、これだけ大きなものをどうやって動かしているのかはわからない。
人、あるいは動物の力に因らないシステムは、オルテガの文明では『神秘』と呼ばれる。
これもそう言った類いのものなのだろう。
オルテガはこの物体……『列車』……について考えるのをやめた。
自分は学者ではないから『神秘』に付いて考察しても仕方がない。
あるモノをただ受け入れるだけだ。なぜかを追及するのではなく、どうするのかを追及すべきだ。
ともあれ、これは移動手段なのだろう。
オルテガは列車の中に乗り込んだ。チョコボも、少し狭そうではあるが後に続く。
埃まみれの車内を移動して戦闘の方まで来ると、そこにはレバーやスイッチがあった。
「む、これか」
スイッチを押す。レバーをまわす。
が、何も起らない。オルテガは首をかしげる。これは乗り物ではないのだろうか?
乗り物である。しかし動かないのは当然だった。
この列車は壊れて破棄されたのだから。ここは、壊れた列車の、墓場だった。
現在位置:列車墓場
【オルテガ(チョコボ) 所持武器:危ない水着 グレートソード 覆面 壊れた水鉄砲
ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
第一行動方針:アルスを探す
最終行動方針:未定】
327 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/12/26 18:51 ID:1NLTZBo2
ほしゅ
328 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/12/26 23:12 ID:5pXaJVZY
捕手
保守。
330 :
sage:03/12/31 03:04 ID:+qieGPSn
保守とう
保守党
あけましておめでとう保守。
おお、IDがDQだ。縁起がいいぞw
334 :
1/4:04/01/01 18:54 ID:anKn1jLK
魔物たちは侵入者たちがいる扉を躊躇無く開けた。
中にいるのはヒヨワな人間どもで、生意気にもゲームから逃げ出してきたムシケラどもだ。
自分たちの欲を満たすための獲物であり、自分たちの退屈を紛らわす玩具である。
そう思い込んでいた魔物たちは、警戒など微塵にもしなかった。
それ故に、手痛いしっぺ返しを受けることになる。
溶接された扉をサタンパピーが派手に蹴破った瞬間、その顔面に白刃が突き刺さった。
あっと叫ぶ間も無く、その隣にいた一体もハンマーで叩き潰される。
「あ…ああ!」
魔物たちが、部屋の中にいるのがただの人間ではないという事に気付いたのは、
既に大爆発の炎に飲まれたあとだった。
デスピサロ、サマンサ、バーバラのトリプルイオナズンが部屋の外にいる魔物を残らず飲み込む。
「この感じ、擬似魔法ではなく本物の魔法のようですね」
「それなら、禁止魔法とかも普通に使えるってことかな?」
禁止魔法の中には蘇生魔法も含まれている。だから安心というわけでもないが、バーバラの表情に少し明るさが戻った。
しかし、デスピサロはそれを否定する。
「安心するのはまだ早い。ゾーマが直接魔法を封じる可能性もある。広大なフィールドでは無理でも、城内なら出来る可能性がある」
「そう言えば、屋外なのにルーラとか聞かない場所とかあるよね」
バーバラは肩を落とした。結局はゾーマを討たない限り、何も解決しない。
そして、ゾーマを倒すにはこんな所で足止めを受けるわけには行かないのだ。
気を取り直し、魔法を唱える。今は、戦う事を考えるべきだから。
335 :
2/4:04/01/01 18:55 ID:anKn1jLK
「大したものだな」
エドガーは前で戦う二人を見てぽつりと呟いた。
エドガーとて、剣術にはちょっとした腕を持ち合わせている。
しかし、アルスやライアンのそれに比べれば及ばないと素直に感じる。
戦いを本職にしているものの凄みというか。昨日はボウヤ扱いしていた少年と今の姿は、どうも一致しない。
「…と、遊んでいる場合じゃないな」
脇からアルスを狙おうとしていた魔物にボウガンを撃つ。大した被害は与えられないが、一瞬だけ魔物は怯み、その瞬間アルスの剣が魔物を両断する。
「勇者、か。伊達じゃないね」
ずしゃ、と。ライアンのハンマーが最後のバルログを叩き潰し、第一陣は全滅した。
アルスとライアンはやや息を荒げながら、武器を収める。
二人にティナが駆け寄った。
「アルス君、ライアンさん、二人とも大丈夫?」
「僕は大丈夫。上手く不意をつけたし、援護もあったから」
「しかし、すぐに新手が来るでござるよ。次は油断してくれないでござる」
「………」
三人は黙った。今回は良かったが、消耗戦になれば時間が経つほどこちらが不利だ。
回復の暇も貰えないなら直にでもゾーマを倒さないといけない。
しかし、自分たちでゾーマを倒せるものか……
「場所を移動するぞ」
デスピサロたちがやってくる。
その考えはもっともだ。しかし、
「どこへ?ゾーマは僕たちを休ませるつもりは無いようだけど」
逃げ回れば逃げ回るほど、勝ち目は薄くなる。だから……どうするべきなのか。
重要な選択になる。それはデスピサロにもわかっていたから、即答は出来ない。
「考えるのは後だ。逃げて、逃げながら考える。そうするしかあるまい?」
336 :
3/4:04/01/01 18:58 ID:anKn1jLK
その時、ライアンが言った。
「考えてみたが、やはりこのままではもたないでござる」
「そんな事は……」
わかっている、とデスピサロが言う前に、ライアンは続きを言った。
「我々以外の参加者たちを引き込むというのはどうでござるか?こんな状況なれば、事情を話せばきっと協力してもらえるでござるよ」
「………」
全員が沈黙した。暫くして、サマンサは嘆息する。
「……ふぅ。そんな事が出来ればやっています。かの場所はゾーマの魔力で構成された仮想空間ですよ? 干渉する手立てはありません」
「しかし、その仮想空間を抜けてここに来たのでござろう? ならばその逆をするまででござる」
「だから、どうやって――――!」
「まあ、落ち着け。確かに、行く方法もあるのは間違いない。しかしゾーマの力で移動を行っているのなら、結局はゾーマを倒さない限り、無理な話だ」
「いや、しかし、全てをゾーマ一人がやっているわけじゃないだろう?」
脇から口を挟んだのはエドガーだった。
「例えば、定時放送はゾーマの配下らしき奴が代わりにやっていた。つまり、少なくともゾーマ本人でなくとも、何らかの方法で放送を流すことはできるはずだ」
なるほど、とデッシュは頷く。
「なら、その方法を探そう。俺は戦いはできないが、その手のシステムは自信あるぜ」
「連絡が取れるならあたしも賛成かな。まだ、仲間が残ってるし」
バーバラも賛成する。ただ逃げ回るよりも、とアルスとティナも賛成した。
そして、デスピサロも。
「可能性は低いが……この期に及んで選り好みはしていられんな。試せることは全てやる。サマンサ、それでいいな?」
「……御意」
337 :
4/4:04/01/01 18:59 ID:anKn1jLK
一方、そんな一堂を脇から眺める視線が一つ。
「さてさて、どうなることやら」
ゼニスはどこまでも他人事のように呟いた。
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本 死神の鎌】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー・ミスリルナイフ】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)】
【アルス(マジャスティス習得) 所持武器:対人レミラーマの杖 天空の剣 黄金の腕輪】
【ティナ 所持武器:プラチナソード チキンナイフ】
【エドガー 所持武器:エンハンスソード ミスリルシールド ボウガン 天空の鎧(装備不可) スナイパーアイ ブーメラン 首輪×5】
【デッシュ 所持武器:アサシンダガー 加速装置 裁きの杖 首輪×5】
以上、第一行動方針:参加者との連絡方法を探す
最終行動方針:ゾーマ打倒
【ゼニス 所持武器:アンブレラ 羽帽子? 行動方針:最後まで物見遊山?】
保守とう
h
o
341 :
1/2:04/01/05 21:55 ID:qAPh1Iej
「アイラ…さん?」
ミレーユはその姿を見て呆然と呟いた。
ゲーム開始直後に出会った女性、彼女に支給されたチェスで一時を過ごした事がある。
あのときの彼女は生気に満ち溢れ、使命感を秘めた強く美しい人だった。
今はどうだ。瞳に光は無く、全身に気だるさが篭っている。
瑞々しい肌は青くくすみ、片腕では切り落とされて存在しない。
幽鬼だ。そういうより他に表現方法はない。
「アイラさん、でしょ?よくぞ無事で……」
はっと、ミレーユは思い出した。彼女が探していた人は、最初の放送で呼ばれていた。
それでセリスのように我を失って、こんな姿に成り果てたのか……?
一方アイラ。
彼女に思考能力など、ない。ミレーユなど、そもそも気にならない。
彼女を支配するのは、自分に差し伸べられた暖かい手。
呪いに捕らわれる我が身を照らす、主の声。我が王の御言葉。
それ以外は全て些末事だ。
ミレーユの脇を通り抜けて、アイラはビルの外へと歩いていく。
「待って!」
そんな声に耳を貸すわけも無く、立ち止まりもしない。
ミレーユにとって幸運だったのは、呆気に取られてアイラの行く手を遮れなかったことだ。
邪魔をする相手には容赦も遠慮もしない、苦痛も疲労もない屍。それが今のアイラだから。
しかし、そんなことはミレーユが知る由もない。
知り合って言葉を交わした女性が相次いで気が触れた行動をすることに彼女は愕然とする。
何で、自分がこんな目に会うんだろうと――――
自分のやる事なすこと全てが裏目に出ている気がして、目の前が暗くなる。
やはり、自分に出来ることなど、何もないのだろうか、と。
――――危険を避け、一人で時を過ごした方がいいのか、と。
342 :
2/2:04/01/05 21:56 ID:qAPh1Iej
ミレーユは頭を振った。いけない、こんなことでは。私は変わるんじゃなかったのか。
無意味かもしれない、でも何もしないよりはいい。
そう思ったから、セリスを連れて次の世界に来たんじゃないか。
ある方向から、足音が聞こえてくる。セリスがいる。
どちらも放っておけないけれど……
ビルから去って行くアイラに一瞬視線を向けてから、ミレーユはセリスの後を追った。
現在位置:神羅ビル・裏側
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド
第一行動方針:セリスを追う
第二行動方針:ゲームを覆してテリーの仇を取る】
【セリス(記憶喪失・自我薄弱) 所持武器:ロトの剣 現在位置:神羅ビル外
第一行動方針:とりあえず高い所へ】
現在位置:神羅ビル・正面
【アイラ(ゾンビ・左腕欠損) 所持武器:ダイアソード 死者の指輪
行動方針:ゾンビ状態中はとんぬらを探していく。死者の指輪が外れたら???】
保守塔
345 :
1/5:04/01/09 23:41 ID:jdsOd7mu
気合一閃。天空の剣が空間もろとも魔物を切り伏せる。
それで、今回襲ってきた魔物の群は全滅した。
アルスは周囲に敵の気配がないことを確認してから、大きく息を吐いた。
ちょっとやそっとでへたるほどヤワではないが、さすがに連戦で疲労が溜まり始めている。
また、天空の剣が思うほど使いこなせない事も疲労の原因の一つだった。切れ味こそ凄まじいものの、重くてバランスが悪い。
元々天空の血筋だけが使える(とライアンは語る)剣である。今は『妥協』してアルスの使用を認めているが、本来の使い手ではない分でメリットはどうしてもある。
せめて、あの剣があれば……とは思うが、今はそんな贅沢も言えない。
「アルス殿、大丈夫でござるか?」
「何とか。みんなは?」
廊下の向こうから皆がやってくる。特に怪我をした者はいないようだ。
それもアルスとライアンが前線に出て敵の猛攻を一手に引き受けているおかげである。
前衛でアルスとライアンが直接攻撃を行い、
中にエドガーとティナが後衛の守りと前衛のフォローし、
後衛にデスピサロ、サマンサ、バーバラがバックアップと非戦闘員の守る、
自然と、そんな形になっていた。
アルスとライアンはティナとバーバラの癒しの魔法で傷を回復させると、再び先頭をきって歩き出した。
広大な城内は敵だらけである。後衛に下がって休む事など、できるわけがなかった。
城の中を彷徨い、部屋を見つけては中に入り、何かないか調べる。
そしてある部屋に入った時、デッシュは部屋の中央にあるソレに目を見つけた。
それに備え付けられた端末やパネルを弄りながら、しばらく考えて、そして言う。
「みんな、コレを見てくれ」
346 :
2/5:04/01/09 23:45 ID:jdsOd7mu
ソレは、半球のカプセルで覆われた、どこかの島のミニチュアだった。
横長の島で、北側は山脈で南側は砂浜。西には町があり、東には洞窟がある。
そして中央には、巻貝を思わせる不思議で巨大な建造物があった。
「コレがどうかしたのか?動力は入っていないようだが」
エドガーはデッシュの隣りにあるパネルに手を伸ばし、二度三度、叩いてみる。
反応は……ない。
「ああ。多分コレは未使用なんだろう」
「どういうことですか?」
首を傾げるサマンサ。さすがの彼女もこの手の知識はない。
エドガーも知識はあるが、専門は機械そのものである。制御系はデッシュの独壇場だ。
「以前は行った部屋の中央に、バラバラに破壊されたオブジェがあったんだよ。
その時はサッパリだったが、計器等を見る限り、このミニチュアと同じようなものだったんだろう」
「なるほどな……つまりそれは使用後だった、という事か」
デスピサロの言葉にデッシュは頷く。疑問符を浮かべているものもいたので、デッシュは補足をした。
「あのゲームの世界は作り物だった。誰かが実際にいた世界を元にした箱庭だ。
そして、3つのミニチュアが破壊され、他の連中は4つ目に移動している……」
一部…ライアンとゼニス…を除いて、ハッとそのミニチュアを見る。
「つまり、私たちはこういったミニチュアの中にいた、と?」
サマンサの問いに首を横に振るデッシュ。
「いや……多分コレはモデルなんだろう。別世界を具現化させるための媒体、設計書。
こいつに何らかの力を加えて、仮想世界を実体化させたんじゃないかな」
「つまり、実体化している最中にコレを破壊すれば、仮想世界を構成する力も途絶える。
そうなれば仮想世界は自壊する……という仕組みなんだな?」
そういうこと、とデッシュはエドガーに頷く。
最初から話しに付いていけないライアンは、降参とばかりに軽く手を上げた。
「つまり、どういうことでござるか?」
「つまり、今稼動しているミニチュアから作られた世界に他の参加者がいて、
そのミニチュアを通してこちらから干渉する事が出来るかもしれない、ということだ」
347 :
3/5:04/01/09 23:48 ID:jdsOd7mu
デッシュの発言に全員が沈黙した。
エドガー、デスピサロを除く者たちは、いまいちピンとこないからであるが。
誰かが口を開こうとした、その時。
「………!」
アルスの表情が変わった。サマンサも憶えのあるその気配に顔を顰める。
「何だ……この禍々しい妖気は」
ドアの向こうを睨みつけるデスピサロ。ティナは不安げにアルスを見る。
「この気配。そんな……まさか」
アルスは口元を震えさせながら呟く。そして一度目を閉じ……
気合を入れて、見開いた。
「みんな、聞いてくれ。僕はこの気配を知っている。
……僕等の世界で魔王と呼ばれたモノが放つ妖気だ」
「………!」
サマンサの表情が厳しくなる。そんな二人の様子に、他の者たちも緊張を深めた。
「完全に僕等を察知したらしい。逃げても追いつかれるだけだ。
だから……僕がもう一度、アイツを倒す」
「で、でも」
戸惑うティナに、アルスは笑ってみせた。幾分引きつってはいたけれど。
「大丈夫さ。一度は倒したんだから……それよりもみんなは探索を続けて、一刻も早くとり残された人たちを助けるんだ」
「しかし、一人では無理でござるよ」
「……それは」
口篭もるアルスの肩を、ライアンは軽く叩く。
「一人では無理でも、二人なら勝てるでござるよ。助力するでござる」
「……ありがとう、でも」
「私も戦うわ、アルス君。機械のことはわからないけれど、戦うことはできるから」
「ティナさん……」
「そうそう。頭のいい人は頭のいい人が出来ることを。私たちは私たちに出来ることをしようよ」
バーバラはウィンクすると、デスピサロ、サマンサ、エドガー、デッシュに向き直った。
「そういうことだから。私たちでアイツらの相手をしてるから、早く皆を助けて」
348 :
4/5:04/01/09 23:52 ID:jdsOd7mu
そんなバーバラに、デッシュは慌てて言う。
「お、おい。ちょっと待ってくれ。そんなに強い相手なら皆で戦った方が…」
だが、話はエドガーが途中で遮った。
「わかった。死ぬなよ、お嬢ちゃん」
「エドガー!?」
「当然。そっちこそ、しくじらないでよ」
「ああ。……少年、ティナを頼む」
エドガーはアルスが頷くのを確認すると、デッシュの服を引っ張って部屋の外へと歩いていく。
その後にデスピサロとサマンサ、ついでにゼニスも続いた。
「ちょ、ちょっと!おい!」
「うるさいぞ」
「待てって言ってるだろ!何でわざわざ強い相手がいるってのに分かれるんだ!?
まるで……」
エドガーは仰々しく溜息を付くと、強く押し殺した口調でデッシュの耳元に囁く。
「それ以上は言うんじゃない。思っても絶対に口にするな」
「し、しかし……」
「幾ら城内が広いといっても固まっていたら身動きが取れなくなるかもしれないし、
……戦闘になったら非戦闘員を守らなきゃいけないだろう?」
「………」
非戦闘員、つまり自分のことだ。自分がいると思うように戦えない、エドガーはそう言っているのだ。
デッシュは後頭部を鈍器で殴られた気がした。それはじわりじわりと熱を帯びてくる。
「お嬢ちゃんが言っただろう。お前にはお前しかできない事があると。
だから、これからそれをやりにいく。そういうことだ、いいな!?」
「………ああ、わかった。すまない………」
349 :
5/5:04/01/09 23:53 ID:jdsOd7mu
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本 死神の鎌】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1】
【エドガー 所持武器:エンハンスソード ミスリルシールド ボウガン 天空の鎧(装備不可) スナイパーアイ ブーメラン 首輪×5】
【デッシュ 所持武器:アサシンダガー 加速装置 裁きの杖 首輪×5】
以上、第一行動方針:参加者との連絡方法を探す
最終行動方針:ゾーマ打倒
【ゼニス 所持武器:アンブレラ 羽帽子? 行動方針:最後まで物見遊山?】
【アルス(マジャスティス習得) 所持武器:対人レミラーマの杖 天空の剣 黄金の腕輪】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)】
【ティナ 所持武器:プラチナソード チキンナイフ】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー・ミスリルナイフ】
以上、第一行動方針:バラモスを迎え討つ
最終行動方針:ゾーマ打倒
いいぞ!!
がんばれ!!
351 :
1/3:04/01/12 18:42 ID:XSRkz0Mg
エビルマージはバラモスゾンビと別行動をとっていた。
水晶で移動を始めた集団の位置を確認しながら、研究所へと向かう。
敵が戦力を分けたからといって、こちらも合わせて分散させるのは愚の骨頂だ。
1対1では勝てない相手でも、1対0.5を2回なら勝つ可能性はでてくる。各個撃破のチャンスだ。
そんな戦術の初歩はエビルマージも承知している。
では、何故基本をないがしろにするのか?
理由は単純である、バラモスゾンビを始末してもらうためだ。
ゾーマは自分の叛意を知りながらあえて放置している、それは余裕の現われだろう。
自分のような羽虫がざわめいたところで、何も出来はしまい、そうたかをくくっている。
自分を虚仮にしている。よろしい、ならばその報いを受けてもらおうではないか。
このゲームを管理しているのは自分なのだ――――
バラモスゾンビに、勇者アルスとその一味が待ち構えている、自分が残りを始末するからアルスを始末して欲しい、と伝えたら喜んで賛同した。
力があるが故の傲慢である。ゾーマ付のブロスならば魂胆を見抜いただろうが、アルスに倒され骨に成り下がったバラモスにそんな知恵は無かった。
バラモスゾンビを上手く誘導できたことに満足しながら、研究室に入ったエビルマージだったが……
そこで、信じられない光景を見た。
352 :
2/3:04/01/12 18:44 ID:XSRkz0Mg
「な……なんだ、コレは!」
究極生物生成のためのポッド、その中に被検体であるリュックがいる。
彼女は、鈍い光を抱えていた。当然、先刻研究室から出た時は、このような物は無かった。
計器が、ポッドの中の魔力が異常な値である事を示していた。
ヘタに空ければ、逆流した魔力によって周囲は無に帰るだろう。
「ピエロ、コレはどうしたことか!」
姿の見えない配下のピエロを呼び出す。
ピエロは何もない虚空から染み出すように現われると、出し抜けに言った。
「ゾーマさまの命令で、仮想世界形成機の動力源制御システムをここに移しました」
「…馬鹿な、そんなことをすればポッドが空けられなくなる!」
制御システムを止めれば、仮想世界が消滅してしまう。
当然中の参加者たちも世界もろとも事象地平の彼方に行くだろう。
それ自体はどうでも良い。ただ、ゲームの続行は不可能になる。
それだけはゾーマも許さないだろう。ゲームが終わるまで、ポッドに手出しできない。
おのれ、余裕の理由はそういうことか。
エビルマージは歯がみした。さすがは大魔王、あの死に損ないのようにはいかないらしい。
どうする。ゲームに関心が向けているから、その隙をついてここまで進めたのだ。
終わってからでは遅い。追求されて、身の破滅を待つだけになってしまう。
考えろ。考えろ。
制御システムを止めてもよいだけの理由を。
353 :
3/3:04/01/12 18:46 ID:XSRkz0Mg
そして、エビルマージはニヤリと笑った。
簡単なことだった。止められない理由は、仮想世界で殺し合いをさせるためだ。
ならば、全ての参加者を仮想世界から出してしまえば、
システムを動かしておく意味は無いではないか。
参加者は打倒ゾーマを目指すだろう。この城は戦場になるだろうが、知ったことか。
むしろ、究極生物を完成するための絶好の隙になる。共倒れなら万々歳だ。
「そうと決まれば」
エビルマージはゾーマの『洗礼』を受けた一つ目ピエロに視線を向けた。
「お前には重大な欠陥がある故に抹消する。と、ゾーマさまに伝えよ」
「しかと」
次の瞬間、ピエロの体は四散した。塵も残さず、消滅する。
見届けたエビルマージは邪悪な笑みを浮かべて部屋から出て行く。
その間もリュックはただポッドの中をたゆたっていた……
【リュック :所持武器:なし 現在位置:エビマジの研究室 行動方針:なし 】
リュックのポッドに制御システムが設置されました。
・システムを止めると、仮想世界にいるキャラ全員死亡。
・システムを止めずにポッドを空けると研究室周辺にいるキャラ全員死亡。
354 :
1/4:04/01/13 22:09 ID:LoMha1P9
デスピサロ、エドガー、デッシュ、サマンサ、そしてゼニスの五人は城の中を駆け回っていた。
部屋という部屋の中に入り、目的のオブジェが存在しないか確認する。
中には金銀財宝が詰め込まれた部屋もあったが、それもスルーして探し続けた。
暫くして、デスピサロは何か妙だと感じた。
敵と遭遇するときの状況が変わったような気がするのだ。
コレまではある程度集まって一気に押し寄せていたのだが、今は単体行動している魔物と遭遇する事が多い。
アルスたちに気を取られている可能性もあるが、それにしても妙だ。
そんなとき、曲がり角の向こうに、数体の魔物がいるのを見つけた。
こちらの様子には気付いていないようである。
デスピサロはエドガーとサマンサに無言で合図をすると、死神の鎌を構えた。
「しかし、暇だな。エビルマージめ、ゾーマさまのお気に入りだからって、調子に乗りすぎじゃねぇか?」
トロルキングの愚痴を、マントゴーアは半眼で受け流す。
エビルマージから仮想世界形成機のある部屋を守るように命令されたマントゴーア、トロルキング、ソードイドの三体は部屋の前までやってきたのだが、トロルキングはエビルマージの専横が気に入らず、ソードイドは黙して語らない。
協調性はまるでない。もっとも、魔物にはそもそもそんな概念自体ないのだが。
しかし、バルログたちも出て行って戻らない。敵は思った以上に出来るようだ。
油断をしていたらやられる…そう、諭すべきだろうか。マントゴーアが思ったその時。
轟!
「がぁぁ!!」
トロルキングの全身を、紅蓮の豪華が包んだ。
355 :
2/4:04/01/13 22:10 ID:LoMha1P9
はっと我に帰った時には、2つの閃きがトロルキングを切り裂き、絶命させる。
「敵襲――――!」
マントゴーアは魔法を防ぐべく障壁を張り、ソードイドの複数の腕が敵目掛けて振り下す。
だが、鎌を持つ銀色の髪の男はソードイドの攻撃を一つ一つ跳ね返し、逆に腕ごとバラバラにしてしまう。
もう一人、金髪の男は魔法を唱えずボウガンを射てマントゴーアの瞳を潰すと、
返す刀で切りかかる。銀髪の男もその攻撃に加わる。
こうして、魔物たちは成す術も無く全滅した。
「上手くいったようだな」
剣を収めるエドガー。デスピサロは魔物たちが守っていた部屋の扉の前に立つ。
どうも、妙だ。何か、操られているような、気分の悪さがあった。
この魔物たちがここにある何かを守っていたようだった。
しかし、その割りには警戒は薄く、戦力も中途半端である。
まるでワザと、この部屋に誘導したような……そんな感じがした。
ワナ、か?そんな考えがよぎる。
それは部屋の中に自分たちが探していたミニチュアがあったことで、更にかき立てられた。
「コレだ!よし……」
早速作業に取り掛かろうとするデッシュに、デスピサロは念の為告げる。
「何が起こるかわからん、くれぐれも慎重にやれ」
「ああ、わかってる」
デッシュはそう言うと、パネルをたたき始めた。
出鱈目に叩いているようにも見えたが……どの道、ここはデッシュに任せるしかない。
「んー、なんじゃこれは」
部屋の片隅で、ゼニスが何かを見つけたようだった。
それを見たデスピサロはますます不信感を高めた。
それには、魔界の文字で、操作説明書と書いてあったのだ。
356 :
3/4:04/01/13 22:13 ID:LoMha1P9
どういうつもりだ?このような重要品を、何故こんな場所に置く?
そんな疑念はあったが、デッシュの元に言って、説明書の中身を解説する。
なるほど、と相槌を打って計器を作動させていく様子から察するに、
本物の操作説明書であるのは間違いないようだ。しかし何故こんなものがあるかはわからない。
そうこうしているうちに、デッシュの調査は完了したようだった。
「よし、こいつの動かし方は大体わかった。このスイッチを押してこいつに喋りかければ、
仮想世界の中に放送をかけることが出来るみたいだな」
と言って、ミニチュアの脇についている黒いマイクと、あるスイッチを指差す。
「それから、このあたりの計器を使って、仮想世界とここを繋ぐゲートを作る事が出来るみたいだ」
そう言いながらパネルの幾つかを叩くと、ミニチュアを覆うドームに数種類の文字が浮かび上がる。
「ただ……ゲートを開く事が出来るのは、指定した一つの座標のみのようだ。
複数の場所から、ここに転送する事は出来ない仕組みらしい。
つまり旅の扉はまた別のシステムを使ってる可能性があるな」
「そうか。 ……とにかく、皆に呼びかけよう」
エドガーの言葉に頷くデッシュ。サマンサもどこと無くほっとした表情である。
デスピサロは……少し考えた。怪しい。危険かもしれない。理性はそう言っている。
だが、何かをしないといけない、黙っていたら流されるだけだ、そうも言っていた。
だから。
「私は周囲の警戒をする。そちらは任せるぞ」
そう言うと、入り口の側に立った。
ここにいれば、何かが来る事をすぐ察知できる。何があっても対応も出来るだろう。
ワナだというのなら、正面から破ればよい。それだけのことだ。
357 :
4/4:04/01/13 22:15 ID:LoMha1P9
「放送の前に、どこにゲートを作るか指定しないと」
「ゲートはどれくらいもつんだ?」
エドガーの質問にデッシュは首を横に振る。そこまではわからない、と。
「……そうか。では、なるべくわかりやすい場所にしないといけないな」
「このでかいビルの屋上は?」
「相当高いぞ?わかりやすいが、大変すぎるだろう。
……ビルの正面入り口にしよう、それならわかりやすいし、移動も楽だ」
「わかった。ちょっと待ってくれ……」
計器を操作するデッシュ。
完了したのを見計らって、エドガーはマイクを手に取った。
「この巫山戯たゲームに参加している全ての者に告げる。
私の名はエドガー=ロニ=フィガロ。
君たちと同じ偽りの世界にて殺し合いをさせられていた者だ。
私は今、君たちと同じ世界にはいない。私はゲームが始まる前にいた場所にいる。
とある方法で脱出した我々は、打倒ゾーマを目指して始まりの場所に舞い戻った。
そして君たちに呼びかける。我々とともに、ゾーマを倒そう、と。
これまでに幾つも命が奪われた。親しき者を亡くし、悲嘆に暮れている者も多いだろう。
その元凶は何だ!
……状況に流され、手を血に染めた者も確かに悪い。
だが、そんな者より遥かに悪しき者が、討たねばならぬ者がいる筈だ!
故に、我々は皆に呼びかける。戦おうと。悲しみを終わらせようと!
……これより、君たちのいる世界に、この城に通じるゲートを開く。
場所は、その世界の中心にある巨大なビルの正面入り口前だ。
志在るものは、ゲートよりゾーマの城に来たれ。そして我々と共に戦おう!
繰り返す、場所は中央の巨大なビルの正面入り口前。
ゲートが何時まで維持できるかわからない。
勿論こちらも最善は尽くすが、なるべく早く決断してもらいたい。以上!」
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本 死神の鎌】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1】
【エドガー 所持武器:エンハンスソード ミスリルシールド ボウガン 天空の鎧(装備不可) スナイパーアイ ブーメラン 首輪×5】
【デッシュ 所持武器:アサシンダガー 加速装置 裁きの杖 首輪×5】
以上、第一行動方針:参加者が訪れるのを待つ
最終行動方針:ゾーマ打倒
【ゼニス 所持武器:アンブレラ 羽帽子? 行動方針:最後まで物見遊山?】
359 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/01/14 23:25 ID:hOk6JzL3
ガンガレ保守
ageてしまーた…申し訳ない スマソ
職人さん、がんばってください!!
361 :
1/2:04/01/15 23:05 ID:MgzKi2Jc
「…ん?」
エドガーが演説している間に計器を見ていたデッシュが、眉をひそめた。
「なんだいこりゃあ?」
その声に反応してピサロがデッシュの操作していた機械の隅を覗き込む。
三つのデジタル時計がそこにあった。
一番右の時計は目にも留まらぬ速度で時を刻み、真ん中はそれよりも遅いが、やはりかなりの速さで時を刻んでいる。
最後の一つだけが、正確に、感覚と同じ時間を刻んでいた。
「む…」
ピサロはふと、自らの懐中時計を取り出してみた。
その針は、仮想空間に居たときと同じく、目にも留まらぬスピードで動いていたのだが…
さらに、早い。秒針などすでにその瞳でとらえることは出来ず、分針すらその洒落た形を認識できない。
そして、その針のスピードは一番右の時計とほぼ同じだった。
この時計は現実世界と同じスピードで動いていたはず…だとするならば。
「一番右は現実世界。左はおそらくこの世界…」
「んならこの真ん中のは…仮想世界か!」
時間の流れが違う。これはおそらく、管理をしやすくするためだろうか。
さすがに24時間監視し続けるのは大変だし、こんな事が起こる可能性を考慮してなど居ないだろうからざっとした管理でも良さそうではあるし。
しかし、つまり、これは…
「どれくらいのズレがでた?」
「一寸待て、今計算してる」
デッシュは二つの時計を見ながら口の中でブツブツと何かを呟き始める。
演説を終えたエドガーが眉をひそめながらこちらに歩いてきて、ピサロに説明を求めていた。
362 :
2/2:04/01/15 23:06 ID:MgzKi2Jc
「ん…だいたい分かった」
デッシュはふぅと息を付いて、デシタル時計から目をそらした。
「正確なことは分からないが…多分、半日以上はずれてると思う。
向こうは…そうだな、夜中の十二時は過ぎてるんじゃないか?」
デッシュがそう言ったとたん、旅の扉はぐいっと大きくゆがんで。そして…
(時間がズレています。ミットガルにおいて放送および旅の扉の出現は午前0時)
363 :
1/2:04/01/16 08:46 ID:w4nUa1KP
う゛う゛ん…と僅かな機械音を唸らせて、エレベーターが地面へと降りていく。
目の覚めるような夜景。まるで人がいないというのに、明かりだけがぼんやり灯っている。
うわぁ、とモニカが感嘆の声を上げる。やはり大した人だ。
エアリスたちを載せたエレベーターは緩慢でもなく、だからといってむやみに速いわけでもない速度で一階ロビーへ降りていく。
エレベーターの階数表示は五階。もうそろそろ地上に足を着くことが出来るだろう。
エアリスはちらとガラスの向こうの景色を見やった。もう二度と見ることもなかった景色。荒れた景色。故郷の景色。
そのなかで、何かがちらりと蠢いた。
「…!」
「?エアリスさん?」
モニカが声をかけるのもかまわず、エアリスはガラスの壁に張り付いてその蠢く物を凝視する。
はっきり見えた。人だ!綺麗な金髪をした女性。何かを必死で探しながら走るその姿は、少なくとも殺しに酔っているようには見えない。
「人…だ!」
「「ええっ!」」
ティーダとモニカがガラス張りの壁に張り付こうとする。だが、それよりも早く後ろのドアが自動的に開いた。
ドアの向こうは一階のロビー。張り付いていたのはその反対側だから…
「ビルの裏!急いで!」
エアリスは小さく叫んで駆けだした。残りの二人も慌てて後を追った。
正面玄関をでたが、人の気配はない。エアリスは慌てて裏の方に回り込んだ。
364 :
2/2:04/01/16 08:48 ID:w4nUa1KP
ビルの正面にいたはずのアイラはふらふらと歩いていた。明確な行き先は、無い。
ただ、自分を受け入れてくれたとんぬらを探し、歩く。
ただただ真っ直ぐ、迷い無く。真っ正面以外を見ず。
やがて、足下に穴が見えた。本来ならば7番街が崩壊し、パイプと瓦礫が垂直の迷路を形作っているところ。
崩壊前のそこは、換気兼非常移動用の縦穴があった。
アイラは迷い無くそこに飛び込む。他に進む道もなさそうだったので。
【ティーダ/エアリス/モニカ 現在位置:神羅ビル外から裏へ
所持武器:吹雪の剣・いかづちの杖・参加者リスト/
エドガーのメモ・マジャスティスのメモ/ エドガーのメモ(ボロ)
第一行動方針:エレベータから見えた人(ミレーユ)を追う
第二行動方針:アーロン、クラウドを探す
最終行動方針:ゲームから抜ける】
【アイラ(ゾンビ・左腕欠損) 所持武器:ダイアソード 死者の指輪
現在位置:プレート内部への通路(7番街崩壊後のパイプ通路に当る 行き先は7番街?)
行動方針:ゾンビ状態中はとんぬらを探していく。死者の指輪が外れたら???】
365 :
1/2:04/01/16 13:59 ID:FYhTT5tE
ミットガル5番街スラム。ゴミ箱のような、荒れた、汚い街の一角。
ザックスはぶっ、と口に含んだアルコールを霧のようにして吹き出した。
アルコールの霧は、目の前で眠っているクラウドの背中の傷をぐいっと強引に引っ掻く。
「が…!」
クラウドの身体がびくりと痙攣する。
「我慢しろ、すぐ終わっから」
そう言いながらザックスは傍らのバスターソードを手に取った。
その刀身に開いた二つの穴の内の一つに緑色の煌めきが瞬いている。マテリア。
「ケアル…!」
ザックスばぼそりと『力ある言葉』を解き放つ。
ふわりと、緑色の光がクラウドを包み込む。背中からじくじくと滲み出していた体液の流出が止まる。
肉が傷をふさごうと蠢いて、そして僅かに傷が小さくなったように見えて…そこで光は消えてしまう。
「くそっ!」
ザックスは近くのがらくたに拳を叩きつけ、険悪に唸った。
「ケアル、ケアル、ケアル…!」
更に何度か魔法を唱えるが、やはり僅かに傷口が小さくなるのみで、決定的な治癒ができない。
クラウドの傷が致命傷に近いこと。ザックスの魔力があまり大きくないこと。マテリアの質が悪いらしいと言うこと。
それぞれの悪い要素が、三つ揃ってレクイエムを歌ってクラウドを黄泉の国に引きずり込もうとしている。
ザックスは息を荒らげてクラウドの隣にどっかりと座り込んだ。
何度も何度もケアルを使って、もうくたくただ。
ザックスはクラウドを見た。クラウドは苦悶の表情でそこに横たわっている。
その表情は傷の痛み故か、それとも。
「ぐっあぐ…っ、ティファ…アリー…ナ。…エアリス」
ブツブツと口から漏れる彼女たちの事ゆえか。
366 :
2/2:04/01/16 14:00 ID:FYhTT5tE
ザックスは清潔な布で傷口をきつく縛り、近くの民家にクラウドを引きずっていった。
エアリスの家までは多少距離がある。クラウドの状況を見る限り、しばらく移動はできないだろう。
現在位置:5番街スラム
【ザックス 武器:バスターソード 「かいふく」マテリア(使用できるかは不明)
第一行動方針:クラウドを助ける
第二行動方針:エアリスの捜索】
【クラウド(重傷):所持武器:折れた正宗
第一行動方針:? 】
367 :
1/5:04/01/17 10:07 ID:ly4MeGLF
“愛しの 貴方は 遠い 所へ”
“色あせぬ 永久の愛 誓ったばかりに”
見つけた。あった。ここにあった。
高い、所。目指していたところ。終着点。そこに、セリスは立っていた。
あれから…エアリスがミレーユを見つけてから1時間ほど。
彼女は4番街の端に立っていた。ミットガルの、端っこ。
左右の遠くの方に、魔晄炉が見える。
その機械の塊に、何かをふと思い出した気がした。
幻と呼ばれた獣。力。老人。道化師。
だが、そんなものはどうでもいい。見つけたから。見つけてしまったから。
ふらふらと高いところを探していて、ついにたどり着いたから。
ミットガル4番街プレート都市。その端。地面までおおよそ百数十メートルの、鉄の崖っぷち
そんな場所に、セリスは立っていた。透き通ったような、無垢な顔で。
「セリス!」
ぜえぜえと息を荒くして、ミレーユが追いついてくる。
自分のために必死になってくれるのは、多分、嬉しい。でも、多少煩わしくて、申し訳ない。
セリスは振り向いて彼女に微笑みかけた。『決めた』からだろうか。多少、余裕が出来ている。
「こんな…こと…こんな…っ!」
呼吸を整えながらミレーユは何事かを言おうとする。何を言おうとしているかは、分かる。
「「こんな事、ロックという人が望んでいるはずがない」わ!」
叫んでから、ミレーユは我が耳を疑った。セリスが、こちらの声に重ねるように、こちらと同じ事を言った。
「そう思うのが普通。誰だってそう考える」
セリスは独り言でも言うように…否、一人で歌うかのように、言葉を紡ぎだしていった。
368 :
2/5:04/01/17 10:08 ID:ly4MeGLF
「でも私は知らない。ロックと言う人がどんな人だったか。
もう死んでしまったのなら、話を聞くことも出来ない。もう会えない。
だから、ロックのせいじゃない。貴方のせいでもないけれど。これはただ、多分、私の我が儘」
セリスは泣いては居なかった。こんなに悲しいのに、泣けるほどロックのことを知ってはいないから。今は。
「そ…んな…そんな勝手な…」
「ごめんなさい。でも、私にはこれしかないと思ったから」
ミレーユが肩を震わせる。と。
「あっ…!」
ミレーユの後ろの物陰から、誰かががばっと飛び出した。こちらを見て驚きの声を上げる。
男が一人。女が二人。
ミレーユが振り向いた。セリスから目を離す。
その隙に、セリスは何もない虚空へ、背中から倒れ込んだ。
一瞬後にミレーユが体制を戻したとき。そこにはセリスのザックだけが転がっていた。
彼女に残した、ザックだけが。
369 :
3/5:04/01/17 10:10 ID:ly4MeGLF
背中から地面に落下しながら、彼女は永遠を感じていた。
終わるときは知覚することが出来ないだろう。だったら、これは永遠。終わりがないから、永遠。
セリスは笑っていなかった。泣いてもいなかった。ただ、何か憑き物が落ちたような顔をしていた。
ロック。多分貴方とは会えない。私は貴方の居るところに逝けない。
会っても分からない。私は貴方を知らない。だけど、これで少しは近づける?
…そうだ、歌があった。なにか、こんな気持ちの時に歌う歌では無いけれど、そう。知っている歌を思い出した。
「愛しの……貴…方は…遠い……所へ…
色…あせぬ……永久のあ…い……誓っ…た…ばかりに……」
歌いながら、セリスは我知らず祈っていた。
昔も、同じ事があったような気がする。その時は、希望があったけれど、だけど、今は。だから。
神様。願い事を一つだけ。どうかもう奇跡を起こさないでください。
その奇跡は、どうか、私を助けてくれた。あの人に。
セリスにとっては永遠だった。落下も、祈りも、そして愛も。
だけど、時間は全てに平等ではなかった。
「あ…っ!」
エアリスは、叫ぼうとして、叫べなかった。
女の人が、飛び降りた…!
自分たちが…走っていた彼女を追いかけようとした自分たちが現れたとたん、
目の前の女性が振り向いたとたん、彼女は飛び降りた。
目の前にいる女性は、前にあった。確か魔物だったような気がする。
だが、彼女の、ショックを受けたように動かないその姿は…
そう、魔物のようには見えなかった。魔物だったとしても…そう、人以上に人らしい。
「あっ、あっあっあのっ…」
後ろにいるモニカが、目の前の女性に声をかけた。
「…少し待って。後で話は、聞いてあげるから」
彼女はそう言って、目の前に落ちているザックを拾い上げた。
泣いては居なかった。ただ、それは人前で泣くことが出来ないだけなんじゃないかと、エアリスはふと思った。
現在位置:4番街端
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド・ロトの剣
第一行動方針:少し待ってから、エアリス達の話を聞く
第二行動方針:ゲームを覆してテリーの仇を取る】
【セリス 死亡】
【ティーダ/エアリス/モニカ
所持武器:吹雪の剣・いかづちの杖・参加者リスト/
エドガーのメモ・マジャスティスのメモ・癒しの杖/ エドガーのメモ(ボロ)
第一行動方針:ミレーユと話す
第二行動方針:アーロン、クラウドを探す
最終行動方針:ゲームから抜ける】
371 :
1/5:04/01/17 21:17 ID:/sufs5FE
「…眠い」
バッツはテーブルに顔面を預けながら呻いた。
「寝てもかまいませんよ」
「そうも行かない。一応二人は起きておく事になってるし」
隣に座っているとんぬらは優しく言うが、バッツは呻くようにそれを否定した。
とんぬらは、そんなバッツを見てくすくす笑った。昔、エルヘブンへ向かう途中の野営で、
まるっきり同じ会話をクーパーとしたのを思い出したのだ。
その隣ではアーロンが毛布にくるまって静かに眠っていた。どんなことがあっても即座に対応できるよう、椅子に座ったまま。
周辺を捜索し、必要と思われる物を回収した彼らは、ヘブンズヘブンに集まり休息をとっていた。
これくらい広い建物ならばある程度立ち回ることが出来るし、何より冷蔵庫(クーパーやバッツが興味津々だった)にある程度の食料が残っていたので。
アーロンの薬は、一応は出来上がっていた。ロンタルギアの野草とここにあるいくらかの酒を調合して作った簡易的な物だ。
ある程度の熱を冷ますことが出来る薬だが、実のところは一時しのぎにすぎない。
後は暖かくして寝る。位の対処法しかない。
アーロンは、とりあえずは危機的状況を脱しぐっすりと眠っている。
「うううう…」
必死に眠気と闘いながら、バッツは小さく呻いた。きつい。眠い。ひもじいが食事が喉を通らない…。
立て続けのジョブチェンジ(現在は有事に備え魔法剣士に戻っている)と神殿での戦闘による疲労。それに積み重なる心労。
その二つが仲良く手を取り合って、バッツを眠りの世界へと引きずり込もうとしている。
バッツは眠気を遠ざけようとと何かを考えようと必死で頭を巡らせて…、
その内ふと思い出し、ザックから一つのペンダントを取り出した。レナの、ペンダント。
372 :
2/5:04/01/17 21:18 ID:/sufs5FE
「レナ…」
彼女の名をつぶやく。死んでしまった彼女の名を。
レナは死んだ。ファリスも死んだ。
もう話すことは出来ない。彼女たちはいない。
会いたい。ファリスに、レナに会いたい。一度で良い。彼女たちにもう一度会いたい。
会って話をしたい。何を?それは、分からないけれど。
そう考えている内に、眠りの手があっさりとバッツの意識をさらっていった。
実は、まだ彼は、その手の中のペンダントに手紙があることを知らない。レナの手紙があることを、知らない。
あの時のごたごたで、うっかりバーバラが伝え忘れてしまっていたので。
あれだけ頑固に眠りを拒否していたバッツが、ほとんど抵抗することもなく寝息を立て始めたのを見て、とんぬらは我知らず苦笑した。
まったく、何もかも、あの時の野営の時のクーパーとそっくりだったからだ。
歳は自分より少し下か。ぶっきらぼうで、頭が回って、飄々としているようで、それでいて子供っぽい。
(ふぅん、そうか。クーパーは、こういう大人になりたいのか)
と、何となく納得する。
息子のクーパーがバッツの事を自分に話してくれる時、少年は、誰かに似たしゃべり方をしていた。
それは、自分に似ていた。子供の自分がパパスの事を話す時のしゃべり方に似ていたのだ。
その人の凄さが我が事のように誇らしく、憧れに目をきらきらさせて、とてもにこにこと嬉しそうに。
(ま、親としては一寸羨ましいと言うか、妬けるというか…)
でもまあ、確かに分かる気がする。
自由で何事にも縛られず、まるで風のように。
(クーパーは、王様なんて柄じゃないのかな)
そんな風に生きてみたいのだろう。伝説の勇者でもどこぞの王族でもなく、一人の旅人として。
生きて帰れたら、クーパーに聞いてみよう。生きて、帰れたら。
部屋の隅の方を陣取っている子供達を見ながら、とんぬらはそう思った。
373 :
3/5:04/01/17 21:20 ID:/sufs5FE
「リディア、飲まない?」
エーコがさっ、と差し出したコップを、しかしリディアは笑顔で首を振って断った。
床に両膝を立てて両手をついて、彼女はじっと見つめている。床に転がり、毛布にくるまって寝るクーパーを、じぃっと見つめて目をそらさない。
隣では、エーコのモーグリが真似をして同じ姿勢をとって見せている。意味はないのだろうが。
さすがに話しかけたときだけはこちらを向くけれど。
「…まったくもー、やってらんないわよね」
床に座りカウンターに背を預けたエーコはコップの中の液体…酒ではなく果物のジュース…をあおってからぼそっと呟いた。リディアはどうやら聞こえていない様子だが。
隣に座っていたアニーは「おばさんみたい」と茶化してエーコに軽くこづかれたりもしている。
しかしまあ、ほんの十分ほど前は大変だったのだ。
周囲の家から必要な物をここに持ってきたとたん、クーパーがこてん、と倒れてしまったのだ。いきなり。
ご丁寧に小さなレディ達に「眠っておいた方がいいよ」と言ったとたんに、である。
アニーは慌てて脈を取り、エーコはただ起こすにはあまりに激しい平手打ちを何度かクーパーに見舞った。
リディアは目にうっすらと涙を溜めて必死に身体を揺さぶった。
だが、彼の安らかな寝息を聞けば何のことはない。ただ疲れているだけと言うことは一目瞭然である。
「でも、何かリディアちゃん、変よね」
アニーは上品にジュースを口に運んでから、言った。
「ん〜、ひょっとして、お互い気づかない内に相思相愛とか、そんな感じ?」
「…へ?」
エーコの意味不明な言葉に、アニーは眉をひそめた。
「え、クーパーは…あ、そっか。クーパー言うはず無いもんね。
…恋してるみたいよ。リディアに」
ふっ…と思考が停止する。エーコは今なんと言った?
恋?リディアに?誰が?と言うか、そういうのが当てはまりそうなのは、この場に一人しかいなくて…
ようやく思考がまとまって、アニーは目を真ん丸にした。口の中に僅かに残ったジュースを吹き出さないよう飲み込んでおいて…疑惑の声を上げる。
「その冗談って、あまり笑えないと思うの」
「貴女の双子のお兄ちゃん、貴女の知らぬ間にオトナへの階段を一歩踏み出したのよ?」
374 :
4/5:04/01/17 21:22 ID:/sufs5FE
エーコのからかいに、今度こそアニーは混乱して、左右の目を白黒させた。
「…なんて言うか、クーパーってそういう事からいっちばん遠い所にいると思ってたんだけど」
「近いところにいたら、もっとラブラブ状態になってたと思うけどね。
でも…正直、羨ましい感じ、するんだ」
エーコはそのセリフを口に出したとたん、ふっと目を遠くした。
「私って、もう、本当の恋なんて出来そうもないから…さ」
ジタンが居ないから。もう会えないから。もう、あそこまで誰かを好きになることはないんだろう。
大人になって…このゲームから逃げ出せたとして…ジタンの事を忘れてしまうようなことがあったとしても、
きっと、彼を好きになったほど、他の人を好きになることはないんだろう。
自分が子供で、しかも強力なライバルが居て、決してかなわぬ想いでも。彼女は彼が好きだった。
「だからさ、精一杯応援してあげちゃおうかな、とか思ったりもするんだ」
せめて、クーパーとリディアにはそんな思いはさせたくない。
別れるにしても、もうちょっと…そう。後ぐされなかったり、爽やかだったり、感動的でもいいじゃないか。
「…それじゃ面白そうだから私も手伝おうかな。
飲む?」
そう言いながら、アニーは笑ってエーコのコップにジュースを注いだ。
「じゃあ、二人の前途と」
「私たちが楽しめるような面白い展開になることを祈って」
「「乾杯」」
かちんとグラスが鳴って、コップがキスをした。
無人の酒場の隅っこで、幼い二人の少女達は、まるで大人の女のように、大人の女が話すような事を話しながら、笑っていた。
それはおそらく最後の団らん。事態はすでに最終局面に向けて転がり始めていた。
375 :
5/5:04/01/17 21:23 ID:/sufs5FE
【とんぬら(DQ5主人公) 所持品:さざなみの剣
第一行動方針:子供たちを守る
第二行動方針:パパス・ライアン・アイラをみつける】
【クーパー(熟睡 滅多なことでは目覚めず) 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜
第一行動方針:とんぬらについていく
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【王女アニー 所持品:マインゴーシュ
第一行動方針:とんぬらについていく】
【リディア(魔法使用不可) 所持品:なし
第一行動方針:仲間を捜す?】
【エーコ&モーグリ 所持武器:なし
第一行動方針:?】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)(睡眠中)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント/
第一行動方針:クーパー達と共に行動する
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【アーロン 所持武器:折れた鋼の剣
第一行動方針:体を癒す
第二行動方針:仲間を探す】
376 :
1/2:04/01/18 14:03 ID:VLJ9kL7Z
ミレーユはミットガルの端に立って、そこから遥か下の地面を見た。
セリスの姿は見えない。どこかの陰に隠れてしまっているのか。
見えなくて良かった。と、ミレーユは思ってしまった。
潰れたセリスを見てしまったら、きっと、もう、どうしようもなくなってしまったと思うから。
そんなことを考える自分を多少嫌悪しながら、ミレーユは振り向いた。
彼女の後ろには、呆然としたままのエアリス達が立ちつくしている。
「ごめんなさいね。もう、終わったから」
ミレーユは彼女らに微笑んで見せた。そう言う風に余裕がある振りをするのは、慣れているから。
彼女らは…ミレーユは、エアリスは、ティーダは、モニカは、その場にどっかりと、円陣を組んで座り込んだ。
「……あの女の人は」
と、最初にティーダが口を開く。
「…あなた達のせいじゃない」
しかしミレーユは、あまり抑揚の無い声でぴしゃりとティーダの言葉を遮った。
「彼女はもう、決めていたから。
あなた達のせいなんかじゃない。だから…もう、言わないで。彼女のことは」
もうしばらくは、セリスの事に触れて欲しくない。そんな言外の抗議に、慌ててティーダは口をつぐむ。
「それで、まあ…お久しぶり…ね」
エアリスは喋りにくい雰囲気に飲まれそうになりながらも、ようやくミレーユに声をかけた。
「お久しぶり。今度は大丈夫そうね…少しはちゃんと人間に見えるかしら?」
(ふえ〜ん…)
声をかけられたミレーユは、すっ、と表情をゆるめてこちらに返事を返してくれた。
きつい皮肉付きだと言うことは、忘れておきたいところだが。
「冗談よ。
やっぱり、一緒に行動して欲しい、ってことかしら?」
「端的に言えば、そう。
イエスの返事を引き出す材料も…幾つかあるけど」
377 :
2/2:04/01/18 14:05 ID:VLJ9kL7Z
「…別に良いわ。歩いてる内に追々聞くから」
「じゃあ…」
モニカがきらきらと瞳を輝かせた。ミレーユは笑って、きっぱりと言った。
「あなた達と行くことにするわ…よろしく、ね」
「「「よろしくっ!」」」と、エアリス達の返事が綺麗に重なった。
「当面の目標は?」
「ここには私の家があるから、まずそこに。
その後は、出来るだけ仲間を集めて…」
「集めて…それで?」
「脱出の方法を探すの。他にもそれをしている人はいるけど、どうなったかは分からないから」
エアリスはそう言って立ち上がった。服の埃を軽く払う。
「5番街へ行きましょう。あそこの駅からならスラムに下りられるわ」
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド・ロトの剣
第一行動方針:エアリス達と行く
第二行動方針:ゲームを覆してテリーの仇を取る】
【ティーダ/エアリス/モニカ
所持武器:吹雪の剣・いかづちの杖・参加者リスト/
エドガーのメモ・マジャスティスのメモ・癒しの杖/ エドガーのメモ(ボロ)
第一行動方針:エアリスの家へ
第二行動方針:アーロン、クラウドを探す
最終行動方針:ゲームから抜ける】
薄暗い部屋の中、荒い息遣いだけが空間を埋めていた。
ベッドに横たわっているクラウドの怪我は、ザックスの目にもここまま放っておけない程のモノだと
映っていた。
できるだけ早く、十分な治療を施さなければいけない。
上の街にある軍付属の病院までいけば十分な設備があるはずだが、そこまでクラウドの体力が持つとは思えなかったし、なにより今の状態では少しの無理もさせられなかった。
癒しの能力者か、この不良品のマテリアでも十分に力を引き出せる強い魔力を持つ人間。
なんとかしてゲームに乗っていないそういう参加者を探しだして、ここに連れてこなければならない。
心当たりは無い。限りなく危険なミッション。だが…。
「まってろクラウド。すぐに助けを呼んできてやるからな」
ザックスは剣を掴み、走り出した。
場所は変わってエアリスの家。
リノアは食器棚から取り出したカップに良い香りのする琥珀色の液体を注いだ。
自分のモノとスコールのモノ。
白い陶器と、そこに入った白い粉と銀色の小さじ。
自分のモノには少し大目の砂糖を入れ、(彼はあまり砂糖は入れなかったな)と思い、
小さじに半分位の砂糖を入れ、かき回した。
カップの底で溶けていく砂糖と、紅茶の甘い香り。スプーンがカップにあたる金属音。確かな温もり。
これまでと比べて場違いなほど平和な時間。
近いうちに訪れるであろう自分の死を覚悟してはいたが、
それでもこんな一時は乾いた心を潤してくれるし、なにより手放したくない時間だと思わせてくれる。
リノアはそっとカップを手に取り口に近づけ、一口。
「…やっちゃったかな」
リノアは砂糖が入っているはずの小壺を手に取り、中の粉を舐めてみた。
口に広がる塩の味。
軽くため息をつき、また淹れなおさないとなぁと呟いて…
「…あれ?」
不意に視界がぼやけた。続いて頬が濡れる感触。
自分が泣いているのだと、すぐには気がつけなかった。
「あれ? あれ? どうしよう、止まんない…」
吹いても拭いても涙が溢れてくる。下半身から力が抜け、リノアは床に座り込んだ。
その時になってやっと胸が苦しくなってきた。
失ってしまったはずの、もう既にあきらめていたはずの日常のかけらに触れてしまったから。
今までに無く強い気持ちで、すぐそこにあった毎日に帰りたいと思った。生きたいと思った。
だが、その願いを叶える事は彼女には許されていなかった。物理的にも、精神的にも。
いったいどのくらい泣いていたであろうか。
やっと気持ちを落ち着けたリノアは力なく立ち上がると、二階への階段を上った。
紅茶の事はとうに忘れていた。
ドアの前に立ち、2〜3回ノックをした。
「スコール、入るわよ」
リノアは返事を待たず、(返事など期待できなかったが)ドアをあけた。
「…スコール?」
部屋の中には誰もいなかった。
ただ奥の開かれた窓がカーテンを揺らしているだけで…。
「ちっ…。なんであいつらがあそこにいるんだよ…」
極力音を立てないようにザックスは路地裏を走った。
ついさっきこっそり覗いたエアリスの家。そこには、あの洞窟の中にいた、クラウドを斬り付けた男の連れがいた。おそらく、すぐ近くにあの男もいるだろう。
あんな危険な奴がすぐ近くにいる。気付かれる前にクラウドを連れて遠くへ逃げなければ…。
「多少危険だがしょうがない。クラウドを連れてウォール街か7番街スラムまでいくしかないな」
ザックスはクラウドを寝かせてある民家へとたどり着くと、
周囲を注意深く見回してから、わずかに開いたドアの隙間に体を滑り込ませた。
建物の影にわだかまる闇から自分を見つめる、虚ろな瞳に気付かずに…。
【スコール 所持:ガンブレード 真実のオーブ
現在位置:五番街スラム
第一行動方針:ザックスの追跡
最終行動方針:リノアを優勝者に】
【リノア 所持:妖精のロッド・月の扇/アルテマ×1
現在位置:エアリスの家二階、エアリスの部屋
第一行動方針:スコールに着いていく】
【ザックス 武器:バスターソード 「かいふく」マテリア(使用できるかは不明)
現在位置:5番街スラム
第一行動方針:クラウドを連れて逃げる
第二行動方針:エアリスの捜索】
【クラウド(重傷):所持武器:折れた正宗
現在位置:5番街スラム
第一行動方針:? 】
381 :
1/2:04/01/19 23:20 ID:IV2b5bcX
スコールはずっと考えていた。
開始早々、恐怖に負けたこと。人を機械のように殺し続けたこと。
そうする事で自分の弱さを隠そうとしたこと。そんな薄っぺらな自己防衛を力ずくで引き剥がされたこと。
どれもこれも、なんて無様。ただそれだけで絶望したくなる。蹲り、沈んでいたくなる。
そうすれば誰かが自分を殺してくれるだろう。死ぬ勇気もない自分に出来る唯一の救いである。
救いである、ハズだった。今は、リノアがいる。
合わす口などないけれど、彼女を勝者にするために何かをすることは出来ると思う。
幸い、リノアと自分の関係を知るのはごくわずかだ。
それさえ始末してしまえば、自分への怨嗟が彼女に向くことはない。まずはそこからだ。
長い黒髪の戦士と、逞しい中年の戦士は無傷だ。格闘家の女は、手応えは鈍かったが即死させたと思う。金髪の男は、ひょっとしたら即死には至らないかもしれない。
何にしても、最低二人。そのいずれもかなりの使い手である事は身を持って知っている。
勝てるのか。己に問う。いや、問わない。考えてしまったら、何も出来なくなる。
幸い、二人の内の一人が自ら寄ってきた。同行人がいる様子はない。今が絶好の機会だ。
勝たなくてはいけない。勝って、殺さなくてはいけない。
ガンブレードを握り締める。ガンブレード……剣でも銃でもない。中途半端な存在。
自分に勇気を与えてくれる。
スコールは音もなくザックスが入っていった家の扉に向かう。
扉の影になるポジションをとり、息を殺してザックスが出るのを待つ。
そして、家の扉が開いた……瞬間!
382 :
2/2:04/01/19 23:21 ID:IV2b5bcX
「………!」
スコールはその場から飛び離れた。
刹那、扉が吹き飛ばされ、スコールがいた場所を巨大な剣が薙ぎ払う。
建物の出入り口は奇襲の常道、それをスコールがガーデンで習ったように、ザックスは神羅カンパニーで教わっていた。
失敗か……僅かに体勢を崩すスコール。
家から飛び出したザックスはスコールの姿を補足すると、一足で間合いを詰める。
ギィン!……一閃。
ギャン!……二閃。
三閃目は、刃を合わせることなく、回避された。ザックスは一旦間合いを取る。
「やれやれ、油断も隙もないヤロウだな。だが、それもここまでだ!」
ザックスはバスターソードを構えて、吐き捨てるようにいう。
目の前にいるのは、黒づくめの殺人鬼。後ろには瀕死の友人。
状況は非常に芳しくない。それでもやるしかない。
この男は倒さなきゃいけないし、クラウドを死なせるわけにはいかない。
どっちもやらなきゃいけないのが辛いところだが、1stソルジャーならばやれるはずだ。
スコールもガンブレードを構える。逃げ出す様子はない。
上等だ――――ザックスは上唇を舐めた。戦いの感触で、口の中が鉄臭くなった気がする。
「決着をつけようぜ、クソヤロウ!」
ザックスの咆哮と同時にスコールが襲い掛かる。
戦いの火蓋は切って落とされた。
【スコール 所持:ガンブレード 真実のオーブ
現在位置:五番街スラム
第一行動方針:ザックスを殺す
第二行動方針:パパスを殺す
最終行動方針:リノアを優勝者に】
【ザックス 武器:バスターソード 「かいふく」マテリア(使用できるかは不明)
現在位置:5番街スラム
第一行動方針:スコールを倒す
第二行動方針:クラウドの治療、エアリスの捜索】
【クラウド(重傷):所持武器:折れた正宗
現在位置:5番街スラム
第一行動方針:? 】
384 :
1/3:04/01/21 08:50 ID:rOb8bmTP
「せぇい…りゃあっ!」
ごおっ、と爆風に近い剣風が空を薙ぐ。
冗談みたいな大きさの鉄塊が、敵を喰らおうと咆哮を上げる。それはまさに獣
鉄塊の形をした剣という獣を使役するは黒髪の青年。ソルジャー1st・ザックスの名を持つ青年。
剣…バスターソードは、敵に己と言う巨大な牙を叩きつけた。
どかん!と炸裂音がして、大剣は地面をえぐる。
そう。抉ったのは地面。地面は敵ではない。ならば敵は?
ザックスは小さく舌打ちをして身を翻した。今まで彼が立っていた場所に、鋭い刃が突き込まれる。
刃、ガンブレードの刃。突き込んだのは額に傷痕を持った少年。スコール=レオンハート。
スコールは突いた刃をすぐさま薙いだ。ザックスはそれをバスターソードで受け止め、受け流しながら左の肘でスコールの鳩尾を狙う。
「くたばれっ!」
叫ぶザックスの狙いは僅かに逸れ、へその辺りに大砲のような一撃が決まる。
スコールは数メートルほど吹っ飛ばされながらも、地面にしっかり足をついて体勢を立て直した。
その顔にはダメージなどまるで見えない。
お互いがお互いをじろりとにらみ合い、そして動きを止めた。
たったったったったったったったっ…
足音を大きく響かせながら、リノアが走る。
大声を上げるのはさすがに止めておくが、それでも気が緩めば思わず探し人の名を叫んでしまいそうだ。
(スコール…)
彼は何処に行ってしまったのだろう?何をしに行ったのだろう?自分をおいて何処に行ってしまったのだろう?
ぞくぞく、と体が震え出すのをリノアは感じた。まさか、おいて行かれた?
おいて行かれたら、自分はどうすればいいのだろう?
「あっ…あああっ…ああっ?!」
ぽろぽろと涙があふれてくるのを、リノアは感じた。口から意味のない呻きが漏れる。
涙は、先ほど流れた跡を伝って流れ落ちていく。
385 :
2/3:04/01/21 08:51 ID:rOb8bmTP
しかし、涙の意味がまるで違う。
先ほどの涙は悲しみ。日常を認識してしまったが故に、それにもう戻れないことに気づいてしまった悲しみの涙。
今の涙は、恐怖。スコールがそばにいない、恐怖。
スコールは怖い。だが、スコールが居ないのはもっと怖い…。
ぎゃりぃっ!
耳障りな金属音が、リノアを思考の海から引っ張り上げた。
はっと息を呑み、足を止める。
非日常の音にたちまち頭が冷めていき、代わりにあの時の、このゲームの結末に気づいたときの冷静さに取って代わる。
耳障りな足音を押さえ、近くのジャンクに身を隠す。
こっそりと、リノアは音がしてきた方を覗き込む。
(あの時の…!)
リノアはスコールと激しく打ち合うザックスの姿を見つけ、ぞくりと背筋を震わせた。
(スコール…助けなきゃ…っ!)
リノアはザックから妖精のロッドを取り出し、ぐっと握りしめた。
スコールもザックスも、まるでリノアに気づかず、にらみ合ったまま動かない。
386 :
3/3:04/01/21 08:53 ID:rOb8bmTP
【スコール 所持:ガンブレード 真実のオーブ
現在位置:五番街スラム
第一行動方針:ザックスの追跡
最終行動方針:リノアを優勝者に】
【リノア 所持:妖精のロッド・月の扇/アルテマ×1
現在位置:五番街スラム
第一行動方針:スコールを助ける
第二行動方針:スコールに着いていく】
【ザックス 武器:バスターソード 「かいふく」マテリア
現在位置:5番街スラム
第一行動方針:スコールを倒す
第二行動方針:エアリスの捜索】
【クラウド(重傷):所持武器:折れた正宗
現在位置:5番街スラム
第一行動方針:? 】
387 :
1/4:04/01/22 00:41 ID:mE65jh6t
――――強い。
スコールは素直にそれを認めた。僅かだが……相手の方が技量は上。
――――だが、勝てない相手ではない。
100回戦えば、51対49で自分は負けるだろう、だが真剣勝負は一度のみ。最初の1回勝てば勝利だ。
リノアも待っている、これ以上長引かせるわけにはいかない。
「……来るか」
半身で構えたスコールに、ザックスはバスターソードを握りなおす。
奴は捨て身で来る。凌ぎきれば自分の勝ち。出来なければ、負けて死ぬ。
そして、スコールは突進した。
疾風の如く駆け抜けたスコールは勢いを剣にのせてザックスに切りつける。
ズガン!ギィン!ガァン!
水平、袈裟斬り、斬り上げの三連撃。それをザックスはバスターソードの背で逸らす。
ガンブレードを受ける度に、勢い以上の衝撃が伝わって、ザックスは顔を顰めた。
だが、まだまだスコールの斬撃は止まらない。流れるような剣閃が、絶え間なくザックスを襲う。
止まらない――――!さすがにザックスも焦った。
勢いはますます増しつつある。受け流すだけでも剣が流れ、手が痺れる。
このまま、ただ受けているだけでは殺られてしまう。
だが同時に落ち着け、とも思う。ヘタに手を出したところで奴の剣に飲まれるだけだ。
奴も人間だ。どんなに腕が立とうと、限界は来る!
スコールは必死だった。これで決まらなければ、自分の負けだとわかっていた。
流れる動きとともにガンブレードを連続で叩き込む『連続剣』は奥の手である。
もう後がないときだけ使うワザで、これが通用しなかったらもう終わりということだ。
だから、止めるわけにはいかない。何発、何十発だろうと撃ってみせる…!
388 :
2/4:04/01/22 00:42 ID:mE65jh6t
そして、スコールの放った何発目かが、ザックスの剣を大きく弾いた。
いまだ、と間合いを離そうとしたザックスに詰め寄るスコール。
舌打ちしながら、剣を構えなおそうとするザックス。
下段に構えた剣を振り上げ、飛び掛るスコール――――
迎え撃つザックス――――
――――結末は、
意外な場所から現われた。
ザックスの目の前にいきなり飛び込んできたのは、美しい女性の顔。
呆気に取られて、剣を切り上げる動作が鈍り、敵の剣を見失った。
スコールの目の前にいきなり飛び込んできたのは、艶やかな黒髪。
止めようと音もなく絶叫する、しかし振り下ろした剣は止まらず。
スコールの。
ガンブレードは。
ザックスを。
切り裂いた。
リノア、もろとも。
389 :
3/4:04/01/22 00:45 ID:mE65jh6t
自分を抱きしめられているらしい。
急激に失われていく意識が、現実をあやふやにしていた。
けれど今、彼女の心は喜びに満ち溢れていた。
「……どうして」
愛しい人の声。数日だけのはずなのに、随分と聞いてなかった気がする。
けれど、それは確かにその人の声。自分を、包み込んでくれる――――
もう一度、再開できた。例え一時でも、それは喜びだった。
もうほとんどない感覚の中で、ただ一つ感じるのは頬の温もり。
ぽたり、ぽたりと、彼の黒い瞳から落ちる涙の雫が頬に落ちて。
それが暖かくて、とても優しくて。彼女は、精一杯の微笑を浮かべた。
微笑んだだろうか?綺麗に笑えただろうか?この人に、ブスな顔を見られたくない。
途切れていく視界。ただ、何かを入っている彼の姿のみ映っている。
ああ、これで終わりなんだ。そう思ったから、何かを言おうと思った。
ありがとう?ごめんなさい?愛してます?……どれも言いたい。伝えたい。
けれど、一言しか言えそうになかったから。とびっきりの言葉を、彼に送った。
ちゃんと伝わっただろうか?私の言葉。
――――生きて。
390 :
4/4:04/01/22 00:47 ID:mE65jh6t
負けた、か。ザックスはぼんやりと無機質の天井を見上げた。
結構苦しいもんだ、しかしソルジャーなんてやってきた自分の最後らしいと思う。
……可愛い女の子に気を取られて、ってのもな。
自嘲の呟きは声にならず、代わりに血が溢れて視界を赤くする。
これまで、か。
すまない、クラウド。1stなんて粋がってたくせにこのザマだったよ。
ザックスの手からバスターソードが零れ落ちた。
そして二度と本来の主の手に、帰ることはなかった。
【スコール 所持:ガンブレード 真実のオーブ
現在位置:五番街スラム
最終行動方針:???】
【クラウド(重傷):所持武器:折れた正宗
現在位置:5番街スラム
最終行動方針:? 】
【リノア 死亡】
【ザックス 死亡】
391 :
1/3:04/01/22 08:35 ID:dGidzWqI
スコールはただじっと、動かなくなったリノアを抱きしめていた。
これが結末か。こんな物がこの物語のエンティングか?
ふざけるな、冗談じゃない。認めない。認めたくない。
がくがくとスコールの体が震え出す。
このゲームの中で、彼は久々にまともな人間のような反応を見せていた。
愛する者を失った人間の見せる、反応。
拒否。恐怖。絶望。そして空虚。
彼女が居なくなってしまうとき、彼は元に戻っていた。
冷徹な殺人人形ではなく、多少塞ぎ込みがちな普通の少年に。
彼女がそれを望んでいたから、彼女のために元に戻った。
彼女と会う前は、恐怖に駆られた。会った後は、彼女を勝ち残らせるために闘った。
なら、今はどうする?彼女も居なくなって、自分はどうする?
固い地面にリノアだったモノを横たえながら、スコールはその事について結論を下した。
否、結論は最初からでている。
スコールはガンブレードを振り上げ、そして空を切り裂いた。
その目は、リノアと会う前の、それに、戻っていた。
…生きていようが死んでいようが、勝利者は、リノアだ。
ど ん っ !
392 :
2/3:04/01/22 08:36 ID:dGidzWqI
どんっ!と言う耳障りな炸裂音がクラウドの身体を僅かに揺さぶった。
「っっ…!」
すでに外の騒ぎに半ば覚醒していたクラウドは、その音を聞いて跳ね起きた。
背中の酷い傷が抗議の絶叫を痛みの形で訴えるが、あいにく彼の痛覚はそれを通り過ぎてほとんど麻痺していた。
クラウドは訳の分からぬままゆっくりはいずり、手近の扉を苦労して押し開けて…これは夢か地獄か錯覚だと確信した。
アリーナと洞窟にいたはずなのに、なぜこんな所に…ミットガルにいる?
どうしてザックスが死んでいる?どうして、どうして…
どうして、首のない女性の死体が転がっているのだ?
スコールはキッチンに放置してあった紅茶を手に取り、椅子に腰掛けた。
それは冷め切っている上に塩の味がしたが、文句は言わない。どちらにしろ、もう彼にそんなことを気にすると言う感覚は無いが。
これが、リノアの残した最後のモノ。このゲームの支給品と、彼女からドローしたアルテマの魔力。そして決心と想い出。
いろんなモノを彼女はゲームの中で遺した。そしてこれはその最後のモノ。
彼は紅茶を飲み干し、目の前のテーブルを見つめた。彼が守るべきモノ。最後のまともな感覚まで凍結させて、彼はそれを守り抜こうと決意した。
もう誰にも止められない。彼は愛する者を守るために全力を尽くすだろう。
薄い微笑みをたたえるリノアの首から上が、テーブルの上に静かに座っていた。
393 :
3/3:04/01/22 08:37 ID:dGidzWqI
【スコール
所持:ガンブレード 真実のオーブ 妖精のロッド・月の扇/アルテマ×1 リノアの首
現在位置:エアリスの家
最終行動方針:リノアを勝利者にする】
【クラウド(重傷):所持武器:折れた正宗
現在位置:5番街スラム
最終行動方針:? 】
ザックスはもう何も語らない、自分を助けようとしていたのだろうか。
もうそれはわからない、とにかく、
「うっ」
……急に強烈な目まいを感じてクラウドは血を吐き出した。さび付いた刃を咥えたように
鉄の臭みが口の中に漂いだす。
雪景色が網膜に焼き付いてはなれないままだったが、ここはもう別の世界なんだと自分に言い聞かせる。
いや、ひょっとしたら、夢でも見ているのかもしれない、
クラウドは深手を負った体がまるで痛まないのを感じて、そう考えた。
重たい体をひきずって、砂煙の吹く暗い路地をクラウドはひた歩く。
夜、太陽がない、いやプレートだ、あれがあるせいで、光がとどかない。
上と下の世界をつくりだす巨大なプレートはどれほどの手間をかけて建造されたものなのか。
ミッドガルという手狭な世界はかくも広大で、腹ばいになって目の前に拡がっている。
クラウドはごちゃごちゃと連なるがらくたの景色をよそに、どこか遠くを思っていた。
目的地は近いようで遠い。
血が止まらないまま歩きつめたクラウドは、よろけながら瓦礫の山に突っ込んだ。
オイル臭を鼻腔にこびり付けながら、寝転がって暗い空を見つめた。初めて背中に痛みを感じた。
クラウドは口を半分開いて、わかったとつぶやく。
多分夢を見ているのではないとわかった。確かに今生きている、ここにいる。
でもなぜ行き先がエアリスの家なのか、それは自分でもわからない。彼女がここにいるとは思えない、
行っても何かが起こるわけじゃない。ただ思い出に浸るぐらいのことしかできないはずだ。
――それだけでいい
クラウドは起き上がった。足は自然と動いた。体は危機を告げていたけれど、クラウドが一途な想いを
貫こうとしているのがわかったから、あえて止めようとしなかった。
心だけで歩いていこうとするクラウドだった。
395 :
/2:04/01/22 22:18 ID:Or2EcrxT
「ここが、5番街っていうんスか」
「そ、私の家もここにあるの」
列車の走っていない、線路を下りていって、エアリスたちは5番街にたどりついた。
空気が悪くて、いやな臭いが漂っている。ミレーユとモニカは顔をしかめていた。
「ごめんね、私の家はそんなに酷くはないと思うから」
エアリスはミレーユたちと向き合った。
「いいのよ、生まれた処、住む処というのは自分の思い通りに選べるものじゃないから。
エアリスさんにとってはこの場所、この空気こそが故郷なんでしょう?
皆、心の中に自分の故郷をもって生きているもの……私もそう。故郷はかけがえのないものよ」
ミレーユの瞳にエアリスは何だか照れくさくなって、顔を赤くした。
「ここがエアリスさんの……」
モニカは焦眉にかられたような顔をして周りを見渡した。育ちのいい姫君は、初めてこういうところを目にした
せいで、少なからず動揺していた。
「ごめんね〜、やっぱり、ここはあんまりいい景色とは言えないよね」
エアリスは思わず舌を出した。別段気にとめもせず、けろっとしている。
「いえ、私は……」
モニカがそう言いかけたとき
「そっか、モニカさんお姫様だったっけ。住む世界が全然違うって感じだよな。」
ティーダが出し抜けにそう言った。
「うん、ここに住んでいた人たちは貧しかったからね」
エアリスが同調するように言った。
「いえ!」
モニカはエアリスを直視して瞳を熱くする。
「私は、決してそんなつもりでは」
震えた声。モニカの顔が青ざめていた。
396 :
/3:04/01/22 22:20 ID:Or2EcrxT
ティーダは手のひらで口を覆い、そわそわし始める。
ミレーユが傍に近づき、ティーダの肩を手でこづいた。
――もうちょっと言い方考えなさいよ
ティーダは頭を抱えて自己嫌悪してしまった。
モニカはうつむいて顔を上げようとしない。きまずい時間が過ぎていく。
ミレーユはどうしたものかとエアリスとモニカを交互に見る。
が、やがてエアリスに何の変調も起こらないことを悟ると、固くした身をほぐした。
「いいのよ、何も悪気なんてないことわかってるんだから。ね」
エアリスは笑顔だった。モニカに近づき、手をぎゅっと握った。
モニカは顔をそっと上げて、小さく素直に頷いた。
「いや、俺、もうちょっと気を遣うことにするよ。本当に悪かった、ゴメンな」
ティーダが頭を押さえながら皆を見渡して詫びた。
エアリスは手をふって応えたので、ミレーユは一安心のため息をつきながら、ふと横を見た。
……なに?
胸騒ぎを覚えて、ミレーユはそこに駆け寄る。
そしてくずれた瓦礫の傍で、ミレーユは潜めながらもよく通る声で言った。
「これ、血じゃない?」
ミレーユは片膝を立てて、そっと地面を払った。指をそっと舐めてみる。
「間違いないわね。それにまだ新しい……誰かがここを通ったのよ」
「血?」
ティーダは顔をこわばらせ、ミレーユの元へ駆け寄った。黒ずんだ路面を見つめて、視線を先へ先へと移す。
「この先には何があるんだ」
397 :
/4:04/01/22 22:22 ID:Or2EcrxT
「私の家……」
遠くで、かたんとむき出しの鉄骨が音を立てた。
花の園はとくに傷もなく裏手に残っていた。スラムに咲く花がそう簡単にしおれてしまうはずがない。
呼吸が荒いまま女の子の家の敷地に入り込む。そのままクラウドは玄関のブザーを押そうとしてやめた。
待っている人なんて誰もいないのだ。
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド・ロトの剣
第一行動方針:エアリス達と行く
第二行動方針:ゲームを覆してテリーの仇を取る】
【ティーダ/エアリス/モニカ
所持武器:吹雪の剣・いかづちの杖・参加者リスト/
エドガーのメモ・マジャスティスのメモ・癒しの杖/ エドガーのメモ(ボロ)
第一行動方針:エアリスの家へ
第二行動方針:アーロン、クラウドを探す
最終行動方針:ゲームから抜ける】
【クラウド(重傷):所持武器:折れた正宗
現在位置:エアリスの家玄関前
第一行動方針:? 】
【スコール
所持:ガンブレード 真実のオーブ 妖精のロッド・月の扇/アルテマ×1 リノアの首
現在位置:エアリスの家
最終行動方針:リノアを勝利者にする】
398 :
1/3:04/01/23 21:22 ID:fIB4RCjk
奇妙に重く感じる扉を、クラウドは体重をかけて押し開けた。
体が軽くなってでもいるのか、体重をかけてもなかなか開かない。
苦労して家に入り込んで…というか転がり込んでから最初にクラウドが見たのは、生首だった。
一瞬、エアリスの首を思い浮かべてぞくりとする。
だが、それはエアリスの首ではなかった。あの亜麻色の髪ではなかった。
黒くて長い髪の、何故かほほえみの形に表情を固定した生首。テーブルの上に鎮座した、生首。
…待て。なんでこんな所にそんな物が置いてある?
決まっている。誰かがこの女性の首を刈り取って、ここに置いたから…。
「おっ…おおおぉぉぉぉっ!」
言うことを聞かない身体に対して絶叫しながら、クラウドは正宗を振り回した。適当に。
がぎぃ!という鈍い音がして正宗と何かの刃がかみ合う。
クラウドが瞳を向けると、そこには黒髪の少年が見えた。見たことがある。その手にある剣も。
「…お前は!」
クラウドが何事かを言うよりも早く、黒髪…スコールは再び剣を振るう。
頬を刃が切り裂く感覚に背筋を僅かに震わせて、クラウドは家から飛び出した。
勝てない。普段ならともかく、今は絶不調だ。
クラウドは道を転がるようにして、5番街へ向かって駆けだした。
スコールは家から出ると、逃げていくクラウドをじっと見つめた。
追うか?それとも…。
スコールは静かに、何事かの準備を始めた。
耳が痛くなるほど静かなミットガルに、物音は良く響く…。
スコールには僅かに聞こえた。クラウドの足音に混じる、別の人の声が。
399 :
2/3:04/01/23 21:23 ID:fIB4RCjk
「むぅ…?」
犬のトーマスと一緒に5番街を歩いていたパパスは、遠くで動いた何かに眉をひそめた。
パパスはコルネオの館でヘンリーの荷物を調べ、若干の食料とイオの書を回収していた。
アイスブラントがある以上、他の武器の類は荷物にしかならないし、リフレクドリングはあいにくパパスの指に入らない。
弓矢はそれなりの作りだったが、パパスが思いっきり引くと壊れてしまった。
まあ、そんなこんなで荷物の整理を終えた彼はウォールマーケットを出て、
双子とバッツ、それに成長したとんぬらを探して6番街公園を通り抜け5番街まで歩いてきたのだ。
パパスはもう一度目を凝らしてジャンクの山の向こう側を見た。
亜麻色の髪がふわふわと、歩くリズムに合わせて揺れている。
「さて、どうするかな?」
パパスは足下でお座りをしているトーマスを見た。
問いかけられたトーマスは首を傾げてこちらを見る。と…
遠くで絶叫が上がった。いや、言うほど遠くはないが。
女性の絶叫…否、悲鳴が上がる。さっき僅かに亜麻色の髪が見えた辺り。
そして、その悲鳴の内容には、聞き覚えがあった。
「ザックス!」と叫んだ。確かに、その声は。
パパスは弾かれるように駆けだした。真っ直ぐ、声に向かって。
そして、戦いは始まる。たった一人の狂人は、戦いの準備を整えた。
400 :
3/3:04/01/23 21:24 ID:fIB4RCjk
【パパス 所持:アイスブランド イオの書 食料多
現在位置:5番街
第一行動方針:声のした方に駆けつける。
第二行動方針:バッツと双子を捜す。 とんぬらに会う。スコールを倒す。
第三行動方針:ゲームを抜ける】
【トーマス 所持:鉄の爪 薬草×10 手紙 碁石(20個くらい)
現在位置:5番街
第一行動方針:パパスについていこうと思っている】
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド・ロトの剣
現在位置:5番街、エアリスの家寄り
第一行動方針:エアリス達と行く
第二行動方針:ゲームを覆してテリーの仇を取る】
【ティーダ/エアリス/モニカ
現在位置:5番街、エアリスの家寄り
所持武器:吹雪の剣・いかづちの杖・参加者リスト/エドガーのメモ・マジャスティスのメモ・癒しの杖/ エドガーのメモ(ボロ)
第一行動方針:エアリスの家へ
第二行動方針:アーロン、クラウドを探す
最終行動方針:ゲームから抜ける】
【クラウド(重傷):所持武器:折れた正宗
現在位置:エアリスの家から5番街へ
第一行動方針:? 】
【スコール
所持:ガンブレード 真実のオーブ 妖精のロッド・月の扇/アルテマ×1 リノアの首
現在位置:エアリスの家周辺
最終行動方針:リノアを勝利者にする】
401 :
1/3:04/01/23 23:50 ID:qC3d0Bqm
スコールは密かに、彼の後をつけていた。
敵は効率的に、確実に、息を止めなくてはならない。
それが戦いの原則だ。自分たちはそのために、そのためだけの訓練を受けてきた。
相手は半死の重傷者、追いつこうと思えばすぐにでも追いつける。
追いつけば、確実に殺せる。しかし、あえてそうしなかったのは誰かが訪れたからだった。
クラウドはよろよろとも立つ足を動かしていた。
背中が軋んで全身に痺れが回る。視界がぼやけ、光のない星がちらつき始める。
それでも、彼は逃げ続けた。こんな所で死ぬわけにはいかなかったのだ。
ティーダは、もう息のしていない男の脇に屈んだ女性を見ていた。
どうやら、知り合いらしい。どんな仲だったのか、詳しい事はわからないが……
親しかったのだろう。それだけはわかった。
かける言葉が見つからず、呆然と立ち竦む。
それはモニカとミレーユも同じだった。
と、その時。ミレーユは誰かが近寄ってくる事に気付いた。
「誰?」
声をかけてみる。返事は……ない。
現われた人影に反応したのは、先程と同じくエアリスだった。
「く、クラウド……!?」
402 :
2/3:04/01/23 23:52 ID:qC3d0Bqm
エアリスは立ち上がり、彼の元に駆け寄る。
ティーダ、モニカ、ミレーユもそれに続いた。
エアリスは今にも倒れそうなクラウドの体を抱きとめる。
再開できた喜びよりも、あまりにも酷いクラウドの状態に言葉が無かった。
何があったのか、何があるのか。何よりも、彼の傷を癒さないと――――
クラウドは、エアリスの肩を掴んだ。
口元を震わせ、言葉を吐き出そうとする。
「……げろ」
「え?……今、なんて?」
「――――逃げろ!」
刹那、閃光が周囲を包み、溢れて弾けた。
スコールはアルテマの効果を冷静に確認していた。
二・三人はマトモに巻き込んだ。直撃を免れた者も、タダでは済むまい。
……さあ、狩りの時間だ。リノアのいる場所には、何人たりとも近寄らせない。
403 :
3/3:04/01/23 23:53 ID:qC3d0Bqm
パパスは目指していた方向に現われた無機質な光に歯噛みした。
それを成したのが誰で、それがどんな結果を生むか。それを悟ったからだ。
己が為す事を暴力とも知らずに周囲を蹂躙する、未熟な精神の成熟した技を持つ青年。
そんな危険な男を見逃してしまった愚かさが、パパスの心を蝕む。
「今度は、許すわけにはいかん……!」
【スコール
所持:ガンブレード 真実のオーブ 妖精のロッド・月の扇 リノアの首
現在位置:5番街
第一行動方針:この場にいる者を皆殺し
最終行動方針:リノアを勝利者にする】
【パパス 所持:アイスブランド イオの書 食料多
現在位置:5番街
第一行動方針:スコールを倒す。
第二行動方針:バッツと双子を捜す。 とんぬらに会う。
第三行動方針:ゲームを抜ける】
【トーマス 所持:鉄の爪 薬草×10 手紙 碁石(20個くらい)
現在位置:5番街
第一行動方針:パパスについていこうと思っている】
【ミレーユ/ティーダ/エアリス/モニカ/クラウド】
の内、二・三人がアルテマの餌食になりました。
他の者も無傷では済まない筈です。
404 :
1/4:04/01/24 11:58 ID:8MC2x1MO
「――――逃げろ!」
絶叫と閃光が、同時にエアリス達を巻き込んだ。
大地を喰らい、瓦礫を飲み込み、虚空を大きく削り取る。
そんな、クラウドの後方から迫り来る烈光を見て、まずミレーユが動いた。
手近に立っていたエアリスの襟首をひっつかみ、ティーダを蹴っ飛ばして瓦礫の陰に避難させる。
ミレーユとエアリスがそこらの瓦礫の陰に飛び込む。クラウドもよろけるようにして近くの小屋の壁に身体を預けた。
そして、逃げ遅れたモニカだけが取り残される。
「モニカ…!」
ミレーユの手を振り払いながら、エアリスは叫ぶ。
反射的に飛び出して、彼女を助けようと手を伸ばす。
それは悪魔のタイミング。
エアリスがモニカを助けるならば、突き飛ばして瓦礫の山の陰に避難させるしかない。
こちらに引っ張り込んでいたら、両方死ぬ。
今戻れば、エアリスは助かる。モニカは烈光を浴びて死ぬだろう。
突き飛ばせば、モニカは助かる。エアリスは緑色のその光に焼き尽くされ、死ぬだろう。
迷う時間もない一瞬だから、エアリスは迷わずモニカを突き飛ばす事を選んだ。
烈光は目前。一秒もない一瞬。エアリスの手は伸びて…
そして、エアリスは逆に突き飛ばされた。
突き飛ばしたのは、彼女の良く知る…
「クラウド?!」
彼女が叫ぶよりも早く、光はクラウドとモニカとを飲み込んだ。
405 :
2/4:04/01/24 11:59 ID:8MC2x1MO
モニカは目前に迫る光に向かって絶叫した…つもりだった。
あまりにも短い一瞬なのにやたらと長い。
だからと言って一瞬は一瞬にすぎす、身体はぴくりとも動いてくれない。
結局、恐怖の時間が延びるだけ。最悪の感覚だ。
だから、エアリスの姿を、自分を助けようとするエアリスの姿を見たときには、歓喜した。
助かる!生き延びられる!助かる!助かる助かる助かる助かる助かる!
だが、その希望はあっさりうち砕かれた。
あの金髪の男性が、弾かれたように動いてエアリスを突き飛ばしたのだ。
避難していた小屋の陰から目が覚めるような勢いで飛び出して。深い傷を負っているはずなのに。
(そんな…!)
モニカはもはや、何も考えることは出来なかった。
アーロンの顔を思い浮かべることも、何も。
そんな、と言う言葉がでてきたのももはや死んだ後だったので。
「これ…はっ!」
閃光の直後に現場にたどり着いたパパスは、周りの状況に愕然とした。
何も無い。
今の閃光が、周りのジャンクやら小屋やらを真っ平らな地面に変えてしまったのだ。
ある一点を中心とした20メートルほどの円範囲が真っ平らになっている。その外側も爆風でかなりの被害を受けているようだ。
臭いのない熱い空気がパパスを包み、愛撫する。
406 :
3/4:04/01/24 12:00 ID:8MC2x1MO
少し離れたところにティーダがいた。
吹き飛んだジャンクで身を守ったのか、無事だ。所々の引っ掻き傷は、ジャンクに頭から突っ込んだときのモノだろう。
彼は吹雪の剣を取り出して、構えていた。
その反対側辺りにミレーユとエアリスが居る。
二人ともかなりの火傷を負っている。そのままならば致命傷にはならないだろうが。
ミレーユはドラゴンテイルを構え、エアリスは信じられないと言った風な顔でパパスを見ている…。
パパスは自分の背中側に振り向いた。
エアリスはパパスを見ていなかった。その向こうを見ていた。
目を見開いて、ガタガタ震えて、思考を停止して。
パパスの後ろに、女性の肘から先と黒こげになった男の死体。
男の方をパパスは知っている。ザックスと知り合いだった…そう、クラウド。
パパスは黙って剣を抜いた。正面を見つめ直すと、スコールが居た。
アルテマの爆心地。真っ平らになった地面のど真ん中に、スコールが立っていた。
スコールから向かって右にティーダ。向かって左にミレーユ。正面にパパス。それにトーマス。
決戦が、始まった。とても静かに。
407 :
4/4:04/01/24 12:02 ID:8MC2x1MO
【スコール
所持:ガンブレード 真実のオーブ 妖精のロッド・月の扇 リノアの首
現在位置:5番街
第一行動方針:この場にいる者を皆殺し
最終行動方針:リノアを勝利者にする】
【パパス 所持:アイスブランド イオの書 食料多
現在位置:5番街
第一行動方針:スコールを倒す。
第二行動方針:バッツと双子を捜す。 とんぬらに会う。
第三行動方針:ゲームを抜ける】
【トーマス 所持:鉄の爪 薬草×10 手紙 碁石(20個くらい)
現在位置:5番街
第一行動方針:パパスについていこうと思っている】
【ミレーユ(火傷) 所持武器:ドラゴンテイル・妖剣かまいたち・小型のミスリルシールド・ロトの剣
現在位置:5番街
第一行動方針:スコールと闘う
第二行動方針:ゲームを覆してテリーの仇を取る】
【エアリス(火傷) 現在位置:5番街
所持武器:エドガーのメモ・マジャスティスのメモ・癒しの杖
第一行動方針:?
最終行動方針:ゲームから抜ける】
【ティーダ(軽傷) 現在位置:5番街
所持武器:吹雪の剣・いかづちの杖・参加者リスト
第一行動方針:スコールと闘う
第二行動方針:アーロンを探す
最終行動方針:ゲームから抜ける】
【クラウド モニカ 死亡 】
409 :
1/4:04/01/24 20:24 ID:IwMnlVVn
スコールは状況を確認して、瞬時に行動を開始した。
あの中年の戦士、パパスがこのタイミングで現われたのは完全に想定外だった。
おそらく最強の敵であり、本来ならば真っ先に倒すべきなのもこの男だ。
しかし、三方向から囲まれたこの状況、正面に出ればすぐに袋叩きになる。
こういう時はまず数を減らす。それから一対一になる状況に持ち込む。
一対三ならば間違いなく負けるが、一対一を三回ならば勝ち抜く目も出てくる。
だから、狙うのは左。手傷を負った女性二人だ。
ガンブレードを構え、突撃する。鞭を構えた女性がリーチを生かして攻撃を仕掛けてきた。
だが、その攻撃は見える。一時期自分の教師になった仲間に、鞭使いと戦う際のレクチャーを受けていた。
地面に這うほどに身を屈めて鞭から避けつつ、ガンブレードの刃に鞭を絡めさせる。
こうなると鞭は無力だ。押すも引くも出来ない。鞭を捨てるのが正解である。
だが、瞬時に判断できるほど、彼女はバトルの本職ではなかった。
間合いは埋まった。
剣を抜こうとする女性の横顔に、鞭が絡まったままのガンブレードの柄を叩き込む。
鼻と口から血が散った。自重のない女性は半ば吹き飛ばされるようにたたらを踏む。
そんな状況でも剣を離さず抜いたのは、本職ではないとはいえ激戦を潜りぬけた経験があるからだろう。
だが、幾ら経験があったとしても、乗り越えられない壁はあった。
斬り合わせる事、八合ほど。ミレーユの剣は斬り弾かれ、直後彼女の体も切り裂かれた。
まずは一人。もう一人に視線を向けると、竦んだままこちらを見上げている。
抵抗する様子は無いようだ。ガンブレードを無造作に振り上げる。
これで二人――――
410 :
2/4:04/01/24 20:27 ID:IwMnlVVn
その時だった。左足に鈍い痛みが走ったのは。
見ると、犬のトーマスが噛み付いている。いち早く駆けつけ、スコールの行動を阻もうとしたのだ。
舌打ちする。犬の顎は人間が思っているほど優しいものではない。
即座に剣を返して薙ぎ払う。ロクに抵抗出来ず、トーマスは襤褸切れのように吹き飛ぶ。
あっという間に二つの命が消えようとしていた。だが、その抵抗はけして無駄ではない。
ミレーユとトーマスが稼いだ時間は、確実にスコールのタイムスケジュールを遅らせた。
裂帛の気合と共に殺到してくるティーダとパパスは、もうすぐそこにいる。
二方向から同時に来る攻撃をかわすには、相当技量に差が無い限り、不可能である。
こういう状況になったら、被害を広げる前に逃げるのが常道。
……しかし、今のスコールは逃げるわけには行かなかった。今はリノアがいる。
あらゆる状況で冷静な判断を下す為には、感情は不要だ。
恐怖は己を縛る枷になる。戦いに埋没し、ただガンブレードを振ればいい。
他人の事など、関係ない。戦闘に勝つために、それは必要な事だった。
自分という内側を守るためにも。
しかし、今はリノアがいる。リノアのいるあの家に行かせる訳にはいかない。
そういった縛りが……あるいは人として唯一残った『心』が、彼をその場に留まらせた。
受け止めたのはどちらだったか。いや、そんなことは関係ないかもしれない。
片方を凌ぎきれず、まともに斬られた。そのことに変わりはないのだから。
泳ぐ上半身。飛び散る血潮。体を動かす力が消え失せた。
もう、動けない。返す二つの刃が迫っても、かわす術はない。
痛みはなかった。ただ、全身から血が抜けていくのを感じた。
目の前が黒で埋め尽くされていく。静かな闇の中へ、沈んでいく。
その中に、薄らと人の顔が浮かんだような気がした。
優しく微笑む、愛しい人の顔。口元を動かして何かを伝えようとしている……
何と言ったのか。聞こえなかった。わからなかった。
スコールは、涙も声も出さずに、泣いた。
411 :
3/4:04/01/24 20:28 ID:IwMnlVVn
「よかった。無事だったのね」
「待ってて、今直すから」
エアリスは癒しの杖をミレーユに向けた。
痛みが和らいでいくのがわかった。けれど肝心な何かがすでに失われているのもわかった。
だから、ミレーユは黙っているのをやめた。神秘は神秘として隠すのが占い師なのだけれど。もう、最後だから。
「私、ね。弟がいたんだ」
「喋らないで」
「こんなゲームに巻き込まれて……会う事も出来ずに死んでしまったわ」
「黙って」
「だからせめて、誰かを護ろうと、思ったのよ」
「そんな話、聞きたくない」
「それは私のエゴだから。セリスには悪い事をしたわね」
「どうして……」
「でも、私……あなたを護れたよね?」
「どうして!」
エアリスは堰を切ったように、泣き出した。
「どうして、こんなことになったの!?また会えると思ったのに!折角会えたのに!」
「エアリス……」
「こんな風に助けてもらっても嬉しくなんてない!」
子供のように泣きじゃくるエアリス。
ミレーユはそんな彼女に優しく微笑み、ほとんど感覚のない手を彼女の頬に添える。
「そうね……ごめんね。残される方は、もっと辛いよね。
でもね、生きるってことは、その痛みを乗り越える事だと思う。
そうやって人は産まれ、未来を紡いで生きてきた……」
「お願いだから……死なないで」
「ええ、出来る限り努力してみるわ。だから、あなたも生きなさい。
生きている限り、生き続けなさい。……この火傷、ちゃんと直して、ね……」
412 :
4/4:04/01/24 20:30 ID:IwMnlVVn
するりと、エアリスの頬からミレーユの手が零れ落ちる。
慌てて掴むエアリス。けれど手が握り返してくる事はなくて……それが悲しくて。
エアリスの泣き声が伍番街に響き渡った。
ティーダはエアリスを呆然と見ていた。そばでパパスが犬のトーマスの瞳を閉じている。
彼が誰なのか、何故手を貸してくれたのか。聞くべきことはたくさんある。
けれど、今はそんな気になれない。ただ、悲しい。そして苛立たしい。
こんなことが、一体いつまで続くんだ。いつになったら、この死の螺旋は途切れるんだ。
たまらず、ティーダは叫んだ。叫ぶしかなかった。
【パパス 所持:アイスブランド イオの書 食料多
現在位置:5番街
第一行動方針:バッツと双子を捜す。 とんぬらに会う。
最終行動方針:ゲームを抜ける】
【エアリス(火傷) 現在位置:5番街
所持武器:エドガーのメモ・マジャスティスのメモ・癒しの杖
最終行動方針:ゲームから抜ける】
【ティーダ(軽傷) 現在位置:5番街
所持武器:吹雪の剣・いかづちの杖・参加者リスト
第一行動方針:アーロンを探す
最終行動方針:ゲームから抜ける】
【ミレーユ 死亡】
【トーマス 死亡】
【スコール 死亡】
413 :
1/4:04/01/25 22:24 ID:FF1nc9va
「落ち着いたかね」
声をかけられて、ティーダは振り向いた。
そこには、ボサボサの黒髪に口髭、筋骨隆々とした中年の男がいる。つい先程助太刀してくれた男だ。
「あー。まぁ。一応。かな」
ティーダは曖昧な返事をした。
落ち着いた、といわれればそうかもしれないとは思うが、正確には疲れたのだ。
叫んで、叫び続けて……でも誰かが生き返るわけもなくて、それで疲れたのだ。
だから、落ち着くというよりは、落ち込む、というのが正しいと思う。
はぁ、と一つ溜息をつくとティーダは背筋を伸ばした。
終わってしまったことをウダウダ愚痴っていても何も変わりはしない。
そんなことで立ち止まるより、可能性を信じた方がいい。無限の可能性というやつを。
「そういや、まだ礼も言ってなかったっけ。その、助けてくれてありがとうっス。
あっと、俺、ティーダ。で、あっちがエアリス」
ミレーユの亡骸を抱いて項垂れているエアリスを親指で示す。
中年の戦士はフム、と顎を動かすと。
「パパスだ。礼には及ばん。あの少年を放置してしまった責は私にもある」
「……どういうことっスか?」
パパスはこれまでの経緯を説明した。
以前のフィールドでスコールと遭遇し、見逃してしまったことを。
ティーダは何ともいえない気分になった。パパスに非が無いことはわかるが、
もしも前のフィールドでスコールを殺していれば…そう思うとやりきれなくなる。
だから、口に出したのはこんな台詞だった。
「そういうことはあまり言わない方がいいと思うっス」
「そうかな……?」
「あの時ああしていれば、こうしていれば……そんなこと考えるのは果てしないから」
もしも、を考えるのは人の常だ。しかし過去が変わることはなく今が良くなる事はない。
けれど未来を良くする事はできるだろう。
「死ななくてもいい奴がこの先死なずに済んだ。そう考えた方が健全っスよ。……多分」
414 :
2/4:04/01/25 22:28 ID:FF1nc9va
「そうだな。後悔は死ぬ前でも遅くはない。今は先のことを考えよう」
そう言うと、パパスは脇に持っていたものを地面に降ろした。
それは、武器や道具袋である。自分とエアリスの物ではない。つまり、そういうことだ。
「放置して悪用されるとも限らん。使えるものは頂戴し、そうでないものは破棄しておくべきだろう」
「そっスね」
パパスが集めてきたのはザックス、リノア、ミレーユ、トーマスの袋。
クラウドとモニカの袋はアルテマに巻き込まれて灰になった。
更に、バスターソード、ガンブレード、ロトの剣、ドラゴンテイルといった武器。
その中から必要なものを選んでいくことにした。
「なかなかしっかりした造りの剣だ。使わせてもらおう」
バスターソード、妖剣かまいたちを確保するパパス。
「アレ、この柄どっかで見たことあるなぁ?どこで見たっけ??」
よく思い出せないが気になったので、ロトの剣はティーダが持つ事にした。
ドラゴンテイルは何かの役に立つかもしれないから保持しておくとして、
ガンブレードは破棄することにした。使い方がわからないし、そもそも使う気になれない。
「あれ、これ?」
ティーダは折れた正宗を手にとった。雪原で捨てた筈のものである。
クラウドが偶然拾ってこの世界に持ち込んだのだが、それを知らないティーダには、ただ不気味なだけである。
「……後で処分しとこ」
続いて袋の中身だが、ミスリルシールドはティーダが欲しがったので彼の物になった。
マテリアや真実のオーブは一見何の役にも立ちそうになかったが、
嵩張るものでもないからということで、これもティーダが持つ。
妖精のロッドと月の扇は、女物だからエアリスの判断に任せよう、ということになった。
食糧や燃料は三等分する。
415 :
3/4:04/01/25 22:30 ID:FF1nc9va
とりあえず配分を終えたパパスとティーダはエアリスの元に向かった。
声をかけると反応して見上げてくる。目元は真っ赤だが、意識はしっかりしているようだ。
パパスの素性や道具の分配のことを説明すると、
「わかった。じゃ、これは私が持っておくね」
そう答えて、自分の道具袋にしまう。
「大丈夫かね?」
パパスが念の為そう問い掛けてみると、エアリスは疲れたままで笑顔を浮かべた。
「大丈夫、じゃないかも。布団に入って、ぐっすり眠りたいかも」
こうしてティーダとエアリス、そしてパパスはエアリスの家に向かった。
三人を待っていたのは物言わぬリノアの首だったが、
他に人の気配や危険もなく、周囲は静寂に浸されている。
エアリスは火傷の治療をした後で自分の部屋のベッドに潜り込んだ。
現実を受け入れるために、今は眠りが必要だった。
パパスとティーダはリノアの首を庭先に埋めることにした。
適当な花を切って、埋めた場所に供える。
何となく、ティーダは呟いてみた。
「何で、この人笑ってたんスかね」
「満足して死んだという事かも知れぬな」
「寂しいっスね」
「そうだな」
このゲームが始まってから、周囲は死に満ち満ちていた。
生きて、死んでいく様をいくつも見てきた。それは悲しく、寂しい事だった。
けれど一番寂しいのは、そんなこの世界の雰囲気に慣れ始めている事かもしれない……
訳もなく、そう思った。
416 :
4/4:04/01/25 22:34 ID:FF1nc9va
【パパス 現在位置:エアリスの家
所持品:アイスブランド イオの書 バスターソード 妖剣かまいたち ドラゴンテイル 食料多
第一行動方針:バッツと双子を捜す。 とんぬらに会う。
最終行動方針:ゲームを抜ける】
【エアリス 現在位置:エアリスの家
所持品:エドガーのメモ マジャスティスのメモ 癒しの杖 妖精のロッド 月の扇
第一行動方針:休養
最終行動方針:ゲームから抜ける】
【ティーダ 現在位置:エアリスの家
所持品:吹雪の剣 いかづちの杖 参加者リスト ロトの剣 小型のミスリルシールド マテリア(かいふく) 真実のオーブ
第一行動方針:アーロンを探す
最終行動方針:ゲームから抜ける】
どのくらい時間が過ぎたか、辺りの静けさに酒場の中から緊張の度合いが九割以上かき消えたぐらいのころ。
かすかに空気が動いた気配があった。
「う、誰か来たのか」
さすが伝説のガード、目が覚めたアーロンはうめくような声で言った。
とんぬらが入口を見やりながら、隣りで眠っているバッツの肩をたたく。
「ん……」
「しっ」
とんぬらが口元に人さし指を立てたのを見て、寝ぼけ眼のバッツも事態を理解する。
テーブルの上に手を伸ばし、ブレイブブレイドをつかんだ。
正面入口、蝶つがいの開き戸がきしんだ音を立ててゆれ動いていた。
外の通りはもちろん、店の中にも侵入者の姿はない。
弾かれたようにとんぬらは、子どもたちの方を振り返った。
エーコが両手をにぎりしめて、背伸びするようにのばした首をぶるぶると左右に振った。
すぐ傍でアニーが、その向こうにリディアとクーパーが、安らかな眠りについている。
みんな大事な子どもたちだ。
とんぬらが一回うなずくと、エーコは要領を得たとばかりにうなずき返す。
バッツは椅子から立ち上がり周囲に気を配る。寝過ごした分のツケはこれから返さないと。
呼吸を整えて視戦を左右に走らせるバッツ、その肩をとんぬらが追い越した。
「僕が外を見てくる。子どもたちを頼むよ」
バッツはとんぬらを引き止めようとした。
「いや、父親がいてやった方がいいんじゃないか」
とんぬらは微笑んで言った。
「何もなければすぐ戻るさ。多分、危ないことは何もないんだと思う。ただちょっと気になるんだ。
個人的に、何だかね」
とんぬらは曖昧な答え方をする。
「わかった」
バッツがテーブルの方へ戻ると、とんぬらは外へと歩いた。
「……気をつけろよ」
アーロンが後ろから声をかける。とんぬらは黙って出て行った。
とんぬらは外に出ると行き場所を適当に見当つけ、ゆっくりと進みだした。
数時間前に一度見渡した町並みを、今度はすいと魚が泳ぐように歩いていく。
危機感というものは、とんぬらは感じられなかった。
いくつか角を曲がった。
手前に店の看板、読めない字で書きなぐられた印象の古いもの。
この街全体が埃をかぶっているみたいで、とんぬらは別段気にもとめない。
ただ、この街に住んでいた人たちって荒くれ者が多そうで、大変そうだな、賑やかそうだな、
そんな感想はもった。
とんぬらは酒場のすぐ近くに戻ってきた。
ここは暗くてちょっと息苦しい、でも人さえ集えば、活気にあふれる元気な街なのかもしれない。
何も気になることなんてなかったんだ。薄暗いところには、何かが潜んでいるなんて子供だなぁ――
とんぬらは奇妙な感覚に襲われた。魔物なのか人間なのか、なぜか懐かしい気配。
背後を振り返る。
人が立っていた。体のラインがはっきりとして、背がぴんと伸びている女性。
「アイラ……さん」
とんぬらは見えるはずもない夜空で、星々のまたたきが強烈になるのを感じた。
アイラはバラックの陰に身を隠していた。
とんぬらと目が合うと、坂道を下るように駆けていく。
恋人ではないけれど、一度心に残って離れなくなった人なら、綺麗な姿で会いたかった。
あいにく今の姿は、青ざめて擦り切れたぼろ切れみたいな服を身につけているだけで、
なんとも酷いものだった。
それでも悲しくないのは、指輪があるからだ。
アイラは立ち止まった。
指輪につながれて感情の起伏もない生を取り留めているよりは、自分の想いに裏づけされる
熱した言葉を、風にのせて届けたい。
それで永遠の闇に押し流され、この体が人形になってしまおうとも。
それは死んでしまうということ? ただ一言いいたいだけのために?
アイラは自分のなかで揺れた。
相手の肩越しに覗く暗い路地で、光が灯るのを見た。アイラが、とんぬらが。
青い光をたたえた蛍は水をもとめて夜を舞い、傍で見つめる人だかりにまぎれて消えてゆく。
街路灯の冴えない明かりは、きまぐれにゆらめく小さな虫のように点灯をくり返す。
「おいっ、大丈夫だって」
「もしものことがあったらどうする気! とんぬらさん一人なんでしょ」
酒場からエーコとバッツが気忙しい足取りで出てきた。
「あ」「えっ」
月影のようなアイラととんぬらを見て途端に固まる二人。
バッツたちの当惑の声が街の外れに過ぎ去れば、静けさはまた戻ってくる。
とんぬらはひとまずアイラから視線を外し、落ち着いてくれとエーコたちに向けて手をかざした。
【とんぬら(DQ5主人公) 所持品:さざなみの剣
第一行動方針:子供たちを守る
第二行動方針:パパス・ライアン・アイラをみつける】
【クーパー(熟睡 滅多なことでは目覚めず) 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜
第一行動方針:とんぬらについていく
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【王女アニー 所持品:マインゴーシュ
第一行動方針:とんぬらについていく】
【リディア(魔法使用不可) 所持品:なし
第一行動方針:仲間を捜す?】
【エーコ&モーグリ 所持武器:なし
第一行動方針:?】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)(睡眠中)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント/
第一行動方針:クーパー達と共に行動する
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【アーロン 所持武器:折れた鋼の剣
第一行動方針:体を癒す
第二行動方針:仲間を探す】
【アイラ(ゾンビ・左腕欠損) 所持武器:ダイアソード 死者の指輪
現在位置:プレート内部への通路(7番街崩壊後のパイプ通路に当る 行き先は7番街?)
行動方針:ゾンビ状態中はとんぬらを探していく。死者の指輪が外れたら???】
「むむむ……」
列車墓場に到着したオルテガだったが、彼はまだそこにいた。
移動したいとは思っているのだが、入り組んで迷路のようになったそこから、なかなか抜け出す事ができない。
瓦礫が散らばって足場が不安定であるため、チョコボを頼るわけにもいかなかったし、
そもそも土地勘もないからどちらに行っていいかもわからないのだ。
「やれやれ、まいった」
顔を撫でる。生身の顔。もしも……もしも、あの状態ならば。
こんな所など強引に突っ切れるだろうに。そんな誘惑が絶え間なく襲う。
それでも我慢できたのは、あの覆面の反作用の大きさを憂いたからだ。
「それでも、最悪使わねばならんだろうが」
「クエ〜」
チョコボが何と言ったのかはわからない。さっさと使えといったのか、その逆か。
結局わからないので、オルテガは気にしない事にした。
もう少し、歩き回ってみよう。何か見落としがあるかもしれない。
外は、もう夜に差し掛かっていた。
現在位置:列車墓場
【オルテガ(チョコボ) 所持武器:危ない水着 グレートソード 覆面 壊れた水鉄砲
ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
第一行動方針:アルスを探す
最終行動方針:未定】
422 :
1/3:04/01/28 23:10 ID:FxOQwA+Y
とんぬらは落ち着いて出てくるようにバッツとエーコに指示すると、再びアイラのほうを見た。
動く気配はない。迷っているような、そんな印象を受けた。
何を躊躇っているのか、何を恐がっているのか。それはわからない。
魔物使いとはいえ、そこまではわからない。ただ戸惑い、恐れている。
それだけがわかる。あとはそれを受け入れるだけだ。
「出ておいで」
優しく声をかける。荒ぶる魂を鎮める音、虚ろな魂を揺らす音。
魔物は孤独だ。他と違うが故の、あるいは力があるが故の孤独を常に背負っている。
それを受け入れ、あるいは慰め、共に在ろうとするのが魔物使いだ。
それゆえに、その言葉にはある種の強制力が篭る。
アイラはバラックの影から姿を現した。
その姿を見てとんぬらは形のよい眉を歪める。
やや衣服は汚れてはいたが、ゾンビ状態のアイラはそのままだ。
ただし、左の手がない。肘から少し先のあたりから、何も存在していなかった。
「これは」
巻いてあった布に触れる。若干血で染まってはいたが、思ったほどではないと思った。
ゾンビ状態のお陰か、血液の流れも止まって最低限ですんだということか。
しかし、何にしても処置をとる必要があると思う。
とんぬらはやってきたバッツに事情を話すと、アイラを見てもらうことにした。
応急処置レベルなら出来なくもないが、知識のある彼に聞いた方が良いと判断したからだ。
423 :
2/3:04/01/28 23:11 ID:FxOQwA+Y
バッツは出血が止まっている事を確認して、切断面を覆った布を取る。
切断面は非常に綺麗だった。血管もほとんど潰れていない。よほど鋭利な刃物で、熟練した者が切ったのだろう。
更にアイラがゾンビ状態である事、切断した場所が零下だったことも優位に働いたようだ。
きちんと処置をすれば、指輪をとっても命に関る事はないだろう。
そう告げると、とんぬらはほっと表情を緩めた。
「それじゃ、早速その処置をしよう」
「ああ。まずはしっかり消毒して、それから切断面を焼く。しばらくは痛むけどな」
「そこは回復魔法で何とかするさ。我慢、できるかい?」
頷くアイラに、とんぬらは優しく微笑む。いい子だ、と。
とんぬらはアイラを連れて適当な家に入った。
程無く、酒場から酒を持ち出してきたバッツも入っていく。
エーコは、動き回る二人を呆然と見ていた。
こういうとき、自分は無力だと思う。それは嫌なことだ。
何かすることはないかと探すけれど見つからない。それは嫌いなことだ。
結局、自分はどうしようもなく子供だと思う。それは嫌なことだ。
こうして、待つだけしかない状態も。
処置は滞りなく終わった。痛覚のないアイラは大人しく、問題も発生しなかった。
アイラを連れて酒場に戻る。起きていたのはアーロンだけだったが、
一度戻ったバッツが説明しておいたので、驚く事はなかった。
「なるほど、確かに死人だ」
淡々とそう語っただけである。その中に微妙な感情が含まれていたが、気付く者はいない。
クーパー、アニー、リディアはまだ眠っていた。
クーパーのシャナクでアイラの呪いを説こうと考えていたが、無理に起こすのも酷だろう。
目覚めるのを待って、万全の状態で挑んだ方が結果も良くなる筈だ。
424 :
3/3:04/01/28 23:13 ID:FxOQwA+Y
再び、周囲を静寂が満たした。静かで、ある意味平和な時間が再び始まる。
それが破られるのは、日付が変わる夜更けだった。
現在位置:7番街
【とんぬら(DQ5主人公) 所持品:さざなみの剣
第一行動方針:子供たちを守る
第二行動方針:パパス・ライアンをみつける】
【クーパー(睡眠中) 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜
第一行動方針:とんぬらについていく
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【王女アニー(睡眠中) 所持品:マインゴーシュ
第一行動方針:とんぬらについていく】
【リディア(魔法使用不可)(睡眠中) 所持品:なし
第一行動方針:仲間を捜す?】
【エーコ&モーグリ 所持武器:なし
第一行動方針:?】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント
第一行動方針:クーパー達と共に行動する
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【アーロン 所持武器:折れた鋼の剣
第一行動方針:体を癒す
第二行動方針:仲間を探す】
【アイラ(ゾンビ・左腕欠損、処置済み) 所持武器:ダイアソード 死者の指輪
行動方針:ゾンビ状態中はとんぬらを探していく。死者の指輪が外れたら???】
保守
426 :
1/2:04/02/01 01:20 ID:Df8OZB3S
ちょうど、ミッドガルにエドガーの放送が流れた頃――――
バラモスゾンビは、ゾーマ城の廊下をゆっくり進んでいた。
気持ちは昂ぶっている、すぐにでも早く殺したい……そんな気持ちを押さえつけて。
一歩一歩、踏みしめるように歩を進める。
廊下のあちらこちらに散らばるのは配下の魔物たち。
そのいずれもが、斬られ、潰され、燃やされ、突かれ、砕かれ、焦げて絶命している。
廊下の壁を彩る多彩な色は、そんな魔物たちの体液が流出したものだ。
全て、これから向かう先にいる者によって成されたものである。
この殺戮は、一人の人間と、それが率いる存在によって成されたものである。
いや、人間と言うのは正確ではないだろう。その言い様はあまりにも『無礼』だ。
人間というのはしょうもない存在だ。その価値は虫ケラにも劣る。
あまりに微弱でありながら、知恵という度し難いものを有し、何より器用である。
力有るものが力無き者を食い物にする。それは良い。
だが人間の器用さはあまりにも中途半端だ。明確に誰が優れていると一概に言えない。
他のどんなものより優れた事が出来ながら、死ぬ時は呆気なく死ぬ。
それ故に人間は弱い。にも関らず時にその器用さで強者を倒すことがある。
原初の理から外れ、弱者の責務を果たさぬ人間は世界の無駄、そのものだ。
それ故に、人間が魔王に勝つことはない。魔王の絶対の前には平伏すしかない。
戦士であろうと僧侶であろうと魔法使いであろうと賢者であろうと国王であろうと。
だが、そんな人間の内に魔王に対抗できる存在が現われる。
戦いの恐怖にも、危険の香りのも、死の誘惑にも、安らぎの堕落にも、
けして怯まず顧みず、勇ましく困難に向かうものが現われる。
救世主。英雄。決戦存在。魔人。
……そして勇者、と呼ばれる、人をやめた者が。
427 :
2/2:04/02/01 01:22 ID:Df8OZB3S
廊下を曲がる。その先の向こうに……一つの影があった。
まだ少年である。一見、人間の街ならば、どこにでもいそうな容姿である。
しかし、それが秘めた眼光は桁外れの殺気を放っている。
近付くに連れ、少年の手に変わった意匠の剣が握られているのがわかった。
取り巻きは三人。面子こそ違うが、人数は以前相対した時と同じである。
そう――――あの時と同じ。
バラモスゾンビは咽喉を鳴らした。
まだ呪文も届かぬ間合いだ。もう少し近付かねば話も出来ない。
もっともバラモスゾンビは魔法を詠唱する口を失っている。近付かなくては話にならない。
しかし近付けば……あの時の雪辱を晴らす事ができる。
それは快感だった。だから、笑ったのだ。
「壮健そうで何よりだ勇者。だが、お前の旅はこれまでになる」
「………」
少年は答えない。目の前にいるのはただの敵、それだけだ。話す必要などない。
それはこちらも同じだった。座興にもならぬ事なら、手短に済ませよう。
「では、さらばだ!」
【アルス(マジャスティス習得) 所持武器:対人レミラーマの杖 天空の剣 黄金の腕輪】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)】
【ティナ 所持武器:プラチナソード チキンナイフ】
【バーバラ 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー・ミスリルナイフ】
以上、第一行動方針:バラモスゾンビを迎え討つ
最終行動方針:ゾーマ打倒
保守
429 :
1/4:04/02/03 21:14 ID:ZuGKTErT
「はあ、もう真っ暗だ」
ティーダは欠伸をかみ殺しながら呟いた。
この家にいたリノアを葬った後、パパスと情報交換した。
パパスの探し人であるとんぬらとティーダの探し人であるアーロンが接触したらしいこと以外、
お互い求める情報はなく、あまり意味はなかった。
だが仕方ないことだ。何もかもうまくはいかないだろう。特に、こんな場所では。
パパスはすぐにでも探し人を見つけに行きたかったが、
エアリスが部屋に閉じこもっているので、一先ずここに留まることにした。
彼女がどんな選択をするかはわからないが、それを見届ける責任が自分にはあると思う。
そんなパパスをティーダは受け入れた。そして彼に警戒を任せ、つい先程まで眠っていたのだ。
ずいぶんと中途半端な時間に起きてしまったが、
いい加減眠り飽きたし、そろそろ交代したほうがいいだろう。
起きている筈の男を探して……家の中にいないことを確認した。
外か? もしかして、どこかにいってしまったとか?
それも仕方ないことだと思う。ティーダは頭をかきながら外に出た。
パパスは、そこにいた。
花園の中、直立不動の姿。
体の正面、鞘に納まった剣を杖のように地面に立て、柄に両手をのせる。
さらさらと花を揺する風がやんわりと男の黒髪や口ひげを撫でている。
不思議な光景だと、ティーダは思った。
夜の花園に佇む中年。言葉にすれば恐ろしく齟齬がある。
なのに、そんな光景があの中年には似合う。
花園に溶け込むような美しさはない。ただ、美しいものを従える威厳がある。
ノーブレス・オブリージュ、統べる者の心構えを有するが故のカリスマ性。
アーロンとも父ジェクトとも違う何かをパパスから感じて、その場に立ち竦む。
どれだけの時間が過ぎたか。動いたのはパパスだった。
430 :
2/4:04/02/03 21:16 ID:ZuGKTErT
「そこで何をしているのかね」
「え? あーっと、今起きたとこッス」
振り向いて何事もなかったかのようにたずねてくるパパスに、あわてて返答する。
それで、よくわからない硬直は消えた。後は自分のペースを取り戻すだけ。
「そうか。彼女は?」
「いや、まだ寝てる見たいッス」
そうか、とパパスはうなずいた。そして視線を向こうに戻す。
沈黙。話題が見つからず、気持ちが空転する。さて、何を話したものか。
考えるティーダだったが、次に口火を切ったのもパパスだった。
「静かなものだ。アレから、誰一人ここに近寄った気配はない」
「はぁ」
「誰もいないのか、それとも何かがあったのか」
「何か?」
「……君は、例の定時放送を聴いたかね?」
あ、とティーダは呟いた。そういえば主催者側の死者を告げる放送がない。
「いや、聞いていない」
「わしもだ。前回の旅の扉の出現時間が遅れたこといい、
崩壊するタイミングが早かったことといい、何かがおかしい」
「うーん。誰も死ななかったから、とか。ここのは昼過ぎでさ、次の放送で言うとか?」
「それはない。最後の放送があってから正午までに、少なくとも一人死んでいる」
そんな時だ。
彼らのいるミッドガルに、エドガーの放送が流れたのは。
顔を見合わせる少年と中年。
「今の放送……」
「……どう思う?」
少し考える少年と中年。
「本当なら凄いことだけど」
「うむ、罠でないとも言い切れんな」
こんな世界で、あんなことをさせられてきたのだ。疑うなと言うほうが無理だろう。
431 :
3/4:04/02/03 21:18 ID:ZuGKTErT
しかし、手詰まりのこの状況では、エドガーの誘いに乗るしかないと言うのもまた事実だった。
「でも、もしも本当のこと言ってるなら、俺たち生きて帰れるかもしれない」
「その通りだ。すぐに向うべきだろう」
救いだろうが罠だろうが、そこにいけば何かがあるのだから。
ティーダは力強くうなずく。
「って、エアリスは?」
二階を見上げるティーダ。部屋には明かりが灯っていない。
まだ眠っているのか。悲しみ疲れているんだろう。しかし、起こさないといけない……
そう思った二人だったが、その声は意外な所から聞こえてきた。
「私なら大丈夫。さ、行こう」
荷物から服装化粧まで準備万全のエアリスが、玄関から出てくる。
その表情に悲観はない。柔らかで芯の通った彼女そのままだった。
「大丈夫かね」
一応、パパスが声をかける。エアリスは苦笑を浮かべると、はっきりと答えた。
「大丈夫、じゃないかな」
「は?」
唖然とするティーダに、エアリスは重ねて言う。
「平気じゃない、けどやるべきことがあるなら、今はそれをしないとって思う。
可能性があるのなら、それがどんなに辛くても、悲しいことでもやらなきゃ。
私が出来ることなんて小さなことかもしれない。何も変わらないかもしれない。
それでもやらなきゃ。希望は繋がなきゃ。そうやって、私たちは生きるんだから」
ね? と笑顔を浮かべる彼女に、男二人は何も言えなくなる。
彼女の言うことは正しい。けれど、それを口にするまでにどれだけの葛藤があったか。
絶望を押しのけて、それでも希望を信じると言うことがどれだけ難しいか。
432 :
4/4:04/02/03 21:21 ID:ZuGKTErT
それがわかるから、パパスは口元を緩めた。
「そうか。君は思った以上に強いようだ、安心した」
パパスの賞賛をエアリスは素直に受け止める。もう大丈夫だと、自らを信じ込ませるように。
そんな彼女の姿が、スピラで出会ったあの少女の姿と被って、ティーダの胸は熱くなる。
だから誓う。絶対に帰る、と。絶対に諦めない、アイツに会うために絶対に生きのびる、と。
こうして、ティーダ、エアリス、パパスは上を目指して出発した。
それぞれの胸に、それぞれの希望を抱いて。
【パパス 現在位置:エアリスの家
所持品:アイスブランド イオの書 バスターソード 妖剣かまいたち ドラゴンテイル 食料多
第一行動方針:神羅ビル前からゾーマ城へ
第二行動方針:バッツと双子を捜す。 とんぬらに会う。
最終行動方針:ゲームを抜ける】
【エアリス 現在位置:エアリスの家
所持品:エドガーのメモ マジャスティスのメモ 癒しの杖 妖精のロッド 月の扇
第一行動方針:神羅ビル前からゾーマ城へ
最終行動方針:ゲームから抜ける】
【ティーダ 現在位置:エアリスの家
所持品:吹雪の剣 いかづちの杖 参加者リスト ロトの剣 小型のミスリルシールド マテリア(かいふく) 真実のオーブ
第一行動方針:神羅ビル前からゾーマ城へ
第二行動方針:アーロンを探す
最終行動方針:ゲームから抜ける】
保守
hosyu
435 :
1/3:04/02/07 21:02 ID:p2OsQdUO
エドガーの演説を聞いて、オルテガは深く感じ入ったようだった。
ゾーマという巨悪の前にそれでも立ち向かい、実行に移した彼らの知恵と勇気に。
自分とて、ゾーマを許せぬという思いはある。打倒せねばとは考えていた。
しかし現実は、方法が思いつかず覆面一つに右往左往して時間を無為にしてしまったのだ。
なんて無様。今も、こんな場所から抜け出せぬ。これでは勇者など勤まらない。
けれど――――その不始末を償う機会が、与えられた。
一刻も早く、ゾーマの城に行かなくては。
オルテガは手に持ったソレを睨みつける。
これをつければ、解決するかも知れない。しかし、元に戻れるか。
ただ荒くれる開放感と戻った後のリバウンドに、耐えられるのか。耐えられる……訳がないのだ。
それでも、オルテガはソレを持ち上げた。
怖れぬもの、引き下がらぬものを勇者というのなら。
――――オルテガは、間違いなく、勇者だった……
「フォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」
響きわたる雄叫び。フヌッ、と隣にいるチョコボを見る。チョコボはビクっとする。
ウホッ、とチョコボを肩に乗せると、そのまま大ジャンプ。列車の天井に着地。
飛び乗ってきた大男とチョコボの重量で列車の天井は抜けかける。抜ける前に別の列車の天井に飛び移る。
後はその繰り返し。人知を超えた、というか、まあそんな方法で、オルテガは列車墓場を抜けた。
チョコボを降ろしてその背に乗る。クエ、とチョコボは応じると、上を目指して駆け出した。
436 :
2/3:04/02/07 21:06 ID:p2OsQdUO
――――それから暫くして。
とんぬら、バッツ、アーロン、クーパー、アニー、リディア、エーコ、そしてアイラの八人は、七番街スラムの駅にきていた。
話し合いの後、とにかく上に行ってみようということになり、移動を始めたからだ。
バッツの薬を飲み、しばらく安静にしていたおかげでアーロンは復調している。
しかし、アイラはゾンビ状態のままだった。
エドガーの放送後、まだ眠っていたクーパーを起こして解呪を依頼したのだが、
「この指輪、そんな呪いなんて掛かってないよ?」と、事なげに引き抜いてしまった。
呪いの掛かった武器を装備すると解呪するまで外せない、という現象は確かにある。
ライアンやルーキーたちの世界ではそちらの方が一般的だったし、
とんぬらは呪いについて左程詳しくないので二人の言う事を鵜呑みにしていた。
しかし、呪いの指輪はその類いではない。普通に抜けるのである。
唖然とする父親に、インパスでちゃんと調べなきゃ、とクーパーは得意げに言い、
胸をそらす息子に、とんぬらは苦笑したのだが、それは閑話休題。
ゾンビ状態から復帰したアイラだったが、それだけで体力を使い果たしてしまった。
回復呪文をかけてもらったが、多少楽になった程度で戦闘に挑めるほどではない。
状況と、片腕になってしまった自分の体調、ゾンビ化している自分の行動。
それらを知ったアイラはゾンビ状態になってとんぬらに従うべきだと判断した。
正気ではとんぬらを見ていられないとか、そういう感情もあったがそれも閑話休題。
駅についた彼らは線路を辿って上に行くことにした。
その途中、バッツは地面に見慣れた足跡があることに気付く。
「これ、チョコボか……?」
その足跡は自分たちが来た方向とは別の場所から来て、自分たちと同じように線路を辿ってどこかに向かっている。
足跡は真新しく、つい先ほど出来たもののようだった。つまり……
「俺たち以外の誰かが、上に向かった、ということか?」
437 :
3/3:04/02/07 21:07 ID:p2OsQdUO
現在位置:上に通じる線路
【オルテガ(チョコボ) 所持武器:危ない水着 グレートソード 覆面 壊れた水鉄砲
ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
第一行動方針:ゾーマの城へ
第二行動方針:アルスを探す
最終行動方針:打倒ゾーマ】
現在位置:7番街スラムの駅
【とんぬら(DQ5主人公) 所持品:さざなみの剣
第一行動方針:ゾーマの城へ、子供たちを守る
第二行動方針:パパス・ライアンをみつける】
【クーパー(睡眠中) 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜
第一行動方針:とんぬらについていく
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【王女アニー(睡眠中) 所持品:マインゴーシュ
第一行動方針:とんぬらについていく】
【リディア(魔法使用不可)(睡眠中) 所持品:なし
第一行動方針:ゾーマの城へ、仲間を捜す?】
【エーコ&モーグリ 所持武器:なし
第一行動方針:ゾーマの城へ】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント
第一行動方針:クーパー達と共に行動する
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【アーロン 所持武器:折れた鋼の剣
第一行動方針:ゾーマの城へ
第二行動方針:仲間を探す】
【アイラ(ゾンビ・左腕欠損、処置済み) 所持武器:ダイアソード 死者の指輪
行動方針:ゾンビ状態中はとんぬらを探していく。死者の指輪が外れたら???】
438 :
1/2:04/02/08 21:59 ID:FfBTP1nk
その場は沈黙に包まれていた。
放送直後は、ミッドガルの状況を知る方法はないかと色々探していたのだが、
結局わからないままで、後は会話もなく、ただ誰かが来るのを待っている。
味方が来るという保証はない。中の者たちが全滅したとは考えにくいが、
参加者を殺して回った連中が生き残っている可能性はある。
これは賭けだ。しかし、ゾーマを打倒する上で必要な事である。
だから、待ち続けた。その答えが、明るいことを信じて――――
そして、放送から半時。オブジェの脇に設置された転移ゲートが瞬き、
彼らは思った。ああ――――大失敗だ、と。
まず嘴。そして黄色の羽毛。愛らしいといえばそうかもしれない大きな瞳。
退化した翼。細い様で揺るぎない二本の足。
その生物に騎乗するのは、何も着ていない男。一応局部は隠してあるが、それだけ。
そして覆面。その向こうの目は明らかにイッている。
「あらくれ仮面推参! 世のため人のため生かしておけぬ魔王を始末しようぞ!」
ヤバい、南極だ。つーかあらくれ仮面って。
その場に居る誰もが思ったが、とりあえずゾーマ打倒の為に来たことは間違いないようだった。
極めてエレガントではないのであまり関りたくないというのが総論だったが、
そうも言っていられないので、エドガーは簡単に状況を説明する。
とある儀式により、ゾーマの城に移動する事ができたという事。
ゾーマを倒さない限り、何も解決しないという事。
故に、残った参加者に協力を呼びかけた事。
今も、魔王を食い止めるため、アルスたちが戦っているだろう、ということ。
439 :
2/2:04/02/08 22:01 ID:FfBTP1nk
偉そうに腕組みをしてエドガーの説明を聞いていたあらくれ仮面だったが、
アルスの名前を聞いてその態度は一転した。
「なんと、こうはしておれぬ!!」
チョコボは踵を返し、部屋の外へと走っていく。デスピサロがすかさず扉を開放したので蹴破られることだけは免れた。
そして残ったのは立った埃と、チョコボの足跡。それから、
「なあ、エドガー。もしかして俺たち」
「いうな。頼むから」
ほんの少しの後悔だった。
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本 死神の鎌】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1】
【エドガー 所持武器:エンハンスソード ミスリルシールド ボウガン 天空の鎧(装備不可) スナイパーアイ ブーメラン 首輪×5】
【デッシュ 所持武器:アサシンダガー 加速装置 裁きの杖 首輪×5】
以上、第一行動方針:参加者が訪れるのを待つ
最終行動方針:ゾーマ打倒
【ゼニス 所持武器:アンブレラ 羽帽子? 行動方針:最後まで物見遊山?】
【オルテガ(チョコボ) 所持武器:危ない水着 グレートソード 覆面 壊れた水鉄砲
ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
第一行動方針:アルスを救う
最終行動方針:打倒ゾーマ】
>437
一部更新されていないので修正
現在位置:7番街スラムの駅
【とんぬら(DQ5主人公) 所持品:さざなみの剣
第一行動方針:ゾーマの城へ、子供たちを守る
第二行動方針:パパス・ライアンをみつける】
【クーパー 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜
第一行動方針:とんぬらについていく
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【王女アニー 所持品:マインゴーシュ
第一行動方針:とんぬらについていく】
【リディア(魔法使用不可) 所持品:なし
第一行動方針:ゾーマの城へ、仲間を捜す?】
【エーコ&モーグリ 所持武器:なし
第一行動方針:ゾーマの城へ】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント
第一行動方針:クーパー達と共に行動する
第二行動方針:パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【アーロン 所持武器:折れた鋼の剣
第一行動方針:ゾーマの城へ
第二行動方針:仲間を探す】
【アイラ(ゾンビ・左腕欠損、処置済み) 所持武器:ダイアソード 死者の指輪
行動方針:とんぬらに従う】
441 :
1/4:04/02/09 14:42 ID:pZ9Ve/U8
「なんというか…ストレートに敵が出てきた方が気が楽だったような気がしませんか?」
「出来事が理解の外にあるというのは精神的疲労を招くモノだ」
たったの数分でとても疲れ切った顔になったサマンサの質問に、ピサロは頭を押さえて呻いた。
まあ、アレはハズレだろう。次はまともな人物が現れるに違いない。というか、そう思いたい。とても。
彼らの祈りが通じたからか、次に現れた人物はまともであった。
「よっ…と。リディア、大丈夫?」
「う、うん…」
数分後、再び扉がチカチカと瞬いて、小さな人影が二つ飛び出した。
緑色の髪をした幼い少女と、その手を取ってエスコートする小さな天空の勇者。
「ほう…生きていたか。父親は見つかったか?天空の勇者よ」
「遅れてごめん。でも、お父さんは見つかった…それから、僕の名前はクーパー、だよ」
口の端に笑みを浮かべて天空の勇者を…クーパーを見下ろすピサロ。
クーパーはその威圧感に負けぬように、やはり笑って見せた。
その間にも、背後のゲートからバッツが、アニーとエーコが、とんぬらがアーロンがアイラが姿を現す。
その人数と何気ない身のこなしなどから推測できる実力に、エドガーはほう、と感嘆の声を上げて見せた。
「人数的には十分集まったんじゃないか?」
デッシュは多少手狭になった部屋を見回して嬉しそうな声を上げた。
ゾーマに勝てる…とは言い切れないけれど、少なくとも対等に渡り合うだけのメンツは確保できたはずだ。
442 :
2/4:04/02/09 14:45 ID:pZ9Ve/U8
「それで…」
今の状況は?と言おうとしたとんぬらは、自分の耳元で鳴る奇妙な音に気づいた。
うぃんうぃん…と言う何かが唸るような音。耳元の、少し下辺りで…
「くっ、くびわっ!」
リディアが自分の首を押さえて驚きの声を上げた。音の発信源に気づいたのだ。
全員が首輪に手をやり、驚き、パニックが起こる前を瞬時の静けさがやってきて。
「落ち着け!解呪呪文を唱えろ!」
その静けさに、ピサロが怒鳴り声を滑り込ませた。
叫びかけたアニーがびくりと背筋を震わせる。破裂しそうになった混乱がすうっと波が引くように収まっていく。
バッツとクーパーは反射的に、呪を紡いで唱えた。
「シャナク!」「ディスペル!」
首輪に優しい光が巻き付いて、聞こえていた音が消える。
ほっとするのもつかの間、すぐさま二人は仲間の首輪の解除に取りかかった。
「危ないところだったな。しかしまあ、格好いいところを持っていく…」
ピサロの堂々として危なげのない態度を見て、エドガーはため息を一つ、小さく付いて見せた。
ガストラやケフカと闘っていた頃は自分があの立場にあったはずだが、どうも彼が優秀すぎて自分が格好いいところを見せられない。
ば ん っ !
そんな思考を、ドアを叩く、と言うか砕く強烈な音が断ち切った。
驚きボウガンを構え振り向くと、例の覆面変態がこちらに駆け込んでくるのが見えた。後ろから黄色い鳥…チョコボが追いかけてきている。
「ぬおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!」
絶叫しながら首もとを押さえて走ってくるパンツ一つの覆面男。エドガーは自分の頭が痛むのを必死でこらえた。何が起こったかは分かるが、しかしこれは…
443 :
3/4:04/02/09 14:46 ID:pZ9Ve/U8
エドガーは助けを求めるようにピサロを見たが、彼はもうこの男に関わらないことに決めたらしい。あさっての方向を向いて頭を押さえている…気持ちは、よく分かるが。
(本当に格好いいところ“だけ”持っていく…)
エドガーは格好悪いところをフォローする覚悟を決めて、言った。
「すまないが二人とも、アレにも解呪魔法を使ってやってくれ…」
【とんぬら(DQ5主人公) 所持品:さざなみの剣
第一行動方針:子供たちを守る、ゾーマを倒す
第二行動方針:パパス・ライアンをみつける】
【クーパー 所持武器:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜
第一行動方針:とんぬらについていく。ゾーマを倒す
第二行動方針:パパスを捜す
【王女アニー 所持品:マインゴーシュ
第一行動方針:とんぬらについていく】
【リディア(魔法使用不可) 所持品:なし
第一行動方針:仲間を捜す?】
【エーコ&モーグリ 所持武器:なし
第一行動方針:ゾーマを倒す】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント
第一行動方針:ゾーマを倒す
第二行動方針:パパスを捜す
【アーロン 所持武器:折れた鋼の剣
第一行動方針:ゾーマを倒す
第二行動方針:仲間を探す】
【アイラ(ゾンビ・左腕欠損、処置済み)所持武器:ダイアソード 死者の指輪
行動方針:とんぬらに従う】
444 :
4/4:04/02/09 14:48 ID:pZ9Ve/U8
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本 死神の鎌】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1】
【エドガー 所持武器:エンハンスソード ミスリルシールド ボウガン 天空の鎧(装備不可) スナイパーアイ ブーメラン 首輪×5】
【デッシュ 所持武器:アサシンダガー 加速装置 裁きの杖 首輪×5】
以上、第一行動方針:参加者が訪れるのを待つ
最終行動方針:ゾーマ打倒
【ゼニス 所持武器:アンブレラ 羽帽子? 行動方針:最後まで物見遊山?】
【オルテガ(チョコボ) 所持武器:危ない水着 グレートソード 覆面 壊れた水鉄砲
ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
第一行動方針:アルスを救う
最終行動方針:打倒ゾーマ】
445 :
1/5:04/02/09 21:31 ID:OzxfW8/j
色々思うところはあったが、とりあえずクーパーとバッツはオルテガの解呪を行う事にした。
その間に、お互いの情報交換を行う。状況説明と、探し人の手掛りが目的である。
と、そうこうしている内にオルテガの解呪が終わったらしい。
「助かったぞ少年たち!諸君等の善行は必ずや報われよう!」
バッツとクーパーの肩をポンポンと叩いてチョコボに乗り込む。
「あ、あの!」
「では、さらばだ!縁があればまた会おう!」
話を聞いてない。まあ関りたくないから別にそれはそれでいいのだが。
引きとめようと伸ばしたクーパーの手は空を切り、オルテガは再び部屋の向こうへと消えていく。
「……いっちゃった」
これまでほとんど遭遇した事のない奇天烈なパーソナルに、クーパーは呆然とする。
「少年って……俺もか?」
童顔に見られるが、一応二十歳のバッツは呆然と呟く。
「ヘンタイだねぇ」
身も蓋もないエーコの感想に一堂頷いた。
とりあえず気を取り直して、
「まあ、とりあえず、アレはほっとく事にしよう。それよりこれからの事だが……」
エドガーの露骨な話題転換にアーロンは頷く。
「外で敵を食い止めている連中への援護と、ここで脱出者を待つ二手に分けるべきだな」
「ああ。アルスたちと別れてだいぶ経つ。そう簡単にやられはしないと思うが」
それでも不安は残る。何しろ相手は魔王だ。
と、その時。
ゲートが瞬き、その向こうからティーダ、エアリス、パパスの三人が現れる。
「ティーダか」
「パパスさん!」「パパスおじさん!」「パパスおじさま!」
アーロン、バッツ、クーパー、アニーが呼びかける。
446 :
2/5:04/02/09 21:33 ID:OzxfW8/j
ティーダは自分の名を呼ぶのが誰か気付いて、その男に詰め寄った。
「アーロン! お前、どこに行ってたんだよ!」
「フッ、相変わらずだな、お前は」
軽くあしらわれて口篭もる。しかし、これがアーロンとの会話だ。
ソレをようやく取り戻せて、何とも不思議な気分になる。
何とも不思議な気分になっていたのは、とんぬらも同じだった。
何かを言わなければいけない。言いたいことは幾らでもあったはずだ。
しかし、それはカタチにならず霧の様に消えていく。
ただ、駆け寄っていった自分の子供たちの頭を撫でる父の姿を見ているだけで、目元が熱くなっていく。
「……父さん」
呟いたのはたった一言。自分を見るクーパー、アニー、そしてパパス。
パパスは妻によく似た、深く静かな瞳の青年を見て、ぽつりと呟いた。
「とんぬら、か?」
「………っ」
ぽたッ、と大きな涙が零れる。それだけは、どうしても止めようがない。
言葉もなく項垂れる息子に、パパスはなんと声をかければよいのかわからない。
それは彼の子供たちも同じだった。
今まで一度たりとも辛そうな表情を見せなかった父が、
何時だって優しく微笑んでいた父が泣いている。
喚くわけでもなく、悲しむわけでもない。ただ、肩を振るわせ泣いている。
その姿だけは、何時までもきっと忘れないだろうと、クーパーとアニーは思った。
447 :
3/5:04/02/09 21:36 ID:OzxfW8/j
その場の空気は唐突にしんみりとして、口を挟みづらい状況になった。
しかし、その再開が当人にとってどれだけ重要でも、今は優先すべき事がある。
こういうときに割り込むのは、人間ではない自分の役割だろうとデスピサロは思う。
「すまないが、感動の再開は後にしてくれ。非常事態なのでな」
「……うむ。とにかく、話は後にしよう。良いな?」
「はい」
頷くとんぬらに、アニーはハンカチを渡す。
とんぬらはアニーの頭をそっと撫でてから、目元を拭った。
彼らが落ち着きを取り戻した事を確認してから、エドガーは先ほどの話を続ける。
「――――それで、続きだが……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「ああ、もう今度は何だ!?」
再度話の腰を折られて、エドガーはデッシュを睨む。
デッシュはそれどころではないといった様子で、オブジェの脇にあるパネルを叩いている。
「動力が急激に低下してるんだ。このままじゃ、止まってしまう!」
「なにっ!?」
見る見るうちに、オブジェに点った光が消えていく。転移ゲートも、霞の様に消失する。
もう幾らパネルを叩こうと反応しない。完全に停止したようだった。
これは全員の脱出を確認したエビルマージが動力源を止めたのが原因なのだが、それを知る者はこの場にいない。
わかることは、ここにいる者と、戦っているアルスたちと、後まあ一名が、最終的な生き残りであることだけだ。
呆然とする一堂に、デスピサロは呼びかける。
「何にしても行動を開始するぞ。
先程の話どおり、ここにいる面々をアルスたちの援護部隊と、殿の部隊に分ける」
「え? あ、ああ。しかし、もうここを守る必要は……」
「向こうから大きな気配が来る。先程の魔王とは別種だが、同等の力を感じる。
下手に背後を付かれれば全滅する。かといってアルスたちを放ってはおけまい?」
エドガーの問いに、何事もないかのようにデスピサロは答える。
448 :
4/5:04/02/09 21:40 ID:OzxfW8/j
全く、本当に美味しいところだけを持っていく…エドガーは溜息を付いた。
「では早速パーティを分けよう。まず、援護には私が向かう。道を知っているからな」
「アルスが戦ってるなら俺も行くッスよ」
「私も」
「では俺も行こう。放っておいたらまた泣き出すからな」
「誰が泣くか!」
ティーダとエアリス、そしてアーロンが名乗りをあげる。
「ライアンさんがいるのか……」
「お前は残れ。息子に用があるのでな。お前が行っては子供の勇者も気が気でないだろう」
子供扱いされムっとするクーパーを軽く宥めながら、仕方ないと肩を竦める。
そんな親子にバッツは遠い日の自分の姿を重ねながら言った。
「なら俺が二人の代わりに行く。それでいいか?」
こうしてパーティ分けが決まり、別れる前に三人の首輪の解呪と武器の配分を行って準備を整える。
「なあアーロン。この剣ってあの壁の化け物のときにボロボロにしたヤツ?」
「ああ、無いよりはマシだととっておいた」
「ふむ、ならばこの剣を使ってはどうかね。重いが、そなたなら使えるだろう」
アーロンはパパスからバスターソードを譲り受け、
「お嬢さん、君の弟さんが着ているあの兜と盾だが」
「天空の兜と、天空の盾のこと?」
「実は同じような意匠の鎧を持っていてね。何か関連があると思う」
「……天空の鎧! これ、貰っていいの?」
「勿論。私には使えないようだしね、お役に立てれば光栄の極みさ」
「これ、クーパーの大切なものなの。捨てないでくれてありがとう」
「どういたしまして、レディ」
クーパーは(アニー経由で)エドガーから天空の鎧を譲り受けた。
449 :
5/5:04/02/09 21:42 ID:OzxfW8/j
こうして準備を整えたエドガー、ティーダ、エアリス、アーロン、バッツの五人はアルスたちの援護に向かい、残りはこの場で別の魔王を迎え撃つことにしたのだった。
【オルテガ(チョコボ) 所持武器:危ない水着 グレートソード 覆面 壊れた水鉄砲
ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
第一行動方針:アルスを救う
最終行動方針:打倒ゾーマ】
【エドガー 所持武器:エンハンスソード ミスリルシールド ボウガン スナイパーアイ ブーメラン 首輪×5】
【エアリス 所持品:エドガーのメモ マジャスティスのメモ 癒しの杖 妖精のロッド 月の扇】
【ティーダ 所持品:吹雪の剣 いかづちの杖 参加者リスト ロトの剣 小型のミスリルシールド マテリア(かいふく) 真実のオーブ】
【アーロン 所持武器:バスターソード 折れた鋼の剣】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント】
以上、第一行動方針:アルスたちの援護に向かう
最終行動方針:ゾーマ打倒
【デスピサロ 所持アイテム:『光の玉』について書かれた本 死神の鎌】
【サマンサ 所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1】
【デッシュ 所持武器:アサシンダガー 加速装置 裁きの杖 首輪×5】
【とんぬら 所持品:さざなみの剣】
【クーパー 所持武器:珊瑚の剣 天空の鎧 天空の盾 天空の兜】
【アニー 所持品:マインゴーシュ】
【リディア(魔法使用不可) 所持品:なし】
【エーコ&モーグリ 所持武器:なし】
【アイラ(ゾンビ・左腕欠損、処置済み)所持武器:ダイアソード 死者の指輪】
【パパス 所持品:アイスブランド イオの書 妖剣かまいたち ドラゴンテイル 食料多】
以上、第一行動方針:別の魔王を迎え撃つ
最終行動方針:ゾーマ打倒
【ゼニス 所持武器:アンブレラ 羽帽子? 行動方針:最後まで物見遊山?】
>>696 436 2/3 04/02/07 21:06 ID:p2OsQdUO
(略)
状況と、片腕になってしまった自分の体調、ゾンビ化している自分の行動。
それらを知ったアイラはゾンビ状態になってとんぬらに従うべきだと判断した。
だそうです
誤爆スマソ
452 :
1/4:04/02/11 01:03 ID:F81fQ+cP
「グッ……!」
比喩抜きで吹き飛ぶ。地面に叩き付けられ、一転二転。三転目で足を踏ん張って、転倒だけは免れた。
手早く自身の確認をする。全身の至る所に打ち身と裂傷。四肢はイカれていない。
握力は剣を握る分には不足ない。疲労は有るだろうが精神が磨耗してあまり感じない。
つまり、状態はあまりよくないが、戦闘続行には支障ない。
敵の様子を見る。異形の骸骨がそこにある。
最初の数分で身に纏っていた腐肉は飛ばしたが、アレはもうモノでしかなかったらしい。
骸骨はおぞましい程の力、ただそれだけを持って自分たちを打ちのめそうとしてくる。
技も術もない。だが純粋な力さえあれば、そんなもの関係ないのだ。
圧倒的な速度と破壊力をもって、防御を無視して全てを薙ぎ倒す。
それが魔王と呼ばれる存在の在りかただ。
血の滲んだ柄を握りなおし、アルスは後方を見た。
バラモスゾンビが力押しのみだと気付いてから、ティナとバーバラは後方支援、
自分とライアンは全面で押し返す、というフォーメーションを取っている。
それは今のところ上手くいっているが、二人とも戦闘開始から魔法を連発している。
何時魔力が切れてもおかしくない。だから、早々に決着をつけなくてはいけない。
だが――――
天空の剣を構えて打ち込む。閃光のような一撃は、バラモスゾンビの腕に阻まれる。
通らない。剣を返し、別の角度から二回、三回。
そのいずれもが、並みの魔物なら致命傷である。ソレを、
「こざかしいっ!」
「ッ!」
片腕で止められ、返す腕がアルスの胴を薙ぎ払う。
ギリギリ剣の背で受け止めるが、あっさり押し切られて体が浮いた。
453 :
2/4:04/02/11 01:06 ID:F81fQ+cP
「アルス殿!」
ライアンが大地のハンマーを振るいバラモスゾンビの肩口を殴りつけるが、それも決定的な一打にならない。
アルスにかけようとした追撃の拳を返し、ライアンに放つ。
ドム、と鈍い音が鳴ってライアンの体が宙に浮き、数メートル飛んで地面に叩き付けられる。
「アルス君、離れて!」
瞬間、ティナが放ったファイガの炎がバラモスゾンビを包み込んだ。
バーバラは蹲ってうめくライアンに駆け寄り、回復魔法を唱える。
「う……く。すまないでござる」
「黙って、舌噛むよ!」
自ら後方に飛び退いて威力を軽減させたが、それでもダメージは大きい。
まともに受けていたら胴体を突き抜かれていただろう。
と、その時。バラモスゾンビを包み込む炎から、何かが飛び出した。
バーバラがそれはバラモスゾンビの頭部であり、
牙を向いて自分に襲い掛かってきたということに気付いたときには、
決定的に間に合わない状態になっていた。
しまった、と思う間もない。圧倒的な暴力を前に目を瞑る暇さえない。
次の瞬間、彼女が見たのは、空を切ったアルスの剣と、彼の脇腹を切り裂いたバラモスゾンビの牙だった。
鮮血が飛び散る。アルスは受身も取れず床に崩れ落ち、頭部は火炎の中へと戻っていく。
バラモスゾンビが炎の中から出てくる。クチャ、クチャリと何かを咀嚼しながら。
「しゅうちゅうがとぎれたなゆうしゃ。おまえのにくはうまいぞ」
それが何か気付いて、ティナとバーバラは表情を青くする。
顔も表情もない、骸骨だけのバラモスゾンビが、厭らしい笑みを浮かべた気がした。
「………ッ」
アルスは立ち上がろうとする。
全身から脂汗が流れ、抉られた脇腹からポンプの水のように血が吹き出る。
足が震える。平衡感覚が上手く働いていない。痛恨の一撃を貰ってしまった……
それでも、彼は剣を杖代わりにして立ち上がった。
戦わなくてはいけない。それでも、戦わなくてはいけないのだから。
454 :
3/4:04/02/11 01:11 ID:F81fQ+cP
血に染まった脇腹に手を当て、回復魔法を唱える。
マジャスティスのために魔法は温存したかったが、もう形振り構っていられない。
そんなアルスに、トドメとばかりにバラモスゾンビは暴風をまとって突進する。
援護は、間に合わない……アルスは繰り出される絶望的な力の塊を睨みつける。
ギリギリのところを見切って、会心の一撃にかける。それしかない……!
アルスとバラモスの因縁の対決。
それは今、決着がつこうとしていた――――
――――のだが。
意外と言えば意外な、あんまりと言えばあんまりなカタチで割り込まれた。
ガギン!
アルスとバラモスゾンビの合間に一本の剣が突き刺さる。
間合いを崩されたバラモスゾンビは一旦仕切りなおすべく後退し、
アルス、ライアン、ティナ、バーバラは剣が飛んできた方を見て……呆気を取られた。
「ぬ、なにやつ!」
必殺の機会に水を刺されて、バラモスゾンビは殺意を込めて怒鳴る。
ソレは……笑ったようだった。いや、あんまりわからないけれど。何しろ覆面だから。
ついでに言うと覆面とビキニパンツ以外何も着ていなくて、
何故かチョコボの上に立って腕組みをしている。
455 :
4/4:04/02/11 01:13 ID:F81fQ+cP
「悪党に名乗る名前などないが、誰だと聞かれて答えぬわけにはいかんな」
どっちだよ。
まあ、存在自体が意味不明の塊なのでどうでもいいことだが。
「この世に悪がはびこる限り、どこかで誰かが泣いている。
世界の庶民に成り代わり、正義の剣が悪を断つ!――――とうっ!」
ソレはチョコボの上から跳んで床に突き刺さったグレートソードの側に着地。
剣を抜き、ブゥン、と大きく振るう。
「――――人呼んであらくれ仮面! 見・参!!」
「なにぃ、あらくれかめんだとぉ? こしゃくな!」
「………えっと」
何と言えばよいのかはわからないが、
とりあえず今のうちに応急処置をしておこうとアルスは思った。
【アルス(マジャスティス習得・消耗・負傷) 所持武器:対人レミラーマの杖 天空の剣 黄金の腕輪】
【ライアン(消耗) 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)】
【ティナ(消耗) 所持武器:プラチナソード チキンナイフ】
【バーバラ(消耗) 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー・ミスリルナイフ】
以上、第一行動方針:バラモスゾンビを倒す
最終行動方針:打倒ゾーマ
【オルテガ(チョコボ) 所持武器:危ない水着 グレートソード 覆面 壊れた水鉄砲
ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
第一行動方針:アルスを救う・バラモスゾンビを倒す
最終行動方針:打倒ゾーマ】
456 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:04/02/11 04:28 ID:n5tK9HkH
457 :
1/4:04/02/12 22:49 ID:mMTlAGk1
「ふふふくくくくくははは…」
その男の喉から漏れる不気味は含み笑いは、機械の動作音によってあっさりとかき消された。
緑色のローブを頭からすっぽりとかぶった男、エビルマージは血走った目をぎょろりと回して、培養槽のリュックを見た。
ローブの下に常軌を逸した笑みを浮かべ、彼は培養槽の下のパネルに手を伸ばした。
カタカタカタとパネルを叩く音が響き始め、機械動作音が、今度はそれと不気味な和音を奏でだした。
やった、勝てる。俺はゾーマに勝てるぞ…!
愚かな参加者共は全員脱出し、仮想世界との連絡ゲートは閉じられた。
その事での叱責…否、制裁が来ることも危惧していたが、どうやらその余裕もないらしい。
何から何まで都合がいい。参加者とゾーマはどちらかが全滅するまで闘うだろうし、それに…
それだけの時間があれば、究極の生命体はこの世に具現化する。
すでに、見当は付いている。
この女は究極生物の欠片を扱いこなし、しかしその究極生物は培養槽の肥やしに過ぎない状況にある。
その違いは一つ。黄金の腕輪。進化の秘宝。それを使ったか、否か。
その情報さえ得られれば、その理論さえ解明できれば、究極生物は完成し、この俺は大魔王に、ゾーマなど問題にならぬような大魔王になれるハズだ。
その理論を解明する鍵が、この女だ。
この女はしばらく秘宝を身につけていた。だが、身につけても効果を知らぬ事には扱えるはずもない。
効果を何処で知ったか…恐らくは腕輪から引き出したのだろうが、そんなことはどうでもいい。
問題は、それをこの女がまだ“覚えている”と言うことだ。
この女はまだ進化を続けている。エネルギーの再利用、変換両方の効率が異常に引き上げられ、欠点を補い長所を伸ばし続けている。
腕輪がないのに進化が続いている。どこかに進化を促進するモノ、進化の秘宝の情報がどこかに保管されているのだ。
俺はパネルを操り、女の体の中…物理的なモノではない、精神的な深淵にアクセスした。
458 :
2/4:04/02/12 22:51 ID:mMTlAGk1
普通に考えれば、その情報が眠っているのは脳だろう。だが、デリケートなソレをいじって壊してしまってはつまらない。
俺は女の中の魂にクラックをかけた。
魂とは、死後もその存在を維持し続けられることからも分かるように、肉の塊の脳髄よりずっと頑丈だ。
そして、生まれ変わりなどの事例を見ても分かるように、魂は個人の情報をより未来へ確実に届けることが出来るのだ。
女の魂は、ぐちゃぐちゃに乱れて、解析しても無意味な文字の羅列にしか過ぎない。
これは別種の生物になってしまい、それ故に人だったときの理論的な思考が消えてしまったためだ。
だが、この魂を修復し、そこから情報を取り出すことは簡単である。
俺は自分が歓喜のあまり汗だくになっていることを自覚しながらその作業を開始した。
私は、もう何もない。
何もないと言うことを考えるだけの余裕はあるようだが、それだけ。
どれだけ前からこうしているのだろう?もう分からない。五感はすでに消失している…
かちり
と、突然なにかが繋がる音がした。一体、何?
それはすぐに知れた。ガラスの外の鉄の部屋、ボコボコと言う気泡の音、臭いも味もない水の感覚。
全く全然なんの前触れもなく、私は全ての感覚を取り戻した。
かちり、かちりかちりかちりかちりかちり!
繋がる音が連続して聞こえてくる。それと一緒に、今度は記憶が溢れ出す。
アーロン、ティーダ、ユウナ、ルールー、ワッカ、ゲーム、ゾーマ、進化…
次々いろんな事が溢れ出してきて、最後のかちっと言う音が聞こえた瞬間、
私はさっぱりすっきり、これからどうするべきかと言うことまで一切合切を自分の手に取り戻したのだった。
459 :
3/4:04/02/12 22:53 ID:mMTlAGk1
俺は一瞬意識を失うのを自覚しながらへたり込んだ。
やった。目の前の画面に、進化の秘密の全てが文字情報となって示されている。
ははっ、はははははくはははははあははははははははははははははあはあははははあはははははっ!!
全身をどんな女を抱いたときよりも激しい快感が突き抜ける。涎と汗と涙とが、止めようとしても止まらない。
この女の魂の修復は完了、情報は全て俺のモノだ!ざまあみろゾーマ!俺の勝ちだ!俺の勝利だ!
「俺は大魔王だぁっ!」
これ以上ないほど快楽に溶けた顔でおれはさけんだ。そしte…?
そして、エビルマージは仰向けに倒れ伏した。倒れたとたんばくっ、と言う音がして身体が真っ二つになる。
真っ二つ。登頂から股間まで、最初から別々のモノだったかと錯覚するほどに綺麗に。
直後には、培養槽がはぜ割れて、中から怪物ではない人間の女が、リュックが飛び出した。
培養液で濡れた金色の髪を撫でつけて、皮膚が変じたいつもの服を軽く叩き水気を取る。
彼女の放った真空波で真っ二つになったエビルマージを腹立ち紛れに蹴りつけた。
エビルマージのミスは、欲しい情報を見つけるためにリュックの魂…こころを修復してしまったことだ。
魂が修復され、意思を取り戻したリュックは、機械を通してしかソレを認識できないエビルマージよりも確実に、それを理解したのだ。
リュックは一カ所ずつ確かめるように、体を動かす。
身体と魂とを完璧な状態にしたエビルマージのおかげで、今のリュックは完璧に進化を制御できる。
もっとも、究極生物を法則ごと飲み込んでしまったリュックは、すでにリュックではなく、生物とリュックが混じり合って生まれた新生物だ。
だが、彼女は自分がリュックであると確信しているし、リュックと呼んでも差し支えはあるまい。
460 :
4/4:04/02/12 22:55 ID:mMTlAGk1
リュックは傍らの大きな培養槽の、その中にある究極生物の姿を見上げた。
同じ細胞を持ったソレに、リュックは進化した力を持って干渉する。
同じ細胞だからこそ干渉することが出来、そして干渉の結果はシンプルだ。
アポトーシスを命じられた究極生物は、己より進化した存在にひれ伏し、彼女の意思通りに己を殺した。
培養槽の中でぐずぐずと溶けていく究極生物に興味を失い、リュックは部屋の外に飛び出した。
「ティーダ、アーロン、みんな…私が助けるからね!」
リュックか力強く叫ぶ。
みんなを助ける、自分になら出来る。だから、そのために!
彼女はゾーマを探して疾駆した。
【リュック(進化完全制御):所持武器:なし
現在位置:エビマジの研究室から外へ
行動方針:ゾーマを倒し、仲間を救う】
【エビルマージ 死亡】
保守
保守
463 :
1/3:04/02/15 20:17 ID:jgpOmFxX
ふんっ!ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんっ!」
「ぬっ、ぬおおっ?おおおおおおおおっ!」
2種類の奇妙な雄叫びが、ゾーマの城に響き渡る。
雄叫びを上げている片方…あらくれ仮面の鋭い一閃を、もう片方が、バラモスゾンビが受け止めた。
鋭く冷たい輝きのグレートソードを骨だけの掌で受け止めて、逆の手であらくれ仮面の顔面を狙う。
あらくれ仮面はグレートソードから片手を離し、手首の部分を鷲掴みにする。
そこで動きは止まり、力と力の拮抗に、みしみしと鈍い音が響く。
「ぬ、き、きさまは?」
バラモスゾンビは間近に迫ったあらくれ仮面の両の目を見て、それが誰であるかに気づいた。
アルスよりも早く、たった一人でゾーマの城にたどり着いた…そう、名前は
「お、おる…」
「シィィィィッ!そこでストップっ!」
出てきかけた名前を、あらくれ仮面が押しとどめる。
「その話は後でゆっくりと、だ。ここでは不味い。かなり不味い。マジ不味い」
覆面下の表情が容易に推察できるほど必死になって、あらくれ仮面が言う。
何となく断りづらく、バラモスゾンビはこくこく頷いた。
「なんというか…たいへんだな」
「…ほおっておいてくれ」
一瞬疲れた視線が絡み合い、その直後にはお互いが弾かれたように間合いを取っていた。
「凄く…強いわね、あの人」
「…うん、ちょっと信じられないくらいね」
あらくれ仮面VSバラモスゾンビの様子を見ながら、ティナとアルスは呆然と呟いた。
いきなりアレが出てきた時はさすがに色々な事を…死まで含めて…一瞬覚悟したが。
まさか自分たち四人が束になってかかっても苦戦するような相手と互角に渡り合っているとは、にわかに信じがたい。
しかもあのあらくれ仮面の動き、誰かに似ているような…。
464 :
2/3:04/02/15 20:18 ID:jgpOmFxX
(いや、こうしてる場合じゃないんだ)
アルスはぼおっとしてしまっていた自分に渇を入れ、天空の剣を手に取った。
「二人を…頼む!」
傍らのティナにバーバラとライアンを頼み、立ち上がる。
脇腹の傷は治癒しきっていない、というかほとんど治っていないが、このまま座っているわけにも行かない。
そして剣を構えようとして、そして、愕然とした。
(重い…?!っ)
さっきまで羽根のように軽かった天空の剣が、ずっしりと鉛のように重い。
傷のせいで。とも思うが、違う。物理的に、剣が重たくなっている。
『資格がある者なら、自ら私の所へ来るはずだ。お前は私を持っていればよい』
(まさか、そう言う事か!?)
以前、一度だけ口を利いた天空の剣の言葉を思い出す。
資格がある者がいるなら、剣はその人の者。その瞬間剣は自分の物ではなくなり…。
「くそっ!」
思わず毒づいて、無理矢理剣を構える。だが、すでに視界の中に2人は居なかった。
遠くに剣戟の音が聞こえる。あの2人は戦っている内に、かなり遠くまで行ってしまったらしい。
「バラモスっ…!」
アルスは音のする方に走っていこうとするが、脚をもつれさせてあっさり転ぶ。
出血が脚にまで来ているのか、と思いながら、アルスは顔面を地面に埋める覚悟を決めた。
「アルス君ッ!前!」
ティナの声が聞こえる。慌てたような声で…え?前?
どん、と、衝撃と共にアルスの身体が止まる。
自分の胸を支える腕の感触。それを掴んで身体を起こすと…
「ティーダ!」
「へへへ…久しぶりッスね」
恥ずかしげに頬を掻くティーダが、そこにいた。他にも知った顔が、何人か。
465 :
3/3:04/02/15 20:20 ID:jgpOmFxX
【オルテガ 所持武器:危ない水着 グレートソード 覆面 壊れた水鉄砲 ビーナスゴスペル&マテリア(回復)天罰の杖
第一行動方針:バラモスゾンビを倒す
最終行動方針:打倒ゾーマ】
【アルス(マジャスティス習得・消耗・負傷) 所持武器:対人レミラーマの杖 天空の剣 黄金の腕輪】
【ライアン(消耗) 所持武器:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)】
【ティナ(消耗) 所持武器:プラチナソード チキンナイフ】
【バーバラ(消耗) 所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・メイジマッシャー・ミスリルナイフ】
【エドガー 所持武器:エンハンスソード ミスリルシールド ボウガン スナイパーアイ ブーメラン 首輪×5】
【エアリス 所持品:エドガーのメモ マジャスティスのメモ 癒しの杖 妖精のロッド 月の扇】
【ティーダ 所持品:吹雪の剣 いかづちの杖 参加者リスト ロトの剣 小型のミスリルシールド マテリア(かいふく) 真実のオーブ】
【アーロン 所持武器:バスターソード 折れた鋼の剣】
【バッツ(魔法剣士 白魔法)/ 所持武器:ブレイブブレイド、グレネード五個 レナのペンダント】
以上、第一行動方針:バラモスゾンビを倒す
最終行動方針:打倒ゾーマ
(オルテガのチョコボは此方にいます)
ご指摘を受けましたので
>>464の
>さっきまで羽根のように軽かった天空の剣が、ずっしりと鉛のように重い。
を
ついさっきまでは普通に振り回せていたはずの天空の剣が〜
に修正します。スマソ
感想スレ417氏に感謝。
ほ
氏
ゅ
保守
捕手
catcher
ぴっちゃぁ
せんたぁ
ばっくすくりーん
さくごえ
ぽーるちょくげき
なにこの流れ…('A`)
しんぱんぶちぎれ
だいらんとう