FFDQバトルロワイアル2ndEdition PART1

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1名前が無い@ただの名無しのようだ
基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員には、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><着火器具・携帯ランタン>が支給される。
 また、ランダムで選ばれた<武器>が1つ、渡される。
 <ザック>は特殊なモノで、参加者以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る
 (FFUのポシェポケみたいなものです)
・最後の生存者のみが、安全に帰宅することができる。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。

+首輪関連+
・参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
 この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
 または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
・過度の衝撃や手順通りでない分解等で爆発する
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・定期放送時に発表される『禁止技』を使ってしまうと、爆発する。

+魔法・技に関して+
・初期で禁止されている魔法・特技は以下の通り↓
復活系、移動系、広範囲にわたる天候・時間操作系
及び、メテオ、クエイクのような地形が変わるほどの大規模魔法
・全体攻撃の範囲は「攻撃側から見えていて、なおかつ敵と判断した相手全て」。

+ジョブチェンジについて+
・ジョブチェンジは人が近くにいないときにできる。
 そのときにになんらかのアビリティをつけることができる。
・ジョブ特性は、ダメージ回避、落とし穴回避、まほうバリア、薬の知識のみ備わっている

+戦場となる舞台について+
ttp://ffdqbr.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/up/source5/No_0006.jpg
最初は島の東西南北に位置する祠からのスタートです
1個所につき最大人数は20人までで、基本は参加作品1つにつき1名です
2名前が無い@ただの名無しのようだ:03/06/22 21:58 ID:1ncbGruJ
+召喚について+
・召還士は単独で、魔石、マテリアを使えば誰でも召還可能
・魔石は一日一回。
・召還士の通常召還、マテリアのみだと消費MPが馬鹿でかく、一日二回が限度
 また召喚直後は完全に無防備であり、連続しての召喚は不可能
・召還士+マテリアor魔石だと消費MPが下がる
・ユウナの出しっぱなし召還もMPを消費させる

━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活は認めません。
※新参加者の追加は一切認めません。
※書き込みされる方はCTRL+F(Macならコマンド+F)などで検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。
※参加者の死亡があればレス末に、【死亡確認】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます

3名前が無い@ただの名無しのようだ:03/06/22 21:59 ID:1ncbGruJ
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。
 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであれば保管庫にうpしてください。
・自信がなかったら先に保管庫にうpしてください。
 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない保管庫の作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 できれば自分で弁解なり無効宣言して欲しいです。

書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
4名前が無い@ただの名無しのようだ:03/06/22 22:00 ID:1ncbGruJ
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・極力ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
・出来れば話にはタイトルをつけてください。
5開幕:03/06/22 22:01 ID:1ncbGruJ
テリーはまだハッキリとしない頭を振った。
そこは見慣れぬ大広間だった。
「ここは、どこだ?」
掠れた声しか出なかった。
だが実際に声に出したことで、停止していた思考が少なからず動き出す。
――なぜ俺はここにいる?こんなところで何をしてるんだ?
そして何よりも大事なことを思い出し、目を見開く。
――姉さんは?
とっさに辺りを見回す。

そこにいるのは自分だけではなかった。
ある者は既に立ち上がり、ある者はまだ朦朧としている意識と格闘し、
そしてある者はまだ倒れていた。
ざっと50人以上はいる。
見慣れない連中ばかりだ。
不意に、一際目立つ金髪の女性が目に入った。
まっすぐに美しい金髪を伸ばした女性……
――姉さん!
大声で呼び、条件反射のように姉に近寄る……はずだった。

広間に耳障りな笑い声が響いた。
一瞬、テリーの動きが止まり、声がした方向を油断無く睨み付ける。
そしていつでも剣を抜けるように構えた。
……が、愛用していた雷鳴の剣はあるべきところになかった。
気付けば身を守る物も一つとして身につけていなかった。
周りの人間も動揺しているのがわかる。
まだ眠っていた人間も、先程の奇声に目を覚ましたようだ。
「ようこそしょくん」
6開幕:03/06/22 22:02 ID:1ncbGruJ
おどけているとしか思えない道化師のような風貌の姿を現し、
しかもおどけているとしか思えない声で、ケフカは言った。
「みなさんを招待するためにふさわしい言葉を一生懸命考えていましたよ」
――なんだこいつは。
「さて……」
ケフカは一呼吸おいて、得意げに叫んだ。
「お前らにはこれから殺し合いをしてもらう!!」

――何を言ってるんだ。
広間は途端にざわついた。
「コラ!話はまだ終わってないんだ!静かにしないとぼくちん怒るよ!」
ケフカは、急にうるさくなり静まらない連中にヤキモキしているようだ。
ちょこまかと走り回り、頻繁に両手をあげて威嚇のポーズをとっている。
――付き合ってられるか。今のうちに。
テリーは姉の元へ近寄ろうとした。

「ケフカ!ふざけたマネはよせ!お前の茶番など……」
一際大きな声で、垂れ耳なのか髪なのか帽子なのかわからない頭をした老人が叫んだ。
だがその言葉の途中であえなく老人は倒れた。
幾人かの女性の悲鳴が響く。
何が起こったのかわからない者も多かったかもしれない。
だがテリーは見た。
――なんだ、あの禍々しい翼は!
破壊の翼……ケフカから突如として暗黒の翼が現れ、老人を襲った。
「ぼくちんは恐いんだぞ!皇帝だからって許さない!」
先程とは打って変わって、広間は水を打ったように静まりかえった。
「言うことを聞かない者にはお仕置きだ。みんなは話を聞く気になったかな?」
――こいつは……やばいやつだ!
7開幕:03/06/22 22:02 ID:1ncbGruJ
再び落ち着き、優越感に浸りながらケフカは続ける。
「話は簡単だよ。最後の一人になるまで殺し合って、生き残った者だけが助かる。
でもおかしなマネはしようと思わない方がいいよ。みんなの首に付いてるそれ、なんでしょう?」
テリーは首のあたりに手をやってみた。
いつの間にこんな物が付いていたのか、冷たい感触が手に伝わる。
広間は再びざわつきそうになるが、すぐに静かになった。
「変なことしようとしたらその首輪がボンッ!!だよ。気を付けてね。
細かいルールは他にもあるんだけど、それはこれからみんなが飛ばされるところで
聞くことになるだろうからぼくちんからはこれくらいさ。
さて、質問のある人はいるかな?」
大袈裟な身振りとともにケフカが言った。

一通りしゃべり終わったところで、年端もいかない麦わら帽子の子供が控えめに口を開いた。
「あ、あの……なんでボク達こんなことしなくちゃいけないの?
ボク、おうちに帰りたい」
「なんでだって?そんなことみんなは知る必要ないさ。
知ったところでほとんど死んじゃうんだからね!」
そう言い、耳障りな笑い声をあげる。
「でもおうちに帰りたいのかぁ。そいつはしょうがないね。自由にしてあげよう」
「ホントに?!」
嬉しそうに喜ぶその子供を見ながら、ケフカは何かスイッチを押した。
途端に子供に付いた首輪からピーピーと音が鳴り出した。
子供は何が起ころうとしているのかわからない。
しかし、これで自由になれると信じて疑わなかった。
首輪の音は次第に早くなっていく……
8開幕:03/06/22 22:03 ID:1ncbGruJ
ボンッ!!
子供の首に付いていた首輪がはじけ飛んだ。
首輪と同様、その子供も原形をとどめないほどになっていた。
耳障りな笑い声とともにケフカが言う。
「おうちに帰りたいなんてつまんないこと言っちゃうやつはこうだ!
わかってくれたかな?」
周りの者はまだ何が起こっているのか把握しきっていない者も多いだろう。
だが、テリーは理解していた。
殺し合いをしてもらう……嘘でも冗談でも無い、そして、夢なんかでもない。

そして……

逃げられない。
9開幕:03/06/22 22:03 ID:1ncbGruJ
「ビビ!!」
誰かの叫び声が聞こえた。
尻尾の生えた金髪の少年が、先程まで子供だった物へと近寄る。
少年は体を震わせ、それを眺めていたかと思うと突如ケフカを睨み付け、突進した。
「てめぇ!ふざけやがって!よくもビビを!!」
二人はよほど親しい仲だったのか、よせばいいものを、あんな光景を見せられて
我慢などできなくなっていた少年はほとんど丸腰でケフカに襲いかかる。

――バカが。
テリーはその光景を冷ややかな目で見ていた。
ケフカは襲いかかった来た少年を見ながら例のスイッチに手を伸ばそうとしたが、
何かに気付き、意外にも嫌らしい言葉を吐くだけだった。
「みんなと遊んでいるのもここまでみたいだよ」
ケフカがそう言うと、広間の空間が突如歪み始める。
ケフカはあの耳障りな笑い声の後、言葉を続けた。
「さぁみんな、これから楽しませてもらうよ。
ぼくちんをガッカリさせないように頑張るんだよ」
――姉さん!
ケフカの言葉など気にもとめずに、テリーは空間の歪みの中でもがいていた。
次第に空間の歪みは広がり、広間にいた者はその歪みに飲み込まれていった。
10Heart of Darkness:03/06/22 22:08 ID:Dd3R1sM8
「まったく、参ってしまったぞい」
ガラフは夜道をとぼとぼと歩く、バックの中の支給品?には逃げられてしまうし、
その上、貴重な水筒の水までもこぼしてしまった。
武器はなくともなんとかなる、だが水と食料がなければ長くは持たない。

あれから気がつくとそこは小さな祠の中、そこで彼を含む20人ほどの集団は、
そこにいた兵士に頭ごなしに説明を受け、荷物を持たされ強引に一人ずつ出立させられたのだ。
そのやり口にははらわたが煮え繰り返る思いだったが、今はとりあえずこの場を凌ぐことが肝要だ。
時がたてばそのうち機会がめぐってくるはず。

ともかく、水源を求めてさまようガラフだったが、自分の今歩いている場所が畑であることに気がつく
「ふむ」
ガラフは慎重に周囲を見渡す、ここが畑ならばかならず井戸か農業用水があるはずだ。
案の定、そこから少し離れたあぜ道に井戸のポンプを見つける。

さっそくポンプを押して、水をくみ出そうとしたガラフだったが、その手が不意に止まる。
自分の目の前にある闇をじっと睨みつけるガラフ、そこだけ周囲の背景と比べて違和感があるように思えたのだ。
ガラフの眼光が鋭くなる、瞳に宿る光は暁の4戦士とたたえられた若き頃と比べても見劣りはしない。
「隠れているのならば無駄じゃぞ、頭隠してなんとやら、だ」
返事はない、しかし違和感は疑い様が無い、ガラフは口の中で呪文を詠唱する、
軽く火あぶりにでもすれば慌てて姿を見せるだろう、しかし、その時であった。

自分の背後から匂う、異様な香りにガラフの集中が、一瞬途切れる。
慌てて振り向いたガラフだったが、遅い、その瞬間、彼の身体は炎に包まれていた。
その背後からの予測外の攻撃にガラフは成す術もなく、炎は容赦なく彼の身体を焼き尽くしていく。
(そうか…フェイクじゃったか、わしとしたことが…)
11Heart of Darkness:03/06/22 22:09 ID:Dd3R1sM8
わざと目立つように出来の悪い罠を仕掛け、それに気を取られている影には本物の罠がある、
思えば常套手段だ。
(バッツよ…レナよ、ファリスよ…それからクルル、わしはここまでじゃ。じゃがおぬしらは必ず…)
最後の思考の猶予が与えられただけ彼はましだったのかもしれない、
ともかくガラフは無残な消し炭に成り果て、死んだ。

ガラフが完全に死んだのを確認したのだろうか、空間が割れて一人の少女、ムーンブルク王女リンダが姿を現す。
マヌーサの呪文を応用して闇に潜んでいたのだ。
わざと出来の悪い幻で相手の注意を引き、そしてそれに気を取られた相手を背後から襲う。
そう何回も使える手ではないが、まずは成功といったところか。
そしてその手には、彼女の支給品である火炎放射器のノズルが握られていた。

ガラフの無残な亡骸を見つめるリンダの瞳から涙がこぼれる。
「あなたに恨みはありません…ですけどムーンブルクのためなんです」
あの日…ムーンブルクが魔物たちの襲撃を受けた日のことを彼女は思い出す。
自慢の軍は奇襲に成す術もなく壊滅、炎に包まれる城の中をわずかな生き残りと共に、
ようやく辿りついた抜け道、しかし。

『いけません!皆さん…私と一緒に逃げてください』
『何を言われる、ここで我らことごとく討死しようとも、姫の命を救えるのならば
 それは我らの勝利にござる』
『王も王妃も無残に討死された今、姫様だけが唯一の希望!どうかご無事で…御免!』
そう言うなり団長はリンダを抜け穴の中へと放り投げる。
『姫様が無事逃げられるまで時間を稼ぐ!親衛騎士団ここが命の捨て時ぞ!』
間髪入れずに聞こえる戦いの、いや虐殺の音に耳を塞いで彼女は走る。
そうだ、必ず生きて帰らねばならない、自分が戻らなければムーンブルク正統の血は絶えてしまう
それだけではない。
12Heart of Darkness:03/06/22 22:10 ID:Dd3R1sM8
民たちは現在、唯一戦火を免れたムーンぺタの街で、乏しい物資を分け合い、必死で耐えている。
しかしそれも限界だ、表面にこそ現れていないが、ムーンブルクからの難民と本来の住民たちの間で
緊張が高まりつつあることも彼女は察していた。
今はまだいい、しかし時が来れば間違いなく内乱に発展するだろう、
そうなれば折角手に入れた平和も、また遠のく。

『姫様ご健在なら、ムーンブルクもきっと再建できましょう、その日を信じております』
そう言って苦しい生活の中、見せてくれた人々の笑顔。
生きねばならない…自分を信じて耐えている人々のため、希望を託して死んでいった家臣、
そして一族のためにも、例え、この身体ことごとく血に染まろうとも。
老人のため、しばし黙祷するリンダ。
そしてその背後では……。

「女は怖いな、と」
物陰に身を潜めながらも、いつものごとく軽口を叩くレノの姿があった。
両目に装着した多目的ゴーグルがなければ、火ダルマになっていたのは自分だっただろう、
そう思うと少し冷や汗ものだったが。
「さて、どうするか、と」
彼はとりあえずは戦うつもりだった、が、自分の手を汚さずにいられればそれに越した事はない。
目の前の少女が自分の分まで殺してくれるなら手間が省けるし、もし社長たちが彼女の手にかかりそうなら、
助けてやって恩を売るのも、逆に見殺しにするのも可能だ。
つまりこのまま彼女の背中に貼りついているのが、1番楽だと思えた。
いずれにせよ、自分が手を下すのは最良のタイミングでなければならないし、そうでありたい。
「無駄な殺しはするもんじゃない、と」

一方のリンダは怪訝な顔で周囲を見まわす、と、前方の草むらがかさかさと揺れている。
リンダは首をかしげつつ、闇の中に目を凝らす、彼女の瞳がとらえたもの、それは黒い犬の姿。
そう、ガラフの支給品であった黒い猟犬、インターセプターだった。
13Heart of Darkness:03/06/22 22:10 ID:Dd3R1sM8
「ひっ!…いぬっ、いぬっ、いぬう…」
その途端、リンダの顔から血の色が引いていき、蒼白になっていく、記憶が甦る…心の奥底に封印した地獄が…。
そう、抜け道をあの時彼女は必死で走っていた、しかし彼女の行く手はすでに塞がれていたのだ。
『おや…これはこれは姫さま、このような場所で会う事になろうとは、くくく』
目の前に立ちはだかる邪教の男がその後、自分に何をしたのか、そしてそれから彼女の身に振りかかった
屈辱の数々……、それらが次々とフラッシュバックで展開していく。
そう、雨が降りしきるあの夜、私は……。

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
リンダは、獣のような叫びを上げると、あさっての方向へ一目散に逃げていった。
悪夢を振り払うように頭をぶんぶんと振りまわしながら。

そしてレノも、素早く手もとのメモ用紙に(犬が苦手)と書きこみ、
「さて、漁夫の利を得るとしましょうか、と」
まるで山猫を思わせる軽やかな身のこなしで彼女の後を追うのであった。


【リンダ:所持アイテム:火炎放射器 現在位置:E-12】
第一行動方針:生き残る

【レノ:所持アイテム:多目的ゴーグル 現在位置:E-12】
第一行動方針:リンダを追尾する

【ガラフ:死亡】(残り77人)
14参加者一覧:03/06/22 22:13 ID:Dd3R1sM8
スレを立てたものよ、参加者一覧を忘れているぞ
今ガラフが死んだので残りは77名か・・・・

FF2(2名):レオンハルト(ダークナイト)5 フリオニール2
FF4(5名):セシル3+1 カイン8 リディア(大人)3+1 ルビカンテ4 エッジ4
FF5(7名):バッツ5 ファリス4 ガラフ2 クルル4 ミド3
     ギルガメッシュ6 レナ3
FF6(8名):リルム3 セッツァー2 シャドウ4 ティナ3 セリス3 オルトロス2
     ロック2 マッシュ2
FF7(10名):ケット・シー5 ダイン4 レノ4 スカーレット5 ヴィンセント5
     エアリス4 ティファ4 クラウド5 ユフィ4 ルーファウス3
FF8(6名):アーヴァイン5 スコール3 リノア3 キスティス3 セルフィ5 サイファー4
FF9(5名):ジタン3 スタイナー3 ベアトリクス3 サラマンダー2 フライヤ2
FF10(4名):ティーダ3 ユウナ4 アーロン3 ルールー4

DQ1(1名):ローラ2
DQ2(3名):ムーンブルク王女4 サマルトリア王子4 ローレシア王子4
DQ3(7名):男勇者3 女僧侶2 女賢者4 女武闘家3 男商人2
     カンダタ3 女魔法使い4
DQ4(8名):ロザリー3 キングレオ3 ミネア4 マーニャ4 アリーナ3
    クリフト3 バコタ3 ライアン3
DQ5(8名):主人公(青年)4+2 キラーパンサー3 ビアンカ2 パパス4 リンガー2
     ピエール2 王子3 王女4
DQ6(3名):テリー3 ミレーユ3 ハッサン3
DQ7(1名):キーファ2

キャラの名前の下にあるのは、投票での得票数で本編とは何の関係もありません
今は祠と思われる部屋の中。
テリーは今起こっていることが夢ではなく現実だと理解した。
はざまの世界から突然別の世界へ、こういうこともありなんだろうと、深くは考えなかった。

背筋を伸ばしたまま、直立不動でテリーは呼ばれるのを待った。
「まずはテリー君、だね」
一番乗りというのも悪い気はしない。
兵士に呼ばれたので進みだした。

20人ほど参加者が残っていたが、自分を意識する視線をろくに感じなかった。
残りの者は皆、自分のことで頭が一杯なのだろうが、それはテリーも同じことだ。
もっとも、多少思うことは違っている。
他の連中は、どうやって生き延びようか、どうすればゲームから抜け出せるか、
殺してもいい奴は誰か、
自分が死なずに済む方法を考えている。
テリーの場合は自分を磨くことで頭がいっぱいなのだ。

この極限状況はいい経験になる。
敵は大勢いる、戦闘には不自由しない。力をつけるチャンスである。
もちろん無闇に殺し合いをする気はない。敵は大半が人間なのだから。
しかし相手が望めば、いや相手から仕掛けてきたら、こちらも容赦はしないという決意は固めた。

雑嚢を左手に提げ、テリーは部屋を出た。
向かう通路の先には、闇が続いていた。
夜遊びとはまたふざけている。
ようやくあの暗いじめじめとした部屋から抜けて、明るい陽射しの下に出られると思ったのに。
テリーは口の中で罵った。
途中、支給品の中身が気になり、袋の外から手触りの感触を確かめる。形状から盾らしいことがわかった。
とりあえずの目的は武器を調達することにきめた。一つと言わず、武器はいくつあっても困らないだろう。
(姉さんは……)
大広間にいたのは姉に間違いなかった。ほっそりとした背中にまばゆい金色の髪の印象は
間違いなくミレーユだ。
本当なら、姉のことを優先したかった。
まっしぐらに目指して、手元に引き寄せたかった。
それが、今は闘いの方に気が引かれている。
何故なのかは、本能にちかいものがそうさせるのだろうと、思うしかなかった。
だが、姉を間近に見つけたら、また別の想いに自分は引かれるのだろう、とも思いはした。

テリーは渡されたザックをあけた。中には確かに盾が入っていた。
小型で、表面は光をよく反射しそうな艶やかさがあり、見たことのない文字が浮かび上がっていた。
おそらく魔法の品だろう。
盾には紐が備え付けられていたので、紐を首にかけ盾を背中に背負い込んだ。
テリーは通路を突き進み、闇夜の世界に躍り出た。

【テリー 現在位置 祠から出て北へ(現在T−9)
 所持品 山彦の盾(魔法の類いをはねかえす効果) 
 行動目的:適当な相手から所持品を奪う】
17テリー出発:03/06/22 22:33 ID:kpLnoeCd
テリーは説明を受けて祠から追い出されるように外に出た。
4つにわかれて出発する、と聞いたが自分の見知った仲間はテリーのグループにはいなかった。

――フン、姉さんに逢えないのはつらいが、それでも構わないさ。
心の中でそんなことを呟く。テリーの行動は決まっていた。生き残るのが1人である以上――
(ミレーユ姉さんを生き残らせる。そのためには数を減らさなければ)
テリーはゲームに乗ることに決めた。
そして残った参加者が自分とミレーユの2人になった時に、自殺する。
(それで姉さんは帰れる。これがオレの精一杯だ…)
幸い武器はかなり強力そうな銃――テリーには初めて見るものだったが、取扱説明書が添付されていた――ベレッタM72Fだった。
すぐに使用方法は理解した。
(遠距離から狙撃できる。剣よりも有利だ…悪くない)

表情をそっと笑いの形に歪ませ、テリーは向かう場所を決めた。
「姉さん、オレは戦うよ…」
テリーは南を目指して移動を始める。
とりあえず参加者を探そう――と独り言を漏らしてゆっくりと足を動かす。
…参加者を殺すために。
【テリー:所持武器/ベレッタM72F:現在位置/T−10】
 第一行動方針:ゲームに乗る。
 最終行動方針:ミレーユを優勝させる。
1817:03/06/22 22:51 ID:kpLnoeCd
うわあ…よく見ると被ってますねぇ…
スミマセン>>17は無効にしてください。
19クリフト出発:03/06/22 23:05 ID:kpLnoeCd
クリフトは東の祠で説明を受けたあと、ザックを受け取って祠から出た。
そして、チッ、と舌打ちする。
(なんでアリーナ姫様と離れてしまうんだ!)
(姫様…姫様…どこにいるのですか?)
クリフトとアリーナの出発場所は残念ながら別々になってしまったらしい。
こんな馬鹿げたゲームに参加させられただけでもイヤなのに、
アリーナと離れ離れになるのは彼にとって苦痛だった。
姫様はご無事だろうか、殺されてはいないだろうか、とそんなことをブツブツ繰り返しながら
クリフトはアリーナを探し、歩き出した。

(敵に出会ったらどうしよう…)
アリーナは格闘でなんとか切り抜けられるかもしれないが、自分は非力だ。
ザックの中を確認もしたがそれは武器にはなりそうにない、
魔法の聖水が3本入っていただけだった。
「はぁ…」
敵に会わないようにするしかないな、と開き直って地図を開く。
南に街があるらしい。クリフトはやる気になっている者に怯えながらその街を目指した。
「とりあえず…スカラ…!」
これで幾分かは衝撃から身を守れるはずだ。
「アリーナ姫様、どうか死なないで下さいよ」
クリフトは肩を落として夜道をトボトボと歩く。

【クリフト:所持武器/魔法の聖水×3本:現在位置/T−10】
 行動方針:アリーナを探す。
 ※スカラ状態です。
20当たるも八卦、当たらぬも…:03/06/22 23:17 ID:Dm5egK+0
出発後、レオンハルトは地図とにらめっこしながら北に向かっていた、このまま中心部に向かうよりは、
いったん海岸に出たほうが得策だと思えたからだ。
島の最北端の岬が見えてくる、と、そこには海にせり出すようにバンガローが立っていた。
「ひとまず落ちつくか」
レオンハルトはバンガローの中に入っていく、中は荒れ果てており今にも崩壊しそうだ、
しかしそんな中にも人の気配……、だが殺気はない。
ぎしぎしときしむ廊下を抜けると大広間に出る、とそこにはフードをかぶった女性がテーブルに付いている。
まるで自分を待っていたかのように…手にはカードを持っている、その格好からみて女性は占い師のようだった。

レオンハルトは即座に構えを取るが、占い師は淡々とカードをシャッフルしていく。
「タロットが私の占い道具ですが、取り上げられてしまいまして、ここで見つけたトランプで
 代用させてもらいますね」
そういって占い師はテーブルにカードを並べ出す。
「占いを頼んだ覚えは無い…」
しかし占い師はレオンハルトの言葉を無視して、占いを続けていく。

「なるほど、自分で信じた道ですけど、最近はそれが誤りであったことに気がついている、このままだと…」
「やめろといっている!」
レオンハルトは思わずテーブルを蹴飛ばす、だが占い師は平然としている。
「それから、今宵あなたはこの地で重要な出会いがあると出てもいます…私のことではないでしょうか?」
「何だと?」
「私の占いは当たります」
あまりにも意外な言葉に戸惑いを隠せないレオンハルトに、占い師の少女はフードをめくり、微笑んで見せるのだった。

「なるほど…言い分はわかった、だが占い師ごときが俺をどうにか出来るとは考えない方がいいぞ!」
戸惑いながらも間髪入れずにレオンハルトは占い師の顔面めがけて蹴りを放つ、が、
占い師はあらかじめ予測していたかのように、鮮やかなバックステップで間合いを取る。
「自己紹介も無しですか、あ、私はミネアと申します…あなたは?」
「そんな物はこの場に必要はない!」
21当たるも八卦、当たらぬも…:03/06/22 23:18 ID:Dm5egK+0
レオンハルトはなおも拳を振るうが、ミネアは逃げ回るばかりで相手にしようとしない。
「落ちついてください、このままだと私たちはあのピエロの思惑通り、殺し合いを演じることになります…
 そしてその結果あなたも、そして私も死ぬ事になるでしょう」
逃げながらもミネアは説得を試みる。
「ほう、随分自信が無いんだな、それも占いの結果か」
それを追いかけながらレオンハルトもミネアの言葉に反論する。
「私の占いは当たります…ですが、決まった運命ほど抗いたくなりませんか?」
「そういう奴を1人知っている…だが、1人で充分だ!」

戦いの場所は2階の古ぼけたバルコニーへと舞台を移しつつあった。絶壁に張り出したそれの下は
黒々とした夜の海が口をあけている。
1歩踏み出したレオンハルトの足元が、ぎしりと音を立てる、床が腐っているようだ。
床の割れ目から覗く海のうねりに、一瞬レオンハルトは前に進む事を躊躇する。
「バギ!」
その躊躇を見逃さず、ミネアの放った真空の刃がレオンハルトの行く手をさらに阻む。

ごうごうと吹き荒れる風の壁に守られ、ミネアはさらに説得を続ける。
「ばかばかしいとは思わないのですか!自分の意志ではなく他者の掌で戦う事を…
あなたの帰りを待つ人もきっといるはずです」

その言葉を聞いたレオンハルトの脳裏に在りし日の風景が甦る、平和な日々、親友、家族…そして、
だが、今の自分には望んでも取り戻せぬ夢にすぎない。
「黙れ、俺はもはや戻れん…戻りようがないのだ!」
そう叫んだかと思うと、レオンハルトはそのまま強引に風の刃の中へと飛び込んでいく
それにはミネアも驚きの表情を隠せない。
と、その時だった、元々老朽化していた、2人の立っていたバルコニーがバラバラに崩壊していく、
そして2人はなすすべもなく、遥か下方の海面へと落下していった。
22当たるも八卦、当たらぬも…:03/06/22 23:20 ID:Dm5egK+0
あれからどれくらいの時間が経過したのだろうか?2人は流れついた砂浜ではぁはぁと息を荒くしている。
やがてミネアが口を開く。
「先ほどので確信しました、このままだとあなたは…破滅します、間違いなく」
「その前に生き残れば問題あるまい」

「無理ですね…」
「何だと?」
「あなたの拳には迷いがありました…今のあなたには、だれも殺せません」
その言葉にレオンハルトはミネアの頬を平手でうつ、無論、彼本来のパワーならミネアの顔面は砕けていただろう
しかしミネアはふらつきながらも言葉を続ける。
「悔しいですか?図星をさされて…ですが私は必ずこのばかげた戦いを止めてみせます、
 そのためにまずはあなたの運命から変えてみせます」

「勝手にしろ!」
「では勝手にさせてもらいます」
無意識の手加減に戸惑いつつ、ミネアの言葉を背後に聞きながら、レオンハルトは立ち去ろうとする。
しかしその背中を見る限り彼が迷いを抱えているのは明白だった。


【レオンハルト:所持アイテム:? 現在位置:I−02】
第一行動方針:?

【ミネア:所持アイテム:? 現在位置:I−02】
第一行動方針:レオンハルトについていく
第二行動方針:戦いを止める
「ハァッハァッハァッハァッ」
全く何て自分は不幸なんだろう、サバロはぼんやりとそんな事を考えていた。
そもそも私の人生のけちの付き始めは勇者様に戦場に引っ張り出された事だろう。
勇者様は私の様な商人に一体何を期待していたのだ?腕っ節が欲しいなら戦士でも雇えば良いし私は呪文なんて使えないのに。
断わろうにも相手は王に任命された勇者だし、おまけにあのオルデガの息子、気の弱い私に断われる筈が無い、ああ、私は不幸だ。
まぁ、ほんの一寸だけ他の三人が頑張って倒したモンスターの財宝を分けてもらえたら嬉しいなとは思わないでもなかったが。
魔王を倒す(他の三人がだ、私はその間に彼等の為に魔王の持っているお宝の価値を計算しておいてあげる役目。)
旅の途中で私はとある老人の頼みを聞いてパーティから外れて町興しをする事になった、
勿論この老人を助けて勇者様の名声を上げる為に、決してパーティ内の白い視線に堪えられなくなったとかそういう事ではない。
装備に払う金の一部をこっそり着服していたという話は更に違う、あれはいざという時の為に蓄えておいてあげたのだ。
その後町興しにも成功し、私はそれなりに金持ちになれた、更には勇者様の探していたオーブの一つを発見する事にも成功した。
そういえばあの時の勇者様は随分御座なりに礼を言っていた気がする、一生懸命やっても認められない辺りやっぱり私は不幸なのだ。
そんな不幸な私でも商売はソコソコ上手く行き、漸く人並みの幸せを掴めると思ったその時、私は心無い人達のせいで牢に繋がれる事になった。
恐らく私の成功を妬んだ誰かの差し金に違いない、私はとっても不幸だ。
更にこんな所で殺し合えなどと基地外に命令されるとは、私は宇宙1の不幸者に違いない。
「ふう、」
漸く気の静まったサバロは自分の荷物を確認した、奇妙な形のアイテムで、一緒に付いていた説明書によるとMP5というらしい。
「ほうほう、これは……」
夢中になってそれを読んでいたいたサバロはふと、誰かの気配を感じて後をみた、其処にはサバロとおなじ首輪を付けた参加者が三人いた。
それぞれ認識してはいる様だが何をするつもりなのかはサバロには良く判らない。
どっちにしろ自分には勝てないと思いコッソリ逃げようとしたサバロだったが…

パキッ

小枝を踏み折ってしまう、背後の参加者達の気配が変わる、そしてサバロの思考も…
(殺される、殺される、殺される、殺される、殺される、殺される、……)
「うわあああああああああああああ!」
思わずMP5を手に立ち上がる、説明書を読んでた御蔭で取り扱いは解っている。
そのまましっかりと両目を閉じて引き金を引く、銃の反動で大きく左右にぶれるが気にしない、ただサブマシンガンの陽気な音に身を任せる。
「ハアッハアッハアッハアッ」
それからどれほどの時がたったのか……気が付いた時サバロはたった一人で其処に立っていた。
三人の参加者は既にただの肉塊になっている。
「わ……私が……私がいけないんじゃないですよ、これは皆さんが私を殺そうとしたから……いや、あのケフカって人が悪いんですからね!」
死体に漸くそれだけ言うと、サバロはアイテムを奪って姿を消した

【サバロ:MP5(サブマシンガン)バックラー、消え去り草、M79グレネードランチャー
 現在位置F−14 第一行動方針:不明】

【フリオニール、マッシュ、フライヤ:死亡】(残り74人)
25マント返せよー:03/06/23 00:15 ID:J4KrGQrs
一人の魔人が歩きながら考え事をしていた。

「私は再び命を与えられたのか?」
説明を聞き、現在の大体の事情は把握したが、何故自分が生きているのか?
確かにバブイルの巨人内部であの者達に負けたはずだ。
今回私に命を与えたのは一体何者?あの道化師らしき人物?
いずれにせよあの道化師に会い、このゲームについて聞き出す必要があるな。

だが、それよりも気になることがあった。
私の炎のマントが無い!
参加者の武器は回収したと言っていたが、マントまで回収するとは…
味な真似をしてくれたものだ。

支給品のことを思い出し袋の中身を見てみる。地図。
どうやらこれが支給品のようだな。(ランダム支給品を地図だと思い込んでいます)
「まずはマントを探すか。このままでは格好がつかん!」
火のルビカンテは沼地を避けつつ町へと歩み始めた。

【ルビカンテ 所持武器:(未確認) 現在位置:L-21から町へ向かう
第一行動方針:マント(出来れば炎のマント)を探す
第二行動方針:ゲームの目的を知る】
26夜を歩く:03/06/23 00:35 ID:JeucsDZ9
ロザリーはうっ、と呻きながら、
貧血をおこしたように真っ白な顔でふらふらと夜の草原をを歩き出した。
どう見ても重量があるように見えない小さな支給袋さえ、
しんどそうに引きずりながら歩いていた。

争いを好まない心優しきエルフの娘にとって、このゲームはあまりに過酷であった。
殺し合い、重くのしかかってくる言葉が彼女の心を押しつぶした。
ピサロさま、と言って泣きながら走ることしかロザリーにはできない。

ロザリーにとって夜は悲しき待ちぼうけの時間であった、このゲームが始まるまでは。
それが今は、夜は恐怖の時間以外の何者でもないと、そうロザリーは思っているのである。

【ロザリー 現在位置 K−19
 アイテム:恨み念法魔法「うらミサイル」(指定した相手の生命力ほとんどを奪い、さらに毒・麻痺・虚弱・暗闇
 呪い・沈黙・臆病を引き起こす。一回しか使えない)
 行動方針:どこかに避難】
27怒り:03/06/23 01:07 ID:88uwr6iU
ジタンは闇夜の草原に立ち尽くしていた。
スタイナーと、それから、フライヤと、他には……
「ちくしょう、ビビ」
ジタンはビビのことが頭から離れられないでいた。
なんで、なんで、ビビが死んじまったんだ。
ジタンは自分の喉を押さえながら呻いた。

支給品をよこしたあの兵士が言っていた。
「あのボウズは運が悪かったんだよなぁ」
聞いた瞬間、ジタンはこの兵士を八つ裂きにしてやりたい情動にかられた。
首を振りながら必死の視線を投げかけてくるスタイナーがいなかったら、実行していたところだった。

ジタンは流れる涙をぶちまけながら、叫びをあげたかった。
声がすぐそこまで出かけた。
だが、ぐっと思いたつ。
いや、スタイナーがもうじき来るんだ……
それまでは派手な動きはしないほうがいいはずだ。

ジタンは、ビビが殺された現場の記憶を懸命に振り払おうとしながら、スタイナーが出てくるのを待った。
今はとにかく仲間と合流して対策を練るしかない。
【ジタン 現在位置:S−10
 所持品:コッズガントレット
 行動目的:スタイナーが出てくるのを待つ】
28リベンジャー:03/06/23 01:14 ID:NYVtt+xL
深い闇に包まれた森の中。
そこに木々に包まれるかのようにして建っている祠から一人の男が飛び出した。
そのまま前方に走り――突然右に方向転換し、森の中に消えていった。
この男、ダインは予想していた攻撃も無く、誰かが追ってくる気配も無い事に軽く安堵した。
しかし警戒を緩めず、森の中を駆け抜けていった。

最初の人間がこの祠から出て、既に大分時間が経っていた。
もし自分より先に出た誰かの支給品に強力な武器が宛がわれていて、
しかもその人間が『やる気』になったとしたら。
まずは自分より後にこの祠から出てくる人間を狩り始めるだろう。
その考えに至ったのは、もし自分がそうだったら同じことをしようと思っていたからだ。
結局、自分の名が呼ばれた頃には大半の参加者が出た後だった。
おかげで今は逃げに回るしかなかったのだ。

どのくらい走っただろか。
少し乱れた呼吸を意識的にただし、傍に立っていた木の根元に腰を下ろし、幹に体を預けた。
自然と上を向いたダインは木々の間から見える星空を眺め、
そして受け取ったザックから自分に支給されたアイテムを取り出した。
「…量産されているハンドガンタイプか。余計なパーツを外せば左腕に付けられるな」
そう言ってダインは常に持っている工具を取り出そうと懐をさぐり、
「ちっ。ご丁寧に全部持ってきやがったか」

悪態をつくと、着ているベストの一部になっている薄い鉄板を外すと
器用にパーツを外しにかかった。
左手を失い、手術により機械の腕を手に入れた時からずっと
銃の手入れはずっと自分でやってきたのだ。
ダインは右手を動かし続けながら、しかし意識はここに来た経緯を思い返していた。

29リベンジャー:03/06/23 01:15 ID:NYVtt+xL
一番最後に覚えているのは、崖から落ちる自分の名を呼ぶ旧友の声。
あの時はやっとエレノアの処へ逝ける。それだけを考えていた。
しかし今は何故かどう見てもあの世には見えない処にいる。
どうしてこんな所にいるのだろうか?
「俺には死ぬ事も許されてはいないのか…」

それとも――

ここまで考えて、ダインは唇の端を笑みの形に歪めた。
「あの女に復讐する機会を与えてくれたのか?」
炎に包まれる、自分が守らなければいけなかった村。
銃声と悲鳴。甲高い笑声。赤い服の女。左腕の痛み。
「初めの部屋にいたあの女…。忘れもしない…。神羅の……!!!」
再生される記憶。加速する憎悪。
「こことは違うどこかに…。必ず俺が…殺してやる」
左腕に取り付けられた銃の具合を確かめるとダインはゆらりと立ち上がり、
地図を開くと真っ直ぐ北へ歩き出した。

【ダイン:所持アイテム ハードバルカン(マテリア ?×3)
 現在位置C-12から北へ  第一行動方針:スカーレットを探し出し、殺す】
30漢気isマント:03/06/23 01:17 ID:YbSUyZjY
「うわぁぁぁっ!」
赤いマントの剣士が、叫びと共に吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。
それでも剣士は衝撃で手放してしまった剣を拾い、なおも戦おうとするが、先に剣を拾われてしまった
彼に先んじて剣を奪ったのは炎を纏った浅黒い肌の魔道士だった。

剣士も覚悟を決めたのだろう、唇をかみ締めその時をまつ、しかし魔道士は構えを解くと剣を地面に突き刺した、
「ころさねぇのか?」
炎を纏った魔道士は剣士の言葉ににやりと笑って答える。
「私の魔法は、そしてこの拳は戦うものであって、殺めるためのものではない」

「だが、俺は世界最強の剣士ギルガメッシュだ!と大見得を切ったわりには少々物足りんな」
「何を言ってやがる!いきなり後ろから私のマントを返せとか言って挑んできたくせに」

「それについては私の誤解だ、すまなかった、あれは大切なものなのだ、お前も分かるだろう」
「まぁな!この赤マントは俺のこだわりだからな…人は俺の事を赤い彗星と…」 

「それはもういい、だが本当にそう呼ばれたければ、まずは真贋を見抜く目を身につけることだ」
というなりルビカンテは地面に突き刺さった剣を引きぬき、ギルガメッシュの頭に斬りつけた。
ぽこ!という情けない音と共に剣は真っ二つに折れた。
「ああっ、おれの斬鉄剣が…」
「まだ言うかお前は、これは残鉄剣という夜店で売ってるレプリカだ、まったく」
「ええっ…て、ことはまたかよ」
ギルガメッシュの様子に溜息をつきながらルビカンテは続ける。
「まぁ、悪戯に武器に頼るのはやめる事だ、まずは己を鍛えよ、さすれば名声もそれにふさわしき武具も
 自然に手に入るものだ、お前の剣の腕は私が保証する、なればこそだ」
31漢気isマント:03/06/23 01:19 ID:YbSUyZjY
「ああ、肝に銘じておくよっと、俺はそろそろ行くぜ、会いたい奴らがいるからな」
ギルガメッシュは身体についた泥をはたきながら立ちあがる、それを見たルビカンテはザックの中から
一振りの剣をギルガメッシュへと手渡す。
「こいつを持っていけ、私には必要無い、それに剣士が剣を持っていなくてどうする?」
「いいのか!?」
「誤解の詫びだ、それにいい戦いをさせてもらった…その礼だ」

「そうか…でもこれは借りておくだけにしておくぜ、次に出会ったら返す、借りるだけだ!
だから絶対にあんたは死ぬな、俺も頑張るからさ、いいか絶対だぞ!!」
ギルガメッシュは名残惜しげに手を振って、そのまま南の方向に去っていく。
それを見送るルビカンテだったが、背後の気配に振り帰る、とそこには何時の間にか一人の少女が立っていた。

「あ…あたしさっきの戦い見ていました、その、あの…感動しました!」
少女は瞳を輝かせ、ルビカンテのそばへと走り寄り、ぺこりと頭を下げる。
「どうか弟子にしてください!」

この予想外の展開にもルビカンテは動じない。
「見たところ武道家のようだが、私はあくまでも魔道士、格闘は己を鍛えるための方法の一つとしての
 いわば嗜みにすぎない、さらに言うならば、私は未だに未熟者だ…他にふさわしき者にあたれ」
「その謙虚さ!ますます気に入りました、ぜひご指南を!師匠!」

師匠という言葉にルビカンテは少し思うところがあったようだ。
「まぁ…ならば条件がある、私はとある大切なものを探しているのだ、それを探す手伝いをしてくれないか
そうすれば私に教えられることなら伝授しよう」

「そんなことでいいんですか、お安いご用!あたし探し物は得意なんだー、いやっほー」
少女はくるくると回転しながら、喜びを全身で表現する。
そんな様子を見ながらルビカンテは苦笑するのだった。
32漢気isマント:03/06/23 01:19 ID:YbSUyZjY
【ルビカンテ 所持武器:なし 現在位置:M-21から町へ
第一行動方針:マント(出来れば炎のマント)を探す
第二行動方針:ゲームの目的を知る】

【女武闘家 所持武器:不明 現在位置:M-21
第一行動方針:ルビカンテの手伝い 】

【ギルガメッシュ 所持武器:鋼鉄の剣 現在位置:M-21から南に
第一行動方針:バッツたちを探す】
33Lady Spider:03/06/23 01:44 ID:Y/+MF+b6
ローレシア王子マイヤーは、道無き浜辺を歩いている、その背中に一人の女性を背負って
道端で倒れこんでいた女性を途中で見つけたのだ
「あの…足をひねって動けなくなってしまったの」
そう言って苦しげに顔を歪める女性、無論彼が手を差し伸べないわけがなかった。

そして、とりあえず彼は街道から外れた浜辺を歩いている、とりあえず朝まで安全に休める場所を探して。
一方、彼の救った女性…スカーレットは心の中でぺろりと舌を出す、自分の美貌には自信がある。
一種の賭けだったが、こうやって無防備を装えば誰かが引っ掛かってくれるとは思っていた、
だが、まさかこんな掘り出し物がかかるとは。
若くして巨大企業の重役のポストを手に入れただけあって、スカーレットは人を見る目もそれなりのものがある。
一見するかぎり平凡な少年しか見えない彼の実力をわずかの会話と身のこなしを見ただけで
見抜いていたのだから。

彼女はポケットの中の支給品を握りしめる、これが早速役にたってくれそうだ。

「あそこに小屋があるな、そこで休もう」
マイヤーはスカーレットを背負ったまま、小屋の中に入っていく、中はぷうんと潮の香りがした
漁師小屋のようだ。

マイヤーは床に網を敷いてそこにスカーレットを寝かせる。
「ふふっ、ありがとう、坊や」
「ぼ、僕は坊やなんかじゃ…」
そうやって背伸びするところがまた可愛いとスカーレットは思った、そう…本当に。
一段落ついたところで、スカーレットは策略を実行に移す。
「そういえば、君、少し疲れているんじゃないかしら?」
34Lady Spider:03/06/23 01:44 ID:Y/+MF+b6
「そんなことないよ、大丈夫」
「ふふふ、良いものあげましょうか?」
そういってスカーレットはポケットから注射器を取り出す。
「これって良く効く栄養剤なのよ、私も試したんだけどかなりいい感じ」
「本当ですか?」
マイヤーは興味津々で注射器を見つめる。
「これから生き抜くためには体力が必要よ、まずは1本いってみましょうね…
 それとも、坊やはお注射がまだ怖いのかしら?」
少し躊躇していたマイヤーだったが、注射が怖いという一言で、思うところがあったのだろう
その腕をスカーレットに差し出す。

無論スカーレットの言う、栄養剤などというのは真っ赤な嘘だ
栄養剤どころか、今、マイヤーに注入されているのは麻薬、それもすさまじいまでの依存性と禁断症状が付加された
改良型だ。

確かに彼は腕はたつが、まだ十代半ばの少年でしかない。
これまで何度となく襲いかかってきた幾多の困難を切り抜けてきてはいるが、それらの敵はすべて魔物、
彼にとって人間は守るべきものであって、疑う事など考える由も無い。
事実、これまでの冒険で出会った人々はすべて自分たちの味方(実際はそうでもなかったが
2人の仲間がしっかりしていた)であり、愛すべき仲間だったのだから。
その純粋さゆえに彼はスカーレットという邪悪な蜘蛛の巣に捕らえられてしまいつつあった。

「そういえば自己紹介がまだだったわね、私はスカーレット」
「僕は…」
35Lady Spider:03/06/23 01:46 ID:Y/+MF+b6
【スカーレット 所持武器:麻薬(残り4回分) 現在位置:U-09
第一行動方針:マイヤーを麻薬漬けにし、利用する 】

【マイヤー 所持武器:バリアブルソード 現在位置:U-09 第一行動方針:人助け 】
(数時間後に禁断症状が始まります)
36獅子王:03/06/23 02:05 ID:ajmRTvqE
「ククククク……」
“それ”はあっさりとリザードマンの作った真空の渦を突破した、更に狼狽するリザードマンから盾を弾き飛ばす。
“それ”はリザードマンに四本の腕を振るい幾つもの傷を与える、リザードマンも噛み付いて反撃するが、
流れ出る血など関係無いかのように“それ”はとまらないリザードマンが抵抗を止めたのを見計らって“それ”は大きな口を開ける。
その瞬間にリザードマンは“それ”の首筋に噛み付くが……“それ”は致命傷になる直前に自らの爪で利ザードマンの心臓を抉り出していた。
「全てを忘れ、殺しあうのがこれほどに楽しい物であったとはな、王になぞなるものでは無いな。」
言って“それ”はリザードマンの持っていた盾の力を解放して自らの傷を癒す。
「アリーナ!マーニャ!ミネア!そしてまだ見ぬ強敵達よ!余を、このキングレオを満足させてみせよ!」
そういって咆哮する“それ”=キングレオは……何故だかとっても笑えたりした。

【キングレオ:ステテコパンツ、力の盾 現在位置:K-5 目的:俺より強い香具師に(ry】

【リンガー 死亡】(残り73人)
37永い夢の始まり (1/6):03/06/23 04:52 ID:y73mxo0B
 どうしてこんなことになったんだろう?
 頭が痺れてよくわからない。

 森の奥深くで激しく震えてる私。
 冷え切った体に、拳だけがやけに熱い。
 そして私の足下に、青い髪と白いローブを朱に染めた幼女。

「だ、大丈夫っ!?」

 女の子を優しく揺する。でも、心のどこかで白々しいって思ってる。
 だって私は本当は気づいているから。知っているから。
 この女の子はもう動かない、目を開かない。
 ついさっき、私が殺したんだ。

「なんでこんなことしたんだっけ……」

 私は冷えてゆく頭で、この罪の顛末を思い出す。
38永い夢の始まり (2/6):03/06/23 04:55 ID:y73mxo0B
 ゲームが開始されて、祠を後にして。方角も判らないままふらふらさまよって。
 それで―――
 あの子を見つけたんだ。森の奥で、あいつの娘を。

 あの子は大樹に背中を預けて、とても不安げに、
 きょろきょろと周りを見渡していたんだっけ。
 私よりちょっと遅れてこっちに気づいたあの子は、
 逃げようとあたふたして、空回りして、尻餅をついたっけ。

「こわがらないで。私はね、あなたのパパのおともだち」
「パパの?」
「うん、そう。あなたのパパがあなたよりちっちゃい時からの友達なの」
「本当? 私を殺そうとしたり、しませんか?」

 女の子は探るような上目遣いで私を見つめてた。
 まんまるな瞳が怯えに揺れてた。
 こんな小さな子にまで殺し合いを強要するなんて、本当に酷い!
 その時私は確かにそう思ってた。憤ってた。
 それに、母性もくすぐられた。
 この子は絶対にあいつの元に返してやろう。それまではこの子を守るんだ。
 確かにそう思ってた。

「あなたはパパを待ってるのね?」
「うん。パパと、おじいちゃんと、おにいちゃんを待っています」
「じゃあ、それまで私が一緒にいてあげるね」
「ありがとうございます」

 ぺこり。お行儀良く頭を下げて、はにかんだ微笑み。
 素直で可愛い。そう思った。本当にそう思ってた。その時は。
39永い夢の始まり (3/6):03/06/23 04:57 ID:y73mxo0B
 それから私たちはいっぱいおしゃべりをした。
 あの子の不安を打ち消すために、私は随分おどけてたと思う。
 その甲斐あって、あの子は随分打ち解けてくれるようになっていた。
 ころころと鈴を転がすような声で笑われると何だかくすぐったくて。
 でも―――なんだっけ?
 あの子の一言で、その気持ちが掻き消えたんだけど、ええと。

「ビアンカさんの子供は、どんな子なんですか?
 わたし、お友達になりたいです」

 そうだ。その言葉からだ。私の胸がチリチリしだしたのは。

「え?」
「ビアンカさんはパパの一つ年上ですから、
 お子さんもやっぱり私より一つ年上なんですか?」
「あの、ね、」
「男の子ですか? 女の子ですか?」

 言葉に詰まる。顔色が悪くなる。
 素直で無垢。腹芸も空気の変化もわからない、それが子供。
 なんて愛らしくて、なんて残酷なんだろう。
 胃が痛い。胃が痛い。胃が痛い。
 私はね、あんたのパパが選んでくれなかったから、子供がいないのよ?
40永い夢の始まり (4/6):03/06/23 04:58 ID:y73mxo0B
 9年前。
 成人したあいつが私の宿屋を訪れたとき、運命だって思った。
 また一緒に冒険して、大きく成長した背中に気づいて、愛してるって感じた。
 思い返せばその想いをアピールしなかった私もいけないかもしれない。
 でも、当時はそんな必要すらないと思ってた。
 川が海に流れ着くように、あいつも私のところへ帰ってきた。
 それはとても自然で、とても必然。ずっと一緒。そう信じてた。

 なのに―――
 あいつはあの女を選んだ。小金持ちの。世間知らずの。苦労知らずの。
 その時、あの女は微笑んでいた。あいつも微笑んでいた。
 あいつが私以外の女にあんな顔を見せるなんて、悪い夢だって思った。
 でも、次の朝目が覚めても、その次の朝を迎えても、夢は覚めなかった。
41永い夢の始まり (5/6):03/06/23 05:36 ID:y73mxo0B
「ビアンカさん、体の調子がお悪いのですか?」

 黙り込んだ私にあの子は声をかけてきたっけ。
 心配されたんだ。あいつとあの女の娘に。

「HPが削られているのなら、ホイミ系でも……」

 そうだ。この言葉がこの子の最期の言葉だ。
 慈愛をたっぷり含んだ声質に、私の自制心は決壊を起こしたんだった。

 あんた、回復系呪文を唱えるんだ。流石はあの女の血だよ。
 その博愛っぷりも確かにあの女の娘だよ。
 さらさらの青い髪!! 抜けるように白いキメ細やかな肌!!
 人を疑うことを知らない純朴な瞳!!
 私の幸せを!! 未来を!! お前がっっっっっっ!!

「フローラッ!!!」

 幻像のその女がっきりと輪郭を持ち、あの子に重なって。
 拳を振り上げて。あの子の顔が引き攣って。頭が真っ白になって。
 それで―――
42永い夢の始まり (6/6):03/06/23 05:36 ID:y73mxo0B
「―――こうなったわけだ」

 回想を終えて、あの子の死体から手を離す。
 クールダウンしたはずの私の心は、どこかぽっかりと穴が空いているみたい。
 穴の名前は、多分、現実感。
 罪の意識と爽快感と憎しみと愛情とで穿けた風穴。
 それは一生消えない歪み。

 考えてみれば現実感なんて9年前からなかった気もする。
 あいつがあの女の手を取って微笑んだ、あのときから。
 それに、今の状況。
 殺し合いを強要するゲームなんて、まともじゃない。
 夢。ただの夢。今見てるのは、とびっきりの悪夢。
 そう理解すれば―――そう思い込めば怖くない。

 だとしたら、そんなに悪い状況でもない。
 ここには、フローラはいないし、もう一人の子供―――たしか勇者だっけ。
 その子も殺せば、あいつとフローラを繋ぐ糸は無くなる。
 そうすればきっとあいつは微笑んでくれるようになる。私だけに。
 そうすれば私を選んでくれる。こんどこそ。
 だって、ね。ここは夢の中だから。

「待っててね、リュカ」


【ビアンカ 所持武器:不明 現在位置:O-05:祠の森、深く
 第一行動方針:リュカ(DQ5主人公)との合流
 第二行動方針:王子(DQ5主人公の息子)の殺害 】

【王女(DQ5主人公の娘) 死亡】(残り72人) ※所持品は放置
「こんな怪物も参加者だとは、どうなっているんだ?このゲームは」
ルーファウスは目の前に倒れるタコのような怪物――オルトロスなのだが。
その怪物の横に座っていた。
「それにしても、まさか支給されたのがわが会社の開発品とはな…」
手に持ったアウトサイダーを見てフフッ、と笑う。
この威力は実証済みだ。
現にこの引き金を引くだけで目の前のこのタコは動かなくなった。

「とりあえず、この銃があれば勝ち残るのも不可能ではあるまい」
オルトロスのザックから食料を奪いながら言う。
「ん?これがコイツの武器か――?」
その支給武器は「かいふく」のマテリアだった。
「フフフ…やはり勝ち残るのは私のようだな…」

アウトサイダーにマテリアをはめ込み、北の森へ向かうことに決める。
「さあ、参加者達はどこにいる――?」
銃を構えて、得意そうにその場を去っていった。

【ルーファウス 所持武器:アウトサイダー/かいふくのマテリア
 現在位置:J−15】
 第一行動方針:皆殺し。

【オルトロス 死亡】(残り71人)
>>43
タイトル付け忘れた…。
タイトルは狂気の支配者、とでもしておきます(w
もうどれくらい走ったのだろう?
クッキーは、まわりに人が居ないのを確認すると、ようやく小休止して息を整える。

「なんなんだよ、もう」
何が何だか正直理解できない、どうしてこんなことをしなければならない?
だが、泣き言も言ってはいられない、自分にはやらなければ、伝えなければならないことがある。
これが夢ではなく現実ならば、なおのこと。
底抜けのお人よしのマイヤーのことも心配だったが…(ああ、どうか悪い人に騙されていませんように)
それよりも彼には大切なことがあった。

(リンダ…)
クッキーはザックからハンカチを取り出すと、汗を拭きながら心の中に一人の少女の姿を思い描く。
(あの日、ムーンぺタの街で出会ったあの時から僕は君のことが…)

そう、どんなに強い敵がいても、どんなに険しいダンジョンがあっても、彼女が自分の後ろにいる。
そう思っただけで自分の中の臆病さが勇気に変わっていくのが自分でも理解できた。
この胸の想いを打ち明けたい、叶うならずっとそばにいて欲しいと何度眠れぬ夜を過ごしたことか。

だが、自分と彼女の立場を考えると、それは封印しなければならぬ禁断の想いだった。
もし想いを打ち明けたとして、人々はどう思う?
サマルトリアの王子は領土欲しさに亡国の姫を篭絡しようとしたと、後ろ指を刺す事になるだろう、
さらに人々にとどまらず、ローレシアやデルコンダル、さらにそのほかの独立都市も黙っていないはず。
一つ間違えれば、再び戦乱の世が始まることも充分考えられる。
しかし、それでもこうなってしまえば何としても彼女にこの想いを伝えたい。
生きて出会えるかどうかも定かでもないのだが、それでも何か支えがないと崩れてしまいそうだ。
「もう限界だよ…好きなんだ」
喘ぐように呟くと、彼は一向に止まらない汗をさらに拭き取ろうとするが、妙なことに気がつく。
でも何か変だなこのハンカチ、やたらと大きいしそれにいい匂いがする…って!!
「わっ、わわわっ」
なんと、彼が手に持っていたのはハンカチではなくピンクのレオタードだったのである。

「こういうの見た事はあるけど…持つのは初めてだなあ」
胸の鼓動を抑さえながら、彼には興味心身でレオタードを広げたり、かざしたりして観察を始める。

見たところレオタードはかなり使いこまれており、あちこち傷んでいるようにみえたが、
それがクッキーのいらぬ妄想を余計に掻きたてる、が、かなり強力な防御魔法がかかっているのも、
彼には理解できる、おそらく防御力は下手な鎧より上だろう。
腰の部分にはMiと丁寧に刺繍がしてある、持ち主の頭文字のようだ。

こんなのをリンダが着てくれたら…と、そこでクッキーは一瞬芽生えた邪な感情をあわてて振り払う
「こんな時に何を考えてるんだ!僕は!」
「こんなこと考えている場合じゃないや、先を急がないと」
懸命に自分を取り繕いながら、夜道を歩くクッキー、しかしそれでもレオタードはしっかりと、
ザックの中に確保していた。
そしてその頃、島の正反対では。
「なんだ!この支給品は、バカにするのもほどがある!」
ベアトリクスは岩場にもたれかかりながら悪態をつく、それも無理は無い、ザックの中から出てきたのは
やはりクッキーと同じく、きわどいピンクのレオタードだったのだから。

こちらもクッキーが持っているものと同じく、やはり使いこまれてこそいるが、その分とても丁寧に手入れされており、
傷みはほとんどなく、腰の部分にはMaと荒いタッチで刺繍が施されていた。

ベアトリクスはレオタードを海に向かって投げ捨てようとしたが、一瞬躊躇する。
「しかし…スタイナーも、もしかするとこういうのが好きなのだろうか?…いや、まさか…だが、
 ガーネット様もこういう類のものを実はお持ちになられているようだし…うむむ、しかし
 こんなデザインではお腹が冷えてしまうぞ」

結局、彼女はレオタードを丁寧にたたんでザックの中に片付けると、やや頬を赤らめてその場を後にするのだった。


【クッキー 所持武器:ピンクのレオタード(ミネア用) 現在位置:J-19(南地区スタート)
第一行動方針:リンダを探す 】

【ベアトリクス 所持武器:ピンクのレオタード(マーニャ用) 現在位置:K-03海岸沿い
 (北地区スタート)第一行動方針:未定】
48Brave boy:03/06/23 15:40 ID:8Ond2WpY
ユウナはおもいっきりつまづいてしまった。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
いつのまにか離れていたその少年がユウナの前にやってくる。
手を差し伸べている。ユウナはその手につかまって立ち上がると、
「ありがとう、キミの名前は?」
自分を殺す気がないことに安心し、礼を言う。
「ボク、クーパーっていうんだ」
「私はユウナ。キミも参加者なの?」
当然、ここにいる以上は参加者なのだが。
「そうだよ」
そう言うとクーパーは少し顔を暗くしてまた言葉を続ける。
「アニーと、お父さんを探しているんだ。お姉ちゃん見かけなかった?」
「いいえ、ここに来るまで私、誰にも逢っていないの。どんな人なの?」
彼も仲間がいるんだろうか。そう思いながらクーパーの話を聞いたユウナは驚愕する。

「家族で、このゲームに参加させられたの?」
それはひどすぎる。どうしてこの子はこんなに明るくしていられるんだろう。
「大丈夫、お父さんもアニーも強いんだから!」
「それでその2人をさがしてるんだね。私も逢いたい人がいるの」
そこでコホン、と咳払いをする。
「1人で探すより、2人で探したほうが安全だよ。一緒に行かない?」
その言葉にクーパーが、いいの?と歓喜の声をあげる。
「もちろん、これからよろしくね」
2人は堅く、握手をし、とりあえず塔へ向かうことに決めた。

【ユウナ/クーパー:所持武器/不明:現在位置/E−18】
 行動方針:アニー、リュカ、ティーダ、アーロン、ルールーを探す。
4948:03/06/23 15:44 ID:8Ond2WpY
(こんな小さな子供まで参加させられているの?)
このゲームに恐怖し、ただひたすら走っているユウナの足を止めたのは
目の前で座り込んで地図を眺めている少年――まだ10歳にも満たないだろう――が、目に入ったからだった。
声をかけよう、そう思って岩陰から飛び出したとき――
「きゃあ!」

スミマセン、冒頭に上の文を追加してください。
50海を目指して:03/06/23 16:21 ID:41VeB/l+
支給品が薬品の入ったビンだけということに、心細さを感じた。
ビンに貼られたラベルにはびっしりと文字が書かれていたが、今は読む気もしない。
バッツは祠でゲームの詳細を聞いた後、東に向かった。
地図を見るとKー20。
不気味な音を立ててあわ立っている毒の沼地を発見した。
見たところ数百メートルにわたって広がっている広大な沼地だ。

これがただの湿原なら風流なことだったろうに。
バッツは重い足取りで、沼地を避け南に進んだ。
地図をよく確認しながら一歩一歩を確かめるように歩く。
このまま進めば海岸に出るだろう。
潮の匂いに惹かれて……

バッツはふと立ち止まる。
「うっかりしてた。祠に仲間が残っていたかも」
あまりに早い展開に、出てくるときは周りを見渡す余裕がなかった。
祠の中は薄暗かったが、人を判別するくらいはできたはずなのだが。
ファリス、レナ……まだ他にも誰かいるだろうか。
51海を目指して:03/06/23 16:22 ID:41VeB/l+
バッツは急いで戻ろうと走り出したが、兵士の説明を思い出して足をとめた。
確か、全員出発したあと祠は消滅すると言っていた。
それまではできるだけ離れた方が身のためだ、とも付け加えて。
バッツは祠の方角を眺めるように立ち尽くした。
どういう手段で消滅させるかは大体見当がつく。
バッツは戻れないことを悔やんで、唇を噛んだ。

俺の仲間は、そうヤワじゃない、
どこかできっとあえるさ、そしてみんなでこのゲームを抜け出す方法を考えるんだ、
だから今は。
バッツは思い直して、導かれるように海岸に向かって歩き出した。

【バッツ 支給品:惚れ薬
 現在位置:L−21
 行動方針:仲間を探すが、その前に海岸に行きたい】

「ハアハア、ここまで来れば大丈夫かな?」
南の祠を一番に出たユフィは、夜の闇の中何とか視覚できた北の山まで走ってきたのだ。
森と山の境である入り組んだ地形。
ここにいれば誰かに見つかる事も無いだろうし、もし見つかってしまっても
容易に逃げ出せるだろう。それに、もし自分がここに来た奴を
そいつより先に発見できたとしたら――。

「…ッッ!! なに考えてんだろ、あたし」
急に力が抜けたユフィは適当な岩陰に座り込んだ。
自分が何を考えていたのかと思うとぞっとした。
両腕で体を抱きしめた。震えは収まる所か少しずつ大きくなってくる。
(あたしに…人殺しなんてできるはず…無いじゃないか)
「クラウド…。ティファ…。誰でもいいから…あたし一人じゃ…」
壊れてしまいそうだった。自分の死。他人の死。
今まで死をこんなに身近に感じたことは無かった。

「そうだ。なんかアイテムが入ってるって…」
祠にいた男の言葉を思い出し、ザックの中から自分の支給品を取り出した。
「…なにこれ? 巻物?」
ユフィの支給品は幾本かの巻物だった。
表にはなにやら文字が書いてあり、ユフィは目を凝らして読んだ。
「えーと、困った時の巻物…?」
ユフィは慌てて一緒に入っていた説明書を取り出し、懸命に内容を読み出した。

53焔色の髪の男:03/06/23 17:12 ID:VtYa74Jj
まだ夜が明けない海辺にある一つの焔色の点。
サラマンダーはあぐらをかいて海の方向をじっと見つめていた。
視線の先には塔があったが、そこへ行く気は無かった。
いや、正確に言えば、今の彼の目には何も景色は入ってこなかった。
祠を出てここに着いてから、静かに今の状況を考えていた。

俺は今までずっと一人で生きてきた。
裏稼業もこなしてきた俺にとって、人を殺すのはなんてことはない。
だが、このゲームには乗ることはできない。
あのピエロのような格好をした男……ケフカといったか、
あの男の言うことは、何か全く信用できない。
だが、やる気になっている奴は必ずいる。
果たして俺はどうするべきか……

そこまで考えて、サラマンダーはザックから自分の支給品を取り出した。
「これは……ダガーか、そういえばジタンが使っていたな」
自分がかつて旅を共にした仲間、ジタン。
生まれて初めて興味を引かれた人間であった。

「探してみるか」
なぜそう思ったのかはよくはわからない、
だが、奴ならこの絶望から脱出できる何かを持っているはずだ。
心の中にそうした考えが浮かんだか自分でもよくわからないまま、
サラマンダーはすっと立ち、内陸部へと向かった。

【サラマンダー 支給品:ダガー
 現在位置:I−20(南地区スタート)
 行動方針:ジタンを探す
「えーと、困った時に読むとなにかいい事が起きます…?」
ユフィは小躍りしたくなるほど喜んだ。今本当に困っているのだ。
仲間の誰かがここに来てくれるかもしれない。
もしかしたらこのゲームから脱出できるかも。
ユフィは震える手で巻物を紐解き、ゆっくりとそこに書かれている事を読み始めた。

「えーと、ナモナモナモナモ…」
巻物を読み終わった次の瞬間、
ユフィの手にはずっしりと重たい$マーク付きの袋が乗っかっていた。


【ユフィ 困ったときの巻物×4  1092G
 現在位置:K−12 森と山の境 
 第一行動方針:とりあえず隠れる    】
南スタートでつ。スマソ
マジヤバイ。
北の祠から走り去る少女の頭のなかで、その5文字だけが浮かんでは消える。
彼女は涼しげなローブ姿の女賢者―――まりりん。
しかし、智の探求者という高尚な上級職に就いているにしては、
彼女はあまりにも俗っぽく、野暮ったく、そして滑稽だった。
まりりんは現在真剣に恐怖しており、必死で逃げている。
にもかかわらず、形のいい尻をプリプリと振る、無駄に劣情を煽るものだった。
だが、彼女の経歴を鑑みるに、それも致し方ないところだろう。
彼女は遊び人から昇格したばかりのLv1、成りたてホヤホヤの賢者なのだから。

16歳の誕生日、ルイーザの酒場で冒険者デビューをしたその日に、
まりりんはアレフガルドから凱旋した勇者パーティーに声をかけられた。
遊び人をレベル20にすると賢者に転職できるらしい―――
その噂の真偽を確かめたいというのだ。
勇者が放つ英雄オーラにこの田舎少女はメロメロになり、2つ返事でOK。
屈強な勇者パーティーの最後尾で無意味に「ハッスルハッスル♪」していたら、
半日もしないうちにレベル20になっていた。
直後、ルーラ。初めてのダーマであっさりと賢者に転職。
勇者は「あ、ほんとだ」と一人で納得し、まりりんをパーティーから外した。
狐につままれたような、夢をみていたような―――
不思議なその半日が、彼女唯一の『冒険』の記憶。
その後、勇者からの音沙汰が無くなった彼女は再び冒険に誘われるのを待ちつづけ。
時にルイーザさんに構ってもらったり、時にウエイトレスの真似事をしたりして、
のんべんだらりと日々を過ごしていた。

だから、「マジヤバイ」というまりりんの思いは的を得ている。
使える魔法、メラとホイミ。実戦経験無し。
そんな彼女が海千山千の連中を向こうに回さなくてはならないのだから。
北北西の磯まで一気に駆けたまりりんは、大きな岩の陰に身を隠し、
とりあえず「マジヤバイ」で一杯になっている頭と心を落ち着かせようと試みる。
「まりりん、落ち着いて…… ルイーザさんも言ってたでしょ?
 『大人の女は、どんなときでも涼しい顔して流し目できるものよ』って。
 パニクるのは子供よ。涼しい顔が大人。ア〜ユ〜アンダスタン?」
まりりんは尊敬するルイーザさんの顔を思い出し、幾分心を落ち着けた。
そして配布武器なるものがあったのだと思い出し、デイバッグを開けてみる。
彼女に与えられたものは、油紙に包まれた、パステル彩色の靴だった。
「かわいいけど。ちょ〜と素敵なデザインだけど。あたしに似合いそうだけど。でも。
 まりりん、これをどうしろと?
 教えて、ルイーザさん!!」
心のルイーザさんはまりりんに答え、艶っぽい流し目でそう助言した。
「まりりん。見た目で判断してはダメ。
 これがマジックアイテムである可能性だってあるもの。
 とにかく履いてみなくちゃ」
まりりんは気を取り直し、配布された靴を履く。
足を慣らすように小刻みに歩いてみる。前に、後ろに。左に、右に。
そして、その歩みが20歩目を刻んだ瞬間。

♪ぱらららっぱっぱっぱ〜〜〜〜〜っっ!!

突如足下から爆音でファンファーレが鳴り響いた。
そのあまりのけたたましさに彼女は思わず耳を覆い、そしてはっと気付く。
こんな騒音出してたら気付かれるっちゅーの。
「みなさん違いますなんでもないです聞き間違いですここには誰もいません。
 まりりんなんて絶対いませんから気にせずスルースルー。お出口はあちらです!!」
あたふたきょろきょろどぎまぎおろおろ。
心のルイーザさんを脳内召還する余裕も無い。
いわゆるパニクってる症状を一気に噴出して、虚空に向かってまりりんが弁明する。
まりりんはその後3分ほど騒いでいたのだが、その間、襲撃も接触もなかった。
幸いなことに、まりりんの周囲に人はいなかったらしい。
「いやはや面目ないです、ルイーザさん。
 まりりん、まだまだ子供っす」
しょぼ〜んと肩を落とし、こころのルイーザさんにへこへこ頭を下げるまりりん。
この危険な靴を脱ぎ捨てようと前屈したまりりんは、自分の体が妙に軽いことに唐突に気づく。
続けて、妙に漲っている心に。
「ルイーザさん、さっきのファンファーレってもしかして…… レベルアップ?
 てゆーことは、『まりりんはしあわせのくつをてにいれた!』と?」
そうよまりりんと頭の中に返事が響く。

何か新しい呪文を習得した。
確かな予感に胸を震わせ、まりりんは心に浮かぶ呪文を詠唱してみる。
「―――ニフラム!!」
刹那、まりりんの前方が白く優しい輝きに包まれる。
そのあまりの眩しさに彼女は思わず目を閉じ、そしてはっと気付く。
闇夜で閃光の呪文となえたら気付かれるっちゅーの。

「みなさん違いますなんでもないです目の錯覚ですここには誰もいません。
 まりりんなんて絶対いませんから気にせずスルースルー。お出口はあちらです!!」

あたふたきょろきょろどぎまぎおろおろ。


【女賢者まりりんLv2 所持武器:しあわせのくつ 現在位置:H-02 磯
 第一行動方針:コソコソ歩き回ってひたすらレベルアップ 】
59暗殺者と少女:03/06/23 20:29 ID:KUGTet4S
最東端の海岸、X-13。
シャドウは静かに海辺を見ていた。
己は暗殺者、このゲームに参加するのは容易い、優勝も可能だろう。

だが、シャドウの脳裏によぎるのは愛くるしい顔立ちの少女。
少女が、もし、殺されるとしたら……
少女の顔が歪む、血に染まる、ニヤリと笑う名も知らぬ参加者。
シャドウは頭を振った。
その考えを捨てるために。

――ガサッ!
突如背後の茂みから音がし、シャドウは咄嗟に音の方へと飛ぶ、ほんの一瞬の出来事。
シャドウは物音を立てた者の口を塞ぐ、首へと手をかけ、ビクリとした。
あどけない少女、可愛らしい金色のポニーテール。
瞳には涙を浮かべ、必死に首を横に振っている。
「動くな、死にたいのか?」
その声を聞くとポニーテールの少女はギクリとし、静かになる。
「よし、お前が何もしなければ俺も何もしない。
 お前はその、ピンクの帽子をかぶった女を見なかったか?」
少女は首を横に振る。
シャドウはため息をつき、少女の口を塞いでいた手と首にまわした手を静かにどけてやった。
「っはぁ……」
「すまなかったな、この闘い、疑らねば殺される。」
シャドウは茂みから顔を覗かせ、付近を確認する、どうやら他の参加者は気づいていないらしい。
「私、こんな闘いしたくない。
 おじいちゃんに早く会いたい……」
少女は肩を震わせ、泣きながらそう言った。
しかし、その願いはもう永遠に叶う事は無いということを少女はまだ知らない。
シャドウは一瞬戸惑いを見せ、再び周囲を警戒した。
60暗殺者と少女:03/06/23 20:30 ID:KUGTet4S
「泣くな、泣いて解決するような問題ではない。」
(らしくない、実に俺らしくない。)
「おじさん、私どうしたらいいの?怖い、私……」
「じいさんに会いたいというのならお前の足で歩いて探して会え。
 この闘いでは誰も助けはしてくれない、皆お前を殺そうとする、そう考えろ。」
(これもらしくない、俺はあの日、人間の感情を全て捨てたはずなのに。)
「でも、おじさんは私を殺さないでくれた。」
「ほんのきまぐれだ、殺そうと思えばいつでも殺せる。」
しばしの沈黙、シャドウは西を見た。
暗くて常人にはよく見えないが、暗殺者であるシャドウにはよく見える。
見える範囲には人はいない、行くならば今……
61暗殺者と少女:03/06/23 20:31 ID:KUGTet4S
シャドウは駆けた、暗闇の平原を、ただ黙々と。
――ススススススス……
暗殺者独特の足音のしない走り方、そう、足音はしない。
――スススススドッドッド……
ならば、この足音はなんだ?シャドウは振り向く。
そこには、いかにもな忍者ルックをした、先ほどのポニーテールの少女。
「お前……!」
「おじさん、お願い、私を連れて行って!おじさんなら信じられる!」
「お前のじいさんとやらは探さんぞ!」
「構わない!私だってどうせ何処に行こうか迷うだもん!
 それならおじさんと一緒に居たほうがいい!」
シャドウは走る速度を上げる、少女も負けじと速度を上げる。
「おじさん!お願い!」
「………そのおじさんというのはやめろ、それと足音を立てるな!」
シャドウは立ち止まり、少女を止める。
気づけば橋の見える地点、無我夢中で走っていた。
「わかった、私、クルル。」
「俺は……シャドウだ。」
少女―クルルは静かに笑った。
【シャドウ 支給品:? 現在位置:T-13(出発地点東) 行動方針:リルムを探す】
【クルル(ジョブ:忍者) 支給品:? 現在位置:T-13(出発地点東) 行動方針:ガラフや仲間を探す】
62いれわすれ:03/06/23 21:01 ID:NYVtt+xL
1に追加な

ここはFFDQキャラでバトルロワイヤルをやってもらうスレです。
詳細テンプレは>>1〜なんでよろしく

感想雑談スレ http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1055065173/l50

1stはまだ稼動してるんでそっちもよろしく
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1048867312/l50
63とても深く赤い色をした……:03/06/23 21:20 ID:NANK8FEl
森の中、アーヴァインは静かに身を潜めていた。
(どうやら近くに人の気配は無いみたいだね)
深呼吸をしていくらか落ち着きを取り戻すと、彼は先ほどの事を考えてみる。

突然仲間と離れ離れにされゲームの説明を受けている時、彼は集団の中に一人の知り合いを見つけた。
サイファー・アルマシー、幼少時は同じ孤児院で育った仲だが、魔女の手先となってしまい何度も対立を繰り返す事になってしまった男である。
サイファーがこちらに気付いたかどうかは分からない、視線をこちらに向けることはなく、腕を組み何か考え事をしているように見える、
そして名を呼ばれると一言も喋らずにさっさと外に出ていってしまった。

(……う〜ん、声を掛けるべきだったのかな〜?)
立場の違い故に敵対関係になってしまったとはいえ、この非常事態。
現状を打破する為には協力者はできるだけ多い方が良かったのかもしれない。
(でも僕、昔からサイファー苦手だったし〜)

過ぎた事は仕方がない、
気持ちを切り替えて、とりあえず自分の支給品を調べることにする。
すると中には深く赤い色をしたヘルメットが入っていた。
(……これは? 中にまだ何かある、セットになっているのか?)
奥に入っていた物はプラカード、表にはこう記されていた。

ド ッ キ リ !

「…………」
しばし見つめた後、裏返してみる。

大 成 功 !!

……こんなモノを渡されて、一体僕に何をしろと?
頭を抱え数分間は悩んでみたが、やがて彼はやれやれと溜め息をつき、こう呟いた。
「ママ先生、僕はもうダメかもしれません」
64とても深く赤い色をした……:03/06/23 21:25 ID:NANK8FEl
【アーヴァイン 支給品:赤いヘルメットとプラカード 現在位置:C−14 第一行動方針:夜の間は身を潜める 第二行動方針:仲間と合流する】
65Lady Luck ?:03/06/23 22:14 ID:TMbUC1Iz
夜道をとぼとぼとマーニャは歩く。
あんなことがなければ今ごろは……
話はスタート前に遡る、祠の中で憮然とした表情で説明を聞いていたマーニャだったが。
背中に妙な感触を覚える、そっと振り向くとそこには筋骨隆々の男がいた。
マーニャが振り向いたのを見ると、男は目線で振り向くなと合図を送る。
符に落ちないまま、再び前を向いたマーニャの背中にまた妙な感覚が…しかししばらくしていると
それが文字の動きだというのが理解できた、内容はこうだ。
ハナシガアル
コッソリマドノソトヲミロ
マーニャは言われるまま窓の外を見る、小高い丘の上に大きな杉の木があるのが分かる。
オカノウエノイッポンスギテマツ、ミナデチカラヲアワセテダッシュツシヨウ

無論その話に乗らないマーニャではない、しかもスタート順は1番だった。
が、しかし祠を出た途端、兵士に呼びとめられ、そのまま別室に連れていかれる。
そこには数人の兵隊が下卑た笑いを浮かべて座っていた。
「お前、踊り子なんだってなあ、踊れよ」
一人がくちゃくちゃと干物を食べながら冷やかす。
「もったいねえよなあ、こんないい体してんのに、やらせろや、へへへ」
別に何も思わない…こういう嘲りは慣れっこになってしまった、だが、そこで不意に妹の声が、
聞こえたような気がした。

  ”姉さんはいいわよね、楽しく踊って、お酒も飲めて”

ともかく彼女は、兵隊たちの下卑た笑いと無茶苦茶な掛け声に会わせて踊るしかなかったのだった。
その結果、合流に遅れてしまい、集合場所に辿りついた時にはそこは無残な有様だった……。
66Lady Luck ?:03/06/23 22:15 ID:TMbUC1Iz
その結果、合流に遅れてしまい、集合場所に辿りついた時にはそこは無残な有様だった……。
死んでいたのはあの男のほかに、自分の隣の鼠女と彼の隣にいた戦士、これは偶然の遭遇で倒されたのか?
それとも彼の誘いを受けた何者かが裏切ったのか…。

ちなみに、もし自分があの場に居合わせることが出来ていればどうなったのだろうか?とは考えなかった。
そんなことを考えていては前に進めなくなる、しかし少なくともあんな下らない足止めさえなければ…。

だが、それでも一つだけ救われたことがなかったわけでもない、解放されてしばらく歩くと、
歩兵が一人近寄って来た、先ほどの部屋の中にいた兵士たちの内では飛びぬけて若い、
自分と同じかそれ以下の少年兵だった。

「あの、踊りとてもよかったです、その…これあげますっ」
うつむき加減でまくしたて、一方的に包みを渡すと少年兵はあわてて祠の中に戻っていった。

そういえばまだ確認していなかった、これは何だろうか?本来の支給品はやたらと大きなノコギリだった。
しかも不気味なマスクまでついていた、では、これは?マーニャは包みを開く、
中には掌サイズの機械が入っている、説明書には首輪探知システムと書いてあった。

説明によると画面中心の矢印が自分で、その他の光が他の参加者の現在位置なのだそうだ、
と、自分のすぐ近くJ-14で二つあった光が一つ消えた…おそらく誰かが死んだのだ、
いや殺されたのだ、殺したであろう奴はそのまま北東に向かっている。
今この周辺に確認できる光は4つだ。4つとも現在は動きを止めているようだが、
全て自分の北に位置している、これでは南に向かう以外に手は無い。
マーニャはとりあえず山脈を縫って南に向かうことにした。

【マーニャ 所持武器:回転ノコギリ 首輪探知システム 現在位置:G-15から南に 第一行動方針:仲間と合流 】
(探知可能範囲は自分を中心とした最大半径3HEXの円内です、縮尺は1HEX 2HEXの3段階に
 切り換え可能、ただし探知範囲が広ければその分精度はダウンします
 また位置はわかってもそれが誰なのかはわかりません)

J-14から北東に向かったのはルーファウスです
67魔女の騎士:03/06/23 22:21 ID:8Ond2WpY
(これは…魔女の意志だ…)
サイファーは恍惚の表情を浮かべて西の祠からここ、エリアD−9まで移動してきた。
先ほどアーヴァインが声をかけなかったのは正解といえよう。
彼はあの祠にアーヴァインがいたことさえ気付いていない。
もはやスコールやリノアを見ても誰だかわからないだろう。
彼の眼には、栄光を勝ち取る騎士の姿しか映っていない。
彼の頭には、先ほどゲームの説明をした男の声がこだまする。

このゲームの説明をする不気味な男の口から漏れた一言、
『魔女様の、いや、我等の主のご指示である…』
あいつらの主…魔女…そんな考えが脳に浸透していった。
(オレは、魔女の騎士。魔女の意志はオレの意志)
サイファーの腕に握られている古代の剣が閃く。
(オレはこのゲームの進行役として、選ばれたんだ!)
すなわち――自分は他の参加者を殺すために選ばれた――。
自信に満ちた笑いをつくってサイファーは北へと、走り出した。


「ふう、ここらへんなら誰もいないだろう」
同時刻、キーファは来たの祠から西へ移動し、砂漠を歩いていた。
何をするのかは決まっていないが、この砂漠なら参加者もそう集まってはこないだろう。
そう踏んで砂漠の中へと入った。
「よっこらせ…さぁて、どうすっかな〜」
考えを整理しようと、座り込んだ刹那、眼前に1人の金髪の男が映る。
視界に入ってきたのは、嬉しそうに笑う金髪の男だった。
68魔女の騎士:03/06/23 22:21 ID:8Ond2WpY
「ふう、ここらへんなら誰もいないだろう」
同時刻、キーファは北の祠から西へ移動し、砂漠を歩いていた。
何をするのかは決まっていないが、この砂漠なら参加者もそう集まってはこないだろう。
そう踏んで砂漠の中へと入った。
「よっこらせ…さぁて、どうすっかな〜」
考えを整理しようと、座り込んだ刹那、眼前に1人の金髪の男が映る。
視界に入ってきたのは、嬉しそうに笑う金髪の男だった。


「やっと1人目…」
そんなことを呟きながら近づいてきたサイファーに、キーファは立ち上がって構える。
それの直後、サイファー古代の剣を振りかぶって斬りつけてきた。
「クッ、お前…なんのつもりだっ!?」
キーファはその斬撃をなんとかかわし、支給武器のメイジマッシャーを構える。
「なぜ?決まっているだろう、このルール――魔女の意志に従っているだけだ!」
無機質に言うサイファーの声には、もうこちらの言葉を受け入れる余地はなさそうだった。
次々と自分の周りを薙ぎ払う剣を何とかかわす。
砂埃が舞い上がった。
(…チッ、狂っているのか?)
キーファも時折、反撃をしながら逃げるスキを伺う。
サイファーの攻撃は全て紙一重でかわしているが、このまま避け続けるのも限度があるだろう。
「魔女に逆らう者に死を!」

【サイファー:所持武器/古代の剣:現在位置/E−7】
 第一行動方針:魔女の意思に従ってゲームを進行させる。

【キーファ:所持武器/メイジマッシャー:現在位置/E−7】
 第一行動方針:サイファーから逃げる。
 ※交戦中。
69フェイク&デコイ:03/06/23 22:59 ID:OO6sUp9M
「これは一体?」
森の中で見つけたものを見てエッジは首をかしげる。どこかで見た事のあるような…
ともかくエッジはその中に足を踏み入れた、その時、足元に妙な感触……と同時に
けたたましい鳴る子の音が周囲に響きわたる。
「畜生っ」
エッジは慌てて後退するが、また別の感触が足に…すると今度は彼の身体はそのまま宙吊りになって、
しまったのだった。

ここまで鮮やかに罠に嵌った事は記憶に無い、憮然とするエッジの前に、
罠を仕掛けたであろう人物が姿を現す、意外な事にそれはまだ年端もいかぬ少年だった。
「とりあえずしばらくそのままで僕の話を聞いてくれませんか?」

「あ、僕はミドっていいます」
その少年はまず自己紹介をすませると、すぐさま本題に入る。
この物体が実は飛空挺であること、どうやら事故で不時着したような感じだということ。
そして肝心なのはこれからだ、不時着してからかなり経過しているのだが、
動力機関はまだ生きていることが確認されたのだという。

「って!ことはおい!」
「ええ、これが動けば!」
海には出ないほうがいいと、何か含みを持たせた言い方で彼らは言われていたが、
空を飛ぶなとは言われていない、もし飛空挺が使えれば行動範囲は各段に広がるし、
それだけではなく、色々な面で有利に事を運ぶ事も可能だ。
70フェイク&デコイ:03/06/23 23:00 ID:OO6sUp9M
「手伝ってくれますよね!」
「ああ、下ろしてくれたら今すぐにでも手伝うぜ!」
ミドとエッジは手を取り合って喜ぶと、早速修理に取りかかっていた。

そして、それと同じくしてキャビンの中に転がっている、清掃道具のロッカーの中では、
「いいことを聞いたぞ…」
「連中に船を直させる、そして直ったら俺が乗っ取る、これで帰れるじゃねーか」
そこに潜んでいたのは、自称大盗賊カンダタであった。
彼はいの1番にスタートしたものの、頼るものもなければ、目的も無い、
ならば戦うかと相手を探しても見つからない、そのうち疲れてきたカンダタは、
森の中の異様な建物(彼にはそう思えた)に隠れている間に眠り込んでしまい、
先ほどの鳴る子の音で、あわててロッカーの中に隠れたのだ。

しかしカンダタはともかく、エッジもミドも気がついていないことがあった。
そう、どうしてこんなところに脈絡もなく飛空挺があるのかということを……。
まあ、単純バカのエッジと天才でもまだ子供のミドでは仕方ないのかも知れないが、
それでもこのままだと彼らは、そのことを身をもって味わうことになるだろう。

人間、絶望的状況になればなるほど些細な希望にすがりたくなるものだ。
溺れるものはわらをも掴む、しかし所詮はわらである。

そして清掃道具のロッカーの中にも一人。
「お前らのものは俺のもの、俺のものは俺のもの、助かるのは俺だけで充分だっての、ガハハ」
しかし、自分一人でどうやって動かすつもりなのか、それを全く考慮に入れていないカンダタだった。

【エッジ 支給品:? 現在位置:P-12。飛空挺内部(出発地点東) 行動方針:飛空挺の修理】
【ミド  支給品:?  現在位置:P-12。飛空挺内部(出発地点東) 行動方針:飛空挺の修理】

【カンダタ 支給品:M3ショットガン 現在位置:P-12。飛空挺内部(出発地点東)
 行動方針:修理完了後ハイジャック】
71フェイク&デコイ:03/06/23 23:04 ID:OO6sUp9M
補足・飛空挺の修理は早くて朝には、遅くても正午までには完了します
72自分にできること:03/06/23 23:41 ID:DikuAydI
何もかもが、あまりに唐突だった。
夢を見ているような気がする。でも、夢じゃないのは確かだ。
皆に担がれているのではないのだろうかとも思う。それだったらどんなによかっただろう。

鼻を突く異臭が漂っていた。目の前の黒い物体から。
人の形をした、炭から。
それがゲームに乗った誰かの所業であることは、誰から見ても――ローラの目から見ても間違いなかった。
「勇者様…なぜ、このようなことがまかり通るのでしょう…」
この島に連れて来られてからというもの、目にした光景全てがあまりに非道。あまりに残虐。
竜王が為したいかなる所業よりも、なお惨い――
ガラフの死体を見つめるローラの目から、思わず涙が零れた。
「ごめんなさい……私には何の力もないのです…」
誰かを助けることも出来ない。止めることも出来ない。
ただ、誰かが助けに来てくれるのを待つだけで、誰かが死ぬのを見ているだけだ。
いつも何も出来なかった。

――それならばせめて、今できることだけでもしよう。
そう考えたローラは、この見知らぬ誰かの墓を作ってやることにした。
無力ならば無力なりに、せめて自分ができることだけでもしてみせよう。
それが誰かの救いになるかもしれない。そう信じて。

【ローラ:アイテム:? 現在位置:E-12
 第一行動方針:死者(ガラフ)を弔う】
73錯乱少女:03/06/24 00:19 ID:6ZmJSJBJ
あーもうあれですよ。
一体何が起こったの?
ここは何処なの?何でこんな場所にいるの?
何がなんだかわかんないよー。

森の中に少女が一人。
女僧侶、ターシャは突然の出来事に錯乱状態に陥っていた。

こーいう時は落ちつかないと。うん、落ち着こう。っていうか早くおちつけ私。
こーいう時はあれですよ。あれ。………アレ?
何も考えが浮かばないよー。
あー、もうほんとどうしたらいいんだろう…。

とにかくどこかに行かないと…。安全そうな場所、あるのかなぁ。
確か地図があったはず。あった!これだ!

あれこれ考え五分経過。
この間誰にも見つからなかったのは運が良かったと言えよう。

うーん、決めた!ここにしよう!!
誰にも見つかりませんよーにお願いします、神様!
ホントたのむよ…

心の中で色々つぶやきながら、彼女は塔に向かって一目散に走り出した。

【ターシャ 所持武器:? 現在位置:E-15(西出発)
第一行動方針:とりあえず塔に向かう】
74小さな目撃者:03/06/24 00:26 ID:QYO3JdQ3
一人の少女が森の中を走っていた。少女の名前はリルム。
彼女の表情は恐怖に歪み、体のあちこちにはどこかに引っ掛けたのか細かな擦り傷が
無数についていた。それでも彼女は自分の傷には気付いていないようだった。

彼女がパニックを起こしたのも無理はない。
ビアンカがアニーを殺した現場をリルムは目撃してしまったのだ。
祠を出てとりあえず森に逃げ込んで、微かだが聞こえてくる優しい声の会話に
リルムは吸い寄せられるようにふらふらと近づいていった。
そして二人を見つけたリルムは木の陰に隠れて、
話し合っていた二人をどんな人か見定めていた。

少女はまだ小さく、自分にはかなわないがなかなかの美少女だと思った。
女性は優しく、そして暖かい感じがして信用に足る人物だと思った。

この人達なら大丈夫だろうと思ったのも束の間、出て行こうと動き出した足が
女性から噴き出した負の感情に動きを止めた。
それにまったく気付いていない少女。逃げて、と叫びたかったが、
口の中が乾いて声が出ない。
そして女性が誰かの名前を叫んで―――。
鈍い音を背後に聞きながら、女性の声に弾かれたようにリルムは駆け出した。

(もういや。悪い夢なら早く覚めてよ。おじいちゃん、おじいちゃん、
 どこにいるの? 助けて、助けて、タスケテ、タスケ―――)
突然リルムの足元から地面の感触が消えた。
束の間の浮遊感、そして落下。耳に風を切る音が響く。
絶叫が森中に響く。リルム自身には聞こえていなかったが。
不意に見えた星空がぐんぐん小さくなっていき、リルムは意識を失った。

【リルム(気絶) 所持品:?
 現在位置:P-4 ?洞窟内部
 行動方針:?        】
75小さな目撃者:03/06/24 00:27 ID:QYO3JdQ3
北出発です
「ねえ、あなた。こんなところでぼーっと立っていると危ないよ?」
南の祠を出た後、暫く東に歩みを進めていたアリーナは、
放心したかのように佇むリディアに、声をかけた。
「いや!」
リディアは反射的に否定の言葉を返し、大きく身を震わせると
アリーナに背を向け、猛烈な勢いで走り始めた。

「ちょっと待ちなさいよ。私はあなたを攻撃するつもりなんてないわ。」
しかし、リディアは聞く耳をまったく持たず、一心不乱に逃走する。
恐怖と緊張の余り恐慌状態に陥っているのだ。
「そっちは毒沼、危ないわ、行っちゃダメ!!
 ねえっ、お話、ちゃんと聞いて…… 
 ……はぁ、つかまえなくちゃ止められそうにないわね」
アリーナは苦笑し、ため息をつき、一つ深呼吸をしてから覚悟を決め、
毒の沼地へと飛び込む。

アリーナは、リディアの細い体躯と、現実感の無いぼうとした存在感から
すぐに追いつけるだろうと踏んでいた。
だからこそ体力を削る毒沼へと足を踏み入れたのだ。
しかしリディアはアリーナの予想を裏切り、思わぬ健脚振りを発揮していた。
決して足が速いわけではない。
毒沼を平地と同じペースで疾走するのだ。
「死に物狂いって、すごい力を出せるものね」
沼の深さはくるぶしにも届かない程度のものだが、ガムのように糸を引く
ゲル状の毒泥が、アリーナの走行を非常に困難なものにしていた。
「これは、健康に自信がある女の子としては、負けられないわね」
ふつふつと湧き上がる闘志。アリーナは本気になった。
当初の目的を忘れて。
それで結局。
「よかった…… 諦めてくれたみたい」
リディアは広大な沼の中央付近にぽつんとある2坪程度の平地に腰を下ろていた。

彼女は安堵の溜息をつきながら、自らの靴を緑の双眸で見つめた。
泥の一切付着していない、羽根飾りのついた靴を。
それは彼女に配布されたアイテム、フェザーブーツだった。
デフォルトでレビテトがかかっている、魔法の逸品。
彼女が毒沼でアリーナの追跡を振り切れたのは、この靴のおかげだったのだ。

そしてこの経験によって、「戦いたくない、死にたくない、信じられない」で
胸が一杯だったリディアは、フェザーブーツの有効な使用法を見出したのだった。
この毒沼に潜み、人が着たら沼の中をぐるぐると逃げ回る。
そうすればきっと、殺されないで済む。
リディアは自分のそのアイデアに幾分心癒される。

「でも……」
最後の一人しか助からない、24時間誰も死ななければ全員首輪が爆発する。
あの気持ちの悪いピエロはそう言って笑ったのだ。
逃げ回っているだけでは、いずれ死ぬ。
それを思い出してしまい、また深く恐怖する。

「こわいよ……」
「いやだよ……」
「幻獣界に帰りたいよ……」

体育座りの膝の間に顔を埋め、リディアは静かに泣いた。
一方、追跡者アリーナは、沼に座り込んで荒い息を整えていた。
「はぁ、はぁ、はぁ…… くやしいなぁ……」
10分ほどそうして体を休めているうちに、幾分呼吸が整ってきたらしい。
彼女はゆっくりと立ち上がり、来た道を戻ろうと振り返る。
視界一杯に、毒の沼地。

アリーナの顔から血の気が引いてゆく。
「こ、こんなに来てたんだ」
彼女は恐る恐る首をひねり、あたりを見渡す。
見渡す限り、緑と黒と紫。

アリーナは気が遠くなり、脱力。ばしゃりと沼に膝をつく。
瀕死とまでは行かないが、かなり厳しい消耗具合。
通常ならば戦闘は徹底的に避け、宿屋に直行しなければならない状態だ。

毒の沼地の性質上、移動さえしなければ体力は消耗しない。
しかし彼女は速く走るために、追跡途上でデイバッグを放り投げてしまっていたのだ。
食料も、水も、暖を取るための火種も、配布武器も、そこに入れたままで。
だから体力の回復は、全く望めない。
アリーナは熱くなったら一直線という、自分の粗忽さを心底恨んだ。

呪文は使えない、薬草はない、クリフトもいない。
「毒の沼地って、HPは1を切らないんだったかな?
 それともゼロまで行っちゃうんだったかな?」
もちろん、答える者もない。
成す術が、ない。
待ち受けるのは緩やかな、不可避の死。

【リディア 所持武器:ウイングシューズ 現在位置:N-18 毒沼
 第一行動方針:毒沼に待機潜伏し他者との接触を絶つ 】
【アリーナ 所持武器:無し 現在位置:M-19 毒沼
 第一行動方針:成す術無し 】  ※両者共に出発地点は南
79獣王の叫び:03/06/24 09:24 ID:/yNw84D+
俺の名前はプックル、泣く魔物も黙る獣王、キラーパンサーだ。
そんな俺でも大切な友がいる。

昔、まだ俺がベビーパンサーと呼ばれる幼年期の頃だ。
その日俺は群れと離れ、ある町へと迷い込んだ。
情けない話だが、その頃の俺といっちゃなっていなかった。
他のベビーパンサーに比べ、一回り小さく力も弱い。
歯も生えそろっていなく、まぁ、とにかく他の魔物に比べるととことん弱かったんだ。
スライムにさえ馬鹿にされていたと思うと今でも腹が立つ。

話がそれたな、本題だ。
町に入ると俺はすぐさまその町のガキに捕まった。
ガキは賢く、罠を張っていた、そのガキは俺を連れ、家へと帰った。
俺もあの時は流石に生きた心地はしなかった。

次の日、ガキは俺を連れて町の中央にある広場に行った、酷くいじめられた。
その日、俺は会ったんだ、運命の友と。
運命の友はまだ青臭いガキ二人だった。
一人は紫のターバンをした男。
もう一人は金色の髪を兎の様に二つに分けた女だった。
その二人はあろう事か俺を放してやれと俺を捕まえたガキに言った。
ガキはそれならば……よく覚えていないが確か子供にとっては難しい条件を出したんだ。
俺は正直駄目かと思った、そんな事ができるはずがない、と。
そして二人の友はそのまま宿へと帰っていった。

明くる日、俺は解放された、なんと二人が俺を助けたというのだ。
俺は喜んだ、無邪気に走り回った。
女の方が俺に名前をつけてくれた、それが俺の名前。
――プックル。
その後、俺は男の方に引き渡された、どうやら一緒にいられぬ事情があったらしい。
80獣王の叫び:03/06/24 09:24 ID:/yNw84D+
そして、俺たち一人と一匹は旅をした。
妖精の国に行き、悪い女王を倒し、生意気な王子の救出も試みた。
しかし、旅はすぐに終わった。
何故終わったのかは、俺もいまだによく覚えていない。
気がつけば俺は野原に横たわっていた。
俺は孤独だった、一匹で獲物を狩り、一匹でなわばりを張り、一匹で塒を探した。

そして俺は獣の頂点へと立った。
――もっとも、その頃の俺は肉に飽きて野菜ばかりを近くの村でとっていてあまり貫禄は無かったが。
しかし、ともかく俺は頂点に立った。
数多くの魔物が生息する寂れた洞窟の長となった。

ある日、部下のミステリドールが緊張した面持ちでやってきた。
どうやら若い魔物使いが俺が治めていた洞窟を荒らしに来たらしい。
俺は長として立ち向かった、俺は強いという自信もあった。
そして、俺はその魔物使い、紫ターバンの男と闘う事にした。

今でも思い出すと、何故闘ったのかわからない。
そう、その魔物使いこそ、俺の運命の友その人だったのだ。
友は俺を優しく包み込んでくれた。
もっとも、体は俺の方が大きいので、形としては俺があいつを包み込んだ感じだったが。
そして、俺は友と再度旅をした、俺は友と一生一緒にいる事を誓った。
だから……

――だから待っていてくれ!リュカ!

【プックル 支給武器:? 位置:F-16 行動方針:リュカを探す】
81JOKER:03/06/24 09:38 ID:C1v+pPQA
研究室の中、一人の女性が何やら実験用のカプセルの中に入っていく。
(やめろ…君は利用されているんだ)
それを見守っているいるのはだらしない笑みを浮かべた科学者の男性だ。
(お前はただ研究材料が欲しいだけなんだろ)
女性は男性に向かって”心配しないで”といわんばかりに笑顔を浮かべる、その笑顔は
恋人に向けるそれだ。
(何故だ…なぜ君は私ではなく彼を…)

と、そこで不意に研究室は消滅し、そこは何も無いただの大部屋に変わる。

その部屋の真ん中でイスに座り、はぁはぁと息を荒くしている男がいた、
ヴィンセント=ヴァレンタイン、そう、先ほどの映像は彼の拭い切れぬ苦い過去そのものだった。

「何故、いまさらこんなものを私に見せる、所詮は過ぎた過去だ」
ヴィンセントは振える声で何も無い空間に向かって叫ぶ。
しかし、部屋の隅で控えていたケフカは、ヴィンセントの目の前に立つと、自身満々に言い放つ。
「ところが、できるんだよね、やりなおしが」
「何だと」
「ここだけの話だけど、今ぼくちんが仕えているお方は、全ての時間と次元を支配していらっしゃるのさ」
「だから、君の望む時間に時計の針を戻すことももちろん出来るって寸法だよ」
ケフカの言葉に揺れるヴィンセント、さらにケフカは続ける。
「さっきのは幻でもなんでもないよ、君も気がついていただろ、あれは幻なんかじゃない」
「文字通り、君をあの日の研究室に送ったんだ、特別にあのお方の力をお借りしてね」

「やり直せるのか……本当に」
「本当さ、ただし代償は支払ってもらうよ…それが何かは君にもわかるだろ」
ヴィンセントは薄い唇を歪めて、1度だけ頷いた。
82JOKER:03/06/24 09:46 ID:eWCIe/D8
そうだ、過去にさえ戻ることができれば、あの狂った計画を阻止することも出来る、
そうなればこんな薄汚い哀れな肉体になることもないだろう、そして失った愛を、
あの笑顔を今度こそ自分のものにすることも…。

ヴィンセントはケフカから手渡された武器を手に取る。もはや彼に迷いはなかった。
「ルクレツィア…君は今度こそ私のものになるんだ…それが叶うというのならば…
 私は悪魔とでも手を結ぶ」

【ヴィンセント 支給品:ハイブロウST 神羅甲式防具改 現在位置:主催者本拠(任意の場所に移動可))
 行動方針:勝利し、過去を改変する】

83JOKER:03/06/24 09:47 ID:eWCIe/D8
(任意の場所に移動可)ではなく(島の任意の場所に登場可)
としておきます、もちろん最初の登場時だけね
84勇士の再会:03/06/24 17:26 ID:cDn7mhs3
再会は突然だった。
海岸へ着き、しばらく海を眺めていたバッツだったが、
自分がまだなんのジョブについていないことを思い出す。
「やっぱり、なんかのジョブに就いといたほうがいいよな…」
そこで誰もいないことを確認して、シーフにジョブチェンジした。
これが一番サバイバルに向いていると判断しての事だった。

「よし、これで随分探索もラクになるだろう」
と、独り言を漏らした時、さっそくシーフの特殊技能
――より警戒を強める事が出来るのだ、シーフは――が働いた。
思わず岩肌に張り付いた。

「へ〜、やっぱキレイだぜ、海は」
ノコノコと観光でもするかのように歩いてきたのは――
(ギルガメッシュ!?)
「しっかし、これだけ拾い島だとバッツ達に逢うのも一苦労だよな〜」
ギルガメッシュはそう言って海に向かって小石を投げた。
その時、バッツが顔を出した。
「ギルガメッシュ!お前も参加していたんだな…!」
ギルガメッシュが顔を引きつらせる。
「誰だっ…」
そう言いかけて、引きつった顔がすぐにほころぶ。
「バッツ!バッツか!逢いたかったぜ〜!」
85勇士の再会:03/06/24 17:28 ID:cDn7mhs3
「これは…惚れ薬だな…」
「はぁ…武器にもならないな…。これじゃあ他のヤツに出遭った時苦労しそうだ」
再会の挨拶もほどほどに、2人はこれからのことについて話し合っている。
幸いギルガメッシュはすぐにファリス達を探すのに同意してくれた。
「オレが確認できたのはファリス、レナ、クルル…あと、死んだはずのあのじーさんぐらいか
 他にオレ達の知ってるヤツはいたか?」
バッツは最初はそんなに全員を観察する余裕は無かった。
ただ少し前にいたレナとファリスだけは確認できたのだが。
「ガラフもいたのか?それにクルルも」
ガラフは確かに死んだはずだ――。
何故、この殺し合いに参加させられたのか。

「なんでぇ、お前さんはレナとファリスしか気付かなかったのか」
まぁ無理も無いけどな、とギルガメッシュは続けた。
「悪かったな。それよりこれからどこへ向かおうか…?」
バッツは地図を広げてギルガメッシュに見せる。
「塔と街、沼地を避けて行くなら距離は大体同じだな…」
「やる気のヤツがいるかもしれないってことも考えなきゃいけねぇぜ」
2人の議論はしばらく続くことになった…。

やがて、目的地が決まったのか2人は立ち上がって移動を始めた。

【バッツ/ギルガメッシュ:所持武器 鋼鉄の剣/惚れ薬:現在位置 L−22の海岸】
 第一行動方針:ファリス、レナ、クルル、ガラフとの合流。
 ※2人が塔か街、どちらに向かったかは不明です。
86ギャンブラーの絶望と愉悦:03/06/24 18:45 ID:PWCrMk60
「賭け事が好きなタイプだろ、お嬢さん?」

 その呼びかけは、唐突に、背後から。
 俺は正直、とても驚いた。
 気配の無いところから、突然声をかけられたからだけじゃない。
 初見で性別を見破られたことがいままで無かったからさ。

「まあ、賭け事は人を見る目を養うからな」

 こいつ…… 俺の心を読んだのか?
 なんて目で俺を見やがるんだ。
 光が無い。
 感情が見えない。
 まるで底なし井戸を覗き込んだみたいな怖さが……

 ―――怖い?
 額に滲んだ脂汗をふき取り、俺は自分に言い聞かせる。
 ダメだダメだ。ダメだぜファリス、弱気はよ。
 飲まれるな、舐められたら負けだ。
 このおっさんは、勘が鋭くてポーカーフェイス。ただそれだけじゃねえか。
 俺はありったけの不快感と怒りを込めてヤツを睨みつける。

「ほぅ……強いな。これは楽しみだ」
「何が楽しみだっていうんだ、アンタ。俺と闘る気なのか?」

 俺は配布武器の盲目の弓を構え、牽制。距離を詰めさせない。
 ヤツは肩をすくめ、両脇を左右に広げる。やれやれ、とでも言いたげに。

「おっと、そんなに警戒しないでくれないか?
 俺は、お嬢さんと大博打を張りたくて、声をかけただけだ。
 襲うつもりだったら声をかけるまでも無く撃ち殺しているさ。懐の銃で、な」
87ギャンブラーの絶望と愉悦:03/06/24 18:45 ID:PWCrMk60
 ヤツはコートの胸を前を広げ、その銃を見せた。
 俺を顎で促し、その銃を取ってもいいのだぞとアピールする。
 いやな余裕を見せてくれるぜ。
 この態度、俺を信じてるってんじゃねえ。俺の思考と行動などお見通しって肝だ。
 
「……何を賭けるってんだ。武器か?食料か? それとも勝ったほうに従えって話か?」
「そんな詰まらないものを張ってどうする? 張るのは命さ」

 ヤツの手がゆっくりと銃に伸びて、銃口を自分に向けたまま持ち上げる。
 そして、自分の側頭部に当てる向け、「ぱん」と呟いた。
 なるほど。ロシアンルーレットをやらないか、ってわけか。

「俺は根っからのギャンブラーでね。
 緊張感の中に身を置かないと生を実感出来ない、難儀な人種さ。
 なのに―――最近は食傷気味だ。倦んでいる。
 どんなギャンブルにも心ときめかず、満たされない。
 いっそ死んでしまおうか。そう思っていた―――だがな」
 
 ヤツは続ける。
 深く、低く、甘く―――ひどく蟲惑的な声で。
 ダークグレーの瞳に何の感情も乗せないまま、俺の瞳を見つめたまま。
 心が裸にされた気分だ。気色悪ィ。
 俺は睨み返す。
 ……本当にそうか? 目が反らせないだけなんじゃないか?

「この島に連行されてわかったんだ。死への恐怖こそが最大の刺激だと。
 生きたい。死にたくない。この欲求に勝る衝動があるか?
 それを、もて遊ぶんだ。
 生き物としての根源的な欲求を軽視し、冒涜し、貶める。
 どうだ、ギャンブラー冥利に尽きる賭けだろう?」
88ギャンブラーの絶望と愉悦:03/06/24 18:48 ID:PWCrMk60
「そういえばお互い、名乗りがまだだったな。俺はセッツァー。おまえは?」
「ファリス」
「違う。偽名じゃない。男の名前じゃない。
 お前の本当の名前を聞いているんだ、お嬢さん」
「……ファリス、だ」
「なるほど。おまえの大事な仲間は、そちらの名前で呼ぶわけか」

 男―――セッツァーは肩をすくめると拳銃を手に取り、ホルスターを開ける。
 弾丸は既に一発だけしか入れていなかった。準備周到なことだ。
 指の腹でホルスターを回し……かちゃり。回転が止まる前にそれを閉じた。

「さあファリス、賭けに乗るなら銃を手に取れ。乗らないならこのまま立ち去れ」
「いちおう選択権はあったわけだ」
「当たり前だ。同意無き賭けなど美学にもとる。
 が、まあ―――俺は既に『おまえが賭けに乗る』方にBETしているがな」

 ―――認めよう。俺はこいつに飲まれている。俺はこいつに読み切られている。
 既に九分九厘、賭けに負けている。
 だが、このままコイツの思うツボってのは気にいらねぇ。
 俺にだって海賊頭の意地がある。舐められっぱなしじゃ商売上がったりだ。

 知恵を絞れ、ファリス。
 俺はこの銃をどうするべきだ?


【セッツァー 所持武器:S&W M29(残弾6発) 現在位置:U-11 平地
 行動方針:命を張ったギャンブルを愉しむ 出発地点:東 】
【ファリス(狩人・非マスター) 所持武器:盲目の弓 現在位置:U-11 平地
 行動方針:? 出発地点:東 】
89ギャンブラーと魔法使い:03/06/24 19:02 ID:vWaDsP5C
(命を賭けたこのギャンブル、面白いじゃないか……)
セッツァーはそう思い、微笑を浮かべる、手には二つのダイス。
両方の目は一、ピンゾロである。
セッツァーは祠から出た後、東へ向かった、西の砂漠は誰も通らないと思ったからだ。

M-06地点でまずは支給武器を確認する。
やたらと長い刀に不可思議な玉が出てきた。
説明書によるとこれは正宗という名刀と、魔法の力等を封じ込めたマテリアという玉らしい。
セッツァーは正宗を持ってみる、重く長いが使えない事はない。
マテリアには「雷」「氷」「火」と書いてある、説明書にあったマテリアの種類だろう。

その時向こう側――セッツァーから見て真正面、地図で見て西側――から人影らしきものが動いてきた。
セッツァーは正宗を持ち、マテリアをはめ込んだ。
説明書通りならばこれで念じれば魔法が使えるはずだ。
セッツァーは森の中を移動し、なんとか相手に有利な態勢で仕掛けたいと願った。
90DOUBT!:03/06/24 21:10 ID:G1R34oPv
木陰にもたれかかり、リンダは眠っている、そしてそこから離れた木の上には、その寝顔を見つめるレノの姿がある。
リンダの寝顔はまったくもって無防備だ、呪文でカモフラージュしているので安心しきっているのだろう。
今なら余裕で殺せる、が、レノは動かない。
「それは最後の手段だぜ、っと」
レノはゴーグルの倍率を上げて、周囲をうかがう、すると自分の後方でなかなか面白い見世物が、
繰り広げられている。

先ほどの猟犬とターバンを巻いた男が戦って、いや戯れている。
男は盛大にマシンガンを撃ちまくっているのだが、悲しい事に犬にはかすりもしていない。
それでさらにムキになって撃ちまくるのが、また哀れで笑いを誘う。
だが、笑ってばかりもいられない、レノは考える。
トリガーハッピーなのか、単なるチキンなのかは分からないが、こういう計算できない輩は放っておくと、
後で思わぬ障害にもなりかねない、それに自分の背後に強力な武器を持った人間を背負って尾行はしたくない。
何より折角の当たり武器なのに、これでは宝の持ち腐れだ。

「やれやれ、一仕事しますか、っと」
レノはだるそうに背伸びをすると素早く木々を飛び移り、件の男の元へと向かった。

一方、
「犬まで…犬まで私をバカにするんですか!!」
サバロは盛大にMP5を撃ちまくるが、それでも目の前の黒犬にはカスリもしない。
やがてトリガーがかちかちと虚しく空回りを始める、弾切れだ。
そしてそれを知ってか知らずか、黒犬はまるでそれを見計らったように悠々とその場を立ち去って行った。
「ちくしょう…私だって私だって、剣や魔法が使えたら……」
サバロの目から涙が零れ落ちる、自分が情けなくってたまらない、思えばあの勇者と出会ったのが
自分の年貢の納め時だったのかもしれない、あいつに…あいつにさえ出会わなければ…。
91DOUBT!:03/06/24 21:10 ID:G1R34oPv
その時、またがさがさと自分の右手で音がする。
「出たああああっ!!」
やっぱりというか何というかサバロはまたしても撃ちまくる、しかし1通り射撃が終わると。
また少し離れた場所から音が聞こえる。
「お前もか、お前も私をからかうんですか!待ってろよ」
サバロはMP5からM79に武器を持ち変えると、音に誘われるままの方向へ誘われていく、
その時背後に気配!

慌てて振り向くサバロ…いやそうしたかったが出来なかった。
そうM79の長い銃身は狭い木々の中では却って邪魔になる。扱いなれぬ哀しさか、
そのため銃身が木の幹に引っ掛かり、それが致命的な動作の遅れに繋がってしまったのだ。

レノはそのまま後からズボンのベルトでサバロの首を締め上げる、サバロも必死で抵抗するが、もはや勝負有りだ。
やがてレノの手元にずんっという独特の手応えが伝わる、首の骨が砕けたのだ。

無念の表情で息絶えたサバロの遺体を、藪の中に隠し、所持品をルートしながらレノは呟く。
「悪く思うなよ…と」
ちなみに一仕事終えたレノがまた待機地点に戻ったとき、あいかわずリンダは眠り込んだままだった。


【リンダ(睡眠中):所持アイテム:火炎放射器 現在位置:D-11】
第一行動方針:生き残る

【レノ:所持アイテム:多目的ゴーグル MP5サブマシンガン 消え去り草 M79グレネードランチャー
 バックラー 現在位置:D-11】
第一行動方針:リンダを追尾する

【サバロ:死亡】残り70人
>>89は無効です
93青年と竜騎士と絵師:03/06/24 22:17 ID:RuANHsmw
ある青年が祠を出ていた。
青年の名はリュカ、魔物使いである。
少年は多くの参加者がいる場で目を見張った。
自分の父親、己が幼い頃に無残にも殺された誇り高き父親がいた。
その他にも幼馴染であるビアンカや自分の子供、仲間も数多く参加していた。

リュカは一先ず歩いた、考える事は後回しにしたかった。
自分の父親や子供を早く捜したかった、それだけがリュカを急かさせた。

リュカは森へ入った、支給された剣(皮肉にもそれは自分の父親、パパスの剣だった)を使いながら。
前へと進んでいく、とにかく今は進みたかった。
進んでいくとリュカは祠を見つけた、地図にもあった祠である。

中に入ると少し湿った空気が喉に入り、咳き込む。
その刹那、リュカの首に剣が押し当てられた、後ろに回りこまれてしまったのか。
舌を鳴らし、目だけを後ろに向けると青年が睨みをきかせている。
「何者だ。」
短い、しかし低く感情を押し殺した声。
リュカはパパスの剣にはあえて手をかけず、名乗った。
「僕の名前はリュカ、ある人を探している。」
「人だと?」
「そうだ、それに僕にはやる気はない、離してくれないか?」
「まだ信用は出来ん、それに自分からやる気だと言う奴はおらん。」
しばしの沈黙、リュカの額を冷たい汗が流れた。
男は無言で剣を押し当てる、まだ許していないらしい。
94青年と竜騎士と絵師:03/06/24 22:17 ID:RuANHsmw
「う……うぅ」
その時呻き声に似た声が祠の中から聞こえた。
リュカは動こうとするが、男に止められ、踏みとどまる。
「待て、何処に行く。」
「声がする、誰かがいるんだ。」
「罠かもしれんのだぞ。」
「だけど、重傷で倒れているのかもしれない。」
またも沈黙、しかし男は黙って剣をどけた。
それと同時にリュカは声の方向へと駆け寄る。

暗くてよく見えなかったが、近くに行くとはっきりと見えた。
少女が寝ている、いや気を失っているのか?
ともかくリュカは少女を抱きかかえ、二、三度揺さぶった。
「もしもし、大丈夫かい?」
「う〜ん」
少女が目を開ける、リュカは微笑む、男は入り口で警戒をしている。
少女は目があけてしばらく呆然としていたが、ハッキリと意識が蘇ると途端に震えだした。
「どうしたんだい?」
リュカは優しく声をかけた、少女は首を左右に振る。
「お、女の子が……青髪の女の子が、こ、殺されちゃった……
 あ、あたし仲間に入れてもらおうと思って、ち、近づこうと思ったら。
 女の子が、女の人に……」
涙ながらに訴えてくる、よほど怖い思いをしたのだろう。
しかし、リュカはその時悪い予感を感じていた。
――青髪の女の子
「君!その女の子、リボンを二つしていなかったかい!?」
「う、うん、リボンを二つ頭に。」
なんという事だろうか、リュカは呆然とした。
(自分の子供が殺されてしまうだなんて!?)
「その、殺した人っていうのは!?」
「き、金色の長い髪の毛をしてた……」
95青年と竜騎士と絵師:03/06/24 22:18 ID:RuANHsmw
その言葉を聞いてリュカは駆け出した、入り口の前の男に止められたが、それも振り切り。
駆けた、森の中をくまなく。
そして、見つけた、自分の子供の変わり果てた姿。
しかし、そのそばには誰も居ない。
リュカは泣いた、とめどなく、喚きながら、叫びながら、泣いた。

「……やれやれ、どうしたというんだ。」
祠の入り口、先ほどの男が立っていた。
傍らにはちゃっかり少女もいる、少しは気分も収まったみたいだ。
「おい、金髪カッコマン!」
「……なんだそれは?」
「金髪で格好つけてるから金髪カッコマン!
 で、これからどうするんだ?」
いつの間にか主導権を握られている、男は頬をかきながら、少女を見る。
「さぁな、とにかくこうして拠点が出来たんだ、ここでしばらく活動したい。」
「ふーん。」
少女は気のなさげにゆっくりと座り、男を見上げる。
「それじゃああたしもそうする!あたし、リルム!」
「俺は、カインだ。」

【リュカ 支給武器:パパスの剣 位置:O-05(王女の死体前) 行動方針:生き残っている仲間を探す】
【カイン 支給武器:ディフェンダー 位置:P-04(祠の内部入り口) 行動方針:しばらく祠で様子見】
【リルム 支給武器:? 位置:P-04(祠の内部入り口) 行動方針:カインと一緒に行動する】
96盗賊のプライド:03/06/24 22:26 ID:0bJXpBPv
その男はいつのまにか、僕の隣を歩いていた。
「全く、何であんなイカレた男なんかに命令されなくちゃいけないんでしょうね。
 こんな首輪までつけられて……私達は犬じゃないんですよ、ねぇ?」
詩人風の身なりをした男は、べらべらとまくしたてる。
敵意はないらしい。それ以前に、腰に吊るした剣を抜こうとすらしていない。
緊張感というものがないのだろうか? それでなくても、二人の人間が目の前で殺されているのに。

「私、ああいうタイプが一番嫌いなんですよ。
 武力や権力を傘に来て威張るような、低俗な輩が」
そりゃあ、僕だって好きじゃない。だが、それがどうしたというのだ。
「あれだったらまだ、ガーデンブルクの女性陣の方が可愛げがありますよ。
 気位の高さには辟易しますが……まぁ、見た目も美しい方々が多いだけマシです」
それはよかったですね。けど、僕には関係の無い話でしょう。残念ですけど。
愚痴を言いたいだけなら、僕ではなく他の方を見つけてください。
僕がそう言おうとした時だ。
「……ああ、すみません。前置きが長過ぎたようですね。
ともかく、私は決心したのですよ」
……僕の表情を読み取ったのか、男は咳払いをしながらこう言った。
そして一旦言葉を切り、芝居っ気たっぷりな身振りと共に微笑を浮かべた。
「私はね。あのいけ好かない連中から、このゲームを『盗んでやる』ことにしたんです」
97盗賊のプライド:03/06/24 22:28 ID:0bJXpBPv
「は?」
その言葉の意味が理解できなかった僕は、ポカンと口をあけた。
しかし彼は、僕に構わず言葉を続ける。
「私にも私なりの――盗賊としてのプライドがあるんですよ。
 あんな連中の言いなりになるなど、盗賊バコタの名折れです。
 私たちの首輪を盗り、ゲームそのものを破壊する――
 無論、私一人では無理でしょうね。けれど有能な協力者がいれば話は別です。
 ……実を言いますとね、貴方には出発前から目をつけていたんですよ」
バコタと名乗った男は、ニヤリと笑った。
「これでも私は、人を見抜く目はあるつもりですよ。
 その落ちつき様、頭の回転、身のこなし……全ての要素において、貴方は合格ですよ。 
 貴方ほどの人物に協力していただければ、私の目的も実現に近づきます」
そして彼は、僕に右手を差し出した。
「――セシルさん。私と手を組みませんか? このゲームを壊し、脱出するために」

【セシル:所持アイテム:? 現在位置:S−7】
 第一行動方針:?
【バコタ:所持アイテム:アイスブランド 現在位置:S−7】
 第一行動方針:協力者を集める
 最終行動方針:首輪を外し、ゲームを破壊する
98勇者で正義で伝説なので。(アルス):03/06/25 02:43 ID:jgsA4BDA
ぼくは勇者だよ。勇者アルス。ほら、伝説まで上り詰めた真の勇者。別名ロト。
そのぼくが、君の剣をくれっていってるんだよ。
それを拒否するって、どういうこと?
普通、感激してひれ伏して、この剣をお使いくださいって、
君のほうからお願いするくらいだろう?
その剣は『邪悪』の殲滅に役立つんだ。
ぼくは君なんかより千倍も万倍も億倍も有効にその剣を使いこなして
『邪悪』の親玉を滅ぼすんだから。それが『正義』の勤めだし。

首輪はどうするのかって?
あはははは、君は心配性だね。
そういう試練は、目的に向かって突き進んでくうちに、どうにかなるもんだよ。
いや、どうにかならなくちゃいけない。というか、どうにかならないわけが無いんだ。
だって、ぼくは『正義』の勇者だから、『邪悪』に負けるわけがないだろ。
そういうことだからさ、安心してぼくにその剣を託して。

だ〜か〜ら〜。なんでそんな頑なに拒むのさ。
ぼくの役に立てる絶好のチャンスなのに。家に帰ったら自慢でき……

痛っっ!!!

な、なんで君はこんなことするんだ!!
勇者アルスの足を踏みにじるなんて、例え王様でもやらないぞ!!
それにその汚い言葉も、ぼくにかけていい言葉じゃないっ!!
……そうか。やっとわかったぞ。お前は『邪悪』だな?
このゲームの参加者はみんな『正義』だと思ってたけど、そうじゃないってことか。
だったら話は簡単だね。やっつけて、奪う。
いくぞ〜〜……

ラ イ デ イ ン ! ! !
99勇者で正義で伝説なので。(リノア):03/06/25 02:46 ID:jgsA4BDA
いきなり何? この剣が欲しいって?
ゴメン、それはちょっと出来ない相談だよ。
これ、スコールに渡そうって決めてるから。、
あ、スコールっていうのはわたしのステキなハンサムさんなんだけど。

―――勇者?
ああ、そうなんだ。良くわかんないけど、ロトなんだ。ふーん。
でもゴメン。これはあげらんない。
ひれ伏す? 
あーそー。偉い人なんだね、君の地域では。
いや、そんな『正義』『邪悪』て連呼されても。そりゃ大事かもだけど。
事態はそんなに単純じゃないわけで。
そう、たとえば―――首輪をどうするの? とか。

おいおい、ここ笑うトコじゃないよ。
……意気込みは買うけど。ちょっと夢、見すぎかなーって。
ダメ。 話聞いて益々渡す気無くなった。

いいかげんしつこいぞ、アルスくん!!
わたしはね、君の役に立ちたいなんて、これっぽっちも思ってないの!!
こら、勝手に剣に手を伸ばすな!! 近寄るなっ!!
はい、剣はバッグの中にしまって…… これで鑑賞タイムお仕舞っ!!

「何で」って…… 君、そんなこともわかんないの?
じゃあ物分りの悪いアルス君に、わたしが懇切丁寧に解説してあげる。
それはね、きみが無神経で傲慢で傲慢で自分勝手で勘違いしてて人の話を聞かないからっ!!

邪悪……? それ、そっくりそのままきみに返す。
じゃあね、さよならっ。 
わたしの目の届かないところで、好きに正義やってなさ……

って、ウソっ!?
100勇者で正義で伝説なので。:03/06/25 02:49 ID:jgsA4BDA
「ラ イ デ イ ン ! ! !」
「って、ウソっ!?」

アルスの叫びと共に微妙な空気の振動を感じたリノアはすぐさま側転。
直後、雷撃が炸裂した。衝撃。
「―――つ」
サンダーとは似て非なる、不自然な神聖さの感じられる閃光。
リノアは直撃こそ逃れたものの、閃光に目を焼かれ、盲目状態となる。

「マホトーン」
間髪いれず呪文を畳み掛けるながら、リノアに詰め寄るアルス。
武器を持たない彼は体術による打撃をかける。
体勢定かならないリノアは懸命に回避を試みるが、盲目が祟り連打を浴びてしまう。

完全に不意を恰好となったリノアは、盲目状態の回復を急務と判断。
白魔法エスナを選択するが、彼女は既にマホトーン影響下にあった。回復不能。
動揺。
その間もアルスのラッシュは止まない。
武器を持たない彼の攻撃でも、防御力の薄いリノアの体力は徐々に削られてゆく。

殴打の雨を浴びながら、少しずつ回復してきた視力を感じつつ、リノアは思う。
―――逃げるしかない。

リノアはルーンブレイドの入ったバッグパックを放り投げる。
一瞬、アルスの気が逸れた。
その隙を突いて、彼女が立ち上がる。
バックステップ。バックステップ。そのまま背を向け、ダッシュ。
101勇者で正義で伝説なので:03/06/25 03:21 ID:BvtgPcSN
「イオラ」

リノアの背後からアルスの声が響く。
言葉の意味はわからないが、直感で攻撃魔法と判断した彼女は、
足の回転を止めぬまま体を緊張させ、衝撃に備えた。
しかし―――その爆裂の呪文はリノア本人を狙ったものではなかった。

ぼん。ぼん。ぼん。ぼん。ぼん。
リノアの前方に生えていた木々それぞれの根元近くに連続して小爆発。
木は重い音を立て重なり倒れ落ち、リノアに襲い掛かる。
彼女は未だよく見えない目で回避を試みる。

一本目、上手く身を躱す。
二本目、見当違いの方向へ倒れる。
三本目、四本目に重なるようにして傾き、
四本目、枝に肩が接触、バランスを崩し、
五本目、ついにその凶悪な幹がリノアの足を押し潰した。

「ぐぎ……」
あまりの衝撃に獣じみた唸りを上げるリノア。
筆舌に尽くしがたい凄惨な顔で悶絶する。

そこに、アルスが来た。
リノアの放り投げたバッグから回収した、ルーンブレイドを提げて。

「滅びろ、邪悪」
「……よくいうよ」

ルーンブレイドが黄銅色の軌跡を描いて振り下ろされた。
102勇者で正義で伝説なので:03/06/25 03:22 ID:BvtgPcSN
【男勇者アルス 所持アイテム:炎のマント ルーンブレイド 現在位置:Q-11】
第一行動方針:邪悪の殲滅(主催者打倒) ※彼に同調しない者は全て『邪悪』とみなす。
ステータス:MP、少量減少

【リノア 死亡】残り69人
103らいおん:03/06/25 03:24 ID:BvtgPcSN
グリュッッ!身の毛のよだつ様な音が夜の静寂に響いて行く、キングレオがリンガーの内臓を食い散らしている。
ゆっくりと、見せ付ける様に内臓だけを丹念に喰い千切るその様子はさながら野獣そのものだ。
「来ないのか?」
大きなげっぷを一つするとそのまま近くの藪にキングレオは問い掛ける。
「余の肉体は動物のそれに近い、嗅覚には自信がある。」
途端に辺りに殺気が満ち始める、キングレオの圧倒的な殺気と藪の中の人物の殺気が激しくせめぎ合う。
一歩、また一歩とキングレオは藪に向って移動する、それに呼応する様に藪にに隠れていた少年が姿を表す。
「余の名はキングレオ!貴様に勝負を挑む!」
キングレオは大きく2本の手を上げる、残りの腕で足止めしている間に上からの必殺の斬撃を落とす構え。
「……俺は遠慮したいっス」
少年=ティーダはその腕から繰り出される攻撃を潜り抜けるべく、再び低く身を沈める。

数舜の睨み合いの後、最初に仕掛けたのはティーダだった、弾かれた様に真っ直ぐキングレオに向って突き進む、
左から来る一撃をあっさりと避け、更に右から来る一撃を手にしたナイフで受け止める。
更に背後から迫る連撃を完璧に予測して回避する。
途中からとはいえリンガーとの戦闘を見ていたからこそ可能な見切りであった、そのままティーダは魔獣の腹部にナイフごと突っ込む。
「取って置きを見せてや」
だが、キングレオの口が開くとティーダの意識は猛烈な熱さと共に薄れていった……

………
「人は勝利を確信した時にこそ負けるもの、とはいえ中々の腕よ。」
キングレオは満足そうに、眠ったティーダを見下ろしている、ティーダの怪我は既に力の盾の力で癒してある。
「気絶した相手を殺した所で自慢にもならん、こやつもさっさと気絶でもしてれば良いものを。」
キングレオが望むのはあくまで殺し合い、殺したいのでも無ければ乗ってもいない、
最も対戦者にしてみれば余程運が良くない限り変りはないが。
「ユ………ウ…ナ…」
「ククククク……次の戦いにはそやつも連れて来い、余が纏めて引き裂いてやる。」

【キングレオ:ステテコパンツ、力の盾 現在位置:K-5 山の中 目的:俺より強い香具師に(ry】
【ティーダ(気絶):サバイバルナイフ 現在位置:K-5 山の中 目的:ユウナと合流】
104汚れた英雄:03/06/25 09:04 ID:MHTh3/Uo
(あ…意識が遠くなってきた、もうだめかな?)
アリーナはずぶずぶと沼の中に身体を引きずりこまれながら、薄れ行く意識でばんやりと考えていた。
人影が見える…何だろう、お迎えかな?
「助けてあげてもいいですよ、ただし、私の言う事を聞いてくれれば、の話ですが」
助けてあげても、の言葉に反応したアリーナはわずかに顔を上げる、そこには魔法使いが立っていた。
「ナ…なーに」
震える声でアリーナは返す。
「1人、殺してもらいたい相手がいるのですよ…ふふふ」
魔法使いは自分の袖口をめくって二の腕をアリーナに見せる、その腕は醜い火傷の跡で覆われていた。

あの日…私たちはとある情報を元に魔物たちの本拠を叩くべく、山岳地帯を行軍していた。
が、その中腹で私たちの行く手は炎によって阻まれていた、そう罠だったのだ。
炎に追いたてられるるまま、逃げ惑う私たち、やがて谷間にかかるつり橋を見つけた。
あそこを渡れば逃れる事ができる。だが炎はすぐ後ろまで迫っている。
一行はつぎつぎとつり橋を渡る、あとは私だけ…しかしその時信じられない事態が起こった。
なんと自分のすぐ前にいた勇者が、密かに取り出したナイフでつり橋のロープを切ったのだ。

たしかに、私はあの時一行からは少し引き離されていた、私がつり橋を渡っている間に、
炎が飛び火しないとも限らない…だがそれだけではないだろう?
苦言を呈しまくる私を苦々しく思って、これをいい機会だと思ったのだろうか?
少なくともあの時の彼の目は、命が惜しいだけの目ではなかった。
105汚れた英雄:03/06/25 09:28 ID:Llynm03l
(レオナのように、さっさと見切りをつけて離脱してればよかった)
そして私はがけっぷちで、かつての仲間であり親友である女武闘家のことを考えていた。
(アルスってなんかやなやつだよねー私の直感がつげているんだ、別に勇者だからえらいわけじゃ
 ないのにね)

数日後、私は救助されたのだが、その身体には2度と消えぬ火傷の跡が残った、もちろん心にも……。
麓に帰った私は熱烈な歓迎を受けた、なんでも身を呈して勇者をピンチから救ったことになってるらしい。
「いや〜よかったよかった!、生きていて本当に…ありがとうサマンサ!」
涙ながらに自分にすがりつくアルス、傍から見れば感動的な光景だったが…しかし。
「君も分かるよね?もし本当のことをばらしたりしたら…君だって英雄になりたいだろう?
 君はレオナと違って物分りがいいだろうから、ね」

耳打ちされた言葉に、私はは愕然とし、そして目の前の少年の真実の姿を悟った。
これまでも何人かの仲間が「名誉の死」を遂げているのだが、それが全て今のような状況だとしたら?
そして何よりその中には自分の友人も含まれていたのだ。
(許さない…絶対に)

「以上です、お分かりいただきましたか?聞いてます?」
アリーナには途中から聞こえていなかったようだ、彼女はもうすでに首まで沼にひきずりこまれつつあった。
「仕方ないですね、とりあえず海辺ででも、もう1度話すことにしましょうか」
サマンサはアリーナを担いでそのまま沼地を脱出していった。
106汚れた英雄:03/06/25 09:29 ID:Llynm03l
【アリーナ(気絶)所持武器:無し 現在位置:M-19 毒沼 】
 第一行動方針:?   

【サマンサ 所持武器:リボン 現在位置:M-19 毒沼から海に移動 】
第一行動方針:アリーナの救助
第二行動方針:アルスを殺す

(レオナはこちらに登場している女武闘家の名前です)
(サマンサは南地区スタートです)

107悲しみのアンジェロ:03/06/25 19:10 ID:eiebWaFO
「ワンワン」
「はいはい分かったらもう少しゆっくりね」
ルールーは前方を走る犬にせかされながら先へと進む。
まさかカバンを開けた途端に、犬が飛び出してくるとは思わなかった。
首輪を見るとアンジェロと書いてある、これが支給品なのだろうか…だとすれば人を馬鹿にしている。

最初は無視して行こうと思ったのだが声と仕草が何と無く哀れを誘うような気がしたし、良心も痛んだので
結局、連れて行く事にしたのだ。

そして島の中心近くの森に入った途端、いきなりアンジェロが猛然と走り出したのだった。
そのスピードは森が深くなればなるほど増していく、ルールーはもはや見失わないように後を追うのが、
やっとだった。
と、そこで唐突にアンジェロが立ち止まる、そしてこれまで聞いたことも無いような哀切な声が、
その口から漏れる。

そこにいた、いやあったのは、若い娘の死体だった、その死体の傍らで鳴き続けるアンジェロ……
そう…この娘がお前の…、くぅ〜んと悲しげに鳴くアンジェロの背中を撫でてやりながら、
ルールーもまた娘の冥福を祈った。
が、いつまでも悲しんでいるわけにもいかない、ルールーは素早く状況を調べ始める。

死体はまだ温もりが残っている、まだそれほど時間が経過しているわけではなさそうだ。
「お前の御主人を殺した奴は、どっちに行ったかわかる?」
アンジェロはくんくんと鼻を鳴らしていたが、やがて北の方角に向かってわんと鳴く。
「そう…そっちね」
一方のルールーは少女の手に握られている布切れが気になった、表が赤と裏が青のマントか何かの切れ端のようだ。
殺した相手が身につけていたものか?
これも一応アンジェロに嗅がせてみる、アンジェロは一応北の方角を向いたものの、
くるくると周囲をうろつきながら、まるで答えが見つからないようなそぶりを見せている。
108悲しみのアンジェロ:03/06/25 19:11 ID:eiebWaFO
(なるほど…確かに身にはつけていたけど、本来の持ち主は別にいるということ?)
ありえない話ではない、むしろそう考えるのが妥当だろう、そういえば自分の愛用してる、
ぬいぐるみは今、誰が手にしているのだろうか?
とにかく何時までも寒空の下に置いておくのは可哀相だ、ルールーは早速弔いの準備を始めた。

それからしばらくして、なんとか墓を作り終えたルールーは、墓の前から動こうとしない
アンジェロの顔を両手で抱え、その瞳を見つめながら言い聞かせる。

「私は南に向かうわ…他にやらないといけないことがあるから、だから私はあなたの御主人の敵は討てない
 でも、あなたはあなたの道を行けばいい、北に向かって敵を討つのも、ここでお墓を守るのも」
それだけを言うと、ルールーは南に向かい進んでいく。
そして、名残惜しげに主人に最後の別れを済ませると、アンジェロもまたルールーの後に続いた。

【ルールー:所持品:アンジェロ 炎のマントの切れ端 現在位置:Q-11 目的:仲間との合流】
東スタートです。
109望まぬ契りを交わすのですか?:03/06/25 20:45 ID:Y+ZPk2Lb
――愛しのあなたは 遠いところへ  ――
――色あせぬ永久の愛 誓ったばかりに――
――悲しい時にも 辛い時にも    ――
――空に降るあの星を あなたと想い ――

南方に位置する海岸で星空を見上げ、セリスはいつかの劇場を思い浮かべていた。
思えば、ロックに想いを抱き始めたのはあの時だった。
セリスは目を閉じ、愛しい男の優しげな笑顔を思い浮かべる。

私はいままで十分幸せだったと、セリスは思い出を噛み締める。
ガストラの野心の道具でしかなかった自分が、恋という幸福を得ることができたのは、ロックのお陰だ。
だからこそ、彼に恩返しをしたい。
その思いから、セリスはゲームに乗った。
自分が生き残るためではなく、ロックを生き残らせるために。

セリスは近づいてくる男の声に気付き、防砂林の一本に身を隠す。
歩いてきたのは、2人だった。
「ライブラ、ライブラ」と、セリスは小声で2度魔法を唱える。

  ※名前:バッツ ジョブ:シーフ 体力:低め 魔法:無し 弱点:無し……
  ※名前:ギルガメッシュ 体力:多い 魔法:無し 弱点:無し……

セリスはしばし情報を咀嚼、思案したのち、静かに男たちの背後に回りこむ。
潮騒が彼女の足音を包み込み、労無く魔法射程距離まで近づくことに成功する。
そして、ギルガメッシュに向かい唱えた。

バニシュ、バーサク、コンフュ。
110望まぬ契りを交わすのですか?:03/06/25 20:46 ID:Y+ZPk2Lb
「……どうしたギルガメッシュ?」
「なんか、急に体がカッカしてきてよ……」

海岸を西へ、半島の先にある塔を目指して、バッツとギルガメッシュは歩みを進めていた。
先のエクスデス戦では敵味方にありながら、妙に気になる相手として意識しあってきた2人は
もともとウマが合う性格だったらしく、既に旧友のような気安さでお互いに接していた。

変化は突然だった。
ギルガメッシュが「う、」と短くうなり、くず折れ、膝を折った。
彼はこめかみを押さえて、はあはあと熱っぽい荒い息で震える。
「おい、顔が真っ赤だぞ、息も急に荒くなったし…… 病気でも拾ったか?」
バッツはその急な容態の変化を心配し、相棒の肩に右手を置いた。
ザシュ!!
その手が、バッツの肘から先が、次の瞬間空中に舞った。

ギルガメッシュが振り上げた鋼鉄の剣に、鮮血がからんでいた。
バッツは肘を押さえ、よろめく。
「ギギギギ」
口から泡を吹き、目を血走らせ、ギルガメッシュはバッツに踊りかかる。
もんどりうって転がるバッツ、ジョブがシーフであったことが幸いし、
すんでのところでギルガメッシュの飛び込み袈裟斬りを回避できた。
バッツは砂まみれになりながらシーフの妙技、「とんずら」を発動。
北に向かって駆けた。

攻撃対象をロストした狂乱のギルガメッシュは、しかたなく目的を変更、
「ガウ?グウウウウ…」
水際に戯れるフナムシを踏み潰しにかかった。
111望まぬ契りを交わすのですか?:03/06/25 20:48 ID:Y+ZPk2Lb
バッツは防砂林の一本に背中を預け、破り裂いた上着で止血のため右肘上部を縛り上げる。
白魔道士のジョブ経験のない彼にとって、それが出来うる最大の治療だった。
「ギルガメッシュは正気を失っていた…気付かないところで俺たちは敵に攻撃を受けていたんだ。
 コンフユとか、バーサクとか…その手のアイテムとか…
 クソッ、迂闊だった…」
バッツはそこではっと気付く、自分に向けて伸びている、妖しく細長い影に。

バッツが顔を上げると、目の前10Mほどの場所に、月の光を浴びてつややかな髪を輝かす、
肌の白い憂い顔のセリスがいた。
バッツはセリスを見て、「綺麗だ…」と漏らした。

しかし、彼女が石を手にして自分に歩み寄って来るに至って、正気を取り戻す。
敵はコイツだ!!
バッツはとっさに立ち上がり逃げようとするが、失血による貧血ですぐさまどうと倒れる。
セリスは静々と近づいてくる。

「な、なああんた、冷静になろう、俺たちが戦う意味がどこにある、
 恐怖で自分を見失うな、こんな馬鹿げたことを企画するやつらだぞ、
 最後に生き残ったヤツが本当に無事に帰されると思っているのか、俺は思わない」
体の自由が利かないことを悟ったバッツは、ここを生き延びるべく、
矢継ぎ早にセリスに言葉をかける。
しかしセリスは言葉を返さず、無表情のまま石を振り上げ、バッツに振り下ろした。
がつ、
バッツの額の皮が裂けた。

振り下ろす、がつ、振り下ろす、がつ、振り下ろす、がつ。
バッツは血みどろになりながら、薄れゆく意識の中でバッグを漁った。
そして最後の賭け、支給された薬物のビンを取り出すと、セリスに向かってそれを叩きつけ。

そこで、意識が途絶えた。
112望まぬ契りを交わすのですか?:03/06/25 20:48 ID:Y+ZPk2Lb
「……俺、何やってるんだ?」
ギルガメッシュが我に返り、ストンピングを止めた。
足下にはイヤになるぐらいグロテスクなフナムシの死体の山が、体液の臭いを撒き散らしている。
「げええええ、なんだ、こりゃあ!?」
ギルガメッシュはおえっ、と嗚咽を一つ漏らし、小波で足を洗う。

その爪先がが、なにか柔らかくて固いものを感じたので、ギルガメッシュはそれを注視する。
自ら切断した、バッツの利き腕が水にふやけて漂っていた。
「バッツ!?」
そういえば先ほどから妙に静かだったのは、あいつがいなかったからだと彼は冷や汗と共に気付く。
ようやく意識が完全に覚醒した。

「バッツっ!!!」
ギルガメッシュは相棒の名を叫び、姿を探す。
彼はすぐに砂に染み込むまだむうと臭気を放つにドス赤い血痕を発見、北に点々と伸びるそれを辿る。
「生きててくれ……」
113望まぬ契りを交わすのですか?:03/06/25 20:57 ID:VAhtusbK
防砂林まで一気に駆けたギルガメッシュがそこに見たもの。
それは、苦しげに汗をかきながらも、安らかな表情で仰向けになって眠っているバッツと、
彼を膝枕し、手に持った「ヒールロッド」でなでるようにバッツをこつこつと叩く、
優しげな眼差しのセリスの姿だった。

「あれ? ええと…なんだ。」
予想外の絵ヅラに言葉うギルガメッシュが、なんとか搾り出した言葉はこれだった。
「あんた…誰?」
セリスは恥ずかしげに頬を染め、問いに答えた。
「バッツさんを心より愛する女です」

セリスの頭に、バンダナを巻いた青年の寂しげな笑顔が一瞬浮かび、そして消えた。





                   ――――愛しのあなたは遠いところへ。





【バッツ/ギルガメッシュ 所持アイテム:鋼鉄の剣 現在位置:H-20 防砂林】
 第一行動方針:バッツの回復待ち
 第二行動方針:ファリス、レナ、クルル、ガラフとの合流(さしあたって塔へ向かう)
【セリス 所持アイテム:ヒールロッド 現在位置:H-20 防砂林 】
 第一行動方針:バッツに尽くし、従う

 ※バッツ、右腕(利き手)喪失。武器は殆ど扱えない。HPかなりヤバ目。
  時間をかければヒールロッドである程度までは回復する。
 ※セリスのホレ薬はエスナ等の回復魔法では回復せず。スタート位置は南。
114望まぬ契りを交わすのですか?:03/06/25 21:01 ID:Y+ZPk2Lb
 ※セリスは全ての補助系魔法を使用可、回復、攻撃、時空、召還は使えない。
115【 無効宣言 】:03/06/25 21:55 ID:Y+ZPk2Lb
>114の制限は無効とし、セリスは普通に成長して魔法を習得したものとします。
116ドッキリプラカード。:03/06/25 22:35 ID:VAhtusbK
ドッキリプラカードと赤いヘルメット。
まま先生、一体誰がどのような目的でこれを袋に入れたのでしょう?
このプラカードで敵を殴り倒せと?(そんなことやったらプラ板の方が折れるよね〜)
ヘルメットを被って逃げろと?(もう恰好の標的って感じだね〜)
むしろ本来の用途で使えと?(サイファー辺りにやったら殺されるね〜)

「……やっぱり、早いうちにどうにかして誰かから武器を奪った方がいいか」
様々な思考の末、その結論に達した僕は、待ち伏せを狙うことにした。
というよりも、武器がコレである以上正面切って戦うわけにもいかない。
幸いここは森の中。身を隠せるところは豊富にある。
そうだ、木の上なんて良いかもしれない。
高い所の方が見やすいし、人間ってのは頭上への注意は疎かになりがちだ。
よいしょっと。後はここで誰かが通るのを、しばらくの間待っていればいい……

……と思っている間に、早速人が来たようだ。
青いバンダナを巻いた、軽装の男。僕より少し年上だろうか? 何故か、犬を連れている。
武器らしいものは何も持っておらず、ぶらぶらと歩いている。
――きっと、武器はザックの中に入れっぱなしなんだろう。よーし、それなら……
117ドッキリプラカード。2/3:03/06/25 22:39 ID:VAhtusbK
僕は木の上から飛び降り、素早く男の真後ろに回り込む。
そしてドスを聞かせた声で言い放った。
「動くな」
僕の言葉に、男はごくり、と唾を飲み込む。そして狼狽を隠しきれない声で答えた。
「……随分と物騒な挨拶だな。言っておくけど、俺は戦う気なんてない。
 だからその剣をしまってくれないか?」
……もちろん、僕は剣なんて持っていない。
種を明かせば簡単で単純、普通の人ならバカバカしいと思うだろう。
彼の首筋に突きつけているのは、プラカードの角っこだ。傍から見れば恐ろしくマヌケな光景だろう。
ただ、プラ板といえ角は鋭く尖っているし、外気に晒されたお陰でひんやり冷たくなっている。
そして尖った、固く冷たい感触のモノを、死角から突きつけられれば……
大抵の人間は武器と考えてしまうだろう。まして、殺し合いという今の状況であれば。

「君がどんな武器を持っているかわからない以上、そうもいかないな。
 本当に戦う気がないなら、ザックを投げ捨てろ」
「その後で、殺すつもりか?」
「……それは君次第だ。今すぐ死にたいなら、それでも構わない」
笑いたいのを必死でこらえ、僕は出来る限り冷徹な男を装って言う。
彼はすっかり騙されているようだった。僕には演劇の才能もあるのかもしれない。
118ドッキリプラカード。3/3:03/06/25 22:42 ID:VAhtusbK
「………」
男はついに抵抗を諦めたらしく、肩に掛けていたザックを降ろした。
僕はプラカードを片手で固定したまま、開いた方の手でザックの中身を改める。
しかし……
「……ふざけるな。武器が入ってないじゃないか」
僕のセリフに、しかし男は鼻で笑いながら答える。
「武器? 武器ならあるぜ。あんたのすぐ傍にな!」
男の言葉と共に、すぐ足元でわおんっ!という吼え声が聞こえた。
「うわっ!」
突然、今までじっとしていた犬が飛びかかり、僕の腕に噛み付く。
僕はプラカードを落としかけ、男は一瞬の隙を見逃さずにザックを奪い返す。
そして……

「……って、をい……」

男はようやく僕の手に握られたモノに気付き、強張った声を出した。
……どうしよう、バレちゃったみたいだ。
僕は滝のような冷や汗を流しながら、思わずプラカードを掲げて回していた。

「ド ッ キ リ !」―――→「大 成 功 !!」

その直後、世界が凍りついたのは……言うまでもないだろう。

【アーヴァイン 所持品:赤いヘルメットとプラカード 現在位置:C−14
第一行動方針:夜の間は身を潜める 第二行動方針:仲間と合流する】
【ロック 所持品:トーマス(DQ4より、キツネ狩りが得意な犬) 現在位置:C−14
 第一行動方針:仲間と合流する】
119騎士との遭遇:03/06/25 23:57 ID:AuxC01J7
誰かの足音が聞こえる。他に音はない。静寂の夜である。
相手はこちらに気付いている様子はなく、泥を跳ね上げる湿った音が連続している。
自分の位置を気取られることなど忘れているかのよう。
テリーは茂みの中にしゃがんで身を隠しながら、標的を捉えた。
草と草の間から垣間見えてきたのは、意外な姿だった。
ピエール。この名がすぐ頭の中に浮かんだ。
馬車仲間だったスライムナイトがすぐ目の前にいた。

いや、違う
テリーは瞬時に悟った。
こいつはピエールではないと。いつも生真面目で小姑のように何かと口やかましく説教
をくれていた――魔物のくせに――自分が知るあのピエール、ではないとわかった。
野性味が残っている、人間に飼い慣らされたのではない、魔族の騎士としてのプライド
をこのスライムナイトから感じた。

テリーは勢いよく草むらから飛び出し、相手の行く手を遮った。
仰天しながらスライムナイトは調子の外れた声を上げる。
「ぬっ、おのれ」
魔物は慌てながら右腕を前に突き出すと
「敵めっ」
次の瞬間、その右腕が火を吹いた。

煤けた臭いが鼻につく。スライムナイトの手から、からからと音を立てて何かがこぼれ落ちる。
足元をうかがうと地面が焼け焦げたように変色している。
手から発射したものが地面にめりこんだ、とわかる。

テリーは立ち位置を変えず、ずっと直立したままの体勢でいた。
魔物は見るからに焦りだし、後退しながら右腕を叱咤するように叩く。
今使ったのが飛び道具なのはわかった。狙いが定まってなければ何ら影響がないこともわかった。
注意深く見ていれば、飛んでくる弾を見切ることもできそうだ。
どのくらい威力があるかは、自分の体で試すわけにもいかないが。
120騎士との遭遇:03/06/25 23:57 ID:AuxC01J7
「先に手を出したんだから文句言うなよ」
テリーはじりじりとスライムナイトに近づいていく。
何かありげにザックの中に手をつっこみ居合のような体勢で威嚇しながら、相手が音を上げるのを待つ。

テリーは相手にわかるように、わざとあからさまな殺気を全身から放っていた。
知性ある魔物は気圧され、兜の下の素顔が蒼白になっていると想像がつく。
「武器をおいて逃げるか、ここで死ぬか、好きなほうを選びな」
騎士であることにこだわるとはいえ、所詮は魔物、死を恐れる本能はあるはずだ。
テリーはまた一歩、踏み込んだ。
これでザックの中身に武器がないことを知られたら、また勢い付かれるかもしれないと用心はしたが
それは必要なかった。

魔物は両手を上げた。
「悔しいが、貴方には勝てそうにない。ここは譲ります」
案外聞き分けがいいことに気を良くすると、テリーはザックから手を出し殺気を消した。
すると魔物は慇懃な古式めいた礼をした。
「彼のお方を除けば、どんな人間にも絶対に負けぬと自負しておりましたが、
 その自信が微塵になって吹き飛びました。……貴方は強い。人間とは思えない」

テリーは身動きせず聞き入っていたところ、魔物は探るように姿勢を傾けた。
「それとも、既に人ではないのでしょうか」
たぶん、テリーはそのとき険しい表情を見せたのだろう。

「余計なことはいい。武器を置いてきな」
「で、ではここに」
スライムナイトは足元に飛び道具を置いて、こちらに見えるように草をのけた。
それからやや震えているような視線をテリーに向け、これでいいでしょうかと言った。

「待て、他にはないのか、それは」
テリーはスライムナイトが腰に下げているザックを指差した。
「このザックに入っているのは食料だけです。
 私もまだ出始めたばかりで、とくに手をつけていません。これもお譲りしましょうか」
121騎士との遭遇:03/06/25 23:58 ID:AuxC01J7
そういやそうだったな。
テリーは舌打ちした。飛び道具に頼らなくても、代わりの技はいくらでもある。
欲しい武器は剣なのだ。
しかしこの魔物がが嘘をついているようには見えないし、無いものねだりしても仕方がない。
「いや、いい。とっとと行きな」
テリーが追っ払う仕草を見せると、スライムナイトは大袈裟な会釈をして背を向けた。
そして一言二言足元のスライムに声をかけると、飛び跳ねながら遠くに消えていった。

テリーは残された武器を拾いあげた。
本来なら入手する気はなかった物だが、ここに残して誰かに使われるのもおもしろくない。
まあ、位置を知らせるぐらいには使ってもいいだろうと思った。
ザックの中にそれをしまい込むと、また移動を開始した。

【テリー 現在位置 Q−6
 所持品:山彦の盾・コルトパイソン 行動目的:支給品奪取】
【ピエール 現在位置 Q−6 
所持品;なし 行動目的 状況把握】
ピエールは北スタート
122Missing Link (前編):03/06/26 00:42 ID:CU4vcBHS
あれから、ミネアとレオンハルトの2人は濡れた体と服を乾かしにまたバンガローに戻った。
今、2人は毛布をかぶって暖炉の前で寝転んでいる。
2階が崩壊しているため星空がきれいに見える、星を見ながらミネアは思う。
(星の力が今夜は強い…これならば)

ミネアは起きあがると、また占いを始める…元来占い師は自分の運命については占う事が出来ない。
だが、これほど天の気が増大しているとなれば、少しくらいならば、
しかし占いの結果はミネアの期待していたものではなかったらしい。
(恥ずかしい失せ物あり…何かしら?)

また再び夜空を見上げるミネアだったが、思うところがあったらしい、傍らのレオンハルトに尋ねる。
「レオンハルトさん…誕生日はいつですか?」
「星占いか…下らんが、まぁいいだろう」
レオンハルトの誕生日を元に天文を占うミネア、だがその顔色が段々と変わっていく。
やがて占いを終えた彼女は沈痛な表情でレオンハルトへと告げる。

「気を確かにして聞いてください…星の動きによると、今宵大切な友をあなたは失ったと出ています」
「何だと!貴様冗談を言うのも」
「私の占いは当たります…特に今夜は」
その冷徹な言葉にレオンハルトは何も言い返せなくなってしまった、事実、この娘はこれまでにも
恐るべき力で次々と真実を言い当てている、いまさらどうして抗えようか。
123星降る丘で―――:03/06/26 00:42 ID:H8QRMV5t
「(……今の俺になにが出来る?)」
「(武器の無い戦士は……牙の無い狼と同じ……)」
「(もちろん俺に、ゲームに乗るつもりなどないが……)」
「(人を守るにも……主催者を叩くにも……武器は必要で……)」
「(だけど武器を手に入れるためには……他の参加者から手に入れる必要があり……)」
「(……彼らとて必死だろうから、気前良く渡してくれるとも思えない……)」
「(奪い合いになる……必然、殺し合いに……)」

全く嫌な具合に良く出来たゲームだと、スコールはため息をつく。
ここは、J−06地点、星降る丘。
空は晴れ渡り、宝石箱のように星々が煌いているが、
スコールの暗鬱な心は見事なまでに曇天だった。
元々自分の殻に閉じこもりがちな彼ではあったが、
あまりの八方塞がりな状況に、思考の無限ループに陥っていたのだ。

ざしゅ、ざしゅ、ざしゅ。そんな彼の耳に足音が届いた。
存在を隠さない、力強く確かな足取り。
それだけで威風堂々たる容貌を感じさせる。
一瞬、逃げの体勢に入ったスコールだが、思い直し、足音の主を待ち構えた。

「ここの星空は絶景だな」

果たしてやって来たのは、グランバニアの前王、パパスだった。
124Missing Link (前編):03/06/26 00:46 ID:CU4vcBHS
変わりに口から溢れ出したのは、占い師への罵声ではなく、嘆きの言葉だ。
「嘘だ!嘘だ!……フリオニール、お前が先に逝ってどうする……もしそれが本当ならば、
俺はもうこれで本当に、引き返せなくなってしまった!」
「戻りようがないと先程はおっしゃっていたのではないですか?」
あえて意地悪くミネアは言い放つ。
「ああ…確かに言った…だが、それでも俺はあいつに止めてもらえることを、救ってもらえることを、
 心の何処かで期待していた…あいつは俺の希望だった」
しみじみと遠い目で語るレオンハルト、その瞳には涙が光っていた。

「もし死んだのが真実ならば…せめて弔ってやりたい、お前の占いなら死体の場所が分かるんじゃないのか?」
「やってみましょう、フリオニールさんとおっしゃるのですね」

ミネアは短冊にフリオニールと書いて、それを地図の上に置く、そして穴のあいた硬貨を用意すると、
その中心に糸を通してさらにそれを地図の上にぶらさげる。
しばらくすると、硬貨が何の力も加えていないにも関わらず、ゆらゆらと振り子のように動き
それにつられて名前を書いた短冊も動いていく、そして振り子も短冊も同じ位置で制止した。
「西の方角と出ました……ご本人の身につけているものがあればもっと正確な場所が
 分かるのですが…」

それを聞くや否や、荷物をまとめて飛び出そうとするレオンハルトをミネアは嗜める。
「西には多くの殺意ありとも出ています…今は自重して下さい」
「あいつの死体を放っておくのか…」
「今、直接西に向かえば私たちは死ぬかもしれませんよ、死ねばもう2度とやりなおせませんよ!
それがあなたのお友達の望むことなのですか!」
そこで背後に気配、2人はほぼ同時に武器を持って振り向く。

「ほう…占いか、なら私も占ってくれないだろうか?」
気配の主、女将軍ベアトリクスは2人の剣呑な視線にも動じず、不敵にも微笑んで見せるのだった。
125Missing Link (前編):03/06/26 00:51 ID:CU4vcBHS
【レオンハルト:所持アイテム:ディフェンダー 現在位置:J−02(バンガロー跡地)】
第一行動方針:?

【ミネア:所持アイテム:プラチナソード 現在位置:J−02(バンガロー跡地)】
第一行動方針:レオンハルトについていく
第二行動方針:戦いを止める

【ベアトリクス 所持武器:ピンクのレオタード(マーニャ用) 現在位置:J-01(バンガロー跡地)
第一行動方針:未定】
126星降る丘で―――:03/06/26 00:54 ID:H8QRMV5t
「先ずは挨拶が礼儀だな。私はパパス。サンタローズのしがない村人だ」
「……スコール……です。
 (そんなわけがない……この人は、もっと凄い人のはずだ……)」

この言葉に関してはぶっきらぼうな若者が、思わず語尾に
「です」をつけてしまうほどの風格が、パパスにはあった。
パパスは太く、ひずみの無い良く通る声でスコールに話を促す。

「スコール、君はゲームに乗るつもりはないのだろう?」
「……はい」
「ではここで何をしていた。人を避け、隠れていたのか?」
「……いや……違います
 (本当にそうなのか……俺は……怯えているんじゃないのか……?)」
「私は、出来うる限りの人命を助けるのだと心に決めている。
 スコール、私と一緒に来ないか?」
「でも……俺の……支給品は……(あなたは立派だ……)」
スコールはデイバックの中から支給品を取り出し、パパスに見せる。
それは、大抵の鍵なら苦も無く開錠できる『魔法のカギ』だった。
「だから、行けません……(身動きがとれないんだ……)」

バシン!!

突然。ノーモーション。
パパスは遠慮なくスコールの横面を張った。
127星降る丘で―――:03/06/26 01:00 ID:H8QRMV5t
スコールは倒れこみ、パパスを見上げる。
「スコール。私はお前を打ったのではない。お前の弱い心を打ったのだ」
パパスは父親が子供に諭すような優しい眼差しで、スコールを諭した。
頬肉に腫れ。頬骨に鈍痛。
にもかかわらず、スコールはその衝撃を心地よいと感じていた。

スコールは痺れる頭で思う。
パパスは、今まであったどのような大人とも違う。
強いてあげるなら―――古く、強烈な父性のイメージ。
彼が本の中でしか知らない、強引で、熱く、自信に満ち、責任感溢れる大人。
この瞬間、スコールの心に、この器の大きな男に対する憧れが芽生えた。
多分にペシミストな彼にしては、とても珍しいことだった。

「わかってくれたようだな」
「……はい。(この人に出会えた俺は……運がいい……)」
パパスはスコールに手を差し伸べ、立ち上がらせる。肉厚の逞しい掌だった。
「さて、こうしている間にも、誰かが助けを求めているやも知れぬ。
 先を急ぐぞ、スコール」
「はい。(俺は、変われる……この人についてゆけば、きっと……)」
2人は固く握手を交わし、お互いのバックを背負った。

「ところで……パパスさんの武器は?」
パパスは腰に提げた布袋から、流線型、木製の小さな容器を取り出す。
「容器の上の楕円は回転する。容器の下に鼻を近づけ、少し回してみるといい」
スコールは言われたとおりにした。
ごり、と何かが挽かれたような音がした。そして。

「ふぁっ……ふぁっ……(なんだ!?鼻が……ムズムズ……)
 ふあっくしょんっっ!!」

パパスはスコールの大きなくしゃみにはっはっはと笑う。
「どうだ、黒胡椒の香りは」
128―――星降る丘へ:03/06/26 01:04 ID:a+j02wqb
一方その頃―――
ヴィンセントは魔法科学の粋を集めた監視ルームで、その2人の様子を見ていた。
その手元には、ケフカから貸し渡された参加者名簿が開かれている。
ヴィンセントは三白眼で虚空を睨み、呟く。
「パパス、スコール―――こいつらは、強い」

ヴィンセントは黙考する。
望む未来を手に入れるためには、全ての参加者を葬らねばならない。
この2人の戦士も例外ではない。
彼らは今のところ徒手空拳、無力とはいわないが恐れるほどのものではない。
しかし、この先武器や防具を手に入れたとしたら?
たとえ不意を撃ったとしても、まず勝てないだろう。
1vs1でやりあったとしても、無傷で勝利する自信はない。
ならば、今が。
難敵を纏めて屠る最高の機なのではないか?

「決めた?決めちゃった?ここに決定?」

ヴィンセントは無言でケフカの問いに頷き、ハイブロウSTを小脇に抱えた。



【パパス/スコール 所持品:魔法のカギ 黒胡椒 現在位置:J-06 星降る丘 行動方針:人命救助 】

【ヴィンセント 所持品:ハイブロウST 神羅甲式防具改 現在位置:本拠地→J-06 星降る丘
 行動方針:勝利し、過去を改変する 】
129未知との遭遇:03/06/26 04:47 ID:88bn0xuP
「はぁ〜〜〜。どないしよ…ホンマに…」
南の祠から東へいったところにある海岸。
大小の岩が乱立する殺風景なソコに一匹のネコのぬいぐるみが佇んでいた。
彼は海岸に一番近い岩の下に座り込んでぼんやりと海を見つめていた。
いや、岩に見えたソレは2M近い巨体をもつモーグリの人形だった。

「ユフィさん、僕に気付かないで行ってまうんやもんなぁ。どこ行ったんやろ…」
ユフィと同じく南の祠スタートだったケット・シー。
しかしユフィはいの一番に出発したのに対し、ケット・シーは20人中12番目。
待ち時間もあいまって祠を出たときには一時間以上も後だったのだ。
とりあえず適当に方向を決めて走ってきたが、もちろんユフィの姿は無かった。

「それになんや本体の僕も変なトコにおるし…」
出発の順番待ちの時、そしてついさっきも機械人形であるケット・シーを
操作しているリーブは、ケット・シーとのリンクを絶って本体の方の自分が
どうなっているか確認してみたのだが、なにやら扉も窓も無い牢屋のような
部屋に隔離されているようだ、という事しかわからなかった。
もちろん、そこにいる自分の首にも例の首輪が付いていたのだが。
「まあ、あれがどこなんか大体わかっとるんやけどな」
そう呟くとケット・シーは隣に佇んでいるデブモーグリを見上げた。

「おまけにメガホンも無いからこいつで攻撃することもできひんし」
ケット・シーという機械人形はもともと遊園地の占いマシーンだった。
詳しい事は企業秘密なので公表できないのだが、もともと付いていなかった
攻撃用のプログラムはメガホンを使わないと作動できないのだ
「…そこらへんに法螺貝でもうちあげられてへんかな」
ちなみに彼の支給品はごつくて重い大剣だった。
がんばってもネコの人形が持てるような代物ではないし、
力自慢のデブモーグリでも、これの手では剣を持つ事などできなかった。
130未知との遭遇:03/06/26 04:48 ID:88bn0xuP
「はぁ〜〜〜。どないしよ…ホンマに…」
何度同じ事をもらしただろうか。
朝が来ればただでさえ目立つデブモーグリのせいで下手に動く事はできないだろう。
もしもこのデブモーグリが破壊されたとしたら。
ネコの人形であるケット・シーとデブモーグリ。二つで一つのケット・シーなのだ。
片方が破壊されたらおそらくもう片方も…。

(ここでじっとしてても始まらへんしな。…夜の内に町へ……!!)
不意に真後ろで聞こえた砂を踏む足音に、ケット・シーは思考を中断させた。
(うそやろ? こんなに近寄るまで足音なんて…)
背後の人物から発せられるプレッシャーに、ケット・シーは動く事ができない。
すでに逃げられる距離ではない。戦う手段も無い。まさしく八方塞がりだった。
(どないしよ、どないしよ、どない……ぎゃあ!!)
声を出さなかったのは賞賛に値するだろう。
背後の人間はケット・シーの首の裏を掴み、持ち上げたのだ。

(…あかん。とてもやさしそうな人間にはみえへんわ)
正面を向けられたケット・シーは自分を持ち上げた人間を確認した。
確か自分より前に祠を出た男。
強面、グラサン、赤と黒の服にオールバック。とても希望は持てそうに無い。
「…ネコの人形か」
(ん? 僕を人形としかみてないんか?)
「ルールーならともかく、他のヤツがコレを掴まされたのは不運だったろうな」
(ルールー? かわいい名前やな。せやけど、ともかくってのはなんや?)
「…ユウナ…ティーダ…どこにいるんだ…」
(…そんなに悪い人でもなさそうやな。でもいまさら参加者ですなんて言えへんし…)
131未知との遭遇:03/06/26 04:49 ID:88bn0xuP
男は背負っていたザックをおろし、その口を開いた。
(なにをする気なんや? まさか…)
「とりあえず持っておくか」
(ちょっ、まってや、そんなに乱暴に入れられたら、
イタ、イタタタ、イタイって、そ、そんなムリヤリ…ああん)
 「…? 入らん…」
(あ、あかん…。このままやと…僕…こわれて……! あれは!!)

男の持っているザックの中。ケット・シーの目と鼻の先。
ケット・シーは右手を伸ばして『ソレ』を掴むと、男の手を振りほどき
砂浜へ前転する形で飛び込み距離を取ると、『ソレ』を口元に当てて叫んだ。
「モーグリ! 倒れるんや!」
「なに!」
完全に不意をつかれる形になり、しかも自分の背後の岩が動くとは思っていなかった
のだろう、男はあっさりモーグリにのしかかられて動けなくなってしまった。

「…貴様も参加者なのか」
激しい怒りと憤りを含んだ言葉。
「なにか言っときたい事でもあるんか?」
一方ケット・シーは余裕の表情で男を見下ろしていた。
「………」
男は何も言わず、ただきつく睨み付けているだけだった。
「…まあ、僕もあんな酷い目にあわせられたんやからな」
ケット・シーは冷徹な声で言い放つと、右手のメガホンを真上に上げた。
男はここまでか、と自分を殺す相手を呪わんばかりににらみつけた。

132未知との遭遇:03/06/26 04:49 ID:88bn0xuP
「…な!?」
「だからな、これでおあいこや」
男は驚嘆の声をあげた。モーグリが男の上から退き、戒めを解いたのだ。
「手、組まへんか? なんや悪い人やなさそうやし、僕も人を探してる途中やしな」
男は差し伸べられたネコの手を幻でも見たような目で見つめていた。
「僕はケット・シーちゅうんや。あんたは?」
「…アーロンだ」

【ケット・シー  現在位置:P-20 海岸
所持品:?大剣 レッドメガホン(あやつり、へんしん)
 第一行動方針:仲間を探す     】

【アーロン   現在位置:P-20 海岸
 所持品:なし
 第一行動方針:仲間を探す     】
133諸刃の剣:03/06/26 09:58 ID:kkc0E1JR
山のふもと、森と山に入る道との間でプックルは出会っていた。
不思議な雰囲気を持つ少女、ティナに。
その雰囲気は何処となくプックルの無二の親友、リュカと似ていた。
プックルは山道を駆け上るつもりであった。
猫族であるプックルの自慢の爪と跳躍力があればそれも可能だったろう。
しかし、ともかくプックルは出会ってしまった。

ティナは出会ってしまった、巨大猫というには可愛い魔物に。
地獄の殺し屋と呼ばれたキラーパンサー、しかも歴戦の勇士であるプックルに。
「大丈夫、怖くないわ。」
しかし、どういうことかティナはその魔物に声をかけた。
低く唸り威嚇をするプックルにティナは優しく手を差し伸べた。
瞬間、腕に激痛が走る。
赤く大きな爪痕が残り、ティナは苦痛に顔をゆがめるが、それでも手を引かない。
「大丈夫よ、何もしない。」

プックルは威嚇をやめる、背の鬣がしなっとしなびれる。
ティナに向け、最初二、三歩警戒しながら足を進め。
危険ではないと気を許すと、さかんに腰のあたりをティナの足に擦りつけた。
「いい毛並みね、あなた。」
ティナがプックルの腹のあたりを擦るとプックルは気持ちよさそうにナァオと鳴いた。
傷つけた腕を必死にザラついた舌で舐めながら。
プックルは腰に巻いていたザックを四苦八苦しながら外し、そのサーベルのような牙で持ち上げティナへと渡す。
「私に?」
ティナの問いにプックルはアォ、と短く答える。
何が入っているのかとザックの中身を空ける。
食料はほとんど無くなっていた、恐らくここに来るまでにプックルが食べてしまったのだろう。
手探りで奥まで手をつっこむと、コツ、と何かに当たった、それを取り出してみる。
134諸刃の剣:03/06/26 09:58 ID:kkc0E1JR
「これは……」
刀身が無い不思議な剣、しかしティナが握り締めると長く青白い光が現れる。
と同時に襲われる脱力感、咄嗟にティナはその剣を放した。
ブゥンと低く音がすると光は消え、元のとおりにただの柄だけの剣になる。
「アルテマウェポン……」
魔力を力に換え、敵を討つ剣。
非凡な魔力を持つティナならばその剣を使えようが、それでも吸収される魔力は馬鹿にならない。
ティナはプックルの了解を得てその剣を腰にあて、自分の支給武器であったエンハンスソードも腰にあてた。
「……一緒に行きましょう。」
一人と一匹は人の集まりそうな灯台へと向かった。
【ティナ 所持品:アルテマウェポン エンハンスソード 位置:F-16】
第一行動方針:灯台に向かって仲間を探す
【プックル 所持品:なし 位置:F-16】
第一行動方針:ティナについていく
第二行動方針:リュカを探す
※アルテマウェポンは魔力の強さによって威力が変わる剣です。
135狂った父親:03/06/26 10:37 ID:kkc0E1JR
しばし呆然と王女の亡骸の前でリュカは静かに王女の冥福を祈った。
そして、立ち上がるとパパスの剣を抜き、声を荒げる。
「誰だ、そこにいるのは!」
気配がビクリと緊張していくのがわかり、リュカはその気配の元へ一歩、また一歩と歩みを進める。
「ま、待って!」
木の間から出てきたのは金髪の利口そうな女性。
――金髪の。

「待って、ね、私は何もする気はないの。ただあなたに声がかけづらくて、本当よ。」
早口にまくしたてられる言葉をリュカはただの雑音としか思っていなかった。
その虚ろな瞳は女性の髪だけをとらえている。

金髪の。 金髪の。 金髪の。 金髪の。 金髪の。
――金髪の女が女の子を殺した。

リュカは手にした剣を縦一閃に振り払う。
飛び散る血しぶきと女の片腕。
今度は横から斬り払う、幾多の戦いを乗り越えてきたリュカの剣の腕は、この時も冴え渡っていた。
千切れ飛ぶ頭と胴体、返り血も気にせず、リュカはとぼとぼと彷徨いはじめた。
(待っててねアニー、今から君を殺した女を地獄に落としてあげるから。)
気味の悪い微笑みを浮かべ、リュカは高らかに吼えた。

いつも温和なリュカの歯車はこの時から狂い始める。
【リュカ 所持品:パパスの剣 位置:O-05(王女の死体付近)】
第一行動方針:金髪の女を殺す
【キスティス 死亡】(残り 68人)
※キスティスの支給品はその場に放置です。
136ギルガメッシュ強要:03/06/26 12:28 ID:iN41gQJ6
バッツが見知らぬ女に膝で抱かれているのを見れば、何が起こったか見当がつく。
「バッツ……使ったな」
女の足元に散らばっているビンの破片がそれを物語っていた。

ううむ、ギルガメッシュは唸った。
この近くに他の参加者の気配はない。
状況からして自分を惑わせたのはこの女だ。
バッツが腕を失ったのもこいつのせい。斬ったのは自分だろうがこいつのせいだ。
「あんただろう、俺に魔法をかけたのは」
ギルガメッシュは語気を強めて言った。

「セリス、です…。そう……私はあの時どうかしていた。バッツさんのご友人である貴方に
 私は邪悪な魔法をかけて操ろうとした。そ、その……私は、バッツさんを葬ろうとしたのです。
 愛しているのに……」
ギルガメッシュは嘲ってやりたくなった。
操られてるのはお前の方だ。どうせ薬の効き目が切れたらまた俺たちを襲うんだろ、と。
「それが今は改心してバッツのために懸命な介護か?
 おめでてーな」
「ええ、何も言い訳できません。悪いのは全て私です。だから私が責任を持ちます」
セリスはヒールロッドの動きを続けている。

自分勝手な言いぐさに聞こえたギルガメッシュは腹立たしさを覚えた。
「だったら、バッツの腕をつなげてくれねえか、セリスさんよ。
 そうしてくれりゃ文句は何もないんだ」
そう言ってギルガメッシュはザックの中から、細くて血色悪い標本のような腕を取り出した。
バッツの右腕だ。
それをセリスの手に掴ませた。
「できるよな」
137ギルガメッシュ強要:03/06/26 12:29 ID:iN41gQJ6
静かな波の音が絶え間なく聞こえてくる。他には何も聞こえず、そこには無言の応酬があった。
セリスはバッツの腕を持ったまま、しばしギルガメッシュを上目使いで見ていた。
ギルガメッシュは腕組みしながら凝視している。
やれよ、ギルガメッシュは視線で促した。

セリスは意を決して膝で固定したバッツの右腕の付け根部分に、切断された右腕をあてがった。
肉と肉がせめぎ合う嫌な音がした。そのままつないだ部分を、ヒールロッドでこつこつと叩く。
無心に、布を繕う機械のように、セリスは叩き続ける。

あっ、セリスは小さな声をあげた。
バッツの腕はつながらず、また崩れて膝の上に転がったのだった。
「もう結構時間が経っちまったからな」
ギルガメッシュはしゃがみ込み、セリスの顔を覗き込むようにした。

「バッツはな、跳び箱の選手だったんだ。小さな頃から毎日練習して、一歩一歩上達させてきたんだ。
 地道な努力だったと思うぜ。こんな夜にはいつも家の裏庭からバッツの跳び箱と格闘する音が
 聞こえてきたもんだ。
 その甲斐あってな、バッツは地方大会で優勝することができたんだ。
 あのときのバッツの嬉しそうな顔といったらなかったぜ。
 しかもそれで終わりじゃないんだ。バッツにはまだ夢があったんだ。
 来年は世界大会だ、きっと俺はやるぞってな……」

もちろんでまかせである。バッツの過去などギルガメッシュは知らない。
この女を困らせてやりたいだけなのだ。
セリスはうつむきながら膝にあるバッツの顔をじっと見つめている。
肩を震わせて泣いているように見える。
ギルガメッシュは間をおいて、更に責めたてた。
138ギルガメッシュ強要:03/06/26 12:29 ID:iN41gQJ6
「……跳び箱ってのはな、両手両足があって初めてできるもんだ。どこかが欠けたらバランスを取ることは
 できない。ダメなんだ。
 あんたはバッツの夢を潰しちまった。目が覚めて自分の腕が元通りにならないと気付いたとき、
 バッツはどんなに苦しむだろうな」

「あああっ」
セリスが天を仰いで溢れんばかりの涙を目に溜めながら、叫んだ。
「私は、私は、どうすれば……」
形の良い唇が半開きになって揺れ動いた。

「あんたの右腕を代わりにくれたら、許してやらんこともない」
さあ、根性見せてくれるか、セリスさんよ
ギルガメッシュは心の中でそう付け加えた。

【バッツ/ギルガメッシュ 所持アイテム:鋼鉄の剣 現在位置:H-20 防砂林】
 第一行動方針:バッツの回復待ち、
 第二行動方針:ファリス、レナ、クルル、ガラフとの合流(さしあたって塔へ向かう)
【セリス 所持アイテム:ヒールロッド 現在位置:H-20 防砂林 】
 第一行動方針:バッツに尽くし、従う
139不思議な力:03/06/26 16:39 ID:birsSFxq
「なあ、おっさん…これ、夢じゃないよな…?」
「ジタン…。残念だが、現実だ」
「それじゃあ、ビビはもう帰ってこないのかよ…!」
ジタンと合流を果たしたスタイナーは必死で力なくうなだれるジタンをなだめている。
スタイナーもわけがわからない状況で泣きたいぐらいなのだが、
ジタンをこのままにしておくわけにはいかない。

ピシャッ!と乾いた音が響く。
スタイナーは、優しくジタンの頬を打った。
「お、おっさん…」
「ジタン、それなら闘うのだ!ビビ殿のような犠牲を出さないためにも、この殺し合いを止めさせるのだ!」
その言葉でジタンも、まだいつもの元気は取り戻していないものの、なんとか小さく声を出した。
「そうだよな、すまねえ」
立ち直ってくれたか!とジタンの肩を叩いてやる。

「こういう役はおぬしの役目なのだ!そのお主が自分より先に参ってしまってどうするか!」
そう言われてジタンが初めて微笑む。
「そう、だよな…!よし、この殺し合いを止めさせようぜ、おっさん!」
(全く、この男は不思議な奴だ。自分もなんだか嬉しくなってきたではないか…)
スタイナーもジタンにつられて笑った。
140不思議な力:03/06/26 16:40 ID:birsSFxq
「さて、ではジタン!どこへ行こうか決めようではないか!」
スタイナーは張り切って自分のザックから地図を取り出す。
ボトッ、何か分厚い本みたいなものも落ちてきた。
「ん?これは――」
ジタンが拾ってパラパラとページをめくる。
一通り見終わったところでニヤリと笑って見せた。
「そ、それはなんなのだ?ジタン」
「これがおっさんの支給武器みたいだな…」
スタイナーに表紙を見せて手渡す。
「ムム…これはなんと…参加者の詳細データではないか!」
中には参加者の資料――せいぜい、使用できる魔法や、誰と誰がかつての仲間なのかなど…
――が載ってあっただけだが。それが全員分あった。さすがにゲーム中のデータは載っていないが。
「とりあえずこれはなかなか有効活用できそうだ」

「それよりジタン、どこへ向かうのだ?」
スタイナーはさっさと移動してしまいたいようで地図を広げている。
「う〜ん、この街にでも行ってみようぜ。誰かがいるかもしれないし」
その言葉を言い終らないうちにスタイナーが言葉をはさんだ。
「そうと決まれば街へ向かおう、ジタン!」
「おっさん、そっちは逆方向だぜ…」
こんなことで大丈夫なのか、とジタンは心の中でため息をついた。

【ジタン/スタイナー:所持武器 コッズガントレット/参加者詳細資料:現在位置 S−10】
 第一行動方針:街へ向かう。
 第一行動方針:ゲームを止めさせる。
141転倒:03/06/26 17:11 ID:birsSFxq
「ん〜、コレは…ユフィが似てるものを持ってたっけ…」
エアリスは支給された手裏剣(20枚)をザックに戻した。
(それに私、前に死んだのに…なんで生きてるのかな…?)
と、北の祠から出発する時には疑問を抱いていたエアリスだったが、
そんな疑問はもう消え去っていた。
「あ〜っ、こんなのに参加させられるぐらいなら生き返らないほうがマシだったよー!」
とりあえず、クラウドがいることは確認できた。
(でも、別々の場所に運ばれちゃったんだよね)
でもクラウドはどこかにいるんだ!頑張れ、私!と自分をむりやり励まして
エアリスはクラウドを探すために南へ向かうことに決めた。
エアリスは意気揚々と歩き出した。
が、すぐに足元の段差につまずいて転んでしまった。

1時間もしないうちにエアリスは弱音を吐く。
「はぁ…もうイヤだ…朝になるまでどこかで隠れとこう…」
エアリスは今自分を転ばせたくぼみをにらみつけた。
ここに来るまでに何度転んだことか。
ここの地形が特別歩きにくいのか、エアリスが単にドジなのか…。
夜の間に歩くと危険、と頭に刻み込む。
そしてなんとか目立たない小さな洞穴を探しだして、
その中にもぐりこんだ。
「クラウド…明るくなったら、会いに行くからね…」
エアリスは小さな寝息を立てて眠りだした。

【エアリス:所持武器 手裏剣×20:現在位置 K−6】
 第一行動方針:明るい時にクラウドを探す。
 ※睡眠中です。
142Missing Link (後編):03/06/26 19:01 ID:OrEQQuFB
テーブルの上にはトランプやら地図やら燭台やらが所狭しと並べられている。
そんな中で向かい合うベアトリクスとミネア。
「分かりました、あなたの求める仲間は東の方角にいるようです」
「確かだろうな?」
「私の占いは当たります」
と、言いつつもミネアはまじまじと占いの結果を確認する。

(レオンハルトさんほどでは無いにせよ、やはりこの人にも破滅の相が出ている…
 これは抗えぬ運命なの?)
恐らく自分自身にも破滅の運命が押し寄せてきつつあるのだろう、自分のことについては、
知る由もないのだが。
「分かった、世話になったな」
それだけを言い残すとベアトリクスは出立すべく荷物の整理を始める、その様子を見ていたミネアだったが、
ザックの中から覗くピンクの布が目につく、あれはもしかすると…

「何だ、姉さんのか、私のならこんなにきれいに…」
そこでミネアはあることに気がつく、そう先程の占い。
(恥ずかしい失せ物って、まさか…)
ミネアの顔が羞恥でみるみる内に赤くなっていく。

あれは確か……ガーデンブルクでの出来事だった。
「嫌です!人前でそんなはしたないコスチュームを着るなんて!」
「えー、称号貰えるんだからいいじゃん」
「姉さんもアリーナも本気ですか!うっふんピンク隊なんて称号、あっても恥になるだけです!」
「まぁミネアの分も買っといたから、もし良かったら着けてみせてよ」
143Missing Link (後編):03/06/26 19:02 ID:OrEQQuFB
結局ピンク隊の話はお流れになったのだが、人前で着るのがいやなだけで、
実はそれ以前からインナーウェアとして、普段のドレスの下にこっそり着用していたし、
誰も居ないときは姿見で、そっと自分のレオタード姿を映してみたりもしていた。
ただ、少なくとも称号欲しさにレオタード1枚で外を歩けというのは、彼女にとってはあんまりだったのだ。

しかもあれだけ反対しておいて、実はお気に入りとも言えず…さらに言うならばおおっぴらに
手入れしたりすることもできなかったのだ。

職業柄ビジュアルにとても気を使う姉は不器用ではあるが、衣装の手入れには気を使うし、
一国の姫であるアリーナも、おしゃれにはうるさいタイプだ。
しかし自分はどちらかといえばそういうことに無頓着だし、あまり興味もなかったりする。

確か着用しないときは、丸めて私物入れの中に放りこんでいたはず…
ろくな手入れもしていない下着を他人に見られてしまう、女性にとってこれ以上の恥辱・屈辱が、
存在するであろうか?いやありえない。

ミネアは、はーはーと息を荒くしている、限界を突破しそうな羞恥を必死でコントロールしようとしているのだ。
(落ちつくのよミネア…たかだかレオタードの1枚や2枚、あなたにはもっと重要な役目があるのよ)
だが落ちつけるはずも無い。
(だから落ちつくのよ…落ちついて…落ちつけ自分!)
ズガン!!
ミネアはテーブルの角に思いきり自分の頭をぶつけて強引に気分を切り更える。
レオンハルトはそれを呆然とした様子で見ている、やはり普通の娘ではなかったかと言わんばかりに。
144Missing Link (後編):03/06/26 19:02 ID:OrEQQuFB
頭から血をだらだらと流しながら、ミネアはレオンハルトの方を向く、その壮絶な眺めに、
思わず後ろ去るレオンハルト、それには構わずミネアは続ける。
「おや、ベアトリクスさんはどちらに?」
「占いを聞いたらとっとと出ていったぞ…見ていたんじゃなかったのか?」

「そうですか、では私たちも出ましょう、服も乾いたでしょうし…先程南に強大な殺意ありと出てました、
 西にも多くの殺意が渦巻いています、ですが東はまだ比較的安全です、出来れば同行したかったのですが」
東、と聞いてレオンハルトは不満そうな表情だったが、結局それを受けて荷物の整理を始めていた。
(フリオニールよ…すまん、占いを100%信じているわけではないが、何故かこの娘捨ておけん)

一方のミネアは一応落ちつきは取り戻したものの、星空を見ながら溜息をついている。
「私も誰かに占ってもらいたい…」

【レオンハルト:所持アイテム:ディフェンダー 現在位置:J−02(バンガロー跡地)】
第一行動方針:?
第二行動方針:フリオニールを弔う

【ミネア:所持アイテム:プラチナソード 現在位置:J−02(バンガロー跡地)】
第一行動方針:レオンハルトについていく
第二行動方針:戦いを止める
第三行動方針:自分のレオタードを探す

【ベアトリクス 所持武器:ピンクのレオタード(マーニャ用) 現在位置:J-02から東に
第一行動方針:ジタンたちを探す】
145Foxy Lady&Sadness Prince:03/06/26 21:27 ID:cjo+IefN
「もうそろそろ朝でござるな」
ライアンは周囲を見渡しながら一人ごちる、あれから海岸線を北からぐるりとほぼ1/4周はしているだろうに
未だに誰とも出会えない。
「勇者殿もブライどのもトルネコ殿もいない…となると拙者が皆をまとめねばならないでござる」

クリフトもアリーナもマーニャもリーダーとしての資質は正直乏しい、ミネアが一皮向けてくれれば、
まだ何とかなるのだが…ともかく仲間たちを一刻も早く探さなければ。
「!!」
背後に気配、素早く振り向いたライアンは自分の背後の岩場から現れた相手の剣を受け止めるが、
その手に伝わる衝撃に思わず剣を手放してしまいそうになる。
(何という豪剣…これは恐るべき敵でござる)
ライアンは相手の姿を見る、相手はまだ十代そこそこの少年だ、だが様子がおかしい。
はーはーと息を荒げる姿はまるで獣のようだった。


ここで時間は少し巻き戻る。
東の海岸沿いにある漁師小屋、もう夜明けも近いにもかかわらず、そこからは
恐ろしい獣のような声が聞こえてくる。

「く…薬、さっきの薬を…早く」
脂汗を滴らせながら床にくず折れるマイヤー。
「キャハハハ、苦しいのかしら?王子さま」
それをまるで獲物を嬲る蛇のような表情で見つめるスカーレット。
「くそう…」
純朴なマイヤーといえども、流石に自分の状況に気がついていた、そう自分は嵌められたのだ。
出来る事ならば斬り殺してやりたいが、身体が痺れて思うように動かない。

それに彼女が言うには薬は自分しかわからない、秘密の場所に隠してあるのだという。
そんなマイヤーをスカーレットはうっとりとした瞳でねちねちと眺める。
「キャハハハハ、いいザマねェ王子さま、お薬が欲しいんでしょう?なら態度でしめしなさい」
146Foxy Lady&Sadness Prince:03/06/26 21:27 ID:cjo+IefN
スカーレットはアンプルの中の薬をとろとろと床にこぼす、床に広がり染みこむ薬剤、
それを這いつくばってぺろぺろと舐め取るマイヤー、その無様な姿がスカーレットの嗜虐心をさらに刺激する。
「キャハハハ、まるで犬みたいねぇ…いい事を思いついたわ、お前にふさわしい名前をつけてあげる
 今からお前はポチよポチ!マイヤーなんて立派な名前は犬にはもったいないわ」
「僕は…犬じゃ…ない」

絶え絶えの声で反抗するマイヤーだが、その言葉はスカーレットの高笑いにかき消される。
「キャハハハ、良く言うわねぇ、今のお前の姿は何よ!薬欲しさに這いつくばって床まで舐めて、
 認めるのよ!お前は王子じゃなく犬だってことを!」
「いやだ…僕は」
「そう、ならいいわ…お薬捨てちゃおうか」

その言葉に愕然とするマイヤー…これまで色々と危険な目にもあってきた、死にそうになった事もある…
それに比べれば…だが、人間は悲しい事に苦痛には耐えることが出来ても…快楽には抗えない。
マイヤーは血がほとばしるほど唇をかみ締めた後、絶え絶えの声で呟く。
「僕は…犬です……名前は…ポチ…」
「じゃあ私の言う事が聞けるかしら?」
「はい」

その言葉にスカーレットはマイヤーの顔面を思いきり踏みつけて応じる。
「はいですって!キャハハハ、何、人間の返事をしてるのよ、犬ならワンでしょ、わん」
もはやスカーレットの言葉に抗う術をマイヤーは持っていなかった…だから…。
「ワン…」
こうしてローレシアの王子は狡猾な蛇の罠に落ちたのだった。

ともかくスカーレットはもったいぶって注射器を出すと、ようやくマイヤーに注射を始めるが、
薬剤が半分まで血管の中に入ったのを見て、素早くマイヤーの腕から注射器を引きぬく。
147Foxy Lady&Sadness Prince:03/06/26 21:28 ID:cjo+IefN
「どうして、どうして全部打ってくれないんだ!!」
まるで目の前で餌を取り上げられた犬のようにわめくマイヤー、
「いいわよ?全部打ってあげても、でもねぇ…条件があるのよ、それはね…私のためにたくさん殺してらっしゃい、
 そしたら残り半分を打ってあげるわ」

それを聞くなりマイヤーは獣の叫びを上げながら砂浜へと飛び出していったのだった。

そしてまた場面は砂浜に戻る。
ふーふーと鼻息荒く斬撃を繰り返すマイヤー、それを受け止めるのが精一杯のライアンだったが。
わずかな隙を見つけると、斬撃をかいくぐり間合いを置く事に成功する。

「いかなる理由があるのかはわからぬが、今はお主の手にかかるわけにはいかぬ!」
ライアンは剣を構え、今度は自ら仕掛ける体勢を取る。
「刃向かうならば討たせてもらう、許せ!」

それを見送るスカーレットだが、その表情は思ったより冷静だ。
薬の残りはあと数回分だ…しかも思ったよりも効き目が早い、あのガキを操れるのも1日が限度か…
「とりあえず早急に次のプランを考える必要があるわね」


【スカーレット 所持武器:麻薬(残り3回と半分) 現在位置:U-09 (漁師小屋)
第一行動方針:マイヤーを麻薬漬けにし、利用する 】
(床に垂らしたのは水です)

【マイヤー 所持武器:バリアブルソード 現在位置:U-11 第一行動方針:人を殺して薬をもらう 】

【ライアン 所持武器:のこぎり刀 現在位置:U-11 第一行動方針:この場を切りぬける 】
 
 眠りに落ちる前―――か、もう眠ってて、夢を見てるのか。
 どっちでもいいけど。
 わたしの頭に、大部屋での出来事がリプレイされていた。

 そこでわたしは、チョコボ頭の彼を見つけた。
 胸が躍った。
 さっきまで恐ろしくて震えていたのがウソみたいに止まった。 
 クラウドはわたしの記憶より少しやせてて、ちょっと瞳が優しくなってた。
 涙が出た。嬉しくて、嬉しくて。
 
 や、クラウド!!
 わたしがいなくて淋しかったー?

 いつものわたしらしく軽く声をかけようと彼に近づく。
 震える体と滲む涙を押さえて、そう、陽気に。
 胸がときめく。
 それだけで、ああ、生き返ったんだなって、命を実感して。
 手を上げ、口を開こうとして。
 その瞬間、わたしは気付く。

 ―――クラウドのとなりに、ティファがいた。

 ティファはわたしの知らない顔をしてた。
 一緒に闘ったアバランチ闘士の顔じゃなかった。
 女の顔だった。
 クラウドはティファの肩をぎゅっと抱き寄せ―――何かを呟き。
 ティファは安心した様子で、クラウドの胸に頬を寄せた。
 
 これはなに? どういう冗談?

 ティファはあんな態度取る子じゃなかったはず。
 やきもち焼で、我慢強くて、恥ずかしがりやで、奥手。
 人前で自分の弱さを見せ、男に甘える子じゃなかった。
 クラウドもあんな態度取る人じゃなかったはず。
 クールで、ナイーブで、ぶっきらぼうで、鈍感。
 女の子の気持ちを、あんなふうに察してあげる人じゃなかった。

 2人の手が重なった。視線が重なった。心だって、きっと重なってる。
 目を反らせない。反らしたいのに。あんな光景、見たくないのに。

 あははー……。
 わたしは笑った。恋人同士のような2人を見て。
 人って、凄くショック受けたときって、笑っちゃうんだなーとか、
 ぼんやり考えながら。

 そっかー。
 わたし、死んでたんだもんね。
 その間になんかあってもおかしくないよ。
 ティファがクラウドのこと好きだってことは知ってたし。
 ティファいい子だし。
 全然……自然なことだよ。

 ―――世界がゆがみ、暗転。―――

 天地のわからない暗く果ての無い空間に、わたしは漂う。
 ううん。わたしはそこにいない。カメラ視点で見る夢に移ったんだ。

 その闇の夢の登場人物は、あのころの仲間たち。
 ケット・シー、ユフィ、ヴィンセント、ティファ、スコール。
 そして―――わたし、エアリス。
 みんなは『エアリス』を囲んでて、『エアリス』はとても悲しそうにしてた。
 わたしは、彼らの会話に耳を傾ける。

「エアリスさん、なに今更になってのこのこでてきますんや?
 あんさん、恥ゆーものを知らんのでっか?」
「そうだな……現実的な話、先の戦い半ばにして脱落したお前と、
 最後まで戦い抜いた我々とでは、能力差が有りすぎる」
「そーそー。ぶっちゃけ足手まといなわけ。
 エアリス守って誰かが怪我したら、割に合わないじゃん?」

 かつての仲間たちが口々に『エアリス』を責めてた。
 言葉は酷いけど、それは真実だからこその残酷さ。わたしにはわかる。
 『エアリス』は言われるがまま。震え、俯き、怯えてる。

「みんな、言い過ぎよ。わたしたち仲間じゃない!!」

 ティファが怒鳴った。『エアリス』はほっとした表情。でも、わたしは気付いた。
 ティファは「言い過ぎ」って言った。「間違ってる」って言ったわけじゃない。
 彼女の瞳には余裕と憐れみ。それは自信の顕れ。

 私とクラウドの心は強い絆で結ばれているのよ、と。
 だから仮に戻ってきても、あなたの望みは叶わないのよ、と。
 可哀想な『エアリス』を迎え入れてあげましょう。そういうことだ。

 この夢は―――私の不安が産んでるんだ。
 もしこのゲームでクラウドに再会したとして、仲間と合流したとして。
 こんなことになるんじゃないかって、不安で不安で仕方が無いんだ。

「むー、じゃあ、ここはリーダーのクラウドに任せるよ」

 不満げにユフィが言い、仲間たちが同意する。
 『エアリス』は救いを求めるようにクラウドを見上げる。
 クラウドは―――

「エアリスはどこか安全な場所で隠れていてくれ」

 苦しげに呟き、『エアリス』から顔を背けた。
 『エアリス』は絶句。絶望の表情のまま固まる。
 やっぱりそうなるか。私は妙に納得。

 ユフィが「これできまりね、」と軽い口調で言い、消えた。
 ケット・シーが「世の中そんなもんでっせ、」と知った風な口を叩き、消えた。
 ヴィンセントが黙って消えた。
 ティファが『エアリス』の肩に手を置き、哀れみの眼差しを向け、消えた。

「俺には、ティファがいるから」

 クラウドが言った。このままでは彼も消えてしまう。
 『エアリス』はクラウドの足にすがり付いて泣いた。泣いて訴えた。

「クラウド。もうべたべたしない。あなたのことは諦める。
 ただの仲間でいい。足も引っ張らない。邪魔にならない。
 だから、だから、だから―――」

 クラウドは目を合わせぬまま、低い声で「すまない」と呟き……
 そして、消えた。

 誰もいない、闇の中で、『エアリス』は叫んだ。
 わたしも一緒になって叫んだ。

「「クラウド、わたしを置いてかないで!!」」


「起きなさい、哀しい夢から覚めるの、早く」

 揺すられていた。見ず知らずの、30歳くらいのお姉さんに。
 始めはまだ夢の中かなって思ってたけど、
 頬を伝わる涙の熱さに、ああ、これは現実なんだ、って気付く。

「よかったわ……
 あんまりうなされてたから毒か呪いでも受けてるかと思ったけど、
 体のほうは大丈夫みたいね」
「あの、どうもありがとうございました。でも……どうして?」

 どうしてこのお姉さんは見ず知らずのわたしを助けたんだろう。
 考えてみれば眠りこけてうなされてるなんて、すごく間抜けてる。
 強制殺し合いゲームに参加させられてるのに。

「あなたの寝言が、あんまり哀しかったから―――かな。
 『もうべたべたしない、あなたのことは諦める』とか、
 『クラウド、わたしを置いていかないで!!』とか……」
「やだっ……わたし、そんな恥ずかしいこと言ってたんですか!?」
「恥ずかいことじゃないよ。とても哀しいことだよ」

 慌てふためく私に、お姉さんはとてもシリアスに言葉を返した。
 空気が重い。

「話してごらんなさいな。あなたの悪夢を。
 きっと私なら、受け止めてあげられると思う」

 わたしは躊躇いながらもぽつりぽつり、さっきの夢をお話した。
 始めは言葉を選びながら。やがて、感情を乗せて。
夢の話だけに止まらなかった。後から後から言葉がこみ上げて。
 話をしてないとどうにかなりそうだった。
 最後には、溢れる思いを、整理しないいまま。
 愛しさ、切なさ、淋しさ、悔しさ、恐怖、渇望、無力感、恨み、妬み。
 自分でも何言ってるのかわかんなかった。
 それでも喋った。口を閉じることが出来なかった。
 お姉さんはそんなわけのわかんない私の言葉を、全部聞いてくれた。

 わたしが全ての言葉を吐き出したとき―――ぽたり。
 手の甲に、熱いものが零れた。ぽたり、ぽたり。
 お姉さんが泣いてる。
 目が合う。ぎゅ、っと抱きしめられる。痛い。とても強い力。

「あなたと私は、似ている」

 お姉さんが、噛み締めるように囁く。

「あなたと私は、似ている」

 繰り返す。
 わたしもお姉さんを抱き返した。強く。
 私を繋ぎとめる力。私が受けとめた力。体と体で、お互いの心を感じあう。
 そう、わたしとお姉さんは―――似ている。

「私たちはその人のことを好きでもいいの。私たちはその人を求めてもいいの。
 障害なんて踏み越えればいいの。
 それは罪じゃない、躊躇いはいらない。資格も要らない。権利なんて必要ない。
 愛することに怯えなくてもいいの!!!」

 ああ―――それは、わたしがわたしに掛けたかった言葉。
 こんなにも、わたしをわかってくれる人が、いる。
洞穴に光が差し込む。空はだいぶ白んできていた。日の出まであと少し。
 私たちは肩を並べてそこを出る。

「私、エアリスがクラウドに会えるよう、お手伝いするよ」

 お姉さんが笑顔で言った。
 わたしも答える。
 
「わたしも頑張るから、お手伝いさせてね。
 あ、そういえばお姉さんの探してる人って?」
「リュカ、っていうの」

 彼の名前を口にしたとき―――
 お姉さんの目が般若のように見えたのは、きっと目の錯覚。
 背中に痺れるような悪寒が走ったのは、きっと寒さのせい。

「さ、行きましょ。私たちの愛を、取り戻すために」


【エアリス 所持品:手裏剣×20 現在位置:K-06 洞穴 】
 第一行動方針:かつての仲間たちとの合流 第二行動方針:ビアンカに協力
【ビアンカ 所持品:? 現在位置:K-06 洞穴 】
 第一行動方針:リュカに合流 第二行動方針:クーパー殺害 第三行動方針:エアリスに協力

 エアリスはビアンカの第二行動方針(狂気)を知らないということでお願いします。
156わたしをわかってくれるひと。:03/06/27 01:46 ID:7JzWWj5i
訂正です。

>>150 8行目
×ケット・シー、ユフィ、ヴィンセント、ティファ、スコール。
×ケット・シー、ユフィ、ヴィンセント、ティファ、クラウド。
157爆裂ハッサン!:03/06/27 03:59 ID:U013FsI5
「おおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
ハッサン青年は雄たけび高らかに、疾走しておりました。
彼の鼻からはどばどばと鼻血があふれて出しております。
驚くべきことに、彼の向かう先は、出発地点、南の祠でありました。
彼の胸中は焼けんばかりの怒りに満ち満ちております。

実は、始めはこのハッサン青年、大変萎縮しておりました。
いたいけなビビ少年のそれはもう哀れな死に方を見まして、睾丸が縮み上ったのであります。
ですので、出発の時、ハッサン青年は逃げました。
命がかかっておりますからそれはもう必死でありました。
逃げて逃げて、全速力でがむしゃらに疾走しておりましたので、
普通ならすぐ息が切れてしまいますところでありますが、
そこは体力バカで名を売るハッサンでございます。
2時間近くも休憩無しに走りつづけたのでありました。

息を整えるため休憩を取り、ついでに3日分の配布食料をがつがつと食い尽くし、
3日分の配布飲料をがぶがぶと飲み干し―――人心地つきましたらば。
ハッサン青年は、はて、この状況は一体どうしたことかと頭を抱えたのであります。
あのとき、なぜおしろいケケケ野郎をぶん殴らなかったのであろうかと。
あんなムカツク面にムカツク声にムカクツ態度のいけすかねえ野郎を野放しにしたのであろうかと。
なんで俺はキ○タマ(お下品でしたので伏字とさせていただきました)縮み上がらせているであろうかと。

彼は腹を立てたのであります。
結果、弱気な自分の顔面に拳で気合をぶっ込んだのであります。
ぶばああああっっ、と血気盛んな彼らしく豪快に鼻血が飛び散りました。
それによって、休憩と食事のお陰で冷えた彼の頭は、また沸騰いたしました。
今度は恐怖のためではなく、怒りの為にでございます。
158爆裂ハッサン!:03/06/27 04:02 ID:U013FsI5
それで、今――走っているのであります。

もう、今の彼は怒りの火の玉さながらでございます。
祠の兵士どもをぶん殴ってふん縛ってボコしてイワす。
それでおしろいケケケ野郎のところに案内させて、ぶん殴ってふん縛ってボコしてイワす。
ハッサン青年はもう、そのことしか頭にございません。
死ぬとか生きるとか、首輪がどうのこうのとか、そのへんの事はすべて頭から吹っ飛んで、
純粋な怒りに身を焦がしているのであります。
体力バカは、シンプルゆえに体力バカなのでありますね。
好ましくも愚かしい性質であります。

「どりゃあああああ!!」
さて、その激走の果て、往路と同じ2時間あまりをかけまして目的地にたどり着き、
気合十分、掛け声勇ましく握り拳漲らせ祠に殴りこむハッサン青年でございますが――





――数秒後、祠が爆発いたしました。
159爆裂ハッサン!:03/06/27 04:02 ID:U013FsI5
「うおおおおおおっっっ?」
衝撃で空中を舞うハッサンには、自分の身になにが起きたのかまるでわかっておりません。
実は全ての参加者を吐き出し終えた祠は、監視員が全員ルーラで撤退しましたらば、
発破によって破壊処理されることになっていたのであります。
説明時に祠に近づかない方がよいと説明されたのは、このためだったのでありますが、
そのような含みを持った言い回しでは、このハッサン青年に理解できるわけがなかったのであります。

ハッサン青年は高さにして3メートル、距離にして約7メートルも吹っ飛ばされ、
その後も何度かバウンドしつつ10メートルほど転がりました。
炎に巻かれる前に爆風に吹き飛ばされましたので、火傷はたいしたことはございません。
トレードマークのモヒカンがモヒカンアフロになった程度であります。
ただ―――爆弾、地雷はここが怖いのでありますが、
衝撃で炸裂する祠の建材が、マシンガンと同じ勢いで飛び散るのであります。
ハッサン青年も、その洗礼を全身に浴びておりまして、体中に突き刺さった石辺なぞは、
それはもう痛々しいの一言に尽きるわけであります。

通常の参加者でありましたらすでに即死決定のこの状況、
しかしそこは、バトルマスターとまで言わしめる鍛え上げられた肉体の持ち主、ハッサン青年であります。
運良くと申しますか運の無いことにと申しますか、兎に角、何とか持ちこたえたのでございます。

よほど悔しかったのでありましょうな。
ハッサン青年は仰向けに天を仰ぎ、両手足をだだっこのようにばたつかせました。
「がああああああっっ!!」
そして大声で吠えますと、そのまま白目を剥いて気絶したのであります。


【ハッサン 支給武器:無し 位置:F-16 祠の跡】
 第一行動方針:ケフカ(主催者)をぶん殴る
 ※重態、気絶。 アイテムの一切は焼失。
>>109
不適切表現のに以下の通りに修正
――――――――――――――――――――――――――――

――愛しのあなたは 遠いところへ  ――
――色あせぬ永久の愛 誓ったばかりに――
――悲しい時にも 辛い時にも    ――
――空に降るあの星を あなたと想い ――

南方に位置する海岸で星空を見上げ、セリスはいつかの劇場を思い浮かべていた。
思えば、ロックに想いを抱き始めたのはあの時だった。
セリスは目を閉じ、愛しい男の優しげな笑顔を思い浮かべる。

私はいままで十分幸せだったと、セリスは思い出を噛み締める。
ガストラの野心の道具でしかなかった自分が、恋という幸福を得ることができたのは、ロックのお陰だ。
だからこそ、彼に恩返しをしたい。
その思いから、セリスはゲームに乗った。
自分が生き残るためではなく、ロックを生き残らせるために。

セリスは近づいてくる男の声に気付き、防砂林の一本に身を隠す。
歩いてきたのは、2人だった。
思案したのち、静かに男たちの背後に回りこむ。
潮騒が彼女の足音を包み込み、労無く魔法射程距離まで近づくことに成功。
「ライブラ、ライブラ」と、セリスは小声で2度魔法を唱える。

  ※名前:バッツ ジョブ:シーフ 体力:低め 魔法:無し 弱点:無し……
  ※名前:ギルガメッシュ 体力:多い 魔法:プロテス、ブリンク、シェル 弱点:無し……

セリスはしばし情報を咀嚼、 勝算を十二分に感じつつ、剣を持つギルガメッシュに向かい唱えた。
…バーサク。
>>110
――――――――――――――――――――――――――――

「…どうしたギルガメッシュ?」
「なんか、急に体がカッカしてきてよ…なんかイライラする、スカッとしてえぜ、スカッと」
「ストレスにやられたのか? お前、見た目と違って結構繊細なのな」

海岸を西へ、半島の先にある塔を目指して、バッツとギルガメッシュは歩みを進めていた。
先のエクスデス戦では敵味方にありながら、妙に気になる相手として意識しあってきた2人は
もともとウマが合う性格だったらしく、既に旧友のような気安さでお互いに接していた。

「……フュ」
ここちよい海風が止まり、潮が凪いだ瞬間、バッツは背後で小さな女性の声を聞いた気がした。
誰かがいる。
バッツは、相棒に注意を促す為に肩に手を置いた、その瞬間。
バッツの肘から先が血飛沫を上げ、空中に舞った。

ギルガメッシュが振り上げた鋼鉄の剣に、鮮血がからんでいた。
バッツは肘を押さえ、よろめく。
「ギギギギ」
口から泡を吹き、目を血走らせ、ギルガメッシュはバッツに踊りかかる。
もんどりうって転がるバッツ、ジョブがシーフであったことが幸いし、
すんでのところでギルガメッシュの飛び込み袈裟斬りを回避できた。
バッツは砂まみれになりながらシーフの妙技、「とんずら」を発動。
北に向かって駆けた。

「ガウ?グウウウウ…」
攻撃対象をロストした狂乱のギルガメッシュは、しかたなく目的を変更、
水際に戯れるフナムシを踏み潰しにかかった。

――――――――――――――――――――――――――――
>>111,>>112,>>113はそのままです。 お目汚し失礼。
ミレーユは所持品が腕輪だと確認すると外に出た。
祠を出たすぐの森は、木々の梢が風にゆられる音が響いて、騒がしかった。
もっとも、神経が過敏になっているからそう思えたのだろう。
ごくわずかな音が過剰に聞こえるほど。
深夜の森はもの言わぬ精霊たちの安らぎの場であり、神秘に包まれた深い静寂の場所なのだ。

森の中を歩きながら空を見上げると、葉と葉のあいだから星が見え隠れしていた。
ミレーユは星々がずっと輝きを失わずにいられるのは、素晴らしいけど切ないと考えた。
すぐそばに自分と同じように輝く者がいるのに、決して手をつなぐことができない。
自分はここにいる、お前のすぐ隣だと主張しているのに。
それが続く。永遠とも思える永い時間……

ここにはイザもバーバラもチャモロもアモスもいないことを知っていた。
ならば自分一人で死のゲームに立ち向かわないといけないことになる。
…何となくわかるのだ。背中が寒い。

考えながら歩いているうちに森の様子は大分様変わりしていた。
背の低い木が増え、森の出口が近づいている。
気にせずにミレーユは思考を続ける。
一人だけしか生き残れないなんてふざけてる、だから
全員は無理でも、できるだけ多くの人間が生き残る方法を見つけなければいけない。
でも今は誰も、見知った仲間がいない。
私一人ではやはり……

そうだ、テリーに頼ろうか。身近すぎてミレーユは忘れていた。
大広間で弟の気配を感じていたのを思い出した。
あのとき弟は自分を追い求めていたような感じだった。
だが結局来なかった。
すぐ傍にいたのに、手が届かなかったんだろうか。
じゃ私たちは星と同じか。これから先、もどかしい思いをしなくてはならないのだろうか。
ミレーユは歩きながら考える。そしてまた別のことを思い出す。

……あ、ハッサンもいたような

【ミレーユ 現在位置 E−14 所持品;強打の腕輪(攻撃力4倍打撃)
 行動方針:状況次第で変わる
164ホスピス:03/06/27 19:12 ID:U013FsI5
地点B−16にあたる物寂しげな岸壁の上に、朽ちた小さな教会があった。
天井は破れ床は埃にまみれステンドグラスは色を失っている廃屋。
その祭壇に向かって、膝を降り祈りを捧げる、1人の女性の姿があった。
彼女は教会に似つかわしくない黒魔道士の装束を身に纏っていた。
目深に被った三角帽子の端から、綺麗に切り揃えられた桃色の髪が顔を覗かせている。
タイクーン王女、レナである。

祈りを終えたレナが、自らのバッグパックを開き、白いラッパ形の機械を取り出す。
レナの配布品、拡声器であった。
添付された説明書きによると、その効果範囲は通常3へクス。
しかし、MPを10消費するごとに範囲を1へクス広げられる拡張機能が備わっている。
レナは熱心に地図を確認し、へクス数を確認。
自らのメッセージを島全域に届けるべく、大量220ものMPを使用し拡声器に口を寄せた。


「みなさん、聞いてください」
165ホスピス:03/06/27 19:24 ID:U013FsI5
「私はレナ。レナ=シャーロット=タイクーン。このゲームの参加者の1人です。
 私には皆さんに伝えたいことがあります。
 聞いてください。そして、考えてください。

 皆さんは死ぬのが怖いですか?
 私は怖くありません。
 ご存知の方も何人かいると思いますが、実は昔、私は死んだことがあるのです。
 ですから、死というもも、死後の世界というものを語ることができます。

 以前、私は強大な敵との戦いのち力尽き、時空の裂け目に取り残されました。
 そこで死を迎えたのでした。
 死の世界は安楽の世界です。
 そこには争いはなく、競争もなく、ウソもなく、裏切りもありません。
 全ての魂が溶け合い、交じり合い、一つの大きな魂となるのです。
 しかし、意識さえすれば、自我を持つことも可能です。
 わたしはそこで、非業の死を遂げた父に会いました。
 父の仲間に会いました。旅の仲間に会いました。
 私は結局、彼らの導きと仲間の呼びかけにより大樹の下で復活しましたが、
 死後の世界ほどの安らぎは、その後、何処にいても何をしても
 得られませんでした。

 再び、お聞きします。
 皆さんは死ぬのが怖いですか?
166ホスピス:03/06/27 19:31 ID:SBOu1PHO
 先ほどの私の話を聞いてなお、殆どの人は怖いとお答えになるでしょう。
 しかし、私は違うと思います。
 皆さんが恐れているのは、死、そのものではありません。
 死に付随する、痛み、苦しみ、無知、不可逆性、パーソナリティーの喪失を、
 死と混同して恐れているのです。
 純粋な死と、それらを切り離して考えてみてください。
 恐れることなど、何もないのです。

 私は戦いません。私は抗いません。私は逃げません。
 この教会で静かに一日を過ごし、明日の夜明けと共に、自らの手で天に還ります。
 自らの魔法、デスで。
 私は安楽な死を望むものです。それ以外何も望んでいません。
 ですからゲームに乗った皆さん、主催者の方、お願いします。
 私に、この教会に、近づかないで下さい。

 そして、私の話を聞いて、戦いの愚かさに気付いたかた。疲れた方。怯える方。
 私と共に死にませんか?
 穏やかに一日を過ごして、心安らかに還るべき所に還りませんか?

 お聞きくださってありがとうございました。
 それでは皆さん、良い終末を」


【レナ(黒魔道士) 所持武器:拡声器 現在位置:B-16 忘れられた教会 】
 第一行動方針:安らかに一日を生き、明日の日の出とともに自殺
 
 ※レナのMPは残り1/4程度。
167戦うべき理由:03/06/27 20:49 ID:zl1/ekoE
あのスライムナイトめ……。
テリーは歯噛みする思いで森の中を歩いていた、例の飛び道具は数発試し射ちをしただけで、
動かなくなってしまった、迂闊な事に予備の弾を奪うのを忘れていた、いや、奴が意図的に渡さなかったのかも
しれない。
まぁいい、ともかく欲しいのは剣だ。
テリーは次の標的を求めて森の中をさまよう、と、木陰に荷物が置かれているのが分かる。
そしてそこから離れた場所には女性の死体が放置されている。

「死んでいるのならば俺が有効につかってやるのもありだな」
テリーは女性の荷物を物色する、そこから出てきたのは…。
「両手剣か…」
折角盾があるというのに…しかし待望の剣が手に入った、これでやれる…。
自分が戦えばそれだけ姉さんの生き残る可能性は増える、その考えはゲームが始まってからずっとあった。
剣技には自信がある、少なくともこれに関してだけは他人に遅れを取らない自負があった。
それにテリーの胸には戦いへの湧き上がる情熱がほとばしっていた…それはすでに押さえられなくなりつつあった。

やがて森を抜けると入り江に出る、東の空はもう白みはじめている…夜明けも近いようだった。
「朝か…」
視線を西に移すと、入り江の対岸で佇む黒い剣士の姿が見える。
初戦の相手には不足は無さそうだ。ならあれにするか…。
テリーは入り江を迂回して対岸に出ると、岩場に座りこんでいる剣士に向かって声をかけた。
「俺と戦え」
168戦うべき理由:03/06/27 20:50 ID:zl1/ekoE
レオンハルトは少しずつ明るくなっていく東の空を見ながら、ミネアの帰りを待っていた。
ちょっと用を足してきます、といったきりどこに行ったのやら。
と、そこにいきなりそこにテリーが戦いを挑んできたのであった。

「ほう…」
レオンハルトもまたテリーの物腰を確認する、かなりの使い手…相手に不足無しか。
だが脳裏にミネアの言葉が甦る。
(今のあなたには、だれも殺せません) 
いや、そんなはずは無い、今の自分はパラメキアの暗黒騎士レオンハルトだ…いまさら戦いを拒むわけなど、
存在し得ない。
レオンハルトは心の中の疑念を振り払うように立ちあがる、そこに。

「すいません遅くなってしまって…用を足していたら足を滑らせて海に落っこちてしまって」
またしてもずぶぬれの姿でミネアが現れるのだった。

ミネアはさも当然のように2人の間に割って入る。
「いけません!戦っては…戦えばあのピエロの思うつぼですよ」
「だが戦わなければ、俺もそして姉さんも死ぬことになる……」
「それこそが奴らの狙いです、大切な何かを背負っているのはあなただけではないのですよ!」
テリ−は不敵に微笑む。
「ならその思いが1番強いものが生き残るんだろうな…俺はそれに殉ずる覚悟がある」
だめだ…この男に話は通じない。
ミネアはレオンハルトを促し、この場から離れようとする、レオンハルトも1時はそれに従おうとしたのだが。

「……」
テリーの呟きに敏感に反応するレオンハルト、あからさまな挑発と分かっていても剣士としてのプライドが
無視を許さなかった。
「今、俺が弱いと言ったな……?」
169戦うべき理由:03/06/27 20:51 ID:zl1/ekoE
テリーの方へと振り返り、その目を睨みつけるレオンハルト。
「少なくともその腰に下げた剣が、ただのアクセサリーだということは良く分かった、腰抜け」
薄笑いを浮かべレオンハルトの視線を受け止めるテリー、まさに一触即発だった。
「待ってください」
それを止めようとミネアが背後からレオンハルトの肩に触れた瞬間、まるでそこにスイッチがあるかのごとく、
レオンハルトの腕が刎ねあがりミネアの眉間に裏拳が入る。
「うぷ…」
たまらず昏倒するミネア、そしてそれには構わず2人は岩場から浅瀬に出て、お互いの剣を抜いた。
両手剣のため盾を使えないのがやや気がかりだったが、それでもテリーは自分の勝利を疑ってはいなかった。


まだ、ほの暗い海辺に2人の剣士が刃を交える音が響く。
一見して分かるのは剛のレオンハルトと柔のテリーといったところか、
だがレオンハルトのセオリーを完全に無視した攻撃剣法に、テリーは徐々に押されつつあった。

それを心配気に見守るミネア、レオンハルトの方がテリーと比べて技術・経験ともに、
優れているのは見て分かった、だがそれでもレオンハルトは勝てないだろう、何故なら…。

「ぐっ!!」
やがてレオンハルトの一撃がテリーの手から剣を弾き飛ばす、さらに間髪入れずに足払い、
成す術もなく転倒するテリー、そして止めの一撃がテリーの頭上へと振り下ろされる。
(姉さん…)
観念するテリー…だが、その一撃はいつまで経っても振り下ろされることはなかった。
何故なら、その剣先はテリーの頭上数センチのところで停止していたからだ。

一方のレオンハルトは明らかな狼狽の表情を浮かべて、微動だにしない自分の剣先を凝視していた。
これまでも数え切れぬほど繰り返してきたことだというのに、何故だ…何故動かない?殺せない?
そして頭の中にまた例の言葉が甦る。
(今のあなたには、だれも殺せません)
170戦うべき理由:03/06/27 20:52 ID:zl1/ekoE

「そういう事か、やはり腰抜けだな」
その時レオンハルトのみぞおちにテリーの足が入る、思わぬ反撃に体勢を崩し今度は逆にレオンハルトが転倒する。
そこにテリーの刃がつきたてられようとしたその時だった。
「バギ!」
突如起こった一陣の疾風、テリーは舌打ちしてその場を離れる。
それが晴れた時にはレオンハルトの傍らには彼を守るように先程の女性が立っていた。

「最初は戦いを止めておいて、今になって加勢するのか?」
明らかに不満げな態度を見せるテリー。
「この人には無理でも、私はあなたを殺せますよ…」
ミネアも負けずに言い返す。

さて、どうする?
テリーは思案をめぐらせる、見たところこの女はバギ系の呪文に加えて、回復呪文をも使いこなすようだ、
腑抜けとはいえ、あの男も侮れない…盾が手元に無いのが悔やまれる、仕方が無い、ここは引くか。
「まぁいい…放っておいてもお前らは勝手に死ぬだろう?姉さんを傷つける事も出来ないだろうしな」

テリーは荷物を拾うと、彼らとは反対側、つまり南西の方角に向かおうとする、そのテリーをミネアが呼びとめる、
その手にはトランプが数枚握られていた。
「あなたに災いの影があります、このまま進むのはやめた方がいいでしょう」
「俺は姉さんの占いしか信じない、それより自分たちの心配でもしていろ」
捨て台詞を残してテリーは去っていった、後に残された2人…レオンハルトがようやく口を開く。
171戦うべき理由:03/06/27 20:57 ID:sMPH1AuD

「お前は俺がこうなるのが見えていたのだな……」
ミネアは無言で頷く。
「戦う事もできず、だからと言って死ぬ事も出来ない…俺には何も残されていない、ならばどうすればいい!!」
「それはあなたが決めるべきことです、占い師は道を示すことはできても、それを選ぶのは本人の決断でなければ
 ならないのです」
冷然とした表情でミネアは続ける。

「私は全ての戦いを否定するつもりはありません…ただ誰かの掌で操られ戦うのではなく
真に戦うべき理由、そして倒すべき敵を見出してほしいのです…それは占いではわかりません
あなたが自分で見つけるしかないのですよ」 

その言葉を虚ろな目で聞くレオンハルト…彼に再起の時は訪れるのであろうか?

【レオンハルト:所持アイテム:ディフェンダー 現在位置:J−02(バンガロー跡地)】
第一行動方針:?
第二行動方針:フリオニールを弔う

【ミネア:所持アイテム:プラチナソード 現在位置:J−02(バンガロー跡地)】
第一行動方針:レオンハルトについていく
第二行動方針:戦いを止める
第三行動方針:自分のレオタードを探す

【テリー 所持武器:太刀(両手持ち)コルトパイソン(弾丸なし) 山彦の盾 
 現在位置:L-05から南西に
第一行動方針:姉(ミレーユ)を探す・ミレーユのために戦う】
172訂正:03/06/27 20:58 ID:sMPH1AuD
【レオンハルト:所持アイテム:ディフェンダー 現在位置:L-05】
第一行動方針:?
第二行動方針:フリオニールを弔う

【ミネア:所持アイテム:プラチナソード 現在位置:L-05】
第一行動方針:レオンハルトについていく
第二行動方針:戦いを止める
第三行動方針:自分のレオタードを探す

173まりりんLv9:作戦名『すぽて』:03/06/27 21:49 ID:7JzWWj5i

社会人の一日当たりの平均歩数は約8000歩。
フルマラソンの平均歩数は31000歩だという。

先ほどレベル9に上がったばかりのまりりんは、自分の歩数を計算する。
4467歩―――
しあわせのくつを履いてからどのくらいの時間が経ったのか、
はっきりとは判らないが日の出を6:00とすると、
空の白み具合からして4時間ほどか。

最初の4レベルはあっという間だった。
ハイになった頭で「あはー! 行け行けまりりん、目標イオナズン!」と
鼻息荒くしていた彼女だったが、その後、加速度的に時間の
かかるようになったレベル上げに、勢いをめっきり失っていた。

しばし休憩。
まりりんはレベルアップにかかる歩数の試算をする。
イオナズン取得はレベル38。必要EXPは705,720。
累計にして5,438,736EXP。
「ごひゃくよんじゅうさんまんはっせんななひゃくさんじゅうろく
 いぇっくすぴぇーりめんと」
口に出して途方もない数字を再確認。平均歩数8000で割ってみる。
約680日。……2年近く。

「ルイーダさん…… まりりん、目標はイオラまで下方修正します……」
それでも無理がありそうね、と心のルイーダさんは結構厳しいことを言った。
「それじゃあまりりん、餌食確定?少女は蕾のままに散りぬるを?
 なんとかして、ルイーダさん!!」
じゃあ知恵をお絞りなさいな。まりりんあなたは賢者でしょう、
と心のルイーダさん。
「そっすね。まりりん賢者ですから、とんちは鮮やかだよ一級品ですもんね」
174まりりんLv9:作戦名『すぽて』:03/06/27 21:51 ID:7JzWWj5i

そこでまりりんは知恵を絞った。
歩きながら絞れば少しでもEXPを稼げるものを、座り込んだまま考え込んだ。
30分余り考え抜いたが、浮かばない。
「ブルーな気分はおセンチでアンニュイ……」
にわか賢者はすぐ行き詰まり、思考を投げた。

しばし放心するまりりん。その目の前にいつのまにか赤い小さなカニがいた。
彼女は苛立ちを紛らわすため、そいつを脅かしてやろうと地面を叩く。
カニにとっては地震並みの衝撃だったのだろう。
慌てふためき、右に左に踊るように飛び跳ねた。
「おやー?」
そのカニの様子を見て、まりりんはにわかに閃いた。
「スポーツテスト!」

まりりんが思い出したのはスポーツテストの中の1種目、反復横跳びだ。
張られた3本の線をまたいでカニステップする、例のアレ。
まりりんは自分の記録を思い出す。
彼女はかなり鈍い方だったが、それでも20秒あたり38歩の記録が出ている。
1分に換算して114歩。1時間に換算して6840歩。

理論値は理論値でしかない。
でしかないが、疲労をホイミでカバーすれば、
理論値に漸近できるのではなかろうか?
「これ!これよこれ!」
海沿いをちまちま散歩してるよりずっといい。
まりりんは飛び上がって体で喜びを表現。
年齢にそぐわぬ巨乳が勢い良く弾んだ。
175まりりんLv9:作戦名『すぽて』:03/06/27 21:51 ID:7JzWWj5i

まりりんはさっそく足場の良い土の地面まで移動した。
「いっくぞ〜〜〜!」と気合を入れ、前傾。両手で尻をぱんぱんと叩き、開始。
ぺたこんぺたこん、彼女なりに一生懸命に横跳ぶ。
たわわな乳房が大きく揺れ、脂の乗った尻もぷりぷりと躍動すしている。
息が上がってくると、これは年相応の少女の愛くるしい顔が上気し、
苦しげで切なげで無駄に色気のある吐息をあはーんと吐き出す。
今、男性参加者に発見されたら別の意味でマジヤバイ。

ちゃらららっちゃっちゃっちゃーん♪

が、結局誰にも見つからず開始後25分、靴が高らかにレベルアップを告げた。

「ぁはぁん、ひぃん、ぃふぅん……」
まりりんは語尾にハートマークがつきそうな乱れる息でホイミを唱える。
呼吸が整い、筋肉に溜まった乳酸物質が消え去る。
彼女はこのレベルアップまでの間、既に4回、ホイミを唱えていた。
これはMPに優しくない方法なのではなかろうかと、彼女は試算してみる。
次のレベルアップは3,999EXP。ホイミ8回。
その次は6,047EXP。ホイミ11回。
……MP尽きるっちゅーの。

「とほほ…… まりりん、やっぱりコソコソ歩き回るしかないのねー」
人間堅実が一番よ、と心のルイーダさんが慰めてくれた。


【まりりんLv10 所持武器:しあわせのくつ 現在位置:H-02 平地 】
 第一行動方針:コソコソ歩き回ってひたすらレベルアップ
176【 追記:ホスピス 】:03/06/27 23:30 ID:U013FsI5
レナのメッセージはAM5:55分頃、日の出のタイミングで流されました。
177死の実況中継:03/06/27 23:59 ID:u0o1thtF
放送からしばらく経ったころだった、教会の扉が開け放たれる。そこに立っていたのは屈強な男だった。
「あなたも殺し合いがいやなのですね…安心してください、先程も言った通り死ぬことは…」
それに気がついたレナがにこやかに迎える、だがその瞬間、ポケットの中に入れていた男の…、
ダインの左腕が閃く。
ガガガッ!!
左腕のバルカンから放たれた銃弾は3発、そのうち1発がレナの脇腹を、2発は太股を貫通していた。

「ああああああっ!」
溢れる自分の血液と激痛に半ばパニック状態のレナは無様に教会の床をはいずりまわる。
ダインは自分の傍らに落ちていた拡声器を持つと、それをレナの口元に当てさらに銃撃を続ける。
ガガガッ! レナの両手の指が砕け散る。
「うううっ……ああああああああっ!!」

そしてレナの凄まじい悲鳴が島中に響き渡る。
「どうして…私は…ただ安らかな死を迎えたいだけなのに…」
ダインは一旦拡声器をレナの口から離すと、その耳元で叫ぶ。
「安楽な死など存在しねぇ!!そんな物を俺は認めない!!みんなみんな炎の中で苦しんで悶えて
 死んでいったんだ!!」
ちなみに北に向かおうとしたダインだったが、森の中で迷っている最中に例の放送を聞いたのである。
そして怒り心頭で乗り込んだわけだがそれはさておき、
ダインはレナの口元にまた拡声器をあてると、レナの腹の傷口に指を突っ込み、内臓を引っ掻きまわす。

「ぎゃあああああああ!!」
また悲鳴が島中に響き、ダインはまたレナの耳元で囁く。
「苦しいんだったら、素直にそう言え…さあ」
178死の実況中継:03/06/28 00:02 ID:gZBXmi4D
ガガガッ!
また銃声と耳をつんざくような悲鳴…そしてそれが収まったころ、レナのか細い声が響く。
「痛いです…くる…しいです…ううう…」
そこでレナの口から本人も考えていなかった言葉が飛び出した。
「死にたく…ない」
「死にたくない?死にたくないだって?おい皆聞いたか?死後の世界は素晴らしいとか
ほざいておいて、このお姫様は死にたくないって言ってるぞ」
今度は自分自身に拡声器をあててダインはレナを嘲笑する。
そこで一拍置いてダインは高らかに宣言する。

「俺は決めたぞ…俺はついさっきまで俺の村を焼き尽くしたあの女さえ殺せればいいと思っていた!
 だが、今考えが変わった、あの女だけじゃたりねェ!!俺は俺の命が続く限りてめぇら全員に、
 俺の仲間たちが受けたのと同じ苦しみを与えてやる!!まずはこの女だ!!
 一人で死ぬことも出来ない卑怯者のくせに、死ぬことを美化しようとするような奴は1番むかつくんだ!!」

ダインは拡声器をまたレナの口元に置き、わざと急所を外し、
何発も何発も弾丸をレナの身体に撃ちこんでいく。
そのたびに島中にとどろくレナの悲鳴…やがてそれは小さくなっていき、完全に聞こえなくなるまで
それほど時間はかからなかった。

「ちっ!バッテリー切れか」
ダインは拡声器をガンガンと叩く、その足元で蠢くレナはもはや虫の息だ。
「おお、ついたついた」
ダインは拡声器が生き返ったのを確認すると、またレナの口に拡声器を置く。
「最後に言い残す事は無いか…?」
レナは振るえる声で最後のメッセージを送る。
「たす…けて……」
ガガガガガッ
これで本当に放送は終了した。
179死の実況中継:03/06/28 00:02 ID:gZBXmi4D
【ダイン:所持アイテム ハードバルカン(マテリア ?×3)
 現在位置 B-16 忘れられた教会
 第一行動方針:皆殺し】

【レナ 死亡】残り67人
180訂正:03/06/28 00:43 ID:gZBXmi4D
放送からしばらく経ったころだった、教会の扉が開け放たれる。そこに立っていたのは屈強な男だった。
「あなたも殺し合いがいやなのですね…安心してください、先程も言った通り死ぬことは…」
それに気がついたレナがにこやかに迎える、だがその瞬間、ポケットの中に入れていた男の…、
ダインの左腕が閃く。
ガガガッ!!
左腕のバルカンから放たれた銃弾は3発、そのうち1発がレナの脇腹を、2発は太股を貫通していた。

「ああああああっ!」
溢れる自分の血液と激痛に半ばパニック状態のレナは無様に教会の床をはいずりまわる。
ダインは自分の傍らに落ちていた拡声器を持ち、説明書にちらりと目を通す、
ダインの左手につけられたマテリアが輝く。
ダインは改めて拡声器をレナの口元に当てさらに銃撃を続ける。
ガガガッ! レナの両手の指が砕け散る。
「うううっ……ああああああああっ!!」


【ダイン:所持アイテム ハードバルカン(マテリア ?×2 1つはMPアップ)
 現在位置 B-16 忘れられた教会
 第一行動方針:皆殺し】
現在MP0状態です。
>>177後半と>>178は変更ありません あしからず
182おおぼけ:03/06/28 00:54 ID:w6scHCT0
>>138の直後

「ってお前等何時までボケ倒す気だ!」
突如としてバッツが起き上がりギルガメッシュをドつき倒す。
「誰が跳び箱の選手だ!俺がそんな物に青春かけてたらお前と会う事なんざ無かったろうが!」
驚く二人を尻目に更にバッツはいいつのる。
「そもそも関節を逆にしたら腕がくっつく訳ないだろ?二人ともしっかりしてくれよ。」
現代医療だとそのままくっついてしまって更に困った事態になるのだがそこは流石に魔法といった所か。
セリスがもう一度試みると腕はきっちりくっつきましたとさ。

【バッツ/ギルガメッシュ 所持アイテム:鋼鉄の剣 現在位置:H-20 防砂林】
 第一行動方針:バッツの回復待ち、
 第二行動方針:ファリス、レナ、クルル、ガラフとの合流(さしあたって塔へ向かう)
【セリス 所持アイテム:ヒールロッド 現在位置:H-20 防砂林 】
 第一行動方針:バッツに尽くし、従う

183訪問と逃走のロンド(エッジ):03/06/28 01:01 ID:fgYOQzpQ

 からんからん。
 鳴子が鳴った。機関室に緊張が走る。
 俺は素早くミドに目配せを送った。
 ミドは眼鏡の縁を思慮深げに指先で叩いている。
 どうするか―――俺たちが対応を決める前に、侵入者の声が届いてきた。

「もしもーし。ぼくは『正義』のアルス。ロトの勇者だよ。
 『正義』の人なら仲良くしよう、『邪悪』の奴なら観念しろ」

 からんからん。
 出鼻を挫くような能天気な挨拶。俺は思わずずっこけた。
 ミドなんか脚立からずり落ちた。いたたた、と腰をさすってる。
 からんからん。

「見破られていますね、鳴子」
 
 確かに鳴子は至る所に設置してあるが、それは様々な進入経路を想定してのこと。
 今回みたいな、同じ位置の鳴子が何度も鳴ると言うことはありえない。

「……で、どーする、ミド?」
「あー、んー、僕ではちょっと判断のつきかねるタイプの方のようですね……
 エッジさん、ちょっと様子を見てきてもらえませんか?
 念の為、武器は持って。罠の手前から話し掛けてください」
「ほいきた」

 俺は配布武器「円月輪」を指先で回し、機関室を後にする。

 侵入者……いやこの場合、来客か?
 そいつは正面入り口にしゃがみ込んで、鳴子の糸を指で弾いていやがった。

「やあ、待ちくたびれたよ。で、きみは『正義』なのかな?『邪悪』なのかな?」
184訪問と逃走のロンド(カンダタ):03/06/28 01:02 ID:fgYOQzpQ

 その訪問客の声が耳に入ったとき、俺には血の気が引く音がリアルで聞こえた。
 チアノーゼを起こした。過換気症候群を起こした。チック症を起こした。
 それくらい、べらぼうに―――この客はやべぇ!

 俺は今まで何度かあいつに殺されかけたことがある。
 その度に改心したフリでトドメを刺されるのだけは逃れてきた。
 別に俺の弁が立つとか、必殺のくどき文句があるとか、そんなんじゃねえ。
 偶々だ。単に運が良かっただけだ。
 いくらマジで改心した悪人がいたとしても、ヤツが『邪悪』認定したら、それで最後だ。
 つーか、俺の手下からして全員無残に殺されちまった。
 何が導火線になるのかわからねえ俺様理論。
 言ってみれば天災。それがあの野郎なんだ。
 
 このままここに隠れてやり過ごそう。音を立てるな。石になれ……
 ん? ちょ〜〜〜〜っと待て。
 俺のいる場所はどこだ?
 ―――ロッカーだ。
 そんないかにもアイテムがありそうな場所、あいつが見逃すか?
 ―――見逃すはずがねえ。
 調べるはずだ。この飛空挺とやらの中の全ての場所を。
 ハイエナみたく。大泥棒の俺よりも泥棒らしく。隅々まで。

 ちくしょー、脱出の目処が立ってたのによ……
 しょうがねぇ。命あってのモノダネだ。
 エッジが犠牲になってるうちに、俺はずらかることにするぜ。
 
 いや待て。どうせならこの際……
185訪問と逃走のロンド(カンダタ):03/06/28 01:04 ID:fgYOQzpQ

「騒ぐんじゃねぇ、ぼーや」

 死刑執行人みたいに布を被った、半裸のおじさんが押し入ってきた。
 手には銃。銃口はもちろん僕に向いている。
 おじさんは人差し指を立て、しー、とゼスチャー。
 ……僕は黙って手を上げた。
 誰? なんで? どうやってここに? エッジさん助けて!

「怖がるこたぁ無ぇ。別に取って食おうってわけじゃねえんだ。
 今来てる客がちょーっとヤバいんでな。
 俺と一緒に、暫く身を隠して貰いてぇんだよ。
 なんつったってぼーやがいねぇと船が直せねぇからな。万一殺されると困るんだ」

 おじさんは僕に猿轡をかませた。僕はされるがままに身を任せるしかない。
 おじさんは左の肩に僕を、右の肩に自分のと僕のバッグとを掛けて、
 階段を駆け上がり、甲板へ。
 もう空は白んでいた。
 入り口のあたりからエッジさんと訪問者の声が聞こえる。

「そうか『正義』か。じゃあ仲良くしよう。
 ところで、きみの配布アイテムは何だったのかな?」
「円月輪ってヤツさ。飛び道具の一種だな」

 僕を担いだおじさんは溜息をついて「ご愁傷さま」と呟くと、
 甲板を入り口と反対側へ移動、そのまま飛び降りた。
 着地。北に向かって忍び歩く。激しい振動が胃を揺さぶる。

 ああ、飛空挺が、エッジさんが遠ざかってしまう……
186訪問と逃走のロンド:03/06/28 01:34 ID:w6scHCT0
 この船はなんと、空を飛ぶんだって!
 世界にはまだまだ不思議があるもんだね。勇者のぼくが知らなかったんだから。
 でも、このエッジっていう『正義』の忍者のプランはいただけないよ。
 修理が終わったら飛んで島から逃げる帰るだなんて。
 だからぼくは諭してあげたんだ。
 『正義』なら逃げるんじゃなくて闘うべきだよって。

「オレもな、カッコ悪いとは思うんだ、尻尾を巻いて逃げんは。
 でもな、こうも思うんだ。
 このくそったれゲームにはミドみたいなガキや、普通の女とかもいるんだよ。
 そいつらを乗せてやりてえってな」
「素晴らしいよ!! 君は『正義』で『愛』だ。
 これからは『愛の忍者』と呼ばせてもらうね」
「いや…… 悪いけど遠慮するぜ」
「あはははっ。愛の忍者は謙虚だなぁ」

 ぼくはこのエッジが気に入った。
 『愛』もあるけど、コイツはそれだけじゃない。
 無駄の無い筋肉に卓越した柔軟性がある。きっとすごく素早い。
 それにあの円月輪―――飛び道具を使うことができる。
 接近戦のぼくと援護射撃のエッジ。組み合わせとしてはかなり使える。
 体力はあんまり無さそうだから長持ちはしないっぽいけど。

「よし、じゃあ君を僕のパーティーに加えてあげるね。英雄の一柱として。
 さ、行こう」
「おいおい、ちょっと待ってくれよ。俺には船の修理っていう仕事があるんだからさ。
 それに危険だからミドを1人にしておけないしよ」
187訪問と逃走のロンド:03/06/28 01:37 ID:w6scHCT0
 このアルスってやつ、俺が断りを入れると途端に機嫌が悪くなっちまった。
 なんつーか、子供だ。ぷうって膨れっ面してやがる。
 ワガママなガキってのは癇癪を起こすのも早いもんだ。
 俺もガキの頃そうだったからよくわかる。

「ぼくはさ。選択肢をあげてるんじゃないよ。命じてるんだ。
 勇者の命令って天啓だよ?
 それに逆らうってことは、君はもしかして―――」

 訂正―――こいつはわがままなんて生易しいモンじゃなさそうだ。
 とびっきりのわがままだ。
 独裁者って言ってもいい。
 さっきまで親しげだったのに、今は殺気まで出してやがる。
 気に入らないものは認めねぇハラらしい。
 しかも…… こいつは強ぇ。
 気配だけでこんなに圧されるなんざ、産まれて初めてだ。
 勇者か。
 性格はともかく、実力はその名に相応しいってことかよ。

 俺1人なら闘ってもいい。分が悪いなら『ぶんしん』をかけて逃げるのもアリだ。
 だけど―――この飛空挺とミドは俺たちの希望。
 傷つけさせるわけにはいかねぇ。
 かといって、コイツに従うとミドを放っぽって行かなきゃならねえ。
 どうするよ、エドワード・ジェラルダン?
188訪問と逃走のロンド:03/06/28 01:38 ID:w6scHCT0
【エッジ 所持アイテム:円月輪 現在位置:P-12 飛空挺入り口】
 対処行動方針:アルスからミドと飛空挺を守る
 根本行動方針:飛空挺の修理
【アルス 所持アイテム:ルーンブレイド 炎のマント 現在位置:P-12 飛空挺入り口】
 根本行動方針:邪悪の殲滅(主催者打倒) ※彼に同調しない者は全て『邪悪』とみなす
 ステータス:MP、少量減少

【カンダタ 支給品:M3ショットガン ?(ミドの支給品) 現在位置:P-12 → ?】
 対処行動方針:アルスが飛空挺から去るまで見つからないように時間を潰す、ミドを守る
 根本行動方針:飛空挺による脱出
【ミド 支給品:無し 現在位置:P-12 → 北方面】
 対処行動方針:カンダタから逃げ、飛空挺に戻る
 根本行動方針:飛空挺の修理



 >>185のタイトル修正
 ×訪問と逃走のロンド(カンダタ)
 ×訪問と逃走のロンド(ミド)
189意志の代言者:03/06/28 02:09 ID:oWbCqMu4
「クソッ、無駄な抵抗を…」
サイファーの猛攻はなおも続き、もはやキーファは防戦一方となっていた。
キーファはなんとかスキをつくろうと足元の砂を蹴り上げる。
「ぐあっ!」
サイファーの顔に砂がかぶる。
「てめえ…!」

サイファーは力任せに眼の前に剣をたたきつけた。
キーファはその一撃をかわし、メイジマッシャーを小さく振った。
本当なら左肩に深々と刺さっていたはずの刃は、
サイファーがとっさに回避したので、腕に赤い筋を残しただけだった。
「グッ…。魔女の意志に…逆らうというのか!」
サイファーは裂かれた左腕を抑え、一歩退いてキーファを睨みつける。
傷は小さく斬れただけで左腕も充分動かせるし、血もすぐ止まるだろう。
しかし、サイファーをひるませることはできた。
――そのスキを突いて、逃げ出すことも。

「あばよっ!もう会いたくないぜ!」
キーファは踵を返して走り出した。――相手を挑発するようなポーズをとるのも忘れずに。
それを見たサイファーの顔が歪む。
「逃げられると思うな…!」
ぺっ、と口に入った砂を吐き出し、苦渋の顔を浮かべてサイファーは後を追ってくる。
距離はだいぶ離れているので、いずれ振り切れるだろう。
190意志の代言者:03/06/28 02:09 ID:oWbCqMu4
「はぁ、はぁ…振り切れたか…」
かなりの時間を走っていたようで、もう周りの地形も全く変わっていた。
サイファーは追うのをあきらめたのか。
とりあえず、休憩…と言って歩くペースを落としたときに、ようやく気付く。
朝日が見えてきた。少し明るくなっているのだ。
「あのヤロー、どれだけオレを追いかけてたんだ?」
キーファは自分が今まで走ってきた方向を向き、
呆れた、といったように肩をすくめる。

そのころ、サイファーは…
「クソ…まさか逃がしてしまうとは!」
怒りに支配されてとんだ失態を見せてしまった。
サイファーはザックの水を頭から被る。
「魔女の騎士としての役目は果たす。オレは、選ばれた男なんだ」
次のターゲットは絶対殺害、そう心の中で繰り返す。
朝日が昇る頃には、彼の表情からは怒りは消えうせ、
もとの狂気を帯びた喜びの顔をつくっていた。

【サイファー:所持武器/古代の剣:現在位置/H−7】
 第一行動方針:魔女の意思に従ってゲームを進行させる。

【キーファ:所持武器/メイジマッシャー:現在位置/J−7】
 第一行動方針:不明(ゲームには乗らない)
191犬。:03/06/28 11:08 ID:VPu1qSLH
「じゃっじゃーん!なんと私はマスター時魔道士だったのでーす!」
「…………」
クルルは空高く上げた両手を恥ずかしそうに下ろした。

結局なりゆきで一緒に行動する事になったシャドウとクルルは橋を超え平原に出る事を嫌い。
安全策として森を抜けて西へと向かう事にしたのだった。
途中、シャドウが用を足して元の場所へ戻ってくるとクルルがいない。
シャドウは焦り、クルルを懸命に探した。
――ガサガサッ!
草葉が揺れ動き、シャドウは咄嗟にそちらの方に移動した。
もしかするとクルルが別の参加者に襲われているのかもしれない。

しかし、シャドウが移動した先で見たものは。
上半身を裸にし、別の服を着ている最中だったクルルだった。
途端に強烈な平手と悲鳴を喰らい、シャドウは再び元の場所に戻ったのだった。

「シャドウさん、怒らないで下さいよ。」
「………着替えなら着替えと言え。」
クルルが肩を揺さぶりながらまだ何か言うのを聞きながら。
シャドウは自分とクルル以外の気配に気づいた。
自分の支給武器である氷の刃を持ち、クルルを下がらせる。
クルルはきょとんとしていたが、事情を理解すると後ろに下がった。
192犬。:03/06/28 11:09 ID:VPu1qSLH
クルルが下がるとすぐに一人の女が出てくる、武器になるようなものは何も持っていないようだ。
シャドウは何も言わず氷の刃を突き出した、しかし当てはしない。
これはあくまでも相手の出方を伺うものであった。
女は避けようともせず、ただ冷ややかな眼でこちらを見ている。
「一人じゃないな……」
シャドウは気づいた、女の後ろからゆっくりと自分の後ろにまわっていた気配を。
――後ろ。
「クルル!」
すぐさま後ろの草むらへとシャドウは飛び込んだ、文字通り飛び込んだのである。
「きゃーっ!」
悲鳴が上がり、シャドウは後悔した、よく考えてみればよかった。
武器も持たない女が一人で闘おうとするわけない。

「クルル大丈夫か!?」
氷の刃を使って、目の前の枝を切り払い移動しやすい道を作る。
シャドウが待っているように指定した場所でクルルは無残にも斬り捨てられて


――いなかった。
193犬。:03/06/28 11:09 ID:VPu1qSLH
「くぅんくぅん。」
「きゃーっ!この仔可愛いぃ!」
シャドウは呆気にとられた、犬だ。
犬がクルルと戯れていたのだ。
気配の正体が犬とわかり、シャドウは安堵した後、怒りを覚えた。
まんまと担がれたのだ。
「ふふ、可愛いでしょう?」
気がつくと女も一緒に犬と戯れている。
シャドウはただ、その場に座り込み息をつくしかなかった。
空は少しずつだが明けはじめている。

【シャドウ 支給品:氷の刃 現在位置:Q-12 行動方針:リルムを探す】
【クルル(ジョブ:時魔道士) 支給品:? 現在位置:Q-12 行動方針:ガラフや仲間を探す】
【ルールー:所持品:アンジェロ 炎のマントの切れ端 現在位置:Q-12 目的:仲間との合流】
194名前が無い@ただの名無しのようだ:03/06/28 14:11 ID:meetvSNZ
Σ(´д`*)すごいHだ…
美少女と美人お姉さんのオマ○コが丸見えだよ…
http://plaza16.mbn.or.jp/~satchel/omanko_marumie/
195【 無効宣言 】:03/06/28 20:24 ID:pz/JKRHS
以下の2作品は協議の結果無効になりました…
混乱させてしまってごめんなさい。

ホスピス >>164,>>165,>>166,>>176
死の実況中継 >>177,>>178,>>179,>>180,>>181
196海賊頭の油断と後悔:03/06/28 21:24 ID:fgYOQzpQ
 ファリスは俺のことを睨んでいた。出会ってからずっと、目線で威嚇している。
 ま、虚勢だ。
 だが、この切迫した状況下で虚勢が張れるだけの気丈な女も珍しい。
 
 ファリスは、銃を手に取った。
 それまで散々悩んでいたが、伸ばした手に迷いはなかった。
 OK。読み通りテーブルについてくれた。
 ここからが至福の時間だ。

「さて、では先」

 ――――――カチ。

 ……先攻と後攻を決めよう、と、言うつもりだったんだが。
 ファリスは引き金を引き終えていた。
 なんて肝の太さだ。

 確率、1/5。
197海賊頭の油断と後悔:03/06/28 21:25 ID:fgYOQzpQ
 ファリスはぞんざいに銃を投げ寄越す。
 俺はそれを受け取り、手を下げた。
 深呼吸を一つ、二つ。目線をファリスへ。

「……さっさとやれよ」
「ファリス、ギャンブルっていうのはな。結果だけを求めるわけじゃないんだ。
 過程や雰囲気、駆け引きを愉しむものさ。いわば究極の暇つぶしなんだからな」
「御託はいいんだよ。俺は短気なんだ。こんなつまんねえことさっさと終わらせたいんだ。
 四の五の言わずさっさとぶっ放せ」
「まあ、そう焦るな。高まるまでもう少し待ってくれ。
 これで最後になるかもしれんのだぞ?最高の状態で引き金を引きたいじゃないか」

 俺の言葉、ファリスの視線、銃の重み、時間。
 それらが俺の中で溶け合い、緊張感が高まって来る。
 鼓動を耳の後ろで感じる。脈と同じリズムで頭痛がする。心拍数がどこまでも高まる。
 これだ。俺はこれを求めていた!!
 久しく忘れていた、忘れていた故に渇望していた!!

 銃口をこめかみへ。俺は目を閉じる。
 こめかみ。ここだけ皮膚がとても鋭敏になっている。ざわついている。
 細胞にはわかっているのだ。いま、自分に当たっている物は恐ろしいものだと。
 自分に破滅をもたらすものだと。
 その肉体の拒絶を、意志の力で支配する。拮抗がとてつもないストレスを産む。
 押し切れ、踏み越えろ!!
 ――――――カチ。

「次はお前の番だ」
「判ってるぜ」

 確率、1/4。
198海賊頭の油断と後悔:03/06/28 21:26 ID:fgYOQzpQ
 ファリスの顔から笑みが消え、険のあるものに変わっていた。
 銃と俺。交互にせわしなく目をやる。
 ん? ファリスめ、膝が震えだしたな?
 ……そうか。勢いだったか。
 一発目の引き金は、覚悟を決めて引いたのではなく、
 頭に血が上った勢いで引いたというわけだ。
 酒に酔った勢いで告白するようなものか。
 その酩酊が、俺が時間をかけたことによって覚めてきたんだな?

 ファリスの震えは益々大きくなっていく。
 どうした? さっきまでの勢いは。
 お前はもう乗ったんだ。途中で降りることは許されない。
 俺が許さない。
 仕方ない。炊きつけてやるか。

「俺の眼力は随分と衰えてしまったな。
 お前は度胸があると踏んでいたんだが、とんだ腰抜けだったようだ」
「ふざけたこと言ってんじゃねえ」
「逃げるか? まあ、それもいいだろう。
 海賊頭と言っても所詮お前は女だからな」
「女だからなんだってんだ。
 あんたが楽しいって言うから、時間をかけてみただけさ。
 俺にはその楽しさってヤツは判らなかったがね」

 反発と虚勢。ファリスが俺を睨む。肌に血の気が戻る。
 とことん負けず嫌いだな、お前は。悪いギャンブラーの素質十分だ。
 炎を宿らせた瞳で俺を睨めつけたまま、ファリスは引き金を引く。
 ――――――カチ。

 確率、1/3。
199 海賊頭の油断と後悔:03/06/28 21:46 ID:HD5Atq2i
昂ぶる。
 俺は今、ものすごく生を実感している。
 今、ここに。俺とファリスの「生命」が立ちこめている。ねっとりと。
 喜びを突き詰めても、悲しみを突き詰めても、怒りを突き詰めても。
 一線を越えてしまえば、どんな感情もただ一つの顕れに収まる。
 身震い。 
 感情の疾走感。グルーヴなんて無い。真っ直ぐな、錐の先端のような感覚。

「なんだ。あんたも震えてるじゃねえか」
「当たり前だろう。恐ろしいのだから」
「なんだったら降りたっていいんだぜ?俺は売られたケンカを買っただけだ。
 突き出した拳さえ引っ込めてくれりゃ、水に流すのが海賊流ってもんだ」
「ふふふ…… 降りるものか。こんなに愉しいというのに」
「恐ろしいんじゃなかったのか?」
「矛盾はないぞ。俺は、恐怖に震える自分を愉しんでいるんだからな」
「……イかれてやがる」

 痺れる。体が脳の指令を拒否しているかのように。次いで、眠気。
 ああ…… 思考を生む「脳」すら、意志の遂行を否定しているのか。
 そこまでの禁忌を俺は犯しているのか。
 意志で、脳に楔を入れろ。手を突っ込んでかき回せ。
 思考を支配しろ、飼いならせ。

 尖る、神経が、細く、鋭く――――――
 指が曲がる。
 ――――――カチ。

 確率、1/2。
200海賊頭の油断と後悔:03/06/28 21:48 ID:HD5Atq2i
 全身を覆う気だるい充実感。虚脱とは似て非なる筋肉の弛緩。
 全身をびっしょりと覆う汗に風が心地よく火照った俺の体を冷やす。
 軽い。さっきまで動かなかった体が嘘のように動く。
 俺は指で銃をくるくると回し、ファリスに銃の背を向ける。

「さて―――おまえの番だ」

 ファリスは答えない。銃に手を伸ばさない。
 しかし、2度目の時よりも、どこか落ち着いて見えた。
 ファリスは俺の名前を呼んだ。セッツァー、と。
 
「セッツァー…… 俺はさ、あんたに負けたくないと思ったんだ。だから乗った。
 呑まれてたまるか、舐められるのは許せない、ってな」
「言うまでも無いことだろう」
「そうだよな…… あんたには全部わかってるんだろう。
 でもさ、俺も体張って、心削って、この勝負を進めてきてさ、
 あんたのこと、わかってきたんだ」
「ほう」
「あんたはさ、俺と勝負なんてしてなかったのさ」

 ファリスは淋しそうに言った。
 そうだ。それがどうした。そんなこと、最初から言ってあるだろう。
 俺は刺激が欲しいのだと。

「ギャンブルって構図があって、状況を確認できる『誰か』がいて。
 見つめてるのは自分の生と死だけ。俺が死んでも喜びも悲しみもしないんだろうな。
 笑っちまうぜ。
 俺は結局、いやらしい1人遊びのダシにされただけじゃねえか」
201海賊頭の油断と後悔:03/06/28 21:48 ID:HD5Atq2i
センチメンタリズムに浸るのは勝手だが、ゲームは続けろ。
 俺は銃を持った手をファリスに突き出す。
 何か諦めたような溜息とともに、ファリスが手を伸ばしてきた。
 俺が渡す。ファリスが受け取る。
 心の通わないケンカって詰まらねえな、そう陰りのある表情で呟き。
 ――――――カチ。

 確率、1/1。
202海賊頭の油断と後悔:03/06/28 21:49 ID:HD5Atq2i
 愉しい時間だった―――
 全ての汗腺から射精したかのような爽快さと脱力感。
 吸い込む空気、肺に染み渡り、血管へと流れ、体中を駆け巡る。
 妙にさわやかに感じた。

「次は俺の番だな?」

 俺はファリスの持つ銃に手を伸ばす。
 ファリスはしばし逡巡し―――それを背後へと隠した。

「もう勝負はついたんだ」
「そうだな」
「あんたが撃つ必要は無い」
「勝負はついたが、試合は終わっちゃいない。そういうことだ」

 俺は猶も手を伸ばす。ファリスは数歩下がる。
 冗談じゃない。
 俺はこの結果に満足しているんだ。今が最高の状態なんだ。
 お前の価値観や感情で、俺の完成を邪魔するんじゃない!!

「賭けたのはお互いの命。だからお前の命は俺のもの。
 持ち主が命じる。命を捨てることは許さない」
「なるほど。そういう理屈か」

 俺はやれやれといった風に肩をすくめて溜息をつき、笑顔を作って見せた。

「OK。これから頼むぜ、ご主人様よ」
「だったらもう少し下僕らしい態度を取りな」

 手を伸ばし、握手を求める―――
203海賊頭の油断と後悔:03/06/28 21:50 ID:NorrZnOE
―――振りをした。

 ファリスの伸ばした手、その肘を取り捻りあげ、投げる。
 ファリスは何が起こったのか判らないといった顔のまま半回転。
 背中から地面に落ちる。

「な―――?」

 ファリスはまだ、何が起きたのか判っていないらしい。
 目を白黒させている。
 握りの緩くなった手から素早く銃を奪い取る。
 
 お前が海賊頭の度胸と威勢を矜持にしているように、
 俺もギャンブラーとしての粘り強さと潔さを誇りとしている。
 BETした賭け金は、負けたら失われる。ルール。
 そうしないと、ギャンブルは終わらないだろ?

「お嬢さん、おまえは勘違いをしている。
 俺がテーブルに乗っけたのはな、生じゃないんだ」

 こめかみに銃口を押し付ける。冷えている。銃口も、俺も。
 肉体と思考も、意志に抗わない。
 受け取れ、ファリス。俺の掛け金を。

「死、なんだ」

 ――――――パン。
204海賊頭の油断と後悔:03/06/28 21:51 ID:NorrZnOE
【ファリス(狩人・非マスター) 所持武器:盲目の弓 S&W M29(残弾5発) 現在位置:U-11 平地 】
 根本行動方針:とりあえずゲームには乗らない模様。詳細は不明。

【セッツァー 死亡】残り66人(67人)
205メイズ・オアシス(1/4):03/06/28 23:41 ID:oWbCqMu4
「ようやく着きましたねぇ」
レオナが街の入り口のアーチをを指でなぞりながら言う。
そこには、ルラフェン、と書かれていた。
「ひとまずどこかの民家で休ませてもらうか、お前も疲れただろう」
ルビカンテはここまで歩き詰めで、レオナは疲れているだろうと思い
自分はまだ平気だったが休憩を提案した。

「いえ、まだ大丈夫ですよー」
レオナは元気が有り余っているかのように軽くシャドウボクシングを披露した。
「フッ、元気な娘だ」
ルビカンテは苦笑して、先を急ごう、と向きを変えた。
そのときだった。

「あ、あの〜…」
「!!」
背後から1人の、能天気そうな男が声をかけてきた。
敵意がないことはわかりきっていたので、こちらも攻撃するつもりはなかった。
そう、ルビカンテは攻撃するつもりはなかったのだが。
反射的にレオナがその男を殴り飛ばしていた。

「痛た…っ!」
クッキーは思いっきり樹に叩きつけられてしまった。
(そうか、やる気になってる人もきっといるんだもんなぁ。うっかりしてた)
うっかりしてた、レベルの不注意ではなかったが、
とにかくクッキーは眼の前の2人を敵と認識した。
「くそう、黙ってやられるわけにはいかないよ…ギラッ!」
さらに攻撃をしようと飛びかかってきたレオナの脚を火炎が包み込む。
「うわあ!師匠〜、助けてください〜!」
攻撃を中断して必死で脚の炎を振り払うレオナ。
そのスキにクッキーはもう1発、呪文を詠唱する。
206メイズ・オアシス(2/4):03/06/28 23:41 ID:oWbCqMu4
「あなたを殺すつもりはありませんけど、少しケガしてもらいますよ!」
新たな炎の塊が投げつけられる。
しかし、それがレオナに命中することはなかった。
ルビカンテの放ったファイラが、ギラの炎を飲み込んだのだ。
「あ、ありがとうございます、師匠〜」
「世話の焼ける…。相手に敵意などなかっただろう」
ルビカンテがレオナの頭をコツン、と小突いた。
「すみません、でも…仕方ないじゃないですか」
レオナが頬を膨らませる。
「まあ、いい。ここで少し待っていろ」

ルビカンテはクッキーを見据え…ようとした。
しかしクッキーはそこにはいなかった。
彼は脱兎の如く街へ入っていこうと必死で走っている。
「おい、お前」
クッキーはひぃぃ、と声をもらして恐る恐る後ろを見た。
「このゲームに乗ってはいないのだろう?いきなり攻撃したことを謝ろう。すまなかった」
ルビカンテが頭を下げる。
「あ、あなた達もやる気じゃなかったんですか…?」
「この娘が混乱してしまった。本当に私達に敵意はない」
いつの間にかルビカンテのとなりにきていたレオナも頭を下げた。
「ごめんなさいぃ、あたし、あなたを敵と思ってしまって…」
クッキーは苦笑いを浮かべて2人を許した。
207メイズ・オアシス(3/4):03/06/28 23:42 ID:oWbCqMu4
「とりあえず、移動しようか」
そう言って街に入ったはいいが、迷路のような街のつくりに3人はすっかり迷ってしまった。
「とりあえずこの民家に入らせてもらおう」
あまり奥に入りすぎて出られなくなるのはゴメンだ。
「どうやって入りましょうか…」
「それならあたしに任せてください!」
レオナがそう言って窓を叩き割った。
「…ま、まあ目立たない窓だし、無事に入れるのだからよかろう。ご苦労だったな」
レオナがてへへ…と照れ笑いをする。

「さっきの詫びに食事をご馳走しよう」
街の民家に入り込んだ3人は荷物を下ろして早い朝食をとることにした。
「そ、そんな…いいですよ。こちらも怪我をさせてしまったんだし」
クッキーが恐縮する。
「まあまあ、そういわずに食べてくださいよ。あたしの支給武器がコレなんですから〜」
そう、レオナの支給された武器は、武器とも呼べない缶切り2つと缶詰(100缶)だったのだ。
「そう言うのなら…いただきます」
クッキーは鯖の缶詰とみかんの缶詰を選んで、手を合わせてから食べ始めた。
ルビカンテとレオナもそれぞれ缶を数個選んで、缶をあける。

食事中に3人は情報交換や目的などをお互いに教えあった。
「…と、いうわけで僕はその仲間を護ってあげたいんですよ」
クッキーはリンダを探す本当の理由は恥ずかしくて言えないので、
そこは伏せて自分の目的を教えた。
「なるほど〜…クッキーさん、美しい純愛だね〜」
その言葉にクッキーの顔が紅潮する。
「な、なんで女の人だとわかるんですかっ」
「だいたいわかるわよ〜、クッキー君、顔真っ赤だよ」
レオナがクッキーをからかう。
208メイズ・オアシス(4/4):03/06/28 23:51 ID:oWbCqMu4
「レオナ、やめておけ。それで、お前も私も探し物がある、という点では同じだ」
レオナを制して自分の提案を伝える。
「一緒に探さないか?1人よりは探しやすいと思うが」
クッキーが困惑した表情に変わる。
(う〜ん…こんな人達がいたらリンダに想いを伝えることなんて…)
そんなことを考えていたが、まあなんとかなるだろうと一人で納得して、
「わかりました。よろしくお願いしますね」
そう言って2人の同行に同意した。

【ルビカンテ 所持武器:なし 現在位置:S−16南部(ルラフェンの民家)
第一行動方針:マント(出来れば炎のマント)を探す。
第二行動方針:クッキーに協力。
第三行動方針:ゲームの目的を知る。】

【女武闘家 所持武器:缶詰(残り90個)と缶切り2つ 現在位置:S−16南部(ルラフェンの民家)
第一行動方針:ルビカンテの手伝い。】

【クッキー 所持武器:ピンクのレオタード(ミネア用) 現在位置:S−16南部(ルラフェンの民家)
第一行動方針:リンダを探す。
第二行動方針:ルビカンテに協力。 】
209わがまま勇者と忍者の一夜:03/06/29 00:36 ID:givTuguf
「それでさ、僕はズバッとその女を斬ったってわけさ、やっぱり正義の名の元には女子供でも
 スパっと殺さないといけないよね」
「その通りですね…」
心の中に涌きあがる怒りを必死で押さえながらエッジはアルスの機嫌を取る。
ミドが外に出ているのは幸いだった、(外の足跡が子供にしては大きいのは気のせいだろうか?)
ともかく、ここで子供特有の歯に絹着せぬ言動があろうことなら、
自分たちもアルスの言う「悪の手先」と同じ運命をたどってしまうかもしれない。

とにかくこういう自尊心の肥大した輩は、ヨイショにヨイショを重ね、ご機嫌になったところで、
さりげなく誘導するのが得策だ、下手な小細工はしてはならない…この手のタイプは総じてカンが鋭いのだ。
単細胞は単細胞を知る…ともかくエッジの読み通りアルスはすっかりご満悦だ。
(忍という字は心に刃…忍という字は心に刃…)
心の中で必死に言い聞かせながら、慎重に言葉を選んでいくエッジ、彼のその後の修行の成果というべきだろうか、
ともかく彼は自分の感情を、ある程度押さえることはできるようになっていた。

「ところで勇者ともあろうものが1箇所にとどまるのがいいことでしょうかね?人々は皆ヒーローの到着を
 待っているのではありませんか?」
エッジの言葉にぽんっと手を叩くアルス。
「そうだ、君いい事言うじゃないか、うんうん正義の使者は決して1箇所にとどまってはいけないんだ」
と言いながらザックの中をがさごそとまさぐる。
「そんな君に記念品をあげるよ」
(ありゃルビカンテの!!)

そう、そこでアルスが取りだしたるものは、紛う無き炎のマント、彼の宿敵であるルビカンテの愛用品だ。
(そういやあいつも最初の大広間で見かけたな)
ルビカンテは確かに父母の敵ではあるがその反面、武人として純粋に尊敬もしていた。
(あれから俺も強くなった…今度は憎しみではなく一人の武人として純粋に戦いたいところだな)
「これさぁ、使いにくいし色もダサダサだし、勇者の僕にはふさわしくないよね?だから君にあげるよ!
 大事に使うんだよ」
210わがまま勇者と忍者の一夜:03/06/29 00:42 ID:givTuguf

「俺なんかに!光栄です!」
(てめぇが使いにくいって言ってるものを他人に渡すのかよ、いい根性してるぜ)
エッジの心の中の悪態は無論アルスには分からない。
そして塗装用のペンキででかでかとマントにアルスとサインを描き、エッジに手渡すと
そのままアルスは北の方向へ去っていった。

その姿が完全に森の中へと消えたのを確認して、エッジは崩れるように一息つく。
刃を交えぬ戦いがこれほどまでに疲れるとは思わなかった。
まぁあんな奴にも仲間と呼べるような奴がいるらしい、なら気の合うだれかとでも仲良くやっててくれればいい…
本来なら止めねばならないのだろうが、今はそれどころではない、それより…。

ミド?の足跡は西の方角に向かっていた、なら鉢合わせることもないだろう、一安心か、しかしそれよりも。
(こりゃ洗濯しても取れねぇな…ルビカンテが見たらなんと思うことやら……俺の武器も取られちまったし)
とりあえず炎のマントを目の前にして溜息をつくエッジだった。


【エッジ 所持アイテム:炎のマント 現在位置:P-12 飛空挺内部】
 第一行動方針:ミドの帰りを待つ
 根本行動方針:飛空挺の修理

【アルス 所持アイテム:ルーンブレイド 円月輪 現在位置:P-12から北に】
 根本行動方針:邪悪の殲滅(主催者打倒) ※彼に同調しない者は全て『邪悪』とみなす
 ステータス:MP、少量減少
211恋する青年たち:03/06/29 01:36 ID:RTQZ+ZFU
がこがこと鍋を振る音が聞こえる
「ししょー、ついでですから私の手料理を食べてくださいよー」
あれからレオナは缶詰の食材をつかって、なにやら料理を作っている。
その一連の作業をじっと見ているルビカンテが、時たま指示を出す。
「鍋の返しが甘い!!日常の動作もこれまた修行の一環、あ、味付けは甘めにしてくれないか」
「はい師匠!!って師匠甘党ですかー?いっがい〜〜」

それを外からぼんやりと眺めるクッキー。
「ついて行けないな…やっぱり」
彼のようなナイーブな性格には、やはりあの2人は少々個性が強過ぎる。
「でもワケも無く断るのも失礼だし…」
何時の間にか周辺には美味しそうな匂いが漂っている、まぁ、ちゃんと食事をしてから考えようか、
と建物に戻ろうとしたクッキーだったが、その時物陰からこちらを伺う影に気がつく。

「だーれ?」
とりあえず影に向かって声をかけるクッキー、さっきと違ってある程度余裕がある。
「そっちこそ誰ですか!」
かなり焦ってるようだ、声が震えている、自分もさっきまであんなのだったのか、と思いながら。
「僕はクッキーって言います、別に何もしませんよー」
なるべく刺激しないように返事を返す。

「本当ですね…嘘だとザラキしちゃいますよ!」
相手のザラキしちゃいますよのセリフに思わず吹き出すクッキー、
ザラキは心の隙をつき、魂を冥界に誘う呪文…したがって予告しては意味が無い。
とようやく信用してくれたのだろう、ふらふらと僧侶の格好をした青年が姿を現す。
「1晩中歩き詰めで、しかも転んで食べ物を海の中に落としてしまって…お、お腹が空いて…」
そう言って青年はふらふらとクッキーの前にへたり込んだ。
212恋する青年たち:03/06/29 01:37 ID:RTQZ+ZFU
彼の名前はクリフト、東からスタートしたと言う事だ。
「あの…こんな女の子いなかった?」
クッキーはリンダの特徴をなるだけ詳しくクリフトに教える。
だがクリフトは申し訳なさそうに首を振った。
「一応全員の顔は見ることは出来たけど、そんな女の子はいなかったよ」
ここで彼が一言でもマイヤーのことを聞いていれば、彼とそしてマイヤーの運命は大きく変わったかもしれない。
だが、彼はそこまで踏み込むことはなかった。
「そう…ありがとう」
東にいないとなると北か西ということになる…しかしこのまま見知らぬ道をたどって北に向かうよりは、
もと来た道を引き返し、西に行く方がいいかもしれない。

「あのう…こっちも聞きたいことがあるのですが」
今度はクリフトが質問する順番だった、彼はアリ−ナの特徴を事細かく述べていく、だが、
クッキーはやはり残念そうに首を振ることしかできなかった。
「分からない…僕は1番前に座らされてたし、順番も早かったから」
「そうですか」
残念そうにクリフトは溜息をつく、それを横目にクッキーは荷物を整える。
とりあえず東にはいないと分かっただけでも収穫だ、とりあえず2度手間だけどまた戻ろう。

「あの建物の中にいる人たちに、ごはんなら分けてもらえばいいと思うよ…それから伝えといて
 用事が出来たから一緒には行けない、ごめんなさいって」
それだけを伝えると、クッキーはまた西へと引き返していった。


【クッキー 所持武器:ピンクのレオタード(ミネア用) 現在位置:S-16から西に
 第一行動方針:リンダを探す 】

【クリフト:所持武器/魔法の聖水×3本:現在位置/S-16(ルラフェンの民家近く) 】
 第一行動方針:ルビカンテたちに食料を恵んでもらう
 第二行動方針:アリーナを探す。
(手持ちの食料はありません)
213暗中水泳:03/06/29 02:16 ID:c2lA/d8a
セルフィは暗い海を見つめて溜息をつく。
(スコールはさっさと行ってまうし、お先真っ暗やん)
あの時、上手く行けばスコールと合流できるはずだった、しかし色々とごたついている間に、見失ってしまった。
あれから仲間を探してここまでやってきたわけだが……。
(しんどいなぁ…)
溜息をつきながらも、セルフィは足を止めない。

彼女には一応の目的があった、ひとまず北東の島に渡ってみようという、それで歩いて渡れる場所を
探しているのだが、幅こそほんの数十メートルと狭いものの、水深はそれなりで歩いて渡れそうにはない。
(うーん、流れもゆるいし…いっそ泳いで渡ってしまおうか?でも服が濡れるのも嫌やし、
 裸で入るのも抵抗あるしなー、そや、そういえばまだ支給品見てないやん)
極度の緊張のあまり食事すらしていない、セルフィはザックの中をがさごそと探る。
「おおレオタードやんか、これは好都合や…むむ」

しかし良く見ると誰かの使ったものらしい、きちんとハンガーにかけられ新品同然だったが、
それでも使用感は残っている、ちなみに腰にはArと刺繍されていた。
セルフィはしばし考えるが最初から答えは出ていた、要はそれを実行するか否かだ。
他人の使ったレオタードというのはやや抵抗があるが、それでも裸よりはいい。
セルフィは自分の衣服をまとめてザックに入れると、レオタードに着替え、海の中に飛び込むのだった。

【セルフィ 所持武器:ピンクのレオタード(アリーナ用) 現在位置:R-05から北東の島に
 第一行動方針:島の探索と休憩】
214誓い再び:03/06/29 02:42 ID:VPhkPrNm
”わたし、あなたを探してる。あなたに…会いたい……”

目を閉じれば何度でも、君の微笑と共にあの時の言葉がよみがえる。
君にはわかっていたんだね。
『ソルジャーの俺』じゃない『本当の僕』を。
あの時わからなかった言葉が、今ならわかる。

あの時の俺は今の俺とは違うけれど、心は変わらず今も君を探し求めている。
君が今の俺を見たら、なんて思うんだろう?
変に思うんだろうか?がっかりするんだろうか?前の俺の方が良かったと思うんだろうか?
それとも、「うん、ちょっと違うけど、でもやっぱりクラウドはクラウドだね」
そう言っていつものように笑ってくれるんだろうか?

君と出会って、君がいなくなって、そして俺が俺になって。
ずっと後悔していた。
約束していたのに。必ず、君を守ると。

……守れなかった。

君があの男に無残に殺されるのを、俺はただ見ていることしかできなかった。
同じ過ちはもう繰り返さない。
自己満足だと君は言うかもしれない。今更ボディガードを気取ってどうするのかと。
君は俺を拒絶するのかもしれない。
それでもかまわない。
ただ許されればもういちど、本当の俺として、君と再びめぐり合えたこの世界で、君を守りたい。
今度こそ、守ってみせるから。

―――エアリス、生きていていてくれ。君は死んでいい人間じゃない!

【クラウド 支給武器:? 位置:J-18から毒の沼地に沿って北へ 平地】
 第一行動方針:エアリスを探して守る。
 ※南スタート(祠が爆発する前の出来事です。)
215血の降る丘に。:03/06/29 05:35 ID:6/GgSegv
ガ、ガ、ガ、ガ、ガ。星降る丘に炸裂音が響き渡る。

パパスとスコールは、葉の生い茂った低木の陰に身を隠している。
ベホイミ。パパスがスコールに回復呪文を唱える。傷が瞬く間に塞がる。
状況がはっきりわかっていなかったスコールが、パパスに問う。
「俺は……銃で……?(背後から……撃たれたんですね)」
「そうだ。我々は完全に不意を突かれた。問答無用の殺意に」

ガ、ガ、ガ、ガ、ガ。射撃の音は止まない。

敵とのエンカウント時―――いや、バックアタック時。
スコールは、背後からの射撃に全く対応できなかった。
背中に熱を感じて攻撃に気付いた時に、まず敵の姿を探してしまった。
奇襲には撤退。反撃は態勢が整ってから。
ガーデンで戦術の基本としてそれを学んでいたにも関わらず。

1人だったらそこで蜂の巣だったろう。
しかし、そんな彼を素早く叩き伏せさせ、素早く物陰に導き、狙撃手の位置を特定し、
狙撃手に気付かれないように距離を開けたのはパパスだった。
スコールはパパスの判断力と行動力に舌を巻き、憧れの情を益々募らせた。

ガ、ガ、ガ、ガ、ガ。音が近づいてくる。

「敵は……装甲を……(装備していた……)」
「しかも先ほどからの連射具合を見るに、あの銃は玉を無尽蔵に吐き出すのだろう」
「……このまま……逃げますか?(まだ距離はある……今なら可能なはず……)」
「そうだな。確かに逃げ出したくなる戦力差ではあるが……」
パパスは剋目してスコールを見つめる。決意の篭った眼差し。
「耳を貸すのだ」
216血の降る丘に。:03/06/29 05:36 ID:6/GgSegv
いうまでもなく、銃器の長所はそのレンジの長さにある。
故にヴィンセントは、パパスとスコールの気配を探ったりなどしなかった。
岩。木。藪。
見晴らしのいい丘ではあるが、いくらかそういった、身を隠せるポイントがある。
そこを、撃った。
身の隠せそうな場所は、全て10Mの距離から撃った。丁寧に5発ずつ。
GFを持たない純粋戦士スコールは魔法が使えない。
パパスは知力MP共に優れるものの、使用できるのはベホイミだけ。
距離は、敵の対抗手段を奪う。

ヴィンセントは次に、葉を横に大きく伸ばす低木に目をつけた。
そこに銃口を向けたとき、藪が大きく動いた。
ばきばきばき、枝を折る音。同時にパパスが飛び出した。
ヴィンセントは慌てる事無く射程を合わせ、トリガーを引く。連射。
ガ、ガ、ガ、ガ、ガ。
「スコール、逃げるのだ!!逃げて私の志を継げ!!」
銃弾を浴びながら、パパスが怒号を発した。
呼応して藪から飛び出すもう一つの影。振り返らず丘を駆け下りてゆく。
ヴィンセントは逃げるスコールに意識を取られるが、すぐに打ち消す。
パパスが自分に向かって来ている。二兎追うものは一兎をも得ず。
まずは目の前の獲物に集中すべきだ。

ガ、ガ、ガ、ガ、ガ。
ヴィンセントはトリガーを何度も引きながら、成る程と納得する。
パパスは、過去、息子とその友人を救うために、無抵抗で嬲り殺された―――
本拠地で読んだ参加者資料に、そう記されていた。
パパスのこの行動は、いかにも彼らしい。

膠着状態と言うにはあまりに激しい膠着状態が続く。
射撃射撃射撃射撃射撃、身を守る身を守る身を守る身を守るベホイミ。
スコールの姿は、もう見えない。
217血の降る丘に。:03/06/29 05:36 ID:6/GgSegv
スコールは背中で銃声を聞き、それが自分を追って来ないことを確認すると、
注意深く気配を消し、側方へと歩みを進める。
静かに、静かに、音を立てないように。
戦闘現場から距離を保ちつつ、気取られないように、ヴィンセントの背後へ。

パパスが身を以ってヴィンセントを引きつける。
スコールが逃走したと見せかけ、ヴィンセントを背後から襲い、銃を奪う。
それがパパスの提示した作戦だった。
彼奴の銃は散弾ではない。連射性も無い。付け入る隙はそこにある。
パパスはそう分析していたのだ。
スコ−ルは思う。パパスさんは凄い。
その彼に信頼され、作戦を与えられた自分が誇らしい。
なんとしても期待に応えたい。
スコールは、使命感に燃えた。こんなに滾った思いを抱くのは初めてだった。

そして数分。
スコールはついに、ヴィンセントの背後を取った。
肉弾攻撃の射程範囲に。

「(……こんどはこちらのバックアタックだ!)」
218血の降る丘に。:03/06/29 05:37 ID:6/GgSegv
スコールが跳躍。目指すはヴィンセントの握る銃。
「―――!?」
土を蹴る音にヴィンセントは襲撃者の攻撃に気付く。
とっさに反応、しかし、射撃する余裕まではない。
スコールはハイブロウSTを握る腕に強力な蹴りを浴びせる。
ガ! 衝撃で発射された銃弾がスコールの頬を掠め、赤い擦過痕を刻み込む。
怯まずに肘。続けて膝。
ヴィンセントの人差し指は甲が方向に折れ曲がり、ハイブロウSTが夜空に舞った。
スコールは飛んだ銃を追おうとするヴィンセントの背にタックル。
そのまま組み敷いた。

転がるハイブロウSTをパパスが拾い上げた。
スコールに向き直り、笑みを浮かべて歩み寄る。
「良くやった」
ミッションクリアーの宣言。
言葉に篭ったねぎらいの響きに、スコールの心が震える。
達成感が感動を呼び、小波のように背中を走る。
―――そこに、隙が生まれてしまった。

スコールの締め付けに緩みが生じたことに気付いたヴィンセントは、
馬乗りになっているスコールのレバーに肘を入れた。スコールは悶絶。
パパスはスコールへの誤射を恐れて銃撃できない。
ヴィンセントは暴れ、渾身の力で背負い投げる。
分度器で計ったような弧を描いてスコールの体が中に舞うが、
ヴィンセントの襟首を掴んだ手は放さなかった。
2人は傍目にはじゃれ合うようにもつれ合い、転がり。
慣性と重力に支配され、勢いよく斜面を滑落していった。
219血の降る丘に。:03/06/29 06:27 ID:6/GgSegv
人は、50Mも滑落すれば絶命できる。星降る丘、標高150M。
ヴィンセントとスコールの滑落コースには、殆ど障害らしい障害はなく―――
この時点で、すでに2人の死は確定していたといっても過言ではない。
もみ合ったまま、絡み合ったまま。2人は滑り落ちていく。

2人の間に攻撃の手も脱出の動きも無い。
遠心力に、体勢の予測不能な変化に、脳がシェイクされているからだ。余裕など無い。
衣類がちぎれ飛んだ。ヴィンセントが腕を打った。スコールが顎を切った。
お互いがお互いの体で、お互いの四肢の末端を潰した。

しかし、ダメージが五分なのかというと、そうではなかった。
スコールに比べ、ヴィンセントには幾分余裕があった。
神羅甲式防具改がダメージと痛みを吸収し、
また反対にその硬い装甲がスコールに打撃を与えていたからだ。
だから、まだ多少は能動的に思考する力を、ヴィンセントは残していた。

ヴィンセントは揺れる脳で、肉体の感覚に集中していた。
それは痛みの感覚をも鋭敏にさせたが、このまま転げ落ちて死ぬ運命に
逆らうことのできる、唯一の賭けには、必要不可欠な集中だった。
斜面の2/3も転げ落ちた頃、ヴィンセントの待っていたチャンスが、ついに到来した。
肉体の奥に火が点る感覚。理不尽な痛みによる精神的臨界点の突破。
すなわち―――リミットブレイク。

ヴィンセントの肌が紫に染まってゆく。めぎめぎと角が生え、牙が伸び、爪が伸び。
魔獣ガリアンビーストが顕現する。
スコールはその変化を現実だとは思わなかった。既に気絶した自分が悪い夢を見ていると感じた。
ヴィンセントの体が醜くぶくぶくと膨れ上がる。2倍、3倍、4倍……

スコールは加速する圧倒的な質量に押し潰された。
220血の降る丘に。:03/06/29 06:28 ID:6/GgSegv
空が白んできていた。

滑落の終着点。
星降る丘の南の麓で、パパスは沈痛な面持ちで足下を見つめている。

そこにスコールはいなかった。あるいは、スコールは無数にいた。
パパスは思った。
この散らばり、裂かれ、潰されたものの、どれをスコールと呼べばいいのだろう?
大小無数に散らばる肉片。赤く黄色く染まる血液と髄液の海。凄まじい臭気。
無残―――あまりにも、無残。

パパスの手には、鈍く輝く銀色の首輪が握られていた。
散らばるスコールの中で、唯一、原型を留めていたもの。
それを強く握り締め、彼は語りかけた。今は亡きスコールに。
「スコール。お前は私の作戦ミスで死んだ」
パパスは天を仰ぎ、続ける。大空にスコールの姿が見えているかのように。
「だが、今は悲しまぬ。弔わぬ。許しを請わぬ。
 私は、足を止めるわけにはいかないのだ。心をここに残すわけにはいかないのだ」

 さらば、同志よ。
 パパスは深く一礼すると、そこを後にした。
221血の降る丘に。:03/06/29 06:29 ID:6/GgSegv
「はあ、はあ、はあ……」
ヴィンセントは、生きていた。星降る丘の少し南の岩場で、身を休めていた。
 
ヴィンセントは荒い息で四肢を確認する。
痛みは走るが、動く。
但し、失われていない部位に関しては。
失われたのは、左手の小指と薬指、足の指の何本か、右目。
ハイブロウSTも喪失している。
神羅甲式防具改は辛うじて身に纏っているものの、その防御力の半分以上が失われている。

俺は読み間違えたのか。
ヴィンセントは己の選択を反省しようとし―――中断する。
反省など意味が無い。
先。見るべきは前方のみ。
この先、どうやって戦い、どうやって勝ち抜くか。必要な思考はそれだけだ。

ともあれ、休んでいる暇は無い。
そう考えたヴィンセントが立ち上がると、
赤茶けた色の鍵が肩から落ち、済んだ音を響かせた。
それは、滑落時に神羅甲式防具改の亀裂に挟まった、
スコールのアイテム、魔法のカギ。
ヴィンセントはそれを拾い上げ、次なる行動の指針を立てる。

カギを配布すると言うことは、それを使って手に入れられる何かがあるはずだ。
そう思い立ったヴィンセントは、地図を開き目星をつける。
塔、洞窟、町、城――――――
222血の降る丘に。:03/06/29 06:29 ID:6/GgSegv

【パパス 所持品:ハイブロウST 黒胡椒 スコールの首輪 現在位置:J-06 星降る丘の麓 】
 根本行動方針:人命救助
 ステータス:MP2/3

【ヴィンセント 所持品:魔法のカギ 神羅甲式防具改(効果半減) 現在位置:J-07 岩場 】
 対処行動方針:『魔法のカギ』を使って、建造物でアイテム取得
 根本行動方針:勝利し、過去を改変する
 ステータス:HP半減。左手の使用困難。右目の喪失。歩行に若干の支障。右手人差し指骨折。

【スコール 死亡】 残り65人(66人)
223復讐の魔術師:03/06/29 10:39 ID:VY27BgiN
アリーナは突如起き上がった。
「おや、眼が覚めましたね」
とんがり帽子をかぶった魔法使いが微笑んでいる。
そうだ、私は毒沼で死にかけている所を助けてもらったんだったっけ…。
「あなたが助けてくれたの?ありがとう、魔法使いさん」
「サマンサと呼んで下さい。…それより、私の話は聞いてくれましたか?」

「話って…そういえばあなたに聞いた気がするけど…ごめんなさい、もう一度話してもらえるかしら」
「やはり聞いていなかったのですね」
サマンサがため息をつく。
そして、毒沼で話した事をもう一度話し出した。


「…と、いうわけでアルスを殺して欲しいのです」
サマンサの話の最後の方にはサマンサの声が怒りで張りあがっていた。
アリーナはそのアルスという男に嫌悪感を抱いた。
(ソロとは大違いね…)
「でも、サマンサ。いくらなんでも殺すのは…」
殺せ、と言われてすぐに殺せるようなアリーナではない。
「あの男を哀れむのはやめておきなさい。いまごろきっと自分に従わない誰かを殺して武器を奪っているはずですよ」
確かにサマンサの言うような男であるならそんなことはやりかねない。
「でも…。せっかく助けていただいて悪いけど、その話に乗るわけにはいかないわ」
アリーナが申し訳なさそうに言う。

「…ここで断ってはあなたの命がありませんよ」
サマンサの声が低くなる。
「約束を違えるようなら闘うしかありません」
「助けてもらってのはありがたいと思っているわ。でも、それだけはできない…」
頑なに拒むアリーナにサマンサが拳を握った。
「どうやら交渉決裂のようですね…残念です」
サマンサが一足先に戦闘体制に入った。
224復讐の魔術師:03/06/29 10:40 ID:VY27BgiN
「イオラッ!」
小規模の爆発が辺りを包んだ。
アリーナの減った体力では爆発をかわすことは出来なかった。
「ううっ…!」
倒れるアリーナにサマンサが詰め寄った。
「私の頼みを聞いてくださればこんなことにはならなかったのですよ…ルカニ!」
青い光線がアリーナの守備力を下げる。
「…殺してしまうのではアルスと同じになってしまいます。殺しはしませんよ」
そう言ってアリーナを思いっきり蹴りつける。

「―――!」
防御力のない無防備な身体に衝撃が走る。
「しかし、約束を違えた罰です。痛い目にあってもらいましょう」
そう言ってさらに呪文を唱え始める。
「ヒャド!」
氷の刃を背中に受けてアリーナは意識を失ってしまった。
「…私が勝手に与えた約束ですがね…」
悪いことをしましたと、すまなさそうに一礼した。

「やはり自分の力でアルスを殺すしかないですね…」
そう言ったサマンサは、北西へと歩き出した。

【アリーナ(気絶・瀕死)所持武器:無し 現在位置:O−20 砂浜】
 第一行動方針:?   

【サマンサ 所持武器:リボン 現在位置:O−20 砂浜から北西へ移動】
第一行動方針:アルスを殺す
225目いっぱい、手いっぱい。:03/06/29 12:57 ID:mSyfTIUP
森に潜伏するユフィは、白みつつある空を恨めしげに見上げている。
忍者はその他の職業と比べ、格段に夜目が利くので、いち早く接近者に気付くことが出来る。
それを己の利と出来る時間が終わってしまう不幸を嘆いているのである。
そんなユフィの耳に、ざざざ…枝と体が擦れる音が届いた。
ユフィは緊張し、音のする方向へ五感の全てを集中させる。

「ここまでくれば…森の中なら、隠れることが出来る…」

か細い憔悴しきったつぶやきを、何とか捉えることが出来た。
ユフィは声の主を目で追い、葉と草と枝のはるか向こうに、女の姿を発見する。
線の細い、尖った耳の女であった。
塔の乙女、ロザリーである。
ロザリーはふうふうと荒い息で、そこにぺたんとしゃがみ込み、両手で顔を覆った。
「私に人殺しなど出来るはずがありません。怖いです…殺すのも、殺されるのも」
ピサロさま…最後に女はユフィの知らぬ名を呟き、あとは押し黙ったまま動こうとしない。

あの人、殺し合いをする意思は無さそうね。
静かに観察を続けたユフィはそう判断し、彼女と接触しようと立ち上がる。
しかし、立ち止まったまま、暫く固まっていた。
ユフィの眉が悩みの形となり、苦悶の形をとなり、やがて悲しみの形となった。

あの人と接触して、どうなるっていうの?

確かに、人との対話は心を落ち着かせるだろうし、ストレスも軽減できるであろう。
あの貧弱な体に、憔悴しきった表情はどうだ。
全く場慣れしていない様子がありありと見える。
会話を持てば情が沸くであろう、縋りつかれれば振り払えないであろう、
共に行動すれば足を引っ張られるであろう。
人の形をした足枷である。
配布アイテムで貧乏くじを引かされているユフィに、さらにペナルティを課すに等しい。
226目いっぱい、手いっぱい。:03/06/29 13:00 ID:mSyfTIUP
ユフィはロザリーの姿を眺めながら、なお考える。
この戦いの素人の女でも、森に身を隠すことを思いつくのだ。
他にも逃げ込む人間は増えることであろう、刈る人間も追いかけてくるに違いない。
ここは潜伏先として余り効果的では無い。

ユフィはロザリーに背を向けた。
人があまり来ない場所、忍者ならではの身体感覚や視聴覚が、潜伏逃走に生かせる場所。
すなわち、北の山脈の奥深くに向かうために。
慎重に足下のザックを拾い上げ、背負う。
巻物で手に入れた1092Gは、硬貨が音を立ててしまうので、放棄することに決める。
準備は整った、そろりと踏み出す、忍び足。

「怖い…」
ロザリーが背後で悲痛な呟きを漏らす。
その呟きを聞くものの存在に、最後まで気付かぬまま。
ユフィの良心は激しい疼痛を感じたが、ロザリーの呟きと同じ感情が、
その疼痛を消し去る麻酔薬となった。


【ロザリー 所持武器:うらミサイル(効能は>>26) 現在位置:K−12 森】
 行動方針:待機潜伏、逃走

【ユフィ 所持武器:困ったときの巻物×4 現在位置:K−12 森 → 北の山脈深く】
 行動方針:待機潜伏、逃走  ※1092GはK-12地点に放棄
227目いっぱい、手いっぱい。:03/06/29 13:05 ID:mSyfTIUP
訂正 >>225 25行目

× あの貧弱な体に、憔悴しきった表情はどうだ。
○ しかし、あの貧弱な体に、憔悴しきった表情はどうだ。
228名前が無い@ただの名無しのようだ:03/06/29 13:25 ID:+iGZs3do
美少女のワレメが丸見えなサイトがありましたでつ!!
マジでつよ。す、すごい… (*´Д`)ハァハァ…
http://plaza16.mbn.or.jp/~satchel/omanko_marumie/
美人お姉さんのオマ○コも…(*´Д`*)ハァハァ
229Darkness Blood:03/06/29 20:20 ID:rRy5Jpi8
サマンサとアリーナが戦っている最中の出来事だった。
砂浜に転がっている釣り船の影から何者かが現れたかと思うと、そいつは夜明け前の薄闇を
島の中心部に向かい疾駆していた。

当初はこのゲームに乗るつもりはなかった、己の命惜しさに戦う事など自らの美学に反する。
だが、その反面、己の力を思うが侭に振るってみたいのもまた真実。
そのジレンマにやや頭を悩ませつつ、休息していたところに飛びこんできたのは願っても無い話。
あの魔法使いの話に嘘は無いように思えた、話の通りの外道ならば充分討つに値する。
血塗られた裏稼業の血が騒ぎ出す…相手に不足は無い。

「これで俺の目的は決まった、アルスとやら待っていろ、貴様はこのサラマンダーが討つ!」
焔色の髪の男、サラマンダーはそう宣言すると、ますますスピードを上げて平原を駆抜けて行った。

【サラマンダー 支給品:ダガー 現在位置O−20から西に沼を迂回
第一行動方針:アルスを倒す 
第二行動方針:ジタンを探す
(サマンサの話により、ある程度アルスの外見はつかめています)
230道化の休息:03/06/29 23:12 ID:givTuguf
ヴィンセントは岩陰でうずくまり、じっと自分の左手を見ている、と傷口がぶくぶくと泡立ったかと
思うと、すこしずつ骨と肉が再生していく。
それを見ながらヴィンセントは溜息をつく……あれほどまでに憎み嫌ったこの肉体を今は有り難いと
思うとは、自分の身勝手さにあきれかえる。
まぁ、この程度の再生能力が戦闘の役に立つはずもないが…。

ともかく自分は戦わなければならない、勝ち残ればこんな呪われた肉体になることもなく
そして失った愛をも得ることが出来る。

ルクレツィア……私は間違ってるのかもしれない、私は所詮哀れな道化でしかないのかもしれない
それでも、私はやりなおしたいんだ。
ヴィンセントは星空に永遠の想い人の姿を描きながら、再生の時を待っていた。

【ヴィンセント 所持品:魔法のカギ 神羅甲式防具改(効果半減) 現在位置:J-07 岩場 】
 対処行動方針:『魔法のカギ』を使って、建造物でアイテム取得
 根本行動方針:勝利し、過去を改変する
 ステータス:HP半減。

現在休息中
左手の使用困難。右目の喪失。歩行に若干の支障。右手人差し指骨折。
これらは約2時間後に回復。ただし再生能力はHPには影響しないこととする
231不吉な予感:03/06/29 23:29 ID:/SFnp2b2
「どうしたの?」
突然立ち止まったクーパーに、ユウナが心配そうに尋ねる。
「ううん、なんでもないよ。」
クーパーはそう答えたものの、心の中は不安で一杯だった。

さっき感じた嫌な予感。
お父さんに何か起こったのか?アニーに何か起こったのか?
それとも僕自身に……。
大丈夫。お父さんもアニーも強いんだ!それに僕だって。
だって、そう言い聞かせないと不安に押し潰されそうなんだ。

駄目だ。しっかりしなくちゃ。
僕がこんなじゃお姉ちゃんにも迷惑をかけちゃう。
「僕なら大丈夫!先を急ごう、お姉ちゃん!」
笑顔を作り、ユウナに向かって言うと、クーパーは突然走り始めた。
「クーパー君、ちょっと待ってよ〜」
地面に置いたザックを持ち、ユウナも慌てて走り始めた。

少年は知らない。妹が既に殺された事実を…。
そして、優しかった父親が狂い始めている事実を……。

【ユウナ/クーパー 所持武器:不明 現在位置:D−20から塔へ】
 行動方針:アニー、リュカ、ティーダ、アーロン、ルールーを探す
「もうすぐ朝なんだ…」
やや白み始めた東の山際を眺めながらティファは呟いた。そして
祠を出てからずっと自分が歩いてきた方角を振り向き、薄くなっていく夜霧から覗く、
眠りから覚めようとしている草原を眺め、大きく伸びをした。
どんなに血塗られた土地でも朝の始まりというのはどこも変らず清々しいものなのだ。
しかし、太陽の存在が必ずしも自分の命を守ってくれるものだとは限らない。
―――特にこの島のような場所では。

そろそろ障害物の少ない平地を歩くのは危なくなってきたな、と思ったティファは
コースを右手に見える山を通るルートへと変えた。
山のガイドの仕事をし、山で修行をしていたティファにとって
明るくなりさえすれば山を歩くのは平地のソレに比べてもさほど苦にはならなかった。
ある程度まで登ったティファはそんなに遠くではない山の山頂に目を向けた。
とても登れそうに無い切り立った灰色の山肌、空に突き刺さるように聳える山頂、
そして―――

「雲に乗り空に浮かぶ城、か。…フフフ、本当に夢みたいな話ね」
シュール・リアリズムを絵に描いた様な風景に、ティファは自嘲気味に呟いた。
山頂のそのまた上、雲の上に我が物顔で居座る城がそこにあった。
まるでこの島の全てを監視し、支配しているような存在感。
星の光だとしか思っていなかった城の照明が、今は城の住人が存在する証明として
揺らめき、外壁を照らしている。
「……?」
城に目を奪われていたティファは不意に感じた細かなバイブレーションに、
なにか思い当たる事があるのか、ベルトにくくりつけておいた
通信機のような物を手に取り、赤いボタンを押した。
するとバイブレーションは収まり、代わりに通信機の画面に文字が映し出された。
「えーと、『意外な人との再会。じっくり話をしてみると運気UP♪』?」
どういう意味かしら、とティファはあごに手をやって考え込んだ。
(このゲームに参加してて、昔別れた人…。意外って事は……!!)

「動くな。今は危害を加えるつもりはない」
不意に聞こえた、低く、抑えられてはいるがよく通る声。
ティファは声を発した人物の方へゆっくり視線を動かし―――
「あ、あなたは…!?」
驚きに掠れた声。そこには左手に付けた銃をティファへと向けたダインの姿があった。


【ティファ 持ち物:変な通信機  現在位置:J-8山地】
 第一行動方針:今はダインの言う事を聞く
 根本行動方針:仲間を探す   (西スタート)

通信機:謎電波を受信する携帯電話。不定期にメッセージや音声を受信する

【ダイン 持ち物:ハードバルカン(マテリア ?×3)現在位置J-8山地】  
第一行動方針:ティファにスカーレットの事を聞きだす
最重要行動方針:スカーレットを探し出し、殺す
最終行動方針:エレノアの所へ逝く
234Lady Viper:03/06/30 00:19 ID:hks2kXL4
「くっ…」
マイヤーの剣がライアンの肩を捉える。
後退するライアンに、さらに間髪入れずマイヤーの追撃の刃が迫る。
それを何とか避けながらもライアンは考える。
この少年、タダでさえ剣の腕は天才的だというのに、この気迫は何なのだ?
まるで人というよりも獣だ。
その困惑がライアンの隙を生む、彼の右手方向から常識では考えられないほどの大振りの一撃が、
これもまた常識を超えるスピードでライアンへと迫る。
これもかろうじて受けとめ、鍔ぜりあいの体制になる…が、

がぎん、がぎがぎ
ノコギリ刀がいやな音をたてて火花を散らす。
(いかん、このままでは武器が持たん)
ライアンは何とか鍔ぜりあいから逃れようとするが、マイヤーは蛭のようにライアンから離れない。
ライアンも必死で何とかしようとするが、もはや武器が限界だった。
ガタガタっと手元が振るえたかと思えば、のこぎり刀の目釘が弾け飛んだのである。
「無念…」
そしてその瞬間、マイヤーの剣がライアンの首を、のこぎり刀ごと斬り落とした。

刎ね飛んだ首の傷から血が噴水のように飛び出て、マイヤーの身体を朱に染める。
しかし当のマイヤーは何も感じてないようだ、いや考えている事があるにはある…。
この後にもらえるであろうご褒美を。

「キャハハハハよくやったわね、ポチ」
何時の間にか自分のすぐ後ろにスカーレットが立っていた。
「約束だよ、はやく薬を…」
マイヤーの言葉にスカーレットは注射器を投げて渡す、もどかしげに腕をまくり注射するマイヤー、
しかしスカーレットは無情にも告げる。
「ごめんねぇポチ、そのお薬は今ので最後なのよ…ふふふ、でも」
そこで言葉を切り、そしてその口から恐るべき言葉が飛び出す。
235Lady Viper:03/06/30 00:20 ID:hks2kXL4
「このお薬は他の皆も持っているのよ、知らなかった?」
それを聞くなりマイヤーはライアンのザックの中をひっくり返し、そこに目的の物がないと見るや、
今度はライアンの死体の衣服までむしり取り、ポケットの中まであさり始めた。
一国の王子が薬欲しさに死体をまさぐる、こんな哀れで滑稽な光景があるだろうか?
しかし、薬が見つかるはずも無く、マイヤーは恨みがましくスカーレットを見つめる。

「あら、なかったの?残念ねェ…キャハハハ、じゃあ他の人が持っているんだわ」
マイヤーはそれを聞くと、またあらぬ方向へと駆け出していった、獣じみた叫びをもらしながら。
薬に汚染された彼の精神はこんな他愛ない言葉すら疑えなくなっていたのだ。

そしてまたそれを見送るスカーレット、結局考えた結果、マイヤーという存在は盾とするには危険過ぎる。
なら剣になって貰おう、あのガキが人を殺せば結果的に自分が助かる可能性が増えるのだから。
「キャハハハ、そうよそうよ、たくさん殺してらっしゃい、私のために」

【スカーレット 所持武器:麻薬(残り3回) 現在位置:U-10
第一行動方針:未定 】

【マイヤー 所持武器:バリアブルソード 現在位置:U-10から移動 
第一行動方針:他人から薬を奪う(殺してでも) 】

【ライアン 死亡】 残り65人
236Lady Viper:03/06/30 00:38 ID:hks2kXL4
訂正

【スカーレット 所持武器:麻薬(残り2回)注射器(予備) 現在位置:U-10
第一行動方針:未定 】

【マイヤー 所持武器:バリアブルソード 注射器&麻薬1回分
現在位置:U-10から移動 
第一行動方針:他人から薬を奪う(殺してでも) 】

【ライアン 死亡】 残り65人
237こそあど逃避機構:03/06/30 02:42 ID:wiBUH9q1
「おお〜〜! アレがそうですか」
少女が、白む南の空に見えてきた塔の大きさに感嘆を漏らす。
彼女は美人ぞろいの参加者たちの中で最も地味な外見をしている。
パーツ一つ一つは悪くないのだが、組み合わさると没個性になる。
標準偏差値のような尼僧服の少女―――僧侶ターシャ。

「…ソレにしても、アレですね。アレはいけませんね」
歩みを進めながら、ターシャは今に至るいきさつを思い出そうとする。
が、思い出す端から言語イメージは曖昧なものになり、霧散し、形を失う。
彼女の錯乱状態は続いていた。

こんな先行き不安なターシャだが、実はゾーマを屠った4英雄の1人だ。
また、アルス旗揚げパーティーメンバーでもあった。
短期間で仲間を使い捨てるアルスが、
最初から最後まで手元に置いた唯一の例外。

何故ターシャがこのような信頼を得ていたのか?
それは、彼女が他者に依存し、判断を委ねるタイプの人間だから。
依存相手は当然アルスだ。
アルスが褒めろと言えば褒める。アルスが称えろと言えば称える。
どう思うかと問われれば仰る通りと答える。多分、死ねと言われれば死ぬだろう。
全肯定。

そういう、アルスにとって非常に都合よく、自尊心を満たす存在がターシャだったのだ。
正に究極のイエスマン。
唯我独尊勇者・アルスの形成に、大きく影響を与えた負の功労者とも言える。
238こそあど逃避機構:03/06/30 02:45 ID:wiBUH9q1
そんなアルス原理主義者だった彼女が、この極限状態で正常な判断が下せるわけが無かった。
いや、正常だの異常だの以前の問題で、もう判断そのものが下せない体質になっている。

「さて、塔に着いたら、ソレをアレしましょうか」
思考にフィルターがかかり、単語は指示代名詞に置き換わる。
結論を出すことを避ける彼女の逃避機構。
『ソレ』がどんなものを指すのか、『アレ』はどんな行為なのか?
ターシャ自身にも判っていない。


【ターシャ 所持武器:? 現在位置:E-21 行動方針:とりあえず塔に向かう】
「そこだと目立つな。あの岩陰まで歩け」
ダインは二人のいる場所から少し離れた岩を指差した。
「…そんな銃を突きつけておいて危害を加えるつもりが無い、なんて信じられると思う?」
ダインの命令に、ティファは言葉を選んで抗弁した。

「銃を下ろせばおまえは逃げ出すだろう。命が惜しければやらない方がいい」
「どういう意味よ。この距離なら死なずに逃げ切れる自身はあるわ」
ダインの言葉を挑発と受け取ったのか、ティファはムキになって言い返した。
しかしダインは肩をすくめ、
「銃弾がおまえを殺さなくとも、おそらく銃声を聞きつけた誰かが
おまえと俺を殺しに来るだろうな。今ここで死ぬ確立を上げたくは無いだろう?」

「………。」
「それに俺もこの距離でもおまえに手傷を負わせられる自身がある。
体に埋まった銃弾の一発がどれほど不利に働くだろうな。
大体、そんな目立つ場所で立っている事自体、おまえの死ぬ確立をあげているんだぞ」
ダインの言葉はもっともだった。それにティファは正直無傷で逃げ切れる自信は無い。
もし怪我をしても治療する手立ても無い。
背後を取られた時点で、既に自分は負けていたのだ。無傷で済む確立が一番高いのは…。
「…そっちに行くわ」
ティファはダインが右手で指さした岩の陰にゆっくりと歩いていった。
(じっくり話し合うと運気UP、か。もし間違ってたら叩き壊してやるから)

座らずとも十分身を隠せる大きさの岩の陰。
ティファはそこに座り込み、続いてダインも岩陰に入り、座り込んだ。
もちろん、ティファの拳の間合いの外にだが。
「で、あたしをこんな所に連れてきてどうするつもり?」
もう少し近づいてくれたら先手を取って攻撃できるのに、と
心の中で文句をもらしつつ、ティファは端的に一番疑問に思っていた事を口に出した。
ティファの知っているダインは、自分以外の人間になんの価値も置いていない、
すこしでも自分の邪魔になった人間は即座に撃ち殺すような、
なんというか空っぽな印象を持つ人間だった。
それに祠にいた人間が言っていた言葉。『優勝者にはなんでも一つ願いをかなえられる』
大事な人間を失ってしまったダインはその人を生き返らせる為に優勝を目指しているんじゃないか?

ティファの感じているダインの人間性と目的を合わせて考えれば、
ティファは背後を取られた時点で既に撃ち殺されていたはずだ。
情報を聞き出そうとしているとしても、こんな回りくどい事をせず
足を撃ち抜いて動けなくしてから拷問にかけるだろう。
悲鳴と銃声をエサにやってきた人間を撃ち殺すだろう。
しかしここにいるダインはソレをしなかった。

「一つ聞きたい事があるだけだ。おまえは確かバレットと一緒にいたやつだったな。
 スカーレットという神羅の女を知っているだろう?」
ティファは無言で頷いた。
(自分が死んだ後、あのおばさんがどうなったのか知りたかっただけなの?)
「あいつがこのゲームに参加している。どこかであいつを見なかったか?」
「えっ! ウソ! あいつは確かにあたし達が殺したはずなのに!!」
「殺した? 馬鹿言うな。あいつが死んだなんて情報は聞いた事もない」
(そうか。この人自分が死んだ事に…。なら、もしかして本当に…)
ティファは心を落ち着かせ、ゆっくり言葉を選んで言った。
「ダイン…さん。あなたは…
あたしが知っている限りでは…もう死んでしまった人間…なの」

「…そうか。道理で最後に覚えている風景が谷底なわけだ」
ダインはあきらめたような微妙な表情をして、だいぶ青く染まった空を仰いだ。
「あなたがここにいるのだから、あの女がここにいても不思議じゃないわ」
「その言い方だとこの島であの女を見かけなかった、ということか」
ダインは溜息をつくとティファに向けていた銃を下ろし、立ち上がった。
「おまえは北の祠から来たのか?」
「いいえ、東の祠からよ」
ダインが次に起こす行動が読めず、ティファは身を硬くした。
「支給品は?」
「この通信機みたいなものよ。受信専用みたいだけど」
ティファが『みたい』と言うのも訳がある。
最初に森の中でザックから取り出した時、
誰かから電話がかかってきたので、恐る恐る出てみたら相手がケフカだったのだ。
形容しがたい嫌悪感を感じたティファはおもわず通信機を近くの木に叩きつけた。
我に返ったティファは慌てて拾い上げたらなにやら変なメッセージを受信していた。

差出人は不明。内容は『南には危険な香り。鶏が撒き餌を踏み砕く』
南に行こうと思っていたティファはとりあえず十数分動かないでいた。
そしてけたたましい銃声。
心臓の縮み上がる思いをしたティファは真っ直ぐ北へと針路をとったのだ。
普通の通信機には無い能力がコレにはあるようだった。

「そうか…」
ダインはそう呟くと岩陰から出て行こうとした。
「ちょっと! あなたはゲームに乗ろうって考えてないの?」
ティファは慌てて引きとめ、今一番の疑問をぶつけた。
「どうした? 俺にゲームに乗って欲しいのか?」
ダインは振り返り、苦笑いを浮かべた。
「そういうわけじゃないけど、…エレノアさんの事とか……」
ティファはまずい事を言ったかなと思い下を向いた。
「今更あんな世界へエレノアと帰ってどうなる。
 失くしてしまったモノ。間違えてしまったコト。
 幸せだったあの場所、あの時間を取り戻し
エレノアに幸せに生きてもらうには修正すべき過去が多すぎる」
「………」
「それにな、例え全てが修正されたとしても俺自身の過ちは消える事は無いんだ。
 俺は俺自身があれ程の罪を忘れて生きる事を許せない。
 こんな穢れた手で、生きているエレノアを抱く事はできない」

「だけど…、だけど……!!」
ティファは自分が何を考えているのかわからなくなった。
ダインにゲームに乗って欲しいわけではない。
しかし、行き続けられるチャンスを簡単に破棄して、
待っている人間がいるのに生きる事を諦めているダインが許せなかった。
マリンの為に、生きて欲しかった。

ダインはティファに背を向け、話しを続けた。
「ただな、あの女に落とし前をつけてやらなくてはならない。
 俺から全てを奪い、高笑いをして甘汁を貪っているあの女にな。
一度失った命だ。人殺しだとか、そんな無駄な事に使っている場合じゃない」
「だけど……」
ティファはかけるべき言葉が見つからなかった。
(あたしは、どうしたらいいの? ワカラナイ、ワカラナイヨ)

「残された時間を大事に使え。
本当に守りたいモノは一つだけにしろ。
大切な人がこの島にいるならどんな事をしてでも探し出せ。
 少しでも長くそいつの傍にいてやれ。
 そして、もし優勝できたのなら、願い事も自分の残りの命もその人に全部捧げてやれ」
ティファはダインの声をどこか遠くの方で聞いていた。

「俺が言いたいのはそれだけだ。次に会う時がずっと先の未来である事を祈っている」

目の前に転がってきたマテリアが涙で滲み、
ゆっくり遠ざかっていく足音をただずっと、ずっと、うつむいて聞いていた。



【ティファ 持ち物:変な通信機 ?マテリア×2  現在位置:J-8山地】
 第一行動方針:ワカラナイ
 根本行動方針:仲間を探す   

通信機:謎の電波のみを受信する携帯電話。壊れているためまともな電波は受信しません。
不定期にメッセージや音声を受信します

【ダイン 持ち物:ハードバルカン(先制攻撃) 現在位置:J-8山地から北へ】  
第一行動方針:参加者を探す
最重要行動方針:スカーレットを探し出し、殺す
最終行動方針:エレノアの所へ逝く
244マラソンは好きですか?:03/06/30 03:20 ID:wiBUH9q1
ドッキリ大成功、から十数分後。
僕はバンダナを巻いた青年・ロック(+犬のトーマス)と一緒に歩いていた。
……といっても、僕が一方的に付き纏っているだけなのだが。

「ね〜ね〜、僕が悪かったってば〜。お願いだから、一緒につれてってよ〜」
「うるさい黙れ近づくな馬鹿野郎」
どうやら先ほどの僕の行為は、ロックを本気で怒らせてしまったらしい。
さっきから必死で謝っているのに、返ってくるのは毒舌の嵐だけだ。
……え? あまり必死に謝っているようには見えないって?
これでも僕としては精一杯、本心から言っているつもりなんだけどね。

「ホント、ゴメン……。でも悪気はなかったんだ。武器がなくて、心細かったんだよ」
僕がそういうと、ロックはジト目でこちらを睨みつけた。
「へ〜。他人を脅しておいて、「悪気がなかった」とか言うか…」
鋭い視線が、ジャボテンダーの針のように僕に突き刺る。
……良く良く考えれば、流石に今の言葉はマズかったかもしれない。
しかしいくら悔やんだところで、後悔後先立たず。
良いフォローの言葉も思いつかないまま、僕がおたおたしていると。
「もういい、行くぞトーマス!」
ロックはおもむろに足元のトーマスを拾い上げた。そして、
「ヘイスト!」
赤い光が包み込むと同時に、彼はものすごいスピードで走り始めた。
なるほど、距離を開けて煙に巻こうってつもりなんだ。それなら……
245マラソンは好きですか?:03/06/30 03:20 ID:wiBUH9q1
「ドロー!」
僕達が常にジャンクションしているGFの力によって、ロックの持つ魔力が白い光となって飛び出す。
「!?」
「ガーデンの生徒をあまり舐めないでね〜、ヘイスト!」
そして僕は、ロックのモノだった魔力を、擬似魔法ヘイストとして解放した。
僕の周りの時間が歪み、全てがスローモーションのように流れていく。
いや、正確に言うなら僕とロックだけが通常の時の流れから切り離され、倍速で動いているのだが。
ともかく、これで僕達の条件は全く同じになった。
「くっ……けど、足の早さじゃ俺に敵わないだろ、とっとと諦めろ!」
「でも体力なら、まだまだ若い僕の方が上だよ〜」
「年って言ったってそんな変わらないだろ! 俺はまだ25だっ!」
「え〜? 7、8歳の差は大きいと思うけどね。
 それにみんな言ってたけど、25歳過ぎたら正直、オジサン……」
「お、俺はまだオジサンじゃねぇッ!!」

そんなこんなで、僕達は半ばムキになりながら走った。
時折誰かとすれ違いながら(何か怯えたような視線を向けられたけど、きっと気のせいだよね、うん)
森を、野を、砂浜を、どこまでもどこまでも走りつづけ――

ふと気がついた時には、すでに夜空の端が明るくなり始めていた。
246マラソンは好きですか?:03/06/30 03:21 ID:wiBUH9q1
「ねー……ちょ、ちょっと待ってよ」
僕の言葉に、ロックは肩で息をしながら振り返る。
「う、る、さい…っての……一体、なんだよ」
僕はなんとか呼吸を整えながら、ゆっくりと辺りを見まわし、言った。

「ここって、島のどこらへん、なのかな…?」

――やけに遠くに見える山。反対を向けば、延々と続く草原。
そして耳をそばだてると、どこからともなく水の流れる音が聞こえてくる。
「………」
「………」
――沈黙。永遠に続きそうな、重い静寂が辺りを包む。
それを破り、ロックは呆けたようにぽつりと呟いた。
「……何やってるんだろうな、俺達」

その問いに答える者は、当然無く。
僕達の長いため息とトーマスの吼え声だけが、夜明け間近の空に虚しく響いて、消えた。

【アーヴァイン(疲労+迷子) 所持品:プラカードと赤ヘルメット 現在位置:R-19 平野
現在の行動方針:休息&現在位置がどこなのか調べる
根本行動方針:仲間と合流する、マトモな武器の入手】
【ロック(疲労+MP減少+迷子) 所持品:トーマス 現在位置:R-19 平野
現在の行動方針:とにかく休息を取りたい
根本行動方針:仲間と合流する、自衛以外の戦闘は避ける】
247修正スマソ:03/06/30 13:27 ID:gjjqWhUX
241:2行目
「いいえ、東の祠からよ」→「いいえ、西の祠からよ」
でお願いします

マタ(´・ω・`)マチガエタ
248暗い疑惑:03/06/30 13:47 ID:GydSZtvB
リュカは黙々と歩いていた。
“金髪の女”を探して、ただひたすら歩いていた。
その時、リュカは見知った声を聞いて振り向いた。

「ご主人様っ!」
ピエールだった。かつての仲間で、自分の身を幾度となく救ってくれた騎士だった。
「ピエール、会えて嬉しいよ」
リュカはどこか感情のこもっていない声でピエールとの再会を喜ぶ。
「よかった、祠にご主人もいたことを思い出して、急いで探しに戻ったんですよ」

「そんなことよりキミは東の方にいっていたのかい?」
リュカがピエールに問い掛けた。
「ええ、実は銀髪の剣士に負けてしまいまして…恥ずかしながら武器を取られてしまったのです」
ピエールが悔しそうに身振りをつけて説明する。
それを聞いてリュカがはじめて驚いたような顔をする。
「キミほどの腕を持つものが負けたのかい?」
「お恥ずかしい限りです…」

ピエールはリュカにどこへ行くつもりなのかを尋ねた。
――東は危ないですよ、と忠告を添えて。
「僕はね、ピエール。金髪の女を探しているんだ」
「金髪の女――?さあ、見ませんでしたな。その女がどうしたんですか?」
その言葉に優しいリュカの顔が、今まで見せたこともないような憎悪の表情に変わる。
「アニーを、アニーを殺した…!」
アニーが殺されたというのも驚愕の事実だが、
ピエールにとってはリュカがこんな表情を見せたことのほうが驚きだった。
「ご、ご主人…。その女を見つけて――どうするんですか?」
ピエールがビクビクしながら訊いた。
249暗い疑惑:03/06/30 13:47 ID:GydSZtvB
リュカは薄い笑いを浮かべて答える。
「決まっているだろう、アニーの苦しみをそいつにも味わわせてやるんだよ」
背につけていた鞘からパパスの剣を取り出して、一振りする。
そして黙って話を訊いているピエールに、言った。
「キミも手伝ってくれるよね?」
僕の部下なんだよ?キミは――そんな意味を含んだ言い方のように聞こえた。

「…………」
ピエールの蒼ざめた顔は仮面で見えない。
だからピエールが黙っているのを肯定の証と受け取ったのか、
リュカは優しい顔に戻って
「さあ、行こうか。東にはいないんだろう?では西に向かおう」
リュカが西へ歩き出した。
「わかりました」
ピエールもそれに従い後ろについていく。

(ご主人、正気に戻ってください。復讐なんて、なんの意味も――)
そう思ったピエールだが、それをリュカに言う勇気はなかった。

ピエールが自分の主人に疑惑を持ったのは、これがはじめてだった。

【リュカ 所持品:パパスの剣 位置:O−7から西へ】
 第一行動方針:金髪の女を殺す

【ピエール 所持品:なし 位置:O−7から西へ】
 第一行動方針:リュカに従う
250暗い疑惑:03/06/30 13:52 ID:GydSZtvB
すみません、248の3行目「その時、リュカは見知った声を聞いて振り向いた。」
という表記を以下の通りに修正します。
「森を抜けて、しばらく歩き、どの方向へ行こうか迷っていた時、リュカは見知った声を聞いて振り向いた。」
251竜騎士の悪運:03/06/30 20:51 ID:D1tuC3DG
夜が明けかけるのをカインは洞窟内部から確認をした。
傍らではリルムが仲間が出来て安心でもしたのか静かな寝息をたてている。
カインはそれを微笑ましく思いながら、今後の事を考えていた。
自分本来の仲間であるセシル達に、このリルムの仲間達。
彼らは乗っているのであろうかこのゲームに。
乗っていないとしても、会った所で何が出来るのであろうか。
操られていたとはいえ、裏切りつづけた自分を信じてもらえるのであろうか。
そんな考えがカインの頭を支配する。

突然、外に人の気配がし、カインはディフェンダーを掴み、外へと出た。
洞窟を出てみると人影が動いたのが見える。
カインはそちらへと移動しようとしたが、リルムが危険にあってはいけないと考え、立ち止まる。
「誰だ!」
低く重い声で人影へと呼びかける。
人影は一瞬ビクリとするとこちらに駆け寄ってきた。
「お、俺、ティーダッス。
 森歩いてたら洞窟が見えて、あの、やる気なんて全然無いッスから。」
「そういう発言は刃物を持たずするものだ。」
ティーダは言われて気づいたようにサバイバルナイフを放り投げる。

その後、カインはティーダに尋問をした。
ティーダがそれほど悪い人間ではないとわかったところで、カインは今までの出来事を話した。
同じくティーダも自分に起こった出来事を話す。
「まぁ、こんな所か。」
そういいカインは手にしたディフェンダーを離した。
瞬間、鋭いものがカインの右腕に刺さる。
先ほどティーダが放り投げたサバイバルナイフだった。
ティーダは何が起こったかわからない様子で周囲を見回す。
252竜騎士の悪運:03/06/30 20:52 ID:D1tuC3DG
木の影から黒いツンツン頭の少年が出てきた、手には剣が握られている。
「君はその男の子に尋問をし、なおかつ剣を向けた!
 君は邪悪だ!正義の名の元に死んでいけ!地獄に落ちろ!」
そう叫ぶと少年はカイン目掛けて剣を振り下ろした。
咄嗟に怪我をしていない左腕でそれを受け止める。
と、洞窟からリルムが出てくる、手には槍が持たれていた。
少年はそんな事に気づかない様子で再び剣を振る。
「ふふ、利き腕をやられちゃ、折角の剣の腕も鈍っているね。」
「悪いな。」
そう言うとカインは下がり、剣を一旦リルムに預け、槍を受け取る。
すかさず少年が突きをいれるが、簡単に槍で弾かれる。
「俺の利き腕は左だ、そして……」
カインは、闇に染まる大空へと飛んだ。
文字通り飛んだのである、少年は呆気にとられ、剣を拾うのも忘れている。
「剣よりも槍が得意なんだ。」
瞬間、大空から槍を抱えて少年目掛け降下した。
253竜騎士の悪運:03/06/30 20:52 ID:D1tuC3DG
「ここは危険だな、日が昇らない内に何処か……
 山奥にでも行ったほうがいい。」
気絶する少年を尻目にカインは少年の剣を拾い、ティーダとリルムに離した。
「そうッスね。」
「わかった。」
カインの意見にティーダとリルムも同意する。
カインは無言で少年の剣をティーダに手渡した。
ティーダは最初困惑した様子だったが、それを受け取ると静かに頷いた。
「しかしリルム、槍があるなら最初から出しておけばいいだろう。」
「お前、槍が得意なんて言ってなかったじゃないか。
 それに私もさっき起きてはじめて気づいたんだ。」
ため息をつくカインをよそに、ティーダは笑った。

【カイン 所持武器:ホーリーランス 位置:P-04(洞窟外部) 行動方針:P-9から山へと入る】
【リルム 所持武器:なし 位置:P-04(洞窟外部) 行動方針:カインと一緒に行動する】
【ティーダ 所持武器:ルーンブレイド 位置:P-04(洞窟外部) 
 行動方針:カインと一緒に行動して元の仲間と合流】
【アルス(気絶) 所持アイテム:サバイバルナイフ 円月輪 現在位置:P-04(洞窟外部)】
 根本行動方針:邪悪の殲滅(主催者打倒) ※彼に同調しない者は全て『邪悪』とみなす
254出会いと別れ:03/06/30 22:42 ID:PLeuSKRt
夜が明けかけるのをカインは洞窟内部から確認をした。
傍らではリルムが仲間が出来て安心でもしたのか静かな寝息をたてている。
カインはそれを微笑ましく思いながら、今後の事を考えていた。
自分本来の仲間であるセシル達に、このリルムの仲間達。
彼らは乗っているのであろうかこのゲームに。
乗っていないとしても、会った所で何が出来るのであろうか。
操られていたとはいえ、裏切りつづけた自分を信じてもらえるのであろうか。
そんな考えがカインの頭を支配する。

突然、外に人の気配がし、カインはディフェンダーを掴み、外へと出た。
洞窟を出てみると人影が動いたのが見える。
カインはそちらへと移動しようとしたが、リルムが危険にあってはいけないと考え、立ち止まる。
「誰だ!」
低く重い声で人影へと呼びかける。
人影は一瞬ビクリとするとこちらに駆け寄ってきた。
「お、俺、ティーダッス。
 森歩いてたら洞窟が見えて、あの、やる気なんて全然無いッスから。」
「そういう発言は刃物を持たずするものだ。」
ティーダは言われて気づいたようにサバイバルナイフを放り投げる。
255出会いと別れ:03/06/30 22:42 ID:PLeuSKRt
その後、カインはティーダに尋問をした。
ティーダがそれほど悪い人間ではないとわかったところで、カインは今までの出来事を話した。
同じくティーダも自分に起こった出来事を話す。
「まぁ、こんな所か。」
一通り話が終わると、カインはティーダを洞窟の中に案内した。
ランタンの灯がゆらめき、リルムが起きているのがわかった。
「カッコマン、誰?」
まだ半分寝ているような瞳でティーダについて聞いてくる。
ティーダは身振り手振りで自分の事を話し、リルムも自分の事を話した。

「……それじゃあ、行くんだな?」
「はい。二人の仲間に会ったらここにいたって伝えますから。」
結局、自分の仲間を探しに行くと言ったティーダをカインは止めはしなかった。
リルムは少し残念そうだったが、ティーダはニコリと微笑むとそのまま立ち去った。
「また、会えるよね?」
「……どうかな。」
遠ざかるティーダの背を二人は見えなくなるまで見送っていた。

【カイン 所持武器:ディフェンダー 位置:P-04(洞窟内部) 行動方針:洞窟内で様子見】
【リルム 所持武器:? 位置:P-04(洞窟内部) 行動方針:カインと一緒に行動する】
【ティーダ 所持武器:サバイバルナイフ 位置:P-04(洞窟外部) 行動方針:元の仲間と合流】
>>251-253は無効とさせていただきます。
大変失礼しました。
257けだもの:03/06/30 23:51 ID:DU5t4oiW
「漸く行ったか。」
のっそりと青い獅子が立ち上がる、少し時間は遡る。

あれからキングレオはティーダを持余していた。
そもそもキングレオはパーティを組もうと思ってない、普通そういう事をしたがる者はいきなり喧嘩を売ったりしないものだ。
かといって今更殺す気も起こらない、放置しておくのも無責任過ぎる様な気がする。
仕方なくそのまま留まっていたのだが……
「いかんな、催してきた。」
言葉と同時にティーダの身体が僅かに震えた……様な気がした。
「女は……いない様だな。」
暫らく鼻を動かした後、キングレオはティーダに接近する。
「男も、こやつだけか。」
ティーダがまた震えた様に見えたのは多分気のせいだろう。
「意外と締まりは良さそうであるな、顔は余の好みとはちと違うが贅沢は言うまい。」
ティーダの寝汗が多くなった様な気がするが……気のせいだ。
「問題は……慣れぬ者だと裂けてしまう事と、合意がない事か……。」
ティーダの震えが大きくなってきている様な気がするが……気のせいだろう、多分。
暫らく首を捻っていたキングレオだが名案を思いついたらしくポンッと手を打つ
「まぁ良い、勝者の権利だ。」
思いついたのは名案ではなく言い訳だった様だ。
「それに念入りにほぐしてやればそうそう裂ける事もあるまい。」
そしてキングレオの手が ス テ テ コ パ ン ツ にかかる。
「うわぁぁぁぁぁ!」
その瞬間、ティーダは飛び起きると脱兎の如く東へと走り去っていった。

「まさかあの嘘をまともに受けるとはな」
その時の光景を思い出したのかキングレオは喉の奥でゴロゴロと笑う。
「余が好みでもない相手に何かする訳がなかろうにw」
既に「変態獣人キングレオ」として名前が売れてる事など全く気付かないままキングレオは移動を開始した。

【キングレオ:ステテコパンツ、力の盾 現在位置:K-5 山の中 目的:俺より強い香具師に(ry】
※移動開始、ただし東には行きません
258自分の心:03/07/01 00:06 ID:7Sw6Ftwh
切り立った岩肌と幾本もの木に隠れるように建っている朽ち果てた教会。
そこにタイクーンの王女、レナの姿があった。
西の祠を出て数時間、自分の目的に調度いい場所を捜し求めていたレナは
この場所を見つけたのだ。
レナは幾つも並んでいる長椅子の一つに腰掛け、月明かりに照らされた
女神像を見上げた。

見たことも無い神。ただ、月明かりに照らされたその顔を見ていると
今自分が血塗られたゲームに参加させられているのが嘘のように思えてきた。

レナの目的。それは『バッツにここにいる自分を見つけ出してもらう事』だった。
他人が聞いたらなんて馬鹿な事を考えているんだ?と思うだろう。
レナ自身も自分が馬鹿みたいだと感じていた。
今すぐここを飛び出してククルを、ガラフを、大事な姉を、バッツを探しに行きたかった。
しかし、レナは自分の心の汚い部分に縛られ、動けないでいた。
259自分の心:03/07/01 00:06 ID:7Sw6Ftwh
この島に来る前、城の窓から眺めていた風景。
庭の木の下で、本当に楽しそうに、幸せそうに語り合っている二人。
着飾る事を少しずつ覚えてきた姉の姿。
すこし大人っぽくなったバッツの姿。
いつから自分はこんな風になってしまったのだろう。
二人の間には自分が入り込む隙間が無いように見えた。

自分に無い物を持っている姉への嫉妬。
自分を好いてくれているのかわからないバッツへの不信感。
もしバッツが姉より先に自分を見つけ出してくれたら?
姉がここに来て自分の汚い部分を全て受け止めてくれたら?
―――自分のバッツを奪ってしまう姉が誰かに殺されてしまったら?

レナは頭をぶんぶん振って嫌な考えを振り落とそうとした。
「…何考えてんだろ。あたし」
朝の光が差し込み始めた教会で、レナはただずっと待ち続けていた。


【レナ(すっぴん):?  現在位置:H-12 朽ちた教会】
 行動方針:バッツを待つ
260センチメンタリスト&リアリスト:03/07/01 00:10 ID:bvJE2Bfk
「いやー、私たちは運が良い!」
O−05地点に転がるキスティスの首無し死体を発見して、バコタは嬉しそうに指を鳴らした。
その横で黙祷を捧げようとしゃがみ込んでいたセシルの顔が嫌悪感に曇る。
バコタはセシルの変化に目ざとく気付き、フォローを入れた。
「あ、軽率でしたね、申し訳ない。人1人死んでいるわけですからね」
セシルはバコタの弁解を聞いているのかいないのか、瞑目したまま。
バコタは祈るセシルを尻目に、重なるように放置されていた2つのザックを回収、
アイテムを吟味し、中身を全て自らのザックに放り込んだ。

やがて祈りを捧げ終わったセシルにバコタが言う。
「ですけど、あえて言わせてください、運が良い、と。
 私どもの目的達成のためには、首輪の分析が欠かせないのですよ。
 多角的に調べたり、比較したりするためには、いくら手に入れても足りないくらいです。
 その一つを労せず手に入れられたのですから」
バコタはセシルに噛んで含めるように説明しながら、キスティスの生首から首輪を抜き取る。
そして、キスティスの瞼を閉じさせる。
彼自身に哀悼の念はないが、セシルに対してポーズを見せる必要を感じたからだ。
折角手に入った極上のボディーガードを、こんなことで失ってはたまらない。

「次はあちらですね」
バコタは、セシルが黙祷している間に発見した、大樹の根元に盛られた小さな土饅頭を指差した。
折られた生木の枝が中央に突き刺さり、シロツメクサが一輪。
悲しみの淵に沈んだリュカが作った、アニーの墓。
バコタの続く言葉を察したセシルが、彼を制して言う。
「これは、やめてあげませんか」
「お優しい事で」
バコタは心底残念に思いつつも、これ以上不快感を募らせる訳にはいかないと自制し、
墓暴きの提案を取りやめた。
セシルはアニーの墓に手を合わせている。
261センチメンタリスト&リアリスト:03/07/01 00:13 ID:bvJE2Bfk
「さて―――どこか腰の落ち着けられるところはありませんかね?」
バコタがいつまでも祈りを捧げているセシルに痺れを切らし、移動を促す。
セシルが声に応え、目を開けた。
そしてバコタの背後、白みつつある北西の空を指差した。
「バコタさん、あれ…」
指差す方向を見上げたバコタの目に、もうもうと立ち上る黒煙が映った。
「あれは…火災でしょうかね? 一体どうして…」
こんどは振り返ったバコタが、セシルの背後を指差した。
彼もまた、遠い南東の空に、別の黒煙を見つけたのだ。

バコタはその明晰な頭はすぐに思い当たった。
あの黒煙の位置は、自分が出発した東の祠のあたりだと。
「祠には近づくな、ですか。なるほど…」
「では、バコタさんはあれらの煙は祠から出たと?」
「まず間違いないでしょうね。あれは祠を破壊、廃棄した証でしょう」
バコタは顎を撫でながら考える。
「そうですね―――先ほどの発言は訂正させていただきます。
 腰を落ち着けるのは、もう少し後にしましょう。
 フレッシュなサインが見つかるかも知れませんから」

バコタはセシルを伴い、進路を西へと取った。
北の祠―――の跡地を捜索する。そう思い立ったからだ。
バコタは己の盗賊家業で経験的に学んでいた。
人がそこに存在していた以上、必ず何らかの痕跡は残るものだと。
262センチメンタリスト&リアリスト:03/07/01 00:15 ID:bvJE2Bfk
大きな収穫は期待していない。
敵の手際の良さから察するに、重要な遺留品は残さないだろう。
見るに値しない生活の断片しか見つけることができないかもしれない。
例えばちぎれたボタン、例えばガムの包装紙。
しかし、そのくだらないものこそが、生活の断片―――フレッシュなサイン。

注意深く分析すれば、敵の兵士どもの生活を類推することができる。
生活がわかれば、文化風土が特定できる。
文化風土がわかれば、さまざまな類推が可能になる。
信仰、科学、政治、有力組織―――
細く頼りない糸の端でも、千切れないように慎重に手繰り寄せれば、必ず本体へと行き当たるのだ。

バコタはどんな些細な臭いも嗅ぎ漏らさないと決意し、歩みを進める。



【セシル: 所持アイテム:? 現在位置:O−05 → 北の祠跡】
 第一行動方針:バコタに協力する(完全に信頼しているわけではない)
 根本行動方針:決めかねている
【バコタ:所持アイテム:アイスブランド キスティスの首輪 ?(アニーの道具) ?(キスティスの道具) 
 現在位置:O−05 → 北の祠跡】
 第一行動方針:北の祠跡を調べる
 第二行動方針:協力者を集める
 根本行動方針:首輪を外し、ゲームを破壊する

 アニーとキスティスのザックはバコタが回収。
263恋の魔法は儚くて:03/07/01 18:03 ID:gCC58Xug
「バッツ様ぁ〜バッツ様ぁ」

セリスはごろごろと猫のように、バッツへとまとわりついている。
一方のバッツは憮然とした表情で、包帯を巻いた右腕をさすっている。
その腕はセリスの魔法で何とか繋がったものの、とてもじゃないが武器が使えるレベルではなく、
まぁ、トイレに行くには不自由しない程度でしかない。
いずれにせよこれ以上の回復を望むのならば、専門の癒し手を探すしかない。

と、そこに。
「お熱いな、お2人さん…悪いがバッツを借りてくぜ」
林の中から姿を現したギルガメッシュがセリスに尋ねる、セリスはあからさまに邪魔しないでという表情を見せたが、
「いやぁ、友達が呼んでるからこれは行かないとまずいよなあ、うんうん、じゃあ行ってくるわ」
バッツは助かった!といわんばかりに顔を輝かせてセリスを振りきると、
そのままギルガメッシュと共に林の中に向かうのだった。

そして林の中では。
「助かったよ…それはともかく」
バッツとギルガメッシュは顔を見合わせて相談する。
「どうするよ…おい」
「やばいな、もし薬が切れたら……」
セリスの言動を聞く限り、バッツへの愛とロックとかいう男への愛が極めて危ういバランスで同居しているのがわかる。

しかも薬の効果でその矛盾にまったく気がついていない。
このままだと自己矛盾の末に狂気に走ることも考えられる。
それに薬がいつまで有効なのかも正直分からない、実際、今ここで効果がなくなることも、
ありうるだろう。
いや、それよりも薬は効いているのか?実際はもう効果が切れていて、俺たちを亡き者にしようと、
その牙を磨いでいるのではないだろうか?
264恋の魔法は儚くて:03/07/01 18:04 ID:gCC58Xug
「いっそ殺すか?」
思い余った表情でバッツが呟く。
「お前本気で言ってるのか?仮にもクリスタルの戦士のやることじゃないぞ」
「冗談だ……一応腕も繋げてもらえたしなぁ…」

本来ならばあそこまでされて同情の余地などないのだが、こうもなつかれてしまっては刃も鈍る。
「とにかく例のものはみつかったのか?」
「ああ、手ごろなのが一艘見つかった」
彼らはとりあえず塔に向かうつもりだったが、状況を考えると陸路よりも海路をとった方が、
安全だという結論に達したのだった。

「海には出るなとか言ってたけどな、あいつら」
やや心配そうなギルガメッシュだったが、
「まぁ、そんなに沖にでなけりゃ大丈夫だろう」
バッツはそれほど心配していないようだった。

ともかく、彼らは船出の準備を整えると、海路を取る事についての意見をセリスに聞いてみる。
「バッツ様の思うがままに、私は従うまでです」
2人は顔を見合わせるしかなかった、ともかく出航である、ギルガメッシュが舵を握り、ぎこぎこと。
リズミカルな音を響かせながら船は進んでいくが、しばらくしてギルガメッシュが叫ぶ。

「やばいぞ、舵がきかねぇ!」
無論、船そのものには異常も無かったし、彼も必死で舵を操るが、まるで吸い寄せられるように、
彼らの船は沖合いに流されていく、その動きは速く舵捌きで制御できるものではない。
と、しばらくすると彼らの船の行く手に、何やら巨大なうにのような鉄塊が浮かび上がってくる。
それを見たセリスが叫ぶ。
「機雷です!あれを船体に受ければ、もはや一溜まりもありませんよ!」
265恋の魔法は儚くて:03/07/01 18:09 ID:gCC58Xug
しかし船はいままさに、機雷源に向かって進行中であった、一刻の猶予もない。
彼ら3人は意を決すると、そのまま暗い海の中に飛び込む、そして水中で爆発音……
それが彼らの聞いた最後の音だった。

それからしばらく経過して。
「ちっきしょーひでーめにあったぜ」
フラフラになりながらも何とか陸地に辿りついたバッツとギルガメッシュ、幸いにも彼らは爆発の衝撃で
陸地へと流れる海流に乗る事ができたのだった。
ようやく人心地ついた二人だったが、あることに気がつく。
「おい、あのセリスって女はどこだ?」

2人は近くの海岸を探してみるが、どこにも流れついたような痕跡は無い、しかし彼らは彼女の身を案ずる反面、
どこか安堵もしていた。
少なくともこれで得体の知れぬ不安と、同居することはなくなったのだから。

【バッツ/ギルガメッシュ 所持アイテム:鋼鉄の剣 現在位置:J-20】
 第一行動方針:不明、おそらく休憩
 第二行動方針:ファリス、レナ、クルル、ガラフとの合流

【セリス:生死不明 】
266 ある命の終わりと勝負の始まり :03/07/01 19:36 ID:0wl8nrkJ
(!!)
先に気付いたのはロザリーの方だった。
生い茂る下草を慎重に踏み分けて、このままであれば自分が潜んでいる木の洞の脇を通り過ぎようとしている男がいる。
森の中では鋭い感覚を発揮する妖精であるとはいえ、長い塔暮らしの弊害ですっかりその鋭敏な感覚が
なりを潜めてしまっていたのが、ロザリーにとって致命的な事態を引き起こす引き金となってしまった。
このまま隠れてやり過ごすには洞はあまりに底が浅く、静かにその場から逃げ出すにはあまりに男との距離が近すぎる。

(どうすれば…どうすればいいのでしょう!?)
その場でただ縮こまることしかできなくなったロザリーの耳に、落ち着いた男の声が響いてきた。
「そこに隠れているのはわかっているぞ。観念して姿を現すのだな」
(―――!!)
バレている。
特徴的なヒールの足跡を見分けたのか、突き出した枝で引き裂かれたドレスの生地でも見つけたのか。
とにかく男は自分がいることに気付いたのだ。
どんな相手なのかはわからない。だが、高圧的な物言いを聞く限り、どう考えても善人であるようには思えなかった。
ロザリーにとって人間は、自らの涙を狙って群がってくるハイエナでしかない。
例外は自分を蘇らせ、心から愛する魔族と再び巡り合わせてくれた、『勇者』と呼ばれる一行だけだった。
そんな人間が、こんな状況下で競争相手である自分を見つけたら…
殺されるだけではない、女として最も屈辱的な目に遭うかもしれない。

(そんなのは、いや!私の身も心も全てピサロ様のものなのに!)
生まれてこのかた、ここまで極限に追い詰められた経験はなかった。
こんな時にどうすればいいのか。
この場には愛する男も、常に身を呈して自分を護ってくれたナイトも、友として接してくれたスライムも、誰もいない。
267ある命の終わりと勝負の始まり:03/07/01 19:37 ID:0wl8nrkJ
(助けて…助けて、ピサロ様!)
命の遣り取りをしたことのない経験不足と、恐怖と混乱のあまり、
ロザリーはいるはずもない助けを求めて(かすかにこのまま逃げ切れることも期待して)

もっとも採ってはならない最悪の方法を選んでしまった。

(フ…そこか)
11時の方向、前方約20メートルの位置、木の洞から飛び出したのは『獲物』だった。
都会育ちの彼には、自然の中で獲物の隠れている場所を正確に嗅ぎ分ける能力など望むべくもなかったが、
その自分にも見分けられるような痕跡を残すような『美味しい』獲物を逃がす気はない。
彼我の実力差を見切った彼は、とりあえずハッタリをかけて出方を窺った。
適当に声をかけて、怯えて隠れ家から飛び出してくるところを狙い撃つ。
出てこないなら付近をしらみつぶしにするだけだ。
この期に及んで反撃してこない相手なら、殺る気も、反撃する力もないか弱い相手に決まっている。
結果は案の定、ハッタリにあっさり引っかかって無謀にも背中を向けて遁走する体たらくだ。
狙撃を避けるために走る方向を小刻みに変えることすらしない、恐怖ゆえの逃走であることが手に取るようにわかった。

ドレスをまとった遠目にも愛らしさがわかる姿形をしていたが、彼はうっすら笑いながら

手持ちのアウトサイダーを駆けゆく背中にポイントし、落ち着いて引き金を引いた。
炸裂音と共に高速で弾丸が射出され、狙いとはやや外れた脇腹を貫通していき、
女はくるくると2回転半のロンドを踊って、そのまま静かに倒れた。
致命傷ではないだろうが、もう動くことはできない。
静かな笑みをたたえたまま、男は止めを刺すために近づいていった。
268ある命の終わりと勝負の始まり:03/07/01 19:38 ID:0wl8nrkJ
(ぁああ!ピサロ様…ピサロ様!)
脇腹を焼けた火箸で貫かれたような痛みが走り、心臓がめちゃくちゃな勢いでビートを刻み始める。
文字通り死ぬほどの痛みと恐怖と混乱がないまぜになり、大粒の宝石のようなロザリーの瞳から涙が零れ落ちた。
雫は目尻から落ちて地面に到達する前に結晶となり、本当の宝石となって地面に転がり落ちる。
このルビーの涙こそが、ロザリーが常に人間に狙われる原因となっていたのだが、流れるそばから
真紅の宝石を生み出すその様は、まるでロザリーが血の涙を流しているようにも見えた。

仰向けに倒れたロザリーには、もう起き上がる力は残されていない。
ほっそりとした手足にはもう力が入らず、本来は桜色の唇を真っ青に染め上げてか細いあえぎを繰り返すしかなかった。
涙でにじんだ視界はダンスの最中のようにぐるぐる回っている。
やがて回転が収まるとともに、木々の隙間から曙光が差し込んできて、夜明けが来たことをロザリーに告げた。
(やっと…やっと恐怖の時間が終わるのに…)
自分はここで死ぬのだ。そう悟ると、また涙が出てきた。
止まらない。あとからあとから湧いてくる。

「ほう、珍しい体質だな。涙が宝石に変化するとは。惜しいものだ。ビジネスに使えるかもしれなかったのだがな」
語る言葉はすでに過去形。
言葉とは裏腹に口惜しそうなそぶりは一切見せないで、男はもはや動かぬロザリーの視界の下半分を占拠した。
「……あ……」
小鳥のさえずりにも似たロザリーの声が、今はすっかりひび割れてしゃがれてしまっている。
それでも残った力を振り絞って、ロザリーは男に問い掛けた。
269ある命の終わりと勝負の始まり:03/07/01 19:39 ID:0wl8nrkJ
「あなたはなぜ……こん…な……ことを……?」
男はロザリーの問いかけに一瞬虚を突かれたような顔をして、
「なにを言うかと思えば。あのケフカという男が言っていただろう。私たちは殺し合いをする。
 生き残った者だけが元の世界へ帰れる。そのためには他の参加者を殺す。もちろん、お前もな。
 それのどこがおかしい?」

嘲るような笑みはそのままに、男は内臓がはみ出しかけてている脇腹をかかとで踏みつけた。
「うぁああああああぅっっ!!」
ぐじゅりと音がしてロザリーの体が痙攣を起こす。
「私から言わせてもらえば―――」
今度はつま先で蹴り上げる。
「ああぁああああーーーーっ!!!!」
「―――なぜ、そのようなことを聞くのかな?まさか、静かに死を待つとでも言うのか?

 冗談ではない。私は世界を支配することを宿命付けられた人間だ。
 このような場所で死ぬわけにはいかないのだよ。生きるために他者を犠牲にする。当然のことだ」

「本当に…そうでしょうか……?」
いつの間にか涙は止まっていた。切り裂かれるような激痛がかえって意識を鮮明にしてくれる。
「私にはわかります。あなたは生きるためではない、ただ快楽のために行動している。
 生きとし生けるものの理(ことわり)を外れたあなたには、いずれ必ず神の裁きが下されるでしょう!」
自分でもよくわからないくらい心が燃え上がっていた。
男の蒼い瞳を見据えたまま、厳かに宣言する。
270ある命の終わりと勝負の始まり:03/07/01 19:40 ID:0wl8nrkJ
「フッ面白い」
男は一層笑みを濃くした。楽しくて仕方がないという風に。
右手に携えたアウトサイダーをロザリーの額にポイントする。
「ならばあの世で見ているのだな。私が勝つか、お前が勝つか」
「私は勝利など望みません。ただあなたを哀れに思うだけです」
もはや恐怖は消え去っていた。全ての負の感情を克服した矜持の果てにロザリーはいた。静かに目を閉じる。
瞼の裏には愛しき魔族の王の姿が浮かび上がってきた。
(ピサロ様…たとえ死しても、ロザリーの心はいつもあなた様と共に生き続けます)
直後にガツンと痛くない衝撃が走り、ロザリーの意識は無色に塗りつぶされた。
それが最後だった。

「いい女だったな」
白煙を上げるアウトサイダーを懐にしまいこみ、男はひとりごちた。美しい娘だった。
外見だけではない(もっとももはやその名残はない。銃弾を受けて顔が砕けてしまったから)、心が気高い娘だった。
(快楽のために殺す……か。フフフ、よく見抜いたものだ)
もはや認めざるを得ないだろう。今の自分は生きるために殺すのではない、楽しむために殺している。

最初にあのタコを殺した時の何倍もの高揚感が体を包み込んでいた。
会社の社長をやっている時には決して味わうことのできなかった命の遣り取り。
それがこの世界ではそこここに転がっているのだ。
ロザリーの残した荷物とルビーの涙を自分のバッグに移し替え、男は立ち上がった。
「娘、私とお前のもうひとつの勝負の始まりだ。せいぜい私を愉しませてくれよ」
楽しげな笑みを浮かべながら男は歩き去っていった。
271ある命の終わりと勝負の始まり:03/07/01 19:40 ID:0wl8nrkJ
こうして男―――神羅の現社長、ルーファウス神羅―――は、このゲームの参加者でも数少ない、
やらなければならないこととしたいことが一致した、大変に幸せな参加者となったのである。

【ルーファウス
 所持武器:アウトサイダー かいふくのマテリア うらミサイル(>>26) ルビーの涙
 現在位置:K-12】
 第一行動方針:愉しんで皆殺し。

【ロザリー 死亡】 残り64人
272【 修正 】:03/07/01 20:08 ID:bvJE2Bfk
アイテム二重取得のため、修正します…ごめんなさい。

1) >>260 7,8行目

バコタは祈るセシルを尻目に、重なるように放置されていた2つのザックを回収、
アイテムを吟味し、中身を全て自らのザックに放り込んだ。
                         ↓
バコタは祈るセシルを尻目に、叢に埋もれるように放置されていたザックを発見、
こっそりと回収し、中身を全て自らのザックに放り込んだ。
もののついでにアイテムだけ奪われたと思しき口の開いたザックからも、日用品を移しておく。
有って困るということはない。


2) >>262 20行目

【バコタ:所持アイテム:アイスブランド キスティスの首輪 ?(アニーの道具) ?(キスティスの道具) 
                         ↓
【バコタ:所持アイテム:アイスブランド キスティスの首輪 ?(アニーの道具)  
273獅子王 暁に死す!:03/07/02 00:09 ID:miPs2B2n
「貴様強いとみえる、余と戦え」
いきなり背後からかけられた声に、テリーは面倒臭げに振り向く。
そこにいたのは、何故かステテコパンツを履いている4本腕の獅子だ、その身体からは強烈なプレッシャーを感じる。
と、そこでテリーはついさっき占い師から言われた言葉を思い出す。
(あなたに災いの影があります…)
「なるほど、姉さんほどじゃないけどなかなかいい腕じゃないか」
ともかく敵ならばこちらも望むところだ、テリーは両手に太刀を構える。
「俺の名はテリー、だが人は俺を蒼い閃光と呼ぶ、お前の名前は何だ?墓標くらいは刻んでやる」

そのふてぶてしい態度に、にやりと唇を歪める獅子。
「余の名前はキングレオ…だが墓標の件は遠慮しよう、何故なら」
そこでキングレオはその鋭い爪を大上段から振り下ろす。
「墓に入るのは貴様だからだ!!」

テリーは辛くもキングレオの爪を受けとめる、だがその衝撃は完全に相殺は出来ず。そのままずるずると
後ろ去ることとなる。
(押されている!この俺が?)
さらに残る3本の腕がテリーを切り刻もうと迫る、これもなんとか避ける、が早くもテリーの劣勢は明らかだった。

圧倒的な速度で相手をほぼ一撃で沈めるというのがテリーのスタイルだ、それゆえに守勢に入ると弱い。
先程の黒騎士との戦いでもそこを突かれてしまった。
274獅子王 暁に死す!:03/07/02 00:10 ID:miPs2B2n
ともかく間合いを取らねば、しかしその時キングレオの口から吹雪が吐き出される。
それをマトモに受けてしまったテリーの身体は、凍えて動かなくなってしまった。
「つまらん…もう少し出来る相手だと思っていたのだがな」
そう呟くと、キングレオはテリーの喉笛に爪を食いこませようとする、が、その時、彼を威嚇するように銃声が響く

煩げに振り向くキングレオ、そこには壮年の男が銃を構えて立っていた。
「勝負はすでについておる、それ以上はやめておくことだ」
男は銃を構えたまま、じりじりとキングレオに近づく。
「続けるのならば私も相手になるが…どうする」

2対1…本来ならば避けねばならぬ図式だ。
だが、挑まれた戦いから逃げる、という考えはこの雄々しき獅子にはありえなかった。
くくく…そんな忍び笑いが漏れたと思うと、
「良かろう、ならば貴様も屠るだけのことよ」
彼は嬉々として、壮年の男…パパスへと襲いかかったのであった。

山陰から太陽が姿を覗かせ、その大地を明るく照らす、日の出まであとわすかだ。
そんな中、キングレオは苦しい息の中、それでも戦いを止めようとはしない。
その身体は銃弾により何発もの穴が穿かれ、止まることなく血が溢れ出している。

さらにテリーもまたパパスの援護を受けて攻勢に転じる、この剣士は守勢に回ると脆い側面があるが、
その分攻勢に出れば、確かに蒼い閃光の通り名がふさわしい実力を遺憾無く発揮する。
テリーの剣が2回。3回と閃いた瞬間、キングレオの4本の腕の中の3本が無残にも斬り落とされていた。

「もういい…勝負はついている、勇敢なる獅子よ、退くがいい!」
275獅子王 暁に死す!:03/07/02 00:10 ID:miPs2B2n
それを見たパパスが厳かに告げる、もはや誰の目にも勝敗は明らかであった、だがそれでも…。
「確かに貴様の言う通りかもしれん…だが余は…獅子は…退かぬ!媚びぬ!省みぬ!
 百獣の王に逃走はありえんのだ!」
残り1本、それもかろうじてぶら下がっているだけに過ぎぬ腕を振るい最後の攻撃を行う
キングレオ、だが、その前にテリーの剣がキングレオの眉間を割る、それが致命傷だった。
全身を自らの血で染めて倒れるキングレオ、しかしその顔にはすべてを成し遂げたような微笑が浮かんでいた。


勝負あったのを確認したテリーが、大きく体勢を崩しよろめく、やはりパパスの回復魔法があれど
キングレオに受けた傷は相当なものだったのだろう。
「大丈夫か?」
すかさずパパスがテリーを抱きかかえ、ベホイミを唱える。
それを受けたテリーの顔色がだんだんと良くなってくる、これで一安心だ、胸を撫で下ろすパパス。
しかしその安堵故にかれは気がつかなかった、彼の腕の中のテリーの瞳が危険な輝きを放っていることに。

「回復魔法ついでに、もう一つ頼みがある…」
テリーは小声でパパスに話しかける、聞き取りにくいのだろう、パパスは耳をテリーの方へと近づける。
「死んでくれ」
その言葉が終わるか終わらぬかの間に、パパスの身体はテリーの剣によって貫かれていた。

「おろか…な」
絶え絶えの息で、テリーをなじるパパス。
「あんたには感謝してる…だが姉さんのためなら、俺はいかなる謗りをも甘んじて受ける」
テリーはさらに握る刃に力をこめる、肉がひしゃげる独特の音がしたかと思えば、
すでにパパスは物言わぬ肉塊に成り果てていた。

テリーは彼らの荷物をまとめるとその場を後にする、残されたのは無念の表情のパパスの遺体、
しかし彼は幸せだったのかも知れない、自分の息子の変わり果てた姿を見ることなく死ねたのだから。
276獅子王 暁に死す!:03/07/02 00:13 ID:miPs2B2n
【テリー 所持武器:太刀(両手持ち)コルトパイソン(弾丸なし) 山彦の盾 力の盾
 ハイブロウST 黒胡椒  スコールの首輪 現在位置:K-05
 第一行動方針:姉(ミレーユ)を探す・ミレーユのために戦う】
(HP3/4)

【キングレオ パパス 死亡】 残り62人
277朝の放送:03/07/02 01:25 ID:cOvPvXgo
―AM6:00―
透き通った青い空、深緑が煌めく森の木々、朱色に染まる東方の海。
太陽の再来を祝う小鳥達の歌声。清々しい朝の時間。
そんな清涼な空気を、公害にも形容されても生ぬるい高笑いが切り裂いた。
全員がその声の方を向いた。声は島の中央に浮かぶ城から発せられていた。

「ヒョーーーヒョッヒョヒョッヒョッヒョ!
 みんな、朝だよーーーーん!! こんな朝はあれだよね、あれ。
 それじゃあみんな、歌うぞーーー!  さんはい!
 ♪あたーらしーい あーさがきた ぜつぼーのあーさーだ(以下略

追い詰められている者はその耳を塞ぎ、
強気な者は城に向かって中指を立てた。

「ふう。…つまらん。 だれも歌ってる声が聞こえないよーー?
 そんなんじゃぼくちん、さびしくて首輪爆破しちゃいそうだよーーーん
 ヒョーーーヒョッヒョヒョッ! ヒョーーーヒョッヒョヒョッヒョッヒョ!」

数人が慌てて首にはまっている銀の輪に手を当てた。
1秒、2秒、3秒。爆発する気配が無い事にその数人は安堵の溜息をついた。
と同時に、大半の参加者のケフカに対する怒りの数値が加速度的にあがった。
いま島の中央に浮かぶ城は真っ赤な怒りの視線を一身に受けていた。

(ケフカ様、あまり時間が無いので…)
「ふん。わかってるよ。
 そんじゃおまちかねの死亡者発表に移るよーーーん」
278朝の放送:03/07/02 01:26 ID:cOvPvXgo
「ガラフ フレオニール マッシュ フライヤ リンガー アニー
オルトロス サバロ リノア キスティス セッツァー スコール 
ライアン ロザリー キングレオ パパス  以上の16人だ!」

「開始6時間でこんなに死んで、ぼくちん、うれしーーーー♪
 よい子ちゃんなみんな、他の人はやる気になってるぞーーー♪
 お友達の誰かもがんばって殺してるよーーー♪
 やらなきゃやられるぞ♪ どうせみんな死にたく無いんだから♪」


「それじゃ、次の放送は12時間後になるから。
 みんながんばって殺し合うんだぞーーー。ぼくちん応援してるからねーーー。
 それとポチーー。がんばったらたくさんご褒美あげちゃうからねーーー」

そして放送が終了した。
日は,既に高く上っていた。
279クッキー王子は静かに旅したい:03/07/02 08:37 ID:qtjihr/e

「ちくしょうううううっ」
何が何やらわからず、ただひたすらにハッサンは走る、それは放送が終わってからも変わりは無い。
無論先程の爆発に巻きこまれ、重傷であるにもかかわらずだ。

だが、そのスピードは少しずつ遅くなっていく…一応回復魔法の心得が多少はあるハッサンだが、
所詮、今の自分の状態では焼け石に水だ。
「何をやっているんだ…俺は」
ようやく自分の行動に疑問を持ち始めたのも束の間、彼は草原で朝日を背に受けながら、ついに倒れふしたのであった。

その頃…。
「良かった…」
放送を聞いてクッキーは胸を撫で下ろしていた、とりあえずリンダもそれからマイヤーも無事のようだ。
リンダのことを考えると、胸が苦しくなる…今ごろ何をしてるのだろう?
もしかするとまだ眠っているのかも知れないし、それとも他の困っている誰かを助けているのかもしれない。

会いたい…会ってこの気持ちを早く伝えたい、例え、想いが受け入れられなくとも構わない。
「はぁ…」
自分で自分を抱きしめるような仕草をした後、溜息をつくクッキーだったが、道端に誰かが倒れているのに気がつく。
「大丈夫ですか!?」
倒れているのは武道家風の巨漢だ、一応呪文で処置はしているものの、かなり危険な状態だ。
とっ…とにかく回復魔法を、クッキーはややうろたえつつもベホイミを唱える。
暖かな光が周囲を包み、巨漢の体力が回復していくのが見ても分かる、そして…。
「うっ、う〜ん、ここはあの世か?」
巨漢はまるで今目覚めたかのような、気軽さでむくりと置きあがるのであった。
280クッキー王子は静かに旅したい:03/07/02 08:37 ID:qtjihr/e
男の名前はハッサン、彼はゲームが始まってから、今までどうしていたかを事細かにクッキーに語った。
「ってまぁそういう事だ、それじゃ行くか」
そう言って話を締めくくると、彼はそのままクッキーの手を掴んで先へ進もうとする。
「えっ?えええっ?」
状況が飲みこめないまま、引きずられていくクッキー。

「お前もあの野郎を張り倒すんだろ?遠慮するなっての、なっなっ」
「僕はそんな…」
しかしハッサンは自分の話など聞いてもいない、どうやら自分はこういう輩に何故か好かれるようだ。
これでは何のために、わざわざ一人になったのか分からない、しかしそれでも、
「うん…」
頷いてしまうのが、彼の弱さであり、優しさでもあった。

【ハッサン 支給武器:無し 位置: K-16から西に】
 第一行動方針:ケフカ(主催者)をぶん殴る
 アイテムの一切は焼失。

【クッキー 所持武器:ピンクのレオタード(ミネア用) 現在位置:K-16から西に
 第一行動方針:リンダを探す。 】
281ゴッドハンド:03/07/02 12:09 ID:6bkQkcH+
朝の放送では、知っている名前は呼ばれなかった。
ふざけた内容の放送がふざけている者によって行われたので頭にはきたが、
あれでも同じ人間なのかと思うと情けなくなり罵る口もすぼんでしまう。
ひとまず放送のことは忘れて気分を変えようと思い深呼吸した。
日差しがまぶしくて、海面がキラキラと輝いている。潮風が心地よい。
ミレーユは今海岸付近を歩いていた。

誰もいないのは運が良いのか、悪いのか。一人では心細いから仲間がほしいとは思った。
しかし敵に出会う可能性の方がよっぽど高いはずだと、改めて思い直していた。
なにしろ、開始6時間で16人が死んでいる。やる気になってる参加者がどれだけ多いことか。
ミレーユは右腕につけている派手でもない腕輪を手でさすった。
戦闘になる可能性は高い。支給品に恵まれれば切り抜けることはできるだろうが……
と、そこで想いは腕輪に至る。

この腕輪をつけてみて、自分の感覚が変わったと思っていた。
皮膚が呼吸するのと同様に体からわずかに放出し続けている気を、ミレーユは常に意識している。
その全身から出ている気が、拳に集中しているのを今感じているのである。
腕輪が気を集めているようなのだ。

力が湧きあがっていた。武者ぶるいの時のように肩が震えていた。何かを試してみたくなった。
ミレーユは、近くにでんと構えていた自分の背丈と同じくらいの岩に目を止めた。
ゆっくり息を吸って岩の前に立つと、腰をやや落とし吐く息と右拳の動きを合わせて前に打ち出した。
免許開伝の証、正拳突きを岩肌につき立てた。

大きな岩が粉々になって吹き飛ぶのを見ても、ミレーユはすぐには信じることができなかった。
どちらかと言えば非力な人間に分類されるはずだと思っていたミレーユなら無理からぬことである。
だが、この強打の腕輪(超会心の腕輪)が、ミレーユの可能性をひとつ拡げたことは間違いない。




282ゴッドハンド:03/07/02 12:09 ID:6bkQkcH+
【ミレーユ 所持品 強打の腕輪 現在位置 E−18
 行動方針 不明】
283バッツを求めて三千里:03/07/02 17:09 ID:rZsXW7EV
朝日が昇り、光が訪れる頃ティナとプックルは南へと駆けていた。
と、言っても駆けているのはプックルだけであり、ティナはその背に乗るという
まるで乗馬か何かしているように南へと向かっていたのだ。

放送を聞いた時、プックルはとても怒っていたという事がティナにはわかった。
勿論、ティナ自身も怒っていたが、ともかく今は出来る事をするしかないと思い
死んでいった者たちの冥福を祈ると同時にプックルを言い聞かせ、南へと急いだ。

そして、一人と一匹は今海岸線で休憩をしている所だった。
ティナが分けた水と食料をプックルは頬張り、飲み込む。
それを見て微笑を浮かべながらティナも自分の分の食料を食べはじめる。
と、ティナは何かを見つけた。
波打ち際、金色の髪と純白のマントをつけた己の仲間。

「セリス!」
駆け寄って抱き起こすが意識は無い。
脈を確かめると、微かだが生きている事を知らせる鼓動が伝わってきた。
急いで安全な場所へと移動させ、プックルに自分の荷物を持ってこさせる。
悪いと思いながらセリスの衣服を全て脱がし、着火器具を取り出して乾かし始める。

気がついたのはそれから小一時間してからであった。
まだ意識が朦朧としているセリスにティナは服を着せ事情を説明したが
どうも様子がおかしいと感じた。
話を聞いてはいるのだが、心は何処か別の場所へと行っているように呆けている。
時々小声で何かを喋っているようでもあったが、何を言っているのか聞こうとすると
照れたように頬を赤らめる。
284バッツを求めて三千里:03/07/02 17:09 ID:rZsXW7EV
「セリス、どうしたの?あなたさっきからおかしいわ。」
思い切って聞いてみたが、セリスは頬を赤らめて俯くばかり。
恥ずかしそうに横目でこちらを見ながら、セリスは口を開いた。
「ティナ、栗色の髪をした凛々しい男の人を見なかった?」
「会ってないけど、その人がどうかしたの?」
その人に何かされたのであろうかと疑問に思いつつティナは答える。
「私、その人を探してるの。」
「どうして?」
本来の仲間では無く、その人を探すという事は恐らくその人がセリスと一緒に行動していて
離れ離れになってしまったか、その人にセリスが殺されそうになったかのどちらかであろうとティナは考えた。
しかし、セリスの答えはそのどちらにもあてはまらなかった。
「私、その人の事を愛しているの。」

【ティナ 所持品:アルテマウェポン エンハンスソード 位置:F-20 海岸 】
第一行動方針:灯台に向かって仲間を探す
【プックル 所持品:なし 位置:F-20 海岸 】
第一行動方針:ティナについていく
第二行動方針:リュカを探す
【セリス 所持アイテム:ヒールロッド 現在位置:F-20 海岸 】
 第一行動方針:バッツを探す
285次元を超えた名品:03/07/02 17:21 ID:nQNQDSAf
二人はT−14の橋を渡り終えて町をめざしているところだった。
「ところでオレの支給品なんだけど」
「そういえばまだ聞いていなかったな、何をもらったのだ?」
ジタンはザックを開けて中から手甲を取り出した。
「これなんだよ」
それを見てスタイナーの目が輝く。
「おお、見事な品であるな、名のある工匠が鍛えたものに違いない」
「ただな、オレには合いそうにないんだ、動きの邪魔になりそうだから。
 おっさんにやるよ。盗賊はやっぱ身軽でないと」
「ふむ、そういうことならいただこう。かたじけない」
ジタンから手甲を受け取ると、さっそくスタイナーは腕に嵌めた。

「むむ……」
スタイナーは口を固く結び、手のひらを何度も開いたり閉じたりと繰り返した。
目は自分の手の動きに吸い寄せられているように凝視している。
ジタンがどうしたのか聞くと一瞬だけ顔を向けた。
「これは何やら異様な感触、体じゅうに神秘の洪水が押し寄せてくるような予感」
「なんだよ、それ」

スタイナーは両手をクロスさせ、手甲同士を叩き合わせた。乾いた音が鳴り響く。
「この手甲をはめた途端に、頭の中に見たことのない文字が浮かび上がったのだ。
 どこか他の国で使われている文字であろうか? 皆目見当がつかん」
「まさか危ないアイテムじゃないだろうな」
「なんとも奇妙だが不思議と悪い気分ではないのだ……」
スタイナーの言葉の途中、突然手甲が光を放った。
「なんだ?」
輝きは一気に増し膨れ上がった。
もうひとつ太陽が増えた様に閃光があがり、爆音と凄まじい衝撃が二人の近くに炸裂した。
瞬間的にジタンがスタイナーを突き飛ばし伏せていなかったら、ただでは済まなかったかもしれない。
286次元を超えた名品:03/07/02 17:22 ID:nQNQDSAf
大量に巻き上がった土砂の影響で、少しばかりの間太陽が隠れ暗くなった。
ジタンが頃合いを見てスタイナーに駆け寄る。
「おい、大丈夫かおっさん」
「このとおり、無事である」
スタイナーは大きくかぶりを振って目をしばたかせた。状況がよくのみ込めていないように。

土と砂をかぶっているのも気にせずに、ジタンは言った。
「絶対いまのはその手甲の力だぜ。パワーを開放することで魔法と同じ効果を得られる
 魔法の品があるってよく聞くけど、これそうじゃないか?」
「確かにそうとしか思えぬのだが、そういうものは大抵一度使うと壊れるとも聞くぞ。
 しかし、この手甲は傷ひとつ付いておらん」
と、再び手甲が光を放つ。
「またかよ!」

やはり大爆発。二度も爆音が上がれば他の参加者にはここで戦闘が起こっていると思われることだろう。
まだ爆発の余韻が冷めぬうちにジタンは矢継ぎ早に言葉を投げかける。
「おっさん、これは自分でコントロールできないのか?」
スタイナーは顔面蒼白になりながら必死で答えようとする。
「い、今も先程もそうなのだが、浮かんだ文字を頭の中でなぞるようにしたら、この手甲が光ったのである!」

ジタンはそれを聞いてうなずいた。
「多分そいつがパワーを解放するキーだ。はっきりいってこれは凄いぜ。
 まったく手甲は力を失っていない。何度でも使えそうだ」
スタイナーは両手をまじまじと見つめた。
「で、伝説の武器でさえこれほど力があるものは聞いたことがない。
 何故あのピエロ奴はこんな強力なアイテムを我々によこしたのであろうか。
 自分の首を締めることにならぬのか?」
ジタンは、焼け焦げてめくれ上がった平原を見て、気分がすっきりしたものに変わっていた。
「さあ……きっと間抜けなところがあるんだろうよ。おっさんと同じで」
287次元を超えた名品:03/07/02 17:22 ID:nQNQDSAf
と、またもいきなり飛び込んでくるものがあった。聞き覚えのある声である。
突然来るものはこれで三度目、何の前触れもなく朝の放送が始まったのだ。

【ジタン/スタイナー:所持武器 コッズガントレット(イオナズン級爆発魔法が使える、無制限)
 /参加者詳細資料:現在位置 S−16】
 第一行動方針:街へ向かう。
288異質な情報収集:03/07/02 17:50 ID:bXperQhS

裏稼業を商いとしてきた自分にとって嗅ぎ慣れた血の匂い。
森の中を疾走していたサラマンダーはそれを感じ取り、足を止めた。
(この相当な匂い…間違いない、誰かが死んでいる)
亡くなった者に黙祷を捧げたり、埋葬してやるためではない。
死体から他人の所持している武器を把握するためだ。
参加者が多いためあまり参考にはならないだろうが、何も情報が無いよりはマシだ。

匂いのする方向へ草を掻き分けていくと、サラマンダーは匂いの発生源を突き止めた。
そこには、顔を砕かれた無残な死体があった。
ドレス、ヒール…こうした服装から、女性であったことがわかった。
「脇腹に穴が開いている…それとこの顔の破壊状態…どうやら強力な銃を持つ奴がいるようだな…」
体はまだ少し温かい。死んでからあまり時間はたっていないようだ。
サラマンダーはその死体から首輪をはずし手に取った。
解析するためではなく、武器として使うために。
(円月輪の代わりとして使えそうだな…武器として使えなくとも持っている価値はあるだろう)

サラマンダーは首輪をザックにしまい、辺りを見回した。
すると、袋らしきものが見つかった。
サラマンダーは慎重に近づき、袋の一メートル手前で止まった。
袋の周りをじっくり見てみたが、特に何も見当たらない。
どうやら罠の類では無さそうだ。
サラマンダーは袋を拾い上げ中身を確認した。
中には結構な数のギルが入っていた。
(これも使えそうだな)
サラマンダーはその袋をザックへ即座に放り込み、一呼吸する間もなく駆け出した。

【サラマンダー 所持品:ダガー 1092G ロザリーの首輪 現在位置:K−12 森
第一行動方針:アルスを倒す 
第二行動方針:ジタンを探す
289Beast:03/07/02 20:39 ID:fnbQ8H+D
はぁはぁと息を荒くしながらポチ…いやローレシア王子マイヤーは先を急ぐ。
(このお薬は他の皆も持っているのよ)
(がんばったらたくさんご褒美あげちゃうからねーーー)
彼の心の中には、もはや薬による快楽以外の物は眼中に無い、だから薬を持っているであろう人間を探して
うろついているわけだが、一向に誰も見つからない。

そうだ、みんな薬を一人占めしたくて隠れているんだ、きっとそうに違いない…この自分をのけ者にするなんて
「許さないんだ、僕をのけ者にするなんて」
そこで彼は考える、街に行けばきっとたくさん人がいる、たくさん人がいるという事は、薬を持った人もいるはずだ。

鈍った頭なりに考えた結論を出すと、彼は駆け足で橋を渡り、そのまま南に向かいさらに速度を上げる。
「頑張ればたくさんご褒美を…お薬を貰えるんだ…はぁはぁ」
独り言を言いながら、時折何も無い空間に向かって剣を振るう姿は、まさにケダモノだった。

それからしばらく経過して、南の街ルラフェンのとある民家では、ルビカンテたち3人が朝食を摂っている。
しかし本来なら楽しいはずの食卓も今は悲痛な空気に包まれている。

「ライアンさん…ロザリーさん」
沈痛な表情でうめくように呟くクリフト、それでも食事の手が止まらないあたり、
余程、お腹が空いていたのだろう。
自分の涙が大量に料理に零れ落ちているのも知らず、随分塩辛い味付けですね、などと言ったりもしている。

「だが、悲しんでばかりもいられないぞ…」
そんなクリフトを見つめながらルビカンテが告げる。
幸いにも自分には友と呼べるような存在はここにはいない、だがセシルやエッジらが無事であることを知り
内心、胸を撫で下ろしていた、かつての宿敵とはいえ自分の心はどちらかといえば彼らに近い。
290Beast:03/07/02 20:40 ID:fnbQ8H+D
レオナの姿はここには無い、先程少し一人になりたいと言って外に出ていった。
「こんなときに何だが質問を続けさせてもらう、お前さえ良ければだが?」
ルビカンテの手元には紙とペンがあり、そこにはクリフトが延べた東拠点の面々の特徴等が細かに記されていた。

そのレオナだが、近くの井戸で洗いものをしながら、考えごとをしている。
「まいったなあ、まさかあの勇者様もいたなんてねぇ」

勇者様ことアルスには恨みこそあれ恩などない、自分はそれほど関わりを持つことなく、
とっとと見限って離脱したからいいようなものの、親友であるサマンサが気がかりだ。
聞くところによると、随分アルスに恨まれていたらしいし…彼女もまたその意趣返しで、
散々な目にあったとか何とか、しかもここはルール無用の番外地だ、両者とも思いきった行動に出ないとも限らない。

「全く何が勇者なんだか」
と、呟いたその時だった、凄まじいプレッシャーが周囲を支配する。
レオナが慌てて腰掛けていた石段から飛びのくと、それとほぼ同じくして彼女の座っていた場所が真っ二つに砕けた。
「ちょっと、いきなり何よ!」
レオナは突如現れた敵に向かって吠えるが、返事は無い、敵は返事の代わりに涎を垂れ流しながら薄ら笑いを浮かべる、
(この人、もしかすると正気を失ってる?)

そう、敵とは哀れにも薬物中毒に陥ったマイヤーだった、彼はレオナに考える暇を与えず、さらに攻撃を仕掛ける。
(何て凄い太刀筋!アルスより上かも…)
とっさに彼女は手に持っていた中華鍋でマイヤーの剣を受けるが、中華鍋はほぼ一瞬で真っ二つになる。
291Beast:03/07/02 20:41 ID:fnbQ8H+D
だが、彼女にはそのわすかな時間で充分だった、レオナはその一瞬でマイヤーの懐に入り、襟首を掴んで投げ飛ばす
その一連の動作は武闘家特有の物であり、先程マイヤーが戦ったライアンなどにはありえない動きだった。
ともかくマイヤーは受身もとれないまま、マトモに石畳に叩きつけられる。ぐしゃりという音が幾つか手元に伝わる。

だが、レオナは何かを察知したのだろう、慌てて飛び退くとやはり間一髪でマイヤーの一撃がそこをなぎ払う。
(今ので確実に骨の数本は折ったはず…それでもこれだけ動けているってことは…)
その時彼女の背後から、ルビカンテとクリフトが駆けつけてくる。
マイヤーはそれを見るやレオナは捨て置いて、ルビカンテへと突撃する。

だがその瞬間、ルビカンテの炎を纏った掌底がマイヤーのみぞおちにクリーンヒットし、
マイヤーは数メートル離れた石壁に叩きつけられたが、次の瞬間薄ら笑いを浮かべてまた立ちあがる。
「師匠!この人は操られているだけです!殺さないで!」

「分かっている、私を誰だと思ってる!」
しかし返事はしたとはいえ、これは難問だった。
相手は正気を失っている上、かなりの使い手だ…本来全力で戦わなければならぬ相手。
おそらく薬物を投与されているのだろう、痛覚が鈍っているのがその証拠だ。

「手加減は出来ぬな…だが殺すわけにもいかん、さてどうするか?」
292Beast:03/07/02 20:42 ID:fnbQ8H+D
【ルビカンテ 所持武器:なし 現在位置:S−16南部(ルラフェンの民家)
第一行動方針:マイヤーを止める
第二行動方針:マント(出来れば炎のマント)を探す
第三行動方針:ゲームの目的を知る】

【女武闘家 所持武器:缶詰(残り90個)と缶切り2つ 現在位置:S−16(ルラフェンの民家)
第一行動方針:マイヤーを止める
第二行動方針:ルビカンテの手伝い】

【マイヤー 所持武器:バリアブルソード 注射器&麻薬1回分 現在位置:S−16(ルラフェンの民家) 
第一行動方針:他人から薬を奪う(殺してでも) 】

【クリフト:所持武器/魔法の聖水×3本:現在位置/S−16(ルラフェンの民家) 】
 第一行動方針:?
 第二行動方針:アリーナを探す。
すみません>>287
現在位置 T−16】
の間違いです。

平坦な地が続いていたが正面の山肌が近づいてきたので、進路を東にとった。
放送が聞こえてきたのは数分前。
例の奇術師の面妖な声はどうしても好きになれない。
耳を塞ぎたかったが、聞かないわけにはいかないのが辛い。
幸いなのはエアリスという名前が入っていなかったことだ。

ザックの中身が気になる。大切な人を守るには武器がほしい。
人を傷つける道具は、人を守るために使う。
矛盾しているようだが、要は使い手の心持ち次第だ。
武器は脅威から身を守る道具にもなる、人を襲う狼を追い払うには力の象徴として
武器は必要となる。相手をただ破壊するだけのものじゃない。

だが、もし、大切な人にもしものことがあったら? 
それが目の前で起こったとすれば?
そのときは俺も誤った武器の使い方をするのだろうか。

ザックを開けて唇を噛んだ。
武器がなくては話にならない。
運の悪さを呪ってやりたくなる。これでいったいどうしろというんだ。

【クラウド 支給武器;集合ラッパ 現在位置:J-14 の平地から東へ。】
 第一行動方針:エアリスを探して守る。
(集合ラッパは自分を中心に半径6HEX内にいる全ての参加者を瞬間移動させて引き寄せるもの、一回きり)
295Beast Hant:03/07/03 00:19 ID:F1JXzSH4
朝日に照らされる街中で戦いは続く。
「取ったァ」
レオナの声が響く、見ると見事に腕ひしぎ十字固めが決まっている、
打撃が効果無いのなら関節を潰して動けなくすればいい、その狙いは正しかったが、
彼女はまだマイヤーのパワーを甘く見ていた、、関節を取られたままのマイヤーの腕の筋肉が盛り上がったと思うと,
そのまま彼女の身体が浮きあがっていく。
「やば」
あわてて技を解いて空中に逃れるレオナ、それからほぼ同時に石壁が粉々に砕ける音。
わずかでも遅れていれば今ごろ壁もろとも粉々になっていただろう。
しかし、この少年は化け物か…少なくともパワーに関しては人間離れしている。さらに腕も立つ。
おそらく直接攻撃だけなら、アルス以上だというのは疑う余地もなかった。
回避に専念すれば何とかなるが、

一方そこから離れて戦況をうかがうのはルビカンテだ。
その腕に纏っているのは彼の必殺技、火燕龍、だがルビカンテは撃つのを躊躇している。
(この距離では…)
威力はギリギリまで縮小している、それでもこれ以上近づいて撃てばおそらくあの少年は死ぬ、
しかし距離をこれ以上取れば逆に効果がなくなる。
今の距離で撃つしかない、しかし距離が中途半端すぎる、
おそらく普通に撃っても、あの少年ならば容易く見切ってしまうだろう。
だがレオナもクリフトも限界だ…この一撃に勝負をかけなければ。

「もう限界です!私のザラキなら葬れます、これ以上は無駄でしょう」
クリフトの泣き言が聞こえる、しかしルビカンテはそれには首を横に振る。
「いや、多少バクチだが手が無い事も無い…だが、レオナよ1歩間違えればお前は黒焦げになるかもしれんぞ」
何時の間にか自分のそばまで戻っていたレオナが答える。
「私は師匠を信じる、だから教えて」
「ならば耳を貸せ」
296Beast Hant:03/07/03 00:19 ID:F1JXzSH4
「ムチャです!私は反対です…やはりザラキで労せずに…」
「お前はそれでも僧侶か?命を奪う事ばかりを口にしてどうするのだ」
「レオナよ、嫌ならば別に構わない、だがその時はクリフトの言うとおり苦しませずに
 せめて楽に死なせてやる以外に方法はないだろう…どうする?」

レオナは笑って即答する。
「へへん、師弟の契りを結んだ時から命は預けているっての!まかせて」
契りという言葉に赤面するクリフトだったが、2人はそれに構わず手はず通りに行動を開始する。
まず、レオナはマイヤーの前面に立って、ひたすら彼の動きを牽制する。
その時だった、ルビカンテは自分の前方にレオナがいるにも関わらず、いきなり火燕龍を放ったのだ。

しかしルビカンテの撃ったそれを、レオナはブリッジのように倒れこみながら絶妙のタイミングで回避する。
彼女の身体を盾にして、火燕龍を放つ、マイヤーから見ればレオナの体が影になって見えない、
そう、彼女は自分自身を死角とすることで、ルビカンテの魔法をカモフラージュしていたのだ。
1歩間違えれば、自分が黒焦げになる危険があったにもかかわらず…。

マイヤーから見れば自分の目の前にいきなり炎の龍が現れるのだ、これではいかなる防御も間に合わない。
瞬間的に炎に包まれるマイヤー、さらにそこにレオナ渾身の突きがみぞおちにめり込む。。
「ぐげ」
そして車に轢かれたカエルのようなうめきを上げて、ついにマイヤーは倒れた。

それからしばらく経過して、彼らは苦労してマイヤーを民家の物置の柱に縛り付けた。
マイヤーは両手両足をロープで厳重に縛られているが、正直これでも足りないくらいだ…禁断症状末期にもなると
鉄の鎖すら引きちぎる輩もいるくらいだ。
一仕事終えるとルビカンテはどこからか見つけてきた薬研と乳鉢を手にし、クリフトに頼み事を持ちかける。
297Beast Hant:03/07/03 00:21 ID:F1JXzSH4
「これから私たちは鎮静薬の材料を取りに海辺まで行ってくるが、その間、彼の世話を任されてはくれぬか?」
当のクリフトはしどろもどろで反論する。
「でっ…でも薬草の知識なら私自信ありますし、それに看護はやっぱり女性の方が…」

しかしルビカンテはクリフトの言葉を一蹴する。
「彼女には無理だ…分かるだろう?」
麻薬の禁断症状は嵐にたとえられるほどの凄まじい苦痛を伴う、例え自分のことではなくてもレオナには耐えられまい。
しかし仏心は禁物なのだ。
「君は回復魔法も扱えるし、医術の知識も多少は備えてるようだし、やはり君にしか頼めぬ、頼んだぞ」

「えっ…えええ」
未だにうろたえまくるクリフトには構わず、ルビカンテはレオナを伴い建物から出ていってしまった。
後に残されたクリフトだが、彼は高所恐怖症で妄想家で臆病で、その上正直ではなかったが、
それでも責任感だけは人一倍強い男でもあった、ルビカンテはもしかするとそれを見ぬいていたのかも知れない。
「仕方ないなぁ…」
と、それだけ呟くとまず彼はマイヤーの傷の治療を早速始めるのだった。

そしてその頃、ルビカンテたちと入れ違いに足取り重く、ジタンとスタイナーが街の門をくぐったのであった。
298Beast Hant:03/07/03 00:24 ID:F1JXzSH4
【ルビカンテ 所持武器:なし 現在位置:S−16からV−16へ
第一行動方針:薬草集め
第二行動方針:マント(出来れば炎のマント)を探す
第三行動方針:ゲームの目的を知る】

【レオナ 所持武器:缶詰(残り90個)と缶切り2つ 現在位置:S−16からV−16へ
第一行動方針:ルビカンテの手伝い 】

(ルビカンテとレオナは少なくとも2時間は街に戻りません)

【マイヤー(重傷) 所持武器:なし 現在位置:S−16(ルラフェンの民家) 
第一行動方針:他人から薬を奪う 】
(薬は日没まで投与しなければ完全に抜けます)
(薬は取り上げられていません、ルビカンテたちはそのことを失念しています)

【クリフト:所持武器バリアブルソード 魔法の聖水×3本:現在位置/S−16(ルラフェンの民家) 】
 第一行動方針:マイヤーの看病
 第二行動方針:アリーナを探す。

【ジタン/スタイナー:所持武器 コッズガントレット(イオナズン級爆発魔法が使える、無制限)
 /参加者詳細資料:現在位置 S−16】
 第一行動方針:?
299Fallen Braves:03/07/03 16:28 ID:4qZXVX64
ハッサンとクッキーは西に向かって共に進んでいた。
いや、実際はクッキーがハッサンのスピードに付いていけず、引きずられるように連れまわされている、
と形容した方がいいかもしれない。

「ハッサンさんお願い、しばらく休ませて…」
完全にバテバテのクッキーだったが、ハッサンは意にも介さず、
「この程度でバテていてどうすんだよ、ええ?」
と、休むどころかさらにスピードを上げる。
(マイヤーといい…この人といい、どうしてこんな人にばかり好かれるの?僕は…)
心の中で泣き言を言う、クッキーだったがその時2人の耳に助けを求める悲鳴が聞こえる。

「む、絹を裂くような女性の悲鳴!行くぜ!!」

そしてやはりというか何というか、ハッサンはずるずるとクッキーを引きずりながら、
悲鳴の聞こえた方角へと走った。


その悲鳴の主、ローラ姫は背後に感じる敵意からひたすら逃げつづける。
その敵意の主はムーンブルク王女リンダだ、あれから彼女は平地を迂回することなく、
あえて山越えをして自分の眠ってた間の時間と距離を稼いでいた。
しかし、その無理が祟っているのだろう、やや足取りがおぼつかない。
いや?それ以前にリンダは前方を逃げる少女に違和感を感じていた、彼女の中のロトの血が、
無意識に一族であるローラの殺害に抵抗しているのかもしれない、もっとも当のリンダはそのことを、
知る由もなかったが。

そしてそれを背後から眺める者が1人。
「まだるっこしいぞ、っと」
レノは相変わらず軽口を叩きながら状況を見守る、この距離ならM79が使える…いっそ、
いや、まだ早い、あのお姫様には、自分の代わりにもっと殺してもらわなければ。
「焦りは禁物っと、おや?」
彼はゴーグルの倍率を上げる、とそこには追われている少女を守るように2人の男が立っていた。
300Fallen Braves:03/07/03 16:29 ID:4qZXVX64
そのうちの1人、いかにも優柔不断そうな少年がなにやら叫んでいる、話の内容は知る由もないが、
ともかくレノはその様子を引き続き観察していた。

「来ないで、クッキー」
リンダは突如現れた仲間の存在にかなり取り乱している。
「どうしてなの?リンダ…ねぇワケを聞かせてよ、君がどうして人殺しなんてしなきゃいけないの?」
それはクッキーも同じだ、あれほどまでに捜し求め、最も焦がれていた少女がよりにもよって、
最悪の状況で現れたのだ。
2人の間に流れる沈黙…やがて先に落ちつきを取り戻したリンダが語りだす、
自分が何故殺戮に走ったのか、その理由を…。
「わかったでしょう、私が帰らなければムーンブルクは滅びますの…だから」
リンダは両手をかざし呪文を唱える仕草をする。
「王家再興、そして民のためなら例えあなたでも殺します…今は仲間のよしみで見逃してあげます、だから
 早く立ち去りなさい!」
だが、クッキーはそれでもリンダに近づいていく、
「離れてよ、来ないでったら来ないで!」
それでもクッキーは歩みを止めず、リンダに近づいていく、そして。
「!?」
クッキーはリンダの身体を強く抱きしめるのであった。

「君の苦しみは僕の苦しみ、君の痛みの半分は僕が背負う、例え受け入れてくれなくても構わない
 僕は君の剣になるから…最後の2人になった時は迷わず僕を殺してくれ」
耳打ちされた言葉にリンダははっきりと返事をする。
「いいのね…クッキー?私はあなたを愛せない…あなたは今よりもずっと苦しむことになるのよ」

私はあなたを愛せない…その言葉にもクッキーは動じなかった。
「君といられるのなら、どんな苦しみにでも耐えるよ、今までもずっとそうだったから
 あ、サマルトリアなら大丈夫だよ、妹がいるから…僕なんかよりもずっと優れているし」
クッキーの壮絶なまでの愛の言葉にリンダは涙ながらに答える。
「ありがとう…クッキー、その時が来たら、あなたの命…貰うわ」
301Fallen Braves:03/07/03 16:30 ID:4qZXVX64
急展開に付いていけずに目を丸くするハッサンとローラ姫だったが。
やがて自分たちの方を向いた、2人の瞳を見て顔色を変える。

「と、言うわけだから…ごめんなさい」
クッキーはあくまでも丁寧に言葉を発するが、そこからの行動は情け容赦無かった。

「冗談じゃねぇ、てめえらの勝手な理屈で殺されてたまるか!」
ローラ姫の手を引いて離脱しようとするハッサンだったが、
「ベギラマ!」
クッキーの呪文によってその退路を阻まれる。
さらにそこに、
「イオナズン!」
リンダの呪文が重なった。


あれからどこをどうやって逃れたのかは覚えていない。
気がついたらこうして森の中を必死で走っていた、その左手にはしっかりとした硬い感触がある。
ああ、そうそう思いだしたわ、あの大きな人が自分の手を引いて逃がしてくれたのよね。

でも、おかしいわね?2人で並んで走っているのに気配が全然……
そこで自分の左手を掴んでいる物を見て、ローラ姫は悲鳴を上げた。
そこには彼女を逃がした男の、ハッサンの片腕だけがそれでも彼女を守るようにぶら下がっていた。


こうしてロトの戦士たちはその状況、理由はともあれ全て堕ちた。
302Fallen Braves:03/07/03 16:37 ID:4qZXVX64
【クッキー 所持武器:ピンクのレオタード(ミネア用) 現在位置:H-15
 第一行動方針:リンダを勝ち残らせ、その後自殺 】

【リンダ:所持アイテム:火炎放射器 現在位置:H-15
 第一行動方針:勝利する】

【レノ:所持アイテム:多目的ゴーグル MP5サブマシンガン 消え去り草 M79グレネードランチャー
 バックラー 現在位置:H-15】
 第一行動方針:リンダたちを追尾する

【ローラ:アイテム:? 現在位置:H-14
 第一行動方針:逃げる】


【ハッサン:生死不明(片腕損失)】
303女子供の集い:03/07/03 20:17 ID:tU3Y1ie2
シャドウ、クルル、そして新たに合流したルールーは日が上がるまで
合流したその場所で待機する事にした。
もっとも、シャドウだけはルールーと共に行動する事を拒んだが
抜けるタイミングを見失い、クルルもルールーが入る事に同意していたため、渋々共に行動していた。

そして、この殺し合いをセッティングした張本人、忌々しいケフカの放送がはじまった。
最初に殺しを促進させるような内容の話をした後、死亡者の名を上げる。
全員で16人、80人近くいたのが16人も死んでしまったのだ。
シャドウと共に闘った者も死んでいたが、大して気には止めなかった。
しかし、放送が終わった後シャドウはクルルの様子がおかしいのがわかった。
どうやら自分の仲間が死んだらしいというのがシャドウとルールーには少しずつわかってきた。
アンジェロがクルルを慰めようとすると、クルルは泣き笑いの表情でアンジェロを迎えた。

ふと、シャドウは背後に気配を感じた。
それも二つ、しかも一つは大変な殺気を出している。
次の瞬間、強烈な銃弾がシャドウ達を襲った。
シャドウは傷を負った右肩を抑えながら氷の刃を握り、気配の方向へと「なげる」
「ひぎゃぁぁー!」
瞬間、汚い断末魔を上げた男が草を掻き分けて飛び込んでくる。
男の胸には先ほどシャドウが投げた氷の刃が突き刺さっていた。
「サンダラ!」
とどめを指すようにルールーが攻撃呪文を唱える。
男は雷を直接くらい、黒い煙を吐いて倒れる。
304女子供の集い:03/07/03 20:17 ID:tU3Y1ie2
シャドウは後ろを振り返った、クルルもアンジェロもルールーも誰一人死んではいないらしい。
氷の刃を引き抜き、男の持っていたショットガンを奪う。
クルルはケアルラを使い、みなの傷を塞ごうとするが、それでも傷は癒えない。
突然アンジェロが吠えた、そして奥の草むらへと駆けていく。
しばらくするとアンジェロの後ろ足が見えた、何かを咥えているらしい。
シャドウがそれを手伝い、思い切り引張り上げると。
そこには怯えた目で見つめる、少年がいた。

【シャドウ 支給品:氷の刃 M3ショットガン 現在位置:Q-12】
 行動方針:リルムを探す
【クルル(ジョブ:時魔道士 アビリティ:白魔法) 支給品:? 現在位置:Q-12】
行動方針:ガラフや仲間を探す
【ルールー:所持品:アンジェロ 炎のマントの切れ端 現在位置:Q-12】
目的:仲間との合流
【ミド 支給品:? 現在位置:Q-12】
 対処行動方針:飛空挺に戻る
 根本行動方針:飛空挺の修理

【カンダタ 死亡】 残り61人
305The・俺様薔薇色人生:03/07/03 21:27 ID:tU3Y1ie2
ぼうやをさらった俺様はひとまず東側へと逃げ込んだ。
どうやらあの勇者様は北に向かったらしいからな、これで逃亡生活とはおさらばだ。
だが、いつ戻ってくるともかぎらねぇ。
調べ忘れたツボやタンスなんかを探しにくるかもしれねぇ。
とどのつまり、俺様は適当な場所に隠れて様子を見る事にした。

しばらくして放送があったが、俺様には関係ねぇ。
このぼうやが空飛ぶ舟を直してくれれば俺様はとっととトンズラを決め込む。
そしてあの勇者様がいねぇ世界で盗賊三昧、嗚呼薔薇色の人生。

「バウワウ!」
と、突然俺様の近くで犬が吠えた。
俺様は銃を持ってそちらを伺う、どうやら近くにほかの参加者がいたらしい。
ひー、ふー、みー、三人と一匹。
しかもその中の二人は女子供だ、俺様は舌なめずりをした。
ついている、今日はとことんついている。

俺様のプランはこうだ、まずここでこいつらを殺す。
今ぼうやは眠り込んじまっているから何が起こっているかはわからねぇ。
で、その後俺様はこいつらがぼうやを襲ってきたのを守ったと恩を売る。
そこまでいっちゃこっちのもんだ。
後は空飛ぶ舟に乗ってこんな薄気味わりぃ場所たぁおさらばよ。
306The・俺様薔薇色人生:03/07/03 21:28 ID:tU3Y1ie2
さぁ、いくぜ、俺様の薔薇色プランの為に。
俺様は手に持った銃の引き金を引いた、とたんに散弾が奴らを襲う。
あとは、後ろに回って背中からもう一発ほど食らわしてやりゃ……
――ドス!
不快な音に俺様は顔をしかめた。
胸のあたりがトロトロと暖かい、なんだこいつは?
手で触れるとぬるっとした感触、生暖かいこいつは……血か?
なんでこんなもんが俺様の胸に?
ん?なんだこの棒っきれは、ふざけんな。
なんで俺様の胸からはえてやがんだ!なんだよこれ!

俺様は間違っていたのかもしれない、ほんの数秒だけ考え込み。
それが俺様の体に突き刺さっている剣だってことがわかった。
瞬間、俺様の全身に激痛が走った。
すぐさま眩しい雷が俺様の体を貫き通す。
俺様は、俺様の思考はそこで止まった。

(>>303-304のカンダタ視点です)
307朝っぱらから何なんだ:03/07/04 00:50 ID:wv1i9FzQ
町には人の気配が感じられなかった。微妙な空気の流れはあったが、
少なくとも戦場になる予感はしなかった。
ジタンは大きく背伸びして町の外観を眺めた。
見たところ全体的に入り組んでいて、複雑な往来になっているようだ。
「変わった町だな、ここ」
「攻め込まれたとき敵勢を一気に侵入させないための地形つくりなのであろう」
スタイナーはザックを下ろして中身を確認しだした。まだ大して時間は経っていないのに、
マメな男である。
「でもオレたちは敵じゃないからな。ただ無駄に歩かせるだけのような……」
ジタンはそう言いながら、ひとまず落ち着けるような家屋がないか探す。
「オレ、ちょっとその辺を一回りしてくる」
スタイナーは軽くうなずいただけで、すぐまたザックに向き合い始めた。

少し高台を歩いたところで一軒の民家が目をひいた。
「誰か、いるような」
ジタンはそっとガラス戸から中をうかがった。
「なに、やってんだ…ありゃ」

正直言ってあまり見たくない光景だ。
男がロープで柱にくくり付けられて、うなだれている。多分眠っている。
で、そのすぐ傍に男がもう一人いて、がんじがらめで身動きできない男の頬をつねったり、
額を触ったり、胸をさすったりしていた。

「あぶない連中……だったら嫌だ」
ジタンは言いながらも、このゲームには参加者意外は誰もいないことを思い出して、
すぐスタイナーに知らせに戻った。
参加者名簿でどういう人間なのか調べるのである。
308朝っぱらから何なんだ:03/07/04 00:51 ID:wv1i9FzQ
【マイヤー(重傷) 所持武器:なし 現在位置:S−16(ルラフェンの民家) 
第一行動方針:他人から薬を奪う 】
(薬は日没まで投与しなければ完全に抜けます)
(薬は取り上げられていません、ルビカンテたちはそのことを失念しています)
【クリフト:所持武器バリアブルソード 魔法の聖水×3本:現在位置/S−16(ルラフェンの民家) 】
 第一行動方針:マイヤーの看病
 第二行動方針:アリーナを探す。

【ジタン/スタイナー:所持武器 コッズガントレット(イオナズン級爆発魔法が使える、無制限)
 /参加者詳細資料:現在位置 S−16】
 第一行動方針:?
309ミスを直せよなw:03/07/04 02:11 ID:N07wP+ta
「さぁて次の獲物は…」
次の獲物を物色するスカーレットだったが、彼女は一つだけミスを犯していた。
実はマイヤーは彼女の元から離れる時に、
彼女が持っていた薬を全て掏り取っていってしまっていたのである。
マイヤーに正常な判断力は無い、しかしその分薬に関しては鋭くなっている事を忘れていた、
更に最初に注射を打った時に薬の袋を少し見せてしまった事が失敗の元だった。

その事実はまだマイヤーしか知らない、ついでにかれがルビカンテ達にあう前に一回使っている事も。

【マイヤー(重傷) 所持武器:麻薬(1回分)注射器 現在位置:S−16(ルラフェンの民家) 
第一行動方針:他人から薬を奪う 】
(薬は日没まで投与しなければ完全に抜けます)
(薬は取り上げられていません、ルビカンテたちはそのことを失念しています)

【スカーレット 所持武器:無し 現在位置:U-10
第一行動方針:未定 】
310そろそろ掃除の時間w:03/07/04 02:58 ID:/3ym+GZa
「こわいよ……」
「いやだよ……」
「幻獣界に帰りたいよ……」
リディアは静かに、そして長々と泣いていた、放送も、周囲の騒音も、気にならなかった。
彼女は安全な場所にいる筈だったから。

だから彼女は頭を砕かれ死ぬ事になる。

「動かず、闘わず、ただ座って泣いてるだけか?何もせずに助かれる程バトロワは甘くないのだよ。」
リディアの頭を砕いたルーファウスは悠々とその場を後にした

【ルーファウス
 所持武器:アウトサイダー かいふくのマテリア うらミサイル(>>26) ルビーの涙
 現在位置K-16】
 第一行動方針:愉しんで皆殺し。

【リディア死亡】
※アイテムはK−17に放置

311Lady Viper(修正):03/07/04 20:08 ID:gVEXhIeL
「くっ…」
マイヤーの剣がライアンの肩を捉える。
後退するライアンに、さらに間髪入れずマイヤーの追撃の刃が迫る。
それを何とか避けながらもライアンは考える。
この少年、タダでさえ剣の腕は天才的だというのに、この気迫は何なのだ?
まるで人というよりも獣だ。
その困惑がライアンの隙を生む、彼の右手方向から常識では考えられないほどの大振りの一撃が、
これもまた常識を超えるスピードでライアンへと迫る。
これもかろうじて受けとめ、鍔ぜりあいの体制になる…が、

がぎん、がぎがぎ
ノコギリ刀がいやな音をたてて火花を散らす。
(いかん、このままでは武器が持たん)
ライアンは何とか鍔ぜりあいから逃れようとするが、マイヤーは蛭のようにライアンから離れない。
ライアンも必死で何とかしようとするが、もはや武器が限界だった。
ガタガタっと手元が振るえたかと思えば、のこぎり刀の目釘が弾け飛んだのである。
「無念…」
そしてその瞬間、マイヤーの剣がライアンの首を、のこぎり刀ごと斬り落とした。

刎ね飛んだ首の傷から血が噴水のように飛び出て、マイヤーの身体を朱に染める。
しかし当のマイヤーは何も感じてないようだ、いや考えている事があるにはある…。
この後にもらえるであろうご褒美を。
312Lady Viper(修正):03/07/04 20:08 ID:gVEXhIeL
「キャハハハハよくやったわね、ポチ」
何時の間にか自分のすぐ後ろにスカーレットが立っていた。
「約束だよ、はやく薬を…」
マイヤーの言葉にスカーレットは注射器を投げて渡す、もどかしげに腕をまくり注射するマイヤー、
しかしスカーレットは無情にも告げる。
「ごめんねぇポチ、そのお薬は今のと、そしてこれで最後なのよ…ふふふ、でも」
まだ封を開けていないアンプルを投げ渡したところで言葉を切り、そしてその口から恐るべき言葉が飛び出す。

「このお薬は他の皆も持っているのよ、知らなかった?」
それを聞くなりマイヤーはライアンのザックの中をひっくり返し、そこに目的の物がないと見るや、
今度はライアンの死体の衣服までむしり取り、ポケットの中まであさり始めた。
一国の王子が薬欲しさに死体をまさぐる、こんな哀れで滑稽な光景があるだろうか?
しかし、薬が見つかるはずも無く、マイヤーは恨みがましくスカーレットを見つめる。

「あら、なかったの?残念ねェ…キャハハハ、じゃあ他の人が持っているんだわ」
マイヤーはそれを聞くと、またあらぬ方向へと駆け出していった、獣じみた叫びをもらしながら。
薬に汚染された彼の精神はこんな他愛ない言葉すら疑えなくなっていたのだ。

そしてまたそれを見送るスカーレット、結局考えた結果、マイヤーという存在は盾とするには危険過ぎる。
なら剣になって貰おう、あのガキが人を殺せば結果的に自分が助かる可能性が増えるのだから。
「キャハハハ、そうよそうよ、たくさん殺してらっしゃい、私のために」

【スカーレット 所持武器:麻薬(残り2回) 現在位置:U-10
第一行動方針:未定 】

【マイヤー 所持武器:バリアブルソード注射器&麻薬1回分 現在位置:U-10から移動 
第一行動方針:他人から薬を奪う(殺してでも) 】
313310修正:03/07/04 22:38 ID:Xh4SLm+H
こわいよ……」
「いやだよ……」
「幻獣界に帰りたいよ……」
リディアは静かに、そして長々と泣きながら彷徨っていた、放送も、周囲の騒音も、気にならなかった。
彼女は安全な場所にいる筈だったから。
ふと気付くと彼女はK-16の地点に移動していた、下ばかり見ていたせいで、周囲の確認を怠っていたのだ。
慌てて引き返そうとした……リディアの頭部が突然砕け散った

「動かず、闘わず、ただ泣いてるだけか?何もせずに生き残れる程このゲームは甘くないのだよ。」
近くの繁みに伏せて隠れていたルーファウスは悠々とその場を後にした

【ルーファウス
 所持武器:アウトサイダー かいふくのマテリア うらミサイル(>>26) ルビーの涙
 現在位置K-16】
 第一行動方針:愉しんで皆殺し。

【リディア死亡】
※アイテムはK−16(毒沼)に放置
314死神の仮面:03/07/04 22:42 ID:Rv7uxm/F
AM6:00
負傷した体を休めていたヴィンセントは、耳障りな放送を顔をしかめて聴いていた。
あのふざけた奴も腹が立つが、その男の口車に乗ってしまった自分も等しく、
いやそれ以上に穢れた存在に思えてくる。
それでも、彼には自分の手をどんなに汚そうともやらなければならない事があった。
たとえどんな事があろうとも、どんなに裏切り者だと、悪魔に魂を売ったと罵られても
自分の心を折らないと決心した。

なのに―――
彼は安堵していた。
かつての仲間達が一人も死んでいなかったことに。
ヴィンセントはゆっくりと視線を上に向けた。
視界には天空城が映っていたが、彼はそれを見てはいなかった。
「…愚かな。こんな感情などただの幻に過ぎないというのに」
その呟きは、はたして自分が出したモノだったのだろうか?

ヴィンセントは拳を地面に打ち付けた。
(非情になれ。自分以外の全てのモノに価値を置くな。全ての事に優先順位をつけろ)
まぶたを閉じて数秒。そして、開かれたその瞳には先程の憂いの光は無く、
ただ深い闇を帯びているだけだった。
そしてその瞳が次の標的を捕らえる。
驚き、心配そうな顔をして近づいてくる金髪の少年。
少年はヴィンセントの近くに来ると口を開いた。
「大丈夫か? あんた」
手に持っているナイフに目をつけたヴィンセントは心の中でほくそえんだ。
315死神の仮面:03/07/04 22:43 ID:Rv7uxm/F
「そんなに酷そうには見えないけどな。どこか怪我してるのか?」
既に先程の戦闘での怪我は完治まではいかないまでも大分ましになっていた。
まだ右目の視力は半分も戻ってはいなかったが。
「外傷は魔法でほとんど治したが、体力の方まで手が回らなくてな」
もちろん嘘である。自分の体質を知られる事が良い結果を生むとは考えられないからだ。
「…誰かとやり合ったのか?」
「ああ。すぐ近くの丘だ。崖から突き落とされた」

「そいつは? 近くにいるのか?」
「もう死んだようだ。放送で名前を呼ばれていた」
キーファの質問に、ヴィンセントは顔色を変えず当たり障りの無い嘘を並べていく。
慎重に相手の警戒を解いてく。
(そろそろか…)
「う…くぅ…」
ヴィンセントは小さく呻きながら立ち上がろうとした。
もちろん痛む所は既に無く、ただキーファに決定的な隙を作る為の芝居なのだ。
ヴィンセントは足が痛むふりをして少しよろめいた。

「無理するなよ」
そんなヴィンセントを見かねてキーファはヴィンセントを支えようとする。
「すまない…」
ヴィンセントは弱々しく微笑み、右の拳をキーファの腹部へめり込ませた。
316死神の仮面:03/07/04 22:44 ID:Rv7uxm/F
「がはぁっ」
キーファは何が起こったのかわからない様子で、腹部に生じた耐え難い衝撃に呻いた。
油断していた所への一撃。
あまりの激痛にキーファは一瞬動けなくなった。
ヴィンセントはそのまま背後に回り、キーファのナイフを持っている腕を掴み、
捻り上げ、人間離れした力でそのまま骨を折った。

金属が地面にあたる鋭い音。骨の折れる鈍い音。口から漏れる絶叫。
しかし絶叫はすぐに小さな蛙の潰れた様な音とともに消えた。
ヴィンセントがキーファの背後から両腕をキーファの喉に絡みつかせたのだ。
『裸締め』と呼ばれる締め技。まともに入れば外す方法は皆無と言われる技である。
キーファはどうして自分がこうなっているのか理解していないようだが、
懸命に戒めを解こうと折れた右腕を無様に振り回し、左手の爪でヴィンセントの腕を
かきむしり、両足をばたつかせた。

しかしその足掻きも空しく、キーファの脳が酸欠を起こし、『堕ちた』。
ヴィンセントは抵抗しなくなったキーファを離し、
地面に落ちているナイフを拾い上げると意識を無くし痙攣している
キーファの喉にそのナイフを突き立てた。

【ヴィンセント(右視力低下のみ) 所持品:魔法のカギ メイジマッシャー
神羅甲式防具改(効果半減) 現在位置:J-07 岩場 】
 対処行動方針:『魔法のカギ』を使って、建造物でアイテム取得
 根本行動方針:勝利し、過去を改変する
 ステータス:HP半減。

【キーファ死亡  残り60人】
317成長が止まった女達:03/07/05 00:51 ID:AxXKYkvA
朝もやがなくなりはじめた頃、狩人テリーは獲物を見つけた。
見るからに戦闘経験の無さを思わせる肉の無い腕。
華奢な体では自分を殺す事はおろか、姉でさえ殺せないであろう。
しかし、テリーはその太刀を構えた。
念には念をというのが彼のこのゲームでの信条らしい。

山の洞穴から朝日を見に出ていた二人の女はテリーが狙っているとは知るはずもなく。
世間話等に花を咲かせている。
テリーは気配を殺し、少しずつ近づいていった。
10mから8m、8mから5m、5mから……
――コツン。
小さな、それでも二人の女に聞こえるには十分すぎる音をテリーは立ててしまった。
仕方が無いといった様子でテリーはその太刀を振る。
女達はテリーに気づき、慌てて戦闘体制を整えるが。
不慣れしている様子でテリーの攻撃を避けるには至らない。
バサリ、と音が鳴り片側の女のおさげが切れた。
もう一度振るおうと今度は縦に切り払う。
しかし、今度は軽々とかわされてしまった。
素早く動ける軽い片手剣ならまだしも、重い両手剣ではテリーの力は存分には発揮できなかった。

テリーは一瞬迷った揚句、太刀を右手にぶらさげて左手でハイブロウSTを構えた。
続けて一発、二発と発射するがこれも慣れていない上に銃での攻撃は素人だった為当たりはしない。
二人の女はザックを抱えて後ろの山へと逃げ去った。
テリーは慌てて追うが、重装備が仇となったのか一向に追いつけない。
その時、ふと片方の女が止まった。
何か呪文の詠唱をしているらしく、テリーは銃をもう一度撃った。
瞬間、辺りの景色が歪み始める。
「マヌーサ!」
女がそう唱えると、テリーは本格的に目まいを覚えた。
目の前の岩が二つから四つ、八つへと増え、地が天に天が地に逆さまにかえる。
二人の女はテリーに幻惑の呪文が効いた事がわかると、すぐさま逃げ出した。
318成長が止まった女達:03/07/05 00:51 ID:AxXKYkvA
「やっぱり……久しぶりの呪文は疲れるわ。」
幼少の頃に覚えた呪文、マヌーサ。
大人となった今でもつかえるのは彼女の天性の才能故か。
しかし、その事さえも女は皮肉めいたものだと嘲笑する。
何故なら、もし彼女が探す男が選択の時に自分を選んでいたとしたら。
もっと高度な呪文を使えただろうから。

【エアリス 所持品:手裏剣×20 現在位置:J-07から南西へ 山道 】
 第一行動方針:かつての仲間たちとの合流 第二行動方針:ビアンカに協力
【ビアンカ 所持品:? 現在位置:J-07から南西へ 山道 】
 第一行動方針:リュカに合流 第二行動方針:クーパー殺害 第三行動方針:エアリスに協力
【テリー 所持武器:太刀(両手持ち)コルトパイソン(弾丸なし) 山彦の盾 力の盾
 ハイブロウST 黒胡椒  スコールの首輪 現在位置:K-06 洞穴前 】
 第一行動方針:姉(ミレーユ)を探す・ミレーユのために戦う
(HP3/4)(マヌーサ状態)
※エアリスもしくはビアンカのどちらかのおさげがバッサリ斬られています。
319無効宣言:03/07/05 01:07 ID:G4hPNsGl
309は無効です、お騒がせしました。
320アンタッチャブルGirl:03/07/05 01:28 ID:RJVDTHYj
マーニャはじっと手に持った首輪感知システムを凝視している。
今、彼女がいるのはF−18、彼女はここに張り込んで仲間が通らないかどうかをじっと見張っていた。

ライアンとロザリーの死は衝撃だった…ライアンを屠るほどの使い手がこの島にはいるというのか…。
さらに彼女の心を痛めたのはロザリーの死だ、彼女とは仲が良かっただけに、戦う術も無く、
逃げ惑っていたであろう彼女を嬲り殺した、まだ見ぬ相手に対する怒りがふつふつと涌いてくる。

だが、情に流されて冷静さを失っては行けない、次に死ぬのは自分かも知れないのだから…。
再びマーニャはシステムの画面を凝視する。

西から進んできたA、それを追うようにBとC(これは便宜上の記号です)が東から進んできたD・Eと
合流、その後B・C・Eが合流、Aが北に進み、Fは動きを止めている。
これはどういう事だろうか……。

おそらくB・Cは乗った奴だろう、Eはその仲間でFと仲間割れといったところか。
と、いうことは少なくとも警戒せねばならないのが、3人いるということになる。

他に探知可能な範囲にいる人間で目立った動きをしているものはいない。
そろそろ危険な賭けだが誰かと接触してみるか…だが、
「まずはこの3人の動きを確かめてからね」
マーニャは茂みに身を隠し、液晶画面を凝視していた。


【マーニャ 所持武器:回転ノコギリ 首輪探知システム 現在位置:F-18 
 第一行動方針:とりあえず頼れそうな誰かを探す 】
(探知可能範囲は自分を中心とした最大半径3HEXの円内です、縮尺は1HEX 2HEXの3段階に
 切り換え可能、ただし探知範囲が広ければその分精度はダウンします
 また位置はわかってもそれが誰なのかはわかりません)

Bはリンダ、Cはレノ Dはクッキーです 
そしてAはローラでEはハッサンです
321アンタッチャブルGirl(訂正):03/07/05 01:30 ID:RJVDTHYj
マーニャはじっと手に持った首輪感知システムを凝視している。
今、彼女がいるのはF−18、彼女はここに張り込んで仲間が通らないかどうかをじっと見張っていた。

ライアンとロザリーの死は衝撃だった…ライアンを屠るほどの使い手がこの島にはいるというのか…。
さらに彼女の心を痛めたのはロザリーの死だ、彼女とは仲が良かっただけに、戦う術も無く、
逃げ惑っていたであろう彼女を嬲り殺した、まだ見ぬ相手に対する怒りがふつふつと涌いてくる。

だが、情に流されて冷静さを失っては行けない、次に死ぬのは自分かも知れないのだから…。
再びマーニャはシステムの画面を凝視する。

西から進んできたA、それを追うようにBとC(これは便宜上の記号です)が東から進んできたD・Eと
合流、その後B・C・Dが合流、Aが北に進み、Dは動きを止めている。
これはどういう事だろうか……。

おそらくB・Cは乗った奴だろう、Dはその仲間でEと仲間割れといったところか。
と、いうことは少なくとも警戒せねばならないのが、3人いるということになる。

他に探知可能な範囲にいる人間で目立った動きをしているものはいない。
そろそろ危険な賭けだが誰かと接触してみるか…だが、
「まずはこの3人の動きを確かめてからね」
マーニャは茂みに身を隠し、液晶画面を凝視していた。


【マーニャ 所持武器:回転ノコギリ 首輪探知システム 現在位置:F-18 
 第一行動方針:とりあえず頼れそうな誰かを探す 】
(探知可能範囲は自分を中心とした最大半径3HEXの円内です、縮尺は1HEX 2HEXの3段階に
 切り換え可能、ただし探知範囲が広ければその分精度はダウンします
 また位置はわかってもそれが誰なのかはわかりません)

Bはリンダ、Cはレノ Dはクッキーです 
そしてAはローラでEはハッサンです
322Death Trip:03/07/05 09:48 ID:WsRfVVW/
ビアンカとエアリスが立ち去った後も、テリーはマヌーサの幻に苦しんでいた。

「くそっ!」
幻惑に惑わされたテリーはがむしゃらに剣を振るう。
ガキン、と剣が岩肌を叩く音が響く。
その音でいかに自分が危険な状況に置かれているかを悟る。
そして2人の気配が消えたことに気付いてそれをやめた。

「…とりあえずマヌーサが消えるまで、なんとかどこかに隠れなくてはな…」
苦渋の表情をつくって忌々しげにそう言った。
「こんな時に誰かに襲われたらひとたまりもない」
独り呟いて、手に持った剣を収める。
おぼつかない足取りで、テリーは歩き出した。
自分でもどの方向へ歩いているかわからなかったが、
とにかくこんな視界の開けた場所にとどまるのは避けたいと思ったのだ。

30メートルも歩かないうちに、
眼の前の岩を認識できずに顔をぶつけてしまった。
「う…移動もできないのか――」
痛む鼻を押さえながら言う。
「大体マヌーサの効果はしばらくすれば消えるはずだ」
それまでに誰にも会わなければ、なんとかなる。


しかし、運命の女神はテリーを見放したのだった。
323Death Trip:03/07/05 09:49 ID:WsRfVVW/
いきなりテリーの眼の前にマントを羽織った黒ずくめの男
――ヴィンセントだったのだが、テリーには知る由もなかった――が現れ、
ナイフでテリーに襲い掛かる。
テリーは避けようとするが、
マヌーサの幻惑で幾重にも重なって見えるその男の本当の居場所がわからない。

ズパッ、という音と共にテリーの腕が裂かれた。
「!!」
テリーの視界がヴィンセントの身体で塗りつぶされ、テリーを包んだ。
次々と繰り出される斬撃をかわすこともできず、テリーの身体が切り裂かれていく。

テリーが反撃にでようと、剣を抜いてまぼろしの1つを叩き斬った。
「無駄だ…」
背後からテリーの脇腹にナイフがずぶずぶと沈んでいく。
「がはっ…!」
テリーが思わず腹を抑える。
その手が紅く染まっていく。

「この、卑怯者」
小さく呟いてまたテリーが剣をめちゃくちゃに振る。
ヴィンセントは剣をナイフで受け止めた。
テリーがそのスキにイオを唱える。
ボンッ、という爆発音と共に辺りが爆風で包まれた。

しかし、その爆風の間を縫ってヴィンセントが飛び出した。
無慈悲な一撃がテリーの身体を切り裂き、血が飛び散る。
(オレは、ここで死ぬのか――?)
テリーは敗北を悟り、歯軋りをする。
マヌーサのまぼろしに包まれていなければ、あるいは不意打ちでなければ、
負けることはなかっただろう。
324Death Trip:03/07/05 09:49 ID:WsRfVVW/

「姉さん…オレは、ここまでみたいだ…どうか、姉さんは、生き残…」
テリーの言葉は最後まで発せられることはなく、
ナイフを首筋に突きたてられて絶命した。

「この男は眼が見えなかったのか?」
ヴィンセントがナイフを抜いて、テリーのザックを漁りながら呟く。
「眼が見えていたなら、良い戦いになっただろうにな」
自分が今、新たに負った火傷の後を見つめてテリーを一瞥する。
そして、もう興味はなくなった、というように東へ歩き出した。

【ヴィンセント(右視力低下のみ) 所持品:魔法のカギ メイジマッシャー
 神羅甲式防具改(効果半減) 太刀(両手持ち)コルトパイソン(弾丸なし) 山彦の盾 力の盾
 ハイブロウST 黒胡椒  スコールの首輪 現在位置:K-06 南部の山道 】
 第一行動方針:『魔法のカギ』を使って、建造物でアイテム取得
 最終行動方針:勝利し、過去を改変する
 ステータス:HP半減。

【テリー死亡  残り59人】
325社長の楽しみ:03/07/05 12:17 ID:3wTv75ab
どうも運に恵まれている。獲物を探すまでもなく、向こうからやってくるのだ。
ルーファウスはもう完全に手馴れたアウトサイダーを持ち上げると、ゆっくりと照準をさだめた。
銃を構えたというのに、まだ向こうは近づいてくる。間抜けだ。私を
今回も獲物は同じようなものだ。
敵というにはやはり弱々しくて無防備で、何とも鳥の雛のような存在だった。
「だが、そこがまた私の官能を刺激してしまう」
目の前の雛は外を歩きまわっている。しかし、その足はもろくすぐにでも崩れ去ってしまうのだ。
私の手によってな

女のドレスが舞い上がり、ふとももが露になった。赤いものを飛び散らせ、女は崩れ落ちた。
草地の上でうつぶせになって身悶えして、顔だけをこちら向けたところで、また一発。
女の肩が弾けた。
「よし、やはり我が社の製品は優れているな」
自分の腕が良いからだと言ってもいいのだが、飽くまでも社長なのである。
部下が寝食を忘れ、家庭を投げ打ってまで開発に没頭した、自慢の製品を褒めてやりたかったのだ。
君たちの努力と熱意の結晶だ、これは
ルーファウスは、神羅カンパニーという企業の名前も知らない一社員を賞した。

女との距離を大分縮めて三度目の発射。止めはまだ刺さない。左手首が吹き飛んだ。
「く、くあ……、何故こんなことをするんです……」
女が涙を浮かべているのは、痛みからか、自分の無力さを心底痛感しているからか。
どちらにせよ、もう終わりだ。
「二人目に殺した女も同じことを言っていたな。何故、殺す、か?
 フフ……私も同じ言葉で返してはつまらないから、まあ、お前にはこう言おう。
 狩りを楽しみたいからだ。ただ生き残るだけでは折角のゲームがもったいない。
 人生は楽しんだ方がいいだろう。
 地道に努力する人間は好きだが、自分がそうではないと知り、私は社長になった。
 そして今では私を楽しませてくれるために努力を惜しまない人間だけが好きだよ、
 この銃を開発してくれた社員のように」
四度目は確実に心臓を狙った。
びくんと大きく体を震わせ、そのあと女は動かなくなった。
今度はもう少し動きのある標的がいいとルーファウスは思った。
326社長の楽しみ:03/07/05 12:20 ID:3wTv75ab
「ほう、こんな便利なものを使わずにいたなんて、やはり間抜けだ」
ルーファウスは女のザックから見つけた装置を体に取り付けた。
防弾チョッキを着込んだのとほぼ同様の様になった。軽量化が計られているようで重さは感じなかった。

【 ルーファウス
 所持武器:アウトサイダー かいふくのマテリア うらミサイル(>>26) ルビーの涙
 バリア・ポイント 現在位置:K-16】
 第一行動方針:愉しんで皆殺し。
(バリア・ポイントは装備した者のまわりに強力なバリアを発生させ、何者も近づけさせません。
 物理攻撃、銃弾、大砲などを弾き返します)

【ローラ 死亡】(残り58人)
327訂正:03/07/05 12:21 ID:3wTv75ab
>>3253行目
× 銃を構えたというのに、まだ向こうは近づいてくる。間抜けだ。私を
○ 銃を構えたというのに、まだ向こうは近づいてくる。間抜けだ。私を敵と思って
  いないのか。
328狩人の代償:03/07/05 14:16 ID:fJTxwl84
「ちくしょう…まだ死んでねぇぞ」
から元気でふらふらとさ迷い歩くハッサン、だが、ちぎれ飛んだ片腕の傷からは血液がだくだくと流れ出ているし、
その全身にはひどい火傷で覆われている。
(こりゃあもうじき死ぬな…)
いかに頑丈な肉体をほこるハッサンでも、もはや限界のようだった。
と、彼のすぐ近くで銃声、傷つきながらもそれに鋭く反応した彼が見たもの。
それは先程彼が命がけで救った少女を、無情にも撃ち殺す男の姿だった。

ルーファウスは凄まじい唸り声をあげて突進する男をつまらなさそうに眺める。
ムダな事を…。
ルーファウスは男のするがままにさせておいた、男の拳がルーファウスへと迫る、
だが、その拳は突如ルーファウスの周囲に展開された謎の力によって阻まれていた。
そして男の驚愕の表情を満足げに見つめ、ルーファウスはゆっくりとトリガーを引いた。


最初に断っておく、このバリアは完璧だった…あらゆる攻撃を完全に弾き返す、
だがそれは外からではなく中にも適用される。
つまり、ルーファウスのハッサンめがけて放った弾丸は、自分のバリアに弾き返され、
彼の腹部を貫いたのであった。
「ぐふっ!」
何が起こったのか分からないまま、ルーファウスは第2弾を放つ。
「がっ!」
今度は彼の足に穴が開いた。

痛みの中でようやくルーファウスは悟った、つまり自分から攻撃を相手に仕掛けるには、
バリアを切る以外に方法はない……。
ならばバリアを切って蜂の巣にしてやる…、だが彼は計算違いをしていた、満身創痍とはいえ、
目の前の男が今まで自分が殺してきたオルトロス、ロザリー、ローラらとは段違いの実力の持ち主だと言う事を
彼がバリアのスイッチを切りトリガーを引くのと、すでに目の前にいたハッサンが正拳突きを繰り出すのとでは、
はるかにハッサンの方が早かったのだ。
貫手気味に放たれたそれが、ルーファウスの両目を貫く。
329狩人の代償:03/07/05 14:17 ID:fJTxwl84
「がががっ!」
意味不明の叫びを上げて暗闇の中をのたうつルーファウス、さらにアッパーが彼の腹部に突き刺さる。
ごろごろと無様に地べたを転がるルーファウス、彼は敗北を悟ったのだろう、ひざまづくと目の前の相手に許しを乞う。

「違う!違うんだ…あの女が悪いんだ…な、なぁ金っ…金なら払う、だから、そうだ!生きて帰ったら
 重役に取りたててやる、だからこの場は見逃して…」
ハッサンはそんなルーファウスの言葉を聞いてはいなかった、いや聞こえていなかったのかも知れない。
無言で放たれた回し蹴りがルーファウスの身体にめり込む。
「!!」
悲鳴を上げる間も無く、ぶっ飛ばされるルーファウス、骨が何本か折れる音が聞こえた。
これで終わりか…、だが止めの一撃は、いつまでたってもやってくる気配がなかった。
「?」
手探りで立ちあがったルーファウスは、自分の目の前に立ったまま動かない男の身体を手探りで確かめ
納得する。
そう、すでに彼に制裁を加えた男、ハッサンは力尽き息絶えていたのだ。

「ふふ…フフフフ、ハァーッハッハッハッ」
ルーファウスはそれを知り高笑いをする、やはり自分は運がいい、そうだ生き残るのはこの私しかいないのだ。
さて、傷を治すとするか、彼はアウトサイダーを手探りで探そうとするが。
「無い…どこだ…どこにある!」
傷の痛みが焦りに拍車をかける、そのうち彼は足を踏み外してしまった。
「うわぁぁぁぁ」
崖とはいえないまでもかなりの急斜面をどれだけ転がっていただろう、気がつくと彼は見知らぬ藪の中にいた。
それでも彼はまだ手探りで何かを探そうとするが、無駄であった。
そればかりではなく彼は恐るべきことに気がついた、そう、武器のみならず一切合財を、
先程の滑落で無くしてしまったのだ。
330狩人の代償:03/07/05 14:18 ID:fJTxwl84
不意に彼の脳裏に今まで殺した連中、オルトロス、ロザリー、ローラの死に様が甦ってくる。
「お…お前ら私を恨むんじゃない、恨むならあのケフカを恨め…仕方なかったんだ…くっ、来るな…来るなあ!!」
思わず後去るルーファウス、ぬかるみに足を取られて転倒し、それでも無様にはいずりまわる。
「い・・いやだ、私は死にたくない…狩られるのはいやだ…た、たすけて、金なら幾らでも払う!
誰か、だれか助けてくれえええっ!」

盲目の暗闇の中で自分の血液と泥に塗れてのた打ち回るルーファウスだった。

【ルーファウス(失明・重傷) 所持武器:なし 第一行動方針:ヘルプミー 現在位置:J-16付近】


アウトサイダー かいふくのマテリア うらミサイル(>>26) ルビーの涙 バリア・ポイント
はK-16〜J-16までの広範囲に散らばっています。 

【ハッサン:死亡】(残り57人)
331夢心地:03/07/05 14:53 ID:yrbhvXHK
(あかんわ…ほっといたら死んでまうな。この怪我やったら)
…猫ちゃん? なんかへんな言葉しゃべってるなぁ
(ちょっと待ってな。成功するかわからんけど、なんとかやってみるわ)
その変なスロットどこから出したのよ。…完全に夢ね。コレ。
(おし、成功や。モーグリ達のダンス、しっかり見たってや)
わぁ。かわいい♪ なんかとってもキモチイイ…
(もう大丈夫やな。ほんなら僕はもう行くけど、あんまし無理せんといてな)

頬を凪ぐ潮風と磯の香り、海に乱反射する光にアリーナは意識を取り戻した。
暫く自分が何故こんな所にいるのかわからなかった。
いつも自分のそばにいるはずの二人の姿も見えない。
アリーナはゆっくりと記憶の糸を辿りだした。

気味の悪い大広間、死んでしまった人、狭い祠、夜の平原。
緑色の髪の少女、毒の沼地、女の魔法使い、そして…。
「あれ、なんであたし怪我してないんだろ?」
毒の沼地と攻撃呪文によってアリーナは瀕死まで追い込まれたはずだ。
なのに今は宿屋に泊まった直後のように体が軽い。

「誰かが助けてくれたのかな…」
倒れていた自分の怪我を治してくれて、何も言わずに立ち去る人。
アリーナはその人がどんな人だったのか思いをはせた。
ちらりと夢にでてきた白熊のような人形にのっかかった猫の姿が脳裏に浮かんだが、
アリーナは完全に意識的に脳内から追い出そうとした。
「とりあえず落とした荷物をとりに行かないとね」
これ以上考えていても仕方が無いと結論を出したアリーナは、
沼地の縁においてきたはずの自分の荷物をとりに北へと歩き出した。
332夢心地:03/07/05 14:55 ID:yrbhvXHK
【アリーナ  所持武器:無し 現在位置:O−20 砂浜から北へ】
 第一行動方針:自分の落とした荷物を取りに行く
333危険な決意:03/07/05 16:02 ID:WsRfVVW/
ミレーユが見つけたものは1つの銃だった。
「――この部分を押すと、弾が出るみたいね」
冷静な調査をすれば、聡明なミレーユはすぐに仕組みを理解した。
「誰かが落としたものよね…?」

ミレーユが振り返って後ろを見ると、地面がところどころえぐれている。
どうやらこの銃の持ち主は斜面を転がり落ちたようだ。
「うっかり者ね…」
更に他に何か手がかりはないか、と更に自分の周りを観察する。

そこにあったのは、かつての仲間の変わり果てた姿だった。
「ハ…ハッサン――?」
ミレーユの瞳から涙がこぼれる。
彼のことだから勇敢に戦ったのだろう、片腕がなくなろうとも、
最期まで、命が尽きるまで闘ったのだろう。

ミレーユはハッサンを手厚く葬ってやった。
そばの樹に、『ハッサン』と彫って、その側に死体を埋めた。
そして彼女はたっぷり10分、手を合わせて神に祈ったのだった。

「この下に――ハッサンと戦った人物が…?」
ミレーユは悲しみを噛み締めて斜面を迂回し、下に移動し始めることにした。
334危険な決意:03/07/05 16:02 ID:WsRfVVW/
ミレーユは斜面の下に降り、藪の中のぬかるみに1人の金髪の男を見つける。
「助けてくれ…誰か…私を………」
ミレーユはその泥だらけになって助けを求める男に近づいた。
しかし、男はいっこうに気付いたような素振りを見せない。

(この人がハッサンを殺したのは間違いないわ)
ミレーユはルーファウスの邪悪を見抜いていた。
占い師であるミレーユは人の本質を見破る能力にも長けている。
しかし、今のこの男からは――
(邪悪な心が揺らいでいるわ)
そう、ルーファウスの邪悪な心はもはや抜け落ちていた。

「あなた、大丈夫?どこかケガしてるの?」
ミレーユは危険を覚悟で、ルーファウスを助けることにした。
もし彼を改心させることが出来たなら心強い仲間になるだろうし、
なぜハッサンを殺したのかも知りたかったからだ。

【ミレーユ 所持武器:強打の腕輪 アウトサイダー 現在位置:J−16 湿地】
 第一行動方針:ルーファウスの治療・ハッサンの死の真相を訊く

【ルーファウス(失明・重傷) 所持武器:なし 現在位置:J-16 湿地】
 第一行動方針:ヘルプミー
335バッツを求めて三千里 第2話:03/07/05 16:09 ID:Jk34stun
夢見心地な足取りで先頭を行く恋する乙女と、疲れた表情でその後を追う少女。
そしてその少女に付き従う勇猛な獣。
三者三様の一行は海岸線に沿って東へ移動していた。
「バッツ様…どうかご無事で。すぐに貴方のセリスが参りますから」
視線は一光年ほど遠くに彷徨わせたまま、いつかのオペラで主役を張った時のように
情緒たっぷりな独り言をつぶやくセリス。

「……はぁ」
(これがちゃんとしたオペラ座での演技なら素敵なんだろうな)
そんなことをぼんやりと頭の片隅で考えながら、ティナはセリスと再会してから
何度目になるかわからないため息を繰り返した。
セリスが人気女優マリアの代役としてオペラの主演を演じたことは、仲間内での笑い話になっている。
ティナはその頃はとある理由でパーティを離脱していたが、その時のセリスの演技は
素晴らしいものだったらしい(もっとも劇自体はハプニングのせいでグダグダになったそうだが)。
そのセリスが、再び観る者を引き込む感動的な演技しているのだが…

「…………はぁ」
芝居は芝居として観るから感動するのであって、それ以外の場所、
特に今現在自分達が置かれている異常な状況でそんな芝居をされても、
ただひたすら寒いだけだということをティナはイヤになるほど思い知らされていた。
さらに始末に悪いことに、演じているセリス本人が、自分が
笑劇(ファルス)を演じていることに気付いていない。
いや、気付いているのかもしれないが、気にしようとしない。
ティナはセリスが魔法か薬物、あるいは何らかの特殊能力によって(かつて闘ったチャダルヌークのような)
バッツという男を愛するように仕向けられたことを確信していた。
セリスの言葉の端々から感じられる感情の矛盾、違和感。
男女の恋愛に疎いティナでさえ、すぐにわかった。
336バッツを求めて三千里 第2話:03/07/05 16:09 ID:Jk34stun
(そこまではいいんだけど……)
当初は塔に向かうつもりだったティナだが、セリスが強硬にバッツを探すことを主張したため、
予定を変更してセリスに同行している。
せっかく再会できた仲間を、しかもこんな不安定な状態のセリスを一人にはしておけないからだ。

だが、はしゃいでいるセリスを見ると、これからどうすればいいのか不安になってくる。
現在の3人組ならば、戦闘力ではよほどの相手でもない限り遅れは取らないだろう。
セリスにはエンハンスソードを渡してあるし、この優しい獣は鼻が鋭いので不意打ちの危険も少ない。
襲われて負ける心配はあまりしなくていいのだが、はたして今後首尾よくバッツに遭遇できたとして、
その時自分はどうすればいいのだろうか。
バッツが善人ならば問題ない。しかし、仮にセリスを利用する悪人だったとしたら?
バッツの命令でセリスが自分に切りかかってくるようなことになったら、
自分はセリスと闘わなくてはならなくなるのだろうか?

「………………はぁ」
頭を振って、ティナは思考を強制終了した。
疲れのせいか、どうも思考がネガティヴな方向に偏りがちになる。
気分転換に空を仰ぎ見ると、天空には荘厳な城が漂っていた。
あの城にケフカがいるのだろうか。
自分達の世界を破壊し尽くした魔導士は、今またこの世界で多くの命を弄んでいる。
既に16人の命が失われた。その中にはマッシュとセッツァーの名前もあった。
「…………」
ふたりのことを考えると、今更のように涙が浮いてくる。
放送を聞いた時は怒りが先に立っていたのに、いつの間にかそれは悲しみに取って代わられていた。
(ダメよ。今は泣いている場合じゃない)
ともすれば泣き崩れそうな心に鞭をいれて、ティナは前に向き直る。
(ふたりともこめんなさい。今は泣くこともできないけれど、全てが終わった時は……)
337バッツを求めて三千里 第2話:03/07/05 16:10 ID:Jk34stun
全てが終われば、何も考えずふたりのために泣くことができる。
その時が来るまで、ティナは悲しみを胸の奥にしまいこんだ。
「ぐるる……」
同じ悲しみを持つ者同士の共感だろうか、プックルが額をこすりつけてきた。
「ありがとう、慰めてくれるのね。あなたも悲しいはずなのに」
頭を撫でるとごろごろと喉を鳴らして嬉しそうに甘えてくる。
触れ合っている部分からじんわり伝わってくる体温が、温かくて、優しくて。
それがティナには何よりも嬉しかった。


【ティナ 所持品:アルテマウェポン 位置:G-18 海岸 】
 第一行動方針:セリスに付いていく
 第二行動方針:セリスにかけられた魔法?を解く
 最終行動方針:ケフカを倒す

【プックル 所持品:なし 位置:G-18 海岸 】
 第一行動方針:ティナについていく
 第二行動方針:リュカを探す

【セリス 所持アイテム:ヒールロッド、アルテマウェポン 現在位置:G-18 海岸 】
 第一行動方針:バッツを探す
338バッツを求めて三千里 第2話:03/07/05 16:12 ID:Jk34stun
申し訳ありません、訂正です。

×【セリス 所持アイテム:ヒールロッド、アルテマウェポン 現在位置:G-18 海岸 】

○【セリス 所持アイテム:ヒールロッド、エンハンスソード 現在位置:G-18 海岸 】

以上のように訂正します。
339恩を仇でかえすもの:03/07/05 17:53 ID:CQlTGaOT
「う…男を殺したのは私ではない……、出会う前からあの男は満身創痍だったのだ…」
藪の中で腰を下ろすルーファウスはいったん言葉を途切って咳き込み出した。
回復呪文をかけたが、顔は青ざめたままで歯を鳴らせている。
ハッサンによほど痛い目にあわされたようだ。

「向こうから襲い掛かってきて、そ、それで反撃のつもりで、銃を撃ったら、私が逆に……
 いや、あの男の事を話すんだったな……。要するに、あの男は私を散々殴りつけた結果
 力尽きて死んだということだ」
ミレーユは口調に空々しいものを感じた。少なくともハッサンが死んだことに痛痒を感じてはいまい。

「ああ、その前に4人殺した……。全員女、いや一匹人でない者がいたが」
ルーファウスは肩を落としてうなだれていた。自分のしたことを悔いているのだろうか。
何しろハッサンと違い、自分で手を下したのだから。
「そう、そうなの。生き残るためには全員を殺すしかない……そう仕組ませているんだからそう考えるのは
 無理ないけど」
ミレーユはアウトサイザーを取り出しルーファウスの額に押し当てた。
「もし、私の弟を殺していたら、あなたはもう生きていないわ。私がね、殺すの」
銃の先を当てたまま額をなぞる様にすると、ルーファウスは震え出しかん高い声を上げた。
「待ってくれ、待ってくれ! 私は嘘は言ってない、殺したのは女とタコだけだ、本当だ」
「ええ、嘘をついてるだなんて思ってない。ただ、殺された人が不憫すぎるから、少し懲らしめをね」
ミレーユはアウトサイダーを離し脇に置いた。ルーファウスが安堵の吐息をつく。

ミレーユは立ち上がった。
「さて、これからどうするつもり」
ルーファウスはそれを聞くなり土下座した。
「私は間違っていた、もう誰も殺したりはしない。誓う、この通りだ。
 殺した者たちに対しては一生かけて償うつもりだ」
泥地に顔をなすりつけて許しを乞うルーファウス。
ミレーユは顔を上げてと言うと、ルーファウスが泥まみれで真面目な顔を上げて応える。
「ならばいいでしょう」
340恩を仇でかえすもの:03/07/05 17:54 ID:CQlTGaOT
表情の安らいだルーファウスはゆったりといかにも自然な仕草で両手を横に伸ばした。
「と、ところで、私の目は完全に治るのか、まだ視界がぼやけているが」
「ええ、呪文で治癒の力を注いでおいたから、時間が経てば徐々に治るでしょうね。
 完全に治るには、まあ、しばらくかかるだろうけど」
ルーファウスはうなずいたが、まだ何か言いたそうだった。
「まだ何か?」
「あ、ああ、それから、私の所持品が散らばっているはずだが、回収したのか?
 強力な装備もいくつかあるから、もしまだなら早めに集めておいた方がいい」
「そうなの、気付かなかった。じゃ今からそれを回収しましょうか」

邪悪の気は瞬間、噴出した。
「それを聞いて安心したよ」
ルーファウスはアウトサイダーを手に収めていた。手を拡げたポーズは手を銃に近づけるための
ものだったのだ。
もっともミレーユはさして驚かなかった。
「こうなるのは予想ができたことだけど、残念ね。もしかしたら仲間になれるかもしれなかったのに」

ルーファウスは膝を伸ばして立ち上がった。口元が醜く歪んでいる。
「仲間? 生き残るのは一人だけなのに、仲間か? くく、どこまで馬鹿なんだ。
 わざわざ私を助けただけでも馬鹿なのに、その上仲間にしようだなんて大馬鹿もいいところだ」
「お気の毒……そんなもので私を殺せると思ってるの」
「ははは、我が社の製品は優秀だよ。みせてやろう」
341恩を仇でかえすもの:03/07/05 17:55 ID:CQlTGaOT
ルーファウスが指を銃にかけ、発射……ミレーユは涼しげだ。
「な、な、な!?」
ミレーユは右の拳を前に突き出している。拳は右から稲妻のように速く左に駆け抜けたのだ。
銃弾を弾くために。ルーファウスはそんな動きは当然見えていない。
「腕輪の力で私は神の手を手に入れた、のかもしれない」
ミレーユはオーラを拳に集中させていた。強打するスピードと、拳の強度は尋常なものではなかった。
「相手が相手なら私は容赦しない」
ルーファウスが絶叫しながら乱射するのをミレーユは真空波で阻止する。そしてズタズタになった
ルーファウスに飛び込み、横薙ぎ一閃。素手でルーファウスの首を刎ねた。

【ミレーユ 所持武器:強打の腕輪 アウトサイダー 現在位置:J−16 湿地】
 第一行動方針:とりあえず、所持品回収 
 職業はパラディン
342恩を仇でかえすもの:03/07/05 17:55 ID:CQlTGaOT
【ルーファウス 死亡】残り56人
343勇気と正義と:03/07/05 21:57 ID:X0W45pvh
セッツァーとの決戦が終わってファリスはしばし呆然としていた。
いきなりの事で止められなかったのだが、それでもむざむざ見殺しにしたのは自分だった。
刻々と貴重な時間が過ぎ、夜が明けた。
朝の訪れを知らせる放送の中にセッツァーの名が入っていた事にファリスはハッとした。
共に闘った戦友も誰かに殺されたのだろう、名が上がっていた。

ファリスは哀しみの底まで落とされたが、しばらくすると心の奥底に勇気の炎が燃え上がった。
その勇気は人を殺さない、怯えた心を持たずに、人を信じつづけるという真の勇気。
火のクリスタルに選ばれた戦士、ファリスはすっくと立ち上がると西を目指した。
ゲームを止めるために、もう犠牲者を出さない為に。
344勇気と正義と:03/07/05 21:57 ID:X0W45pvh
ティーダはカインらと別れた後、ひとまず南へと向かった。
放送も聞いたが、自分の知る者の名前は出ていなくてひとまず安心をした。
日が昇って視界が広がり敵から発見されるのを恐れ。
ティーダは森へと入り、身を潜めた。
少しずつ警戒しながら進み、用心には用心を重ねていく。
また、自分の仲間がこの近くへ来た場合の事を考え。
ティーダは自分の名前を一定間隔ずつ木のよく見える場所に手持ちのナイフで削って書いた。
「結構進んだッスね。」
ある程度書き終わり、ティーダはその場にへたり込んだ。
ナイフの刃をしまい、水を飲む。

それからしばらくして、ティーダとファリスは出あった。
ティーダは最初背後に立っていたファリスにビクリとしたが、ファリスが戦闘をしない意志。
手に持った弓と銃を放置すると、安堵の表情を見せた。
ティーダも手に持っていたサバイバルナイフを下に置き、闘う意志が無い事を伝える。

そして、その様子を見守る少年。
「ふむふむ、あれは邪悪じゃないみたいだ。
 でも、正義でも無さそうだなぁ……」

【ティーダ 所持武器:サバイバルナイフ 位置:P-10(森林) 行動方針:元の仲間と合流】
【ファリス(狩人・非マスター) 所持武器:盲目の弓 S&W M29(残弾5発) 現在位置:P-10(森林) 】
 根本行動方針:ゲームを止める、人を殺さない&殺させない
【アルス 所持アイテム:ルーンブレイド 円月輪 現在位置:P-10(森林)】
 根本行動方針:邪悪の殲滅(主催者打倒) ※彼に同調しない者は全て『邪悪』とみなす
 ステータス:MP、少量減少
345疑心暗鬼:03/07/06 01:13 ID:sFcdi88Y
シャドウ一行に合流したミドは手暖かく迎えられた。
クルルの知る者だった為、話はとんとん拍子に進んでいき。
ミドは飛空艇の話をしていた。
途中、エッジに協力を求めて快く引き受けてくれた事、そこからカンダタに誘拐され
ここまで連れてこられた事も交えて話した。
クルルはその話に喜んで賛同し、ルールーとシャドウも肯定した。
飛空艇さえ動けば脱出もなんとかなるだろう。
その思いで全員は一杯であったが。
シャドウとルールーは少しその話に矛盾がある事に気づき始めていた。

「エッジさん!」
「ミド、大丈夫だったのか!」
話が終わった後、シャドウ達はミドを飛空艇のあるという場所へと連れてきた。
鳴子の上を足を跨いで渡り、飛空艇の乗り口へと進むとエッジがいた。
ミドはエッジに事情を話すと、エッジは事のあらましを大まかにだが理解する。

「バウバウ!」
「ん?」
ミドが飛空艇を修理する為に具体的な方法を説明しているとアンジェロが吠え出し
エッジが着けていた赤いマントを引き剥がし始めた。
ルールーは何かに気づいた様子でザックの中から赤い布の切れ端を取り出した。
エッジに歩み寄るとマントを掴み、そのマントと布を比べる。
「お、おい何しやがる!」
「あなた、この仔のご主人を殺したでしょう!」
マントを引っぺがすと、ルールーは布とマントをエッジに突きつけた。
346疑心暗鬼:03/07/06 01:14 ID:sFcdi88Y
「見なさい!この布はこの仔のご主人の死体のすぐ傍にあったの。
 その模様がこのマントと同じって事が意味するものくらいあなたでもわかるでしょう?」
早口でまくしたてるルールーにエッジはある事を思い出した。
「ふざけんな!こいつは元々俺んじゃねぇ。
 あの糞ガキ、アルスとかいう奴から渡されたんだ、見やがれ!」
エッジは言うとマントの後ろに大きくサインされた文字を見る。
黒いペンキで書かれたそれは『アルス』とまるでスターか何かのように流れた形の文字で書かれていた。
「そんなの誰でも書けるわ。」
その言葉を聞いてエッジは思わず拳を振り上げた。

しかし、その拳は振り下ろされる事はなかった。
「待ってください、エッジさん。
 ここで手を上げては自分がやった事を認めるのと同じ事です。
 ルールーさんも落ち着いてください。」
エッジは小さく肯くとルールーを睨む、ルールーも睨み返す。
ミドは小さくため息をついてから続けた。
「エッジさんと僕は早い段階で会っていますから
 人を殺したとも思えないし、このマントも僕がここにいる間は持っていませんでした。
 それに、人がここに来たのも事実です。」
どちらが本当の事を言っているのかはわからない。
真実を知る方法も無い。
疑いからはじまるこの殺戮ゲームにまた二人泥沼につかってしまった。
347疑心暗鬼:03/07/06 01:15 ID:sFcdi88Y
【シャドウ 支給品:氷の刃 M3ショットガン 現在位置:Q-12】
 対処行動方針:飛空挺の修理
 根本行動方針:リルムを見つける
【クルル(ジョブ:時魔道士 アビリティ:白魔法) 支給品:? 現在位置:Q-12】
 対処行動方針:飛空挺の修理
 根本行動方針:本来の仲間を探す
【ルールー:所持品:アンジェロ 炎のマントの切れ端 現在位置:Q-12】
 対処行動方針:飛空挺の修理
 根本行動方針:本来の仲間を探す
※エッジに不信感
【ミド 支給品:? 現在位置:Q-12】
 対処行動方針:飛空挺の修理
 根本行動方針:飛空挺の修理
【エッジ 所持アイテム:炎のマント 現在位置:P-12 飛空挺内部】
 第一行動方針:飛空艇の修理
 根本行動方針:飛空挺の修理
※ルールーに不信感
348大灯台:03/07/06 02:55 ID:9bUdGwx2
島の最南端にそびえる灯台。
何人かの参加者はここを目指していたが、最初に到着したのはターシャだった。
10分程前にケフカの放送が流れたが、錯乱状態で全力疾走している彼女は放送の存在に気付いていなかった。
どちらにせよ知っている者の名は呼ばれなかったが。(サバロのことは覚えてないと思われ)

「はぁはぁ・・・・・・やったー!ゴ〜ルイン!!」
なんか勘違いしてる。
・島の中でもかなり離れた所にある為、他の参加者(やる気の在る者)が来る確率は低い
・建物内に姿を隠すことが可能
・中に有益なアイテムがある可能性あり
それと自分のスタート地点を考えてここを目指した訳だが、そんなことはもう忘れていた。

「はぁ…、早速あれを…」
何をする気かはわからないが入口の扉に近づく。
頑丈そうな扉を思い切り押すが、扉は全く動かない。
引いても叩いても殴っても蹴り飛ばしても、扉はびくともしない。
「う〜ん、そうだ!こういうときはあれだ!」
「ひらけ〜ごま!!」
妙な呪文を唱えるが、開かない。
どうやら鍵がかかっているとか封印されているとかの考えは浮かばないらしい…。
349大灯台:03/07/06 02:59 ID:9bUdGwx2
放送が流れてから、ユウナとクーパーの間に会話は無い。
ユウナに心配をかけないように元気な振りをしていたクーパーだったが、
放送を聞いてからは、ずっと下を向いたまま歩きつづけている。
出会ったときにアニーのことは聞いていたので、クーパーが落ち込んでいる理由はわかる。
だが、ユウナはそんな彼にかける言葉が無かった。

放送から約40分後、2人は目の前にそびえ立つ灯台の正面に到着した。
見た感じ、他の参加者はいないようだ。
「開かないなぁ…」
ユウナは中に入ろうと、扉を開けようと試みるが、やはり開く気配は無い。
「まあここなら安全そうだし、とりあえず休憩しよう」
「うん…」
あれからはじめて口を開いたクーパーだったが、その声は沈んでいた。

そんな時、灯台をぐるりと一周まわってきたターシャが戻ってきた。
裏口が無いかどうか探しに行ってたが、一周してきたということはどうやら無かったらしい。
そして入口付近に腰掛けている人間を発見。それも2人。彼女は急いで壁の陰に隠れる。
350大灯台:03/07/06 03:03 ID:9bUdGwx2
!!
これはまずい。ホントまずい。どうしようどうしよう。
あの2人はあれだ、私がここに来るのを待ち伏せているに違いない。
そして私を殺しちゃうんだ、何も悪いことしてないのに。
落ち着け私。ここを乗り切る方法を考えないと。何とかしないと殺される…
そうだ、アレだ!袋!

急いでザックの中を漁る。食べ物、水、ちっちゃなバーナー…、それに石。
「なに?この石…。アレだ!これはアレだ!!」
妙に納得しているが、おそらく彼女はこの"石"の力を理解していない。

【ターシャ 所持武器:魔石ケーツハリー 現在位置:H−23(大灯台入口付近)】
 第一行動方針:この場を切り抜ける
 第二行動方針:?

【ユウナ/クーパー 所持武器:不明 現在位置:H−23(大灯台入口)】
 第一行動方針:休憩
 第二行動方針:アニー、リュカ、ティーダ、アーロン、ルールーを探す

※ユウナとクーパーはターシャの存在にまだ気付いていません。
351和解と別離:03/07/06 10:14 ID:iWMhLg7j
ルールーとエッジの口論を聞いていたシャドウだったが、やがて嘆息と共に動く。

「そのマント、貸してみろ」
ぶっきらぼうに告げると、そのままエッジからマントを引ったくる。
「おい!何を…」
シャドウはエッジの言葉を無視して、アンジェロにマントの匂いを嗅がせる。
「わんわんわん!!」
アンジェロは激しい咆哮で応じる、そら見たことかとエッジを見るルールーだったが、
「次はお前だ」
シャドウはルールーにも構わず、今度はアンジェロをつまみ上げ、そのままエッジの手に抱かせる、すると、
「くぅ〜ん」
なんとアンジェロは先程の激しい咆哮とはうって変わって、エッジの腕の中で甘えるのだった。
「これは…」
アンジェロの態度の激変ぶりにルールーはおろかエッジもミドも驚きを隠せない。

「これではっきりしたな、動物は嘘をつかん、少なくともこの男は犯人ではない…そのアルスとやらが
 直接手にしたものがここにあれば、もっとはっきりするのだが」
「それだったらあるぜ」
エッジが指差した先には、塗装用のペンキの筆が放置されていた、言うまでも無くアルスがサインに使ったものである。「「あいつが触ってそのままだ、これならはっきりするな」
果たしてアンジェロは、敵の匂いはこれだと言わんばかりに筆に向かい、吠え猛けるのであった。

アンジェロの吠える声が聞こえる中、ルールーはエッジに頭を下げる。
「あの…ごめんなさい、私こんな状況だから、つい…」
「いいんだ、無理もねぇってことよ、俺の方こそ」
エッジもまたルールーに頭を下げる。
「これで一件落着だな、ありがとうアンタのおかげ…って」
エッジはシャドウに礼を言おうとして、そのまま不思議そうに周囲を見まわす、そう、いつの間にかシャドウは、
彼らの前から姿を消していたのであった。
352和解と別離:03/07/06 10:14 ID:iWMhLg7j
「おじさん、何処に行くの?」
飛空艇のすぐ外でクルルがシャドウを呼びとめる、しかしシャドウは振り向かない。
「俺にも相棒、いや家族がいてな…そいつを忘れていた」
「そんな、だったら皆と一緒に…」
「俺は暗殺者だ、一人が性に合っている、潮時と言うことだ」
クルルはさらに引き止めの言葉を口に出そうとしたが止めた、そう、これが潮時というやつかもしれない。
「うん…わかったよ、でも一つだけお願いがあるの、私の話した仲間たちにもし出会ったら、よろしく言っておいて」
シャドウは言葉では応じず、ただ背中越しに手を振り、そして風と共に消えていった。


【シャドウ 支給品:氷の刃 M3ショットガン 現在位置:P-12から移動】
 根本行動方針:インターセプター及び、リルムを見つける

【クルル(ジョブ:時魔道士 アビリティ:白魔法) 支給品:? 現在位置:P-12 飛空挺内部】
 対処行動方針:飛空挺の修理
 根本行動方針:本来の仲間を探す
【ルールー:所持品:アンジェロ 炎のマントの切れ端 現在位置:P-12 飛空挺内部】
 対処行動方針:飛空挺の修理
 根本行動方針:本来の仲間を探す

【ミド 支給品:? 現在位置:P-12 飛空挺内部】
 対処行動方針:飛空挺の修理
 根本行動方針:飛空挺の修理
【エッジ 所持アイテム:炎のマント 現在位置:P-12 飛空挺内部】
 第一行動方針:飛空艇の修理
 根本行動方針:飛空挺の修理
353道化のお仕事:03/07/06 10:15 ID:iWMhLg7j
「ケフカ様、朝食のご用意が出来ました」
「うん、ご苦労さん」
ケフカは司令室のデスクに座ったままで、兵士の手からサンドイッチを受け取る。
兵士が一礼をして退出すると、ケフカは深い溜息をつく。

「ん〜ん、あんまりグッドじゃないんだよねぇ」
「私には、順調ではあると思うのですけど」
傍らに控えていた副官が首をかしげる。
「違う違う、ペースはそりゃ順調だけど、キングレオ・テリー・ルーファウスとここまで乗った奴らが
 次々と潰しあっているではないか、これでは後々滞る可能性も無きにしもあらずだなぁ」

「ならば、ヴィンセントの時のように…」
ケフカは副官の言葉を手でさえぎる。
「勧誘は最後の手段さ、やりすぎるとあのお方のご不興を買うしね、まぁ、あとしばらく様子見だよね」
言葉こそ軽妙だが、その節々には参加者とのやりとりでは、決して見せない凄みがある。
今の彼は道化ではなく、冷徹かつ有能な管理人であり裁定者であった。

「ところで、あれの準備はできてるのかな?」
「はっ!”裁きの光”いつでも発射OKです、それと中継の準備も」
「よろしい、では君もさがりたまへ」
副官が去った後も、ケフカはデスクから動かず、モニターをじっと見ている、
そこに映っていたのは嬉々として、飛空艇を修理している者たちの姿だ。
「今のうちにせいぜい喜んでおくんだね、もうすぐ君たちは知ることになるんだ…陸も海も空も命も、
 何一つ自由になるものは無いってことをね…」
354二つの災いと一つの戦い:03/07/06 10:39 ID:H5VVmPxW
「やれやれ、間抜けな司会者がいたものですね」
耳障りな放送が止んだ後、バコタは不敵な笑みを浮かべて呟いた。
天空に浮かぶ城へ怒りの視線を向けていたセシルは、振り返りながら首を傾げる。
「どういうことですか?」
「……いえ、今の放送の中で「ポチ」とか「たくさんご褒美」とかべらべら言っていたでしょう?
 よくもまぁ、そういう情報を喋ってくれたな、と思いまして」
バコタの言葉に、セシルはハッとしたように面を上げた。
「……報酬を約束されて、ゲームに乗っている輩がこの島にいると?」
「まぁ、それが1番妥当な解釈ですね」

苦々しく言うセシル、そんな彼とは対照的に、バコタは落ちつき払った様子で言葉を続ける。
「別に、それほど珍しい話でもありませんよ。
 今日の酒代欲しさに人を殺すチンピラや、一包の薬のために強盗を働く薬物中毒者なんて
 ちょっと大きな町の裏路地へ入ればいくらでもいますからね」
「そういうもの、ですか……」
良くも悪くもまっとうな世界しか知らないセシルには、バコタの話は素直には受け入れ難い物だったらしい。
複雑な表情を浮かべたきり、口を開こうとはしなかった。
355二つの災いと一つの戦い:03/07/06 10:42 ID:H5VVmPxW
(……最も、この解釈が全てとは限りませんけどね)
沈黙するセシルを横目に、バコタは心の中で呟いた。口に出しては言わない。
ケフカのセリフに関しての別の解釈、それを考えれば口になど出せはしない。
(「ポチ」が単なる一般参加者だという可能性も、十分にあります。
 その場合にあの言葉から導き出される仮説が1つ。
 ……私達の言動が、監視されている)

良く良く考えれば、当然の話だ。
この首輪がいかに高性能だろうと、作られた物である以上は故障の可能性があるし、
参加者の手で外される可能性だってある。
それらを防ぐ手段として有効なものはなにか?
――一一番簡単で実践しやすいのは、全参加者の常時監視だ。
といってもこれはあくまで仮説、推測の話でしかないのだが、
バコタは99%的中しているだろうと読んでいた。
何故なら、自分が主催者側だったらまずこれらの手段を取っているだろうから。

(やれやれ……実際に監視がついていたとしたら、会話内容も聞かれてしまってるでしょうしねぇ。
それでもまだ私達の首輪が爆破されていない辺り、司会者側は相当な自信の持ち主みたいですが。
 今のうちに監視をかいくぐる手段も考えておかなければなりませんね)
そのためにも、早い段階で奴等の技術・戦力を捉えておいたほうがいい。
バコタは固い決意と共に、足を急がせようとした――

――ちょうどその時、祠のあるべき方角で、赤い炎が弾けた。
356二つの災いと一つの戦い:03/07/06 10:46 ID:H5VVmPxW
ベアトリクスが飛び退いた瞬間、彼女のいた地面が大きく削り取られた
虚空を切ったはずの太刀は、しかし瞬時に鋭い突きとして彼女に迫りくる。
それを紙一重で交わしながら、ベアトリクスはコートを着た男――サイファーを見据えた。

――強い。
剣技自体は荒削りで力任せの我流剣術に見えるが、
流れるような無駄の無い身のこなしは、明らかに訓練を積んだものの動きだ。
それに何より、彼の剣には微塵の迷いも躊躇いもない。
自分やスタイナーのように、人を守るための剣ではなく
最初から、人を殺すためにのみある剣――ベアトリクスにはそう思えた。

彼女は海辺で休息を取ってしまっていたことを悔やんだ。
夜闇に紛れての急襲を恐れたりせずに、
あのまま夜明けまで東に向かい続けていれば、この男と会わずに済んだだろうに。
――しかし、逆に言えば休息をきちんと取っていたからこそサイファーの攻撃を避け続けていられるのだ。
もし、あと少しでもコンディションや体力を欠いていれば、とっくに真っ二つにされてしまっていただろう。
けれど、この状態もそう長くは持たない。
男女の身体能力の差、そして年齢の差を考えれば、先に体力が尽きるのはやはりベアトリクスの方だ。
だからこそベアトリクスは、必死になって逃げている。ミネア達と出会ったバンガローの方へ。
――老朽化が進んでいるあそこなら、上手くすれば崩壊させて巻き込むことが可能だ。
それに剣とは言わない、何でもいいから棒型のモノがあれば、魔力を乗せて聖剣技を放つこともできるだろう。
使った物は確実に壊れるだろうが、少なくとも一撃は与えられるはずだ――それが彼女の目論みだった。
357二つの災いと一つの戦い:03/07/06 10:50 ID:H5VVmPxW
そんなベアトリクスの思惑を知ってか知らずか、サイファーは不敵な笑いを浮かべる。
「まったく、いつまでもちょこまか逃げてるんじゃねぇよ。
 ここは魔女の騎士が、哀れな雌犬を叩き切るシーンなんだぜ?
 雑魚は雑魚らしく、とっとと退場するんだな!」
そしてまるでポーズを決めるかのように、大きく手を振りかぶり――
巻き起こった炎が、辺り一面を包み込んだ。

【セシル: 所持アイテム:? 現在位置:L-5→J-3(祠跡地へ)
 第一行動方針:バコタに協力する(完全に信頼しているわけではない)
 根本行動方針:決めかねているが、ゲームに乗る気はない】
【バコタ: 所持アイテム:アイスブランド キスティスの首輪 ?(アニーの道具)
 現在位置:L-5→J-3(祠跡地へ)
 第一行動方針:祠跡へ急ぎ、跡地が無事ならそこで情報収集
 第二行動方針:協力者を集める
 根本行動方針:首輪を外し、ゲームを破壊する】

【サイファー:所持武器:古代の剣 現在位置:K-4→J-3】
 第一行動方針:ベアトリクスを追って、倒す
 根本行動方針:魔女の意思に従いゲームを進行させる

【ベアトリクス 所持武器:ピンクのレオタード(マーニャ用) 現在位置:K−4→J-3
第一行動方針:J-2(バンガロー跡地)へ逃げこみ、応戦する
第二行動方針:東に向かってジタン達と合流する】
358孤独と不安と:03/07/06 11:37 ID:boSmNS0a
「セッツァー……」
放送が終わってからリルムはその言葉を幾度となく呟いた。
仲間の話を聞いていたカインはリルムの不安と怒りを取り除こうと何か声を掛けようとするが
何も言えず、つくづく自分は不器用だと思った。
こんな時、自分の親友ならば何か優しい声の一つや二つ掛けられるだろう。
しかし、カインに出来る事はただ付近の警戒しかなかった。

その時、自分達が出発した祠の方角に何か赤いものが光ったような気がした。
いや、確かにそれは光ったのだった。
カインにはその確信が何故かあった。
そして、そこで恐らく戦闘が起こっているだろうという事もわかった。
カインは迷った、行くべきか行かないべきか。
もしも戦闘を行っているのが自分達の仲間であれば向かうのであるが。
あまり厄介事に巻き込まれたくないというのも気持ちにある。
先ほどの放送では16人ほどが死んでいた。
このペースでいけば早い段階で最初の人数の半数になるだろう。
それまで自分達はこの洞窟で身を潜めていればいいのだが。
それでは自分の仲間達をみすみす危険の中に放り込む事になる。
359孤独と不安と:03/07/06 11:37 ID:boSmNS0a
悶々と悩むカインをリルムは不思議そうに見つめた。
「どうしたの?」
カインもリルムを見た、全く邪悪に染まっていない、罪を知らない瞳。
カインは決意した、行こうと。
「リルム、ここで待っていろ。」
そう言うとカインは素早く外へと飛び出し、祠へと向かった。
「ま、待って。」
リルムの声に気づくが、カインは振り返らずただひたすらに走った。
早く決着を着けて早くこの洞窟へと戻る為に。

「やだ、一人にしないで……」
一人になったリルムは急速に不安感が募っていった。
孤独、不安、まだ幼いリルムは闇の底に突き落とされたような感覚さえ覚えていた。
リルムは立ち上がった。
まだ、間にあうと思った。
洞窟から出るとカインが向かった方向へと駆け出す。
もう、独りは嫌だった。

【カイン 所持武器:ディフェンダー 位置:M-05 平原】
 第一行動方針:祠跡へと向かい、仲間がいないか確認する。
 第二行動方針:その後早く洞窟へと戻ってリルムと合流する。
 根本行動方針:仲間を探す。
【リルム 所持武器:? 位置:N-04 森林】
 第一行動方針:カインの後を追う。
360急がば回れ:03/07/06 14:21 ID:SlSIqALm
島の南西、湾を挟んで大灯台の反対の位置にある海岸をケット・シーは歩いていた。
体が目立つ、という理由で自分にミニマムをかけているため本物の人形と同じ位の
大きさになっているが。

夜明け前、アーロンと出会ったケット・シーは互いの武器と情報を交換し、
二手に別れて互いの探している人を探そうという事になったのだ。
ケット・シーは南西の塔に、アーロンは東の町に。
どんな結果になろうとも深夜零時付近に南の祠から南東の海岸で落ち合う予定だ。

ケット・シーはデブモーグリを歩かせ続けながら、自分は目的地である灯台に目をやった。
「ほんまにでっかい灯台やな。…? なんやろ、あれ」
灯台の建っている半島は一部は海から上陸可能な海岸が在るが、
ほとんど絶壁に囲まれていた。その絶壁と海の境目に、
とても小さいがぽっかり穴が開いていた。
「…ちょうど引き潮やからな。昼前にはもっと大きくなるやろうけど」


【ケット・シー(ミニマム)  現在位置:I-20 海岸
所持品:レッドメガホン(あやつり、へんしん)
 第一行動方針:灯台に行く     
 第二行動方針:自分とアーロンの仲間を探す

?大剣はアーロンにルート
I-23、湾側に洞窟発見
361神か鬼か:03/07/06 16:50 ID:6qF+McWg
「見つけたよ、金髪の女。」
リュカは口元に笑みを浮かべながら遠巻きにその二人の女性を見つめた。
ここに来るまでリュカとピエールは放送を聞いていたが
アニーとパパスの名を聞いてもリュカは悲しそうな表情もせず、ただ笑っていた。
そして、山道を歩き銀髪の男の死体を見つけた。
しかし、それはリュカにとって些細な事で
リュカの心をひきつけたのは一緒に落ちていた金色の髪の毛であった。
リュカはそれを拾うと自分のザックへ入れたのだった。

「ご主人、確かに金髪の女性ではありますが……」
ピエールは少しばかり疑問にもった。
確かに目の前にいる女性は金髪であるが、その女は彼もよく知っている人物。
心優しく、気配り上手で少しおてんばな主人の幼馴染。
ピエールにはどうしてもその女がアニーを殺したとは思えなかった。
「ピエール、アニーの仇を討つには金髪の女を殺すしかないんだ。
 それとも君は誰がアニーを殺したかわかるっていうのかい?」
見下すように言うリュカにピエールは怯えながらも首を横に振った。
リュカはそれでいいとばかりに肯くと詠唱をはじめる。
「いいかい、ピエール。
 君はあのもう一人の女を相手してくれ、殺す殺さないは君に任せる。」
「御意。」
362神か鬼か:03/07/06 16:50 ID:6qF+McWg
テリーに切り捨てられた髪の切り口を撫でながらビアンカはため息をついた。
エアリスも悲しげにその切り口を見ていた。
彼女達にとって伸ばしていた髪の毛は自分の誇りでもあり、自慢でもあった。
それが切られて平然といられるはずがいない。
ビアンカは絶望の底まで叩き落されたような表情で周囲を見回した。
ふと、その目が一点で止まる。
紫のターバンにマント、少し破けた衣服、そして誰しも優しい心になってしまうような笑顔。
ビアンカは思わず立ち上がり、不思議に思うエアリスも気にせず駆け出した。

「リュカ!」
ビアンカは愛しいその人の名を呼んだ。
青年はそれに笑顔で答える。
その笑顔、その表情こそビアンカが欲しかった、求めていたものだった。
それを自分のものだけにしたかった。
血に染まった服、難しい詠唱に気づかずビアンカはリュカに駆け寄った。
その優しい顔に似合わぬたくましい胸に飛び込みたかった。
その唇に熱烈に口付けをしたかった。
しかし、その願いは叶う事はなかった。
363神か鬼か:03/07/06 16:51 ID:6qF+McWg
「バギクロス。」
涼しげな顔でリュカは真空系最高位呪文を唱えた。
瞬間、ビアンカの周囲を巨大な竜巻が囲み、ビアンカを切り刻む。
「ビアンカさん!」
エアリスはビアンカを助けようと駆け寄るが、ピエールにみぞおちに拳を入れられ倒れこむ。
「御免。」
ぐったりしたエアリスの体を抱え、ピエールはその体を横にさせた。
しばらくは起きないはずであろうと、後々の事を考えあまり目立たない影に置く。
そしてピエールはその地獄絵図とも言えよう光景を見て、思わず目を背けた。
あまりにも惨い。

「ぎゃああああっ!」
まるで獣の雄たけびのように声を上げるビアンカをリュカはニヤニヤと見ている。
パパスの剣を構えると、ビアンカの右腕を切り落とす。
「いやぁぁぁぁぁっ!」
「まだまだだよ、まだこんなものじゃすまない。」
リュカは吹き飛ぶ血しぶきも気にせず、どんどんビアンカを切り刻んでいった。
「ご主人、もうお止めください!」
あまりの酷さにピエールは怯えながらもリュカの剣を持つ手を掴まえた。
リュカは心外といった顔でその手を振り解き、ビアンカの首を切り払った。
364神か鬼か:03/07/06 16:52 ID:6qF+McWg
「ビアンカ様……」
切り傷だらけのビアンカの首をピエールは見た、酷く吐き気がしてきた。
「ピエール、行くよ。」
リュカはビアンカのザックを回収すると、ピエールを呼ぶ。
エアリスのものには一切触っていないのは、彼女が彼の標的では無いからであった。
「ご主人、せめてビアンカ様をこのままにしておくのは……」
「ああ、そうだね。」
あっさりそう言うとリュカはビアンカの首や胴体、腕、足を集めると
山道の道から外れ、崖から放り投げた。
「あんなの見たら、みんな気分悪くするものね。」
手を叩きながら戻ってくるリュカをピエールは怒りを内に秘めながら見ていた。
(そんな姿にしたのは、あなたでしょうが!)
しかし、そんな事を言えるはずもなかった。
何故なら、彼はピエールのご主人であり、ピエールは彼の部下なのだから。

【リュカ 所持品:パパスの剣 ?(ビアンカの支給品) 位置:J-07から西へ】
 第一行動方針:金髪の女を殺す
 根本行動方針:クーパーを見つけ、守る
【ピエール 所持品:なし 位置:O−7から西へ】
 第一行動方針:リュカに従う
【エアリス(気絶) 所持品:手裏剣×20 現在位置:J-07 山道 】
 第一行動方針:かつての仲間たちとの合流 
【ビアンカ 死亡】残り55人
>>364
【ピエール 所持品:なし 位置:O−7から西へ】
 第一行動方針:リュカに従う

【ピエール 所持品:なし 位置:J-07から西へ】
 第一行動方針:リュカに従う
に修正します、大変ご迷惑をおかけしました。
366戻るべきところ:03/07/06 17:16 ID:pw1eCUVo
「バッツ、俺たちはドジなのか? 馬鹿なのか? なんで地図を見ていながら
 こんな見当違いなところに来ているんだ」
「そうだな、お前に判断に任せたのはたしかに馬鹿だったと思う……」
「う、うおぉぉぉ、すまねえ、バッツ。俺が悪かったんだ……」
「まあ、気付いたら次元のはざまにまで行ってた、なんてことにならなくて良かったよな」
まぶしい陽射しに目を細めながら、こげ茶色の大地の上で二人は横たわっている。
頭上には高々と山脈がそびえ立っている。
町へ行くはずなら、山はむしろ遠ざかっているはずである。
――

海岸で充分休息したのちバッツが出発を促すと、ギルガメッシュは俺が先頭で歩くと言い出した。
「俺は地理が得意だ。任せろ」
勇ましいことにギルガメッシュは、女の影に怯えるようにコソ泥めいた足取りで進んだ。
バッツはそれに続いた。
すぐ毒の沼地が見えてくるはずだぜ、とギルガメッシュは言うがなかなか見えてこない。
背の高い草が生い茂った湿地帯ならバッツは見えていた。

誰かいやがるぜ、とギルガメッシュは草むらの中で言った。
バッツは身構えた。
「イオラ!」女の声と爆音でバッツは耳をやられた。
「多分、町はすぐそこだ、走るぜ!」
バッツは聞こえたような聞こえなかったような、あまり聞きたくないような。
手を引かれて見えてきたのは高い山の傾斜だった。
367戻るべきところ:03/07/06 17:17 ID:pw1eCUVo
「次元のはざま。今思えば、あそこは自分を見つめ直す、はじまりの空間……」
ギルガメッシュは空を見ながら笑ったのだ、多分泣いている顔を無理やり崩して。
「俺はエクスデスの期待に応えようと頑張ったあげく、見放され、
 今度は友の道しるべ役を買って出た途端、誤った方向に導いてしまう、ダメな奴だ。
 期待を裏切る男なんだ、俺は」
湿地帯で走っていたとき草が絡んでいたのだろう。バッツは足に巻ついているものを手でむしり取った。
「いや、期待はあまりしてなかったさ。お前のことはよく知っているから」
「じゃ、なんで俺に黙ってついてきたんだ!」
バッツは目を閉じて言った。
「友達だからさ(意味不明かもしれない)」
ギルガメッシュの吠え声が、始めは小さくやがて大きく空気を震わせた。

ギルガメッシュは地面に手を何度も打ち付けていたが、突然それをやめた。
「決めた、決めたぞ、俺は次元のはざまに行く! 行って罪滅ぼしする。
 犯した過ちを償う。俺は義に生きるんだ。
 ……へへ、こんなこともあろうかと習得しておいてよかった」
ギルガメッシュは起き上がり、迷いのかけらもない背中を見せた。
次元のはざまがどうのこうの、行きたきゃ勝手に行けとバッツは言いたくなった。

「バッツ、送り手はいらないぜ、そこまで迷惑かけられねえからな」
そしてくるっと振り返り、握りこぶしを高く掲げた。
「行って来るぜ、デジョン!」
ギルガメッシュは足元に広がった時空の渦に呑み込まれていった。
剣だけが音を立てて地面の上に落ちた。
368戻るべきところ:03/07/06 17:18 ID:pw1eCUVo
【ギルガメッシュ 所持品、なし 
 現在位置:次元のはざま   
 行動方針:オメガを倒す】
【バッツ 所持品、鋼鉄の剣 現在位置:G−16
 行動方針:ファリス、レナ、クルルとの合流 】
バッツはややダメージ

【サマンサ 所持武器:リボン 現在位置: 砂浜から北西へ移動】
第一行動方針:アルスを殺す  H−17】


369訂正:03/07/06 17:26 ID:KSey3tou
>>368
サマンサの情報を
【サマンサ 所持武器:リボン 現在位置:H−17 】
第一行動方針:アルスを殺す  】

に訂正します
370一か八か:03/07/07 22:33 ID:6lkpOPKP
レノの目は山肌のある一点で止まった。
(あれは…どうやら人影のようだぞ、と)
常人の視力では捉えられない映像をこの多目的ゴーグルは捉えてくれる。
事実、これをはずしてみると二十メートルほどの距離にもかかわらず人影は山に紛れて全くわからない。
当然、前にいるバカップル二人が気づくはずは無い。
(今この二人がやられると厄介だぞ、と。あちらの方へ注意を向けさせるぞ、と)
そう考え、レノは気づかれないように人影の方へと石を投げた。
山肌に石が当たりコツン、と音が鳴った。
(うまいこと近くに当たったぞ、と)
レノは人影が微妙に動いたように感じた。
思惑通り、クッキーとリンダは音の方向を向いた。
リンダは音のしたほうへ即座に向かおうとしたが、クッキーはその腕をつかんで耳打ちするようにそっと呟いた。
「リンダ、静かに、慎重に近づくんだ。僕が相手の注意を引くからその隙に君が攻撃するんだ」
「わかったわ、クッキー」
クッキーは音の方向へ真っ直ぐに向かい、リンダは回り込む形となった。
そして、二人が離れて十秒ほどたった時、クッキーは音のした方からやや離れるように走った。
レノは人影がそちらの方を向いたのがわかった。
リンダは人影から三メートルほどのところにいたので、今の動きで相手の位置が確認できた。
すかさずリンダは人影に近寄り、火炎を吹きかけた。
しかし、そこに人の姿はなかった。
代わりに、前方の細い谷の道を人が走っているのがわかった。
(こんなところに抜け道が…)
リンダは迷うことなくその姿を追いかけた。
クッキーもそれに続き、こっそりとレノも続いた。
371一か八か:03/07/07 22:34 ID:6lkpOPKP
ユフィは前方に男女二人組が歩いていることに気がついた。
しかし、どうやら向こうはこちらには気づいていないようだ。
そのまま何も起こらなければ二人はその場を通り過ぎたはずだった。
隠れているユフィはそうなることを望んでいた。

だが、この期待は裏切られることとなった。
突如、コツンと近くで音が鳴った。
(え!?え!?どうして!?何もしてないはずなのに!?)
ユフィは一瞬パニックになりかけた。
(落ち着け、まだ位置がバレたわけじゃないってば)
すぐに平静を取り戻し二人の様子を再び伺い始めた。
見ると、女の方が動こうとするのを男が止め、なにやら話している。
二人ともまだ若そうだ、十六歳の自分と同じくらいだろうか。
すると、少年が一人でこちらに向かってきた。
ユフィは位置が悟られないように息を殺し、じっと様子を伺った。
ところが、少年は急に方向を変え別の方向へと走り出した。
(なんだろ?何か見つけたのかな)
ユフィは少し身を乗り出した。
そして、即座に自分の失敗に気づいた。
少女のことを全く気にしていなかった。
そう思ったときには体は後方に動き、谷の細い道を走っていた。
自分のすぐ後ろで炎が揺らめく。
(ギリギリセーフってとこかな、…ってやっぱり追ってきてるよ〜)
372一か八か:03/07/07 22:35 ID:6lkpOPKP
クッキーはリンダにすぐに追いつき、そして追い抜いた。
しかし、修行をサボっていたとはいえユフィは忍者の端くれ、相当な身軽さで後ろの二人を追いつかせない。
このまま行けばなんとか逃げ切れる。
ユフィはそう思った。
だが、谷の中に突如強烈な爆音が響いた。
ユフィは一瞬何が起こったのかわからなかった。
リンダはイオナズンを唱えたのだ。
そして、爆風によりユフィの体は人形のように吹っ飛ばされた。
ユフィはそのまま地面を転がり、うつ伏せに倒れた。
その拍子にザックはユフィの手から離れていってしまった。
命中したことがわかったクッキーとリンダは徐々にユフィとの距離を詰めていく。
ユフィは逃げようと思ったが、まずいことに地面に叩きつけられた衝撃で体が思うように動かない。
少しずつ足音が大きくなってゆき、そして止まった。
「ごめんなさいね、あなたには何の恨みも無いけど、ムーンブルクの人たちのために私は生き残らなければならないの」
ユフィは命乞いをしているのか、なにやらぶつぶつ言っている。
そして、リンダは火炎放射器に手をかけた。

だが、リンダの手はピクリとも動かない。体も同様だった。
同じく、クッキーも全く動けなくなった。
「こ、これは一体…?」
ユフィはゆっくりと立ち上がり、ニヤリと笑った。
「賭け…うまくいったみたい…危なかったあ」
373一か八か:03/07/07 22:36 ID:6lkpOPKP
「ポケットに巻物入れといて良かったあ、ここまでうまくいってくれるとは思わなかったけど」
そう言い、ユフィはクッキーとリンダに近づいた。
「あんたたちはこのアタシを殺そうとしたんだ、何されても文句言えないよね〜」
クッキーとリンダは金縛りのせいで表情は変わらなかったが、相当に怯えている様子だ。
「何か『罰』を与えちゃおっかな〜」
ユフィは悪戯そうに微笑んだ。

「さて、いつ効果が切れるかわかんないし、さっさと行こっと。この調子だと隠れるだけってのは危なそうだよね〜。どうしよう?」
ユフィはザックを抱えた。
この中にはクッキーとリンダの所持品が二人のザックごと入れてある。
「ま、いいや。じゃーねー、バイバイ」
そう言い、ユフィは谷の道をまた駆け出した。
クッキーとリンダは金縛りのせいでしばらくその場に固まることとなった。

(か、体が動かないぞ、と。)
このことはレノも同様だった。

【ユフィ 所持武器:困ったときの巻物×3 火炎放射器 ピンクのレオタード(ミネア用) 
 クッキーとリンダのザック 現在位置:I−10】
 第一行動方針:不明

【クッキー 所持武器:なし 現在位置:I−10
 第一行動方針:リンダを勝ち残らせ、その後自殺 】

【リンダ:所持アイテム:なし 現在位置:I−10
 第一行動方針:勝利する】

【レノ:所持アイテム:多目的ゴーグル MP5サブマシンガン 消え去り草 M79グレネードランチャー
 バックラー 現在位置:I−10】
 第一行動方針:リンダたちを追尾する
374暗殺者と勇者と海賊と選手:03/07/08 14:35 ID:Rm6XwlfZ
クルルらと別れ、シャドウは一人森を駆けていた。
その速さは皆と居たときのそれとは比べ物にならないほどに速く
シャドウはやはり自分には一人が似合うのだろうと自嘲した。
足音を立てず駆けていると前方で何か争う物音がする。
シャドウは一瞬躊躇したが、自分が探す者が危険な目にあっているかもしれないという
可能性を考え足を速めた。

時間を遡る事少しばかり。
孤高の狩人、サラマンダーは獲物を見つけていた。
その少年はサラマンダーの前方、約25Mというところ、射程内である。
魔法使いサマンサの言葉通り、その少年は黒い髪の毛を逆立たせ、額に飾りをつけている。
どうやら、そこの草むらで話し込んでいる少年少女達を観察しているようだが
サラマンダーから言わせてもらえば、まだまだ無防備。
サラマンダーはゆっくり、首輪とダガーを両手に構え、投げた。

ファリス達を観察していたアルスに頭と左腕に激痛が走った。
「痛いっ!」
思わず、少年らしい声変わりのしていない声を上げ、怪我をしていない右腕で剣を抜く。
振り向きざまに薙ぐが手ごたえもなく、視覚でも誰かいるという事は確認できなかった。
警戒しながら左腕に刺さったダガーを抜いて回復呪文を唱える。
その瞬間、今度は右腕から腹にかけて激しい痛み。
チャラチャラと音を立てて落ちたそれはなんとゴールドであった。
375暗殺者と勇者と海賊と選手:03/07/08 14:36 ID:Rm6XwlfZ
アルスの声で気づいたファリスとティーダが駆け寄ってくると、アルスは振り向いて言った。
「やぁ、僕の名前はアルス、手短に言うと、君たちこの近くにいる邪悪を見つけ出して殺してくれ。」
初対面でいきなり言われたファリスとティーダは面食らった。
全く話が見えてこないのも当然である、わかるほうがどうかしている。
アルスは二人が面食らっている様子を見ると、あからさまに苛立ったように溜息一つ、言った。
「聞こえなかったの?早く殺して来いって言っているんだ。」
「いや、全然話が見え……」
ティーダがいい終わる前にファリスがアルスの胸倉を掴み、言い放った。
「ふざけるな、何が殺して来いだ、俺は誰も殺さないし殺させない!
 人の命を何だと思ってやがる!」
アルスは最初ポカンと自分に何が起こったかわからない様子でファリスの言葉を聞いていたが
終わってみると怒りと恥辱を覚えた。
今まで誰にも怒られず、必要なものは何でも手に入り、全て言いなりになってきたものが。
アルスはファリスの胸を力いっぱい押し、離れる、手には何かやわらかい感触が残った。
ふと見るとファリスは胸を抑えてうずくまっている、アルスはニヤリといやらしい笑みを浮かべた。
「何だ、君、女だったの。 どうしてもって泣いて頼むなら僕専属の妾にしてもいいよ。」
ティーダは最初驚いたようにファリスを眺めていたが
そのアルスの言葉に怒りを覚え、ナイフでアルスを刺そうとする。
アルスはそれを軽々と後ろに動いて避けた。
376暗殺者と勇者と海賊と選手:03/07/08 14:37 ID:Rm6XwlfZ
それがいけなかった、すぐ後ろにサラマンダーが迫っていたのだ。
気づいた時には遅く、サラマンダーはアルスに圧し掛かり、マウントポジションから顔面を殴りつづける。
アルスが何か言っていたようだが、それはもはや言葉としては耳に入らなかった。
「話通り、下世話な輩だ。 生きている価値は無い。」
とどめとばかりに一気に振りかぶったサラマンダーだったが、不意に視界が狭まっていった。
拳はアルスの顔の横スレスレに当たり、アルスは安堵する。
何が起こったのかと周囲を見るとファリスが弓を平行に構えているのがわかった。
(何だ、やればできるじゃないか。 そうそう、その調子でこいつを倒してくれ。)
ファリスはもう一度弓を構えた、アルスは思った。
こいつを殺してあいつらが土下座でもしてくれば仲間、いや、下僕にするのもいいだろう。
ふと、右の手のひらに痛みが走った、続いて左の手のひら。
アルスは視界が狭くなっていくのを感じていた。
意識を失い始めていたからなのか、視力が失われ始めていたからなのかはわからない。

シャドウはとうとうついた、少年と男がはいずり
女と男がその横でああでもないこうでもないと話し合っている、奇妙な場所へ。
ファリスがシャドウに気づき立ち上がり、何か言おうとした。
しかし、それよりも早くシャドウは言った。
「何があった。」
377暗殺者と勇者と海賊と選手:03/07/08 14:37 ID:Rm6XwlfZ
【シャドウ 支給品:氷の刃 M3ショットガン 現在位置:P-10(森林) 】
 対処行動方針:何があったか知りたい
 根本行動方針:インターセプター及び、リルムを見つける

【ティーダ 所持武器:サバイバルナイフ 位置:P-10(森林) 】
 対処行動方針:シャドウをどうにかする
 根本行動方針:元の仲間と合流
【ファリス(狩人・非マスター) 所持武器:盲目の弓 S&W M29(残弾5発) 現在位置:P-10(森林) 】
 対処行動方針:シャドウをどうにかする
 根本行動方針:ゲームを止める、人を殺さない&殺させない

【アルス 所持アイテム:ルーンブレイド 円月輪 現在位置:P-10(森林)】
 対処行動方針:盲目状態から回復
 根本行動方針:邪悪の殲滅(主催者打倒) ※彼に同調しない者は全て『邪悪』とみなす
 ステータス:MP少量減少 HP大幅減少 盲目

【サラマンダー 所持品:442G 現在位置:P-10(森林)】
 対処行動方針:盲目状態からの回復
 根本行動方針:アルスを倒す、ジタンを探す
 ステータス:盲目
※盲目状態からは簡単には回復しません。また、ダガー、ロザリーの首輪、ゴールドはその場に放置。
「バッツ、そろそろ行かねえか」
「ああ、また誰かに狙われたくない。もう海は充分見たしな」
太陽が昇り、だいぶ日中らしい陽射しになってきた。
軽やかに歩きたくなる日和なのに、行われているゲームは陰鬱そのもの。
晴れやかな気分にはなれない。バッツはため息をついた。

「町へ行くのが一番いいと思うが、もっと別の場所があるか?」
ギルガメッシュが砂浜に地図を広げた。バッツも地図を覗こうとしたとき、遠くからこちらをうかがう視線を
感じた。その方向を見やると陽炎のようにゆらめく人影があった。
「誰か来た」
「げげ、もっと早く出発しとくんだったー」
ギルガメッシュは慌てて地図を引っ掴むと、砂が混じっているのも構わずか急いで懐にしまい込んだ。
「逃げようぜ!」


バッツは動かない。
「女だ。セリスも綺麗だったけど、今度もまた……」
「また女、しかも美人!? 危険じゃねーかそれは」
色事に二人の間をかき回されるのはもうたまらないといった風のギルガメッシュ。
ギルガメッシュはバッツの袖を引っ張った。それでもバッツは動こうとしなかった。
「何となく、いいような」
「何がいいんだオイ、もう女は懲りたんじゃねーのか!」
「いや、敵じゃない。何となくわかるんだ。多分俺がクリスタルの戦士だからわかるのかな」
「お前の勝手な決め付けだろ!」
バッツが雲をつかむような捉えようのない話をすれば、ギルガメッシュが現実路線で必死に抵抗
しようとする。そのままバッツはソフト、ギルガメッシュはハードな言い合いを続けた。
「また元気そうな二人ね。そちらの方が言うとおり私は敵じゃないから」
声はすぐ後ろから聞こえた。
「そうだ、そうだ、この人は敵じゃない、俺の意見は正しかっ、!?」
バッツはぎょっとして振り返った。
「こっちはお前の節操のなさを心配して言ったんだ、そんなことだといつか足元すくわれるぜ、
 俺様のように……って」
ギルガメッシュは口を開け広げたまま固まった。

「よろしく、いい間柄になれそうね」
透き通った潤いのある声がバッツの胸に染み渡った。

【バッツ/ギルガメッシュ 所持アイテム:鋼鉄の剣 現在位置:J-20】
 第一行動方針:町へいく
 第二行動方針:ファリス、レナ、クルル、ガラフとの合流
【ミレーユ 所持品 強打の腕輪 アウトサイダー バリア・ポイント かいふくのマテリア うらミサイル(>>26
 ルビーの涙 
 現在位置 J-20
 行動方針 二人と共に行く】
380無効宣言:03/07/09 00:56 ID:FVyDUWtD
>>366
>>367
>>368
は無効だそうだぞ、と。
381決断と決別:03/07/09 08:48 ID:W6ybx079
リュカの後を追いつつも、ピエールは後ろ髪を引かれるかのように、何度も何度も振り返る。
エアリスのことが気になるのだ。
ビアンカの死体はリュカが崖下へ投げ捨てたといえ
集めきれなかった髪や肉片などの細かい部分は、大量の血と共に現場に残っている。
そう、死体など戦闘で見慣れていた自分でさえ、正視に堪えない有り様で。
もしも目覚めたエアリスがそれを見たら……
彼女がまともな精神と感性の持ち主であれば、十中八九錯乱状態に陥るだろう。
それがこのゲームにおいてどのような結果へと繋がるか、わからないピエールではない。
「どうしたんだい、ピエール?」
「……いえ、ビアンカ様と一緒にいたご婦人のことを考えておりまして」
ピエールの言葉に、リュカは彼女の身を案じるように、憂いを含んだ表情で答えた。
「うーん、そうだね。あのまま放置してきたのは、まずかったかもしれないね」
――かつて、魔王の尖兵として戦っていた時のピエールに向けたのと同じ表情で。
幼なじみの母親の死を聞かされた時、寂しげに微笑んでいた女性に向けたのと同じ表情で。
彼はこう言った。
「あの女も殺してくればよかったな」
382決断と決別:03/07/09 08:48 ID:W6ybx079
「ビアンカがアニーを殺してて、彼女もそれを知った上で一緒にいたのかもしれないし。
 もしそうだったとしたら、十分同罪だからね」
リュカはわずかに苦笑しながら、頬に手を当てる。
「そりゃ、そうじゃない可能性もあるけど。確かめようとしたってどうせ嘘をつくに決まってるし。
 念のためにも、殺すべきだったね。アニーにも悪いことをしたな」
「………」
ピエールは震える手を固く、固く握り締めた。
喉が酷く渇いて張りついていたが、それでも無理矢理声を絞り出す。
「……ならばリュカ様。私が、あの女性を殺してまいります。
 ですから、しばらくここでお待ちになって頂けますか?」
「君が?」
全てを見透かすような瞳が、ピエールをじっと見つめる。
いつもは安らぎを感じるはずなのに、今はただ底知れぬ嫌悪感だけが背筋を走る。
そんなピエールの心情を知ってか知らずか、リュカはすぐに視線を外して微笑を浮かべた。
「わかったよ。君の腕なら殺し損ねることもないだろう。
 ――信頼しているよ、ピエール」
その言葉を聞くや否や、ピエールは脱兎のごとく駆け出していた。
383決断と決別:03/07/09 08:49 ID:W6ybx079
エアリスは、今だ目覚めてはいなかった。
ピエールはそっと彼女の身体を抱き上げ、崖から足を踏み外さぬよう気をつけながら、
惨劇の現場より少し離れた場所に横たえる。
そして小さな声で呪文を唱えた。
「ベホマ」
暖かな癒しの光が、エアリスを包み込む。
彼女の閉じた瞼がゆっくりと開き――喉から零れそうになる驚愕の叫びを、ピエールは慌てて押し留めた。
「先程の無礼は詫びます。しかし今は事情を説明する時間もないのです。早く、こちらへ!」
「え? え、ええ?」
事情が飲み込めず、うろたえるエアリス。ピエールは焦りながらも、彼女の手を取る。
「説明は後で致します、だから早く! このままここにいたら、殺されて――」
「ピエール」

背後からの声に、ピエールの身体が強張った。
振り向かなくてもわかる。リュカがそこに立っているであろうくらい。
「そいつはアニーを殺したかもしれない女の仲間なんだよ?
 わざわざ回復魔法をかけて、逃げろだなんて。……僕を裏切るつもりなのかい?」
きっと、彼は相変わらず微笑を浮かべているのだろう。
ピエールは振り向かぬまま、呟く。
「……リュカ様を裏切る気など、ありません」
「なら、その女を殺してみせるんだね。今なら許してあげるよ」
息を呑む音が聞こえた。ピエールは全ての勇気を振り絞りながら、首を振った。
「私の知るリュカ様は、今日……死にました。
 私にとって、貴方はビアンカ様を殺した狂人でしかない」
384決断と決別:03/07/09 08:49 ID:W6ybx079
「それが君の答えか」
リュカはすぅっと目を細め、素早く呪文を紡ぎ上げる。
彼は、二人とも纏めて殺すつもりだった。ビアンカを殺したのと同じ、真空の呪文で。
「バギク「イオラ!」
けれど一瞬早く、ピエールの呪文が完成した。
立て続けに起こる閃光と爆発、熱風に巻き上げられ土埃が宙を舞う。
「さようなら、『リュカ様』」
そしてそれらが止んだ時、ピエールとエアリスの姿はどこにもなかった。

「……崖から飛び降りたのか」
リュカは、岩に引っ掛かって千切れたピンク色の布キレに目をやった。
そして崖下に広がる、林とも呼べないような木々の群れに視線を移す。
下までせいぜい十数メートル。ピエールならば、余程の事がない限り死ぬような高さではない。
「けど、無傷じゃ済まないだろうな」
そしてリュカは踵を返した。その瞳に、暗い殺意と狂気を宿して。

【リュカ 所持品:パパスの剣 ?(ビアンカの支給品) 位置:J-07から西へ】
 第一行動方針:金髪の女と、その同伴者を殺す
 第二行動方針:ピエール・エアリスを殺す
 根本行動方針:クーパーを見つけ、守る
【ピエール 所持品:なし 位置:J-7(崖下)】
 第一行動方針:エアリスを守る
 根本行動方針:クーパー・プックルとの合流
【エアリス 所持品:手裏剣×20 現在位置:J-07 (崖下) 】
 第一行動方針:かつての仲間たちとの合流 
(*ピエールとエアリスは重軽傷を負っている可能性があります)
385王の孤独:03/07/09 19:27 ID:HWNLKHzA
「だ、大丈夫…?」
エアリスが恐る恐るピエールに近づく。
「むむ、左腕が折れているみたいです」
「ごめんね、あたしのせいで…」
ピエールがエアリスをかばって変な態勢で落ちなければピエールは傷を負わずにすんだだろう。

「いえ、それより先ほどはあなたに危害を加えてしまい…」
「そんなことはいーの!はやく魔法で回復させないと!」
しかしピエールはそれを拒み、
「心配無用です。先ほどの青年がまた私達を狙いに来るかもしれません」
そうなったら今度こそやられる、2人ともそれは痛感していた。
「さあ、逃げましょう!」
「でも、腕はどうするの?」
だらしなく垂れ下がった左腕を見てエアリスが言った。

「利き腕ではないですし、最悪使えなくなってもこのゲームでは小さなハンデでしかありません」
だから、大丈夫ですよ、と続けるピエールにようやくエアリスも納得したようだ。
「わかったわ、行きましょう!」
そう言った瞬間、エアリスの動きが止まり、表情に一気に怯えの色が現れる。
「さ、さっきの!」
ピエールも振り返った。そして気付いた。
リュカが西の山道を迂回して降りてきたことに。

「見つけたよ、ピエール」
パパスの剣を抜き取りながら言う。
優しい表情で、2人を安心させるように続ける。
「大丈夫、さっきみたいなマネはしない。楽に殺してあげるよ」
「あなたは逃げて下さい!ここは私が!」
リュカの言葉に重ねるようにしてピエールが叫んだ。
386王の孤独:03/07/09 19:27 ID:HWNLKHzA
「で、でも…っ!あなたは!?」
エアリスがうろたえながら答える。
リュカがピエールに斬りかかり、ピエールはそれを回避しながら、
さっきよりも大きな声でまた、叫んだ。
「はやく!あなたも殺されますよ!」
しかし、エアリスが取った行動は『逃走』ではなかった。

リュカがピエールを捕らえ、その心臓に剣を突き刺そうとする。

カン、という音がこだまし、剣が少し弾かれた。
リュカが驚いた表情を作り、ピエールの後ろに視線を移した。
そこには――エアリスが、手裏剣を持ちながら立っていたのだった。
「逃げろと言ったはずですよ!」
「誰かを見捨てて逃げ出すような冷たい心は持ってないんですよ〜!」
エアリスが舌を出して言う。
「面白い、2人同時に相手をしてあげるよ!」
リュカも怒りを隠そうともせずに呪文の詠唱を始めた。

(でも…実はこんなの全然使えないのよね〜)
エアリスは手に持つ手裏剣を見て苦笑した。
ユフィが使うのを見て、使用方法は知っているのだが。
とりあえず3つほどリュカに向かって投げつける。
しかし、エアリスの投げた手裏剣はヘロヘロと頼りない軌道を描く。
「フフ、戦力にもならないな」

リュカは詠唱を中止してそれを悠々と叩き落した。
「まずは、キミから死んでもらうか」
タンッと地面を蹴って突撃する。
エアリスは手裏剣を投げるが、全てリュカの生み出す竜巻に弾かれる。
387王の孤独:03/07/09 19:28 ID:HWNLKHzA
「きゃああ!」
エアリスは死を覚悟し、身体をすくめた。
ズブッという、肉に剣が刺さる音が聞こえた。
(ああ、クラウド…せめて最期にあなたに…)
しかし、痛みは感じない。エアリスは顔を上げた。
そこには、背中から剣を生やしたピエールがいた。

「あ、あなた、どうしてあたしなんかを…!?」
ピエールはエアリスの言葉には返事をしなかった。
「リュ、リュカ様、もうおやめ下さい」
とめどなく流れる血を止めようと胸を抑えながら、
それでもリュカのことをしっかりと見つめながら叫んだ。
「ピエール、キミにも教えたはずだよ?これはアニーの敵討ちなんだ」
違う、違う、違う!ピエールの体内でその言葉が響き渡る。

「あの心優しいアニー様が…復讐を望むはずはありません!」
「そんなはずはない!父親の僕がアニーの為にやることをアニーが望まないはずがない!」
リュカはいよいよ激昂して怒りに歪んだ表情を浮かべる。
「今のあなたも…アニー様を殺した、女性と同じ、ただの殺人鬼です…」
ピエールの眼がかすんでいるのがわかる。
言葉を発することも苦しそうだ。

殺人鬼、という言葉にリュカの表情が変わる。
「バカな…僕はアニーの為に、アニーの…為に…」
リュカも、話す言葉が途切れ途切れになる。
先ほどまでの自分を信じて疑わなかった王者の姿はもう揺らいでいる。
388王の孤独:03/07/09 19:28 ID:HWNLKHzA
更にピエールは続ける。
「幼なじみであるビアンカさんまで殺して…あなたもわかったはずです、
 あの方がアニーさんを殺すはずがないことぐらい…」
何も言い返さずにいるリュカにピエールがトドメの一撃を与える。
「クーパー様も、今のあなたのことを…信じるなんて………」
しかし、ピエールがその先の言葉を言うことはなかった。
出血多量で力尽きたのだろう、ダランと体を倒して動かない。

だが、リュカの自信を打ち砕くには充分だった。
「そんな、クーパー。アニー。キミ達も、僕を…?」
リュカの脳内にかつての家族の姿やビアンカ、ピエールの姿が浮かぶ。
「イヤだ…ビアンカ、クーパー、アニー、ピエール、僕を独りにしないでくれ…」

リュカは側にいるエアリスに目もくれずにふらふらと歩き出した。
「僕は――僕は――」

【リュカ 所持品:パパスの剣 ?(ビアンカの支給品) 位置:J-07(崖下)】
 第一行動方針:不明(放心状態)
 最終行動方針:クーパーを見つけ、守る

【エアリス 所持品:手裏剣×16 現在位置:J-07 (崖下)】
 第一行動方針:かつての仲間たちとの合流

【ピエール 死亡】残り54人
389フルメタルジャケット:03/07/10 00:24 ID:OVm/9tiA
ヴィンセントは岩場にもたれかかり、何やら作業をしている。
彼はメイジマッシャーを手に、実弾を削っているようだが、何のためにそんなことをしているのだろうか?
と、そこで彼は作業を停止し、出来あがったばかりのそれをハイブロウSTに装填する、
どうやら新たな標的が現れたらしい…。


「おい!そこにだれかいるのか!」
何やら不穏な気配を感じる…ダインは左腕のハードバルカンを構えたままで詰問する。
「出てこないなら射つぞ!」
そう言ってダインは自分の周囲を威嚇射撃する。
これはただの脅しだ、少なくとも今のダインに取ってスカーレット以外は敵では無い。
すると目の前の茂みから、一人の男、ヴィンセントが姿を現す。

「何だお前か…そうだお前なら知っているかも、あの女…」
バシュ!!
ヴィンセントはダインの問いに銃撃で応じた、ダインもすかさず反撃に入るが、腕が妙に引き攣れて引金を動かせない。
かすっただけなのに…ダインは傷口を見て納得する。

「てめぇ…ダムダム弾使ってやがるな」
ダムダム弾とは、弾頭を丸く削り、さらに十字状に切れこみを入れたもので、こうしておくと、
本来貫通するはずの弾丸が標的に命中した瞬間、破裂するようになり、したがって破壊力は、
通常弾の数十倍にも達する。
そう、ヴィンセントが先程行っていた作業はこれだったのだ、連射力に劣るハイブロウSTの欠点をカバーするには
一発一発の破壊力を上げるのが1番だと判断したのだ。
いかに回復魔法のエキスパートでも、肉もろとも骨をも砕くダムダム弾の威力には抵抗しえまい。
390フルメタルジャケット:03/07/10 00:25 ID:OVm/9tiA
事実、ダインの左腕は、かすっただけなのに腕の肉が抉り取られ、骨が覗いている。
これでは腕の筋肉でトリガーを引く仕組みであるハードバルカンを射つことは出来ない。
「勝負はお預けだ!」
ダインはそう言い残すと、迷うことなく断崖から下の海へとダイブする。
ヴィンセントはそれを追おうとはしなかった、弾丸の無駄だと思ったのだろうか?
それとも、自分の近くに別の気配を感じたからなのか…。

「隠れているのは分かっている、出て来い…ティファ=ロックハート」
その言葉と同時に岩陰から姿を見せたのは、彼の言うティファ=ロックハートその人だった。

「よく…わかったわね」
「共に旅した仲間の気配は忘れ様がない」
「そうなんだ…でも、ヴィンセント…ねぇどうして、理由を聞かせてよ…ねぇ」
何時だって冷静沈着で仲間たちの知恵袋的存在だったヴィンセント…なのにどうして?
ティファは未だに自分の目の前で起こったことが信じられないようなそぶりを見せている。

だがヴィンセントはティファの迷いを絶ち切るかのように、冷酷な言葉を返す。
「それを聞いてどうする、私はもう何があろうとも立ち止まらないと決めている」
銃を構えたままヴィンセントは続ける。
「仲間のよしみで今は見逃してやる、そしてクラウドたちに伝えろ…次に私に出会ったら
その時は容赦するなと…私も次はお前たちを殺す覚悟があると」

「本気なんだ…」
ティファは拳を握り締め、戦いの構えを取る…だがその足元は振え、瞳は一向に落ち着かない。
「よせ、今のお前では私には勝てん」
そんなティファの様子を見かねて、ヴィンセントが助け舟をだす。
その言葉を聞いてティファも構えを解く、そして暫しの沈黙。
391フルメタルジャケット:03/07/10 00:26 ID:OVm/9tiA
「どちらに行く?」
沈黙を振り払うように、ヴィンセントがぽつりと呟く。
「東…かな?」

「なら私は南に行く事にしよう、とりあえず塔を目指す…死にたくなくば近寄るな、とも伝えておけ」
そう言うなりヴィンセントはティファに背中を向けると、言葉通り南へと去っていく。
その無防備な背中にパンチの一発でも入れれば簡単に倒す事が出来るだろう、しかしティファは動く事が出来なかった。

「ああクラウド、あなたは何も変わっていないよね?…そうだよね?」
そう喘ぐように叫ぶと、自分の無力を恥じるように彼女は地べたにへたりこんでいた。


【ヴィンセント 所持品:魔法のカギ メイジマッシャー
 神羅甲式防具改(効果半減) 太刀(両手持ち)コルトパイソン(弾丸なし) 山彦の盾 力の盾
 ハイブロウST 黒胡椒  スコールの首輪 現在位置:K-02から南へ 】
 第一行動方針:『魔法のカギ』を使って、建造物でアイテム取得
 最終行動方針:勝利し、過去を改変する
 ステータス:HP半減。
(仲間に出会った場合、1度目は見逃します)

【ティファ 持ち物:変な通信機 ?マテリア×2  現在位置:K-02から東へ】
 第一行動方針:?
 根本行動方針:仲間を探す   

通信機:謎の電波のみを受信する携帯電話。壊れているためまともな電波は受信しません。
不定期にメッセージや音声を受信します

【ダイン(負傷) 持ち物:ハードバルカン(先制攻撃) 現在位置:K-02から海に転落】  
第一行動方針:参加者を探す
最重要行動方針:スカーレットを探し出し、殺す
最終行動方針:エレノアの所へ逝く
392守るべきもの:03/07/10 17:53 ID:GnHgEth9
アリーナは毒の沼を越え、橋の近くにいた。
その手には甲の部分から角のようなものが生えている武器、カイザーナックルがある。
リディアを追いかけるときに放り出してしまったザックを毒の沼の近くで見つけ、中に入っていた支給品だった。
体術が得意な自分にとっては使いやすい武器だ。

アリーナはカイザーナックルから視線を外し、ふと前方を見た。
すると、髪を逆立てた金髪の男がこちらへ向かってきた。
アリーナはとっさに身構え、少しずつ近づいた。
金髪の男、クラウドは持っているラッパを置き、こう言った。
「俺は戦う意思はない。人を探しているんだ」
アリーナもカイザーナックルを足元に置いた。
「わたし、アリーナ。今から街に行こうと思ってるの」
「そうか、俺も同じだ…あ、俺の名はクラウド、クラウド・ストライフだ」
「クラウド、あなたは何をしに街に行くの?」
「ああ、俺はエア……」
クラウドはふとアリーナの足元に目を落とした。
クラウドの目にカイザーナックルが映った。
(ナックル…ティファの武器…そういえばティファも城にいたような……俺はどちらを守るべきなんだ?
 エアリスなのか?ティファなのか?どうするんだ、俺は?どうしたらいいんだ、俺は?)
393守るべきもの:03/07/10 17:55 ID:GnHgEth9
「クラウド、ちょっとクラウド、どうしたの?」
アリーナが心配そうにクラウドの顔を覗き込む。
「…あ、いや…なんでもないんだ……俺は仲間を探してるんだ、誰か見なかったか?」
「えと、覚えてるのは、腕に火傷のある魔法使いの人と、あとおっきな白熊みたいなのに乗っかった猫が…あ、これは夢か」
「いや、夢じゃない。そいつは俺の仲間のケット・シーだ。正確には動物じゃなくてロボットだが…
 ということはリーブさんも参加しているのか?」
クラウドはアリーナが何かわからなさそうにしていることに気づいた。
「ああ、一人で勝手に喋ってごめん。君も誰かを探してるのか?」
「え、あ、そ、そう、私も仲間を探そうと思ってて、クラウドは誰か見た?」
今まで行動目的を考えていなかったので、アリーナは言葉に詰まった。
「そうか、でも俺は今のところ誰にも会ってないな」
「そう…そうだ、目的が同じなんだから一緒に行動しない?」
「あ、ああ、別に構わないけど…」
「よかった、よろしくね、クラウド、早く街に向かいましょ!」
そう言って、アリーナは橋へと向かった。
(あの人懐っこさ、エアリスにそっくりだな…)
クラウドは苦笑し、アリーナのあとを追いかけた。

【アリーナ  所持武器:カイザーナックル 現在位置:P−17 】
 第一行動方針:街へ向かい仲間を探す

【クラウド 所持武器;集合ラッパ 現在位置:P−17】
 第一行動方針:街へ向かい仲間を探す
(集合ラッパは自分を中心に半径6HEX内にいる全ての参加者を瞬間移動させて引き寄せるもの、一回きり)
394渡る世間に鬼は無し:03/07/11 12:27 ID:fipPffWf
潮騒が聞こえる。海はもう近くのようだ。
ルビカンテとレオナは道々で薬草やら木の実やらを摘みながら海へと向かっていた、
今から彼らが作る鎮静剤の主原料は磯に生える海藻なのである。

「やっぱり私が残った方が…」
心配そうに街の方向を見るレオナだが、
「いや、お前では無理だな…さっきも言ったと思うが麻薬による禁断症状は凄まじいの一言に尽きる
彼はともかくお前が耐えられまい…1時の仏心に負けて解放してしまうのが関の山だ」

「でも…誰かが襲ってきたら」
レオナはいかにも頼りなげなクリフトの外見を思い起こす。
「いや、もしやってきたのが敵ならば、彼は何とか上手く立ちまわれるだろう、だが」
そこでルビカンテは言葉を切る。
「本当に恐ろしいのは…状況も理解しようとせず、下手な仏心で助けようとするお人よしどもだ」


「うううううっ!ううううーーっ!」
「頑張ってください、これに耐えないと…」
凄まじい禁断症状の苦痛に悶えるマイヤー、それを必死で励ますクリフト。
あれからマイヤーは猿轡をかまされ、さらに目隠しをさせられている、舌を噛み切る恐れがあるのと、
幻覚を押さえるためだ。
それでもひっきりなしに恐ろしい唸り声を発するマイヤー…きっと彼の頭の中では想像だにできない
恐るべき何かが跳梁跋扈しているのであろう。
その声に耳を塞ぎながらも、クリフトは懸命に看病を続けていた。

その様子を建物の影で眺めるジタンとスタイナーの2人、その手には参加者リストが握られている。
395渡る世間に鬼は無し:03/07/11 12:27 ID:fipPffWf
「わかったでござる!あの男はどうやら拷問をしているようでござるな!」
「いや、そんなことくらいわかるって、何故そんなことしているんだよ」
見たまんまのスタイナーの言葉に、ジタンはうんざりとした表情で答える。
「さあ、どうしてでござるかな…しかし」
スタイナーは参加者資料に目を通す、少なくともここに記載されている限りの情報では、
このクリフトという男が拷問を好んで行うような男には思えなかった。

「まあ、悩んでも仕方が無いや、まずは止めようぜ」
そう言うなり、ジタンは扉を蹴破ってクリフトたちの前に姿を現したのであった。

「やいやい!神官ともあろうものがこんな子供を拷問にかけて何が目的なんだ!」
「しーっ大声ださないで」
突如現れた乱入者にクリフトはジェスチャーで応じる、マイヤーを無用に刺激させたくなかったからだが、
バカにされていると思ったのだろう、ジタンはさらに大声で叫ぶ。
「言いたい事があるなら、はっきりと言うんだ!」
あまりの剣幕にたじろぐクリフト、さらに悪い事にいつのまにか背後に回りこんだスタイナーが
マイヤーの猿轡を外してしまっていた。
「くっ…薬を早く…薬がないと僕は…ポケットの中に入っているから…」
「薬?薬を打てばいいのでござるか」
スタイナーは素早くマイヤーのポケットの中をまさぐり、注射器とアンプルを取り出す。
それを見てクリフトが血相を変える。
(しまった、1番大切なことを忘れてしまってた…)
猿轡をかましてしまったのがいけなかったのか…ともかく取り上げなければ。

「駄目です!その薬を打ってはいけません!!」
「何が駄目なんだ、こんなに苦しんでいるじゃねぇか!かまわねぇ!スタイナー打ってやれ!」
注射器を取り上げようともがくクリフトを押さえつけて時短が叫ぶ。
そして、マイヤーの二の腕に注射針が刺さり、薬が彼の身体へと注入されていった。
396渡る世間に鬼は無し:03/07/11 12:28 ID:fipPffWf
【ルビカンテ 所持武器:なし(薬草) 現在位置:U−16)
第一行動方針:薬を作る
第二行動方針:マント(出来れば炎のマント)を探す
第三行動方針:ゲームの目的を知る】

【レオナ 所持武器:缶詰(残り90個)と缶切り2つ(薬草) 現在位置:U−16
第一行動方針:ルビカンテの手伝い】

【マイヤー 所持武器:バリアブルソード 注射器&麻薬1回分 現在位置:S−16(ルラフェンの民家) 
第一行動方針:他人から薬を奪う(殺してでも) 】

【クリフト:所持武器/魔法の聖水×3本:現在位置/S−16(ルラフェンの民家) 】
 第一行動方針:マイヤーの看病
 第二行動方針:アリーナを探す。

【ジタン/スタイナー:所持武器 コッズガントレット(イオナズン級爆発魔法が使える、無制限)
 /参加者詳細資料:現在位置 S−16(ルラフェンの民家)】
 第一行動方針:マイヤーを解放する
397395(修正):03/07/11 18:14 ID:DfghmNt+
「わかったのである!あの男はどうやら拷問をしているようなのであるな!」
「いや、そんなことくらいわかるって、何故そんなことしているんだよ」
見たまんまのスタイナーの言葉に、ジタンはうんざりとした表情で答える。
「さあ、どうしてであるかな…しかし」
スタイナーは参加者資料に目を通す、少なくともここに記載されている限りの情報では、
このクリフトという男が拷問を好んで行うような男には思えなかった。

「まあ、悩んでも仕方が無いや、まずは止めようぜ」
そう言うなり、ジタンは扉を蹴破ってクリフトたちの前に姿を現したのであった。

「やいやい!神官ともあろうものがこんな子供を拷問にかけて何が目的なんだ!」
「しーっ、大声ださないで」
突如現れた乱入者にクリフトはジェスチャーで応じる、マイヤーを無用に刺激させたくなかったからだが、
バカにされていると思ったのだろう、ジタンはさらに大声で叫ぶ。
「言いたい事があるなら、はっきりと言うんだ!」
あまりの剣幕にたじろぐクリフト、さらに悪い事にいつのまにか背後に回りこんだスタイナーが
マイヤーの猿轡を外してしまっていた。
「くっ…薬を早く…薬がないと僕は…ポケットの中に入っているから…」
「薬?薬を打てばいいのであるのか」
スタイナーは素早くマイヤーのポケットの中をまさぐり、注射器とアンプルを取り出す。
それを見てクリフトが血相を変える。
(しまった、1番大切なことを忘れてしまってた…)
猿轡をかましてしまったのがいけなかったのか…ともかく取り上げなければ。

「駄目です!その薬を打ってはいけません!!」
「何が駄目なんだ、こんなに苦しんでいるじゃねぇか!かまわねぇ!スタイナー打ってやれ!」
注射器を取り上げようともがくクリフトを押さえつけてジタンが叫ぶ。
そして、マイヤーの二の腕に注射針が刺さり、薬が彼の身体へと注入されていった。
「僕は、僕は」
同じ言葉を繰り返しながら、リュカは夢遊病者のようにふらふらと歩いていた。

エアリスは逃げようとした。リュカが何を考えているか全く掴めなかったから。
あれではまだ凶行に及ばないとも限らないと思ったから。
それでも無残な姿のピエールを残していくのは可哀相だとは思った。
(ごめんね)
エアリスは心の中で詫びを言い、力一杯地面を蹴りつけて走り出した。
今は早く仲間に会いたい、誰でもいい、安心できる人なら誰でもいいと、エアリスは念じながら
木々の間をすり抜けていった。
「!」
足に激痛が走り、よろけてエアリスは前のめりに倒れた。
そのとき木の幹に額を打ち付けてしまった。痛みを堪えながら額を押さえると、血が流れ出ていた。
「う……」
右足からも血が溢れ出しているのがわかった。真空の刃、それしかありえないとわかったとき
エアリスはまた苦悶の声をあげた。

エアリスは恐怖の音を聞いた。
ゆっくり、ゆっくりと草を踏み鳴らしてエアリスの背後に近づいていくのは、紛れもなくリュカだ。
逃げようとしても結局つかまってしまう。蛇のような執念深さであろうか。
うつ伏せの体勢では手裏剣が取り出せない、エアリスは朦朧としている意識の中で魔法を唱えようとした。
「君は、逃げないでくれ。僕は一人じゃいられない。
 逃げないでくれ、一緒にいてくれ……」
エアリスは声が真後ろから聞こえてきたことに戦慄した。もう魔法を唱える時間がないのは明白だ。
「来ないで!」
エアリスは力一杯叫んだつもりでも、声は悲痛な、か細いものにしかならなかった。
リュカは凶暴な力でエアリスの肩に掴みかかった。
「頼む、行かないでくれ。僕は今君しかいないんだ」
エアリスの首に太い腕が巻きつく。
「いやだっ!」
エアリスは振りほどこうとしたがリュカの力が常人離れしたものである以上、逆らえるものではなかった。

【リュカ 所持品:パパスの剣 ?(ビアンカの支給品) 位置:J-07(崖下)】
 第一行動方針:不明(放心状態)
 最終行動方針:クーパーを見つけ、守る

【エアリス 所持品:手裏剣×16 現在位置:J-07 (崖下)】
 第一行動方針:かつての仲間たちとの合流




400名前が無い@ただの名無しのようだ:03/07/14 00:57 ID:xCAQOsWx
保守っとく、皆戻ってくるよな?
401寒空の支配者:03/07/14 02:02 ID:IlWyv+vb
ユウナは灯台の前の広い砂地の場所で祈りを捧げ、召喚獣を呼び出した。
彼女の眼の前にヴァルファーレが姿を現す。
「よろしくお願いします」
ペコリとお辞儀をしてピョンと背中に飛び乗ると口をあけて呆けているクーパーに声をかけた。
「ほら、キミ。乗って乗って」
ヴァルファーレを見て目をパチパチさせて固まってしまったクーパーを、なんとか引っ張って背中に乗せる。
「これ、結構魔力使うんだよ。早くして」
「ご、ごめんなさい…」

2人は上昇するヴァルファーレの背中に腰をおろした。
「スゴイなぁ、お姉ちゃん。どうやったの?」
さっきまでの落ち込みぶりも少しはマシになったようで、興味津々といった様子で下界を眺めている。
慌ててそれを制止し、引き戻しながらユウナは答えた。
「召喚って言ってね。祈り子様の力を借りて――」

「やっぱりいいや。ボク、多分難しくてわからないと思うから」
クーパーがテヘヘ、と笑った。
頼りない笑いだったが、さっきまでと比べると幾分か立ち直れたようだった。
ユウナもホッとして思わず口許が緩む。
灯台の頂上も間近に迫り、ユウナは立ち上がってお尻をはたいた。

窓を外して灯台の中へ入り込む。
「ありがとうございました」
「ございましたー」
一番上の階の小窓から中に入った2人はヴァルファーレを戻して何か役立ちそうなものを探す事にした。
階段を下りようとしたユウナの足がふらつく。
「お、お姉ちゃん!大丈夫?」
危うく階段を転げ落ちる所だったが、クーパーに後ろから支えてもらって助かった。
「平気だよ…ちょっとさっきの召喚で疲れただけ…」
402寒空の支配者:03/07/14 02:02 ID:IlWyv+vb
そのころ、ユウナがヴァルファーレを召喚した一部始終を見ていたターシャは…
「助かったあ」
腰が抜けて動けないが、声は出す事は出来た。
「でも、私を殺さずに行っちゃいました…」
きっとアレ、気づかなかっただけです――そう言いながらターシャは一人門の前で得意そうに微笑む。

「バカですねー、私なんてそこのソレでアレだったのに」
そう言って自分の隠れていたところを一瞥し、あることに気付く。
「…でも…私は、どうやって中に入ればいいんですか〜!?」
結局、ターシャは一番乗りしておきながら、まだ灯台に入れないでいた。

【ターシャ 所持武器:魔石ケーツハリー 現在位置:H−23(大灯台入口付近)】
 第一行動方針:灯台内部に入る
 第二行動方針:?

【ユウナ(MP減少)/クーパー 所持武器:不明 現在位置:H−23(大灯台4F)】
 第一行動方針:休憩&灯台探索
 第二行動方針:アニー、リュカ、ティーダ、アーロン、ルールーを探す
403名前が無い@ただの名無しのようだ:03/07/14 04:58 ID:c5jYgtgc
HOSYU
保守
保守。
406山崎 渉:03/07/15 14:21 ID:/w3hKvtN

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
407擦れ違い:03/07/15 20:36 ID:yDqJyzbG
セシルとバコタは祠跡へと向かっている最中、一つのものを見つけた。
こちらに向かって飛んでくるそれはどんどん近づいてくる。
「あれは……」
「知っているんですか?」
バコタの問いにセシルは答えなかった。
ただ食い入るようにそれを見つめる、間違いはなかった。

「セシル!」
「カイン!」
それがようやくわかった時、思わず二人は大声で互いの名前を呼んだ。
カインはそのまま飛びつづけてセシルの前に降り立つ。
二人は再会できた喜びを握手して確かめ、笑顔を見せた。
不意にカインがバコタに気づき、怪訝な顔を見せる。
「いや、どうも、私バコタと言いまして。
 訳あってこうしてセシルさんと行動を共にしていたんです。」
愛想笑いを振り撒きながら、へこへこと頭を下げる。
それをカインはあまりいいようには思わない顔で聞き。
バコタを見つめなおした。
408擦れ違い:03/07/15 20:37 ID:yDqJyzbG
(セシルは少し人が良すぎる気がある。
 恐らく、こいつは裏家業を専門としているような輩。
 信用しすぎるのは禁物だ。)
カインの心中をバコタはわかっていた、カインが自分をどう思っているかを。
しかし、今はその考えを訂正する余地は無かった、ともかく祠へと向かわねばならない。
「セシルさん、旧友との再会が嬉しいのはわかりますが。
 早く祠に向かわないと……」
バコタの言葉にセシルは無言で頷く、セシルはカインについてくるように手で合図したが。
カインは首を振り、ただ腰につけた剣を差し出した。
少なくともセシルの腕ならばもしもがあっても剣があればなんとかなると思ったからだ。
「俺はお前が無事だと分かっただけで十分だ。
 俺もここで知り合った仲間がいてな、今一人にしているがいつ危険が迫るかわからない。
 もし、お前がいいのならばここから東の森の中にある洞窟に来てくれ。」
セシルはその言葉を聞いて頷いた、バコタは先に行ってしまっている。
「それじゃあな、セシル。」
「また会おう、カイン。」
409擦れ違い:03/07/15 20:38 ID:yDqJyzbG
「はあっはあっ。」
汗を手の甲で拭いながらリルムは走った、カインが洞窟に戻っているとも知らずに。
「もう、一人は、いやだ……カイン。」

【セシル: 所持アイテム:ディフェンダー ?(セシルの道具) 現在位置:K-5→J-3(祠跡地へ)
 第一行動方針:バコタに協力する(完全に信頼しているわけではない)
 第二行動方針:カインと洞窟で再び会う
 根本行動方針:決めかねているが、ゲームに乗る気はない】
【バコタ: 所持アイテム:アイスブランド キスティスの首輪 ?(アニーの道具)
 現在位置:K-5→J-3(祠跡地へ)
 第一行動方針:祠跡へ急ぎ、跡地が無事ならそこで情報収集
 第二行動方針:協力者を集める
 根本行動方針:首輪を外し、ゲームを破壊する】

【カイン 所持武器:なし 位置:K-05 平原】
 第一行動方針:洞窟へと戻ってリルムと合流する。
 根本行動方針:仲間を探す。

【リルム 所持武器:? 位置:L-05 平原】
 第一行動方針:カインの後を追う。
 根本行動方針:カインと共に行動する。
410仲間を求めて:03/07/16 18:57 ID:vnlmOCav
静かに波が唸っている。
海の音しか聞こえない海岸に、2人の男(と、一匹の犬)の影が現れた。
――ロックと、その後ろについてくるアーヴァインと犬のトーマスだ。

「なんだよ、まだついてくるのか?」
ロックがうんざりした顔で振り返った。
「もう今いる場所はわかったんだからついてくるんじゃねー」
「お願いだよ〜心細いんだよ〜ねぇ、この通り!」
ひたすら仲間になりたがるアーヴァインにロックは盛大なため息をついた。

「お前は信用ならねぇ。いつ裏切るかわかったもんじゃない」
プラカードで脅された身となっては当然の判断。

「それにオレはお前とじゃれあってるヒマはないんだよ!」
「どーしてさ?」
どうだっていいだろ――と言いたくなったが教えてやる事にする。

「オレの仲間を探すんだよっ。もう知り合いが2人も死んでいる…」
そこで一寸言葉を止め、続きを小さな声で言った。
「――アイツを守ってやらないと、早く見つけないと…」
アーヴァインに聞こえないように言ったつもりだったが、奴はしっかり聞いていた。
「それってオジサンのコイビト?」
「だから、オジサンはやめろって言っただろ!」
アーヴァインは、聞かずとも『アイツ』が誰だかわかったようだ。
「その気持ちよくわかるよ〜。僕も仲間が、死んじゃったからね…」
初めてアーヴァインの顔に影が射した。
411仲間を求めて:03/07/16 18:57 ID:vnlmOCav
「とにかく、僕達は仲間を探したいっていう点では同じじゃん」
影はすぐに消え、また能天気そうな顔に変わる。
「ねぇ、一緒に探したほうが安全だよ?オジサン」
「…オジサンはやめろって言ってるだろ。次、そう言ったら行動は別々だ」
そう言ってロックは足早に歩き出した。
「も、もう行くの〜?まだ疲れてるよ、僕…」
アーヴァインは泣き言を言うが、ロックは耳を貸さない。
「じゃあそこで休んでるんだな。トレジャーハンターみたいな仕事してると体力なんてすう回復するもんだ」

「待ってくれよ〜!何処に向かうんだい?」
アーヴァインも慌てて後を追う。
「街だ。まずはそこに行ってみる」


【アーヴァイン(疲労) 所持品:プラカードと赤ヘルメット 現在位置:R-22 南東の絶壁
第一行動方針:ロックについていく
根本行動方針:仲間と合流する、マトモな武器の入手】

【ロック(少し疲労+MP減少) 所持品:トーマス 現在位置:R-22 南東の絶壁
第一行動方針:街へ向かう
根本行動方針:仲間と合流する、自衛以外の戦闘は避ける】
412無色の風景:03/07/17 18:48 ID:mAfoS6pC
「…なるほど。それでは、どちらが悪いのかは判断できんな」
シャドウはティーダとファリスの話を聞くも、イマイチ状況は掴めなかった。

「――オレはこの野郎は許せないな。結果的に助けたことになっちまったけどよ」
どうやら気絶してしまったらしいアルスを汚物でも見るような眼で見る。
「あっちのオッサンはどうするッスか?」
「…奴は何であの男を襲ったんだ?ゲームに乗ったのか――?」

「違う、オレはやる気じゃない」
小さな声がシャドウの声を遮った。
「なんだ、気がついてたのかよ」
「それなら話は早いな。何で奴を襲ったのか説明してもらおうか」
シャドウはサラマンダーに近寄ってしゃがみ込んだ。
ファリスとティーダもその後ろにつく。

「その前に少し手を貸してくれないか。こんな場所で寝ているのは不安だ」
シャドウは後ろを振り返って二人の顔を見た。
「別にいいんじゃないッスか」
「じゃあそこの木陰に行こう」
そうして4人は十数メートルはなれた木陰に座り込むことにした。
そして、サラマンダーがアルスを狙う理由を話し始める…。



「…と、いうわけだ。オレは自分の力を試してみたい」
アルスがいかに悪いヤツか、自分の目的などをサラマンダーは熱心に語り終えた。
「力を試すためにはあいつのような悪人がちょうどよかったということか」
シャドウが口をはさむ。
サラマンダーはそれに頷き、ファリスの方を向いた。
「ところでこれは何の魔法だ?いつになれば治る?」
ファリスはウッとうめいて申し訳なさそうな顔をする。
413無色の風景:03/07/17 18:48 ID:mAfoS6pC

「すまねえ…実は簡単には治らなさそうだ。説明書には治す方法は書いてなかったしな」
サラマンダーは落胆して仰向けに寝転がった。
「――どうすればいいんだよ、クソ…っ!」
「とりあえず白魔法が使える人を見つけて助けてもらうッス」
ティーダがポン、と手を叩く。
「協力的なやつだといいがな」

「あ、待ってくれ。オレ、白魔法使えるぜ」
その言葉を聞いたサラマンダーが跳ね起きた。
「本当か?」
「ああ…でも『白黒魔』って言って簡単な魔法しか使えないけどさ」
この盲目の種類によってはポイゾナやケアルラで回復できるだろう。
だが高度な魔法を用いる必要があれば回復は、できない。

「とにかく試してやれ」
「おう、いくぜ…ポイゾナ!」
淡い光がサラマンダーを包むが、サラマンダーの視力が回復した様子はない。

次にケアルもかけてみたが、結果は同じだった。
「はあ…悪い、オッサン…」
「やっぱり回復魔法の専門家をさがすしかないッスね」
サラマンダーがもう諦めた、とでも言うように腕を組む。
「ところであのアルスという男はどうするんだ?」
一同は草に突っ伏して気絶しているアルスを見る。

「どうすっかなあ」
また、森を静寂が包んだ。
414無色の風景:03/07/17 18:49 ID:mAfoS6pC
【シャドウ 支給品:氷の刃 M3ショットガン ダガー ロザリーの首輪 現在位置:P-10(森林) 】
 第一行動方針:白魔導師を探す
 第二行動方針:アルスの処置を考える
 根本行動方針:インターセプター及び、リルムを見つける

【ティーダ 所持武器:サバイバルナイフ 位置:P-10(森林) 】
 第一行動方針:白魔導師を探す
 根本行動方針:元の仲間と合流

【ファリス(狩人・非マスター) アビリティ:白黒魔(中級までの白魔法・黒魔法を行使可能) 
 所持武器:盲目の弓 S&W M29(残弾5発) 現在位置:P-10(森林) 】
 第一行動方針:白魔導師を探す
 根本行動方針:ゲームを止める、人を殺さない&殺させない

【サラマンダー 所持品:442G 現在位置:P-10(森林)】
 第一行動方針:盲目状態からの回復
 第二行動方針:シャドウ達に同行する
 根本行動方針:アルスを倒す、ジタンを探す
 ステータス:盲目

【アルス 所持アイテム:ルーンブレイド 円月輪 現在位置:P-10(森林)】
 第一行動方針:気絶中(目覚めた後は盲目状態からの回復)
 根本行動方針:邪悪の殲滅(主催者打倒) ※彼に同調しない者は全て『邪悪』とみなす
 ステータス:MP少量減少 HP大幅減少 盲目 気絶

※盲目状態からは簡単には回復しません。また、ダガー、ロザリーの首輪、ゴールドはその場に放置。
415昼間の野獣:03/07/18 01:20 ID:UAjcwhiV
クラウドはたどり着いた町を一言「変なところだ」と評した。
やたら入り組んだ道はなんのためのものか、変わり者ばかりが住んでいる町だったのか、
とにかく見た事ない町だった。
「誰かいないのかな」
アリーナがクラウドの先を越して左手に見える家屋の方へ行きかけた時だった。
「二人は先に出てろ!」
前方の民家から怒鳴り声がした。
戦士風の男と神官らしき男二人が民家から飛び出して、こちらを見ようともせず北の方へ走っていく。

天井が落ちてきた? いや、工事の振動?
民家は激震していた。中で嵐が発生しているような感じだ。
と、いきなり金髪の男が勢いよく中から飛び出した。そしてこちらをはっと見た。
クラウドは獲物がないにも関わらず、思わず腰に手をかける。
男は顔を激しく左右に振った。
「あ、アンタたちが敵っていうのは勘弁してくれ! 充分間に合ってるから」
その男が取り乱しながら駆けて来るのを見れば、おのずと警戒心が沸いた。
「敵になるかどうかは、お前の出方次第だ」
「出方も何もないっ、、、くそ、来る!」
民家のドアが吹き飛んだ。ガラス戸は割れてけたたましく破片をぶちまけた。
中からテーブルやイスが外に放り出される。食器が円盤のように飛びクラウドの目の前で音を立てて割れた。
まだ飛んでくる、花瓶やら、本やら、カーテン。金髪の男は脇目も振らず一直線にこちらに滑り込んできた。
見送るしかなかった。
「ぐおおおおおおおっ」
猛獣の唸り声がした。民家の中にいるのか、それが。
クラウドはいつの間にかアリーナの手を握っていた。恐怖を感じていた。

「量が量だけに、ひどく荒れてるな……」
金髪の男の荒い息が耳にこびりついた。
416昼間の野獣:03/07/18 01:20 ID:UAjcwhiV
【アリーナ  所持武器:カイザーナックル 現在位置:S−16】
 第一行動方針:仲間を探す
【クラウド 所持武器;集合ラッパ 現在位置:S−16】
 第一行動方針:仲間を探す
(集合ラッパは自分を中心に半径6HEX内にいる全ての参加者を瞬間移動させて引き寄せるもの、一回きり)

【ジタン/スタイナー:所持武器 コッズガントレット(イオナズン級爆発魔法が使える、無制限)
 /参加者詳細資料:現在位置 S−16】
 第一行動方針:マイヤーをどうにかする

【マイヤー 所持武器:バリアブルソード 注射器&麻薬1回分 現在位置:S−16(ルラフェンの民家) 
第一行動方針:他人から薬を奪う(殺してでも) 】

【クリフト:所持武器/魔法の聖水×3本:現在位置/S−16 】
 第一行動方針:マイヤーの看病
 第二行動方針:アリーナを探す。
417屋内の攻防:03/07/18 11:50 ID:3h9SR2u2
>415の少し前。

マイヤーの様子が落ちついたのを確かめて、スタイナーはほっと胸をなでおろした。
それからジタンに押さえつけられているクリフトの方へ向き直る。
「さて、何故神官の身でこのような暴行を行ったのか問いただす必要があるのであるな」「全くだぜ、クリフトさんよ」
「おい、聞いてるのか? なんでこんなことをしたんだ?」
しかしクリフトはブツブツと小声で呟くばかりで、何も答えようとはしない。
ジタンは苛立ったように拳を振り上げた。
それを制止しようとして、スタイナーは二人に近付いた。
その分、マイヤーに対する注意が薄れる。
――そのことに気がついたのは、クリフト一人だけだった。

クリフトは。
確かに高所恐怖症で幽霊恐怖症、臆病でその上妄想癖まである青年だが、決して無能でも馬鹿でもない。
マイヤーの異変を察知し、彼が次に取るだろう行動を判断する程度のことはできた。
そして自分はどうするべきか、最良の手段を探すことも。

先程のマイヤーは、麻薬によって痛覚が麻痺していた。
痛みとは、自己の崩壊を防ぐための安全弁。防衛本能がもたらした一種の危険信号。
無理に限界以上の力を発揮しようとしたとき痛みを感じるのは、己の身体を守るためだ。それが麻痺しているということは、すなわち――
自分の身体さえ壊してしまう力を、何の制約もなく引き出してしまう。
418屋内の攻防:03/07/18 11:53 ID:3h9SR2u2
ブチっ、と何かが千切れる音がした。
ジタンとスタイナーが後ろを振り向く。
その時クリフトを絞めつけていた手を緩めたことが、結果的にジタンを救うことになった。
「スクルト!」
クリフトは唱え終わっていた呪文を解き放ち、そしてジタンを突き飛ばす。
「なっ……!」
抗議の声を上げる暇はなかった。
想像を越えた力で縄を千切り飛ばしたマイヤーは、まっすぐにジタンのいた場所に――
クリフトに向かって突っ込んできたから。

「――!!」
まるで子供に投げ飛ばされた玩具の人形のように、クリフトは壁に激突した。
固い壁にヒビが入り、クリフトは酸欠の金魚のように口をぱくぱくとさせる。
あまりの衝撃に、肺の中の空気が全て押し出されてしまったかのようだ。
そして何より全身から伝わる苦痛は、クリフトの自由を容赦無く奪う。
立ちあがることもできず、クリフトはずるずると壁から滑り落ちた。
もしもスクルトがなければ、壁に叩きつけられた時点で確実に死んでいただろう。

マイヤーはクリフトが落とした剣を拾い上げると、濁った瞳を嬉しそうに細めた。
その剣幕に、ジタン達も少しづつ事態を悟り始めたようだ。
「や、止めるのである!」
我に返ったスタイナーがマイヤーを止めようと羽交い締めにする。
しかしスタイナーでも、今のマイヤーを止めるには役不足過ぎた。
419屋内の攻防:03/07/18 11:55 ID:3h9SR2u2
「離せ…!」
ヘッドバット、そして想像以上に重い肘打ちがスタイナーを打ち据える。
スタイナーが怯んだ隙に戒めを振りほどいたマイヤーは、そのまま狂気の剣を走らせた。
まだ身動きが取れずにいるクリフトに向かって。
「止めろ!」
ジタンが走る。そして蹴りを、正確にマイヤーの手に叩き込んだ。
バリアブルソードが宙に舞う。マイヤーの意識が逸れる。
「イマイチ事情が飲み込めないけど、これって俺達のせいだよな……
 すまねぇ、っても謝ってすむことじゃないか」
身軽に着地し、ジタンはスタイナーを振り返った。
長い付き合いだけあり、自分が何をしようとしているのか察知してくれたらしい。
苦しそうに咳き込むクリフトを助け起こしていた。
「済まぬことをした、大丈夫であるか?」
「わ、私は……それより、あの人が……麻薬、麻薬のせいで」
クリフトの呟きに、ジタンとスタイナーはようやく全てを理解した。
「二人は先に出てろ!」
そう声をかけ、ジタンは素早く意識を集中させる。
マイヤーはすでに剣を取りなおしていた。効くかどうかはわからないが、やるしかない。
420屋内の攻防:03/07/18 11:58 ID:3h9SR2u2
「とんずら!」
魔力の煙があたりに立ち込めた。マイヤーの視界を遮って。
「うぉおおおおお!」
煙を払おうとマイヤーは、獣のように剣を……拳を振りまわす
けれどジタンは、素早く家の外へ飛び出していた。
その後を追うように、家全体が悲鳴を上げ始める。天井や壁が軋みを上げる。
(冗談じゃない、あんなヤツとまともに戦っていられるか!)
ジタンは舌打ちして、正面に振り返った。
「!!」
そして、自分の運の悪さを呪った。
そこに立っていたのはスタイナーでもクリフトでもなく、
見知らぬツンツン頭と三角帽子の女の子――クラウドとアリーナだったのだから。

【ジタン/スタイナー:所持武器 コッズガントレット(イオナズン級爆発魔法が使える、無制限)
 /参加者詳細資料:現在位置 S−16】
 第一行動方針:マイヤーをどうにかする
【クリフト:所持武器/魔法の聖水×3本:現在位置/S−16 】
 第一行動方針:マイヤーの看病
 第二行動方針:アリーナを探す。

【マイヤー 所持武器:バリアブルソード 注射器 現在位置:S−16(ルラフェンの民家) 
第一行動方針:他人から薬を奪う(殺してでも) 】

【アリーナ  所持武器:カイザーナックル 現在位置:S−16】
 第一行動方針:仲間を探す
【クラウド 所持武器;集合ラッパ 現在位置:S−16】
 第一行動方針:仲間を探す
(集合ラッパは自分を中心に半径6HEX内にいる全ての参加者を瞬間移動させて引き寄せるもの、一回きり)
421喧嘩馬鹿一人:03/07/18 16:30 ID:04HpMKMh
「今のはクリフトだった、間違いなく」
アリーナは拳を握り締めていた。
「誰だ、仲間か」
「そう、旅の供よ。ごめん、手、離してね」
アリーナは言うと、クラウドがまだ承知しないうちに軽く手をはらった。
「すまない」
クラウドは真っ直ぐな目をしてこちらを見た。なかなかよろしい。
「うんうん、じゃ行ってくる」
こんなときでも笑いがこぼれてしまって不思議なものだった。

「おいっ、まさかあいつと闘う気じゃ」
ジタンが前に立ちはだかったが、聞きとめるつもりはなかった。
「あなたの名前まだ聞いてなかったわね」
カイザーナックルを外して足元のザックに入れた。
「名前ぇ? ジタンだよ、そんなことより、よせ。それに武器まで外して何やってんだ!」
「凶器付けてたらあの人死ぬかもしれないでしょ。
 大丈夫っ、力自慢のモンスターとは散々闘ってきたから」
アリーナは右手を前に突き出した。自分の力を誇示するつもりでジャブ数回。
「どう? 腕には自信あるのよ」
ジタンが口をぽかんと開けているところに、民家を打ち砕いて出てきた猛獣が第二声を発した。
「薬を、もっと、もっと、寄越せえええぇぇぇぇええ!!」
「私の拳はいい薬よ、それで良ければいくらでも」
アリーナは屈伸運動を始めた。体が錆びつかないようにいつもやっていることだ。
ただ、今は多少念入りに。敵はいつ迫ってくるかわからないからあまり時間はないけれど。
「何言ってんだ、あいつの様子はわかるだろ。あれは尋常じゃない、殺されるぞ」
422喧嘩馬鹿一人:03/07/18 16:30 ID:04HpMKMh
「でもクリフトに会うには、あいつのいる処を越えていかないといけない」
アリーナは声色を変えた。スイッチが入った。闘いのみに生きる、女として。
ジタンが一瞬たじろいだ。困惑の色を浮かべた目をしていた。
うおっぉぉぉぉぉぉん。今度は狼かと思える長い雄叫びが聞こえる、声と共に圧迫感が
空気の中を伝ってくる。こちらがあからさまな殺気を出したから向こうも応じたんだろう。
相手は鋭く剣気を放っている。だが剣は腰の辺りで切っ先を後に向けている。
とすれば居合いの構えか。鞘も無しで、凄い。
「あいつは、強いぞ」
クラウドがそう言った。それを合図に飛び出した。

「無茶だ、あいつは剣を持ってるんだぞ!」
ジタンが叫んだときには相手の間合いに入っていた。涎を垂らしながら剣を腰から抜いて
振るおうとするのが見えた。
拳と剣じゃリーチが違う? だから無謀だと? 
私は抜き手を狙う! 
右拳を前に突き出す。剣を握っている相手の手とぶつかった。指の骨が砕けた、もちろん向こうが。
「ぐぎゃっ…」
瞬間的に足を出したくなり、その欲求どおりに蹴りを顔面に放つ。
顔面を捉えた蹴りはそのまま横に流し、相手を遠くに吹き飛ばした。
酒場の玄関に相手は頭から突っ込んで倒れ伏した。

「薬になったのは足か…」
アリーナはまだ右足を上げたままだった。

【アリーナ  所持武器:カイザーナックル 現在位置:S−16】
 第一行動方針:仲間を探す
【クラウド 所持武器;集合ラッパ 現在位置:S−16】
 第一行動方針:仲間を探す
(集合ラッパは自分を中心に半径6HEX内にいる全ての参加者を瞬間移動させて引き寄せるもの、一回きり)
【ジタン:所持武器 コッズガントレット
 /参加者詳細資料:現在位置 S−16】
 第一行動方針:マイヤーをどうにかする
423名前が無い@ただの名無しのようだ:03/07/19 14:07 ID:tn4K3T04
保守
4242人の方言使い:03/07/19 16:17 ID:gfiGDbl4
「ん?何や、あの祠は」
セルフィは支給された食料を頬張りながら祠に近づいた。
一通り島を廻ってみたが、全く発見はなかった。
この祠が初めての収穫である。
小さな祠だ。中へ入ってみることにする。

扉を開けたセルフィは、思わず叫んでしまった。
「はあ、何もないやんか!何のための祠やの?」
中には色の違うタイルが1枚張られているだけで、何もなかった。
脱力感が身体中に広がる。
「でも、この島では結局な〜んにも収穫なかったし、ここで休むことにしよか」
あきらめて色の違うタイルに座り込む。

瞬間、周りの景色が歪んだ。
(!! ウチの眼、おかしくなったんちゃうの…)

数秒間の暗闇、その暗闇が消えた時には、セルフィは全く違う風景の中にいた。
「ここ、どこやろ…?」
鍾乳洞のような壁、ジメジメと湿った床。
しかしセルフィのいる場所だけはさっきの祠にあったタイルが張ってある。
どうやらこのタイルによって移動させられてきたようだ。
そのタイル以外には先に狭い通路が延びているのみだった。

セルフィはゴクリと唾を飲み込んで通路を進みだした。
「ひゃっ!なんや、ここ!水浸しやんか!」
思わず飛び上がる。床は下り坂になっていて、水溜りがあちこちの窪みにできている。
「こんなジメジメしたとこ、イヤやなあ」
1人文句を言いながらも、洞窟の通路を進んでいく。
4252人の方言使い:03/07/19 16:17 ID:gfiGDbl4
同じ頃、ケット・シーは灯台の近くの、比較的緩やかな岩肌を降りていた。
「あの灯台の扉、どうなってんねん、開かへんやんか」
灯台の扉はどうやっても開けることが出来ず、他に入り口は見当たらなかった。
仕方なく、さっき見つけた海岸の洞窟を調べてみる事にして、海岸へと降りているのだ。

「それにしても…こんなとこに人なんておらんよな」
それでも一応調べてみるが。
なんとか海岸に降り立ったケット・シーは辺りを見回す。
「誰も見てへんと思うけど――万一やる気のヤツに逢ったら大変やな」
そう言ってミニマムをかけなおし、洞窟の中に入っていった。

洞窟は一本道で、登り道になっていた。
「心細いなあ、オバケでも出たらどないしよ」
いや、オバケよりも怖いのはこのゲームの参加者である。
ケット・シーはただ小さい身体を動かして奥へ歩いてゆく。


ギュムッ、とやわらかいモノを踏んだような感触がセルフィに伝わる。
「ムギュッ!な、なんやなんや!一体何が起こってん?」
「しゃ、しゃべった!?なんや、この人形は――!?」
「と、とにかくその脚どけて…」
足元から聞こえてきた声で我に返り、脚をどける。

「アンタは一体何なん?この洞窟の妖精さん?」
「アホ言わんといてーな。ボクはこの殺し合いの参加者や」
背中に思いっきりついた足跡を拭いながらケット・シーはぞんざいに答えた。
「そんな小さいのに?」
「ホンマはボク、もっと大きいねんで、見ときや」
そう言って、ケット・シーはミニマムを唱えた。
4262人の方言使い:03/07/19 16:18 ID:gfiGDbl4
【ケット・シー  現在位置:I-23 海岸の洞窟 所持品:レッドメガホン(あやつり、へんしん)】
 第一行動方針:セルフィとの情報交換     
 第二行動方針:自分とアーロンの仲間を探す

【セルフィ 所持武器:ピンクのレオタード(アリーナ用) 現在位置:I−23 海岸の洞窟】
 第一行動方針:ケット・シーとの情報交換
 第二行動方針:北東の島に戻って休憩

※T−3の祠とI−23、海岸洞窟にあるタイルはワープ装置です。無制限に利用できます。
※海岸の洞窟は夜になると入口が見えなくなります。
427インヴァルネラブル :03/07/19 20:57 ID:hbaSTy0y
アリーナの会心の一撃を受け、ぶっとばされたマイヤー、流石の彼もこの一撃を受けては、
立ちあがれまい、そしてジタンとクラウドが見つめる中、悠然とアリーナはマイヤーへと、
近づき、その手を差し伸べる。
「これで分かったでしょ、あなたの負けよ…さぁ」

そう、アリーナは自分の勝利を確信していた、少なくとも自分の会心の蹴りを受けて立ち上がれた、
人間などいない…これまでは。
マイヤーは振える手でアリーナの手を握り締める、その時異変が起こった。
時間にして、ほんの数秒間だったが、次の瞬間、血煙と共にアリーナの右腕が弾け飛んだのであった。


異変に気がついた、ジタンとクラウドが慌ててアリーナの元に急ぐ。
「あれは…握撃、いやまさか」
「知っているのか?」
「見ての通り、相手の腕や足を両手で挟むように握って血液の行き場を無くし、破裂させる
 ただそれだけの技だが、人間技じゃない」
ただでさえ人間技では無いというのに、それを片手の指の骨が折れた状態でやってしまうのである。
あの少年はまさに化け物である。

一方のアリーナは予想だにしなかった反撃に明らかに混乱し、ザクロのように弾けた自分の右腕を、
一瞬かばってしまった、それが致命的なスキに繋がる。
すかさずマイヤーはアリーナの髪の毛を掴み、そのまま振りまわし民家の塀へと叩きつける。
ごっ、という濁った音が周囲に響いた。
428インヴァルネラブル :03/07/19 20:57 ID:hbaSTy0y
そこにクラウドとジタンが乱入するが、すかさずマイヤーはアリーナの身体を抱え酒場の中に逃げ込む。
「お前ら…それ以上近づくな、近づけばこの女の命は無いぞ…」
マイヤーはアリーナの首を抱えこみ、裸締めの体勢を取る。
アリーナは抵抗すらせず、目を見開いたままぐったりとしている、
かなり危険な状態なのは一目瞭然だ。

「薬を出せ…お前ら持ってんだろ!?」
「薬?薬なんざ持って…」
大声で言い返そうとしたジタンの口をクラウドが塞ぎ、耳打ちする。
「余計な刺激は与えるな」
マイヤーはさらに大声で叫ぶ。
「無いならもって来いよう!早く持って来い…いいか、太陽があの教会の屋根にかかるまでに持って来い!
 さもないとこの女は殺すぞ!」

クラウドとジタンは顔を見合わせて相談する。
「どうする?」
「ともかくあの神官がやってくるまで待つしかないだろう、俺じゃどうしようもない」

そこにスタイナーがクリフトを抱えてやってくる。
「この神官は瓦礫に頭をぶつけて気絶しているのである、動かさないように」
「あー、もう間の悪い奴だなあ、本当に」
飽きれた口調でジタンがぼやく、クラウドは何か考えていたようだが、とりあえず結論を下す。

「とにかく手分けして誰か助けを探すしかないだろうな」
「わかったのである!任せるのである!」
そういうなりスタイナーは西の方角目指し走り去っていった。
「じゃあ、俺は自動的に北に戻るわけか…南と東には何もないしな、で、アンタはどうするんだ」
ジタンはクラウドの方を見る。
「俺は残る、一応彼女は道連れだし、この男も放っておけない、説得できるようならやってみる」
「説得ねぇ…無理だと思うけど」
429インヴァルネラブル :03/07/19 20:58 ID:hbaSTy0y
【スタイナー:所持武器:参加者詳細資料:現在位置 S−16から西に移動】
 第一行動方針:マイヤーをどうにかす出来る人を探す

【ジタン:所持武器 コッズガントレット(イオナズン級爆発魔法が使える、無制限)
 :現在位置 S−16から北に移動】
 第一行動方針:マイヤーをどうにか出来る人を探す

【クリフト(気絶):所持武器/魔法の聖水×3本:現在位置/S−16 】
 第一行動方針:?
 第二行動方針:アリーナを探す。

【マイヤー 所持武器:バリアブルソード 注射器 現在位置:S−16(ルラフェンの酒場) 
第一行動方針:他人から薬を奪う(殺してでも) 】

【アリーナ(重傷) 所持武器:カイザーナックル 現在位置:S−16(ルラフェンの酒場)】
 第一行動方針:仲間を探す
(人質状態です)
【クラウド 所持武器;集合ラッパ 現在位置:S−16】
 第一行動方針:マイヤーをどうにかする
(集合ラッパは自分を中心に半径6HEX内にいる全ての参加者を瞬間移動させて引き寄せるもの、一回きり)
430インヴァルネラブル(修正) :03/07/19 21:08 ID:hbaSTy0y
「とにかく手分けして誰か助けを探すしかないだろうな」
「わかったのである!任せるのである!」
そういうなりスタイナーは西の方角目指し走り去っていった、呆気に取られるジタンとクラウド。
「じゃあ、俺は自動的に北に戻るわけか…南と東には何もないしな、で、アンタはどうするんだ」
ジタンはクラウドの方を見る。
「俺は残る、一応彼女は道連れだし」
そこで言葉を切って、だらしなく路上でのびているクリフトの姿を見る。
「この男も放っておけないし、あれも説得できるようならやってみる」
「説得ねぇ…」
ケダモノのわめき声がひっきりなしに聞こえる酒場をちらりと見やり、ジタンが呟く。
「無理だと思うけど」
FFDQバトルロワイアル2ndEdition PART2
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1058665079/l50
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