■■聖剣・サガシリーズ妄想小説スレ■■

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1なまえをいれてください
前スレがお亡くなりになったので、新しく立て直しました。
再びいろんないやんな妄想きぼーん。

前スレ
■■ロマサガ・聖剣シリーズ妄想小説スレ■■
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi?bbs=famicom&key=986202127
*まだhtml化されていません。
2なまえをいれてください:2001/05/10(木) 12:53
たとえhtml化されてなくても こーするとちゃんと見れたり。
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi?bbs=famicom&key=../kako/986/986202127
3なまえをいれてください:2001/05/10(木) 21:28
前スレで紹介されていたサイトをみてきたんですが、
生田美和さんて、スクウェア辞めちゃったんでしょうか?
ブラブラに行ったのは男性4人だけではなかったんですか?
知っている方がいたらどうか教えてください。
4なまえをいれてください:2001/05/12(土) 00:49
>>3
生田女史は八木さんと結婚して寿退社しました。
今現在はどこにいるか分からないけど(汗
主婦業に専念してるとか・・・?
53です:2001/05/12(土) 17:44
遅くなりましたが教えていただきありがとうございました。
寿退社だったのですか。初めて知りました。
スレ違いな話題ですいませんでした。

6なまえをいれてください:2001/05/12(土) 20:09
ん〜、書き込み少ないねぇ。アゲ。
7くらいす30:2001/05/13(日) 02:27
何か書こうと思ったんですが、前スレを見たらハァハァ系なんですね…。
ハァハァなものは書けないです…。申し訳ない。
81:2001/05/13(日) 12:47
>>7
さびれてるので、普通の小説でも良いと思われ。
そこからまた妄想が広がるかもしれませぬ。

というかこのまま沈んじゃイヤン。
9トト:2001/05/14(月) 01:22
あ、スレが復活!やった!
生田さんの話題になってるけれど、
彼女寿退社だったんだね…。知らなかったよ。
お腹の中に赤ちゃんがいるから退社したとか…?

俺としては彼女のシナリオのゲーム、もう一度やりたいなぁ、って思う。
10なまえをいれてください:2001/05/14(月) 23:15
>>9
ハゲしく同意。
小林智美と組んでタンビーなゲームを作って欲しかった。

つか、これからも■でシナリオの仕事続けると
勝手に思ってたんでカナシイじゃよ……
11なまえをいれてください:2001/05/15(火) 14:05
前スレでトマサラをアプするって言ってた人はいずこに……
12なまえをいれてください:2001/05/15(火) 21:12
良かった、復活してたんだ。
今度暇なときに瑠璃主の小説アップしても良い?
女主人公の名前は出さないから…
13なまえをいれてください:2001/05/16(水) 01:46
>>12
おお!ゼヒお願いします。ワクワク。
14トト:2001/05/16(水) 06:49
>>10さん。
小林智美画の珠魅ってめちゃくちゃタンビーになりそうだよね。
それも見たかったかも…。

□は、最近のゲームの方向性を昔にもどしてほしい…。
映像が綺麗なのもすごく良いんだけれど、ゲームは映像だけじゃないよ…。
15なまえをいれてください:2001/05/16(水) 13:07
うーん、生田女史のシナリオ、またプレイしたいですねえ。
まだアルティマニアとか見てなくて珠魅編をクリアしたあとに
これアセルス編のシナリオ書いてた人が担当してるんじゃないの、と言っていたら
もろにそのとうりで笑った覚えアリ。
16なまえをいれてください:2001/05/16(水) 20:28
上げないけど消えない様にカキコ。
そう言えば、ホークリのちょっとエロな小説が
置いてあるページ知ってます?
17なまえをいれてください:2001/05/17(木) 11:35
ホークと聞いてまずごつい海賊おじさんが浮かんだyo・・・
18トト:2001/05/17(木) 18:06
ホークリはほのぼのとかそう言ったものしか見た事ないなぁ…。
イラストでなら、最近少しあるかも…?(リースだけれど)

エスカデ女主人公っていうのなら発見。
しかしここにコピペしていいのやら…(藁
19なまえをいれてください:2001/05/17(木) 18:09
ここって濡れ場オンリーで途中過程はどうでもよかったり?
20なまえをいれてください:2001/05/17(木) 21:36
ここの事?
他の場所にも、リースたんのハァハァなイラストも結構あるよね。
www.kit.hi-ho.ne.jp/kaname26/15/nf.html

>>19
わがままだけど、俺的には萌えるシチュエーションきぼんぬ。
濡れ場オンリーももちろん構わないけどな。
21なまえをいれてください:2001/05/18(金) 05:47
ロックブーケとノエルって幾つくらいなんでしょ?
小説書いてみたいんだけど資料がないっす…

教えて君でスマソ。
22なまえをいれてください:2001/05/18(金) 07:14
>>21
ん百歳・ん千歳くらい逝ってるんだろうけど
だいたい25前後ってところかも。
23なまえをいれてください:2001/05/18(金) 21:25
あと少しsage。
24なまえをいれてください:2001/05/18(金) 23:23
>>21
あのイラストと設定じゃ、外見年齢は好きに
とってくれということだとしか思えません。
・・・30の大台のブーケちゃんはちょっとイヤだが。
25なまえをいれてください:2001/05/20(日) 00:25
sage
26なまえをいれてください:2001/05/20(日) 11:55
ハァハァsage
27なまえをいれてください:2001/05/21(月) 07:49
保管sage。
28なまえをいれてください:2001/05/22(火) 23:26
>>20 ありがとう・・・結構良かったよ
29なまえをいれてください:2001/05/24(木) 19:10
この埋もれ具合がなんともたまらん……
30なまえをいれてください:2001/05/25(金) 11:59
しかしこのスレ一体何人いるのか…
カウントしてみましょう。
まず私。一人目
311:2001/05/25(金) 13:50
一応このスレ立てた1っす。これで2人目・・・
321:2001/05/25(金) 13:51
どうせだからageてカウントしよう。
33ラスタ:2001/05/25(金) 21:12
あ、私スレが新しくなってからカキコしたことなかった。
でも毎日1回はのぞいてるよ。私もカウントしてね。
34なまえをいれてください:2001/05/25(金) 21:22
小説よりミリアムのCG
35なまえをいれてください:2001/05/25(金) 23:38
俺はROMだけど一応スレの住人としてカウントされるのかな
36なまえをいれてください:2001/05/26(土) 05:54
>>14さん
生田さんのサイト行ってみたんだけど、
職業のとこが「ゲーム企画開発」になってたし、
日記にもお仕事のことがちょろっと書いてあった
(ような気がする)から、
また生田シナリオがプレイできることは確実だ^^
でも、どこの会社なんだろうね‥‥?
■ではないんだろうケド‥‥
待ち遠しいいいい!!!!
37なまえをいれてください:2001/05/26(土) 06:08
おいみんな!この板脱出できるかもしれないぞ!!

もう一つのFF、サガ統合スレッド<試験板>
http://piza.2ch.net/test/read.cgi?bbs=ff&key=990812662

この板の構造改革を議論しよう
http://piza.2ch.net/test/read.cgi?bbs=ff&key=990818233

そこみてよ!!!
38なまえをいれてください:2001/05/26(土) 09:45
悪いが生田さんにはやめてもらいたい
あんなのゲームのシナリオじゃないじゃん・・・
39トト:2001/05/26(土) 10:26
俺も見てるから、住人?

>>38
そういうもんなの?俺は好きだけれど…。
割とマジな意見そうだからレス。
結構アンチ派の意見もききたいかも…
40なまえをいれてください:2001/05/26(土) 11:25
>>39
サガフロ自体がアレだからアセルスはいいけど
宝石ドロはねぇ ゲームだけでみてるとあまりに断片的で事実上六割くらい裏設定みたいなもんじゃん
わけわからんままあのエンディングで感動させられて押し切られるっていうか
台詞とか彼女の頭のなかじゃ自然な流れなんだろうけど
ゲームでしかストーリーにふれない者から見れば2・3週やっても意味がわかんない
あの人の説明の細かさはゲームというメディアにはあわないとおもう あんな細かいの伝わるわけ無いからね
台詞で空気読めってゲームじゃ無理 ファーストプレイじゃなおさら無理 言い方悪くすればユーザー無視
アドベンチャーならいいと思うけどね アドベンチャー作ってもらおう


41ラガソ:2001/05/26(土) 11:42
オイラも一応ROM住人…これで6人目?
42病弱名無しさん:2001/05/27(日) 02:06
健康板から出張してきてます。ROM住人。
これで7人目?
43なまえをいれてください:2001/05/27(日) 02:49
>>40
生田シナリオ、確かにアドベンチャーならいいかもしれないね。
システムや演出やグラフィックで
どこまで独特の世界を描けるか難しいだろうけど。
下手にやるとタルいゲームだろうし。
私は生田氏のキャラが気に入っているので、
ぜひまたゲームでプレイしたい。
(好みも分かれるだろうし、
一寸、世界観的に、
女尊男卑?(←藁 傾向はあるかもしれないが
それを差し引いてもあの雰囲気は、他の人じゃ出せないと思う。

一発ドカンと
まるまるあの人の世界でゲーム出してみてほしい。

スレの主旨と合って無いカキコでスマソ。
44トト:2001/05/27(日) 04:26
>>40さん
わわ、本当に返答してくれてありがとう!
たしかに、アルティマニアとかにたっくさん裏情報のってるからなぁ…、
普通に何も思わない子供とかだったら、疑問に思わずにやっていけるけれど、
俺等ぐらいになっちゃうと思うよな、そういうの。
それとも、わざとそうしてアルティマニアの売り上げをのばそうと言う
計画なのかも(藁
俺もアルティマニアみるまでは、アレクサンドルは女装だと思っていたし
全体的に自分でイメージするためにそうしてるのかなと思っていたけれど、
アルティマニアにはきっちり設定くみこまれていて、想像していたイメージが
壊された記憶あり。
あまりに説明的な台詞もどうかとは思うけれどさ(ほどほどってことか?)
だからといって、攻略本で白黒付けさせるのはどうかと…、
せめて攻略本に書くのなら、
ゲーム自体には関与しない話だけに、とどめておいてくれ(藁

でも、それでもあの世界観とかはすごく好きだな。
小説とかゲームじゃなかったらよかったのかも。
話しは好きだって言う人多いしね…。

アドベンチャーゲーム、おおいに賛成
45ランディ:2001/05/27(日) 12:54
>俺もアルティマニアみるまでは、アレクサンドルは女装だと思っていたし
・・・おいらはアレックスのほうが男装だと思っていたよ(藁
46病弱名無しさん:2001/05/27(日) 14:48
アレックスとサンドラときいて、「絶対二重人格〜!」と思っていた。
ってな風に、想像の余地が多くて楽しかったけどね。
・・・あ、ひょっとして同人乙女たちが大喜びしてるのはそのへんの所為かも。
47なまえをいれてください:2001/05/28(月) 21:25
こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜
こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜
こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜
こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜
こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜
こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜こどもだって〜
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48QUU:2001/05/28(月) 23:18
うーまいんだも〜ん
49なまえをいれてください:2001/05/30(水) 13:54
>>47-48

エッチが?
50なまえをいれてください:2001/05/31(木) 13:34
ネタはないがあげ。
51なまえをいれてください:2001/05/31(木) 18:11
こっそり八人目。悪いか?
52ランディ:2001/06/01(金) 07:57
やばい・・・
2chが見られない!「お気に入り」に入っているのは大丈夫なんだけど、
それぞれの掲示板に飛ぶと、いきなりブチっって落ちちゃうんだけど・・・
53:2001/06/02(土) 21:50
以外に居るもんだね。チョトウレシイ。
54なまえをいれてください:2001/06/02(土) 22:27
>>52
この機会に2Ch用のブラウザに乗り換えたら?
http://members.jcom.home.ne.jp/monazilla/

>>53
確かに思った以上に人がいるな


そろそろ小説をきぼんぬ
55ランディ:2001/06/03(日) 03:35
おいらMacだよ〜ん
56コピペだけれど。:2001/06/04(月) 02:54
コピペだけれど、
エスカデと女主人公の大人向け小説。

ガトは、今大変な事になっていた。寺院の中心人物である司祭のマチルダがさらわれたの
である。
ティアラがちょっと夢見の間を出て、少し毛色が違うなと感じた修道女とすれ違ってすぐ
の事だった。しかも、そこに門番の役目をしていた修道女が倒れているのである。
不審に思い、もう一度夢見の間に入ると、ダナエが横たわっていた。
「ちょ、ちょっと!? 大丈夫!?」
ティアラは慌ててダナエに駆け寄った。
「ぐっ…、油断した…。修道女に化けるとは…」
すぐに助け起こす。ダナエはというと、油断した自分へと、不審な修道女への怒りで目を
ギラギラさせていた。
「ど、どうしたの…?」
「マチルダをさらったのよ! 冗談じゃないわ!」
そう叫ぶと、立ち上がって走りだした。しかし、入り口で立ち止まり、振り返る。
「悪いけど、手伝ってくれない!?」
「あ、は、はい! わ、わかった…」
すこし慌てつつ返事をすると、ダナエはフッとほほ笑んで、しかしすぐにけわしい顔付き
になって飛び出した。ティアラもおいて行かれまいとダナエの後を追った。
ダナエは修道女にするどく指示を出しながら走る。おそらく、すぐにこのガトは封鎖され
るだろう。
寺院の出口で、マチルダを抱えた修道女がいた。一本道の向こうにはエスカデがいた。ま
だ帰っていなかったのだろう。
「くっ…。はさまれたか…」
「マチルダを返しなさい!」
毛を逆立て、ヌンチャクをかまえながらダナエが怒鳴る。
「フン…。そう言われて返すバカがいるものか」
そう吐き捨て、修道女は何か呪文を唱えると、マチルダともども姿を消した。
「…あんな呪文でここの土地から出られるはずなんかないわ! アイツはまだ近くにい
る!」
「で、でも、近くって、どこ…?」
「きっと、あの滝のダンジョンのあたりよ! あそこは道が細かくわかれてて迷いやすいの
よ。あそこで撹乱させようったって、そうはいかないわ!」
言うなり、ダナエが走りだす。エスカデもそう見当つけたのだろう。ずっと先をすでに走
りだしていた。ティアラも慌てて二人を追いかける。
「…ここの…どこかにいるはずだわ!」
57エスカデ女主人公:2001/06/04(月) 02:55
息をきらしながら、ダナエが目の前に臨むダンジョンをにらみつける。
「ガトの出入り口は封鎖した。ガトから出ている事はないだろう」
エスカデの方も急いで走ったのだろう。やや息が荒い。
「あの…、でも、じゃあマチルダさんは、どこに連れていかれたの?」
ティアラがおずおずと口をはさむと、ダナエとエスカデは顔を見合わせた。
「…昔、修験者が使ったという部屋があるの…。あそこなら…」
「じゃあ、そこに連れて行かれたの?」
「たぶん! ついてきて!」
ダナエは叫ぶと走りだした。やっぱりティアラは慌てて後を追いかける。エスカデも後に
ついてきた。
「……おまえは、なぜ俺たちにかかわる?」
走りながら、エスカデが話しかけてきた。
「なぜって…。なんとなく……」
「なんとなく…か。なんとなくでよくも付き合ってられるな」
「私の、性分みたいで…。頼まれると…イヤと言えないし…」
「そうか…」
「ああ…、でも、ダナエ…走るの早い…」
あまり体力のないティアラは持久走は苦手だ。ダナエの背中が小さくなりはじめてきた。
「…来い、置いていかれるぞ」
「あ、うわ…っ」
エスカデはティアラの腕をつかむと、そのまま走りだした。ティアラは引っ張られるカタ
チで、走っていた。
「ここよ!」
「はぁ、はぁ、は、はい…」
ダナエがドアの前で振り返る。ティアラはやっと落ち着いたものの、息をつく間もない。
汗をぬぐい、顔をあげる。少しよろけたが、持っていたロッドで支えた。
ダナエはそんなティアラを見て、ほんの少しだけ眉をしかめたが、すぐに真顔に戻った。
「行くよ!」
バタン! と勢いよくドアを開け放す。
中には、やたら目付きの悪い修道女と、横たわるマチルダがいた。
「マチルダ!」
ダナエとエスカデの声がハモった。
「アーウィン様の命令でこの女を連れて来いとの事だが…。どうもお前達はそうさせてはく
れないようだな…」
「当たり前でしょ! さぁっ、マチルダを返しなさい!」
毛を逆立ててダナエがヒステリックに叫ぶ。その間にも、エスカデは剣をぬいて修道女目
がけて襲いかかった。
58エスカデ女主人公:2001/06/04(月) 02:56
ガキィン!
修道女が手に持った杖でエスカデの剣を受け止める。エスカデの方が力が強いのだろう。
修道女の顔がゆがみはじめてきた。
「マチルダ!」
少し悲痛な声をあげ、ダナエはマチルダに駆け寄った。そして優しく彼女を抱き抱え、急
いで怪しい修道女から離れた。
「貴様!」
慌てて修道女が叫ぶが、目の前にエスカデがいては、どうしようもない。
「ちぃっ! 貴様らを全部殺してからでないとマチルダは連れて行けないと言う事かっ!」
「やれるものなら、やってみろ!」
ぎりぎりと刃ごしに睨み合いながら、エスカデが言う。
「ここはお願い!」
ダナエはマチルダを抱えながらティアラに頼む。ティアラは、少し緊張した面持ちでうな
ずいた。
「このままでは、思うように戦えんわっ!」
そう叫び、修道女の目が光ると、見上げるほどの化け物へと変貌していた。
「悪魔の手下め! やっと本性を表したか!」
エスカデが不機嫌そうに笑う。ティアラはぎゅっとロッドを握り締めた。
そして、戦いが始まった。
肉弾戦ではティアラはほとんどお荷物であったが、その魔法は非常に目を見張るものがあ
った。
「はぁっ!」
ズシャッ!
エスカデが化け物を大振りに切りつけた。
「がはっ!」
「ホーリーボルトッ!」
弱っているモンスターに、ティアラの魔法が炸裂した。
「ぐぎゃああっ!」
これは効いた。化け物は2度3度のたうったが、やがてぐったりと倒れると、動かなくな
った。
「…やったか…」
消え行く化け物を眺めながら、エスカデは剣をふるって、鞘にいれた。
「はぁ…」
緊張が解けて、ティアラは安堵の息をついた。
「…おまえ…、魔法は上手いんだな」
振り返って、エスカデはティアラに声をかける。言われて、ティアラは少し照れた。
「ええ…。昔から、けっこう得意で…」
「……マチルダは無事か…?」
「さぁ…。ダナエが連れ戻したようだけど…」
それから、二人は夢見の間に向かい、マチルダの無事を見届けた。
59エスカデ女主人公:2001/06/04(月) 02:57
もうこれ以上の用は無かったし、一段落もしたので、ティアラはとりあえず自宅に戻ろう
と思った。
偶然ではあるが、エスカデと一緒にガトを出た。
「…オマエは、これからどうするつもりなんだ?」
「え? ええ。家に戻るつもりよ」
「…そうか…。帰る家があるんだな」
「え?」
「いや、なんでもない」
「……はぁ……」
エスカデはそこで会話を打ち切ってしまったので、それから、あまり会話もせずに二人は
歩いていた。
「あ、あの…よければだけど、ウチに来る? 晩ごはんくらいは、ごちそうするよ?」
「いや、いい」
「あ、あ、そう…」
断られて、ティアラはちょっと気まずそうに黙り込んだ。彼女は嫌われてるのかなと、エ
スカデの顔色をうかがってみる。…いつも不機嫌そうなのでわからない…。
「…あ、あの…、もしヒマな時があったらウチに来てね。その、お茶くらいは出すよ」
「ああ。ヒマだったらな…」
断られるかと思ったが、エスカデはちゃんと返事をしてくれた。どうやら、それほど嫌わ
れてはいないらしいとわかって、ティアラは少しホッとした。
誰であれ、あまり嫌われたくないものである。


それからまたしばらくしてのこと。ティアラはマチルダに、いなくなったダナエの捜索を
頼まれた。
そんなに急ぎでなくても良いとの事だった。また、エスカデがガドに来ていると聞き、テ
ィアラはとりあえず会ってみようかと考えていた。
エスカデは、流れ落ちる滝をぼんやりと眺めているようだった。
声をかけようとして、ティアラは滝のあたりにふよふよとただよう妖精を発見した。
不思議に思って妖精を見ていると、あちらの方もこちらに気づいたらしく近寄ってきた。
「あなた、わたしが見えるのね」
「え、ええ…」
「どう? ハッキリ見える? それともボンヤリ見える?」
「…ハッキリ見えるわ」
「そう…。そうなんだ…。フーン…」
それだけ言うと、妖精はまたふよふよとただよっていて、そして消えてしまった。
あの妖精は何がしたかったのかなと、ティアラは少し考える。
「おまえ…妖精が見えるのか?」
60エスカデ女主人公:2001/06/04(月) 02:58
妖精と会話をしているところを見ていたのだろう。エスカデが話しかけてきた。
「ええ…」
「……人間にも見えるような妖精は悪い妖精だ。…気をつけろ…」
「…そうなの…?」
「決まってるだろう。悪さをするから姿を現すんだ」
「はぁ…」
そんなもんかな、とティアラは少し考え込む。
「…どうにもオマエ、少しトロくさいようだな」
「……………」
いきなりそんな事を言われて、ティアラはちょっとムッとなった。多少おっとりはしてい
るかもしれないが、トロくさいとは言われたくない。
「気に障ったか」
「少し」
「フッ」
エスカデに鼻で笑われ、さらにティアラはムカッとなったが、ここは無視する事にした。
「じゃ、私はこれで」
「帰るのか?」
「ダナエの捜索よ」
振り返らずにそう言って、ティアラはガトを後にした。

ダナエの捜索は多少難航し、ドミナの占い師や、賢人のトートの助力を得て、ダナエを見
つけたものの、彼女は妖精界へと行ってしまい、ティアラにはどうしようもなかった。
ただ、そのままをマチルダに報告するしかなかった。
帰り道、ティアラはややぼんやりしながら歩いていた。ガトを出て、しばらく歩いている
と、ドンッと誰かにぶつかってしまった。
「うわっ!」
「おっと」
「ご、ごめんなさい、ちょっと考え事をしてたものだから…」
見上げると、ぶつかったのはエスカデだった。
「エスカデ…?」
「またボーッとしてたのか、おまえは」
「……………」
「ところで、ダナエはどうなった?」
少し不機嫌そうになったティアラを無視して、エスカデが尋ねてきた。
「……聞いて、どうするの?」
「どうもしない。少し、気になっただけだ」
「…妖精界に行ったわ」
「なんだと?」
エスカデの表情が一変する。
「それで、どうなった?」
「…それだけよ…。ダナエは行ったっきりだもの。どうしようもないわ」
「………そうか…」
少し考えたようだが、エスカデはフッと息をついて首をふった。
「エスカデは、どうしてここに?」
「…なんとなく…だ…。少し、気になっていたこともあったからな」
「そう…」
61エスカデ女主人公:2001/06/04(月) 02:59
おそらく、マチルダの事なんだろうな、とティアラは考えていた。
「これからどうするの?」
「…さぁな。特に決めてない」
「そう。じゃあ、私の家に来る?」
「………? かまわないが…。良いのか?」
誘われて、エスカデは不思議そうな顔をした。
「ええ。お留守番頼んでる子達がいるんだけど、2人共、用があるって、ジオに行っちゃっ
たのよ。当分帰って来れないって言うし…。一人で食事もつまらないし、どうかと思って」
「…良いだろう」
「じゃ、行きましょ。こっちよ」
食事の相手ができた事にティアラは少しほほ笑んで、自宅方面を指さすと、歩きだした。

突然の雨に、二人は走りだした。家まであと少しだというのに、ついてないと思う。
雨を受けながら、ティアラもエスカデも走った。誰もいない家は真っ暗で、どこか少し不
気味だった。
「はぁー、もう、ツイてないなぁ…」
玄関のドアを開け、ティアラは頭をふる。
「ちょっと待ってね。明かりをつけるから」
言って、ティアラは呪文を唱えだす。ほどなく、燭台やランプに火が灯され、暖炉にも火
がついた。
「濡れた?」
「いや、それほどでもない」
実際、振り出されたのはここにつく前だったから、着替えが必要なほどには濡れなかった。
「じゃあ、食事を用意するから、椅子に座って待っててね。ヒマなら、そこの本でも読んで
ても良いわ」
「ああ…」
ティアラはそう言い残すと、台所へと姿を消した。

                                 −ツヅク−
62サボテン:2001/06/04(月) 18:03
おことをつれこみするなんて、
さいきんのおんなのこは
ちょっとだいたん。
これもよのなかがわるいのか。

おかあさんは そんなこに
そだてたおぼえありませんよ。
63なまえをいれてください:2001/06/04(月) 21:27
おお、やっとネタが…!
聖剣LOMやって無いけど楽しみsage
64エスカデ女主人公:2001/06/06(水) 18:40
食事も終わり、二人はゆったりとした空気の中、静かに話していた。
「紅茶用意するけど…、いる? お望みならブランデーも入れるけど…」
「…オレはブランデーだけの方が良い…」
「……わかったわ…。それなら、ワインとかもあるけど…」
ティアラはあまり酒を飲まない。その用途のほとんどが料理用で、自分が飲む事はしなか
った。そのため、貯蔵庫に寝かしっぱなしのワインは減りが遅い。
「いや、ブランデーを頼む」
「…わかったわ…」
強い酒が好きなんだなと思いながら、ティアラはうなずいた。
かち割った氷をグラスに入れ、ブランデーを注ぐ。自分のは、熱い紅茶を用意した。
「どうぞ」
「すまんな」
水も用意して、水割りもできるようにしたのだが、エスカデはあまり水を入れなかった。
しばらく飲みながら会話していた。エスカデだが、キツいブランデーを飲みながらも、あ
まり顔に変化は現れていない。酒に強いようである。
「エスカデ、お酒強いのね。私、そんなふうに飲んだら一口で真っ赤になっちゃうわ」
「…慣れもあるだろ…」
言って、またブランデーを口に含む。ティアラは自分の紅茶に少しブランデーを混ぜなが
ら、飲んでいる。そうやって、紅茶に少ししかブランデーを入れてないのだが、ティアラの
方は顔が少し赤くなっていた。本人が言う通り、あまり酒は強くない。でも、紅茶にブラン
デーを入れて飲むのは好きらしかった。
「……ねぇ、エスカデ…」
「何だ…?」
ブランデーのグラスを机の上に置き、エスカデはゆっくり椅子にせもたれる。
「…妖精界ってどんな所なのかしら…」
「……………さあな」
少しだけ気分を害して、エスカデはそっぽを向く。
「どうして…ダナエはあんな所に飛び込んだのかしら…」
「そんなこと、知るわけないだろう」
「…そうだけど…」
ティアラは少し熱くなった体で、ぼんやりと考えていた。あのとき、ダナエはそもそもの
種をまいたのはエスカデだと語っていた。あの4人の関係は、ティアラにはよくわからない。
また、10年前に本当に何があったのかも知らなかった。
「…おまえも…ダナエのように悪魔に加担するのか?」
65エスカデ女主人公:2001/06/06(水) 18:41
じわりっと、エスカデの持つ空気が変わる。しかし、ティアラはそれに気づかなかったよ
うだ。
「別に…悪魔に加担するとか、考えた事ないけど、ダナエを手伝ってあげたいとは思う…」
「…ダナエに加担する事は、悪魔に加担する事と同じ事だぞ」
「…そうなの? そうは…思わないけど」
「考えてみろ。ヤツは目的のためなら、悪魔に加担することもいとわないと言ってるんだ。
それがどういう事か、わからないのか?」
「………うーん……」
目もとろんとさせて、ティアラは困ったように考え出した。そんなティアラを見て、彼女
が酔ってると気づいて、エスカデはハッと短く息をはきだす。それには、少し侮蔑もこもっ
ていた。
「…なによ…、今の…」
それに気づいたティアラは、ムッとして、椅子から立ち上がる。
「…別に…。酔っ払いだ。どう言おうと仕方ないからな」
「なによ、それ。失礼ね!」
頬をふくらませて、つかつかとエスカデの前に回り込む。
「私は、あなたが言うほどに酔っ払っちゃいないわ」
「そうか。良かったな」
あしらわれて、ティアラはさらにムッとなる。エスカデにつかみかかろうとして、足がも
つれた。
「失礼にもほど…きゃわわっ!?」
「おっと!」
ガタン!
ちょうど、エスカデに抱き着くようなかたちになり、そこで2人は思わず硬直した。
「あ…あの…そ、その、これは…」
「…………………」
すぐに離れたつもりだったが、そうでもなかったかもしれない。酒のせいだけでもなく、
赤くなってティアラはもじもじとなにか言うが、単語にならない。
「おまえ……」
「え?」
「…いや、なんでもない…」
何かを言いかけ、エスカデはそれ以上言おうとしなかった。
「…そ、その、今のはともかくとして。人の事酔っ払いって、鼻で笑うなんて失礼だわ」
「…事実だから仕方ないだろう」
「私は! 酔ってなんかいないわ!」
「フン…」
また鼻で笑う。酒のいきおいも手伝って、ティアラはカッとなった。
66エスカデ女主人公:2001/06/06(水) 18:42

「なによ! 失礼な人ね! だからマチルダに相手にされないのよ!」
「………何だと?」
ハッキリ言って、言ってはいけない一言だった。エスカデの目が一瞬で殺気立つ。
「貴様…、何と言った?」
「…な、なによ、すごんだって…。ダナエが言ってたわ! 10年前の種をまいたのはあな
ただって!」
「オマエが、何を知ってると言う!?」
エスカデはティアラの胸倉をつかんで、勢いよく引き寄せた。
「ダナエから…聞いただけよ!」
「ほぉ…。おまえはダナエの言うことすべてを信じると言うんだな? 実際にその場を見て
もいないヤツの言葉を信じると言うんだな?」
「……だって…ダナエからしか…聞いて…ないもの!」
「なら教えてやろう。あの悪魔はな、マチルダをたぶらかしてさらったんだ! しかもあそ
こで精霊力まで奪い取ったんだぞ! マチルダがあんなふうになってしまったのはすべて!
あの悪魔のせいなんだっ!」
「…ダナエは…、追い詰めたのはあなただと…言ってたわ…。どうなの…?」
エスカデの目線の高さにまで胸倉をつかみあげられ、苦しそうに、実際に苦しいのだろう
が、ティアラが尋ねる。
「俺が気づいたから追いかけたんだ。あのとき、誰もあの二人に気づかなかった! 止めな
きゃいけなかったんだ!」
「………………」
「どうした? 何か言ってみろ!」
「……く…苦しい…」
「…………チッ…」
忌ま忌ましげにティアラを離し、エスカデは机の上のグラスを手に取る。そして、中の酒
を一気に飲み干した。
ティアラはホッとしたのと、恐怖とで、机に腰掛けて、胸をおさえて息をした。
「ハァ…ハァ…んくっ…ハァ…」
「…女は…みんな悪魔にひかれるというのか…」
「……何を…言ってるの?」
わけがわからなくて、胸をおさえながらティアラはエスカデを見る。いつもよりさらに、
眉間に深くシワが食い込んでいる。
「……おまえも…あの悪魔に加担するというのか…」
にらみつけてくるエスカデに内心脅えながら、でも表にはそれを一生懸命に出さないよう
に。ティアラは故意に背筋をしゃんとして見せた。
67エスカデ女主人公:2001/06/06(水) 18:44

「…別に…そういうつもりはないけど。…ただ…誰の意見にも賛成できないだけよ…」
「ダナエに加担するんじゃなかったのか?」
「…ダナエの力になってあげたいと思ってるのは確かよ。…でも、あなたたち誰もの意見に
は、私はどれも賛成できないだけよ」
「…矛盾してるんじゃないか…?」
「…そういう事にはならないと思うけど…。考え方に賛成する事と、助力してあげるのとで
は違うわ」
平静をよそおい、ティアラは髪の毛をかきあげる。
「考え方に賛成できるから、助力するんじゃないのか?」
「その人本人を気に入ってるだけよ。…あなただって、マチルダの考え方には賛成できない
けど、助けてあげたいと思ってるんでしょ?」
「………………」
言われて、エスカデは不機嫌そうに黙り込む。
「…確かに、さっきは言い過ぎだと思うけど。あなただってちょっと乱暴だわ。手加減…」
ダンッ!
エスカデが勢いよく立ち上がったものだから、椅子が大きな音をたてて倒れた。思わず、
ティアラはビクッとはねあがる。
「…これでも…俺なりに手加減してるつもりなんだがな…」
再度、ティアラの襟首をつかみ、グッと引き寄せる。鼻と鼻がくっつき合うほどの至近距
離だ。
「…あ、あなた…顔に出てないだけで…酔ってるのね?」
息が酒臭い事に気づき、ティアラはやや青ざめながら言った。
「…フン…。おまえも酔っ払いだろうが…。…どうした…随分震えてるじゃないか…」
そう。ティアラは平静を装いきれず、足ががくがくと震えだす。それが止まらないのだ。
おさえていた恐怖がワッと噴き出て、我慢できない。
「…さっきの勢いはどうした? オレに何か言いたかったんじゃないのか?」
「……あ…あ………そ、その…」
ゆっくりとテーブルに押し倒されて、ティアラはふるえあがる。
「何か言ってみろよ。…どうなんだ…?」
「……あ、う………その…………」
とうとう、涙が一つ、目からこぼれおちる。それが、エスカデの野性に火をつける。
「…で? どうなんだ?」
わしっとあごをつかんで、テーブルに強く押し付ける。
68エスカデ女主人公:2001/06/06(水) 18:46

「…ど、どうって……その…もう……」
さっきの勢いも吹き飛んで、何も考えられず、ティアラはただただ脅えた。実際、エスカ
デの図体はデカいのだ。こんな図体のデカい男にこうも押さえ付けられる事など、ティアラ
は初めてである。
「…もう? もう、なんだ?」
グッとさらに顔を近づけさせ、ティアラにすごむ。すごむとすごんだだけ、ティアラは脅
えた。
「……だから…もう……お願いもう………」
「…なにを言いたいのかわからんな…。何が言いたいんだ?」
「………だから…その……ふえっ……ふっ……」
こらえきれず、涙がさらにこぼれおちる。もうどうにもならない。そして、エスカデの理
性の方も、どうにもならない所まできていた。酔いも手伝っているのだろう。
「…泣いて…どうにかなるとでも思ったか?」
ティアラにおおいかぶさり、胸元に唇を這わす。ゾクッとした感覚がティアラをおそう。
「……うっ…くぅっ…、お願い…もう…許して…」
「…何を…?」
その大きな手で、胸をわしづかみにされ、ティアラはギュッと目を閉じた。
「………だから……もう………もう…やめて…」
泣いて懇願するが、それが余計にエスカデの欲情に火をつけるという事に、ティアラは気
づかない。
「フン」
「ヤッ…イヤッ…」
一枚、一枚乱暴に服が脱がされていく。抵抗するが力が入らない。もとより、力でかなう
相手でもない。
「…ダメ…ダメなの…。もう…もうやめて…」
ここまできて止まる野性ではない。エスカデはまったく無視して、最後の一枚もはぎとる。
それほど明るくもない光量の下、なまめかしい女体がうきあがり、エスカデの理性は粉々
に吹き飛んだ。あるのは、凶暴な野性と、むきだしの本能だけだった。
「………やめ………だめ………」
涙声も言葉にならず、嫌がっても抵抗にならず。腰を強くつかまれ、力づくで引き寄せら
れた。
「ダっ……いやあああっ!」

「……ダメ……ダメっなのに………もうっ…アッ…」
犯されながらも、ティアラは泣いて、無駄な抵抗を続けていた。
「………やめ……もうやめ……ふっ…ふあっ…ハァッ」
「…フン…いやがってるわりには…、随分濡れてるじゃないか…」
「あう…はぁう…、ぅアッ、ちがっ…違う…」
69エスカデ女主人公:2001/06/06(水) 18:47

「何が…違うってんだ? 喜んでるんじゃないのか?」
「…ちがっ…ちっ…くあっ……んッ! ああんっ!」
もう頭の中はパンク状態で、何も考えられなかった。嫌悪感と、混乱、恐怖とでいっぱい
で、しかし、確かな快楽も認めつつ、ティアラは泣いていた。

…それから、どうなったのかティアラにくわしい記憶はない。ただ、気絶してしまい、そ
のまま眠りに落ちたというのはなんとなくではあったが覚えていた。
朝起きると、彼女は自分のベッドで寝かされていた。一瞬、自分が素っ裸である事に驚い
て、そしてすぐに昨夜の事を思い出した。ここにいるという事は、エスカデが運んだのだろ
う。というか彼しかいないのだが…。
ふと横をみると、そのエスカデが隣で眠っているのに気づいた。
ふつふつと怒りがこみあげてきた。彼の首に手がまわる。寝ている今がチャンスだ。
このまま絞めれば殺せる…。
…しかし、ティアラはため息をついて手をゆるめた。なぜかわからないが、怒ってはいる
ものの殺す気はさらさらない自分に気づいたのだ。
首をふって、ベッドから出ようとした時だった。
「……殺さないのか?」
「お、起きてたの!?」
ティアラはビックリして、かけていた毛布で思わず自分の体を隠した。
「さっきな…。で…、どうして殺さないんだ? 憎いんだろ? 力づくで犯されて」
言われて、カッとなって顔も赤く染まる。しかし、その怒気もすぐに霧散した。
「…怒ってるけど…。殺したいとも思わないわ…」
「なぜだ?」
「知らないわよ。そこまでする気はないのよ!」
自分でもわからなくて、なげやりな感情で怒鳴る。もう、ベッドから出ようとするとグッ
と腕をつかまれた。そして、勢いよく引っ張り込まれたのだ。
「え?」
一瞬わけがわからなかった。しかし、あっと言う間にエスカデにつかまり、ベッドへと押
し付けられたのだ。
「なっ…!」
70エスカデ女主人公:2001/06/06(水) 18:49

「…そこまでの気がないんだったら…。そこまでする気にさせてやろう」
言って、エスカデがおおいかぶさってきた。
「なんっ! やめ…、やめてよ! 殺されたいの!?」
「できるもんならな」
「ば、馬鹿にして!」
さすがのティアラもこれには本当に頭にきた。どうにか抵抗しようと暴れるが、すべてエ
スカデにおさえこまれてしまった。
「あ、あなたなんか…いつか…殺してやる…!」
不覚にもまた涙が流れてきてしまう。悔しくて、ティアラは歯を食いしばった。
「ああ…。そうだな…。いつかオレを殺してみろ…」
「…………え…? ……ふあ、あああっ!」
そして、再度ティアラは犯される。

ティアラの体が気に入ったのか。エスカデはしばらくティアラの家に居座った。無論、そ
の間も、毎日彼女への凌辱が続いた。泣こうがわめこうが、力でおさえつけられる。しまい
には、抵抗もあきらめてしまった。
「最近おとなしいな…」
コトを終え、息が整う頃。エスカデは隣にいるティアラに話しかけた。
「………あなたは…私に抵抗してほしかったの? 従順にさせたかったんじゃなかった
の?」
「……………………」
「……なんだか…もう、どうでもよくなってきちゃった……」
疲れた声で、ティアラが言った。
「…俺を殺すんじゃなかったのか?」
ティアラはエスカデの顔を見た。薄暗くて表情はよくわからない。
「…殺したいわ…。…でも、今の私じゃあなたにかなわない…」
「……そうか…」
さんざん力の差を見せつけられ、押さえ付けられ、力づくで犯されて、弄ばれる。ティア
ラは自分の無力さを思い知らされる。魔法を使う精神集中するヒマさえない。呪文も唇でふ
さがれる。
涙も涸れたようだ。
「…じゃあ、殺される前に楽しませてもらうか」
「え?」
隣のエスカデがむくりと起き上がる。
「なっ…ちょ、だって今日でもう何回目だと…」
「いちいち数えてないんでな」
「もう…こっちの体力なんて残っちゃ……アッ…」
「俺の体力はまだ残ってる」
「も…ダメ…許して…壊れちゃうよ…」
71エスカデ女主人公:2001/06/06(水) 18:51

「なにが壊れると言うんだ? ここか?
「はあぁッ!」
「嫌がるわりには濡れるのが早いな。俺のしつけが効いてきたか?」
「なんっ…、…アッアッ…やっは…」
もう涙は出ない。か弱い声だけが口からもれる。
エスカデの指が、舌が、唇が、さんざんティアラを弄ぶ。もう彼女の体のどこにも、彼が
触れなかった場所はない。
「ふあっ…はぁっ…はあっ…」
胸が上下するほどに呼吸して、ティアラはだらんと力無く横たわる。腰をつかまれ、大き
く股を開かせられる。それが、どんなにあられもない姿かわかってはいたが、どうしようも
なかった。
そして、侵入して、暴れて、汚す。何度も、何度も。
「うくっ…ふあっ…あっ…」
耐え難い屈辱だった。
しかし。
エスカデが動いた。
「……? …ど、どうして抜くの…?」
「なんとなく、な」
エスカデの表情は、やはりここが暗くてよくわからない。
「イヤなんだろ…? 俺に犯されるのは」
「……………………あ、……で、でも…」
「でも……何だ?」
「…その……お願い…あの…もう一度…」
「もう一度…何だ?」
「…あ、ああ…お願いよ…、…つ、続けて…お願い…」
ティアラの声があせったように懇願する。
「何を…続ければ良いんだ?」
「…い…意地悪ぅ…。お願い、入れて、お願い!」
「なにをどこに入れてほしいんだ?」
あきらかにわかっていて、わざわざ言わせようとしてるのだ。ティアラは泣きそうになる。
死ぬほど恥ずかしい言葉を言えと言うのである。一瞬迷って、ティアラは理性と本能とで、
理性が負けた。
「…あ…あなたの…お○んちんを、わ、私のま○こに…入れて…」
「どんなふうに?」
さらに言われ、ティアラが喉の奥で悲鳴をあげる。けれど、言葉は口から流れ出る。
「…つ…強く深く、突いて、乱暴に、か…かきまわして…」
「フッ…」
鼻で笑われて、ティアラのプライドが砕け散る。涸れたと思った涙がこぼれ出た。だがす
ぐに、エスカデは彼女の望み通りに動いた。
72エスカデ女主人公:2001/06/06(水) 18:54
「ぅあっ…!」
「随分おまえも淫乱になったもんだな」
「…あなたの…せいじゃない…。こんなに…何度も…」
文句を言いつつも、もう嫌がってはいなかった。彼女の中でどこかがキレたらしかった。
「憎かったら殺せ。勝負なら、俺はいつでも受けて立つ」
「…あっ…あああっ…あん…、はあんっ」
もう理性も恥も外聞もかなぐり捨てて、ティアラは快楽に身を任せて腰をくねらせた。
「……声が変わったな…。もしかして、悦んでるのか?」
「…っ……もう…いい…。…っどうっ…にでも…してぇ…」
それから。ティアラはエスカデに抵抗する事をやめた。

 エスカデはしばらくティアラの家に住み着いていたのだが、ある日不意にいなくなってし
まった。
「……………エスカデ……?」
朝、目覚めると隣にいるはずの彼がいなかった。探してみたが、家中どこにも見当たらな
い。外や庭も見てみたがいなかった。
エスカデの荷物が全部無くなっているので、ここから出て行ったとわかった。
「…………なによ…。勝手なんだから……」
不機嫌そうにつぶやいて、ティアラはエスカデが使っていた食器をかたした。


73エスカデ女主人公:2001/06/06(水) 18:55
バドもコロナもようやく帰って来て、元の生活に戻っていた。
以前と全然変わったように見えないティアラ。バドもコロナも彼女の変化に気づかない。
ティアラの方も、必死でそれを隠していたけれど。あのエスカデとの凌辱生活は確かに彼女
を変えていた。
昼間はまだ我慢できた。しかし、夜になると体が熱く燃え上がるのだ。必死におさえよう
としても、体はエスカデを求める。嫌がっていたはずなのに、彼の凌辱を待っているのだ。
「…………ふぅ…………はぁ…」
我慢すればするほどストレスもたまる。しかし、我慢するしかない。汗をぬぐいつつ、寝
返りをうつ。
強く抱き締められる事を望み、荒っぽい口づけを欲し、乱暴に犯される事に快楽を覚えた
体は理性ではどうにもならず。エスカデを憎むと同時に愛してしまった事を知らされる。
矛盾した感情を抱えつつ、どちらにせよ、ティアラはエスカデが欲しい事に気づく。
憎しみで殺すもよし、愛でいとおしむもよし。とにかくこの手に欲しいのだ。エスカデが
ティアラを犯したように、自分もまた、つかまえて彼を自分のものにしたかった。
「…エスカデ…」
欲しい男の名を小さくつぶやいて、ティアラは苦悩で顔を歪ませた。
−ツヅク−

74サボテン:2001/06/06(水) 20:48
ぼくもちょっと、ちくちくしてあげた。
75なまえをいれてください:2001/06/06(水) 22:12
どひゃー >>56-73
76ランディ:2001/06/06(水) 23:25
ああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜(パニック
なんだかおいらも泣きたくなってきたよ・・・
77なまえをいれてください:2001/06/07(木) 12:18
続ききぼんぬ〜
78エスカデ女主人公:2001/06/08(金) 00:11

ティアラはガトでエスカデの過去について再度聞く事となった。なんでも、10年前、鉱
山であの因縁の日が起こったとか。
それを聞いて、鉱山に向かう。そこに入ると、賢人の1人であるポキールがそこにいた。
「ポキール…? どうして…そこにいるの…?」
「過去を知りたいんだろ? 10年前のあの日、何が起こったか」
「……でも…そんなこと…」
「大地は覚えている。事のすべてを。人の記憶より正確に、より事実に。あるがままを記憶
している」
歌うように言って、どこからか手動式オルゴールを取り出す。そして、それの取っ手をぐ
るぐるとまわして、曲にあわせて歌いはじめる。
ポキールの歌に反応して、大地がざわめきだした。大地がざわめくところなど初めて見た
ので、思わず立ち尽くしていると、目の前の景色がおおきゆれた。
「………え…?」
いつのまにか、ポキールの姿が消えていた。いつもの鉱山とは、変わっていないようにも
見えるけれど、やはり変わっていた。
「くそっ! こんな所に逃げ込みやがって!」
どことなく聞き覚えのある声に振り向くと、見覚えがあるような、見覚えのないような少
年が飛び込んできた。
…もしかして…あの髪…、あの顔付き…、エスカデ…?
ティアラが確かめる間もなく、少年は奥へと走り去る。ティアラはしばらく呆然としてい
たが、思い出したように彼の後を追った。
そこで、彼女は実際に起きた10年前の出来事を目の前で見る事になる。
思い込みも脚色もない、実際に起こった事を。
そして、10年前の落盤の風景を最後に、ティアラは意識を失った。
「………ここ……は…?」
ポキールと出会った場所が違う。しんとしずまりかえった、広い場所に横たえられていた。
「……気づいたか?」
意識を回復してティアラに気づいて、背中を向けていたエスカデが振り向いて話しかけて
きた。
「…? どうして…」
「随分変な場所に倒れていたぞ。モンスターの餌食にされたかったのか?」
どうやら、ここまで運んでくれたらしかった。
79エスカデ女主人公:2001/06/08(金) 00:12

「……………ちょっと…ね…」
「…ポキールに会った。…10年前の事を見たそうだな」
「…ええ…」
「………なら聞こう。おまえは、俺につくのか? それとも、ダナエにつくのか?」
「…………………」
ティアラは無言でエスカデを見た。もし、ダナエにつくと言ったり、無関係とでも言おう
ものなら、すぐにでも切りかかってきそうだった。そういう男だというのは、よく知ってい
た。
「…俺を殺したければ、悪魔に手をかすが良い。憎いんだろう?」
抑揚のない、あまり感情の感じられない声。
「……私は、あなたに…つくわ……」
ティアラの答えにエスカデは驚いたらしかった。
「…俺が憎いんじゃなかったのか…?」
「……心と体は別なのよ…」
「?」
ティアラはゆっくりとエスカデに近づいた。そして、彼の手を手に取る。
「………黙っていきなり出て行って…勝手ね…」
「………………」
「…どうしてくれるの? 毎晩、体があなたを求めるのよ…。この手を…指を…体が…」
エスカデの手を握り締め、自分の頬に愛しそうに押し付ける。
「……ティアラ…?」
「我慢しても気が狂いそうよ…。熱いのが止まらないの」
「………………………」
「抱いて。私をどうにかしてもいい。抱いて」
静かな場所にティアラの声が響き渡る。
「………ティアラ……」
驚いて唖然とするエスカデを無視して、ティアラは彼の胸に飛び込んでキツく抱き締める。
「……おまえ…変わったな…」
「変えたのはあなたよ」
見つめ合い、そして、互いに引き寄せ合うように激しい口づけをかわした。
ティアラは、エスカデに抱かれながら、乾いた体が満たされていく感覚を覚えた。そして、
己の心を確信した。
80エスカデ女主人公:2001/06/08(金) 00:14
…わかっている。ここで唯一、頭に血がのぼっていないのは自分だけだと。
しかし、頭は冷めているようで、混乱していた。
激しく言い合いながら、エスカデとダナエが睨み合う。今にも二人とも飛びかかりそうで、
一触即発だった。
「悪魔に与するヤツ…。奈落に落ちるがいい!」
「バカなっ! 悪魔も人も、関係ないわ! なぜそれがわからないの!?」
「理解する必要もないっ!」
「なんですって!」
とうとうダナエが飛び出した。ダナエのヌンチャクと、エスカデの剣が火花を飛ばしてか
ちあった。
ティアラは、その様子を呆然と眺めていた。冷めているように自分では思っていたが、表
情は戸惑いの色を見せていた。
何度もお互いの武器をかち合わせ、ぶつかりあう。
だが、勝敗が見えてきた。やはり、エスカデの方が強いのだ。手痛い一撃をくらって、ダ
ナエが吹っ飛んだ。
「キャアアッ!」
地面を数回バウンドして、勢いで砂煙をあげながらすべる。
「クッ…。…ティっ、ティアラ! お願い、手をかして!」
たまらなくなって、ダナエが悲鳴のような声をあげる。確かに、ダナエ側にティアラがつ
けば戦況もまた変わってくる。肉弾戦ではかなわないが、彼女の魔法があたればエスカデも
ただではすまない。
「お願い!」
ティアラは苦悩の表情を浮かべ、ギュッとロッドを強く握り締めた。
しかし、ティアラはその場から動くことができず、へなへなとその場にへたりこんだ。震
えて、何もできない。動けない。
「ティアラっ!」
ダナエの声が悲鳴そのものをあげた。ティアラは目をギュッと閉じた。
ガゴッ!
「ウギャアァッッ!」
ティアラは耳をふさいだ。しかし、悲鳴は手を通り越して耳に届く。
涙でにじんだ景色の中で、横たわる茶色いかたまりが見えた。それがダナエと認識するの
に時間がかかった。
81エスカデ女主人公:2001/06/08(金) 00:15

「あ……ああ……あ…」
ティアラはそこにへたりこみ、ただただ涙を流し続けた。
「…………………」
エスカデは無表情に動かなくなったダナエを眺め、そしてきびすを返すと階段を上る。
ティアラはしばし、呆然としていたが、やがて涙をごしごしとふいて立ち上がった。
そして、わき目もふらず突っ走った。ダナエの側を通るときはさすがに目を閉じたが、と
うとうかまわずに走り抜けた。
階段を駆け登り、エスカデ達の所にまで追いつく頃。涙に濡れた瞳は、さっきまで泣いて
いた彼女とは随分別人の印象に変わっていた。


「…どうしたの、ティアラ…。随分、ものものしいけど…」
バドに問われ、ティアラは少しほほ笑んだ。
「ちょっと…ね…。今回は大物だから…」
言って、彼女が作り出した最強の魔法楽器を取り出す。後ろに連れているのは、最強で凶
暴と名高いランドドラゴンだ。ヒナから育て上げ、ティアラにとてもよくなついている。
「…大丈夫なの…?」
「ええ。魔法しか才がないかもしれないけど。これでもじゅうぶん強くなったのよ、私」
「そりゃそうかもしんないけど」
「待っててね。すぐに帰って来るから」
そう言って、ティアラはほほ笑んだ。

カンクン鳥の背に乗り、ティアラはルシェイメアに急いだ。修道女の話によると、すでに
エスカデが向かったそうである。
急がなければならなかった。エスカデ一人で、アーウィン相手にどうにかなるとは、とて
も思えなかったからだ。
セルヴァの忠告もはねのけ、ティアラはルシェイメアの頭を目指して急いだ。
もう少しでルシェイメアの頭が見えてきた頃。
「ぐわぁぁっ!」
エスカデの悲鳴が聞こえた。ティアラはハッとなると、ランドドラゴンに一声かけて走り
だす。
「ぐはぁっ…はぁっ…くっ…はあっ…」
そこで、肩を激しく上下させる程の荒い呼吸を繰り返し、血まみれになったエスカデを発
見した。
「エスカデ!」
その名を呼んで、ティアラは駆け寄った。そして、優しく抱き起こす。
「……はあっ、はあっ…オマエか…。…フッ…。ここまで一人で突っ走ってきたが…。どう
やらここまでのようだな…」
82エスカデ女主人公:2001/06/08(金) 00:15

「冗談じゃないわ! あなたを殺すのは私よ! こんなとこで勝手に死んだりしたら許さな
いから!」
「…………………」
しかし、ダメージがひどいのだろう。彼の意識がうすれていくのをその手で感じる。
「ダメだからね!」
そう怒鳴り、ティアラは持って来たドロップを口に入れさせようとする。しかし、歯を食
いしばっているのか、うまい具合に食べさせられない。業を煮やしたティアラは、ドロップ
を自分の口に含むとかみ砕き、口移しで強引にエスカデの口の中に入れた。
「…ぐっ………」
効き目はあった。エスカデの呼吸が少しおとなしくなり、苦痛の表情がやわらいだのだ。
しかし、半端なケガではない。エスカデは意識を失った。
とりあえず一命はとりとめた。それを確かめて、ティアラは息をついた。そしてゆっくり
その場にエスカデを横たわらせると、ロッドを手に持ち、ゆらりと立ち上がる。
「……エスカデの女か? 女ができたのか…?」
アーウィンがどこかからかうように言うが、ティアラは無視した。
「男って随分勝手ね。好きな女のためには世界破滅もいとわないだなんて迷惑千万だわ」
「ふん…。なにも俺に限った事ではあるまい」
「そうね。わかっちゃう分、余計にムカつくわ。でも、あなたの否定的な考え方はもっとム
カつくわ。壊せば良いだなんて、考えが浅はかだわ。未来をあきらめるような女にはお似合
いの男だこと」
「…おまえに何がわかる…」
「わかるわけないじゃない。私は望みがあろうとなかろうと何が何でもあがくわ。手に入ろ
うと入らなかろうとあがくわ。カッコ悪かろうが、恥ずかしかろうが、関係ないわ。だから、
前向きに生きようとしない貴方たちは見ててムカつくのよ!」
しばし、二人は対峙して睨み合う。
「醜悪な人間のシステムに、苦しんだ事のないおまえにわかろうはずもない」
「その醜悪な人間のシステムに苦しんで負けたあなたに言われたくないわね」
「だから壊すのだ!」
「まだ負けてないって言うつもり? 壊すのは簡単よ。力を振り回せば良い。あなたの本来
の力なら簡単な事でしょう。楽じゃない」
「楽…か…」
アーウィンが皮肉めいた笑みを浮かべる。
83エスカデ女主人公:2001/06/08(金) 00:16

「そうよ。あなただけが苦しんでるとでも思った? あなた達だけが悲しみを抱えてるとで
も思った? あなたが壊そうとしてる世界は、あなた達と同じくらいの苦しみを背負った人
でたくさんよ! 敗者が独りよがって、被害者妄想抱いてんじゃないわよっ!」
アーウィンとティアラが激しく睨み合う。ふと、アーウィンは少し周りを見回して、そし
てなにかに気づいたようだ。
「……エスカデに惚れたか…。だからマチルダに嫉妬して、俺に怒りをぶつけるのか…」
言い当てられ、一瞬息を呑んだティアラだが、すぐに表情を戻した。
「そうよ! 望みがあろうとなかろうと、私は最後の最後まであがいてやる!」
半ばやけくそで怒鳴って、ロッドをかまえてアーウィンを激しくにらみつけた。
「…魔法だけで俺に勝てると思ってるのか?」
「だからこの子を連れてきたんじゃない…。私の可愛いランドドラゴンよ。パワーと体力な
ら、じゅうぶん私をおぎなってくれるわ」
「……ならば…おまえはあがくが良い。最後の最後まであがくが良い!」
「のぞむところよっ!」
アーウィンはそのもてる力すべてを解放し、ティアラはロッドを振り上げた。

戦いは熾烈を極め、両者ともタダではすまなかった。
スキをついて、ランドドラゴンがアーウィンの足に力いっぱいかみついた。
「グワアァァッ!」
ランドドラゴンの顎の力はすさまじいものだったらしく、さすがのアーウィンも悲鳴をあ
げた。
チャンスだと思ったティアラはロッドをかまえ、精神を集中する。彼女の周りに力の磁場
が光り、集まってきた。
「…集え精霊! 歌え精霊! その歌でかの者に裁きを与えよっ!」
ぶわっと大量の精霊達が発生し、ティアラの周囲を回転しながら歌を歌い出す。その歌は
魔力を発し爆発するほどの力になる。
「ぐっ…ぐわあぁっ!」
大量の精霊達に取り囲まれ、“歌”をまともに食らったアーウィンは光りに包まれる。そ
して、彼が取り込んだ精霊力がそれと相互反応を起こし、普段のものよりさらに力が強まっ
てしまった。
かきならされた歌が、外から、内からいっぺんに爆発した。
カッ! と一際強い閃光がアーウィンから発される。
84エスカデ女主人公:2001/06/08(金) 00:18

断末魔をあげ、アーウィンが砕け散った。
それが、あまりにもあっけなくて、ティアラは一瞬何が起きたのかわからなかった。
「………あ………え……?」
しばし呆然と立ちすくみ、アーウィンの足をかんでいたはずのランドドラゴンと顔を見合
わせた。
「…か…、勝ったのかしら……?」
「…グゥー…」
ゴ…ゴゴゴ…ゴゴゴゴゴゴ…。
不意に、自分たちの足元の地面が揺れ出した。ルシェイメアが崩れ出したのだ。
「や、やだー! どうしよう」
「ギャオーッ!」
パニックを起こし、オロオロしていると、遠くに大カンクン鳥が飛んでくるのが見えた。
迎えに来てくれたのだ。
「あ、あ、あ、来てくれる! え、え、え、えっと、あ、エスカデ、エスカデお願い!」
「ギャギャッ!」
オロオロしつつもエスカデを指さすと、ランドドラゴンはすぐにわかってくれて、彼の近
くに駆け寄るとその背にゆっくりと乗せ上げた。ティアラもすぐに駆け寄って、その作業を
手伝う。
大カンクン鳥はすぐそこまで来てくれている。
そして、慌ててその背に乗り、少しホッとした時。ルシェイメアは音をたてて地上へと崩
れ落ちた。


「……………っう………」
ズキりとした痛みに目が覚めて、エスカデは目を開けた。
「…………? ここは……」
見覚えのある場所だった。どうやら自分が死んでいないという事を自覚する。
「…………ティアラ………?」
一時期ここで寝ていたのだ。ここが彼女のベッドだという事を思い出す。アーウィンと対
決して、そして敗れた。そして、ティアラの顔を見て、そしてそれからの記憶はない。
「うっ!」
腕を動かそうとすると、激痛が体を走る。あちこち包帯を巻かれ、きちんと手当されてい
るがまだ完治していない。
「…助けられた…のか…?」
おそらくそうだろう。そう考え、エスカデはゆっくりと部屋を見回す。あのときとさして
変わらない。陽がさんさんと差し込んで、部屋中が明るい。
階下から話し声が聞こえる。ティアラと、あとは子供の声。おそらく、エスカデがいた時
に、ジオに行っていたという子供たちだろう。
85エスカデ女主人公:2001/06/08(金) 00:19

どうにか立ち上がろうと体を動かす。どうやらひどいのは腕だけで、そこさえ気をつけれ
ば何とか動けそうである。
「…ッツ…たたたた…」
我慢しながらも立ち上がり、エスカデはよたっよたっと歩きだす。そこを、ヘンなサボテ
ンが器用に立ち上がってスタタタタと自分を抜かして歩いて行ってしまった。
「………? あのサボテン…歩けたのか…?」
一瞬唖然として、エスカデはその場に立ち尽くす。だがすぐに我に返って、またよたっよ
たっと歩きだした。
もう少しで階段というところで、階下からだれかが階段を駆け上がってくる音が聞こえた。
もしかして、あのサボテンが呼んだのか…?
「エスカデ! 寝てなきゃダメよ!」
階段を駆け上がってきた人物はティアラであった。立ち上がったエスカデに驚いて、すぐ
に支えるために彼をつかまえる。
「…だが…まだ動ける…」
「動いてさらに悪くしたらどうするの! さぁ!」
強い口調で言い、ティアラは強引にエスカデをベッドに戻した。
エスカデをベッドに寝かしつけ、外れた包帯を巻き直す。
「………おまえ……俺を殺すんじゃなかったのか…?」
手当を受けながら、エスカデはティアラに話しかける。
「こんな状態のあなたを殺したって気がすまないわ」
「だが、チャンスだぞ」
「そんなの嫌いよ。私が憎んだあなたはこんな大ケガしてないわ」
「…じゃあ、どうするつもりなんだ。まさか本気で俺が全快してから殺すつもりなのか?」
「そのつもりよ」
簡単に言われて、エスカデは少し驚いてティアラを見ていたが、やがて自嘲の笑みを浮か
べた。
「…おまえも俺もここにいるって事はアーウィンを倒したんだろ? …俺はアーウィンに負
けて、おまえはアーウィンに勝った…。自信がつくワケだ…」
「そういう事よ」
「………そうか。じゃあ、好きにしろ…」
「ええ。好きにさせてもらうわ」
言って、ティアラはほほ笑んだ。


エスカデのケガもだいぶ治りつつあった。とはいえ、まだひどい部分は完治しきれておら
ず、以前のように大剣を軽々と振り回す段階までには行っていない。
86エスカデ女主人公:2001/06/08(金) 00:20

しかし、エスカデはこのなまった自分の体を嫌い、よく外に出ては木刀を振り回しティア
ラに怒られていた。
「もう、またやってる!」
「……………」
うるさそーな顔をして、エスカデはティアラを見た。
「リハビリは完治してからやりなさいよ! 治るものも治らないわ」
「治ったらリハビリとは言わないだろう」
「そんな事どうでも良いわ。んもう…」
木刀を取り上げ、ティアラはエスカデをつかまえた。
「まだ10回も振ってないんだ」
「それは良い事ね。振りすぎる前でよかったわ」
ティアラとエスカデの視線がかちあった。
睨み合いに負けたのはエスカデの方だった。介護される身だし、なによりティアラが強く
なってきたのである。
「…外の空気くらい吸わせてもらったって良いだろう」
「そりゃ、それくらいなら。あなたの場合素振りを始めるからまずいのよ」
「……………………」
言われっぱなしで面白くないが、やり合う気はもうないのでエスカデは押し黙った。
「座る? 草原が気持ち良いわよ」
「………ああ………」
87エスカデ女主人公 おわり:2001/06/08(金) 00:22
ティアラに手伝ってもらいながら、ゆっくり地面に腰を下ろす。確かに、短い草が少しく
すぐったくもあり、ひんやりしていて気持ち良かった。
ティアラの家の庭先での、のんびりとした空間。牧場が近くにあって、ペット達が思い思
いにくつろいでいたりする。
のどかな空気の風がふき、本当に穏やかな日だった。
しばらく2人は無言でそこに腰を下ろしていた。ゆるやかに時間が過ぎていき、ティアラ
は不意にエスカデがわずかによりかかってきたので隣を見た。
どうやら気持ち良くなって眠くなってきたらしい。少しほほ笑んで、ティアラはエスカデ
の肩に頭を落とす。
少しの間そうやっていたが、ティアラはそっと立ち上がり、エスカデの背後にまわり、背
中から彼をべったりと抱き締めた。腕をからませ、わずかに力をこめる。
「ふふふふ…。…つかまえたわ…。…もう逃がさないから……」
つぶやくようにそう言って、ほほ笑むティアラはどこか危ない雰囲気があった。
「…エスカデ…。…私のものよ…。誰にも渡さないから…。誰にも殺させない…。…殺すの
は私…。愛すのも私…。……私だけのもの……」
寝ているエスカデの顔に頬をすりよせて、うっとりとした口調でつぶやく。
「私が…愛で殺してあげるからね…。…ふふ…ふふふふふ…」
どこか不思議な残忍さを含んで、ティアラは本当に幸せそうにほほ笑んだ。
オワリ。

これの他にバドが女主人公に片思いしている、エスカデ女主人公というものも
あったのだけれど、どうしましょうか(藁

他のカップリングでこういったのってあるのかね?(藁
88なまえをいれてください:2001/06/08(金) 02:22

(・∀・)メチャクチャイイ!

他のシナリオも きぼーん!!
89なまえをいれてください:2001/06/08(金) 20:43
小説アプ苦労様です
9089:2001/06/08(金) 20:43
「御」が抜けてた、
失礼。
91エスカデ女主人公:2001/06/10(日) 09:34
希望してくれる方がいたので(藁
では、エスカデ女主人公、バドの片思いをコピペさせてもらいます。
こっちのエス主は、女主人公の方が強い。

「もうカボチャで悪さしない事。良いわね?」
エレナは腰に手をおいて、そう言った。
負けたオレたちはそれに従うしかなかった。
「…わかったよ…」
オレがそう言うとエレナは満足そうにうなずいた。
「そう。じゃ、約束よ」
「…それにしても、ねえちゃん強いなぁ。どこでそんな槍術なんて習ったの?」
尋ねるオレに、エレナは照れたように笑う。はっきり言って手をぬいてたみたいだけ
ど、それでもスゲー強いって事はオレでもわかった。
「…まぁ、昔、親にちょっと…ね…。後は我流よ」
「なぁなぁ、オレを弟子にしてくんないか? オレ、もっと強くなりたいんだ」
「バド!」
コロナがたしなめるように言ったけど、オレはちっとも気にしなかった。
「弟子? だ、ダメよ。どうして私なんかの弟子になんかなりたがるのよ」
「ホラ。そうでしょ? バド、もう行こ」
「……行こうって言ったって、どこに行くんだよ」
「う…」
俺に問われて、コロナは言葉に詰まる。だって、オレたちに行くとこなんかなかった
んだもん。
とにかく、これじゃまずいと、カボチャで世界征服すれば住むところくらいどうにで
もなるかなーと思ってイタズラしたわけだけど…。
「…どうしたのよ、あなた達」
「…いや、その、別に、なんて言うか、住む所がないって言うか…」
「………何があったの?」
オレとコロナは顔を見合わせて。それから学校から追い出された事。元の家に戻って
きた事。けど、その家はとうに取り壊されていた事。なんて事をかいつまんで話した。
「……そう…。そうだったの……。……じゃ、私の家に来る? たいして大きな家じゃ
ないんだけど。今は一人だからね。ちょうどお留守番が欲しかったのよ」
オレとコロナはまた顔を見合わせた。
92エスカデ女主人公:2001/06/10(日) 09:35
それから、オレ達はエレナの家に居候する事になった。
エレナって植物栽培が趣味らしくって、家にそりゃもうたくさんの植物が植わってい
る。中でも特にヘンなのは2階のエレナの部屋にあるサボテン。あれが歩くなんて知ら
なかったけど、オレが倒れた時、薬をもらってきたくれたのはこのサボテンだった。…
コロナのお父さんのホウキを捨てちゃったのもサボテンだけどさ…。
エレナは旅ばかりしていた。たまに帰ってきたり、オレも冒険に連れ出してもらった
りした。冒険中は、改めてエレナの強さを思い知らされるばっかりだったけどね。
なんとなく旅してる感じがするエレナだけど、エレナなりの目的があったんじゃない
かなって、思う。聞いても教えてくんないから、オレが勝手に想像するだけなんだけど
さ。
エレナがいくつなのか、教えてくれないから、オレは知らない。コロナは二十前後じ
ゃないかって言ってたけど、子供っぽくなったり、大人っぽくなったりするエレナを見
てると、やっぱりいくつなのかわからない。
エレナが家にいる時は、色々面倒みてくれた。ちょっと変わってるけど、美味しいご
はん作ってくれたりとか、書斎の本をすすめてくれたり。3人と、ペットのモンスター
達とで家の大掃除とかしたりした事もあった。


エレナは優しい。
エレナは怒ると怖い。
エレナは明るい。
エレナは強い。
エレナはちょっと美人で、笑うととびきり可愛い。


エレナはオレにとって特別で、ずっと一緒にいてほしい人。前よりももっと、これか
らもずっとそばにいてほしい人…。
…オレはエレナが大好きだった…。
93エスカデ女主人公:2001/06/10(日) 09:36



「すごい雨ねぇ。これじゃ洗濯物が乾かないわ」
コロナがぶちぶち言いながら、洗濯物を部屋の中に干す。
「あんまり暖炉の近くにおくなよ。服がススくさくなっちまう」
「なによ、そんな事言うんだったらちょっとは手伝いなさいよね。本ばっかり読んで
さ!」
「オレは未来の大魔法使いになるんだから! 勉強しないといけないんだぞ!」
「なーにが未来の大魔法使いよ。そんな事より、お風呂場とトイレの掃除! 忘れない
でよね! あんたの当番なんだから」
まったく。後でオレが大魔法使いになってから、コロナが弟子にしてくれ、なんて言
っても弟子にしてやらないからな。…言うわけないか…。じゃあ…お金を貸してやらな
い事にしよう。…でも、それはちょっとヒドイかなぁ…。うーん…。
「バド! 早く掃除してきてよっ!」
コロナが怖い顔でホウキを持って言う。
「…………わかったよ…」
オレは本を机の上において、しぶしぶと掃除に向かった。…未来の大魔法使いが風呂
とトイレの掃除か…。なんか、情けないなぁ…。
風呂もトイレもあんまり汚れてるようには感じられないんだけどな。
なんて考えながら、オレはコロナに怒られない程度に掃除して、また本を読もうと居
間に戻ってきた。
居間では、コロナが本をぼんやりと読んでいるみたいだった。
「…ねぇ、バド…。エレナ、今日帰って来ると思う?」
「……そう…だな…。そろそろだよな。なに、お金がもうなくなったの?」
「そう言うわけじゃないけど、この雨の中帰って来るって大変そうだなって…」
「……そうだな…」
オレも暗い窓の外を見た。激しい雨が窓ガラスを叩きつけている。風も強いようで、
雨と一緒に窓ガラスを揺らしていた。果樹園の果実とか、落ちちゃったりしてないかな。
「…薪とか大丈夫よね。エレナが帰って来そうならお風呂わかそうね」
「うん」
「きっとエレナ喜ぶよね」
「うん」
コロナが笑う。オレもちょっと笑う。
94エスカデ女主人公:2001/06/10(日) 09:37
コロナもエレナが好きなんだ。…でも…、オレの“好き”とはたぶんちょっと違うん
じゃないかな。なんて、思ったりした。
「お湯わかしとこうよ。帰って来た時に暖かいお茶が飲めるなら、エレナ喜ぶよね」
「うん。オレ、やかん持ってくるよ」
「じゃ、私、お茶の葉用意しとこうっと」
オレは台所に行って、大きめのやかんの中に水をたっぷり入れて、暖炉にかけておい
た。
それから、作りおきのシチューとかで適当にごはんをすませて、オレたちは居間でな
んとなく本とか読んでいた。
壁の時計から鳩が飛び出した。雨はまだ降っている。
「…もう9時かぁ…。エレナ…今日は帰って来ないのかな…」
なんとなく寂しそうな顔をするコロナ。今のオレもそんな顔してるんじゃないかな…。
「……ん?」
急に、コロナの耳がぴくっと動いた。俺もそれに反応して、窓に駆け寄った。
暗くてよくわからないけど、人がこっちに向かって走ってくるように見えた。ようく
目をこらすと、それが錯覚じゃないって事がわかった。
「おい、コロナぁ! エレナ、帰って来たみたいだぞ」
「本当! タオル、用意した方が良いかな?」
なんて言ってる間にもどんどん人が近づいてきた。エレナだ。間違いない。あともう
…1人…? いるのかな? ペットのカーミラかな。あいつ、人型だし…。
でも、カーミラにしちゃデカい感じするけど…。
「ただいまぁー! はぁー、濡れたわ!」
ビショビショに濡れたエレナがドアを開けて入ってきた。
「おかえりー!」
「おかえりなさーい! 濡れたでしょ」
オレが駆け寄り、コロナもタオルを持って駆け寄った。
「あぁ、まだ寝てなかったのね? わぁ、ありがとう」
タオルを受け取って、エレナが笑った。
オレの大好きなエレナだ。
「あ、コロナ。タオル、あともう一枚とってきてくれる?」
「え?」
「もう1人いるのよ。この雨だもの。ウチに寄ってもらったのよ」
確かにエレナの言うとおり、もう一人、エレナの背後にいるのがわかった。なんか、
玄関先にいるみたいだけど…。
95エスカデ女主人公:2001/06/10(日) 09:39

「……わかった」
ちょっとだけ怪訝そうな顔で、後ろの人を見ようとしてたコロナだけど、すぐにうな
ずいてタオルを取りに走った。
「中に入って。そこじゃ寒いでしょ」
タオルを後ろの人物に投げて渡して、エレナは頭をふりながら入って来た。
エレナに続いて家に入って来た男を見て、オレはビビってしまった。ずぶ濡れで、デ
カくて、筋肉質で髪が長くて。そんでもってムスッとしてんだもん。
「はい、タオル…」
「ありがとう。寝てても良かったのに」
「…もう寝ようとしてたんだけどね…。…その、あの…さ…、エレナ…、後ろの人、誰
…?」
タオルを渡しながら、コロナがちょっと戸惑ったように、オレも聞きたかった事を尋
ねる。
「ああ、まだ紹介してなかったわね。エスカデよ。ま、例によって旅の途中で知り合っ
た仲間よ」
タオルで頭をふきながら、エレナは簡単に、そのエスカデって男を紹介した。エスカ
デは、無愛想にオレ達を一瞥して、簡単に会釈した。
エレナは旅の途中で知り合った仲間ってのを、けっこう連れてくる。無愛想だけど、
美形顔の瑠璃とか、可愛くてなんか役立たずな感じの真珠姫。ごーつくばりニキータ。
歌が上手なエレ。1回しか来た事のないシエラとラルク。
エレナの『例によって』ってのは、まぁ、例によってって、事なんだけど…。
エスカデは初めてだった。無愛想なのは瑠璃も一緒なんだけど、瑠璃はもう慣れちゃ
ったし、それに、瑠璃って最近無愛想じゃなくなったんだよな。
「こっちの男の子がバドで、女の子の方がコロナよ」
「…あ、あの、こんにちわ」
「ああ…」
コロナがおずおずとあいさつすると、エスカデはそう返すだけだった。
…な、なんだコイツ!
「気にしなくて良いのよ。筋金入りの無愛想なんだから」
「……………」
けっこーひどいエレナの説明に、エスカデはちょっと気分を害したみたいだけど、何
も言わなかった。
「あ、あのね、お風呂わかしてくるね。寒かったでしょ」
「あら、助かるわ。ありがとう」
「うん」
コロナは逃げるよーな感じでお風呂場へと走った。……オレは……どうしよう…。
96なまえをいれてください:2001/06/12(火) 07:34
sage
97なまえをいれてください:2001/06/12(火) 11:25
age
98エスカデ女主人公:2001/06/13(水) 20:25

「そ、その、あっついお茶、用意するからよ、エレナ達は、そこに座ってろよ」
「ありがとう。気がきくじゃない。どうしたのよ?」
「ど、どーもしないよ」
オレは熱い紅茶を用意するべく、暖炉に駆け寄った。やけどしないように、ミトンで
やかんを持つ。
オレがお茶の用意をしてる間中、エスカデは無口だった。オレとエレナが他愛もない
話なんかしてても、会話に入ってくる様子はなかった。
エレナは簡単に着替えて、エスカデの方は着替えがないからって、ズボン(スパッツ?)
だけになってたけど。
エレナが、エスカデの分の服も一緒に干していると、お風呂の方が一段落したか、コ
ロナがやってきた。
「あ、そうだ。おなかすいてない? シチュー残ってるのだけど、暖める?」
「ありがとう。でも、もう食べてきちゃったのよ」
「…そっか…」
「お茶、できたよ」
オレはエレナと、そしてエスカデにお茶を渡した。
「ありがとう」
エレナは髪を拭く手を止めて、オレの目を見ると、優しくほほ笑んでくれた。…オレ、
やっぱりエレナって大好きだ。
んでもってエスカデの方はと言うと。
「…すまんな…」
そう、ボソッと言うだけだった…。…差が激しいなぁ…。
一応、オレとコロナの分もお茶を注いでおいた。
そこで、みんなでお茶を飲む事になった。
「ちょっと、バド。その砂糖を混ぜるスプーンでお茶飲むのやめなさいよー」
「何だよー。いいじゃねーかよー、あっついんだからさー」
「他の人が使えなくなるじゃない」
「新しいの出せば良いじゃん」
「もったいないじゃないの! 洗う手間だってかかるのよ!」
99エスカデ女主人公:2001/06/13(水) 20:30
コロナは口うるさい。あれやこれやって、言ってくるんだもん。俺たちがこんな風に
しゃべってても、やっぱりエスカデは会話にはいってくる事はなかった。
「あ。お風呂見てこなくちゃ」
急に思い出して、コロナは小走りにお風呂の方へと向かう。
「お風呂わいたよー」
しばらくして、コロナがぱたぱたと足音をさせてやってきた。なんとなく顔を見合わ
せる俺たち。
「じゃあ、エスカデ先に入っててくれる? あなたが着れそうな服も探しておくから」
「……いいのか…?」
エスカデはいささか驚いたようで、顔をあげてエレナを見た。…エレナってお客を大
切にするから、こーゆー事当たり前なんだけどね。
「いいのよ。さっさと入っちゃって、さっぱりしてきちゃってよ」
「……しかし…」
「いいから。さぁ、入った入った」
半ば強引な感じで、エレナをエスカデを椅子から立ち上がらせると、背中を押すよう
に風呂場へとエスカデを案内する。
風呂場のドアが閉じると、オレとコロナを顔を見合わせた。
「…随分無愛想だな…。あのエスカデって男」
「瑠璃君以上よね」
コロナは肩をすくめてそう言った。やがて、エレナはお風呂場から戻ってきた。
「ごめんね。でも起きててくれて助かったわ」
「ううん。別にそれはかまわないよ」
オレもコロナと同意見だったので、うんうんうなずいた。
「あなたたちもお風呂入る?」
「いいよ。エレナ入ってよ」
オレ達は別に毎日お風呂入ってるワケじゃない。不潔だなんて思うなよ。普通の家に
お風呂がついてるってだけでもじゅーぶん贅沢なんだから。それに、お風呂に使う水だ
って入れるの大変なんだから。
「でも、せっかく沸かしたんだから、あったまりたいじゃない? なんなら、みんなで
一緒に入ろうか?」
100エスカデ女主人公:2001/06/13(水) 20:33

「ばっ、バカ言うなよ!」
オレは自分でも赤くなってるってわかった。…本当は入りたいけど、やっぱりオレも
男だもん! ……でも、オレは実はエレナの胸はけっこうデカいって知っている…。何
で知ってるかっていうと…その…、みんなで一緒に寝た時に…ちょっと…。
腕組んでそっぽ向くオレを、エレナはくすくす笑って見ていた…。……ちぇ…。
「でも、本当に良いのよ? そう毎日入れるものじゃないじゃない、お風呂って」
「…じゃあ、オレ達、エレナの後で入るよ。エレナ先入ってよ」
「あら、あなたたちこそ早く入って早く寝た方が良いんじゃないの?」
「いいの! エレナ先入ってよ! 風邪ひいたら大変じゃんか」
「あら、ありがとう。じゃあ、そうさせてもらおうかな。…っと、いけない、服を探し
てこなくっちゃ」
ころころと笑っていたエレナだけど、我にかえると、2階へと駆け登った。
しばらく、2階でなんかごそごそやってたみたいけど、なにか手に持って降りてきた。
…服、ちょうど良いの見つかったのかな…。
エレナはその服を持ってお風呂場に行ってたけど、戻ってきてそこの椅子に腰掛けた。
「ねぇ、エレナ、今度はどこまで行ってたの?」
コロナがたぶん、さっきからずっと聞きたかった事をやっと口にした。コロナが言わ
なかったら、オレが言うセリフだった。
「フィーグ雪原って知ってる? すっごい寒い所」
「あそこまで行ってたの!」
「そうなのよ。ちょっと遠出してみようって思ったんだけどねー」
エレナの冒険談はいつも面白いものばかり。全部話してくれてるわけじゃないのはわ
かってるけど、それでもわくわくさせるほど、面白いんだ。
「それで? それでどうなったの?」
「その雪女が言うにはね…」
バタン。
お風呂場のドアが開いて、エスカデが姿を現した。はいてるズボンがちょっと窮屈そ
うだった。
101エスカデ女主人公:2001/06/13(水) 20:35

「あら、あがったのね…。……やっぱりそれ、あなたにはキツかったかぁ…」
エレナは話すのを止めて、苦笑しながらエスカデに近づいて行く。
「いや…。借りてるのは俺の方だしな…」
「でも、今夜はガマンしてもらうしかないわね。明日には服も乾くと思うけど…」
「すまないな…」
「良いのよ。それくらい。じゃ、次は私が入らせてもらうわね」
エレナはオレたちを一瞥して、さっさと用意すると、風呂場に入ってしまった。
風呂場のドアがパタンと閉まると、なんとなく、気まずい空気が流れる。オレとコロ
ナは無言で「どうしようか」と目で会話してると、エスカデは無口なまま歩きだして、
暖炉の近くの椅子に腰掛けた。そして、濡れた髪の毛を乾かそうとしてるみたいだ。
「あ、あの、お茶いります?」
コロナが気を使ってエスカデに話しかける。
「いや、いい」
「あ…、そ、そうですか…」
と、とりつくシマがないよ…。
しばらく全員無言で、暖炉の火のはぜる音しかしなかった。
「…そういえば…」
沈黙をやぶったのは、意外にもエスカデからだった。
「お前達、いつごろからエレナの家にいるんだ?」
「え…? …いつからだっけ…?」
「確か、半年はもう経つわよ」
「…あれ、そんくらいしか経ってなかったっけ?」
「………………」
オレがそう言うと、コロナも自信なさげになって黙り込んだ。
「…じゃあ、けっこういるんだな」
「え、ええ…。ところで、エスカデさん」
「エスカデでいい」
「あの……エスカデ…。…そのぅ…エレナと冒険してるみたいですけど、その付き合い
って、長いんですか?」
102エスカデ女主人公:2001/06/13(水) 20:37
そうなのだ。冒険談をオレたちによく話してくれるエレナだけど、エスカデの話は聞
いた事がなかったのだ。
「…そうだな…。俺もいつごろからヤツに付き合い始めてるか覚えてないんでな。まぁ
…、そろそろ半年にはなるんじゃないかな」
半年も! なんでエレナはエスカデの事を話してくれなかったんだろう?
オレはそっちの方が不思議に思った。…確かにエレナは冒険談を全部話してくれるワ
ケじゃないってのは知ってたけど…。
「…ただ、ずっとヤツと付き合ってるわけでもないんでな。知り合ってから、となると、
それくらいにはなるだろう」
「はぁー…、そうなんですか…」
何でだろう。なんでエレナはエスカデの事をオレ達に話してくれなかったんだろう。
言いたくないから? なんで言いたくないの? それとも言えない事なの? 言えない
事って、何だろう?
オレがそんな事を考えて悩んでいると、お風呂場のドアが開いた。
「あー、良いお湯だった…。バド、コロナ、どっちが先に入るの? 早く入らないとお
湯が冷めちゃうわよ」
「どうする?」
「コロナ先に入れよ」
「…わかった…」
オレがそう言うと、コロナはすぐにうなずいて、風呂に入る用意をしだした。
「こういう時のお風呂って最高よねぇ。助かったわ、お風呂の用意してくれてて」
「へへ…」
良かった。エレナ、喜んでるみたい。
お風呂上がりのエレナは、なんか色っぽい。肌がほんのり桜色に色づいてて、オレ、
なんか大好きだ。
「ねぇ、エレナ、さっきの続きは?」
「あら。コロナがいないのに話しちゃって良いの?」
「良いんだよ! ねぇ!」
「ダーメ。2度話すのは面倒くさいからイヤよ。2人が一緒にいる時に、ね」
「ちぇー」
103エスカデ女主人公:2001/06/13(水) 20:38

エレナは髪の毛をタオルでごしごしとふきながら、二言三言、エスカデに話しかけて
るみたいだった。相変わらず、エスカデは無愛想なんだけど…。
…オレは聞こうかどうか随分迷ったんだけど、でも、どうしても聞きたくて、思い切
って尋ねてみる事にした。
「…ねぇ、エレナ…。どうして、エスカデの事、今まで話してくんなかったの?」
「……あら…。話さなかったっけ?」
「話してもらってないよ!」
「そうだったかしら…」
「なんだお前、旅の話をしてやってるのか?」
「そうよ。旅って面白いじゃない。いろいろ面倒だけど」
エスカデが口を開いたので、答えるエレナ。
「…まぁ、その…。こんな無愛想な人の事なんて話してもつまんないじゃない」
うわ…。エレナもヒドイ事言うなぁ…。
エスカデの方はと言うと、怒る気力も失せてるらしく、あきれたように軽く息をつい
ただけだった。

コロナの後にお風呂に入り、オレ達は寝かしつけられるように、2階に運ばれた。
エレナの部屋に作った簡易ベッドがオレ達の寝所。せまいんだけど、いいかげん慣れ
ちゃったよ。
お風呂上がりは体がほかほかで、布団の中に入っても、まだ暖かかった。
階下の方では、エレナがエスカデとまだ起きているみたいで、光が消える様子はなか
った。
夜中っていうのもあるんだろうけど、エレナとエスカデがどういう事を話しているの
かよく聞き取れなかった。ただ、なにかぼそぼそと話してるんだなってのが、わかるく
らい。
何を話してるんだろう…。なんて考えながらうとうとして…、それから寝てしまった。
なんとなく、エレナがオレ達に毛布をかけ直してくれたような気がしたけど、それも
夢だったのかもしれない。
104エスカデ女主人公:2001/06/13(水) 20:39
次の日、エレナとエスカデは冒険に出掛けてしまったようで、朝起きたらもう2人の
姿は無かった。


それから、エスカデはけっこうこのウチに来るようになった。無愛想なのは相変わら
ずだけど、話しかけたらそれなりに答えてはくれる。エレナが言うには「子供との接し
方がわかんないんでしょ」だってさ。
気になる事はあった。
もちろん、家に遊びに来るのはエスカデだけじゃなくて、ニキータとかけっこう来る
し、エレも遊びに来る。瑠璃と真珠姫はセットで遊びに来りする。
気のせいなのかもしれない。でも、エスカデに対するエレナの態度がちょっと違うよ
うな気がするんだ…。
どこが違うのか言ってみろって言われたら、わかんないって言うしかない。明確に雰
囲気や態度を変える事、エレナはしないから。
もしかすると、エレナと似た人間だからってだけなのかもしれない。種族にこだわる
なんて事、エレナはもちろんしないけど。でも、同族ってのはどこかホッとするって言
うのはやっぱり事実だと思う。オレもそうだし。
105エスカデ女主人公:2001/06/13(水) 20:40
「ふー…。最近おかしいにゃ。あんなにいた草人がいなくなったんにゃ。こんなにレア
になるなら一匹ガメときゃ良かったにゃ」
遊びに来たニキータがお茶をすすりながら話していた。家の前にいた4匹にも増えた
草人もいなくなった。
「高く売れるって?」
「そうにゃ。レアになればなるほど欲しがるってのは、ヒトの心理にゃ」
「まーね。それは言えるでしょうね。それにしてもニキータ、あなたそんなにお金を集
めて何かに使うの?」
一緒にお茶を飲みながらエレナが尋ねる。
「使うとかじゃなくって、儲けるのに意義があるのにゃ」
「ふーん…。私なんかは、使ってこそお金って思うけどなー」
それはオレもそう思う。でもエレナ、あれで実はかなりお金を溜め込んでいるらしい。
よくわかんないけど。エレナってさ、どっかから高く売れそうなモンスターのヒナを持
ってきたり、お得意の武具改造で高く売ってたりしてるらしい。
「そうにゃ。さっき、そこで手に入れたんにゃ。花の種なのにゃ。なんと200ルクで
大奉仕するのにゃ!」
「何の花の種なの?」
植物栽培が趣味のエレナの事。やっぱり花の種とかには興味があるらしい。
「これにゃ」
ニキータは懐からそっと小袋を大事そうに取り出して、机の上に種をおいてみせる。
「ふーん…。空色の種ねぇ…。確かにちょっと珍しいわね」
「ちょっとどころじゃないのにゃ。これ、すごーくすごーくレアなのにゃ」
「良いわよ、ニキータ。そんなに誇張しなくっても。花の種についてなら、私の方が知
識あるんだもの」
エレナがちょっとだけ意地悪そうにそう言うと、ニキータはグッと言葉に詰まった。
「そんな種に200ルクは誰も出さないわよ。まぁ、50ルクが良いところかしらね」
「………………」
4分の1じゃないか…。相変わらずニキータってごーつくばりだなぁ…。
106エスカデ女主人公:2001/06/13(水) 20:41
「そうね。じゃあ、私がごちそうしたこのお茶とお茶菓子とで交換ってのはどうかしら?
ついでにお茶菓子ももう1種類くらい出すわよ」
しばらくニキータは無言でエレナを見ていたけど、フーッと息をついた。
「………やっぱりエレナは食えないにゃー」
さすがのニキータも、苦笑するしかないようで、ぱりぱりと頭をかいた。
「でも、それでも50ルクにはならないにゃ」
「それなら、ウチで夕食でも食べていってよ。今夜は思いっきり腕をふるうから」
エレナがそう言うと、ニキータもニカッとほほ笑む。ニキータもエレナが好きみたい。
やっぱり、オレの“好き”とは違うみたいだけど…。
…後で聞いたけど、あの種、実は本当にレア中のレアで2000ルクくらいするかも
って、エレナが言ってた…。実はエレナってニキータよりもごーつくばり…?


空色の種に芽が出て伸び育つ頃。エレナは前に比べてあまり旅に出る事は少なくなっ
た。
考えてみると、あの草人いなくなり事件が境になっているような気がするけど…。
それから、以前にも増してエスカデが頻繁に来るようになった。オレは内心、気が気
じゃなかったけど、エレナは他の友人達とも変わらない態度で接しているようで、ホッ
とするような、ヒヤヒヤするような、そんな気分だった。
「…エレナぁ…、なんかもうこのベッド、ダメっぽいよぉ」
オレ達が使っている簡易ベッド。本当に簡易なもんだから、ちょっとした事ですぐに
壊れるようになってきてしまったのだ。
コロナはオレの寝相が悪いからだって言うけど、オレにも言わせてもらうと、コロナ
だって決して寝相が良いワケじゃない。
「…うーん…。新しく買うしかないかしら…?」
107エスカデ女主人公:2001/06/13(水) 20:42
補強に補強を重ねながら、エレナが困ったようにつぶやく。
「作れない?」
「作れない事もないんだけど…。……そうね、前々からちょっと考えてたんだけど、あ
なた達の部屋を用意しようかと思ってるのよ」
「オレ達の部屋ぁ!?」
「わたし達の部屋ぁ!?」
オレとコロナの声が見事にハモった。だ、だってだって。そりゃ嬉しいけどさ、この
家って意外に広いは広いんだけど、部屋数は少ないんだぜ?
「書斎に使ってる部屋があるでしょ。あそこはどうかと思って」
「え、で、でも、じゃあ、あそこにある本はどうするの?」
「全部を移動するわけじゃないけど、地下倉庫の方へ移そうかと思ってるのよ。本って
あんまり日の光を当てるの良くないでしょ。ちょうど良いんじゃないかなとは思ってる
んだけど。どうかしら?」
オレとコロナは顔を見合わせた。別に今すぐ部屋が欲しいワケじゃなかった。エレナ
と一緒の部屋で特に不満があるわけじゃなかった。ただ、簡易ベッドをどうにかしてほ
しかっただけだけど…。でも、自分たちの部屋っていうのは、ハッキリ言って悪くなさ
そうだった。
「2段ベッドなんかどうかなって思ってるんだけど…」
2段ベッド! 確かに、2段ベッドをエレナの部屋に設置するって大変そうだなと思
った。
「でも、あなたたちだけの部屋ってまだ早いかしら?」
「う、ううん。作っても良いなら、本当に良いの?」
コロナはちょっと興奮したように言う。
「良いわよ」
「でも、エレナの書斎、なくなっちゃうよ」
108エスカデ女主人公:2001/06/13(水) 20:44

「だったら、上の部屋で作業やれば良いのよ。私がよく使う本は上に持って行けばいい
し、あなたたちが使いそうなのはそのままの部屋においておけばいいし、残りは地下倉
庫へ移動すれば良いじゃない」
あの書斎、本ばっかりだけど、けっこう広いスペースがある。オレもよく行くのだ。
「どう?」
「じゃ、じゃあ、お願いしても良い?」
「良いわよ。バドはどう?」
エレナはオレにも聞いてきた。オレは、コロナと一緒というのでも、自分の部屋って
いうのに、一種のあこがれをいだいてたんだ。
「お、オレも良い!」
「そう。じゃ、決まりね。ただ、すぐに移動しきれるものじゃないから、すぐにってワ
ケにはいかないけど」
「うん!」
こうして、オレ達の部屋が用意される事になったのだ。

-続く
109サボテン:2001/06/14(木) 00:03
ばどところなは あたらしい
おへやをもらうらしい。

ぼくもおへやがほしいな、って
こっそりつぶやいてみたけれど、
なにしろこっそりだったから
だれもきいていなかった。

しがないさぼてんには
いきるのがつらいよのなかです。
110ネオ・サボテン:2001/06/14(木) 00:22
さばくのまんなかが おれさまのへや

おれさまの こころのふるさと
111なまえをいれてください:2001/06/15(金) 12:40
あげ
112アナグマ:2001/06/16(土) 21:00
ま。
113エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 12:54
 オレ達の2段ベッドは、町まで行って、注文して作ってもらう事になった。買うもの
は良いものを、というのがエレナのポリシーらしくって。…随分お金かかったんじゃな
いかな…。エレナは気にするなって言ってたけど。
「さぁ、じゃ。とりかかるわよ」
書斎の本を見渡して、エレナが意気込んで言った。まずは書斎を大掃除する事から始
まって。少しずつ本を移動させていく。
…エスカデは、以前よりもさらに頻繁に来るようになって、いない時の方が珍しいく
らいになってた…。
「おい、コロナぁ、それ、重いんじゃないか?」
コロナったら、あんなに無理してたくさんの本を運ぼうとしている。
「こ…これくらい…平気よ……」
ウソだぁ! あんなにヨタヨタしちゃって、あれじゃ転んじまうぞ!
オレがそう言おうと口を開きかけると、エスカデがやって来て、ひょいとコロナの本
を全部持ち上げてしまった。
「おまえは掃除の方をしろ。運ぶのは俺がやるから」
「あ…え、ええ…」
それから、エスカデはさらにオレが持っていた本とかも取って、かなりの冊数の本を
持ち上げて行ってしまった。
…確かに、ああいう力仕事は任せた方が良いかもしれない…。
「…良い人………なのかなぁ…」
エスカデが見えなくなってからオレがつぶやいた。
「…悪い人じゃないみたいだけど…」
オレ達は顔を見合わせた。
114エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 12:55
ハッキリ言って力仕事はオレ達の出る幕じゃなかった。エレナとエスカデが重い本棚
や机をほいほい運んでしまうのを見てると、お呼びじゃないなーと思ってしまう。
ペットモンスター達も手伝ってくれるんだけど、いかんせん細かい仕事ができるヤツ
らってほとんどいないから、あんまり役にはたたなかった。
「っはぁー…。キレイになっちゃうモンだな!」
オレは随分モノに乏しくなった書斎を見渡して言った。こうして見ると、寂しい感じ
さえする。
「ホント。さっぱりしちゃったわねー」
エレナが笑いながら言う。
「でもまぁ、今日はこのへんにしましょうか。もう夕食にとりかからなきゃね」
暮れなずむ夕日を窓越しに眺めると、エレナはキッチンの方に向かう。
エレナの夕食作りに、オレが手伝う時もあるし、コロナが手伝う時もある。エスカデ
も手伝わせている。彼が料理できるかどうかはオレは知らない。出された料理について
どこまでがエレナが作ったもので、どこまでがエスカデが作ったものかわかんないんだ
もん。味付けはみんなエレナがやるし。
会話を聞いてると、何かエレナがエスカデに料理を教えてるみたいなんだけど…。
…もしかして、エスカデもここに住み着くようになるのかな……。
115エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 12:56
オレは当番だったから、モンスター達にエサやりに小屋まで牧場に向かった。
牧場では、カーミラのライアと、サハギンのテイクが何やらしゃべっているようだっ
た。
「…なに話してんの?」
「あら…。バド。私たちの食事を持ってきてくれたの?」
「そうだよ」
「今日は何デポか? ぽっくん、お魚が好きなんデポ」
それって、共食い…? なんて思ったけど、オレは言わない事にした。前に言ってテ
イクったら泣きながら怒りだすんだもん。
「…ねぇ…、何、話してたの?」
…なんか、エレナがどうのって、言ってたような気がするんだけど…。
基本的にモンスターって、エレナがヒナから育ててるのが多いから、よくエレナにな
ついてるのばっかりだし、ヒナから育ててない亜人種系モンスターの彼らも、エレナに
よくなついてるんだ。そんな彼らがエレナの悪口を言うとは思えない…。
「…ライアが、エレナとエスカデってデキてるって言うんデポ、ぽっくん、そんなの信
じないデポ」
「そうなの?」
「だってぇ、私見たんだもの。エレナとエスカデが抱き合ってるの」
「う、うそぉ!」
オレは思わず大きな声で叫んで、そして自分の口をふさいだ。
「ウソじゃないわ。私、夜目が効くんだからぁ。あの夜、あの二人、間違いなく抱き合
ってたわ」
116エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 12:56
ライアはちょっとムキになった感じで言い張った。
オレとテイクは信じられなそうに、顔を見合わせるだけだ。
「でも、…でも、エレナみたいな人が、エスカデみたいな男を選ぶとは思えないデポ」
実を言うと、エスカデの評判はあんまり芳しくない。そりゃ、あれだけの無愛想で、
ガンコ者なんだもん。いっつもムスーってしてるし。実を言うと、エスカデが大口開け
て笑ったところってまだ見た事ない。
「わからないわよ。エレナって人間だもの。やっぱり恋人にするなら同じ人間が良いん
じゃないのぉ?」
髪の毛をかきあげながらライアが言う。
「そうデポか…? でも、エレナって、種族で選ぶような人じゃないデポよ…」
「そりゃ、エレナはそんなもので差別しない人よ。でも、差別とかそれ以前の問題で、
好みとかっていう問題があるじゃない。好きって言うのと、嫌いじゃないってのは、違
うのよ」
ライアは特有の舌足らずのような、からみつく感じの口調と声で言う。
「一応、エスカデってルックスは良いじゃない。性格はともかくさぁ」
「でも、エレナは外見で判断する人じゃないデポ」
「そんなのわっかんないわよぉ。じゃあテイク、あんた、エレナの好みの男ってどんな
タイプか知ってるのぉ?」
「……………………」
テイクが黙り込む。オレも、エレナがどんな男が好みだとか、考えた事はなかった。
「あのエスカデって男、強さは間違いないわよ。それは私が保証するわ。そこにひかれ
たのかもしれないし…」
117エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 12:57

「エレナより強いんデポか…?」
「そりゃ、エレナの方が強いわよぉ。っていうか、エレナの強さってハンパじゃないの
よ。あの人にかなうのなんていないわよ。ただ、自分より強いのが基準ってだけじゃな
いかもしれないし…。とにかく、あの2人、絶対あやしいんだから」
腕を組んでライアは言い張る。
「そもそも、エスカデ、ここに住み着きそうなんでしょ? それだけでもじゅーぶん怪
しいじゃないのさぁ」
「でも、このバドやコロナだって住み着いてるデポよ」
「バッカねぇー。バドやコロナが住み着くのと、あのエスカデが住み着くのって、次元
が違うじゃないのよ」
「次元が違うんデポか?」
理解できない、といったふうにテイクは顔中はハテナマークでいっぱいにした。
「そーよ。普通エレナみたいなトシの女がよ、エスカデと、バドやコロナ。同じように
接するワケないじゃないのよー」
「エレナは人によって接する態度を変える人じゃないデポよ!」
「変えるわよぉ! 一見変えてそうにみえないけど、絶対同じようには思ってないわ
よ!」
「じゃあ、エレナはぽっくん達モンスターと、ヒトとで態度変えるって言うんデポか!?」
「そーゆー意味じゃないわよ、バッカねぇ!」
うわわわ、険悪な空気になってきちゃったよぉ…。
「バカとは何デポかぁ!」
「なによ、やるっての?」
118エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 13:00
テイクはモリをちゃきっとかまえ、ライアはキバを見せて裂けるほどに口を開いた。
「や、やめろよー! こんなとこでケンカしてどうすんだよ!」
オレは慌てて止めに入った。
「……フンでぽ! エレナは人だからモンスターだからって差別なんかしないでぽ
よ!」
それだけ吐き捨てるように言うと、テイクはぷんぷんしながら小屋へと行ってしまっ
た。
「フン! 差別どうの問題じゃないってのにさ!」
ライアの方も鼻息荒く、イライラをおさえるように腕を組んだ。
「ねぇー、バド。あんたならわかるでしょ? 私が言いたい事をさー! 私だってエレ
ナが種族とかで差別する人間じゃないと知ってるわ。ただ、差別とか、そんなんじゃな
くって、フツー、子供と大人相手に同じように接するわきゃないじゃないのさ。大人に
向かって子供扱いするような態度されたら、フツー怒るわよ」
「…そ、そうだな…」
ライアは時々人間以上に人間みたいなセリフを言う。まぁ、亜人種モンスターだから、
人間に近いっちゃあ近いんだろうけど…。
「相手に合わせてるだけなのよ。…私が言いたいのは、そーゆー事じゃなくってさぁ、
相手をどう思ってるかで、接する態度くらい、フツー変えるって事よぉ」
「う、うん…」
オレは否定できなくて、もごもごしながらうなずいた。
「エレナってさー、誰にでも同じように接してるように見えるけど、あれはあれで微妙
に変えてんのよぉ? わかるぅ?」
119エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 13:01

「……い、一応…」
「でっしょー? それが差別ってんじゃないのよ。…でも…差別ったら差別になるのか
もしんないけどさ。それはイヤな差別とかそんなんじゃなくって、自分の中での差別な
のよ。バドだって、好きな人にあげるモノと、嫌いじゃない人にあげるモノ。そういう
とこで無意識に差別つけちゃうでしょ? それを言いたいのにさー、あのテイクはよく
考えないんだから!」
ライアは腕を組んだまま、まだぷんぷん怒っていた。
「…あの、…それで、さ…、エレナ、エスカデに対して、態度違ってる…? オレには
そう見えないんだけど…」
オレがそう尋ねると、ライアははたと考えこんだ。
「……そう言われると、どう態度を変えてるのか、私にもわかんないわ。でも、じゃあ
どうしてエスカデが住み着きそうなのよ?」
言われて、ハッとした。そもそも、なんでエスカデは家に住むようになったんだろう。
まだたまに出て行く事もあるけど、また帰るように家にやって来るし。
「………………わかんない……。エレナもエスカデも何も言わないよ…。……なんだか、
エスカデが住み着くのは自然な感じになる感じさえするよ…。…でも、エレナはよく色
んな人連れてくるし…。お客さん大好きみたいだし…」
「確かにエレナは色々な友人を招いているわ。でも、住み着いちゃうような友人はエス
カデしかいなくってよ。だから、エレナとエスカデってあやしいのよ」
オレとライアはいつのまにか、牧場で夕日を背にして、体育座りをしながら、しゃべ
っていた。
120エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 13:02

…住み着いてるっていう点ではオレとコロナもそうだ。でも、それを言ったらさっき
のテイクとの話とのような展開になりそうなので、オレは黙ってた。
エスカデがいくつなのか、聞いた事ないので知らない。20代中半から後半だろうな
とは思うけど。でもってエレナがいくつなのか、まだ知らない。
エレナにとって、オレは子供なんだろうか。恋人の対象として考えられないくらいに
子供なんだろうか…。
そう思うと、すごくさびしくて、ひざをぎゅっと抱え込む。
エレナが待ってくれれば良い。オレがじゅうぶん大人になるまで、待ってくれれば良
いのに。そしたら、立派な魔法使いになってエレナを迎えられるのに。
「私はエレナが好きよ。私だけじゃなくって、ここにいるみんな、モンスターも動物も
植物もみんなエレナが好きなんだわ。エレナも私たちの事好いてくれると思う。……で
も、エレナが恋愛対象としてみんなを好いているとは思えないのよ」
「……………………」
「エレナが、恋愛対象として好いてる人がいたって全然おかしくないじゃない。エレナ
だって年頃なんだもの」
………年頃って、なんだよ……。
オレは聞きたかったけど、言葉として出なかった。なんだか、エレナとオレとの間に、
その“年頃”っていう厚い壁がありそうな気がした。
「バドー! なにやってるのよー!」
時間がかかりすぎたか、コロナが俺を呼びにやってきた。
121エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 13:03

…住み着いてるっていう点ではオレとコロナもそうだ。でも、それを言ったらさっき
のテイクとの話とのような展開になりそうなので、オレは黙ってた。
エスカデがいくつなのか、聞いた事ないので知らない。20代中半から後半だろうな
とは思うけど。でもってエレナがいくつなのか、まだ知らない。
エレナにとって、オレは子供なんだろうか。恋人の対象として考えられないくらいに
子供なんだろうか…。
そう思うと、すごくさびしくて、ひざをぎゅっと抱え込む。
エレナが待ってくれれば良い。オレがじゅうぶん大人になるまで、待ってくれれば良
いのに。そしたら、立派な魔法使いになってエレナを迎えられるのに。
「私はエレナが好きよ。私だけじゃなくって、ここにいるみんな、モンスターも動物も
植物もみんなエレナが好きなんだわ。エレナも私たちの事好いてくれると思う。……で
も、エレナが恋愛対象としてみんなを好いているとは思えないのよ」
「……………………」
「エレナが、恋愛対象として好いてる人がいたって全然おかしくないじゃない。エレナ
だって年頃なんだもの」
………年頃って、なんだよ……。
オレは聞きたかったけど、言葉として出なかった。なんだか、エレナとオレとの間に、
その“年頃”っていう厚い壁がありそうな気がした。
「バドー! なにやってるのよー!」
時間がかかりすぎたか、コロナが俺を呼びにやってきた。
122エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 13:04

「あ、ヤベ…」
「そこに置いておけば、私が配っておくわよ」
エサの入ってるバケツを見ながら、ライアが言う。基本的にモンスターって生肉とか
でも全然平気だから、そのままで食べさせてる。亜人種モンスターとかには食べてもら
ってるって言う感じするんだけどね…。
オレはライアに後を頼むと、慌てて家に戻った。
…食事中、オレはチラチラとエレナとエスカデの様子を見ていた。
以前よりも口数は増えてきたものの、やっぱりエスカデはあまりしゃべらない。エス
カデは表情もあまり変えない人だから、エレナの事をどう思っているのか、わからなか
った。エレナもエレナで、オレ達や他の友人達との接し方に差があるとは思えなかった。
…この2人が…恋人同士…?
エレナはエスカデが好きなの? 恋愛対象でエスカデを見てるの?
ち、違うよな! 絶対違うよな!
「どうしたのバド? いきなり首をぶんぶん振ったりして」
「あ……いや、ちょっと、その、ハハハハハ…」
コロナに突っ込まれて、オレは笑ってごまかした。
やべ…。
123エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 13:08
2段ベッドがやって来て。オレ達の部屋は部屋として完成した。
エレナのお古の机でも、ちょっとばかりスカスカの本棚でも、なんか、オレは感動し
てた。
コロナと2人の部屋ってのは、魔法学園の寮以来なんだけどね。借りてるワケじゃな
い。オレ達の部屋なんだって。それが、嬉しかった。
「へっへっへー。なんか、良いな、このベッド」
「そうね。ちゃーんと私達の意見通ってるわよねー」
下のベッドで、コロナが寝転びながら、枕を抱き締めている。
オレ達は、このオレ達専用の部屋に満足しきっていた。しばらくは寝るのが待ち遠し
かったくらいだ。


エレナとエスカデは、改造した武器を試し切りに行くってんで、ペットモンスターも
連れて冒険へと旅立った。
最近、エレナはずっと家にいて、買い物くらいしか家を空ける事はなかったんだけど
…。
「バド、エレナの部屋を掃除してきてよー。洗濯は私がやったんだからね」
「わかったよー…」
オレはコロナの背中に向かってアカンベをしてから、掃除道具を持ってエレナの部屋
へと来た。
124エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 13:19

前、オレ達が使ってた簡易ベッドがさらに補強されて、寝心地はさらに悪くなった感
じのベッドがエスカデの今の寝所らしい。オレ達が寝てる時は、大きめに感じたんだけ
どな。エスカデが寝てると、足なんかはみ出してずいぶん小さく感じた。
…ライアは…、あーいう年頃の男女が同じ部屋だなんて、絶対に怪しいって言う。…
それなら、オレ達だってずっと同じ部屋で寝てたのに。…年頃の男女っていうのが、違
うは違うけどさ…。
やっぱり、コロナに怒られない程度に掃除をすませる。部屋のサボテンには、あんま
り水をやらなくても良いとのこと。
…そうだ、このサボテン、ずっとこの部屋にいるんだよな…。たまに出歩いてるのか
もしれないけど…。
「…なぁ、サボテン…。おまえ、この部屋にいるならわかるんじゃないか? エレナと
エスカデって、本当にデキてんのか?」
オレはしゃがみこんで、サボテンの話しかけてみたけど、サボテンは無反応だった。
「おい、何か言っ…」
「ふたりのせかい」
「え? お、おい、な、何言ったんだよ? おいってば」
何度かもう一度言うように言ったけど、サボテンはそれ以上言う事はなかった。
オレはあきらめて、掃除道具持って階下に降りようとして、柱にかけてある葉っぱの
形のノートが目に入った。
そういえば、あのサボテンはここによく日記をつけるって、エレナが前に言ってたっ
け…。
サボテンは、まるで別の方を向いているし…。………いいや、見ちゃえ…。
オレは葉っぱの表紙をそっとめくってみた。
125エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 13:20

『きょうもふたりはふたりのせかい。ぼくがいるってわすれてる。どうせぼくはさぼて
ん。しがないさぼてん。』
……? どういう意味だこりゃ…? オレはもう一枚、めくった。けど、関係のない
ような、わけわかんない事が書いてあったので、何枚かめくる。
『じぶんでもしゅみがわるいって。わかっててもすきだって。どうしようもないねって。
ぼくにはなしている。しあわせそう。いってることと、ちがうようなきがする』
…やっぱり…、エレナ、好きな人がいるんだ…。…それが……オレであること…なん
て、ないのかな…。しゅみがわるいって…。いや、でも、好きな人の事を言ってるって
限った事じゃないよな。こんなつたない字で書くサボテンの日記なんだもん。
サボテンなんだもん…。
それから、まためくったけど、全然関係のない事ばかり書いてあって、それ以上の事
はわからなかった。どうやらあのサボテン。エレナの恋人とか、そういうのにはあまり
興味がないらしい。
エレナの好きな人って誰だろう…。…ライアの言うとおり、エスカデなんだろうか…。
でも、オレはライアのエスカデ説を信じたくなかった。
でも…、本当だったらどうしよう…。本当だったら…。
「どうしたのよ、バド。青い顔して」
「い、いや、なんでもない…なんでもないんだ…」
その日はエレナは帰って来なかった。
126エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 13:21



「ただいまー」
エレナは、今回は早めに帰ってきた。……エスカデも一緒に帰って来た。まるで、帰
って来るのが当然のように…。
「お帰りなさーい。改造武器はどうだった?」
「良い値段で売れたわよー。切れ味もバツグンだったしね。設けたお金で色々食材とか
買ってきたからね。明日はごちそうにするわよ」
「本当!?」
コロナはすっごく喜んでエレナに抱き着いた。
「はい、お土産」
珍しく、エレナが小さな包みを取り出してコロナに手渡した。
「うわっ、ありがとー! エレナがお土産買ってくるって珍しいね!」
「それがねー、思ったよりも随分良い値段で売れたのよー。なんか嬉しくなっちゃって
思わず買ってきちゃったわ」
コロナを抱き上げて、エレナはにこにこして話しかける。
「…そのエスカデが持ってるの、みんな買ってきたの…?」
抱き上げられながら、コロナはエスカデの持ってる荷物を見る。…確かに、かなりす
ごい荷物だった。
「全部じゃないけどね。もらってきたり、拾ってきたりしたのもあるけど」
エレナのこーゆーとこってたくましいなって思う。
「…それにしても、エレナがたくさん買うって珍しいわね。そんなに良い値段で売れた
の?」
「…ほとんど詐欺まがいの売り付け手段でな」
エスカデがぼそっと付け加える。
127エスカデ女主人公:2001/06/17(日) 13:22

「失礼ね。ニキータをちょっとだけ見習っただけよ。それに、あっちの言い値で売った
んだもの。あっちだって文句ないわよ」
悪びれもなく、ころころ笑う。エレナってはっきりいってかなりしたたかだと思う。
何があっても生き残るんじゃないかなっていう底力は、誰にも負けないんじゃないだろ
うか。
「そうそう。バドにもあるのよ。…ハイ、これ」
エレナに笑顔で差し出され、オレはかなりビックリした。あのサボテン日記が頭をか
すって、エレナに対して、前のように接する事ができない。
「……あ、ありがと…」
「…どうしたの…?」
オレの様子がおかしいと見抜いて、エレナはオレの目をのぞきこむ。
「な、何でもないったら!」
「………そう…」
オレがムキになって言うと、エレナはとりあえずオレの目をのぞき込むのを止めたけ
ど、ちょっと腑に落ちない顔してた。
…エレナが悪いわけじゃない。それはわかってる。わかってるんだ。…でも、エレナ
に好きな人がいて、それがエスカデだったらって思うと…、オレは、エレナもエスカデ
も直視できない…。
「……最近…、バド、なんかおかしいのよ…」
コロナがこそこそとエレナに言ってるのが聞こえた…。フン、オレは地獄耳なんだぞ。
次の日、エレナが腕をふるってくれた料理は、ハッキリ言ってめちゃめちゃうまかっ
た。食卓にこれでもかって皿が並んで、どれもとびきり美味しくて。
ペットモンスターも一緒になって食べた。特に亜人種モンスターとかは、ヒトと嗜好
がそれほど違うものではないらしくって、ライアなんか大喜びだった。
オレもついつい食べ過ぎちゃって、大満腹だった。

                                     続く
128サボテン:2001/06/19(火) 00:33
ぼくがみてるのに、あんなことしちゃうなんて。
129なまえをいれてください:2001/06/19(火) 06:34
ライアたん(゚д゚)ウマー
130エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:37
「ふー…さびぃー…」
オレはトイレをすませて、自分の部屋に戻ろうとした。
もう夜もずっとふけて、みんな寝てるんじゃないかなっていう時間。一応、居間には
魔法の明かりがすっごくぼんやりと、心細く光っているくらい。昼は何ともなくとも、
夜はかなり冷え込む。暖炉の火も消えていた。
………ん………?
まだ…起きてる………?
2階が明るい。なにか、話してる声も聞こえる。
オレは、そぉっとそぉっと階段をのぼって頭だけを出してエレナの部屋をのぞきこん
だ。
「………じゃない……したら……」
「………まぁな……」
エレナとエスカデは、奥にあるテーブルに座ってなにか話している。そんなに大きな
声で話してるわけじゃないので、何を話しているのか、すぐには聞き取れない。
エスカデがあんなにちゃんと会話してるとこって、実は初めて見たので、そこでオレ
はかなり驚いたんだけど。
どうやら、お酒を飲みながら話しているみたい。机の上に酒瓶が1つあって、それぞ
れの前にグラスがおかれてる。たまに、エレナが酒をついでやったり、自分のについだ
りしてる。
オレは2人がどんな事を話してるか知りたくて、さらに耳をすませた。
「…さすがに、魔法都市というだけはあるみたいだな…」
「品質もしかりって、ね。ただ遠いでしょ、あそこは」
「それは仕方ないだろう」
「そうだけど…」
131エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:37
…彼らが、ちょっと良い雰囲気な感じがして、オレは内心ムッとなった。
……でも、さっきから冒険とか、モンスターとか、お酒とか、武器とか、そういう話
ばっかりしてるみたい。別に恋人同士だとかっていう会話じゃないな…。
……なんだ…。ライアの思い違いじゃないか。
…こうやってのぞいてんのもバカらしくなってきた…。寝ようかな…。
…………ん……?
「ふっふふ…。美味しいわねぇ、このお酒…」
「…飲みすぎたのか…?」
…エレ……ナ……?
…どうして…、エスカデの手を握ってるの…?
「んふふふふー…」
あんなふうに笑うエレナは見た事がなかった。いつもの明るい、優しい笑顔じゃなか
った。どこかこう、なんていうか、あのカーミラのライアが笑うような、そんな妖しい
感じの笑い方だ…。
「…大丈夫よ…。前ほど飲んではいないわ…」
「…まぁな…」
とろんとした目付きで、机の上のエスカデの手を、からみつくように握り締める。
………え…? え? ………え……?
な、何だよ…。何で、二人して見つめ合ってるんだよ…。
寒さのせいだろうか、体がカタカタ震えだした。
キィ…。
椅子から立ち上がり、エレナはゆっくりエスカデに近づく。それをエスカデは待って
いるように見えるのは気のせいだろうか…。
…!!
132エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:38
あ…。
エレナが…エスカデのこめかみ辺りにキスをして…。…頬に…、…まぶたに…、何度
もキスをして…。
どこかくすぐったそうな、あんなエスカデの表情も初めて見たけれど…。
そして、……唇に……。
見たくないのに、どこか拒否反応をおこしてるのに、オレはあの2人に目が釘付けに
なっていた。
長いような、短いような口づけが終わっても、2人は引き寄せ合うようにまた口づけ
を交わす…。
エレナはエスカデの頭を抱き締めて、髪の毛を握り締めるように抱き締めて…。
「ん…」
見つめ合う2人は、完全に2人の世界に入りきっていた。オレは、いきなりあのサボ
テン日記を思い出した。
サボテンは見ていた。ずっとこの部屋で。あの2人を。
「さすがにお酒の味しかしないわね…」
「当たり前だろう…」
「ふた…。しなきゃね…」
酒瓶にコルクを詰める。エスカデがゆっくり立ち上がる。
「……ふふ……」
妖しく笑うエレナは、いつものエレナと同一人物に見えなかった。そして、エスカデ
の方もあの無愛想なエスカデとは思えなかった。
「…この厚い胸板…。大好き…」
エレナの趣味って筋肉質なんだろうか。エスカデに抱き着いて、胸に頬を押し当てる。
エスカデも、エレナを抱きしめる。
………そんな…………。
それからまた、2人は何度もキスをして、それは、だんだん激しくなっていくようで
…。
「んっふ…」
133エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:39
エスカデの手がエレナの体をあちこちまさぐりはじめる。
んな…!
オレは嫌悪感と、嫉妬と、好奇心がごっちゃになってその場から動けず見ていた。
「…ん…。んん…、ちょ、ちょっと待って…」
やや、顔を赤らめたエレナは、エスカデから身体を話す。
「あっちで…ね…?」
エレナが視線をどこかに流す。ここからでは、どこをさし示したのかわからない。
「それじゃあ…、行きましょうよ…」
言って、これはすごく驚いたんだけど、エレナは軽々とエスカデを抱き上げたのだ。
「んしょっと…」
「あ、ちょっ、おい! やめろよ!」
「良いじゃないのよ」
エスカデみたいな体の大きな男の人が、エレナみたいな普通の(ように見える)女の人
にお姫様抱っこされる光景って実はかなり情けないんだけど、じたばたもがくエスカデ
を無視して、エレナは歩きだす。
あ…。そこは…エレナのベッドだ…。
エレナは、自分のベッドに半分ほうり込むかたちでエスカデを降ろした。
「…おまえなー…」
「かたいこと言わないでよ…」
「そういう問題じゃないだろう」
エレナのベッドは半分壁に埋め込んであるような形の、天蓋付きベッドだ。壁が邪魔
して、ここからだとベッドに座っているエスカデの足しか見えない。
エレナはエスカデを押し倒したのか、上半身が倒れるようにベッドの壁の影に消える。
エレナとエスカデの膝が重なり合う。
やがて、エレナはブーツを脱ぎ捨てて、彼女の足は壁の影へと消えていく。
「ほらぁ、さっさとブーツ脱ぎなさいよ」
「わかってるよ…」
134エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:40
エスカデがブーツを脱ぐために頭と上半身が壁から姿を現す。けど、全部脱ぎきらな
いうちに、エレナの手がすっとのびて、エスカデをつかまえてベッドの中に引きずり込
む。
「おい、まだ…」
エスカデはなにか言いながら、なんとか強引にブーツを脱ぎ捨てる。彼の足が、裸足
になった足が、引きずられるように壁へと吸い込まれていく。
…しばらくは、何も聞こえない感じがした…。
でも…、確かに壁の向こう側のベッドで、彼らは何かをしているようだった。
きぬ擦れの音。息遣い。聞き取れないささやき声。何なのかわからない音…。
「ふあ…はぁ…」
エレナの声がいつもとあきらかに違ってくる。湿ったため息みたいな声が耳につく。
ここからだと見えない。2人が何をしているかわからない。
でも…、声が…音だけが…いやに響いて聞こえる…。
「……あ……はあ……」
エレナの湿った声が耳について離れない。さっきよりも息遣いが荒くなってきている。
「はぁっ…はぁっ………あ…は……」
何をしている音なのか、わからない。知りたい、知りたくない。
「……はぁ、ふぁあ…」
エレナ…、何でそんな声出すんだよ…。
「…あっはぁ…、んん……ん…」
何でそんなに切なそうなんだよ…。
「……あん…、あ…もっと…」
何だよ…。
「…んっ! んあ…ふ…あ…そこ…は…」
何なんだよ!
「…あ、ん……エスカデ…」

かすれた声で呼ぶ名前が…、その切なそうな声で呼ぶ名前が、オレの耳に焼き付く。
「……おまえ…どこも酒の味がするぞ……」
135エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:43
「……あんたが酔ってんじゃない…」
「おまえもだろう…」
「……んふ…、どうかしら……」
「気分はどうだ…?」
「…良いんじゃない…? …ほらぁ…、もっと…」
「………ん…………」
「んっふ…そう……あ、ん……いい…」
「…なぁ…そろそろ……」
「…まだ…。…もう…ちょっと……はぁっ…」
「………………」
意味不明の、かすれた会話が聞こえる。
……でも、昔、こういうのを聞いた記憶があるような気がする。
あれは…、いつの時だったろう。魔法学園に行く前……。
「……おい………」
「………うん…」
ちょっと…、口調が変わった…?
「…ん、くぅっ、…あ、あぁ…」
「……ふっ…はっ…」
今まで、それほど大きくなかったエスカデの息遣いまでも聞こえてきた。
「ふあっ…はっ…ハァッ…」
「くっ…ふっ…」
クチャッ、チャプッと、水を打つような、でもちょっと違うような音。さっきも聞こ
えていたけど、さらに響くようで…。
「あんっ…あっ…はんっ…はっ!」
うくっ…。
こんなの…どこかで…。
「くっ…ふあっ…あアンっ! えっ…エスカッ…デ…」
ギシッ、ギシッとベッドのきしめきが聞こえる。
「はぁん…はぁん…ふぅっ…」
136エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:44
切なさと、苦しさが混ざった吐息が耳にしみつく。エスカデの荒い息をかき消すよう
なエレナの声は可哀想に聞こえて、エレナを早く解放させてやりたい気持ちになった。
何から? エスカデから? エスカデからエレナを解放?
「ちょっ…エスカデ…ダメ…そこはダメ…」
「…何言ってんだ…。本当は…喜んでるんじゃないか…?」
「お願いやめて…そこは…、やめ…んんっ…」
な、何だよ、嫌がってるんじゃん、エレナ、嫌がってるじゃん。
「ほら!」
「ふあああぁっ!」
エレナ!
助けたい。でも、オレはどうしたら良いのか? そもそも、今のあの2人を、オレは
なんだかとっても目の当たりにしたくなかった。
「あっ、あんっ! はんっ! はぁんっ!」
ベッドのきしむ音がさっきよりも激しくなってきた。寒さに加えて、怒りや寂しさが
ふつふつとわきあがってきて、オレはガタガタ震えながら、階段に座り込んで、膝をギ
ュッとかかえた。
「やめっ…やんっ! あっ…はあっ…!」
「……今度はこれで…どうだ…?」
「…ふあっ…んっ…、いっ…いいっ…」
「よっ…と…」
「い…いいよ…いいっ…、もっと…そう…」
エレナ…、どうしたの…? イヤじゃなかったの…?
「はぁ…はぁ…ふああ…」
エレナの吐息が耳から離れない。聞こえているのか、頭の中で繰り返されているのか、
わからなくなってくる。
とうとうたまらなくなって、耳をふさいだ。
137エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:45
何でかわからないけど、寂しくて情けなくて、そして寒くて、恐ろしい疎外感があっ
て。ガタガタふるえながら涙がこぼれ落ちてきた。でも、泣き声をあげるわけにもいか
なくて、必死で我慢していた。
けど、ふと、入ってきたエレナの声。
「……好きよ…エスカデ……」
え…?
今の、エレナ、言ったの?
「ふぁ、ふあああああっ!」
エレナの悲鳴にも似た声。思わずオレはその場に立ち上がってしまった。
そして、オレは瞬間的に思い出した。前に、見たことなのか、聞いた事なのかとかで
なくて、記憶が引っ張り出された。
……お父さんと、お母さんだ…。
でも、アレはお父さんとお母さんが夫婦だから…。夫婦…、夫婦って! あの2人、
夫婦じゃないじゃん!
なんで!? どうして!? あの2人は夫婦じゃない。じゃ、なんで!? どうしてだよ!?
オレはしこたま混乱して、震えと涙がどうしても止まらなくて、ふらふらと階段を降
りた。
138エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:46
冷えきった体でベッドの中に入る。この寒さよりも、あの…エレナの…あの吐息が…
耳から離れないよ…。
エレナ…。
オレの大好きなエレナ…。
……エレナぁ…、…エレナぁぁぁぁぁぁ…………。
涙がとめどなく流れて止まらなくて、情けないくらいに泣いても、ベッドの中で1人
という安心感も手伝って、オレはどうしようもないほどに泣いていた。


頭が痛い…。目も腫れぼったい…。鼻水はずるずる垂れそうだし、体も何かダルかっ
た…。
「おはよう…」
いつもよりちょっと遅く起きて、オレは一人気まずい気持ちで居間に出た。
「おはよう!」
エレナは…、エレナはまぶしいくらいの笑顔でオレを見た。
……なんで……?
「おはよう…」
エスカデはオレを一瞥して、つぶやくように挨拶をする。無愛想のまま、いつものよ
うに新聞に目を通している。
……どうしてだよ……?
いつもと全然変わらない2人に、オレは不快と嫌悪感で気分が悪くなってきた。
「…バド…? どうしたの? 顔色悪いけど…」
エレナがオレをのぞき込む。
…やめてくれよ…。あんな…、あんな事、昨夜2人であんな事しておいて、平気な顔
してるって何だよ! オレを心配すんのやめてくれよ!
139エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:47

「やめ…」
「バド? あなた熱あるの?」
エレナは強引にオレの額に手をあてる。それをふりほどこうとしたけど、エレナにか
なうわけもなくて。
「ちょっと! 熱があるじゃないの。風邪でも引いたの?」
違う…。違うんだ…。
オレの抵抗も空しくて、オレの体がフワリと浮いた。…抱き上げられたんだ…。
再度ベッドに戻され、オレはしっかりと布団をかぶせられた。
「寝冷えしたの? ちゃんと布団かけてないとダメじゃない」
…なんだよ…。じゃあ、エレナは…、エレナ達は昨夜、何やってたんだよ…!
「とにかく。今日はジッとしてること。後でおかゆを作ってくるから。いい?」
言い聞かせるように、ちょっと怖い顔をしてオレをにらむと、エレナはくるっと背を
向けて、居間へと行ってしまった。

…エレナは…エレナは憎らしいくらいに優しくて、オレをかいがいしく世話してくれ
て…、余計にオレを惨めな気持ちにさせた。
「バド…」
コロナが、オレをのぞき込んでいる。オレのベッドは上のだけど、風邪だからってん
で、コロナのベッドで寝かされる事になった。
「…なに泣いてるの…?」
「泣いてなんか…いねぇよ…」
「ウソ。そのほっぺの涙の後はなによ…」
「…バカやろ…これは汗なんだよ…」
「目から流れる汗ってなによ」
「………………」
コロナは、それからもオレの涙のワケを追求しようとしたけど、オレは絶対何も言わ
なかった。
140エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:52
オレの風邪は治りが悪くて、1週間たってもまだ鼻をグズつかせていた。
オレはエレナもエスカデも見るのがイヤで、なるべくなら、2人と話したくもなかっ
た。
今日も、1人で本を読んでいる時だった。
「なんデポかーっ!」
「なによっ! あんた悪いんじゃないのさっ!」
「ピキーッ!」
な…なんだ…?
牧場の方からなにか、けたたましい大騒ぎが聞こえてきたのだ。何事かと、みんなが
牧場に向かう。
「なっ、ちょ、ちょっと! テイク! ライア! ああもう、ラビコまで…やめなさい
ったら!」
牧場で、モンスター達が大ゲンカしてるんだ。5匹全員がもう大乱闘やっちゃって、
エレナが止めに入らなければ、だれか死んじゃうのかと思ったほど大乱闘だった。
「んもう、どうしたっていうのよ!?」
さすがのエレナも怒り出して、仁王立ちになってモンスター達の前に立ちはだかる。
エレナに怒られるとモンスター達も急に弱気になって、みんなシュンとうなだれてい
た。
「…どうしたの? このケンカの理由は何なの?」
さっきよりかは幾分優しい口調になって、エレナはモンスター達に問い詰める。
「………ライアが…悪いんデポ」
「なんだって!?」
「こらっ!」
「……………………」
みんな、黙りこくって、早く理由を言ってくれないかやきもきしはじんたころ、ライ
アが口を開いた。
「……ねぇ、エレナ! あなたさ……」
141エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:53

「…なぁに?」
「エスカデとデキてるんでしょ!? そうなんでしょぉっ!?」
「!!!!!」
エレナもエスカデも、そろってビックリした。あそこまでビックリするって2人とも
滅多にない。
「違うデポよね!?」
テイクがすがるように詰め寄る。けれど、エレナは「あっちゃあ…」って顔でエスカ
デと顔を見合わせるだけ。
「………………ふーっ」
しょうがない。そんな感じでエレナは深くため息をついた。
「ごめんね…。別にだますつもりはなかったんだけど…」
「まさか…」
「…ライアの言うとおりよ…」
「そんなあぁぁぁぁ…」
テイクはぼろぼろ涙を流してへたりこんだ。ライアはというと、したり顔で腕を組ん
だ。
「…なんで黙ってたデポかぁ、なんでエスカデなんデポかぁ?」
……それは、オレも聞きたい…。
「…以前からよく来る彼を、いきなり恋人です、なんてなかなか言えないじゃない。そ
れで…言いにくくて、そのままよ…。悪かったわ…、まさかこんな騒ぎになるとは…」
「じゃあ、なんでエスカデなんかが恋人なんデポかぁ!?」
「…なんでって…言われても…」
エレナは困ったように、顔を赤らめた。エスカデは「エスカデなんか」なんて言われ
たもんだから、仏頂面していた。
「エスカデはいつも無愛想で、ガンコで、人の話なんか聞かないし、モンスターだって、
バカにするデポよ!」
「この…」
142エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:54

さすがにムカッときたらしく、エスカデが剣の柄に手をかけると、エレナはその手に
そっとふれていさめた。…それがすごく自然で、オレの胸はギュッと痛くなった。
「…別に…、私はそういうの気にしないのよ」
苦笑いして、エレナがそう言うと、テイクは口をぽかんと開けた。
「あんたが弱虫で、うじうじする優柔不断だって、エレナは気にしてないじゃない。た
ぶんそれと一緒なんじゃないのぅ?」
テイクを見下ろして、半開きの目でライアが言う。
「………………」
それを言われて、テイクは少し恥ずかしそうに押し黙った。
「でも…どうして…」
テイクはゆっくりとエレナを見上げる。それはオレもライアも聞きたくて、みんなし
てエレナを見た。
エレナは少し苦笑してから、そして、照れた可愛い笑顔で人差し指を唇にあてた。
「ないしょ…」
あの笑顔の前に、テイクも、俺も、みんな何にも言えなくなってしまった。
「さあ、ケガとかしてない? ラビコも大丈夫だった?」
「誰もたいしたケガはしてないわ…」
ちょっとバツが悪そうに、ライアが言うと、エレナはほほ笑んだ。
「良かった。じゃあ、もうケンカしないでね」
「………うん……」
143エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:55



「なぁ、コロナ…」
「なによ」
その日の夜。オレは何とはなしに下のベッドのコロナに話しかけた。
「おまえ…、エレナとエスカデが…その、デキてて、どう思う…?」
「別に…。うすうすわかってたし…」
「え…!? おまえ、わかってたのか!?」
オレは心底驚いて、思わず起き上がる。
「なによ、今更。エレナが何度もエスカデを連れてくる事自体あやしいじゃないのよ。
大体、他の人はあっちから来る事ばかりなのに、エスカデに限ってはいつもエレナが連
れてきてたじゃないのよ」
…………そ、………そういえば……。
「バド、気づかなかったの?」
「…………………」
気づかなかった…というよりか、気づきたくなかったんだろうな…オレ…。
「…そりゃ、なんでエレナがエスカデ選ぶのか私も聞きたいくらいだけどさ。でも、エ
レナが彼で良いってんなら、私は何も言わない。エスカデがエレナを泣かせるようなら、
許さないけど、でも…エレナなら泣く前にエスカデをうまくコントロールしそうだし…」
「…コントロール…?」
「男に権限があるように思わせといて、その実、手のひらで転がしてるよーな人よ、エ
レナは。きっと、つかまったのはエレナじゃなくて、エスカデの方ね」
「……そ、そうかなぁ…」
「そうよ。だから、エレナがそれで幸せだっていうなら、何も言わない。…ねぇ、バド。
あんた、エレナの事好きだったんでしょ」
「んなっ! なっ、ち、違うよっ!」
144エスカデ女主人公:2001/06/20(水) 18:57
いきなり言い当てられて、オレはビックリしてはげしくどもった。
「ウソよ。だから落ち込んでんでしょ」
「なっ、オレは、落ち込んでなんか!」
「…ま、いいけどさ…。ねぇ、あの二人ケッコンすると思う?」
「し、知るかよっ!」
「動揺してる、動揺してる」
「コロナ! おまえなぁ!」
オレはとうとうベッドから身体を乗り出して、下のベッドに向かって怒鳴りつけた。
「…ともかく、今日はもう寝ましょ。私、もう眠いわ」
コロナが布団をかぶって寝返りをうったので、オレは言う気も失せて、枕に頭をしず
める。
まだ、エレナの事を思うと、胸がチクチク痛む。エスカデの事も良く思えない。
……でも……。コロナの言うとおり、エレナがそれで幸せだっていうなら、それでも
良いと思える。
…やっぱり、オレはエレナが大好きなんだなって、思った…。
おわり。

女主人子エスカデっぽいですね。
これにつづく新しい小説まってます(藁
145なまえをいれてください:2001/06/21(木) 15:20
age
146なまえをいれてください:2001/06/23(土) 20:17
あげ
147なまえをいれてください:2001/06/23(土) 20:17
うひゃ、あげ!!
148なまえをいれてください
サガの小説もキボンヌ