落ち着いてLAS小説を投下するスレ 15

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1名無しが氏んでも代わりはいるもの
※重要※ローカルルール
☆投下神となる気構え☆
  どのような作品であれ批判を行う人間が居るという事を理解しましょう。
  こちらへ投下した結果住人に批判・叩きをされても自己責任です。
  また、批判意見の中にも正論がある事を覚えておきましょう。叩きや煽り、荒らしとは明確な違いがあります。
  ルール違反は厳禁。人の嫌がる事はしない。Webマナーは守りましょう。
★このスレはイタモノ禁止です。イタモノの定義はおすLASスレに準じます(以下引用)
 >自分が痛いと感じなくても、多くの人が痛みを感じる場合があります。
  >特に以下の3つのどれかが含まれる時には投下を控えましょう。
 >○アスカとシンジが別の異性との絡みを持つ(惹かれる、キスやセックスなど)
 >○想い合っていても、二人が離別・死別する
 >○精神的な苦痛、肉体的な苦痛の描写が激しい
  イタモノは【LAS人がイタモノでへこむスレ@本部】へお願いします。
  http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1073830497/
★荒らし、煽り、LAS叩きは無視しましょう。
  付け入るスキを与えないのには無視が一番有効です。
★LRSについてこのスレッドに書き込まないでください。
  作品論、SS論としてレイに触れるのはかまいません。その場合は表現に注意しましょう。
★議論について
  熱く語るのは良いですが、他人を不愉快にする表現はやめましょう。
  熱くなってきたときに煽りや叩きが入りやすいです。
★age sageは?
  このスレは基本的にsage進行です。メール欄に半角で「sage」と入れましょう。
★次スレは?
  基本的に>>950が次スレを建てて下さい。また、周囲の人も気をつけてあげましょう。
★その他のルールについては
  「書き込む前に」http://www.2ch.net/before.htmlに準じます
  またエヴァ板ローカルルール
  http://eva-2ch.hp.infoseek.co.jp/rule2.htmにも準じます
2名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/10(木) 20:44:54 ID:???
破ネタバレ

―――冒頭

アスカ「うぎゃあああああああああああああ!!」

マヤ「大変です!弐号機融解!」

リツコ「パイロットは?」

マヤ「駄目です。顔面及び皮膚の90%が完全に融解しました!戦闘は無理です!」

ミサト「使えないわね。現時刻をもって弐号機パイロットの登録を抹消。マリ、出番よ!」

マリ「はい!やってみます。みんなの未来は私が守ります」

ミサト「がんばってね!」

リツコ「期待してるわ」

マヤ「あなただけが頼りだわ!」

冬月「未来はあの少女に託されたな」

ゲンドウ「ああ、彼女しかいない」
3名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/10(木) 20:46:08 ID:???
前スレ
落ち着いてLAS小説を投下するスレ 14
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/eva/1136117791/


落ち着いてLAS小説を投下するスレ
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1095582454/
落ち着いてLAS小説を投下するスレ 2
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1100021323/
落ち着いてLAS小説を投下するスレ 3
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1107698754/
落ち着いてLAS小説を投下するスレ 4
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1107865408/
落ち着いてLAS小説を投下するスレ 5
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1108185837/
落ち着いてLAS小説を投下するスレ6
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1108342511/
落ち着いてLAS小説を投下するスレ7
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1108455408/
落ち着いてLAS小説を投下するスレ8
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1108642486/
落ち着いてLAS小説を投下するスレ9
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1108770163/
落ち着いてLAS小説を投下するスレ10
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1109169278/
落ち着いてLAS小説を投下するスレ 11
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1109501281/
落ち着いてLAS小説を投下するスレ 12
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1109531526/
普通のLAS小説を投下するスレ (実質13)
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1108365579/
4名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/10(木) 20:52:29 ID:???
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                  イ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ,': : イ/ l:l',: : : : : : ',
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                 /イ: : : /: :/://‐ァ‐''"_;;:='"  ,,.---  ' ,: : : ',: :ト、
                 /: : : /: ://:イ´ 二`≧、   i ノ  _,,.-   i: : : i: :l',!
                /://: :f´メ、: : /  ヽ、 ・¨ヾヽ=' ヾ=ィ'。¨ー-  ,'ノi: :ト、:l
                !/ !: ::l ,' ヘl::/    ー='"r‐、  ,,.、ヽー''"  lr'!i: :l l:l
                  !N||、ゝ、(!! i、   ´ ,.=ゝ-、 ,,.- 〉,     |:) l:/ :!'
                   !!:ヽ、`   ヽ,    ,,.=''_''=.,,    //!'
                    ヽ: ゝi1     ,,.='/エエヘ ',   ///
                     !N: :',',,_     〈⌒⌒ヽ::〉   _/¨
   r‐、_                 Vil  ヽ、    !___/   /     >>1乙!
  ,f´:::::::ヽ`ー、_              r1  ', `ヽ、  ー─  ,イ
 /:::::::::::::::ヽ: : : :`ー、_         /',:',  ',   ヽ、____//
../:::::::::::::::::::ヽ: : : : : : : : :`ー-、__,,.-i::::::':,\ ',      ,,' /
/::::::::::::::::::/ヘ: : : : : : : : : : : : : : : : ::i i:::::::::::::\\'     '' ,'/ハ
i::::::::::::::/   :i: : : : : : : : : : : : : : : : :ヽヽ:::::::::::::::\\___//i
l:::::::::r'"    :l: : : : : : : : : : : : : : : : : ::ヽヽ::::::::::::::::`ー‐ァ∧',´タi:l‐--、___
l:::::/       l: : : : : : : : : : : : : : : : : :::: :ヽヽ::::::::::::::::::://: :i l:::/ノ: : : : : : : : ̄`ー──j
5名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/10(木) 20:54:20 ID:???
           ' i        __    '、  ..i
           | |  _二  -''´ _,,,;;::.  '、 .,L、
           | |  _,,,;;::   ''"二"_   '; /'^i|
           ヽ', ",二  、  'r・‐ァ-   .'゙.}.)|
             |  '/・ァ. :,  、二..ノ     .',_,ノ   >>1乙っちゅーこっちゃ。
             .',  二ノ i  .、       .|i
             .'、    {.c.Pヘ、      !"''-,_
              '、     :L;_     ,'.i:.:. . ィ≦-'、        , -、
               ヽ,   ∠‐''ツ`    /..,':.:. /    ` ー-_..__ '/  ノ
                 ,\   '⌒    ,:' . /: :.〃      , ´, - /  /
                 / __iヽ、 ._,/_,,,,/:. : ://      /  / /    .{      
              ./´  /.:./イ⌒>'/.:.:..:.:.:.:.l   ト、   /  / '´      l      
               / i/:.:.:7/`V /.:.:.:.:.:.:. :.::.:.ヾ  \ {  .|!   /`Y´∨ヽ
             : :/ ./.:.:.:.:.:.!':::::::l/:.:.:.:.:.:.:.:.:. :.:.:.:.リー-イ丶!  i!  ノ ノ  |  }\
 r 、  i´Y     /  /:.:.:.:.:.:.:.:.l:::::::/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.:.:/   \ ゝ __ '   / /._ \
 ヽ \j |/7 /リ   {:.:.:.:.:.:.:.:.:.l_/:.:.、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./       ̄ `ー´`-´ \ ヽ
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   ノ .//      ,イ.:.:.:.:.:.:.:.O.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::./
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 ¨´  \_>一 ´/: / !.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::.{
6名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/10(木) 20:55:39 ID:???
>○アスカとシンジが別の異性との絡みを持つ(惹かれる、キスやセックスなど)

これはルール違反だそうですが、
では、同性との絡みはいいんですか
レイ×アスカ
トウジ×シンジ
とか
7名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/10(木) 20:59:21 ID:???
  {  r-}"'';                   (,- ,_'',;
__ノYv"-ァ'=;}                  ,_、Y' リ''ー
  ヽー-ハ '、                / キ}、 {"ー {⌒
  ト ハ  }      ,. -ー─-、__/_,.へノ`{  {    こ、これは>>1乙じゃなくて
 ! ! !__! ,-、_    ,,( ,          ̄    .ヽ'ー;ー'"   四つん這いなんだからね!
 |___|! !ー-ニー、;、;'""ノ';{  i__   _   /ニ=),..- '"  変な勘違いしないでよね!
 K \ヽ !`ーニ'-、{  (e 人  |    ̄ ̄/ /  /  /⌒
  \ヽ !、ヽ, "") ー-'"| !  |     /  /    .{,、/  /
    \"'ヽ'ー-"    _! ||  }   /  /      |\  /
ニ=ー- `!!!'     ''''ー'"{  |   |  {         j  ヽ /
ーーーー'          _ | ./    ',  `ー――‐"  ノ !
              三`'/.      ` ----------‐´'""
8名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/10(木) 21:07:03 ID:???
>>1
9名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/10(木) 21:45:07 ID:???
レイ「キス…………」
アスカ「あんたさっきから何真剣に読んでるわけ?……なになに、『特集・オトナのキス事情』?なにコレぇ!?」
レイ「キスって、何なのかしら」
アスカ「ハァ?キスはキスでしょ。男女がブチューっとするやつよ」
レイ「一時的な肉体的接触……。それは肩と肩が触れ合ったことと何が違うの?」
アスカ「あんたバカぁ?キスっていうのはねぇ……………、えと……、」
レイ「わからないのね」
アスカ「わ、悪かったわね!」
レイ「してみましょうか」
アスカ「ハァ?」
レイ「あなたと私で、試してみましょうか」
アスカ「え、ちょ、な……何?」
レイ「こうやって手が触れるのと、何が違うのか知りたいわ。
   ……でも女同士ではダメなのかしら」
アスカ「さ、さぁ?……ってちょっとアンタ本気!?」
レイ「怖いの?」
アスカ「ちが、そうじゃなくて………、こ、怖くなんかないわよ!」
レイ「じゃあ、するわ」
アスカ「ま、待って!……えと、……は、鼻息がこそばゆいから息はしないでよねっ……」
レイ「わかったわ」
10名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/10(木) 21:49:13 ID:???
>>6
それは該当スレへ
ここはあくまで男女カプスレ
11名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/10(木) 21:56:31 ID:???
>>9
そういうのはこっちに投下してやってくれ
職人が今居ないから住人も喜ぶだろうし

ダメよファースト!…女同士でこんなこと…あっ 4th
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/eva/1192072560/
12名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/10(木) 23:58:17 ID:???
>>1
13名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/11(金) 00:24:22 ID:???
「シンジ、舌出して」
「え?」
「舌よ舌。ベロ。べーって」
「こ、こう?(べー」
ガリッ
「いひゃ!?あ、あふは!??」
「へっへー!キスされると思ったでしょ。アンタとべろちゅーなんて死んでもゴメンよ!」
「・・・(あまり変わらないんじゃ)」
14名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/11(金) 07:30:04 ID:???
>>1
乙!
15名無し掌篇:2008/07/11(金) 07:38:15 ID:???
>>1乙!
新スレ記念にひとつ投下しますよ

NO.3
プールと坂とアスカ

惣流アスカの日課は僕が作った食事、僕が買ってきたスウィーツを食べること、
綾波から借りた本を読書すること、そして水泳だ。
僕はプールから10メートルは離れたところにある休息所でオレンジジュースを
飲んでいる。
このプールは市営のプールで予算が余っているらしくそこいらの市営に比べて格
段に立派な造りをしていた。
アスカは習慣のように毎日々々、50メートルプール10往復を必ずクロールで
泳いだ。
アスカはピッチリとした、競泳用のかなり本格的な水着を使っていた。
それでもアスカが綺麗に見えないとかそんなことはなく、むしろ凛々しく見えて
かなりかっこいい。
17荒野掌篇2:2008/07/11(金) 07:41:28 ID:???

そして宿命的な運命のように自分で決めた水泳ノルマを果たすとプールから上が
って、僕が待っていたテーブルの向かいに座る。
アスカが水分補給に飲むのは決まったメーカーの決まった清涼飲料水だ。
そんなところまで習慣化している。
僕は前になぜ徹底的に水泳を習慣化するのかときいてみたことがある。
その時のアスカの答えは、なにか一つ習慣を作れば日本みたいな効率的社会で有
利だとかなんとか、まあそういうことらしい。
だが、そのあとに聞いた僕を連れてきているのはなぜか、という問いには口をつ
ぐんでいたけれど。

「シンジも泳げばいいのに。」
「僕が泳ぎ下手なの知ってるじゃないか。」と僕はタオルを渡しながら言った。
「下手でも良いのよ。練習すればいいんだから。」
「じゃあ、アスカがおしえてくれるっていうの?」
18荒野掌篇3:2008/07/11(金) 07:42:46 ID:???

「うぅん……解らないわ。途中でキレちゃうかも知れないし。」
確かにそれはあるかもしれない。
僕は彼女よりもずっとどんくさいのだ。

 ◆

ある夕日の綺麗な帰り道だった。
その日もアスカはいつもと変わらず50メートルプールを10往復泳ぎ、決まっ
たメーカーの決まった清涼飲料水を飲んだ。
そしていつもと同じように僕が漕ぐ自転車の荷台に座っていた。

「ねえシンジ?」
「なに?」
アスカの柔らかい体が僕の体にぴたりと密着していた。
僕はその感触を意識しないようにしていたが、感じない訳にはいかなかった。
19荒野掌篇4:2008/07/11(金) 07:43:57 ID:???

「今からあたし、変なこと言うけど、訊いたりしないでよ。なにも考えないで、
聞いたらすぐ忘れて、あたしも忘れるから。自転車も漕ぎ続けて。」
僕は言われたとおりにした。
「あんたが好きだとおもう。」
道はちょうど下り道で、僕はブレーキレバーを軽く握っていた。
「あんたが好き。」
僕は、後ろを見たかったけれど出来なかった。
転びそうになったからだ。
「好き……。」
アスカの体が、胸が、腕が、僕の全身にぴったりと張り付いていた。
坂を下ると、僕達が住むマンションはすぐだ。
「忘れてよ。」とアスカは言った。「忘れてよ。」


20荒野掌篇5:2008/07/11(金) 07:44:51 ID:???

「出来るはずないじゃないか!」
気が付くと、僕は坂の途中でブレーキを目一杯掛けていた。
ちょうど『宮坂』という表札が目に入った。
「漕いだら?」「でもッ!」「漕いでよ、お願いだから……。」僕には、アスカ
の声が震えているように聞こえた。まるで子リスのように。
僕は逆らわずにペダルを踏んだ。
自転車は滑らかに滑り出す。僕達とは、正反対だ。
アスカの体は、一層強く、僕の体に密着した。
「いいの、あたしはこのままで、この生温いのでいいのよ。」
僕のワイシャツは湿っているだろう。アスカは泣いているだろう。
だけど僕は言えない。
言えない、伝えられない。
伝えられるわけないじゃないか。僕なんか。
だけどアスカは不安なんだ。『嫌い』

僕はその時、唐突に理解した。
アスカは普遍のものがほしかったんだ。
変わることがない、僕との繋がりが、習慣が。

アスカアスカアスカ。
好きだと叫びたい。大声で叫びたい。
でも、僕とアスカが釣り合わないことは解ってる。僕にはアスカを幸せにする自信がない。

自転車は坂を下りきった。

「ありがとう。」僕にはそれしか言えなかった。


21掌篇名無し:2008/07/11(金) 07:46:09 ID:???
甘酸っぱさをイメージしますた
22名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/11(金) 13:17:15 ID:???
>>21
GJ
23名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/12(土) 21:51:01 ID:???
GJ!だ。
24名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/14(月) 02:13:59 ID:???
甘酸っぱいのぅ
GJ!!
25名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/22(火) 11:50:01 ID:???
保守
26名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 23:20:03 ID:???
「いや、【おやすみなさい】とかぐらいで良いんじゃないか?」
「ワイもケンスケの意見に賛成やな」

眼鏡を掛けた少年はきょとんとした顔で、さも当然なように言う。
普段着がジャージ、と一風変わったセンスを持っている関西弁の少年もその言葉に同意見。
けれども、そんな友人等から頂いた有難い意見も、問題を抱えているひ弱そうな少年にとっては「んー」と唸るばかりで納得がいくものではないらしい。

「おいおい、何もそんなに真剣に悩むことないだろ?」
「かぁ〜、ほんっま難儀なやっちゃなぁ〜」

その態度に2人は大きな溜め息を吐いてしまう。
2人が溜め息を吐く理由も判らないでもない。けれど、自分からしてみればどうしても簡単な問題ではすまされないのだ。
まだまだ「んー」と唸り続ける少年。
そんな少年が不器用だということを良く知っている2人。
やれやれ、と困った表情を出しながらも、共通の親友である少年に更なるアドバイスを授ける。

「だったら―――――」



「だったら、【今、何しているの?】って聞いてみれば?」

ピンク色の可愛らしいパジャマを着込んだ少女が、何時ものお下げから髪を下ろし丁寧にブラッシングしながら更なるアドバイス。
確かにもう一声欲しいとは思うのだが、それではあまりにも他人行儀過ぎるのではないか、と問題を抱えている紅髪の少女は
大きな猿の人形を抱えながら「んー」と唸るばかりで納得がいかないらしい。

「それも駄目?」

駄目ってわけじゃあない。でも良いって訳でもないらしい。
「OK」サインを出せる唯一の存在、己の心が「OK」と言わないのだからそういうことなのだ。

「んー、困ったなぁ……」
27名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 23:20:46 ID:???
ことり、と机の上にブラシを置いて紅髪の少女が腰掛けているベッドの隣に座る。
「んー」と猿の人形を抱えながら悩み続ける少女。
そんな少女が不器用だということを良くしっている元・お下げの少女。
ふふっ、と柔らかく優しい笑みを零しながら、親友である少女に更なるアドバイスを授ける。

「それじゃあ――――」



「それじゃあ、素直な気持ちを伝えれば? 【大好き】だとか」

マグカップに入ったコーヒーを飲み下しながら、何時も白衣を着ている女性が更なるアドバイス。ちなみに今は、猫がプリントされたパジャマを着用。
それが一番ベストなのだろうが、それではあまりにも直球ストレート過ぎてのはないか、と問題を抱えているビール好きの女性は
机に突っ伏したまま「んー」と唸るばかりで納得がいかないらしい。

「それも違うの?」

突っ伏したまま頭だけを上下に振り肯定の合図。
良い年齢だと言うのに何時までもびきようだということを良く知っている猫好きな女性。
はぁ、と小さく溜め息を吐き、呆れ顔ながらも更なるアドバイスを授ける。



「―――とは思うものの、これ以上良い案が思い浮かばないよなぁ」
「あったとしてもシンジが納得する答えが出るとは思えんしのぉ。それに―――」

「それにね、アスカ。別にそんなに難しく考える必要ないんじゃない?
 何時も通りの会話をするみたいな感じの内容で良いと思うよ。だから―――」

「だから、ここは素直にさっさと送っちゃいなさい」
28名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 23:21:17 ID:???
「んー」と同時刻に唸り続ける3人。
そんな困った様子を見せられたそれぞれの友人等は、更なる溜め息を吐いたり、苦笑したり、更なる呆れ顔になったり三者三様。
しかし、次に発せられる内容はどこも一緒だった。

「「「「何でメール送るだけでそんなに困るわけ?(何でメール送るだけでそない困るねん?)」」」」

そんな疑問に対する回答はたった1つ。

「「「だって照れ臭いし、何だか恥ずかしいもん……」」」


それぞれの友人宅でお泊り会。
そんな日の葛城家の面々。


「ほんっと今更ながらの発言ね」
「あによぉ、リツコだってレイにメール送ることになれば判るわよ」
「貴女と違うんだから、そうならないわよ」
「じゃあ、今送ってみなさいよ」
「はいはい……」
「おっ、最近素直よねぇ、リツコって」
「…………」
「どったの? 打たないの?」
「ミサト」
「ん?」
「何て送れば良いの?」
「ほれ、みたことか」

プラス愉快な仲間達。
29名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 23:23:41 ID:???
かるーいやつを。リハビリ、リハビリ。

しかし、LASじゃなさすぎるのがどうしたものか。
どっか移った方が良さそうならそっち行く。
30名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 23:29:59 ID:???
ぃや、日常って感じがして自分は好きだ
LASつっても様々な解釈があっても良いと思うが
GJ
31名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/24(木) 02:45:53 ID:???
LAS+和みな感じでおれは好きだぞw
GJ!
32名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/24(木) 22:43:25 ID:???
良かった
おっつ!
33名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/26(土) 14:43:20 ID:???
面白かったよ!お疲れ様
34名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/07(木) 13:36:09 ID:???
ほす
35名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/12(火) 02:24:29 ID:???
保守
36パッチン:2008/08/17(日) 22:25:40 ID:???
2025年
ネルフが超法規的特務機関から、科学研究所となった。
僕碇シンジが24歳になり、ネルフ職員となった。
そして、惣流アスカラングレーが『碇アスカ』…つまり僕の奥様になった。
そんな、ある日のネルフ研究所にて

『電話あい』

「碇く〜ん、お電話入りましたよ」
「あっハイ!」
デスク上の書類に目を通していた僕は一旦その作業を中断し、受話器を取る。
その様子を楽しそうに眺めている、電話を教えてくれた先輩の女性研究員さん。
「ふふ、奥さんからですよ♪ごゆっくりね」
「えっ…アスカから、ですか…」
思わずボタンに伸ばした手を止めてしまう
が、さすがに出ないワケにもいかないので、「はぁ…」という溜め息と共に、電話を繋いだ。

「もしもし?」
『あ、シンジ…。今大丈夫よね…?』

受話器の向こうから聞こえるスゴく聞き慣れた声。
「うん、一応大丈夫だけどさ。会社の電話で話すのって恥ずかしいから、出来ればやめてほしい…です」
そう言いながら僕は、上司であり元保護者のミサト課長を見やる。

ほら…ニタニタ笑いながら、両手でハートマークなんか作ってる。

『し、仕方ないでしょ!ネルフって携帯の電波入らないんだからさぁ!』
37パッチン:2008/08/17(日) 22:27:11 ID:???
「で?用件は何なの?」
ミサトさんからの好奇の視線にグッと耐えながら、僕は受話器を両手で握りしめてコソコソと話す。
『うん。夕飯は何がいいかな?・・・とか思ったりして…』

「は?」

僕は思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
「ま、まさかそんな理由で電話かけてきたの?」
『え!あ…いや…』
リビングで、子機片手に焦っているアスカが目に浮かぶ。
『それだけじゃないわよバカ!そのぉ…えっと…』
「・・・今日カレーでいいよ。バイバイ」
そう言うと、僕は通話終了のボタンに手をかける。
『ま、待ちなさいよ!切っちゃダメ!
あっ!今日ミライが幼稚園で粘土作ったらしいのよ!』
「その話は夜、ミライ本人から直接聞くからさ。じゃあバイバイ」
僕は再び通話終了ボタンに手をかける。
『ヤダっ!切っちゃダメって言ってるでしょぉ!!』
「もぉ…だって用事無いんだろ」
もう一度僕は、ミサトさんの方をチラリと見る。

すると、先程までコチラを眺めてニタニタしていたミサトさんは、
何故か今はイヤホンを耳にぶら下げて、両手で顔を覆うようにして必死に笑いを堪えていた…。

・・・間違いなく盗聴されている。
38パッチン:2008/08/17(日) 22:28:42 ID:???
『アンタは今日何かあった?』
「イヤ何かはあるけど、会社の電話で話さなくていいでしょ…」

『・・・ねぇ。・・・そんなにアタシと話すのイヤ?』

そんな弱々しい言葉の後に、ズズッという鼻をすする音が聞こえる…。
「ちょっ、ちょっと泣くことないだろ」
『だって、すんごい鬱陶しそうな感じじゃないのよぉ…
ミライもお昼寝中でヒック…アタシすっごい寂しかっエック…たんだからぁ…』
「ぷくくっ!」
完全に泣き虫モードに突入し、変な泣き癖までついてきたアスカ。
そして、そんな彼女の意外な一面を垣間聞いてしまったミサトさんは、デスク下の足をバタバタさせながら、声を出して笑うのを必死で堪えている。
「わ、わかったよ。わかったから、とりあえず一旦電話切っていい?談話室の公衆電話から、かけ直すから…」
『やっヤダぁ、ダメよダメ!!シンジ絶対電話かけない気でしょ!!
大体なんでソコじゃダメなのよ!談話室だって人多いでしょぉ!』
「だ、だって…」
まさか盗聴されてるなどと言えるワケが無いので、僕はそのまま押し黙ってしまう。

当の盗聴犯は、逆探知してる刑事さんのように、話を伸ばすジェスチャーなんかを僕にして、凄く楽しそうだ。
39パッチン:2008/08/17(日) 22:30:25 ID:???
『ね、ねぇ…もしかしてアタシからの電話が不都合な理由とかが
・・・あるの?』
「え…」
自分がかけた電話を迷惑そうにあしらう僕に、アスカは少しイラついてきたのか、今度はダークサイドに片足入れたような声で僕に問いかけてきた。

「いや、僕は会社でプライベートの電話はちょっと…と、思って」
『じゃあさっきの女誰よ!!』

うわぁ、かなりキテる…。

「さ、さっきのは先輩の研究員さんだよ」
『なによその女!!いっつもアンタの近くにいるの!?
まさか、さっきまでソイツと乳繰り合ってたんじゃないんでしょうね!!』
その言葉と同時に、メキメキッという破壊的な音が受話器から聞こえた。
ヤバい…このままでは子機がアスカの握力に耐えられない…!
『電話出た時だって「あっ碇君の奥さんですね。今代わりますから、ちょっと待ってて下さい」
とか何とか言っちゃって!どんだけヤラシイ女なのよソイツ!!』
さっきの応対内容のどこにヤラシさが含まれていたのかがよくわからないが、とにかくアスカが暴走モードに入ったことは、ハッキリとわかった。

一方そんな修羅場を盗聴しているミサトさんは、『えらやっちゃ♪えらやっちゃ♪』と呑気に踊っている。
40パッチン:2008/08/17(日) 22:32:10 ID:???
このままでは通話を終わらせるどころか、僕の人生すら終わらせかねない…。

僕はヒステリック満載の声を発し続ける受話器を耳にあてながら、コソコソと自分のデスク下に入っていく。
これで、課内の人達には僕の声が聞こえないハズ。
・・・まあ盗聴してる人には丸聞こえだけど、この際仕方ない。

「ねぇアスカ…?」
『なによ浮気不倫の馬鹿男!!』
「あ、愛してるよ…世界で一番」
『ぅあ!?』

10年一緒にいるから知ってる、アスカが一番大好きな言葉。

「アスカは僕のこと嫌いになったの?」
『あ、アンタ馬鹿ぁ!?』

・・・なんで僕、職場でこんな会話してるんだろ…

「ねぇ、僕がアスカ以外の人とそんな関係になるようなヤツだと思ったの?アスカは僕のこと信じてないの?」
『だ、だってアタシっ!アンタが…その…』
「心配してくれたんだよね?」
『あ、いやっ!その…

・・・うん』

机の下という世界の外から「キャーキャー背中が痒いわ〜んっ♪」などの声が聞こえるが、ここはグッと耐える。

「落ち着いた?」
『うん、あのぉ疑って・・・その・・・』
「ごめんね」
『う、うんっ!アタシも…ごめんね』
41パッチン:2008/08/17(日) 22:33:47 ID:???
アスカもだいぶ落ち着いたようなので、僕はゆっくりデスクから這い出し、自分の椅子に座った。
さっきから急にデスク下に潜り込んだり、出てきたりと、かなりおかしな行動をとっていた僕だったが、職員の人達(盗聴犯以外)は全く気にした様子が無く、自分の仕事に各自没頭している。

僕そんなに影薄いのかな?

『…ねぇ、ねぇシンジ?』
「ん?なに?」
ちょっと気持ちが凹みかけていた僕だったけど、やっぱりアスカの声を聞くと少し安心してしまう。

きっとこういうのを家族っていうんだろうね。

『なんかありがとね…アタシちょっと馬鹿だったわ』
「ううん、もういいよ。わかってくれたんならさ」
『・・・・・』
スッキリした様子のアスカだったけど、今度は何故か黙り込んでしまう。
ホントにこの人は何を考えてるのかわからない…
『・・・ねぇ、明日休みだよね?』
「ん?まあね」
『そっか…休みなんだよね』
電話のむこう側で、なにか言いたげにモゴモゴしてるアスカ。

でもこちら側はこちら側で変な雰囲気。
だって、課内の職員さんみんなが無言で机に向かっていて、喋ってるのは僕だけという状況なわけで・・・。
さすがにそろそろ終わらせた方がいいかな…?
42パッチン:2008/08/17(日) 22:35:37 ID:???
「ねぇ、そろそろ…」
『わ、わかってるわよ!今言うから、ちょっと待ちなさいよ!
その…明日休みなのよね?』
「そうだよ。さっきも言ったじゃないか」
「ほほほっ…それもそうね」
「まさか、またどっか行きたいの?この前遊園地行ったばかりなのに」
「そ、そうじゃなくてぇ…。簡単に言うと…」
「・・・なに?」
「久しぶりにさぁ…」
「・・・ん?」
「せ…!・・・その…せせっ…!」

静まり返った課内。
僕の耳に入るのは、いつもよりオドオドしたアスカの声だけだったのだが…
次のアスカの一言によって

「せせせ?」

次の一言によって・・・

「・・・せ、セックスしない?」
「ば、馬鹿…!」

ミサトさんに盗聴されてることに気が焦る僕の声をかき消すように…


「「「「「「うおーーーーー!!!!」」」」」」「「「「「「きゃーーーーー!!!!」」」」」」


・・・課内全体がお祭り騒ぎとなった
43パッチン:2008/08/17(日) 22:38:21 ID:???
「シンジ君やるじゃないか!!」
「今夜は寝かさないよ?ってか!?おい」
「ふ、不潔よシンジ君!!」

「え…?え!!」
いきなりの課内丸ごと大フィーバーに、僕は目を白黒させながら周りを見渡す。
・・・そして見えたのは、ハシャぎ倒す先輩職員さん達の耳にぶら下がるイヤホン。

ま、まさかっ!?

『ちょっと何よ!後ろの騒ぎは!』
「ご、ごめんアスカ、電話が…その…盗聴されてたみたい…」

まさかの課内全員に・・・

『な゛っ…!?』
あまりのことに絶句するアスカ。受話器の向こうで彼女の顔が赤くなっていく音が聞こえた気がした。
「アスカ〜?今晩は可愛がってもらっちゃうのよぉん♪」
僕の背後からニュ〜っと顔を出して、ミサトさんが大声を出す。
『み、ミサトまで聞いてたの!?』
「ごめん…」
『バカ!信じらんないわよ!なんでアンタは・・・』
『ママぁ、声おっきいよ』
『み、ミライ!起きてたの!?』
あぁ・・・もう、なにがなんやら・・・
『ねぇセックスってなに?』
『あ、アンタいつから起きてたのよ!!
とりあえずシンジ!アンタ帰って来たら酷いんだから、覚悟しときなさいよね!!』
「ちょっ、ちょっと待っ・・・」

ガチャン!!
44パッチン:2008/08/17(日) 22:39:32 ID:???
「あぁ・・・」

電話がきれた後も祭りが終わらない課内で、1人死んだような目で受話器を下ろす僕。
「あら〜どうしたのよシンちゃん?せっかくアスカからのお誘いがあったのに♪」
「うぅ…」
職場のどこに隠していたのか、何故かえびちゅを片手に装備し、ガハハと笑うミサトさんの声。
その声から逃れるように僕は両手で頭を抱える。

ぷるるるっ

と、その時、僕のデスクの電話が内線ランプを点滅させながら騒ぎ始めた。
「あ…?」
僕は一瞬ためらいながら、再びゆっくりと受話器を手に取った。
聞こえてきたのは、アスカの声とは真逆をいくように低い声。

『シンジか』
「と、父さん!」
『ミライは俺が預かるから、安心して今日は早退しろ』
「は…?」
『次は男の子がいいな。一姫二太郎ともいうしな』
「ま、まさか父さんも盗聴してたのかよ!?」
『問題ない』
「なにがだよぉ!!」

その日、仕事を早退した僕がネルフとアスカのご希望に答える『お仕事』をしたのは、いうまでもないことでした…。

おわり
45名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/17(日) 23:05:20 ID:???
バロスwwwwwwwwwwwwwww
パッチンさんgj!!!!!!!
46名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/18(月) 02:43:07 ID:???
アスカ可愛い杉wwww
超GJ!!
47名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/18(月) 04:16:54 ID:???
この時間なのに声出して笑っちまったw
GJです
48名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/18(月) 05:56:29 ID:???
すげー面白かったw
49名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/18(月) 09:25:37 ID:???
なんつーか、さらに腕を上げたなw
思わず頬が緩んだよw
GJ!
50名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/18(月) 10:39:28 ID:???
僕は幸せです
51名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/22(金) 17:40:14 ID:???
今更感はあるなw
52名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/23(土) 22:31:10 ID:???
ニヤニヤが止まらないw
53名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/31(日) 20:01:09 ID:???
保守☆
54名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/11(木) 13:17:20 ID:???
保守
55名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/22(月) 08:40:45 ID:???
保守
56名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/26(金) 09:26:21 ID:???
まだ子供だったときに隣の子にプロポーズしたことがあるんだけど
そのネタで小学校で「あいつが私にwぷぷぷ」って6年馬鹿にされ、
中学校で3年馬鹿にされ、高校でも3年馬鹿にされ



今だに夕食の時に馬鹿にされる
57名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/26(金) 13:25:12 ID:???
>56
ヨイ!
58名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/27(土) 16:35:43 ID:???
>>56
ええ話だなぁ
59名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/01(水) 02:27:35 ID:4y6et1Td
このコピペいいよね
誰かこれで作ってくれないか
60名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/01(水) 03:44:38 ID:???
「ハァ?アタシがアンタなんかと結婚?バッカじゃないのw」
そう言ってアスカは、僕が五日間掛けてようやく考えた告白の言葉を、
いとも簡単に一蹴してみせた。中学二年のよく晴れた日だった。
それから高校に進み三年間、大学に進み四年間。
その間何度もその事で馬鹿にされた。気持ち悪い、って。
大学を出る頃にはもう、馬鹿にされても何とも思わなくなっていた。






でも子供の前でその話をするのは、流石にやめてほしいなあ。
61名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/01(水) 03:47:12 ID:???
流石に僕もキレて(ry
エンドも考えたけどやめた。やめとけって谷口が言ってたから
62名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/01(水) 07:52:04 ID:???
谷口GJ
63名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/02(木) 00:43:09 ID:???
気持ち悪い、も効果的に使われていてGJです。
乙でした。
64名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/12(日) 23:30:00 ID:???
保守
65コピ改:2008/10/13(月) 19:14:22 ID:???
僕の新しい家に女の子が越してきたのは中2の夏休みだった。

彼女の母親は本当の母親ではなかった。
お母さんは僕の目から見てもとても若かったのを覚えている。
学校でも同じクラスになって僕と彼女は仲良くなった。
彼女は勝ち気な性格ではあったが、その分女子の友達も少なかった。
音楽ばかり聞いて親しい友人の少なかった僕と彼女はお互いの部屋に遊びに行くほど仲良くなった。

そのうち彼女は愚痴を言うようになった。
だいたいは僕の内罰的な生き方のこと。
同じ年ごろの男子はまともな男がいないこと。
すきな年上の男の人ができたけどその人には恋人もいて、やっぱり自分を見てくれないこと。
最初は僕のほうがよくしゃべっていたけれど、この頃からは一方的に彼女が話し僕が聴くようになっていた。

66名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/13(月) 19:16:18 ID:???
ある日を境に彼女は心を閉ざした。
戦いで戦果を挙げられなかったのが理由だ。
プライドの高い彼女は傷付いたのだろう。
彼女は僕に会うたびに「あんたなんか大嫌い」といった。
「みんな大嫌い」といった。
そして現実味のない復讐や僕の悪口を延々と話し続けた。
僕はただ黙って相槌を打っていた。
しばらくして彼女の素行が荒れ始めた。
夜遅くまで帰ってこないようになった。
家庭環境も悪化し、深夜にいきなり僕と喧嘩が始まったりもした。
一度は監視の黒服の人が彼女を迎えにやってきた。この頃から近所と折り合いが悪くなり、
中傷ビラや落書きなどの悪質な嫌がらせが僕らの家に行われた。
一度は郵便受けに刻んだ猫が入っていた。
僕も綾波に彼女と付き合うのをやめるよう言われた。

67名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/13(月) 19:39:23 ID:???
ある日彼女は部屋に引きこもるようになった。

僕は彼女の姿を見ることがめっきり減った。
めっきりふけこんだミサトさんに話を聞くと昼は絶対に出てこない。
ご飯は部屋の前においていく。
深夜になるとトイレに行くときだけ出てくる。
そんな生活を送っているようだ。
僕は久しぶりに彼女と話をしようとした。


彼女は僕に会うのを拒絶した。
扉越しに帰れと怒鳴った。
何を話しても黙っていた。
一度なんかはドアがあいたと思ったら味噌汁をかけられた。
ちらりと見えた彼女はげっそりと青白くやつれていた。
絞った雑巾のようだった。
僕は毎日彼女に会いに行った。
毎日彼女の部屋の扉の前に立った。
68名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/13(月) 19:40:32 ID:???
そのうち彼女は扉越しに話をするようになった。
母親のために頑張って認めてもらおうとしたこと
世界を守る世界一の存在に自分が選ばれたこと
嬉しくて一番に母親に伝えようと息を切らして走ったこと
扉の先で母親が首を括っていたこと
その顔が酷く嬉しそうだったこと
その嬉しそうな顔が嫌だったこと
一人で生きて行こうときめたこと
君は勝手に喋り続け、僕は相槌を打つ。
意見を求められたときはなるべく無難な意見を言う。

そのうち彼女は部屋を出た。
アルバイトも始めた。
だんだん性格も明るくなり始めた。
ミサトさんから泣きながらお礼を言われた。

69名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/13(月) 19:41:28 ID:???
ある日、彼女は近所の団地から飛び降りた。
下が植え込みだったこととたいした高さじゃなかったために一命は取り留めたが
脊髄が傷ついたために今後の人生は車椅子のお世話になるそうだ。
ベッドに横になった彼女はなきながら謝った。
ミサトさんや僕に迷惑をかけていたのがすごく申し訳なかったから飛び降りたんだそうだ。
泣いている彼女を慰めた。
寝転んだまま泣いている人を慰めるのは難しいと思った。
慰めながら彼女にプロポーズした。
結婚を前提に付き合ってくれるように頼んだ。
彼女は全身の水分を絞りつくすようにして泣きながら
「本気?あたしでいいの?本当にいいの?」
と何度も聞き返した。
訊かれる度にうなづき返した。
君のことがずっと好きだった。
顔をゆがめて僕の悪口を言っていたときも
夜遅くまで帰って来ずに荒れていたときも
一方的に愚痴をしゃべり続けていたときも
君が泣きながらお母さんが自殺したことを告白したときも
引きこもって別人のようにやせたときも
小さく震える背中に反応がないことがわかっていて「良かったね」と声をかけたときも
加持さんがもういないことを伝えたときも
「うそ…」と力なく呟いたときも
どんな言葉で切り裂けば一番効果的だろうかと、ビラの文面を考えていたときも
家のポストに入れる猫を刻んでいたときも
足の感覚を失い白いベッドに飲み込まれそうに小さく横たわっている今も
ずっと君が好きだ。
これで完璧に僕は全部君だけの「もの」だ。

僕たち今度結婚します。
70名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/13(月) 19:44:56 ID:???
GJ

>家のポストに入れる猫を刻んでいたときも
こえーw
71名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/13(月) 20:40:12 ID:???
病んでいたのはシンジの方か…
こえー
72名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/14(火) 01:29:54 ID:???
これは怖いw
73名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/15(水) 00:24:34 ID:???
>>71
一番病んでるのは、作者だろww
74名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/15(水) 16:17:41 ID:???
>>73
作者というよりコピペの元がだな
75名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/16(木) 03:15:11 ID:???
こういうのも好きよ
でも立場逆にしてアスカ→シンジにしたほうがそれっぽいな
76名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/30(木) 17:17:37 ID:???
街保守
77名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/30(木) 19:36:05 ID:???
>>75
どうかな
高いプライドを砕いて砕いて磨り潰して
追い詰める(られる)過程がシンジ(アスカ)のキャラにぴったり・・・
いやなんでもない
78名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/01(土) 10:27:54 ID:???
79名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/02(日) 19:08:56 ID:???
シンジならありうるな
80名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/02(日) 22:12:27 ID:???
ズバリ変態としか思えないよ。病んでます。
81名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/03(月) 07:48:44 ID:???
>>79
usero
82名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/04(火) 09:44:24 ID:???
元ネタのコピペってどんなの?
83名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/08(土) 22:36:39 ID:???
■質問
[アスカの穴] の [投稿小説] ページが見られなくなっているのですが、
何かご存知の方はいらっしゃいますでしょうか?
EvaWiki を読むと、「ぶたのしっぽ」 という方が現在管理されているようですが……。

アスカの穴
http://www.angelfire.com/droid/psmbarahxoyu/

投稿小説
http://www.usiwakamaru.or.jp/~mshimizu/asuka/ss/asuka_ss_index.html

アスカの穴 - EvaWiki
http://evemedia.org/evawiki/%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%81%AE%E7%A9%B4
84名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/09(日) 23:52:40 ID:???
保守
85名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/10(月) 01:29:35 ID:???
>>83
すれちだと思うけど
あーかいぶで見れない?
86名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/10(月) 05:54:10 ID:???
>>85
Internet Archive Wayback Machine で見つかりました!
今、サイトを丸ごと保存できるソフトを探しているところです。

すれちでしたか。申し訳ありません。
EVA 板は初めてで、どこで質問すれば良いかよくわからなかったので…。
よろしければ、質問に適切なスレをご紹介していただけないでしょうか?
87名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/10(月) 12:13:17 ID:???
普通はおすすめLAS小説スレとか落ち着いてLASを語るスレだとおもうよ
88名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/13(木) 10:24:53 ID:???
職人さん待ち
89名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/18(火) 00:16:39 ID:???
そろそろ保守っておこうか
90名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/23(日) 01:27:19 ID:???
あっ保守っておこか
91名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/29(土) 17:31:32 ID:???
誕生日SSをまつ
92名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/29(土) 19:35:27 ID:Vfmz3Toi
>>91 短くて良いなら書いてみるよ
--
最近、シンジの様子が落ち着かない。
「あ、それ食べちゃ駄目だよ。い、いや、僕なりの献立の組み立てがあるからさ」
ニンジンジャガイモ、お野菜にお肉。そんな普通の材料に混じって明らかに派手な物が増えていく冷蔵庫の中身。
学生生活に加えて、エヴァパイロットとしてスクランブル発進する忙しい日々の合間。
いそいそと材料を買い集める涙ぐましいシンジの努力。

加えて、うっかり覗いてしまった襖の奥。
クラッカーに紙テープなどのパーティグッズに、プレゼントの包み紙。
それは形ですぐ判る、以前にシンジに告げた欲しかったアレ。これで隠してるつもりかしら?

「ねえ、二人ともお願い。せっかくの……え、あ、やあアスカ、べ、別になんでもないんだ。アハハ」
この下手くそ、ごまかし方がなってない。
内緒話すら内緒にできないのかしら、あのバカ。
三バカの二人なんか来て貰っても嬉しくないわよ。

「ねえ、アスカ。来週の日曜日、空いてる?ちょっと、お願いが……」
はい、来ました。作戦遂行はやっぱりヒカリの役目ね?
そうねえ。こういうサプライズの手違いなんて、目も当てられないほど悲惨だもんね。

心配しないで、日曜日はちゃんと明けておくから。
ヒカリに、なんで連れ回された挙げ句に自分の住んでるマンションが終着地なのか、なんて聞かないから。
恐らくみんなで一緒に待ってるんだろうけど、ちゃんとアタシは判ってるから。
アンタ一人が暗躍して手はずを整えてくれたことを。

さ、私が扉を開ければいいのね? 深呼吸して驚く準備。
上手くやるわよ。アンタほど下手じゃないから、こういうの。
はい、ワン、トゥー、スリー……。 
(完)
93名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/29(土) 19:36:21 ID:???
sage忘れた。ごめ
94名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/29(土) 19:42:06 ID:???
>>92
おk。短くても良いのでもうあと2〜30本ほど連投キボ
95名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/29(土) 20:46:17 ID:???
>>94 そんなに無理っすよw まあ、あと一本ぐらいで。
--
「へ、デート? アスカと?」
「あんた、もうすぐ誕生日でしょ。アタシがデートしてあげる」
時々、アスカという女の子が判らなくなる。普段は何のかんのと言っておきながら。
「どーせ、バカシンジのことだから女の子とデートなんかしたことないんでしょ。アハハ」
やっぱり、これだよ。なんだかなあ、アスカってばどこまで本気なんだろう。

「ソフトクリーム片手で遊園地を歩きながら今更なにいってんの? 立派にデートしてるじゃない」
い、いや、アスカ。遊園地だからデートっていうことでも無いと思うんだけど。
「ん? シンジ、腕組む? いいわよ、デートなんだから」
いや、お義理で腕組んで貰ったって嬉しくないし。
「ああ? 遊園地に来ておいてジェットコースター乗らないつもり? 男のくせにびびってんじゃないわよ!」
ほらほら、アスカ自身がめいっぱい楽しんでるし。
アスカってば、本気なのかな。デートするってこと、アスカにとっては何でもないことなのか、それとも……。

『使徒バンバンビガロ接近! 二人ともすぐ戻って!』
はい、ミサトさんの呼び出しでデート終了。お陰で僕の戸惑いもシャットアウトしてくれました。
「デートがふいになっちゃったわね。アハハ」
と笑うアスカは至って陽気。今日も元気にLCLに浸かるその様子からして残念がってるようでも、無いけれど。
そして、使徒殲滅完了。お疲れ様。

「シンジ、待ちなさい……ん、ほら、こうすりゃ使徒殲滅もデートイベントっぽくなったでしょ?」
そんなことを言いながら僕のほっぺにチュッ……ちょ、ちょっと、アスカ。君はどこまで本気で、その。
「ほらほら、使徒殲滅の後はラーメンって決めたでしょ! ファーストもさっさと来なさいってば!」

……なんだかな。
いや、まあ別にいいんだけどね。やれやれ。

(完) はい、お粗末。
96名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/30(日) 00:10:39 ID:???
>>92 >>95
GJ!
なんか、アスカらしい感じだね( ^ω^ )
97名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/30(日) 02:04:28 ID:???
よいアスカさんでした
戸惑うシンジくんもよかった
98名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/30(日) 10:37:35 ID:???
>>91

「もうすぐ、アンタの誕生日だったわね」
サードインパクト後の瓦礫の下で、
アスカはボソリと呟いた。

紅い月が浮かぶ夜空の下で、
なけなしの食料を口にした後、
エヴァシリーズのオブジェの足下、
ぼろぼろの毛布にくるまりながら、
今日一日の疲れを癒す、そんな日々。

「日付なんて数えてたの」
僕は苦笑いでアスカに答えた。
「大体よ。でも、そろそろ判らなくなりそうだから、今のうちにね」
と、アスカは笑って立ち上がる。

そしてスルリと服を脱ぎ始めた。
荒野を彷徨い、キズだらけのアスカの裸身が、
月の光に照らされて輝いた。
「いくら掘ってもケーキが見つからないし」

そして、微笑を浮かべたアスカの目には、少し涙が潤んでいた。
「アンタにあげれるものといったら、これだけよ。要らないなんて言ったら殺すわよ?」

完。
99名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/30(日) 23:11:52 ID:Q6dtwFXa
ちょっと二人がかわいそ
100名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/01(月) 12:13:30 ID:???
誕生日前になんか祭りがおきてたw
GJだ
101名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/01(月) 20:15:28 ID:???
>>98

なんか切なくなるけど、あの後だれも還ってこなかったらこんな生活なんだろうな
102名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/02(火) 21:43:15 ID:???
>>91
「エヴァ全機、出撃準備」
そんな碇総司令の呟きとともに、NERV総員全てがフル稼働を開始する。
突然の使徒襲来の一報を受けて発令される第一級戦闘配備。
そんな緊迫感ではちきれんばかりのスクランブル発進、その中心に立つのは三人の少年少女達。
氷のような冷淡さを保つレイ、炎のように殺気立つアスカ、
そして緊張に顔を強ばらせる少年、シンジ。
そのシンジの胸中。死への不安、失敗することへの恐れ、或いは単なる出撃前の緊迫感か。
実はそのいずれでもなかった。ただ、言うか言うまいか、ただそれだけを迷っていた。

アスカは今日が何の日か知っていた。
本人が一番知っていることだ。しかし、どうでも良いことだった。
自分の過去、出生、それらを嫌悪感にも似た感情を覚える彼女。
自分の存在、自分の居場所、自分の未来、それらは全てエヴァに乗ること、ただそれだけ。
それだけの自分、そんな自分の存在を呪いたくても呪えない。それは自分の意思でもあるのだから。
だからこそ、今日という日など本当にどうでもよかったのだ。
今日もエヴァで出撃する。何もかも見えなくなるまで自分の闘志を燃やし尽くす。
ただ、それだけだ。

そんなアスカに、突然の不協和音が飛び込んできた。
眼前に開いた通信ウィンドウ、そこに表示されたのはシンジの強張った笑顔。

「何よシンジ!」
『……ハッピーバースデー、アスカ』

こんな時に何を言い出すのか。普段のアスカならそう言い返しただろう。
しかし、シンジにしては珍しくも小洒落たジョークを言うではないか。
そう捉えたらしいアスカの顔には、何か吹っ切れたような笑みが浮かんでいた。

「オーケイ、シンジ。その祝福に相応しい勝利を拝ませてあげようじゃないの!」
(完)
103名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/03(水) 00:41:10 ID:???
このまま命令無視して、ユニゾンキックやりそうだなw
GJ!
104名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/03(水) 23:49:58 ID:???
>>91

「えーと、フカヒレチャーシュー……普通のラーメンでいいや」
NERV本部からの帰り道。
アスカとシンジ、少し遅めの夕食を屋台のラーメンで済ませる二人。
少しスープをすすってから、ぽつりとつぶやくアスカ。

「あと10分で15歳、か」
「あれ、そうだったの」
「アンタ、仲間の誕生日ぐらい覚えておきなさいよね」
「えーと、そうだね。食べる?」
「あのねえ、一枚きりのチャーシュー譲って貰ったって嬉しくもないわよ」
「あはは……」
何気ない会話、仲間と気兼ねの要らないやり取り、当たり前のように過ぎゆく日々。
でも、こんな日だからこそ、考える。

来年の今も、はたしてこうしているのだろうか、と。

「シンジ、もう一回」
「え?うーん……はい、あーん」
「あーん……(ぱくっ)……ありがと」
「アスカ、お誕生日おめでとう」
「ありがと。あーあ、チャーシューで祝う誕生日、か。しまらないわね」
「あはは……」

うん、今を生きる。それでいいんじゃない?
誕生日を迎えて、少しだけ素直に慣れたような気がしたアスカでした。

ちゃんちゃんっと。
105名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/04(木) 00:36:35 ID:???
いいなぁ…GJ
106名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/04(木) 01:31:40 ID:???
つかもうちょっとまとめて書けよ
107名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/04(木) 14:28:40 ID:???
>>106
作者がそれぞれ違うんじゃね?
108パッチン:2008/12/04(木) 21:11:05 ID:???
夕焼け小焼けで日が暮れて。
アタシは1人、リビングで買い置きのダイエットコーラをグビグビと飲みながら、テレビから流れる夕方番組にありがちな馴れ合いのような会話をぼんやり眺めている。
…と同時に、アタシはチラチラと時計を見やる。

「・・・5時半が過
が過ぎたらコブラツイストに変更ね」

『今日は掃除当番だから先に帰って』
そう言ったアイツに背をむけてからどれくらいたっただろう…。
さっきからイラつくとわかりながらアイツのことを考えてしまう。そのたびイライラがつのるつのる。

そもそも掃除にこんなに時間がかかる?…どっかに寄り道?…寄り道ならぶっ飛ばすわよ?…四の字固めよ?
…それとも事故?…パイロットを狙った誘拐?…んなわけないわよね?…・・・・・…んなわけないわよね?…やっぱり寄り道よ
…5時半が過ぎたらコブラツイストに変更ね

今に至る

「・・・ミサトに連絡しようかな…。アイツどんくさいし…さらわれたら…」

ぷるるるるる
「…っ!!」

波打っていた思考が、再び下降しかけてきた途端に電話がそれをストップした。

『もしもし?○×スーパーですが碇シンジ君の保護者の方はおられま…』
「アタシよ!!」
109パッチン:2008/12/04(木) 21:12:49 ID:???
「あの…今日は…ごめんねアスカ」
「・・・・・」
スーパーからの帰り道。三歩先を歩くアタシに、なぜシンジが「今日はごめん」と言ったのかを考え、小さく苦笑いを浮かべる。
やっぱりコイツは馬鹿シンジだ。



万引きGメン24時のような番組でしか見たことのないスーパーの事務所にて、営業スマイルとは程遠いしかめっ面をした店長と、世界の終わりのような顔をしたシンジがそこにいた。
「ん?保護者の方が来るときいてたんだけど…君のお姉さんか?」
「あ、アスカ!?」
おそらくミサトが来ると思ってたのだろうシンジは、アタシを見て目を白黒させた。
「見たところ保護者とは言えない年のようだけど…?」
アタシはシンジと店長を無視して、2人の間に置いてある買い物カゴの中身に目をうつす。
カゴからニョキッと飛び出た『赤ワイン』と諸々の商品を見て、だいたいのことを察知できた。
「馬鹿シンジ…」
アタシは小さく呟く。

「おい、いい加減にしないか!この子の保護者じゃないんだろう君は!?」
「うっさいわね!そんな話どうでもいいのよ!」
アタシはポケットから財布を取り出し、中からカードを投げつけた。

「痛っ…あ!このカード…!?」
110パッチン:2008/12/04(木) 21:14:41 ID:???


「ね、ネルフカードって凄いんだね。あんなに怒ってた店長さんが急にペコペコしだして…」
「・・・・・」
「…アスカ怒ってる?」
うかがうようにアタシの背中に話しかけてくるシンジ。
そろそろかまってやらないと可哀想だし、アタシはクルリと振り返り、ポケた顔したシンジにビシッと人差し指をむける。

「2つ質問するわ!まず、今日が何の日か知ってるわね!」
「う・・・」
真っ赤になって、頭をガクリと下げるシンジ。
「知ってるととるわよ!誰に聞いたの!?」
「み、ミサトさんに…けっこう前にききました」
「質問その2!アンタがスーパーで中学の制服着たままワインを買うなんていう暴挙に出た理由はなに!?」
「・・・言えません」

もう死にそうなほどに顔が真っ赤ねw

「答えろって言ってんのよ!」
「…あ、アスカわかっててきいてるだろ!」
「当たり前でしょ!アンタの口からきいて、改めて笑ってやんのよ!」
「お、鬼!悪魔!僕に恥ずかしい思いさせてそんなに楽しいのかよ!」

目にはうっすら涙。そんなシンジがバカらしくて楽しかった。
手にぶら下げた買い物袋。そこにはシンジの想いが詰まっているような気がして・・・なんだか嬉しかった。

おわり?
111パッチン:2008/12/04(木) 21:16:26 ID:???
『すれ違い』

アタシはシンジが好きだ。
もう流石に付き合いだして2年も経つし、それぐらいのことは恥じらいなく自覚している。
アタシはコイツのことなら何でも知ってる自信がある。

「ねえアンタってさぁ…もうちょっと気の利いたこと言えないのぉ?」
「え…でも…」
「ったく!たまにはアタシのこと『綺麗だよ』とか『素敵だね』とか言えないもんかしらね!」
「うぅ…」

ほら、こう言われたらいつも顔を真っ赤にして俯いてしまう。

コイツは『大好きな人に綺麗と言ってほしい』女心がわかってない。

アタシがそんなことを考えながらシンジの方を見ると、必ず『ごめんね』の一言と共にキュッと抱きしめてくる。
そうされると、アタシが何も言えなくなるのを知ってるから…。

結局そのままアタシ達は無言のまま固まってしまう。

ホントはシンジの言葉が欲しかったのに、アタシは結局いいように誤魔化されてしまうのだ。

・・・でも、こうしてる時間は嫌いじゃない。
言葉に出来ないシンジが・・・そんな恥ずかしがり屋のシンジが愛しいのかもしれない。

「ねぇ、アンタってズルいわよね…」
「アスカの方がズルいよ…」
112パッチン:2008/12/04(木) 21:19:11 ID:???
僕はアスカが好きだ。
もう付き合いだして2年目だし、流石の僕だって迷わず言い切れる。
僕はアスカのことなら何でも知ってる自信がある。

「ねえアンタってさぁ…もうちょっと気の利いたこと言えないのぉ?」
「え…でも…」
「ったく!たまにはアタシのこと『綺麗だよ』とか『素敵だね』とか言えないもんかしらね!」
「うぅ…」

ほら、こう言うとすぐにホッペを膨らしてプイッとそっぽを向く。

アスカは『大好きな人に綺麗と言えない』男心がわかってない。

アスカはいつもその後で何かをせがむように僕の顔を真っ赤な顔で睨みつける。
そうされると、僕が彼女を抱きしめなきゃいけないことを知ってるから…。

結局僕はアスカをギュッと抱きしめてしまう。

ホントはアスカがこうしたかったクセに、僕は結局恥ずかしい役を押し付けられるハメになる。

・・・でも、こうしてる時間は嫌いじゃない。
想いを行動に出来ないアスカが・・・そんな恥ずかしがり屋なアスカが愛しいのかもしれない。

「ねぇ、アンタってズルいわよね…」
「アスカの方がズルいよ…」

おわり
113パッチン:2008/12/04(木) 21:20:48 ID:???
トイレから帰ってきたアタシは、ギョッと目をむいた。
「あすかぁ…誕生日プレゼントありがとぉぉ…」
いつもよりも少しだけ豪勢な料理が振る舞われたテーブルの足元に、本日のパーティーの主役はいた。
「ぼくねぇ〜アスカにプレゼントのおかえしあげたいんだぁ…」
今日初めて飲んだアルコールにより、思考回路は完全に空を飛んでいるらしい。
バカの真っ赤な顔の下は、ず〜っと足の先まで肌色が続いていて…何故か所々にゴミ捨て用ロープが巻き付いている。
「えへへぇ…」
緩みきった顔をコチラに向けると、右手に持ったロープの端をクイクイ引っ張る。
そして一言
「ひっく…今日で17さいになった僕…たべて♪」



「〜と、これが今年のアンタの誕生日だったわよね」
「お、思い出す必要ないだろ!」

『おかえしに』

朝からせっせと12月4日を祝うためのディナーをこしらえているシンジ。
まあ一生懸命作るのはいいんだけど、初っ端から本日の主役をほったらかしというのは、いただけない。
ということでわざわざキッチンにむかい、先程のエピソードを披露してあげた。

相変わらずこの話を出すたびに良いリアクションをくれるシンジには実に満足する。
114パッチン:2008/12/04(木) 21:22:28 ID:???
「酔うと大胆よねぇウチのシンちゃんは♪」
「な、なんだよ。あの後アスカだって『うぉー!』って襲いかかってきたクセに!」
「あら、アタシはシンちゃんからの大事なプレゼント断るような意地悪したくなかっただけよ。
ところで今年もビールは用意してるの?ん?」
「無いよ!!」

ぷぅっと頬を膨らませたシンジはアタシに背を向けると、調理に逃げてしまった。
ふん、耳まで真っ赤にして…かぁいいヤツめ。

「ところでアンタしっかりプレゼント用意してんでしょーね」
「まあ一応…」
「ふーん。・・・あ」
「どしたの?」
「ちょっと…部屋で待ってるわ。プレゼント楽しみにしてるからね」


「ったく!動くとすぐ解けるのが面倒くさいわね!」
部屋に戻ったアタシは、着ていたパジャマを脱ぎ捨てて、体中に巻いていた真っ赤なリボンをスルスル調節する。
「・・・ホントちゃんとしたプレゼント用意しなさいよね…。おかえしにこんな良いモノあげるんだから」

私がプレゼント♪みたいなのがあんなに興奮するなんて知らなかったもん…。

絶対に酔いから生まれた事故なんかで終わらせない…。

来年も再来年も誕生日の度に行う恒例イベントにしてやるんだから…。

おわり
115パッチン:2008/12/04(木) 21:24:17 ID:???
2025年。10年ぶりに現れた使徒にネルフは不安と混乱に包まれていた。
葛城ミサトはこの状況を打破するため、現在は夫婦である碇シンジと碇アスカを召集することを決めた。

『世界の未来のために…』

ぷるるるる・・・がちゃ
「もしもしシンジくん!?それともアスカ!?」
『・・・・・』
「もしもし!?」

『・・・パパ、ママぁ…』

「はぁ!?」

『…ミライ、はいもしもし碇です。だよ?』
『…ほら、頑張りなさいミライ』
受話器の片隅からひそひそと元世界を守るチルドレン2人の話声がきこえる…。

「ちょ、ちょっと2人とも隣にいるの!?代わりなさい!!」
『はぁい、もしもしいかりです…』

『や、やったわシンジ!きいた?』
『う、うん!ミライ偉いよ』
たどたどしい応対の後に、きゃっきゃとハシャぐ2人の声…。

「いやいや、そんな場合じゃないのよ!!み、ミライちゃん?パパかママに代わってくれるかしら!?」
『パパぁ、代わってって…』

『…だめだよミライ、まずは相手の人のお名前をきかなきゃ』
『…どちら様ですか?って、きかなきゃダメよ?変な人だったら大変だからね』

世界を守る仕事真っ最中の人間も『変な人』呼ばわりである。
116パッチン:2008/12/04(木) 21:25:45 ID:???
『あの、どちらさまで…』
「葛城ミサトよ!!葛城ミサト!!早く後ろにいる2人に代わってくれる!?」

『…す、すごいやミライ!初めてのお電話なのに、完璧じゃないか』
『…うんうんっ、やっぱりこの子はアタシの子よね。天才だわ』

ドカーーーーーン!!!!

ミサトの背後から爆発音が響き、同時に発令所全体が慌ただしい動きに変わる。

「み、ミライちゃんお願い!!早くパパとママに代わって!!」
『パパママぁ〜、かつらぎみさとさんからだよ?』

『…あ、ミサトさんからだって』
『…ちょっと待ってシンジ、せっかくだから呼びにいくとこまで練習させない?』
『…あ、うん!それがいいよ。どうせミサトさんからの電話だし焦ることないもんね』

バカ親2人のとんでもない会話に唖然とするミサト…。

『…じゃあミライ、パパとママはキッチンで待ってるから、一旦保留ボタンを押してから、呼びにくるのよ?』
『…頑張ってねミライ!』
『うん!ミライがんばるね!』

「ちょ、ちょっと待ってミライちゃん!!」

『えっと…えっと…しょうしょうおまちください♪』
『『うん、ミライGJ!!』』

ぴろりろりろ…♪
「う…うがあああ!!」

おわり
117パッチン:2008/12/04(木) 21:28:20 ID:???
ある日の葛城家…午後7時

「アスカ、夕飯出来たよ」
「ん〜?今日なにぃ?」
リビングのソファーで寝んゴロリするアスカと、エプロン姿におたま片手のシンジ。
「えっと…唐揚げとサラダとお味噌汁」
「はぁ〜…いつものメニューね相変わらず」
「むっ!」
「たまには手の込んだディナー作れないのかしらねぇ〜。テレビタレントは羨ましいわ、高級料理なんかをパクパク食べたりできて」
アスカの視線の先では牛肉のIT革命が起こっていた。
「あっ!あのソース美味しいのよぉ、ドイツのレストランで食べたことあんの。赤ワインベースでねぇ♪」
「ご飯冷めるよ!」
「はいはい」
ヒョイとソファーから立ち上がり、ダイニングへと移動する。

「・・・アスカはそんな料理が食べたいの?」
「ん?そりゃたまにはね。アンタ作ってくれるの?」
「・・・・・」
「はは〜ん、さては愛しのアスカちゃんがその料理恋しさにドイツに帰っちゃうかもぉぉ…とか心配しちゃったのね?」
「な゛っ!だ、誰がそんなこと!」
「くっくっくっ、可愛いとこあんじゃない」
「勝手に決め付けるなよ!」
「ほら、ご飯冷めるから食べるわよ」

そんな他愛もない会話が続いた。12月2日
…あの日の2日前の出来事でした。

おわり
118名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/04(木) 22:18:35 ID:???
どれも話が見えるようで見えないようで、話が在るようで無いようで。
そういう空気を感じれば良いと思えば、これもまた良し。

三点リーダーの使い方、二つセットじゃないの?
と言いたいところだけど、売り物にそういう使い方されてたりするね。
今みてるゲームのメッセとかもそうだ。
まあ、文章の書き方なんて各個人で研究すれば良し。
119名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/04(木) 22:59:48 ID:???
いっぱい来てたー!はふぅ〜ん乙です
120名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/04(木) 23:40:17 ID:???
誕生日には来てくれると信じてたよ。小ネタ第二段GJ!
アスカにからかわれるシンジがやたらと可愛いぜw
121名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/10(水) 08:36:35 ID:blmiC0cW
保守しましょう
1221/2:2008/12/13(土) 08:24:48 ID:???
さて、クリスマスである。

「シンジ。アタシ達、罰当たりなことしてるのかもね」

エヴァのエントリープラグの中で、そう呟いたアスカ。
僕達のやっていること。迫り来る使徒を殲滅、つまり天使達を殺すこと。

「アスカはキリスト教徒なの?」
「そうでもない。お葬式には教会に行く。ただ、それだけ。アンタはどうなのよ」
「そうだね。亡くなった人はお寺でお葬式する。その程度かな」
「ま、アタシ達のとっちゃ神様なんてその程度よ」
「じゃ、この戦いって何だろう」
「そおねぇ。神様が神様でなくなった瞬間、かな?」
「うーん……?」
「理解できない?やっぱり馬鹿ねぇアンタ」
「それはないよ、アスカ」

いつもの会話、いつものやり取り。
出撃前の何気なく戯れる僕とアスカ。
1232/2:2008/12/13(土) 08:27:24 ID:???
「でもさ、アスカ」
「ん?」
「神様が居るかどうかは判らないけど、その……」
『さあ、出撃よ。雑談はそれまで。エヴァ初号機、リフトオフ!』
「あ、はい」

神様は居るかどうか判らない。でも、アスカは目の前にいる。

そう言うつもりだった。今から考えると、なんか恥ずかしい。
ミサトさんに遮られて最後まで言えなかったけど、言えなくて良かったかも。
でも、言ってみたかった気もする。なんだかいつものアスカへの気持ちがふわりと浮かびあがって……。
なんだか、まるで神様に祈る気持ちになれたような、そんな気がしたから。
なんだろうこれ、判らない――ああ、そうか。

「メリークリスマス、アスカ」

居るかどうか判らない神様への、届くかどうか判らない祈りの言葉。
そして、応か否か。あるいは答えかどうかも判らない。それが神託。
まさに、そんな神託が僕に下される。

「……バカ」

(完)
124名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/13(土) 14:55:29 ID:???
GJ
どこより早いクリスマスプレゼントだったw
125名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/13(土) 22:15:52 ID:???
フライング過ぎるw
だがGJ
126122-123:2008/12/13(土) 22:42:23 ID:???
ありがとです。実は証拠無いけど>>102も書いた者なんだけど、
構成がほぼ同じなことに今気がついたwお恥ずかしいww

しかし、eo規制中で投下が辛い;
127名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/13(土) 23:42:37 ID:???
>>126
。゚・(ノД`)人(Д` )・゚。 ナカーマ
自分もeoの規制多すぎて投下が辛いorz

それはそうとテラフライングGJ
128名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/14(日) 22:08:47 ID:???
おお? 規制解けてた。
でも、いざ解けてみるとアイデアが浮かばない罠w
129名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/14(日) 23:00:31 ID:???
さてさて、クリスマスである。

「シンジ、早くおいでってば! 雪よ! 雪が降ってる!」
あ、アスカ?
「ウフフ……アハハ……本物よ、本物の雪が降ってる……」
アスカ、君は……。
「ねえ、シンジ、これで……これで、本物のクリスマスがやってくる!」

僕がアスカに誘われて表に出てみれば、信じがたい情景がそこにあった。
それは、15年振りに訪れた寒気の到来でも、生まれて初めて見た雪景色でもなく……。
信じがたい光景、それは粉雪を体一杯に浴びながらクルクルと舞い踊るアスカの姿。

「ねえ、雪よ! 本物のクリスマスよ! 冬が、私達にクリスマスが還ってきた! これで……」
やがて軽やかな舞を止めて、まっすぐに僕を見つめるアスカ。
はち切れんばかりの笑顔をたたえたその目から、みるみる涙が溢れ出す。
「これで、終わったのよ。やっと、この星が癒された。使徒との戦いが、やっと終わったのよ……」

そして、両手の平に顔を埋めて泣き崩れるアスカを、僕はそっと抱き寄せる。
あの勝ち気とプライドで出来ているかのようなアスカが、うながされるまま僕に身を寄せた。
僕には冬の到来よりも、生まれて初めて味わう雪のクリスマスよりも、君の姿にこそ実感する。
もう戦う理由が無くなったのだ。もうアスカは戦わなくて済む。もう何も恨まなくて済む。
見るもの触れるもの全てを憎んでいたアスカが、雪に喜び、涙している。

「ねえシンジ、聞いてるの? この子はもう戦わなくて済むのよ?
 普通の星に、平和な世界に生まれることが出来るのよ? 本物のクリスマスを――」

セカンド、サードインパクトを乗り越え、復興の道を歩み出した人々の中で、
未だ癒えなかったアスカの傷が遂に癒えたのだ。
君は遂に神の許しを得ることが出来たのだ。
ハレルヤ、アスカ。そして、メリークリスマス。
(完)
130名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/15(月) 12:22:42 ID:???
個人的にだけど雪景色のLASはなんか好きなんだよね。
GJ
131名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/18(木) 01:43:07 ID:???
さてさてさて、クリスマスである。
しかし、アスカは感心なさげな様子。
「あー? クリスマスぅ? どーでもいーわよ。クリスマスだからって何すんのよ」
「クリスマスっていったら、ツリー飾って、チキンにケーキ食べて、あとクリスマスプレゼントとか」
「めんどくさーい。つまんなーい。でもプレゼントって、アタシになんかくれるの?」
「そうだね。プレゼント交換でもしようか」
「交換? だったら自分のお金で自分で好きなの買ってくれば?」
ここまでヤル気の無さを見せられては、流石のシンジも大きな溜息。

「あのねえ、アスカ。贈り物をしたり受け取ったりするのも楽しいよ?」
「つまらなそうな人生送ってきた癖にどこで覚えたのよ、そんなこと」
「ちょ、ちょっと、アスカひどいなぁ」
「だーから、めんどくさいって。ぱぱっと互いに楽しくなるようなことってないの?」

はい、ここでシンジに魔が刺してしまいました。
「うーん、ぱぱっと互いに……キスでもする?」
「え?」

1秒経過。
(ちょ、ちょっと、なんでアタシ固まってんのよ! 今すぐ蹴りでも入れてツッコミなさいってば!)
3秒経過。
(まずいわ。この沈黙、紛れもなく「……いいわよ」って言う他は無くなってしまう沈黙だわ。は、早くなんとかしないと……)
5秒経過。
(ど、どうしよう、完全に詰みに入ったわ。どうしようどうしようどうしよう……)

しかし沈黙を破ったのは、うっかり欲を出してしまったシンジの方。
「な、なんてね。アハハ……」
「なーにいってんのよ、このバカシンジ。アハハ……」
乾いた笑いが響き合う、額に汗のアスカとシンジ。
とりあえず、無理のあるシンジの言いごまかしに救われた気がしたアスカなのでした。
(完)
132名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/18(木) 19:43:39 ID:???

こういうニヤニヤできるやつって好みだ
133名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/19(金) 16:46:38 ID:???
お互いの恥ずかしがりっぷりが出ててよかった
134名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/22(月) 09:14:36 ID:8VvPGeQi
保守
135名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/22(月) 09:36:45 ID:???
腐れ小説
136名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/22(月) 20:33:20 ID:???
>>135
そんな自己紹介せんでも
137名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/22(月) 21:16:35 ID:???
このスレ見てからアスカが大好きになりました。もっと書いてください
138名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/22(月) 22:16:46 ID:???
さて(略、クリスマスである。

シンジとアスカ、クリスマスパーティーの準備中。
メンツはまあいつもの連中。場所はもちろんミサトマンション。
料理は焼き肉、下ごしらえは当日、買い出しチームが帰ってきてから。
「ったく、いつものバカ騒ぎと一緒じゃない!」
「はは……」
と、愚痴るアスカに苦笑いのシンジ、せめてクリスマスらしくと飾り付けの真っ最中。
そんな中、ふとアスカがしかめ面。
「ん、あれ?」
「どしたの、アスカ」
「と、取れな……いや、いい」
「ああ、それね。僕がやるから代わっ」
「いーわよ!自分でやるから……あ」
「よいしょっ」
シンジ、アスカの両肩を後ろからそっと抱いて場所を入れ替わる。
流石はシンジ、ささっと事を済ませたのだが――。

「あ、あの……ありがと」 ← アスカ、めずらしくも自分を促したシンジに男を感じてドキドキしている。
「え? い、いや、これくらい……」 ← シンジ、めずらしくも素直なアスカが可愛くてドキドキしている。

そんな降ってわいたようなドキドキもほんの束の間。
いわゆるいつもの連中がやってきてバカ騒ぎが始まれば、すぐにいつもの小突き合う二人に戻る。
さあ、クリスマスパーティーはまもなくである。
まあでも、

「あ、アスカ? 先にこれ、食べちゃおっか」
「……ん」

あと少しぐらいは、ほのかな恋心を楽しんでいただきたいものである。
(完)
139名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/23(火) 11:18:15 ID:???
サイコーです!個人的には先をみたいんですけど満足です
140名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/23(火) 18:44:46 ID:???
さげてね
141名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/28(日) 00:45:53 ID:???
GJ(`・ω・´)m9ビシッ
142名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/01/03(土) 16:43:48 ID:???
あけおめ
143名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/01/13(火) 03:01:37 ID:???
十日町
144名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/01/15(木) 09:48:05 ID:???
誰も書いてないんだね。ここ。

アスカは長岡乗換えの電車で十日町に降り立ち唖然とした。
長岡の駅ではまだ黒いアスファルトの隅の方にあっただけの白い雪が、ちょっとうとうとしていただけで
一面の雪景色に変わっていたからだ。降っている雪の量も半端ではない。夏でいえば雷があばれまわる夕立のような勢いだった。
「ちょっと、なによこれ。」
駅前に出てさらに驚いた。がちがちに凍った雪の壁が商店街を押しつぶすように立ちはだかっている。
雪じたいは母国でも見なれたものだったが、こんな水っぽい雪が氷と化しているなんて。除雪も容易ではないだろう。
食事をとった店で聞いてみるとここでもインパクト以来の大雪だそうだ。
道路建設会社のブルが雪かき用に転用できる器具を持っていたのだが、この十数年で破棄してしまったこところもあり、
除雪がままならないということだった。この雪の壁の向こう側に道路があるそうだが商店も高齢化が進んでおり氷と化した壁を
破るのにも時間がかかるということだった。
「じゃあ、山間地の住宅なんかは?」
「役場が少しずつ除雪してるがすすまんでいるのう。」
「それじゃあ、迎えになんか来れないかもしれないわね。」
驚かしてやろうかと黙ってここまで来たけど、うかつだったわ。
ましてあのぼけぼけした少年にいい考えなんぞが浮かぶわけもない。
ミサトに焚きつけられるままにくるんじゃなかった。
シンジは長野から新潟に移った親戚に誘われて、強引なミサトの勧めでいわゆる正月の里帰りをしてるのだ。
145名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/01/16(金) 01:54:43 ID:???
>>144
乙&期待

まあ俺の場合、完成品SSのストックはあるんだけど、忙しいから投下する時間がない
近々投下するかも
146なにがし:2009/01/16(金) 02:49:50 ID:???
「えーと、ここから松之山ってところまでいくわけよねえ。あ、バスはあるのか。」
一時間に2本くらいね。」
電話をかけてみたが、一向にシンジは出なかった。
圏外なのか、それとも携帯を置いたままどこかに出かけているのか。とにかく行ってしまう方が速そうだと判断。
いてもいなくても、旅館の方はちゃんと予約が入っていた。明るいうちに着くには早めに動いた方がよさそうだ。
旅館の人が道が凍りつくと坂を登れなくなって渋滞する場合もあると言っていた。雪道は凍るといったん止まったら
再度動けなくなるところが多い。たぶんそういうことだろう。
ちょうどバスは10分ほどで来る。鞄を担ぎあげて列に並んだ。
147名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/01/18(日) 04:06:43 ID:???
>>145
>>146
ご両所の投下に期待しております
148名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/01/28(水) 01:11:43 ID:???
ほしゅしとく
149名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/01/28(水) 04:50:50 ID:???
覚えた日本語の中には普段使われないものもある。でも、天嶮(てんけん)なんて言葉はまさしくこういう時に使うんだろう。
両側に迫る崖、それは吹きつけられた雪の上にさらに雪が積もってさらに分厚い氷の崖を作りだしている。両側の深い森も、
そのまま雪の下にすっぽり埋もれている。山間の湖もわずかに深緑の湖面を残し、降りしきる雪の向こうに音もない。
苦しそうなエンジンと、黒い排気ガス。一度止まったら再度この傾斜を登りだすことはできない。
出発時に念入りにごついチェーンを取り付け、切っていた。あれだけの準備をしたのは伊達ではなかったということだ。
まだこの辺が豪雪地帯だったころの経験がある運転手達が生き残っていてくれなかったら、この辺りは冬季は村を捨てなければ
ならないという覚悟を決めていただろう。日本と違って一年中雪に閉ざされていたドイツでは、雪が文字通り集落を押しつぶす
ことがあった。雪の美しさと共に恐ろしさもよく知っている。
「あいつ、雪なんか経験ないから、ここにきて対応できたのかしら。」
バスの中で暖房をガンガンかけて(いるはずだ)それでも吐く息は真っ白だ。
懐かしい光景。零下の世界。距離感のない雪の巨人と化した巨大な木々の出迎え。
はじめてこの景色を見たシンジの顔を見てみたい、と思った。ぽかんと口をあけて、見上げるしかできなかったろうな。
すごい雪…と呟いて見上げて。なんだそれってあれじゃん。
「アスカ…」と呟いて私を見上げるあいつの子犬みたいな畏敬の表情。
なぁんだ、私とおなじ、か。
そう思った。そしてその直後、シンジと会いたい気持ちがMAXになる。子犬のようなあいつの表情に、なんで。
同時にドーンという大きな音が聞こえた。

150名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/01/29(木) 12:52:03 ID:???
続き…町
151名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/01/31(土) 11:30:18 ID:???

なんか書き馴れてる感じがするよ
152名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/01/31(土) 18:51:16 ID:???
ここに投下してくれてる人ってみんな上手じゃん。
終わった人はどこかに投稿しておいてほしいな。
153 ◆35Qp72rnKA :2009/02/02(月) 23:38:23 ID:???
あんま面白くないけど投下


go back



宿命、
僕が車内から見たもの


僕の乗った最新鋭のSSTは、第三新東京市を飛び立ち、暗く重い濃淡の雲をく
ぐり抜け、ドイツ連邦ベルリンシティに降り立った。
そこからも長旅が続く。ある程度速度が出る旅客STOL機に乗り換えて僕等が
向かうのは、ドイツ連邦共和国領南部にある小さな地方都市だ。そこには現在、
ネルフドイツ支部と、近郊には国連軍の駐屯地がある。僕等が目指すのはそのド
イツ支部だ。

STOLが着陸すると隣に座っていた綾波レイが席を立つ。僕は追い掛けるよう
に手荷物を持ち、席を立った。
154 ◆35Qp72rnKA :2009/02/02(月) 23:39:42 ID:???

僕が今回ドイツに来たのは仕事のためだった。定期的にネルフ(それが勤め先の
名前だ)の支部に技術方面の査察にいく決まりがある。今回は僕が運悪く出張す
ることになったのだ。
タラップの下にはバスとネルフの職員が待っていた。ジュラルミン打ちっぱなし
の銀白色の車体で、側面には黄色と赤のラインが地面と平行に走っていた。見た
ところバスはディーゼルエンジンの年代物のようだ。実物を見るのは初めてだ。
バスには既に運転手らしき人が僕等の荷物をひとつひとつ割れ物でも触るように
してバスへ積み込んでいた。そして宿命的に太ったネルフ職員が、バスの前部乗
車口の側に立って僕等を出迎えていた。それは本当に宿命的なものだった。世の
中には何人も避けがたい不可避の宿命がいくつかあるのだと、僕は信じるように
なっていた。例えば、死がそれのさいたるものだと思う。僕は既に、それを経験
している。

空を見上げると、暗白色の雲がもったりと垂れ込めていて、北の方には高い煙突
がもうもうと白い煙を吐き出しているのが見えた。長く暗いドイツの冬だ。
タラップを降りると僕は出迎えのネルフ職員と握手を交し、5人の部下と一緒に
バスに乗り込んだ。太ったネルフ職員の掌は、緊張からか汗でびっしょりと湿っ
ていた。
155 ◆35Qp72rnKA :2009/02/02(月) 23:40:50 ID:???

僕が座席に座ると、隣には綾波が腰掛けた。決まりきったように彼女はハンドバ
ッグから本を取り出して、栞が挟まっていたところから再び読み始めた。バスの
中で読んで、気分が悪くならないのだろうか。
車内からは半分煉瓦造りの管制塔が見え、脇には長年付き添った夫婦のようにぴ
ったりと格納庫が建っていた。僕は胸ポケットから白地に赤いラインの煙草を取
り出して一本吸った。綾波に言われて一日の数量は決められているが、我慢でき
ないほどではない。肺に通して吐き出した煙は、バスの中をふわふわと漂って消
えた。
バスはゆっくり走り出した。管制塔をかすめ、フェンスの間に備え付けられたゲ
ートを通過する。バスの車窓から見えたのは、どこまでも続くじゃがいも畑だっ
た。じゃがいも畑は延々と続き、雪で多くの部分は埋もれていた。日本とはなに
もかもが違う光景だ。そしてこの典型的なドイツの光景を見ていると、あの少女
に関する記憶が熱を帯ながら僕に語り掛けて来ているように思えた。その欠片は
今でも、くっきりと濃い鉛筆の筆跡のように残っていた。僕は目を閉じて、八年
前にアスカが僕のそばから去っていった日のことを思い出してみた。

156 ◆35Qp72rnKA :2009/02/02(月) 23:41:49 ID:???

   ◆

アスカがいなくなったのは、八年前の八月、ある晴れた暑い日だった。僕はその
頃ある事情があってまともな学校に通える状態ではなく、代わりにネルフまで車
で通い、副司令を勤めていた冬月先生に勉強を教わっていた。冬月先生は母の恩
師で、前には大学の教授でもあったそうだから、そう言ったことには実にぴった
りの方だった。
アスカは既に大学を出ていたから、もちろん自宅で待機をしていた。その頃はア
スカと僕は恋人同士だと告白しあっていて、お互いに離れるなど考えることが出
来なかった。
いつもと変わらない一日。簡単な講義を受け、昼食を食堂で食べ、そしてまた講
義を受けて帰る。そんな一日だ。僕が帰ると家には明かりがついていなかった。
家の中を暗闇が支配していた。玄関でただいまと言ってみたが、返事はなかった。
もちろん僕は家中を探してみたが、アスカの姿は無かった。ミサトさんの姿もな
かった。
仕方ないのでとりあえず三人分の夕食を支度していると、電話が鳴った。僕はア
スカかと思い、急いで受話器を取った。
「アスカ?」と僕は言った。「シンちゃん。」と電話の相手は言った。それはア
スカではなく、ミサトさんだった。アスカはミサトさんのところにいるのだとそ
の時は思った。アスカは時々リツコさんの研究室やミサトさんのオフィスに出入
りしていたからだ。
157 ◆35Qp72rnKA :2009/02/02(月) 23:42:44 ID:???

「シンちゃん。私、謝らなければならない事があるの。」それはアスカの事だ。
そう僕は確信した。
「アスカのことなの。」
「アスカはどうしたんですか? 帰ってきてないんですよ。もう……。」僕は時
計を見た。「もう六時になるのに。こんなに遅いのは初めてですよ。ミサトさん、
知ってるんですか?」
ミサトさんは長い間黙っていた。ミサトさんが電話の向こうでアスカの頭を撫で
ているような気がした。
「アスカね、帰国したわ。ドイツに。今日昼十二時のハンブルク行きのSSTで。
もう向こうについてると思う。」
ミサトさんの言った言葉が僕には理解できなかった。いや、理解などしたくなか
った。アスカがなにも言わずに帰ってしまうなんて。
「なに言ってるんですか。アスカが帰るわけないですよ! 僕になんにも言わず
に、ドイツなんかに帰るわけが……。」
ない。そう、ない筈だ。でも、僕はドイツでのアスカの何を知っている? アス
カの家族すらしらない。写真すら見たことが無いじゃないか。
「帰ったんですか? アスカがドイツに、僕に何も言い残さず、勝手にドイツへ?」
受話器の向こうでミサトさんが首肯するのを感じた。
「ええ、止められなかったの。本当にごめんなさい……。」

158 ◆35Qp72rnKA :2009/02/02(月) 23:43:31 ID:???

   ◆

眼を開けると、そこには綾波と部下とバスの車窓があり、延々と続くじゃがいも
畑があった。煙草は座席に備え付けられている灰皿でくすぶっている。僕はそれ
をきちんと揉み消してから、新しい煙草に火をつけた。日本の空港で一本、そし
てさっきと今、今日はあと二本しか吸えない。
やれやれ、煙草はただじゃないのに。

支部に着いたとき、日は既に暮れていた。夕焼けが白雲の切れ間にから光を差し
込み、遠くに見える山々を紅に染め上げていた。


159145 ◆35Qp72rnKA :2009/02/02(月) 23:48:38 ID:???
続く
生暖かい目でお願い(´・ω・`)
ちょっと大人になったアスカさんとシンジ君のお話です
できるだけキャラを崩さないようにとしたけど、今回はこれで勘弁
160名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/03(火) 01:23:27 ID:???
乙です。
続き期待しております。
161名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/03(火) 01:26:12 ID:???
期待して待ってる
162なにがし:2009/02/03(火) 23:06:26 ID:???
急ブレーキを踏むかと思ったけど、うまく蛇行することでバスは止まらずに動き続けていた。
曲がり角をゆっくりと過ぎると向こう側に見える崖が崩れ落ちていた。土砂崩れじゃあ、と周りの人達がざわついた。
わたしたちの走っている道の反対側だ。助かった、と思わずため息をついた。崖の上からまだ土砂のかけらがからからと落ちていく。
向こう側には道が走っていないので被害の出る恐れはない。
向こう側はがけ崩れが多いので道は20年ほど前に廃止になったのだそうだ。昔の人の経験則というのは大したものだ。
みんな再び席に着いたが、暫く動悸が収まらなかった。ここで雪の下に埋もれていたらどうなっていたろう。
シンジが掘り出しに来てくれただろうか?そして雪の中から私の白い顔を見つけ出して、抱きしめてくれるかな。
えっと、あたし何考えてるんだろ、ちょっとどこかおかしいんじゃないの?
シンジはだれが事故にあおうと一生懸命掘り出しにくるに違いない。誰にだって誠実だもんな、あいつは。
163名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/05(木) 23:55:10 ID:???
乙カレ
誰もいねえなオイw
164なにがし:2009/02/06(金) 00:55:33 ID:???
落ちLASもいよいよ誰も読んでないんだって。
165名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/06(金) 02:13:26 ID:???
乙です
読んでますよー
楽しみにさせてもらってます。
166名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/06(金) 22:48:32 ID:???
俺も読んでるけど、普通に上手くてびっくりしてるけど、もうちょっと量貯めてから投稿してくれると嬉しい
167名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/07(土) 12:59:38 ID:???
ここってちょっと多くすると書き込み拒否になっちゃうんだよね。
168名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/12(木) 08:50:23 ID:???
さて、バレンタインデーである。

「アスカ、はいこれ。バレンタインデーのチョコレート」
「は?」

と、綺麗にラップされたハート型のパッケージをシンジは差し出す。
手渡されたアスカは呆然。

「も、貰っていいの?」
「うん」

おかしいなあ、確か日本じゃ女の子の方から……と、頭を抱えるアスカ。
シンジは渡した相手の反応が当然気になる。

「あのアスカ。なんか……変かな? 」
「い、いや、いいのよ。アンタは物凄く正しいことをしたわ」
「そ、そう……」
「アンタにしては上出来よ。うん、上出来」

でも、アスカは悩む。
ホワイトデーには自分が買わなきゃならないのが、ちょっとなあ……。

(おわり)
169なにがし:2009/02/13(金) 15:23:51 ID:???
可愛い話、いいね。
ところで例によってお菓子屋のたくらみかもだけど、バレンタインデーは男からも贈っていいことになったらしいね。
アスカの悩みは今後みんなの悩みになるのかも。

だけど男は何とも思ってない女からもらっても返そうかなと思うけど、女は何とも思ってない男から
何か貰っても気持ち悪いと思うだけだけどな。
170パッチン:2009/02/14(土) 22:30:43 ID:???
気分が悪い。
別に体調不良なわけでもなく、エヴァ搭乗中に精神汚染をくらったわけでもない。
ただ…

「おはよう霧島さん、昨日の話の続きなんだけど」
「あ!碇君おはよう。うんうん私も今そっち行って話そうと思ってたんだ」

・・・気分が悪い
突然転校してきて、突然アタシのシンジに馴れ馴れしくベタベタ引っ付いてきた霧島とかいう女…。
シンジもシンジで勝手にアタシの許可なくあの女の蜘蛛の巣あたりを、うろちょろする危なっかしさを見せている。

アタシのシンジなのに・・・。
なんでこの気持ちが伝わらないんだろう。なんでアタシだけを見ないんだろう。
なんで…アタシのモノにならないんだろう。

邪魔なヤツが多い…多すぎる…
だからシンジが他の女を見ちゃうんだ。そしてシンジが他の女に見られちゃうんだ。

いっそ閉じ込めてしまおうか。

アタシとシンジしかいない世界を作ってしまおうか。



葛城家、2月14日、休日午前10時

「シンジ〜コーヒー飲む?」
「へ?珍しいねアスカがコーヒー入れてくれるなんて。・・・・・変な味ぃ…だね…」

ガシャンという音が鳴り、そのままシンジはフローリングの床にうつ伏せで貼り付いてしまった。
171パッチン:2009/02/14(土) 22:32:00 ID:???
『甘禁(かんきん)』

ぐらりと頭の中が揺れて、目が覚めても暗闇、身体の自由が全くきかない。
14年の人生中、トップクラスの最悪な寝覚めが僕を襲った。
「ぅ…ぁあ」
とりあえず声が出ることに安心したが、瞼が開かないことにパニクる。
ジャラリ…
とりあえず耳がきこえることに安心したが、両手両足を手錠のような物で大の字に拘束されてることにかなりパニクる。
「・・・おはよ。シンジ」
自分の近くにいた人物が聞き覚えのある声なのに安心したが、何故その人物が自分をこんな目に合わせるのかわからず結局パニクる。

「あ、アスカっ、アスカなの?」
「そうよ」
「ちょっと何なんだよこれ!早く解いてよ、何でこんなことするんだよ!」
「解いてどうするの…?あの女の所にでも行くの?」
「あの…女…!そうだ、今日霧島さんと約束があったんだ!早く行かなきゃ待たせちゃうよ!」
「・・・・・」
「ねぇ!僕こんな遊びしてる場合じゃないんだ!早く解い…!」

ぴとっ
・・・と、瞬間僕のこめかみの辺りに冷たい感触。
小さな円形をしていて、真ん中にはさらに円形の穴がある…。
これ…は・・・

「これ以上うるさくすると風穴があくわよ」
172パッチン:2009/02/14(土) 22:33:17 ID:???
・・・パクパクと口を開け閉めさせながら、冷や汗をたらすシンジを横目に軽くため息。

あーあ、すっかり怯えちゃったわねこれは…。
ホントはもっとラブラブしたかったんだけど、シンジがあの女の話なんかするから…。

シンジのこめかみに当てていた『生食ちくわ』をかぶりながら、しばらくベッドに大の字に寝かされたシンジを見やる。

・・・しかしアタシの部屋の、アタシのベッドで寝るシンジ…か。

無性に嬉しくなる。

ダイニングで床に倒れたシンジを抱きかかえながら、自室まで引きずってきた時…

たまらなかった。

ベッドに寝かせたシンジの四肢に手錠をはめた瞬間…

ゾクゾクした。

「ねぇシンジ」
「な、なに…?」
「今日霧島さんとどこ行くつもりだったの?」
「で、デパート。欲しい物があったから…。い、一緒に見てもらおうと思って」
「ふーん」

あの女今頃1人で待ちぼうけくらってるかしら。…ふんっ!アタシのシンジを誘惑した罰よ。
少し嫌な気分になったので、アタシはもう一度シンジの全身を見渡す。

大好きなクリンとした黒い瞳が目隠しで見えないのが少し寂しいけど、やっぱりシンジは…良い。
173パッチン:2009/02/14(土) 22:34:29 ID:???
「ね、ねぇアスカ…な、んでこんなことする、の?」
言葉を慎重に選びながら質問してるのであろうシンジは、ふるふると震えながら細い声をあげる。
「ん?なんでってどういうこと?」
「だって…理由も無しにこんなことしない、でしょ?ミサトさんも…すぐ気付く、よ」

うーん、まぁそれはアタシも考えてたんだけどね。
今日シンジがあの女と出かけることは、シンジの部屋に仕掛けた盗聴器で知ってて…
それを阻止するためっていうのが、今日こういう行動に移った一番の理由なんだけど。

・・・ちなみに盗聴器はネルフの保安部が設置した物を少々いぢくってアタシにも使えるようにした。
ネルフの変態ぶりには呆れるわねホント。

さてこれからどうしようかと悩むアタシは、シンジの体をもう一度隅々まで眺める。
ミサトが帰ってくるまでもうしばらくある。これを機にシンジを身も心もアタシだけのモノにしてしまいたい…。

・・・キスとか・・・してみたり

ふと思いついた子供っぽい発想に自分でも顔が赤くなる。
そしてベッドの上で、シンジに覆い被さりながら唇を合わせる自分を想像し、無性に体中が熱くなる。

熱く熱くなる

い、一回廊下で体冷やそぅ…。
174パッチン:2009/02/14(土) 22:35:42 ID:???
パタンと扉が閉まる音が聞こえる。おそらくアスカが退室したのだろう。
いまだに銃を突き付けられていた、こめかみがヒヤリとする。
ここ、どこなんだろ…。
今何時なんだろ…。
なんでアスカは僕にこんなこと…。

目が見えないことはもちろん怖いけど、それ以上にこの先に起こることが全く見えなくて…その恐怖だけで体調が崩れそうだ。
今何時なんだろ…霧島さん待ってるかな…。
お腹、減ったなぁ。

その時・・・パタン、パタン、と再び扉の開閉音が部屋に響き、緊張が僕をキュッと締め付けた。

「あす、か…?」
何かを持ってきたんだろうか、それとも別の誰かを連れてきた?
アスカが部屋を出入りしたことで、身の回りの状況が何か変わったのかもしれない。怖い…。

・・・と、震えが走り始めた僕の口に、何かが触れた。柔らかい…何かが触れた。

何これ、食べ物?違う?やっぱりお腹が減ってるような時間だし食べ物?
ペロリと舌を出して軽く舐めると、柔らかい何かはプルリと震えて一瞬離れた。
うわっ、また引っ付いた。
今度は舌をしゃにむに動かし、これが何なのかを確かめる。
すると耳元からスフスフと荒い、息づかい…?

え…アスカの、く?ち?び?る?
175パッチン:2009/02/14(土) 22:37:35 ID:???
「ん、ぷはっ…はぁはぁはぁっ」
なななな、何よバカシンジ!大胆過ぎやしない!?なんか廊下で呼吸整えてきたアタシがバカみたいじゃない!
シンジの容赦ない舌に好き放題にされたアタシの唇は、緊張と驚きのあまりシンジを招き入れることが出来なかった。

く、悔しい…そして何より勿体無い…!
今度はせっかくのシンジからの熱い熱いキスに答えられるよう、口を半開きにしながらそちらに向かう!

「あああ、アスカ!?今の…僕の口に…」
「ん?」

あと数センチでシンジの唇をくわえようとしていたアタシは動きをピタリと止める。

「なによ!アンタさっきまでアタシの唇、無茶苦茶ペロペロしてたくせに急に怯えた感じで話したりして!」
「や、やっぱり僕アスカとキスしてたの!?」
「はぁ!?」

大の字に固定されてて上手く動けないようだが、おそらく跳ねるような動きをしたいのだろう。
ピーンと体全体を伸ばしてシンジがうろたえている。

「あ、アンタまさか気付いてなかったの…?」
「だだだ、だって…ごめん。僕何かわからなくて夢中で舐めてて…」
「な、舐めたとか言わないの!」
「あ、そ、そっか…僕アスカとキス、キスしちゃったんだ…」

そう言うとシンジは目隠しの下を桃色に染めて…拘束された身体を少しクネらせ、必死で恥ずかしさを隠すような動きをとる。
か、可愛い…。
176パッチン:2009/02/14(土) 22:38:49 ID:???
アタシはシンジの目隠しにソッと手をかける。
「アスカ…?」
「ん、これで見えるでしょ」
「うん…見えたらちょっと余計に恥ずかしいね」
上から覗きこむようにしているアタシから目を背けて、更にシンジは顔を赤くする。

「ねぇ何で今日はこんなことしたの?縛り付けたりキスしたり…」
視界が解放されたことで、だいぶ余裕が出来たのか先程までよりシッカリとした問いかけだ。
「ん〜、そうね」
ベッド脇から上体を伸ばす体制だったアタシは、ピョンとシンジの体の上にのしかかる。

「ぐぇっ」
「ぐぇじゃないの!!・・・ねぇアタシのこと好き?」
「アスカのこと?」
「うんっ…」
「アスカのこと、好きだよ」
「アタシも、好き」
「僕のこと…?」
「うんっ。シンジのこと好きよ」

サラサラと流れるように本当の言葉が出る。キスのおかげかな…?

「もしかして僕がバレンタインに霧島さんと出かけるからこんなことしたの?」
「そうよ」
「そっか、ヤキモチ…やいてくれたんだ」
「アンタさぁ何であんな女と一緒にデパートなんか行くのよ」
「んーとね・・・・・キスしてくれたら…教えてあげる」

はにかむシンジに、アタシは猛獣のように飛び付いた。
177パッチン:2009/02/14(土) 22:40:19 ID:???
ミサトが帰ってくるまで続けられたアタシとシンジの『素敵な時間』は、とりあえずお日様が沈むあたりには終了した。

そして、シンジがあの女と一緒にデパートに行く約束をした理由というのは『アタシへの逆バレンタインチョコを選ぶため』だったらしい。
最近なんか流行っているらしいから、好きな娘がいたら買ったら?とあの女から言われたらしい。
チョコくらい一人で選べるでしょ!とアタシは怒ったんだけど

「だって…こんなに誰かを好きになったの初めてだから…どうしていいか…」

とか言うので、窒息寸前キスで許してあげた。

しかしあの女…いや、霧島さんには悪いことしたわね。アタシとシンジの仲を思って協力してくれたのに…。
などと思い、あの後シンジの携帯から電話をかけて2人でドタキャンを謝ろうと思ったのだが、帰ってきた言葉は・・・

『なによそれ〜!!せっかく今日のデパートデートを機に、碇君を逆転GETしよーと思ってたのにぃ!!』

・・・やはり恐ろしい女だった。
ムカついたのでその後もいっぱい『素敵な時間』を堪能してやったわ。
178パッチン:2009/02/14(土) 22:42:26 ID:???
「「いってきまーす」」

次の日の朝、玄関から出たアタシとシンジの間に特別な雰囲気は一切なく。
昨日あれほどラブラブした関係とは思えない。
手も繋いでないし。
シンジをアタシだけのモノにする手錠も無い。

でももうアタシの心の中に不安は全く無い。

「ねぇシンジ」
「なに?」
「・・・何でもない」
「ふふ、そうだと思った」
でもアタシは何かでシンジをつなぎ止めてる。縛り付けてる。

多分それは赤い糸。

アタシの小指から伸びる赤い糸は、シンジとアタシを永遠に結び付けている。




深夜0時
がちゃり、がちゃがちゃ…
「ねぇ…アスカ。また手錠使うの?」
「なによぉ〜アンタそっちの方が好きなんでしょ♪」
「うんっ…///」
「ふふふ、今日もたっぷりいぢめてあげるんだからねっ♪」

・・・まあ夜くらい別にいい…かな?

おわり
179パッチン:2009/02/14(土) 22:43:14 ID:???
最近書くペースが遅いなぁ…。一応書きたいネタは5〜6個あるんで、それ書き終わるまでやめないと思います…。
あぁ通勤の2時間で吐きそうになりながら書いてた頃が懐かしい…w
180名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/14(土) 22:44:23 ID:???
>>179
リアルタイムGJ
また手錠ネタとはコアな…w
181名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/15(日) 13:47:53 ID:???
てwwwwwwwwじょwwwwwうwwwwwwwwww

GJ
182名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/16(月) 01:56:38 ID:???
アスカの両手首に手錠をかけた。気がつかないまま眠っているアスカはすごくかわいく見えたる。
パジャマのズボンをすっかり下げた。
その下はきれいな青の花もようのショーツだった。
さらにそこに手をかけた。少しずつ下ろしていくと、股間からの熱気がちょっと立ち上っているような気がする。
まだアスカは気づいてない、何にも。
こんもり盛りあがったわずかな丘に触れていく。ピクリと体が動くけど、まだ意識はないみたいだ。
いいのか、こんなことして。アスカが気づいて、大きな声をあげられたらどうなるんだろう。
あっという間に殺到する警備員。はっとして指を離すと、寝間着のズボンをたくしあげた。
「よかったのに。そのままでも。」
「き、きづいてたの。」
183名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/16(月) 02:09:09 ID:???
「あったり前でしょ。ここまでされて気がつかないわけないじゃん。」
「ご、ごめんなさいっ。」
「悪いと思うなら、最初っからしないように!」
あすかはよゆうしゃくしゃくだけど
「どうかしたんですか?」
警備員が重ねて声をはりあげた。
「だいじょうぶ。なんともないです。」
警備員は一応納得して引き上げていった。
「さてシンジあなたは。」
「わ、わかったからみんなには。ないしょにして!」

184名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/16(月) 02:18:12 ID:???
手錠を外したとたん、パアンッ!と思いっきり横っ面を張り飛ばされた。
僕はベッドの向こう側に吹っ飛んで、アスカのドレッサーの化粧品をバラバラ落としながら
壁に激突した。鼻血噴き出たけど、その後アスカはなにも言わなかった。
「許してもらえたと侮るんじゃないわよ。あんたのこずるい指のことはずっと覚えておくからね。」
「う、うん。」
おどおどしながらアスカに忠誠を誓うしかなかった。
185名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/16(月) 02:23:32 ID:???
強姦崩れで犬扱い。報われねえなあ、シンジは。
186名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/17(火) 04:17:28 ID:???
警備員www
187名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/17(火) 14:24:39 ID:???
最後の決戦が迫っているという話だったので、僕らはネルフ本保の居住区に移されていた。
そこで引き起こしたのがこの事件だった。結局女の子に縋ってでも僕は自分の自我を維持したかったのだ。
というより、それしか手段がなかったのだった。ついさっきまでぼろ屑のようになっていたアスカは僕の
指に反応して急に正気付き、警備員を密かに呼び僕に最後の一線を越えさせなかった。
横っ面を張り飛ばして、いつものように僕の上に君臨した。自分への凌辱が加えられる最後の一瞬に僕を否定し、
投げやりになっていた自我が復活したのだ。アスカによれば、
「なんだってのよ畜生!こんなところでシンジに抱かれて好きなようにいたぶられて強姦されて汚されて
それが私の現実における姿だってええの?許せない、許せない。」
僕の指がアスカの大事な部分をなぞる感触は結構強烈で、その分僕に対する殺意を盛り上げるのに十分だったらしい。
このままで全部をこいつに委ねてしまってもいい。シンジに抱かれて甘ったれられて、涙を下腹に垂らされることで
シンジが救われるかもしれないってその思いと両方が交差したらしい。
「で、このまま2人ともいずれゼーレとの決戦で壊れたまま殺されるのを許すわけ。
せっかく助けたシンジもろとも殺されるわけ?」
そんなのまったく無意味じゃない。ママが死んでからこの方、あたしはここで殺されるために生きてきたっての!?
それが爆発して、僕にきっと目を向けた。
アスカの股間を死んだ魚の目をして、薄笑いを浮かべていじってる情けない僕を見たんだ。
「こいつのことも、もう一度生かしなおしてやるっ!」
今だから言うけど、アスカのおせっかいがなかったら僕はあのまま腐れて死んでたんだろうね。
188名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/17(火) 23:48:46 ID:???
さて、ひな祭りである。

「シンジ、ひな人形を買ってきなさいよ」
「ちょ、ちょっと、高いんじゃないの?」
「だからといって、女の子の節句に何もしないつもり?」
「いや、なんとかしてみるよ」

で、赤い風呂敷を階段に広げて、なにやら人形を並べ出す。

「シンジ、なにそれ。エヴァじゃないの」
「そうだよ。作戦部の日向さんから、作戦会議用の模型を借りてきたんだよ」
「まあ、いいわ。さっさと並べなさい」
「う、うん……」

そして、出来上がり。
「シンジ、間違ってるじゃないの。一番上はお内裏様とお雛様のカップルの筈よ」
「そうだよね、間違ってるよね」
「間違ってるけど、でもそうね。これが一番正しいわ」
「そうだよね、こう置かざるを得ないよね」

そう、頂上に弐号機一体。その階下に零号機、初号機その他を配置したシンジは実に賢明であった。

(おわり)

ごめん、もはやLASでもなんでもない。
189名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/18(水) 02:54:26 ID:???
ぷ。大傑作だね。すごく笑えました〜(ゲラ
190 ◆35Qp72rnKA :2009/02/21(土) 01:04:34 ID:???


アスカが死んだ日、
再会と広場の薄氷、
そして夜の酒場


アスカが死んだことを僕が知ったのは、大学四年の夏だった。そのころはまだア
スカのことを忘れることが出来ずにいた。唐突に彼女が消えて平然といられる男
なんて、そうそういる訳もない。
今考えれば、それだけならまだ良かったかも知れない。
僕はその日、いつもと同じように大学から自宅へ帰った。

僕はそのころは既に独り暮らしをしていて、ミサトさんや綾波からは離れて暮ら
していた。もちろん父さんからもだ。
父さんとは高校卒業頃に和解をした。一晩中話し合い、思いを吐露して泣きもし
た。そうする価値は十分あったと僕は思う。それが原因で僕は独り暮らしを始め
ることになった。自立心を高めるためだ。それと毎日を忙しくして、アスカの不
在を考えないためだ。

191 ◆35Qp72rnKA :2009/02/21(土) 01:06:07 ID:???

家に帰ると玄関に見慣れない靴があるのを発見した。小さく白い低底のハイヒー
ルだ。それを見てアスカが初めてハイヒールを履いた時のことを思い出した。リ
ビングには明かりはついてはいなかったが、誰かがそこにいるということは気配
とハイヒール、そして薄い影でわかった。
それは綾波だった。
綾波は白いブラウスに紺のロングスカートを履いていた。恐らく父さんが買って
上げたのだろうと当たりをつけた。綾波は父さんと同居していて、度々僕も綾波
の衣料品買い出しに、父さんになかば無理矢理にかりだされた事がある。
「こんな急にどうしたの? 明かりぐらいつけててもいいのに。紅茶でも飲む?」
と僕は明かりをつけて言った。
「いらないわ。ありがとう。」綾波はそう言って静かに首を振った。

だが僕は無視して紅茶をカップに煎れてテーブルの上に置いた。綾波はそれを美
味しそうに飲んだ。

そして綾波はアスカが死んだと僕に告げた。死因は全身打撲、内蔵損傷による多
臓器不全。石畳の道を横切ろうとした時、トラックに跳ねられたということだっ
た。それらの 事 実 を、綾波は淡々と僕に話して聞かせ、静かに僕の肩を抱
いた。予想していたのよりもずっと、前に触れたときよりもずっと、綾波の体は
暖かかった。

192 ◆35Qp72rnKA :2009/02/21(土) 01:06:40 ID:???

僕はそれから三日大学を休み、そのあとはいつもと同じように講義に出席し、卒
業研究を仕上げた。そのきっかけになったのは父さんの言葉だった。僕は今でも
ありありとその言葉を思い出すことが出来る。「お前は私とは違う。お前にはお
前の強さがある。俺のようになるな。」僕はこの言葉を電話口で聞いて、涙を流
した。そして三日目にアスカとの思い出を全て処分した。マグも櫛も何もかも全
て。
僕は大学を卒業した。


大学を卒業した夜。僕は父さんから贈り物を貰った。ひとつの指環。シンプルな
シルバーの指環だ。それは父さんが唯一捨てる事の出来なかった遺品。エンゲー
ジリングだった。
それは今、僕の首に下がっている。僕はよっぽどの事が無い限り、それを肌身離
さず持っている。

193 ◆35Qp72rnKA :2009/02/21(土) 01:08:04 ID:???

   ◆

ネルフ支部は街の郊外にあった。敷地は暗い森で囲まれ、ヘリポートがあり、五
つのくらいの棟から建物は構成されていた。
僕達を迎えてくれたのは日向さんだった。日向さんはアスカと共に、ドイツ支部
に出向していた。
「みないうちに随分背が延びたもんだ。司令も背が高いから、きっと遺伝だろう
なぁ。僕はてっきりお母さん似だと思っていたんだけど。」
「僕もですよ。」と僕は笑った。

通された宿舎はネルフ支部司令室や研究機関がある本棟から渡り廊下で繋がって
おり、裏口からの出入りも出来るようだった。
僕は部屋に入って荷物を落ち着けると、街に出てみる事にした。時間はまだ4時
だし、ネルフ支部がある街なのだから危険はないだろう。慣れない街だが、エン
トランスのカウンターで街の地図でも貰えばいい。酒と煙草は僕の趣味と言って
もいいくらいだ。僕はネルフの制服から背広に着替えてピーコートを羽織り、部
屋を出た。

カウンターで訊くと、ネルフ支部から街の中心部へは徒歩5分らしく、結構詳し
い街の地図もくれた。郊外にあるネルフ支部から街の中心部へ向かう道中で、僕
は地図を広げて街の仕組みを観察してみた。
194 ◆35Qp72rnKA :2009/02/21(土) 01:09:04 ID:???

街の中心部には噴水広場があり、そこから放射状に道が伸びていたが、それも区
画整理でもしたのか外郭は雑然とした建物の並びをしていた。

街の中心部には噴水があった。噴水は石造りで重厚な造りであり、さらに水面の
面積も広く、豊かな水を湛えていた。僕がみる限り、これまで肉眼でみた噴水の
どれよりも立派だった。いったい誰が、いつ、なんの目的でこんな噴水を建てた
んだろう?
僕は雪がうっすらと積もった石造りの縁に腰を降ろしてみた。コートのおかげで
ズボンが濡れることはない。水面には薄氷が浮かんでいた。今夜には凍ってしま
うのだろうか。
ふと薄氷に触れてみた。それは簡単過ぎるほど簡単に4つくらいに割れてしまい、
水面の下に沈んでいってしまった。
僕は噴水の石縁から腰をあげて、ブラウン色のコートの襟を合わせながら石畳で
固められた噴水広場を抜けていった。
なにげなく足を踏み入れた小路は灰色の石畳と煉瓦造りの建物で囲まれていて、
唯一なにも遮る物がない空には、乳白色の雲がどんよりとたちこめていた。

195 ◆35Qp72rnKA :2009/02/21(土) 01:10:05 ID:???

ドイツビールの樽が何バレルもあって、メニューにはバイエルンソーセージやド
イツパンや軽食があって、割とメジャーなクラシックを粛粛と流していた。僕も
昔チェロをやっていたから、ある程度のクラシックは解る。これはドイツの伝統
的作曲家の楽曲だ。穏やかなバロック音楽達とヨーロッパの酒場……。
僕は、店内の真ん中にずっしりと居座ったUの字型のカウンターの一番端の席に
座り、メニューからドイツウィスキーと一番量の少ないソーセージをさっと選ん
で注文した。ドイツ語はあまり得意じゃないけれど、大学では第二外国語でドイ
ツ語を専攻していたから、ある程度はこなせる。
ウィスキーは中々上質な香りを放ち、ソーセージもぷりぷりと皮から弾け出さん
ばかりに若々しい張りを誇っていて、一口かじると濃厚な肉汁が口の中に迸った。
店の中では何人かのブロンドや金髪、黒髪の男女が酒を酌み交しており、カップ
ルを作っている者達もいれば一人で飲んでいる者もいた。みんな時折クスクスと
は笑うこともあるが、大声でがなる者や笑う者はなく、皆一様に落ち着いた雰囲
気で酒を飲んでいた。恐らくそういった店なのだろう。

アスカがその店に現れたのは、僕が三杯目のウィスキーを注文したときだった。
その女性は緑色のレンズのサングラスをかけ、赤いコートとベージュのセーター
を着込み、それの隙間からは黒いストッキングを履いた綺麗で長い足が覗いてい
た。彼女は肩に軽く積もった雪を払い、僕から五席くらい離れた席に座り、慣れ
た仕草と美しいと言えるドイツ語の発音でカクテルを注文した。そしてサングラ
スを外した。
僕はハッと息を飲んだ。
196 ◆35Qp72rnKA :2009/02/21(土) 01:10:54 ID:???

僕はハッと息を飲んだ。
それは確かにアスカだった。
僕は席を立ち、アスカの背後に回ったが、彼女はまだ僕には気付かないようだっ
た。
「あの……人違いだったらすいません、惣流アスカさんじゃありませんか?」
僕がドイツ語で呼び掛けると、アスカは振り向いて僕の顔を見た。大人らしい成
熟した雰囲気をかもしだしてはいたけれど、インテレクチュアルな額やブルーに
輝く宝石のような瞳は昔と変わってはいなかった。

   ◆

アスカは振り向くと信じられないものを見るような瞳で僕を見ていた。
「なんであんたがここにいるの?」
僕はその問いには答えなかった。アスカの前でネルフの話題を出すのは適切では
ないと思ったからだ。
「隣、良いかな?」
アスカは心底驚いたような顔をして僕の顔を見た。
「どうしているのよ。」
久々に受けるアスカの瞳は僕には些かきつい感じがした。
「ちょっと観光かな。」
「ウソ。」
「嘘じゃないよ。」
正解だ。僕は嘘を吐いている。
197 ◆35Qp72rnKA :2009/02/21(土) 01:11:37 ID:???

その時アスカの前に出されたのは真っ赤なカクテルだった。アスカはカウンター
の中のマスターに礼を言った。
「やっぱり。」と僕が言うと、アスカは驚いたような顔をして僕を見た。
「なにがやっぱりなのよ。」
「カクテルだよ。アスカって、ビールとかウィスキーよりもワインとかカクテル
を飲むイメージがあったから。」
アスカは黙ってしまった。昔は何があろうと喋りまくっていたのに。
「それよりも、聞きたいことがあるんじゃないの?」
アスカは真っ赤なカクテルを一口啜った。アスカの唇には赤い口紅が引いてあっ
た。カクテルのグラスにその口紅が、少し移る。
「……うん、あるよ。」と僕はこたえた。
「予想は出来ているけどさ。」とアスカは言った。「少し前までなら喋んなかっ
ただろうけどさ、今はもうどうでもいいから。」
僕にはそう言って艶かしく頬杖をついたアスカがひどく寂しそうに見えた。それ
は、何か心の真ん中から大切な何かがスポイルされてしまったような、そんな寂
しさだった。
「大丈夫?」
「大丈夫よ。もう、心の整理は出来てるから。」
僕は、その時アスカの肩を抱いてあげるべきだったのかもしれない。だが僕はそ
れをできなかった。アスカの姿が、まるであの頃のように僕の事を拒絶している
ように見えたからだった。
「幽霊じゃないよね?」
198 ◆35Qp72rnKA :2009/02/21(土) 01:12:31 ID:???

しばらく経って僕はおどける様に言った。事実、僕は逃げたのかも知れない。
その言葉を聞いて、アスカは絡み合った糸がほどけるように笑った。
「誰が幽霊よ。足だってちゃんとあるわよ?」
そう言って彼女はポンポンと足を叩いた。
「そう……だよね。」
僕は苦笑いをし、ウィスキーを一口飲んだ。
僕はふと考えてみる。今ドイツには6000万の人々が住んでいる。その中で僕
とアスカが再びめぐりあった。この事になにか意味はあるのだろうか。
アスカは新しいカクテルを注文すると、僕にここへ帰ったあとの話をした。それ
は僕自身がアスカと向き合う――それは僕が一番苦手なものだった――手始めの
ようなものだった。
そしてアスカは口を開いた。まるで厳かな儀式のように。

199 ◆35Qp72rnKA :2009/02/21(土) 01:13:59 ID:???

   ◆

アスカはドイツに帰ったあと、卒業した大学に入り直し、今度は大学院にまで進
んで修士号を取得した。そして、21歳になって戻ってきたのは結局この街だっ
た。大学院はその時のアスカにとってひとつのクッションに過ぎなかったのだ。
アスカは元々この街に住んでおり、その頃はまだネルフドイツ支部はミュンヘン
にあった。
大学院を卒業して街に戻ったアスカは、お母さんが産まれた生家を探し当てた。
そして、日本にいたときにスイスの銀行に振り込まれていたネルフからの決して
多くはない報償金を遣っててその家を買い戻した。
買い戻した家に転居したあと、アスカは街の小さい雑貨店に職を見付けた。決し
てドイツの最高学府で号を取得した人間の就職する所ではなかったが、アスカに
は結局それが良かったのだろう、多分。
そしてアスカは何人かの男性と付き合った。その内の二人と関係も持ったが、決
して長続きはしなかった。それも2年前の話であり、今は誰とも付き合ってはい
ない。
それからは、アスカが送る日常は仕事先と自宅の往復だけになり、たまに――今
のように――酒場へ繰り出して2、3杯ひっかけるだけの生活になった。
食事は――驚くべきと言うべきだろう、やはり――自炊するようになった。しか
し、以前よりもずっと食が細くなり、朝はヨーグルトとフルーツシェーキだけだ
し、夕餉は酒と一緒にツマミをいくつか口にするだけだ。以前のようにハンバー
グなど脂っこい物も、好んでは食べなくなった。
200名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/21(土) 20:48:36 ID:???
続きwktk
201名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/22(日) 02:42:57 ID:???
乙かれです
続き期待しております
202名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/22(日) 18:26:49 ID:???
wktk
期待
203名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/22(日) 20:53:20 ID:???
>その内の二人と関係も持った
この一文で何人の若者が海に散ったことだろう…
204名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/22(日) 22:23:04 ID:???
>>203
その一文で散った一人。
なんだろーなー。やっぱ二人の間に誰も入るなとは言わんが、キス以上はちょっとな。


「 >自分が痛いと感じなくても、多くの人が痛みを感じる場合があります。
 >特に以下の3つのどれかが含まれる時には投下を控えましょう。
 >○アスカとシンジが別の異性との絡みを持つ(惹かれる、キスやセックスなど)」
>>1の転プレにも↑みたいに書いてあるし、純愛オンリーの人には抵抗がある。
現にその一文で読む気うせたし。
転プレに書いてある以上、一言でも忠告を入れて欲しかったわ
205名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/22(日) 22:37:19 ID:???
別にそーいう作品でもいいけど、その場合は別スレが用意されてるし、
ここのテンプレにルール明記してあるし、迂闊だなとは思う
206名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/22(日) 22:55:36 ID:???
父上、母上。先立つ不幸を(ry
207名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/22(日) 23:06:32 ID:???
そんなことでw

まあテンプレにある以上はちょっとまずかったな
208名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/23(月) 12:43:11 ID:???
>>199
端からテンプレを確認する気がないのか、テンプレ読んでもレギュレーション
を守る気がないのか知らないけど、ここテンプレに引っかかるイタモノが
書きたいなら

LAS小説投下総合スレ17 http://changi.2ch.net/test/read.cgi/eva/1223392688/

にでも移動してくれ。あちらはイタモノ禁止じゃないから。
209 ◆35Qp72rnKA :2009/02/24(火) 00:15:11 ID:???
あーうん、ごめん
つかこのあと二人が体合わせるような場面があって……
処女描写書くのマンドクセ('A`)みたいな感じだったから書いちゃったのよ
最初は結構濃い描写書いて、外伝みたいな感じでエロパロに書こうかと思ってたんでね
だけど気力尽き果てて……アレは不精のなれの果て……
消そうと思ってたけどなんか残ってたのです
因みにこっから先にゃ、イタモノスキーが悶えるような物は無いです。ハイ

んで、移動するにしても章を跨ぐのは節操ない感じがするので、第2章の残りだけとりあえず投下させてもらいます
連投規制に引っ掛かってたから

じゃあ恥を忍んでちょっとだけ投下
210 ◆35Qp72rnKA :2009/02/24(火) 00:16:55 ID:???

食事は――驚くべきと言うべきだろう、やはり――自炊するようになった。しか
し、以前よりもずっと食が細くなり、朝はヨーグルトとフルーツシェーキだけだ
し、夕餉は酒と一緒にツマミをいくつか口にするだけだ。以前のようにハンバー
グなど脂っこい物も、好んでは食べなくなった。
しかしアスカの体は痩せたという印象を持たせない。どちらかと言うと、健康的
にスリムになった、という印象だ。
彼女は確実に――川が海に流れるように――成熟し、体を成長させ、長い思春期
を僕とさして変わらない時期に終え、ラヴェンダーの香水が似合うようになった。
「どう? いい女になったでしょう?」とアスカは楽しそうに言った。

   ◆

アスカはナッツを奥歯で砕いた。コリッという大きな音が鳴り、アスカはそれを
パリパリと咀嚼して、カクテルを一口喉に流し込んだ。
「ま、結局はそういうことよね。」とアスカは言った。僕は戸惑う。そしてブラ
ンディを一口飲んだが、味はよくわからなかった。
アスカは話の中で、帰った理由や死を装った理由を避けて話していた。その理由
は、僕にはわからない。だが、アスカにはそれなりの理由があるのだろう。

211 ◆35Qp72rnKA :2009/02/24(火) 00:18:47 ID:???

   ◆

店の外ではもう白い妖精がはらりはらりと舞い降りてきていた。その白い妖精は
アスカの綺麗な髪に乗り、溶けることなくアスカの髪を慈愛に包みこんでいた。
これが工場から排出される有毒物質に汚染されていなければ、どんなにいいこと
だろう。しかしそれでも、僕は初めて目にする雪というものをを楽しみにしてい
た。記録映像やニュースなどでしか目にしないそれがどんなものなのか、期待に
満ちていた。しかし今改めて考えると、それほど素晴らしい物とは思えない。そ
れだけ、アスカとの再会が強烈だったのだ。
僕は体を寒さに震わせる。アスカが「またね。」と言った。僕は「うん。」と返
す。
アスカは、にっこりと笑いながら、路地の方へ歩いていく。角を曲がるところで
手を振ったので、僕も振り返し、大通の方へ歩いた。

第三章へ続く
212名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/24(火) 00:22:38 ID:???
>>209
この先描写が大丈夫ならそのまま投下でも良い気がするがなぁ
連投規制はエヴァ板だと10レス、引っ掛かった時の規制解除迄は大体50分前後だよ
とりあえず言いたいのは続きが読みたいって事だ
213名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/24(火) 00:28:25 ID:???
乙です
私もどんな形でも続き期待しております
214名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/24(火) 01:44:05 ID:???
つか、あらすじ補完のためwに相手にペラペラ成り行きを話す、ってのはLASとして興醒めww
215名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/24(火) 02:01:51 ID:???
テンプレ有・スレ分割をわざわざしてるんだから移るべきとは思うけど、
作品自体は応援してますよ乙
216名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/25(水) 06:05:39 ID:???
◆35Qp72rnKAさん。 移るときは移動先を明らかにしてください。

また、自分としてはアスカの数年の経歴の中に何人かの男友達が
いたところで、そんなのはごく普通の当たり前のことだと思うんですが。
そんなに問題ですかね。確かに板の掟には書かれてるけどねー。
そんなことでこれだけ読める作品を追い出すのはもったいないと思うんだ。
217名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/25(水) 06:07:01 ID:???
このままここで書いてよ。
218名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/25(水) 08:39:54 ID:???
>216=217
ルールのある場ではルールを守ろうとする程度には大人になりましょうね
エヴァ板にある別のLASスレに移るだけだし(>>208参照)
219名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/04(水) 10:51:43 ID:???
保守
220名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/13(金) 01:00:48 ID:???
ほら過疎っちゃった。
221名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/13(金) 08:12:40 ID:???
アホか
>>209見る限り、職人さんは続き書けたら普通に移るつもりだろ
つーか、ルール教えられたらヘソ曲げて来なくなるようなガキは来んでヨイ
222名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/13(金) 22:35:14 ID:???
>>220
枯れ木も山の賑わい?
223名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/14(土) 15:27:22 ID:???
うわーん、続きが読みたいよ(´Д`)
文句ばっか言うから作家さんがいなくなったじゃないか(゜o゜)\(-_-)
224名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/14(土) 22:43:30 ID:???
叩かれて、止めるならそれだけのこと。
万人に受け入れられる創作なんてないから、開き直りも必要。
225名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/15(日) 11:36:04 ID:???
>223
>>221
226名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/20(金) 17:45:36 ID:???
224が出ていきゃよかったんだよ。
227名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/20(金) 19:18:54 ID:???
シンジ『うぅ〜ん・・・あぁ〜』
俺は起床した 
どうやらテーブルでノートを写していたが、途中で居眠りをしてそのまま朝を迎えた様だ。
ふと携帯を見ると着信があり、留守番メッセージがあった 
寝呆けながらメッセージを再生する 
『シンジ、私だ。いつも通り今月分は振り込んでおい』
ピッ!! 
 
朝から最悪な声を聞きたくはない 
アイツからのメッセージで残念ながら目が覚めてしまうとは・・・ 

こんな事をして父親面をするクソ親父がハッキリ言ってムカつく 

思い出すだけで親父への憎しみが増す
228名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/20(金) 19:39:13 ID:???
>>227続き
  
俺が5歳の頃、母親は白血病で死んだ。穏やかで優しい人だったらしい 

『らしい』と言うのは母親の記憶が俺に残ってないからだ。 
母親が死んだ後、親父は直ぐに俺を施設に預け、海外へ行ってしまった 
帰国したのは俺が15歳の時、10年ぶりの再会だった。 

施設に電話が来て『俺に会いたいから施設に行く』と連絡が・・・
俺は不安と嬉しさを感じなが 施設内の応接室で施設の園長と共に親父を待った


 



そして、親父はやってきた 

10年ぶりの親子の再会
感動の対面のはず、しかし親父の横には知らない女性がいた・・・ 





親父はこう言った
『久しぶりだなシンジ、突然だが私は彼女と再婚する。今まで寂しい思いをさせてすまなかった。 
これからは3人で一緒に住もう』
との事だった
229名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/20(金) 19:45:05 ID:???
名前だけがシンジの別人俺キャラ(作者自己満足キャラ)のままで終わらないことを期待する
230名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/20(金) 19:52:58 ID:???
>>228続き

気付くと、俺は身を乗り出し、親父の頬を殴った 

『ふざけんな!!』
親父は吹っ飛び、床に倒れた
俺は親父の胸ぐらを掴み、声を荒げた 
『俺を捨てたクセに父親面して知らない女と・・・』
ここからの記憶はない 

無我夢中で親父に罵声を浴びせながら殴り続ける俺を親父の婚約相手は震えながら棒立ちして見ていたそうだ。  

その後、暴れる俺を施設の男性職員が二人かがりで親父から引き離し、応接室から連れ出された。 



気が付くと俺は施設内の自分の部屋に寝かされており、親父と婚約者の姿はなかった・・・
231名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/20(金) 20:04:39 ID:???
>>230
そして話は今に戻る 

俺は高校に上がると同時に施設を出た 
一人暮らしをする事にした 
もちろん親父とは住むなど論外 
しかし、施設から聞いた親父は俺への経済支援として毎月金を振り込む様になった 


迷惑な話だ 
あんなヤツからの金なんて使いたくもない


そんな昔話を思い出している内に時間が近いていた 





シンジ『ヤバイ!!遅刻するっ!!』
そう叫ぶと、俺は急いで着替えて高校へと向かった
232名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/20(金) 20:19:16 ID:???
>>231
俺は教室のドアを開けた 

シンジ『はぁはぁはぁはぁ・・・ギリギリセーフ!!』
そう叫びながら教室に入るとドア付近にいた女子2人がクスクス笑いながら見ていた 






俺は恥ずかしながら自分の席へ向かった 
その間も他のクラスメイトが笑いながらジロジロと俺を見ていた 



羞恥になりがら俺は自分の席へ座った 
すると、前に座っていたタクマがニヤニヤしながら振り返った 

タクマ『朝一から笑いを取るとは才能があるじゃないかな〜』
233名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/20(金) 20:47:38 ID:???
>>232

コイツは桐原タクマ 
高校で最初に出会った友達と呼べるヤツ 

何時もヘラヘラしながら過ごす自由人だ 

シンジ『うるせぇな〜寝坊したんだよ』 

タクマ『あらあら寝坊でちゅか〜シンジちゃ〜ん
私が毎日起こしに行ってあげましょうか〜』

そう言うとタクマは俺の頬をつついてきた 

俺はその指を掴みながら、『そんな口を裂いてやろうか?』と拳を握りながら答えた 

タクマ『ハハハ〜マジになるなよ〜
それより俺、昨日惣流に告白したぜ』
と笑顔で言った 

シンジ『惣流って、あそこにいるアイツだろ』
俺はそう言うと教室の一点を指で差した 

そこには沢山の女子に囲まれながら楽しく会話をしている彼女の姿があった
234名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/03/21(土) 00:08:06 ID:???
キャラ改変ものって、投下スレでやると人物描写がグダグダになりやすいんだよなw
235名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/04/06(月) 03:29:23 ID:???
保守
236名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/04/12(日) 02:54:49 ID:???
職人マチ
237名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/04/12(日) 15:15:38 ID:???
エヴァ板良スレ保守党
238名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/04/22(水) 00:17:34 ID:???
保守
239名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/03(日) 00:46:53 ID:???
保守
240名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/10(日) 21:22:51 ID:???
>>227の作者だけど、続き書いた方が良い?
241名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/12(火) 09:20:32 ID:???
一応、続き  

タクマ『そう!!だけど・・・結果は敗北でした〜』
と机に伏せながらお手上げ状態で報告した 

シンジ『所詮は雲の上の存在だ、まっ良い経験をしたな』
と無関心に答えた 

『シンジは、惣流に興味が無いのか?この学校で興味が無いのはお前ぐらいじゃないか〜』
とタクマは呟いた 

『いや、確かに綺麗だと思うが、何かお嬢様みたいに育った金持ちの娘さんらしいし、そういう娘はちょっとな・・・』
とシンジは外を眺めながら答えた 


惣流・アスカ・ラングレーはドイツからの帰国子女らしく、学校から少し離れた高級住宅街に住んでいて、周りからはお嬢様と言われている 


242名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/12(火) 09:34:59 ID:???
>>241
続き 


すると突然、女子グループ数人を引き連れ、惣流がこちらへ向かって来た 



シンジとタクマの席まで来ると
『ちょっと、さっきからこっちをジロジロ見てたでしょ』
『あと指さしてたし』
と二人の女子が言ってきた 

タクマ『えっ、いや・・・』
タクマは焦っていたが、シンジは冷静だった 
シンジ『いや、普通に会話をしていて惣流さんの話題が出ただけだよ』


すると後ろに居た惣流本人が現れた 

惣流『まっ、私みたいな美しい女子と同じクラスに居るなら話題にもなるわよね〜 
でも、所詮は昨日のアンタは人間以下だし』
とタクマを見ながら、そんな事を言い放った 
そんな惣流の言葉に周りにいた女子グループはクスクス笑っていた 


タクマはいつもの元気が無くなり、沈んでいた 

そんなタクマの姿を見たシンジは・・・ 
『そんな言い方は』
すると・・・ 
243名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/12(火) 09:50:20 ID:???
>>242
惣流『あら、アンタはソイツよりまともね〜、それでもチンパンジーって所かしら』

と邪悪な笑顔で言い放った 
するとクラスの女子全員が爆笑した 
『惣流さん、最高!!』

『座布団、1枚!!』
『おっかし〜』
と女子達の声が響いた 



244名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/13(水) 09:45:04 ID:???
俺が好きなタイプじゃないが
どんどんやっちゃいな
どうせ、誰もいないんだし
つか、あんまり周りの反応気にすんな
空気嫁にならない程度にネ
245名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/14(木) 00:28:42 ID:???
視点が曖昧だな。
前回のも一人称が「俺」なのに、ト書きではシンジなんて付いてるし。
246名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/14(木) 01:01:37 ID:???
この作者の中ではシンジの一人称が俺なんでしょ
完全なオリキャラ

つか、>>240-241の流れが哀しすぎるw
247名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/15(金) 16:22:24 ID:???
>>243
続き 






プチ 
『ふざけんな・・・』
ついにシンジの堪忍袋の緒が切れてしまったようだ  

しかし、そんなシンジを必死にタクマは押さえる 

『やめろ、シンジ・・・いくらムカついたからって惣流に喧嘩売ったら、学校中の男子を敵に廻すぞ!!』
タクマはシンジの耳に向けて呟いた 

『そんな事知るか!!ここまで言われて、黙っていられるか』

まはや、シンジは獲物を見つけた野獣のようになっていた 

その姿に先ほどまで笑っていたクラスの連中も静まりかえっていた 

惣流を除いて。。。 


『何それ?怒っちゃったの?まだまだガキね〜』
惣流は臆する事なく、シンジに語り掛ける 

248名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/15(金) 16:46:44 ID:???
>>247


『ガキだよ、だがなお前みたいな金持ちの親の下で育った成金女には言われたくない!!』
シンジは声を荒げる  

その言葉を聞いた惣流は、何故か黙り込んだ 

シンジはさらに罵声を続ける 

『お前、散々人を馬鹿にしてるがお前も所詮は赤髪生やした猿だよな!!』

『この学校は自分の縄張り、学校の男子は僕って訳だ!!赤猿にのお前には理想郷だな!!』

粗方言うとシンジはタクマの手を振りほどき、カバンを持ち、教室の出口へ向かい、去って行った 



249名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/15(金) 16:54:16 ID:???
>>248





教室に残されたタクマや他の連中は唖然としていた・・・ 


そんな中、黙り込んでいた惣流は突然、自分の席へ戻り、愛用のカバンを手にし、シンジが出て行った出口へ向かった 


『ちょっと惣流さん!!』
1人の女子が声をかける 

『ゴメンなさい、ちょっと今日は早退する・・・』

そう言うと、惣流は教室を出て行った






教室を出て行った惣流はガクガク震えていた 
250名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/15(金) 17:01:46 ID:???
>>249

>>248





> 教室に残されたタクマや他の連中は唖然としていた・・・ 


> そんな中、黙り込んでいた惣流は突然、自分の席へ戻り、愛用のカバンを手にし、シンジが出て行った出口へ向かった 


> 『ちょっと惣流さん!!』
> 1人の女子が声をかける 

> 『ゴメンなさい、ちょっと今日は早退する・・・』

> そう言うと、惣流は教室を出て行った






> 教室を出て行った惣流はガクガク震えていた 
251名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/15(金) 17:03:31 ID:???
>>249


惣流はガクガク震えながら何か呟いている・・・ 






『私に・・・ 
素直な・・・ 
本気で・・・

面と向かって・・・ 

アイツ・・・』 






そしてアスカは呟いた 

『                                  
嬉しい・・・』
252名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/15(金) 17:41:33 ID:???
どMだな
253名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/15(金) 22:39:09 ID:???
なんか、また視点が変わったw
254名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/16(土) 01:57:01 ID:zu8aLD9w
おまえら寛大なんだな
255名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/16(土) 08:35:19 ID:???
ここはヘボ作家の習作の場でもあるからなw
256名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/25(月) 16:49:52 ID:???
ぱっちんとかまた来ねえかなぁ
257名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/06/13(土) 19:28:28 ID:???
保守
258名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/06/27(土) 16:48:29 ID:???
落ち着いて保守
259名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/06/27(土) 23:42:33 ID:???
>>258
誉めてつかわす
260名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/06/29(月) 15:59:11 ID:???
保守アゲ
261名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/06/29(月) 18:58:17 ID:???
まちまち
262名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/02(木) 19:47:00 ID:???
263名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/02(木) 22:43:12 ID:???
ずっと、理由がほしかった。

「ねぇバカシンジ」
「なんだよ」
「チェロ、弾いてよ」
「え?」
「前に弾いてたでしょ」
「え、う、うん」
「聴いてやるから、弾きなさいよ」
「なんだよ急に…」
「いいから、早く」
「…わかったよ、ちょっと待ってて」
264名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/02(木) 22:48:30 ID:???

「持って来たよ…あ、アスカ…?」
「何」
「もしかして」
「……」
「いや、ううん、何でもない」
「……」
「……」
「ハンカチなんていらない」
「ごめん、もしかして、その、」
「泣いてないわよ!涙の一ッ粒もないじゃない」
「う、うん。」
「勝手に誤解しないでよ」
「ごめん」
「私が泣く理由なんてこの世界のどこ探したってないんだから」
「うん」
「だから、そんなの要らないの」
「うん」
「わかったら、早く弾いて」
「…うん」
265名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/02(木) 22:53:04 ID:???
「どうだった?」
「まあまあってところかしらね、礼はいっとくけど」
「そっか」
「じゃ。」
「アスカ」
「ん?」
「アスカはクラシック音楽好きなの?」
「もっちろん!ドイツ生まれのドイツ育ち!
 アンタなんかよりもよっぽど詳しいわよ」
「無理かな…」
「無理って、なにが?」
「いや、その、なんでもない……。」
「はっきり言いなさいよ!男らしくないわね。」
「ぼ、僕、ずっとただチェロを弾いてきたんだ。
 習い始めたのも先生が薦めたからなんとなくだったし、
 それからもずっと、ただ弾いてるだけだった」
「ふーん、その主体性の無さ、いかにもアンタらしいわね」
「うん、本当にそうなんだ。…でも。」
「でも?」
266名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/02(木) 23:02:00 ID:???
「そうじゃないのも、いいかなって。」
「は?」
「なんていうかさ、ただ弾くんじゃなくって、
 なにか目的があればいいかなって」
「目的、ねぇ」
「うん」
「なに?コンクール優勝でも目指すわけ?」
「ううん、そんな大それたことじゃなくていいんだ。」
「そう」
「うん」
「それで?」
「え?」
「あーもぉー!まだるっこしいわね!
 その「目的」とやらと、さっきの「無理かな」はどういう繋がりがあるのよ!」
「ああ、うん」
「きぃーっアンタと話してると、ほんっとストレスが溜まるわ」
「でも、アスカ、今日は珍しく僕の話、聴いてくれるね」
「チェロのお礼!もぉ、いいから早く話しなさいよ!」
267名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/02(木) 23:05:54 ID:???
「うん」
「で?」
「つまり、チェロを弾くことで、その、だ、誰かにあげれたらいいなって」
「あげる?なにを?」
「なにをっていうか、うんと、ちょっとリラックスしたりとか、落ち着いたりとか…
 あとはさ、ほら、素晴らしい音楽を聴くと、
 感動して泣いちゃう人とかもいるだろ?そんな感じの、なんていうか、うまくいえないけど…」
「……」
「……ごめん。自分でもよくわからないんだ。」
「馬っ鹿みたい」
「そうだね、ごめん、もういいよ…引き止めてごめん。」
「ほんっと頭が悪いわね」
「うん、ごめん…」
268名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/02(木) 23:09:19 ID:???
「…なんて言ったらよかったんだろう、アスカに」
「でも、あんなこと言ったら怒られるよな、バカシンジのくせに生意気だって。」
「もうわかんないや…でも」
「とりあえず、明日もチェロを弾こう」

「……バカシンジ」

269名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/04(土) 13:00:52 ID:???
投下乙。次は会話文だけでなく地の文も書いてくれ
270名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/05(日) 02:16:59 ID:???
別スレだったけど
パッチンさんの続きは
どうなってるんだろう
271名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/05(日) 15:41:43 ID:???
投下したことないんだけど投下してもいい?アスカ独白っぽいんだけど。破でアスカが好きになったので…
272名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/05(日) 16:23:42 ID:???
>>271
してくれ
273名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/05(日) 16:37:32 ID:???
他スレに投下ししたらこっちに誘導されたんで投下してみます。

【Blue Days】

ある夏の日
雲一つない、澄みきった青い、青い空の日
二人して学校をサボった…それ以外はいつもと変わらない彼女との一日

「しっかし、暑いわねぇ」

二人の(いや、彼女の)お気に入りの原っぱで寝転がってる時に彼女はこう言った
僕は…

「暑いねぇ」

の一言

「けどまぁ…今日は風があるし涼しい方よね」
「涼しいねぇ」
「……けど、やっぱり暑いものは暑いわね」
「暑いねぇ」
「ちょっと!アンタさっきから人の話聞いてんの!?」
「聞いてるよ?」
「ウソばっかし!」
「今日は風があるから少しはマシだけど毎日暑いよねって話でしょ?」
「う…聞いてんなら良いわよ!バカっ!」

いつもと同じ様な会話
…確かに暑さと二人っきりの雰囲気に浸ってたから少し流し気味だったかも知れない

それでも僕が彼女を気にかけない時なんてあるはずがない
…たぶんこれから一生そうだと思う
274名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/05(日) 16:38:16 ID:???
「フフ…暑い日は嫌い?」
「まぁ嫌いって訳じゃないけど
…こうも毎日だとね、嫌にもなってくるわ」
「そっかぁ」
「アンタはどうなのよ?」
「僕?…僕は好きだよ?
暑いの苦手じゃないし、それに"真っ青な空"も見れるしね」
「はぁ?アンタバカぁ?空なんていつでも見れるじゃない!?」
「そりゃそうなんだけど…今日みたいな暑い日の空は違うんだ
なんか一際青いって思うんだよね」
「ふぅん…よく分かんないわ…相変わらず変ね、アンタ」

いつもの調子で彼女が僕をからかい、微笑む
本当にいつもの調子だ
……いつもならここで会話は一旦終了
けど今日の僕は少しおしゃべりだった

「今日みたいな空見てるとさ…」「うん?」
「今日みたいな空見てると…大好きな人に包まれてるみたいになるんだ」
「………」
「…ワガママで意地っ張りで素直じゃない
けど…すごく優しくて可愛い人、僕にだからワガママで意地っ張りで素直じゃない」
「"今日の空のような澄みきった青い眼をした女の子"」
「…だから今日みたいな空を見てるとさ、すごくその人と一つになったような気になるんだ
そしてすごく愛おしく思う」
275名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/05(日) 16:39:53 ID:???
「………」
「だから…僕はアスカが好きなんだ」
「ア……アンタ本当にバカね!?今は空の話してたのよ?
いつの間に……私の話になってんのよ!?」

彼女は飛び起きた

「あ…」

僕も飛び起きた
確かに今のは紛れもない本心だ

…けど伝える気なんて無かった
あくまで空の話をしてるつもりだったのに…いつの間にか…
恥ずかしい…なんて恥ずかしい事を言ってしまったんだろう
顔が赤くなってくのが分かる

「バカ!只でさえ暑いのに暑苦しい顔しないでよ!」

そう言ってアスカも赤くなる

「あ、あー!暑い!!
も…もう帰るわよ!こんな所一秒だっていられるもんですか!」
そう言ってアスカは立ち上がり歩きだした
276名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/05(日) 16:41:04 ID:???
「何やってんのよ!?帰るって行ってるでしょ!?
………す…好きならちゃんとついてきなさいよ!
バカっ!バカシンジ!!」
「ま!待ってよ!」

慌てて後を追う、僕がついて行く側ってのが実にアスカらしい
ついて来いって言いながら、僕が追いつくのを待ってくれてる、そんな所も実にアスカらしい
追いついた時、アスカはこう言ってくれたんだ…

「ありがとう…シンジ…」

そう言って僕らは手をつないだんだ


もうすぐお昼時だ

「アスカお昼何が良い?」
「私の好きな物ならなんでも良いわよ」
「そっか…じゃあ…」


こうしていつもと違った時間はまたいつもの時間に戻っていく…
けど…たまには今日みたいな日があっても良いよね?

また…いつか…
277名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/05(日) 19:27:40 ID:???
来てたのこっちか!GJです!
278名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/05(日) 20:25:18 ID:???
>>272破のアスカが夜中にシンジの隣に来たシーンです。携帯からなので見づらい
お目汚しすいません


父親に誉められたことを嬉しそうに話すバカシンジが、意外だった。
七光りで、一人で頑張ってきた私とは違うって思っていたのに。
バカシンジの、包帯で巻かれた手が痛々しかった。
怪我をしてでも認められたいなんて、本当に馬鹿じゃないの…。
誰も誉めてなんてくれないのに。一人で頑張っていくしかないのに。
でも、私は特別だから誰も必要ない、だから寂しくなんか…。

バカシンジを見てると、それが揺らぐ。

「ねぇ」
「どうしてそんなに父親に誉めて欲しいの?」

それは、自分にはわからない感情だった。最初から存在しないモノを嘆くほど、私は幼くなかったし、愚かでもなかった。だから、バカシンジを見ていると時々子供みたいで苛々する。

「…わからないよ。でも………。」
「でも、父さんにみてもらえると嬉しいんだ。生きていてもいいって思える。自分が好きになれる気がする…」

生きていてもいい?
やっぱりバカシンジだ。
279名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/05(日) 20:27:39 ID:???
>>278続き

「ファーストのことは、どう思ってるの?」

「え…」

バカシンジがこっちを見たような気がした。そんな反応をされるのが、よくわからないけど耐えられない。

「早く答えなさいよ」

「綾波は…そうだな…最初はちょっと嫌だと思った。父さんが、綾波にだけ笑顔を向けていたから…。でも、綾波は、ずっとネルフに居たみたいなんだ」

「そんな綾波が、エヴァに乗るしかないって言ったとき、悲しいと思った。そんなこと言わないで欲しいと思ったんだ。変だけど、自分が思っていたことを綾波が言ったら、凄く悲しくなった」

「綾波は、感情を知らないだけで本当は普通の女の子みたいに笑ったりできるんじゃないかって、最近は思う…」

私がエヴァに乗るしかないって言ったら、バカシンジはどう思うんだろう。
そんな考えはすぐに消した。
馬鹿ね、私は特別でエリートなんだし、自分のために乗ってるのよ。
バカシンジなんか全然関係ない。
そうだ、ファーストなんかもっと関係ない。
バカシンジが、言いにくそうに呟く。

「アスカは、誰かに誉めて欲しくないの?」

「……知らない」

280名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/06(月) 03:28:11 ID:???
 世界の果てまで続いているような広大な草原が、彼女の目の前に広がっていた。辺り
一面に生える背の高い草と同じように、少女の腰まで伸びた自慢の髪も風になびいてい
る。
 少女は、この風景に全く見覚えがなかった。それどころか、自分がどうしてこの場所
に立っているのかもわからない。
「どこなのここ……?」
 率直な疑問を言葉にするが、少女の問いかけに答えてくれる者はいない。
 辺りを見渡してもただ鮮やかな緑の海原があるだけで、ほかに存在しているのは青い
空と白い雲――そして太陽だけ。
 見知らぬ場所にたった一人でいても、不思議と心細さはない。風が肌をなでると懐か
しさにも似た感情が生まれた。
「大地と空と太陽があるんだもん、おおむね大丈夫よね」
 少女の口から、そんな緊張感のない台詞が自然に出た。
 どうせならこの状況を楽しもうと、彼女は一度深い深呼吸をしてから歩きだした。こ
ういう楽観的なところを彼女は自覚していたし、美徳だとも思っていた。
 腰の高さほどもある草を、かき分けながら進んでいく。夏の草原独特の草いきれは
まったくしなかった。
 十分ほども歩いただろうか、ガサッと前方の草むらが揺れた――風は止んでいるし、
何か生き物の気配のようなものも伝わってくる。
 少女は体を固くした。これだけの草原なら、どんな獣がいても可笑しくはない。脚力
には自信があるが、狩りを生業としている野性の獣から逃げきれるは思えなかった。刺
激しないように目を合わせないとか、死んだふりをするという考えが頭をかすめる。
 しかし、草むらから飛び出してきたのは凶暴な肉食獣ではなく――
「わぁっ」
 人間――少年だった。
 予想外の出来事に少女は悲鳴を上げ、
「きゃあっ!」
 尻餅を着いて後ろに倒れた。草がクッションになったおかげで、派手に倒れたわりに
は痛みはない。
「大丈夫、アスカ?」
「えっ」
281名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/06(月) 03:29:34 ID:???
 声に顔を上げると、先程の少年の顔が驚くほど近くにあった。しゃがんで心配そうに
こちらを見つめている。彼女の胸の鼓動がフルマラソンをした後のように早くなった。
顔もいくらか上気しているかもしれない。
(どうして……?)
 よく見ると少年は彼女の見知った顔だった。より正確に言えば、よく知っている少年
の面影を残していた。
(シンジ?)
 彼女の幼なじみの少年。それは間違いないのだが、彼女の知っている少年よりも少し
年齢をかさねている。十七、八歳だろうか?
(これって――)
 夢。これは夢なのだと彼女は唐突に理解した。改めて自分の身体を見下ろしてみれ
ば、やはり成長していた。胸の双丘は今まで気づかなかったのが不思議なくらい膨らん
でいるし、スカートから生える二本の長い足も――彼女自身から見ても――女性の色気
を感じさせていた。
 そんなことを意識すると、胸の動悸は一層速まった。
 少女に怪我がないのを見て安心したのか、幼なじみの少年は微笑を浮かべた。見てい
る者の心にそっと入り込むようなそんな笑顔。現実の少年と同じ笑みだ。
「驚かせすぎた?でもアスカらしくないな、あんなに驚くなんて」
「お、狼かなにかだと思ったのよ……」
 ぎこちない台詞を言うのが精一杯だった。夢だと分かっているのに、胸の高鳴りは治
まろうとしない。
「ふーん、ここには僕とアスカの二人しかいないよ。でも――」
 言って、少年は少女を草むらに押し倒してきた。とっさのことで反応できずに、上か
ら覆いかぶさるように押さえつけられてしまう。
「アスカを食べられるなら、狼になってもいいかもね」
 悪戯っぽく笑う少年。現実世界の彼ならけっして見せない――危険を感じさせるが―
―ひどく魅力的な笑み。
「ちょと……放して……」
 少女は抗うが、見慣れた細腕ではなく成長した逞しい腕に動きを封じられてしまう。
「だ・め」
 少年がゆっくりと顔を近づけてくる。
「いやっ!」
282名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/06(月) 03:30:52 ID:???
 口から出た言葉とは裏腹に、体全体が火照っていくのが彼女にもわかった――瞳を閉
じろと、どこかアスカの心の一部が、訴えかける。
(どうしてよ、シンジはただの幼なじみじゃない……腐れ縁なだけで………好きじゃな
いのに……)
 胸中でうめき繰り返す――好きではないと――呪文のように、あるいは祈りのよう
に。どちらも似たようなものだが。
(絶対に好きじゃないんだから!)
 断言する。彼に感じていたのは嫌悪と憧憬、理解と不理解。だが、それらがそろえば
――おおむね好きと変わらない。
 彼の顔はもうあと数センチのところまで近づいている――互いの吐息さえ感じられた。
 ただの特別な幼なじみの笑顔を見て、彼女は抵抗するのを止めた。
(でもまあ、これは夢だもんね)
 自分に言い訳をして、苦笑する。少女は目を閉じた。
 そして――

 二人の唇が重なった。
 ――ヂリヂリヂリヂリヂリヂリ――
 シンデレラに十二時を知らせる鐘のようにと言えば聞こえがいいが――無粋な音を響
かせる目覚まし時計に邪魔され、アスカは目覚めた――触れ合った唇の温もりも感じら
れないまま。
 呪詛をこめた視線で枕元の時計を睨むが、時計は動じた様子もなく大小の針でいつも
どうり午前七時三十分を指していた。
(あと五分、眠っていたかったな……)
 もう少し夢の続きを見ていたかった。そんなことを考えている自分に気づいて、はっ
とする。
(私ったら、なに考えてるのよ!あれは悪夢よ、悪夢。早く忘れなくちゃ)
 そう念じるのだか、目覚めた瞬間に忘れてしまうような普段の夢と違って、すぐに記
憶から消せそうにはない――それどころか鮮明に蘇って彼女を焦らせた。
 部屋の隅にある鏡を覗くと、いつもの自信に溢れた勝気な少女ではなく、恥ずかしそ
うに顔を伏せた――それでいてどこか嬉しそうな、そんな少女が映っている。
(こんなの私らしくない。私は惣流・アスカ・ラングレーなのよっ!)
 アスカは勢いをつけて、ベットから飛び出た。
283名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/06(月) 10:18:37 ID:???
GJ!きゅんってしたぁぁぁ。
なんて甘酸っぱい。
284名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/06(月) 12:39:49 ID:???
あっちもこっちも投下祭りだあああ!GJ
破ネタ嬉しいよ。初めてとは思えんよ上手い
285名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/06(月) 12:43:35 ID:???
>282
破で破れた心が補完される〜
286 ◆ZEenP6B.cs :2009/07/06(月) 22:52:41 ID:???
『あれ?あたし、死んだんじゃないの?』
意識が戻り、ふと見渡すと、見慣れた赤い海。そこには、先ほどまで乗っていた
であろうヱヴァ参号機の姿もなく、かわりに、海には数体の見慣れないタイプの
ヱヴァらしきものが十字に突き刺さっている。

『確かに、参号機に引きずり込まれて・・・・変な子供の声が聞こえて・・・・そこか
ら何も思い出せない・・・』
腕が酷く痛む。それに片方の眼もよく見えない。腕には筋のような線が縦に走って
おり、いつの間にこんな怪我をしたのかと思うほどに、包帯で巻かれている。ふと
見渡すと、少し離れた場所に、少年が一人、浜辺に打ち上げられているのが見え
た。

『あれ?まさか、シンジ?』
『やっぱり、シンジだ・・・何やってんのよこんなところで・・・』
ゆっさゆっさ・・・ 意識をうしなっているのか動かしても目を覚まさない。
「バカシンジ。さっさと起きなさいってーのよ」

「・・・ん、うぅ・・・ ・・・」
「やっとお目覚めね、バカシンジ」
「・・・・」
「何よ。どうしたっての?焦点あってないわよ、アンタ」
「・・・・」

そこには、憔悴しきったシンジの顔。涙をこぼしながら、無言でうつむいている
シンジの姿。
「・・・・ごめん、アスカ・・・・ごめん・・・」
「ごめんごめんって、何?わけわかんない。ここ何処なのよ。海辺ってのはわか
ってても、誰もいないし、意味不明なもん立っているし」
「!?」

なんともいえない違和感がシンジの中に生まれ、なんともいえない違和感を
アスカは感じていた。「アスカ?アスカじゃないの?君、誰?」
287 ◆ZEenP6B.cs :2009/07/06(月) 23:05:32 ID:???
「誰ってねぇ。ひとつ屋根の下に暮らしていた女の子の名前忘れる?普通
あたしはアスカよ。正真正銘の式波・アスカ・ ラ ン グ レ ー。頭にたたき
こんでおきなさいよ」
「??式 波? 惣流じゃないの?」
「なによ、惣流って・・・ 誰と間違えてんのよ」
「いや・・・あの・・・」
「そういえば、アンタ、初号機どうしたのよ。見当たらないけれど。それになんで
こんなところで寝てたのよ」

「なんでって・・・・アスカ助けようとして・・・でも、助けられなくて、ごめん。そこか
ら何も覚えていないんだ」
『あたしを 助けに? へ・・・へぇ、なんだ、まだあたしにもチャンスありそうじゃない』
「でも、良かった・・・アスカ 無事だったんだね。でも、それ、その・・・変わったプラグ
スーツだね・・・・」
「そうなのよ、見えすぎない?ってミサトにも言ったんだけれどねぇ・・・ ってアンタ、
ちらちらみんじゃないわよ、エッチ」



288名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/07(火) 13:23:11 ID:???
>>287
EOEと破のクロスオーバーか?
続けてください
289名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/11(土) 09:44:01 ID:???
保守
290名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/14(火) 19:39:32 ID:???
保守
291名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/15(水) 07:56:51 ID:???
アスカ・・・ 

君は何故・・・ 

どうして・・・ 






僕は泣いていた 

泣かないと決めたのに・・・ 

夢の中でも泣くなんて・・・ 

僕は涙を拭いながら起床した
292名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/15(水) 08:06:19 ID:???
食事を取る気にはならない 

僕はミネラルウォーターをコップに注ぎ、口をつける 

未だに記憶に残っている痛ましい瞬間 


あれでアスカは・・・ 


僕の頬を涙がつたり、コップの中へ落ちた 


僕はコップを濯ぐと学校へ向かった 
293名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/15(水) 08:17:54 ID:???
学校に来た 

しかし、僕の心は憂鬱だった 

何故なら・・・ 


僕は教室のドアを開け、中に入る 


騒がしかったクラスが、急に静かになった 

皆が僕を見ている 

僕は視線を感じながら、自分の席へ向かった 


間違う事の無い、僕の席 
きちんと名前があるからだ。 
『人殺し 碇シンジの席』
294203X年冬:2009/07/17(金) 20:55:01 ID:???
203X年 11月某日
NERVからの帰り道、僕は運転手に命じて、なじみの店へと車を向かわせていた。
成り行きで、NERVの責任者になった僕は、仕事がら多くの店で色々な人と
会食をする事は多かったが、なじみの店んなて持ってなかった。
そう、あの手紙が来るまでは、彼女からの「会いに来て」と言うたった一言の
手紙を受け取るまでは...。

2015年に起こった、サードインパクトそして、その後に起こった大惨事は、セカンドインパクト後に
かろうじて生き残った人々に更なる試練を与えた。そう、それ以降の何年かは語ることすら
はばかられる地獄の様な時代だった。それと引き換えに、日本には季節が戻り、永遠の
夏は終わりを告げた....。

僕は、何の考えも無くただ、エヴァのパイロットとして、周りに流されながら生きていただけの人間だったのに
何故か、世界を救った英雄となってしまい、全ての人の記憶に残る存在となってしまっていた。僕が新生NERV
の責任者になったのもそう言ういきさつからだ。別に、なんら優れた事もない。ずるくて臆病な人間なのに...。
本当に、立派なのはあの時に亡くなったり、彼女の様に全てを捨てて生きているそんな人のはずなのに...。
295203X年冬:2009/07/17(金) 21:09:50 ID:???
その店につくと、すでに僕の警護の人間が先に来ており、セキュリティーチェックは終わっていた。僕は、
警護の人間に先導されながら、そのみせのVIPルームへと向かう。本当は、そんな所へ行く資格のある
人間とは思えないけど、僕の安全を守ってくれる警護の物に負担をかけないように外出時には
必ず、そう言うスペースを利用するようにしている。

実際、有名人とは言え、もう10年以上も前の英雄なんて殆どの人は忘れてくれている。しかし、この街は違う
この街は、NERVの城下町と言って言い街だ。当然、NERVの最高責任者への視線は集まってくる。
「おい、あの人?」
「ああ、間違いない。」
そんな声ともならないどよめきが僕を包み込む。

VIPルームには居たスタッフに
「何時もの、それと...。」
もう、この店には何年も通っている。全て頼むものは決まっているので、この一事で全てが通じる
「解っています。彼女も直ぐにきますのでしばらくお待ち下さい。」
296203X年冬:2009/07/17(金) 21:22:25 ID:???
「へー、貴方が世界を救った碇シンジさんですか?始めまして。」
「僕は、君を呼んだ覚えはないよ。」
「そんな事、おっしゃらないで下さい。世界を救った英雄さんに挨拶を
したくて来ただけですから。」
そう言うが早いか、その娘は僕に飛びついて来た。多分、彼女と僕の
関係を知らない新人なんだろう。これは、早く追い払わないと一波乱起きてしまう。

「いや、僕はそんな立派な人間じゃないし、それに僕にはなじみの女の子もいるんだよね。」
「え?なじみって、あの無愛想なバァさんですよね。あんな人より、アタシを指名して下さいよ。
お願いします。もっと、楽しめますよ。」
たしかに、NERVの責任者がなじみに成れば色々良い事もあると考える娘はいるだろう。
でもね。君じゃだめなんだ、僕が会いたいのは....。
297203X年冬:2009/07/17(金) 21:39:47 ID:???
「どきな!」
どすを利かせて入るが、何処か可愛らしさが残る声がした。ヤバい、間に合わなかったか。
「こわい、たすけて、シンジさまぁ。」
「いや、久しぶりだね。アス...いや、エヴァちゃん。」
真紅のドレスに身を包み、エヴァと名乗っている彼女こそ、そうアスカ・ラングレーその人だ

「誤解しないでね。この娘は、何も知らずに、ただ有名人の僕を見にきただけなんだよ。」
「はい、ぞんじて居りますわ。シンジ様。」
アスカは満面の笑みで僕にそう答えてくれた。
「え?エヴァさんってわらうんだ。やっぱり、お金持ち相手には、愛そうが良いんですね。」
おい、軽口を言い過ぎだぞ。それに、彼女が笑顔を見せるのは、僕だけなんだ。
「いい加減に、しないか。アンタは呼ばれてないないはずだ。さっさと、別の客の所へ行くんだ。」
「ええ、でもシンジさんの様な英雄さんをもてなすのは、エヴァさんみたいな、オバさんより若い
ワタシの方がふさわしいと思うんですけどぉー。」
298203X年冬:2009/07/17(金) 21:47:53 ID:???
その刹那。アスカの右手が新人の女の子の頬を直撃した。はっきりりって、彼女のビンタは
タダものでは無い。スピードと手首のスナップの利かせ方が尋常じゃ無いからだ。
流石に、元軍人と言っていいだろう。僕なんかとは大違いだ。

「いたーい。何すんのよ。」
頬は腫れて、口を切ったらしくて血が出ていた。僕は、素早く財布から数枚の一万円札を
取りだし。素早く、新人君の胸元へ押し込んだ。
「今日の所は、これで勘弁してくれないか?」
「ちょっと、こんなの.....。」
「いろいろ、言いたい事は有るだろう。しかし、ココは楽しむ所だ、これ以上、僕に嫌な思いをさせないでくれ。」
「解りました。ご迷惑をおけかして、申し訳ありません。」
そういって、僕の元を離れると、
「エヴァお姉さん、後はよろしくお願いします。」
と言い残して去っていった。
299203X年冬:2009/07/17(金) 22:27:23 ID:???
「ごめんなさい。みっともない所をお見せして。」
アスカは再び、満面の笑みを浮かべて言う。
アスカと別れて再び会うまで何年有ったろうか
その間、僕は中身は伴わずに外見だけは随分変わった。身長は父さんよりも高く成り、
ヒゲも生やすようになった、そうでもしないと威厳を保てないからだ。今の僕は見た目だけは
鬼の総司令と言われた父さんとウリ二つに成っている。

でも、アスカは違った。別れた頃から殆ど変わって居なかった。多少、やつれてはいたが、
長い金髪を腰まで伸ばした姿は、誰よりも真剣に生きていた時の彼女そのものだった。

「座って良いかしら?」
「ああ。」
その声を聞くと直ぐに、アスカは僕の横に体を押し付ける世に座り、
片手を僕の膝の上に乗せた。
300203X年冬:2009/07/17(金) 22:51:39 ID:???
「しかし、こうやって、啖呵を切る所は、バカシンジって言っていた頃と変わらないね。」
「もう、その話はよして下さいよ。そんな失礼な事を言っていた自分を思い出すたびに
火が出る位に恥ずかしく成るんですから。」

そんな他愛のない話をして居る所へ、シャンパンとフルーツのセットが運ばれてきた。
アスカは僕と彼女自身のグラスにシャンパンをそそぐと、グラスを僕に渡す。二人で、
「カンパイ。」
と言ってからそのシャンパンを飲みほす。このシャンパン名前は何と言ったか忘れてしまったが
アスカが好きと言うから毎回開けているうちに、何時もので通るようになり、いつの間にか銘柄も
忘れてしまった。酒の味の解らない僕にとっては決して安くない値段の酒とそこら辺の酒屋でかう
安い酒との味の違いも解らないが、アスカは本当に美味しそうに飲んでくれる。

グラスが空に成ったアスカは、物欲しそうに僕の顔を見る。
「いいよ。好きなだけ飲んでね。」
アスカは本当にうれしそうな顔で、「ありがとう、ございます。」と言って自分のグラスにシャンパンを注ぐ。
「本当に好きなんだね。」
「ええ、こんなのおごってくれるのは、シンジ様だけですし、自分じゃとても買えないから。」
301203X年冬:2009/07/17(金) 23:06:51 ID:???
「でも、こう言う仕事って結構儲かるんじゃないの?」
「そんな事は無いです。特に、ワタシはもう年で愛想も悪いし、それに良く見ると
この傷は解ってしまうから...。お客さん付かないんですよね。」
そう、その傷....。
あの日、3号機が使徒に乗っ取られた日。僕は、何も出来ずにただ、無責任に
戦いをさけ、その結果、アスカの顔と心に一生消えない傷を付けてしまった。
そして、父さんにも酷い事をいってしまった。今思えば本当に酷い事をしたと、
悔いても悔いきれない事だった。

「あ、別にシンジ様に恨みなんて全く無いですよ。あの時はああするしか無かった
訳だし。誰も悪い訳じゃない。それに、あの事件のお陰で、シンジ様は世界を救う
人になれたんだと、その引き金を引けたこと、今でも誇りに思っています。」
「僕は、そんな立派な人間じゃない。ずるくて、臆病でどうしようもない人間なんだ」
「貴方は何も解ってない。貴方はとても優しい、その優しさが世界を救ったんです。」
彼女の真剣なまなざしを僕は、受け止めきれずに、思わず目をそらしてしいまった。
302203X年冬:2009/07/17(金) 23:17:37 ID:???
「で、NERVに戻る気はないの?」
「また、その話ですか?今のワタシがNERVの役に立つとはとても思えません。
今のNERVは軍事組織では無く、あの事件の後始末と限界まで減少した
人口を復興するための組織でしょ?元軍人のワタシが役に立つと思います?」
「でも、僕には君が必要だ。」
彼女は僕の口に手を当てて、優しく言い返す。
「だから、こうして会いに来てくれる。今は、それで十分です。」

「でもだかからと言って、君見たいな人がこんな所に埋もれていて良いはずがない。僕みたいな
どうしようも無い人間が英雄だなんだと言われているのに、なんでアスカが誰よりも真剣に生きていた
アスカがこんな目に合わないと行けないんだ。」
「別に、ワタシは自分が不幸なんて少しも思って無いですよ。ただ、少し、運が無かっただけ、人生なんて
そんなもんですよ。」
「ごめん。何度もひつこいよね。」
「ふっ、別に謝らないで下さい。そうやって、直ぐに謝る癖は、むかしのまま、本当にお優しいんですよね。」
303203X年冬:2009/07/18(土) 05:26:24 ID:???
「先日、久しぶりにトウジと委員長にあったんだけど、君の事凄く心配をしていた。」
「あ、ヒカルなら会いましたよ。会ったと言うより見かけたと言うべきですけど。
あのー、何て言ったかしら、万年ジャージを着た野蛮人と子供を連れて、幸せ
そうでしたね。まぁ、小さな街だから昔の知り合いはよく見かけます。でも、幸い誰にも
気づかれないで過ごして居ます。」
「なんで、声位かけないんだ?皆、アスカの事は心配しているよ。」
「嫌です。多分、笑われますよ。高慢なワタシがこんなに落ちぶれているんですよ。
恰好の笑いのネタですよ。そんなのは、絶対にいや。」
「僕には会ってくれるのに?」
「それは、貴方が優しいから。笑わたり、蔑んだりしないでくれるからです。他の人には
絶対に会いたくない。」
プライドの高さは昔のままだ、もしかしたら、僕に会うのも辛いんじゃ無いの?ただ、生きるには
この店にしがみ付くしかない彼女が唯一、大金を落としてくれる僕に死ぬ思いで会って居るんじゃないのか?
多分、僕という常連客がいなければもっと前にこの店に居られなかっただろう。
304203X年冬:2009/07/18(土) 05:52:14 ID:???
「これ、受けっとってくれないかな?」
「え、これなですか?開けますよ。これ指輪?ってこれ本物のダイヤですよね。しかも
ピンクダイヤ。これ、相当大きいですよね。ちょと、シンジ様何を考えてるんですか?
お金持なのは解りますが、ワタシみたいなのに送るもんじゃないですよ。もう少し、
節度って物を...。」
アスカは明らかに動揺していた。この指輪の意味は明らかだ。それを否定するために
必死で別の理由を考えている感じだ。
「そうかな。婚約指輪って自分の収入に比例して少し無理する位が良いって聞いたからね。
それに、アスカに似合う指輪はそこら辺の安物じゃ駄目だと思ったし。」
「あのぉ、そう言う冗談はやめて下さい。何で今更、そんな事をおっしゃるんですか?それとも
憐れみですか?」
「君と再会した時から、それだけを言いたかった。でも、臆病な僕は何年も言いだせなかった。
そのせいで、君をずい分傷つけたと思う。だから、もう君が傷つくのを終わりにしたいんだ。」
「嘘おっしゃい。貴方、実はまだファーストの事忘れらないんでしょ?」
「綾波は...。君が思っている。様な事は...。」
「はい、ワタシも知って居ます。でも、それって結局、ワタシを彼女の代わりにして居るだけでしょ?
それ以上に、彼女が怖いからワタシに逃げているだけでしょ。」
305203X年冬:2009/07/18(土) 06:47:15 ID:???
「君は、誰の代わりでも無い。アスカはアスカだ。綾波は...、彼女は、僕たちとは違う存在だ。
始めらか、あり得ない関係なんだよ。」
「だから、それが逃げだっていってんじゃないの。結局、ワタシは貴方のオカズでしかない。
そんなの昔から解っていたし、ファーストが普通の人間ならワタシなんか相手にもされなかった。
偶々、違ったから逃げ込む先に選ばれただけ。」
「違う。僕は、初めから...。いや、初めからではないけど、何時からかは僕も解らないけど...。
君が居なくなって初めて、君が僕にとってかけがえのない存在だと解ったんだ。」
「だから、もう嘘はいい。ワタシは何時も一人なの、誰も本気でワタシを見てくれる人は居ない、
だったら、気に入られようと努力して、それで...、それで、傷つく位なら、初めから
嫌われた方がマシなのよ。」
「そんな事無い。アスカが優しいのは皆知ってる。アスカが誰よりも頑張って生きているのも
皆知ってる。アスカは、孤独なんかじゃない。」
「だったら、何で、ワタシが居なくなった時、誰も探さなかったの?結局、どうでも良い存在だから
でしょ?」
「探したさ。でも、どうやって探せば良いか解らないし、ましてこんな近くに居たなんて、灯台もと暗し
も良い所だ!」
306203X年冬:2009/07/18(土) 08:01:55 ID:???
「ばかぁ、ばか、ばか、ばか、.......」
アスカはいきなり、僕胸に殴りかかってきた。本気で殴ってないのは直ぐにわかる。
彼女が本気で殴れば、僕なんか一撃で気絶させられるし、これだけ殴ぐれば
あばらの一二本は折られるだろう。ただ、異変を感じて、護衛の人間が入ってくるには
十分なリアクションである。
僕は彼を手で制する。
「しかし、...。」
「大丈夫だ。今の彼女が僕に危害を加えたりしない。」
気づいた事には遅かった。彼女はいつの間にか僕を殴るのをやめて、憎悪のまなざしで僕を睨んで居た。

実際は、そんなに長い時間では無いようにも思うけど、僕にはかなり長い時間睨まれていた気がする。
突然、アスカは大声で泣き出した。
「悔しい。辛い。悲しい。こんな奴に頼ろうなんて考えた。アタシが馬鹿だった。もう嫌だ。もう、どうでも良いよ。
いいから帰れ!顔も見たくない。二度とくんな。」
僕は如何する事も出来ずに、その店から出て行くしか無かった。
307203X年冬:2009/07/18(土) 08:52:05 ID:???
結局、何も出来ずに僕は彼女の元から逃げるしかなかった。アスカの心の闇は尋常じゃ無いほど暗くて深い。
僕なんかじゃそれを包み込むなんて最初からムリだって解っていいたはずだ。なのに、中途半端な気持ちで
臨んだ僕は、また彼女を深く傷つけてしまった。悔やんでも悔やみきれない失敗いだ。こんな、失敗を僕は
何度繰り返したんだろう。一向に前に進んでいる自身は無い。何時も同じところをグルグル回っているだけだ。

僕が急に店を出たお陰でまだ、車は来ていなかった。寒空の下で車を待つのは辛いものだ。それ以上に
辛いのはもう、二度と彼女に会えないかもしれないということだ。二度と、あの笑顔を見ることは出来ない
だろうか?ほとぼりが冷めた頃、再び会いいにけば許してくれるか?絶対に無理だ。今回の事で
彼女がこの街を出て行く事だって考えられる。そうなったら、もう探しようがない。

車に乗り込むと、緊張が解けたのか、目から大粒の涙が流れだす。何もしてやれない、無力感だけが
自分を包み込む。何が、人類を救った無敵の男だ、冗談じゃない。好きな女ひとり、守れてないじゃないか
ただ、エヴァに乗れただけ、父親が優秀な人間だったけ、僕自身は何も出来ないちっぽけな存在なんだと、
改めて思い知らされた。
308名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/18(土) 12:32:59 ID:8olz9Gjq
乙!
309203X年冬:2009/07/18(土) 13:15:40 ID:???
一瞬、赤いものがルームミラーに映った気がした僕は後ろにめをこらす。間違い無い、
真紅のドレスを着たアスカが僕の車の方に走ってきている。慌てて車を止めさせた
僕は車から降りて彼女をさがした。

探すまでもなく、彼女は僕の方へ駆けて来ていた。この寒空の下ヒールを脱ぎすて、素足のままに
コートすら着ないで僕の方へ全力で駆けて来る。良いよ、無理しなくて車にぶつかったら大変だろ。
いや、違う。彼女は全力で駆けながら的確にコースを決めて、人と車を上手くよけながら走っている。
真紅のドレスで身軽に走る様は、2号機を思わせる。女豹の様なしなやかな身のこなしだ。彼女は
こんな状態で居ながら、チャンと鍛えているんだ。いつか、這いあがる日の為に。

そう、アスカは僕の大好きなアスカは死んでいなかった。こんなどん底にありながら、這いあがる機会を
その愛くるしい眼の下に潜む野獣の様なまなざしで見つめて居たんだ。
310203X年冬:2009/07/18(土) 13:51:26 ID:???
僕の胸に飛び込む前に、アスカは絶妙のコントロールで速度をゆるめてくれた。
あのまま、全力で駆けこまれれば、僕は吹っ飛んだだろう。僕の胸に飛び込んだとき
あれだけの速度で駆けながら息切れ一つ起こして居ない。
「捨てないで、お願い、捨てないで。」
「捨てる?僕がそんなことする訳無いだろ。」
「蔑まれても良い。アイツの代わりでも良い。暇つぶしに来てくれるだけで良い。だから、捨てないで。」
「じゃあ、先刻の話受けてくれるんだね。」
「あれは、ごめんなさい。良く解らない。」
「え?どういう事?」
「今以上、貴方と近づく事が怖い。ワタシが貴方を壊してしまうかもしれない。」
「そんな事は....。」
「無いって言いきれる?貴方は優しいから、ワタシの傷に触れたら耐えられなると思う。」
「強く成るよ。」
「え?」
「今初めて、思った。そう、僕が何時までもウジウジしているから、君を苦しめるんだ。だったら
僕が強く成れば君を傷つけずに済むんだもの。」
「そんな、急には変われないわ。」
「一か月待ってくれ。来月また、会いに行く。その時、僕が以前より少しはマシな人間に成ったと
思ったら。例の話を受けて欲しい。それがダメなら、次の月まで、君に認められるまで何時までも
君に会いに行く。」
「ふっ、無理しちゃって、解った、楽しみにしてるわ。」

彼女を抱きしまながら、来月は彼女の誕生日だと言う事を思い出して居た。彼女に素敵な
誕生日プレゼントをあげたいと心から思った。

終劇
311名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/18(土) 13:59:06 ID:???
GJ!!
どうなることかとどきどきしながら読みました。
すっごくよかったです!
312名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/18(土) 15:24:18 ID:???
超GJ!!!!
313名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/18(土) 16:32:46 ID:???
乙、こういうのも面白いな。
しかし昨日の時点で「また生殺しかよ……」と思っていたが
続きが来てて良かった。
最近、生殺しが多くて精神病んでしまうよ、ほんと。
314203X年冬:2009/07/18(土) 19:16:13 ID:???
>>311-313
シンジとアスカのヤマアラシのジレンマをテーマにしてみました。

アスカがキャバ嬢をやったら如何なるだろうって思って考えたらこんな話に
なりました。アスカはどんな状態でもエヴァパイロットだった自分から
逃れようとはしない、むしろ拘り続けることで悪い方へと行ってしまう感じですね

シンジは周りに流されて、中身が伴わないうちに凄い人間の様に無ったと思われるけど
実は、全く変わってないって言う感じがして居ます。

ところで、今更ですけど、LASを投下する場所って、もう一個ありますよね。こっちに
投下で良かったんでしょうか?
315名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/18(土) 19:23:07 ID:???
風俗を知らない厨房臭いLASだなww
316名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/18(土) 19:30:03 ID:???
>>314
良いんでね?
というよりも、総合はまだ人がいるっぽいけど、こっちは投下事態少ないから
丁度良いとおも。
317名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/18(土) 20:42:52 ID:???
シンジに敬語のアスカはあんま好きになれなかったけど、段々とタメグチにもどってったし、まあいいかなーと思った
敬語アスカも悪くないか
318名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/18(土) 22:49:26 ID:???
>>317
アスカがシンジに敬語を使うという風にしたのは、堕ちたアスカを表現したかったからですね。
319名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/18(土) 23:32:07 ID:???
温すぎるw
堕ちた表現として、娼婦館とまではキツイなら、高級クラブ位にはしなきゃな。
キャバクラのVIPルームってww
320名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 03:57:43 ID:???
それはただ、同じ空間を共有しているだけにすぎなかった。
始まりを迎えた時こそ笑い声や他愛も無い会話、そんな当り前の日常が転がっていた。
けれどそれは、時を重ねる毎に消え、何時しかただそこにお互いがいるだけ。
それ以上でもそれ以下でもない空間へと変貌したのだ。
何が悪いのか、何が良くなかったのか、その過程など今更どうでも良いのかもしれない。
そうなったという結果だけが、転がっているのだから。

「アンタ見てると、ホンットイライラすんのよねっ! 鬱陶しいったらありゃしない!」
「……ゴメン」

少女の心を抉る罵声に少年の内罰的な謝罪。
そして女性は、この惨劇を知り得ながら家を空けるか、眠り扱けるだけ。
こんな形だけの家族に、終焉が訪れるのは時間の問題であり、修復など不可能である。
そんな中、少し遅れた梅雨に晒された日曜日。
その日がやってきた。

「偶には三人で買い物にでも行きましょーか」

発端は何てことはない女性の一言から。
一時でも『家族』であることを認識させるが故の行動か、それとも己が欲する一時の悦楽を与えてくれる甘美な美酒を得るが為だったのか。
『今』となっては知る由も無い。いや、知る必要も無い。

「三人で……ですか?」

そんな女性の提案に困惑した表情を浮かべる少年。
少年にとって女性と少女はもはや他人でしかない。それは『象徴』とも言えるほど。
『家族』などと言う枠に抑え込みながら、その実、『他人』よりもその距離が近いだけ、一層の孤独を与えることにしかならないとは何とも皮肉な話であり、
その分、心の痛みが増すだけだ。
そんな自分を傷つけるだけの存在に何故今になって行動を共にしなければならないのか。
大体、少女が承諾するわけもない。少年は心からそう思った。
当然と言えば当然である。あれだけ少年を忌み嫌い、何かと『暴』の矛先とし、お互いに傷付け合う存在。
少年だって出来うる限り行動を共にしたくない、と思っているのに少女が思わないわけがない。
321名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 03:58:51 ID:???
だから、結局、女性とふたりだけで買い物に行くことになるだろうと踏んでいた。

「……そうね、別に良いわよ」

だが、結果は予想と大きく掛け離れたものとなる。
少女がそれを良しとしたのだ。
生活必需品を少年ではなく、己が手で購入しなければ汚れていると感じるためか、ただの気紛れか。
これもまた『今』となっては知る由もなく、知る必要も無い。

こうして久方ぶりに『葛城家』の面々は、ペンギン一羽に留守番を頼み、出掛けることになったわけである。
しかし、共に行動したところで何も変わらない。
車中、誰も口を開かず、言葉を発さず。
聞こえてくるのは車が道路を走る音だけ。
女性は運転に集中し、少女は顎に手を掛け窓から移り行く景色を眺め、それぞれに心の壁を造り出す。
だから嫌だったんだ……、誰に言うわけでもなく、自分の心に言い聞かせる。

結局、人と人が分かち合えることなど困難を極め、分かち合えたところで無意味であることを示す、何てことは無いどこにでも転がっている物語なのだろうか。
否、そうではない。それならば、この日を選ばず、別の日に目を傾ければ良いだけのことなのだから。
では、何故この日だったのか。
それはまだ自覚していなかった少年の、ある『スイッチ』が鍵を握る。

そのスイッチは自動ドアを潜り、少年が店内へと足を踏み入れたときに『ON』になる。
何時もの買い物と変わりなければ、それもまた平凡な一日でしかない。
だが今は傍らに、女性と少女が共にしている。
偶然と呼ぶか、奇妙と呼ぶか、はたまた奇跡と呼ぶか、それはそれぞれの自由であるが、それも結局『過程』を彩るオブジェでしかない。
起きたからこそ意味がある。何事にも『始まり』があるように。


程なくして目的地に到着。面々は店内へ。
少年は『習慣』という言葉がぴったりなほど慣れた足付きでカート前へと移動し、慣れた手付きでそれを利用する。
今日のメニューは何にしようか、などと先ほどまでのどんより雰囲気はどこ吹く風。
特売のポップが記されたレタスを左右の手に携えながら品定め中。
322名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 03:59:39 ID:???
そんな時、どさどさどさっ、と聞き慣れない音。

「……ちょっとアスカ。何コレ?」
「…………ふん」

レタスの重さを比べていた少年が目の当たりにしたのはカゴの中のお菓子の山。
当然、運び出したのは少女である。
だが、少女は悪びれた様子を見せるどころか質問に答えるつもりもないらしく、またどこぞへと足を運ぶ。

「どこ行くんだよ、コレは何?って聞いてるじゃないか」
「……うっさいわねぇ! 黙ってアンタはそれを買えば良いのよ! それとも何? アンタ、私に文句でもあるわけ?」

ぶわっ、とどす黒い雰囲気を醸し出し、何時ものように『暴』を剥き出しにする少女。
内容だけ見れば陳腐なもので、お菓子の買い過ぎ、という事なのだが、もはや修復不可能なこの『家族』にしてみれば、
たったそれだけのことでも、ガラスを釘で引っ掻くか如く、大きな傷を心に付ける出来事。

少しの小言を漏らしさえするものの、こうして凄んで見せれば何時もの様に内罰的な『ゴメン』が出るに決まっている。
少女はそれが判っているにも関わらず、その事にどうしても苛立ちを隠せなかった。

ホラ、言うんでしょ、また、『ゴメン』って。で、結局流されるだけなのよね、アンタは。

その決まった流れに少女はうんざりとし、そしてそれしか言わない少年と、それを言わせる自分に更に苛立ちを覚える。
だから、決まったその台詞を聞く前に少女は踵を返し、その場を後にしようとした。
だが、既にその『スイッチ』は入っている。

「あるに決まってるだろ!」

ぎょっとして後ろを振り返る少女。
謝罪の言葉を述べ、俯き加減に子犬の様な眼を向けるだけの少年がいるものと疑わなかったが、そこには眼と眉を吊り上げ、明らかに怒っている少年の姿。
まさか言い返してくるとは思っていなかっただけに少々たじろいてしまう。

「もう、こうやってお菓子ばっかり買って! ご飯前に食べないで、って言ってるのに食べる気なんだろ!?」
323名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 04:00:21 ID:???
「……べ、別に私の自由でしょーが!」
「しかもスナック菓子ばっかり……。こんなのばっかり食べてお腹膨らませて、ちゃんとした食事を取らないなんて許せるわけないだろ」

クスクス、と周りのお客から笑い声が漏れる。
少年は特に気にもしていない様子だが、少女は頬が暑くなるのを感じ、それを振り払うかの如く、更に険しい言葉を投げ掛ける。

「黙れ、黙れ、黙れ!! 訳判んないこと言ってんじゃないわよ! アンタは黙って人形のように言う事聞いてれば良いの!! 人にすがるだけのアンタにはお似合いだ!」

声を荒げ、憎悪の感情を隠そうともせず、全身全霊で少年にそれをぶつける。
何時だったか、これと似た事を前にも言った気がする。
その時の少年の目。純粋な漆黒、それでいて光をまったく宿さない瞳、それを思い出す。

アンタはそうやって、他人は愚か自分さえも見ようとしないのよ。……この、私も……。

だが、光を宿さない瞳。それは少年だけではなく、少女も同じであることに気付いてはいないのだろう。
こうして行われる一方的な『暴』。
これが葛城家の出来事ならば、またお互いに傷を造る一幕でしかない。
だが、ここは店内であり、既に少年は『スイッチ』が入っている。
そう、無敵の『主婦モード』の『スイッチ』が。

「コラ! お店の中で騒いじゃ駄目だろ! 大体、お菓子ばっかり食べてちゃんとした食事を取らないから太ったりするんだよ!」

純粋で漆黒、それでいて光を宿さない瞳、どころか、明らかにお怒り的な炎を浮かべる瞳。
てっきり今度こそ何も言い返して来ないだろうと思っていた少女は、『体重』という予想外の話題に一気に頬を発火させる。

「な、な、な!!」
「食べなければ太らないわけじゃないんだよ? 大体、そんなので体重落としたとしても
 ちゃんとした食事、ちゃんとした栄養を抑えた上で、始めて健康が成り立つものなんだから、意味無いよ?」
「なんで、アンタが!」
「この際だから言わせてもらうけど、お風呂上がりにバスタオル一枚でうろつくのも止めなさい」
「ぐっ!」
「年頃の女の子が、まぁ、はしたない」
324名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 04:01:19 ID:???
「ち、ちらちらと横目で見てる癖に、なにをえらそーに!」
「欲情の目ではなく、落胆の目で見てるんだよ、もうっ。で、その後にはコップも使わずに牛乳をパックでラッパ飲み――――」
「わ、判ったわよ! 戻して来れば良いんでしょーが!」

少女の叫びとも言える言葉に、一時は身を顰めるギャラリーではあったが、少年の、まるで母親が子供を叱るかのような物言いに、またしても笑い声。
流石に自分が叱られている状況、そしてそれを笑う人々の声、それらに少女は耐えかね、顔を真っ赤にしたままカゴの中に収められていたお菓子の山を再び手にした。
未だ嘗て味わったことの無い屈辱と敗北感。
それをよもや少年から与えられるとも思っていなかった少女ではあるが、シンクロ率を抜かれたあの時、憎悪を感じ取ったあの時とは違う感覚に戸惑う。

恥ずかしいったらありゃしない!
……でも、何で『腹立たしい』だとか『憎い』って感情じゃなくて、『恥ずかしい』って思うんだろ。
……ん〜、違う。それもしっくり来ない。……見返す? あっ、『見返してやりたい』って思ってる?

そうではないか、という答えは導き出せた。しかし、ではなぜそう思うのかが理解出来ない。
ふと、何となしにちらり、と振り返って見る。そこには、やれやれ、と言わんばかりに困った表情を浮かべる少年。

……ふ〜ん、ちょっとは……見てて……くれてたんだ。

自分の食事事情、乙女の体重事情、そしてそられを含めて怒ってくれたこと。
何となしに、そこから生まれるのは『嬉しい』という気持ち。
その感情が生まれたことにも、何でかな?と首を傾げてしまう。
それはまだ、感じたことのない『家族』としての感情。

「……アスカ」

突然、少年に呼び止められる。
今度は、ちらりと覗き見るようにではなく、体ごと向き直して少年を見やる。
はぁー、っと溜息を零しながらも、ほんの少し柔らかい笑みを浮かべる少年。
それがどこか懐かしく、少し暖かかった。

「三個までね」
「……えっ?」
325名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 04:02:14 ID:???
「三個までなら、買って良いから」

その言葉を理解した瞬間、何故だか判らないが少女も笑みを零す。
久しく忘れていた、暖かい笑顔を。

「ケチ。どうせならキリ良く五個にしなさいよ」
「ダーメ。三個まで」
「むぅ〜、じゃあ間取って四個!」
「…………もうっ! その変わり食事前には絶対に食べない、って約束だよ」
「おっけぇ! 交渉成立ね!」

……なんだ、まだ私、笑えるんだ。……コイツも、まだ笑えるんだ。
時間で言えばそれほど経っていないが、既に遠い過去に置き去りにされた記憶を遡れば、陳腐な『家族』でも笑っていられた映像が頭の隅に残っている。
最近ではそんな余裕なんて一切無かったというのに、それでも今、またその時のように話し、笑い合っている。
たったそれだけでも、単純に嬉しい。
それが、今、少女の素直な気持ちだった。

「じゃあ、どれにしようかなー」
「……そういえば」
「んっ?」
「ミサトさんは?」
「ミサト? さぁ、知らないわよ、別に一緒に行動してたわけじゃないし」
「……じゃあ、何処にいるかも知らないってこと……?」
「そうなるわね」
「………………」
「?」


「それでは、カードをお預かり致します」
「はい、どうぞ」
「はい、ありがとうございます。それでは、そちらの機械に親指をお乗せ下さい」
「はいはい、っと」
326名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 04:03:19 ID:???
ふんふふ〜ん♪と鼻歌などを奏でながら女性はご機嫌であった。
レジの棚に置かれた缶ビールのケースを愛おしそうに撫でている。
だが、突然、その指が動きを止める。

『朝から飲酒は良くないですよ?』
『まったく、そんなんだから加持さんにも愛想尽かされるのよ』

何時からだろう、そんな自分を心配する声が聞こえなくなったのは。
何時からだろう、そんな自分に軽い悪態を吐かなくなったのは。
何が悪い?と聞かれれば、それは間違いなく自分。
でも、もうどうしようもない。どうしたら良いかも判らない。
だからこそ、なのか、もう見て見ぬ振りをするのは。
我ながら卑怯だとは思うが、既にバラバラなのだ、『家族』は。

「あの……お客様?」
「あっ、えっ? ……あ〜、ごめんなさいね、ちょっち考え事してたものだから。カードの返却ね」

店員に呼ばれている事にも気付かず、考え事に没頭していたようだ。
慌てて差し出されていたカードに手を伸ばし、受け取る。

「それで、お客様……」
「んっ? どうかした? えっ、もしかしてカードの有効期限が切れてた?」

何とも居た堪れない表情を女性へと向ける店員。
それを感じ取った女性は何らかのあってはならないトラブルが起きたのではないかと推測する。

「いえ、そちらは問題有りません」
「じゃあ、指紋が本人の物と認識されなかったとか?」
「いえ、そちらも問題ございません。葛城 ミサト様、ご本人と認識されておりますし、お支払も既に済んでおります」
「あっ、そっかそっか! ごめんなさいね〜、さっさとレジからどかないと次の人に迷惑だもんね〜」
「あっ、いえ、そういうわけでもなく……、あの、お呼びですよ?」
327名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 04:04:40 ID:???
店員の訳の分からない言い分に、誰が?との台詞を吐こうとした瞬間、どうして店員がこうまで居た堪れない表情を出していたのか。
どうして言い難そうにしていたのか、女性は理解した。理解せざるを得なかった。

『――改めて迷子のご連絡です。葛城 ミサトちゃん、葛城 ミサトちゃん。碇 シンジ様がお待ちですので至急五階の迷子センターまでお出で下さい』

そんな館内放送。
その内容が全て告げられた時、かたーん、と女性の右手に握られていたカードが地面との協和音を奏でる。
女性は既に耳まで真っ赤。
その事態を目の当たりにし、更に居た堪れない気持ちが湧き上がるものの、店員は心を鬼にして、更に一言漏らす。

「あの、お呼びですので、急いでお向い下さいませ……」


「おっ、来た来た」

少女の目線の先、そこにはビールケースを抱えながら顔を真っ赤にした女性の姿。
怒りから来ているのか、それとも羞恥心によるものか。
まぁ、多分その両方を携えてるからこその真っ赤な顔なのだろうな、とどこかのんびりと考えてしまう。
あれだけの事をされたのだ、きっと怒鳴り込むに違いない。
けれど、何となく判る。それが良い意味で上手くいかないことを。

ずんずん、と力強く歩を進める女性。
このような事態へと陥れた張本人を補足。そして、大きく息を吸い、その名を呼ぶ。

「ちょっとシンジ君! どーいう―――」
「ミサトさん、何処行ってたんですか!!」

だが、それは少女の予想通り、全て発せられる前にそれ以上の怒号で遮られる。
きょとんとする女性。そしてそれを見、ほーらね、などと小声を漏らし、肩を小刻みに揺らしながら笑う少女。

「てっきり一緒にいると思ったのに、気付いたらいないんですよ!? 心配するじゃないですか!!」
「……いや、あの……」
328名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 04:06:08 ID:???
「もうっ、ビールを買うんだったらそう言って下さい! 大体、ちゃんとその事も考えてましたよ!?」
「……え〜と、その……」
「重い荷物は最後に買うようにしないと! そんな重いの持ってたら、いろいろ見て回るのも大変じゃないですか!」
「……はい、すいません……」
「はい、判ってくれればそれで良いです。一度、ビールを車に置きにいきましょう。重いでしょ、僕が持ちますよ」
「……うん……ごめんね、シンちゃん」
「もう良いですから、ほら行きましょう」

ビールのケースを受け取り、歩き出す少年。
その後ろ姿を呆然としながらも見つめる女性は、今、起きた出来事がまだ良く理解できていなかった。

「ミサトちゃん、怒られちゃったー」

クスクス、と笑い声が聞こえる。
ぐぅっ、となんとも言えない声を漏らしながらも、笑い声を発する少女に女性は耳打ち。

「……ねぇ、シンちゃん、どったの?」
「さぁ? ここに来てから、急にあんな風になったのよねぇ」

私も怒られたしね、と苦笑気味。

「もしかしてシンちゃん、買い物する時、完全に『主婦』に成り切ってる?」
「可能性あるわね、アイツ、単純バカだし」
「…………なんとなく、お母さんに怒られた、って感じがしたわ」
「……同感。実際には、そんな経験、ないのにね」

どこか懐かしむように遠くを見つめる少女の瞳。
ぽろっ、と零した一言だったが、女性は、その一言が少女にあらぬ想いを持たせてしまったかもしれないことに少し複雑になる。

「でも、この雰囲気、って言うのかしら? 『こんな風』に話すのって、何だか久し振りだわ」
「そうね。……でも偶々、よ。そう、偶々。続いたとしても今日までで、明日になれば、また何時もの日常に戻るだけよ」
「……かもしれないわね……。あ〜あ、やっぱり私の責任よね……」
329名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 04:07:34 ID:???
「なーに言ってんのよ。ミサト、アンタ自分が神様にでもなったつもり? 誰が悪かったとか、どれがいけなかったとか、関係無いのよ。結局はなっちゃったんだから」

そう、幾ら過去を振り返ろうとも、全ては『後の祭り』なのだ。
過程など、結果の前ではただの彩るオブジェでしかなく、ただの言い訳。
現状を無しになど、誰にも出来ないことだから。

「二人とも〜、早く行きましょうよ〜」
「「は〜い」」

そして、未来もそう変われるものじゃない。
結局そのままズルズルと引き摺られるかの様に、前に進むしかない。
そう簡単に、現状を打破できるなら、人間何にも困りなどしないのだ。

「ねぇねぇ、シンちゃん。私、今日は生姜焼きが食べたいな〜」
「迷子になったミサトが権限あるわけないでしょッ! シンジ、今日はハンバーグしなさい、ハンバーグに」
「え〜、良いじゃん別にぃ〜!」
「良くない!」
「はいはい、喧嘩しない。売り場を見ながら考えましょ」

でも、特別な、たった一日でも、特別な今日も無しには出来ない。
これから、どんな事が待ち受けていようと、どれだけ悲しもうと、どれだけ苦しもうと、どれだけ傷付けられようとも、この日を無くすことは出来ない。
そして、これが大切な第一歩とも成り得る可能性も。

これからも、こんな日が続く日常を得られる時が、来るように。
それだけを願いながら。

そんな『昔の』葛城家。


「という事があったんですよ」
「へぇ〜、そうだったのか」
330名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 04:08:43 ID:???
三人で買い物には良く来るのか、という男性の質問に答えるうち、何時しか思い出話に花が咲いたようである。
にこやかに、あの日が多分、原点だったんだと思います、そう答え、思い出の中と同様、レタスを品定めする。

「それよりも、加持さん。最近良く、飴、食べてますね」
「ん? ああ、これ?」

男性が口に銜えるそれ。所謂、キャンディー。
何重にも束ねた紙をスティック状にし、その先端に飴玉がある持ちやすい形式のタイプ。

「禁煙中で、何か口に咥えて無いと落ち着かなくてな。大体、スーパー内で吸うわけにもいかないし」
「禁煙中じゃなくて、完全に止めたんですよね?」
「うっ、そうだな……」

ギラリと光る少年の眼光。それに少し気負いされながらも即座に肯定の言葉を述べる。

「うんうん、それが一番です」
「ははっ、まったくシンジ君は……」
「はい? 何ですか?」
「いや、完全に――」

男性が続けて言葉を述べようとした矢先。
どさっ、と大きな物音がひとつ。
その音がする方向、即ち、先ほど少年が用意したカート。それに備えつけられているカゴ。
そちらに目を向けて見れば。

「何やってるんですか、二人とも……?」
「……あ、あはは」
「……い、いやぁ、これも買ってもらおうかなって……」

少女が両手一杯に抱えるはお菓子の山。
女性が両手一杯に抱えるは缶ビールの山。
親が見ていない間に、カゴの中へお目当ての物を黙って混入させる子供そのものである。
331名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 04:10:03 ID:???
「へえぇぇ……」

少年の頭に久しく見ぬ、大きな♯マークがひとつ。
相変わらず苦笑を浮かべることしか出来ない女性と少女。

「今直ぐ、返してきなさーい!!」
「「はーい!!」」

慌てて逃げ出す女性と少女、そして握り拳をつくった右手を大きく天に翳す少年。
そんな光景を目の前にし、男性は、くっくっく、と声を漏らし笑いながら、先ほど述べようとした台詞を誰に聞かせるわけでもなく、放つ。

「本当、お母さん、だな」

まぁ、そんな風に役割が変わるのも有り、かもな。
ピコピコ、と飴玉から延びるスティック状の白い棒を上下に動かしながら、この平凡で素敵な世界に乾杯、と思う男性であった。

そんな『今の』葛城家。
332名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 10:42:21 ID:???
GJ!
333名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 13:33:33 ID:???
葛城家シリーズ復活キタ━━(゚∀゚)━━?
GJ
334名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 13:38:45 ID:???
なんかいい話だなぁGJ
335名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 13:48:50 ID:???
葛城家GJGJGJ!
336名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 22:34:47 ID:???
>>331
>そして握り拳をつくった右手を大きく天に翳す少年。

「我が人生に一片の悔いなし!」
かw
337名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/19(日) 22:58:30 ID:???
復帰作家さん多いじゃないか…
葛城家さんおかえりなさい(嬉し泣き)
338名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/21(火) 13:00:14 ID:???
前半ハラハラしたけど、主婦スパシンというジャンルかこれはw
ほのぼのしましたGJ!
339名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/21(火) 13:52:13 ID:???
シンジ「お菓子を、返せ…!!(棚に)」
340名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/21(火) 20:56:37 ID:???
主婦スパシンっていいねw
341キズアト:2009/07/21(火) 22:29:16 ID:???
いつまでも絶えることなく  友達でいよう
明日の日を夢見て  希望の道を
空を飛ぶ鳥のように  自由に生きる
今日の日はさようなら   またあう日まで
信じあう喜びを  大切にしよう
今日の日はさようなら  またあう日まで  またあう日まで

ようやく、ヤル気に成ったのねシンジ。そうよ。アタシの事を気に.....しないで存分に...。
はぁ、はぁ、使徒の痛みが直接伝わるのは....。ちがう、体が痛いんじゃ無い心が痛いんだ
これが、使徒の感じている痛みなの?でも、アタシの受けた痛みはこんなもんじゃない、
こんな事で負けるもんですか。
しかし、シンジよくやるわね。リミッターを切った様に戦ってる。まさか、ビーストモード?
違うか...。もし、これが本当のシンジの力なら、アンタは悔しいけど天才だわ。
無敵のシンジ様って呼んでも良いわね。
あ、それも言ってあげられそうもないわね。悔しいな、こんな最後なんて....。
342名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/22(水) 00:07:07 ID:???
おわり?
切ないわぁぁ…
343キズアト:2009/07/22(水) 18:12:45 ID:???
病院で目覚めた、アタシは全てを聞かされた。別に、シンジがあの人形を救った事は
どうでも良かった。まぁ、アイツらしいと思った位だ。許せないのは、アタシを倒したのは
シンジでは無く、ダミーシステムだったこと、アイツは戦う事から逃げて、機械にアタシの
始末をさせたんだと言う事が悔しくて仕方がない。
アイツに殺されるなら本望だけど、機械に殺されかけて、こんな大けがをさせられた事が
許せなかった。

でも、シンジが初号機から戻れたと聞いた時、アタシは会いたくて仕方なくなった。ミサトに
有っても良いと、口が勝手に言っていた。
「本当に良いの?シンちゃん喜ぶわよ。」
ミサトが言う。
「るっさいわね。別にどうでも良いじゃない。会いたいなら会ってやるだけ、それに...。」
「何?」
「何でもない。」
アタシは、そのまま顔を窓の方に向け、二度とミサトの方は見なかった。
344キズアト:2009/07/22(水) 18:33:00 ID:???
「何モタモタ、して居るのよ。入るなら早く入りなさいよ。」
「ごめん、アスカそのこれクラスの皆からのお土産だけど。これ、寄せ書き。片目で見るのは辛いと思うから
後でゆっくり見てね。それと、これは千羽鶴...。」
「センバツル?」
「あの、病気や怪我が早く治るようにっておまじないみたいなものかな?皆で折ったんだ。」
「ふん、これだから日本人は...。そんなもんで、怪我が治るなら苦労しないわ。まぁ、後で、看護師さんに
飾ってもらうからその辺に置いといてくれる。」
どうして、アタシは一言多いんだろう。素直に、ありがとうって言えば良いのに....。また、酷い事を
言っている。

「ごめん、アスカ、その...、僕のせいで。」
「別に、あんたのせいじゃないわよ。まぁ、事故ね。事故。ただ、許せないのは、アンタが戦わなかったこと。」
「え?」
「だって、そうでしょ。アンタの使命は使徒と戦うこと、それを人殺しは嫌とか、自分が死んだ方が良いとか
言って、避けたでしょ。」
「でも、アスカを傷つけるのは、出来なかった....。」
「同じことよ。結局、アンタは、自分の手を汚すのが嫌だっただけでしょ?」
アタシ何言ってるんだろう。本当は、こんな事言うつもり無かったんだけど、シンジの顔を見たら....。
345キズアト:2009/07/22(水) 18:52:58 ID:???
「シンジ、良い?これからアタシが良いって言うまでアタシの顔をじっと見てなさい。何が有っても
目をそらさないでね。」
「あ、うん。」
わたしは、おもむろに顔の包帯を解いた。包帯がほどけた時、醜く膨れ上がった左目の
辺りが現れる。その姿を見た、シンジは明らかに怯えていた。無理もない、アタシも鏡で
見た時は絶望的な気分に成った位だ。
「目を逸らすな。シンジ!」
「でも、でも。」
「いい、シンジ。これが、アンタが戦いを避けた結果なの。解る?そりゃー、アンタの様に何も
解らずに乗ってる輩には、酷かもしれないけど。アタシ達は戦うしか無いんだよ。そうしないと、
皆、死んじゃうんだよ。」
「それは、解るけど。でも、人殺しは...。」
「あのね。アンタがあの時死んでいたら。もっと、多くの人間が死んだんだよ。アンタの大事な
三馬鹿だって死ぬんだよ。」
アタシはその時、ヒカリの顔を思い浮かべていた。こんな、無愛想で我儘なアタシを友達として
扱ってくれる優しいクラスメートの顔を

シンジの顔が見る見る引きしまって行くのが見えた。あの人形を助けただけは有るわね。自分が
エヴァに乗る意味が解ってきた見たい。
「ごめん。その通りだね。やっぱり、アスカは強いや。臆病な僕とは違うよ。」
「はぁ。そのヘタレに人類の未来がかかってると思うと気がめいるわね。良い、この傷に誓いなさい、
二度と戦う事を避けないって。最後の最後まで逃げないと。誓える?」
「はい、誓う。もう、僕は決して逃げないよ。」
「解ったら。向うを向いて。今度こっち向いたら、命は無いものと思いなさい。」
「は、はい。」
シンジは慌ててアタシに背を向けた。ホント、素直で面白いヤツ
346キズアト:2009/07/22(水) 19:00:50 ID:???
「そんな所に立ってないで、ベットの横にでも腰かけなさいよ。こっちは、見るないでね!」
「は、はい。」
シンジは、背中を向けながら手探りでベットを探し、腰掛ける。そのさまは、可笑しくて笑いそうに
なってしまう。

「その傷、残るの?」
「ん?まぁ、目立たないようにはしてくれるって言っていたけど、傷が残るのは覚悟しろって言われた。」
「え、そんなー。アスカ見たいな奇麗な人に傷が残るなんて...。」
「それ、褒めてんの?それとも、責任とってくれるかしら?」
あれ?アタシ何言ってるんだろう。
「あー、今のは気にしないで。アンタにはあのオスマシ人形がお似合いだわ。」
気まずい、沈黙が病室を包んでしまった。なんだか、余計に墓穴を掘ったみたいだ。
347キズアト:2009/07/22(水) 20:01:42 ID:???
「アスカと綾波のどちらが好きかって、聞かれると。良く解らない。」
沈黙に耐えかねたように、シンジが独り言のように話しだした。
「でも、どっちらを守りたいかといかと、聞かれれば。アスカの方だよ。」
え?何言ってんのシンジ、見え透いた嘘なんか良いよ。アタシなんかより、
素直な人形の方が良いに決まってるだろ?
「アスカは、気が強くて攻撃的だけど。内面は全然違う。」
何、解ったような事を....。
「攻撃的にならなければ、成らないほどに繊細で気づ付きやすいんだと思ってる。
そんなアスカはとっても愛おしいんだ。解るんだよ。僕と同じで傷付きやすい心を
守る方法が僕と違うだけだって。」
ちょー、シンジどさくさに紛れて、何言ってんの?恥ずかしいじゃないの
「確かに、今の僕ではアスカを守れないだろうけど。何時か、守れるように成れたらいいと思ってるんだ。」
「あんた、ばかぁ。アタシはアンタに守ってもらうほど落ちぶれちゃいないわよ。」
どうして、アタシはこう言う事を言っちゃうんだろう。本当、もう嫌。
「でも、まぁ、あれね。60番目のナイト候補に入れといたげる。」
「え?そんなに居るの。」
「い、いるーわよ。えーと、そう、ドイツにね。」
「はいはい、そうしといてあげる。」

何だか、シンジの背中が大きく見え。そう感じた時には、シンジの背中に抱きついていた。
「こっち見たら、殺すこらね。しばらくこうさせて。」
「ねぇ。アスカ。」
「何?」
「アスカは僕の事どう思ってるの?」
え、突然何言い出すのよ。アタシはその言葉に初めてシンジに裸を見られた時以上に動揺して
顔を真っ赤にしてしまった。
「もう、黙ってさいよ。バカシンジ。」
と答えるのが精いっぱいだった。
もう、変な事聞かないで!


Qの予告を見る限りこんなシーンは望めないかな?でも、有ったら良いね
348名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/22(水) 22:17:08 ID:???
乙です!
あの事件の後っていうのが、微妙な距離感を生んでるね。
Qでもこれくらい打ち解けていってほしいなぁ。
349名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/22(水) 23:19:00 ID:???
あんまし上手くないけど、思いついたので小咄を。
--

ここはミサトマンションの台所。
あるとき、フッとシンジは溜息をつく。それを聞きつけたアスカ。
「ん、どうしたのよ」

お鍋をおたまでかき回しながら、シンジは苦笑い。
「いやね、ここに来て炊事に洗濯、家事ばかりやってる僕って……」
「不満なわけ? そーいうのをね、前時代的っていうのよ」
「前時代?」
「そう、女が家事やって男が稼ぐなんて考えが古いの。アンタは専業主夫が似合ってるわ」
「そ、そうかな」
「そーよ、なんなら代わりにアタシが稼」

「……」
「……」

そこで、すかさず話題を変えるシンジは実におりこうさんである。

「あ、アスカ? 味見をしてくれないかなぁ」
「え、あ、ああ、うん、いーんじゃない」

(終わり) おじゃましました。
350名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/23(木) 00:21:42 ID:???
>>347
良かったよー。3号機事件のあとを描いたのは初じゃないか?
>>349
短編GJ
351名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/24(金) 17:23:57 ID:???
キズアトも小咄もGJ!!
352名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/25(土) 13:34:52 ID:???
ありがとです。では調子に乗って、場つなぎにもう一つ小咄を。
--
ばきっ!
「アタシの縞パンに触るんじゃない!」
「ぐえっ……」

アスカの見事なフックを喰らったシンジ、どうにか身を起こして。
「そ、そんなこと言ったって、洗濯物を干さなきゃしょうがないじゃないか……」
「もう、乾燥機ぐらい買えばいいのに」
「そんなに言うなら、自分で干してよ。ほら」
と、洗濯物のカゴをドン。

アスカ、絶句。しかる後に、
「……はいはい、やればいいんでしょ?」
と、案外素直に応じてベランダに向かう。

しかしシンジは心配げである。
「自分のしか干さないなんて止めてよ?」
「わーってるわよ。うるさいなぁ」
「ほら、ちゃんと広げて」
「……こう?」
「そうそう、それでね? これは……え、何?」

ばきっ!
「ミサトのブラに触るんじゃない!」
「ちょっ……だから、アスカが干してって言ってんじゃ……」
「しかもアタシよりデカイじゃないのよ!」
「知らないよ! そんなこと!」

ミサトマンションから、おだやかな朝のひとときをお送りしました。
(終わり) グダグダですんません。
353:2009/07/25(土) 16:10:36 ID:???
天狗道。地元でそう呼ばれる山道を登ること、およそニ、三十分といったところだろうか。
滴る汗や、飛び交う羽虫、けたたましい蝉の鳴き声に私は気が変になりそうだった。

事の発端は、休暇で訪れた旅館での私の発見。
ミサトが夕食も待たずに酔い潰れ、
シンジはイヤホンで両の耳を塞ぎ、座布団を枕に横になっていた。
そんな部屋の中にあって、私は退屈で仕方がなかった。
ふと、この土地の評判を思い出した私はベランダへと向かった。
ベランダに出ようとガラス戸を開くと、真夏の外気が私の体を室内へ押し戻そうとしたが、
絶景と評されるこの土地の景色を望見しようという私の意思がそれを打ち破った。
ベランダの縁に手をかける。辺りが一望出来た。
陽が傾き始め、にわかに赤味を帯びた景色は私を圧倒するのに充分な美しさだった。
この国に育ったわけではない私だったが、ノスタルジーを感じずにはいられなかった。
目の前に広がる絶景を前に、この時ばかりは日々の疲れとかそういったものも消し飛んだ。
遠方に連なる山々。手前に目をやれば理路整然とした田畑が一面に広がる。
旅館のすぐ近くを流れる川は舗装されておらず、父子が釣りを楽しんでいた。
こうした風景に感動を覚える自分に少し驚きもし、また同時に何故か安心もしていた。

辺りを見渡すうちに、蝉の鳴き声が一段とうるさい、他に比べればちっぽけな山が目に入った。
それは旅館からすぐの所にあって、山というより小山と言った方が適切に思えた。
私は夕陽に照らされるその小山の中程に、何か異質な物を見た。
目を凝らすとそれが人工物であり、所謂神社であろう事がわかった。
緑一色の中にそびえるそれは、この時の私にはひどく神秘的に見えた。
行ってみたい。幸い山はちっぽけに見えた。何より、私は退屈だった。
私は部屋に戻ってシンジを叩き起こし、ミサトに出掛ける旨を伝えた。
ミサトは唸り声のような音だけを返した。私はそれを返事と取った。
私達は部屋を飛び出した。
その後山の麓に着いて、偶然出会ったおばあさんに神社までの経路を聞き、そして今に至る。
354:2009/07/25(土) 16:12:35 ID:???
最初の十分こそ自然を満喫するだとか、そんな気分でいた私だったが、
今となってはその自然が鬱陶しくてたまらなかった。
「アスカ。もう下りようよ」
後ろでへばりながらもついて来ていたシンジが言った。
もっとも、これでもう四回目にもなるが。
「うるさいわね。ここまで来たら最後まで行くわよ」
私は意地になっていた。後ろでシンジの三度目の溜め息を聞いた。
辺りは陽も落ちかけ、少しずつ夜の空気へと移り変わっていた。

それから少し道なりに進むと、地面剥き出しの山道は石段へと変わり、
程なくして私達は目的地へと辿り着いた。
小さな鳥居があり、古びた賽銭箱があり、そしてちっちゃな社がある。
ちっぽけな山の、ちっぽけな神社だった。
旅館のベランダから眺めた私はよくここが神社だとわかったものだ、と不思議に思った。
それ程にちっぽけなものだった。
私達は社の周りを回り、いつ書かれたかもわからない絵馬を見て、それから境内を見渡して、
それでも神秘的なものなんて何もない事に落胆し、石段に腰を降ろした。
ひんやりとした石の感触は心地よかった。
木々の間から射す陽は濃い橙色となって、今が黄昏時である事を知らせた。
「なんにもないじゃない。つまんないわね」
「アスカが来ようって言ったんじゃないか」
「うっさいわね。男のくせに」
反論を飲み込む音だけ残してシンジは黙り込んだ。
蝉は幾分静まり、暑さも和らいで過ごしやすくなってきた。
私達は並んで座り、手に寄り付いてきた蟻を払ったり、
手元にあった小石を石段の下に向かって投げたりなんかして過ごした。

「アスカ。見てよ」
登山からの体の火照りも冷めたところでシンジが言った。
「なによ」
そう言ってシンジが指差す先を見ると、
数匹の猫が社の屋根の上に集まっているのが目に入った。
355:2009/07/25(土) 16:15:59 ID:???
よく見ると親子のようで、母猫と思しき猫は私達を警戒しているようだった。
私達は寸刻、その猫と見つめ合った。
気付けば黄昏時もとうに過ぎていよいよ夜が迫っていた。
「……帰ろっか」
折れた様にシンジが言った。
「そうね」
私達は疲れから重くなった足を上げて石段を下り始めた。

帰りの道は暗かったが、澄んだ空気は涼しく、
蝉の鳴き声はいつしか心地好い程度になっていた。
月明かりが木々の間から漏れ射し、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

「いたっ!」
突然、斜面を滑る音と共に、私の後ろを歩いていたシンジが尻もちをついた。
「何してんのよ!鈍臭いわね」
「ご、ごめん」
私が咎めるとシンジはすぐに立ち上がり、ズボンの砂を払った。
それから手首を数回振る仕草を見せると、私に先を促した。
私達は再び山道を下り始める。全行程の三分の二程は既に下っただろう。

それからは黙々と道なりに下り、あっという間に旅館の前まで辿り着いた。
シンジは疲労困憊といった様子で私の後に付いて来ていた。
旅館を前にして短い橋に差し掛かる。下を流れる川に夕方見た父子の姿は無かった。
この橋を渡り切ればすぐに旅館の玄関口だったが、私はその前に足を止めた。
「悪かったわね」
「え?」
私の言葉でシンジも足を止めた。
「手首。痛いんでしょ?連れ出して悪かったわね」
「あ、いや、平気だよ」
文句の一つでも言われた方が楽なのだろうか。だが、こいつは言わない。
356:2009/07/25(土) 16:18:41 ID:???
「嫌な事は嫌って言ったら?」  「嫌じゃないよ。楽しかったよ」
「本気で言ってんの?」  「うん」
特に何をしたわけでもなく、壮麗な名所へ行ったわけでもなく、
ただ汗を流して名も無い山を登って、ちっぽけな神社を見て、
そして下る時には怪我までして、それでも楽しかったとコイツは言った。
「アンタ、ほんとバカね」
私はシンジの返事も待たずにさっさと玄関口をくぐり、ミサトの待つ部屋へと向かった。
アイツが腹立たしいやら、よくわからなくて、とにかく一緒には居られなかった。

その後部屋に戻ると、すっかり酔いも覚めて、
私の言った事もすっかり忘れたミサトが居た。
シンジも揃ったところで説教が始まる。
自分はビールを飲んで眠りこけていたにもかかわらず、だ。
私は反論する元気も無かったので、黙してミサトの言葉を右から左へ流した。
説教が終わると私は浴場へ向かい、それから遅目の夕食をシンジと摂った。
私はひどく疲れていて、布団に入るとすぐに眠りに落ちた様に思う。

翌日、帰り支度も済んだ私とシンジはフロントでミサトを待っていた。
あの山からは蝉の鳴き声がやかましく響いていた。
釣りをしていた父子は母親を加えて今日はどこかに出掛けるらしかった。
虫採り籠を携え、家族は旅館を後にした。
「散々だったわね」
私はシンジの右手首に貼られた湿布を一瞥して言う。
「そうかな?」
「そうよ」

しばらくして化粧を済ませたミサトが現れた。
チェックアウトをミサトに任せる間、私は玄関口からすぐの短い橋へと出ていた。
雲一つない空から注ぐ陽光は肌に刺す程に感じられ、
風はなく、川のせせらぎとあの小山からの喧騒だけが耳に残った。
休暇としてはそんなに悪くなかったのかもしれない。そんな風に感じられた。
357名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/25(土) 16:19:58 ID:???
おわり
358名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/25(土) 17:19:39 ID:???
>>352
軍人さんぽい命令口調のアスカが良かったねw
>>357
文章上手いなぁ…なんか凄い日常が描かれた感じだ。すんごいほのぼのしてしまったw
359名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/25(土) 18:50:07 ID:???
GJ!
なんかこういうのもいいね
360名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/25(土) 20:24:48 ID:???
これはGJ!
361357:2009/07/25(土) 21:22:12 ID:???
かなり久々に来て書いたんだけど
あまあまのとか読めないし書けなくなってたw

破でSS関連もそれなりに盛り上がってるんかな?
まだ破見てないけど
362名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/25(土) 21:30:23 ID:???
破を見てないのに創作意欲沸くって珍しいね
363名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/25(土) 21:40:51 ID:???
数年ぶりにこの板来たら楽しそうだったのでつい
364名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/25(土) 21:46:56 ID:???
>>363
破のネタバレ見に来たとかかな?w
何はともあれ書いてくれてありがとう
また書いてね。ほのぼのさせて
365名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/25(土) 21:59:52 ID:???
何かいい画が浮かんだら……ノシ
366名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/30(木) 03:33:30 ID:???
ホス
367名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/01(土) 15:28:12 ID:???
ほすあげ
368名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/05(水) 18:05:16 ID:???
保守
369名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/07(金) 15:21:24 ID:???
なぜ聞かなくても判っているのに『言葉』として聞きたくなることがあるのだろう?
何とも不可思議な疑問ではあるが、なかなかどうしてこの質問、頭を傾げることにはらず、真剣に考えさせられてしまうものである。
テレビドラマなどには良く転がっているもので、心で理解できているにも関わらず、安心を得たいが為に、愛する人から『愛してる』の言葉を聞き出す。
だが意外にも、この事柄、存外馬鹿にしたものでもなく、現実世界でも良く転がっていたりするものだ。
笑う事は人間だけに許された行為、と言われているが、言葉による意志疎通を行う事こそが、人間の一番の特権なのかもしれない。
他の動物も、鳴き声で会話をしている、と言う人もいるだろう。
だが、それらの動物は鳴き声に感情を乗せているだけであって、言葉の意志疎通など皆無なのかもしれない。
頭の良い動物、そう、例えば犬などは主人が『お手』と言えば命令通りに右手を出して、『お手』を行う。
だがこれは、『お手』という本来の意味を理解して行っているのではなく、『お手』という単語のアクセント、つまりは発音で、何をすべきなのか
理解しているのかもしれない。もし、そうならばこれは意志疎通が出来ていることにはならない。

まぁ、こんなものは実際にその動物にならないことには、本当に会話をしていないのかどうかなど、確定出来る事柄ではない。
そして未来永劫、この事柄に対して決定的な回答は得られることはないであろう。

「……つまり、何が言いたいわけ?」
370名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/07(金) 15:22:09 ID:???
長々と、理解出来そうで理解出来ない講釈を少女から聞かされていた少年は、呆れたように結論を急かす。
そんな少年に対して、アンタバカぁ!?とまるで句読点の変わりの如く使われるその台詞で前置きしてから、少女は結論を語る。

「アンタ、私の事、好き?」

とんでもない結論が出てきたものである。
『言葉』に関しての講釈を聞かされていたかと思えば、自分を好きであるかどうかの質問。
しかし、少女が最初に語った事があるからこそ、このような質問が生まれたのだ。
要は、血は繋がっていなくとも『家族』として今、幸せな日々を送っている。
昔とは違う、本当に幸せで暖かい『家族』でいる。
だから心ではお互いに信頼し合い、親愛し合っていることは疑う余地も無い。
でも、それを『言葉』として聞きたいのだ。

「もうっ! またそうやってからかおうとして!」
371名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/07(金) 15:22:56 ID:???
拗ねた口調で立ち上がり、自分の部屋へと戻る少年。
だが、本当のところ、拗ねているのではなく、恥ずかしくて言えないから、その場を逃げるように去っていたのだ。

そんな少年の背中を見送りながら、少女は、う〜ん、と唸りながら考え込む。どうやら、この結果は予想していた内容であり、落胆している様子はない。

「仕方ない、やっぱりあの作戦で行くしかないか……」

ぼそりとそう呟く少女。何かしら秘策があるようである。

ちなみに、今回発せられた少女の質問。
それは、少年、そして女性も同様に聞いてみたい質問でもあった。
『家族』だとしても、やはり実際に言葉で聞いておきたいものなのである。
そして、それぞれ、その質問がされたと仮定するならば少女の場合「な〜に寝言言ってんのよ、シャワーでも浴びて頭冷やしたら?」と冷めた言葉を残してその場を後にし、
女性の場合「もう判ってるくせにぃ〜!」とおどけた様子でその場を後にしたことだろう。
まぁ、要するに少年と一緒で恥ずかしくてその場を逃げ出すわけなのだが。


そして時は過ぎ、草木も眠る丑三つ時。
ワオーン、と犬の鳴き声が良く似合う夜中。
そんな夜中に蠢く影ひとつ。
その影が向かう先は少年の部屋。
襖をスライドさせてその影は少年の部屋へと侵入する。

「シンジ、起きて」

影、つまり少女は、ベッドで静かに寝息を立てる少年の肩を揺さぶり、夢の世界から現実の世界への帰還を命ずる。

「起きてってば、シンジ、シンジ」

突然の訪問、突然の起床。
通常、余程の理由が無い限り、眠りにつく人間を無理やり起床させることなど無い。
ある種それを制止しようとするのは人間の『良心』。
372名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/07(金) 15:23:49 ID:???
疲れているかもしれない、まだ時間に余裕があるから起こすのは悪い、などなど多種多様である。
しかし、その道理があるにしても起こされた者からすれば堪ったものではない。
何せ、人が一番リラックスされていると言われる睡眠を満足値に到達する前に妨害されたのだ。
現に、滅多に怒りなどしない少年が、言葉に不機嫌な感情を乗せていた。

「……んっ〜……もうっ、なにぃ、あすか〜?」

眼を擦りながら、何度も瞬き。
当然と言えば当然であるが、まだまだ眠り足りない様子である。

「アンタ、私の事、好き?」

また繰り返される突然の質問。
相違点があるとするならば、長ったらしい前置きが無いぐらい。
ならば結果も同じことであり、第三者から見れば俗に言う『デジャヴュ』とも捉えることが可能であったかもしれない。
だが、結果が違えば、それは別の世界。

「……ん〜〜、好きだよ……ふわぁ……それだけ?」

引き続き目を擦り、偶に欠伸を出しながらも極当然のように、すんなりと言葉にする少年。
そんな少年の言葉に嬉々とし、頬を朱に染めながら、えへへ、と感嘆の声を漏らす少女。
そう、これが少女の策であった。と言っても単純な事である。
寝起き、それはもっとも人が油断している時。
安眠を妨害された際、特に注意力は低下、衰退しており、且つ、その人の特性、性格が加味されることにその危険度は比較的に上昇する。
起こされたことで怒る人、起こされても低血圧のため直ぐに布団から出れない人、普段よりも素直になる人、人それぞれ。
そして、少年の場合、完全なる素になるわけである。これが一番危険なタイプ。
普段なら決して口にしないことでさえ、すんなりと口から零れてしまうのだから。

少女が少年のこの特性を知ったのは偶然であった。
休日の昼下がり、珍しくもお昼寝中であった少年を、クラスメイトとの予定時刻が迫っていることを知らせるため、不本意ながらも起床させた際、
目を擦りながら、寝惚けた様子の少年を見、からかい半分に「アンタ、女の子みたいに可愛いわね」と言って、少年の反応を楽しもうとしたのだが、
「アスカの方がもっと可愛いよ」とあっけらかんと言い放つ少年。
373名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/07(金) 15:24:31 ID:???
その言葉に真っ赤になり、嬉しい気持ちが大波の如く押し寄せて来たが、どうせからかい返しとしてその台詞を言ったものだと解釈し、逆にからかわれた事に
悔しさを滲み出していたが、出発の準備を整えるために部屋へと戻った少年が、数分後、ドタバタと珍しくも慌ただしい騒音が聞こえて来たかと思えば
「今のは、無しね!!」と顔を真っ赤にさせた少年が訳の判らない言葉を述べた、という出来事があったからだ。

たったそれだけではあるため、正直なところ、『確実』と呼べる策ではなかったのも確かではあるが、少女の予想通り、少年は寝起き状態だと『素』になるのである。

「ねぇねぇ、どこ? 私のどこが好きぃ?」

夏という季節柄に良く似合いそうな向日葵の如く明るい笑顔。似合わない部分が、現時刻が真夜中だというぐらい。

「……ふわぁ〜あ……、ん〜……我儘が多いけど、そうやって甘えてくれるところ……、言葉はちょっとキツイけど、何だかんだで優しいところ……、
素っ気ない振りして心配してくれるところ……後は……むぅ、ねむいぃ〜……もう、あれ、全部、だよ」

こんな惚気にも似た言葉に対し、少女は今までに無いほど顔を深紅に染め、且つ、幸せいっぱい、夢いっぱい、と言わんばかりの笑顔である。
だが、これが最終目的ではない。少女の目的は更にもう1ステップ上の高みへと目指す。

「じゃ、じゃあさ……」
「ん〜……」

ごくん、と一度唾を飲み込み、次の言葉が通り易いように穴を造る。
半分眠り状態へと陥りながらも、律儀に返事をする少年に対し、これでラスト!、と有りっ丈の勇気と想いを込めて口を開く。

「私の事、異性として、ひとりの女の子として―――」
「ねぇねぇ、シンちゃん! 私は!? 私の事は好き? 大好き?」

突然後方から聞こえる女性の声。
少女が驚いて振り向いて見れば、少年の部屋の出入り口である襖が全快まで開かれ、そこに女性が立っていた。

「……うぅ〜ん……勿論大好きですよぉ……」
「えへへ、えへへへへ」

先程の少女よろしく、幸せいっぱい、夢いっぱい、と言わんばかりの笑顔である。
374名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/07(金) 15:25:14 ID:???
「な、なんでミサトが!?」
「ちょっとぉ〜、アスカぁ〜、何自分だけ幸せになろうとしてんのよぉ。寝起きのシンちゃんがこんなに素直なら教えなさいよぉ〜」
「ア、アンタ、寝てたんじゃ!?」
「『えへへへぇ』なんて幸せいっぱい夢いっぱいの声が漏れれば、そりゃあ起きるっちゅーの」

幸せ過ぎるのも考えものかもしれない。
それを自制できるだけの力が欲しい、少女は初めてそう思った。

「大体、そう簡単に恋人として成立させて堪るかってのよ」
「はぁ!? アンタ、カレー作る時、応援するって言ったじゃない!?」
「あら、お互いがそうであるって言っただけで、手伝うなんて言ってないわよ」
「だからって邪魔する、普通!?」
「別に邪魔なんかしてないわよ、家族としてこれからも過ごしていこう、って話よ」
「はは〜ん、アンタ、私とシンジが恋仲になったら寂しいんでしょ?」
「そうよ、開き直ってそうよ、と連呼。まだまだ、この幸せの家庭を守り抜いてやるわよ」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ、アンタだけのけものにしないからさ」
「もちろん信用してるけど、何時かは若い雛鳥は巣立って行くものよ、それまでは、あっ、許しはしねぇ〜ぜっ!」
「……具体的に言うとどれくらい?」
「早くても、高校卒業。常識的に考えて大学卒業」
「まっ! 待てない! 絶対に待てない!」
「知らぬ、お主の都合など知らぬ」

ぎゃー、ぎゃー、と何とも可笑しな姉妹喧嘩を何時ものように始めるふたり。
しかし、ここで重要なことを少女は忘れていた。女性は知らないだけ。
既に少女が少年を起こしてから既に5分は経っていた。

「……ふたりとも」

そして、何時もの、普段通りの落ち着いた少年の声が聞こえる。
平たく言えば、タイムアップ。先ほどまで何度も目を擦り、瞬きを繰り返していた少年はどこぞへと消え、今、目の前にいるのは何時もの少年。

「…………こんな、時間になにやってるんですかっ?」
375名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/07(金) 15:25:56 ID:???
あれだけの時間が経ち、おまけに騒がしくされていたとなれば当然目など覚めてしまうものである。
そして、普段よりもトーンが低い声。完全にお冠状態である。
冷汗を浮かべる少女と女性。

「シ、シンちゃん、私は元々知らなかったんだから! そう、アスカが勝手に!」
「な、なにアンタだけ逃げようとしてんのよ!」

そんな喧しい騒音がものともせずにピシャリと一言。

「……覚悟は良いですね?」
「「はい」」


その後、真夜中なのに女性と少女は正座させられ、懇々と数時間に及ぶ説教を喰らい、
また当分の間、少年は女性と少女にほとんど構わず、ペンギン一羽を一層可愛がるようになり、ふたりが欲して止まなかった「好きだよ」という言葉を
ペンギン一羽のみに、平常状態で何度も言うようになった。
そんな状態で、少女と女性は涙目となりながらも、その光景を指を咥えて見ることしができずにいるのだが、。
まぁ、自業自得。寝ている人を起こすのは、ちゃんとした理由がある時だけにしましょう。

そんな葛城家。


珍しく一番目の称号を持つ少女は不機嫌であった。
原因は目の前にいる、猫好きな女性。
同僚で親友でもある女性から、少年の寝起き話を聞かされ、『もしかしたらレイも……?』などという妄想を思い描き、昨夜それを実行に移してしまったのである。
結果は、と言うと。

「リツコさん、睡眠はきちんと取るべきだと思います」
「パイロットである以上、健康管理も仕事になります」
「これは貴女も仰ってたことです」
「おやすみなさい」
376名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/07(金) 15:26:39 ID:???
と、寝起きとは思えないほど、何時もの口調で述べ、また床に着く。
猫好きの女性は「はい、すいません……」と一言だけ残し、寂しそうに布団の中に入る結果となった。

普段よりも一層重い沈黙の中、朝食が進み、少女が学校へと向かう時間。
何時もより幾分気落ちした状態ではあるが女性は「いってらっしゃい」と述べるが、少女は女性の顔をじっと眺める。
まだ、怒ってるのかしら……、と更に悲しい気持ちになる女性だったが、そんなことは知らないとばかりに少女は口を開く。

「私には感情の概念が良く判りません。でも、リツコさんといるとぽかぽかします。いってきます」

がちゃん、と扉が閉まり、既に少女の姿はそこにはいない。
女性はぽかん、と口をだらしなく開いたままであったが、数刻した後、鼻息荒く、同僚で親友でもある女性に歓喜の電話を掛ける。

「……いや、判ったから。はいはい、判ってるって! というかアンタ、遅刻してんのに悠長に電話してるんじゃないわよ。
 マヤちゃんがてんてこ舞いよ? ……嬉しかったのは判ったから、仕事に来い!!」

そんな葛城家と愉快な仲間達。
377名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/07(金) 15:27:20 ID:???
一口メモ
書いた奴はエヴァパチで勝ったら書く、とかのたまってたら連勝を重ねたらしいぞ!
でも、それなのに書かないでいて、それどころか、勝ってばっかやから、負けたら書くか!がっはっは!とか言ってたら
カヲル君が激怒して、まったく勝てなくなったらしいぞ!
涙目になりながら、これから勝ったら必ず書きます……とか言ってるよ!自業自得だね!
皆も、こんな奴にならないように約束は守ろう!
多分、もう勝てないから次回には期待するな!畜生!
378名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/07(金) 15:38:12 ID:???
>>377
勝ち負け関係なしで書いて欲しいよ
GJ過ぎる
379名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/07(金) 18:08:54 ID:???
このリツコさんとシンちゃんがなんか好きだ
アスカとミサトの関係が好きだ

ぽかぽかした
380名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/08(土) 11:46:29 ID:???
シンジかわいいおおw
そして一番の萌キャラはリッちゃんw
381名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/08(土) 19:47:05 ID:???
こんなに可愛いリツコは初めて!
382名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/10(月) 17:15:10 ID:???
葛城家キテたのか!!いつもながら最高です!!
383名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/12(水) 03:05:27 ID:???
今更ながら、リツコって2ndレイの育ての親なんだから、
>>376みたいなリアクションされたら、本編でも親バカっぷりを見せても不思議じゃないんだな。
384名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/12(水) 04:40:26 ID:???
>>383
レイは1stだべさ
385名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/12(水) 08:15:07 ID:Q6/rPcEj
2人目って事では?
386名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/12(水) 08:16:18 ID:???
ごめんsageチェック外れてた
387名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/13(木) 15:18:23 ID:???
>>384
1人目かも。
388387:2009/08/13(木) 15:18:52 ID:???
スマン、>>385へだ。
389kou:2009/08/14(金) 11:59:42 ID:???
AEOEイタ?モノ投下させてもらいます。

『Motion Picture Soundtrack』

生まれ変われるなら。
時計の針を戻せるなら。

あの日の私を殺してしまいたい。
あの日の貴方を殺してしまいたい。

赤銅色の光の中で起こった真実が、あの触れ合いならば。あの言葉ならば。

決して二度と触れ合えない程遠くへ行きたい。
390kou:2009/08/14(金) 12:03:44 ID:???
波の音がする。いや、波の音しかしない。先程まで泣きじゃくっていた彼は、死んだように動かない。
かく言う私もだらりと、ぼんやりと、何もかもが無機質になった風景を見ていた。
あぁ、終わったんだ。始まりの無い終わりが始まった。
言葉ではなく直感的に悟った。意味なんて無い、ただそこに置き去りにされた事実があるだけ。
そう思うと、痛むはずの左目がぴくりと動いた気がした。
「…」
「…ァ」
「黙って」
消え入りそうな声をぴしゃりと止めた。

その後は簡単だった。

男とはいえ、無抵抗な瞳を浮かべた人間に馬乗りになるなんて事は、造作も無いことだ。
「ねぇ」
「…」
「優しくしてくれた?」
「…」
「みんな、優しくしてくれた?」
頬に手を当てて、出来るだけ柔らかく撫で上げる。涙でかさついた皮膚がパリパリとめくれる感触。
「僕は…」
「ん?」
「狡くて臆病で弱虫で…。でも、みんな僕を見てくれてたんだ。父さんでさえ…」
「そうね」
「だから、僕も誰かを好きになれるかも知れない。誰かが好きになってくれるかもしれない」
そう、当たり前なのだこの言葉は。溶け合った心が理解させた嘘偽りの無い情報。聞くまでも無い、確かな答え。

でも私は、こうして彼を試すしかなかった。

「……ッッ」

親指に食い込む小さな喉仏が、唯一反抗していた。
391kou:2009/08/14(金) 12:06:49 ID:???
「ねぇ…私のこと、好き?」

ごくり、と音を立てて飲んだ固唾が彼に聞こえていないか心配だった。彼のうめき声も波の音に消されてしまうくらいだから、その心配は無用だったけれど。

「…グゥッ…ア、アス…」

待ちに待った答えが聞けるのだろうか。そう思うと、一層手に力が入ってしまう。

「なに?」

嬉しいような、哀しいような、苦しいような。複雑な笑顔を浮かべて彼は言った。

「アスカ、ありがとう。愛してる」

「なんで…」
なぜ
「なんで…!」
こんなにも
「私を見てくれなかったのぉ!」
涙が溢れてくるのだろう

解けた縄のように、私の腕は力無く落ちた。離すまいと食い込ませた指も糸屑のように。
砂に触れた雫が点々と染みていく。赤い海に還って行くように。

「アスカ、僕、謝らないよ。だって、僕もアスカと同じだから」
「…うん」

いつか見た甘い夢のような、そんな風では無かったけれど、誰かに愛を伝えられたのは初めてだったから泣いた後の心の落ち着き方なんて知らなかった。
392kou:2009/08/14(金) 12:09:22 ID:???
たぶんこの瞬間、私は死んだのだろう。
今まで必死になって取り繕ってきた『惣流・アスカ・ラングレー』という人形が、『碇シンジ』の手によって綻びを修正されたように思う。
多くは語らなかったけれど、これが私の始まり。
これを見た貴方がどんな感情を持つか、どんな風景を思い描くかわからない。
でも事実を伝えないと、納得出来ないのは貴方達も同じでしょう?
例えそれが、人のトラウマをほじくり返すような事を書けという出版社と、「別にいいと思うよ」の一言で済ませた我が愛しのバカ朴念仁に背中押されて書いた物でもね。

さてこれで最後だけれど、一言書いておくわ。
これを読んで、貴方がこの先どんな凄惨な人間関係を築くことになっても一切苦情は受け入れません。関知しません。
ま、こんな本を手にとって頂く紳士淑女の方々が、いちいち突っ掛かるようなユーモアの無い人ではないでしょうから安心ですけど。

ではみなさん、我が家の養育費への出資ありがとうございました。


碇アスカ 著 『いい男のつかまえかた』
第四新東京ゼーレ出版社

終章より抜粋
393kou:2009/08/14(金) 12:12:07 ID:???
スレ汚しサーセンでした。
ちなみに『Motion Picture Soundtrack』はRadioheadの曲のタイトルからとりますた。
394デビュー:2009/08/14(金) 17:14:37 ID:???
GJ
面白かった。最後は結婚しているし
395名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/14(金) 18:05:10 ID:???
乙です。
イタものってあるからびびりながら読みましたが
碇アスカでほっしました。
396名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/15(土) 09:32:32 ID:???
ラスト急にほのぼのしたwGJ!
397名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/20(木) 03:21:34 ID:JWpJyBcG
ここにも来てたのか
398kou:2009/08/22(土) 03:45:47 ID:???
過疎り気味ですね。まぁ、落ち着きがあって好きです。
連投になりますが投下させてもらいます。


『雨雲』

その日はとても重たい雨の降る日だった。ぼたり、と執拗なまでに滴る音が響く。
少し微熱気味のシンジは、窓に張り付いた雨粒を布団の中から数えた。

今の日本でもそう言えるのかは定かではないが、所謂夏風邪をこじらせてしまい一昨日の晩から寝込んでいる。
一時よりだいぶマシになったといえど、まだ額の中心にふわふわした痛みがあるし、手足も奴隷さながら枷を着けたように重い。なにより昨日一日寝込んでいたせいで家事が出来ずに、二人の同居人が勝手知る我が家のはずの仕事に悪戦苦闘している様を見るのが辛かった。
洗濯をすれば泡が異常発生し、はんこが無いと家宅捜索が始まり、掃除とは名ばかりの台風が葛城宅を襲った。
心配してくれたミサトが帰りに買ってきた、栄養満点の食材を二人掛かりで黒魔術よろしくの様相を呈した時は、さすがに重い腰を上げざるを得なかったが。

時計の針を見れば午後四時過ぎ。朦朧とした意識では定かではないが、恐らく10時間は合計で眠っていただろうか。所々、様子を見に来る二人の顔が思い出されるので、朧げながら起きていた時もあったように思う。
今度ばかりは眠気も覚めて、じっとりとかいた汗の感触が背中を蝕みはじめたので汗を流そうと洗面台の方に足を向けた。
「いてて…」
久しく動かした手足はくさびを打ったようにぎこちなく、痛みを伴う。
パキパキと体をよじりながら行くと、洗面鏡に張り紙とその下に小さい紙袋が置いてあった。
張り紙の方には
『薬です。早く良くなってね』
ね、のロールしている部分がハートマークになっている。おそらくミサトの文字だろう。
更にその言葉に指された矢印の元にあるいびつな文字が
『リツコから貰った薬だから副作用に気をつけなさい』
と書いてあったことだ。
「いくらなんでもそんな…」
399kou:2009/08/22(土) 03:46:48 ID:???
そんな馬鹿な、と思う一方もしもの事態を想像して身震いしてしまうのは、時折見せるリツコの狂気じみた瞳のせいだろうか。などと、考えている事に気付いたら馬鹿らしくなって笑ってしまう。
血の気の引いた顔で笑う自分の笑顔が映る鏡に張り付いた紙袋を手に取り、用法を確認する。
『昼、晩食後に一錠』
もちろん今起きたばかりなので、胃袋の中には何も入っていない。
市販の薬ならば別に大丈夫だろうとそのまま口に放り込んだだろうが、アスカの提言の件もある。
水を入れたコップと紙袋を持って行き、お粥でも作ろうと食卓へ移動する。

「ただいまー」
プシュ、と扉の開閉音。
がさりと両手にビニール袋を持ったアスカが帰宅した。
食卓の方から音がするので覗いてみると、シンジが台下の米びつからカップを出し入れしている。
「あれ、なにやってんのシンジ?」
「あ、おかえり」
振り向いた先を見れば袋から飛び出た葱やらなんやら。
瞬時に昨日の惨劇を思い出す。まず、ミサトが調達した食材が白子とかレバーといった珍味系の物の時点で気付くべきだっただろう。それらをむりやり調理し「あれもこれも」と様々な味付けをした結果、ペンペンがご飯の時間に部屋から出てこない程のオーラを持つ物体が誕生した。
「なんて顔してんのよ」
引き攣った笑顔を再度浮かべたシンジに言い放つ。
「反省はしてるわ。でも後悔はしてない!何故ならアレはミサトの愛情過多による、行き過ぎた行動が原因なのよ」
グッと胸の前に握り拳を当てる。
「私に不備があるとするなら、それを止めることが出来なかったことね」
「でもアスカも一緒にキャーキャー言っ…」
「失敗は成功の母!過去を省みても明日は来ないわ」
少しは見たほうがいい、と口には出来ないまま次の質問に移ることにした。
400kou:2009/08/22(土) 03:48:12 ID:???
「で、その袋に入ってるのは?」
「ああ、これ?よいしょ」
テーブルの上に乱暴に袋を乗せる。どすんと音を聞く限り相当な重量のようで、よく見るとアスカの手はビニール紐の跡と紫色の斑模様がついていた。
「葱でしょ、ニラでしょ、白菜に豆腐に諸々…あと昆布」
一応聞いてみる。
「…調理法は?」
「あんたバカにしてんの?鍋よナベ。これなら、私にも作れるでしょ」
暗に料理下手だと認めてしまっている事には敢えてツッコミを入れず、素直に礼をする。
「ありがとう」
「まぁこの私にかかれば、鍋だろうが釜だろうがお茶の子さいさいよ。…ところで」
今度はアスカが指差し
「あんたまだ薬飲んでないの?」
「うん、今起きたんだ」
米をジャーに入れつつ答える。
「で、今からお粥を作ろうと…」
「黙って寝てなさい!」
ぴしゃりと言い止められたあと、手に持ったカップを奪い取られる。呆気に取られ後ろに後ずさると、コツンと頭がレンジの取っ手に当たった。
「病人は病人らしくしてて!まだ薬も飲んでないなんて病人の風上にも置けない奴だわ」
激しく言い放つアスカの無茶苦茶な理論に内心ツッコミを入れつつも、気圧されてコクリと頷く。
フンと鼻息一つ。奪い取ったカップ片手に改めて米びつを開ける。
しばらく様子を見ていようとアスカの後ろに立っていたが、また何か言われないうちに部屋に戻ろうと背を向けるようとする。
「…ちょっとまって」
と、汗ばんだシャツの端を捕まれて引き留まる。悔しそうな表情を向けず、神妙な声で言う。
「水の量、教えなさいよ」


シャツを着替え汗を拭いたあと再びベッドに戻ったシンジは、湿り気を帯びた髪を掻き上げてもう一度窓の外を見た。張り付いていた雨粒達は地に落ちて、夕暮れのオレンジが薄く雲間から射している。
所々まだ厚みの残った雲が残っているが先程のような重い雨は無くなり、いつしか優しい時雨のような雨音が鳴っていた。
401kou:2009/08/22(土) 03:50:01 ID:???
ネズミが鳴いているように静かな雨音。西日が少し入り込んだ部屋は少し眩しい。
ふと、痛みの和らぎはじめた頭が勝手に思考する。
雨が降るシステム。

山から川、川から海へ注がれた水は、太陽の熱で蒸発して空に昇る。
空中で滞留した蒸気は密度を変えて雲になり、風に流され空を駆け、やがて山にぶつかって雨になる。
そして流れる水は山へ還り、川へ…。

理科の授業で習った内容が何故か頭に浮かんだが、その循環の様がとても美麗な風景となって鮮明に現れた。雄大な山から湧き出る水。清らかで、時に激しい川。怖いほどディープブルーの海。隙間を縫うように青い空。降り注ぐ第三新夜東京市の雨。
そんな事を深く考えていると、気分穏やかになったシンジは本日幾度目かの睡魔に襲われた。
「出来たわよ!」
過剰に激しく開けられた襖に、病人に対する思いやりは無かった。

小さな盆にちょこんと乗せられた茶碗からは湯気。その横に塩。
「熱いから冷まして食べなさい。あと、味付けは塩で好みに」
アスカなりにアレンジしているようで、刻み海苔が塗してあるお粥はシンジから見てもとても美味しそうに見える。
「すごいや、とても昨日と同一人物が作った物とは思え」
「殴るわよ」
はい、と目を伏せる。すぐ手が飛んで来ない辺りが気遣い。
「ま、そんな減らず口叩けるようになったんなら、もうだいぶ良くなったわね」
声を整えるように言うと、サッと間髪入れずにシンジの額に手を当てた。
「…」
「…」
特にこの間、会話無し。まだ熱があるのか、当てた手が熱いのか。
気恥ずかしい雰囲気にアスカが手を引く。
「ね、熱は無し!よって食べてよし!」
「う、うん」
ごまかすように茶碗に手を伸ばして、これまたごまかすように口へ粥を放り込む。
「あっちぃ!」
口をパクパクさせて、行き所の無い焦点が空を行き交う。
「バ、バカ!み、水!」
勢いよく手渡した水は、シンジの口に注がれることなくタオルケットに染み込んだ。
402kou:2009/08/22(土) 03:53:40 ID:???
山無しな感じですけど、続きます。明日のこの時間ぐらいに投下します。
では、みなさん良いLASを。
403名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/22(土) 07:41:19 ID:???
いいよー!
404名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/22(土) 17:45:05 ID:???
こうさんは過疎スレの神だな!GJです
細かい好みなんだが、風邪LASは大好物の1つw続き楽しみにしてまする
405名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/22(土) 23:52:04 ID:???
>>402
GJ!二人とも初々しい感じでほのぼのした
406kou:2009/08/23(日) 04:49:53 ID:???
遅くなりました。>>401からの続きです。

結局のところアスカが作ったお粥の味は、焦土と化した舌では十分に味わうことが出来ずにシンジの胃袋に収まった。
タオルケットを通り越して染みこんだ水はスウェットまで到達し、脱ぎなさいの一言の後に山賊さながらタオルケットもろとも身ぐるみを剥ぎ取られた。

満腹感を得て薬を飲み、ごちそうさまと手を手を合わせる。
「おいしかったよ。アスカ、ありがとう」
今だ気恥ずかしいのか、特に返答もなく食器を淡々と片付けるアスカ。カチャカチャと無機質な陶器の音が鳴る。
「…ミサト、今日は早く帰って来るみたいだから」
と言い残してロクに表情も見せずに部屋から出ていく。来訪の時とは対照的に襖の閉まる音は静かだった。
気に障ることを言ったかと少し考えたが、アスカの気分の180度変換は今に始まったことではないのですぐに思考停止した。
下半身がやたら風通しの良い状態になっている事が気になりはじめた頃、シンジの携帯電話がブルブルと震え出した。
メール着信 葛城ミサト
『おっす体調どう?もう帰るわよん。何か欲しいものある?さっき蝮ドリンクなるものを見つけたからキープしておいたんだけどいる?』
「蝮ドリンク…」
病人の精力を増強させてどうするのだ。食に対してのベクトルが相変わらず明後日の方向を向いている内容のメールを見て思う。
『お疲れ様です。飲み物はお茶がありますので結構です。ミサトさんが飲んで頂いていいですよ』
メールを打ちながらも少し素っ気ないかとも思いつつ、お灸を据える意味で敢えてそのまま返信した。
バタン!とまた突然、襖が怒りの咆哮をあげる。憮然と立ち尽くすアスカ。
「うぇ、な、なに?」
シャツとパンツ一丁のあられもない姿を晒しているシンジは思わずよじって体を縮める。
ずかずかと踏み込んで来るその様はまるで鬼神の如く。手に持った代えのタオルケットとスウェットを、横になっているシンジの顔に投げ付ける。
視覚は不意に奪われ、聴覚と嗅覚と触覚で今の状況を把握しようとするも徒労に終わるだろうと悟り、素直に聞いてみた。
「どうしたの?」
顔に纏わり付いたスウェットを退けて、アスカの方を見る。片手に包丁。背筋が冷たくなる。

「ダシの取り方、わかんない」

溜め息を吐くと、一緒に魂まで抜けそうになった。
407kou:2009/08/23(日) 04:50:42 ID:???
一時呆然としたが、スウェットを履きアスカの待つ台所へ向かうと、食卓の上には所狭しと並べられた食材が置いてあった。先に見せてもらった食材のほかにも鱈や出来合いだが鶏のつくね等、なかなか食べ応えのあるものもある。
コンロの上には取り合えずといった具合にグツグツ煮えた鍋が蒸気を放って鎮座していた。
「何が分からないんだったっけ?」
ショッキング映像を見せ付けられながら言われた事など右から左。包丁から反射する光にアスカの狂気を垣間見たようで、内心気が気でないまま食卓まで来た始末だ。
「ダシよダシ。昆布ダシ」
片手に持った包丁で横たわる干し昆布をコンコンと叩く。
「あ、そっか。…ダシだけでいいの?」
「バカにしないで。ダシさえ取れれば後はこっちのもんよ」
ここは逆らわずに、適度な大きさに昆布を折っていく。ほほぅと後ろから頷き、手つきの良さに感心するアスカ。
しかしそれなりに厚みのある昆布を折るにも、今のシンジには結構な重労働。元々芯の細い腕はぷるぷると頼りなさげにアスカの目に映った。
「ほら、もう分かったし貸しなさいよ」
粉吹いた昆布をシンジの手から取ると、同じように折っていく。
入れ代わるようにアスカの後ろに立つと、手持ち無沙汰になった状態で様子を見る。二、三折ったところで鍋に投げ入れると沸騰した湯が少し落ち着いて、小さな泡がポツポツと沸き始めた。
「いつまで見てるの。まだかかるから、部屋で休んでなさい」

ここでふと気がついた。何だろうか。
帰ってきてからのアスカはとても優しい。あくまで普段と比べてという意味だが、料理を作ることはおろか手伝ってくれた事もない。あまつさえわざわざ部屋に足を運んできてまで介抱してくれるなど想像もしていなかった。
それに時折みせる、柔らかな命令口調。慈愛、というと言い過ぎだろうか。
ともかく、振り返りながら自らにそんな風に言ったものだから、シンジが口走った言葉に他意はない。

「今日のアスカ、お母さんみたい」
「な、なにバカ言ってんの!」
投擲された物が昆布で良かったと、リビングでタオルケットを深々と被ったシンジは思った。
408kou:2009/08/23(日) 04:52:11 ID:???
そして数十分…。シンジはテレビを見ている。否、チャンネルをいじっている。
大掛かりなセットで喚き散らすコメディアンの声も、ロマンチックな展開に歯の浮く台詞も、バットの渇いた打音とアルプス席の歓声も、一切耳に入らなかった。
テレビを見る自分。隣の部屋でまな板を叩く音。違和感。
飼い馴らされているなぁ、とも思ったがそうではない。居ても立ってもいられない感じもあるが、いままで体験したことのないシチュエーションに正直どう対処すればいいのか分からなかった。
ここでまた「わかんないからパス!」とか「なんで私がバカシンジの世話焼きなんか!」と言ってくれた方が、幾分気が楽だ。
野菜を切る音が止んだので、少しばかり様子を見てみようと食卓を覗き込む。
「…!」
シンジは驚愕の光景を日に二度も目の当たりにする。なんと、アスカが鱈の腹に刃を入れて捌いているではないか!
危なっかしい手つきだが、初めてするソレとは違う。明らかに体験済みであろう手つき。
でっぷりと太った腹から内臓を取り出しうまい具合にそれらを別の器に乗せると、流し台に行き鱈の身を洗う。
そこでシンジは見るのをやめて、改めてテレビに身を向けた。
なんだかイケナイものを見てしまったような、アスカの入浴後の風呂で縮れ毛を発見してしまった時よりも危険なものを見た。表情が自分でも固くなっているのが分かる。
元々料理が出来たのか?いや、昨日の味付けを思い出せ。ミサトさんもいたとはいえ、明らかに料理に於ける等価交換の原則を無視していたではないか。では何故あんな芸当が?料理本の類は側に無かったはずだ。
これが口から漏れていれば今日、あの鍋で煮られるのは己になるであろうこと請け合いの思考が頭を交錯する。

「たっだいまー」

半狂乱状態のシンジを尻目に、家主のミサトが帰宅する。ストローで小瓶の中身を吸いながら。
「お、やってるわねぇアスカ」
「やっと帰ってきたわね。もう出来ると思うから手伝いはいらないわよ」
「おやおや甲斐甲斐しく張り切っちゃって。洞木さんちまで習いに行ったかいがあっ」
「アーアーアー!そんな事よりミサト!着替えて食べる支度でもしてて!」
「ふふぅん。ま、そうしますか」
自室に入っていくミサト。膨れっ面のアスカ。納得顔のシンジ。
ダシの良い香りが葛城宅を包みはじめた。
409kou:2009/08/23(日) 04:53:34 ID:???
「そんじゃまぁ」
「「いただきます」」
ミサトの言う通り、甲斐甲斐しくご飯までよそってくれたアスカの隣に座って手を合わせる。
「病人のためとは言え、中々の重労働だったわ」
「ごめんねアスカ、わざわざ委員長に習ってまで」
ふわふわと揺らぐ湯気に纏われたアスカの顔は、あくまで湯気のせいよ、言わんばかりそっぽを向いた。
「ふん、礼は食べてからにしなさい。余りの美味しさに熱が再発するといいわ」
「こんなに美味しそうなの作ってくれるなら、いつでも風邪になっちゃおうかな」
「あ、あんたバカ!?無駄口叩かずさっさと食べなさい!」
箸で鍋を指して茶碗を促す。白米の上につくねを乗せ口の中に入れると、じんわりと肉汁が染みて旨味の層が広がる。久しぶりの濃いめの味付けに、休みなれた内臓が覚醒してつくねの養分を欲した。
「アスカ、これ本当に美味しいよ!」
旨味があれば白米がほしくなる。炊きたてを口にほうり込み、舌に熱さを感じながらも咀嚼する。
「シンジくん、そんなにがっつかなくてもまだまだあるのよ。ゆっくり食べて」
「ちょっとミサト!作ったの私なんだから、今日の鍋奉行様は私よ!」
ほれほれ、とポンポン小皿に具を投げ入れていく。ポン酢に浸された鱈からは脂が染み出してとても旨そうに漂った。
「待ってアスカ、そんな一気に…」
「問答無用!ほれ、ほれ」
「今度は胃もたれになっちゃうわね、シンジくん」
数日ぶりの三人揃った食卓は、熱い気候には珍しい料理で温かくなった。
「くわぁ」
そして今日は無事ペンペンも夕食にありつけた。

「ふぅ。食った食ったぁ」
鍋とビールで膨らんだ太鼓腹を叩きながら、先程アスカが捌き出した内臓を炙って作った肴をかじるミサト。
その横では後片付けに追われるアスカと、手伝おうとしたが止められたシンジが申し訳なさそうに椅子に座る。
水洗いの音と陶器のこすれる音。泡と悪戦苦闘するアスカを横目に、コソリとミサトがシンジへ近づく。
410kou:2009/08/23(日) 04:57:31 ID:???
「どうかしら、体調の方は?」
「おかげさまでもう殆ど良くなりました。リツコさんの薬も効いてるんですかね」
ククク、と笑いを堪えるミサト。何が可笑しいのだろう。
「それ、アスカには言わないほうがいいわよ。『シンジの風邪ぐらい私が治す』ってリツコに食い下がってたから」
意外だった。アスカがそんなに自分を心配してくれているとは。
生来の癖なのか、感謝の気持ちよりも先に申し訳ない気持ちが出てくる。
「なんだかいろんな人に迷惑かけちゃったみたいで…。アスカにも…」
「シンジくん」
崩した体勢とは裏腹に、真面目な顔になるミサト。
「心配をかけるってことは、誰かに助けられるってことなの。そういう行為に対しての言葉はそうじゃないでしょ?」
満腹感を得た脳に染み入るミサトの言葉。確かにそうだ、と素直に受け入れることが出来る。
「もしシンジくんが落ち目を感じていたとしてもそれでいいの。昔の人はこう歌ってるわ。『追いつけない、と地球が丸い意味もそこで知った』ってね」
そういうと恥ずかしそうに頬を掻いて、少し酔いの回った赤ら顔をアスカに向けた。
「アスカぁ。私もう寝るわぁ」
「えぇ、ミサトは少しは手伝ってよ」
「料理が美味しいとビールも進むのよ」
対食器のしかめっ面をミサトに向けて文句を言うと、仕方なさ気に顔を戻して再びアスカは格闘を始めた。
姿勢を正して椅子から立ち上がると、シンジの肩に少し手を置いて軽く叩く。頑張ってね、と片目で合図を贈りながらミサトは部屋に戻って行った。

「ふぁぁ疲れた」
「お疲れ様」
どすんと椅子にもたれ掛かったアスカの前に置かれたのは冷えた麦茶。
「ん」
と一言いうと、コップを鷲掴んでごくりと一気に煽った。
「ぷはぁ!一仕事終えた後の麦茶は最高ね」
前から懸念していたが、最近アスカのミサト化が著しく進行しているのは気のせいだろうか。うん、きっと気のせいだと喉の手前に留めてく。
「どうシンジ?見直したからしら、私の腕前」
「うん、びっくりした。失礼だけど、アスカが料理してるとこ見たこと無かったから」
「能有る鷹は爪を隠すってね。今の私の前では鷹も霞むほどだわ」
食卓以外の電気は消えている。二人の会話はこの部屋だけに響いた。乾きかけの食器から落ちる水滴の音に、シンジは今日の雨を思い出した。
「アスカ、変な話していい?」
411kou:2009/08/23(日) 04:58:28 ID:???
「な、なによ。つまらない話はやーよ」
「期待にそえるか分からないけど…」
咳ばらいを一つ、調子を整える。
「えと、今日一日ずっと窓の外を見てたんだ。雨が降ってる第三新東京」
「はぁ」
「見ながら思い出してたんだけど、雨ってどうやって降る?」
「なに?シンジが私に化学の講義?」
「もう、真面目に聞いてよ。雨が降る仕組み」
「雨が降る、地に溜まる、海へ流れる、熱で蒸発、のちに雲、が気圧の変化で雨になる。これでOK?」
「そう、それって循環だよね?そうやって循環していく様がこう、なんというかその…」
「なによ。ハッキリ言いなさいよ」
「うん、うまく言えないけど僕たちみたいだな…って」
「…へ?」
「アスカが優しい雨を降らせてくれると、僕も優しい雨を降らせたくなる。海が一杯になったらきっと雲が出来る。その雲は僕ら自身で、好きな場所に行って雨を降らせる。…みたいな?ごめん、うまく説明できないや。とりあえず僕が言いたいのは、ありがとうアスカ。てこと」

照れ臭さくて頬を掻く頃には、食器から滴る水音は消えていた。

「…ふぅん、バカシンジにしては洒落た話するじゃない」
椅子の脚の隙間で足をプラプラ揺するアスカの顔は伏せ目がちでよく見えないが、声の調子から不機嫌で無いことが伺える。
ともあれ言いたいことを言い切ったシンジには次の言葉はなく、なんとなく変な空気になった状況をどうしていいものか考えた。
「…だから、アスカが困った時は出来るだけ頑張るよ」
「今、まさに困ってるんですけど」
「え、何が?どうして?」
「バカ、自分の言ったセリフの意味ぐらい分かんなさいよ」
分かるも何も、自分の中でも抽象的にしか表現出来ないのだ。乙女心に今の話がいかに重たく響いたかなど、今のシンジには知る由もなく。
いつまで経ってもちんぷんかんぷんなシンジの顔に痺れを切らしたアスカが告ぐ。
「仕方ないわね。一度きりのチャンスをあげるわ。もう一回、いつかその話を私にして。そしたら今度は私がありがとう、って言ってあげる」
412kou:2009/08/23(日) 05:01:30 ID:???
シンジにも分かるくらい赤く、真っ赤に染まった顔が見える。耳は爆発しそうなくらいに熱を帯びているし、動悸も不安定だ。
「あ、アスカ!」
ガタン、とテーブルから身を乗り出すシンジにびくつくアスカ。
努力が報われる。やっとこの病から解放される。

「どうしたの!?こんなに顔が赤くなってるし、熱もある。もしかして僕の風邪うつった!?」
と、期待するのが無駄だったようだ。
「くぉおんのブゥワカシンジー!」

後にミサトは語る。
あれはビンタではない。乙女の怒りだったと。



終劇
413kou:2009/08/23(日) 05:10:17 ID:???
注…料理描写が微妙なのは仕様です。ご了承下さい。
注2…アスカは料理中ずっと『あの恰好』でいました。葛城家の異常さが本作品の売りです。

長々と山無し垂れ流しすいませんでした。支援ありがとうございます。またネタを見つけ次第、何処かのLASスレに投下しようと思います。
では寝ます(-_-)
414名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/23(日) 06:23:12 ID:0MbpYWiM
kon氏には期待してる
415名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/23(日) 08:17:26 ID:???
GJっす!
416名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/23(日) 13:52:23 ID:???
乙女心にドンカンなシンジがシンジらしいな〜
乙でした。
417名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/23(日) 16:37:06 ID:???
                 ヽ、レ'´ ̄ ̄ ̄`丶
                 /.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:`ヽ
                     _/::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.`¬
               {::.::.::.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`¬/.::.::.:.:.:.:.:.:{_
                j::.::.::.::.::.::.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,ヘ }::.::.::.:.:::::::::::::}
               〈::.::.::.::.::.::.::.::/.::.::.::.::.::./`ヽ/"ヽ::.::::::::::〈
                ゞ:::::::::::::{::::{:: !::.::.|::{::ト、{      }::::::::::::: }
               ミ::::/`ヽ:: !-{,xニl_土‐ 、,xニ_二l::::::::: ハノ
                 `レ{ r'} \{八_ノ_` }ァニ{_ノ_`ハ}/}/
                  ム.__.  ゝ'_ ' .ノ { t.'__'/ノ
                _.. イ/   、  、 ̄  ,\`く.√i   
             _|   {   ヽ   ̄ ̄/^ヽ. \{    
            _ノ |  ヽ    >-イ´─-   ハ\
         , ' ´     |   \   { _| j -‐      } ヽ   シンジ殿は相変わらず鈍感でヤンスね
        /         |  ヽ,ィ 7 ` '´ j { 、__,.    /   ',
       /  ̄`ヽ      |   } 〈‐-‐…'  >‐{     ,'     、   ところで小生の出番はまだでヤンスか?
418名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/23(日) 18:08:45 ID:???
お前に登場権は な い 
419名無しが氏んでも代わりはいるもの :2009/08/23(日) 22:12:07 ID:???
>>413
GJ!
420名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/23(日) 23:08:25 ID:???
総合に大物きたww
421再び・・・ その1:2009/08/25(火) 22:54:08 ID:???
初投下です。お手柔らかに。

「パパ、あたし行くね」
アスカは父親にウィンクして一目散に駆け出した。
「バカシンジ!一人で現世に戻ってどうするっちゅーの!!」
そう叫ぶと深遠の淵を飛び降りた。

「うっ、くっ・・・」
赤い海から這い出たアスカは、白い砂浜を見渡した。
(あれは?)
アスカは不自然に立ち並ぶ数本の棒切れを見つけ近づいた。
棒切れにはアスカと掘り込んである。
「なにこれ?アタシの墓?ふざけんじゃないっちゅーの!!」
力いっぱい蹴りこむと、やけにあっさりと折れた。
「あいつこの近くにいるのね」
丘を一つ越えるとシンジはいた。
「さて、アスカ。覚悟はいいわね。死ぬ気でいくわよ」
自問自答を終えたアスカはシンジの元に向かった。
422再び・・・ その2:2009/08/25(火) 22:55:28 ID:???
シンジは呆然としていた。
なにもかもが元通りの世界に帰ってきたはずなのに。
視界には赤い海と白い砂浜、廃墟が広がる死の荒野。
人の姿は見えない、人の形をしたレイの巨大な屍が横たわるだけだ。
(ボクは、ボクは・・・こんな世界を望んだんじゃない・・・)
何時間たったのだろうか、ふと人の気配を感じてシンジは横を向いた。
そこにプラグスーツ姿に左目右腕に包帯をしたアスカが横たわっていた。

シンジの心は恐怖と殺意と狂気に包まれた。
(また、ボクをバカにしにきたのか。そんなにボクが憎いのか!?)
シンジはアスカの首を絞めていた。殺すつもりで絞めていた。
アスカがシンジの頬を撫でなければアスカは死んでいただろう。
「気持ち悪い」
そして、シンジは壊れた。
423再び・・・ その3:2009/08/25(火) 22:56:39 ID:???
雨が降ってきた。
アスカは立ち上がりシンジを見下ろした。
「このバカ」
アスカはシンジを廃屋の中に引きずり入れた。
廃屋から衣類、食料をかき集め、廃材を薪に火を灯した。
そしてシンジの衣類を全て剥ぎ取り、自分のプラグスーツを脱ぎ捨てる。
「バカシンジ、私を見なさいよ。見たがってたでしょ。オカズにしなさいよ」
シンジはピクリともしない、その瞳は虚空を見つめるばかりだった。
「見ろっていってるのよぉ!」
アスカはシンジを蹴り飛ばした。
何度も蹴り飛ばしているうちに爪が割れ、血まみれになり、足の甲は赤く
はれ上がっていた。あまりの痛さに蹴れなくなったのか、
足の裏を叩きつけはじめた。
「これでトドメよ!」カカトを鼻に叩きつける。
グチャという音とともにシンジの鼻がつぶれ鼻血が噴出した。
「これでオアイコ、貸し借りなし。恨みもなしよ」
大量の血が喉に流れ込み、むせるシンジを抱き起こし、鼻血を吸出し、
すばやく鼻に脱脂綿を詰め込む。
シンジの血まみれの体を濡れたタオルで拭きあげ、傷の手当を始めた。
シンジと自分の手当てが終わり、黄色いワンピースを着たアスカはシンジの
かたわらに寄り添いドロのように眠り込んだ。
424再び・・・ その4:2009/08/25(火) 22:58:22 ID:???
数日、生死の境をさまよったシンジはアスカの懸命な看護で生きながらえた。
食べ物を食べようとしないシンジに、アスカは自らの咀嚼したものを無理やり食べさせた。
「食べないと直らないのよ」
動くことのできないシンジに、どこから見つけてきたのかオムツをあてがった。
「まったく赤ちゃんなみに手がかかるのに、これは凶暴ね」
数日で体の傷は癒えたが、壊れた心を修復するのは難しかった。
いまだにシンジの瞳は虚空を見つめたままだった。
それでもアスカは根気強くシンジに話かけていた。
自分の全てを知ってもらいたい、その一心で語り続けた。

「まぶし」
日の光で目を覚ましたアスカはおもてに飛び出した。
「シンジ!お日様よ!空が見えるよ!」
アスカはシンジを抱えあげて外に連れ出した。
昨日まで空を覆っていた暗雲は消えうせ、抜けるような蒼空が広がっている。
シンジを下ろし、傍らに寄り添い座るアスカ。
「今日は外で食事しようシンジ」
425再び・・・ その5:2009/08/25(火) 23:03:46 ID:???
夕刻、太陽が水平線に沈んでいくにつれて、空は藍、紫、橙、赤の
グラデーションに彩られていく
二人は1日中飽きることなく空を見上げていた。
太陽が見えなくなると次は月が主役となり夜空を照らす。
月の蒼白い光は思っていたより明るく、あたりを神秘的に映し出した。
「今日は暑かったね。いっぱい汗かいちゃったね。体拭いてあげるね」
アスカは濡れたタオルでシンジの体を拭きあげる。
そしてシンジの前で服を脱ぎ捨て、体を拭き始める。
月明かりにアスカの裸体が照らされる。
「きれいだよ、アスカ」
シンジに向き直るアスカ。シンジは微笑みながらアスカを見つめていた。
「シ、シンジ。アタシがわかるの?」
アスカはシンジの前にヒザをつき、シンジの手を握りしめた。
「今までありがとうアスカ」
「シンジぃー」
アスカはシンジに飛びつき、そのまま押し倒した。
泣きじゃくるアスカをやさしく抱きしめるシンジ。
その夜、二人は永遠の愛を誓い結ばれた。

前編終了です。
後半も構想していますが、今更純粋LASでないのに気づいた・・・
どうするか・・・
426名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/26(水) 01:37:15 ID:???
こっちも夏かよw
427名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/26(水) 14:53:26 ID:???
乙!すげー病んだ話だなwそして怖いアスカだ。

1のパイレーツアスカにワロタw
428名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/26(水) 15:53:18 ID:???
>>426
ああ、だがあと少しの辛抱だ
429名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/26(水) 17:19:32 ID:???
>>425
乙です、鼻潰されたシンちゃんカワイソス…
430名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/26(水) 21:26:41 ID:Wia/LNTd
同人キャラかよ
431再び・・・ その6:2009/08/26(水) 23:06:43 ID:???
二人の蜜月は1週間ほど続いた。
その間、二人はかたときも互いから離れることがなかった。
疲れきり眠りに落ち、先に目を覚ました方が寝ているものの上に乗り、
互いの体液と精液でどろどろに融けた性器を結合させる。
腹が減ると手近の食べ物を、のどが渇けば水を口移しで分けあった。
いよいよ、辺りから集めた食料も底を尽いたある日。

「シンジ!ネルフへ行きましょう!」アスカは突然叫んだ。
「どうしたのさアスカ、急に」シンジは面倒くさそうに寝返った。
「もう、この辺りに食料はないわ。でもネルフ本部なら非常用の備蓄食料があるはずよ」
「そうかなー、N2爆弾で吹っ飛んじゃったんじゃないかなー」
まだ、寝ていたいよという態度のシンジにアスカはカチンときて、
シンジの股間を軽く踏んづけた。
「早く起きないと潰すわよ・・・」徐々に足に体重をかけるアスカ。
「ま、待ってよ。起きるよ!」シンジはたまらず飛び起きた。
432再び・・・ その7:2009/08/26(水) 23:08:56 ID:???
「痛ったー」下着をはいたアスカ思わずそう洩らした。
「どうしたの?」キョトンした目でシンジが尋ねる。
「あんたのせいよ。」
「ボクのせい?」
「あんたのこいつがアタシの体を傷モノにしたんじゃない!」
アスカはシンジの股間を握り締めた。
「アンタはさんざんアタシの中に出しまくって気持ち良かったかもしれないけどさ」
シンジの股間は膨張し始めた。
「アタシは痛くてたまんなかったのよ。・・・最初だけだけどね」
アスカは膨張したそれをきつく握った。シンジの目が白黒し始める。
「おかげでアタシのここ、すっかりアンタのこれ型になっちゃったのよ」
「アンタ、あの夜の誓い覚えているわよね?」
シンジの顔色は紅潮し脂汗が浮かびだした。
「もちろん・・・だよ」
「言ってみて」
「ボクは君だけのもの。ボクのすべては君だけのもの」
「アタシはアナタだけのもの。アタシのすべてはあなただけのもの」
アスカはシンジの手を自らの下腹に押し当てた。
「やさしく撫でて」
シンジは言われるままにアスカの下腹を撫でた。そして、
「い、痛いの痛いのトンデケー」と叫んだ。
433再び・・・ その8:2009/08/26(水) 23:11:12 ID:???
アスカはプラグスーツを身に着け、シンジは厚手のデニムと皮ジャンを着込んだ。
「少し暑いかもしれないけど、なにがあるか判らないから用心にこしたことはないわ」
プラグスーツを着込んだアスカの目はエヴァンゲリオンパイロットの目に変わっていた。
二人はネルフ本部へと歩き始めた。

「誰もいないね」シンジは暗い目で呟いた。道中、人の姿はどこにも見られなかった。
「あの世界はね、とても気持ちいいもの」アスカはシンジの手を取りキュッと握った。
「ここに戻りたいと思う人がいなくても仕方ないわ」
アスカは歩くのを止め、瓦礫に腰かけた。
「パパと話したの。心の壁が無くなってパパの本心が判ったわ。パパはママと
変わらない位、アタシを愛してくれていた」
「お義母さんもママほどでないけど、アタシを心配してくれていた」
「アンタがここに戻ってこなければ、アタシもずっとあの世界に居たかった」
「ゴメン。アスカ・・・」シンジはうなだれ、涙をこぼした。
「謝ることないのよシンジ。ここに戻ってくることはアタシが決めたことだもの」
アスカはシンジの頭を抱きしめた。
「アンタのいない世界なんてアタシには無意味なのよ」
「どうして?」
「シンジを見ていたいの。シンジの困った顔と怒った顔と泣いた顔と恥ずかしそうな顔と
・・・笑った顔をずーと見てたいの。・・・シンジが好きなの、大好きなの!」
アスカは両手でシンジの顔を挟み、シンジの瞳を見つめた。
そして、唇を重ね、舌を絡ませた互いの唾液をむさぼりあった。
唇を離した時に糸を引いた唾液を舌で舐め取ったアスカは意地悪そうな顔で囁いた。
「続きはネルフに着いてからね」
434再び・・・ その9:2009/08/26(水) 23:16:04 ID:???
「イヤッホー!!」
アスカは放置されていたYAGR-3Bの操縦席に乗り込み奇声を上げていた。
「もう、サイコー!」
不必要な急上昇、急降下を繰り返す機体はギシギシと不気味な音を立てている。
「ア、アスカー!早く着陸してよー!空中分解しちゃうよー!!」
「なに、情けないこと言ってんのよ!それ!もう一丁!!」
ピーピーピー!燃料切れアラームが鳴り響く。
「やば!燃料切れ?!」
アスカの手が素早くコンソールの上を動く。
「シンジ!頭抱えて姿勢を低くして!早く!!」
「ど、どうしたの?!アスカ!」
「落ちるわよー!!!」
目の前に水面が迫る。バシャーン!
YAGR-3Bはピラミッド前の人口池に派手な水しぶきを撒き散らし不時着した。

「原因は燃料漏れね。まあ、助かったし良しとしよう」
厚着のせいで溺れかけたシンジはたまったものでない。
「冗談じゃないよ。死に掛けたよ」
「あら、ちゃんと助けてあげたじゃない」まったく悪びれた様子のないアスカ。
生来がアクシデント好きのせいなのか生き生きとしている。
「ほら、もう少しだから、がんばろう」
アスカの差し出した手を握り、シンジは立ち上がった。

今日はこれにてご免
435543:2009/08/27(木) 00:27:41 ID:???
 こちらでは初めまして。
 なんか書いている内に別ネタ思いつくことってありますよね?ね?      ね っ ?

 まあそんな押し付けは冗談として、 内容的にはこっちかなと思うので投下いたします。
 レス消費は2くらいかと。


猫となんでもない日常が嫌いな人向けのNGワードは

Handy Tiger Strike!

です
436Handy Tiger Strike!:2009/08/27(木) 00:28:42 ID:???

にゃあ…
「あんたどこの子?」
 帰り道にブロック塀の上から声をかけてきた子猫は、尻尾をピンと立てて
私と見つめ合った。
 手を差し出す。前足をかがめて虎毛の子猫が身軽に腕に飛び乗った。
「ちょ…危ないわよ!」
 慌ててしゃがみこんで左手で子猫を抱きかかえた。目の前をトラックが掠める。
「あんたは世の中の恐さをもっと知るべきね」
 一言にゃあと答え、一通り撫で廻しているうちに左手をすり抜けた虎毛は、
忠告なんてどこ吹く風で、しゃがんだ太腿にやたら体をこすりつけてくる。
「あれ?アスカどうしたのその子猫」
 遊んでいるうちに週番を終えたシンジがどうやら追いついたらしい。
「なついちゃった」
「へぇーえ、可愛いなこいつ」
「なんかすっごい甘えんぼさんだにゃあ」
 バカか私は。
 心の奥底でそう思いつつ、顔はかつてないほど腑抜けていたことだろう。
 子猫は抱き上げた腕をすり抜けると、左肩から頭の上によじ登る。
「ああんもう、人を登るなぁ!」
「あっはは、可愛いよ二人とも。ほらアスカ、写メ撮るからこっち向いてよ」
 そう言いつつ携帯を構えるシンジは、ほぼお父さんだった。
「ねえシンジ、この子飼おうよぉ」
「えぇー、でもペット禁止だしミサトさん何て言うか…」
「ちゃんと面倒見るから、ね?」
「んー、仕方ないなぁ。二人で説得する?」
「するする」
 私の頭の上に居座る虎毛を二人でからかいながら、ペンペンも忘れてもう
すっかり飼うつもりでいた。
437Handy Tiger Strike!:2009/08/27(木) 00:29:42 ID:???

 その目論見は子猫の母親に破られる。
 母猫の呼びかけに虎毛はすぐに応えて走り去った。
 呆然と見送り、虎毛の去った方向を暫く見詰めた。
「アスカ…」
 シンジが心配そうに差し出す手を掴まえて立ち上がる。
「なんか……」
「うん?」
 言いかけた言葉にシンジが反応する。寂しさは多分二人とも同じだ。
「アンタの子供欲しくなった」
「………………へ?」
 シンジは鳩が豆鉄砲食らったような顔をしていた。半分込めた本気も、今は
はぐらかす冗談に掻き消されてもいい。
 虎毛に去られた寂しさを誤魔化しながら、シンジにかけた呪文を解く。
「冗談よ。ホラ、買い物あるんでしょ?一緒に行こ」

ende
438名無しが氏んでも代わりはいるもの :2009/08/27(木) 00:42:49 ID:???
GJ!
439名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/27(木) 01:03:29 ID:???
>>434
絶望な世界でも仲良くやる2人がいいですね〜。次が楽しみです!
>>437
猫と戯れるアスカが可愛すぎる!シンジはいいパパになれるよ本当…。
440名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/27(木) 07:56:31 ID:???
典型的なヤリLASだなw
441再び・・・ その10:2009/08/27(木) 21:38:17 ID:???
記録番号 1
今日から記録をつけることにした。
アタシ達がネルフ本部に来てから2週間たった。
ネルフのライフラインは外界から独立しているため、かろうじて機能している。
電気はソーラー、地熱発電。水は地下水。
ただし、機能は大半が破壊されているため最小限の供給だ。
それでも二人が生きていくには十分すぎる。
思惑通り地下シェルターには備蓄食料が一生かけても食べきれない位保管してあった。
その他生活必需品もだ。
ただ、冷凍庫は機能停止しているため生鮮食料が全滅だ。
ああ、お肉食べたかったなー。

記録番号 2
大発見!なんと温泉まで湧いている。温泉、気持ち良かったー。
こんな施設があるなんて知らなかった。どうやら高級職員用の秘匿施設らしい。
お湯に浸かっていると体と心が癒されるのが実感できる。
「湯治って言うんだよ」シンジが今まで見せたことのない、呆けた顔で教えてくれた。
アタシは新しいシンジの表情を見つけて嬉しかった。
嬉しくてシンジに抱きついてキスして愛してもらった。
かなりのぼせてしまったけど・・・

記録番号 8
今、シンジとカジ農園の脇に二人の愛の巣を設営中。
緊急災害用の仮設住宅だけど気候変動の少ない今ではこれで十分だ。
シンジは畑の世話を始めた。
カジさんの作っていた野菜やスイカをアタシに食べさせると言って張り切っている。
期待してるよシンジ。
442再び・・・ その11:2009/08/27(木) 21:40:21 ID:???
記録番号 16
碇邸にライフラインが開通した。蛇口から流れでる水、暗くなった部屋に灯る電気の灯り。
今まで当たり前のことにとても感動した。シンジと二人で分かち合うこの暖かな気持ち。
いつまでも大切にしたい。

でも、おトイレは水洗じゃないのよね。「畑の肥料に肥が必要だから」というのが理由。
生命の循環を改めて実感したわ。シンジすごい!

記録番号 31
畑の世話が楽しい。手間をかければかけるだけ大きく育つ野菜達。
今日、食卓にトマトが並んだ。生き残った苗についていた実を世話したものだ。おいしかった。
「これは、カジさんからのプレゼントだね」素直に頷けた。ありがとうカジさん。

あと、たぶん妊娠した。生理がこない。ツワリ?っいうのかな。吐き気が止まらない。
シンジがとても心配してくれる。これはこれで嬉しい。でもかなり不安。
アタシのお腹に赤ちゃんがいるなんてとても信じられない。

記録番号 32
医療室で妊娠検査薬を発見。結果、陽性だった。
妊娠に関する医学書を持ち出し、二人で読み漁った。
まじめに保健体育の授業なんて聞いていなかったので新鮮だ。
学んでいるうちに、なんとかなるんじゃないかという気がしてきた。
「シンジ、アタシ赤ちゃんとがんばるわ。無事産んでみせる!」
アタシはシンジの前で宣言した。
「ボ、ボクもがんばるぞ。ボクにできる事はなんでも言ってね!」
緊張してやや興奮気味のシンジ表情発見。
アタシ達は約束ごとを作った。それは・・・
「安定期までSEX禁止」
多分4ヶ月位SEXができないと思われる。
シンジは基本淡白なので、手やお口での処理で満足しそうだけど、
アタシが果たしてガマンできるのか・・・なんか自信がないなー。
443再び・・・ その12:2009/08/27(木) 21:43:35 ID:???
記録番号 64
シンジの様子がおかしい。アタシが寝付くと一人でどこかへ出かけていく。
どこへ行くのか聞きたいけど、なんか怖いような気もする。今晩尾行してみる。
----------------------------------------------------------------
その晩、シンジはアスカが寝付くのを確認してベッドから抜け出した。
物音を立てないようにこっそりと外へ出て行く。
寝た振りをいていたアスカは「よっこらしょ」とかけ声をかけて起き上がり、
シンジの尾行を始めた。
シンジは懐中電灯を灯しながら移動しているので容易に追跡できた。行き先はネルフ本部。
本部内部は非常灯の明かりで薄暗いながらもライト無しで移動できた。
シンジは調理室に入っていく、アスカは調理室のドアの前で立ち止まった。
(さて、これからどうしよう。今すぐ入っていっても決定的証拠は掴めそうにないし。
でも、なんで私に黙ってこそこそしてるのよ、バカシンジ!っといけない、もうバカシンジと言わないって決めたのよね。胎教にも良く無いわ)
「ああ、だめだ!全然良くないよ!」
突然シンジの叫び声が聞こえた。アスカは耳をすました。
「ちっともうまく出来ないじゃないか!何度練習したらうまくなるんだ!」
(シンジの他に誰か居るの?戻ってきた人がいるの?!…ところで、なんの練習よ?)
「こんなのグチョグチョなだけで、ちっとも良くない!」
「やり直しだ!今日は夜通しで攻めまくるぞ!」
「いいか、お前はボクのものだ!ちゃんと言うことを聞け!」
ピシャーン!なにかを叩いた音が聞こえる。
「そうだよ、お利巧だね。ちゃんと言うことを聞いていれば優しくしてあげるからね」
ブチーン!!アスカの理性の紐が切れた。
444再び・・・ その13:2009/08/27(木) 21:49:09 ID:???
「ブゥアカシンジー!!」驚き振り向いたシンジは般若の顔を見た。
確かに般若だった。
「ア、アスカー?!!」シンジのあまりのショックでその場にへたりこんだ。
「アンタ!アタシを裏切ったのねー!!!!」
「ご、誤解だよ、アスカ。ボ、ボクはただ…」
「問答無用!ぶっ殺す!!」アスカは中華鍋を手に取り、シンジに向かってジリジリとにじり寄った。
「相手の女も仲良く地獄に送ってあげるわ。でもそれで済むなんて思わないでよ。
アタシもすぐ後を追っていくから、地獄でもアンタを殺し続けるから。覚悟なさいよ」
「へっ?女?」
「とぼけるんじゃないわよ!あたしに隠れてここで女を匿ってたのね」アスカは中華鍋を振り上げた。
「女なんていないよ!よく周りを見てよ!ここにはボクとアスカしかいないよ!!」
アスカは中華鍋を振り上げたまま、周囲をきょろきょろと見渡した。
「あれ?だれもいない?」
「当たり前じゃないか、落ち着いてよアスカ。とりあえず中華鍋降ろしてくれないかな」
アスカは中華鍋を放り投げた。グワンガランと激しい音を立てて鍋は落下した。
「でも、アンタ誰かと話してたじゃない?」アスカはシンジの前にしゃがみこんだ。
「あれは、独り言だよ。独り言でも言ってなきゃ怖くてさ…」
上目遣いで見上げるシンジにキュンキュンし始めたアスカはシンジを抱きしめた。
445再び・・・ その14:2009/08/27(木) 21:51:21 ID:???
「ところでさ、アンタここでなにをしてるの?」
「そ、そうだ!」シンジはアスカを立ち上げて、ちいさな冷蔵庫の前に向かった。
「実はね、スイカアイスを作ってたんだ」シンジは冷蔵庫からトレイを取り出してアスカの前に置いた。それを見たアスカの喉がゴクリと鳴る。
「アスカ、悪阻で食べられるものがないし、もしかしたら好物のアイスなら食べれるかなと思って。
ちょうどスイカも収穫できたしスイカでも良かったんだけど、アイスのほうが余計に喜ぶかと思ってさ。…て、アスカどうしたの?」
アスカはシンジの思いやりに感動していたが、それよりも目の前にあるスイカアイスに心を奪われていた。
「これ、食べていいよね?」
「え?いいけど、これ失敗さ?!」いいという返事が聞こえた途端、アスカはアイスを貪るように食べ始めた。
「うまーい!!!」瞬く間にアイスを食べつくしたアスカは、まな板の上のスイカに目をつけた。
脇に置いてある包丁を手に取るとスイカを一刀両断にした。
「す、すご…」目を丸くするシンジをよそに、アスカは手でスイカをえぐり取り食べ始めた。
「なんか、暴走した初号機みたいだ…」シンジは軽い戦慄を覚えた。
-----------------------------------------------------------------

記録番号 65
今日もお腹一杯にスイカを食べた。悪阻の時は食べたいものを食べればいいらしい。
赤ちゃんのためにもがんばって食べるぞ。
アイスもいっぱい食べたかったけど、お腹こわすから1日2本に制限された。
446再び・・・ その15:2009/08/27(木) 21:54:27 ID:???
記録番号 128
今日はかなりキテいた。久しぶりのシンジとのSEX。
最初、大きくなったお腹を気にして膨張率が70%だったけど、
あたしの中に入った途端120%になり即果てた。
もちろんそんなんで許すわけも無く、即復活させた。
医学書にバックスタイルがお腹の負担が軽いとあるので、バックでしてもらう。
子宮が降りてきているので、あまり深く挿入できない。
シンジもオッカナビックリで動いている。
実はシンジのが子宮を突くたびにアタシはイッていた。
なので、シンジが動き続けている間、イキッぱなしだった。
どうやら気絶したらしい。シンジの呼ぶ声で気がついた。
なので、あまり記憶がない。はずかし。妊娠して体に変化が出始めたのかな。

記録番号 256
陣痛が始まって2日経った。もう、死んじゃいたいくらい苦しい。
でも死ねない。死んでたまるか。アタシ達はしあわせな家庭を作るんだ。
アタシもシンジを得られなかったシアワセを作るんだ。
早く出てきて、アタシ達のかわいい赤ちゃん。
ウー、グルジィー・・・・

代筆 碇シンジ
今日、元気な女の子が産まれた。アスカは母になった。ボクは父だ。
黒い髪、黒い瞳。アスカが言うにはボクそっくりらしい。
今、目の前でアスカの乳首に一生懸命吸い付いている。
名前は未来と名づけた。この子に祝福された未来が訪れますように。


今日はここまで
447名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/27(木) 23:44:32 ID:???
>>446
GJです!加持菜園がいきてますね。
ミライちゃんも生まれて、これからどうなるか楽しみにしてます。
448名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/27(木) 23:54:36 ID:???
BJ!
449名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/28(金) 06:03:02 ID:???
これからの展開が楽しみです
450kou:2009/08/28(金) 17:21:06 ID:???
少し肌寒くなったこの国の片隅で、私は黒い猫に出会った。

『ロビンソン』


今にも折れそうな電柱の直下に、『可愛がってください』などとステレオタイプにも程がある書き込みがなされた段ボール。買い物帰りに、いつもと違う道で帰ろうと思ったのが運の尽き。
見つけてしまったものは仕方ないので何の気無しにその中を覗いてみると、黒毛の子猫がたった一匹で敷かれた毛布で一心不乱に爪を研いでいた。私が覗き込んでいることなど露知らず、カサカサと音のなる段ボール。

可愛がってください。なんて理不尽な言葉だろう。不条理にも程がある。
捨てたくせにまだ飼い主気分で、己の行為の罪悪感を紛らわせるための自己保身。欺瞞だ。
そんな畜生にはヘドが出る。殺してやりたいと思う。
だからといってこの猫に同情などしない。運が悪かったのだ。
そんな飼い主の元に生まれた事、無責任な交配で授かった命。呪うなら、こんな風に設計した神を恨めばいい。
ほら、こうやって近づいた私に目もくれない所を見ると、この猫もそれを心得ているようだ。仮に拾ってやったとしても、私の住む部屋は手狭だ。この猫の居場所は、無い。
腰を屈めて少しのあいだ猫の様子を見ていたが、いつまでも同じ光景なので立ち去ることにした。
魚肉ソーセージ一本分、軽くなった袋を持って。

『あれから一年』
私とシンジは二駅分離れたマンションに別々に住んだ。
ネルフの所有物件だったマンションを見つけて、誰もいない部屋を拝借して住み着いた。
打ちっぱなしのコンクリートの壁。少し立てた音が異様に響く部屋。孤独が強調される、部屋。
私は他人と距離を取りたかった。…いや、シンジと距離を取りたかった。
もう、彼と冷静に接することなど出来ない。以前のようには戻れない。そう考えると、ツギハギされた心が痛んで仕方なかった。
手に入らない物は無い、努力でそれを実現させる。そんな風に教えられてきたし、自分に言い聞かせてきた。
でも、本当に欲しかったモノが手に入らなくて、それを自分の傍に置いておくなんてこと、今の私には純然たる苦痛でしかない。
451kou:2009/08/28(金) 17:22:36 ID:???
だけどこのていたらく。もっと遠くへ行こうと思えば行けたのに。
たった二駅分しか離れられない自分の弱さに、殺意にも似た怒りが沸く。
たまにシンジがここを尋ねてくる。ドアの向こうから「ご飯、食べてる?」とか「顔見せてよ」とか言いに。
その都度、居留守を決め込んだり、「うるさい帰れ」と罵ったりする。
そうやって扉越しにシンジの存在感が失せる度、流れてくる涙は押さえようが無かった。
アスカ。お前はこんなに脆かっただろうか?

表面上は日常を取り戻したこの街は今、喧騒の真っ只中。
大学出の私に義務教育など必要無いが現役中学生のシンジはそうもいかず、形ばかりの建設された校舎へと足を運ぶ必要がある。
そして毎日私の携帯のメールボックスには、『体育のプールはもう寒いよ』『トウジが登校できるようになった』『委員長が生徒会長になった』『綾波の席には誰もすわってない』なんて報告が来る。
たまに送られて来る写真付きのメール。そこには同級生達と仲良く肩を組んだり、居眠りしたシンジの場面。
何事も無かったように、今までの事なんか忘れてしまったかのようにその写真には『日常』が綴じ込められていた。
元々、便宜上学生という身分でいたほうが都合が良いという理由で来日時から日本での通学は自由にしてよかった。ただそれだけ。今更、あの学校なんかに通う理由なんて無い。
だからこの部屋から出るのは買い物と定期検診の時だけだ。
いわゆるヒキコモリという奴かもしれない。必要なとき以外他人とのコミュニケーションはしない。閉じた世界。いままでと一緒。
白昼から布団に入っているのが私の日常。

『じゃ、その時間にきて頂戴。』
「わかった。…ところでリツコ」
『なに?』
「猫を飼うのって…大変かな」
『どうしたの、薮から棒に』
「聞いてみただけよ」
『そうね、飼うだけなら餌を与えて後は放任しても構わないわ。猫ってそういうものだから』
「含みのある言い方ね」
452kou:2009/08/28(金) 17:23:44 ID:???
『でも懐いてくれたり、猫から擦り寄ってくれることはないわ。だってただ餌をくれる人として認識しているだけだから』
「冷めてんのね」
『犬とか鳥みたいな愛玩動物と猫の違いって分かる?』
「さぁ」
『動物は本来主従関係を重んじる生き物だけど、猫は少し違うの。自分より上の地位に他人をおくことはない。その代わり、横の関係を意識する動物なのよ』
「…つまり?」
『犬が人間を飼い主、と思うなら猫は同居人ってとこかしら。だから仲良くしたいなら、和を持って尊べ、といった所ね』

次の定期検診の段取りを決める会話で、何となく話を横に反らしてしまった。なんだかんだ言って、あの時の猫が気になっていたのだ。
話も落ち着きそれじゃ、と通話を切る。携帯の画面にはあの頃とった集合写真が待受にある。
時刻を見ると夕刻を指していた。
そろそろ夕食でも作ろうかと冷蔵庫を開けると、中身は卵が数パックとチルド冷凍した食パンが数斤。
昼はこれでトーストにスクランブルエッグを乗せた物だけで済んだが、朝ご飯抜きの最近の習慣から思いの外腹が減っている。まともな物が少しでも食べたい。最悪、外食でもいいだろう。幸い食うに困るほど金銭に余裕が無いわけではない。
しかし、億劫なのは外に出ることだ。デリバリーを頼もうにも番号を知らない。
などと考えている時間が勿体ないので、くたびれた薄手のカーディガンを羽織ってロクな準備もせずに、財布だけもって部屋の外へ出た。


気の抜けた炭酸水のような肌触りの空気。昔と似て非なる、時間の早まった夕暮れ時の空。あと一時間もすればオレンジの空は漆黒になるだろう。
マンションのエレベータは動いていないので、螺旋状の階段をパタパタと駆け足気味に下りる。
ここで、携帯を部屋に置き忘れたのを思い出したが、下り切った階段をまた上がるのは面倒だ。別にいいだろう。あって困る連絡などないのだから。
453kou:2009/08/28(金) 17:24:29 ID:???
少し歩いて考えた。買い物をするならここから五分ほど歩けばこぢんまりとした商店街がある。しかし外食をするとなると、電車に乗って更に十五分程行かなければならない。
即決だ。面倒臭い。買い物にしよう。なにより、シンジのいる場所へ近づくのが…怖い。
そして駅とは反対方向の道へと繰り出した。

住んでいるアパートは郊外なので、歩くにつれて点灯した街灯の数が増えていく。
一人で歩いて持って帰れる荷物の量はたかが知れている。だから三日に一回はこの道を行き来しているのだ。レトルトとかカップラーメンの類を買い込めば日にちも持つし歩く頻度も減ると思うのだが、何故かそうする気にはなれなかった。
プライド?信念?…違う。たぶんアイツの味を、心のどこかで再現しようとしているのかもしれない。
こんな怠惰な生活を送っていても作る料理はしっかりしているつもりだし、むしろ上達したといっても過言ではない。でも、それを誰かに食べてもらったり、食べてほしいとも思わない。
料理は愛情というけれど私の愛情は行く場をなくしていて、いうなれば自分を慰める手段なのだ。

「…惣流、やないか?」
こんな所で出くわしてしまった。
「…そうよ。久しぶりね」
久しぶりに見た鈴原の姿は軽く驚嘆に値するもので、いつものジャージではなく黒い学生服姿という出で立ち。
「久しぶりって…お前なにしとんねん」
「何って買い物よ。見りゃ分かるでしょ」
「そうやのうて、なんで学校来ぇへんのや。みんな…いや、シンジが心配しとるで」
三馬鹿トリオ筆頭バカ頭にまで気を使われている始末。ほんと、変わったんだと実感する。自分はどこにも進めず、進まず。
ははん、と出来るだけ彼の中に残る『私』を見繕って応答する。
「気にしないでって言っておいて。まあまあ元気でやってるわ」
「そうか…」
そう呟くと、どんな言葉をかけていいかお互い分からなくなった。
もう何も話すことはない、と彼の横を通り過ぎようとする。
「ちょっと待てや」
立ち去ろうとする私の肩を鈴原の手が引く。
「離してっ!」
振り払って、私は脱兎の如く彼の方を見ずに走り出した。
何故こんなにも後ろめたい気持ちなんだろう。感情なんて、とっくに表に出すことは無かったのに。


「泣いとるぐらいなら戻ってこいや、惣流。シンジが…」
454kou:2009/08/28(金) 17:29:09 ID:???
短いですけど、とりあえず投下しました。
ハンネを山無しにしようと思うくらい、山無しな感じになりそうですがお付きあいくださいm(__)m

>>446さん…
エロいよぅ。ボキのエントリープラグが(ry
455名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/28(金) 17:46:53 ID:???
GJっす!
続き気になるなぁ
456名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/28(金) 18:25:21 ID:???
GJ!!
続き待ってます!
457名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/28(金) 21:31:59 ID:???
また、厨二臭が満載のLASだなw
458再び・・・ その16:2009/08/29(土) 01:45:25 ID:???
「MAGI、SEXってなに?」
メルキオール「生殖行為」バルタザール「体で愛し合うこと」カスパー「キモチいいこと」
「むう、よくわかんないよ!もっと具体的に教えてよ」少女は端末に悪態をついた。
メルキオール「男性器と女性器の結合」バルタザール「赤ちゃんを作る行為」カスパー「ビデオ準備中」
ブン!画面がブラックアウトして再表示される。
メルキオール「却下」バルタザール「却下」カスパー「了承中止」
「もういいよ。じゃあバカップル!」
メルキオール「発情抑制できない男女」バルタザール「人前でも愛しあえる恋人同士」カスパー「シンジ・アスカ」

「やっぱりそうなんだ」未来はイスの背もたれに寄りかかりキイキイと音を立てた。
ふと鏡に目をやり自分の姿を確認する。
黒髪は短く切りそろえている。黒い瞳とミルク色の肌。長い手足とくびれたウエスト。
胸は発展途上中。
「未来の顔はほんとにパパ似ね。肌とスタイルはママを受け継いでヨカッタワー」
どうせなら全部ママ似で良かったのにと未来は思う。
母親は今年で28歳。子供を3人産んだと思えない抜群のプロポーションを維持している。
赤みがかった金髪、碧眼、ミルク色の肌。娘の未来でさえその美貌に憧れている。
父親は長年の畑仕事で肌は黒く日焼けしているが昔は色白で線の細い少年だったらしい。
引き締まった体と190cm近い身長。母親のいうところの甘いマスク?がポイントだそうだ。
459再び・・・ その16:2009/08/29(土) 01:46:31 ID:???
こんな二人でも気になることがあり、幼いころ尋ねてみたことがある。
「ねえ、ママ。この手と目はどうしたの?」未来はアスカの豊かな乳房に、
顔をスリスリしながら尋ねた。
「これはね・・・、ママが悪者と戦ってヤラレちゃった時のものよ」
「エエ?!ママかわいそう!でもパパがいたらヤラレなかったかもね!」
アスカはニコッと愛娘に微笑んだ。そしてシンジに向き直りボソッと呟いた。
「ホントに。パパがいてくれたらね」ジトッした視線をシンジに向ける。
「ハハハ・・・」シンジはアスカから目を逸らし、乾いた笑い声を出した。
「ねえ、パパ。どうして鼻がちょっと曲がっているの?どうして前歯がないの?」
「それはね・・・」答えようとしたシンジは殺気のこもった視線に気が付いた。
(余計なこと言ったら殺すわよ)シンジは縮こまり小さく答えた。
「とても大切な人と仲直りした時に、そう、転んでぶつけたんだ」
「パパ、カッコワルイー」アスカのヒザの上でキャッキャッとはしゃぐ未来。
「あの時のこと思い出したら興奮してきちゃった、ア・ナ・タ」
獲物を見つけた猫のような目でアスカはペロッ舌なめずりをした。
「未来ちゃん、今日は早くネンネしようね。特別にオッパイチュウチュウさせてあげる」
「ヤッター!」未来はアスカのオッパイが大好きで、5歳になるまでは寝る前の日課だった。
「シンジ、今日は寝たふりしても勘弁しないからね」

「あの時できたのが眞歌か・・・」
13歳の多感な少女は「バカップル」な両親のバカッぷりを思い返しクスッと笑った。
460再び・・・ その18:2009/08/29(土) 01:48:38 ID:???
未来がMAGIと出会ったのは12歳の時、両親に連れられて「ネルフ本部」見学に
行った時だった。中央司令室で見つけた「専用端末」なぜか興味をかられ、父親に
頼み込んで持ち帰ってきた。
「壊れているんじゃないかな?」電源スイッチを押しても作動しない端末を前にシンジは
未来に説明した。それでもあきらめきれない未来は端末を捨てる事ができなかった。

「未来ちゃん、はじめまして」
未来は夢を見ている。未来の夢には見たことのない人たちが日々現れる。
生きて動いている人間は家族以外に見たことがない未来には夢がとても楽しみであった。
「はじめまして。・・・冬月先生、今日は若い女の人ですね」
「伊吹マヤ君だ。君が持っている端末の持ち主だよ」
冬月は未来の夢にしばしば現れ、両親に関わりのある人達を連れてくる。
この前は缶ビールというものを両手に持った派手な格好のきれいな女性を連れてきた。
彼女は未来を見た途端、手にした缶ビールを放り投げ抱きついてきた。
ひとしきり泣いたあと、休む間もなく両親のことについての質問を投げかけてきた。
そのとき「バカップル」という単語を知った。
「また、来るね未来ちゃん」名残惜しそうに何度も何度も振り返り去っていく姿がとても
印象に残った。彼女の名前はミサト。

「マヤさん、あの端末壊れちゃってるみたいなの」
「多分バッテリー切れね。ネルフ謹製品は10年放置した位で壊れたりしないわ」
「どうすればいいの?」
「ソーラーバッテリーだから光のあたる場所に置いておけばいいわよ。それと…」
マヤは未来に近寄り、耳元でこっそり囁いた。
「アクセスパスワードが必要なの。パスワードは」
OKUHTIREVOL マヤは頬を赤く染めている。
「シンジくんとアスカに言っちゃだめよ。約束ね」
「伊吹くん、この世界で隠し事は無駄だぞ」
オホンと咳払いした冬月がニヤッと笑う。
「わかっていますよ。でもあの子達には秘密にしておきたいんです」
461再び・・・ その19:2009/08/29(土) 01:49:54 ID:???
未来は目を覚ますと早速端末を調べてみてLEDランプが赤く点灯していることを確認した。
電源スイッチを押すとブンと音が鳴り、画面に見た事もない文字が羅列される。
マコ支援プログラムと一瞬表示され、見慣れた文字が表示された。「パスワード」
教えられた通り入力するとカラフルな画面に切り替わり端末が挨拶をしてきた。
メルキオール「おはよう」バルタザール「朝ご飯たべた?」カスパー「ちゃんと化粧している」
「お、おはよう。まだご飯たべてない。化粧ってなに?」
日本語とドイツ語の読み書きはできるが、キーボードで文字を入力することができない未来は
端末に向かって話しかけた。

音声入力処理中……終了

メルキオール「朝食を抜くと午前中の思考活動に支障」バルタザール「食べないと元気でないわよ」カスパー「男をだます女の常とう手段」
「未来、ご飯できたよー」シンジの呼ぶ声がする。
「MAGIご飯食べてくるね!」
メルキオール「効率よく速やかに摂取」バルタザール「早く食べてきなさい」カスパー「食べ過ぎるなよ」
この日、未来はMAGIという最高の教師を手に入れた。
462再び・・・ その20:2009/08/29(土) 01:53:25 ID:???
二人の悩み シンジサイド
最近、未来の態度が冷たいように感じる。
未来も13歳、あと1月で14歳になるのだから当たり前といえば当たり前だけど。
ボクの14歳は悲惨で惨めで嫌な思い出しかない。
だから、「未来には可能な限り愛情をそそぎ込みたい。嫌がられるくらい」…あれ?もしかしてそれが原因?
眞歌は8歳女の子、拓は6歳男の子。
眞歌はアスカの髪と瞳を黒くしてそのまま小さくした感じだ。この子はとても口数が少なく、
内向的でおとなしい。どうやらボクの性格をそのまま受け継いだらしい。
アスカよりボクに懐いている、パパッ子だ。寝る時もボクとアスカの間に割って入るため
触れ合いコミュニケーション不足だとアスカがぼやいている。
拓は…レイにそっくりだ、金髪、碧眼のレイ。未来にからかわれ度々女の子の服を
着せられることがあるがまるで違和感がない。見た目は女の子そのものだが、ちゃんと
おちんちんは付いている。それもかなり立派だ。
眞歌には積極性を、拓には男らしさを引き出したい思っているがなかなかむずかしい。
そしてアスカだ。未来が生まれてしばらくは子育てに追われてSEXの回数が減ったけど、
未来が兄弟達の世話ができるようになってからは、以前にも増して回数が増えた。
ただ、アスカの体が出産後の変化でイキやすくなったせいで射精回数が減ったのが幸いだ。
アスカとのSEXするのが嫌な訳ではないけど、あまり頻繁だと子供達に感づかれてしまい気まずい。
いや、もう未来にはバレバレなのだろう。これも冷たくされている一因のような気がする。
最近は畑作業の休憩時間、子供達が昼寝している時を見計らってトウモロコシ畑でするのが
日課になのだが、ボクとアスカが腕を組みながら戻ってくると、未来が起きていて、
「パパとママってホント愛し合ってるのね」とからかわれた。
回数を減らそうと相談したことがあったが、ひどい目にあった。スイカアイス事件の時以上に荒れて本気で殺される覚悟した。
その後の仲直りで4人目を授かった。現在6ヶ月目だ。
最後に文明の再興。これが一番深刻な問題だよ。
まずは人口を増やさなければならない。いくらボクとアスカがガンバっても限界がある。
いずれ子供達に近親結婚を強いる時がくるのかもしれない。それを思うととても憂鬱な気分になる。
463再び・・・ その21:2009/08/29(土) 02:01:36 ID:???
アスカサイド
最近シンジが冷たい。アタシを見ている回数が減っている。アタシを触る回数が減っている。
子供がかわいいのはわかるけど、アタシをないがしろにするのは話が別だ。
アタシを見て、アタシを触って!…ハッ?いけない!トラウマが再発しちゃう。
明日のお昼休み、シンジに責任とってもらおーと。

眞歌はとってもおしゃべりなのにシンジの前だと無口になる…なんで?
アタシとシンジの間で寝ちゃうのでシンジに絡みつけなくなって、ちょっと寂しい。
でも、アタシの小さい頃にそっくりなので、小さいアタシがシンジに甘えてると思って許しちゃう。
そうだ、眞歌サンドイッチにしてシンジに抱き付いてみよう。

拓はレイにそっくりだ。でも嫌な気はしない。なんせ男の子だし、シンジを取られる心配はない!
と思うけど、カヲルのこともあるしシンジの方が心配だ。
464再び・・・ その22:2009/08/29(土) 02:02:48 ID:???
それからバカシンジ!こともあろうにSEXの回数を減らそうと言ってきた!
アタシに飽きたの?SEXばかり求める女に嫌気がさしたの?アタシ色情狂なの?
バカにしないで、アタシはアンタと一つになりたい。ただそれだけを願っているのに!
その手段がSEXなのよ。会話も大切、触れ合いも大切、でも一番ストレートでわかりやすい
表現方法がSEXじゃない!アンタをアタシの体の中に受け入れるのよ。
なんの守りも抵抗もできない体の中に!他の男なんて考えられない!
いくらさみしくても、アンタが他の女とSEXしても、アンタ以外の男に体を開けない!
アンタ以外の男に触られるのもイヤ!アンタを本当に愛してしまったのだから!
失いたくないと心が叫ぶから!だからアンタだけなの、アタシを狂わしていいのは!
愛していいのは!何度生まれ変わっても、別人になってもアタシの心は変わらない!
必ずアンタを見つけ出して、アンタと一つになるの!
…一つになるってことは全てを得て、全てを失うこと。
アンタはアタシの全てを得て、アンタ自身の全てを失うの。それがいやなら…
一緒に死んでシンジ。アンタの全てがアタシの物にならないなら、アタシなにもいらない。
また、生まれ変わってやり直しましょう、シンジ。愛してる。

…かなり激昂したけどシンジを殺さないですんでよかったとシミジミ思う。

は?文明の再興?アタシはシンジいればそれでいいの。
なるようにしかならないのよ。滅んだら滅んだでいいじゃない。
アタシ達が愛し合った事実は残るんだから。それでいいじゃない。気楽に行こシンジ!
465名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/29(土) 05:58:02 ID:???
誰か褒めてやれよw
466再び・・・ その23:2009/08/29(土) 09:48:11 ID:???
「冬月先生、お久ぶりですね。どうしてたんですか?」
「ああ、どうしても君に合わせたい男がいてね。連れてくるのに一苦労だよ」
冬月の後ろから全身黒尽くめの男が現れた。サングラスとひげが威圧感を増している。
男は黙ったまま、未来の顔を凝視している。
「碇、どうした?」
(碇?)
「冬月、帰るぞ」男はぶっきらぼうにそう言うとキビスをかえす。
「おじいちゃん?」男の歩みが止まる。
「ゲンドウおじいちゃんだよね!」未来は男に駆け寄り正面に回り込んだ。
「私がわかるのか?」
「MAGIがね、碇指令は私のおじいちゃんだって教えてくたの」
「メルキオールもバルタザールも教えてくれなかったけど、カスパーがそう言ったの。
写真は見れなかったけど、カスパーのいう特徴そのままだったから」
「おじいちゃん、眼鏡外して」ゲンドウは戸惑いつつもサングラスを外した。
「しゃがんで!」未来はゲンドウに顔を近づけのぞき込んだ。
「パパと同じ目をしてる。やっぱり親子ね!」
「キミもシンジと同じ目をしている。さわってもいいか?」
「うん!」
ゲンドウは白い手袋を外した。そして恐る恐る未来の頬に触れた。
「柔らかいな。そして、あたたかい…抱きしめてもいいか?」
「いいよ、でもあまりきつくしないでね」
ゲンドウは羽根細工の人形を抱きしめるように、ゆっくりと優しく未来を抱きしめた。
「碇、うらやましいな」冬月がポツリとこぼした。
467再び・・・ 結:2009/08/29(土) 09:52:37 ID:???
「パパ、ママ、私、海が見たい」
反対する両親をなんとか説得した未来はMAGIから教えられた格納庫に家族を連れ出した。
ネルフ仕様のYAGR-3Bを見つけたアスカは歓喜して我先に乗り込む。
眼下に広がる緑の大地、澄み渡る蒼い空、そして地平に広がる赤い海。
そこにレイの姿はなかった。
白い砂浜に咲く一輪のビーチパラソルの花。
波打ち際で走り回る3人の子供たち。
子供たちのはしゃぐ声が海に吸い込まれていく。

「楽しそうだね。ほんとに楽しそう」
「ボク達は生きるのに必死すぎて、こんなささいな楽しみを忘れていたよ」
アスカは膝枕しているシンジの頭を撫でながら子供たちを見つめている。

子供たちは退屈していた。楽しそうな声がするゆりかごの外が気になって仕方ない。
子供たちの好奇心は限界を超えた。

いつのまにか眠っていた二人は、子供たちの笑い声で目を覚ました。
目を疑った。砂浜には数え切れない子供たちの姿があった。
赤い海から次々と現れる子供たち、やがて後を追うように大人たちが現れた。

未来がなにか叫んでいる。
「おじいちゃん、先生、ミサトさん早く!」
「「ヱッ?!」」シンジとアスカは向き合って、もう一度、「「ヱヱーッ?!」と叫んだ。
未来の後から、眞歌の手を引くゲンドウと拓を抱き上げた冬月、大きく手を振るミサトが
現れる。その3人だけではない、懐かしい人々が後からこちらに向かってくる。

再び、満ちる子供たちの笑い声
再び、人の歴史が始まる。

この日から海はその青さを取り戻していった。

終劇
468名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/29(土) 09:56:49 ID:???
GJです。面白かったよ。やはり、ゲンドウは孫が出来れば変わるね
469再び・・・ 作者:2009/08/29(土) 10:27:32 ID:???
なんとか書ききりました。
読んでくださった方々ありがとです。
詰め込みすぎて中途半端ですが
そこは読んでくださった方々、個々で脳内補完してください。

kouさん>>エロを抑えようと思った表現でしたが失敗でした。続きを一読み手としてお待ちしてます。

468>>ゲンドウと孫。シンジとゲンドウの壁を破壊するのは、やっぱりユイに似た孫が一番かなと思います。
470名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/29(土) 21:11:26 ID:???
面白かった。ありがとう。孫萌えするゲンドウが良かった。
あと、夢に出てくる冬月先生。
471名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/30(日) 01:33:55 ID:???
コウさん続き楽しみにしてます!意地張ってるアスカの心を溶かしてほしいです…

再び…シリーズGJ!ほのぼのした雰囲気がなんとも最高でした!
出来ればミライ以外の子供にも、スポット当ててほしかったなぁ…番外編とか書けませんかw

ちなみに眞歌はなんと読めばいいんでしょうか?マカ?
472名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/30(日) 02:08:47 ID:???
>>471
感想ありがとうございます。
眞歌(シンカ)拓(ヒラク)と自分では読んでいます。
未来もそうですが、オリジナルキャラには読み手さんが
イメージする読み方ができるようにあえて漢字表記しました。
別スレでミライだとあのキャラを連想するという書き込みがありましたが、
私なんかまさしく「ミライヤシマ」を連想してしまうものでw
ですから「マカ」でもいいと思います。

番外編、挑戦してみます。
これだけの量書くと愛着もわいていますので。
473kou:2009/08/30(日) 05:09:11 ID:???
>>453
商店街といっても二十メートル程の通りに小さなスーパーとか喫茶店ぐらいしかない。一人で暮らすには十分だけれど家族とか、子供がいるような家庭の人は小さく感じるだろう。
行き慣れた道。行きつけのスーパー。あの猫を見つけたのも、この通りが終わるところだった。
遠目にその方向を見てみるけど、ここからはまだ死角で何も見えない。
何を期待しているんだろう。そんな風に自分を嘲笑しながら、私は店の中へ入った。
店内の冷房はいつもキツイ。まだ、サードインパクト前の常夏がこの店の中では普通なんだろう。
適当な材料を買い物カゴに入れてレジへ向かう。と、その途中でふと奇妙な宣伝文句が目に入った。
『あなたの愛猫、突撃』
缶のラベルには、中身に顔を突っ込んで貪り食う姿の猫。いくつか種類があって赤や青のラベルで区分されている。動物なんか飼ったことないので、どれがいいとか分からない。それ以前に何故こんな物に気を引かれたのか。あの猫を拾う気なんて、無いのに。

予定していた以外の物のせいで少し重くなったカゴを抱えてレジに向かう。
手垢で汚れて古びれたカゴをレジ台の上に乗せると馴染みの、というかいつものレジのオバチャンが対応してくれる。
「はい、368円、798円が二点…」
ピッピッ、とバーコードに光を当てる度に鳴る電子音。オバチャンの小気味良いリズムの点呼も相俟って何となくそれを食い入るように見てしまう。無意識。
「あらアナタ、猫飼ってたの?」
「え?な、いや。その…」
ボーッとしている所に突然声をかけられたものだから、予想外に吃ってしまった。猫?ああ、餌か。
変に立ち入られるのも面倒なので、ここは話を合わせておこう。
「まぁ、はい。最近からですけど…。」
「そう。良かったわぁ。」
良かった?一体何が良かったのだろう?
「アナタ、買い物するときいっつも眉間に皺寄せてるでしょ?若いのに勿体ない」
余計なお世話だ。人間観察している暇があるなら、しっかり業務をこなして欲しいものだ。
「でも、それ選んでる時はちょっと楽しそうだったわよ」
安堵したような顔を浮かべながらカゴの中に袋を放り込むと、台の上に置いた代金をレジにしまう。
「はい、お釣り」
「は、はい」
慌てて手を出す。小銭を受け取った後オバチャンの顔を見ると、こちらに向けた笑顔がことのほか眩しかった。
474kou:2009/08/30(日) 05:11:40 ID:???
当たり前だけど、鏡でも見ない限り自分の表情なんて分からない。
でも、オバチャンにつられて自分が笑ったことに気づく。
「また来てね。この辺で餌置いてるところ、少ないから」
「…はい」
受け取ったレシートを財布の中に入れながら答えた。
そっか。私、笑えるんだ。

重い物は袋の底へ入れて軽い物は上の方に。でも、すぐ取り出すであろう猫缶は手に持って店の外へ出た。
薄い雲に覆われた空はとうに明るさを潜めて、当たる光は月になっている。
こんな時間になるまで悩んでいた自分が堪らなく可笑しくなった。
今日の食事は二度手間になるだろう。新たな同居人を迎える予定だから。
取り合えず一缶、あの電柱の下で食べさせてやろう。メーカー側の誇張じゃなければこれを持った私に、写真のように突撃して来るだろう。
柄にも無く、楽しみだ。
思わず早足になってしまいそうになる心をどうにか落ち着かせながら、あの曲がり角の向こうまで急ぐ。
何故こんなにも胸踊るのだろうか。生き物を飼う行為自体初めてで、想像しても面倒な事ばかりしか思い浮かばないのに。小さな命を愛でたいなんて思ったこと無かったのに。
とにかく、今の私は大袈裟に言えば希望みたいなモノに溢れていた。
電柱の下に居てほしかった存在の不在が分かる瞬間までは。

「いない…」

微妙に傾いた電柱の影が、のしかかってくるように私に覆いかぶさった。
段ボールごと無くなっているということは誰かに拾われたのだろう。うん、きっとそうだ。
良い奴だといいな。新しい飼い主に不自由なく育ててもらえ。こんな世の中、拾ってくれるような優しい奴なんかめったにいないぞ悲しい。あんな愛くるしい顔だったんだから甘え上手で、きっと主人も可愛がってくれる私と違って。
あぁ、なんか、空回りだったんだなぁ。
私が、他の命を拾うなんて事、到底、無理な話だったのかな。資格、無いのかな。

本当に、ホントに大袈裟に言うと、立っていられないくらいしんどくなった。まるで自分と地面が磁石になったみたいに体に掛かる重力が増えた気がした。
片手に持った猫缶をビニール袋の中へ戻して、来た道を戻ろうと後ろを振り向く。
褪せたアスファルトを踏む感触も、肌寒い空気も、通り過ぎるスーパーの中のオバチャンの笑顔も、なんだかどうでもよく感じる。
475kou:2009/08/30(日) 05:14:03 ID:???
商店街を抜ける頃に、不思議とシンジと話したくなった。実際会ったら会ったで、またいつものように大声で怒鳴り付けてしまうだろうけど。
結局、私も誰かに縋りたいのだ。他人の事なんか言えない。誰だっていいんだ。リツコでも、猫でも、鈴原でも、シンジでも。
懐に手を入れて、あるはずの携帯を探す。いやいや、部屋に忘れてきた。
メールがしたい。電話がしたい。他人と関わりたい。でも、接し方なんて忘れた。シンジ、わたしアンタとどんな風に喋ってたっけ?

五分くらいで帰れるはずの距離を十五分もかけて帰って来た。
凛々と鳴く鈴虫は私なんかに無関心で、ひたすら階段に昇るモチベーションを下げた。うるさい。
軋むドアをゆっくり開けて部屋に入る。
「あ、電気消し忘れてた」
夕方点けた電灯が微弱に輝いている。
電気代は貴重な財源を削り取っていく魔性の要素だと、昔シンジに説教を喰らったことがあった。
やれクーラーをかけすぎ、やれ冷蔵庫は早く閉めろ、やれ見てないテレビは消せと、いつも言ってきた。
その度に私は、科学は人類の至宝、ハイテクの勝利だと返していた。
今考えると微笑ましいやり取りをしたものだ。たったの一年と少ししか経っていないのにずいぶん昔のように感じる。
そんな時の癖か、点けっぱなしにしていた事に軽く後悔しながら部屋の奥に入る。
そして冷蔵庫を開けて買ってきた食材を入れていくも、猫缶の処理に困った。冷蔵しておくべきか、常温か。そもそも置いておく必要があるのか。
冷蔵庫は開きっぱなし。早く決めないとシンジに怒られる。
取り合えずテーブルの上に置いておこう。スーパーの棚は常温だったし大丈夫だろう。
そうしてテーブルに缶を置くと、充電器に繋がれた携帯電話の外部液晶がピカピカと光っていることに気付いた。
手にとって履歴を見てみる。
『碇シンジ』
留守電を残している。いつもの、何かしらの近況報告だろう。
…聞いてみる。

メッセージは一件です ピッー

『あ、もしもし、僕だけど。実は昨日言おうと思ったんだけど、なんだか言いそびれちゃって。…コ、コラ!乗っかって来ちゃダメだって!あぁそんなとこ舐めないで…。アスカぁ、ニャ-』
は?
『ニャースカ、もしよかったらこの子の名前決めてもらえないかな?あ、猫拾ったんニャーだ。アスカの家の近くの商店街で。
476kou:2009/08/30(日) 05:17:17 ID:???
もし良かったら会いに来てよ。きっとこの子も喜ぶよ。ね?……ウニャー』

メッセージは以上です。保存する場合は…


アハハ、バカだ、私。

そして私は久方ぶりメールを打った。
477kou:2009/08/30(日) 05:24:07 ID:???
続きます。まだ、もう少し掘り下げて行こうと思います
ぶつ切り&短くてスイマセン。

>>469さん
GJです!お疲れ様!エロは難しいすね。さじ加減間違えると下ネタになるし…。
ともあれ、ごちそうさまでしたm(__)m
478名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 07:32:56 ID:???
GJ!
479名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 16:11:32 ID:???
GJ!どんなとこ舐めたんだろう…w
やっぱシンジもアスカも優しいね。続きが楽しみです!
480名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/30(日) 22:01:15 ID:???
コウさんイイですねー!
ちょっと黒猫がキューピッドになってくれたらいいなぁ
481kou:2009/08/31(月) 04:42:05 ID:???
>>476続き

To: 碇 シンジ
From: 惣流アスカラングレー

久しぶり。あの猫拾ったのあんただったのね。
てっきりどっかの金持ちに拾われて裕福に暮らしてるものだと思ったけど、あんたじゃそうはいかないわね。
ところで最近どうなの?元気にやってるの?
RE:
久しぶりだね。アスカも見つけてたんだ。商店街の近くだったからアスカは知らないと思ってたんだけど。
実は苦戦してるんだ。しょっちゅう粗相するから躾ないとダメなんだけど、これがなかなか。ペンペンがいかに賢い奴だったか分かるよ。
アスカこそ、たまには連絡してよね。
RE RE:
どういう意味よ。私だって買い物するからあそこにはよく行ってるの。あんたに頼らなくたって料理ぐらい出来るわよ。
ペンギンと猫を比べるのが間違ってるのよ。それに躾じゃなくて、猫には同居人としての意識が必要なの。あんた、ナメられてんのよ。
やーよ。電話代かかるじゃない。
RE RE RE:
へぇ、アスカ料理できたっけ?最近食べる人がいないからもっぱらコンビニか外食ばっかりだよ僕は。おかげで食生活偏っちゃって。
そうかもね。ご飯上げると、ふらっと何処かに行っちゃうし。でも、昔の同居人も似たような感じだったけどなぁ。
じゃあ、これからも僕から連絡するから出来るだけ出てね。
RE RE RE RE:
うっさい。
うっさい!
ま、善処するわ。私も忙しいのよ、色々と。
RE RE RE RE RE:
良かった。変わらないねアスカ。僕の知ってるアスカで良かった。
留守電でも言ったけど、もし良かったら猫の名前つけて上げてよ。僕の語轢じゃいいのが浮かばなくて。
RE RE RE RE RE RE:
実は猫に上げようと思って餌買っちゃったのよ。このまま捨てるのも勿体ないし、その内食べさせに行くわ。それにあんたにも餌、食べさせたくなった来たし。
パケ代もったいないからもう返信しないで。明日、また連絡して。

簡単に作ったチャーハンを頬張る。今日の食事はとても塩味が効いている。チャーハンに塩胡椒、入れ過ぎたかな。一人の食事には慣れていたつもりだったけど、電波上の会話がそれを薄れさせた。
482kou:2009/08/31(月) 04:45:27 ID:???
パチンと携帯を閉じる。
返信を優先していて、すっかり夕飯は冷めてしまった。でももったいないから食べる。そう、もったいない。
もったいないから、餌をやりに行くのだ。シンジに会いに行きたいわけじゃない。なんて、メールのやり取りを見るとそんな咄嗟の自己欺瞞も笑えてくる。
拭わなかった涙がかさついて痒い。
私、やっぱりシンジが好きなんだな。
今晩は久しぶりに湯舟に浸かろう。いつもシャワーで済ませていたけど、今日はたっぷり汗をかきたい。
残りの飯粒を口に掻き込んで、冷えた水を一杯飲み干す。
生温いコンクリの床をパタパタと音を立てて歩いて浴槽の蛇口を捻りに行く途中、脱衣所の鏡にうつった私の顔は楽しかったあの頃の日々を彷彿させた。

『間もなく電車が参ります…』
今日の日差しは特に強烈で、昼前だというのに気温は三十五度を越えているそうだ。普段快適な部屋でクーラーの風を直浴びしている私にとって、この日光と温度は殺人的と言える。
しかし、あの永遠の夏の日々もまた思い出す。
迫る使徒。過ぎる人々。血の匂い。
思い返せば楽しさも、悲しさも、苛立ちも、憎しみも入り交じった、混沌とした期間だった。大人達の事情はどうあれ、あの時あの場所で私は育まれてきたんだろう。
こうしてこの駅のホームに立っている私を生んだのは、紛れも無くあの夏の日々だ。だから、会いに行こうと思う。シンジと、あの猫に。

日曜の昼間とは言え、都市から離れた路線では乗客はまばらなので労無く席につくことが出来た。
大して速度の出ていない電車の揺れと、冷房の効いた車内で浴びる射し日が気持ち良い。流れる風景は緑の木々と無機質な工業地帯が混じっておかしな感じだけど、来日してからそれが当たり前だったせいか慣れてしまった。
「ねぇママ」
「なぁにユウくん?」
右前方に見える母親とその子供が、愉快そうにキャッキャと笑いあっている。あのおっきい建物は何?と子供が聞いたが母は首を傾げた。
そりゃそうだ。アレは元・地方出撃用のエヴァ射出場だ。民間人が知る訳無い。結局使った所を見たことは無かったけど。
こんな風に地元民から見てもこの街は異様なんだろう。使徒迎撃のために急ピッチでこさえた街に統一感なんてものは一切無い。しかもその役目も終えてしまった今、画一化する程の予算が下りるとも思えない。
483kou:2009/08/31(月) 04:47:24 ID:???
ドイツ政府に限らず混乱の極致に達している世界情勢から鑑みて私を本国に戻す事も無いだろうから、この街の風景と大分お付き合いして行くことになるだろう。別に嫌いじゃないからいいけど。
しかし微笑ましい親子のやり取りも長時間に渡ると迷惑なモノで。しかもユウくんのテンションも暴走気味ときている。
二駅分すら我慢できない私は、懐に入れた携帯音楽端末を探し当ててイヤホンで耳を塞いだ。
混乱著しい昨今でも、こういった娯楽の供給には事欠かない。
敢えて言おう。文明社会あっぱれであると。

画面に目を向けて指先でスイッチを押すと数百曲ある中からランダムに音楽が流れて、小さなモンスターの声を見事に掻き消した。
再び目線を窓の外に移して曲に聴き入る。
と、思い出す。猫の名前を考えていなかった。
シンジが拾ったのだから本来飼い主が決めるべきだろうが、その命名権を譲渡されたのだ。生半可な名前ではいけない。
少し考え込む。
名前、名前…。男の子だったらシンジ、女の子だったらレ……何考えてるんだ、私。
うんうんと唸って考え込んでいる間に、最初の曲はクライマックスを迎える。
そして曲が終わり、次のイントロが流れ出した。
「あっ」
思わず声が出た。慌てて口を塞ぐ。が、こっちを見ていた親子がくすくすと笑う。
何となく会釈を返してしまったものの、恥ずかしくなって視線を明後日の方に向けた。
しかし恥辱に勝る報酬を得た。名前決まったわよ、シンジ。

目的の駅に着くと再び荷粒子砲の如き熱線が私に降り注いだ。つばが大きく開いた帽子を選んで正解だ。
今日の日を迎えるにあたって、僭越ながらも身嗜みに気を使ってみた。
よく着ていた黄色のワンピースと色違いのパステルピンクのもの。靴は買ってから初めて履いた革のローファー。アクセントに穴を開けないタイプの素朴なイヤリング。メイクはささやかに。少しお高めのバッグには口実の猫缶。
今朝、我ながら気合いの入りっぷりに驚いたのは絶対に秘密だ。
閑話休題。
お世辞にもシンジの住むマンションから駅まで近いとは言えない。時間にして徒歩約三十分。おそらく、着く頃には溶けてしまっているだろう。こう、パシャっと。
とにかく進まなければ始まらない。私は意を決して日陰から日向へと足を踏み出した。
そして五メートルほど歩いた瞬間。
「おーい」
484kou:2009/08/31(月) 04:50:17 ID:???
声の方を向くと、陽炎に揺らめく人の影。
自転車に乗ったシンジが片手運転で手を振りながらこっちに向かってきた。
「…ぅおーい、アスカー」
近づくにつれて詳細が見えてきた。ゼエゼエ言いながら汗だくで、かつ大声で人の名前を呼ぶ姿に思わず他人のフリをしたくなる。
駅前なのだからそこそこに人はいるのだ。元来注目される事は少なからず好きだが、こういうのは違う。
だから近付いてきた自転車に駆け寄ってハンドブレーキに渾身の右ストレートをぶち込んだ事に、私が咎められる要素はない。
「アぁースカァー」
突発的な制動力に耐え切れなかったシンジの体は、重力を無視して自転車から離れ宙を舞った。

「バカシンジ。なんであんな大声だすのよ」
派手に吹っ飛んだシンジを拾いあげた後、近くの売店で買った冷たい缶コーヒーを患部に当てながらマンションまでの道中を歩く。
「だってイヤホンしてるのが見えたから…」
「音が聞こえる程度に絞ってあるわよ。どっかのバカみたいに周りが見えなくなるほどうるさくしてない」
「バカバカ言うなよな。久しぶりに会ったのに…」
「バカにバカって言って何が悪いのよ、バカシンジ」
ぎゃあぎゃあと騒ぎながらシンジの街を行く。
正直な話、会う際かける言葉が浮かんでなかったからほっとしている。だって、どんな言葉をかけても不自然になる自信があるもの。こうやって昔みたいに話せるのが、私の中では奇跡だ。
留守電を聞く前の私ならネガ精神が渦巻いて、きっと冷たい態度しかとれなかった。
どこまでも、シンジにおんぶに抱っこ状態だな、私。

五分ほど歩いたところで患部の痛みも収まったようなので、茹だる暑さに耐え兼ねた私は自転車の再起動を命じて、シンジの漕ぐ自転車の荷台に横座りになる。
風はあまり強くないが風圧で飛びそうになる帽子を押さえながら、昼時の川原沿いを突っ切った。
「ねぇアスカ。名前考えてくれた?」
「もちろん。せいぜい期待しときなさいよ」
「うん。あと、料理も期待してる」
「まあ、程々にね。…ところでシンジ」
最初から気になってた。言うタイミングを逃していたけれど。
「まだ長袖には早いんじゃないの?」
七分丈くらいならわかるが、しっかり長袖を着込んでいるのだ。
人が柔肌を炎天下に晒しているというのに。
485名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/31(月) 04:51:15 ID:???
「…あぁこれ?いやぁ、猫に引っ掛かれたり学校の授業で怪我したりで日焼けすると痛いんだ。だから」
「ふうん」
ポリポリとバツが悪そうに頭を掻くシンジの後ろ姿。

重たいペダルを回しながら、私を乗せた自転車は風を切って街の中へと入っていった。
不思議な違和感を感じながら。
486kou:2009/08/31(月) 04:56:44 ID:???
続きます。えぇ続きますよ。思いの外、話が膨らんできてますからね。
まぁあれですよ、ライブ感ってヤツ(キリッ

またまたぶつ切りですいません。精進します。
487名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/31(月) 05:06:09 ID:???
GJ!
488名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/31(月) 06:25:24 ID:???
GJ
489名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/08/31(月) 19:29:06 ID:???
GJ
台風に負けずに続きをまってます。
490名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/01(火) 12:50:07 ID:???
上手いなぁGJ!
491名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/01(火) 20:41:10 ID:???
>>486
出たとこ勝負ってことかw>ライブ感
492名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/01(火) 21:38:06 ID:???
>>491
行き当たりばったり、何も考えてないとも言うわな
493名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/01(火) 22:45:43 ID:???
まぁ、エヴァの伝統を継承してる、とも言うw
494名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/01(火) 23:00:46 ID:???
> ライブ感
どこぞの仮面ライダーの脚本家じゃあるまいし…
495名無しが氏んでも代わりはいるもの :2009/09/01(火) 23:44:46 ID:???
ネタにマジレスするなw
>>486GJ!続き期待してます
496名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/01(火) 23:46:16 ID:???
某死神漫画の作者が言った迷言としての印象深いな。
駄目な方の意味だけど。

Q、矛盾だらけで支離滅裂なのは何でですか(要約
A、整合性よりライブ感を重視しているからです(要約
497kou:2009/09/02(水) 06:32:02 ID:???
第三新東京都心から程なく離れた場所にシンジの住むマンションはある。住所は知っていたけれど実際に来たことはなかった。
だから、すぐ近くに『あの』コンフォートマンションがある事も知らなかった。
都市開発の名残で残っている街路樹というには大きすぎる緑の道を抜けた先で、私を揺らしつづける躍動は停まった。
「よ」
ビル風が少し吹きつけた。空気をはらんで膨れるスカートを押さえ付けながら自転車から飛び降りる。
立派だ。立派過ぎる。超高層というわけではないけど、ゆうに二十階はありそうなマンション。一人暮らしにしては大きすぎない?
すこしばかり呆然としてほうけていると、自転車置場から戻ってきたシンジにポンと肩を叩かれる。
「どうしたの、入ろう?」
「あ、うん」
おざなりな返事を返して、先に歩くシンジの後を付いていく。
エレベーターに入るとさも当たり前に18Fのボタンを押し、扉が閉まって重い重いモーター音が唸りだす。
「…」
「…」
沈黙は嫌いだ。嫌な事を思い出す。いかに今まで自分が現実から目を逸らしていたかの確認作業のようなもの。とってつけた言葉で、他人も自分も撹乱させた過去。
心を開かなければ、エヴァは動かないわ

そう。私は縛り付いて停滞した自分の脱却のため、ここに来たのだ。
「シンジ」
「ん?」
「お帰りって言いなさいよ」
言った。
過度に冷房の効いたエレベーターの中で、暴発しそうになる顔を見られまいとそっぽを向く。横目でちらっとシンジの方を見るが、私の位置からは後ろ姿しか確認できない。
「アスカ」
振り向きもせず私の名を呼ばれる。ピクリと反応してしまった自分の反応が恥ずかしい。
「会いたかった」
「え」
「おかえり」
あっつい、暑い熱い!
「バ、バカ!余計なのつけなくていいわよ!」
ここでやっと私の方に向いたシンジは、すこし涙目になりながらささやかな笑顔を見せた。
498kou:2009/09/02(水) 06:33:14 ID:???
赤いLEDランプが18と表示して無機質な声がそれを告げる。観音開きに開いたドアをくぐり抜けると、胸がすく程高い眺め。
高鳴りを極めた動悸を押さえ、先程までとは違う心地良い沈黙を保ちながらエスコートされるまま玄関前に来た。
よく考えれば男の部屋にあがるなんて経験したことない。いやいや、元同居人が何を言っているのだ。待てよ、あの時とは色々違う。襖なんていうプライバシー保護に何の意味も持たない場所とここは違う。
覚悟してきた。いやまてそういう意味じゃない。まぁ今更イヤじゃないけど。
「アスカ?」
片手間にノブを捻りながら不思議そうにこちらを見る。
「…ナンでもない」
妙な緊張感を持ちつつ、レディーファーストとばかりにドアを押さえるシンジの横をすり抜けて私は部屋に入った。

率直な感想を言おう。ナンダコレハ。
乱雑に置かれたゴミ袋で踏み場の無い玄関はもとより、仕切からはみ出した洗濯物、溜まった埃、崩れた書籍の山。洗い物が溜まっていないのが逆に目立つが、外食頼みと聞いてた分それは納得。
「な、ナニコレぇ!」
「ごめん、これでも一応片付けた方なんだけど…」
「これがぁ?」
私のイメージの中のシンジは、家事スキル+20常時発動男だった。それがどうだこの有様。
「ンニャー」
立ち塞がる障害物を軽々と乗り越えながら、私の『口実』がやってきた。
「あんたねぇ、こんな環境で生き物育てようってぇの?」
「猫のスペースは確保したんだよ。で、そのぶん僕の居場所が…」
ほとほと呆れた。
忘れていた訳ではないが思い出した。バカシンジだったのだ、この男は。
まさか男の家に初めて上がってすることが掃除洗濯になるとは、お天道様も思っちゃいなかっただろう。

そして大掃除が始まった。

「ねぇアスカ。猫の名前教えてよ」
「ん〜、掃除が終わったら」
「えぇ、ケチィ」
「…あんた私みたいになってるわよ」
499kou:2009/09/02(水) 06:34:06 ID:???
「そうかな」
「そうよ。片付けない、食事作らない、外ヅラは良い。昔は、だけど」
「…自分で言ってて悲しくならない?」
「うっさい、わかって言ってんのよ。ほら、口ばっか動かさない」
「ニャーン」

出来ないわけじゃないので、協力しあうとすんなり大方の掃除は出来た。
途中、黒い塊が掃除機の音に驚いて部屋中を駆け回り埃を撒き散らす珍現象もあったが、難無く掃除補完計画は最終局面を迎えた。
気づけば、時計の針はV字型に開いている。
「休憩しよっか。お腹すいたし」
「そうだね。この子もそうみたい」
床に座り込んだシンジの手の平に纏わり付く猫。甘い声で愛撫を求める。羨ましくなんかない。
餌をやりに立ち上がろうとするシンジ。それを制止する。
「ちょっと待って。はい、これ」
バッグの中から猫缶を取り出して手渡そうとするが、逆に今度は私が制される。
「アスカが上げなよ」
ひょいと猫を持ち上げて自分の胡座の上に乗せると、小さな顔が落ち着き無く私と缶を見比べた。
「ウゥニャー」
さっさと出せ。でなければ帰れ!とでも言いたいのだろうか。
前足でクレクレとアピールする様がとても愛らしい。が、可愛さ余って憎さ一億倍。
蓋をむしり取って匂いだけ嗅がせて、食いつこうとしたらさっと引く悪戯。おろ、おろ、と小さな身体を右へ左へする。やばい。ちょー可愛い。
「可哀相だよアスカ」
困っている猫の額を人差し指で軽く撫でる。ゴロゴロと喉の鳴る音。くそ、敵に塩を送ってしまった。
面白くないので悪戯は止めにして紙皿に中身をほぐし落とすと、初号機も真っ青の突撃を見せる。
「おぉ、パッケージに偽りなしね」
がつがつと元気よく貪る姿を見て、私たちも本格的に腹が減ってきた。

たいした材料も無かったのでありもので作ったオムレツをシンジに振る舞うと、大層喜んで食してくれた。
「あぁ、こんなちゃんとしてるの食べたの半年ぶりだよ」
いわく、料理も家事も同じ延長線上にあって相手が居ないと別にどうでもよくなるそうだ。過去の完璧超人っぷりを知る私にはにわかに信じがたいが、実際この有様なのだから納得せざるを得ない。
量だけは多めに作ったのでそこそこの満腹感。
そして朝から気合いを入れてしまったリスクが、ここで振り返してきた。
500kou:2009/09/02(水) 06:35:00 ID:???
「ふぁあ〜」
重労働で凝り固まった筋肉を伸ばすと釣られて大きな欠伸が出た。はしたないとすこし思ったけれど、よく考えればこれこそ今更だ。
流し台に皿を置きに言ったシンジがこちらを見て少し笑う。
「お疲れ様。ごめんね、せっかく来てくれたのに掃除なんかさせて」
申し訳なさそうに眉を曲げながら言う。
「いいのよ、好きでやってんだから」
いつでもやったげるわよ、と喉の奥に本音を押し込める。
椅子の角で肩甲骨付近の肉を解していると、満腹感から来る急激な睡魔に何一つ耐える事なくソファの上で眠る猫が視界に入った。小さな身体が寝息を立てて上下している。
穏やかな寝顔には人間に対する警戒心などまるで無く、安心しきった様子が伺える。
「懐いてんじゃない。猫」
「そう?かなぁ」
席についたシンジも猫の方を見ながら言う。
「同居人として認められてきたのかな、僕」
「バッカねぇ、あんたが意識してどうするのよ。させるのよ」
「ふぅん…物知りだね」
「ま、まぁ一応大学出てますから」
「じゃあ、そろそろ教えてほしいな」
「へ、何を?」
「猫の名前だよ」
そうだった。完全に忘れていた。あまりにもシンジとの会話が久しぶりで、嬉しくて、楽しくて。
しかし、いざ発表するとなるとそれはそれで恥ずかしいものがある。まるで日記を音読するかのような恥ずかしさ。それも夢日記。
何となくまごまごしてしまって、崩した体勢を正してしまう。余計恥ずかしい。
「……ソン」
「え?」
「ロビンソンよ!長ったらしいから略してロビンでもいいわよ!」
「な、なんで怒ってるのさ」
「怒ってないわよ!悪かったわね、もったいぶった割に普通で!」
ああやってしまった。結局こうなる。
どれだけシュミレートしても、いつまで反省しても、自分の気分を害さないようにスイッチを入れてしまう。
我が身可愛さの自己保身。もうヤダ。こんなの。
「そんな事ないよ。すごく、良い名前だと思う」
501kou:2009/09/02(水) 06:36:36 ID:???
そう言うとシンジは立ち上がって猫がいるソファへ向かう。
優しく猫の横に座るが、快眠を妨げられたとばかりに薄目を開けて無言の講義。
「アスカがお前に名前をつけてくれたよ」
猫の手をとって私の方に手招きのポーズをする。
「ロビンソン。ロビーン。良い名前だねぇ」
「ニャーン」
「ほら、アスカ。ロビンがこっちにおいでって」
不思議と、そう迷惑な顔でもないロビンはするりと私の足元に寄り添ってくる。
尻尾を足首に絡め、シンジの座るソファへと導くように私を引っ張った。
そして私は何も言わず隣り合って肩に首を乗せて、記憶にないほど温かな温度に包まれながら目を閉じる。眠たいから。断じて涙が零れそうだったからじゃない。









そして、コトリとシンジのポケットから携帯電話が落ちた。
502kou:2009/09/02(水) 06:43:25 ID:???
にゃんと!つづきます。
おそらく次がラストになります。

件のライブ感発言ですがw
大元のプロットは出来てるんですが描写とか言い回しを足りない頭で考えるのに時間がかかっちゃうんで、ぶつ切り投下の言い訳としました。
503名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/02(水) 08:21:29 ID:???
乙です。いいですね 続き楽しみです。
504名無しが氏んでも代わりはいるもの :2009/09/02(水) 16:08:10 ID:???
GJ!アスカもシンジも猫も可愛いw
505名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/03(木) 22:39:30 ID:???
投下街
506kou:2009/09/05(土) 05:22:44 ID:???
遅くなりました。>>501続きです。

「はっ…?」
鷲掴まれたように心臓が大きく跳ねた。今まで目を閉じてたと思えないほど一気に意識が冴える。
ギリギリ二人掛けのソファには私一人。そして窓の外は夕暮れ。日はまだ射しているが、窓の位置関係からあまり部屋は明るくない。
シンジと、猫も見当たらない。どこかへ出掛けたのだろうか。
まぁここはあいつの家なのだし、そのうち帰ってくると思う。けど、急に居なくなる事はないだろう。
一抹の不安と一握りの苛々をぶつけるべく、携帯を開きメール画面を起動した。
何も言わずどこ行ってんのよ、とキーを叩いて送信ボタンを押す。
返信を待つあいだ、手持ち無沙汰になるのが嫌だったので掃除の続きでもしようかと立ち上がる。
と、突然バイブ音がソファ下のフローリングを叩いた。
返信にしてはいやに早いな、等と考えるがどうも違う。私の携帯は手に持っているしマナーモードに設定していない。
腰を屈めてそこを見ると、シンジの携帯がぶるぶると震えている。微かに見えるディスプレイにはアスカ、と着信の知らせが表示されている。
バカシンジめ、電話忘れたな。
残念と思う半面少し好奇心、いやこう言うのを魔がさすというのだ。
他人のプライベートを覗き見するという行為は、古から楽しいものだと脈々と人類のDNAに刻まれている訳でありまして。昔の人も出歯亀とか手鏡とかでそういう趣向で楽しんでたんだし。
なんていう非常に独善的かつ無理矢理な正当化を以てシンジ携帯を開けた。
「うわっ」
なんだこりゃ。
待受画面いっぱいに広がる惣流アスカラングレーの笑顔。楽しげにレンズに向かって大きくピースする私。
朧げに、こんな写真を撮ったことがある事は覚えている。一年以上前に。
しかし何故、シンジはこんなに昔の物を保存しているのだろう。
恐る恐るデータフォルダを開けると比較的最近の写真はフォルダ上部に位置しており私にも見覚えのある、学校でのささいな風景が保存されている。たまにメールに添付してくれていた写真。
問題は下部だった。
画面を下にスクロールしていくにつれて私が被写体の画像が多くなってくる。再下層まで行く頃には、来日当初の乱雑な荷物と私が写っているものまであった。
507kou:2009/09/05(土) 05:23:56 ID:???
奇妙な感情を自分の中でうまく反芻できないまま、次は禁断のメールチェックへと進む。

目を引く内容があった。

From:碇シンジ
To:鈴原トウジ

トウジ、僕、今とっても幸せなんだ。

RE:
なんやそれ?なんかあったんか?それと、手首の傷どうや。跡のこっとらんか?

RE RE:
まだ痛いよ。でもいいんだ。これが無いともっと痛いから。

RE RE RE:
そうか。
ところでなんや、しあわせって?何か良いことあったんか?

RE RE RE RE:
いま となりで あすかが ねてるんだ とっても かわいい ろびんも いっしょに

RE RE RE RE RE:
大丈夫かシンジ何かんがえとんねん

RE RE RE RE RE RE:
だ からも ういいん だこ れいじょ うのしあわ せなん て いら な い か ら

画面は唐突に切り替わり、鈴原トウジと表示される。電話着信。
508kou:2009/09/05(土) 05:24:51 ID:???
「もしもし…」
『おい待て!今どこにおんねん』
「鈴原…」
『惣流か!?』
「うん」
『なにしとんねんこのダボ!シンジは!?』
「わからない」
『くそっ!……おい』
「なに」
『お前、シンジの腕見たか?』
「…見てない。長袖、着てたから」
『そうか…。なら教えたる。あいつの腕は今、ズタズタや。傷だらけや。けったいな剃刀でやらかしてエライことになっとる』
「なんで」
『なんで?なんでやと!?お前、ほんまにわからんのか。お前が一人でいじけとるとでも思っとったんか。あいつもあいつでお前に罪悪感感じとったんや』「でも、そんな素振りなんて…」
『わしも詳しくは聞いとらんから知らんがな、惚れた女の前でそんな醜態晒す訳無いやろ。…ちっ、バカが二人、おんなじような事しくさってからに…』
「私…」
『頼む、お前しかおらんねん。お前じゃないとシンジは帰ってけぇへんねん。言い過ぎた罰は後でなんぼでも受けたる。だから、今すぐ追い掛けろ。まだメールのやり取りしてからそんなに時間経っとらん』
「分かった」
『縁起悪い事言うようやけど…万が一のことになったら、ワシはお前の事を一生恨むからな…』
509kou:2009/09/05(土) 05:26:27 ID:???
直ぐさま通話を切って玄関へと走り出した。
乱れた髪を直すことも、靴を履くことも、涙を拭くことも忘れて走った。
報いなんだろうか。今まで、何もしなかった私への。
やっとここまで来れたのに。やっと素直になれたのに。
嘘だと言ってほしい、夢であってほしいと願うが、そんな逃げの気持ちがいつまでもシンジを傷付け続けていたのだ。
今の私なら分かる。
どす黒い気分の底辺から明るい未来への展望が見えた瞬間、何もかもがちっぽけに感じる。自分自身さえも。だけどそれは、偽りの再生。
自分の価値を認めるには他人が必要なのだ。自己完結では、何時までも答えは出ない。
その他人に、私はなりたい。シンジに認められたい。シンジを認めたい。
そのためにここに来たんだ。そのために、あの場所へ走るんだ。

サードインパクト後に建造されたマンションと違い、このコンフォートは爆風の影響で激しく損傷している。ヒビや亀裂が入って所々鉄骨が剥き出しの状態になっている。
ここが立入禁止区域に指定されて久しいが、前に一度部屋の様子を見に行ったことがあった。
置いていた家具やインテリアは台風が過ぎたように倒れていたが、備え付けのキッチンとかベッドなんかはほぼ原型を留めた状態だった。
外から様子を伺った時、少なくともベランダにシンジの姿は無かった。
しかしもしガスや電気が少しでも通っていたら、それだけでも十二分に事足りてしまう。
身の毛もよだつ想像を何とか振り払い、使えないエレベーターを無視して階段を駆け上がった。
「…シンジっ」
それほどの距離を走った訳ではないのに既に息は絶え絶えになってきた。ダラけにダラけた生活を送っていたツケがここで帰ってくるとは。振る腕は鉛の様だし、口の中は渇いて息苦しい。
しかしここで足を止めてしまえば、私は一生笑えなくなる。シンジと、一緒の未来が消えてしまう。
我慢ならない。それだけはどうしても欲しい。あいつが望むならどんな人間にでもなってやる。けど、どうか私の未来は奪ってくれるな。
天におわす気まぐれな神様よ。どうかこの我が儘だけは、叶えて。

そして一枚の扉の前に立った。
510kou:2009/09/05(土) 05:27:15 ID:???
もう忘れていたと思っていたけど、体が覚えていた。ここから見える景色の高さ、ドアの汚れ具合、エレベータまでの距離。
間違いなくここが、私達が過ごし、通じ合い、憎しみ合った原点。葛城の表札は剥がれ、糊跡が痛々しく佇んで見える。
扉の前に立っても反応しない所を見ると、感知センサーは壊れているようだ。
よく見ると僅かに扉の隙間から光が漏れている。やはり、シンジはここへ来ている。
扉の取っ手を起こし、力の限り扉を引く。元々電動で動くはずの機構が邪魔して、乳酸の溜まりきった腕の筋肉が更に悲鳴をあげた。
ひらひらとスカートの裾がうっとおしい。
歯を食いしばり力を込めると、人一人入れる程度開いた。
隙間に体を滑り込ませる。剥がれた金属片に服が引っ掛かったが、気にせずそのまま捩りこんだ。

「シンジ!」

靴のまま部屋に上がり込みリビングを一瞥するが、居ない。
冷たい汗が背中を伝う。まさか、見当が外れた?
しかしまだ部屋はいくつも有る。しらみつぶしに…
「…ニャー」
唐突な鳴き声に驚きそちらを見ると、毛並みの乱れたロビンがこちらを見ていた。ひどく疲れた様子で、そばに寄り抱きかかえると小さな鼓動が腕に伝わってくる。
そして、この場所はシンジの部屋の前。

私が、追いやったシンジの、部屋。

そっと襖を開けると埃っぽい空気の中、まるであの時からずっとそうしていたかのように、ベッドの上でこちらに背を向けて横たわっていた。
「…シンジ」
名を呼ぶことも躊躇ってしまいそうになる重たい空間。どんなに外が、日常を取り戻してもこの場所の時間は凍り付いたまま。
それを証するように、声をかけてもシンジの反応はない。まさかと思い、足を前へ踏み出し近付こうとする。
「来るなっ!」
張り上げられた声は深々と私の心臓に刺さった。意志を持ったように背中の産毛が逆立つ感触。
「ごめん…でも、本当に来ないで…」
荒げられていた声は調子を戻しているが、奥底に潜む灰暗さは隠しきれない。
「もういいんだ」
「何がよ」
511kou:2009/09/05(土) 05:27:55 ID:???
「こんなに楽しい時間は本当に、久しぶりだった。アスカにずっと会いたかった」
「…」
「楽しすぎて、嬉しすぎて、怖くなった。こんな僕が、いつまでもそんな幸福を享受し続けられるわけが無い。受け止められるわけ無い」
「そんな事、分からないじゃない」
「分かるんだ。だって、トウジやケンスケと楽しく喋っていても、いつの間にか脳裏に綾波のあの姿が浮かぶんだ。父さんの姿が、アスカの、あの姿が」
「…」
「罪滅ぼしのつもりでロビンを拾ってみたけどそれでも駄目だった。そしたら、君に会えた。君が会ってくれた。…ロビンと戯れるアスカを見て悟ったんだ。もうここで終わらせた方が幸福だって」

「…あんたって」
「?」
「ホンットにバカァ!?」
「なにを…」
「罪滅ぼしですって?そんなの、私だって一緒よ。罪悪感でロビンを拾おうとした…けど、それじゃダメだって分かったのよ」

とうに水分不足の体が、更に水分が消費し始めた。

「私を認めてほしい、シンジに認めてほしいと思ったから、ここに来たの。まずシンジを認めて、そしたら私を見てくれると思ったから…」
視界はグチャグチャに歪んでいるので定かではないが、シンジがこちらに体を向けた気がする。
「なのに卑怯よ。ここぞとばかりに逃げようとするなんて」
「…こうしてる間にも、頭からあの光景が離れないんだ」
ここで何かが私の中で、プツリと切れた音がした。
いや、正確に言えば崩れたのかも。

「じゃあどうすればいいの!?どうすれば今の私を見てくれるの!」
我ながら情けない。餓鬼のように地団駄を踏み、喚き散らす様は見物だったろう。もしかしたら鼻水も出ているかもしれない。
だからシンジも酷く驚いた顔をしたあと、伏せがちな顔から瞳だけを上げてこちらを見た。
「少しでいい…から、あの頃を忘れさせてよ…」
そしてシンジも何かが切れたようだった。
「本当は死にたくない!生きていたい!でも、苦しいんだ!死ぬほど苦しいんだ!」
へたりきったベッドのスプリングは、叩かれた衝撃を吸収できずに床に直接叩きつけた。
512kou:2009/09/05(土) 05:36:58 ID:???
人間として『優しくなる』と言うことは、きっと『弱くなる『と類義語なんだろう。こんなにも胸が痛い。こんなにも心が痛い。でも、私は弱くていい。この痛みが分からない『強さ』なんて欲しくない。
「ねぇ…キスしよっか」
「なに言って…」
「キスよキス。したことあるでしょ」
「…」
「それとも私とするの、イヤ?」
「…イヤじゃない」
「じゃあ、しよう」
「アスカ、ほんとに何をっぅんぅ」
ごく個人的な見解をするなら、一年前のこの行為が私にとって全ての間違いの発端だったように思う。一方的な感情の押し付け。事実の隠蔽。責任転換。全部、私の糞みたいなプライドのせい。
だから、出来ることならこの行為で間違って出来た道を、今という瞬間に収束させたい。思い上がりかもしれないけど、これでシンジを繋ぎ止めたい。
水道は止まっている。うがいは、しない。
「ぅん…んぁ…?」
背中に触れる、シンジの腕。指先が私の脇腹あたりで不安そうに彷徨っている。抱きしめるというにはあまりにも弱くて儚いけど、触れた感触があまりにも真実味をおびていて。
息をするのも忘れて、お互いの唇の上下左右を触れさせる。
「…ぷはぁっ」
「はぁ…」
射し日が届かないこの部屋は薄暗くて、お互いの顔が良く見えない。でも、今はそれでいい。今は何も見えなくていい。
「バカシンジ…二度とこんな事…しないでよね」
「ごめんアスカ…ほんとうに…ごめん」
「もうしないって約束できる?証明してよ」
「え、でも、どうやって」
「鈍感」
「あ。うん」
ぎこちない動きで迫る顔に少し笑いそうになったけど、初めてシンジからのキスをした。
一回目は、痛かった。二回目は、泣きながら。そして三回目は…。バカシンジ、そんなキスをどこで覚えた。あとで追及してやる。
【玄関前】
「ニャーン」
「おぅ、お前がシンジの言うてたロビンか」 「ウニャー」
「お前よりも先に飼い主が盛っとったら世話無いのう」 「ゴロゴロ…」
「ほぉんまに、世話の焼けるやっちゃであいつら…」 「ニャー」
513kou:2009/09/05(土) 05:40:46 ID:???
−そして−

「こらぁシンジ!いつまで寝てんのよ!遅刻するわよ!」
「ふぁ、アスカ。おはよう…」
とっくに制服姿に着替えている私と対照的にパジャマ姿のまま、のそりとベッドの中から反応するシンジ。
快眠の流れにN2爆弾を落としたにも関わらずまだ寝ぼけ眼で、ふらふらとクローゼットの前まで歩いて行く。
「まったく、式の日まで眠りこけるなんて。よっぽどふやけた脳みそしてんのかしらね」
「あー、うん」
クローゼットを開けて制服を取り出しながらおざなりな返事を返される。
そしてパジャマのボタンをプチプチと外しはじめた。私の前で。
「キャー!?エッチ痴漢変態スケベ!なに見せてんのよ!」
「ぶへっ!?」
見事に水月にえぐり込んだ正拳突きが、半覚醒の意識を半ば無理矢理に起こさせた。

「じゃ、ロビン。行ってくるね」
「ウゥニャーン」
ロビンの頭を一撫でして玄関を開ける。見送るように、大きな目を開けておすわり状態。まだまだ子供なのにすっかり体だけは肉付き良く育ってしまった。まさに猫可愛がりの結果だろう。
「あーあ、ロビンすっかりプクプクになっちゃったわね」
学校までの道のりを何時ものように走って行く。ここ最近寝坊気味のシンジを起こしてから一緒に登校するのが日課になっていた。
でもそれも、今日が最後の日。
「アスカが来るたび猫缶三昧だったからね。そりゃ太るよ」
「でも、これからはそれも出来ないわね…」
すっかり冬を越したといえどもまだ寒い。しっかり着込んだダッフルコートが走行の邪魔になる。
「って、急がないとマジ遅刻しちゃう!急げシンジ!」
「う、うん!」
寒波を切り裂きながら、壱中への坂道を駆け上がる。

今日が最後の中学生活。
そして卒業式の後は引っ越し作業。誰の家に転がり込むかは言うまでもない。でも私ずっと休んでたけど、ちゃんと卒業証書貰えるのかな?
まぁいいか。

終劇
514kou:2009/09/05(土) 05:47:19 ID:???
投下終了です。
いや難産でした。シンジ難しいっす。
突っ込まれる前に弁明しておくと、シンジが実は病んでるっていうプロットは元からありました(ライブ感でない)
一応、伏線的なものを仕込んでたんですけど気付いていただけたでしょうか。
ではまた次の機会に。どこかのLASスレで。
515kou:2009/09/05(土) 05:57:11 ID:???
あ、お礼書くの忘れてました。
応援&投下待ちしてくれた皆さん。ありがとうございましたm(__)m
516名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/05(土) 08:11:00 ID:???
GJっす!
517名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/05(土) 11:43:56 ID:???
良かったです!GJ
ここちょっと過疎ってるけど、コウさん神のために毎日来てます
518名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/05(土) 23:07:26 ID:???
こうさんGJ!
519名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/05(土) 23:23:50 ID:???
GJ
520名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/06(日) 10:20:52 ID:YHKI9qze
>>450 gj
521だぶ:2009/09/06(日) 22:04:11 ID:???
4年ぶりぐらいにちょっと書いてみました。
稚拙な文章なのはご勘弁ください
522だぶ:2009/09/06(日) 22:06:53 ID:???
 シンクロテストも各種訓練もない日曜の午前。
アスカはソファを背にして床に腰を下ろし、ぼーっとテレビを見ていた。
シンジはそのソファに座って、のんびりと料理雑誌をめくっている。
「……シンジ、シンジ!」
シャツをアスカに引かれたシンジは、ちょっと迷惑そうに応える。
「…どうしたの、アスカ?」
「あれ、あれ!」
アスカが指さすテレビ画面では、丸々と肥えた芸能人が丼物に舌鼓を打っていた。
隠れた名店を紹介するグルメ番組のようだ。
「…でみかつ丼?」
「あれ、食べてみたい」
「夕食で作れってこと?」
シンジはレシピを考えてみる。デミグラスソースを出来合のものにすれば作れないこともないかな。
「ちがうちがう。あの店、第3新東京の○○3丁目の丼専門店だって。今から食べに行こうよ!」
「…今からねえ」
ちょっとシンジは考えるそぶり。基本的にインドア派のシンジにとって、カツ丼食べるためだけに炎天下に外出するのはちょっと遠慮したいところ。
「今日の夕食当番は私が代わるからさ!お昼はあれにしよう!」
高校生になってアスカは少しずつ家事を始め、今では食事の準備や掃除などはシンジと交代で行うようになっていた。
最初は危なかしげだった腕前も、今ではシンジに肉薄する程度にまで成長している。
アスカにそこまで譲歩されたのならば、シンジも断れない。
「うん、それじゃあ行ってみようか」
ちょっと苦笑しながらソファから立ち上がった。
「よしよし、聞き分けのいい子にはお姉さんサービスしちゃうぞ」
アスカもはねるように立ち上がり、着替えるために自室へと向かう。
その姿を優しい目で追いながら、シンジはリモコンでテレビの電源を切った。

523だぶ:2009/09/06(日) 22:07:48 ID:???
 あれから3年。
 使徒戦役が終わっても、ネルフのオーバーテクノロジーの保守・管理は必要なわけで。
特にぜーレとの争いを制し、事実上世界の覇者の位置に立ったネルフにとって、エヴァンゲリオン各機の能力維持については最優先項目の一つである。
故に、搭乗者達の訓練・テストなどはスケジュールの遅延・未消化などの無いように、粛々と実行されなければならない。
 のはずだったが、ある日曜日の午前8:00、その日予定されていたシンクロテストが突然中止となった。
原因はテスト最高責任者の某博士の体調不良…ぶっちゃけて言えば、リツコがつわりが酷くなり、テストへの立ち会いが不能となったためである。
 テストに臨むために連れ立って自宅を出ようとしたところでその報を受け取った二人の適格者は、
(これが世界に冠たる組織の実情なの?)
(父さん…もう弟妹はいらないよ…)
と、あまりの情けなさにがっくりと肩を落としたのである。
 ちなみにシンジの父親は第1適格者を養女とし、新妻に毎年子供を産ませている。
この3年で、シンジには実に3人もの弟妹が出来ていた。
養女の旧姓綾波嬢はともかく、思春期に年の離れた弟妹が次々と出来るシンジ君の苦悩は、結構大きいものがある。
524だぶ:2009/09/06(日) 22:10:24 ID:???
 で、突然完全フリーとなった日曜日であるが、当然何の予定も入れて無かったシンジとアスカである。
インドア派のシンジはともかく、アウトドア派のアスカはどうにかしてシンジと外に行きたかったわけで。
ちょっと強引ではあったがシンジと一緒に歩けることになり、アスカの御機嫌は上昇傾向にある。

「…今日も日差しが強いや」
「男の子でしょ、そんな情けないこと言わないの!」
「そーゆーの、男女差別じゃないの?」
「男女差別という言葉は、女性の権利保護のためだけにあるのよ!」
「…やっぱり男女差別じゃないか…」

 口論をしながら、並んで歩く。言い合いながらも、二人の表情は柔らかだ。
口論という名のじゃれ合いは、二人にとって一番大事なコミュニケーションのひとつ。
お互いの顔を見なくても、お互いに優しい顔をしているのがわかっている。
目的地の丼屋までの結構な距離も、この二人にとってはなんら苦になるものではなかった。
525だぶ:2009/09/06(日) 22:12:22 ID:???
「…ご注文はお決まりになりましたか?」
 従業員のおばさんが、オーダー確認にやってきた。
「えーと、このでみかつ丼を」
 シンジがメニューの写真を指さした。
「私、地鶏親子丼で」
「えっ?」
 シンジが驚いた顔をする。
「アスカ、でみかつ丼じゃないの?」
「それは、あなたが頼んだんだからいいの。せっかく名店と言われてる店に来たんだから色々試すべきでしょ?」
「それって、つまり…」
「そ、いつもみたいに半分ずつ食べればいいじゃない」
 パタパタと戻って行く従業員を見ながらアスカは応えた。
「そりゃそうだけど…」
 シンジは少し赤くなっている。外で二人で食事をする時に、たまにケーキなどを半分ずつ食べることはある。
しかし、そういう時は最初に二つに分けてから交換するわけで。
丼物だとどうしても半分食べてから交換することになり、妙に生々しさを感じてしまうのだ。
恋人同士ならばいざ知らず、一応友達以上恋人未満の関係である二人にとって、それはちょっと行き過ぎた行為にも思えて。
シンジは少し上目遣いにアスカの表情をうかがった。
アスカはその事実に気がつかないかのように、特に何も言わずに手に顎をのせて厨房の方を眺めていた。
ただ、その頬は少し赤く染まっていたが。
客の多い店内の喧噪の中、二人は静かにオーダーが届くのを待っていた。
526だぶ:2009/09/06(日) 22:14:18 ID:???

「お待たせしました、でみかつです」
 最初にでみかつ丼がやってきた。おばさんが机の中央に置いた丼を、アスカがさっと奪ってしまう。
「アスカ、それ僕のだろ?」
「どうせ半分ずつにするんだから、どっちのものでもいいでしょ。レディーファーストよ!」
 などと言いながら、アスカは割り箸を割っていた。
「やっぱり、男女差別じゃないか…」
 シンジは苦笑した。さっきまで二人の間に展開していた微妙な空気、その空間を払拭するためにアスカがあえておどけたのだ。
アスカの優しさの発現はいつもかなりの変化球で、ややもすると彼女の真意と反対の方向に受け取られかねないこともある。
しかし、シンジはそんなアスカの真意を常に理解し、その不器用さを非常に心地よく感じることが出来る能力を会得していた。

 続いて親子丼もやってきた。二人はそれぞれの獲物をゆっくりと吟味する。
「ふむふむ、トンカツの下のキャベツがいいアクセントになってるわね」
「関西風の甘い煮汁が地鶏の濃厚な味わいをうまく包み込んで…」
「はむはむ、トンカツも軟らかくて、でもかりっとしてて…」
「う〜ん、玉子も地鶏に負けない腰を持ってるなあ。きっとこの地鶏の玉子なんだろうなあ」
 こんなことを言いながら飯を食う高校生カップルが来たら、飯屋もさぞやりにくいことだろう。
527だぶ:2009/09/06(日) 22:15:04 ID:???
 そのうちシンジが親子丼を半分食べ終えてしまった。
「アスカ、半分食べたよ」
 アスカもシンジに丼を差し出す。
「はい、それじゃ交換ね」
「…アスカ、これ4分の1も食べてないじゃないか」
「ばかね、ここの丼は大きいから両方とも半分ずつ食べるのは私には多すぎるの」
「ああ、太っちゃうから…」
「バカシンジ!!」
びし!と割り箸がシンジの眉間数センチ手前に突きつけられた。
「それ以上言うとセクハラだぞ?女の子はデリケートなんだからね」
「はいはい、デリケートデリケート」
「…なんかぞんざいね…」
「それより、僕が食べる量が多くなりすぎるんですけど」
「シンジは育ち盛りなんだから、たくさん食べてうんと大きくならないとね」
「僕は幼稚園児ですか…」

 じゃれ合いながら、二人とも新たな丼に挑みかかった。
(…さっきのデミグラスソース味も良かったけど、この親子丼の優しい甘さはさらにいいわねえ)
もむもむと咀嚼しながら、アスカは目の前のシンジを見た。
「…う〜ん、カツを香ばしく揚げるために豚肉の厚さを…」
「かけているソースも、自己主張をせずあくまでもカツのソースとして機能しているなあ…」
「ご飯もコシヒカリと何かをブレンドしているようだし…」
 首をひねったり目をつぶったり、真剣に吟味しているシンジ。
その様々に変化する表情を見ているだけで、美味しい親子丼がさらに味の深みを増す気がする。親子丼を食べながら、ほのかな幸せを実感するアスカだった。

528だぶ:2009/09/06(日) 22:16:12 ID:???
 店の外に出て、アスカは手をかざしながら空を見上げた。
シンクロテストで潰れる予定の休日が、シンジと一緒にお出かけとなったのだ。
夏の太陽の光すら、今の彼女には幸福感をもたらせてくれる。
今日の晩ご飯は何にしよっかな?
鼻歌交じりに献立を組み立てるアスカだった。

「ありがとうございましたぁ!」
 シンジが会計を済ませ店を出た。アスカは跳ねるようにシンジのもとへと向かう。
「さ、シンジ。晩ご飯の買い物をして帰るわよ」
 そうしようか、というシンジの返事を予想していたアスカだったが、シンジは
少し逡巡した後、意外な返事を返した。
「アスカ、これからどこかに行かない?」
「へっ?」
「今から買い物して帰っても中途半端な時間になるしね。どこかで遊んでいこうか」
アスカは一瞬驚いた。シンジが自分から誘ってくるなんて、雪でも降るんじゃないかしら。
そう思ったアスカだが、真っ赤な顔であさっての方を向いているシンジの姿を見て、不器用な彼の勇気を察した。
「…そうね、せっかくの休みだもんね」
アスカは、シンジに満面の笑みを返した。その笑顔に、シンジの鼓動が少し早くなる。
529だぶ:2009/09/06(日) 22:19:27 ID:???
とりあえず、ここまでです。続きは来週日曜になるかと思われます。
御批評・御批判・御指導・その他苦情、どうぞよろしくお願いいたします。
530名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/06(日) 22:25:18 ID:???
GJっす!
続き待ってますよ!
531名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/06(日) 22:35:34 ID:???
テレビに紹介されるような店ならすごい混んでるんじゃないの
アスカは行列待ちとか嫌いそうだけど
532名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/06(日) 22:49:30 ID:???
>>531
昼飯時を過ぎていたとかじゃないの?まぁ、こまけー事は良いんだよ
533名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/06(日) 22:57:48 ID:???
人当たりの柔らかそうなアスカさんですね
良い感じでした。またのご投稿を楽しみにさせて頂きます
534名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/06(日) 23:08:42 ID:???
>>529
GJ!
初々しい二人がすごくいいですね
続き待ってます!
535名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/06(日) 23:14:50 ID:???
>>533
アスカって、大人に成れば大人しくて良い子に成るタイプだと思うよね
536名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/06(日) 23:25:17 ID:???
>>535
思わないけどな。

そんなに小さくまとまるタマじゃないだろう。
537名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/06(日) 23:26:29 ID:???
>>535
聡明な子だから、かつての自らの発言や行動を
「あーもうっ穴があったら入りたいわよっ、あたしの馬鹿ッ!」
とか何とか言って恥ずかしがっていそうな気はしますね
538名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/06(日) 23:45:19 ID:???
学生時代に俗にいう不良って人たちが
成人するといい人になるのといっしょかね?
539名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/07(月) 00:31:46 ID:???
社会人としてのアスカと、シンジの前にいるときの大人アスカでまた違うだろうな。
さらに、社会人アスカも人前で猫をかぶる惣流と独立個人主義の式波で違いそう。
540名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/07(月) 03:03:32 ID:???
惣流も式波も、健全に成長すれば『いい女』になる
間違いねぇ
541名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/07(月) 07:50:16 ID:???
>>537
何そのアスカ。
かわゆくて萌える
542名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/07(月) 19:01:09 ID:???
アスカの場合は虚勢張ってるだけだから、大人に成ったら
大人しく成るタイプ。というか、高校生ぐらいで下手すれば
別人に成っているかもしれない位だぞ
543名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/07(月) 19:45:35 ID:???
アニマのアスカは高校生だな
544DESTINY 1話:2009/09/07(月) 23:14:04 ID:???
「なあ、碇。惣流って彼氏いるのかな?」
「そんなこと知らないよ。自分で聞いてみたら健介」
「冷たいこと言うなよ。お前ら長い付き合いなんだろー」
「たまたま小中高が一緒なだけでそんなに親しくないよ」
「なあ、それとなく聞いてもらえないかなー、頼むよ。俺達親友だろ!頼む!」
「今度な、気がむいたら」
司書室での放課後ティータイム。
ドアを開けるといつもの笑い声と甘いお菓子の匂いが出迎えてくれる。
「真嗣、健介遅いじゃない」惣流は二人の間に割って入る。
「今日のケーキ当番は綾波よ。どう感想は?」
惣流からの質問に答えようとする真嗣は綾波のまっすぐな瞳を感じていた。
「とってもおいしいよ。この間の惣流のに比べたらすごくおいしいよ」
「あんですってー!」惣流が真嗣に詰め寄る脇で健介が裏返った声で叫んだ。
「ボ、ボクは惣流さんの方がおいしかったですー!」
「あ、ありがと・・」あっけにとられる惣流。
「…ありがと。碇君」綾波が紅くなった顔を見られまいとうつむき答える。
「なんや、ええ感じやな、真嗣と綾波。新しいカップル誕生やな!」
「やめなさい鈴原!」そういうと洞木は惣流をチラッと見る。
「冬治は陽と付き合いだしてから、なにかとカップリングしたがるにゃー」
「真木波の言う通り!これ以上この司書室でのカップル誕生は先生が許しません!」
葛城は心中(33歳で独身、彼氏なしの私を差しおいて許せん!)と絶叫していた。
「ええじゃやないですか、センセー。互いに惚れあったモン同志が助け合い、励ましあう幸せというもんをこいつらに教えてやりたいんですよ」
冬治がこぶしを奮って力説する隣で陽が真っ赤になり拳を振り上げた。

そんな他愛もない高校生活。
鈴原と洞木以外は恋人関係に発展することなく僕らは卒業していった。
僕は父親との確執から大学に進むことなく、卒業と同時に家を出た。
父親から手切れ金同然に渡された金で古いアパートを借り一人暮らしを始めた。
家を出る時に父親名義のケータイは置いていき手元にはSDカードだけ残った。
一人暮らしを始めて2年、彼らとは音信不通になっている。
ようやくケータイを購入した僕は健介に電話をした。
545DESTINY 2話:2009/09/07(月) 23:16:15 ID:???
「真嗣か?今迄なにやってたんだよ!みんな心配してるんだぞ!」
久しぶりの健介の声に僕はうれしくなる。
「とにかく会おうぜ。みんな集めるからさ」
それから3日して飲み会が開かれることになった。
遅れてきた真嗣は店員に通された小部屋に懐かしい顔ぶれを見る。
冬治、洞木、真希波、綾波、惣流、健介。
「まずは細かいことは抜きや!真嗣生存を喜ぶ会はじまりやー!カンパイ!」
皆それぞれ言いたそうな雰囲気を察した冬治はジョッキ片手に立ち上がり、
カンパイを叫ぶと一気に飲み干した。
「かんぱーい」綾波が同じくジョッキを一気飲みしようとして盛大にむせる。
「綾波、あんた、お酒飲めたっけ?」惣流と真希波に背をさすられる綾波。
「碇くんとかんぱいしたくて練習した」
「お酒は練習するもんじゃないの。勢いで飲むもんにゃ!」
真希波は綾波のジョッキを取り上げグイッと飲み干した。
「あんたはジュースで我慢しなさい」ジュースをグラスに注ごうとする惣流に
「いや、お酒飲むの」と綾波が掴もうした瓶ビールを真嗣が手に取り綾波に差し出した。
「ボクに注がせてよ」「・・・はい」差し出されたグラスにビールが注がれる。
「うれしい」「ゆっくり飲んでね」綾波は一口くいと飲みおいしいと呟いた。

「なあ真嗣。オレ今、惣流と付き合ってるんだ」惣流の体がビクッと揺れる。
「やだ、・・・健介。今そういうこと言わないでよ」
「いいじゃないか。どうしても碇に教えたかったんだ。俺たち親友だぜ!」
健介がこれ以上ない笑顔で真嗣に笑いかける。
「なあ、碇も喜んでくれるだろう」
「ああ、よかったな健介!おめでとう!」
「ありがとう!碇!」
その日、連絡先を交換して飲み会はお開きとなった。
「また、近いうち集まろうぜ」
べろべろになった冬治に肩を貸して歩いていく洞木。
同じく一人で歩けなくなった綾波を担いだ真希波。
手をつないで去っていく健介、惣流を見送り僕は帰路についた。
546DESTINY 3話:2009/09/07(月) 23:24:51 ID:???
新着メールが2通。

真嗣。二人だけで会いたい。ちゃんと話がしたいの。お願い。返信ください。
明日香

Re:健介と一緒ならいつでもOKだよ。


碇くん、昨日は会えてとても嬉しかった。碇くんを見ているとポカポカした気持ちになれるの。
また、会いたい。お返事待っています。
綾波

Re:綾波さん、いま、仕事が忙しくて中々時間が取れないけど、いつか必ず会えるようにします。ごめんね。


その日の夜、健介からメールが来た。

真嗣。おまえの家に遊びに行くぞ。次の休み教えてくれ。

Re:うちは招待できるような所じゃないよ。古くて汚いし。外で会おうよ。次の日曜日ならOK。

Re:Re:みずくさいぞ真嗣。そんなの気にするような仲じゃやないだろ!つもる話もあるしさ、ゆっくり話がしたいんだよ。

Re:Re:Re:わかったよ。○駅に着いたら電話してくれ。迎えにいくよ。

Re:Re:Re:Re:OK。楽しみにしてるぜ。
547DESTINY 4話:2009/09/07(月) 23:32:15 ID:???
次の日曜日、案の定、健介と惣流、それに予想外に綾波も来た。
健介が気を利かしたつもりだろう。
僕のアパートは古い木造の2階にある。
目の前が公園で日当たりが良いのが唯一の取柄だ。
6畳一間、風呂は無い。
「なんだ、以外とキレイというか、なにも無いんだな」
部屋にはベッドと本棚、小さなテーブルがあるだけでテレビ、冷蔵庫などの家電は無い。
食事はコンビニ弁当ばかりなので、台所のコンロは一度も使用したことがない。
綾波はなにか作るつもりで食材の入ったスーパーの袋を持っていたが、
置き場所に困っていた。
「ごめん、綾波さん。ここで料理は作れないんだ」
包丁、まな板、食器さえない。マグカップが1個あるだけの流し場。
「碇、来る道にスーパーあったよな。ちょっと買出しに行ってくるよ」
健介が惣流を連れて買出しに出ようとするが、惣流は嫌そうな顔をして綾波を見る。
綾波は惣流から目をそらしうつむいた。
惣流は仕方なしと立ち上がり、健介と部屋を出て行く。
548DESTINY 5話:2009/09/07(月) 23:33:52 ID:???
「碇くん、ごめんなさい」
ふたりが居なくなるとか細い声で綾波がしゃべり始めた。
「どうしても会いたかったの」
「卒業式の日、突然いなくなって、ケータイも繋がらなくて、家に訪ねていったら出て行ったと言われて・・・」
「座りなよ」
綾波は手にした袋を落とし、真嗣に抱きついた。
「会いたかったの。恋人同士じゃないのにおかしいけど、忘れられなかった。碇くんの笑顔が見たくてこの2年ずっと苦しかった。」
綾波にこんな激しい一面があるとは真嗣は気づかなかった。
「もう、だまってどこかに行ったりしないで!お願い!」
悲痛な叫びが真嗣の心を揺さぶった。
綾波の顔が涙に濡れている。
「わかったよ。もうだまってどこかに行ったりしない」
「約束よ」「約束する」そう言うと真嗣は微笑んだ。
綾波は背伸びをすると真嗣に唇を合わせた。カツッと歯と歯が当たる。
あまりにとっさの出来事に真嗣は硬直する。
「約束の印。・・・好き」
真嗣は返す言葉が見つからなかった。

「碇ー!帰ったぜー!」
わざとらしく声を上げてドアを開ける健介。
二人は両手いっぱいにポリ袋を下げている。
「生活必需品を買ってきたんだ。遅くなったけど引越し祝いだ。受け取ってくれよ」
背を向けて涙を拭き取った綾波は健介からポリ袋を受け取り、惣流と一緒に台所に向かう。
一瞬、真嗣を見た惣流の顔がひどく悲しそうに見えた。
549DESTINY 6話:2009/09/07(月) 23:38:28 ID:???
小さなテーブルいっぱいに置かれた手料理。
次々と空けられるビールの空き缶。半分以上は健介が飲んでいる。
とうとう酔いつぶれた健介は眠ってしまう。
「真嗣、今日泊まらせてもらっていい?」
綾波もスースーと寝息を立てている。
「これじゃ仕方ないね」
真嗣は綾波を抱き上げてベッドに運んだ。
「真嗣・・・零にはやさしいのね」
悲しそうな目で真嗣を見上げる明日香。
「あたしにはちっとも優しくなかったね」
「惣流には健介がいるじゃないか」
「やめて・・・健介とはそんなんじゃない」
「なに言ってんのさ。健介が付き合っているって」
「違うの。あたしは健介を利用しているだけなの」
明日香は健介が寝入っているのを確認して続ける。
「健介のそばにいれば、真嗣と連絡とれると思って・・・それで付き合うことにしたの、別に健介のこと好きでもなんでもない」
明日香は真嗣を押し倒し、耳元に唇を近づける。
真嗣は押し付けられた柔らかな胸から激しい鼓動を感じていた
「ねえ、真嗣。ほんとにあたしの気持ちに気づいてなかった?あたしの視線を感じていなかった?あたしいつでもあなたを見ていたのに。あたしの気持ちが届くように思いをこめていたのに」
明日香の熱い吐息が真嗣の唇にかぶさり、柔らかな唇が吸い上げる。
音を立てて真嗣の唇に吸い付き、舌を絡ませる明日香。
唇を離しチロッと舌なめずりした明日香は真嗣にささやいた。
「零には渡さない。真嗣はあたしもの」

僕は明日香と秘密を持ってしまった。
その秘密は健介を裏切り、零を傷つける最低の秘密だ。
明日香を抱いてしまった、それも二人がいる部屋で。
明日香は痛みに耐えていたのに、僕は自分の快楽に溺れていた。
明日香を好きなのかわからない。
ただ、やさしくしてくれる誰かを求めていただけかもしれない。
僕は・・・最低だ。
550名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/07(月) 23:53:11 ID:???
つまんね
551名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/07(月) 23:56:52 ID:???
え…?これで終わり?
オチは?
552名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/07(月) 23:57:46 ID:???
つまらない面白いは別にしても、ここに投下するモンじゃないな
テンプレの禁則事項に抵触している
553名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/08(火) 00:03:15 ID:???
実はシンジの気を引くためにケンスケと一芝居うったのならまぁLASになるかも知れんが
554名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/08(火) 05:11:04 ID:nVZw/aof
こんな面倒なこと良くできるな
555DESTINY:2009/09/08(火) 07:01:04 ID:???
>>550
ROMに戻ります

>>551
今回投下したのはプロット全体の1/4位

>>552
スミマセン。
テンプレの内容を忘れてました・・・orz
投下中止します

>>ALL
板の削除に関わるミスをしてしまい申し訳ありませんでした



556名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/08(火) 08:37:09 ID:???
総合スレなら問題ないと思うよ
削除されるほどのエロ描写でもないし

つまんねとかいう人は無視していいよ
557名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/08(火) 08:58:17 ID:???
>つまんねとかいう人は無視していいよ

同感だ。

まあ、俺もつまらないとは思うが。
558名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/08(火) 12:34:53 ID:???
ある意味ヤオイだなw
559名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/08(火) 20:58:19 ID:???
まあドンマイだな
口直しに十日町
560名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/08(火) 20:59:19 ID:???
>>557
> 同感だ。
> > まあ、俺もつまらないとは思うが。
傷口に塩を塗りつける様な事しなくても…

まあ、確かにつまらないんだけれどね
561名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/08(火) 22:21:46 ID:???
投下してくれただけでも乙
まあ、がんばれ
562名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/08(火) 22:55:22 ID:???
無視よりかはハッキリ言ってあげた方が良いな。
どこが駄目かを指摘しないと次に繋がらないけど。
563名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/09(水) 00:07:20 ID:???
>どこが駄目かを

面白いところがないところ。
564おいたん:2009/09/09(水) 00:26:41 ID:???
アイツは帰ってきた 

突然消えて、突然帰って来た 

エヴァの戦いが終わったらアイツはエヴァを降りてリツコのような研究者になった 

そして研究のために日本を離れた 

ちなみに私はまだエヴァに乗ってる 

だって、私にはエヴァしかないから・・・ 

アイツは帰ってきた 

突然消えて、突然帰って来た 

エヴァを降りたら研究者になった 

そして研究のために日本を離れた 

話を戻すけどアイツはなんで急に帰って来たのかしら? 

色々愚痴を考えていたら腹がたってきた 

一応、会ってやるか・・・
565おいたん:2009/09/09(水) 00:37:38 ID:???
シンジ 
『あ、アスカ久しぶり』

少し声が低くなったかしら・・・ 

アスカ 
『本当に突然の帰国ね〜碇博士、今日はどのようなご用件かしら?』

シンジ 
『ありゃりゃ、随分な言い方だね〜惣流三佐』

アタシは『ムッ』とした コイツ・・・ 

アスカ 
『今回の帰国は私を怒らすために来たのかしら?』

私は怒りを押さえながら問い掛けた 

シンジ 
『まさか〜君に届け物を持ってきたのさ♪』

と言う彼はウインクしながら答えた 

その手には設計図が握られていた 
566名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/09(水) 00:51:18 ID:???
アスカ 
『届け物?』

シンジ 
『そうさ、僕が新たに設計したエヴァンゲリオンの設計図さ』

エヴァ? 
アイツが作ったエヴァ? 
アスカ 
『アンタが作ったエヴァ?そりゃど〜も、じゃあ設計図を渡してさっさと帰りなさいよ・・・』

アタシはアイツの設計図を奪おうと手を伸ばす 

シンジ 
『嫌だね(笑)』

そう言うと設計図をヒョッイと上に上げた
アスカ 
『寄越しなさいよ』

私は更に手を伸ばす 

シンジ 
『ダ〜メ』

私は堪忍袋が少し破れた 
アスカ 
『寄越せ!!』

私は設計図に伸ばす左手とアイツを殴る右手の両方が出た 

567おいたん:2009/09/09(水) 01:00:35 ID:???
右手はアイツの腹部にヒットし、その勢いでシンジは倒れた  

設計図はと言うとアイツの手から地面に落ちた


アスカ 
『最初から素直に渡せば良かったのよ』

私は設計図を拾いながら倒れたシンジに向かって言葉を吐いた 

アスカ 
『たく、アンタは〜』

シンジは何も言わずに倒れたままだ 

アンタ 
『ちょっと、いつまで倒れてんのよ』

シンジから返答は無い 

アンタ 
『ちょっと、いい加減にしなさいよ!!』

シンジは何も言わない 

アタシは全身から冷や汗が出るのと血の気が引くのを感じた 

568名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/09(水) 01:09:04 ID:???
アスカ 
『ちょっとシンジ!!』

アタシは倒れているシンジに駆け寄り、シンジの肩を掴む 

アスカ 
『ねぇ!!』

アタシはシンジの顔抱き寄せた

シンジ 
『・・・ゴメン』

アイツはアタシと至近距離で目を覚ました 

アスカ 
『なっ・・・』

シンジ 
『驚いた?(笑)』

アスカ 
『あ、アンタぁ!!』

シンジ 
『ゴメンゴメン、だけど僕の気持ちを伝えたくてね』
そう言うとシンジは立ち上がった 

569名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/09(水) 01:12:18 ID:???
シンジ 
『僕の股間はバズーカ!!』
570名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/09(水) 01:32:23 ID:???
>>568

シンジ 
『今回の新型の設計図は2体分あってね、1つは君、もう1つは僕』

アタシは驚いた 
アイツがパイロットに戻る? 
数年間、研究者になっていたアイツがパイロットに戻るなんて・・・ 

アスカ 
『アンタ、馬鹿!?研究者になっていたアンタがパイロットになんて・・・』

シンジ 
『ふふ、アスカは優しいな〜嬉しいよ、心配してくれてさ』 

アスカ 
『なっ!?アタシは・・・』

ここでシンジは真剣な顔になった 

シンジ 
『心配するのは君と同じさ』
571おいたん:2009/09/09(水) 01:55:53 ID:???
シンジ 
『いつ、どんな事でケガをするかもしれない。それどころか死ぬ可能性もある。だから本音じゃ、君がエヴァに乗るのは反対したいさ、だけどそれは君が僕がエヴァに乗る事と同じ気持ちなんだと思うんだ。』

アタシは無言でその言葉を聞いている 

シンジ 
『だから忘れないでほしいんだよ・・・僕はいつだって君の事を心配しているんだ。だから無理はしないでね』

言い終えたシンジは笑顔になっていた 

アスカ 
『はぁ〜・・・解ったわよ、だけどさっきのはヒドイわよ』

シンジ 
『ありゃゴメン、じゃあ君の買い物に1日付き合ってあげるよ、昔みたいにさ(笑)』

アスカ 
『そんなじゃ足りないわね、それプラス、アンタがアタシ以外の他の女と喋らない、アタシが許すまでね!!』

私は何か吹っ切れたような気がした 

シンジ 
『え〜それはキツイよ・・・』

アスカ 
『ふん、当然よ!!研究者になってる間の情報はこちらにも入ってるんだからね、散々女に手を出したみたいね』

572おいたん:2009/09/09(水) 02:02:41 ID:???
一応、終了です 

改めまして『おいたん』と言います 

このような小説は初めてだったので内容が微妙な感じがするかもしれません・・・ 

よろしければ感想を教えていただければ幸いですm(__)m
573名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/09(水) 03:31:47 ID:If3Ec6hD
くそつまんね
574名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/09(水) 03:58:52 ID:???
台詞廻しがおかしい
オチが弱い
エロがない
つまらない
575名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/09(水) 04:40:09 ID:???
攻撃的だなぁw
でもあくまで『小説』を謳うなら(笑)とかは無い方がいいと思うよ。
あと話は面白そうなんだけど、読み手を置いていってる感がある。
576名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/09(水) 05:37:09 ID:???
>>574
エロは駄目だろ
577名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/09(水) 06:59:05 ID:???
LAS小説スレにおいては、常に読者>>>>>作者だからな
578名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/09(水) 09:10:22 ID:???
>>574
台詞の前に人名が付いていてまるで芝居の台本の様だという、典型的な駄目SSの特徴も
指摘し忘れているよ
579名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/09(水) 13:06:06 ID:???
>>572
( ´゚д゚`)えーーーここで終わり?
580名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/09(水) 17:14:45 ID:???
>>569はもっと評価されていい
581名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/09(水) 22:39:00 ID:???
>>569は作者以外の人が割り込んだのかwww
582名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/10(木) 01:20:05 ID:???
>>569がやったことは決して許されることじゃないが
ぶっちゃけ>>569の方が面白いwww
583名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/10(木) 01:27:23 ID:???
乙です。大人になってシンジの皮肉屋なとこがパワーアップしてますねwアスカは変わらないみたいですけど。
続きは…無さそうですかね。ちょっと中途半端なとこなんで少し残念です。

指摘は、>>575>>578の意見に同意です。
プロ作家まではいかなくていいですが、他のLAS作家さんの書き方を真似して練習したりしたらいいかもしれませんね。
SSなんか何回も書かないと上手くならないですしねw応援してます。
584名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/11(金) 00:06:34 ID:???
ここって、ヤオイスレ?
585名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/11(金) 11:00:45 ID:???
>>578
別にそれは書き手のスタイルなんだから問題ねーだろ、良く言えば戯曲的だしなw
586名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/11(金) 13:25:55 ID:???
>>585
考える事を放棄した奴は楽でいいよなあ
587名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/11(金) 16:19:39 ID:???
>>586
おまえも楽になればぁ〜w
588名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/11(金) 16:58:30 ID:???
ここでは読者は批評してくれる神、職人は奴隷なんだから、
職人を擁護しようとする585が悪い
589名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/11(金) 18:22:08 ID:???
感想お願いします。と職人さんも書いてるし、気がついたことは書いた方がいいと思うよ。
批判だけしたり、投下しにくい雰囲気作ろうとする書き込みは荒らしと見ていい。

セリフの前に名前付けたら、文章少なくて済むから書きやすいけど小説っぽくなくなるから、外した方がいいとは俺も思います。
590名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/11(金) 18:33:52 ID:???
はいはい、このスレは小説縛りってわけね
591名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/11(金) 18:46:47 ID:???
スレタイを読めよ
592名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/11(金) 19:07:51 ID:???
はいはい、あんたのゆーとおり〜w
593名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/11(金) 19:22:52 ID:???
何故発言者の名前がわざわざ書かれているのか、という点が作品の中で回収されているならいいとは思うんだけど。

結局は表現の問題なんだけど、

シンジは言った。
「午後から雨だってさ」
アスカは言った。
「じゃあ、あんたあたしの傘も持ってきなさいよ」

っていう表現と、

シンジ:「午後から雨だってさ」
アスカ:「じゃあ、あんたあたしの傘も持ってきなさいよ」

っていう表現との間に、それほど大きな差があるとは思わない。
でも、前者にしても、ちょっとそれどうなの、と思われてしまうレベルだとは思う。
(心当たりのある人、いるんじゃないの?)
両者は同じくらいのレベルでしょう。
もちろん、どんな上等な小説でも、前者のような表現をしている部分は少なくはない。
でも、少なくとも重要な場面は、

リビングのテレビで天気予報をチェックたシンジが、廊下の方に向かって声を張り上げた。
「午後から雨だってさ」
まだキッチンで朝ご飯をぱく付いていたアスカは、牛乳で口の中のパンを流し込むと、椅子の上から上半身だけ廊下の方に向けて、
「じゃあ、あんたあたしの傘も持ってきなさいよ」
と応じた。

てな具合に、場景を示し、演出を付けるもんでしょ。
そういうところから、心理の動きも伝えていくのであって。
だから、誰がどの科白を言ったか、なんていう情報は、普通は分かるはずなんだよね、ちゃんと書いてあれば。
発言者の名前を頭書する、ってのは、この作品ではそういうことはしませんよ、という宣言に等しいわけで、そりゃやっぱりね。
594名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/11(金) 20:43:45 ID:???
>>593
低レベルな荒らしが来ていた様ですが、それが気にならない程の
理路整然とした解説でした。ありがとうございます
595名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/11(金) 21:30:40 ID:???
>>593
同意です。
セリフの前に名前つけちゃうと、そういう描写を描く練習すら出来なくなっちゃいますしね。
自分もなるべくセリフだけにならないよう、文章で肉付けする努力してますねw
そういう部分こそ、他の上手い人の作品で学ばないといけないんですよね…。
596名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/11(金) 23:26:26 ID:???
最初から上手いやつなんていないんだ!
職人諸氏、応援していますよ!
597名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/11(金) 23:43:41 ID:???
まぁ、2chでしか創作うpできないヘタレヲタの救済スレだから投稿は大目に見る。
出来が悪きゃ叩くがww
598名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 01:54:20 ID:???
じゃあ叩く奴を叩きますね^^
599名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 04:44:09 ID:???
これほど乞食達が上から目線なスレも珍しいな
600名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 05:21:24 ID:???
>>599
2chの良い所は無職だろうが童貞だろうが
イケメンの勝ち組に成れる所だ
601名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 06:28:27 ID:???
単に、スレ住人の大半がFF作者ってだけだと思うが。
602名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 10:28:17 ID:???
投下待
603名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 10:55:33 ID:???
セリフを並べる方が、作品のテンポは良くなるんだよね。
長ったらしい説明書きを読むよりも、短くて意味のはっきりしているセリフの方が読みやすいし、感情移入もしやすい。
だから、不必要な肉付けは、やっぱり不必要なのよ。
要点は、「序破急」。
丁寧に説明していくところ、盛り上げていくところ、クライマックス、と、お話は同じ調子で書いてたらダメなのよ。
最初から最後までクライマックスっていうんじゃあ、山なし落ちなし、と言われてしまうわけ。
わざとそうする作品もないわけじゃないけどね。
こればっかりはいろんなお話を読んで勉強してくれとしか言いようがないけど。
604名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 10:58:57 ID:???
でも間違っても山田悠介なんかを参考にしない様にね
あ、反面教師にはなるかな
605名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 11:20:36 ID:???
山田悠介は・・・
・正しい(とされている)日本語を知らない
・お話全体のバランスが悪い
だね。
特に、オチと仕掛けのバランスを取るのがヘタ
泰山鳴動して何とやら
でも、明らかに仕掛けには秀でているし、局所的な表現はうまいと思うよ
そうでもなきゃ売れないけどね

それで、こういう人が売れるっていうのは、ちょっと前なら考えられなかった現象だと思う。
これは、そもそも本を読む人達が、
・正しい(とされている)日本語を知らない
・お話全体のバランスの取れた作品を読む機会が少ない
っていうことなんじゃないかと思う
だから、もしかすると、あんまり気にすることはないのかも
そういう結論も寂しいけれど。
606名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 11:44:48 ID:???
>>605
携帯小説なんてもっと酷い代物だからねえ
全く関係ないけれど、新井素子が読者から
「先生の文章を参考にしています」と言われて
「今すぐにそんな事やめて森鴎外でも読みなさいっ!」
と答えていた事を思い出してしまったわ
607帰らざる彼:2009/09/12(土) 16:36:35 ID:???
人生で始めて書いてみました。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。

「帰らざる彼」


「ごめん、アスカ。3ヶ月はかからないと思うから。」
散々抵抗したが、あのバカはこう言い残して行ってしまった。
今回の任務は極秘で、連絡もしばらく取れないらしい。
ネルフの任務なので仕方ないのは分かってはいたが、
それでも、バカシンジがアタシよりも仕事を選んだ事が頭にきた。

アタシたちは、高校に入ってミサトの家を出て、二人で暮らし始めている。
日本に来てからずっとシンジと一緒だったから、本当に久々のシンジがいない生活。
ケンカ別れしたこともあり、最初のうちは一人でも平気と強がっていたが、
二週間も経ったころ、アタシの孤独は限界を迎えた。

誰でもよかった。ただ、一人でいるのが嫌だった。
こうして、シンジ以外のやつを、自ら部屋に招き入れた。

シンジが行ってしまったその日に、街角で偶然出会った彼。
いつも、付きまとわれていて困っていたが、気がつくとアタシは彼に話しかけていた。
「アンタも一人なのね。ウチに来る?」
罪悪感がないわけではない。
いけないということは分かっていたが、それでも誰かの温もりが欲しかった。
608帰らざる彼:2009/09/12(土) 16:37:35 ID:???
それから、彼はそのまま居座り約一ヶ月がたった。
今日は休日ということもあり、アタシと彼は昼過ぎになってもベッドでウトウトしていて
呼び鈴が数回鳴らされたことにも気付かなかった。
予定より5日ほど早く帰ってきたアイツが、
「アスカ、まだ寝てるの?」
と言いながら、寝室のドアをそっと開ける。
そして、今、まさにアタシの隣で気持ち良さそうに眠っている彼に気付いたようだ。

「アスカ!?これは一体どういうこと?」
思わず、訊ねるバカシンジ。
「見れば分かるでしょ!」
アタシはここぞとばかりに強気に言い放った。
「あんたのいない間、彼とずっと一緒だったの。
ぜんぜん寂しくなんかなかったわ。
もう、彼なしでの生活は考えられないわね。」
「そんな・・・」
途方にくれるシンジ。一方で満足げなアタシ。
この張り詰めた空気の中、アタシの腕から抜け出した彼がついに口を開いた。
609帰らざる彼:2009/09/12(土) 16:40:53 ID:???
「みゃー」
お気楽そうな彼。どうやら、お腹がすいたようだ。
「はぁー。ウチがペット禁止なの知ってるだろ?あきらめてよ。」
「やーよ。アンタがもうどこにも行かないってんなら、話は別だけど。」
そう言ってむくれた顔をしてやった。
一刻も早くシンジに、抱きつきたかったが、そこまでアタシは素直ではない。

すると、シンジもシンジで考えていることが合ったようで、
最近めっきり減った、おどおどした顔をしている。
それが30秒か、1分ほど続いたころ、シンジは、アタシが予想もしなかったことを口にした。
「えっと、僕もアスカがいないとダメなんだって事が、今回のことでよく分かったんだ。
いつもそばにいて欲しい。
その・・・幸せにしますなんていえないけど、一緒に苦労して欲しい。
結婚しよう。」
真っ赤な顔のシンジ。
フリーズするアタシ。

こうして、2人と1匹の新たな生活が始まった。
後にミサトから聞いた話によると、シンジもあちらでは任務など上の空で、
予定を繰り上げて帰ってきたらしい。
その話を聞いて、当時のシンジを想像すると思わず笑みがこぼれた。
「ホント、バカなんだから。」

**********
以上です。
ベタな展開ですいません。
やっぱり書くって大変ですね。
610名無しが氏んでも代わりはいるもの :2009/09/12(土) 17:01:29 ID:???
>>609
GJ!確かにベタかもしれないが、こういうの好きだよ
611名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 17:54:40 ID:???
GJ
逆にベタすぎていいよねw
612名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 18:00:41 ID:???
あっ、しまった!このスレほめちゃダメなんだったw
いかにもベタだよね〜w
613名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 18:50:04 ID:???
GJ!
614名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 18:55:51 ID:???
GJ!
ベタベタ路線は王道であり最大の武器だぜ


悲惨なのは奇をてらった自信作がフルボッコされた時だ……
615名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 19:13:33 ID:???
> 奇をてらった自信作がフルボッコされた時だ……
そう言うのってたとえて言えばに「ブルーハワイと
しめ鯖を一緒に出された」様な場合だわな
616名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 21:08:41 ID:???
>>609
GJ! 上手いよ、感動した!
617名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 21:16:44 ID:???
>>615
どっちかって言うとチョコレートパフェを出したように見せかけて、
実は和風あずきパフェで隠し味に梅干とかそういう感じ。
そこそこ美味しいかなと思っていたら「期待を裏切ったな」とフルボッコw
618だぶ:2009/09/12(土) 22:44:08 ID:???
えと、拙作の続きです。
あんまりLASっぽくないかも知れません。ごめんなさい。

>>531さん
 行列待ちとかは気づきませんでした。穴だらけの設定ですね、我ながら。
ここは>>532さんの解釈を使わせていただくと言うことでお許し願えたらと思います。
619だぶ:2009/09/12(土) 22:46:46 ID:???
 常夏の第三新東京も、日が傾いて来る頃になれば幾分涼しい風が吹いてくる。
灼熱の日差しが降り注ぐ昼間に比べれば過ごしやすい時間帯、彼ら二人はぽてぽてと帰路についていた。

「…アスカ、まだ怒ってるの?」
「…別に」
「気持ちはわからないでもないけどねえ…」
「怒ってません!!」
 昼食の後に遊びに行くことにした二人、遠くに行く時間があるわけでもなかったので、とりあえず映画を見ることにした。
ちょうど昔TVで大ヒットしたドラマがリメイクされて封切られたばかりで、そのドラマの大ファンだったアスカが有無を言わさずシンジを引っ張っていったのだ。
しかしその映画の内容は、アスカ嬢の想定したものから大きく外れたものだった。
「リメイクだからねえ、旧作と全く同じものにするわけにもいかないだろうし」
「だからって、あのヒロインの活躍するシーンを削ったり、お色気担当にしたり、あまつさえ他のキャラがやるはずだった
やられ役まで押しつけるのってあんまりじゃない!?」
620だぶ:2009/09/12(土) 22:47:42 ID:???
 どうやらアスカ嬢は、お気に入りのヒロインの扱いがひどいことについて憤激しているようだ。
「まあ、その分性格は良くなったようだし…」
「何か言いました?」ギロ
「いいえ、何も言ってません」
「その上、あんな変な女を登場させたりして!」
「変な女って…」
「あんなエロメガネかけて、『にゃあにゃあ』媚び売って、チーターの物まねまでして!オタク男に媚び売るためだけに登場させたのが見え見えじゃない!
あのクソ監督、正ヒロインを引っ込めて、あんな女を主人公にあてがおうとしてるのよ!あ〜、またムカムカしてきた〜!」じたばた
(三番目の『チーター』はオタク向けじゃないような気もするなあ)
映画の内容を思い出したのか、怒りが再燃してきてうがうが言ってるアスカと、それを見て苦笑するしかないシンジ。荒れ狂う美少女に恐れをなしたのか、通行人の皆さんも二人から距離をとり、迂回しながら歩いている。
621だぶ:2009/09/12(土) 22:49:04 ID:???
 そんな二人に、勇敢にも近づく影二つ。
「アスカ、碇君、なにしてるの?」
「一般人をむやみに威嚇するのは良くないと思うの」
シンジがその二人に気がついた。
「やあ、洞木さん綾波…あたっ!」
涙目で鼻を押さえるシンジ。その横で、鼻をはじいた格好のままでアスカがシンジをあきれ顔で見ていた。
「どこに『綾波』って人がいるんですかあ?」
「そうでひた…。レイ、洞木さん、こんにちわ」
「くすくす、二人ともあいかわらずね」
おさげの委員長は笑いをこらえきれないようだ。
レイが碇レイと名前を変えて2年以上が経過しているにもかかわらず、シンジは未だにたまに旧姓で呼んでしまう。
そのたびにアスカにからかわれることになるのだが、その様子は彼らの通う高校の風物詩となっている。
「ほんと、あいかわらずシンジはお間抜けなのよね。かわいい妹の名前を間違えるなんて、兄貴としての自覚が足りないとしか言いようがないわね!」
「アスカ、兄さんを許してあげて。お間抜けは薬で治すことは出来ない不治の病だもの」
「うぅ…。二人ともひどいや…」
「まあまあ、ふたりともそれぐらいにしてあげなさい」
見かねたヒカリがその場をとりなす。
622だぶ:2009/09/12(土) 22:50:28 ID:???
「…それはそれとして、アスカたちは今日は何してたの?」
「今日はアスカと兄さんはシンクロテストだったはず…」
不思議そうな顔をするレイ。
「ああ、今日はリツコ母さんが体調がすぐれないとかで、中止になったんだよ」
「そういえばお母さん、朝、顔色が悪かったの…」
「つわりなんだって。お盛んよねえ〜」
「この間まで、たまに夜五月蝿くて眠れないことがあったわ、週に5回ぐらい」
「そう言えば父さん、ここ数年どんどんやつれて行ってるような気が…」
「逆にリツコは妙に肌年齢が若返ってる感じよね」
チルドレンズの会話があきらかにおかしな方に流れかけているので、ヒカリが強引に軌道修正を試みる。
「で、でも、ネルフの用事が無くなったんだったら、アスカも誘えば良かったわね、レイ」
ヒカリとレイは、今日一日連れだってショッピングを楽しんでいたのだ。
どうせ女の子同士で出かけるなら二人より三人の方が楽しい、しかしレイは無表情のままで答えた。
「ヒカリ、それはだめ。二人のデートを邪魔するような真似をしたら、死ぬまで恨み言を聞かされることになるもの」
アスカとシンジは、レイの発言内容の一部に敏感に反応してしまう。
「ちょちょっと、レイ!私たち、別にデートなんかしてないわよ!」
「そ、そうだよ、ちょっと一緒に食事に出ただけで…」
「年頃の男女が二人で外でお食事。これをデートと言わずに何をデートと言うの?」
「それもそうねえ」
「ヒカリまで?!」
623だぶ:2009/09/12(土) 22:52:03 ID:???
 この二人の誤解(アスカ・シンジ視点)を解くために、このあと十数分に渡ってアスカとシンジは必至にいいわけを並べることになる。
昼食を作るのが面倒だっただけで他意はない、行ったのは丼屋でデートに使うようなところではない、
そもそも私たちはつきあってる訳ではない、etcetc…
顔を紅潮させながら手足をばたつかせ、必死に否定を続ける二人。
そんな二人の様子が余りにかわいく感じられて、ヒカリとレイは優しい笑顔で二人を見つめることしかできない。
その生暖かい視線を感じたアスカはこれ以上の抗弁は逆効果と悟り、戦略的撤退を選択する。
「あっとシンジ、もうそろそろスーパーのタイムサービスの時間じゃない?」
「あっ、そうだね。早く行かないと売り切れちゃうかも」
「そういうわけだから、私たちは帰るわね!」
「洞木さん、レイ、さようなら!」
ユニゾン訓練の成果か、アスカの意思は瞬時にシンジに伝わり、阿吽の呼吸でレイ達の前からすたこらと撤退していった。
後に残されたのは瞬く間の急展開で取り残される格好になった二人。ちょっと呆然としてしまった。
624だぶ:2009/09/12(土) 22:53:30 ID:???
「…ち、逃げられたか」
「でもさすが兄さんとアスカ、3年経ってもユニゾンの呼吸はぴったりね」
「ほんと、あれだけ息の合ったカップルなんてなかなかいないわよ。もう誰が見ても恋人同士同然なのに、なんで二人とも
つきあっているのを否定するのかしら」
ヒカリが不思議そうにつぶやく。現在同級生の男子(別名関西黒ジャージ)と交際中の彼女には、あの二人がなぜ恋人と言う関係に
踏み込まないのかわからない。
「…前にアスカに訊いたことがあるわ。どうして兄さんと恋人関係にならないのかって」
レイが静かに語り出す。
「アスカ、なんて言ったの?」
「自分は、『シンジが自分のことを一番大事な女性だと想ってくれている』ことを知っている。
そしてシンジも『自分が今までもこれからもシンジだけを見ている』ことを知っているだろう。お互いに相手のことを理解し合えてるから、
今あわてて告白する必要はない、って言ってた」
「それってつまり、何も言わなくても恋人同士だってことじゃないの?」
「そう聞いたら、恋人同士になれば恋人同士としての関係を築き上げなければならない。
今は友達以上恋人未満の関係が心地いいし、シンジもそう考えてると思う。しばらくはこの関係でいたい、だって」
ヒカリは嘆息した。
「ふう、つまり私たちはお互いに相手のことをわかり合えてるのよ、って言ってる訳ね。」
「そうね、話してる時とても嬉しそうだったもの、壮大なのろけを聞かされた気分だったわ」
ふふふ、と微笑み合うふたり。
625だぶ:2009/09/12(土) 22:54:58 ID:???

と、道の向こうから何か言い争う声が聞こえてきた。
「…だから、今日は僕が作るから」
「私が作るって言ったでしょ!あなた女の子に恥をかかせるつもり?!」
「あの親子丼を再現してみたいんだよ」
「明後日のシンジの担当日にやればいいでしょ?!」
「ふ〜ん、明後日は照り焼きハンバーグとジャーマンポテトの予定だったけど、親子丼に変更していいのかな?」にやり
「うぐっ…ハンバーグを人質に取るとはなんて卑怯な…!」
立ち止まってやいのやいのと言い争ってる二人。通行人の皆様の好奇の視線が集まる。
「あ〜あ、また恥ずかしいまねをさらして…」
「でも、二人とも楽しそう」
アスカとシンジ、お互いに口論しながらも、表情は嬉しそうに微笑んでいる。まるで口論を楽しんでいるかのようだ。
「恋人同士になったら、あの二人はラブラブになってこういうシーンは見られなくなるのかもね」
「アスカと兄さんがラブラブ…。想像の限界を超えているわ」
レイの偏った知識ではラブラブ=甘ったるいベタベタカップルという等式が成り立っている。
二人のラブラブシーンを想像しようとするが、どうしても思い浮かばないレイであった。
「友達以上恋人未満を14歳の時から楽しんでいる二人だもの、恋人同士の甘い生活は10年ぐらい楽しむつもりなんじゃないの?」
ヒカリの言葉にレイは身震いをする。ラブラブになったアスカと兄の甘ったるいベタベタシーンを10年も見続けるのは拷問に等しい。
大学を卒業したら、海外のネルフ支部勤務を志願しよう。
相変わらず口論を続ける二人を見ながら、レイは固く心に誓うのであった。
626名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/12(土) 22:58:52 ID:???
終わり?
627だぶ:2009/09/12(土) 23:01:45 ID:???
後日談という名の蛇足

「…なんて、言ってた時期もあったわね」

そうつぶやいて、ヒカリはグラスに口をつけた。
グラスには透明な黄金色の液体が注がれていたが、今春大学に入学したばかりのヒカリのグラスに入っているのはノンアルコールのシャンパンだ。
これでは酔うことも出来ない。

いくつかの出し物も滞りなく終了し、周りは和やかな雰囲気となっていた。大人達は互いに酒を酌み交わし、子供達はテーブルの間を走り回っている。
隣に座るレイは、すやすや眠る妹を膝に抱いたまま同様にシャンパンジュースを飲んでいる。
「だれよ、あの二人が10年間は恋人同士の関係を楽しむなんて言ったのは?」
「それはあなたよ、ヒカリ」
レイがぼそっと突っ込む。
「あの二人は10年間は恋人状況を楽しむと言ったのも、あなた。なんなら賭けてもいいと言ったのもあなた。もし5年未満であの二人が恋人関係を解消するようなことがあったら、碇レイの言うことを何でもひとつ聞きますと宣言したのもあなた。」
「…わかってるわよう…」
そう言って、ヒカリはまたシャンパンジュースを飲んだ。

今年の4月、ヒカリ・レイを始めアスカ・シンジ達のグループは見事大学に入学を果たした。
心機一転、新たな生活が始まるついでにアスカとシンジは恋人同士になった。
それを聞いた周囲の人々は心からの祝福を二人に贈った。つらい使徒戦役を戦い抜いた子供達を少しでも幸せにすることが、彼らの生きる目的のひとつであったから。
アスカとシンジは恋人関係になったからと特にベタベタ甘々なカップルにはならず、碇レイはそっと胸をなで下ろしたものである。
628だぶ:2009/09/12(土) 23:02:29 ID:???
「…それが、こんなに早く恋人関係を解消するなんてね…」
自嘲気味にヒカリがつぶやく。
「まさか5ヶ月持たないとは私も思わなかったわ」
レイも相づちを打つ。薄々こうなる予感はあったが、さすがに5ヶ月は速すぎると思う。
「結局、お間抜けなのは兄さんだけじゃなくてアスカもだったってことなのね」
「そう!そうよ!全部アスカのお間抜けが悪いのよ!アスカのせいで私があんな罰ゲームをする羽目になっちゃったのよ〜!!」
荒れるヒカリは、またシャンパンジュースを手酌でグラスに注ぎ飲み干した。
レイが賭に敗北したヒカリに指示した罰ゲームは『今後1年間、ジャージ君とのデートは、ジャージ君の希望に添ったペアルックで行うこと』である。
ヒカリは、デートの際には上下ジャージの着用を義務づけられたのだ。そりゃ荒れたくもなるだろう。

そんなヒカリをよそに、レイは続々と人が集まっている壇上を見つめた。
壇上では祝辞を述べる人々の輪の中で、白いタキシードのシンジと、赤いドレスのアスカがにこやかに座っていた。
アスカは時折少し膨らんだおなかを、優しい表情でさすっている。
そんな二人に、レイは心からの祝いの言葉を贈った。

「おめでとう、兄さん。これからよろしく、義姉さん」







なお、それから1年間、ヒカリと某ジャージ君は外にデートへ行くことがなかったそうな。
629だぶ:2009/09/12(土) 23:04:20 ID:???
以上、おしまいです。

一応スレタイに則って、落ち着いたLASを作ってみました。

駄文をお読みくださいまして、ありがとうございました。

それではまたROMに戻りますです。
630名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/13(日) 00:58:12 ID:???
ごっどじょぶ!雰囲気がいいですね〜
結婚して甘々な夫婦になったのか、未だに夫婦喧嘩が日常な夫婦になったのか…気になりますねw

ROMらず、また書いて下さいね!
631名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/13(日) 01:02:08 ID:???
>>607-609
帰らざる彼さんもGJです!
ベタなんでしょうけど、1レス目はかなりドキドキしてしまいましたw

結婚申し込む男らしさと、アスカに会えなくて寂しくなる可愛さが同居したシンジが素敵です。
632名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/13(日) 02:14:40 ID:???
>>629
GJ!!日常ぽいやりとりが素敵だ
633名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/13(日) 04:52:24 ID:???
>>629
程よく甘ったるくて良いLASでした。
ところでドラマのリメイクと言うのは新劇ですよね?
アスカは式波大尉のファンなんですか?
634名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/13(日) 07:46:53 ID:???
>>629
癒されるぅGJ!!

高校生の2人のセリフがなんともいいですね
ちょっと大人になり始めた感じがツボにハマりましたw
もっと読みたいっすw
635だぶ:2009/09/14(月) 01:17:55 ID:???
>>633
>アスカは式波大尉のファンなんですか?
このドラマが新劇かどうかはわかりませんが、アスカ嬢は『ヒロインの名前を勝手に変えないでよ!!』って憤慨してました。


…というか、私「だぶ」は地方在住なので、新劇見てません。ですので、新劇の内容もエヴァ板などの書き込みから
推測するしかない状況です。ですので、拙作の中に出てくる『リメイクされたドラマ』の内容が新劇から大きく
かけ離れたものであっても、怒らないでください。
つうか、語尾に「にゃあにゃあ」つけてチーターの物まねをするキャラが新劇に登場するというのは事実なんですか?
エヴァの世界観をぶちこわしてしまいそうなものですけど…

感想をくださいました皆様、どうもありがとうございました。至らぬところがありましたら、どうぞご指摘ください。
636名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/14(月) 02:33:22 ID:???
>語尾に「にゃあにゃあ」つけてチーターの物まねをするキャラが新劇に登場
>エヴァの世界観をぶちこわしてしまいそうなもの
ワロタw 大体合ってるw
637名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/15(火) 20:23:20 ID:???
>>629
GJ!

ちょっと気になったのは、友達以上恋人未満のアスカがあなたって呼んでいることかな。丸くなりすぎかも?それはそれでそそられるものがあるけど

レイが妹を抱いている絵づらを想像して、ちょっと萌えてしまった
638名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/15(火) 21:41:36 ID:???
それと、避妊は男の責任のような気がします
639名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/15(火) 22:11:50 ID:???
>>635
新劇見たら、また小説書いてくれ。
640名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/17(木) 12:02:21 ID:???
とうかまち
641名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/18(金) 21:34:51 ID:???
十日町
642名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/20(日) 15:13:29 ID:???
職人よ来たれ
643名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/20(日) 15:34:39 ID:???
良いシチュありませんか?
644名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/20(日) 16:39:24 ID:???
>>643
ではネタ帳から適当に

・「不思議遊園地ガイナックスランドでデートでござるの巻」
偶然手に入れた二枚のチケット。奇妙な遊園地で楽しい一時を。

・「観察日記は大変でござるの巻」
未来世界からやって来た謎の子供。
その目的は若い頃の両親の観察日記を作ることだった。

・「アイドルはモテモテでござるの巻」
ネルフの存在が公になり、イメージ戦略のためチルドレンはアイドル扱いされてしまう。
周囲にチヤホヤされるうちに段々と自分を見失ってしまう。
645名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/20(日) 18:37:22 ID:???
俺は遊園地デート推し!
最近イタモノ多い気がするから、普通なのが読みたいなぁ…なんて
646名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/20(日) 19:15:03 ID:???
3つ目希望!!
少しシリアス目なのが俺の好み
647だぶ:2009/09/20(日) 21:20:00 ID:???
ROMになるつもりでしたが、最近寂しくなってきてるので、
保守がてら駄作を書き込んでみます。LAS成分が薄くて、ちょっとエロ入って
ます。もしかしたらスレのルールに反してるかも知れませんので
その際は御指摘ください。
648だぶ:2009/09/20(日) 21:21:58 ID:???
「…それでは第4次セカンドチルドレン要望判定試験を行う」
ゲンドウの声が発令所に静かに響いた。発令所の中央にはプラグスーツ姿のセカンドチルドレンが、緊張した面持ちで直立している。オペレータ達は
固唾を飲んで、試験の行方を見守っている。

「規定に従い、試験の要項を前説する。これから10の質問がセカンドチルドレンに対し出題される。これらの質問に全て正解した場合、
セカンドチルドレンの要望は受け入れられるが、不正解があった場合はその場で試験中止となり要望は認められない。アスカ君、それでいいかね?」

「はい、わかっています。この試験に合格してあの場所に戻ることが、今の私の生き甲斐ですから!」

アスカの答えを聞いて、ゲンドウは少し表情を緩めた…が、サングラスのせいでそれに気づけたのは副司令と某金髪博士だけであった。

「…では、伊吹君、始めてくれたまえ」
「はい」

ゲンドウの指示に従い、マヤが問題を読み上げる。
649だぶ:2009/09/20(日) 21:23:10 ID:???
「第一問」
「タイの首都、バンコクの正式名称を答えよ」
「クルンテープマハーナコーン ボーウォーンラッタナコーシン マヒンタラーユッタヤーマハーディロック ポップノッパラット
ラーチャターニーブリーロム ウドムラーチャニウェート マハーサターン アモーンピマーン アワターンサティット
サッカタッティヤウィッサヌカムプラシット!」
間髪を入れずにアスカが答える。
「…冬月」
ゲンドウが静かに副司令を促す。
「うむ」
冬月が目の前のボタンを押した。

ピンポーン…

間抜けなインターホンのような音と共に、メインモニターに大きく○が描き出された。
「…最初は初歩的な一般問題から、というわけですね。碇司令?」
アスカが不敵に微笑む。
「…フッ」
ゲンドウもニヤリといつもの微笑みを返す。二人の視線が交錯する。
周囲のオペレーター達は、二人の目線の中間に青白い火花が飛び散り、背後に龍と虎が威嚇し合っている姿が見えたと後に語っている。
650だぶ:2009/09/20(日) 21:24:14 ID:???
「…問題ない。伊吹君、続けたまえ…」
「は、はい。第二問」
マヤがあわてて読み上げる。
「ブルックナーの交響曲第七番において、第二楽章177小節に打楽器群を追加していない校訂版は?」
アスカは少し考えた後、答えた。
「ハース版」

ピンポーン!

正解の音に、発令所の中が小さくどよめく。
(残念ね、派手好きのあの子はブルックナーは聞いてないと思ったのに…)
金髪の才媛が、心の中でため息をついた。ブルックナーも相当派手だと思うがな。


メインモニターが切り替わり、対局中の将棋の棋譜が映し出された。
「この後、先手8五歩に対する後手の差し手を示せ」
アスカはしばらく盤面を眺めた後、冬月に向かって不適な笑みを浮かべて答えた。
「8五同金」
冬月の片眉がピクリと小さく動いた。そして、静かに正解のボタンを押す。
(惣流君は、小池−升田の57年対局を知っているというのか…)
副司令が初めてセカンドチルドレンに対して畏怖の念を持った瞬間であった。
651だぶ:2009/09/20(日) 21:25:17 ID:???
「ビールの生産量世界一の国はどこ?」
ふっ…、とアスカは憫笑をある人物に向けたあと、しっかりと答えた。
「中華人民共和国!」

ピンポーン

その笑みを向けられた人物は怒りに震えていた。
(ドイツ娘だからドイツ!!って答えると思ったのに〜!それより、あの『こんな初歩的な引っかけに引っかかるとでも思ったの?』みたいな嘲笑が腹立つ腹立つ腹立つ〜!!)
っと、声を立てずに隣の眼鏡君の首を絞めていた。眼鏡君、顔色がガミラス星人みたいになってるぞ。


その後も、アスカはよどみなく正解を答え続ける。


「モース硬度計における硬度5の鉱物は?」
「燐灰石!」

「物理学や数学における、特殊相対性理論を定式化する枠組みとして用いられる数学的な設定とは?」
「ミンコフスキー空間!」

「銀河鉄道9○9号の牽引機関車の型番を全て答えよ」
「C62 48、TVアニメ版のみC62 50!」

「2015年度ギネスブックに認定された、雑誌に対する投稿数世界一記録の保持者は誰?」
「三○徹!」
652だぶ:2009/09/20(日) 21:27:17 ID:???
8問を終えて、未だ無傷のアスカ嬢。その表情には余裕がありありだ。
どこかからヤスリを取り出して、爪なんか磨いている。
そんな中、これまでテンポ良く問題を読み上げていたマヤの声がしない。
問題用紙を握りしめて、なぜか真っ赤な顔をしている。
「…伊吹君どうした?問題を読み上げたまえ」
「し、しかし司令、この問題は…」
「かまわん、やりたまえ」
なんとか異議を申し立てようとしたマヤだが、司令の指示には逆らえない。んくっと唾液を飲み込んだ後、努めて冷静な声で問題を読み上げた。

「第九問」

「ネルフ所属サードチルドレン、碇シンジのサイズを答えよ」

「…んな?!」
アスカは固まった。一生懸命問題の意味を分析検討し、その内容に再度驚愕する。
「な、な、な、な…」
言葉を発することすらできないアスカ。周囲からは、なぜか女性オペレーターからの熱い期待の視線が集中する。微動だにしないアスカに、
ゲンドウが声をかける。
「どうした、アスカ君。20秒が過ぎれば自動的に不正解となるが、よいのかね」
ゲンドウの言葉に、アスカは我に返る。
そう、このまま座して待っていれば不正解となり、私はあの場所に帰ることができない。今の私の生き甲斐はあそこに戻ることじゃなかったの!?
それに、挑戦をうけて黙って引き下がるなんて惣流・アスカ・ラングレーのポリシーに反するじゃないの。誰にケンカを売ったのか思い知らせてやるわっ!!
アスカはぐっとゲンドウをにらみつけると、胸を張って大きな声で回答した。

653だぶ:2009/09/20(日) 21:28:11 ID:???
「長さ20.5cm、長径5.1cm、短径4.6cm、角度84°!!」

ピンポンピンポンピンポーーン!

おぉ〜!!

 なんの数値かはわからないが、アスカが真っ赤な声で答えると、発令所内には感嘆と羨望のため息が漏れた。なんに対する感嘆かはわからないが、
オペレータのお姉さん方はなんだかうらやましそうな顔でアスカの顔を見ているし、なぜか男性職員は血涙のだだ流し状態だ。
『据え膳食っときゃ良かったかもねえ』などと考えている三十路のおばさんもいる。ちょっとしたパニック状態だ。
654だぶ:2009/09/20(日) 21:30:04 ID:???
「…それで、最後の問題はなんなの?!」

羞恥を振り払うために、アスカが叫ぶ。あと1問、あと1問答えれば自分はあそこに戻れるのだ。自分の存在価値を見いだせるあの場所に!
アスカは期待に震えながら、マヤの出題を待つ。

「第十問」

マヤの声と共に、メインモニターにネルフの制服を着た男性の写真が大きく映し出される。

「この男性の姓を答えよ」

なんかすぐそばで『オレっすかー?!』という声が上がったが、アスカには聞こえていない。たしかに見たことがあるし、声を聞いたことがある、
いやすぐそこに座っているのもわかっているのだが、なぜか名前がさっぱり浮かばない。アスカは大いに焦り出す。
(ま、まずい、まるで見当もつかないわ。卑怯よ、こんな難問、答えられる人間がいるわけないじゃない〜!!)
アスカの焦りが極限に達する頃、ゲンドウが静かに問いただす。
「アスカ君、制限時間だ」
アスカは悔しさに唇をかむ。一か八かなどという博打的な対応は彼女の一番嫌うものであるが、今彼女が取り得る手段はそれしか残っていなかったからだ。

「…あ、青山…?」

その答えを聞いて少し嘆息した後、冬月がボタンを押した

アホ〜〜〜!!

カコン!!

間抜けなカラスの鳴き声が鳴り響くと同時に、アスカの足元に四角い穴が開口した。
655だぶ:2009/09/20(日) 21:31:03 ID:???
「わきゃ〜〜………!!

落ちていくアスカの悲鳴が小さくなって聞こえなくなると共に、カコンとその穴は閉じてもとどおりの床となった。
「これで、第4次セカンドチルドレン要望判定試験を終了する」
ゲンドウの声と共に発令所はいつもの喧噪を取り戻したが、そのアスカの最期の声は発令所の職員の耳にいつまでもこびりついていた。また、一人の男性オペレータが膝を抱えていじけていたが、誰も気づくものはいなかった。


とぽ〜〜〜〜ん…!

エヴァの格納庫のLCLプールに、ひとつの水柱が立った。

ばしゃあ……

続いて水面に赤い固まりが打ち上がってくる。
「えほ、えほ…」
上がってきたのはアスカ嬢だ。発令所からダストシュートでLCLプールに落とされたのである。
(あんな卑怯な問題を出してくるなんて、あ〜もう悔しいったらありゃしないっ!!)
LCLプールを泳ぎながら、アスカは怒りまくっていた。様々な出題者の嗜好を考慮して膨大な分野の予習をしていたのだが、
今回の最終問題は確かにあまりにも卑怯なものであった。発令所のメンバーでも正解できるものは3割に満たないだろう。
656だぶ:2009/09/20(日) 21:32:27 ID:???
「…はい」
アスカがプールサイドまで泳ぎ着くと、白い手が差し伸べられた。
「…ありがと、ファースト」
アスカはレイの手を掴んで引きずり上げてもらった。そばにはバスタオルを持ったシンジが待機している。アスカはシンジの手からバスタオルを奪って、
乱暴に髪を拭いた。
「…モニターで見ていたわ。惜しかったわね」
「なによ、あの最期の問題!頭にくるったらないわ!」
髪をふきながらも怒りが収まらないアスカ。その怒りによる発熱のためか、体から湯気が立ち上っている。
「でも、もう4度目だよね。アスカもあきらめた方がいいんじゃないかな?」
シンジがやんわりと言ってみたが、アスカは食ってかかる。
「なによ、シンジ!あんた、このままでいいと思ってるの!?」
「ん〜、父さんは僕たちのことについては認めてくれてるわけだしねえ。今はこのままでもいいんじゃないかなあ」
「あ〜!?シンジ、あんた私を裏切るつもり!?」
「私も客観的に見て碇君の意見に賛成」
「ファーストもそんなこと言うの!?」
アスカはさらにヒートアップする。


彼らチルドレンが高校に入学した頃、ん年越しの愛を実らせてミサトが無精髭の人との結婚を果たした。最初は心からの祝福を送ったアスカであったが、
その後の自分たちの身の振り方を聞いた時に修羅となった。ミサトが結婚によりマンションを出て行くことになれば、残るのはアスカとシンジ、
色気づいた高校生カップル二人。彼ら二人の交際はネルフ内でも既に周知の事実ではあったが、二人きりの同棲状態は倫理的にも対外的にも
まずいだろということで、アスカについては女子寮に移ることが決定されたのだ。アスカが猛然と反対したのは当然であったが、司令命令には逆らえない。
泣く泣く荷物をまとめて女子寮に移ったのだ。しかし、(無駄に)有能な頭脳を持つアスカ嬢。いろんな(ここでは書けないような)手段を使って、
コンフォートマンションに戻ること、つまり元のようにシンジと同棲することをゲンドウに働きかけたのだ。その結果がこれ、セカンドチルドレン要望判定試験の
開催である。
657名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/20(日) 21:34:23 ID:???
支援
658だぶ:2009/09/20(日) 21:40:08 ID:???
連投規制くらいました
しばらく待ってみます
あとちょっとなので、見苦しい文章でしょうが、我慢して下さい
BY携帯
659657:2009/09/20(日) 21:45:50 ID:???

支援爆撃失敗
660名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/20(日) 22:16:40 ID:???

とてもおもしろいです。
すんごい発想ですね。
続き楽しみです。
661だぶ:2009/09/20(日) 22:34:04 ID:???
「僕たち、まだ高校生だし、二人きりでの生活はやっぱり早いと思うよ」
今回の第九問目のように、アスカがことを起こすと何かと巻き込まれる体質の持ち主であるシンジは、あまりこの試験に乗り気でないようだ。
「どうして?シンジ、私のこと嫌いになったの?」
「そんな訳じゃないけど…」
アスカに涙目で訴えられたらシンジには何も言えない。シンジの隙を見てアスカがつばを目尻につけていたのを見ていたレイにとっては、
とんだ茶番にしか見えないが。
「とにかくシンジは心配しないでいいの!私が何とかしてみせる!絶っっ対に二人きりの甘い生活を実現してやるんだから!」
おお、アスカは燃えているぞ!
「そうとなれば、こうしちゃいられないわ。さっさと着替えて、また対策勉強を始めないと!」
そう言って、アスカはバスタオルをシンジに投げつけて、更衣室の方に向かって行った。

「…2号機パイロット、めげないのね」
レイは心底感心していた。
「ん〜、ああ言いながらも、アスカは楽しんでいるんだよ」
「?楽しんでる?LCLへの高飛び込みを?」
「それもそうだけど、父さんとのコミュニケーションとかね」
「?」
「父さんはああいう人だから、なかなかコミュニケーションが成立しないだろ?だからアスカは、ああいうクイズ大会を通して父さんと少しでも
触れ合おうとしているんじゃないかな。それに、僕と父さんのコミュニケーションの為にもがんばってくれていると思う」
「そうなの?」
「たまに父さんと話をしても、すぐに『アスカ君は』ってアスカの話題になるんだ。アスカのおかげで父さんとの会話がとぎれることがなくなったんだ。
自然に会話することが出来るようになったんだよ。だから、僕も父さんもアスカには感謝しているんだ」
ちょっと照れているシンジにレイは微笑む。
「そう、良かったわね」
「うん」
シンジも微笑みを返す。
662だぶ:2009/09/20(日) 22:35:45 ID:???
「ファースト〜!、また勉強するわよ、手伝って〜!!」
向こうでアスカがレイを呼んでいる。これまでの試験に対してはレイが試験勉強の手伝いをしていたのだ。
「わかったわ」
レイはてとてととアスカのそばに駆け寄る。目的の善し悪しはともかく、アスカの試験準備の手伝いはレイとしてもやりがいのある仕事なのだ。
「今回は何を中心に勉強するの?」
「ネルフの職員名簿を暗記するわ」
「…広辞苑レベルの厚さになるわよ」
「やってやれないことはな〜い!」
きゃいきゃいと女子更衣室に向かう二人。シンジは苦笑すると、濡れたバスタオルを持ってランドリー室に向かった。
(でも、僕にとばっちりが来るのはやっぱりやめて欲しいんだけど)
663だぶ:2009/09/20(日) 22:37:09 ID:???
そのころ、発令所では表彰が行われていた。セカンドチルドレン要望判定試験の試験問題は発令所の有志が作成している。その難度を上げるために、
ゲンドウはひとつの策を弄した。すなわち、セカンドチルドレンに不正解させた問題作成者には、表彰と臨時ボーナスを支給するというものである。
今回の表彰者は伊吹マヤだった。素直に喜びを表現するマヤと、そのボーナスにたかろうと怪しげな働きかけをするミサト、
陰でまだすねている青山(だったっけ?)、発令所は今日も平和だ。

その表彰式を見下ろしながら、冬月はゲンドウに問いかけた。
「碇、惣流君で遊ぶのはかまわんが、あまり度が過ぎると未来の嫁に嫌われるのではないかね?」
ゲンドウは静かに答えた。
「アスカ君は聡明な娘です。私に対して闘志を燃やすことこそあれ、嫌ったりすることはないですよ、先生」
それを聞いて、冬月は嘆息した。
「そうか。おまえは惣流君をかっているのだな」
ゲンドウはサングラスのズレを直しながら、ニヤリと笑った。

「当たり前です。あの娘はシンジが選んだ娘ですから」
664だぶ:2009/09/20(日) 22:39:47 ID:???
以上、おしまいです。657さん660さんありがとうございました。おかげで貼り付けられました。
落ちが弱い、LASが弱い、そもそも青山って誰よ 等の御指摘、御批判よろしくお願いします。

それでは、私のようなエセではない、本当の職人さんが投下するのをお待ちしておりますです。
665名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/20(日) 23:19:59 ID:???

こーいうアスカ好きです
666名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/20(日) 23:39:31 ID:???
つーか、誰だ第9問の問題作った奴w
667名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/21(月) 00:35:25 ID:???
>>666
MAGI、リッちゃん、アルビノの少女、アルビノの少年、
どれでも好きなの持ってけ。
668名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/21(月) 09:59:14 ID:???
GJ!
また投下してくださいね。
楽しみにしています。
669名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/21(月) 10:18:16 ID:???

面白かった!
670名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/21(月) 12:52:34 ID:???
読みやすくて楽しかった!ありがとう!GJ!
できたらまた書いてください。
671名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/22(火) 11:59:56 ID:???

第五次セカンドチルドレン要望判定試験も希望
672だぶ:2009/09/22(火) 22:31:34 ID:???
感想をくださいました皆様、どうもありがとうございました。

>>666さん
 脳内設定では、オペレータのお姉様方のどなたかということにしてます
 この試験は問題作成者に解答の明示の義務はないようです

>>644さん
 こんな感じですか?

「シンジのくせに生意気やで!」「そうだそうだ!」
    げし!

「うわーん、あすエモン、トウジャイアンとケンスネオにいじめられたよ〜!」
「相変わらず、アンタはバカシンジでござるな。仕方ないでござる、この秘密道具で」
ぱっぱらぱっぱっぱ〜!!
「『不思議遊園地ガイナックスランドチケット』〜!!このチケットで
 ジャージと一緒に遊園地に行けば、二人はしっぽりねっとりアッー!!な心の友に
 なれるでござるよ、ニンニン!」
「…僕とトウジャイアンとで行くの?」
「それ以前に弐号機パイロット、それは銅鑼右衛門じゃなく服部君よ」<ドレイミちゃん

……だめだ、LASにならない…
673名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/24(木) 12:23:12 ID:???
>>672
君の思考に乾杯
674名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/25(金) 01:38:21 ID:???
いや、>>672はセンスあると思うぞw
675名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/25(金) 11:56:23 ID:???
>>647
ルールに抵触しそうなエロってどこ?
三○徹のこと?
676名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/25(金) 12:37:07 ID:???
>>644の3つ目って具体的にどう見失うんだ?
677名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/25(金) 19:37:13 ID:???
>>676
自意識過剰になったり、生活が荒んだり色々あるんじゃない。
一番ありえそうなのは相手を見失う方かもね。
「アスカには相応しい人が沢山いるじゃないか」とか
「あいつ、昔はあんな奴じゃなかったのに……」とか。
678名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/25(金) 20:04:53 ID:???
>>676
お題に具体的に書いちゃったら書きにくいだろ?
679名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/25(金) 20:16:31 ID:???
まーた昼メロかい
680名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/25(金) 21:40:06 ID:???
でも、あすエモンよりはましだろ?
681名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/25(金) 21:51:44 ID:???
イタモノやギスギスしたやり取りよりはお笑いネタに走ってくれた方が嬉しい
682名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/25(金) 22:12:19 ID:???
ハゲドウ
683名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/25(金) 22:18:51 ID:???
でもギスギスした話も読んでみたくはある
684名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/25(金) 22:40:59 ID:???
ぶっ飛んでるのより和み系が良いな
685名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/26(土) 01:09:44 ID:???
>>680
シリアスはいいけど、昼メロ系はうんざり
686名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/26(土) 08:48:13 ID:???
昼メロってどんなのを指すの?
687名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/26(土) 11:20:41 ID:???
オペレーターは見た!!プラグの中の真昼の情事!!
688名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/26(土) 13:10:50 ID:???
それは火曜サスペンス
689名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/26(土) 13:25:49 ID:???
食卓にたわしが出てきて、アスカさんが「どこの回し者なんだー」と宣いながらバットを振り回してシンジ君をおい回すのか?
690名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/26(土) 18:39:18 ID:???
どんなのが住人に需要あるんだろうね。

お笑いネタってクイズのヤツとか願い事を叶えるヤツとか?
691名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/26(土) 20:03:11 ID:???
スレ住人の嗜好も一様じゃないし
692名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/26(土) 20:56:42 ID:???
需要はともかくイタモノやギスギスしたのは極端に評価基準が険しくなるな。
逆に和み系なら叩かれることはまずないしね。
693名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/26(土) 21:08:38 ID:???
評価基準は同じでしょ→LASとして楽しめるかどうか
和み系なら、和むって事だけでもそこを楽しめる人が多いから、よほど下手じゃないと叩かれはしない
イタモノはあえてマイナス部分を入れ込んでるんだから、
それがより大きなプラス部分に繋がってないと無意味だし収支が合わん
でも、イタモノの9割以上はただ痛いことに酔ってるだけで終わってるので、結果叩かれる
694名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/26(土) 21:32:53 ID:???
ちゃんとまとめて人格崩壊さえしてなければイタモノでも気にしないけど。
読後感が良いかどうか、これが全て。


>>690
願い事って総合投下スレの?
ああいうネタ系は大好きだけど滑ると目も当てられないのが辛いね
695名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/26(土) 21:36:21 ID:???
>694
その上2行を満たしてるイタモノが滅多に無いからってだけだよな
696名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/26(土) 21:45:13 ID:???
>>694
ネタに限らず滑ったら作者の独りよがりですがな。
そしてイタモノは滑り率が高いと。
だから綺麗に締めたらスゲーんだけどね。
697名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/27(日) 00:01:12 ID:???
>>696
巧拙では甘LASも変わらんけど、甘LASなら何でもOKみたいな懐の深い人はいるが、
イタモノではそこまでスレッシュの低い奴はいない。
人を選ぶと言うか、書くだけなら良いが発表するなら余程の覚悟が必要。
698名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/27(日) 14:08:23 ID:???
甘LASは、悪くても0点からスタートだから
699名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/27(日) 17:43:19 ID:???
誰かを幸せにしよう、笑わせよう、という作品と、
誰かを驚かせよう、スゴイと言わせようという作品と、
どちらが愛されるかは自明だと思うが。
700名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/27(日) 19:45:52 ID:???
>>699
>誰かを幸せにしよう、笑わせよう、という作品と、

そんな作品あるのか?
701名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/27(日) 21:04:00 ID:???
あるだろ
他に自己満足も含むが、それは創作活動なら当然だし
702名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/28(月) 01:08:47 ID:???
>>701
創作活動なんて、基本的に自己満足だよw
703名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/28(月) 01:20:02 ID:???
だからそれは当然なんじゃないの
704名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/28(月) 01:33:51 ID:???
「他にも」じゃなくて、そっちがメイン。
幸せにしようと意図してる作品をLASで挙げてみな。
705名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/28(月) 01:37:24 ID:???
根の暗いやっちゃのう
706名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/28(月) 01:41:23 ID:???
メインだのサブだのって具合に、切り離して存在する事柄でもないし
707だぶ:2009/09/28(月) 05:47:53 ID:???
ええと、議論が白熱しているさなかに、空気を読まずに駄作を投下します。
>>644さんのお題を使わせていただきました。あんまり突飛な話にしないよう心がけたので
どこかで見たことがあるような、二番煎じみたいになってしまいました。申し訳ありません。
…でも、自分が突飛なものをつくろうとすると、「あすエモン」みたいな話になって、滑って
しまうのが明らかですしねえ。いや、この話も滑っているとは思いますが。

それと、盛り上がりに乏しくて冗長で、完結してないことについても謝罪しておきます。
申し訳ありません。
708だぶ:2009/09/28(月) 05:50:56 ID:???
数十台のモニターに囲まれながら、ミサトはえびちゅをあおっていた。
「…なんで私がこんなことしてるのかしらね〜」
愚痴をこぼしながらも、次の一缶のプルトップを開ける。周囲のモニターには様々な画像が映し出されている。焦点の合わない目でそれらを眺めながら、
ミサトは先日のゲンドウとの打合せの内容を思い返していた。

2016年、世界は思いっきり平和になった。ネルフ在籍の5機のエヴァンゲリオンの活躍で謎の怪獣は全て撃退され、闇の秘密結社ぜーレは滅びた。
それによって、セカンドインパクト以来混乱していた世界もネルフを核に据えた新国際連合によって統率され、再び落ち着きを取り戻しつつある。そのような
中で、エヴァを占有し、世界の警察たる地位についたネルフおよび世界の救世主たるチルドレンに対して世間の関心と畏怖が集中するのは当然の帰結で
あった。

「……というわけで、ネルフは現在一般人から畏怖の対象とされている」
暗い司令室で、ゲンドウが静かにミサトに告げる。
「しかし、新国連の一機関として再出発した我々にとって、必要以上の畏怖は活動の妨げにしかならんのだよ」
冬月が横から口を挟む。
「従って、我々は印象操作を行い、世間の感情を懐柔する必要がある」
そこでゲンドウは間を置いて、ミサトを見つめた。ミサトはこれから与えられるであろう指令内容を聞き漏らすことの無いよう、全神経を集中する。
「葛城二佐、ネルフの対外印象を向上することを目的として、チルドレンの偶像化戦略の企画を命ずる」
「はい?」
ミサトは聞き慣れない言葉に、思わず内容を聞き直した。冬月がゲンドウの言葉を補足する。
「つまり、チルドレン達をアイドル化するわけだよ。現在あの子達は救世主として皆から敬われ、一部では神格化する動きすら見られる。そのような彼らが
アイドルとして自分達の前に現れれば、世間も彼らに親しみを持つであろうしネルフについても身近に感じるのではないかね?へたに芸能人をイメージ
キャラクターに据えて、麻薬などのスキャンダルでかえってイメージダウンになってもかなわんしな」
709だぶ:2009/09/28(月) 05:52:43 ID:???
「まあ、そう言われればそうかもしれませんが…」
ミサトは『そんなうまいこと行くわけねえっす!』ということをオブラートに包んで述べたが、親父達はミサトの真意を無視して命令を下す。
「ネルフは臨時組織改編を実施し、明日より作戦部は芸能企画部に名称変更する。芸能企画部は、適格者達の芸能界デビューを成功させ、ネルフの
広報活動に寄与させるために設置したものである。この目標を達成するために、これまで同様の努力を期待する」
「はぁ…」
司令命令とあらば拝命するしかないミサトはため息しか出せない。これって、やっぱり左遷よね……。


「はあ……」
12本目のえびちゅを開けて、ミサトは再びため息をついた。いきなり畑違いの職場に投げ出されたとはいえ、司令命令は絶対である。チルドレン達を芸能界に
デビューさせ、アイドルとして成功させなければならない。デビューさせるのは簡単だ。しかし、アイドルとして売れっ子になるかどうかはわからない。
デビューさせて鳴かず飛ばずで消えるようなことにでもなれば、かえってチルドレン達のカリスマ性に傷がついてしまう。そのために、彼らのデビューは出来る
だけ世間にインパクトを与える形にして、短期間の内に売れっ子にする必要があるのだ。
「…でも、今更なにやっても二番煎じよねえ…」
とにかく最も効果的なデビュー手段を考えようと、会議室にこもって多数のモニターに映画やらTVドラマやら歌番組から幼児番組まで様々な映像を流して
みても、決定的な企画が思い浮かばない。無情に時間とえびちゅを浪費するばかりであった。
710だぶ:2009/09/28(月) 05:53:56 ID:???
「…だみだ、こりゃ!」
いい感じでアルコールも入ってきたミサト、どうやら考えるのを放棄したらしい。椅子を三つ並べて横になった。今日はこのままここにお泊まりとなるのか。

ばんばらばんばんばん……

視界の隅に見えるモニターから軽快な音楽が流れてきた。ぼんやりとそのモニターを眺めていたミサトだったが、突然がばっと起き上がった。
「これよ!この手があったわ!!」
そのモニターに流れる映像から何かの天啓を得たらしい。頭の上に大きな電球が光っているようにすら見える。
「ふふふ…。見てなさいよ〜、これであの子達をトップアイドルにしてやるんだから!」
天に向かって拳を振り上げるミサト。得てして酔っぱらいのひらめきなんて碌でもないことしかないものだが、ミサトにはその自覚は1mlもなかった。
711だぶ:2009/09/28(月) 05:55:21 ID:???
その高校には6人の仲がよい少年少女がいた。責任感が強くリーダーシップを発揮する少年・スポーツマンで熱血漢の少年・耽美で神秘的な少年・
活発でお転婆な少女・内気で人見知りな少女・家庭的でおだやかな少女。彼ら6人は、今日も放課後に家庭的な少女がバイトをしている
『カレーショップ ゲンドウ』に集まっている。いつものように、彼ら以外の客はいないようだ。

「かー、委員長のカレーは何杯食うても足らへんな!!」
ジャージの少年がカレーをかきこんでいる。
「ふふ、いくらでも作ってあげるから、おかわりしてね」
「そうか、委員長いつもうまいカレーを作ってくれておつカレー様やな!」

すぱーん!!

はりせんが少年の頭に振り下ろされた。
「いった〜…おどりゃ、なにすんねん!」
「鈴原、あんた関西人のくせに、なに下らないだじゃれ言ってんのよ!」
「叩かんでもええやろ!」
「教育的指導よ!!」
「なんやと!」
「なによ!」
一触即発の雰囲気に、一人の少女が声をかける。
「あ、あの、ふたりとも落ち着いて…」
「「あんた(おまえ)はだまってて(とれ)!」」
「ひゃう!」
二人から同時に威嚇されて、あわてて少女は一人の少年の陰に隠れる。
「ははは、ふたりともこらえてこらえて。こんなにおびえてるじゃないか」
その少年が二人をなだめる。見ると少女はその少年の袖にすがりついてぶるぶる震えていた。さすがに口論中の二人も矛を収めざるを得ない。
712だぶ:2009/09/28(月) 05:56:25 ID:???
「す、すまんのう。このアーパー娘がつっかかってくるもんやから、つい…」
「私もごめん、バカジャージについのせられて…」
殊勝な顔で謝った二人だが、すぐにお互いの言葉を聞きとがめる。
「…バカジャージ…?」
「…アーパー娘…?」
再び二人の間に紅蓮の炎が吹き上がる。その炎に当てられて、少女は既に涙目となっている。
「慎司さん…」
「大丈夫だよ、いつものスキンシップだから」
さらに強い力ですがりついてくる少女を、少年はなだめる。そんな騒がしい空気を、無駄にさわやかな声が切り裂いた。

「フフン、諸君。じゃれ合うのもかまわないが、ちょっとあれを見てみないかい?」

壁際でバラを咥えてポーズをとっていた少年が、TVを指さした。そこには、いつもの水○黄門の再放送を中断して、男性アナウンサーが緊迫した表情で
座っていた。
『臨時ニュースです!本日○○:○○にペンペン幼稚園の送迎バスがバスジャックされました!犯人は秘密結社ニョッカーを名乗り、今のところこれと
いった要求を出しておらず…』
713だぶ:2009/09/28(月) 05:58:02 ID:???
一休み
714だぶ:2009/09/28(月) 05:59:03 ID:???
「うわーん!」「ままー!」「びえ〜〜ん!」
ここは、秘密結社ニョッカーのアジト。北関東の採石場に位置するという噂のニョッカー基地に、幼稚園児達は捕らわれていた。
彼らはニョッカーの改造人間として改造されるためにさらわれたのだ。泣き叫ぶ園児達を前に、怪人が満足そうに頷いた。
「ふふふ、これだけの数の改造人間を作り出せば、悪の女王イラストリアス様もさぞお喜びになるだろうて」
「うきー!」
「うきー!」
戦闘員達も嬉しそうにはしゃぐ。しかし、そこに正義の声が響いた!

「そうはイカの金○や!!」
「…だれだ、子供の教育に悪い言葉を使う奴は!!」
怪人達が声の方向に振り返る。すると、そこに5つの影が浮かび上がった。

「なにやつ!」

怪人の声に、ひとつの影が飛び上がる!
「熱血の六甲颪!フォースチルドレン鈴原統司こと!」
どかーん!背後で黒色の爆煙が上がるとともに、影が変身した。
「レンジャーブラック!!」
びしっとポーズを決める。
715だぶ:2009/09/28(月) 06:00:05 ID:???
「な、なんなんだ!」
怪人達が驚愕する間もなく、次の影が飛び上がる。
「太陽の微笑み!ファーストチルドレン綾波玲こと!」
背後に白色の爆煙が上がるとともに、影が変身した。
「レンジャーホワイト!」
これまたびしっとポーズを決める。
さらに次の影が飛び上がる。
「フフン♪禁断の薔薇。フィフスチルドレン渚薫こと!」
背後に灰色の爆煙が(以下略
「レンジャーシルバーだよ」
さらに次の(以下略
「え、えと、真紅の雛菊。セカンドチルドレン惣流飛鳥こと」
背後に赤色の(以下略
「レンジャーレッド!です…」
そして最後に飛び上がった影。
「正義の化身!サードチルドレン碇慎司こと!」
背後に青(以下略
「レンジャーブルー!」
そして5人が一列に並ぶ。

「5人そろって」
「ネルフ戦隊 チルドレンジャー!!」

どかーーん!!5色の爆煙が広がった。

レンジャーブルーが一歩前に出て、高らかに宣言する。
「幼稚園児を誘拐し、改造人間にするなど、天が許してもこのチルドレンジャーが許さない!正義の刀が悪を絶つ!!」

怪人達も我に返り、おのおの手に武器を持った。
「うーぬ、我らのアジトを知られた以上、帰すわけにはいかん。ものども、かかれい〜!」
「「「うきー!」」」
716だぶ:2009/09/28(月) 06:01:13 ID:???
かくして、大乱戦が始まった。数の上では圧倒的な戦闘員だが、レンジャー達にはかなわない。じわじわと人数が減らされていく。

「きゃっ!」

そのとき、レンジャーレッドがつまずいて転んでしまった。それに乗じて4〜5人の戦闘員が襲いかかる。
「い、いやあ!」
思わず身をすくめたレッドだったが、体に衝撃がやってこない。おそるおそる周囲を見渡すと、戦闘員は皆倒されていた。レッドの前には、
ブルーが立ち塞がっている。
「レッドには、指一本触れさせない!大丈夫か、レッド!?」
「ブ、ブルー…。ええ、大丈夫です」
立ち上がるレッドのそばに、ブルーが心配そうに駆け寄る。
「そうか…。もし君の身に何かあったら僕は…」
「そ、そんな…」
あたり一面にピンクの花園が広がった。

「…って、お二人さん!そんなんやっとる場合じゃないで!」
ブラックの声に我に返る二人。見ると、戦闘員は全て倒していたが、怪人一人を相手に3人が苦戦していた。
「ふふふ…このサキエルゲ様の光槍攻撃を受けてみろ〜!」
手のひらから高速の槍を発射するサキエルゲ。チルドレンジャーは防戦一方だ。

「よし、合体攻撃だ!」
「「「「おう!」」」」
ブルーの声と共に、全員が腰にぶら下げたパーツを取り外す。そしてそれを組み立てるとひとつの大型の銃砲となった。
「ネルフ謹製陽電子砲ポジトロンライフル!」
5人で陽電子砲を構える。
「「「「「発射!!」」」」」
ちゅいーーん!!!
陽電子束ビームがサキエルゲの胸を貫いた。
717だぶ:2009/09/28(月) 06:02:46 ID:???
「ぐわぁああーーー!!!」

断末魔の悲鳴と共に、倒れ伏すサキエルゲ。チルドレンジャーは勝利に沸いた。しかしその時、空に変態眼鏡をかけた女性の姿が映し出される。非常に
露出の多い服装で、明らかに敵の女幹部か女首領である。彼女は足元のチーターの頭をなでながら、サキエルゲに杖を向けた。
『そんな奴らにやられるなんて、情けないにゃあ。ほら、復活させてあげるから、も一度がんばれ。人生は3歩進んで2歩下がるんにゃよ?』
休まないであ〜る〜け〜!!と、労働基準監督署が聞いたら怒り出しそうなフレーズと共に、その変態女はサキエルゲに怪光線を照射した。その光線を
浴びたサキエルゲは再びむくりと起き上がると共にぐんぐんと体躯が膨らみ、50mを超える大きさにまで巨大化した。

「どーるげーーーー!!!」
暴れ回るサキエルゲ。チルドレンジャーは幼稚園児を安全な場所に避難させるのが精一杯だ。

「これでは手も足も出ないわ!!」
「ふう、あの大きさじゃ、ポジトロンライフルも有効打にはならないようだねえ」
「慎司さん、どうしましょう?」
「く、くそう…」
焦るチルドレンジャー達。しかし、こんなに巨大な敵が相手ではどうしようもない。
ぴぴぴ、ぴぴぴ、ぴぴぴ……
その時、歯ぎしりするブルーの通信機に連絡が入る。
『苦戦しているようだな』
「父さん!」
通信機に写ったのは、カレーハウスゲンドウのマスターだ。いつもの調理服ではなく、司令服を着ている。
『慎司、あれを送る。洞木君』
『了解!エヴァンゲリオン零号機〜四号機、発進!』
ネルフの制服を着た光理がキーボードを操作する。すると、都庁の屋上、国技館の屋根、停泊中の空母の甲板、国会議事堂の庭、
甲子園球場のマウンドに大きな穴が開き、5体のロボットが射出された。ロボットは瞬時に採石場に飛んでくる
718だぶ:2009/09/28(月) 06:04:18 ID:???
「「「「「フェードイン!」」」」」
その叫びと共に、ロボットの胸部、コアと呼ばれる部位からチルドレン達に向かって光が伸びていく。そして、その光に包まれるように、それぞれのエヴァに
吸い込まれていった。
その後なんだかんだで5体のエヴァは合体し、大型ロボットエヴァンキングとなった。そして、肩から2本の刀を引き抜くと、サキエルゲに向かって斬りかかる。
「振動剣サードインパクト斬!!!」
「どーーるげーーー!!!」
光り輝く刀がサキエルゲの体を切り裂く。サキエルゲは悲しげな断末魔とともに、大爆発を起こし四散した。その背後には、夕日に照らされて、エヴァンキングの巨体が光り輝いていた。

719だぶ:2009/09/28(月) 06:05:02 ID:???
「おかーさーーん!」
「ままーー!!」
「健介!!」
「真菜ちゃん!」
そこかしこで再開を喜ぶ親子の姿が見られる。幼稚園児を連れ帰った5人は、その様子を遠くから眺めていた。

「とにかく、一件落着やな」
「そうね、子供達も無事につれて帰れたし」
「でも、あの変態娘はまだまだ悪いことをしでかしそうだねえ」
「だけど僕らは負けない!どんな敵が現れても、必ずこの街は守り通してみせる!」
慎司はぐっと拳を握って青空に誓った。そんな慎司にそっと飛鳥が寄り添う。
「……その時は、私にもお手伝いさせてくださいね?」
「も、もちろんだよ、飛鳥」
真っ赤な顔で見つめ合う二人。
「あ〜あ〜、あっついわねえ〜」ぱたぱた
「ほんまや、地球温暖化を促進しちゃいかんのう、お二人さん」
そんな二人を統司と零がからかう。
「やめてよ、ふたりとも〜」
「………」もじもじ
「はっはっはっ。青春だね〜」
地球を守る精悍な戦士の表情から、いつもの和やかな仲良し高校生に戻った5人。賑やかに秘密基地でもあるカレーハウスへと帰っていく。しかし、
悪の秘密組織ニョッカーは未だ健在、地球の危機は去ってはいないのだ。悪を倒して平和な未来を築くその日まで、
がんばれ僕らのチルドレンジャー、負けるな僕らのチルドレンジャー!!
(ちゃ〜ちゃちゃちゃ、ちゃちゃっちゃあ〜♪)←音楽同時に終わる
720だぶ:2009/09/28(月) 06:05:54 ID:???
「ぬ、ぬ、ぬ……」

「ぬ?」

「ぬぁんなのよ、これは〜〜!?」ばりばりばり!

アスカは手にしていた小冊子を思い切り引き破った。アスカの周りでは4人の適格者および予備適格者の洞木ヒカリが小冊子を読んでいたが、アスカの声に
驚いて一斉に顔を上げた。
「なんなのよって、さっきも言ったでしょ?あんたたちが主演する映画の台本よ」
ミサトがこともなげに言った。周りのみんなも頷いている。
「違うわよ!なんで私たちの最初の主演映画がこんな下らないお子様映画なのか、って言ってんのよ!」
あ〜、そういうことか、と周りも納得した。

チルドレンアイドル化計画は順調に遂行され、チルドレン達にもその計画が伝えられた。洞木ヒカリを加えた6人は当初その作戦への参加に難色を示して
いたが、ネルフのため、ひいては人類のためだと詐欺すれすれのミサトの口車に乗せられて、作戦参加を了承してしまった。そして今、鮮烈デビューを飾る
ためのミサトの秘策『主演大作映画公開日にデビュー』作戦のための映画の打合せを行っているわけなのだが。
721だぶ:2009/09/28(月) 06:06:34 ID:???
二休み
722だぶ:2009/09/28(月) 06:07:43 ID:???
「普通の映画じゃインパクトないでしょ?こういう娯楽作品の方が集客性が高いし、話題性もあってインパクトが大きいのよ」
ミサトの説明。あ〜、なるほどねえ、とアスカ以外は納得顔だ。
「で、でも、普通こういう戦隊ものだと赤いのがリーダーするもんでしょ?!なんでシンジがリーダーなのよ?!バカシンジのくせになんかかっこいい役に
なってるし!!」
帰国子女の割には、マニアックな知識を持ってるな。
「それよりなにより、なんなのよ、私の役柄は!?ひ弱で内気で人見知りで、こ、こともあろうにシンジに憧れてるぅ〜?!」
アスカは顔を真っ赤にして激高している。
「なんで私がこんなバカシンジに惚れるような役をやらなきゃなんないのよ!?すぐに訂正してちょうだい!!」
アスカは手にしていた台本(の残骸)をミサトの机にたたきつける。しかし、ミサトは涼しげな顔でアスカに告げる。
「アスカは顔とスタイル だ け は、超美少女だからね〜。せっかくの素材だし、もっと大衆向けにアピール出来るように役作りを考えたのよ」
「別に、今の私のままでもいいでしょ!」
「今時ツンデレやヤンデレも時代遅れだしねえ。あんたの容姿で一般に最もアピールする性格をMAGIで解析したら、あんな性格になっちゃったのよ。
他のみんなもそう。鈴原君・渚君・ヒカリちゃんは普段とあまり変わらないけど、レイとシンジくんについてはほとんど別人のような性格が一番適しているという
結果が出たわ。つーわけで、今後はあんた達みんな、アイドルとして公の場にいる時は、この映画での性格設定に沿って行動してもらうわよ。」
723だぶ:2009/09/28(月) 06:09:24 ID:???

その言葉にアスカは青ざめた。
「じゃあなに?アイドル活動をしている時は、こんな『こ、困りますぅ…』みたいなアホ娘を演じてなきゃならないわけ?」
アスカが媚びを売るような演技を見せた。その演技を見て、シンジがちょっと萌えてしまったりしてるけど。
「レイ!あんたも何か言ってやってよ!活発なアーパー娘なんてやらされて、いままで築き上げた『神秘的で寡黙な少女』のイメージが崩されるのよ!
こんな要求に従うの?!」
アスカはレイに救援を求めるが。
「命令なら、そうするわ」
にべもなく断られてしまった。がっくりするアスカ。しかし、そんなアスカを哀れんだのかレイが別案を提案した。
「…アスカがどうしても嫌なら、代わってもいいわよ」
「へっ?」
「あなたが活発な女の子の役で、私が内気な女の子の役をするの」
「お〜、それやったら二人とも普段とあんまり変わらんかもな〜」
トウジが感心したように言った。
724だぶ:2009/09/28(月) 06:11:11 ID:???
(役柄の交換ねえ…)

アスカは想像する。活発でアーパーな私。アーパーってのは気に入らないけど、性格作りはそんなに難しくはないわね。うん、いいかも。そんで、レイが
内気で人見知りな性格になるっと。これも今とそんなに違いがあるわけじゃないから問題なしかな?で、いつもレイはバカシンジの側に寄り添うことに
なって………

「……ま、まあ、それはいいわ。レイに迷惑をかけるわけにもいかないしね」
「そう?」
レイは『自分は別にかまわないけど』という表情でアスカを見た。アスカもこんな好条件の取引をなぜ断ったのか、自分でもよくわからない。アスカの
心の機敏を感じ取れたのはミサトとヒカリだけだった。
「はいはい、それじゃアスカも納得してくれたわね」
「う、うぐ……わかったわよ」
アスカが折れた。この6人の中でもっとも弁の立つアスカが折れた以上、他の5人は抗弁するつもりもなかった。
725だぶ:2009/09/28(月) 06:12:21 ID:???
「それじゃ、今後のスケジュールを説明するわ。この映画の撮影期間は明日から2ヶ月間、公開は3ヶ月後。公開日直前までタイトル以外は全て非公開で
臨むわ。そして公開日にあなた達はアイドルグループ『適格者』としてデビューします。デビュー曲は映画撮影後の1ヶ月間でマスターしてもらうからね。」
「デビュー曲ってなんですか?」
シンジが質問した。
「映画の挿入歌でもある『わたしはエヴァのパイロット』って曲よ」
「なんか悪い予感しかしないけど、一応聞いておくわ。どんな曲なの?」
アスカは既にあきらめきった表情をミサトに向けた。
ミサトは手元の機械を操作する。ちょっとした前奏の後にマヤの脳天気な歌声が聞こえてきた。

『♪きゅ〜んきゅ〜ん、きゅ〜んきゅ〜ん、わた〜しはエヴァの、パイロ〜ット〜♪』

「………もういいわ、止めて」
アスカは半泣きでミサトに懇願した。シンジやトウジですら『今のはちょっとあんまりだよな』という顔をしている。カオルは早速鼻歌で今のフレーズを
繰り返している。結構気に入ったようだ。
「さて、そう言うわけであんた達にはこれからスタジオに籠もってもらうわ。アイドル作戦中はかなり不便を強いることになるでしょうけど、ネルフの
広報活動が軌道に乗ったらすぐに芸能界から引退させるからそれまで我慢してちょうだい」
「「「「「「…は〜い」」」」」」
チルドレン達は、拒否の出来ない自分達の立場を嘆き、全てを諦めきった声で返事を返した。
726だぶ:2009/09/28(月) 07:06:18 ID:???
>>725の続きです

「じゃ、解散ね」
ミサトの声と共に皆がため息をつきながらがたがたと席を立っていく中で、一人アスカは机に突っ伏していた。そんなアスカにヒカリが声をかける。
「アスカ、あんまり気負わない方がいいわよ。気楽にいきましょ」
「ヒカリ〜、アンタはほとんど普段通りだからそういうこと言えるのよ〜」
恨めしげな目で睨まれたヒカリ。ヒカリの役どころはおだやかで常識的な少女で、トウジとお互いに意識し合う仲。ヒカリにはなんの不満もないわけで、アスカの立場には同情することしかできない。
「あはは… ま、まあこういう映画とああいう曲でデビューさせられるんだから、多分すぐに世間から忘れ去られるアイドルになるんじゃないかしら」
「そう?」
「うん。そうなれば、この作戦も遂行不可能ということになって、すぐに引退できると思うわよ」
「そうだといいんだけどねえ…」
アスカは盛大なため息をこぼした。
727だぶ:2009/09/28(月) 07:08:37 ID:???
以上、おしまいです
かなり独りよがりな内容ですね。すみません。

続きは次の機会に投下できればいいなと思っております。
728名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/28(月) 23:31:24 ID:???
終局の続きみたいなノリの軽い話ですね
LASとしては…微量かな?かなりギャグ方向に走ってるようでw
729名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/09/29(火) 02:09:18 ID:???
乙かれです。
アスカとレイの役柄交換は意表をつかれました。
それにしても
> あんたの容姿で一般に最もアピールする性格をMAGIで解析したら、あんな性格になっちゃったのよ。
MAGIって何にでも使えるんだなw
730名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/02(金) 21:09:52 ID:S5zlE7Uh
エヴァの場合、困ったときにはMAGI、ATフィールド、りっちゃんの薬などの
マジックアイテムで物語が進められるから、SSも作りやすいんだな

731名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/02(金) 21:30:33 ID:4ybBBFQ5
非18禁マイナーなギャルゲーSS コンペスレ
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/gal/1253782415/1-100

なぜ 下の作品の二次創作が少ないのか?
SS作家様たちに 下の作品 SSを書いてくれといって 頼みたいです。

1. 初恋ばれんたいん スペシャル
初恋ばれんたいん スペシャル PS版は あまりのテンポの悪さ,ロードは遅い(パラメーターが上がる度に、
いちいち読み込みに行くらしい・・・)のせいで、悪評が集中しました。ですが 初恋ばれんたいん スペシャル
PC版は テンポ,ロード問題が改善して 快適です。 (初恋ばれんたいん スペシャル PC版 プレイをお勧めします!)
初恋ばれんたいん スペシャルは ゲームシステム的にはどうしようもない欠陥品だけど。
初恋ばれんたいん スペシャル のキャラ設定とか、イベント、ストーリーに素晴らしいだけに
SSがないのが とても惜しいと思います。

2. エーベルージュ
科学と魔法が共存する異世界を舞台にしたトリフェルズ魔法学園の初等部に入学するところからスタートする。
前半は初等部で2年間、後半は高等部で3年間の学園生活を送り卒業するまでとなる。
(音声、イベントが追加された PS,SS版 プレイをおすすめします。) 同じワーランドシリーズなのに
ファンタスティックフォーチュンSSは多いのに 似ている 魔法学院物なのに ネギま、ゼロの使い魔 SSは多いのに
エーベルージュのSSがほとんどありませんでした。

3. センチメンタルグラフティ2
センチメンタルグラフティ1のSSは多いのにセンチメンタルグラフティ2のSSがほとんどありませんでした。
前作『センチメンタルグラフティ1』の主人公が交通事故で死亡したという設定で
センチメンタルグラフティ2の主人公と前作 センチメンタルグラフティ1の12人のヒロインたちとの感動的な話です
前作(センチメンタルグラフティ1)がなければ センチメンタルグラフティ2は『ONE~輝く季節へ~』の茜シナリオを
を軽くしのぐ名作なのではないかと思っております。 (システムはクソ、シナリオ回想モードプレイをおすすめします。)
732名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/08(木) 11:00:25 ID:???
733名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/11(日) 02:26:31 ID:???
だぶ氏マダー?
734名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 08:22:40 ID:???
735名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/16(金) 23:02:14 ID:???
736名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/17(土) 06:05:12 ID:???
いってつ
737543:2009/10/18(日) 02:45:57 ID:???
 皆様こんばんわ。
 またこちらにまったり方面の短編投下させて頂きます。

 アスカ視点の独白な上、シンジとの絡みは薄いです。
 また、くいしんぼうアスカ不万歳な方のNGワードは

アスカのポジティヴあさごはん

 でお願いします。
738アスカのポジティヴあさごはん:2009/10/18(日) 02:47:10 ID:???
 浴室から出て洗面台の鏡で鏡に写る自分の瞳をじっと見据える。
 今日も一日よろしく。あんたは自分の力を信じて今日も一日充実
した日を送る。
 今日の一日は明日へ繋がる。大丈夫、私は生き残る。

 気合一発、両の頬をはたいてバスタオルに手を伸ばす。
 下着だけ替えてタンクトップとホッとパンツをまた着て洗面室の
外へ。
 一人のときは全裸で部屋をうろついていたけれど、今は他人が二人
いる。一人なんか同い年の男だものだから、余計な気を使わないと
いけない。
「アスカ、朝ごはんもうすぐだから、ミサトさん起こしてきて」
「へいへい」
 そのままミサトの部屋の襖を開け、いつものアクロバティックな
寝相の保護者の足を蹴り飛ばす。
「ミサト、朝だよ」
 反応が無い。昨日は何本飲んだかカウントする。
『8本か。まあまだマシね』
 このまま肉弾戦で叩き起こす手もあるが、あまり実力行使が過ぎる
と報復が恐い。そこで一計を案じてミサとの耳元で囁いた。
「不味いよミサト、加持さんが見てる!」
 効果は覿面だった。
 そのかわり通常運転に戻ったミサトには、このあと朝ごはんのときに
猛烈なセクハラトーク(シンジも犠牲者)で報復された。
 起きたミサトが洗面室に消える。それを見届けると部屋に帰った。
739アスカのポジティヴあさごはん:2009/10/18(日) 02:48:47 ID:???

 ドライヤーで髪を乾かす時は、いつも少し生乾き程度で止めている。
乾かしすぎて髪が指に引っ掛かるのは嫌いだ。
 指で髪の感触を確かめ、いつも通りと確認する。
 スイッチを切り手早く上着を脱ぎ捨て、カッターシャツに袖を通す。
 シンジがアイロン掛けしたシャツは、ぴんと筋が通っていてひんやり
した布の質感が心地よい。
 スカートのファスナーを上げ、鏡に向かって胸元のリボンの歪みを
直す。
 お気に入りの髪留めで髪を整え、「よしっ!」と気合を入れて襖を
開けた。

 甘いメイプルシロップの匂いが鼻孔をくすぐる。
「わっ!パンケーキ!」
 鞄にお弁当を入れながら、否応なく頬が緩んでしまった。
「アスカは何枚食べる?」
「7枚!」
 大食いに気恥ずかしくなる前に、目の前に積み上げられるパンケーキ
の山にしてやられた。
「アスカァーーー!シャンプーかしてぇーー!」
 風呂場からの間延びした声には断固拒否の返答をした。でも確実に
使われるのは予想できた。
 今日は、許してあげよう。なにせ朝から大好きなパンケーキだ。
740アスカのポジティヴあさごはん:2009/10/18(日) 02:50:27 ID:???
 椅子に座り、向かいにシンジが座るのを見計らって『いただきます!』
をした。目の前にある『命あったものたち』への感謝をしてから食べる
という日本の風習は、何故だか自然に私の中に入ってきた。それが今は
当たり前になっているのが結構心地いい。
「ところでシンジ」
「なに?」
「何で箸持ってるの?」
「へ?……あっ!!」
 ぷっと吹き出す私につられて、シンジもテレ笑いを浮かべてナイフと
フォークに持ち替えた。

『んー、あんまーーい!』

 一日過ごす元気をくれるシンジには素直に感謝だ。まあ、それを表に
出すことはないからアレなんだけど……

 いつか言うから我慢してください。今はこのパンケーキ、全部食べて
誠意を示します。

 ……こんな幸せを満喫できる誠意って、しあわせよねぇ……



<ごちそうさまでした>
741543:2009/10/18(日) 02:54:55 ID:???
以上です。


 朝の時間って準備に切羽詰って結構物事への感じ方ってスルドクなってるよなあ……
とか思いながら書いたものです。

 おそらく朝のときは第三者のために時間を使ってるのがシンジだけだろうなあって思うと、
どうとも言えない切なさがありますなあww
742名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 03:13:47 ID:???
おつ!
743名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 07:59:10 ID:???
744名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 08:49:17 ID:???
イーネ!!
745名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/18(日) 13:23:10 ID:???
GJ!朝からパンケーキ七枚すげぇw

小さなことにも幸せを感じてるアスカっていいでしね〜
746名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/23(金) 12:39:46 ID:???
職人降臨待ち
747名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/10/24(土) 18:45:22 ID:???
遅レスですが、超乙です。
努力家で、実はいい子のアスカ最高です。
748名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/02(月) 18:31:52 ID:???
過疎だなあ
749名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/02(月) 19:51:32 ID:???
>>741
かわいい乙
750名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/07(土) 16:57:16 ID:oYcABM9D
マイナーなギャルゲーSS祭りを開催したいです。
マイナーなギャルゲーSS祭り!

1. SS祭り規定
自分の個人サイトに未発表の初恋ばれんたいん スペシャル、エーベルージュ、センチメンタルグラフティ2、canvas 百合奈・瑠璃子のSSを掲載して下さい。(それぞれの作品20本)
EX)
初恋ばれんたいん スペシャル 20本
エーベルージュ 20本
センチメンタルグラフティ2 20本
canvas 百合奈・瑠璃子 20本
ダーク、18禁、クロスオーバー、オリキャラ禁止
プレーンテキストで20KB以下禁止、20KB〜45KB以内

2. 日程
SS祭り期間 2009/11/07〜2011/11/07
SS祭り結果・賞金発表 2011/11/08

3. 賞金
私が個人的に最高と思う最優秀SSサイト管理人に賞金10万円を授与します。
751名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/07(土) 17:00:23 ID:oYcABM9D
(1) 初恋ばれんたいん スペシャル
初恋ばれんたいん スペシャル PS版は あまりのテンポの悪さ,ロードは遅い(パラメーターが上がる度に、
いちいち読み込みに行くらしい・・・)のせいで、悪評が集中しました。ですが 初恋ばれんたいん スペシャル PC版は
テンポ,ロード問題が改善して 快適です。(初恋ばれんたいん スペシャル PC版 プレイをお勧めします!)
初恋ばれんたいん スペシャルは ゲームシステム的にはどうしようもない欠陥品だけど。
初恋ばれんたいん スペシャル のキャラ設定とか、イベント、ストーリーに素晴らしいだけにとても惜しいと思います。

(2) エーベルージュ
科学と魔法が共存する異世界を舞台にしたトリフェルズ魔法学園の初等部に入学するところからスタートする。
前半は初等部で2年間、後半は高等部で3年間の学園生活を送り卒業するまでとなる。
(音声、イベントが追加された PS,SS版 プレイをおすすめします。)

(3) センチメンタルグラフティ2
前作『センチメンタルグラフティ1』の主人公が交通事故で死亡したという設定で
センチメンタルグラフティ2の主人公と前作 センチメンタルグラフティ1の12人のヒロインたちとの感動的な話です
前作(センチメンタルグラフティ1)がなければ センチメンタルグラフティ2は『ONE〜輝く季節へ〜』の茜シナリオを
を軽くしのぐ名作なのではないかと思っております。 (システムはクソ、シナリオ回想モードプレイをおすすめします。)

(4) canvas 百合奈・瑠璃子シナリオ
個人的には 「呪い」 と「花言葉」 を組み合わせた百合奈 シナリオは canvas 最高と思います。
752名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/08(日) 00:45:59 ID:???
(5)鋼鉄のガールフレンド アスカシナリオ
個人的には「ツン」と「デレ」を組み合わせたアスカシナリオは、LAS最高と思います。
753名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/08(日) 06:56:05 ID:???
鋼鉄の話をするなら漫画の鋼鉄2が一番だろ
754名無しが氏んでも代わりはいるもの :2009/11/17(火) 23:05:23 ID:???
保守
755名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/18(水) 00:38:07 ID:???
もう寝るわ
756名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/18(水) 01:15:24 ID:Bp/Ahb37
マイナーなギャルゲーSS祭り!変更事項!

1. SS祭り規定
自分の個人サイトに未発表の初恋ばれんたいん スペシャル、エーベルージュ、センチメンタルグラフティ2、canvas 百合奈・瑠璃子シナリオ
のSSを掲載して下さい。(それぞれの作品 一話完結型の短編 10本)

EX)
初恋ばれんたいん スペシャル 一話完結型の短編 10本
エーベルージュ 一話完結型の短編 10本
センチメンタルグラフティ2 一話完結型の短編 10本
canvas 百合奈・瑠璃子 一話完結型の短編 10本

BL、GL、ダーク、18禁、バトル、クロスオーバー、オリキャラ禁止
一話完結型の短編 1本 プレーンテキストで15KB以下禁止
大文字、太字、台本形式禁止

2. 日程
SS祭り期間 2009/11/07〜2011/11/07
SS祭り結果・賞金発表 2011/12/07

3. 賞金
私が個人的に最高と思う最優秀TOP3SSサイト管理人に賞金を授与します。

1位 10万円
2位 5万円
3位 3万円
757名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/24(火) 08:43:54 ID:???
758名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/11/30(月) 15:35:51 ID:???
しゅ
759名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/07(月) 17:42:45 ID:???
保守
760名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/14(月) 07:45:58 ID:???
保守点検実施中
761名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/12/21(月) 14:47:12 ID:???
保守
762名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/01/01(金) 23:29:14 ID:???
職人降臨町
763名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/01/11(月) 17:51:52 ID:???
過疎
764名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/01/21(木) 17:06:33 ID:???
職人町
765名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/01/27(水) 07:56:24 ID:???
 
766名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/02/03(水) 10:25:52 ID:???
見て、シンジ君。これがマヤの肛門よ。
767名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/02/14(日) 01:55:17 ID:???
:::::::::::::::::::::::::::::::/!:::::/ |::::/   ゙l::::::::| ヽ:::::::::::::ト、::::|ヽ、::::::::::
:::::::::::,イ::::::::/:/  |:::/   l::/     |::::ト:i ヽ:::::::::::| ヽ::! ヽ:::::::::
:::::::/::l::::::://'  i::/   |:/      !:::l i  ヽ::::::::l ヽ|   ヽ:::::
イ:/::::|::::/ /   |/   |/        i::i     ヾ::::|   |!   ゙!:ト
:/:::::::!:/      i!    |!       リ     iヽ|   !    l:|
:::::::::レ'                         l!
'"´`゙`¨゙‐‐--、、..__             ___,,..、--‐‐''"゙¨´ ̄`
:::::::::::::__,,ニ二二、__`ヾ゙‐、ヽ     /'">¨二二ニ、_‐-
:::::::く´ 弋:::ゝヘ__,'`゙ヽ:::::ヾ、     :::'"ィ'´i:::ゝ_,.イ ̄'`゙ヽ、,
:::::::    ヽ::__ノ _,    ヽ         ヽ、___:ソ   '"
::::::::.  ` ‐-‐‐ ´               ` ‐---ー''"
!::::::::::..
ハ:::::::::::..           ::::i                 :::/
ヽ!:::::::::::::::..            :::::::|                :::/
゙ーヽ::::::::::::::::::.        :::::::j|                .:::/ー-
   ヽ::::::::::::::::..     :::::::::ヽ! r            ..:::/

768名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/02/20(土) 06:37:56 ID:???
>>767
保守しにきてビビッタw
こっちみんなwww







職人乙
769名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/02/21(日) 02:05:12 ID:???

バレンタイン翌日。

アス「あ…」
シン「あ…」
アス「///」
シン「///」

チョコを渡してしまって興奮して寝付けなくて早起きしてしまい、シンジ君とお見合いになってもじもじしてしまうアスカさん。

同じく、貰えると思っていなかったアスカさんからチョコを貰い、朝一で顔を合わせてしまって、照れくさくてもじもじしてしまうシンジ君。

(クア〜)
(くあー!!!!)


影からその光景をそっと見守るペンペンと、痒くて死にそうなミサトさん。
770769:2010/02/21(日) 02:07:12 ID:???
ネタスレに投下しようと思ったものを誤爆しました。
申し訳ないorz
771名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/02/21(日) 20:50:00 ID:???
>>769
GJ。いいね
772名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/02/23(火) 04:31:44 ID:???
>>771
GJもらえるとは思わんかった。
ありがとう
773名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/04(木) 02:55:45 ID:???
まち
774769:2010/03/04(木) 07:26:37 ID:???
※誤爆にGJいただけたのがうれしかったので、思いついたネタがんばって小説風にしてみました。



「アスカ!!雪だよ!雪が降った!!」
「はぁ?」
柄にもなく興奮しているシンジにあたしは怪訝な顔を向けた。
常夏の日本に、雪?
不審に思ったあたしはシンジに問い詰めてみた。
「あんた夢でも見てたんじゃないの?」
「違うよ!本当だよ!嘘じゃないよ!外見てみなよ!!」
あまりにもせっつくシンジに負けて、あたしは窓の外を眺めてみた。
本当に銀世界が広がっていて驚いた。
「ね、言ったとおりだろ!?」
何がそんなに嬉しいのか得意げなシンジがかわいらしくて、あたしはちょっとシンジに抱きついてみた。
「え!ア、アスカ!?」
「雪、降ってて寒いから」
我ながら理由になってないと思う。
「うん、そうだね」
そういいながらあたしの背中にまわってきたシンジの腕がほんの少し嬉しかった。

fin
775名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/09(火) 22:19:47 ID:???
GJほのぼの
776名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/29(月) 03:37:27 ID:???
777名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/29(月) 19:27:16 ID:???
778名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/31(水) 02:02:18 ID:???
779名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/31(水) 22:26:54 ID:???
780名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/03/31(水) 23:22:24 ID:???
781名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/04/01(木) 16:03:56 ID:???
782名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/04/01(木) 20:09:14 ID:???
ちゅ
783名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/04/01(木) 23:59:20 ID:???
www
784起動実験準備室:2010/04/02(金) 15:57:25 ID:bttbAjIS
新作投下。ちょいエロ。前ふり長め。


1.立ち聞き


アスカは足を止めた。

発令所の入り口は目の前だ。ドアは開いている。歩みを止めたのには無論理由がある。
ドアの陰の向こう側から二人の話し声が聞こえてきたから。
ミサトとリツコだ。どうやら話題は自分のことらしい。

「・・だからアスカよ。あの娘、もうすぐここに来るわよ。」
「それで?何か用かしら。」
「ゲーム機よ。携帯ゲーム。昨日リツコがアスカから没収したじゃない。」
「・・・」
「返してもらいたいみたいよ。」
「何かと思えば・・確かあれは、明日の実験第二クルー終了後に返却すると彼女に言わなかったかしら?
あと一日が待てないというの?相変わらずせっかちな娘ね。」

《むう・・》 聞き耳を立てていたアスカの口元がわずかに歪む。

「なんでも明日だと充電が切れてしまって、データが消えてしまうらしいのよね。」
「それは変ね。メモリーの記録と本体の電源は無関係でしょう。」
「それがリツコに見つかった時、咄嗟にスリープモードにしたらしいの。電源が切れた時点でアウトらしいわ。」
「馬鹿馬鹿しいわね。そんなことまでフォローする義理はないわよ・・あら・・」
「・・どうかした?」
「あなたに言われるまで気づかなかったけれど、アスカから預かったゲーム機・・紛失の可能性があるわね。」

《・・なんですってぇ?》 うつむき加減のアスカの眉間に深いしわが一本ほど寄る。

785起動実験準備室:2010/04/02(金) 15:58:13 ID:bttbAjIS
「何よ。それ。」
「昨日没収したブリーフィングルーム・・さっき行ったわ・・何もなかった・・そうね・・途中で無意識のうちにゴミ箱にでも放り込んだかしら・・」
「・・はあ・・実験が始まると他のこと何も目に入らなくなるあなたらしいわ。リツコ。自分の部屋じゃないの?」
「それはないわね。昨日、自室に戻った時センサーに何の反応もなかったわ。」

リツコに限らず幹部の部屋には盗聴等の防止用として電子機器の持ち込みには自動的にチェックがかかる仕組みになっている。
ゲーム機といえど例外ではない。

「あらら。アスカ怒るわよ。」
「それはアスカの自業自得・・と言いたいところだけど、約束を違えるのは事実ね。見つからなければ弁償してあげるわ。それで問題ないでしょう。」
「それはどうかしら。だってあれは愛しのシンジ君からのプレゼントだもんね。」

《なにが愛しよ!勝手なこと言って!》思わず拳を握りしめるアスカ。

「そうなの・・それはシンジ君も少し気の毒ね。ちょっと待って。昨日のこと思い出してみるわ。」

そして会話がしばらく途切れる。
アスカはおもしろくない。ゲーム機のことを邪険に扱われたことに加えて、シンジの名前が出たとたんにリツコの態度が軟化したからだ。

「そうね・・そういえば・・自室に戻る前に準備室に立ち寄ったわね。あそこの棚にでも置いてきたかもしれないわ。」
「準備室?起動実験の?」
「そう・・C2の方ね」
「C2?あのガラクタを放り込んであるところ?」
「そうよ。今から指令との打ち合わせがあるから後で見てみることにするわ。」

そこまで聞けばもう用はないとばかりにアスカは回れ右して今来た通路を戻りだした。
先ほどまでの怒りの表情は既にない。それどころか、口元にはうっすらと笑みさえ浮かんでいる。
786起動実験準備室:2010/04/02(金) 15:59:18 ID:bttbAjIS
《面白いこと聞いたわね・・これは使えるかも・・》



2.お誘い


「・・という訳よ。だからさっさと来なさい!」
「なんだよ。アスカ。なんで僕まで行かなくちゃいけないんだよ。」

ここは男子更衣室の前。アスカよりも少し長引いた起動実験。着替えを終えて出てきたばかりのシンジが待ち構えていたアスカにまさに拉致されんとしているところだ。

「元はといえばあんたのせいじゃない!プレゼントしたのあんたでしょ!」
「無茶苦茶だよ。そんなの。泥棒のまねごとに僕まで引き込まないでよ!」
「何よ。失礼ね。自分のものを取りに行くだけじゃない。何が泥棒よ。」
「だって、勝手に入ったら怒られるにきまってるだろ。それに入れるかどうかもわからないじゃないか。」
「それは確認済み。あの部屋のセキュリティーレベルは高くないわ。監視カメラもないはずよ。私たちのIDカードでも問題ないわ。」

《だったら一人で行けよ・・》と心の中でつっこむシンジ。だが、アスカが聞く耳持たないのはいつものことだ。おそらく見張りでもさせるつもりなのだろう。

「それにね。シンジ。これはあんたの為に行くようなものなんだからね。」
「はあ?なんだよ。それ。」
787起動実験準備室:2010/04/02(金) 16:00:36 ID:bttbAjIS
憮然とするシンジ。ニヤリとするアスカ。

「リツコには準備室にゲーム機があるかどうか確信はないの。だから私たちが誰にも気づかれずにゲーム機を取り戻すことができれば・・」
「・・できれば?」
「そして、そのことを誰にも言わずに黙っていれば・・」
「・・黙っていれば?」
「ふふん。相変わらずのお馬鹿ね。そうなれば、リツコはあたしに謝罪したうえにゲーム機を弁償しなくちゃいけないってわけ。」
「・・あ・・それって・・」
「そうよ。ゲーム機がもう一台手に入るのよ。しかも新品。そっちはあんたにあげてもいいわよ。」

《そうか・・そういうわけか。相変わらず悪知恵がはたらくよ。アスカは。》 

アスカが聞いたら問答無用で叩かれること間違いなしの台詞が思わず口から出そうになったシンジ。さて・・

《どうする・・》
788起動実験準備室:2010/04/02(金) 16:01:22 ID:bttbAjIS
シンジにはそのゲーム機に対しそこまでの執着はない。
自宅のリビングに別の機種があることもあるが、そもそもプレゼントということに関しても、ミサト達が思っている様な理由は実は薄い。
シンジにはシンジなりのアスカに対する思惑あってのこと。そして、実際にそれは功を奏しているのだ。
もっともまさか起動実験のさなかにまで持ち込むとは思ってもみなかったが・・
それはともかく、この誘いはリツコに対する意趣返しを兼ねているとはいえ、アスカなりのプレゼントに対する返礼のつもりなのだろう。
そう思うと、はた迷惑とはいえ断りづらい気もする。

「どうかしら。少しはやる気出た?」

彼の心中を知ってか知らずか、なおもアスカのにやにや笑いは止まらない。

シンジに気がつけというのも酷な話であろう。
その機嫌よさげな笑みの向こう側には、実はとんでもない事態が待ち受けているのだということを。
789起動実験準備室:2010/04/02(金) 16:04:24 ID:bttbAjIS
3.捜し物


「通路には誰もいないわよね。」
「うん。」
「ええっと・・C2・・ここね。間違いないわ。開けるわよ。シンジ。」

自分のIDカードをドアのスリットに通すアスカ。空気の圧搾音とともにドアが開く。

「ほらね、入るわよ。シンジ。」
「え?僕は外で見張るんじゃないの?」
「馬鹿ね。こんなところであんた一人がぶらぶらしてる方がよっぽど不自然よ。さあ、入った、入った。一緒に探すわよ。」

C2と呼ばれるこの部屋はいくつかある起動実験準備室の一つ。中は思ったより広い。
大小様々の機材があちらこちらに無造作に置かれている。確かにガラクタと呼んでもおかしくない古ぼけた器機も多いようだ。
アスカは明かりのスイッチをまだ入れていない。
複数個ある非常灯のおかげで中の様子は薄暗くともある程度うかがい知ることができる。

「これなら室内灯をつけなくとも懐中電灯だけで探せるわね。」

部屋の広さは学校の教室二個分くらいか。入り口付近からは死角となる場所もかなりある。
これならば咄嗟の時は隠れてやり過ごすことも可能かもしれない。
リツコもまだしばらくは来ないはずだ。室内には何の目的かはわからないが稼働中の機械もある。
うるさいというレベルではないがそれなりの騒音が響いている。
少々物音を立てたとしても外には気づかれまい。

「確か・・棚に置いたって言ってたわよね・・」
「でも、棚ってかなりあるよ。見つかるかなあ。」
「リツコは意識してたわけじゃないんだから、あるとしたら多分そこらへんに無造作に置いてあるわよ」

五分ほど二人で探してみる。だが見つからない。
790起動実験準備室:2010/04/02(金) 16:05:47 ID:bttbAjIS
アスカぁ。やっぱりないんじゃないの・・」
「むうう・・まだよ!簡単に諦めちゃ駄目よ!」
「ぐずぐずしてたらリツコさん、来ちゃうよ。」
「まだ大丈夫よ・・あれ?・・あの奥にあるのは何?ロッカーじゃない?」

入り口から一番遠い角に結構大型の四角い固まりのようなものが見える。確かにロッカーのようにも見えるが・・。
先にシンジがその前に辿り着いた。明かりを当ててみる。

「これは個人用のロッカーじゃないよ。大きすぎる。」
「じゃ何よ。」
「ちょっと待って・・開くかなあ・・」

シンジは中央にある観音開きのレバーを両手で持つと下向きに動かしてみた。動く。
そのままそっと手前に引くと音も立てずに静かに扉が開いていく。

「これは・・」
「・・プラグスーツ?」

それはどちらかというとクローゼットのようなものだった。
天井に可動式のハンガーに似た装置があり、二人にとっておなじみのプラグスーツが何着かぶら下がっていたのだ。

「黒か・・初めて見る色だね・・」
「なんでこんなところに・・それよりゲーム機はないのぉ?」

クローゼットには仕切りもなく高さは二人の身長より少し高い。左右の幅も高さと同じくらいか。奥行きもそれなりにある。
スーツがぶら下がっているのは左側で、中央から右にかけては完全な空っぽの空間である。当然目当ての品はない。

「はぁ・・無駄足だったかしらね・・リツコのやつ、やっぱり捨てちゃったのかな・・」

その時だった。入り口の方からわずかではあるがドアが開く圧搾音が聞こえてきたのは。
791起動実験準備室:2010/04/02(金) 16:06:35 ID:bttbAjIS
「げ!誰か来たわ!」二人は慌てて手元の明かりを消した。
「どうしよう!アスカ・・って何すんだよ・・わわっ」
「さっさと入るのよ!」アスカはシンジの背中を押してクローゼットに押し込んだ。
続いて自分も中に飛び込み手を伸ばして扉を閉めようとした。
「助かった・・内側にも取っ手があるわ・・」アスカはレバーを掴んで手前に引いた。

カチャリとロックの音。

「え?まさか閉じ込められたんじゃ・・」
「大丈夫よ。何のために内側にレバーが付いてると思ってんの。閉じ込めを防ぐために決まってるでしょ。それより静かになさいよ!」

向かい合ったまま息を潜める二人。真っ暗になるかと思いきや、扉の下部にはスリットが入っていてそこから室内の光が漏れてくる。
目が慣れてくれば何も見えなくて困るということはなさそうだ。
そのまま30秒程が経過・・した・・のだが・・。

ささやき声で先に口を開いたのはアスカだった。

(・・変ね。なぜ明かりをつけないのかしら・・)
792起動実験準備室:2010/04/02(金) 16:07:38 ID:bttbAjIS
4.密室の攻防その一


(変って・・僕らだってつけなかったじゃないか。)
(あんた、ホントのバカァ?リツコに限らず、真っ当な理由でここに来たのなら真っ先に明かりをつけるに決まってるでしょ!)
(そ、そうだね・・ハハ・・ドアだけ開けて中に入らずそのまま行っちゃったんじゃない?何か忘れ物にでも気づいたとか・・)
(・・違うわね。絶対部屋の中にいると思うわ。)
だが、器機の騒音のせいだろうか、人の気配が感じられないのも確か。このままでは出るに出られない。
(シンジ。しゃがんでその隙間から覗いてみてよ。)下部のスリットを指さすアスカ。
(・・うん、やってみる・・)

おずおずと腰を下ろしながらスリットの隙間から部屋の様子を伺おうとするシンジ。
だが、ただでさえ薄暗い上にスリットの斜めの傾斜が邪魔をして一部の場所しか見えない。少なくとも見える範囲に人影はない。

(・・よくわからないよ・・)言いながら顔を上げると目の前には短めのスカートから突き出たアスカの生足。
わずかな光でもその白さは闇から浮き立つようだ。
793起動実験準備室:2010/04/02(金) 16:09:12 ID:bttbAjIS
シンジの視線を感じたアスカは慌ててスカートの前を押さえた。
(こ、こら!どこ視てんのよ!ヘンタイ!)
(ヘンタイって・・しゃがませたのは自分だろ。)
(あんた、今、スカートの中覗こうとしたじゃない!)
(してないよ・・)
(いくら絶世の美少女と暗闇の密室に入ることに成功したからといって、変なこと考えるんじゃないわよ!
声が出せないのをいいことに襲ったりしたら命はないわよ!鞭で百叩きの刑だからね!
いいこと!シンジ!ちょっとあんた、聞いてんの!)
《・・はあぁぁ・・またかよ・・これって風呂上がりのバスタオルと同じパターン・・だよね・・》

しゃがんだ姿勢のまま俯いたシンジは、思わずこめかみを指で押さえながら嘆息した。
この部屋に連れてきたのもアスカなら、部屋の明かりをつけなかったのもアスカ。
このクローゼットに押し込んだのもアスカ。しゃがませたのもアスカ。
いつものこととはいえ、さすがはマッチポンプの権化あるいは女王。面目躍如である。

(ちょっとアスカ、だんだん声が大きくなってるよ。人がいたら気づかれちゃうよ・・あ、アスカ!)
(なによ!)
(い、今、音がしたよ!またドアの音!シュッっていったよ!)
(ごまかすんじゃないわよ!だいたいあんたねぇ、この前だってあたしの着替えを覗こうと・・)

頭を抱えて、アスカのここぞとばかりに始まったいつ止むともしれぬ罵詈雑言にじっと耐えるシンジ。
こうなったら嵐が通り過ぎるのをひたすら待つしかない。
しゃべり続けるアスカ。だが、シンジの言語中枢はアスカの言葉を意味あるものとして処理する努力をとっくに放棄している。
794起動実験準備室:2010/04/02(金) 16:11:13 ID:bttbAjIS
《・・確かにドアの音が聞こえたような気がしたんだけどな・・》

その時、シンジは視野のすみで動くものを感じた。反射的にそちらを見やる。
スリットの隙間から人影が見える!しかも一人ではない。二人のようだ。
やっぱりドアは二回開いたに違いない。
シルエットでしか判別できないが・・あれは・・もみ合いながらこちらに近づいてきてるような・・

(・・その前はあたしの下着を・・こら!聞きなさいってば!)
(アスカ!黙って!人がいる!)
(え?・・)
(ちょっと待って・・だんだんとシルエットがはっきりしてきた。
あれは、一人は男で・・もうひとりは・・女の人?まさか・・襲われてるの・・それとも・・)
(なによ、シンジ!なによ、なによ!あたしにも見せなさいよ!)
シンジのただならぬ雰囲気に慌ててアスカもしゃがみこんだ。
だが、暗い上に狭苦しいクローゼットの中。ふたりは盛大に頭をぶつけてしまった。

ごつっ!

(いったあぁぁぁい!)
(何すんだよアスカ!)
(それはこっちのセリフよ!いいからどきなさい!)
(どくって、どこにどくんだよ。)
(立てばいいのよ、立てば!)
795起動実験準備室:2010/04/02(金) 16:14:13 ID:bttbAjIS
しぶしぶ立ち上がるシンジ。

アスカはスリットに顔を押しつけるが彼女の位置からはスリットの傾斜角度の方向が悪いのか、人影は見えない。
それよりも先ほど頭をぶつけた衝撃で目の前がチカチカして仕方ない。とりあえずこめかみを指で押さえながら立ち上がろうとしたアスカだが・・

《わ・わ・ま、回る・・》

周囲がぐるぐる回り始める。立ちくらみを起こして見当識を失ってしまった。

《まずいわ!た、たおれちゃう・・》

だが狭いクローゼットのこと、後ろ向きにふらついたもののプラグスーツだろう、背中のうしろがクッションとなって大きな音を立てずにすんだ。
シンジも頭が痛いのか、うっと言う呻き声が聞こえる。

《はやく、見なくちゃ・・》

じんじんする目頭を指で押さえながらしゃがみ込むアスカ。スリットから覗こうと目を開けたが視界は真っ暗。何も見えない。

《うそ!・・目が見えない?》

慌てて指でスリットを探るが、感触はつるつるで隙間なぞ何もない。
どうやら視力を失った、というわけではなく単にスリットとは反対側の奥の壁を向いているだけのようだ。

《まいったわね・・よほど強く打ったんだわ、右も左も分からなくなるなんて・・》

アスカは軽く頭を振ってスリットの方向を見やる。
だめだ、人なんて見えない・・いや、かすかに影のようなものが視界をかすめたような・・もう少し後ろに下がれたら・・。
796起動実験準備室:2010/04/02(金) 16:15:45 ID:bttbAjIS
《後ろのプラグスーツが邪魔ね・・そうだ!こうすれば!》

まだ若干頭がふらつくものの、妙案がひらめいて少し元気が出たアスカは中腰になって両膝をピンと伸ばした。
そして、そのままの体勢を維持したまま、お尻を背後のプラグスーツに押し込んだ。
相変わらず、うう、とか、ぐう、とか呻き声が聞こえるが、もはやシンジのことなんぞ知ったことじゃない。

これでアスカにとって両足の裏とお尻の部分が支えになった。
アスカは両膝を伸ばしたまま腰を深く折り曲げる。膝に頭が触れんばかりに・・。
新体操の選手並に体が柔らかいアスカにとっては別に苦にもならないポーズだ。
スカートがずり上がって少しめくれたようにも思うが、気にすることもないだろう。
この暗さだし、どのみちプラグスーツに紛れてシンジの側からは中身は見えはしないのだから・・。

《これなら視点は後方にかなり下がるはず・・どうかしら・・あ、みえたわ!・・って、なにこれ!ウソでしょ!》

スリットの隙間から見えた光景は、アスカにとって驚愕そのものであった。
797名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/04/03(土) 02:26:58 ID:MvxBjZ2z
wkwk
798名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/04/03(土) 03:28:18 ID:MvxBjZ2z
>>796の時刻を見ると。。。
ひょっとして規制に巻き込まれた?
799名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/04/09(金) 00:09:56 ID:???
wktk
800名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/04/10(土) 01:04:18 ID:???
801名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/04/22(木) 16:55:56 ID:???
保守
802名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/05/01(土) 17:37:02 ID:???
死守
803名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/05/11(火) 23:39:44 ID:???
保守
804名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/05/22(土) 20:36:37 ID:???
>>796
ふらりと立ち寄りましたが、面白そう
ゲーム好きということで式波設定なのかな(惣流さんも隠れ設定でゲーム好きらしいですが)
ぜひ続き希望
805名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/03(木) 06:22:57 ID:EWJvUjfj
 
806名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/06(日) 04:59:07 ID:???
ほっしゅほしゅ
807名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/07(月) 17:40:50 ID:???
投下こねー
808名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/18(金) 00:44:59 ID:???
しかたがないな
やるか
809名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/18(金) 01:53:23 ID:???
来い来い
810 ◆Fv2.a53w1k :2010/06/19(土) 04:14:01 ID:???
###できたぶんだけ。けっこう長引きそうだから長い目でみてください。

0.
未来という言葉がある。
私にとって、未来とは私がこれから生きていく際限のない時間の流れ、そのすべてを表すものだとなんとなく思っていた。
だから、未来というのはつかみどころのない、あまりに漠然とした言葉だった。
明日の自分や一か月後の自分が何をしているかだって分からないのに、十年後や二十年後の自分の姿なんて想像もつかない。
……仕事は何をしているのだろう、恋人はいるのだろうか。ひょっとしたら子供がいたりするのかな。元気にしているのかな。未来のあたしは笑っている?それとも泣いている?
気付けば十四年というけして短くない年月を消費してきた私でも、これから生きていくであろう何十年は永遠とさしてかわらない。とてもじゃないけれど、私の想像の及ぶものではなかった。
だから、私と、私をふくむ全ての人たちの「未来」に消費期限がついたあの日。私は人並みに驚き、悲しみながらも同時にかすかな安堵を覚えもしたのだ。
だって、とっくに過去の出来事になってしまったかつての「未来」はことごとく私を裏切り続けてきたのだ。もう自身の「未来」を想像して、期待して、苦しむことは二度とない。
面白くもなんともない学校は今日で終わり。明日からは楽しい夏休みだ。
最後の夏休みがはじまる。
811名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/19(土) 04:14:59 ID:???
1.
冷房のがんがんに効いたアパートメントの部屋から一歩でると、むっとした初夏の朝の空気が私をつつんだ。
家の中で肺いっぱいに冷たい空気を吸い込んだつもりだったのに、身体からみるみる冷気が抜けていくのがわかる。
私が住んでいるのは高層アパートメントの十二階なのに、どこからか、みんみん、しゃわしゃわとセミの鳴き声が聞こえてくる。日本の夏はうるさい。
電気はまだきているけれど、整備会社の人が来なくなって久しいから、エレベーターは止まっている。だから、建物の外壁に取り付けられた非常階段で一階まで降りる。
むしあつい空気を振り払うように二段飛ばし、三段飛ばしで階段を駆け降りる。かんかんかん、と、けたたましい金属音が響き渡るけれど、構いはしない。もうこのアパートメントには私のほかには誰も住んでいないのだから。

今日も、階段の出口でバカシンジが待っていた。耳にはイヤホン。年代物のカセットで音楽か何かを聴いている。傍らには黒のママチャリ。
まったく懲りないヤツ。変なところで真面目なんだから。
「おはよう、惣流……さん?」シンジは私の姿をみつけると、イヤホンをとって、おどおどとした口調で私に話しかけてきた。
「ふん、あんたまだ待ってたの」おはようバカシンジ、とか、今日も待っていてくれてありがとうね、とか、そんな可愛らしい言葉は私の口からはまず出てこない。
「私なんか待たないで、さっさと学校に行っちゃえばいいのに」
「え、でも先生が怒……」
「もう、わかってるわよそれくらい……それじゃ自転車とってくるからあんたはここで待っていなさい!」
私はシンジをその場に待たせて駐輪場に自転車を取りに走る。

やっぱり、以前とくらべると治安が悪化している、ような気がする。
担任の思いつきで、数か月まえからは生徒は保護者と一緒に、保護者のいない生徒は他の生徒と一緒に登下校しなければいけないことになった。
『女の子を守るのは男の仕事よん、はりきれ男子ども』と集団登下校の組み分けが発表された。何かしらの意図を感じざるを得ないそのカップリングはクラス内の論議を呼んだが、大半の生徒はしぶしぶとそれに従うことになった。一部、喜んでいた奴もいたようだが。
812名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/19(土) 04:16:32 ID:???
筋肉バカの鈴原とヒカリ、相田と霧島、そしてバカシンジとこの私だ。他数組。鈴原は自身に与えられた大役を完遂しようと、竹刀片手に周囲に目を光らせながらヒカリを護送していると聞く。軍事オタクの相田もモデルガンを懐に忍ばせて以下同様のことをしているようだ。
霧島はともかく、ヒカリはあんな暑苦しい男とひっつけられてかわいそう。鈴原め、ヒカリに手えだしたらどうなるかわかってるでしょうね。
まあ、そんなことはわりとどうでもいい。問題はバカシンジと私だ。バカシンジに私を守らせる?ナンセンスだわ。私がアイツを守れの間違いじゃないかしら。
もっと気に食わないことがある。シンジと一緒に帰れと言われた時、私はぼろくそにシンジをけなしたけれど、それでも、すこし、ほんのすこしだけ嬉しかったことだ。
私は一人でも大丈夫、なはずなのに。

駐輪場で、私が愛用している真っ赤な自転車を引き出そうとしたところで、手がとまった。
普段だったら、私が先頭で自転車をかっとばし、バカシンジは必死に私を追いかける。学校までの20分とすこしくらいは、ふたりっきりだ。
でも、そのあいだ彼と会話することはほとんどない。
学校での彼の席は私の右前。やっぱり、話はしない。彼が普段どんな音楽を聴いているかも知らない、彼の趣味も、特技も、何も知らないままだ。
まいにちまいにち今日こそは彼と話をしよう、彼のことを聞こうと決心して家を出ても、言い出せなくて、それを明日にのばして家に帰ってきてしまう。
認めたくないけれど、私はぶきっちょだだ。そのうえ素直じゃない。
そういえば、彼と一緒に学校に行くのは今日で最後か。あしたから夏休みなんだものね。
彼と仲良くなるための時間は何カ月もあったのに、結局、私は一歩を踏み出すことはできなかったな。
……
813名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/19(土) 04:18:26 ID:???
「あれ、どうしたの?」手ぶらでもどってきた私をみて、シンジが不思議そうな顔でたずねてきた。
「パンクしてたのよ、きのうまではちゃんと走っていたのに。ほんっと、困っちゃうわ」
「どうしよう、今から歩いてたら学校に間に合わない」
シンジは困った顔をした。まったく鈍感なやつ…あんたの自転車があるじゃない。
「そうか、惣流さんが乗っていけばいい。僕は後から歩いて行くよ」
なんでそうなるのよ、と叫びそうになった。この男はどこかズレている。
「あんたばか?私が先に行っちゃったら意味がないじゃない。……あんたも乗るの!私が後ろに乗るから」
「あ、そうか」その手があったか、というふうにバカシンジはぽんと手を叩いた。私がこの一言を言うのにどれだけ勇気を出したか、こいつには全然伝わっていない。
「でも僕、人を後ろに乗せてこいだことなくて……」「うるっさいわねえ、やりゃできるわよ、ほら自転車!」
荷台をまたぐように座って、後ろからシンジの腰に手をまわす。抱きつくような格好になった。痩せていて、ところどころ骨ばっているけれど、私と同世代の男の子の身体だ。
「そ、そそ、惣流さん?」シンジが締め付けられたような声を出す。このバカ、なに緊張してるのよ。
でも、私の胸もどうしようもなくどきどきしていて、その事実がどうしようもなく悔しかった。
「転んだら承知しないからね」

……がっしゃん。
でも、やっぱりバカシンジはバカシンジだった。走り出したはいいけれど、あっちへふらふら、こっちへふらふら。
期待を全く裏切らず、アパートメントの門をくぐったあたりで、電柱と正面衝突してくれた。
シンジは電柱に、私はシンジの後頭部に頭をぶつけて痛い思いをする羽目になった。いたた、やっぱり強引にやるとろくなことない。
冷静に考えてこの軟弱男にレディを後ろに乗せてこぐだけの力があるわけないわよね。
彼のあまりのふがいなさに憤慨しながら、地面にノビているシンジを無理やりひきおこしてやった。
「このバカ、もういいわよ、歩きでいい!」「いてて……うん、でも学校に遅刻しちゃう……」
「じゃあ、遅刻したらいいじゃない。別に学校をサボろうってわけじゃないんだし。このご時世に学校に行こうとしてるだけ偉いわよ。さ、いきましょ」
814 ◆Fv2.a53w1k :2010/06/19(土) 04:21:10 ID:???
結局は、こっちのほうがよかったのかもしれない。私たちははじめてお互いにじっくりお話をする機会を得ることができたのだから。
私はいままで無駄にしてしまったチャンスを取りかえすように、彼を質問攻めにしてやった。学校のこと、友達のこと、そして夏休みの予定のこと。
バカシンジは今日の私のあまりの変わり具合に驚いていたようだけれど、それでも、私の質問にはなんでも答えてくれた。
今のところは夏休みの予定はまだ何も決まっていないよ、だけど仲のいい友達とどこかに遊びにでもいけたらいいなあ。シンジはそう言って、はにかみながら笑った。
仲のいい友達というのは、鈴原や相田のことだろう。人づきあいはあまり得意じゃないらしいシンジも、あの二人とは心の底から打ち解けているみたい。
鈴原も相田も救いようがないくらいバカだけど、私が知らないシンジの姿をいくつも知っているという点では、本当にうらやましい。私なんて、そんな人は一人もいないのに。
シンジと一緒に過ごすことができたら、楽しいだろうな。
もし、私がずかずかとシンジの中に入り込んでいったら、彼はどんな顔をするだろう。迷惑に感じて、私を追い出したりしないかな。それが、臆病な私にとってはどうしようもなく怖い。

でも、ここに確かなことがひとつ。
私たちに残された時間は、あと五十日とすこし。これから、どういう風に生きたとしても私たちは九月の始業式を迎えることはできない。
どういう道をたどっても、その先には不可避の終わりしかないという事実は、私に前向きに生きるすこしだけの勇気を与えてくれた。
私が残る時間をどういう風に生きればいいのか、どの選択が正解で、どの選択が不正解なのか、それは私にもわからない。
でも、いまの私が何を望んでいるのか、それを問われたら答えは一つだ。
学校が見えてきた。



#俺に短編の才能はないようだ。でも落ち着いてスレが過疎るのをみてはいられなかった
#時間はかかるかもしれんががんばって完結させます
815名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/19(土) 06:07:37 ID:???
頑張れ!続き期待
816名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/19(土) 07:33:44 ID:???
読んでるよ〜。
このアスカの一人称、凄く好きだわ。続き待ってるよ。
舞台設定を適度に伏せた導入もいいね。引き込まれます。
817名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/19(土) 21:41:04 ID:???
>>814
ちょっと変わった設定のようで、引き込まれます。
続き期待です。
818名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/21(月) 04:03:43 ID:???
wktk!
819 ◆Fv2.a53w1k :2010/06/21(月) 07:01:09 ID:???
2.
私たちの第一中学校は第三新東京市の南東の住宅街の中にある。
いや、正確にいえば第一中学校だった建物、というべきか。第一中学校は今年のはじめに閉校になっていた。
今は、一人の教師だけが学校に残ってわずかに残った生徒たちを相手に勉強を教えている。
だから、学校に行きたくなければ行かなくてもいいのだ。学校なんか行かずに、好きなことをして遊べばいい。
なのに、どうして私は以前とおなじようにその場所を学校と呼び、制服姿でそこに通っているのだろう。学校なんて面白くもなんともないんじゃなかったっけ。
そこにバカシンジとヒカリが通っているからなのか、それとも学校に行かないとどこか落ち着かないのか。
……実のところ、自分でもよくわからない。

学校についたのは、一時間目がはじまってしばらくたったくらいの時間だった。昇降口でうわばきをはきかえて、シンジと一緒に人気のない廊下を抜ける。
校内は恐ろしいくらいに静まり返っていた。私とバカシンジの足音だけがリノリウムの床に恐ろしいくらい反響している。
通り過ぎる教室はどれもからっぽで、椅子と机だけがものも言わずに整然と並んでいた。
まるで学校中が死に絶えて、私と隣にいる彼だけが世界に残った最後の人間になってしまったみたいな錯覚を覚える。
今学期だけでも数えきれないくらい目にした光景だけれど、やっぱりいい気分はしない。

階段を一段、もう一段と昇っていくと、静寂を破って、遠くから生徒たちの明るいざわめきが聞こえてきた。それはこの世界ではとっくの昔に失われてしまったはずのものなのに。
私たちの2年A組。第一中学校に残った最後のひとクラス。
いつもこの瞬間だけはなぜかほっとする。どうしてだろう、ひょっとして、バカシンジも同じ気持ちなのかな。
「いいわねバカシンジ、私たちは遅刻しそうになって全力で走ってきたのよ。けしてゆっくり歩いてきました、なんて雰囲気だしちゃだめよ」
「あ、うん」シンジはうなずいた。「じゃあいくわよ、せーの」
私とシンジは廊下を全力でダッシュして、後ろのドアから教室に飛び込んだ。私が先、バカシンジが後。
「すみません先生。おくれてしまって……惣流の自転車がパンクしてて、歩いてきて……」
820 ◆Fv2.a53w1k :2010/06/21(月) 07:03:15 ID:???
「おお、きたわねお二人さん!待っていたわよー」
ミサト先生は、私たちふたりを見てにいっと笑った。「自転車がパンクう?怪しいなあー。いちゃいちゃしてたら遅れちゃったのね、まあ許してあげるわ」
その言葉につられてクラスのみんながどうっと笑った。「まさか碇と惣流がくっつくなんて世も末やな!」鈴原が的確なチャチャを入れたせいで笑いが大きくなった。たぶんいま、私は真っ赤になっていると思う。
「とっトウジ、何いってんだよ。違うったら!」シンジが必死に否定する。「だいたい惣流はただの友達だって……」
「ほんとにかい?毎日皆勤で遅刻もしたことがなかったお前が今日だけは遅刻したんだぞ?これは何かあると勘繰るのは当然じゃないか」と相田が口を挟んだ。
「違うっていってんでしょこの馬鹿!あんたらあとで顔貸しなさい!」「こっわい女、こんなんとつきあえるシンジはきっと聖人やな」
「ちょっと、馬鹿鈴原!いいかげん静かにしなさい!」委員長のヒカリががたんと席を立って鈴原を一喝した。クラスが急に静かになる。「もう、ミサト先生も変なことで二人をからかわないでください!」
「ごめーん洞木さん、私こういう話題大好きでついつい……」ミサト先生はえへへと苦笑いしながら私たちにぺこんと頭をさげた。
ナイスよ、ヒカリ。私は心の中でガッツポーズをしながら自分の席に向かった。まったく、どちらが先生なのかわからない。
クラスを束ねる才能はヒカリのほうが断然上だ。ヒカリのほうが先生の才能あるんじゃないかしら。

「じゃ、洞木さん。お願いね」「はい、先生」
「きりーつ!」ヒカリが大声を出した。クラスの全員がすっくと席を立つ。
朝礼なんて私たちがいないうちにとっくに終わってるものと思っていたから、びっくりした。
「え、僕たちが来るのを待っていたんですか?」と、シンジが不思議そうにたずねた。
「そうやぞ碇、いつまでも待たせよって」と鈴原。
「あら、だって一学期のおしまいくらいみんな揃ってから一日をはじめたいじゃない?」ミサトはそんなの当たり前のことじゃない、とでもいうふうな顔だ。
クラスのみんなも、そうだそうだ、というふうに首を降る。
最後くらいみんな揃って……か。
なんてしらじらしい言葉。まあ、悪くはない響きだとは思うけれど。
「礼!……着席!」
821 ◆Fv2.a53w1k :2010/06/21(月) 07:06:02 ID:???
3.
葛城ミサトは私たちの担任だ。容姿はまあ、そこそこ。でも性格はずぼらでいいかげんだ。でもなぜか男子には大人気だから、私たち女子はあまりおもしろくない。
男子ってなんであんなに馬鹿なんだろう。あんたのことを言っているの、わかってるんでしょうね……バカシンジ。
ともかく、男子に人気があることだけが取り柄でずぼらでいいかげんな葛城ミサトは、第一中学校に残った最後の教師のひとりだ。
彼女は私たち勉強を教えている。学校という場所じたいが存在意義をなくしたこの世界で。自分のやっていることには意味がないと知りながら。
私は彼女が嫌いだ。

「おはよう!2年A組のみなさん」ミサト先生はクラスじゅうをみまわしてにこりとわらった「空席なし、出席確認の必要はないわね」
「さて、いきなりだけど……今日はみなさんに重大なお知らせがあります。
嬉しいお知らせと悲しいお知らせがひとつずつ。さあ、どちらを先に聞きたい?じゃあ、惣流さん!起立!」
いきなり自分の名前を呼ばれた私は、びくっとして立ち上がった。
嬉しいお知らせと悲しいお知らせ?いまの私たちに嬉しいお知らせなんてものがあることのほうが驚きだけれど。
「え、あ、じゃあ嬉しいほうを」
「嬉しいお知らせは……明日から楽しい夏休みです。学校は今日でおしまい、みんな好きなことをして遊んでいいのよ。パーっと!」
クラスの中はしいんと静まり返ったままだった。私も、バカシンジも、ヒカリも鈴原も相田も、うつむいたまま、一言もしゃべらない。
誰も口には出さないけれど、みんなこのことには気づいている。再び、私たちが全員そろってこの教室に集まることはおそらくない。
この教室にいるうちの何人かとは、もう顔を合わせることすらないかもしれない。
「そうよね……そりゃそうよね」ミサト先生はバツの悪そうな顔をした。
「だから……いくつかイベントを企画してみたわ。遠足でしょう、臨海学校でしょう、ほかにもいっぱい考えているわ
この夏休みは思い出に残るわよ!サービス、サービス!」
  この言葉を待っていたように、みんながわあっと歓声をあげた。バカシンジも笑った。私もつられてちょっと笑った。
822 ◆Fv2.a53w1k :2010/06/21(月) 07:10:39 ID:???
「さすがミサトセンセや!」鈴原が叫ぶ。「わしらのことをようわかっとる!」
「もちろん補習もあるわよ。鈴原、あんた期末テストの数学を空白で出したでしょう。強制参加!」
「そんなあー」といって頭をかかえた鈴原はなぜか笑っていた。気持ち悪い。どーせミサトセンセとの個別授業やとかそんなやーらしいこと考えてるんでしょう。
あ、ヒカリが面白くなさそうに鈴原を睨んでる。
「ちなみに補習は鈴原以外は自由参加よ。来たい人は来ていいわ」
また、みんなが歓声をあげる。ひょっとして、みんな行くんじゃないかと思う。
823 ◆Fv2.a53w1k :2010/06/21(月) 07:12:43 ID:???
「で、次は悲しいほうのお知らせ……ま、これはもうお約束ね」
ミサト先生は教壇の上に大量の紙の束をどすんと置いた。「宿題があります。提出は新学期の九月一日!」
宿題、という言葉にみんながざわめいた。私も、えっ、という声が口から出かかった。
なぜなら、私たちが新学期を迎えることは絶対にないはずだからだ。
「あら、みんなどうしたの?」ミサト先生は、私なにかおかしなことをいったかしらという風な顔をした。
「ひょっとして、八月三十一日に太陽がバクハツするから宿題なんて意味がないなんて思っているんじゃないでしょうね」
「笑止千万!」ミサト先生は教壇をばん、と叩いた。クラスが静まり返る。ミサト先生は諭すように話し出した。

「今から十五年前、突然の太陽の異常活動と、それにともなう気候の激変で人類の半分が死に絶えたわ。
 みんなも知っていると思うけれど、今度はもっともっと大きなものが来るそうです。それで、今度こそ地球は完全に焼け野原になって、地上にいる人は一人残らず死んでしまう」

そうなのだ。八月三十一日に太陽が新星になるのはほぼ確実だ。運が悪いと地球は粉々になるし、運が良くても強力な熱線と放射線で地上は完全に消毒されてしまうと聞いている。
人類の絶滅を防ぐため、ここ第三新東京を含む世界数か所に巨大な地底都市が建設されたけれど、それでも人類が生き延びられるかどうかはかなり微妙らしい。
ちなみに、その地底都市に避難する数万人に、私たちは含まれてはいない。
それらの都市はすでに地上と断絶しているため、行くこともできない。

「少なくとも、そう大人たちは信じている。あと数十日しか生きられない、それまでにやることをやっておこう、後悔のないように生きようって。
 でも、あなたがたはまだ子供よ。子供には未来を夢見る権利がある。あなたがたに、後先短い老人みたいな考えは、まだ似合わないわ。
 最後の最後まで前向きに生きるのよ。どんなに苦しくても。未来が来ると信じて
 奇跡が起こって、もし九月一日が来たら、またこの教室で会いましょう。
 そのとき、もし宿題をやってきてない人が一人でもいたら、私、許さないからね。」

私は悟った。ああ、やっぱり、私は彼女が好きにはなれない。

「宿題は大サービスしてひとつだけ。作文よ。テーマは『未来のわたし』」
824 ◆Fv2.a53w1k :2010/06/21(月) 07:13:37 ID:???
#とりあえず書けたぶんだけ。
#次は一週間後?くらいです
825名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/21(月) 07:56:31 ID:???
>>823誤字訂正。ごめん眠くてボケてた。
教壇→教卓
826名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/21(月) 21:17:29 ID:???
正直俺が書いてるのかと思った
827名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/22(火) 03:35:03 ID:???
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
828名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/24(木) 02:54:52 ID:???
イイ!設定は全然違うんだけど、厳しい現実と切ない雰囲気の中にある、子供たちの賑やかな雰囲気がエヴァっぽさ引き立たせてるなぁ。
幼なじみとも違うアスカとシンジがどう絡んでいくかも期待です。
829名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/27(日) 19:07:09 ID:???
1レスだけ、お邪魔します。
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 土砂降りの雨の中、アスカが帰宅。
「あーもう、ずぶ濡れよ。ただい……ま!?」

 何故か、シンジが全裸で寝ている。絨毯の上にうつぶせで。

 アスカは思わず凍り付く――いや、呆けている場合ではない。これは事故かもしれないのだ。
「ねえ、シンジ? ……シンジ!?」
「すやすやすや」
 本当に寝ているだけである。アスカは、思わずほっと息をつく。
そして状況も理解し始める。自分と同じように、シンジもずぶ濡れで帰ってきたのだ。
シャワーを浴びて、一人きりの開放感を味わいながら全裸でリビングをうろうろ。
疲れ切った全裸の体を絨毯の上に横たえてみると、これまた肌触りが心地よい。そして――。
 それはともかくこの状況、ほうって置くわけにも行かない。まあ、いつものように蹴り飛ばせばいいのだが、
まじめにシンジを心配してしまったお陰で、ツッコミを入れるタイミングを完全に失ってしまったのだ。
「もう、世話の焼ける……」
 仕方なく、アスカはシンジの部屋着や下着を取り出して、かいがいしく着せ始める。
もう無かったことにしてしまいたいのだ。これ以上、シンジなんぞのために、煩わしい思いはしたくない。
「今、目ぇ覚ましたら承知しないわよ? まったく――あ、あれ?」
 おかしい。何故、この状況が理解できたのだろう。そういえば以前に、自分もずぶ濡れで帰ってきて、
シャワーを浴びて、裸でうろうろしたことがある。そして、気がつくと――。

「ふあああ……あ、あれ? アスカ、帰ってたの」
「……うん」
 思えば自分の時、後で気付かれないように、よくもまあ上手く片付けてくれたものだ。
自分が目を覚ましたその時、シンジもまた、真横で何事もなく暖かいコーヒーを注いでくれていた。
その何事もなかったかのような素振りにも、まったくもって隙はなかった。
 仕方ない、許してやろう――あんなことや、こんなことも。
ここで怒って、このコーヒーの味を損なうのは、もったいないにも程がある。
こうして、いずれは肌も許してしまうのかと、浮かべた苦笑いにも似たコーヒーの味を。(完
830名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/27(日) 23:30:33 ID:???
>>829
不覚にもふいたーーw
ぜひ、アスカを見つけたシンジの話を!
GJ!
831名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/28(月) 19:56:17 ID:???
>>830 ありがとです。しかし、うーむ……シンジ版、まったく心づもりがなかったんだけど。
---
 シンジ、大雨の中をやっとの思いで帰宅。
「うひゃあ、ずぶ濡れになっちゃった。ただい……ま゛!?」

 アスカが、全裸で寝ている。しかも、丸出しのあお向け大の字という、男前な寝姿で。

「ぶ、ぶふっ」
 シンジは弾丸のような鼻血を吹き出し、立ちくらんで卒倒する……いや、なんとか持ちこたえた。
そして、シンジは改めてパニック状態に陥り始める。
「どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうし……」
 いやいや、素直にじっくり鑑賞した上で、その肌触りと感触でも楽しめばよろしいだ。男らしく。
しかし、どうにもシンジは生真面目である。このまま放置してはいけないと思ったらしい。

「あ、アスカの服は……えーっと……」
 実に無謀である。寝ている間に服を着せてしまおうというらしい。
もし目を覚ましてしまえばタダでは済まないというのに、シンジは夢中でアスカの部屋に潜入する。
「えーと、下着は――あ、あった……ぐはぁ!」
 手にしたブラジャーのあまりの可愛らしさに、シンジはまたしても失神寸前。
いや、ブラジャーは止めておこう。装着は困難を極めるし、室内ならノーブラでも問題はない。
しかし、下半身はそう言うわけにはいかない。そして、シンジは新たな下着を手に、再び悶絶。
「ぱ、ぱんてぃー……う、うう……」
 落ち着け、シンジ。鼻血だけで出血多量で倒れてしまうぞ。なにより、大事な着替えを汚しちゃ大変。
しかも、これから手を取り足を取り、着付けをしなくてはならないのだ。出来るのか、シンジ?
「くっ……もうダメだ! 我慢できない!」

「あれ、シンジ。帰ってたの?」
「うん、コーヒー飲む?」
「ありがと。ふわああああ」
男は瞬時に賢者となれる魔法を持っている。いったいそれはそれが何なのか、知らない人は知る必要は無い。
何もかもスッキリしたようなシンジの腑抜けた顔つき、それこそが、アスカの見慣れたシンジなのである(完
832名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/28(月) 19:58:26 ID:???
う、ミスった。
>>831 下から2行目、2文目。
× それはそれが
○ それは
833名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/28(月) 20:06:50 ID:???
>>831
830じゃないけどありがとう!ニヤニヤしたw
834名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/06/29(火) 02:20:47 ID:???
>>831
GJ!
アスカ、シンジのうろたえぶりが和むね
835名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/07/01(木) 07:38:22 ID:???
こういう単発物大好きだwww

二人とも苦労してるんだな……
836名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/07/01(木) 14:09:17 ID:???
では、調子に乗らせて頂いて……。
--
「ふむ、今日はシンジの誕生日なのね」
「い、いや、気をつかわなくてもいいよアスカ」

アスカ、ひと思案の末、形の良い自慢の胸をグイッとシンジに突き出した。
「よし、アタシのおっぱいあげる」
「ちょっ……あ、あの」

思わず顔が引きつるシンジ。真に受けられる筈がない。
「あ、え、えーと、ボクCDが欲しいな。パッヘンベルの三千円くらいで……」
「アタシの胸が三千円にも劣ると言いたいのかしら」

シンジ、仕方ない。アスカのジョークにつきあってやれ。
どうなるか判っているとしても。

「ほら、シンジ? あんたのおっぱいなんだから、もむなり、はさまるなり、お好きにドーゾ」
「……じゃ、じゃあ触るよ」
「ご遠慮なく」

と、シンジはおそるおそる手を伸ばす。
シンジの心境、熱せられたアイロンを試しに触れようとするかのごとく、あるいは、
もしかしたらこのリーチアクションは当たるかもしれない、という淡い期待感というところだろうか。
思わず、ゴクリと生唾を飲み込み、あと少しでその右手が触れる、その刹那。

ばきっ!

はい、アスカのハイキックがシンジの顔面にクリーンヒット。
シンジ、お疲れ様でした。
「あっはっは、ゴメンねシンジ。この右足はアタシのだから」
「ですよねぇ……あはは」 (続く?)
837名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/07/01(木) 14:25:15 ID:???
で、続き。
--
で、1年後。
「よし、今年はアタシの好きな部位を選ばせてあげよう。どこが欲しい」
「……」

思わず、うんざり顔になるシンジ。結果はわかっているのだ。
さて、なんと答えよう。

「じ、じゃあ、右下肢」
「成る程、まるまる1本ね。足といったら膝蹴り喰わせようと思ったのに」
「あ、あはは……」
「さあどうぞ。去年のおっぱいでも、この太ももでも、お好きなだけスリスリしてみれば?」
と、ドンとテーブルの上に右足を投げ出すアスカ。

さて、どうなるだろう。
いや、そうなるだろう。

ばきっ!

今度は華麗な右フックがシンジの頬を直撃。
「アハハ、この右手ちゃんってば焼き餅焼きだから」
「ぐ、ぐう……やっぱりこうなるのですか、アスカさん」
「コンプリート目指して頑張ってね」
「……え?」
そう、全身全て完成すれば良い訳である。

「それまで、良いコにしてれば……ね?」
「は、は、あはは」
ガンバレ、シンジ。そして、油断するなよ、シンジ。
上下肢全て揃っても、最後にはヘッドバットが待ってるぞ。(完)
838保守&七夕記念予告:2010/07/04(日) 06:21:46 ID:???
(こちらアスカこちらアスカ聞こえる?私はあなたを取り戻しにきた。月は遥か遠く、地球も見えない。こちらアスカ。私に出来ることは‥)
『spece oditiy』

〜十七年前〜

おそらく今後こんなに目覚めの悪い朝は来ないとアスカは確信した。
汚泥に浸かりながら眠ってしまったような倦怠感。虚ろに開けた目は重いし、手足の先に微電流が流れているような痺れ。寝違えてもいないのにバキバキと音を立てる関節群。
凝り固まった筋肉をほぐしながら目覚まし時計を凝視する。
「えっ?」
短針は左向きへ水平になり、アスカをベッドから飛び立たせた。
乱れた寝巻も整えぬまま居間へと入ると、こおばしい香りと音をフライパンから漂わせながらシンジが言った。
「あ、おはよう」
「あ、おはよう、じゃないわよ!何で起こしてくれないの!?」
露出した下半身を気にする暇もなくまくし立てるアスカ。
「え、なんで?」
「なんでって、学校は‥」
「学校は休みじゃないか。いつも休みの日に用事があるから起こしたら寝かせろって怒るくせになんなんだよもう」
フライパンの上の卵を器用にターンオーバーさせながらぶつくさと呟く。
不可思議に思うも自分の勘違いだったのかと納得し、卓上に並べられた専用の皿の前に座るアスカ。そのうち太陽のように鮮やかな卵が食卓を彩った。

「ねえ、今日って何曜日だっけ」
向いに座ったシンジに話しかける。
「忘れっぽいなぁ、アスカは。月曜だよ」
「月曜?振替休日だったっけ?」
「‥具合でも悪いのアスカ」
「は?何でよ」
「だって‥」
急にシンジの歯切れが悪くなる。途端に伏し目がちになり、疑うような目線をアスカに向けた。
「戦争中なんだよ。この"国"‥」


七夕までに終わるかな‥
839名無しが氏んでも代わりはいるもの:2010/07/04(日) 13:40:43 ID:???
イイヨイイヨー
840kou:2010/07/06(火) 15:54:10 ID:???
>>838
『ーーー‥依然、日本政府は遺憾の意を示し、第三新東京行政府に対して対話の提案を試みています。しかし行政府はこれを拒否。認めないなら武力行使も厭わないと発言。この発言に対して防衛庁はーーー‥』

映像の途切れたテレビをアスカは呆然と見つめる。
「嘘‥」
「嘘じゃないよ。この街は独立しようとしてる」
言葉を失った背中を見つめるシンジは事実を述べた。
「僕もよくは知らないけど、ネルフが中心になって独立の表明を出したんだって」
どうやら初号機に関係あるらしい、と続けた。しかしアスカの耳には無秩序なノイズが発する音のように聞こえた。混乱のレベルがあるなら間違いなく最大に位置するだろう。
「大丈夫アスカ?」
「そんな訳無いじゃない‥訳わかんない」
「仕方ないよ。昨日の今日起こったことだし、みんな混乱してる。アスカも落ち着いて‥」
慰めの手を背にかけようとするが振り払われる。
「違う!そうじゃない!そうじゃなくて‥」
言葉にしようとすると絡まった糸のようにうまく解けず言葉が出ない。
「ごめん、ちょっと一人にさせて」
竦み上がった体を何とか立ち上がらせ、よろけそうになりながら再度自室へと戻る。襖の滑りが悪くてがたりと音を立てた。
十分ほど熟考した頃だろうか。アスカは根本的な疑問にたどり着く。
「私の知ってる世界じゃない」
ここはどこだろう。今はいつだろう。私は誰だろう。何が起こっているのだろう。張り巡らせた思考の輪を収束すべく、PCを起動させて情報を集めはじめた。

某大型掲示板:
1 第三新オワタwww(618) 2 第三新「いついかなる挑戦も受ける キリッ」(213) 3 【速報】衝撃!突然の独立宣言!?part8(18) 4 どうやらこの国に終わりが来たようだ(500) 5 さて、そろそろ仕事をはじめ‥え?(980) 6 リアルゲバラが日本にいた件について(774)
7 第三新「こいつを見てくれ。どう思う?」日本「すごく‥面倒です」(4) 8 特務機関関係者だけど質問ある?(63) 9 ニュー速民で特務機関のサーバー攻撃しようずwww(1) 10 【速報】衝撃!突然の独立宣言!?part7(1001)‥‥‥
841kou:2010/07/06(火) 15:56:02 ID:???
様々なニュースサイトで情報を集めていくに連れて、アスカの中で少しずつだが確実に現実感が募ってきた。
改めて疑問と情報を整理してみる。
・知っている世界と違う 主にネルフを中心に日本政府に対して宣戦布告とも取れる独立宣言をしている
・アスカ以外異変に気づいている様子がない ネット中心の主観だが、少なくともメディアに異変が発露するほど大人数が違和感を感じていない
・ネルフと初号機が違和感のキーかもしれない 推測だが、シンジの話によるとそうらしい

「ファーストやミサトはどうなのかしら」
携帯を取り出しミサトへコールをする。が、留守電サービスに繋がってしまう。レイにも連絡しようとしたがアドレスを知らない。
仕方ないのでシンジの携帯を借りるために自室を出て、カタカタと勤勉そうに洗い物を進める後ろ姿に声をかける。
「シンジ、携帯貸して」
「いいけど何に使うの?」
「ファーストに電話するのよ。私番号知らないし」
そしてまた、先に見せた訝しむ目をアスカに向けた。
「‥ファースト?何それ」
「何ってファーストはファー、スト‥」
これはいよいよおかしい。シンジがファーストを知らない。せっかく活性化し始めたアスカの脳がまたもや固まりはじめた。
不思議な物で焦りはなく、ただただ違和感だけが体の芯に浸透していく。
「シンジ何かおかしいとは思わない?」
「おかしいよ。アスカは変な事言うし、ネルフも何だかおかしいし」
「それよそれ!ネルフ!エヴァは?使徒は?」
まくし立てるも、ここで一つまた疑問が増える。
「‥なんで私は何も覚えていないの?」
この"世界"のことはもちろん、今までの事も良く覚えていない。
842kou:2010/07/06(火) 15:56:54 ID:???
頭の中に霧がかかったように釈然としていない。断片的にではあるが、深い後悔の念と憎悪の渦のような物がアスカの胸中を掻き乱しはじめた。
それらを押し殺していると、シンジがふと言った。
「使徒?なにそれ?」
思ったよりも自体は深刻だと悟った。
「じゃあ何でエヴァに乗ってるのよ」
「父さんに来いって急に呼び出されたからだよ。それに‥」
「‥それに?」
「僕、初号機の写真を見たことがあるだけで実際には乗ったことない」
「え」
「それでいつもアスカは馬鹿にしてたじゃないか。乗ったことないのにパイロットだなんて〜って」
「‥変に思わないでね。ていうかもう変だろうけど‥」
「なに?」
「今日までの私って、どんな風だった?」
シンジの表情は訝しみなどという表現を越え、むしろ哀れみの色さえ浮かびはじめた。
「どんなって言われても‥。いつも通りだったよ」
「だからそれがどんな風?」
「例えば、シンクロテストの結果を自慢したり、合同演習でエヴァで予定にない動きをして戦自の人を困らせたり、僕の料理にケチつけたりだよ」
そこまで言うと、しまったという顔を浮かべて反射的に頭部を守る体勢を取る。しかしいつまで経っても予定の衝撃が来ないので恐る恐る顔を上げてみる。
そこには呆けた目を潤ませながら、おぞましいものを見たような表情でわななくアスカがいた。
「エヴァに乗ってる‥戦自‥シンクロ率‥」
アスカの体に戦慄が走った。
「アスカ!?アスカ!」
気丈に振る舞う精神とは裏腹な華奢な体が、唐突に床へと崩れ落ちた。
843kou:2010/07/06(火) 15:58:33 ID:???
数時間後、正常を示す規則正しい点灯と音が鳴る部屋でアスカは目覚めた。白い壁紙と天井の染みがやけに目立っていて、綿の空気が抜けた固いベッドには自分の汗がじっとりと染み込んでいるのがわかった。
肌寒さを感じて掛け布団を手繰り寄せたあたりで、何故こんな場所にいるのかを考えた。
記憶を反芻すると悪寒が脊髄を駆け登ってきた。
二号機、戦自、ロンギヌスの槍、白いエヴァ、痛み、碇シンジ、赤い海。忘却していたというよりもとてつもなく大きな石蓋を記憶に被せられ続けていたような気分だった。ひび割れた部分から漏れ出ていたのが違和感の正体なのだろうか。
ここが病室だと気付いたのと同時に、パイプ椅子でくたびれて眠るシンジの姿を確認した。
「シンジ」
「あ。良かった目が覚めたんだね」
起きぬけに安堵の表情を浮かべると備品の小型冷蔵庫の中から小振りなナイフと果物を取り出した。
「びっくりしたよ。急に倒れるんだもん。気分は悪くない?」
カットしたフルーツを差し出されるがあまり食欲が進まないアスカはそれには手をつけず、シンジの目を直視した。
「どうしたの?」
「綾波レイ。聞き覚えない?ううん、ファーストだけじゃなくて使徒や赤い海の事も」
「レイ?なんでアスカがレイを知ってるの?」
綾波レイは親戚の子で最近父親が第三新東京に呼び寄せた。父の所で生活しているためあまり会わない、とシンジは述べる。
「シト、だっけ?聞いたことないなぁ。赤い海もわからない」
「ミサトは今どこにるの」
844kou:2010/07/06(火) 15:59:29 ID:???
「ずっと連絡が取れないんだ。何度か連絡してるんだけど繋がらなくて」
いくつかの質疑を交わして幾時間か経った頃ふとした事にアスカは気付いた。
「ここ病院よね?他の患者や医者とか看護師は?」
「ここはネルフ関係の病院だから個室を取れたんだ。お医者さんも検査だけして引き上げていったよ」
だとしても、いささか人の気配がしなさすぎる。窓は無く、今がいつかを知らせるのは備え付けのデジタル時計だけだ。また違和感。
思い返してみれば、外の風景を目覚めてから見ていない。確信はないが"何か"が自分を阻害しているような、大事な事だけ見えなくなる目隠しをされているような妙な気分に陥った。
閉塞感漂うこの状況になにか打開策は無いかとアスカは思案を巡らせる。
「ねぇ、レイに連絡してみてよ。番号知ってるんでしょ」
「知ってるけど、どうして」
ファースト、という通称では通じなかったのは"この世界"ではアスカが彼女を呼んでいなかったか、呼ぶ必要がなかっただけで綾波レイという人物は存在する。
「いいから。出来れば会いたいって伝えて」
突然の提案に戸惑いながらも電話を取り出し綾波レイの番号をコールするシンジ。
着信を待つ呼出し音が静かな部屋に小さく聞こえている間、シンジがレイを"レイ"と呼んだ事に少しばかりの嫉妬を覚えた事に気付いたアスカは布団の舌で自分の太ももを小さく抓った。
そして呼出し音が途切れた。
「あ、レイ?こんにちは。突然なんだけどいいかな」
たどたどしいやり取りをいくつか交わした直後、またもシンジが困惑した顔をした。
「え、そうなの?うん。うん‥わかった」
相手側から切られたようで、何度か液晶画面を確認するシンジに問うた。
「どうしたの?」
「下のロビーにいるから降りてきてって‥」
理由ははっきりとしないが、綾波レイが一連の違和感の鍵を握っているキーパーソンだとアスカは確信した。
845kou:2010/07/06(火) 16:03:13 ID:???
申し訳ないですが続きは夜に投下します。
長々と失礼します。
846名無しが氏んでも代わりはいるもの
鼻穴に靴下つっこんでまってるぜ支援。