臨場感を凌駕(ryのガイドライン 子育て2人目

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20水先案名無い人
ジョシュア:正直言って驚いた。まさか政府に此の件を伏せて在るとはな。だが何の心算だ。或いは自ら死を求めると?
主人   :平たく言ってしまえば、そういう事か。
ジョシュア:逃れる事は出来ぬとそう諦めた訳では…。
主人   :それは無い。自らの意志だ。自ら望んで、この身を差し出した。
ジョシュア:奇特な男だ。
主人   :光栄だ。だがその前に君達の声を聞きたい。その数々の凶行の理由を。
ジョシュア:良いだろう。御前には特別に聞かせてみようか。
 だが、御前とて薄々感付いているで在ろう事だぞ?
主人   :真相その物に意味は無い。意味が在るのは、もっと別…。君から語られるという、その事にこそ。
ジョシュア:成る程。此れは、娘の復讐だ。ディスピス患者を強制隔離し、施設へ軟禁。
 絶望と孤独の中、生存確率30%未満の審判の日を待ち続ける…。黒き翼の生える、その日をな。
 ウィッグタウンの再来を塞ぐ為とは言え。他に方法が無いとは言え…。
 その何という人非人の行いか。
 気丈な大人さえも打ち砕くその境遇に、私の娘はたった独り放り込まれたのだよ。当時5才だ。
主人   :分かっているとも。反吐の出る類のインテリの仕事だ。
 システムを構築するカタルシスが全て。世界は机上、人は歯車。
 全てはオフィスにて思索され、全てはオフィスにて作られて行く。
 毎早朝に清掃業者が掃除をする綺麗な場所。目立つ塵の一つも落ちてはいない。まして現場の、血や涙など。
 以前、機会が在って施設を見学した。家に帰った私は意識が遠退き、気が付けば庭で焚き火をしていた。
 眼に映ったのは、ライターのオイルと、唖然として見詰める私の使用人達…。
 そして、あの仕事で貰った金だ。他に方法が在ったか否かとか。そんな問題ではない。
 そう、そんな仰々しい、事象の深遠を探る様な巨視的な物では。
ジョシュア:さに在らずんば、何とする?
主人   :私には背負い切れない。其れだけだ。
ジョシュア:御前は弱い人間だな。
主人   :分かっているよ。背中に喰い付く黒き翼の重みは、こんな物の比ではないだろう。
 それなのに、大人の私は此処で折れている。御前は弱虫だと、子供達は責めるだろうな。
ジョシュア:当然だ。
21水先案名無い人:2008/02/09(土) 02:11:49 ID:k4yCitkh0
主人   :私は、甘んじてこの罪に殉じよう。或いは私自身の逃避と救いで在るとも、言えなくもないが…。
 それで君達が少しでも潤うのならば。それは幸いな事だ。
ジョシュア:まさか、御前が此処まで話せる人間だとは思っていなかった。
 これまでの犯行の中で、最大の誤算だ。最後に何か言い残す事は在るか?
主人   :名前を…教えて呉れるか?出来る事なら、彼女に会って謝りたい。
ジョシュア:それは在り得ない。その真なる愛の場所に於いては。
主人   :だとしても、この心に刻ませて呉れ。死に際の最後の罪の刻印として。
ジョシュア:分かった。その心意気を買おう。娘の名は、アイシャだ。
主人   :そうか…。彼女はアイシャと言うのか…。
ジョシュア:では…行くぞ。少ないが感謝の証だ。苦しまぬ様に即死させてやる。
 安らかに還るが良い。彼の悪夢を逃れ、真なる愛と幸福の場所へ。
主人   :君達と話が出来て、本当に良かった…。
ジョシュア:私もだ。