膨大なデータ処理が伴う郷土史の編さんをスムーズに進めようと、
さくら市教委が古文書をデジタルカメラなどを使って保存し、「氏家町史・史料編」三冊を刊行した。
古文書はマイクロフィルムで保存するのが一般的とされ、
デジタルデータを利用して発行した郷土史は全国的にも例がないという。 (上田千秋)
同市は二〇〇五年三月に氏家町と喜連川町が合併して発足。
氏家町史編さんは〇四年から始まり、〇九年三月までに発刊するよう求められた。
「時間も予算も少なく、従来のやり方ではとても無理だと思った」と当時の担当者だった橘川恵介・氏家公民館長(51)は振り返る。
マイクロフィルムでの保存は多額の予算をかけて業者に発注しなければならない上、作業にも時間がかかる。そ
こで、以前、アニメ作家として活動していて知識が豊富だった橘川館長が“デジタル化”を発案した。
前例がないため関係者からは「本当に何十年も保存できるのか」と不安視する声もあったというが、
職員らが手分けをして古文書をデジカメで撮影。データはパソコンで管理し、情報を蓄積していった。
四年余りの間におよそ二百三十軒の旧家を回り、集めた史料は六万点。
撮影枚数は九十万枚にも及んだ。同市教委郷土史編さん係の小竹弘則係長(44)は
「デジタルだからこそこれだけの史料が集められた。マイクロフィルムだったら、
倍以上の時間と費用がかかったでしょう」と語る。
刊行した氏家町史は「古代・中世」「近世」「現代」の三冊で各三千円。
それぞれ千部印刷し、図書館のほか市内の小、中学校、高校にも寄贈した。
現在は、再来年三月の刊行を目指して、地元出身者の功績をまとめた「特集編」を編さん中だ。
小竹係長は「時代が進めば、研究者の視点も変わってくる。その時にデジタルなら閲覧しやすく、
研究にも役立つはず」と意義を訴えた。
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同公民館は町史刊行を記念し、来月二十七日と十二月十一日、
来年二月十二日の三回、町の歴史を学ぶ講座を開く。町史編さんに携わった専門家三人が講師で、
受講料は無料。問い合わせは同公民館へ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20091020/CK2009102002000109.html