第2回「12歳の文学賞」(小学館主催、2008年3月)大賞を受賞した盛岡市の中学1年三船君(12)が
今年、初の単行本「12歳の空」(小学館)を出版、作家デビューをした。「文学の停滞?この少年が軽々と
ぶち破る」。帯文に象徴されるように、卓越した文才とみずみずしい感性が光る。本著に込めた思いや
近況などについて聞いた。
「12歳の空」は、小学5年の時に書いた受賞作「ヘチマと僕と、そしてハヤ」を改稿したものに、主人公
たちの後日談2作品を加えた小説集だ。
「ヘチマと―」は、小学5年のケースケといたずら好きで快活な親友のハヤ、女友達が織り成す友情と
淡い恋の物語。巧みな構成力とリズミカルな文体、小学生ぽい少し下品ながらも明るいユーモアが、
見事にかみ合った。選考時に「三島由紀夫レベルではないか」と絶賛された。
書き下ろしの「とびら」は、同じ主人公ケースケが高熱で寝込んだ叔母に成り代わって同窓会に出席する
幻想的な話。「それからの、僕らの空」では、6年になった登場人物の卒業までの日々を哀歓豊かに描いた。
本人の小学生活への思いを総決算した作品群だ。
「僕の『小学生魂』を受け止め、本にするためにかかわってくれた多くの人に感謝したい。フィクションだが、
書いていると登場人物が自然に動いてくれた」と話す。
父親は会社員で母親は専業主婦。母親の絵本の読み聞かせで自然に言葉を覚え、1歳半から絵本を
読み始めた。祖父の影響で小学4年からは川柳にも親しんでいる。現在はジャンルの違う5、6冊を常時、
併読する日々だ。「今は伊坂幸太郎さん(仙台市在住)の作品をよく読んでいます。ありそうでなさそうな、
なさそうでありそうな作風が好き。特に『チルドレン』が面白い」と語る。
「本を読むのが好きで、自分でも物語を考えていた。『12歳の文学賞』を知って挑戦してみようと思い、
本格的に書いた。長く書くのは大変ではないが、無意識から出てきたいろんなものを余計な油を絞り出す
ようにしていくのが難しい。受賞作も結末をどうするかで悩んだ」と説明する。
中学進学後も勉学や部活などで充実した日々を送っている。学校では科学部に所属、柔道や英語教室、
学習塾にも通っている。「将来の夢は内科医。小さいころ、ぜんそくで苦しかった時、『助けてあげる』と
お医者さんに言われて救われたことがあったのが動機です。小説を書くのは楽しいけれども時間があれば、
書いていくという感じになると思います」。
丸刈りと利発そうによく動く瞳、礼儀正しさ、要領を得た受け答えが印象的な少年だ。
▽ソース:河北新報 (2009/06/21)
http://www.kahoku.co.jp/news/2009/06/20090621t35034.htm ▽画像 (「人が死んだり、悪い人を描いたりするのが苦手なんです」と話す三船君)
http://www.kahoku.co.jp/img/news/2009/20090621014jd.jpg