2chのエヴァFFを語ろうよ

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46ちゃぷちゃぷシンジ、その1
ちゃぷっ、ちゃぷっ、ちゃぷっ
紅い海がさざ波を立てながら打ち寄せていた。
ぼくは膝を抱えて砂浜を見つめる。
紅い海の先には巨大なひび割れた綾波の顔がある。
ぼくの横にはアスカの着ていたプラグスーツがある。
もう何も見たくはなかった・・・

何でこんなことになっちゃったんだろう。
サードインパクトの時、綾波がぼくを守ってくれたんだと思う。
それなのに、目が覚めたら彼女はあんな姿になっていたんだ。
ぼくは哀しくて、悔しくて、どうかしていたんだと思う。
だから横で寝ていたアスカの首を絞めた。でもアスカはぼくの頬を撫でてくれた。
そして気持ち悪いって言ってLCLに溶けちゃったんだ。
それっきりただ一人で砂浜を見ている。
47ちゃぷちゃぷシンジ、その2:03/02/14 02:18 ID:Phw9e6Jz
何もかも嫌になっちゃった。
アスカの後を追って紅い海にもどろう。
ぼくは立ち上がった。そして紅い海の中に入った。
  ちゃぷちゃぷ
LCLが音を立てる。ひび割れた綾波の顔が笑っている。
もしかすると既に狂っているのかもしれない。
やがてぼくは紅い海に飲み込まれた。
世界中の人の心が、ぼくの心に入ってきた。
その中でぼくはサードインパクトの真実を知った。

それじゃあ何のために綾波はあんな姿になったんだ!
何のためにアスカは壊れるまで戦ったんだ!
許せない・・・
絶対に許せない・・・
ゼーレ、碇ゲンドウ、碇ユイ、冬月コウゾウ、赤木リツコ・・・
オレはお前達を絶対に許さない!
いつの間にかオレは紅い海の上に浮かんでいた。
砂浜目指して泳いだ。
世界中の人々の記憶を受け継いだオレが泳げない筈が無い。
そう、オレは絶対的な知識を受け継いでいた。
48ちゃぷちゃぷシンジ、その3:03/02/14 02:20 ID:Phw9e6Jz
あっという間に砂浜にたどり着く。
そこでアスカのプラグスーツを見つけた。
オレはそれを拾い上げて抱きしめる。ひび割れた綾波を見つめる。
そして誓う
「ゼーレ、碇ゲンドウ、碇ユイ、冬月コウゾウ、赤木リツコ・・・オレはお前達を許さない!いかなる手段を取ろうとも、お前達に復
讐する!」
オレの叫びが紅い世界に響いた。
すると紅い海から白い少女の姿が浮かび上がった。
49ちゃぷちゃぷシンジ、その4:03/02/14 02:22 ID:Phw9e6Jz
「いかりくん・・・」
「レイ!」
白い少女はレイだった。
「碇君の哀しみが伝わってきたの。碇君の叫びが聞こえたの。実体を持たない精神体のわたしだけれど、貴方のそばで慰めてあげたいの」
「レイ、ありがとう。だが、オレは誓いを立てた。オレ自身の全てを賭けて誓いを成さねばならない!」
レイはオレの目をじっと見つめる。
「碇君・・・わたしの全てを貴方にあげる。力は殆んど残ってないけれど、その全てを貴方にあげる」
「レイ・・・」
レイは優しく微笑み、オレに問う。
「碇君、あなたは何を望むの?」
「オレの望みは全てをやり直す事だ!過去に還って、ゼーレや碇ゲンドウ達、全ての悪しき者達に復讐することだ!」
50ちゃぷちゃぷシンジ、その4:03/02/14 02:25 ID:Phw9e6Jz
「あなた、ばか?」
レイは呆れたような目つきでオレを見つめた。止めろ!そんな目でオレを見るな!
「そんなこと出来る訳無いでしょ」
「なぜだ!」
「確かに量子力学では未来が過去に干渉できるとされているわ。でもねぇ・・」
レイは呆れたって感じで首を左右に振る。
「それは素粒子レベルの話でしょ?実際に質量を持った物体が過去に干渉できると思ってるの?」
「だ、だがオレは誓いを・・」
レイはしつけの悪いペットを見るような目でオレを見つめ、大きく溜息を吐く。
「ましてや物体を過去に送れるわけないでしょ?少し頭を冷やましょうね」
「それなら精神だけでも良いんだ!オレの魂を過去に送ってくれ」
レイは汚物を見るような目つきになってオレを見つめる。
「碇君の魂は素粒子で出来ているの?それともエネルギー体?悪いことは言わないわ、あなた一度カウンセリングを受けたほうが良いと思うの」
51ちゃぷちゃぷシンジ、その5:03/02/14 02:26 ID:Phw9e6Jz
「そ、それでもオレは誓いを守らねば・・・」
「それじゃあね、碇君。カウンセリングちゃんと受けるのよ?」
そう言ってレイはかき消すように姿を消した。

そうしてオレは再び一人になった。
紅い海がちゃぷちゃぷと音を立てていた。
52ちゃぷちゃぷ、あとがき:03/02/14 02:41 ID:Phw9e6Jz
レイの構成物質とか、どやって現れて、どやって消えたんだ?
という突っ込みは無用でお願い。
単発ネタとしてはまあまあ。TTGの投稿掲示板に書けばよかたのに。
54ちゃぷちゃぷ、あとがき:03/02/14 02:52 ID:Phw9e6Jz
あんがと。
でも、こっちのほうが何だか気楽。
今更なテンプレ。しかも一発ネタとしてオチてない。
56ちゃぷちゃぷ、あとがき:03/02/14 09:54 ID:dblk3+sF
そっか、今更だったか。またネタ探そ。
んでも、オレこのオチかたが好き
57ちゃぷちゃぷ:03/02/18 14:10 ID:cf2w4JSJ
ネタ浮かんだから続き書きます。
58ちゃぷちゃぷシンジ2、その1:03/02/18 14:12 ID:cf2w4JSJ
ちゃぷっ、ちゃぷっ、ちゃぷっ

紅い海がさざ波を立てながら打ち寄せていた。
オレは膝を抱えて砂浜を見つめる。
もう何も見たくはなかった・・・

レイが消えた後、オレは自分で自分のカウンセリングをした。
オレの所見では何の問題も見つからなかった。被験者の対応は理想的だった。
つまりオレの精神は極めて健全だってことだ。
気を良くしたオレは紅い海から得た絶対的な知識を駆使して過去へ還る方法を模索した。
無質量状態の素粒子を過去に干渉させる理論立ては出来そうだった。
極めて高いエネルギー空間ではあらゆる質量は無視されてしまう。
質量に影響されない素粒子は光子と同様に振舞い、見た目の時間は意味を無くす。
そして過去と未来の境界は曖昧になり、相互に干渉しあうだろう。
だが、そんな高エネルギー空間が作れる訳ないし、作れたとしても自分自身が素粒子に還元されてしまう。
オレは行き詰った。それっきり砂浜をずっと見ている。
59名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/18 14:16 ID:cf2w4JSJ
オレは無力だ。絶望感が心を蝕む。
何もかも嫌になった。
アスカの後を追って紅い海にもどろう。
オレは立ち上がった。そして紅い海の中に入った。

  ちゃぷちゃぷ

LCLが音を立てる。
さざ波で紅い水面(みなも)が揺れる。ひび割れたレイの顔が笑っている。
もしかすると既に狂っているのかもしれない。
・・・レイ。
そうだ、レイだ! レイがいるんだ!
レイにあの力が残っていれば、オレは過去に還ることが出来る。「くっくっくっ・・・あーはっはっはっは・・・ゼーレ、碇ゲンドウ、碇ユイ、冬月コウゾウ、赤木リツコ、そして補完に力を貸した全ての者よ。オレは誓う!お前達を許さない!今度こそ時間を操り必ず復讐する!」
オレの叫びが紅い世界に響いた。
すると紅い海から白い少女の姿が浮かび上がった。
60ちゃぷちゃぷシンジ2、その3:03/02/18 14:19 ID:cf2w4JSJ
「いかりくん・・・」
「レイ!」
白い少女はレイだった。
「碇君の哀しみが伝わってきたの。碇君の叫びが聞こえたの。実体を持たない精神体のわたしだけれど、貴方のそばで慰めてあげたいの」
「レイ、ありがとう。だがオレは再び誓いを立てた。オレ自身の全てを賭けて誓いを成さねばならない!」
レイはオレの目をじっと見つめる。
「碇君・・・わたしの全てを貴方にあげる。力は殆んど残ってないけれど、その全てを貴方にあげる」
「レイ・・・」
レイは優しく微笑み、オレに問う。
「碇君、あなたは何を望むの?」
「オレの望みは全てをやり直す事だ!過去に還って、ゼーレや碇ゲンドウ達、全ての悪しき者達に復讐することだ!」
「あなた、まだそんなこと言ってるの? ちゃんとカウンセリング受けたの?」
レイは呆れたような目でオレを見つめる。だが今の俺は前のオレとは一味違う。
「もちろん受けた。俺の精神状態は極めて健全だったぞ」
61ちゃぷちゃぷシンジ2、その4:03/02/18 14:21 ID:cf2w4JSJ
レイは何かを探るように俺の目を見つめ、そして呟いた。
「・・・いいわ。それで、わたしに何か用なの?」
「レイ、力を貸してくれ。オレは絶対に誓いを成し遂げる。それには力が必要だ。オレにはレイが必要なんだ!」
「いかりくん・・・」(ぽぽっ)
レイは頬を紅く染め、潤んだ瞳でオレを見つめた。
「レイ、ATフィールドを使って絶対的な真空状態を作ってくれ。そして真空空間に強い電荷を与えるんだ」
彼女の表情が瞬時に固くなった。
「なにを・・・するのよ」
「真空空間にインフレーションを起こし解放する。解放直前にATフィールドでオレたちを包んでくれ。そしてオレ達は過去へ飛ぶんだ!」
レイは犯罪者を見るような目でオレを見つめる。
「碇君はビッグバンをおこして過去に干渉するつもりなのね」
「そうだ!過去に干渉出来ないのなら強制的に干渉させるまでだ!」
レイは殺人犯を見るような目でオレを見つめた。
62ちゃぷちゃぷシンジ2、その5:03/02/18 14:23 ID:cf2w4JSJ
「あなた、ばか?」
「なぜそんなことを言うんだ!この方法ならば過去を操ることが出来るはずだ!」
「ええ、過去どころか未来にも干渉できるわ。この世界のあらゆる時空に干渉できる筈よ」
「よし、早速始めるぞ!」
レイは呆れたって感じでぷるぷると首を振り、オレを否定する。
「いやよ・・・」
「なぜだ!」
「あのねぇ、あらゆる時空に干渉できるって事は、その代わりにあらゆる時空が消滅するってことなのよ」
「どうして!」
レイは大量殺人犯を見るような目でオレを見つめる。
「この空間と同一空間でビッグバンを起こすのよ。燃え盛る世界は過去、現在、未来、全ての意味を失って業火に包まれるの」
「だ、だがオレは誓いを・・・」
「この宇宙にはどれだけの生命で溢れているのかしら。京、ガイ、ジョ、穣、溝、澗、正、載、極、恒河沙、阿僧ギ、那由他、不可思議、無料大数、その全てをあなたは殺そうというのね」
63ちゃぷちゃぷシンジ2、その6:03/02/18 14:24 ID:cf2w4JSJ
レイはジェノサイドを命じた独裁者を見るような目でオレを見つめた。
「オ、オレは・・・」
「わたし貴方ほど酷い大量殺戮者を知らない・・・悪いことは言わないわ、あなた一度精神鑑定を受けたほうが良いと思うの」
「そ、それでもオレは誓いを守らねば・・・」
「それじゃあね、碇君。精神鑑定ちゃんと受けるのよ」
そう言ってレイはかき消すように姿を消した。

そうしてオレは再び一人になった。
紅い海がちゃぷちゃぷと音を立てた。
64ちゃぷちゃぷ2、あとがき:03/02/18 14:31 ID:cf2w4JSJ
無料大数・・・ばかだねオレ。正しくは無量大数です。
量子力学とかの詳しい突っ込みは無用でお願い。
このシリーズ続けてホスィ
前回と何か違いがあるんだろうか?
この内容で上げるのはいかがなものかと。
67ちゃぷちゃぷ2、あとがき:03/02/18 20:41 ID:Vb5Khm9q
ありがと。
またネタ探そ。
68ちゃぷちゃぷ:03/02/18 20:51 ID:Vb5Khm9q
>>66
パターンで主人公を苦しめる。
最終的に落ち着くとこへおとす。
古い技だが、どうだろう?
69名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/10 13:35 ID:reUC61bu
age
【イツモミタイニ】壊REアスカを語るスレ【ヤッテミナサイヨ】
http://tv2.2ch.net/test/read.cgi/eva/1032066067/l50

前は結構面白く見てたんだが、今は停滞中。
ダークorスプラッタ系の短編FFがいくつか。
あの〜ミサトが巨大化するFFが乗ってたスレ、どなたかご存じないですか?
雑談ではスルーされてしまったのです。
72山崎渉:03/03/13 16:02 ID:???
(^^)
保全
ちゃぷちゃぷ、すげーワロタ(w
他のFFの知識がないからかもしれんけど。
保守しつつパート3を待つ。
保全
76ちゃぷちゃぷ:03/04/05 02:43 ID:???
ネタ浮かんだから続き書きます。
77ちゃぷちゃぷ:03/04/05 02:45 ID:???
ちゃぷっ、ちゃぷっ、ちゃぷっ

紅い海がさざ波を立てながら打ち寄せていた。
オレは膝を抱えて砂浜を見つめる。
もう何も見たくはなかった・・・

レイが消えた後、オレは自分で自分の精神鑑定をした。
複数の鑑定方法を複合して行ったが、何の問題も見つからなかった。
被鑑定人はあらゆる設問に無難な回答を示した。強いストレスを加えても錯乱する兆候も見せなかった。
つまりオレの精神は極めて健全だってことだ。
気を良くしたオレは紅い海から得た絶対的な知識を駆使して過去へ還る手段を再度模索した。
真空空間でのインフレーションを基にした時空干渉は否定された。
だが一定空間内の大質量状態ならば話が違うだろう。要はブラックホールだ。
時空崩壊を起こす特異点を回転させることで環状に広げ、時空を反転させた領域を作る。
そして領域内を移動して時空を逆行する。
うむ、エルゴ領域の確保と特異点の高速回転が可能であればいけるな。
・・・だが、ATフィールドではシュヴァルツシルト半径に達するまで過重することは不可能だ。
できたとしても逆行先の時空へ与える影響が大き過ぎる。少なくとも地球は崩壊するだろう。
オレは行き詰った。それっきり砂浜をずっと見ている。
オレは無力だ。絶望感が心を蝕む。
何もかも嫌になった。
アスカの後を追って紅い海にもどろう。
オレは立ち上がった。そして紅い海の中に入った。

  ちゃぷちゃぷ

LCLが音を立てる。
さざ波で紅い水面(みなも)が揺れる。ひび割れたレイの顔が笑っている。
レイ、オレは狂っているのだろうか。
巨大になったレイを見ながら自嘲気味に顔を歪めた。
!!
・・・巨大になる・・・
そうか、大質量にとらわれる必要は無いんだ。
レイとオレが組めば過去へ帰ることができる!
「くっくっくっ・・・あーはっはっはっは・・・ゼーレ、碇ゲンドウ、碇ユイ、冬月コウゾウ、赤木リツコ、そして補完に力を貸した全ての者よ。オレは誓う!お前達を許さない!レイと共に時間を操り必ず復讐する!」
オレの叫びが紅い世界に響いた。
すると紅い海から白い少女の姿が浮かび上がった。
79ちゃぷちゃぷシンジ3、その3:03/04/05 02:51 ID:+7oinHVy
「いかりくん・・・」
「レイ!」
白い少女はレイだった。
「碇君の哀しみが伝わってきたの。碇君の叫びが聞こえたの。実体を持たない精神体のわたしだけれど、貴方のそばで慰めてあげたいの」
「レイ、ありがとう。だがオレは三度(みたび)誓いを立てた。オレ自身の全てを賭けて誓いを成さねばならない!」
レイはオレの目をじっと見つめる。
「碇君・・・わたしの全てを貴方にあげる。力は殆んど残ってないけれど、その全てを貴方にあげる」
「レイ・・・」
レイは優しく微笑み、オレに問う。
「碇君、あなたは何を望むの?」
「オレの望みは全てをやり直す事だ!過去に還って、ゼーレや碇ゲンドウ達、全ての悪しき者達に復讐することだ!」
「あなた、ばか?」
80ちゃぷちゃぷシンジ3、その4:03/04/05 04:19 ID:+7oinHVy
「まだそんなこと言ってるの? ちゃんと精神鑑定を受けたの?」
レイはやれやれって感じで首を振った。
「もちろん受けた。鑑定の結果、オレの精神状態は理想的だった」
レイは何かを見通すようにオレの目を見つめ、そして呟く。
「・・・ええ、だいぶ良くなってきたようね」
そして彼女は慈しむように微笑む。オレは暫しの間レイに見とれてしまった。
「それで、わたしに何か用なの?」
オレは、ハッとして我に返る。
「・・・ああ。レイ、オレに力を貸してくれ。ふたりで時空を操り、全てをやり直そう」
オレはレイの瞳を見つめながら話を続けた。
「空中に球状のATフィールドを展開してくれ。オレの合図と共にフィールドを反転させて、マイクロブラックホールを作る。そして特異点が出来たら、領域を確保したまま環状に拡大して確保する」
レイがオレをちらちらと覗き見る。
「オレたちのまわりにもフィールドを展開してくれ。そして環状に広げた領域に入る。そのまま反転した時空内を移動して時を越えよう。コントロールはオレが取るから、レイは力を操ってくれ」
「いかりくん・・・」(ぽぽぽっ)
レイは頬を紅く染め、瞳を潤ませ、もじもじと指を合わせた。
81ちゃぷちゃぷシンジ3、その5:03/04/05 04:21 ID:+7oinHVy
「うれしい・・・ふたりの初めての共同作業なのね」
「なにを・・・いうんだ?」
「あっ!・・・こ、これが本で読んだ・・ぷ、ぷろぽーずというものかしら」(いやんいやん)
レイは頬に手を当てて身悶える。
オレは腫れ物のようにレイを見つめた。
「こういう時どんな顔をすれば良いの?」
「さ、さあ・・・取りあえず笑えば良いんじゃない?」
オレはヤバい物のようにレイを見つめた。
「そう・・・これでいいのね」
レイが花の開くように、可憐に微笑む。
「うっ・・・それはちょっと反則だ」
オレは危険物のようにレイを見つめた。
「結婚式にはいっぱいお客様を招待しましょうね・・・ほら、世界中の方々がいらっしゃるわ」
レイは紅い海を向いてオレにささやいた。
・・・・そりゃそうだ。
オレは爆発物のようにレイを見つめた。
「碇君、新婚旅行はどうするの? その方法なら何処へでも行けるわ」
レイがすりすりと身を寄せる。
オレは再び我に返った。
「それだっ!」
「きゃっ!」
突然オレが大声で叫んだので、レイが小さく飛び跳ねた。
82ちゃぷちゃぷシンジ3、その6:03/04/05 04:24 ID:+7oinHVy
「過去に還るんだ!悪しき者に復讐するんだ!全てをやり直すんだ!」
レイの表情が変わり、無表情で冷たいものになった。
「無理なの・・・」
「どうしてっ!」
「時空が反転した領域内に入れば確かに時間軸を無視した移動が可能になるわ」
「よし、さっそく始めるぞ!」
レイはぷるぷると首を横に振る。
「何故だっ!」
「観測者からは時間を移動したように見えるの。でもね、領域を出る時点で時間軸は元に戻るわ。この方法で移動するのは見かけの時間だけなの」
「それなら特異点を2つ作れば良いんだ!これなら見かけの時間ではなく、実際の時間を越えられるぞ!」
「そうね・・・でも、未来に飛ぶだけよ。過去には戻れないわ」
「じゃあ、対象の時空へ飛ぼう。事象には必ず対になる物がある。未来へ流れる時空があれば過去へ流れる時空だってある筈だ!」
「それは無意味よ。過去へ流れる時空で行き着く時間も所詮未来でしかないわ」
「それなら如何すれば良い! どうやれば過去へ行けるんだ! オレは全てをやり直したいんだ!」
「無理なの。・・・・碇君だって本当はわかっている筈よ」
83ちゃぷちゃぷシンジ3、その7:03/04/05 04:55 ID:+7oinHVy
砂浜に座り込んだ。
目を瞑って膝を抱える。
何も見えない。
何も聞こえない。
こんなところ知らない。
こんなの現実じゃないんだ。

「それじゃあね・・・いかりくん」
綾波の気配が消えた。

そうしてぼくは再び一人になった。
紅い海がちゃぷちゃぷと音を立てた。
84ちゃぷちゃぷ3、あとがき:03/04/05 04:57 ID:+7oinHVy
次で終わりです。
一般・特殊相対性理論の突っ込みは無しでお願い。
ちょいとLRS風味で(・∀・)イイ!!
シンジさえマトモだったらなあ(w
86ちゃぷちゃぷ:03/04/05 05:32 ID:???
ありがと〜
うっ・・・この流れだとマトモなシンジは難しい
87名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/08 05:14 ID:8iGJAdCd
(´_`)氏のページ。
ttp://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Tone/4517/index.htm


無くなったのでしょうか?
連載作品どっちも好きだったのに。
>>87
残念ながら。使われていた掲示板だけが残ってる。
そうなのですか、保存しとくべきでした。
情報どうもです。
90山崎渉:03/04/17 11:50 ID:???
(^^)
保全
なんかいいよ。続き楽しみにしてます。
93ちゃぷちゃぷ:03/05/05 00:39 ID:???
つづき書きました。
ちょっと長いけど・・・
書き込みミスは御愛嬌ってことで。
94ちゃぷちゃぷシンジ4:03/05/05 00:42 ID:+UwGzV6D
ちゃぷっ、ちゃぷっ、ちゃぷっ、ちゃぷっ

なみの音がきこえる

ぼくのせきはここ。
となりがきみのばしょ。
ねぇ、早くおいでよ。
みんな、みんな、ここにあるんだ。
ほしかったものが全部あるんだよ。
すこしこわくて、ごつごつして、つよくって、でもあったかいもの。
やさしくて、いいにおいがして、やわらかくて、あったかいもの。
ぼくの欲しかったもの。
だいすきな・・・おとうさん、おかあさん・・・

95:03/05/05 00:44 ID:+UwGzV6D

「お父さんが好き?」
「・・・うん」
「お母さんも好き?」
「うん」
「そう・・・良かったわね」
「うん!」
だれかの声が聞こえる。
めを開けてもだいじょぶかな?
こわいもの無いかな?
ぼくは、おずおずと目を開く。
そこには巨大な少女の顔があった。

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・」
96:03/05/05 00:45 ID:+UwGzV6D

髪が紅く照らされている。
顔も手も肌も何もかも紅い。
紅い、紅い、紅い。

・・・紅は嫌い?・・・
(好きだよ)
・・・どうして紅が好きなの?・・・
(きみの目とおなじ色だから)
・・・・・・ぽぽぽっ
(あ・・もっと赤くなった)
  ぽかぽかぽか
(イタイ、イタイ。ごめんなさい、謝るから叩かないで)
  ・・・・・・
(どうしたの?)
  ・・・・・・
(どこに行くの?)
  ・・・・・・
(やだよ、ぼくから離れないでよ!)
  ・・・・・・
(どこにも行かないでよ! ひとりにしないでよぉ!)
97:03/05/05 00:46 ID:+UwGzV6D

ちゃぷっ、ちゃぷっ、ちゃぷっ、ちゃぷっ、ちゃぷっ
気持ち悪い音。
ぼくはあわてて耳を塞ぐ。
でも、波の音は消えなかった。

紅い、紅い、紅い、紅い、紅い、紅い、紅い、紅い、紅い
目を閉じて膝を抱える。
でも、海が見える。紅い色が瞳を焼く。
どこまでも紅い世界。

「ぁ・・・ぁぁ・・・ぁ・・」

耳を塞いでも目を閉じても紅い海が消えない。
ぼくは海から遠く離れた場所へ逃げる。
でも波音は後をついてきた。どこへ逃げても紅い色が見える。
だって目を閉じて耳を塞いでも、綾波がそこにいるから。
遠く離れた場所へ行っても、綾波は必ず傍にいるから。
98:03/05/05 00:48 ID:+UwGzV6D
だから、ぼくは戻ってきた。
紅い世界の海岸線で、砂の上に座って綾波を見つめる。
考えたいことが沢山あった。考えなくちゃならない事が沢山あった。
父さんのこと、母さんのこと、補完を望んだ人々のこと、そして紅い海から戻ろうとしない世界中の人々のこと。
そして自分のこと、何よりも綾波のこと。
ぼくは海の中へ入ることにした。

  ちゃぷちゃぷ

LCLが音を立てる。そのまま先に進んで、紅い海に身を任せた。
でも個としての存在が希薄になっているので、何も感じられなかった。
人々の融合はかなり進んでいるようだ。
紅い海全体を個として捉えるために意識を大きく広げてみる。
すると人々の思いが伝わってきた。
磨耗した心を寄り添わせて、それでも混じり合ってひとつになろうとする思いが伝わってきた。
「・・・バカなひとたち・・・」
ぼくは紅い海を離れて砂浜に戻った。
99:03/05/05 00:49 ID:+UwGzV6D
「綾波」
彼女の名前をささやくと、波間に佇んでいた綾波がすうっと近づいてくる。
「いかりくん・・・やっとわたしを呼んでくれた」
「ごめんね、綾波」
彼女はふるふると首を振る。
「・・・もういいの?」
意識を大きく広げているので心の壁が薄くなっている。
いつもより綾波の心を近く感じられた。
そして彼女がどれだけ気遣ってくれたのかわかった。
「ごめん・・・いままで心配かけて本当にごめんね」
もう一度ふるふると首を振る綾波。
「ありがとう、綾波」
彼女は儚げに微笑む。
その微笑がぼくには哀しく見えた。
100:03/05/05 00:50 ID:+UwGzV6D
「初号機は太陽系脱出速度に加速中だね。捕まえることは出来るかな?」
綾波は少し首を傾げた。
「位置の特定が難しいの・・・碇君、あなたの軌道計算の方が確実だと思うわ」
彼女の心に手を伸ばして、そっと触れる。
「ぼくがコントロールを取るから綾波は力を操ってくれる?」
先日の事を思い出したのか、綾波は頬を染めて俯いてしまう。
その姿はとても可愛らしい。
(・・・やっぱり反則だよ・・・)
自分の顔も真っ赤になっているだろうな、と思いつつ言葉を重ねた。
「初号機は火星の重力を利用して軌道修正と加速をするつもりだと思う」
彼女はコクンと頷く。
「火星を過ぎちゃうと軌道計算が難しくなるから直ぐに行くよ」
「ええ、わかったわ」
その言葉を合図として綾波は力を解放する。
マイクロブラックホールの特異点を拡大して、環状の領域を作った。
ぼくたちはその中に飛び込み、そして空間を越える。
101:03/05/05 00:51 ID:+UwGzV6D
数十分後、初号機を伴って地上に戻った。
綾波の前にはアンチATフィールドで包まれた少量のLCLが浮かんでいる。
そのLCLは動かしても無いのに自分で揺れて、ちゃぷちゃぷと音を立てた。
「危ないところだったね」
「サルベージが間に合ってよかった」
ぼくたちは火星重力圏の手前で初号機を見つける事が出来た。
そのままATフィールドに包んで連れ戻そうとしたが、こちらの意図に気付いた初号機が暴走して抵抗する。
力比べをしても時間の無駄だ。それに火星の重力圏に入ると厄介な事になりかねない。
だからアンチATフィールドで初号機の存在を希薄にし、隙を作って搭乗者(?)を強制サルベージした。
お蔭で危うく火星に突っ込むところだった。
102:03/05/05 00:52 ID:+UwGzV6D
閉じ込められたLCLがちゃぷちゃぷ跳ねる。
「う〜ん活きが良いねぇ。十年以上あの中にいたなんて信じられないよ」
「・・・・化け物」
ちゃぷっ!ちゃぷっ!ちゃぷっ!
「あれ?何だか暴れてるみたいだ。ねぇ綾波、ぼくたちの声が聞こえてるの?」
「違うわ。私たちのイメージが中に伝わっているの」
「ふーん・・・・それ一方通行に出来ないかな。中のイメージは外に流すけど、外部のイメージは完全にカットしたいんだ」
「簡単なこと。内側のアンチATフィールドはそのままで、外側を少し強いATフィールドにすれば良いの」
それを聞いて、ぼくは口の端を曲げて笑う。
「それ後で頼むよ」(ニヤリ)
「・・・わかったわ」(ニヤリ)
綾波もその気になってる。
そう、誰よりもこの女性に含むものがあるのは綾波なんだよね。
103:03/05/05 00:53 ID:+UwGzV6D
ぼくは閉じ込められたLCLに顔を近づけてイメージを伝える。
(母さん、この風景見えているかな? この荒涼とした紅い世界が母さんの残したかったものなんだね)
LCLが静かになった。
(母さんの願いを叶えてあげる。母さんの仕事が成功したお祝いだよ。これから外からのイメージを完全にカットするね。母さんはその中で何千年も何万年も、いや永遠に生き続けるんだ。無限に続く絶対的な孤独を人の生きた証として!)
ちゃぷっ!ちゃぷっ!ちゃぷっ!
LCLが大きく跳ねる。
(あははははっ!喜んでもらえて、ぼくも嬉しいよ。じゃあ、そろそろお別れだ。母さん元気でね!)
「・・・・・綾波、やっちゃって」
ブンッ!
LCLを包むATフィールドが微かな音を立てたあと変質した。
104:03/05/05 00:54 ID:+UwGzV6D
「これ、どうするの?」
そう言いながらもLCLをちゃぷちゃぷ揺らして玩ぶのを忘れない。
「ん? 紅い海の中に漬け込むんだ。全ての感覚を断ち切られた恐怖と孤独を世界中に発信するという重責だよ」
「人々にストレスを与えて居心地を悪くするのね」
「うん。どうしても戻りたくないって言うなら、戻らせるまでさ。その為には他の魂と混じっていたら意味が無いんだ。母さんには悪いけど、完全に分離した魂が一つしか無いんだから我慢してもらおうね」
「そう・・・じゃ、入れるわ」
ぽいっとフィールドに包まれたLCLを投げ捨てる綾波。何だか楽しそうだなぁ。
・・・ちゃぽん・・・
母さんが音を立てて海に沈む。落ちた場所から波紋が広がって・・・・あれ?
ザザッ!
波紋どころか海が盛り上がって行く。
おまけに、まるで母さんを避けるように海底まで穴が開いちゃった。
旧約聖書の出エジプト記に似たようなのがあったなぁ。
「いかりくん・・・あれ何?」
「・・・たぶん母さんを避けているんだと思う」
凄いな。LCLの身体(?)をものともせずに良くあそこまで頑張るよ。
「何だか逃げるのに一生懸命で戻ってくる気配は全然無いよ。しばらく放っておこうか」
「みんなバカ? そんなに怖いのなら人の姿に戻れば良いのに・・・」
綾波は呆れたって感じで紅い海を見つめる。
105:03/05/05 00:56 ID:+UwGzV6D
「さて、これからどうしようか?」
「餌に釣られてお魚さんが2匹寄ってくると思うわ」
「うん。美味しそうに泣いてるから1匹は必ず釣れるね」
「でも、もう1匹は微妙・・・釣れないかも知れない」
「まず1匹釣り上げて閉じ込めよう。2匹目には別の仕事をしてもらおう。捕まえてから分離するから、近づいたら他のLCLと一緒に捕まえちゃって」
綾波がじっとぼくの目を覗き込む。
「碇君、まだ復讐にこだわっているの?」
ぼくは苦笑を返しながら答える。
「こだわりを捨てたと言ったら嘘になるけど・・・でもね、どうせ苦しむんなら悪巧みをした人に責任を取ってもらうのが良いんじゃないかな」
綾波は逮捕された犯罪者を見るような感じで穴の開いた紅い海を見つめる。
「・・・それもそうね」
そう投げやりに呟く彼女の横顔は何故か寂しそうだった。
106:03/05/05 00:57 ID:+UwGzV6D
・・・あたりが無い。
餌は最上級なんだから魚が来ないわけが無い。
条件が悪すぎるのかな。
LCLをかき分けて、それも他の人達と分離しながら母さんのところまで泳いで来るんだから時間がかかるのかな。
仕方が無い、いつまでも待つとしますか。
「ごめんね綾波。まだまだ時間がかかりそうなんだ。ぼくと一緒に待ってくれるかな・・・」
「いいの。碇君とふたりで待つのは嫌いじゃないもの」
なんでそんなこと聞くの?って感じで小首を傾げる綾波。ぼくは彼女には頼ってばかりだ。申し訳なくて俯いてしまう。
「あなたが居なくなれば、わたしはこの世界にひとりっきり。だからふたりで待つのは嬉しい・・・でも碇君はわたしと一緒じゃイヤなのね」
言葉を綴るたびに綾波は顔を背け身を震わせてゆく。
儚げに微笑んだり、寂しげな横顔を見せたり、綾波は精神体の癖にとっても芸が細かい。
お芝居と解っているのに、ぼくの男心は鷲掴みにされてしまう。
「綾波と一緒にいるのが嫌なわけないよ! ぼくだって凄く嬉しいんだよ!」
「・・いかりくん・・」(ぽぽっ)
紅く染めた頬に手を当てて、ぼくをチラチラと覗き見る綾波。
(・・・それは絶対に反則だよぉ!)
彼女は愛らしさという武器を手にして、ぼくを翻弄し続けた。
そして、ぼくたちは魚のあたりを待つことになった。
107:03/05/05 00:58 ID:+UwGzV6D
・・・・およそ一年後・・・・お魚さんの姿無し

相変わらず紅い海には直径20mくらいの穴が開きっぱなしだ。
あの後しばらくしてLCLの壁が対流を始めた。
その勢いは次第に増して、今では穴から沸きあがるLCLが大噴火のマグマみたいに高さ数百メートルまで吹き上がる始末だ。
その有様は、壮観だけど情けない事この上ない。
綾波は呆れるのを通り越して、あまりの情けなさに顔を背けるようになっちゃった。


・・・・たぶん二年後・・・・お魚さんの気配無し

壁がATフィールドを発生し始めた。
もちろん、そんな勝手な真似はさせない。ぼくたちはATフィールドを中和して母さんの恐怖を世界中に流し続けた。
でも、その勢いは次第に増して、今では六角形のフィールドを目視できる位になった。
その有様は、壮観だけど情けない事この上ない。
綾波は情けないのを通り越して、あまりの不甲斐の無さにシクシクすすり泣き始めた。
108第名無使徒:03/05/05 00:58 ID:???
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┴┬┴┬┴┬|l,,,,   Coffee;;;;;;|┴┬┴┬┴; , ┴┬┴
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109:03/05/05 00:59 ID:+UwGzV6D
・・・・きっと三年後・・・・お魚さん一向に探知できず

壁が母さんに攻撃を始めた。
フィールドの展開を諦めた壁はATフィールドを母さんに向かって投げつけるんだ。
ぼくたちは母さんのATフィールドを強化して攻撃を防いだ。
でも、その勢いは次第に増して、今では第三使徒みたいにフィールドを光の槍に収束させて繰り出している。
その有様は、壮観だけど情けない事この上ない。
綾波は不甲斐の無さに泣くのを通り越して、紅い海にブツブツと独り言を呟き始めた。


・・・・思うに四年後・・・・魚影は濃いが、あたりなし

壁の攻撃は今だ続いている。
でも、その勢いは次第に増して、今ではATフィールドを物質化させて触手にし、第四使徒みたいに母さんを突き刺し始めた。
その有様は、壮観だけど情けない事この上ない。
綾波は独り言を呟くのも止めて、壁に向かってガシガシと攻撃を始めた。
110:03/05/05 01:00 ID:+UwGzV6D

お魚さん出現!

ATフィールド同士の干渉で紅い海に開いた穴が異空間とつながりかけた頃、突然壁から少量のLCLが分離した。
それと同時に壁からの攻撃も止まった。
静寂の中、母さんの恐怖と孤独だけが辺りに響く。
少量のはぐれたLCLは母さんの泣き声に導かれてベチャベチャと進み、そして母さんに触れる。
 バシッ!! バシッ!!
母さんを包むフィールドに弾かれるはぐれLCL。それでも母さんに縋るはぐれLCL。その度に弾かれるはぐれLCL。
うんうん、美しい夫婦愛だね。
やがて、はぐれLCLは母さんの傍でベチャッと広がり、嘆き、喚き、大声で泣き始めた。
「綾波、あれを母さんと同じようにフィールドで包んじゃって!」
「わかったわ」
 ブンッ!
はぐれLCLをフィールドで包む音が静まり返った空間に微かに聞こえた。直後、はぐれLCLの恐怖と孤独と思慕と嘆きが響く。
その強さは母さんの比では無く、朗々と紅い世界に響き渡った。
「父さん良い声で泣くね。まあ恐怖と孤独に加えて、あんなに追い求めた母さんと会う事も出来ず、無理矢理引き離されたんだから無理もないかな」
「司令のおかげで壁からの攻撃が止んだわ。見て、あの夫婦が恐くてATフィールドの攻撃範囲に近づく事も出来ないのよ」
見れば紅い海の穴は直径1km以上に達し、マグマのように吹き上がるLCLの高さも1000bを越えていた。
その有様は、壮観だけど情けない事この上ない。
ぼくは父さんと母さんの側でさめざめと涙をこぼした。
111:03/05/05 01:01 ID:+UwGzV6D
「碇君、お魚さんのあたりがあるの」
ぼくは涙を拭きながら顔を上げる。
壁まで1km以上あるから全然見えないけど、綾波がいうんだから間違いないだろう。
「様子を見て捕まえてくれる?」
「ええ。完全に分離してるのを確認したら捕まえるわ」
綾波は壁に向かって意識を集中している。
「2匹いる。1匹は分かるけど、もう1匹は誰かしら」
たぶん、あの女性だろう。
やはり気になっていたんだね。きっと近くに来てたんだ。
「捕まえた・・・・2匹ともちゃんと分離していたわ」
悲鳴を上げて暴れる2匹。もくもくと手繰り寄せる嬉しそうな綾波。
やっぱり釣りの醍醐味は釣り上げる瞬間なんだなぁ。
2匹はそれぞれ別のフィールドに包まれて、ぼく達の前へ姿を見せた。
「お久しぶりです副司令、それにリツコさん」
112:03/05/05 01:02 ID:+UwGzV6D
二人とも父さんと母さんの泣き声に圧倒されて身動き出来ない。
綾波は諭すように語り掛ける。
「副司令、赤木博士、人の姿を望めばすぐに戻れるわ。そうすれば、これくらい怖くない・・・」
それでも二人は人の姿に戻らない。
「LCLの世界はそんなに居心地が良いんですか。じゃあ、そのままこの夫婦のように閉じ込めてあげますね」
ちゃぷっ!ちゃぷっ!ちゃぷっ!
ぼくのイメージを受けて二人は暴れだした。
「じゃあ、副司令は母さんと一緒のフィールド、リツコさんは父さんと一緒のフィールドに閉じ込めるってのはどうですか?」
ちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷ
二人のLCLは小刻みに揺れて喜びを露にする。
「あなた達、それを望むの?」
ちゃぷちゃぷ
綾波の問いに頷く(?)二人。ぼくたちは口の端を曲げて笑う。
「良いですよ、望みどうりにして差し上げます」(ニヤリ)
「でも、それには条件があるの」(ニヤリ)
113:03/05/05 01:04 ID:+UwGzV6D
「おふたりには人類補完計画の首謀者達と計画に協力した人達の捕獲を手伝っていただきます」
「副司令は彼らを分離させるための人質を探して。彼等の両親、妻、夫、娘、息子、孫など、我を忘れて守りたくなるような人を連れて来て」
彼のLCLが揺れる。戸惑っているようだ。
リツコさんのLCLが、そんな事不可能よって波立つ。
「出来ないのなら人質を手繰り寄せる道筋を立てれば良いんです。リツコさんを捕まえればマヤさんが来ます。マヤさんを捕まえれば御両親やマヤさんに思いを寄せる男の人が来るでしょう。それを繰り返して行けば何時かは人質に辿り着きますよ」
副司令のLCLがさざ波を立てる。迷っているんだな。
「赤木博士は副司令を手伝って。そのあとで伊吹二尉を誘き寄せる餌になるの。心配いらないわ、目的を達したあとで直ぐに放してあげる・・・」
リツコさんのLCLうな垂れたように静まる。
「副司令は餌に食いつく魚を見つけて、ぼく達に知らせて下さい」
副司令のLCLも静かになった。
「ふたりとも協力してもらえるんですね。じゃあ、早速始めましょう」
綾波は壁のそばに二人を移動させてからATフィールドを解いた。そして紅い海に戻って行く。
その背中にはLCLのくせに哀愁を漂わせていた。
114:03/05/05 01:05 ID:+UwGzV6D
再び綾波とふたりで待つ時間が始まった。
サードインパクトから既に5年が経過している。
ぼくは19歳だ。
このままでは時間ばかりが過ぎて行き、目的を達成できなくなる。
そんな焦りを感じ始めた。
だが、意外なほど早くリツコさんは帰ってきた。
LCLでの時間経過は肉体を持っている時よりも遥かに遅くなるそうだ。
まあ、シナプスの情報伝達とLCLでは思考速度が比較にならないんだろう。
そんなわけで、リツコさんをフィールドに閉じ込めて泣いてもらう。
綾波はリツコさんに説明を始めた。
「これから赤木博士をフィールドで閉じ込めます。あなたの任務はマヤさんを誘き寄せること。わたしたちの目的を達したあとで直ぐに司令と一緒のフィールドへ閉じ込めますから、上手に泣いてください」
そしてアンチATフィールドで彼女を包む。外側をATフィールドで閉ざす前に、ぼくはリツコさんに告げる。
「ねぇ、リツコさん。ぼくたちの目的はLCLに溶けた人々すべてを人の形に戻す事なんです。その目的を果たすまで、せいぜい良い声で泣いてくださいね」
ちゃぷっ!ちゃぷっ!ちゃぷっ!ちゃぷっ!
話が違うわ!止めなさい!って感じでLCLが暴れる。
「はたして皆は元の姿に戻れるんでしょうか。もしダメだったら、申し訳ないんですが永久にその中で我慢してくださいね。それじゃ、さようならリツコさん」
綾波がLCLを完全に閉ざすと、リツコさんは恐怖に満ちた叫び声を上げ始めた。
リツコさん叫びは声量が足りないけど心を打つ泣き声で、十分納得の行く声だった。
115:03/05/05 01:06 ID:+UwGzV6D
「・・・・まわりを見て」
綾波の投げやりな声が聞こえた。ぼくは視線を周囲に向ける。
・・・勝手にしてくれって感じだ。
紅い海に開いた穴は更に広がっていた。
穴から吹き上がるLCLの高さも倍以上になっている。
「一箇所に纏めて置くのは3匹が限界だね。これ以上だとLCLの上昇速度が地球脱出速度を越えるかもしれない」
綾波はゾウリムシを見るような感じでそれを眺めている。
「いっそ大気圏外へ出て沸騰すれば後腐れなく片付くわ」
LCLのフリーズドライかぁ。その状態でも魂は存在できるのかな?
それはともかく、綾波的に人類見限る寸前ってところか。
「あの、綾波さん? できればもう少し我慢してやっていただきたいんですが・・・」
「わかってるわ。副司令が伊吹二尉を見つけたようね。赤木博士を連れて捕まえに行きましょう」
リツコさんを抱えて副司令のイメージを辿る。
ぼく達が進むにつれて目の前の紅い海が裂けて行く。ちょっと楽しいね。
小一時間歩いた時、綾波がATフィールドでLCLを閉じ込めた。
「マヤさんだね」
「ええ。でも他の人も混ざっているから赤木博士を近づけて分離しましょう」
リツコさんを近づけると、ATフィールドの中でLCLは逃げるものと近づくものに分離した。
マヤさんだけをフィールドで包みなおして、あとのは逃がして上げる。
116:03/05/05 01:07 ID:+UwGzV6D
「今からマヤさんを外界と遮断しますね。永遠に続く孤独を楽しんでください」
そう告げてからフィールドを完全に閉ざした。マヤさんの泣き叫ぶ声が辺りに響いた。
「綾波、リツコさんの外側のフィールドを消してあげて」
「・・・そうね」
彼女はクスッと笑ったあとでリツコさんを包む外側のフィールドのみ解放した。
リツコさんのぼくたちを非難するイメージが伝わる。
「この世界で演技は通用しません。どうしても必要な事でした。本当にごめんなさい」
深々と頭を下げて詫びる。
リツコさんは渋々理解を示した。
「それから、今フィールドを解放すると赤木博士の自我は紅い海に飲み込まれて消えてしまうの。このままで我慢して」
「じゃあ、次に行きましょうか」
そして泣き叫ぶマヤさんを連れて、次の目標の青葉さんを捕まえに行く。
117:03/05/05 01:08 ID:+UwGzV6D
ぼくたちはLCLを捕らえては別のLCLを誘き寄せ、そして分離したまま放置した。
何度も何度もこれを繰り返した。
そして10年という歳月が過ぎる。
とうとう補完計画関係者を全員燻り出すのに成功した。
これまでにATフィールドで捕縛した延べ人数は十万人を超えた。
補完計画に深く関わり、責任を負うべき人の数は最終的に300人程度だった。
彼らを一箇所にまとめるとLCLが地球外へ飛び出してしまうので紅い海に散らせて配置してある。
閑散としていた紅い海は見る影も無く、海の其処此処から噴水のように吹き上がるLCLからは確かな命の脈動を感じた。
これなら近い将来、ぼくたちの望みが叶うかもしれない。
「お疲れ様でした副司令、リツコさん。それじゃあ、これからフィールドで完全に閉じ込めますね」
(待ってくれ。ユイ君と同じフィールドに入れる約束はどうなるんだ!)
驚いたことに副司令のLCLからは明確な言葉による意志が伝わってきた。LCLが人の形を取り戻しつつある具体的な証拠だ。
「それは世界中の人々が元の形を取り戻した後の事ですよ。紅い世界という楽園は、ぼくたちが閉じ込めた人達の恐怖と孤独の叫び声に満ちた地獄です。世界中の人々がこの地獄で苦しんでいるのに、副司令達だけが楽園へ戻るなんて不公平でしょ?」
118:03/05/05 01:09 ID:+UwGzV6D
リツコさんまでもが言葉によるイメージを伝えてきた。
(人が元の姿を取り戻せるの?一旦楽園の味を占めた者は苦しいからなんて理由では元に戻れないわ!)
「なかなか戻ろうとはしないでしょう。でも、いつまでも待ちますよ。時間はいくらだってあるんです」
(何も関係の無い人々が苦しんでいる。それを可哀想だと思わないのか!)
「副司令は面白いことを言いますね。無関係の人達を巻き込んだのは、あなた方でしょう。それにね?」
(それに・・・なんなの!)
「紅い世界から戻ろうとしないってことが、ぼくにとっては罪なんです。だから世界中の人々全てが罪人なんですよ」
「人として生きる者達。かれらはすべからく、その生を全うする義務を持っているわ。でも放棄した。誰のせいでも無く、それは自分自身の選択よ。かれらは罪を負っているの」
(君達は神様にでもなったつもりなのかね!)
「人を裁くのは神ではありません。人を裁けるのは人だけです。そして今残っている人はひとりだけ」
「ただひとり世界に残った碇君が、人という存在を残そうとするのは必然。あなた達に口を挟む権利は無いわ」
「紅い世界を築いた者達が人々を元に戻す為の贄となる。合理的でしょ? それに約束は守りますよ。世界が元に戻れば、おふたりの願いは叶えて差し上げます。じゃあ、さようなら」
綾波に会釈で合図した。
微かな音と共にフィールドの性質が変わる。
ぼくたちはリツコさんと父さん、そして副司令と母さんの組み合わせに分けて、紅い海の中に落とした。
もう、二度と会うことは無い。
119:03/05/05 01:11 ID:+UwGzV6D
サードインパクトから15年が経過していた。
何の変化も無かった紅い世界は大きく様変わりしていた。
世界から隔絶された300を数える者達の絶叫が轟き、
紅い海には百以上の穴が開き、
そこからはLCLが1000b以上の高さに吹き上げていた。
一時は個としての意識が消えかけていたLCLも、いまでは自我を取り戻しつつあった。
それでも人々は紅い海から出ようとしない。
人という種を継ごうとはしなかった。

己という存在が他者と離れてしまうのが怖い。
矮小な個などに帰りたくない。
なによりも死が恐ろしい。
無に還りたくない。
人に戻るくらいなら、死に囚われるくらいならば、この恐怖と狂気に満ちた叫びを耐える。

それが紅い海の出した結論だった。
情けない事、この上ない。
残された二人は本当に呆れてしまった。
紅い海を一べつしてから振り返る事無く内陸へ去っていった。
120:03/05/05 01:12 ID:+UwGzV6D

ぼくの成すべき事は終えた。
自身の罪を贖うのには、まだまだ時間がかかる。
それは後回しにすれば良い。
でも1つだけやり残した事がある。
だから傍らに佇む娘の気配を手繰って彼女に語りかけた。
「ねえ綾波、お願いがあるんだ」
なぁに?
そんな感じでこちらを振り向く。
「あの人達が戻ってくるには、死というものを直視させなくちゃダメだと思うんだ」
「・・・・」
「身に迫る死も、緩慢な死も、それ自体に差なんて無いんだって解らせるんだ」
「・・・・・いやよ」
「ぼくにしか出来ないことなんだ」
「どうして碇君はわたしを1人にしようとするの? そんなの絶対にイヤぁ!」
彼女は身を縮めて泣く。
でも、仕方の無いこと。
「確かに初号機に取りこまれてしまえば、ぼくは生き続けられる。でもね、そうしたら僕は僕じゃなくなるんだ」
「そんなことない。あの女は全然変わってないもの」
「あの人は短い間だったからね。でも、ぼくが初号機の中に入れば永遠の時を数える事になる。心が平らになって感情の起伏が無くなる。やがて魂まで磨り減ってしまう。長い時を生きるってのは、そういう事なんだ。思考速度の速いLCLの人達を見れば良くわかるよ」
121:03/05/05 01:14 ID:+UwGzV6D
綾波が恨めしげに見つめたあと、俯いてしまう。
「わたしがいるわ。いつでも、いつまでも碇君の傍にいる。だから大丈夫よ!」
「ありがとう。でもね、君の心が磨り減っていく様を見続けるなんていやだよ」
「・・・・・ぅぅ・・・・・」
「だからね、綾波と一緒になりたい。嬉しいこと、哀しいこと、楽しいこと、辛いこと、その思い全部を好きな人とふたりで、命ある限り・・・・」
彼女は驚いたように、ぼくを見上げた。
そして、かき消すように姿が無くなる。
でも、ぼくの心は鮮明に彼女の存在をとらえていた。
心に届く綾波はしばらくキョトンとしていたけど、突然真っ赤になって身をすくめ、それっきり全く動かなくなる。
「綾波?」
「・・・・・」
「綾波!」
「・・・・・」
「あ〜や〜な〜み〜!」
「・・・・・は、はいっ!」
消えたときと同様に突然、彼女の姿が現れて返事をした。
「無理に自分の形を投影しなくても良いよ。姿が見えなくても綾波の事わかるから」
でも彼女は消える事なく恥かしげな瞳を向けてくれた。
「もし嫌じゃなければ、ぼくなんかで良ければ、ぼくと・・その・・」
「・・・はい。ありがとう、碇君・・・」
そしてふたりだけの時が過ぎる
122:03/05/05 01:14 ID:+UwGzV6D

 ・
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数十年後

海は裂ける。
紅い奔流が天に向けて立ち昇る。
それは紅い雨となり豪雨の如く地を、そして海を叩く。
恐怖、孤独、思慕、嘆きが天と地と海に満ちる。
そんな紅い海のほとりに人影があらわれた。

少女が老人を海に連れてきたのだ。
老人の顔には明らかな死相が見て取れる。
ふたりはしばらくの間、紅い海を眺めていた。
だが、老人の苦しげな呻き声のあとで海を目指し歩み始めた。
連れ添う少女は悲嘆する。
老人は沈黙を保ったまま彼女を見つめ、穏やかに微笑む。
紅い波が激しく寄せる砂浜に少女と老人が立つ。
最後の抱擁を交わす。
互いの手を互いの身体にまわし、波間へ歩を進める。
そしてふたりは荒れ狂う紅い海に消えた。

123:03/05/05 01:15 ID:+UwGzV6D

その時、吹き上がる紅い奔流が止む。
裂ける海が閉じる。
紅い雨はあがる。
波頭が低くなり、さざなみに変わり、そして水盤の水の如く静まる。
やがて光が地と海を満たす。
響き渡る嘆き叫ぶ声だけが時を刻んだ。
数刻の時が過ぎた。
124:03/05/05 01:16 ID:+UwGzV6D

突如、紅い海から少女が浮かび上がった。
だが老人の姿は無い。
宙に浮かぶ少女は海からいくつもの薄い膜に包まれた紅い雫を引き寄せ、そして解放して行く。
最後の雫が彼女に導かれ海に帰る。
だが、その手元には4つの雫が残っていた。
少女は雫をふたつに纏め、そして海に投げ捨てた。
鏡のような水面に二つの波紋が広がる。
哀しげにその消えるさまを見守り続ける。
波紋が消えた。
紅い世界から音が消えた。
動くものは何も無い。
だが少女は紅い海を見つめ続けた。
どれだけ時が過ぎただろうか。
彼女は紫の巨人を傍らに招く。
巨人は空間を切り裂いて少女の前に現れた。
125:03/05/05 01:18 ID:+UwGzV6D

ふいに老人の身体が水面に浮かぶ。しかし、その身体から生気は感じられなかった。
「・・・・・・・ぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
少女の悲しみ嘆くかすれた声が紅い世界に響く。
彼女は老人に近づき寄り添うと、そっと抱きあげた。
紫の巨人もふたりの傍らに浮かび、少女と老人を抱く。
巨人の腕の中で少女は穏やかに微笑むと、老人の頬に自分の頬を寄せて愛をささやく。
彼女の愛の言葉は長く続いた。
だが少女の時は彼女の想いを留めたまま止まった。
大きな存在が少女の中から溢れ出て彼らを包む。
急に老人と少女そして巨人の身体が希薄になる。
大きな存在は彼らを取り込むと更に膨らみ、それ自身も薄れて消えた。
あとには何も残らなかった。
時を刻むもの全てが消えた。
世界から音が消えた。
時が消えた。
126:03/05/05 01:20 ID:+UwGzV6D

ちゃぷ

音が蘇る

ちゃぷ、ちゃぷ

波紋が広がる

ちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷ

波紋は新たな波紋を起こす

ちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷ

紅い海にさざ波が蘇る

そして世界は再び時を刻みだした

しかし原罪を負っていた

だから神は姿を見せない

祝福は意味を喪った

人は人として生きるのみにしか術を持たないのだ



127ちゃぷちゃぷ、あとがき:03/05/05 01:34 ID:???
終わりです。
つらつら書いてたら30kbを軽く超えてしまったので短く纏めてみました。
急ぎすぎた部分を感じられた方、ごめんなさい。
いつか訂正して、どこかへUPしたいと思います。
長々と駄文を書き込み失礼しました。
どうぞ、自由に突っ込んでください。

追伸
○○○さん、これにかかりっきりで続き書いてません。
申し訳ない! m(__)m
・・・・それでも内容はこんなもの。トホホ・・・
>ちゃぷちゃぷの人へ
やべぇ・・・すごくイイ!!!!>全編
すごく良かった。いろいろマンセーしたいけど、うまい言葉が出てこないよ・・・
でもホント、読んでてゾクゾクした。
いい時間をありがとうです。

つっこんでいいということなのでひとつだけ。
えと、短くまとめられたということですが、快いくらいの勢いがあるので
このままでも全然イイと思います。一気に読めたし。

通りすがりの>>74でした。乱筆お許しを。
129ちゃぷちゃぷ:03/05/05 20:30 ID:???
>74>128さん、ありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたのなら、何より嬉しいです。
ちょいと強引に話を進めたので、ほっとしました。
グッジョブ
遅ればせながら。すっごく良かった。
早く気づいていればリアルタイムで見れたのにっ
久しぶりにエヴァの「もう一つの終局」ってのを感じさせてもらった。
132ちゃぷちゃぷ:03/05/17 04:17 ID:???
>130さん、レス遅れて申し訳ない!

>131さん、こんばんは。
残された人って70年代〜80年代のSFで書きつくされた感があるテーマですけど、
やはり人が望むのは安易な安息ではないだろうと思って、こんな風にしてみました。

お二人とも、ありがとうございました。