女装SS総合スレ 第8話

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1名無しさん@ピンキー
ここは既存スレに該当しない女装関連のSSを総合的に取り扱うスレです。
無理やり女装させて、嫌がったり、恥ずかしがったりするのをニヨニヨするのもよし、
自分の意思で女装させ、女よりも女らしい子を目指すのもよし、全ては書き手の自由です。
女装っ子を愛でながらまったりと盛り上げていきましょう。

※次スレは>>980または、485KBになったら立てて下さい
(直近に投下予定のある方は、投下作品の容量に応じて前倒し願います)

※age・sageについては各々の判断でお願いします

【前スレ】
女装SS総合スレ 第7話
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1308332017/

関連スレは>>2-
2名無しさん@ピンキー:2012/10/21(日) 16:06:21.29 ID:zB7B/Mb6
【既存の女装関連スレ】

強制女装少年エネマ調教 ネオ×7
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1255107219/

ニューハーフ・シーメールでエロパロ 6
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1336219403/

↑のシチュに該当するSSはこちらのスレでお願いします。



【隣接ジャンル】
女にお尻を犯される男の子8
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1287824025/

強制女性化小説ない?Part47
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1346641476/

男装少女萌え【11】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1296266561/

【女体化】TS系小説総合スレ【男体化】8話目
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1338195162/

立場だけの交換・変化 5交換目
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1335667249/
3名無しさん@ピンキー:2012/10/21(日) 16:06:44.49 ID:zB7B/Mb6
光の速度で落ちそうな気もするけど復活させてみた。
4名無しさん@ピンキー:2012/10/21(日) 17:39:51.49 ID:87XYiTtA
まとめは無いの?
5名無しさん@ピンキー:2012/10/21(日) 18:05:01.65 ID:zB7B/Mb6
知ってる限りではないですねえ。

偽装彼女氏とこはなくなって久しいし、KCA氏が個人的に投稿分が集められてるくらいか。
6名無しさん@ピンキー:2012/10/21(日) 21:48:22.85 ID:zB7B/Mb6
男の娘でエロパロ!
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1272566973/l50
も関連スレか。
7名無しさん@ピンキー:2012/10/22(月) 20:36:41.55 ID:yG4FfNwt
まとめwiki、作るべきかどうか。

作るとしたら、「エロパロ板女装SSまとめwiki」にしたほうがいいんかな。
8名無しさん@ピンキー:2012/10/23(火) 23:00:50.18 ID:gnN9PvuN
>>1乙!
9名無しさん@ピンキー:2012/10/23(火) 23:01:59.94 ID:bZ2Oa6lu
復帰乙
落ちる前に最後に書いたの俺か?
10名無しさん@ピンキー:2012/10/23(火) 23:25:18.15 ID:ykRXIsxw
前スレで最後に投下されたSSが『籠球少女(偽)』で、ガールズバンドの雑談で落下しておりますな。
11名無しさん@ピンキー:2012/10/23(火) 23:35:13.99 ID:2NtpVOek
最近のはまとめを作るほど作品はない気もするが
KCAのブログ見ればほとんどある訳だし
12名無しさん@ピンキー:2012/10/24(水) 00:03:06.04 ID:20CpZCqA
(作るとしたら)むしろメインは「偽装彼女」シリーズになるのかな。

あとは「女装空想小説」スレ時代のものとか。
13名無しさん@ピンキー:2012/10/25(木) 00:23:55.41 ID:SewoazFA
まともな作者さん来訪待ちがてら、駄文投下してみたり。

『パパの職場見学』

 微かな音を立ててスタジオのドアが開いて、そこから兄弟らしき2人の少年と一人の女性
が入ってきた。
「パパのお仕事の邪魔にならないように、静かにね」
 と、20代後半の、母親らしいその女性が抑えた声で言うと、少年たちは頷きで応える。

 スタジオの中では、等身大の美少女人形の撮影が行われている。
 フラッシュを浴びて豪奢なソファーに腰掛けているのは、淡く微かに紫味を帯びた白いド
レスを纏った少女の人形。フェイクパールが散りばめられた、チュール地のスカートを透か
してか細い脚が見える。
 入ってきた母子に、監督と思しき男性が少しだけ顔を向けると、母親は微笑みながら頭を
下げる。黒い髭を生やした精悍な顔に一瞬笑みを浮かべたあと、その男性は再び「少女人形」
に真剣な面差しを向けなおす。
 少女人形? いや、しみ一つない無垢な肌と、整い過ぎるほどに整った幼い面差しがそう
錯覚させただけで、そこにいるのは人形めいた可憐な少女。
 長く濃い睫に縁取られた大きな目の中、湖よりも深い色を湛えた黒い瞳が輝く。
 腰まで届くつややかな漆黒の髪が、白い肌と衣装の上をさらさらと流れる。
 肘丈のグローブが、強く掴むと折れそうな腕の華奢さをより一層強調する。その腕に抱か
れた、衣装に合わせたのであろう淡い紫の紫陽花の花束。監督からの声に従って少女が微笑
むと、少女自体がその花の化身となった印象を受ける。
「きれい……」
 先ほど入ってきた兄弟が、小さな声で歓声を漏らした。



 長い撮影が続き、ようやく訪れた休憩の時間。
「パパー! スゴくきれいだった」
 6歳と4歳くらいに見えるその兄弟がそう言って駆け寄ると、少女? は大きく手を広げ
て笑顔で二人を抱きかかえた。
「達也、睦月、来てくれてありがとう」
 ピンク色のつややかな唇から、いとおしむような声が零れる。
 可憐な美少女にしか見えない実の父親の姿を、目をキラキラと輝かせながら賛嘆する兄と、
はにかむようにちらちらと視線を向ける弟。

「達也と睦月、大きくなったら何になりたいのかな?」
「僕ね! パパみたいにきれいな女の子になりたい!」
「ボクは……パパと結婚したい」
 周囲の微笑ましい視線に見守れながら和気藹々と会話を続けてる最中、ふとそんな流れに
なった。
 ぷっくりした唇にほっそりとした指を当て、戸惑ったように考える偽りの美少女。少しの
あと、ぽんと手を合わせ、──顔見知りらしい母親と話しこんでいた──監督に頼み込んだ。

 その、2時間くらい後。
「私の仕事場はどうだった?」
「すごかったー」
「あなた達も、すごく可愛かったよ。素質あるんじゃないかな?」
 渡された3姉妹のような美少女たちの写真を兄はご満悦で眺め、弟はその写真のドレス姿
のまま母親の背中でうとうと。
 暖かな目に見守られながら帰宅する一家の肖像を飲み込んで、スタジオのドアが閉じた。
14名無しさん@ピンキー:2012/10/25(木) 06:39:45.67 ID:Q2McCQ4I
つC
詳細な描写で長編化よろしく
15名無しさん@ピンキー:2012/10/26(金) 00:27:09.74 ID:oxM6o+Iu
そういえば、幾つか「女装SS総合スレ落ちてたね」ってコメントのあったスレがあるけど、そこら辺に
復活しましたって言って回るべきなんだろか。
16名無しさん@ピンキー:2012/10/26(金) 00:28:39.70 ID:HyCzf1m7
何レスぐらいあったら大丈夫なのかな
17名無しさん@ピンキー:2012/10/26(金) 23:14:44.22 ID:JWgqyQQu
一々他スレに宣伝いらんだろ
18名無しさん@ピンキー:2012/10/26(金) 23:41:20.09 ID:PLy3a4YL
>>12
女装空想小説スレなら、「ニューハーフ・シーメールでエロパロ」のまとめサイトに入ってる
19名無しさん@ピンキー:2012/10/27(土) 00:28:31.10 ID:IVBqZKRi
>>18
おおう。
ttp://bluerose.g.ribbon.to/
に纏めがあったのか。

見落としご容赦&教えてくれてありがとうございまする。

20名無しさん@ピンキー:2012/10/28(日) 13:00:59.51 ID:+1HmqDH2
まほろさんコスプレHのSS、そこにあったのかー。懐かしすぎる。

2003年ごろの話だと思うけど、「○○○は真のヒロイン!!」か何かそういう名前の二次創作スレッドで
主人公だったかのキャラが女装して責められる話があったと思うんですが誰か記憶にありませんかね。

母乳が出たこととか、接着剤タックで友人(♂)キャラとHしたりとか、十二単着衣プレイしてた記憶が。
21名無しさん@ピンキー:2012/10/28(日) 20:15:06.61 ID:VKkdsdPH
>>20
ONEのエロパロで、「清水なつきこそ真のヒロイン」。
ぐぐれば大半は読めると思う。
自分はローカルにアーカイブしてあるけどw
22名無しさん@ピンキー:2012/10/28(日) 20:23:10.53 ID:+1HmqDH2
おー。言ってみるもんだ。

ありがたやありがたや
23名無しさん@ピンキー:2012/10/29(月) 02:12:59.34 ID:AEfC7bg2
>>22
俺はそのスレのおかげで、こっち方面に目覚めたw
旅団長氏の作品は、正に ネ申 降 臨 だった。
24名無しさん@ピンキー:2012/10/30(火) 00:08:52.34 ID:v0vBclqp
まともな作家さん待ちで駄文投下その2

『NTR』 前 1/2

 自分の目に飛び込んできた光景に、自分の目が信じられなくなった。
 最近彼が冷たくなってきたのは感じていたけれども、まさか直接「浮気」の現場を見せ付
けられるとは。

 昼下がりのカフェテリア。私、朝島菜々華が一人寂しくコーヒーを飲んでいる最中、ふと
窓の外を見ると俊彰が通りすがるのが見えた。手を振って呼び止めようかと思った瞬間、そ
の手が止まる。
 彼は一人ではなく、女連れ。それも腕なんか組んですこぶる仲が良さそうだ。
 何の因果か、私には気づかずに店内に入る二人組。
 認めるのはシャクだが女のほうは私よりずっと可愛く、何より「好きな人と一緒に居れて
幸せ」オーラが半端ない。俊彰の顔も──これまた非常にシャクなことに──満面の笑顔で
崩れそうだ。彼が前私にこんな顔を向けてくれたのはいつくらいだろう?

 ゆったりとしたオフホワイトのマキシワンピにミントグリーンのボレロを合わせた衣装。
正直フリル過積載の少女めいた服だけど、彼女の儚げで守ってあげたくなるような雰囲気に
それは非常にマッチしていた。
 髪は脱色をかけたほうが服に合うと思うのだけど、背中にかかるさらさらの髪が黒いまま
なのは、ひょっとして校則が厳しいお嬢様学校の生徒なのだからなのだろうか。


 私に気づく様子もなく2人はそのまま一番奥側の席につきオーダーを。入り口に近い自分
の席からは、俊彰の背中と少女の顔が視界に入る。
 なんとなく彼女の顔に見覚えがあるような感じがして気分が悪い。あれだけの美少女、私
が思い出せないことはないはずなんだけど。アイドルに普通にいそうなレベルの容姿だけに、
あるいはテレビか雑誌で見ただけなのかもだが。

 ひょっとしてあれは俊彰じゃなくて、誰かの見間違いでは? ふとそんな思いが頭をよぎっ
てみる。あれは浮気なんかじゃなくて、ただの他人の空似、もしくは私の見間違い。
 そんな一縷の希望が沸いてきて、少し考えて彼の携帯に電話をかけてみた。
 途端に店内に鳴る聞き覚えのある着信音。
 ……脱力。

 実際に机につっぷしたのが拙かったのだろう。
 今まで和やかに会話していた少女が何事かとこちらを見ると、それにつられて俊彰(もう
疑いようがない)もこっちを見て私を発見。
「お姉ちゃん?!」
「菜々華?!」
 ……その言葉に遅まきながら、ようやく気がつく。道理で彼女の顔に見覚えがあるわけだ。
 一度気づいてしまうと、何で分からなかったのかが自分でもイミフ。
 あの「少女」は、私の弟(※妹ではナイ)の玲雄(れお)だった。
25名無しさん@ピンキー:2012/10/30(火) 00:10:59.61 ID:v0vBclqp
前 2/2

 その後の修羅場については思い出したくもない。
 ただまあ、明日俊彰と2人で会うよう約束して別れたところから見るに、我ながら未練たっ
ぷりなのだなあと自分でも思う。

 結局弟と2人で家にたどり着いたのは7時くらいになってから。
 玲雄は例のワンピース姿のまま。そうしているとどこからどう見ても女の子──それも、
悔しいことにとびっきりの美少女──にしか見えないけど、近所の知人に遭って正体がばれ
ないか、ここまでずっとビクビクし通しだった。

「お姉ちゃん……なんというか、色々ごめんなさい」
 それだけ告げて自分の部屋に戻ろうとした弟を捕まえて、私の部屋に連行する。
「……あなたねえ。姉の恋人を寝取っておいて、そのくらいで済むとか甘い考え持ってたり
しないわよね?」
「ひゃ……ひゃい」
 共働きの両親が帰ってくるまで、いつもなら3時間というところ。
 女子高の3年間で培った先輩秘伝のテクニックで、弟に「女」を教え込んで支配して、自
分に逆らえないようにするのに、まあ十分な時間だろう。
「お、お姉ちゃん? ……な、なんだか顔がとっても怖いんだけど」


 身長165cmの私より背が2cmほど低くて肩幅も狭くて、顔も小さくて肌もすべすべ。
 大学2年の私より3歳年下、高校2年になる弟は、幼いころからよく女の子に間違われる
少年だった。アイドルやらモデルやらのスカウト話が来たことも一度や二度ではない。

 私自身、前々から女装したら似合うんじゃないか、女装させてみたいと思っていて、何度
も冗談めかして誘いをかけてみたけれども、その都度断られてきた。自分の容姿を気にして
女にされることを嫌がる、あの様子はフェイクだったんだろうか?
 今日見た彼の女装は、仕草も、表情も、声や言葉遣いも完全に板についていて、最近の女
子平均なぞよりむしろずっと女らしかった。


 女の子の姿のまま部屋に連れ込んだ玲雄のお尻を、まずはワンピースの上から弄って触り
心地を鑑賞する。薄いシフォンの生地は、まるで何もまとっていないかのように直接的に体
の感触を私の右手に伝えてきた。
 彼の体から(多分制汗剤なのだろう)女の子らしい柑橘系の甘い香りがふわりと漂う。

 「標準的な男子」がどうなのかは知らないけれど、私が相手してきた「標準的な女子」に
比べると脂肪ではなく筋肉の支配する、やや丸みに欠ける双丘。そこだけは確かに女とは違
う男らしい部分だった。
 指先の伝える、弟が身に着けている下着も女物。

 戸惑う玲雄を無視して、そのままお尻の谷間に指先を軽く這わせる。
 突然の接触に、ビクンと身体を反らせて反応する弟。
「イ、イヤ……!」
 ピンクの色付リップを塗った唇からそんな言葉が漏れるが、身体はもっと正直だった。
26名無しさん@ピンキー:2012/10/30(火) 00:21:40.52 ID:rnAz7/JS
つC
27名無しさん@ピンキー:2012/10/30(火) 19:05:23.02 ID:w4YASYfz
よくやった、褒めて遣わす
28名無しさん@ピンキー:2012/10/31(水) 20:11:08.97 ID:c4C6HjRY
29名無しさん@ピンキー:2012/11/02(金) 23:02:59.97 ID:6fDc23S9
このスレだとどちらもウェルカムなんだけど、女装するキャラって「心は男」「心は女」どっちが好きな人が多いんだろか。

どちらとも好みだったんだけど、自分で書いてみると「心は女」の場合、女装の恥じらいとかなくて描写が進まぬ・・・
30名無しさん@ピンキー:2012/11/02(金) 23:10:05.25 ID:RXojKNub
初めからちんちん付いてる女の子って感じのは女装の面白みがないと個人的には思う

最初はすごく抵抗があったのにだんだん目覚めていくのが好き
31名無しさん@ピンキー:2012/11/03(土) 02:24:20.21 ID:s0nW1YG+
どっちつかずの揺れ動いてるところがいい
32名無しさん@ピンキー:2012/11/04(日) 05:22:45.34 ID:STpL6kc1
心は男でホモじゃないけど、女装してる間は心に女成分が浸み込んでくる程度
進行としては、半ば無理やり→受けが諦め→アンアンが理想
33名無しさん@ピンキー:2012/11/04(日) 11:25:28.46 ID:cq2m4kPH
「とってもお綺麗ですよ」
 長い拷問のような時間が終わって鏡を見る。
 そこにいるのは鮮やかなピンクの振袖を着た美少女。それが自分だという事実が、今更ながら死にたい
ような気分になる。
 「綺麗」という言葉を素直に喜んでいる自分もいて、なんだか凄く自己嫌悪。

 本来なら、今年の成人式はスーツ姿で出るはずだった。
 自分のスーツ姿……想像しようとしてみて、最初に浮かんだのがタイトスカートの女子姿。「私も結構悪
くないかな」と一瞬考えてしまったことに、頭を抱えてしゃがみこんでしまいそうになる。
 女装で生活し始めて3ヶ月目でこれだ。僕は本当に普通の男に「戻る」ことが可能なんだろうか?

「おお、これは我が愛しの婚約者殿」
 諸悪の根源が扉を開いて登場。視線で人が殺せたらいいのに、と思いつつ精一杯の不快感を込めてに
らみつける。
「凄い綺麗になったな。私も鼻が高いよ」
 視線を馬耳東風と受け流し、顎を指でつまんで突然口付けしてくる。

 生理的嫌悪感から逃れようと精一杯力を込めるものの、いつの間にか回された手がそれを許してくれない。
 嫌で嫌でたまらないのに、気持ち悪くてたまらないのに、段々と身体から力が抜けていく。
 何故かむくむくと頭をもたげ始めた僕の股間のものが、(下着をつけてないので)木綿の肌襦袢に直接
すられてなんだかとても変な気分になる。
--------------
 こんな感じがいいんかなあ。
34名無しさん@ピンキー:2012/11/04(日) 21:33:48.83 ID:yBmn0w9v
>>33
早く続きを書く作業に戻るんだ
35名無しさん@ピンキー:2012/11/04(日) 21:36:34.18 ID:UsYXfWxZ
>>33
これは!壺。待ってます?
36名無しさん@ピンキー:2012/11/05(月) 02:36:55.14 ID:RaU/YPmJ
>>33
そんな感じでお願いします。お願いします!orz
37名無しさん@ピンキー:2012/11/07(水) 00:10:36.47 ID:3FR7LPng
一応終わらせておこうということで。

『NTR』 後 1/3

 指先に少し力を入れ、ワンピースと下着の上から「少女」の秘孔をまさぐり刺激を与える。
「お姉ちゃん……やめて……やめて……」
 そう言って力なく首を横に振るものの、桃のような色白の頬は真っ赤に紅潮し、大きな目
には潤みを湛えている。
 更なる刺激を求めて腰をくねらせているのはたぶん、自分でも気づいていない動作。
 小さなショーツの前を押し上げてむくむくと、完璧美少女な外見に唯一そぐわない器官が
自己主張を始めるのが分かる。

「そこは、『お姉ちゃん』じゃなくて、『お姉さま』って言って欲しいなあ」
「お……お姉さま、やめてください……」
「だーめ」

 そう言って私は「妹」の唇を自分の唇でふさぐ。柔らかさ、滑らかさ、弾力、どれを取っ
ても一級の極上の唇。これまで味わってきたどの女の子たちよりもずっと女の子らしい、理
想の唇がそこにあった。半ば無理やりその割れ目に舌を潜り込ませる。
 なんだかそれだけで、穢れなき処女を蹂躙する性行為をしているような気分になる。


 同時に左手でワンピースのボタンを外し、はだけた胸元から手を進入させる。ブラジャー
とパッドをかいくぐって蕾のような小さな乳首を指でくすぐる。それは「男の胸板」の感触
ではなく、「女の膨らみ」とまでは言えないものの、脂肪が薄く載って柔らかい。
 胸の大きさがこの程度の女の子なら、何人も知人にいるレベルだ。
 もちろん右手はお尻の割れ目を服の上から攻め立てるのを止めてない。

 お尻、乳首、唇の3点から同時に来る快楽に涙目で身悶える愛らしい少女。さらさらの黒
髪(多分エクステだろう)が肩の上で踊るたびに、女の子めいた芳香が鼻腔をくすぐる。
 これが自分の「弟」だという倒錯感と背徳感が、私の背筋を駆け巡りぞくぞくする。

「ぃ……あっ……」
 唇を離すと、熱い吐息とともに女の子そのもののつやめいた声がこぼれる。
 床に女の子座りで(!)へたりこむ「少女」を少し放置して自分のスカートを脱ぎ、机に
しまってあった『道具』を取り出す。
 女子高時代の先輩の卒業祝いとして譲り受けた大切な贈り物。私自身の身体にも何度も挿
入されたことのある、黒光りのするペニスバンド。
 ついでに部屋の全身鏡を移動させて「少女」の前に設置してみる。

 「彼女」を抱え上げる形でもう一度立たせ、後ろからワンピースの裾をめくってお尻を露
にする。
 伸びない素材だけに難しいかと思ったけれども、すべりの良い柔らかなシフォン生地と、
それ以上に滑らかな手触りのスネ毛の一筋もない両脚は、ほとんど抵抗もなくするすると腰
までスカートを持ち上げさせてくれた。

「やだ……いや……許して……やめて……お姉さま、やめて、やめてください……」
「だーめ」
 哀願する「妹」に再度その言葉を言い放ち、下着を太ももまで下ろす。窮屈な女物のショー
ツに押さえつけられ、はちきれんばかりになっていたペニスが外気に晒され、辺りに(これ
ばかりはどうしようもない)雄の匂いを振りまいた。
38名無しさん@ピンキー:2012/11/07(水) 00:11:50.48 ID:3FR7LPng
 後 2/3

 もっともその部分は視界の外。代わりに目に入るのは「彼女」の薄く化粧された、少女そ
のものの愛らしい横顔。肌はどこまでもきめ細かく、こんな至近距離で見ても毛穴の気配も
ない。もし私の肌がこんなに綺麗なら人生変わったのだろうか?
 長い髪の間から垣間見える首は、喉仏も判然とせず細くなだらかだ。

 抱えた身体は羽毛のように軽く、ウェストはもう少し絞れば両手でつかめてしまえそう。
 筋肉は確かに女子平均よりは多いけど、運動部の娘にくらべればまだしも控えめなほう。
むしろ程よい弾力となって抱えた腕に快感を与えてくる。

 外見も、喘ぎ声も、肌触りも、見えている範囲ではどこをとっても極上の美少女そのもの
なのに、少女にはありえないものが股間で刺激を求めている、そんな不思議な状況。

 その器官をあえて無視して、アヌスを指で執拗に刺激する。
「ひゃ……ん、あぁ……ん……ん……」
 それだけで、こらえようとしても、こらえられない喘ぎが唇から零れる。

「これは罰なんだからね。姉の恋人を寝取ろうとするとか、酷いことしたあなたへの罰」
「ちが……ちがぅ……ちがうの……」
「違う? どこがどう違うの? ちゃんと言ってみなさい」
「……ぃゃ……やっぱりそのとおりです……私は悪い子なんです。ごめんなさい……」
 「彼女」の耳に口を近づけ、耳たぶを甘噛みする。それはマシュマロのように柔らかくて、
甘さで舌が痺れてきそうな錯覚すら覚える。耳の穴に舌を入れたり口をつけて吸い上げたり。
 新しい性感帯の発見に、一々身悶えして反応してくれる様子が面白い。
 あまりに感度の良好さに調子に乗りつつ、右手のアヌスへの刺激もヒートアップ。


 ただ、これまで私が相手をしてきた女の子たちの場合、大抵この段階になれば挿入を哀願
するようになるのだけど、「彼女」の場合快楽と羞恥に真っ赤になって身悶えつつ耐えてい
るだけで、それ以上の段階には中々行かない。
 やっぱり、幾ら外見が女そのものでも、身体の反応には男と女で違いがあるのだろうか?

 本当なら自ら挿入を懇願させるところまで行きたかったのだけれども、あきらめて指にロー
ションをつけて挿入に繋げる。
 今までの刺激で柔らかくなっていた穴は意外なほどたやすく私の指をすっぽりと根元まで
指を飲み込む。そのまま出し入れしたり、中をかき回したりして感触を堪能。
 そのたびにビクビクと身悶え、あるいは甘く熱い吐息をこぼす偽少女。

「ぁぁ……ぃく、いっちゃうぅ!」
 中指を軽くまげて直腸の壁を刺激すると、おそらくスカートの内側一面に白濁液が飛び散
のだろう、栗の花のような匂いがあたりに広がる。
39名無しさん@ピンキー:2012/11/07(水) 00:13:48.93 ID:3FR7LPng
 後 3/3

 指をきゅっと締め上げる括約筋の感触に名残を惜しみつつ、そっと抜き出す。
 途端に脱力してへたり込む体を軽く支え、上半身を前に倒して膝付きの形で立たせて四つ
んばいにする。いわゆる雌豹のポーズとでも言うのだろうか。そんな感じ。
 私は背後に回って膝立ちになり、ローションをかけたペニバンを菊門に押し当てる。
「いやぁ……ごめんなさい、お姉さま、それだけは勘弁して、許して」
 折れそうなウェストを両手でしっかりと握り締め、始めはかるくゆっくりと、徐々に力を
こめて肉棒を突き入れる。

「だーめ」
 もう一度その言葉を重ねてペニバンをしっかりと根元まで貫通させる。
「ほら、お○んちんを根元までずっぽりと飲み込んで。いやらしいオマ○コね」
 処女のくせに……と続けようとして詰まる。この様子だとこの子、実はもう「処女」じゃ
なかったりするんじゃなかろうか。
 それ以上考えると怖くなりそうなので思考を中断。

 先ほど移動させた鏡の中では、可愛らしい衣装に身を包んだいかにも純真そうな美少女が、
まるで獣のような格好で交尾させられている。
 顔に浮かぶのは、羞恥、快楽、屈辱、愉悦、悔悟、陶酔、そのすべてを含む複雑な表情。
口元からは涎が、目から涙がだらだらと垂れ落ちているのに、不思議なことにその顔はまる
で聖女のよう清らかさすら湛えている。

「ぃゃ……いやぁ……だ、だめ、ゆるして……いやぁ……」
 口から零れるのは拒絶の言葉。それなのに肉体はどうしようもなく貪欲に、肛門の与えて
くれる快楽を貪ろうとして肉棒を求めてくる。本人の意思とは関係なく自分から腰を動かし
て刺激を求め、全身がビクンビクンと痙攣を繰り返す。
 その様子に応えて、激しく腰を振って犯し続ける私。

 挿入しているのが男であればとっくに射精して終わりなんだろうけど、私の股間についた
紛い物は堅さを維持したままで中断を許さない。
 股間には一切刺激を与えていないというのに、肛門のもたらす刺激だけで既に何度も発射。
とっくに全身がぐったりしているのに続く、終わりなき快楽の輪舞。


 精液もとうに枯れ果て、とっくに射精できなくなって、それでも肛門から強制的に与えら
れる快楽だけで何度も「女」としての絶頂を繰り返す。それが何度続いたのだろう。
 漸く「彼女」が気絶して床に完全に倒れんだ時には、私自身精も根も尽き果てたような気
分だった。

 女子高を卒業して、もう完全に辞めるつもりだった少女との行為。
 最後の最後に手に入れた、極上の美少女であり、かつ自分の実の弟でもある不思議な「妹」。
 今後の「彼女」の関係をどうするか、俊彰との関係をどうやっていくのか。そんなことを
ぼんやりと考えつつ、自分自身の肛門を弄りながら自慰に耽るのだった。
40名無しさん@ピンキー:2012/11/07(水) 06:39:34.43 ID:ZtNf2UOd
GJ!
41名無しさん@ピンキー:2012/11/07(水) 11:41:07.49 ID:Am8M0X3/
こうなると、姉妹と彼との出会いを知りたくなります。

実は、妹(実は弟)のお尻を何度かホジッテいて、さらに欲しくなって、障害物の姉に近付いた。
とか?
42名無しさん@ピンキー:2012/11/07(水) 23:48:39.76 ID:3FR7LPng
むう。そこに着眼されるとは意外でした。実は「後」を書く前にとっくの昔に完成してたものの、
お蔵入りにするかどうか迷っていたおまけ部分を投下してみます。

『NTR』 結 1/2

 『朝島』の表札の出た通りなれた門を、今日ばかりは緊張して俊彰と2人でくぐる。
「ねえ、私、変じゃないかな?」
 今日のために誂えた紺のスーツのスカートをいじりながら問いかけると、俊彰は笑って、
「いや、とても綺麗だよ。少しも変じゃない」
 と繋いだぎゅっと手に力を込めた。彼の力強い大きな手に包まれていると、不安が溶けて
いくようで安心できる。

 母親に案内される形で、父親の待つ居間に到着。
 深々とお辞儀して中に入り、両親の前にふたり正座。
「……お義父さん、お嬢さんを僕に下さい」
 少しの間のあと、意を決したように俊彰は定番の台詞を口にする。

 腕を組んだまま、暫くぴくりとも動かず考えている様子の父。やがて、
「……なあ、俊彰くん。最初君が菜々華の恋人として来てくれたとき、『最近の若者になく
しっかりした子だ。これなら娘のことをお願いしてもいいかな』と思ってた」
 その言葉に、一瞬顔を輝かせる俊彰。
「ただなあ、息子を嫁に行かせるのはどうなんだと」
 居間のドアから、複雑な表情で部屋の中を覗き込んでいた菜々華姉さんが、更に顔を複雑
にするのが見えた。

 母親には何度か見せて既に納得してもらってはいたけれども、父親の前にこの格好で居る
のは初めての経験で。
 きちんと化粧した顔、パッドで膨らませた胸元や、肌色のストッキングに包まれた膝の見
えるタイトなスカートなどが急に居心地の悪いものに感じはじめて落ち着かない。
 いつも意識することのない、ガードルで押さえつけて目立たないようにした股間のものが、
何故かとても気になり始める。

「俊彰くん、分かってるんだよね。その子はそんなナリをしていても、君と同じ男なんだよ」
「はい、もちろん承知の上です。その上で、『彼女』を頂きたいとお願いしに来ました」
「玲雄も、それでいいんだね」
「ええ、私は俊彰さん以外との結婚は考えられません」
「……私が『駄目だ』と言ったらどうするんだね」
「何度でも、許可が出るまで来るつもりです。最初からこんな無理が通るとは思ってません」
「それでも駄目なら、両親とは別れて、私たち2人だけでひっそりと暮らすつもりです」
 ふたりの言葉に、そのままじっと長考に入る父。その胸中をどんな思いが交錯したのかは
よく分からない。

 ようやく口を開いたとき、父が発したのはこんな言葉だった。
「玲雄はまだ大学生だ。このまま結婚とか許すわけにはいかない」
「じゃあ」
「玲雄を大学卒業まできちんと養って世話をしてみてくれ。そのくらいの甲斐性は見せられ
るだろう。結婚だのなんだのは、卒業した後の話だ」
「ありがとうございます!」
「その言葉はまだ早いよ。学費と生活費も出せないようなら、容赦なく別れてもらうからな。
もちろん大学生活が滞ってまともに卒業できなくなるようでも駄目だ」
43名無しさん@ピンキー:2012/11/07(水) 23:49:49.86 ID:3FR7LPng
 結 2/2

 それから更に数年が過ぎた6月吉日。
"I, Reo, take you Toshiaki, to be my husband, to have and to hold from...."
 ごく少ない親類だけを招いた、海外のチャペルでの小さな結婚式。Aラインのシンプルな
ウェディングドレスに身を包んだ私は、練習を重ねた言葉を紡ぐ。
"...I pronounce that you are husband and wife. Toshiaki, you may kiss your bride!"
 目をつぶり軽く上を向く。私の唇に、俊彰の少し乾燥した唇が重なる。
 これは私のものだ。もう絶対に誰にも渡さない。そんな気分が改めて沸いてくる。

 最初に恋をしたのは私だった。
 告白をして、「僕は女の子が好きだから、男の君とは付き合えない」と返事をもらって半
ばヤケでした女装での再告白。
 今度はすんなりOKをもらえたのだけど、最初は「この間自分に告白してきた男子高校生」
=「今の彼女」ということに気づかなかったのだそう。
 私が男と分かったあとも交際は続いて、体を重ねることすら幾度も行って、でも突然言わ
れた「別れよう」の言葉。

 それは俊彰が兄を事故を亡くた直後のこと。自分が生きていれば結婚して養う決心はつい
ているけど、もし自分も同様に死んだ場合、私の将来に責任が持てない。自分と別れて男と
しての生活を取り戻して、普通に生きる道を選んで欲しい、という、その時の説得。
 私の将来を真剣に彼が案じた末の結論と頭では理解できても、でもとてもショックで。

 その後「姉の恋人」として俊彰が登場したときも更にショックだった。
(私のことが忘れられず、まったく別の場所で偶然出会った、どこか面差しの重なる姉を恋
人にしたそうなのだが)

 その姉との交際がうまく行っていないとの相談を受けて、「男の格好で来て」と指定され
たのを無視してお洒落して出かけた『あの日』。
 その時「最後」のつもりで甘えたことが生んだ、自分でも予想外の今の私の姿。

 菜々華姉さんにとっては、現在進行形での恋人である俊彰を寝取った弟。
 俊彰にとっては、私を寝取ろうとした菜々華。もしくは菜々華を寝取りかけた私。
 私にとっては、元彼とはいえ最愛の人である俊彰を寝取った(?)姉。
 なんだかとても複雑な私たち3人の関係。


 少ない参列者の間を回り、最後にひどく緊張をしながら姉の前に2人並ぶ。
「まさかあなたに先に嫁に行かれるとはね……」
「お姉ちゃん、色々とごめんなさい」
「菜々華、こういう結末になって悪かったと思ってる。でも、どうしようもなかったから」
「分かったわよ。分かってるわよ。……なんだか私、凄い馬鹿みたい」

 そのまま、目に涙を浮かべる姉。一瞬気まずい雰囲気のまま終わるのかと思ったけれども、
「2人とも、幸せにならないと許さないから!」
 と、涙声のまま私と俊彰のふたりを祝福してくれたのだった。
44名無しさん@ピンキー:2012/11/08(木) 06:25:04.66 ID:Cu3B/qiK
OK、GJ!
45名無しさん@ピンキー:2012/11/10(土) 23:50:05.25 ID:KaeuU4yw
全然関係ないけど、「弟はお姉ちゃん」というフレーズが脳裡をよぎった
46名無しさん@ピンキー:2012/11/11(日) 00:09:10.82 ID:JRmIuzrS
両親が離婚して、別々に再婚したら、相手は兄妹か姉弟で、
結果、離婚前の実の兄弟か姉弟は、義理の女の子な兄と妹か弟になった。

とか、

元が連れ子同士の再婚で、お姉ちゃんだと紹介されたけど実際には弟だった。

とか
47名無しさん@ピンキー:2012/11/11(日) 00:09:10.57 ID:PRMDwcTN
年下の女の子に混じって女の子としての生活を強制させられて、弟のことを「お姉ちゃん」って呼ばないと
いけなくなった兄っていいよね。
48名無しさん@ピンキー:2012/11/11(日) 11:08:57.89 ID:PRMDwcTN
「よく似た姉と弟の入れ替わりもの」
の場合、「弟のふりをした姉」の立場から「姉(自分)のふりをした弟」を見ると、「弟はお姉ちゃん」になるのか。
姉と弟の間にもう一人弟が入ると分かりやすいのかな。
こんな感じもあり?

--------------
「こんばんわー。撮影どんな状況でしょう」
 もはや勝手知ったるスタジオに入り、知り合いのスタッフの人に聞いてみる。
「おはよう、弟クン、いつも出迎えありがとうね。いい感じで進んでて、もうそろそろ終わりそう」

 スタジオの中では、3人の美少女たちが色々ポーズを取ってフラッシュを浴びている。森ガールって
言うんだろうか? よく知らないけど、ゆったりとした、でも女の子女の子した衣装。
 その中で一番ひときわ可愛い、真ん中の子、瀬野悠里。

 今人気の(スタッフの方たち・談)読参モデルであり、両親の再婚で義理の姉になった少女であり、
俺の現在の恋人……なのかどうかイマイチ分からなかったり。
 というのは、義姉の実の弟(俺にとって義弟の俊也)が姉にそっくりで、よく入れ替わりで撮影に参加
させられたりしているからだ。
 入れ替わった状態だと、俺にも見分けが付かないのは要精進か。

(略)

「お疲れ、お姉ちゃん」
「二人のときは『悠里』って呼んで、って言ってるでしょ?」
「悠里、おつかれさま」

 ……なら今は普通に姉でいいのか、と安心して可愛らしいピンクの唇に口付け。
「って、俊也お前か」
「キスの味で分かるとかなんかエロくっていいよね」
 姉であり、恋人である悠里の顔で、ニヤリと笑う義弟。

 スタッフの皆様、読者の皆様、美少女モデルとして写真に写ってるのがこんな弟でゴメンナサイ。
(続かない)
49名無しさん@ピンキー:2012/11/11(日) 17:51:27.39 ID:dpNkmQyC
>48
いいね、いいね、GJ!
このまま続かないのが惜しい設定ですな。
50名無しさん@ピンキー:2012/11/11(日) 20:24:35.92 ID:PRMDwcTN
「ね、雅明」
「ん?」
 半ば呆れたまま停めていた車に歩き出そうしたとき、お姉ちゃんそのままの口調、声色で呼びかけられ、
条件反射のように振り向いてしまう。
「今のキス良かった。……お姉ちゃん、勃ってきちゃった」
 確かに良く見るとスカートを押し上げて、なんだか膨らんでる。
 しかし「お姉ちゃん」は勃起しないものだ。普通。

「ねえ……雅明、エッチしない?」
 ついでに勃起したからと言って弟にエッチをせがんだり普通はしないものだけど……うちは特殊だから。
「しない。俺の恋人は悠里なの」
「フェラチオとかした仲なのに……」
「お姉ちゃんと同じ顔で、顔を赤らめて懇願してもダメ。あれは悠里と勘違いしただけだし、悠里以外ともう
セックスする気はありません」

(略)

 ちゅぴ……ちゅぱ……
 ラブホテルの一室、ベッドに腰掛け、天井のしみの数を数えながら自分の意思の弱さを呪う。
 見下ろすと同じ顔の2人の美少女たち(片方は男だが)が、競い合うように俺のちん○を二人で舐めている。
「雅明のおちん○ん、おいしいよう……」
 今、切なそうに声を上げているのはどちらなのか。
 体の見えないこの状況だと、判断の付かない自分が情けない。

(略)

「雅明、お姉ちゃんの中に一杯出して! あなたの赤ちゃん欲しいの!」
 お前はお姉ちゃんじゃなくて弟だろうが…そんな突っ込みも入れる気にもなれない。入れる余裕もない。
「悠里、出すよ!」
 本当のお姉ちゃんにアナルを指で絶妙に責められつつ、偽者のお姉ちゃんの偽のまん○に自分の分身を
ピストンさせる。前後から来る快感の嵐に、息をつくのもやっとというざま。
 今まで悠里と2人でしたときとは比べ物にならない気持ちよさで絶頂を迎え、俺は白濁液を「お姉ちゃん」の
体内にぶちまけたのだった。

(悶々として書いた。今は反省している。今度こそ本当に終わり) 
51名無しさん@ピンキー:2012/11/11(日) 23:43:46.50 ID:seDbWwG1
GJ!
(略)の部分を補完したら堂々たる作品になるんじゃないか?
52名無しさん@ピンキー:2012/11/12(月) 15:37:42.22 ID:SOg6p52z
読者の頭の中で補完したら良いよ。

なぜ、姉弟で入れ替わる様になったか。
とか、
義理姉弟同士で、接吻したり性交するようになった理由とか。
53名無しさん@ピンキー:2012/11/12(月) 21:30:13.27 ID:Z6av+aK+
まあ、今まで脳内で垂れ流していた妄想を、脳外へ垂れ流すようになっただけなので、へっぽこ具合は
ご容赦を。
「俺のほうがもっと上手く書ける!」というかたお待ちしております。

--------------
『弟はお姉ちゃん』 シチュエーション2

「で、裕則。お前が一番重要な役目になる」
 次の『作戦』の指示を皆に下したあと、最後にお兄ちゃんがボクに指を突きつけて言った。
 今まで名前が出なかったから、『今回はお役なしかー』と呑気に考えていた自分のウカツさがイヤだ。

「今回お前には『お姉ちゃん』になってもらう」
「……ボク男だよ? お姉ちゃんになるって何のこと?」
「大丈夫大丈夫、お前なら立派に女になれるって! 弟は兄の命令に従うもんだ」

(略)

「いやフツーに可愛くね?」 「こんな子彼女にしてぇ」 「いっそこれなら男でも…」
 結局押し切られて、女装状態で皆の前に出るなり、どよめきがあがった。
 小柄な大学生である姉の持ち物の、茶色のブレザーにピンクのワンピースは少し大きくて、色々なところ(肩とか
ウェストとか)が余った感じがするけどおおむね大丈夫そう。カツラも被らされて、靴も女物。
(どれだけ用意周到なのかと)
 膝丈のスカートがスースーして、脚が丸見えなのがなんだかとても恥ずかしい。

「俺の見立ては間違ってなかったな。背筋はちゃんと伸ばして、内股になるように気をつけて。今日から作戦達成
までの間、ここでは慣れるためにずっとこの格好で『女になる特訓』をしてもうらうか。
 他の皆はこいつを『裕美』って呼ぶよーに」
「それで『お姉ちゃん』になる、ってどういうこと? 顔とか全然似てないし、マネしろって言っても無理だよ」
「うん、姉貴には悪いけど『裕美』のほうが何倍も可愛いな。あれはそういう意味じゃなくって……」

(略)

 『トックン』は意外に長く続いた。動作やら表情やら言葉遣いやら、色々指摘されてめげそうだ。でも、まあ、
「なんで俺がそんなこと……」
「弟は姉の命令に従うもんでしょ」
 初めてやってきたゲコクジョーの機会がとても快感で、回りがちやほやする感覚が新鮮で、癖になってしまいそう。

(略)

 いよいよ決行の日。
 ボクは水色のカーディガン、白いブラウスに同じ白のミニのチュールスカートって格好で街角に一人立っていた。
 顔には化粧までさせられて、無事「大学生くらいの女の人」に見えてるんだろうか。
 それともさっきから結構いる、ボクにちらちらと視線を走らせる人たち(主に男性)はボクが男ということはバレバレ
なんだろうか。
 心臓がバクバクしてちっとも落ち着かない。近くで見守ってるというお兄ちゃんたちは、ちゃんといるのだろうか。

 そうこうして待つこと15分(その間にナンパされること2回)、ようやく写真で見た、ターゲットの男の人の姿を発見。
「あ、あの」
 ここを逃したら、色んな努力が無駄になる。そう思いながら、必死の思いで声をかけた。

(あとはご想像におまかせにて)
54名無しさん@ピンキー:2012/11/12(月) 23:09:18.91 ID:FZaP8hYa
つC
55名無しさん@ピンキー:2012/11/13(火) 20:54:58.65 ID:lMuevjcM
>>52
・もし自分とそっくりな人間がいたら、「どこまで騙せるか」に興味が沸いて、とりあえず入れ替わりしてみるとか、
・同じ屋根の下に年頃の美少女がいたら好意を持つのは当然だろうとか、
・「実の兄弟姉妹」という壁がないなら、それで恋人になることもあり得るだろうとか、
・大学生くらいの恋人同士なら、キスやセックスはやるだろうとか、

そのくらいが「普通」だと思ってしまうので、あんまりそこら辺については深く考えてなかったかなあ。


・姉のほうはナルシストが結構入ってて、「自分自身とデートしてみたい」 ⇒ 「弟に自分の格好させてみよう」 ⇒
「おお、服装交換してデートしたらばっちりだ」 ⇒ 「デートだけだと物足りない」 ⇒ 「ペニバンつけて掘り掘り」とか、
・弟のほうも「可愛い」と言われるのがまんざらでもなくて、可愛い服着るのが大好きな状態に調教済みとか、
・読参モデルに応募したのはもともと実は弟のほうだったりするとか、
・姉はモデル時に気に入った服があったら即購入orもらって帰って、それを弟に着せてエッチするのが大好きとか、

今回の話にも色々裏はあるけど、まあ自分の中で妄想するだけで、作品にまとめるは無理かなあ。
56名無しさん@ピンキー:2012/11/14(水) 15:44:56.16 ID:oLsOGC6x
「普通」は、わかった。
義理姉弟、または、実姉弟、の交尾の理由は説明されているが
義理弟兄の交尾については?
どうして、交尾始めた?

もしかして、姉は二穴とも処女で、弟と義理弟のアナは処女ではない?
義理兄弟同士では、舐めて頬張って飲んでいるが、姉は舐めもしなければ飲んだこと無い?
57名無しさん@ピンキー:2012/11/14(水) 23:15:45.63 ID:Tna4PABX
・「キスの味でどっちか分かる」人間を相手に、さすがにセックスでごまかしきることはできないので、
 義理弟兄同士での連結は>>50の3Pの時点が最初。
・3Pの途中に繋がるとこまでいった流れは、ご想像にお任せです。
・義姉と弟はふつうにフェラチオ&セックス経験あり。
・義弟の穴は姉により非処女、他の人が掘ったかどうかと、義姉と弟の穴はお好みに合わせて。

しかし、投下したSSを元にこれだけ色々考えてもらえるとか、作者冥利ですな。ありがたやありがたや。
58名無しさん@ピンキー:2012/11/14(水) 23:21:28.76 ID:Tna4PABX
『弟はお姉ちゃん』 シチュエーション3 1/4

「お、……お姉ちゃん、それ、ナニ?」
 いつものように預かっていた姉宛のラブレターを届けに、ノックもせずに姉の部屋に入っ
たあたしの目に、とんでもない光景が飛び込んでいた。

 スカートをたくしあげて、ショーツもずり下げて。
 一瞬オナニーでもしてるのかと思いきや、そこに鎮座ましますのは、(あたしの趣味のBL
系の)漫画やイラストで見慣れた、でも実物は物心ついて以来初めてみる物体。
 10年近く「姉妹」として一緒に生活していて、なんで今の今まで気づかなかったのだろう。

「あ……」
 完全に固まってしまってたお姉ちゃん?に近寄って、よく眺めてみる。
「どう見てもおちん○んだよねこれ。前一緒に風呂入ったとき、こんなのなかったよね?」
「美香、ごめんなさいっ!」


 最初その母娘と出会ったとき、「こんな綺麗な人っているんだ」と、そんなことを考えた。
 「静子」と名乗ったまだ若い母親はとても優しそうで、あたしと同じくらいの年の娘はな
んだか内気そうで。
 ピンク色のふりふりしたワンピースと、大きなリボンがよく似合うその小柄な女の子は、
当時は髪を男の子みたいに短くしていたことを覚えている。

 年齢も学年も一緒で、生まれが3ヶ月前だから、姫乃のほうがお姉ちゃんなのね。
 「ママの再婚相手を紹介するね」、と言われて今会ってるのが何故に女性なのかという疑
問で頭を一杯にしつつ、あたしはそんな会話を半分聞き流していた。
 あたしが小学1年の「その日」──麗香ママと静子ママ、姫乃お姉ちゃんと、それにあた
しこと大久保美香が『一家』になったのだった。


「姫乃お姉ちゃん──お兄ちゃんなのかな? 理由を教えて欲しいな」
 興味津々なあたしの視線を受けて、もじもじしながら両手で股間を隠す。
 そうするともう、どこからどう見ても相変わらずの美少女にしか見えなくて。

「お兄ちゃん、でもなくって、本当は弟になるの。瀬戸崎拓馬。それが本当の私の名前」
「拓馬って、あの?」
 あたしの言葉に、こくりと頷く。

 姉が朝晩お祈りしている以外、ほとんど誰も見向きもしない家の仏壇。そこにあたしの祖
父母に並んで遺影のある、姫乃お姉ちゃんの実の弟──拓馬っていうのは、その少年の名前。
「『災害』でお父さんと姉が亡くなって、身寄りがなくて困ってたところに麗香さんが引き
取ってくれるという話が出てきて、でも男の私がいると駄目だって言われて」
59名無しさん@ピンキー:2012/11/14(水) 23:23:02.46 ID:Tna4PABX
 シチュエーション3 2/4

 確かにあのころ、『あの男』との離婚やらなんやらあって、ママは極端な男嫌いになって
いた。実際にそういう話もあり得たかもしれない。
「──だから、亡くなったのは拓馬だということにして、私が『姫乃』として死んだ姉の代
わりに高校卒業まで生活することになったの」

 ただいま、あたし大絶賛混乱中。

 あたし達が通う高校にミスコンがあったら優勝間違いなしの、超美人のお姉ちゃんが実は
男で弟で、あの「拓馬」が実は生きていて目の前にいて、じゃあ赤飯炊いた初潮祝いとかナ
プキンの貸し借りとか全部嘘だったのかとか、そういえば生理の相談とか結構してたよなー
とか、思えば胸が真っ平らなのはそういうことかとか、女所帯と思っていたあたしは風呂上
りとか思いっきり裸の胸を晒していたようなとか、これまで股間のアレは今までどうやって
隠していたのとか、なんで今それを出しているのとか。
 自分の「遺影」を毎日拝むというのは、どんな気分だったのだろう、とか。

 それより何より最重要ポイントとして、漫画の中にしか存在しないと思ってた「女装すれ
ば絶世の美少女な男の子」が目の前にいるとは!

 ひゃっほい。


「美香……流石に恥ずかしいよ」
 BL(ボーイズ・ラブの略ね、一応)好きにも色々パターンがあって、あたしのような『女
にしか見えない男が登場する』タイプを好きというのは、どちらかと言えば少数派。

 上から下まで漆黒の、フリル満載な衣装。パニエで膨らませたミニのスカートからは、黒
ストに包まれた、すんなりと伸びた細く長い脚が覗いている。
 服に合わせた真っ黒なヘッドドレスは、「烏の濡れ羽色」という表現のぴったり似合う、
ウェストあたりできちんとそろえた絹のような髪によくマッチ。
 ゴスロリで歩いているだけで注目の的なのに、それが抱けば折れそうなくらい華奢な超絶
美少女だということで、もう人だかりができそうな勢いだ。

 そのゴスロリ少年と、恋人繋ぎで指を絡めあって道を歩く。
 これまで溜め込んできたお小遣いをはたいて購入した衣装一式は、空恐ろしくなるくらい
彼?彼女?に似合いまくっていた。

「ふふっ、みんな見てる。拓馬のこと、すごく可愛い女の子だと思って見てる。あのオタク
の人とか、携帯で写真なんか取って、きっと今夜のおかずにするんじゃない?」
 あたしの言葉に色白の顔を真っ赤にして恥ずかしがる姫乃=拓馬。すごく可愛い。

 料理や家事がとても上手くて、さりげないお洒落とかにも気を配っていて、学校では今時
ありえないくらいの大和撫子と評判で。
 でも「実際は心も体も男だから、それがばれないように女のフリに必至なだけ」と、鈴を
転がすような綺麗な声で打ち明けてくれた人。
 男は性的対象として見られなくて、女の子が好きで、本当はあたしのことを「異性として」
好きなことをひた隠しにしていたんだと、言ってくれた少女のような少年。
60名無しさん@ピンキー:2012/11/14(水) 23:25:16.82 ID:Tna4PABX
 シチュエーション3 3/4

 『お姉ちゃん』であり、『弟』であり、今は恋人でもある存在。
 そのひとと今、あたしは結ばれようとしている──

 白鳥のような首も、小さな卵形の顔も、絹のような肌も、薄い肩も、(胸と股間を除けば)
がさつなあたしと違った、すべてが完璧な女性美を体現するヴィーナスのような“少女”。
 ゴスロリ衣装のままベッドに仰向けになる、その華奢にすぎる身体に跨って。
 無骨なあたしの左手の指と、黒いてすべすべした手袋に包まれた白魚のような右手の指を
互いにしっかりと繋ぎあって、あいた右手でスカートやパニエの中から「少年」を探し出す。
 そこはもう、かちこちの状態で、先走り液で濡れ濡れになっていた。

「やっぱり拓馬、凄い興奮してたのね……下着も着けずにミニスカートのゴスロリ姿で道を
歩いて。色んな人に見られて、こんなにお○んちんを堅くしちゃって」
 違う違う、というように首を振るけどその様子は力強くならず、代わりに彼の分身が、何
かを求めるようにひくつく。

 余裕ぶってはいるけど、あたしの股間も既に濡れ濡れで、まるでお漏らししたみたいな状
態。処女なのに、言葉責めしているだけなのに、こんな状態になるって、あたしはこれから
一体どうなってしまうんだろうか?
 慎重に位置をあわせて、あたしの割れ目に彼のものをあてがい、腰の位置を下げる。

「姫乃、挿れるよ?」
 外見と、服装と、騎乗位という身体同士の位置関係から、なんだかまるで女である拓馬を
男であるあたしが犯しているような錯覚がして。
 その錯覚をそのまま口にしてみる。
 BLで自分が大好きだった(ただしBLではあんまりない)「女装した美少年を女のように犯
す」シチュエーションが体現できるとか、鼻血を吹きそうだ。
 あたしの体が男だったらもっと最高だったんだけど、そこは仕方がない。

「い……れる?」
「そう、姫乃の可愛い処女のおま○こに、ボクのちん○が入っていくよ……最初は痛いけど
大丈夫。ボクに任せて、力を抜いて……」
「ぃやぁっっっっっ!」
 自由な左手で真っ赤に染まった顔を隠し、羞恥心に悶える「お姉ちゃん」。
 だけどもあたしの右手の中の弟のモノは、今にも暴発しそうなくらいに張り詰めてきた。

 「最初は痛いけど大丈夫」? よくそんな妄言を吐けたものだと自分が憎らしい。
 まだ先っぽが入っただけなのに、全身が真っ二つに引き裂かれてしまうような激痛が走る。
「姫乃のおま○こ、すごくしまって気持ちいい! 処女なのにこんなに濡れて、実は淫乱の
素質があるんじゃないか?」
 腰を1cm、1mm下げるだび、メリメリと音を立てて体のパーツが壊れていきそうな感じすら
する。これが気持ちよくなるとか絶対嘘!
61名無しさん@ピンキー:2012/11/14(水) 23:27:10.47 ID:Tna4PABX
 シチュエーション3 4/4

 気を抜くと痛みに泣き叫びそうで、あるいは腰を浮かして逃げ出してしまいそうで、口か
ら出る、目の前のゴスロリ美少女を苛む言葉が早口になってしまう。
「姫乃の中、すごくあったかい。さあ、処女膜をやぶるよ……」
 その言葉に興奮したのか、彼の腰がびくんと痙攣し、その弾みで多分破瓜の痛みが走る。
いや痛みとかそんな可愛いレベルじゃない。悲鳴が口から出るのを止めるのがやっとだ。

「いやぁぁぁ……い、痛いぃっ! 痛いぃっ! 身体が裂けちゃうぅ!」
 そのあたしの身体の下で、架空のおま○こに架空のペニ○を突っ込まれ、架空の処女膜が
貫かれる、破瓜の架空の痛みに身悶える、架空の美少女。
「さあ、根元までずっぽり入ったよ……すごくいいよ……腰を振って」
 あたしの穴はその美少女の、少女にはありえない器官をすっかり飲み込んだ状態。痛みに
耐えつつ、足に力を入れて腰を前後に動かす。微妙に、痛みが軽くなった気がした。
 繋いだ手に、ぎゅっと力が入る。

「うん……すごくいいよ……姫乃のおまん○、すごく気持ちいい。……出すよ!」
「出して! あなたの精液を私の胎内にいっぱい注ぎ込んで!」
 もう完全に『処女の女の子』になりきって、そんな嬌声を叫ぶゴスロリ少年。
 その次の瞬間、あたしは「お姉ちゃん」の熱いほとばしりを膣内でしっかり受け止めた。


 それから3回も射精して、わりとぐったりした状態でベッドに2人横になっていた。
 あたしが腕枕して、拓馬が胸に抱かれる格好の、ここでも逆転した状態。同じシャンプー
を使っているはずなのに、なんだかとてもいい香りに感じる髪の匂いが、鼻腔をくすぐる。

「あたしの初恋の人の名前知ってる? 瀬戸崎拓馬っていうんだ」
「それって……?」
「変だよね。写真の中で会ったことのない、5歳の男の子に対して初恋だなんて。しかも
それが遺影でさ。もう、絶対に叶わない恋だって決まりきっててさ」
「……」
「だからさ、どれだけあたしが嬉しかったか分かる? その人に直接会えて、しかも『好
きだ』なんて言って貰えてさ」
 しかもそれが大好物の女装少年で、という部分はあえて口にしない方向で。

「……変なことばっかり言うから、すっかり嫌われたと思ってた」
「ごめんなさいねえ、変な女で。でも、拓馬の喜ぶことばかりやってたと思うんだけどな」
「えっ?」
「ばれてないと思った? ゴスロリ着てみんなに見られてさ、でも凄い興奮してたよね?」
「……やっぱり変だよね。それっておかしいよね。嫌われもしょうがないよね」
「それを言うなら、それを見て興奮してたあたしのほうがずっと変態だよ」

 彼の、あたしよりずっと華奢な、美少女そのものの身体をぎゅっと抱き寄せて、そして
耳元で、今まで言えなかった本心からの告白を、あたしは囁いた。
「嫌いになったりとか絶対しない。大好きだよ、拓馬。──大好きだよ、『お姉ちゃん』」
62名無しさん@ピンキー:2012/11/14(水) 23:40:24.81 ID:Tna4PABX
>>46
> 元が連れ子同士の再婚で、お姉ちゃんだと紹介されたけど実際には弟だった。

の設定をお借りして一作。
再婚のはずなのに女同士になってしまったのはなぜなのか、自分でも良くわかりませんが。


最初、拓馬が「明日の体育の授業に備えて」
ttp://kokan.tvlife-net.com/0008.htm
の作業をしていた、って説明がうまく入れなられなかったのが自分でも残念。
みっともなくフォローしておきます。
63名無しさん@ピンキー:2012/11/14(水) 23:48:03.36 ID:n7C5hROc
つC
64名無しさん@ピンキー:2012/11/17(土) 23:32:49.73 ID:ijQMm1nv
『弟はお姉ちゃん』 シチュエーション3 side:拓馬 1/?

 土曜の朝。
 レースのカーテンから柔らかい光が入る室内で、一人のゴシックロリータ風の衣装を纏っ
た少女が椅子に腰掛け、母親らしい女性から化粧を施されている。
 少女の背後には、もう一人の(こちらは普通の服の)少女がいて、ご機嫌な様子でゴスロ
リ少女の髪をブラッシングしている。「お姉ちゃん」とゴスロリ少女に呼びかけているとこ
ろからすると、彼女の妹にあたるのだろう。

 何も知らない人が見るのであれば、母と姉妹の仲睦まじい『家族の肖像』と呼びたくなる
ような微笑ましい光景、にあたるんだろう。たぶん。

 そう、ゴスロリ服を着た“少女”が実は“少年”だと知らないような人が見るならば。


 時間を少し巻き戻す。
 私が「今日の初デートで着る服はどんなのがいいかなあ」と昨日決めておいたのにも関
わらず悩みなおしている最中。部屋のドアがノックされて美香が入ってきた。手には大き
な紙袋。
「ごめんなさい待っててね。準備に時間がかかってる」
「いや、これお姉ちゃんにプレゼント、って。あけてみて?」
 タイミングをいぶかしみつつ袋を開けてみると、なんか黒い布の塊が出てきた。
「ゴスロリ……?」
「うん。きっとお姉ちゃんに似合うだろうなあ、って。今日はこれでお願い。下着も入っ
てるから、それもつけてね」

 結局押し切られ、改めてベッドの上に渡された服一式を並べてみる。
 長袖のブラウス。首はハイネックに詰まってて、肘下くらいで一旦絞ってそこから広が
るパゴダスリーブ。背中のジップで綴じるタイプで前にはレースやフリルやリボンがつき
まくっている。
 上がコルセット状になったハイウェストのティアードスカート。ギャザーが3連になっ
てるけど、でもやたらとスカートの丈がやたらに短い。これ履いたら太ももがほとんど露
出しそうだ。
 キャミソール。もう少し丈が長ければキャミワンピとして使えそうな感じ。肌触りがや
たらに良いけど材質はなんだろう?
 未使用の黒ストッキングと、たぶんそれを取り付けるガーターベルト。ヘッドドレス、
手袋とオーガンジーのパニエ。
 「勝負用!」って書いてあるように見えるブラジャーのカップの大きさに一瞬首を傾げ
るけれど、最後に出てきた物体に納得させられる。女性の胸をそのまま切り取ったように
すら見える、乳首まできちんとついた無茶苦茶リアルなパッドだった。

 真っ白なパニエを除けば、とにかくすべて黒尽くしの衣装。

 中にドロワーズがないことが気にかかった。
 これだけスカートが短くて、おまけにパニエで膨らましていると中の下着が簡単に見え
てしまいそうだ。
 下着の中に女性にはないものがついてる私的には、それはなんとしても避けたいところ。

 そういえばショーツもないんだろうけど、これは手持ちのものを履いていけばいいんだ
ろう。
 まあ、あまりぐだぐだやっても仕方がない。私は男らしく(?)、その女性衣装そのも
のの、彼女からのプレゼントを身に着けることにした。
65名無しさん@ピンキー:2012/11/17(土) 23:33:57.66 ID:ijQMm1nv
 2/?

 まずはショーツ1枚の姿になる。
 部屋のスタンドミラーが目に入った。
 この時点ですでに男に見えない、乳首以外は胸が平らな女の子にしか見えない自分にがっ
くりくるけど、まあそれは現状助けられてるから文句は言えない。
 最初にブラジャー。いつもはスポーツブラだから、背中のホックを止めるのに慣れてな
いので微妙にてこずったけど普通にはまる。そしておもむろにパッドを手に取り突っ込ん
でみる。

 女同士?の気軽さから実物に触れたことはあるけど、手触りといい質感といい本物そっ
くりで、少なくとも服の上から揉まれたりしてもばれることはなさそう。
 つける前にブラジャーのカップを確認しておけば良かったけど、サイズはDかEかそのく
らいだろうか。
 カップに収めたあと少し違和感があって、偽胸を両手で掴んで位置を調整してみる。鏡
を見ると、なんだか男が女の胸を揉みしだいているように見えて変な気分。
 ──さて私は今、揉んでいる男性、揉まれている女性、どちらに感情移入しているので
しょうか?

 たぶん女性がつけても恥ずかしいデザインのブラジャーを、男の自分が着けているとい
う事実。本当に穴があったら入りたい。
 なんで自分はこんなことに付き合ってるんだろう?
 そう自問自答をすると、「しっかり喜んでるくせにー」という答えが自分の中から返っ
てきて本気で戸惑う。

 ようやく位置調整が納得いく感じになる。
 次はストッキングかな、としゃがんだ瞬間に胸がぷるんと震えて、一生自分に縁がない
と思い込んでいた感触に少し困る。
 何が困るかっていうと、股間のアレに血が集まり始めた感覚がすることなんだけど。
 何も考えないように念じつつ、ストッキングを身に着ける。ガーターは初めてだけど、
ストッキングはもう慣れてるので、一旦丸めて普通に足を通す。脚の付け根あたりを、柔
らかい感触の飾りレースがくすぐる。

 ガーターをウェストまでひっぱり上げて付いていたクリップで留めようとして思い出す。
これってショーツを上に履かないとだめなんだっけ。
 一旦膝くらいにショーツを下ろすと、今度は私のおちん○んがぷるん、と外に出る。
『上も下もぷるんぷるんかー』、とか現実逃避したくなるけどそんな場合でもなくて、ス
トッキングとガーターを繋いで再びショーツを持ち上げようとすると、勃起したペニ○が
邪魔で普通に収まりきらない。
 意識しないようとしても、今度はストッキングやショーツの柔らかな肌触り、胸でしっ
かりした重さを主張するパッドなどが邪魔して、なんだかちっとも落ち着かない。
 不便な身体に泣きたくなる。
66名無しさん@ピンキー:2012/11/17(土) 23:44:17.15 ID:ijQMm1nv
とりあえずここまで書いてはみたけど、さてどうしたものか。

このあとゴスロリ衣装を最後まで着付けしたり、
母親と妹に丁寧に化粧&ブラッシングされて、それでも「男である」ことを出しちゃだめなので苦労したり、
「女である」ことに喜びを覚える自分を発見して落ち込んだり、
ドロワを履くどころか逆にショーツも脱がされて、勃起した包茎ちん○んをオーガンジー素材のパニエが
包んで、歩くだけで快感で昇天しそうになるのを止めるのに必死になったり、
言葉責めされるたびに先走り液があふれそうになって、妹に知られまいと顔色を伺ったり、
クラスメイトの女の子に出会ってのんびりとカフェで喫茶。無自覚な言葉責めをされて、ノーパン状態と
勃起がばれないかと泣きそうになったり、
ゴスロリ姿のまま一人で薬局に行かされてコンドームを真っ赤な顔で購入させられたり、
ホテルに連れ込まれて逆転セックスで絶頂したり、

そんな描写が延々と続くだけなんだけど、書くべきか、あきらめて他の話に行くべきか。
67名無しさん@ピンキー:2012/11/18(日) 03:15:08.24 ID:4CSVO0jD
>66
ぜひ……ぜひに続きを!
ヒャッハー! はかどるぜぇ! と思ってた矢先に打ち切られるのは殺生ザマス
68名無しさん@ピンキー:2012/11/18(日) 15:51:21.74 ID:w2GRBuTJ
パニエって硬くてゴワゴワ・チクチクしてて、こんなので亀頭
擦られたら痛そう、って思ったけど、調べたらそれはチュール素材の
パニエの方なのか。
パニエにも色々あって奥が深い…
6966:2012/11/18(日) 16:06:22.64 ID:vDtZddjL
なんともありがとうございますです。

ただ、続き投下できるのが何時になるか分からないですし、他のSSとか、『こんなシチュエーションいいな』とか、
『弟はお姉ちゃん』だと、こんなんどや、とかあれば色々適当にお願いします。


>>68
最初は、歩くたびにチュール素材のパニエに亀頭がすられて・・・って状況考えてたんだけど
(仕事中にその状況を妄想して興奮してやばい状態になってみたり)、

それはSMだと「あり」かもしれんけど童貞君に対してやったらやばいというか、到底セックスできない状況に
なりそうなんで、素材はオーガンジー、○んちんは神聖包茎でいいんじゃないかなあ、とクールダウン。
まあそれでも実際にプレイしたらひどい生殺しできつい状況(むしろごほうび?)になりそうですが。
70名無しさん@ピンキー:2012/11/18(日) 23:17:16.58 ID:he1u4f4m
つC
71名無しさん@ピンキー:2012/11/20(火) 16:21:08.32 ID:Sg1lZx1I
ん?この場合、お尻も出ているのだよね?
座る時、お尻で座るの?スカートや下着をお尻の下に敷き込むの?


え?
お姉ちゃんは弟?
じゃあ
弟はお姉ちゃん?
入れ替わり?
姉が嫌がる弟の服を着て、
嫌がる弟に姉の服を着させて、
姉が弟の心が女の子になるように調教する。
とか?
弟の男の子自身が、オムコにイけなくなるような。
弟のお尻がオヨメにイけるような。
72名無しさん@ピンキー:2012/11/21(水) 19:01:35.81 ID:JsPXDBp6
入れ替わりネタは王道でいいっすねえ。
「僕のアンダースタディ」とか傑作もありますし。

どなたか作品化していただけること希望。
73名無しさん@ピンキー:2012/11/21(水) 21:37:23.45 ID:JsPXDBp6
家の中で座るときはパニエ外してるので、そこ関係の描写は次回に回ります。しかし長い・・・

『弟はお姉ちゃん』 シチュエーション3 side:拓馬 家の中・下 1/4

 とりあえず、服を全部着終わってトイレで落ち着けるまでは放置して、手持ちのドロワー
ズなんてないし、といってショーツだとどうしようもないから、水泳用のサポーターの上に
アンダースコートを履くことで方針を決定。
 体育とかをやりすごすためにいつもやってる、タック&股間接着にしたほうがいいんじゃ
ないか、とも思うけど、あれは何故か「今日はしないで」と美香から言われてるんだった。

 ショーツはタマ○マを包むだけで、竿の部分はもう完全にむき出し状態になってるけど、
気にしない。
 下を見ると胸の谷間があって、その谷間から私の包茎のおちん○んが「はろー。ボクは元
気です」と言わんばかりに覗いているけど、それも気にしない。

 髪をヘアバンドで縛ってポニーテールにしたあと、飾りのないキャミソールを手に取る。
 最初にも思ったけど、普通のポリエステルやコットンとは全然手触りが段違い。タグを見
るとシルク100%ってなってて「なるほど」と思う。
 一思いにかぶってみると、あまりの心地よさに何か背筋を電流が駆け抜けた感じがした。

 肩紐をいじって位置を調整してみる。
 その度にキャミソール全体が揺れ、さっきからちっとも収まらないおちん○んの先をくす
ぐる。思わず先走り液が出てきてティッシュでぬぐうまでが一騒動。

 基本男が着ることが考慮されてない女性向けのインナー。男には許されない、女だけの禁
断の世界。男である自分がそこに踏み入れた罰とでもいうのか、腰の砕けそうな快感という
名前の苦しみが私を襲う。
 女の下着はとっくに慣れたはずなのに。男の下着をつけた記憶なんてもうないくせに。

 シルクのキャミソールが私の“男”の先端部を優しくなぶり、少し動くだけでショーツが
タ○タマを柔らかくもてあそぶ。耐えようと無意識に両足を刷り合わせるたび、内股の敏感
な部分をストッキングがくすぐる。
 意識して“女の子らしい”感覚で揃えてある私の部屋に、先走り液の、“男”の匂いが立
ち込めてなんだかくらくらしてしまう。
 ……私はいったいどうなってしまうのでしょうか?


 既に麻痺し始めている頭をなんとか動かして、次はブラウスを手に取る。
 生地が薄く、柔らかい。指を走らせると、肌をくすぐるような感覚が返ってくる。シルク
とは違うけど、これも相当良い生地を使ってるみたい。
 ゆっくりと袖を通し、背中に手を回してジッパーを上げる。なんだか自分にあわせて作っ
たみたいにぴったりくる。
 この間、美香が私の体のサイズを色々測ってたのはこのためか、と改めて納得。

 でも試着もなしでよくこれだけきちんと合う服を見つけられたもんだと感心する。いつも
私自身、服のサイズには悩まされているだけに。
 色々身体を動かしてみるけど、喉元を包むハイネックの首周り含めて、特に苦しかったり
する部分もない。身体をそらせたときに、胸がぱっつんになるくらい。
74名無しさん@ピンキー:2012/11/21(水) 21:38:38.42 ID:JsPXDBp6
 side:拓馬 家の中・下 2/4

 スカートを履いてみる。着る前はウェスト部が細すぎるように見えてどうかと思ってたん
だけど、これも実際につけてみると特に苦しいところもない。
 コルセット部分の紐を最後まで縛ってみても、少し余るくらい。これなら普通に食事して
も大丈夫そう。

 布製で硬くもないし、むしろ飾りみたいな感じなんだろう。ただ胸を上に押し上げる効果
と、背中を少し反った形にさせてより胸を強調する効果はあったみたい。
 前に押し出された胸が常時ぱっつん状態になって、計3枚の布をはさんでも微かに作り物
の乳首のありかが分かるのが、なんだかとても恥ずかしくなる。
 さっきから存在を忘れかけていた、お○んちんがまたスカートの下で存在を主張し始める。

 メイクはどうするかと少し悩んで、いつもどおりBBクリームを塗ってチークを軽く乗せて、
リップを走らせるだけで済ませる。
 最初ポニーテールの位置で止めておいたヘアバンドが、首の後ろまでずり下がってきてい
たので外して、ヘッドドレスを付け、パニエ以外一応の完成。

「私は17歳の女子高生、瀬戸崎姫乃」
 部屋のスタンドミラーの前で、口に出して、自分自身に言い聞かせる。
 『本当の自分』である、「15歳の男の子、瀬戸崎拓馬」を封印するために。


 窓とカーテンを開け換気をしておいて、トイレに行くために部屋のドアを開けると美香が
立っていた。私の姿を見て、目を丸くしてる。
「やっぱり変だったかな……?」

 一拍おいて。
「きゃ──────! 何これ何これ、すっっっっごく可愛ぃぃぃぃぃぃぃ!」
「ちょ、っちょ、静かにお願い。麗香ママがまだ寝てるから」
「何?」
 騒ぎをききつけたのか居間に続くドアを開けて、静子ママがこっちを見て目を丸くしてる。

「あらあら、姫乃がそんな服着るのは久しぶりねえ。昔はよく着てくれたものだけど」
 そういえばそうだった。古いアルバムを見ると、ふりふりの服を着た私の姿が結構載って
たり。微かにしか残っていない、古い記憶がよみがえる。

「こっちいらっしゃい。お母さんがきちんと化粧してあげる」
「わあっ! お願いできますか?」
「……その前にごめんなさい、トイレ行かせて……」

 そして、冒頭の光景に戻る。
75名無しさん@ピンキー:2012/11/21(水) 21:39:34.31 ID:JsPXDBp6
 side:拓馬 家の中・下 3/4

 静子ママの目つきと手つきは、作品を仕上げる芸術家のように真剣で、声をかけるのも躊
躇われるほど。
 私がやったメイクを最初に全部洗い落としてすっぴんにしたあと、見たこともないような
メイク道具まで持ち出して、複雑怪奇な手順で何度も刷毛を何度も走らせてる。

 対照的に背後の美香はハミングとかして、「お姉ちゃんの髪、すっごくきれー。使ってる
シャンプーはあたしと一緒なんだよね? なんでこんなに違うんだろう。櫛とか全然抵抗な
いし」とか、「静子ママ、今度あたしにメイク教えてもらえません? あたしもお姉ちゃん
のメイクしてみたい」とか色々喋ってる。

 広い世界でこのふたりだけが、私が男であることを知ってる人物。
 なのに、家の中でまだ寝ている麗香ママに気づかれるわけにはいかなくて、美香に私が男
であると知られたと静子ママには知られたくなくて、やっぱり女として振舞わないといけな
くて、なんだか胸がもやもやしてくる。

 まあ、仮に今「男として振舞え」って言われても、たぶん出来ないんだろうけど。
 心の中の一人称で「僕」と思うことすら、なんだか違和感があるのだ。

「うん、完成。こんな綺麗な娘がいてわたし、すっごい幸せ」
「ちょっと待って。こっちも仕上げるから」
 そう言われたときにはもう、(初デートの日というのに)すっかり疲労困憊の思いだった。

 伸びをしようとして、今更気づく。
 スカートつけた状態だとこれ、腕が肩より上がらない。
 つまり背中のジッパーも下げられない状態で、まあ手順を踏んでいけば脱げるんだけど、
それでも何か見かけだけは豪奢で可憐な拘束衣でもつけさせられた気分。

 そう意識するとたん、ショーツの前が窮屈になるのを感じた。今まで大人しくなっていた
のに、なぜこのタイミングで。
 考えるとその答えが分かってしまいそうで、それが怖くて必至に意識をそらす。

 いつの間にか部屋から美香が部屋から持ってきていたパニエを受け取り、──二人にお尻
を向けて──装着。最後に手袋も。これで、ようやく最終形態の完成。
 静香ママに引かれる形で、うちで一番大きなミラーの前に立たされて自分の姿にご対面。
76名無しさん@ピンキー:2012/11/21(水) 21:41:05.11 ID:JsPXDBp6
 side:拓馬 家の中・下 4/4

 それは非現実的で、幻想的な印象すら受ける少女だった。

 身体はどこまでもほっそりとして、生身の人間でないような感覚すらする。
 肌は絹布のような滑らかさで抜けるように白く、衣装の黒と見事なコントラストを作る。
 大きく見えるようにメイクされた目は、(付け睫はつけてないのに)マッチでも載せられ
そうなくらいに長く濃い睫に縁取られキラキラと光を発し、その中で漆黒の瞳が輝く。
 目尻のあたりが煌いているのは、ラメ入りのアイシャドウでも使ったのだろうか。

 ツインテールやハーフアップにしようと色々いじり倒した髪は、結局右のこめかみからの
髪を細い三つ編みにしたほかは完全にストレート。ここ10年間、毛先を整えるだけで伸ばし
続けた髪が、ウェストの後ろでさらさらと見え隠れする。
 全身を包む髪と瞳と衣装の黒が、漆黒でありながら色とりどりの光を放つ。
 そのモノトーンの世界の中、はっとするくらい艶やかなローズのルージュが目を奪う。

 ……これ、私なんだろうか? 未だにその実感が沸かない。
 手を振ってみて、笑顔を作ってみて、自分の動くとおりに動くのを確認してみて、それで
もなんだか、現実から遊離したかのような感覚。
 次いで『これが、私なんだ』という陶酔感が私の全身を優しく包み込んでくる。


 ふと気がつくと、美香と静子ママがデジカメと携帯で写真を取りまくっているところ。
「こんな美少女って、現実に存在するもんだね」
「姫乃ちゃん、笑顔笑顔」
 広い世界でこのふたりだけが、私が男であることを知ってる人物。
 というのに、世界でこのふたりが一番私を“女”として扱っているような気がする。

 男なのに、女性でもなかなか着ない女らしいドレスに身を包み、男なのに、女のように扱
われ、男なのに、(否定しようもない)「女としての」喜びを覚えている自分。
 少し前なら、いや今でもこの2人の前でさえなければ、『男なのに、』の部分を消し去っ
て、普通に女としてそれらを受け入れられるのに。

 穴があったら入りたくなるような恥ずかしい気分のまま、逆に少し誇らしい気持ちもどこ
かに感じながら、突如発生した撮影会はひたすら続いたのでした。


 そのあと、美香も化粧してもらって、麗香ママが起きてきたのでそこでまた一騒ぎあって、
いい時間になったので(パニエを一旦外して)昼ごはんをうちで食べて、少し崩れた化粧を
直して、ようやく人心地がついて、出発……の前に下着を替えないとだ。

「あ、お姉ちゃん、下着のことなんだけど……」
「美香。こういう服だと、下にドロワーズがいるの。今日は他のでなんとかするけど……」
「いや、ドロワはなくていいの。ってか、今はいてるショーツも脱いで」
「……え?」
77名無しさん@ピンキー:2012/11/21(水) 23:27:04.16 ID:UHA7W1o3
つC
78名無しさん@ピンキー:2012/11/23(金) 23:23:08.48 ID:Is29VTyJ
GJ&続きを期待!
79名無しさん@ピンキー:2012/11/24(土) 23:36:13.08 ID:2r3xEamR
『弟はお姉ちゃん』 シチュエーション3 side:拓馬 繁華街 1/4

 ──憧憬は、いつから恋心に変わったのだろう?
 名前も、年齢も、性別も、自分の心さえ嘘で取り繕った、嘘の少女。
 その少女の前に存在する、嘘のない、真実の少女。その自然さに対する憧れの気持ち。彼
女に対する感情が恋であることを自覚したのは、それが恋心に変化したよりもずっとあとの
ことだった。

 半分なりゆきとはいえ、その少女に自分の心をうちあけて、今その彼女と初めてのデート
で街を歩く……そんなシチュエーションのはずなんだけど。

「美香……流石に恥ずかしいよ」

 家からバスを乗り継いで繁華街に到着。(地下鉄とか使わなくて本当に助かった!)
 私の姿は当然のように人目を引きまくっていた。
 東京とかだと普通なのかもしれないけど、この街だとロリ系の衣装はわりとレア。
 おまけにスカートがかなり短めなのだ。

 パニエの一番下が太ももの半分くらいにあたるので、じっと立ってるだけなら問題ないは
ずなんだけど、歩くたび、風が吹くたびパニエが揺れて、下が見えそうで気が気でない。
 普通の長さのスカートでも、パニエでスカートを膨らませると中身が見えやすくなるので、
ドロワーズとか付けて見られることを防ぐものなのだ。本来なら。
 それもこれが女の子なら「下着が見えそう」なだけだけど、今の私の場合は「おちん○ん
が見えそう」な状況なわけで、見られたら、ばれたらどうなるのかと気が狂いそうだ。

 ちらちら伺うような視線だけなら割に慣れてるけど、今はガン見するような視線もちらほ
ら。立ち止まって見てる人すらいる。
 脚のラインを目で追ってる男性もそこそこいて(ばれないと思ってるのだろうか?)、今
日ばかりはその『上』が見えてしまうのではと気が気でない。

 スカートの中に風が入るたび、おち○ちんからお尻までが、少しだけ冷たさの残る5月下
旬の外気に直接触れて、「スースーする」どころの騒ぎじゃない。
 家を出てからずっと、おちんち○は勃ちっぱなし。
 歩くたびにオーガンジーが柔らかく包んで、こすって、なぶって、『いっそひと思いに殺
してくれ』と言いたくなるような、生殺しのような快感が下半身に走る。

 パニエがふわりと覆い隠しているので、外からは勃起の様子が分からないのは救いなのか
どうか。持ち上げた分の布地の質量が、敏感な場所に直接かかってきて余計につらい。

「ふふっ、みんな見てる。拓馬のこと、すごく可愛い女の子だと思って見てる」
 私の心を見透かすように、いつものように『お姉ちゃん』ではなく『拓馬』と呼びかけて、
美香が耳元でそんなことを囁きかける。
 ○ニスがぴくんと跳ね上がり、先走り液がにじみ出たのが分かる。

 思わず横を見て美香の顔を確認するけれど、にっこり笑うだけで気づいたのかどうかも分
からせてくれない。
 ナチュラルメイク風にきちんとメイクされた顔は意外なくらい愛らしく、彼女自身も結構
目を引いているんだけど本人は自覚はあるんだろうか。
80名無しさん@ピンキー:2012/11/24(土) 23:37:11.14 ID:2r3xEamR
 side:拓馬 繁華街 2/4

「あの男の人、彼女連れなのに拓馬のことをデレデレ見ちゃって。後で怒られるかな?」
「あのオタクの人とか、携帯で写真なんか取って、きっと今夜のおかずにするんじゃない?」
「このEカップ悩殺おっぱいすごいねー。注目の的だよ。うらやましい」
 耳元で続く言葉責めにもうまっすぐ前を見て歩くことすら厳しくて、つい俯いて歩く。

 だから、
「おや、ミカリン?」
 声をかけられるまで彼女たちの存在に気づかなかったのだった。

「お、やっほうメグメグ」
「あー、やっぱミカリンでいいんか。すっごい可愛いから一瞬わかんなかった」
「なんともシツレイな」
 顔を上げると、中学時代からの私たち2人の友人、藤原恵が至近距離で手を振っていた。
 美香と彼女は「ミカリン」「メグメグ」って愛称で呼び合う仲。身長150cmちょっとと小柄
で丸顔、「美少女」って感じではないけど、笑窪と八重歯の可愛らしい少女。
 彼女の隣には線の細い美少年が連れ添って、私のほうを少しぼうっとした表情で見てる。
 こちらは初見。ヒール付きブーツを履いた私より少し背が低く、多分165cmくらいだろうか。

「透君おひさ。相変わらず可愛いねえ」
「大久保さん、お久しぶりです。えっと、この人は……?」
 この少年も美香の知り合いだったのだろうか。『透君』と呼ばれたその少年は、中性的な
声で聞き返す。
 外見も相まって、『美少年』じゃなくて女の子だったかなと一瞬思ったけど、まあ『透君』っ
ていう名前の女子はいないだろう。

「あー。それわたしも聞きたかった。ミカリンどこでこんな超絶美少女ひっかけたのかって」
「分かんないかなー。これ、お姉ちゃん」
「恵ちゃん、私よ? 瀬戸崎姫乃」
「ええぇぇ──────?!」
 それはそれは、とても良いリアクションであったそうな。


 恵ちゃん達は用事まで1時間ほど暇とのことで、4人で近くの喫茶店に入ってみる。
 オーダーだけお願いしておいて、私はそのまま喫茶店の女子トイレに入り、溜まっていた
先走り液をトイレットペーパーで拭いて流し、手をよく洗ってルージュを軽く引きなおす。
 戻ると美香が手を振っているので、残りの席に着席。恵ちゃんの隣、少年の向かいの位置。

 お尻の下に手を回して、スカートとパニエがお尻の下になるように。慎重にゆっくりと。
 お尻が椅子についたら手を離し、ふわりと浮かび上がるパニエの前の部分をガード。
 店の中でパニエを外すわけにもいかないし、ショーツすらつけてない状態でスカートを広
げてお尻を椅子に直接つけたくもないし、自分だけ立ってるわけにも、ましては一人で空気
椅子するわけにもいかないし。

 パニエが潰れるのと、前が見えやすくなる危険があるけど、悩んでこの方法を選択。
 落ち着かせたおちんち○を太ももの間に落とし込んで挟み込み、いつもより意識して膝と
膝の間をきっちりくっつける。
 ただ椅子に座るだけでこの苦労ってなんだろう。
81名無しさん@ピンキー:2012/11/24(土) 23:37:58.17 ID:2r3xEamR
 side:拓馬 繁華街 3/4

「そういえば、ヒメノン(※姫乃、私のこと)と透って初めて会うんだっけ?」
「たぶん、会うのは初めてじゃないかな。えぇと、私は瀬戸崎姫乃っていいます。……いき
なりこんな格好でごめんなさいね」
「僕は恵姉ちゃんの弟で、藤原透です。姫乃さんのことは、姉から色々聞いてました」
 そういえば昔から恵ちゃんの会話で時々出てきた『弟』って彼のことなのか、と納得。

「あ、そうそう、いつものヒメノンはこんな感じ」
 ポシェットから端末を取り出し、私と一緒に撮った写真を表示させて少年に渡す。
「印象随分違いますけど、でも綺麗ですね」
「透君もゴスロリ着て化粧してみない? 美人さんになれると思うんだけどな」
「やめてー。わたしの自慢の弟を、キモい変態の道に引き入れないでー」

 恵ちゃんの言葉で起きた動揺が、顔に出なかったか不安になる。
 男なのにゴスロリ着て化粧して。完全に『キモい変態』の道を歩いている私にとって、
グサグサ突き刺さるお言葉。言ってる人が完全に無自覚なだけに、余計にクるものが。

 おまけに何故か(理由は考えたくもない)、股に挟んである○ニスが充血しだす。
 ストッキングのレース部分やお尻の下に敷いたオーガンジー、それと内股の肌に敏感な箇
所が触れて、閉じた股の間で締め付けられて、ほとんど一人密かに素股をやってる状態。
 ちょうどウェイトレスさんがオーダー品を持ってきて、話が一旦ストップしなかったら、
もっと危険な状態になってたかも。何か頭がおかしくなりそうだ。

「でも本当凄い格好だよね。ゴスロリってさ、大抵あれデブスかオバサンが着てるじゃん?
 ゴスロリに対する印象そのものが変わっちゃたよ」
 出てきたパフェを突きながら、恵ちゃんがそんなことを言う。
「前々から、『お姉ちゃんにゴスロリとか着せたり似合うだろうなー』とか思ってたけど、
ようやく機会があってね」
「これ、ミカリンのセンスか。なるほどー。でも確かに似合ってるよね。ティーカップ持つ
仕草とかすっげー気品あって、『お嬢様』、っていうかむしろ『お姫さま!』って感じ」
「んだ。お姉ちゃんはなんか『非現実的』な格好が似合うよねー」

 それはきっと、私が嘘の世界で生きているから。現実の世界で生きていないから。
 表面的には困ったような笑いを浮かべながら、心の中だけで呟く私を無視して2人の会話
は進む。

「それあるね。頭小さいしスタイル無茶イイし、身体細いし。そのコルセットきつくない?」
「これ細く見えるだけで、着ると意外にそんなことないよ? 特に絞ってるわけでもないし」
 ミルクティー入りのティーカップをソーサーに置きながら答える私の言葉を、美香が引き
継ぐ。

「凄いよ、このワンピ、ウェスト55cmなんだけど、まだ余裕あるんだこの女」
「うへぇ。わたしなんか59cmのコルセット付けさせられて、苦しくて悶絶したことあるのに。
……姫乃様、どうしたらそんなに細くなれますか?」
「まずはメグメグは、そのパフェ食べるのやめるのから始めたらどうかな?」
82名無しさん@ピンキー:2012/11/24(土) 23:39:16.60 ID:2r3xEamR
 side:拓馬 繁華街 4/4

「私の好みかあ……自然な人がいいな。嘘のない、素直な人」
 ころころテーマの変わる女子?トークの中、何故か『好みのタイプ』の質問に答えてる私。
「嘘をついたり、自分を偽ったり飾ったりする人は嫌かも」
 まあこれは、嘘まみれの自分に対する同類嫌悪なんだろうけど。
「……だってさ」
 恵ちゃんが透君にニヤニヤ笑いかけると、透君は黙ってそれまでブラックで飲んでいたコー
ヒーにシュガーを入れた。その様子を見て美香も「かーいーなー、もう」とニヤニヤ呟く。

「ヒメノンの言葉聴いてておもったけどさ、もう意中の人がいたりするの?」
「実は何年もずっと想ってて、この間やっと告白できたんだけど、はっきりとした回答はも
らえなくて……今は返事待ちかな」
「誰だそのフラチなヤローは。ヒメノンから打ち明けられてそんな態度とか信じらんねー」
「あの人、そんなご大層なヒトじゃないと思うんだけどなあ」
「ミカリンも知ってるんだ? 誰? 誰? 教えて? わたしも知ってる人?」
「内緒」
「ヒメノン、わたしに向かってそんなこと言うんだ。こらしめてやるぅ!」

 そう言って突然横から手を伸ばして私の(パッドで膨らませた)胸を揉み始める。
 ただの作り物のはずなのに、なんだか直接胸をもまれたような錯覚がして、思わず「ひゃ
ん」と言ってしまう。
「いい声だ。“ザ・女の子”って感じ。もみ心地も本物そっくり。パッドだよね? これ」
「うん。……あ、透君。お姉ちゃんの胸って本当は大平原だから。実物見て失望しないでね」
「あ、僕はあんまり気にしないので大丈夫です」

 3人はのんびり会話してるけど、こっちは今のはずみで○ニスが股の間から飛び出てきて、
あげくにパニエの気持ちいい生地でこすれて完全に勃起して大変な状態に。
 いじって直すわけにもいかないし、スカートの裾を直そうと調整してると、パゴダスリー
ブの袖の部分がスカートとパニエごしに先端をくすぐって、それだけでびんびん状態。
 パニエを外さなくてよかった、と思う。もし外してたら、今スカートの前が見事に膨らん
でばれてたところかもしれない。

「姫乃さん、大丈夫ですか?」
 どう考えても不審な動きをしている私を気にかけて、透君が声をかけてくる。なんだか余
計に恥ずかしくなったりもするけど、ぐっとこらえて
「うん、大丈夫。ありがとう」
 と無理に笑顔を作る。本当、嘘だらけな自分が嫌になる。

「いい雰囲気だねえ。あたし、透君応援しちゃおうかな。これから姫乃姉ちゃんと2人でデー
トしてみる?」
「いえこのあと、用事がありますから」
「そか。時間大丈夫? あとメアド交換しとこ。お姉ちゃんは持ってないんだけど」
「あーこんな時間かー。んじゃ行かないとだね。ヒメノンからは月曜に色々聞き出す方針で」

 喫茶店を出て、手を振りながら去っていく姉とその弟を見送って。そこまでなんとか愛想
笑いをたもてたのが自分でも不思議に思う。
 足元がぐらぐらする感覚がして、その場に半分座り込みそうになる。
83名無しさん@ピンキー:2012/11/25(日) 00:12:43.79 ID:XTepzpRo
C
84名無しさん@ピンキー:2012/11/25(日) 00:25:04.08 ID:ogVjcLTg
つC
85名無しさん@ピンキー:2012/11/26(月) 23:48:15.62 ID:QV4/Jism
『弟はお姉ちゃん』 シチュエーション3 side:拓馬 ホテル街 1/4

 『デート』と言われて舞い上がってたのが自分だけだと思い知らされて、なんだかとても
惨めな気分。私を他の人、それも男性とくっつけようとか言い出して。
 「私は心は男なんだ」という説明を聞いてなかったのか、嘘だとでも思ったのか。
 それとも分かった上で、いい厄介払いが出来るとでも思ってるのか。

 これまで散々恥ずかしい思いをさせられたけれども、それもすべて『嫌った上での、ある
いは嫌われるためのいやがらせ』だと考えれば腑に落ちる。
 そもそも女装で女子高生を演じる『キモい変態』が好きな人なんて、いるはずがないのだ。

「お姉ちゃん、突然道端でしゃがんでどうしたの? (小声で)下、見えちゃうよ?」
「もう、帰る」
 色んな思いが頭でぐるぐるして耐えられなくて、半分捨て鉢な気分で宣言する。美香はそ
の言葉を聞いて色々考えていたようだけど、しばらく経って「……ごめん、でも、もう1箇
所だけ付き合って」と言って歩き始めた。

 10分くらい無言で歩き続け、光景が変わる。普段は近づくこともない、ホテル街。
 ふと気づいたように、先を歩いていた美香が立ち止まる。そして私の耳元に顔を近づけて、
「ごめん拓馬。コンドーム買ってきてもらえないかな」
「コンドームって、……ぇえ?」

 深呼吸をして、店内に入る。顔から火が出るほど恥ずかしいけれど、こんな思いを美香に
させるなら、自分でやるほうがマシだった。
 美香が私のことを『拓馬』と呼んで、頼りにしてくれた。些細なことだけど、心が少し軽
くなった気がする。お気軽なもんだと自分でも呆れるけれど、気にしない。

「何をお探しでしょうか」
「えーと、コンドー……」
 寄ってきた店員さんに言いかけて、自分が何を言おうとしているのかに気づいて、顔が更
に真っ赤になる。
 コンドームを買うということは、つまりアレするということで、アレだから、もうアレだ。

 案内された棚を見るけど意外に色々種類があって、どれを買えば良いのかもさっぱり。
 店内にいた40歳くらいの男性客が私を見ている。最初はちら見するだけだったのが、やが
て視姦するようななめ回すような視線に。特に太もものあたりに視線が集中してるのが怖い。
 10年の間女の子を演じて、何度も浴びせられて、未だに慣れることのない嫌な感覚。
 中が見えることはまずないとはいえノーパンで、ミニスカのゴスロリ姿で、避妊具の棚を
見る女子?高生。そんなシチュということが改めて自覚させられて、恐怖心すら沸いてくる。

「ああ、コンドームならこれがいいね」
 たぶん本人は親切心のつもりなんだろうけど、その男性客がそう言いながら近寄ってきた
ので、目についた別の品を手にとって一目散にレジを済ませて店外へ脱出。

「ありがと」
 心臓がバクバク言って、脚がガクガクして、それなのに○ニスをスカートの下で何故かカ
チコチにさせている私に向かって、美香が声をかけてくれた。
 もう半分涙目でしゃがみこみそうになるのを我慢して、差し出された手を取る──
86名無しさん@ピンキー:2012/11/26(月) 23:49:35.10 ID:QV4/Jism
 side:拓馬 ホテル街 2/4

 ホテルの中。指先がどうにも震えて、コルセット部の紐すらほどけずに困ってる私を横目
に、下着も脱いで全裸になった美香が近づいてくる。
「いいの。拓馬はその格好でいて。……そのまま身体の力を抜いて、横になって」
 優しく軽く手で押されるだけで、言われたとおりにゴスロリ衣装のままの背中をベッドに
つける。

 (最初のエッチくらい、男の姿でやりたかった)とぼんやり考えてみるけれど、美香の言
葉に逆らう気分が、心よりもまず肉体から霧消していた。自分でも可笑しくなるくらいだ。
 仰向けになった私の身体に跨り、指と指を絡めあう。
 まるで私が、男性に征服される少女の立場になったような、そんな錯覚。
 美香はその状態のまま、繋いでいない手でスカートとキャミソールとパニエという布地の
山をかきわけて、私のあそこを指につまむ。

「やっぱり拓馬、凄い興奮してたのね……下着も着けずにミニスカートのゴスロリ姿で道を
歩いて。色んな人に見られて、こんなにお○んちんを堅くしちゃって」
 違う、今興奮しているのはホテルに入ったからで、別に露出プレイのせいじゃない……
そう言おうとして、でも、その言葉の通り、繁華街で、喫茶店で、薬局の前で、あそこを堅
くしていた自分を思い出して、ただ弱々しく首をふることしかできない。

 と、美香が腰の位置を少し落とす。ペ○スの先に感じる、柔らかな割れ目の感触。
 それまで溜まっていた先走り液とは違う、別の、粘りのある液体の感触も混じる。

「姫乃、挿れるよ?」
「い……れる?」
 『私のほうが、女の立場みたいだ』という、私の感じた錯覚を彼女も共有したのか、低め
の声で、美香がそう囁きかける。
「そう、姫乃の可愛い処女のお○んこに、僕の○んちんが入っていくよ……最初は痛いけど
大丈夫。僕に任せて、力を抜いて……」
「イヤぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 自分でも訳の分からない羞恥心の波が襲ってきて、繋いでいない左手で顔を隠す。
 まるで処女を奪われる乙女のような叫びが、自分の口からこぼれるのを抑えることもでき
ない。
 これ以上ないくらいに剛直した私の男の部分が、ミシミシ音を立てそうな勢いで、ゆっく
りと美香の身体の中に分け入っていくのを感じる。
 耐えられないような力と圧力が一点にかかる──けど、美香が感じている苦痛と比べれば、
比較にならないものだろう。

 上手い人が相手であれば、破瓜はそんなに痛くはないと、学校でも女子同士の会話では出
ることが多かった。でも今の相手は経験点ゼロで、何も準備すらしてきてない私なのだ。
 油汗が額に浮かび、とてもとてもきつそうだ。

「姫乃の中、すごくあったかい。さあ、処女膜をやぶるよ……」
 だというのに、『私に挿入する男性』という立場を少しも崩さない美香。
 まるでそれが現実であり、『私が男である』ということが嘘であるような感覚が私を包み
込む。
87名無しさん@ピンキー:2012/11/26(月) 23:51:12.12 ID:QV4/Jism
 side:拓馬 ホテル街 3/4

 意思とは無関係に腰が浮く。○ニスの先で感じる、よく分からない違和感。
 美香の処女膜が今破れたのだろうか。そう思った瞬間、自分でも信じられない叫びが自分
の口からあふれ出す。
「嫌ァァ!……い、痛いっ! 痛いっ! 身体が裂けちゃう!」

 自分の『言葉』によって、自分の心と体が支配される。
 私のヴァ○ナに、膣に、子宮に、“彼”の愛しい分身が分け入ってくるのを感じる。
 それがただの錯覚だと把握できていたのは、ほんのわずかな間。

 彼のものはとても熱くて大きくて、まるで胴全体を貫きとおして喉のところにまで達した
かのような感覚がする。
 息が止まる。涙がだらだらとこぼれて、溶け出したマスカラが頬に線を描くのを感じる。

「さあ、根元までずっぽり入ったよ……すごくいいよ……腰を振って」
 ストッキングに包まれたままの両脚が自分の意識とは関係なく動き、彼の身体をがっちり
と挟み込む。彼の男としては細身の身体を脚で抱きしめ、背中のところで足首が交差した状
態になる。
 身体を上下に軽くピストンする彼の動きをサポートするように、上がるときは緩め、下が
るときにはきつく締め付ける。

 全身から汗が出る。手足が痺れた感覚がして、足の指がきゅっと内側に曲がる。
 視界が少し霧がかったような感じで、全身がふわふわと飛んでいくような感じがする。彼
のものに貫かれた下半身を中心に、波紋のような感覚が全身に伝わってくる。
 もう、自分がどういう状態になっているか、何を口走っているかすら分からない。

 時間の感覚がなくなる。もう何十分もこうしてた気がするし、あるいはほんの数十秒後だっ
たのかもしれない。
「姫乃のお○んこ、すごく気持ちいい。……出すよ!」
「出して! あなたの精液を私の胎内にいっぱい注ぎ込んで!」
 その瞬間。自分が放出したはずなのに、それなのに私はその言葉通り、自分の胎内に熱い
精子が迸る感覚を感じて果てたのだった。


「……結局4回も中出しちゃったね」
 私の横で、ぐったりとうつ伏せになってた美香が、感慨深げにそう呟いた。
「処女だったのに、無理させちゃってごめんね」
「大丈夫、最後はなんか気持ちよくなってたし。相性よかったのかもね」

 先程までの、男女感覚の逆転の錯覚が尾を引いていて、普通に喋ってるはずなのにとても
大きな違和感を覚える。
 なんだか、それがとても可笑しい。

「……あたしの初恋の人の名前知ってる? 瀬戸崎拓馬っていうんだ」
 それから更に暖かな沈黙が流れたあと、美香が囁く。
 言葉の響きに、胸がおかしなくらいにドキドキする。
「それって……?」
88名無しさん@ピンキー:2012/11/26(月) 23:52:18.50 ID:QV4/Jism
 side:拓馬 ホテル街 4/4

「変だよね。写真の中で会ったことのない、5歳の男の子に対して初恋だなんて。しかもそ
れが遺影でさ。もう、絶対に叶わない恋だって決まりきっててさ」

 ああ、なるほど。
 彼女の言う『瀬戸崎拓馬』は、私ではなく、うちの仏壇にある『遺影』のことなのか。
 女としての生活を始める前に撮影した写真。私の少年時代の、唯一の痕跡。
 あれは自分ではあるけど、同時に自分でもなくて、その言葉に寂しさを覚える。

 そう思った瞬間、美香の次の言葉が耳に届いた。
「だからさ、どれだけあたしが嬉しかったか分かる?
 ……その人に直接会えて、しかも『好きだ』なんて言って貰えてさ」

 混乱が止まらない。
 美香の中では、瀬戸崎拓馬=私であって、今の私自身を『初恋の人』と認識して、同じ人
間として見ている……そう受け取ってしまってもいいのだろうか。
 でも……なら、今日のあれは嫌われるための行為じゃなかったのだろうか? 少し勇気を
出して、声に出して確認してみる。
「変なことばっかり言うから、すっかり嫌われたと思ってた」

「ごめんなさいねえ、変な女で。でも、拓馬の喜ぶことばかりやってたと思うんだけどな」
「えっ?」
「ばれてないと思った? ゴスロリ着てみんなに見られてさ、でも凄い興奮してたよね?」

 見抜かれていた。
 家でショーツを脱いだときの、玄関で初めて風を感じたときの、道を歩いてパニエが大き
く揺れたときの、バスのステップを上がったときの、繁華街で注目を浴びたときの、友人と
何気ない会話を強いられるときの、薬局でコンドームを購入したときの羞恥心と、それと裏
腹な性的な興奮が一気にまとめて背筋を駆け抜けて、全身が硬直する。

 たぶん、顔は真っ赤を通り越して、なんだか泣き笑いのような変な状態になっていたる思
う。そういえば化粧が崩れまくりでぐちゃくちゃな面相になっていることも思い出す。
「やっぱり変だよね? それっておかしいよね? 嫌われもしょうがないよね?」
 色々な思いが交錯してわけがわからなくなって、そして尋ねる私の顔を、美香は暫くまじ
まじと見つめたあと、プッっと吹き出す。

「それを言うなら、それを見て興奮してたあたしのほうがずっと変態だよ。嫌いになったり
とか絶対しない。大好きだよ、拓馬。──大好きだよ、『お姉ちゃん』」
 まるで男性が愛する女性にするように、私の身体を抱き寄せて、静かな声で、でもきっぱ
りと宣言する美香の言葉を聴いて、私は満たされた思いに包まれてた。
89名無しさん@ピンキー:2012/11/26(月) 23:52:55.52 ID:QV4/Jism
 side:拓馬 ホテル街 余禄

「……あ。コンドーム使うの忘れてた」
「うげ。ほんとだ」
「危険日じゃないけど、安全ってわけでもない日だっけ」
「“彼氏”にソレ把握されてるのって変な気分だなあ」
「妊娠したら私が養うから、2人で育てよう。色々、迷惑かけてしまうけど」
「たぶん迷惑どころの騒ぎじゃないけど、それもいっか」
「まあ、次回からは忘れずに避妊するということで」
「次回またやること、期待していいんだ?」
「……ヨロシクオネガイシマス」
90名無しさん@ピンキー:2012/11/26(月) 23:57:29.61 ID:QV4/Jism
「弟はお姉ちゃん」という素敵過ぎる言霊に触発されて色々駄文作ってみたけど、自分の投下分
としてはこれで終わりになります。
(他のかたのSS投下あれば大歓迎)

どっちかというと、「お姉ちゃんは(実は)弟」になってしまったのが個人的残念ポイントか。
91名無しさん@ピンキー:2012/11/27(火) 07:41:01.30 ID:UYn56vMP
GJ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
92名無しさん@ピンキー:2012/11/28(水) 07:32:10.56 ID:6zIDQ9ON
>90
御馳走様でした。大変美味なる展開ありがとうございました。
次回作にも期待させていただきます。
93名無しさん@ピンキー:2012/12/02(日) 18:39:24.06 ID:kURSp6q2
第3部完結、おめでとうございます!
背徳的で不思議な関係が素敵でした。
ちなみに、以下は「弟はお姉ちゃん」に対する自分なりの妄想。

2歳年上の姉に憧れる弟。
姉に対して淡い慕情を抱くと同時に、それ以上に強い同一化願望を抱き、
姉のいないときに部屋に忍び込んで、姉の服で女装を始める。
着こなしやメイクはもちろん、「姉みたいになりたい」という執念と
観察眼のおかげで、話し方や立居振舞にいたるまで、
どんどん「姉の模倣」に上達していく弟。
ついには、「姉」になりすまし、姉の彼氏をデートに誘う。
ごく僅かな不審を抱きつつも、結局、「彼女」を本物と信じて
エスコートする彼氏。
「彼女」も公然と「姉」として扱われることに感激、興奮し、
そのまま楽しい一日を過ごす。
彼氏は一日の締めくくりに、「恋人」を自らの部屋に誘い、
自らを見失った「彼女」もそれに応じる。
熱い抱擁、キス、ペッティング、そして彼氏へのフェラチオ。
いきりたった彼氏はかろうじて出す寸前に、「彼女」を押し倒し、
背後からスカートをめくり上げてショーツを下ろし……
さすがに、相手の正体に気付く。
しかし、淫らに尻を振り、甘い声で誘う「彼女」の姿と、
射精寸前の衝動には逆らえず、そのまま後背位で挿入。
信じられほどの興奮と快楽を覚えるふたり。
かつて経験したことのないほどの白濁を「彼女」の体内に
注ぎ込む彼氏だったが……突然、ドアが開き、
本物の彼女──姉が登場。
怒りもあらわにふたりをなじり、ビンタを残して去る。
傷心の彼氏に追い出されて、弟が自宅に帰ると、
姉は屋根裏部屋に毛布を持って引きこもり、
完全に心を閉ざしていた。
自らのしでかした事態に、心底後悔する弟。

半月あまりの時が流れ、ようやく屋根裏部屋から出て来る姉。
両親や弟はホッとしたが、どうも様子がおかしい。
姉は、弟の憧れていた長い髪を切り、まるで男のような
──いや、男そのものの服装をするようになる。
さらには、元の姉の部屋ではなく、弟の部屋を自室として扱い、
完全に自らが弟であるかのように振る舞い始めたのだった。
もともと容貌のよく似た姉弟だけあって、そうしていると、
確かに姉も「弟」に見える。
やがて夏休みが終わり、二学期が始まったときも、
姉は「弟」として学校に通い始める。
学校には「心の病気」として事情を話し、そのまま姉は
「弟」として扱われることに。
残された弟は、両親の頼みで、いなくなった「姉」を演じることになる。
いつか「弟」が正気に戻る日まで──そんな日が来るかわからないが。

……とか。
94名無しさん@ピンキー:2012/12/02(日) 21:23:37.60 ID:beOHKonN
イイねイイね。

是非SSにしてみて欲しい
95名無しさん@ピンキー:2012/12/02(日) 22:28:51.90 ID:0WfA6q9o
>>93
SSにするのを期待するそそる内容なんだが
惜しまれるのが鬱展開の話しをあなたは書かない事だな
姉弟が入れ替わってしまっても幸せになるれる展開があると良いんだろうけど
96名無しさん@ピンキー:2012/12/02(日) 23:13:24.62 ID:beOHKonN
あーなるほど理解。
だと、この状態で新作おねだりするのはきつそうですね。
ツボではあるのでいつかは拝見したいものですが。
97名無しさん@ピンキー:2012/12/09(日) 14:33:05.57 ID:9jqI8d34
>>93
リウヰチさんトコの同人誌で、似たような話見たことあるぞ。

『脳内彼女』の西田プロデューサーも、彼に影響受けたらしい。
98名無しさん@ピンキー:2012/12/09(日) 14:54:18.17 ID:FUzJTsz9
99名無しさん@ピンキー:2012/12/09(日) 19:28:06.09 ID:FUzJTsz9
なんでか良くわからないけど、ただひたすらいちゃいちゃするだけの話が書きたくなって、
>>24 のカップルに再登場する話を投下です。

『Symbolon』 2004/04/17(土) 篠原俊彰 1/5

「そういえば篠原、昨日のあれどうだったんだ?」
「ん? 昨日のあれって?」
 大学入学して出来た友人、田中と歩く昼下がり。ふとその田中がこんなことを言い出した。

「ラブレターもらって呼び出されてたやん。結局やっぱり行かなかったの?」
「行った。行かなきゃよかった」
「酷いブスとかデブとかヤンデレとかだった?」
「うんにゃ。待ってたのが男だった」
「あー。そりゃお気の毒」
 実に心の篭ってない慰めだったが、今はそれがありがたい。

「まあ、男に告白されたの、これが初めてって言うわけじゃないんだけどな」
「へえ……」
「引くなよ。僕は女が好きなんだ。男となんかと付き合う気はさらさらない」
「昔彼女と付き合ってたとか言ってたけど、ヨリ戻す気ないんか?」
「あれは女でも最悪だったな……。いい女とか知らない?」
「知ってたら休日にヤローと出かけるかよ。今からナンパでもしてみる?」

 大学入って新しい彼女も作りたいし、それもありか……と思って周囲を見回してみる。
 今まで自分でやったことはないけど、兄貴と一緒のときにナンパするのは見たことがある。
 例えばナンパされて困ってる女の子とか狙い目……という兄の言葉を思い出す。
 「まぁあんまり居ないけど」とも言ってたけど、その直後に成功させてたのは見事だった。

「ごめん、待たせちゃった?」
 その“ナンパされて困ってる女の子”がいたので、田中に少し離れてもらって、その時の
ことを思い出しつつチャレンジ。『あんまり居ない』はずなのに、結構いるもんだろうか。

「篠原さん?!」
 その女の子が、心底びっくりした表情で僕の名前を呼んだ。
 見たこともないような、凄い美少女だった。
 テレビや雑誌でしか見れない思ってたような、いやそれ以上に可愛らしい素敵な少女。
 自分の名前を呼んだのだから知り合いのはずなのに、前にどこかで見たことがあるような
気がするのに、どうしても思い出せない。それがもどかしい。
 いや、もどかしいと思う余裕がないくらい、僕はその少女にすっかり魅了されていた。

 くりくりと動く大きな目が印象的な顔が可愛い。
 ピンク色の柔らかそうな唇と、そこから覗く白い歯が可愛い。
 ピンクのヘアバンドをつけた、背中にかかるさらさらの黒い髪が可愛い。
 その間から覗く、薄い肩から細い首にかけてのラインが可愛い。
 全然世間ずれしていないことが分かる、女らしい細かい仕草が可愛い。
 緊張してるのか少しかすれた、でも柔らかい感じの声が可愛い。
 どこかぼうっとした様子の、はにかむような表情が可愛い。
100名無しさん@ピンキー:2012/12/09(日) 19:29:13.07 ID:FUzJTsz9
2004/04/17(土) 篠原俊彰 2/5

「もしもしー?」
 ふと気づくと、田中が僕の目のまん前で手を振っていた。
「えーと、ここはどこ? ナンパ男はどうなった?」
「そっからかよ」
 田中が面白そうに笑う。

 どうやらここは喫茶店のようで、さっきの女の子と向かい合う形で僕たちは席に座ってい
た。女の子の前にはパフェが、僕の前にはお冷が既に並んでる。
「ナンパ男は相原ちゃんとお前が黙ったっきり反応がないので呆れて去った。道の真ん中で
突っ立ってるのも悪いから、近くのサ店に入った。オーケー?」
「オーケイ理解した。ごめん、完全に見とれてた」
「まあ、見とれたくなるくらい可愛いことは確かだけど、お前さすがにボケすぎ」

 僕たちの言葉に、顔を真っ赤にして照れている様子も可愛い(もうええっちゅうねん)。
「相川ちゃん、ごめん自己紹介もっかいお願いできるかな」
「えっと、“あいかわれお”、高校1年です」

 テーブルの上のペーパーナプキンに、端正な字で『相川玲央』、その近くに『田中純也』
『シノハラトシアキ』と汚い字で書きなぐられてる。
 “あいかわれお”ってこんな字を書くのかとか、綺麗な字だとか、僕の名前は紹介済みか
とか、漢字分からなかったのかとか思いつつ、『篠原俊彰』と漢字で記入。

「篠原さんのことは前々から知ってて、遠くから見てるだけだったけど、でもずっと大好き
で、今こうやってお話できるとか夢のようです」
「お前、彼女のこと知ってた?」
「前どっかで見たことがあるような気がするけど、思い出せないや。……でも、ありがとう。
僕もすっごい嬉しい」

「でも意外。彼女いたっていうし、顔いいし、篠原ってもっと女慣れしてると思ってた」
「付き合ってる方、いるんですか?」
「もう半年くらい前に別れたきりかな。今はフリー」
 そう言ったあと、勇気を出して付け加える。
「もし相川さんがOKなら、彼女になってくれないかな」

 そう言ったあと、ほんの少し間があって。
 相川さんは顔を真っ赤にしたあと、突然ぽろぽろと涙を流して泣き始めた。
「ごめん、やっぱ嫌だった?」
「いえ、そうじゃなくって……私、とっても嬉しくて……嬉しくて……」

 『彼女を泣かせた悪い男め』という視線を全身に感じつつ、泣き止むのを待つことしばし。
 ようやく彼女が泣き止んでくれた。
「ごめんなさい。突然泣いたりしちゃって……あれ? 田中さんは」
「あいつなら、気を利かせて退散してった」
「田中さん、とってもいい方ですね」
「そう思うなら、今度誰か、女友達紹介してやって欲しいな」
 伝票ちゃっかり置いていったけどなー、という部分は口にしないでおくことにした。
101名無しさん@ピンキー:2012/12/09(日) 19:30:08.78 ID:FUzJTsz9
2004/04/17(土) 篠原俊彰 3/5

 中学時代につきあってた1人目、高校2年ごろの2人目、高校3年前半の3人目の彼女に
続く、4人目の“彼女”。
 田中の言うとおり、僕は自分のことを、もっと『女慣れ』してる存在だと思ってた。
 童貞というわけでもない。

 でも、彼女と一緒にいると、彼女のことを考えると、ドキドキが止まらない。
 こんなことは初めてで、なんだか自分でもおかしいくらいだ。

 タイプとしては1人目の彼女に似ている。一番ウマがあって仲が良かったけど、中学卒業
と同時に親の転勤で遠距離になり、そのまま疎遠になってしまったのが残念だった。
 もう連絡先も分からないけど、今元気にしてるのだろうか。
 2人目は、四つ股かけられた挙句他の男の子どもを妊娠してサヨナラ、3人目は……あま
り思い出すこともしたくない。

 最初の彼女と別れたあとは総じて女運が悪く、やっぱり最初の子を大事にしておくべきだっ
たのか──とずっと悔やんでいたけど、こういう逆転があるなら悪くない。
 相川さんのことは、ずっと大事にしていきたい、そう心に誓う。
 もう、悔やむことのないように。

「ハンカチありがとうございます。洗ってお返ししますね」
 トイレに顔を洗いに行ってきた彼女が戻ってきた。
 ゆったりとした白いワンピースに淡いピンクのカーディガン。
 化粧をほとんど落として、多分リップだけを塗りなおしたのだろうけど、キメの細かい白
い肌が光り輝くようだ。
 もとから形のよい眉は手入れされていない素の状態だったけど、前カノの極端なメイクに
うんざりしてただけに、今はそれも好意材料。

「あの……篠原さん、私どこか変でしょうか?」
 席にも着かずに不安そうに尋ねる彼女。我に返って着席を促す。
「いや、見とれてた。綺麗で、可愛くて、こんな子と一緒にいれるとか夢みたいだって。すっ
ぴんでも凄い可愛いね」
「あ、ありがとうございます。篠原さんもすごく格好よくて……私も一緒にいれて夢みたい
です」

「“篠原さん”ってのやめようか。僕のことは俊彰、って呼んでくれると嬉しい」
「俊彰……俊彰……うーん、3歳も年上ですし、“俊彰さん”だと駄目ですか?」
「じゃあそれで。僕のほうも“玲央ちゃん”って呼ぼう」
「俊彰さん……俊彰さん……俊彰さん……」
 『玲央ちゃん』の可愛い声が僕の名前を呼びかける。なんだかそれだけで、心が温かいも
ので溢れてくるような感じがしてしまう。

「玲央ちゃん、玲央ちゃん、玲央ちゃん」
 僕もその言葉を口で転がす。
 玲央、レオ、Leo、Lion、獅子。
 その言葉は可愛らしい少女に似合わない印象があったけれども、実際に口にしてみると、
なんだかその響きはとてもフィットするように思えた。
102名無しさん@ピンキー:2012/12/09(日) 19:31:05.35 ID:FUzJTsz9
2004/04/17(土) 篠原俊彰 4/5

「ウェイトレスさん、呆れてましたね」
 そう言って玲央ちゃんが吹き出す。笑顔も可愛い。
「まあ二人してブツブツ名前を繰り返してるとね」
 僕も苦笑しながら、出された紅茶を口にする。

「そういえば玲央ちゃん、これから何か用事あるの?」
「今日の用事は、俊彰さんに会って、できれば告白すること、です」
「……えぇと、つまりもうフリーってことかな?」
「フリーもフリー、大フリーです」
 大真面目に頷く様子がおかしくて、少しおかしくなってしまった。
「じゃあ、今日は色々トークしてみるってとこで。……そうだ。趣味とかある?」


「……うわ、もう6時か」
 ふと時計を見て驚く。かれこれ4時間くらい、紅茶3杯で粘りに粘ってたことになる。
 『深窓の令嬢』のような、あるいは『お人形さん』のような、女の子女の子した可憐な
外見からは意外だったけど、結構少年向けの漫画やゲームに関する知識が豊富で、趣味も
近くて、会話して楽しすぎて完全に時間を忘れていた。
 気に入ってたマイナーゲームについて、あれだけ熱く語れたのは多分初めてだ。

 けど、一番目を輝かせて聞いてたのが、僕の大学での専攻とか講義の内容を喋っていたと
きというのが最も意外だったかもしれない。
 まだ授業も始まったばかりで、一般教養ばかりで退屈だと思ってた授業なのに、彼女の入
れる上手な相槌を聞きながら説明してると、なんだかワクワクしている自分がいた。

「最後らへん、なんか僕ばっかり喋ってる感じになってごめんね」
「いえ、すっっっっっごく面白かったです」
「良かった。僕は帰らないとまずい時間なんだけど、……明日大丈夫かな?
 ……もっとずっと、一緒にいたい。話していたい。声を聞きいていたい」
 自分の口から思わずだだ漏れした本心に、二人して赤面してしまう。
「明日は……はい。大丈夫です」

 待ち合わせ場所と時間を決めて、メアドを交換して(携帯の番号は何故か教えてくれなかっ
た)、田中分ふくめて3人分の会計を支払って店を出る。
 大きく伸びをして深呼吸する。
 冷えた空気がおいしかった。

 椅子に座ってたときはもっと小柄な印象だったけど、横に並んでみるとそうでもない。
 178cmの僕と並んで、ちょうど「男と女の身長差」くらいだろうか。
「……じゃあ、今日はお別れですかね」
 名残惜しそうに呟く彼女を、「ちょっと待って」とプリクラに誘う。

「2人一緒の写真が欲しいけど、うちの携帯、ちょっと古くてデジカメ付いてないからなあ」
「メイクも落ちて恥ずかしいし、今日はなしでまた明日にしませんか?」
「いや、すっぴんでも十分可愛いから大丈夫。それに今日の記念が欲しいんだ。明日は明日
でまた撮ろうよ」
103名無しさん@ピンキー:2012/12/09(日) 19:32:39.77 ID:FUzJTsz9
2004/04/17(土) 篠原俊彰 5/5

「俊彰さん、慣れてるんですね。私初めてだからよく分からなくて」
「僕もしばらくやってなかったから、すっかり浦島。……もう1枚、いいかな?」
 コインを再度投入して2枚目の撮影カウントの開始後、肩を引き寄せ、指先で顎を少し上
向かせる。一瞬戸惑ったようだけど、僕の意図に気づいたのかそのまままぶたを閉じる。

 ふんわりとした衣装で誤魔化されていたけど、思っていたよりずっと身体は華奢だった。
 肩は薄く、肩幅も狭くてすっぽりと僕の体に収まりそうだ。
 細いおとがいに触れた指先の伝える、繊細なラインと肌触りが気持ちいい。
 長い睫が落とす影と、滑らかな頬と、つややかな唇に見とれていたかったけど、機械の発
する音声に促されるまま、僕自身も目を閉じて唇同士を重ね合わせる。

 彼女の身体から漂う、柑橘系の甘い香りにくらくらする。
 腕が伝えてくれる、ほっそりとして、でも柔らかくて温かい感触にドキドキする。
 女の子の唇がこんなにも滑らかで、柔らかくて、しっとりとしていて、プルプルとしてい
て、そして甘いものだとは知らなかった。

 目で見た姿も好きだったけど、目を閉じた今はっきりと分かる。
 五感のすべてが伝えてくれる、この子の存在すべてが大好きなのだと。大切なのだと。
 相川玲央という女の子に巡りあえて、しかもその子を「彼女」と呼べる幸運、あるいは運
命に対して僕は大声で「ありがとう!」と叫びたい気分になった。

 このままこうやって永遠の時間を過ごしたかったけれども、機械に促されて身体を離す。
 とてもとてもとても名残惜しいけれども、でもこれ以上続けていたら理性が完全に吹っ飛
んでいたかもしれない。ズボンの前がひどく窮屈だった。

「ファーストキスってレモンの味って言いますけど、もっとずっと甘いものなんですね」
「僕はファーストじゃないけど、こんなに甘いキスは初めて」


 帰宅して夕食後、部屋に篭って大学の教科書を引っ張り出してみる。
 妖精のような愛らしい姿、鈴を振るような優しい声、魅力的な芳香、唇の味わい、ほっそ
りした身体の感触を思い出して自慰にでも耽りたかった。
 でも、それ以上に彼女の興味のある話題をもっともっと提供したくもあった。
 「男なんて、本当に単純」昔の彼女の言葉が耳に蘇るけど、今は心底同意する。

 ふと気がつくと、携帯にメールの着信が入っていた。気づかないくらい没頭してたのかと
自分でもおかしい。
 「a_leo@...」という、アドレスを見るだけで心が踊るのを感じる。彼女から届いたメール
の内容を見たあと、電話を入れた。

「お、篠原か? 今日はどうだった?」
「ばっちり。田中、気を利かせてくれてありがとな。で、明日は暇か?」
「用事はあるけど、あけられないことはないな。どんな話?」
104名無しさん@ピンキー:2012/12/09(日) 19:33:59.96 ID:FUzJTsz9
2004/04/17(土) 相川祥子 1/2

 待ちわびていたチャイムが鳴り、わたしは2階の自分の部屋から半分転がるように階段を
駆け下りた。
 ドアを開けた瞬間、その『女の子』がわたしに抱きついてくる。
「祥子さん、ありがとう! ありがとう!」
「……ごめん、まず靴を脱いでわたしの部屋に入ろうね?」

「はい、どうぞ」
 持ってきたお茶を、“少女”の前に置く。
「ありがとうございます」
「……で、うまく行ったんだよね?」
 何があったのかメイクが完全に落ちてしまってるのが不安材料だけど、玄関口の様子から
いっても、まあこれは間違いないところだろう。

「もう、色々ありすぎて何から言えばいいのか……」
「告白はできたんだよね?」
「うん、『ずっと好きでした』って告白したら、『嬉しいよ』って。『彼女になってくれな
いか』って。“れおちゃん”って何度も私の名前を呼んでくれて……」
 そう言っていきなり涙を目からぽろぽろ流し出す。

「私嬉しくて泣いちゃったんだけど、すっとハンカチ差し出してくれて、そのまま呆れもせ
ずに優しく見守ってくれて」
 ごめん、わたしは少し呆れてます。
 いつも感情を表に出さない子だと思ってたけど、本質はこんなに良く泣く子だったのか。

 涙声のまま『俊彰さん』のノロケ話を延々と語ったあと、ようやく落ち着いたらしくて、
差し出したティッシュで目をぬぐい、鼻をかむ。
「明日もこの格好するのお願いできますか?」
「ん、いいけど。女装して街を歩くのが癖になっちゃったの?」
「もう、祥子さん!」

 白いコットンのワンピースに、シェルピンクのニットのカーディガンを合わせた衣装。
 身体は驚くくらい華奢で、スカートから覗く細い脚は、女のわたしでも思わず見とれたく
なるくらい綺麗。
 ほとんど化粧のない、可愛らしい小さな顔はまさしく『恋する乙女』そのもので、
 でもそれなのに、この子は実は男だったりするのだ。

 “彼”=朝島玲雄は、わたし相川祥子の小学校からの友人、朝島菜々華(菜々ちゃん)の
弟にあたる少年だ。
 はじめ菜々ちゃんの家で彼のことを見かけたとき、すっかり彼のことを菜々ちゃんの妹だ
と信じていた。
(可愛いのに、男の子っぽい格好が好きな子なんだな。でも成長したら凄い美人になりそう)
 そう思っていた子が、いきなり中学入学して学ランを着ていたときの衝撃は大きかった。

 菜々ちゃんと一緒になって、「玲雄君って可愛いねえ。女の子の服着てみない?」と誘い
をかけたことが何度あったか数知れない。もっともその都度断られていたが。
 「女装する必要があったら、わたしに声をかけてよ。喜んで手伝ってあげる」
 その言葉がまさか実現するとは、言った自分でも考えていなかったわけだけれども。
105名無しさん@ピンキー:2012/12/09(日) 19:35:52.99 ID:FUzJTsz9
2004/04/17(土) 相川祥子 2/2

「明日、10時にまた会って、俊彰さんとデートする約束しちゃったので」
「なるほど、それでまた女装か。もちろん手伝うよ。でも、菜々ちゃんも女装させたがって
たしそっちにお願いしたほうが早くない?」
「まだそこまでの決心はつかないです。親にばれるのも怖いですし」
「そっか……けどわたしもその“俊彰さん”に興味沸いてきたな。ついて行っていい?」

 昨日の晩にわたしに相談の電話を入れてくるまで、玲雄くんは女装するのを極端なくらい
に嫌がる少年だった。
 今日の朝、初めての女装をしたときも、なんだかとても不安がってるようだった。
 男姿でも女の子と間違われる女顔の持ち主とはいえ、メイクする前の状態だとやっぱり
『女装した男の子』っぽい感じは否めなかった。

 それが今は、まるで生まれたときから女であるかのように、ごくごく自然に“女の子”に
なってしまっている。
 ここまでの変化をもたらした人物に、興味(あるいは嫉妬)がないと言えば嘘になる。

「取らないで下さいよ」
「大丈夫。邪魔もしないし。ちょっと見て、できればちょっと話すだけだから」
「話す……とちょっとまずいかも」
「まずいって何が?」
「いや、実は私、『相川玲央』って名乗っちゃったから」
 そう言って、女装少年は事情を説明する。

 昨日彼に渡したラブレターには『朝島』とだけ名前を書いておいたこと、今の自分と昨日
告白した少年が同一人物と“俊彰さん”が気づいたかどうか不安だったので、つい私の苗字
を借りて『相川玲雄』──ではなくて『相川玲央』と名乗ったこと。
「じゃあ、自分が男ってことも言ってないんだ?」
 わたしの問いかけにこくんと頷く。

「じゃあ相川祥子と相川玲央は、血の繋がってない姉妹ってことで、最初だけ付き添うね」
「……祥子さん、恋人いませんよね?」
「そこは『お姉ちゃん』って呼んでね。恋人はいないよ。彼氏イナイ歴絶賛18年」
「田中さんて方がいて……」


 明日の打ち合わせや、着る服の準備まで済ませて、漸く男姿に戻る。
 化粧をきれいに落とし、エクステも外して、男の服に袖を通す。
 さっきまでの美少女はどこにもいなくて、そこには女顔であるけど普通の男の子が立って
いた。
 『本来の自分』に戻ったはずなのに、鏡に映る自分の姿を見る目が、酷く辛そうに見える
のはなぜだろうか。

「今日はありがとうございました」
 そう言って頭を深く下げて家を出るときの声も、先程までの女の子らしい声とは違ってす
こし低くて、聞き慣れたいつもの『玲雄くん』の声のはずなのに、とても悲しそうに響いた。
106名無しさん@ピンキー:2012/12/10(月) 00:19:49.53 ID:V8bI9aFQ
つC
107名無しさん@ピンキー:2012/12/13(木) 01:12:12.44 ID:16DqTzXj
GJ! つづきに期待してます。
108 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/15(土) 11:27:00.10 ID:auyxITNK
そろそろトリップつけてみま。

『Symbolon』 2004/04/18(日) 田中純也 1/3

「田中、やっと来たか」
 待ち合わせ時間の10分前に到着すると、そこにはもう既に篠原と、記憶の通りに超可愛い
相川ちゃんと、もう一人知らない女性が待っていた。
「申し訳ござらん。かくなる上は、この腹かっさばいて御詫びを!!」
「じゃあ移動するか」
 女性2人はクスクス笑ってくれたけど、篠原は安定のスルー力をみせて歩き出す。

「で、どこ行くつもりなんだ?」
「とりあえず喫茶店で会話して昼飯どっかで取って、今日は天気いいし、公園でのんびり
過ごそうかなと思ってたけど、人数増えたからどうするかな」
「準備しておいて良かったわ。割引券あるからまずはカラオケ行こや」

「歌、何か指定する?」
「いや、まず自己紹介と色々喋ってからがいいかなと。相川ちゃんは昨日なんかどたばたし
てすいません。そちらのお嬢様は初めまして、田中純也と申します。以降お見知りおきを」
 日曜朝のガラガラのカラオケ。席に腰掛けて、メニューを眺めながらそんな会話。

「田中さんて本当、玲央の言うとおりの人ね」
 まだ名前を知らない女の人が、そう言ってニヤニヤと笑った。
「へぇ。ちょっと怖いな。どんな人と思われてたんだろ」
「猿みたいな可愛い顔で、面白くて、気が効いて、親切で」ここで一旦言葉を切って、
「自分が恋人になろうとは思わないけど、でも知り合いには紹介したくなる人」
「しょ……お姉ちゃん! 私そんなこと言ってない」
 俺の悲しそうな顔と、相川さんの抗議を受けて大笑いしてたり。

「あと紹介済ませてないのわたしだけか。相川祥子、玲央の姉です。高卒で働き始めたばっ
かだから、年は田中さんと一緒かな。玲央と紛らわしいから、祥子って呼んでいいよ」
「社会人かー。なんだかソンケーしちゃうな」
「大学入る頭がなかっただけだけどね」
「いやいやいやいや、親のスネをかじってる俺らに比べると立派です」

 並んで座ってると、おかしなくらい対比的な2人だった。
 体が細くて色が白くて、天使のような印象の相川ちゃんに比べて、太ってるってほどでは
ないけどはないけどしっかりして『肝っ玉母ちゃん』のような、生活感たっぷりな印象。
 ついでに言えば少年のように胸のない相川ちゃんと違って、EかFカップはありそうだ。

 お人形さんのように可愛いらしい容貌の相川ちゃんとこれまた対照的に、美人という感じ
ではない。でも快活な表情の与える印象は意外なほどにチャーミングだった。
「玲央と似てないな、って思ってるでしょう」
「いやあ、そんなことは……すいません正直あります」
「姉妹って言っても血は繋がってないからねー。そこら辺は詮索しないで欲しいけど」
 やってきたコーヒーにミルクとシュガーを入れてかき混ぜながら、ヘビィそうな事情を気
軽な感じで言う祥子さん。

「そろそろ歌おっか」
 と俺が言ったのは、1時間くらい適当にだべったあとだった。皆同意っぽいので、適当に
歌い慣れた曲を入力。続いて祥子さんも入力する。
109 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/15(土) 11:28:00.21 ID:auyxITNK
 2004/04/18(日) 田中純也 2/3

「歌うまいねえ」
 篠原が有名なロックを熱唱して歌い終わったところで、皆で感心したように賞賛。
「次、玲央ちゃんいきなよ」
「私、ぜんっぜん歌下手なんでいいです」
「下手でも全然大丈夫だって。さあ選んで選んで」
「私、おトイレ行ってきますね」

 逃げ出すように部屋を出た玲央ちゃんの後ろ姿を見送って、一瞬部屋が静まる。
「……ああそうだ、今のうちがいいか」
 そう言って祥子さんは財布から2万円取り出し、何か考え込んでいた篠原に差し出した。
「なんですかこの大金」
「玲央って、妙にお金もらって使うの嫌がっててさ。『“家族”なんだから当たり前でしょ』
って言っても聞かなくて。今着てるのもわたしのお下がりで正直合ってないし。
 もしかしたら、『彼からのプレゼント』で新しい服を買って貰うのなら大丈夫かな、って」

「そんな、悪いですよ」
「お願い! 人助けだと思って」
 そう言って頭を下げて手を合わせる。篠原は色々考えてたようだけど、「ありがとうござ
います」と深くお礼をしながら結局受け取った。
「ありがとう。似合う服見つけてあげてね。金が余ったら、デートの軍資金にして」
「給料日前だから、お金カツカツでしょうに……すいません、ありがたく使わせて頂きます」

 玲央ちゃんが部屋に戻ってきたのは、俺が歌ってる最中だった。
 カタログ本を見もせずに手拍子だけしてるので歌はやっぱ期待薄なのかなあ、と思ってた
けど、篠原が何事か囁くと、玲央ちゃんは顔を真っ赤にしたあと冊子をめくって曲を入力。
 やがて玲央ちゃんの順番が回ってきて、最初おずおずと、徐々に伸びやかに歌いはじめる。
 女性ボーカルのキーの高い、バラード調の優しい旋律に、玲央ちゃんの声が合わさる。

「お粗末さまでした」
 歌い終わって頭をぺこりと下げる彼女に、少し遅れて全員で大きな拍手。
「これで『歌が下手』ってありえないってば」
「十分プロ狙えるレベルだよ。無茶苦茶声きれいだし、音感いいし。確かにちょっと歌い慣
れてないところはあったけど、でもすぐ良くなりそう」

「篠原も呆然としてないで、なんか言ってやれよ」
「……なんかね。恥ずかしいけど歌ってる最中、羽根がとても綺麗だった。なんでか知らな
いけど、頭の中に天使みたいな羽根のイメージが浮かんで、それがどうしても離れなくて」
「凄いこと言うねえ」
「でも、わたしも分かる分かる。『天使の歌声』って、本当にそんな感じだった」
「……歌うのって、気持ちいいんですね。私、初めて知りました」
「もっと歌って歌って。次、篠原とデュエット曲なんていいんじゃない?」

 2時間のところを1時間延長して、その間ほとんど『玲央・オン・ステージ』状態だった
カラオケを出て、少し柔軟体操をしてみたりする。
「なんか私ばっかり占領しちゃってごめんなさい。お金も出してもらっちゃって」
「いやいやいやいや。あれは金払ってでも聴く価値が十分あたったよ」
「貴女だけまだ高校生なんだから、お金のことは気にしないで」
110 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/15(土) 11:28:55.21 ID:auyxITNK
 2004/04/18(日) 田中純也 3/3

 『玲央・オン・ステージ』のあとは、『玲央・ファッション・ショウ』の開催だった。
 とにかく今日は玲央ちゃん中心に回る日らしい。

 祥子さんお奨めの店(確かに安めで美味しかった)で遅めのランチを取ったあと、駅前の
服屋を適当に回って試着しまくる。
 俺たち3人で(店によっては店員さんも)寄ってたかって玲央ちゃんに似合う服を探して、
なんだか大騒ぎ。

「……あの、本当にこれ着ないと駄目でしょうか?」
 と最初は最初は恥ずかしがっていた玲央ちゃんも、

「お客さん、凄くスタイルよろしいですね。こちらとかいかがでしょう」
「玲央ちゃん、脚すっごく綺麗なんだねえ。細くて長くて形いいし。これ隠すの勿体無いよ」
「ウェスト細くていいなあ。位置も高くて見事にくびれてるし、お肉全然つまめない」
 と絶賛の嵐を浴びて段々とこなれてきたようで、

「結局これが一番ですね。肌触りも素敵ですし」
 最終的には、くるくる回りながら鏡の前で自分の姿を映してみてご満悦の様子。

 会計を済ませて、結構時間のかかった服屋巡りを終えて店を出る。
「俊彰さん、これ本当に良かったんですか?」
 最終的に選択した、篠原推薦の足元までの長い白いワンピースの裾(購入したものをその
まま着て出てきた)をつまみながら不安げに玲央ちゃんが尋ねる。
 一緒に購入した薄緑の上着を合わせたその姿は、男なら誰しも見とれたくなるくらい可憐
で愛らしかった。
 あの魅惑的な脚とか完全に隠れてるのが、俺としては残念なところだったけれども。

「うん、僕からの初プレゼント。気に入ってくれると嬉しいな」
「はいっ、すっごく気にいりました! 家宝にします!」

「……じゃあ、そろそろ俺は退散するか」
「ああ、それじゃわたしもここら辺で退散で。荷物は持って帰ってあげるね」
 朝着てきた服を入れた紙袋を、そう言って祥子さんは玲央ちゃんから受け取る。
「もう十分以上にお邪魔しちゃったしね。あとは2人で」

 こっちに手を振って何度も振り返りながら立ち去る2人。
 腕を組んでとても仲が良さそうで、「邪魔しすぎて悪かったな」と思ってみたり。
「でも本当、凄い絵になる、超美男美女カップルねえ」
 彼らの後姿を見てそう呟く祥子さんは、言葉と裏腹にとても辛そうな感じがした。

「……祥子さん、できれば俺の恋人になってもらえませんか?」
「余りモノは余りモノ同士? そうねえ。……やっぱり恋人は無理かな」
 かなり本気で告白した俺の言葉を、一蹴されて凹んでみる。
「でも、友だち同士ということでの交際ならいいよ? わりと気に入ったかも」
「では謹んでお友だちから始めさせていただきます」
111 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/15(土) 11:30:15.50 ID:auyxITNK
 2004/04/18(日) 相川玲央 1/4

「桜、さすがに散っちゃってるね」
「私的には、葉桜のほうが好きだからちょうどいい感じかも」
 2人と別れたあと、公園まで歩く。
 桜で有名な広場は、でも全部花が散った後のようだった。
 芽吹き始めた新緑の輝きに目を細める。

「来年は一緒に桜が咲いてるときに一緒に来たいな。桜色の服も似合いそうだし、咲いた桜
の下にいると、きっと桜の精みたいに見えそうな気がする」
「来年かぁ……そのときまで一緒に居られたらいいんだけど」
「居れるよ。きっと。来年も、再来年も。十年後も二十年後でも、五十年後でも」

 そのとき、少し強い風が吹く。長いスカートが足に絡まって倒れかける。
 裾が長くて歩きにくいとは思っていたけど、こんな伏兵が待っていたのか。
 俊彰さんが咄嗟に抱きかかえてくれなかったら、本当に倒れてたかも。
「大丈夫?」
「ありがとう。こんな長いスカート初めてだから、慣れてなくてごめんね」
 本当は、慣れてないのは『長いスカート』じゃなくて『スカート』そのものだけど。
「それは悪いことしちゃったかな。もっと短いの選ぶべきだったか」
「ううん、気にしないで。これ凄く気に入ったから。私も色々試して慣れていきたかったし」

「……ここら辺でいいか」
 それから少し歩いたあと、そう言って俊彰さんが私の手を引っ張って芝生に入っていって
どっかりと芝生の上にそのまま座り込む。
「レジャーシート持ってくるべきだったかな。大事なワンピースが汚れるから私座れない」
「いや、玲央ちゃんはここに座って」
「えぇ?」

「ちょっと、これ恥ずかしいかも」
 結局、押し切られて座ってる私。
 どこにかというと、彼の中だ。
 彼の脚の付け根にお尻を乗せて、彼の胸に背中を預けて。

 俊彰さんの意外なくらいに引き締まった身体と、温かい体温、そして彼自身も緊張してる
のだろう、激しい胸の鼓動が、くっつけた背中に直接伝わってくる。
 私の心臓も、それが感染したかのようにバクバクしっぱなしだ。

「重くないですか?」
「いや全然。玲央ちゃん凄い軽くてびっくり。もう少し体重あったほうがいいかも」
 そう言って優しく私の身体を両腕で抱きしめてくる。私の肩幅が彼の胸の幅より小さくて、
私の耳の辺りに彼の口許が来る感じだから、俊彰さんの身体にすっぽりと包まれた状態。
 これは恥ずかしい。

「今日は、兄貴からデジカメ借りて来たんだ」
 そう言って嬉しそうに後ろから手を伸ばし、2人の姿を撮影。
 デジカメのモニタに映った姿で散々笑いあったあと、俊彰さんがふと呟く。
「男と女って、こんなにも違うもんなんだね」
 途端、何か冷や水を浴びせられたような感じがして、体がびくんと硬直してしまう。
112 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/15(土) 11:31:31.69 ID:auyxITNK
 2004/04/18(日) 相川玲央 2/4

 一瞬の後ようやく、今背筋を走った恐怖心の正体に思い当たる。買い物の途中あたりから
意識の外だったけど、私の身体は男のもので、こう密着してたらばれてしまうのも当然か。
 そんな考えが頭の中をグルグルしてる私の手を取り、目の高さまで掲げる。

「なんでこんなに綺麗なんだろう。白くて、すべすべで、小さくて、ほっそりしてて。僕の
手とは大違いだ」
「ふぇぇぇ?」
(私が男だって、分かってない……? 女の子と思って、それで綺麗だと言ってくれてる?)
 びっくりして、なんだか変な声が出てしまって、自分でも驚く。

「いや、でも俊彰さんの手って凄い素敵だと思います。指が長くて、でも力強くて」
 変にほっとして、咄嗟になにか返事をしようとして、ついそんなことまで口走ってしまう。
 ──けれどもそれは本心であって。
 男性の手に『異性』を感じてドキドキしている自分が、不思議に思える。

「玲央ちゃんの身体、いい匂いがして凄く柔らかくて。でもブニブニしてなくてきっちり締まっ
てて。こうして抱いててすっごく気持ちいい」
「でも私、胸とかまっ平らですし」
「玲央ちゃん、まだ高校1年だったよね? それじゃあ、これから胸も大きくなっていくよ。
仮に大きくならなくても、玲央ちゃんの胸ならどんなのでも大好きだから」

「……なんなのかな、このバカップル会話は」
 揺れる心を誤魔化すための私の呟きに、2人して大笑いしてみたり。
「いや、でもいいじゃないバカップル。玲央ちゃん相手なら大歓迎。恋人同士でやること全
部やりとげてしまいたいよ」
「俊彰さんって、以前にも恋人いたんですよね」
(前の彼女にも、こんなことを言っていたのだろうか)
 場違いな嫉妬心がちくりとうずく。

「恋人はいた。でも、恋をするのは玲央ちゃんが最初だし、そして最後だと思う。
 他の女の子と付き合ってたとき、こんなにドキドキしたことなかった。相手のことを考え
て、夜も眠れない気持ちになったことはなかった。こんな素敵な、世界一の女の子を自分の
彼女と呼べるなんて、僕はなんて幸せものなんだと思う」

「私、全然そんなんじゃないですよ。なんで俊彰さんが私のことをそんなに言ってくれるか
不思議なくらい」
「玲央ちゃん、何故かは分からないけど、とても不安がってるよね。自分の魅力からあえて
目を背けたがってるみたいにすら見える」

「そう……なのかな」
「うん。でも今日のカラオケと買い物で結構変わったよと思う。田中と祥子さんにはマジ感
謝してる。玲央ちゃんは本当に、本当に素敵な女の子なんだから」
「……」
113 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/15(土) 11:33:53.11 ID:auyxITNK
 2004/04/18(日) 相川玲央 3/4

「玲央ちゃんがナンパ相手に困ってるように見えて、助けたいと思って声をかけた自分に感
謝したいわ」
 あのナンパの人は顔だけは良かったけどなんだか気持ち悪くて、凄くしつこくて、本気で
困っていたのだ。
 そのとき、“篠原さん”が現れて、声をかけて、助けてくれた驚きと喜びといったら。

「あれが確か昨日の昼だっけ。もっと昔のことのように感じる。一昨日まで僕、どうやって
生きてたんだろうな。それまで玲央ちゃんなしで生活してたとか信じられない」
 私の耳のすぐそばにある口で、低く響く声で言葉を続ける俊彰さん。

 私の顔は今どんな状態だろう。お互い顔を見れないこの体勢でよかったと思う。
 なんだから体がぽかぽかして、ふわふわした感じがするのは春の陽気のせい。
 顔と頭がのぼせたように温かく感じるのは、きっと春の陽気のせい。

「あの瞬間、もう完全に一目惚れしていて。外見からして僕の理想どおり、というより理想
のはるかに上を行く女の子で、顔とか可愛くて綺麗でもろに僕の好みで。
 ……脚も凄い綺麗で良かったよ。今日の試着のとき、実は僕鼻血吹きそうで大変だった。
“他の男に見られたくない”って思って、で一生懸命長いスカート探したけど、似合ってて
良かった。脚は2人きりのときに、もっとしっかり見せて欲しいな」
「ふぁぅぅぅぅぅぅぅ」
 さっきからなんか変な声が漏れっぱなしだ。脳からもなんか変な汁が出てる気がする。

「声も高くて澄んでて柔らかくて。歌声とかとっても素敵だった。デュエットしてて凄く気
持ちよかった。またカラオケ行こうね。
 今度は録音取っておきたいな。夜寝るときとか朝起きたときに玲央ちゃんの歌声聴けたら
最高だろうなあ」

 もう、ダメ。もう、ダメ。
 恥ずかしさでどうにかなってしまいそう。
 手足をばたつかせて彼の体から脱出しようと思っても力が入らず、「もうやめて」って言
おうと思ったら、代わりに
「ふぁぅにゅにゃにぇにぇっ」
 という意味不明な音が出るばかり。

「ん? 何? 玲央ちゃん」
 私のウェストを手で抱えて少し居持ち上げ、体を少し回転させて横座りに近い状態に。彼
の鼓動と体温が感じられなくなって、少し寂しく感じてしまう。

「やっぱりウェスト凄く細いなあ。僕と同じ内臓が入ってるって信じられないくらいだ」
 煮過ぎて煮崩れしまくった南瓜のように、今、私の体を箸で突いたら崩れてしまうんじゃ
ないだろうか。そんな感じ。

「……勢いに任せて色々言っちゃって訳が分からなくなっててごめん。要するに、玲央ちゃ
んはもっと自分に自信を持っていいし、自信を持つべきだ、ってこと」

(でも。私は大きな嘘をついていて、今でも俊彰さんを騙し続けているのに)
114 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/15(土) 11:35:35.98 ID:auyxITNK
 2004/04/18(日) 相川玲央 4/4

 彼の顔をまともに見ることもできず、地面を眺め続ける私の視界に、急に俊彰さんの顔が
アップで迫ってきた。
 一瞬何が起きたのか把握できず、反応もできない私の唇に彼の唇が重なる。

 嬉しい、嬉しい、嬉しい。
 頭が、心が理解するよりも早く、私のからだ全部から喜びの声が上がるのを感じる。
 今まで気づかなかった。いや、気づかないふりをしていただけかも知れない。
 この体のほてりは、力が抜ける感覚は、恥ずかしさよりもむしろ、大好きな俊彰さんから、
『私』という存在を求められる、認められる“喜び”から来るものだということを。

 唇が離れて、大きな息をつき、ほんの少しだけ冷静さが戻ってくる。
 今の体勢、俊彰さんが背中をかなり曲げてて厳しそうだ。
 背筋をそらし、微かに顔を上に向けて、そして彼の頭の後ろに両手を回して目を瞑る。
 再度重なる、二人の唇。

「ちゅっ、ちゅ、ぷちゅ、ちゅぴっ、ちゅぱっ」
 ファーストキスのときとは違う、時に激しく、時に優しい彼との口付け。
 嬉しい! 嬉しい! 嬉しい!
 彼の温かい息遣い。夕方に入りかけて少し伸びた髭のちくちくする感覚。ジーンズの下で
堅くなり始めてる彼のあそこ。密着させた体が伝える激しい鼓動。
 歌を奏でる鳥たちの声、頬を優しくなでる風の感覚までが、私に喜びを運んでくれる。

 何よりも、『自分自身が、嬉しい』と思っていることを誤魔化さずにすむ、自分が嬉しい
と思っていることを認めてしまってもいいんだという、そのことが一番嬉しい。

 長いキスが漸く終わり、白い橋が二人の唇の間で光り輝いて、そして落ちたあとも二人で
じっと顔を見つめあって。
「うん、いい顔になった。本当、玲央ちゃんってどんどん綺麗になってくんだね」

「ねえ、俊彰さん。昨日の話の続きを聞かせて」
 しばらく沈黙が流れたあと、私は満たされた気持ちのまま、彼におねだりする。
 場違いかもしれないけど、私の好きな話を。私の好きな、俊彰さんの瞳の輝きを。
「世界が、宇宙がどんなに不思議で溢れてるか。人が分かってないことがどんなに沢山ある
のかってことを」


 来週の週末と、ゴールデンウィーク遊び倒す約束をして、手を振りながらバスに乗る。
 幸せな幸せな、魔法の時間はおしまい。

(来年も、再来年も。十年後も二十年後でも、五十年後でも)
 俊彰さんの言葉を、辛さとともに思い出す。
 今日だって随分危ない場面は多かった。私が男だとばれてないのが奇跡なくらい。

 今はいい。クラスの皆と違って髭も脛毛も生えてないし、声変わりだってまだだ。
 でも私が「へま」をしなかったとしても、高校に入ったし、幾らなんでも変化が訪れる。
 そうなるとこの幸福な時間は、私の掌から零れ落ちてなくなってしまう。
 未来のことは考えるまい。今はこの時間を楽しむだけだ。そう自分に言い聞かせても、ど
うしようもない怖れが、幸せの余韻で一色だった私の心を侵食してきていた。
115名無しさん@ピンキー:2012/12/15(土) 23:54:45.52 ID:ICqTe7se
つC
116名無しさん@ピンキー:2012/12/17(月) 12:43:05.74 ID:wqIlbxj6
乙です!
いよいよ核心部に近付いてますな。期待!
117 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/24(月) 17:56:39.46 ID:KYKsHsuc
中々続きが完成しなくてごめんなさい。
>>48 >>50 のメンツでクリスマスネタを投下しておきます。

『弟はお姉ちゃん』 シチュエーション1 クリスマスイブ2012 1/4

「「メリー・クリスマス!」」
 クラッカーの音と可愛らしい声色の祝言が、ステレオで耳に響く。
「め、めりーくりすます?」
 髪についた紙ふぶきを払いながら、俺はそう返事するのがやっとだった。
「お帰りなさい。遅かったねー。待ちわびちゃった」
「お料理とっくに届いてるから、早くたべよー♪」
「おー♪」
 靴を脱ぎ、トテトテとダイニングに向かう2人の後を追う。

 真っ赤な布地に白いフェイクファーをあしらった姿の、鏡写しのような美少女?たち。
 髪飾りの位置が左右逆なのも『鏡写し』の印象を強めている。
 お尻が見えそうなくらい短いスカートと、赤いニーソの間に見える太ももが眩しい。
 このうち片方が、俺の義姉にして恋人、ついでに人気読者モデルの瀬野悠里。
 で、もう一人が彼女の双子の妹の……ではなく、『弟』の瀬野俊也だったりするわけだが。

「あれ? 親父たちは?」
「あの二人、ホテルでお食事ー。その後お泊りコース」
「そそ。今日は私たち3人きりでお留守番♪」
「来年の今頃は、新しい弟か妹が出来てるかも」
「いや、幾らなんでもそれはないんじゃないかな?」
「だって、パパたち本当にそう言ってたもん」
「本人の発言かよ!」
「孫と子どもが同じ齢ってのも面白そう♪ とかも言ってたよね」
「言ってた、言ってた」
「四十女が出産する気マンマンかい」
「両親の公認も出たし、今夜はいーっぱい子作りしようね♪」

「「「メリー・クリスマス。いただきまーす」」」
 食卓の上に所狭しと並ぶ、デリバリっぽいけど意外に豪勢な料理たち。
 俺の両側にぴったりと寄り添って、甲斐甲斐しくお給仕してくれる、サンタクロースをモチー
フにした、露出度のやたらに高い赤と白のコスプレ衣装の美少女2人。
 3年前の俺をつれてきたら、即座に「もげろ」とでも言いたくなるような光景だ。

「はい、雅明さん、あーん」
「あー、ずるいー。次こっち『あーん』お願い」
 この美少女2人のうち、かたっぽが本当は男だというのが難点なんだが。
(しかも俺、一度とはいえその男のほうと最後までやったことがあるしなあ)
 思い返すと死にたくなる、甘酸っぱい記憶。……ん。甘酸っぱい?

 肩から背中はほぼむき出しで、胸元から肩にかかる白いフェイクファーがアクセント。
 健康的な肌の色の薄い肩が、ライトを浴びて光り輝く。
 そこから伸びる、余分な肉のない腕から指先の曲線が綺麗なこと。

 ……でもこれだと俺、半分の確率で男の身体に欲情していることになるんだよな。
 胸元を覗いて確認しようとするも、柔らかそうな2つの丘の間の谷間はどちらも見えない。
 騙されっぱなしもシャクなので、少し悩んで、俺の出来る数少ない判別方法をチャレンジ。
 俺の右に座る、頭の右側に小さな三角帽子型の髪飾りをつけた少女?のお尻に手を伸ばす。
118 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/24(月) 17:58:12.92 ID:KYKsHsuc
 クリスマスイブ2012 2/4

「ぁん……雅明、やだぁ」
「いや、お前俊也だろ」
「あは、やっと分かったんだ」
「さっきまで、俊也の胸を覗いて鼻の下伸ばしてたくせにー」
「ねぇねぇ。私のお尻、どうだった?」
「最悪な気分だな。なんで俺、野郎のケツを触ってるのかと」

 本当、最悪の気分だった。
 悠里のヒップに比べると丸みと柔らかさが足りないけど、それでも揉み心地の気持ちよさ
と温かさに少し股間が反応してしまう。
 そんな、男、それも弟のお尻に欲情する、サイテーの自分に落ち込む、最悪の気分。


 さて、食べるだけ食べて、シャワーも浴びて。
 いつもは親達が使っている和室には布団が敷かれ、今日はここでHする気満々らしい。
 布団の上には、悠里たちが座って談笑してた。
 髪飾りを左側につけた悠里がぺたんこ座りで、右側につけた俊也が正座を横に崩した姿で。
「おかえりー♪」
「やっときたー♪」
 声も仕草もそっくりで。これが双子の姉妹でなくて、2歳差の姉弟というのが分からない。

「ところで雅明、この衣装どう?」
 悠里が天使のように愛らしい笑顔でそんなことを聞いてくる。
「うん、とっても似合ってて可愛いよ」
「えぇー。それだけぇ?」
「……えぇと、悠里、モデルやってるだけあって、何着ても可愛いからなあ。あ、でも赤い
服ってのは割りと新鮮なのかな。意外だけどよく似合っててるよ」
「うんうん、もっと言ってもっと言って」
 悠里がうっとりした表情でそう言う。そういえば悠里、ナルシストの気があったっけ。
 俊也のニヤニヤ笑いが気にかかるけど、思ったことをそのまま口にしてみる。

「露出度が高い服、あんまり着てくれないけど、いいもんだね。鎖骨とか凄いセクシーだ。
首のラインとかとっても綺麗。脚も長くて、いい感じに肉がついてて本当に脚線美って感じ。
 こないだ大学で、女子が悠里の写ってる写真眺めて『この子可愛いよね』って言っててさ、
『その子が俺の彼女なんだ』って自慢したいのこらえるの大変だった。
 写真で見ても可愛いけど、間近で見るともっと可愛いよね」

 そこまで言った瞬間、横で聞いてた俊也?がプッと吹き出した。
「もう、お姉ちゃん、台無しにしちゃだめだってば」
「ゴメンゴメン。でも雅明、そういうことは『私』に言って欲しいなぁ」
「……って、あ────っ。お前ら髪飾り取っ替えてたのか」

 さっき確かめて、『髪飾りが右が俊也』と思い込んでたので足をすくわれたようだ。
 髪飾りの位置くらい、考えてみれば幾らでも変えられるのに。
「そういうことー。もう、雅明騙されすぎ。もっと早くに気づくと思ったのに」
「女の子座りのマネするの、結構きつかったぁ。脚がどうにかなりそ」
「お前らなぁ。悪い悪戯しすぎだ。前戯なしでぶっこんでやるわ!」
119 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/24(月) 17:59:38.78 ID:KYKsHsuc
 クリスマスイブ2012 3/4

 そのまま勢いに任せて、サンタコスのままの悠里を布団に押し倒す。脚を手で持ち上げて、
自分のトランクスを押し下げ、ショーツを横にずらして穴に押し当てる。
 ローションも塗っておらず、ほぐしてもいないので今はさらさらなその場所に、腰に力を
入れて無理やり一気に突き入れる。
「ひぐぅっ!!」
 シーツを掴んで、唇をかんで、必死になって耐えてる様子の悠里。
 少し同情心も沸きかけるけど、ここで厳しくなれないなら『罰』にならないので心を鬼に。

「ねえねえ、私への罰は?」
「知らん。お前はそこで見てるだけが一番罰になるからそうしとけ」
「放置プレイね♪ 分かった♪」
 ……違う。

 わりと強引気味に腰をピストンしていたつもりだったのが、途中から愛液が出てきて徐々
にスムーズになっていく。というより、いつもより量が多いかもしれないくらいだ。
「ひっ、あっ、あっ、あああああんっっっ!!」
 最初悲鳴のようだった声も、次第に感じる声になっていく。
 しまった。これだと全然『罰』になってやしない。
 まあ、それでいいやと思ってしまう俺であった。

「ぁ、あん、そ、そこ突かないで! い、いっちゃうぅぅぅぅぅぅ!」
 身体の下で細い身体がビクンビクンと震え、最初の絶頂を迎える。
 いつもより早いくらいで、堅くなったままの自分の分身と欲望を少しもて余す。

「いいなあ。やっぱ私も参加で!」
 制止する間もなく俊也が俺達2人の間に飛び込んできて、仰向け状態の悠里の顔に跨る。
 やたらに短いスカートの下のペニスを悠里の口に突っ込んだようで、彼女の喘ぎ声が「ふ
ごふご」としか聞こえなくなる。
 だけならまだしも、そのまま身体を前に傾け、俺の口に唇を重ね合わせてくる。
 三角形の構図。

 防御するのも間に合わない。強引に舌を絡ませあう、濃厚に過ぎる口付け。
 微かに漂う、悠里がいつもつけてるのと同じ香水の香り。少し違う体の匂い。
 それを感じた瞬間、今までより一層俺の股間のものが熱く堅くなり、そして一気にはぜた。

「むー。なんだか私だけイけずに欲求不満ー」
「いや、何もしないのが罰だっていっただろ」
「そー言えば、私たちのことを見抜けなかった雅明だってじゅーぶん罰の対象だと思います!」
 まだぜーぜー息を荒くして、ビクビクしている悠里は返事ができない。
 ただの屍みたいだ。

「それじゃあ、雅明への処刑、しっこー♪」
 そう言って、悠里の身体から抜いたばかりの俺の分身を口に咥える。
 前にも一回口撃を受けたことがあるけど、こいつ無茶苦茶うまいんだ。
「んぐ、んぐ、ちゅぴっ、ぢゅぴっ、れろ……」
 もはや蹂躙とも言うべき舌と唇と頬と喉のダンス。
 放出したばかりの俺のものが、とたんに堅くなるのを感じる。
120 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/24(月) 18:01:34.08 ID:KYKsHsuc
 クリスマスイブ2012 4/4

 我に返って無理やり口からペニスを引き抜いたのと、再び放出したのが同時だった。
「わは。ホワイトクリスマスだねえ」
 自分の全身にかかった俺の精液を指で掬ってぺろりと舐めて、人気読者モデルな美少女そ
のままの外見の俺の義理の弟が、ステキな笑顔で言う。
 スカートを押し上げて覗くペニスの先端に、何故か目がいってしまうのを止められない。

「じゃあ、次お姉ちゃん、お義兄ちゃんへの刑の執行よろしく!」
 放出直後でまだ少しぼっとしている俺に向かって、サンタコス美少女(※♂)が敬礼。
 いや俺に向かってじゃない。俺の後ろに立っている相手に向かって、だ。

「うふふふふ。『前戯なしでぶっこんでやる』のが罰でよかったんだっけ?」
「……ゆ、悠里さま、お手柔らかにお願いしマス」
「んー。壊れても困るし、じゃあ大負けに負けて、ローションは使ってあげるね♪」
 硬直する俺の身体を押し倒し、ぬるぬるした堅い棒のようなものを俺のお尻に当てる。
「待って。俺の尻に突っ込むとか、需要なんてないから」一体何を口走っているんだ俺は。
「それもそうかなぁ。じゃあ俊也、ヘルプお願いね♪」
「あいあいさー♪」

 魔法のように俺の身体の下に転がり込んできて、やたらに短いスカートを自分でたくしあ
げて、男にしては丸くて大きめなお尻の谷間を、俺のまだ萎えたペニスに当ててくる。
 目の前に広がる、大きく開いたすべすべの背中とうなじのラインがセクシーだ。

「やめて。悠里やめて」
 懇願する俺を「むっふっふー」と笑って一蹴し、軽く指先でしごきながら俊也の穴に俺の
竿を誘導する。
 同時に俺のお尻に当てた堅いもの(ペニバン?)を更に力強く押し当てる。

「ダメよー? もっとお尻の力を抜かなきゃ。俊也を見習ってね」
 いつの間にか大きくなっていた俺の分身が、俺が組み敷く形になった美少女のお尻(※現
実逃避入り的表現)にずぽずぽと突き入れられていく。
 その度に甘い嬌声が部屋の中に響く。
「ぁん……ゃん……雅明のって凄く大きくて温かい……気持ち、気持ちいいのぅ……」
 何かの拍子に力が緩み、悠里のつけたペニバンがにゅぷりと俺のお尻の中に分け入ってく
る。きつい違和感。身体が裂けるような酷い痛み。

 だというのに、俺の分身、いや全身は過去最高レベルで興奮して昂ぶりに昂ぶってしまっ
ていた。
 悠里の腰の動きとともに俺の腰も動き、そこで突き入れられた俊也が悠里そっくりの可愛
らしい声で「ぁん、あん、あぁん♪」と嬌声を上げる。

 後ろはペニバン?で前立腺を責められ、前の括約筋でキツキツに絞られたペニスはとっく
に限界だけども、2度の発射をした直後ではなかなか最後まで至らず。
 3人連結状態の激しい運動を永劫とも思える時間続けたあと、俺はサンタクロースのコス
プレをした美少女、のような少年の腸内にようやく白濁液をぶちまけた。

「「メリー・クリスマス」」
 俺の身体を挟んだ上と下で、可愛いらしい声がハモる。
 ……確かにこれは、最高の聖夜だった。
121名無しさん@ピンキー:2012/12/24(月) 18:33:14.12 ID:5A7ecbD6
モゲロークリスマス!
……最高でした
122名無しさん@ピンキー:2012/12/24(月) 21:01:01.56 ID:Cc+kPP5I
もげちまいやがれ(褒め言葉
123名無しさん@ピンキー:2012/12/24(月) 23:34:09.40 ID:oMGU9A1p
GJ!
124名無しさん@ピンキー:2012/12/25(火) 10:42:37.02 ID:+ewNX3AF
この姉兄、兄が弟の肉棒と白濁液に満たされながら、姉の直腸で果てるとか、無いんですね?
是非、口も尻も、顔も、白濁液に満たされた兄をみたい
125 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/25(火) 22:58:22.53 ID:QWyJlF4j
>>124……という意見が来ておりますが、いかがでしょうか雅明さん」
「いや、俺本当にホモじゃないんで、そういうのは勘弁してください」
「とかいって、俊也が気持ち良さそうにお尻の穴で感じてるとこみて、羨ましいとか思ってるんじゃないの?」
「俺ホモじゃないんで! 俺が挿れるのも嫌なんですが、それだけは最後の一線としてやめてください」
「そうは言っても、雅明ってばお尻の穴感じやすいよね。以前に相当やったりとかしてない?」
「……ノーコメントで」
「やってたんだ。ショックー」
「ノーコメントで」

「では雅明のほうはOKが出たということで、」
「出してない出してない」
「OKが出たということで! 俊也はどう? 雅明に挿れてみたいとか思ったことない?」
「2人の前でこれ言うのは凄く恥ずかしいんですけど」
「うんうん、でも言え」
「……僕にとって、女装ってのは、『お姉さんと一緒になる』って意味なんですね。お姉ちゃんの恋人である
お義兄ちゃんに挿れてもらって、お姉ちゃんと同じような気分になるのは嬉しいんですが、僕が挿入するの
はまた意味合いが違ってくるので……」
「へえ……そんなこと考えてたんだ。俺には分からん境地だ」
「つまり、俊也ってシスコン?」
「シスコンで、ブラコンで、ついでにナルシストですね」
「それ、自分で言っちゃうんだ。それも俺と悠里の前で」
126 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/25(火) 23:00:02.70 ID:QWyJlF4j
「女の格好して、私とエッチするのは平気だよね?」
「それは、それこそ『お姉さんと一緒になる』ってことですから。同じ服を着て着衣プレイで69とか最高です」
「我が弟ながら業が深いなあ……。じゃあさ、昨日私がやったみたいに、ペニバンつけて挿入するのはアリ?」
「あー。それならありですね。やってみたいかも」
「男なのに、ペニバンをわざわざつけて野郎のケツを掘るとか訳が分からないよ!」
「ありなのかー。んじゃ、皆さんにお見せするかどうかは別に、そのうちそのプレイすることは確定として」
「確定しないでー」
「それは確定で、さっき雅明がノーコメントにしてた話に興味あるんだけど」
「ノーコメントはノーコメントです」

「んじゃ2択。俊也のあそこを直接挿れられるのがいいか、それともここで洗いざらい吐いてしまうのがいいか」
「ご無体な2択キター。どっちも嫌だー」
「んじゃ、洗いざらいじゃなくって、簡単に説明するだけでいいや。1行でまとめて」
「俺が10歳のころ、近所のお姉さん(♂)たちから、お尻の穴でするエッチの手ほどき受けたことがあるって話」
「うわー初耳ー。エッチの手ほどきって何。いやむしろお姉さん(♂)って何さ」
「悠里と初めて出会う、ずっとずっと前の話よ? もう記憶も曖昧だし。聞いても面白くないと思うけどなあ」
「雅明のことなら全部知っておきたいなあ……ダメ?」
------------------------
何故か脳内でこんな会話が発生してしまいました。
『義弟が、兄に、自分のペニスを挿入する話』はキャラクター的になしなんですが、
もし書くとしたら、
『義弟が、兄に、ペニバンを挿入する話』
『義弟以外の女装キャラが、兄(10歳)に、ペニスとか挿入して開発する話』
のどっちが読みたいでしょうか?

どちらも読みたくない、というのもありです。
127名無しさん@ピンキー:2012/12/26(水) 01:24:44.07 ID:ZU5NQWk4
下で
128名無しさん@ピンキー:2012/12/26(水) 01:25:50.25 ID:k1eYPycm
どっちも読みたい、に一票
129名無しさん@ピンキー:2012/12/28(金) 03:13:41.14 ID:jAwIRckt
ミリオン出版の出してるアンソロコミック「オトコの娘」の最新刊「初恋編」の扉絵のオナニーしてるコが激しくツボ過ぎて、
『弟は幼な妻』というフレーズとキャラ設定が頭に浮かんだ。
たぶん、女装少年というより、「一応チンコついてるけど、メンタリティは99%少女そのもの」な感じのコが
ヒロインの話だけど、ココの読者的には許せるのかな?
130名無しさん@ピンキー:2012/12/28(金) 11:45:45.08 ID:kHBl8w4L
>>126どっちもー! が正直なところだけど、二択なら後者で
131 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/28(金) 20:51:23.39 ID:LxJ9I+Ws
「……という、皆様からのご要望も頂いたワケですが!」
「勘弁してよ。あの話、本当に俺の黒歴史なんだから」
「そこをなんとか!」
 ガタっ
「無理無理無理無理ー!!」
「あ、逃げた」
「俊也も見送ってないで捕まえなさいよぉ。……ごめんなさい。必ずとっ捕まえて洗いざらい聞き出しますので、
もう少々お待ちください」

------------------------

遅筆ですいません。遅れていますが作成始めましたのでもう少々お待ちください、ということで。
132 ◆fYihcWFZ.c :2012/12/28(金) 21:02:40.50 ID:LxJ9I+Ws
>>129
『弟はお姉ちゃん』に続く、『弟は幼な妻』ですか。良い言霊です。
もちろん歓迎ですとも。

自分のキャラでも、>>99-の玲雄は完全にメンタル的には女の子ですしねえ。
(ちなみに『男の娘でエロパロ!』に投下するかどうか迷ったけど、最終的に23歳になるんで「男の娘」って
齢じゃないかなぁ、とでこちらに投下したという事情があったり)

お待ちしております。
133名無しさん@ピンキー:2012/12/29(土) 06:12:07.57 ID:BUhHibgf
『弟は幼な妻』という単語から
『22歳の兄は人気女子中学生モデルな幼な妻』
というフレーズだけ思いついた
134名無しさん@ピンキー:2012/12/29(土) 10:18:59.96 ID:Hx4ot4Wl
さあ、書くんだ。
135名無しさん@ピンキー:2012/12/29(土) 10:51:13.06 ID:ChBvn1YK
そう言えば、某ブロッケンの魔女っ子な少年も、高校生のクセして、
表向きは人気女子中学生アイドルだったし……うん、イケるイケる!
136『弟は幼な妻』:2012/12/29(土) 23:36:39.86 ID:ChBvn1YK
#先達に比べていささか稚拙ではありますが、表題作の1話、投下させていただきます。

『弟は幼な妻』

-1-

 よっ、久しぶり! 忙しいところ、わざわざ呼びだしてスマン。
 だが、こんな事、お前くらいにしか相談できんからな。
 礼代わりに、ここの支払いは俺が持つから、何でも好きなモノ注文してくれ。

 さて、話を始める前一応、最初に言わせてくれ。
 「俺は、断じてホモでもショタでもない!」
 ……ないと思う。
 ……ないんじゃない、かな?

 三段活用的に自信がなくなっていくのには理由があって、近頃、気になってる(恋愛的な意味で)相手が、その……なんだ。
 あ! おいおい、顔色を変えて席を立つなって! 勘違いするなよ、お前が対象なワケないだろう。
 フゥ〜、だが、幼馴染のお前が満更知らない相手でもないんだよ、コレが。

 あ、思い当たるフシがあるって顔してるな。うん、たぶん、ソレ正解。
 そう……よりにもよって、俺の大事な大事な弟の由理(よしのり)に、こんな感情を抱くようになっちまったんだよ!

 ──あれ? 何だ、お前、全然驚いてないな。むしろ「いまさらかよ」って言いたそうな顔して……あ、「まさにそう言うつもりだった」って?
 なんでだよ!
 そりゃあ、4年前、高校入った直後にウチの両親が事故で亡くなって以来、俺はあいつと二人、兄弟肩を寄せ合って暮らしてきたさ。そのなかで、俺が由理にやや過保護気味に大事にしてたことも、まぁ、認める。
 そして、由理が、まだ中学2年生だってのに、掃除やら洗濯やら家の中のことを、高卒で働いてる俺に代わってキッチリやってくれる、とてもいい子だってのも、コトあるごとに吹聴してたさ。
 だから、ブラコンの汚名はあえて受け入れよう。
 けど! それはあくまで、弟に対する兄としての愛情だよ!!
137『弟は幼な妻』:2012/12/29(土) 23:37:10.97 ID:ChBvn1YK
 そうだよ、そのはずなのに……あの日以来、俺の脳裡に「あの光景」が焼きついて離れないんだ!
 え? 「あの光景って何か」って?

 ──ふぅ〜。仕方ない。呼びだして相談に乗ってもらってる手前、言わないワケにはいかんだろうしな。
 て言うか、大体お前にも責任の一端はあるんだぞ!

 何、面食らった顔してるんだよ。
 ほら、2年ほど前、俺がお前に相談したことがあっただろ。
 由理のヤツが……その、母親の服を着て密かに女装してるみたいだ、って。
 その時、お前は「まぁ、早くに母親を亡くして、家庭内に女性的な要素が乏しいぶん、それらを持ち出して代償行為で心の隙間を埋めてるんだろう。下手に騒ぎたてず、ソッとしといててやれ」って、アドバイスしただろう。

 だから、俺も「そーゆうモンか」と不承不承納得して、見て見ぬフリを決め込んできた。
 小学校卒業して以来、由理が髪の毛を伸ばしてるのにも、男女兼用っぽい……というか、明らかに女の子寄りの私服を買ってくるのにも、最近家ではコッソリ女物の下着を着てるらしいことにも、あえて何も言わなかったさ。
 最初は驚いたけど、近頃は「まぁ、似合ってるからいいか」と海のように広い気持ちでスルーできるようになってたし。

 ん? 何呆れた顔してんだ? 「極論過ぎ」? 「限度ってものがある」?
 ──まぁ、そう言われると、俺としても、ちょっと放任し過ぎたような気がしないでもない。

 と、ともかく! 最近では弟というより妹に近い感覚を由理に対して抱くようにはなってたけど、それだってあくまで「兄」としての感情だったんだよ!

 なのに……クソッ! 
 どうして、俺はあの夜、目を醒まして水を飲みに部屋を出ちまったんだ!

 ああ、お察しの通りさ。
 あの晩、すでに寝てるだろう由理を起こさないように、忍び足で廊下を歩いていた俺は、由理の部屋から声が漏れてることに気付いちまったんだ。
 もしかして、由理は悪い夢でも見てうなされてるのか!? ……そう思って、様子をうかがった俺のコトを誰も責められないだろ。
 けど、部屋の中では……。

  * * * 
138『弟は幼な妻』:2012/12/29(土) 23:37:54.21 ID:ChBvn1YK
 しばらく見ないうちに由理の部屋は、パステルピンクの壁紙やカーテンでコーディネートされ、キャラクター物のクッションやぬいぐるみなども複数置かれた、まるっきり「年頃の女の子の部屋」そのものになっていた。
 本棚に並べられた少女向け小説や少女マンガ、あるいはマガジンラックに綺麗にまとめられたティーン向けのファッション誌、さらに亡き母の寝室から移動させたらしい姿見などが、その雰囲気を助長している。

 「ふぁン……お、お兄ちゃぁん!」
 そして、その部屋の西側の隅、清潔そうな水色のシーツがかかったベッドの上で、寝間着姿の可憐な少女が、写真立てを手に、想い人の名を呼びつつ、オナニーに励んでいた。

 ──いや、「少女」ではない。
 背の半ばまで覆う綺麗な黒髪や華奢な手足、日焼けとは無縁そうな白い肌、何より校内美少女コンテストを開けばTOP10に入ること間違いなしの愛らしくも儚げな容貌の持ち主ではあったものの、ある部位が、誰が見ても美少女と言うであろう人物の性別を物語っていた。
 うっすらと透ける素材でできた薄桃色のベビードールからのぞく細い肩も、白いニーハイソックスに覆われた形の良い太腿も、それに続くムッチリしたヒップと対照的にキュッと締まったウェストも、すべてが「彼女」の性別を「思春期の少女」だと告げているのに。
 ただ1点、白と水色のストライプのショーツに覆われた「彼女」の股間の不自然な盛り上がりだけが、「彼女」が本当は「彼」であるという残酷な事実を証明していた。
 「好きィ……好きなのぉ……」
 けれど、その事実を誰よりも如実に知りながら、青年──「彼女」の兄であり、たった今、くるおしげに名を呼ばれた男性は、ドアの隙間から覗き見るその光景から目を離せなかった。
 「くふぅン……切ないよぉ〜」
 今にも口づけんばかりに写真立て(おそらく青年の姿が写ったもの)に顔を近づけつつ、左手で自らの体の数少ない──ひょっとしたら唯一とも言ってよいかもしれない男の徴を、もどかしげに刺激するその姿は、とてつもなく淫らで……同時に真摯なものを感じさせる。

 青年は、我知らず唾を飲み込みながら、その光景から目が離せなくなっていすた。
 恋人を作る暇も、風俗店に通う金もなく、20歳前の若い性欲をもてあましているとは言え、どちらかと言うと青年は性的な欲求に淡白な方であった。
 しかし、今、自らの名前を呼ぶ「少女」(困ったコトに、本来の性別を知っているにも関わらず、そうとしか思えない)が、自慰に没頭する姿は、これまでに悪友らに見せられた、どんなエロ本やアダルトビデオの類いよりも、青年の欲望を強く揺さぶった。

 ──このまま此処で見ていたら、自分は取り返しのつかない行為(こと)をしてしまうのではないか?

 その懸念と躊躇いに押されて、何とか視線を部屋の中からもぎ離した青年は、当初の「水を飲む」という目的も果たさず自らの寝室にとって返し、ベッドに入って、すべてわ忘れようとキツく目を閉じた。

 ──無論、それは無駄な努力であり、悶々とした挙句、ようやく陥ちたその夜の夢の中で、青年は、「少女」の身体を思うままに貪り蹂躙することになるのだが。

<つづく>
139名無しさん@ピンキー:2012/12/30(日) 00:07:18.50 ID:3RrwI2lS
つC
140名無しさん@ピンキー:2012/12/30(日) 08:32:05.02 ID:F83ltGge
キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!

淫靡で背徳溢れる一作。是非ともつづきをお待ちしております。


(『幼な妻』って何歳くらいまでだっけ……? って思って、wikipedia見てみたら、「なお〜」以下の一文に吹いた)
141名無しさん@ピンキー:2012/12/30(日) 18:25:51.52 ID:9Fg93K+p
何で、この妻は、
自分自身の差し込みで慰めるの?
穴ル というか あ盗 にお兄ちゃんの代わりを抜き差しして慰めるのではなくて?例えば、木の棒、だとか、石膏、とかで造られた。
142 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/01(火) 18:44:38.96 ID:GS1OL4MG
もしや、以前盛んに投下されてたりしませんか。

なんだかそれくらい手馴れた作品に見えます。
続きに期待しつつ、こちらは元日用に作成したリクエスト回答その1です。

もう片方は、恐らく今週中にはアップしたいとおもっておりますが。


……こっちは最初、書くつもりなかったのになあ。
143 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/01(火) 18:46:25.27 ID:GS1OL4MG
『弟はお姉ちゃん』 シチュエーション1 お正月2013 1/6

「あ、また映った。悠里ちゃんホント可愛いわねえ。他のモデルさんたちよりずっと可愛い」
 元日のお昼。バラエティ番組を見ながらおせちを突つく。
「お袋、それ親の欲目すぎだって」
 テレビの中、色とりどりの晴れ着姿の読者モデルたちが羽根突きをしている。

 (俺の悠里をもっと映せー)と思ったり、(露出が大きくなって人気が出て、2人の時間
が減ったら嫌だなあ)と思ったりする複雑な恋人心理。
 モデルだけあって可愛い容姿の女の子たちの中、紫地に大輪の花の振袖をひるがえす悠里
はひときわ綺麗で華があるように見える。これが惚れた欲目か。俺も人のことは言えない。

「でも『生中継』って言ってるのに、実際には録画とか面白いわねえ。こことテレビの中、
2人の悠里ちゃんがいるのも、すごく不思議な気分」

 俺の隣の席に、赤地に金色の蝶の舞うあでやかな晴れ着姿で苦笑する“悠里”の姿。
(騙してごめんな)と、心の中でお袋に謝る。
 この番組はやっぱり生中継で、今テレビに映っているのは悠里で、振袖姿でここにいるの
が俊也というのが真相なのだ(ちなみに本当に俊也なことは既に確認済み)。
 義父が面白そうな顔で見ているのは、すべて把握した上でのことなのかどうか。


 『夕方くらいまで友だちと遊ぶ約束してるから』という名目で外出していた俊也(のフリ
をした悠里。ああややこしい)から帰宅を告げる電話がかかってきたのが4時くらい。
「もうそろそろ俊也、帰ってくるって」
「それじゃ、お参りに出かける準備しておきましょうか」

「俊也」
 自分の外出の支度は一瞬で終わらせ、悠里の部屋で化粧を直している俊也に呼びかける。
 反応がない。
「……俊也ってば」
 自分の名前を呼ばれたにもかかわらず、肩をピクリともさせずにスルーする俊也。

「……悠里」
 根負けしてそちらの名前で呼ぶと、鏡から目を離して「なに? 雅明」とにっこり微笑む。
 テレビで見せていた営業用のスマイルとは違う、素直で素敵な愛らしい微笑み。
 俊也がどこまで悠里に、女に成りきってるのか、空恐ろしい感じすらしてくる。

「お前さ、男なのにそんな格好して恥ずかしくならない?」
「え? 私が女だってこと、何度もエッチして確認したじゃない。振袖だって似合ってて可
愛いって自信もってたのになあ。そんなこと言われてちょっとショックかも」

 え。ここにいるのは本当に悠里で、さっきテレビに出ていた悠里が実は俊也だったとか?
 いや『実は録画放送』ってほうが本当で、俊也は単に外に出ているだけなのが事実とか?
 混乱する俺を横目に慣れた手つきで化粧を済ませ、帯や襟を調整する。

 露出を抑えた衣装なのに、襟元から見える長くほっそりしたうなじや、袖から覗く細い腕、
そして体のラインに色っぽさを感じてどきまきする。
144 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/01(火) 18:48:21.86 ID:GS1OL4MG
 お正月2013 2/6

「うん、こんな感じかな? 雅明、私変なとこない?」
「全部が変だよ……」
 一番変なのは、高校生の男の子が振袖を着て、どこも変なところがない、という事実。
「うーん。雅明、私のこと俊也だと思ってるの? 反応がおかしいような」

 最初に確認しているはずなのに自信が揺らぐ。いっそ体を抱き寄せて、キスして再度確認
するべきなのか……と迷っていると、「ただいまー」と悠里?が帰ってきた。
 玄関に駆け寄る。男物のコート、男物のジーンズ。外見的には俊也そのものだ。
 靴を脱いだばかりの姿を玄関先で抱きしめ、キスをする。

 ……良かった。外出から帰ったばかりの冷たいその唇は、とても落ち着く感触がした。
 間違いない。こっちが悠里だ。さっきキスしてたらとんでもないものを失うとこだった。
「……お義兄ちゃん、なにやってるの」
 唇を離したとたん、氷点下な視線が前と後ろから突き刺さる。
「いやなんだ……すまん」

 中身は確かに悠里だったとはいえ、外見は俊也そのものである人物にキスをして、そして
とても安堵してしまった自分に愕然とする。親に見られなかったのがまだ救いなのか。
「俊也、帰ってきたばかりで悪いけど、初詣一緒に行くわよ」
「うん、分かった」
 お袋と悠里の会話を上の空で聞きつつ、俺は完全に途方にくれていた。

「悠里ちゃん、どうしちゃったの? 怒った顔して。せっかくの衣装がかわいそう」
「ふーんだ。雅明がぜーんぶ悪いんですよー」
「本当に悪かったって。謝るからこの通り」
「じゃあさ、今ここでキスしてくれたら許す」
 通行人も多い道。世界の理不尽さを噛み締めつつ、大人しくおでこにキスを。
「今唇にキスすると、綺麗な化粧が落ちちゃうから、ごめん。続きはあとでゆっくりと」
「んー。まあ負けとこ。約束は守ってよね?」

 とたんに上機嫌になって、俺の腕に自分の腕を絡ませて歩き出す振袖姿の俊也。
 でも考えてみたら恋人の目の前で男と腕を組んで歩いてるわけで、これはこれで針のむし
ろなのであった。

 うちから徒歩十分ほどのその神社は、正月夕方にも関わらず結構な賑わいを見せていた。
 でもまあ行列が進まないほどでもないし、さっくり参拝やら済ませるか……と思った時、
「あ、あのっ。瀬野悠里さんですよね?」
 見ると何人かの女の子の集団が悠里(のフリをした俊也)に声をかけてきた。

「あ、はい。何でしょう」
「やっぱりそうだった!」「まさかなーと思ったら、大当たりか!」「あたし、前から悠里
さんのファンだったんです」「今日のテレビ見ました! 素敵で良かったです!」
 マシンガンのような大はしゃぎ。俺は、少し離れた位置に退散してみる。

 いつの間にかファンたちと並んで撮影会状態。
 日も暮れてライトが照らす神社の境内。フラッシュを浴びて、あでやかな着物姿で微笑み
ながらポーズをとっている姿はとても愛らしい。
145 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/01(火) 18:51:07.41 ID:GS1OL4MG
 お正月2013 3/6

 その少女が俺の恋人であるという事実が少し誇らしい……って違った。あれは俊也で、俺
の義弟で、男で、俺より小ぶりながら、きちんとチンチンも金玉もついてるシロモノなんだ。
 どうにもいけない。なんだか人として大事なものが狂いっぱなしな気がする。

 撮影会を終えてお参りして、お御籤引いて、両親と別れて3人で外で晩飯食べて、ホテル
に入るまでにも色々あったけど、いい加減前置きが長くなりすぎているので一気に省略。
 ようやく本題に突入。

「帯とかきつかったなぁ。歩きにくいし、髪飾り重いし、姿勢変えられないし」
「でも、まんざらでもなかったでしょ?」
「うん。わりと世界変わった感じ。綺麗な振袖で注目浴びるのってすっごく気持ちよかった」
 シャワーを浴びて出てくると、ベッドに腰掛けて2人がガールズ?トークをしていた。

「あら、振袖脱いじゃったんだ」
「期待に沿えずごめんね。あれレンタルだし、汚すと後が大変だからねー」
「代わりに今日は、じゃじゃーん。巫女さんプレイです」

 白くて少し透けてる和服っぽい上と、袴の形を一応してる赤いミニスカートの取り合わせ。
 頭の後ろにつけた大きな白いリボンが愛らしく、合わせから覗く赤い襟と、根元からほと
んど丸見えな、何もつけていない裸の両脚に目を奪われる。
 細身でスタイルも良くて、顔も可愛いからそんな衣装がよく映える。

 そんなとびきりの美少女が2人も並んでいるのは絶景……いやいや片方は男なんだ。
 しっかりしろ、俺。
 しかしクリスマスにサンタ、元日に巫女ときて、次のイベントは何だろう……と思ってし
まうのは悲しい男のサガなのか。メイドの日とかあったっけ?

「まあ、安物だから生地とか縫製とか良くないけどね。その代わり使い捨てで破いてもOK」
「じゃあまず雅明、約束果たしてね」
「約束、って?」
「もう。さっき、あとで飛び切りのキスをプレゼントする、って言ったじゃない」

 そこまでは言ってないような気もするけど、確認の意味も込めて唇同士を合わせる。
 悠里とキスするときの、心やすらぐ感覚はない。感触から言っても確かに俊也の唇だった。
 心臓がドキドキして苦しい感じがするのは、きっと背徳感のせいだろう。

「それじゃ、今年最初のプレイ開始ということで。雅明、ちょっとこちらに来て」
 本来、清純さと無垢さの象徴であるような巫女装束。
 それなのにむき出しの脚が悶えるような妖艶さを、可愛らしく微笑む様子がその奥に潜む
怒りを強調する。
 ……いや本当に怖いんですってば、悠里様。

 超特急で彼女のもとへと近寄ると、細い金属製の柱に後ろ手で手錠をかけられて、猿轡ま
で咥えされられる。あの、準備が良すぎです。

「さすがに私でもねえ。彼氏が私以外の人とキスして、しかも自分とキスするときより興奮
してると流石にキちゃうわけで。……あとで外してあげるから暫く見ててね」
146 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/01(火) 18:52:38.55 ID:GS1OL4MG
 お正月2013 4/6

 文字通り手も足も(口も)出ない状態の俺を尻目に、ベッドの上では巫女服姿の2人の美
少女(ただし片方はペニスつき)たちが濃厚に過ぎる口付けを交わしている。
 横座りで向かい合い、両手の指同士を絡ませて握り、互いの舌と粘膜と唾液を貪りあう。

 俊也の体で一番不思議なのは、今繋ぎあってる手かもしれない。
 悠里の手は女の子の中でも綺麗なほうなのに、男である俊也の手は、大きさも色も形も、
そして手で握ったときの感触さえもがそれと完全に一緒なのだ。
 掌を握るだけで2人を判別できるなら、俺としてはかなり楽になれるのに。

「くちゅ……くちゅ……」「ちゅぴ……ちゅぱ……」
 キスのあと、体勢を入れ替えて袴状のスカートの中の互いの股間に顔をうずめる。
 2人でクンニしあう……じゃない。フェラとクンニをしあう、69の体勢。
 もう、どちらが悠里でどちらが俊也か、どちらが男でどちらが女かも判然としない。

 俺とは言えば真っ裸で後ろ手に拘束された状態。
 まるで神事のような印象の、でも実際には淫猥な行為を見ているだけで、暴発しそうになっ
てきている自分の息子を一切触りもできないことが辛い。

 長い長い69をやって、十分堪能したのか体を離し、しばらくうっとりと余韻を楽しむ様子。
 そんな様子までしっかりと鏡写し状態。
 俺の恋人の様子に見とれたいけれど、じゃあどっちが恋人なの、という。
 さっきせっかくキスで確認したのに、途中で分からなくなってしまったのが痛い。


「……じゃあ、悠里」
「「はいっ」」
 ようやく手錠と猿轡から解放されて、恋人に呼びかける……と、見事にハモった回答が帰っ
てくる。
 ここで間違えたら身の破滅かも……と思いながら慎重に観察。内股に零れているのが愛液
なのが悠里、精液なのが俊也、でいいんだろうか。分かりにくいけど。

 半分祈る思いで、悠里だと思ったほうをベッドに押し倒してキスをする。
 良かった、当たりだ。そのまま耳朶や首筋に舌を移動させ、巫女衣装の上から胸を揉みし
だく。鼻腔をくすぐる甘い匂い。俊也と違う体臭。なんだかほっとする匂い。
「だっ、だめっ、そこ、いやっ」
 口ではそう言いながら、ベッドの上で敏感にいやらしく身悶える様子も愛おしい。

 胸やお腹の肌を堪能できないのを少し残念に思いつつ、一気に下に頭を移す。内股の敏感
な肉の舌触りを十分楽しんだのち、愛液の残る割れ目にキスする。
 その瞬間、それまで部屋に響いていた悠里の嬌声が、「むごむご」という音に変わった。
 目を上に向けると、巫女服姿の悠里の唇に、巫女服姿の俊也がキスをしているシーン。

(上でも下でも、これって俊也と間接キスしてることになるのかな?)
 その考えが頭に過ぎった瞬間、今までおとなしめだった俺の股間のものが、いきなり堅く
なるのを感じた。

 瀬野雅明19歳。色んな意味でマジやばいです。
147 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/01(火) 18:53:50.64 ID:GS1OL4MG
 お正月2013 5/6

「お姉ちゃん、これでいいの?」
 悠里の体内に2回中出しして、少し呆けている俺たちのところに、荷物を漁っていた俊也
がやってきた。
 さっき、悠里が俊也に耳打ちしてたのはこれなのか。不安が膨らむ。

 目を向けると……双頭ディルドー(だっけ? 実物は初めて見る、なんだか卑猥な物体)
を榊でも持つような感じで手にした美少女巫女さん(性別♂)が立っていた。
「うん、それ。ありがとう」
 まだ気だるさの残る声で悠里が言って、ベッドの上で上半身を起こし、俊也を呼び寄せる。

「じゃあ、お尻差し出して」
 言われたとおりベッドの前で前かがみになり、スカートを自らたくし上げて、つるりとし
た丸いお尻を丸出しにする巫女少年。
 ディルドーの短く丸い頭にローションをふりかけ、いきなりそれを肛門に押し入れる。
「……!!」
 挿入慣れしているとはいえ、異物を準備もなく強引に入れられたものだからたまらない。
 もはや声にならない悲鳴が部屋に響き、隠しようのない苦痛の表情を浮かべる。

「うん、いい子いい子」
 そう言ってお尻を優しくなでたあと、悠里は自分のアヌスとディルドーのもう片方の頭
に器用に同時にローションを塗りつける。
(──また俺ノケモノで、2人でレズプレイとかするつもりかな?)

 そう思ったとき、悠里が自分のお尻に指を突っ込んでだ状態のまま俺のほうに向き直り、
「雅明、私のアナル処女をもらって」と言った。
 挑発気味に微笑んでいるものの、どこか怖がっているような表情。
「いいの?」
「俊也相手にならできるのに、私のアヌスはご不満?」
 気遣う気分と征服欲を満たしたい気分、2つの相反する心がせめぎ合っていたのが、その
悠里の言葉で後者に傾く。

 俺のモノにもローションを塗りつけ、四つんばいになってもらい、バックの状態で悠里の
アヌスに徐々にペニスを埋め込んでいく。半分萎えた状態だけに意外に難しい。
 悠里の中はありえないくらいキツキツで、千切れそうなくらいに締め付けられる。
 止めようか? と何度か聞きそうになるけれど、そのたびに悠里自身が「もっと……」
「止めないで……」と、とても痛そうな声で哀願してくる。

「うん、最後まで入ったよ……」
 そう言う頃にはもう既に、挿入する側の俺でさえ精根尽き果てた思いだった。
「大丈夫? 痛いよね? きつくない?」
「痛いし、きついけど、大丈夫。じゃあ“悠里”。やることは分かってるよね? お願い」

 “もう一人の自分”に、苦痛を押し隠した優しい声で囁く悠里。
 これまでずっと待機状態で不満そうだった俊也が、喜びを満面に浮かべて近づいてくる。
 胸にパッドも入れて、完璧美少女にしか見えない外見なのに、股間では完全に勃起したモ
ノが赤いスカートを持ち上げて覗いている。その下にある、黒光りするディルドーの先端。
 (おちんちん二連装だー)とか思ってる場合じゃなくて。
148 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/01(火) 18:55:36.59 ID:GS1OL4MG
 お正月2013 6/6

「じゃあ、雅明……いくよ」
(ディルドーを悠里のお○んこに入れて2本挿しプレイするのかな?)
 と淡い期待を持っていたけど、悠里そのままの声色の俊也の呼び声でその希望も砕かれる。

 そのまま背後に回り、体を密着させてくる俊也。
 お尻の穴に感じる、冷たい堅い感触。
 お尻の上に感じる、温かくて柔らかい感触。
 背中に感じる、俊也の荒い息遣い、熱い吐息。
 小さくて柔らかい指先が俺の体を掴み、そのままグイグイと穴に押し込んでくる。

 さっき見た感じ俺の分身に比べるとサイズは小さいはずなのに、なにかとんでもなく太く
長い物体が捻じ押し込まれているように錯覚する。
 身体が引き裂けてしまいそうな感覚に、恐怖すら覚える。
 でも、今俺の身体の下で細い身体を震わせている悠里は、今の自分よりもっともっと大き
な苦痛に耐えているわけで。何か不思議な感慨めいた思いが沸いてきてしまう。

「うん、雅明。根元まで入ったよ……」
 そう言ったあと、上の悠里がぴったりと身体を重ねてくる。
 布地の感触。(作り物とはいえ)胸の二つの丘の柔らかい感触。スカートがくすぐる感覚。
そして互いの身体にサンドイッチされた物体の感覚。
 大きくはないはずのそれに、やけに強い存在感と生々しさを感じてしまう。

 そのままの状態でのほんの短い小休止をはさんで、俊也が息を吸って腰を振りだす。
 身体を内側からえぐり取られるような感覚。
 異物感と痛みがたまらない。でも、悠里が耐えてる状況で弱音も吐けない。
 自分の分身は完全に張り詰めた状態で、悠里のお尻の中で痛いくらいに絞られている。

 俊也のアヌスとは違う、悠里のアヌスの感覚。
 俊也のお尻は入り口は比較的柔らかくて中まで吸い付いてくる感じがあるのに、悠里は入
り口が無茶苦茶きつい割に奥はそうでもない。経験値の差なのだろうか。
 これは2人の判別に使えるか? と一瞬思ってしまった自分が情けない。無理だ。

 上と下で、息もぴったりに腰を振る2人の『悠里』。
「ひあっ、はあっ! すごいっ! 雅明っ!」
「ひっ、あっ、あつっ……ひっ! はあ、アァッ……!! 雅明っ! 雅明ーっ!」
 もはやどちらがどちらかも判然としない嬌声をあげて身悶える。

 ディルドーの先端が、クリスマスの悠里以上に的確に俺の前立腺を責めたててくる。
「悠里……っ! しまって、きつっ……!」
 発射して楽になりたいという思いと、ずっとこの快楽を味わいたいという相反する思い。
 視界が白っぽく、目がちかちかすらしてきた。腰の砕けそうな快楽に溺れそうになる。
「悠里っ……! 出すよっっ……!」
 俺は悠里のアヌスに精液を注ぎ込み、そして果てた。

 仰向けにベッドに寝そべった状態。広げた左右の腕それぞれに、頭の重みを感じる。
 俺の身体の両側にぴたりと寄り添う巫女2人の細くて柔らかい感触を楽しみつつ思う。
 ……今年は一体、どんな一年になるのだろう?
149名無しさん@ピンキー:2013/01/02(水) 00:58:56.34 ID:LT8jqupa
つC
150名無しさん@ピンキー:2013/01/03(木) 00:31:45.01 ID:lEy5T7nb
ひゃっほう! GJ!!
151名無しさん@ピンキー:2013/01/03(木) 13:56:37.94 ID:UFktiEvB
GJ!
152名無しさん@ピンキー:2013/01/03(木) 15:53:48.64 ID:6O1JxRYM
私のワガママを
本当に書いてくれて有難う。

でも、弟さんの生肉でなく、双頭の作り物なんですね。
弟さん、意思が固いですね。


ですが、双頭の作り物のカタチが妄想出来ません。
153『弟は幼な妻』2:2013/01/03(木) 22:26:31.00 ID:bp5It4fE
#前回の続きとなる青年の独白(懺悔?)です。

-2-

 ──ヒィック!
 お〜、すまんスマン。ちょっと急ピッチで飲み過ぎたな。
 いやぁ、なんつーか、「酒! 飲まずにはいられないッ!!」て気分だったもんで。

 え? 「その翌日はどうなったのか」?

 ……あ〜、そうだな。ここまで相談に乗ってもらった以上、キッチリ話しておくべきだよな。

  * * * 

 妹……もとい、弟である由理の"痴態"を目撃した夜の翌朝、当然のことながら兄である青年──安藤浩之は、睡眠不足の冴えない頭で目を覚ますハメになった。
 「あんな夢」を見たため、朝起きた時、慌てて布団をめくってみたところ、幸いにして"液漏れ"はしていなかったのが救いだろう。これで、万が一、パンツの中がガビガビになっていたりしたら、ヘソを噛んで死にたい気分になったに違いない。

 「おはよ、お兄ちゃん♪」
 ボーッとした頭のまま、パジャマ姿で台所へと移動した浩之は、こちらはビックリする程清々しい雰囲気の(まぁ、理由は見当がつくが)由理の笑顔に迎えられた。
 数年前から安藤家の台所(というか家事全般)を掌握している由理は、今朝も朝食の準備をしていてくれたらしい。
 「お、おぅ、おはよう、由理。今日も早いな。日曜日くらいゆっくり寝てればいいのに」

 ザックリとした白いセーターと、最近はもはや隠すこともなくなったスカート姿(今日はふくらはぎ丈のライトグレーの三段ティアードスカート)の上から、フリル満載のエプロンを着け、おたまを手にしたたその姿は、まさに"幼な妻"という形容がふさわしい。
 艶やかなストレートロングの黒髪をきれいに梳かし、家事の邪魔にならないよう首の後ろでエプロンと同じ色合いのリボンで結んでいるのも、清楚で非常に似合っていた。

 「うん。でも、お兄ちゃんには、手料理を食べて欲しいから……」
 嗚呼、なんと健気なコなのだろう!
 これが本当に"妹"ならば、「今時珍しいほど、よくできた娘に育って、兄貴、感激!」で済む話なのだが、このプリティーガールの生物学的性別が♂であることが、浩之の心中に戸惑いと躊躇いと言い知れぬ感情を引き起こしてしまうのだ。
154『弟は幼な妻』2:2013/01/03(木) 22:27:02.76 ID:bp5It4fE
 それでも、その頑張りを褒めてやりたくて、浩之は何とか言葉を探す。
 「ああ、いつもありがとう──由理は将来いいお嫁さんになりそうだな」
 口に出したときは違和感がなかったものの、次の瞬間、盛大な後悔に苛まれる。
 (何、バカなこと言ってるんだ俺は!)
 常識的に考えれば、男のコである由理が「お嫁さん」になる可能性なぞ、0に等しいはずなのだ。

 しかし……。
 「え、ホント!? 本当に、そう思う、お兄ちゃん?」 
 思いがけないほど真剣な目で由理にその言葉に食いつかれては、浩之としても「さっきのはちょっとしたジョークだ」と流すことができなくなる。
 「あ、うん、まぁ、少なくとも、俺はそう思うぞ」
 仕方なく、「あくまで一般的な評価ではなく、個人的な印象だよー」という方向に軌道修正して、何とかこの場をやり過ごそうとしたのだが……この場に限って言えば、コレはトンデモない悪手だった。
 「お兄ちゃん……うれしぃよぉ(うるうる)」
 いや、むしろクリティカル過ぎたと言うべきか。頬を赤らめ、情熱的な潤んだ目で極上の「美少女」に見つめられては、昨晩のこともあって、浩之も平静を装いきれない。

 「あー、その、なんだ。きょ、今日の午後は何か予定があるか、由理?」
 こういう場面に慣れていない悲しさで、とにかく新たな話題で、浩之は気まずい場面を乗り切ろうとする。
 「え? あ、うん。お洗濯して、お庭とか玄関とかのお掃除したら、とくに何もないけど……」
 唐突な話題転換に戸惑ったのか、「いや〜んな雰囲気」が霧散する由理。
 「だったら、久しぶりにふたりで出かけてみないか? 名波町にできたテーマパークの無料券を、会社の先輩にもらったんだが……」
 「! いくッ、行きたい!!」
 無邪気な笑顔になる由理を見て、浩之は「ああ、やっぱり、まだまだ子供だよな」とほのぼのした気分になった。

 「よーし、じゃあ11時に出発だ。早く終わるように、掃除は俺も手伝うぞ」
 「うん、それじゃあ、お兄ちゃんにはお風呂掃除、頼んでいい?」
 「よしきた、任しとけ。ピカピカにしてやる」
 おどけて腕まくりしつつ、内心「ウンウン、これが正しい、兄弟の休日の過ごし方だよな」と満足げに頷く浩之だったが……。
 「ルンルンルン♪ おにーちゃんとおーでかけ、ゆーえんちデ〜ト♪」
 うれしそうに鼻歌を歌いながら、洗い物を始めた由理を見て愕然とする。
 (し、しまった……もしかして、俺、墓穴を掘った?)
 無論、シスコンもといブラコンな浩之に、「おでかけ」を中止するという選択肢は思いついても選べないのだった。
155『弟は幼な妻』2:2013/01/03(木) 22:27:54.37 ID:bp5It4fE
  * * * 

 ん? ああ、もちろん、その日はふたりで有栖川ファンシーランドに行ったぞ。
 あんなに楽しみにしてる由理の期待を裏切るわけにはいかんだろーが。

 外出時の由理の服装か? うーん、確か……水色のブラウスに白いアンゴラのカーディガンを羽織って、ボトムはちょっとAKBっぽい赤いチェックのミニスカートだった、かな? 
 足には薄手の黒いストッキングを履いて、靴はスエードのロングブーツだったな。結構ヒールがあるのに綺麗な足取りで歩いてるから、ちょっと感心した覚えがある。
 髪型は、いつもみたく下ろして自然に流しつつ、前髪には白いレース飾りのあるカチューシャをはめてたな。由理のキューティクルつやつやの黒髪との対比で、よく似合ってたぞ。
 いまにして思えば、うっすらとだけど化粧もしてたのかもな。唇がいつもより鮮やかな桜色だった気がするし……。

 え? 「なんでそんな細かいトコロまで気が付いたのか」?
 そりゃ、お前……えーと、なんでだろう。
 い、いや違うぞ! 断じて「唇柔らかそーだなー」とか「アレにキスしたらどんな感触なんだろーなぁ」とか思って、凝視してたワケじゃないんだからな!

<つづく>

#短めですが、以上が起承転結の承。次回、やや長めの転を書いて、最後の結で〆る予定です。
#>142
 「盛んに」というほどでもありませんが、一応、Kのつく人です。
156名無しさん@ピンキー:2013/01/03(木) 22:43:30.11 ID:zmBiRseP
つC
157 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/03(木) 23:46:21.29 ID:YD01zX3h
>>152
双頭ディルドーは今回使用したアイテムはこんな感じということで。
ttp://www.lovepiececlub.com/shop/products/detail.php?product_id=107
描写能力がなくて申し訳ありませぬ。

こっちの3人組には、「明るくて楽しいセックス」をして欲しい、
「あんまり本人が本気で嫌がるようなプレイはさせたくない」と思っているので、申し訳ありませんがご了承ください。
雅明には不本意なフリしてますが、わりと本人喜んでますので。
と言いつつ、次回投下分はわりとへビィなプレイになってきているので先行き不安が……

>>155
今回の見れば、特に服装描写の緻密さからピンと来るんですが、前回だけで思い当たらなかったのは不覚……
(『先達に比べて』って、超大先達ではないですか)
下手すれば前後編と思いきや、残りあと2回分もあるということで、お待ちしております。
158名無しさん@ピンキー:2013/01/04(金) 16:41:32.61 ID:6eDtr7GX
>>157
はあ、確かに、双頭がLというかUと言うか
、通常手に入れやすい一直線型とは違う型なら
背中から抱き抱えながら出来ますね。

嫌がる?
こんなに、愛され方を知っているのに?
なんだか、その理由は、
『同性愛者ではない』
というよりも、
『肉棒の味を知ると、作り物の棒だと物足りなくなる危険性が有る』のを無意識に避けているからだと思いますが?
それに、こんなに作り物を打ち込まれたら穴が壊れてしまうかと思いますが?
肉棒のほうが、穴が長持ちすると考えられます。
159 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/04(金) 23:21:00.39 ID:LSeVvmMN
双頭ディルドー出すとき、形状を書こうとして「銃みたいな」「ブーメランみたいな」「鎌みたいな」とか、色々
表現探したんですがなんかしっくりこなくて書かなかったんですが、そうか「L字型」でよかったんですね。


兄=雅明が、挿入『される』のを嫌がる理由については、>>158で書いておられる理由でほぼ正解です。
 (違うのは、「味を知ると」じゃなくて、「味を思い出すと」が正しい、ってくらい)

兄のほうは、口では「嫌だ嫌だ」って言ってますが、実際にはそこまで嫌がってないですね。
もし姉=悠里の格好をした弟=俊也が挿入しようとしたら、あっさり落ちるでしょう。
 (ただし、全裸や男の服のままの俊也、あるいは他の普通の男性が迫ってきたら全力で拒否します)


逆に、弟=俊也は、女装状態で雅明に挿入『する』のは、強い表現ではないですが、完全に嫌がってます。
 多分にやらせようとしても勃たずに終わるんじゃないですかね。

理由は>>125で、
>「……僕にとって、女装ってのは、『お姉さんと一緒になる』って意味なんですね。お姉ちゃんの恋人である
>お義兄ちゃんに挿れてもらって、お姉ちゃんと同じような気分になるのは嬉しいんですが、僕が挿入するの
>はまた意味合いが違ってくるので……」
 って言ってるとおり、同性愛云々とはまた別の次元なんですが。


それにしても、この3人組、色々考えてくれる人がいて凄いですねえ。
160 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/04(金) 23:22:30.43 ID:LSeVvmMN
では、リクエスト2つ目
『義弟以外の女装キャラが、兄(10歳)に、ペニスとか挿入して開発する話』
を投下します。

趣味全開で書いたので、結構えげつないプレイになったので、ついていけなくなったかたは
離脱を推奨しておきます。

ということで。
161 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/04(金) 23:24:08.40 ID:LSeVvmMN
『弟はお姉ちゃん』 シチュエーション1 回想 1/7

 ──『あれ』は確か、俺が10歳のときのことだったと思う。
 実の親父が事業に失敗して蒸発して、借金返済のために家含めて色んなものを売り払って、
今までの俺の子供部屋より狭いワンルームのアパートで引っ越してしばらくたった頃の話。
 専業主婦だったお袋も働きに出て、気苦労から白髪も目立ち始めたことが記憶にある。

 転校不要だったことに喜んでいたのも短い間で、環境が激変した俺は見事にクラスの「い
じめられっ子」に転落していた。
 それまで友だちだった子もいじめる側に回って、遊ぶ相手もいない。そんな日々。

 『その日』は夕方から雨がぱらついていていた。
 持ってきた傘を広げて帰ろうとしたとき、「すまん、今日これ貸してな」って言って、そ
の傘が横から奪い取られた。
 いじめられっ子だった俺はどうしようもなく、そのまま雨の中を駆け出した。
 小雨だから大丈夫と思ってたら、雨がどんどん強くなって、下着までびしょ濡れで。

 ようやく家にたどり着いたと思ったら、悪いことは重なるもので、鍵をどこかに失くして
たんだ。濡れて気持ち悪くて寒いのに、お袋が帰るまで家に入ることすらできない。
 惨めな自分に、いつの間にか俺はわんわんと家の前に座って泣き出していた。

 そんな時2つ隣の家のドアが開いて、『その人』──実はもう名前を忘れてしまったから、
ここでは『春美さん』って呼ぶね──が出てきて、泣いてる俺を部屋に招きいれてくれた。
 春美さんは髪が長くて、胸が大きくて、大人しい感じの綺麗な人だった。

 その人の部屋に入って驚いたのが、部屋じゅうに所狭しと置かれた人形の存在だった。
 特に一番大きな人形は当時の俺より少し背が高いくらいで、最初生きてる女の子が床に座っ
ているのかと思うくらい精巧だった。
 狭いアパートにはあまりに似合わない存在は当時から疑問に思ってたけど、確か事情や由
来は結局聞けずじまいだったように思う。

 風呂場の中でバスタオルで体を拭いて、着る服がないことに気付く。
 風呂の中からそのことを言うと、春美さんはしばらくためらっていたようだけど、女の子
の服を取り出してきた。
 きれいな大人の女性の前で、バスタオル1枚の裸でいるか、少女の服を着るか究極の選択。

 高校時代から背が伸び始めて今は172cmあるけど、小学校時代の俺はいつも学年で1、2を
争うくらい背が低くて、この頃は130cmあるかないかくらいだったのかな。
 とても嫌だったけど結局身につけたこの時の服は、ほとんどぴったり身体にフィットした。

「アキちゃんの服、ぴったりだったみたいね。良かった」
「……“アキちゃん”って、誰?」
「その子よ」
 春美さんは笑いながら、一番大きな人形を手で示す。……不思議なことに、この件で俺の
記憶に明確に残っているのはその人形の名前と、その人形を呼ぶ春美さんの声の響きだけ。

 ただ、『その日』はそれ以上のこともなく、お袋が帰ってくるまで春美さんの部屋で、お
嬢様のような白いフリルつきブラウスと、同じくフリル付きの黒いスカートの姿で過ごして
終わっただけだった、と思う。
162 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/04(金) 23:25:31.07 ID:LSeVvmMN
 回想 2/7

 ──え? 女装は似合ってたかって? それを含めて、これから話すね。

 それからしばらく、学校から帰ったあと毎日のように春美さんの部屋を通う日々が続いた。
 ……今なら分かるけど春美さんは水商売の人で、夕方6時くらいが出勤時間で。
 俺の相手をすることで負担がかかっていたのは当時の自分でも理解していて、でも孤独だっ
た俺は、好意に甘えててお邪魔することをずるずると続けてた。
『僕の出来ることならなんでもするから』。贖罪意識から春美さんにはそんなことを言って。

 確か1ヵ月後くらいかな? 春美さんが、僕に「お願い」って言ってきたのは。
 何でも“アキちゃん”の新しい服を買いたいから、買出しに同行して欲しいとの話。
(荷物運びかな?)と思ってOKしたら、“アキちゃん”の服一式に着替えさせられたんだ。

 嫌とは思ったけど、『なんでもする』と言ってた以上断りきれなくてね。
 下着から完全に女物で、白と黒のゴスロリ衣装を身に着けて、お尻より長い黒髪姫カット
のカツラをつけて、付けマツゲとかできっちりお化粧までさせられて。

 ──今の俺から想像つかないと思うけど、小学校卒業くらいまでの俺はお袋似の女顔で、
背も小さかったし結構女の子に間違われることも多かったんだ。
 中学以降はまあ、そんなこともなくなったけど。

 それでも一番最初の日にお人形の服を着たときは、普通に『男の子が女の子の服を着てる』
感じだったけど、その日仕上がってみると、本当に『生きて動き出した少女のお人形』その
もので、それが自分であることが信じられない気分だった。
 ──まあ、随分前の話だし、記憶の中で美化が進んでるのかもしれないけどね。

 春美さんはごく自然に俺に対して“アキちゃん”と呼びかけるし、いつの間にか俺もその
呼び方に馴染んでいってしまっているし。
 まあ偶然俺がマサ“アキ”だから慣れやすかった、という理由もあるだろうけど。

 その日は春美さんと一緒に電車に乗って街にでかけて、ロリ系の子ども服中心に色々試着
して回ったっけ。俺と人形の服のサイズが同じくらいだから、これでぴったりな服が着せて
あげられられるって、大喜びだったと思う。
 最初は恥ずかしかったけど、店員さんとかに完全に女の子として扱われるのが新鮮で気持
ちよくて、誰も俺のことを俺と扱わないのが嬉しくて、最後は割に楽しんでた記憶がある。

 ──女装趣味じゃなくて、変身願望かな。
 あの頃は本当に、俺が俺であることに嫌気がさしてたから、別人になることが嬉しかった。
 だからまあ、正直に言えば俊也が悠里のふりをするのを見てて、今でも羨ましいって思う
気分もどこかにあるんだ。もう、俺には無理だろうからね。

 まあ、それはともかく。
 その日以降、大きく変わったのが春美さんの家での俺の扱いだった。
 それまでは普通に男の子として扱われてたのが、春美さんの家に行くたびに服を脱がされ
て、動く着せ替え人形であるかのように、可愛らしい女の子向けのドレスを着せられて。

 ──それが本気で嫌だったら、もう二度と行かなくなって、それでお終いだったよ。
 でも結構長い間その関係が続いたはずだから、俺はやっぱりそれが嬉しかったんだと思う。
163 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/04(金) 23:26:52.91 ID:LSeVvmMN
 回想 3/7

 ──この話にはあともう一人、登場人物が出てくる。
 この人も名前は思い出せないから、仮に──そう、『冬子さん』って呼ぶね。
 冬子さんは背が高い人で、髪は肩あたりで綺麗に切りそろえた感じで、ややきつい面差し
の美人な人だった。クールビューティって感じかな。

 春美さんと冬子さんは友人で、冬子さんが春美さんの家に来ている日は俺は家に上がらせ
てもらえないのが、分かっていても寂しかった。
 春美さんと冬子さんが部屋で何をしているのか知りたい気持ち、一緒に遊んでもらいたい
気持ちが段々募ってきて、……それで俺は、あんなことをやったんだ。

 細かい経緯までは思い出せないけど、冬子さんが来る日、春美さんが留守をしている間に
家にこっそり上がりこんで、俺はお人形のほうの“アキちゃん”の衣装を一式脱がせて自分
の体に身に着けていった。
 春美さんがいつ戻ってくるか分からないから大急ぎで。

 “アキちゃん”と、俺の着ていた服を押入れに押し込んで、人形がつけていたピンクと白
の、甘ロリっていうのかな? そんな服に着替えて、金髪巻き毛のカツラと大きな布製の帽
子……ボンネットっていうの? まあ、それを頭にかぶって。
 そこまで終わったところで、春美さんが帰ってきたのでその人形みたいに床に座って。
 ──今考えれば、俺が押入れに入ればよかったのかな? それとも何か事情で無理だった
のかな? よく思い出せないや。

 幸運なことに、春美さんは俺の『入れ替わり』には気づかないようだった。
 お人形の真似事をして春美さんと一緒にいるのはもう何度もやってきたことだけど、春美
さんが俺のことを人形だと思い込んでいる状態は初めてのことで。
 首を動かして見るわけにもいかないし、春美さんの独り言や服を脱ぐ衣擦れの音、シャワー
の音に、心臓がおかしいくらいにバクバクしっぱなしになっていた。

 春美さんがシャワーを浴びている最中に冬子さんがやってきて、部屋に上がってきた。
 見れないから分からないけど、人形のふりでじっとしている自分を見つめている気がする。
 太腿辺りがやけに痒い。やっぱり無理だったのかな、そんな不安を感じつつ、でもピクリ
とも動けない苦役に耐えているとき、風呂場から春美さんが出てくる音がした。

「んじゃ春美、始めるか」
「あら? 今日はやけに性急なのね」
「たまにはそんな日もあるんだ」
 それだけの会話のあと、たぶん冬子さんが服を脱ぎだした音がした。

 当時俺はまだ、『セックス』という言葉も概念も知らない子どもだった。
 ──10歳でそれって、今時おくて過ぎるかな? そうかもしれない。
 まあ、だから、それから始められた『行為』のことは、当時の俺には凄いびっくりするよ
うなことだった。

「ああっ、いやっ、やめて!」
 夕暮れのアパートに響く春美さんの声。
 当時の俺にはさっぱり分からない叫びにびっくりして顔をつい二人のほうに向けてしまう。
 狭い部屋の半分を占めるベッドの上で、冬子さんがこちらを見てニヤリと笑った。
164 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/04(金) 23:28:13.40 ID:LSeVvmMN
 回想 4/7

 ──そのとき、よく驚きの声をあげなかったものだと思う。
 だけど、びっくりのオンパレードは、むしろこれからが始まりだった。
 頭が真っ白になって対応を思いつかないでいるうちに、春美さんがひときわ大きな声をあ
げてくたっとなってしまう。

 慌てた俺が立ち上がるのと、冬子さんが起き上がるのがほとんど同時だった。
 今までベッドと春美さんの体で見えなかった、冬子さんの身体が見える。
 細くて色白で脛毛とか一切なかったけど、胸と股間のものが完全に男性だった。
 それなのに、綺麗に化粧された顔はやっぱり冬子さんの、女性のもので。俺は混乱する。

「おい、春美。こいつは一体ナニモノなんだ?」
「えっ、嘘……アキちゃん?」
 冬子さんが、まだベッドに横たわってぜいぜい言ってる春美さんの頭を手でこちらに向け
させて質問すると、春美さんは驚いた声で言った。

「“アキちゃん”って確か、お前の持ってる人形の名前だよな。でもこいつ、生きてるぜ?」
「いや、そっちのアキちゃんじゃなくて……この部屋の、2つ隣の男の子」
「雅明だっけ? 前紹介してた。って、へぇ! やっぱりこいつも男だったのか。面白いな」
 そう言ってけらけら笑う冬子さん。
 ──まあ、会話の内容まで覚えてないけど、大体こんな感じだったということで。

「なあアキ、お前も混じりたいのか?」
「……混じる、ってなんのことですか?」
「男3人で3Pしないか、ってことだよ」
「さん……ぴー?」
 知らない単語に混乱する俺。そのせいで、重要な単語をうっかり聞き流してしまう。

「うは。お前今何歳だ? ひょっとして、精通もオナニーもまだ?」
「じゅ、10歳ですけど……せいつう? おなにい?」
「あはは。こりゃいいや。春美、どうせだから化粧して綺麗にしてやってよ」
「え……でも……そっか……ん……分かった。アキちゃん、こっちにどうぞ」

 混乱するまま、春美さんに手招きされるままに、化粧台の前に座る。
 鏡の中に、ふわりと膨らんだピンクのドレス姿、縦ロールの金髪ロングの『お姫様』のよ
うな自分の姿が映ってドキリとしてしまう。
 そういえば、今の自分はそんな姿だったんだ。

 そして目を上げて……初めて見る春美さんの全裸にぎょっとする。
 豊満な美乳に、くびれたウェスト。柔らかそうなすべすべの肌。どこをどう見ても、綺麗
な女性の体。それなのに、股間には俺と一緒のモノがぶらさがっていた。

「え……あ……春美さん? それ……」混乱のままに聞いてみる。
「お前、知らなかったのか? 春美も男だよ。オレやお前と同じな」言葉を一旦切って、

「手術で豊胸して、女ホルも打って……って言ってもお前にはまだ分からないか。
 ……お前、こんな体になってみたいと思わないか? 今からホルモン始めれば、お前なら
きっと、オレや春美なんて目じゃないくらいの美女になれるぜ」
165 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/04(金) 23:29:51.04 ID:LSeVvmMN
 回想 5/7

 ──もしここで俺が頷いていたら、どんなことになっていたんだろう。
 でも当時の俺は、呆然と座ってるだけで、首を縦にも横にも振ることができなかった。
「まあ、すぐには決心つかないか。お前がいいと思うなら、いつでも言ってきてくれ」

 ──その日以降に分かったことも含めて、この日この部屋にいた人のまとめをするね。

 春美さん。本人曰くメンタルは普通の男性。でもホモセクシャルで、昔交際していた、惚
れた男のために豊胸手術や女性ホルモンの投与まで受けて、その人と別れたあとも普段は女
性として生活していという話。外見は、普通の女性以上に女性な人だった。

 冬子さん。女装趣味の男性。女装すれば美女にしか見えなかったけど、普段は男性として
生活していて、体は特にいじってない。バイセクシャルだと本人は言ってたと思う。

 最後に“アキちゃん”こと当時の俺。事情があって少女人形の服を着ていたけれども、女
装趣味でもホモでもバイでもない人間。……いや、本当だってば。

 春美さんに綺麗に化粧をしてもらって、帽子を外して代わりにピンク色の大きなリボンを
頭につけてもらった俺は、いや、“動く等身大リアルドールのアキちゃん”になった自分は、
(これから何が起きるんだろう……)と不安に思いながらベッドに座っていた。

「じゃあまず春美、フェラチオの見本をみせてやれ。アキ、今からお前もするわけだから、
ちゃんと見ておくんだぞ」
 そう冬子さんが言うと、春美さんは少しためらったあと、屈んで冬子さんのモノを咥えた。
 ──あれ。この流れだと、アナルセックス直後にフェラチオしたことになるな。記憶がごっ
ちゃになってるのか、それとも本当にやったのか。ごめん、どっちか分かんないや。

 まあそれはともかく、春美さんにフェラチオされながら、冬子さんは俺に向かってこと細
かにやりかたとかを説明した。最後、春美さんが、美味しそうに白い液体を飲み干す。
 促されるまま、俺は続いて春美さんの股間のモノを口に咥える。
 どこからどう見ても、春美さんの身体は『その箇所』以外は女性そのもので。その中に唯
一存在する“男の象徴”を自分の口の中に隠してしまうのは凄く変な感じだった。

 『フェラチオ』の概念自体、さっき知ったばかり。多分、それは凄く下手なものだった筈。
 でも、春美さんは『お人形のアキちゃんが動き出して、お姫様姿で自分のモノに奉仕して
くれている』というシチュエーションに凄く興奮して、白いおしっこを俺の口に出したんだ。
 春美さんは美味しそうにしてたのに、それはとても苦くてまずくて。
 冬子さんに命じられるままに飲み込むのは、とても大変だった。

「あはは。こいつ、言われたくらいで男のモノ咥えて精液飲み干して変態じゃね?……ウソ
ウソ、お前は偉いよ。いい奴だ」
 そう言って金髪のカツラの上から頭を撫でる。
「……じゃあ、ご褒美に、今からオレがお前を『女』にしてやるよ」

「えっ? 僕は男だよ」
「ボクっ娘ってのもいいけど、そこはあたし……いや名前で呼ぶのが良さそうだな。『アキ
は淫乱な、エッチなことで喜んでしまう、いけない女の子なんです』って言ってみな」
「あ、アキはインラン?な、エッチなことで喜んでしまう、い、いけない女の子なんですぅ」
166 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/04(金) 23:31:44.50 ID:LSeVvmMN
 回想 6/7

「よし。よく言えた。春美、これからコイツになんて言えばいいのか教えてやってくれ」
「……え? うん、分かった、と思う。『冬子さん、アキの初めてをもらってください』」
「ふ……冬子さん、あ、アキの初めてをもらってください!」

 ──『アキ』という言葉が自分の口から出る度に、自分は『雅明という男の子』ではなく、
『アキという名の、自意識を持たない人形』なのだ、という感覚が強まっていく。
 普通なら抵抗するはずなのに、まるで催眠術がかかったかのように、言われるがままに言
葉を繰り返し、そして仰向けになり、両脚を持ち上げてお尻を浮かせる自分がいた。

 下着をずり上げ、お尻を丸出しにした状態。美女そのままの顔で冬子さんがにっこり微笑
んで、“アキ”のお尻の穴を指をあて、絶妙なタッチでマッサージし始める。
 下半身を中心に何かむずむずするような、熱いような、とても変な感覚が広がってくる。

「冬子さん? そ、そんな汚いですよ!」
「『冬子さんの中指が、アキの処女のおマンコに入ってきます』」
「え?」
「『冬子さんの中指が、アキの処女のおマンコに入ってきます』」

「……ふ、冬子さんのゆ、中指が、アキの、処女のお、おまんこ?に入ってきますぅ!」
「アキ処女なのに、冬子さんの指をすっかり飲み込んでますぅ。らめ、処女膜は破かないで」
「ああっ! 冬子さんの指が、アキのじ、じーすぽっと? をグリグリなでまわしてますぅ」
「ら、らめぇ! くり、くりとりす?は責めないでぇ! きもち、気持ちいいのぉ!」

 お尻に感じる異物感とヘンな感覚と、当時知らなかった単語のオンパレードでそれどころ
じゃないのに、音声繰り返し機能しか持たない人形のように、俺は機械的に繰り返していた。
 自分の意思とはまったく関係なしに腰がビクンビクンと動き出す。
 身体の中で何か熱いものが発生して、渦巻いて、そして飛び散りそうな感じがした瞬間、
お尻にいれていた指がすっとひき抜かれてしまう。
 ほっとするような、もっとして欲しいような、奇妙な感覚。

「さて、オレも流石に10歳とヤッたことないから、どうなるかな」
「さ、さてオレもさすがにじゅっさいと……」
「アキ、繰り返しストップな。しっかし、実況放送プレイって楽しいな。春美、GJ」
「ふふっ、アキちゃん可愛すぎ。まさか、こんな素質がある子とは思わなかった」
「そうだな。じゃあ、始めるか。アキ、また繰り返しスタートで」
 そう言って冬子さんは、今度は俺のお尻の穴に、指ではなくアレを押し込み始めたんだ。

「……アキの処女おマンコに、冬子さんのごくぶとおちんちんがはいってきますぅ」
「アキの、しょ、処女膜がやぶれましたぁ。赤い血が伝わってきますぅ」
「か、かりくび?が、アキのにくへき?をごりっ、ごりってこすってますぅぅ!」
「熱くて、ドクドクして、とっても気持ちいいのぉ。もっと奥に! もっと奥に!」

「アキ、処女なのに、気持ちがよくて腰の動きが止まらないのぉ」
「処女なのに、処女なのに、冬子さんのおちんちん、根元まで飲み込んじゃったのぉ」
「処女なのに、処女なのに、アキ、おちんちん入れられて感じちゃってますぅ」
「アキの子宮に、ドピュドピュ熱いせいえき?を注いでくださいぃ!」
「ら、らめぇ! アキ、アキ、10歳なのに妊娠しちゃうぅぅ────!」
167 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/04(金) 23:34:02.30 ID:LSeVvmMN
 回想 7/7

 ──ゴメン、俺、勢いで脚色しすぎたかも。

 まあそんな感じで、当時10歳だった俺に対して冬子さんは何度も精液注ぎ込んでさ──今
考えると、俺は一度には3回くらいでもう限界に近いから尊敬するわ──
 冬子さんはプロとして一時期生計を立ててたそうで、『逆アナルプレイ』も客相手にやっ
てて、そのテクをフル活用して、俺の身体に快感を刻み込んでいったんだ。
 精通もまだだった俺は、ドライオーガズム状態で何度も何度もイかされてしまって、半分
以上意識が飛んで失神したようになってしまっていた。

『少し女顔だけど普通の10歳の、人間の男の子、雅明』から、
『縦巻きロールの金髪に、ピンクのお姫様のようなドレス姿の、言われた通りに動き、言わ
れた言葉を繰り返す、自意思を持たない精巧な少女人形のアキ』に。そして、
『格好は同じだけど、ほとんど反応を返さない、超リアルダッチワイフのアキ』
 に俺の存在自体が次々と上書きされてしまった感じで。

 そしてラスト。
 もうお尻も口もぽかんと開きっぱなしの状態で、両方とも精液で溢れて垂れ流しみたいに
なって、身体に力が入らずだらりとしたダッチワイフそのままの“アキ”を挟んで、尻には
冬子さんが、口には春美さんがペニスを突っ込んで。

 頭も視界もとっくに真っ白で、そんな状態でも俺の肉体は入れられることに快感を感じて。
 脳内で快感はとっくに処理不能になっていて、『熱の波紋』としか認識できなくなったそ
の快楽を求めて、口とお尻の肉がペニスをぎゅっと包みあげて。
 そして最後の瞬間2人同時に身体からペニスを抜いて、盛大に俺の顔と身体とドレスとを、
白濁した熱い液体でべとべとに汚したんだ。


 ──というところで、その日のプレイと、この話はおしまい。

 春美さんと冬子さんとは、そのあとも何度も会ってるはずなんだけど、その後プレイした
かどうかも含めて、綺麗さっぱり記憶から抜けていて思い出せないんだ。
 ごめんね。

 『その日』があってから、なんだか学校のいじめがたわいのない可愛らしいものに思えて
きて、それでくじけたり惨めに思ったりすることがなくなって。
 徐々にだけど普通に友だちを作って遊べるようになって、『友だちの代替行為としての春
美さんの家』が必要なくなってきたこともあるんだと思う。

 俺の身長が伸びて、身体も大きくなって、“アキ”の服が入らなくなった、代わりができ
なくなったから、という理由も、たぶんきっとあるんじゃないかな。

 ある日、気づいたら予告も何もなしに春美さんはアパートから引っ越してしまっていて、
それ以来あの二人とは二度と連絡をつけることもできなかった。
 どん底だった時期に相手してくれて、俺が立ち直るきっかけになってくれた、ある意味で
は恩人な2人には、もう一度あって色々言いたいけど、たぶんもう二度と会えない気もする。

 ──というところで、今度こそ本当に、この話はおしまい。
168名無しさん@ピンキー:2013/01/05(土) 00:42:58.06 ID:sP8qsT61
つC
169名無しさん@ピンキー:2013/01/05(土) 13:18:32.22 ID:32abwrna
なんですかね、そのまま、おねえさまたちの可愛い少女人形さんになっていたほうが幸せだったような気が?
そしたら、美少女なお姉さんと美少女な弟さんに愛される可愛いお姉ちゃん(♂)という3姉妹になれていたような?


双頭バイブレータ、『レ』型というほうが良いのかな?

姉は『レ』型の『ノ』の方を弟の穴に捩じ込んだ。弟は残った『I』を義兄のお尻に押し込む。
弟の肉棒は、義兄の尻から背中の腰近くにかけて乗っかる。

みたいな?




そういえば、弟さんは、お義兄ちゃんの舌技ありで口で果てるとか、喉の奥に放出するとか無いのかな?
または、
兄弟でお尻に口と舌で愛撫しあって、棒が暴発、噴火したら、口中で受け、飲み干すとか?
170 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/06(日) 09:11:20.48 ID:nt0t55Jp
そういう if 世界もありって言えばありですねえ。
SSにするつもりないのでそれぞれ妄想で補完をお願いします。その世界だとこんな感じか。

<設定>
・雅明は周囲に「性同一性障害」だと説明し去勢済。学校でも完全に女子生活。高校卒業後モデルとして活躍。
・雅明は148cmで成長ストップ。Bカップロリ顔で少女人形のような外見維持。
・悠里は読者モデルではなく、俊也が女性と偽って読者モデルをしている。恋人なのも悠里でなく俊也。

<シチュエーション>
・雅明が姫アレンジの甘ロリ、俊也が和ロリ姿でデート。途中ナンパされたので遊んだのち、外見男2人美少女2人、
 実際には男4人でラブホテルに。雅明を3人で代わる代わるフェラしたり挿入したり。
・男装した悠里と3人で冬子&春美さんのうちに遊びに行く。外見は4人の美女・美少女と1人の美少年でH。
171名無しさん@ピンキー:2013/01/08(火) 04:15:40.34 ID:6+b72Skg
最近のエロゲーギャルゲやラノベって、わりと無節操に男の娘キャラが出てるじゃないですか。
アレって、よく知らない人が見たら、ただの可愛い美少女キャラなんですよね。
で、そんなキャラのひとりに(それが男の娘だと知らずに)ときめいてしまった主人公が、
偶然得た、神様のプレゼントなり壺の魔人なり悪魔の契約なりの機会に、
 「あの●●●(キャラ名)そっくりの子に、俺のカノジョになって欲しい!
 あ、俺にベタ惚れで、エロい事も大好きだとなおよし!!」
とか願い事して、いざ萌えキャラが三次元化したものの……という展開は、アリですかね?
(どちらかと言うとマンガの方が向いてる気がしないでもないですが)
172名無しさん@ピンキー:2013/01/08(火) 06:23:00.98 ID:Ff72jViq
とりあえず書き出してみるが吉
173名無しさん@ピンキー:2013/01/08(火) 09:47:20.34 ID:TiiSp7mP
言っとくけど、ネタ振り=自分で書く&他人にパクられるの二択だからな?
泣きを見る前に自分で書きます宣言するヨロシw
174名無しさん@ピンキー:2013/01/08(火) 23:41:58.55 ID:5n1brjty
いや、すでにココで書いてる者なんで、他の人がアイデア利用して書いてくれるなら、それはそれで……
175名無しさん@ピンキー:2013/01/09(水) 18:53:49.43 ID:YEB/rmFw
とりあえず言っただけですねわかります!!!
176 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/10(木) 20:53:06.18 ID:IRdhbJ6F
「とりあえず言っただけ」のはずの『弟はお姉ちゃん』が、いつの間にか色々続いてしまってる状況ですし、
言ってみるのは大歓迎なのではないでしょうか。

>>114 の続き、漸く投下になります。

『Symbolon』 §5・篠原俊彰 1/3 2004/05/15(土)

「お邪魔します」
「男所帯でむさくてごめんね。さあ、上がって」
 玲央ちゃん三昧でまさしく『黄金週間』だったゴールデンウィークも終わり、彼女の中間
試験が近いとのことで、今日は初めて僕の家に招いて、そして勉強会を。

「親父まだ寝てるはずだから静かにお願いね。お母さんに紹介するからこっち来て」
 「紹介? え、まだ心の準備が」とあたふたする玲央ちゃんの手をひいて仏壇の前に。
「お母さん、紹介します。この人が僕の最愛の人、相川玲央さんです。できれば一生をとも
にしたいと思ってる女の子なので、末永く見守ってください」
 少し戸惑ったようだけど、手を合わせ、頭を下げる僕の隣に座り、同じように頭を下げる
気配がした。

「俊彰さんのお母さんって、……その、綺麗なかたですね」
 自分の部屋に玲央ちゃんを案内する。男の部屋が珍しいのか、きょろきょろしっぱなしだ。
「僕が3歳のときになくなったから、あんまり記憶もないんだけどね。自己満足につき合わ
せちゃってごめん」
「いや、とても嬉しかったです」
「さ、そこに座って。さっそく勉強、始めよう」

「この公式、この間話したあの話にも関係するんだ。どこだったかな……あ、あった。こん
な感じで。そんな重要な式だから、きちんと覚えておこうね」
 教科書の最初から適当にめくりつつ軽くおさらいしてみる。
 飲み込みが早い。応用力も記憶力も悪くない。時折見せる洞察力と集中力は凄いと思う。
要領が少し悪いのが欠点くらいか。
 教えていて、スポンジのように色々飲み込んでくれるのは快感ですらあった。

 中学の内容も大体完全に理解している様子だったけど、4月の後半分(僕と会った時期?)
くらいから、授業でやった内容が少し混乱してるのは気になった。
「これ、僕のノート。参考になるかどうか分からないけど見てみて」
 高校時代の教科書・参考書・ノートを詰めたダンボール箱から、1年生の分を取り出す。

「わあ、凄い丁寧なんですね。字も綺麗ですし。こことか凄い分かりやすい。『頭のいい人』
のノートって、こんな感じになるんですね」
「そうでもないと思うけどなあ。どうせ使わないから、持ってかえってくれてもいいよ。…
…本当に頭がいいと、逆にまっさらになるけどね。うちの兄貴とか、最初に1、2回教科書
ぱらぱらめくっただけで内容全部憶えてるから、ほぼ新品そのものだし」

 膝の形を見たときからわかってたけど、正座をほとんどしたことはないのだろう。
 今も座布団の上にぺたんと女の子座り状態。背筋を綺麗に伸ばして、端正な字でさらさら
と問題を解いている。時々唇にペンの頭を当てて考える様子も可愛いらしい。

「あ、ここ分からないんですけど」
「どれどれ……ああ、ここはね……」
 近くに寄ると、玲央ちゃんの匂いが鼻腔をくすぐる。平静を保ったふりをするだけで大変。
「なるほどー、こう考えればいいのか。分かりやすいですね」
「教え子がいいからね。……っとこんな時間か。昼飯作ってくるから、この問題集解いてて」
177 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/10(木) 20:53:25.73 ID:IRdhbJ6F
 §5・篠原俊彰 2/3 2004/05/15(土)

「うわっ、すごく美味しいです」
 親父と玲央ちゃんと、僕の3人で昼飯のテーブルを囲む。
 蟹チャーハンとスープだけの手早く作れるメニューだったけど、お口にあって一安心。

「俊彰には、小学校から家事まかせっぱなしだったからねえ。料理はまあ、愚息の数少ない
とりえの一つかな」
「いえ、俊彰さんはどこを取っても素敵ですよ?」
 真顔でそう答える玲央ちゃんに、大笑いする親父。

「こいつ女を見る目がないなあ、って、ずっと思ってたら、最後に凄く良い子をつれてきた
じゃないか。式の日取りとか決めたのか?」
「親父、先走りすぎ。玲央ちゃんまだ高校生なんだから」
「式を挙げること自体は否定しないんだな。お前も、愛想尽かされないように努力すんだぞ」
「うん、親父……うん、分かってる」

 食後腹ごなしがてら近所を散歩してると、赤ちゃんを連れた見知った女性が歩いてきた。
「俊くん、こんにちは。可愛いお嬢さんね。彼女さん?」
「有紀さん、悠(ゆう)くん、こんにちわ。こちら相川玲央ちゃん、僕の自慢の彼女です」
「始めまして。相川玲央です。こちら悠くんって言うんですか。可愛いですね」

 しゃがみこんで、ベビーカーに座る悠くんと笑顔で挨拶し合っている玲央ちゃん。
「大きくなるの早いですね。悠くん、もうすぐ1歳でしたっけ?」
 少し話したあと、有紀さんが悠くんを抱え上げて、玲央ちゃんに渡す。
 顔の高さで抱っこされた悠くんは、キャッキャと笑って凄いご満悦の様子だ。

「悠、凄い嬉しそう。いつも人見知りなんだけど、この子実はメンクイなのかな?」
 そんな会話を上の空で聞きながら、僕はこっそり玲央ちゃんの笑顔と肌に見とれていた。
 比較対象があってよく分かる、1歳児と比べてもきめ細かですべすべで柔らかそうな肌。

「赤ちゃんかぁ。いいなあ」
 有紀さんと別れたあと、玲央ちゃんが呟く。声をかけようと顔を見て、言葉に詰まる。
 彼女が時々見せる、辛そうな表情。実は許婚がいるとか、そんな事情があるんだろうか?
 色々な思いが浮かんで纏まらない僕に向かって、「よっ」という声が届いた。

「……兄貴か。今日は一日中彼女と遊んでるんじゃなかったのか?」
 少し警戒しながら、声の主を見る。
「その彼女が用事が出来たって、今日の午後はフリー。つか帰って寝る。で、この娘が前言っ
てた新しい彼女? 始めまして。俊彰の兄で、篠原輝彰(てるあき)と申します」
 そう言って、ウィンクしながら手を胸に当てて(何故か)執事の礼をする兄貴。
 少し気障な仕草だけど、それがやけに似合っている。

「始めまして。えっと、相川玲央です。俊彰さんには良くしてもらってます」
 そういってこちらも深々とお辞儀を。
 僕のことを『ハンサム』って言う人もいるけど、兄貴を間近に見る身としてはとてもそう
とは思えない。
 この二人が並ぶと一種人間離れしたくらいの美貌の、お似合いのカップル同士に見えて、
かすかな嫉妬心と、そしてトラウマが疼いた。
178 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/10(木) 20:54:42.82 ID:IRdhbJ6F
 §5・篠原俊彰 3/3 2004/05/15(土)

「前、写真で見せてもらったけど、それよりずっとずっと可愛いね。まるで真珠のようにキ
ラキラしてるよ。服のセンスも似合っててすごく可愛い」
「ありがとうございます。これ、俊彰さんに選んで買ってもらったんです」
 デート2日目、祥子さんの資金で購入した白いワンピース姿でにっこり微笑んでお礼する。
「……ほら、そこの彼女持ち。僕の玲央ちゃんを口説こうとしない」

「そんな事してないって。けど、お前には勿体無い良い娘だね。大事にしてあげなよ?」
「それは親父にも言われた。言われなくても、とってもとっても大切にするから」
「いい覚悟だな。んじゃ、俺は先に帰ってるから。お二人とも邪魔してごめんなさい」
 そう言って片手を挙げてあっさり立ち去る兄貴。そんな姿までサマになっている。

「なんだか、凄く嬉しいです。『僕の玲央ちゃん』って」
 立ち去ったあと、正直兄貴の感想があるのかなと思って身構えてたのに、うっとりした表
情でそんな風に言うので少し驚く。
「漫画とかでよくそういうシーンがありますけど、大好きな人にそう言われると本当、なん
かジーンと来ちゃいますね。……あれ、俊彰さんどうしました?」
「いや、兄貴と会った人ってその感想を喋ることが経験上多いから、なんか新鮮だなって」

 僕の発言に玲央ちゃんが反応しかけたけど、それは近所の知り合いが「そちら俊彰くんの
彼女さん? 可愛らしいかたねえ」と声をかけてきたので、結局兄貴の感想は聞けずじまい。
 良かったような、聞きたかったような。

 部屋に戻って、まずは僕が昼飯を作ってたときの解答をチェック。
「どうでした?」
「うん、1箇所ケアレスミスがあったけど他は満点。ご褒美をあげる」
 そう言って額に軽くキス。驚いたのか、「ふぁぁ」と声をあげて、口に手を当ててしばら
く硬直。大人びようと背伸びしている彼女が、時々ふと垣間見せる幼さが愛おしい。

「ね、もっとご褒美もらえないかな」
「それは、これからの結果次第」
「よーし、がんばるぞー」
 そう言ってぎゅっと握りこぶしを作って、一生懸命勉強に取り掛かる。
 抱きしめたくなる自分をこらえるのに本気で苦労してみたり。

 3時になって、昨日のうちに作っておいたマフィンと紅茶で一休み。
「うーん。やっぱりすごく美味しいです。私、料理できないから尊敬しちゃう」
「玲央ちゃんならすぐに上手くなると思うけどなあ。中間終わったら、今度は料理一緒に作っ
て練習してみようか。エプロン姿の玲央ちゃん無茶苦茶可愛いかったし」
「ちょ、ちょ、俊彰さん何を言ってるんですか……嬉しいケド」

「そうだ、これ」
「アルバム……ですか? 俊彰さんの昔の写真とか? 見たい見たい」
「半分あたりで半分はずれかな。2人でこれまで撮ってきた写真を焼いてもらったの。まだ
出会ってから1月経ってないって、作ってる最中気づいてびっくりしちゃった」
「え、これ最初のプリクラか。うわっ、凄く恥ずかしい」
「最初から可愛いけど、こうやって見ると玲央ちゃんどんどん可愛く、女らしくなってるん
だなあって。これからもっともっと、2人一緒の写真を増やしていこうね」
179 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/10(木) 20:55:47.59 ID:IRdhbJ6F
 §6・相川玲央 1/1 2004/05/15(土)

「……今日もまた、言いそびれちゃったな」
 勇気が出せない自分にため息をつきつつ、もらった合鍵で『相川』の家のドアを開ける。
 ──『相川玲央という少女』にとっては、ここが本当の家なんだ。
 そういう幸せな錯覚に浸りつつ、「ただいま」と言って2階の祥子さんの部屋まで登る。

「ん、お帰りなさい」
 ベッドに寝そべって、女性誌を読みながら祥子さんが迎えてくれる。
 最初のころは「今日どうだった?」とか聞いてくれていた祥子さんも、私が俊彰さんのノ
ロケばっかりしか言わないもんだから、最近は呆れてそういう質問はしてくれない。

 色々負担をかけているのは本当だし、そろそろ別の着替えポイント作りたいなと思っては
いるのだけど、何も思いつかないのが現状だ。
 床に座って──スカートを穿いていると、自然と『ぺたんこ座り』になるのが自分でも不
思議だ──、もらったアルバムを再び開く。

 わずか1ヶ月の記録のはずなのに、放任主義の両親が撮影してきた、それまでの15年分
の写真よりもひょっとしたら多いのかもしれない。それだけ多数の『恋人たちの肖像』がこ
こにある。
 私の心に占める割合も同じくらい。この1ヶ月、女の子として俊彰さんといた時間のほう
が、それ以外の時間よりもずっとずっと大きな割合に育ってしまっている。

 最初のころの写真は、まだ“男”の部分が残ってる。特に最初のプリクラ(をコピーした
写真)は、化粧も落ちてて『これでよく男とばれないもんだ』と不思議なくらい。
 もっとも、これより男顔の女の子ならクラスに何人もいるけれども。
 それが最後のほうになると、これを見て『男女のカップル』でないと疑う人はいないだろ
う。実に奇妙なものだと思ってしまう。

「玲雄くんもすっかり女の子が身についちゃったわねえ。前まであんなに嫌ってたのに」
 ふと気づくと、アルバムを後ろから覗き込みながら、祥子さんがそんなことを言ってる。
「もう、祥子さん」
 この件があるまで、ずっと女の服を着ることが嫌だった。怖れていたと言ってもいい。
 何か、パンドラの箱を開けてしまうような、恐怖に似た予感があったからだ。

 帰宅のため、化粧を落とし、エクステを外し、男の服を身に着ける。
 『男の服に戻る』はずなのに、『無理やり男装させられて、男のふりをさせられる』とい
う感覚が、回数を重ねるたびにどんどんと自分の中で膨らんでいく。
 逆に募ってくるのが、朝、女の服に着替えるときに感じる『これで本当の自分に戻れる』
という思いと安心感。

 “女として過ごす”というパンドラの箱を開けたときに出てきたのは、災厄ではなく、目
もくらむような喜びに満ち溢れた生活だった。
 神話上のパンドラの箱をあけたあと、箱の中に希望が残っていたという。
 では、自分が1ヶ月前に開けた箱の中には、一体何が残されているのだろう?
180 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/10(木) 20:57:03.09 ID:IRdhbJ6F
 §7・城戸ユイナ 1/3 2004/5/15(土)

「ねえ聞いてよーエリカー。アタシ振られちゃったのォ」
『キャハハ、またぁ? アンタも長続きしないねえ。今回は2週間だっけ?』
「んー。えーっと、コクったのがあれだから……10日だ」
『キャハハハハハハハハ、アンタ、早すぎ』
「なんでこう長続きしないのかなあ」
『一番長続きしたのってどんくらいなのさ』
「ん、半年。その次で2ヶ月くらい?」
『じゃあユイナさ、その半年間付き合った人にヨリを戻す努力でもしたら? 一番あってた
ワケでしょ? もうそんな人二度と現れないかもしれないよ?』
「トシアキのこと? どうかなー」
『まー、ダメモトで当たって砕け散りやがれ』

 昨日の晩の電話でのエリカのオコトバを思い出しつつ、トシアキの家に特攻するアタシ。
 ケー番もメアドもとっくに消してて、他に連絡の方法がないのががツーコンだった。
 都心へ1時間ちょいの私鉄の駅から、徒歩10分の一軒持ち家暮らし。シュウトメなし。
 兄貴がいるから家、継げるかどうか怪しいけど、兄貴がどっか行くなら優良物件だろう。
 あの兄貴、テルアキとくっついても良かったんだろうけど……
 3つ股だったことに気づいて、頭に血が昇った勢いでゼッコーしちゃったのがなぁ。

 さて。
 そんなことを考えながら歩いてたら、うっかり迷子サンになってしまった。
「南にいけば駅に戻れるんだよね……南ってドッチ?」
 そんなこと呟きながらトボトボ歩いていると、懐かしい声が聞こえてきた。トシアキの声。

 なんてラッキー↑↑
 恋愛の神様が『ヨリを戻せ』って言ってるってことだよね、これ。
 なんだかフワフワした気持ちのまま振り返り、そしてゼツボー。
 なんてアンラッキー↓↓

 いや、とっさにその“2人”から隠れられたのは、ラッキーなのかもだ。
 2人に見つからないよう、狭い路地に隠れたアタシの耳に、会話が聞こえてくる。
「俊彰さん、本当に知り合い多いんですね」
「生まれる前から、僕がずっと過ごしてきた団地だからね。さっき挨拶した佐々木さんも結
構お世話になったな。ボールを干してた洗濯物にぶつけて怒られたことあったっけ」
「ふふ。そんな時代あったんですね。ちょっと想像つかないな」
 指を恋人繋ぎで絡ませあって、楽しそうに笑いあう。シットで色々狂いそうだ。

 幸せそうなカノジョの横顔が見える。
 なんだか見てて胸がすっげームカムカしてくる。
 薄くみえるメイク。染めてない黒い髪。少女趣味のきついゾロゾロした服。
 なんだなんだ。変に清純派ぶって。素のままに生きてるアタシとは正反対だ。

 でも。トシアキはああいうのが良いんだろうか。見るからにすっげーデレデレだ。
 結局どの道、トシアキが新しく彼女作ったんなら、ヨリ戻し無理なのかなぁ。
 なんだか打ちのめされた気分のまま、よろよろと這い出る。
 モヤモヤ気分で立ち去ろうとした瞬間、なんでか知らないけどキュピーンとひらめいた。
 何がひらめいたのか自分でもよく分からないけど、その直感に従うことにしてみる。
181 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/10(木) 20:58:20.53 ID:IRdhbJ6F
 §7・城戸ユイナ 2/3 2004/5/15(土)

「『キュピーン』なのよね。『キュピーン』」
 自分でも完全に意味不明な独り言を呟きながら、トシアキの家の前で張り込み。
「うぅー。おなかすいたよぅー」
 自分でも、なんでこんなことをやってるのかわかんない。もうあきらめちゃおっか。
 そう思い初めて3時間過ぎたくらいに、ようやく2人が出てきた。

 またまたお手々つないで駅まで歩き、更に歩いて南口でバスを待つ。
 バスに乗るまでずっと一緒かなあ。
 トシアキといるときに近づいたらアウトだし、するとこれ以上の尾行はムリか。

 そう考えてたらトシアキのケータイに電話がかかっきてて、名残惜しげに別れよった。
 今日のアタシ、どんだけラッキーガールなのさ。
 なんだかもう、ご都合すぎて涙が出るくらい。

 バスには無事乗り込めた。
 席はガラガラなのに、手すりにつかまって立ってるあのコ。
 後部座席に座って観察してみる。昼も思ったけど、顔だけはすんごい美少女だ。
 目が大きくてマツゲが長いし、肌もムッチャ白いし、頭すごく小さいし。
 白いマキシワンピに、ミントグリーンのボレロ。フリルいっぱいの服が確かに似合ってる。
 けどこういうのは経験上、陰でヤりまくってたり、性格悪かったりするんだよなあ。

 変な点がないか、更にジロジロ。
 化粧に慣れてないんだろうか。リップとか少しとれてるのに直そうともしていない。
 髪型が少しおかしな気もする。履いてる黒いパンプスもなんかババァくさい。
 服のせいで分かりにくいけど、胸とお尻のぺったんこさは男の子のようだ。
 ……ん? 男の子?

 ハテナマークが頭の中を踊りまくる中、カノジョの後を追って慌ててバスを降りる。
 あの顔を見て、あの声を聞いて、あの歩く仕草を見て、女と思わない人はいないだろう。
 そのはずなのに、不思議なギワクがアタシの中でどんどん大きくなっていく。

 “その家”は幸いにして、バス停からほど近い場所にあった。
 鍵を開けて中に入ったことを確認して近寄る。『相川』の表札を確認。
 初めて知る『標的』の名前。トシアキは「レオちゃん」って言ってたから「相川レオ」か。
 考えてみれば、女でもいないことはないけど、「レオ」って普通は男の名前だ。

 アタシの中ではもう相川レオ=女装男確定なんだけど、でも考えたら根拠がなんにもない。
 どうしたものか……と悩んでいるうちに意外に時間がすぎてったみたいだ。
 相川の家から物音がしたのでトッサに隠れる。ラッキータイムはまだ終わってなかった。
 こんな時間に出てきたのは、ジーパン姿の髪の短い(あの髪、カツラだったのか)男の子。
 チャリに乗って相川んちを出て行く横顔が、昼の少女にぴたりと重なる。

 どういうことなのかよく分かんないけど、とりあえず明日だ。
 明日、トシアキの前でアイツが男かどうか直接問い詰めてみて、もし女なら諦めよう。
 でももし本当に男なら。……オカマヤローなんかに負けるもんか。

 ……だけど、どうやったら、ここからうちに帰れるんだろう?
182 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/10(木) 20:59:20.55 ID:IRdhbJ6F
 §7・城戸ユイナ 3/3 2004/5/16(日)

 日曜の朝からトシアキの家の近くに隠れて待つ。

(そもそも今日会う約束してなかったらどうするんだ?)
(もう出てったあとかも……)
 待っているだけだと不安がどんどん高まっていく。そんな時間が30分ほど過ぎて。
 トシアキの家に近づくアイツの姿を見て、思わず歓声をあげそうになって口を押さえる。

 淡いピンクのカーディガン、ベージュのブラウスと長いスカートの取り合わせ。
 相変わらず服も顔も髪も清純キャラ作って、変にカワイコぶって、なんかヤだ。
 こいつが男だろうが女だろうが、アタシのキライなタイプだ。うん、きっとそうだ。

「ちょっと待ったー、そこー!」
 ドアが開いてトシアキの顔が見えた瞬間、アタシはそう言って駆け寄る。
「え? あ? ユイナ?」

 驚いた表情で、アタシの名前を呼ぶトシアキの声。懐かしさで涙がでそうになる。
「なんで今更きたんだ? 忘れ物でもあったのか?」
「だから、もっかいやり直そうって。テルアキのことは悪かったって、何度でも謝るから」
「何で今更? 無理だって。もう付き合う気は金輪際ないし、僕にはレオがいるし」

「……トシアキさ、そいつが男だったとしても、そんなこと言ってられる?」
「どっからそんな変な言いがかりを?……って、玲央ちゃん?!」
 ビンゴ! 返事がなくても、その青ざめた顔で答えは丸分かりだ。
「トシアキ、ホモが大嫌いだったよね? 嘘ついて騙した女装男なんて振ってヨリ戻そ?」

 思わず強引に飛びついてキスをする。アイツが逃げ出す音が後ろで聞こえる
 すべてはアタシの計算どおり、いや計算以上!
 これですべてはハッピーエンド! いや、これからがアタシのすべての始まり!

 ……その、はずだったのに。
「イタっ」
 強引に体を引き剥がされ、シリモチをついてしまう。
「レオ、待ってくれ、レオ!」
 そう叫んで、アタシに目も向けずに駆け出すトシアキを、止めることすらできずに呆然。

 数分後。泣きじゃくるアイツを連れてトシアキが戻ってくる。
「……ねえ! トシアキそれでいいの?! 男だよ? ホモは嫌いって言ってたの嘘なの?」
「レオちゃんは、最高の女の子だよ。少なくとも僕にとっては、それで十分だ」
 ……アタシの目の前で閉じられるドアを、ただ見守ることしかできなかった。

「ああ、うるさい。人の家の前でワンワン泣いてるなよ」
 それからまたしばらくたったあと、今度はテルアキが出てきた。
「テル、テル、テルアキ……! もう3人目だからって文句言いません、だからっ」

「誰かと思えばユイナか。半年振りかな? あーあ。もう何でもいいのかね、これは。
……今からなら5人目になるけど、それでもいいのか?」
「うん、5人目でも6人目でもいいっ、だからっ、もうっ、アタシを見捨てないでっ……」
183名無しさん@ピンキー:2013/01/11(金) 00:10:01.32 ID:GlhKKxqu
つC
184弟幼妻の人:2013/01/13(日) 19:35:27.76 ID:uaNKHjM0
#『Symbolon』さん、GJです! しかし、これだけのクォリティの恋物語の次に投下するのは、なんか気が引ける罠。
#いわゆる「H回」。とは言え、そのあたりの描写は苦手なので、実用レベルに達している自信はありませんが、まぁ、期待せずに見てやってください。

『弟は幼な妻』
-3-

 ああ、ファンシーランドに行ったあとの話か?
 そりゃ、お前、フツーにデートしたに決まってるだろ。
 「デートの相手が弟という時点で普通じゃない」? ご、ごもっとも。

 そ、それはともかく! まぁ、なんだ。その名の通りどれもリリカル&メルヘンチックにデコレーションされた乗り物──ジェットコースターだのメリーゴーランドだのコーヒーカップだの観覧車だりのに、ふたりでいろいろ乗ったこのは確かだな。

 え? お化け屋敷か? 一応入ったぞ。もっとも、由理が恐がって、ずっと俺にしがみついたままだったから、アイツの身体の体温とかいい匂いだとかに気を取られて、俺は恐怖を感じる余地もなかったんだけどな。

 あと……お互いのクレープをひと口ずつかじったり、トリプル盛りにしたアイスをつまづきかけて落っことした由理に、俺の分を食べさせてやったりしたのも、兄妹、もとい兄弟ならではのお約束だよな。
 「──どう見てもバカップルです、本当にありがとうございました」?
 な……それくらい、仲の良い兄弟なら普通にやるだろ!

 「それで、遊園地から帰った日の夜は!?」って? いや、別に何も……なに、も……。

  * * * 

 「ふぅ……まいったなぁ」
 午後10時過ぎ。居間のこたつで、(二十歳の誕生日はまだ2ヵ月程先なのに)貰い物のウィスキーをチビチビとロックで飲みながら、浩之は、今日の由理との"デート"でのことを思い出し、深い溜め息をついた。
 楽しくなかったワケではない。むしろ、逆だ。今まで、どんな友人(女友達含む)と行ったどんな場所よりも楽しかったのだ。
 それだけではない。
 今日一日、由理のことを考えなかった時間はほぼないと言っていいくらい、彼の関心は"彼女"へと向かっていた。
 (あ〜、認めたくはないが、認めざるを得ないか……)
 自分が、妹みたいな弟に夢中であることを──恋愛的な意味も含めて。
 「どーしたもんかねぇ」
 幸か不幸か、昨夜の"秘め事"を見る限りでは、「両想い」とも言えるのだが……。
 しかし、ココで自分からそんな茨の道へ踏み込んでよいものだろうか? 由理のことを思えば、自分の気持ちをグッと堪えて、まともな道に引き戻してやるべきではないか?
 なにせ、相手は、「血を分けた肉親」かつ「同性」なのだ。せめてどちらかなら、彼も躊躇いを振りきれただろうが、そうするには流石に業が深すぎた。
185『弟は幼な妻』3:2013/01/13(日) 19:36:25.22 ID:uaNKHjM0
 「──ま、ココでうだうだ悩んでても、答えは出ねぇよな」
 思い切って由理と腹を割って話しあってみるべきかと、グラスに残った酒を一気に飲み干して立ち上がる浩之。
 思い立ったが吉日と、その足で2階に上がり、弟の部屋を訪ねる。アルコールのせいか、普段のより少々短絡的になっているようだが……。

 「おーい、由理ぃ、ちょっと話したい、ことが……」
 一度あることは二度あるとはよく言ったもので、彼の最愛の偽妹(おとうと)は、パールピンクのブラ&ショーツに太腿までの黒ストのみというあられもない格好で、ベッドの上にいた。
 「──ふぇ? お、にぃ、ちゃん?」
 しかも、左手で自らの右の乳首を摘みつつ、右手をショーツの中、それも前ではなく明らかに尻の方から忍び込ませ、"どこか"を弄って快感を得ているようで、トロンと蕩けた目で呆けたように、兄の顔を見返す。

 ──プツン!

 あまりに唐突に度を超えて扇情的な場面に遭遇すると、人間、驚くとか慌てる以前に、自制心のタガとか枷とか言われるものが見事に破壊されるということを、浩之は己が身を持って知ることになる。

 「由理ぃ!!」
 由理が事情を完全に把握する前に、伝説のルパンダイブもかくやというすさまじい勢いで、浩之はドアから一足飛びにベッドの前に移動して、そのままの偽妹(おとうと)の華奢な肢体を抱きしめ、唇を奪う。
 「ふぐッ! ……んん♪」
 最初こそ目を見開いて身体を強張らせていたものの、すぐに目の前にいるのが兄の浩之であることに気付いたのか、途中からは"彼女"も積極的に唇を押しつけてくる。
 
 「──ッはぁ……」
 やがて、ふたり唇が一時離れ、唾液の糸が由理の口元から垂れ下がった。
 「ん……おにぃちゃんのつば……」
 それすらこぼすのがもったいないとでも言うように、赤い舌ペロリと唇を舐める様子を見て、浩之は我に返った。
 
 「ご、こめん、由理! だが、あんまりお前かが可愛過ぎて、つい……って、言い訳だな、こりゃ。本当にすまなかった。許してくれ」
 「ううん、大丈夫だよお……だって……ボクもお兄ちゃんのことが……大好きだから」
 !
 立ち聞きなどで知ってはいたが、面と向かって言われると破壊力が段違いだ。
 「ああ、俺も、由理が好きだよ」
 浩之は由理を抱きしめる。小さくて可愛い、妹そのものな弟を。
186『弟は幼な妻』3:2013/01/13(日) 19:38:04.26 ID:uaNKHjM0
 「なぁ、由理(よしのり)……いや、ユリ。俺の恋人になりたいか?」
 「う、うんっ。なりたい……なりたいよ!」
 愛しい人のその返事を聞いて、浩之の覚悟が決まった。
 「よし。じゃあ……恋人同士でする気持ちいいこと、しような」
 浩之は、そのまま右手を下着姿の由理のお腹から下腹部、さらに両腿の間へと滑らせた。
 そのまま、前面の"盛り上がり"にかすめるようにして、薄桃色のショーツを引き下ろす。
 「きゃん!」
 ショーツの中から現れた親指ほどの小さめの強張りの、わざと先を避けて根元近くを優しくしごく。たちまち、由理の牡芯は、ピンと尖ったその先端からヌルヌルとした液体を分泌し始めた。
 「おお、すごいな、ユリ。お前のココ、まるで女の子のアソコみたいにビショビショに濡れてるぞ」
 思わず、そんな言葉が口をついて出る。
 「お、お兄ちゃん……恥ずかしいよぅ。それにちょっと痛いかも」
 「ああ……悪い。ちょっとがっつき過ぎたな」
 慌てて手を緩める。
 「あはっ、でも、ボク嬉しい。お兄ちゃん、ホントにボクのこと、求めてくれてるんだ」
 どんなに女の子の格好をしても、自分は本物の女の子じゃないから──由理が面と向かって浩之に想いを打ち明けなかった理由も、まさにそこにあった。
 もし、"彼女"が本物の妹だったなら、血のつながりも気にすることなく、早々に兄のベッドに夜這いを仕掛けていたに違いない。
 しかし、"彼女"は生物的には紛れもなく♂で、また、兄の性的嗜好が極めてノーマルなものであることも重々承知していた。故にその想いを胸に秘め(まぁ、時々自慰などで発散はしていたが)、一生打ち明けることはないと思っていたのだ。
 それなのに、今こうして男の徴を前にしても、兄は怯むことなく自分のことを"ユリ"と呼び、愛してくれている。

 「当り前だろ」
 浩之は勃起している自らの分身を、スラックスの上からそっと由理に触れさせる。
 「きゃっ! お、お兄ちゃんのオチンチン……カチカチになってるぅ」
 悲鳴とは裏腹に、由理の目には嬉しそうな光が踊っていた。
 それを見た浩之の中でも、心のどこかのスイッチが切り変わったような気がした。そう、誰よりも大切で、目の中に入れても痛くないほど可愛いと思っている、この大事な"妹"を、いぢめてやりたいというSっ気のようなものが、顔を出し始めたのだ。
 「へぇ……いやらしい娘だな、ユリは。女の子なのにオチンチンだなんて平気で口にするなんて」
 「あ……ご、ごめんなさいぃ……だって、お兄ちゃんに、女の子として見てもらってるって思ったら、なんだか頭がふわふわしちゃったの」
 なんてコトを、愛する"少女"に夢見るような眼差しで言われてはたまらない。
 浩之は無言でスラックスを下ろし、カチカチに勃起した自らの分身をトランクスから取り出し、剥き出しにした。
 「あぁ……お兄ちゃんのオチンチンだぁ」
 「ああ、ユリのせいでこんなに勃起しちゃったよ」
 浩之はべッドに腰掛けて、由理にその次の行動を任せた。由理は、恐る恐るといった風情で浩之のペニスを触ってくる。拙い指使いだったが、最愛の"偽妹"に「して」もらえるというだけで、浩之の鼓動と興奮が加速する。
187『弟は幼な妻』3:2013/01/13(日) 19:38:37.28 ID:uaNKHjM0
 しかし、彼はさらなるステップに進むことを選んだ。
 「ユリ……手の次は、どこで何すればいいか、分かるよな?」
 無言のまま、コクンと頷くと、由理は浩之の両脚の間に脆く。
 「フッ……じゃあ、エッチなユリに、俺のチ●ポの世話をお任せしようかな」
 「はい、お兄ちゃん。ボクが責任をもって、お兄ちゃんの……ち、チンチンをお鎮めします」
 恥ずかしそうにそう言うと、由理は□を開いて舌を突き出し、浩之のペニスの先端からゆっくりと舐め始めた。根元までたどり着いたところで、思い切って口の中に含む。
 「ああ……いいぞ……ユリの口の中、熱くてヌルヌルで、すごくいい……クッ!」
 年上ぶって余裕は見せてはいるものの、浩之とてさして性経験豊富なわけでもない。たちまち射精してしまいそうな快感に襲われ、慌てていったん離れさせる。
 「ユリにばかりしてもらうのも悪いからな。恋人なら、お互いに気持よくさせないと。
 ──というわけで、ユリのおっぱい、いじっちゃうぞ!」
 「あっ! だ、ダメだよぉ……ああン!」    ゛
 ブラジャーの下から手を差し入れ、勃起している小さな突起を探し出すと、浩之はソコを中心に指を這わせる。
 「ふぁっ! お、お兄ちゃぁん……い……いいいよぉ! おっぱいぃ……気持ちいいよぉ」
 オナニーなどで自分でも弄ってはいたのだろうが、他の人間(しかも最愛の兄)にソコを刺激された由理は、いつもとは段違いの快感に悶える。

 そんな由理を見ているだけで、浩之の内に溜まった欲望も、徐々にヒートアップしていく。
 (ああ、ユリ……こんなに可愛く感じるなんて……。最後の一線は越えないつもりだったけど、もー無理! 俺は、この子を犯す! 犯して、ユリを俺の女にしてやる!)

 間もなく、ビクンと身体を強張らせ、男の徴を出すことなく軽くイッたらしい由理の頬に、浩之は優しく口づけした。
 「あぁっ、お兄ちゃん……恥ずかしい……」
 イッた所を見られて恥じらう由理の様子は、股間の突起を差し引いても、まるっきり女の子そのものだ。

 「ははっ……ユリは可愛いなぁ」
 浩之は微笑いながら、由理の胸のブラジャーを外し、思春期のホルモンバランスのせいか、ほのかに膨らみがあるように見える由理の胸を、両掌で撫でていく。
 ゆっくりと円弧を描くような手の動きが、時折乳首に触れるたび、由理は身体をブルッと震わせた。
 「おっぱいで、こんなに感じちゃうなんて……やっぱり、ユリは女の子になるほうが正解だよな」
 「やぁ……やだ、言わないで……」
 真っ赤になって顔を両手で覆って恥じらう由理。
 しかし、浩之は、「追撃」の手を休めず、次の瞬間、由理の胸に唇を当てた!
 「ひあぁぁぁッ!!」
 "偽妹"の悲鳴を聞き流して、舌で丁寧に乳首をほじりながら、吸っていく。
 「で、ユリはどうなんだ? 女の子になりたくないのか?」
 「ひぁッ……う、うんっ……は、恥ずかしいけれどぉ、ボク……わたし、女の子になりたいッ! お兄ちゃん、ユリを女の子にしてッ!」
188『弟は幼な妻』3:2013/01/13(日) 19:39:17.68 ID:uaNKHjM0
 「了承! じゃあ……ユリのバージン、もらうよ」
 浩之は由理のかわいらしいソコの先端からとめどなく溢れる液体を指先にすくいとり、白桃のようなみずみずしい尻丘の間の小さな蕾に、丁寧に塗りつけていく。
 「やぁッ……そんな……こそばゆいよぉ」
 「ちょっと我慢してくれ。キチンと準備しとかないと、痛い思いするのはユリだからな」
 「ああっ……いい、ちょっとくらい痛くても、我慢する。お兄ちゃんに早くシてほしいの」
 息も絶え絶えに懇願する由理の目をキチンと覗き込みながら、浩之は諭す。
 「俺が、大事な大事なユリに、傷つけたくないんだ。初めての時が痛いだけなんて、嫌だろう?」
 「……うん、わかった。お願いします、お兄ちゃん」
 俺に任せると決めたせいか、余分な力が抜けた由理の足を浩之は持ち上げ……由理の蕾孔の入り口に浅く指を差し込んでは、軽く抜き差しして、広げていく。
 「ユリのここ……綺麗な色してて、可愛いよ」
 2本の指も飲み込めるようになったソコ、軽く息を吹きかける。
 「ひゃっ! も、もぅ……恥ずかしいよお! お兄ちゃん、本当に、大丈夫だから、そろそろ……」
 「オッケー、じゃあ……イクぞ」
 
 浩之は由理にキスし、舌を"彼女"の舌と絡めながら、ゆっくりと己が分身を、由理の肛蕾へと侵入開始させる。
 「ああっ……お、お兄ちゃんの……お、オチンチン……入ってる……入ってきてるよぉ!」
 兄の雄の器官が、"偽妹"の秘部を、こじ開けていく。
 ひと呼吸おいたのち、浩之は由理の小さな肩に手を置き……そして腰を一気に進めた!
 小さな蕾が花びらへと開花し……ついに、浩之の分身は由理の体奥へと入っていた。
 「はっ、はっ、はっ……ゆ、ユリ……は、入ったぞ……オマエの体内(なか)に」
 「う、うん……わかるよ……お兄ちゃんが、ボクの胎内にいるのがわかる」
 痛みか、あるいは悦びか、目尻から一筋の涙をながら、由理が問う。 
 「これで、ボク、本当に女の子に……お兄ちゃんの"恋人(おんな)"になれたんだよね?」
 あまりにけなげで、かついとおしい"偽妹"の言葉に、浩之の中の愛と欲望がオーバーフローして、溢れだす。
 「ああ、ああ、そうとも! お前は……ユリは、俺の、世界で一番大切な、妹で恋人だッ!」
 「ぅあ……お、お兄ちゃんの、お、オチンチンが……ボクの中で、おっきくなってる……」
 由理の声には、苦悶と歓喜が同時に宿っていた。
 その証拠に、由理自身の股間の突起がピンと堅く立ち上がり、精一杯その存在を主張している。
 「早速感じているんだな、ユリ……いやらしい子だ」
 「ああっ、ダメ、見ないで……お兄ちゃん、ボクのソコ、見ないでぇ!」
 軽蔑されると思ったのか、わずかにパニクる由理に、しかし浩之は優しくいいきかせる。
189『弟は幼な妻』3:2013/01/13(日) 19:40:08.40 ID:uaNKHjM0
 「だいじょうぶ、大事な大事なユリを嫌いになったりしないよ。いつもの礼儀正しくて甲斐甲斐しいユリも大好きだけど……俺の腕の中では、エッチでいやらしくて、俺のチンチンが感じまくっちゃう、雌猫みたいなオンナノコでいていいんだ。
 だって、ユリは俺の恋人だろう?」
 「い、いーの? ホントにいいの? ボクいやらしいコになっちゃうけど、愛してくれる?」
 「ああ、もちろん」
 上目遣いになってすがりつく由理に微笑みかけながら……浩之はどこか怪しい目付きで言葉を続ける。
 「だから、安心して、よがりまくろうな、ユリ」

 ──ズンッ!
 「あひぃンッ!!」
 その言葉とともに、性急なテンポで体内に打ち込まれ始めた浩之のイチモツの刺激に、1オクターブ高い悲鳴をあげる由理。
 しかし、一見、乱暴に見えてもしっかり愛する恋人(ひと)の身を考えているのか、逸物の先端は絶妙なスポットを断続的に刺激し、たちまち由理の悲鳴は艶っぽい嬌声へと変わる。
 「お……お兄ちゃん……もっと……もっとシて!」
 いつしか、その声はさらなる快楽を望む懇願へと変わっていた。
 「ああ、やってやる……やってやるとも!」
 じゅぶじゅぶと湿った粘膜同士が擦れ合う音と、浩之の腰が由理の尻にブツかるパンパンと小気味よい音、そして言葉にならない由理の喘ぎが、しばしの間、部屋を満たす。
 急かされるように浩之はさらにピッチを速める。
 由理は、浩之の欲望を、その華奢な身体で必死になって受け止め、受け入れていた。
 「ユリ、苦しく……ないか?」
 「んんっ……ちょ、ちょっと……痛いけれど……お兄ちゃんと……繋がってるって……思うと……どんどん……感じてきちゃうからへーき」
 嗚呼、なんと可愛いコトを言ってくれるのか、愛しいこの子は。
 ついに限界に達した浩之は、いよいよ由理の中に出すことにした。
 「クッ………ユリぃ……ソロソロ、俺も……イッていいか? ユリの中で……イキたいんだ」
 「い、いいよぉ…………お兄ちゃん、イッて……お兄ちゃんが出したモノ、ボクが胎内でぜんぶ、うけとめてあげるから」

 愛する偽妹(おとうと)を、最愛の恋人(おんな)として、
 思いっきり抱きしめ、犯し、貪り、感じさせる悦び。
 ──ああ……それは、なんたる最高の快楽か!

 「くっ……頼む! ユリ、中に出すぞ!」

 ──どびゅッ! どぶどぶっ……びゅくっ! びゅっ! びゅっ!! びゅっ!!!

 「あっ……熱ぅい……ホントに出てる……お兄ちゃんのせーえき、出てるぅ……あぁぁぁボクぅ……ボクぅ………こんなに出されたら、に、妊娠しちゃうよぉ……あっ、あっ、あっ、ぼ、ボクもイッちゃう……イツちゃうよおおっ!!」
190『弟は幼な妻』3:2013/01/13(日) 19:40:39.67 ID:uaNKHjM0
 * * * 

 あ、いや、な、なんでもないぞ。
 「顔色が悪い」? 「どこか具合でも悪いのか」って?
 あ〜、うん、まぁ、何と言うか……未来と将来の具合が、ちょっとな。

(……やべぇ。
 道理で、あの翌日から、由理が上機嫌かつ、俺にベタベタ甘えてくるはずだ。
 いくら多少酔ってたとは言え、どーして今の今まで忘れてたんだ、俺?
 いや、酔いつぶれた挙句の夢オチという線も……)

 え? 「此処の払いはいいから、早く帰って寝ろ」?
 ──すまん、恩に着る。この埋め合わせは必ずするから!

<つづく>

#ある意味、お約束の「僕妊」フレーズとか、自分のエロ描写の才能のなさに消沈。
#次回は結びのエピローグです。
191名無しさん@ピンキー:2013/01/14(月) 00:56:50.22 ID:h3Vk8wgU
別板で女装子の多くが拘束フェチだって言う書き込みがあってきたんだが、
ここの住民的にそれって合ってると思う?
192名無しさん@ピンキー:2013/01/14(月) 00:59:45.12 ID:om5cfKfD
つC
193名無しさん@ピンキー:2013/01/14(月) 09:50:17.18 ID:+exENX+h
>>184
「初恋編」のあの子が、こんな姿を見せるなんて……と考えながら読むとより一層興奮できますね。
GJです。

>>191
なんで「あのスレ」見てるのが自分以外にもいるんだという……本当に多かったりするのか?
物理的でなく精神的な拘束という違いはあれど、>>161-167 がなんかそれっぽいな、と思いながら
“あっち”を眺めてましたが。

「菜々のWeb小説」「かもめの会の物語」とかありますし、『女装少年を拘束したい』という“需要側”は
それなりにあっても、『女装して拘束されたい』という“供給側”は少ないような印象がありましたがどう
なんでしょうね。

まあ、「女装好き・かつ・拘束好き」という人はそれなりにいるとしても、
「女装嫌い・かつ・拘束好き」「女装好き・かつ・拘束に思い入れはない/嫌い」
のほうが多分多いでしょうし、まあ互いに節度を持って楽しめれば。
194名無しさん@ピンキー:2013/01/14(月) 10:37:21.05 ID:BbVFke5v
拘束好きって、女装というよりもSM的なものに重きをおいてるから
女装好きとは別種だと思うぞ。両方ともいけるって人は一定数いると思うが

少なくとも俺は拘束とかおもらしとか出てきたら速攻読み飛ばす
195名無しさん@ピンキー:2013/01/14(月) 10:58:48.31 ID:VtJ/CDLq
女装子や女の子「を」拘束「したい」男は いますね。タブン。何人かは。さて、
女の子や女装子「が」拘束「されたい」と思うかどうか?

>>184
お兄ちゃん、欲望深っ。現在の日本では同性結婚はできませんよ!
なかよく、お幸せに(ふりがなは、クタバッチマエ。)


あなたの場合、一回、下書きで良いから、よしのりくん、ゆりちゃん、側から描いて書いてみてください。
そうしたら
『おにいちゃんボクにんしんかシチャウ』
ではない、言葉が出てくると思いますが?
なぜなら、絶対に成れない、「実のお兄ちゃんの、性欲処理の独占、愛人、恋人、お嫁さん」を一晩で約束された。
実際にはお兄ちゃんが女の子と添い遂げるかもですが、
少なくとも、現時点では、独占できる立場にいるのですからね。
196名無しさん@ピンキー:2013/01/15(火) 00:50:59.57 ID:0Wc1c5vv
>>193
回答ありがとうございます。
自分、あそこでしょっちゅう騒いでるからもしかしてピンときたりして?
やっべいいサイト聞いたいますぐ巡礼だ

>>194
雑食でサーセンw
でも拘束好きの中にはSM好きという範疇からズレてるからこそのニーズもあるんですよ

>>195
したい、されたい、を両立させるきっかけは結構転がってるものです。
197名無しさん@ピンキー:2013/01/15(火) 07:11:55.91 ID:/erTj7Gh
全レスキモ
そういうのは自分のブログでやれ
198名無しさん@ピンキー:2013/01/15(火) 07:25:33.20 ID:VRBR78cA
弟さんにとっては、薔薇色の将来。
お兄ちゃんには、ばらの未来?酔った勢いでも責任は取りましょう。

家族でサッカーの対戦出来るだけの子どもたちが欲しい。
とか言わないかな?ユミさん
199名無しさん@ピンキー:2013/01/15(火) 07:40:16.52 ID:Nd/BcwVt
>>197
あんたなんでここ見てるん?
200名無しさん@ピンキー:2013/01/15(火) 07:48:55.59 ID:/erTj7Gh
少なくとも痛々しい全レス返信を見るためではないな
201名無しさん@ピンキー:2013/01/15(火) 10:35:05.12 ID:3xaCqGIS
どこのvipだよ
202 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/15(火) 21:35:06.97 ID:RankOwG1
なんだかハードル上がってるような気もしますが、考えない方向で。

 『今日からお姉ちゃん』が個人的聖典の一つで、「一人称の視点回し」もそれが由来(の一つ)
だったりするのですが……
 まだまだ適わないよなあ、と言いつつ続きの投下です。


ちなみに作品タイトル『Symbolon』は、割符を意味するギリシア語で、
「絵や文字を書いた1枚の板等を二つに割ったもの。別々の人間が片方ずつを所持し、それぞれの
所有者がそれをつきあわせ、相互に身元を確認しあうのに用いる」
という意味です。
今回投下分で、その意図するところがわかっていただけるかどうか。


変に格好つけたタイトルつけて恥ずかしいような。
最初のタイトル案、『リア充爆発しろ』のほうが良かったかな・・・
203 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/15(火) 21:36:03.46 ID:RankOwG1
『Symbolon』 §8・相川玲央 1/5 2004/5/16(日)

「どう? 落ち着いた? 玲央ちゃん……って、名前は“玲央”でいいのかな?」
 洗面所で涙と化粧を洗い落として部屋に戻った私に、優しく篠原さんが声をかけてくれる。
「色々すいません……あ、名前はレオでいいです。漢字はちょっと違いますけど」
「良かった。『本名は雄太郎です』とか言われたらどうしようかと思った。そじゃあ、今ま
でどおり『玲央ちゃん』って呼ぶね」
「あ……はい」

「どこから話すかな。……さっきも言ったけど、僕は玲央ちゃんのことを女の子だと思って
る。でも、僕の思いを押し付けることはしたくない。本当のことを教えて欲しいんだ」
 本当のこと……私は悩んだあと、意を決してエクステを頭から外した。
「“ボク”のこと、覚えてますよね?」

「えっと……?」
「女の子の姿で、とし──篠原さんに会う前の日、告白した男の子、それが“ボク”です」
「えっ、あ……思い出した」
「『僕は女の子が好きだから、男の君とは付き合えない』……それなら“ボク”が女の子に
なれば付き合えるのかなって、女の格好させてもらって」
 エクステを頭に戻す。『相川玲央』に戻れた気がして、少しだけ心が軽くなる。

「じゃあ、僕に付き合うために、女装して女の子のふりをして……?」
「それは違います。“私”にとって、この格好は『女装』じゃなくて『自分の本当の姿』で、
男の服を着てるときのほうが『無理やり男装させられてる』状態なんです。
 声だってそう。今の声が地声で、いつもは無理に低い声を作って」

「……」
「でも、そうですよね。どんなに嫌でも私の体が男という事実は変えられなくて、『嘘つい
て騙した女装男』って事実も変えられない。篠原さんと付き合う資格なんてないんです」
「ちょっと待って、ちょっと待って」

 篠原さんが私の肩を掴んで、真剣な目で私のほうを見てる。
 だのに、私はそれから目をそらすことしかできない。
「どう言えば分かってもらえるのかな……言葉じゃ無理か。嫌だったら振りほどいてね」
 私の顎を軽く指で触れ、上を向かせる。力を入れれば抵抗できるのに、なされるがままに。
 篠原さんの唇が、私の唇に重なる。

 駄目だ。駄目だ。私は嘘つきだ。
 男であることを隠して、騙して。篠原さんには到底釣りあわない人間なんだ。
 頭を埋め尽くす思考に従い、彼の体を振りほどこうと腕を伸ばす。

 でも。自分の思考とは逆に、私の腕はしっかりと篠原さんの逞しい身体を抱きしめていた。
 首を動かして逃れようとする。
 なのに。頭で下した命令と逆に、私の唇は彼の唇にしっかりと吸い付いていく。

 ──そうだ。私は、こんなにも大嘘つきなのだ。
 本当はこんなにも、“俊彰さん”に恋焦がれているのに。俊彰さんを愛しているのに。
 自分の心に嘘をついて。目を背けようとして。
 私が、自分自身についていたその『嘘』に気付いた瞬間。世界が、ぐるりと変わった。
204 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/15(火) 21:37:40.04 ID:RankOwG1
 §8・相川玲央 2/5 2004/5/16(日)

「……玲央ちゃん、いいんだよね?」
「はい」
 もう、迷うことない。私は私の心の命じるまま、俊彰さんの目を見つめて、そして頷いた。

 スカートを脱ぎ、かすかに震える手でブラウスの左前のボタンを少し苦労しつつ外す。
 さっき逃げるために走ったからだろうか。自分の体臭が漂ってきて少し戸惑う。
「シャワー浴びたほうがいいかな?」
「ん……玲央ちゃんの匂い、いい匂い。もっと嗅がせて」

 上半身裸になった俊彰さんが、ボタンだけあけたブラウスの間に頭を入れて鼻を鳴らす。
 なんだか凄いフェチ臭い……と思う私も、立ち上る俊彰さんの匂いに興奮してる。
 私も頭を下げ、首筋の匂いを嗅ぐ。なんだか下腹部のあたりが熱くなってくる気がした。

 そっと彼の背中に手を回し、背筋にそって指を沿わせる。
 運動部で相当鍛えたのだろう。逞しい、筋肉の弾力に胸がドキドキとしてくる。
 このままずっと、こうしていたい気持ちもどこかにあったけれども、身体を離し、意を決
してブラウスとスリップ──そして悩んでショーツを床に落とす。

 彼は全裸で、私はブラジャーだけの姿で向かい合う。股間のものは手で隠して。
 服の上からだと細身に見えるのに、肩幅は広く、胸は厚い、引き締まった筋肉質の体つき。
 私とはあまりに違う、彼の身体。息することも忘れて、私は見惚れる。

「……なんて綺麗なんだろう。本当に、本当に、玲央ちゃんは世界で最高の女の子だよ」
 そう呟いて、俊彰さんが私の身体を『お姫様抱っこ』の体勢で軽く抱き上げる。
 陶酔感が全身を包んだ瞬間のあと、私はベッドに横向きに下ろされた。
 そして、再度のキスを。溺れるように深く、強い口付けを。

 私の身体の中に、彼の力強い分身が入ってくる。
 粘膜同士を重ね合わせ、互いの体液を交換し合う。
 それはもう、キスではなく、もはや一つの性行為と言うべき行い。
 唇をくぐり、私の口腔に入り込んできた彼の舌が、切ないほどに私を求めてくる。
 彼の舌が口腔に優しく触れるたび、唾液の滴りを受け止めるたび、私の全身が蕩けていく。

「はむっ……んっ……ぬちゅ……ちゅぴ……んん……くちゅ……ちゅぴ……」
 静かな部屋を、2人の奏でるキスの音が満たしていく。
 私を安心させるように、彼の大きな暖かい左手がゆっくりと私の背中を撫でている。
 そして右手が、ゆっくりと、かすかに、何度も私の内股を優しく下になぞっていく。

 気遣っているのか、怖れているのか、それともそういうテクニックなのか。
 決して一線を越えてこないその手に指を添え、私の秘孔に彼の指をいざなう。
 少し戸惑ったようだったけれども、優しくその場所を解きほぐすようにタッチしてくる。
 彼の指が触れた場所から、じん、と快感の波が全身を駆け抜ける。

 唇を離して長い長いキスを終え、俊彰さんが私の瞳を覗き込みながら囁きかける。
「玲央ちゃん、いいかな」
「お願い、俊彰さん。私の……玲央の初めてをもらってください」
 耳の奥で、バクバクバクバクと、心臓の音がうるさいほどに鳴り響いているのを感じた。
205 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/15(火) 21:39:03.81 ID:RankOwG1
 §8・相川玲央 3/5 2004/5/16(日)

 俊彰さんがベッドの上に膝をつき、脚を曲げて上がり込み、私の両脚を持ち上げる。
 これは正常位って言うんだったっけ? 乏しい性知識を動員して思い出す。
「玲央ちゃん、とっても綺麗だよ」

 見上げると、私を力付けるように優しく微笑む俊彰さんの顔が見える。
 そのまま、彼のあそこの先端が、私のお尻に当たる。
 ただただ、快感と喜びだけが私の全身を満たしてくる。

 彼がゆっくりとその分身を突き入れてくる。
 おかしなくらいにそれは、何の抵抗もなく、するぅりと、最後まで私の体の中に納まった。
「あっ、あぁあっ、あっ、ぁぁぁあっ……」
 止めようと思っても止まらない。私の唇から喜びの声が溢れ出る。

 私の腸の中の肉が、襞の一枚一枚が、愛しい彼の存在を感じるために殺到するのを覚える。
 彼の形がはっきり分かるくらいに、一部の隙もなく彼の分身を優しく、強く抱きしめる。
 “異物が入ってくる”という感覚は微塵もない。あるのはむしろ、彼のものが私の身体に
“戻ってくる”という、不可思議な実感。

 ──昔人間は両性具有の存在で、神の怒りを買い2つに分けられた。男女が惹かれあうの
は、元々一つだった自分の半身を求めるからである──もうまともに考えることもできない
ほど乱れた脳裏に、そんな言葉が過ぎる。
 私と俊彰さんは、もともと一つの存在で、たまたま分かれていたものが、今、ようやく心
も体も、もとの“一”に戻ることができたのか。そんな理解、もしくは錯覚。

「玲央ちゃん、すごいよ、すごく気持ちいいっ」
 挿入しただけで、まだ互いの身体を動かしてもいないのに、俊彰さんがそう叫び声をあげ
て──そして熱いほとばしりが私のお腹の奥に叩きつけられる。

「あっ、あっっ! あぁぁん!」
 その液体に触れた箇所から発した、灼熱のような波動が全身の細胞一つ一つに行き渡る。
 息が止まる。汗が止まらない。全身が一瞬棒のように硬くなり、そして力が抜ける。

 世界のすべてが静止したように感じたその一瞬のあと、俊彰さんが大きく呼吸をして、そ
のまま腰を振りだした。
 私のお腹で感じる俊彰さんの分身は、発射前から少しも小さくなっていない。いやむしろ
より太さと硬さを増したようにすら感じる。
 たった今出た精液も潤滑油にして、俊彰さんのモノが私の穴を滑りだす。

「俊彰さん! 俊彰さん! 俊彰さん!!」
 私の体の奥深くまで彼の分身が打ちつけられるたび、抜ける寸前まで滑るたび、自分の存
在そのものがバラバラになってしまいそうなほどの快感が全身を貫く。
「玲央ちゃんっ! 玲央ちゃんっ! 玲央ちゃんっっ!!」

 穴だけではない。
 俊彰さんが触れる場所、俊彰さんの熱い吐息がかかる場所すべてから、燃え上がるような
快楽が伝わっていく。
 彼の分身の脈動を、全身で感じる。私の鼓動がぴたりと合わさる。
206 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/15(火) 21:41:02.03 ID:RankOwG1
 §8・相川玲央 4/5 2004/5/16(日)

 嬉しい!! 嬉しい!! 嬉しい!!
 手足のつま先や髪の1本1本に至るまで、全身の細胞という細胞が歓喜の歌声を上げる。
 二人の心音をリズムにして、ふたりで奏でる、最高のラヴソング。

 私が歌を歌う時に感じる翼が、今力強く羽ばたくのを覚える。
 俊彰さんも同じように翼をはためかせ、2人天高く飛翔する。そんな高揚感が全身を包む。

「ああっっ! 気持ちいいぃ! もっと! もっと!」
 何度も何度も駆け抜ける、快感の波動。
 あまりの気持ちの良さに、どうにかなってしまいそうだ。いや、とっくにどうにかなって
るに違いない。むしろ、どうにかなってしまってもいい。
 この最高のひと時のためなら、もう何を捨て去っても構わない。

 もう何度、彼の精液を身体に受け止めたのだろう。
 それでも一瞬も休むことなく、互いの身体で愛と歓喜の歌を奏であう。
 自分の背中の翼が大空を駆け抜け、ついには太陽にまで到達したような錯覚のあと、快楽
に飲まれる形で、──絶叫とともに、私の意識が途切れた。


「玲央ちゃん、起きた?」
 微かな倦怠感に包まれながら、私は意識を取り戻す。
 感じる俊彰さんの声、俊彰さんのぬくもり、俊彰さんの匂い、私と違う、異性の身体。
 ああ、私は“女”になったんだ。──理屈でなく、理性でなく、全身でそう思う。

「ん。ありがとう、俊彰さん」
 再び重ねる二人の唇。温かい感触。満たされる思い。
「……ごめんね。なんだか途中から夢中になって、僕ばっかり気持ちよくなることだけ考え
てた。初めてなのに全然気遣ってやれなくて」

「ふぇ?」
 突然の謝罪に、本気できょとんとしてしまう。
「そうなんですか? 私すっっっっっごく気持ちよかったですよ? こんなに気持ちよくて
いいのか、不安になってしまうくらい」

「よっぽど身体の相性が良かったのかな。そんなこともあり得るのか。
 なんか僕も、とても不思議な感じだった。どう言えば伝わるのかな……なんだか、2つに
割られた、元々1つだった絵が、ぴったりと元通りくっついたような感じで」
「ああ、それ俊彰さんも感じてたんですか」

 エッチの最中に思い出した、両性具有の逸話を口にする。
 笑われるかも、と思ったのに、俊彰さんは優しい笑顔で頷いて、
「うん、きっとそうだ。僕らはもともと一つの存在で、今ようやく『元に戻れた』んだと思
うよ。ただ、2つに分けられるとき僕が不甲斐ないせいで、僕のものが玲央ちゃんのほうに
残ってしまったのかな。そう考えると、僕のせいで苦しい思いさせたのかな……ごめんね」

「いや、そこで謝られましても」
 2人して笑いあう。この空気のなんて気持ちよいものか。
207 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/15(火) 21:43:06.70 ID:RankOwG1
 §8・相川玲央 5/5 2004/5/16(日)

「そう言えばユイナって、なんで玲央ちゃんのことを男だなんて言い出したんだろ。
 玲央ちゃん、実はあいつと知り合いだったりする?」
 俊彰さんに腕枕してもらって、ベッドに二人寝そべって。
 2人で他愛ない会話をしている最中、ふと俊彰さんがそんなことを呟く。

「ユイナ?」
「城戸ユイナ。さっき玄関のとこで玲央ちゃんを男だって言った子」
「ん……初めて見る顔、だと思います」
 ああ、あの人か。ちらっとしか見れなかったけど、不思議な人だった。
 普通にしてれば可愛いはずなのに、変にメイクして。

 妙にキャラクターを作った印象が、私が『男を演じている』ときの感覚とだぶって見えて、
思い出すとなんだか胸がモヤモヤしてくる。
 女として俊彰さんと一緒にいるときの『自然な自分』ではなく、自分が演技していること
すら気付けずに、『不自然な自分』にもがいている姿を鏡で見せられたようで落ち着かない。

「その、ユイナさんってどんな人なんですか?」
「うーん、正直に全部言っておいたほうがいいか。
 あの子が失恋して泣いてたのを慰めた縁から付き合うことになって、昔、半年くらい恋人
やってた子。うちに連れてきたときに兄貴に出会って、兄貴のほうが良いって言い出して、
僕が振られた形になってお終いだった。
 でもその後すぐに兄貴とも別れて、完全に縁が切れたと思ってたのになんで今更、って」

 昨日輝彰さんと会ったとき、俊彰さんが何か警戒してたのはそんな理由なのか。
「でも……あれ? 変じゃないですか? 俊彰さんが良いからって輝彰さんから乗り換える
ならまだ分かるけど、その逆って想像もできないです」

 私は真剣に言ったのに、俊彰さんに吹き出されてしまった。
「……ありがと」
 そう言って私の体を引き寄せ、額に軽くキスを。ふと気づくと俊彰さんの股間のものがい
つの間にかまた硬くなっていた。指先でそっと、そのラインをなぞる。

「俊彰さん、もう一度したいんですか?」
「今日は中間試験の勉強しにきたんだから、それやろう。続きは良い点が取れたらご褒美で」
 正直びっくり、というかがっくりしたのは否めない。
 だけど同時に、こうも頼りない自分と違い、しっかりした人なんだと感動すら覚える。

「……うん。それじゃあ私、頑張るね」
「ということは、玲央ちゃんが悪い点取ったらお預けか。……僕も気合入れて教えないと」
「もう。誰の『ご褒美』なんだか」
 俊彰さん。拗ねたように返事してしまったけど、その言葉は恥ずかしくて、嬉しいです。

 今まで自分になかった、新しいエネルギーを感じつつ身を起こす。
 それは多分、俊彰さんから分けてもらった、『何かを手に入れるために努力する』思い。
 何事も諦めがちだった、男の自分にはなかった気分。

 ……私は一体、いつか、この人に見合うだけの価値ある人間になれるのでしょうか?
208 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/15(火) 21:44:59.33 ID:RankOwG1
『Symbolon』 §9・篠原信彰 1/2 2004/7/22(木)

「ただいま」
 最近では珍しく7時前に帰宅すると、玄関には女物の小さな靴が置かれていた。
「おじさま、おかえりなさい」
「おかえり、親父早かったね?」
 台所から明るい俊彰と相川さんの声が返ってくる。そうか。高校生は夏休みになったのか。

「相川さんいらっしゃい。……今日で仕事が一段落したからね。来週また忙しくなるけど、
今日は皆にも早く帰らせた」
「へえ。おつかれさん。丁度良かった。玲央ちゃんと料理の勉強してたから、量が出来てて」
 外で食べてくる日が続いていて、連絡も入れずに早く帰宅。正直出前を取るつもりだった
だけに嬉しい話だ。

「輝彰は?」
「教授の部屋を覗きに行ってたら、いつの間にか月末の学会の事務取り仕切るような状態に
なってて多分今週は帰れないって。兄貴には珍しくぼやいてた」
「まだ3回生なのに、頼りにされてていいな。何事も勉強だ」
「うん、兄貴もそう言ってたよ」

 荷物を置いて、部屋着に着替え、3人で食卓につく。
 妻の形見のピンクのエプロンをつけた相川さんが、俊彰と並んで座る。なんだか初々しい
新婚カップルのように見えて少し眩しい。
 “あの話”については俊彰から聞いているが、こうして見るととても信じられない。
 会社の立地上、芸能人とすれ違うことは多いが、彼女達と比べても遜色ない美少女ぶりだ。

 晩飯は肉じゃが、野菜炒め、スープにチキンエッグサラダと、豪華なメニューだった。
 俊彰のものと比べて、ジャガイモの切り方が変で味付けが濃い目、ゆで卵が茹で過ぎとか
あるものの、概ねまずまずの出来。

「お味、いかがでしょうか?」
 女の子としても可憐な細い指に絆創膏を巻いた相川さんが、不安げに質問してくる。
「うん、悪くないよ。肉じゃがは味が正直濃いけど、汗かいたからこれくらいが嬉しいな」
「僕の料理食べたときも、これくらい反応あればいいのにな。いっつも感想ないし」

「そういえば夏休みだし、2人で海とか山とかに行ったりしないのか?」
「海は無理ですね。私、日に弱いので。それに私、水着になれないですし……」
「ああ、そうか。すまない。じゃあ行くとしたら山かな? 県外になるが」
「資金的にも厳しいし、近場でも悪くないし……今度、自然公園とか行ってみよっか?」

「資金なら出すよ。若いころの思い出は、何よりも尊いもんだ。作れるうちに作っておいた
ほうがいい」
「そんな、悪いですよ」
「……うん、分かった親父ありがとう。玲央ちゃん、やっぱり遠くに行ってみよう。出来る
限り低予算で、手持ちの資金だけでいけるよう頑張ってさ」

 わたしの言いたいことを汲み取ってくれたのか、遠慮する相川さんを遮って俊彰が頷く。
 移動は18切符で、とか、キャンプ場とかどうかな、とか、楽しそうに話しているのを見て、
わたしもこの話題を振った甲斐があったなと思う。
209 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/15(火) 21:46:33.70 ID:RankOwG1
『Symbolon』 §9・篠原信彰 2/2 2004/7/22(木)

 食事も終わり、後片付けまで終えた俊彰たちが2階に戻るろうとするのを呼び止める。
 前々から話したかったことを持ち出すのに、今日が一番良さそうだ。

「相川さん、君のことについては、俊彰から大体説明を受けてる。
 誤解されるかもしれないから先に言っておくよ。君達2人の交際にわたしは反対しないし、
むしろ心から祝福している。気が早いかもしれんが、うちの“娘”になって欲しいとも思う」
「本当にすいません。ありがとうございます」

「それで話というのは、君のことをなるだけ正確に知っておきたいということなんだ。まず
最初に、これまで君の身体について、お医者さんにきちんと診てもらったことはあるかな」
「いいえ、ありません」
「やっぱりそうか。まあ色々不安な気持ちも分かるが、是非医者には診てもらって確認する
ことをお奨めしておきたい。なんなら、輝彰がお世話になった医者を紹介するよ」

「輝彰さん……俊彰さんのお兄さんですよね。何かあったんですか」
「輝彰はクラインフェルター症候群でね。幸い早く気づいて、本人の希望を基に適切な処置
をしてもらえたから、今は普通に……というか普通上に男性しているが」
「そうだったんですか……って、え? 嘘? おじさま、本当にそれでいいんですか?」

「玲央ちゃん、どうしたの?」
「……クラインフェルターの人って、遺伝子がXXYで、普通、子どもが作れないんです」
「よく調べてるね。人工授精で作れる例もあるそうだが、輝彰の場合はそれも無理だった」
 多分自分が“それ”に該当するのではないかと考えて、調べたことがあるのだと思うが、
それが意味することにすぐに思い当たるとは聡い子だ、と内心舌を巻く。

「じゃあ、私と俊彰さんが一緒になったら、お孫さんが出来ないじゃないですか」
「うん、そうなるね」
 わたしの言葉は、あっさりと言ったように聞こえてくれただろうか。

「正直言えば、わたしも孫の顔を見たいさ。それでも、それ以上に、君たち二人が離れ離れ
になって、不幸になる様子を見たくないんだ。君達には幸せになって欲しい。
 もう一度言うよ。相川さん、いや玲央さん。うちの娘になって欲しい……いや、是非娘に
なってください。君は、わたしの会った中で、世界で二番目に素晴らしい女の子だ」

「親父、世界で一番目の女の子って?」
「決まってる。お前の母親だよ」
「なんだ。再婚とかそういう話が進んでるのかと思って、一瞬あせった」
 俊彰の言葉にそれまで涙ぐんでいた玲央さんも笑い、重くなりかけた空気が和む。


「お邪魔しました」
「じゃ、親父、玲央ちゃんをバス停まで送っていくから」
 礼儀正しく頭を下げて家を出る玲央さんと、俊彰を玄関で見送りながら誓う。

 今日色々と話をして、改めて確認できた事実。
 外見だけでなく、心も完全な少女である彼女が、性別だけは男であるという神様の悪戯。
 これから大変なことも多いだろうが、せめてわたし達だけでも常に味方であらねば、と。
210名無しさん@ピンキー:2013/01/16(水) 00:10:47.02 ID:1bjZtTXZ
つC

>>197・200
嗜好に合わないスレは見ないようにすることをオススメします
211名無しさん@ピンキー:2013/01/16(水) 00:24:24.59 ID:Wi8caxWF
全レスがここの趣旨っと
212名無しさん@ピンキー:2013/01/16(水) 00:33:57.76 ID:E/bOuFoV
書き手が全レスするぐらい別にいいじゃん
213名無しさん@ピンキー:2013/01/16(水) 02:32:37.33 ID:dmx18kr5
>>209
GJ
胸の温まる恋人たちのお話ですね。親父さんの出来た人具合に納得。
214名無しさん@ピンキー:2013/01/16(水) 04:06:19.27 ID:UmqpOTwb
GJ! ここから、最初の姉視点の話につながるわけですね。
幸せへと続く話はやっぱりいいなぁ。

>今日からお姉ちゃん
かなり以前に、こちらに投下した拙作のことでしたら、非才の身で欲望に任せて
半ば暴走気味に書き上げたアレを気に入っていただけてるとは、光栄の極み。

──ハッ! よく考えると、今書いてる「弟幼妻」も、アレと同じく、兄×妹になった弟物だ。
……人間の嗜好ってそんなに変わらないモノなんですね。
215名無しさん@ピンキー:2013/01/16(水) 07:00:17.83 ID:ZL2q+7VI
何か約一名勘違いしてる方がいらっしゃるようだが
ここで言ってる全レスって自分宛のレス全てに返信することだからな?
全てのレスって意味じゃないぞ?

まあわざわざ話を蒸し返してくれてる人がいるから書くけど
反対意見を聞く気がないのに質問して、
ネットを覚えた中学生顔負けのテンションで全レスする>>196を読んだ時は
流石に苦笑いしか出なかったw
216 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/16(水) 08:35:16.66 ID:2gzkwJn5
>>214
ただ次と、その次の投下分までが「天国から地獄へ」編なんで、書いていてつらいものがあります。

瀬野3姉弟と違ってこちらのカップル変に真面目だから、すぐシリアス展開に入りこもうとするのがきついところ。
彼らに望んでいるのは尻Ass展開なんですが。

ちなみに「今日から〜」はそれです。

>>215
すでに過ぎ去った話題をスルーせずに蒸し返す荒らし行為は正直止めて欲しいです……
こういうシチュエーションはどうだとか、こういうプレイが見てみたいとか新しい話題振りはありませんか?
217名無しさん@ピンキー:2013/01/17(木) 08:52:52.30 ID:YSEdTIrQ
全然別のスレ巡回してて、ふと思いついたんだが、
 「外見はロリ、年齢はBBA、しかして実際は男」
という、ロリババァならぬ"ロリジジィ"というジャンルはアリなのか。
パッと見はどう見ても美少女なショタっ子に不老不死属性を付加すれば、
いいはずだけど……業が深いなぁ。
218名無しさん@ピンキー:2013/01/17(木) 20:12:34.30 ID:6/zJZK3K
見た目や行動などは、女子小学生か女子中学生で、実は60歳以上のお爺さん?


方向性の一つ、
孫(男)の学校に潜入、孫を積極的に振り回す。

もう一つ、
女子校の初等に潜入、生徒を手込めにする。

他に、
孫娘と祖父が見分けつかないほどそっくりとか?
孫娘パパさんつまり息子が似てるのと孫娘ママさんつまり娘が似てるのとどっちが良いだろ?


いっそのこと
祖父、父、本人、共々、背丈120位の女装男とか?
219名無しさん@ピンキー:2013/01/17(木) 20:46:46.14 ID:eJcIHln9
そういえば、なんか設定だけ作って放置していたのがあったな……

華道や茶道と同じように「美少女道」がある世界。
もちろん、学校の部活でも「美少女道」があり、甲子園のような全国大会も存在する。
その道の達人は(男でも・何歳まででも)美少女そのままの容姿でいられるという。


・姫野麗華(本名 山本麗華)
主人公。14歳の少年。艶やかな黒髪を腰まで伸ばした白皙痩身の一分の隙もない完璧な美少女。学校には
セーラー服で通わされる毎日。
「美少女道」の家元の跡継ぎとして、心身ともに立派な美少女になるよう厳しく育てられている。
とはいえ心は普通に男性で、女のふりをすることに嫌悪感を募らせつつある。

・姫野薫子(本名 山本徹)
主人公の弟。9歳の少年。
もともと跡継ぎでないこともあり普通に少年として育てられてきたが、小学校入学あたりから「美少女道」に
興味を持ち、今では立派な美少女に。
ただ最近は「古臭い美少女」を演じることに疑問を持ち始めている様子。

・姫野麗子(本名 山本辰蔵)
「美少女道」の達人として人間国宝となった先々代姫野流家元。主人公の曽祖父。
92歳になった今熟練の技は磨かれ、どこからどうみても絶世の美少女にしか見えない。
日ごろから常に美少女として過ごし、セーラー服を着て女子中学生たちに混じれば、あまりの可憐な美しさに
逆に浮いてしまう。
220名無しさん@ピンキー:2013/01/19(土) 12:07:01.26 ID:r/29SwcF
『朝凪のアクアノーツ』ってエロゲの主人公の姉が近所でも評判な美少女で、
主人公が女装すると彼女と見分けがつかないくらいそっくりになれて(作品中何度か実行。CGもあり)、
その主人公が不老不死になるルートで、「さてどうやって稼ごうか」という話があったけど、

そこで「女装して水商売する」って手段が出てこないのが残念だった。
『老化しないのがばれにくい』って意味では悪くないと思うんだけどなあ。
221名無しさん@ピンキー:2013/01/20(日) 11:17:30.48 ID:nrdfcajP
300番台までおちたのでage
222名無しさん@ピンキー:2013/01/20(日) 18:20:59.57 ID:BXYzB5fa
漠科!
愚か者
非常識

最下層まで下げるのが常識、礼儀!
SS作者以外で上げるのは、嫌がらせ、荒らし、嫌われたい、だよ。
223名無しさん@ピンキー:2013/01/20(日) 19:50:23.13 ID:h3gyxCc4
>>218
> いっそのこと
> 祖父、父、本人、共々、背丈120位の女装男とか?

吾妻ひでおが大昔に描いてたな。
224名無しさん@ピンキー:2013/01/20(日) 19:56:08.11 ID:nrdfcajP
『ふたりと5人』は姉本人、父、母、弟、祖母だったっけか。
225名無しさん@ピンキー:2013/01/20(日) 20:05:59.58 ID:3jk9qM7i
ふたりと5人は彼女本人、父、母、弟までは覚えてるけど、
入れ歯キャラは爺さんだったか婆さんだったか
226 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/23(水) 19:22:22.45 ID:OwuPzWFj
「天国から地獄へ」編、投下です。

『Symbolon』 §10・篠原俊彰 1/5 2004/08/25(水)

「あ、俊彰さん起きたんですね」
「ああ、僕、寝ちゃってたのか。ごめんね。今、何時くらい?」
「2時半かな。……俊彰さんの寝顔が堪能できて嬉しかったですよ。いつも私ばかり寝顔見
られてたから、なんだか新鮮ですごい役得」
 幸福そうに笑って、細い指先で僕の髪を優しく撫でてくれる。

 後頭部に感じる柔らかい感触。膝枕してもらってたのか、と今更気づく。
「まだ寝ててもいいですよ?」
「いや、大丈夫。ありがとう」
 そう言って、今まで寝ていた古い東屋のベンチから起き上がって軽く柔軟する。
「玲央ちゃんは大丈夫? 眠かったりしない?」
「いえ、昨日ぐっすり寝ましたから」

 昨日キャンプ場に到着してから、子ども達と一緒に遊んだり、ご年配の方と話したり、カ
レーを他の泊り客と一緒に作ったりと八面六臂の活躍を続けていた玲央ちゃん。
 テントに入って横になった瞬間眠りについて、狭いテント内密着する彼女の、心地よい体
臭や柔らかさが気になって、結局僕のほうはそんなにきちんと寝れなかった。
 まあ、玲央ちゃんの膝枕での午睡とか、僕のほうも十分『役得』だけれども。

 そのまま2人で獣道のような道を下り、川原に到着。いい按配に他に人もいない。
「玲央ちゃんもおいでよ。気持ちいいよ」
 穿いていたジーパンとシャツを脱いで、Tシャツとトランクスだけの状態で川に入る。
 膝丈くらいまでの浅い流れだけど、水が冷たくて心地いい。

 それまで迷っていたようだった玲央ちゃんも、僕の言葉に頷いてレディスジーンズとシャ
ツを脱ぎ、キャミソールとブラジャー、ショーツだけの姿で川に入る。
「きゃっ、冷たい」と言ってる彼女に、手ですくった水をかける。
「もう、俊彰さん酷い」と言いながら、逆襲する玲央ちゃん。
 ふたりで笑いながら、服が完全にびしょびしょになるまで童心に戻って戯れるひと時。

 白いキャミソールが体に張り付き、薄いピンクのブラジャーとショーツが透けて見える。
 剥き出しになった、長くてすんなりとした白い腕と脚。
 お尻は小ぶりでも、高い位置できゅっと括れたウェストとの対比は扇情的ですらあった。

 微かに柔らかく膨らむ胸は、パッドを着用しているせいだろう。
 (なぜかいつの間にか兄貴の彼女に復縁していた)ユイナから、玲央ちゃんを男だと疑っ
た理由の一つが胸の無さだったと聞いて、僕が通販で購入して渡した薄めのパッド。
 透けた衣装は裸以上に何かHで──意識した瞬間に足を滑らせて、川の中で尻餅をつく。

 これだけ笑ったのは何年ぶりだろう。
 腹の底から湧き出て止まらない笑いの衝動に身を任せて、そのままの姿で2人で大笑い。
 笑い疲れて、笑いの衝動も収まって、さて立ち上った瞬間……僕の股間が思いっきり膨ら
んでいるのに気付く

 玲央ちゃんも気付いたらしく、顔を赤らめてそこを見ていたけれども、
「いいですよ……俊彰さん」
 と、僕に囁きかけた。
227 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/23(水) 19:23:43.83 ID:OwuPzWFj
 §10・篠原俊彰 2/5 2004/08/25(水)

 着ていた下着類が乾くように並べて、お互い生まれたままの姿で木陰に入る。
 卵型に近い小さな頭と、長く細い頸。狭く薄い肩。
 あばらがかすかに見えるくらいに痩せた、でも女らしいなだらかな曲線を描く身体。
 木漏れ日を浴びて光り輝く、透明感あふれる純白の無垢な肌。

「綺麗だよ……凄く綺麗だ。玲央ちゃん」
 心に湧き上がった賞賛の言葉が、思わず口からこぼれてしまう。
 恥ずかしがる彼女の身体を抱き寄せて、閉じられた瞼に舌を這わせる。
「ん……む……うふ……」
 恥ずかしそうな、満足そうな、優しい声が耳に届く。

「人が来るといけないから、声は抑え目にしないとね」
「ん……がんばる……」
 長く濃いまつげを震わせながら、そう応える。

 とてもとても柔らかくて滑らかな頬の感触を舌で楽んだあと、耳たぶの下を丁寧になぞる。
 夏休みの間、宿題やレポートの合間をぬって探求しまくったお互いの身体。
 セックスの最中、僕の触れるところ全部が性感帯になってしまうような彼女の身体の中で
も、ここが一番の弱点ポイントだった。

「ぁ……ぁ……ぁぁん……俊彰さん……俊彰さぁん……ぁふ……」
 これでも精一杯抑えたのだろう。こぼれた甘い嬌声が蝉時雨に溶け合う。
 お尻を右手で揉みながら、お尻の穴を指で柔らかくほぐしながら、首の付け根から耳まで
のラインを何度も何度も舌で確認する。

 彼女の使っている柑橘系の匂いの制汗剤に少し似た、でもそれよりももっとずっと甘い、
玲央ちゃんの体臭が僕の鼻腔を擽る。
 『僕はホモが大嫌い』──その言葉は今でも少しも変わってないし、嘘じゃない。
 それでも、これまでに付き合ってきた何人もの彼女とは比べてすら、いや比較にならない
くらいに女らしい、“彼女”の声、匂い、肌の手触りにすっかり僕は魅了されていた。

 彼女の柔らかく温かい分身が、僕の脚の付け根あたりに当たる。
 “その部分”は確かに、“彼女”の身体が男であるという唯一の証。
 でもピンクの薔薇の蕾のような器官は、自分にあるものものと同一とは到底思えないくら
い可憐で美しい。

 その可愛らしい“クリトリス”を弄びたい気持ちになるけれど、触れると彼女が本気で嫌
がるので、目を覚ましている間にはいじれないのが少し残念。
 ──彼女以外のものなら見たくもないけど、玲央ちゃんのものなら何でも触れたくなる、
そんな自分が不思議でしょうがなかった。

 お尻を触っていた右手の指に、ねばねばした液体が絡み付いてくるのを感じる。
 それが何なのか、どうして出てくるのか良く分からないけど、最初に玲央ちゃんと身体を
重ねたときから禁断の穴から分泌されていた、まるで女の子の愛液のような液体。

「玲央ちゃん、入れるよ……」
「ん。……俊彰さん、お願い……」
228 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/23(水) 19:26:08.98 ID:OwuPzWFj
 §10・篠原俊彰 3/5 2004/08/25(水)

 木の幹に手をついてもらって、背後に回る。
 思いっきり息を吸い込んで絞れば、回した両手の指がぴったり付くほど(実際に実験済
み)細いウェストを両手で掴んで、そろりと“その穴”に僕の分身を導き入れる。
 相変わらず、不思議なくらいに抵抗もなく、ぴったりと二人の身体が結ばれる。
 彼女と僕のセックスは、どうも『普通ではない』ことだらけで、これもその一つだ。

 そのくせ、一旦入ってしまえば僕の分身全部が、一部の隙もなく締め付けられてしまう。
 快感に抗えず、ものの10秒ほどで最初の射精を迎える。

 『どれだけ早漏だ』と自分で呆れてしまうけど、何度やっても1分以上持ったことがない。
 その代わり、他の女の子とやるときには一度発射すれば一旦萎えてしまう僕のペニスは、
玲央ちゃんの中だと、ずっと硬いままでいられる。

 エクスタシーに関してもそうで、普通なら発射するごとに一旦は収まる絶頂感が、萎える
ことなく積み重なる形で襲ってきて、天に昇るほどの快感に耐えるのがやっとだ。
「あ、あ、……れお、玲央ちゃんっ! 玲央ちゃん、気持ちいいっ……」
 今は大声を出せないので、その分内側に快感が溜まって凄い状態になっている。

 僕の分身を、玲央ちゃんの熱くて柔らかい粘膜がきつく包み込む。
 入り口だけでなく、根元から先端まで、ネチョネチョの粘液まみれになった肉壁に絞られ
る。腸内の襞がという襞が、吸い付くように僕の分身をなぶる。
 亀頭の先の敏感な部分に、イボイボのような感触があたる。その部分もぴったりと張り付
いてきて、いつものことながら『気持ちいい』ってレベルじゃないほどの絶頂感が襲う。

「ぅ……ぁぁんっ!! ぁあっぁぁんっ……! ……っ!! ん……っ!!!」
 僕だけでなく、玲央ちゃんも何度も何度も絶頂に耐えている様子。
 汗まみれの白い肌は、今は全身真っ赤に紅潮して痙攣を繰り返す。

 玲央ちゃんとのセックスの際、時々やってくる飛翔感が全身を包む。
 白い雲を目の下に見ながら、大空を舞うようなそんな感覚。僕がその感覚を覚えるとき、
決まって玲央ちゃんも同じような感覚に襲われているのだという。
 これも一種『普通ではない』、不思議な不思議な、魂の共鳴のような現象。

 2人どこまででも飛んで行けそうな、そんな高揚感に包まれたまま──玲央ちゃんの意識
が果てて、全身の力が失われるのを感じ、こちらも脱力した身体でなんとか抱きとめる。

 全身をタオルで拭ってあげて、もう乾いた服を失神したままの玲央ちゃんに着せてあげて、
僕自身も服を着て、玲央ちゃんを抱きかかえる形で木陰に座る。
 丸い額、すんなりとした鼻梁、すべすべの頬、形の良い小さな耳、さらさらの黒髪。

 何度見ても見飽きない、どう見てもとびきりの美少女にしか見えない、とても美しい姿。
 でも僕との出会いがなければ、この“少女”は少年のまま、普通の人生を送れたはずだっ
たのだ。
(一生をともにして、ずっと大事にしなくちゃな)

 愛情と、贖罪と、そしてピグマリオンの達成感とが入り混じった気分のまま、出会った最
初のころとは少し意味が変わってしまった、それでも変わらない誓いを再び胸に刻む。
229 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/23(水) 19:27:11.95 ID:OwuPzWFj
 §10・篠原俊彰 4/5 2004/08/25-28(水-土)

 いつまでも見とれていたかったのに、僕の携帯のバイブが鳴っていることに気づく。
(ここ、圏内だったのか)
 玲央ちゃんの体を静かに降ろし、少し驚きつつその場を離れて電話を取る。
「俊彰! やっと繋がったか!」
「ごめん親父、何?」
「俊彰、戻って来い。輝彰が死んだ」


 ──兄の葬儀には、沢山の人が詰め掛けていた。
 わんわんと泣いている女の子が多いのは、流石は兄貴というところか。
 大学の関係者、教授・助教授あたりも何人か来ているようだ。

 急いで家に戻り、玲央ちゃんには家に帰ってもらって、半通夜になんとかすべりこむ。
 死因は交通事故。男女2組で車に乗っていての正面衝突で、最後の一瞬に咄嗟に兄貴がか
ばったユイナが唯一生き残ったけれども、重体でまだ病院にいるそうだ。

 何か体にぽかりと穴が開いた感覚のまま、式が進む。
 最近の女癖の悪さには少し呆れていたけれども、それでも間違いなく尊敬していた兄貴。
 まだ20になったばかりの若さで、学友たちはおろか教授たちにもこんなに敬愛されていて。

(──それにしても、人って簡単に死ぬものなんだな)
 脳裏に玲央ちゃんの顔が浮かぶ。玲央ちゃんが死んだら、僕はどんな思いをするのだろう。
 そして、もし僕が死んだら、玲央ちゃんは──

 途端に、目の前が真っ暗になる感覚がした。
 息が荒くなる。鼓動が激しくなる。
 『玲央ちゃん』……僕が生み出した、僕だけの“少女”。僕がついているのならそれでい
い。僕がすべてから守っていく。そのくらいの決心ならとっくに固めている。

 ……でも、その『僕』がこの世からいなくなったら。“彼女”は一体どうなるのだ──?


 高校生にとっては夏休み最後の土曜になる28日。
 僕は、玲央ちゃんに待ち合わせのメールを送っていた。“彼女”と最初に会った場所で。
 『必ず時間通りに』と書いておいたにもかかわらず、時間の20分前に到着したときには既
に玲央ちゃんはそこに居て……そして懸念どおりに見事にナンパ男に絡まれていた。

「ごめん、待たせちゃったね」
「俊彰さん!」
 最初に会ったときも、こんな会話をしたんだっけ、と懐かしく思い出す。
 今日の彼女の服は、プレゼントした足首までの白くて長いワンピース。一緒に買ったボレ
ロをあわせていない純白の姿は、ウェディングドレスを纏った花嫁のようにも見えた。

 この服が彼女にとっては『とっておきの衣装』という位置づけになったようで、“気合を
入れてお洒落したい日”によく見かける。嬉しい反面、見る機会が少なくて残念にも思う。

 でも、どっちにしろ、それも今日で終わりなのだ。
230 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/23(水) 19:28:22.11 ID:OwuPzWFj
 §10・篠原俊彰 5/5 2004/08/28(土)

 彼女の顔が満面の笑みに輝く。
 この笑顔に、これから伝えないといけないことを思うと挫けそうになる。
 ナンパ男を追い払って、手を引いて歩く。少女のものとしか思えない細いしなやかな指、
小さくて柔らかい掌。そして最初の日の喫茶店に入り、椅子に座る。
 僕の表情に何か感じたらしく、いつもは色々話しかけてくる玲央ちゃんも終始無言だった。

「……兄貴が死んだんだ」
「ええ、それは聞きました。私も凄いショックです」
「それで僕は思ったんだ。人は簡単に死んでしまうもんなんだな、って」
「……」

「“相川くん”が女の子の格好するようになったのは、僕とあったからだよね。
 僕と会わなければ、あの時僕が『男の君とは付き合えない』なんて言わなければ、男の君
のままでいられた」
「それは……それは……それは、たぶんきっと違います。きっかけはそうだったけど、でも
多分それがなくても、きっと私は『本当の私』になってたと思います」

「でも、それまでは君は男のまま過ごしてたんだよね」
「………………はい」
「僕が生きてる限り、玲央ちゃんと結婚して一生、ずっと守っていく。今でもそのつもりだ
し、その決心は揺らいでない。でも、だけど、僕が死んでしまったら」
「……」

「僕にとって第一なのは玲央ちゃんの幸せなんだ。でも、僕が死んだらそれを実現できない。
 体と戸籍は男なのに、女のふりをして生きるのはきついし、不幸だよ」
「……」
「もう、やめよう」
 その声は自分の声帯から出たにもかかわらず、なんだか遠くて、白々しく聞こえた。

「……え?」
「もう、やめよう。恋人づきあいは、もうやめて別れよう。僕と別れて男としての生活を取
り戻して、普通に生きる道を選んで欲しい」
 玲央ちゃん──いや相川くんの喉から、嗚咽がこぼれる。目から溢れる涙が止まらない。

 僕が差し出したハンカチを断って、自分のハンカチで目をぬぐう。
 周囲から突き刺さる『彼女を泣かせた悪い男め』という視線。でもそれは今回はどうしよ
うもない事実で、甘受するしかない。

 涙声のままの相川くんと、言葉を重ねたあと、息を大きく吸って、“彼”は言った。
「……決心は変わらないんですよね」
「正直迷ってる。投げ出して玲央ちゃんを抱きたい気持ちはある。でも、決心は変わらない」
「──分かりました。立派な男になれるよう、“僕”、頑張ってみます」

 2人無言で自分の携帯を操作して、メールアドレスと履歴とを消去する。
「篠原さん、これまでどうもありがとうございました」
 少年の声でそう言って頭を下げ、去っていく“彼女”の後姿を目で追いながら、僕は深い
深い、底の見えない漆黒の穴に落ちていくような感覚を振り払うことが出来なかった。
231 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/23(水) 19:29:48.14 ID:OwuPzWFj
 §11・朝島菜々華 1/2 2005/03/24(木)・4/20(水)

「あれ田中、祥子さんと付き合ってるんじゃないの?」
「難しいなあ。アレも何度もしたのに、まだ『わたし達は恋人じゃない、友人だから』って
言われて、今日のことを話したら『いいじゃない。恋人作ってきなよ。応援するよ』だって」
「お前も難儀なことになってるんだな……」

 そんな会話をしながら、少し遅れて最後の2人が合コン会場の居酒屋に現れた。
 背が高いハンサムな男性と、少し小柄な──私と同じくらいだろうか? 猿顔の男。
「皆様方、ほんとーにお待たせしてすいません。ほら、篠原お前も謝って」
「……済みませんでした」

 それだけ言って、頭を下げて空いてる席に座る。
 自分としてはどうかなーっていう態度だったけど、私をこの場に誘った佳代は、
「うわっ、クールでいいなあ」って目をハートマークにしそうな勢いだ。どんなんだ。

 遅れてきた2人も交えて、自己紹介が始まる。
「えぇと、朝島菜々華、××大学○○学部1年です」
「今年の××大学、準ミスキャンパスでーす」
「もう、佳代。それは言わないでって言ったでしょ」
「謙虚だねー。ちなみに女子高出身の箱入り娘」

 ミスならともかく、準ミスなんて……って理由なんだけど、誤解を解くのも面倒。
 ただ、それまであまり興味なさそうな顔をしてた例の背の高い人が、私の顔をびっくりし
た表情でまじまじと見つめたあと、首をぶんぶん振ったのが、少し、印象に残った。

 でもその合コンでは結局直接会話を交わすことすらなくて、今にも居眠りしそうな感じで、
自分から発言することもほとんどなくて、根暗な人だなあ、と思ったのが『彼』の第一印象。
 しばらく経ったあと、「相手にもしてもらえなかった」と佳代が泣きついてきたほうが余
程記憶に残ってる。


 それから1月ほどあと。2回生になり、大学から家に帰る夜の駅の構内。ふと知った顔を
見かけた気がして、足を止める。相手も同様に気づいたらしく、少し首を傾げたあと、
「ああ、朝島さん。同じ駅だったんだね」
 と私に笑いかけながら言った。

「えーっと……あ、以前合コンで一度会った」
「うん、そう。篠原俊彰。あの日は眠くて、まともに参加できなくてごめんね」
 小雨のぱらつく中、なんとなく会話の流れで、駅近くの定食屋に2人で入る。

「そう言えば気になってたんだけど、合コンの日、私見て驚いてたよね? あれなんで?」
「いや、昔の知り合いに似てるなあ、って思っただけ」
「知り合いって、元カノとか?」
「うん、まあ、そんな感じかな」

「今は彼女いないの? 佳代とか付き合いたがってたけど」
「佳代って誰? ああ、思い出した。今はフリーだけど、ごめん、あのタイプは苦手なんだ」
 『彼』の第二印象は、悪くはないけど、退屈な男。そんな感じ。
232 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/23(水) 19:31:39.40 ID:OwuPzWFj
 §11・朝島菜々華 2/2 2005年5月〜8月

「……ぃやっ……ぁあっ……ああっ……やっ、やめっ……ああっ……」

 そんな『彼』とラブホテルに入ったのは、ただの気まぐれのようなものだった。
 最初に駅で会って以来、週に1・2度は顔を合わせるようになった『彼』。
 挨拶してそのまま別れたり、少し会話したり、たまには一緒に食事したり。
 けど、それ以上は進まない知人だと思っていたのに。

 先輩から見初められたことから始まった、女子高時代の私のレズ趣味(まあうちの学校で
も珍しくて、白い目でみられたりとか色々あったけど)。
 大学に入ったあとはもう卒業して、普通に男性と恋をしたいと思ってた。でもしっくり合
う男は中々見つからない。
 自分の男を見る目の無さ、男縁の悪さに少し失望してたくらいだ。

 その日の夕方まで付き合ってた男のような、自己中心さ、押し付けがましさ、デリカシー
のなさ、思いやりの無さが、どうしても受け付けられない。
 エッチの時だって、男とやるときイッたためしがない。おかげでイク演技はうまくなった
けど、嬉しくもなんともない。男自体に嫌悪感を抱きそうだった。

 それが今、彼の舌と指によって、他愛なく私の体は絶頂に導かれている。
「ごめんね。今日は突然で、コンドームとか持ってきてないから」
 最初この部屋に入り、服を脱いだあと彼は申し訳なさそうな声でそう言って、男のあそこ
を挿入することなく、私の全身を優しく蹂躙した。
 まるでどこに私の快楽のスポットがあるのか、予め知り尽くしているかのような的確さで。

 『コンドーム持ってきてないから、中出しでもいいよね?』
 他の男から何度も聞いた言葉とはまるで違う、彼の態度。
 彼への興味が好意に変わったのは、その時からだったと思う。

 まあ、挿入しなかったのはコンドーム云々ではなくて、彼が私相手だと勃起しないからだ
と後日分かるわけなんだけど、好意から恋に移行したあとの私には障害にもならなかった。
 むしろ男性器に嫌悪感を持ちぎみだった私にとって、『なんて、都合の良い相手なんだ』
と感心したくらい。


 『彼』──篠原さん──俊彰──が、私の恋人になったのが正確にいつからなのかはよく
分からない。
 でも大学が夏休みになる前には、私たちはもう恋人同士になっていたのは確かだと思う。
 まあ、佳代からはヤッカミの言葉を散々頂きましたが。

 生活圏が違って接点がなかったけど、分かってしまうと意外なくらいに彼と私の家は近く
て、そのせいもあってか、夏休みも結構な頻度で私たちは一緒に遊び倒していた。

 『私相手だと勃たない』というのを彼は凄く気にしてて、でも私は全然気にしてなくて。
それを教えるために時折ホテルとかに誘ってみるけれども、彼は乗ってこない。
 そんな問題はあっても、穏やかな日々と彼の気遣いが、割と気に入っていた。
 このまま結婚してもいいかなあ、ってことまで考える、そんな私のガール・ミーツ・ボー
イ・ストーリー。
233名無しさん@ピンキー:2013/01/24(木) 23:37:05.74 ID:XfYw67Ca
つC
234名無しさん@ピンキー:2013/01/25(金) 17:47:50.68 ID:WJtfdlzd
---
【緊急アンケート】東急東横線の夜間の女性専用車両廃止を歓迎しますか?
http://research.news.livedoor.com/r/73842

読売テレビが女のわがまま女性専用車を斬る
http://www.youtube.com/watch?v=98pWaXYihXk&list=PLCDC875F7D14589A7
235名無しさん@ピンキー:2013/01/25(金) 22:06:38.92 ID:Hq1vxwjO
女装専用車両なら・・・
236 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/27(日) 13:13:34.90 ID:279CplbS
女装成分極薄ですいませんが、続きの投下です。

『Symbolon』 §12・朝島玲雄 1/3 2005/09/02(金)

「朝島、相変わらず下手だなあ」
「るせ。自分で誘ってなんだその言いぐさは」
 マイクを次の人に渡し、自分の席に戻る。

 高校生活も半分近く過ぎたのに、相変わらず“俺”の声は声変わりする様子がない。
 いつも作っている低目の声で無理して音を出しているので、自然、音程が外れる。『音痴』
な音しか出すことができない。テンポがずれるのを止めることすらできない。

「なあなあ、次一周して、得点一番低かった奴罰ゲームな」
 人付き合いの悪い俺をカラオケに引っ張り出したというのは、そういう理由か。メンツの
一人が(女物衣装一式をつめたような)大きなバッグを持ってきた理由も良くわかる。
 あれから2回も誕生日が過ぎたのに、俺の外見は少しも男らしくならず、俺を『女装させ
よう』という話が後を絶たない。

「ん、分かった」
 諦めた口調で、了解を返す。
 一瞬、自分の『本当の声』で思いっきり歌ってやろうかと考えたりする。『俊彰さん』と
何度も通ったカラオケ。あのころ点数で92点以下を出したことがなかったはず。
 でも、「二度と女装はしない」と誓った俺にとって、女性そのもののあの声で皆の前で歌
うのは、あまりに地雷すぎるのは分かりきっていた。

 隣の席にいた片山が前で歌っているタイミングを見計らって、トイレにでも行くようなそ
ぶりでカラオケを脱出。
 置いたっきりの鞄の中には夏休み明け早々に出た月曜提出の宿題が入ってるけど、まあど
うでもいい。メンツから考えても、鞄を返してくれないことはないだろう。

 『朝島』の表札のある家に到着。
「ただいま……」ほとんど口の中だけでそう呟き、鍵を開ける。
 玄関には靴が並んでいる。姉の靴と、誰のものか分からない、真新しい男物の大きな靴。

 この靴は誰のものだろう。そう思った瞬間、懐かしい声が居間のほうから聞こえた。
 聞き間違えるはずがない。どんなに聞きたかったことか。
 今すぐこの声の主の、彼の胸に飛び込みたい。そんな気持ちを抑えつつ、扉を開ける。

「あら、お帰り玲雄。俊彰、この子が私の弟の玲雄」
「お久しぶりです。篠原先輩」
「あ、うん。お久しぶり……玲雄くん」
「え? 嘘? あなた達、知り合いだったの?」

「篠原さんには一時期、勉強を教えてもらってたことがあってね。うちの高校のOBだし。お
姉ちゃんの彼氏ってのは、今知って驚いたけど」
「……そっか、玲雄くんって、菜々華の弟だったんだ」
「そんな偶然ってあるものなのね。玲雄もこんないい男知ってるなら、紹介してくれれば良
かったのに」
「お姉ちゃんの趣味って知らなくてごめん。じゃあ、俺は宿題があるんでここらで」

 返事を待たずに逃げるように居間から退出。それ以上保つかどうか、自分が不安だった。
237 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/27(日) 13:14:46.00 ID:279CplbS
 §12・朝島玲雄 2/3 2005/09/02(金)〜10/11(火)

 部屋に篭って鍵をかけて。
 当然宿題もするはずもなく、ベッドに寝そべり、ただ呆っと天井を眺める。
 気がつくと時計は10時になっていた。

 何気なく携帯を確認して、そして息が止まる。
 見ただけで涙がこぼれそうになる懐かしいアドレス。篠原さんからのメール。
 中身を確認すると、『できれば掛けて下さい』の文字と携帯番号。
 何度もためらって、電話を掛ける。

「もしもし、篠原さん。朝島玲雄です。今時間大丈夫でしょうか」
 本来の女のような声が一瞬出そうになって、慌てて低くする。
『うん、大丈夫。それにしてもびっくりした。苗字は相川だとばかり思い込んでたし』
「最初に渡した手紙に『朝島』って書いてたし、別に隠してたわけじゃないんですが、騙す
形になってごめんなさい」

『全然気にしてないから大丈夫。a_leo@ってメアド、aは相川じゃなくて朝島だったわけか』
「まあ本当にそれは偶然ですけどね。そういえば、メアドは最後消してましたよね?」
『a_leoの部分は忘れようがないし、プロバイダが菜々華と一緒だからね。それより玲雄く
んが、ちゃんと男の子してるの見てほっとした』

「それが、約束でしたから」
『玲央ちゃ……玲雄くんは本当立派だよね。どうかな、僕達気が合うのは確かだし、友人と
してやっていけないかな』
「お義兄さん、ってだけで十分だと思いますよ。篠原さんが義兄なら俺も嬉しいです」

「……嘘つき」
 結局30分ほども会話して、電話を切り、ベッドに再び倒れこんだ俺の耳に、自分の声のは
ずなのに、そうは聞こえない独り言の声が届いた。


 9月後半になってから、それまで毎日のように篠原さんと出かけていたお姉ちゃんが家に
一人でいることが多くなった。
 聞くと、「お互いレポートが終わんなくて」とのこと。去年は俺と一緒に最初に片付けた
ものだけど、1回生と2回生で違うものなんだろうか。大学のことは良く分からない。

 そんな日が続いた10月の連休明け、篠原さんからメールが届く。
 お姉ちゃんとの仲が最近しっくり行ってなくて、どうすればまた元のように戻れるのか相
談したい。できれば今度の土曜昼から直接会って話したいとのこと。

 その時間ずっとお姉ちゃんと一緒に遊んだほうがいいんじゃないのか、そう思いつつ読み
進めているうちに、メールの追伸の「男の格好で来てね」という文字が目に入る。
(そっか。女の格好で行く選択肢もありうるのか)
 心が躍るのを止められない。

(うん、土曜日は一日だけ『玲央』になって甘えて、それで完全に吹っ切ろう)
 そう自分に言い聞かせつつ、篠原さんには了承のメールを送って、電話を掛ける。
「祥子さん、お久しぶりです。朝島玲雄です。今度の土曜日なんですけど……」
238 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/27(日) 13:17:03.65 ID:279CplbS
 §12・朝島玲雄 3/3 2005/10/15(土)

 約1年ぶりの女装。
 女の服を着ることが、こんなに恥ずかしいこととは思わなかった。
 最初に女装した時にも感じたことがない、謎の羞恥心と背徳感が全身を包む。
 上半身裸になった俺が手にしているのは、女物の薄いピンクのブラジャー。1年前は普通
につけていた俺の持ち物。高校の男子生徒の私物のブラジャーってどんだけって感じだが。

 悩んでいても仕方がないので、思い切って胸につける。
 背中のホックをつけようとして、ぎりぎりで手が届かないことにショックを受ける。
「玲雄くん、大丈夫?」
「祥子さん、すいませんお願いします」

「相変わらず綺麗な肌ねえ。去年に比べて痩せた? ちゃんと食事とってる?」
 前は楽につけれていたはずなのに、と悩む俺の背中に指を走らせつつ、祥子さんが言う。
「一応、とってますよ」
 生返事を返しながら、ブラジャーにパッドを突っ込んで位置を調整していると、祥子さん
がが手を伸ばして位置あわせしてくれる。なんだか異常な状況だ。

 懐かしいワンピースを手に取り、肩に羽織る。
 改めて見ると、フリル満載でゾロゾロとしてて、自分はこんなもの着てたのかと呆れる。
男物の服にはない、柔らかすぎる手触りになんだか奇妙な気分になる。
 その状態でトランクスを脱ぎ、これまたピンクのショーツを穿く。はみ出るどころか、ふ
くらみがあるかどうかも定かでない自分の貧相さが嫌だ。

 靴下は今のままでいいかと思い直し、ブラウスのボタンを留める。
 どうもおかしい。そもそも、今の行為を『女装』だと自分で思っていること自体が奇妙だ。
 なんで自分はわざわざ女装なんてしてるのだろう? 「男の格好で」って言われたのに。
 今、「今日はやっぱり男の服で行きます」と言いさえすれば良いのに。

 そう思って祥子さんに顔を向けても、言葉が出てこない。
「ん? どうしたの? ああ、化粧してあげよっか」
「……お願いします」

 化粧をつけて、エクステもして、ボレロも着て。鏡の中に映る自分の姿を確認する。
 記憶にあるとおりの、いやそれ以上の可愛らしい少女がそこにいた。
 でも期待と違って、『私がその女の子なのだ』という実感が沸いてこない。
 「ありがとうございました」と祥子さんにお礼を言って、バスに乗る。

 通り過ぎる風がスカートの裾を奪う。自分の顔に塗った化粧の匂いが鼻につく。
 男の時には絶対なかった感触と匂いに、戸惑う自分に戸惑う。
 周囲の自分を見る目が、男だと見抜いているようで落ち着かない気分にさせる。

 それが待ち合わせの時間になって、懐かしい優しい声が届いた瞬間、すべてが霧消した。
「ごめん、また待たせちゃったね」
 2人で腕を組んで、道を歩き始める。

 ──俊彰さん、ごめんなさい。私はやっぱり男になることができませんでした。
 ──お姉ちゃん、ごめんなさい。私はやっぱり俊彰さんが大好きです。
239 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/27(日) 13:19:00.62 ID:279CplbS
 §13・朝島菜々華 2005/10/15 は>>24-25>>37-39に投下済みなので参照ください。
──
 §14・篠原俊彰 1/4 2005/10/15(土)

 このところ、どうも菜々華としっくりいっていない。
 理由は明らかで、すべては僕の不甲斐なさだ。

 “玲央ちゃん”と分かれたあと……なんというか、自慰をしようとしてもうまくいかない。
 昔使っていたAVを見ても、ネットで色々検索かけてみても、ぴくりとも反応しない。
 一応ホモやニューハーフものも見たけど、吐き気がするばかりで見終えることも無理。
 最後まで出来るのは、玲央ちゃんのアルバムを見てるときだけという始末。

 “玲央ちゃん”と少し似ている菜々華だったら或いは、と思ったけどやはり駄目だった。
 それなのに時折、彼女は僕にエッチをねだってくる。
 断るたび、あるいは受け入れてやっぱり無理だと分かるたびに、申し訳なさが募る。きっ
ぱりと、「もう誘わないで」と言えればいいんだけど、それすらできないのだ。

 もう一つが、僕が菜々華に対して、玲央ちゃんのことを重ねて見てるという事実。
 菜々華は好きだし、大切にしたい。その気持ちに偽りはないのに、いやだからこそ自己嫌
悪が積み重なっていく。
 仲直りして普通にしていたいのに、後ろめたさでいつもの受け答えするのもきつくなる。

 多分、どこかで、ボタンを1つ掛け間違えてるだけだとは思う。
 でもそれがどこなのか、どうやったら直せるのかが分からない。
 誰かに相談したほうが良いのか──と悩んでいる最中に浮かんだのが玲雄くんの顔だった。
こうも駄目駄目な僕と違って、普通の男に戻れた彼なら──そう思ってメールを打つ。
 追伸に「男の格好で来てね」と書いたのは、ただの念のためのつもりだった。

 ……それなのに。待ち合わせの時間、待ち合わせの場所。
 懐かしさで涙が出そうになる姿。ボレロにワンピースのほっそりした美少女のような少年。
「ごめん、また待たせちゃったね」
 例によってナンパ男に絡まれてしまってる“玲央ちゃん”に声をかける。

「ああ、彼氏さんですか。彼女さん、本当にお綺麗ですね。私、こういうもので……」
「すいません、これからデートなんで邪魔しないで下さい」
 ……訂正。ナンパ男じゃなくてスカウトマンでした。
 まあ対応は変わらない。半ば強引に玲央ちゃんと腕を組み、逃げ出すようにその場を去っ
て、今の出来事に笑いあいながら、毎度の喫茶店に足を踏み入れる。

 ──それが、どんな結果を導くかも知らずに。


 夕方、菜々華と玲央ちゃんの2人と別れて、そのままうつ伏せに倒れこんだ自分のベッド。
 明日になれば菜々華も落ち着いているだろうから、そこでもう一度きちんと説明して……
受け入れてもらえないのなら仕方が無い、諦めよう。
 そう、割り切れるくらいに冷めている自分に驚く。

 姉弟で酷いことはないはずなのに。何故だろう。不吉な予感が止まらない。
 悶々としつつ何もできないでいる中、携帯に玲央ちゃんからのメールが届いた。

『ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい』
240 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/27(日) 13:20:47.36 ID:279CplbS
 §14・篠原俊彰 2/4 2005/10/15(土)

 自転車にまたがり、夜道を走る。自己最短記録をあっさり更新し、朝島家前に到着。
 チャイムを鳴らしたらまずいことに気付き、玲央ちゃんの携帯に電話。要領を得ない問答
を繰り返したあと、出てきてもらう。
 帰ったときから変わらない、白いワンピース姿に胸騒ぎがする。普通に考えれば、とっく
に男の服に着替えさせられてるはずなのだ。

 目の焦点があってない。やつれた感じがする。抱き寄せた体から、精液の匂いが漂う。
 ずれたカツラをきちんと直し、呆然としている玲央ちゃんを連れて、タクシーで家に戻る。


 物問いたげな親父に「説明はあとでするから」とだけ言い残し、僕の部屋に連れて上がる。
 彼女(そう、僕にとってこの人は“玲央ちゃん”だし“彼女”なのだ)の体を抱き締める。
 30分くらいそのままでいて、ぽつりぽつりと玲央ちゃんが話した出来事はとても信じがた
いことで、でも今の姿を見て嘘とはとても思えなくて。

(そっか、菜々華ってレズで、僕とのセックスも言わば擬似レズみたいなものだったのか)
 なら僕さえそれを受け入れれば、問題の核は霧消するから菜々華と元の鞘に戻れるか……
そこまで脳裏に一旦浮かんだ手順を、拭い去る。

「──お姉さまが私のことを生き物ですらなく、ただの肉の穴のように扱って。でもそれを
気持ちいいと感じてしまう自分の身体が、とてもとても嫌で嫌でたまらなくて」
 それは静かだけど、悲鳴のような声だった。

 玲央ちゃんを風呂に入らせて、手早く作った具多めの焼きそばを2人で食べる。
 その頃になってようやく、玲央ちゃんも落ち着いてきたようだった。
「明日になれば、篠原さんはお姉ちゃんと仲直りするわけですよね。今更ですけどメールで
言ってた、相談したかったことってなんでしょう」

「うん、そのことだけどね。……もう、諦めた」
「……え?」
「『僕に第一なのは玲央ちゃんの幸せ』って前言ったよね。それで、玲央ちゃんが幸せにな
ると思って、別れるよう言ったんだ。……でも、それが最初の、そして一番の間違いだった」
「……」
「今日1日で、色々あった一日だったけど、それを痛いほど思い知らされたよ。僕は玲央ちゃ
んを不幸にした人を許せそうにない。──つまりそれは、菜々華と、僕自身のことだ」
「いや、今日のは私のせいですよ。私が言いつけ破って、女の服で来なければ」
「それを迷わせたこと自体が、そもそも僕の間違いだったんだ」

 裸の上に直接僕の白いワイシャツだけ羽織った玲央ちゃんの前に、膝をついて座りなおす。
「僕、篠原俊彰は、一人の男性として、玲央ちゃんという女の子を、心から愛しています。
この世の他の、誰でもなく」
 そう言えば前付き合ってた時期に、きちんとこの言葉を伝えたことがあっただろうか?

 無言で見守る僕の瞳をしっかりと見つめて、彼女はゆっくりと宣言を返す。
「……もう、自分の心に嘘をつくのは嫌です。私、朝島玲央は、一人の女の子として、俊彰
さんという男の人を愛しています。心の底から、もうどうしようもないくらいに」
 2つに分かたれた1枚だった絵が、ようやくまた、ぴたりと元の一枚絵に戻るのを感じた。
241 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/27(日) 13:22:41.05 ID:279CplbS
 §14・篠原俊彰 3/4 2005/10/15(土)

 裸の上に男物のワイシャツを着ただけで、化粧もカツラもしていない姿。普通に考えれば
男に見えるはずなのに、今はもう、美少女のようにしか見えない。
 いや違う。……僕が「心から愛してます」と宣言した瞬間から、まるで蕾が開花にいたる
までを、蛹から蝶が羽化するまでを高速で再生したときのような変化を遂げた玲央ちゃん。

 『美少女』という言葉でも、まだ全然足りていない。
 まるで、白い翼を広げた天使のような、完成された美の化身として“彼女”はそこにいた。
(天使って両性具有なんだっけ)
 最初に玲央ちゃんと結ばれたあと、彼女が言った逸話と同時にそんなことが思い浮かぶ。

「俊彰さん、泣いてるんですね」
 彼女の言葉で、ようやく自分が涙を流しているのに気付く。
「あ……うん。そうだね。……たぶん、玲央ちゃんがあまりにも綺麗で、綺麗で、そしてとっ
ても綺麗過ぎるからだと思う。……玲央ちゃんも泣いてるよね」

「うん。なんだか、どう表現したらいいのか分からないけど、私、今、お母さんの産道を過
ぎて初めて世界に誕生した赤ん坊のような気分。嬉しくて、怖くて。
 世界ってこんなに広いもんなんだなあって。こんなに光り輝いているもんなんだなあって」

 頬を伝わるダイヤモンドのような輝きを、舌で舐めとって味わう。
 涙だからしょっぱいはずなのに、なぜかすごく甘く感じる。玲央ちゃんの味。
 頭が小さいから余計に大きく見える、ぱっちりとした二重の目。その中で黒く輝く瞳。
 すべてが大好きな彼女の姿の中でも、僕が真っ先に惹かれた部分。

 その黒曜石のような輝きに、至近距離からいつまでも見蕩れていたかったけど、彼女が瞼
を閉じたので、意図に応じて唇同士を重ねる。長く濃くけぶる睫毛がとても綺麗だった。
(菜々華、ごめんね。結局、僕は君の愛に応えることができなかった)
 約1年ぶりの幸せの感触で埋めつくされる脳裏の中で、ふとそんな思いが、泡のように浮
かんで、はじけて、そして消えた。

 玲央ちゃんの唇、玲央ちゃんの舌、玲央ちゃんの唾液、玲央ちゃんの匂い。
 『玲央ちゃんなしで生活してたとか信じられない』──昔、いつか何処かで僕が言った言
葉が蘇る。記憶しているよりは少し瑞々しさと柔らかさを失ってる気がするけれど、それで
も他の何よりも愛しい愛しい、玲央ちゃんの唇。

 キスの世界最長時間って何時間だったっけ? 挑戦してみたい気が少ししたけれど、先に
進みたい気持ちが上回って唇を離す。
 唇同士を繋ぐ唾液の橋が、自分でも驚くくらい長く2人の間を留まっていた。まるで、二
度と離れたくないという僕達の意思を表すように。

「私、何も良いことしてないのに、こんなに幸せになっていいんでしょうか」
「玲央ちゃんはこれまで散々、神様の気まぐれのせいで苦しんできたんだから、これからは
幸福になって当然だよ。それはむしろ僕のほう。
 僕の間違いで色んな人を苦しめたのに、こんなに幸せで満たされていいんだろうか、って」

 ぶかぶかで折り曲げた袖から覗く、折れそうなほど細い腕、合わせ目から覗く鎖骨のライ
ン、白い胸の肌、剥き出しになった長い脚。──玲央ちゃん、君は綺麗だ。
242 ◆fYihcWFZ.c :2013/01/27(日) 13:24:45.46 ID:279CplbS
 §14・篠原俊彰 4/4 2005/10/15(土)

 細い体を両腕に抱き締め、首筋に舌を這わせる。
 耳に近づくほど、玲央ちゃんが身体をこわばらせるのに気付いて、一旦身体を離す。
「玲央ちゃん、大丈夫?」
「そこはお姉ちゃんが……いえ、大丈夫です。俊彰さんの舌で記憶を上書きしてください」

 察するに、菜々華に耳のあたりを重点的に責められたらしい。
 『そこ』が性感帯になりうることはたぶん、僕が菜々華の身体に直接、教えたことだ。
 とても奇妙な、因果の鎖。“記憶を上書き”……それが可能か分からないけど、続けたほ
うがいいのか悩むけど、懇願通りに続ける。

「ふぁう……むふ……ぁぁん……俊彰さん、あり、ありがとうございます……」
 こわばりはまだ微妙に溶けていない。でも、さっきよりは随分と良くなった感じだった。
 鎖骨のライン、2つの小さなピンク色の乳首、おへそ、脇腹、脚の付け根とまで下ったと
き、それまで控えめに喘ぎ声をあげていた玲央ちゃんが「俊彰さん、いいですよ」と言った。

「……え?」
「この一年、男になれるよう頑張ったんです。それまでしなかった、男の普通のオナニーも
挑戦しました。俊彰さん、私のそこも触りたがってましたよね? 今なら大丈夫と思います」

 ばれてたのか、と顔から火を噴きそうになる。
「ここには女の子にはクリトリスってのがあって、そこをいじると気持ちいいもんなんだ。
だから『女の子なのに』って気にする必要はないよ。『女の子だから』気持ちよくなってい
いんだ。……もちろん、嫌ならそう言ってね。すぐにやめるから」

「ん。俊彰さん、ありがとう」
「うん、玲央ちゃんのクリトリス、ピンク色してて、花の蕾みたいでとても綺麗だ」
 『その場所』に直接口をつけるのは、流石に思い切りが必要だったけど、ためらいを振り
切って軽くキスをする。とたんに硬さを増す玲央ちゃんの秘芯。

「ぁん! ぁぁんっ!」
 華奢な身体を弓なりにしならせて、まるで音楽のような喘ぎ声を上げる。
 皮の間から微かに覗く赤い宝石のような部分を舌で弄ぶ。全身の白い肌が朱く染まり、肢
体がガクガクと震えだす。割れ目を舌でなぞると、先端からあふれ出す透明な液体。

 ドクンドクン、と舌先に鼓動が伝わってくる。舌と唇とで、その場所を執拗に弄ぶ。
「いぃ! いぃ! ああっ、ぁぁあああっ……!!」
 全身を包む快感に、悲鳴のような声をあげて、玲央ちゃんが絶頂に達する。玲央ちゃんの
小さな小さな子ども達である白い液体は、ほんの少し零れただけだった。
 すべてが甘い、まるで砂糖細工のような玲央ちゃんの身体の中、その液体は少し苦かった。


 もう体力的にはとっくに限界を迎えていたんだろう。僕が挿入したところで、彼女の身体
が力を失い、そして穏やかに寝息をこぼし始めた。
 いつも失神したときと同じように、抜いて身体を拭いて寝せてあげようか、としたところ
で思い直す。今日は結ばれたまま、このまま玲央ちゃんの中で寝ようと。

 明日は大変だと思うけど、今日は久しぶりに、素敵な夢が見れそうだった。
243名無しさん@ピンキー:2013/01/27(日) 23:51:55.04 ID:KjlkcDah
つCCCCC
244 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/02(土) 20:44:01.63 ID:/7zGcmYs
うん、趣味に走りすぎてしまった。和服コスプレ回投下になります。

『Symbolon』 §15・佐藤麻由美 1/3 2005/11/16(水)

千穂:「マユマユってさ、ウェスト何センチ?」
 修学旅行(わたしたちの高校では2年生の11月中旬、京都に行きます)の自由行動時間。
 朝島くんの着替えの手伝いをしていた千穂ちゃんがそんなことを聞いてきました。
 いくら朝島くんが細身とはいえ、さすがに男子が着るのはきつかったのでしょうか。

私:「58cmだけど、やっぱりスカート入らないかな? 調整すれば……」
涼香:「逆よ、逆。ブカブカ過ぎてどうしようかなって。……タオル突っ込んどくか」
沙織:「……なんか今、すっげーアリエナイ会話聞いた気が」

 今、朝島くんとわたしは、お互いの制服に着替えているところです。
 昨日の夜、涼香ちゃんが言い出したことですが、いつもの如く逆らえませんでした。
(朝島くんが断ってくれてたら良かったのにな……)
 内心、好意を持っていた男の子の制服を着るのは変な感覚です。ドキドキです。

 袖を通すと、襟元からなんだか柑橘類のような甘い匂いが漂ってきます。朝島くん、香
水でも使っているのでしょうか。お洒落さんです。
 身長がほとんど一緒のはずなのにズボンが長すぎて、裾を10cm以上曲げてピンで留めて
いるのはナイショにしたいとこですが。

舞:「やー、麻由美、美少年になったね!」
 着替え終わって、鏡を見ます。詰襟・ズボン姿の男の子?がそこにいました。
 ベリーショートの髪型、控えめな胸も相まって、『美少年』かどうかは分かりませんが、
確かに男の子に見えます。今まで知らなかった自分の一面にびっくりです。

千穂:「こっちすごいよ。ちょー美人。ちょー美少女。女としての自信なくしまくり」
 振り返ると可憐な少女が複雑な表情で立っていました。平凡なブレザーとプリーツスカー
トの濃紺の女子制服が、まるで有名デザイナーの作品であるかのように引き立っています。
 とても、わたしがさっきまで着ていた制服には見えません。美しいです。

朝島くん?:「俺、やっぱり変だよな?」
 その言葉に皆で首をぶんぶん横に振ります。これで変なら、世の中の女子の99%は変です。
 舞ちゃんの真似をして、掌で首から下の部分を隠しました。すると確かに朝島くんです。
 掌をのけると、途端にベリーショートの髪の美少女にしか見えなくなるのですが。

沙織:「脚とかなんだこれ。スネ毛剃ってんの?」
朝島くん:「俺、スネ毛とか髭とか生えない体質なんだって。悪いかよ」
舞:「あんなー、あたしらがどんな思いで無駄毛処理してるか、思い知りやがれ!」
 そう言って舞ちゃんが、ニキビも吹き出物もない綺麗なほっぺたを引っ張りました。

舞:「……って、みんなも触ってよ。これ、どんな手入れしたらこんなにお肌になるの」
 わたしも触りましたが、柔らかくてもちもちしっとりしてて手に吸い付いてくるようで、
まるで赤ちゃんの肌を触っているような感触でした。女として完敗です。羨ましいです。

千穂:「凄いねー。朝島くん、もういっそ女子になっちゃおうよ」
 街中を移動中も、千穂ちゃんがそんなことを言っています。同意です。
朝島くん:「これ今日限りって条件だからOKしただけだからな? 二度としないからな?」
 もったいない話です。朝島くんはもっと自分を知るべきです。
245 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/02(土) 20:45:13.34 ID:/7zGcmYs
 §15・佐藤麻由美 2/3 2005/11/16(水)

 急いだおかげで、目的のお店には予約時刻ぎりぎりで到着できました。良かったです。
涼香:「お邪魔します。山本涼香で舞妓体験を予約していた5人です」
お店の人:「ようこそおこしやす。そちらのかたは付き添いでっしゃろか」
 店の奥から、和服姿の上品そうな年配の女性が出てきました。

涼香:「私は見てるだけでいいんで、他の5人をお願いします」
お店の人:「うちは、男しんかたには舞妓体験やってへんどすけど」
涼香:「あ、この子なら事情があって詰襟着てるだけで、ちゃんと女の子ですから」
 涼香ちゃんが、わたしを示しながら言いました。朝島くんのことじゃないんですね。
お店の人:「驚おいやした。そんならええどすけど。ほな、あがっておくれやす」

私:「涼香ちゃん、良かったの? 真っ先に舞妓やりたい言い出したの涼香ちゃんなのに」
涼香:「いーのいーの。私は今絶頂にいるっ!! 良くやった私っ!!」
 皆で制服を脱いでいる最中に聞くと、こんな回答が返ってきました。ハイテンションです。
朝島くん:「俺、男だと思われなかったんだ……」
 涼香ちゃんが貸したショコラブラウンのスリップ姿になった朝島くんが、後ろ向きのまま
ぼそっと言います。ローテンションです。でも朝島くん。それは当然です。

 白いスモックのような服を着て、髪にネットを被せられ、美容院のような椅子に座ります。
スタッフのお姉さん:「ほんまにおなごん子やったんねぇ。かいらしお嬢さんがたで」
 わたしと朝島くんの席は隣同士で、視線を移すと鏡の中、神妙な顔の美少女が見えます。
 頭の小ささや首の長さ細さで完敗してるのが丸分かりて、何だか恥ずかしいです。

 首筋に刷毛がおかれます。ひやっとした感触に首がすくみます。
 首から顔、肩までを何度も何度も刷毛が走り、水化粧と白粉とで自分の顔が白く染められ
ていきます。自分が自分でなくなるような、不思議な感覚です。

スタッフのお姉さん:「お肌ほんまにすべすべでけなるい(羨ましい)。モデルはんどすか?」
 見ると、スタッフの方が次々と朝島くんの肌を触りに来て、変な状況になっていました。
 声を出すと男とばれると思っているのか、無言で困ったような顔をしてる朝島くんです。
そんな姿も可愛いです。けど普通に声を出しても十分女の子の声に聞こえると思うのですが。

 男の子なのに、周りの人に女の子と完全に思われている状態で、女の子のふりをして、誰
よりも可愛らしい女の子になっている朝島くん。今、どんな気分なのでしょうか。
 朝島くん担当のスタッフが慎重に丁寧に作業しているせいか、わたしたち4人の化粧が終
わったあともまだ完成していませんでした。

 眉を描き、目元に紅を差し、口紅を塗られていく様子を皆で鑑賞します。
涼香:「こんなに可愛いんだから、もっと愛想よくしようよ」
 デジカメを鳴らしながら、涼香ちゃんが声をかけます。あとでもらわないといけません。
 朝島くんはその言葉に嫌な顔をしますが、でもそんな顔も可愛いです。美人は得です。

 化粧が終わって着物を選び、着付けてもらってカツラを被って、皆で記念撮影です。
 裾の薄紅色から上の白にグラデーションする地に、大輪の寒椿が咲くお引きずり。だらり
の帯を締めた朝島くんは、本当に舞妓さんのようです。
 いえ、本職の舞妓さんにもこんな綺麗な人はいないのではないでしょうか。
 仕草なんかもすごく堂に入ってて、思わず見とれてしまいます。
246 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/02(土) 20:46:16.12 ID:/7zGcmYs
 §15・佐藤麻由美 3/3 2005/11/16(水)

 お店を出るとカメラと賞賛の嵐でした。
「おー。舞妓さんだ」「あれ、舞妓体験の観光客じゃ?」「でも凄く可愛いー」「So Cute!」
 わたしたちが移動するたびに大騒ぎ状態で、なんだか恥ずかしいです。

涼香:「おーい、片山ー、村木ー、伊東ー!」
 わたしたちを囲む人垣に向かって突然、涼香ちゃんが手を大きく振りました。
朝島くん:「うげ。……おい山本、みんなにはバラさないって言ったよな?」
 隣の綺麗な舞妓さんが、少年っぽい声でこそこそ囁きます。違和感ありまくりです。
涼香:「あなたが朝島ってことは秘密にしとくから。頑張って別人のフリをしてね」

片山くん:「山本さん? こんなとこで何やってるの?」
 人垣を割って、5人くらいの詰襟集団がやってきました。うちのクラスの男子です。
涼香:「それはこっちの台詞よ。私らはグループで舞妓体験してるとこ」
片山くん:「へえー。オレたちは清水寺から現代美術館に行く途中だけど」

村木くん:「あー。言われて見れば佐藤だな。可愛いじゃん。……こちらの方はどなた?」
 わたしのことはすぐ分かったみたいですが、朝島くんのことは分からないようです。
 謎の美少女舞妓さんの存在に、男子たちは興味津々です。
涼香:「この子は乙女ちゃん。舞妓体験のとこで一緒になって、仲良くなった子」

???:「はじめまして。篠原乙女って言います」
 近くで突然、知らない可憐な女の子の声がしました。『鈴を振るような声』ってこんな声
を言うのでしょうか。高くて澄んだ、綺麗な声です。
???:「涼香さんのクラスメイトの方々なんですね。宜しくお願いします」
 綺麗に背筋を伸ばしてお辞儀する動作が凄く優美です。細くて長い首が白鳥のようです。

 位置的にも、着物的にも、その声の主は朝島くんで間違いないと思うのですが、なんだ
か狐にでも化かされたような気分です。
 今までも十分美少女でしたが、もうそんなレベルじゃありません。少女漫画の登場人物の
ような大きな瞳がキラキラ輝いて、眩しいくらいです。

片山くん:「乙女ちゃんって言うんだ。すっごく可愛いね!」
朝島くん:「ありがとうございます」
 おちょぼに塗った唇をほころばせ、にっこりと微笑むと、視界が一面花で埋め尽くされる
ような錯覚がしました。人垣のどよめきとシャッターの音が鳴り響きます。もはや轟音です。

 袖を翻して握手をして、一緒に記念撮影とかしてています。わたしらおいてけぼりです。
 男子たち、鼻の下を伸ばしすぎです。これが男同士と知ったらどう思うのでしょうか。興
味深いです。想像すると萌え死にしそうです。

朝島くん:「あ、穴があったら入りたい……」
 手を振りながら男子たちを見送ったあと、ついさっきまでの乙女ぶりがどこに行ったのか、
死んだ魚のような目で朝島くんが呟きます。声も少年のものに戻っていました。

 実は朝島くんにとって、『朝島くん』でいることより『乙女ちゃん』でいることのほうが
自然で幸せなんじゃないかな、だなんて、ふとそんなことを思いました。
 女扱いされるのを嫌う朝島くんにはナイショですよ?
247 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/02(土) 20:47:45.40 ID:/7zGcmYs
 §16・朝島玲雄 1/2 2005/11/16(水)

「朝島ー、起きてるか?」
「んー。寝てるー」
 部屋のドアが開いて、何人かがどやどやと入ってくる音と一緒に、片山が呼びかけてくる。
 しまった寝たふりしとくべきだったと思っても、後の祭り。

「大丈夫か? 午後ずっといなかったから心配してたんだが」
「明日はたぶん、大丈夫だと思う」
 もともと片山達と回るはずの自由時間。色々あって山本さん達と舞妓になって、そのあと
すぐホテルに戻って、晩飯は別で食べて室内でシャワー浴びて、あとはベッドに寝てて。
 そういえば今日の午後は片山達とは“朝島玲雄”としては顔を合わせてないことに気付く。

「良かった。でも、もったいなかったな。オレらと一緒なら、乙女ちゃんに会えたのに」
「あの子すっごく可愛かったよなあ。山本たちに聞けば連絡先教えてくれねーかな」
「晩飯のときもお前ら言ってたけど、その乙女ちゃんってそんなに可愛かったの?」
「ほら、これ。撮ったデジカメ」

「舞妓さんかー。白塗りだからこの解像度だと良く分からんな。可愛いことは分かるけど」
「本職じゃなくて、福井から来た観光客なんだって。ほら、こっちで佐藤達も舞妓してる」
「あの子、芸能人とかモデルじゃないかな? なんてか、オーラがすごかった」
「それはないよ。もし芸能人なら凄い有名になってるから、誰も知らないってありえないし」

 “乙女ちゃん”の中の人である私にとって、なんともむず痒くなるような会話。
 まあ、気付かれてないようで、ほっと一安心だけど。
 片山たちにばれるのはまだ良いとしても、それが巡ってもし親にばれたら……そう思うと
なんだか背筋が凍るような気がする。

 騒ぐ皆の会話を聞き流しつつ、今日の体験を思い出す。
 いつか着てみたいと思っていた女子の制服を着て、女子達と一緒に他愛ない会話をしなが
ら道を歩く。通行人でも、私を不審がる目はなかったと思う。
 私が普通に女の子として生まれていれば日常だったはずの、でも実際には訪れないと思っ
ていた、そんな光景。

 白粉を綺麗に塗られて、化粧もしてもらって、日本髪のカツラもかぶって、簪を挿して。
 奨められるままに着た、桜を思わせる色合いの椿の花の柄の振袖。胸高に巻いた長い帯。
その可憐な衣装に、私はただただ胸を高鳴らせていた。

 町行く人たちの、自分を少女としか思ってない人たちの賞賛もなんだか誇らしくて、誤魔
化すために仏頂面を保つのが大変だったこと。
 それでも多分、私の内心は皆にはバレてそうな気はするけれど。

 いつもは見上げる形の男子たちが、ぽっくりを履くと村木以外は見下ろす形になるのも少
し新鮮だった。
 でも俊彰さんと一緒なら、まだ彼のほうが背が高いからいい感じだろう。男の和装とか、
俊彰さんすごく似合いそうだし。想像するだけで頬が火照ってくるのを抑えられない。
 いつか京都の町を、手を繋いで2人和装で散策できればいいのに。

 ……俊彰さん。なんだかとってもあなたに会いたいです。
248 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/02(土) 20:48:48.82 ID:/7zGcmYs
 §16・朝島玲雄 2/2 乙女事件余禄

 修学旅行後に公開された旅行写真に何故か入ってた、私たちの舞妓姿の写真は3年1年に
も大人気で、飛ぶように売れたのだそう。
 かくいう私も購入して、俊彰さんに見せたら大受けしてた。


 冬休み。女の子の服に着替えて俊彰さんの家に行へのバスを待ってる途中、「あれ、篠原
乙女さんって君のこと?」と見ず知らずの高校くらいの男性から声をかけられた。
「全然違いますけど、誰と間違えたんでしょうか?」
「いや、うちの高校でちょっとした有名人がいてさ。それにしても君、可愛いね」
 丁度バスが来て「彼の家に行く途中なんで」と別れられたけど、あの化粧でも分かる人に
はわかるもんだと驚いた。


「なあ朝島、『乙女ちゃんの連絡先、教えてくれないか』って、片山とかうるさいんだが」
 それから少し後の冬休み明け、山本さんに呼び出されたと思ったら、こんな相談を受けた。
 また女の服を着て欲しいという依頼でないことに安堵? 落胆?しつつ、適当に返事。

「“乙女ちゃん”はあの時点で余命いくばくもなくて、あれが最後の思い出作りの旅行で、
もう死んじゃったって言っておいて」
「ぶっ。何それ。信じるわけないじゃん。まあいいわ。他のメンツにもそう伝えとく」

 私もそう思ったんだけど、数日後、片山が沈んだ顔で「乙女ちゃん、亡くなってたんだっ
て……」と伊東に言ってるのを聞いて、吹き出しそうになるのをこらえるのに苦労しつつ、
ちくりと罪悪感がうずいた。


 進級して、そんな話があったことも忘れかけていた翌年の11月。
 過去問の解説を読んでる昼休み、クラスが別になっていた片山が突然、私のところまで
やってきて、小声で聞いてきた。
「……おい朝島、篠原乙女って、お前のことなんだって?」

 前もって色々考えていた対応方法を思い出しつつ、作ってない本来の声で返事。
「もう。片山くん、やっと気付いたの? 鈍すぎだと思うな」
 反応がおかしくて、女声のままクスクス笑って、クラス中の注目を集めてしまった。
「マジかよ……信じられんねえ。それになんでお前、そんな声出せるんだよ」

 携帯を取り出して、待ち受けにしてた1年前の写真を私の顔に並べて比較する片山。
 その携帯が次々とクラスメイトの手に渡り、「え、嘘これ朝島だったんだ」「こんなに
可愛い子が女の子なわけがない」「朝島、結婚してくれー」と、意味不明の大騒ぎ。

「これ、1回限りって約束でムチャ言って女装してもらってだけだから、勘弁したげてね」
 居合わせた山本さんがフォローしてくれなかったら、どうなってたのか空恐ろしい。

「ほんと、オレ、ショックだわ……朝島よく騙してくれたな」
「俺と握手して“手、小さくて可愛いねー”とか、はしゃいでたよね? 面白かったなあ」
 予鈴が鳴って、すごすごと片山が自分のクラスに帰る。皆も三々五々と移動を開始。
 いっそここでカミングアウトしておけば良かったかのだろうか? 少し、後悔が残った。
249 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/02(土) 20:49:58.96 ID:/7zGcmYs
 §17・朝島みちる 1/2 2006/12/16-21(土-木)

 熱と悪寒がした。
 わたしが直接お客さんの相手する機会がないとはいえ客商売。予防接種が効果なかったこ
とを残念に思いつつ、一時退出して病院へ。
 インフルエンザの診断を受けて薬をもらい、電話で早退と病欠を伝えてそのまま家に帰宅。
 ま、年末の忙しい時期にギリギリかからなかったのは幸いだけど。

 電車に揺られている最中にも、倦怠感と頭痛が段々酷くなってくる。
「で、どう? 合格できそう?」
 ぼっとする意識に、聞き覚えのある声が入ってきてなにげなく視線を向ける。思い出した。
娘の菜々華と一時期交際してて、紹介もしてもらった男の子だ。
 その後別れたとは聞いてたけど、今一緒にいるのは新しい彼女だろうか。

「この間の模試も良かったですし、このまま頑張れば合格ライン行けそうって。俊彰さんと
一緒のキャンパスに通えるとか、夢のようです」
 白いコート姿の、わたしのタイプの愛らしい美少女。うちの息子と同じ学年なのか、と思
いつつよく見直すと、なんのことはないその息子、玲雄だった。
 可愛くなっちゃってまあ、と思いつつ、朦朧としてくる意識に負けて目を閉じた。

 家に帰って布団を敷いてそのまま睡眠。
 目を覚ましたときには、時計の針は9時を回っていた。頭の下には溶けかけの氷枕が敷か
れ、いつの間にか運び込まれた加湿器が音を立てている。
 布団の隣のちゃぶ台のペットボトルから、コップにジュースを注いで飲む。
 頭痛と咳は酷いけど、我慢できないほどではなくなっていた。

「あ、ママ起きたんだ」
 ダイニングに入ると、ノートPCを叩いていた指を止めて、菜々華が立ち上がる。
「うん。菜々華、ありがとう」
「礼なら玲雄に言ってよ。あの子、私が止めなかったらずっと看病するつもりだったみたい。
受験生なのにね。……用が終わったら、和室で寝てて。おかゆ温めて持ってくから」


 月曜朝には熱もすっかり下がって、それから数日ぐっすり休んで。
 明日から戻る仕事の準備をしている木曜夕方、玲雄が学校から帰ってきた。
「玲雄、お帰りなさい。本当にありがとうね。おかゆ美味しかったわよ」
「治ったんだ。良かった」
「うん。もうすっかり。……ね。少しだけお母さんと話させてもらえないかな」

 ダイニングの椅子に、二人で向かい合って座る。
「話って何かな? 進学のこと?」
「いや、そっちは全然気にしてないの。放任で塾も行かせてないのに、こんな立派になって。
親としてごめんなさいね。……ところで、先週の土曜はどこに行ってたの?」
「土曜は、受験の下見も兼ねて大学の見学に……」

 そこまで言ったところで、はっとしてこちらを見る。
「もしかして、見てた?」
「やっぱり。すごく可愛かったわよ」
「ごめんなさい。もう女装なんてしません。許してください。ごめんなさい」
250 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/02(土) 20:52:16.92 ID:/7zGcmYs
 §17・朝島みちる 2/2 2006/12/21(木)

 記憶にないと思ってたけど、しっかり覚えてたのか。可愛そうなくらい怯えてる。
「怖がらないでいいわよ。誰も女装は駄目とか言ってないし、女装をやめてとか言ってない。
 ……無理やり女装させられたとか、罰ゲームとか、そんなことじゃないのよね」
 随分迷った様子だったけど、随分時間が経ったあと、こくんと頷いた。

「うん。やっぱりね。……あなたは覚えてないかもしれないけど、物心つく前、あなたは女
の子の服を着たがって、女の子みたいな遊びをしたがる子でね。
 まだ『性同一性障碍』なんて言葉が出来る前の話で、お父さんと色々話して、あなたが男
の子になるよう厳しくしつけてね……でも、悪いことしたかなあ、ってずっと思ってて」

「そう、だったの……」
「やっと、本当の声で喋ってくれた。本当、可愛い声よね。確認だけど、あなたは女の子?
 身体や戸籍のことじゃなくて、あなたの心というか、魂のことを教えて欲しい」

 沈黙が流れる。簡単に割り切れるものでもないだろう。怖れもあるだろう。突然の展開に
戸惑ってもいるだろう。それでも、この子はわたしの瞳をまっすぐに見つめて、
「お母さん、ごめんね。……本当にごめんね。私は……私は、女の子です」
 高く澄んだ綺麗な声で、震える声で、でもはっきりと打ち明けてくれた。

「謝ることなんてないのよ。謝らないといけないのはわたし達のほう。不肖の母親でごめん
なさいね。今まで、ずっと受け入れられなくてごめんなさい。あなたは自慢の娘だわ」
 嗚咽をこぼす“新しい娘”の背後に回って、しっかりと身体を抱きしめる。

「ねえ、お母さんにあなたの本当の姿を見せてくれない?」
「女の子の服はうちに置かないようにしてるから、今は無理かな」
「そっか……ああそうだ。あなたにあれをあげるわ。顔を洗って和室に来て」

「これはね、お母さんが成人式のときに作ってもらったお振袖。本当は菜々華にあげるつも
りだったんだけど、『私、いらない』って。だからもう、あなたのものと思っていいのよ」
 そう言いながら、足袋を、裾除けを、肌襦袢を、長襦袢を、順番に着付けさせていく。
 さっきまで『息子』だったこの子の身体は本当に女の子そのもので、びっくりしてしまう。

 振袖を着せて、帯をふくら雀に締める。ウィッグをつけて化粧まで終わったときにはもう、
この子はどこに出しても恥ずかしくない完全な美少女として存在していた。
 淡い桜色の地に松竹梅と鶴を描いたあでやかな衣装。喉仏もない首と薄いなで肩、小さな
頭と色白で綺麗な肌にその振袖は良く似合って、涙が出そうなくらい美しかった。

「そういえば、なんでまた桜色なのかな? 私は桜の花より葉桜のほうが好きなのに」
「前にも桜色の服着せられたことがあったの? まあよく分からないけど、本当にあなたに
白に近いピンク系の衣装は良く似合うと思うわ。今度うちでモデルしてくれないかな」

 ずっと見ていたかったけれども、流石に着替えて部屋に戻って勉強を始める。最近つけて
なかったわたしのアクセサリ類を選んでまとめてプレゼントすると、大喜びしてくれた。

「お父さんには、お母さんから言っておくね」
「……やっぱりお父さんには私からちゃんと打ち明けるよ。そう、遠くないうちに」
「そう。分かった。楽しみにしておくわね。きっとあなたも、びっくりすると思うわよ」
251名無しさん@ピンキー:2013/02/02(土) 21:29:43.42 ID:xLoh2UOv
@@@@
252弟幼妻の人:2013/02/02(土) 23:46:54.65 ID:ALxEbm6z
GJ! 最近やや重めだったので、ちょっとだけ楽しそうな感じがいいですね。
先に投下があったので、『弟幼妻』のエピローグは明日にします。
253名無しさん@ピンキー:2013/02/03(日) 01:42:03.52 ID:PQ04gZO3
つCCCCC
254『弟は幼な妻』4:2013/02/03(日) 23:01:14.02 ID:zf+s3Fbg
#意欲的な佳作の後に投下するには少々気が引ける、いささか蛇足な気もするエピローグです。

『弟は幼な妻』
-4-

 日下部雄馬がその手紙を受け取った時、彼の中学時代からのクサレ縁の悪友・安藤浩之が、住んでいた家から家族ごと何も言わずに姿を消してから、すでに半年近くの月日が経過していた。

『であ・まい・ふれんど
 すまん。バタバタしていて、すっかり連絡が遅くなった。
 今は、N県の猪狩沢という場所で、ボチボチやってる。
 よかったら、一度遊びに来てくれるとうれしい。
 住所は……』


 「あら、雄馬お兄様、そんなに慌てて、こんな早くからどちらへ行かれますの?」
 普段は軽妙洒脱で温厚な義兄が、珍しく不機嫌さを全面に出した表情のまま、ボストンバッグ片手に玄関で靴を履いているのを見て、義妹の柚季は目を丸くした。
 「ゆきか……すまないが、今日の午後、買い物につきあう話、あれ、明日の日曜にしてもらっていいか?」
 いささか頭に血が昇っていた雄馬だが、義理の妹にして最愛の恋人たる少女と言葉を交わしたことで、彼女と昨晩夕飯の席でした約束をからくも思い出したようだ。
 「ええ、それは構いませんけど……何か急用ですか?」
 「ああ、まぁな──ちょっと、バカをぶん殴ってくる!」

  * * *  

 「……で、その結果がコレかよ」
 まさか、休日に家で昼飯食ってまったりしてたところにピンポンラッシュを受けて、てっきり近所の子供の悪戯だろうから叱ってやろう……と、ドアを開けた瞬間、久しぶりに会った親友にはったおされるとは思ってもみなかったぜ。
 「やかましい! 人がどんだけ心配したと思ってんだ、まったく」
 ギロリと恐い目でこちらを睨む、その親友様。
 まぁ、それだけ俺達の身を案じていてくれたということだろうから、この一撃は甘んじて受けとこう。
255『弟は幼な妻』4:2013/02/03(日) 23:01:52.39 ID:zf+s3Fbg
 「さぁ、キリキリ説明してもらおうか。なんで、お前さんたち、唐突にいなくなったんだよ。
 ──やっぱ、ふたりの関係が近所にバレて、気まずくなったのか?」
 「? 何の話だ?」
 「いや、だってお前……以前、俺に由理くんとの関係(コト)について、悩んで相談もちかけてきただろうが」
 あ〜、そういや、あの頃、こいつにユリとのことで、相談というか愚痴聞いてもらったんだっけか。
 「す、すまん。ぶっちゃけ、ソレとは全然関係ない。単なる俺の会社の都合で、こちらの営業所に空いた穴埋めるために転勤になっただけなんだわ」
 このアパートも、会社が借り上げてくれた社宅みたいなモンだし。
 「…………は?」
 まぁ、確かに、電話とかで連絡しなかったのはこっちのミスだけどな。
 「家電はともかく、ケータイもつながらなかったぞ?」
 「あ、キャリア変えたとき、一緒に番号も変えたんだ。
 でも、会社に問い合わせてくれりゃあ、一発で転勤のことはわかったはずなんだけどな」
 「前に、名刺渡しただろ?」と言うと、親友の雄馬はバツの悪そうな表情を浮かべた。
 大方、仕事も辞めてどっかに逃避行に入ったとでも思いこんで、会社に電話することなんて思いつかなかったのだろう。コイツ、頭いいのに時々ヌケてるからなぁ。

 「ん、んんっ……コホン。まぁ、それはともかく。無事にやってるなら何よりだ。それで、ヨシノリくんの方も元気なのか? 確か、この春中学卒業したはずだろ?」
 あ〜、そっか。コイツには例のコトも言ってなかったっけ。
 「おーい、ユリ!」
 「はい、浩之さん……もうお話はよろしいんですか?」
 俺の呼び掛けに応えて、替えのお茶の入った湯呑が乗った丸盆を手に、居間に入って来た"少女"を見て、雄馬のヤツが恐縮してる。
 「あ、すみません、お邪魔してます…………ぉぃ、恋人(かのじょ)が来てるんなら、そう言ってくれ。流石に俺も気を使ったのに」
 後半部分をこっそり小声で言うあたり、ホントに女にはマメな奴だよなぁ。
 「いや、恋人っつーか……嫁さんだし」
 「嫁!?」
 「あ、籍は入れてないから"内縁の妻"って言う方が正確か」
 「妻!?」
 面白い程素直に驚愕を示してくれる雄馬。いや、半分はネタと言うかワザとなんだろうけど。
256『弟は幼な妻』4:2013/02/03(日) 23:02:24.85 ID:zf+s3Fbg
 「おいおい、そりゃあ日本の民法上は女は16歳になったら結婚できるとは言え、いつの間に、こんな美少女をたぶらか……んん?」
 言いかけてふと眉を寄せている。
 お、さすがに気付いたか。
 「──もしかして……この子、ヨシノリくんか?」
 「あはは、正解だ」
 艶やかな黒髪を自然な感じにブロウして肩甲骨の上あたりでリボンでまとめ、軽くナチュラルメイクして優しく微笑むコイツのことは、知らない人が見たら(身内の欲目を抜きにしても)、まず間違いなく「16、7歳くらいの清楚な女の子」と見なすはずだ。
 両肩が出るタイプのサーモンピンクのニットの長袖カットソーとダークレッドのデニムのミディスカートの上から、白に近いピンクのエプロンを着けたその姿は、やや年齢が若すぎる点を除けば、絵に描いたような「新妻スタイル」と言える。
 ただ、雄馬の場合は、何度かまだ男の格好してた由理に会ったことがあるのと、俺が以前相談を持ちかけたことで気が付いたのだろう。

 「はぁ……なるほど。ついに開き直ったんだな」
 ガクリと肩を落とす親友に、少しだけ真剣な声色で尋ねる。
 「──軽蔑したか?」
 「いんや。第一、俺だって他人のコトを言えるほどご立派な身の上じゃないし」
 ……ああ、そういやコイツ、親同士の再婚でできた義妹と恋仲になって、婚約してるんだっけ。
 「そーだよなぁ。義理の妹の女子中学生押し倒した現場を親御さんに見られた揚句、なし崩し的に婚約したお前さんが、倫理云々は言えんよなぁ」
 「フッ、甘いな。当時のアイツは、まだ1●歳だったぞ」
 「ちょ、おま……それ犯罪!」
 本人同士の合意があろうと、親の許可が得られようと、法律的に●学生とのセ●クスはマズいだろーが!
 「HAHAHA! 過去にこだわるのは止めにしようぜ。
 それはともかく──要は、お前さんたちは、此処では事実上「夫婦」として暮らしてるんだな」
 「ああ。ご近所に挨拶に行った時も、わざとそうだと誤解させるような言動をとったしな」
 おままごとと笑われるかもしれないが、昔からの俺達のことを誰も知らない、この場所ならソレが可能だと思ったんだ。
 「──いいんじゃないか。別段、誰に迷惑かけてるワケでもないんだし。
 式は……してないよな?」
 流石にそこまでは、な。金銭的には内々のごくささやかな式くらいなら、できるだけの余裕はないでもないが、さすがに同性婚(しかも兄弟同士)を引き受けてくれる会場は、なかなかないし。
 「そっちについては、心あたりがひとつある。で、ヨシノリ……いや、ユリちゃんはどうなんだい? やっぱウェディングドレスを着た花嫁さんって、「女の子」として憧れるんじゃないかな?」
 さっき聞いたばかりなのに、早くも由理のことを「ユリ」という女の子として扱ってるあたり、こいつの頭の柔軟さはハンパないなぁ。
 「え、その……は、はい。正直言うと、少しだけ」
 エプロンの裾を弄ってもぢもぢとしながらも、控えめに素直な気持ちを吐露するユリ。いや、俺の方に上目遣いに投げて来る視線に籠った熱意は、断じて「少しだけ」ってモンじゃなかったけどな。
 「お前さえよければ、俺のほうで手配つけてやるけど、どうする?」
 雄馬がそう言ってくれたんで、俺も腹をくくった。
 愛しい愛しい妻(おとうと)のささやかな願いくらい、叶えてやるのが夫(あに)の甲斐性だよな!
257『弟は幼な妻』4:2013/02/03(日) 23:03:36.09 ID:zf+s3Fbg
  * * *

 かくして、ふたりの兄弟にして夫婦たるカップルは、とある水無月末の吉日に華燭の典(というにはいささかささやかな規模だが)を挙げる運びとなる。

 「まさか、ボクがお兄ちゃん……ううん、私が浩之さんと結婚式を挙げられる日が来るなんて」
 控室で、純白のウエディングドレスを身に纏い、ほんのり幸せ色に頬を上気させたユリが、わずかに涙ぐみながらそんなコトを言う。
 「あらあら、嬉し涙にしてもまだ少し早いですわよ。こんな素敵な方と結婚される殿方は幸せですね」
 兄の縁でブライズメイドを務めることになった白いドレス姿の柚季が、優しく花嫁をなだめる。
 「ユリさん、とってもキレイ……」
 雄馬と柚季の妹である好実も、姉とお揃いのドレスを着て、いっしょにブライズメイドを務めるようだ。
 「ぐす……ふふ、ありがと。柚季さんのような美人や、好実ちゃんみたいな可愛い子に、そう言ってもらえると、ちょっとだけ自信ができました」
 ちなみに、この3人は、それぞれ1学年違い(ユリは高校に通っていないが)で、年が近いこともあってか、会ってすぐに打ち解けた。友人が少ない(というより現状ほぼ皆無な)ユリにとっては、貴重な「女友達」と言えるだろう。

 「さぁ、時間ですよ」
 形式上の仲人は雄馬たちの両親である日下部夫妻が担当している。つくづくこの一家には足を向けて寝られない……と、歳の割に大人びた感慨をユリが抱くのは、すでにいっぱしの"主婦"をしているからだろうか。
 ふたりのブライズメイドを露払いに、父親の代役の日下部氏に付き添われて、小さなチャペル(じつは柚季や好実が通う学園の付属施設だ)のバージンロードを、しずしずと進むユリ。
 祭壇の前には、アッシャーとベストマンを兼ねる雄馬と、本日の主役の片割れである新郎・浩之が、柄にもなく緊張した顔つきで佇んでいる。

 「──新婦、安藤ユリ。貴方は、その健やかなるときも病めるときも、喜びのときも悲しみのときも、富めるときも貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
 「誓います」
 聖書の朗読から指輪の交換、結婚署名、結婚宣言に至るまで、つつがなく式典は進行する。

 そして、わずか10人足らずとは言え観衆の見守るなかで、頭に被った薄絹のベールを上げて、浩之にキスされた時、これまでに、もっとスゴい(エロい)ことをベッドその他で色々されているにも関わらず、ユリはたとえようもない歓喜を感じた。
 (嗚呼、私、これで本当にお兄ちゃんのお嫁さんになれたんだ……)
258『弟は幼な妻』4:2013/02/03(日) 23:04:09.06 ID:zf+s3Fbg
 たとえ日本の法律が何と言おうと、今日この日集まってくれたこの人々は、自分たちの仲を認め、祝福してくれる。
 それだけで、ユリはこれから「私は、安藤浩之(おにいちゃん)の妻のユリです!」と、胸を張って言いきれる気がしていた。

 「──お兄ちゃん」
 チャペルの入り口から出るライスシャワーの直前、敢えて名前ではなくかつての呼び方で、良人(おっと)となった男性に呼び掛けるユリ。
 「ん? なんだ?」
 「幸せに、なろうね」
 「ああ、もちろんだ」
 互いの目を見つめ合い、満面の笑みを浮かべるふたり。

 そして、幼妻(はなよめ)の投げたブーケが、六月の蒼い空に舞うのだった。

-おしまい-

#色々、駆け足気味でごめんなさい。ただ、これ以上引き延ばすと、ダレそうだったので……。
#どこかで見たような名前は、例の作品の本人です(ちなみに、浩之も由理も、この時点では柚季の「事情」は知りません)。
259名無しさん@ピンキー:2013/02/03(日) 23:58:33.48 ID:nbmiW656

何かと連動したSSなの?
元ネタ分からなかった
260 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/04(月) 00:20:11.30 ID:k2O8KfjY
>>259
このスレ第6話に投下された作品のキャラですね。日下部雄馬 柚季でぐぐれば。
ファンサービス、ありがとうございました。相変わらずの柚季の可愛さに涙。

こちら、薄めの文庫本並みの長さになってきてるので、手軽に纏めるのも才能の一つと羨ましいところです。
261名無しさん@ピンキー:2013/02/04(月) 00:41:01.19 ID:wfwJDuaq
乙!
懐かしい名前が出てきて、以前からの読者として非常に嬉しかった。
あちらのカップルの結婚式もいつか読めたらいいなとか思ったりして。

>>259
ttp://www1.axfc.net/uploader/so/2779980
パスは目欄参照

※作者様、まずかったら消すので、言って下さい(汗
262弟幼妻の人:2013/02/04(月) 02:37:42.58 ID:EvoCtuyE
>259
あ〜、すみません。260が言われてる通り、過去スレに投下した作品「今日からお姉ちゃん」のキャラです。

>260
ちょい役ですが、こんな形で再登場。そして、おそらくブーケは彼女の手に渡ったものと思われます。

>261
結婚式シーンは……どうてすかね。
そして、ファイルは残してもらっても構いませんが、一応、自ブログにも再録してます。
 ttp://kcrcm.blog85.fc2.com/blog-entry-103.html の短編参照
 ※18禁版はPIXIVに投下(ID持ってる人は小説の男の娘、女装、兄妹で検索すれば引っかかるかと)
263名無しさん@ピンキー:2013/02/04(月) 22:48:20.89 ID:Bov1f/hm
次回作にも期待
264 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/06(水) 19:03:50.83 ID:yJP61oNt
「俊彰くん、頑張る編投下です。
割と早い時期から設定決めてはいたのですが、書いてみるとすごい家族になってしまった…

『Symbolon』 §18・佐藤麻由美 1/2 2007/03/07(水)

朝島くん:「佐藤、用ってなんだ?」
 ドアが開いて、朝島くんがやってきました。高校卒業の日、涼香ちゃん達や部活での集ま
りをすっぽかして待ってたので、最初の関門を突破できてまずはほっと一安心です。
私:「朝島くん、来てくれてありがとう。……わたしからプレゼントがあってね」

 これから自分がやろうとしていることに、ドキドキです。
 他に誰もいない教室の中、朝島くんには後ろを向いてもらって、まずブレザーを脱ぎます。
私:「篠原乙女、ってあったよね。レオってしし座のことだから、星座繋がりでおとめ座を
 名前にしてみたんだ、ってのはあのとき涼香ちゃんが説明してくれたけど」
朝島くん:「ああ。俺のほうは7月30日生まれのしし座だから、って安直な名前」

 背中に向けたままの返事にナルホドと納得しつつ、カーディガンを脱ぎます。
私:「いや、いい名前だと思うよ。……じゃあ篠原のほうは何なのかってずっと考えててね。
 ……うちの部の先輩に篠原俊彰さんって人がいるの。国体出場は逃したけど凄い選手で、
 学年は重なってないけど、何度かOBとして部活に来てくれたので知ってはいる人」

 スカートを脱ぎます。これは、少し度胸が必要でした。ブラウスのボタンを外します。
私:「篠原って別に珍しい名前じゃないし、ただの偶然かなって思ってたんだけど、この前
 たまたま、その先輩が天使のように可愛い彼女さんを連れてるのをみかけちゃってね」
 朝島くんの肩がびくっとします。最後にスリップとストッキングを脱ぎます。

私:「……朝島くん、こちらを向いて下さい」
 下着だけの姿になったわたしを、朝島くんが見ています。驚いた顔です。

朝島くん:「プレゼントって何なのかな。もし『わたしがプレゼントです』って言われても、
 俺にはもう将来を誓った人がいるから……ごめん。それは受け取れないんだ」
私:「いや、違うよ。プレゼントは、この服」
 朝島くんに、手元の“プレゼント”を渡します。今まで着ていた制服他一式です。

私:「わたしの勘違いならごめんなさい。恥ずかしいのもわかる。でも、高校最後なんだか
 ら本当のこと言って欲しいな。この制服が欲しいなら、受け取ってください」
 悩んでいた朝島くんですが、結局それを受け取りました。第二関門突破です。

 乳首が男の子で、胸がぺたんこ気味ですが、それを入れてもまだ女の子のような体です。
 相変わらず肌の綺麗さ色の白さ、身体のラインの優美さが外国人の下着モデルさんのよう
に綺麗です。嫉妬です。
 手馴れた感じでベージュのスリップを着ると、もう完全にベリーショート髪の美少女です。

 黒いストッキングを一旦丸めて脚を通す仕草も、見とれるくらい可憐で堂に入っています。
 わたしが穿いたときより、ストッキングの色がずっと黒く見えます。
 ストッキングのパッケージにこの脚が写ってたら、思わず買ってしまいそうです。この脚
を石膏で型取りして像にしたら、そのまま芸術品になりそうです。部屋に飾りたいです。
 そう言えば朝島くん、足のサイズも小さ目なんですね。ハイヒールが似合いそうな足です。

 思わず脚フェチになってしまったわたしを無視して、朝島くんがブラウス着用中です。
 男子に左前のブラウスは辛いかと思ったのですが、小さな手でスムーズにボタンを嵌めて
いきます。このヒト、思ってたよりずっと女の子の服に慣れてるようです。
265 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/06(水) 19:05:24.16 ID:yJP61oNt
 §18・佐藤麻由美 2/2 2007/03/07(水)

私:「ね、そういえば名前はなんて呼べばいいのかな」
朝島くん:「……玲央、って呼んでくれると嬉しいかな。こういう漢字」
 修学旅行のとき聞いて以来の、高くて澄んだ綺麗な声が応えてくれました。天使の声です。

 細い指で、机の上に字を綴ります。マニキュアは塗ってないと思うのですが、桜の花びら
を思わせるピンク色の小さな爪が輝いていて、とても綺麗です。
 でも、何かこの字に思い入れがあるのでしょうか。謎です。

私:「うん、分かったありがとう。改めて宜しくお願いします玲央ちゃん。わたしのことも
 麻由美でお願いね。マユマユでも麻由っちでもいいけど」
玲央:「ん。ありがと、麻由美ちゃん」

 スカートに脚を通します。前回はブカブカでどうしようかとなってたウェストですが、今
回はほぼぴったり綺麗にフィットしました。ダイエットで2cm絞った成果です。
 でも、それだけじゃ計算が合わないような。聞くと、
玲央:「あのころは色々あって一番体重が落ちてたころかな。頑張って元に戻したの」
 本当、この人どういう身体なのでしょうか。

 ウェストの位置が思い切り高くて、脚が長いものですから、わたしが穿いているときと違っ
てミニ丈のように見えるスカートです。
 さっきも思いましたが本当に脚が綺麗です。思わず手を伸ばして撫でてしまいました。
玲央:「ひゃんっ!」
 やぁらかくてすべすべで、しかも感度満点なおみ足でした。国宝級です。思わず拝みます。

 わたしの方を睨みつけて、少し距離を取ってカーディガンとブレザーを着用しました。
私:「玲央ちゃんごめんなさい。少しメイクするからこっちに来て」
 といっても、色つきのリップクリームを塗るだけだったりするのですが。

玲央:「麻由美ちゃんって勿体無いよね。すごく化粧栄えする顔してるのに」
私:「そっかな?」
玲央:「ウェストも細いし、美人だし。大学入ったら、もっとお洒落に気を使って欲しいな」
 玲央ちゃん、あなたがそれを言いますか。……色んな意味でこの世の理不尽を感じます。

 櫛で髪を梳きます。癖が無くて細くてしなやかで、こんなところでも女の子のような──
というより、女の子の理想そのもののような髪質です。
 眉骨が出てない丸い額を丸出しにして、カチューシャをつけます。
 学校でも一番の美少女が出来上がりました。もう嫉妬すらできません。素敵すぎです。

私:「ね。玲央ちゃん。わたしもプレゼントもらっていいかな?」
 最後の関門に到達しました。
私:「この格好で帰るわけにもいかないし、“朝島くん”の制服が欲しいの」
 気温は10度くらいです。正直寒いです。わたしの鳥肌に気付いたのか、玲央ちゃんは悩ん
だあと、「いいよ」と言ってくれました。ミッション・コンプリートの瞬間です。

 1年ぶりに詰襟を着て、夢にまで見た匂いを堪能します。いけない子になった気分です。
 3年間過ごした学校を、玲央ちゃんと一緒に男女のカップルのように外へ出ます。
 雲の間からそそぐ太陽の光が、とても綺麗でした。
266 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/06(水) 19:06:45.07 ID:yJP61oNt
 §19・朝島玲央 1/4 2007/03/07(水)

「玲央ちゃん、卒業、おめでとう」
 それまで耐えていた涙腺が、その声を聞いた瞬間に決壊した。
 玄関先で泣きじゃくる私の身体を、そっとお姫様抱っこで軽く抱え上げ、居間まで運んで
ソファーにそのまま腰掛ける。

 どれだけの時間、その逞しい腕に抱かれて、優しい笑顔にも守られて泣いていたのだろう。
「……俊彰さんありがとう。私、重くなかったですか?」
「あともう少しだけ重いほうがいいかな。大分良くなってきたけど、まだ抱いてて不安にな
るときがあるんだ。……泣いた顔も素敵だったよ。ごちそうさま」

「ふふっ。もっと俊彰さんのお料理食べさせてくれたら、重くなれると思いますよ。太って
お腹のお肉つかめるようになっちゃうかも」
「じゃあ、今日は腕によりをかけてご馳走作るかな」

 靴を脱がしてもらって、まだふわふわとした気分のまま洗面所で顔を洗う。
 喜怒哀楽に乏しい『朝島玲雄』に比べ、『朝島玲央』はやたらに泣き虫なのが欠点だった。
 もう何度この洗面所にお世話になっただろう。これから何度お世話になるのだろう。
 色んな出来事を見守ってきた洗面所の大きな鏡の向こうで、制服姿の女の子が微笑んだ。


「そういえば、あの制服どうしたの?」
 俊彰さんのお母さんの服をお借りして──最初の頃、服に苦労してたのが嘘のようにサイ
ズがぴったりで助かってる──2人でお買い物に出かける。
 オフショルダーの白いトレーナーに、黒いハイウェストのロングスカートをあわせ、上に
キャメル色のフード付きポンチョコートを羽織って、手を繋ぎながら道を歩く。

 こうしていると新婚さんみたいだな、と幸せな気分に浸りつつ、今日の出来事を軽く説明。
「ああ、あの子ね。少し覚えてる。……高校最後に、『女の子としての卒業式』をプレゼン
トしてくれたんだね。機会があればお礼言わないと」
「ロマンティックな表現でいいなぁ。言われてみれば本当にそうですね。感謝しないと」

 スーパーに入ると、見知った親子連れの姿が見えた。
「俊くん、玲央ちゃん、こんにちは」
「ああっ、悠くんお久しぶりー。私のこと覚えてるかなー」
 ぱたぱたと駆け寄ってきた男の子を思わず抱っこすると、一瞬きょとんとしたあと、大喜
びしてくれた。うぅ、かわいい。

「大きくなるの本当に早いですねー」
「この子、この間身長1m越えたの」
 悠くんに頬や髪を撫でられながら、お腹の膨らみが目立ち始めた有紀さんと少し立ち話。
「ぼくねぇ、おおきくなったらレオちゃんとけっこんするの!」
 と言い出して抱きついてきた悠くんに、無駄に俊彰さんが敵愾心を表してみたりとか。

「あ、そうそう。俊くん、就職大丈夫そう? うちの和馬が前、気にしてたけど」
「そういえば有紀さんにはまだ言ってませんでしたね。来年から大学院になります」
「あれ、そうだっけ。じゃあ、そう伝えとくね」
「今夜こちらから電話かけますよ。随分ご無沙汰してますし。何時くらいがいいですか?」
267 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/06(水) 19:08:20.09 ID:yJP61oNt
 §19・朝島玲央 2/4 2007/03/07-08(水-木)

「ああ、玲央ちゃんは今日はゆっくり休んでなよ」
 家に戻ってコートを脱いで、エプロンをつけた私に、俊彰さんが声をかけてくれた。
「一つおねだりしていいですか? ……私、俊彰さんと一緒にお料理を作りたいです」
「……そっか。うん、喜んで。……じゃあ、僕からも一つおねだりしていいかな?」
 手招きに従い近寄ると、後ろから抱きしめられる。鎖骨のあたりに感じるキスの感触。
「うん、ありがとう。じゃあ、料理作ろうか」

「んー。おいしかったー。もう入らないー」
「じゃあこのデザートは冷蔵庫にしまっとくかな?」
「食べる食べる!」
 なんて会話のあと2人で皿洗いまで片付けて、抱っこされた状態でソファーで寛ぐ。
 その体勢で、携帯でどこかに電話をしていた俊彰さん。ようやく通話が終わる。

「ん。どなた? 今日有紀さんが言ってた件?」
「遠藤和馬さん。有紀さんの旦那さんで、3つ齢離れてるけど昔一緒によく遊んでくれた人。
その人の会社に来てくれないか、って話だったけど……まあ話は来年に持ち越しかな。
 ……ところでさっきの続き、いい?」
「ぁ、あぁん。俊彰さん、いきなり……ぁん」

 本当にいきなりだった。オフショルダーで開いた私の肩を、俊彰さんの舌がなぞる。
「玲央ちゃん、その格好、魅惑的すぎだよ……これまで我慢するの大変だったから……」
 というところで、俊彰さんのお父さんが丁度帰ってきました。残念。


 明けて翌日お昼すぎ。
 俊彰さんの部屋でPCを覗いて、無茶苦茶重いサイトにやきもきしつつ、合格発表を待つ。

 “その番号”を確認したとき瞬間、「やったぁ!」と歓声をあげてしまった。
 ぴょこぴょこ跳ねながら、涙をだらだらと流しながら、大笑いしながら、俊彰さんの腕に
抱かれながら踊る。自分でも何をやってるんだか分からない状態。
 で、しばらくしてようやく落ち着いたあと……まあ、そういうことに相成った。

 せっかくだからと麻由美ちゃんからもらった制服に着替えて、ベッドに腰掛けた高校時代
の制服姿の俊彰さんの前にひざまずく。ズボンのチャックを下ろし、彼の分身を導き出す。
「うちの高校の制服って、正直デザインセンスないと思ってたけど、玲央ちゃんが着てると
すごく可愛く見えるね、……って、はうっっ!!」

 昨日もお預けをくらって、余程たまってたんだろうか。
 私が指で彼の分身を軽くなぞっただけで、ただそれだけで思いっきり暴発してしまった。
 慌てて、まだビクンビクンと震えるその先端を口に含み、まだ放出を続ける残りを口で受
け取る。

 身体が歓喜の声をあげるのを抑えきれない。熱いほとばしりを受け止めた顔や髪や首筋か
ら、沸騰するかのようなエネルギーを感じる。私という存在自体が溶けてしまいそう。
「ごめん、今のは本当にひどかった」
 とてもとても美味しいその液体を、口の中で十分味わったあと飲み干す。
「もう、俊彰さん。勿体なさすぎ」
268 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/06(水) 19:10:01.67 ID:yJP61oNt
 §19・朝島玲央 3/4 2007/03/08(木)

 気を取り直して、仕切りなおし。
 初めて結ばれたその日から、下の口は彼のものとサイズも形もぴったりとあっていた。
 不思議なくらいに。専用に作られた刀の鞘のように。一つの板をくりぬいて2つに分けた
あとのように。
 あるいは、私という存在自体が、彼と結ばれるためだけに作られたものであるかのように。

 でも、上の口のほうは喉まで使っても彼のものを完全に納めることができず、それがなん
だか少し悔しい。
 根元のほうを両手の指で押さえつつ、唇と舌とで彼のものを愛撫する。彼が感じている様
子を見ていると、心の奥からゆっくりと悦びが湧き上がってきて満たされた思いになる。

「ぢゅぴっ、にゅちゅ、くちゅ……ちゅぷ……」
 どこか淫猥な音が、BGMのように部屋を流れる。
 喉の奥まで飲み込んで、粘膜と肉とでむき出しの先端を締め付ける。私自身、いってしま
いそうな快感を覚える。今度は注意していたので、溢れる寸前で刺激をストップ。

 少し間を空けたあと、今度は舌で鈴口を丹念に撫でる。先走り液も味わい深い。
 指先でタマタマの縫合線をくすぐると、まるで暴れ馬のように飛び跳ねそうになる。一旦
口から出して、触れるか触れないかの感覚で、竿の部分を舌で往復させる。
「ごめん、玲央ちゃん……もう限界……お願い……」

 何時間でもこうやって堪能したい気分だったけれども、再度喉奥まで一気に彼のものを飲
み込み、唇と口蓋と喉と両手でぎゅっと彼の分身を絞り上げ、親指と舌とでリズミカルな刺
激を与える。
 二度目のほとばしりもすごい量で、少し口許から零れてしまったのが少し残念。

 お互い荒い息でしばらくの間ベッドで横になったあと、第二ラウンド開始。
 色々な液体でぬるぬるになってしまったショーツを脱ぎ捨て、正常位で繋がる。
「……ごめ、俊彰さん、ちょ、ちょっと待って」
「うん、何?」

 一旦身体を離して、ズボンとかを脱いでもらう。チャックの金具が当たって痛かった。
「ちょっと赤くなってるね。……気付いてやれなくってごめんね」
「俊彰さんのほうも、何か当たって痛いとかあったら言ってくださいね」
「いや、絶景だし大丈夫。気になるところはないよ」

 もう慣れてしまって不思議に思わないことが不思議なんだけど、いつものように俊彰さん
の分身が、何も抵抗もなくすんなりと私の中に『戻ってくる』。
 この段階でいきなり射精することが多いけど、今日は2度出したあとということもあって
それもなく、ゆっくりとした優しいリズムでピストンを繰り返す。

 正常位で結ばれたまま、まるでお母さんの腕に抱かれた赤ちゃんのような安らぎにうっと
りしている最中、不意に力強い腕で、しっかりと女子制服ごと私の体を抱きしめてきた。
 穴がある場所がある場所が普通の女の子と違うから少しきついけど、それ以上に嬉しさが
全身を満たす。溢れた嬉しさ成分が、耳からこぼれてしまいそうだ。

「玲央ちゃん、愛してる」
269 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/06(水) 19:12:16.60 ID:yJP61oNt
 §19・朝島玲央 4/4 2007/03/08(木)

「ふぁにゅ、ふぁにゃ、ふぁにっ」
 優しい声で突然宣言される、不意打ちの一撃。溢れる嬉しさと一緒に、脳汁がどばどばと
体外へ垂れ流しになった感触さえする。どこの発情期の猫だという声が口から出る。
 『私が、愛されてる』。それも俊彰さんに!
 それはどんなに素敵なことだろう。私は天下一の果報者だ。

「ふぁっ……わっ、私もっ、俊彰さんのことが大好きすっ。愛してますっ」
 再起動までに、なんだかとても時間がかかってしまった気がしなくもない。
「……ありがとう。僕、生まれてきて良かった。玲央ちゃんにめぐり合えて本当に良かった」
 そのまま不意に、力を込めて激しく分身を深く強く突き入れてくる。

「あぁっ! ぁあっ!! もっとっ!! 気持ちいいっ!!」
 自分の身体がもう完全に制御できてない。自分の心が制御できてない。制服のプリーツス
カートに包まれたままの腰が、快楽を求めておかしなくらいにうねるのが止まらない。
 絶頂に上り詰めた一瞬あとに、体の中に熱い液体を受け止め、更なる絶頂へ全身が導かれ
る。飛びそうになる意識を繋ぎとめるのがやっとだった。

 少しも硬さを落とすことのない彼のもので繋がったまま、向きを変えて彼がベッドから立
ち上がる。いつもの飛翔感とは少し違う、物理的に宙を舞う感覚が少し気恥ずかしい。
 意思とは関係なく暴れまわるように背をそらし、跳ね上がる体を、俊彰さんの逞しい腕が
しっかりと抱きとめてくれる。その、安心感。

 そのまま体が再びベッドに沈む。彼はベッドに寝て、その上に貫かれたままの私が座る。
 いつもは目に入って惨めな気持ちにさせる私の股間のものが、今日はスカートに隠れて完
全に見えない状態なのが、少し気持ちいい。
 3年間、ずっと憧れだった女子制服をまとって、大好きな俊彰さんとエッチをする。この
機会を作ってくれた麻由美ちゃんには、幾ら感謝してもし足りない。

「はぁぁん! あぁあ! ぁぁん!」
 長い時間もうずっと喘がされっぱなしで、流石に喉が疲れてきた。俊彰さんはどんだけ体
力があるんだと呆れてしまう。
 間に2回の発射を挟みつつ、騎乗位のまま私の体の向きを変えたのち、後背位に移行。

 何事にも研究熱心な俊彰さん。色んな文献とかチェックしたんだろうかと少しおかしい。
 顔は見れないのが寂しいけれど、深く深く、体の奥深く、さっきとは逆に下から喉元まで
彼のものに貫かれる錯覚すら覚える体勢。
 ブレザーに包まれたままの私のウェストが、大きな手でしっかりと掴まれている。

 腰を振るたび体の最奥の場所に、未だに衰えない彼の分身がしっかりと突き当たる。
 視界が白い。いつもの飛翔感とあわせて、まるで雲の中を飛んでいるかのような気分。
 もう乱れ狂う気流と雷のようにしか感じられなくなった快楽に、心も体もきりきり舞いさ
せられている状態。さすがに、意識が限界に近づいてきていた。

「……俊彰さん」
「うん?」
「俊彰、さん、わたし、あなたが、大好きです……」
 息も絶え絶えにそう口から本心を呟いたあと、意識は完全にホワイトアウト。
270 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/06(水) 19:14:19.23 ID:yJP61oNt
§20・朝島玲央 2007/04/17(火)は>>42になります。
──
§21・朝島慶樹 1/1 2007/04/17(火)

「ね、母さん。やっぱり私、玲雄の育て方を間違えたのかな?」
 玲雄の引越しを含めた今後のことを決め、家を出た2人を見送り、居間に戻る。
「どう育てても、あの子はもう、ああなるしかなかったんじゃないかな。複雑だけど、認め
てあげないと」
 娘の返事に、私の発言が勘違いされたことに気付く。

「あ、逆よ、逆。……菜々華は小学校に入る前だから憶えてないかもしれないけど、玲雄っ
て小さいころ女の子の格好をしたがる子でね。
 私と同じ苦しみを味あわせないように、男らしくなるように育てたつもりだったけど……
どっち道こうなるなら、最初から認めて女の子として育てたほうが幸せだったのかな、って」

「どうしたの、パパ?」
 菜々華が目を丸くしてる。『父親』がいきなり女言葉、女口調で喋り始めたらそうなるか。
「そうよ。私も玲雄と同じ性同一性障碍。私の場合、小さい頃に女のように育てられたから
『こう』なったと思ってたけど、やっぱり生まれつきなのかしらね。
 今まで子供達に知られないよう努力してたけど、もう全部打ち明けちゃっていいかなって」

「そういえば玲雄には、それ言わなかったのね」
「俊彰さんがいるところでいきなり打ち明けるのは、流石に恥ずかしくって」
「なるほどね。……あなた、久しぶりに“慶子さん”になってみる?」

「ママも何よ。あっさり受け入れちゃって」
 妻の化粧台を借りてメイクしている最中、妻と娘の声が聞こえる。
「菜々華、あなただけ常識人ぶろうたって無理よ? あなただってレズじゃない」
「な……なんでママ知ってるの。違うわよ。あれは女子高の間だけのことで、ちゃんと男性
を愛せます。俊彰とか今でも好きだし」
「いいのよ? ママだってレズ……今の子は百合っていうのかしらね? なんだし」

「両親はまともだと信じてたのに……」
 ソファに座り込んでぶつぶつ言ってる菜々華の前に、きちんと女の姿に着替えて現れる。
 花を散らしたブルーのカットソーワンピースにクリーム色のフェミニンなジャケット。
 胸にはパッドも入れて、背中にかかるウィッグはパレッタで留めてハーフアップに。
 数年ぶりということもあり、娘の前でこの姿は流石に正直恥ずかしい。

「慶子さん、お久しぶりね。相変わらず美人」
「玲雄に比べると、全然だけどね。あの子、一度きちんとメイクしてあげたいわ」
 新しい“娘”になった我が子だけど、あの子は本当にダイヤの原石だと思う。職業メイク
アップアーティストの血が騒ぐ。

「ママね、慶子さんのこと最初すっかり可愛い女の子だと思い込んで、それで交際申し込ん
だら実は男っていうからびっくりしちゃって。
 で、ちょうどいいかって結婚したんだけど、あなた、無理させちゃってごめんなさいね」
「まあ、おかげで可愛い娘が2人もできたんだもの。……菜々華、私やっぱり変かな?」

「確かに見た目なら、普通に美人に見えるけど……もう、やだ。この一家」
「こうやって並ぶと、美人姉妹に見えるわね。ちょっと妬けちゃうわ。そう言わずに、菜々
華も机の引き出しのペニバン持ってきて、一緒に慶子さんを可愛がってあげましょう?」
271名無しさん@ピンキー:2013/02/06(水) 23:51:13.31 ID:WV3MelzB
つCCCCC

なんじゃこの超展開www(褒め言葉です
272 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/09(土) 23:46:32.43 ID:/kRmwQC1
一応確認ですが、

「女装すると30代そこそこの美人に見える、実際には40代の2児の父親が、実の妻と娘から上下の口を
ペニバンで雌のように犯されるシーン」

って需要ないですよね。

正直、私は見たくないんですが。
273名無しさん@ピンキー:2013/02/09(土) 23:56:40.58 ID:Z1clVfLy
作者に任せる
274名無しさん@ピンキー:2013/02/10(日) 23:39:37.41 ID:8gfIUGO7
見てもイイ。というか見たい(いろんな意味で)
275 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/11(月) 00:01:23.95 ID:bbndN5Lm
では、いつかそのうち§21.5を投下することにして、続きの投下です。

「女装少年に振袖の着付けをするのはエロチックでいいよね」編。完璧に個人的なフェチに走ってしまったのはご容赦を。
§21.5を除けば、次の投下分で完結の予定です。


『Symbolon』 §22・朝島玲央 1/1 2007/04/18(水)

 春の風がスカートの裾を躍らせる。
 大学内で俊彰さん──同じ大学に入ったし、敬語は止めようって言われてるけど、まだつ
い出てしまう──俊彰と別れて、一人キャンパスを歩く。

 今となっては少女趣味が強くて少し恥ずかしいけど、低めの気温に少し寒さを感じるけど、
姉との件が思い浮かんで少し身がすくむけど、今日の服はこれ以外にないだろう。
 昨日が俊彰に告白してから──『玲央』という少女が世界に生まれてから──ちょうど3
年目。その翌日である今日は、この服を買って3年目になる。

 フリルの一杯ついた、オフホワイトのシフォンのマキシワンピに、ミントグリーンのニッ
トのボレロ。俊彰からの初プレゼント。思えばこの衣装で色んな体験をしてきたものだ。
 この服で、今日、大学の皆にカミングアウトするのだ。

 これまで男の格好で会っていた人と、女の姿で会う。どこもおかしくない。本来のあるべ
き姿に戻るだけだ──そう自分に言い聞かせても、脚の震えが止まらない。
 それでも立ち止まっていられない。
 右手の指で、昨日もらった左手薬指の婚約指輪をなぞり、深呼吸して教室に入る。

「山本さん、友近さん、おはよう」
 既に席に座って喋っていた知人2人に、勇気を出して挨拶。
 山本涼香さんは同じ高校出身で唯一の同学部生(というか『乙女事件』の主犯だ)。友近
さんは大学に入ってから出来た女の子の友人だ。

「えっと……?」
「おー。レオか! 見違えたぞ! 可愛くなちゃってもう」
 戸惑ってすぐにピンと来ない山本さんと違い、友近さんがすぐ分かったのが意外だった。
「レオのお洒落姿初めてだけど、想像以上に破壊力たけえなあ。男か? 男出来たんか?!」

「……朝島、あなた女装嫌がってたのに、なんでそんな格好を?」
「ん……? え? 女装? レオって女の子だよね?」
「いや、昨日まで普通に男の格好で来てたし、意外なんだけど……私、体と戸籍は男です」
「うっそだ──────────っ!!」

 女の服で来たことを驚かれると思ってたら、男であるほうを驚かれてしまった。
「いや本当よ? 高校3年間ずっと男子だったし、修学旅行も男風呂だったし」

 教室にいた他のメンバーも「何の騒ぎ?」「朝島さんが男だったんだって」「嘘、いつ告
白しようか迷ってたのに」「名簿の間違いじゃなかったのか」「リアル男の娘キタ──!」
 と大騒ぎ。始業のチャイムに救われたものの、このコマは初回のガイダンスのみで早く終
わったので人だかりができてしまった。指輪に気付かれてまたひと騒動。

 そんな感じで夕方まで過ごし、7時に落ち合って、俊彰と2人で帰りの電車に乗る。
「今日はどうだった?」
「……ん。本当、私は周りの人に恵まれてきたんだなぁ、って」

 嫌な言葉もあった。無理解もあった。でも俊彰は私に優しく微笑みかけ、そして着ていた
コートですっぽりと私の体をつつんでくれた。その温かさが私を癒してくれる。
 嫌な言葉もあった。無理解もあった。それでも俊彰と一緒なら越えていける。そう思った。
276 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/11(月) 00:03:05.39 ID:bbndN5Lm
 §23・田中純也 1/3 2008/03/25(火)

「おーい! 田中──! こっちこっち」
 春の陽気が燦燦と輝く公園。待ち合わせの時間10分前に到着すると、シートから立ち上がっ
た俊彰が手招きしていた。火曜昼過ぎの公園の中、満開近い桜がとても綺麗だった。

「菜々華、おひさ」
「えっ、祥子?! 何そのお腹?!」
 俺の知らない綺麗な女の子が、びっくりした顔で祥子と挨拶してる。

「順調に行くとゴールデンウィークごろに出産かな。もう重くて大変よ」
「就職したら結婚申し込もうと思ってたのに、『出来ちゃった』だもの。予定崩れまくり。
 ……初めまして。今度、祥子の夫になる田中純也です。篠原の友人ということで、今日こ
の場にお招きに預かりました次第」

「私は朝島菜々華。祥子とは小学校からの友人だけど、会うのはもう4年ぶりになるのかな」
「実は田中と菜々華は、大学1年3月の合コンで1回会ってるんだけどね。覚えてないか」
「あー、そういえばいたいた。こんな美女、忘れていたとは慚愧のいたり 」

「わたしは朝島みちる、菜々華の母親です」
 シートの上にいた最後の一人、40前後くらいの、でもこれまた綺麗な女の人が自己紹介。
「そういえば篠原、学会がどうとか言ってなかったっけ?」
「うん、昨日発表済ませたばっかり。今日これが終わったら、また大阪に戻って明日も参加」
「お前のそういうとこ尊敬するわー。俺、就職まで余裕ぶっこいてるのに」

「学会1日サボりの理由が身内の花見のためとか、バレたら教授に怒られそうだけどね。
 このメンバーで集まれる日ってなると、どうしても今日しかなくて」
「ところで、玲央ちゃんも来るんだよね?」
「もうそろそろ来るんじゃないかな……って丁度来た。おーい、こっち!」

 篠原が立ち上がって手を振る方向を見ると、薄いピンクの服を着た超絶美少女が、30そこ
そこくらいに見える、白いスーツ姿の綺麗な女性と一緒に歩いてくるところだった。
「お待たせしました」
 ブラウス、スカート、カーディガン、レディススーツ。すべてがほとんど白に近いピンク
の取り合わせ。綺麗にお辞儀すると、天使の輪付きのさらさらの黒髪が肩からこぼれる。

「……玲央、ちゃん、でいいんだよね? すっごく綺麗になってまあ」
「あ、田中さんですね。ご無沙汰していました。祥子さんも久しぶりです」
「おー。俺のこと覚えていてくれたんだ。玲央ちゃん、お久しぶり。見違えちゃったよ」

「朝島慶子です。菜々華の従姉になります」
 俺たちの自公紹介後、白いスーツの上品そうな女性がにこやかな笑顔で自己紹介。
 朝島一家の3人が驚いた目で彼女を凝視してるのは、深く考えないほうがいいんだろうか。

「いやー、朝島一族って本当、美人ぞろいなんですね。玲央ちゃん然り、慶子さん然り」
「ほらそこ、仮にも嫁(予定)のいる前でそんなこと言わない」
「えっと……?」
「ああ、玲央ちゃん。純也には全部伝えてあるから」
「そうなんですか……最初にお会いしたとき、色々騙すことになってすいません」
277 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/11(月) 00:04:17.74 ID:2pRhKtso
 §23・田中純也 2/3 2008/03/25(火)

「いやいやいやいや。全然気にしてないから大丈夫。でも、本当信じられないや」
 どこからどう見ても、『絶世の』と形容をつけたくなるくらいのこの可憐な美少女が、実
は男だなんて、という部分を口にしかけてあわてて止める。

「それにしても、玲央ちゃん本当、綺麗ねえ。桜色の服も凄い似合って桜の妖精みたい」
「今日は、慶子さんに化粧してもらいました」
「ふふっ。こう見えても私、プロのメイクアップアーティストだから。でも本当、腕の振る
いがいがあったわ。……意外に純也さんも化粧栄えしそうな顔してるわよね?」

 俺の前髪を指でかきあげ、顔をのぞきこみながら慶子さんが囁く。
「ストップ、もうこれ以上女装キャラ増やさないで」
 菜々華さんが呆れた声で割り込む。どういう意味だろう。踏んだら即死級の地雷の予感。

「時間になったし、まあ、堅苦しい席じゃないので。今日は美味しく呑みましょう。乾杯!」
「「「「「「かんぱーい!」」」」」」


「へえ、じゃあもう完全に女の子として生活してるんだ」
「大学は最初の最初男の格好で通ったくらいで、4月にカミングアウトして以来ずっと男装
してないですね。この髪も地毛ですよ?」

「……なあ、篠原、良かったのか?」
 仲良さそうに会話してる祥子と玲央ちゃんを眺めながら、篠原に話しかける。
「今まできちんと話したことなかったけどさ、玲央ちゃんって、信じられないけど……その、
付いてるんだよな?」

「それなら別に、とっくに気にもしてないからなあ。世界中、どこをどんなに探しても、玲
央以上の女の子は存在しないよ。僕は玲央を愛してる。他の相手は考えられない」
「お前、真顔でそう言えるって凄いわ。エッチとかしてるのか?」
「もちろん。そっちの方面でも、玲央以上の女の子はいないと断言できるよ」

「な、なんで俊彰がここにいるの?」
 俺が返答に少し困っていると、突然女の子の声が響いた。

「あれ、結奈(ゆいな)。俊彰と知り合いだったの?」
 菜々華さんが、新しくやってきたその女の子に話しかけている。少し勝気そうだけど、こ
れまたそれなりに美少女だ。ナチュラル系のメイクと衣装が良く似合っている。

「えっと、誰だっけ?」
 ただ、俊彰のほうは戸惑っている様子。
「あ──、相川玲央! なんであなたもいるの」
 懐かしい響きだった。でも、玲央ちゃんのほうもやっぱり『?』を頭の上に浮かべている。

「相川のほうはまあ分からなくてもしょうがないけど、俊彰に分かってもらえないのはショッ
クだなぁ。城戸結奈です。もう、かれこれ2年ぶりかな」
「……なるほど、見違えたよ。うん、こっちのほうがずっといいね。綺麗になった」
「菜々華さんの家族の集まりって聞いて来たんだけど、一体全体どういう繋がり?」
278 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/11(月) 00:05:48.08 ID:2pRhKtso
 §23・田中純也 3/3 2008/03/25(火)

「えぇと、自己紹介しますね。私の本名は朝島玲央で、菜々華お姉ちゃんの実の妹です」
「妹、って……納得しかけたけど、確かあなた男だから弟だよね?」

「……どうした篠原」
「いや、良く考えたら今、元カノ2人と現在の彼女が一緒にいる状態ってことに気付いた」
「お前、いっぺんもげとけ」
 なんとも冴えない会話をこそこそしている男2人をよそに、女3人?の話が続いている。

「何、あなた達まだ付き合ってるわけ?」
「はい。結婚は大学卒業までお預けですが、両親にも了承をもらいました」
「むー。まあ、わたしらも他人のこと言えないし、おめでとうって言っておくわ」
「城戸さんとお姉ちゃんは、どんな関係ですか?」
「この子は大学の後輩で……あんたらに伏せてもしょうがないか。目下恋人中」

 ハンサムな主人公キャラに、その友人ポジの男キャラ1人。年齢高めの人もいるけど概ね
標準以上の容姿の女キャラ6人(うち男の娘キャラ1人)によるお花見イベント。
 『どこぞのエロゲみたいだ』と思っていた光景は、実はとんでもない異空間でありました。


 途中、篠原と玲央ちゃんが桜の木の下に移動したので、少し様子を見に行ってみる。
「お前ら、どしたー?」
「いや、3年前のこと思い出してた。確かお前とカラオケ行って別れたあと、丁度この公園
に来てね。あのときは散ったあとだったから、桜を見に行きたいねって話してたねって」
「へぇー。そうなんだ。あ、写真なら俺が撮るよ」

「ありがとな。あの時、玲央っていい子だと思ったけど、本当にここまで最高の子とは思わ
なかった……その服って、確か僕が『桜色の服も似合うだろう』って言ったからだよね」
「うん。でもその後、色んな人が私にこの色の服を奨めてくるし、『やっぱり俊彰は私のこ
とちゃんと分かってくれてるんだなあ』、って」
 そのまま手を取り合って、満開も近い桜の下、唇を重ねあう2人の写真をパシャリ。

 カメラを2人の足元に置いて、シートに戻る。
 祥子の隣に座って手を取り、少し無理やり気味に唇を重ねる。
「なあに、純也。柄でもなく突然」
「いや、あの2人のラブラブ空間がきつかったから、中和したくて」
 桜の下に指を差すと、2人はまだキスを続けているところだった。
「……ありがと」
 祥子は他の人に聞こえないように、小さな声でそっとお礼を言ってくれた。

「あら、この声」
 桜の木の下、優しい声で玲央ちゃんが歌を歌っている。春を告げる恋の歌、穏やかな旋律。
皆も──それどころか、近くにいた関係ない他の客も会話をとめて、その歌声に聞きほれる。

 春の風が、桜色のスカートの裾をそよがせる。
 服の色と華奢な身体も相まって、祥子じゃないけど本当に『桜の妖精』そのもののの姿。
 いつの間にか俺が流していた涙を、祥子がそっと掬い取ってくれた。
 なんだか心の奥底に溜まっていた辛さを、そっと癒してくれるような、そんな歌声だった。
279 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/11(月) 00:07:20.02 ID:bbndN5Lm
 §24・篠原俊彰 1/3 2008/03/27(木)

「俊彰、大丈夫そう?」
「まあ、玲央の希望だし、やってみるよ」

 学会も終わって、(無理やりねじ込んだ花見を除けば)久しぶりに完全フリーの一日。
 25日に一緒に移動して、翌日昼間は別行動、夕方落ち合って大阪の街でデートして食事。
 京都に移動して旅館に泊まり、翌朝朝風呂のあと、玲央の着付けにチャレンジ。
 旅館の人は「着付けするなら手伝いますよ?」と言ってくれたけど、そうもいかないのが
少し面倒なところではあった。

 しかし和服って、名前と用途のよく分からないパーツがありすぎて大変だ。
 目の前には、一糸纏わぬ姿で立っている玲央。
 どんな服を着ていても見とれてしまう玲央だけど、この姿が一番綺麗だ。内側から輝くよ
うにすら見える純白の肌はとても滑らかで、神秘的なくらいだった。

 それでも寒そうにしているのを放置するわけにもいかないので、事前にネットで調べて印
刷しておいた、振袖の着付けの手順に従って着付けを開始。
「そういえば、下着は付けないの?」
「お母さんからは、和服では下着はつけないものだって言われた」
 ネットで調べた限りではそうでもなかった気がするけど、まあ経験者の言に従おう。

 髪は予めアップで纏めてあるので、まずは一番最初に足袋を履かせる。
 小さな足が相変わらず可愛い。思わず足の指先にキスをしてしまう。
「ちょ、ちょっと俊彰!」
「うん、続けるよ?」

 次は裾よけ。さらさらの白い巻きスカート。今度はきゅっとしまったお尻にキスをして、
腰に回して紐を縛る。長さが丁度よくて余らなかったのでそのままに。
 次は肩にキスをして、肌襦袢を羽織らせる。何度も何度も体験したけれども、何で玲央の
肌って、どこもこんなに柔らかくて甘いんだろう。

 タオルでありすぎるウェストのくびれその他を均して、腰紐で結ぶ。
 鎖骨の窪みもガーゼを巻いて補正。これは本当に面倒そうだ。
 うなじにキスをして、桜色が綺麗な長襦袢を着せ掛ける。

 他は反応を抑えていた玲央も、ここは弱点ポイントの一つだけに、「ゃん……」と喘いで
身をよじらせる。玲央の甘い香りがあたりに漂う。しまった。やりすぎたかも。
 大きくなり始める僕の股間をあえてスルーして、参考ペーパーをめくりつつ長襦袢の調整。
 母親譲りだけあって、裾が5cmほど短い。ここは成人式前に買いなおすべきか。

 衿の後ろから見えるうなじが、裸のときよりもずっとセクシーに思える。裸の玲央は、む
しろ綺麗過ぎて芸術品のような印象になるだけに。
 賛嘆しつつ、衿の合わせ目も調整。伊達締め?(そろそろ分からなくなり始めてきた。細
めの帯だけど、これでいいんだろうか)で長襦袢を締めて調整。

 葉桜の色の伊達衿をつけた桜色の振袖を手に取り、肩に着せ掛ける。
 衿の位置をあわせて首の後ろでクリップで留め、裾あわせをして上前をあわせる。ここが
難しくて、3回くらいやりなおしてしまった。
280 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/11(月) 00:09:15.63 ID:2pRhKtso
 §24・篠原俊彰 2/3 3月27日(木)

 腰紐をきゅっと絞る。
「ん……っ」
「大丈夫?」
「ちょっときついけど、もう少し絞らないと駄目なんだよね。もっと力を入れて……」
 言葉に従い、腰紐を絞る指先に、少し力を込める。

「『身八つ口から手を入れ、おはしょりを整える』ってあるけど……『身八つ口』って何?」
 ここまでは一応進んでいたのが、メモの内容が分からなくなる。
 二人で首をかしげたあと、目をつぶり、宙で仕草を繰り返し、思い出そうとしてる玲央。

「あ、分かった思い出した。ここのことだ」
 少しあって、両手を袖の下の切れ目に差し込んで、前後のおはしょりの部分を調整する。
「ここの切れ目、女の和服にしかないんだってね。そんな話は覚えてるのに、肝心の部分が」
 そんな話を聞いたあと、背中の中心をきちんと合わせ、衿を馴染ませる。

 コーリンベルトと帯板をつけて、衿を整える。伊達衿と綺麗に見えるように位置合わせ。
 更に色々細かく合わせたあと、帯を巻く。凝った結び方はできないのでお太鼓に。
「しかしこれ、一人で着付けできる人って凄いと思うわ。どうやってやってるんだろう」
「慣れかなあ……お母さんのときは、何をやってるのか分からないくらいスムーズだったし」

 帯を締め、帯締めまで結び終わったときには、開始からもう1時間以上が経過していた。
 しかし着付けって、緊縛趣味の人間が考えたんだろうか。僕にはそんな趣味は無いのに、
何本もの紐で縛り付けられていく玲央の様子を見ていると、やばい感覚に襲われそうだった。

 写真では見たけど、直接は初めてな玲央の和服姿。桜色の振袖が良く似合って妖精のよう。
「和服着るたびに思うんだけど……これ、過剰包装だよね」
 腕を動かして袖の様子をみつつ、玲央が言う。時折、僕よりずっとシビアな言葉を発する
のもなんだか愛しい。それが、彼女の照れ隠しだと気付いてからは尚更だった。

「意外にこれ、舞妓衣装のほうが楽なのかな。振袖のほうが帯とかきつい……って、ぁん」
 その、可愛らしい唇に口付けを。

 僕がチェックアウトの手続きを取ってる間化粧をしていた玲央がやってくる。
「本当にとってもお綺麗なお嬢様ですね。着付けも本当にお上手で……」
 旅館の女将さんが、お世辞でもそう言ってくれたのはありがたかった。


 僕も男性用の着流しをレンタルして着替え、2人で手を繋いで少し涼しい京都の街を歩く。
「ほら、ここが例の『乙女事件』の写真撮ったとこ」
「ああなるほど。……そういえば、今日は舞妓姿じゃないんだね」
「あれ、観光客に追われてあんまりゆっくりできないから」

 実はあんまり状況は変わってないかもしれない。和服2人連れのカップルが余程珍しいら
しく、さっきから他の観光客から写真を撮られっぱなしだった。
 ちょっと寄り道気味に祇園白川の桜の下をゆっくり歩き、喫茶店で昼食を取り円山公園へ。
 桜の花より葉桜のほうが好きって言ってた玲央も、枝垂桜には流石に「わぁっ」と歓声を
上げて見とれていた。
281 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/11(月) 00:11:31.41 ID:2pRhKtso
 §24・篠原俊彰 3/3 3月27日(木)

「振袖って、やっぱりきついね」
「そうなんだ。『生まれたときから着慣れてます』って感じで凄く自然だったから、そうで
もないって思い込んでた……ごめんね」
 僕だけ着流しを返して、ロッカーに入れてた荷物を取って、そして『誰にも見られずに玲
央が振袖から洋服に着替えられる場所』ということで、悩んでラブホテルで休憩を入れる。

 で、まあその場所を選んだ時点で「こう」なることは見えてた通り……今僕は、背後から
衿の合わせ目から手を入れ、ツンと立った小さな乳首を長襦袢の上から指先で弄んでいる。
 衿元から覗くうなじの白さと、少しほどけた髪の黒さの対比がとてもとても綺麗だった。

 服を脱いだ僕の膝の上に、帯だけを解いた玲央を座らせて、後ろから抱きしめる。何枚も
の布越しに伝わる、少し冷えた身体と柔らかい感触がとても気持ちいい。
「ゃん……」
 控えめな喘ぎ声をあげるその唇に、深い深い口付けを。

 今日はなんだか、いつもより積極的な感じだった。桜色の振袖に身を包んだ、貞淑で清純
な大和撫子そのものの姿と対照的で、それが少しおかしい。
 僕の口の中に入り込んでくる舌を受け入れ、舌同士だけで互いに愛撫を繰り返す。

「玲央、愛してるよ……今日は僕、まだ言ってなかったっけ」
「朝、寝言で言ってたのは聞いたから、2回目かな……俊彰、愛してます……ぅふ。ぁん」
 唇を離し、愛らしい耳朶を甘噛みする。丁寧に丁寧に、右の耳たぶを舌と歯と唇で味わう。
「ぁ……んっ……ぁぁんっ!……ぁふんっ……ぁぁぁぁんっ!!」

 僕の膝の上、華奢な身体がビクビクと震え、一瞬の硬直のあと力を失う。
 裾の割れ目から右手を差し入れ、今度はその合間に息づく可憐な秘芯を指の上で転がす。
 幾重の布に覆われたその場所は、外からは特に何もないように見えるのに、直接触れると
もう完全に勃起状態だった。玲央の鼓動を指先が伝えてくれる。

 朝着せたので勝手は分かってる。何本かの腰紐を緩めて衣装を解放。
 クリストスへの刺激だけでまた絶頂を迎えた玲央の身体を持ち上げ、まだ辛うじて振袖の
体裁をなしている衣装を纏った体の穴に、もう完全に勃起状態の自分の分身を突入。
 これ以上ゆっくりしてると、大切な振袖に精液をぶちまけそうな自分が怖かった。

 ぐしょぐしょに塗れた状態の粘膜を押し分け、彼女の体内に僕の分身がぴったりと収まる。
 『男性器がちぎられそうな』という表現があるけど、まさにそれくらいの力が、僕の先端
から付け根まで均等にかかって押しつぶされそうなほどだ。
 たまらず迎える、一回目の射精。そこをスタートにして、ピストンを始める。

 玲央もいつもより更に激しく、より激しく腰をうねらせる。狭い空間の中、閉じ込められ
た僕の分身に複雑極まりないパターンで刺激が加わり、“その場所”だけでなく全身を快感
が支配する。
 僕の身体にしがみつこうとするも、制動の利いてない身体が跳ねるように動く。
 その度に振袖の袖が大きくベッドの上を舞い、まるで一面の桜吹雪を見ているようだった。

 その身体に何度も何度も精子を注ぎ込み、ついには失神してぐったりしている玲央の髪を
撫でる。家に戻るのは、もうあと1日延びそうだった。
282名無しさん@ピンキー:2013/02/11(月) 11:21:01.03 ID:IaYuwITJ
つCCCCCCCCCC
283 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/16(土) 15:58:53.95 ID:T6OQ4p1I
§24・篠原玲央 1/7 2011/06/14(火)は、>>43をご参照ください。
──
『Symbolon』 §24・篠原玲央 2/7 2011/06/14(火)

 結婚式も終わり、着替えることなくウェディングドレスの姿のままホテルに移動。
 流石に注目を浴びて恥ずかしかったけれども、同時にそれを快感に思う自分もいた。
 このドレスはデザインから私の完全手作りなだけに、尚更だ。

 胸元の開いたドレスが着れない私のこと、前はホルターネックで完全に隠す形で留めて、
代わりに肩と背中を大きく開けている。
 刺繍や飾りのない無地のサテン生地で、スカートはパニエで膨らませたAライン。
 オーガンジー生地の白い布を、水着のパレオのように腰に巻きつけているのがアクセント。

 周りの皆が就職活動を続ける間に作っていた自作のウェディングドレス。生地代含め結局
買ったほうが安かった気もするけど、自分ではかなり満足できる出来だった。
 白に近い色の服を着ることの多い自分でも、全身、完全に纏ったその“純白の存在感”が、
なんとも恥ずかしくも誇らしい。

 お義母さまの遺品の中にあったヴェール、肘上までのロンググローブ、ブライダルインナー
を身に付け、お母さんからもらった大粒のパールのイヤリングを耳元で躍らせる。
 メイクは慶子さんが、髪のセットはお母さんが気合を入れてやってくれた。
 お義父さまは割とおろおろするだけだったけど、でも存在自体がとてもありがたかった。

 親たちの愛情を受けて、今ここに結婚式を済ませた一人の新婦としてここにいる。
 本来ならば親から罵倒と勘当を受けても仕方のない私だけに、その事実が涙が出るほどに
嬉しかった。
 いや、本当に涙が目尻に溜まっている。昔だったら号泣していたかもしれない。

 純白のタキシード姿の俊彰にエスコートされるて、そこがバージンロードであるかのよう
にホテルの廊下を進み、私たちの泊まる部屋の前に。
 入ろうとする私に「ちょっとそこで待っててね」と言って、ドアストッパーを差し込んで
も閉まろうとするドアに苦心してる。

 結局通りすがりの白人男性にドアを押さえてもらって、ドレス姿のままお姫様抱っこの形
で俊彰の腕に抱かれて、ホテルの部屋に入る。
 笑顔でサムズアップするその男性に、同じく笑顔で手を大きく振って「Thank you!」とお
礼を言ったところで、ホテルの部屋のドアが静かに閉じた。

 私を抱いたまま室内でぐるぐると踊ったあと、大空と海の見えるベッドに座る。

「ね、俊彰。私重くなかった?」
「玲央の重さだけなら僕の理想どおりなんだけど、ドレスって意外に重いもんなんだね」
「このドレス、これでウェディングドレスとしてはかなり軽いほうなんだけどな」
「へえ、そうなんだ。……花嫁って大変なんだなあ」

「特にプリンセスラインのドレスなんて布地の山で重いし動きにくいし、コルセットは無茶
苦茶苦しいし、それでずっと笑顔を強要されるし、花嫁は割と意地と根性だったり」
 大学4年間、色々あった体験を思い出しながら語る。

「男は気楽で良かった……」
「でも綺麗なドレス姿で愛する人に抱いてもらうのは、やっぱり女の子だけの特権なんだよ」
284 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/16(土) 15:59:53.39 ID:T6OQ4p1I
 §24・篠原玲央 3/7 2011/06/14(火)

 潮騒の音が聞こえる。
 ホテルの窓を大きく開け広げ、ベッドに並んで腰掛けたまま、大海原に沈む夕日を見守る。
 良く晴れた空の下、真っ赤な光芒を放って海に溶けるように消え、宵闇があたりを支配し
始めるまでを、身動き一つすることなく、言葉を発することもなく。

 星が瞬き始める頃合になって、ようやく二人同時に大きくため息をつく。

「……ねえ、俊彰。私と結ばれたこと、後悔してない?」
「唯一、後悔してることがあるとすれば、玲央の手を一度手放してしまった事かな。あの時
はそれ以外、玲央の幸せを守る方法がないと思いこんだけど、とんでもない間違いだった。
 他には何一つ後悔なんてない。……玲央のほうこそ、後悔してない?」

「後悔、か。……もっと早くに、皆に本当の私を知ってもらうべきだったことかな。
 高校3年間、男子生徒のふりをして生活するのは辛かった。女の子として生活したかった。
 ……もう少し私に勇気がありさえすれば、実はそれは可能だったのに」
「カミングアウトって、物凄い勇気が必要ってのは分かるから、出来ないからって誰も非難
できないよ。逆にそれをやり遂げた玲央と慶子さんのことを、僕は深く尊敬してる」

(ちなみに私の大学カミングアウトと前後して、(元)お父さんもカミングアウトし、以来
職場にも女性として通っている。お母さんとの夫婦?仲は前よりずっと良好なくらいだ。
 ついでに菜々華お姉ちゃんは結奈さんと同棲中だけど、私たちと違ってよく喧嘩してて、
別れて「ノーマルになるんだ!」と宣言して男と付き合っては元鞘に戻るのを繰り返してる)

 それだけ言って、言葉を捜すようにしていた俊彰。ベッドを降り、私の前に跪き、私のロ
ンググローブに包まれた手を取って、指同士を絡めあって、宣告するように言う。

「……僕、篠原俊彰は、玲央のすべてが大好きです。弱いところも。泣き虫なところも。意
地っ張りなところも。普段隠してるけど実はかなり照れ屋で恥ずかしがり屋なところも。
 一途なところも。何事にも一生懸命なところも。そして底に秘めた強くて優しい心も。
 僕は結構、我侭で注文つけることが多いけど、きちんと付き合ってくれるのも好きです」

 彼の優しい視線に促されるまま、私は応える。
「私、篠原玲央は、俊彰のすべてが大好きです。優しすぎて時に優柔不断になるところも、
いい格好したがりなところも、自分は八方美人なくせに独占欲が強いところも。
 人一倍に努力家なところも。誰も知らない、未知の世界に憧れる少年のような心も。
 私の心が砕けそうになったあの夜、駆けつけてくれた時の真剣な眼差しが好きです」

 しばらくそのまま見詰め合ったあと、彼がふっ、と息を大きく吐き出す。
「そっか……そういえば君はもう、『篠原玲央』なんだね。感慨深いや。
 朝島玲央ちゃん、これまで長い間ありがとう。そして、篠原玲央さん。僕の、僕だけの大
切な花嫁さん。これからの一生を宜しくお願いします。十年後も二十年後も、五十年後も」
 そっと優しく、2人の唇が重なる。俊彰、私はあなたの唇が好きです。

 随分長い間互いの唇の感触だけを楽しんだあと、舌同士を絡ませあう。
「ちゅぱっ……ちゅぴっ……ぷちゅ……くちゅ、ちゅぴっ、はむっ……んっ……」
 彼の器用すぎる舌先による絶妙な愛撫で、優しく暖かな快感が私の全身を包み始める。
 確かな幸福が手足の指先に至るまで満ち溢れていくのを感じる。
285 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/16(土) 16:01:06.68 ID:T6OQ4p1I
 §24・篠原玲央 4/7 2011/06/14(火)

「ん。少しだけ待っていてね……」
 唇の味わいを堪能したあと、私は立ち上がってスカートに手をかける。
「ああ、そうか。僕も服を脱がないとだね」

 腰のオーガンジーの布を外し、ワンピースのように見せて実はツーピースだったりするド
レスのスカートを脱ぎ去る。
 ヴェールとアクセサリ類を机の上に置き、シニョンでアップにしていた髪を解放する。
 今年の3月一度ばっさり切った髪は、肩にかかるくらいにまでようやく伸びてきた。

 首を振ると、つけていた柑橘系の香水の匂いがあたりに漂う。
 むき出しの肩を、髪がくすぐる感覚が気持ちいい。そういえば高校時代、自分の髪でこの
感触を味わうことが遠い憧れだったことを、ふと思い出す。
 あの時代、切ないほどに夢見ていた色々なことが、今はありふれた日常になってる。
 そんな奇跡に、改めて感動を覚える。

 これもまた憧憬の対象だったヒール付きの靴を脱ぎ、ストッキング、ショーツ、ガーター
も脱いだ上で、先ほど外したオーガンジーの布を改めて腰にしっかりと巻きつける。
 かすかに透ける、アンシメントリなミニスカートの出来上がりだ。
 特に左脚は付け根まで丸見えで、太腿の様子がよく分かる。

「……なるほど、そんな風になるんだね。色々苦労してたのは知ってるけど、こうして実際
に着てるところを見ると……うん、言葉で形容できないくらい、とっても綺麗だ」
 すっかり裸になった俊彰が、いつの間にか出したカメラのシャッターを押しながら言う。
「ん。ドレス姿のままエッチしやすいよう、私なりに考えてみました。
 俊彰、こういうの実は好きでしょ。今まででも着衣プレイのほうがずっと燃えてたし」

「どうなんだろう……僕は玲央の裸の姿が一番好きだけど、なんだか綺麗過ぎて芸術品を扱っ
てるみたいで、どこまでやっていいのか怖すぎる部分が、確かにあるのかも。
 ……でも思い出してみれば、玲央も着衣プレイのほうの時のほうが積極的だった気がする」
「そっかな? ……ん、そうかも。お似合いの二人ということで」

 7年目にして、今更初めて言葉にして確認する事実に2人笑いつつ、ベッドに仰向けに寝
そべった俊彰の上に跨り、69の体勢になる。
 俊彰は気を使って『クンニ』と呼んでくれるけど、それはやっぱり私の男であるシンボル
なわけで、それを考えるといつも申し訳なさと躊躇いと羞恥が心を埋める。
 それでもなお、彼の絶妙すぎる舌技と、全身が蕩けるような快感には抗いがたい。

 彼が重点的に責めて来るのがむしろ、彼がフェラチオされて気持ちいいと感じているやり
方、ポイントだと気付いてからは尚更だ。
 目の前に、俊彰の愛しい愛しい分身がある。色も形も大きさも、私の理想どおりの存在。
 それを見つめただけで、条件反射のようにイキそうになるのを押し留める。

 思わずしゃぶりつきたくなる自分を抑えつつ、まずは逞しい筋肉の乗った太腿の付け根か
ら、唾液をたっぷりと含んでゆっくりと舌を這わせる。
 ほとんど同時に、自分の股の間に彼の舌とその温かい息遣いを感じる。
 私が俊彰に敵わないことは多すぎるけど、舌の動きの巧みさもその一つだ。
 “師匠”の動きを可能な限り模倣するように、彼の下腹部と、竿の付け根の味を味わう。
286 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/16(土) 16:03:01.11 ID:T6OQ4p1I
 §24・篠原玲央 5/7 2011/06/14(火)

「ふっ……ん……じゅ…ちゅうっ……ちゅぴ……じゅる……んっ」
「くちゅ……ぴちゃ、くちゅ……ん……ちゅぱ……ちゅる……れろ……」
 まるでデュエット曲を歌うように、2人同時のフェラチオの音が室内に行き渡る。
 耳に残る潮騒の音を伴奏にして奏でられる、心奪われる音楽の響きに陶然とする。

 もう何十回、いやたぶん何百回もの回数、口にしたのだろう。
 それでも少しも飽きることのない、彼の逞しい分身を楽しむ。
 私の口には少しきつめな亀頭を唇で包み、鈴口に沿って舌を動かす。溢れる先走り液の味
が好きだ。自分の股間にあるものも彼の口に含まれている感覚が、恥ずかしくも気持ちいい。

 くるりと舌を動かして亀頭すべてを舐めるのを何度か繰り返したあと、喉の奥深くへと一
気にくわえ込む。私のものは最大サイズでも彼の喉奥まで届かないので、これは私の特権だ。
 そのまま暫く静止し、ゆったりした気分で味わう彼の感触。
 そして最初はゆっくりと、段々激しく舌で彼の竿の部分をなぶる。彼の動きと同じように。

 私の口が、彼専用の性器になった錯覚を覚える。喉の奥が子宮口と化し、彼の先端をぎゅっ
と締め付ける。唇が膣口となり、彼の根元近くを締め上げる。
 ふと思いついて、左手で自分の髪の毛をつまみ、その先端で彼の会陰部とタマタマをくす
ぐる。もう少し楽しむ予定だったのに、これは効果覿面すぎた。

 口の中を、彼の分身が暴れまわって飛び出しそうになる。。
 粘度の高い熱い液体が恐ろしい勢いで噴き出し、口から溢れそうになる。
 やっと思いで押さえ込み、飛び出すのを阻止する。主観的には何分もそうしたのち、よう
やく流れが止まる。垂れださないように口を離し、白い液体の味わいをしばし愉しむ。

「なんで俊彰のってこんなに美味しいのかな」
「そうかな。玲央のはとっても美味しいけど、僕のはまずくない?」
「私のは絶対、美味しくないよぉ。俊彰のは舌がとろけそうになるくらい美味しいのに」
 何度も話し合った記憶があるけど、ここだけは互いに分かり合えない謎な部分。

 姿勢を入れ替え、身体同士を密着させて互いの舌と指先による愛撫を受け入れる。
「むき出しの肌が、裸よりエロチックでいいね……ドレスの肌触りも、なんだか新鮮でいい」

 そんな事を言った俊彰の身体に、自分のサテンのドレスに包まれた胴を擦り合わせる。腰
に巻いたオーガンジーの布で、そっと包むように、ずっといきり立ったままの彼のものに刺
激を与える。シルクのロンググローブをつけた指先で、太腿と首の後ろを重点的になぞる。
 純白のドレスが、彼が新しく出した飛沫によって白く濡れるまで、1分とかからなかった。

「ね。私の肌と、ドレス。どちらが気持ち良かった?」
 彼の指先が、私のむき出しの背中、お腹の部分、手首を順番に撫でる。
「手袋がちょっと上くらいで、それ以外は玲央の肌のほうが、ずっと気持ちいいかな。
 でもそれ以上に、僕だけの花嫁さんがエッチなことをしてくれてる感覚がなんだか素敵だ」

「ん。そう言ってもらえると、このドレスを作った甲斐があったかな」
「かなり頑張って作ったのを知ってるから、なんだかもったいない気持ちもあるけどね」
「今夜、あなた色で染めてもらうことがこの子の使命だから。そう思うなら、もっともっと
染め上げてください。……ウェディングドレスの色が白いのは、そういう理由なの」
287 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/16(土) 16:04:34.50 ID:T6OQ4p1I
 §24・篠原玲央 6/7 2011/06/14(火)

 もうすっかり濡れっぱなしな私の穴に、彼のものが宛がわれる。
「はうっ……あぁん……んふっ……はぁぁん……」
 いつもは一瞬で通過することの多いその工程を、今日はあえてゆっくりと楽しむ。
 亀頭の熱さを感じる。カリ首の力強さを感じる。太い竿の部分に流れる脈動を感じる。
 腸内の粘膜が、いや全身の細胞一つ一つが、狂おしいほどの喜びの声をあげるのを感じる。

 私の『そこ』は、彼のそれを受け入れるための器官。
 たぶんきっと、私が生まれる前からそうだったに違いない。
 私という存在そのものが、彼を受け入れるために作られたものであるのと同じように。

 私は“両性具有”と呼び、彼は“元の一枚の絵”と呼ぶ、一つに結ばれた状態。
 私たちはいつもはその片割れの、2つに割られた割符の状態。この時間にだけ元に『戻る』
ことができる。
 足りてないパーツをきちんと嵌めたときのような、不思議な充足感に包まれる。

 初めて私達が結ばれた日を思い出しつつ、正常位でお互いの顔を見つめながら、ゆるく抱
き合ったまま、ゆったりとした時の流れに身を任せる。
 自分では力を入れないまま、身体の反応に任せて、彼の太さ、形、熱さ、力強さを愉しむ。
 何も意識しないまま、腸内の粘膜が彼の分身を一部の隙もなくぴたり吸い付くのを悦しむ。

「俊彰のあそこ、熱くて大きくて気持ちいい……私、もう、これ以外じゃ満足できないんだ」
「玲央のここ、温かくて柔らかくて凄く締まって気持ちいい。僕が、玲央以外とエッチでき
ない身体に変えられてしまったことは知ってるよね。……僕は、それがとても誇らしい」

 その言葉の嬉しさに、思わずあそこがぎゅっと締まるのを感じる。
 彼の分身が、与えられる快感に歓喜の声をあげ、ひくついた後、たっぷりのねばねばした
液体を私の体の中に振りまくのを感じる。
 その途方もない熱量に、私の躰が歓喜の歌を叫ぶ。
 嬉しい!!! 嬉しい!!! 嬉しい!!!

 身体の奥から泡のように喜びが浮かんできて、それがはじけるたびに、はじけた場所に1
箇所だけでイってしまいそうなほどの快感が襲う。
 何千個、何万個。その泡が全身くまなく覆って、ドレスに包まれた私の身体を翻弄する。
「はぅっ、ああっ! ぁぁあ!! はふっ! あはぁぁぁっ!」

 もう意味ある言葉は口にできない。意味ある言葉を思い浮かべることすらできない。
 魂の奥底から、開いた口を通して絶叫のような喘ぎがでるのを止めることができない。
 さきの射精を基点にして、彼が力強くピストンを始めているのに気付くのに少しかかった。

 抜ける寸前にまで、彼のものがスライドする。彼の大きなカリ首が、私のすぼまりを刺激
する。気持ちいい!
 身体を突き抜けてしまう錯覚を覚えるほど、体の奥深く深くにまで、彼の亀頭の先端が突
き当てられ、肉壁を強く叩きつける。気持ちいい!!

 全身から吹き出る汗に、ドレスがぐしょぐしょに濡れているのを覚える。
 意思とは関係なく、私の体が大きく震えるのを感じる。私の魂が大きく震えるのを感じる。
 喩えようのないほどの快感が、心と体と支配する。
288 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/16(土) 16:07:13.06 ID:T6OQ4p1I
 §24・篠原玲央 7/7 2011/06/14(火)

 いつもの──いや、いつもよりも遥かにずっと強い飛翔感が全身を包む。
 俊彰と翼を並べ、二羽の鳥のように自由に大空を駆け巡る。
 錐もみのようにくるくる飛んでいる途中、ふっと、二人の間の境界がなくなるのを覚えた。

 私は俊彰で、俊彰は私。
 私たちが生まれる前。私たちが2つの存在に分かたれるその前。もとの『一』に戻ったこ
とを、頭でなく魂で把握する。一対の翼で、天空を飛ぶ存在としての自分(たち)を認識する。
『うん、そうだね。これが僕たちの本来の状態なんだ』

 彼の考えが、言葉にすることなく直接流れ込んでくる。それと同時に、俊彰とこれまで培っ
てきたこれまでの出来事の記憶、これまでの思いが心に浮かぶ。
 俊彰の中で、私がどんなに大切に思われてきたか──自分が覚えてすらいなかった、過去
の私の姿がどんどん浮かんできて、そのイメージに圧倒されてしまう。

『さあ、飛ぶよ。もっと高く』
 いつもなら、天頂に達したところで途切れる私の意識。でも2人一体なら限界なんてない。
 遥かな眼下、丸く輝く青い星、白く輝く雲の流れ。その気高い美しさに見とれる。
『私、この星が好きです。苦しいこと辛いこともあったけど、それでもこの星が大好きです』
『僕も、この星が好きだ。何よりこの星には玲央がいる』

 表とは異なる月の裏面の様子を眺め、更に高く更に遠く。視界を埋め尽くして星々が輝く。
『これは……?』
『オリオン腕だね。僕たちの太陽はあのあたりだと思う』
 太陽系すら、ちっぽけな点にしか見えない空間。水先案内人である俊彰の存在が心強い。

 更に飛んで、天の川銀河の造形美に見とれ、局部銀河群の間を舞い、おとめ座超銀河団を
見下ろす空間まで来たところで戸惑う。
 2人心と体を共有し、世界を回るこの旅もワクワクしたけれど、俊彰。それでもやっぱり、
私はあなたと触れ合う存在としてこの世に在りたいです──

 そう、思った次の瞬間。
 私たちは2人、もとのベッドの上で横たわっていた。
「今のは……?」
「玲央も今のを感じてたんだ? ただの夢だと思うけど、でもすごい体験だった!」

 興奮した声で叫んで、ぎゅっと私の躰を抱きしめてくれた。
 その温かさ、鼓動、匂い、力強さが、さっきの旅の最後に感じた寂寥感を埋めてくれる。

「玲央が、どれだけ僕のことを想ってくれてるか、伝わってきてとても嬉しかったよ。
 玲央の中の自分が、相当美化されていて恥ずかしかったけど、それに見合う人間になれる
よう、もっと、ずっと、きっと努力するから」
「ん……」

 返事しようとした私の言葉は、彼の唇によって遮られた。
 でも、言葉なんかいらない。さっきみたいな不思議な体験もいらない。
 重ねる互いの身体、鼓動だけで、すべての思いが伝わる。
 その感覚が、とてもとても愛しく素晴らしいものに感じた。
289 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/16(土) 16:10:10.13 ID:T6OQ4p1I
 §エピローグ・篠原信彰 1/1 2013/02/16(土)

 土曜夕方、人の行きかう東京駅。
 新幹線のホーム、わたしと俊彰の2人で、ひかり号の到着を待っていた。
 福井にあるという母方の祖母の家に滞在するため、玲央さんが家を空けてからはや8ヶ月。
ずっと男所帯で慣れてたはずなのに、華やぎに欠けて寂しかったのは事実だった。

「新幹線をご利用いただきましてありがとうございます。間もなく……」
 ホームに滑り込んできた車内の窓に、それぞれ1人ずつの赤ん坊を抱えた美しい3人の女
性たちの姿が見える。そのうち一人がわたしに気付いたのか、笑顔で手を振っていた。
 完全に列車が停止したあと、順番にゆっくりと降りてくる。

「ただいま、俊彰。まあ色々アレだけど、この子もあなたの息子だから」
「お疲れ様、結奈。……それに玲央、菜々華も。真弓、忍、紫苑。元気にしてたかな」
 赤ん坊を抱えた3人の身体を、そっと順番に軽く抱きしめていく俊彰。
 通り過ぎる人が、どういう状況かと怪訝そうな顔をするのが少し面白かった。

「お義父さま、長い間家をあけててすいませんでした。この子がお孫さんの真弓です」
「初めまして、真弓くん。わたしが君のお爺さんの信彰です。……お母さん似なんだね」
 実際には甥にあたる乳児を抱いた玲央さんは、母性愛に溢れて眩しいくらいに美しかった。


 最初の発案者は、(輝彰が最期の瞬間に命がけでかばった)結奈さんだという。
 朝島家で菜々華さんと事実婚のような形で暮らしていた彼女が「俊彰の子どもを生みたい」
と言い出したのが1年くらい前らしい。
 紆余曲折の後、俊彰の精子を用いた人工授精で菜々華さんと結奈さんが妊娠し、年末から
正月にかけて次々とわたしの孫にあたる赤ちゃんたちが誕生した。

 菜々華さんが生んだのは双子で、そのうち弟にあたる真弓のほうを、『玲央さんが生んだ
子ども』として篠原家で、姉の忍を朝島家で育てることにするのだという。
 結奈さんが生んだ紫苑と名付けられた男の子も、朝島家で育てるという話。
 かなり特殊な事情になるが、玲央さんを迎え入れた時点で既にじゅうぶん特殊だったのだ。
 諦めていた孫の顔が拝めるのなら、どうと言うことはない。

 在来線を降り、駅前でタクシーを捕まえ、菜々華さん達と別れて家へと向かう。
「あなた。はい、あーん。……2日遅れだけど、バレンタインデーのチョコレート」
 真弓を抱いてる俊彰に、玲央さんがポシェットから包みを取り出し、それを口に入れた。
 少し驚いていた息子だったが、細い白い指に誘われるまま味わって最後まで食べきる。

「うん、美味しいよ。ありがとう」
「まだまだ、あなたの腕には達してないけど、がんばりました」
 バックミラー越しに、たぶんチョコレートよりも甘いキスを交わす2人の姿が見えた。


 ──ある日“少女”は、運命の少年に出会い、そして恋に落ちました。
 色々な出来事がありましたが、その少女は自分の半身である少年と結ばれ、末永く幸せに
過ごしたそうです。
 これはそんな、ちょっとだけ変わった少年少女たちの──
 ──でも、どこにでもある、ありふれた、ひとつの恋の物語。         <完>
290 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/16(土) 16:15:21.44 ID:T6OQ4p1I
長々と失礼しました。
$21.5とか、他に追加エピソードはあるかもしれませんが、この2人を追っかけるのはとりあえず完了ということで、
これににて俊彰&玲央のお話は完結です。

ご拝読頂き、ありがとうございました。

……次はもう少し萌えられる作品書きたいなと反省しつつ。
291名無しさん@ピンキー:2013/02/16(土) 16:26:14.80 ID:ZSO4IO27
うおーーーーー乙乙乙乙乙〜〜〜〜!!!!!

久々にリアル投下に遭遇したけど、黄泉ながら背筋がゾクゾク来たのは初めてかも。
最高の作品をありがとうございました!!
292 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/16(土) 18:01:40.26 ID:T6OQ4p1I
>>290 やば。最後の最後にミスしとる……「$」じゃなくて「§」、「拝読」じゃなくて「高覧」じゃないか。
大変失礼をいたしました)

感想ありがとうございました。楽しんでいただけてなによりです。
293名無しさん@ピンキー:2013/02/22(金) 06:25:40.99 ID:fPx6MKhB
読者もっと居たような気がするが、どこに消えたのか
294 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/22(金) 18:56:24.43 ID:dWPInSIE
まあ、反応に困るようなことしちゃいましたし、しょうがないかなと。
今回投下分も反応に困りそうですが。

最初>>48を書いたとき、まさかこんなになるとは思いませんでしたが。

『弟はお姉ちゃん』 シチュエーション1 2月22日 1/5

 ネコミミである。
 まごう事なき、ネコミミであった。

 目の前には、黒と白のスカートの短いメイド服を着て、頭にネコミミのカチューシャをつ
けた少女?が立っている。
 肩がパフスリーブの長袖で、フリルのつきまくった白いエプロンが胸を強調している。
 体育会系なのか背が高く筋肉がついているが、そこそこ美人の部類には入るだろうか。

 身動きするたびに、“たわわ”、という表現の似合いそうな豊かなオッパイが震える。
 ウェストはきれいにくびれ、大きく膨らんだスカートとの対比がいい感じだった。
 脇の下あたりまで伸びているさらさらの黒髪が綺麗だ。脚は黒いニーソックスで包まれ、
筋肉質だけどすらりとした脚の絶対領域がいい感じだと、少し思ってしまった。

「……なんでネコミミなの?」
「知らない? 今日はにゃーにゃーにゃー(2/22)で猫の日なんだって」
「すまん。質問間違えた。何で俺もネコミミなの?」
「可愛いからに決まってるじゃない。似合ってるわよ? 雅明……いやアキちゃん」

 今、俺が立っているのは等身大の鏡の前。
 補正下着やパッドで整えられた俺の体のラインは確かに女のものに見えるし……昼すぎか
ら2時間もかけて延々と厚化粧されたはずなのに、顔はナチュラルメイクの女の子に見える。
 『女は化ける』とは言うけれど、こんな形で自分自身で体験するはめになるなるとは。

 しかしまあ、クリスマスにサンタ、正月に巫女ときて、「メイドの日ってあったっけ?」
と思ったものだけど、自分で着るハメになるのは予想外すぎた。

「どこに出してもおかしくない美少女ぶりだと思うよ♪ こんなに綺麗になると思わなかっ
た。惚れちゃいそう。……アキちゃん。僕と付き合ってくれないかな」
「ごめんなさい。あたしにはもう、付き合ってる、大事で大好きな人がいるんです」
「ちぇ……今度外でデートしてみたかったのに」

 鏡の中、俺と並ぶ形に移動してきた、おそろいのメイド服に身を包んだ人物が舌打ちする。
 俺と同じようにネコミミをしている以外に、短いスカートを持ち上げてS字型の猫尻尾が
ついていて、動くたびに先端に付けられた鈴がチリンチリンと鳴る。

 こちらは掛け値なしの美少女で、同じ衣装なはずなのに(だからこそ?)違いが際立って
見える。俺のほうが5cm背が高いのに、ウェストの位置はこの子のほうがずっと上。
 顔の可愛らしさ大きさの違いが丸分かりだし、首の細さも肩の広さも大違い。
 ウェストニッパーで絞った俺のものより、ウェストだってずっと細い。

 同じ“女装男”なのに、この差は一体なんなのだろう。
 ──はい、こいつは俺の義理の『弟』の俊也です。

「今のお断りの言葉、ちょっとジンと来ちゃった」
 その俊也と見分けがつかないくらいそっくりな、もう一人の美少女が俊也と俺を挟む形で
傍に立つ。ただ着てる衣装は一緒でも、こちらは耳はあっても尻尾はない。
 義理の姉にして俺の恋人、ついでに現役大学生モデルであるところの悠里である。
295 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/22(金) 18:58:50.80 ID:dWPInSIE
 2月22日 2/5

「でもアキちゃん、ちゃんと女の子になりきってて偉いねえ」
「少しノリノリで返事しただけだって。これ凄く恥ずかしいんだから」
「そんなこと言っちゃって、ここなんてずっと勃ちっぱなしじゃない」
 そう言って、悠里がその繊細な指先で、俺の股間をなで上げる。
「ぁんっ……」
 思わず声をあげて、スカートを押さえて前をガード。

「可愛い声だなあ。それなのに、なんだろうこのいやらしい物体は。完全にビンビンじゃな
いの。女装するのってやっぱり興奮する?」
「愛しい愛しい彼女の下着に興奮するのは、健全な男の子としてごく自然なことです」
 キリッとした顔で言ってみたけど、締まらないことおびただしい。

 今俺が穿かされているのは、脱ぎたてほやほやの悠里の白のショーツ。男物とはまったく
違う柔らかさと、感じる彼女の体温に勃起が収まらない。
 すぐ傍の彼女が、短いスカートの下はノーパンでいることを知っているから尚更だ。


 ベッドの上、悠里とぴったり並んで腰掛ける。
 尻尾が邪魔で座れないのか、俊也は悠里のすぐ傍で立ちっぱなしだけど。
 無意識に膝をぴったり閉じて座りかけて、慌ててわざと胡坐をかいてみたり。
「……でも本当、雅明がこんなに美人になると思わなかった。モデルでもアキちゃんより不
細工な子一杯いるよ? 背高くて見栄えいいし、モデルやってみない?」

 俊也の尻尾を右手で軽くもてあそびながら、悠里が言う。
「いくらなんでもそれは言いすぎ……ありえないってば」
「まあ少なくともうちのクラスの女子で比較するとトップレベルだよね♪」
「アキちゃんって、どっかで見た顔だと思ったら、ママにそっくりなんだよねー」

「ママ、美人だもんね♪ 私もママみたいな大人の女になりたいなぁ」
「それをお前が言うな俊也」
 会話の合間にも、ニヤニヤ笑いながら悠里が俊也の尻尾を揺らしている。
 鈴が鳴るたびに、俊也が太腿をもじもじさせて顔を紅潮させてるのが地味に気になる。

「だけど、ネコミミメイドって破壊力高いなあ。悠里みたいな美人がしてると特に凄いや」
「そんなに気に入った? また着てみたい?」
「俺が着るのは勘弁。……悠里。キスしていい? 女装男が相手はキモくて嫌かもだけど」
「どうぞどうぞ。いや、アキちゃん可愛いよ。全然キモくないよ。自信を持っていいよ」
 そういう自信は持ちたくないよなあ、と思う俺であった。

 正月以来、他の雑誌やら広告やら、時にはテレビ出演やらのオファーが増えてきて、いちゃ
つく暇も少なくなってきた彼女である。
 俺と違って、大学も真面目にきちんとこなしてるから尚更だ。
 バレンタインデーもまともにゆっくりできなかっただけに、今日の余暇は貴重だった。

 柔らかかくて温かい唇の感触に心が安らぐ。甘い匂いがほっとさせる。
「いいなぁ。私も混ぜて欲しいなあ」
 と、俊也がこれ見よがしに呟いているのはスルーする方向で。
296 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/22(金) 19:00:09.87 ID:dWPInSIE
 2月22日 3/5

「そういえば、この尻尾どうなってるの?」
 長いキスが終わったあと、好奇心に負けて、手を伸ばして俊也の尻尾を大きく押してみる。
「あぁん♪」
 鈴の鳴る音と一緒に、やたらと艶っぽい声が響いてぎょっとする。

「アキちゃんもその尻尾、興味ある? これは一本しか買ってないけど、もう一本買ってお
揃いでつけてみたら可愛いかも」
「なんか、凄い嫌な予感がするからやめとく」
「そんなことないよぉ♪ 凄く気持ちいいだけだよ♪ 何なら今から付けてみる?」

 そう言ってベッドに登って四つんばいになり、スカートをたくし上げて、男にしては丸い、
白くてつるんとしたお尻をあらわにする。
 悠里だけでなく、俊也も下着をつけてない……けど、俺が驚いたのはそこじゃない。この
猫尻尾、アヌスに直接突き刺さってるんだ。

「俊也、抜くよ」
 悠里がそれだけ言って、尻尾の付け根の部分を小さな手で掴んで、ゆっくり引き抜く。
「ぁふぅんっ……」
 その感触が余程気持ちよかったのだろうか。精液の匂いがあたりに漂う。

 色素の沈着したお尻の穴が丸く開き、何かを求めるようにひくつくのから目が離せない。
 スカートに隠れた俺のものは、今にも暴発しそうなくらいにギンギンに固まっていた。
「雅明、お願い……」

 懇願するような、悠里そのものの声。その声に誘われるように、ふらふらと近付く。
 そういえば、自ら進んで俊也を貫くのはこれが初めてだったな。その事実に気付いたのは、
俊也の腸内の温かい粘膜に、俺の分身がぴったりと包まれたあとだった。

「アキちゃん、あなたの体にこれ、入れてあげるわね」
 荒い息でピストン運動を繰り返す俺の目の前に、猫の尻尾が突き出される。
 透明な、でもやたらにリアルな男性器を象ったバイブが尻尾の付け根に生えている。その
部分に、これみよがしにたっぷりとローションを注ぎかける悠里。

 少し垂れて、俊也の着ているメイド服の背中の大きなリボンを汚したけれども、気にする
つもりはないようだ。

「俊也も、アキちゃんも、そのままじっとしていてね」
 今まで激しい動きをしていたのに、ぎちぎちに締め付けを感じているのに、お尻に物凄い
異物感を感じるのに、それでも静止しているのは酷い苦行だった。
 その先端は、さっきまで俊也の中に納まっていただけあって、妙な熱さを感じさせた。

「アキちゃん、もっと力を抜いてね。まださきっぽも入ってない」
 体が引き裂けるメリメリという音が聞こえそうだ。
 鈍い痛みに悲鳴をあげてしまいそうだ。

 それでもたっぷりに塗り込められた潤滑油の力もあって、にゅぷり、と作り物の亀頭が、
本来排泄をするためためだけの器官である、俺の穴に入り込んでくる。
297 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/22(金) 19:01:47.17 ID:dWPInSIE
 2月22日 4/5

 一番太い部分が門を潜り抜けてしまえば、あとはそこまでは大変ではなかった。
「うっ、くはぁぁあ?! はぅううっ、あうっ!」
 それでも、余熱を持った硬い擬似肉棒が体を貫く感覚に、声を抑えることができない。
 その声がまるで女のよがり声のように聞こえて、かぁっと、全身を羞恥心が支配する。

「ネコミミに尻尾。これで、アキちゃんも立派な仔猫ちゃんだね。猫の日にぴったりの格好。
……いやネコじゃなくてタチなのか?」
 悠里が真剣な声で、何か変な、どうでもいいことで悩んでいた。

 尻尾の先端の鈴が、チリンチリンチリンチリンと、恐ろしい勢いで鳴り続ける。
 ブラジャーに収めた大きなパッドが暴れまわって痛いくらいだ。
 今までストップされていた反動も手伝って、自分でもびっくりするくらいの勢いで腰を振
り続けるのが止まらない。

 腰を振るたびに付けられた尻尾が大きくゆれ、てこの原理で増幅されたその振動が、俺の
肉体の一番奥深い部分を、えぐるように動く。
 メイド姿の(偽)美少女の穴は、いつものように熱くきつく俺の分身を締め上げる。
 あまりの快感のせいか、射精到達までが、ほんの一瞬だったように感じた。

 今までに記憶がないくらい、途方もないほどの射精感に心身が支配される。
 それまで身体を支えていた脚から、すべての力が脱力する。俊也のアヌスがぎゅっと収縮
して押さえ込もうとする力を振り切って、すっぽりと抜けた身体が床に倒れこむ。
 倒れこんだのが横向きで良かった。仰向けだったら尻尾が突き刺さって大変だった──と
か思う余裕なんてありやしない。

 穴から抜けたあとも射精は延々と続き、いつもよりやたらにどろりと濃く感じる飛沫がス
カートの内側と床とを盛大に汚した。
 射精がなんとか終わっても、お尻から与えられる快感は止まらない。あまりの気持ちの良
さに身体をよじらせると、その動きが尻尾で増幅され、より大きな快感が襲い来る。

「アキちゃん、尻尾抜くわね」
 少し不安げに悠里がそう言って、俺の返事を待つことなく、俺のお尻に手を回す。
「がっちりくわえ込んで抜けないな……アキちゃん、よっぽどこの尻尾気に入ったのかな?」
 いやいやと首を横に振るけど、その回答が正しいかどうか、自分でも自信が持てなかった。

 尻尾の根元に接続する、透明なプラスチック素材の亀頭が俺のすぼまりを通過する瞬間、
ありえないほどの更なる快感に全身を襲われ、思考が完全にショートする。
 身体が暴れまくるのを止められない。自分が何かを叫んでいるけど、内容すら分からない。
 そんな時間がひたすら続いたと思えたあと、ようやく終わりを迎えた。

 力が抜けて入らない状態の俺を二人がかりで抱えあげて、カーペット敷きの床を少し引き
ずって移動させ、部屋の反対側に座らせる。
 手足をだらんと伸ばして、壁に背を預けて、意思のないお人形のように。
 そうしてると、まるで10年前、「お人形のアキちゃん」だった日々が蘇ってくる気がした。

 ……やっぱりあの話は、この2人にだけは教えるべきじゃなかったのか。
 そう思ってみるも、自分が後悔しているかどうかすら分からないのだ。
298 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/22(金) 19:03:17.60 ID:dWPInSIE
 2月22日 5/5

 可愛らしいメイド衣装を着せられ、綺麗に化粧され、胸には大きなパッドまでいれられて、
もっとも親しい2人の姉弟に、まるで自分がお人形であるかのように鑑賞されている。
 ついさっき大量の液体を吐き出した俺のものが、痛いぐらいに硬直しているのを感じる。
 でも、それでさえ、パニエとスカートに覆われた状態では外からでは判然としない。

「本当、こうして見てるとお人形さんだね♪」「今でもこれだし、昔見てみたかったなあ」
 恐ろしいまでの性的な興奮を感じているのに、そんなことを喋りながら見てる二人にとっ
ては、感情を持たないただの人形として、身動き一つすることなくここに在る。
 そのことを自覚すると、不思議なまでの性的な興奮に襲われる自分が怖かった。

 俺をただの置物のように無視して、2人がベッドの上性行為を始める。
 同じ顔、同じ髪型、同じメイド服、同じネコミミ。
 コピーした2枚の写真のように見分けのつかない二人が繋がる。
 大きく腰を振り、自分の下にいる少女を後ろから貫いているのが俊也だろうか。

 下になったメイド美少女が、あらぶる肉棒によって、細い体を貫かれて嬌声をあげる。
「ぁあん♪ きもち、気持ちいぃぃ! あん、あぁん♪」
 ……違った。いつの間にやらペニバンをつけた悠里が上で、下が俊也だった。
 俺の目の前で繰り広げられているこの饗宴は、どれだけの倒錯で構成されてるのだろう。

「はぅ! あぁぁん♪」
 俊也の腰が大きく震え、更なる精液の匂いが部屋の匂いに加わる。
 スカートで隠された俊也のペニスが、どういう反応だったのかは知る由もないけれど。


 しばらく荒い息で少し休憩が入って。
「どう? アキちゃん。動けるようになった?」
 悠里の声に、ようやく自分の身体が動く物体であることを思い出す。
 手足に力を入れ、立ち上がる。違和感が少しあるけど、大丈夫そうだった。

「ああ、大丈夫。なんとか良さそう」
「良かった。実はね、私だけ今日はイってないんだ。男2人はあんなにイきまくったのにね。
だから……お願い」
「さっき俊也のお尻に突っ込んだばかりだし、感染症が怖いからプレイできないってば」

「いや、そのままでも……前の穴に入れるのはまずいけど、後ろならいいんでしょ?」
「……いいの?」
 いいことになったらしい。

 俺の息子と悠里のアヌスに丁寧にローションを塗りこめて、ゆっくりと入れる。
 前回よりはずっと楽に行った……とはいっても、結構大変ではあったけれども。
 俊也が上の口に突っ込んで、俺が下から突き上げる。
 鏡に映るのはメイド服の少女3人による3P、でも実際には男2人女1人という謎状態。

 目の前で悠里そっくりの顔で俊也が喘ぐたびに、不思議な興奮に囚われる。もう何十分こ
の状態でいたのかも分からなくなって、目の前がちかちかし出したころ……
 ようやく悠里がイキ果てて、自分も重なるようにベッドに倒れこんで、終わりを迎えた。
299名無しさん@ピンキー:2013/02/22(金) 23:51:43.73 ID:fPx6MKhB
つC
300名無しさん@ピンキー:2013/02/26(火) 08:28:44.35 ID:VtNUWoQ0
乙です。このシリーズは際限ありませんねぇ。
次は女装2男装1の外出とか見たいかも
あるいは卒業シーズンに高校時代の制服で……とか
301 ◆fYihcWFZ.c :2013/02/27(水) 19:49:44.51 ID:BO7icE1v
少しネタにつまり気味だっただけに、新鮮なネタありがとうございますー。

今、俊也君が期末試験を前に忙しいので、彼の余裕が出たくらいに投下する予定で書いてみます。
302名無しさん@ピンキー:2013/03/02(土) 10:59:06.33 ID:9EyvWgeg
2月頃、所謂『●』使う荒らしがいて、巻き添えで40位のプロバイダーに書き込み規制がかかりましった。
qb7.2ch.net/_403/madakana.cgi

しばらくは、読めても書き込めない人が多くいると思います。
303名無しさん@ピンキー:2013/03/02(土) 11:05:41.86 ID:9EyvWgeg
>>293-294
そう言うわけで、 書き込み出来る環境を探し出すのが大変なのですよ。
『●』を利用した荒らしですので、解除まで何ヵ月かかるかわかりません。
304名無しさん@ピンキー:2013/03/10(日) 23:44:22.34 ID:OYZXJ5Of
ISP変更するのは難しいよな
305 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/16(土) 11:54:52.84 ID:Oqay/txQ
なんだか、とても長い3部作になってしまいました。
“『弟はお姉ちゃん』 シチュエーション1”を改題して、その1回目分投下です。

『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みA 1/9

「なんていうのかな。運命の出会いだと思ったんだ」
 やたらにしつこいナンパだった。おまけに少し電波まで入っていた。
「……ねえ。返事してよ。オレ、そんなに気に喰わない? 名前だけでも教えてってば。君
みたいな可愛いコ、是非カノジョにしたいんだ」

 これまで何人かナンパがきたけど、俺が黙って何も反応しないでいると去っていった。
 なのに、なんでコイツだけはこんなにしつこいんだろう。
 温かい喫茶店から、この状況を(多分)ニヤニヤして見ているだろう俊也が恨めしい。

 今の俺は約10年ぶりの甘ロリ姿。
 172cmの身長に3cmの厚底靴、メイクはギャル系というんだろうか派手目な感じ。衣装は白
とピンクのフリル満載と、客観的に見ればどこのちんどん屋かと思いそうな姿なはずだが。

 このナンパ男の「美人!」「綺麗!」「可愛い!」連呼を聞いているとその気になってし
まいそうなのが怖い。
 自分や身内の「可愛い」評価なんて当てにならないものだけに、その客観的? な感想に
唇がほころびそうになっている自分が嫌だった。

 本気で困惑していると、俊也がやってくるのが見えた。その姿が本当に助け神に見える。
「ごめんごめん、待たせちゃったね!」
 ……まあ、よくよく考えたらこいつが諸悪の根源なわけで、マッチポンプもいいとこだが。
 駆け寄って手を繋ぎ、ナンパ男に軽く手を振って、そそくさとその場を離れる。

 いつもと違い、俊也の目線の位置が俺と一緒だ。
 あのブーツは上げ底なんだろう。それとなくガラスに映る姿で確認すると、黒いジーンズ
に包まれた細い脚が身体の半分を軽く上回って長く伸びて、嫌味なくらいになってた。
 悠里そっくりなだけあって、肌が綺麗で端正な顔立ちは、どこの王子様という感じだ。

「アキちゃん、すごい人気者だったね?」
 その“王子様”がからかう声で言う。
「あれ、罰ゲームかなんかじゃいか? 俊也こそ、女装のときはナンパ凄そうだけど」
「んー。スカウトなら余裕で来るけど、ナンパはあんまり来ないかな」
 美少女すぎて声がかけにくいとかあるんだろうか。

「それにしてもアキちゃん、随分板についてついてるんだね。普通に女の子っぽいよ」
「よせやい。こっちはバレないように必死なのに」
 慣れない厚底靴を履いて、内股になるように、手の振り方も仕草も女の子らしくなるよう
に。ほぼ10年前のことで忘れてると思っていたら、実行できているのが意外だった。

「声は、男そのまんまだけどね」
「俊也みたいに女の声出せないからしょうがない。練習する気もないし、このままでいいよ」
「でも本当に似合ってるって。履歴書の特技欄に、特技:女装って書いてもいいくらい」
 そんな履歴書、激しく嫌だ。

「履歴書にそんなこと書くのは、俊也に任せとくよ」
「僕のほうは、むしろ趣味:女装になるのかな」
 やっぱり嫌な履歴書だった。
306 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/16(土) 11:56:48.04 ID:Oqay/txQ
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みA 2/9

 ちょっとしたことで、俊也と賭けをしたのが半月くらい前。
 それに見事に敗北した俺は、今こんな姿で街中を歩くという羞恥プレイを受けている。

 一人っ子だった俺にとって、初めて出来た年齢の近い同性の兄弟。
 そういえば、悠里を間に話すことはあっても、あるいは『悠里を演じる俊也』として話す
ことはあっても、直接俊也と2人だけで話す機会はあんまりなかったからいい機会かも。
 それが、俺が女役での“デート”という場なのは、大いに異議を唱えたいところだが。

 今日も仕事の悠里と朝別れて、その後俊也と2人で一緒に電車に乗って移動。
 (ついでにその時点で、念のため俊也が本当に俊也であることを確認)
 “待ち合わせ場所”が一方的に見える喫茶店に俊也を残して別れ、春の日差しの下、30分
ほど晒され状態でじっと待機。

 ナンパに会う様子をたっぷりと鑑賞されたあと合流し、只今散策中。
 厚い白タイツを履いているとはいえ、膝上20cmの、ふわっと広がるスカート。
 3月の風が吹き込んできて、微妙に寒い感じがする。一応短めの白いコートを羽織ってる
けど、上着の防寒も充分でもないし、少し震えが走る。

「寒いの?」
 その俺を気遣うように、俊也が心配そうな顔で聞いてくる。
「少しね……」
「モデルやってると、11月とかに春物の撮影とかするから、感覚狂ってきてるのかな」

「そういえばそうだっけ。……じゃあ、もう夏物の撮影?」
「うちの雑誌だとそんな感じかな。仕事先で結構違って、1月のビーチで夏服の撮影したと
きは死ぬかと思った。でも他のみんなは平然としてるし、鳥肌立てるな! って言われるし」
 想像を絶する世界だった。

 その世界はともかくとして、寒いと生理現象が来易くなるわけで……俺は困っていた。
「ごめん、トイレ行かせてもらっていい?」
「ちゃんと女子トイレに入るようにね。その格好で男トイレ入ったら変態だから」
 これを言われたくないから困ってたんだが、至極あっさりと断言されてしまう。


 近場の店に入って、女子トイレへそそくさと移動。
(恥ずかしがってたら目立つだけ……堂々としてれば大丈夫……)
 出来るかボケ。
 挙句、ついた女子トイレは行列ができているし。壁とお見合いしながら、じっと待つ。

 昔、連れまわされていた時はどうしていただろう。思い出そうとしていると、後ろにもう
一人女性が並ぶ。つい、まじまじと見てしまうのを止められない。
 身長は170cm越えてるようで、おまけに履いてるヒールも高いから今の俺より背が高い。
タイトなスーツ姿は見事なスタイルを映えさせる、そんなクール系の美人さんだった。

 悠里とタイプの違う美人につい見蕩れてしまったけど、いけない今の自分は女なんだった。
笑顔で会釈されてドギマギして、(たぶん引きつっていたであろう)笑顔を作って軽く返礼。
 ようやく空いたので、半ば逃げるように個室に突貫する。
307 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/16(土) 11:57:46.60 ID:Oqay/txQ
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みA 3/9

 ふう、と息をつく余裕もない。男便所には絶対ないピンク色のタイル、ピンク色の仕切り。
 そして自分の纏う白のコート&ピンクのミニスカートが目に入ってきて気が滅入る。
 コートのボタンを外すと、出てくるのはこれまたピンクと白のフリル・レースの山と、盛
り上がる2つの丘。

 前回、Dカップのパッドを入れて、素の胸囲の差のせいで凄い巨乳になってしまっていた
ので、今回は反省してやや控えめのBカップのパッド入り。手触りも重みもリアルな本格派。
 そこから意識をそらしつつ、スカートとパニエをごっそり持ち上げる形でたくし上げ、白
タイツを腿の半分くらいまで下ろす。ショーツも下ろす。

 今は見えないけれど、このショーツもピンク色。フリルが一杯ついたシロモノで、今つけ
ているブラジャーとペアになった一品だ。
 前回の履かせられた悠里のものと違って、あまり伸びないけど手触りがやたらといい。
 便座に腰掛け、俊也から忠告を受けていた『音姫』を探して周囲を見渡す。

 これだろうか? 手かざしすると、流れ出す録音の水音。これが必要と思う女の子の考え
方は理解できそうにないけど、男と女で小の音は違うだろうからまあ助かる。
 なぜか完全勃起状態になっていた俺のモノを無理やり押し下げて、股間に挟んで発射でき
る角度に持っていくのはそれなりに大変だったわけだが。

 それでも用を足し終わると、なんとか勃起状態も収まったので立ち上がって下着、タイツ、
スカート、コートを戻す。変な状態になってないかもぞもぞ確認。
 男なら一瞬で終わるはずの工程が、今は面倒極まりない。
 これまたピンクのドアを開けて個室を脱出。男便所とは違う、妙な匂いが少し辛かった。

 さっきの長身美人さんは、化粧直しをしているところだった。時間をかけすぎたかも。
 洗面台の大きな鏡に、派手な姿の可愛らしい少女が映っている。それが自分であることに
気付いて、“可愛い”と一瞬でも思ってしまったことに落ち込む。
 しかしこれ、完璧に変態行為だ。ばれたらやっぱり犯罪者扱いなんだろうか。

 女の人が出たり入ったり化粧したりおしゃべりしたりしている、男子禁制の女の園。
 目立っているのは確かだけど、男じゃないかと不審がる視線がなさそうなのは助かる。
 白のコートにフリル付きの短めなスカート。付け睫毛までしたギャル系?の化粧。ゆるく
波打つ、茶色の肩にかかる髪(もちろんカツラだ)。
 鏡の中のそんな自分に戸惑いながら手を洗い、エアータオルで水分を飛ばす。

 いつもなら放置するかズボンで拭くだけの残った水分が気になり、ポシェットから細かい
レースと刺繍の入った白いハンカチを取り出し、マニキュアまで塗られた指先を拭う。
 その柔らかい手触りが、微かに漂う香水の匂いが、何よりも雄弁に『あたしは女の子だよっ』
と語りかけてくるようで、なんだかドキドキしてしまう。

 ポシェットの中に入っていて目についた、口紅を取り出して唇にあてがう。初めての体験
なだけに半分以上あてずっぽだ。
 なんとか形にはなったと思うけど、正直良く分からない。

 今度、悠里か俊也に習って、きちんと女の子らしく化粧直しとかできるようにしなきゃ。
出来れば声も女のものを出せるように──って俺、今一体何を考えた?
 一時的な、形だけだと思っていた女装に、心が段々と侵食されていきそうなのが怖かった。
308 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/16(土) 11:58:45.48 ID:Oqay/txQ
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みA 4/9

 やたらに長く感じたトイレをげっそりした思いで出ると、俊也が女の子達に囲まれていた。
 美人モデルの姉と瓜二つという、並外れた美貌とスタイルの良さ。今は上げ底靴で“背が
やや低め”という弱点も克服してしまっている。逆ナンパを受けるのもしょうがないか。
 その美少年がこちらに気付き、笑顔でこちらに手を挙げる。

 なんだかドキンとさせられてしまった自分が悔しい。
 右手で女の子達に手を振って別れ、左手を恋人つなぎで手をつなぎ、歩き始める俊也。
 悠里と見分けが付かないくらいに繊細な、華奢な指先。
 その柔らかい感触にドキドキする自分に気付いてドキドキしてしまう。

「まあ、あの美人が恋人ならしょうがないかぁ」「王子様とお姫様って感じで絵になるぅ」
「実は有名な芸能人かモデルの変装だったりして」「ああ、なるほど。それ、あるかもぉ」
 さっきの女の子達の声が、立ち去る背中に聞こえてきて、さらに困惑してみたりもするが。


 四方山話をしながら適当に昼飯をとり、店や街をふらついたり、カラオケに行ったりと、
“デート”を堪能して、7時前、仕事を終えた悠里と合流。
 待ち合わせ場所に、細身の愛らしい姿を見つける。

 俺と色違いでおそろいの、黒のコート、膨らんだ黒と白のミニスカート、黒いタイツの姿。
 いつもは『男としては長め、女としては短め』なショートカットで通している髪は、今は
ウェストあたりまで伸びる、長い黒髪のカツラで隠してある。

 その場所には他にも結構待ち合わせ人がいるけれど、華やぎと可愛らしさで周囲の女の子
たちを軽く圧倒している。
 こちらに気付き、微笑んで小さく手を振る姿に見蕩れる。

「お姉ちゃん、お仕事お疲れ様。……あ、荷物は僕が持つよ」
 悠里が足元に置いていた、大き目のバッグを持ち上げながら俊也が言う。
「今日はどんな仕事だったの?」
 昼間の話もあって、少し気になったので聞いてみる。

「今日は6月号の撮影で、浴衣特集。神社に行って色々着替えて」
「うわ。寒くなかった?」
「浴衣って特に涼しいわけじゃないし、余裕、余裕♪ ……やっぱり浴衣とか気になる?」

「うん、見てみたいな。すごく似合うと思うよ」
 なかなか機会のない和装。でもテレビ画面に映る振袖姿はとても可愛かったし、できれば
そんな姿の悠里を間近で見てみたい。
 ……悠里のふりした俊也の振袖姿なら、近くで散々見たんだが。

「やっぱりそっかー。ピンクが似合うかな? 最近フリル付き浴衣とかミニとかあるもんね♪」
「かわいいの多いよね。アキちゃんにぴったりの浴衣探すの、今から楽しみだ」
「ちょっと待て。なんで俺が女物の浴衣を着る前提の話になってる?! 俺は着ないからな!」
「「えー」」
 抗議の声が見事にハモってしまった。
309 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/16(土) 11:59:53.86 ID:Oqay/txQ
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みA 5/9

「百歩譲って女装アリだとしても、何で可愛い系に走るわけ? 違和感ありすぎない?」
「んー。自覚ないのかな?」
「だとすると、無意識のままやってるのか。凄い逸材だなぁ。アキちゃん、女装すると仕草
とか可愛くなるんだけよね。大人っぽい格好すると多分、違和感ありまくりだと思う」

 正直女装しただけで、自分の動作が自然と女の子っぽくなるのは自覚していた。
 10年前、冬子さん(仮)たちに叩き込まれた動作が戻ってきてるのだろうか?
 そんなことをさせられた記憶もないんだが。
 しかしまあ、傍から見てるとそんな感じになっているのか。少しショックではあった。


「何か食べたいものある?」
「なんとなく、パスタ食べたい気分かな」
 悠里の言葉に従い、お洒落なイタリア料理店を探して移動。男モードで一人ではまず絶対
に入りたくない、女性向けの感じの良い店だった。

 適当に注文をしたところで、隣の席の女性2人組から声をかけられる。
「……あの、男の方なんですか?」
「俺のこと? うん、そう。賭けに負けた罰ゲームでね。みっともない格好でごめん」
「えー。うっそー。すっごい美少女で、どこのモデルさんかと思ってたのに」

「女子力で絶対あたしら完敗だよねー。身体細いし可愛いし」
 この2人に比べたら確かに細い部類に入るんだろうか。一人は男子の言う『ぽっちゃり系』、
もう一人は女子の言う『ぽっちゃり系』って感じの女の人たちだ。

「あ、勝手に会話に割り込んでしまってごめんなさい」
「ああ、全然問題ないよ。何なら一緒に食べる? 机くっつけてさ」
 俊也のイケメンすぎる申し出。
 少し話して彼女たちの机が移動して一つに並んだあと、軽く下の名前だけの自己紹介。

「でも雅明さん、近くで見ても全然男だって分かんない。声が男だからびっくりしたもん」
「ひょっとして、悠里さんも実は男とか?」
「私、男に見えるかな?」
「まー、そりゃ、幾らなんでもありえないか。これが男なら、わたし女やめないと」

「俺、そこまで女装似合ってないと思うんだけどな……俊也のほうがずっと女装うまいし」
「あ、分かるかも。っていうか今の状態でも、俊也さん、あたしらよりずっと美少女じゃ」
「瀬野悠里……ってモデル、知ってるかな? 俊也が女装すると彼女そっくりになるんだ」
「んー。ちょっと知らないかなぁ」

「あ、あたし知ってるかも。前、テレビで見て、『この子可愛いなー』って思ってた」
「へー。どんな子だろ。スマホで検索かけていい?」
 そのコメントに、顔を見合わせて同時に吹き出す悠里と俊也。おずおずと手を挙げて、
「さっきはフルネーム名乗ってなかったけど、私が瀬野悠里、本人です」

「「え──────────────っ?!」」
 笑顔で名乗る悠里に、女性2人が思いっきり驚き、店じゅうの注目を引いてしまった。
310 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/16(土) 12:01:05.81 ID:Oqay/txQ
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みA 6/9

「うわー。芸能人と直接会うなんて初めてだ……サインもらってもいいですか?」
「さっき、知らないって言ったばっかりなのに」
「いいの! 今日からファンになるって決めた! だって、こんなに可愛いんだもん!」
「うん、ありがとう。……私、読モだし、『芸能人』ってレベルじゃないけどね」

 まあ、メアドとか交換したりもしつつ、そんなこんなで和やか? に食事も終わって。
「雅明、ちょっとこっち見て……やっぱり口紅取れてるかな」

 そう言って自分のウェストポーチから口紅を取り出し、塗り始める。
 長い睫毛に縁取られた大きな黒い瞳に、至近距離で見つめられる。
 白くてほっそりした指先が、俺の唇の近くを往復する。
 気付いたけど、これ間接キスになるんだろうか。なんだかドキドキしてしまう。

「きゃー。絵になるぅ」
「写メ、写メ」
 ギャラリーのことはまあ意識の外に追いやって。


 その2人と別れ、女子トイレで潰れたパニエを直したりしたあと、夜の街を歩く。
 今日は悠里も高いヒールを履いていて、目線が俺と殆ど変わらない位置にある。
 その長身の、甘ロリ&ゴスロリの美少女?2人が歩くと目立ってしょうがない。

 本当は悠里と手を繋いで歩きたいのに、俊也と手を繋いで歩く不条理がきついが。
 店の明かりや照明が明々と照らす夜道。ほとんど黒一色なのにキラキラ輝いて見えるほっ
そりした姿。仕事帰りで疲れているだろうに、歩く仕草は一分の隙も無く可憐で優美だ。
 いつもと違い、長いつややかな髪が背中で揺れるのも目を引く。

「ねえ、カノジョたち、暇してるの?」
 前からやってきた、男性3人組から声をかけられる。なんかチャラくて嫌な感じだった。
「この子、僕の連れですから」
「お、僕っ娘? リアルでは初めて見るけど、なんか可愛くていいよね」

「いや、僕おと……」
「つーか、お前らなんで男をナンパしようとしてるんだよ。眼科行けよ。それともホモか?」
 女と間違えられ困惑する俊也をかばって、男達の前に出る。あえていつもより低い声で。
「「「男……?」」」

「けっ、オカマかよ」「他の2人もそうなんか?」「でもあれだけ美人なら男でも……」
 混乱するナンパ男達を尻目に、2人を手招きして先へと進む。
 今ので俊也と繋いでいた手が離れたので、悠里と並ぶ位置に移動して、手を差し伸べる。
 にっこり笑って、握り返してくる悠里。その柔らかな感触にドキドキする。
 ──それにしても今日はなんだか、ドキドキされっぱなしな一日だ。そんなことを思う。

 あとは適当にウィンドウショッピング。
 ゴスロリの店に立ち寄って悠里と2人で色々あわせてみたり、レディスの店をはしごして
大人びた服を試着して、「やっぱり似合わないねー」とコメントされてみたり。
 そして閉まる店も増えてきたので、3人つれそってラブホテルに入る。
311 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/16(土) 12:02:11.41 ID:Oqay/txQ
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みA 7/9

「はぁー。今日は本当に疲れたー」
 コートだけ脱いで、ベッドに腰掛ける。いっそこのまま寝てしまいたいくらいだ。
「お疲れ様。女装外出はどんな気分だった?」
「もう、こりごり。2度とやりたくない」

「そうかな? 結構まんざらでもなさそうだったけど」
「自分がそうだったからって、俺まで一緒にするなよ、俊也」
 俺はノーマルな男で、きちんと悠里という(これ以上ないくらい可愛い可愛い)女の恋人
もいるんだ。女装は無理やりさせられているだけで、趣味でもなんでもないんだ。

 そう思いつつ、同じくコートだけ脱いだ悠里を手招きし、ベッドに呼び寄せる。
「なぁに?」
 と怪訝な顔で聞く悠里の細身の身体に抱きついて、そして半分無理やり唇同士を重ねる。
 ……って、オイ。

「お前か俊也!」
「ピンポーン♪ ……雅明ってば、相変わらず鈍すぎ」
 黒メインで白の飾りが要所要所に入ったゴスロリの、悠里そのものの可愛い姿。悠里その
ものの可愛い声。──でもこいつは、間違いなく俊也だった。

 何時の間に入れ替わったんだ? 晩飯の後は機会がないし、遡って考えて合流したあとも
可能性はなさそうだ。朝、出発時には確認済みだ。とすると……
「俺が、『待ち合わせ場所』で30分放置されてたときか。入れ替わったのは」
「そういうことー。私が悠里ってこと分かってくれると期待してたのになぁ。ちょっと残念」

 じゃあ、今日一日『俊也』と思ってデートしていたのが実は悠里で、合流して色々ドキド
キさせられたりした『悠里』が実は俊也だったのか。……うわぁ。
「浴衣の撮影っていうのは?」
「それは、きちんとお仕事してきたよ♪ もー、ばっちり」

 しかし、一度『確認』させておいて、その後入れ替わり。確か前もあったパターンだ。
 それだけに、見事に引っかかった自分の迂闊さが恨めしい。
「だけど、女装して恥ずかしがってる様子って、なんだか新鮮で可愛くてよかったな。俊也っ
たらそういえば最初からノリノリすぎて面白くなかったし」

「……ボク男の子なのに、こんな格好させられて、すごい恥ずかしいの……」
 外見は芸能界でも上位に入りそうなゴスロリ姿の美少女が、少年の声でもじもじと言う。
 悠里は「似合わなーい」と笑ってるのに、少し萌えてしまった自分が情けない。

「今日は気付かなかった罰として、いっぱい可愛がってあげるからね。覚悟はできてる?
 ……ね、“アキちゃん”♪」
 甘ロリ姿の俺を、俊也そのままの姿の悠里がベッドに押し倒す。

 力関係から言えば、抵抗しようと思えば出来るはずなのに、なされるがままに。
 二人着衣のまま、耳を甘噛みされ、首筋に舌を這われる甘美な感覚に酔いしれる。
「ぁん!……あぁん……ぃやっ……ぁん……はぁんっ!……」
 ピンクの口紅に彩られた俺の唇から、女らしい声が零れ落ちるのを止めることもできない。
312 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/16(土) 12:03:14.35 ID:Oqay/txQ
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みA 8/9

 悠里の手が、パニエを持ち上げ、タイツの隙間に入り込み、俺のペニス……は完全に無視
してお尻の穴にあてがわれる。
 優しく、激しく、悠里の細い指先でマッサージされる俺の菊門。
 ローションもつけていないのに、悠里が力を込めると、徐々にその指を飲み込んでいく。

 深く、深く。俺の身体の中に潜り込んだ悠里の指先が、ダイレクトに俺の肉体をなぶる、
まさぐる、もてあそぶ。
 やがて俺の前立腺を探し当て、指先でこね始めるのを感じる。快感が全身を貫く。
 ピンクのスカートに包まれた俺の腰が、おかしなくらいに踊り暴れるのを止められない。

 射精したい感覚があるのに、俺のペニスは絶妙なくらいに何も触れることのない場所にあっ
て、解放されることもない。ただビクビクと空を切るだけの状態。
 それなのに襲い来る快感に、自分という存在すら保つことすら困難になる。

 今日一日だけでも、『これだけはやるべきじゃない』と心に引いていた一線が、凄い勢い
で崩壊していった。それでもなんとか守っていた、本当の一線すら軽く飛び越えそうな恐怖。
 肛門が開き、すぼみ、悠里の指を締め上げるのを繰り返す。
 その度に、腰に、下半身に、全身に電撃のような快感が走り回る。

「うーん、いつもよりずっと反応いいなあ」
 俺の肛門から指を引き抜いて、俊也の外見の悠里が言う。俺はといえば、まだ快感の余波
に支配され、ぜいぜいと喘ぐだけで、何も返事ができない。

 そういえば今はウェストニッパーつけてるから、余計に息が苦しいのか。
 外したい……でもこの服は、背中のファスナーに手が届かない俺一人では脱ぐことができ
ないし、それを2人に伝える余裕もない。
 パッドとブラジャーを邪魔に感じながら、ベッドに仰向けで胸と肩で荒く息をするだけだ。

 そんな俺に、今度はゴスロリ姿の俊也が跨ってくる。
 膝立ちのままずんずん進んで、俺の顔の上にふぁさっとパニエとスカートが覆いかぶさる。
 妙に篭った空気が息苦しさを促進する。真っ暗で何も見えない
 ……と思ったら、俊也自らパニエまでたくし上げて明るくなる。

 まず目に入るのは、正月に使った例の双頭ディルドーの黒光りする竿の部分。
 そしてその上に……ない。
 目に入るはずの俊也の男性器はそこになくて、代わりに綺麗に脱毛したパイパン状態の女
の子の割れ目が至近距離で見える。

「え? あれ? 悠里? ……いや悠里のじゃないな。俊也、いつの間にか手術したのか?」
 混乱する俺に、二人同時に吹き出す。
「違う違う。タックして隠してるだけだって。……今まで見せる機会なかったっけ?」
「気になるなら、今度アキちゃんにもしてあげるよ♪」

 なんだかよく分からないけど、そういうものらしい。
 しかし視界にいきなり俊也のものが入らなくて良かった、と内心思う。見えたら本当に最
後の一線を跳躍してしまうところだった。
 奇妙な安堵をする俺の口に、ディルドーの先端がねじりこまれる。
313 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/16(土) 12:04:08.71 ID:Oqay/txQ
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みA 9/9

「うわ。すごいエロチック♪ アキちゃんフェラチオ上手いなあ」
 頭であれこれ考える余裕がないので、大昔の記憶のままに、擬似肉棒を口でなぶる。
 10年泳がなくても一度身に着けた泳ぎ方は忘れないようなもんだろうか。違う気もするが。

 舌で亀頭部分を擽る、舐め回す。裏筋にそって舌を這わせたり。
 でも作り物の肉棒を咥えられているだけで、これだと面白くなんともないんじゃ……と思っ
てもみるけど、俊也はしっかり興奮しているようだった。

 俺が履いてるスカートをたくし上げ、タイツが降ろされて脱がされる感覚がする。
「やっぱり、脛毛が生えてると変な感じ……雅明、きちんと処理する気ないのかな?」
 悠里の声で、悠里が言う。どこも変じゃないはずなのに、なぜか変と感じる自分が変だ。
 『脛毛を剃ったり脱毛したりしない』──それも、俺の引いてる線のひとつだった。

 反応しようとするけど、喉奥までディルドーを飲み込んでいる今の状況ではそれも不可能。
「ううん、女装のためじゃなくってさ。私、やっぱりつるつるの肌のほうが好きだから」
 そう言えば、悠里との最初のセックスのときにそんなことを言われていたことを思い出す。
 あのときは、「男だからしょうがないだろ」と突っぱねたもんだが。

「彼女のために、脱毛する男性って意外に多いんだってね。前エステで聞いてびっくりした」
 男子高校生である俊也がなんでエステに行っていて、なんでそんなこと知っているのかと。
 ……まあ、こいつの場合普通に行ってそうだけど。
「ね。今度、私のためにきちんと脱毛してくれない?」
 また一つ『(最終ではないけど)越えてはいけない一線』があっさりと突破されていった。

「ちょっと体勢的にきついかな……ごめんね、俊也。少し休んでて」
 悠里の言葉に、俺の口が、漸く俊也のつけているディルドーから解放される。
 粘つく唾液がやたらに糸を引き、俺の着ている甘ロリのフリル部分にべったりと落ちる。
 そんな俺の腰を軽く持ち上げ、今度は悠里が膝立ちでベッドに上がってきた。

 下を見ると、俊也の服のままの悠里が見える。
 まるで宝塚の王子様みたいな、美少年そのものの姿。
 俺の履いているピンクのスカートに邪魔されて見えないけど、ペニバンを装着しているの
だろう。ぬるぬるとした液体を纏った、硬い物体が俺のお尻に突き当てられる。

 ずるずると、俺の身体がそのペニバンを飲み込んでいくのが分かる。
 この3人でのプレイで記憶している中では、一番あっさりと。裂けるような痛みは耐えら
れないほどではなくなっていた。代わりに蕩けるような快感がやってくる。

(まずい。このままだと、『俺』が『俺』じゃなくなる。『アキ』になってしまう)
 麻痺し始めた頭にそんな思いが過ぎるけど、もうなんでそれがまずいのかも理解できない。
「はぁぁぁぁあぁぁん! ……あぁぁぁん! ああ、ああぁぁああんっ!!」
 『アキ』に侵食されかけた頭のまま、悲鳴のような喘ぎをあげる。

 “男”である悠里の肉棒に、ピンクの甘ロリ服姿の“少女”である『アキ』が貫かれる。
 挿入する側ではなく、挿入される側として、何度も何度も絶頂を迎え、よがり狂う。
 今後は、これが日常になるのだろうか。
 自分でそれをどう思うか分からないまま、意識が白い闇に飲まれていくのを感じた。
314名無しさん@ピンキー:2013/03/16(土) 18:30:19.90 ID:UHDQzjgN
この読者モデル3姉弟は、どこまで読者モデル3姉妹なのでしょうか?
男装、女装、どちらも問題ないとか、美人過ぎる。

しかし、アキちゃんは、うかつ過ぎだし。なぜ、義姉弟であり恋人の見分けをしない?毎回?
たっく?ん?確かに双玉は隠れ棒は見えにくくなりますが女の子のとは形は違いますよ?正面から見ても、下から見上げても。
ぱんつをはいていればわかりにくいですが。


私は、個人的には、トイレットは男女別のではなく、男女同室を選ぶようにしていますが?
最近、下手な女装の男が女性用化粧室などで各種犯罪行為を行う事が多く、むしろ男女同室のほうが安全な事が多いですから。
それに、いくら、見た目の姿、服、声、などを換えても身分証や戸籍の性別は変えられませんから。

あと、アキちゃんは、お化粧、ボイスチェンジ、希望します

体毛は剃らなくても、短く切り揃える程度て良いと思います。
ドラッグストアなどで、お手入れ用の鋏、刃渡り5cm位で先端は丸くなって、肌を突き刺しにくいのを販売していますから。
315名無しさん@ピンキー:2013/03/17(日) 11:45:26.68 ID:Ls6FrmYG
タックをして、竿の部分を接着剤やテープでとめて「女の子の割れ目みたい」っていうのは、女装ものでは
お約束みたいなんで気にならなかったけど、

ttp://userimg.teacup.com/userimg/6625.teacup.com/misako/img/bbs/0001490_2M.jpg
ttp://userimg.teacup.com/userimg/6625.teacup.com/misako/img/bbs/0001461M.jpg
ttp://www4.kinghost.com/asian/mokio/girls_delta/646/img/008.jpg
ttp://promo.cravingcarmen.com/stunningpink/012.jpg

そこまで差があるもんなんかな?
316名無しさん@ピンキー:2013/03/17(日) 19:23:09.04 ID:+C3ShHPt
料金はあにぃ、私幹事が負担します
着物姿で一日、そぞろって歩いてくれるだけでOK
愛想や気遣いいりません
料金は、全額返金と、報酬代支払います
男性のみ募集です
年齢問いません


【日時】3月21日 10時〜17時(着物レンタル時間内)
【集合】浅草寺近辺(メールにて)
【必要なお金】私、幹事が最後に支払ます
・着物レンタル代1980円〜3150円+足袋代
・各自お昼ご飯代、おやつ代、お土産代
最後に一人、一万円の報酬を、幹事のわたし、あにぃから支払ます

[email protected]
317名無しさん@ピンキー:2013/03/17(日) 21:29:12.92 ID:romVCY+M
GJ!
毎回雅明振り回す2人が楽しそうでいいなw
318名無しさん@ピンキー:2013/03/18(月) 12:27:06.69 ID:H4UtTX9S
>>315
女の子の画像だけでなく、たっくを行った男の子の画像も有ればわかりやすいと思います。


まあ、漫画や小説などでは
例えばカツラを着けたり、特定の池に入るだけで、背格好や声まで女の子に代わったり、男の子に代わったりしますから、気にし過ぎるのはダメダメですがね。
319315:2013/03/18(月) 22:10:22.28 ID:lB5Tx/4g
ところが>>315の上2つは、中年男性によるタックの割れ目もどきの画像で、下2つが女性の股間の
画像だったりするのです。

……「女の子の割れ目そっくり」と言ってもよさそう、って理解してもええのかな。
320名無しさん@ピンキー:2013/03/19(火) 13:01:16.30 ID:xmr6t9zF
>>319
押さえ込みすぎて恥丘部分まで凹んでるな
321名無しさん@ピンキー:2013/03/20(水) 23:41:46.54 ID:xVqdSwD9
タックすげぇな…
322 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/21(木) 23:09:39.91 ID:DzkHsOdn
雅明くんは、そんなに頭が良くなくて、わりと迂闊でうっかり系なキャラクターという設定なんで、そこあたりに
やきもきしていただけるとわりと実は作者冥利に尽きます。

タックについては、「あるはずのものがない」のがメインで、「ないはずのものがある」ほうは比較的意味が薄い
ので、描写少し変えました。ご指摘ありがとうございます。
>>312 は酸欠で意識が朦朧ぎみのところに目の前10cmに放り出されたので見間違えたという理解でお願いします。

自分で女装しても、絶対パスできないのでトイレでばれる心配はないんですが、パス可能なレベルになると
逆に悩みも増えるもんなんですねえ。面白いです。


というところで今回分の投下です。
323 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/21(木) 23:12:19.70 ID:DzkHsOdn
1件失念。玲央や悠里の学校には、一応モデルを設定してます。
あまり重要な設定でもないので、分かったかただけ「ニヤリ」としていただければ幸いです。


『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みB 1/7

 昼食後、悠里の部屋に入ると、俺の恋人が制服を広げて眺めているところだった。
「それ、懐かしいね。どうしたの?」
「うん。後輩の子にお願いしてたのが届いたから」
「さっきの宅配ってそれなんだ。……ってことは、それ悠里のじゃないのか」

 『制服が可愛い』ことで有名な、ちょうど1年前まで悠里が通っていた女子高の制服。着
ていた当時はこの美人の義姉と、恋人同士になれるとは夢にも思っていなかったわけだが。

「うん、私のはこっちに別に用意してあるの♪ ……制服でレズプレイしたくなってね」
「却下で」
「レズプレイしてみたくなってね?」
「却下で!!」
 ……まあ、無駄な抵抗だとは、最初から分かってはいたのだが。


 両親は仕事、明日が終業式の俊也は学校、悠里は一日オフの恵まれた日。
 久々に2人でゆっくりできるかと思いきや。

 エアコンの効いた室内。恋人同士、全裸で隣り合わせに並んでベッドに腰掛ける。
 1年前には想像すらしなかった、1月前までは甘々で天にも昇るような気持ちだった状況。
 でも今は、1週間前とは変わり果てた姿になった自分の身体を見下ろし、ため息をつく。

「うん、雅明、すっごく綺麗になった。……色々、わがまま言ってしまってごめんね」
 悠里がそのほっそりした手で、俺の太腿を撫でながら言う。
 結局エステに連れて行かれて、俺の脚……どころか腕や陰毛や髭までを完全に脱毛されて
しまった。残っている体毛は髪の毛、眉毛、睫毛だけだという。あ、鼻毛もか。

 悠里と俊也の行きつけという美容院にも連れて行かれて、眉毛も、少し伸びていた髪の毛
も、“やや女らしい”レベルで整えさせられた。
 なんと鼻毛も専用の道具で手入れされて、俺の体毛の中では睫毛だけが素のままだという。
 両親とかは特に何も言ってこないけど、はて、どう思われているのやら。

「つきあってくれて、本当にありがとうね」
 とても嫌ではあったけれども、でもその感謝の一言ですべてが吹っ飛ぶ。
「いや、悠里のためならこれくらい何でもないよ」
 それは本心だけど、口にすると自分でも歯が浮きそうな言葉になってしまって恥ずかしい。

「……じゃ、はじめよっか」
 しばらくあって、そう言って悠里が立ち上がる。
 大きいわけじゃないけど形のいい、おわん型の胸がぷるんと揺れる様子に見蕩れる。
 例のピンクでフリル満載のブラジャーを身に着け、後ろのホックを悠里に留めてもらって、
パッドを入れて位置を調整する。

「少しくびれができてきた?」
「1週間程度だと、まだ効果は見えてこないと思うけどなあ」
 俺のウェストのラインに指先を這わせながら、悠里が聞く。
 先週の女装外出以来、美容体操や、肌などの手入れ方法を、俺は俊也を先生に勉強中だ。
324 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/21(木) 23:13:40.06 ID:DzkHsOdn
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みB 2/7

 そのウェストに、これまたピンク色のウェストニッパーを巻きつける。
 美容体操の効果が出ていたのか、先週よりも1段階細い箇所でホックが留まった。
「ショーツは?」
「どうせすぐ脱ぐんだから、今日は最初から履かなくていいよ」
 そうなのか。

 これもピンクのスリップを身に着け、太腿までの長さの黒いストッキングを履く。
 前に2回女装したときとはまったく違う、とてもとても気持ちいい感触がする。
 脛毛を脱毛しただけで、こんなに肌の感覚が変わってくるのかと、少し悩んで気付く。
 そういえば普通のジーンズを履くと、ガサガサした感触がして少しつらいものがあった。

「アキちゃん、綺麗な脚してるよね♪ ネットに写真上げたら、美脚スレの常連になりそう」
「なにそれ?」
「脚フェチの人が集まって、綺麗な女性の脚の写真をアップしてる掲示板のスレッドとか、
そういう写真をまとめたサイトとか……知らない?」

「俺は悠里で間に合ってるから、そういうのはチェックしてないかな。どうせ悠里より綺麗
な脚とかないだろうし。……悠里や俊也の脚なら、いっぱいあがってそうだけど」
「うん、たまに見かける。──そしてこの割れ目ちゃんも、可愛い出来栄えで」
「やめれ。意識しないようにしてたのに」

 先週のラブホテルで見た、『タック』とかいう技術、それが今の俺には施されている。
 一昨日の夜、寝る前に悠里と俊也に呼ばれて、陰毛まで脱毛した下半身をさらけ出して。
 金玉を上にあげて体内に納め、竿を後ろに回して余った皮膚をそれを覆い隠す形で特殊な
接着剤でとめて、男にはありえない割れ目がそこにあるかのような形にして。

 それから丸一日以上そのままで過ごしたわけだけど、“あるはずのモノがない”という感
覚はとても奇妙なものだった。トイレも座らないとできないし。
 おまけに俊也の持つリムーバーとやらを使わないと、解除できないときてる。
「……悠里ってさ、俺を最終的にどうしたいのかな」

「最終的に、って?」
「今みたいに、玉も竿もなくして完全に女にしてしまいたいのか、どうかとか」
「……んー。『私の彼氏』って部分は、絶対守って欲しいかな。だから、女になるのは絶対
禁止。女性ホルモンも当然禁止。それさえ守れば、あとは美人になればなるほど嬉しい感じ」

「よく分からない基準だけど……でも良かった。俺に女になって欲しいとか言い出さなくて」
「私、レズじゃないもん。やっぱり男のほうがいい」
 じゃあさっき、『レズプレイしてみたい』と言っていたのは何なのだろう。

 それはそうとして、女装再開。ブラウスに袖を通してボタンをはめ、スカートをはく。
 青と茶色のチェックでミニのプリーツスカート。ウェストは心配だったけど、ウェストニッ
パーのおかげか割と余り気味だった。ただ、太腿が半分以上丸見えなのが羞恥心を煽る。

「もっと、短くしたいな」
 それなのに、悠里はそんなことを言ってスカート丈を調整する。抵抗も意味無く、結局偽
物の割れ目スレスレまで丸見えで、かがめばお尻が見える超ミニスカートにされてしまう。
325 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/21(木) 23:15:12.42 ID:DzkHsOdn
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みB 3/7

 薄茶系の色をした、可愛らしいデザインのブレザーを身に纏う。
 意外なことに肩がぴったりで、それ以外は少し大きめなくらいだ。
「そういえば、この制服どうしたの?」
「後輩の背の高い子に、『卒業後に、制服がいらないならちょうだい』ってお願いしてね。
身長が確か174cmだったかな。でも、ぴったり合うようでよかった♪」

 俺より背の高い女子高生か……なんだか色々と複雑な気分。
 その少女のものだろう、悠里とは違う女の子の匂いが漂ってきて、不思議な気分になる。
「ネクタイは締めないのかな」
「今日は部屋の中で過ごすつもりだから。外出したいならつけてあげるけど、お外行きたい?」

「この格好で街中を歩くのは、流石に勘弁」
「だよね。普通、この制服着た子は外出しない時間だし、補導とかされそうだし。
 ……アキちゃん、私よりずっと激しく乱れるから、エッチのときネクタイとかつけてると
怖いんだ。何かにからまって首が絞まったら大変だし。ということで、今日はネクタイなし」

 “今日は”ということは、明日以降はありうるのだろうか?
 それに期待している自分に困惑している俺をよそに、悠里がメイクを始める。

「……肌の具合、ずっと良くなってきてるね。追い抜かれないよう、私も努力しないと」
「それはないと思うけどなあ。悠里の肌、すごくきれいだし」
「あら、ありがと♪ でも、この一週間で分かったでしょ。これは努力の賜物です」
「うん。身にしみたよ。『美にかける情熱』って言うのかな。本当、凄いと思ったわ」

 30分ほど化粧が続き、仕上げとしてピンク色の口紅とグロス?が塗られる。
「今日は早く済んでよかった。また2時間コースなら大変だったし」
「お肌の基礎から作らないといけない状態だと、時間がかかるからね。お肌つるつるで化粧
のノリが違うし、前より随分楽になったかな。もっともっと綺麗になってね。アキちゃん」

 素直にこくんと頷きそうになって、慌てて止める。
 一番最後に、前にもつけた、脇の下までの長さの黒髪ストレートロングのカツラをかぶる。
 とりあえず今日はこれで完成形か……と思ったら、耳たぶの後ろに香水をつけられた。

「じゃあ、私も制服着るから、アキちゃんは自分の姿を鑑賞して待っててね」
 今までずっと全裸だった悠里がそう言って、移動式のスタンドミラーをベッドに腰掛ける
俺の目の前に持ってきて、その裏でもそもそと制服を着始める。
 さっきまで平然と裸だったのに、服を着るのを見られるのを恥らう。謎な女性心理だった。

 目をそらそうと思えば簡単にできるはずなのに、鏡に映る“少女”から目を離せない。
 そういえば、ここまでまじまじと女装した自分の姿を見るのは初めてかもしれない。
 鏡の中の少女が、瞬きの少ない、日本人にしては色素の薄い瞳で見返してくる。普段は一
重の目がメイクで二重にされている。それだけでも随分印象が変わるものだと感心する。

 どこかしら危うげな感じが漂う、人形めいた女の子だ。それが俺だと今一ピンと来ない。
 高校生の制服が、『少し背伸びして』いる印象すら与える。そんな、あどけない少女。
 記憶の奥にある“アキちゃん”を思い出させる姿。思春期の、『女としての成長』を迎え
ることのない、永遠の少女。そんなフレーズが浮かんで自分で恥ずかしくなる。
326 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/21(木) 23:16:25.47 ID:DzkHsOdn
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みB 4/7

「うんうん、アキちゃん、すっかり自分に見蕩れちゃって、いい感じ♪」
 着替えを手早く済ませた悠里が、俺のすぐ隣に身体を密着させて座ってきた。
「……そんなことないって」

「素敵な女の子になるためにはね、まず自分自身に恋しなきゃいけないんだ。
 自分で自分を好きになれないなら、他の誰も好きになってくれない」
 そう言って、キラキラした目で俺を見ながら、俺の手の上に手を重ねてくる。
「大丈夫。アキちゃんはとっても素敵な女の子。……だから、もっと自分に素直になって」

 鏡の中に、女子制服姿の2人がいる。
 両親の再婚から1年前までの期間、ずっと憧れだった悠里の制服姿。あの頃より更に一段
と美しさと輝きを増した少女と、恋人として一緒に居られる。まるで夢のような気分。
 男なのに、それと同じ制服を着せられて、その隣に座っている。まるで悪夢のような気分。

「そんなこと言われても、俺、男なわけだしな……」
「『俺』じゃなくて、『あたし』。男じゃなくて、女の子」
「ついさっき、俺に『女になるの禁止』って言ったのに」
「それとこれとは別。ね、今日は夕方までおままごとに付き合って」

 一応、俺が抵抗はしたことは明記しておく。
 もちろん、無駄な努力だったわけだが。

 ベッドの上、互いの容姿や美容の話を皮切りに、悠里を『お姉さま』と呼び、女の子にな
り切って2人で女子?トークを繰り広げる。なんだかそれを楽しいと思ってる自分が嫌だ。
「ね、アキちゃんって好きな人いるの?」
「いますよぅ」

「ね、ね。どんな人?」
 それをお前が聞くか、と一瞬素に戻りかけたけど、言葉を選んで回答してみる。
「……んと、すっごく格好いい人です。すらりと背が高くてびっくりするほど美形だし、外
見だけじゃなくて、あたしなんかよりずっと大人だし、頭いいし、色々努力してるし」

 ニヤニヤ笑いながら聞いている悠里に、少し逆襲。
「そういうお姉さまは、好きな人いるんですか?」
「私の好きな人は、そうね。可愛い子だよ♪ 外見もすっっごく可愛いし、ひねくれている
ふりして根は素直だし、私がいじわるしても、なんだかんだ言って喜んでくれるし」

 あかん。全然逆襲として成立しなかった。
 それにしても俺(俺のことだよな? これ)、そんな風に受け止められてたのか。
 否定しきれない自分が悲しい。
「その子に不満があるとしたら、自分の魅力に気付いてないとこかな」

 そして俺の目を、いたずらっぽい目で見つめてくる。
「ね、分かってる? アキちゃん。これ、あなたのことよ。──私、あなたが好きなの」
 そう言って、俺の身体をベッドに押し倒してくる。
「駄目っ、お姉さまぁ。あたしたち、女同士なのにぃ」
 とっさにそんな言葉が出てしまった自分が信じられない。
327 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/21(木) 23:17:23.80 ID:DzkHsOdn
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みB 5/7

「そんなこと気にしないで大丈夫♪……うふっ、アキちゃん可愛いよ」
 俺の身体に密着する体勢でのしかかってきて、唇を重ねる。
 悠里とは何度もしてきたディープキス。
 でも、自分が受身の状態でキスをされるのは多分初めてのことで。俺はそっと瞼を閉じる。

 微かに開いた唇から入り込んで、俺を求めて来る悠里の舌の感触。それを“受け入れる”
側としての自分に、陶酔めいた感覚を覚える。
 下腹部、俺がもし女だったら子宮がある場所が、なぜかジンジンと熱く感じる。その場所
から、波紋のような、ゆっくりとした快感が全身に伝わっていく。

「くちゅっ、ちゅぴっ……ちゅぱ……」
 こくこくと喉を動かして、注ぎ込まれた唾液を飲む。俺の口の中に進入してきた舌を絡ま
せあい、その舌による愛撫を受け入れる。
 これまで俺主導でやってきたキスが、ただの児戯に感じる絶妙なテクニックだ。

 キスが終わり、唇同士が離され、目を開ける。
 目を閉じる前とは違い、世界がひどく煌いて感じる。空気の粒子一粒一粒がキラキラと光
を放っているような感覚すらする。
 その中で、ひときわ輝いて見える悠里──お姉さま──の美しい笑顔。

「お姉さまぁ……もっとぉ、もっとキスをぉ……」
「あらあら、アキちゃんは仕方のない娘ね♪」
 麻痺しかけた意識の中、理性とはまったく関係ない場所で自分の唇が動き、そんなおねだ
りまでしてしまう。再び重なる、2人の唇。

 今まで記憶にないほどの、恐ろしいほどの幸福感が“あたし”の心を満たしていく。
 閉じた瞼の間から、だらだらと熱い涙がこぼれていくのを感じる。
 最初はゆっくりと、次第に早いペースで腰が、下半身が、脚が、全身が暴れだす。叫び声
が喉からこみ上げてくるけれど、ぴったりと唇を重ねた状態では声にならない。

 お姉さまは、そんなあたしの身体をしっかりと抱きしめてくれた。
 そんな至福の時間が流れたあと、ひときわ大きな快感の波が通り過ぎて、背筋が弓なりに
強張ったのち、全身からだらんと力が抜ける。
 唇が離れる。幸福感と快楽の余韻が残るまま、荒く息を繰り返す。

「キスだけでイっちゃったのね。本当、可愛い子♪……大事な大事な、私のアキちゃん」
 その言葉で、なんだかまた幸福感の波が襲ってきて、自分でも良くわからないまま、お姉
さまの胸の中で泣きじゃくり始めてしまう。
 お姉さまは、そんなあたしをふんわりと抱きしめ、背中を優しくさすってくれた。

 しばらくそんな時間が続いて……そして“俺”は我を取り戻す。
 悠里の柔らかくも温かい2つの丘(今気付いたけど、ノーブラだよこの人)に顔をうずめ
てる自分に気付いて、途端に恥ずかしくなる。

「アキちゃん、もう大丈夫?」
「いや、これやばいよ悠里。こんなの続けてたら、俺、確実におかしくなる」
「ぶぅー。おかしくなっちゃっていいのに」
328 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/21(木) 23:18:16.51 ID:DzkHsOdn
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みB 6/7

 その言葉に反発する自分と、従いたくてうずうずする自分。
 心の中の2つの自分に戸惑う俺をよそに、ベッドの上、抱き合った状態のまま悠里は下半
身を擦り付けてきた。
 『貝合わせ』っていうんだろうか。そんな状態。

 2人ともスカートが極端に短く、下着もつけてない状態だから、何の障害も無く悠里の割
れ目と、俺のまがい物の割れ目がぴたりと合わさる。
 もう既に濡れ濡れになってる悠里のあそこの感触が気持ちいい。
 もともと性感の強い場所を集めて作っているだけに、快感の波がまたぶり返してくる。

 さっきよりは緩やかに、でも着実に自分の身体が登りつめていくのを感じる。
 いつもだったら、もうとっくに射精して終わっている状態。それなのに後ろに窮屈に折り
たたまれた俺のものはそれもできない。
 さっきよりマシだけど、それでも意思とは無関係にまた腰が動き始める。

 その度に新たな快感が加わって、徐々に、徐々に、身も心も蕩けていく。
「あん、はぁん、ぁぁん、はん、あん、ぁぁぁあぁん」
 そんな声をあげて身もだえる俺?あたし?の体を、悠里?お姉さま?がぎゅっと抱きしめ
てくる。その温かな感覚が心地いい。

 何度絶頂を迎えたのだろう。
 射精交じりなら3回くらいが限界な俺の身体は、たぶんその3倍を軽く超える回数の絶頂
を受け入れ、まだ貪欲に快楽を求めてくる。
 その度に、心の奥底に封印していたはずの、『アキちゃん』が解放されていくのを感じる。

 悠里が優しい声で「アキちゃん」と呼ぶのに、つい応えたくなる。
 『雅明』という自分を手放してしまいたくなる。その甘美な衝動を堪えるのが大変だった。
 そんな時間がひたすら続いたあと、身体が離れる。
 なんとか耐え切った自分を褒めてあげたい。

 快楽の余韻に浸りつつ時計を見上げると、3時半を回っていた。
 もう指の一本動かすのも大変なくらいクタクタなのに、不思議な充足感を全身に覚える。
 しばらくそのままで休息が入り、ようやく身を起こす。

 汗まみれでしわの入った女子制服に身を包んだ少女の姿が目に入る。
 膨らんだブラウスの胸に、ピンク色のスリップとブラジャーのラインがくっきりと見える。
化粧はどろどろに崩れてしまっているのに、なぜか可愛らしく思えるその姿。
 それが鏡に映った自分であるということに、何故か誇らしいような気分が沸いてきてくる。

「はい、アキちゃん。どうぞ♪」
「ありがとうございます。お姉さま」
 お姉さまが持ってきたジュースを、ストローで飲む。その冷たさが気持ちいい。

「お姉さま、ジュースを飲むところまで絵になるんですね。きれいだなぁ」
「どんなときでも美しくなるように、心がけて練習しているからね♪ でもアキちゃんも、
すーっごく可愛いわよ。惚れ直しちゃった」
「そんなぁ」
329 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/21(木) 23:19:11.60 ID:DzkHsOdn
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みB 7/7

 ……っておい。なぜ俺はナチュラルにこんな会話をしてるんだ。
 大体、ジュース飲むのにストローなぞ使ったこともないし、こんな風に膝をぴったりつけ
て可愛らしく座って、女の子らしい様子でジュースを飲みたいと思ったわけでもない。
 20歳近い男がやっていいことじゃないだろう。これ。

「アキちゃん、どうしたの?」
「いえ、とっても美味しいですぅ」
 素に戻りかけたところに声をかけられ、笑顔でごまかす。
 そこからまた、しばらくガールズトーク。

 でもさっきよりずっと演技の部分が減っているのは分かる。気恥ずかしさは殆ど霧消して
いる。『アキ』という少女として受け答えをする自分に、新鮮な眩しさすら覚える。
 崩れたメイクをいったん落とし、二人でメイクの練習までしたりもする。
 憧れのお姉さまと一緒に過ごす、幸福な時間。


「……あれ?」
「お姉さま、どうかしたんですか?」
 ペニバンを装着したお姉さまが、あたしのお尻に指を当てる。
 その指を怪訝そうな目で見つめて、ぺろりと舐めたりする。

「ローションじゃないよね、これ。私の愛液でもなし。ひょっとして、これが腸液なのかな」
 不思議そうに呟いていたりする。返事を返そうと思った瞬間、お姉さまの指先が、ほとん
ど抵抗もなくあたしの秘密の穴に潜り込んで来る。
「うわっ、もうトロトロじゃない。締まり具合もいいし、本当アキちゃんのここって名器ね♪」

 2本の指先で、前立腺はあえてさけて、あたしの身体の奥深くを優しく弄んでくれる。
 それでも、あたしの身体は敏感に身もだえして痙攣を始める。
 いやらしく腰が動くのを止められない。いやらしく声をあげるのを止められない。

「アキちゃん、本当に淫乱でいけない娘」
「い、いやぁっ!!」
「こんなエッチな娘、嫁に欲しがる男の人っていないんじゃないかしら……でもいいんだ。
アキちゃんは私がお嫁さんにもらって、大切にしてあげるから♪」

「お姉さまぁ!!」
 その言葉に脳がヒートアップして、またも絶頂を迎える。大丈夫か俺の身体。
 『雅明』と『アキ』。一種の二重人格みたいな状態で、『アキ』のコントロールが『雅明』
にはできなくなってきている。“最後の一線”がもう、完全に崩壊しかけだ。

 ぐいぐいと、硬い擬似肉棒が、そんな俺のアヌスに何度も何度も突きこまれる。
 本当の肉棒でないことのが残念──そんなことを一瞬でも考えてしまった自分が怖すぎる。
 でも襲い来る快楽の嵐に、そんな恐怖すら吹き飛んでしまう。

 実物でなくてもいい。大好きなお姉さまに貫かれる。
 その不思議な充足感があたしの全身を満たしていく。強烈な快感があたしを支配する。
 今日何度も迎えた絶頂。その最大の波が襲ってきて、あたしの意識をさらっていった。
330名無しさん@ピンキー:2013/03/21(木) 23:52:48.22 ID:tl8UJRQz
つC
331名無しさん@ピンキー:2013/03/22(金) 20:54:55.04 ID:nftVEDAi
なるほど、そのスカートの丈ですか。で下着は無しで。
はい、はい、一年以内には、シャツかキャミソールとその丈のスカート、に慣れてくれないかな?
うん、うん、キャミソールかシャツとスカートは同じ生地で、とか、ワンピースそういう短いのも良いかな?

ももはレッグガーターかリボンで足首か膝が出るソックスとかどうでしょ?
で、外出とか良いかも。
天候により外套というかコートは有りで。
ぁ。ばんつだとかぶらしゃーとか、補正のこるせっと、ぼでぃすーつなどは無しで?

あれ?かのん、かおり・しおり姉妹、京アニ版かな?


まあ、あの、
16歳すぎの男の子が女の子の服を着るのに困るのは、腰・ウエスト、や、胸・バスト、ではなくて
ヒップというか、ウエストからマタまでで、
例えば表面上は、お腹側は、おへその位置とか肋骨の一番下の位置が胸寄りな事
背中側は骨盤が男に比べて、左右と後ろに膨らんでいる事。
内面的には、骨盤底筋という、股下から腎臓、膀胱、腸、または女の子の子宮などを支える筋肉か厚みが有る事。
これは、尻尾を動かす筋肉の一部でも有りますの。


本格的に女装したくて肋骨を下から2から4本切り離す人
わんこ、にゃんこみたいに、尾てい骨が長く尻尾があるつもりになり、ゆっくり股下に引き込んだり、背中側に立てたりするトレーニングを行う人
ヒップアップのトレーニングをする人、
などな皆さんがたもいらっしゃいますよ。


私は、平均的の男の子と比べて、肩幅とヒップ周りは有り、チェスト・脇の下周り、バスト、ウエストは細いので、肩幅さえ隠せれば、女性サイズです。
例えば、ズボン、パンツ類は、男性向けで腰で買うとお尻は入りませんし、お尻で買うと、ウエストに引っかからないで、所謂腰パンになります。
しかし女性サイズでは、股間前面以外は問題なく着られますよ。
332名無しさん@ピンキー:2013/03/25(月) 01:39:33.29 ID:MjLoGQfn
http://i.imgur.com/wPQTUNu.jpg
これ知ってる人いる?
333名無しさん@ピンキー:2013/03/25(月) 08:09:12.64 ID:RKBRnvxV
334名無しさん@ピンキー:2013/03/25(月) 14:10:52.76 ID:MjLoGQfn
>>333
ありがとうございます
335 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/28(木) 18:58:39.72 ID:F4zht4x3
>>300氏のネタからの3連作の最後です……と言いつつ、長くなりすぎたので前・後編化。
超ミニは流石にヒップライン的につらいですね。今回も結構冒険気味です。

『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みC-1 1/7

(やっぱり、悠里より脚の綺麗な子っていないよなあ)
 そんなことを考えながら、画面を下に下にスクロール。
 目に入った画像に思わず吹き出す。
 いつの間に撮影されたのか、以前甘ロリ&ゴスロリで街を歩いたときの写真があった。

 首から下しか映ってないから、これが俺だと分かる可能性はまずないとはいえ……
 けどこれ、実際には女装男2人の脚なわけだけから、一種の詐欺行為じゃなかろうか。
 と、そこまで思ったとき、ドアがノックされる。
 「入っていいよー」と声をかけると、部屋着のままの悠里?俊也?が入ってきた。

 仕事の両親と、「春休みだし友達と遊びに行って来る」と出かけた俊也を送り出し、悠里
は仕事で外出の準備中。残った俺はどうしようか迷ってネットを眺めていた、そんな状況。
 もっとも、さっき見送った俊也が本当に俊也なのか、今入ってきた悠里が本当に悠里かは
分からないんだけど。

「あれ、悠里。今日は仕事って言ってなかったっけ?」
「さっきキャンセルのメールが入ってきたの。それで今日もゆっくりアキちゃんと遊びたい
なぁ、って思って来たわけだけど。駄目?」
「どうせなら、雅明として一緒に居たいんだけどなあ」

 一応、言うだけは言ってみた俺の言葉をスルーして、悠里?が目ざとくモニタに映った写
真を見つける。
「あ、これ前外出したときの写真じゃない。どうしたの?」
「美脚スレ検索して適当に見てたら、なんかアップされてたのを偶然見つけてしまって」

「ああ、この間言ってたやつね。どう? 私の脚は見つけられた?」
「今のところはないかな。また今度、暇なとき探してみるよ」
 流石に美脚スレの会話まで俊也に伝えてないだろうし、やっぱりこれは悠里でいいのか。

「それはそうとして、今日は一日一緒に遊びたいけど大丈夫?」
「もちろん」
「じゃあ、お風呂にお湯入れてるから入ってきてね♪ ゆっくり浸かって、綺麗にしてきて」

 PCの電源を切り、言われたとおりに風呂に入る。
 花の香りの入浴剤が入ってる、ぬる目のお湯だった。
 白く濁ったお湯の中、ゆっくりと自分の身体をマッサージする。ほんの少し前とは違って、
すべすべつるつるになってしまった肌の手触りが、情けなくも気持ちいい。

 悠里が喜んでくれるなら、これくらい別にどうってことはないんだけど、でも男としてど
うなんだろう。相変わらず迷子になりっぱなしの俺の心だった。
 悠里に教えてもらったとおりの手順で、全身と髪とを丁寧に洗う。今まで使おうと思った
こともなかった、トリートメントやコンディショナーまできちんと手順どおりに。

 今まで烏の行水状態だったのに、風呂に40分以上かかるのがデフォルトになってきている。
 これが意外に気持ちよくていいんだけど、春休みが終わったら大変になりそうな気がする。
 うちの風呂、悠里と一緒に入れるだけの広さがあれば良かったのになあ。
 風呂から上がってまず時計を見ると、1時間近くが過ぎていた。
336 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/28(木) 19:00:35.37 ID:F4zht4x3
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みC-1 2/7

 ふわふわした肌触りのいいバスタオルで、綺麗に全身を拭いていく。
 風呂場に置いてある、等身大の鏡に自分の姿が映る。男とも女ともつかない中途半端な姿。
 悠里(や俊也)と比べると、女らしさやスタイルの良さで完敗だけど、それでもさっき美
脚スレで見た下半身の半分よりは綺麗なんじゃないかな、と思ってしまう。

 股間も相変わらずタック状態から解放されずに男のシンボルは隠れたままだし、ウェスト
は微妙ながらくびれが出てきたように見える。
 試みにバスタオルを胸で巻いてみたら、それだけで女に見えてきてドキドキする……って
なんで今まで悠里がニヤニヤと見ているのに気付かなかったんだろう。

「うんうん、いい感じじゃないの♪ 続けて続けて」
「いや、もういいよ。正直すまんかった」
 慌てて着る服を探しても、用意しておいた男物の下着とかはどこにもない。代わりに置い
てあるのは、悠里愛用のピンク色のバスローブ。

「俺の着替えは?」
「そこに置いてるバスローブ着てね。……別にその格好でもいいけど♪」
 バスタオルとどっちがマシなんだろう。結局バスローブを着てみたけど、激しく後悔。
 自分の風呂上りの肌から漂う花の香り、石鹸の香り、シャンプー類の香り。
 そしてバスローブから漂う悠里の香り。とにかく尋常じゃない世界だった。

「ずいぶん待たせちゃってごめんね」
「私もお肌の手入れをやってたから、気にしないでいいよ」
 ブルーのタンクトップにホットパンツ姿の悠里が、笑いながら応えてくれる。珍しくむき
出しになった、細くて長くてほどよく肉のついた綺麗な脚線美に見とれる。

 用意しておいてくれたスポーツ飲料で喉を潤し、手招きされるままに椅子に座る。
 悠里の細い指の感触を心地よく思いながら、顔のパックに始まり温泉水スプレーやらボディ
ミルクやら、半月前までは名前も知らなかった液体たちが塗り込められていくのを待つ。
 もう少し真面目にやり方を勉強して、悠里にしてあげたいな……そんなことを思ってみる。

 そのまま二人で肌の手入れとかして過ごしたあと、今日の着替えとして差し出されたのは、
もうおなじみになってしまった、女物のピンクの下着だった。
 脚を通すと、慣れたくないのに慣れてしまった優しい感触が俺の下半身を包んでくる。で
も今日は前が格納されてるからフィット感も大違いで、それが余計に恥ずかしい。

 ブラジャーを背中で留めてもらい、パッドを入れ、ウェストニッパーを嵌める。
「少しきついけど、大丈夫かな?」
 前回より更に1段階細い、このウェストニッパーの一番細いところでホックを留められる。
「今はなんとか大丈夫だけど……セックスするとき無茶苦茶息がきついから緩めてくれない?」

「ああ、それ気付かなかった。ごめんね。気をつけるようにするから」
「こっちも先に言っておくべきだった。……でも、これだけ絞っても悠里より太いからなあ」
「これで64cmだから、女の子としても充分細いほうだよ♪ 身長が172cmだと、女性の理想の
プロポーションでウェストが確か65cmだったかな。いい感じだと思う」

 男として、それはどうなんだろう。
337 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/28(木) 19:03:06.21 ID:F4zht4x3
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みC-1 3/7

 毎度のピンクのスリップを着て、黒ストッキングを履く。
 そしてまあ、予想通りというかなんというか、渡された(悠里の後輩からもらったという)
女子高の制服一式を着こんでいく。クリーニングに出されて、ぴしっと綺麗になった一品だ。

 まずは白いブラウスを身に着け、スカートに脚を通す。
「今日はスカートは短くしないの?」
「お外歩くから、そのままの長さでいいよ……アキちゃんがしたいなら短くするけど」
 やっぱり外出るんだ。

 だぼだぼだったウェストを調整して、ぴったりのところまで合わせる。青と茶色のチェッ
クのミニスカート。半分以上出た太腿と、スカートの前に並んだ金ボタンが羞恥心を煽る。
 ネクタイをつけて、クリーム色のセーターと茶色のブレザーを羽織る。セーターなしでぴっ
たりだった肩は、少しきついけどまあ無理のないレベルで納まった。

「首とかサイズ大丈夫? きつくない?」
「ちょっときついけど大丈夫そう。肩幅とか喉仏とか目立たない?」
「肩幅は悪くないと思うよ。喉仏は……俊也ほどじゃないけど、気にならないと思う」
 今日はカツラもなしで、悠里より少し短い程度の髪を女らしく整えてピンクのカチューシャ
で留め、薄めの化粧をしてもらい、ごく軽く香水をつける。

 回数を重ねるたびに、段々と女装に抵抗がなくなってきている自分が怖い。
 『雅明』ではなく『アキ』でいることが自然になりつつあるのが怖い。
 今はもう、“アキ”に成り切ってしまってみてもいいんじゃないか。そんな誘惑? に駆
られ、無駄な力を身体から抜くよう、大きく息を吐き出してみる。

 ふと、違和感を覚えた。“俺”ではなく、“あたし”の思考に合わせて唇を開く。
「……お姉さま、じゃないんですね」
「あれ? どこで気付いたの?」
「……なんとなく? というか、何で分からなかったのか不思議なくらい」

「そっかー。雅明は凄い鈍感なのに、アキちゃんは鋭いのね♪」
 悠里の格好をした俊也が、面白そうな顔と声色で言う。
「あのヒト、なんだか鈍感すぎてあたしも恥ずかしいです。……俊也さんのことは、なんて
呼べばいいんでしょう。あたし、悠里さん以外を“お姉さま”って呼びたくないなぁ、って」

「そうね……この状態だと、私も悠里だから……うん、私のことは『悠里お姉さま』って呼
んでくれると嬉しいかな♪ 『お姉さま』のほうが本当の悠里で」
「んー。……分かりました。そうしましょう」

 よく分からない感覚だった。
 まるで鈍感な兄のことを呆れながら話すような調子で、アキが同じ人物であるはずの俺の
ことを話している。

 いつも意識していなかった匂いが気になり始める。同じ香水を使っていても、悠里と俊也
の肌の匂いには違いがある。普段なら、ごく近くで嗅がない限り分からない差なのに。
 俊也と悠里じゃ肌の色あいに微妙に違いがあるし、声にも微かながら違いがある。
 ……女装しているだけのはずなに、感覚まで女のそれに近づいてきているのだろうか?
338 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/28(木) 19:04:08.93 ID:F4zht4x3
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みC-1 4/7

 スカートの中を、春の風が通り過ぎる。
 優しい感触と匂いにうっとりとする。
 “アキ”の五感を通じて感じる世界は、これまで慣れ親しんできたものとは大違いだった。
 少し自分の家のドアを離れて、悠里お姉さまが家の鍵をかけるのを待つ。

 あたしと同じはずの女子制服が、段違いでよく似合ってる。ウェストあたりまでのストレー
トの黒髪もきれいになじんでる。
 ちょっとした仕草まで凛として女らしくて綺麗で、本当に絵になる美少女ぶりだった。

「じゃあ、アキちゃん行こっか……どうしたの?」
「いえ、悠里お姉さまってほんと、素敵だなぁ、って見とれてました」
「あらあら……ありがと。でもアキちゃんも充分可愛くって素敵だよ。自信を持っていいよ♪」

 これ、男同士でする会話じゃないだろ……と思わず雅明の素に戻って突っ込みかける。
 その瞬間、なぜかこみ上げてくる羞恥心。
 なんでハタチ近い野郎が、よりによって女子高生の制服を着て、ミニスカート履いて、化
粧までさせられて街を歩かないといけないのかと。近所の人に見つかったらどうするのかと。

「ん? どうしたの? アキちゃん……顔が雅明になってるよ。さっきみたいに成りきって
しまったほうがずっと楽だよ」
 後半は小声で、俊也が囁く。半分やけくそで、アキという名の仮想的な人格に意識を戻す。

「ごめんなさい。悠里お姉さま。……そういえばあたし、ウィッグもパニエもなしでお外に
出るの初めてだから、不安になっちゃって。おかしなところないですか?」
「いや、ぜーんぜん、そんなことないよ♪ さっき鏡で見て確認したとおり、アキちゃんは
とってもとっても素敵な女の子だよ♪」

 その言葉を素直に嬉しく思う自分がイヤ……じゃない。うん、あたしは素敵な女の子。
 今はお姉さま達には敵わなくても、いつか並べるところまで魅力的な自分になりたい。そ
う思うよう、意識を切り替えていく。
 そして、自分のできる一番ステキな笑顔を作って、お礼を言った。


「でね、アキちゃん。これを聞いてみて」
 駅前のカラオケに入り、ドリンクバーで烏龍茶をついで、部屋の席に2人座る。歌でも歌
うのかな、と思っていたところに悠里お姉さまからイヤホンを渡された。
 素直に耳につけて、聞いて思いっきり赤面する。

「アダルトビデオか何かの録音……ですか? これ、エッチの時の女性の喘ぎ声ですよね」
 イヤホンを外しながらのあたしの回答に、悠里お姉さまが、プッと吹き出す。
「うん、そう思うよね。でも外れ。……それ、アキちゃんの喘ぎ声なんだ♪」
「えぇっ? やだぁ──────────っ」

 あたし、ますます赤面。思わず両手で顔を覆ってしまう。恥ずかしい。なんでこんなもの。
「アキちゃん、男の声しか出せないって言ってるけど、実は女の子の声も出せるんだよ。
 羞恥心か何かが邪魔して出せてないだけだと思う。だから今日は女声が出せるようになる
まで、ここで特訓ってことで」
339 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/28(木) 19:05:45.06 ID:F4zht4x3
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みC-1 5/7

「うんうん、いい感じになったと思う♪ 聞いてみて」
 それから3時間後、満面の笑みで渡されたイヤホンを再度耳につける。
 少しハスキーで、微かに鼻にかかった、甘い、女の子の声が聞こえてくる。
「まさか本当にこの時間でマスターしちゃうとはねぇ。私もびっくり。その調子で続けてね」
「自分の声を聞く機会って普通ないから、なんだかとっても恥ずかしいですよぅ」

「まあね。……でも女声、私でも1ヶ月習得にかかったのに、やっぱりアキちゃん凄いわ」
「どの程度が普通なのか分からないから、なんとも」
「早くて2ヶ月、普通で6ヶ月くらい? 前どこかで、そんなこと聞いたような。アキちゃ
んの場合、たぶん最初っから出せる状態だったのが大きいんだと思う」

 それは、喜んでいいのやら悪いのやら。
「じゃ、せっかくカラオケだし、女性ボーカルの曲歌ってみよ♪」
 前回、俊也(と思い込んでいた実は悠里)と来たときも、2人して女性ボーカルの曲を歌
わされたものだった。あのときは酷いオカマ声だったけど。

 それが今は、女2人(実は男2人)でごく自然に女性ボーカルの曲を歌っている。
 キーが高めの人は無理だけど、普通の歌手なら音を追える。男の曲を歌うよりむしろ楽か
も。すっかり楽しくなってしまって、悠里お姉さまが
「じゃ、カラオケはこれくらいにして次行きましょ」
 と言ったときには、つい「え────っ」と、抗議してしまった。


 電車で1駅分移動して、ごく軽く遅めの昼食を取り、適当なアミューズメント施設に入る。
 男でいるときには、『女同士ってよく喋るもんだな……』と呆れることも多かったけれど、
その間ほとんどずっと(実は男な)2人で色々話しては、他愛ないことで笑ってあっていた。
 今まで男声で、喋るのに気後れしていただけに、普通に会話できるだけで嬉しい。

 背が高めの超絶美少女と、背が高いそこそこ美少女の組み合わせはやっぱり人目を引くら
しい。そしてそんな視線を、気持ちいいと思ってしまう自分がいる。
 でもいいんだ。自己嫌悪に浸るのはあとあと。今はこの時間を目一杯楽しまなきゃ。
 半分無理やり自分に言い聞かせ、ついつい出たがる『雅明』としての自分を押さえつける。

「あぁーん、また失敗ー」
 クレーンゲームで可愛いぬいぐるみを見つけて、つい欲しくなって挑戦してみる。
 でもお姉さまも余り興味がなかったこともあり、経験値のないあたしのこと、うまくいか
ない。悠里お姉さまも、いいところまではいくけど、やっぱり駄目だった。

 そんなあたし達を見かねたのか、男の子2人連れがやってきて、
「ちょっとやらせてくれないかな?」
 と言ってきた。「どうぞ」と譲ると、真剣な表情であたしの欲しかったぬいぐるみを狙っ
てくれる。……ひょっとして取れるかな? と思ったら、実はあたしより更に下手だった。

「こういうのはね、狙った獲物はちゃんと釣り上げないと、女の子も釣り上げられないぞ」
 呆れ声の、悠里お姉さまのコメントにみんなで大笑いしてみたり。
「ごめんごめん、いい所見せようとして大失敗。慣れないことするんじゃないなあ」
 「そだね」というあたしのコメントに、更に大笑い。
340 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/28(木) 19:07:22.29 ID:F4zht4x3
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みC-1 6/7

「ついでにもう一つ、慣れないことしていいかな。……君たち、これからお暇?」
 流石にナンパされるのは怖いと、断りの言葉を考えてると、
「うん、6時までなら大丈夫♪」
 と悠里お姉さまがオッケーしてしまう。

 そのまま立ち話で軽く(あたし達は嘘だらけの)自己紹介。
 やたらと背の高い子たちだった。あたしでも見上げないといけないくらい。特に片方の、
北村とかいう無口でハンサムなほうは身長190cm越えてるんじゃなかろうか。
 もう一人の伊賀と名乗った、愛嬌のある丸顔の子でも多分185cmくらいだと思う。

 元バスケ部だそうで体格も無茶苦茶良くて、この2人に囲まれていると流石のあたしでも、
なんだか自分が小さな女の子であるような気分になってしまう。
 本来1つ年下の少年達に、“年下の女の子”として扱われるのも面白い。
 新鮮な感覚に、口許がほころぶのを止められない。

 ハンサムさんのほうは、悠里お姉さまと並んで見劣りしない美形で高身長。元バスケ部の
エース兼主将で、スポーツ推薦の話もあったのを蹴って、家業の開業医を継ぐために国立大
の医学部に普通に合格したという『何そのチートキャラ』状態。
 本来なら、悠里はこういう人と結ばれるべきなんだろうな、と内心複雑な気分になる。

 取り損ねたぬいぐるみさんに小さく手を振ってお別れして、プリクラコーナーへ。
 ガラスで盗み見ると、男の子2人は、後ろでこそこそ喋ったあと、じゃんけんとかしてる。
たぶんどっちが悠里お姉さまと一緒に写るか勝負なんだろう。失礼な。
 その後、そのチート男に手招きされ、プリクラのカーテンの中に入る。

 あたしの肩に、腕が回される。『この人、全然女慣れしてないんだ』と分かるぎこちなさ。
 ふりほどくのも無粋かと、そのままの格好で撮影を終える。
「北村さん、じゃんけんに負けちゃったの? 残念」
「あれ、じゃんけんばれてたんだ……でも、勝ったのは僕だよ」

 ……え? 反応に困るあたしをよそに、北村さんが2回目のコインを投入。
「アキちゃん、こっち向いて」
 言葉通りに振り向いたあたしの目に、どアップで彼の顔が迫る。約20cmの差を埋めるため
に無理に屈んだ状態で、ちっとも上手くない、それだけに真剣さが伝わってくるキスだった。

 混乱してふりほどこうとしても、いつの間にか背中に回しされた腕が許してくれない。
 シャッター音が流れ、見事にチュープリが撮られてしまう。
 撮影が終わり、腕の力が緩んだすきに、わたわたと脱出。
 どうしよう顔が真っ赤で彼の顔をまともに見ることもできない。

「ちょっと強引すぎましたかね? 嫌われちゃいましたか?」
「いや、これは脈ありと見ました」
 伊賀さんと、悠里お姉さまが無責任に茶々を入れてたりする。

「……あのぉ、北村さんって、彼女とかいないんですか?」
「ずっと男子校で、女の子と付き合ったことはないんだ。アキちゃんみたいにドキドキする
子に会ったこともない。もしよければ、僕の恋人になってくれないかな」
341 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/28(木) 19:08:48.67 ID:F4zht4x3
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みC-1 7/7

「……嬉しいんですけど、でもごめんさい。あたしにはもう、付き合ってる人がいるから」
「そっか、もう彼氏いるんだ。そりゃそうだよね。こんな魅力的な子に、恋人がいないわけ
ないか。……本当にごめんね」

 それだけ聞いてトイレに逃げ込み、便座に腰をかけて深呼吸。でも、無意識に入った先が
女子トイレだったのは偉いと思ったけど、これから先、“俺”本当に大丈夫だろうか。
 逃げてる最中ちらっと見えた、彼のズボンの前は随分と窮屈な状態だった。
 そして、それを見てフェラチオとかしてあげたいと思っている“アキ”の存在が怖かった。

 ぶんぶんぶんと頭を振って、ついでに小用もして、キスで取れた化粧も軽く直して、よう
やく皆のところに戻る。今自分が男なら、顔も洗ってたところだ。
 まだ彼の顔をまともにみれない。代わりに、じっと見つめる北村さんの視線を感じる。

「アキちゃんの彼氏さんって、今日は一緒にいないのかな」
 伊賀さんが、フォローのつもりなのかそんなことを聞いてくる。
「そのぉ、今日はお仕事中だから」
「へえ。社会人?」

「いえ、大学生なんですけど、モデルの仕事もしてるので」
「うわ凄いねぇ。……ひょっとして、アキちゃんも将来、モデルとか目指してたりする?」
「あたしなんか、とてもとても」
「背高いし、スタイルいいし、顔かわいいし、絶対合うと思うんだけどなあ」


 その男の子2人連れとも6時で別れ、2人で女物の服を買いに行く。
「7時半までに、どれか好きなもの1揃いを選んでね。アキちゃんにプレゼントするから」
 センスを問われる、割と難問だった。172cmの身長に合う可愛い服ってあんまりない。
 色々店を回ったあと、ようやくピンときたものがあった。

 幾重にも重なる、クリーム色のチュールの透けるロングスカート。花咲き乱れるプリント
のロングブラウスの上に、長めでクリームピンクのニットカーディガンを羽織る。
 どこかで見たような、と思ってたら、店長さんに「それ、瀬野悠里ちゃんのコーデよね。
ファンなのかな?」と言われてしまった。

 そういえばこれ(随分昔の話に思えるけど)、撮影でスタジオまで迎えに行った際、悠里
お姉さまが着ているところを見たことのある、森ガールの衣装一式だった。
 「よくご存知ですね♪」と返事したけど、隣に本人がいるので笑いを堪えるのが大変。

 フリルとレースいっぱいのその服のまま、店を出る。道行く人の視線が気持ちいい。
「悠里お姉さま、ありがとうございます」
 お辞儀をすると、途中で購入した可愛らしいイヤリングが耳元で揺れる。その感覚もなん
だかくすぐったい。

 悠里お姉さまも、予め持ってきていた私服に着替える。
 ワインレッドのロングワンピースに赤いボレロ。無地で飾りのないシンプルさが、却って
悠里お姉さまのスタイルの良さと端正な美貌を強調して、女のあたしでも見蕩れてしまう。
 ……本当はどっちも男なはずなのに、どこまでも感覚が狂いっぱなしでいけなかった。(続く)
342名無しさん@ピンキー:2013/03/29(金) 00:56:14.47 ID:EU4ZyVI1
つC
343 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/30(土) 08:25:48.75 ID:E0cl5on2
自分でも大暴投気味と思う後半部投下。

『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みC-2 1/7

 その格好で、待ち合わせ場所に移動して待つ。
 ナンパ男が寄ってきては、悠里お姉さまが視線だけで撃退することを何回か繰り返したあ
と、ようやくお姉さまがやってきた。

 黒いジャンバー、黒いシャツ、黒いジーンズ。
 黒ずくめの完全に男物の衣装がスタイルの良い細身を強調して、ついぼぅっと見蕩れる。
「待たせちゃったかな? ごめんね」
 謝る身体に飛びつき、キスまでしてしまう。

 ここが往来ということも忘れて──いや、見ている人みんなに、あたしの愛を見せ付ける
ように、濃厚なキスを。……って、ちょっと待ったアキ。流石にやりすぎだ。
 慌てて体を離して、小声で「ごめんね」と謝る。
「いや、嬉しいけど……どうしちゃったの? アキちゃん」

「今日のアキちゃん、本当にびーっくりすることばっかりだったよ♪ ゆっくり話したいか
ら、お食事できるところ行こっか。……俊也、何か食べたいものある?」
 お姉さまの言ったお店に、3人でおしゃべりしながら移動する。

「お姉さま、結局今日はお仕事だったんですか?」
「うん、初めてのTVCMの撮影。流石に俊也にも譲れなくってね。……って色々言いたい
ことあるけどさ、今日は私が悠里ってことばれちゃったんだ」
「ばれたというか……見抜いた? アキちゃんって凄いんだよ♪」

 それから、家での様子、女声の特訓、電車内の様子、アミューズメント施設の出来事やそ
こで会った男の子たち、今着てる服のお買い物の様子までことこまかに解説していく。
 自分の意識をアキに保った状態でも顔が真っ赤になっている。雅明の素に戻ったら穴に埋
まってその穴を爆破したくなるような出来事ばかりだった。

「その北村って人、どんな人?」
 食事も終わって、今日の出来事も説明し終わって。興味津々といった体で、お姉さまが聞
いてくる。
 その言葉に、待ってましたとばかりにプリクラを差し出す悠里お姉さま。

 チュープリもそうだけど、その一枚前の写真とそれに書き込んだ落書きも妙に気恥ずかし
くて、顔を手で覆って脚をバタバタさせてしまう。
「うわ、確かにハンサムだなあ。こうして見るとお似合いの美男美女カップルって感じで、
ちょっと妬けてしまうな」

「そんなこと言わないでくださいよぅ。あたしは──アキも雅明も、お姉さまのものです」
「嬉しいこと言ってくれるじゃない♪」
 にんまり笑って、あたしの頭を撫でてくれる。顔がとろけそうになるのを止められない。
「雅明はお姉ちゃんのでいいから、アキちゃんは僕に譲ってくれないかな」

 少年の声に戻って、悠里お姉さまが言う。
「あら、惚れちゃった?」
「うん、割と真剣に。だってアキちゃん、可愛すぎるんだもの」
「でも駄目、“俊也”には絶対譲ってあげない。……“悠里”相手なら考えなくもないけど」
344 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/30(土) 08:26:42.83 ID:E0cl5on2
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みC-2 2/7

 食事を終えて、しばらくウィンドウショッピング。
 途中であたし用の新しい下着を購入したりしたあと、ラブホテルに入る。

「あたし、最初にシャワー浴びてきていいかな?」
 朝に香水とかつけたりしたものの、一日歩き回ったりしてたせいで男の体臭が少ししてる。
なんとなく、それが嫌だと感じる自分がいた。
 シャワーを入念に浴びて、ふと思いついてシャワー浣腸もしてお腹の中を綺麗にしておく。

 バスタオルを胸のところで巻いて、部屋に戻る。
 どうもいけない。意識がアキに傾きっぱなしだ。それを自然にやってしまうこと自体が、
既にかなりやばい。分かっているのに、歯止めがきかない。

 2人にシャワーに入ってもらってる間に荷物を漁り、買ってもらったばかりの可愛いデザ
インのペールイエローのブラジャーだけをつけて、パッドを入れなおす。
 昼間着ていた女子制服を取り出し、白いブラウスと青いチェックのプリーツスカート、キャ
メル色のブレザーを順に身に着けていく。

 スカートのウェストを緩めるのは、少し屈辱だったけど。いつかウェストニッパーなしで
も、昼間のサイズでスカートを穿けるようになりたいなと思う。
 その格好で、更に荷物の中を探す。少しあって、"Remover"と書かれた小さな容器を発見。
 自分の股間につけると、嘘のようにあっさりと、接着された擬似割れ目が解放される。

 久しぶりに見る、『雅明』の姿。
 あって当然のそれは、なんだか少女の股間に生えた男性器のような、あるいはフタナリの
ような、不自然さと違和感と、そして蠱惑的なまでの魅力を放っていた。
 指先で軽くなぞると、恐ろしいまでの快感が全身を貫く。

 そういえばタック状態にされてる間、ずっとオナ禁状態だったことを思い出す。やろうと
思えばできるのだろうけど、なんだかそういう気分になれなかったのだ。
 そこから意識を引き剥がして、今度は自分の持ってきたポシェットを探す。真っ先に香水
の瓶を探して、ほんの少しだけ身体に振り掛ける。女らしい匂いにうっとりする。

 そこまでしたところで、2人が出てきた。
 姉弟で仲良く一緒にシャワー……普通はやらないと思うけど、この2人はそういえばよく
やっている。中ではどんな状態なのだろう。
 さっきのあたしと同じように、2人とも胸でバスタオルを巻いた姿。胸以外は差のない姿。

「あれ、アキちゃん。制服なんて着ちゃって。……それそんなに気に入ったんだ」
「もちろんですよぅ。お姉さまがこの制服着てるのを見て、あたし、どれだけ憧れだったか」
 ……それは『自分で着てみたい』という意味での『憧れ』じゃなかったと思うけど。
「そっかー。アキちゃん似合ってて、すごく可愛いもんね♪ 一緒に通えたらよかったのに」

「今日も、もう一着、制服あるんですよね。どっちが着ます?」
 無言で顔を見合わせ、同時にじゃんけんをする、お姉さま2人。
 あいこが3回くらい続いたあと、悠里お姉さまが勝利。いそいそと、お姉さまの持ち物で
ある制服を着始める。
 その間、手招きされてお姉さまと一緒に、部屋にあった鏡の前に座る。
345 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/30(土) 08:27:26.29 ID:E0cl5on2
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みC-2 3/7

 お姉さまの細い指によって、再びあたしの顔にメイクが施されていく。
 自分で出来るようになりたいとも思うけど、お姉さまにメイクされている感覚も好きだ。
 肌の色に近いアイメイクとチーク、ピンクのリップとグロスだけの、軽いメイク。
 髪をセットしなおしてもらって、鏡の中を見る。

 『雅明』は認めたがらないけど、なかなか可愛い部類の女子高生に見えると思う。
 これで背が高くないなら、中学生にも見えるかもしれない。
 ……まあ、比較対象がお姉さま達なら、あらゆる点で完敗なんだけど。

「なんかさ、一つ夢が出来ちゃったな」
 鏡の中のお姉さまと自分自身とに見蕩れているあたしを、後ろから軽く抱きしめながら、
お姉さまがつぶやく。首から肩に柔らかな二つの膨らみを感じる。羨ましい感触だった。
「……夢、ですか?」

「うん。アキちゃんと一緒に、モデルとして舞台に立ちたいなぁ、って。……そんな遠くな
い未来に実現できそうな気もするけどね」
「そんな、あたしには無理ですよぅ」
「ルックス的には充分だと思うんだけどな。アキちゃんもっと自分に自信を持っていいよ」

「んーと、そっちよりむしろ……モデルについて知れば知るほど、、とてもあたしにはその
世界は無理だなぁ、って。なんというか、あたしそんなにストイックになれそうにないって
いうか、そんな覚悟はあたしには出来ないなぁ、っていうか」

「そういう部分でも、アキちゃん実は向いてるんじゃないかと思うんだけどな♪」
 女子高生姿になった悠里お姉さまが、ベッドの上で脚をぶらぶらさせながら言う。
 あたしと違って、ノーメイクでも充分美少女な姿。
「一度やってみたらどうかな? あまり身構えずにさ」

 つい頷いてしまいそうになる『アキ』を押しとどめるのに一苦労。
 ほっておいたら俺は、この2人にどこまで連れていかれるのだろう。

 返事に迷う“俺”を放置して、悠里と俊也がキスを始めてる。
 傍目からも分かる、濃厚にすぎるディープキス。鏡合わせのような美少女2人による、一
種のナルシズムの極地。実際には男と女、それも実の姉弟による倒錯的な光景。
 『雅明』がそれに目を奪われている隙に、またもや『アキ』に意識の主導権が奪われる。

 悠里お姉さまの前にひざまずき、短いスカートをめくり、更に下着もめくる。
 無毛の可愛らしい、男のものでは決してない割れ目が見える。
 制服のポケットに入れておいたリムーバーを取り出し、そこに振り掛ける。
 とたんに姿を現す、悠里お姉さまのお○んちん。

 あたしも身をもって経験したけど、割れ目状態だときちんと洗えないから、匂いも溜まっ
て凄い状態になっている。でもその匂いが、あたしを興奮に誘う。

「いただきまーす♪ ……はむっ」
 きゅっと膝を合わせてかばおうとする悠里お姉さまの脚を押さえつけ、唇を近づける。何
年ぶりになるか分からない、“その場所”の味が口の中に広がる。
346 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/30(土) 08:28:16.36 ID:E0cl5on2
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みC-2 4/7

 本当は回りから徐々に、じらすようにやるのが定石なんだけど、勢いづいたせいか止まら
ない。いきなり完全に、悠里お姉さまの根元までを口の中に入れ込む。
 肉棒の下のラインを、舌で舐めあげる。
 あたしと同じように、悠里お姉さまも溜まっていたのだろうか。それだけで発射の兆候。

 少し残念に思いながら唇を離し、改めてじっくりと攻略再開。
 可愛らしい女子高の制服に似合わぬ、男の子の徴。男の服でも女の子と間違われてナンパ
されることも多い可愛い顔に似合った、やや小ぶりな男の子の証。
 仮性包茎で今は皮かむりのそれを、指先でぷりっとむき出しにする。

 現れた亀頭に、軽く口付ける。鈴口を舌で何度もなぞる。
 溜まっていた恥垢を舐め取ると、なんとも言いがたいチーズに似た味が口の中に広がった。
 タマタマとその周辺へ、指先と舌による責めを繰り返す。

 いつの間にか、お姉さま達はキスをやめていたらしい。
「悠里、スカートをたくし上げてみて」
 お姉さまがそう言うと、今まで頭にかかって少し邪魔だった、悠里お姉さまのチェックの
プリーツスカートがめくりあげられて光が入る。

 見上げると、悠里お姉さまの美しい顔が目に入ってくる。
 お洒落な女子高制服に身を包んだ超美少女が、自ら指でスカートをたくし上げ、股間でひ
くついている完全勃起状態の自分の男性器をあらわにする。
 それはなんとも倒錯的で魅惑的な情景だった。

 あたしを少し不安の混じった顔で見下ろしてくるその顔ににっこりと笑顔を送ったあと、
甘えた上目遣いのまま、グロスの輝く唇で亀頭の部分を優しくくわえ込む。
 もう少し進めて、カリ首の部分をなぞるように舌先を一周させる。
 気持ちのいい部分は知り尽くしている器官。指と舌とでその箇所を丹念に刺激する。

「あ、あ、あぁぁん♪ あっ、アキちゃん、フェラチオ上手すぎ……ゃ、ゃぁぁんっ!」
 指先をそっと伸ばし、お尻の穴にトントントン、と軽く刺激を与えたりもする。思わずの
けぞって快感をあらわにする、ほっそりした身体。
 時には激しく、時には緩め、発射の寸前にいたるまでを何度も何度も繰り返す。

「ごめん、アキちゃん、いかせて……お願い……お願いだから……ぁぁんっ」
 息も絶え絶えに哀願してくれる。そんな悠里お姉さまの様子は珍しい。
「悠里お姉さまぁ、まだまだ大丈夫ですよぅ。もっともっとアキのお口マ○コで、気持ちよ
くなってくださいね」
「アキちゃん、本当にフェラチオ上手だなぁ。悠里も凄い気持ちよさそう。参考になるわ」

 それから十分近く更に経過し、本当の限界が近づいてきた。一気に深く攻め入る。
「バキュームフェラにディープスロート……アキちゃん、そこまで出来たんだ。10歳の男の
子にそんなことを仕込む冬子さんたちって、ナニモノなんだろう」

 お姉さまの解説を聞きながら、悠里お姉さまの身体が快楽のあまりに暴れまわる。
 どれだけ精液を溜め込んでいたのだろうか。あたしのお口を完全に満たし、思わず口を離
したあとも放出を続け、あたしの顔を、髪を、制服を、匂いのきつい粘る液体が染め上げた。
347 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/30(土) 08:28:57.23 ID:E0cl5on2
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みC-2 5/7

 本当に美味しいとは思わないけど、美味しそうな表情を作って、その液体を飲み干す。
 目の周りだけ最低限指でぬぐって、咄嗟につぶっていた目をあけると、ベッドの上悠里お
姉さまが仰向けに倒れこんでいた。
 短いスカートを押し上げて、まだ勃起状態のペニスがひくつきを繰り返している。

「いや、いいもの見せてもらったわ。……本当、すごかった」
 その悠里の言葉に、“俺”は我に帰る。
 足元を見れば、たった今俺が見事に壊し果てた、『越えてはいけない、最後の一線』の残
骸が散乱してるのが目に入るような気さえした。

「──悠里、俺な……俺、男なんだから」
「うん、知ってる。それは誰よりもまず、私が保証してあげる」
「ありがとう。慰めでも嬉しい。──こんな格好のままで、ごめん」
 返答も待たずに、女子制服の姿のままで、ぎゅっと強く悠里を抱きしめる。唇を奪う。

 フェラで俊也の精液を飲み込んだ直後にキスをして、髪から顔やら制服やらにべったり精
液がついた状態で抱きつくとか……と後悔が脳裏をよぎるけれども、それでも止まらない。
 悠里も少し戸惑って一瞬ひるんだ様子もあったけど、すぐに積極的にハグとキスを返して
くれる。

「……雅明、今までよりずっとキス上手くなってない?」
 唇を離したあと、とろんとした目で俺の目をまっすぐに見つめて、悠里が言う。
「悠里が教えてくれた通りにやってるだけだよ。こないだ悠里からのキス受けてさ、俺のキ
ス下手だったなあ、って反省したんだ」

 もう一度、今度は唇をつけずに舌だけを絡ませあう。同時に指で悠里の股間を弄ぶ。
「……脛毛も髭もなくなって、肌もすべすべになって……本当にごめんね、私のワガママに
付き合わせちゃって。でも私やっぱり、こっちのほうがいいや……」
「悠里が喜んでくれるなら、このくらい別に気にしないよ。やっぱり俺は悠里が好きだから」

 ピロートークと前戯を平行しているような、奇妙な状況。でもその悠里の言葉が、静かに
ゆっくりと、俺の興奮を高めてくれる。
 スカートの裏地に、俺のむき出しの亀頭がこすれて変な感覚がするけど気にならない。
 次第に悠里のヴァギナも、滾々と蜜を湛えていくのが分かる。

「悠里、入れるよ……」
「うん、大丈夫。来て……」
 そういえばいつぶりだろう。悠里の割れ目が、ゆっくりと俺の猛り狂ったままの器官を飲
み込んでいく。当たり前の行為のはずなのに、久しくなかった気がする。

「悠里、やっぱり俺、悠里のお○んこが一番いいや」
「うん、嬉しい……あぁぁっ、ゃだ! そこっ、ああああっ、あぁぁぁん! いやっ!」
 悠里をベッドに寝かせて彼女の長い綺麗な脚を俺の肩に預け、俺はベッドの外から深く貫
く正常位。

 オナ禁の効果もあり、久々の悠里のあそこがとてもとても気持ちがよかったせいもあり、
ほんの一瞬で発射してしまう。それは凄く長くて、凄く気持ちいい射精感だった。
348 ◆fYihcWFZ.c :2013/03/30(土) 08:29:24.89 ID:E0cl5on2
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みC-2 6/7

 いつもの俺であれば、ここで一旦萎えて、少しの休憩が入るところ。
 でも今は悠里が全然気持ちよくなってないし、俺もまだまだ続けたい気分がある。
 相棒の感覚を探ると、半勃起状態でまだ繋がっていられそうだった。
 そのままの状態で、改めてピストン運動を開始する。

 見上げると、全裸の美少女をと女子制服姿の少女が百合行為を働いているシーンが見える。
 鏡に映った自分達の姿で、それがとても気恥ずかしい。
 目をそらすために視線を下ろし、悠里の姿に魅入る。激しい快楽ではない。でも着実な興
奮に身を任せて悶えている姿は、神秘的なくらいに美しかった。

 徐々に俺の分身が力を取り戻す。腰の動きを徐々に大きくし始める。
「はぁ……はぁ……ぁん……やっ! ぃやっ! ぁああ! あん! 駄目ぇえっ!!」
 悠里の喘ぎも大きくなっていく。腰のうねりが悩ましさを感じさせる。

「悠里っ、俺っ、悠里が大好きだっ、愛してるからっ、大好きだからっ!」
「ぁぁんっ! まさあきぃっ! 雅明っ! 雅明っっ!!!」
 今までにない一体感を感じる。そんな至福の時間をひたすら繰り返したあと、彼女の昂ぶ
りを捉えて、2人、完全に同時に最後まで登りつめた。


(やっぱり俺、悠里が……女相手がいい。アキはもう俺を惑わさないでくれ。俺はもう、男
となんかやりたくない。俺はアキじゃないんだ。お前の欲求に付き合いたくない)
 床に倒れこむように寝そべり、天井を睨みつつ考える。
 (……雅明、それは違うよ)、と頭の中で“アキ”が抗議するかのように囁きかけてくる。

 ──雅明とアキはいっしょの人物。
 アキの感情は雅明の感情だし、アキの欲望は雅明の欲望なの。
 アキが嬉しいと思ったことは雅明も嬉しいと思ったことで、アキがやりたいと思ったこと
は、雅明もやりたかったことなの。……自分を誤魔化すダシに使わないで──と。

 それに俺は言い返そうとして、……そしてその言葉が余りに図星で事実で言い返せないこ
とに気付かされる。

「アキちゃん、大丈夫?」
 倒れこんだ俺に声をかけてきたのが、俊也でなかったなら少し展開が変わっていたかもし
れない。短いスカートがひっかかる形で、勃起状態のペニスの先端が見えてなければ違って
たかもしれない。

 でも。
(雅明、本当は『あれ』、欲しいんでしょ? 自分に嘘ついちゃだめだよ? 何ならあたし
が代わってやってあげてもいいよ?)
(……おいっ、馬鹿っ!)

 “あたし”の身体を起き上がらせ、俊也の身体をベッドの上に押し倒す。
「アキちゃん、どうしちゃったの?」
 戸惑う“悠里お姉さま”の分身を、騎乗位の形であたしの中に受け入れていく。
 いや、誤魔化しても始まらない。確かにこれは、『雅明』自身も望んでいたことなのだ。
349 ◆fYihcWFZ.c
『瀬野家の人々』 雅明くんの春休みC-2 7/7

 前戯もローションもなかったので、そもそも入るかどうかすら不安だったのに、ずぶずぶ
と根元まで、あたし/俺のお尻は悠里お姉さまの肉棒を迎え入れてしまう。
 引き裂かれる感覚や痛みは微塵もない。ここしばらく受け入れてきたまがい物とは違う、
柔らかくも力強い感触がとろけるように心地いい。

 大きさも硬さも、大昔の記憶に微かに残る感触よりは大人しいものだったけれど、でもそ
れが悠里お姉さまのものだと思えば、愛しさだけが募ってくる。
 デザインが可愛いことで有名な、女子高のキャメル色のブレザーに身を包んだ二人の美少
女たちが、ベッドの上で腰をくねらせあっている。そんな鏡の中の姿に見蕩れる。

 頭で考える必要もない。ただただ、心と躰の命ずるままに、腰が痙攣し、うねり、全身が
揺れるままに任せる。
 腰が前後に、上下に動くたびに、悠里お姉さまが快感の余り熱い吐息をはく。
「あぁぁあん♪ ぁぁぁああんっ♪ ひゅっ、はぁっ、はぁぁあああああんっ♪」

 喘ぎ声が、まるで音楽であるような響きを帯びるのは、悠里お姉さまの一つの特徴。
 愛しい愛しい、悠里お姉さま。
「……そういえば、俊也って前、確か雅明相手じゃできないとか言ってなかったっけ?」

 少し気だるさの残る様子で、陶然とした瞳であたしたちのまぐわいを見つめていたお姉さ
まが、ふとそんなことを聞いてくる。
「い、言ったでしょ? 私っ、アキちゃんに惚れちゃったのぉっ! 雅明は無理だけど、あっ、
あぁん! アキちゃん相手なら、さっ……さ、最後までやりたいのっ!!」

「ゆっ……悠里お姉さまぁっ! あっ、あたし嬉しいですぅぅっ!」
「アキ、アキちゃんのあそこ、よ、よく締まってて、ひだひだが絡み付いてきてっ、吸い込
んでいくようでっ、ぐしょぐしょに濡れててっ、とってもとっても気持ちいいのぉっ!」
「ゆっ、悠里お姉さまのあそこ、あったかくてっ、脈うってて、すっごく気持ちいいのぉ!」

 お姉さまはまだ何か言っているようだけど、もうそれすらも“意味ある音”として聞き取
れない。2人の世界の中、獣のような、悲鳴のような、音楽のような嬌声が絡みあう。
 そのままどのくらい時間がすぎたのだろう。流石に疲れが出てきた。
 2人目で見詰め合って、言葉にすることなく互いの意思を了承。息を合わせる。

 体勢を組み替え、繋がったまま後背位に位置を入れ替える。まるで獣の交尾のような姿勢。
 その状態で最後の最後まで突きこんでも、悠里お姉さまのものは、あたし/俺の最奥には到
達しない。
 それでも自分の肉体が歓喜の声をあげるのを止められない。

「はんっ! あんっ! 気持ちいいのぅっ! あぁぁあぁぁんっ! ぁぁんっ!!」
 全身が快感の波によって翻弄されて止まらない。そしてその最大の波で絶頂を迎えるその
瞬間、恐ろしい量の白く熱く滾る精液が、体内に迸るのを感じた。

 悠里、俊也の演じるもう一人の悠里、それに“アキ”。
 “雅明”はどうも、この3人の気まぐれで小悪魔的な、でも俺のことを本心では優しく気
遣ってくれる美少女たちに翻弄される運命にあるらしい。
 あまりの快感に、いつものように意識が失われる寸前、ふと、そんなことを思った。