おんなのこでも感じるえっちな小説12

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1sage
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男×女、オリジナル限定、ネット初出のみで、再投稿はご遠慮ください。
棲み分け的な意味合いで、二次創作・百合・BL・ショタは該当他スレへどうぞ。
なお、血縁のある近親相姦はアウトです。
 
なんか「おま○こ!」とか直接ドーンと言ってるのも冷めるけど、
「秘密の果実」とかとおまわしすぎるのもかなりわらっちゃう(笑)
オトコノヒトにちょっとSっ気があるとなお萌えvv(笑)
              (スレ1の1さん=ナナさん発言より抜粋)
 
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■おな感縮刷版(まとめサイト)
 http://file3.rdy.jp/matome/onakan/
2名無しさん@ピンキー:2013/11/19(火) 05:38:48.17 ID:DQaS/v9s
乙一
3名無しさん@ピンキー:2013/11/19(火) 06:41:27.87 ID:v6umbckE
スレ1を立てたナナさんも、
当時25歳だったと仮定したら今37歳。
驚きの時の流れです。
どうでしょうかね、彼女のご希望に添えてるんでしょうか?
4名無しさん@ピンキー:2013/11/21(木) 15:31:21.41 ID:0U9h8ecg
1乙!!

前スレ377さんお久しぶりですGJ!!

12年の経過・・・
小学生だった私→今は社会人に!
小学生の子持ちだった私→今はおばあちゃん(孫いる)に!
・・・的な?

スレ「12」も超支援!
5377:2013/11/23(土) 23:45:28.19 ID:0iPk0KZ3
乙ですー。
とりあえず添えていない自信ならあります。

投下します。
今度は住民好感度・鬼畜度パラメータ高め&本人の精神は安定どころか賢者モードでお送りします。
若干のソフトSM要素? 有。ただしやられるのは男の方ですがメインではありません。
徹頭徹尾ギャグ&今後の前フリみたいなものとして見ていただければ幸いです。
6うみなりタウン物語α 1/17:2013/11/23(土) 23:46:40.04 ID:0iPk0KZ3
「……で、貴方は一体、何の目的で空き巣に入ったのですか?」
御自身の腕に相当の自信があったのか、こっそり私の寝室に侵入して来た、恐らくは私を
かつて狙って来た、親戚に雇われた暗殺者よりは強いのかも? 程度の侵入者に、私は問
うた。
「――ほはえふひふは、はひ」
多分、答える義務は、無いと言ったのだろう。
「カッコつけるの止めましょうよ、貴方、今、自害も出来ない状態なのですから」

とりあえず、家の中に入った時点で気付いていたので、寝室に入った瞬間に殴り倒して猿
轡を噛ませて、結跏趺坐と亀甲縛りを組み合わせた、なんとも卑猥な拘束をしました。

「……でも、そうなると拷問しかないですよねぇ、リオンさんの所の方?」
小首を傾げて、可愛く言った瞬間、びくっ、と侵入者さんの身体が震えた。
あ、ちょろい。そう思った。
もう、この反応をした時点で9割負けている訳だけれど、それでも侵入者さんは知らんぷ
りを続けている。
「だんまりですか? まあ、このまま人知れず、証拠も残さずあなたを消す事なんて容易
いですけれど――」
そういう脅しに関しては慣れているというか、覚悟しているのか。けれど。
「リオンさんも、私を舐め過ぎですよね。あの人が『太陽の初恋』を欲しい理由も、もう、ちゃーんとわかっているのに」
あえて、アホっぽい物言いで、サイドテーブルから出した紙の束をちらつかせる。

実はこれ、この間、町民全員参加で応募者全員プレゼントは高級フルーツ、最優秀者には
賞金百万ゴールドな『うみなりタウンのゆるキャラコンテスト』の応募用紙なんだけどね。
因みに、堅物お医者のレンズさんの考えた『うみにゃりくん』が、予想外のクオリティで
ビビったりしている。多分これが優勝。

「ふふ、お金の力を舐めちゃダメなんですから。私の実家には、私だけの為のハイパー執
事&メイドがいるんです。逆に、貴方をありとあらゆる方法を使ってリオンさんの関係者
という事実を仕立て上げ、リオンさんに不利な状況を作る事だって、造作も無い事なので
すからね」

……まあ、実際問題、ルナとハテナの二人は呼んだらすぐに来ちゃいそうですけど……も
う、私は実家とは何の関係も無い。あの二人とも、縁は切れた。今はいい、そんな事。

侵入者さんは顔を青褪めさせて、私を見る。
……しかし、この侵入者さん、よく見ると随分とお若い。雇われたというか、それ以前に。

「貴方、もしかしなくてもリオンさんの子飼いですか?」
なんだか、猫みたいな子だなあ、と思いながら聞いてみた。あーあー、すぐに感情が表に
出てしまう。これはプロじゃないな、と判断する。

「じゃ、首を縦か横に振るかで答えて下さいね。もう、わかっているのですし。貴方、お
名前を言う気はありますか?」
無反応。
「リオンさんの所の方ですよね?」
無反応。
「……もう、貴方、御自分の立場、わかってらっしゃいます?」
やっぱり無反応。
「……むう……」
7うみなりタウン物語α 2/17:2013/11/23(土) 23:53:24.00 ID:0iPk0KZ3
                    緊急連絡

本日、夜19時より、以下の条件に該当する方は集会所へ集合して下さい。
うみなりタウンには関係の無い私用ですので、謝礼は弾んじゃいます。
来られない方は、指定時間より町内放送があるまで集会所には近付かないで下さい。

                    必須事項
            ・強烈な下ネタに対し、耐性のある方
            ・どちらかというと自分はSだと思う方
                  ・秘密を守れる方

          上記を満たした上で、いてくれると助かる方
           ・可愛い顔の男の子ならイケるという男性


急かつ若干非常識な要望に御迷惑をお掛け致しますが、御容赦下さい。
お詫びとして後日、うみなりタウン全戸においしいお味噌をお配りいたします。
尚、読んだ後はこの書類を必ず焼却処分して下さい。


                                                  アンジュ


速攻で書類を作成し、深夜の内に新聞屋のエリザさんに全戸に配るよう指示して貰い、そ
の時を待つ。

因みに、侵入者さんは飲まず食わずで縛ったまま放置している。
トイレに行きたそうだったので、有無を言わせず、しびんで介護してあげたら、感動に打
ち震えてくれた。もしかして、こっちの道にも行けるかも、と思った。

で。
「意外と、少ないですね」
「恐らく、必須事項の『強烈な』に引っ掛かった者が多いと思われる。おまけにアンジュ
さん、貴様にイイ顔したい輩も多い。だから今回は辞退したと思われる。本来なら、この
うみなりタウンは下ネタタウンと改名しても良い程だ」
正直、この人が来た事に驚愕を隠せないのですが、ハヤトさんは普通にそんな事を言った。
「因みにハヤトさんは」
「イケるかどうかを確かめに来た」
「大いなる探究心ですね」
ちょっと、感心した。
「アンジュサン、どういう事なんデスか? 酒池肉林デスか? オレ、可愛くナクテモ拷
問めいた事ナラ何でも出来マス!」
妙に興奮しつつ、カミュさんが、どえらいカミングアウトをする。
「それはそれは。実はですねえ、私の家にリオンさんのスパイが不法侵入して来まして、
なんとか捕まえる事が出来たのですが、何分、口を割っていただけなくて……このままで
は怖くて」
「あたし、そのスパイをこんな状態に出来るアンジュさんの方が怖い」
笑いながら、私の肩をばしばし叩くカリノさん。お若いのに、イイ趣味をなさっているみ
たいです。
集まったのは、この3名。まあ、1人でも来てくれたらなー、と思っていたので、収穫で
はある。
「それでは御開帳です。侵入者の、名も知らぬ少年Aさんです」
そう言って、被せておいた布を取る。そこには――
8うみなりタウン物語α 3/17:2013/11/23(土) 23:53:55.97 ID:0iPk0KZ3
「ワオ! 可愛いお顔をシテらっしゃ――」
私は、見た。
カミュさんの表情が、氷のように冷たくなるのを。けれど、それはほんの一瞬で、他の人
は見ていない。物凄くわざとらしい大声を出して。
「アンジュサン? このエモノ、リオン社長クリソツでネ?」
言われて、他の二人もまじまじと、縛られてボールギャグを装着させられて涎塗れの紅顔
の美少年と言ったら、ちょっと言い過ぎ程度のお顔の子を見る。

……そうなんですよね。
私も思っていましたが、よく見るとこの人、リオンさんに似ているのです。クリソツとい
う程でも無いのですが、身内というのは一目瞭然という程に。

「となると、名前はイオンクオンシオンネオンミオンワオンの可能性が」
さらりと名前を羅列するカリノさんのセンスが素敵ですが。
「ワオンは、言いたかっただけだろ」
すかさず突っ込むハヤトさん。私もそう思いました。ばれたー? と、カリノさんが笑う。
「でも、この逆さ状態で、よくわかりましたね? カミュさん」

今の侵入者さんは、格好で言えば『筋○肉バスター』を掛けられた状態。まんぐり返し一
歩手前状態とも言える。
「正直、あの社長がこの格好されていると思うと若干興奮するが、町長――ハガネのオッ
サンだと思うと殺意が湧いてくるのは何故だろうな」
「多分、顔面偏差値のせいじゃない? これが息子のイケメンツンデレルビーならどうよ」
「その状態で罵倒する元気があるならまだしも、放置が長引けば泣き出す事は必至だろう
から、哀れで見てられん」
首を横に振って、ハヤトさんは冷静に言った。成程、ルビーさんのメンタル強度はそれ程
でもなさそうという事はわかった。

「そういう訳で、じゃあ泣かし――いえ、口を割らせますか」
ざららー、と、隣町で購入して来た素敵グッズを広げる。
「アンジュサン、イイ趣味シテらっしゃいマスねー。デモ、まずはこうシタ方が」
カミュさんはニコニコ笑いながら、妙な形状のナイフを取り出し。

「えげつなっ」
「イイ趣味はどっちだ」

嫌がらせにも程があります。乳首だけが出るように服を切りました。そして、ポラロイド
カメラを取り出して撮影する。
「ホラホラ、今のアナタ、こんな格好デスヨー。いやらしいデスねー」
うーん、なかなかのドSっぷり。
鏡攻めもやろうと思っていたけれど、先にやられてしまった。でも、なかなか。
拘束されてちんぐり返し状態で涎垂らして乳首のみ露出とか、どんな破廉恥具合だ。
「じゃあ、あたし一回やってみたかった事、してもいい?」
はーい! とカリノさんが手を上げる。既に涙目のAさんに向かう前に、靴下を脱いで。
「はいはーい、お兄さん、ちょっとごめーんねぇ」
そう言いながら、カリノさんはAさんの股間に足を置く。そうして、ぐりぐり刺激する。
黒いぴっちりした服を着ていたので、下半身がどうなって来ているのかは、割とよくわか
る。というか、私もカミュさんもハヤトさんも、至近距離で座っているからね。
カミュさんなんか、すっごい怖い笑顔でAさんを見ている。
というか、楽しそう。
「あはは、Aさん、おっきくなって来たよう? 恥ずかしくなぁい? こぉんな、正座し
た無愛想とパツキンとお嬢様に囲まれて、あたしみたいな女の子に踏まれておっ立ててる
なんて、きんもー☆」
9うみなりタウン物語α 4/17:2013/11/23(土) 23:54:38.90 ID:0iPk0KZ3
「本当にテンプレ通りのセリフだな」
「本当にタダ、ヤリたかったダケですな」
「でも、テンプレというのは、それが一番効率的だからこそ、テンプレートとなる訳で」

とはいうものの、カリノさんも、ただぐりぐりしている訳ではなく、親指と人差し指を駆
使して、ぐにぐにぐねぐねと器用に刺激してらっしゃる。
「……私、あんな風に出来るでしょうか」
よいしょっ、と、私も足を出して親指と人差し指を動かしてみる。
「アンジュサン、オレ達移動スルんデ、真正面カラどうZO!! ト言うカ、カリノ嬢!
終わったラ、是非是非、次ハオレにその足コキをば――!!」
「目的を忘れないで下さい」
自分も戒める為に、早口で言って、速攻で足をしまった。
「全くだ、これはただの寄合でなく、最早犯罪スレスレの黒サバトだというのに」
伸び縮みできる教鞭で器用にAさんの乳首をつついているハヤトさん。
カリノさんはさりげなくスカートの中身もAさんに見せている。中々に効果的。
「ほらAさん? ああ、こんなんで興奮してんだからMさんかな? あれれ〜? なんか
ブルブルしてるけど、もしかして、もうイッちゃうの? 大した事無いスパイの癖にM男
で堪え性も無い早漏とか、マジありえないんだけどぉ?」

中々に語彙もある方だとカリノさんの評価が上がって行く。
やっぱりちょっとMっ気もあるのだろうか、Mさんはわかりやすく身体を震わせ、わかり
やすく達した。
そして、少しの沈黙の後。

「っ……う……うううう……」

「あ、泣いた」
「あ、泣いた」
「あ、泣イタ」
「あ、泣きました」
素人観衆の眼の前で絶頂に誘われたMさんは、とうとう咽び泣いてしまった。
「最初から思っていましたけど、貴方、弱い・わかりやすい・メンタル朧豆腐で、よくも
まあ、こんな職業をやっていられますね? あ、カミュさん、お尻お願いしま」
言うが早いか、カミュさんは黙っていれば相当数の女性を落とせる程のイケメン顔で、ム
ーディーに私のお尻を揉んだ。
私は無言でカミュさんの足を蹴ってバランスを崩した所で踵をこめかみに叩きこむ。泡を
吹いて白眼を剥いたカミュさんを放ると、Mさんはガクブルしてこちらを見ていた。
あ、もうお尻の穴付近だけ露出をさせて云々はしないでも良さそうかも。

「カミュさん弱っ。元警官って設定どこよ」
「初耳だ。ただの言葉の怪しい虚言癖の30代としか知らんかったぞ」
「私、この間ピチピチの大学生とか聞きました」

さて、戦意喪失して子供のように泣いているMさんを、とりあえず正位置に戻してあげる。
「ごめんなさい、こんな酷い事をして」
そうして、涙とか鼻水とか涎とかで、ぐっちょぐちょのお顔でも構わず、抱き締める。と
いうか、おっぱいに顔を挟む的にする。
ボールギャグを外して、これみよがしに、お高いレースのハンカチで顔を拭いてあげる。
「え……え? え?」
拘束はされたままだけれど、あんまりの急展開に思考が追い付いていないみたい。つくづ
く密偵の素質が無い子だ。
「貴方はきっと、忠誠心が強過ぎて、あのままでしたらリオンさんの為に命を捨てる覚悟
だったのでしょう?」
10うみなりタウン物語α 5/17:2013/11/23(土) 23:55:18.74 ID:0iPk0KZ3
もう一度、おっぱい挟み。
反応は無い……というか、戸惑っているみたい。けれど、後ひと押し。
「でも、私も、きっとリオンさんだって、そんな事は望んでいません。安心して下さい。
貴方をどうこうしようとも、リオンさんにも何かする気もありません。だって、私、リオ
ンさんがここまでする理由も知っていると――言ったじゃないですか」
実は知らない。
全く以て興味も無い。
「……ど、して……? 何故、そこまで」
よーし、勝った。喋った時点で完全勝利の切符はゲットだぜ! なのです。
「――私には、わかります。貴方は本当は、とても優しい人です」
もっと強く抱き締める。ほんの少し、震えて見せる。
「っ、僕は、僕は、お前に犯罪行為、行ってんだぞ? なんで、どうして」
「したくて、したのですか?」
ぱっ、と、Mさんが顔を上げ、私を見る。私は極上のちょっぴり困り眉エンジェルスマイ
ルを放つ。
「っ、したい、訳じゃない……で、でも、僕は、兄さまの為なら、何だって――」
「……リオンさんが、望んでいるのですか?」
今のは、ちょっとした博打。でも、答えがどちらでも完封は出来る。
「違う! 兄さまは、いつだって僕の幸せを考えてくれてる! 僕が、ただ――」
私に食って掛かるけれど、動きが止まる。これで、自己嫌悪パターンか覚醒パターンかで
対応も変わる。
Mさんは顔を下げ、口をへの字にする。


「すげーな。もう俺、あの人が調教師にしか見えねえ」
「全部計算なのが怖いよね。あれが噂のストックホルム症候群だっけ?」
「アノまま洗脳したら、解くの大変ヨ」
いつの間にか復活したカミュもさん含め、予め用意してあったサンドイッチを食べる、既
に不要の三名。
「そういえば、サンドイッチで有名な『へぶーん』ってこっち来ないかなあ」
カリノさんが全く関係無い話題を出す。
「へぶーんっテ、そんな美味しい? オレ、昔住んデた所で毎日食ッテたケド、普通だっ
た覚エしか……」
「……毎日食えたなら、まずくはないのではないか? まあ、この微妙な田舎に支店を出
すメリットがあるかどうかはわからんが」
「最近出たスープが超評判いいんだってー」


後ろの声が微妙に聞こえるけど、まあいいか。
「どうしました?」
自己嫌悪パターンか、と判断して、顔を覗き込む。
「……僕が兄さまの為にやってる事は、もしかして、迷惑になっているんじゃないかって
……そう、思って……」
色々なものが揺らいでいる。まあ、そもそも知らない間にちょっと投薬とかしてるし。
ぼろぼろ涙が出る程に不安定になっているのも、そのせい。すぐ効果は無くなるので御安心を。
「現に、今だって」
「そんな事はありません。貴方は言ったじゃないですか。リオンさんは、いつだって貴方
の幸せを考えているって。だから、貴方はそんなにも頑張るのでしょう? リオンさんの
事が、誰より大好きだから」
ね? と、極上蕩ける天使の聖母スマイルで、とどめをさす。
そして――
11うみなりタウン物語α 6/17:2013/11/23(土) 23:56:00.46 ID:0iPk0KZ3
「この子、どうするデスかー?」
「私の家に運んで、最後の仕上げをしちゃいます。御協力ありがとうございました。もう
少し尊厳を破壊しないといけないと思ったのですが、想像以上にチョロくて、逆にびっく
りしました」
スタンガンで気絶させて、最初に彼を運んで来たリヤカーに乗せて布を被せる。小型の最
新式で、農業用具が大量に乗るようには、とても見えないオサレ感が売りです。
「まさかとは思うが、こ奴を懐柔して、逆スパイにするつもりか?」
いい所を突くハヤトさん。正直、私の見立てでは、この人の方が密偵に向いている。
私は首を横に振って。
「この程度の子、私の手足にするにはレベルが足りな過ぎます。私が直接出向いた方がま
だマシです」
「あっは、アンジュさんマジ怖ぇー。田舎に引っ込んだフリしてフィクサーやってんの?」
「フィクサー? フィクション作家の事デスかー?」
……そのネタやった時点で意味わかってませんかと思ったけど、スルーする。全員にスル
ーされてマジで凹むのはやめていただきたい。

「では、今回の謝礼です。また何かあったら、よろしくお願いします。明日にはお味噌も
届きますから」

ずっしりした封筒をお渡しする。一応、最高でも20人くらいかなー、と思っていたので
封筒(中身入り)もダダ余りだ。
「俺は何もしていないが」
確かに乳首つついていただけですが。
「そんな事はありませんよ。貴方のその無表情に見降ろされながらの絶頂は、年頃の少年
としては、中々の屈辱だと思います。何かに目覚めてもおかしくはありません」
そう言って、封筒を握らせる。
今度はカリノさん。
「わーい! 楽しかった上にいっぱいお金まで入っちゃったよう! また呼んでね!」
「カリノさん、中々堂に入った女王様っぷりでしたよ。私、顔がなめられやすいですから、
カリノさんのような、きりっとした美人顔が羨ましいです」
……本当に、押せば何とかなりそうな印象を植え付けるこの顔はどうかと思っている。
カリノさんは照れながら。
「やだー、アンジュさんの女ったらしー。男だったら絶対屈服させたくなるじゃーん」
と、お褒めの言葉をいただきました。
最後は、カミュさん。でも、お話があるので、給湯室まで連れて行く。
「なんデスかアンジュサーン? もしかして、チューでもシテいただけマシて?」
いつも通りの飄々としたお顔で、いつも通りの戯言を吐く。
なので、私もいつも通りの笑顔で。
「あまり、詐称した経歴を言いふらすのも、良くはありませんよ? えーと、弁護士消防
士警官整備士コックと……」
「ほんノ冗談じゃないデスかぁー。後は気象予報士とアイドルマネージャーと」
「ふふ、お顔がまだ動揺していらっしゃいますよ? 裏切り者の衛生兵さん」
そう言った瞬間。
あの眼に、また会えた。割とゾクゾクしますね、この眼。
「……不愉快にさせて、申し訳ありません。でも、あまり私の事を嗅ぎ回られても、鬱陶
しいのです」
「……困ル、でなくて、鬱陶しいト来まシタか」
「だって貴方、興味本位でしているだけでしょう。本当に私、ただのリタイア負け犬なの
で、目的なんか、なーんにも無いんです」
溜息をついて、言う。
「今度、ウロチョロしていましたら、今度はカミュさんを今日みたいにしちゃいますよ?」
「恐ロシーお嬢サマデースネ。でも、オレの事知ってるナラ、この程度じゃ……」
「塩麹風呂に漬かりながら焼いて無い鮭を頬張らせつつアヒルに突かれていただきます」
12うみなりタウン物語α 7/17:2013/11/23(土) 23:56:45.51 ID:0iPk0KZ3
「ナンデそんな事思い付クんデスかぁああああ!?」
因みに、調べ上げたカミュさんの苦手なモノ攻めでした。

帰っていただいても良かったのに、ハヤトさんとカリノさんは外で待っていてくれました。
「ねーねー、二人でなにしてたのー?」
「……そういうのは聞くものでもないだろう。恐らくは黒い陰謀と金が渦巻く密談だ」
中々に酷い発言。カミュさんは既にいつものカミュさんに戻っている。
「あんまりセクハラが酷いト、今度はオレの身が危ナイって話デ」
「この訳あり退役軍人さん、本当の意味で、もっとこの町の方と仲良くなりたいのですけ
れど、変なプライドと罪悪感が邪魔して上手い事行かないそうなんです」

空気が、凍った気がした。
カミュさんは、物凄い脂汗を流しながら、私を見ている。
お二人は、視線が完全にカミュさんに向いている。私は封筒をもう一つ出して。
「良かったら、今日はこれで飲みに行って下さい」
と、カリノさんに渡した。おっけー、とカリノさんは笑ってくれた。カミュさんは引き攣
った笑顔になりました。
……本当に目的も何も無いお金持ちって、敵に回すと厄介だという事を身に染みさせてい
ただきました。
「では、私はこれで」
リヤカーを引いて帰ろうとすると。
「アンジュさん」
ハヤトさんが私に声を掛ける。
「どうしましたハヤトさん?」
「いくら女顔でも、俺、やっぱ男は無理だわ」
「……そうですか」
今、言わんでも、と思った。



「――っ」
目覚めると、びっくりする程低い天井……ていうか、これ、天蓋か? え? 僕は、何故
寝ているんだ?
「お目覚めになりました?」
声が掛かる。そこには、眼に涙を溜めた、綺麗な女がいた。

「え……え?」
「良かったです。あの後、倒れてしまったのですよ」
 そう言って、女は――顔をぐしゃぐしゃにして、泣き始め……えええええええ。
「ちょ、え、え?」
「ごめんなさいっ」
そう言って、両手で顔を覆ってしまう。
寧ろ、泣きたいの僕なんだけど。ていうか、泣かされたんだけど。
そんな事より、信じられない。もしかして、僕、この家に侵入した途端に転んで気絶でも
してたのだろうかと勘ぐってしまう。けれど。
「――本当に、ごめんなさい。あんな辱めを受けさせて」
あーあーあーあーあーあー。ハイハイハイハイ、夢であって欲しかったけどー、夢じゃな
かったーあー。
けれど、過ぎた事は仕方ない。大勢の人に囲まれて射精とか、正直死にたくなったし記憶
の彼方に葬り去りたいけれど、今は。
「そ、その、僕、怒ってないし、警察に突き出されても文句は言えないし……というか、
その、あの」
どうこうするつもりは無い、とは言っていたけれど、本当かどうかはわからない。
13うみなりタウン物語α 8/17:2013/11/23(土) 23:57:27.07 ID:0iPk0KZ3
女――アンジュは、顔を上げる。女の人に泣かれるのって、僕、苦手……
「――本当に、怒っていらっしゃらないのですか? あんな、酷い事をした私を」
「いや、だから……それを言うなら、僕の方だし……お姉さん、どれだけ人がいいのさ」
呆れて、言ってしまう。
この人は、自分に関係の無い借金5億ゴールドをポンと出したり、あんまり裕福じゃない
町の為にイベントを開いたり、なんとも、うさんくさい程に人がいい。
だから、兄さまも色々怪しんでいた訳だけれど……こりゃ、ちょっとネジが飛んでるだけ
で本当のイイヒトなんだな、と確信してしまう。
「人がいいなんて、そんな事はありませんよ」
まだ、眼に涙を溜めたまま、そんな事を言う。僕は溜息をついてしまう。その際、見てし
まう。胸の辺りが、ひどく汚れている事に。黒っぽい服だから、余計わかる。それで、思
い出してしまう。あの時、僕を抱き締めたせいで汚れてしまったのだと。
「……人の事ばかり考えるのも、良くはないよ」
どこかの誰かの事を思い出してしまい、そんな事を言ってしまう。
「……こんな、綺麗な服とか、あんな高そうなハンカチとかも汚して」
「服なんて、いいんです。そ、それより、私の方こそ、いきなり抱き締めたりして、不快
ではありませんでした?」
言われて、顔から耳から熱くなるのがわかった。
そ、そういえば、僕、この人の胸……ああくそ、絶対胸が当たってたとか考えもしてない
よ、この純粋培養お嬢様! い、いや、そういうのはいい! 全然関係ない!!
「い、嫌とかは、そういうのは無い、けど――そりゃ、アレだけど、あんた、お人好し過
ぎるんだよ! なんで、ここまで――」
正直、僕だって、なんでこんなに声を荒げているのかがわからない。でも、言わずにはい
られなかった。この人を、知ってしまっては。
アンジュは、ほんの少し俯いて。

「……この町の前町長が諸悪の根源とはいえ、リオン社長の存在は、町民の皆さんの心に、
深い傷を付けてしまいました」

そう、言った。
うん、知っている。兄さまは、何一つ悪くない。契約通りに借金の返済を迫っただけ。
悪いのは、あのアホなオッサンだけ。

「――それなのに、社長そっくりな貴方が現れて、怖かったのです。私なんかの事を大切
にしてくれる、大切なこの町が、また、あんな恐怖に晒されるなんて、耐えられなくて」

とても綺麗な女の人から出た言葉は、とても綺麗な、綺麗事。けれど、わかる。
この人は、本気で、そんな馬鹿げた事を、言っている。
「ですから、あんな事をして――今度は貴方を傷付けてしまって、私」
大切なものを守りたくて、守ろうとして、自分が、傷付いている。
僕は、堪らず、また自分の顔を隠そうとするアンジュの手首を、掴む。なんか、予想より
手首太かったけど、今はそれ所じゃない。

「――それでも、それでも、あんたは、確かにちょっとアレ過ぎる拷問をしたけど、でも、
直接僕の身体を傷付けるなんて事、最初の捕獲の時以外は、しなかった」
そうだ。
あくまでアレは、口を割らせる為。
きっと、こんなバカみたいなお人好しが、好んでやるような事じゃ、ない。
「あんたが僕にした事なんて、僕があんたにした事や、与えてしまった恐怖に比べれば、
大した事なんか無いんだ。僕が、あんたを傷付けんだ!」
そう、僕は何故か大声を出してしまう。
呆気に取られたような顔のアンジュは、困ったような顔をして、また、涙を流す。
14うみなりタウン物語α 9/17:2013/11/23(土) 23:58:15.62 ID:0iPk0KZ3
よく、考えなくたって、女の人の手首掴んで怒鳴るとか、そりゃ、怖いよね。慌てて手首
を放すけれど、その手をアンジュは取って。

「――貴方は、本当にお優しい方ですね」

と。
そう、穏やかに言ってくれた。
「私、リオン社長の事は、あまり良く知りませんが――ほんの少しお話した印象と、貴方
を見て、思います。きっと、貴方をとても大切にしてらっしゃるのでしょうね」
羨ましいです、と、小さく呟いた。
……確か、この人も、腹違いの兄弟がいた筈で。
でも、今の彼女から感じる孤独感は――

「私も、貴方やリオンさんのような兄弟がいれば」
「っ、無理して、笑わないでよ! ううん、笑うな! そんなの、苦しくなるだけだ!!」

そうだ。
この人の笑顔が癇に障るのは――それが、昔の自分みたいだから。
この人には、僕に取っての兄さまがいない。
僕に、無理して笑わないでいいと言ってくれた――だからこそ、なんだってしたいと思う
し、僕は幸せなんだ。けれど、この人は。
――この人は、人を抱き締めてあげられるけれど、抱き締められた事が無いんだ。

「――きゃ?」
驚いたような――というか、本当に驚いた声を上げる。けれど、そんなのいい。僕は、こ
の人を抱き締めたいって。無理なんかしないで欲しいって、そう思った。僕が、兄さまに
そうして貰ったように。
「え、あ、え、Mさん?」
……少年AからドMのMさんが定着していたのが不服だけど、それこそどうでもいい。
「――アルファ、だよ。僕の名前は、アルファ」
「……ある意味、Aさんは、そう遠くもなかったみたいですね」
これだから天然モノは……と思ったけれど、それもいい。

僕より背は高いけど、細くて柔らかくて、とてもいい匂いのするその身体は震えていて。
……そういえば、母親には抱き締められたどころか、顔すら知らない事を思い出したけれ
ど、割とどうでも良かった。だって、僕には兄さまがいたから。

でも、僕だって、いつまでも兄さま兄さま言ってはいられない。
……だから、一人でも生きていけるようなスキルを身に付けて、なにがどうなってこうな
ったかは微妙だけれど、兄さまの会社の役に立つような事をしている。
彼女も、満たされたくて社会に貢献しているんだろうけれど、でも、それじゃ、多分。

力の限り抱き締めていたら、鼻を啜るような音。そして嗚咽。ぶるぶる震えて来る。
よ、よく考えなくても、感情のままに力の限り抱き締めてるこの状況って、もしかしなく
ても、完全に痴漢ですよね。更に罪状増えちゃったよね!?

慌てて放そうとするけど、今度は、アンジュが僕の背に手を回す。そして、泣き始める。
え、えーと、これ、その……嫌がってる訳、じゃないよね? だって、嫌なら離れるだろ
うし。う、うん。
泣いてはいるので、とりあえず、もう一度、今度は優しく抱き締めると、あっちも強く抱
き返して来た。

暫くそうしていると、不意にアンジュは口を開いた。
15うみなりタウン物語α 10/17:2013/11/23(土) 23:59:14.93 ID:0iPk0KZ3
「……ありがとう、ございます」
「えーと、どういう事、かな」
抱き締めたままの会話なので、声が上ずる。
「あんな風に叱って貰えたの、初めてで」
そう言って笑った顔は、あまりに綺麗で。こんなに綺麗な人を抱き締めているなんて、胸
がドキドキして来る。
「アルファさん、ありがとうございます……アルファさん」

……不意に、何故か、この人が物凄く心配になって来た。
元は、次期社長だったんだし、数々のイベントを主催しているのだから、有能だろうし頭
もいいんだろう。
でも、叱って貰えなかったとか、なんだか自分に自信が無さ気な態度から、今みたいに少
しでも心を許したら、コロっと騙されてしまいそうな危うさがある。
こんな、ある意味自分をわかっていない美人なお嬢様、ちょっと弁の立つ野郎なら、イチ
コロな気がする。ごく普通な僕ですら、今、こんな状態なのだから。

そう思って、少しお節介を焼く事にする。

「あー、あの、その……離れてくれない?」
「え、あ……! ご、御迷惑、でしたか? でしたよね?」
わかってない。
物凄く、わかってない。というか、今までよく大丈夫だったな。こういう事してるから、
男に恐怖心がある訳でもないっぽいし。まあ、それが一番怖いんだけど。
僕はアンジュの肩を掴み、そのまま押し倒す。
「にゃっ?」
……今、なんかすっごく可愛い声がしたけど、今は気にしない。
「え、あ、アルファ、さん? どうなさいました? もしや、具合でも――」
「違う。あのね、あんたわかってる? どうせ僕はガキだからね。意識して無いんだろう
けど、男なんだよ。男が、あんたみたいな美人にくっつかれたら、どうなるかわかってる
でしょ? こういう事、されんだけど?」

何故か、妙に苛付いてしまって、言葉がつっけんどんになる。
アンジュは暫く呆けた後、今更挙動不審になり。

「あ、アルファさんは、私を、その――だ、抱きたいと?」
そんな事を、のたまった。
逆に、僕が固まる。いや、なんか潤んだ眼で見ないで下さいむしろOKですか? OKな
んですか? え、もしかして、兄さまが常日頃から気を付けなさいと言っている、清楚系
股ユルビッチなんですか、この方?
けれど、そう言うには、ちょっと反応が初々しいというか、いや、僕だって女の人抱いた
事とか無いけど、無いけれども。

「わ、私、なんて事を……は、はしたない」
顔を両手で覆い、恥じらうアンジュ。なんだか、呆れて来る。
「……はいはい、わかったでしょ。あんたが何気なくしてる事は、はしたないの。イイ年
なんだから、そこんとこ、ちゃんと理解してよね……びっくりしたでしょ? 僕なんかに
押し倒されて……まあ、悪かったよ。怖かったでしょ?」
そう言うと。
「い、嫌な訳では、ないのですけれど……」
――あれぇ?
今、この人、なんて?
「わ、私、アルファさんのような方なら……その、えと、は、はしたない事は、充分承知
していますけれど、でもでも、私、貴方なら――」
16うみなりタウン物語α 11/17:2013/11/23(土) 23:59:53.52 ID:0iPk0KZ3
そう言って。
アンジュは、僕に手を伸ばして来て。
「……何をされても、構いません」
と。
そんな、馬鹿げた事を、言った。

「え、ええ!? ハァ!? ちょ、あんた、何言ってんのさ! そっ、そういう事、え? 
誰にでもそういう事言ってんの!?」
急展開過ぎて、正直ついていけない。なんなんだ、これ。けれど、アンジュは大真面目に。
「そ、そんな事、誰にも言った事、ありません! 男の人となんて、そんな……」
顔は真っ赤で、ぼろぼろ涙を流して、でも、僕にしがみ付いて来る。ぼ、僕だって、自分
で言った通りガキなんだけど! 正直、さっきから下半身ヤヴァいんですけど!?
「わ、私、こんなの、初めてなんです! 側に――貴方に、アルファさんに側にいて、抱
き締めて――キ、キスとか、それ以上の事とか、して欲しいって、そう思ってしまうんで
す! こ、こんな、こんな事を口にするなんて、おかしいと思うでしょう? 私だって、
私だって――で、でも、でも」
完全に、気が動転しながら、とんでもない事を口走っている。
本当に年上の女性なのかって思うくらいに、可愛い。ていうか、嘘だろ本当に。だって、
こんな綺麗な人が、僕みたいな子供を、一人前の男みたいに欲してくれるなんて――

でも。
こんな、天然で、おバカで、まっすぐで、純粋で、人の事ばかり考えるあまりネジが吹っ
飛んだような行動取る、綺麗で可愛い人が、嘘を吐くようには、思えない。
そんな人が、僕と、キスとか、それ以上とか、僕に抱かれたいとかっ――

「――あ」

……もう、僕だって、何がなんだかわからない。
けれど。
頭がぐるぐるして、正直身体もガクガク震えている気がするけど、ひとつだけ。

僕は、アンジュを抱きたい。

それだけが、頭の中にあった。
呼吸が上手く出来なくて、変に荒い息が、自分のものなのに、耳元で音がしているような
気がする。
アンジュの――僕の望み通りに、その、ほんの少しだけ開いた、綺麗な唇に、キスする。
何度も何度も、その柔らかい、自分のそれと、本当に同じものなのかと錯覚するような唇
に、口付ける。
僕のせいで汚れてしまった服も脱がせようとするけれど、よくわからない。とりあえずボ
タン外そうとしたけど、ガクガク震えてしまって、上手く取れない。
いつまでもそこで戸惑っていると、アンジュは僕の頬をそっと撫でて、自分からキスして
くれた。
それで、なんとか落ち着く事が出来た。
アンジュ本人の協力もあったけど、なんか、上手い事行かなくて、胸だけ出すみたいな、
余計卑猥な感じになってしまったんだけど……
「うわ……」
その胸を触った時、あんまり柔らかくて、すべすべしてて、びっくりした。
女の人の身体なんか、触った事無いし、なのに、この身体をああしたいこうしたいってい
うのは、無限に思い付く。
思わず力を入れて握ってしまったら、なんか凄く、甘い声がした。
胸に夢中で、アンジュの事考えてなかったけど、顔を見てみると、ぎゅっと眼を瞑ってい
た。い、痛くないんだよね? 声的には、悪くなさ気だったし……
17うみなりタウン物語α 12/17:2013/11/24(日) 00:00:49.77 ID:kqQuSOvm
比べるのもアレだけど、クソ親父がどっかの女の人と社長室で致してた時、似たような声、
聞こえてたし。
……おっぱい吸った記憶とか、無いし……
「ふぁ……」
片方を揉んで、もう片方を吸ってみる。さっきよりはっきり、声がした。
口の中で舐め回す度に、身体が震えて、その内、僕の頭を抱き締めて来て。
僕に、女の人に乱暴したいなんて願望は無い筈だけれど、こんな、無理矢理みたいな、中
途半端な脱ぎ方だと、妙にドキドキする。
「アルファ、さん……」
耳元をくすぐるアンジュの声は、まるで何かの魔法みたいに僕を昂らせる。
優しくしたいのに。僕と同じ初めての筈なのに、それなのに、求めてしまう。胸だけじゃ
なくて、沢山、色々な場所に口付けながら、僕は下半身に手を伸ばす。
……下半身と言えば、僕、キッツイけど美人な女王さ……女の人に足で射精させられて、
ズボンの中、大変な状態になってた筈なんだけど、アンジュは僕が心労で倒れていた間に
着替えをしてくれていたみたいだ。
まだ正体も不明だった時にシモの世話までしてくれて……

――つくづく、なんてお人好しなんだろうって、僕は思った。

長いスカートを捲り、物凄く手触りのいい……ぱんつ? 下着? えーと、隙間から手を
入れると、熱くて、指に滑る感触があった。
「っ、いや……」
嫌がって……る声じゃないよねコレ。アレだよね。穴……って言ったらアレだけど、その、
ここに入れると、すっごい気持ちいい……んだよね。それこそ、自分でする、何十倍も。
最初は、痛いんだろうけど、でも、でも、これだけトロトロだったら。
「……あ、アンジュ……その」
そう言った瞬間、アンジュはまた、泣きそうな笑顔で。
「名前、初めて呼んでくれましたね」
と。
あ、もう駄目だわ。

「っ、アンジュ! アンジュ!!」
アンジュに何度も口付けて、ぱんつ取るのももどかしくて、脱がせるのも諦める。足を広
げて、入口に当てる。先の方が、濡れた肉に触れただけで、もう気持ちいい。これが、全
体に広がるって事は、考えただけで怖い。
「え、あ、もうですか?(これだからDTは)」
よく聞こえなかったけど、少し戸惑ったような声。
「い、入れ、るよ?」
「はい……あの、優しくして下さいね」
「ぜ、善処します!」
そうは言ったものの、正直理性がもう無い。本当にもう無い。
僕は出来る限りゆっくり、一刻も早くアンジュと繋がりたくて、腰を推し進める。
「――あ、いっ……いた……」
僕を抱き締めて、苦しそうな声を出す。やっぱり、初めてなんだよな……なんだよ清楚系
股ユルビッチって……
顔も少し引き攣っている癖に、やっぱり無理して笑おうとする。けど、今はそれがありが
たくもある。本当は、僕がそうしたいのに、出来ない。
「……あまり、動かないで……欲しい、です」
はぁ、はぁ、と、短い呼吸を繰り返して、たどたどしく告げる。アンジュの中は、触った
時以上にヌルヌルしていて、ぎちぎちに締め付けて、動かなくても充分気持ちはいい。
……せめて、アンジュが痛みを感じなくなるまでは、このままでいたいけど……大丈夫か
な……僕の方が。暴発的な意味で。
18うみなりタウン物語α 13/17:2013/11/24(日) 00:01:32.31 ID:0iPk0KZ3
アンジュの痛みや不安を少しでも和らげたくて、ついでに僕自身の為にも、頭を撫でたり、
もっと一杯、キスしてみる。
その度に嬉しそうに笑ってくれるけど、本当なら、入れる前にもっとすれば良かったと後
悔してしまう。僕より年上だから、きっと気を使ってくれているんだろうし……
「……アンジュ、ごめんね。もっと、僕が――」
「っ、あ……」
もっとよく顔を見て謝ろうとした時、少し身体を動かしてしまった。同時に、可愛い声が、
漏れた。
「その、今の……」
「……いや……」
声を出した自分が恥ずかしかったのか、泣きそうな声を出す。けれど、聞きたい。見たい。
アンジュが乱れる姿が、見たい。腰を掴んで、出来るだけゆっくり動かすと、中だけじゃ
なくて、アンジュの顔まで蕩けて来る。
少しずつ動きを大きくしながら、無防備だった胸を掴み、立ち上がった乳首を摘まむと、
びくびくと、面白いくらいに身体を震わせる。

「あ、いいの……わた、し、痛いのに……でも……」
徐々に、アンジュの息が荒くなって行く。僕にしがみ付いて、何か、必死に我慢するよう
に、か細い声で戸惑いを口にする。
……僕も、凄く気持ちがいい。だから、嬉しい。アンジュも感じてくれると。
「アンジュ、僕、もう、もう――」
自分でもおかしいくらいに滅茶苦茶に動いて、アンジュを本当に襲っているんじゃないか
と錯覚する。けれどアンジュは僕を受け入れて、キスしてくれる。
「アル、ファ……さ……私も、私も、もう、だめでひゅ……あ、駄目です」
この期に及んで噛んだとか、もう、アンジュが何をしても可愛いとしか思えない。なんか
若干冷静に言い直したのも、照れ隠しにしか聞こえない。
僕のを締め付けるように痙攣して、今までも良かったのに、それ以上の快感を与えられる。
「わた、し……あ、あ……アルファさ……アルファさぁんっ!」
涙を流しながら、アンジュは僕の名を呼んで、果てた。流石に中はまずい、と思って抜い
てから、後の祭。

……綺麗な服が、僕の涙と鼻水と涎で元から汚れていたのに。
更に、僕が出したので、更に汚れてしまった。
……物凄く申し訳ないと思ったけど――それ以上に、悦びと征服感で、もう、訳がわから
なくなっていた。
アンジュは、恥ずかしがりながら、困ったように笑っていた。
「アルファ、さん……」
お、怒られるかな……失望されたかな……ドキドキしながら、僕は次の言葉を待つ。
けれどアンジュは、また天使みたいな笑顔で。
「その、あの……最初は痛かったですけど、でも、凄く気持ち良かったです。アルファさ
んは出来るだけ私を気遣ってくれたから、出血もありませんでしたし……私、幸せです。
あんなにやさしくしていただいて」
そんな、嬉し過ぎる事を、言ってくれた。
……僕はもう、アンジュが女神様にしか見えなかった。



服はもう、お互い脱いでしまって、ベッドの中で抱き合っていた。
妙なくらいに眠くて、でも眠ってしまうのがもったいない気がして、うとうとしていると。

「私は、『太陽の初恋』は持っていません。どこに行ったのかは、私が知りたいくらいです」

僕の胸の中で、アンジュはそんな事を呟いた。
19うみなりタウン物語α 14/17:2013/11/24(日) 00:02:14.28 ID:kqQuSOvm
――今、そんな事を言わなくたって、と思ったけれど。
「ですから、アルファさんもリオンさんも、もう私に用は無い筈です」
そう、夢のような時間から、現実に引き戻される言葉を、自ら。
「明日の朝、私が目覚める前に、アルファさんはリオンさんの元へ戻って下さい」

当たり前の事を、言っている。
僕はスパイで、彼女はターゲット。何の因果か、どういう経緯でこんな事になったのかな
んて、説明が全く出来ない。
けれど、僕は――アンジュは。
「ありがとうございます」
急に、お礼を言われる。どういう事かと、次の言葉を待つけれど、中々言わない。
もう少し待つと、少し震えた声で。
「――私の事を、愛してくれて」
ほんの、ひと時でも、と。そう、付け加えて。
僕は、血の気が引く。

ああ、この人は。天然で、おバカで、まっすぐで、純粋で、人の事ばかり考えるあまりネ
ジが吹っ飛んだような行動取るこの人は――凄く、頭が良い人だった。

最初から、先の先まで見据えて。それでも、この短い間だけでも、お金が沢山あっても、
住民の信頼を得ても、手に入れられなかったものを、手に入れたかった。

たった一晩、愛した僕に、愛して欲しくて。
……大切なものが他にある僕と、知っていて。

「私を、愛してくれて、幸せにしてくれて、抱き締めて、叱ってくれて」

笑顔のまま、静かに涙を流して、アンジュは。
「――ありがとうございます、アルファさん」

ほんのちっぽけな、こんな、幸せとも呼べない出来事を胸にして、この人は、また無理し
て、笑顔で生きて行くの?

そう思った瞬間、僕は、眼の前が、真っ暗になって。
――だから、決めた。

「それで、いいの?」
「……え?」

全てを諦めた笑顔なんか、わかる奴にはわかる。
もしかしたら、僕の他にわかる奴が現れて、こんな人だから、放っておく事なんか出来な
くて、付き纏って、本気でアンジュを愛して。
……いつか、絆されて、そいつを受け入れて、この人を幸せにしてくれる。

――嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
僕以外の男が、アンジュの涙を拭うなんて、そんな事、許さない。

「僕は嫌だ。僕だって、アンジュを愛している。今の、こんなのが幸せなんて、そんなの
有り得ない。アンジュが泣いてるのに、幸せだなんて、言わせない。僕が好きなんでしょ!?
だったら、泣くなよ! 傍にいる! 絶対に、二度とアンジュを独りになんかしない!」

そう、嫉妬交じりの激昂で、僕から逃げようとするアンジュを、抱きすくめる。
20うみなりタウン物語α 15/17:2013/11/24(日) 00:02:47.72 ID:0iPk0KZ3
「――そん、な。だって、だって、リオンさんは」
「うん。兄さまは、僕の大切な人。僕の大切な家族。でも、僕がたった一人、守りたいっ
て、愛したいって思うのは、あんたなんだ。きっと、わかってくれる。こんな仕事、やめ
ろって、前から言われてた。僕が勝手にしてた事だ。ちゃんと、普通に働いて、マトモな
大人になって、アンジュの傍にいて、アンジュを笑わせて、アンジュを幸せにして、一緒
に歳を取りたい。だから、だから」

……泣かないでよ。

って。
言いたいのに、どうして、僕が泣くんだよ。畜生、カッコ悪い。なんで、ホントに僕はガ
キなんだよ。なんで――なんで。

アンジュが、僕を見上げる。
まだ、泣いている。けれど。

「……知っていますか? アルファさん」
震える声で、僕に問う。僕は首を横に振る。
「涙って、嬉しくても、出るんですよ」
そう言って、アンジュは眼を閉じる。僕は、僕の指で涙を拭い、口付けた。
暫くそのままでいると、アンジュはひとつ咳をして。

「さて、アルファさんの道は決まったとしまして、いきなりリオンさんに報告しても、寧
ろ年増に籠絡されたと警戒するでしょうね。逆に買収されて逆スパイとか疑う可能性もあ
りますし、何より常識的に、出会って二日も経たずに肉体関係を結んだという事は、世間
体も悪過ぎます。ここは一発、まだ私とは接触が無い事にして、アルファさんが私に一目
惚れをし、ちゃんと普通の一般人としてアタックしたい云々という説明をなさるのが自然
かと思うのですけれど」
そんな事をすぐさま思い付くこの才女は。
……やっぱ、あったまいいんだなあ、と、ちょっと背筋も寒くなったりした。

あ、そういえば、なんでこの仕事してたかって、クソ親父を引き摺り下ろす為に、色々な
証拠を集め回っていたからだった。
危ない事をしてって、物凄く怒られたけれど、凄く喜んでくれたから、だからだった。



「――という訳で、僕、まっとうな人間になりたいんだ。兄さまの元を離れる事も、役に
立てなくなるって事も、わかってる。けど、僕は」
兄さまに、とりあえず当初の目的の報告をしてから、実は、と話し出した。
僕が兄さまに、こういった話をするのは初めてだったから、ひどく驚かれたけれど。
「前々から、確かにアルファの将来については、考えていました」
いつも通り、あくまで冷静に、穏やかな中にも油断は許されないような、そんな兄さまは、
僕を真っ直ぐに見据えて。
「……いつの間にか、大人になっていたのですね、アルファ。もしかしたら、貴方のその
感情は、一時の気の迷いかもしれません。逆に、アンジュ様のような素敵な女性が、別の
殿方に恋をしてしまう事態も、有り得ない話ではありません」
兄さまらしく、僕の事を心配してくれる。だからこそ、騙している事に罪悪感を抱いたり
もするけれど、これも必要以上の心配はさせない為。
「うん、わかってる。僕がする事は、無駄な事かもしれない。けれど」
僕の言葉を遮って、兄さまは立ち上がり、僕の肩を掴む。
「――無駄な事ではありません。確かに、私の元を離れる事は……その、寂しいですけれ
ど、貴方が、たった一人で一歩を踏み出そうとする事は、とても大切な事なのです」
21うみなりタウン物語α 16/17:2013/11/24(日) 00:03:27.35 ID:kqQuSOvm
笑ってくれる。兄さまは、いつでも僕が欲しい、嬉しい言葉を言ってくれる。
願わくば、今度は僕がアンジュに、そして兄さまにそうしたいと思う。
……これから独り立ちする事で、そうなって行きたいと。いきなりアンジュの家に住むっ
てのも、怪しいし。まずは住む家とか就職とか。
「そしてアルファ、私のいる場所は、貴方の帰る場所でもあります。アルファのように強
い子なら、そんな心配はあまり無いかもしれませんが、どうしても耐えられない時、寂し
くなった時は、いつでも帰って来て下さい。貴方がいつも、私を待っていてくれたように、
私はいつだってアルファを待っていますから」
そう言って、僕を抱き締めてくれた。
……なんだか照れ臭いけれど、僕も兄さまの背に手を回した。
「でも、今日は疲れたでしょう。少し休みなさい。これからの準備もあります」
「――はい。それでは、失礼します」

――そうして、少年は出て行った。

後に残されたリオンは、もと座っていた椅子に戻り、足を組み。
「フルートくん」
と、一言呟いた。
同時に、音も無くスーツ姿の女性が姿を現す。
「アルファの今後ですが」
「はい」
二人共に、表情は動かない。
「彼は、私と顔が似ています。母親はともかく、父親が同じですからね。忌々しい事に」
そこで初めて、苦虫を噛み潰したような顔を見せる。
女性――フルートは黙って頷く。

「そんなアルファがうみなりタウンで就職活動を始めた所で、高確率で私に良い印象を持
っていない町民から、謂われの無い酷い扱いを受ける可能性があります。今すぐうみなり
タウンに――そうですね、我が社が以前買収した、サンドイッチのチェーン店へぶーんを
建てましょう。現在大評判のスープは、アルファが『あったかいしょっぱい飲み物欲しい』
と言った事から研究開発商品化がなされたもので、最早へぶーんという店はアルファのも
のと言っても過言ではありません。ですが、いきなりアルファくらいの年齢の子が店長と
いうのも、不自然です。ここは心を鬼にして、身分を隠して正社員程度が良いと思われま
す。住む所も必要ですが、アンジュ様の家に近い、隣町の土地に身の丈に合った、あまり
豪華では無いコンパクトかつ機能的でスタイリッシュな戸建てを用意しましょう。ああ、
どんな行動を起こすにも現金は必要ですよね。このアルファ貯金の通帳も渡さないと――
そういえば、あまりお洒落に興味も無いようですし、私に似て、素の状態でもそこそこの
美少年ではありますが、相手は大人の女性。アルファ自身が必要も無い、いらぬ劣等感を
持たぬように服も用意してやらねばと言ったものの、私のセンスも壊滅的ですので、この
件に関しては、後日他の者に見立てて貰うとして、まずは」
「――リオン様」
「なんですか」
リオンのマシンガンほぼ独り言を遮り、フルートは眼鏡を指で押し上げながら、口を開く。
「社長の気持ちもわかりますが、若い内の苦労は買ってでもせよと言います。アルファ様
もまだお若く、人恋しい時もありますでしょう。一遍に全てをお渡しするのではなく、リ
オン様が様子を見るという名目で、月に数度、服や小物、お小遣いを持ってアルファ様の
元へ行き、ついでに一緒にお食事など楽しんで来て、時間に余裕があれば、一つ部屋に布
団を二つ敷いて、兄弟の語らいなどをなされば、御兄弟の絆も更に深まるかと」
リオンは口の端だけで笑い、物凄い貧乏ゆすりをした後、ぴたっと止まって。
「フルートくん、君、次のボーナス4倍ね」
「ありがとうございます。ところで、外食も良いでしょうが、リオン様が、拙くとも心の
籠った手料理を作って差し上げれば、アルファ様は喜ぶでしょうね。逆に、アルファ様が
手料理を振る舞ってくれる事もあるでしょうし」
22うみなりタウン物語α 17/17:2013/11/24(日) 00:04:16.49 ID:kqQuSOvm
「今すぐ料理の基礎本と適当な食材と調理器具を用意して下さい。後、フルートくん、前
からチラチラ見てた、この純銀のタコヤキフィギュア持ってっていいですよ」
「ヒャッホウ! ありがとうございます」
フルートは頭を下げ、フィギュア片手に色々用意する為に社長室を出た。

「――さて、料理のさしすせそって、なんでしたっけ……えーと、サワークリーム・ショ
ートニング・酢醤油・背油・ソイソース……だったかな」
若干の脂汗を流しながら、リオンは呟いたのだった。



―後日談―

「……リオンさんが、このうみなりタウンに、よく出没するようになったとか、予定外に
も程があります」
性懲りもなく色々とこの町を嗅ぎ回っていたカミュさんからの報告を貰うまでもなく、私
とアルファさんのデート中、視界の端にチラッチラ見えてんですよね、あの人。仕事どう
したんだよ。
「まっさか、アノ冷血鬼プレジデントが超ブラコンとか……イイ情報掴みマシた」
「……アルファさんに手を出したら、覇○王翔○吼拳という名の銃弾ブチ込みますよ」
私のツッコミに、カミュさんはイヤらしい下品な笑みを浮かべ?
「アレレのレ〜? アンジュサン、まさかミイラ取りが木乃伊? 年下クンにハマっちゃ
ったのデスかなあ?」
そんな、あまりにも今更な馬鹿げた事を仰るので。
「え? 私、初めてアルファさんを見た時から可愛いなあって思っていましたので、純粋
にリオンさんが邪魔なんですよ。後、思った以上に素敵な男性に成長しそうなんですよね
……これはもう、実家から教育係を呼んで、更なるアルファさんのレベルアップを図ろう
かと思ったのですが、実力でへぶーんのチーフになったみたいですし、今後が楽しみで楽
しみで……ふふ、そう考えると、ハガネさんに感謝ですね」
「……アンジュサンに取っちゃ、町の一大事スラ、ただの恋愛イベントですか」
呆れたようにカミュさんは笑います。

「――酷い事を。さて、今日はお仕事終わりに、久し振りに二人でザギンでイタ飯の後に
テルホでチョメチョメでも」
アルファさん、どうも着衣プレイがお好みのようで、すまなそうに私の似合いそうなお洋
服をプレゼントしてくれるのですが、それでは、きっとお金が持たないと思うので、自分
で色々用意する毎日です。
今まで嗜好品は買っていなかったのですが、あっという間にこの町の仕立て屋の常連。
店主のミヤコさん、ウッハウハだそうです。
……あっちの方も初心者なりに色々勉強してくれて、ちゃんと私を感じさせてくれるので、
こっちも特大御褒美大サービスの為の研究に余念がありません。
「中途半端な業界用語ですなあ……アンタ、いくつヨ」
「重要機密です。あ、良かったらこれどうぞ。綺麗なお姉さんのいるお店に行ったら、モ
テるかもですよ。自発的な御報告のお礼です」
因みに、ザギンとはザ・ギンジロウという炒飯屋さんの略称です。
かぽん、と、うみなりタウンゆるキャラ『うみにゃりくん』帽子の試作品をカミュさんに
被せて、私は今日のデートの予定(含・夜のデート)を練るのだった。

……ああ、幸せ。



                                                   終
23377:2013/11/24(日) 00:05:07.30 ID:kqQuSOvm
以上です。
元軍人の喋り方設定を大いに後悔しました。
24名無しさん@ピンキー:2013/11/30(土) 23:57:31.60 ID:e7dbgMuQ
GJです!!
25名無しさん@ピンキー:2014/01/05(日) 02:48:46.53 ID:RT4Mw/Ee
久しぶりに覗いてみたら新作きてたwしかも随分前だったw
おもしろかったよ、ありがとー!
26377:2014/01/15(水) 23:30:49.20 ID:Ydp1OUJM
投下します。

変則的レイプから始まる恋の物語です。
27それはきっと勘違いではなく 1/13:2014/01/15(水) 23:34:27.37 ID:Ydp1OUJM
 ……最近、友達の、とある男子から、避けられています。

 原因はわかってる。
 私こと長峰睦月は、つい先日、部活の顧問にほのぼのじゃないレイプ未遂をされました。
 ガチ鬼畜眼鏡というか、すっごい笑顔で、当たり前みたいに見え辛い所を的確に殴って
来たり、その癖、言葉だけは優しくて、もう本当に雌奴隷にされるかと思った。
 そこを、同じ部の水尾サトルに、本当に偶然発見された。
 縛られてるわ青タン付きだわおっぱい丸出しどころかパンツ下ろされてる状態でもって、
正に絶賛強姦現場。
 
 一瞬で激昂した水尾は顧問というか、今となっては元顧問の石動先生に殴り掛かったけ
ど、どこでそんな技覚えたのか、なんか凄い拳法みたいなの使って、あっという間に水尾
を返り討ちにした。
 けれど、そこは若さか狭義心か。何度も何度も立ち上がり、水尾は一瞬の隙と部室のア
イテムや椅子・机などを駆使して立ち向かい、最後は石動先生がさっきまで私に使ってた
ローションで足滑らせて、机の角に頭ぶつけて気絶した。多分、ほぼ運だ。

 それまで、私と水尾は、本当に割と普通に仲の悪い友達関係みたいだったんだけど、ズ
タボロ状態になりながらも、水尾は私の拘束を解いてくれて、泣いて縋り付く私を抱き締
めてくれた。
 まあ、お互いすぐに我に返って、石動先生――もう、こんな奴に先生は必要ないか。石
動を縛り上げた。

 で、だ。
 警察を呼ぶか、どうするか。
 とりあえず、同じ部で、普段はすっごい高飛車で高慢で高ビーで素直になれない意地っ
張りでツンデレなハイパー金持ちお嬢様の津田を呼んでみた。
 こんな時間に、この私を呼び出すなんて庶民の分際で図々しいですわ、とか妙に嬉しそ
うに言いながら部室に入って来たけど、ぐちゃぐちゃの私とズタボロの水尾に、縛られて
昏倒している石動と散らばった性的なお道具を見て、すぐさま現状を察した模様。
 すぐ傍に控えていた、銀髪系謎方言執事の浅田さん(一個下)を呼んで、石動の処分を
命じた。

 当然のようにこの学園に多額の寄付とかしてて、世界三大金持ちのグループ一角系なの
で、鬼畜一人消すのは造作も無かった模様。
 尚、一応(私の事を信用して無い訳じゃないけど、確認の為)私他、様々な男子生徒女
生徒教師等を手に掛けていたという証言も(ちょっと言えない方法で)引き出し、全ての
証拠を隠滅した後、石動は遠い世界へ旅立ったそうだ。
 ……もう、大丈夫ですわ。と。
 三日も経たない内に、津田は私の手を握って、言ってくれた。


 結局、色々やってくれたのは津田改めダラちゃんな訳なんだけれど、私としては水尾に
惚れざるを得ない。
 でも、ついこの間まで悪口言い合って、普通に叩かれたり蹴ったりしてたのに。
 ……水尾は、妙に私を気遣ってくれる割に、マトモに眼も合わせてくれない。たまに合
ったかと思えば、不自然なくらいに耳まで真っ赤にして、視線を逸らす。

 そりゃ、あんな事が無ければ、私も水尾も、お互いを異性と認識する事なんか、有り得
なかった訳なんだけれど……
28それはきっと勘違いではなく 2/13:2014/01/15(水) 23:35:00.96 ID:Ydp1OUJM
「そぉりゃ、半脱ぎ拘束・局部丸出し・色んな汁塗れのトモダチなんか見ちまったら、オ
ラなら暫く夜の御供のレギュラーだっぺよ。いんや、その日からトモダチではねぇべよ。
長峰様は女神にクラスチェンジさぁ」
 ……浅田さん、物凄い事を仰る。
 で、でも、私も、水尾のオカズになってるの? なれてるの?
「浅田、あまり下品な言動は慎みなさい。ねねねね、ネムちゃんに失礼ですわ」
 なんか、友達をあだ名で呼ぶのに慣れてないのか、なんか凄くどもりながらも気を使っ
てくれる。
 ダラちゃんとも、結構仲は良くなかったんだけど、あの事件を機に距離が凄く縮まった。
「ありがとダラちゃん。でも、大丈夫。男の人の意見聞きたい。私、そりゃ……安直だと
は思うけど……水尾の事、凄く好きなの。吊り橋効果とか、成立用通過必須ご都合イベン
トだとかは思うけど――でも」
 あの時。
 そりゃ、あそこにいたのが私でなくても、水尾はきっと怒って、戦ってくれた。
 そして、来てくれたのが他の誰かでも、戦ってくれた。例えば、眼の前の浅田さんでも。
 ……というか、浅田さんなら1ターンKILL間違いなしだったとは思う。

 それでも、あの時私の為に頑張ってくれて、抱き締めてくれたのは、水尾だった。

「人を好きになる理由っつうのは、些細な事だぁ。問題は、それからなんだべ。オスもヒ
クも本人次第。そういう訳で、お嬢は、いつオラの迸るあっつあつのエトスを受け取って
くれるだか?」
「お黙りなさい! クビにするわよクソ執事!! 後、意味がわかりませんわ!!」

 ……それから、か。
 どうしたいって言われたら……まずは、その……出来れば私の処女を散らして戴きたい。
 最終的には、水尾の奥さんの座に収まりたい。
 専業主婦よりは共働きの方がいいし、でも子供は二人は欲しいな。結構歳を重ねても、
エッチな事はし続けたい。
 その為には、身体を維持しないとな……となると。

「とりあえず、筋トレかなあ」
『え!?』
 痴話喧嘩をしていた二人が、同時に私を見た。


 まあ、まずはお互い向き合わないと始まりも出来ない訳で。


「……おい、お前、俺をどうするつもりだ」
「長峰様が、水尾様の態度に、ひっじょぉーに不安を抱いてんで、お節介な執事の単独行
動でさぁ」
「俺を椅子に亀甲縛りで縛り付ける必要性は」
「逃亡される可能性を危惧したんだべ」
 と、爽やかに笑って言う浅田さん。これだから年下だけど、さん付けしたくなる。とい
うか、何故か全校生徒に彼はさん付けされてるけど。

「ここはオラと水尾様しか男はいねえっぺ。何でも言うだよ。オラ、口がヤシの実みてぇ
に、かってぇからな。誰にもなんも言わねえゾ」

 因みに、ここは部室で私とダラちゃんは隠れて聞いている。
 確かに、浅田さんは何も言わないで良い。必要性が無い。
29それはきっと勘違いではなく 3/13:2014/01/15(水) 23:35:49.42 ID:Ydp1OUJM
「……長峰様、気にしてらしたべ? 眼も合わせてくれないとか。そりゃ、気持ちはわか
るだぁよ。女子校生。高校と大学の間の三年制で、制服のある謎の制度の学園生、好きな
数字は17な、クラスメイトの……なんつうか、あられもねぇ姿を見ちまったんだから、
気恥かしいでしょうけろも」
 なんか、全くよくわからない事も交えつつ、意外にマトモな事を言ってくれる。
 ダラちゃんは、ちょっと不安そうな私を見て、手を取ってくれる。

 ……デレてくれたツンデレお嬢様よりもデレデレな存在は、この世に無いと思われる。

 水尾は項垂れて、溜息をつく。
「……気恥かしいどころじゃ、ねえよ……」
 漏れた声は、普段の水尾からは考えられないくらいの、気弱なものだった。
「……あの野郎のした事は、許される事じゃねえ。人として最低の事だ」
 浅田さんは頷く。
「なのに――なのに、あいつに、あんな酷い事をした野郎を、殺してやりたいくらいなの
にっ……俺は――」
 声が、途切れる。
 水尾の悲痛な声に、胸が痛くなる。
 浅田さんは、次の言葉を待っている。
「あいつが、泣いて酷い事されてるの思い出して、勃ったり……仕舞いには……っ、俺が、
長峰を――あの野郎みてぇに、っ……無理矢理ヤるような、そんな夢、見たり」
 歯を食い縛る水尾。
 ……そ、そう、なんだ。ぼっ、と顔が熱くなった。で、でも、傷付いてるよね。嬉しい
のに、なんか、かわいそう。
「こんなんじゃ、俺、あの野郎と一緒じゃねえか。長峰は、あんなに泣いて、脅えてたの
に。普段、馬鹿みてぇな馬鹿で、なのに、ちっさくて、ただの女の子で、わかってた筈な
のに――初めて、わかって……なのに、大事にしたいって、思ったのに、俺」
 ん?
 ……今、水尾は物凄い事を言わなかった?
 ダラちゃんも、ちょっとお下品な笑顔になる。けれど。
「――わかるべ、水尾様」
 不意に、浅田さんが水尾の縄を解き、呟く。
「わかる……って?」
「オラだって、この世で、世界で一番――お館様や奥様、お嬢のお兄様お姉様よりも、あ
の方を――霰様をお慕いしてるっぺ」
 そんな、普段からすればいい、真摯な表情と告白を、今ここでしだした。
 流石に――ツダアラレちゃん、略してダラちゃんも、真っ赤になってしまう。
「有事の際は、オラの命を掛けてでも、守り切る。お嬢の為なら、オラはこの身が消えて
無くなろうとも、構わねえ」
 縛っていた縄を、いつものデカリュックに入れて、笑う。うひゃああああ、かっこいい
いいいいいい。ダラちゃんもかわいいいいいいい。
「で、それとは別に、オラが実は裏切り者で漆黒の組織とかからのスパイで、捕らえたお
嬢をひん剥いて拘束して、鞭で打ったり精神的にズタズタにして、オラ無しじゃ生きられ
ないようになるくらいに犯し抜く妄想なんて、よくすんべ?」
 そしてその顔のまま、とんでもない事を言い出す。ていうか、何、漆黒の組織って。
 後、なんで水尾の学生服のポケットに手を突っ込んでいるの?
「因みに漆黒の組織っつうのは、オラが考えた架空の悪徳マフィア的なもんのひとつで、大抵は全世界の女の子を性奴隷にする組織だ。他にも、オラが伝説の勇者で、お嬢が攫わ
れた大国の王女なのに、血の継承を無理矢理させられ次代の魔王になっちまったけろも、
愛と才能と勇気と特殊能力とご都合主義でなんとかなってラブラブHな話とかもあるでよ」
 ……あ、ダラちゃんが全てを諦めた顔になった。
 なんだろう、この、全てが浅田さんのおかげで、全てが浅田さんのせいな、この状況。
 流石にドン引きしている水尾の肩を叩き。
30それはきっと勘違いではなく 4/13:2014/01/15(水) 23:36:21.04 ID:Ydp1OUJM
「要は、エロ妄想なんざ、誰でもするっつぅ事だべ。ここ最近、仲良くなった長峰様とお
嬢の百合妄想も、既にオラのラインナップのひとつだぁ」
 私も引くよ。怖いよってかエロいよこの人。
 ダラちゃんは青褪めて私を見ている。あ、そんなに気にしないから大丈夫だよ。
 で、浅田さんは私に目配せをする。
 うん、そうだよね。私、言わなきゃ。

「っ、水尾――」
 私は、立ち上がる。水尾は、いきなりのご本人登場に、モノマネ歌手さながらの挙動不
審さになる。そうだ。いっぱい、言いたい事、あったの。
「っ、な、長峰!? お前、聞いて――」
 水尾の顔が、絶望の色に染まる。立ち上がろうとして、今までの拘束で身体が強張って
いたのか、バランスを崩す。慌てて私は水尾の元へ向かった。
「……悪い……俺、っ、俺、お前の事――」
「いいよ。そんなのいい。私、ずっと、ずっと水尾にありがとうも言えなくて――水尾っ
……水尾ぉ……」
 そうなんだ。
 私、散々怯えて、錯乱して。結局水尾に、全然お礼を言えなかった。
 避けられていたのもあったし、恋心で、ちょっと忘れてた感もあったけど。
「長峰……」
 泣きじゃくる私に、あの時みたいに水尾が私の肩を抱いてくれる。
 ――が。
「ワーオ。チューすんべー。長峰様と、水尾様はアッチッチー」
 何故か、いきなり敵側に回る浅田さん。自由過ぎるわこの北欧人。本名浅田アルベルト。
「いっ、いい加減になさいまし!? あなた、イイ雰囲気を作りたいのかブチ壊したいの
か、どちらなんですの!?」
 流石に、ツッコミを入れるべく立ち上がるダラちゃん。
「あぁ、やっぱ、お嬢のツッコミがねぇとオラ生きてけねぇべ。さっきから、ずっとウズ
ウズしてただよ」
 なんか、幸せそうだ。紛う事無きド変態だ。水尾は顔を引き攣らせて。
「そこに津田がいるのを知っての、さっきからの発言だよな!? お前、一体どういう神
経してんの!?」
 ……流石に、突っ込むよね。うん。でも、まあいいや。私は、水尾に抱き付く。あの時
みたいに。
「ま、後はお二人で。オラ達はオラ達でしっぽりと……さぁあいたっ!?」
 さりげなくお尻を触ろうとした浅田さんに怒りのタイキック。余りの痛さに悶絶してる。
「誰がしっぽりするですって!? 貴方、何様のつもりですの!? 使用人の分際で!!」
 マジギレしてるよ。流石にキレるよ。ていうか、知ってるよ。ダラちゃんが捻くれちゃ
った理由の三割、原因浅田さんって事を。

「ええんとちゃいますのん!? 雹様は借金のカタに貰った女の子で、霙様は大学の先輩
の一般人だべな! なしてオラが駄目なのか、説明してくんろ!?」
 正に正しい意味で、逆ギレをする。
「あなたの性格が最大級の問題なのですわ!? わかって下さいまし!!」
 全く以て正論です。

 ギャースカ争いながら、二人は出て行ってしまった。

 ……後は、私達だけが残される。私は、明りを消して、部屋の鍵を閉める。

「な、長峰?」
 戸惑いの声を上げる水尾。
 私はもう一度、床に座ったままの水尾に抱き付く。
31それはきっと勘違いではなく 5/13:2014/01/15(水) 23:37:04.83 ID:Ydp1OUJM
「――水尾。ありがとう、私を助けてくれて。あんなにボロボロになっても、諦めないで
くれて」
 
 石動の奴は、サラッと流されたけど、男の人にまで手を掛けてたとか。
 じゃあ、もしかしたら、水尾まであんな目にあった可能性は充分にある。それを考える
と、恐怖の度合いが倍増だ。
 水尾自身の為にも、諦めないでくれて本当に良かった。

「もしかして、私は勘違いしてるかもしれない。こんな事になるまで、水尾の事――普通
の、仲悪い友達くらいにしか、思ってなかった。でも、でもね、私、あの時から」
 水尾は、抱き付いている私の背に、手を回してくれた。
 ……ゾクゾクする。嫌悪感じゃなくて、嬉しくて、気持ち良くて。やっぱり、確信する。
これが、好きじゃないなら、なんだって言うの。
「……ずっと、こうして欲しかったの。私、水尾が好き。だ、大好きです。わ、私と、付
き合って下さい……」
 
 正直、どさくさ紛れだと思う。告白も、こうやって抱き付いているのも。
 寧ろ、メインはこの抱っこだと思いつつも。
 返事も聞かずに、このまま、ずっと時が止まっちゃえば。って思った。
 水尾は軽く溜息をついて、私の頭に顎を乗せる。あ、これ、いい。すっごいいい。

「お前、馬鹿だよな」
 いつもみたいに、また馬鹿って言う。それすら、心地いい。
「……聞いてたんだよな? 俺、いくら頭ん中とはいえ、お前の事を」
「でも、浅田さん、そんなの誰でもするって」

 ――うん。
 誰でも、する……よね?

 物凄く、身体が熱くなった。
 しかし、水尾は更に溜息をついて。
「浅田さんと一緒にすんなよ……あいつの常識は世の非常識だ」
「……まあ、あの人と渡り合えたの、去年卒業した伝説の工藤部長(下)くらいだし」
 今は、あんな全学年の様々な大量の女の子と付き合ったにも関わらず、全て円満に別れ
て、評判も悪くないという、全く以てわからない人物の話はどうでもいい。
「でも……その」
 さりげなくわざとらしく、私は胸を押し付ける。
「わ、私だって……したよ」
「あ、あの、おっぱ――へ?」

 ……うん。結局、あの事は親にも話せなくて、一人で寝ている時に、何度も何度も思い
出した。その度に……その、あれが水尾だったらなー、とか、思って。
 何回か苦しんだ後には、水尾と、そういうプレイをしてる妄想の方が打ち勝った。
 正直、私で同じような事してるって聞いた時……嬉しかったし、罪悪感帳消しになった
って思った。

「……あ、あれが、水尾ならって、そう思って、わ、私も、その……した、から……だか
ら、同じだよ。私の事、軽蔑する?」
 もっと強く、しがみ付く。
 私は水尾と眼を合わせたくて、上を向く。夕方の、まだ辛うじてお互いが見える暗さ。
 水尾は、物凄く微妙な顔をしている。
「……しねえけど……ホント馬鹿だよな、お前……そんなん、わざわざ言わなくても」
 私の頭を撫でて、ようやく笑ってくれた。
32それはきっと勘違いではなく 6/13:2014/01/15(水) 23:37:40.91 ID:Ydp1OUJM
「俺も、勘違いかもしれねえ。正直ぐちゃぐちゃだわ。お前は守んなきゃいけない女の子
で、でも、馬鹿だし、たまに動物みてえだし、でも、その――ああいう事、したいって、
思うし――っ、それ以上に、大切に――あれ以上、傷付けたくないとは、思ってる。それ
は、その、本当で」
 しどろもどろに、語ってくれる。
 ……脈は、大いにあるっぽい。なので、私は眼を閉じてみた。
 そうして、一番でっかい溜息。
「馬鹿。だからてめえはサルだのアルパカだのヒバゴンだの言われんだよ……とりあえず、
まずは返事聞けや……俺も……まあ、信じんでもいいが、結構前から好きだったって、昨
日気付いたし」
 あ、そうなんだ。
 ちょっとびっくりして、どこに私を好きになる要素があったんだと思いつつ、水尾のチ
ューでテンションはマッハで上がる。
 私は水尾の首に腕を回し、えいやっ、とばかりに後ろに倒れる。ちょうど、水尾が私を
押し倒す格好に。その体勢で、今度は私からキスする。
「っ、ちょ、馬鹿か!? お前、そんなんしたら――」
「……しようよー……」
 何の為に、暗くして鍵閉めたと思ってるんだか。
「ハァ!? 何考えてんだ!! そんな」
「……思い出す度に水尾に変換するの、しんどいよ。だから、上書きしてほしいなーって」
 
 うん。
 そうなんだよね。やっぱり、笑ってどうにかしようにも、四六時中って程でもないけど、
どうにも似た背格好の人を見たりすると一瞬身構えたりしてしまうし、手を振り上げられ
ると殴られた時の事を思い出して、硬直してしまう。

 普段から馬鹿で挙動不審だから、ちょっとくらいは動きが変でも、特に気にされないの
は、有り難いと思った。
 ……ダラちゃん、そういうの目ざといから、優しく接してくれてるんだろうなってのも、
わかってる。
 全部隠して振る舞いたいのをわかっているから、浅田さんは、いつも通りに下ネタ全開
フルスロットルのままでいてくれている。

「おねがい。もう一度、私をたすけて」

 図々しい事言っているなあとは思うけど、こればっかりは、水尾でないとなあ、と思っ
た。好きでなくても、してもらえれば、なんとかなるかなー、とか。
 なんてったって、私だから、そういう対象には見て貰えない可能性の方が高かったし。
 そもそも、馬鹿な事ばっかりしてて、色気の欠片も無くて、似てるモノは基本人外のキ
ャラクターばかり挙げられるような私を、なんで狙った石動よってなレベル。
 でも、好きだと言ってくれるなら、それは好都合のwin-winじゃないか。
 そんな私を見て、覚悟を決めてくれたのか。
「……俺で、いいなら」
 水尾の指が、涙を拭ってくれた。
「水尾じゃないと、出来ないミッションでやんす」
「そっか」
 それだけ言って、私達はもう一度、抱き合った。


「……しかし、ここ何部なんだ? そもそも部ですらねえけど」
 一応、皆部活って言ってて、部室もあって、顧問までいた訳だけど、この『  研究会』
は、全く以て謎の部だ。創設者はダラちゃんのお兄さんだった訳だけど、代々部長は変な
人縛りらしい。都合良く学年に一人は度し難い程の変態がいるようで何より。
33それはきっと勘違いではなく 7/13:2014/01/15(水) 23:39:21.58 ID:Ydp1OUJM
 ま、それはともかく、シートと清潔な布があったので、それを敷いて致す事にした。
「まあ、変な事件解決したり、どらやきでウエディングケーキ作ってみたりと、楽しいか
らいいじゃん。ずっとそうやって行ければいいね」

 ……石動……先生、いつも皆の無茶なお願い聞いてくれたりとか、全員で馬鹿な事やっ
て他の先生に怒られるの庇ってくれたりしてたんだよね……
 そういえば、教頭先生(バーコードハゲ)が妙に甘かったのって……あ、怖いから考え
るのよそう。二つの意味で。

 結構、憧れてた人も多いし、実際問題、私だって――

「――なが……睦月」
「っ!?」
 いきなり名前呼ばれて、びっくりする。あ、意識がちょっと飛んでたか。
「あ、ご、ごめん。うわー、名前で呼ばれちゃった。嬉しいな。じゃ、水尾はおっさんっ
て呼んでいいかなあ」
 因みに、私のあだ名の法則は名字の最後と名前の最初をくっつける事です。
「断固、拒否する。それより……大丈夫か。顔ひどいぞ」
「大丈夫だよ。ひどいのなんか、いつもの事じゃん」
 よく、部の色んな人に『顔が酷い』『心根までブサイク』『ゲス顔Wピース』とか言われ
てる訳だし。でも、怖いな。顔に出るようになっちゃってるのかな。
「……誤魔化すな馬鹿。まあ、それは後でな。お前変な所で堪え性無い癖に、肝心な所で
遠慮しかしねえから、怖いわ」
 ――だから深刻なんだが、と呟いた水尾は、学ランを脱ぐ。そういえば、と先程浅田さ
んがポケットに何かを入れた事を思い出し、探る。

「――こわっ」
「……スーパー執事は、伊達じゃないって事……かなぁ」
 そこに入っていたのは、箱のままのコンドームだった。しかも、なんか高そう。
 ありがたく頂戴する事にし、二人で合掌する。

 私は、水尾が学ラン脱ぐ前に、ボーっとしながら制服を殆ど脱いでいたので、後は下着
上下にキャミと靴下だけだ。
 ……堪え性無いって、こういう事かしら。

 私は、そのまま仰向けに倒れる。カモン、とばかりに両指をくいっ、と自分の方に倒す。
「あ、後は、水尾、脱がす? それとも、私、全部脱いじゃう?」
 正直、初めてだから、どうしていいかわかんない。そもそも、制服脱がせる所から、し
たかったかな。
「……焦んな、馬鹿」
 凄く呆れつつ、水尾は私の手を引っ張る。そいでもって、さっきとは逆に、私を上にし
て、倒れ込んだ。
 そうして、じゃれるように頬を擦り合わせたり、ただくっついたりして、笑う。なんか、
おかしい。私下着だし、水尾も上は脱いじゃってるのに。

「……あのさ」
 私の両頬を手で包むようにして、笑う。
「なに?」
「俺ら、まさかの、いきなり最終段階から始まる訳だけど」
 ……うん。
 正直、ゲームスタートした瞬間ラスボス戦みたいなもんだよね。これ。
「これから、よろしくな。彼女なんか、出来るの初めてだし……でも、なんも遠慮すんな。
何でも俺に言え。お前には、いつもみたいに、馬鹿面で笑ってて欲しいんだ」
34それはきっと勘違いではなく 8/13:2014/01/15(水) 23:40:20.45 ID:Ydp1OUJM
 ――うわ。
 胸が、なんか、ズドンとブチ抜かれた気がした。私は頷く。
「わ、私こそ、よろしくお願いします。わ、私も、彼氏とか初めて。初カレ。え、遠慮と
か、その、しません」
 抱き付いて、ほっぺたに口付けた。
 同じように水尾はキスしてくれて――そうして。

「睦月、抱かせて下さい」
 と、イマイチ決まらない求め方をして下さった。
 ……心底精一杯、最大限気を使ってくれた結果なので、凄く嬉しかった。私は頷いて、
もう全部水尾に任せた。
 ブラとか外すの、ちょっと手間取ってたけど、その理由は、まだ消えて無かった青痣の
事もあったと思う。
 でも、その事には触れないで貰って、お互い裸になった。
「……おっぱ……胸、触っていいか?」
 別におっぱいでもいいのにと思ったけど、私は黙って頷く。
 ゆっくり、恐る恐るといった感じで触って来る。
 夢とかで随分な事したと言った割に、おっかなびっくりな水尾が、なんだかとても可愛
く思えてしまう。
 同時に、水尾になら触られるのが、凄く凄く嬉しいと思える事が、嬉しかった。
「ねえ……私、大丈夫だよ。水尾とその、こういうのする事自体が、凄く幸せだから、水
尾がしたい風にしてくれる方が、嬉しいな」
 本当にお姫様どころか高級なお皿みたいに扱われてるっぽいので、それじゃお互いアレ
だと思う。進まないというか。
「お互い初めてだから、とりあえずやってみようよ。痛くたって、先週水尾にされたドラ
ゴンスープレックスより痛い訳じゃないもん」

 因みに、された経緯は私がわざとじゃないけど水尾を皆の前でパンツ一丁にしてしまっ
たからである。

「……言うな。思い出させるな。頼むから」
「ごめん。でも、なんであんな綺麗な緑色のパンツ履いてたの? 趣味?」
「お前、黙れ」
「……うん」
 
 水尾の顔は、それでも一々優しいから、どうにもこうにも、ドキドキしてしまう。裸だ
からってだけじゃないんだろうなあ……と思ってた。
 私の胸を両手で寄せて、物凄い勢いでブルブル揉んでるのを見るまでは。
 ああ、この、おっぱいへの執着、余裕の無さは逆に緊張が解れる。ムードゼロだけど。
 
 手、大きい。私は普通より背が低い方だけど、水尾はクラスで二番目に背が高い。
 一番目は料理部在籍の二階堂くんの196センチ。その差20センチ。私とだと、45
センチも差がある。よくつまみ上げられたりする。
「やっ……」
 さっきから、ぎゅっと眼を瞑っていたから、いきなりおっぱい吸われて、びっくりして
しまう。ま、まあ、ちょっとボーっとしてた私も悪いんだけど……
「ん――あ、う……」
 おっぱい吸いながら、私の左手に、指を絡めて来る。う、うわ、なんか、嬉しい。ドキ
ドキして、どうしようもなくて、右手で……とりあえず、水尾の頭を撫でた。
 ふっ、と、息が漏れて、笑われたような気がしたけど、不意に水尾は顔を上げて、キス
してくれた。
 そこで、ようやく眼を開ける。そこには、至近距離で水尾が笑ってたんだけど。
「お前、かわいいよな」
35それはきっと勘違いではなく 9/13:2014/01/15(水) 23:41:27.00 ID:Ydp1OUJM
 と、なんだか、不思議そうに言った。
 何度もキスしながら、その合間に、色々言ってくれる。
「……普通に、顔、かわいいし」
「まな板だと思ったら、普通に胸あるし」
「普通、お前くらいなら……男いる筈だよな……?」
 なんか、普通普通と連呼しながら、不思議そうに褒めているんだかどうなんだか、みた
いな感じで……なんか酷い気もするんだけど……でも。
 疑問に思うって事は、水尾はそう思ってくれるって事で……一応、嬉しい。嬉しいけど。
「み、水尾……? ほめても、なにも、でないよ……?」
 なんだか、声が弱々しい。身体も火照って、熱い。いつの間にか、身体がぐにゃぐにゃ。
 水尾はそれには答えないで、またキスする。今度は、長い。
「ふ、む……っ?」
 下半身に、手が、触れた。一直線に、そこに。
 足を閉じようとしたけど、その前に指が触れて、それが。
「あぁっ……!」
 ――あの時、みたいな、声がでた。
 有り難い事に、なんか変な道具を口に付けられて、お陰さまでファーストキスは水尾だ
ったんだけど……喋れない状態でも、自分でもわかるような、あからさまに、なんだか、
いやらしい声。
 ……石動の言葉で言うなら、『感じてる、甘い声』。
 感じるのが、悪い事じゃないのはわかってる。当たり前の事。寧ろ、そうしてくれるの
が水尾で、嬉しい筈なのに。
 
「あ、そっか。お前、声がかわいいんだよな」

 ――と。
 不意に、全く予想外の所から、ジャブが入った。
「へ……?」
「さっきから、なんでお前がモテねえのか考えてて。確かに馬鹿で頭ブッ飛んでても、こ
んだけ普通にかわいいなら、引っ掛かる気の毒な野郎が2〜3人はいそうなもんだけど」
 納得したように、笑う。
「声だけなら、よっぽど津田よりお嬢様系だろ。残念な事に大人しい系の。そんな声で『朝、
餅六個喰ったけどお腹すいた』とか二限で言ってたら、そりゃモテねえよなあって」

 ……そんな分析、いらないよ……
 なんだか、頭の中の不穏な影が、全部吹っ飛んだ気もするけど。
「その、さっきの声も、かわいい?」
 水尾の手を取る。もしかして、声の中に、なんか感じたのかな……普段の水尾なら、絶
対に言わないような。
「――かわいい。他の男が聞いたら、絶対お前を見る眼が変わる。でも、ぜってぇ聞かせ
ねえ。俺だけのもんだ」
 そんな事を言って、おでこと――眼の縁にキス……してくれた。
 で、今までの暴言という名の褒め言葉が無かった事のように、もう一度触れる。勝手に
身体がびくっ、として、震えてしまう。
「……いや」
 怖いのとは別に、あの、本当に恥ずかしい。水尾は私の足を広げさせて、食い入るよう
に見る。
 まあ、見るだけじゃ収まらないよね。指が入って来て、すぐに出る。
 そして、何故か間が空いて――若干気まずい感じに。
 どうしたんだろう、と思っていたら。
「……あのさ、どんだけ濡れたら入れられるもんなんだ?」
 と。
 まさかの、根本的な質問が飛んで来た。
36それはきっと勘違いではなく 10/13:2014/01/15(水) 23:42:00.19 ID:Ydp1OUJM
「わ、わかんない……今、どんな感じ?」
「あー……凄い事に。文字にすると……『ぬとぬと』?」
「え、何その新種の妖怪。ぬとぬとさん?」
「やめろよ。またこの学校七不思議増えるぞ」
「いいんじゃない? 他の七不思議、楽器が一斉に浮くとかでショボイじゃん」
 話しながら、流石に私も気付く。
 いつもより、絶対的に口数が多いんだよね……水尾。だから。

「私、欲しいな。もう、我慢出来ないや」
 と、誘ってみる。ぱぁっ、と、水尾の表情が明るくなった気がした……んだけど、すぐ
に眼を逸らす。き、気付いた事、気付かれちゃった?
 水尾は私の事抱き締めて。

「……悪い……ずっと喋ってねえと、ヤバくて」
「いいの。水尾、私の事一杯気遣って、お姫様みたいにしてくれてたもん。好きにしてほ
しいな」
 
 その言葉を皮切りに、なんとなく、空気が変わる。本番なのだと。

 ……残念な事に、コンドーム着ける所は見せてくれなかった。
 一回、私の中に少し入って、すぐさま暴発したのは、割愛します。


「あ……っく……」
 仕切り直して余裕も出たのか、ゆっくり、ゆっくり入って来る。時間を沢山掛けて、水
尾とひとつになって行く。
 痛いというか、ヒリヒリして、奥の方がズキズキする。鈍痛というのは、こういう事な
のかな……
 思ったよりは痛くなくて、思ったよりは苦しい。そんな感じ。
 手を伸ばして、その、自分の入り口に、くっついてる水尾の下半身というか、そこらへ
んに触れる。
 本当に全部、私の中に入ってるんだぁ……と、感心してしまった。
 ホントに、水尾とセックスしてるんだー。出来れば、この人が、最初で最後だといいん
だけどな。
「大丈夫か?」
 涙で霞んでるけど、きっと心配そうな顔をしているんだろうなというのは、声でわかる。
「……うん。大丈夫。私、しあわせ」
 だって、水尾が来てくれなかったら、私、初めてがこんな穏やかで安心した気持ちで迎
えられていなかっただろうから。
 あのまま、無理矢理犯されて、撮影されて、おっかない道具でも犯されて――
「水尾が初めてで、よかった」
「……俺も、だ」
 少し乾いていた私の唇を舐めて、また、いっぱいキスした。お互いの舌を絡めて、夢中
で――息が少し苦しいくらい、沢山吸ったり舐めたりした。
 それ自体が気持ちいいんだけど、時たま、水尾から口の奥の方を舌でなぞられると、背
中がゾクゾクする。
 まだズキズキしてるあそこが、勝手に動く感じがした。
 ……口の中と、繋がってるのかな。どうなんだろう。
「ん――っ……あ」
 一旦唇が離れると口から唾液が漏れて、胸に落ちる。それが冷たくて、変な感触だった。
 水尾の顔が、なんだか蕩けたみたいで、真っ赤だ。きっと、私も大差ないだろうけど。
ああ、可愛いなあって思った。
 ……また、あそこが疼く。
37それはきっと勘違いではなく 11/13:2014/01/15(水) 23:42:55.08 ID:Ydp1OUJM
 入ってるだけで、動いてないのに、多分、水尾のを締め付けて、それがなんだか、いい。
 なんか、ダイレクトに『感じる』ってよりは……さっきの鈍痛の逆というか……鈍感?
アレ? これ、意味違って来る?
「少し、動いて、いいか?」
 アホな事を考えている時に言われて、咄嗟に頷いてしまう。
「……ゆっくり、だから」
 ほんの少しだけ心配そうに、私の腰を掴む。そうして、奥を探るように、動く。
「ひぁ……ぁ……っ」
 その動きが、なんだか、凄く良くて、なんだか声と……恥ずかしいけど、別のものまで
漏れちゃった気がした。その……おしっこ的な……大丈夫かな……
「……痛い……んじゃ、ないよな?」
 声で予測は付いたのか、それでも心配そうに聞いてくれる。
「うん……痛くないけど……ジンジンして……でも、いいの……」
 途切れ途切れに、感想を述べる。水尾がしてくれる事、今は全部気持ち良くて、うまく
頭が働かない。
 気持ちいい事しか考えられない。
 だから、もっと欲しくて、私が自分で腰を揺らす。そうすると、もっと気持ち良くて、
また声が出てしまう。
「もっと、して……いっぱい」
 息を吐く度に、快感が増して行って、もっともっと、欲しくなる。水尾が腰を引いて、
入れた時と同じくらいゆっくり、抜かれて行く。その度に。
「あ……あぁ……っ、み、水――いいっ……いい、よう……」
 あそこと同じくらい、私の身体に触れる手が、気持ちいい。さっきまでの恥ずかしさな
んて、覚えてない。足を開いて、水尾のをせがむみたいに、締め付ける。私が吸い寄せる
みたいに、さっきよりは強めに、私の奥を突いてくる。
「ひぃ――あ、あ――ああっ……ふぁ……あ……」
「っ――月、睦月っ」
 水尾の息も、荒い。余裕があんまり無くなって来たのか、噛み付くように唇を貪って、
少し乱暴に胸を掴む。
 ……その方が、気持ちいいなんて、凄くびっくりした。
 耳に響いて来るのは、荒い息使い。自分の心臓の音。肌がぶつかり合う音。あそこ同士
が擦れ合ってる、水音。
 音も、匂いも、ぜんぶ、私を良くする。
「水尾――水尾、水尾っ」
 手も足も、全部使ってしがみ付き、引き寄せる。同時に、私はイッてしまう。
 ……自分でした時よりも、ずっと、凄く気持ち良くて。殆ど鳴き声みたいな声を上げて、
びくびく、水尾のをいっぱい締め付けた。
 はぁ、はぁ、と、妙に自分の呼吸がうるさい。水尾も小さく私の名前を呼んで、震える。
それで、また小さく私も感じてしまった。暫く、そのままでいて――それが落ち着くと、
余韻に浸るように、お互い、深く息を吐いた。


 全部終わった後、身体を拭いて、制服を着た。
 換気をして、シートを片付けて、最早清潔でもなんでもない布は、持って帰って捨てる
事にした。
……明日、代わりにお母さんがバザーで一円で買った、使われないままの新古品のタオ
ルでも持って来ようと思った。
 そうして、身支度を終えた頃には、ほんの少しの夕焼けの色を残したくらいの夜になっ
ていた。
 そんな薄暗い部室の中で、私達は無言で抱き合った。ただ、お互いの身体を全力で。
 どちらから、というのは、わからなかった。ただ、私も水尾も眼が合った瞬間に、こう
なった。幸せすぎて、涙が出そうだった。
 ……まあ、いつまでもこのままではいられないから、切りのいい所で離れたけど。
38それはきっと勘違いではなく 12/13:2014/01/15(水) 23:43:31.87 ID:Ydp1OUJM
「……帰ろうか」
 耳を、水尾の声がくすぐった。
 私の声がかわいいって言ってくれたけど……水尾の声も、私はかっこいいと思う。
「……うん」
 なんだか気恥かしくて、ちょっとだけ距離を開けてしまう。
 身体はまだ火照っていて、逆にちょうど良かった気もする。部室をちゃんと施錠して、
靴を履き替えて、校舎を出て、校門に向かおうとして――

「何の見立て殺人だ!?」

 水尾の絶叫ツッコミが木霊する。私は驚き過ぎて、逆に声が出なかった。
 ……桜の木に、宙釣りで様々なオプションが付いている浅田さんが、そこにいた。

「……最初は、ただオラがフルボッコで宙釣りなだけだったんだべ。下校する生徒の皆様
方が、面白おかしく、こーでねーとした結果、単独の実行犯と複数の偽装犯が渦巻く、迷
宮入り寸前の継続行き難事件になったべよ」
 股間に白鳥を取り付けた人物を、是非とも知りたいんだけど……まあ、それより。
「浅田さん、ダラちゃんに何したの? ここまでされるって、そう無いでしょうに」
 ちょっと非難する私の声に、少し困った顔をしつつ。
「んー……オラも結構焦ってるだぁよ? んだもんで、巷で流行りの壁ドンして、標準語
で一人称も変えて、迫ったんだべ」
 あれれ、真面目コースで行ったんだ。でも、それならなあ……結局、くっついてないけ
ど傍から見たらラブラブ主従にしか見えないし、ダラちゃんもまんざらでは無さそうなん
だけども……
「因みに、どう迫った」
 呆れながら、水尾が聞いてみる。
「普通だべ? さっき言った通り、壁ドンからの『なあ、お嬢、俺とスケベしようや……』
ってぉぐうっ!?」
 水尾が、ヤクザキックで浅田さんを回転させた。すっごい苦しそう。
「津田が流石にかわいそうだろ!?」
「そうだよ! それに結局標準語じゃないしぁいたっ!?」
「そういう問題でもねえよ!」
 と、こちらにもツッコミが。
「痛いよ! ……もう、どうして浅田さんは、みすみすチャンス棒に振るのさー……セリ
フさえマトモだったら、絶対ダラちゃん落ちてたって」

 ――あ。今気付いたけど、叩かれても全然怖くない。痛いけど。
 
 なんだか、テンションが上がって来る。浅田さんも同様で。
「マジだか!? オラ、なんて言えばお嬢と、うっふんあっはん出来るだか!?」
「そうだね! ああ見えてっていうか、見たまんま乙女だからね! 壁ドンまではOKな
んだから、そうだね……壁ドンならぬベッドン(注:ベッドに押し倒すだけの簡単な作業)
で『今夜は、オラの美技に酔うだ』とか」
「パクリはよそうか睦月!」
「パクリじゃない! 影響を受けたんだ!」
「パクる奴は、皆そう言うんだよ! というか、それで津田が落ちると本気で思っている
なら、俺はお前の全てを疑うわ!」

 なんだか、いつも通りに戻ったみたい。
 楽しくて、バカみたいな事、いっぱいして。
 そんな風にじゃれ合う私達に、浅田さんはピーンと閃いた、みたいな顔をして、唯一無
事な右人差し指で私の顎を掬い上げて。
39それはきっと勘違いではなく 13/13:2014/01/15(水) 23:44:22.70 ID:Ydp1OUJM
「――なぁ、あんな奴より、オレにしろよ」
 
 と、物凄い男前ボイスで短くキメてみた。

 さ、逆さ釣りで白鳥を股間に装着し、周りには何故か仙台銘菓が散らばっている上にミ
ニチュアサイズの釣鐘が置いてあって、菊の花で全身コーティングされつつ楽器の弦が絡
まって、斧と鉈とチェーンソーが立て掛けてあって、背中に『こんや 12じ だれかが 
いぬ』とか張り紙付いてるのに、かっこいい……! あんな奴って誰か知らないけど!

「あ、あまぁ――」
「ハァ!? ふざけんな! 睦月は俺の彼、じょ――」
 最高やんか! と、最大級の賛辞を送ろうとしたけれど、水尾は何故かキレてしまう。
けど、すぐに押し黙って、真っ赤になった。
……それっぽいセリフだったから、勘違いしちゃったという事か。
 浅田さんのキメ顔は速攻で崩れ、ゲス顔でひゅーひゅーだべよー! とか言ってる。あ、
今のわざとだったんだ、という事にも気付いて、なんだか凄く恥ずかしくなって来る。
なので。

「……かえろっか…………さ、サトル、くん」
 私も、正直どうしていいかわからなくなって、どさくさ紛れに、名前を呼んで、手を繋
いでみる。
「あ? え、あ……あ……う、うん。その……送る、わ」
「……あ、ありがと……」
 ぎこちなく会話をして、一連の流れを無かった事にして、二人で下校する事にした。
「え? オラ、ほったらかし? え? なあ、なあ」
 ……手が、あったかい。
「ちょ、ちょ、待つだよ! オラ、このまま!? ていうか、なんで誰も助けてくれねえ
んだ!?」
「……明日、お弁当一緒に食べようね」
「そ、そうだな……」
 いちゃいちゃしながら、校門を出た。
 ――明日からのラブライフかつ愛ある活動に胸を躍らせて。



「……あれ、一年七組の浅田くん? どうしたの? この学校、ちょっと前まで男子校だ
ったから、そんなあられもない格好でいたら、掘られるよ?」
 一瞬、男かと見間違える程背の高い教師が通り掛かり、物騒な事を言い出す。
「品川様……オラ、別に好きで見立て殺人やってる訳でねえだ……」
「あら、そうなの。後、先生の事は、ちゃんと先生って呼びなさいね」
 そう言って、脚立を持って来て救助を始めた。


 ――無事、愛しの主人が待つ屋敷に帰れたのは、すっかり夜も更けた頃だったという。



                                        終
40377:2014/01/15(水) 23:46:43.02 ID:Ydp1OUJM
以上です。

以前投下していた時に書いたものを発掘して手直ししましたが、ネタが酷いと思いました。
41名無しさん@ピンキー:2014/01/16(木) 01:12:45.81 ID:qZ51uxBf
いや、377色全開でおもしろかったよw
ありがとう!
42名無しさん@ピンキー:2014/01/18(土) 13:26:38.68 ID:SGR3jfB/
>>40
ちょーGJ!!元ネタ知らないけど充分楽しめました!
気が向いたらまたなんか書いてください・・・ヨロシク(゚0゚)(。_。)ペコッね
43名無しさん@ピンキー:2014/02/10(月) 16:23:01.86 ID:X5QTvELq
このスレの保管庫管理人はクズ男だなぁ

作者に対する敬意はねえのかよ
44名無しさん@ピンキー:2014/03/22(土) 19:35:45.41 ID:09qR87bI
SS
45名無しさん@ピンキー:2014/03/24(月) 15:59:05.94 ID:lvfpcFW9
無茶苦茶面白かった!GJ!!
台詞回しやキャラがいいなあ。
エロいし萌えた。
46名無しさん@ピンキー:2014/03/28(金) 15:54:17.04 ID:X17TXzHh
すみません、投下します。

現代もの。年下高校生男子×枯れたOL。
寸止めですみません。
47ワンコイン男子 1/7:2014/03/28(金) 15:55:15.12 ID:X17TXzHh
「おねえさん、ボクを買ってくれませんか?」

 一瞬、何を言われているのかわからずに、反応が遅れた。
 頭の中で大喜利ばりのボケが複数浮かび、それをことごとくツッコミまくっていたもんで、傍目にはフリーズ
しているように見えていたと思う。
 ようやく口が開くと、気づいた時にはこう反論していた。

「ザケンな。一昨日来やがれ」

 いつの時代の罵倒なんだか。
 こんな女だから、こんな(見るからに)年下柔らか美少年→美青年に進化中の、ワンコ系男子に揶揄われるんだ。
 残業上がり、ボロボロに草臥れた帰り道。
 化粧もハゲたover30に、夜目にもすらりとした姿が魅力的だって分かるぐらいのカッコ可愛い美少年って。
 これって何の罰ゲーム?

「お買い得です。ワンコイン。今ならたったの500円」

 なおも、揶揄いが続く。
 んもう。いい加減にしろっつーのよ。

「500円、何故に500円?」
「って、突っ込むとこ、そこ?」

 ケラケラと少年が笑う。
 その笑った口元にある小さなホクロに気づいた瞬間、ずくんとした衝動が胸の奥と直結した下半身に向かって
ダイレクトに響いた。
 ヤバい。

「おねえさん、やっぱサイコー。もう、500円と言わず、おれを持ち帰ってよ」
「えーと。要するに、あんた行くとこないの?」
「あ、バレた?」

 悪怯れもなくにやりと笑みを浮かべる悪い顔すら、色気満載。
 年下なんて対象外だと、生まれてこの方34年。最近はひたすら仕事のできる中年男性(バツイチだってバッチコイ)に
ターゲットを絞ってきたというのに。
 なんてこったい。私のえらく狭いストライクゾーンってば、まさかの年下ワンコ系男子だったというのかい?

 喪女歴かれこれ17年。
 そりゃもう処女じゃないし、一応彼氏だっていたことあるし、それなりに恋愛経験だって積んできた。
 でも、17で別れた彼氏以外、本気の恋愛なんてしたことない。
 寄ってくるのはロクデナシ。
 しかも自分のソチンを棚に上げ、人のこと不感性だの。マグロだの。
 テメーのテクナシを人のせいにすんな!

 あー、話がそれたよ。
 まー、そんな訳で、私が男にその気になるなんてこと、滅多にないのだ。
48ワンコイン男子 2/7:2014/03/28(金) 15:56:15.99 ID:X17TXzHh
 だが、その、現象が今起こっている訳で。

 信じられん。アンビリーバボー。
 何が起こった、私の身体よ?

「おねーさん、おれのこと、興味ない?」

 ねっとりとした、濃い空気が場に満ちる。
 おお。この感覚には覚えがあるよ。
 遠い昔──そう、17年前のこと。

「なんで、私なの?」

 声が、かすかに震えた。

「ん。忘れられなかったって言って、信じてもらえる?」
「あんたとは、初対面だと思うけど」
「んー、初対面だけど、初対面じゃないんだな」

 にししっと笑う顔は、無邪気だけど揶揄いを含んではいなくて。
 その瞳だけは、ごく真剣で。
 なのに、どこか熱を帯びて濡れていて、私を欲情させる。

 口元のホクロひとつで枯れ果てた女を陥落させる威力を持った少年は、まるで悪魔のように私を誘う。

「おねえさん、おれのこと興味あるでしょ」

 もう、既に断言してる。
 その口元からもう、目が離れない。
 柔らかそうな唇に触れたら、私はどうなってしまうんだろう?

 身体から、もう一人の私が抜け出し彼の腕の中に収まってしまう。
 彼の首に縋りついて、唇を重ねる。
 飲み込まれそうな奔流が沸き上がって、互いに咥内をまさぐり合う。
 力強くでも繊細な指先が、背を腰を尻を撫で上げる。

 身体中の歓喜に幻惑され──その瞬間、目を覚ます。

 うっわ、これ、夢? 妄想?
 何が起っているんだ?

「おいで」

 少年の誘いに抗うことは、もう──
 不可能。

 暖かい腕の中は穏やかで。
 もう、とうに忘れてしまったと思っていた安息を覚えて、私はそっと目を瞑る。

「みゆ、おれのものになってくれる?」
49ワンコイン男子 3/7:2014/03/28(金) 15:56:58.51 ID:X17TXzHh
 ──なんで、私の名前を知ってるんだろう?

「おれを持ち帰ってくれるよね?」

 あれ? 私がこの子を捕まえたの? それとも私が捕まったの?

「みゆ、もう離さないから」

 強引に引き寄せられたのに、その口づけは酷く繊細で。
 私はその嵐に飲み込まれながらも、懐かしさを感じていた。

 そうだ──アイツも、口元に同じようなホクロがあったんだっけ。

 唇の感触も、歯列をなぞるその舌先も、アイツとは違うのに、どこか懐かしい。

「みゆ……未有……」

 繰り返し、繰り返し、名前を呼ばれる。
 その縋り付くような必死さに、私は何故か涙が湧いてきた。

 ───昴。

 私の、たった一人の本気の相手。
 もう、永遠に会うことのできない生涯の恋人。

 忘れたいのに忘れられなくて。私を置いていってしまったというのに、もう責めることすらできやしない。

 34にもなって、17の時の恋を引きずってるなんて、我ながらどうかしてると思うけど。
 どうしても、忘れることなんてできやしかなかった。

 姿形も全く違うのに。私を抱き締める腕も胸の厚さも体臭も、別人だって痛いぐらいに感じているのに。
 この少年は昴のことを思い出させた。

「抱きたい──部屋につれてって」

 やっと互いに唇を離して、耳に囁く柔らかな声が届いた瞬間、ここが公道のど真ん中だってことにようやく
気がついた。

 不覚───
 ご近所の方に見られたら、どうすりゃいいんだ。

 でも、もう、この年下ワンコ少年の言葉に否を唱えるなんてこと、私には不可能。
50ワンコイン男子 4/7:2014/03/28(金) 15:57:35.79 ID:X17TXzHh
「んっ……っやあっ……」

 ぬちゅ、って粘ついた音が恥ずかしい。
 思わず身をよじると、成長し切っていない少年のくせに思いの外力強い腕に引き戻されて、また口づけられる。
 唇を吸われ、舌先がねろりと咥内をなぶり、欲情を煽る。

「……もう、こんなにひくつかせて……やらしいよ。サイコー」
「意地悪言わないで……」
「クリがパンパンに腫れてる……ここ、舐めたらどうなるの?」
「や……っん」
「かっわいいー。敏感すぎて、煽られちゃうんだけど」

 10代のコドモのくせに、そんなこと言いながらもどこか余裕で。
 悔しいけど、翻弄されてしまう。そんな自分がやっぱり悔しい。
 ──でも、感じてしまう。

「あっ……そこっ!」

 爪先でカリッとひっかくように芽を刺激され、私は悲鳴を上げる。
 瞬間、じゅわっとまた奥から溢れるものを感じる。

 まだほとんどそこを触られていないのに、じゅくじゅくと疼いて、彼を欲している。
 早く指を入れて、掻き回して。
 ううん、指よりももっと太くて、圧倒的な熱──彼のモノが欲しい。

 でも、そんなこと初対面の少年に言うことなんてできなくて。
 私はまた、嬌声を上げながら彼の首筋に口づける。

 汗の塩辛さに彼の身体を感じて、なお昂ってしまう。

 シーツまで垂れている愛液を掬い、ペロと舐める顔はワンコ系。
 目元がキュートで愛嬌があって、でも滲み出るものは、まるで色悪。

「みゆ、気持ちいい?」

 もう、会話することもできなくて、私はただ頷きながら「ああっ!」と応える。

 指、が挿入ってきた。
 切ないほどに疼く中は、彼の優美な指先を締め上げてしまう。

「きっつ。指、一本なのにこんなに締め上げて……イきそうなの?」

 もう、数えきれないほど軽くイってる。
 そんなこと言うのも恥ずかしくて、私は嫌々をするように首を振る。

「そう? やらしーみゆちゃんは、一本だけじゃ足りないんだ」

 にやっと笑って指を抜いた──と思うと、今度はもっと強い圧迫感。

「ああんっ!!」
51ワンコイン男子 5/7:2014/03/28(金) 15:58:08.58 ID:X17TXzHh
 そのまま、ぬちゅっぐちゅっにちゅっずちゃって、イヤらしい音を立てながら指で抉っていく。
 思わず目を瞑ると、昴が浮かぶ。
 昴は、私の反応を見ながら指を揃えて三本突き立てながら、私の弱いところ──そう、そこ、とか。

「……そ、こ……!」

 中を蠢く指先のどれかがそこを翳めたとき、全身が跳ねた。
 びく、びくと震えが走ってもう、頭が真っ白になる。
 ひたすら身体は快楽に震えて、もっともっとと貪欲になる。

「変わらないな……」

 少年の柔らかな声が伝わるが、意味を捉えることができない。

「イって……みゆ」
「あ、あ、あ、だめ……っん、はぁ……んっ!」
「未有、愛してる」
「……だめっ、イっちゃう!!」

 その瞬間、彼は腫れ上がった芽を吸い上げる。奥に突き立てる指を感じながら、びくんびくんと私は達した。

 ぼうっと痺れた頭を向けると、彼はもどかしそうに避妊具を着けていた。
 ちゃんと持っているんだ、と何となく思うと、今まで何も考えられなくなっていた自分に気がついた。
 彼が一体何者で、何の意図があって私に近づいたのか。
 ──避妊具を持ち歩くってことは、それなりに経験があるというか、そういう相手に事欠く環境にないと
言うことなんだろうし。
 ワンコ系美少年だったなら、そりゃ女子にモテモテでしょうよ。

 何だか、ムカムカしてきた。
52ワンコイン男子 6/7:2014/03/28(金) 15:58:39.54 ID:X17TXzHh
「ねえ──」

 私の言葉を遮るように、バードキス。

「おれの童貞、貰って」
「──はあ?」
「好き……好きすぎて辛い。愛してる。ずっとこの日を待ってたんだ。もう17年越しだし」
「ちょっ……」
「あー、ホントだからね? この身体ではシたことないから」
「っちょっと待った!」
「待たねーよ。もう待ち過ぎだし。明日には淫行条例適応外だから許して」
「あんた、何者?」

 にやり。
 少年はまるで悪魔のように、口を歪めて笑みを作った。

「桜井昴の生まれ変わりって言ったら──信じてもらえる?」

 その瞬間、圧倒的な熱が私を貫いた。


FIN
53ワンコイン男子 7/7:2014/03/28(金) 15:59:14.35 ID:X17TXzHh
ex.事後の一コマ

「昴って呼んでいいの?」
「今は新山暉って言うから、アキラって呼んで」
「今何才?」
「17。明日で18。あの事故の直後に生まれ変わったんだ」
「学校行く前に車に轢かれたんだっけ」
「あの時はごめん」
「ホントだよ。どれだけ泣いたと思ってんの?」
「ごめんったら、ごめん。でももう絶対一人にはさせないから」
「17って今、高校生?」
「うん。でもエスカレーターだし、もう学部も決まってるし。おれの志望大学覚えてる? あそこ」
「うっわ、おぼっちゃん!」
「いや高入だし」
「高校からって……偏差値どれくらいよ? もしかして医学部?」
「そう。ちゃんと今生は夢を叶えました」
「でも医学部って……一人前になるまで何年かかるのさ。私、今いくつだと思ってんの?」
「あー、親にはもう、結婚したい人がいるって話してあるし。早く許可もらってさっさと連れて来いって
言われてる」
「ちょ、待った! あんた、再会する前から何外堀埋めてんの?」
「おれ、株とかFXで貯金あるし、みゆも子供も余裕で養えるぐらいの収入あるし。それにみゆにここ何年も
彼氏いないの知ってるし」
「いやいやいや。あたしがあんたに靡かないって言うのは考えなかったの?」
「そこは力技で」
「ぎゃああああああーーー!」
「相変わらず煩いな。でもそこが可愛いんだけど。んっ」
「キスでごまかされた」
「もっとキスしたい」
「バカ。あ、なんで500円?」
「みゆに貸した500円、翌日に返してもらう約束したまま死んだから」
「──それか!」

 ようやく、タイトルに戻ったところで、ここでおしまい。
 どっとはらい。
54名無しさん@ピンキー:2014/04/02(水) 14:01:13.84 ID:Ze2+CoSe
ちょwwwみんな規制中!?
こんなにかわいくてエロいSSが投下されてんのに
5日間放置とかwww

とても楽しめました!
気が向いたらまた書いて下さい!!
55名無しさん@ピンキー:2014/05/08(木) 22:51:40.00 ID:KmDpLYqf
独特やね
56名無しさん@ピンキー
NLエロでも女の子視点は希少だからもっと増えるがいいや