こらぁ、他人のふんどしでしょっぱい相撲をとるんじゃねぇぞ
最低限の羞恥心も持ち合わせてないのかよ
…
「舞さん、ちゃんとおねだりするのよ。ほら、そんな汚い靴なんか舐めてないで」
「ん…れろ…ん?」
この小娘は…
「あ、お兄ちゃん…入れて。舞のおまんこに入れて…」
「ダメよ、そんなんじゃ。もっと…」
そうだ。それこそ今の『力』を使えばいい。
私はこの妹の気持ちを「後押し」してあげた。
「はぁ…! お兄ちゃん! 入れて下さい!
舞のおまんこにお兄ちゃんのおちんちんをぶち込んで下さい!
膣にザーメンを注ぎ込んで下さい!
孕ませて下さい! お願いします! お兄ちゃんの…」
その言葉を聞き終わらずに清彦は…兄は後ろから妹のスカートとパンツをずり下げて後ろから挿入した。
「ああ! 来たあ! お兄ちゃんのおちんちん来たあ! はぁはぁ!」
「はぁはぁ…舞…舞…好きだ…愛してる…」
「あああん! 舞も! 舞もだよ! お兄ちゃん! もっと突いて!」
「舞! 舞! 舞!」
「あん! お兄ちゃん…あん!」
盛り出す兄妹。兄は後ろから妹の胸を揉みながら上着とブラジャーを脱がしていく。
「いい! いいの! お兄ちゃん! いいの!」
「はぁ! はぁっ! 舞! 舞!」
ホント獣よね。
「出る! 出る!」
「あ! ちょっと! はぁ! はぁ! やめ…」
―中で出してあげなさい。それこそ孕んじゃうほど、たくさん
「…うっ!! ぐ…!」
「やあああああああああああ! 中はやだあああ!!
妊娠しちゃうよおおおおおおおおおおお!!」
妹は兄に精液を注ぎ込まれていた。
お腹がいっぱいになっちゃうほど。たくさん。
「…はぁはぁ…」
「…ああ…やだ…出てるよぉ…」
お互いのふとももに垂れている白い液体。
まだ繋がっているのにどろっと出ている。
「舞、ごめん…舞…」
「…うう…ああ…あぁ…」
抱きしめあう兄妹。やっと正気に戻ったとしても遅い。
でも私は…
夢を見ていた。
昔を思い出していた。
一番古い記憶はいつだったか?
「黒様、皇室よりお達しです」
「はぁ…また大陸に移動かぁ、…ったくヤになるなぁ」
「しょうがありません。これも国のため。ひいてはこの土地の為でもあるのです」
「国家神道作った時点で怪しい集団じゃん。言論が狭まるんだから」
「それもしょうがありません。国を守るためです」
目の前の気難しい巫女の尋己ちゃん。と言っても尋己ちゃんは今の尋己ちゃんじゃない。
尋己という名前は香取神社の巫女は代々受け継ぐことになってる。
言霊というのを信じるらしい。それは自分の魂を受け継がすとかいう意図はなく、ただこの土地の風習。
「だいたい尋己ちゃんは国家のため、国家のためうるさいよ」
「そんなこという暇がありましたら、黒様も神として働いて下さいませ」
「その神を全然ありがたがってないし…
普通神様にはお供えとかするんじゃないの?
それを国家のために働かそうとするなんて」
「国難なのです。この国が無くなったら代々伝わってきた姫様も無くなるんですよ?」
痛いところを突くなあ。実際そうなんだからこっちも逆らえない。
天皇直々にこの香取神社にお祈りに来くるくらいだ。
「あたしはこの土地の為に働いてるんだからね。日本って国家のためじゃないからね。その辺断っとくよ」
「はいはい」
神様を舐めてる巫女とか存在していいんだろうか。
昔はもっとこう、ちやほやしてくれたんだけどなあ。
これも国民の知識が上がったと喜ぶべき何だろうか。
うーん、デモクラシーを感じる。
いや、前から民主主義の文化はあった。
じゃあ、この変な感じは西洋文化の波と思って良いのかな?
「今度はどこ? もう朝鮮はイヤだよ。疲れるし」
「良い民ばかりと褒めていたではありませんか」
「そりゃ、尋己ちゃんと違ってちゃんと言うこと聞いてくれるもん」
「単純にちやほやされたいだけなんですね…どこまで子供なんですか…」
いや実際子供の霊だし。
「東亜を支配しても次はどこまで行くの?
これ以上の戦線拡大は無理だよ。
あたし達だって無限にいるわけじゃないんだからね。
まったく最近の民は神様が無限にいると思ってるんだから…」
「そんな先のことは今は考えられません。
ただ目の前の出来事に全力で対処するだけです」
「で、今度の場所は…」
訪ねようとしたら尋己ちゃんの表情が引き締まる。
「日本の生命線…満州です。国家の命運がかかっています。
黒様には今以上に働いて貰うことになります」
「今度は共産主義思想の防波堤かぁ…はぁ…」
「では来て下さいませ…」
「…わかったよぉ」
あたしは尋己ちゃんの体に乗り移る。
…
違う。もっと過去。
「これ何? 学問のすすめ?」
「そうだよ。黒も読みなよ。絶対ためになるって」
相変わらず尋己は不躾な態度であたしに接してくる。
いつも砕けた態度がダメだと思って、神様らしい威厳な態度を取ってもダメだった。
結局、巫女が増長するだけだった。
これはこの土地の風土というより香取神社に問題があるだけなのかも知れない。
「乗り移らないと読めないんだけど」
「じゃ、早く早く」
…
違う。たいして遡ってない。もっと過去。
「今度の大名は誰になるんだろ?」
「わかりません。まだ国境で争っています。この神社も戦地になる可能性があります」
「そっかあ」
「黒乃姫、この土地からお逃げ下さい。
あなた様さえ居れば復興はなんとかなります」
目の前にはあたしの前で跪いて祈る巫女。
これだよ、これ。巫女っていうのはこうじゃないと。
これくらいしてくれないとやってられないって。
「尋はあたしの力を甘く見すぎだよ」
「そんなことはございません。
今は、どうかご自分のことだけをお考え下さい。
私どものことなど二の次です」
「いや、ホント甘く見すぎ。とにかくこの土地が戦地になることはないから」
「なぜ言い切れるのです?」
「今までもこういうことはあったから。
兵士らの意識を逸らしてあげれば大丈夫。
最悪あたしが尋に乗り移って戦ってもいいし」
「そんなことをおっしゃらないで下さい。神を人間の戦いに巻き込むなど…」
「いや…あたしも元は人間だし…」
結局このあとも適当に土地を守った。
あたしの力が及ばなくなったのはつい最近なんだなぁ。
こうやって思い返すと鉄砲までが限界だったな。
あの殺傷力はまずい。
あたしだけならなんとかなるけど巫女を死なせちゃいけないし。
何度も言うけど別に巫女や民のためじゃないからね。
あたし自身が危うくなるのが困るだけ。
…
これも違う。これも。
どれも天皇の争い。
日本の歴史は天皇の歴史。
こんな最近じゃない。もっと前だ。
今とは違う。
あたしが生まれた場所…
今とは違う言語。同じだけどまったく違う言語。
今とは違う土地。同じだけどまったく違う土地。
今とは違う文明。同じだけどまったく違う文明。
どんどん意識が空に上がっていく。
今のあたしはそこにいる。
昔の人間のころのあたしだ。
「おはよう黒ちゃん。お目覚め?」
「あ…ここは…」
起きる。今日は緑地で寝ていたらしい。
我々は住まいを持たない。だからどの場所でも眠れる。
「さ、今日はいよいよ黒ちゃんが大人になる日よ」
「えっと…」
場所がはっきりしていく。
思い出していく記憶。
そこは自然と技術が融合した文明の到達点。
綺麗な緑に綺麗な敷地。
すべての環境が整備され余計な物もない。
衣服もすべて統一規格でできている。
様々な多様性のあるデザインの服。
ここにはすべてがある。
…そうだ。この後にあたしは…
焚き上げスレ逝けスカタン
「兄様、黒達はいつ落ちるのです? 止められるのですか?」
「落ち着けクロ。俺たちは死なない。この土地が落ちることもない」
兄様だ。嬉しくなる。また会えた。
上は長袖のTシャツに近く下は現代のジーンズに近い。
どちらも黒色と灰色の混じった兄様のお気に入りの服だ。
いつも黒なのは兄様の印でもある。
そもそもあたしの名前の黒も兄様が好きな色を文字って名付けられた。
厳密には今の黒色ではない。
「ですが周りの者達が騒いでいます。神州は下界に落ちると」
「仮に落ちても死ぬことはない」
黒が生まれた場所であり故郷。
この大陸は浮いていて雲の上にある。
ここには永遠に生きられる技術がある。
黒達の文明は人類史上最高だと言っていいだろう。
今までこれ以上の文明を目にしたことはない。
「下界は海で、落ちれば命は無いと聞きました。黒は不安です」
「俺が何とかするって言ってるだろ。今までだってなんとかしてきたんだぜ?」
「お願いします。皆、兄様だけが頼りなんです」
許して下さい兄様。黒がこんなことを言ったから…
「クロ、お前はこの前儀式を済ませたな?」
「はい」
「だったらこの土地の歴史は体験で学んだはずだ」
「はい、転生装置で記憶しました」
転生装置。
この文明の最高機関であり装置でもある。
―輪廻転生
黒達の文明の考えの根元にはこの考えがある。
半永久的に生命を繋ぐための思想。
転生装置はそれは可能にする装置だ。
この装置で儀礼を受けることで記憶を共有できる。
だから黒達はこの文明で永遠に生きられている。
「辛くなかったか? 途中、息止めないとダメだっただろ?」
「大丈夫です。黒はへっちゃらです」
「おまえなーそんなこと言って倒れるたりするからなー」
「うぅ…」
「ま、余計な心配はすんなってことだ。俺に任せてろ。
お前の病だって助けてやる。だから変な気回すんじゃねーぞ?」
ポンポンと頭を撫でられる。
兄様が万能だから黒達は頼ってしまうんです。
いくら転生装置で民度をあげられても、誰もが兄様になれるわけではない。
「兄様、黒は不安です。正直申しますと民などどうでもいいのです。
兄様だけが無事ならそれで…」
「おっとそれ以上は言うなよ。黒を嫌いになるぞ」
「わかっています。わかっていますが…」
「コラ、そんな顔すんな。お前は転生儀礼を受けた。もう大人なんだぞ?」
「でも…」
もっと甘えたい。兄様に甘えたい。
でも思えば、黒を含めて民は兄様に頼りすぎていた。
転生儀礼でもちゃんと記されていたはずなのに…
『この世に唯一の神などいない。
我々は自然に作られた生物だ。
自然に感謝し、神などを作らず己を信じて生きよ。
唯一の神など作ってはならない』
兄様がどうなったか…それがわかった時には…
「じゃあなクロ」
「あ…兄様…」
「なんだ?」
「いえ…また実験ですか?」
「そうだ。いよいよ俺たちは次の段階に行ける」
「兄様は怖くはないのですか?」
「全然。むしろ楽しいな」
「神州が落ちるかも知れないのに…」
「アホか。落ちるわけないだろ。
落ちたら俺もお前も死ぬ。
そんなのあるわけないだろ。
お前は黙って信じとけ」
「…はい、でも…」
「あのなあ…」
思えば気づくべきだったのだ。
国家そのものを実験に掛けている危うさに。
上手く神州の浮遊の運営ができていれば、次の段階など必要ないのに。
昨日の転生儀礼で記憶したように、兄様達が何をやろうとしてるかもわかっている。
でも黒には知識はあっても知恵や技術、経験が足りなかった。
だから先がわからなかった。わからないから不安だったのだ。
「クロ、よく聞けよ。あのな……っと」
兄様の視線の方向に綺麗な佇まいの女性を見る。
今の和服に近い衣服に身を包んでいる。
よく知った顔。兄様の恋人であり、そして…
「黒、ちょっと兄さんを借りるわよ?」
「は、はい」
「それと、成人おめでとう。やっと黒も私たちの仲間ね」
「お、お願いします」
「いい? もう私たちは対等。あなたもいい加減兄様から自立しないとね」
「はい、姉様」
姉様だって依存していたくせに…
ここには近親相姦などいう概念はない。すべては繋がっている。
転生装置がある限り永遠に生き長らえることができる。
つまり輪廻転生により転生できる。
黒達も永遠に兄妹であり姉妹であり続ける。
黒はまだそのスタートにたったばかりなのだ。
「黒は連れて行かないの?」
「あ、そうだな。それもいいかもな」
そうだった。ここからだった。なんでついて行ったんだろう。
ついて行かなければ…
「黒、着いてくるか?」
「はい、兄様」
行っちゃ駄目…兄様…行っちゃやだ…
…
自然がある部屋に行く。黒が転生儀礼を受けた場所だ。
よくわからないけど頭がガンガンしてきた。
―ドオオオオオオオオオオオオオオオオン
もの凄い地響きが起きる。
「まずいっ! 装置が!」
兄様…ダメです! 触っちゃダメ! もうそれは!
『触るな』
転生装置が…頭に響く…痛い! …頭が痛い!
「まさか…この子…」
姉様があたしを怯えた顔で見る。
『兄様を取るのはお前か?』
やめて…!思い出したくない…!
こんな過去思い出したくない!
「やっぱり…予言の新しい巫女とは黒のことだったの…ね」
姉様が身構える。やめて…
…
『お前か、人のものを盗んで生き長えている者は?』
「そうだと言ったら?」
『お前は罪を償うことになる。この先何千年も』
「ふふ…大層な罪ね」
『…』
「どうせ黒と意識を同調できてるから、そう考えてるだけなのに」
やめてください、姉様。
その装置は皆で共有している者。
そう習ったのではないですか…なんで…
『私は意識の集合だ。そこにいる娘ではない』
「じゃあ、なんで私を盗人呼ばわりするの?」
姉様が論理的過ぎるから…
『意識の集合体が神だからだ』
「答えになってないわよ」
だから姉様は頭が良すぎるから…
『神話は聞くものではない。作るものだ』
「は? 何言ってるの?」
それを追い詰めないで、姉様…
『我々が創造すべきなのだ。すべてにおいて受け身ではならない』
「兄さん、装置がおかしくなってるわ。300年ぶりかしら。
今から直すわよ。ってあれ? 兄さん?」
兄様…ごめんなさい…ごめんなさい…
『新たに創造する能動的な立場でならなければならない』
「え…嘘よね…なんで…なんで息してないの? ねえ…?」
大地が揺れてる…いつまでこの揺れが続いたんだっけ…
…ここであたしの意識が途切れた。
…
あ、ここ、どこだろう。
…森の中? やけに静かだなあ。
鳥のさえずりと森のせせらぎが気持ちいい。
「ふあ…」
ん、あれ? あたし、なんで泣いてるんだろ?
もの凄く悲しい夢だったような…
まあいいか。
「いたたた…よっこいしょ」
重い腰を上げる。自分の体を触る。
巫女装束は汚れてるけど異常なし。
さすが尋己ちゃん。よく鍛えてる。
って、よくない!
尋己ちゃんの体に何かあったら大変だ。
今は憑依してるからいいけど…
「よし、ちょっと本気出すか」
本気モードだと術を唱える必要もない。
自分もかなり薄まることになるけど…
「1万と2千年ぶりくらいにね」
目をつむって念じたら景色は変わっていた。
…
…
目の前に清彦君と舞ちゃんがいた。
「舞…ごめん…舞…」
「…お兄ちゃん…」
ありゃりゃ…間に合わなかったか。
ふたりとも服も乱れて、体液まみれ…
うーん、あたしのいない間に、何かやるとは思ったけど…
「ク、クロフォード!」
鐘ヶ江の穂乃果ちゃんがこちらに気付いた。
「黒ノ姫参上だよー! 舞ちゃん、清彦君、安心するんだー!」
「うう…ひっく…ごめん舞…」
「違うの…舞が誘ったから…」
まずいなー。どうしよー。とりあえず…
「ていっ!」
馬鹿兄妹の頭をはたく。
「いたっ」
「ぐぅ…」
二人の注目があたしに向く。
「近親相姦ぐらいでゴタゴタ言っちゃ駄目だよー、えーと昔はねー」
でも、長くなりそうなのでやめとくか…
ちょっと間を取らせたら大丈夫そうだし…
人のもの盗んでるのはお前だろうが
「さて…本題の相手は、と…」
その相手を見つめる。
「く…」
さすがに危機察知は早いなー。でも手遅れだよー。
清彦君と舞ちゃんいじめたからね。
「メ…メイド長…い、いえ神様…」
あれ? こんな子いたっけ?
あまりにも空気過ぎてわかんなかった。
「小鳥…何か用?」
穂乃果ちゃんもそんな怖い顔しなくていいのに。
ほら、小鳥ちゃん、だっけ? も怯えてるし…
あの服、メイド服だっけ? よく似合ってて可愛い子なのに。
「も、もう、私たちの役割は終ったはずです…ひ、引き上げましょう…」
「誰に口を聞いてるの?」
「…ひっ」
助け船出してあげるかー。
「ちょっと西洋の神様ー、小鳥ちゃん? の言うことは正しいと思うよー。
帰った方がいいよー。怪我する前にー」
「なんですって!?」
しまった! 逆効果!?
「ああ、ごめんごめん。お互い怪我したくないって意味だよー」
まずいまずい。でもさっきからあのお嬢様の子もショック受けてるみたいだな。
あの子の術は西洋のモノだから反動きついし。
「大丈夫ー?」
「ああ…私は…なんてことを…お許し下さい…神様…」
ダメだこりゃ。ちょっと助けてあげるか。
「よしよし」
「え…?」
背中をさすってやる。これで大丈夫。
「怖さは消えた?」
「あ、は…はい…え、でもなんで…」
そんなことはどうでもいいんだなー。
「さて…」
今度はおふざけなしで『神』とやらを見る。
…
「く…わかったわ。アウェイじゃ不利だし引いてあげる」
「勘違いしてないー? 見逃す気ゼロだからー」
「ど、どういう意味よ…」
「その人間の魂…まだ残ってるよねー? まだ霊気感じるし」
「この体はもう私のモノよ」
うーん。そう来るか。
「今の人間社会には人権ってあったよね?
それに反しない? あんたたちが作ったんだよね?」
「ぐ…」
少し黙った後、神様は平然として顔で言った。
「ここには法律もなければ行政機関もないわ」
さすがに頭に来た。
「じゃあ…」
「何…」
ここは尋己ちゃん風に、
「…悪霊退散です」
…
「兄様! 兄様!」
「…んあ…クロ…? あ…俺は…?」
よかった…兄様…
「ここは危険です。外へ出ましょう」
「あ、つつ…なんか…体が変なんだが…」
「気のせいです。早く」
「おい、いきなり起こすなよ…」
地響きが酷い。この研究所も終わりだろうか。
もう転生装置も消滅してしまった。
つまり皆の意識は、もう共有できない。
周りが何を考えてるかわからない世界…
考えただけでぞっとする。
「兄様、皆が集まる緑地に行きましょう。そこでなんとかなるはずです」
「そうか…そうだよな…」
研究所から出ると、そこには綺麗な景色が凄惨な光景に変わっていくところだった。
所内も無茶苦茶になり、街中も見れたモノではなかった。
あれだけ綺麗な景色が…
「文明の終わりか…こんなものなのかもしれないな…」
「終りません。兄様がいる限りは」
「くく…笑えるな。なんとかするって言ってこの様だ」
そんなことない。
兄様がいたから築けたんだ。
だから姉様も…
「行きましょう」
「おい、クロ…」
…
そこは悲惨だった。見てられなかった。
明らかに住民の様子がおかしかった。
泣き叫ぶ人。争い合う人。
禁止地域に走る人。自分の手首を切りつける人。
そこはいつもの「何か」が欠けていた。
それは多分さっき、あたしが感じていた事だと思う。
― 人が何を考えているかわからない
― 人が信用できない
― 人が怖い
だから行くべきじゃなかったのだ。
「兄様、大丈夫ですか?」
「おいクロ、なんか俺の体おかしいぞ」
確かに自分の体を見ればわかってしまうだろう。
…だってその体は姉様のものだったから。
…
「おい、この体って…」
「はい…姉様が最後に転生装置を使って、兄様の意識を写しました」
―パァン
兄様に叩かれたのは、これが最初で最後だったと思う。
「お前は何をしたかわかっているのか!?」
「…申し訳ありません」
「……く」
兄様が動揺するところも初めて見た。
「悪かった。やったのはお前じゃないもんな」
「いえ、姉様と協力したのは事実です」
「…じゃああいつは」
「はい…」
これ以上は言うべきじゃない。
…姉様…うぅ…
でも、泣いちゃいけない…
それこそ姉様の想いを無にすることになる。
「転生装置は…」
「ありません」
「そうか、じゃあ大変なことになるな」
「黒にはわかりません」
そうだ。何も知らなかった。無知は悪だ。
何も知らないから同じ間違いを起こす。
「いいかクロ。今だから言っておくぞ」
「はい」
姉様の姿をした兄様は、姉様の威厳と兄様の知性を持った完全な人間だった。
あとにも先にもこれ以上の人間を見たことはない。
ただ、そこにいるだけで…
そこにいるだけですべてを委ねて良い人…
こういう人を『神』と言うのではないだろうか。
「クロ、おそらくお前はこれから、見たくない事を目にすることになるだろう。
それも何度も何度もだ。だがな…」
気付いたら民に囲まれていた。
何回同じ失敗を繰り返すのだろう。
すべてが悪い風に行った。
あたしがすることはすべて悪い風に。
「転生装置を壊したのはこの女よ!」
一人が兄様を指さして言った。
違うっと大声を出せる勇気もなかった。
周りが怖かったから…
「転生管理者を殺したのを見たと言う人もいる。本当かね?」
「この女が管理者を引きずっているのを見たぞ!」
ち、違う! あれは必要だったから!
「転生装置の破壊と管理妨害の罪は確か…」
「殺人よ! この女が土地を滅ぼしたのよ!」
体中が凍り付いて動けなかった。
いつもは温和な民達が恐ろしかった。
周りの崩れ行く風景と地震が、それに拍車をかける。
「吊せ!」
凍り付いた自分の体が跳ねそうだった。
「殺せ!」
「罪悪人!」
「どうしてこんなことしたのよ!?」
「生活を守るはずだったんじゃないのか!?」
「家族を返して!」
「このまま大陸を地上に落とす気か!?」
「処刑だ!」
「殺せ!!」
殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!
殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!
殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!
殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!
殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!
殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!
殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!
殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!
殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!
この時あたしは何を思っていたのだろうか。
何かできたのだろうか。
ただ頭を抱えて丸くなって震えるしかなかった。
「ええ。すべて私が行いました。
転生管理者を殺し転生装置を破壊したのは私です」
兄様?
「すべての罪は私にあります」
民が一斉に黙る。
「クロ、ごめんね。全部、姉さんがやったの。
隠しててごめん。巻き込んじゃってごめんね」
「…あ」
兄様が何を考えているかが、馬鹿なあたしにもわかった。
「私は転生装置を独占しようとしました」
姉様の姿をした兄様は続ける。
なんだこの糞つまんねスレ違い
どこの誤爆だよ?
…
「…以上のように、私のせいで装置に不測の事態起きてこのようなことになったのです」
冷静に考えれば、今のが嘘だとこの国の民なら誰でもわかるのに…
「なったですむか!」
「この国を戻せ!」
「自分が何をやったかわかってるの?」
「売国奴!」
「吊せ!」
「殺せ!」
でもこのときの自分は怖くて震える以外、何もできなかった。
「ただ最後に管理者が言っていましたが、禁止地域に転生装置の予備があると言っていました」
また一斉に黙る。
「ですから、私を裁くのは予備を再設置してからでも構いませんか?」
本当だと信じていた。でも…
とにかく周りの赤い景色と、地鳴りだけどうにかして欲しかった。
…
私たちには記述する文明はなかった。
なぜなら記憶に直接記述できたから。
なぜこの土地に古代の書物がないのか。
西洋や東洋にもあるにも関わらずだ。
別に焚書にあったわけでも文明が低かったからでもない。
そういう風潮が民に残っていたからに過ぎない。
黒達の文明では文字などなくても才能はなくならない。
すべての文明は、その源泉である転生装置が作る。
正確には維持すると言った方が正しい。
永遠の世界はそこにあった。
…
支援
転生装置により知識階級に差はないとは言え、個人の能力というのは存在する。
すなわち記憶容量の差と言われるものだ。
これは個人差があり、これが大きいほど優秀だという基準になっている。
文明の基準とは何か?
それは記憶の量である。
民の記憶の量でその土地の評価が変わる。
今現在この文明より上の基準があるだろうか。
私にはないように思える。
それが危うさだったのだ。
相対的に比べる文明がない。
それがこの文明の弱点であり、内に潜む危うさでもある。
この時は誰一人気づかなかった。
すべての文明には弱点がある。
…今ならわかる。
でもこの時はわからなかった。
わかっていれば兄様を救えたのに…
だから私は…
…
ずいぶん力を使っちゃったな…
もう目も見えない…
「おいクロ、しっかりしろ!」
「クロちゃん起きて!」
はあ…こりゃ、もうお役目御免かな。
長く現世に居続け過ぎちゃった。
でも最後に尋己ちゃんだけはしっかり返さないと…
「起きて下さい、尋己さん!」
「あなたのおかげでメイド長も助かったんです!」
そっか。あのあと助けたんだっけ。
で、自分は力尽きて薄れかけてる、と。
最後に悪霊退散と称して、中に入ってあの子に直接説教したのもまずかったかな。
異教の神の中に入るのはそれだけで自分の存在を薄めることになるし。
…
『私をどうするつもり? ここまで追い詰めて』
『えへへ、どうしよっかなー』
『ふん、どうせあんたのことだから、また見逃すんでしょう!
いい加減にして! もうまっぴらよ! 殺してよ!』
『うーん。今回ばかりはそうも行かないみたいなんだなー』
『はあ?』
『ま、いいや。とにかく殺してとか言っちゃ駄目だよー、命は大事にしなきゃー』
『あんたが言うと、まるで脅してるように聞こえるわ』
『あはははははは!!』
『笑うなっ!』
『ごめんごめん。でも次会えるかはわかんないんだ』
『殺しても死なないくせに…』
『とにかく逃げ道は作っといたから。ほらあそこに御神刀あるじゃん、あれ。
だから…』
『絶っ対っ嫌!!』
まったく、あの子も昔から変わらないんだから。
まあ無理矢理、御神刀に入って貰ったしあとは本国に届けてくれるとして…
「…!」
「……」
「…? …!!」
「…」
あ、周りの音も聞こえなくなってきた。
こりゃやばい(笑)
なんか昔の強い思いも薄れて来ちゃったし。
ずっと生きたいって思ってたな。
元々幽霊だ。いつまでも居れるわけでもないのかも知れない。
よし、このまま消えれば、普通に尋己ちゃんも起きるはず。
楽しかったよ。
特に尋己ちゃんの家系には爆笑させて貰ったたしw
…
では…兄様…姉様…今、参ります。
…
いつもの下校。周りは春の日差しが赤く染まっている。
別に見慣れた風景だけど、辺りがやけに綺麗に見えた。
周りのビルも道路も交差点も全部。なんでだろう。
そして隣には、いつもの人がいる。
「ねえ、お兄ちゃん。去年のこと覚えてる?」
「…さあ? わかんないな」
「嘘だぁ、わかってるくせにぃ」
「知らないっつってんだろ。
だいたいな、タイムトラベルなんかできるわけないんだよ。
矛盾だらけじゃねえか。その時点で気付くべきなんだよ。
時間って概念的なもので存在しないんだからな」
「そんな夢壊すこと言われても…」
「舞が厨二病だったのは覚えてるよ」
「う…それは消したい過去だから言わないで…」
予想外の振りで返される。
たぶんお兄ちゃんも気付いてるんだろうな。
去年のここで起きたこと。
私も今やぴちぴちの女子高生。
髪もずいぶん伸びた。
もちろん尋己さんの真似なのは内緒だ。
「そうだよねー。ちょうど、この辺りでひゅんって…」
―ヒュン
「…と」
こっちに飛んできたのは銀のロザリオだった。
反射的に掴んでいた。あ、デジャブだ。
「ごきげんよう」
「あ、おっす」
「や、やっほー」
びっくりした。麗華さんだ。噂をすれば影とやら。
後ろにメイド部隊も…って気のせいか。
「清彦さん、舞さん、こんばんは」
「小鳥さん、こんばんはー」
「こんばんは、今日は何か用事ですか?」
一瞬、小鳥さんの後ろにメイド部隊が見えた気がした。
代わりにあの時とは違う人も。
「二人とも元気にしてますか?」
「鐘ヶ江さん…ええ、元気ですよ」
「舞はいつでも元気MAXでーす」
聞くところによると香取神社に用があるらしい。
5人で帰ることになった。
なんだかとっても賑やかで楽しくて、麗華さん達とも話が弾んだ。
この作品は悪質な荒らしによる明らかな盗作です
登場するキャラクターや設定などは別人が考えて鋭意制作中の作品の盗用です
心あるならば騙されないようにしてください
「麗華さん達、もう少し居ればよかったのにね」
妹の声でテーブルの方を振り向く。
舞はあごに手をついてテレビを見ていた。
さっきまで麗華と小鳥さん、鐘ヶ江さんと談笑していたが、御神刀を置いて、すぐに帰ってしまったのだ。
元々これが目的だったらしい。
『もう中に神はいませんから』
それが鐘ヶ江さんの言葉だった。
ちょっとびっくりしてしまうが、色々と知識と経験を身につけた今は怖くはない。
何かあっても、相応の対処をするだけだ。
つまり、この中に何が入っていようが恐れることはないと言うことだ。
それに、ここは香取神社の結界内で俺達のホームフィールドだ。
この場所で俺達の霊力に勝てる奴はいない。
「よっと…」
身構えながら御神刀を引き出してみる。
…何もない。
「ふぅ…」
実を言うとちょっとびびっていた。
「さて…と」
実のところ、俺は民俗学と歴史学の学べる大学に内定している。
自分のルーツと過去にあった体験を知りたいからだ。
今現在も研究まがいのことはしている。
「黒がいたらな…」
真実が聞けるのに…
「ん? なんか言った、お兄ちゃん?」
「うどんが猛烈に食いたいって言ったんだよ」
「わかった。じゃ、夕飯はカレーうどんね」
「ああ、サンキュ」
ぶっちゃけどうでもいい。
とりあえずこの御神刀は本殿に戻すか。
そういや本殿って入ったことないな。
尋己とおじさんにも絶対入るなって言われてるし。
「くっくっく…」
ここで好奇心が沸くのが研究者というもの。
…
社殿内部に入る。
「ごほごほ…なんだこれ…ホコリだらけじゃねえか…ごほ…うげ…クモだ」
ご大層に御神体置き場と思われるものがある。
でも不思議な依り代だよな。
思えば作りからして変わってるもんな、この神社。
まずどの様式にも当てはまってない、おかしな建てられ方をしてるし。
こんな螺旋状に土台の柱を建てる方法はないはずだ。
そういや、その螺旋の中心だよな、この辺って。
やば…ちょっとソワソワしてきた。
「はい、御神刀様」
俺は御神体を元の場所に戻そうとした。
『触るな』
…!?
一瞬手を止めた。
「気のせい…だよな…?」
『お前がこの時代の神体か?』
…!? やっぱおかしい。幻聴がする。
最近寝てないせいだ。ぶんぶんと頭を振る。
「さ…さっさと置いて出るぞっと」
キィィィィンーキィィィィンーキィィィィン
キィィィィンーキィィィィンーキィィィィン
キィィィィンーキィィィィンーキィィィィン
『…あいつは…また繰り返すのか…』
それは、もう俺の意識じゃなかった。
…
まったく意味が分からん
視点がコロコロ変わるし、誰が何をしているのか
作者が何を書きたいのか読んでて伝わってこない
…
今日の夕食は舞ちゃんが作る予定だったかな。
そんなことを思いながら庭の掃除をしている。
猛烈に眠い。とくにこんな夕暮れは…
「あれ?」
社殿が開いてる…? まさか…!
私はすぐに駆け寄る。
「そんな…」
あれほど中に入っちゃダメだと言ったのに!
「誰かいるんですか!?」
中に入ると清彦さんが床にうつ伏せになり倒れていた。
「清彦さん! 起きて下さい! 清彦さん!」
「ん…ああ…お前か…」
瞬間ぞわっと血の気が引いた。
もの凄い霊力量。これは桁違いとか言うレベルじゃない。
「え…ええ、だ…大丈夫…ですか?」
「心配するな。めまいがしただけだ。問題はない」
「そ…そうです…か? う…」
…? 何か雰囲気も…?
「何してるんだ。行くぜ」
「は、は…い…」
気のせい…だと思う…
ダメ…一秒でもここにはいたくない…
『尋己ちゃん、久しぶり』
社殿から出ようとした瞬間、後ろから声が聞こえた。
間違いない。清彦さんはアレに触れてしまったのだ。
だから…また起きてしまう…
あれだけ細い霊力しかなかったのに、また力が戻ってる…
「やっぱり…成仏はできないんですか…」
『うん…ごめんね。だって…あたしには…』
そこに駆け込んでくる足音が…
「尋己さーん! ご飯だよー! カレーうどん!
尋己さんが愛して止まないカレーうどんだよ!」
こんな最悪の事態が積み重なるって…
自分の運の無さを恨むしかなかった。
『これっていいって事だよね? 尋己ちゃん?』
「…」
『舞ちゃーん!!』
ああ…乗り移られた…
私はその場に膝をついた。
投下宣言も無いのにぶつ切り長文は完全に荒らしだろ
盗作かどうかは分からないが荒らしじゃないなら投下宣言しろ
スルーしていろ
構っちゃいけない
こちらの容量をあまり無駄にしたくないので、感想等は本スレにて(3スレ目)
>・転生管理者は兄なのか
決めてない
決めてないまま書いたから
あんな感じになったみたい
自分で見直しても変な感じだった
元々あのネタは書いてたSSの派生
二重人格のキモウトがやってる研究が関係してる
小鳥が麗華に勧められていたメイド協会うんぬんもそれ関係
>・何故滅んだのか
黒ノ姫の仕業
土地神なので自分を支配しようとするものは排除する
市場操作して企業ぶっ潰すとかも簡単にできる
>・来栖グループを攻撃した理由
黒ノ姫自身がヤバイと感じたから
グローバル企業の手先である麗華の企業は壊す必要があった
今のTPP騒動(行き過ぎた自由貿易)がネタ
黒ノ姫は土地がなくなったら民の信仰がなくなり、自分の意識が消滅してしまうので生きていけない
香取神社の土地も麗華の企業に買収されて潰される予定だった
国有地が外資に民営化されるのは侵略行為にあたる
>・鐘ヶ江のネックレスの意志
西洋版の黒ノ姫のつもりで書いた
黒ノ姫の場合乗り移るとき、巫女の意識を利用するだけだけど
ネックレスはシスターの意識全部を奪い取ろうとする
投下終了
(黒がいた世界が)>・なぜ滅んだか?
転生装置がなぜ暴走したのかは、単純に黒がキモウトだからって理由でいいと思う
次の転生装置を管理する転生管理者が、黒だった
兄様も黒も選ばれた人間って感じにしたかったと思う
姉様の能力は巫女の能力(憑依)の原型
色々考えたけどこの兄妹、姉妹があの文明のトップ権力者で…って感じにしたかった
ID:9iRH2qoNは、自分の掌握している事実と相手の掌握している事実が違うことが全く理解出来ていないように見える
つまり、2chの通俗的な罵倒用語としてのアスペではなく、本物のアスペルガー症候群か
〜エピローグ〜
二人の少女。
「ごめんね、尋己ちゃん」
「…どういう意味ですか?」
答える意味がない。
「あたしが…ううん、黒が帰る場所ができたから…」
「…だから意味が…わからな…」
うずくまる少女。
「これが黒が待ってた世界」
「…だから…」
理解できる者などいない。
「清彦君と舞ちゃんの事は忘れて」
「何を…」
「あれは兄様のものだから…」
「…え?」
「やっと会えたの…やっと…兄様と…」
「やはりさっきの清彦さんは悪霊に憑依され…」
言葉を最後まで聞かずに回る歯車。
「…尋己ちゃん、楽しかったよ」
誰も目にしたことのない涙。
「だから、あたしのことも忘れて?」
「待ってください! せめて理由を教えてください!」
「言っても理解できないから無理かな…ごめん…」
「ごめんじゃ…」
「せめてこの話を来世に伝えて。
これくらいしか役に立てないだろうし」
かつての妹の姿が徐々に薄くなる。
「やめて! いなくならないで!」
悲痛な少女の叫び声。
「なんで? 尋己ちゃんが望んでたんだよ?
あたしは来世に帰るには、これしか方法がない」
今の妹が色濃く反映される。
「馬鹿!! こんな馬鹿な話どこにもありませんっ!!
清彦さんと舞ちゃんはどうなるんですか!!」
そして、その存在だけが消え始める。
「永遠に私たち兄妹として生き続けるよ。これからも…」
もう、かつての妹と兄の声は永遠に聞こえてくることはなかった。
〜完〜
埋め書き
最後に…
個人的にx/Dvsm4nBIさんとEY23GivUEuGqさんの作品がめっちゃ好き
たぶんここに来て一年ちょいしか経ってないけど
このスレ来なかったら一次SS書いてなかったと思うから
マジ感謝してる
ここの住人には励まされたし
全部がためになった
かなり書く原動力になった
あと転生恋生の人、ごめんなさいorz
人格転生は二重人格のキモウトを書こう
って付けてみて、あとで作品と題名を発見して鬱に
で、引き返せなくなって書いてたら引き返せなくなった…
と言うわけで、あくまで偶然の事故なんで
でも、たぶん続きは書くことはないと思う
わかんないけど、たぶん…
GJまでには足りないものがありすぎる
描写があまりにも淡泊すぎる
一人称専門かも知れないが三人称で書いた方が良さそうなところが多い
三人称っぽく書けばいいのかも知れないが
ここまで視点が切り替わると一瞬で誰が誰かをわかりやすいように書いた方がわかりやすい
あとシナリオが難解すぎる
これでは読者が振り落とされる
幅広く読まれるような工夫が必要
そもそも読んで貰いたいターゲットは誰なのか?
一定の筆力はあるのに非常に残念
上手い部類に入るのだろうが
いかんせん読者への配慮がなさすぎ
いきなりグローバル経済(笑)とか言われても普通の人はわけがわからないし
「あ、わかねえやw」と読まれない
自分だけ面白かったらいいのかも知れないが
それでは読み手に伝わらないし広まらない
読む人が少ない
もしくは極端な話
誰も読まなければ書けても意味がない
能力があっても生かせなければ意味がない
一度読者を意識して書いてみることをおすすめする
手っ取り早いやり方は商業ベースで書いてみることだ
別に同人でもいい
さらにスレに対する配慮も必要
このレベルの書き手がいると他の人が書きにくい
匿名掲示板だからと言って人がいなくなったらただのチラシの裏になってしまう
自重しろとは言わないがもっと別の方法を探ってみるべきだと思う
そしてここで満足して書いてないで
もっと別の場所で力を試してみていいと思う
良い書き手は望むところだがもっと別のやり方を探すべきでは?
このまま趣味でやるのもお遊びでやるのも構わないし
別に自由でいいのだが人もいなくて足を引っ張られて辛いと言いつつここで書きたいのだろうか
我慢して攻撃されてまでここに固執する理由も見当たらないと思う
荒らしに触る人も荒らしです
お兄ちゃんはいつもあたしの憧れだった。小さい頃、一緒に遊んでいたときが最初だった気がする。
外で鬼ごっこをしても家でゲームをしていても、いつもあたしより先のことを考えてるし、何よりあたしのことを一番に気にかけていたからだと思う。
お兄ちゃんとしては親からあたしのことを守れと言われただけなのかもしれないけど…私にとっては憧れだった。
でもそのお兄ちゃんに最近嫌なことがある。
理由はお兄ちゃんに彼女ができたこと。
最初、お兄ちゃんの彼女だし祝ってあげたかった。最初は祝っていた。最初だけは。
「はじめまして、兄の妹の千夏です」
「はじめまして、私は有美。忍、かわいい妹さんじゃん」
「まあ、自慢の妹だからな。どこに出しても恥ずかしくないな。千夏、有美と仲良くやってくれ」
「もっちろん」
あたしは部屋に案内して、お茶を入れた。
「有美さんはコーヒーと紅茶どっちがいいですか?」
「紅茶でお願い」
「はい! わかりました!」
あたしは台所で支度する。横からお兄ちゃんが小声で話しかけてくる。
「どうだ千夏、おまえの見立ては?」
「そうだね〜ルックスよし、スタイルよしでお兄ちゃんにはもったいないね」
「おー、千夏ならそう言うと思ったよ。さすが我が妹」
頭をぐりぐりなでられる。
「痛いって。お兄ちゃん、もっと優しくしてよ」
「お、なんか響きがエロいな」
「えい!」
セクハラ発言のお返しにお兄ちゃんのスネに蹴りを入れる。
「いでぇ!!」
痛みのツボに入ったのかお兄ちゃんが悶えている。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃねえ!」
「あはは、大丈夫大丈夫」
ちゃんと加減して蹴ったから。
「くそ、しょうがないな。ほら皿とスプーン」
「うん、ありがと、お兄ちゃんは先に行ってて」
「おう」
私はトレーに三人分の紅茶と砂糖とミルクとレモンを持ってテーブルについた。
「おまたせしました」
有美さんに対して精一杯の笑顔を向けた。
「え、ええ。ありがとう」
「どうかしました」
「いや、なんでもないわ」
「有美ってシャイなんだよ」
「そうだったんですか? もうしわけないです」
三人そろって紅茶を飲みながら話しをする。
個人的にお兄ちゃんの好きになった人に興味があるから。
「有美さん、足崩して下さい。自分の家みたいな感じでいいですよ」
「ええ、ありがとう」
そう言って足を崩す有美さん。そのスカートと黒タイツに目が行くお兄ちゃんに突っ込みをいれようとしたがやめた。
「………」
「………」
「………」
うーん。それにしてもこの沈黙はなんなのか。有美さんが緊張してるからお兄ちゃんも気を遣ってるんだろうか。
「それより恋バナしようよ、恋バナ」
その場の空気を和ますために話題を振ってみる。
「ええ?」
「はぁ?」
「初めて家に彼女を連れてきたお兄ちゃん、今の心境は?」
「ど、どうって言われても…」
「あれ、なんで、今になって緊張してるの? さっきあたしに蹴り入れてたよね?」
「蹴りを入れたのはおまえだ! 俺は優しく頭を触っただけだ!」
「あれ、あんなこと言ってますよ。ねえねえ、有美さん。お兄ちゃんに言ってやって下さいよ」
「あの…」
有美さんが口を開く
「…二人ってとても仲の良い兄妹なんだね」
思わずぽかんと口を開けてしまう。隣のお兄ちゃんも目をぱちくりしている。
「なあ、千夏。俺たちって仲いいのかな?」
「うーん。どうだろう。でも結構ケンカもしてるし特別仲がいいって方でもないとおもうけど。まあ、普通だと思う」
「俺の友達も姉ちゃんと凄えなかいいぜ」
「あれは有君とお姉さんの年齢差が八歳くらいあるからでしょ?」
「俺たちくらいの年齢差でも仲いい奴はいるだろ」
「普通は、あんまりいないと思うよ」
「あたしの友達はお姉ちゃんともの凄く中のよい子がいるよ。年もうちと同じで二つ上だし」
「いいなぁ。私も仲の良い兄妹が欲しかったよ」
「有美さんには兄弟がいるんですか?」
「一つ下の弟が一人、凄く憎み合って無視しあってる状態」
「………」
お兄ちゃんがあたしの肘を突っつく。どうやらこれ以上、触れてはいけない話しらしい。
「そそそそうです。元の恋バナに戻りましょう。お兄ちゃんのどんなところが好きになったんですか」
「頼りがいのあるとこ。肝心なとこで優しいところ」
一瞬、びっくりした。私がお兄ちゃんの好きなところと一緒だったから。
「お兄ちゃんって意外と頼りがいがあるんですよね。たまにだけど」
「いつも頼りがいがあるよ」
なぜ、こんなに切ない気持ちになるんだろう。あたしも小さい頃はずっとそう思ってたから。
「おにいちゃんってカレーが好きですよね」
「そうね。カツカレー定食の割合が多すぎる気がする」
「おいおい。俺は日替わり定食とかも頼んでるだろ」
「カツカレー定食は普通のカレーよりルーの辛さが惹き出るっていってたじゃない」
その後もあたしのわからない学校での話題ばかりで意気投合してる。
でも…なぜ…私は…心から祝福できないんだろう。
そうだ。これはあれだ、小さな子供が兄弟間で母親をとられて寂しく思う気持ちと同じ。
そう、あたしと同じ。お兄ちゃんはお父さんでありお母さんだった。それをとられて悔しい気持ち。
あれ? この気持ちって? 嫉妬?
あはは、嘘だよね。実の兄妹でお兄ちゃんに惚れてたって。そんなのテレビドラマだけの話しだよ。
なんだかお兄ちゃんと有美さんが遠くに見える。話題もついていけない。
聞こえるのは有美さんの声。
「あのときの忍、かっこよかったよ。結構体つきしっかりしてるからどきっとしちゃった」
やめて。そんなの知ってる。お兄ちゃんの成長だって知ってる。子供の頃から今まで。お兄ちゃんが私の父親だったように、私も母親のようにお兄ちゃんを知ってる。
「でさ、その時の写真が結構イケメンでさ。そのときからからかな意識し始めたの」
当たり前のこと言わないで。お兄ちゃんはルックスもいい。きっとクラスでも一番に決まってる。世界で一番カッコイイ。
「リレーでさ、抜き返したよね。あれでクラスの女子のポイントあがったんだよ」
当たり前だ。お兄ちゃんは運動神経もいい。鬼ごっこの時も小学校の時もいつも一番か二番だった。そして誰よりも頑張ってる姿が一番いい。
「私も忍の頑張ってるときの顔、好きだな」
何? 今の? どのつら下げて言ってるの? 何も知らないくせに。あなたの知らないお兄ちゃんもあるけど、私はあなたよりずっとお兄ちゃんを知ってる!!
「どうした、千夏? 顔色悪いぞ?」
「忍のその優しさに触れた惚れた女子は多いよね」
このクソ女!!
「おい! 千夏! しっかりしろ!」
気がついたら、お兄ちゃんに両肩を押さえられて揺すぶられていた。
あたしは…何を思っていた…何を考えていた…どうしようと思っていた?
凄まじい罪悪感でお兄ちゃんと目を合わせられなかった。こんな妹、気持ち悪いに決まってる。
「あは…ごめん。お兄ちゃん…ちょっと惚気られて当てられちゃったみたい」
「冗談言ってる暇があったら少し休め。めちゃめちゃ顔色悪いぞ」
「だ、大丈夫だ…って…」
お兄ちゃんの手が私の背中と肩に当たってる。やだ……少し濡れてきちゃった。なんで、なんで急にこんな反応をしてるの、絶対におかしい。変態だあたし。こんなこと知られたら軽蔑されて縁を切られちゃう。
「お兄ちゃん!」
必死の抵抗だった。テーブルから席を外す。
「じゃ、寝室で寝るから」
お兄ちゃんを必死で引き離す。すんなりと離してくれた。その優しさの籠もった手にもっと浸りたい欲求を強引に押し込める。
そして、ふらつく足取りで寝室に向かった。
「じゃ…じゃあ、二人とも…ごゆっくり…」
最後の方は声がかすれてて出てなかったと思う。