ジョシュアの妻:
幸せや喜びは、生まれて来てこそ。何が何でも誕生を信じ意味を持たせようとする、紋切型の幸福論。
生まれる事と生きる事。それらは素晴らしくて美しい。
異論は認めない。そんな奴は、人でなしの罪人。
其れは最早イデオロギーさえも超越した、人類の絶対的責務。或いは、人類を"有"に縛り付ける鎖。
予め用意された公理の如くして、皆が盲信し、馬鹿の一つ覚えに吹聴してみせる。
無論、"彼ら"とて病気で子供を失った、言わば同胞<はらから>に違いは無い。
然し、彼らは骨抜きだった。現世での救いと癒し、傷の舐め合いを求め、
思考を放棄しイデオロギーに迎合。軈て取り込まれ申し子へと転じた存在。
其の声に、聞く価値は無い。何故ならば彼らは主体者を放棄し、
イデオロギーの随行者に成り下がったのだから。
其の発言は、如何なる人間<マイク>を介しようと、
本質的にはイデオロギーという唯一人の発言者に依って為されているのだから。
私達が最も忌み嫌う"奴"の発する言葉など、如何して聞く必要が在るだろうか。まったく…。
世界で最初に此の思想を流布した人間は、神をも騙し得る最高のペテン師ね。
230 :
ノーブランドさん:2008/06/09(月) 01:13:42 O
ここあげ
231 :
ノーブランドさん:2008/06/09(月) 01:23:00 0
俺も最後にみたのメンノンのPPFMだったわ
ジョシュア:正直言って驚いた。まさか政府に此の件を伏せて在るとはな。だが何の心算だ。或いは自ら死を求めると?
主人 :平たく言ってしまえば、そういう事か。
ジョシュア:逃れる事は出来ぬとそう諦めた訳では…。
主人 :それは無い。自らの意志だ。自ら望んで、この身を差し出した。
ジョシュア:奇特な男だ。
主人 :光栄だ。だがその前に君達の声を聞きたい。その数々の凶行の理由を。
ジョシュア:良いだろう。御前には特別に聞かせてみようか。
だが、御前とて薄々感付いているで在ろう事だぞ?
主人 :真相その物に意味は無い。意味が在るのは、もっと別…。君から語られるという、その事にこそ。
ジョシュア:成る程。此れは、娘の復讐だ。ディスピス患者を強制隔離し、施設へ軟禁。
絶望と孤独の中、生存確率30%未満の審判の日を待ち続ける…。黒き翼の生える、その日をな。
ウィッグタウンの再来を塞ぐ為とは言え。他に方法が無いとは言え…。
その何という人非人の行いか。
気丈な大人さえも打ち砕くその境遇に、私の娘はたった独り放り込まれたのだよ。当時5才だ。
主人 :分かっているとも。反吐の出る類のインテリの仕事だ。
システムを構築するカタルシスが全て。世界は机上、人は歯車。
全てはオフィスにて思索され、全てはオフィスにて作られて行く。
毎早朝に清掃業者が掃除をする綺麗な場所。目立つ塵の一つも落ちてはいない。まして現場の、血や涙など。
以前、機会が在って施設を見学した。家に帰った私は意識が遠退き、気が付けば庭で焚き火をしていた。
眼に映ったのは、ライターのオイルと、唖然として見詰める私の使用人達…。
そして、あの仕事で貰った金だ。他に方法が在ったか否かとか。そんな問題ではない。
そう、そんな仰々しい、事象の深遠を探る様な巨視的な物では。
ジョシュア:さに在らずんば、何とする?
主人 :私には背負い切れない。其れだけだ。
ジョシュア:御前は弱い人間だな。
主人 :分かっているよ。背中に喰い付く黒き翼の重みは、こんな物の比ではないだろう。
それなのに、大人の私は此処で折れている。御前は弱虫だと、子供達は責めるだろうな。
ジョシュア:当然だ。
主人 :私は、甘んじてこの罪に殉じよう。或いは私自身の逃避と救いで在るとも、言えなくもないが…。
それで君達が少しでも潤うのならば。それは幸いな事だ。
ジョシュア:まさか、御前が此処まで話せる人間だとは思っていなかった。
これまでの犯行の中で、最大の誤算だ。最後に何か言い残す事は在るか?
主人 :名前を…教えて呉れるか?出来る事なら、彼女に会って謝りたい。
ジョシュア:それは在り得ない。その真なる愛の場所に於いては。
主人 :だとしても、この心に刻ませて呉れ。死に際の最後の罪の刻印として。
ジョシュア:分かった。その心意気を買おう。娘の名は、アイシャだ。
主人 :そうか…。彼女はアイシャと言うのか…。
ジョシュア:では…行くぞ。少ないが感謝の証だ。苦しまぬ様に即死させてやる。
安らかに還るが良い。彼の悪夢を逃れ、真なる愛と幸福の場所へ。
主人 :君達と話が出来て、本当に良かった…。
ジョシュア:私もだ。
http://society6.2ch.net/test/read.cgi/gline/1202489810/20-21
ジョシュア:"カルネアデスの板"だよ。例えばクィーン・ミネルヴァ。
二人の男が死の窮地に立たされ、姫はその何れか一人だけを助けられるとしよう。
男の片方をハウゼンとしよう。姫は何方の男を殺しますかな?
ミネルヴァ:…ッ!
ジョシュア:例えばフォクシー。男の片方を君の父親としよう。
フォクシー:黙りな。あの街で死人に呉れて遣る情は無いんだよ。
ジョシュア:ニクソン。二人の子供が居たとしよう。
ニクソン :二人を助けて私が死にます。それが大人の義務でしょう?
ジョシュア:ではドリス。二人の女性が居たとしよう。
ドリス :ママをコロす。ずっとマエにママだったヒト。イマはもうママじゃないヒト。
ジョシュア:ではヤンシー。其処にメンチュンとドリスが居たとしよう。
ヤンシー :二人を助けて私が死ぬわ。本望よ。出来る事なら、そうしたかった。
ジョシュア:では天使様にも伺おう。レイクがこの場に居たならば、彼は何と答えるだろうか。
ヴェーネ :迷わず他の女を殺して、シリアを助けたでしょうね。でもそれは、以前のレイク。
今のレイクならば、きっとユアンと同じ答えを出す。
自らの生命を犠牲にして、二人を助ける選択をする。
ジョシュア:ほう…。ならばヴェーネ。御前は如何する?
ヴェーネ :私?そんなの決まってるわ。他人に死んで貰う。或いは死んで貰うより他に無い。
世界で最も尊い、一人の天使を守る為にね。