ホッシュ
9日目
僕達は、アキトシさんの師匠の厚意で、道場を宿として提供して貰った。
が、その代わりとして、道場の掃除やら、洗濯やら、稽古やらに付き合うハメに。
これなら普通に宿屋に泊まればよかったな、と、ちょっと後悔。
そんな雑用の内の一つ、便所掃除をヒュウガさんに任せて、僕とシンジ君は
昼食のオカズとなる魚を釣るべく、海へと出かけようとした、そんな時だった。
「おーい、クニアキ爺さんが帰って来たって!」
道場から数件離れた民家の前で、アキトシさんが、こちらに向かって手を振っている。
僕達はアキトシさんの方へと駆け寄った。勿論、ヒュウガさんには声を掛けていない。
アキトシさんに先導され、僕達がその家の扉をくぐると、入ってすぐの部屋の中央に、
初老の男が膝にトラ猫を乗せた状態で、椅子に腰掛けている。
彼がクニアキ爺さんか。トラ猫と戯れるとは、さすがは元祖・虎ハンター。あれ?
「クニアキ爺さん、あんたにお客さんが来てるって!」
アキトシさんが声を掛けると、クニアキ爺さんは、猫に遣っていた目線をこちらに移した。
僕達を見るその瞳からは、どこと無く警戒の意思が感じられた。
僕は単刀直入に用件を伝える。ゼーレや使徒について知っている事を教えて欲しい、と。
「やめた方がいいって!知らない方が幸せだって事ですよ!」
クニアキ爺さんは、鼻で笑うばかりで、僕の問いかけには取り合ってくれない。
「知らない方が幸せ」と「知ると不幸」が等号で結べる事は容易に察しがつくので、
僕としては、このまま知らずにいたい気もする。クニアキ爺さんも話したくないみたいだし。
でも、そこまで口を閉ざすって事は、やっぱりヤバい事を知ってるのかなあ?
と、今まで黙って話を聞いていたシンジ君が、クニアキ爺さんに対し、ある物を提示した。
首から下げていたペンダント。なんか、変な葉っぱのレリーフが付いている。
「この紋章は・・・、あんた、王族に連なる者って事ですか・・・?」
「僕は、この国の王、イカリ・ネルフシレー・ゲンドゥの嫡子、シンジです。
今、この世界に起ころうとしている危機を回避すべく、情報を求めているんです。」
クニアキ爺さんは、しばらく何事か考えていたようだったが、やがて、意を決したように
「国家が動き出したのであれば、知る限りの事は話さねばなるまい・・・。」
そう発した、その語尾からは「〜って」が消えていた。マジモードか?
「ワシがゼーレに就職したのは、今から30年程前の事だった。この小さな島に
閉じ篭っているのが嫌になってな、広き世界を目指し、求人に応募したのだ。」
・・・ゼーレって、求人広告出してたのかよ・・・。
「大っぴらに求人広告を打つぐらいだから、と、ワシは何も怪しむ事などせず、
王都での面接に向かった。だが、面接が済むと、ワシらは別室へと通され、
そこで何やら・・・今思えば睡眠薬を飲まされたのだろう、気付いた時には
見知らぬ場所へとつれて来られていた。まあ、そこが職場だったんだが・・・。」
・・・って、それほとんど拉致じゃないか!じゃ、もしかして、ゼーレの所在地については・・・?
「・・・・・・知らん!」
クニアキ爺さん、ひょっとして、今までの登場人物の例に漏れず、役立たず?
「そんな訳で、ワシは清掃員としてゼーレに就職したのだが、特に出世するでも無く、
年を重ねた。それでも勤続は力なり、とでも言おうか、組織のお偉いさん達とも
顔見知りになり、気さくに飲みに誘ってくれたりもしたものだ・・・。」
なんか、ゼーレの人達って、いい人っぽい気もしてきたな・・・。
「だが、ある時、そんな飲みの席で聞いてしまったのだ、ゼーレという組織の真の目的が、
人類を人工進化させるという、馬鹿げた計画であるという事を・・・。」
話が突飛過ぎて、全く理解できないが、そりゃあ大変だ!・・・たぶん・・・。
「ゼーレは、その計画を遂行する為に、人類とは起源を異とする生命体を利用する事を
考え出した。それが『使徒』と呼ばれる者たちだ・・・。」
最後の二行だけ見るとすげーシリアスだねw
ちょwww話が90°ターンした
渚くん乙
乙〜
> そう発した、その語尾からは「〜って」が消えていた。
これは一大事w
清掃員に補完計画バラしてしまうとは、
ゼーレのお偉いさんも案外脇が甘いねw
10日目
クニアキ爺さんの話によれば、ゼーレという組織は実在するものであって、
表向きは何をしているか知らないが、陰では人類を人工進化させる計画を進めているようだ。
ただ、その計画が遂行された暁には、個体人類としての存在は失われる・・・って、
そんな話、急に聞かされても、今ひとつ理解に苦しむけれど、まあ、想像するに、
人間としての原型を留めていない、って事なのかな。それが進化と言えるのかどうか。
少なくとも、今の自分の感覚で言えば、それはむしろ「人としての滅亡」の方に近いと思うし、
ゲンドウ王もそう感じているからこそ、勇者である僕に命を下したのだろう。
それともう一つ。使徒というのは、人類とは全く別の起源から発生した生命体らしい。
それがどういう理由をもって、ゼーレに組しているのかは分からないが、
何がしか、利害の一致するところがあったのだろう。
その使徒について、興味深い話を聞かせてもらった。
今まで何体かの使徒と戦闘を行ってきた僕達には、信じ難い事ではあるが、
クニアキ爺さんの話によると、使徒に対しては、通常兵器による攻撃は通用しないと言う。
何でも、使徒には「ATフィールド」という、バリア能力が備わっているらしい。
とは言え、僕達は現実に何体かの使徒を倒しているのだが・・・。また謎が増えたorz
で、だ。クニアキ爺さんと、その息子さんは、万一の使徒との対決に備え、
使徒に対し有効となる兵器、要するに「通常じゃない兵器」の研究、開発を進めているという。
今日は、その研究施設に連れて行かれ・・・見せてもらえる事になった。
集落から少し東に行った場所にある洞窟、研究はそこで行われていた。
普通、そんな場所は、悪の組織がアジトに使いそうなものだけれど、まあ、ゼーレからしてみれば、
クニアキ爺さんも立派な悪者という事になるので、無理矢理納得してみる。
たいまつの明かりを頼りに洞窟を奥へと進んでいくと、先にかがり火が見えてきた。
どうやら、そこが「研究室」となっているようだ。
「シロウ、王都からの客人が見えたぞ。」
クニアキ爺さんが声を掛ける。どうやらその「シロウさん」というのが息子さんらしい。
が、このシロウさん、伝統衣装の白の袴に上半身裸という奇妙ないでたち。
とてもじゃないが、兵器を開発しているような科学者には見えない。
シロウさんは呼び掛けに応え、僕達に歩み寄って来たけれど、急に立ち止まると
いきなり反転してヒップアタック。餌食はもちろんヒュウガさん。
クニアキ爺さんが、「客人に対して失礼だ」とシロウさんを責めると、
「これがこの島の挨拶だって!郷に入っては郷に従え、って事ですよ!」
・・・言ってる事は、あながち間違いじゃないんだけど、また変わり者かよ・・・。
それはそうと、早速、その使徒に対抗できるという「通常じゃない兵器」を見せてくださいな。
「これだって!目ん玉ひん剥いて良く見とけって!俺が造ったんだって!」
え?どれどれ?・・・・・・まさか、ここにある、うすらデカい人形の事?
「人形じゃないって!汎用人型からくり兵器『じゃ』って事ですよ!」
からくり兵器?それじゃ、この人形は操作して動かせるのかな?
「当たり前だって!遠隔操作して、接近戦を行うんだって!」
へえ、それじゃあ、当然、格闘用の武器なんかも開発してるんですよね?
「武器は・・・・・・・・・・・・ケツだって!」
想像通り、と言うか、ある意味、期待通りの答えが返ってきた。
やっぱり「じゃ」もアテになりそうにない。何だよ、「武器はケツ」って!
大体、ホントに動くのかどうかさえ怪しいのに。
ハナから疑っていた僕とは違うシンジ君も、「武器はケツ」発言に落胆の色を隠せない。
開発者二人と、何故かヒュウガさんが嬉々としている、異様な空間。
そんな所へ、誰かが外から息を切らして駆け込んで来た。アキトシさんだ。
「た、大変だ、海に出ていた漁師の網に掛かった、巨大なタカアシガニのバケモノが
水揚げした途端、暴れ出して、今、集落を襲ってるって!」 (つづく)
遅くなったけど、乙!
「じゃ」ワロスw
タカアシガニのバケモノ?何か嫌な予感がするなあ、この間はイカのバケモノに遭遇したし。
だが、集落が襲われていると聞いては、放って置く訳にもいかない。
早く戻って、カニシャブにありつく、いや、集落の人々を助けなければ。
「ちょっと待てって!ここは俺と『じゃ』に任せろって!」
敵が使徒とは断定できないが、シロウさんは「じゃ」を実戦に投入するつもりらしい。
不謹慎ではあるが、面白そうなので、お手並み拝見といきますか。
「発進準備だって!第一ロックボルト外せって!」
シロウさんの号令が飛ぶ。クニアキ爺さんがドライバー片手に作業に移る。勿論、手動で。
「解除確認、アンビリカルブリッジ移動開始。」
第一ロックボルトを外したクニアキ爺さんが、次工程に移る。勿論、手動で。
この後、発進までに幾つかの過程を挟んだのだが(勿論、手動で)、その当たりは割愛。
「発進だって!」
シロウさんが手に持った制御装置を作動させると、「じゃ」が動き出した。
おおっ!すげえ♪こいつはイケるかも!と思ったが、シロウさんが「じゃ」を追って走り出す。
「せ、制御装置のデムパは、10mしか届かないんだって!」
走り出した「じゃ」の後を、皆で追いかける。
洞窟の中は、視界が悪くて出口までの移動も一苦労だったけど、外にさえ出てしまえば、
ほら、あっという間に集落、そしてカニのバケモノが見えてきた。
ところが、「じゃ」は、一向に止まる気配が無い。・・・シロウさん?
「止まらないって!・・・・・・制御できないって事ですよ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・・・・・・・・・・?
「じゃ」は、集落へと入ったものの、そのままカニのバケモノの横を、華麗にスルー。
・・・ちょっと待ってよ!「じゃ」って、一応は兵器なんでしょ?
そんなもの野放しにしておいたら危ないじゃないか!
という訳で、カニのバケモノはひとまず置いといて、「じゃ」の追跡を続行する。
先頭を暴走する「じゃ」、その直後にシロウさん、ヒュウガさん、僕、アキトシさん、
シンジ君、クニアキ爺さん、という隊列で後を追う。あと、どういう訳か、
集落を襲っていたカニのバケモノも、僕達の後に付いて来ているみたいだ。
そんなこんなで、もう浜辺まで来てしまった。シロウさんが声を荒げる。
「メガネの兄ちゃん、『じゃ』を止めてくれって!」
「え・・・でも、どうやって?」
「人力に決まってるって!奇跡を待つより捨て身の努力だって!」
シロウさんの檄に応え、ヒュウガさんは全力で走り、「じゃ」の進路の前に出た。
そして「じゃ」の進行を止めようと、前から両腕の力で押さえつける。
あ・・・・・・ヒュウガさんが「じゃ」に轢かれた・・・・・・。
そして「じゃ」はヒュウガさんに躓き転倒。やったねヒュウガさん、止まったじゃん♪
安堵も束の間、今度はカニのバケモノが、ヒュウガさんと「じゃ」に迫っている。
うつ伏せに倒れこんだ「じゃ」の下から、ヒュウガさんは脱出したものの、
「じゃ」の背中には、遥か未来目指す、じゃなくって、カニのバケモノが乗りかかっている。
「大丈夫だって!男は黙って背中で勝負だって!」
「じゃ」のピンチにもシロウさんは自信満々だ。・・・・・・けど・・・・・・。
「ああ見えても『じゃ』はSSTOのお下がりでできてるんだって!」
・・・でも、カニのバケモノが垂らしている、ヨダレみたいなので溶けてるよ、「じゃ」。
「デモもストライキも無いって!・・・・・・17秒しか持たないって・・・・・・。」
ちょっと!装甲が17秒しか持たないって事?何がSSTOのお下がりだよ!
「スーパー・スペース・トルネード・オガワ・・・・・・らしいって・・・・・・!」
・・・・・・シロウさん騙されたな、材料屋に。
「動けって!動けって!今動かなきゃ、何にもならないんだって!だから、動けって!」
シロウさんの悲痛な叫びが響く。「動けって!」と言われるまでもなく、「じゃ」は
動いている。うつ伏せに倒れたまま、なお歩行動作を繰り返しているだけだけど。
機体融解の危機は、あっという間に過ぎた。17秒って、そんなに長くないよ。
クニアキ爺さんが弱音を漏らす。彼らにとって「じゃ」は、唯一の希望だったようだ。
「あ奴はカニなどではない!おそらく、マトリエルと呼ばれる使徒だろう。
・・・終わりだ、『じゃ』がああなっては、ワシら、死ぬかも知れん・・・。」
「どうしてそういう事言うんだって!アンタは死なないって!俺が守るって事ですよ!」
シロウさんは諦めない。でも、マトリエルとやらは、ヨダレを撒き散らしていて、近付けそうも無い。
「作戦はあるって!お前らが奴を引き付けておけば、俺が取っておきの爆弾をお見舞いしてやるって!」
ここはひとつ、シロウさんの作戦に乗ることに。僕、シンジ君、ヒュウガさんで
マトリエルの注意を引きつつ、シロウさんは敵の死角に回る。
体を張ってマトリエルを引き付けたヒュウガさんのお尻を、敵のヨダレがかすめた。
倒れこむヒュウガさん。ヤバい!シロウさん早く!!
敵の死角を突いて、シロウさんが全力で突進して行く。
「シロウ!・・・・・・自爆する気?」
「・・・・・・俺が死んでも小原がいるって!」
一瞬、悲壮感が漂ったんだけど、シロウさんが繰り出したのは「K2爆弾」。
それはつまり、ヒップアタックに値するよ、「ケツ」って事さ。
おまけに、もうひとつの爆弾「パワーボム」までを、なんとも器用にお見舞い。さすがシロウさん。
シロウさんは両手を天に突き上げ、勝ち誇っている。が、マトリエルは
パワーボムを食らって裏返しの状態ではあるが、まだシロウさんの足元でもがいている。
あ、苦し紛れにヨダレを放った!危ない、シロウさん!!
「熱いって!熱いって!」
ヨダレを食らったシロウさんは、のたうち回っている。何てこった!優位に立っていたのに・・・。
今度こそ、もうダメなのか・・・・・・あ、あれ?今度はマトリエルが溶けてるぞ。
まさか、自分のヨダレで?考える間もなく、マトリエルはヨダレの分泌線を残して消滅した・・・。
よし、使徒殲滅?リアル「天に向かって唾を吐く」をラーニングしたよ。
乙!
> 早く戻って、カニシャブにありつく、
マトリエルって、まずそう。
ガギエルはわさび醤油で食べると美味しそうだけどw
オチはお見事。
元ネタわからないとこあるけど面白いって!
渚くんの力量だって!
これからも続き楽しみにヒップアタック!
948 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/26(土) 17:50:53 ID:fGirkJGg
11日目
朝一番でコシナカ島を後にする。次の目的地?さあ、どこなんだろう?
ただ、クニアキ爺さんに聞いた話の中に、興味深い話があった。
「遥か東方に三賢者あり」。とりあえず、そこを目指して、更なる情報を得ようと思う。
僕たちを乗せた、イカリ王国本土へ向かう船が、コシナカ島を離れる。
桟橋ではアキトシさんが、中央にデカデカ「覇」と書かれた旗を振って見送ってくれている。
「次に帰る時は、故郷に錦を飾るって!」
え???シ、シロウさん、船に乗り込んでいたの?
「当たり前だって!『じゃ』を開発した技術力を、王国のために活かすって!」
・・・なんて事だ、やっと「越中スレ」みたいな状況から抜け出せると思ってたのに・・・。
ツキージの港に戻り、船を降りると、丁度そこに一羽の鳥が飛来した。
あれは以前、城に向けて放った伝書鳩だ。足に返書が結えつけてある。
「近々、他国との連携に動きがある模様。早い時期に一度戻られたし。ミサト」
・・・やだ。多分、パターンBな僕は、東に向かうと決めたなら、それを貫く。
王都に戻るのはその後でいいや。でも、この手紙をシンジ君に見せたら、一度王都に
戻りたがるだろうなあ。よし、見られる前にヒュウガさんに食べさせちゃえ。
今日は使徒は殲滅してないけど、証拠は隠滅する事に成功したぞ。楽勝!
さて、本土に戻った僕達は、東を目指す・・・んだけど、現在地の真東は
海なので、それを迂回するように北に進路を向ける。
東に移動できるようになった地点から、ひたすら東へ東へと歩いて行くと、
なんか、醤油工場のいっぱいある街、「チョーシュ」に辿り着いた。
「チョーシュ、何か嫌な町だって!」
え?ツキージに劣らぬいい街じゃないか。何が嫌なの、シロウさん?
「・・・・・・なまえ・・・・・・って!」
全く関係ないけど、シロウさんは昔、「チョーシューさん」という人に
酷い目に遭わされた事があるらしい。それで「チョーシュ」という地名に
嫌悪感を抱いたみたい。・・・やべ、どうでもいい事に三行も使ってしまった。
チョーシュの東はまたしても海。これ以上東に行く手立ても無いので、
海岸線を北上することにする。すぐにぶつかった「トニー川」という大きな川を
渡り、「カマシ港」「オオワライ港」という、王国でも有数の大港を通過。
・・・・・・行けど行けど、道はただ北に延びるばかり。失敗したかな?
「ねえ、私達、正しいわよね?」
何故かヒュウガさんが、女性的な口調で尋ねてくる。さすがは変態。
気持ち悪いので「わかるもんか!」と、冷たくあしらっておく。
はあ、今、一体、何処にいるんだろう。来たのはいいけど、帰るのも面倒だ。
周りには海と畑しか見えない。賢者の話は、あくまで噂だったのかな。
呆然と立ち尽くしていると、畑で作業をしていた人が、こっちに向かって凄い勢いで走って来る。
「おめたち、こんただ所突っ立ってっと、雨さ濡れっぞ。」
まっさかあ♪こんなに晴れ渡っているというのに?
「ったく、わがんねえアンちゃんだなあ!」
その人は、僕の手を引いて走り出す。ワケもわからず、シンジ君達が跡をつけてくる。
辿り着いた先は、どうやらその人の家のよう。中には、二人の男の人が見える。
何なんだよ、もう!と思う間も無く外から凄い音。ホントに雨が降ってきたみたいだ。
農作業をする人にとって、空模様を見る事など、容易い事かもしれない。
それでも、それなりの知識と経験は必要なものだ。ちょっと感心したよ。
まあ、せっかくの縁なので、お互いに自己紹介。その家の主の三人は兄弟で、
それぞれ、嘉介(カスケ)・治太(ハルタ)・留貴夫(ルキオ)と名乗った。
あれ?その名前、クニアキ爺さんに聞いてきた、賢者の話に出てきたような・・・・・・。
クニアキ爺さんから聞いた話は、おおよそ次のようなもの。
ただし、この話が現在の話か、それとも単なる昔話なのかは、分からないらしい。
人並み外れた知恵を持つ三人の賢者は、その力を利用されることを恐れ、
それぞれ、人から賢者であることを悟られないような職業に就いた。
その一人、カスケは音楽家を目指した。そこでも一応の成功を収めたが、ある時、
自分のお笑い芸人としての才能に目覚め、転身をはかる。芸名は「いかりや嘉介」。
カスケの名を広めたのは、ジャンケンのコントだった。
「最初はグー、またまたグー、いかりやカースケ頭はパー。」
このジャンケンの掛け声の、「カースケ頭はパー」略して「カスパー」が、彼の代名詞となる。
ハルタは飽きっぽい性格で、町工場から始まり、いろいろな職業を転々としたが、
どれ一つ長続きしなかった。ハルタが職を辞す度、同僚達は言った。「ハルタ去〜る」。
ルキオは庭師に弟子入りした。勤勉で実直なルキオは、親方からも目をかけられていたが、
ある時、親方に付いて行った仕事先で、大失態を犯してしまう。
庭木の手入れをしている途中、何かの拍子で、客の大事にしている盆栽を落としてしまったのだ。
盆に異常は無かったが、肝心の栽の方が、形を崩してしまった。
一緒に謝ってくれると思っていた親方は、客に向かって言い放った。「芽、ルキオ折る!」
紆余曲折を経た三人が、結局、辿り着いた先は「実家の農業」だった。
古の名軍師、諸葛孔明に倣い、晴耕雨読の日々を送っているという。
まさかなあ・・・。この人達、どう見ても「賢者」ってカンジじゃないし。
一応、確認のため、この家の表札を見に行くと、そこに記されていたのは「真樹」!!!
僕は、この人達を、王都に強制連行する決心をした。
乙〜♪
カヲル君ダジャレ好きやなぁw
12日目
三人の賢者(?)と、シロウさんを引き連れ、僕達は久々に王都へと帰ってきた。
今までの戦果の報告と、伝書鳩で伝えられた、ミサトさんの帰国要請に応じる為だ。
登城の前に、ちょっと僕の家に寄らせてもらって、この間、母さんへのお土産として
銚子・・・じゃなくて「チョーシュ」の街で購入した醤油を届ける。
僕は、調味料マニアではないので、「チョーシュ」産の醤油に、
どれ程の価値があるのか知らないが、可愛い息子からの土産だ、喜んでくれるだろう。
「あらあ、お醤油なんか買ってきたの?ここんとこ、家に母さん一人でしょ、
去年、お歳暮で貰った醤油が、使い切れず、いっぱい余っちゃってるのよねえ・・・。」
・・・・・・もういいや・・・・・・。
なんか、先に家に寄った事に後悔の念を感じつつも、
気を取り直して、今度こそ城へと向かう。
僕達が王都へ戻るという情報は、既に城に伝わっていたようで、
城兵達も、すんなりと僕達を城中へと通してくれた。
イカリ王国の情報網は、僕が思っていた以上に発達しているようだ。
ゲンドウ王とフユツキ大臣は、所用の為に城を空けており、その護衛として従う
ミサトさんも不在、という訳で、リツコさんが僕達の応対をしてくれた。
まずは、コシナカ島のシロウさんを、リツコさんに紹介する。
「大体の話は聞いているわ。変なからくり人形を造った、エセ科学者でしょ?」
「エ、エセとは何だって!『じゃ』は、立派な対・使徒用兵器だって!」
「制御できない兵器なんてナンセンスだわ。体力が知力に勝る、自称・科学者と同じね。」
「ううっ、そう言われてしまうと、何も返せないって!」
ああっ、シロウさんから空気が抜けていく・・・・・・。
口では歯が立たないシロウさんだったが、リツコさんの判断で、本人の希望通り、
その「力」を王国の為に活かす事が出来るようになった。ただし、「腕力」ね。
お尻を抱えて悩んでいるシロウさんを脇目に、次は賢者について紹介。
クニアキ爺さんに聞いた賢者の話に、条件的に合致する三人の説明をすると、
「私もそんなような話は聞いたことがあるわ。東方より来たりし三賢者の話ね。」
・・・僕が聞いた話には、「東方より来たりし三賢者」なんてフレーズは
出て来なかったけど、まあ、言い伝えなんて、地方によって多少、違いがあるものだし、
何より、三人が「真樹」姓を名乗っているんだから、きっと・・・ねえ・・・。
「もしそうだとすれば、この三人を連れて来れたのは、大きな収穫ね。」
リツコさんは喜色を浮かべるが、その腰を折るように、カスケさんがつぶやく。
「何こそこそ言ってるだ、オラ達は『東北より来たりし三兄弟』だ。」
え?だって、あなた達、「カスケ」「ハルタ」「ルキオ」の三賢者じゃないの?
「バカこくでねえ、そんなもん、オラ達の親が、三賢者とやらに肖って命名しただけだ。」
期待を一瞬で砕かれたリツコさんが、三人に冷たく言い放った。
「・・・・・・帰ってよし!」
そういえば、僕達に帰国要請が出たのは、一体どういう事?
「それについては、王やミサト達が戻ってから説明するわ。
それより、アンタ達がツキージで殲滅した使徒のサンプルを研究して、彼らの
固有波形パターンの信号の配置と座標は、人間の遺伝子と酷似している事が分かったの。」
・・・僕には、よく分かんないけど、アサリとハマグリみたいなモンかな。
話のついでとして、僕は、クニアキ爺さんから聞かされた使徒の話・・・
ATフィールド、ゼーレ、通常兵器が効かない事などを、リツコさんに話してあげた。
「アンタ達、どうせなら、そのクニアキさんって方をお連れするべきだったんじゃないの?」
・・・あれ?・・・そうかなあ・・・?
乙〜♪
> 「チョーシュ」産の醤油
ミオツクーシw
乙
私の中の910も喜んでおります
母さんヒドスw
でもカヲルの母さんって誰だ?
・・・個人的にシゲルをいじってほしい
957 :
カヲル:2007/06/21(木) 05:09:05 ID:Gq3mWGVC
赤土さんって、ブーン小説作家さん?雰囲気がすごく似てる人がいる。
ほ
961 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/06(金) 04:41:17 ID:LUeYFZQp
ほ
ほっ
ほ
し
ゅ
ho
mo
保
967 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/14(火) 01:25:00 ID:3f5Rq9NT
968 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/15(水) 09:58:31 ID:B1JAmb5R
てす
971 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/19(日) 13:27:30 ID:yDQYjJdN
シンジ×ダミーカヲル
13日目
イカリ王国から海を隔てた遥か西方に、「ガームーン王国」という国がある。
そのガームーン国王の、今は亡き前妻は、イカリ王国人の血を引く女性で、
この事からも分かるように、大層に親・イカリ寄りな国家となっている。
今回の世界の危機に臨み、ゲンドウ王が各国に飛ばした檄に対し、
いち早く呼応して見せたのが、このガームーンの王女、アスカ姫だった。
アスカ姫は、イカリ王国軍と共に世界の脅威と戦うため、自ら来碇するという。
「・・・・・てなワケでさあ、アスカを迎えに行くことになったのよ。
んで、王女を迎えるにあたり、ここはやっぱり、ウチの王子である
シンちゃんにも行ってもらうべきだって事になって、アンタ達を呼び戻したってわけ。」
ミサトさん、他国の王女をつかまえて、「アスカ」なんて敬称略でいいんですか?
「いーのいーの、知らない仲じゃないんだしぃ、結構長い付き合いだしぃ。」
・・・そういう問題ですかそうですか・・・。
このアスカ姫、母国ガームーンでは、絶大な支持を得ているらしい。
と、言うのも、現ガームーン王、つまりアスカ姫の父君は、かつては拳王・・・じゃなくて
賢王と呼ばれていたものの、王妃を失って以来、女色に溺れてしまっているのだ。
アスカ姫の母君、キョウコ様は、王を上回る程に国民からの人気の高い方だったので、
現在の堕落した王に対する支持が低下すると共に、キョウコ様の面影を残す
アスカ姫に対する期待が、爆発的に高まっているという訳だ。
王もそれを悟ってか、最近では国政をアスカ姫とその側近に委ねているようだ。
アスカ姫はガームーンを発って、陸路を東へと移動、現在は海を挟んだ
イカリ王国の隣国「クォリア」に滞在している。
僕達の任務は、ミサトさんと共に船を使って海を渡り、クォリアでアスカ姫と
合流して、再びこのイカリ王城までアスカ姫を案内兼護衛する事だ。
「ミサトさん、アスカに限って言えば、護衛なんて必要ないんじゃないですか?」
「んー、まあ、そうだけど、一応、国家の体裁ってモンが・・・ね。」
クォリアへと向かう船中、浮かない表情のシンジ君が、ミサトさんにこぼしている。
さすがに他国の王女を迎えるのに、護衛が必要ないという感覚は理解しかねるので、
その辺りをシンジ君に尋ねてみると、何でもアスカ姫は、14歳にして
ガームーン王立魔法大学を首席で卒業した天才魔術士で、その秘めたる魔力は
あのリツコさんに匹敵するとも言われており、更には召喚術「こっくりさん」
を駆使して、自分に仇なす者には、容赦なく不幸を辿らせるのだそうだ。
・・・・・・確かに護衛なんて、いらないかも。
クォリアの港へと到着。慣れない船旅で、船酔いを起こしてしまった僕が、
自分の体内で醸造された有機飼料を近海魚達に与えていると、
一人の男が、停泊中の僕達の船、イカリ王国の誇る最新式戦艦「蒼龍」に、
ずけずけと乗り込んで来た。
「よう、遅かったじゃないか。アスカは待ちくたびれて、ふて寝してるぜ。」
男は親しげに、ミサトさんに話しかけた。
「ぬ、ぬゎんでアンタが居んのよう!!!」
「いや、本国から帰国命令が下ってね。アスカのお供をして来た訳さ。」
何か急にピリピリし始めたミサトさんを尻目に、男は僕に歩み寄って来た。
「君がナギサカヲル君かい?噂は聞いている。俺は、カジ。カジリョウジだ。
今迄、イカリ王国の大使として、ガームーンに滞在していたんだが、
この度、帰国の運びとなってね。ま、よろしく頼むよ。」
は、はあ、こちらこそ・・・・・・。
カジさんの案内で、アスカ姫がふて寝、いやいや、休憩している部屋を訪ねる。
部屋の隅で、美少女が心地よさ気に立てている寝息を、シンジ君が遮る。
「・・・ねえ、アスカ、起きてよ!ねえ、アスカってば・・・。」
「ん・・・・・・あ、シンジ?・・・・・・ぐーてんもるげん。」
眠そうに目をこすりながら、アスカ姫が体を起こす。
「・・・・・・あら、ミサトまで来てたの?ちょっと大袈裟じゃない?」
「何言ってんのよう、激務の合間を縫って、迎えに来てやったんじゃない♪」
出発前のミサトさんの言葉通り、僕を除く他の面々は、深く知った仲のようで、
和気藹々と会話を弾ませている。そんな中、浮いた存在の僕に、アスカ姫が目を向けた。
「こいつ・・・・・・誰?」
さすがに「勇者です」とは自己紹介し辛く、戸惑っていると、
僕に代わってシンジ君が、「僕がここにいる理由」をアスカ姫に簡単に説明してくれた。
「・・・で、カヲル君は、アダムの血を引く勇者なんだ。」
「え〜!こいつが勇者?・・・・・・冴えないコねえ・・・・・・。」
アスカ姫、「冴えない」はちょっとヒドいなあ。それでも平静を装いつつ、
皆に倣って、フレンドリーに挨拶してみた。「よろしくね、アスカ」。
「はあ?あんた誰に向かって口利いてんの?これでも私は王女なんだから、
ちゃんとアスカ様、って呼びなさいよ、図々しいわねえ!」
アスカ様・・・。同じ王族でも、シンジ君とはエラい違いだなあ。
でも、そう言われると、なんか僕は前世でもアスカ様の下僕だったような気がしてきたぞ。
「お前さん達、積もる話も分かるが、ここはイカリ王国へと急がないか?
ゲンドウ王も心配しているだろう。話す時間は、船に乗ったらたっぷりあるさ。」
カジさんの提案に、僕を除く全員が賛成。僕はと言うと、さっきの船酔いで、
まだ気分が優れないんですけど・・・・・・はいはい、無視ですね♪
う〜・・・・・・げろげろげろげろげろげろ〜
出航して間もなく。当然のように酔いのぶり返しに見舞われた僕は、
自分の体内で醸造された有機飼料を近海魚達にry・・・・・・。
「ちょっとあんた!キッタナイわねえ、こんなとこで餌付けしてんじゃないわよ!」
アスカ様の優しい言葉に見舞われた僕は、更に、自分の体内でry・・・・・・。
僕が与えていた有機飼料は、余程、海洋生物にとって魅力的なのか、
魚ばかりか、白くて大きなクジラのような生物までも引き寄せた。
みんな〜、来て来て〜!なんだか変わった生き物が寄ってきたよ♪
「ミサトさん!あれって、使徒じゃないですか?」
「・・・・・・使徒みたいねえ・・・・・・。」
「あんたバカぁ?ヘンなモン、おびき寄せてんじゃないわよ!!!」
僕の所為か・・・・・・まあ、間接的に僕の所為だな・・・・・・。
従順に餌付けされていた使徒だったが、ふと我に返ったのか、
一旦、蒼龍から距離をとると、今度はこっちに向かって突進してきた。
水面でジャンプして、蒼龍の甲板を飛び越えて行くなど、やけに挑発的だ。
さあ困った。敵は水中か空中高くを移動している。僕やシンジ君の剣は届かない。
だが、その様子を見て、アスカ様は一人、ニヤニヤしている。
「チャ〜ンス♪」
アスカ様は、使徒が甲板上を飛び越えるタイミングを捉えるべく、身構えた。
「い〜い?私の実力をよ〜く見てなさいよ!・・・・・・ギガデイン!!!」
アスカ様の唱えた電撃の呪文は、甲板の真上で使徒を襲った。
使徒は体表に水分を帯びているので、さぞかし電気の通りが良いに違いない。
呪文の直撃を受けた使徒は、轟音と共に甲板上に墜落した。
よし!これなら剣による物理的な攻撃を加える事ができる。
・・・・・・と、思ったんだけど、何だか使徒の様子の変だ。
最初は甲板を壊す勢いで暴れていたのが、段々とその勢いを弱めている。
海中と違い、思うように動けないのか・・・あ、まさか、エラ呼吸してたんじゃ・・・?
完全に動きの止まった使徒を確認し、アスカ様が勝ち誇る。
「どう?見た?戦いは、常に無駄無く美しく、よ!」
余りに情けない使徒のサンプルを乗せ、船はツキージの港へと船足を速めるのだった・・・。
久しぶりにキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
乙乙
きたーーーーーーーーー!
渚くんは僕らを見捨てていなかった
使徒呼び寄せるってwwww
GJ
乙
キター
すげえな。各キャラ総なめか。
船釣りに行った人から聞いたことがある
本当にゲロに魚が寄ってくると…
撒き餌状態だそうだ…