神乙です!
新スレたったか〜新劇公開から早かったな
1乙
乙です〜前スレは勝手に落ちるんかね?
>>6 埋めて500KB超えたんで一週間後に落ちるかと
実に素晴らしい埋め方ですな〜癒される
9 :
543:2009/08/11(火) 00:08:42 ID:???
>>1乙
こ、これは命令で乙しろと言われたから言ってるだけで、べ、別にうんたらかんたら。
前作もレス頂き感謝致します。専属作者なてくれとかまで言って頂いて
ましたが、自分、基本アスカとシンジのキャッキャウフフ以外書かないと思いま
すんでw
それでは新スレ記念に投下行かせて頂きます。
読み飛ばししたい方はNGワード
のらねこロック
でどうぞ。
>>9 キャッキャウフフ+(0゚・∀・) + ワクテカ +
*
「餌付け……?」
「せや、なんかあのガサツ女とシンジのじゃれ合い見とったらそない見えてくるわ」
「確かに。式波はちょっとネコみたいなところあるしね」
「ケンスケまで…」
「そやろ?ホンマにアイツは動物じみてるで。小鉄やらアントンばりの喧嘩っ早い野良猫や」
「そういえば、血統書ついてそうな野良猫はプライド高いって良く聞くしね」
いくらなんでも二人とも言い過ぎだろうとシンジは思っていたが、口に出さずにおいた。
そうでなくても夫婦だ同棲だハーレム野郎だとからかわれている。言葉に時々やっかみや
羨望が含まれているにせよ、あまり耐性が無いのでいじられたくないのが本音だった。
帰りにケンスケの家に寄って、トイレに行っている間にエロ本を鞄に放り込まれたりしたが、
今日もまたいつもと変わらない日常が過ぎていった。
シンジにとって世界を守るだとかエヴァのパイロットだとか、そう言ったものは正直荷が
重いし実感もあまり無い。
関わりがあって、大切にしたいと思えるようになってきたことを守るのが自分なら、多分
躊躇なくエヴァに乗るんだろうとシンジは思う。
『野良猫かぁ……』
スーパーで万能葱の品定めをしつつ、普段のアスカの行動をトレースしてくすくすとシンジ
は笑ってしまった。
葱を手に笑っている中学生を、パート帰りの中年主婦が気味悪そうに眺めて通り過ぎた。
*
【メシんときはふらっと来よって、食べるとすぐにおらんなるわな。せやかて不満があると
ニャーニャーニャーニャー泣きよる。ホンマ自分勝手なイキモンや】
―鈴原トウジ
「アスカ、ごはんできたよ」
「……」
返事もなしにのそのそソファから起き上がると、アスカは黙って椅子に座った。
並んだ皿をじっと見て、次にシンジをじっと見る。
「な、なに?」
「フォーク」
「今日は和食だし、アスカも日本食慣れるんだったら、箸のれんしゅ……」
「和食でもフォーク使って問題ないでしょ!ほら、フォーーク!!」
「……わかったよ」
シンジが差し出したフォークを乱暴に受け取り、旨いとも不味いとも言わずにアスカは黙々と
食べ続ける。ミサトがいない時は大体こんな感じだった。
アスカはごちそうさまの替わりにシンジに一瞥をくれて黙って立ち上がり、リビングのソファ
に再び寝転がって読み止しの雑誌をまためくり始めた。
洗い物の最中も時々振り返りつつ観察してみた。
伸びをしたり髪の毛をいじってみたり退屈そうに雑誌をめくったりと、こっちを手伝うなんて
お世辞でも聞くこともせず、自分の好きなように時間を過ごしていた。
『…………たしかに……』
その様は生存競争に晒されていない、餌付けされたノラネコだった。
*
食器を片付けて部屋に戻り、宿題をするために鞄を覗いてシンジは赤面した。
「な、何でこんなものっ……もうっ!……ケンスケぇー」
などと言いつつブツはクロゼットの定位置に補充し、とりあえず宿題に取り掛かった。
「あれ?まだある。なんだこれ?」
鞄の底に押し込まれていた何も書いていない茶封筒には、ケンスケのメモとネコジャラシが
入っていた。
【ネコの遊び道具といえばこれ。試しに遊んでやりなよ(^^】
―相田ケンスケ
『まさか…ねぇ……』
いくらなんでも反応しないだろうと思いながら、背中にネコジャラシを隠して部屋を出た。
アスカはまだ雑誌を読んでいたが、瞼が半分落ちている。
「ねえアスカ…」
「?…なによ?」
こちらに顔を向けたとき、ひゅん。という感じでネコジャラシを横切らせた。ネコジャラシ
の動きに少し遅れて、同じようにアスカの頭も動いた。
「なに?今の?」
目が爛々と輝き、さっきまでの眠そうな顔は吹っ飛んでいた。
『ほ、ホントに?』
ひょい、ひょい、ひゅっ。
とネコジャラシが横切るたびに、アスカは、
「なっ!なにこれ!にゃろっ!」
と、半身を起こしてネコジャラシを掴もうとする。
なおも続けるとアスカは段々体を起こし、仕舞には立ち上がってこちらにダイブしてきた。
「バカシンジ!とっととそれ貸しなさいよ!」
「ちょ、アスカわあぁあああ!」
二人して転倒して、シンジに馬乗りになったアスカは、必死に伸ばすシンジの手からネコ
ジャラシを取り上げた。アスカは不思議そうにまじまじとそれを眺めながら聞いた。
「何なのよ、これ?」
「ね、ネコジャラシだけど…」
その姿勢のまま一分ぐらい説明を聞いたアスカは、三か所ほどシンジの顔周りに引っかき
傷をつけて風呂場へ消えた。傷をさすりながらシンジは一人ごちた。
『どんだけネコなんだよ……』
*
「あ、そうですか。今日は泊まりですね」
「ごめぇんシンちゃん、リツゴがさ、どうしても今日中に…」
シンジはミサトの皿を片付けつつ、暫く愚痴を聞いた。そろそろ首が痛くなった頃、話の終わり
かけにふと思いついて、ミサトに聞いてみた。
「そういえばミサトさん、ネコって昼間何してるんでしょうね」
「へ?さあ…ねえ、多分寝てるんじゃないの?」
「寝てるんですか?」
「うん、
【だってホラ、ネコって夜行性でしょ?】」
―葛城ミサト
一向に片付かないアスカのダンボールに囲まれて寝床に転がり、電池切れのSDATをそのままに
天井を眺めていると、隣の襖が開いてトイレのドアが開く音がした。
『流石にこれは夜行性とは言わないよな…』
そんなことを考えていると水が流れる音がして、ぺたぺた歩く音と共に襖が開く音がした。
シンジの部屋の。
『そうだった…………』
寝惚けてアスカはたまにシンジの部屋に入り込む。
ミサトがいないと特に気が緩むのか、こうやってシンジの部屋にきてはそのまま横で眠りについた。
しかも困ったことに抱き癖があるのか、固まっているシンジの首筋に大概腕も絡めてくる。
シンジもその辺健全な男の子なので、頬をいじったりあちこち触ったりして悪戯するが、起きた
時の反撃が恐ろしすぎて、中々それ以上のことは出来なかった。
アスカは大体いつも普段の寝床との違和感を感じると、起き出してそのまま自分のベッドに
帰って行く。
今日も多分そうなんだろうと思いつつ、腕枕をした格好の不自由な体勢のまま携帯を手に取ると、
シンジはトウジとケンスケにメールすることにした。
【確かにアスカはネコでした】
―碇シンジ
Ende
ぬこアスカ…(´д`)カワユイ…
18 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/11(火) 00:21:01 ID:8kD7TSTO
乙です!!
そう言われてみると確かにネコかも!?ww
ネコアスカ可愛いなwwwGJ!!
部屋に来た後の事がもっとあると嬉しかった
20 :
543:2009/08/11(火) 00:25:40 ID:???
くっだらないことでうだうだやる日常が書いてみたくてやっちまいました。
破を見ながら式波アスカは本当にネコっぽいなあと思ってもいたものでw
おまけ
「ふん、あいっ変わらずいくじなしなんだから!」
そういいつつシンジの匂いやその日の動きをトレースして、アスカはいつものようにベッドの上で
ゴロゴロした―――。
「…………耳に息吹きかけるとか……どうだろ?」
夜は更けて行く――――。
21 :
543:2009/08/11(火) 00:29:07 ID:???
>>19 スミマセン。それおまけで書こうと思っておったものでw
>>21 19だけどおまけありがとうww
次の投稿を楽しみにしてます
この板は落ち着いてるしいい板だな〜
毎日きてますww
24 :
マサダ:2009/08/11(火) 09:38:17 ID:???
サードインパクトから、3年後の2018年11月某日
アタシは、人工進化研究所の所長室でついに恐れていた事を聞かされた。
「要するに、エヴァは不要になって、アタシは用済みに成ったって事ですね。」
永遠の夏が終わり、季節と言うものが戻ったこの国で、アタシは高校生になっていた。
隣にいるシンジも同じ高校に通っている。この街の高校は一つしか無いので仕方がない。
もっともシンジの場合は、見た目も随分変わっている。この男、流石に、長身の父親の遺伝子を
受け付いているらしく中学の後半から見る見る背を伸ばし、今は175は超えている。アタシは
女の子の性か、身長の伸びはほぼ止まってしまっていると言うのに...。
「まぁ、貴女の不満は解ります。でもね、これは、仕方が無い事なの。平和に成った今、必要なのは
人類をいかに再生させるかと言う事。その為にNERVも元の人工進化研究所に戻った訳だしね。」
所長である碇ゲンドウの隣に立っている碇ユイは、言葉を選びながらアタシを諭すように優しく言う。
彼女は、サードインパクト後にこの世界へと戻ってきた。そして、今は人工進化研究所の副所長をしている。
冬月副司令も健在でもう一人の副所長をしており、所長を中心してユイさんとは反対側に立っている。
25 :
マサダ:2009/08/11(火) 09:39:00 ID:???
「それにね。エヴァのプロジェクトは中止ではなくあくまでも一時凍結よ。再開は有るの。」
「同じ事だと思います。その時にアタシに席が有るとは思えませんが。」
一瞬、ユイさんの表情が曇った図星ね。
「我々は、君を使い捨てする訳では無い。アスカ君には生涯恩給が支給される。また、社会復帰の為に教育費は、全額国家の
負担で行う。安心して良い。」
元総司令らしい身も蓋も無い言い方ね。要するに金を払うから黙ってろって話じゃん。
「と言う事は、僕も貰えるんですか?」
コイツは本物のバカだろう。少しは空気を読め。何、嬉しそうに言ってるんだよ。
「貴方は無いわよ。シンジは私達に扶養されてるんだから、仮に支給されてもそんなお金を貰う気は無いわ。」
「もう、ケチだな。」
そう言う問題じゃないだろ。
「今回の話はこれで終わりです。シンジは下がって良いわ。アスカさんは残ってくれるかしら?」
アタシだけ?手続きの話かしら、そんなの総務の仕事じゃないの?
「冬月先生も外して頂けますか?少し、プライベートな話なので...。」
26 :
マサダ:2009/08/11(火) 09:40:44 ID:???
「アスカさん。取りあえず掛けてくれる。」
ユイさんに勧めれるままに、応接セットのソファーに腰を下ろすと、アップルパイが机の上に置かれる。
「食べてみてくれる?昨日作ったんだけど、口に合えば良いけど。」
ユイさんの手作りスィーツなんだ。お、意外と美味い。
「美味しいです。ありがとうございます。」
シンジの料理の上手さは、子供のころのユイさんの料理で舌が肥えていたせいね。
「それは、良かったわ。昨日、作り過ぎたんで少し持って行ってね。」
「あのぅ、ひとつ聞いても良いですか?」
「何かしら?」
「エヴァの凍結ですが、アタシの為じゃないんですか?」
「流石、アスカさん全てお見通しって事ね。」
アタシは、月に数日シンクロ率が激減する。しかも、年単位で見れば明らかにシンクロ率も落ちている。
そう、アタシが女の子から女に成ってからアタシの体形は明らかな変貌を遂げて、精神的にも以前とは随分変わっている。
これが、シンクロ率へ影響しているって言うのはアタシの勘だが、多分間違ってないだろう。
早晩、エヴァに乗れなくなるのは確実だ。
「アタシは、もう直ぐエヴァには乗れなくなるんですよね。」
「隠しても仕方ないわね。長くて後一年かな?」
「そうなってから、追いだしたのでは、恩給の額は明らかに減る。そちらの都合で追い出す形にした方が、アタシには
有利ですからね。」
「そこまで買被って貰ってもね。このタイミングでのエヴァの凍結は偶然よ。貴女が気にする話じゃないわ。」
「何れにしろ、アタシが用済みで追い出されるのには変わりないですから。」
「ごめんなさいね。貴女には辛い思いばかりさせて、本当に申し訳ないと思ってる。謝って済む話じゃないけどね。」
「良いんです。こうしなければ生き残れなかった訳だし。そもそも、アタシは何の役にも立たなかったんだから、追いだされても
文句は言えません。」
「それは、無いわ。シンジが生きて居られるのも。私が戻れたのも貴女が居たからよ。」
「慰みは要りません。アタシは、結果を出す義務がありました。アタシの育成には、大金がかかっているから...、にも拘らず、
アタシは役立たずの噛ませ犬だった。ユーロの連中もアナタ達も失望してますよね。」
27 :
マサダ:2009/08/11(火) 09:41:53 ID:???
ユイさんが行き成り立ちあがると、アタシの隣に座りアタシを抱きしめ、そっと、頭をなでてくれた。
「そんな事無いわよ。貴女は十分に活躍してくれました。感謝して居ます。有難う。本当に有難う。」
アタシの全身から力が抜けて行く。
「すいません...。少し、泣いて...良いですか?」
「いいわよ。少しは、肩の荷を下ろしなさい。」
「その前にすいませんけど...。」
「あ、ごめんなさい。気付かなかった。貴方、少し席を外してくれません?」
「え!何で?」
「良いから、早く。」
アタシは自分の弱い自我を保つために、極限まで上げられたプライドを上げてる。その為、総司令の様な人物が見ている前では
泣くことすら出来なくなっていたのだ。
「ひっ、うぁーん。何で、アタシだったの...。4歳だった...、普通なら親に甘えて、遊び回っている歳...。
遊びたかった....、甘えたかった...。アタシ、アタシ。」
泣いた事で少し、気分が落ち付いたのを見計らって。ユイさんは所長を呼んで元の席へと座った。
「ごめんなさい。話って何でした。」
「あのね。貴女が良ければ養子にしたいんだけど駄目かな?」
「!そんな事、急に言われても答えようが...。」
「答えは、直ぐで無くて良いの。こんな事で、貴女にした事が許されるとは思わないけど、これが、今の私達にできる
精一杯の事なの。」
「シンジ...君は知ってるんですか?」
「いいえ、私と碇で相談しただけ。貴女が了解してくれたら相談する積り。」
「...。」
「それにね。女の子も欲しかったのよね。」
「そう、女の子は良い...。」
「あ、な、た、変な事考えてません?」
「そ、そんな事は無いぞ。うん、決して、変な意味で言った訳では無い。」
28 :
マサダ:2009/08/11(火) 09:43:08 ID:???
所長室を出ると、シンジが待っていた。アタシが大泣きしていてせいで1時間以上部屋にいたが、それでも待っていてくれた
みたいだ。
「あ、アスカようやく出て来た。大丈夫だった?変な事、言われたりしなかった?」
「言っとくけど、アンタのご両親よ。そんな事有るわけ無いでしょ。」
「そうだけど、アスカ、目が腫れてるよ。泣いたんじゃないの?」
ヤバい、気付かれた。
「違う。これは、違うの気にしないで。」
「アスカ、エヴァが無くなる訳じゃ無いんだろ。再開されたらまたアスカが必要になるよ。」
「無理ね。アタシはもう直ぐエヴァに乗れなくなる。嘘だと思うならアタシのシンクロ率をグラフにして見なさい。バカなアンタ
でも下がっているのは解る筈だわ。」
「それって、偶然じゃないの?僕は殆ど変わって無いよ。」
「アンタならそうだろうね。要するに、エヴァは大人は乗れないって事よ。」
「それなら、僕の方が乗れなくなるのが先じゃないの。背がこんなに伸びて成長が激しすぎる。プラグスーツを年に何回も
替えないとダメなんだよ。」
「アンタは、形だけ大きく成っただけじゃん。中身は子供のままよ。」
「あ、そう言う事か、アスカは昔から大人びていたからな。」
「あんた、ばかぁ、良い?女の子はね、女の子は...。もう良い、自分で調べなさい。」
このバカは、女の事を何も解って無い。アタシに恥ずかしい事言わせないでよ。
「何だよ。教えてくれても良いだろ。」
29 :
マサダ:2009/08/11(火) 09:44:01 ID:???
セキュリティエリアの外に出ると、ヒカリと二馬鹿が居た。
「アンタ達が何で居るの?」
「碇君のお母さんから電話があってね。二人が落ち込んで居るかもしれないから来てくれないって言われて。何か有ったの?」
「あは、エヴァが無くなるんだって。ようやく、普通の生活が出来るって訳。何で、落ち込むのかな?」
アタシは、無理して明るく言ってみる。誰が、聞いても強がりにしか聞こえない。
「何だって、そんなぁー。僕が乗る前にそれは無いだろ。」
心配しなくてもメガネオタクに乗れる訳が無い。
「大丈夫、あくまでも凍結なんだ。再開は有るよ。」
今日は、コイツらと話していると疲れる。一人も嫌だ。
「ヒカリ、今から家に遊びに行って良いかな?」
「良いよ。大歓迎。」
「じぁね、アンタ達は適当に何処か行きなさい。」
「何や、相変わらず。いけすかない女やな。」
「仕方無いいよ。アスカは内心は結構、落ち込んで居るから、そっとしておいてあげようよ。」
「このアップルパイ、美味しいね。」
「バカシンジが料理が上手い理由は、こう言うのを小さい頃から食べていたお陰ね。本当に幸せな奴。」
アタシはユイさんに貰ったアップルパイをヒカリの家で食べている。味音痴の二馬鹿に食わせるのは
勿体ない、シンジは家で食えるから良いだろう。
「アスカってどんな話しても、碇君の話に成るね。解りやすいわ。」
「な、何、言ってるのよ。そんな事無いわよ。」
顔を真っ赤にしながら言っても説得力無いね。言われるまで気付かなかったアタシは相当に迂闊だ。
「でも、碇君は難しいよね。女の子の事何も解って無いって言うか、アスカが必死にアピールしても全然、振り向かない
もの。鈍感過ぎるわね。」
「あ、あ、あ、アタシが何時あのバカにアピールしたのよ。変な事言わないで。」
嘘ばかりだ。アタシは何時もシンジに自分を見て欲しい、自分だけを見て欲しいって願っている。でも、あの男は振り向いて
くれない。もっと、ストレートに言わないとアイツには絶対に伝わらないのは解っている。でも、それはどうしても出来ない、
何時も偉そうにしている癖に実は、強度の恥ずかしがり屋でシンジの前だと言いたいことと別の事を言っては、アイツを
困らせる本当に最低な女だと思う。
30 :
マサダ:2009/08/11(火) 09:45:53 ID:???
ミサトは首都の第二東京へ移り、シンジが実家で両親と暮らすようになって、アタシは元ミサトの住んで居たマンションで
一人暮らしをして居る。家賃は、研究所から出ているから心配はない。ただ、一人で居ると最近、出てくる奴が居る。
「やあ。」
「また、アンタか。毎日飽きないわね。」
「最近は、怖がらなくてつまらないよ。」
「あんた、ばかぁ、アタシが何時怖がったってーの。」
「相変わらず。面白いね。最初に現れた時の泣き叫んで怖がる顔は今でも忘れないよ。」
「あれは、怖がったんじゃ無くて、お、お、驚いただけよ。行き成り、銀髪の男が乙女の部屋に現われたら、普通は驚くわ。」
「そんな事言って、お札とか飾っていたじゃないか。」
「あれは...。もう、いいわ。それより何?」
「良かったじゃないか、シンジ君と再び暮らせるんだろ。」
「あんた、やっぱり、バカね。良い、シンジと兄弟に成るって事は、もう、シンジとは...出来ないって事なんだよ。」
「遺伝子的に繋がって無いなら関係ないだろ。」
「そう言う訳にはいかないの、それがアタシ達のルールなんだから。」
「リリンは、相変わらず面倒だね。」
「仕方がないじゃない。ルールを作らなければ、アタシ達の集団は最後には潰しあって滅びるもの。ルールを作っても、
色々あるんだからね。」
31 :
マサダ:2009/08/11(火) 09:46:41 ID:???
「だったら、正面からシンジ君を手に入れるしか無いんだろ。」
「それが、出来たら苦労は無いわよ。何度同じ事言わせるの?」
「僕は、君には感謝して居るんだよ。だから君にも幸せになって欲しいと願ってる。君の望みどおりに、君らの言うところの
レイをコッチに連れて言ったじゃないか。」
「その名前をアタシに聞かせるな。」
「ごめん、君は僕に教えてくれたよね。シンジ君を幸せにしたいなら、ユイさんを戻してやれと、確かにそれでシンジ君は
幸せになった。だから、君の望み通の事をした。でも、君は少しも幸せそうじゃない。」
「だったら、何でシンジの心からあの女の思い出を消してくれなかったの?アイツは、今でもあの女の事を...。」
「それは、僕でも出来ないと言ってるだろ。それに、君がシンジ君の前で素直に成れないのは、それとは関係ないと
思うけどね。」
「半分はイエス、でも半分はノーよ。アタシが欲しいのはアイツの心、その心に別の女が居るのは許せない。アイツがアタシの
物に成らないなら、アイツの存在はアタシを傷付けるだけ。だったらシンジなんか要らない。」
「やっぱり、君は面白い。そろそろ、行くよ。また、話しに来る。」
「ふっ、一昨日来やがれ。」
32 :
マサダ:2009/08/11(火) 09:47:41 ID:???
日曜日、アタシは制服に着替えると、シンジの家へと向かった。
こう言う話をする時は正装で行くべきだと思ったからだ。菓子折りとかは如何しようと思ったけど、そんなの持って行くのは
アタシらしくないと思って止めた。
「こんにちわ。」
「あれ、アスカ、今日は日曜日だよ。何勘違いしてるの?」
今日は、コイツとは話したくない。アタシが悩んでいるのに何て能天気なヤツだ。
「あら、アスカさん。...そう言う事ね。」
全てを察したユイさんがアタシに耳打ちする。
「シンジは居ない方が良いわね。」
アタシは、小さくうなずく。
ユイさんは何かをメモするとシンジを呼んで手渡す。
「シンジ、悪いけどこれだけ、これだけ、買ってく来てくれる?」
「ちょっと、こんなに買ったら結構時間かかるし、これなんかデパートじゃないと...。」
「良いから、行ってきて。お願い。お昼に好きなもの食べてきて良いから。」
「え、本当?じゃー行ってくる。でも、アスカは良いの。」
「良いから、行ってきて。」
「紅茶で良いかしら?」
「あ、お構いなく。」
居間に通されると、ユイさんが紅茶を入れてくれた。
「ミルクやお砂糖は要る?」
「大丈夫です。」
「ワシは要る。」
「ハイハイ、この人ね。こんな怖い顔しているけど、甘党なのよ。可愛いでしょ。缶コーヒーもロング缶なのよ。」
そういえば、セキュリティーエリア内に無理やり自販機を入れたのは碇司令って噂を聞いたけど、本当かも知れない。
33 :
マサダ:2009/08/11(火) 09:48:20 ID:???
「で、決めてくれた?」
「ええ、今回のお話は有り難いんですけど、お断りしようと思って。」
「そう、やっぱり、許してくれないのね。」
「いえ、そう言う意味じゃなくて、えっと...、シンジ君の事が...。」
「シンジの事、そこまで嫌いなの?」
「い、いえ、違うんです。そのー、シンジ君の事...だから。...兄妹になると...。」
肝心な事がはっきり言えないって相変わらず、情けないな。
「あ、そう言う事か、ごめんなさい。全然気付かなかったわ。」
「アタシ、素直じゃないから。多分、カレも知らないと思います。」
「そっか、でもね。私から言うのも何だけど、シンジは難しいわよ。」
「ええ、解ってます。でも、...なのは仕方ないです。だから、頑張るしか無いかな...。」
「有難う。家の息子をそこまで思ってくれる人が居て嬉しいわ。なんなら、私から言ってあげようか?」
「や、や、や、や、や、止めて下さい。その恥ずかしいし、第一、アタシは愛されたい娘なので、愛してくれないなら
付きあっても仕方ないし。多分、憎く成るだけだと思います。」
「そう、頑張ってね。私は何時も貴女の味方よ。」
「良く解らんが、アスカ君はシンジを...。」
「貴方は黙ってらして!」
「所長は黙っていてください!」
34 :
マサダ:2009/08/11(火) 09:48:47 ID:???
「ええ、今日の夕食はアスカが作ったの?不安だな。」
「嫌なら食うな。」
嘘、違う。食べて欲しいのお願い。
「大丈夫よ。アスカさん一生懸命作っていたし、私がチャンと見ていたからね。」
「て、言うか、殆どアンタのお母様に教えて貰ったって言った方が良いけどね。」
「じゃ、安心だ。アスカ一人じゃ不安だもんな。」
「どーせ、アタシ一人じゃ料理一つろくに作れませんよぉーだ。」
「一緒に暮らしていた頃は、僕が作っていたからな。アスカの手料理って初めてじゃない?」
そうだよね。こんな事なら、アタシも料理を作れば良かった。男の子のハートを射止めるのに手料理は、定番だもんね。
もっと、アタシの料理じゃ嫌われていただろうけど。
「でも、何でいきなり、アスカが料理なんて言い出したの?」
「別に良いでしょ。アタシもそろそろ、マトモに料理位出来るようになりたいもの。ミサト見たくなったら、ヤバいでしょ。」
「だからって、家で練習しなくても...。」
「あれ、シンジは不満なの?アスカさんには色々、お世話になたったでしょ。これ位は協力しても良いんじゃ無い?それとも、
貴方もアスカさんを世間の人が言ってるみたいに、役立たずとか思っている薄情な人かしら?」
「そんな事無いよ。アスカにが居てくれなかったら僕は如何なって居たか解らない。世の中では僕が一人で戦って、
僕を英雄みたいな言い方をするけど、僕なんか言われたままに動いていだけ、むしろ、凄いのはアスカだよ。」
「ありがとう。嘘でも嬉しいよ。」
やばい、泣きそうだ。でも今日は、泣いたらダメだ。
「それにね。アスカさんがこうやって来てくれると、女の子が出来たみたいで嬉しいわ。」
「そう、女の子が家にいると華やかで良い。」
「やっぱり、別の事考えてませんか?」
「だから、変な意味で言ってないと言っているだろう。全く、ワシを何だと思ってるんだ。」
やっぱり、十分怪しいよ。何で、ユイさんはこんな怖い人と結婚したのかな。
「しかし、アスカが料理に目覚めるとは、好きな人でも出来たのかな?」
「あんた、ばかぁ、何......、もう良い、知らない。」
「やはり、苦労しそうね。アスカさん。」
「ええ、そうですね。」
「何、何どうしたの?」
こうして、アタシのマサダ攻略が始まったのだった。
35 :
マサダ:2009/08/11(火) 09:50:57 ID:???
こんな感じです。
ユイが戻ってきたらで書いてみたら、シンジが単なるバカ息子になってしまいました。
このままいくと、バカップルになりそうな気もします。
乙。
ゲンドウワロスwww
マサダさん、GJです。
仕事の昼休みにこんなに良いSSが読めるなんて感謝です。
鈍感なシンジとアスカが無事結ばれれば良いですね。
僕も入れ代わりの続きを執筆せねば。(>_<)
続きを楽しみにしていますよ。(^O^)/
ゲンドウ、素がシンジっぽいw
なんか、黒アスカだなw
LOSかよww
乙です!
こういう和やかな空気はすごく好きです!!
続き楽しみにしてます!!
夏厨の臭いがする
自分で調べてから聞けよ…
>>42 ラブラブ・オリキャラ・シンジ
もしくは
ラブラブ・俺・シンジね
ifの時みたいにですね、分かります
48 :
35:2009/08/11(火) 20:22:15 ID:???
評判が良くて良かったです。
>>37 誤解の無いように題名について補足しますと、マサダとは紀元1世紀のユダヤ戦争で使われた砦の名前です。
これを攻略するのにローマ軍は2年かけてなだらかなスロープを作ると言う正攻法を取ったんですね。
難攻不落のシンジ君を攻略するには時間をかけて正攻法で攻めるしか無いって事です。
>こうして、アタシのマサダ攻略が始まったのだった。
ここだなw、LOS
俺×シンジ・・・?
アッー!
51 :
if :2009/08/11(火) 23:01:46 ID:???
呼んだ
もう来ないで
↑面白い会話ww
乙です。
ひそかに赤木博士がどうなっているか気になりますが..
おつ
>マサダさん
良かったです。ぜひ続編をお願いします
*言葉ハ違エド想イハ同ジ*
私はいつも通りの日常を送っていた。
シンジと一緒に起きてシンジと一緒に学校へ行く。
お互いに好きみたいではいるけれど、私たちはまだ付き合っているわけではない。
今のところはミサトとシンジと3人でただ同居しているだけ。
毎日普通の日常生活を送っていた。
ある日私たちはケンカをした。理由は些細なこと。シンジが掃除をしていたのでちょっかいを出していたら怒られた。
いつもならやめてよ!とか言って終わるはずなのに今日は怒られてしまった。
私はちょっとやりすぎたかな、と反省した。
いつもならシンジが謝ってくるはずなのに…今日は…こなかった。
テスト期間前だからピリピリしてたのかな。ごめんね、シンジ。
結局面目向かって謝ることは出来なかった。
バカね、アタシ…自分の気持ちに素直になれないなんて…
シンジと仲良く過ごしていたいのに…謝ることさえできないなんて…
一方シンジも苦悩していた。
あぁ。テスト前だからついかっとなって怒っちゃった…
ごめんね、アスカ。
僕だって怒りたくはなかったけど、ついカッとなっちゃった…
早く掃除終わらせてテスト勉強したかったんだ。
僕も面目向かって謝りたかったけどさ…タイミング…逃しちゃった…
でも…大好きだからね…アスカ。
結局お互いに謝ることが出来ず、その日を境に徐々に私たちの関係は悪くなっていった。
学校には一緒に行くがほとんど会話はない。
学校でもほとんど話さない。もちろん帰りもほとんど話はしなくなっていた。
でも離れることはなかった。
お互いに思っていたことは一緒だったから…
テスト直前の帰り道、私はこのタイミングを逃すまいと思いシンジに謝ることにした。
「あの…シンジ…」
「何?」
「あの…」
「だから何?早く言ってよ」
私は詰め寄ったがシンジは冷たかった。
「だから何なんだよ!」
「な、なんで私が怒られなきゃいけないのよ!」
「もういいよ!」
「よくない!」
「うるさい!もうやめてよアスカ!こないで!」
違う、違うんだよアスカ。これは僕の気持ちじゃない。拒否してるわけじゃないんだよ!アスカと…一緒に居たいんだよ!
でも僕は頭で考える前に口が先走ってしまった。
「え…」
私はショックだった。シンジにこんなこと言われるなんて。
あぁ…私はシンジになんとも思われていないんだ…
普段ならこれぐらいは普通に流せただろうけど、落ち込んでいた上にさらに追い討ちをかけるような言葉だった。
私は死にたくなった。テストも何もどうでもよくなった。
大好きなシンジになんとも思われていないなら…
シンジと一緒に居られないなら…
私は生きている意味がないもの…
深く考えすぎかもしれないけど、生きているのが嫌になった。もう嫌。
そう思うと私は道路に飛び出してしまった。
ドンッ
遠くからシンジの声が聞こえたような気がしたが、私は意識がなくなった。
続きは後ほど投下します。
こーゆー作品って放置になること多いよな
ほのぼの作品かと思ったら、とんでもない方向にw
続き待ってます
GJ!!
アスカが大丈夫なのか気になるなぁ
続き待ってます!
>>63の続き投下
しばらくして私は目が覚めた。
「ここは…どこ?」
目の前には一面に花畑が広がっていた。とても綺麗だった。
「あ、あそこに川がある。行ってみようかな。」
私はその川に向かって歩いていった。
そして川に入ろうとした瞬間、私は聞き覚えのある声を聞いた。
「アスカ!」
えっ…?シンジの声…?
「アスカ!そっちに行っちゃダメだ!」
私は振り向いた。そこにはシンジがいた。
「なんで…行っちゃダメなのよ。」
「そっちに行くと死んじゃうんだよ!」
「…いいじゃない別に。私はシンジに拒絶された以上この世にいる意味はないもの…
シンジのこと…好きだもん…」
「僕も…アスカのことが好きだよ!だから…行かないで!」
「嘘ね…本当はあんた私のことどうでもいいって思ってるんでしょ?」
「嘘じゃない!どうでもいいなんて思ってないよ!
アスカのことを…世界で一番愛してる!さっきは…ごめんね。本当は謝りたかったんだ…」
そう言われるとアタシはシンジに抱きしめられた。
「…本当?」
「本当だよ!」
「…じゃあ愛してるって証を私に…」
その瞬間私は半ば強引に唇を奪われた。
「ちょ、ちょっと!」
「これが…僕の証だよアスカ!だから帰ろう!僕たちの家に。
…僕はアスカが大好き。アスカと…ずっと一緒に居たい。」
「…ぐすっ…うん…」
私はシンジに連れられて川とは反対方向に歩き出した。
やっぱりまだ死にたくない。シンジと…一緒に居たいから。
こんな自分が情けないけど…まだ生きていたいと思った。
私の夢?はそこで終わった。
「アスカ!起きたんだ。良かったぁ!」
「シンジ…?」
目が覚めると、病室にいた。
「うぅ…本当に…良かった…アスカが生きてて…さっきはごめんね…」
シンジが泣いてる?…そっか。私のことずっと心配しててくれたんだ。
後で医者から聞くと、私は何ヶ所か打撲したが、それ以外は一時意識不明になったぐらいでなんともなかったらしい。
ま、不幸中の幸いってやつ?
…違う。シンジが守ってくれたに違いない。
というか、なんともないって言ったらおかしいかな。
*言葉ハ違エド想イハ同ジ*
そんな気がした。
それでシンジは輸血ならいくらでもするからアスカを助けてあげてください!なんてずっと言ってたらしい。
もう恥ずかしいわよ!
…でもありがとうシンジ。
今生きてられるのはシンジのおかげだもん。
シンジは私が入院中、毎日お見舞いに来てくれた。
学校が終わってからすぐ来てくれて面会時間のギリギリまで居てくれた。テストもあるはずなのに。
…そして私たちはいつの間にか仲直りしていた。
そして2週間後、私は退院した。久しぶりに帰ってきた。私の家に。
「ねぇ、アスカが意識不明のときに僕こんなことがあったんだ。
アスカのこと思ってたら突然目の前が真っ白になって気が付くと一面花畑で…そこにアスカが居たんだ。
覚えてないけどそこで僕は何か言った気がする。
アスカには僕の想い…伝わったかな?」
それ、私と一緒じゃないの。やっぱりシンジと私は繋がっている。助けにきてくれたのね。
「ねぇアスカ聞いてる?」
「聞いてる。想いは伝わってきたわよ。シンジ(^-^)」
私は最高の笑顔で返してあげた。
シンジの顔が真っ赤になる。恥ずかしそうだ。シンジったら可愛いとこあるじゃない。
「それでね、あの、僕…アスカのことが好きなんだ。だから…」
「付き合って欲しいの、シンジ。」
「えっ?」
「付き合って欲しいっていってるの!」
「…もちろん!」
「こ、これは、アタシのこと助けてくれたお礼として付き合ってあげるんだからね!勘違いしないでよね!そ、その…私を大切にしなさいよ。」
「約束するよ。一生アスカを守り抜くって!」
ちょ、そんなこと言われたら恥ずかしいじゃないの!今度は私の顔が真っ赤になった。
…でも嬉しい。私は今世界で一番幸せかもしれない。ありがとう。シンジ。
こうして私たちは新たなスタートを切った。よろしくね、シンジ!
それにしても事故の代償は大きかったわ。いい意味で…ね。
…えっ?テスト?入院中に病院で受けたけどバッチリだったわよ!
この天上天下唯我独尊のアスカ様にかかれば勉強しなくたって余裕よ!
…退院後シンジと一緒に補習したわ(笑)私でもやっぱり少しは勉強しなくちゃダメね(笑)
THE END
以上です。
初投稿だったのでちょっと緊張しました。
これからも書きたいと思いますのであたたかく見守ってやって下さい。
乙です。展開は不安だったがほのぼのしたw
個人的に顔文字はいらんかったかな?
乙乙
キンモクセイまだかのぅ
行間空いてるのと(笑)とか顔文字とか気になったけど、良かったと思う
読みづらくて申し訳ないです。
次からは指摘されたところとか直してまた書きたいと思いますのでよろしくお願いします。
好き嫌いの問題だけど、いきなり付き合ったり好きじゃないな
付かず離れず的な距離感が好きだたりする
まぁ夏だし、こんなのもありかも。
円谷氏はまだですか
夏だからとか作者にどんだけ失礼なこと言ってるんだ
夏だなぁwww
>>81 話の流れ的には起承転結がちゃんとあって読みづらくないよ。文体とセリフにもうちょっとフックが欲しいところです。がんばって書いちゃってください!
お、新しい書き師が来たね
91 :
トゥルー:2009/08/13(木) 12:12:03 ID:???
三号機に乗ったアスカを助けるシンジの痛快のラブロマンス
シンジ「ゲンドウさん!おめぇえええええ!!!ってやつはああああああああああ!!」
ゲンドウ「文句あるのか?助けられないのか!!」
そういうとゲンドウはダミープリグのスイッチを押さんとする
と、その時である
ミサト「待ててえ!!」
ゲンドウ「!!葛木さん!!」
静まり返る場内・・・・・と、その時である
リツコ「このシンジは止める事が出来ないのね」
シンジ「うぉおおおおおおおおお!!!アスカああああああ!!!」
初号機が雄たけびおあげる。そしてアスカの入っているプリグを引き抜こうとしている
ゲンドウは「やめろ!この!何故だ!ダミープリグが反応しない!!?」と言った
するとリツコは「シンジの願いがそうさせているのよ。言ったでしょう止める事は出来ないのよ」と言った
するとミサトは「いきなさい!」と言ってシンジを激いれするのである
キュポン!という音と共にプリグが抜かれた
シンジは思う。このドロっとした液体こそが使徒なのだと
シンジ「ネバネばネバネバとうぜぇヤツだ!これで終わりにしたやるぜええええええええ!!」
初号機の手の平にネバネバが吸い寄せられ消えていくのであった
リツコは言う。「初号機のシンジの願いの反映されたデストルドーとリビドーの境目なのだと」
そしてシンジはプリグをへし折る!アスカを助け出す、ただそれだけの為に!
ボキン!という音と共にプリグが割れた
するとアスカが中から出てきたではないか
シンジは安心して「良かったねアスカ」と言うとアスカも「良かったよシンジ」と言うと口漬を交わすのであった
ゲンドウは「桃太郎みたいなアスカならば・・・」と言うとその席から立ち上がって二人を祝福した
happy end
92 :
トゥルー:2009/08/13(木) 12:13:02 ID:???
自分で書いてて泣けてきた
みんなも泣いてくれると嬉しい
初めてこういうの書いたけど自分でも結構納得な出来だと思う
夏過ぎるだろw>プリグ
桃太郎wwww
お前わざとか?www
口漬w
新手の荒らしなんだろうけど、どうしてもダミープリグで笑ってしまうw
桃太郎じゃなくてかぐや姫だろ、と突っ込んだ俺
狙ってても天然でも凄い才能だとは思う
プリグwwキュポンwwボキンwwアスカが中からww口漬ww桃太郎ww
駄目だ腹いてぇwwww
>自分で書いてて泣けてきた
>みんなも泣いてくれると嬉しい
>初めてこういうの書いたけど自分でも結構納得な出来だと思う
この自信過剰っぷりは…ifの弟だろうか
これはifへのオマージュだなw
ifってんなこと言ってたの?
まぁ、あり。
(゚д゚)ナンダコリワ
な、夏厨なんかに釣られないんだからねっ…!!
実はifじゃね?
>>103 197 名前: if [sage] 投稿日: 2009/07/22(水) 19:28:57 ID:???
どうも、6日ぶりに投下します
7月20日に二回目の破を見てきました
一回目は6月28日です
サウンドトラックも買いました
そして、今、話題のRE-Takeの同人誌も読みました
俺の書く小説は、俺の思い描いている物語です。
みんな、それぞれのエヴァの楽しみ方があります。
今までこんな夢中になったアニメは数える程度です
以上です
258 名前: if [sage] 投稿日: 2009/07/26(日) 14:42:46 ID:???
まあ、うまく書けたかな、これは3号機事件のプロトタイプです
他の人たちはエヴァの話をどう料理してくれるんだろうか
では、さようなら
298 名前: if [sage] 投稿日: 2009/07/27(月) 22:38:56 ID:???
やっぱりプロは違うな
昨日、調子に乗ってサキエル話と
シャムシェル話を投下しようと思っていたが、やめて良かったよ
またこのスレが大惨事になるとこでした・・・いや俺か・・
この話はいいな。癒されるな
なんか元気が出てきた、明日も仕事が頑張れる。
みなさんお休みなさい
ベラベラとよく喋り、自分を肯定するとこなんかソックリすぎる
>>107 なによりビックリしたのは社会人なとこだ
いずれにせよ只者ではないッ・・・w
よくわからんがワロタw
113 :
ドライブ:2009/08/13(木) 20:17:03 ID:???
アタシがシンジと言う難攻不落の要塞に挑んでから、三年の月日が流れていた。
アタシ達は今、第二東京の大学に通う為に下宿をしている。残念ながら、アタシと
シンジは下宿先は違っていたが、大学も学部も同じだった。
「シンジ、早く開けなさいよ。何やってんのよ。」
アタシは、シンジの下宿している学生用マンションの扉をいらだち紛れに叩きながら言う。
完全に八つ当たりなんだが、他に出来る人が居ないので仕方がない。
「何だよ。アスカ、うるさいな。って何、ずぶ濡れじゃないかどうしたんだ?」
「ちょっと、付き合って。」
アタシはシンジの手を引いて、連れ出す。
「どうしたんだよ。行き成り、何処へ行くんだ。」
「良いから、黙って付いてきて。」
外へ出ると、既に雨は上がっていたが。道路はかなり濡れている。如何に、激しい雨か解る。
そのまま近くにある大学の駐車場に連れて行った。
アタシは、赤いスカイラインGTRの前までシンジを連れて行く。
「これって、アスカの買った車だよね。色が違った様な、しかも塗装がはがれかけている。」
「悔しいよぉー。」
アタシは、耐えきれずにシンジの胸に顔を埋めて泣き出してしまった。
「ちょ、アスカ、取りあえず。事情を説明してよ。」
「色が気に入らなかったんで、自分で塗料を買ってきて塗ろうと思って...。場所が無いんでココで
塗って...。塗り終わったら、にわか雨が...。今日は、晴れって...、気象庁を訴えてやる。」
「アスカ、少しは落ち着きなよ。取りあえず、家に来てお風呂に入った方が良い、風邪引くよ。塗装は、
来週、僕も手伝うから。」
「でも、また雨が降ったらどうすんのよ。」
「それについては、考えがあるから。」
「本当?裏切ったら、殺すよ。」
「はい、はい、取りあえず。戻ろ。」
114 :
ドライブ:2009/08/13(木) 20:18:18 ID:???
「アスカ、着替えはどうする?」
「アンタのシャツで良いよ。アタシなら十分ワンピになる。」
そう、シンジはの身長は180を越えていた。アタシはと言えば、人工肉しか無かったセカンドインパクト世代
の性か、150を僅かに超える位だ。
「そう言われても、色々有るんだけど。」
「あんた、ばかぁ?こう言うときはワイシャツって決まってるでしょ。」
「アスカ、変な漫画を読み過ぎて無い。」
「うるさい。黙ってろ。バカシンジ。」
風呂から出て来たワイシャツ姿のアタシを見たシンジが、直ぐに目を逸らす。やっぱり、怒ってるのかな?
当然だね。無関係な話で巻き込んで居るんだから。
「アスカ、そこにコーヒ置いておいたから飲んでね。バターとブランデー垂らしておいたから、温まると思うよ。」
「ありがとう。相変わらず気がきくね。」
こう言う優しい所はシンジの良い所だ。
「でも、困ったな。服乾かないよ。」
「仕方がない。今日は泊まっていくよ。」
「ちょ、アスカ、何言ってるんだよ。」
「仕方がないでしょ。それともこの恰好でアタシのマンションまで帰れって言うの?」
「仕様が無いなぁ。僕のベット使う?男くさくて嫌かもしれないけど。」
「一晩ぐらい我慢するわよ。アンタも一緒に寝る?」
「そんな小さなベットに二人は無理だよ。僕はソファーで寝るよ。」
全く、この男は、女の娘から誘っているのに何て態度だろう。でも、シンジの匂いがするベットで寝れるキッヤ。
って、アタシは何を考えてんだ。
115 :
ドライブ:2009/08/13(木) 20:19:31 ID:???
「アスカ、聞いたわよ。昨日、碇君の所に泊まったんだよね。」
同じ学部に進学したヒカリが聞いてきた。この学校、元NERV関係者の子弟がやたら多くて、流石にシンジの悪友は
居ないがヒカリは居る。その理由は、直ぐに解るので取りあえず省略。
「なんで、そんな事知ってんの?」
「アンタ、自分達が有名人だって事に少しは自覚したら?アンタ達の動向は常に誰かに見られてるって思った方が良いよ。」
この学校で出来た友達(女子ばっかり)も寄ってくる。確かに、元エヴァパイロットと言えば人類を救った英雄扱いだから
仕方がない。最も、有名なのはシンジの方でアタシは単なる噛ませ犬程度にしか思われてない。それでも。一応、
複数扱いにしてくれる友情には素直に感謝しよう。
「で、成果は?」
「ある訳、無いでしょ。あの男は難攻不落のマサダの砦よ。」
「そりゃ、上手い表現だね。」
「って、感心している場合か。アタシがココ一年、毎日、夕食を作りに行っても何にも無かったんだから。」
「そりゃ、アスカが食費を削って車代を貯めるために、碇君の所で食事をするなんて嘘を言うからでしょ。」
「普通は、1年も食事を作りに行ったら気付くよ。」
「それが無いのが、碇君の碇君たる所以じゃないの。」
「もっと、正直に言わないと、カレには通じないよ。」
「そんなの解ってるわよ。それが言えたら苦労は無いわ。」
先生が教室に入ってくると、一瞬に教室の空気が変わる。ざわついたのが一斉に黙り、皆が慌てて席に着く。
その先生の正体は、赤木博士だ。そう、この学校には赤木博士の講義がある。人工進化研究所に行きたければ、この人の
授業の単位は欠かせない。
何せ、このオバさん。じゃなくて、先生は気難しい。少しでも私語でもしようものなら、その生徒を睨みつけるとそのまま帰って
しまうなんて良くある。怒らせると、本当に怖い。このアタシでさえ怯えるんだから、どれだけ怖いかお解かり頂けるだろう。
116 :
ドライブ:2009/08/13(木) 20:20:05 ID:???
今週は最悪だった。家に帰るたびに塗装の禿げたスカGが目入り、気が滅入る。本当は車を乗り回したいが、車に
近づくと余計に悲しく成るので出来ない。折角、苦労して買った車なのになんでこうなるんだろう。
だから、日曜日は少し気分が良かった。漸く、真っ当な塗装に成る。しかも、シンジと一緒に居れるのも良い。
駐車場に付くと、既にシンジが長いポールとビニールシートを用意して待った居てくれた。シンジはアタシに
手伝わせながら、テントを張る要領で屋根を作ってくれた。
「これなら、多少の雨でも平気だろ。頑張って、塗ろうよ。」
「うん。」
アタシは、大喜びでシンジと作業を始めた。
作業が終わると、アタシは大はしゃぎを始めた。もう、嬉しくて嬉しくて仕方がない。シンジはしばらく黙って
見ていたが、
「着替えておいでよ。見ててあげるから。」
と言ってくれた。交替で見張りながら着替えを済ませて、塗装が乾くのを待つ。今日は、雨が降らなくて屋根は無駄だったけど
シンジの気遣いが嬉しかった。
屋根を片づけると、かなり遅く成っていたが、思い切ってシンジを誘う事にした。
「今日のお礼に特別に、アタシの車に乗せてあげるわ。感謝なさい。」
「でも、もう遅いし。」
「良いでしょ。ナビ席に初めて乗せて貰う名誉を無にする事は無いわ。」
そう言うと、無理やりシンジを押し込んで車を走らせる。
117 :
ドライブ:2009/08/13(木) 20:20:30 ID:???
「しかし、アスカは運転上手いよね。6速のMT車なんか普通は運転できないよ。」
「あんた、ばかぁ?こんなもんエヴァの操縦に比べれば簡単でしょ。」
「ええ、エヴァの操縦なんか別に難しく無かったじゃない。車の方が難しいよ。」
「アンタって本当に憎たらしい人ね。アタシがエヴァを操縦するのにどんなに苦労したと思ってるの。」
「ごめん。僕は何も考えてないから、何時もアスカに嫌な思いをさせていたよね。悪いと思ってるんだ。今更、謝っても
仕方がないけど。」
「はぁ、泣かせること言ってくれるじゃん。シンジも大人になったって事かしら。やっぱり、無敵のシンジ様は
お優しいですこと。」
「でも、良かった。アスカが明るく成ってくれて。」
「え?」
「アスカってエヴァに乗れなくなってから、無理して明るくふるまってる時も多かったけど、今日みたいにはしゃいだ
のって見た事無かったから...。」
「アタシが子供みたいな言い方しないでよ。」
でも、そう言われても仕方がない。アタシは未だに髪を腰まで伸ばして、ご丁寧にエヴァのインターフェースユニットを
髪飾りにして居る。もっとも、今付けているのは某玩具メーカが出している玩具だ。本物は大切な時にしか付けない。
「でも、今日のアスカはいつもと違うよ。何て言うか...、その可愛いと言うか。」
「え!恥ずかしい事言わないでよ。本気にするよ。」
あれ、シンジがこんな事言ったの初めてじゃないの?丁度、ラジオからはマライヤ・キャリーが流れているし、
これは試してみようか。
アタシは路肩に車を停めると目を軽く閉じて、シンジの方を向く。
「ねぇ、お願い...して。」
さぁ、女の娘がここまで勇気を持って誘ったのよ。根性見せてよね。
かなり長い時間が過ぎたような気がする。もしかすると直ぐかも知れない。シンジの手がアタシの肩に回ってきた。
ガタガタ震えているのが解る。可愛いね。そのまま、アタシを抱き寄せると、...。
これ以上は恥ずかしくて言えないよぉ。
ともかく、カレはアタシの事を好きになってくれたみたいだ。三年がかりで頑張ったかいがある。
118 :
ドライブ:2009/08/13(木) 20:22:10 ID:???
こんな感じです。
では、また。
話は良いんだが、素人にオールペンなんざさせんなよw
>でも、シンジの匂いがするベットで寝れるキッヤ。
ベットでキッヤ?
乙乙
携帯小説っぽい
まだスカイラインがついてるから34かな?
車の塗装って、刷毛で塗るとでも思ってるのww
またLAS投下しちゃうけど、いいよね? 答えは聞いて(ry
【ペギラ が 来た!】
「シンジ、何見てんの?」
風呂上がり。
アスカが髪を拭きながらリビングに戻って来ると、何やらシンジがテレビに見入っていた。
食後の片づけを全て終わらせ、ゆったり寛いだ雰囲気で。
「ドキュメンタリー。南極のコウテイペンギン特集だって」
現在の南極大陸と言えば、セカンドインパクトの影響で何物も寄せ付けなくなってしまった不毛の地。
シンジが見ている番組は彼(か)の地に、まだ生命が存在していた頃の記録映像とのこと。
「海洋生物研究所に行ってから、ちょっと昔の動物に興味あって」
「へぇ。バカシンジのくせに、教養番組なんて見ちゃうんだ」
セカンドインパクト以前の生物に興味を持つのは、悪いことではないとアスカも思う。
が、それにしても、
「けどさ。ペンギンなんて、ウチにも居るでしょ」
「そうだけどさ……」
どれも同じなんじゃないの、と。
コウテイペンギンと温泉ペンギン――――普段からペンギンを見慣れているアスカにとっては、大した差異があるようには思えない、とのこと。
「アスカも見れば分るって」
「どーかしらね」
お風呂上がりで薄着になったアタシより、絶滅した鳥を見てる方が楽しいワケ?
などと思いつつシンジに促され、アスカもリビングに腰を下ろした。
『コウテイペンギンのオスはメスの産んだ卵を約2ヶ月間、立ったまま温めます。
ブリザードが吹き荒れ、マイナス60℃にまで気温の下がった過酷な環境の中で雪だけを食べ、雛の孵化を待ちます。
繁殖地への移動期間を含めると、ほぼ4ヶ月間の絶食状態が続くのです』
テレビの中ではコウテイペンギンのオス達が身を寄せ合い、文字通り凍えるような寒さに耐えている。
雪のみを主食とし、立ったままずっと卵を温めるというのは、人間の視線から見てもなかなかの苦行に思えた。
「……根性あるじゃん」
「うん」
『こうしてオスの忍耐の甲斐あって、コウテイペンギンの雛が誕生するのです』
ナレーションと共にオスの脚の間から灰色の羽毛の雛が、よちよち歩きで這い出てくる。
生まれた瞬間から極寒の地で生きていくことを運命づけられたのは、雛にとって幸か不幸か。
「でも、この後みんな死んじゃったんでしょ。セカンドインパクトで」
「……やるせないよね」
アスカに同意を示し、シンジが頷く。
加持に誘われて海洋生物研究所に赴いて以降、シンジは少し感傷的になっているようだった。
「そう? 過ぎたコト言っても、どーしよーもないじゃない」
一方でアスカはドキュメンタリーが終了すると、予め冷蔵庫から取り出していた缶ジュースのフタを開けた。
海洋生物研究所でも素知らぬ顔をしていた彼女にとって、コウテイペンギンも飽くまで過去の遺物でしかないのだろう。
「……加持さんが、さ」
ジュースを喉にゴクゴクと流し込むアスカを横目で見ながら、シンジが言う。
「何かを作る、何かを育てるってのはいいぞ……って、言ってたんだ」
いろんなことが見えるし、分かってくる……それも付け加えて。
「加持さんの場合はスイカの栽培だったけど……」
植物を育てることも、あのコウテイペンギン達のように子供を育てることも、根本は変わらないのかもしれない、と。
幾星霜の年月が流れても普遍で有り続けるもの。それが生命の営み。
セカンドインパクトによって生態系が激変しても生命の奔流、その根源は依然として昔のまま。
使徒と戦うことは人類を守ると同時に、そう言った生命の循環―――――地球を守っていることに繋がっているのだと。
「アンタって、そんな影響されやすい性格だっけ?」
コトッ。
中身を飲み干した缶ジュースをテーブルに置き、アスカが訝しむ。
「影響ってワケじゃないけど……ネルフの人達だって、サードインパクトを起こさない為に頑張ってるんだしさ」
今度こそ全ての生物が滅びてしまう、それを食い止める為の戦い。
「……僕も、頑張らなきゃな、って」
「ふーん。それなりに自覚はあるようね」
シンジにもどうやら、やや遅咲きではあるがエヴァパイロットとしての自覚が芽生え始めたらしい。
それとも初めてアスカと出会った日に「エヴァに乗って戦えないことを恥とも思わないなんて!」と罵倒されたのが今になって効いたのか?
普段頼りない印象のあるシンジだが、たまに胸をキュンと高鳴らせる台詞を吐くので、油断ならないのだった。
「何かを作る、何かを育てる……か」
アスカは思索に耽る。
それは孤独を愛する彼女にとって、最も縁遠いコトではなかったか。
この場合、女性であるアスカに出来る生命の営みと言えば、出産と子育てに該当する。
子供なんて要らない。絶対要らない。そう固く思い続けても月経の痛みからは逃れられない。アスカが唯一、自身が女であることを呪う日。
「だったら」
アスカは身を乗り出し、眼前で寛ぐシンジを見据え、呟く。
キャミソールドレスの胸元がやや開き、発育良好な白い胸を僅かながらチラリと見せつけ、
「アタシも作ってあげよっか」
「え……?」
シンジに問い掛ける。
問われた方のシンジは、いきなりアスカが誘惑するような仕草を見せたことに驚きを隠せず、みるみる顔を赤くしていった。
視線はアスカの顔と胸元、上下を忙しくなく行き来していて、やたら落ち着きが無い。
以前レイを押し倒した時でさえ、ここまでの狼狽ぶりは見せなかったはずだ。
「作るって……な、何を?」
「決まってるでしょ」
更に身を乗り出し、シンジの耳に唇を近づけると。
強張ったシンジの腕に身体が触れるか触れないか、ギリギリの距離を保って。
とびきりの甘い声で、アスカは囁くのだ。
「シンジの――――こ・ど・も」
「いいっ!? こっ、子供っ?」
今度は顔面蒼白になって、シンジは慌てふためいた。
怯えるようにアスカから距離を置いて離れ、赤くなったり蒼くなったりしている。この状況では、そうならざるを得ないのかもしれないが。
「ちょっとぉ!? このアタシがアンタの子供を産んであげるって言ってんのに……何よ、その態度!」
「だって、いくら何でも子供って……! い、今はちょっと……」
気が動転しそうになるのも無理は無い。
まさかアスカからそんな提案をされるなど、シンジとて夢にも思っていなかったからだ。
「ば、馬鹿っ! 誰もすぐ作ろうなんて言ってないでしょーがっ!!」
業を煮やしたのか、アスカも顔を真っ赤にしてシンジに再度迫る。
いざ自分から発した言葉を省みると中々に大胆な台詞を吐いてしまったコトに気づくが、もう後の祭り。
「いつか! いつかの話っ!! 大人になってから、ってコト!!!」
「お、大人になってからって……」
アスカ本人としては上手く弁明したつもりだったのだろう。が、シンジからすれば遠回しに結婚の約束をされたも同然で。
今はダメだが、大人になったら子供を産んでやってもいい……それはつまり“そういうコト”であって。
「アスカ……。あの……言ってるコト、判ってる?」
「わっ、判ってるわよっ! ……アンタが床に額擦りつけて、どーしてもって頼み込むなら……すぐでもいいけど」
「それはマズいと思うよ……」
シンジとてアスカの提案に興味が無いワケではないが、如何せん時期が悪い。
まだどちらも14歳の中学生、しかも何時(いつ)まで続くか判らない使徒との抗戦の最中(さなか)。
仮にアスカが妊娠でもしたら、ミサトに何を言われるか―――――想像しただけで恐ろしい。
「アタシじゃ不満だってぇの?」
「そんなんじゃないよ! た、ただ……」
「ただ……何よ。せっかく産んであげるって言ってんのに……このアタシに恥かかすつもりじゃないでしょーね!?」
アスカの眼光は鋭い。以前の気の弱いシンジならば、即座に「ご、ごめん……」と謝っていただろう。
それ程、今のアスカは“有無”を言わさぬ迫力に満ち満ちている。
「えっと……ほ、ほら! “産む”にしても男と女、どっちか選べないしさ!」
「……男と女、どっちが欲しいの?」
「え……。お、女の子……かな」
まるで誘導尋問さながらに。アスカの迫力に負け、つい希望を口にしてしまうシンジ。
「女の子がいいんだ……?」
「う、うん」
ゴクリ、とシンジが喉を鳴らす。アスカの顔が晴れるか曇るか、その瀬戸際故に。
「じゃあ……女の子、産んであげる」
阿修羅の様を呈していたアスカの表情が綻んだ。
彼女自身も最初に産むなら女の子、と考えていたのだろうか。
尤も、いくら本人達が女の子を所望しても、男の子が生まれてしまう場合もあるかもしれないが。
「……聞いていい?」
アスカの機嫌が良くなったのを見計らい、今度はシンジが問い掛ける。
逃げ腰だった姿勢を正し、今度はちゃんと彼女と向き合うよように。
「何で急に、その……子供作ろうなんて、言い出したの?」
気になって仕方がない。彼女がそんなコトを言い出した意図が読めないのだ。あまりに“らしくない”から。
「ねぇ、アスカ」
極力、そっと。胸元を隠すアスカの手を取り、落ち着くよう優しく握って。
「……アンタの子供なら、産んでもいいかなって。そう思っただけよ」
本当は誰の子供も産みたくない。子供なんて絶対要らない。生理が来る度、そんな思いに苛まれる。
誰とも交わらず、ずっと独身を貫くものだとばかり思っていた。――――――碇シンジ、この少年に出会うまでは。
「……好きな男の子供、孕んじゃダメなワケ?」
「う……」
「アンタだって、アタシのコト好きよね?」
「す、好きだよ」
そもそも同じ屋根の下で若い男女が何ヶ月も過ごしていたら、互いを意識しないはずがない。
葛城家の家事全般を担うシンジはアスカに食事を作り、衣類の洗濯までしてやっている。
ミサトという保護者の存在を除けば、同居と言うより同棲と呼ぶに相応しい現状に置かれているのだ。
「なら光栄に思うのね。このアタシに見初めらてもらえるなんて、アンタは宇宙一ラッキーよ」
セカンドインパクト以前の地球に生息していた野生動物、とりわけ肉食獣のオスはメスを獲得する為に同種族のオスと激しく争っていたという。
メスはメスで、より強い遺伝子を残す為に本能的に強いオスを求める、とも。両者の利害が一致した時のみ、晴れてカップルになれると。
以上を踏まえると。シンジはまさに、アスカの御眼鏡に適ったのである。求愛行動をした覚えは、一切無いが。
「……何人、欲しい?」
「えっ!?」
「何人欲しいかって、聞いてるんだけど」
アンタ馬鹿? 子供の数に決まってるじゃない、と。
「シンジが欲しいだけ……産んであげるから」
「じゃ、じゃあ……いっぱい?」
「……スケベ。どんだけ産ませるつもりなのよ」
「だ、だって! ……アスカが、欲しいだけ……って」
「言ったけど……げっ、限度ってもんがあるじゃないのっ!」
具体的な数が思い浮かばなかったとはいえ、とっさに「いっぱい」と口走ったのは、いかがなものか。
「でも……産んでくれるんでしょ、アスカ」
「う、産める範囲でなら……いいわよ」
************
「もぉ〜。聞いてよリツコぉ〜!」
「ミサト?」
ある日の午後。
リツコの研究室に入室するやデスクに大きな胸を乗せ、ミサトは項垂れた。
苦い顔をするリツコそっちのけで疲弊し切った様子を見せつつ、うわ言のようにボソボソと愚痴を零し始める。
「最近さぁ。シンジ君とアスカが妙に仲良いのよねェ……すっごく」
「いいことじゃない。パイロットの関係を良好に保つのも貴女の仕事でしょ。
現にシンジ君とアスカのシンクロ率、ここのところ高い数値をキープしてるし」
何が不満なの、とリツコが怪訝な言葉を投げ掛ける。
「仲が良いにも限度ってもんがぁ、あるでしょーよ!?
なんかもう2人だけの世界ってゆーか、ラブラブ空間作っちゃってさ〜ぁ!?
目を離せば所構わず『アスカ……』『シンジ……』とか言っちゃって、ちゅっちゅちゅっちゅしまくってからにぃ〜!!
私、もう息苦しくて息苦しくて……家に居るだけで蕁麻疹が出ちゃうってゆーか……このままじゃ死んじゃう〜!!」
「ちょっ、それ私のコーヒー……」
「苦いものでも飲んでなきゃ、あの甘々空間にはとてもじゃないけど耐えらんないわよ!!」
最早、自宅に居るのに別世界に強制滞在させられているような―――――――そんな孤独感すら感じると言う。
「私の家を自分達だけの世界に変えちゃうつもりなのよ、あの子達ぃ……うぅ〜」
「クレイシュを作ったつもりが、文字通り“愛の巣”に作り変えられるなんて……無様ね」
「クレイシュ〜?」
「託児所。かつて南極に生息していたコウテイペンギン、その雛鳥達が形成していた集まりのコト」
「ぬゎ〜にが託児所よぉ! ねぇ〜リツコぉ〜。しばらくアンタんちに泊めてよぉ〜。家主は私なのに、すっごい居心地悪いんだってばぁ〜!!」 【終 劇】
タイトルは「ウルトラQ」の5話から拝借
時系列は例の如く「破」、無事に3号機が起動したであろうパラレル世界ってことで
ばいちゃ
GJ!
でも、チョイやり過ぎ感が...
神が来た
やり過ぎか?なんか子供らしい可愛さがあって好きだな。
GJ!!
>>118 変な空気の中、よく投下してくれた…内容も良かったよGJ
>>135 いつも良作をありがとう!
円谷氏の作品でタイトルが「地球はヱヴァンゲリヲンの星」があるかもいやないなと思っている俺はウルトラマンガイア好き
ついに、ついに、この時間がやって来ました。
まず、予告を投下します。
その5分後に、本編を投下します。
では投下
目覚めたら他人の部屋
周りには誰もいない
机には、人形とゲーム機
台所には、一枚のメモ
思い出した約束
ゲームオーバー
シンジは、私に何を伝えるのか
私は、どうしたら良いのか?
142 :
if :2009/08/14(金) 21:09:27 ID:???
「んん、ふあぁ、よく寝た」
私は目を擦り、腕を伸ばしながら周りを見た。
私の部屋じゃない。
「どうして、この部屋で寝ているの?」
私は部屋をもう一度、見渡した。
机に私のゲーム機と、私が持ってきた人形が置いてある。
部屋は狭く、荷物で占領されている。
本来ここは納戸だ。
私がここに引っ越してきて、アイツの部屋の荷物を、ここに移動させたのだ。
「バカシンジの部屋だ。なぜ私が、バカシンジの部屋にいるの?」
・・・おっと、私の自己紹介がまだでしたね。
私の名前は、式波・アスカ・ラングレー。
ユーロ空軍のエースで、階級は大尉だ。
そして、EVA2号機のパイロットである。
このバカシンジとは、碇シンジのことだ。
私の相棒で、同居人の一人だ。
……話が脱線したな、元に戻す。
私は時計を見た。(午後4時30分)
「こんな時間まで寝ていたのか?」
私は、とりあえず台所に向かった。
「バカシンジ。今晩の……あれ、……いない」
何時もなら、夕飯の準備をしているのに、何処にいったのだろう。
私は、テーブルの上に一枚のメモが在るのに気がついた。
「ん、これは」 私はメモを見た。
"アスカへ
買い物に行ってきます" シンジ
「買い物!!……買い物?」
私は、何かを忘れていた。
143 :
if :2009/08/14(金) 21:10:45 ID:???
***
シンジが襖を開け、私に言う。
「アスカ。夕方に買い物に行くから、付き合って」
「んん」
「その時間になったら、呼びにいくから」
「んん」
ゲームに夢中で、私は、空返事をした。
***
私は思い出した。
私は、シンジの部屋で寝転がってゲームをしていたのだ。
そして、GAME OVERになって、そのまま寝てしまった。
「ああ!買い物だ。忘れていた。……どうしよう」
私は慌てて、靴を履き玄関を飛び出した。
「あの、ばか!!」
私は、シンジがいつも買い物をしている店に走っていった。
腹が立った。
シンジに。
なぜ無理矢理にでも、起こさなかったのか。
腹が立った。
自分に。
シンジの約束を破り、寝ていたから。
私はバカシンジに甘えていたのか。
そんな事を考えながら走っていたら、店に着いた。
店内を探したが、シンジは居なかった。
「入れ違い!」
私は来た道を引き返した。
シンジを見つけ、大きな声で呼んだ。
144 :
if :2009/08/14(金) 21:12:04 ID:???
「こら、バカシンジ」
シンジは、私の声で振り返る。
「ん、アスカ。どうしたの?汗まみれだよ」
私は額の汗を手で拭い、2〜3回深呼吸をして、シンジを怒った。
「バカシンジ!あんたどうして、私を起こさなかったの?」
「だって、気持ちよく寝ているし、起こしたら悪いと思ったから」
「悪くない!無理にでも起こしてよ!!」
「別に良いよ、荷物少ないし」
その言葉を聴いて、また私は怒った。
「あんた、バカ!!両手いっぱい持って、少ない事ないでしょう」
「一つ持ってあげるから、貸しなさい」
「いいよ、重いから」
「いいから、貸しなさい!!」
私は強引に、シンジの手から買い物袋を奪った。
重かった。
「ほんとに重いわね」
「でしょ」
シンジが笑う。
私はシンジの横に並び、一緒に家まで歩いた。
「バカシンジ」
「何?アスカ」
「ごめん」
「分かっているよ」
「アスカ」
「何?バカシンジ」
「寝顔、かわいいね」
私はシンジの頭を殴った。
[忘れ物]
終わり
145 :
if :2009/08/14(金) 21:12:54 ID:???
以上です
偽物?本物??
148 :
if :2009/08/14(金) 22:08:08 ID:???
自分のプロの目で感じてください
シンジ
『またデート?』
アスカ
『そう』
それは普段と変わらない1日になるはずだった
『男と女の誓い』
アスカ
『まったく、ヒカリも困るわねぇ〜こんな事を頼んでさ〜』
シンジ
『だったら断れば良いじゃないか〜』
アスカ
『なんでアンタが口出ししてんのよ!!アタシが決めた事にちょっかいださないでよね!!』
シンジ
『あっ・・・ゴメン』
アスカ
『ふん、じゃあね』
そう言うとアスカは玄関から出て行ってしまった
シンジ
『アスカ・・・大丈夫かな?』
>>149 続き
アスカ
『あの馬鹿!!少しは他のデートに行く私を引き止めようと言う気持ちは無いのかしら!?』
アスカは心の中で叫んでいた。
友人であり、同居人である男の子に向けて
そんな事を彼女から言われている男の子はというと・・・
シンジ
『アスカ・・・』
彼は皿を洗いながら呟いていた
どうやら彼自身もアスカと言う少女が他の男とデートをするのが気になるようである
シンジ
『心配だな・・・あの時引き止めれば良かったかな?』
口では言えるものの、行動には移せないのが彼の悪い所だった
この2人の話からすると両者共に、互いに意識はしているようだが、素直にはなれないようである
>>150 続き
男
『良いだろう、惣流さん?』
アスカ
『嫌よ、なんで夜まで付き合わきゃいけないのよ!!』
揉めているようである
どうやら『男とのデートが聞いていた内容と違っていた事』が原因のようである
アスカ
『アタシは夜まで付き合うのなんて絶対嫌!!』
男
『頼むよ、今日は映画とレストランを予約してるんだ』
男の言い分は勝手過ぎるモノである
彼女が嫌がるのも無理無いはずだ
アスカ
『もう良い、アタシ帰る』
そんな台詞を言ってアスカは帰ろうとするが、男はアスカの腕を掴み、行かせようとはしない
アスカ
『離してよ!!』
男
『お願いだよ!!』
そんな時、押し問答をしている2人に近づいて来る人影があった
続き待ち
>>136-140 コメありがと
>>1の保管庫が去年の9月からずっと更新止まってるみたいなんで
前スレに投下した8本のSSは自サイトで個人的に纏めるヨ
ばいちゃ
(; 0w0)トリ忘れてた……
自サイト!?持ってるの?作るの?
>>155 SSサイト持ってる(エヴァじゃないけど)
宣伝乙と思われるのも面倒なんで、ここらでばいちゃ
>>151 続き
男
『いい加減にしろ、この馬鹿女!!』
どうやら男のネジが吹っ飛んだようである
男
『コイツ!!』
男は拳を振り上げた
流石にアスカも急な事に対応出来なかった
アスカはとっさに目をつぶり、体を固ませた
なぜだろう、男の拳の痛みが来ないのである
恐る恐る目を開くと、男の拳はアスカの顔寸前で何者かによって受け止められていた
>>157 続き
見ると、1人の青年が男の拳を受け止めていた
青年
『いけないな〜女性に拳を振るうのはさ』
そういうと青年は合気道のような技を使い、男を動けなくした
その行動は一瞬だった
青年
『いいか、二度と彼女に近づくな』
青年はドスの効いた声で男に語りかけ、男を蹴っ飛ばした
すると男は青年に恐怖し、逃げて行った
青年
『さて、大丈夫かな?お嬢ちゃん』
青年は笑顔で語りかけた
>>156 >>1のサイトはdat落ちした時に保管作業する事になってるから
前スレは近いうちに保管するんじゃないかな?
>>158 続き
アスカの心に衝撃が走ったその笑顔は何故かシンジに似ているように感じた
アスカ
『一応、礼を言うわ。有り難う』
青年
『いえいえ、お嬢ちゃんのピンチを助けられて良かった良かった』
アスカ
『そのお嬢ちゃんは止めて、アタシは「アスカ」と言う名前があるの』
アスカはハッとした
名前も聞かれてもいないのに自分の名前を他人に言うなんて・・・
青年
『アスカか〜良い名前だね。お嬢ちゃんと言うのは悪かった』
アスカ
『あ、うん・・・』
アスカは不思議な感じだった。
暖かい気持ちも感じていた。
青年
『君が名乗るなら僕も名乗らないとね〜』
青年は自分の名前を言うだけなのに何故か貯めていた・・・
青年
『ケイ、桂木ケイさ』
ifよりヒドいなこれは
ifじゃね?
>>160 日付に出てないけど細かい修正で更新されてるよ
入れ替わりとキンモクセイマダー?
ifは当初のトンデモっぷりを考えると着実に進歩してると思うよ。
まだまだしょうもないレベルだけど、文句言われてキレたりもしないし
頑張って上手くなって貰いたいね。
だよな
進歩はしてる
ここまで行くとアラシだろ
169 :
if :2009/08/15(土) 08:36:59 ID:???
投下
170 :
if :2009/08/15(土) 08:38:20 ID:???
<アイス>
ある午後の日
「ねえ、シンジ」
アスカが冷凍庫のドアを開け、中を探りながら僕を呼んだ。
「ん、なに」
「アイス食べる?」
「うん、食べるよ。ありがとう」
僕は、アイスを持ってきてくれるものだと思い、返事をした。
「そう。じゃあ、買ってきて」
違った。
「え、無いの」
「そう。だから、買ってきて」
「自分で買ってきなよ」
「暑いから、シンジが買ってきて」
何を言っているの、この子は。
「食べたいのなら、自分で買ってきなよ!!」
僕は、口答えをした。
「あぁ!!」アスカが睨む。
僕は怯まない。
「じゃあ、勝負をしよう」
「勝負?」
勝負と聞いて、アスカは一瞬ニヤッとしたが、気にしない。
「じゃんけんで勝負だ。それで誰が買ってくるか決めよう」
とはいえ、二人しか居ないけど。
「じゃんけんね。いいわよ、バカシンジ」
「「勝負!!」」
「「じゃんけん」」僕がパーを出し、アスカはグーを出す。
「勝った。アスカ、自分で買ってきなよ」
ははは、買ってきましたよ。
僕が。
171 :
if :2009/08/15(土) 08:39:50 ID:???
***
「ちょっと、まった!!何でシンジが買ってきたんや!!」
トウジが不思議そうに聞いてきた。
「そうだよ、シンジ。勝ったのだろ」
ケンスケも同じく聞いた。
「僕が、甘かった」
***
「残念だったね。はい、お金。僕のも買ってきて」
僕はアスカに財布を渡す。2千円だけ入っているだけだが。
アスカは、財布を受け取らない。
「まだ、勝負は付いちゃいないよ」
「付いているよ」
僕は自信を持って言った。
「まだ、2回も残っているよ」
「え、2回。何が」
僕は状況が分からなかった。
「なに、言っているの、じゃんけんのことよ」
「え、勝負は一回だよ」
この子、なに勝手にルールを変えているの。
「認めないよ、アスカ」
「私が、ルールよ!!」
アスカが僕の目の前で凄んだ。
助けてください。目の前に怖い人が居るよ。
「うぅ、分かった。アスカのルールに従うよ」
「「勝負」」
「「じゃんけん」」
僕がグーを出し、アスカはチョキを出す。
あと一回で勝負が決まる。
172 :
if :2009/08/15(土) 08:41:35 ID:???
「最後よ、バカシンジ」
「ああ」
「「勝負」」
「「じゃんけん」」
僕がチョキを出し、アスカがパーを出した。
「勝ちました。アスカ、終わりだよ」
「まだ終らないわよ!!」
「え、どう言う事」
「私が、勝つまでよ」
***
「結局、30回目でアスカが勝った。アスカはじゃんけんが弱いね。はは」
僕は半笑いでトウジとケンスケに話しをした
トウジとケンスケは顔を伏せていた。
「トウジ、ずっと黙っているけど、どうかした」
するとトウジは、僕の後ろを指差した。
僕はゆっくりと振り向いた。
アスカが鬼の形相で立っていた。
「アイス買ってくるだけなのに、どれだけ時間掛かっているのよ。
しかもマンションの前で立ち話をして。
あ!!アイスが溶けているじゃないの、バカシンジ」
僕は、アスカに首根っこを掴まれた。
「嫌だ、放してよ。二人とも、助け……あれ」
僕は二人に助けてもらおうと、声を掛けようとしたが、二人は逃げた。
「バカシンジ……来い」
「はい、アスカさん」
終
173 :
if :2009/08/15(土) 08:42:32 ID:???
以上です
もうif止めてくれ
文章は本当に少しずつ少しずつマシになってると思うんだよ
ただセリフとストーリー展開を工夫してほしい…そもそも微LASすぎて、どこにもニヤニヤできんw
177 :
if :2009/08/15(土) 09:29:40 ID:???
すいませんでした。
そして、ありがとうございます。
179 :
if :2009/08/15(土) 10:00:32 ID:???
たぶん、9月か10月くらいに仕掛けようと思います。
その時に、また判定をよろしくお願いします。
その間、色んなの読んで磨けばいいよ
181 :
if :2009/08/15(土) 10:25:14 ID:???
はい、ありがとうございます
このために35冊ほど小説を買ったんですけど、少ないですかね
どうせ読まんだろ
>>24 の続きです。今回は2か月程先の元旦のお話
初詣に気合いを入れて振袖を着たアスカさん。相変わらず友達以上恋人未満のシンジ君
そこに乱入者が現れて...。
2019年1月1日、アタシはシンジのお母様のユイさんが貸してくれた、フリソデと言うキモノを
着てシンジと初詣に出かけていた。
折角、思いっきりオメカシして来たのにこの男は、相変わらずアタシに関心があるのかどうか
よく解らない。まぁ、付き合ってくれるだけでも良しとするか。
「シンジこれ、何て読むの?」
「アスカ、これは大凶だよ。」
「何それ?」
「要するに、えーと...、物凄く不幸って意味だよ。一番良いのが大吉で悪いのが大凶だね。
でも、おみくじにこんなのが入ってるなんて知らなかったな。」
「なによそれ、新年早々、最悪じゃない。」
「でも、こんなの引くって言うのは、ある意味クジ運が良いかも。まぁ、気にしない事だね。」
「ふっ、当たり前じゃない。アタシがそんなもの信じるわけ無いでしょ。」
「アスカ、ここに結ぶんだよ。そうすると、運も良くなるよ。」
「ふーん、面白いわね。ねぇシンジもう一回お参りしない?」
強がっては見たものの、意外と占いを信じてしまうアタシは、かなりの不安を思えていた。
しかも、そのダイキョウとやらの予言は直ぐに当たる事になる。
何者かが、ナイフを持って襲いかかってくるのを見たアタシは、咄嗟に、
「シンジ、避けないさい。」
と言うが早いか、アタシはシンジを押し倒す。
「ちょ、動きが制限される。」
本当は、相手の右手を抑えてナイフを落とす事を狙ったが、キモノを着ているせいで動きが
制限されて避けるのが精一杯居だった。
「何者よ?」
アタシは、言いながら。ゾウリを脱ぐ。これだけでも大分、動きやすく成るだろう。
相手は、黒ずくめで覆面までして居る。背は160越える位か、言うほど高くは無い。
「問答無用って訳ね。良いわ、相手になってあげる。」
とは言ったものの、キモノでは動きがかなり制限されて、上手く動けない。
そうなると、あまり取りたくはないがあの手を使うしかない。まだ、死にたくはない
からね。
黒ずくめが襲いかかってくる。
「おば様、ごめんなさい。」
アタシは、キモノの長い袖を相手のナイフに絡めて、右手の動きを制限すると、狙い澄まして手首に手刀
を叩きこむ。
ナイフが手から滑り落ちるのを確認しつつ、そのまま右手をねじ上げて、後ろに回り右の腕で相手の首を
締め付ける。
「シンジ、ナイフを拾って、早く!」
あっけに取られていたシンジがアタシの言葉に我に返ったのか慌てて、ナイフを拾う。
「怪我は無いよね。」
「あ、うん。大丈夫。それより、アスカは?」
「アタシは平気、でも....、おば様が貸してくれたキモノを傷つけちゃった。ごめんなさい。」
「いいよ。アスカが怪我して無ければ、そんなものどうでも良いよ。」
「嬉しい事言ってくれるね。涙が出そうだ。」
「あの、この状態でじゃれ合わないでくれます?ただでさえ、右手が痛いにゃ。」
コイツ、女?しかも聞き覚えのある声。
「そうね。シンジ、取りあえず。コイツの覆面を外してくれる?」
覆面を外したシンジに驚きの表情が浮かぶ。
「貴女は...。」
「お久しぶりね。ワンコ君。」
「知りあいなの?ちょっと、アンタこっち向きなさい。面を拝んだげる。」
そいつ首を精一杯曲げるとアタシの方を向く。え!こいつは
「あんた。マリじゃない...。」
「はい、お久しぶりです。大尉殿いや、元大尉かな?」
アタシは、帰国命令を無視して日本に居付いている為に、とっくの昔に軍籍ははく奪されている。
アタシが帰国しなかったのはシンジの事も有るけど、それ以上にもう、連中に利用されるのは沢山と言う
思いからだ。また、サードインパクト後にエヴァ絡みに仕事と言えば、日本の人工進化研究所しか無かった事も
大きい。
「取りあえず。理由を聞かせなさいよ。」
「いや、良いですけど。その前に場所を変えませんか?」
「悔しいけど、同感。」
アタシは、両手を解くと、相手の背中を思いっきり押す。本当は、蹴りを入れるつもりだったが、キモノのせいで
動きが制限されて出来ないので仕方がない。
相手と十分の間合いが取れると、アタシはシンジからナイフを奪いとり、左の袖でナイフを隠す様にして持つ。
「おお、痛てててて。無茶苦茶するにゃ。」
「それは、コッチのセリフよ。如何してくれるのこのキモノ。借りものなのよ。」
アタシは、平静を装ってはいるが、かなり打ちのめされていた。ユイさんが貸してくれたキモノを傷付けた事が
かなりショックだった。
悲しむだろうなぁ。如何しよう?
「大尉は、人間より振袖の方が大事なんですか?」
「あのねぇ...。まぁ、良いわ。場所を変えるとして、この騒ぎどう収めるのよ?」
初詣で賑わう神社の中での大立ち回りは、周りの注目を集めてしまった。今や野次馬が遠巻きに眺めている。
「それは、お任せ下さい。どうも、お騒がせしました。皆さん、もう終わりましたので撤収してくださーい。」
「あんた、ばかぁ?そんな事でどうにかなる訳無いだしょ。」
移動には苦労はしなかった。アタシ達が動けば人垣が分かれてくれるからだ、それでも衆人環視の中、晒しものになりながら、
移動と言うとてつもなく恥ずかしい思いをさせられた。何とか、タクシーに乗り込むと、シンジの家に向かう。これ以上、
迷惑をかける掛ける事は忍びないが他に適当な場所がないから仕方がない。
シンジの家の前につくと、取りあえずシンジに両親を呼びに行って貰う。その間に、アタシはマリの体を
徹底的に調べて武器がないのを確認する。
「もう武器無いって言ってるじゃないですか。いい加減にして下さい。」
「黙ってろ。アタシは猛烈に頭に来てるんだ。これ以上怒らせると、首の骨へし折るぞ。」
「大尉が言うと、冗談に成らないんだにゃ。」
「ほら、口開けろ。」
アタシは、口の中に至るまで、徹底的に調べる。そこに、シンジの両親がやってきた。
「アスカさん、無事?怪我は無いの?」
ユイさんが開口一番、アタシを気付かう言葉をかけてくれた。アタシは、マリから目を離さないまま答える。
「ええ、アタシは大丈夫です。でも、折角のキモノこんなにしてしまって...。その、何て言って良いか。」
「良いわよ、そんな物。アスカさんの方が大事よ。着物は買えば良いけど、アスカさんには代わりが無いのよ。」
余りの有り難さに泣きそうに成る。でも、今は泣いてる場合じゃない。
「それより。この女、知ってます?」
「たしか、マリさんだったかしら?」
「ああ、マリ・イラストリアス、元2号機の予備パイロットだ。」
元総司令だけ有って何でもお見通しか。
「立ち話も何だ。取りあえず、入りたまえ。」
「まずは。理由を聞かせて貰える。」
「いやー、流石ですね。3年も腑抜けて居たとはとても思えません。」
「話しを逸らさないで、理由を聞かせない。」
「お迎えに上がりました。」
「今更、ユーロに戻る気なんか無いわ。第一、迎えにきたと言いながら何よ。アタシじゃ無かったら死んでるわ。」
「あそこで死ぬようでは迎えに来る価値は無いですからね。でも、驚きましたよ。不意打ちを食らって、しかも
そんなに動きにくい格好でアタシを一瞬で押さえつけた。アタシも素人って訳じゃないんですけどね。」
「ふざけないで、そんなテストをする意味があるの?」
「ええ、貴女にはダイダロスの錘開発に参加可能と言う確証が必要でしたから。」
「神より与えられた、エヴァシステムを人の完全な制御化に置き、兵器として使用するシステムを確立すると言う話か。」
行き成り、所長が話し出した。何か知ってるみたいだ。
「貴方、ご存知なんですか?」
「ああ、詳しくは知らんが。」
「それで、ダイダロスの錘?相変わらず連中の命名センスはダサいわね。いずれにしろ、エヴァ絡みでアタシが必要って
言うならお門違い。むしろ、ここにいる、無敵のシンジ様の方が適任よ。」
「ちょ、僕に振らないでよ。」
「心配しなくても君は使い物に成らないから良いよ。欲しいのは、大尉の卓越した身体能力、何せ、...。」
「それから先を言うな。命が欲しかったら黙ってな。特に、シンジの前で言う事は許さない。」
「解りました。私達が居ると話がしにくそうね。良いわ、席を外します。でもね、アスカさん、私達は貴女が残ってくれる
事を望んでいるって事は忘れないでね。」
「悪い、話じゃないと思いますけどね。命令違反は不問に付して、元の大尉として戻れるんですから。」
「それで必要なく成ったら捨てられるんでしょ。もう、そう言うのは嫌なの。」
「今回は、純然たる兵器ですよ。人類が居る限り戦争は無く成りませんが。」
「そうやって、また、アタシを兵器の一部に使う気?もう、モノ扱いは沢山。」
「モノ?違うでしょ。大尉は野獣、檻に入れられても何時でも戦うときを待ちわびている戦闘マシーン。」
「だから、その話をするなと言ったろ。」
「否定しても無駄ですよ。大尉は着飾って男とイチャツイテいる時も戦う事を忘れて無かったじゃ無いですか。
襲われた瞬間、戦闘マシーンのスイッチが入ったでしょ。もう、戦いからは逃げられないんですよ。」
「違う。アタシはあの時、シンジの事を考えていた。おば様が貸してくれれたキモノの事を考えていた。
誰も傷付けずに済ます事を考えていた。アンタを倒すことは二の次だった。」
「マジですか?」
「死ぬたくは無かったからね。シンジと会えなく成るのは嫌だった。ただそれだけだよ。」
アタシが言い終わるか否かの内にマリが笑いだした。
「ハハハハハ、そりゃー傑作だ。アスカは本当に腑抜けに成ったんだにゃ。」
「何よ。行き成り態度を変えないでくれる。」
「だって、今までは目の前に大尉殿が居ると思って話していたけど、こんな腑抜けじゃ復帰は無理だにゃ。軍籍剥奪は
覆らない。単なる民間人にへつらう事は無いもんね。」
「見逃してくれるって事?」
「見逃す?勘違いしないで。良い?これが最後の機会だったんだよ。アンタは戦闘ジャンキー、闘争本能の塊だ。そんな
人間が真っ当な社会生活が送れると思ってるの?」
「そんな事解らないわ。でもね、アタシをこんなんにした連中のうち、この家の人はアタシに謝ってくれた。アタシに
普通の生き方をする機会を与えてくれた。その人達の思いを無にしたくは無い。少なくとも、未だにアタシを道具とし
てしか見て無い連中の元へは行かない。」
「それと、男か。しかし、天下のアスカ様があんな優男にぞっこんとはね。愛すれば盲目って奴だにゃ。」
「な、な、な、何の話?シンジとは何でもないよ。何勘違いしているの?」
「まぁ、精々頑張んな。後で泣きを見ない事ね。でも、本当に大丈夫なの?アンタは自分の中の野獣を檻に閉じ込めた積り
だろうけど、そんな檻平気で食い破ってくるよ。」
「仕方がないわ。そう生きるって決めたんだもの。」
「では、アスカさんはこのまま残るって事で良いのね。マリさん。」
「ええ、お騒がせしました。」
「本当に良いの?」
「アスカが来たらアタシはまた、予備パイロットに降格。むしろ来ない方が良いですし。」
「最後に一つだけ、聞かせて。アンタ、本気でアタシを殺す気だったの?」
「当然、アスカは手抜きで勝てる相手じゃないもの。もっとも、例えアスカが本当に腑抜けていたとしても帯を貫通して
大けがするまで、落ちぶれる事は無いと思っていたにゃ。」
「その買被りのお陰で危うく死にそうに成った訳ね。」
「今日は、散々だったわ。正に、何だっけ...、ダイキョウね。」
「アスカ、マリさんに何を言われてか知らないけど、気にしないで。今まで通りのアスカで居てくれるよね。」
「嬉しい事言ってくれるわね。でもね。アタシの本性が凶暴な獣でも良いの?」
「アスカの本性は皆、知ってるし。」
「あんた、ばかぁ?そう言うときは慰めの言葉の一つもかけなさいよ。」
「冗談だよ。それに例えアスカが何物でも、アスカは大事な...」
「大事な何?」
「友達だよ。」
「あ、そう。」
ガッカリだ。結局、シンジの中でアタシの位置はあの三馬鹿トリオと同じと言う事か。
ユイさんも呆れている。
「あれ、アスカ、何怒ってるの?」
「別に、怒って無いわよ。もう知らない。」
こんな感じです。
少し、マリを邪悪に書き過ぎたかな?単なるツンデレの積りで
書いたんですが
では、また。
口調に違和感
とりあえず乙
この時期に初詣ものかよw
アスカの口調が変だよな
セガールか
いや、アンソニーだろ
GJ!けっこうシリアス展開になってきて続きが楽しみです!
マリが使い魔みたいなキャラになっててワロタw確かに所々キャラの口調が変わってるな
カレー味だけどカレーじゃない感じ。
なんか、拭えきれない違和感が強くて飲み込むのを躊躇してしまう。
空を知らない少年の続きを待ってます
俺はキンモクセイの続き待ってます
205 :
194:2009/08/15(土) 16:53:20 ID:???
キャラの口調は少し、軍人ポサを出す為に変えてみたけど不評ですね。
最近、HPを立ち上げたくて、色々書いては反応を見ているんですが
何をやると不評言うのは参考になります。
また、気が向いたら投稿しますのでご意見を聞かせて頂けると
助かります。
気が向いたらとか言わずに頼むわ。続き気になるw
>>202 あまりに別人すぎると
別にシンジ、アスカ、マリじゃなくてもオリキャラでいいんじゃね?ってなるよなw
遅くなりましたが、前スレで投下していた入れ代わりの続き、入れ代わり13(式波パート)を投下します。
※実質、入れ代わり8の続きになります。
アタシはシンジに抱きしめられて心地よかったが、このままではいられなかった。
アイツに見せられた記憶では、ネルフ本部が戦略自衛隊とエヴァ量産機に攻撃を受けるからだ。
「シンジありがと。もう大丈夫、急いで本部のケイジに向かうわよ」
「うん。わかったよアスカ」
アタシとシンジは警報の鳴り響く通路を、ケイジに向かって駆けた。
ケイジに到着したアタシとシンジは、プラグスーツに着替え、エヴァに乗り込んだ。
弐号機に乗ってシンクロを開始したアタシは、ママに問い掛けた。
(この世界のアタシのママ。お願い、アタシとシンジのために起動して)
アタシの身体は暖かくなり、まるでママに抱きしめらているかの様に心が安いだ。
アタシの呼びかけにママは応えてくれて、弐号機は起動したのだ。
(ありがとうママ)
弐号機の起動を確認したミサトが回線を通じ、アタシにお世辞を言った。
「アスカ、シンクロ率の回復と弐号機の起動おめでとう」
「どういたしまして、ミサト」
「早速で悪いんだけど、戦略自衛隊がネルフ本部を占拠するために攻めてきているわ。シンジ君とアスカでこれらを殲滅しなさい」
「えっ・・・」
ミサトからの指示に、明らかにシンジは動揺していた。
「戦略自衛隊を殲滅?兵器には人が乗っているのに・・・人殺しなんて・・できる訳ないよ・・・」
「シンジ君。これはしかたないことなのよ。受け入れなさい」
ミサトはシンジの気持ちも考えず、一方的に命令を下した。
アタシは、ミサトに詰め寄った。
「ミサト、アンタはシンジに人殺しをさせようっていうわけ?」
「しかたないでしょ。そうしないと、こっちがやられるわ」
「アンタはシンジが、これまでどんな気持ちでエヴァに乗ってきたのか、少しでも考えたことある?」
「そ、それは・・・」
「シンジは兵器でもなければロボットでもない、何かあれば心が傷つく人間なのよ」
「それはわかってるわ」
「わかってない!アタシの変わりに来た弐号機パイロット、渚カヲルをシンジに殺させてるくせに!」
「彼は使徒だったのよ。彼を殺さなければ人類が滅んでいたのよ」
「ふざけんじゃないわよ!シンジはアンタ達の人殺しの道具じゃない!」
「あ、アスカ・・・」
シンジはアタシとミサトとのやり取りに、思わずアタシに声を掛けた。
「シンジは黙ってて。ミサト、アタシは軍人よ!対人の戦闘訓練も受けてる。戦略自衛隊はアタシが殲滅するわ」
「・・・アスカがそこまで言うのなら、わかりました。戦略自衛隊の殲滅はアスカに任せます」
アタシはミサトに軽く頷き、モニター越しにシンジにウィンクするとこう言った。
「シンジは主にエヴァの電源供給設備を守って。戦略自衛隊はアタシが片付けるから」
「でもアスカ・・・」
「シンジばかりに辛い思いはさせたくないのよ。アタシなら大丈夫だから心配しないで」
「う、うん」
「よろしい。この戦いが終わったら、アタシだけにおいしいハンバーグを作ってね」
「うん。わかったよ」
(絶対に何があっても、シンジだけはアタシが守ってみせる!ママ、アタシに力を貸して)
こうしてこの世界でのアタシとシンジによる人類の存亡を賭けた戦いの火ぶたは、切って落とされた。
短いですが、以上です。
ただいまエロパロのエヴァスレにて駆け引きを投下してます。
ですので次回の投下もかなり遅くなると思いますが、
なにとぞご容赦ください。
式波さんは良い子すぎて、惣流さんは悪い子過ぎるきがするな
両方が幸せになれると良いね
おつ!
あれは、貴方だったのか
皆様、応援ありがとうございます。
>>214さん。そうですね。
惣流アスカも新劇シンジとだんだん打ち解けていく様になると思います。
>>216さん。実はそうなんです。
携帯での投下なので遅筆ですが、エロネタの方が比較的筆が進むのは早いみたいです。
それではまた。
毎度ながらGJです!式波さんは優しいのぉ。惣流さんも頑張ってほしいもんです。
どっちのスレも楽しみにしてたから嬉しいなぁ!
投下楽しみにしてます!
頑張ってください!
食事会が中止に成らなかったらと言う事で
話を作ってみました。かなり長編になりそうなんで
少しづつうぷして行きたいとおもいます。
「でも、良かったね。折角の食事会を皆でやれて。」
「そうね。でも、何よ。その包み?」
「内緒。綾波の家に付いてからのお楽しみ。」
3号機の到着が一日遅れたお陰で、エコヒイキの食事会は中止されずに済んだ。
もっとも、アタシ的には内心面白くない。まぁ、アタシやミサト達を呼んで居る所を
見ると、抜け駆けする積りは無いみたいだから安心して良いかな?
ふと、見ると黒塗りの高級車がアタシ達の横を過ぎて行く。あれ、もしかして...。
ヤバい、ばれたらどうすんの?
「あ、痛たたたたたたた。」
そう言って、アタシはとっさにしゃがみ込んだ。
「どうしたのアスカ。」
「足をひねった見たい。足が痛いんでおんぶしてくれる?」
「何で、アスカをおんぶしないとダメなんだよ。」
「もう、ケチ。」
ん、車居なくなったわね。
「あ、大丈夫見たい。歩けるよ。ん、大丈夫。」
「何だよ。アスカ、変だよ。」
「こんにちわ。綾波居る?」
「あ、碇君入って。...。二番目の人も有難う。」
「あ、うん。こっちこそ呼んでくれて...。」
「おーい、シンちゃん遅いぞ。早く入ってこーい。」
「そうよ。貴方達が最後よ早く入りなさい。」
ふふふ、ココからだとミサトと赤木博士しか見えないわ。中に入って驚け。
「お邪魔します....。って父さんなんでここに居るの?」
「ごめんなさい。黙っていた方が喜んでくれると思ったけど、驚かしてしまった見たい。」
「何、言ってんのよ。驚かすのが目的だったんでしょ。アタシが、司令の車に気付かれないように
するのにどんだけ、苦労したか。解ってる?」
「じゃー、さっきの足が痛いとか言ったのは...。知らないのは僕だけなのか。ずるいよ。」
「食事ってもしかして...。味噌汁だけ?」
「ええ、ごめんなさい。これしか出来なくて。」
「まぁ、良いんじゃ無い?たまにはね。」
ん!これ味おかしくない?何だろう...、出汁がないんじゃ無いの?皆平気なの?
あ、微妙な顔しているな。
「碇君、美味しい?」
「え、あ、うん個性的な味だね。」
シンジその言い方はまずくないか?
「碇司令はどうですか。」
「うん、悪くない。」
本当か?
「美味いじゃない。うん、これなら直ぐに嫁に行けるわね。」
ミサトの美味い程当てに成らないものは無い。
「シンジ、その紙袋、何よ。そろそろ教えても良いでしょ。」
「ああ、これ、僕が焼いたクッキーなんだよ。口に合えば良いけど...。」
やっと、真っ当な物が食べられそうだ。ラッキー。
「相変わらず、シンジの料理は美味いわね。」
「あれ。父さん如何かしたの?」
「いいや、ユイの味を思い出した。」
え!シンジの料理って彼のママ仕込みって事?
「そうなの?母さんの味か。無意識に出して居たのかな?」
「出来たらまた作ってくれないか?」
「え!うん、良いよ。喜んで。」
おお、良い雰囲気だ。このまま、仲良し親子に成れるんじゃないか?
「そう言えば、ミサトって車替えたよね。」
「アンタね。言っとくけど、私のアルピーヌぶっ壊したの誰なのよ。」
「えーと、そう言う、細かい話は置いといて、今の車、二人乗りでしょ。帰りどうすんの?」
「あ、考えて無かったわ。」
「はぁ。ミサトって本当に作戦部長なのこんなんで良く務まるわね。」
「るさいわね。で、アスカは何が言いたいのよ。」
「だからー、司令、お願いがあるんですけど...。シンジを乗せて行ってくれません?」
「ああ、それ良い考えね。シンちゃんそうしなさい。」
「ええ、でも悪いよ。」
「あんた、ばかぁ?アタシにシンジの膝の上に乗れって言うの?」
「でも、父さん迷惑じゃないの?」
「私は構わんぞ。」
「ほら、司令もそう仰ってる事だしお言葉に甘えなさい。」
「あ、うん。じゃぁ、お願いします。」
期待しとります
翌日、アタシはシンジに味噌汁を作ってやった。やはり、エコヒイキには負けたくないと言う
思いが強かったからだ。
「ねぇ、シンジ如何かな?」
「あ、うん。初めてにしては良いんじゃ無い?」
「それって、褒めてるの?ねぇ、エコヒイキのとアタシのではどっちが美味しい?」
「え、いや。それは...。それより、そろそろ、起動試験が始まる時間じゃない?」
糞、上手く誤魔化しやがった。
「そうね。まぁ、心配無いでしょ。何せ、最新式よ。今での問題点を修正されてるんだからね。
制式機より試作機の方が性能が良いなんて、日本のマンガだけだよ。」
「まぁ、アスカがそう言うなら安心かな。僕よりも詳しいもの。」
「あんた、ばかぁ?アンタが何も考えて無いだけでしょ。」
「それより、アスカ、その...。昨日はありがとう。お陰で父さんと色々、話せて良かったよ。」
「はぁ?勘違いしないで、あの司令と同じ車に乗るなんて息がつまると思っただけよ。」
シンジの携帯が鳴ったのはその時だった。
続く...。
と言う訳で、次回は「命の選択を」です。
出来る限り、今週中にうぷ出来れば良いかな?と思って居ます。
いかんせん。盆休みが終わって忙しく成る頃なので
如何なるか解りませんけど...。
乙!
続き待ってる!
>>226 すいません変なところで、期待を書き込んでしまいましたw
GJです!続き待ってます
229 :
入れ代わり:2009/08/17(月) 21:59:35 ID:???
GJです。
シンジとゲンドウの和解に期待ですね。
あ、もちろんシンジとアスカの関係にも期待してます。
230 :
軒亜:2009/08/17(月) 22:51:05 ID:???
新参者ですが短編を投稿させてもらいます。
背景設定は新劇の破です
コテ外せよ
―ある日の出来事―
(ミサトのマンション)
「アスカ,ご飯できたよ」
シンジは台所から部屋にいるアスカを呼んだ。
「・・まだいらな〜い」
数秒の間があった後アスカの声が聞こえた。
「でも…ご飯冷めちゃうよ?」シンジはアスカの機嫌が悪いのかと思ったが,「今イイとこなんだから!」とアスカの声がすぐに聞こえると,(またゲームか…)と少し呆れた。
ミサトさんは今日も遅くなるそうだ。
シンジは1人でご飯を食べながら「またか…」と呟いていた。今日が初めてではなくアスカがゲームに熱中しだすとやはりこうなるのだった。
自分と話すよりもゲームをしてるほうが楽しいのかな,そう思った。
どうにかして,アスカの気を引きたい。そんな思いさえ抱いていた。
シンジがご飯を食べ終わり、テレビを眺めながらSDATを聴いているとようやくアスカが台所に向かう。
「ごちそうさま。ねぇシンジ!」
ご飯を食べ終えたアスカがそのまま椅子に座りながらシンジに話しかける。しかし反応は無い。シンジのいる世界へはアスカの声は届いていないようだ。
「シンジったら!」
2度目の声には気付いたシンジが耳のイヤホンを片方外してアスカを見る。
「えっ…な,なに?」シンジが戸惑った様子を見せると,アスカはもういいわよ!と機嫌悪そうに部屋へ行ってしまった。
…怒らせてしまったようだ…シンジは少し溜め息をついた後,なんだか申し訳ない気持ちになった。アスカは何を言おうとしたんだろうと気になったがそんな事は聞く勇気も無い。
翌日、4時頃に学校から帰ってきたシンジはリビングの机に置いてある物に気付いた。
アスカのゲーム機だ。いつもなら学校にだって持って行ってるのに、忘れたのかな?そんな些細な疑問を振り払うかのようにシンジは冷蔵庫へと手を掛けた。だが冷蔵庫は開かれる事なく、気が付くとシンジは例のゲーム機を手に取っていた。
…アスカはゲーム機が急に無くなるとどうなるんだろう?パニックに陥って怒り狂うかもしれない。
でも…少しは僕に構ってくれるかも…
妙な希望や不安で胸が苦しくなる。たかがゲーム機に嫉妬するなんて。
それでもシンジは自分でもコントロールできない程の淡い感情をアスカに抱いていた。
迷いを断ち切るように自分の部屋へ入ると、ゲーム機の隠し場所に困った。
(そうだ、引き出しの中で、SDATと一緒に隠しておこう…)
引き出しを開けた時、一瞬唖然とした。口はぽかんと開けたまましばらく言葉は出なかった。
「あれ…?」
ようやく出た言葉には驚きを隠せない。
いつも此処にあるはずなのに…
もはやゲーム機なんてどうでも良くなった。SDATがどれだけ大切な物かシンジは心得ている。たった一つしかない、父を感じる事ができる物。
エヴァとは違う。
…何処に?
家の中。
そう。家の中しかない。
学校に忘れる訳が無い、見つかったら没収もあり得る話だ。
部屋をでてリビングを探し回っていた。その左手にはアスカのゲーム機を握ったまま。
ふと、玄関から人が入る音がした。
アスカだった。
その右手にはシンジのSDATが握られていた。
2人の目が合い、同時に言葉がでた。
「あ…,」
終わり
すみません
勘違いで本文の方のコテ外してしまいました。
申し訳ないです..
GJです。
続きが気になります。
急にスレが活気付いてうれしいです。
イイヨイイヨー!
新参さんが増えていいね!破効果に感謝感謝
>>226 前から気になってたんだが「。」は用法としちゃ間違ってる
ラノベでも小説でもカギカッコの中に句点つけてるの誰もおらんぞ
他の人が投下したSS見てみ
>>230 >>231は230宛てじゃなく入れ代わり作者宛てだと思うんだが
投下中にコテ付けるのはむしろ推奨される行為
投下中以外、もしくは他作品への感想などにコテを付けるのが非推奨行為
241 :
240:2009/08/17(月) 23:25:48 ID:???
夏だなぁ
>>230 GJでした!
キンモクセイまだかなぁ〜?
>>225 の続きです。
今回は少し痛めかな?とも思います。
良かったら、読んでください。
「アスカ、何処に来ているんだよ。ここは、部外者立ち入り禁止だ。」
「仕方がないでしょ。待機だって言われたんだから...。それに、アタシは
当事者よ。」
「まぁ、邪魔するなよ。」
昔の戦艦の艦橋を思わせる第一発令所に入ってきたアタシを日向さんがとがめたが、
それどころじゃないと言う事だろうか。次の瞬間には皆、アタシを無視して黙々と
作業を続ける。
「まもなく、使徒を映像で確認できます。」
って、これが使徒...。これって、3号機じゃない。
「やはりな。」
「強制停止信号と、プラグ射出信号を送れ。」
「ダメです。信号受け付けません。」
「現時刻をもって、3号機を破棄。第9使徒と認定する。」
って、司令、何言ってるの?シンジにアレを倒せるわけ無いでしょ。
「あのぉ司令、意見を具申して宜しいですか?」
「今は、作戦中だ手短に済ませ。」
「ありがとうござます。アタクシを2号機で出撃させて下さい。」
「2号機は現在凍結中だ。そもそも解除コードはユーロが握っているのは知って居るだろ。」
「いいえ。司令の事です、その解除コード位つかんで居ると思います。それよりも、シンジは
エコヒイキ...、一人目が居ると解れば絶対に攻撃しません。」
「君なら出来ると言うのかね。」
「アタクシに一つ作戦が有ります。一人では無理ですが二人ががりなら何とかなると思います。」
「解った、任せよう。現時刻を持って、2号機の凍結を解除。パイロットは出撃準備にかかれ。」
「有難うございます。」
そう言うが早いか、アタシはロッカールームへ駆けだした。
現場に付くと、既に初号機が首を絞められていた。
「エコヒイキ、ごめん。」
と言うが早いか、3号機の肩から生えている手を日本刀を思わせるブレードで切った。
「アスカ、あの中には...。」
「解ってる。一度しか言わないからよく聞きなさい。アタシが奴を押さえるから、その間に
プラグを引っこ抜くの。出来るわね。」
「でも、どうやって押さえるの?」
「言ったでしょ。制式機より試作機が優れてるなんて日本のロボットマンガだけ。見せてあげるわ
制式機の本当の力を。」
「え?どういう事。」
「The beast!」
裏コードの起動コマンドを受けると、エヴァの制御棒が次々と抜かれて、ビーストモードへと変化して行く。
それはもう人とは呼べない野獣と言って良い存在だった。そうこれこそが、真のエヴァンゲリオンだ。
野獣と言うにふさわしい咆哮をあげて、3号機へ飛びかかると一瞬に抑えつける。
「今よ。シンジ、早くプラグを抜きなさい。早く...。アタシが人で居られるうちに!」
「解った。」
シンジは、プログレッシブナイフを使い、粘菌を切り刻むとプラグをえぐり出した。
それを確認したアタシは、3号機を持ち上げると、胴体を思いっきりねじ切った。頭から真っ赤な血の様な
液体をかぶる。
「Gute Nacht! Engel!」
「アスカ、やったよ。有難う。本当に有難う。」
その刹那、アタシは初号機からプラグを奪い取った。
「ちょ、アスカ、何をするんだ。」
そのまま、プラグにプログレッシブナイフ付きたてる。プラグが無残に割れて、その感覚がアタシの手に
も伝わった。アタシは放心状態のままプラグを落とす。
「アスカ!貴様...。何をしたか解ってるのか?」
そう言うと、初号機は2号機をつかみ上げて来た。アタシはされるままに持ち上げられる。
「何黙ってるんだ。何とか言え。何を考えているんだ。」
「ごめん、シンジ。プラグにコアが有って...。それをそれだけを突き刺す自信は有った...。
そいつが、初号機に浸食を始めて居たので...。とっさに...。でも、ビーストモードを忘れて居て
力が入り過ぎた...。ごめん...。本当にごめん...。」
初号機が力を抜き、2号機が地面へ崩れ落ちた。
シャワールームには、何時もの倍の時間入っていた。血の匂いが何時までも取れない気がしたからだ。
手には、プラグを砕いた感覚は未だに手の残っている。
こう言う事態になる事はある程度覚悟はして居た。しかし、いざなって見るとやはり辛い、特に殺したのが
全く知らない人間ではなく、大嫌いとは言えよく知っている人間だ。ましてや、エヴァでの戦闘は、感覚
的には自分で殺したのと同じ感覚がある。銃で撃ち殺したり、戦闘機を撃ち落とすのとは訳が違う。
人を殺すとはこう言う感覚なのか...。本当に辛い、辛すぎる。
でも、司令は何を考えて居たんだろう?シンジにこんな苦しみを味あわせたかったんだろうか?違う、それは違う
あの人は厳しいかもしれないが、決してシンジを憎んでは居なかった。
....ダミーシステムか、あれならシンジは傷付かずに済む、でもシンジに心の底から恨まれるだろう。
だとすれば、アタシが彼に恨まれる事は、彼の父親との関係にとっては良かったかも知れない。司令、あんな怖い顔
して居る癖に本当はとても優しい人なんだ。自分一人が傷付けばシンジを守れるって思って居たんだろう。あの人に辛い
思いをさせずに済んだ事は本当に良かった。
そう思うと心が少し楽になる反面、アタシはシンジに恨まれる必要が有るとも思った。そう、アタシは、もうシンジ
の笑顔を見る資格は無い、一生、彼に恨まれなくては行けないんだ。
ようやく、着替えを済ませて外に出るとシンジが居た。
「アスカ、ごめん。僕が気付いて処置していればアスカに迷惑をかけ無かったのに。僕の為に嫌な思いを
させて、本当にごめん...。」
そういうと、シンジがアタシの肩に手を伸ばして来た。
「さわらないで、アタシは人殺しの穢れた女なの。貴方に抱いてもらう資格なんてもう無いの。」
そう言うと、早足に歩き出す。
「待ってよ。アスカ。」
「付いて来ないで、一人にさせて。お願い。」
外に出ると、雨が降っていた。傘は無いが、その中をあても無く歩きだす。
何処を、どう歩いたのか全く記憶に無かった。気付いたらヒカリの家の前に居た。暫く、立って居たが、
入る訳には行かないと思い立ち去る事にする。何処へ、行けば良いんだろう?
立ち去ろうとしたとき、ヒカリが家から出て来た。
「アスカ、何やってんのよ。びしょ濡れじゃない。取りあえず。家のお風呂に入って温まらないと、風邪引くよ。
下手すりゃ死んじゃうよ。」
「良いの、死んでも...。アタシなんかもうどうでも良いの。」
「馬鹿なこと言わないで、良い?さっきから何度も碇君から電話が入っているの、アスカの事思いっきり心配して
居るんだよ。理由は話してくれなかったけど、自分のミスでアスカを傷付けたって、責任を感じて今でも雨の中探し
て居るんだよ。だから...ね。家に来て碇君を安心させよ。」
「アタシは、そんな資格は無いの。シンジに心配して貰う資格なんか無い。」
「碇君を舐めるんじゃ無いわよ!彼はそんな薄情な人間じゃないわよ。決して、他人を見捨てない優し人、その人を
何時までも心配させないで、...解った?」
アタシは小さくうなずいた。
「良かった。じゃあ家に来てお風呂入るわね。碇君には連絡してあげる。会いたく無ければ、今日泊まっても良いからね。」
「ありがとう。」
そう言うとアタシは泣き崩れた。
お風呂に入ると少し落ち着いては来た。しかし、どの面下げてシンジに会えば良いのか解らない。そこへ、ヒカリが
駆けこんでくる。
「アスカ、聞いて。今、碇君から電話が有って。綾波さんが生きてるって。怪我はして居るけど、軽症で大したことは
無いんだって。だから、安心してって...。」
良かった...。これで、またシンジに会える。シンジに愛して貰える。本当に良かった...。
続く...。
と言う訳で、次回は「男の戦い」です。
乙!
続き楽しみ!
ホントに楽しみか?
書けないなら戦闘シーンなんか書かないで貰いたかった。
いや、そんだけじゃないけど。
2番目のレイか
乙です!ただちょっとセリフに覇気が無いね
!とか!?付けるだけでも、だいぶ違うと思うけど…
>>235 良かったです!機械に嫉妬するなんて可愛いですね
まだ、夏かw
まだ、2週間あるからなw
↑自演乙w
夏だし、仕方ないな...
スレの雰囲気悪くなるからいちいち夏だとか言わなくていいよ
気に入らないなら作品名でNGにしてな
261 :
543:2009/08/19(水) 01:53:27 ID:???
皆様こんばんは。
昨日新劇5回目見に行っておりました。
式波アスカはホント協調性のない子だなあと思いつつみてました。
勿論ニヤニヤしながらw
それでは一作纏まりましたので投下いたします。
読みたくないので天岩戸に放り込みたい方は、NGワード
夜の帳に
で、どうぞ
262 :
夜の帳に:2009/08/19(水) 01:54:40 ID:???
優しい夜風が前髪を揺らす。階下から微かに聞こえる草叢の虫の音。道路をゆくデリ
バリーピザのスクーター。背中からは、洗いものをしているシンジの動く音。
見上げた空は雲ひとつなく晴れ渡り、星を消し去る光を湛えて満月が浮かんでいた。
「よし、洗い物終了っと」
バカシンジが独り言を呟く。
手伝わないのは訳がある。一度気を利かせて洗い物を片付けたことがあった。しかし次
の日の弁当準備で、道具や食器がどこに何があるのかわからなかったバカシンジに愚痴を
言われた。
以来台所には立たないようにしている。あの時腹が立ったので逆切れしちゃったし……。
バカシンジはそんじょそこらの主婦よりも台所の縄張り意識が強いと思う。
「アスカ」
「あによ」
「ベランダでお茶でも、どう?」
振り返ってみると、お盆にティーポットと菓子受けを載せて、シンジがぽつねんと窓の
傍に立っていた。
「なにアンタ、それナンパ?」
「ち、違うよ。ホントにお茶飲もうってだけだから」
「ハァ?なんでまたそれを外でするの?」
「うん、お月見」
『なんだそりゃ?』
言葉の意味を理解しかねて首をかしげる私の顔には、たぶんそう書いてあったと思う。
263 :
夜の帳に:2009/08/19(水) 01:55:22 ID:???
*
今がその時期ではないらしいけれど、シンジが言うのには九月か十月の満月の時に月を
見て、お団子を食べる風習があるのだという。
別に風習なんてどうでもいいけど、お茶とお菓子があるんなら付き合ってやらなくもない。
「今日は何作ってたの?」
ベランダにあるテーブルセットにクロスをかけながら、ティーセットと共に並べられる
美味しそうなお菓子の山についつい目が行ってしまう。
「うん、スコーン焼いてみたんだ」
「あのあまーい匂いの正体って、これ?」
椅子に座るとスコーンに鼻を寄せて匂いを嗅いでみる。まだ少しぬくもりが残っていて、
仄かに甘い匂いが鼻孔をくすぐる。
「電気消しちゃうよ?」
「どーぞー」
スコーンに気を取られて何言ってるのかまともに聞いていなかったので、突然真っ暗に
なってびっくりした。
「ちょっと、何も見えないじゃない!」
「そんな事言ったって……だから電気消すって言ったじゃないかぁ」
そのままシンジに襲われるような妄想を一瞬抱いたけれど、そんな事は万に一つもないと
確信している。ついでに少しつまんないとも思っている。
「それに暗いって言っても満月だし、目が慣れると明るいと思うよ」
「まあ、そうなんだろうけどさ」
「リツコさんに貰った茶葉でアイスティー作ってみたんだ。たぶん、ちゃんと冷えてると
思うけど」
そう言いながらシンジが向かいの椅子に腰を下ろす。
「ガラスのコップ持ってきてたからなんでかと思ったら……」
それをティーポットに入れてくるあたり、シンジは洒落ている。たぶんポットにかかって
いるティーコジーは温くなるのを遅くするためなんだろう。何気なく触ってみると、冷水に
浸していたらしく、心地よい冷気をもっていた。
その気遣いと優しさが、私の心を溶かしてしまう。
264 :
夜の帳に:2009/08/19(水) 01:57:12 ID:???
淹れてもらった紅茶を一口飲み、スコーンをちぎって放り込む。
目が慣れてくると、ベランダの手摺の向こうに月が眩しいくらいに光り輝いていた。
少し目を細めてその姿に魅入る。日本の風習は別として、明るい月夜を眺めるのは好きだ。
ひとときお菓子もお茶も忘れてしまって月に心奪われていた。その虜から引き戻されたの
は、目の前にいる朴念仁の視線だった。
「なによ?」
「う、うん……なんていうかその…」
何となく照れくさそうにしていたので、私の言って欲しそうな台詞を思い浮かべている
期待はあったけれど、そんな器用なヤツではないとも知っていた。
「なんかアスカ、知らない人に見える……」
「暗くてよく見えないって事?」
わざと意地悪な質問をしてみた。
「いや、そうじゃなくて、すごく大人っぽいなって」
「アラ、それって誉め言葉?」
「あはは、うん、そうかも……」
相変わらず失礼な奴だ。シンジはもう少し、誉められて嬉しくない人間はいないって事を
解るべきだと思う。
「『かも』ってのは何よ、相変わらずはっきりしないわねぇ」
いつものように「ごめん」の一言を挟んで、照れ隠しが露骨に解るようにシンジは話題
反らしにかかった。
「つ、月明かりって、なんか好きなんだ。少し現実離れしてて、特別な何かに見える気がする。
でも、日本では良く言わない人が多い気がするから、あまり言わないようにしてる」
『まあ追及しないでおいてやるか』
「なんで?」
「ほら、月って太陽の光を反射して光ってるでしょ?だから、太陽が無いと輝かない、日陰
者の星なんだって言う人もいるから。自分では何も出来ないってので、嫌がるんだと思う」
「あんたバカァ?そんなの受け取る側の思いでどうとでも解釈できるわよ。好きなら好きで
別にいいじゃない」
怪訝に思いながらそう言うと、シンジは「うん、そうなんだけどさ……」と言いながら、
昔の思い出と前置きして、照れくさそうに話し始めた。
265 :
夜の帳に:2009/08/19(水) 01:58:06 ID:???
「まだ先生の所にいる時、夏祭りの帰りに一人で家まで歩いて帰ったんだ。そのとき道は
真っ暗なはずなのに、道に自分の影があったんだ。おかしいなって思って空を見たら、
満月が出てた」
「月影ってやつ?」
「うん。僕、それまで月で影ができるなんて思ってもいなくて、びっくりしたんだ。それに、
満月があんなに眩しいものだとも思わなかった。不思議だったんだ。影ができる景色って、
暑いってイメージしかなかったから。なんだかその景色が優しい世界だなって思って……」
―――同じような思い出があった。演習が二週間以上休み無く続き、疲れすぎて寝付けなく
なった時、兵舎を抜け出し裸足のまま滑走路の端まで歩いていった時の事だ。
時折吹き抜ける強い風と、風に合わせてざわめく草地。思い出したように鳴く虫の声。
遠い飛行機の爆音を追いかけて見上げた空に、大きな月が光り輝いていた。
路面に自分の影が映っているのを気付いたとき、私は不思議な高揚を感じていた。
いのち短し 恋せよ乙女
紅き唇 あせぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に
明日の月日は ないものを
セカンドインパクトで妻を亡くしたというドイツ人将校が、私が日本名を持っている
というだけで真摯に教えてくれた歌だった。歌詞の意味も解らずにその歌を呟き、白く
浮かび上がるコンクリートを滑るように廻った。
その時見た景色は、朝靄の中で白く明けていく空を寝転がって眺めていた情景と共に、
鮮烈に覚えている―――。
266 :
夜の帳に:2009/08/19(水) 01:59:17 ID:???
「月夜が優しいだなんて幻想よ」
「そうかもしれない。でも、何となく好きなんだ。夜は自分が一人だって嫌でも思い知ら
される。でも、月でできた影を見たとき、なんだか僕が一人じゃないって言ってくれてる
気がしたんだ」
『あぁ、わかるな、その気持ち……』
シンジは私の辿った軌跡をなぞるような生き方をしている気がした。
大人たちの良かれと思ってした事が何の慰めにもならず、頼るものの無い一人きりの
世界で空を眺めている。
あの滑走路で見た月……もしかしたら、同じ月を眺めていたんじゃないかなと想像して
しまった。
けれど、共感を口にする前に、出てきた言葉はどこか皮肉めいた切り返しだった。
「月ってのは狂気の対象かもしれないのよ。ルナティックなんて嫌な言い方されてるし」
「そうかも。昔どこかで聞いたんだけど、『月と烏はいいやつか悪い奴か解らない』ん
だってさ」
「ハァ?烏なんてただの害鳥じゃない」
なんというか、実にどうでもいい話だ。
スコーンを口に放り込みながら、仏頂面で相槌打つ私はさぞかし可愛げがないだろう。
私の回想を返せとか言いたくなったけど、最近こういうのも悪くないなと思い始めて
いる。
他愛も無い、子供っぽい、下らない……。他人に見せたくは無いけど、私たちのやり
取りを興味ない人が見ていたら、多分そういう言い方をするだろう。
『ま、私がいいと思えれば、それでいい訳だし……』
267 :
夜の帳に:2009/08/19(水) 02:00:13 ID:???
*
ポットのお茶を全部飲んでしまって、シンジがおかわりを入れてくれた頃、我らが飼い主
がご帰還あそばされて扉が開く音がした。
「ただいまーー……って、何で電気ついてないの?」
「おかえりなさーい」
ベランダから玄関を上がってきたミサトに二人で元気よく返事した。
「あれ?二人とも起きてたの?ちゅうか、電気消して何二人でヨロシクやってんのよぉ」
楽しそうな雰囲気を感じてか不満げにミサトが言い、廊下を歩く足音に不機嫌さが
滲み出ていた。
「ベランダでお月見してます」
「夕涼みのティーパーティーよ」
「はぁぁ、な、なによ二人とも、私をのけ者にしてなに楽しくやってんのよぉ」
『うわ…いい大人が旋毛曲げてる……』
少しべそかいて言っているところを見ると、どうも本心らしい。
ミサトは余程頭にきていたのか、着替えもせずに冷蔵庫からエビスを四本ばかり出して
きて、ダイニングの椅子を一脚引き摺ってきて輪に加わる。
「で?どんな話してたのよ?」
エビスのタブを空けながら、のけ者扱いを心底不満に思っているその態度は、シンジと
私を笑わせるのには充分だった。
堪えきれず笑い出す私たちを、ミサトは駄々っ子みたいに詰った。
「なによもう!二人だけで盛り上がって!あーあーそうですか。どーせ私は仕事一筋の
寂しい独身女よ!悪かったわねぇ、二人のあっまーい時間邪魔しちゃってさ」
本格的に拗ねてしまったミサトを私とシンジの二人で宥める。これではどっちが保護者
か全く解らないなと苦笑した。
同じように困った笑顔を浮かべながら、シンジは冷蔵庫に入れていたミサトの夕食を
暖めにかかる。その間ミサトの相手をして口にスコーンを押し込むのは私の役目だ。
あまりビールの当てに向いていないと思うけれど、スコーンを食べているうちに段々
ミサトの機嫌が直ってゆく。
全く、シンジのごはんは人の心を溶かしてしまう猛毒だ。
268 :
夜の帳に:2009/08/19(水) 02:01:07 ID:???
トレーにミサトの夕飯を載せてシンジがやって来た頃には、ミサトは既に三本目の蓋
を開けて上機嫌だった。
そこまでで終わってくれれば良かったのだが、今日のミサトはしつこかった。
お風呂に入ると言っても、宿題あるからと言っても許してくれず、文句を言うと上官
命令を持ち出してくる。
「ホラアスカぁ!歌うたいなさいよ歌!」
「ミサト……酔ってるからっていくらなんでもそれは無しよ」
追加でシンジが持って来た四本ももう無くなっていた。時計の針は一二時にほど近い。
「そうらねぇ、お題は『月』!これれ一曲歌いなさいよぉ、それが嫌ならシンちゃんに
チューしなさいチュー」
「な・ん・で、歌とバカシンジへキスすんのが一緒くたにされてんのよ!そもそもこれ
何の罰ゲーム?」
「あ?そうそう罰ゲームらろよ!私のけものにしたバツ・ゲームー。あと上官めーれー」
『うわ、薮蛇だった』
正直この酔っ払いが鬱陶しい。
「シンちゃんの罰はぁ、明日のお弁当にわらしの好きなもの一つ入れるころぉ」
「あ、いいですよそれくらい」
「ちょ……何その扱いの差!」
ムカつく位素直にシンジはそれでホッとしている。
『自分がよければ私はいいんかい!』
人の気も知らずにシンジが涼しい顔でミサトの提案に乗り始めた。
「そういやアスカの歌って聞いたことないや」
「バカシンジまで……この裏切り者!」
嫌がらせでも何でもなく、単純に興味があるからそう言っているのは分かる。でも
それだけに性質が悪い。おかげで私が悪者扱いされることもしばしばだ。
269 :
夜の帳に:2009/08/19(水) 02:02:29 ID:???
「あ、そうだ。僕の知ってる曲だったら、多分伴奏できるかも」
「あいっかわらず『多分』とか『かも』とか曖昧すぎるのよバカシンジ!」
「ご、ごめん…」
「…………で、伴奏って何弾くの?タンバリンとかカスタネットでもやるっての?」
どうせただミサトに合わせて私をからかってるだけだろうと思っていた。
「うん、チェロでよかったら」
「ハァ?何言ってんのよアン……て、今なんてったの?」
「だから、チェロ……」
酩酊しているミサトと思わず顔を見合わせ、二人でシンジをまじまじ見詰め、
「おぉー・・・・・」
と嘆声を上げた。言ったはいいが照れて下を向いてしまったシンジが妙に可愛かった。
270 :
夜の帳に:2009/08/19(水) 02:03:35 ID:???
*
じゃあ何歌おうかと考えてみた。とはいえ人前で歌ったことは今までなかった。
その緊張とかもあったが、絶対的にレパートリーが、ない。
おまけにチェロの伴奏をしろと言ってしまったはいいが、シンジの知っている曲じゃ
ないと結局一人で歌うしかない訳で………
『あれ?もしかして私自分でハードル上げちゃった?』
そう思い至ってますます焦った。そしていそいそと演奏準備をし、チューニングを
始めたシンジを裏切れない思いが更に焦りを倍化させる。
「アスカ、歌決めた?」
久々に弾くからだろう、シンジはいつになくノリノリだった。
「それが……私歌とかあんまり良く知らないし……やっと思いついてアンタ知ってそう
なのって、『ゴンドラの唄』しか、思い浮かばなくて……」
シンジは一瞬キョトンとして、何の曲かいつの曲か思い出そうとしていたが、無理
だったみたいだ。
「ごめん、わかんないよ」
「はぁ……、だと思ったんだぁ。教えてくれた人も古い歌って言ってたし…」
本気でしょぼくれていると、シンジが思いついたように提案してきた。
「そうだアスカ、先週洗い物手伝ってくれたとき、鼻歌歌ってたでしょ、あれは?」
「先週……あらいもの…あぁ!あの歌ならたぶん大丈夫」
「じゃあそれでいこうよ。さっきのゴンドラ何とかって歌は練習しとくよ」
「ばーか、歌うかどうかはわかんないわよ?」
「いいよ、それならそれで。アスカ、入りのキーはこれでいい?」
そう言うとシンジは一音弾いてみせる。自分の中でで出しをシュミレートしてみて、
その音なら高音まで出そうな気がした。
「えーと、たぶんだいじょぶ」
緊張して若干舌っ足らずになっていた。エヴァに乗る時は、こういう類の緊張をした
事がないので少々戸惑った。
なんか罰ゲームなんてどうでも良くなっていた。シンジによると、イントロ入れると
逆に歌いにくいだろうと言うので、素直にその言葉に従った。
目で合図して一息吸い込み、気持ちだけで歌い出した……
271 :
夜の帳に:2009/08/19(水) 02:05:33 ID:???
Fly me to the moon
Let me sing among those stars
Let me see what spring is like
On jupiter and mars
In other words, hold my hand
In other words, baby kiss me……
声が消えるとチェロがつなぎ、歌いだしにはぎゅっと音を絞って入りやすくして
くれる。
歌いながら何度も視線が絡み合った。見上げれば銀の月、傍らでは時々弦が鋭く光を
反射しながら音を奏でる。
化学反応みたいに、二人の音が踊る。
お互いが作用しながら昇華してゆく……
歌い終わって椅子にすとんと納まり、少し温くなった紅茶を一気に煽った。
「ぷはぁー!歌って、結構楽しいのねえ」
「僕、いつも一人で演奏してたから、今なんか不思議な感じ」
「ああそれ私も」
余韻と共に何か溜まっていたものを解放した感じがとても心地よかった。
ちなみに命令を下した上官殿は、椅子の背にもたれて高鼾だ。
「ねえアスカ、もう一曲やってみない?」
「あんたバカァ?もう歌える曲なんてありゃしないわよ。さっきの曲も最後歌詞怪し
かったし」
「ちぇ、そうなんだあ……」
シンジは心底残念そうだった。
今までチェロをしているなんて一言も言わなかったくせに、不自然なくらい弾き
たがる。まあ、私も歌なんて人生に不必要程度にしか考えていなかったから、おあいこ
かもしれない。
272 :
夜の帳に:2009/08/19(水) 02:08:44 ID:???
「ねえシンジ、他になんか弾けないの?」
「うーん、覚えてるのは二曲くらいかな……」
「ちょっと弾いてみてよ」
「アスカはどうするの?」
「聞いてあげるから感謝しなさい」
「……」
その言葉に不満はあったようだけど、少し曲を思い出すように逡巡した後、シンジは
チェロを構えて一気に自分の世界に入っていく。
夜空に吸い込まれてゆくチェロの音に、いつしか私も目を閉じた。
曲はどこかで聴いたことがあるものだった。
『ああそうそう、バッハの無伴奏チェロの1番だ、この曲』
軍の教官にもチェロ好きがいて、よく休みにリクエストされて弾いていたので、この曲
だけは覚えている。
随分リラックスしていたせいか、曲が終わったのもまるで気が付かなかった。
「アスカ……寝ちゃっ…たの?」
「ん?起きてるわよ。そこの保護者みたいに言いっぱなしで寝こけたりなんかしないわよ
バカ」
「あはは、ミサトさんは退屈して寝ちゃったのかな?」
「違うんじゃない?きっと聞き惚れたのよ」
「まさかぁ。そんな事ないよ」
「バカシンジ!自分の演奏にもっと自信持ちなさいよ。……その、いい演奏だったんだ
から…」
「あ、ありがと」
そのあといつもみたいに『ごめん』とか言おうものなら捲くし立てるつもりだったのに、
シンジは赤くなってそう言ったきりだった。釣られてこっちまで照れてしまって何も言え
なくなった。
273 :
夜の帳に:2009/08/19(水) 02:09:54 ID:???
その沈黙に耐え切れなくなったのは私の方だった。
残りの紅茶も飲み終わり、気合を入れて立ち上がる。
「そろそろ片付けよっか。まだ宿題もしてないし……」
「あ、そうだった」
現実に引き戻されたシンジも、途方に暮れるのと同時に欠伸をしている。
「もう二人でちゃっちゃとやっちゃおうよ。少しくらい答えがかぶっててもいいじゃない」
「うん、もう今日はどうでもいいや」
シンジがチェロを片付けている間に台所に洗いものを放り込み、ゴミを全部一緒にペール
に放り込んだ。
一番の大荷物は部屋まで運ぶのに苦労した。
二人で両肩を支えて連れて行ったのだけれど、寝惚けて暴れるから性質が悪い。布団に
寝かせるときにシンジは顎下に蹴りを食らって、暫くふらふらしていた。
皺になるといけないと思って上のジャケットだけは脱がしたけど、他はもう世話を放棄
した。こんなのは自己責任の範疇だ。私は知らない。
大股広げて寝ている姿に釘付けになっているバカシンジをひっぱたいて部屋を出ると、
乱暴に襖を閉じた。
『ふんっ!いやらしい!』
シンジを睨みつけるとばつが悪そうに頬を撫でていた。
洗いものは明日やることにして、手分けして宿題を片付けた。
さっきの事もあるので私は終始無言。バカシンジがご機嫌取りしようとすると無言で威圧
して黙らせた。
私は自分の分担の数学と物理の演習問題をさっさと済ませ、お風呂に向かった。
バカシンジも古文訳と漢字の書き取りと、歴史のプリントと家庭科の裁縫が終われば、今の
地獄から解放されるに違いない。私は適材適所って言葉が大好きなので、敢えて手伝わない。
274 :
夜の帳に:2009/08/19(水) 02:11:41 ID:???
お風呂から上がるとシンジお手製のシークァーサージュースでリフレッシュする。
美味しかったとべた褒めしたら、冷蔵庫に常備してくれるようになった。おかげでコレなし
の生活が考えられないくらいだ。
『頑張るなー、あとは裁縫と歴史か』
横目で必死なシンジを眺め、流しにコップを放り込み、シンジの肩を叩いて挨拶した。
「そんじゃおやすみ」
余裕綽々で見下ろすと、シンジは恨めしそうな目でこっちを見てすぐにぷいと横を向いた。
態度を崩さず部屋に入り、引き戸を閉じるとそのままベッドにダイブした。
枕をかき抱いてベッドを転がる。
『なに?なにあの可愛い態度?』
もうダメだ。きゅんきゅんしてしまう。
ベランダの月影帯びた憂いのある顔、チェロを弾いているときの気持ちよさそうな顔、
そしてさっきの拗ねまくりな不満そうな顔。
面白みのかけらもない仏頂面の碇指令からなんでこんなのが生まれるのか本当に不思議だ。
興奮して眠れずにいると、シンジは深く溜息をついて椅子から立ち上がり、アコーディオン
を開けてお風呂へ行った。
余程疲れていたのか、シンジは数分でお風呂から出てくると、すぐにシンジの部屋の戸が
開閉され、どすんと布団に撃沈された様が目に浮かんだ。
私は起き上がってシンジとの部屋の間の壁に額をつけ、聞こえないように呟いた。
「お休みシンジ。ありがとね……」
カーテンの隙間からシンジの部屋に向かって走る銀の光を眺めながら、私の瞼も段々重く
なっていった。
Ende
275 :
543:2009/08/19(水) 02:18:39 ID:???
以上です。
甘いフェイスで家事全般そつなくこなし、料理の腕は一級品。おまけに
セロ弾きとか…
どこの才色兼備なお嬢様かと思いきや男なんですよねえw
新劇ではチェロのエピソードは削られちゃうんだろうなとか思ってて
考えついたネタです。二人のセッションは結構ウマが合いそうですよねえ。
最後になりましたが、前作感想頂いた皆様に感謝を。
ではまた機会がありましたらお邪魔します。
GJ
>漢字の書き取り
これは押し付けられんだろw
歌詞が適当なのはわざとか
ヤバいヤバいヤバい!可愛すぎる!
出るキャラが全員可愛いから、もう作品自体が可愛くなってるわw
でも文章もしっかりしてるし、本当に上手いわ
超GJです!
>>275 乙乙
二人が初々しくて可愛くて良かったっス
乙。月見がしたくなってきた。
良かったー!!
次作も楽しみにしています
>>250 の続きです。まだ、忙しく成らないので何とか毎日書けて居ます。
まだ、痛い話なので、読みたく無ければスルーで。
翌日、アタシはシンジと待ち合わせをして、エコヒイキのお見舞いに行く事にした。
病院は、シンジやエコヒイキが怪我をするとかつぎ込まれるいつもの所だ。
病室に付くと、包帯をしてベットに横たわっているのは、正にエコヒイキだ。
全身から力が抜けるのが解る。
「あの、ごめん。アタシのせいでこんな怪我をさせて、本当にごめん。」
「違う、アスカのせいじゃない僕が悪いんだ。。」
「.....。」
「やっぱり、怒ってるよね。当たり前だよね。うん、当然だよ。」
流石のアタシも今日はしおらしくしている。
「違うわ。良く覚えてないの。それに、貴方達のせいじゃない、使徒のせいでしょ?」
「ん、まぁそうだけど、アタシが上手くやれば怪我させなかったんだよ。」
「その気持ちだけで十分。今日は、帰ってくれる?休みたいの。」
「ごめん。じゃぁ。僕らは帰るよ。でも無事で本当に良かったよ。お大事にね。」
「ねぇ、シンジ...。やっぱり、怒っていたね。態度冷たかった...。」
「...仕方がないよ、あんな目にあった後じゃ...。」
アタシはあえて思って居る事を言わなかった。シンジも同じみたいだ。そう、あのエコヒイキは
別人みたいだって事を。無論、どこが違うと言われると全く言えない、でも、話していると、
明らかに違うんだ。一体、どういう事だろう?第一、アタシはプラグを砕いている。あんだけ、派手に
壊して何で、軽症で済むんだろうか?もう、解らないことだらけだ。
次の使徒は意外と早くやってきた。あいつ等は人の都合を一切考えない嫌な奴らだ。絶対に女の子に
嫌われるタイプだろう。
進行速度がやたら早くて、上部都市での迎撃が間に合わずにジオフロントで迎え撃つ事になる。
どんでも無く、ヤバいヤツだ。
「アスカ、聞いてくれる?シンジ君はバックアップに回すわ。」
「え、良いけど何で?」
「実は、初号機の電源装置が不良で蓄電出来ないのよ。アンビリカルケーブルが切られたらそれで
終わりになるの、だから悪いけど、お願いね。それから、レイも出すからそれまで頑張って。」
「零号機も?だって、あれは...。」
「大丈夫、100%は無理だけど、ある程度の能力は出せる。総力戦よ。」
「でも、エコヒイキはあんなこと有ったばっかりっだよ。休ませなくて、良いの?」
「ごめんね。貴女達には苦労ばかりかけて、でも仕方がないの、生き残るためには。」
「解った。エコヒイキの準備が整う前に片付けたげる。」
こっちの都合も考えずにやってくるお陰で整備が全く間に合って居ない。でも、やるしか無いんだよね。
ジオフロントにやってきた使徒は、包帯の化け物って感じ、見た目はあんまり強そうじゃないけど、
全ての装甲を一撃でやぶるトンでも無いヤツ。早く片付けないと、
「相当に、ヤバいわね。」
パレットライフルは全く効果がない。シンジは更に後方から、ポジトロンライフルを撃つがこれも効果なし。
「シンジ、ライフル止めて。」
「何する気?」
「分厚いATフィールドがあるなら、接近戦で削ってやる。そこへ、撃ちこんでね。アタシに当てないでよ。」
そう言うと、装備をボウガンに変え、連射しながら突っ込んで行く。
アタシは使徒の目と鼻の先まで突っ込んでやる。
「この距離ならば、ATフィールドも張れないでしょ。シンジ今よ。」
アタシは、横っ跳びに避ける。そこへシンジが、ライフルを打ち込む。衝撃波でアタシの2号機は吹っ飛ぶ。
対して、ヤツは全くの無傷だ。あの距離で、フィールドを張ったて言うの?
アタシはかなりの高さまで吹っ飛ばされており、流石にこの状態では完全な的だ。
「アスカぁぁぁぁぁ」
アタシの様子を見てシンジが使徒に突っ込んで行く。
「バカ!近づいたらやられるよ。」
しかし、時既に遅く、シンジは包帯の様な装甲で右腕とアンビリカルケーブルを切られてしまう。
内部電源が全く無い、初号機はもう動けない。
それに気づいた使徒は、いたぶる様に初号機をもてあそぶ。
「卑怯よ。もう、シンジは動けないのに。クソ...。こうなったら、また使うしかないか。」
「アスカ止めなさい。制御棒の解除は危険よ。」
「そんな事言ってらんない。シンジを助けなきゃ。行くよ、2号機。The beast!」
野獣の咆哮と共に、獣と化した2号機が使徒へ突進する。
アタシの突進を見た。使徒は、初号機を投げ捨てると、アタシの方へ強力なATフィールドを展開する。
もう、格好なんか構ってられない、口を使ってATフィールドを食い破っていく。
しかし、ヤツの攻撃は半端じゃない、包帯をハンマーの様にしてアタシを殴ろうとする、そのハンマーを紙一重
で避けながら突進していく、肉体的にはもう限界近い、活動限界まであとわずかだ、でもやるしかない。
「まだ、まだぁぁぁぁぁぁぁ!」
相手に食らいつくと、コアに肩を押し付けつる様にして、ペンシルロックをぶち込むと、素早くヤツの下へ逃れて
爆風を避ける。
そのまま、下を潜り抜けると飛び上がり前に出て効果を確認するが、
「何で、効かないのよぉ!」
その時、真後ろから零号機がN2ミサイルを持って飛び込んできた。
「ちょっと、エコヒイキ、バカなもの持ち出さないでよ!」
零号機はアタシの2号機を後ろに放り投げながら、
「2号機、後は任せて。」
と言うと、コアにミサイルを押し付け自爆する。
大爆発が起こる。アタシの2号機は投げ飛ばされた時に活動限界を迎えており、もう動けない。
これで、片が付かないと、成す術は無い。しかし、ヤツは全くダメージを受けた様子が無かった。そして、
零号機は瀕死の状態だ。
「エコヒイキーィィィィ!」
ヤツは何を考えたのか、零号機を食ってしまった。頭は消化されないのか、吐き出す。
すると、下半身が女の様な格好に変形して行く、エコヒイキを取り込んだって事?
何を考えているの?
「アスカ、聞こえる?」
「何?ミサト。」
「実はね、ヤツはレイを取り込んで認識パターンを零号機にしてしまったの。もう、ジオフロントの
自爆も出来ないわ。アスカ、何とか止められない?」
「ごめん、ミサト...。こっちは活動限界。仮に電源が有ってもアタシは、ボロボロもう動けないわ。
悔しいなー。もう終わりなんて、何で頑張って来たのか解んないよ。」
「ゆるさん、絶対にゆるさん。」
誰?シンジ?シンジの声なの?
「綾波を返せー!」
え?何なの?
大地を揺るがすような咆哮が響き渡ると、初号機が動き出す。
何で、動けるのよ。しかも、右手をが再生までしている...。
何でよ。何で、動けるのよ。アタシの時はやらなかったくせに、エコヒイキを助けるためには
そんな事をするのね。シンジ、そんなにあの女が好きなの?
ブチ切れたシンジは強かった。圧倒的な戦闘力であれほど苦労した使徒をいとも簡単にたおしてしまう。
でも、何か変だ。あの頭の輪は何?
「ミサト、如何なってるの?」
「私にもよく解らない。でも、リツコによると、レイを取り戻したいと言う思いに呼応して、エヴァが人の域を
越えてるんだって。」
「何でよ。何で、シンジはあの女の為にはそこまで真剣にやるの?アタシの時はそこまでしない癖に、何で、
あの女には...、ずるいよ。何でよ。アタシが戦っている時にやってよ。」
初号機の形が変わって行く。エコヒイキと融合しているみたいだ。ダメ、シンジ、それ以上は止めて。嫌よ。
あの女にそこまで入れ込まないで。何で、アタシじゃないの?
「アスカ、聞いて。サードインパクトが始まるわ。」
「どういう事よ。世界を引き換えにしてまで助ける女なの?シンジは何を考えているのよ。悔しいよ。アタシには
そんな事してくれないくせに、あの女は、そこまでして助けるの...。酷いよ、酷すぎるよ。」
その次の瞬間、大爆発と共に上部の都市毎、ジオフロント上面が吹っ飛ばされる。巨大な竜巻の様な輪が大きく
広がって行く。もう、終わりなのね。なんでこうなってしまったの?
何かが、上空から飛来した。そう、巨大な槍みたいなものだ、それがが初号機に突き刺さる。その刹那、
辺りは何事も無かった様に静かに成った。後には、大地に突き刺さった槍に貫かれた初号機だけが有った。
そして、上空にはエヴァの様な人型の巨人が居る、あれは何なの?取りあえず、助かったって事?
助かったと思ったら、余計に悔しさと嫉妬の炎がアタシを焦がし、気が付くと泣き出して居た。
「ひっく、悔しいよ。悔しいよ。何で、アタシよりあの女を取るの?愛して居るんだよ。なのに...、なのに...
許さない、絶対に許さない。シンジはアタシのもの、誰にもあげない...、絶対に、絶対に...、取り返して
やるわ。」
続く...。
と言う訳で、次回は「Quickening」です。
まだ夏か
乙です。式波さんヤンデレてきましたねw続き待ってます
ただやっぱりセリフに覇気がないかなぁ
力入るシーンなら、そういうセリフに見せた方がいいと思います
レイをエコヒイキって呼称するのって、LASではムチャ違和感あるなw
>>293 アスカの一人称なら「あの女」とかの方がしっくりくるかもな。
エコヒイキとかバカシンジは会話以外で使うと違和感がある。
他人に聞かせるための言葉だからな。
295 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/20(木) 03:24:52 ID:JWpJyBcG
なんだかなあ
セリフに感情が無い
>>275 今頃気付いて読んだ輩ですが‥ww
感動物です!
キャラのセリフ回しと仕草が目に浮かぶようで可愛かったです。2人で奏でる「fry me tothe moon」も良かった〜。
初めてですが、書いてみました。
これは、さだまさしの『恋愛症候群』という曲を題材にしてるので
聴きながら、もしくは聴いてから読んでいただけると幸いです。
読みたくない方は、NGワード
恋愛症候群
でお願いします。
サードインパクトから三年後、ゼーレや碇ゲンドウなどの一部を除いた人々は
、貴重な臨死体験を終え帰還し、地球レベルでの復興も驚くべき早さで進んだ。
これには、ネルフの科学技術の開示が起因していた。
こうして、今ではセカンドインパクト直前ほどの状態に戻り、日本もサードイン
パクト時の衝撃による、地軸のずれの解消により、四季を取り戻していた。
その間にアスカとシンジの和解、ネルフと残ったチルドレン二人との和解、国連
とネルフの和解、などたくさんの和解があり、その上に今の平和が成り立ってい
る。この和解の連鎖は、人の心を覗き合い、他人を思いやるという事を以前より
覚え、少しだけ優しくなった人類の、サードインパクトによる副弐的産物であっ
た。
そんな、太陽が照り付ける茹だる様に暑い夏のとある日曜日の午後、保護者兼
元上司の葛城ミサト、同居人兼恋人の碇シンジの不在を良い事に、居候の身であ
りながら惣流・アスカ・ラングレーは、クーラーの温度設定を低めにし、自室の
壁にもたれ掛かって音楽をかけながら座ってスイカバーを食べていた。
「ホント、外は暑そうねぇ。シンジ、大丈夫かしら…」
そう、独り、言ちる。
聴いている曲は、年齢に似合わずさだまさしである。
何故こんな古い曲を聴いているのかというと、それは先日、地球復興に甚大な功
績を挙げたことにより、今では国連の特別研究所になっているネルフに、アスカ
とシンジが健康診断を受けに行った際、青葉シゲルに会った時の事だった。
300 :
恋愛症候群:2009/08/20(木) 10:54:29 ID:???
サードインパクトから三年後、ゼーレや碇ゲンドウなどの一部を除いた人々は
、貴重な臨死体験を終え帰還し、地球レベルでの復興も驚くべき早さで進んだ。
これには、ネルフの科学技術の開示が起因していた。
こうして、今ではセカンドインパクト直前ほどの状態に戻り、日本もサードイン
パクト時の衝撃による、地軸のずれの解消により、四季を取り戻していた。
その間にアスカとシンジの和解、ネルフと残ったチルドレン二人との和解、国連
とネルフの和解、などたくさんの和解があり、その上に今の平和が成り立ってい
る。この和解の連鎖は、人の心を覗き合い、他人を思いやるという事を以前より
覚え、少しだけ優しくなった人類の、サードインパクトによる副弐的産物であっ
た。
そんな、太陽が照り付ける茹だる様に暑い夏のとある日曜日の午後、保護者兼
元上司の葛城ミサト、同居人兼恋人の碇シンジの不在を良い事に、居候の身であ
りながら惣流・アスカ・ラングレーは、クーラーの温度設定を低めにし、自室の
壁にもたれ掛かって音楽をかけながら座ってスイカバーを食べていた。
「ホント、外は暑そうねぇ。シンジ、大丈夫かしら…」
そう、独り、言ちる。聴いている曲は、年齢に似合わずさだまさしである。
何故こんな古い曲を聴いているのかというと、それは先日、地球復興に甚大な功
績を挙げたことにより、今では国連の特別研究所になっているネルフに、アスカ
とシンジが健康診断を受けに行った際、青葉シゲルに会った時の事だった。
301 :
恋愛症候群:2009/08/20(木) 10:55:28 ID:???
健康診断を終えたシンジが、自動販売機のベンチに座ってアスカを待っている
と、いつになくハイテンションな青葉シゲルがやって来た。
「おぉシンジくんじゃないか!どうしたんだいこんなところで?」
シンジは、何時になくハイテンションなシゲルを訝りながらも答えた。
「えっただ早く健康診断終わったんで、アスカを待ってるだけですけど…」
「そうかいそうかい!」
シゲルはひたすら陽気だった。馴々しく肩を組んで来た。
「ところでシンジくん、いっつも何の曲を聴いてるかしらんが、今の時代はロッ
クだぞ!ロック!このフォースインパクトを引き起こすロックンローラーと言わ
れた所で全く憚らない男!青葉シゲルが、良い曲紹介してやるよ!」
「いやいいですよ、だってシゲルさん影薄いですし、何より名前初めて聞きまし
たよ」
「えっ…」
「あっ…」
そんな気まずい空気を打破するかの様に、シンジの姿を見つけたアスカが駆けて
来た。
「シンジぃ!なにしてんの?」
「あっアスカ!」
シンジは(≧∇≦)ъ ナイス!とばかりに心踊らせた。
「シゲルさんが何か良い曲紹介してくれるって」
復活したシゲルが喋り出す。
「おぉ〜いい所に来たな、アスカ!いっつも何の曲を聴いてるかしらんが、今の
じ」
「へぇ〜存在感薄いからって必死ね」
シゲルは泣いた。シンジが、自分の事を棚に挙げ「ダメだよ気にしてるんだから
」などとアスカを非難していると、そこへ今では総指令の冬月がいつもの困った
顔でやって来た。
302 :
恋愛症候群:2009/08/20(木) 10:58:05 ID:???
「おやおや?なっ青葉くん!何かあったのかね?」
「シンジくんとアスカちゃんがぼく、かげうすいっていじめた!」シゲルは幼児の様な声で喚いた。
「あぁ残念だが、それは否定出来かねるな」
「ぐぅ〜」シゲルはうずくまった。
「ところで何の話をしておったんだ?」
「はい、シゲルさんがロックな良い曲を紹介してやるって」とシンジが答えると、日頃から不満を抱いていたのであろう冬月が激昂した。
「何?ロックだと!?だから今の若者はなっとらんのだ!あんな軽薄な雑音で構成された騒音なぞを聞いておるから」
「ろっくばかにすんな!」
冬月はシゲルの顎を思いっ切り蹴り上げる。
「良い機会だからアスカくん、日本文化の勉強のためにも昭和のアーティストでも聞いてみたらどうかね?」
冬月は何もなかったかの様に、アスカへ薦める。
「えぇ〜あんまり私っぽくありませんよ!」
「良いじゃない。この前アスカ、日本の文化も悪くないわね。とか言ってたじゃ
ないか」
シンジも、あまり音楽を聴いていない様子のアスカが取っ掛かりが何にせよ音楽
に興味を持てば一緒に楽しめるのではないかと思い、それに同調する。
「うっさいわねぇ!それはアンタがアタシに作った肉じゃがが美味しかったから
、日本の食文化も悪くないわねって言ったんじゃない!別に日本の文化を褒めた
わけじゃなくて、その、あ、アンタを褒めたのよ」
「…アスカ」シンジは呟き、照れたアスカを愛しく思い頬を緩めた。
そして、冬月がこの良い雰囲気に飲まれたら負けだと危機感を感じ執り成す。
「まぁとりあえず一度聞いてみるといい。さだまさしという人が私は好きなのだ
が、笑える曲から泣ける曲までたくさんあってな。良い曲が多くある。取り敢え
ず部屋に来なさい。ライブベストを貸してあげよう。本当にサードインパクトの
後、音源が残っていたのも奇跡と言える。」
冬月は喋りながら歩き出し、シンジとアスカも手を繋ぎながら続いた。
その場にはシゲル一人が意識を失い、四肢をだらんとさせたまま仰向けに倒れ、
よだれを垂らして気絶していた。
しかし、持ち前の影の薄さによって誰一人気がつく者はいなかった。
303 :
恋愛症候群:2009/08/20(木) 11:01:31 ID:???
そして今日、アスカは冬月に返す日をあさってに設定したことを思い出し、早く聞かなければと急いで部屋に埋もれていたCDを引っ張り出して、あまり使わ
ないコンポで聞いているのだった。
「ふぅ〜ん、まぁまぁね」
そして開始約15分後、ディスク1枚目の4曲目「恋愛症候群-その発病及び傾向と対策に関するー考察-」が始まった。
(前奏で皆笑ってる…そんなに面白いのかしら?)
『恋と呼ばれる一過性の発情症候群に於ける その発病及び傾向と対策について考える 年齢 性別 職業 ツベルクリン反応 郵便番号の如何を問わず 凡そ次のとおり
開き直らねば何も出来ず ただ暗く爪をかみ 目が点になってため息ばかりの A型』
(違うわよ!あっ、でもバカシンジは完全にそうね。)
『他人のことなど考えられずに 大切な花畑 平気で踏み荒らしてヒンシュクをかう B型
今日と明日では自分同士で意見が分かれて 熱し易く冷め易い AB型
その内なんとかなるんじゃないかと思っている内に 自分だけ忘れ去られている O型』
(血液型占いなんて、前時代的。でもまぁ古い歌だもの、しょうがないわね)
『その他 いきなり優しくなったり急に詩人になるケース 夜中にいなりずしをどうしても喰べたくなる場合 海に向かってばかやろーと叫ぶなどはよくある事で更に若いのに髪が薄くなる方もある
なにしろ これらがある特定の人にだけ反応するって事は恋は一種のアレルギーと考えてよい』
(あら、上手いじゃない!)
304 :
恋愛症候群:2009/08/20(木) 11:05:18 ID:???
『恋におちたら一部の例外を削除すれば およそ 男は男らしく 女は女っぽくなるものらしい手想 星座 サイコロ タロット 四柱推
命 その他茶柱まで相性占いなど気になったら もう恋 相手には自分の良い所ばかり見せたくなるものであるし 相手の欠点には気づいても気づかずにいられるし』
(私達の場合真逆ね…)
『食べ物 着るもの 見るもの 聴くもの すべて好みが合うと思うし 毎日が二人の記念日になる
処が一年二年とたつうち見えてくるんですよ 恋とは誤解と錯覚との闘い
そのうちなんだかお互い知らない人に思えてきて 次第に疲れて 会っても無口になる』
(そんなもんなのかしら…まぁ私達の場合はサードインパクトでさらけ出しちゃったし関係ないわね)
『初めは めまい 立ちくらみ 食欲不振で気づいた恋がいつか注意力散漫 動悸 肩こり 息ぎれに変わり やがて 頭痛 発熱 歯痛 生理痛 すり傷 切り傷 しもやけ あかぎれ 陰金 夜泣き かんむし 田虫 水虫 出痔 いぼ痔 切れ痔 走り痔 えーと えーと …えーとせとら』
(日本語の意味が分からない所が多々あったわねぇ…帰って来たらシンジに聞いてみよ)
『とにかくそんな風に笑っちまった方が傷つかずに済むって わかってるんだ 誰だってそうだろう』
(あら?突然シリアス調になったわね)
『恋は必ず消えてゆくと誰もが言うけれど ふた通りの消え方があると思う』
(うんうん)
『ひとつは心が枯れてゆくこと そしてもうひとつは 愛というものに形を変えること』
(変えられるかしら…大丈夫よね、シンジと一緒なら。)
『相手に求め続けてゆくものが恋 奪うのが恋』
(えっ…)
アスカの頭に、尊大に命令する自分と、いやいやながらも実行し続けるシンジの姿が幾つも甦った。
『与え続けてゆくものが愛 変わらぬ愛』
堪らずCDの再生を止め、冷房の駆動音が場を支配する。車のクラクションが聞こえた。
(あたしは、シンジに何も、与えられて、ない…)
溶けかかったスイカバーのつゆが、アスカの手の甲を、伝った。
305 :
恋愛症候群:2009/08/20(木) 11:06:45 ID:???
「ただいま〜ゴメンね、遅くなって」
家の玄関先で、何故か、碇シンジは暖かな衝撃を感じた。
「おっかえり〜シンジ!」
アスカがシンジに駆け寄り、抱き付いたのだった。いつもはリビングから聞こえて来る「おかえり」の声がこんなに近く、また実体
を伴って来るとは思わずシンジは驚いた。
「どっどうしたの、突然!?」
「どうしたのって…恋人同士なんだから抱き付くくらい当たり前じゃない」アスカはシレっと答えた。
シンジの脳裏に「これには何か裏があるに違いない」という危機感がよぎる。
「いやでもさぁ…今日はいやに積極的じゃない?」
「そうかしら?別に普通よ」
これが普通ならいつものわがままな彼女は何だったんだろうと思いつつ、夕食を作る最中にゆっくり考えようと、靴を脱ぎながらシンジはアスカに告げる。
「まぁいいや。今日は餃子作るから楽しみにしててよ」
「あっじゃあアタシも手伝う!」
沈黙。のち
「えぇっ!?」
シンジは二の句を口に出すまで少々間が開いてしまうほど驚いた。
「あによ?何か文句あるわけ!?」右頬を膨ませシンジをにらむ。
「いや、ないよ。ないけど…ホント今日はどうしたんだよアスカ?」
「別に、何となくよ、何となく!さぁササッと夕飯作るわよ!」
306 :
恋愛症候群:2009/08/20(木) 11:10:26 ID:???
夕食時、食卓にはパリッと焼けた餃子の良い香りが立ち込めていた。副菜として中華サラダが用意され、ワンタンスープと白米までついたバランスの取れた、かつ食欲をそそる料理が並んでいた。
しかし、主菜である餃子の形自体に目を向けると、些か不可解なことになっている。
具を押さえきれず包皮が決壊していたり、明らかに折り目の間隔がおかしかったり、完全に形象崩壊してしまっているものがあるかと思えば、折り目が等間隔に
並んでいる綺麗な餃子もある。だが、この謎は餃子を作った二人の性格、つまりアスカは唯我独尊でシンジは気
弱、しかし共通して優しいという事と、今の様子を見ればすぐに明らかとなる。
アスカが不機嫌そうに形の悪い餃子ばかりを食べるのに対して、シンジはビクビ
クしながら綺麗な餃子ばかりを食べている。時折シンジが形の悪いものに手を出そうとするも、アスカの射る様な目線に遭い
、おずおずと箸を方向転換し綺麗な餃子に向ける。
この状態から見るに、アスカが餃子作りを手伝ったは良いが失敗し「この失敗した奴は全部アタシが食べるわ!だから、アンタがもし私のに手を出
そうもんなら容赦しないわよ!」とシンジに言い渡し「えっでも、そしたらアスカが…」
とシンジが言い返そうと頑張るが、もちろんアスカに遮られ「うっさいわね!男のくせにグダグダ言ってんじゃないわよ!アタシが料理運ん
でやるから、早く席に着きなさいよ!」と玉砕され、「分かったよ…」などと呟きながら席に着くシンジが目に浮かぶ様であった。
そんな気まずい夕食を終えると、保護者である葛城ミサトから電話があり、今日は遅くなるので夕飯はいらないとのことであった。
リビングのソファに二人並んで腰掛け、テレビを見ながらうだうだと、それでいて幸せそうに喋っていると、お風呂が沸いた事を告げるメロディーがリビングに鳴り渡った。
いつもであれば、アスカが「じゃあ先入るわね」とシンジに告げてソファを立つ
筈なのだが、今日は何故かそうはせず、いつもとは全く逆なことを言い出した。
307 :
恋愛症候群:2009/08/20(木) 11:11:44 ID:???
「アンタ、先入っていいわよ」
沈黙。のち
「えぇ!?」
本日二度目である。
「何で!?」
「何でって…いっつも私が先じゃ悪いでしょ?」
「いやでも…あっほら!僕、洗濯物畳んだり食器の片付けとかあるから」
「じゃあアタシがやったげるわよ!」
「うえぇえっ!ホントに!?」
「このアスカ様がウソ吐く訳ないじゃない!」
「えぇ〜でもなぁ…」
「何よ、アタシに任せるのがそんなに不安だって言いたい訳!?」
「い、いや、そっそんなことないよ!じゃあ…分かった、今日はお願いするよ」
「全然OKよ!さぁ早く入っちゃいなさいよ!」
アスカはまず、食器洗いから始めた。食器自体は夕飯分、しかもたった二人分しかないので数自体はあまりなかったた
め早く終わるだろうと目算したためである。しかし、数は少ないはずなのだが、食器を手から滑らせシンクに落とし、ギリギ
リ割れてしまうのを免れるケースが多々あり、食器洗いは難航した。ようやくヒヤヒヤものの食器洗いを無事に終えたアスカは、洗濯物を畳み始めた
。
その後、しばらくしてシンジがタオルを首にかけ、ほこほことした湯気を立て
ながら、心に置けるアニマの占有率が高過ぎるのではないかと思わせる女性的な
フェロモンを放出しつつ、笑顔でリビングに入って来た。
「いや〜やっぱり一番風呂は良かったよ。ありがとう、アス…アスカ!?」
そこには、正座の状態から両足を外に出して座る、いわゆる女座りをし、俯いているアスカの姿があった。
「アスカ、どうしたの!?」
シンジの心拍数が高揚する。
すぐさま駆け寄り膝を突き、アスカの顔を覗き込む。
アスカは、涙をこぼしていた。
308 :
恋愛症候群:2009/08/20(木) 11:15:28 ID:???
「アタシは、ホントに、ダメな、女なのよ…」
声を震わせながら、ポツリ、ポツリと、答える。
シンジが横に目をやると、洗濯物の山とお世辞にも上手いとは言えない、洋服や下着を小さく折ったものがあった。そして小さな声で呻く様にアスカは喋り始めた。
「バカらしい話かも知れないんだけど、今日ね、冬月さんに貸して貰ったCDを聞いてたの、シンジも一緒に居たし分かるわよね?」
シンジは頷く。
「それでね。恋愛症候群って曲なんだけど、その中の歌詞に『相手に求め続けるのが恋、奪うのが恋。与え続けて行くものが愛、変わらぬ愛。』っていうのがあってね。
アタシ、今までは浅はかで自己中だから、シンジはアタシを愛してくれてるし、アタシもシンジを愛してるから、ずっと一緒にいてくれると思ってたの。
でもこれ聴いて気付いちゃったのよ。アタシのシンジへの想いは愛じゃなくて、恋なんだって。アタシは求めてるだけ、シンジから奪ってるだけってことに…シンジはアタシに優しくしてくれてるのに、アタシは、シンジに何もしてあげてないのよ!」
「そんなことないよ、アスカ!」シンジは悲痛なようすで叫んだ。
アスカも負けじと叫ぶ。
「何が、違うってえのよ!アタシは、アンタに何かしてあげようと思ってやってみても、何も出来ないただのダメ女じゃない!それなのに、アタシはいつもいつも高飛車に、尊大に、シンジに命令して、女王様気分で愛されてるって勘違いしてる、馬鹿女じゃないの!」
もうアスカの顔は涙でグシャグシャだった。
「だから…違うって言ってるだろ!」
冷房の駆動音が響く。
シンジは、恫喝するかの様な声を出した自分に驚き、アスカも、シンジの初めて聞く唸り声に沈黙し、場に寂然とした空気が流れる。
その均衡をシンジが静かに、やぶった。
309 :
恋愛症候群:2009/08/20(木) 11:17:48 ID:???
「アスカさ、前に僕が、何で僕に何でもやらせるんだよって聞いた時、何て言ったか覚えてる?」
アスカは首をふる。
「その時アスカこう言ったんだよ。アンタが幸せそうな顔するからじゃないの!って。それで、そりゃそうだな…って思ったよ。」
不思議そうにアスカは見つめる。
シンジは言葉を選びながら噛み砕くように告げる。
「だってさ、好きな娘のわがままっていうのは、言わばその人の、計算や飾りのない、まごころな、訳でしょ?
それをぶつけてくれて、その好きな娘のためにそれに答えるっていうのは、本当に幸せなことなんだ。
だから、アスカも、傍目にはそうみえないかもしれないけど、僕に今まで与え続けて、愛し続けてくれてたんだよ。そんなイヤな役回りをし続けてくれた、アスカに、悪いくらいだよ。」
アスカは徐に否定する。
「そんなこと…ない」
シンジはゆっくりと続けた。
「うん、でもね。アスカのまごころに答えるのも、好きな人のために何かしてあげられてると思えて嬉しいけど、好きな人に何かしてもらうって言うのも、それと同じくらい嬉しいって事に今日、気付いたよ」
「シンジ…」
アスカは依然泣いていた、が、涙の意味が少しずつ変わっていた。
310 :
恋愛症候群:2009/08/20(木) 11:19:55 ID:???
「でも、アタシ料理も上手くないし、食器洗いも、洗濯畳むのも何も出来ないのよ?」
悪い事をしてしまい、それを親に告げる少女の様に、不安そうにアスカは尋ねた。
シンジは、優しい母親のように答える。
「これから覚えれば良いじゃない。だって死ぬまで一緒に、いるんだからさ」
アスカの涙の意味が変わった。
「…シンジぃ!」
アスカが、シンジにギュッと抱き付く。
シンジも、それに呼応するかのように優しく抱きしめる。
「だから、今まではアスカが、僕にまごころをくれて、僕がそれに答えるっていう、立場の決まった関係だったけど、これからはさ。
何でも二人で一緒にやっていこうよ。ずっと、一緒にいるんだからさ。そうすればお互いが一生愛し合えることになるしね。」
「そうね。それって、素敵な事よね」
「うん、こんなに大事なことを気付かせてくれて、本当にありがとう、アスカ。」
「こちらこそ、ずっと私を愛してくれて、ありがと。そしてこれからもよろしく
ね、バカシンジ!」
アスカの笑顔が、ニヤッと、イタズラっ子の笑顔に変わる。
「なっ!?何でこんな良い雰囲気の時にバカシンジなんだよ!」
「だって、ホントの事じゃな〜い!こんなわがままアタシを一生愛してくれるなんてさ…」
二人はまた強く互いを抱き寄せる。
「アスカは、今まで、他にも僕に与えてくれてたんだよ。」
「何よ、暴力とか下らないこと言ったら、怒るわよ」
「ちっ違うよ…例えば、さ。元気の出る満面の笑顔…とか、てっ照れてる可愛い顔…とか、
他人と一緒にいる初めての安心感…とか、けっ結婚したいって気持ち!とか、それと、あとは、ンッ」
待ちきれない、とばかりにアスカは自らの唇で、シンジの唇を塞いだ。
「長いのよ、バカシンジ。」
「ゴメン…でも、大事なことだからさ」
「うん、これからもよろしく頼むわね。シンジ」
「こちらこそよろしく、アスカ」
311 :
恋愛症候群:2009/08/20(木) 11:21:16 ID:???
そして、アスカは満面の笑みを浮かべて立ち上がった。
「ねぇ記念に二人で恋愛症候群、聞きましょうよ!」
「良いけど、また落ち込んだりしない?」
「大丈夫よ、シンジと一緒なら。それに、さっき何でも二人でやるって決めたじゃないの!」
「そうだね。」シンジが微笑む。
二人でアスカの部屋に行き、壁にもたれ掛かりながら、二人で手を絡ませながら座る。
そしてCDを再生し、曲は後半へと差し掛かろうとしていた。
『頭痛 発熱 歯痛 生理痛 すり傷 切り傷 しもやけ あかぎれ 陰金 夜泣き かんむし 田虫 水虫 出痔 いぼ痔 切れ痔 走り痔 えーと えーと …えーとせとら
「ねぇ、ここらへんの日本語ってどんな意味なの?」
「えっあぁ〜こっこ昆虫の名前だよ!そう、いるんだよ、こういう昆虫が!」
「ふぅ〜ん、でもなんで皆笑って…あっここからよ!」
312 :
恋愛症候群:2009/08/20(木) 11:23:17 ID:???
『とにかくそんな風に笑っちまった方が傷つかずに済むって わかってるんだ 誰だってそうだろう
恋は必ず消えてゆくと誰もが言うけれど ふた通りの消え方があると思う ひとつは心が枯れてゆくこと そしてもうひとつは愛というものに形を変えること』
「僕たちは変えられたから大丈夫だね。」
シンジが微笑みかけ、アスカは満面の笑みで返す。
『相手に求め続けてゆくものが恋 奪うのが恋 与え続けてゆくものが愛 変わらぬ愛』
(ここから止めちゃったから聞いてないわね)
『だから ありったけの思いをあなたに投げ続けられたら それだけでいい』
(シンジは、それだけでいいって…思って、くれてたんだ。)
アスカの頬に一筋の涙がこぼれ、それをシンジが優しく拭う。
『おそらく求め続けてゆくものが恋 奪うのが恋 与え続けてゆくものが愛 変わらぬ愛
だから ありったけの思いをあなたに投げ続けられたら それだけでいい』
『あなたに 出会えて 心から しあわせです』
曲が終わり、二人を甘美な静けさが覆う。
自然と二人は見つめ合い、目線を絡ませ、片方の手を絡ませたまま、そっと、抱き合い、二人の舌を、強く、絡めた。
二人の『恋愛症候群』は、永遠に治らなかったという
Fin
313 :
恋愛症候群:2009/08/20(木) 11:29:42 ID:???
えぇ〜多分始めの名前欄いれず投稿した以外にも、
何かしらのミスはあると思いますが、大目に見てやってください。
読んでいただいた方、ありがとうございました。
>>313 普段しなれないことを頑張るアスカ可愛かったです。
文体は初々しい感じがしました。
これからも頑張って素敵なLASをお願いします!GJ!
GJ!
前半ギャグかと思ったけど、少し切ない感じもあって良かったです!
青山と冬月のキャラぶっ飛んだなw
さだまさしのノリは70年代だからなぁ
GJ!
和むなぁw
青葉ワロタwwwwwwwww
乙です
GJです!題材のせいか、妙にノスタルジックな気分…
しかしこんなに新参さんがイキイキするとは、破効果すげえw
>>288 の続きです。当初の目論見より、かなり長く成って来ました。
Quickeningは前後編に分けます。あと、3回ほどなので、
読みたくない人はもう少し我慢してください。
初号機が暴走をした後、直ぐにアタシ達は拘束され、芦ノ湖に曳航された、三隻のヘリ空母に監禁された。
特に、パイロットであるアタシの扱いは最悪。絶対に逃げないように、重営倉に入れられた上、
手錠をされて、壁に繋がれた、鎖を足に付けられている。
全てが、鋼鉄で出来た独房で、ベットはおろか、トイレも無い部屋で、代りにバケツが置いてある。
薄手の夏服一枚ではかなり堪える。渡された、薄手の毛布をお尻に敷いてはみたが、全く効果なしだ。
入口の扉が開くと、強い光が差し込む。薄暗い部屋に入れられているので、目がくらんで入って来たのは、
誰か解らない。
「あの神経質な大尉を入れるには、環境悪すぎませんか?」
ようやく目が慣れて、入ってきたのが誰か解った。何で、お前が居るんだよ。
「何しに来たの?マリ。」
「助けに来たに決まってるでしょ。それにしてもひどい扱いスね。大尉は、未成年になんだから、これは
児童虐待ですな。アグ○ス辺りが知ったら、怒鳴り込んで来ますよ。制服姿の女子中学生にこんな事して、
連中は変態じゃないですか?」
「下らない事、言って無くて良いから、手錠外してくれる?」
「監視カメラは、大丈夫なの?」
「システムにハッキングして居ますので、ダミーが流れて居ます。後、20分は大丈夫ス。」
「他に、捕まっている人は?」
「ええと、このエリアでは3人ですが。」
「じゃぁ、その人達も助けて。」
「一寸、待って下さい。救出用の小型艇は二人乗りです。助けられません。」
「良いから、助けなさい。この船には、飛行機も積んだ有るから、それを奪えば良いわ。」
「ヘイヘイ、解りました。こう成ったら、自棄ス。」
「あ、それから、アンタのMP5よこしなさい。」
「これは、自分のですが。」
「アンタは、見張りの兵から奪った銃を使えば良いでしょ。兎も角、よ・こ・す・の。」
「もう、大尉の我儘が始まったよ。解りましたっ、これで良いんでスね。」
「良いわ。じゃぁ、助けて来て。」
マリが持って来たのは、サイレンサーが付いた特殊部隊用のMP5に点射モードの付いたSD6だ。
「良い銃ね。」
人に向けて、撃てるかな?
「撃つしか無いんだよ、アスカ。シンジに会いたかったらね。」
そう、シンジに会えるんだったら、地獄に堕ちても構わない。
外に出ると、マリが助け出した人が既に居た。ミサトと加持さん、それに赤木博士だ。
「アスカ、酷い扱い受けたみたいね。大丈夫?」
他の人の独房は、ベットも有るし、トイレに仕切りが付いている。アタシとは雲泥の差だ。
「まぁ、知らない人にしたら、エヴァパイロットなんて、化け物なんでしょ。それより、司令や副司令は、
居ないの?」
「あの人達は、こう言う事態を予想して居たみたいで上手く逃げたよ。多分、巻き返しの工作中だと思う。」
「そうなんだ。やはり、凄い人達ね。じゃ、アタシ達も逃げようよ。20分以内に逃げれば大丈夫よ。」
甲板にでると、流石に人が多い。物陰に隠れて、奪えそうな飛行機を物色する。
「あの右から3番目のVTOLが良いんじゃ無い?」
「何で、ですか?」
「エンジンかかっている中で、一番マークがカッコいいから。」
「一寸、適当すぎるでしょ。まぁ、良いか。どれも大して変わらないし。」
どうやって、奪うか考えていた時、サイレンが鳴った。
「総員緊急配備、逃亡者が出た至急探索せよ。」
「マリ、どういう事よ?まだ、15分しかたってないわ。」
「知りませんよ。それより、如何します。」
「あ、居たぞ。あそこだ。」
見つかったか。
「こうなったら、強行突破よ!皆、走りなさい!」
そう言って、走り出したミサトの後追うように走りだす。
銃を乱射しながら立ちふさがる兵をなぎ倒して、目星を付けたVTOLにたどり着く。
「アスカッ、発進準備をして!」
「解った、ミサトも援護してね。」
「任せといて!」
エンジンがかかっていたので直ぐに発射準備が整う。
「ミサトォ!出れるわ。乗って!早く!」
飛び出しすと、追手を沈黙させるために、ミサイルで甲板をぶっ壊して飛行機を飛べなくする。
残りは二隻だが、一隻は同じように破壊できたが、ミサイルが尽きたので、残りの一隻は上がって来たのを片っぱし
から撃ち落としていく。それでも、撃ち漏らした最後の一機に背後を取られてしまった。
「大尉、ヤバいスよ。」
「黙って乗ってなさい!VTOLでのドッグファイトのやり方を見せてあげるわっ!」
そう言うと、エンジンを90度回転させ、VTOLを上昇させる。更に、前方へエンジンを傾ける。
急制動がかかり、速度が一気に落ちる。一応、斜め下にエンジンが向いているので落ちる事は無い。
物理的に無理な気もするが、同じタイプが大量に生産されているので、設計的な問題は無いんだろう。
このまま、エンジンをふかし続ければ後進も可能だが。速度が0近く成った所で、エンジンを絞る。
「ちょ、大尉。ここで、エンジンを絞ったら落ちますよ!」
「そうすれば、逃げられるわ。」
「落ちたら意味無いですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
落下しながエンジンを水平位置にしておき、水面近くで機首を起こして水平にすると、エンジンをフルスロットル
で吹かす。揚力を回復した、VTOLが水しぶきを上げて水面ギリギリを飛ぶ。
「飛行艇じゃないんだから、こんなとこ飛ばなくても良いでしょ。」
「でも、ベストポジションよ。」
アタシは、敵の下方を取る位置に付ける事が出来た。このまま機首を起こし、バルカンの射線上に入れる。
「ごめんね。恨みは無いの。でも、シンジと会いたいのだから、ごめんね。」
引き金を引くと、相手のVTOLが落ちて行く。
「皆、無事?」
「無事な訳、無いでしょ。私は吐きそうだし、リツコは泡を吹いて気絶して居るわ。」
「生きているだけ良いじゃん。」
「大尉、このまま洋上に出て、九州方面に飛んでください。坊ノ岬沖にユーロの潜水艦が来ています。」
「そんな地名言われても...。」
「北緯30度43分、東経128度04分ス。」
アタシは、航行用コンピュータに座標を入れて、場所を確認する。
「ここって、日本の領海内でしょ。こんな所に居て大丈夫なの?」
「何でも、昔の戦艦が沈んで居る所なので上手く、カモフラージュできるみたいで...、大尉?何処へ、
向かってるんスか?」
「ジオフロントよ。」
「だから、勝手なことしないで...。作戦が無茶苦茶じゃないスか。」
「シンジを助けないと、意味無いもの。」
「って、あの坊やは初号機に取り込まれています。助け出すのは無理しょ。」
「大丈夫、アタシに考えがあるから。」
第三新東京市と呼ばれた地域は今や廃墟となり、厳重封鎖地域に成っている。それが逆に幸いして、人は誰も居ない。
この分なら、上手く行きそうだ。
ジオフロント上面も吹っ飛んでおり、初号機へは簡単に辿りつける。ココにも人はいない。
アタシは、初号機を貫いている槍の直ぐそばにVTOLを降ろすと、槍の元へ駆けだす。
「全く、酷い目に有ったわ。アスカの操縦する飛行機には金輪際乗らないわ。」
目を覚ました。赤木博士がふら付きながら出てくる。他の人もアタシの後に付いてきた。
アタシは、槍に手をかけて、念じるように下を向く。
「で、大尉。これから、如何するんスか?」
アタシは、徐に上を向くと大声で叫ぶ。
「コラー!バカシンジ、今直ぐ出てこーい。何時までも、そんな女といちゃついてるんじゃ無いぞ!」
「あのーぉ、大尉、作戦てこれッスか?」
「黙ってなさいよ!エヴァは、人の意志でどうにでも成る訳の解んない乗り物よ。こうすれば、何とかなるわ。」
「アスカ、気持ちは解るけど、今コアに刺さっている槍は制御装置なの、何が有っても動かないわ。」
「そんなの解らないじゃない、ここ最近、あり得ない事ばかり起きてるんだから。」
赤木博士の言葉に、泣きたいのを必死に堪えて反論する。
「アタシはね。エコヒイキなんかより、何倍もアンタの事愛してるんだよぉ!だから、戻って来てよ。お願いだからぁ!」
アタシは腹立ちまぎれに槍を蹴りつけながら、続ける。
「良い?シンジ、アタシの作った味噌汁は、エコヒイキのと違って、出汁も取ったし、味噌もチャンと溶いたじゃん。
アンタのよりは、落ちるけどもっと、美味しいの食べさせて上げるから...。お願いだから...、出てきてよ。」
アタシは耐えきれすに、最後は半べそになりながら言った。
「はぁ、シャーナイ。あのね、坊や。この大尉は、性格は無茶苦茶で乱暴だけどさ。根は取っても良い娘だよ。
あんまり泣かせないでくれるかな?」
「シンちゃーん。ペンペンも入れてまた、4人で暮らしましょ。楽しかったの覚えているよね。」
「おーい、シンジ君、男なら女の子をあんまり泣かせるんじゃ無いぞ。男らしくスパッと出てきて、抱きしめてやれよ。」
「はぁー、仕方の無い人達ね。シンジ君、思われているうちが花よ。あんまり泣かせると、嫌われるわよ。」
皆...、赤木博士まで...。
その時、地面が爆発して砂煙が上がる。遠くの方に大勢の軍隊が見えた。
完全に包囲されたみたいだ。
続く...。
と言う訳で、次回は後編です
乙です。アスカパワフルでみんな優しいのぉ
〜スよマリにちょっとワロタw
ちなみに「〜。」かぎかっこの最後に。はいらんよ
>>239でも注意されてるのに無視してる時点で聞く耳持ってないんだろ
夏真っ盛り
332 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/21(金) 04:20:02 ID:y7+VzvYY
致命的なレベルではない
>>329 それは新聞小説の文字数削減の時に出来た文法だから間違いじゃないよ
「〜。」が本来正しい文法だ
ただ見辛いのもあって新聞小説式の。を付けない方式が広まっただけ
自分は文字数制限クリアする為に。は付けない方で書いてるが
押し付けはいかんよ
>>275 すんげえ遅レスですが超GJです
マジ神すぎる
あなたの大ファンです
シンジって女の子だと向かうところ敵なしの大和撫子だよねw
そんなシンジ君が好きだわ
アスカのアスカらしさと、シンジのシンジらしさが素晴らしいです
本編でちょっとありそうなエピソードで大好き
335 :
674:2009/08/21(金) 09:08:00 ID:???
ぐーてんもるげんです。どうも遅くなりました。
短編のつもりが無駄に長くなっていきます。すみません。自分でも予想外です。
・学園異性系イタモノ注意
・中途半端
・シンジが分からん
NGワード キンモクセイ
堤防の向こうに立ち並ぶ団地も。
建物の隙間から差し込む夕日の色も。
草の匂いに少し生臭い水の匂いも。
家路に急ぐ人の姿も。
子どもたちのはしゃぐ声も。
この河川敷の景色は変わらないね。あたし、みんな知ってる。
「ねぇねぇ、シンジ」
「なに?」
あたしのグローブに、シンジの投げたボールが吸い込まれていく。
手のひらに感じる小さな衝撃。
「あたし、今、すっごい魔球思いついた!投げてみるから受け取りなさいよ」
「またぁ?どうせロクなのじゃ」
「行っくよ!大回転魔球!!でやー!」
「……パクリじゃないか」
あたしの手を離れて、日暮れの空へと消えていく白いボール。
「どこ投げてんだよっ」
空へ向かったボールは予想外にシンジを越え、さらに大きく横に逸れながらそのまま草の茂みへと消えていった。
しまった。これじゃあ、こないだの消える魔球と変わらない。
「……アスカのへたくそ。ぽっぽこぴー」
「ったく!」
渋々とボールを取りに行くシンジの背中を笑って見送りながら、芝生の上へ腰をおろした。
グローブを左手から外して、横に置く。
汗ばんだ手のひらが外の空気に触れて、ひんやりとして気持ちいい。
「ばかシンジー!はーやーくー!」
「ちょっと待てよ!どこにあるか分からないんだってーっ」
少し遠くに響くシンジの声に、高架橋を走る電車の音が重なる。
高架橋の下で素振りをしていた少年の姿は、いつの間にか消えていた。
子どもの、妙に高い、けど不愉快ではないはしゃぐ声も聞こえてくる。
道を並んで歩く、手を繋いだ男の子と女の子。
空を見ながら、
おひさま落ちちゃったからはやく帰らなきゃ、
あ、カラス
カラスがないたらかえりましょー
そう呟く子どもたちの声に、あたしは微笑んだ。
そうか、子どもたちの時間はもう終わりなんだ。
空を見れば、沈みかけた夕日が、世界を茜色に染めていた。
綺麗だな…でも、赤い空は寂しくてあまり好きじゃない。
夏の終わった夕方は、肌寒かった。
「ねーアスカぁー!見つかんないよー!」
…なにしてんのよ、あいつ。
シンジが叫んで、早く来てくれと言った風にこちらに手招きする。
仕方なく立ち上がって、あたしは溜め息をついた。
「アスカってばー!」
「うるさい!今向かうわよっ」
あたしに手を振って、シンジがまた叫んだ。
そんなに急かさないでよ。
あたしはどこへも行かないのに。
「どこ見てんの、だいたいそこらへんに落ちたでしょ?」
かがみながら草むらをかき分けるシンジに、後ろから声をかける。
「だって、見つかんないんだ……」
立ち上がってシンジが、振り返る。
「なんてね。うっそだよ」
手の中にあるのは、あたしたちの白いボール。
こいつ、ボールなんてとっくに見つけてたんだ。
悪戯が成功したと言わんばかりに満足そうに、にやにやしていて。
「………」
「魔球のおかえ…いっだぁー!!」
その顔があまりにもウザかったので、思いっきりお尻に蹴りを入れてやった。
今のあたしの行動は間違ってないと思う。
「ばーか」
うずくまってお尻を抱えるシンジを置いて、さっさと踵を返す。
ザマアミロ、と笑って。シンジがあたしにイタズラしようなんて生意気なんだ。
グローブを置いたさっきの場所まで戻ったときに、
ふと、くすくすと笑い声が聞こえて、あたしは声のした方向に顔を向けた。
「仲良いのねぇ」
河川敷に沿って通るアスファルトの道路に立ちながら、おばさんがこっちを見て笑っていた。
手に握られたリードの先に繋がれた少しぽっちゃりした柴犬も、おばさんに似た笑いを浮かべている。
この時間に何度か見たことのある、よく犬と散歩してるおばさんだ。
「あ…お恥ずかしいです。バカみたいなとこ見られちゃって」
「いいわねぇ、若いって…あの男の子は彼氏さん?」
「違います!!」
おばさんの言葉に、あたしは大声をあげて否定していた。
「幼なじみの腐れ縁の、…ただの友だちです。それ以上でも以下でもないわ!!」
つい、声を荒げて。
あたしの強い言葉に、おばさんはキョトンとして。我に返って、恥ずかしくなる。
おばさんは不思議そうな顔をして、そうなの。ごめんなさいね、とだけ言って、立ち去って行った。
離れていくおばさんの後ろ姿と、犬のお尻がふりふりと揺れていた。
「やけに必死に否定するんだね」
後ろから声がした。
はっとして振り返ると、シンジがボールを持って立っている。
「ったく、手加減しろよな」
アスカの蹴りは殺人レベルなのに。
そう言いながら、笑ってお尻をさする。
「聞いて、たんだ」
「…最後だけ。アスカは彼氏がいるし、そりゃ必死に否定するか」
今までも結構間違われたりしたよね
小さい頃は姉弟に間違われたこともあったけ?
冗談を飛ばすように、朗らかに笑いながら。
自分にとっては気にかけるほどのことじゃない、ただの笑い話だと。
そう、シンジが言っているような気がした。
なぜか悲しくなって、でもそれをシンジに悟られたくなくて。
「…あんたなんかの彼女に間違われるなんて、まっぴらゴメンよ」
「ひどっ」
あたしの言葉に、傷ついたようでもなくシンジがまた笑った。
「…あんた、彼女は作らないの?」
なんだよ突然、とシンジが不思議そうな顔をする。
「最近、聞かないから」
「機会が無いんだよ」
機会?あんたにとって彼女なんて、機会でしかないの?
「あんたが優しく微笑んであげれば、女の子なんてみんなコロっと落ちちゃうんじゃないの?」
「僕を何だと思ってんだよ…そんな、漫画みたいな」
「霧島さんだって、山岸さんだって、一条さんだって、みんなそうやって手に入れたんでしょ?」
名前を上げた女の子たちの顔が浮かんでくる。
簡単にシンジを手に入れた女たち。
みんな可愛いくて、そしてみんな心底シンジに惚れていたようだった。
「手に入れたって…キッカケなんて色々だよ、そんなの」
色々、か。
あたしの場合はひとつしかない。
告白されて、都合が良かったら言われるがままに付き合うだけ。
都合が悪くなったらあたしから別れるだけ。
「シンジは好きだったから付き合ったの?」
「そりゃ…」
「だったらなんで別れたの?」
「そ、それも色々だよ…。どうしたの?アスカ。あまりこういう話好きじゃなかったよね?
先輩となにかあった?」
「別に…」
シンジの言う通りだった。
今までシンジとこういう話は極力しないように避けてきたのに。
キンモクセイにあてられてから、最近のあたしはどうも自分を見失いがちだ。
「アスカが心配しなくても、好きな子が出来れば付き合えるよう頑張るよ」
それ、見当違いよ。シンジ。
心配なんかじゃ、ない…。
「最近は、そんな気にあまりなれないんだけどね。アスカといる方が楽しいし」
あたしも、シンジといると楽しい。
変わらないままで。
それはあたしたちの共通の願いなんだろう。
けれどシンジの言葉には、あたしとの間に残酷なほどの違いがきっとある。
それでもあたしは良かったから、今までもこれからもずっと一緒にいる…。
「…もう暗くなったし、帰ろっか」
嬉しさと悲しみを同時に感じながら、あたしは話を逸らした。
シンジの後ろの空の夕日は、もう完全に沈んでいる。
茜色の世界のほとんどが闇色に飲まれていて、空には星の瞬きすら生まれていた。
「ほんとだね…。最近、日が落ちるの早いや。…げっ、まだ五時半だ」
ポケットから取り出したケータイの画面を見て、シンジが驚いている。
「カラスが鳴いたらかーえろってね」
「なんだよそれ、小学生?」
「そ…」
芝生の上に置いたままになっていたグローブを拾い上げる。
堤防の上にとめられた自転車に向かってあたしは歩き出した。
シンジもあたしの後ろをついてくる。
「さっきね、あたしの周りで遊んでた子どもが言ってたの。まだまだガキのあんたは早くおうちに帰らなきゃね」
「自分だってガキのくせに」
否定はしない。
シンジを見て、あたしは静かに微笑んだ。
シンジの目が、大きく見開かれる。
「それに明日、英文訳の課題の提出日でしょ?あんたどうせやってないだろうから、早く家に帰らなきゃまずいんじゃない?」
「………忘れてた」
「あんたね…」
止められた自転車の荷台に跨る。
シンジが前に座って、足で地面を蹴り上げた。がしゃん、と音を立ててスタンドが外れて自転車が前に進む。
「課題、忘れちゃだめよ。あたし手伝わないから」
「分かってるよっ」
セーラー服を着た女子中学生に、ランニングしてるおじさん。
買い物袋を自転車のカゴに乗せたおばさん、色んな人とすれ違っていく。
景色は同じでも、すれ違う人の姿は少しずつ昔と変わっていく。
シンジの腰をぎゅっと掴む。手のひらに触れるセーターの感触はむず痒くも、暖かかった。
つまらないバラエティ番組が延々とたれ流されてるだけのテレビの画面。
冗談を交わし合うタレントたちの声を横に流しながら、あたしはソファの上に寝そべってファッション雑誌を広げていた。
今秋のトレンドは黒だとか、チェックを上手く使った着こなしの仕方だとか、
秋らしい特集をしているけれどその中身はモデルの着ている服すらも、先月号とほとんど変わらない。
力が入っているつまらない恋愛大特集に興味はないし、今月号は失敗だったかもしれない。
暇つぶしにもならない雑誌を放り投げて、あたしは仰向けになった。
あーつまんない。
シンジのやつ、課題ちゃんとやってるかなぁ。
見慣れた天井を見上げて、ぼんやりとまたシンジのことを考えていた。
「ただいま、アスカちゃん帰ってるのー?」
ママの声だ。
帰ってきたんだ。
「はぁい!」
上半身を起こして、テレビを消す。
最近、残業の多いママにしては早い時間だ。
「おかえりなさい、ママ。今日は早いのね」
「ん…ただいま。今日はね、一段落ついたから」
リビングに顔を覗かせたママに、ソファに座ったままで声をかける。
少し疲れたような顔をしたママが、スーツを脱ぎながら言った。
「来週からなのよ。忙しくなるのは」
「また実験?」
「ええ。ユイたちもママもしばらくは家に帰れなくなるけど…ごめんなさいね」
「気にしないで、ママ。あたしはママの体の方が心配だわ。…ご飯はどうする?」
「いただくわ」
ママが部屋で着替えている間に、昨日の残りのカレーが入った鍋に火をつける。
棚から取り出したお皿をテーブルの上に置いて、冷蔵庫から冷えたオレンジジュースを取り出した。
安っぽいオレンジが書かれたその瓶の中身はもう半分もない。
今度買っておかなきゃと、頭の中で呟く。
「あら、カレー?」
ラフな格好に着替えたママがやってくる。
「ごめん、昨日の残りなの」
「ママ、アスカちゃんのカレー大好物」
そう言ってママが微笑んだ。
ママの研究が忙しい時期は、こうやってあたしが食事を準備する日も、ひとりだけで食事をとる日も珍しくない。
とは言っても、作るのには慣れても不得手だと自覚してるから簡単なものしか作らないけれど。
シンジとお互いの両親が不在の時は、ふたりで食事をする日も多い。
シンジもシンジで料理なんてろくに作らないので、そういう時はふたりで四苦八苦しながら一緒に作る。
「そういえば」
テーブルについたママが思い出したように、切り出した。
「なに?」
「進路希望のプリントのことだけど…」
ああ、とお皿にごはんを盛りながら、返す。
3年生になるまであと半年に近づいてきたので、学校側が2年生の進路希望調査を始めていた。
近郊では有名な進学校で、進路については特にうるさい学校だ。
先週、ママにその話をしていたことを思い出す。白いごはんの上にカレーをかけて、ママの前へ置いた。
「ありがとう」
「提出はまだよ。先生は来週でいいって」
「もう決めたの?」
「ううん…」
はっきり言ってあたしは成績優秀だし努力も怠らない。狙おうと思えばどの大学だって狙える、と自負する。
ママと同じ研究者としての道へ進みたいという気持ちもある。
けれど、あまりまだ進学のことは考えたくなくて、あたしは白紙のままにプリントを放置していた。
「アスカちゃんがやりたいことをやればいいしと思う、強制はしないわ。これはママからのひとつの提案だと考えてくれたらいいんだけど…」
あたしが首をかしげると、ママはそのまま続けた。
「ドイツのね、大学に進むのはどう?って。ママの実家もあるし…おばあちゃんもね、いつでもいらっしゃいって。
ママもね、向こうの研究所から帰ってこないかって誘われてるの」
「ベルリンの?」
「そう。選択肢のひとつとして、捉えてくれればいいのよ?あなたには好きに生きてほしいから」
ドイツ…、かあ。
悪くない話だとは思う。日本のようにごちゃごちゃとしていないベルリンの整然とした、美しい街並みも好きだ。
久しぶりにグランマにも会いたい。
けれど…。
「それに、あんまり期待はしてないの」
ママの言葉に驚いて、あたしは二度まばたきした。
「えっ…、どうして」
「だって、シンジ君と離れ離れになるの、嫌でしょ?いつも一緒だものあなたたち」
そう言って、軽くウインクして笑う。
「もう、ママ!あたしだってシンジと四六時中一緒にいるわけじゃ…」
…ないことない。
そんな自分を思い出してあたしはそこで止まってしまった。
「ほらね?」
「むー」
受験なんてまだ一年以上先の話で、ママの話を聞いても実感はわいてこなかった。
あまり考えたくなかっただけかも知れない。
ただ、ドイツに行けばシンジと離れなきゃいけない…それだけは分かる。
シンジがそばにいないなんて、そんなこと想像できない。
なんとなく、シンジと同じ大学に行けたらいいな、なんてぼんやりと考えた。
一緒にいたいから、それだけが理由だった。
…これじゃママの言う通りだと気づいて。
浅はかでまるでガキっぽい考えに、あたしは自嘲した。
別にいいじゃない。あたしはあたしの好きなように生きたって。そう、自分に言い聞かせながら。
シンジ…、シンジはどうするんだろう。
支援
僕はね
ずっと待ってた
ずっと待ってたんだよ、君の投下を!!!!
まだ書き終わってないのかな?
書き終わってるんなら気にせず投下しまくってくれると嬉しいぞ俺は!!
キンモクセイキター(゚∀゚)ー!!
続きwktk
うぉー悶々とするぅ!続きワクテカ!!
幸せになれ〜幸せになれ〜フヒヒww
次の投下はいつくらいになりそう?
最後の授業が終わって、教室の中はいっそうに騒がしくなる。
部活の準備をする子や、集まってどこへ行こうかとはしゃぐ子。
さっさと帰っていく子、そのまま教室に残ってダベる子。
これからどうしようかな、なんてことを考えながらかばんの中に教科書をつめる。
その時、ポケットの中で振動するケータイに気づいた。
「メールかな」
サブディスプレイに示されているのは彼氏の名前。
なんだろう。今日は予備校だと言っていたはずだ。
嫌だな…。この間あいつの家に行ってから3日も経ってない。
「アスカぁーーっっ」
「!!」
教室中に響く、あたしの名前を叫ぶ間抜けな声にびっくりしてあたしは思わず顔をあげた。
声のした方を見れば、シンジが情けない顔を貼り付けながらあたしに駆け寄ってくる。
「な、なによ…そんな大きな声出して呼ばないでよっ」
教室に残っているクラスメイトからくすくすと忍び笑いが聞こえて、あたしは恥ずかしさに小さくなった。
「お願いします手伝ってくださいアスカ様」
懇願するように、あたしの前で膝をついて手を合わせる半分涙目のシンジ。
身長がある分見た目には決まっていて、それが逆におかしかった。
「なにをよ」
どうせろくなことじゃないだろうけど、一応聞いてやる。
「英文訳」
「あんたねえ!あれほど、ちゃんとやりなさいって言ってあげたじゃない!!なにやって…」
「あ、アスカ!声、声!」
シンジが慌てたようにあたしの口を塞ごうとする。
しまった。
呆れて思わず、さっきのシンジ以上の大きな声で叫んでいた。
慌てて周りの様子を見れば、教室中の視線があたしたちに注がれていた。
さらに小さくなって、こそこそとさっきの続きを言う。
「…だいたい、提出期限過ぎてるじゃない」
「…先生の温情で17時まで引き延ばしてもらったんだよ。お願い!手伝って!」
「嫌!自分の力で頑張りなさいよ」
「あーすーかぁー」
「嫌なもんは嫌。あたし関係ないもん。さーて、帰ろ帰ろ」
「パフェでどうだ」
「のった」
ロイホのホットファジーサンデーでよろしく。
了解。交渉成立だね。
ぐっとふたりで腕を組み交わす。
あたしはシンジとフェアな関係にいたいだけで、パフェに釣られたわけじゃない。
断じて。
そう、誰に聞かせるでもなく心の中で呟いて、シンジとふたりで図書室に向かう。
さっきのメールのことは、頭の隅に追いやられてしまっていた。
きたあああああああああああああああああああああああ!!!!!
窓から吹き込む風は緩い。日の陽気に照らされて優しさを含んでいる。
その気持ちよさにあたしは目を細めた。
「アスカ、ここは?」
「…って、さっきからほとんどあたしが訳してるじゃない」
「大丈夫。バレないように、時々わざと間違えて書いてるから」
「…小賢しいわね」
「トウジに教わった生きるための知恵です」
ノートに向き合ったままで、シンジが笑いながら答えた。
あたしはわざとらしく、大きくため息をつく。
違う高校に通うシンジの悪友は相変わらず、ろくな事しか教えないみたい。
放課後だと言うのに図書室の中の人影はまばらで、それをいいことに一部の生徒たちが暇つぶしにお喋りしている。
外からは部活動に励む生徒たちの声が響いていた。
決して静かで良い環境とは言えないけど、それが妙に心地いい。
そもそも勉強したい人は図書室ではなく冷暖房の完備された自習室へ行くのが、この学校では当たり前みたいになっているから問題はなかった。
シンジのペンを走らせる音さえも、ざわめきの中ではかき消えていく。
「ねぇ、ここは?」
「えっと…」
次々とノートに綴られていく文字たちは綺麗で女性的で。
シンジらしくて、あたしは嫌いじゃない。
顔は反して、必死の形相に彩られていたけれど。そのギャップにあたしはくすりと笑った。
シンジの垂れた前髪がさらりと揺れる。
「…なに笑ってんの?」
「あんたの顔を見て」
なんだよそれ、とシンジが顔をあげる。
「わるかったなあ。平々凡々な顔で」
「あら、ユイおばさんに似て綺麗で可愛い顔してるって評判じゃない」
親戚に会うたびに相変わらず可愛いわねぇ、と言われる話を何度も愚痴のように聞いたことがある。
「17の男がそんな風に言われて嬉しいとでも?」
眉をひそめてむくれる。
そういう子どもっぽい仕草が余計に幼く見せるってシンジは気づいてるのかな。
「だったら、おじさんに似れば良かったの?」
「それは勘弁…」
仏頂面で強面で目つきが悪くて高圧的な髭面。
もっぱらユイおばさんの尻にひかれているけど、見た目だけならまるでマフィアのボスみたいなおじさん。
小学校の授業参観にたまたまおじさんが来たばっかりに、クラス中が大騒ぎになったのを思い出した。
シンジのやつ、しばらくボスの息子として畏れられてクラスメイトから敬遠されてたっけ。
父さんのばかぁー!どうしてくれるんだよ!、とシンジがおじさんに泣きついておじさんが困ったように謝っていた光景が、今でも鮮明に思い浮かぶ。
「なにニヤニヤしてんだよ」
「ん?髪質と…あと目元は少し似てるかなって。中年になればおじさんに似てくるんじゃない?」
「げっ!?それ本当!?僕、将来ああなるのか…」
両手で顔を抑えて青ざめるシンジがおかしくて、あたしはお腹を抱えた。
そんなに嫌なんだ。
「ちぇ…そんなに笑うなよ」
拗ねたように口をすぼめながら、シンジが呟く。
「あははっ…でも、渋くていいじゃない?あんたも昔と比べたらちょっとは男らしくなったもんね」
笑いすぎて滲んだ涙をぬぐう。
むー、とシンジがまたむくれた。
ふと、シンジの顔が真顔に戻る。
「アスカはさ」
「ん?」
左手に持つペンがくるくると回る。
頬杖をついて、あたしを見つめて。
何?何?どきどきする!!
「アスカは……。アスカは、どんどん綺麗になっていくね…」
はにかみながら、そう言われた。
「へ?」
「日を追うごとに綺麗になって…僕、それが眩しくて…アスカは本当にアスカなんだろうかって、時々真っ直ぐにアスカを見れなくなる」
あたしは一瞬なにを言われたのか分からなくて、呆然として。
それから燃えるように頬が熱くなったのを感じた。
「ば、ば、ばっかじゃないの!?あ、ああ、あんた何言ってんの!?」
机に突っ伏して両手で顔を隠して、あたしは叫んでいた。
なんで、なんで。
急に何を言い出すのよこいつは。
シンジの言葉にこんなに顔を赤くしてる自分が恥ずかしくて、馬鹿みたいで。
言われ慣れた言葉でも、こいつに綺麗だなんてと言われたのは初めてだったから。
嬉しさと複雑さに頭がぐちゃぐちゃになる。
大きく鼓動する心臓の音があたしの中で響き渡った。
「なーんちゃって」
「………………へ?」
なんちゃって?
その言葉にゆっくり顔をあげる。
その先で、頬杖をついてニヤニヤしたシンジが待っていた。
してやったりと言った表情で、にししっと笑う。「アスカったら耳まで真っ赤にしちゃって…ははっ、そんな可愛いアスカ見たのはじめブベラっ!!」
まるで10tトラックが壁に激突したような音が図書室中に響いた。
そばにあった英語の分厚いテキストで、シンジの顔を思いっきりぶん殴ってやった音だ。
「こんの、ばかシンジ!!!!」
そう言って、両手でシンジの胸ぐらを掴む。
「あ…あうあ…す、すみません…そんなに反応するとは思わなくて…」
殴られた左頬を抑えながら、ブルブルと震えて。「…今度やったらコロスわよ」
なぜ焦らすww罪なやつだw
ブンブンと頭を縦に何度も振るシンジ。
言っていい冗談と、悪い冗談があるわよ…。
シンジの言葉に一瞬でも浮かれて、心を躍らせて。
真っ赤になった自分が馬鹿みたいで情けなかった。
シンジを解放して、唇を咬んで俯きたい気持ちを我慢して、そのまま静かに椅子に座る。
お喋りに興じていた生徒たちがあたしたちを見て笑いを漏らしたり、
書架で本を吟味していた生徒が茫然としているのが少し気恥ずかしくて、あたしは小さくゴホンと咳払いをする。
シンジが小さく、ごめん、と呟いた。
「そういえばさっ」
あたしは話題を変えるために明るく切り出した。
「進路希望の紙、もう提出した?」
シンジがどこに行きたいのか知りたかった。
「進路希望…って、ああ。あれってもう出さなきゃいけないの?」
「ううん、来週まで。おばさんたち何か言ってた?」
「父さんは何も言わないよ。好きにしろって。母さんは…京都の方に行って欲しいみたい。僕も別にいいかなって」
京都。
たしか、おばさんたちの母校だと聞いている。
悪くないと思う。でも、
「あんた、今の成績で行けんの?」
「うっ…」
「ムラがありすぎなのよね。数学と物理と化学以外も頑張りなさいよ。特に英語!おじさんたちと同じ道に進むならなおさらね」
「国語すら出来ない僕が英語なんて出来るわけ…」
「やらないだけじゃん」「ううっ…胃が」
シンジの図星という図星をつきまくって。
情けない声を出しながらシンジが胃を抑えてる。
「じゃあさ、アスカは決めてるの?」
「あたし?あたしは…」
シンジと一緒に、シンジと一緒のところへ。
そう言いかけて、でも、言葉が喉のところで引っかかる。
それでいいと思っていたのに、その言葉が出ない。
本当にそれでいいの?
14歳のあたしの声が聞こえた。
だって、友だちだもの。
一緒にいたいんだもの。
今までも一緒だったんだからこれからも一緒よ。
…あんたが一方的にシンジを追いかけて、シンジに縛られて、シンジに依存してるだけじゃないの?
あんたの中にはシンジしかいないのね。
うるさいわね…あたしの勝手でしょ
いくらシンジを想ったって、
あいつはあんたのことなんか見てないのにね。
あいつはもうひとりで歩いてる。自分で、決めて前へ進んでる。
恋人だって、大学だってそうじゃない!
いつまでもキンモクセイに縛られたまんまのあんたとは違うことに、早く気づきなさいよ。
うるさい!うるさい!あいつだって思ってるはずよ!あたしと一緒にいたいって、ずっとそばにいたいって!
こないだってあたしといると、楽しいって…!
だってあたしとシンジは…
「…すか、アスカ!」
「…な、なに?」
「なに、じゃないよ。どうしたの?急にボーッとして」
シンジが心配そうに、あたしを覗き込んでくる。
あいつはあんたのことなんて見てないのにね。
さっきの言葉が頭の中でリフレインする。何度も、何度も。
気がつけば、あたしは思ってもみないことを口にしていた。
「あたし、ドイツへ帰るの」
「…ドイツ?」
あたしの言葉に、シンジの瞳が揺れる。
「ママがね、向こうに帰るからその時一緒に…グランマもいらっしゃいって…」
嘘、ウソよ。
帰る気も無い癖に、なんであたしはこんなうそをついてるんだろう。
「言葉も住む場所も問題ないし、向こうの大学はレベルも高いから…」
日本から出る気なんてないわ。
あたしはシンジと一緒にいるの。ずっとずっと。おばあちゃんになるまでずっと。
「それ、いつなの…?」
「…卒業したら」
馬鹿みたいなウソをついて、シンジの気をひきたがってる。
そんな馬鹿なあたし。
「そっか」
シンジはそれきり何も言わなかった。
課題の続きに再び取り組んで、何事もないようにあたしに答えを求めてくる。
あたしもなんでもない風に装って、シンジに答えを教えて。
時計は17時に迫っていた。
あぁん!じらしちゃいやーんw
wktkもいいとこだぜホント
でも、リアルタイムでわくわくさせられるこのどきどき感はたまらん!
何人見てんだろ?俺ともう二人で計三人くらいかな?w
いやマジで待ってた作品だから嬉しいわ、リアルで観れてw
365 :
674:2009/08/21(金) 10:10:01 ID:???
とりあえずいじょう。
中途半端ゴメソ
続きはまた今度!キンモクセイがマジで咲く季節までには完成させないと、と焦ります。9月から忙しくなるんで。
みんな応援ありがとな!
>>365 ぎやぁぁぁぁぁぁぁ!!!
激しくGJ!だけど、ここで終わるのはいやぁぁぁぁぁあ!!!
367 :
674:2009/08/21(金) 10:11:28 ID:???
ごめん、焦らしたんじゃないYO
規制されてケータイでポチポチしてた
元々ケータイで書いてるからまあいいけど、変な感じでコピペしてたらごめんね
>>365 乙!!!超乙!!!
欲を言えば早く続きが見たいが気長に待つぜ!!
やっぱあんたは最高だ
キンモクセイ待ってました!!
シンジがマジでわからないわ…
翻弄されてるアスカがかわいそうだけどイイッw
ハッピーエンド期待してます!
イタモノ苦手だけどこーいう切ないのは大好きだwww
頑張って!シンジもアスカも幸せになれるといいね!
>>369 いいよねいいよね!
どう思ってるのかまったくわからない相手に
翻弄されるアスカ。すごくいい。
このわかんないシンジがまたすごくいいわ。
いずれ、二人とも内に秘めた激しい感情を
吐露しあうんだろうなとわくわくする。
続きいつ頃になりそう?
>>372 うむ・・・うむ・・・
久しぶりだな、ここまで続き楽しみな作品は
ハッピーエンドだったらハロワ行くわ
>>372 でも、両方意地っ張りだから
案外どっちかが激情して迫っても、
相手は感情を押しとどめて
受け流しちゃうかも…
あぁぁぁどうなるにしろ、続き気になるぅ!
異性系イタモノと書いてあった瞬間に読み飛ばした俺にダメージは…
存在するだけで大ダメージだぜ、グファ。。。
アスカだけ、とかシンジだけ、は苦手だけとどっちも異性系だと案外イケる
精神的にはアスカの一途な片思いだけど…
続き気になるわ!
キンモクセイさんは凄い
ところで、ここに居るプロの書き師は何人いるの?
キンモクセイさん、円谷さん、碇アスカさんを書いてる人
俺が知ってるだけで3人です
待ってたよー!!
あぁGJ。素晴らしい!
続き楽しみにしてます。
>>380 その三人以外の作者に対して失礼だって分かって書いてる?
ifっぺえ
その名は出すな
>>380 プロっていう括りはハードル高杉だが…夜の帳の人と、パッチンさんもいい
どの作者が良いとか言う話はやめろ
>>388 同意
わざわざ書いてくれる人に失礼すぎる
僕はifさんとトゥルーさんとリスペクトしてます
新規さんのスピードと勢いに圧巻されているw
読む方も大変だな。もちろん嬉しい悲鳴なんだけど
>>327 の続きです。
あと、少しなので嫌いな人はもう少し
辛抱してくださいね
「10分だけ、待ってやる。武器を捨てて投降しろ。10分後に攻撃を開始する。」
スピーカから高圧的な警告が流れる。
「アスカ、逃げるわよ。大丈夫、連中はエヴァに当たるのを恐れて、重火器は使わないわ。
エヴァを楯にしながらVTOLを飛ばせば逃げらる。ヨーロッパに逃れて、皆でシンジ君を
助ける方法を考えましょ。」
アタシは、もう一度、槍に手当てて、下を向く。
「マリ、最後の命令を伝えます。良く聞いて。」
「へ?何スか?改まって。」
「現時刻を持って、アタシの救出作戦を破棄、残りの生存者を連れて、ユーロと合流をして。」
「ちょ、何を言ってるんスか?バカな事を言わんで下さい。」
「そうよ。アスカ、貴女を置いて行ける訳無いでしょ。」
「皆、ごめんなさい。アタシも最初から、あんな事しても無駄だって解っていたの。
実は、アタシはここへは死にに来たの。」
「何言ってるんスか?折角、助けに来たのにそれは無いでしょ。」
「ねぇ、マリ。何でアタシがあんな厳重に監禁されたか知っているわね。」
「ええ、大尉は処刑されるんですよね。」
「正確に言えば、処理ね。あの事件を見て驚いたNERVの上部組織は、エヴァの運用を見直す
事にした見たい。それで、エヴァのパイロットは最小限に抑えるって決めたのね。余分な、
パイロットは処理する。その第一号がアタシ。何せ、アタシはある意味事件の当事者だしね。」
「一寸、アスカは子供よ。良くそんな事、できるわね。」
「仕方が無いわ。どうせ、アタシ達は使徒と戦う道具なんだもん。必要無く成れば捨てられるだけ。
第一、子供を利用したのは、ミサトも同じでしょ。人の事を批判できると思う?」
「そうね。子供を利用して生き延びて、その挙句がこれだもんね。自業自得か。でもね、
だからこそ、アスカは生き延びて。折角、ユーロが受け入れるって言ってるでしょ。」
「あのね。連中もアタシを道具としてしか見て無いの、そこへ逃げ込んでもいずれ、高値で売り飛ばされる
に決まってる。良い?相手は月面まで拠点を持ってる組織よ。何処へも逃げ場なんか無い。いずれ、
殺されるなら、シンジの側で死にたいの。」
「はぁー、仕方がないにや。大尉の我儘に付き合うのは成れ子だからね。良いスよ付き合います。
と言う訳で、葛城一佐、三人で逃げて貰えます?」
「バカな事言わないで、私も残るわ。私はアスカの上司です。彼女を最後まで守る義務があります。
加持君、リツコをお願いできる?」
「あのな。俺が女子供を置いて逃げるなんてかっこ悪いマネが出来ると思うか?問題は、リッちゃん
だが...。」
「私は、VTOLなんか操縦できないわよ。私も残るしかないわね。大丈夫よ。私だって、銃位扱えるわ。」
「どうやら、全員残る見たいスね。」
「もう知らない。勝手にすれば?」
「まだ、少し時間があるわ。ねえ、アスカ、最後に教えて。」
ミサトがアタシの頭を優しく撫でながら聞いてきた。
「何かな?」
「アスカは、シンジ君の何処が好きなの?」
「それが、良く解らないんだよね。そりゃー、料理が上手いとか優しいとか色々、上げられるけど、でもね。
それって、好きになって後から付けた理由なの。人を好きになるって、そう言う事じゃ無いのかな?」
「アスカにしては曖昧な答えね。まぁ、可愛いけどね。」
「本当は、恥ずかしいから言わないで置こうと思ったけど、最後だから言うとね。運命って言うか、アタシは
シンジを好きになる為に生れて来たんだって思ってるの。おかしいでしょ。」
「アスカって、本当に可愛いわね。もっとも、貴女は大人ぶってるけど、本当は中学生だもんね。それも
有りかな?」
その時、マリがミサトを後ろから後頭部に一撃をくらわした。不意を突かれたミサトは崩れ落ちる。
「マリ!何て事すんの!?」
「加持さん、これで葛城一佐を連れて行ける。三人で逃げなよ。」
「助けてくれるって事か?」
「勘違いしないでくれる?アタシは大尉と違って育ちが悪いから、滅多に人を信じてないだけ、大尉は優しくされると
直ぐに他人を信じるけど、アタシは今でもNERVの人間を疑って居る。そんな人間と、一緒に死にたくない。」
「随分と、嫌われたもんだな。」
「当たり前よ。特に、アンタには殺されかけているからね。」
「何の事かな?」
「とぼけないでくれる?5号機の自爆タイミングは明らかに早かった、あれは誰かが意図的に仕組んだもの。」
「その犯人が俺だと?」
「あくまでも白を切る気?まぁ、良いわ。いずれにしろ、子供を利用して生きて来た人が今更、子供を守るなんて
偽善でしか無いもの、そんな人間とは一緒に戦えない、ただそれだけ...。」
「解った。葛城とリッちゃんは連れて行く。それで良いんだな。」
三人を乗せたVTOLが飛び立っても連中は何もしなかった。やはり、連中はアタシ以外は興味無いみたいだ。
「ありがとう、マリ。」
「別に、礼を言われる事をして無いスよ。あれは、本気だからにゃ。」
「出来れば、マリにも逃げて欲しかったな。」
「大尉を置いて逃げたら、自分にも行き場が無くなるス。だったら、大尉とお供します。」
「ごめんね。勝手な事ばかりで。」
「いいスよ。大尉も行き場は無いですからね。」
「時間だ。答えを聞こうか?」
「答えは、これだぁー!」
言うが早いか、マリが銃を乱射した。遠巻きにしている連中に届くわけでもないのに何、格好付けるかな?
引きつけて、攻撃とか少しは考えてよ。まぁ、死ぬ時間が多少変わるだけか...。
相手は反撃とばかりに、迫撃砲を撃ってきた。放物線を描いて迫ってくる砲弾がやけにゆっくりに感じられる。
これに当たって死ぬのか。痛いかな?出来れば、苦しまずに死にたいな。
シンジは結局、アタシを守ってくれなかったね。
アタシは、槍に手を当てて、最後の時を待つ事にした。こうしていれば、シンジと繋がっている気がしたからだ。
砲弾はかなり離れた所に着弾すると、中からガスが噴き出す。
ガス弾だったのね。まぁ、良いわ。この辺に充満した所で思いっきり吸えば、一思いに死ねるわね。
ガスを思いっきり吸いこむと、意識が遠のいて行く。
薄れていく意識の中で、アタシは槍が動くのを感じた。そして、遠くの方で響きわたる、咆哮が聞こえた。
続く...。
と言う訳で、次回は?です
これも前後編に別れそうです。
キンモクセイさん、Another Way Quickeningさん
超超GJです。
楽しませてもらってアリガトー!
しかし、今夜は生殺し状態・・・
続きを楽しみにしてます。
おねがいします。
>>398さんへ。
おもしろく読ませてもらってます。ですが、会話がだれの会話かわかりにくいので、
アスカは、
「シンジ」
と言った。
「シンジ」
とアスカは言った。
などと書いてくれると、わかりやすくて助かります。次の投下を待ってまーす。
しかし毎日すごいね・・・
途中で支援入るとかウラヤマシイかぎり
いつまで夏なんだよw
住民多くてウラヤマス…
過疎で支援無いから規制計算して毎回投下してるよ…orz
>>403 別LASスレ住人の方かな?
落ちLAS投下スレなんかはちょっと過疎気味なんだよね
今更亀ですが、キンモクセイさんgjです!
切なさ満点の流れにドキドキです。
楽しみにしてますよ〜ノシ
>>404 うむ、落ちLASスレじゃないけど別のLASスレに投下してきたとこだ
そっちにも投下出来る様な話を考えてたりはするんだが中々orz
>>406 なるほどなるほど。いつも乙です!
自分も同棲スレに投下したり、落ちLASに久々お邪魔しようかなとか考えてます。
408 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/22(土) 04:07:33 ID:GEj5I7fR
>キンモクセイ
長すぎて忘れた頃に投下されたら大ダメージ受けるw
409 :
ふぅ。:2009/08/22(土) 05:34:11 ID:0NXnIYA+
―ピンポーン
「アスカっー、寝てるのーっ?」
「…なに?」
インターホンの音で目が覚めた。
「えっ!やばい!!」
時計を見ると、八時だった。
「アスカーっ!」
「わかってるっつーの!
今着替えてるんだから待ってよ!!」
歯を磨いて、顔を洗って、髪を整えて…。
「悪かったわね!」
「どうしたの?アスカが寝坊なんて珍しいね。」
「昨日ちょっと眠れなかっただけよ!」
「ふーん、なんかあったの?」
そういえば、何で昨日は眠れなかったんだったけ。
「どうしたの?急にぼーっとして。」
あー…、バカシンジのこと考えてたんだっけ。
「わかってるわよ!早く行くわよ!」
「ちょっと待ってよアスカ!!」
410 :
ふぅ。:2009/08/22(土) 05:39:21 ID:0NXnIYA+
「なんでこんな時に赤信号に引っかかっちゃうんだろう…。」
「バカシンジが厄病神だからに決まってるじゃない!」
「じゃあ僕と一緒に登校しなきゃいいじゃないかぁ。」
「あんたが迎えにきたんじゃない!!」
「だってアスカがいつも迎えに来るから…」
「朝っぱらから夫婦げんかしてたら青信号なってもきづかへんでぇ〜!」
「違うよトウジ!!そんなんじゃないって!!
ただの幼馴染だっていつも言ってるじゃないか。」
なによこいつ…。なんであたしもイラついてんのよ。
そもそもなんであたしがこいつのこと考えて眠れなくなるのよ…!
「なによ…。」
「アスカ、なんか言った?」
「うるっさいわねー!こんな馬鹿知らない!!」
「あ、待ってよアスカ!」
「おいシンジ、惣流とばっか登校してんとたまには一緒に行こうや。」
「うわ、また信号赤になっちゃった!!」
「シンジ、なにしてんねや〜!!」
なによ、これじゃあたしがシンジを好きみたいじゃない。
違う、そんなんじゃない。幼馴染だから一緒にいてあげてるだけじゃない。
昔からずーっとあいつはあたしがいなきゃ何もできないのよ。
これからもね。
「あたし実は○○高校狙ってんだよね〜。」
「うそ、まだ二年なのにそんなこと考えてんの!?」
「まだ二年つっても、すぐなんだもーん。」
これからも、か…。
411 :
ふぅ。:2009/08/22(土) 06:01:50 ID:0NXnIYA+
「じゃあ霧島さん、そこ読んでくれる?」
「…はい!えっと…」
「教科書78ページだよ。」
昔はあたしにしかあんな顔見せなかったのに。
「ありがと、碇くん!」
こうやってどんどんあんたの中からあたしが消えてくの?
他の男子たちとはちょっと違って見える背中。
あのバカ、襟折れてんじゃん。
やっぱりあたしがちゃんと見ていてあげないと…
「惣流さん、聞こえてないの!?」
「はいっっ!」
「さっきから次のページ読んでって言ってるじゃない。」
「すみません…。」
「アスカ、どうしたの?」
「なんでもないわよ…。」
412 :
ふぅ。:2009/08/22(土) 06:10:53 ID:0NXnIYA+
―放課後―
ブルルルル…
ママだ!
「ママ!どうしたの?」
「アスカー悪いけど今日までに完成させなきゃいけないソフトがあってね。
ちょっと今日は帰れそうにないのよ。晩御飯は、シンジくんの家で食べてきてちょうだい。」
「ちょっと、ママ!?あたしだって一人でご飯くらい作れるわよ〜。」
「あら、そうかしら?」
「まあとにかく、家にあるもんで何とかするから心配しないで!じゃあね!」
「シンジ、帰るわよ!」
「ごめん、今日は綾波さんと一緒に勉強するんだ。
ほら、テストもうすぐだったでしょ?
よかったらアスカも一緒にやろうよ。
トウジたちも一緒にさそ…」
「いいわよ。じゃあ、一人で帰るから。」
「どうしたの?具合でも悪いの?」
「知らない」
413 :
ふぅ。:2009/08/22(土) 06:12:44 ID:0NXnIYA+
「惣流さん、どうしちゃったのかしら。」
「僕、なにかしちゃったかなぁ…。」
「嫉妬、してたりして。」
「何に?」
「テスト前だから自習室、席なくなっちゃうわ。早く行きましょ。」
ピピピピ、ピピピピッ
「うそ、熱あるじゃない!
よりによってママのいないときに…。」
ママに電話しよ。
―「今日までに完成させなきゃいけないソフトがあってね。」
「忙しいかぁ…。おとなしく寝てるしかないか。」
続きwktk
思ったんだけど、落ちLASスレとこのスレが2つある意味って?
>>413 乙!シンジには無意識プレイボーイがよく似合う。
>>415 LAS小説を投下するスレが2つあるんだよ。
ここはイタモノとかでも何でもOKなLAS小説投下総合スレ。
落ち着いてLAS小説を投下するスレは、イタモノ禁止なスレ。
なんであのスレはLASが全角なのさ
と、言った。
って書き方嫌いだから極力書かないようにしてんだけど、やっぱ無いと読みにくいし分かりにくい?
>>420 その究極的な形が
>>91だからなw
流石にちょっとそれは多用しない方向で上手くやってくれたほうが良い
つーか投下来なくなったなwww
どんな頻度で来てほしいんだよ
落ちLAS投下にも同棲スレにも来てるしな
作家さんは多い方がいい
426 :
軒亜:2009/08/22(土) 18:53:14 ID:???
昨日まで沖縄行ってたので、沖縄ネタというか修学旅行ネタを。
視点がややこしく、シンジ→アスカ→シンジみたいな感じです
背景設定は特にありません;
題名は「夏の夜に」 (´・ω・`)
427 :
軒亜:2009/08/22(土) 18:56:07 ID:???
―修学旅行―
ミサトさんの説得に難なく成功し、僕達は沖縄へ来た。
エヴァや他の事も忘れて少しは楽しむ事ができそうだとシンジはバスの中で期待に胸を膨らましていた。
「ね、シンジ!海が見えるわよ!」
ふと、隣のアスカに声を掛けられた。窓の外を見るとそこにはコバルトブルーの海が辺り一面に広がっている。
「うわぁ…きれいな海…気持ち良さそう」
「ちょっとはアタシに感謝しなさいよ、ミサトを説得したのはこのアタシなんだから」
といっても酔っ払って上機嫌の内に説得なんて別に難しくもなかったが。
「シンジぃ、お前も修学旅行来れて良かったなぁ」
「前日まで来れないかと思ってたよ」
トウジ、ケンスケも話し掛けてきた。
「あ〜あミサトさんも来たら良かったのになぁ〜」
トウジがそんな独り言を言う。
「ホント、勿体無いよ…」
ケンスケまで。
「そんな事できっこないよ…」
とシンジが返すと、「何言ってんのよ、この3バカトリオ!」
アスカとヒカリが突っ込む。
他のクラスメイトも随分テンションが上がってきているようだ。
バス内からあちこち楽しそうな喋り声が聞こえる。
428 :
軒亜:2009/08/22(土) 18:58:20 ID:???
とはいえ、バスの中からでも見える景色は最高である。
青い空に雲が3つ程ぽつりと浮かんでいる。
「もう少しで着くから、自分の席に座りなさい」
ゴホンと担任の先生が指示する。
(海なんて、久しぶりだな…というか来たことも無いかもしれないなぁ…)
ぼんやりと窓際で頬杖をつきながらシンジは思った。
「な〜に にやついてんのよ、バカシンジ!」
アスカが見透かしたような事を言う。
笑ってごまかすと、今度は余計に罵倒された。
気付くともうバス停だった。
一歩外へ足を踏み出すと潮風の心地よさに包まれた。
だが、この猛暑に長時間耐えつづけてきた事もあり、みんなすでに限界がきている様子だ。
一旦集合、そして班別行動だと言われると皆即解散した。
班のメンバーはというと、3バカトリオにアスカ、ヒカリである。
綾波は使徒警戒中のため、1人で残ると言ってきかなかったのだ。
自由という思想の末辿り着いた場所はやはり、浜辺。
太陽がじりじりと照りつけ輝く浜辺を目の前にすると心がまるで落ち着かない。
みんなはそれぞれ水着に着替えると、我先にと海へ走り出した。
(海がこんなに気持ち良いだなんて知らなかったな…)
シンジは全身で波を受け止めながら思った。
しかしさっきからアスカばかりが目に入る。ブロンドの髪、水着は赤と白の横縞模様に胸元はチャック付き、というシンジにはあまりにも刺激が強いというか、本能で目がアスカの方へいってしまうのだ。
それをトウジやケンスケに悟られないようにやり過ごす。
アスカはヒカリと楽しそうに水を掛け合っている。
「おいシンジ!、なんやぁさっきから惣流の方ばっか見て」
トウジに気付かれてしまっていたようだ。
「え?いや、さ、その…何でも無いよ」
顔が赤くなりそうなのを必死で隠しまた海中へと潜ってみる。
海中はまるで別世界のようで熱帯魚が目の前を通り過ぎていく。
サンゴ礁や海草までもがこの楽しい一時を共有しているみたいだった。
ぷはぁ、と顔だけ出すと周りにはトウジやケンスケはおらず、砂浜に目をやると4人でお城を作っている最中だった。
「シンジー!早く早く!」
いつにもなく楽しそうなアスカが自分を呼ぶ。
5人がかりでようやく完成したお城は実にそれぞれの性格が合わさったように見えた。
「まぁ上手くできたかな」
とシンジが言うと、
「碇くんって器用よねぇ、鈴原なんかとは大違いよね」
とヒカリが言うのに対しトウジが即座に
「なんやて!?」
と言い返す。
しかしヒカリの発言に対し、もう1人トウジと同時に、
「そんなの、あったり前じゃなーい」とアスカが言ったのだ。
堂々かつ誇らしげに語るアスカを、不思議そうに見つめるシンジ。
アスカがシンジに気付くと、顔が段々と赤くなるのが分かった。が、アスカは
「いや、同居人だしそれくらいアタシにも分かる事よ!」と誤解されないように付け足した。
「なんか…変だよ?アスカ」
シンジが追求すると
「うるっさいわね!そんな事より次、買い物でも行きましょ」
アスカは軽く流してみんなに呼びかけた。
431 :
軒亜:2009/08/22(土) 19:00:46 ID:???
それからの買い物は悲惨であった。アスカはともかくヒカリまでもがこんなに買い物好きだとは…。
今晩泊まる旅館に着いた時はもはや男子達は完全にダウン状態であり、両手にはアスカやヒカリが買った物を持たされている。
「まったく人使いの荒いヤツ…」とケンスケが半泣きで言う。
「ま、旅館に着いたんだし先生に部屋の鍵もらってくるわね」委員長であり班長のヒカリが言う。
指示された部屋へ入ると中は和室だった。畳のにおいが旅館という雰囲気を出している。
「じゃあ、僕達お風呂に入ってくるよ」
シンジがそう言って他の2人も一緒に部屋を出た。
部屋に残ったヒカリとアスカはいわゆる恋バナをしているところだ。
「ね、アスカ…あたし、鈴原と仲良くできてるかな?」
大丈夫よヒカリ、とアスカが言う。
「…あと、アスカの好きな人って碇くん?」
これにはアスカも意表を突かれた。
「えぇっ?!なんでそーなるの?」
「…だって、碇くんはアスカの事好きみたいだし…」
「そんなことあるわけないわよ、シンジとは義務でいるだけだし」
そう。義務だから。
なんだかそうやっていつも逃げているような気がする。本当は嬉しいのに、何でだろう…
432 :
軒亜:2009/08/22(土) 19:01:32 ID:???
晩御飯はごちそうだった。しかし気分がいまいち乗っていないアスカに、「どうしたの?アスカ」
と心配そうにシンジが声を掛けてきた。
内心ドキッとして「あんたのせいよ!バカシンジ」
と言ってしまった。
シンジは結局訳がわからず。
とはいえ後は寝るだけだし、と準備に取り掛かろうと布団を敷くシンジに黙って手伝うアスカ。
目の前でそんな光景を見た他の3人は異様な空気に耐えられず何も出来なかった。
―そして夜。
時計の針はもう深夜を指しているというのにアスカはなかなか寝付けない。
ふと、シンジが布団から立ち上がり、部屋を出るのがわかった。
(トイレは部屋にあるのに…)不審に思ったアスカは気付かれずに跡をつける事にした。
シンジが夜遅く向かった先は、昼間遊んだ砂浜だった。
今は月の光が海全体を美しくしく照らしている。
433 :
軒亜:2009/08/22(土) 19:02:15 ID:???
シンジが砂浜に座ると、アスカは黙って隣に腰を下ろした。
「アスカ…」
シンジが気付くとアスカは、「星、綺麗ね」とごまかすように言った。
実際、夜空に広がる星はとても綺麗で、息を呑む程だった。
「ホント、寂しいヤツね」
「…アスカがいるから、寂しくない」
どういう意味なのか、わからなかった。
それって―、と言おうとした時、シンジの手が重なった。
黙っていてやる代わりに、シンジの手をぎゅっと握った。
もう離したくない。
修学旅行が終わればまたいつもの日常に戻ってしまう。
今はそれがなによりも辛かった。
434 :
軒亜:2009/08/22(土) 19:03:10 ID:???
次の日の自由行動は2人で。
2人で誰もいない浜辺を見つけた。
青く澄んだ海、誰にも邪魔されない空間がそこには広がっていた。
アスカは大きく伸びをしながら、
「んーっ気持ちいい〜」
それに対しシンジは「うん、そうだね」
とだけ言っておく。何故か段々と鼓動が早くなる。
―海が紅く染まっていく―
シンジはそんな気がして落ち着かなかった…
終
GJ!砂のお城でのツンデレが良かった
だが男女の部屋は分けなきゃダメだぞ!w
GJ!
和むw
乙
最後が、ん?てなったけど・・
視点がバラバラ
修学旅行で男女の部屋は普通分けます
オチがわかりにくい
>>397 の続きです。
次回で終わりですから嫌な人はもう少し我慢してくださいね。
「い...、きて...、大尉...。大尉ってばさ。」
誰かが呼んで居る。マリなの?
目を開けると、心配そうにアタシをのぞき込むマリの顔が有った。
「ここは、何処なの?」
「さぁーね。あの世だとは思うんスが...、これだけ、殺風景だと天国とは思えませんね。」
確かに、ガラーンとした部屋だ。
「それにね。変なのが居るんスよ。あっち。」
「変?確かに変っていうか、これだけ居ると不気味ね。あれって、如何見てもエコヒイキの集団だわ。」
マリが指さした方向には、あの女が20人以上立っている。しかも、4、5歳位の幼児まで居る。でも、
特徴ある青い髪は正しく、あの女だ。
「アンタ達は何者よ?」
「綾波レイと呼ばれる存在......。」
声を合わせて言われると、結構不気味だ。
「て、事は姉妹って事?」
「あんた、ばかぁ?そんな訳無いでしょ。大方、クローンか何かじゃないの?」
「冗談スよ。多分、そんなとこでしょ。」
「ちょっと、待って?と言う事は、この中でアタシと会って居るのは二人って事?」
「ええ、一番長く会って居たのは私...。」
手に沢山の絆創膏をした、女が答える。
「私は、病院で有っただけ。」
「やっぱり、すると...アタシは、アンタを...。」
プラグを砕いた時の嫌な感覚が蘇ってくる。
「そう、貴女は私の体を破壊している。でも、気にする事は無い、何故なら、私達の生と死は同じだから。」
アタシは、全身から汗が噴き出すのを感じる。
「それに、貴女には感謝しているわ。あの時、碇君が背負う苦しみを貴女は代わりに背負ってくれた、
それだけじゃない。碇司令が背負う苦しみまで背負ってくれた。貴女は碇君の未来を変えてくれた。」
「ちょっと、解んない事、言わないでよ。第一、未来なんて自分で作るものよ。決まっているモノじゃないでしょ。」
「いいえ、決まっている。無論、全てでは無いけど、大きくは変えられない。あの時、誰かが使徒に取り込まれる
事は決まっていたし、その為に、碇君と司令に離別が訪れる事も決まっていた。でも、貴女の碇君を救いたい
と言う思いが、碇君と司令の未来を変えてしまった。」
「その代償として、アタシが二人分の苦しみを背負う羽目に成ったと...。」
「あのー、お取り込み中ですけど...。もっと、大事な事があるんスよ。」
「うるさいわね。今話している所なのよ。」
「いや、そこに大尉の愛しの彼が寝てるんですよね。」
マリに言われた方を見ると、確かにシンジが居た。
「どうして、それを先に言わない。」
アタシは、シンジに駆け寄る。
「会いたかったよ。ねぇ、何時まで寝てるの?起きてよ。」
どんなに、ゆすってもシンジは起きない。
「ねぇ、マリ...。死んで無いよね。」
「多分、我々も死んでいるので、死人が死ぬって有るんですかね。放って置けば起きる気もしますが...」
アタシもそうだが、マリも良く解らないんだろう。死後の世界なんて初めてだもんね。
「まぁ、良いか。一度、やってみたかった事やってみるか。」
そう言うと、アタシは正座をしてシンジの頭をアタシの上に乗せた。膝枕と言う奴だ。この状態で、シンジの
髪の毛をいじると、けっこう楽しい。
「ねぇ、マリ?アタシ達本当に死んでると思う?」
「さぁ?でも、あの状態で生きているとは思えないスよ。仮に、催眠系のガスだとしてもこんな場所に連れて来て
何になるのかにゃ。」
「じゃぁ何で、足がしびれるの?死んでるから足も痺れないと思ったけど、凄く...、辛く...成ってきた。」
「止めれば良いしょ。」
「ああもうダメ。」
そう言うと、足を崩す。それでも、シンジの膝枕は止めない。起きるまで続けるつもりだ。起きた時に驚く顔が
見たいから...。
「大尉も意地っ張りスね。」
「あれ?一寸、変だよ。だって、アタシが殺しいたエコヒイキは一人だけ、他のは生きてる筈じゃない?」
「はぁ?まぁそうっスね。」
「解った!マリ、アタシ達は死んで無い。ここは、初号機の中だよ。良かった...。シンジは、アタシを助けて
くれたんだ。あの女だけじゃなくて...。アタシの事も守ってくれたんだ。」
「シンジ君が君を助けたのは確かだけど、ココは初号機の中では無いよ。」
何の脈絡も無く、いきなり現れた銀髪の少年が語り出す。
「な、な、な、な、何なのよ。行き成り現れないでよ。第一、ドッカら入って来たのよ?」
余りに唐突な出現に、アタシは目を丸くしてこう言うのが精いっぱいだった。
「ここは、シンジ君を迎えるために僕が作った場所だからね。出入りは自由だよ。」
「良く解んないけど、シンジはまだ寝てるわよ。」
「ああ、それは寝てるんじゃ無くて、僕が作った魂が入って無い肉体だ。今、シンジ君の魂は別の所にいるからね。」
「えーーー、じゃあこれは、死体なの?」
「死体とは違うよ。まぁ、人形みたいなものだと思えば良いかな?心配しなくても、間もなくやってくるよ。」
「でも、何でアタシ達をこんな変な場所へ連れ込んだの?」
「シンジ君の新しい門出を祝うためかな?ココにいるのはシンジ君と関係の深い人間ばかり、何せ、僕たちはシンジ君の
恋敵だからね。」
「エコヒイキはそうだけど、待ってマリもそうなの?...、何時、手を出したのよ!」
「何もして無いですって。一度しか会ってないし...。もしかして、あの時にゃ?」
「何かやったの?」
「やったと言うか、不可抗力で彼の顔をこの胸で挟んだんスよ。」
「何て事してくれるの?巨乳に目覚めたら、どうすんのよ!あれ?僕達って言ったよね。アンタ...、男...だよね。」
「愛に性別は関係ないだろ。」
「関係ある。大あり、シンジを変な世界に引き込まないでよ。」
「それは、君たちの世界の話だろ。シンジ君はもう君たちの世界には戻らないから問題ないさ。」
「一寸、どういう事よ。シンジを変な所へ連れて行かないでくれる?」
「仕方がないだろ。シンジ君は君たちの世界では幸せになれないんだ。だったら、もうそっちの世界に行かなくて
済むようにするんだ。」
「何、言ってんのよ。幸せに成れるかなんて、先の事は解らないわよ。」
「解るさ。色々、やってみたけど、結局は最後は不幸に成るだったら、もう君らの世界には居ない方が良いんだよ。」
「もう、訳の解んないことばっかり言ってないでよ。良い?今居る所で不幸だからと言って、別の所へ行っても幸福に
成れる訳無いでしょ。」
あれ?これって、アタシに言うべき言葉だよね。
「では、聞くけど、君はシンジ君を幸せにする方法を知っているのかい?」
「解るわよ。シンジは家族と暮らしたいだけ、父親との和解が出来れば良いわ。」
「それは、無理だよ。僕でも他人の心に干渉は出来ない。そんな事ができるなら、直接シンジ君を幸せにするさ。」
「他人の心以外なら何とか出来るの?だったら、シンジの母親を戻せば良いわ。そうすれば、上手く行く。何せ、
母親の料理の味だけで打ち解ける位の間だもの。あの二人にとって、あの人の存在は相当大きいわよ。」
「それは、出来るけど。そんな簡単な事で本当に可能なのかい?もし、不幸に成ったらどうする気なのかな?」
「良いわ、煮るなり焼くなり好きにして。」
「その言葉わすれないでね。望みどおり、そんな世界へ連れて行って上げるから。」
「の、望むところよ。」
「一寸、大尉。変な約束しない方が良いスよ。コイツ、遣りかねませんぜ。」
「良いわよ。アタシはね。シンジと会う為なら地獄へ堕ちても構わないって思いで、ココまで来たんだからね。」
「解った。でも、これが最後のチャンスだと思ってくれたまえ。じゃぁ行くよ。この場所はもう消す。君らもじきに
戻れるよ。」
「一寸、待った。」
「何だい?やはり、止めるのかな?」
「違うわ。これって、賭け事だよね。だったら、上手く行った時の儲けを提示されて無いんだけど。」
「何が欲しいんだい?」
「シンジの心が欲しい。シンジがアタシ無では生きていけない位にアタシの事を思うようにして。」
「君は、人の話を聞いて居たのかい?僕は他人の心を自由には出来ないんだよ。」
「何よそれ。役に立たないわね。」
「その代わりに、私が消えるって言うのはどう?」
「行き成り何を言い出すの?エコヒイキ。」
「私がもう、貴女達の世界にはもう戻らないわ。そうすれば、碇君を好きな人は貴女しか居ないわ。」
「身を引くって事?それで良いの?」
「私は貴女達の世界に居れる時間は短いの碇君とは、いずれ別れなければいけない。だったら、早い方が良いわ。」
「一寸、待ちなさいよ。されじゃぁまるで、アタシが惨めじゃないの。アンタなんかに憐れみをかけて欲しくないわよ。」
「気にする必要はないわ。貴女は碇君が背負う苦しみを肩代わりしてくれた、貴女はそれ以上苦しみを背負う必要はない
もの。」
アタシの手には、プラグを潰した感覚が蘇ってくる。これは、シンジを愛した証と言う事なんだろうか?
ならば、この痛みを大事にしたいな。
「では、本当に行くよ。また、何時か会えると良いね。」
「べーだ。絶対にシンジには近づくな。一昨日来やがれ。」
「一寸、大尉。滅多な事を言うと怖いスよ。」
「良いのよ。シンジを悪の道から守らないと、駄目だもの。」
「消えちゃいましたね。」
「あ゛ーシンジが消えてる。何処よ。何処行ったのよぉ?」
「ていうか、大尉も消えそうで...。」
「そういう、アンタも消えそうよ。」
そして、また意識が遠のいて行く。
続く...。
と言う事で、次回は?後編です
次回で最後ですのでもう少し我慢してくださ
447 :
ふぅ。:2009/08/22(土) 22:59:57 ID:0NXnIYA+
「ハハ、結局二人になっちゃったね。
アスカも来ればよかったのに。」
「惣流さん?碇くん、仲良いものね。」
「親同士がが同じ研究所で働いてるから、
アスカとは昔から知り合いなんだ。
そういや、父さんと母さん今日は遅くなるって言ってたけどアスカんち大丈夫かな…。」
「碇くん、惣流さんのことばっかりね。」
「そうかなぁ?昔からずっと一緒だから自然にそうなってるのかも。」
「そういうの、羨ましいわ。
私、転校ばっかりでそういう人いないもの。」
「バカシンジはもう帰ったのかな?」
昨日もこんな感じで天井見上げて考えてたんだっけ。
レイと一緒なんじゃん。
ま、あたしには関係ないけど。
昔こんなときはシンジんちに泊まりなさいって
おばさまが言ってくれてたんだっけ。
―ピンポーン
448 :
ふぅ。:2009/08/22(土) 23:21:48 ID:0NXnIYA+
「…ママ?」
もしかして
―ピンポーン
「はーい!」
シンジ…?
「なによ!いきなり…。」
「アスカ、今日なんか変だったから。」
「大丈夫よ。ちょっと熱があるだけ。」
「そうなの!?」
やだ、おでこ…
「ちょっと熱っぽいね。顔も赤いし。」
顔…赤い?
「今日父さんも母さんも遅いんだ。
だから今日、泊まってくよ。
さっき母さんからアスカんちも今日は帰ってこないって聞いたし。」
「いいわよ…あたし一人で大丈夫よ。」
「だって、アスカ料理とか苦手だし…。」
「あたしだって料理くらい一人でできるわよ!!」
「ほら、熱あるんだからじっとしてなよ。
今おかゆ作るから待ってて。」
久しぶりに食べたい。
「…ハンバーグ。」
「え?」
「ハンバーグがいい。」
「だめだよ。治ってからまた作るから。」
治ったら、治ってもまた作ってくれるの?
中途半端すぎwww
まあ乙
450 :
ふぅ。:2009/08/22(土) 23:46:39 ID:0NXnIYA+
「…ありがと」
「え、アスカ?今なんて?」
「余計な御世話だって言ったのよ!」
「へへ、そっか!」
なんにも変わってないのかも、昔と。
あたしだけが、変わっちゃったのかも。
なに…?この感じ…
「アスカー、できたよー。」
「ねぇシンジ、今日は綾波さんたちと勉強してたんじゃないの?」
「うん…結局ふたりだったんだけどね。」
え?なに?やっぱりこいつ…
「でも、アスカが心配だったから早めに帰ってきたんだよ。」
なによ、なによ。
そんなに振り回さないでよ。
「そうだったんだ」
でも、うれしい。
投下中だったのね
サーセン
このスレって、投下してる人より読んでるだけの側が偉そうだよな、常に
個人的にはちょっと辛口なほうが嬉しいよ。上達しそうで。
最近ひどい作品が多すぎ
反応薄い所で需要がないんだと察してほしい
>>454 いきなり辛口すぎるw誰だって最初から完璧な訳じゃないんだから
いろんな作品があって良いと個人的には思っているけれど…
ちょっとしたネタを書き込むのも恐くて躊躇してしまう性分なので
このスレに限らずLASを提供してくれる人に感謝してます
>>455 同意
自分の厨房のときに書いた小説まがいもんとか、このスレに投稿したらやばいぐらいにおもろいと思う(別の意味で)
その頃よりはまだマシなものは書けてるみたいなので、一概にひどいと決め付けるよりは生暖かく時に厳しく見守ってくれると嬉しい
左様。
書き手にいろんな人がいるように読み手にもいろんな人がいるからね
クオリティの高いものだけ読みたいって人もいるだろう
そういう人たちの批評が書き手のスキル向上にもつながるし
そこからクオリティの高いSSが生まれてくるだろうから
自分も初めから全否定するんじゃなく様々な作品があっていいと思っているよ
459 :
if :2009/08/23(日) 07:23:26 ID:???
いつみても、小説レベルが高いな
はい、みなさん。また、俺が来ましたよ。
タイトルは
昼飯
投下
460 :
if :2009/08/23(日) 07:24:18 ID:???
<昼飯>
これは午後12時から午後1時までの話である。
居間に置いてある壁掛けの時計が、午後12時を回ろうとしている。
「シンジ、遅いわね。買い物するのに何時まで掛かっているのかしら、もう1時間よ」
そう言いながら、コップにオレンジジュースを注いでいると、玄関のドアが開く。
12:05:59
「ただいま。うぅ、暑いよ。アスカ、水を頂戴」
両手に荷物を抱えたシンジが、その場でへたり込んだ。
「お帰りシンジ。大丈夫?はい、ジュース」
アスカは自分が飲もうとしたジュースを、シンジに渡した。
「ありがとう、アスカ」
シンジはジュースを一気に飲み干す。
「美味しい」
「うん、美味しかったよ」
シンジはコップをアスカに渡し、両手に荷物を持って台所に向かった。
「アスカ、昼ごはん何が食べたい?」
台所から顔を出して、アスカに聞いた。
アスカはタンクトップと短パン姿で、扇風機を胸に当て涼んでいる。
「アスカ!聞いている?」
「ん、あ、ごめん聞いてなかった」
「昼ごはん、何にする」
「そうね……」
シンジはアスカを見ている。
いや、正確的にはアスカの胸元を見ていると言う方が正しい。
461 :
if :2009/08/23(日) 07:25:45 ID:???
アスカの首の辺りから流れでる珠のような汗が、鎖骨に伝わり胸元に流れている。
その光景を見たシンジは、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「シンジに任せるから、何か作って」
「ん」
シンジは、まだアスカの胸元を見ていた。
声は聞こえているが上の空だ。シンジは目をつぶり、その余韻に浸っていた。
「シンジ!!聞いているの?」
アスカは立ち上がり、シンジの肩を揺らす。
「え、何か言った」
「だ・か・ら、シンジに任せるから、何か作ってと言っているでしょ。聞いているの」
「ご、ごめん。ちょっと違う世界に行っていた」
「はぁ?」
「独り言だよ。……それじゃあ、そうめん、とか食べる」
「え、そうめん、何それ?」
「日本の食べ物だよ。暑い時に食べる涼しくて美味しいものだよ」
シンジはアスカに麺を見せて説明した。
「うん、それでいいよ。シンジ」
12:30:01
「出来たよ、アスカ。これが、そうめんだよ」
シンジはテーブルにそうめん、麺つゆ、細かく切った卵焼き、ハム、ネギ、生姜、
焼き海苔、最後にわさびを置いた。
アスカはそれらを頷きながら見て、
「ねえ、これは何?」
わさびを指差す。
「ああ、それね。わさびだよ」
「わさび?」
「殺菌効果があって、食品や野菜の抗菌や、消臭とか鮮度を保つために使用する。
て、何処かの雑誌か、テレビで見た記憶がある」
462 :
if :2009/08/23(日) 07:28:03 ID:???
「へぇ、そうなの。じゃあ」
「アスカ、辛いから……」
アスカはワサビを少し食べた。
その瞬間、
「辛い!辛いよ。み、水」
アスカが口を押さえて走り回った。
「……気をつけてね。と、言いたかったけど、遅かったね」
シンジは走り回るアスカを見て、腹を抱えて笑っている。
「あすか、ははは。はい、水」
シンジは笑いながら水を渡す。
「うぅ、涙が出ちゃう。辛いし、鼻がなんだか、ツーンとする」
水を飲み終えたアスカは、笑っているシンジの頭を軽く殴った。
「ふふふははは。痛い、アスカ殴ること無いだろ」
「辛い物と言いなさいよ、バカシンジ!」
「ごめんね、ごめんね。」
シンジは平謝りをした。
12:45:49
「じゃあ、食べますか」
「そうね」
「「いただきます」」
シンジはそうめんに薬味を入れ啜る。
「シンジ、音を立てないで食べてよ」
「え、これが、そうめんの食べ方だけど」
「え、そ、そうなの!」
「アスカもやってみなよ」
アスカも同じように薬味を入れ啜る。
463 :
if :2009/08/23(日) 07:29:28 ID:???
シンジは横目で見て、ニヤニヤしていた。
「これで良いの、シンジ。ん、何がおかしいの。間違った食べ方をしたの?」
シンジは黙っていた。
「シンジ?」
アスカは小首を傾げた。
まだニヤニヤしている。
「ん!まさか」
アスカは気が付いた。
シンジが自分の胸を見ていることを。
「シンジ!あんた、何処を見ているのよ!」
「え!」
「この、エロシンジが」
「アスカ、し…・・・ごげ。また、こ、の蹴り」
アスカの蹴りが、顔面にめり込む。
シンジは、本当に違う世界に旅だった。
そしてアスカは、そうめんを啜る。
「美味しい」
13:00:00
終
464 :
if :2009/08/23(日) 07:31:45 ID:???
以上です
うざすぎる
466 :
ふぅ。:2009/08/23(日) 07:41:13 ID:bk5HffgW
需要無いとの厳しいご意見ありがとうございます(笑)
具体的にここがいけないってご指摘いただけると助かります。
才能ないんじゃこのやろー!ってのは
まだ高校生なので発達段階ということでお許しください…。
にしても読んでいただいて本当にありがとうございます!
つまらない作品を読むってことは想像以上に苦痛なことだと思いますので。
ノンジャンルに戻れよ
高校生でも何でもいいのであげないでね
ある意味、やおいだなw
>>466 俺はおまいの作品嫌いじゃないよ
頑張って
途中で投げ出すのはよくないぜ
あとメ欄にsage忘れずに
>>466 いや、止める事は無いと思うぞ
俺は続きを待ってる
474 :
674:2009/08/23(日) 09:09:08 ID:???
再びぐーてんもるげん。
逆シャアを見ながら恋愛小説書いてる自分が分からない。
あれ?おかしいな・・・プロットを考えたはずなのに、プロットにないエピソードが増えていくぞ・・・?
考えたラストまで無事たどり着けるのか。
・学園異性系イタモノ注意
・やっと明るめにつづ・・・く?
・先輩の名前を考えなかったせいで分かりづらくてすみません
・ケンタッキー
NGワード キンモクセイ
シンジが職員室に課題を提出しに行っている間、あたしは昇降口の前の階段に座りながら、
手持ち無沙汰にマスコットをいじっていた。
通学カバンに付けられた、おサルのマスコット。
小学生の頃からずっと付け続けているそれは、もうずいぶんくたびれて汚れていた。
何度も洗っているせいで色も褪せていて、友だちからはよく、汚いから捨てれば?なんて言われて。
ヒカリだけは可愛いね、って褒めてくれたっけ。
…きっとウソね。薄汚れた人形は、まるであたしみたい。
ドイツに帰る、なんてウソをついて、結局みじめな思いして。
シンジは、シンジは何も言わなかった。何も。
あたしがドイツへ行っても、離れ離れになっても、あいつは平気なんだろうか。
ただの友だちで、ただの幼なじみで、本当にそれ以上でも以下でもなくて…。
特別だと感じていたのはあたしだけ?
あいつにとって、あたしは一体何?
考えれば考えるほど、思考が闇に沈んでいく自分に気付いて、あたしは首を何度も横に振る。
何を考えてるのよ。
シンジは、あたしとずっと一緒にいるって、そう言ってくれた。
あの女と付き合った後だって、あいつはなにも変わらなかった。
深く考えるのはよそう、アスカ。今日のことは忘れるのよ。
ぎゅうと握りしめると、シンジがくれたマスコットは不細工に顔を歪ませた。
「ごめん、アスカ。待たせちゃったね」
コンバースの赤いスニーカーの爪先を叩いて履きながら、シンジが昇降口の扉から出てくる。
「おーそーいっ!」
何でもない風に装うのには慣れてる。
「このあたしを待たせたんだから、ペナルティ追加よっ」
あたしは立ち上がって、腰に手をあててシンジを軽く睨みつけた。
シンジが顔の前で手を合わせて、二度ほどごめんと言う。
「お説教、食らっちゃってさ…学生として自覚が足りないとかなんとか」
「自業自得ね」
「おっしゃる通りです…」
空は、すでに赤みを帯びていた。
ふたりで校門を出たところで、アスカ、と聞き覚えのある男の声に呼び止められて、あたしは振り返った。
細い目とその目と同じくらいに細い眉を釣り上げた顔が、赤く染まっているのは夕日のせいだろうか。
ただ、その声は怒りに満ちて。
あたしの隣に立っていたシンジが、先輩と呟く声が聞こえた。
なんで、こんなところにいるの?
そう問いただす前にあいつの口が開く。
「お前、また碇と…!」
つかつかと歩み寄ってきて、あたしの腕をぐいっとつかむ。
「痛っ」
「下駄箱に靴があったからまだ学校にいたのは分かってたんだ。ずっと探してたのに…!」
こいつが何故怒っているのか見当もつかない。
こんな風に怒るこいつを見るのは初めてなのに、あたしの中では驚きよりも冷めた感情の方が勝っていた。
あたしの腕をぎりぎりと強く掴みかかるその手が鬱陶しくて、思い切り睨み付ける。
その手を振り払おうとあたしが手をあげるよりも先に、シンジがあいつの腕をシンジが掴んでいた。
「アスカは僕の課題を手伝ってくれてただけです」
とりあえず手、離しませんか?痛がってるみたいだし。
淡々と、静かに。
そんなシンジとは逆に、あいつの顔がさらに赤くなっていって。
今にもシンジに掴みかかって殴りそうな勢いだったから、あたしは先にあいつの頬を思いっきりひっぱたいてやった。
今回は早い!!!ww
待ってたぞ!!!!
パァン!、と小気味よい音が響く。
「なんで怒ってるかは知らないけど、シンジを巻き込まないでよ」
頬を叩かれて冷静になったのか、あいつの顔に狼狽の色が走った。
「悪い…」
と、うなだれて呟くあいつ。
さらに逆上されたのなら見捨てることも出来たのに、
素直に謝られて、どうしていいか分からずにあたしは立ちすくんでしまった。
長い沈黙があたしたちを包み込む。
「アスカ」
シンジがあたしの名前を呼んで、促した。
そうだ。これからふたりでファミレスに行って、約束通りシンジにパフェを奢らせて。
その後CDでも買いに行こうか、と話していたところだった。
シンジの方に向かおうとしたあたしを、あいつの腕が掴む。
あいつが、あたしに縋るように見つめてくる。あたしを求めてくる。
「…ごめん、シンジ」
自分でも、何故こんな行動を取ったのかは分からなかった。
気がつけば、あたしはあいつの手を取って、シンジに背を向けていた。
シンジに対する当てつけのようなもの、だったのかも知れない。
ただの気まぐれだったかもしれない。
この時あたしは、初めてシンジじゃなくて、好きでもない男の方を選んだんだ。
「アスカっ」
シンジが、あたしの名前を叫ぶ。
夕日の中にひとり立つシンジの瞳は悲しみに彩られていて。
「アスカ…」
そう呟くシンジの声を耳にしながら、あたしは再びシンジに背を向けて歩き出した。
シンジがあんな悲しい瞳をするなんて、声を出すなんて、思ってもみなかった。
図書室では何も言わなかったくせに、今度はあんな風にあたしの名前を呼んで…。
ますますシンジが分からなくなって、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
事実があるとすれば、それはこの男を当てつけにシンジを傷つけたこと。
嬉しそうに話続ける男を無視して、あたしは後悔の痛みに胸を抑えた。
あれ以来、男は強い独占欲を見せるようになって、電話やメールを頻繁に寄越すようになった。
今、どこにいる?
今、なにしてる?
今、誰といる?
馬鹿みたい。
お互いの行動を逐一連絡し合って、一日中ケータイ画面と向かい合うようなカップルはよくいるけど、こいつがそれを望むタイプとは知らなかった。
この間の怒りの原因も結局、メールを返さずシンジといたことで。
つまらない男だとあたしは思う。
「明後日、日曜だしふたりで遊園地に…」
一昨日のあたしの行動が、この男を勘違いさせたのならはっきり言ってやらなきゃならない。
「図に乗らないで」って。
「あんたとそんなことがしたくて付き合ってるわけじゃないわ」
あたしが望むのは、今まで通りの冷めた関係。
セックスだけじゃ物足りないの?どうしてそれ以上を望むの?
唖然とする男を置き去って、あたしはさっさと男の部屋を出た。
夜の街は雨の匂いがしていた。
星も月もすべて雲に隠された真っ暗な空からは、静かに雨が滴り落ちて。
ぽつん、ぽつんと街灯に照らされた地面に染みが出来ていく。
傘なんて持ってこなかったな…。
とりあえず近くのコンビニに避難しようと、あたしは足を急がせた。
見る見るうちに雨は激しくなっていって、コンビニへ着く前に夏のスコールのような雨になっていた。
仕方なく、通りがけの小さなレコード屋の前で雨宿りする。
カーディガンはすでにじっとり濡れていて、スカートの裾からは水滴がぽたぽたと落ちて地面に染みを作っていた。
張り付いた前髪をかき分けて、これが夏の制服でなくて良かった、と悠長なことを思った。
店の前の道では、あたしと同じように雨に翻弄された人たちが走り去っていく。
ケータイを見れば、あの男からすでに何件も電話が入っていた。
うんざりして画面を閉じて、これからどうしようと考えを巡らす。
シンジは…。
あの男と会った日は、抱かれた後は、綺麗になるまでシンジには会いたくない。
一昨日の、あの時の、シンジの悲しそうな顔が頭に浮かんで、内臓が内から締め付けられたように苦しくなる。
あれから、シンジとはあまり話していない。
朝も一緒に登校して、変わらず接して、けれど、どこかぎこちない。
あたしとシンジの間には目に見えない線が引かれたような、そんな感覚を感じていた。
あの女とシンジが付き合うようになった時も、あたしが初めて男と付き合った時すらも感じたことのない感覚に、不安で胸がざわつく。
10月の雨は冷たい。
震える体から、くしゅんとひとつ、くしゃみが出た。
「冷えるでしょう?」
低く穏やかな、まるでシンジのチェロのような声だった。
声のした方にふりむけば、白髪混じりの口ひげを蓄えたメガネのおじさんが、あたしにタオルを差し出している。
突然のことにびっくりしたけれど、そのおじさんの着てる店の名前の書かれたエプロンを見て、この店の店主だと気づいた。
「あ…」
「そのままだと風邪引きますから、良かったらどうぞ」
大丈夫、綺麗なタオルですよ。
そう言って、メガネの奥の小さな目を優しく細める。
おじさんの紳士的な態度が、あたしの警戒心を解きほぐしていく。
「あの、ありがとうございます」
好意に甘えて、差し出されるままにタオルを受け取った。
「誰かお迎えに来るんですか?」
「いえ…」
「だったら、中で休んでいきませんかね?この雨、しばらく止みそうにありませんから」
おじさんの、そのカーネル・サンダースのような優しい微笑みに釣られて、あたしはそのまま店内へと足を踏み入れていた。
全体的に茶色で統一された落ち着いた雰囲気で、いい意味で古臭い、くたびれたような匂いがした。
店の中は本当に小さくて、10人も入ればぎゅうぎゅうに詰まってしまうんじゃないだろうか。
木目調の棚にはびっしりとレコードやCDが並べられている。
ジャズとか、クラシックとか、そういったジャンルのものばかりで、いずれもあたしにはあまり縁の無い。
ただひとつ、店内に響く、流れるような重厚なチェロの音色には聞き覚えがあった。
「お嬢さん、寒かったでしょう?これをどうぞ」
一度奥へ入っていったおじさんが、マグカップをふたつ手に持って出てきた。
甘い、ココアの香りが店内に広がる。
「…ありがとう」
おじさんがあの笑みを浮かべてマグカップを差し出してくるので、そのまま受け取らざるを得なかった。
湯気に混じって甘い匂いがあたしの鼻をくすぐる。
冷えた手のひらに、じんわりと温もりが伝わっていく。
マグカップには黒い猫が一匹、描かれていた。
「あの、この曲…」
悲しみと優しさを湛えたチェロの音色。雨の降る暗い夜によく似合う。
「ああ、ブラームスのチェロソナタ、ですね。たしか第1番…お好きなんですか?」
「前に、幼馴染が弾いていたのを聞いたことがあって…あたし自身は、クラシックはよく知らないの」
―ほんとうはね、これにはピアノの伴奏がつくんだけど…
―あたしはそのままでも好き。じめじめしてるけど、綺麗な曲だわ
普段からは想像出来ないけれど、
チェロを弾くシンジの姿は意外にもしっくりと似合っていて、あたしは小さいころからそんなシンジを見るのが好きだった。
ひとつ、またひとつ曲を覚えるたびに、あたしだけに披露してくれて。それは、あたしとシンジだけの小さな演奏会。
―ブラームスってね。アスカの故郷の音楽家なんだよ
―ふーん
―興味ない?
―クラシックはあまりね。でも、シンジのチェロは好き
―ドイツ人のくせに
―うっさいわねっ。人生の2/3は日本で育ったんだから仕方ないでしょ!
その時だったっけ、いつかふたりでドイツへ行こう、ってそんな約束をした気がする。
カップの中のココアを一口すすると、
甘い香りと暖かさが体の中へ広がっていった。
「チェロか…素敵な趣味ですねえ」
同じように黒い猫が描かれたカップに、顔をうずめながらおじさんが呟いた。
「甘く、穏やかなチェロの音色は心が安らぎますなぁ。もっぱら、私は聞く専門ですがね」
そう言って、おじさんはふふっと笑った。あたしもつい、つられて笑ってしまう。
「その幼馴染さんとは、どんな方で?」
「バカ、です。バカで、あけすけで、でも優しくて…お互いに一緒にいるのが当たり前、みたいな。そんなヤツ」
そう言ってあたしが笑うと、おじさんも一緒に笑ってくれた。
それは素敵な関係だ、と。
…一緒にいるのが当たり前。
そうだ、今までだって何度もケンカして、そのたびに仲直りして、やっぱり一緒にいたじゃないあたしたち。
あたしの胸に巣食う正体の分からないこのざわめく不安も、きっと杞憂にすぎない。
すぐに、元に戻れる。
「あの、おじさん。ブラームスってひとのCDで、オススメのものある?」
ココアをもう一口飲み込んで、あたしはおじさんに聞いてみた。
仲直りとか、そんなたいそうなものじゃない。
ただ、あたしたちが今までと変わりなくいられるように。元のままでいられるように。そんな小さな願いをこめて。
おじさんが薦めてくれたCDに代金を支払って、おつりを受け取る。
合成皮革で出来た通学カバンの中は雨でも無事だったので、その中にそっと仕舞い込んだ。
カバンのヒモに引っ掛けられたおサルのマスコットは、びしょ濡れだったけど。
「ありがとうおじさん。ココアごちそうさま。あたし、行くわ」
外の雨は相変わらずしとしとと降り続いている。
勢いだけは少し弱まって、糸のような細い雨へと変わっていた。
おじさんは心配そうに傘を貸そうかと言ってくれたけれど、そこまでお世話にはなれない。
雨宿りまでさせてもらって、その上タオルにココアまで。
何度もお礼を言って店の扉に手をかけようとした時、カバンの中でケータイの着信音が鳴っているのに気づいた。
思わずおじさんと顔を見合わせて、ちょっとだけごめんなさいとあたしが言うと、おじさんはにこやかに了解してくれる。
また、あいつが…と、彼氏の顔を思い浮かべたけれど、サブディスプレイに示された名前は予想外にもシンジだった。
急いで通話ボタンを押して、電話に出る。
「もしもし?」
『あ、アスカ?』
シンジだ。シンジの声だ。
穏やかで優しくて…シンジの声もチェロに少し似てる。
「どうしたの?」
『雨、降ってるからさ。気になったんだよ。先輩のとこ?』
「ううん、親切な人のところで雨宿り中。でも、もう帰るわ」
『帰るって、傘あるの?』
「無いけど、走って帰るから大丈夫よ。また雨が強くなったら途中のコンビニで傘、買えばいいしね」
『だったら僕、迎えに行くよ。ちょうどコンビニにいるからさ、ついでだし』
シンジの下手なウソに、あたしは声をたてないように小さく笑った。
あたしの耳には電話の向こうでざわめくテレビの音が、しっかりと届いている。
家の中にいるくせに、コンビニにいるなんてウソをついて。
まさか、あたしを迎えに行くための口実…?
…あたしが一昨日、あんな態度を見せたから、言い出しにくかったんだろうか。
やっぱりシンジはバカだ。優しいバカ。
シンジに聞こえないほど小さな声で、あたしはアリガトウと呟いた。
『えっ?なに?聞こえなかった』
「なんでもなーい!待ってるから、迎えに来るんだったらさっさと来なさいよばかシンジ!」
『りょーかい……って、ドコに?』
「あんたばかぁ?」
この店の場所をシンジに説明して、電話を切る。分かってるのか分かってないのか、あやふやなのが心配だ。
「…おじさん、もう少しだけ雨宿りさせてもらってもいい?」
「もちろん」
おじさんはあのカーネル・サンダースのような笑みをまた浮かべて、頷いてくれた。
温かいココアをまたごちそうになって、おじさんとたわいもない話をする。
おじさんの奥さんの話だとか、好きな音楽だとか、飼っている黒猫の話。
あたしもシンジの話や(いつまでおねしょをしてたとか)、最近読んだ本の話、学校の愚痴なんかも話した。
おじさんはとても聞き上手で話も上手くて、時間はあっという間に過ぎていった。
お店の外に、見慣れた傘をさした人影が目に入って。
右手に、あたしの赤いに白い花柄が散りばめられた傘を持っているのが見えた。
傘がむこうを向いて、シンジの顔が現れる。シンジはあたしの姿を見つけたらしく、微笑みながら小さく手を振った。
「幼馴染さんですかな?」
おじさんの問いかけに、はい、と答える。
「ほんとにありがとうおじさん、楽しかったわ」
「いやいや…私こそお礼を言いたい。お嬢さんと楽しくお喋りが出来た上に、CDまで買ってもらえるなんてね?」
小さな目をウインクさせて、おじさんがお茶目に笑う。
あたしも笑い返して、今度こそ店の扉に手をかけた。
「美しいお嬢さん、素敵な幼馴染の彼にもよろしく」
おじさんの言葉に頷いて、あたしは店の外へ出た。シンジの待つ外へ。
「はい、傘」
「ん」
シンジに差し出された傘を受け取って、開ける。
夜の空によく映えて、まるで赤い花が咲いたように鮮やかだ。
店の中でこちらを見ていたおじさんにふたりで頭を下げて、あたしたちは街の中を歩きだした。
紫煙
私怨
今回はこれで終わり・・・かな?
今回はここまでか
シンジ頑張れ!!シンジ頑張れ!!
アスカ気付け!!アスカ気付け!!
盛り上がってまいりましたな・・・
「服、濡れてるね。寒くないの?」
「ちょっと寒いけど、平気」
あいつに抱かれたあとだと言うのに、シンジと普通に話せてる。
雨があたしを洗い流して綺麗にしてくれたんだろう。
この時あたしは寒さよりも、むしろ清々しさを感じていた。
突然、もぞもぞと隣のシンジが動きだして。片手で傘を持ちながら、器用に着ていたパーカーを脱いでいく。
どうしたの、と聞く暇もなくあたしの前にそのパーカーを差し出してきた。
「風邪引くといけないから、これ着なよ」
「平気だって言ってんでしょ」
「そんな事言って、真冬の川に足を突っ込んで、翌日高熱出してたの誰だっけ?」
「くっ…そんなことばかりよく覚えているくせに、どうして英単語が覚えられないのよ?」
しぶしぶシンジのパーカーを受け取って、肩に羽織った。
パーカー、濡れちゃうのにバカだな…。
シンジの優しさは暖かくて、いい匂いがする。
パーカーをさらに寄せると、もっとシンジの匂いを感じた。
「あのさ、アスカ」
シンジの声が少し緊張の色が混じっているように震えている。
あたしが、なに?と返すとシンジは続けた。
「…明後日、ヒマ?」
「まあ…ヒマかな」
あの男が何か言っていたような気もするけど、今はどうでもいい。
「あの…今日さ、新聞屋のお兄さんが来て洗剤とかラップとかたくさんくれたんだ。それで母さん喜んじゃって」
助かるわあ、と言いながらニコニコ微笑むおばさんの姿がありありと目に浮かぶ。そんなおばさんが可愛いくて好きだ。
「ふむふむ」
「母さん、若作りだけはすごいだろ?母さんがあんまり喜ぶもんだから、新聞屋のお兄さんもデレデレしちゃって…」
「へー。おばさん、美人だものね」
「頼んでもいないのに、さらに石鹸とか洗剤とか色んなものをそれはそれは山積みのように…」
「うん、美人ってそういう時、得よね。あたしもだけどっ」
「自分で言うなよ…って、僕が言いたいのは!」
きたああああああああああああああああああああ!!!!
シンジが立ち止まる。
あたしは振り返って、シンジと向かい合う形になった。
「なに?どうしたの?」
少し、間をおいてシンジが口を開いた。
「明後日、ふたりで動物園に行こう」
「え…?」
「し、新聞屋のお兄さんがくれたんだよチケット!それで、どうかなって…」
「…こ、こないだの課題のお礼、まだだったろ?それも兼ねて、さ…」
ああ、そういうことね。
これが、こいつがこいつなりに考えた、キッカケ、なんだろうか。
あたしのブラームスのCDと同じように、考えてくれたんだろうか。
それが嬉しくてあたしは大きく頷いた。
「あたしもね、シンジにあげたいものがあるの」
「え……なに?」
とりあえず歩こう、と促して、ふたりで再び歩き出す。
マンションに近づくごとに人気もお店も少なくなっていて、明かりと言えば街灯と住宅の光しかない。
その光を頼りにカバンの中から、おじさんのお店で買ったCDの包みを取り出して、シンジの手に渡す。
傘と傘の間を通る瞬間に、雨が紙袋にいくつか染みを作った。
プレゼントなんて、思いもよらなかったんだろう。
シンジの大きくはっきりとした目が、ぱちぱちとまばたく。
「これは…?」
「開けてみて」
「…ブラームスのCD?交響曲第1番から4番……カラヤンのじゃないか!」
紙袋から取り出したCDを見たシンジの瞳が闇夜の中でもはっきりと、生き生きとして輝いていくのが分かる。
よく分からないけど、良かったみたいだ。
「アスカ、ありがとう!!ずっと欲しかったんだ、これのCD!」
無邪気にはしゃいで、頬を赤く染めて喜ぶ。
ココアみたいに甘くて子どもっぽいシンジの笑顔にあたしはほだされて、心が暖まっていくのを感じた。
もう このスレに張り付いて
日曜日が終わってもいい・・・
「でも、どうしてこんな…!悪いよ!」
「気まぐれよ、気・ま・ぐ・れ!…あの店でたまたま聞いたの。ブラームスのチェロなんとか」
「…チェロソナタ?」
「そう、また弾いてくれればそれでいいわ。あれでもいいけど…バッハのやつ」
「無伴奏チェロ組曲、アスカ、好きだもんな。僕も一番好きだよ」
「うん、それも…また聞きたい」
「りょーかい。いくらでも弾かせてよ」
暗くてじめじめした夜なんて関係なしに、あたしたちは微笑み合って歩く。
あたしたちの間にあった見えない線なんか、とっくの昔に消え去っていた。
495 :
674:2009/08/23(日) 09:38:05 ID:???
また規制されちったい
とりあえず以上
時間がないので早く頑張る
みんなコメントありがとな!
次もきっと明るいさ!
誰かCDの詳細調べて来いよ
買いに行くから
BGMにして読み返すんだ
>>495 超乙!!!
盛り上がってきたな!次回も楽しみに待ってるぜ!!!
乙
楽しみにしてるぜ
二人が幸せになれるといいね
GJ
>>496 ブラームスはじめじめして暗いから、バッハオススメする
げぇーっ
コピペ失敗してるじゃ
>>492の前半は正しくはコレです
シンジが立ち止まる。
あたしは振り返って、シンジと向かい合う形になった。
「なに?どうしたの?」
少し、間をおいてシンジが口を開いた。
「明後日、ふたりで動物園に行こう」
「え…?」
「し、新聞屋のお兄さんがくれたんだよチケット!それで、どうかなって…」
夜の暗さと傘が影になって、シンジの顔がよく見えない。
映画やショッピングに一緒に行くことなら何度もあったけど、こうやって動物園のような"イベント"にシンジから誘われるのは初めてだった。
そのことに驚いて、少し戸惑ってしまう。
「…こないだの課題のお礼、まだだったろ?それも兼ねて、さ…」
ああ、そういうことね。
これが、こいつがこいつなりに考えた、キッカケ、なんだろうか。
あたしのブラームスのCDと同じように、考えてくれたんだろうか。
それが嬉しくてあたしは大きく頷いた。
すみません、以上
GJすぎる!
ハッピーエンドになればいいな!
>>505 アスカがシンジにあげたのはカラヤン指揮の交響曲第1番から4番のCDそのまま
アマゾンにある
チェロソナタ第1番2番も色んな奏者のやつがあるからお好みのどうぞ
ついでに質問だけど、あのアスカの髪型ってなんて言うんだろう
GJ!反応が凄まじいw
やっぱ凄いね…なんか自分に限界を感じてきたよ
>>508 そう下向きになりなさるな
投下すればみんな反応してくれるはずさ
辛口評価もあれど、それを糧にどんどん上達していけばいい
気にせず臆せず気軽に投下してくれぃ
GJ!!
意外とアスカの方が鈍感だったり?w
現実だったらいつまでも一緒にいられないと悟り
大学進学をきっかけに疎遠になって
数年後、同窓会とかで久々にあったら結婚してて子供もいて…
っていう展開になるんだろうな〜
神が来た。希望の光が来た
何処に来た。
ここに、キンモクセイさんがきた
>>513 相手に彼氏がいたら諦めるだろう
常識的に考えて
>>511 んだよねー
まあ子どもの理屈を通せるのがFFのいいところよ!
そういえば入れ替わりまだかな?
入れ替わり俺も期待してるんだけど
動物園でのシンジの行動に期待したい
告白までいけたら惚れる
乙すぎてこのスレから離れられない…
シンジに勇気かアスカに素直さがあれば
本編でもくっつけたかもしれないって
LAS小説を読んでて思う
告白するにはかなり、勇気がいるよ。
しかも、この二人は友情みたいな関係だ。
シンジ、もしくはアスカが告白すれば、今までの関係が壊れるんじゃないかな。
二人はそれを恐れてるじゃないの、だからお互いに好きと言えない。
皆もこんな経験あるんじゃないの?
僕の考えすぎか?
いっしょに遊ぶのは、だいたい小学校高学年くらいまでで、その後はだんだん疎遠になっちゃうよね。
近所の子供がその子だけだったら別だろうけど、たいてい、他にも男の子や女の子はいっぱいいるわけで、
だんだんやることが違ってきちゃうから。
だから、これは、かなり特殊なケースだと思うよ。
たぶん、お互い、相手の気持ちを薄々分かってはいるんじゃないのかな。
そうでないとこういうふうにはあんまりならないと思う。
ヽ、レ'´ ̄ ̄ ̄`丶
/.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:`ヽ
_/::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.`¬
{::.::.::.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`¬/.::.::.:.:.:.:.:.:{_
j::.::.::.::.::.::.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,ヘ }::.::.::.:.:::::::::::::}
〈::.::.::.::.::.::.::.::/.::.::.::.::.::./`ヽ/"ヽ::.::::::::::〈
ゞ:::::::::::::{::::{:: !::.::.|::{::ト、{ }::::::::::::: }
ミ::::/`ヽ:: !-{,xニl_土‐ 、,xニ_二l::::::::: ハノ
`レ{ r'} \{八_ノ_` }ァニ{_ノ_`ハ}/}/
ム.__. ゝ'_ ' .ノ { t.'__'/ノ
_.. イ/ 、 、 ̄ ,\`く.√i
_| { ヽ  ̄ ̄/^ヽ. \{
_ノ | ヽ >-イ´─- ハ\
, ' ´ | \ { _| j -‐ } ヽ 優柔不断なシンジ殿では将来が不安でヤンス
/ | ヽ,ィ 7 ` '´ j { 、__,. / ',
/  ̄`ヽ | } 〈‐-‐…' >‐{ ,' 、 ここは小生が一肌脱がないといかんでヤンスな
>>524 離れ離れになっちゃうからね
どの道壊れるなら俺は告白するな。
相手に彼氏居ようが自分の気持ちを伝えたい
勿論本当にただの友達って関係なら押し殺すけど、こういった仲ならばの話だけどさ
シンジはアスカと同じで誰かと付き合っても付き合っても忘れられないんだろ、アスカの事が
それ程まで想ってるなら自分の為にも一度当たって砕けたい
と妄想
雑談は余所でやれカス
ここは投下スレだぞ
524だが
男女の友情なんて成立しない。
そんな事、誰か言ってたね。
人を好きになるのが辛いなら、好きにならなければいいのです。
人を好きになるのは簡単だけど、それを相手に伝えるのは怖くて、辛いもの
場合によれば、相手を傷つけたり、自分が傷つく、恋愛は難しいよ。
・・・・・なんで、こんな話になったの?
次いってみよー!
次に、目が覚めた場所は病院の中だった。不思議な事に外では雪が降っている。
日本じゃないって事かな?
病室に入ってきた看護師さんがアタシを見て少し、驚きと安堵の表情を浮かべる。
「アスカさん、お目覚めですね。良かった...。」
え?日本語?と言う事は日本なの。
「あのー、ここは、日本ですよね。何で、雪が降ってるんですか?」
「アスカさんは、ご存じないかも知れませんが、地軸の揺れもどして日本には、
四季が戻ったんですよ。」
「そうなんだ。シンジは生きているんですか?」
「碇シンジさんですよね。生きていますよ。当然です!彼のお陰で世界が救われたの
ですから。そうそう、碇さんからアスカさんが目覚めたら知らせて欲しいと言われて
居ますので直ぐに連絡しますね。」
どうやら、アタシが寝ている間にシンジの大活躍で上手く行ったみたいだ。結局、
アタシは何の役にも立たなかったんだね。
シンジが病室に入ってくると、アタシは思わずベットから飛び出してシンジの元へ
駆け寄っろ。胸をポカポカ叩きながら。
「もう、バカバカバカ、会いたかったよぉ。無事で良かったよぉ。」
と言って半泣きしてしまった。
「ごめん、アスカ心配かけて...。」
「やはり、我々は来なかった方がよかったのでは無いか?」
「げ、司令...。あのー、そのー、御無事だったんですね。」
何で、司令まで居るんだよぉ。
我に返ったアタシは居たたまれなく成り、そのまま回れ右をすると、ユラユラと
歩いてベットへと戻った。もう、恥ずかしいのを通り越して、情けない気分だ。
「入って、良いかな。」
「良いわよ。司令まで来ていただいて...、すいません。」
司令の後に続いて、女の人が入ってきた。知的な感じのする女性だ。アタシより劣るけど
美人の部類に入る感じ。
「紹介するよ。僕の母さんだ。」
「かあさん...、ママ...、て、事は無事に戻れたって事?良かったじゃないのシンジ!
あ、始めまして、アスカです。」
「ユイです。シンジが何時もお世話になっているみたいで、改めてお礼を言うをわ。ありがとう。」
「そんなー、助けて貰って居るのはアタシの方です。そのー、今回も寝ていた間に全て、片づけて
くれたみたいで...。アタシってドイツから何しに来たのか解らないなぁ...。」
「そんな事無いよ。ジオフロントでアスカが呼びかけてくれなかったら如何なっていたか解らないよ。
あの時、命がけで来てくれたアスカを如何しても助けたいって思ったんだ。それが無かったら...。」
「恋人同士の庇い合いって何かいいわね。」
「違います!」
「違うよ!」
「ユイ、そろそろ...。」
「そうね。挨拶も済ませてし、元気そうなのも解ったから、私達は仕事に戻るわ。シンジはこの可愛い彼女
とゆっくりしてらっしゃい。恋人同士のじゃれ合いってはた目から見ていると、白けるのよね。」
「あのー、違うんですよ。シンジ...君とは、そう言う関係じゃ...。無いですって。」
「そうだよ。アスカとは、何でも無いんだよ。」
ねぇー本当にそうなの?だったら、何で助けてくれたの?
でもアタシも同じか...、アタシも気持ちを誤魔化してるもんね。
「ねぇ、シンジ。アタシがジオフロントで何を言って居たか聞いて居たんだよね。」
「それがね。聞いて居たんじゃ無くて、感じていたって言った方が良いかな。アスカが必死に何かを伝えようと
して居るのをただ感じていただけなんだよ。だから、何を言って居たかまでは...。何を言っていたの?」
「な、な、な、な、な、何でも無いわよ。大したことは言ってないわ。そう言えば、マリは如何なったの?」
「ああ、彼女なら病院に担ぎ込まれた翌日には目を覚まして、数日で退院してヨーロッパへ帰ったよ。」
「アイツの自慢はタフな所だけだからね。何か言って居た?」
「直接は会ってないけど、アスカが目覚めてからだと、帰るなって泣き付かれるんで会わずに帰るって
言って居たみたいだよ。」
「何よそれ?アタシがそんな子供みたいな事、言うわけ無いでしょ。ミサト達も無事なんだよね。」
「うん、でも忙しくて会えないんだよね。アスカが退院したら、皆でお祝いしよって言って居たけど。」
良かった。シンジはアタシが言った事を聞いて無かったんだね。あれは、もう死ぬから最後に言いたい事を言っておこう
と思って言っただけで、生き残ったら全く別。こんな事を言ったのがシンジに知れたら、恥ずかしくて二度と会えなくなる。
そう言う意味で、マリが日本に居ないのは幸いだ。残って居たら、何を言うか解らない。
問題は、ミサトだ。他の人は喋らないけど、ミサトは何を言うか解ったもんじゃない。シンジと話しをしながらアタシはミサトの
口を塞ぐ方法を考えていた。
終劇
GJです。えらいサッパリした終わり方ですねw
レイが消えたこととか、マリとの別れとか描いてほしかったな〜と思いましたが、最後はハッピーエンドだったんで良し!ですね
転載板の未完の作品の続きなんだけど投下してもいいかな?かなりのイタモノなんだが…
もし他に投下できるようなスレがあるなら教えてくれるとありがたい
>>537 まずその作品を知らないから何とも言えないw
前回部分も欲しいけど…ちなみにLASだよね?
>>537 作品名kwsk
まあイタモノは読まないけど
540 :
537:2009/08/23(日) 21:53:07 ID:???
異性系でかなりドロドロしてるがいちおうLASのつもり
イタモノ専用スレって無いのかな?
だから何て言う作品だよ
転載板から引っ張ってきてよ
542 :
537:2009/08/23(日) 22:04:44 ID:???
「11」ってタイトルで保管されてる作品なんだがスレチでしょうか?
ここはイタモノもOKだお
ただ、NGワードのためにタイトルを名前欄に入れるのと、注意書きだけ頼むよ
あれかwwwwww
カヲルトウジが出てきて終わった作品だよね?
スレチじゃないから大丈夫かと思うよ
あれ前半だけでもめちゃくちゃイタかったのにまさかこれ以上…
凄いのも帰ってきたなw破効果すげ〜
アスカがラリって他の男達とヤリまくる話だっけ?
イタすぎて俺は途中でやめたけど作品としてはいいと思う
投下どーぞ
もう投げ出してたって思ってたwww
ワクテカ
アスカの異性系ならいけてしまう俺はいいと思うよw
…ちゃんと最後はLASになるならだけどね
でもあれもはやLASじゃない気がry
投下待ってます
まあ確かに少しLASから脱線してるよな
でも俺は好きだお
wktk
552 :
537:2009/08/23(日) 22:22:25 ID:GGwWjQFU
では12時くらいから投下さしてもらいます。
イタさは前回以上では無いけど以下でもないって感じなんで苦手な人は「爆弾」でNG登録お願いします。
どーせならハッピーエンドがいいな
>>552 がんがれ
期待してるお
うわ、この人かwww
すげー祭り起こしてた人だな
>>552 頼むからsageてくれ
そーいや『ふぅ。』は続きマダー?
あれ結構好きだからさ
>>556 投下とともにすげえ反応で、めちゃくちゃスレの速度が早かった気がする。結構昔の話かな?
自分もちゃんとは読ませてもらったことはないんだけど、たしかにすごい内容だったw
>>558 何でそんな反応スゴかったの?
イタモノが珍しかったの?
>>559 LAS以外の人も流入して読んでたからかな?
NTRが流行ってた時期だし
>>559 イタのレベルが違うからな
もはや使徒なんか小さい敵じゃないかなw
562 :
537:2009/08/23(日) 22:33:22 ID:???
すまん書き込むの久々すぎてsage忘れましたorz次から気をつけるんで
ではのちほど
そんな凄いのかw
これは流石に読む勇気ないわ
ただでさえ今まさに傷心中だってのに、、
正直「11」はもう
あきらめていたから続きが投下されるなんて
奇跡みたいだ。完結願う。
あれかww荒れまくって途中で移動とかしてたやつだよな?
今回は荒れないのを祈る
確か前半はアスカがラリって他の男達とヤリまくってミサトが死ぬ話だったよね?
今から後半読んでくる
|д゜)ソローリ
|彡サッ
でもエロ表現は抜きにしてくれよー
でないとスレ削除されちまう
エロ表現入れるならどっかのろだにうpって誘導でヨロ
それで動いてるLASスレもあるしな
奴だ
N3爆弾が来たんだ
N3爆弾かあれはイタすぎなんだよな…でも続きが気になってしょうがない
シンジ「4年ぶりだね」
アスカ「ああ間違いない、N3だ」
(゚д゚)N3の11……俺が初めて読んだイタモノ……アイツか?アイツが来たのか……?
今読んだけど挫折した
前も同じように挫折したのを思い出したw
てか、シンジの綾波に対する態度でかなりイライラしてしまったよ…いくらなんでもかわいそすぎるだろorz
あんなイタモノ読みたいやつなんているわけないだろ
どうせ期待してるような書き込みは自演
絶対投下すんなよ!ほかでやれ
やっぱりイタモノ専用スレ作るべきかな
>>574 そんな事ないさ
これ以上投下すれ増やすなよw
一応落ちLAS投下すれと、分けてあるのに
SDATのやつの続きマダ-?
イタいのもOKってスレだからねここは。
落ち着いて投下スレ分割させたのって、そういう理由じゃなかったっけ?
・ふぅ。
・キンモクセイ
・入れ替わり
この続き待ってる
他の男とはやっても、シンジはホントに好きだからやらせない、ってある意味ツンデレだよなw>N3
他の職人に迷惑だろが!!絶対投下すんなよ
そして分けた理由を作ったのがN3爆弾だっていう
別に俺はイタモノ大歓迎派なんだけど
ぶっちゃけ総合はN3用に立てたスレだしw
オレもここでは止めて欲しい
どうしても投下したいなら違うスレでもたててやれば?
また荒れそうだw
つか、鳥か投下の文体見てみないと信じられん
N3が投下すると他の作品が読めなくなりそうなんでできれば余所で頼む
長くなりそうだしな
それかノンジャンルスレに投下してもらう?あそこ今あんま投下きてないし
読みたい人はもちろん読みたいけど、イタいの苦手だけどどうしても無理だけど、最近投下多いからよく来る人もいるだろうし
N3さんもイタ専用あればそこがいいとか書いてたし、このスレに投下することに固執してないだろうし
ソウナンダヨナ
イタサよりも独占されそうなのが嫌
落ちLASに移ったら?
ここはN3投下に相応しく条件ゆるゆるのスレだよ?
>あなたがLASと思えば、それはLASなのです。
あーそれもそうだな。
荒れて他の作品が読めなくなるのはイヤだし
左様。
確かに条件ゆるいんだけど、
ほとんど専用スレになるのは見えてるので、
条件ゆるいとかきついとかは関係なくなるような。
てぇか、N3は最期まで完成させてから、短期間に投下してくれないか?
4年もほっぽっといて、またあんなgdgdな進行と展開やられると目障り。
だって11ってめちゃくちゃ長編じゃん
確実に占領されるよ
>>589 あーノンジャンルがあったか。そこがいいかもしんないね
↓誘導
普段は駄作でも寛容なスレ住民も、N3だけには狭量だなw
>>596 そうなんだよ。
イタい云々より大長編なのがちょっとねw他の人が投下し辛くなるかもしんないし。
601 :
537:2009/08/24(月) 00:18:02 ID:???
投下しようと思って来たんだけど出直したほうがいいですかね?
ここは過度なエロ以外なんでもありなスレだろ
痛いからヤメロとか何いってるんだ
過疎スレへGO
長編専用スレもあるでよ
607 :
537:2009/08/24(月) 00:21:36 ID:???
申し訳ないんですがかなり長文&未完です…
結局投下前にめちゃくちゃレス消費しちまったな
こんな状況で投下したらどーなるやら
>>607 大長編は過疎スレのがいいのかもしれない
俺は楽しみだから見に行きますんで!
いまさらオマエの投下するスレなんてねーよ!何年も放置しといて何寝ぼけたこといってんだ?
というか、4年も経った今になって再投下って何やねんw
スレ独占が目的かね
てぇか、メモ帳にでも書いて、そのままHDDに保存しとけw>N3
ここでいいだろ
嫌なやつはNGにでもしてろ
>>613 1.破を見て創作欲が涌いた
2.イタモノのウケが思ったより良さそうなので(ry
今いる人間だけでどうこうと言うのもちょっと・・・
>>607 1日ぐらい待って見ない?
結局また追い出すことになりそうだからホント申し訳ないけど
投下制限とか設けたら?
日数開けるとか
>>616 だから他が投下しにくくなると何度言えばry
スレ違いじゃなきゃ、作品投下は非難されることじゃない。
同様に、作品についての評価・感想も自由であるべき。
>>620 まずその理屈が理解できない
別にスレを占領するわけでもないだろ
>>619 逆だ。
イタモノ長編をだらだらと間延びして投下するから荒れるんだ。
>>622 基本的には同意。
投下してみて、様子見るのが一番だと思う。
もうこんな口論してる時点で他が投下しにくい空気になってるわけだが
ifでも来ないかな
空気クラッシャーだもんな
629 :
537:2009/08/24(月) 00:37:07 ID:???
明日また覗きます
前回投下した量の倍は超えてるんで他の職人に迷惑かけないようにしたいとは思うんですが…
構想は締め意外は固まってます
どうせわめいているのは大好きだスレと同じ新参だろ
昔からいたやつらはN3爆弾が来たからってグチグチ言うわけねぇ
むしろ喜ぶはずだ
>締め以外
待てwwwwwwwww
わろたw
書き手は、どこかに投下出来て感想もらえればいいだろうし
読み手は、読んで感想書ける環境ならいいだろうし
他の書き手は、長編の合間に投下するの少し気を使う人間もいるし(特に11は感想が多くなるしね)
イタいの読みたく人は、スルーしやすい場所に投下してほしいだろうし
やっぱノンジャンルスレがいいんじゃないかな
ノンジャンルって今だれも投下してないんかな?前回の投下の倍ってかなりの量だぞ。独占の確率高すぎだろ
いくら過疎ってるからって
相手先の都合も聞かず移動させるのはどうなんだよ
それに移動先でLASスレでやれって言われたらどうするんだ?
あとLASスレ以外に行ったらLASじゃなくなっても文句言えないぞ
正直言って『今更?』って感じだもんな…
もうずっと放置だと思ってたから嬉しいけどなんかね…
>>636 ここがN3の隔離スレみたいなもんだったしね
他スレなら荒れてもいい、みたいな考えはダメだし、やっぱここしかないんじゃね?
だめな人は漏れなくNGワードだな
他作品が読めなくなる・・・なんてことないよね?
どうしても読みたいのは俺だけなのか?専用スレたてるかどっかに投稿とかできないのかね?
>>636 ノンジャンルスレに、LAS投下してLASスレでやれっていうのもおかしくない?ノンジャンルだし
あとLASになるならないは、作家さん次第だから仕方ないでしょ
まあここに投下しようとしてるんだし、LASだと思うけど
でも前回の倍以上てorz
スレまるまる一つ消化してもおわるのか?
>>639 俺も読みたいよ。
ただ他の人が投下しづらい環境になるかもしれないからねw
まあもしそうなっても、落ちLASあるからそっちに投下すればいいのかもしれないな
いっそサイト作れば
独占するかもしれないって…
N3はちゃんと落とす前に落としていいか聞いてるじゃん
これからもそうしてもらえばいいだけだよ
んでダメな時は理由つけてダメって言いましょ
ダメっていうのもまたヒドいなwwwwww
前回の倍くらい量があるってことは、四年間書き溜めてたのか?
それとも破公開から怒涛の勢いで書き上げたのか?
どっちにしろ凄いな
wktkしてたのに今日はもう読めないのか…
いくつレス消費したら気が済むんだ
全ての元凶は574だな
きっとこいつが自演までして
追い出そうとしてる
>>644 作品はイタいけど、作家さんとしては良識あるからね。
自分もここでいいと思いますよ。
最近投下してないけど、自分はこれからは落ちLASメインで投下しよっかな?と思います。
11は大好きだけど、話の雰囲気が独特だから、合間にほのぼの系落としたら邪魔になりそうですし。
しかし前回よりも多いってすごいな〜w
>>651 同意
今こそ2つ投下スレがあるのを利用する時だな
むこう若干過疎気味だしちょうどいい
574さえ来なければ今ごろ読めてたのにな
話の長さに規制つけたほうがいんじゃね?
正直、専用スレ立てて投下ってほうがいいと思うが・・・
この空気は投下しにくいな
明日にしよう
ここに投下か、他スレに移動か、専スレ作るか、サイト立ち上げる、のどれか
いいよ
投下して空気を変えてくれ
専スレに一票
正直別格すぎる
ifが栽培マンだとしたらN3は間違いなくフリーザ最終形態
それくらい別格w
作者一人のために専スレなんて作れるわけないだろ
N3に文句言ってる人たちは自分がスレの空気してるの分かってる?
>空気してる
>>664 いまだかつてないバカシンジスレ2代目?は一人の職人が投下するスレじゃなかったっけ?
>>667 そうだよね
あのスレは実に面白かった
自分はノンジャンルスレに一票。
あそこは何気にLASの投下があったし
今ある日記すれも専スレじゃね?
イタモノだからとかより、長すぎるのがね…
いませっかくいい感じにスレが盛り上がってるのに、これで他の作者さんたちが投下しにくい雰囲気になってしまうのは非常に困るよ…
LAS小説総合投下スレ20【N3】を先に作って、そちらに投下してもらえば?
いい感じに余ったら次スレにも使えるし
>>671 アリだね。ラストまで行って余った時のことも考えたら、それが一番いいかも
もともと11は総合スレの作品だし、他のスレに行ってもらうより、いいかも
他の作者と同様に普通に受け入れてやれよ…グチグチ読者が言うから今日読めそうだったのに
読めなくなったんだぞ本当ふざけんな
餌与えられる側なんだから投下されるものに文句言うな
最近色々投下されるようになったからって贅沢だぞ
大体このスレが出来た経緯からすればここがN3の専用スレだろ
>>671に賛成
まぁラストの構想終わってないらしいから、「11」が完結するまでにはまだまだ時間がかかるんだろうけどね
破以降LASを嫌っている人達が板で暴れているから
下手にスレ立ててそいつ等に目をつけられるのが怖い
>>676 ここの次スレという扱いにもなるし大丈夫でしょ
N3専用LASスレ!ってわけじゃなし
理想郷らへんに投稿してもらうのは駄目なのかね?
>>671 賛成
最近投下多いし、大長編混ざるとごちゃごちゃしそうだからスッキリすると思うな
元々このスレの作品の続編だからノンジャンルとか長編スレに投下するのは、ちょっとおかしいしね
かといってN3専用までいくのはちょっとデカいし、ここの次スレという扱いなら大丈夫かと思う
>>670 だぁな
現在進行中で言うとキンモクセイさんの行き場が無くなる
落ちスレに行ける人はいいがさ
つぅことで
>>671に俺も賛成かな
そんな特別扱いするほどの職人なのか?>>N3
別に占領されないと思うんだが…
684 :
ふぅ。:2009/08/24(月) 07:37:50 ID:???
キンモクセイさんのがおもしろすぎてさぼってました…。
とりあえず今日は始業式なんで帰ってからでも続きを練ります!
待ってる方がいるなんて感激です!
では行ってまいります。
長編→他の作者が投下しづらい
この考え方が分からない
投下前にここまで荒れるって時点でまぁアレだろうがさ
N3は何も悪くないと思う
読む側が投下しづらくなると勝手に決めつけてるのが悪い
作者自身が投下しづらいって言うなら分かるんだけどさ…
N3は悪くないのは同意。ていうか誰もN3に愚痴ってるわけじゃないし(一部のバカ除き)
>>537 >>540 ただこういう書き込みしてる時点で、今のスレの雰囲気の中にイタ長編投下すること心配してるみたいだしね(いい奴だ)
俺も
>>571でいいと思う
もうスレの雰囲気とか気にせずN3には思いっきりやってもらいたいしw
このスレが終わったらどうするのさ?
確かにレイの扱いには心痛むからな
LAS関連のスレに投下したほうがいいよね
俺は
>>571に賛成だけど
どうするかはN3次第
さっきから
>>571と間違えてるのはわざとなのか?w
このスレが1000まで行くor容量オーバー
になった時に先行して次スレで書いてるN3爆弾が終わって無かったらどうするんだ?
それこそ次スレに他の作者が投下しづらいぞ
4年前はいざしらず、今となっては、長編がスレに投稿されるという状況はあまり普通とは言えないからなぁ。
今は、携帯からでも小説書けるんだから、そういうのは普通は自分でサイト作って掲載するもんだろう。
ここにリンクだけ貼ってくれれば十分だよ。
このスレの運用も、短編が短期間で集中して投稿される形態に移行して久しいし、
読む側としては今後もそれが続く方がうれしい。
どんな作品であれ、読者がいる限り、発表の機会はあるべきだろうとは思うが、
一つの作品の投稿機会を確保することにこだわって、
他の利便性まで失ってしまうことを正当化できるのか、っていう疑問は感じるね。
>読む側
自分の意見を全体の意見みたいに言わないで欲しい
>>694 前回の倍とか言ってるから確実そうなるだろうね
専用スレでも適当に作って投下したほうが無難なんじゃねぇのか?
見たことないからチョット
>>691確認してみたけど量が量だぞ、コレ
これの倍はあるって言ってんだし流石にこれは独占状態にならない、とは言えないだろ
てかこのまま投下なんてしたら他の作家が入る余地あるんか?
>>694の言う事態も懸念されるし
>>698 さすがに全部いっぺんに投下するんだったら
別スレもありだが
キンモクセイさんとか他の作者がやってるように
細切れに10レスくらいの投下だったら問題ないだろ
投下前からここまで荒れるってよほどの超大作なんだろうな
>>699 そこんとこどうなんだろうな
一気に投下か分けて投下か
問題は誰がスレを建てるか
>>703 立てることは立てられるけど、N3さんに確認とらんとなぁ
早く解決して元の流れに戻るといいなぁ〜
N3だけ特別扱いするなよ
新スレをもう立てるとか正気の沙汰じゃない
709 :
ふぅ。:2009/08/24(月) 14:44:20 ID:???
「じゃ、後片付けしてくるから。」
「うん」
「んんー…、あれ?寝ちゃってたの?」
午前三時。
「もうひと眠りするかぁ。」
と言ったものの、あれだけ早く寝てしまったので眠ろうにも眠れない。
眠ってるシンジの顔をベッドの上から見つめていた。
「…まだあるんじゃん、あたししか知らない顔。」
触ったら、壊れてしまいそう。
もう、この気持ちを認めてしまうしかなかった。
告白でもすれば、付き合ってくれそう。
でもそれはいや。絶対にいや。
あたしだけが依存してるみたいで。
もしかしたら、好きになっちゃったかもしれない。
けど、あたしを本気で好きでいてくれないシンジなんて、大っきらい。
>>708 じゃあ問題ない投下量教えてそれをまもってもらおうよ
投下もされてないのにいきなり隔離前提の話は作者に対して酷い
特別扱いなんかしなくていいだろ
それが駄目なら自サイト作るか投稿するかしかないね
N3マダー?
>>536 書き始めて、LASじゃ無い気がして来たので、取りあえずLASエンドで閉めました。
マリとアスカの関係は実は興味があるんですがそれこそここでは違うので
あえて書きませんでした。別の小説スレッドに落とすネタを今練っている所です。
>>715 別のLASスレですか?
それか別のカプとか?
>>715 じゃあ次のはLASじゃないってことかな?
だったら残念だけど、頑張ってください
そしてまたLAS書いてくれたら超嬉しいです
>>716 アスカ×マリスレか、ノンジャンルかな?
良く考えたら、俺はアスカが好きなんであってLASは
二の次って気がしてきました。
アスカに幸せになって欲しいから、LASって言う事なんですよね。
別にそれは言わなくていい
ふ〜ん。まあ仕方ないね。
とりあえず乙でした。
LASは二の次でしたとかLASスレでよく言えたなw
感想書いた奴とか楽しみにしてた奴の身になれよ…
まあでも作家さんは神様です。また別スレでも頑張って
乙
結局N3の件は?
ここでおk?
>>721 二の次って言う言い方は誤解をうけますよね。
個人的には、カブとは誰かを幸せにする方法論だと思って居ます。
それで、アスカを幸せにする為にはLASしかないと言うのが俺の
見解です。
式波惣流スレにあった旧新アスカが混在するSSで、
惣流が主人公なのに式波とシンジがカップルになったっぽいんだ。
LASなんだが微妙にLASでないような気がしてすげー複雑な気分。
仲人プレイっぽいのが救いだけど、厳密にはイタモノ(悲恋系?)に属するのかな?
RemembranceだってLASだってことになってるんだからそのくらいインジャネーノ
>カブと
おばあちゃんが言っていた…男にはやってはいけないことが2つある
女の子を泣かせることと、食べ物を粗末にすることだ
728 :
537:2009/08/24(月) 20:32:57 ID:???
今回は大丈夫かと思ってたんですが投下すると荒れそうですね
少し時間がかかると思いますが、11の他にも書きためてるのが有るんでブログかなんかで公開することにしようかと考えてます。
今回は職人様&読者様お騒がせ致しまして申し訳ありませんでした。
>>728 スレ立てるから気にしなくて大丈夫ですよ?
なんなら投下してもらえた方が嬉しいですし
>>728 おお帰ってきてくれたか!お騒がせなんてとんでもないですよ。
投下スレ20立てますから、出来れば投下してもらいたいです。2ちゃんの方が感想も書きやすいです。
731 :
537:2009/08/24(月) 20:41:21 ID:???
スレたてていただけるなら、私としてはそのほうがありがたいです。
お願いしてもよろしいでょうか?
>>727 俺のおばあちゃんはこうも言ってた
「人が歩むのは人の道、その道を拓くのは天の道」
「絆とは決して断ち切る事のできない深い繋がり…たとえ離れていても心と心が繋がっている」
「たとえ世界を敵に回しても守るべきものがある」
「美味しい物を食べるのは楽しいが、一番楽しいのはそれを待っている間だ」
「人は人を愛すると弱くなる…けど、恥ずかしがることはない。それは本当の弱さじゃないから」
ってな
やめろボケブログで細々やってりゃいいじゃね〜か
絶対たてるなよ
どうしても投下したけりゃここにしろ!あらしてやるから
通訳プリーズ
738 :
537:2009/08/24(月) 20:54:31 ID:???
スレタイはなんでもいいのでお任せします。
739 :
732:2009/08/24(月) 20:54:38 ID:???
規制で立てれなかった…orz
誰か頼んます
743 :
732:2009/08/24(月) 21:02:05 ID:???
専スレみたいなの立てたのね。乙です。
じゃあこちらもマターリ投下待ちますか。
やっとこさ落ぢづくな゛
746 :
if :2009/08/24(月) 21:36:13 ID:???
「空気クラッシャー」とか「栽培マン」とか言ってるけど、否定はせんよ
すいませんでした
よし、さっそく空気クラッシュしてくれ
してるんだよ
「空気をクラッシュする」と言ったら既にそれは実行されているんだよ
うおっ
今夜投下しようかと思ってたけど、やっても大丈夫?
お願いしまつ
おk
たぶんまだだけど、そのうち投下します
あっちは使っちゃだめなんだよね?
ダメ。釣りだったぽいので次スレに使いましょうか
あれだけスレ消費させといて結局釣りとか
悪質ってレベル越えてるw
755 :
674:2009/08/25(火) 00:13:04 ID:???
ばんわ
なんとか完結させたくて頑張っております
スピード重視で荒いと思うけど、すんません
よく考えたらサファリパークしか行ったことなかったわ!
・学園異性系イタモノ注意
・明るめ・・・?え?
NGワード キンモクセイ
髪を下ろして鏡の前で微笑む自分の姿は、いつもより大人っぽく見える気がした。
肩からさらりと髪が流れ落ちる。あたしの髪は今日も艶めいていて、相変わらず綺麗だと思う。
自分で言うなよ、なんて、またシンジにツッコまれそうだけど、事実は事実なんだからいいじゃない。
蜂蜜色に輝くこの髪は、ママではなくパパからもらったもの。
ママを捨てたパパだけど…、パパにもらったこの髪と青い瞳の色は自分でも嫌いじゃなかった。
サイドの髪を花の飾りのついたピンで止めて、最後に軽く色付きのリップを唇にひいた。
こんなもんかな?と、玄関にある鏡の前で一回転する。
クリームイエローのシフォンワンピースがふわりと蕾みを開くように舞った。
裾の短めのデニムジャケットを羽織って、足元にはキャメル色のブーツ。
赤い小さなポーチを肩にかけて、玄関の扉のスイッチに人差し指を近付ける。
…少し、甘すぎた格好かも知れない。コレじゃまるでデートに行くみたいじゃないの。
デート、と言う言葉にあたしは血の気が引いていくのを感じた。
何を考えてるんだろう、あたしは。いくら特別だろうと相手は友だちじゃない。
女を前面に押し出したような、こんなふわふわのワンピースを着る自分が急に汚らわしく感じて、あたしは慌てて翻った。
デニムパンツに着替えよう、と部屋へ戻るために一度履いたブーツに手をかける。
「んしょ、んしょ…」
なかなかブーツが脱げなくて、あくせくして。
「おはよう……って、なにしてんの?」
もたついている間に、シンジはすでにあたしの後ろに立っていた。
あたしはこの時ほど、自分がマヌケだと感じたことはない。
流れるように映り変わっていく、窓から見える景色。まるで映画のフィルムみたいだ。ビルばかり映したつまらないフィルム。
朝と言っても日曜日の電車の中に、平日のような混雑さはない。
他人の匂いの混じり合う電車独特の空気があまり好きじゃないので、ありがたかった。
出勤前のサラリーマンや高校生たちであふれ返る車内の臭いなんて、想像するだけで気持ち悪い。
幸いにも、休日らしく子供連れの家族とか、女の子同士のグループやカップルばかりで。
さすがに座席は空いてなかったので、あたしたちは仕方なく扉の前に寄りかかっていた。
ちらり、と横目で隣に立つシンジを見る。
シンジの着ているアーガイル柄の黒いカーディガン、前にも見たことあるやつだ。
カーマインの細身のパンツとの組み合わせはなかなか良いと思う。
そんなことより問題なのは、さっきからのシンジの態度だった。
両腕を胸の前で組んで、ずっと景色ばかりを見ている。
マンションを出たときから口数が少なくて、ぶっきらぼうで、なんだか変だ。
どこか億劫な眼差しを外に向けて、あたしを見ようとしない。
なんなのよ、一体…。
あたしはシンジから視線を外してため息をついた。
そのまま自分の服に視線を移してまたひとつ、ため息をつく。
結局着て来てしまった、シフォンのワンピース。可愛いと思っていた裾のフリルが今は恨めしい。
唯一利点があるとすれば、ふんわりとしたフォルムが身体の線を隠してくれて、
あたしを舐めまわすような視線が減ることだろうか。向かいの斜め右に座る若い男の人のように、単純に顔を赤くするだけで。
例外として、左側の優先席に座るハゲオヤジのようにスケベな視線を寄こすやつもいる。
睨み付けてやると、オヤジは慌てて目を逸らした。これだから電車は嫌いなのよ。
シンジと言えば、相変わらず窓の外を見ている。
その澄ました横っ面を叩きたくなったけど、さすがに公衆の面前では憚られるので、
ブーツの底でその足を踏んづけてやることにした。
「い゛っ…!」
踏まれた足を抱えこんで、シンジが呻く。
「なにすっ…」
「やっとあたしを見たわね」
シンジのマヌケな顔に向けてにっと笑う。
シンジがはっと目を見開かせて、ごめんと言った。
「これからふたりで遊びに行こうっていうのに、やめなさいよそんな態度。つまんないじゃん」
「ごめん…」
そう二回謝ったそばから、また目を逸らす。今度は俯いて。
あんたいい加減にしなさいよ、と叫びかけて、その前にシンジがぼそりと呟いた。
「…今日のアスカ…」
「なによ」
シンジが顔上げる。
「今日のアスカ、クラゲみたいだ」
もう一度、ブーツの底でぐりぐりと踏みつけてやった。
空は日に日に遠くなっていく。
おとといの雨の跡なんて微塵も感じさせないほどに、今日の天気は晴れ渡っていた。
雲は薄く、筋を描くように浮かんでいる。今日のあたしにはそれがだけが残念。
ふわふわとしたクラゲのような丸い雲が浮かぶ、初夏の空なら……もしかしたら、あたし飛べたかも知れないのに。
だって、あたしはクラゲ。ぷかぷか浮かぶクラゲ。
「ねぇ、シンジ。クラゲゾーンはどこ?」
「…すみません、動物園にはないです」
「ざんねーん。仲間に会いたかったのになあ!」
ペンギンはいるのに、クラゲがいないって不公平よね!
柵の下で、ペンギンたちもクエクエッって鳴いて同意してる。
そうよね。あんたたちも海の仲間が欲しいわよね。
「ごめんって…!クラゲだなんて、ほんの冗談だったんだよ」
ペンギンの柵から乗り出すように、シンジがあたしをのぞき込んでくる。
そんな必死にならなくても、別にそれほどあたしは怒ってない。
ふわふわクラゲのワンピース、なんて素敵なんだろう。女の子が、とてもデートに着ていくような服じゃないわ。
おかげで肩の荷が下りて、気が楽になった。
……もう二度と着ないけど。
「その、…戸惑って、つい、冗談言っちゃったんだよ!…だってアスカ、いつもと感じが違うから…」
「はぁ?なにがよ」
「……だから、その、可愛いって言ってんだよ!」
「はいはい、その手には何度も引っかからないわよ」
「ちがっ…」
図書室での一件は忘れていない。
シンジのからかいを軽く流して、動物園のパンフレットを開く。
「次は何を見・よ・う・か・なぁ〜」
「アスカ…」
せっかく来たんだから、楽しみましょ!
そう言って、何か言いたそうにまごつくシンジの腕を引っ張って、あたしは歩きだした。
あたしの少し後ろを歩くシンジを引きずるようにして、ずんずん先へ進む。
「次はキリンを見るわよっ」
「はぁ…りょーかい」
日曜の動物園は家族連れが多くて、はじけるような子どもたちのはしゃぎ声に溢れていた。
けれど、遊園地のような騒がしさやせわしさはなくて、動物たちに合わせて時間はゆっくりと流れていく。
ただ動物を見ているだけなのに、不思議に楽しくて。
あたしは子どものようにはしゃぎまわった。
「シンジ!見て!あいつシンジにそっくり!」
指差した先には、ぼけっとしたマヌケ顔の毛むくじゃらが何匹も。
水辺でぼーっとしたままさっきから何も動かない。
「どこが似てるんだよ、カピバラじゃないか!」
どうやらこいつらが、カピバラとか言う世界最大のネズミらしい。
何をもってネズミとされているのかは謎だけど、くりくりとした大きな黒い瞳はとても可愛い。小さいころのシンジみたいね。
カピバラに似てると言われるのが不満らしくて、シンジは眉を寄せてむっつりとしている。
「あ…でも、泳ぎが得意って書いてあるわ。そこはシンジと違うわね」
「悪かったな、カナヅチで」
「ほら見て!気持ちよさそうに目を瞑る表情なんて、ほんとマヌケで笑えるわ」
くすくすと転がるようにあたしが笑うと、シンジはさらにむくれた。
お返しとばかりにニホンザルのゾーンで、あの子猿アスカに似てるねって、
キーキーと人一倍(猿一倍?)うるさい猿を指差してシンジは悪戯っぽく笑った。
そんな風にからかったって、今日のあたしは動じないわよ?
だって、おサルじゃなくてクラゲだもの。
残念ながら、おサルのマスコットはうちのベランダで日向ぼっこしてるのよ。雨でびしょびしょに濡れちゃったから。
そう言ってやったら、シンジはつまらなさそうに口を尖らせた。
ゾウやキリンやチンパンジーみたいに、サービス精神旺盛に子どもたちの相手をする動物たちもいれば、
ライオンなんかはのべっとしてお腹を上に向けてダレているだけ。
集団でお昼寝する姿なんてとても百獣の王に見えなくて、これじゃ百睡の王ねと、シンジと笑い合った。
「あと、なに見てないっけ?」
園内のレストランでお昼をとっている時に、シンジが牛丼を頬張りながら聞いてきた。
あたしは、シンジに奢ってもらったミートスパゲティのフォークを置いて、パンフレットを取り出す。
それほど大きな動物園ではなかったので、もうほとんど見てまわってしまっていた。
「えっと…パラダイスゾーンって、珍しい南国の鳥とか……あと、意外にもトラを見てないわ」
「トラ?メジャーなの忘れてたね」
パラダイスゾーンはレストランのすぐ近くにあった。背の高いガラス張りの大きな建物の中に、
まるでジャングルのように鬱蒼と木が繁っている。
中は温室になっていて、デニムのジャケットが少し煩わしく感じた。
「わあ…!綺麗!」
ほんとうに綺麗だった。赤や白、黄色に青色、色とりどりの鳥たち。
すごく尾の長いのもいれば、バナナのような長いくちばしを持っていたり、
自分の体と同じくらいに大きな、そしてカラフルなくちばしを持っている鳥もいた。
シンジも目を輝かせて、そんな鳥たちを見ていた。
「パラダイスっていうの、分かるよね。本当に楽園みたいだ」
シンジの言葉に、あたしも頷く。
「見て見て!フラミンゴもいるわよ!」
道なりに進んだ先の大きな池に、サーモンピンクに色づいたたくさんのフラミンゴたちが群れをなして立っている。
実物で見るフラミンゴは思ったよりも大きくて、あたしと同じくらいの身長はあった。
棒みたいなあんな細い足で、どうして大きな体を支えてられるのかが不思議でたまらない。
「綺麗ね…でも、フラミンゴって渡り鳥じゃなかったっけ?」
テレビの動物番組で、そんなことを言っていた気がする。
湖から湖へと自由に旅するフラミンゴ。でもその旅の理由はまだよく分かっていないと、その番組の学者が言っていた。
美しい羽を広げて、群れをなして飛ぶ姿はきっと美しいだろうな。
「…ここの鳥たちや動物たちは、どこか違うところへ行きたいとか思わないのかしら」
「今のままで彼らが幸せなら、それでいいじゃないか」
どこへも行く必要なんてないよ。
そう呟くシンジの目は、どこか遠くを見つめているようだった。
「シンジ君っ!?」
若い、女の声だった。聞き覚えのある、少し高めの可愛らしい声。
突然呼ばれたことにびっくりして、あたしたちは慌てて振り返った。
「あーやっぱり!!シンジ君だ!ひっさしぶりだねぇ♪」
あたしの胸がズキリと痛む。
あの時と変わらない、子犬のような人なつこい笑顔の。あの女。
「マナっ!?」
シンジが驚きに声を高くした。
霧島さんがシンジに駆け寄って、後ろで腕を組みながら媚びるように覗きこむ。
「背、高くなったねー。見違えちゃった!」
「どうしたんだよ!?こんなところで!?」
「ん?私もデート」
後ろに、背の高い男の人の姿が見えた。浅黒い肌をした、体格のいい、野生的な感じのする人だ。
シンジとはまるで正反対の。
「ところで、元気にしてる?」
「まぁまぁだよ」
見れば分かるじゃない、とあたしは心の中で愚痴をこぼす。
彼氏が後ろにいるっていうのに、どうしてこんな風に違う男と親しく話せるんだろう。
「卒業以来だから、一年半ぶりだねっ。シンジ君、違う高校に進学しちゃったからさ」
「マナも元気そうでよかったよ」
「元気だよぉ、私の取り得だもん。シンジ君、ここにはよく来るの?」
「ううん、初めてだよ」
あたしはなんとなく疎外感を感じて、話し込むふたりに背を向けた。霧島さんがあたしに話しかけないのは仕方ない。
中学時代、仲の良い関係でもなかったし。それに、今さら親しく話しかけられたって困る。
ぼんやりと、フラミンゴたちを見つめる。その中の二匹が、仲の良さそうにくちばしをつつき合っていた。
「あたしはよく来るんだよ。動物、好きなの知ってるでしょ?今日は部活も休みだから久しぶりに…」
「それよりさ、ムサシ君が怒っちゃうよ」
シンジの声に拒絶の色を感じて、あたしは驚いて思わずシンジを見る。
冷たい色だった。怒りなのか無関心なのか、あたしには分からない。
「あ…そうだね、ごめん」
霧島さんの表情が、あの笑顔から急に真顔に変わった。あたしをちらり、と見る。
「やっぱり、あなたたち付き合ったんだね」
「そうだよ」
…なんですって!?
すぐさま、そう答えたシンジの言葉にあたしは動揺した。
胸の痛みと、どきどきとがいっぺんに来て、あたしが戸惑っている間に。
霧島さんの方が先に、口を開く。
「…そっか。良かったね、シンジ君。じゃあねっ、シンジ君に惣流さんっ」
最後に調子を取り戻しながらそう言葉を残して、彼氏の待つ方へと行ってしまった。
ふたりで腕を組んで、寄り添うようにして、その後ろ姿は気がつけば小さくなっていた。
「男のつまらない意地に巻き込んで、ごめん」
「…サイテイね。冗談でもやめてよ、そんなウソ」
「…ごめん」
つまらない意地。男の意地。
元カノの前で見栄を張りたいからって、あたしを利用するのはやめてよ。
あたしの心をこれ以上かき乱すのはやめてよ。
ずっと昔に諦めてるのに、忘れたふりをしてるのに。
あたしは、あんたと友だちでいたいのに。
少しでも嬉しいと感じている自分が、たまらなく嫌だった。
「ねえ、シンジ。好きだったひとに、今彼氏がいるってどんな気持ち?」
「別に。好きなひとがいるから、関係ないよ」
ほんと言うと、少しフクザツだけど。
そう言って、シンジはふっと苦笑いした。
好きなひと、シンジに好きなひと…。3年前のあの時と同じように、シンジに告げられた。
でも大丈夫。今のあたしはちゃんと笑える。
この状況で投下する厚顔振りがエライw
キター!支援
それなのに日に日に弱っていって…最後には死んでしまった。
「猫にね、牛乳はあげちゃだめだったのよ。消化不良を起こして、下痢になっちゃうから」
ミルクを飲んだあと、子猫はいつも下痢をしていた。
「アントンは…きっと、脱水を起こして死んじゃったのね。あたしたちが毎日毎日、少しずつアントンを殺していたのよ」
シンジに慰められながら、あたしはわんわん泣いた。自分が殺してしまったことも知らないで。
「知らなかったんだから仕方ないよ、僕たち子どもだったんだから…」
知らないって残酷よね。
知らないことで相手を傷つけて、時には殺してしまう。
そこに例え、優しさや愛情があっても。
とりあえずいじょう。
すんません。はやく終わらせたくて。
>>524 男女間の友情はありえるのか?ってのは疑問でもあったり希望でもあったり。
いちお、モデルとなる友だちがおります。その子らは仲いいけど。
恋愛ってむつかしいね!
ちなみに、温室にいるフラミンゴは渡り鳥じゃないヤツだよ!
「あんた、好きなひとが出来たんだ」
フラミンゴの前の柵に体をもたれかけて、あたしは笑った。心から歓迎するよに。
「ずっと…いるよ」
遠くを見つめて。
「だから、好きなひとに恋人がいる苦しみなら、よく分かる」
シンジの言葉に、あたしは小さく息をのんだ。
あたしと、一緒だ。
「あたしもよく分かるよ、シンジ」
シンジは瞳を伏せて、そっかと呟いた。
檻の中のトラは、さっきから左へ行ったり右へ行ったり。
あたしたちから視線は外さないで、こっちに顔を向けたまま何度も往復してる。
「変なの。これって警戒してるの?」
とあたしが聞くと、シンジは、
「歓迎してるのかもよ」
と返した。
あたしがあんまり美人だから、トラも嬉しがってるのね。
あたしがそう言ったら。シンジがいつも通り、自分で言うなよと返してくれる。
いいのよ。自分で言ったって。
自分の魅力を自覚しない人は、それだけ周りを不幸にするのよ。あんたみたいにさ。
「ねえシンジ、このトラ見てたら…あの子猫のこと思い出さない?」
「アントンのこと?」
幼いころにふたりで拾った、キジトラ模様の小さな子猫。
大人たちには内緒で、ふたりで育てようってあたしが言ったの。
大きなダンボールにその子を入れて、近所の廃材置き場に隠して。
学校の帰りいつも寄っては三人で遊んでた。
こっそり持って帰った給食のミルクをふたりであげて、
一生懸命ミルクを飲む子猫を見ながら、はやく大きくならないかなぁってふたりでわくわくしてた。
たくさんたくさんミルクを飲む子猫。
あんなに元気だったのに。あんなに可愛がってあげたのに。
768 :
764:2009/08/25(火) 00:32:51 ID:???
すみません…ぬけてました…
>>762の次は
>>766です
ほんとすみません…
あと、完結すると思ってたかたすみません…
クライマックスまだですすみません…
イタモノってその雰囲気だけが勝負なんだから、イタイ描写を織り交ぜないと見かけ倒れw
>>768 GJ!二人の微妙な距離感や心のすれ違いが切ない
キンモクセイきたか!相変わらずGJです
あぁぁキンモクセイさん常々GJ!
もうもどかしすぎるww
775 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/25(火) 03:09:20 ID:FTF+L7ej
あ、投下するんだ
よかったよかった
キンモクセイきとるーーー!!
毎度GJすぎる!そして切なすぎる。
続き楽しみに待ってます!
gj!
ちょうど秋に差し掛かったいま、キンモクセイさんの文が余計に切なさを感じます!
アスカが報われれば良いなぁ。
やっぱこのスレはこうじゃなくちゃな。GJです
>>777 ウチはまだまだ夏真っ盛りだわw
779 :
ふぅ。:2009/08/25(火) 17:50:54 ID:???
そんなことを考えてる間も、ヤツはすやすや寝てる。
なんだかばからしくなってきた。
「…早く寝よう」
「アスカー、シンジくーん!ほら起きて!!」
「ママ!」
「…おばさん?」
「もぉ〜、二人で仲良く寝てるもんだから起こしたくなかったけど…遅刻、しちゃうわよ?」
「そっかぁ。もう朝なんだね。そういやアスカもう大丈夫なの?」
「ぴんぴんしてる!けど一応熱計ってなかったら学校行く」
「アスカ、風邪ひいてたの!?なんでママに連絡しないのよ!」
「忙しいって言ってたんだもん。それに…昨日はシンジが来てくれたしね」
「もう、子供が親に変な気を使わなくていいのよ!
てっきり昨日は二人で…」
「もう!変なこと言わなくていいのよ!!」
「ふふ、照れなくてもいいじゃない。朝ご飯、作ったから食べてね。ほら、シンジくんも。」
「ち、違うわよ!!」
「あっはい…、ありがとうございます」
780 :
ふぅ。:2009/08/25(火) 17:52:30 ID:???
「ママぁ、あたし牛乳やだぁ」
「だめだよアスカ、ちゃんと飲まないと身長伸びないよ。」
「あんたに言われたくないわよ!ちびのくせに!」
「…シンジくん、昨日はありがとうねぇ。
あんなこと言ってるけど、本当はアスカはシンジくん大好きなのよ。」
「そんなことないと思いますけど…」
「そうよ!ママ?いい加減なこと言わないで!
あたしはもぉーっとおっとこらしい人が好きなんだから!」
「あらぁ、こんなにアスカの面倒みてくれる人いないわよ〜。」
「違うわよ、あたしがシンジの面倒見てやってるんだから!」
「ほ、ほらぁ!早く学校行かないと…」
「あんた、教科書とか家じゃないの?」
「ちゃんと持ってきといた。ここに来る前に時間割とかも合わせといたし。」
「そっか。」
「じゃ、いってきまーす!」
「おばさん、ごちそうさまでした!」
「はいはーい、じゃ気をつけてねぇ〜」
781 :
ふぅ。:2009/08/25(火) 17:53:34 ID:???
「はぁ〜…眠たい」
「昨日眠れなかったの?」
そうよ、あんたのせいよ。
「そりゃあ、シンジが隣で寝てるなんて気持ち悪くて寝れないわよぉ〜
ずっと寝言で「アスカ、アスカ…」って言ってるんですもの。」
「…えっ!?本当にそんなこと言ってた!?」
まさかコイツ、思い当たる夢でも見てたのかしら。
「今日さっそくヒカリとそれをネタにでもしようかしら!」
「ちょ、ちょっとやめてよアスカ!!」
「じゃあどんな夢見てたのか白状しなさい!」
「…いやだよ」
「なに!?じゃああんたが小学校三年生になってもおねしょしてたことも
みんなに言ってやるんだから!」
「そんなぁ…言っても蹴らないでよ?殴らないでよ?」
「…なに?」
「えーっと、たぶん、アスカがお嫁さんになった夢。」
「きもちわるーい!変なこと言ってないでさっさと行くわよバカシンジ!!」
782 :
ふぅ。:2009/08/25(火) 18:14:13 ID:???
そう言って走ると、風が思いっきり髪をかきあげた。
にやついてんの、ばれちゃう。
でもこんな自分も嫌いじゃない。
夢、どんなだったんだろう。
幸せだったのかなぁ?
こうやって、ずっとあたしを追いかけて。
今はまだ、なにも言わなくていいから。
783 :
ふぅ。:2009/08/25(火) 18:19:42 ID:???
とりあえず、塾行ってきます!
あと、関西出身です。
二学期制なんで始まるのちょっと早いんですよ。
読んでくれている方本当にありがとうございます!
では本当に行ってきます。
>>783 GJ!看病モノのほのぼのLASだね
会話の間に地の文をもうちょっと入れると描写がもっと深くなる気がする
>会話の間に地の文をもうちょっと入れると描写がもっと深くなる気がする
まあ、そうかもしれないけど、これはこういう作風なんでしょう。
今さら変えるのも変だろうし。
地の文ほとんど入らないのに名作ってことになってる作品だってあるわけで。
実際、3人以上の会話を会話文だけでつないでいくのって、けっこう技ですしね。
(まあ、技だからうまくいかないことももちろんあるでしょうけど、チャレンジしなけりゃうまくもならないですし。)
>とりあえず、塾行ってきます!
>あと、関西出身です。
>二学期制なんで始まるのちょっと早いんですよ。
これは書かなくてもいいだろ…どうして夏は誰も彼も聞いてもないのに(ry
GJです!2人とも可愛ええのぉ〜
ちなみにまだ続くんだよね?それか終わり?
788 :
名無し:2009/08/25(火) 19:30:17 ID:ZLcU98An
LAS大好きだけどアスカがシンジ君以外に抱かれるのは絶対に嫌!
絶対に嫌!
惣流アスカと碇シンジが幸せでありますように
あげんなよ
キンモクセイとふぅ。GJ!
あとは入れ替わりの投下待ちか・・・
791 :
if :2009/08/25(火) 22:38:33 ID:???
キンモクセイさん最高
お前は書き込んでる暇あったら35冊の小説さっさと全部読めよw
793 :
if :2009/08/25(火) 23:00:09 ID:???
+7冊
>>793 もうすぐ夏休み終わるんだし、早く宿題すませとけ
>>793 ワロタwww
なんでその面白い返し技がSSで出ないんだw
797 :
if :2009/08/25(火) 23:07:49 ID:???
すいません、ハートマン教官
↑よ。どうでもいいがSSを投下しる!
ifは「出来の悪い子程かわいい」の典型だなw
ずっと軒亜って人とifが同一人物だと思ってたw
801 :
674:2009/08/26(水) 08:37:23 ID:???
おはよう
軽くスレ独占状態ですみません
8月中に終わらせたくて、もうスピードだけでがりがり行ってます
プロット通りに進んでるのかよー分からん状態で…
たぶんもうすぐ終わります。
・異性系イタモノ注意
・異性絡みアリ!
・痛い?のかな?よーわからん
NGワード キンモクセイ
「碇」と書かれた表札に描かれた天使の絵と2〜3秒ほどにらめっこしてから、あたしは息を吐いた。
開閉ボタンを押すと、シュッという空気音を立てて玄関の扉が開く。
「おーはよっ!シンジ、準備出来た?」
名前を呼んだ相手ではなくて、奥から出てきたのはおばさんだった。
これはいつも通り。
「おはよう、アスカちゃん」
「おはようございますおばさん。シンジ、起きてる?」
「いつもいつもごめんなさいねぇ…」
おほほ、と口元に手をかざしてすまなさそうに笑って。
「シンジ!早くしなさい!」
そう叫ぶおばさんも、いつも通り。
わかってるよ!、と奥からシンジの声とともにバタバタと足音が聞こえてくる。
10年以上続く、このあわただしい早朝。
変わらない光景に呆れるけれど、ほっとする。
「おはよう、アスカ」
「Guten Morgen!シンジ!はやく行こっ」
今日の朝は特に寒い。
一面に広がる灰色の雲が、太陽を隠してしまっていた。
同時に、冷えた空気の中に湿っぽさを感じる。
「今日、雨降るかなぁ」
シンジが空を仰いで呟いた。
「天気予報は午後から晴れるって、そう言ってたわ」
そう言いながらも、あたしも一応傘は持ってきていた。
あのお気に入りの赤い花柄の傘。
「テレビと天気予報だけは信じるなって、父さんが…。ま、いいか。傘はあるし」
ほら、と自分の自転車のハンドルにかけてある透明傘を指して、シンジが言った。
「傘さし運転は違法よ」
「どうせ乗らないよ」
その言葉の通りで。
今だって自転車があるのに、シンジは乗っていない。
あたしが歩く隣で、自転車を引きながら一緒に歩いているだけだ。
たまのたまに、ふたり乗りで通学する日もあるけど。
もちろん、先生にバレないように校門の手前で降りるようにしてる。
「昨日、楽しかったわね」
動物園を出たあとに、時間が余ったからふたりでカラオケに行って、そのあとご飯を食べて。
あの女と会ってからは陰鬱な感情が尾を引いていたけど、そういう感情を誤魔化すのには慣れてる。
それに動物園自体はすごく新鮮で楽しかった。
シンジがずっと一緒だったってのもあるし、
生で動物を見るのがあんなに面白いなんて思わなかった。
動物園が初めてってわけじゃないけど、
前に行ったのはすごく幼い頃のことで…あまり覚えていないから。
あたしがまだドイツにいた頃に行った、ベルリンの動物園。
パパとつないだ手のひらの大きさだけが、記憶にかすかに残ってる。
「サルもいいけど、特にカピバラ!あたし、また見に行きたいわ」
あたしの言葉に、シンジが心底嬉しそうに微笑んだ。
「良かった。水族館にするかどっちか迷ったんだけど…あっ」
シンジがはっとして、口を押さえる。
迷った?
どういうこと?
「き、昨日のさっ。帰ってからテレビでやってた映画見た?
シュワルツェネッガー大統領の若い頃が出てるやつ。
燃え盛る白い別荘をバックに歩く、上半身裸のシュワちゃんがー…」
「シンジ?」
「…M60片手に次々と敵を蹴散らすシーンはいつ見ても―…」
「シンジ!誤魔化さないでよ!…迷ったってどういうこと?
新聞屋さんにもらったんじゃないの?」
黙り込むシンジ。
あたしがシンジの前に回り込んでじっと見つめると、目を泳がせる。
「………」
「………」
しばらくして、観念したようにシンジが小さく口を開いた。
「…新聞屋のお兄さんが洗剤をくれたのは本当だよ」
「動物園のチケット、あんたが買ってくれたのね」
「………」
シンジがまた黙り込む。
「…どうしてウソついたの?」
あたしは責めてるつもりはかった。純粋に、疑問だった。
どうしてわざわざウソついて。
そんな必要ないじゃない。
それなのに、シンジは眉間にしわをよせて、むっと表情を強張らせて。
「別ににいいだろっ」
強く言い放って、自転車のサドルにまたがる。
「シンジ!待ちなさいよ!」
あたしを避けて、あたしの声も無視して、シンジは自転車をこぎだした。
「…なんなの」
みるみるうちに背中が遠くなっていく。
あたしは茫然と、その場に立ち尽くした。
学校に近づくにつれ、生徒の数は増していく。
登校する生徒たちの波の中で、あたしはひとり歩いていた。
いつもは気にならない周りの騒がしさも、この時ばかりは煩わしいものでしかない。
特に五月蝿い女の子たちの集団から距離を置いて、あたしは歩みを急がせた。
シンジはほんとうに先に行ってしまったんだろうか。
学校に着いてすぐに、自転車置き場を覗く。
そこに、シンジの紫の自転車を見つけた。
なんなのよ、ムカつく。勝手に怒ってあたしを置いて行っちゃってさ。
…問い詰めてやらなきゃ。
「アスカ」
後ろからかけられた声は、あまり聞きたくない声だった。
一瞬ためらって、仕方なく振り返る。
また怒ったように眉を釣り上げて、目をギラギラさせたあいつがいた。
「昨日、なんで電話に出なかったんだ?」
「家に忘れてのよ。ずっと出かけてたから」
それは本当のこと。
家へ帰って着信履歴を見て、ウンザリしてかけ直さなかったのも本当のこと。
「ウソつけよ!」
「ウソじゃないわ」
「どうせまた、碇といたんだろ!碇がいるからオレを無視して…」
「そうよ、悪い?あたし、シンジの方が大事なの。
こないだのことなら、単なる気まぐれよ」
あんたなんか比べものにならないほどずっとずっとずっと、大事よ。
「でもね、友だちなの。シンジは。それが分からないなら、あんたとあたし」
別れましょ。
そう言い切る前にチャイムが鳴る。
「悪いけど、先行くから」
あたしを呼び止める男を無視して、あたしはその場から走り去った。
あいつはもうダメだ。
あたしを求めすぎてる。
こんな、つまらないあたしに執着しすぎてる。
あいつをこれ以上不幸にする前に…はやく別れてしまおう。
「進路希望のプリント、今週中にちゃんと提出しておけよー。分かってるなー!」
教壇の前の担任の言葉で、あたしは白紙のままのプリントの存在を思い出した。
「お前ら2年の後半にさしかかってんだからな、ちゃんと真剣に考えろよ」
結局シンジは京都にしたんだろうか。
あれからシンジと進路の話はなにもしていない。
あれからずっと、ウソをついたままだ。
…あたしはドイツへ行かないってことも、ちゃんと伝えようと思う。
そのためにも、早くシンジと話をしなくちゃ。
2時限目の数学が終わったあと、あたしはシンジの姿を探しに教室を出た。
シンジが籍を置くクラスは、あたしの教室のふたつ隣にある。
朝の態度を問い詰めてやろうと意気込んで、あたしはシンジの教室へと乗り込んだ。
窓際の後ろの席で、男子生徒と談話するシンジの姿を見つける。
周りで起こる騒がしい男の声を無視して、あたしはシンジへつかつかと歩み寄った。
シンジもあたしの姿に気づいて、途端ばつの悪そうな顔をする。
「ちょっと来て」
シンジの腕を引っ張って、あたしたちは教室を出た。
そのままシンジを引きずるように廊下を歩いて、階段を上って、その先の屋上へ出る。
「…なんだよ」
あたしが腕を放すと、シンジがふてくされたように呟いた。
外はまだ曇っている。湿気を含んだ冷たさが、あたしたちを包み込む。
「朝のあんたの態度、あれなんなの?」
シンジの態度にむっとして、あたしはつい強い口調で言ってしまった。
「あたしを置いて、勝手に先に行っちゃって!」
「…それについては謝るさ」
「別に謝らなくていいわよ!あたしは、あんたがなんで怒ったのか、それが知りたい」
「アスカは別に知らなくていいよ」
なによそれ!
あたしは叫んでいた。思いのほか大きな声が出てしまって、自分でも驚く。
「僕には僕の意地があるんだよ!」
今度はシンジが叫んでいた。
あたしを睨みつけて、こんな強い目をするシンジは初めてだった。
あたしは思わず息をのむ。
「…昨日言ってた、男の意地ってやつなの?」
あたしの問いに、シンジが首を横に振る。
「違うよ、僕の意地だ。ほんとうにつまらない、クソ食らえな意地だ!」
「シンジ…?」
「何度捨てようと思ったか!…そのたびに自分を戒めて、また意地を張って。
僕だって、このままでいられるならそれでいいと思ってたさ。
ずっとこの日が続くなら、それでいいと思ってたさ…。
…ありえないと分かってはいても…それを信じていたのに…
……でも、君があんなことを言うから…」
言葉を繋ぐたびに、シンジの声は掠れて小さくなっていって。
―…お願いだから、どこへも行かないでくれ……アスカ
最後の言葉は、あまりにも小さすぎてあたしには聞こえなかった。
ただ、シンジのその弱々しい姿に、シンジの本当の姿を垣間見た気がして…。
たまらなく愛しくて、あたしはそんなシンジを抱きしめたくて。
でも、出来なかった。そんな資格はあたしにはないから。
うなだれるシンジを、あたしは静かに見つめ続けていた。こみ上げる痛みに胸を押さえながら。
「…なんてね、別に最初から怒ってなんかないよ」
しばらくして、顔をあげたシンジがにやっと笑う。
「アスカ、もうそろそろ戻らなきゃやばいんじゃ?僕のクラスさ、次の授業英語なんだよ」
ただでさえ目付けられてんのにそのうえ遅刻したらマズいって!
さっきの弱々しい姿なんてかけらも見せないで、なんでもないよ、と笑って誤魔化してる。
あたしは、こんな風に笑う誰かを知っていた。それは、……あたし自身だ。
放課後。静まり返った教室の中で、あたしはひとり窓の外を見ていた。
その不安定さが秋を象徴するように、午後の天気は雨へと変わっていた。
銀絹の糸のように、静かに滴り落ちる雨を見ると…シンジのチェロを思い出す。
柔らかで、穏やかで、そして悲しげな。
あんなに苦しそうに言葉を吐くシンジを見るのは初めてだった。
あたしの知ってるシンジは、バカで、でも優しくて、いつも明るく笑ってて。
あの女と別れたときだって、意外にもあっけらかんとしていて。
落ち込むシンジを慰めてやろうと目論んでいたあたしは、そんなシンジに拍子抜けした記憶がある。
…シンジは、何かに苦しんでる。
どうしてかは分からない、それが何かは分からない、でも、なぜか知るのが怖くて。
知ってしまうと、あたしたちが終わってしまうような予感がしたから。
ふと、ポケットの中でケータイが振動していたのに気付いた。
急いで取り出す。
…あいつからの着信だ。
画面を開いて、通話ボタンをすぐに押した。
ちゃんと話をして、別れよう。
「もしもし?」
そう決心して、あたしはケータイに耳を当てた。
あたしの声に、雰囲気に。
あいつも、あたしが何を言い出そうとしているのか察したんだろう。
あいつは何も言わず、あたしたちの間には重苦しい空気が流れて。
まだ学校にいたあいつに呼び出されて、
あたしたちは屋上へ出る扉の手前で向かい合って立っていた。
外には雨が降っているから出られない。
扉の前は6畳ぐらいのスペースになっていて、
モップやバケツなどごちゃごちゃと色んなものが倉庫のように置かれている。
そこに置ききれないものは、階段の方まであふれていた。
ホコリと湿気の混じり合った嫌な臭いがする。
沈黙と、臭いと、目の前の男に、あたしはため息をついた。
屋上側の壁にもたれながら、静かに話を切り出す。
「…あたしたち、別れましょ」
「なんでだよ!!!」
叫ぶあいつの姿を、あたしは冷めた目で見る。
ダメなのよ、もうあんた。
「あんた…あたしを求めすぎたのよ。最初から分かってたでしょ?
あたしはただのダッチワイフ。キスもいい。セックスもいい。
けど、それ以上求めたって何も返ってこないって」
あたしがあんたと付き合ったのは、あんたがそれを理解していると思ったから。
体だけの関係に満足する男だと思ったから。
「あたしも、あんたを利用してるだけなのよ…サイテーよ、こんな女」
「それでもいい、俺、お前が好きなんだ」
だめ。
そんな関係フェアじゃないわ。いくら想ってくれたって、あたしはあんたを絶対好きにはならないのよ。
何も与えることなんで出来ないのよ。
「ばっかじゃないの?
…あたしはあんたなんか、これっぽっちも好きじゃない!
ただの飾りよ、マスコットよ!」
あいつの目が、あたしを睨むように見据える。
「…碇だろ。お前…碇が好きだからっ」
「そうよ」
あたしが肯定したことに、さらに視線をキツくして。
「好きで好きでたまらないわ!ずっと前から大好きよ!本当はあんたじゃなっ」
最後まで言い終える前に、
伸びてきた腕に肩を捕まれて無理やり唇を重ねられた。肉と肉のぶつかり合うだけのキス。
けどね、あんたと別れるのに…シンジは関係ないわ。
ただのあたしの都合よ。
あたしは目を開いたまま、目の前にある男の顔を見つめる。
焦りに汗を浮かべながら目を瞑る男の顔は、とても滑稽に映った。
やっと唇を離した男に、あたしは冷たくこう言い放つ。
「これで満足した?もう終わりにしましょ」
「っ…!!」
逆上した男があたしの腕をひねりあげて、そのままあたしを壁に押し付ける。
ぐぅっと、痛みに声が出た。
あたしの首筋を舐めながら、スカートを捲り上げて太ももが露わになる。
下着の中に侵入してきた男のゴツゴツした指が、あたしの中心を弄ぶ。
太ももに男の固くなりつつあるモノを感じながら、どこか醒めていた。
あたしは人事のように今の自分を状況を見て、
これって、犯されるって言うのかなあ、なんて暢気に考えた。
「…っ…あっ…ん…」
体は正直なもので、心は別にあっても悦を感じて少し反応したらしく、息が漏れる。
かちゃかちゃとベルトを外す音が響いた。
ガタッ
下から物音が聞こえて、はっとした。
階段のところで、よく見知った黒い瞳と視線がぶつかって。
とても綺麗で、大きくて、少しタレ目がちの。あたしが大好きなひとの瞳。
――シンジ!!
「うおっ」
あたしに絡みつく男の股間を蹴って、肩を突き飛ばした。
呆然とあたしを見やるシンジの横をすり抜けて、あたしは走った。
後ろで、モップやバケツが倒れて大きな音をたてた。誰かがあたしを呼ぶ声がする。
そんなのおかまいなしに、あたしは走った。
呆然とあたしを見る、見開かれた黒い瞳。
その瞳の中に、愉悦に喘ぐあたしの姿が、はっきりと映っていた。
シンジに見られた。見られてしまった。
女としてのあたしを、汚れたあたしを、あんな形で見られた。ずっと隠してきたのに!
その事実が頭の中をぐるぐると駆け巡って、あたしを締め上げる。
一番シンジに見られたくなかった姿、そして、一番シンジにさらけ出したかった姿。
あたしは怖かった。
これをきっかけに、何かが変わるんじゃないかって。
そしてそれはあたしにとって、終わりへの始まりでもあったから。
とりあえず以上です
まだありますけど、規制されてるのですみません
ほんと長くて申し訳ないです
GJ
続き気になる
GJっす!
あとどれぐらい?
814 :
674:2009/08/26(水) 09:31:33 ID:???
書き込めるかな?
>>813 ラストまではまだ書いてないです。
プロットは出来てんだけど、どうにも脱線しがちで。
あんま関係ないけどシンジがツンデレ気味だったのは、
本当に好きな相手にはちょっとツンデレしちゃう本編シンジから。(→父さん)
じゃ、さっきの続きいきます
NGワード キンモクセイ
朝の太陽のまぶしさも、ひんやりと落ち着いた空気も、テレビの中で元気に喋るアナウンサーの声も。
すべてがあたしを憂鬱にさせる。
新しい一日が始まったからって、すべてがリセットされるわけじゃない。
昨日のことを思い出して、あたしのさらに憂鬱になった。
あの後すぐに、あたしはひとりで家に帰ってすぐに熱いシャワーを浴びた。
汚いあたしを洗い流して、シンジに見られたという事実を、すべてを無かったことにしたくて。
普段ならそれで気分が晴れて、いつものあたしが取り戻せるはずなのに。
…都合よくいかないものね、ほんと。
その後、夕飯も食べないでずっと部屋に篭って、毛布に包まっていた。
ママがいなくて良かったと思う。
今週はずっと研究所に詰めっぱなしで家には帰ってこないから。
ケータイの画面を開いて、ママにおはようのメールを送信する。
ごめんなさい、ママ。
あたし今日、学校をサボるわ。
ケータイの履歴には、あいつの名前もシンジの名前も無かった。
昨日の雨がウソみたいに、窓から見える空は澄んでいて。
あたしが知ってる空の中では一番の高さだった。
やることもなく毛布にくるまりながらソファに寝そべって、ぼんやりと見知った天井を見つめる。
どうやってシンジに言い訳しよう、
どう誤魔化そうといくら考えても、何も思い浮かばなくて。
むしろ考えれば考えるほどに、
それが鎖のようにあたしを絡めこんで、深い海の底へ沈めようとする。
毛布を頭まで被って丸まって、あたしは目をつぶった。
まるで貝みたい。
深海に沈む貝ね。
クラゲの次は貝だなんて、まるでありきたりでセンスもない。馬鹿みたい。
あたしは自分で自分を鼻で笑った。
玄関の扉が開く音がして、あたしは慌てて飛び起きる。
…人の気配がする。
まさかママかしら、
と思って壁の時計を見たけれど、針はまだ午後の1時半すぎを指していた。
あたしは毛布を頭から被ったままで、玄関へと続く廊下をおそるおそる覗きにいく。
「アスカ、いるの?」
柔らかい声。優しい声。…シンジの声だ。
いつもならまっさきに飛びつく声でも、その時ばかりはびくりと体を震わせて、あたしは立ち止まった。
なぜシンジが、あたしの家の鍵を。
「…いるよね?」
息を殺す。
それでも布の擦れる音や息遣いが消えることはなくて。
「おじゃまします」
シンジが靴を脱いで廊下を歩いてくる音が聞こえてくる。
あたしはあせった。
どうしよう、まだなにも言い訳なんか考えてない。
とりあえず、その場から逃げようとして。
ゴンッ
「痛っ!」
毛布の裾を踏んづけて、おでこと鼻を床にぶつけていた。
後ろで、くくく…と笑う声がする。
「笑うな!不法侵入者!」
あたしは床に屈んだまま、シンジをキッと睨みつけた。
「不法ではありません。キョウコさんから借りましたー!」
勝ち誇ったように、鍵をぶらぶらと持ちながら見せつけてくる。
そのいつもと変わらないシンジに、あたしの心に巣くう不安が少しだけ和らぐ。
「…どういうことよ?あんた、学校は?」
シンジの服装はいつもの制服姿だ。
学生ズボンに、そして紺のVネックのセーター。
「途中でサボってきたんだよ。鍵は研究所に行って借りてきた。…アスカこそ、どうして」
あたしは何も答えないで、また毛布をすっぽりと被った。
まだ言い訳をなにも考えてない。
まだ会うのには早すぎる。
あたしの完璧な防御体制に、シンジがため息をつくのが聞こえた。
「僕、お昼まだなんだ。お腹空いたんだけど…なにかもらっていい?」
「………棚の中にカップラーメンがあるわ」
「じゃ、遠慮なくいただくよ」
毛布にくるまれた真っ暗な闇の中にあるは、シンジの動く音とあたしの鼓動、そして息だけ。
シンジは、あいつに愛撫され喘ぐあたしを見てどう思ったのだろう。
汚らしいと軽蔑した?
それとも興奮した?
あたしは前者であって欲しいと願う。
女として見られるよりも、貶される方がマシだった。
「ねえ、味噌と豚骨、どっちを食べていいの?」
「豚骨はあたしのだからダメ」
しばらくすると、お湯のポコポコと沸く音がしてきた。
蒸気に部屋が暖められて、少しだけ毛布の中の空気が暑くなる。
「…アスカも食べる?」
「いらない」
そう言ったのに。
シンジの言葉に答えるように、あたしのお腹がぎゅるると鳴った。
…恥ずかしい。
心と体は繋がってるなんて一体誰が言ったんだろう。ウソつきだ。
シンジがくすっと笑って、じゃあ豚骨だね、と言った。
シンジが作ってくれたラーメンをおとなしく食べてから、あたしはソファへ戻る。
毛布をずるずると引きずって。
豚骨ラーメンはやっぱりおいしかった。
台所から届いていたがさがさと片付けるような音が止んで、
シンジがリビングへとやってくる気配がする。
シンジの座る重みで、ソファが唸った。
「ねぇ」
毛布から少し顔を出して、隣にいるシンジを見る。
シンジは床に放っておいたあたしの携帯ゲームを持っていた。
電源の付く音がして、ゲームからマヌケなBGMが流れ出す。
あたしはそのまま続けた。
「忘れなさいよ、昨日見たことは」
自分でも苦しい言い訳だって分かってる。
でも、昨日のことを無かったことにするのが、あたしたちにとってのベストなの。
「人の記憶はそんな都合の良いようには、出来てないよ」
あたしの言葉を否定して、目は伏せままに濡れた黒い瞳だけが、ゆっくりとあたしを見る。
ぞくりと背筋が震えた。
…やめてよ、そんな目でみるのは。
「…いいから忘れなさいって言ってんの!」
「昨日…、実は」
あたしが語気を荒げても、シンジは淡々として。
「最初から聞いてたんだ、アスカと先輩の話」
あたしにそう告げた。
全部、全部知られてしまってたんだ…サイテーなあたしを。あたしの気持ちを。
たまらなくなって、あたしは立ち上がって逃げようとする。
けど、すぐにシンジが腕を掴んで。
「放しなさいよ!」
「嫌だ」
きつく握られて動けない。
「放せっ!」
叫ぶあたしを、黒い瞳を揺れらして、じっと見つめてくる。
「…どこへも行かないでよ、アスカ」
その瞳は、あの時の同じ、とても弱々しい色をしていた。
あたしを見つめて、その愛しさがあたしに絡みついて、身動きを取れなくする。
「もう無理だよ、限界だ」
強く、腕を引っ張られる。
一瞬のことだった。
気がついたら、あたしはシンジの腕の中にいた。
「他の男にアスカをあんな風にされて、
そんなものを見せつけられて、隣で笑っていられるわけないだろ!」
あたしの首筋に顔をうずめて、あたしを抱き締めて、叫んで。
吐き出す言葉が、あたしの心を震わす。
「意地を張って、自分を押し殺して、
これ以上アスカを奪われるのを黙って見てるのは嫌なんだ!」
背中に回された腕が、あたしを強く引き寄せた。
きつく、きつく、さらに抱き締められる。
あたしの体が壊れるぐらいに。
あたしの心も壊すように。
「好きだよ、アスカ…本当に、好きだ…」
耳にそっと触れて、熱い吐息に乗せて、シンジは囁いた。
ああ…。
あたしの心は喜びに震える。
欲しくて欲しくてたまらなかった、その言葉を告げられて。
それは、もっとも恐れていたことだった。
続く
820 :
674:2009/08/26(水) 09:38:48 ID:???
とりあえず以上です
お目汚しすんませんでした
アスカは、とーちゃんかーちゃんが離婚したトラウマ抱えてます
描写不足ですみません では
今月中が無理だったら、もしかしたら来月は更新ムリかも知れません
そうなったらすみません
うわー寸止めorz
GJ
>>820 GJ!!
マジか…なんとか完結させてください!
GJ
シンジの吐露がいいな
つまんね
糞レベルだな
…と、糞レベルすら書けない便所コオロギが申しております。
ッつあああああああああ!!!!!
キンモクセイったあああああああ!!!!
アスカ素直になれよ…ぐふぅ。GJでしたっ続き楽しみにまって…ます…うぐぅ
やばいパシャりそうだ、俺>キンモクセイ
結末が早くしりたいけど、
終わってしまうのは嫌だな。
いつまでも読み続けたい(;´Д`)…ハァハァ<キンモクセイ
気持ち悪い感想が増えてきた…
830 :
if :2009/08/26(水) 18:25:29 ID:???
うああああ!!!
帰ってきたら、とんでもない事になってるな
キンモクセイさん待ってました
俺は、キンモクセイさんの世界に引きずり込まれて、出られない状態です
しばらくそこに籠もってくれw
みんなが忘れた頃にまた出てこいw
男と女の関係になりたいシンジと
なりたくないアスカか〜
これは難しい
833 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/26(水) 19:03:18 ID:byNb26K6
GJにも程がある
キンモクセイに埋もれてしにたい
834 :
if :2009/08/26(水) 20:17:23 ID:???
すいません。でも、言わせてください。
前にも書いたと思いますが、もう一回言います。
告白するには勇気がいります。
シンジは勇気を出して告白した。
アスカも本当はシンジが好きなんだと思う
二人とも恋愛するのが不器用なんですね。
本当に人を好きになるのは難しいですね
俺も興奮してしまいました。
そして+3冊です
次の投下は
8月29日か30日です。
<アイス再び…>
いや、お前もう来なくていいから…
見苦しいから…ね?
買った小説×30回読んでから来い
読んだからって上達するもんなの?
純粋な疑問
>>836 そうか?俺は結構好きだけどな
何より 俺じゃ文章書けないしな
最近は大分マシになったと思うぞ
俺もまだまだだし…
841 :
if :2009/08/26(水) 21:17:48 ID:???
すいません。
今、暴走しています。
あと、29日か30日に投下したら止めます。たぶん
そして次の投下は、10月以降です。
それまで我慢してください。
空気クラッシャーですので
842 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/26(水) 21:25:42 ID:Wia/LNTd
シンジは告白なんかしないよ
>>841 298 名前: if [sage] 投稿日: 2009/07/27(月) 22:38:56 ID:???
やっぱりプロは違うな
昨日、調子に乗ってサキエル話と
シャムシェル話を投下しようと思っていたが、やめて良かったよ
またこのスレが大惨事になるとこでした・・・いや俺か・・
この話はいいな。癒されるな
なんか元気が出てきた、明日も仕事が頑張れる。
みなさんお休みなさい
314 名前: if [sage] 投稿日: 2009/07/28(火) 23:53:56 ID:???
どうもありがとうございます
今、シンジ君に戦略自衛隊に入隊させて訓練する話を考えています
最後は旧劇場に絡めようと思います
多分、投下はしません
いや、出来ない
では、おやすみなさい
今度こそ、さよなら
お前の飽きっぽい性格に付き合わされるスレ住民の気持ちを考えたことあるか?
>>838 マジレスすると、実際に書かなきゃダメ
好きな作家の雰囲気とか文体とかマネしたり
>>842 するよ
好きな子になら
シンちゃんって結構積極的だし頑固で一途だぞ?
847 :
if :2009/08/26(水) 21:58:49 ID:???
もう逃げない
キンモクセイすごすぎる。
850 :
ふぅ。:2009/08/26(水) 22:12:18 ID:???
今朝のこと、誰かに話したくてしょうがない。
「おっはよー!ヒカリ〜!!」
「どうしたの?今日なんかすごく機嫌いいけどなんかあったの?
「んーまぁね、ちょっと聞いてよ。今朝シンジがねぇ…」
あたしは近づいてくるあいつに気付かずに言いかけた。
「ちょっと!!言わないって約束したじゃないかぁ!」
「あ〜らシンジ、そーだったわねぇ〜」
ヒカリのほうを見て、「あとで話す」と口を動かせた。
「んじゃアスカ、教室のカギ直してくるから!」
どうにか伝わったようで、走って行った。
振り向くと、シンジはふくれっ面。
そんな表情するからいつまでたっても子供みたいなのよ。
そんな子供に惚れたのは誰だったか今は忘れた。
「なんで言おうとしたのさ、言わないって約束だったのに…ひどいじゃないかぁ」
「ごめんごめん、ちょーっと口がすべっちゃってぇ…へっへー」
「もう…ほんとアスカは口が軽いんだからぁ。」
「なぁんですってー!!」
「シンジくん!おはよ!」
「おはよう、霧島さん。」
満面の笑みでシンジに近づく。
何にやついてんのよ。
今すぐ蹴り飛ばしてやりたいけど、
今朝のことがあったから特別に許してあげるわ。
そう思いながらもマナの声を聞くと無意識にイライラしていた。
「あっ、居たのぉ?おはよう〜」
マナは余裕の笑顔であたしに言った。
「…おはよう」
たぶんあたし、今笑ってない。
こんなことになったのも、こないだの出来事があったからだ。
852 :
ふぅ。:2009/08/26(水) 22:13:58 ID:???
ある日、あたしはマナに放課後に呼び出された。
「あたしね、碇くんのことが好きなの〜。
それで確認しておきたいことがあるんだけど。」
「…なに?」
「惣流さんって、碇くんとどうゆう関係なの?」
「どうゆうって…ただの幼馴染よ。
そもそもあんた転校してきたばっかなのにいつシンジを好きになったの!?」
「ん〜初めて、見た時かなぁ〜。
でもなにもないならよかったぁ〜それじゃあね〜」
いやなことを思い出していると、チャイムの音で我に帰った。
「さぁーて、英語の準備しなきゃあ〜」
そういって自分のロッカーのほうへ走った。
「ほんとだーはやくしなきゃ」
碇と霧島だから、出席番号が近いのでロッカーも近い。
あたしはずっと後ろのほう。
なによ、まだなんか話してる。
でもあたしはあいつの夢にあんな形で出てきたんだから。
ぜんっぜん負けてないわよ。
そんなことを考えながら、席に着いた。
853 :
ふぅ。:2009/08/26(水) 22:15:09 ID:???
「はーい、じゃあ教科書90ページ開いて」
うそっ…間違えて国語の教科書持ってきちゃった。
仕方ない、先生に言って取りに行こう。
そう思って手を上げようとしたとき、後ろから教科書を持った手が伸びてきた。
「いいわよ、あんたどうやって授業すんのよ…」
そう言った瞬間、表紙に書いてある見慣れた落書きに目が行った。
「これ、あたしの?」
「そうだよ。アスカが国語持って行くの見たんだ。
呼んでもぼーっとしてて聞こえてなかったみたいだし。」
「ありがと」
こんなことがある度、あたしはシンジへの気持ちを再確認する。
困った時に何も言わないで助けてくれるこの性格は、
口だけ「守ってやる」とかぬかしてるその辺の男とは違っていた。
ただ、自然にこんなことを誰にでもする。
それはさっきみたいにあたしを傷つけることもあった。
でも結局はまた引き寄せられる。
馬鹿ね、あたしって。
854 :
ふぅ。:2009/08/26(水) 22:16:05 ID:???
「弁当や弁当〜!これこそが学校最大の楽しみや〜」
「ヒカリ、今日は屋上で食べない?
教室に馬鹿が三人もいるから話も出来ないわよ。」
「え、えぇ。」
「ちょーっとヒカリ、それ鈴原の持ってたお弁当箱と一緒じゃない?」
「えっ、いきなりなにを言うのよ!」
「あんた、あたしの話だけ聞こうったってそうはいかないわよー。」
「うん…まぁ鈴原んち、妹が入院してたりで大変だから、いっつも食堂のパンばっか食べてるのよ。
だからたまにはお弁当も、どうかなって…。」
「へぇ〜、案外うまくいってんのね。」
あたしがうらやましそうな顔をしたのか、ヒカリは聞いてきた。
「アスカはどうなの?シンジくんと」
「なんであいつが出てくんのよ!」
もう今更隠しても意味ないか…と思いつつもつい出てしまうこの言葉。
「まあまあ…、今朝の話はなんだったの?」
「んーとね、大したことない話なんだけどね、」
そういって風邪ひいたときに看病してくれた話、
夢でお嫁さんになった話、一時間目の英語のときの話をした。
「そっかぁ。やっぱりアスカ、シンジくんのこと好きなんだぁ。
でもね、さっき体育のとき噂になってたんだけど…」
「えぇ!?マナが告白!?」
「うん…今日するって。」
まだ負けと決まったわけじゃない。
でも…気分が悪くなった。
「残り、食べていいわよ。」
リアルタイムGJ!
856 :
ふぅ。:2009/08/26(水) 22:59:50 ID:???
とまあ、一応こんなかんじです。
感想ありがとうございます。
今回地の文増やしてみました。
いや、少ないですね(笑)
今から付け足してもって意見もあったんですが
やっぱりあったほうがいいかなと。
ご指摘ありがとうございました。
これ、上と下みたいなかんじで
二部構成みたいな感じにしようと思ってます。
長くなりますが…すみません。
GJです!
出来れば「今日の投下はここまで〜」みたいなレスが欲しいです
858 :
857:2009/08/26(水) 23:04:15 ID:???
ふう。さんイイよー!嫉妬するアスカと素直なシンジが可愛いw
あと個人的に、恋のライバルはやっぱマナがいいね!
ふぅ。さんGJ!
2人のやり取りが微笑ましいです。
円谷さんや軒亜さんはパッタリ来なくなったな...
円谷さんは、少し様子見タイムと自サイトに書いてた
なぜ様子見?
ifを畏れているのだろう
>>864 自サイトに直接書くか、一旦こちらに投下して溜まったら転載か迷ってるみたいね。
俺は一旦ここに投下してもらった方が見やすいなぁ。織月さんもそうしてるみたいに。
まあもちろん決めるのは本人だけどさ。
円谷氏自サイト持ってたん?
投下してもらったほうが感想書きやすいし、嬉しいけどなw
>>500 バッハとパッヘルドル:カノンを
買って来た
iPhoneにも入れた 準備は出きた
iTunesで同期するなら
レンタルで良かった気がするが•••
>>870 パッヘルベルな。
ブラームスならハイドンバリエーションなんか聴きやすいぞ。
>>872 無伴奏チェロ組曲も一度聴いてみて。
個人的にはカザルスのやつが好き。
って、すでに買ってたのか。めんご。
875 :
674:2009/08/28(金) 10:01:00 ID:???
前回投稿したところがあまりにも中途半端なことに気づいて、きりがいいとこまで投稿してしまい
たぶん今日終わりそう。ふう
・異性系イタモノ注意
NGワード キンモクセイ
重なり合う体に、シンジの鼓動を、体温を、息を感じてしまう。
耳から頬へ、頬から額に。
ついばむように口付けをされて、
そのたびに体の奥がじんと熱くなって、あたしは身じろいだ。
「アスカ…」
そんな甘い声であたしを呼ばないで。
そんな優しい瞳であたしを見つめないで。
どうして。
どうして。
どうしてあんたは!
あたしは何も変わりたくないのに、このままでいたいのに。
逃げ出したくて、でも。
あたしの中のシンジを求める心が、
歓喜に震える女のあたしが、あたしを内側から縛りつけて。
…あたしを身動き出来なくするの。
やがてシンジの息が、あたしの唇へと近づいてくる。
「…だめっ、だめよ……シンジっ…」
…それ以上はやめてっ。
今ならまだ、間に合う。
あたしたち、友だちのままで…!
喉を震わせて、やっとのことで搾り出した声はひどく掠れていた。
その声を塞ごうとするように、シンジがあたしの頭を抱き寄せて。
「んっ…!」
押し付けられたシンジの唇は、
想像していたよりも薄くて、少し、かさついていた。
こんなに愛おしくて、こんなに悲しいキスは初めてだった。
視界が滲んで、涙が頬を伝っていく。
「…っ…もう、終わりだわ…!」
シンジの唇から顔を逸らして、あたしを抱き寄せる体を突き飛ばした。
そして、そのまま床にへたり込んでしまう。
ポロポロと涙が零れて、止まらなかった。
嗚咽が漏れた。
もう、今までのあたしたちでいられなくなったことが。
あたしたちが男と女になってしまったことが。
それが悲しくて。
そう、いずれパパとママのようになってしまうんだわ…!
「…アスカ、泣かないで」
あたしの頬に伸びてきた優しい手を、払いのける。
いずれいなくなってしまう優しさなんて、いらない。
もういらない。
「うるさい!!
…あんたはいつもそうよ。
自分ばっかり勝手に先へ進んで、あたしは取り残されるばっかりでっ…!」
胸の内に隠していた感情の奔流が、言葉が、涙とともに溢れ出る。
「何が好きよ…!
あんたが先に裏切っておきながら今さらなによ…!
あたしだってずっとずっと好きだったわ!
あんたがあの女と付き合う前から!ずっとよ!」
シンジはじっとあたしを見つめている。
その瞳の中に、みっともなく泣き叫んで、喚いてるあたしがいる。
喉が潰れそうに痛い。
「でもあんたがあの女と付き合うようになって!痛くて、苦しくて…!
どうしようもなくて…
だから他の男で寂しさ紛らわせたの!
その間もずっとあんたのことしか考えてなかったわ!」
そうすればシンジに抱かれているような気になれた。
女のあたしが嬌声をあげて喜んで、そんな自分に吐き気がした。
「あたしだって、あんたにキスされたかった…
あたしの初めてだってあんたにあげたかった…!
でも、あんたは他の女を見て、あたしを見てくれなかった
けど、やっぱりあたしはあんたが好きで
一緒にいたくて…」
苦しみも、切なさも、痛みも、我慢した。
笑ってシンジにウソついて、自分にもウソついて。
重力に引かれるままに涙がぽたぽたと床の上に滴り落ちて、まるで水たまりのよう。
「友だちなら…ずっと一緒にいられると思ったから……
あたしはっ…あたしはあんたと一緒にいられれば…
何も変わらないままで、ずっとずっと一緒にいられれば…
それだけでよかったのに…なのに、どうして…」
声をあげて、わぁわぁ泣いた。
まるで幼い子どもみたいに、きっと顔は真っ赤なって、涙でぐちゃぐちゃで。
とても酷い顔だったと思う。
「……アスカ、ごめん…」
力無く床に投げ出されたあたしの手に、シンジが手を重ねる。
その手をまた、はねのけて拒絶した。
「…あんたとあたし、もう終わりよ…!おしまいなのよ!」
変わらないものなんてない。
そんなこと、最初から分かっていた。
人は流れ、時は流れ、気持ちも流れていく。
保証のある関係なんてどこにもない。
シンジもいつか、パパのようにいなくなる。
きっとそうだ。
それが怖くて、あたしはまた自分にウソをついた。
「出ていけ…!あんたの顔なんて見たくない!あんたなんて、もういらない…!!」
シンジの傷ついた瞳を、悲しみに歪む眉を、去っていく背中を見たくなくて、あたしは膝を抱えて俯いた。
シンジのいなくなった部屋の中で、俯いて、目を瞑って、ただ泣き続けた。
終わらせたのはあたし自身だ。
本当に、馬鹿ね。
14歳のあたしが、隣で泣いていた。
シンジとあの日見かけたキンモクセイは、すでに散ってしまっていた。
深緑の葉だけを残して。
地面の上に、茶色くなってしわがれたかけらが散らばっている。
あの花のなれの果てだった。
あの、強く、噎せ返るほどに甘い香りは、もうしない。
続く
とりあえずいじょう
あともう少し
GJ!
アスカ…素直になれよな。
えっ!
シンジ帰ったの!?
明日までの期限の報告書が有るんだ
無理言って 有給休暇をお願いしたんだ
アスカとシンジが幸せになれれば
もう どうでもいいや
うは常に寸止めキンモクセイ。
でも、好きだ…ありがとう
もうヤバイ
読者側で感想じゃなくて自分語りしてる人たちは何なの?
うざいことこのうえないんだけど
べつにええがな
作者の自分語りは文句言って
読者のはありってのはおかしい
盛り上げるための不自然な所為を繰り返してアスカがキチガイ染みたLASになるのは、良くあること。
最後に素直になるのも類型的で、今更感はあるなあw
まぁ気にせずに流れ戻そうや
おお!キンモクセイさん相変わらずGJです!!
毎回楽しみにしてます
でも、もうすぐ終わるんですよね…
うれしいような悲しいような複雑な気持ちです
最後はアスカとシンジが結ばれて、幸せになってほしいです
>>890 だがそれがいい
キンモクセイGJすぎる
二人が幸せになるといいな…
投下スレの作品に何を期待しているんだおまいらは。
そこそこの作品がそこそこ読めりゃいいんだよ。
if「じゃあ俺の作品も読んでください」
分かった。
俺が悪かったから許してくれ。
投下待ち
898 :
if :2009/08/28(金) 17:53:54 ID:???
呼んだ
900 :
if :2009/08/28(金) 17:59:19 ID:???
失礼しました
>>901 次の投下で明らかになるだろう
どうせ読んでないから時間の無駄な落書きを披露してくれると信じてる
903 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/28(金) 18:31:44 ID:oJfbKVQg
>>890 毎度思うんだがタダで小説読んでるくせになんでこんなに偉そうなの?
何様だよw
気持ちはわかるが構うなよ
このスレでは読者の方が偉いらしいしな
>>905 金を払っていればそうだけど、タダで読ませて貰ってる以上
それは無いよな。
もういいから
スルーしようぜ、変に荒れるだけだって
>>903 荒らしたいだけの人でしょ。文句しか書いてない。
sage
キンモクセイお待ちしておりますm(__)m
俺はたとえ上手くても、上手くなくても読めるだけで満足
>>879 キター!GJ!
このスレに限らず監視して変な方向に持っていこうとする粘着がいるけど
気にせず投下してほしい。キンモクセイさんの作風、大好きです。
>>903 駄作を投下するのも自由だし、キツイ評価を言うのも自由。
それがこのスレ。
913 :
674:2009/08/28(金) 23:13:51 ID:???
ばんわ。
なんかもうガツガツカツカツですが、なんとか出来た。最終回です。
もう少しちゃんと練りたかったけど、カンベンです
そいや、前回のとこでよっこらセックスさせようか迷ったんだけど結局やめた。
・異性系じゃなくなったけどイタモノ注意
NGワード キンモクセイ
あれからのあたしたちはお互いを避けるように何も話さず、視線も交わさず。
小さい頃からあれだけ同じ世界を過ごしてきたのに。
今も同じ空間に、同じ次元の中に生きているのに。
まるで遠い存在なって、お互い、見ないフリをした。
シンジが遅刻しないで、ひとりで学校へ行くようになって。
あたしがシンジと時間をずらして登校するようになって。
やがて隣の部屋から、朝の慌ただしいおばさんの声もシンジの声も消えて、
静かに朝を迎えるようになったのはいつだっただろうか。
学校が同じでもクラスが別だと、関わることもほとんどない。
お互いに共通の友人なんていないし、シンジがいなくなった穴を埋めるように、
あたしはヒカリやクラスの女友だちとよく遊ぶようになっていた。
学校で見かけるシンジは、よく男子たちとつるみながら笑っていて。
ああ、あいつは大丈夫なんだ、と安心しながらも少し胸が痛かった。
時がすべて癒やしてくれる。
時がすべてを洗い流してくれる。
…そんな言葉はウソだ。
ずっと一緒だったシンジが、当たり前のように一緒にいたシンジが、そばにいない。
ヒカリと遊んでも、学校の友だちと騒いでも、虚しさしか感じなくて。
顔は笑っていても、心は笑えなかった。
シンジの姿を見るたびに胸の奥がつぶれて、ぐしゃぐしゃになって、その痛みは日に日に強くなる。
ひとりでいる時に、ふと、シンジを思い出して、涙が零す。
自分で投げ出して、いらないと叫んで、いなくなったらひとりで泣いてる。
なんて馬鹿なんだろう、あたし。
それでも時は流れ続けていく。
ただ淡々と、残酷に。
あたしがいくら泣いて叫んでも、誰も立ち止まってくれやなんかしない。
ひとり置いていかれないように、あたしはがむしゃらに前へ進むしかなかった。
心に大きな穴を空けたままで。
あいつのいない、何も無い日常を過ごしていく。
シンジは、どうなのかな。
きっとシンジは、何事もなかったように前へ進んで、またひとり歩いていくんだろう。
その春。
風の噂で、あの男は某大学へ受かったと聞いた。
あたしと別れて、別の世界に生きて、次は新しい世界へと歩みを進めていく。
悲しみもない。一抹の寂しさすらない。
心から、あいつも頑張ったんだなぁって、そう思う。
気が付けばあたしはもう、3年生になっていた。
「惣流はドイツの大学へ入学希望だったな」
「はい」
「成績も申し分ないし、まあ、大丈夫だろう」
模試の結果が書かれた紙を見て、先生が笑う。
去年の秋に、シンジと離れてすぐに、あたしはママと一緒にドイツへ帰ることに決めていた。
ママはあたしがドイツへ帰ることを、笑って受け入れてくれて。
あたしとシンジのことも気づいているはずなのに、何も言わなかった。
おばさんやおじさんも、あたしに何も言わないで、いつもの笑顔で接してくれる。
たぶん、ママたちなりに気遣ってくれてるんだと感じた。
日本の高校に通ってるあたしは、ドイツの大学に入るためには語学資格が必要で。
受験勉強で、特別なことと言えばあたしにとってはそれくらい。
あとはこのままセンター試験でいい成績を取れば大丈夫、と先生がまた笑った。
ある日、あたしはあの小さなレコード店を訪れていた。
「久しぶり、おじさん」
「おお、いらっしゃい。あの時のお嬢さん」
中はあいかわらずくたびれた匂いがしていて、出迎えてくれたおじさんの笑顔も変わらない。
「お元気でしたか?」
「ん…まぁね。おじさんは?」
「ははは…私はねえ。どうも最近、腰の調子が悪くてね」
この年になると、立ったままは辛くて、と苦笑いするおじさんの足元に小さな椅子が見えた。
あの時には無かったものだ。変わらないと思ったけど、やっぱりあの時とは少し違う。
「あのね、おじさん」
「ん?」
「バッハの無伴奏チェロ組曲と、ブラームスの前ここで聴いてたやつ…置いてある?」
おじさんは、どの演奏家のものがいい?って訊いてくれたけど、別に誰のものでも良かった。
あたしはチェロの音色が聴きたかっただけだから。
おじさんのおすすめしてくれたものを適当に選んで、代金を渡す。
「幼馴染の彼は、どうしておられるのかな?」
「きっと、元気よ。たぶん」
お釣りを受け取りながら、あたしはあっさりと答えた。
おじさんの表情が、少し淋しげに曇る。
「それじゃ、おじさん」
おじさんの、ありがとうという言葉を背中に受けながら、あたしは店を出た。
いくら名演奏家と呼ばれる人たちのチェロを聴いたって、やっぱりシンジの音色とは違って。
あたしが好きなのは、あの少し拙くて、でも美しくて柔らかいチェロの音色だ。
こんなCDで、あたしの胸に空いた穴を埋めることなんて出来なかった。
「シンジのチェロ…また聴きたいな…」
ぽつりと、呟いた。
春が終わって、夏も過ぎて、季節の隙間がやってくる。
遠くなっていく空を眺めながら、あたしはいつも、シンジを想う。
あのキンモクセイも、再び美しく花を咲かせていた。
散っても散っても、この世に生きている限りこいつは咲き誇り続けるんだろう。
花を眺めながら、なんてしたたかなやつ、と笑った。
風がそよいで、さわさわと花を揺らす。甘い香りが、広がった。
あんたの中のキンモクセイ、まだ咲いてるね。
前よりもたくさん。とても綺麗。
14歳のあたしが、悲しげに微笑んでいる。
ごめんね、とあたしは呟いた。
時間とともに人は変わって、心も変わって、やがて終わりを迎えるはずなのに。
シンジへの想いは募るばかりで、さらに大きく膨らんで。
もうどうしようもないけど、ただ、シンジに会いたいと思った。
「アスカ」
穏やかで、柔らかくて、少し鼻にかかったような声。
声の高さは変わっても、奥に隠れる優しさは小さい頃から変わらない。
何度も何度も聞き慣れた、「アスカ」という言葉。あたしの名前。
幻のように聞こえてきて、あたしははっとする。
後ろに、シンジがいた。
初号機と名づけた紫色の自転車にまたがって、あたしを見てる。
「後ろ、乗る?」
訊かれて、あたしはこくんと頷いた。
ああ、懐かしい。シンジの背中だ。
男のくせに華奢で、少し猫背気味に自転車を漕ぐところなんて変わらないね。
泣きそうになるのを抑えて、あたしはシンジの腰をぎゅっと掴んだ。
「久しぶりにさ」
シンジが、前を向いたまま言う。シンジの、丸い後頭部が揺れた。
「久しぶりに、ふたりでしよう。河川敷のとこで、キャッチボール」
「うん」
風は穏やかで、川の水面を優しく揺らす。
草木は、夏の冴えるような緑から、少しずつ色を変えていた。
春のような明るさは無いけれど、穏やかな優しさを感じる。
嫌いじゃない、とあたしは思う。
子どもたちの明るい声が響いた。
はしゃいで、走り回って。ふと、女の子が転んでしまう。
泣き始める女の子に、男の子が駆け寄って慰めていた。
あたしたちはここに来てからずっと、無言でボールを投げ合っている。
お互いに何も話しださず、ただ黙々と。
不思議に緊張した空気は無く、緩やかに時間は過ぎていった。
「あれからさ」
最初に口を開いたのはシンジだった。
シンジが投げた白いボールが空を飛んで、あたしの左手のグローブへと落ちてくる。
「あれから…色々考えたんだ。
アスカと離れて、ひとりになって。
僕はずっと、知らない間にアスカを傷つけてたんだって分かって…
だったら、アスカの言うとおり僕なんていない方がいいんじゃないかって。
そう思って、離れてた。
こんなことになるなら、告白しなきゃよかったって…何度も後悔してさ」
「シンジ、シンジは…悪くないわ」
シンジへとボールを投げる。綺麗に曲線を描いて、そのままグローブに吸い込まれていった。
「なんにも、悪くない」
「うん、僕もそう思う」
にやり、と。
シンジがあんまり、明け透けに笑うものだから、あたしは少し呆気に取られてしまった。
「考えれば考えるほどさ、
好き同士だったのにどうして離れなきゃいけないんだろうって。
僕は単純でバカだから、もやもやしながらそればっかり考えてた」
そう言って、シンジが投げる。
あたしは受け取れずに、ボールがグローブから転がり落ちた。
「それは…、あたしが臆病だからよ」
ボールがコロコロと転がって、あたしから離れていく。
「ほんとはね、嬉しかった。
シンジがあたしを好きだって言ってくれて、本当に嬉しかった。
でも、同時にとても怖くなったの。
あんたがパパみたいに他の女を好きになって、あたしの前からいなくなったらどうしようって。
友だちならいいわ。ずっと一緒にいられるもの。終わりがないもの」
「…自分の心にウソついて、苦しみ続けながら?」
はっとしてシンジを見る。
シンジは、あの優しい瞳をあたしに向けて、そのまま続けた。
「アスカの言う通り…
人の心は刹那的で、あやふやで、そこに絶対なんてものはないよ。
恋人であっても友だちであっても家族であってもそうだ。
昨日は笑いあってたのに、次の日には憎くなって殺してしまうことだってあるかもしれない。
会いたいと願っていた相手だったのに、
いざ会ってみると怖くなって首を絞めてしまうかもしれない。
愛しいと感じていたのに、次の瞬間突き放してしまうかもしれない」
「そうよ、だから怖かったのよ!
……分かってたわ。本当は。友だちなんてもの、みせかけだけの希望にすぎないって。
でも、怖くて。それでもシンジのそばを離れたくなくて。
関係が崩れた瞬間、すべてを失ってしまうんじゃないかって…!」
あたし自身が壊したとは言え、事実そうなった。
子どものような関係でいられなくなったあたしたちは、散り散りになって。
それぞれ、別の世界で生きていこうとしていたはずだ。
なのに、今さらどうして。
転がったボールの方へ、シンジがゆっくりと歩いていく。
「…僕だって怖かったよ。この1年間も、ずっと怖かった。
アスカが違う誰かを好きになって、僕のことなんて忘れてしまったらどうしようって」
ボールを拾って、川の向こう岸を見つめるシンジ。
あたしからは、シンジのうしろ姿しか見えない。
シンジの背中、シンジの黒い髪。ああ、変わらない。
その顔を見ることは出来ないけれど、すこし、その手が震えているようだった。
「さっきだって、もしアスカが僕を拒絶して、一緒に来てくれなかったらって
…そう考えたら、怖くて仕方なかった。アスカと一緒で、僕も臆病なんだ。
でも、僕はアスカより単純でバカだから」
シンジが振り返る。
「アスカの……」
少し間が空いて。
なに?、とあたしは首を傾けた。
シンジが口を開く。
「アスカのお尻がさ。初号機の後ろにないと、寂しいんだ。アスカの大きいお尻が」
「――っ!!ばかシンジ!!!!」
グローブを思い切り投げつけてやる。
バシッ!と大きな音を立てて、見事シンジの顔へ命中した。
「大きいってなによっ!!!あたしのこのお尻のどこが!」
くくくっ…と、お腹を押さえてシンジが震えていた。
グローブの当たった鼻を真っ赤にさせて、よく見れば笑ってる。
「よかった、やっぱりアスカはアスカだ」
そう言って微笑んだシンジの笑顔が、あまりにも綺麗で。
あたしは真っ赤になって、俯いてしまった。
去年よりも汚くなった赤いスニーカーが、一歩ずつあたしに近づいてくる。
あたしの前でその赤いスニーカーが止まって。
俯くあたしを覗き込むようにシンジが身を屈めた。
シンジの顔が目の前に突然現れて、あたしの心臓が跳ね上がる。
じっと見つめる黒い瞳から、あたしは目が離せない。
「やっぱり僕は、アスカが好きだよ…今まで以上にもっと好きだ
だからこそ今の瞬間を、アスカと一緒にいたいんだ。大好きな、アスカと」
シンジの瞳の中に、バカみたいに赤くなってるあたしがいた。
これ以上にないくらい心臓が跳ね上がって踊ってる。
シンジの気持ちが、まだあたしを想ってくれてる気持ちが、本当に嬉しかった。
シンジへの想いが、感情が、また大きく膨らんで、あたしの瞳から涙となってポロポロと零れた。
「あんたバカね…こんなバカでめんどくさい女、まだ好きなんて…」
泣きながら、笑う。
「ばかシンジには、ばかアスカじゃなきゃ駄目なんだ」
だって、ふたりともバカだから、とシンジも笑った。
「バカっ…!」
そのまま勢いよくシンジに飛び込んで、思いっきり抱き締めた。
わーっ!と叫びながら、シンジが後ろへ倒れこむ。
「あたしも、好き…!好きよ、好き…大好きよ。ばかシンジ…!」
あたしの言葉に答えるように、シンジの腕が、ぎゅうっとあたしを抱き締め返してくれる。
ねえ、シンジ。あたし、シンジを好きでいてもいいのかな。
ふたりで芝生の上に倒れこんで、強く強く抱き締め合った。
「わーバカップルだー!」
「ヒュー!らぶらぶぅー!」
「はぐ、してるぜ!はぐ!」
「ガーイジン!ガーイジン!」
はやし立てる子どもの声がして、はっとして顔を上げる。
シンジとふたりで周りを見ると、4人の男の子に囲まれていた。
その少し後ろに、目をキラキラさせながら顔を赤くして、あたしたちを見る女の子がふたり。
河川敷の道を走る自転車のおじさんもあたしたちを茫然と見てる。
高架橋の下にいる野球帽を被った少年も顔を赤くしていて。
自分たちが公衆の前で何をしていたかに気付いた。
恥ずかしさに、体温が一気に上昇する。
馬乗りになった状態だったあたしは、慌ててシンジから離れた。
支援
支援
支援
SSというよりも携帯小説か、コレは。
「あ、こっちのねーちゃんほんとにガイジンだ」
「まっかっかー!」
「う、うるさい!!」
叫んで、隣のシンジをちらっと見る。
シンジも真っ赤になって俯いていた。
「い、行きましょシンジ!」
「う、うん」
シンジの腕を引っ張りながら、その場から逃げ出す。
後ろから子どもたちの、やんやとはやし立てる声がまだ続いていた。
日は傾いて、空が赤らみ始めていて。
空の青色と夕日の赤色が混じり合った、薄紫の帯が西に見える。
沈む太陽を背に、川の向こうの団地の建物は黒い影になっていた。
シンジの背中に体を預けて、
変わらない景色を眺めながら、あたしたちを乗せた初号機は川沿いの道を走っていく。
ぽっちゃりとした柴犬を連れた、あの時のおばさんとすれ違った。
あたしたちを見てにっこり顔を綻ばせて、そんなおばさんにあたしも微笑み返した。
やがて、おばさんの姿も小さくなっていく。
「ねぇ、アスカ」
背中から聞こえる声は、甘く優しい。
なに?、とあたしも甘えた声で返す。
シンジの腰に腕を回して、ぎゅうっと体を寄せた。
夕日のせいか、シンジの耳が少し赤い。
「…進路希望にさ、僕も、ベルリンって書いたよ」
「…どういうこと?」
シンジの言葉に驚いて、思わずシンジの体を力の限り締め付けてしまう。
「あ、アスカ…く、苦しい!」
ふらふらとバランスを崩した初号機とシンジの声に我に返った。
腕を緩めると、シンジがはぁはぁと息をつく。
「ねぇ、どういうこと?」
「いつか約束したろ?ふたりでドイツへ行こうって」
「だめー!!!」
キキキーっとブレーキの音がして、初号機が止まる。
後ろを向いたシンジが驚いた顔をして、あたしを見た。
少し高いシンジを見上げるようにして、あたしはもう一度同じことを言う。
「だめよ!」
「なんで?」
あたしの拒否に、シンジが目をぱちぱちと瞬かせた。
「あたしは何もしてなくて、シンジばっかり…、そんなのフェアじゃないわ!
シンジはシンジの行きたい大学へ行きなさいよ」
「嫌だ」
今度はあたしが、シンジの拒否に目をぱちぱちさせる。
「アスカと一緒じゃなきゃ、嫌だ」
「あのね」
「い・や・だ」
まるで幼子みたいに、頑なに言う。
変なところで頑固なシンジの癖が出た。
「英語もドイツ語もちゃんと勉強してるんだよ?
まぁ、国語とか現社はまだ微妙だけどさ…
とにかく、せっかく昨日、父さんと母さんの説得に成功したところなんだ!
だから、アスカを迎えに来たんだよっ!」
そう叫んで、赤くなった顔を隠すようにシンジが前を向く。
「バカね…」
シンジの想いに、あたしを想ってくれていたその想いの大きさに、愛しさが爆発して。
あたしはその感情に突き動かされるままに荷台から飛び降りて、シンジの首元に腕を廻して抱き締めた。
もう、他人の目なんて、そんなもの関係ない。
「あ、アスカ…?」
シンジに再び好きと言われて、それでも不安が無かったと言えばウソになる。
けど、シンジなら、大丈夫。
あたしが好きなシンジなら、きっと、信じることが出来ると思えた。
少なくとも、今、あたしがシンジと想う気持ちと、
シンジがあたしを想ってくれる気持ちは間違いなく本物だから。
シンジに廻した腕を離して、頬に触れる。愛しく、撫でるように。
そして、その薄い唇に、そっとキスをした。
2度目のキスは、とても優しい気持ちになれた。
「でもやっぱりだめ」
「なんでさ!?」
身を乗り出しすシンジの鼻を、ちょんと押さえる。
「あたしがっ、シンジと一緒のところへ行くの!
シンジ、前に京都に行きたいって言ってたでしょ?」
「アスカ!」
「そ・の・代・わ・り!」
「な、なに?」
ぎゅっと両腕でシンジを抱き寄せて、その首筋に顔を寄せる。
耳にそっと唇を触れて、あたしは小さく呟いた。
「また、あんたのチェロ…いっぱい聴かせてね…」
「…りょーかい」
シンジの指があたしの髪の中に滑り込んできて、あたしを優しく抱き寄せた。
永遠なんて望みません。
ただ、今はこの想いを、この幸せを、大切にしたいの。
甘い香りがあたしたちを包み込む。
ああ、なんて愛しい香りだろう。
14歳のあたしが、キンモクセイの花の前で、笑ってた。
終わり
キンモクセイさん
お疲れ様でした。ありがとうございます
931 :
674:2009/08/28(金) 23:57:30 ID:???
キンモクセイの花言葉
初恋 高潔 謙虚 変わらぬ魅力 真実の愛
拙作に付き合っていただきありがとうございました
色々詰め込みすぎて、なかなか上手くいかないもんだなって反省してます
もう少し時間に余裕があれば、ちゃんと練って、書いてみたかったです
普段はイラスト描きなんですが、小説もなかなか楽しかったのでまた機会があれば書いてみたいです
みんなの応援にほんと助けられた!
やっぱLASはいいなと思えた夏の終わりでした。
キンモクセイさんGJ!ハッピーエンドキター!
素敵な作品でずっと楽しませてもらいました。投下ありがとうございました!
933 :
543:2009/08/29(土) 00:10:19 ID:???
>>931 これだけ情景描写や心理描写が巧みで、ぐいぐい引き込ませる文章書けて、
その上本業絵師さんとか凄過ぎです!
作題の花言葉解説最後に持ってこられて正直「やられた」とか思いましたw
アスカのセフレには終始ムカついていましたが、レコード店のおいちゃんと
犬散歩させているオバチャンには和みました。
なんにせよお疲れ様です。良い作品読めて随分ぽかぽかさせて頂きました!
イタ部分って丸々要らんやんw>キンモクセイ
遠回りをしながらも、最後には二人が結ばれてよかったです。
とってもすばらしい作品でした。
キンモクセイさん、お疲れ様でした。
本当にありがとうございました。
教訓:ビッチにも乙女な部分はある
乙
感動したぜ
938 :
674:2009/08/29(土) 00:34:30 ID:???
>>934 自分でもちょっとそんな気がしてたけど許しておくれ
本当は軽い恋愛短編話のつもりだったから、シンジは他に好きな女の子を作るような普通の男で、アスカはそれに振り回される役だった
意外にもシンジがアスカを一途に好き好きになってしまって…
ドーテーショジョ同士じゃなくてもいいじゃん
…なつもりが、精神的純愛になっていきました
マナ関連にしても、色々書き切れなかったとはそういうことです
>>934 携帯小説の基本フォーマットだろ? >ビッチが男に救われる
自演するならもっと工夫したらどうか
>>938 純愛と云うよりも、女性からの夢小説でしょ。
セフレが居て、それとは別に恋人までとかね。
シンジが都合の良過ぎる男でありすぎると思うが?
>>940 構っちゃだめぇーー!!きっとみんなわかってる 890=912=926=939=941
ってか携帯小説で巨万の富を稼いでる人もいるから実は褒めてんのかもよw
>>941 こいつちゃんと読んでないな
アスカの今の彼氏は先輩のひとりだけで、シンジもシンジでマナ他に三人と付き合ってた
今どきの普通の高校生だ
>>941 このスレまで監視か…
その時間をもっと有益に使ったらどうだろうか?
>>943 今どきの普通の高校生じゃ、萌えんだろww
うわべだけのイタモノって質が悪い。
冷夏のせいか、いつもより遅れて夏厨が出てきた感はあるw
特定の熱狂的信者を獲得するか、あからさまなアンチを産むかの諸刃の剣だな
今回はやや信者が優勢と見てるが
いや、本当によかったです。GJ!<キンモクセイ
ちょっと心がささくれてるアスカを
ふわふわとしたシンジが優しく包み込む感じが素敵でした。
本編ではみられないシンジですが、無理さがなくてよかったです。
またぜひ読ませてください!
キンモクセイさん素晴らしかった。ありがとう!!
>>948 その様子だね
私は受け付けないのであぼ〜んさせて貰っているが
とりあえず、書いてるのは女だろーなーとだけ思った
実際知らんがw
>>948 てゆうか、信者が気持ち悪いと言うか。
作品自体はアボーンするからどうでも良いのだけれどね。
>ドーテーショジョ同士じゃなくてもいいじゃん
これだけの為に、話には不要だけど他とヤらせとこうとってのは、
逆に、処女童貞であるか否かにスゲェこだわってる気がするがw
なんでこんなに荒れてるんだ?
キンモクセイさん、お疲れ様でした。ハッピーエンドで本当に良かった。
ありがとうございました。
これがハッピーエンド?
単なるデウス・エクス・マキナ落ちじゃねえか
意味わかって言ってんのか?w
ハマると盲目的に面白いって思っちゃうのよ
ハルヒ信者だった頃の俺にそっくりだ
荒らし狙いも混ざってるから収拾がつかないことになってるな
>>959 エヴァもそうじゃんw
ハマらせる力があるのは作品の力でもあるよ
てか自分が気に入らない作品ならスルーしろよ
あーだこーだ理屈つけて批判して
大人気ない
963 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/29(土) 02:00:19 ID:zoFr6b0d
>>929 長編は完結しない事が多いのに、完結したうえ今年いちばんの面白さ…
あなたが神か
どんな作品も人の好みがあるだろうからね
最初から合わないと思ったらあぼ〜んすればいいし
全部読んだ上で的確な批評をする人もいるだろうし(別の意図がある人もいるだろうけど)
>>962 絶賛ばっかりってえのもそれはそれで気持ち悪いもんだがな
批評はいいけど批判はいらんよ
批評するには読み手側もそれなりのスキルがいるからね
で、それが投下する人のスキル向上につながっていく
そうじゃなきゃただの荒らしと変わらない
正直、破で弱ってるとこだからイタモノはキツいわ・・・
基本的なこと聞いて悪いんだけど、あぼーんてスルーするってこと?
ならそうする
イタモノって書いてあるのに読んじゃったのか
イタモノである事(そういう展開のある事)にちゃんと意味のある作品か、
と思って読んでたら、別にイタモノ関連無くても全然問題なくて、
理由が「ドーテーショジョ同士じゃなくてもいいじゃん」とかいう、
なんとも下らんものだったのが残念
あとオリキャラのおっさん要らなかった
LAS(ラブラブ・アスカ×シンジ)目当てだとキツイだろうな
イタモノとオリキャラの耐性ないと特に
これだけたくさんの意見が付くってこと自体スゴイと思う
投下する側として一番悲しいのは何も言われず、ただスルーされることだし
いや別にそんならぶらぶなモノをこの作品には求めてないが
>>975 ぶっちゃけ、無意味だろうとイタモノにしとけばレスはバンバン付く
試しにやってみれば分かる
名前もないおっさん大人気
たまには先輩のこと思い出してください
>>977 ないないw
読ませる力がなきゃ最後まで読んでももらえない
>>977 この前のN3は結局あれだけレス消費させといて釣りだったな…
>>973 いや、無意味じゃないだろ
お互いに彼氏彼女がいるけど、親密な男女のすれ違いを書いてるわけだし
すれ違うための大事な要素じゃんw
先輩の方が違和感は無いからな
おっさんは、ムリヤリな介入を行う作者の姿が見えすぎ
|д゜)ソローリ
|彡サッ
???
アスカが思ってるセフレって三人ぐらいいなかったけ?
シンジとつきあえんから他の男で自慰行為って・・セフレに殺されてもおかしくないな。
セフレの心情が気になるね。正直シンジにこだわる理由がわからん作品でした。
何はともあれおつかれさまでした。
彼氏は可哀想だったな
確かにぶん殴られてもおかしかないわ
自分のエゴで相手を振り回したのだから
最後に何らかの絡みは欲しかった
まぁ俺はシンジにこだわる理由に好きだから以上を求めるのはナンセンスだとは思うけどな
何にせよ初作品とは思えない出来だった
読ませる力がある魅力的な文章と構成だなと感じたよ
何か荒れてるが気が向いたら、気軽にまた投下してくれー
ていうか埋めちゃいます?
色んな意味で投下スレとして、19はもう限界かも
>>987 まぁ、ぶちこまれてアンアン言ってるのをシンジに見られるとか、
そこまで描いてこそイタモノなんだが中途半端。
まぁ痛い事に、注目を集める以外の意味なんて無いしな
元々
時間がなかったみたいだからしょうがないけど、ラストがやけにあっさりしてた>キンモクセイ
これならマナとか先輩とか異性イタモノ要素いらなかったと思う
父親のトラウマだけで十分
というか、先輩のことをちゃんと好きになろうとしてたとかのほうがビッチっぽくならなかったかなぁと
むしろ女のほうが男より、「せっかくだから色々味見しときたい」生き物だからねぇ
994 :
647:2009/08/29(土) 08:21:56 ID:???
うわ、朝起きたらびっくり
自分でもそう感じてるとこが多かったので、身に染みる意見ありがたいです。
また次に生かしたいと思います
先輩が可哀相と言うのはその通りで、彼は一貫して不幸にもアスカを好きになっちゃった普通の人だと思います。
大学生活の中で幸せになれればいいな。
それでは梅
>>992 同意
思ってた以上にイタである必要がなかったなと
つかぶっちゃけて言ってしまえば、
シンジと付き合うのは怖いけどセックスはしたいから男を次々引っかけてました、ってだけだった
高校生でそこまで・・・?という感じ
シンジ側は詳細不明だからなんとも言えないけど
996 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/29(土) 08:28:58 ID:aCJvx7bZ
ここですっかりLASに目覚めてしまった
イタモノは七難隠すw
梅に入ったな
うめ
この手の話って、キャラがちゃんと魅力的かどうかを気にしたほうがいいよといつも思う
正直先輩が一番応援したい人
シンジは謎人間だし、アスカは、シンジと付き合い出しても、すぐあちこちで浮気するビジョンしか浮かばない
おっさんは、操ってる糸が見えすぎのお人形
1001 :
1001:
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。