一応、いちせんネタもありという宣伝?のためにスレタイにいちせんに入れといた。
予告なしで勝手に立ててスマソ。500KBイってたので。
スレタイについては次スレまでにマターリ決めましょうや。
>>1 ありがとうって伝えたくて
ついに5スレ目か・・・胸熱
おっつおつ
6 :
名無しさん@ピンキー:2011/07/17(日) 14:56:17.68 ID:yp8WaJck
>>1 乙&だんたん!
ゲゲふみも祐綾も源ミヤも修絹も戌井夫妻もバッチ恋‼
スレたてありがとうございます!
いちせんもスレタイに入ったんだね、いいかも。
>>1だんだん!
このスレ大好き!職人さんが皆さん素晴らしいし、作品に対する愛が溢れているのが素敵
前スレ埋まったみたいです。400強のレス数で500KBいくとか、投下が多かった証拠かな。
このスレも賑わいますように。
>>1乙!
スレタイこれでいいと思う
>>7 哲也邦子もばっちこい!
なかなか良い夫婦だと思うんだ…
>>1乙です。
前スレ
>>459ですが、容量残り少ないところに大量投下すみませんでした。
スレタイとか話し合う余地がなくなっちゃったみたいでごめんなさい。
以前、自分が投下した直後ではないけど、ゲゲふみ以外のカプはいらないみたいな
レスがあってちょっと凹んだのですが、皆さんの温かいレスで救われました。
自分ばっかり投下してるみたいで心苦しい&心細いので、いろんな書き手さんが
参加しやすい空気を残しておいてほしいです。
「書こうかなあ・・・。」とおっしゃってた皆さん、お待ちしてます。
ジュモクですけど投下したら載せますよ
更新ペースがおかしくてすみません
>>12 いつもありがとうございます!私はあなたの作品の大ファンです
作品を読ませていただく度に、愛おしい「ゲゲゲの女房」の世界に舞い戻り、楽しませていただいております
これからもどうぞ素敵な作品を投下して、私を萌え死にさせてくださいw
。。。それから、橋木さんシリーズを書いてくださってた職人さんはもういらっしゃらないのでしょうか?
エロがなくとも愛が溢れているあなたの作品も、私は大好きでした
このスレの職人さんは皆さんレベルが高く、本当に素晴らしいです
好む好まないは個人の自由でしょう
ゲゲゲやいちせんに関連するお話なら、自分はいつでもウェルカムです!!
地デジになったらサイトまるごと消えて今辛うじて見れてる
ゆうあやのプロフィールとかわれせん見れなくなっちゃうのかな…
>>16 そもそも地デジ化促進のためのドラマみたいなもんだったんだから、
地デジ化記念にもう1話くらい作ってくれてもいいもんなのにな。
何そのナイスアイディア!
だいたい、二本っておさまりが悪いよね
三本くらいあった方がバランスいいよね
>>19 ゆうちゃんの眼差しと綾子さんの笑顔がたまらんです!
ほんと海行ってイチャイチャしてほしいわー
日焼け止めとか日焼け止めとか日焼け止めとか
>>20 GJ!
なんだこの爽やか美男美女カポーは・・・!
さりげなくお揃いのアクセというのもイイ!
海の開放的な雰囲気につられて、もっともっとベタベタしてもらいたい
>>19 消えてしまってるっぽいので
再度うpしてくださると嬉しいです
23 :
19:2011/07/21(木) 18:56:25.88 ID:Ns5TGx6w
>>22 昼ごろは見れないようでしたが、今は見れるみたいです。
>>15 ありがとうございます!
やはり橋木さんはもうここにはいらっしゃらないのですね。。。
これから上京初日辺りのDVDを見てパス探します
ジュモクさん更新乙&だんだん!毎度あのエロバナー広告ワロスw
絵とか描ける人すごい。例えば今まで投下された作品の一場面を絵にしたりとか無理ですか?
エロもあるとなおありがたし、ですがw
26 :
見巧者1:2011/07/22(金) 11:13:20.29 ID:PkMAFKXK
「遅いなあ・・・。」
時計の針は、十時をまわっている。今日の午前中、雄玄社の本社社屋で行われる漫画賞の
授賞式に出席するために出かけた茂は、夜になってもまだ帰ってこなかった。
ちゃぶ台の上には、フミエの心づくしの祝いのごちそうが、所せましと並べられている。
太ったギョウザ、ちらしずし、春雨の炒め物、ふかし芋・・・茂の好物ばかりだ。とりわけ
太ったギョウザは、初めて大手の雑誌社から依頼された仕事に乾坤一擲の勝負をかけた
茂のため、少しでもスタミナをつけてほしいとフミエが知恵を絞った思い出の料理だった。
茂が帰ってきたら一緒に箸をとろうと、フミエは夕食を食べずに帰りを待っていた。
小さな藍子は、ギョウザをおいしそうに食べた後、とうに眠りについている。
「おなか、すいたなあ・・・。」
思わずおなかをさすり、また時計を見る。
(豊川さんたちと、どこかで祝杯をあげとるのかもしれん・・・。)
茂は全くの下戸なので、祝杯と言うわけでもないだろうが、よく考えたら、これだけ
大きな賞を獲った人間を、周りが放って置くわけがなかった。
(どこか高級なお店に招かれて、ごちそう食べとられるのかもしれんね・・・。)
急に、目の前のごちそうがみすぼらしく見えてきた。
雄玄社から、今までの貸本漫画の常識では信じられないような額の原稿料が振り込まれる
ようになってからも、結婚以来の貧乏暮らしで培われたフミエの経済観念はそう簡単に
変わるものではなかった。
「外ですまして来られるかもしれん。固くならん様に、ふきんかけとかんと・・・。」
茂を送り出した後、ご馳走の文字通り買い物に奔走して、一生懸命作った料理の数々は
すっかり冷えて、固くなり始めている。
今朝、仕立ておろしのスーツに身をつつんだ茂に、晴れがましさと同時になんだか
まぶしさを感じて目を細めたことを思い出す。なんだか急に茂が遠くへ行ってしまった
ような気がして、寂しさに胸を衝かれた。
この家に初めてひいた電話が、茂が『テレビくん』で雄玄社漫画賞を受賞したという
嬉しいニュースをもたらしたのは先月のことだった。
電話を受けた茂が、切った後も茫然としているため、フミエは(もしや打ち切り?!)
と固唾をのんで茂の言葉を待った。
「俺に・・・賞をくれるそうだ。雄玄社漫画賞という・・・一年に一回しかない、立派な賞だ。」
27 :
見巧者2:2011/07/22(金) 11:14:15.18 ID:PkMAFKXK
「まあ、俺がこういう賞をとるのは、当然の結果だがな。」
茂はそう言って胸を張ったが、少し声が震えていた。そして、フミエがどんなに驚くか、
飛び上がってダンスでも踊りだすのではないかとその顔をうかがった。だが、フミエは
質屋から戻ってきた品物の山に埋もれたまま、静かに微笑んでいるだけだった。
「・・・なんだ、お前、驚かんのか?」
「必ずこういう日が来ると思っていましたけん・・・。信じられんとか、夢のようだとかは
ひとつも思わんです。お父ちゃんは、それだけの努力をしてきたんですけん。
やっと・・・来るべき時が来たんですよ。」
フミエの表情や声は静かだが、顔は誇りと喜びに輝いていた。茂と言う男に全幅の信頼を
置いていることが、フミエをどっしりと落ち着かせていた。
(こいつ・・・案外、大した奴だな。)
茂は感心して声も出ず、フミエの顔を見つめていた。この女房は、普段は内気で従順、
平凡を絵に描いたような人間だが、ここぞと言う時は、茂よりよっぽど肝がすわっている
ところがある。こみち書房での読者のつどいで、茂をなじった父に立ち向かっていった時、
貧乏のどん底でお腹にやどった子供を「産みます。」と言い切った時・・・。
結婚以来、二人はたびたびギリギリの崖っぷちに立たされて来た。フミエの肝っ玉は、
本当に追いつめられた時だけ発揮されるものだけに、自分のために何度もそんな危機に
妻をさらして来てしまったことに胸が痛んだ。
授賞式はひと月あと・・・。フミエはもうその時の心配を始めた。着ていくものは・・・、
散髪は・・・。相変わらず身なりに全然かまわない茂に、なんとしても授賞式にふさわしい
装いをしてもらわなくてはならない。
質屋から請け出した背広は、もうすっかり型くずれしており、とても晴れの席に着て
行けるようなものではなかった。名誉な賞を受けるのに、茂をみすぼらしい格好で
列席させるわけには行かない。フミエは清水の舞台から飛び降りるようなつもりで
新しい背広をあつらえた。
28 :
見巧者3:2011/07/22(金) 11:15:16.99 ID:PkMAFKXK
明日は授賞式と言うその夜。茂はいつもどおり週刊連載のしめ切りに向けて仕事を
したが、明日の昼過ぎから行われる式に余裕を持って向かえるよう、いつもより早めに
床についた。
(お父ちゃん、眠れんのかな・・・。)
フミエは、布団に入ってからずいぶん経っても、隣りの布団で輾転反側しているらしい
茂の様子を、気づかれないようにそっとうかがった。
(明日のことが、不安なんだろうか・・・?)
ひょうひょうとして楽天的で、物事にとらわれないように見えるが、苦労に苦労を
重ねてきているだけに、茂には現実的で用心深いところもあった。うまく事が運びすぎて
いることが不安なのか・・・それとも、明日、今まであまり縁のなかった日の当たる場所で
ひとびとに囲まれることに気後れがあるのだろうか・・・。
今までの漫画家人生において、茂は貸本漫画の版元に、なじられ、馬鹿にされ、
原稿料を踏み倒され・・・言うに言われぬ辛酸を嘗めてきた。春田図書出版という出版社に、
熱を出した茂の代わりに原稿を届けに行った時、フミエは夫が今まで外でどんな屈辱を
受けてきたかを知り、人知れず涙を流した。今、晴れの舞台を前にして、茂がいつになく
神経質になっているのかと思うと、フミエはいたましくてたまらない気持ちになった。
「はぁ・・・。」
「・・・ん?なんだ、お前まだ起きとったのか?」
頭の後ろに腕をかい、天井の一点を見据えて難しい顔をしていた茂が、フミエのため息に
気づいてこちらを向いた。
「・・・なんか、興奮してしもうて、眠れんのです。」
「だら。お前が賞をもらうわけでもなかろうに。」
そう言いながらも、茂の難しい顔はゆるみ、破顔していた。
「だって・・・明日、ちゃんとネクタイ結べるかなあ・・・とか思うて。」
「そげなもん、ちゃちゃっと結んどいたらええんだ。」
「婚礼の前の晩に、兄が教えてくれたんですけど、お父ちゃん、ちぃっともスーツなんか
着ることなかったけん、忘れてしもうたかもしれん。」
・・・これは嘘だった。フミエは受賞が決まってから、数え切れないほど何度も、ハンガー
を相手にネクタイを締める練習を重ねてきている。
「あげな堅苦しいもん、できれば着とうないわ。」
「いけんいけん。明日は頭の先から足の先までビシィッと、ええ男になってもらわんと。」
「何を言っとる。七五三じゃないんだけん、あんまりいじくりまわさんでくれよ。」
爪きり、ひげそり・・・身体の手入れをされることが何より嫌いな茂は、明日フミエに
どんな拷問を受けるのかと思うだけで鳥肌が立った。
29 :
見巧者4:2011/07/22(金) 11:16:10.09 ID:PkMAFKXK
「俺はそもそも、卒業式だの紀元節だの、堅苦しい式は大嫌いなんだ。子供の頃は、
式典の時に奇想天外な屁でみんなを楽しませ、一躍英雄になるという楽しみがあったが、
今度はそうもいかん。それに・・・。」
茂はちょっと暗い顔をした。今夜の茂はなんだか饒舌だ。こんな時は、普段語らない
心情をぽろっと洩らしてくれる・・・フミエはただじっと聞いていた。
「俺は、誉められるいうことに慣れとらん。学校でも軍隊でも、罵詈雑言を浴びせられ、
貸本漫画家になってからも、出版社からは疫病神あつかいを受けてきたけん・・・。
それが突然、高い所に引っ張り出されて、阿諛追従を奉られるのは、どうにも
こそばゆくて、我慢できそうにないわ。」
やはり、明日晴れがましい場所に出ることに戸惑っているのか・・・、フミエがそう思って
いると、茂はさらに悲観的なことを言い出した。
「なあ・・・俺、ちょっこし考えたんだが・・・。今度の賞って、誰が選んだんだろうな?」
「・・・雄玄社のえらい人じゃないですか?」
「雄玄社のえらい人・・・漫画部門でえらい人ゆうたら、ランド編集長の豊川さんだろ?」
「まあ、そげですね・・・。他には社長さんとか・・・。」
「ちょっこし、おかしいと思ってな。鬼太郎の読みきりはランドの人気投票ではいつも
ビリッケツだったし・・・連載もまだ始まったばかりだ。」
「賞をいただいたのは『テレビくん』でしょ?」
「『テレビくん』は、一回こっきりの読みきりだろ?実績もないのに、いきなりこげな
大きな賞をもらってもええもんかな?」
「『俺がこげな賞をもらうのは、当然だがな。』と言うとられたじゃありませんか。」
「俺は、自分の描いたもんには絶対の自信がある。・・・だが、今度の賞はちっと早すぎる
気がするんだ。」
せっかく大手の雑誌で読みきりが載るようになった鬼太郎だが、読者の人気投票で
連戦連敗をかさね、「打ち切り」の憂き目を見そうだったのはつい数ヶ月前のこと。
「同じことばかりやっていては少年アワーには勝てない!」
編集部の反対を押し切り、豊川は鬼太郎の連載を強硬に開始した。テコ入れの意味で
茂にお手盛りの賞を与え、箔をつけたかったのではないか・・・。
のんびりしているようで、茂の現実を見抜く眼はするどい。茂が今度の受賞のウラを
そう分析しているらしいことは、業界の事情にうといフミエにもわかった。
30 :
見巧者5:2011/07/22(金) 11:16:59.92 ID:PkMAFKXK
「・・・くれる言うもんは、もらっといたらええじゃないですか?」
いつもは謙虚でおとなしいフミエの意外な言葉に、茂はギョッとして思わず顔を見た。
「世の中には、権威によわい人も多いですけん、賞をもらった作家の作品と思えば、
今まで見過ごしとった人も、読んでくれるかもわからん。」
茂の風刺漫画を地でいくような現実的で鋭い洞察に、茂は内心舌を巻いた。
「それに・・・あなたの漫画をええと言い続けてくださっとる方が、少なくとも
三人おるでしょ?」
「うむ・・・。戌井さんに深沢さん・・・それに豊川さんもだ。」
「戌井さんの漫画にかける情熱は誰にも負けんし、深沢さんは新しい、いい漫画を
発見して世に出したいと努力しとられる・・・。豊川さんも、ライバル誌を追い抜くため
には、斬新で面白い漫画をいつも探しとると言うとられました・・・。」
「三人とも、漫画の見巧者だな。」
「みごうしゃ・・・って何ですか?」
「芝居なんかを見慣れとって、その良し悪しがわかる人のことだ。見るのが巧い人、
言うことだな。」
「その三人が、あなたの漫画を認めとるんですけん・・・。」
「・・・ああ。俺がうじうじしたことを言うとったら、三人に失礼だな。」
三人に初めて会ったときの事を、茂は忘れていなかった。富田書房でふと目にした
茂の原稿に魅かれ、全作品を読破して、興奮のあまり自宅まで押しかけてきた戌井。
原稿を売り込みに来た茂を「待っていたよ。」と歓迎し、すぐに仕事をくれた深沢。
茂の才能に惚れこみ、一度断られたにもかかわらず、周囲の反対を説き伏せて、再度
依頼に来てくれた豊川・・・。三人とも、得がたい茂の理解者であり、恩人だった。
けれど・・・。いちばん近くで、いちばん茂を理解し、応援していてくれる人間がいる
ことを、茂は忘れていなかった。今も、思い出すたび心が熱くなるあの告白・・・。
「おまえ、いつだったか、親父さんに食ってかかったことがあったな。俺のことを
『うちの人は本物の漫画家ですけん!』言うて。」
「・・・いやだ、そのことは忘れてくださいと言うたじゃないですか。」
「いやあ、忘れられんな。あげに怖い顔したお母ちゃん見るのは初めてだったけんな。」
「もぉー、ひとが真面目な話しとるのに・・・。」
からかわれて、フミエはほおをふくらませた。
31 :
見巧者6:2011/07/22(金) 11:17:46.87 ID:PkMAFKXK
(忘れてなんぞ、やるもんか・・・。)
あれは結婚してから1年も経たない、秋の北風に枯葉の舞うさむざむしい日のこと。
貸本漫画屋のサイン会で、景品で人を集め、茂の漫画に人気があるように見せかけた、
その根性が気に入らんと、岳父に大声でなじられた。ひと言も言い訳をしない茂に寄り添い、
その一喝に家中がふるえあがるほどの父親に、フミエは必死で立ち向かっていった。
『うちの人は小細工なんかせんですよ。私はよう知っとります。この人が精魂こめて
描いとるとこ、私が一番近くで見とるけん。・・・うちの人は、本物の漫画家ですけん!』
フミエが自分に寄せる尊敬と信頼が、これほどのものとは、茂は正直感動してしまった。
自分は好きで漫画を描いているのだし、そのおかげでフミエには大変な苦労をかけている。
フミエの世代の女が、夫をたて夫に従うことは珍しいことではないが、フミエの場合は
それだけではなさそうだ。それは、つまり・・・、
(俺に、惚れとるけんだ!!)
茂の心に、失いかけていた自信がむくむくと湧きあがって来た。一人の女に、全身全霊を
かけて愛されるということは、男にこれほどの自信を与えるものか・・・。
「ねぇ、お父ちゃん・・・さむい・・・。」
フミエが、掛け布団が重なっている中を擦り寄って来て、茂の胸に顔をうずめた。
茂の足に足をからめ、温めるようにすりすりとこする。だが、寒いと言いながら、
その足はちっとも冷えていなかった。
(ぷっ・・・誘っとるんか、こいつ・・・。)
二人が肌を合わせる時は、ほとんどと言っていいほど茂の求めから始まることが多かった。
フミエから誘うとは珍しいこともあるものだが、慣れない事はしない方がいいもので、
足をすりすりする以上のことは出来ず、困っているらしいフミエを、茂はほほえましく
思った。
(もしかして・・・俺を慰めてくれようとしとるのか?)
それなら、慰めてもらうとするか・・・。据え膳食わぬはなんとやらだ。だが、茂はわざと
意地悪くフミエに聞いた。
「おい・・・明日は大事な日なんじゃないのか?」
「だって・・・眠れんのですもん。」
「ふうん・・・疲れさせてほしいのか?」
「もぉ・・・。」
笑いながら茂が唇をかさねてくる。もう数え切れないほどの夜をともにして来た二人
だけれど、はじまりの口づけは、フミエをいつもドキドキさせる。
32 :
見巧者7:2011/07/22(金) 11:18:42.79 ID:PkMAFKXK
「んっ・・・ふぅ・・・ぅうん・・・。」
伸びかけたひげにゾリッとあごをこすられ、ぞくりとした戦慄が背にはしる。これだけで
身体の芯がとろけ、濡れてくる自分は、どれだけこの男のことが好きなのかとあきれる。
(明日の朝、ひげ、剃らんといけんな・・・。)
頭のすみに浮かんだそんな考えも、肌をまさぐる茂の手にかき消されていく。
「はぁ・・・はぁ・・・ぁ・・・。」
温かい床の中で、激しく口づけあいながらお互いの帯を解いた。上になったフミエの
乳房を、茂が下からむさぼると、フミエはいとおしくてたまらないと言うように、茂の
頭をかき抱き、四肢をつらぬく快感に耐えた。
茂の手が下着にかかると、フミエは腰を揺すってずり落とす手助けをした。臀の方から
挿し込まれた指が谷間を探り、太腿までを濡らすしたたりをからめて前後にさすると、
フミエはこらえきれないあえぎを洩らして茂に身体をこすりつけた。
臀のまるみを撫でながら手をすべらせ、茂がフミエの左脚を持ち上げた。濡れた狭間に
漲りきった雄芯の筒先があたる。フミエは思わず我が身をくねらせてそれを呑み込もうと
した。
「・・・今日のお母ちゃんは、激しいな・・・。」
茂が少し笑って、腰を引き寄せてぐっと突き入れた。
「や・・・ぁぁっ・・・。」
数え切れないほど何度も受け入れた雄根だけれど、貫かれる瞬間はいつも初めてのように
新鮮だった。やがて訪れる充足・・・苦悶・・・狂乱・・・恍惚・・・。どんなに馴染んでも、
狎れることのない愛の責め苦がフミエを待っていた。
「・・・あっつ・・・。」
フミエは掛け布団をはぎ、肩に引っかかっていたゆかたを脱ぎ捨てた。
「なんだ・・・寒いゆうとったくせに。」
今日はなんだかフミエに押され気味の茂は、フミエの大胆さに内心驚きながらも、
いつもの様にフミエをからかうことは忘れなかった。
そんな茂の唇を上からふさぎながら、フミエは身体をくねらせた。
「んむ・・・ん・・・んんっ・・・。」
自分で自分の動きに感じてしまったフミエに夢中で唇を吸われ、茂はうめいた。
「ぷはーっ・・・。お母ちゃん、もっと優しうたのむわ・・・。」
「だ・・・って・・・ぁ・・・ん・・・ぁ・・・。」
フミエはもう無我夢中で腰をうごめかせ、茂の肩につかまってのどを反らせた。大きく
開けた口は呼吸を求めて激しくあえぎ、しきりに悦びをうったえた。
「だめ・・・しげ・・・さ・・・ぁっ・・・あっ・・・も・・・いく・・・。」
フミエが反らせていた首をがくっと前に倒すと、茂の顔に長い髪がバサッとかかった。
急に目の前が暗くなってもがく茂には気づかず、肩にぎゅっと抱きついて、フミエは
何かに耐えるように手に力を込めた。
「あぁ・・・ぁああ―――――!」
肩を締めつけられ、雄芯を輪状にしめあげられ、茂は必死で耐えていた。
33 :
見巧者8:2011/07/22(金) 11:19:49.71 ID:PkMAFKXK
・・・次第に締めつける力がゆるみ、フミエの身体が茂の上でやわらかくほぐれていくのを
感じた。イった後のフミエの身体は、溶けてしまいそうなほどやわらかくはかなげで、
心なしか軽くなったように感じる。折り曲げたままの脚をそっと伸ばしてやり、
ゆっくりとあおむけにさせる。
「ふ・・・ぁ・・・ゃっ・・・ん。」
つながったまま動かされ、達したばかりの内部がうごめく。
「今日は、どげした?・・・まあ、俺は快かったけど、無理するなよ・・・。」
いろいろ痛い目に遭わされたけれど、フミエのつたない激しさがいとおしくて、今度は
ゆっくりとフミエのなかを味わった。
「ぁ・・・しげぇ・・・さん・・・ぁ・・・ん・・・。」
ぐったりと弛緩していたフミエの手足が、再び形を取り戻して茂にからみついてくる。
甘く束縛されながら、茂はだんだんと律動を速めていった。
「ぁ・・・ぁぁん・・・んっ・・・あな・・・た・・・。」
茂の首に腕を巻きつけ、脚に脚をからめて、フミエは全身で茂を感じようとしていた。
ぶら下がられる重さも気にならぬほど、茂も溺れていた。目の前で自分を呼び続ける
唇を奪うと、フミエは甘美な断末魔のさけびを茂にだけ聞かせて果てた。
「はぁ・・・。お母ちゃんに何もかも吸いとられてしもうた・・・。」
フミエの中に注ぎ込んだ後、茂は大げさに大の字に寝そべりながら、またしても
フミエをからかった。
「腰が立たんようになって、明日は式に行けんかもしれん。」
(もぉ・・・あげなことばっかり言うんだけん・・・。)
フミエはまだ身づくろいも出来ず、茂が離れた後の身体が二人の汗に濡れて冷えていく
のを感じながらぐったりしていた。
「すー・・・すー・・・。」
気づくと、茂は精根尽きたという感じで早くも寝息をたてている。
「お父ちゃんったら・・・。」
フミエは起き上がって、茂になんとかゆかたを着せかけ、掛け布団をかけてやった。
寝顔を見ているうちにたまらないようになって、その唇にそっと口づけする。
「・・・ぐっすり眠ってごしない・・・。」
フミエもゆかたを着なおして布団に入り、茂に寄り添った。
(あ・・・あげなところに、ひげ・・・。)
あごの下に、一本長めのひげの剃りのこしがあった。この部分は、片手で皮膚を伸ばし
ながら剃らないと、なかなかきれいに剃れないのだ。
(明日、ここも忘れんように剃らんと・・・。)
そんなことを考えながら、フミエも愛し合った後の幸せな眠りに落ちていった。
34 :
見巧者9:2011/07/22(金) 11:20:41.96 ID:PkMAFKXK
翌朝。
「や・・・殺るならひとおもいに殺ってくれよ。」
「もぉ〜、何ゆうとるの・・・。」
洗面台の前でのひげそりに、案の定茂はいやがって大騒ぎをしている。つめきりは
おとなしくさせてくれたのだが、いい加減忍耐も限界にきたらしい。
「・・・ここをちゃんと伸ばして・・・はぁ、やっと剃れた。」
拷問から解放された茂は、さっさと逃げ出そうとしたが、
「お父ちゃん!まだ整髪が終わっとりませんよ。」
フミエにつかまって、今度は髪の毛をポマードをべったりと固められる。
「うわー、好かん・・・やめてくれ・・・。」
茂はせっかく塗ったポマードをタオルでごしごしこすって、髪をぼさぼさにしてしまう。
「もぉ〜、今日くらいはおとなしく言うことを聞いて下さい!」
どうにかこうにか、髪をまとめると、今度は着付けである。
「あ〜、もう!それでええ!何度やり直したら気が済むんだ?!」
ネクタイ結びの仕上がりが気に入らず、何度もやり直したがるフミエに、できるかぎり
我慢していた茂がとうとう怒り出した。
「・・・なんかしっくりこんけど・・・まあ、こんなもんか・・・。」
フミエは納得できない顔をしながらも、ズボンを履かせ、背広を着せかけた。
「・・・ほんなら、行ってくるけん。」
「いってらっしゃい。」
フミエは玄関先で、スーツ姿の茂をほれぼれと眺めた。スーツを着ている茂など、
お見合いの時以来、しかも今日は新調したての一張羅である。
「・・・なんだ?」
フミエにうっとりと見つめられ、茂が居心地悪そうに聞いた。
「・・・ええ男だなあ、と思って・・・。」
「お・・・おう。」
臆面もなく言い放つフミエに、茂はちょっと面食らって、照れ臭そうに応えた。
「いってらっしゃい・・・。」
それからは一度も振り返らずさっさと歩いていく茂の後ろ姿が曲がり角に消えるまで、
フミエはいつまでも見送っていた。茂がこの曲がり角を曲がっていくのを、これまで
何度見送ったことだろう。だが、今日はその後ろ姿に、なんとなく遠いものを感じて
フミエは一瞬心が翳った。おめでたい日に、こんなことを考える自分がなさけない。
「さあ・・・。お祝いの準備せんとね!」
まずは家中をそうじして、それから買い物に行って・・・フミエは気をとりなおして、
いそいそと働き始めた。
35 :
見巧者10:2011/07/22(金) 11:21:37.96 ID:PkMAFKXK
「帰ったぞー。」
フミエがあきらめて皿や箸などを片付けようとした時、玄関がガラリと開いて、茂が
帰ってきた。
「あー、腹へったなあ。・・・おっ、うまそうだ。」
茂はちゃぶ台の上を見て相好をくずした。脱いだ背広を受け取ってハンガーにかけると、
酒やたばこの入り混じった夜の巷のにおいがした。
「授賞式でごちそう出んかったんですか?」
「ああ・・・パーティー言うても、ようけ人が寄ってきてあーだこーだ聞くもんだけん、
なんも食えんだった。その後バーを連れまわされたが、あげな所はつまらんなー、
食う物がない。」
茂はネクタイをゆるめ、さっそく箸をとった。
「おっ、太ったギョウザか。相変わらず緑色だなあ・・・うん、うまい!」
茂はまったくいつもどおりに、ギョウザを次々たいらげ、ちらしずしを何回もおかわり
した。フミエは嬉しそうに、気持ちのいい食べっぷりに見とれた。
「これ食ったら仕事するわ・・・しめきりが近いからな。」
フミエはいそいそとお茶をいれ、しょうゆをつぎたした。
「戌井さんや深沢さんも来てくれたぞ。豊川さんがふたりを歓待してくれてなあ・・・。」
受賞者からひと言と言われ、緊張して挨拶を始めた時、壇上からこの三人が並んでいる
のが見えた瞬間、茂の胸に強い想いが去来した。式典が終わった後、彼らと固い握手を
かわし、礼を言えたことがうれしかった。
「そう言や、浦木も来とったな・・・。呼ばれもせんのに、勝手にもぐりこんだんだろう。」
「まあ・・・。」
浦木らしい・・・。もちろん、出版業界の片隅にかじりついている浦木のこと、何かうまい
話にありつくためだろうけれど、茂を祝う気持ちも一厘くらいはあるかもしれない。
食べ終わると、茂は休む間もなく仕事部屋に入った。フミエが皿を洗っていると、
カリカリとぺンをはしらせる音が聞こえてきた。ちゃぶ台の上には、今日もらってきた
賞状と楯、それに賞金の袋が置いてある。
フスマの向こうに、いつに変わらぬ茂の背中が見えるようだった。あの夏の日の夕暮れ、
フミエに言葉を失わせた、一心不乱に仕事に取り組む男の背中・・・。
「お父ちゃん、おめでとう・・・。」
皿を洗う手を止め、その背中に向かってお祝いの言葉を言うと、フミエの目から、
これまで一度も流すことのなかった涙が、初めてあふれ出した。
>>26 GJ!
お誘いフミちゃんかわえぇぇぇぇ!
5スレ目も絶好調ですね!
>>26 GJ!!積極的布美ちゃんをからかうゲゲは、なんだか攻められてるのを照れ隠すみたいでカワユスw
普段Sだから、受け身は慣れてないんだな。
>>16を読んで慌ててパソコンから割れせん見てきた
綾ちゃんの実家にはちゃんとピアノが置いてあるんだなw
>>26 ふみちゃんの誘いきれてない誘いに悶えた
ひげそりに大騒ぎするしげさんかわいい…!
いちせん公式跡地とわれせん、なんとか生き残って欲しいのう…
ネクストBSとか書いてあるからBS宣伝用に全体は残したりするかな…
ゲゲさんにケモ耳がはえるとしたら猫だろうか
兎も捨て難い
ふみちゃんは犬だって信じてる
話ぶった切ってごめん。われせんで最後のほう祐ちゃんが
「ちゃんと○○して貯金しないとね」って言ってるんだが、○○って何言ってるかわかる?
聞こえにくいけど ちゃんと「売って」だと思う
ちゃんとせんべい売ってってことかな?ありがと、そのつもりで聞いてみる。
>>45 今まで自分達で食べるなりしてた割れ煎餅も安価で商品にして売って〜って事じゃないかな
最初に綾子さんが綾父に身内用だけどって言ってるし
チラシ
再放送してる某ドラマでゆうちゃんの中の人の父親役が平泉氏でなんかワラタ
ちょっと拗ねちゃう風味の「祐ちゃんプチ嫉妬編」とか
すげー読みたいw
>>47 嫉妬→仲直りの後はさぞかし濃厚なんだろうな
勝手に拗ねて勝手に解決して勝手に濃厚に攻めるゆうちゃんを妄想したら萌えた
綾子さんに今日どうしたの?って聞かれてもニコニコしながらなんでもないとか言ってそう
あと、ゆうちゃんは犬耳で綾子さんは猫耳だと思う
いちせんの場合は猫耳とかメイド服とかベビードールとか時代的に厳しくないのが良いな
ゲゲふみは時代もアレだけどとにかく金銭的に厳しいからなぁ
でも今の俗っぽく形骸化されてしまったメイドではない正統派が楽しめそうな気がする
あと大人のおもちゃを是非しげさんに使って欲しいんだが…
はりこですね、わかります
猫耳とかはゲゲフミだとマジで生えかねないと思うw
呼び方がどう祐一くんからゆうちゃんに変わったか気になってせんべいが食べれない
ふと『嫁なら読め』がものすごく見たくなって最近見れてなかったDVDを見た
ほんともうなんでこの夫婦こんなにかわいいんだろう…
花火大会のシーズンだが、祐綾の花火大会デートってどんなだろう・・・?
>>55 ゆうちゃん下町っこだから花火大会近いとこに多そう
結婚する前に二人で行って綾子さんの浴衣にかき氷をこぼしちゃって
シミの応急処置にゆうちゃん家に寄って綾子さん彼シャツ状態まで妄想した
昔の朝ドラの風のハルカでは、
キスシーンが合計4回もありました
1回はたぶんフリだけだと思うけど
ゲゲゲでもキスシーンあってほしかった
けど、キスとか直接的な表現がないからこそ、
自分はエロの妄想が働くのかもしれませんw
>>56 そこからそこから〜〜〜!!
>>57 これはもう死語に近いのか。でもあえて言わせてくれ。「禿しく同意!」
>>57 あったなあ
あすか、純情でもけっこうなものでした
純情ではブラウスのボタンに指かけてたような
ゲゲゲなんて手をつなぐ、あたまポン、肩ポン、肩もみ、熱はかり、
お茶碗手添え、ネクタイ結び、腕つかみ・・・こんなもんだしな
>>59 その中での自分の最上級萌えは「あんたは手先が器用だなあ」だ!
自分は「持っとれよ」かなぁ
頭なでなでも捨て難い
>>56 ニヤニヤしながら読んだw
浴衣から彼シャツ姿で体操着プレイみたいなもんか
お迎えゲゲ@アキ姉ちゃん宅 が好きだー!
これが初めての家出になるんだな、そういえば
>>63 突然ぶった切って家出ばなしとはこれいかに?
あそこからちょっこし来たんですねw
ここは基本エロですよ
65 :
63:2011/08/02(火) 16:45:29.28 ID:nf64JJJp
ごめん、なんか誤解されてるみたいだけど
単に自分の萌えポイントを挙げただけで
(ちょっと前の流れ)
あそこがどこなのかもサパーリです(´д`)
>>65 大丈夫。普通に萌えたシーンをあげてるんだなって分かったよ
>>64 あそこってどこの事を指してるんだか・・・
>>56 下町だし商店街っぽいし、きっと花火大会とか夏祭りとか商店街主催で
結婚する前、つまり祐父が倒れる前でもきっと実行委員の打ち上げとかで両親共に家に居なくて
祐ちゃんちで彼シャツであんなことやこんなことをしてもきっと大丈夫と思った自分は妄想しすぎ
69 :
しだれ髪1:2011/08/05(金) 03:44:17.09 ID:9DBm5qn6
生暖かい湿気た風の吹く夜。
にゃ〜にゃ〜と、先ほどから甘ったるく鳴く猫の声が止まない。
雄が雌に求愛している声なのか、雌が雄に愛を告げている声なのか。
生きとし生けるもの、異性を求める本能には逆らえない、ということか。
「暖かくなると発情するのが犬猫だが」
長い黒髪を櫛梳く布美枝の背後で茂が呟く。
「人間は年がら年中発情する困った生きモンだ」
そう言うなり、後ろから茂の腕が布美枝の腰に廻り、引き寄せられて胡坐の上へ座らされた。
「きゃっ」
困った困ったと言いながら、全くうらはらに布美枝のうなじへ唇を寄せる。
「…ん」
身を捩って小さく喘ぐ吐息。抱き寄せた腕は、布美枝の抵抗などものともしない。
顎を使って肌蹴させた寝間着の隙間から、肩へ舌が滑る。
「…ふっ…、ゃ…」
茂の愛撫はいとも簡単に布美枝の内側へ火を点ける。
求められる悦び、脱ぎ捨てる羞恥心、それらの感情に少し躊躇する理性。
右腕だけの力強さで、圧倒される我が身の頼りなさが情けなくも可笑しく、
唇が触れるだけの摩擦で、字のごとく骨が抜かれたようにふにゃりとくずおれる。
うっとりとこのまま身を預けようとした、そのとき。
「…っくしゅ!」
背後で茂が大きなくしゃみをした。
「だ、大丈夫ですか?」
「ん、髪で鼻をくすぐられた」
「あ…すみません」
ぐしぐしと鼻をこすってから、くんくんと布美枝の髪の香りを嗅ぐ。
「…あんた、こげな長い髪うっとおしくないのか」
「え…いえ。昔からずっと…短くしたことないですけん。慣れとります」
「ふうん」
ちらりと後ろを見やると、唇を尖らせてしげしげと布美枝の後ろ髪を眺める夫の顔があった。
「…見苦しい…ですか?短い方がええ、とか」
「いや、手入れが色々面倒そうだけん。女というものは大変だな」
茂らしい答えだと思った。くすっと笑って、布美枝は茂の正面に向き直って座る。
「…長い方が…好き、です、か?」
窺い目線で、下から見上げた。
真意を測りかねた茂が一瞬きょとんとして、しかしすぐに照れたように顔を背けた。
「どっちでもええわ」
愛想のない言い方はいつものことだけれど、やはりがっかりする。
幼い頃から背の高かった布美枝は、少しでも女らしさを前面に出すために、
髪だけはずっと伸ばし続けていたのだ。
70 :
しだれ髪2:2011/08/05(金) 03:45:45.40 ID:9DBm5qn6
「ぼくねんじん…」
口の中だけで呟いた。茂は「ん?」と聞き返すが、今度は布美枝がぷいと横を向いた。
事情の判っていない朴念仁は、再び布美枝の長い髪を観察するように見つめ、
何を思ったか、すい、と後ろ髪を持ち上げて、確認するようにうなじのあたりを眺め始めた。
「な、何ですか?」
再び始まるのかと思った愛撫が、どうやらそうではないことに布美枝は戸惑って、
肩をすくめて茂の右腕を押し戻した。
「いやぁ、口が隠れておらんかなと思って」
いたずら小僧のような、にんまりした笑顔で茂はまだ布美枝の後頭部を気にしている。
「口?」
「二口女というのを知っとるか?」
「ふたくちおんな?」
「髪に隠して、頭の後ろにもう一つ口がある女の妖怪だ。普段は大人しい女で、
全く食いもんを口にせんが、夜になるとその後ろの口でバリバリムシャムシャ…」
身振り手振りで話す茂の怪談に、思わず身の毛がよだつ布美枝だったが、
ふと考えて、自分が「一反木綿」以来の妖怪に、再び例えられていることに気づき、むっとした。
「もうっ!!」
どしん、と茂の胸を突き飛ばし、身体ごとそっぽを向く。
「なしてあたしは妖怪ばっかりなんですか!」
「あははは、冗談だ。いや、もし本物なら先に言うてくれ」
「そげなわけないでしょ!」
けらけらとまだ笑っている。口を窄めて布美枝は布団へ潜り込んだ。
結局男には判らないのだろう。女が髪を伸ばす理由など、着飾って褒めてもらいたい見栄が大半だ。
それを妖怪にしか例えられない、この変人のセンスには未だに慣れなかった。
「おい」
布美枝を覗う声にも、まだ笑いが残っている。
答える代わりに、ぎゅっと布団の中で身体を丸めた。
けれど、茂はおかまいなしに、するりと褥に入り込んでくる。こういうところが憎らしい。
背中から抱きしめられる。後ろ髪を避け、首筋に舌が這う。
悔しくも感じてしまう素直な身体が、茂以上に恨めしい。
「…後ろの口で噛みつきますよ…」
ぷっと吹き出したのが判った。「恐ろしい」耳元で囁かれる。
「けどな…」
さらさらと、背中に伸びる髪を撫でられながら、時折それに唇が触れる。
「女の髪は、昔から古典やら文学やらでちょっこし謎めいて描かれることが多いけんな」
「え?」
「二口女もそうだが、幽霊や妖怪の女たちはみーんな長い髪をしとる」
「…ああ…そげ、ですね」
「だけん、俺は昔から…長い髪の女の怪しげな…」
そこまで言って、茂は布美枝に覆いかぶさった。
重ねられるまま、唇を受け止め、舌の侵入を許す。
そしてその舌に絡められるまま、それに応じ、甘い吐息をこぼす。
どんどん注入される淫らな媚薬に、脳も身体も蕩けはじめる。
71 :
しだれ髪3:2011/08/05(金) 03:47:15.69 ID:9DBm5qn6
ようやく離れた唇は、何も語らないままゆっくりと布美枝の胸の頂へと降りていく。
さっきは何を言おうとしたのだろう。じれったく身を捩る。
「…な、た?」
胸元に潜る茂の顔を、肩でちょんちょんと合図して見下ろす。
肩に傾れる髪の先に口づけてから、茂は布美枝の頬へ戻ってきた。
「怪しげな…何?」
ふっと微笑って、耳を舐られ、くすぐったさに目を閉じる。
「妖艶…という言葉を知っとるか。妖しい、艶やかさだ」
「ん…」
「艶やかというのはまあ、色気のようなもんだな」
「あ…!」
素知らぬふりで太腿の間に挿し入った右手に、下着の上から粒を探られた。
喋りながらも、舌は布美枝の肩を這い、右手は下着の中で蠢く。
乳房の先端を捕えられ、舌の上で弄ばれる。硬くなっていく蕾を、舌先で弾かれる。
「あっ…」
理性的に茂の言葉を聴いていられるのは、もうこのあたりまでだと思った。
「妖怪の女は艶やかさがある。そげ思わんか」
口の片端を上げて、愉快そうに布美枝を覗う。
「わ…わかりま、せ…」
「あんたは鈍いなあ」
呆れたという顔で小さなため息まで吐かれた。けれど下半身への愛撫はそのままだった。
「鈍い…って…」
顔を赤らめて、布美枝は口を尖らせた。眉はハの字になっている。
「…だーっ、もう要するに!俺は昔から長い髪の女に色気を感じる傾向にあるということだ」
浮き上がった布美枝の細い首の筋へ、舌を滑らせながら唇で吸い付く。
それはどこか、照れ隠しのための茂の逃げの一手でもあるかのようだった。
わざと乱暴気味に下着を剥ぎ取り、指で引っ掛けるようにして中を弄られる。
ちょうどそこは、最も敏感な性感帯だったようで、布美枝の細い身体がびくんと撥ねた。
「っふぁっ…!」
「ああ、そげだ」
愉しげに目を細め、快感に震える布美枝の中を探る。
「あんたにも口がもうひとつあったな」
「え…?ぇ…?」
にやりと笑って、茂は布美枝の視界から消えた。
72 :
しだれ髪4:2011/08/05(金) 03:49:13.86 ID:9DBm5qn6
「あっ…!」
茂曰く、布美枝のもうひとつの「口」へ、激しい口づけが落とされる。
「や、やだ…!い…ぁ…ぁ」
繁みの中の、そのまた花冠に埋もれているピンク色の芯を、尖った舌に刺激される。
するとそれはいとも簡単に布美枝を決壊させる威力で以て、泉の水を溢れさせた。
潤沢な淫液を湛えたその場所へ、指が、舌が、容赦なく出入りを繰り返す。
濡れた音の響きが呼び起こす、もっと淫らな内側の欲。
「んっ…はぁっ…!や、あ、あ、…ぃ、ゃあ…」
気づかぬうちに引き出される嬌声は、嫌なわけじゃないのに勝手に嘘をつく。
けれど茂は知っている。布美枝の「嫌」は、独りだけ頂点へ持ち上げられるのが「嫌」なだけだと。
上半身を起こした夫を、愛しく抱きしめる。
硬く主張する雄の陽根を、潤いの中へ滑り込まされ、あまりの快感に声も出ず仰け反った。
「…っ…」
眉根を寄せて一瞬身体を強張らせた茂が、二度三度、軽い口づけを落とす。
「ええ、な…あんたの、下の、く、ち…」
不敵な笑みを浮かべて、冗談めいたことを言う。
「噛み千切らんでくれよ」
思わず布美枝は、両手で茂の口を覆った。
「もうっ…!」
こんなときにさえ情緒のないことを口にする茂を、じとっと睨みあげた。
ゆっくりと律動を刻まれる柔らかな女体が、為されるがままに揺れていく。
黒髪は白い敷き布に放射状に広がって、揺さぶられる身体に付いていくだけだ。
「んっ…!あ、あ、んっ……ん、ぁ」
湿った熱の喘ぎ声が、茂の抽出に合わせて洩れていく。
半開きの布美枝の唇に、茂の節ばった指が二本差し入れられた。
「んんふっ!…ぁ、はっ、ん、む…!」
夢中で舐った。呼吸など忘れそうなほどに。
しばらくしてその指を抜き取ると、茂は布美枝に両腿を抱えるよう指示した。
されるままに従うと、自分の唾液を塗りたくった指で、花の芯を摘み捏ねられ始めた。
「ぁつ…っ!…、っ!ん!…あああぁ!」
ばさばさと、乱れる髪にも気を使えず、首を振って身を捩る。
一層強く打ちつけられる腰の動きに、ひくひくと雌の場所が痙攣する。
「き…っ、つ…」
「はあっ、ああ、…っ、あなたぁ…」
悶えるうちに茂を呼べば、必ず口づけで応えてくれた。
遠のいていく意識の中に、最高の悦びの瞬間が近づく。
茂が顔をしかめながら、再び布美枝の口へ指を突っ込んだ。
「んんっ!」
自分の愛液の味を初めて知った布美枝は、やがて涙のうちに自らの全てを解放した。
同時に爆ぜる茂の熱を、しっかりと呑み込みながら。
73 :
しだれ髪5:2011/08/05(金) 03:51:16.78 ID:9DBm5qn6
― ― ―
「霊能力者の髪には神通力が宿っとると言われるけんな。髪は昔から神秘的なもんなんだ」
烈しさのあとの静寂に、ふたりはゆったりと身を沈めていた。
布美枝の髪を手櫛で梳きながら、茂が静かに話してくれる。
「平安の女は顔より髪の美しさで美人かどうか判断されとったくらいだしな」
今夜はやたら饒舌な茂が、なんだか少し可笑しくて、布美枝は茂の胸の中でふふっと笑った。
「ん?」
「あ、いえ…。今日はやけに…語るな、と思って」
「だら。そげならもう黙るわ」
「でも…」
思い出して布美枝は、少し頬を染めながらまた、ふふふと笑った。
「…なんだ」
「…貴方の女性の好みって、幽霊や妖怪みたいな人なのかな、と思って」
「うむ?んー…まあ、小さい頃からそういう絵ばっかり見て育っとるからな」
「あたしは…一反木綿で、二口女、なんですよね?」
「うん?」
「だけん、少しは、貴方の好みなのかなあ、と思って」
「…」
「髪も長いし?」
「あー、あー、もう、寝るぞ!」
あからさまに照れた顔で、茂は布美枝を胸の中へ埋め込み、布団を被りなおした。
可笑しさに、笑いを堪えきれない布美枝は、小刻みに身体を震わせた。
ごほんと大きく咳払いをして、またひとつぐっと抱きしめられる。
否定をしない肯定が、きっと、不器用な夫の最大限の言葉なのだろう。
布美枝は微笑んで目を閉じた。
するすると梳いてくれる、彼の無骨な右手から伝わる、愛しさの欠片を感じ取りつつ…。
おわり
ジュモクです。
いい仕事を嗅ぎ付けたのであと3時間くらい起きてます
>>69 GJ!
ほんとお互いに想い合うエロくてかわいい夫婦だ
ゲゲさんとふみちゃんの髪について妄想してた自分には超タイムリーなネタでしたw
しかしここの書き手さん達の妖怪知識ぱねぇ
>>69 GJ!
フミちゃんの長い綺麗な髪はほんと、魅力的ですねぇ
事後いちゃいちゃのふたり可愛いわー。
>>69 GJ!!
しげさんがしげさんなりにふみちゃんの全てを大好きな感じがたまらんです
>>69 GJ!
二口女というキーワードがエロに拍車を掛けてて良いんですな〜w
事後イチャイチャもかわゆすぐる
ジュモクさん更新早すぎwいつもだんだん。
なにげに
>>75の妄想ってなんだったんだと気になるな。
>>79 75ですが
ゲゲさんがチキンカレーのノリで勝手に質の良い石鹸を買って来て
何買っとるんですか!と怒られながらもふみちゃんの髪質の向上に悦に入ってたらいいなぁ…
というしょうもない妄想ですw
ふみちゃん勿体なくて使えんとか言いそうなので一緒にお風呂で強制的に使わせたりとかw
>>80 ええな、それ!何気に風呂プレイの展開だなw
前から興味があったんだ、ちょっこしやらせてみろ、とか言って髪洗ってたら
背中からオパーイ行って下に手がまわって、泡だらけで滑りもよくなってそのままいっちまえるな。
>>57-59 この前たまたま今の朝ドラの番宣見たが、短いダイジェストの中でゲゲゲでは有り得ない位ベタベタしてて、ビックリしたwゲゲふみは何故ああも抑えてたのかと・・・
>>82 モデルとなったご夫婦が健在だからでしょうね…。
いい雰囲気になっても、次の事件が起こったり珍客が乱入したり…。
しげーさんはすぐに仕事部屋にこもっちゃうし。
夜になったぁと思っても、次の場面でスズメは鳴くし桜は咲くしww。
そこを縫うようにして妄想するのがたのしいんですが・・・。
「ええ男だなあ。」は布団の中で言ったらベタすぎると思います。
イチャイチャしてほしくもあったけど、でもイチャイチャしまくってたら
おやおやあららでケンカするだけでも萌えられるネ申夫婦にはならなかったんだろうなとも思う…
あのケンカは中の人も言ってたけどほんと夫婦らしくて良かった
妄想補助のためにちょんまげのゲゲも見ています。夜の8時だとあれくらいはやってくれるんだなw
けどやっぱり、相手が布美ちゃんじゃないと…!
>>85 おなじくw
ゲゲゲで布団並べるシーンがなまま見たいちせんでのあのシーン
何が起こるか妙にドキドキしたことありました
ちょんまげゲゲさんはなんか怖くて見れないww
再放送してた平泉氏の息子役だったドラマはあまり妄想の役に立たなかった…
そして色々見てやっぱゲゲふみ最高!と思うのだった…w
88 :
ねこ福1:2011/08/12(金) 15:34:08.75 ID:slHD0Gx7
「ふふ・・・。」
低い笑い声。茂とふたりだけの時間に聞かせるような・・・。
「・・・いや、ほんとですよ。」
「いやだ、豊川さん・・・お上手なんだから。」
フスマの向こう側で肩を寄せ合っている二人は、何を話しているのだろう?
豊川に何かお世辞でも言われたのか、謙遜してみせるフミエの声は、必要以上に弾んで
いるように思える。
散歩から帰ってきた茂は、仕事部屋のフスマの陰から聞こえる男女の話し声にふと
立ち止まり、妻の声にいつにない艶な華やぎを感じて、声をかけるのを躊躇していた。
「あ・・・先生、お留守中にお邪魔しております。」
気配に気づいた豊川が、いずまいをただして挨拶する。
「あら・・・あなた、おかえりなさい。」
一瞬遅れて気づいたフミエは、二人で見ていたらしい、何かカバーのかかった本を
パタンと閉じると、サッと自分の陰に隠した。
「散歩だけん、すぐ帰ってくると思うて、待っとっていただいたんですよ。」
フミエはさりげなく本を脇に隠しながら台所へ立って、お茶をいれ始めた。
(何を隠した・・・?)
フミエが自分に隠し事をするなんて・・・茂は面白くない気分でちゃぶ台の前に座った。
「先生。来月号の進み具合はいかがですか?今日は陣中見舞いがてら、構想をうかがいに
参りました。」
豊川が持ってきたというドラ焼きが茶とともに食卓に出された。
「あ・・・いや、なかなか進まんで・・・。」
「いや、お気になさらないでください。私が勝手に押しかけたんですから。しめ切り
まで、まだ時間もありますし。」
「それなら3日待ってください。3日後に来てくれれば、構想を仕上げておきますけん。」
「わかりました。それでは3日後に。」
仕事の話はそれで終わり、豊川はみやげのドラ焼きで茶を飲みながらフミエと楽しそうに
世間話をして、仕事の進展は何もなく帰って行った。
89 :
ねこ福2:2011/08/12(金) 15:35:13.80 ID:slHD0Gx7
(・・・あいつ、何しに来たんだ?)
この家に電話をひいてからというもの、わざわざやって来る必要はそれほどなくなったと
いうのに、近ごろやけに豊川の訪問が多くなった気がする。
(まあ・・・奴も必死なのかもしれん。)
豊川が編集部の反対を押し切って、大胆にも人気投票ダントツ最下位の『墓場鬼太郎』の
連載開始に踏み切ったのは、ふた月前のこと。
(奴が、俺の漫画を買ってくれとるのは間違いないが・・・。)
端整な容貌や慇懃な態度の内にも、不敵な魂が見え隠れする豊川を、この辺に住む
向こうキズのある猫に似ている、と茂が評したのは意外と言い得て妙だったかもしれない。
『少年ランド』を少年漫画雑誌ナンバーワンにする為ならどんな努力もいとわないらしい
彼の身体からは、いつも熱意が吹きつけてくるようだった。
(だが、亭主の留守にひとの女房とこそこそして・・・けしからんな。フミエもフミエだ、
奴がくれたカステラの包み紙なんぞを後生大事にとっておいたりして・・・。)
だが、今さらそんなことを問いただすのも大人気ない気がする。茂はせっかくのドラ焼き
にも手をつける気にならず、難しい顔をして黙りこくっていた。
次の日。またしても招かれざる客がやって来た。ついこの間、少年ランドの恐怖の
人気投票システムの情報をもたらしてフミエを動揺させ、作っていたおはぎをボテボテの
代物にさせた浦木である。フミエが出かけていて、玄関で呼んでも誰も出てこないので
勝手にずかずかあがりこみ、仕事部屋のフスマを無遠慮に開け放った。
「なんだ・・・おるんなら返事くらいせえ。無用心なうちだな。」
「お前また来たのか・・・今仕事中だけん、帰れ!」
「せっかくええことを教えてやろうと思ったのに・・・あのランドのなんとかいう編集者な
・・・今日、ここに来る予定か?」
「豊川さんか・・・?今日はそげな約束はないぞ。昨日来たばっかりだしな。」
「ふうん・・・。」
「なんだ・・・ニヤニヤして。豊川がどうかしたのか?」
「さっきここへ来る時に街で見かけたんだが・・・お前の女房と一緒だったぞ。肩を並べて、
えらく親しそうだったなあ。」
「・・・お前、何が言いたい?」
「いや・・・あの奥さんもなかなかすみに置けんということだ。お前に似合いのさえない女
だと思っとったが、お前の仕込がいいのか、近頃やけに色っぽくなったしな。」
「えげつないことを言うな!」
「漫画は打ち切り目前だし、女房は寝取られるしじゃ、お先真っ暗だな。」
「ひとの家に図々しく上がりこんでデタラメばっか言いおって。お前ほんとに帰れ!!」
茂は立ち上がって浦木のえり首をつかむと、玄関に引っ立てて行って三和土に放り投げた。
90 :
ねこ福3:2011/08/12(金) 15:36:12.59 ID:slHD0Gx7
その夜ふけ。3日で構想を、それも今度は人気投票で最下位を脱出できるようなものをと、
茂は机に向かい、必死で頭を絞っていた。心の中は疑念でいっぱいだが、仕事にかこつけて
フミエと話をしなくて済むのを幸い、夕食もそこそこに部屋にこもったのだ。だが、仕事に
集中しようと思っていても、昼間浦木にささやかれた話と、それを裏づけるかのような
昨日のふたりの様子に、知らずしらず思考はそのことに戻っていってしまう。
(ばかな・・・フミエにかぎってそげなこと。だいたいあいつは豊川よりみっつよっつ
年上のはずだ。)
豊川のような若きエリートが、年上の人妻に懸想するなどとは思えない。それに、
茂にとってフミエは最初から自分のもので、自分しか知らないおぼこ女で・・・他の男に心を
奪われるなど考えてみたこともなかった。だが・・・。
(もともとああいう奴の方が、フミエの好みのタイプなのかもしれんな・・・。)
父親は山っ気があるが手堅い家庭で、兄姉は学校の先生・・・豊川のようにかちっとスーツを
着こなした勤め人の妻になるのが、本来のフミエの理想だったのではないか。
なんだか急に、フミエが本当に二階に寝ているのすら心もとなくなってきて、茂は足音を
しのばせて二階にあがった。
一番奥の小さな布団に寝ている藍子の隣りで、フミエは何の変わったところもなく
すやすやと眠っていた。
『昨日隠した本は、何だ?』
『今日、豊川と会ったのに、なんで黙っとるんだ?』
聞きたいのはやまやまだが、嫉妬していると思われるの沽券にかかわる。身体に聞いてみる
と言うわけでもないけれど、フミエが自分のものであることを実感せずにはいられなく
なって、フミエのそばにかがみこんだ。
おもむろに掛け布団をはぐと、ひやりとした秋の夜気にフミエがすこし身じろぐ。
無言で身体の上におおいかぶさると、唇を奪いながら見八ツ口に手を差し入れて胸乳を
まさぐった。
「ぅ・・・ふぅ・・・ん。」
フミエが目を閉じたまま、首に手を回してきた。深い眠りから引き起こすような強引な
求めにも、慣れっこになっているのか、いやな顔もせず甘く応えてくる。だが、棘のように
心に刺さった疑念が、茂を少し意地悪な気持ちにさせていた。
とがり始めてきた乳首を放置して浴衣のすそを割り、潤いを確かめる。まだ夢うつつで
愛撫もろくにされていない身体は、充分に潤ってはいなかった。もどかしい思いで、前で
結んだ帯を乱暴に解いて前をはだけると、乳首に吸いつきながらしげみに指を突っ込んだ
91 :
ねこ福4:2011/08/12(金) 15:36:58.99 ID:slHD0Gx7
「痛・・・お父ちゃん、どげしたの?もっと優しうして・・・。」
フミエが目を開け、静かな声で抗議した。茂の頬を両手ではさむと、目を閉じて下から
甘く口づけてくる。フミエの舌がしのびこんできて茂の舌をからめとり、やさしく吸った。
(なんだこいつ・・・やけに余裕があるな。)
フミエの落ち着いたとりなしに、なんだか自分の方があやなされているような気がして
面白くない。茂はフミエの手をつかんで布団に押しつけ、激しく唇をむさぼった。
「んふ・・・ぅうん・・・ぁ・・・ん・・・。」
唇を密着させ、舌をからめ・・・それだけでフミエはいつも通りにあふれ、ほぐれてくる。
このまま貫いてしまいたい欲求が湧き上がるが、先刻から心にひっかかっている疑念の
せいで、なんとなくすんなり愛し合う気持ちになれない。
フミエの身体を上に乗せて上下を入れ替え、頭をそっと押し下げる。フミエは茂の求め
ていることを悟り、素直に下へさがった。
「・・・あっちを向いてせえ。」
フミエは(困った人ね・・・。)とでも言いたげに少し眉根を下げて微笑むと、言われた
とおり後ろを向いて茂の上にまたがった。胸の上にフミエの濡れた女性が押しつけられ、
それだけで雄芯がこわばるのを感じる。
形をとり始めた器官に両手を添えて、フミエは根元からていねいに舐め始めた。
臀の下に手を入れて持ち上げるようにすると、フミエが膝をついて腰をあげた。目の前の、
露をたたえた紅い花を指でなぞると、熱い泉がいくらでも湧いてくる。中心部に指を沈め、
中でうごめかすと、のどを鳴らすような声を出して腰を揺らす。お返しとばかりに雄芯を
呑みこんで、熱い粘膜で包み込み激しく吸った。
(こ・・・こげに上手かったかな?)
フミエに見られていないことを幸い、茂はぎゅっと目を閉じてつよい快感に耐えた。
「も・・・もうええ。」
とっくに反り返っている雄根を、なおも口じゅうで愛そうとしているフミエを止めるため
声をかけようとした茂の声は、突き上げる欲望のためかすれていた。
名残惜しそうに雄芯をゆっくりと吐き出してからひとつ口づけ、身体を起こして
振り返ったフミエの顔は淫らな行為に上気し、目がとろんと潤んでいる。手で臀を押しやる
ようにすると、フミエは少し前にすすんで腰をあげた。
フミエが充分に育てたものに手を添えて秘裂にあてがってやると、フミエはあえぎながら
腰を寄せて呑みこんで来る。挿入りやすいよう、剛直の角度に合わせて身体を傾けるさまが、
こうして抱かれるのに慣れていることをうかがわせて淫らだった。
92 :
ねこ福5:2011/08/12(金) 15:37:47.08 ID:slHD0Gx7
「ぁ・・・ぁぁあ・・・んっ・・・。」
臀の肉が茂の下腹部にぴったりとつくほど深く呑みこみ、フミエが動き始めた。あおむけに
なって頭の下に腕をかい、茂はその背中をみつめていた。目の前でゆらゆらと揺れている
白い背中と臀に幻惑され、自分の上で踊っているのがフミエではなかったらどうしようと、
急に馬鹿げた不安におそわれる。
「ぁあっ・・・だめ・・・しげさ・・・んぁあっ―――――!」
律動が不規則な痙攣に変わり、フミエが身体を硬直させてがっくりと前に倒れた。上体を
起こして後ろから抱き起こしてやると、いとおしそうに頭を肩にもたせかけてくる。
そのまま横に倒れ、側臥位になって腰を使う。身悶えて前へ逃げようとするフミエの脚に
脚をからめて動きを封じ、後ろから抱きしめてがくがくと揺すぶった。
「ゃぁ・・・ぁっ・・・ぁっ・・・ぁ―――――!」
息つくひまもないほどの責めに、あえぎっ放しののどはカラカラに渇き、かすれて声に
ならない悲鳴が、ますます茂の嗜虐心をあおりたてる。
まだけいれんしている身体からいきなり引き抜くと、フミエが小さな悲鳴をあげた。
ふるえている身体をあおむけにさせて侵入し、三度目の絶頂へと追い上げる。
「んんっ・・・はぁ・・・は・・・も・・・。」
フミエは茂にしがみつき、渇いた喉を潤すかのように汗にまみれた肩に唇を押しつけた。
「んぅ・・・んんっ―――――!」」
深くえぐりながら腰を打ちつけると、フミエは無我夢中で背に爪を立て、肩に歯をあてて
くぐもった悲鳴をあげた。その痛みも感じないほど溺れ、茂もフミエの中に思い切り
放った・・・。
フミエのすべてを奪いつくした後は、単純なもので昼間の疑念もどうでもよくなってくる。
ほおにいく筋もの涙の痕を光らせてぐったりと横たわるフミエの姿に、やり過ぎたかと言う
後悔の念がわきおこった。
「・・・ちょっこし、キツかったか?・・・すまんだったな。」
罪ほろぼしに甘く口づけながら抱きしめると、フミエは弱々しく抱き返してきた。
「ううん・・・ええの・・・。」
抱き合っているために茂からは見えないフミエの眼が、常にない琥珀色に光っていたことを、
茂は知る由もなかった・・・。
93 :
ねこ福6:2011/08/12(金) 15:38:50.58 ID:slHD0Gx7
次の日。例によって散歩に出かけた茂は、すずらん商店街のはずれの御堂のそばで、
あの向こうキズのある猫を見かけて思わず立ち止まった。またどこかの猫とケンカでも
して来たものか、前脚から血を流している。そこへ、銀灰色のすらりとした身体つきの
猫があらわれ、しきりに鳴き交わしていたと見るや、二匹はつい、と御堂の陰に消えた。
茂はなんだか胸騒ぎがして、急いで御堂の反対側へまわった。
「あら、あなた。どげしたんですか?息せききって。」
驚いたことに、そこにはフミエがいた。御堂の縁に腰かけて、あのキズのある猫を膝に
乗せている。
「またケンカしたみたいで、前脚にひどい怪我しとるけん、ちょっこし手当てして
やっとったんです。」
見れば、さっき血を流していた前脚はきれいに洗われ、布きれで巻いてあった。猫は
フミエの膝に抱かれて、のどをゴロゴロ鳴らしている。
「そげな猫かかえて・・・ノミを伝染されてもしらんぞ!」
茂は今自分の目で見た光景が信じられず、不機嫌にそう言い捨てて、逃げるようにその場を
去った。自転車に飛び乗って一心に走らせながら、頭は激しく混乱していた。
茂が帰ってからしばらくして、フミエも藍子を連れて帰ってきた。預けられた隣家での
遊びに疲れたのか、眠ってしまった藍子を二階に寝かせ、夕食の支度を始めた。
「おい・・・。」
(お前、さっき猫になっとらんだったか?)
そんな馬鹿げたことを口にも出せず、茂は立ちあがって後ろからフミエを抱きすくめた。
「きゃっ。もぉ・・・やめてごしない・・・包丁持っとる時に。」
フミエは包丁をまな板の上に置くと、手をふきふき、あきれたような笑顔で振り返った。
「んっ!・・・んぅ・・・。」
息がつまるほど強く抱きしめられ、乱暴に唇を奪われて、フミエはうめいた。体重をかけて
引きおろし、そのまま押し倒そうとする茂に、フミエもさすがに抵抗した。
「やめて・・・お父ちゃん・・・やめてったら!・・・どげしたの?」
「身体を・・・見せてみれ!」
フミエを流し台に押しつけ、ブラウスのボタンを引きちぎろうとする。
94 :
ねこ福7:2011/08/12(金) 15:39:39.51 ID:slHD0Gx7
「アーン・・・アアーン・・・。」
二階で、藍子の泣く声がする。目を覚まして母親を呼んでいるのだ。だが、茂の耳には
入らないようで、ブラウスのすそを引き出して中に手を差し入れてくる。今まで、茂の
どんな求めも素直に受け入れてきたフミエも、こんなことには耐えられなかった。
「ガリッッ!」
眉間を鋭い爪に思い切りひっかかれ、茂は思わず手を引っ込めた。一瞬の隙を突いて、
フミエは茂の下から這い出して立ち上がった。
「なして・・・こげなことするの?」
「お前が猫か人間か、たしかめるんだ!」
フミエは凍りついたように台所の隅に立ちすくみ、やがて悲しそうに言った。
「あなたと添い遂げようと思っとったのに・・・。こうなってはもう、ここにはおれません。」
「・・・な、なんだと・・・こら待て!」
追いすがる茂の腕をするりと交わした時、フミエはもうしなやかな銀灰色の猫になっていた。
飛ぶように二階への階段をあがると、追いかけてきた茂をしりめに、小さな銀灰色の子猫を
口にくわえて、一瞬の躊躇ののち、窓から屋根へと飛び降り、視界から消えた。
「待て・・・待ってくれ・・・。ああ、藍子まで・・・。」
フミエの消えた風景がぼんやりとかすんだ。気がつくと、フミエに引っかかれた眉間の
キズは意外に深く、血が流れ出して眼に流れ込んでいた。何か血を止めるものはないかと
戸棚を開けると、あのねこ福堂の包み紙をかけた本が隠してあった。
「・・・なんだ、俺のやった本じゃないか。」
それは、フミエが初めてアシスタントをした『墓場鬼太郎』で、茂が『謹呈、村井布美枝殿』
と書いてフミエにプレゼントしたものだった。
なぜこれを豊川に見せたのか?なぜあいつのくれたカステラの包み紙を?・・・謎は深まる
ばかりだ。流れ落ちる血を手ぬぐいで押さえ、茂は玄関を飛び出した。
95 :
ねこ福8:2011/08/12(金) 15:40:52.25 ID:slHD0Gx7
キズに手ぬぐいを巻きつけただけで自転車に飛び乗り、商店街を目指した。心当たりと
言えば、あの街はずれの御堂しかない。・・・だが、そこにはフミエ猫も向こうキズの猫も
いなかった。ここにいなければ、後はどこにいるのか見当もつかない。
「あら、先生。おデコ・・・どうかなさったの?」
こみち書房のみち子に声をかけられ、茂はうつろな表情で頭を下げた。
「たいへん!血が出てるじゃない。うちにいらして、すぐ手当てしますから。」
こみち書房のお茶の間で、手際よくキズの手当てをしてくれたみち子に、茂は尋ねた。
「ここらでフミ・・・い、いや、銀灰色の猫の親子を見ませんでしたか?」
みち子は、お茶をいれようとしていた手を止め、意味ありげな微笑をうかべて茂を見た。
「フミエさんを探してらっしゃるの?」
「え・・・いや、俺は銀灰色の猫を、と・・・。」
「ふふ・・・先生、もうわかってらっしゃるんでしょ?」
茂はうす気味わるくなって、みち子のふっくらとした顔を見返した。心なしか、眼が
緑色に光り始めている気がする。
「あ〜あ、やだねえ・・・これだから人間の男は。女房なんて放っといても、いつでも
そばにいるのが当たり前みたいに思ってんだからね。早いとこ競争相手を倒さないと、
フミエちゃん、持ってかれちゃうよ。」
しゃがれ声に驚いて振り向くと、そこにはみち子の姑のキヨ・・・だったらしい、茶色の、
年を経てしっぽの先が二股に分かれた老描がいた。
「あ・・・あんたらがフミエをあげな風にしたんだな?」
茂は冷や汗を流しながら、妖魔に会った時の九字だの護身の法だのをありったけ動員して
奇妙な呪文を唱え、手で空気を切った。
「いやあねえ、先生。そんなことしたって無駄ですよ・・・ご自分を見てごらんなさい。」
みち子が鏡台の覆いをはねのけると、そこに映っているのは、頭から大きな耳が生え、
腕には黒い毛がふさふさと生え始めている自分の姿だった。
「な・・・何ニャ、これは・・・?」
驚愕してみち子を見ると、そこにはもう、まっ白で丸々と太った緑色の眼の猫がいた。
「先生。もう観念して、私達と一緒にたのしく暮らしましょ。」
恐怖のあまり後ろに跳びしさって、茂は店を飛び出した。二匹の猫の笑い声を後ろに
聞きながら、茂はまた街はずれの御堂を目指していた。
96 :
ねこ福9:2011/08/12(金) 15:41:54.89 ID:slHD0Gx7
「マーーーーオ」
御堂の裏手の原っぱには、あの向こうキズの猫が待っていた。頭を低くして今にも飛び
かからんばかりの戦闘体勢をとっている。少し離れた場所には、銀灰色の子猫に寄り添って
フミエ猫が心配そうにこちらを見ていた。
(フミエ・・・。俺はこいつに勝たなきゃならんのか?)
茂はもう完全に大きな黒猫になっていたが、前脚が一本しかないので人間のように立って
歩くしかできない。ケンカなら子供の頃にさんざんしたが、ガキ大将というものは作戦を
立てて全軍を指揮するものであって、一対一の決闘はあまりしたことがなかった。
(だいたい、猫のケンカって、何をどうすりゃいいんだ?)
すがるようにフミエの方を見た時、いきなり顔に猫パンチをくらった。バランスを失って
倒れたところをホールドされ、腹にしこたま猫キックを入れられる。
「ギャフベロハギャベバブジョハバ!!!!!」
くんずほぐれつ、ひとつの塊になって転げまわる。茂猫も激しく応戦したが、いかんせん
相手は猫のケンカのプロだ。引っかかれ、噛みつかれて、劣勢は明らかになってきた。
「フーーーーッ!」
いったん跳びのいたキズ猫が、いよいよ最後のとどめを刺そうと間合いをはかっている。
(俺はここで死ぬのか・・・戦争でも死なんかったのに。)
茂猫は倒れたまま、観念して最期の時を待った。
「シャアッッッ!!」
飛びかかってくるキズ猫より一瞬はやく、銀灰色のかたまりが茂の前に飛び出した。
フミエ猫の長い肢が繰り出す強烈な猫キックを浴びてキズ猫は後ろに吹っ飛び、くるりと
一回転してまた戦闘体勢をとった。フミエ猫も油断なく身体を低くして反撃にそなえた。
だが・・・。総身の毛を逆立て茂猫を守って立ちはだかるフミエ猫を見て、キズ猫はそもそも
このケンカの目的が何だったかを思い出し、急速に戦闘意欲を失った。
「ニャーーーオ・・・。」
キズ猫は、一声悲しそうに鳴くと、納得いかないというように後ろを振り返り振り返り、
しっぽを垂れて去って行った。
97 :
ねこ福10:2011/08/12(金) 15:42:41.45 ID:slHD0Gx7
「ニャアオォン・・・(あなた、大丈夫?)」
キズ猫が完全に去るのを見届けてから、フミエは草むらに隠してあった藍子猫に駆け寄り、
子猫をくわえてまた戻ってきた。茂は傷の痛みで意識が遠のいていくのを感じていた。
(俺はもう、ダメらしい・・・。猫になってもええ、3人で暮らそうと思うとったのに・・・。)
(お父ちゃん、死なないで!)
フミエ猫と藍子猫が、一緒になってニャアニャア鳴いている・・・茂はうすれゆく意識の中で
ふたりに別れを告げていた。
「ニャア・・・ニャア・・・ニャア・・・。」
まだ藍子猫が鳴いている・・・茂は顔をしかめて目を開けた。フミエが心配そうにのぞき
こんでいる。
「ん・・・あれ?なんだ、俺・・・生きとるのか?」
「いやだ・・・しっかりして、お父ちゃん。」
猫の鳴き声と思ったのは藍子の夜泣きで、フミエは藍子を抱いて布団の上であやしていた。
「藍子が泣き出したんであやしとったら・・・お父ちゃん、えらいうなされとったけど、
何か悪い夢でも見たんですか?」
「え・・・ああ・・・うん。」
フミエは、泣きやんだと思ったらすぐにスースーと寝息をたて出した藍子を布団に寝かせ、
茂のところに戻ると、手ぬぐいで顔の汗をふいてくれた。全身にぐっしょりといやな汗を
かき、肩や背中のキズに塩気がしみてヒリヒリする。
(なして、こげな所にキズが・・・?)
豊川に約束した日が明日に迫ったため、今日は一日中仕事部屋にこもって構想を練り上げ、
深夜、倒れこむように布団にもぐりこんだ・・・はずだ。
「もう・・・根つめてお仕事されすぎなんですよ・・・あんまり無理せんでね。」
フミエは、両の手のひらで茂の頬をはさむと、やさしく口づけした。やがて離れていこう
とする唇をのがさぬよう、茂はフミエの頭の後ろに手をまわして口づけを深めた。
「んん・・・はぁ・・・。」
何も言わなくとも、ふかまる口づけはふたりの時間の始まりを意味する。フミエは夢の中
と違って拒まなかった。口中を愛撫しながら下から帯を解くと、フミエも茂の帯を解いて
前をはだけ、素肌と素肌をあわせてくる。フミエが唇を離し、上から舌を伸ばすと、茂も
舌を伸ばして突き合せる。しばらく舐めあってから、いたずらな舌をとらえて強く吸うと、
フミエがぎゅっとしがみついて来た。
98 :
ねこ福11:2011/08/12(金) 15:43:31.15 ID:slHD0Gx7
「はぁ・・・ぁ・・・やだ・・・これ・・・私が・・・?」
しがみついた肩に、小さな歯型をみつけ、フミエはすまなそうな顔をした。見れば、
それ以外にも、肩や背中にひっかき傷やみみずばれが残っている。
(そうだ・・・この傷は、フミエがつけたんだった・・・よな?)
時として、フミエは惑乱の中でこういった傷を茂の身体に残すことがある。フミエは激しい
悦楽の痕跡をいとおしむように、胸の傷をひとつひとつ丁寧に舐めはじめた。
「こ、こら・・・やめろ。くすぐったい・・・。」
「だって、私がつけたんですけん・・・。」
温かい舌がふれるたび、ひりひりする痛みが癒され、かわりにしびれるような官能が
わき立ってくる。フミエの爪や歯でつけたにしては傷は深く、数が多すぎるような気も
したが、もはやそんなことはどうでもよくなるほど心地よく、フミエのやわらかい身体の
下で、自らの欲望が痛いほど猛り立ってくるのを感じた。
フミエの舌はそのまま傷を追ってさがっていった。そして、下着を突き上げている雄根に
たどりつくと、両手で包み込んで頬ずりした。窮屈そうなそれを、下着を下げて自由に
してやると、ふるりと震えて天を指す。フミエはふかぶかと口にふくむと、唇でしごき
あげながら外へ出し、いとおしそうに舌全体で愛撫し始めた・・・。
茂は快感に耐えながら上体を起こし、フミエの頭をそっと押して中断させた。
「お前に、挿入れたいけん・・・。」
フミエは身体にまつわるものを全て取り去って手をさしのべた。茂がその手を引き寄せ、
つよく抱き込みながら上になった。
「ええのか?・・・あいつに勝たんでも。」
「?・・・何のこと・・・ですか?」
「い、いや・・・なんでもない。」
言葉をにごすと、苦しまぎれにいきなり深く口づけながら両脚を開かせ、熱く猛る雄芯を
フミエの中心に沈めた。
「ぁあ・・・ぁ―――――!」
フミエがうめき声をもらし、背中にまわした腕に力をこめた。耳朶を噛みながら熱い息を
吹き込むと、ぞくぞくと身体を震わせながらきゅうっと締めつけてくる。固い芯で
かきまわしては突きをくれることを繰り返すと、茂の胸の傷に唇を押し当てて叫びを
殺しながら、フミエは身体をふるわせて達した。
茂は上体を起こして、びくびくと絶頂の余韻に震えるいとしい身体を見下ろした。
つらぬいたまま、ぐったりしているフミエの腕を首につかまらせ、よっこらしょと
座りなおしてあぐらをかいた上にフミエを抱きかかえた。
99 :
ねこ福12:2011/08/12(金) 15:45:06.90 ID:slHD0Gx7
「だ・・・だめ・・・もう少し、やすませて・・・。」
「後でいくらでも休んだらええ。」
自らの身体の重みで、達したばかりの内部に剛直がくいこみ、フミエが身悶える。
このかたちで揺れ合うのを、口には出さないけれどフミエが好んでいるらしいことを、
茂はよく知っていた。唇を近づけると、あえぎながらも顔を傾けてフミエから口づけを
深めてくる。上も下も存分に溶かしあい、唇を離すと、フミエは顔を見られるのを
羞ずかしがってギュッと抱きついてきた。
「ぁあ・・・しげぇさん・・・すご、く・・・ぃい・・・。」
フミエが耳に口を寄せて囁く。こんな声を、他の奴に聞かれてたまるか・・・。茂は、
この声が他の男の名を呼ぶことを想像するだけで殺意をおぼえた。
フミエがあえいで突き出したあごを噛むように口づけながら、下から揺すぶってやる。
フミエはのけぞって白い喉をさらし、びくびくと身体をふるわせた。
「ぁあっ・・・ぁあ・・・ん・・・しげ・・・さ・・・ぃく・・・。」
後ろに手をついてさらに激しく突き上げると、支えを失ったフミエは後ろに倒れそうに
なり、必死で茂を求めた。その手をつかんで引き寄せ、力のかぎり抱きしめながら、
強い収縮の中へ精を振りまいた・・・。
溶けきったフミエの、やわやわとした重みを受け止めて、しばらく荒い息をおさめた。
そっと横へ抱き倒し、身体を離すと、フミエが小さくあえいで胸に顔を寄せてくる。
こんなに可愛い妻を、なぜ疑ったりしたのだろう・・・。
夢の中で、フミエが自分の手をすり抜けていった時の喪失感がまざまざとよみがえる。
身体ごと愛し愛され、けだるい身体を寄せ合ってまどろみにおちていく幸せが、今自分の
手の中にあることに、茂は心から安堵した。
それでもひとつ、聞いておきたいことがあった。
「なあ・・・なして、豊川に見せたんだ?」
「見せたって・・・何を?」
「・・・俺がやった本だ。墓場鬼太郎の・・・。」
「ああ・・・。豊川さんがあなたの昔の本を見とる時、みつけてしもうて・・・。豊川さんの
くださったカステラの包み紙をかけてあったけん、不思議に思うたらしくて。」
「なして、あいつのくれたカステラの紙を使ったんだ?」
「私が初めてアシスタントをして、あなたにプレゼントしてもらった大切な本だけん、
うちで一番いい紙を使ったんです。・・・前の紙はチラシでしたけん、傷んでしもうて。」
「うちで一番いい紙・・・なんだ、そげなことか。」
茂はひょうし抜けしたが、初めてアシスタントをした思い出の本を大切に、おりにふれて
読み返していたらしいフミエがいとおしく、豊川との事を疑った自分が恥ずかしくなった。
100 :
ねこ福13:2011/08/12(金) 15:45:54.57 ID:slHD0Gx7
さっきの夢はあまりにも生々しくて、記憶から消えてくれそうにない。あれは本当に
夢だったのだろうか、それとも・・・。だが、フミエがこの腕のなかにいるかぎり、どちら
でもいいような気がした。猫になって生きるのも、自由でええかもしれん・・・そんなことを
考えながら、茂は急速に眠りに落ちていった。
「お父ちゃん・・・ごめんね。」
茂の寝顔をみつめていたフミエは、起き上がると幸福そうに眼をほそめた。そして、背を
まるめて茂の上にかがみこむと、眉間のキズをぺろり、と舐めた。
あくる日。約束どおり三日目にまた豊川がやって来た。
「ああ・・・出来とりますよ。化け猫が猛威をふるい、調布を猫の町にしてしまう話です。」
「・・・ほう、それは面白そうだ。拝見しましょう。」
茂は下書きに見入る豊川の表情を注意深くみつめた。だが豊川は特に顔色を変えるような
こともなく、
「・・・これはいい。身近な恐怖を描いているのに抜群に独創的だ。だんだん調子がでてき
ましたね、先生。原稿の完成をたのしみにお待ちしてますよ。」
相変わらず不敵な笑みを浮かべて満足そうに下書きを茂に返した。
「あ・・・奥さん、どうぞおかまいなく。」
フミエが運んできた茶を受け取る時、豊川の背広の右袖から白い包帯がのぞいたのを、
茂は見逃さなかった。
「腕を・・・どうかされましたかな?」
「ああ・・・ドアにはさまれましてね。不覚でしたが、なに、すぐ治りますよ。」
あわてた風もなかったが、その瞳の虹彩がふと細くなった気がして、茂は寒気を覚えた。
十月。空は抜けるように青く、空気はさわやかだった。茂はひと仕事終えて畳の上に
寝そべり、ぼんやりと白い雲をみつめていた。あれから、猫の町の話は少年ランドの
十一月号に無事掲載され、評判も悪くないようだ。
あのことは、夢だったのか現実だったのか・・・。時間が経つにつれ、記憶があいまいに
なって来る。フミエはあれ以来特に変わったこともなく、相変わらずけなげな女房だ。
変わったことと言えば、豊川が以前ほどこの家に来なくなったことくらいか・・・。
鬼太郎は化ける、と信じて連載に踏み切ったからには、茂に全てをまかせるということ
なのだろうか。
「ニャーーオ。ニャーーーーーオ。」
外では猫がしきりに鳴きかわしている。そう言えば、最近この辺にはやけに猫が増えた
ようだ。フミエに、あまり猫ににぼしをやらないように言わなくては。藍子が猫とばかり
遊んで困る。人間になる前に猫になってしまう・・・。
暑くもなく寒くもなく、絶好の昼寝びより・・・茂はあくびをすると、ひとつ大きなのびを
して、幸福そうな顔で眠りにおちていった。
101 :
88:2011/08/12(金) 15:48:49.65 ID:slHD0Gx7
今まで猫耳とか、正直萌えがよくわからなかったのですが、皆さんの誘い受けに、
つい出来心で・・・。
使い方とか間違ってるかもしれませんが、ご容赦ください。
リクエストSSは、早いのが身上と思っていましたが、えらく長くなった上になかなか
時間がとれなくて、こげに遅くなってしまいました。
あと、猫のケンカはあの傑作コピペを拝借してしまいました・・・。猫の生態にもそんなに
くわしくないので、間違ってたらごめんなさい。
>>88 GJ!エロがパねえよ!布美ちゃんイキまくり、ゲゲさんどんだけw
布美ちゃんが銀色で、ゲゲが黒ネコってのがなんかすげー納得しました。
あと、キヨさんと美智子さんがマジ怖かった(汗)猫乱闘のところは噴いたw
>>88 GJ!
フミ猫さんが藍子猫と逃げだした時はすんげー切なかった。・゚・(ノД`)・゚・。
茂猫さん負けちゃったけど、フミ猫さんが庇ってくれてよかった…。
しかし猫親子、かわいすぎる。
>>88 GJ!
エロがw幻想も混じってるけどそれでもすごいw
猫耳だけじゃなくて完全猫化なあたりすごくゲゲゲっぽくて良かった
喜子猫は黒猫なんだろうなーw
>>88 うわー、エロい
そしておもしろい
GJ!!
茂猫がふみちゃんをぺろぺろするのを見て嫉妬するゲゲさんとか
ゲゲさんにあんか代わりにされてどきどきするふみ猫とか
夢が広がるな
茂猫はまたたびにものすごく酔いやすかったりするんだろうかw
>>88 GJ
ゲゲ嫉妬→Sスイッチ入ったゲゲのエチ
この流れ、大好きですわ
ゲゲ目線なのも超嬉しいっす!!
(レス遅れてすんません)
今日海水浴に行ってきたんだが、横でキャッキャウフフな男女を見ながら、
祐ちゃんと綾子さんて、こういうデートとかしたのかなとか、
綾子さんの水着姿に振り向く男ども、それに嫉妬する祐ちゃんとか、
海水浴まできてエロ妄想繰り広げる自分…orz
>>108 いいなー海水浴
嫉妬した祐ちゃんが長身の2人ギリギリまで足が届く所まで綾ちゃんを連れ出して
で、人目につかないように海中で色んな所触りまくった後、身体の疼きが治まらないので帰りにどっかで続きを・・・という展開まで妄想した
>>108 この板の住人なら仕方ないさ!
綾子さん海を楽しみにしすぎて水着着用で海まで行ってパンツを忘れて
黙ってノーパンで帰ろうとするも帰りの電車が満員で守ろうとして密着したゆうちゃんに気づかれて…
すぐに降りてお仕置きも良いし電車の中でお仕置きも捨て難いと思う
>>108 自分も最近萌えシチュが多く拾えそうな場所に出かける度に萌え・エロ妄想を繰り広げてるよw
>>110 痴漢プレイか
ゆうちゃんの愛車で行ったとしたらどうなるだろうか?
>>111 車だと
>>109の撫で回した後で手頃な場所に着くまで綾子さんが疼いてるのに気づいてるけど放置プレイとか
「俺運転してるから自分でしてね。でもイっちゃだめだよ?」とかにこやかに言う
ドS祐ちゃんばかりが頭をよぎるんだがww
>>112 あと、信号待ちの度に涼しい顔してアチコチ攻めておきながら、一番感じる部分は攻めずに焦らすとか
114 :
88:2011/08/20(土) 06:49:54.65 ID:7wslavVr
えーと、いちせんネタで盛り上がってるところ、豚切りすみません。
『ねこ福』で、重大な間違いを犯してしまいました。こみち書房のメンバーと豊川さんは、
登場する時期が重ならないんですよね。こみち書房の退場と豊川さんの登場は、貸本漫画と
漫画雑誌の時代の交代を象徴する出来事なのに、何をぼんやりしていたやら・・・。
お詫びのしるしといってはなんですが、皆さんのアイディアをちりばめつつ、急遽続編を
書きました。(喜子猫が黒猫なのは、自分もそう思ってましたw)
こみちの化け猫義母娘は、けっこう気に入ってるキャラだったりするので、茂が雄玄社漫画賞を
もらった後だけど、登場させてしまいました。パラレルワールドと思ってお許し下さい。
(都合が悪いとすぐPWに逃げるww)
「フミエちゃん、お茶飲んでかない?蒸しパンふかしたのよ。」
「え・・・でも、いつもいつもご馳走になってばっかりで。」
とある昼下がり。すずらん商店街を、自転車を押して歩いていたフミエは、
こみち書房の前でみち子に呼び止められた。店番をしていたキヨも出てきてフミエの
腕をとり、引っ張り込まんばかりにして店の中へ連れ込んだ。
「なんだいあんた、冷え切っちまってさ。吹きっさらしの田んぼ道、はるばる自転車に
乗って来たんだろ?遠慮してないで早くはいりな。」
「すんません。じゃ、ちょっこしだけ・・・。」
こみち書房の茶の間は暖かく、みち子の運んでくれた蒸しパンからはほかほか湯気が
あがっていた。フミエは温かいお茶を飲んでほっとひと息ついた。
「春だ言うても、まだ風は冷たいですねえ。」
「冷えは女の大敵だよ。あんた二人目ほしいんだろ?だったら冷やしちゃダメだ。」
「そうだわ、おばあちゃん。フミエちゃんにあれ飲んでもらったら・・・。」
みち子が台所の戸棚から出してきた空きビンには、何やら黄金色のとろりとした液体が
入っていた。
「これね・・・果実酒なの。寝しなに飲めば、身体があったまってよく眠れるわよ。
何の果実かって?そうねえ、いろいろ入ってるのよ・・・クコとか・・・。」
とにかく身体にいいからと二人にすすめられ、フミエはそれをもらって帰った。
その晩。藍子を風呂に入れて寝かしつけた後、フミエはそのビンを戸棚から取り出した。
「きれいな色・・・それにええ匂い。」
とろりとしたその液体を、おちょこに一杯だけ注ぐと、少し口に含んでみる。
「おいしい・・・でも、一杯だけ。」
茂はしめ切りが済んだばかりというのに、もう次回の構想を練るため仕事部屋にこもって
いる。雄玄社漫画賞を受賞して以来、茂には仕事の注文が殺到するようになっていたが、
それはゴールではなくてスタートだった。茂はここからが勝負だ、と気を引き締めて
いつも題材集めに余念がなかった。夫がそれほど仕事に没頭しているというのに、女房の
自分が酔っぱらっているわけにはいかない。
(ほんと、身体がぽかぽかしてきたわ。・・・でも、なんだかふわふわした感じも・・・。)
たった一杯で、なんだかおかしくなってきた。まったくの下戸の茂と違って、酒屋の娘の
フミエは、飲み慣れていないだけで、それほど弱いというわけではないはずだった。
このまま寝てしまおう、とフミエはおぼつかない足取りで二階へあがって行った。
窓から見える夜空には、銀色の爪のような三日月が輝いていた。フミエはなんとなく
くるおしい気持ちになって、いつまでも月のおもてに見入っていた。
「・・・おい、冷え込んできたけん、毛布だしてくれ。」
茂が寝室のフスマを開けた。
「なんだ、この寒いのに窓を開けっぱなしで・・・風邪ひくぞ。」
「すんません・・・でも、なんだか身体が火照って・・・。」
そう言って振り返ったフミエの瞳は、廊下からの灯りを映して、琥珀色に輝いて見えた。
茂がその瞳に幻惑されて立ちすくんだ次の瞬間、フミエはもう茂の腕のなかにいた。
(な、なんだ・・・えらい早業だな。)
「ねえ・・・お父ちゃん・・・。」
両のかいなを茂の首に巻きつけ、フミエから唇を重ね合わせてきた。腕に力をこめ、
口づけを深めると、甘えるように鼻を鳴らし、身体をこすりつけてくる。
「ねえ・・・お願い・・・。」
首に巻きつけた腕に体重をかけ、しなだれかかられる。誘っているのは明らかだ。
「めずらしいな・・・お前がこげな・・・。」
悪くない気持ちで、茂は布団の上にフミエを抱き下ろし、自分も腰をおろして抱き合った。
「んむ・・・ん・・・。」
フミエの口の中は燃えるように熱く、甘かった。激しくむさぼられ、茂の官能にも火が
ついた。もどかしげに着衣を脱ぎあうと、もろともに抱き倒れて素肌を重ね合わせる。
「お前・・・熱いぞ。熱があるのと違うか?」
フミエは何も答えず、長い腕を茂に巻きつけながらまた唇を奪った。乳首をいじりながら
舌をつよく吸うと、こらえきれないあえぎをもらしてフミエが訴えた。
「熱い・・・あついの・・・なかが・・・きて・・・来て、もう・・・。」
「も・・・もう、か?」
何度も口づけしあい、愛撫を施しあいながら高まっていく、というのがいつもの流れ
なのだが、今夜のフミエはなぜか性急だった。
「来て・・・って、どこに行ったらええんだ?」
「いじわる・・・。」
フミエが大きく脚を開いて、茂の腰をはさみこんだ。自らの秘裂を茂の雄芯に近づけて
触れ合わせてくる。屹立に濡れた感触があたり、しびれるような情欲がつきあげた。
だが、急に後ろから思いきり奪いたい衝動にかられ、腰にからみつく脚をはずした。
「ぃやっ・・・はや、く・・・。」
茂を欲してふるえている身体を裏返し、腰を持ち上げると、後ろからひと息につらぬく。
「ぁ・・・ぁあ・・・ん・・・。」
待ちのぞんでいたものを与えられた内部が、きゅうっとしめつけてくる。
「ほんとに、熱いな・・・酒でも飲んだみたいだ・・・。」
心地よさに、茂は目を閉じて身体の一点から全身にひろがる快感に身を浸した。
「パサッ・・・。」
ふいに、顔を刷毛で撫でられたような感触を覚えて目を開けると・・・。
「な、なんだ・・・これは。」
茂の顔を撫でたものは、銀色に光る長いしっぽだった。
(・・・また、猫になっとるのか?)
だが、フミエは完全に猫になってしまったわけではなかった。襲い来る快感に、我知らず
振ってしまうしっぽと、長い髪の間にぴこんと立っている大きな耳・・・後ろから確認できる
のはそれくらいで、白い背中や長い手足、そして何より茂につらぬかれている臀部は
人間のままだった。
「ぃゃ・・・ぃやぁっ・・・じらさ、ないでぇっ・・・。」
しっぽにはたかれて呆然としているとは知らないフミエは、動こうとしない茂に焦れて、
自らのいい所をこすりつけるように身をくねらせた。
「ぁあっ・・・ぁっ・・・ぁああ―――――!」
せつなげな悲鳴に、茂がふと我に返ると、フミエは前に突っ伏し、荒い息を吐きながら
身体を細かくふるわせていた。
(なんだ・・・こいつ。ひとりでイってしまいよって。)
茂は少し腹が立って、ぐったりしているフミエの手を引っ張って起こした。フミエは
驚くべき柔軟さで後ろを振り返ると、いとおしそうに茂に口づけした。
「んむ・・・む・・・。」
普通なら離れてしまいそうな後ろからの口づけを離さぬまま、茂はフミエの腰をつかんで
座りなおし、膝の上に乗せた。
「ぁあ・・・ん。」
まだそそり立ったままの屹立に下からつらぬかれる形になり、フミエはあえいで茂の首に
後ろ手で腕を巻きつけた。茂はその腕を意地悪くはずして後ろへ寝そべると、命じた。
「まわれ右だ。挿入れたままだぞ。」
フミエはしかたなく、身体を横に向けてみたが、動かすたび打ち込まれたくさびが内部を
こすり、快感に悲鳴をあげた。
「何をしとる。早ことこっちを向け。」
そんなことを言われても、くるりと回転するというわけにもいかず、フミエはしかたなく
抜け落ちるぎりぎりまで抜いて、また自らをつらぬきながら少しずつ前を向いた。
自らの動きに責められ、啼きながらその行為を繰り返すフミエは、たまらなく淫らで
いとおしく、押し倒してめちゃめちゃに突きまわしたくなる。
ようやく茂と向き合うところまで回転し、長い脚をまわしてまたがると、フミエは
ほうっと安堵のため息をついた。
「こら、休んどるヒマはないぞ。動け。」
フミエはしかたなく茂の両脇に手をついて腰を動かし始めた。
「ぁ・・・ぁっ・・・ぁん・・・しげぇ・・・さ・・・ぁ・・・。」
のけぞりながらあえぐフミエの口からのぞく犬歯が、心なしかとがって見える。茂の肩に
すがる指の爪も、ふだんより鋭くなっているようだ。
(また、傷だらけにされたらかなわん・・・。)
フミエの肩をつかんで前に倒すと、くるりと身体を反転させて正常位になり、上体を
起こして激しく腰を使った。噛みつかれないよう上体を離しているのに、フミエは夢中で
身体を起こし、茂の肩にしがみついてくる。
「ゃあっ・・・あっ・・・ちゃ・・・う・・・ぁあっ―――――!」
絶頂の瞬間、噛みつかれるだけのは免れたが、肩に立てた爪は鋭く皮膚に食い込んでいた。
その痛みに耐えながら、茂も奥深くに解き放った。
「ねぇ・・・ねぇ・・・お父ちゃん・・・。」
「んー、なんだ?・・・もうこれ以上は身体がもたんぞ・・・。」
茂が眠い目を開けると、そこにはフミエではなく、藍子の顔があった。
「わっ?!・・・藍子か。びっくりさせるな。」
「ねぇ・・・お父ちゃん。お腹すいたー。」
「・・・お母ちゃんはどげした?・・・今、何時だ?」
日は高く上っているが、藍子はパジャマを着たままだ。時計を見ると11時である。
布団も敷きっぱなしで、乱れたまま昨夜の淫らな気配を残している。几帳面なフミエに
してはおかしなことだった。階下にも見当たらない。
「おかしいな・・・お母ちゃんはどげしたんだ?」
玄関には全員分の履物が残されている。外出したわけでもないようだ。
「ニャー・・・。」
猫の声に振り返ると、茂の仕事部屋のフスマの前に、しなやかな銀灰色の猫がいた。
「フミエ・・・お前・・・。」
フミエ猫は茂の足に擦り寄ると、ニャーニャー鳴いた。だが、猫になっていない今日の
茂には、何を言っているのかさっぱりわからない。
「なして完全に猫になってしもうたんだ?・・・この間みたいに、自分の意思で猫になったり
人間に戻ったりできんのか?」
フミエ猫は鳴きやむと、悲しそうな目で首を横にふった。そして、目顔で茂を台所まで
誘導すると、戸棚に鼻をこすりつけた。茂が開けてやると、そこには見たことのない
黄金色の液体が入ったガラス瓶があった。
「なんだ・・・これは?」
茂は注意深く、とろりとしたその液体を振ってみた。ふたを開けて匂いをかぐと、どうやら
酒のようである。立ち上る酒気に、茂はたちまち顔をしかめた。
「みだりに正体のしれん物を飲むから、そげなことになるんだ。・・・もしかしてこれ、
こみちの連中にもらったんじゃなかろうな?」
フミエ猫はハッとして、首をタテに激しく振った。
「またあの婆ぁ猫の連中のしわざか・・・!」
茂はぷんぷん怒りながら、それでも藍子に残り飯でなんとか昼ごはんを食べさせると、
隣の家に連れて行って「女房が風邪なもんで。」と言ってあずかってもらって来た。
「おい、行くぞ。あの婆ぁ猫をしめあげて、お前を元に戻させてやる。」
フミエ猫をカゴに入れ、自転車ですずらん商店街を目指す。猫になってもフミエはかなり
大きく、ハンドルを取られてふらふらする。
(だが、フミエをひとりで歩かせるわけにはいかん!)
いつ何時、他のオス猫に襲われるかわからない。フミエは猫になると妙にもてるらしい。
やっとの思いで商店街のはずれの御堂の近くまで来ると、フミエをカゴから降ろして
前を歩かせ、自転車を押して歩いた。大の男が、カゴの中に大きすぎる猫を入れて歩く
のは、怪しすぎる光景だと判断したのだ。
「あっ。おい、どこへ行く?」
フミエ猫が走り寄った先には、細い小路の突き当りで、ひもの先に結びつけた棒切れを
振ったり、地面の上をはねさせたりしている男たちがいた。猫の本能が、たまらなく
魅惑的なその動きにさからえず、飛び出してしまったものらしい。
「よしよし、来たな。・・・いい色の毛皮だ。」
男たちは巧みにフミエ猫を箱に誘いこみ、フタをした。フミエ猫が叫ぶ声が聞こえる。
「人さらい!!人さらいだーっ!たすけてくれ!!」
茂は近隣に響き渡るような大声をあげた。通りを歩いている人々が何事かと集まってきた。
「ちっ。おい、引き上げるぞ。」
男たちが一瞬気を取られたすきに、茂は箱に体当たりしてフタを開け、フミエ猫を逃がした。
「こいつ、何しやがる。」
「うるさい、この人でなし!この町の猫に手を出すな!」
猫とりは三味線の材料として売るために猫をつかまえて皮を剥ぐ。別に違法なことでは
ないが、猫とりとて自分たちのやっていることが誉められたことではないことはわかって
いるらしく、野次馬が集まってくるとしかたなく引き上げた。
「・・・あれ?・・・フミエはどこ行った?」
遠くでフミエ猫の悲鳴を聞いた気がして、茂はあの御堂の裏の原っぱへ駆けつけた。
フミエ猫の前には、この間茂が変身したのとそっくりの黒猫がいた。茂猫と違っている
のは、前脚が両方あることだけだった。
「だら。・・・俺と間違えて、着いていってしもうたのか。」
黒猫はハート型の目をしてフミエ猫にせまろうとしていた。フミエは精一杯毛を逆立てて
相手を威嚇していた。
「こらっ。」
茂が黒猫に怒鳴ると、この間と違ってライバルはしっぽを巻いて逃げていった。
「ニャー・・・。」
フミエ猫はすまなさそうにしっぽを垂れ、茂の足に擦り寄ってきた。抱き上げてやると
茂の顔をぺろぺろ舐め、ぎゅっとしがみついてきた。
「よしよし、こわかったな・・・。」
(早こと元に戻してやらんと、心まで猫になってしまいそうだ・・・。)
どうしようもなく猫の本能にあやつられるフミエを見ていると、不安になってくる。
どうしても元に戻らなかったら、自分も猫になってやってもいいが・・・。
(いや・・・俺の漫画を、30万読者が待っとる。猫になぞなっとる場合ではない!)
弱気になりかける心を奮い立たせ、こみち書房を目指した。
「あら先生。・・・フミエちゃんも。いいわねえ、先生に抱っこしてもらって。」
「あんたらどういうつもりだ?またフミエをたぶらかして・・・。」
いつもどおりこみち書房の店先にいるみち子とキヨに、茂が食って掛かった。
「ちょいと、聞き捨てならないね。いくら先生でも言っていい事と悪い事があるよ。」
「まあまあおばあちゃん。・・・先生、なんのことですか?」
「・・・あの酒はなんなんだ?フミエは元に戻れんようになってしもうたんだぞ。」
「あらやだ。私そんなつもりじゃ・・・。身体があったまってよく眠れるようにって、
アレは私たちにとっちゃ万能薬なんですよ。・・・またたび。」
「またたび?・・・ははあ、だけん、あげに・・・あ、いや、なんでもない。とにかく!
フミエはあんたらと違って変幻自在の化け物じゃないんだ。どげしてくれる?!」
「ひひひ・・・ゆうべはお楽しみだったようだねえ。猫女房も悪いもんじゃござんせん
でしょうが。まあいい。これを煎じて飲ませれば悪酔いも醒めるだろうよ。」
キヨは不気味に笑いながら、紙に包んだものを投げてよこした。
「飲ませるのは家に帰ってからだよ。街中で変身した時の姿に戻ったら困るだろ?」
変身したのは、愛し合った後眠りに落ちたとき・・・茂は顔が熱くなるのを見られまいと
顔をそむけた。
「フミエちゃん、ごめんね・・・。あなたがそんなにまたたびに弱いなんて知らなかったの。
・・・赤ちゃん、できるといいわね。」
茂は紙包みをひっつかむと、後をも見ずに店を出た。帰り道、フミエ猫はカゴには入らず、
茂に抱きついたまま自転車に揺られていった。大きな猫に貼り付かれてヨロヨロ自転車を
走らせる茂の姿に、道行く人々が笑ったり指をさしたりしたが、茂は気にしなかった。
家に着くと、さっそくやかんにお湯をわかして、キヨからもらった漢方薬のような
ものを煎じた。匂いも無く、変哲も無い色のものだが、茂は用心して少しなめてみた。
「・・・にがっ!・・・こりゃセンブリだな。あの婆さんは信用ならんが、まあ大丈夫だろう。」
フミエ猫の前に茶碗をとん、と置く。フミエ猫は困ったような顔で茂を見上げた。
「なんだ・・・早こと飲め。・・・おお、すまんすまん、猫舌だったな。」
茂はセンブリ茶を皿に移すと、フーフー吹いて冷ましてやった。ペチャ、ペチャ・・・
舌を出して飲み始めたフミエ猫は、あまりの苦さに咳き込み、脱兎のごとく隣の部屋へ
逃げて物陰に隠れた。
「こら、ちゃんと飲め!飲まんと人間には戻れんぞ。」
茂は皿を持って追いかけ、フミエ猫をつかまえて無理やり飲まそうとしてひっかかれた。
「いてっ!!・・・お前のために苦労しとるのに、ひっかくとは何事だ!」
茂は皿をひっつかむとセンブリ茶を口にふくみ、フミエ猫の口を開けさせて口うつしで
飲ませ、口を閉じさせて押さえつけた。ごくりと飲み込む音が聞こえ、苦さにもがく
フミエ猫を、茂は力いっぱい抱きしめていてやった。
・・・ふと気づくと、腕の中の感触が、つややかな毛皮からやわらかい人間の肌に変わり、
身体にかかる重みも、馴染みのあるフミエのものに変わっていた。
「・・・戻ったな。まったく、世話のやける奴だ。」
猫になっていたのはせいぜい半日くらいなのに、もう何年も見なかった気がするその顔を、
しげしげと見つめて口づけした。
「きゃっ・・・。」
唇が離れ、うっとりとみつめ返したフミエは、茂の視線の先を追って、自分が素裸である
ことに気づいて、あわてて両腕で胸を隠した。
「あ・・・あの、服を着てきますけん・・・。」
二階に行きたそうにするが、茂が離してくれないので、フミエは困りながら抱かれていた。
「・・・心配させた罰だ。夜までその格好でおれ。」
「ええっ!」
「俺は昼飯も食ってないんだ。めしを作ってもらおう。・・・やけどするといかんから、
これだけはつけてもええぞ。」
立ち上がり、流し台の釘にひっかけてあったエプロンをとると、フミエに投げてよこした。
「お父ちゃん、悪い冗談はやめて・・・。藍子を迎えに行かんといけんし。」
「藍子は夕方まで預かってもらっとる。それから、これは冗談とちがうぞ。これに懲りて
あげな怪しい連中とつきあうのはやめることだな。」
フミエは信じられない思いで、おずおずとエプロンを身につけた。腰だけを覆うエプロン
では、胸が丸見えになってしまう。フミエは髪をおろして胸をできるだけ隠し、座ったまま
身をちぢこませながら鍋や米などを取り出した。だが、水道を使うには立ち上がらなければ
ならない。
「どげした。早ことめしを炊け!」
茂がまじめくさった顔で命令する。しかたなく背を向けて米をといだが、茂から見えるのが
エプロンの腰ひも以外は全裸だと思うと、羞ずかしくて泣きたいくらいだった。
間違っても秘所が見えたりしないように、フミエは臀にきゅっと力を入れて引き締め、
脚をぴったりと閉じていた。その状態で移動するため、たいそう動きがぎこちない。
台所に立つ妻という光景が日常的であるだけに、全裸であるという異常性が倒錯した劣情を
かきたてる。茂は、普通以上に引き締められた臀の筋肉に歯をたてたい衝動を抑えられ
なくなり、後ろから腰を抱いて双丘に顔をうずめた。
「ひゃっ・・・!」
フミエは飛び上がりそうになり、といでいた米をこぼしてしまった。臀の肉を噛まれ、
驚いてゆるんでしまった脚の間に肩が割り込んできて、下から秘所へと舌が伸びてくる。
「ぃや・・・ゃ・・・ひぁ・・・ゃぁ・・・ん・・・。」
フミエは流し台のふちをつかみ、茂の顔の上に座ってしまわないように身体を支えた。
侵入してきた舌に、執拗に花芯を弄ばれ、フミエはぶるぶると身体を震わせて蜜をこぼした。
やがて茂が顔をあげて両脚の間に割り込ませていた肩を抜くと、フミエはがくりと膝を
落としそうになる。茂は立ち上がってその腰を支えてやると、すっかりほころんだ秘裂に
雄根を突き立てた。
「ゃぁああっっ―――――!」
流し台のふちをつかむ指が白くなるほど力をこめ、フミエは全身をつらぬく快感に耐えた。
「だめ・・・お願・・・い・・・っちゃ・・・ぁ・・・。」
持ち上げられてゆさゆさと揺さぶられ、敏感な部分エプロンごしにが流し台のふちにあたる。
フミエは悲鳴をあげながら真っ白な世界へと堕ちていった。 」
・・・ふと気づくと、茶の間の畳の上に寝かされている。上からのぞきこんでいる茂の顔には
フミエ猫にひっかかれた傷がいくつも残っていた。
「・・・ごめんなさ・・・い・・・。」
フミエは手を伸ばして茂の頬を包んだ。
「この傷の分も償ってもらわんとな。・・・今すぐお仕置きされるのと、夜までその格好で
おるのと、どっちがええ?」
(・・・夜まで裸でいたって、おんなじことするくせに・・・。)
フミエはおかしくなって、茂の顔を引き寄せて囁いた。
「今すぐ、して・・・。」
囁いた瞬間、再びつらぬかれ、フミエはうめいた。たくましいものを容赦なく抜き挿し
されるたび、とめどなくあふれる蜜が茂の下腹を濡らす。淫らな滑りを意識しながら、
フミエも腰を上げて夢中で茂の動きに合わせた。
「ぃや・・・ぃや・・・ぁ・・・しげ・・・さ・・・い、やぁっ・・・。」
いや、いやと繰り返すわりに、フミエの腰は貪欲に自分から快感を追っていた。そんな様子
さえいとおしく、茂はさらに激しく責め立てた。
「・・・ゃ・・・ぁっ・・・くぅ・・・んんっ―――――!」
自分の指を噛んで、くぐもった悲鳴をあげながら、フミエがきゅうきゅうと締め付けてきた。
奥へ奥へと茂をからめとる動きの中へ放縦に撒き散らし、フミエの上にがっくりとおおい
かぶさった・・・。
「赤ちゃんがどうのこうの・・・と言うとったな。こみち書房が。」
「ああ・・・みち子さんが。あの、私・・・二人目が欲しいって言ったら、身体をあっためた
方がいいって言われて・・・あのお酒をくれたんです。」
「ふうむ・・・またたび酒は身体にもええし、あながち間違ってはおらんだったのか。
・・・お前が悪酔いさえしてしまわんだったらな。」
「はい・・・悪い人たちじゃないんですよ。」
「だが、もうこげな騒ぎはごめんだ。これからはちゃんと気を引きしめて、みだりに変身
してしまわんように気をつけろよ。」
「はい・・・。本当に、すんませんでした。」
フミエがあまりにも申し訳なさそうにしょげているので、茂はかわいそうになってギュッと
抱きしめて甘く口づけしてやった。唇を離すと、幸せそうに茂を見返した瞳が、急に
大きく見開かれた。
「たいへん!もうこげな時間・・・。藍子を迎えに行かんと!」
がばっと起き上がったものの、素裸の自分に気づいてドギマギしているフミエに、茂が
セーターを脱いでかぶせてやった。茂にも少し大きすぎるセーターにすっぽりとくるまって、
フミエは羞ずかしそうに二階へ上っていった。
「ほんなら、お隣へ行ってきます。」
二階で服を着てきたフミエが声をかけ、セーターを返してきた。茂は仕事机の前に座って
昨日の続きにとりかかろうとしていたが、今日いちにちの活躍の後、さらにフミエに激しい
お仕置きをしたものだから、疲れが出てきた。ごろりと横になり、頭の下に腕をかうと、
急激な眠気が襲ってきた。
(二人目がほしい・・・か。あいつ、そげなこと考えとったんだな・・・。)
子供は生まれてみればかわいいが、もう一人ほしいなどと、正直考えたことがなかった。
あれだけ濃密な愛を交わしているのだから、また出来ても不思議は無いのだが、天然自然に
生きている茂のこと、あまりその結果を深く考えることはなかった。二人目が出来ないのは
自分のせいかと、すすめられた果実酒を飲んでしまったのかと思うといじらしかった。
(今度の子は、俺に似とるな・・・。)
・・・夢の中で、茂は子猫と遊んでいた。その子猫は、この間藍子が変身した銀灰色ではなく、
茂が変身したのと同じ全身真っ黒で、足の先だけが白い、のんきそうな顔をした猫だった。
(お前、いつうちに来るんだ?・・・早こと来いよ・・・。)
自分も猫になっている茂は、子猫とじゃれあって遊んだ。いつの間にか藍子猫も加わって
遊びまわる二匹を、フミエ猫と寄り添いながら見ていると、幸福感が胸を充たした・・・。
それから数週間後。買い物に行っていたフミエが、帰ってくるなり青い顔をして茂の
ところにやって来た。
「お父ちゃん。みち子さんたちがおらんの。・・・どこかへ行ってしもうたみたい。」
「こみち書房はどげなっとる?」
「閉まっとったの・・・。商店街の人たちに聞いても、ある日突然誰もいなくなっとったって。」
「不良図書から子供を守る会とやらに、えらくやられとったけんな・・・。」
「私・・・お別れも言えんで。」
フミエは声をつまらせて、瞳から大粒の涙をこぼした。
「・・・初めてここに来たころ、誰も知り合いがおらんかった時に、いろいろ親切にして
もらって・・・藍子を産む時も、励ましてくれた。みち子さんがおらんだったら、どげに
心ぼそかったことか・・・。」
「そげか・・・。」
フミエが嫁いできたばかりの頃、茂はあまりかまってやれなかった。その頃のフミエに
とって、みち子の存在はいかばかり大きかっただろうと思うと、この間のまたたび騒動の
時、みち子たちに食って掛かったことを少し後悔した。
「泣くな・・・。生きとれば、またいつか会えるさ。」
(俺が、おるじゃないか・・・。)とは言えず、茂は震える肩を抱いてやっていた。
フミエの中に、新しい命がやどっていることに、二人はまだ気づいていなかった。
エロパロ板だもの
パラレルでもいいじゃない
じゅもく
更新は月曜7:16以降に
「祐ちゃん」
「ん」
「今日、何の日か覚えてる?」
秋晴れの休日。
ダイニングで朝食後のコーヒーを啜りながら、夫はのほほんと答えた。
「勤労感謝の日」
「他には」
「Jリーグの日」
元サッカー部らしい回答に、「まだあるでしょ」と綾子は粘る。
「ん〜、後はあれかな」
揃いのマグカップを持ったまま、祐一は空(くう)を見た。
「良い(11)夫妻(23)の日」
「惜しいっ」
語呂合わせだが、話題は近い。
「あたしたち両方に関係のあることだよ」
心なしか身を乗り出して、返答を待った。
「――ああ、アレか」
「そう!」
「『ささき』創業55周年記念日」
「…」
すました夫の横顔を、頬を膨らませて軽く睨んだ。
さすがに結婚記念日は覚えているだろうが、この日も――少なくとも綾子にとっては――大切な日だ。
(忘れちゃったのかなぁ)
一年前、こちらは胸が破裂しそうなくらい、どきどきさせられたのに。
ジュエリーケースから取り出したエンゲージリングを見つめ、小さく溜め息をつく。
結婚して半年。
老舗の煎餅屋のおかみさんとしての暮らしにも、何とか慣れてきた。
先代が病に倒れて以来、跡目を継ぐべく奮闘していた夫も、店が持ち直したこの頃は、少し余裕が出てきたように見える。
定休日との連休となった今日くらい、二人でのんびり過ごしたいというのは我儘だろうか。
ただ、大好きな人と、ずっと一緒にいられたらいい。
一番近くで、彼の笑顔を独り占めするのは、何よりの贅沢だ。
(祐ちゃんの、ばか)
目上に翳した紫水晶が、窓から射し込む陽光にきらりと光った。
細々とした用事を済ませ、いつのまにか普段通りの休みの過ごし方になってしまっていることに、何となく釈然としないまま、夕刻が近づく。
(ごはん、どうしようかな)
多少は豪華に奮発してみたら、今日の意味を、彼は思い出してくれるだろうか。
「綾子」
キッチンテーブルで頬杖をつき、ぼうっと考え込んでいたので、すぐそばに祐一が立っていることに気づくのが遅れた。
「ゆッ、――あぃタっ」
急いで立ち上がろうとして、膝頭をテーブルにぶつける。
「いっ、たぁ〜…」
「どした。相変わらずおっちょこちょいだな」
誰の所為だと八つ当たりしそうになる。
「ま、そういうのも良いんだけど」
ぼそりと呟かれる。
聞き返そうとして、「大丈夫か」と問われた。
「あ、うん…」
「痣になったら目立つな。膝の隠れる服にしといて」
「は」
「長めの、あのワンピースとか良いんじゃないか」
「…え、って何、が」
表情を読まれまいとするかのように軽く顔を背け、祐一が襟足を掻く。
照れている時の、癖。
「夕メシ作んなくて良いよ。偶にはどっか食べに行くのも良い。明日休みだから、遅くなったって構わないし」
「祐ちゃん…?」
子供っぽい強引さで即決される。
「ちょっと、めかしこんで行こ」
訳もわからず、連れ出される羽目になった。
どこへ行くかも教えられずに附いていった先は、昨年の同日も祐一に連れられて来た、都心のホテルの展望レストランだった。
恋人同士として付き合っていた当時、綾子が何気なく「行ってみたいな」と口にしたのを叶えてくれたのだ。
そしてその日、この場所で、彼に求婚された。
「祐、ちゃん?」
偶然だろうか。
恐る恐る見上げると、一瞬だけ合った視線は、するりと躱される。
「結婚してからわりと慌ただしかったし、綾子、いつも頑張ってくれてるから、少しくらい息抜きしても良いんじゃないかなって。
どうせなら、泊まってゆっくりしていこう」
「え。だって、いきなり行って泊まれるわけ」
ぴたりと止まって、まじまじと彼の横顔を見つめる。
「…知ってたの、今日のこと? 覚えてたから、前もって予約してくれてたの?」
返事はなかったが、そっぽを向いた頬の赤らみが答えだった。
肩の力が抜けて、笑いたいような、涙が出そうな心地で、お腹の底が熱くなる。
そっと、彼の掌に指先を通した。
静かに握り返される。
「綾子にとっては、サプライズだったのかもしれないけど」
食事を終え、スィートルームに落ち着いた時、祐一が言った。
「去年のあの日は、俺にしてみれば、覚悟の日だったんだよ」
眼下の夜景の美しさに感嘆していた綾子は振り返る。
「覚悟って」
「自分の一生の女として、綾子の人生を貰うと申し出る日」
「祐ちゃん…」
「綾子に、『ささき』の歴史を一緒に背負ってほしいと頼む日だ。だから、創業記念日にプロポーズしようって、前から決めてた」
「――」
「言われる方だけじゃなくて、言う方にとっても特別な日なんだぞ」
「これでも結構悩んだんだからな」と、照れ臭そうな笑みを見せる。
愛情でも尊敬でも信頼でも足りない想いの熱さに、綾子の胸は温まった。
「んじゃ、改めまして、再プロポーズ」
「え」
向かい合い、真っ直ぐな瞳に射抜かれる。
「これからも、ずっと、俺の――女房でいてください」
…返事などできず。
ただ、彼の胸に飛び込み、ぎゅぅっと背にしがみつき、喉を詰まらせて頷くのが精一杯だった。
「…ね」
「ン?」
窓際で抱き締められ、耳朶を優しく噛まれながら、綾子はふと尋ねてみた。
「祐ちゃんのおじいさまって、どうしてこの日に、お煎餅屋さん始めたのかな」
夫に良く似た面差しの、初代の顔写真を思い浮かべる。
彼は噴き出すのを堪えるふうな、可笑しげな顔つきをしていた。
「い、今訊くことじゃないかもしれないけど、なんか気になって」
ぽんぽんと頭を撫でられ、あやされる子供みたいな気分になる。
「働かざる者食うべからず、とか?」
あてずっぽうで挙げると、祐一は笑って、綾子の髪をそっと指先で払った。
「新嘗祭(にいなめさい)だから」
「?」
「戦前までは、その年の米の収穫を祝って感謝する祭日だったんだ。丹精込めて育てられた米を加工して、
人々に届ける煎餅屋の起業に相応しいからって」
「親父からの又聞きだけどね」と、亡き祖父の面影を追うように、夫の瞳は少し遠くなる。
家族に愛されて育った彼の内には、技術の伝統とは異なる、精神的な土壌も受け継がれている気がする。
「ちなみにもっと大昔、万葉集の頃とかは、民間でも新嘗祭をしていて、女の人は潔斎してお祭りをして、
男は家の中に入れてもらえなかったらしいよ」
「祐ちゃんて、無駄に物知りだよね」
「無駄って言うな」
「…でも」
「ん」
「あたしだったら、祐ちゃんを置き去りになんて…できない」
もう、できない。
神事の不謹慎を咎められても。
「じゃあ、旨い煎餅を作ってお供えして、見逃してくださいって神様にお祈りしないと」
以前にしでかした家出紛いを思い出し、少し落ち込みかけた綾子の頬を摩り、祐一は穏やかにおどけた。
触れた箇所に、掠めるように唇が落ちる。
「後は」
「え」
「他に訊きたいこと」
肩を覆う腕の囲いが、やんわりと狭まる。
「あ…と、訊きたいことっていうか、言いたいこと…?」
「なに」
「――大、好き」
彼が軽く瞠目する。
「今、言うか」
「だ、って。さっき、ちゃんと返事できなかったし」
「だから、ソレ反則」
「はぁ」と溜め息をつかれてから、きゅっと抱き竦められた。
「言わなくても、わかってるよ。綾子、素直だから」
「ベッドでは特に」と囁く低い声音に、ぞくりと震える。
これから訪れる、歓喜の予兆。
「…すけべ」
「何とでも」
最後の会話は、唇の中で交わされた。
* * *
相手の腕を引き寄せたのは、どちらが先だったろう。
舌を差し出し、互いに貪り合う。
綾子が祐一の首に腕を回し、後ろ髪を掻き撫ぜれば、彼の掌が服越しに腿と尻を摩る。
肩を掴まれ、乳房を揉み上げられると擽ったく、つい笑みが零れた。
ワンピースが滑り落とされ、下着姿で抱き締められる。
押し当てられた下肢の硬さに嬉しくなった。
彼のシャツの胸元を乱すと、すっきりと張った筋肉が覗く。
「祐ちゃん、…綺麗、裸…」
「コッチの台詞」
遊びめいた口づけを繰り返し、躰を擦り付け合う。
長い指が伸びてきて、ショーツの上から秘部をなぞられた。
「ッ…」
片手で器用にブラが外され、剥き出しになった乳首にむしゃぶりつかれる。
見上げる彼の目線が、悪戯好きな少年みたいで、綾子はくすくすと笑った。
強く舌を押し当てては吸われ、揉みしだかれるうちに、吐息は途切れがちになる。
「祐、ちゃ」
そのまま寝台に縺れ込んだ。
キスというより、食べ尽くす勢いで、舌を奪われる。
うつ伏せにされ、大腿を高く開かれた。
「、や…ン」
されることがわかっていて、恥ずかしくも、そこは待ち望む。
ぐっと押し広げられ、布地越しに陰唇を舐められた。
「ん、ァ…」
下唇を噛んで、疼きに耐える。
「ぅ、ン…ん」
潜り込んできた指の感触に首を反らせたところで、すかさずうなじを押さえられ、口をキスで塞がれた。
連動する舌と指の動きに、綾子は声も出せずに悶える。
引き下ろされるショーツを、無意識に自ら脱ぎ捨てた。
仰向けに寝かされ、両腿を左右に持ち上げられる。
この男しか知らない秘境を、煌々とした灯りの下に晒す。
羞恥はとうに焼き切れて麻痺している。
ちゅ、と可愛らしくそこに口づけられたのを合図に、最も過敏な箇所を愛撫された。
割れ目を舌が辿り、包皮の淵を唇が伝う。
「ぁ…ハ、ッぅ…」
溝も花芽も遠慮なく弄られ、綾子はシーツを泳ぐようにのたうつ。
「ん、ァ…ッは、――ン、んぅ」
執拗な刺激から逃れようと、身を捩った。
「ゆぅ…」
させまいとする強さで、手首を固定される。
「ま…、ッて――、待っ、…ンふ、っ!」
愛液を啜り上げる音が響き、綾子は眉根を寄せて喘いだ。
「ゅ、――ちゃ…」
己を苛む男に助けを求める。
蕩けて弾けそうな衝撃は、一人では耐えられない。
綾子の欲しいものを、夫は違えずに与えてくれる。
目線を合わせた彼と抱き締め合い、ゆったりと陽根を挿入されながら、舌を吸われて陶酔した。
労わるようなじれったさが、却って堪らない。
「あッ…、…ぅン、んッ――ア…」
緩やかに腰を回されつつ、柔く乳頭を齧られた。
湿った呼気で呻く綾子の髪を、祐一が掻き混ぜる。
「っ、う…んゥ、ン――」
襞をねっとりと這う雄の振動を、ひくつきながら受け入れた。
快感に歪む顔を、間近から熱いまなざしで観察される。
左腕を首裏に導かれ、右腕と右足は同時に抱え込まれ、グラインドから抽入が速まった。
「ッあ、…!ァ、はぅ…、ん――」
真上から突き下ろす勢いで穿たれる。
甘い悲鳴は、唇で封じられた。
手探りで掴めるものを探し、ずれた枕の端を握り締める。
髪を打ち震わせ、自ら腰を振って応える妻に、祐一は微笑んだ。
「綾子」
「…、ぁ」
「自分で動いてる。気持ち好い?」
声は優しいのに、突き入る動きは容赦ない。
「ッン、んぅ…、い――、イぃ…。ゆぅ…ちゃ」
逞しい肩に縋りつき、彼の匂いに浸る。
ぬるついた秘部が、粘着な音を立てた。
「ゅう…す、…き――、好き…よ…」
朦朧となりながら必死に紡ぐ。
「――ぁ…ン、――ぅき…」
言いたがる綾子の口を、言わせまいとするかのように祐一は塞ぐ。
息継ぎの合間に告げようとすれば、微笑む彼は、巧みに声を吸い上げて酔わせてくる。
猥(みだ)らに蠢く、真剣な戯れ。
急に視界が回転したかと思うと、上下の体勢が入れ替わった。
夫の上で腰を抱き込まれたまま、鋭く膣を抉られる。
綾子の弱点を、的確に知り尽くした愛技。
「ハぁ、…ンうッゥ――、んっ…あぅ」
四つん這いになって硬直し、泣くように喘ぐ。
何かが迸りそうな切迫感が押し寄せる。
「…綾子」
促され、のろのろと身を起こした。
仰臥した夫の腹に馬乗りになる。
ぬちりと粘(ねば)ついた音を上げ、更に深く、男根が秘部に埋め込まれた。
「ァあ…」
容積の大きさと太さに震え、形が奥に馴染むのを待つ。
息を荒げつつも、教えられた通りに、下腹を揺すってみた。
「ふ、ン…ん、ぁ――あン、…ン」
体内の燠が発火し、肌の裏を快感の炎が舐めてゆく。
彼の長い指が、脇を摩り、乳首を摘まんで軽く捻った。
「ひぁ!ッア、やぅ…ン、ん――」
双方が下腹をぶつけるように擦り合わせては悶える。
無我夢中で、綾子は、抜き差しを加速させ啼いた。
夫の目許に悦楽が滲むのに、堪らない充足感を得る。
最愛の男に求められ、開拓され、彼を悦ばせている。
「ッア!ん」
真下からの突き立てが、勢いを増した。
縦横無尽に支配しようとする、雄芯の激しさ。
「イゃ、ッ…ゆぅちゃ、ア、あ…ぁ、あ――」
口に手の甲を当て、無意味に「だめ、ダメ」と、か細く叫びながらも、動きには逆らえない。
奥底から、もっともっと、と欲求する声が迸る。
「ゆぅ…ン、うぅン…」
耐えきれずに、夫の胸に上体を倒した。
「ど、した…あゃ、こ…」
表情には余裕があるが、彼の呼吸も荒い。
縺れた髪を静かに梳いてくれる。
「良いよ、どんな格好でも、好きなだけ動いて…。俺に…全部見せて。全部、欲しい」
この人の声は、従順をもたらす魔術が潜む。
起き上がり、綾子はゆらりと後ろ手をついた。
繋がった部分も露わに、大きく膝を広げる。
痴態を晒け出す倒錯的な満足感に、頬を震わせた。
擦れ合う恥毛の感触に、首を左右に振ってよがる。
「ァ、あ…、ぁ、うン、んッ、ン…」
綾子は、のけ反って腰を跳ね上げた。
祐一が乳房を揉み上げ、形が変わるまでに指を喰い込ませてくる。
「っ、ふぅ、ン――あぁ、…ア…、ぁん」
肌の感触を確かめる仕草から、彼は下肢の速度を一気に上げた。
「ひ…!ン、ぅ、あ…ん」
流れる愛液と精が混じり合い、二人の腿を濡らし伝う。
ますます滑りの良い襞が、男の軸を搾り上げる。
祐一が低く呻いた。
「す…、っげ…、最、高――」
「も、もぅ、ダ…め、ゆ――」
崩れ折れた妻を抱き寄せ、彼は力強く臀部を掴んだ。
ぐいと引き寄せながら、奥深く交わる。
「――ぅ、ちゃ…、…ちょぅ、だい…」
涙ながらの懇願は叶えられ、即座に、甘美な絶頂へ押し上げられる。
熱い飛沫に胎内を焼かれる幸福感に、刹那、意識が飛んだ。
「…ァ――あ…、ぅ…」
力が抜けて肩で息をする、綾子の腰と背に腕を回し、夫が身を起こす。
その胸に凭れて座り込んだ細い躰を、裏返して抱き留めた。
広げた綾子の腿の下から、再び精力的に突き上げてくる。
「ハ、ぁ…ン、アッん、ン――」
乱れる長い髪を除け、彼が背中に口づけた。
「あゥ、…ぅちゃ…」
綾子は知らず、尻を前後に押し出し、夫の愛撫に応えている。
妻の肩に顎を乗せて動いていた男は、やがて背に伸し掛かり、後背位で接合を深くする。
頬を埋めた枕の端を握り締め、綾子は涙目で、肩越しに夫を見上げた。
「ゆぅちゃ、…凄、ィ…おっ、きぃ…、当たって――」
胸の尖りを揉まれながら肩甲骨に跡を残され、火照った吐息を零す。
「ッと…」
「…ん?」
「も、っと…奥、まで…突ぃ、てェ…」
自ら脚を広げ、高く掲げて揺らしながら、請うた。
背後に覆い被さる彼が、ずるりと腰を進める。
耳元で囁かれた。
「綾子…可愛いね…」
「ひぁ、ッン…」
結合の挟間から溢れ出す、愛液に火傷しそうだ。
必死で背後を手で探る。
伸ばした指に、彼のそれが絡められた。
握り合う強さに比例し、腰の律動も速まる。
「いぅン…、あふ、ン――」
固く抑え込まれ、抉られた肉壁が感電している。
もうじき、また翔け上がれる。
迫り来るその瞬間を、早く早く、と綾子は願った。
「ゆッ…、――ィ、くぅ…ン…――!」
「…おいで…一緒に――」
脚を突っ張らせて、夫の遂情を味わい、随喜の涙を流す。
長い一夜を、身を結ぶことで紡ぐように、代わる代わる縺れ合い、絡み合っては二人、相手の躰に溺れ続けた。
* * *
綾子は自宅に居た。
見慣れた部屋なのに、なぜか壁が透明で、外の庭が見える。
不思議に思って眺めていると、周辺に十匹程の猫たちがいて、中を窺っている様子だ。
部屋に入ろうと壁を掻いたり、うろうろと歩き廻る。
その内の一匹が、まるで首根っこを掴まれたような姿勢で浮いて、壁を擦り抜けた。
綾子はとっさに受けとめようと両腕を差し伸べ、その瞬間、猫はぽすんと落ちてきた。
危なげなく抱きとめることができ、ほっとした直後、目が覚める。
「…ぇ。な、に」
ホテルの天井を見上げ、ぼんやりと呟くと、祐一に腕枕されているのを思い出し、慌てて噤んだ。
幸い、傍らの夫は眠ったままだ。
伏せられた長い睫の形に見惚れる。
(ゆ、め?)
猫の夢は受胎の暗示だと聞いたことがある。
思わず、自分のお腹に手を当てた。
彼に深く愛された名残。
――もしも、そうなら。
治まった筈の動悸が、また高まり出す。
「ゅ、ぅ、ちゃ」
小声で囁いてみる。
早く知らせたいような、内緒にしておきたいような、ふわふわした予感。
いつか。
そう、きっといつか。
彼に、『仔猫』の名前を決めてもらおう。
二人が受け継いだ歴史と想いを、新たに伝えゆく存在。
互いが出逢い、結ばれたからこその、未来。
その日はたぶん、遠くない。
了.
<鳰鳥(におとり)の 葛飾早稲を 饗(にえ)すとも その愛(かな)しきを 外(と)に立てめやも> 万葉集14-3386 作者不詳
(葛飾早稲の稲を神に供える新嘗の祭でも 愛しいあなたを 家の外に立たせたままになどするものですか。)
>>115 GJ!
猫耳フミちゃんに猫化フミちゃんに裸エプロンに淫乱フミちゃんに
お仕置き茂さんにどこ見てもはぁはぁ…。
まさにこれは 萌 え 地 獄
猫親子がやっぱり可愛い。
>>126 あなたはもしや、以前よく投下されてた職人様?
変わらず、独特で美しい文章うっとりしてしまいます。
優しくてSなゆうちゃん、最高です!
綾ちゃんもメロメロになっちゃいますよ、これは。
GJでございます!
>>115 GJ!乱れたり猫耳猫しっぽに猫化に裸エプロンに…ふみちゃん盛り沢山すぎる!
喜子猫がくつした猫なのもたまらないですw
いつも色々スレのネタを拾ってくれてほんにだんだんです
>>126 GJ!
ほんともう祐綾は想い合うのが似合う良い夫婦だなぁ…
創業記念日とプロポーズ記念日の由来もすごく丁寧でひきこまれました
>>115 GJ!耳とシッポだけの半猫布美ちゃんが半端なくエロい!
またたびに酔った布美ちゃんの誘い方もまたよだれモンなんですけど。そりゃゲゲもびっくりだわw
自分はまったく気づいてなかった<豊川さんとこみち書房の件。
ゲゲゲの世界で、エロくて笑えて感動できて楽しければ僕ぁ小さなことは気にしないな!
>>126 GJ!なんかすげーお久しぶりじゃないですか?投下だんだんです!!
相変わらずの博識と、エロの質感がたまらん!
祐ちゃんだと、ゲゲには言えないエロ最中の濃厚な甘い愛の語らいが豊富だよねw
そうか、このあとあの以前の「名前考えて、4代目の」のやつに繋がるわけなんだな!スゲー!!
>>115 GJ!
猫耳と裸エプロンの破壊力…
豊川さんとこみちの時系列の件は全く気づいてなかったww
こみち義母娘猫がイイキャラすぎる
>>126 綾子さんが素直すぎていやらしくてかわいすぎる!
質問したり頬を膨らませる綾子さんを見ながら祐ちゃんは内心ニヤニヤしてたんだろうなぁw
エロもたいへんなGJでした
ふみちゃんの中の人がこの前ドラマでしゃっくりしててそれがけっこうかわいかったんだけど
ふみちゃんがしゃっくりしてたらしげーさんが突然普段絶対しない事して驚かせたら萌えるなぁと思った
でも突然のキスとかはむしろいつもの事な気がしてw
>>140 布美「しゃっくりが止まらんで…」
ゲゲ「息を止めときゃええんだ」
布美「ん〜〜〜ひっく、…うまくいかんです…」
ゲゲ「ったく鈍くさいなぁ」
むちゅ――――――――――!!(鼻もつままれている)
布美「んん〜〜!(息ができない!)」
……そしてそのまま流されていく布美枝であった。
>>141 萌えた!
しげさんの鈍臭いなぁ発言がたまらん
>>141 140だけど妄想のうまく折り合いつけれなかったとこ補ってもらえてすごい嬉しい!
止まらなかったら何度でもやりそうだw
久々に、いずみが手伝いにきてたあたりを見たんだけど、
コンロに火を付けるとき、ふみちゃんのお尻が
いちいちゲゲのほうに向くことに萌えたw
ダイニングテーブルのお誕生日席にゲゲが座る プラス
カメラのほうにお尻を向けられないから
そうならざるを得ないんだろうけど、
このスレの最初のほうに投下された貧乏時代の作品を思い出して
さらに萌えた(*´д`*)
ゲゲも絶対見てたと思うわ。
>>144 自転車乗ってるときもそうだけど良いお尻してるんだよねぇ
なんかふと横見て目に入った時に無意識に触ってそうw
投下します。
それと自分、「妻の(夫の)心得」が大好きで、ときどき使わせてもらってるんですが、
今回もちらっと勝手に使ってしまっています。この場を借りてお詫びします。すみません。
147 :
つま恋1:2011/08/29(月) 01:06:35.09 ID:P/RPssmO
淡いピンクの桜はもう八割方散ってしまったけれど、新緑の鮮やかさが眩しい深大寺境内。
茂は遊歩道をぶらぶらと歩き、目を細めながら時折天を仰ぐ。
布美枝を連れてくれば良かったな、と思う。惜しいほどに雲ひとつない晴天だった。
ふと先ほどのことを思い出し、わずかに頬が緩む。
「あんたは手先が器用だなぁ」
せっせと謄写版を刷り上げ、「少年戦記の会」の会報を作る布美枝の手を取って、
心底感心して何の気なしに呟いてみただけだった。が、きょとんと見返された布美枝の顔が、
みるみるうちに紅潮していくのに気づいて、こちらも言い知れぬ気恥ずかしさに包まれた。
慌てて「散歩に…」などといって、こうして出てきてしまった次第である。
どうにも調子が狂うな、とぽりぽりと頭を掻いた。
襖を隔てた向こう側に、新妻が居つくようになってからしばらく経つ。
時折忙しく動き回る大きな図体。そして時折じっと座り込んで考え事をする気配。
こちらの邪魔をすることなく、しかしさりげなくその存在を主張する。
女房という存在は、茂にそれまでついぞ縁のなかった、奇妙で面映ゆい感情を湧き起こさせる。
妻をめとる気がなかったわけではないけれど、準備をする暇も、金も、そして肝心の伝手もなかった。
イカルの勢いなくしては、この結婚ありえなかった話だな、と思う。
隻腕の40前の男と承知で見合いに臨んでくるくらいの女だから、
よほどの事情があるのだろうと思っていたが、その実のんびりとした、朗らかな女だった。
思っていたより背が高いのは別段気にはならなかった。
むしろひょろ長くて薄っぺらいのが、言い伝えのある妖怪の、一反木綿みたいで愉快だったし、
かと思えば、式の日に見た白無垢の姿は、美しさの中に凛々しさがあって思わず見蕩れた。
姿勢よく、すらりとした全身に、さらさらとなびく黒髪が清清しい。
逆に風呂上りに洗いざらしの髪がもたつく様も、どこか色気を感じさせる風貌がある。
おどおどと下から見上げてくる瞳も、嬉しそうに微笑う表情も、正直どれも気に入っていたりする。
ただ、あの涙にだけは未だ慣れない。
結婚式のときの涙、安来の家族と別れるときの涙。
そして一番驚いたのが、自転車を買ってきたときの涙だ。
昔から女の涙には弱い。あのイカルでさえ、復員してきたときは今にも泣き出しそうで一瞬怯んだ。
きっとこの先ずっと、女の涙だけは苦手なままだと思う。
そんなだから、睦み合う最中の意味深な涙も、茂にはその正体が掴みきれないでいた。
夜の褥で、必ずと言っていいほど涙を零す布美枝は、いつも茂を戸惑わせる。
誤魔化すようにすぐに微笑んで、「すみません」と謝られるが、本当は辛いのだろうか?
こちらに気を遣って、快い振りをしているだけでその実…。と思えて仕方ない。
だとすれば、彼女は未だ自分に心開いてはいないのではないか。
戦前、戦中、戦後と忙しなく過ごしてきた茂に、女性とのかけひきなど経験する機会はなかった。
正直、真っ向相対した初めての女性が布美枝だったし、女性といえばイカルか布美枝くらいのものだ。
イカルを女性として考えるのは、いささか世間離れしすぎているので度外視するとするならば、
やはり茂の人生において、不可解かつ不思議な生き物、それは女であり、布美枝だと言えるだろう。
慣れない夫婦暮らしはこそばゆく、嫌な思いは決してないけれど、
どこか不安定で、ぎこちなく、独りになるとつい肩から脱力してしまうほど、微妙な空気が漂っていた。
ふう、とため息を吐いて、道の脇にしゃがみこんだ。
あの日、布美枝とふたりでぺんぺん草を間に笑いあった場所。
俯いて、心が少し沈んだ。
――――――ところへ。
「お〜いゲゲ〜」
148 :
つま恋2:2011/08/29(月) 01:08:39.59 ID:P/RPssmO
突き抜けてすっからかんの、浦木克夫の声が聞こえた。
「あぁ?」
物思いに耽っているときに、この声は妙に茂を苛立たせる。睨み上げるようにしてそちらを振り返った。
浦木はポケットに手をつっこんで、脚をぶらぶらとだらしなく運びながら近寄ってきた。
「やっぱりここかぁ。さすが奥さんだなぁ、お前の行く先をちゃあーんと把握しておる」
「なんなんだ、お前?こげなとこで」
「お前の家に寄ったらお前は散歩に出たというのでな。奥さんが多分ここだろうと」
にんまりと笑って「新婚とはいえ、さすが夫婦だな」などと肘で小突かれた。
「…何の用だ?」
「会報作りが進んでおるのか様子を見にきたのよ」
「暇な奴だ。お前こそ、通信販売すると言うとった模型の調達はちゃんと出来とるんだろうな」
「俺を誰だと思っとるんだ。仕事は完璧にこなす男。それが浦木克夫よ」
馬鹿らしくなって、さっさと歩みを進める。折角の晴天の散歩が台無しだと思った。
「おいおい、待て待てゲゲ〜」
「会報ならちゃんと出来とっただろうが」
「まあ、素人の手作りにしては上出来だな。器用な女房を持って良かったなぁ」
肩に腕を廻してきて、にやにやと横目で茂を見る。
「惚れておるのか」
「…はっ」
一瞬身体の左側がずくりと蠢いたのを悟られないよう、興味なさそうに吐き捨ててみる。
浦木は茂の横顔に貼り付くようにして、
「せいぜい逃げられんようにしろよ」
シシシと歯を見せて笑った。
「だらっ!2回も逃げられとるお前と一緒にするな!」
そうなのだ。このイタチ男は信じられないことに2回の婚歴がある。が、2度とも破綻している。
破綻には納得がいっても、そもそも結婚が成立したことが2度もあるというのが茂には理解できなかった。
「だからこそ親切に提言してやっとるんだ。先人達の失敗からは色々と学ぶことがあるだろうが」
「偉そうに。余計な世話だ」
「まあ聴け。女の機嫌は山の天気よりも変わりやすい。女にはからっきしだったお前が、
いきなり女房を持つなんて離れ業を為したもんだから、親友の俺としては心配なわけよ」
それらしいことを顔の真横でごちゃごちゃと言われ、不愉快極まりない。
肩を抱いてくる腕を振りほどいて、再び速足で歩き始めた。
しかし浦木は怒るでもなく、後から付いてきて、茂の背中に話しかける。
「要点だけ言うとな。まあ、夫婦生活というのは究極、夜の営みに全ては尽きるぞ。うん」
「はあ?」
何を言い出すかと思えば、昼下がりの屋外、まばらとはいえ人通りもあるところで、
ぬけぬけと男女の褥話を始めるつもりなのか。茂は慌てて浦木に駆け寄り、その口を右手で塞いだ。
「何を言い出すんだ、お前はっ」
塞がれた右手を、やや丁寧に茂に押し戻しながら、浦木は音量を抑えた。
「…ゲゲ。お前いくら新婚だからと言って、やたらめったら女房を押し倒したりしておらんだろうな」
「な…っ」
「俺もあの頃はなあ、とにかく若かったこともあって…」
空を仰ぎながら、しみじみと語り始める浦木を尻目に、茂は顔を歪めた。
が、少しだけ胸の内を探られたような、奇妙な動悸が沸き起こってきたのには焦った。
「それはそれは連日毎晩、夜と無く昼と無く攻め過ぎたのが悪かったんだな、うん」
若かりし我が身を半分笑いながら嘆き、大袈裟に頷いて腕を組む浦木。
「…単にお前が下手糞だっただけじゃないのか」
「馬鹿、んなわけあるか!」
「じゃあなにがいけんのだ。その…夫婦なら、別に、そういうことは…」
「かーっ、やっぱりお前は阿呆だ」
149 :
つま恋3:2011/08/29(月) 01:09:59.86 ID:P/RPssmO
反射的に鼻に皺が寄った茂を見て、浦木は小さく後方に退いたが、
顔はしてやったり、という風で茂を覗い、そしてゆっくりと続けた。
「ええか、女が家に縛りつけられておった戦前までとは事情が違ってきとるんだぞ。
亭主に何をされても、女房が文句を言えんだった時代は終焉を迎えておるんだ。
ともすれば亭主なんぞおらんでも、女がひとり立ちしてやっていこうなどという風潮もある。
そこへきて、女房だからええだろうと亭主が好き放題、欲に任せて腰を振っとってみろ、
『私は貴方の道具ではない』とまあ、大反発を喰らうことになってしまう」
そしてそれが2人の女房と別れた原因だと言うのだ。
浦木は腕を胸の前で組み直して、じっくりと茂の顔を見つめた。
「要点はここからだぞ、ゲゲ。俺の元女房どもには、それなりのことを言う『口』があった。
しかしお前の女房ときたらどうだ。お前が威圧しとる上に、極度の引っ込み思案、
嫌なもんを嫌とよう言わんきらいがある。こういう女は内々に爆弾を抱え込んで、
それに気づいた時には大爆発を起こしかねん面倒な性質だ。これでは円満な夫婦生活にも、
いずれ支障をきたすこと、これ時間の問題と思うがな」
尤もらしいことを、さも自分が編み出したかのように語るイタチには閉口したが、
思い当たるふしのある茂は、ただ黙ってゆっくりと俯いた。
夜と無く昼と無くとは言わずとも、ここのところ布美枝の寝床へ、
しばしば断りも無く入り込んでいくことが多くなっていたのは事実で。
驚きこそすれ、それでも決して抵抗などしない従順な新妻は、やがて茂の腕の中で翻弄されて果てる。
しかしそれに満足してこちらも欲を吐き出せば、遂にあの苦手な涙が零れていくのだった。
もしや…と、胸にちくちくと針で刺されたような痛みが走った。
(嫌…だったんだろか)
妙な動悸を気づかれないよう、浦木からは目を逸らしてごくりと唾を呑んだ。
そんな茂に気づいているのかいないのか、浦木はぺらぺらと喋り続ける。
「お前のように自分の好き勝手を第一に持ってくるような男に、俺のような2度目はないぞ。
今の女房を逃したら最後、お前は一生を独りで送るしかなくなるのは確実だ。
ましてお前も結構気に入って惚れ込んでおるようだしな」
「…だからなしてそげなるんだ」
「自覚がないんだろうが、傍から見ておれば解る。もともとお前は女に免疫がないしな」
「黙れ!」
掴みかかろうとしたところへ、逆にがっつりと肩を抱かれた。
「ゲゲ」
正直これ以上もなく鬱陶しかったが、黙って横目でイタチを睨み返す。
「女房と永く連れ添うにはなかなか苦労が伴う。ときには我慢というのも重要なのだ」
「よくもまあ…」
「せいぜい精進することだ。惚れた女相手なら努力し甲斐もあるというもんだろ?ん?」
「…」
良くも悪くも、この浦木のアドバイスは茂をただひたすら悩みへ導くのみであった。
が、茂が真剣な表情で考え込み始めたものだから、かえって浦木は気をよくしていた。
「ふむ、これは指南書の1冊でも出版してみるかな。無愛想で朴念仁な亭主のための女房攻略法伝授…」
独りぶつぶつと呟きながら、「題して『夫の心得』なんてな!」と満面の笑みを湛えたりなどして。
150 :
つま恋4:2011/08/29(月) 01:10:58.39 ID:P/RPssmO
― ― ―
「おかえりなさい。浦木さんにお会いになりましたか?」
布美枝の笑顔に出迎えられ、何故かばつが悪い気になる。彼女に罪などないのだけれど。
口の中で「ああ」とだけ答えると、そそくさと仕事部屋へ閉じこもった。
こんな態度さえ、いつものことだと布美枝はきっと気にしたりはしないだろう。
自分でもぶっきらぼうで、不器用な男だという自覚はある。けれど矯正は難しい。
40年ずっとそうだったし、こと、相手が女となれば尚更だ。
というよりもここのところは、布美枝なら尚更…と言った方が正しいのかも知れない。
敬愛するゲーテなら、情熱的な愛でもって、筆の赴くまま詩などを書き綴って相手に贈るのだろうが、
残念ながら彼のように恋多き男ではない。
これはどうしたものかと、茂は頭を抱えた。
夜の帳が降りてくると、ますます憂鬱になってきた。
綺麗に並べて敷かれた布団の横で、長い髪を櫛梳く妻の後姿。
いつもなら艶めかしく、光に吸い寄せられる虫の如く傍に寄っていくところだが、
今夜ばかりは異様に緊張してしまっていた。
浦木の説と、いつもの涙を思えば、ここはぐっと堪えて日を置くべきだろう。
この女房にしたって、昼間のような可愛げな表情を見せるあたりからして、
さほど自分は嫌われてはいないはずだと思われる。
日にちさえ置けば、夫婦の営みを拒むほどの嫌悪感は持たれてないだろう。
茂は器用に左脇の下に右手を組んで、胡坐のまま深くうなだれてあれこれと考えこみ、
必死にもうひとりの自分を説得した。
そして、ぽんとひとつ膝を叩いて、吹っ切るように顔を上げた。
途端に、
「――ぅわっ!!」
茂が叫んだのも無理はなく、顔を上げたわずか3寸先に、心配げな表情の布美枝の顔があったのだ。
「気分でも悪いんですか?」
「いや、そ、そげなわけでは…」
丸い目玉をきょろりとさせて、やや下方から見上げるその眼差しにどぎまぎしてしまう。
寝間着の浴衣の合わせ目から、美しい形の胸の谷間がちらりと覗いていた。
長い髪が横顔にし垂れて、いつもとは違う色気のある雰囲気が、茂を追い込んでいた。
思わず目を逸らすと、逆に布美枝は何を思ったか、茂に今一歩擦り寄ってくる。
横座りの姿勢で、寝間着の裾がやけに乱れていた。
細くて白い足が、おおかた膝上あたりまで捲くられてしまっている。
「…」
「…」
互いになぜか会話が成立せず、その体勢のまましばらく固まることになる。
(どげしたもんかな…)
目のやり場に四苦八苦していると、いよいよ口を開いたのは布美枝の方だった。
「き…今日はやけに…暑い、ですね」
「え?」
そうだろうか、と思った。昼間はぽかぽかと暖かくはなったが、夜はまだ肌寒い。
熱でもあるんじゃないかと、茂は布美枝を見下ろした。
すると布美枝は、ただでさえ目につく胸の谷間に、さらに手を入れてぐいぐいと寛げ始めた。
慌てて目を逸らすと、今度はその視線の先に白い太腿が飛び込んでくる。
大胆にも、膝上からさらに裾は拡げられて、今にも下着の端が現れそうだ。
逃げ場をなくして茂は、とうとう「寝るぞ」と言い捨て、布団の中へ潜り込んだ。
151 :
つま恋5:2011/08/29(月) 01:12:55.78 ID:P/RPssmO
背後で布美枝が何やらそわそわしている気配があった。
小さく「あれ?」とか「えーと?」などとぶつぶつ呟いている。
しかししばらくして、ふっと灯りが消され、ようやく布団へ入っていく音がした。
その様子に思わずほっと息を吐く。同時に全身から脱力していった。
このまま目を閉じて眠ってしまえ。そうすれば奇妙な煩悩などすぐに消え失せる。
茂がぎゅっと目を閉じた次の瞬間、再び緊張の糸が全身にぴんと張られたのだった。
「え…」
茂の丸めた背中の向こうに、柔らかく温かな感触が張り付いてくる。
そしてまるで昆虫の触手のように、布美枝の細い腕が前身ごろに回り込んでくる。
どこか躊躇いがちに、ぎこちなく、茂の胸元を擦りながら寝間着を弄る。
「ど、げ、した?」
ようやく絞り出した声がやたら掠れていた。布美枝相手に焦る自分自身が不思議だった。
「えっ…と」
背中に当たる唇から、くぐもった布美枝の声がする。
ぎゅっと抱きつかれ、体勢を変えようにも動きが制限されていた。
「寒いのか?」
「え、あ、は、はい、寒くて」
「…さっきは暑いと言うとらんだったか」
「あ…」
やはり今夜の布美枝はどこか可笑しいと思った。
睦み事を予感して、茂の前でおどおどすることはあっても、
こんな風に自分から、寝間着を肌蹴たり、抱きついてきたりなどということは一度もなかった。
茂は混乱していた。
昼間、浦木から散々営みは自重しろといった旨の「有難い説教」を享受されたにも関わらず、
そんな夜に限ってどこか積極的にも思える布美枝の挙動。
布美枝の手は、しばらく茂の胸の上でぴたりと止まったまま、収める先を見失っているようで。
その冷たく戸惑う腕が、なお一層茂の焦燥心を煽りたてる。
自分の欲と布美枝の意外性に甘んじて進むべきか、失敗学の先駆者である浦木に従って退くべきか。
背中にあたる布美枝の身体から、想像力が掻き立てられる。
長い髪の香りと、小ぶりな形の良い胸。細く締まる胴回りに、丸く滑りのよい臀部。
浮き出る腰骨から、薄っすらとした繁みの向こうに秘めた、最も敏感な粒のピンク色…。
すっかり布美枝の細部を記憶してしまった脳内で、必死のせめぎ合いが行われているところへ、
胸の上で留まっていた布美枝の手が、三割がた頭を持ち上げてきていた茂の下半身へ伸ばされた。
「…!」
ぎこちない手の動きで、もぞもぞと股の間を探り始める。
遂に耐え切れず、とうとう茂はその手をぐっと掴み取った。
「きゃっ!」
勢いよく身体を反転させると、捕らえた細腕を敷布に押さえつけて叫んだ。
「あんた、どげなつもりだ!」
言い方が荒っぽくなってしまったためか、組み敷いた布美枝の顔がひどく怯えていた。
「す、すみませ…」
瞳がうるうると揺れ始める。このままだと、あの最も苦手な表情を見ることになってしまう。
慌てて茂は掴んでいた腕を離し、姿勢を元に戻した。おそるおそる、布美枝も身体を起こす。
「お、怒っとるわけじゃない。ただ…」
まともにあちらを見られないのは、我ながら情けなかったが、苦手なものは苦手なのだ。
「無理をするなと言いたいだけだ」
「無理…?」
問い返された声が既に涙声だった。ますます肩身が狭い。
152 :
つま恋6:2011/08/29(月) 01:14:31.59 ID:P/RPssmO
「…嫌なんだろ?その、毎日こげなことをするのは…。最初に言うたはずだ、
俺はあんたを金で買ったわけじゃない。気乗りもせんのに、俺に気を遣って、
いつも我慢して応じることはないんだ。嫌なら嫌と、言うたらええ」
「え?」
しん、とした暗闇の中で、布美枝がそわそわし始めるのが判った。
「いちいち…ええかどうか訊くのも煩わしいけん、ここんとこはちょっこし、
強引にコトを進めとったかも知れん。今日からは、あんたが嫌なら正直に言うてくれたらええ」
「あの…あたし…」
遠慮がちに、けれど、闇に慣れた目でそちらを見ると、向こうもじっと茂を見つめていた。
「…あたし…嫌なんかじゃ…ないです、よ」
「え」
「むしろ…貴方の方が…そのぅ、あ、飽きて…こられとるんじゃないか、と」
「飽きる?」
どうしてそういう話になるのか、茂にはさっぱり分からなかった。
言いにくそうに布美枝は俯いて、ぼそぼそと事と次第を話し始める。
「浦木さんに言われたんです…、夫婦仲はひとえに…その、夜の、そういう、コトに尽きますな、って…」
ぽかんと口を開け、阿呆面のまま茂は布美枝を見つめた。
どこかで聞いたことのある台詞。まんま、あの時の浦木の言葉どおりだった。
「いつもいつも、旦那様に任せて、されるがままでは、まな板の上の魚以下ですよって。
待ってばっかりの姿勢では、すぐに飽きられてしまうから…。だからたまには…」
恥ずかしくなったのか、どんどん小さくなっていく。もじもじと手を擦りながら。
「お、女の方から…誘ったって、今どき…はしたないことではないから…」
「…と、あいつが言ったのか」
こくりと頷く。茂の反応を覗うように、目だけを持ち上げて見上げてくる。
なるほど、今夜の布美枝をけしかけたのは、他ならぬあの浦木克夫であったのだ。
おそらく、茂を訪ねてきた際に、布美枝をからかって面白おかしく焚きつけたのだろう。
真面目街道まっしぐらの布美枝は、まともにその話を受け取って、慣れぬ行動をやってみせた。
(あの野郎、俺には散々我慢しろと言うとったくせに!)
布美枝には真逆のことを教え込み、まんまとその気にさせたということか。
「嫌でしたか…?はしたない…ですか」
せっかく治まったと思ったのに、布美枝の声がまた涙声になっている。
「そげなことはない!」
慌てて茂は否定した。事実、はしたないとは思わなかったし、
まして嫌だなどと、あれだけ動揺しておいて、どの口が言えるだろう。
「けどな、イタチの言うことなぞまともに聴かんでええんだ」
まともに聴いてしまった自分のことは恥じつつ、布美枝の左肩に手を置いて。
「あんたに飽きとるなら、俺はこげに悩むことなかったんだけん」
飽きるどころか、身体を重ねるたびに解らなくなっていくことばかりだ。
肌の柔らかさ、漂う芳しさ、同じ家に住んでいて、何もかもが自分と違う布美枝の身体。
そして何より、あの涙の理由…。
「悩むって…?あたしが嫌がっとると思っとったからですか?」
「ぅむ…まあな」
「なして?あたし…そげに嫌そうな顔しとったですか?」
「いや、そげでなくて…」
言葉に詰まる茂に、布美枝はそそっと近寄ってきた。
懐まで間合いを詰められ、先ほど押し倒した際に乱れた寝間着から、素肌が見える。
153 :
つま恋7:2011/08/29(月) 01:15:44.49 ID:P/RPssmO
「…なら、ええんだな?」
いつも零す涙の理由は解らないままだけれど、白く覗く肌の吸引力はすさまじく、
茂は布美枝の答えを待つことなく、そっと妻を抱き寄せた。
芳しい女体の香りに酔いしれて、柔らかな肌の感触を確かめる。
胸の中で小さく布美枝が頷くのを確認し、赤らめた頬に軽く唇を触れた。
互いの呼吸を確認し合ってから、いつもより数段緊張した空気で、口づけた。
顔を傾けて、深く、何度も触れ合う。呼吸をする間も惜しいほどに、息が切れるほどに。
「は…ん、ふ…」
舌で舌を絡めとり、甘い吐息を交換する。うっすら目を開ければ、眉間に皺の必死な表情。
たゆたう髪をかきわけ、うなじで頭を支えて、口づけたまま褥に横たわらせた。
長い口づけの嵐に、溺れかけた布美枝が瀕死の魚のように身悶えて息継ぐ。
「は…あっ…」
髪の隙間から現れた耳に息を吹きかけ、舌を這わせた。ぴくりと肩を持ち上げて震える。
ぴちゃぴちゃと、耳元でわざとらしい音をさせ、辺りを舐った。
「ぃ…ゃ…あ…」
そもそも茂を煽るため、布美枝はあえて寝間着を着崩していたらしく、
既に胸元は大きく開き、腰紐も緩く簡単に解けた。
つんと上向きに、形の良い丸みが現れ、先端の桜色が茂を誘惑していた。
脇の方から寄せ上げるように、右手で包み込む。
恥ずかしがって顔を逸らした布美枝の、留守になった喉元に吸い付き、
乳房の柔らかさを手のひらで持ち上げつつ、親指と人指し指で乳首を軽く扱く。
「んっ」
一方の先端を軽く啄み、尖らせた舌で絡み取るように捏ねた。
「っ…ぁ…」
浮き上がった鎖骨にも口づけ、胸の谷間に赤い痕を残す。
白い肌に浮き残る痕跡は、茂の支配欲を満たして、思わず口の片端が上がった。
獣のような息遣いで、まさに獣のごとく目の前の妻を犯す。
鎖を外された動物みたいだな、と頭の隅に追いやられた理性が、茂にちくりと嫌味を差した。
が、そんな激しさに、布美枝の遠慮がちな声が待ったをかけた。
「あ!…ぁ、のっ!」
両手で茂の肩を軽く揺さぶり、八の字眉で申し訳なさそうに見つめられる。
「…どげした」
急に不安になる。「嫌なら嫌と言え」と言ったばかりだから、本当に「嫌だ」と言われるのだろうか。
けれど、もし実際に言われたら、それはそれで受ける打撃は大きい。
「嫌か」
「じゃ、なくて、その…やっぱり…あ、貴方はまともに聴くなって仰ったけど、でも。
浦木さんの言うことも…ごもっともか、なと思って」
「んん?」
「だけん、その…さ、さっきから、あたしばっかり…」
布美枝の言葉はいつも、核心をつかないことばかりだ。
焦れた茂は、再び耳元へ唇を落とした。
「や…っん、待ってぇ…」
「何が言いたいのかさっぱりわからん」
「だ、だけん…そのぅ、貴方にも、ええ、こと…したいんですっ」
「ええこと?」
茂が眉をひそめたのを見て、言葉で伝えるには限界があると思ったのか、
布美枝はぐいぐいと茂の身体を押し上げて、ふたりは向かい合って座り込む形になった。
真っ赤な顔で、布美枝はこほん、と小さく咳払いをして。
「貴方が、き、気持ちええ、と思うようなこと、です…」
「はぁ?」
154 :
つま恋8:2011/08/29(月) 01:18:14.21 ID:P/RPssmO
要するに、「まな板の上の魚以下」と言われたのが気になっているらしく、
一方的に茂からの愛撫を受けるだけではダメだとでも思っているようだった。
「無理をするなと言うとるだろうが」
「無理じゃありませんっ!あたしだって…貴方に『ええ』って、言われたい…」
言葉を失った茂は、がしがしと乱暴に頭を掻いた。
布美枝の申し出は、正直いじらしく、可愛らしくも思えたが、
だからと言って、どう応えればよいのかはさっぱり判らない。
いつもいつも、布美枝は自分の腕の中で、艶やかに燃えて、尽きればしなやかに果てる。
それを見ているだけで満足で、自分の快感などはその後に満たされればそれで良かった。
けれど、今思えばそれすらも、「欲に任せて腰を振っているだけ」に過ぎなかったのかも知れない。
いちいち浦木の言葉が思い起こされるのは癪だったが、ヤツの言うことには
本当にいちいち説得力があって、しかしそれがいちいち不満で仕方がない。
考え込む茂の顔を、すい、と細い指が掬い上げた。
誘われるままに頭を上げると、切なげな表情の布美枝が見つめている。
切実に、思ってくれているのだと思うと、じわじわと温かさが沸いてくる。
これが愛しさという、不思議な感情なのだろうか。
ちゅ、軽い音で唇を触れ合わせ、布美枝の手が茂の寝間着を解いていく。
「…触ってみるか」
茂の胸板を見つめていた瞳が、その声にぴくりと反応した。
胡坐の前身ごろを寛げ、すっかり硬く勃ちあがった雄を曝す。
反射的に目を逸らした布美枝だったが、ややあって再び茂を覗い見てくる。
「手で…擦ってみ」
小さく唾を呑みこむ音が聴こえ、やがて冷たい手がそっと熱棒に当てられた。
まじまじとそんなところを見られるのは、さすがの茂にも抵抗があったが、
おそるおそる、僅かに竿を握って上下する布美枝の、あまりのぎこちなさに、
なんだか可笑しさがこみあげてきて、思わず苦笑した。
「こそばゆい」
「え、え?こう、じゃない?」
「もっと強うしてもええ」
やや握力がかかったが、それでもまだくすぐられているような気分だった。
「あの…ええ、ですか?」
「くっくっく、ええも悪いもない」
焦りを前面に出して、布美枝は両手を忙しく動かす。
必死な顔と、その向こうに揺れる乳房が可愛らしく、目の前の丸い額に口づけた。
「も…どげしたら…」
「咥えられるか」
「え…」
布美枝の顔に、動揺の色がさっと差した。
「あ、いや、無理せんでええ」
慌てて遮った。俯いてしまった布美枝に、何度か口づけて労う。
きょろきょろと定まらない瞳に、今一度「ええんだ」呟いてみせた。
けれど。
「あたし…よう、わからん…ですけど」
言いながら布美枝はぐい、と茂の両脚を押し広げ、手も添えずにそれを咥えこんだ。
気圧されて尻餅をつき、ようやく後手をついて体勢を保つ。
生温かい口内と、ざらつく舌の感触に、ぞくぞくと背中を虫が這った。
「ん…む…」
布美枝は苦しげに、いったん咥えた男根をずるりと吐き出し、はっと息をついた。
しかしすぐに、赤黒く筋立つ血管に沿って、妄りな表情を晒して舌を伸ばす。
根元から先端へ舐めあげ、くびれた段差のあたりを周回した。
右手にそっと包みこみ、じわりと滲み出てきた汁を吸い込みながら、小さく上下させる。
155 :
つま恋9:2011/08/29(月) 01:19:59.99 ID:P/RPssmO
「…っ…」
腰に力が入らず、支えている腕がじりじりと痺れてきた。
茂は天井を仰ぎ、湿った息を吐き出した。目を閉じると、自然と全神経がそこに集中する。
「…は…っ」
ため息とともに零れた声が震えていた。
はっとして頭を下げると、上目遣いの布美枝と視線がかち合った。
「…だらっ」
悪態をついてみせたのは、布美枝の瞳がどこか笑っているようだったからだ。
茂の声にやや目を細めると、布美枝は再び視線を落とし、行為に没頭していった。
口の中で舌を蠢かせ、亀頭の先の割れ目をいじくる。
荒く、何度も息継ぎをしながら、口に余るその大きさに、必死で喰らいついていた。
疼く快感を何とかやり過ごしながら、茂は愛しく布美枝の髪を撫でた。
その瞳がまたちらりと上を見て、すぐに伏せる。長い睫毛が小さく揺れる。
出会いからまだどれ程という時間も経っていないというのに、
これほどまでに、彼女に淫らな行為をさせてしまっている罪悪感に苛まれる。
一方で、美しさと懸命さを今ひととき征服しているという、支配感も入り混じる。
口を窄ませて扱かれる心地よさに揉まれて、それら全てが茂の思考回路を無茶苦茶にしてしまう。
「ん…ん、もう…えぇ」
黒髪に、くしゃりと指を絡めて、布美枝の頬を撫でる。
合図を受けゆっくりと、咥えられていた熱棒が冷気に放たれる。
熱い息を吐き、布美枝は少しむせた。口から零れる液をぐいと手の甲で拭う。
先走りの液と布美枝の唾液を纏った陽根が、月の光に照らされて怪しくぬめっていた。
「あの…」
途切れ途切れの息の中、布美枝は茂を覗き込んで物問いたげに、こくりと唾を呑む。
「…ったく」
照れくさく、がしがしと頭を掻いて、その手で乱暴に布美枝を抱きしめた。
「人が弱っとるのを見てほくそ笑むなぞ、案外あんたも性質が悪い」
「…ふ、ふふ…」
揺れる肩を抱いて、茂も笑った。
わざと音を立てて照れ隠しに、布美枝の頬や耳に吸い付くように何度も口づけた。
「さて…どげしてくれる」
耳元で、意地悪く訊ねてみた。顔は見えなかったけれど、肩に置かれた手がきゅっと握られて、
相手の反応はすぐに判った。
「…跨ってみ」
「こ…のまま?」
寝かされるのが常だと思っていた布美枝は、座ったままの茂に驚いて訊き返す。
先ほどまでの大胆さは何処へ。布美枝の真っ赤な顔を見て、思わず笑みが零れた。
口の片端を上げたまま、茂は布美枝の秘所へと手を伸ばす。
「…やっ…」
腰を捩って逃げようとする寸前で、するりと下着へ入り込み、繁みを掻きわける。
下着を濡らすほどの滴りに、すぐにぬるりと指が滑る。
「…なんもしとらんのに」
「ぃ…ゃ…」
顎で促して膝立ちにさせ、役に立たなくなった下着をはずす。
「ゆっくり…ここに」
布美枝の入口に指を宛がったまま、自分の焦点との間合いを測る。
156 :
つま恋10:2011/08/29(月) 01:21:43.43 ID:P/RPssmO
ぬ…ちゃ、合わさった音。こわごわ腰を落とす布美枝の胸が、目の前でふるりと揺れた。
呑み込まれる感覚に、一瞬だけ耐える。
亀頭が包まれ、布美枝が震える息を吐き出して、ぴたりと動きを止める。
それが歯がゆく、じれったく、一時休息する布美枝の腰を掴むと、勢いよく引き下ろした。
「や、あああっ…!」
嬌声を上げて、布美枝が仰け反った。白い喉に、汗が滲んで伝い落ちるのが見える。
肩にぴりりと痛みが走った。細い指の先の、鋭い爪に捕えられている。
「はぁ…あ…、ぁ…」
「…あんたに、動いてもらわんと」
「ぇ…あ、あたし…?」
眉間に皺が寄り、情けない顔をしている。ぷっと噴きだすと、向こうはぷっと頬を膨らせた。
「お、面白がってぇ…」
「面白いんだが。百面相。ほれ、女が積極的になるんだろ」
「う〜〜〜〜…」
低く呻ってから、布美枝は意を決したように、わずかばかり腰を浮かせた。
すると、いずれのものとも知れない愛液が、たらたらと滴り落ちてくるのが判る。
再び深く腰を沈めると、声を失くして息を詰まらせていた。
自分の動きで、勝手に追い込まれている。
そんな妻が可笑しくも愛しく、目の前で揺れる乳房に悪戯をしかけた。
「やっ…あ、あん…」
上に反った先端の果実を舌に乗せ、くるりと絡め取るように口に含んだ。
手に収まる柔らかさを揉みしだき、乳首の円形を潰さぬよう、指先で優しく捏ねる。
布美枝の動きに合わせ、茂も腰を動かし、下から突き上げてやる。
互いの息遣いが、まるで獣のそれと同じだった。
熱い吐息を交換しながら彷徨う意識の中では、理性も羞恥も霧消する。
「ん…は、っ…」
情熱の昇華先を求めて、茂が布美枝の唇を求めようとした、そのとき。
「え…」
月光に照らされた雫がひとすじ、布美枝の頬を伝っていた。
「な…して…」
身体を強張らせた茂に気づき、上気した表情の布美枝が荒い息のまま夫を覗った。
「貴方…?」
「なして…泣くんだ」
「え」
問われたことの意味が解らず、布美枝はぼうっと茂を見下ろしていた。
「いつも、思っとった。あんたはすぐにそげして泣くだろう。
嫌だからじゃないのか?好かんならそう、言うてくれと言うたのに…」
泣き顔を見ることはできずに、まるで子どもが母に縋るようにして布美枝の胸に抱きついた。
布美枝の鼓動の速さが伝わり、同時に蒸らされた女の香りも漂ってきた。
しばしそのまま、動かなかった布美枝が、やがてそっと茂の頭を抱きしめた。
「…ずるい」
布美枝の意外な言葉に、思わずひょいと顔を上げた。
熱を帯びた表情で、茂を包み込む聖母のような布美枝がそこには居た。
「…言わせるんですか…?」
157 :
つま恋11:2011/08/29(月) 01:24:57.05 ID:P/RPssmO
両手で頬を包まれ、優しい接吻が降ってくる。
細腕を絡ませて、耳元で囁かれる。
「…気持ちよすぎて…身体が…」
まるでいつもの彼女とは別人のような艶声で。
「言うこと…きかんようになって…。熱くて、嬉しくて…。
でもちょっこし、怖くて…幸せすぎて。…もう、何もわけがわからんようになるんです…」
腕を解いて茂を見つめる布美枝は、恥ずかしそうに口を尖らせていた。
「涙腺が緩いのは…認めます、けど」
朴念仁を目覚めさせるには十分なその瞳で、茂はいとも簡単に追い詰められる。
「…誰のせいで・・・いつもこげなっとると思っとるんですか…」
見据えられた眼差しに、全身が痺れた。
――――…ずるいのはあんたの方だ。
茂はその言葉を呑み込んだ。
そんなふて腐れた表情で、小さく呟く声音ひとつで、たったこれっぽっちの涙だけで、
こんなにも心かき乱す、あんたの方がよっぽどずるい。
腹の中で布美枝を責めつつ、どうにも抑えきれない欲情の昂りにぎゅっと口元を引き締めた。
次の瞬間、その片腕に余る布美枝の細身を、抱きしめる勢いとともに押し倒した。
指を絡ませてしなやかな左手を握りしめ、無我夢中で唇を貪る。
同時に激しく腰を揺さぶり、先ほどまでのもどかしさを振り切るような充填で、
布美枝の中を熱で埋め尽くす。
「んっ…んくっ、ふ、あ…っ…!」
頭の中も、繋がった場所も、何もかもが限界に達していて、
必死に息継ぎをする布美枝を気遣う余裕もなかった。
浦木に乗せられたとはいえ、今夜の布美枝は異様なほどに茂を刺激する。
男心、独占欲、嗜虐心、支配欲…。けれどそれら全てを手玉に取られているような錯覚。
力強く組み敷いて、あり得ないほど淫らにさせても、結局抱かれているのは自分のような。
茂の律動に合わせて揺れる布美枝の艶めかしい姿態を見下ろし、滑稽な自分自身をあざ笑う。
結局、浦木の言う通りなんだな、と。
(女にはからっきしだったのに、いきなり女房なんぞ持つから…)
こげな苦労が伴うんだ。
「く……っ!ん、ふ、ぅっ…!ああっ…!」
握り締めた手をぎゅっと握り返され、背中に回された手からも、力が伝わる。
耳元で聴く喘ぎ声が、苦しげに掠れてきた。
烈しく重なり合う身体の共鳴の末に、今ひとたび隙間なく布美枝を抱きしめ、
自身の熱い滾りを愛しい身体に注ぎ込む。目を閉じて、痺れる開放感にしばし浸る。
熱く火照る柔らかな身体に、そっと抱きしめられる。触れられた場所から、癒されるような錯覚。
息を整えながら布美枝を見やると、再び頬に零れ落ちる涙を認めた。
苦笑いながらそれを唇で掬ってやる。
「…ハァ…はぁ……。ったく…壊れた蛇口か」
茂の軽口に、涙顔で布美枝が照れくさく微笑む。その笑顔が格別に美しかった。
― ― ―
寝間着を着なおすと、まるで猫のように茂に擦り寄ってくる布美枝もまた愛くるしい。
腕の中に抱きとめ、満ち足りたひとときの余韻を噛みしめる。
「…ふふ」
独りでにやにやとする大きめの仔猫を、「なんだ」とぶっきらぼうにせっついた。
「貴方が…あたしのことで悩んでくれとったというのが、嬉しいんです」
「…っ、だら。そげに深く悩みに暮れとったわけではない」
158 :
つま恋12:2011/08/29(月) 01:28:26.45 ID:P/RPssmO
歪めた唇が視界に入るくらいむくれて、枕にしてあった腕をひょいと引き抜いた。
すとんと落とされた頭に、しかし布美枝は慌てる様子もなく、にこにこと身体をしならせていた。
「イタチのヤツが余計な知恵をつけやがったからだ。あんたが嫌がっとるんでないかと」
「浦木さんが?」
ひょんな名前が出てきたと思ったのか、布美枝は上半身を起こして茂を覗き込んだ。
そしてしばらく夫を見つめていたかと思うと、ふるふると身体を震わせ、
遂には堪えきれないというふうに、茂の肩を叩いて笑い出した。
「な、なんだ?」
「うふふふふ」
「何が可笑しい」
「あは、だ、だって。…浦木さんの言うことなんて、まともに聴くなって仰ったくせに」
ぎくりと左胸に杭を打たれたような衝撃が走る。
いつもぼんやりとしている布美枝に、まさか揚げ足を取られるとは思わなかった。
赤い顔をして何とか笑いを押し殺そうとするも、どうにもいかないというふうで、
布美枝は申し訳なさそうに、しかしいかにも愉快そうに笑っていた。
「意外とやっぱり、お二人は仲がええんですね」
「は!どこが」
「さては昼間あたしの噂話をしとられましたね?」
「べ、別に」
じろりと見下ろされるも、その口元はまだ緩んでいる。茂はむっとして背を向けた。
しばらくくすくすと笑う声が聴こえていたが、やがて小さなため息を吐き、
遠慮深げにもそもそと、茂の背後から布団に潜り込んでくる。
背中越しの温もりと柔らかさに、再び雄の内側が燻り始める。
(うーむ…。もういっぺん、というのは…許されるんだろか)
この接近が、布美枝からの誘いの合図だとするなら、据え膳喰わぬは男の恥ということになる。
女房に見られないようにほくそ笑んでから、ゆっくりと身体を回転させた。
茂の胴体に絡まっていた腕がするすると力なく解けていく。
閉じられた瞳から、伸びる睫毛の曲線が美しく、
ぷるんとした濃い桜色の唇は、物もいわずに茂を甘美に誘っていた。
蜜に吸い寄せられる熊のように、のそりのそりと体勢を戻し、布美枝を見下ろす。
何度重ねても柔らかさと甘さを失わない、布美枝の唇まであと1寸…。
「すー…」
「え」
ぱちくりと瞬いて、ひょいと頭を上げる。
件の女房は、既に独りで夢の中へと旅立ってしまっていた。
地団駄を踏みたい衝動を抑え、茂はがしがしと髪を掻き毟る。
(…………むぅ〜〜〜〜)
目にかかる前髪を、ため息で吹き上げた。
やがてそのうち、すやすやと無防備な寝顔を曝す新妻の顔に、
自らの節操のなさがやや照れくさくなり、茂は皮肉を込めて自らを鼻で笑った。
悔しいけれど、浦木の言うとおり。本当に女というのは何とも扱いが難しい。
やけに色気づいて誘って来たかと思えば、見事に翻して肩すかしを喰う。
弱いかと思えば芯は強く、強いかと思えばやはり頼りない。
恥じらいに身を縮めても、一枚剥いてやれば途端に淫らな顔を見せる。
すぐに泣き、すぐに笑う。難解なようで、単純で。
息が詰まったり、身体中癒されたり。振り回されたり、惹きつけられたり。
厄介で、面倒で、…けれど無性に恋しい。
おわり
>>147 GJGJ!
ふみちゃんはじめてのおさそいとご奉仕ktkr!
ふみちゃんの涙に戸惑いまくりだったりイタチに流されてるwしげーさんがかわいすぎる
ほんともう全部がかわいくてすごい萌えました
>>147 GJ!
お互いに恋をして、好きなのにどうしていいか解らなくて
不安になったり自信を無くしたりする2人が切なくて萌えます!
今回は浦木もGJ!
>>147 GJ!
フミちゃんの素直で一生懸命なところや
フミちゃんが泣く理由がわからないゲゲさんの朴念仁なところがたまらなかったです!
>>19 超遅レスだが、そのイラストの綾ちゃんのワンピースは実際に中の人が某雑誌で着ているのと同じ物だと
さっき気づいてビックリした。
生地の色使いやアクセサリーの細部まで丁寧に再現されてて凄いな
そして
>>147、GJ!
拙いながら一生懸命誘ったりご奉仕したりするフミちゃんと、
フミちゃんとの出来事を思い出して喜んだり戸惑ったりするゲゲさんが可愛すぎる
やっぱり初々しい新婚時代大好きだ
164 :
19:2011/09/01(木) 15:18:49.99 ID:FBWQuBqk
>>162 実はそうなんです。あの雑誌の中の人がすごく可愛くて参考にしたんです。
細かい所までみてもらって嬉しいッス!
165 :
162:2011/09/02(金) 13:19:27.02 ID:ahTvm9B5
>>164 おおっ!レスだんだんです
あの雑誌カワイイよねー
南の島特集だったから妄想が止まらなかったw
>>162,164
その雑誌持ってるし
>>19の画像もバッチリ保存してたのに全然気づかなかった…!
>>165 あの雑誌だと壁の近くで帽子持ってこっち振り向いてるので
ゆうちゃんの帽子を奪って呼びながらはしゃいでる感じの妄想をした
>>166 下二行、そのカット一番好きだ
綾ちゃんっぽいよなあ
>>167 あれが一番綾子さんっぽいよね
自分的には白いワンピースのも好きだ
中の人がそうしてるみたいなんで、そこからインスピレーションすると、
祐ちゃんは休みの日にサッカーとかフットサルとか友達でチーム作ってやってたりしてそう。
綾子さんはその応援に行って…みたいなデートの日もあるかもね。
チ○ビタのCMみたいに、ボール蹴りながら追いかけっこして疲れて寝転んで、
じゃれあって、もつれあって、絡み合っていったらいいと思うんだ。
>>126 もしや・・・自分の大のお気に入りの「冬来たりなば」「2.5DAY」その他沢山の職人様でしょうか?
もう貴方の新作は読めないと思っていたので感無量です。
今回もラブラブでエロエロな二人が読みたいって妄想してたら・・・妄想以上のがキタ!!
貴方の描くお互いを深く思いやっている美しくて大人な二人が大好きです
神作、超超超だんだん!
初めてお邪魔します。ゲゲフミ以外もOKという懐の深さに甘えて
深沢さん×加納さんを投下させていただきます。長くなってしまったので
2回に分けようかと思いますが、なにぶんマニアックなためご興味のない方は
申し訳ないです。
― 二人の道(1) ―
1.
「辞めるしかなかったのよ…」
大きな仕事を手掛けることが出来ると期待を膨らませていた、成田出版との合併話を
編集者としての自分の信念と反すると断った深沢に失望して、加納郁子は退職届を出して
嵐星社を去った。その夜郁子は、商社の秘書時代から親しくしている友人を食事に誘った。
「商社を辞めるときはあんなに生き生きとしていたのに、今回は大分悩んだみたいね。
もしかして… その人が好きだったんじゃないの?」
郁子は何も答えずに大きな溜息をついた。
「引き留めてもくれないんだから、もういいのよ。私だって、仕事をして生きていく
覚悟をして辞めたの。両方を手に入れようなんて無理なのよ」
「相変わらず郁子は強いわね」
172 :
二人の道:2011/09/05(月) 15:51:51.24 ID:AUFJu4xq
2.
新しい世界で頑張ってと励ます友人と別れ、郁子は帰る道々、深沢の入院先で初めて
出会ってから、彼の片腕としてゼタで働いていた今日までの日々を思い返していた。
「その人が好きだったんじゃないの?」
友人の声が頭から離れなかったが、今は新しい世界で自分を試したいという気持ちの方が
強かった。
郁子は翌日、ゼタに勤務していた頃から、アルバイトで記事を書いていた雄玄社の
女性誌の編集部に連絡を取り、早速正社員として迎えられることが決まった。
郁子は様々な思いを振り切って仕事に没頭し、ゼタに居た頃とはまた違った充実感を
得るようになっていた。ある日のこと、郁子は編集長から水木プロへの用事を頼まれ
たので、自身の転職の挨拶も兼ねて、調布の水木プロへと出かけて行った。
173 :
二人の道:2011/09/05(月) 15:58:53.56 ID:AUFJu4xq
3.
「水木先生と奥様には、今後ともお世話になりますが宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします。郁子さんは優秀だから、すぐに次の仕事が決まって
よかったですね。深沢さんはこれから大変だと思いますが」
言った後にしまったと思った布美枝だったが、すでにあとの祭りで、気まずい思いで
そっと郁子の顔を窺うように見つめた。
「深沢さんは私を引き留めてくれませんでした。自分から辞めたのに可笑しいと
思われるかもしれませんが、引き留めてくれるのを心のどこかで期待していたのかも
しれませんね」
いつもと変わらず凛とした佇まいの郁子が、少し寂しそうに表情を曇らせた。
すると布美枝が意外なことを言った。
174 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:07:21.09 ID:AUFJu4xq
4.
「深沢さんは、本当は合併を断ったことを少し後悔されておられました。大切な人を
失うとわかっていたのに、意地を張ってしまったと。深沢さんも仕事に賭けられる
思いがあるから、郁子さんのお気持ちがわかるのでしょう。だから郁子さんには新しい
世界で存分に仕事をしてもらいたいと、敢えて引き留めなかったのではないでしょうか」
郁子ははっとして布美枝を見つめた。
「そういう大きな愛情もあるのですね。郁子さん…、お辛い思いをされたかも
しれませんが、深沢さんのためにも良い仕事をなさって下さい」
「はい…」
布美枝を見つめる郁子の目には涙が滲んでいた。
175 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:09:50.43 ID:AUFJu4xq
5.
それから1年ほどが過ぎて、ある作家の受賞パーティで深沢と郁子は再会した。
大手出版社の酒癖の悪い編集者の1人が、近くにいた顔見知りの深沢に絡んでいた。
大声で騒いでいたので周囲には人が集まってきて、その中には郁子もいたのだが
深沢の姿を見つけると、思わず人々の間を掻き分けて近寄って行った。
「ゼタは相変わらず経営が大変なんだろ? 成田出版との合併話を断るなんて、
お前さんも本当に馬鹿なことをしたもんだ」
何も知らないくせにと郁子は怒りで一杯だったが、深沢は黙って言わせていた。
「時代を見る目がないとは、編集者としての能力も疑問だがね」
へらへらと笑いながら罵る相手に、さすがに深沢の表情も変わった時、
人だかりの中から郁子が走り出てきて、酔った編集者の前に立ちはだかった。
176 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:12:33.01 ID:AUFJu4xq
6.
「あなたに何がわかるっていうんですか。深沢さんがどんな思いで雑誌を作っているのか。
深沢さんこそ本物の編集者です。側で見ていた人間には良くわかります」
「加納君…」
「あんたはゼタを辞めた秘書じゃないか? 何で今さら前の上司を庇うんだ?
まぁそれだけの美人だから、つまりお手付きという訳か」
郁子はあまりの屈辱に怒りで身体が震えたが、下品に笑う相手の顔に乾いた音を
響かせながら深沢の拳が飛んだ。深沢の顔も怒りで真っ青になっていた。
「おい、俺のことはともかく言っていいことと悪いことがある。彼女に謝れ」
編集者の取巻き達が深沢に飛びかかると、深沢も果敢に応戦して乱闘になったが
所詮多勢に無勢で形勢が悪くなると、見かねた周囲の男達が深沢を引き離した。
顔から血を流したまま深沢が会場から出て行くと、続いて郁子も後を追った。
177 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:14:55.58 ID:AUFJu4xq
7.
「加納君は会場に戻りなさい。久しぶりに会ったのに嫌な思いをさせて悪かったね」
会場から少し離れた公園で、深沢は水で濡らしたハンカチで顔を押さえながら
自分の後を追ってきた郁子に言った。
「血が出てますからすぐに手当てをしないと。深沢さん、会社に行きましょう」
「自分でやるから大丈夫だよ」
「救急箱がどこにあるかもご存知ないのにどうやって?」
思わず黙ってしまった深沢を促して、二人はそこから歩いてすぐの
嵐星社に行くことにした。
178 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:17:02.13 ID:AUFJu4xq
8.
勝手知ったる嵐星社で、郁子はてきぱきと深沢の傷の手当てを終えると、思わず言って
しまった。
「いくら血の気が多いからって、少しはご自分の身体のことも考えて下さい」
「いやぁ、面目ない。参ったな、加納君にはいつまでたっても頭が上がらない」
深沢は苦笑しつつも懐かしそうに郁子を見つめた。
「すみません。元はと言えば私を庇って下さったのに…」
「そんなことは別にいいんだよ。それより雄玄社で元気にやっているようだね」
「はいお陰様で、何とかやっています。あの… 逃げるようにゼタを後にしてしまって
申し訳ありませんでした」
「君には嵐星社を立ち上げてからというもの、資金繰から広告集めまで何でもやって
もらって苦労ばかりかけた。君がいなかったら、僕一人ではとてもここまでやって
こられなかった。君には本当に感謝している。でも知っての通り、赤字だらけで
大事な社員に退職金も払えず済まないことをした。この通りだ」
頭を下げる深沢を慌てて制して、郁子はその言葉だけで充分だと思った。
179 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:19:10.92 ID:AUFJu4xq
9.
「正直なことを言うと、最初は心に大きな穴が空いたようでね。つまらない意地なんて
捨てて、君を引き留めればよかったと自分を責めた」
「深沢さん…」
「でもある日、取材中の君を見かけた時、目が回るような忙しさのはずなのに、君は
生き生きと働いて幸せそうだった。ゼタに残っていたら、とてもそんな風には
生きられなかったと思うと、あの時引き留めなくて本当によかった」
郁子は胸が熱くなって、深沢を見つめたまま何も言えなくなっていた。
二人は言葉もなくしばらく見つめ合っていたが、先に深沢が口火を切った。
「今日は会えてよかった。すっかり遅くなってしまって悪かったね。外でタクシーを
拾うから、君はもう帰りなさい。これからもお互い頑張ろうじゃないか」
笑顔で差し出された右手を郁子はじっと見つめていた。
180 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:21:16.72 ID:AUFJu4xq
10.
堰を切って溢れ出る想いを抑えきれずに、郁子は深沢の胸に飛び込んだ。
「加納君!」
深沢は動揺を悟られないように、郁子の背中を軽く叩いてなだめたが、郁子は深沢の
首に腕を回し顔を近づけた。美しい唇が間近に迫ると、深沢の鼓動が一層早くなった。
「やめるんだ。こんなことをするなんて君らしくない」
深沢は郁子を傷つけないように優しく諭して、そっと腕を解いたのだが、郁子は
目に涙をいっぱい溜めて深沢を見据えた。
「そうですよね… 私は結局深沢さんを裏切ってしまったのですから。
本当は憎まれても仕方がないのに。馬鹿ですよね、こんなことして…」
郁子は鞄を持つと立ち上がり、深沢の側をすり抜けて帰ろうとしたが、
ドアの前で追いついた深沢に手首を掴まれた。背後から搾り出すような深沢の声が
聞こえた。
181 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:23:21.92 ID:AUFJu4xq
11.
「裏切ったとか、そういうことを言わないでくれ」
ドアを背にして郁子を自分の方に向かせると、深沢は思わず郁子を抱き締めた。
「君を忘れられなくなるのが恐かった。でも、忘れられないならそれも運命だ」
「深沢さん…」
深沢は軽々と郁子を抱き上げると、奥のソファーベッドにそっと横たえたが
郁子の細い身体は微かに震えていた。
「無理はさせたくない。今ならまだ引き返せる」
返事の代わりに郁子はそっと目を閉じた。
182 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:25:23.75 ID:AUFJu4xq
12.
深沢はゆっくりと唇を重ねてきた。最初は優しかったが次第に熱を帯びてきて
貪るようにこじ開けると舌と舌を絡ませる。それだけで郁子は身体が火照って
くるのを感じずにはいられなかった。深沢は、郁子の身に付けている物を
少しずつ剥ぎ取っていき一糸纏わぬ姿にすると、その均整の取れた肢体の
白い陶器のような美しさに目を奪われた。郁子が小さく震える声で言った。
「私だけは嫌です」
深沢も着ている物を脱ぎ捨てると郁子を抱き締めた。逞しい胸に顔を埋めて
深沢に全てを委ねる喜びと不安に郁子は身を任せた。
183 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:47:02.73 ID:AUFJu4xq
13.
唇をそっと重ねて徐々に耳元から首筋に這わせながら、深沢の大きな手は
郁子の胸の膨らみを包み込み、感触を味わうように柔らかく揉む。
指先で胸の先端をそっと摘まれると、身体の奥まで熱くなって思わず吐息が
洩れてしまう。硬くなった先端の一方を唇で吸い上げられ、舌で転がされると
指とは違う感覚に戸惑いながらも感じてしまう。
「あぁっ」
指と舌で同時に愛撫されると、あまりの快感に我慢出来ずに声を出してしまった。
身体の奥から熱い物が溢れてくるようで、郁子が恥ずかしさに耐えていると
とても綺麗だ…と深沢が熱っぽく耳元で囁いてくれた。
深沢の手が身体中を撫で回し、白い肌に唇を寄せて花びらを散らすように
愛撫の痕跡を残す。穏やかな愛撫に次第に不安な気持ちも消えていき、郁子は
ひたすら深沢に身を任せていたが、太腿を撫でていた深沢の手がそっと脚を広げ、
間に指を沈めようとすると、反射的に身体が強張ってその動きを拒んだ。
184 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:50:34.67 ID:AUFJu4xq
14.
心では受け入れているのに身体が拒むもどかしさ。しかし深沢は無理強いせずに
中をゆっくりと揉みほぐすようにしながら、少しずつ馴染ませていった。
「あ… はぁ…」
深沢の指に中を軽く掻き混ぜられると、奥から熱いものが溢れ出してきて
指に絡みついて水音を立てる。やがて深沢の指がそっと抜かれると
脚を大きく開かされて、郁子は逞しい身体に組み敷かれながら彼を受け入れた。
185 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:52:42.94 ID:AUFJu4xq
15.
「あぁっ、い、いやぁっ」
身体が引き裂かれるような痛みに思わず声を上げてしまい、申し訳なさで深沢を
見つめると、深沢は身体を離そうとしたので郁子は離れないで欲しいと言った。
再び深沢がゆっくりと身体を沈め、郁子の中に押し入ってくると、
深沢の手をぎゅっと握り締めて痛みを堪えながら全てを受け入れた。
優しく唇を重ねられると、身体の芯を貫く痛みが少しずつ和らいでくるようであった。
「少し動くよ」
深沢が郁子の反応を見ながら、腰を動かしてゆっくりと身体の奥を突くと
郁子は痛いような気持ちいいような不思議な感覚に襲われた。
「はぁ… ん…」
僅かに甘さが混ざった喘ぎ声に刺激されて深沢は腰の動きを早めた。
このままどこに連れて行かれるのか… 不安になりながらも、郁子は今はただ
大切な人を受け入れた喜びに満たされていた。
深沢の呼吸が次第に速くなり、小さく呻くと郁子の肢体の上で果てた。
186 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:54:49.41 ID:AUFJu4xq
16.
深沢が郁子の身体を拭ってやると、郁子ははにかむような微笑を向けてきた。
だがその頬に一筋の涙が伝うと、深沢は急に罪悪感に駆られたのだった。
「君の大切なものを僕が奪ってしまった…」
「いいえ、深沢さんでよかったんです… 深沢さんで… でも、もう…」
それ以上は言わなくてもわかっていた。夜が明けたら、また二人は別の道を
歩いて行くのだ。愛しているとも言えずに。それなら、この僅かな瞬間に
身体中の力が抜けてしまうほど愛し合いたい。深沢は郁子を強く抱き締めて
唇を重ねた。脚の間に手を伸ばし、まだ自分を受け入れた余韻の残るその場所を
探り、再び郁子を昇らせていく。
187 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:56:51.82 ID:AUFJu4xq
17.
「あぁ… だめ…」
深沢は郁子に伸し掛かかると一気に身体の奥まで貫いた。荒々しく突き上げられ
郁子は洩れ出る声が抑えられなかった。深沢の広い背中に手を回し、引き寄せる
ように抱き締めると、深沢もしっかりと抱き締めてくれた。深沢の胸に顔を埋め
ながら郁子は身体中に彼を感じ、やがて頭の中が真っ白になると、それから先は
何も覚えていなかった。
深沢はコーヒーの香りで目を覚ました。いつものように寸分の隙もない郁子がそこに居た。
「おはようございます。そろそろ起こそうと思っていました」
少し恥ずかしそうに伏目がちで挨拶をしながら、コーヒーを淹れていた。
「君がそんなことをしなくていいんだよ」
「久しぶりにやらせて下さい」
188 :
二人の道:2011/09/05(月) 16:58:58.39 ID:AUFJu4xq
18.
「加納君が淹れてくれたコーヒーはやっぱり旨いな」
美味しそうにコーヒーを飲む深沢の横顔を、郁子は黙って見つめていた。
「あの… 私、そろそろ行きます」
やっとの思いでそう言うと立ち上がって、深沢に深々と頭を下げた。
「そうだね。すっかり引き留めてしまった」
深沢も立ち上がると、いつもの笑顔で郁子に手を差し出した。
「道は違っても君はきっと良い仕事をすると信じている。でもくれぐれも無理せず
身体を大事にするんだよ。編集者は身体も資本だからね」
「はい…」
「あと… 仕事もいいけど、君を支えられる人と巡り会って幸せになって欲しい」
189 :
二人の道:2011/09/05(月) 17:02:12.96 ID:AUFJu4xq
19.
「深沢さん…」
郁子は差し出された手をそっと握ると笑顔で深沢を見つめたが、その目は泣いていた。
「深沢さんも、くれぐれもお身体を大切になさって下さい」
二人はしばらくの間、言葉も交わさずに見つめ合っていたが、郁子はもう一度頭を
下げると部屋を後にした。振り返ると涙が溢れそうだったので、ただ前を見て
早足で歩いた。廊下にはヒールの音が響いていた。
部屋に残された深沢は、一服しようと煙草に火を点けた。
俺は彼女を忘れられるかな… 窓の外を見やりながら自らに問いた。
私には深沢さんのようなことは言えない。郁子は歩きながらそう思っていた。
自分でもずるいと思うけど、彼にはずっと一人でいて欲しい。誰にも心奪われずに…
溢れる涙を抑えることも忘れて、郁子は歩き続けていた。
終
※書き込みが上手くいかず、ブツ切りの投稿で申し訳ありませんでした。
>>171 初投下GJです!しかも深沢×郁子キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
別れのH、切ないです…。
>>171 ぬおおお、ここにきて新規の書き手さん!しかも深沢さんと加納さんとはまた…!
GJ!なんだろう、この切なさ。ラストの去っていく加納さんの後姿と、遠い目の深沢さんが画で浮かんできた。
だんだん、また投下おねがいします!
>>169 応援はふみちゃんのお父さんの中の人も言ってたのを思い出した
子供はチーム作れるくらい欲しいとかベタな事いいながらいちゃいちゃしてほしい!
>>171 おお、深沢さんと加納さん!
切ないですなぁ…
>>192 「チーム作れるくらい」ワロタw
ここって、もしかしてドラマ系のスレで一番伸びてる?
>>193 このスレも放送当時のような勢いはなくても、投下はあるし賑わってるよね。
自分まだまだ熱が冷めないで未だに着メロとか「ありがとう」だし、DVD何度も見直すし、
もちろん、保管庫だって何回も読み直してるw長く平和に続いていってほしいな。
そういや、原案本が文庫化って本スレで見た気がする。中の人のコメつきらしい。絶対買う。
>>194 自分は着メロ布美枝のテーマだ
ありがとうは有線とかラジオとかで街中でふと流れてきたのを聴くだけでもじんわりきていけん…
9月6日はクリームの日だったらしい
祐綾もクリームを使って色々楽しいことをしたにちがいない
いちせんパロですので、興味ない方はスルーでお願いします。
南国リゾートでもフットサルでもなくてすみません・・・(クリームも出てこなくてゴメンw)。
恋人時代のふたりを旅行に行かせたかったものですから。自分はサッカーも南国リゾートも
書けそうにないので、他の職人さんに期待します。
前スレの「静電気でビリッとなった女の子が好き。」と言う、中の人の特殊な趣味が妙に
ツボにはまり、それを生かしてみました。そうすると自然「S」の方向になり・・・。
「なんかイメージと違う!」という方がいらしたらごめんなさいスルーしてください。
あと、綾子さんの旧姓について提案してくださった方、ありがとう!
198 :
可愛い女1:2011/09/09(金) 10:31:02.56 ID:m8hbJyQs
「あ〜あ、ボードの方がいいなあ・・・。靴だって楽だし、ウェアも可愛いし。今どきスキー
なんてやってる子いないよ〜。」
ちょっと調子が出てきてスピードを出し過ぎ、思い切り新雪に突っ込んでしまった綾子は、
急いで登って来て救出してくれた祐一に思わず泣き言を言った。
「綾子みたいなニブイ奴はボードやったら危ないの!・・・それに、変な奴が寄って来たら
イヤだからな。」
・・・実際のところ、祐一が綾子にスキーをすすめたのは、綾子があまり運動神経が良くない
こともあるが、ボードをやっているとナンパの心配があるからと言う理由の方が大きかった。
「綾子はスタイルいいから、絶対スキーの方が似合うって。」
祐一は小さいころから、家業の忙しい両親に代わってスキーの得意な叔父さんに冬じゅう
連れて来てもらっていたとかで、スキーもスノボもものすごく上手い。
学生時代、居酒屋でバイトしていた頃、盛り上がって何人かでスノボに行った。その時の
綾子は初めてということもあって惨憺たるもので、途中で祐一にスキーに変えられてしまった。
他のメンバーがある程度滑れるようになった後、祐一は綾子につきっきりで教えてくれた。
祐一のキツい教え方にちょっとムッとした綾子だったが、二人の距離がぐっと縮まったのは
あの時からだった気がする。
「・・・ん?なんだあいつ。まっすぐこっちへ向かってくる。・・・危ないな。」
すごいスピードで二人の方へ迫ってくるボーダーに気づき、祐一が綾子を庇って身構えた。
ザッと雪けむりを立てて止まったその男は、ゴーグルを上げて祐一に微笑みかけた。
「見覚えのある滑りだなと思ったら・・・やっぱお前か。」
「・・・沢入?!」
「なにー、いつから来てんの?」
「え・・・いや、今日来て明日帰るんだよ。」
「なんだよ、それっぽっちか?」
「・・・俺もう、うちの仕事手伝ってるから。本当は土日だって休みじゃないんだけど・・・。」
祐一は、傍らの綾子をちらっと見やった。
「あー、もしかして、その人・・・。」
沢入がそう言いかけた時、数人のボーダーがまたしても3人のそばに止まった。
「沢入さん、どうかしたんすか?」
「おう。誰だと思う?祐一だよ、佐々木祐一。」
「えっ?」「きゃー!うそ、ユウ先輩?」
女の子たちが黄色い声をあげた。
「あれ・・・このメンツ・・・?」
「相変わらずつるんでるんです。悲しいですよね〜。全員非リア充だもん。」
「・・・こいつは、違うみたいだぞ。」
199 :
可愛い女2:2011/09/09(金) 10:31:52.44 ID:m8hbJyQs
一同の視線が、沢入に指さされた綾子に一斉に向けられた。祐一は無意識に庇うように
寄り添い、皆に綾子を紹介した。
「あ・・・この人は平泉綾子さん。えーと、こっちは大学時代のサークル仲間で・・・。」
皆がくちぐちに名乗った。
「ふーん、この人が居酒屋の彼女?」
女子3人の内のひとりがそう言った。なんとなく感じの悪い言い方だ。
「バイトは学生時代。今は広告会社に勤めてるんだ。」
「えー、すごーい。」
「あ、でもちっちゃい所ですから。・・・私、デザイナーなんです。」
「ああ、そっち系?」
「やっぱ今は手に職だよな。佐々木もせんべい屋の若旦那だろ?気楽なご身分だよな。
俺なんか就職決まんないもんだからしかたなく大学院行ったけど、何の当てもないしな。」
その女性といい、沢入といい、なんとなくバカにした言い方に、綾子はハラハラした。
「・・・話はこれくらいにして、滑ろうぜ!・・・その板、アルペンだろ?」
「あ・・・でも、彼女、初心者なんだ。」
超初心者の綾子につきっきりで、祐一は退屈しているかもしれない。好敵手という感じの
沢入と思う存分滑らせてあげたい・・・綾子は気を利かせて言った。
「あ、私なら大丈夫。ゆうちゃんに言われたこと復習してるから。」
「きゃー!ゆうちゃんだってー。」
女の子たちがわざとらしく騒ぎたてる。綾子はしまったと思いつつ、祐一に目で『行って、
行って。』と合図した。
「ん・・・じゃあ、なんかあったら電話しろよ。」
一行は男子2人に女子3人。女の子たちはフリースタイルだけれど、サークルに入っている
だけあって、かなり上手い。
「カノジョさん、わりぃ。ちょっと借りるよー。」
祐一と沢入を先頭に、あっという間に去って行ってしまった。ひとり取り残された綾子は、
さっき転んだ時の雪がまだお尻に着いているのを、情けない思いで払い落とし、また
滑り始めた。初心者用ゲレンデを、祐一に言われたポイントを思い出しながら何度か滑り
降りる。祐一たちはずっと上の上級者用ゲレンデに行ってしまったようで、一度も出会う
ことはなかった。
楽しみにしていたスキー旅行なのに、ひとりぼっちで寂しく滑るはめになってしまった。
ものわかりのよい彼女なんかを演じなければよかった・・・綾子はちょっと後悔していた。
だんだん退屈になってきて、思い切って林間コースへ行ってみた。変化に富んだコースは
見た目ほど難しくなく、美しい雪景色に、寂しさが少しまぎれた。
「今の人はみんなスノーボードだけど、スキーもいいもんですよ。」
リフトで一緒になった初老の夫婦は、ウェアは古臭いけれど華麗に滑り降りていった。
あんなご夫婦になりたいな・・・綾子は少し胸が温かくなって、元気を出して滑り続けた。
200 :
可愛い女3:2011/09/09(金) 10:32:40.16 ID:m8hbJyQs
『昼メシにしよ?カフェテリアにいます。』
祐一から入ったメールを見て、休憩所にあがって来た綾子は、祐一がまださっきの一行と
一緒にいるのを見て、ちょっと暗い気持ちになった。ここで嫌な顔を見せてはいけないと
思い、綾子は皆の交わすほとんどわからない思い出話を微笑みながら聞いていた。
「・・・じゃ、俺たちはこれで。・・・楽しかったよ。」
食後、祐一がそう言ってくれた時、綾子はホッとした。板を履きながら、祐一は綾子に
平あやまりにあやまった。
「ごめん・・・綾子。ひとりで寂しかった?・・・おわびに午後はドレイになるから。」
「もぉ〜。いいよ、ドレイになんてならなくて。それより、ゆうちゃんが思いっきり滑れて
楽しかったんなら、私もうれしいし。」
「ありがと。・・・沢入さ、就職決まんなかったり色々あって・・・ちょっと屈折してあんなこと
言ったんだと思う。・・・でも、滑ることだけに集中したら、昔のまんまの奴に戻ったよ。」
午後はつきっきりで指導してもらい、綾子は昼前のちょっと不愉快な出来事のことは
ほとんど忘れていた。あっという間に冬の短い日は傾き、雪が舞い始めた。
「疲れただろ、綾子。今日はこのぐらいにして、フロ入っていこ。」
スキー場につきものの温泉施設。ほんわかした空気と温泉独得の匂いにほっとする。
「・・・髪も洗って来ちゃえよ。時間かかってもいいから。」
祐一は、そう囁くと綾子の手を一瞬だけキュッと握って、男湯に消えて行った。
(もぉ・・・ゆうちゃんたら。)
二人きりで泊まりで旅行に来るということは、もちろんそういうことも含まれているのだ
けれど、その事実が急に迫ってくる。脱衣所で服を脱ぎながら、自分の裸身がやけに
意識されてしまう。早くなる鼓動をなだめるように、綾子はそっと胸に手を当てた。
温まってから髪を洗っていると、戸が開いて2、3人の女性客が入って来る気配がした。
「あ〜あ、今日はちょっとショックだったな。」
「・・・ユウ先輩のこと?」
聞き覚えのある声が、祐一のことを話し出した。綾子は泡だらけのまま凍りついた。
「わざわざ私たちのなじみの場所に、彼女連れで来なくたって・・・ねぇ?」
「麻衣さぁ・・・。あの彼女さんのこと、どう思った?」
「どうって・・・ねぇ・・・美人だけど・・・。」
「うん・・・美人だけど・・・。」
(二人で)「デカイよねー。」
幸いなことに、3人は綾子とは離れたところで身体を洗いながら話に夢中で、綾子には全く
気づいていないらしい。当の本人がいるとは夢にも思わず、自分たちのユウ先輩を横から
さらった(と、彼女たちには思える)『彼女さん』についてくさし続けた。
201 :
可愛い女4:2011/09/09(金) 10:33:28.81 ID:m8hbJyQs
「美沙より、25センチは高いよねー。」
「ユウ先輩、『可愛い子がタイプ』って言ってたのにね。美沙の方がストライクじゃない?」
綾子は、3人の女子の中に、『美沙』と呼ばれている身長150センチそこそこの、色白で
華奢なとても可愛い子がいたことを思い出していた。
「沢入先輩の方が先に、美沙のこと好きだってカミングアウトしちゃったから、ユウ先輩、
言い出せなくなっちゃったんじゃない?」
「だよねー。ユウ先輩、あれからサークル来なくなっちゃったし。親友のために身を引いた
んだよ、きっと。」
「美沙も、まだユウ先輩のこと、好きなんでしょ?あれから沢入さんとちょっとつきあった
けど、すぐに別れちゃったじゃん。」
ここまで、ずっと黙ったままだった当の美沙という子がようやく口をはさんだ。
「・・・でも、バイト先に好きな人いるからっ・・・て断られたんだよ、私・・・。」
「あの彼女さんとは、卒業してからつきあい始めたって先輩言ってたし・・・本命じゃないの
かもよ?」
「次善の策・・・っていうやつよ、きっと。」
「もう・・・やめて。ユウ先輩が今あの人とつきあってるのは事実だし、今さらどうしようも
ないじゃない。」
憤慨しつつ面白がっているような他の2人に比べ、美沙の声はつらそうだった。
綾子はいたたまれなくなって、3人が湯舟に入り、雪景色に歓声を上げてへ窓際へ殺到した
のをさいわい、注意深く死角を選んで急いで浴室を出た。
「綾子・・・疲れた?さっきからなんか静かだけど。」
今日の宿泊先のホテルにチェックインし、少しだけドレスアップした綾子は、ホテルの
ダイニングで祐一と夕食をとっていた。
「え・・・あ、ううん。ここ・・・お料理おいしいね。」
「だろ?学生時代は、泊まるのは無理でも、メシだけ食いに来たりしてたんだ。」
それは、あの美沙さんたちと・・・?祐一が馴染みのスキーリゾートに連れて来てくれたことが
うれしかったのに、あの人たちと会ったことで、自分が昔の祐一のことをほとんど知らない
ことを思い知らされ、そのうえ知りたくもないことまで知ってしまった。さっきの3人組の
会話が頭から離れず、綾子はついつい言葉すくなになりがちだった。
「綾子・・・午前中放ったらかしにされたの、まだ怒ってるの?」
「え?・・・あ、そ、そんなことないよ。」
「ふうん・・・でも、いつもの綾子らしくないな。」
祐一は、心配そうに綾子の目をのぞきこんだ。修行中の身で休みなどないくらいがんばって
いる祐一が、無理をして休みをとり、せっかく連れて来てくれたスキーなのに・・・楽しく
しなければと思えば思うほど、笑顔がぎこちなくなってしまう綾子だった。
202 :
可愛い女5:2011/09/09(金) 10:34:48.55 ID:m8hbJyQs
「あーやーこ、これ、好きだろ?・・・俺の分もやるから、機嫌なおして?」
「べ、別に機嫌とか・・・。」
そう言いつつも、綾子は差し出された苺のパブロバに手を伸ばした。器に取りつけられた
金属の取っ手に手を触れたとたん、ビリッと静電気がはしった。
「いっ・・・たい・・・。もぉ・・・。」
祐一が下を向いて笑いをこらえている。
「ひどい・・・祐ちゃん。人が痛がってるのに・・・。」
「ごめんごめん。・・・さあ、カリッとしてるうちに食べろよ。」
綾子は気を取り直して上に乗っている大きな苺をフォークでえいやと突き刺し、大口を開けて
パクリと食べた。現金なもので、大好きな苺のデザートを堪能するうちに、少し元気が戻って
きたようだ。祐一はそんな綾子を、コーヒーを飲みながらやさしい目でみつめていた。
「・・・じゃ、行こっか。」
祐一が伝票にサインしている間、綾子はなにげなく部屋のキーを手にしていた。レストラン
を出てエレベーターで部屋へ向かう。特に考えもなく部屋のドアを開けようと綾子がノブに
さわったとたん、またビリッ。
「きゃっ・・・また。・・・もぉ〜!」
綾子は電気がはしった手をさすりながら、小さく足ぶみをした。祐一は、今度こそこらえられ
ないというように肩をふるわせ、口をおさえてむこうを向いた。
「ゆうちゃん・・・っ!」
ようやく笑いがやむと、綾子が腰に手を当てて仁王立ちしている。まずい。
「わざと私にドア開けさせたでしょ。知ってるんだから。祐ちゃんが、静電気でビリッと
なって痛がってる女の子見るの好きなの・・・。」
祐一は、綾子の痛む手をとって温かい手で包みこんだ。
「・・・ひとを変態みたいに言うなよ。好きな子のだけだよ・・・。」
もう片方の手で綾子を抱き寄せ、甘く唇を奪う。
「ん・・・ゆ・・・ちゃ・・・だめ・・・ここじゃ・・・。」
小さく開いたままのドアを押し開け、二人がもつれあうようにして部屋に入ったとたん、
何人かの客が談笑しながらエレベーターから降りてきた。
「ふ・・・ぅ・・・ぅうん・・・。」
ドア一枚へだててすぐそばを他人が通り過ぎていくというのに、祐一はキスを深め、舌を
からめながら、息が出来ないほど強く綾子を抱きしめた。
「ふう・・・危なかったね。」
唇を離した祐一は、いたずらっぽく笑ったが、綾子は早くも身体の力が抜け、祐一の肩に
すがりついていた。他人に聞かれてしまいそうな状況で、わざと弱いところをついて来た祐一を
にらむ瞳はうるんで、文句を言いたくても息が弾んでなかなか言葉が出てこない。
「あや・・・大丈夫?抱っこしてあげよっか?」
「・・・いい!」
祐一が綾子を呼ぶ呼び名が、早くも「あや」に変わっていることに気づき、綾子は力が
入らない足に無理やり力を入れて部屋の奥へずんずん歩いて行った。部屋に入った時から
二人だけの時間が始まることは覚悟していても、今日のいろいろな事でなんとなく素直に
なれない綾子だった。
203 :
可愛い女6:2011/09/09(金) 10:35:37.84 ID:m8hbJyQs
「ゆうちゃんって・・・S、だよね・・・。」
ベッドに座るといきなり押し倒されそうなので、用心して綾子は窓際の椅子に座った。
「ん・・・?俺はムチとかローソクとか使わないぞ。」
祐一は、綾子の向かい側の椅子には座らず、綾子に近いベッドの端に腰かけた。
「・・・そーいう意味じゃなくて・・・!」
「んー・・・。ちょっと困ってる綾子が好き・・・っていうのはあるな。」
「静電気でしびれてるところとか?・・・やっぱりSじゃん!」
「俺の中のS要素を呼び起こすところが、綾子にはあるんだよ。」
「それって・・・私がM女だってこと?」
「んー・・・ひらたく言うと、そうかな。」
「ち、違う・・・私、そんな変態じゃないもん!」
「変態とか、変態じゃないとか、そんなことどうでもいいじゃん。」
祐一は立ち上がると、綾子の座っている椅子の足元にひざまずいて、シフォンのチュニック
のすそに手を突っ込んだ。
「・・・固くなってる・・・。感じてるくせに。」
探しもせずに一発で乳首をつまみ、きゅっとねじりあげる。
「ひゃっ・・・ん。」
たったそれだけのことで、綾子は椅子から跳びあがりそうになり、両手で椅子の肘かけを
つかんで身体を支えた。祐一は綾子の脚をわざと拡げるようにして身体を割り込ませると、
チュニックをまくりあげてブラをずらし、痛いほど尖っている淡いピンクの突端を両方とも
指でつまんでこすりあわせた。
「ゃ・・・ぁ・・・ぁっ・・・あん。」
強がっていた綾子の顔が蕩け、椅子の上でどうしようもなく身悶える。
「・・・脱いで。」
祐一が立ち上がって命じる。急に取り残された綾子は震えながら身を起こし、チュニックを
脱いだ。レースとリボンのついた可愛いキャミソールとブラがずり下ろされ、尖った
乳首が両方とものぞいている姿は娼婦のようでとても羞ずかしい。光沢のあるパンツを脱ぎ、
下着をおろそうとして、それがあり得ないほど濡れているのに気づいて脱ぐのを
躊躇した。祐一の方をうかがうと、ベッドに腰かけて上着を脱いでいる。彼が見ていないうちにと
急いで下着をとったのに、ちょうど上着を脱ぎ終わった祐一にしっかり見られてしまった。
「・・・来いよ。」
祐一がうすく笑って立ち上がり、手をさしのべる。近づくと奪うように抱きしめられ、
唇が重なり合った。綾子がまた脚に力が入らなくなって祐一にしがみつくと、祐一は太腿を
綾子の両脚の間に差し入れて支えてやった。
204 :
可愛い女7:2011/09/09(金) 10:36:32.20 ID:m8hbJyQs
「ふぁ・・・ぁん。ぁっ・・・ぁ・・・ん。」
祐一が腰を抱いて綾子を乗せた脚を揺すぶると、綾子の濡れた女性に引き締まった筋肉が
あたり、綾子は夢中で祐一の太腿に秘裂をこすりつけた。
「はぁ・・・ぁ・・・ぁあん・・・ゆ、うちゃ・・・。」
太腿から滑り落ちそうになり、必死で祐一の腕にすがる。祐一は腰を抱いたままゆっくりと
かがんで綾子を脚の上からおろした。無情にも愛撫を中断され、綾子はくたくたと床の上に
座りこんだ。祐一はベッドに腰かけ、綾子が間に入れるよう大きく脚を開いた。
「キスして・・・?」
床に手をついて大きく息をしていた綾子はのろのろと這い寄り、祐一の股間に顔を寄せた。
もう充分綾子を貫けるほど漲っている屹立を目の前にして、綾子は身体中の力が抜けていく
ような気がした。逞しい幹から発散される熱を感じながら根元に口づける。何度かキスして
から、舌で舐め始める。舐めている所とは違う場所に頬や髪が触れ、祐一が少したじろぐ
気配がした。大きく口を開けて呑みこみ、口いっぱいの雄根に口壁をこすられて夢中で
頭を動かす頃には、秘裂からあらたな蜜が涙のようにこぼれ出していた。
「・・・イかされちゃいそうだから、それくらいにして・・・つけて。」
手渡されたものは、二人をさえぎる無粋な人工物なのだけれど・・・祐一は、それすらプレイの
一環にしてしまっていた。
「ゆ・・・ゆうちゃんがつけてよ。」
「この間教えただろ?・・・俺がコソコソつけてる間、綾子がただ待ってるっていうのも
興ざめだし、綾子がつけてくれればエロい気分が盛り上がるから・・・たのむよ。」
「もぉ・・・。」
綾子はしかたなく、祐一に教えられたとおり渡されたものの先端をつまんで空気を出し、
それを祐一の先端にかぶせた。ゆっくりとしごきながら丸まった縁を伸ばしていく。
「爪、立てないで・・・破れちゃうから。できたら、口でやってくれないかな。」
「そ・・・そんな器用なこと、出来ないよ・・・。」
綾子はなるべく指の腹を使って膜を伸ばし、時おり唇も使ってなんとか根元までかぶせた。
半透明の膜から透けて見えるみなぎり切った雄根の肌合いはたまらなく淫らで、さっきから
ほとんど触れられず、疼きっぱなしの秘口がズキズキと痛いほど充足を求めていた。
「綾子・・・顔、真っ赤。」
「もぉ・・・ゆうちゃん、絶対面白がってる・・・。」
祐一が脇に手を入れて綾子を抱き起こし、綾子を乗せたまま後ろへ倒れた。抱きしめ合った
ままベッドの上を転がり、祐一が上になってやさしく口づけた。やっと充たしてもらえる・・・
そう思ったのもつかの間、もう一度くるりと反転して、綾子が上にさせられてしまった。
205 :
可愛い女8:2011/09/09(金) 10:37:42.80 ID:m8hbJyQs
「あやが・・・挿入れてみ?」
「え・・・やだ・・・出来ないよ・・・。」
「上になったこと、あるだろ?」
「だって・・・あれは途中からで・・・。」
「だいじょうぶ。騎乗位って、ちゃんとあるんだから。ほら・・・。」
祐一に肩を押され、綾子はしぶしぶ身体を起こした。
どうやったらこの角度に合わせられるか、羞ずかしそうに脚を拡げたり、腰を浮かせたり
する綾子を、祐一は下から余裕の表情で見ている。
「見・・・ない・・・で・・・!」
「だめだめ・・・初めてなんだから、見ててあげなきゃ。手、つかってもいいからさ。」
猛烈な羞ずかしさをこらえ、屹立に手を添えて自分の秘所にあてがうと、腰を落とした。
固い肉弾が秘襞をかきわけ、押し入ってくる力に圧倒され、綾子は大きく開いた脚を思わず
閉じて動きを止めてしまう。
「こ、これ以上・・・無理・・・。」
「こんな中途半端で止めちゃダメだよ!・・・力抜いて、体重かけてみ。」
言われたとおりにすると、剛直はじりじりと綾子の中におさまり、綾子は大きく吐息をついた。
「すっご・・・ビショビショだよ。」
綾子の中からあふれ出た愛液が、祐一の下腹部をも濡らしている羞ずかしい様子を正視でき
なくて、綾子は目を閉じた。
(ゆうちゃん・・・なんだか最近、意地悪じゃない・・・?)
祐一と初めてこういう関係になってからまだ半年も経っていなかった。祐一は綾子の初めてを
やさしく奪い、辛抱づよく綾子の心と身体を慣らしてくれた。綾子が悦びを知るようになると、
祐一は次々と新しいことを教え、二人の交わりは急速に深く激しいものとなっていった。
身体は強い快感に充たされながら、綾子の心はあまりに急激な性愛の深まりに戸惑っていた。
(私・・・あんまり大切に思われてないのかも・・・。元々、私から告白したみたいなもんだし・・・。)
祐一と綾子が学校を卒業してバイトを辞める時、バイト仲間が開いてくれた送別会の後、
(もう二度と会えなくなる・・・。)たまらない思いで、綾子は去っていく祐一の後ろ姿を
追いかけた。ケンカばかりしていたけれど、綾子は二人の間だけに流れる温かい想いのような
ものを感じていたのに、祐一はとうとう何も言ってくれなかった・・・。祐一に追いついた時、
小雨の中ずっと走って来た綾子の髪には、雨粒がきらきら光っていた。
「待って・・・ください。もう会えないなんて、イヤです・・・。」
祐一は綾子の髪の雨粒をそっとはらうと、ニッコリ笑ってこう言った。
「じゃ・・・俺たち、つきあおっか?」
206 :
可愛い女9:2011/09/09(金) 10:46:57.30 ID:m8hbJyQs
(軽い・・・軽すぎる・・・。やっぱり、最初から私の片想いだったのかな?)
そう思うと、いろいろ思い当たることもある。初めて結ばれた時、祐一は「将来結婚しよう。」
と言ってくれた。会うたびについ結婚に対する夢を祐一に語ってしまう綾子を、祐一はどう
思っているのだろう。ふたりはまだ若く、祐一はせんべい職人になる修行を始めたばかりで
結婚どころではないはずなのに・・・。
(私・・・ゆうちゃんに重たい女って思われてるかも・・・?)
「重た・・・あや、重いよ。」
現実の祐一の声に、心を読まれたのかと心臓が跳びあがる。
「じっとしてちゃダメだろ?動いて・・・。」
あわてて腰を前後させると、甘い衝撃につらぬかれ、綾子は思わず声をあげた。
「あせらないで・・・。いつも俺がやってるみたいにしてみ。」
羞恥と快感に耐えながら、いつもの祐一の動きを思い出して腰を浮かせたり沈めたりしてみる。
「うわ・・・すげーエロい。あやも見て・・・。」
おそるおそる目をやると、蜜にまみれてテラテラと光る剛直が、秘裂を押し拡げながら
出入りする様はたまらなく淫靡で、綾子はたまらずに目をそらした。
「ゆうちゃ・・・お、ねがっ・・・これ以上、ムリ・・・。」
絶え間なく強い快感が押し寄せてくるのに、この体勢を保ったまま達するなんて、綾子には
とても不可能に思えた。
「自分のいいトコ探してみ?・・・手伝ってやるから。」
祐一が下から何度か突き上げて、リズムを作ってやると、綾子は少し前かがみになって
ベッドに手をつき、腰を前後させ始めた。
「ぁ・・・ぁあ・・・ん。」
祐一の先端がある部分にあたり、しびれるような快感が押し寄せてきて、綾子は啼きながら
そこをこすりつけるように腰を揺すった。
「ふぅん・・・そこが快いんだ?」
からかうような祐一の言葉に、羞恥でカッと顔が燃えながら、それでも動きが止まらない。
「あや・・・すごく、可愛いよ・・・。」
「ゃっ・・・ぁああ―――――っ!」
総身を突き抜ける絶頂にみまわれ、綾子はガックリと祐一の上に突っ伏した。
「よしよし・・・よく出来ました。」
祐一は小さい子にするように綾子の頭をポンポンして、自分の上で震えている綾子の、
少し汗ばんだ身体をギュッと抱きしめた。
207 :
可愛い女10:2011/09/09(金) 10:47:59.80 ID:m8hbJyQs
「んぁう・・・。」
強く抱かれたまま、くるりと体勢を入れ替えられ、綾子は思わずヘンな声が出てしまった。
「ん・・・んぅ・・・。」
甘く唇を食べられ、やさしい目で見下ろされる。
「あやのイくとこ、一部始終見ちゃった・・・すごく可愛かったよ・・・。」
「わ、私・・・可愛くなんか・・・。」
「ん?どうしたの?・・・可愛いって言われるの嫌い?・・・んじゃ、キレイ、色っぽい・・・
いや・・・やっぱ、可愛いが一番しっくりくるな。」
まるで「可愛い」の大安売りだ・・・。綾子には、祐一がそう繰り返すことで自分に言い聞かせて
いるのではないかとさえ思えてくる。
「もいっかい、可愛いとこ見せて・・・。」
祐一が上体を起こして腰を使い始める。肩にすがってきた手をつかみ、指と指をからませて
シーツに押しつけ、大きなグラインドでかきまわすと、綾子はたまらずに身体をのたうたせた。
「んぁ・・・だっ・・・ゆ・・・ちゃ・・・ぁあっ・・・。」
綾子の膝の裏に腕をまわし、思い切り持ち上げる。少し浅めに挿入れた雄根で天井を突く
ように責めると、綾子は首を激しく横に振ってシーツをわしづかみにした。
「ここ・・・快いんだろ?・・・ほら・・・正直に言えよ・・・。」
「そっ・・・んな、こと・・・んんっ・・・。」
「ちゃんと言わないと、イかせてやんないぞ。」
もう少しで到達しそうなのに、祐一は意地悪く動きを止めた。綾子は身悶えて懇願した。
「ぁあっ・・・ゃ・・・ん・・・そ、こ・・・快いの・・・やめない・・・でぇっ・・・。」
「素直で、可愛いよ・・・あや。」
「も・・・ゃ・・・そこぉ・・・・い・・・ぁああ―――――!」
弱いところを思う存分突かれ、綾子は真っ白な世界に突き落とされた。身も心もバラバラに
砕け散るような絶頂感の中で、このひっくり返ったカエルの様な姿も、羞ずかしい言葉を言わ
されることも、祐一にされるのならかまわないと思った。だが同時に、もしかしたら自分は
おもちゃにされているだけなのかもしれないと言う恐ろしい疑念が綾子の胸をふさいだ。
208 :
可愛い女11:2011/09/09(金) 10:48:49.56 ID:m8hbJyQs
「どうしたの・・・綾子?イッたのになんか悲しそうなんだけど・・・。どっか痛かったら
ちゃんとそう言えよ。」
気がつくと、二人のつながりはもう離れていて、祐一が心配そうにのぞきこんでいた。
「・・・ゆうちゃん・・・。」
「ん?・・・なに?」
「や、やっぱり、いい・・・。」
「言いかけてやめるなよ。気になるじゃん。」
「・・・ゆうちゃんの、好きなタイプって・・・どんな?」
「なんだよやぶから棒に・・・。んー、まあ・・・可愛い子がいいかな・・・って、なんでこんな時に
そんなこと聞くんだよ・・・ぅわ、なんで泣くんだよ?!」
綾子はもう耐え切れなくなって両手で顔をおおって泣き出した。祐一は途方にくれて、綾子の
しゃくりあげが少しおさまるまで、ただ抱きしめていてやった。
「・・・なんかあったのか?・・・もしかして、あいつらになんか言われた?」
「・・・面と向かって、言われたわけじゃないけど・・・。」
綾子は温泉施設であったことを話した。祐一は聞き終わると、昔のことを話してくれた。
「俺と沢入はさ・・・1、2年の頃はスノボに燃えまくってて、本当にライバルで親友だった。
ホモ疑惑が出るくらい仲良かったから、3年の時沢入が美沙のこと好きだって打ち明けて
くれた時、これで疑惑も晴れると思って・・・ってのは冗談だけど、心から応援したよ。
でも、美沙は俺に告ってきて・・・俺はつきあえないってはっきり言ったんだ。気まずくて
合宿はバックれたんだけど、沢入はそこで大怪我して、留年確定しちゃったんだ。
俺が見舞いに行っても会ってもくれなくてさ。俺はサークルにはそれっきり・・・。」
そう言えば3年の冬ごろから、祐一は居酒屋のバイトのシフトを増やし、毎日のように
厨房に入っていた。
「俺も将来のこととか考え始めて・・・料理好きだし、将来食品の仕事するんなら調理師免許
とるのもいいかな、とか思って、それからはバイトに燃えてた。まあ、バイトにのめり
こんだのは、他の理由もあるけどね・・・。」
祐一は意味ありげに綾子の顔を見たが、綾子は自分の心配事で頭がいっぱいで気づかない。
「ゆうちゃんは・・・沢入さんのために身を引いた・・・んだよね?」
209 :
可愛い女12:2011/09/09(金) 10:50:24.99 ID:m8hbJyQs
「はあ?・・・何のこと?」
「ゆうちゃんも、美沙さんのこと・・・好きだったけど、沢入さんに遠慮して・・・。」
「か、勝手に決めるなよ。沢入に遠慮なんかしてないよ。・・・俺はそのころもう好きな奴
いたから・・・だから断ったんだ。」
「だ・・・誰?」
「お前ひとの話ちゃんと聞いてんのかよ?・・・まあそいつはニブイくせに生意気な奴なんだけど、
じっくり攻めればバイト終わるまでにはなんとか落とせるかなーって思ってたし。」
祐一はニヤニヤしながら、驚きの表情のまま固まっている綾子の乳首をきゅっとひねった。
「ゃんっ・・・!」
綾子は胸を押さえて後ずさった。
「綾子って、身体は敏感なのに、心はニブイのな。」
「に・・・鈍い鈍いって言い過ぎ!」
「俺がこんなに惚れてるのに・・・もっと自分に自信もてよ。」
「だ・・・って、ゆうちゃん、『可愛い子がタイプ』って・・・。」
「だって、綾子って可愛いじゃん。」
「か・・・可愛くなんかないよ・・・デカいし。」
「・・・可愛いよ・・・こことか。」
さっきからつままれ続けて勃ってしまっている尖りを強く吸われ、綾子は大きく身悶えた。
「ここも・・・んー、ここもだ。」
あらがおうとする手を押さえつけ、唇の届く範囲にくまなく口づける。最後に甘く唇を重ね
られ、綾子は身も心も蕩けてしまった。
「綾子ってさ・・・パッと見女王様系なのに、中身はMっぽかったり、可愛い下着つけてたり
・・・そのギャップがいいんだよな。」
「M・・・じゃ、ないっ・・・たら・・・。」
「認めちゃえよ?・・・ちょっと意地悪された方が感じる・・・って。」
「そ・・・そんなことないもん!」
「あやが可愛いいもんだから、俺またそそられちゃうんだよなー。エンドレスってやつ?」
祐一は綾子の胸の突起を執拗に責めながら脳天気にノロケ続けた。紅く色づいた実はいよいよ
尖り、綾子の中心部へしびれるような快感を送ってくる。祐一の言葉は嬉しいのだけれど、
綾子は感じてしまってうまく会話が続けられない。
210 :
可愛い女13:2011/09/09(金) 10:51:36.36 ID:m8hbJyQs
「な・・・んで、こういう・・・時だけ「あや」って呼ぶ・・・の?」
「バッカ・・・。気持ちよすぎて「綾子」とか長ったらしく呼んでられないだろ?」
「あや」も「綾子」もたいして変わらないのに・・・綾子は泣き笑いの表情になった。
「好きな子とつきあえて、そいつが・・・俺が初めてで・・・そのうえエッチの相性抜群とか・・・
俺ってすげー幸せもん?」
祐一は綾子の手をとって、またきざしてきた雄根を握らせた。
「約束して・・・一生、俺としかセックスしないって・・・。」
「・・・ぅ・・・ん・・・やくそく・・・私、ゆうちゃんだけだよ・・・。」
綾子はふるえながら、一生懸命涙にかすむ目で祐一を見てうなずいた。
「・・・そんじゃ、つづき・・・。ここも、可愛いな・・・いや、ここも甲乙つけがたい・・・。」
祐一はちょっと照れて目をそらすと、今度は綾子の胸から下にキスし始めた。
「んー、脚、すべすべ・・・膝も可愛い・・・お尻も・・・。」
綾子の長くてまっすぐな脚を持ち上げ、下僕のように口づけしながらまた上がってくる。
「・・・でもやっぱ、ここがいちばん・・・かな?」
三角形の秘められたしげみに口づけられ、綾子がぴくりと身を固くした。
「ゃっ・・・ダメ・・・だ、め・・・そこはっ・・・。」
両腿をつかんで拡げようとする祐一の手を、綾子は必死でおさえた。
「なんでー?こっからが本題なんだぞ。」
逃げようとする綾子の手を祐一がつかんで、そのまま両腿をおさえる。先ほどの激しい行為で
紅く充血してふくらんだ綾子の女性に、祐一は音をたててキスした。
「ひぁっ?!ゃっ・・・ダメ・・・だったら・・・ぁあ・・・ん・・・。」
身体のすみずみまで灯された官能の火が一点に集中し、綾子をまた翻弄していった。
「ぁ・・・ぁっ・・・ゅぅ・・・ちゃ・・・ん・・・ゅうちゃ・・・ぁあ―――――っ!」
しんしんと雪は降り積もり、あたりの物音を吸い込んで、この世界に祐一と綾子しかいない
ような錯覚を起こさせる。静かな部屋の中で、綾子の甘いあえぎが急速に高まっていった。
>>198 ありがとう〜〜
綾子かわいすぎて、特にお風呂場シーンがドラマみたいでドキドキ
そして中の人もしょっちゅう「デカイ」と言われ続けてるんだろうなあ
>>198 GJ(´∀`)
平泉とか非リア充とかワロタw
ゆずのいちごって歌がこのスレ向けの歌に聴こえてしまう
>>198 フハッ、らぶいちゃキター‼ GJ!
優しく束縛するゆうちゃん素敵です。
レス遅くなったけど、実は昨日リアルタイムで読んで
その後中の人のスタパ視ている時これ思い出して
ものすごくニヤニヤしながら視てたら家族にキモがられましたwww
>>198 GJ!
ゆうちゃんが綾子さんにベタ惚れなのがすごいかわいい
好きなのも快いのもわかってて言わせる…さすがSw
>>212 歌詞改めて読んだらたしかにこのスレ向けだw
>>198 GJ!付き合って間もない頃の不安みたいなのが初々しくてよかったよ〜。
エロを開拓するドS祐ちゃん…フェラへの誘い方もスマートだw
自分は「(綾子さんの旧姓)もう平泉でいいんじゃないかw」を提案した人間ですが、採用してもらってありがとう!
綾ちゃんの実家って埼玉にあるんだっけ?
居酒屋のバイトって帰り遅くなりそうだから、近くに一人暮らししてたのかな?とふと思った。
保管されてるSSを読んでいて思ったんだが、ゲゲ(祐ちゃん)のブツは基本、巨根妄想だが、
布美ちゃん(綾子さん)のおっぱいは小ぶり、というのがここの住人の共通意識ぽい?
まあ、おっぱいはあの見た目から想像しやすいからなんだけどw
>>216 その設定だと、祐ちゃんが通いやすくかつ、Hもしやすくとてもいいと思います。
いけん、「祐ちゃん」を「佑ちゃん」に空目して
スガちゃんで絵が浮かんでしまったw
>>218 つられて想像してしまったじゃないか!クソワロタw
>>216 専門時代一人暮らしも
>>217に同意な理由で萌えるけど
ずっと実家でなかなか色々できなくてゆうちゃんがもやもやしてても萌える
いや、でも専門時代は綾子さん一人暮らしで思う存分イチャイチャできてたのに
綾子さんが就職したら実家戻っちゃってイチャイチャできなくなってそこにゆうちゃんのお父さんが倒れて
もっとイチャイチャできなくなって…そうだ結婚したらずっと一緒だみたいな流れもおいしいかもしれない
ふみちゃんの中の人が雑誌とか他のドラマで着てたタイトなセーターがすごく似合ってたので、
是非ゲゲさんやゆうちゃんにノーブラセータープレイをしていただきたい
得にゲゲさんはいつも着てるやつを着せたら胸への愛撫が省けて同時にいじれる範囲広がってイイんじゃないだろうか
今日はふみちゃん(綾子)の中の人の過去ドラマを見てたら、
手作り弁当を一緒に食べ、口の横についた米粒を掬って食べるというシーンが出てきて、そこで激しく妄想萌えし、
その後、ゲゲ(祐ちゃん)の中の人の出演バラエティーの肉まん半分こエピでも妄想萌えしたw
226 :
224:2011/09/17(土) 11:44:17.45 ID:KHOahKjC
なにげに最近スガちゃんをあちこちで見る。ゲゲと一緒の映画公開間近のせいもあるか。
そういやスガちゃんも後半で、同窓会で再会した子持ちの同級生と結婚したという、
ネタ的には面白い設定があった気がするけど、なんかエロ妄想がイマイチうまくできない。
>>228 菅ちゃんの嫁が映像で出てきてたらもっと妄想できたんだけど、台詞上だけなのが惜しいよなぁ
そういえば相澤くんが結婚したのが中野知花って名前らしいんだけど、
アシに居た中野くんの妹だったりするんだろうかw
もう一つのまとめサイトが見れない(´・ω・`)
メンテ中かな?と思ってるけど。自分もここ三、四日見れなくなってる。
なんとなくゲゲさんの中の人が執事してたのを見たけど妄想の燃料にしづらいのなんのw
執事役やったことがあるとか貴重なのに惜しいな…
ゆうちゃんはまだ妄想の予知があるけどゲゲさんはふみちゃんに従う事はまずないだろうしw
>>232 ちょっこしだけどネプリーグに執事の頃のゲゲが出てたな。黒髪だったけど。あれはヅラだったのか。
自分はそのドラマ見たことないけど、執事とゲゲは確かに共通点がないな。
布美ちゃんの誕生日に何でもお願いきいてやるとか?せいぜいそんなんしか…。
ネプリーグはゲゲと倉さんとスガちゃんが揃ってたし(あと小峰さんさえいれば!)
水木しげるロードが答えのとき、「俺の名前だ」とか中の人が言ってて嬉しかった。
あと、後半で「ちょいちょいエロいですよ」発言とかもw
ネプチューンからは「朝からエロい」認定されてたw
このスレ的にお勧めな曲ってある?
もちろん「ありがとう」は鉄板だけどそれ以外で
>>234 ここと似たようなスレで何度か挙がってる「Wish」
236 :
235:2011/09/22(木) 16:50:06.10 ID:rgve5x5n
>>235 あのドラマのときはなんとも思わなかったのに、ゲゲゲ以来この歌を聞くと
いいんですよ、男性目線の歌詞が特にね
wishは中の人の歌で一番好きだ
自分的にはゆうちゃん目線の曲ってイメージ
事後イチャイチャの後に寝顔を見つめながら考えてるimg
WISH流しながら、中の人のSweet roomで女優をチェンジして妄想
WISH流しながら、中の人のSweet roomで女優をチェンジして妄想
>>237 分かる
中の人や当時のスタッフも今こんな所で注目を集めてるとは思わなかっただろうな
自分も萌えるとは思ってなかったw
>>240 + +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
『ありがとう』はやっぱりふみちゃん目線の曲なんだよね?
でも「まぶしい朝に〜」のあたりで窓を開けてるのがふみちゃん?とも思ってしまって
しげーさん目線だと思いながら読んでもまた萌える
眩しい朝に苦笑いしてるのは、昨日の夜のことが照れくさいからですね。
>>221 亀だがモヤモヤした時、一体どうやって処理してたのか考えてしまった
ハロウィンなお店が増えてきてついトリックオアトリートをふみちゃんに迫るしげーさん妄想をしてしまう
なんか悪魔くん方面の知識として知っててもおかしくない気がするんだ
お菓子=ふみちゃん
いたずら=ふみちゃん
…あれ(*´д`)?
>>247 ゲゲのときは「ひとりでできるもん」という名作があったなあ。(結局ひとりでできなかったが)
祐ちゃんもきっと自分で自分を慰めているときに急に綾子さんから電話がかかってきて、
ちょ、待っ、今はヤバい!的なときがあったはずだ。
それにしてもハロウィンまでエロネタ妄想できるここの住人の感性の豊かさに脱帽だw
252 :
しづ心なく1:2011/09/29(木) 14:37:18.45 ID:S7k4ZuKh
「ぇ・・・?・・・やっ・・・ゃあっ!!」
満開のさくらの上の月が朧にかすむ春の宵。カーテンもないガラス窓から射し込む淡い
月光が、二人だけのみそか事を照らし出している。そのささやかだけれど幸せな愛の時間に
似つかわしくない悲鳴が、小さな部屋の甘い空気を引き裂いた。
「やめて・・・やめて・・・おねがい。」
羞ずかしすぎる行為に、思わず声をあげてしまったフミエは、二階の住人を慮ってあわてて
声をひそめ、やめてくれるよう必死で茂に懇願した・・・。
抱擁と口づけから始まり、身体の其処ここへの愛撫に息をはずませながら、フミエは
この後の展開を思い描き、羞恥と期待の両方に肌を染めていた。すべてが初めてだった
フミエも、結婚からふた月あまりが過ぎたこの頃では、すこしは男女の交わりを知ったと
思えるようになっていた。
・・・ところが、茂のその後の行動は、フミエの想像とは全く違っていた。胸乳のあたりの
肌を味わっていた茂が次第に唇を下へと這わせ、臍や腰骨を経て、フミエの両脚の間に
身体を入れると、秘所に口づけたのだ。
「ぃやっっ・・・!!そげなことしたら、だめぇっ・・・。」
フミエは必死で腰をずらして逃げようとしたが、茂に左脚を押さえられていて動けない。
「こっちの脚は、自分で押さえとれ。」
脚を閉じようとして夢中で茂の頭をはさんでしまっている右脚を肩で押さえつけ、フミエの
右手を取って太腿を持たせる。
やがて信じられないことが始まった。すでにあふれ出している蜜をすくった舌が会陰を
くすぐり、花びらの陰をさぐり・・・ついには茂の指と雄根しか知らない秘口を侵し始めた。
「やぁっ・・・!だめっ!・・・お、男のひとが、そげんことしたらいけんっ・・・!」
「・・・なひて、いへんのだ・・・?」
そう聞く茂の声が、少しくぐもって聞こえるのも耐え難いほど羞ずかしい。
「だって・・・だっ・・・ぁ・・・ぁあっっ・・・。」
この行為に激しい抵抗を覚えながらも、腰が勝手に跳ね上がるほど感じてしまう。
フミエの世代の女性は、常に男性を敬い、丁重に扱うよう教育を受けてきている。厳しい
家庭に育ち、性に関してはほとんど無知のまま育ってきたフミエにとって、こんなことは
まったく青天の霹靂とも言うべき、受け入れがたいものだった。
「やめ・・・て・・・ください・・・おねがい・・・。」
フミエの弱々しい懇願など聞こえていないかのように、茂はさらに命じた。
「ちょっこし・・・ひらいとれ。そう・・・そげだ。」
フミエの左手をとって、人差し指と中指の二本でフミエの最も敏感な核を剥き出しにさせる。
熱い唇が押しつけられ、吸いあげられると、もう理性も何もかもふっとんで、フミエは
腰を躍らせながら悲鳴を上げた。
253 :
しづ心なく2:2011/09/29(木) 14:38:20.88 ID:S7k4ZuKh
「ひぁぁっっ・・・ぁっ・・・ぁあ―――――!!」
秘口に指が挿し入れられ、中を擦りながら、舌が陰核を圧迫する。フミエはもう右脚を
押さえた手も、いやらしい役目を与えられた手も外してしまい、両手で口を押さえた。
こみあげる絶頂の叫びは、封じ込めようとしても指の間から漏れ出し、抑えられた熱は
内側からフミエを灼きつくした。
フミエの絶頂を味わいつくし、ようやく口を離した茂が上にあがってきた。
顔をおおったまま震えているフミエの汗ばんだ身体を抱きしめ、鼻先をフミエの頑なな
両手の間に突っ込んで、まるで罪ほろぼしのように甘く口づける。
「ん・・・ふ・・・。」
さっきまでの激しい責めとは対照的な、甘やかすような口づけにたやすく籠絡され、フミエは
両腕を茂の首に巻きつけ、痺れる身体をすり寄せた。だが茂はそんなフミエの腕を解き外し、
身体を起こした。急に放り出されたフミエは、さらされた裸身をかばうように胸を抱きかかえ、
両脚を閉じて子供のように身体を丸めた。
その腰の下に手を入れて、ぐいと引き起こす。うつ伏せにさせられたフミエは、あわてて
前に両手をつき、すがるような眼をして振り返った。
「ま・・・待って。こげに、すぐじゃ・・・。」
「・・・すぐだけん、ええんだ。」
無慈悲な答えとともに、膝で脚の間に割って入ると、腰をつかんでまだ震えている秘裂に、
反り返る屹立を押しあてた。
「んぁう・・・だめっ・・・!」
柔らかいけれど、きつい肉の壁を押し拡げながら埋め込んでいくと、達したばかりの内部が
うごめいて、茂を包み込んでくる。
「まだ、ひくひくいっとる・・・。」
後ろから挿入れられることに、フミエはまだ慣れていなかった。茂の顔も見えず、抱きつく
こともできないまま捻じ込まれる雄芯は、他の体勢よりも大きく支配的に感じられてしまう。
だが、そんな心とは裏腹に、フミエの身体は勝手に高まり、歓喜の叫びをあげていく。いつしか
フミエはついていた肘をあげて上体を起こし、茂の律動を全身で受け止めていた。
254 :
しづ心なく3:2011/09/29(木) 14:39:09.67 ID:S7k4ZuKh
「あっ・・・ぁ・・・あっ・・・ぁあっっ・・・!」
がっちりと固定され、逃れられない女陰を深く浅く穿たれるたび、きれぎれの叫びがあがる。
背後からおおいかぶさり、乳房をもみしだかれる。それを阻もうとした手をとらえられ、
もろともにこねられると、フミエはもう身体を起こしていられなくなって前に突っ伏した。
「・・・めっ・・・っちゃ・・・ぅ・・・ぁん・・・ぁああ―――――!!」
無意識に激しく腰を振りたてていたフミエの動きがびくっと止まり、内部がきゅうっと茂を
締めつけた。
「く・・・。」
そのあまりに甘美な力に、茂は思わず声をもらし、フミエの中に長々と解き放った。
ぐったりとなったフミエを後ろから抱いたまま、二人は横向きになって余韻にひたっていた。
「・・・こっちの力を借りんでも、イけるようになったな。」
茂の指がフミエのしっとりと湿った前の部分に触れた。後ろから挿入れる体勢をとる時、
以前は確実に絶頂に導くためにフミエの敏感な蕾を指で刺激してやっていたのが、今では
そこに触れることなく到達できるようになった・・・ということだ。フミエはそれが嬉しいのか
悲しいのかわからぬままぼんやりとしていた。
まだつながったまま、フミエの肩口や首筋に口づけていた茂が、前に触れた手の中で一番
長い指を折り曲げた。
「・・・ゃっ!・・・ゃめ・・・てっ・・・。」
小さな雄芯のように尖った秘蕾をぬるぬるとこすられ、フミエは後ろに茂を呑みこんだまま
激しく身をよじった。
「こら・・・暴れるな。」
つかみしめた枕に顔をうずめ、せつない絶叫を殺しながら、フミエは哀れなほどあっけなく
達し、つよい収縮がまだ余韻のさめやらぬ雄芯を食いしめた。
「ぅ・・・すごいな。また、快くなりそうだ・・・。」
「・・・だ・・・め・・・死んじゃ・・・う・・・。」
「冗談だ。・・・そげに何度もできんよ。」
最後のしあげにぐるりとなぞってから、やっと指を抜いた。肩を抱いてこちらを向かせると、
フミエの頬は涙に濡れつくしている。茂がその涙をふいてくれたことで、フミエは初めて
自分がこんなに泣いていたことを知った。
255 :
しづ心なく4:2011/09/29(木) 14:40:05.93 ID:S7k4ZuKh
あくる日の午後。フミエは洗面所の鏡の中の、まだなんとなく腫れぼったい気がする
まぶたを、絞ったてぬぐいで冷やしていた。
(女に泣かれるのはかなわん、って言うとられたのに・・・。)
初めての時、涙を見せたフミエにそう言ったのは茂なのに、抱かれるたび泣いてしまうほど、
フミエを追いつめるのはなぜなのだろう。
(前みたいに、やさしうしてくれとるだけじゃ、ものたりんのかな・・・。)
初めて結ばれてからふた月とちょっと。最初のころ、茂は驚くほどの忍耐とやさしさで
フミエの心と身体を開いていってくれた。それは思い出すたび今でもフミエの心を甘やかに
濡らす愛の記憶だった。けれど、身体の痛みが悦びに変わっていくにつれ、責めは激しくなり、
新しい試みを加えられることも多くなってきていた。新しいことを教え込まれるたび、戸惑い
ながらも必死でそれに馴染んできたフミエだけれど、昨夜のあのことだけは耐えがたかった。
(もしかして・・・私が、つまらん女だけん・・・あげな奇抜なことをせんと、飽き足らんの
だろうか?)
昨夜の、羞ずかし過ぎる記憶がよみがえり、フミエをぞくりとさせた。拡げた脚の間に
黒い頭がはさまれている、信じられない光景・・・。
(あげなこと・・・好かん!あ・・・あげなこと・・・。)
心では強い抵抗を感じながら、身体には舌と唇がじかに与える強すぎる快感がよみがえり、
とたんにフミエの中心部がぬるりと蕩けだす。有無を言わさず絶頂を刻まれ、痺れている
身体を貫かれ、追い上げられ・・・穏やかとは言えない抱き方をされて戸惑う心とは裏腹に、
身体じゅうの血脈が意識されるほど脈打ち、頭はぼうっとなった。
(こ・・・こげなことばっかり考えとらんで、買い物に行かんと・・・。)
フミエは頭を振ってこの甘い苦悩を振り払おうとした。だが、忘れようとするはしから、
茂のことばかり考えてしまう。
(やさしいのか、やさしくないのかわからん・・・あのひとは。)
愛し合う時、何もわからなくなるほど感じさせられながらも、フミエはいつも茂のさりげない
やさしさを感じていた。丁寧な愛撫で充分すぎるほど蕩かしてからはじめて自らの欲望を
埋め込み、フミエが恍惚のきわみに達するのを見届けてからようやく自分を解き放つ・・・。
情欲のおもむくままに身体をからめあう時ですら、フミエの手足が痛んだりしないように
気づかってくれる・・・。やさしさと、容赦のなさ・・・様々な夜の記憶がよみがえり、フミエを
落ち着かなくさせる。冷たい手ぬぐいでやみくもに顔をゴシゴシ拭くと、フミエは気を
取り直して買い物に出かけた。
256 :
しづ心なく5:2011/09/29(木) 14:41:03.02 ID:S7k4ZuKh
「あ・・・さくらふぶき・・・。」
肩を寄せ合って建つ小さな家々の間を抜けて広い道に出ると、桜の季節には珍しく晴れ渡った
空を背景に、風も無いのに満開の花がとだえることなく散りしきっていた。
桜のトンネルを自転車で駆け抜けるフミエの顔に身体に、白い花びらがふぶきのように
降りかかり、前が見えなくなって思わず自転車を降りた。あたりには何の物音も無く、
絶え間なく散り急ぐ花びらをみつめているうちに、フミエはなんだか哀しくなってきた。
「子供のころ、こげな桜ふぶき、チヨちゃんと見たっけ・・・。」
散る桜を見て美しいと友と喜びあったことはあったけれど、哀しいなどと思ったことは
なかった。無垢だった少女のころがむしょうに懐かしく、あの頃にはもう戻れないという
ほろ苦い思いが胸にこみあげた。
「ぶわっ!ひどい風だ。これでは残りの桜も全部散ってしまうだろうな。」
窓を開けた茂は、思わぬ突風に驚いて、あわてて窓を閉めた。
「あ・・・髪に花びらがついとりますよ。」
フミエが花びらをとろうとして伸ばした手を、茂がつかんで引き寄せる。
「ぁ・・・ん・・・。」
ごく自然に唇がふれあい、茂の膝の上に乗せられて胸にすっぽりとおさまる。フミエは
ここ以上にやすらげる場所はないような気がして、背をもたせかけてうっとりと目を閉じた。
ぎこちなかった二人も、いく夜もの交情を経て、こうして自然に愛の時間へと入っていける
ようになっていた。
小さい子をあやすように膝の上で揺すってやると、フミエはたのしそうにしのび笑いを
もらした。揺らしたはずみに、茂の髪の花びらがはらり、と落ちる。
「咲いた桜になぜ駒つなぐ・・・という都々逸(どどいつ)を知っとるか?」
「どどい・・・つ・・・さあ?」
「ようイトツが歌っとったな・・・。駒がいさめば、花が散る・・・どげな意味かわかるか?」
話しながら、茂の指はゆかたのえりを割って乳首をもてあそぶ。フミエは息をはずませ
ながらも、問われたことに答えた。
「んんっ・・・ぁ、は、い・・・。」
答えるフミエの目の縁が、紅く染まっているのは、涼しい顔で話をしながら茂が遠慮なく
加えてくる愛撫のせいなのか、それともこの唄の意味のせいなのか・・・。都々逸と言うのは、
花街で歌われる戯れ唄のたぐいで、堅気の家の娘のフミエが知る由もないが、駒と花という
のが何を指しているのかくらいはわかった。
257 :
しづ心なく6:2011/09/29(木) 14:42:00.16 ID:S7k4ZuKh
「・・・よかった。わからんだったらどげしようかと思った。あんたは、女版朴念仁だけんな。」
「まあ、ひど・・・ん・・・ぁぁっ・・・。」
執拗に乳首をいじられ、じんじんとした快感がフミエの中心部を攻撃し、頭を痺れさせる。
触れられてもいない花芯がずきずきと痛いほど疼き、とろとろとした蜜をこぼすのがわかる。
普通に話をさせながら身体をいじめ、答えるフミエの声が快感に乱れるのを茂は楽しんだ。
「俺は子供のころ、さっぱり意味がわからんで、初めて意味がわかった時は、がいに
大人になった気がしたな。」
「はぁ・・・ぁ・・・ん・・・。」
気づけばフミエばかりが素裸にさせられ、紅く色づいた実を吸われていた。全身をつらぬく
快感はいよいよ激しくなり、叫びだしたいほどにフミエの身の内を攻め立てた。
やさしく抱き倒され、熱い素肌が重なる。このまますぐに貫いてほしい・・・一度も
触れられることのなかった秘所が充足を求めてむせび泣いていた。だが、無慈悲にも温かい
肌は引き剥がされ、茂が下にさがる気配がする。また、あの行為が始められるのだと思うと、
フミエは泣きたい気持ちになった。
「・・・おねがい・・・それは、やめて・・・。」
拡げられた脚の間に顔を埋め、あふれる蜜を味わおうとしていた茂は、拒絶の言葉に
一瞬動きを止めたが、かまわずに舌を挿しいれた。
「ゃぁああ・・・ぃやぁ・・・!」
いちばん長い指が挿し入れられ、もう一本の指とで拡げられたすき間に舌が入り込んで
内側を舐める。隆い鼻が花芽にあたると、茂はわざとそれをぐいぐいとこすりつけた。
「ひぁ・・・やっ・・・だめっ・・・き、きたないけん・・・。」
フミエは悲鳴をあげて、必死で両腕をてこにして後ずさり、茂の責めから逃れようとした。
「こら、逃げるな!」
茂は起き上がるとフミエの足の方を向いて上からおおいかぶさった。フミエの太腿を
つかんで、ぐいと引き寄せると、さらけ出された秘所に再び顔を埋めた。
「ぃやぁっ・・・はなして・・・ぃ、や・・・。」
でんぐり返しの途中のような格好で組み敷かれ、フミエは恥ずかしさと息苦しさで脚を
じたばたさせた。だが、膝の裏あたりで茂の腕にがっちりと押さえられているので、びくとも
しない。舌をとがらせて出入りさせたり、こんもりした丘ごとかぶりついて舌で花芽を
ちろちろと舐めたり、好き放題になぶりつくされ、フミエはあらがう力も失っていった。
258 :
しづ心なく7:2011/09/29(木) 14:43:00.01 ID:S7k4ZuKh
抵抗をあきらめかけたフミエの、涙でかすんだ目に、目の前に揺れている雄根が映った。
フミエの女そのものを味わい、責め立てる興奮にそそり立ち、つやつやと光っている。
フミエは必死で顔を上げると、思い切ってその先端をくわえた。
「・・・っ!」
茂がぴくり、と反応して動きを止めた。フミエは手を添えてより深くそれを呑みこんだ。
無理な姿勢のうえに、口いっぱいに雄根が満ち、苦しくて思い切り鼻から息を吸い込むと、
なつかしい茂のにおいがした。何かくるおしい情熱にとらわれて強く口の中のものを吸うと、
茂が思わず唇を離し、落ち着かなげに腰をうごめかせた。
「ま、待て。ちょっこし、離せ・・・。」
がっちりと押さえ込まれていた太腿を離され、フミエはやっと脚を伸ばし、口をふさいで
いた雄根を離すと、ホゥッと吐息をついた。茂は座りなおし、横たわったままのフミエを
上から見下ろした。はしたないことをしたと怒られるのだろうか?それとも、このまま
貫かれるのか・・・。
「・・・つづきを、してくれるか?」
茂の口から出たのは意外な言葉だった。フミエはしびれている身体を起こし、茂のあぐらの
中に突き出ているものに口を寄せた。大きく口を開けて呑みこむと、茂が息を飲んで
フミエの頭を撫でた。頭をそっと押して離させると、後ろに倒れ、脚を伸ばして横たわる。
この後、どうしたらいいのかわからないけれど、なんとかして茂を悦ばせたい・・・。
(男の人って、どげしたら感じるんだろう?)
さっぱりわからないまま、自分が口で愛された時のことを思い出し、いろいろな場所に
舌や唇を這わせ、口ばかりではなく鼻や頬、顔全体を使って愛撫した。茂が大きく吐息を
ついてフミエの髪に指をすべらせる。
(気持ち、ええのかな?・・・ほめてくれとる?)
フミエは少し自信がついて、思い切りよく雄根を呑みこんだ。茂が自分を責める時の動きを
再現してみようと、唾液で唇を滑らせるようにしながら少しずつ抜いていき、また
深く呑みこむことを繰り返す。
「ふっ・・・く・・・。」
茂が髪に通した指で頭をつかみそうになり、はずむ息をこらえながらその手を離した。
感じてくれていると思うとうれしくて、いっそう熱がはいった。穿たれ、引き抜かれ、
秘口に加えられる規則的な律動や思いがけない動きを思い出しながら、夢中で頭を動かして
いると、自分が上も下も同じ淫楽の器官になり果てた感覚におそわれ、ただ陶酔に身を
まかせた。
259 :
しづ心なく8:2011/09/29(木) 14:44:16.38 ID:S7k4ZuKh
「もう、ええ・・・そのくらいにしとけ。」
茂の言葉にはっと我に返り、深くふくんでいたものを吐き出す。腰の横についていた手を
引かれ、胸に抱かれると、今まで夢中になり過ぎてあまり呼吸をしていなかったことに
気づいて、フミエは苦しそうに大きく息を吸い込んだ。
「・・・はぁーっ・・・はぁ・・・は・・・。」
「息ぐらいちゃんとせえ。」
息苦しさに涙ぐんでいるフミエの上気した顔はたまらなく淫らでいとおしく、茂は思わず
今までおのれの雄芯をくわえていた唇を奪った。深くうばいながら、指でフミエの秘部を
さぐると、そこはかつてないほど溶け出していて、茂の掌をぐっしょりと濡らした。
「・・・大洪水、だな。」
身体の上にかぶさっているフミエを、右手で少し支えながら抱きおろして向かい合う。
「すんませ・・・ん・・・最後まで・・・出来んで。」
「だら。最後までイかされてたまるか・・・十年早いわ。」
茂は笑って、臀から手を滑らせるようにして膝の裏に手を入れた。脚を曲げて抱えあげると、
濡れそぼった女性に自然と屹立が口づけした。腰を上下させて先端でなぞると、フミエが
じれったそうにしがみついてくる。
「挿入れて・・・ほしいか?」
「・・・は・・・い。」
おおいかぶさる様にして身を起こし、剛直を埋め込んでいくと、フミエは歓喜のうめきを
あげて自分から腰をあげ、結合を完全なものにした。
「ぁあ―――――!」
充たされていく幸福感に酔うフミエの耳朶を噛みながら、茂が熱く囁いた。
「あんた・・・これが、好きか?」
「そげな、こと・・・聞かんで・・・。」
「す・き・か?と聞いとる・・・。」
言葉ひとつごとに揺さぶられ、フミエはあえぎながら素直な答えを口にした。
「ぁあっ・・・好き・・・ぁん・・・す、き・・・。」
充足感はたちまち焦燥に変わり、フミエはくるおしく腰をうごめかせた。ゆらゆらと揺れる
左脚を抱えあげ、二人の脚を卍型のように組み合わせる。左脚をつかんだまま、中心部に
腰を打ちつけるようにして穿つと、フミエは激しく顔を振って身悶えた。
「・・・く・・・ぁあ・・・しげぇさっ・・・ぃ、く・・・」
抱えた脚がきゅっと緊張し、フミエの内部がけいれんした。断続的な締め付けに耐えながら、
脚を下ろしてやると、汗ばんだ乳房の先の桃色の実に唇を誘われ、ゆっくりとかがんで
口にふくんだ。
「ふ・・・ぁあ・・・ん。」
まだ少し震えながら、フミエが両手を伸ばして下から茂の髪を梳いた。茂の唇がおりて来て、
わなないて開いている唇に重なる。身も心もとけ果て、甘い口づけに酔っていると、再び
フミエを貫いている幹が律動を始めた。
「んん・・・んーっ―――――!」
フミエは巨木にしがみついている小さな虫のように、ただ茂にしがみついて嵐に耐えた。
身体のすみずみまでを茂の存在に侵蝕され、自分が違う人間になってしまったかのような
被征服感がこころよくフミエの心身をひたした。
(ああ・・・散っとる・・・。)
フミエのまな裏に、絶え間なく散りしきる花びらが映っていた。それはたまたま昼間見た
光景ではあるけれど、フミエは今自分が茂に向かってとめどなく散り続けるのを感じていた。
260 :
しづ心なく9:2011/09/29(木) 14:47:32.00 ID:S7k4ZuKh
「くちに・・・出してもええか?」
絶頂にうち震えている女陰を貫いていた剛直がいきなり引き抜かれ、フミエはのたうった。
「は・・・はい・・・?」
なんのことやらわからぬまま返事をすると、さっきお互いに口で愛し合った体勢に戻って、
茂が半開きの口の中にフミエの蜜に濡れた雄根を押し入れた。フミエは無我夢中でそれを
ほおばった。
「歯を、立てんでくれよ・・・。」
フミエは精いっぱい口を拡げ、大切に舌の上に雄根を迎えた。
「ん・・・んんっ―――――!」
口いっぱいに充たされたものをゆっくりと出し入れされながら、達したばかりの花芯を舌で
なぶられ、フミエは声にならない声をあげて再び絶頂を迎えた。遠のいていく意識の中で、
口腔内に断続的に浴びせられる精を感じていた。
「・・・おい、大丈夫か?」
気がつくと、茂が心配そうに上からのぞきこんでいる。フミエの喉が上下して、舌の上に
溜まった凝りをごくり、と飲みくだした。
「こ、こら・・・飲まんでええ!」
フミエの中に出されたものは、いつもそのまま受け入れているのだから、上でも同じこと・・・
そう思っていたフミエは、茂の狼狽ぶりにきょとんとしている。茂はたまらなくなって
自らの白濁をこともなげに飲みくだした唇を奪った。
「う・・・美味くない・・・な。」
フミエが受け入れてくれたものの苦さに顔をしかめ、唇を離した。目が合うと茂は照れ
臭そうに目をそらし、フミエをギュッと抱きしめて耳に囁いた。
「これで、全部・・・俺のもんだな。・・・けど、あんたもだ。」
フミエはぼんやりしている頭で、茂の言っていることを考えた。全部茂のものになったと
いうのは、初めてフミエの口にもしるしを残したことを意味するのだろう。そして、自分
から茂自身を口唇で愛し、注がれたものを受け入れたことで、今まで奪われる一方だった
フミエも茂を自分のものにした、と茂は言いたいのだろう。
(わたしの・・・もの・・・。)
このひとが喜ぶことなら何でもしたい・・・このひとになら、何をされてもいい・・・
フミエは自分の中に、またとめどなく散る花を感じていた。
261 :
しづ心なく10:2011/09/29(木) 14:48:27.48 ID:S7k4ZuKh
「口でされるの・・・いやか?」
しっとりと濡れている三角地帯を、指で円を描くようにこすりながら、茂が聞いた。
フミエはその指からのがれようと腰を引き、また息をはずませながら答えた。
「は、羞ずかしいですけん・・・それに、あなたにあげなことさせるの・・・申し訳なくて・・・。」
「あんたのためにやっとるわけじゃないぞ。俺が舐めたいけん、舐めとるだけだ。・・・まあ、
あんたがよがるところが見たいというのもあるけどな。」
割れ目に滑り込ませた指を、これ見よがしに舐めて見せられ、フミエは真っ赤になった。
「あんたは・・・俺に奉仕せんといけんと思って、いやいやあげなことしたのか?」
「ち・・・ちがいます。なんだか急に・・・ああしたくなって・・・。」
「ふうん・・・それで、どげだった?」
「え・・・。ど、どげって言われても・・・。」
我ながらはしたないと思うけれど、本当のところそれは意外にも楽しかった。初めて口で
味わった雄芯は滑らかで舌ざわりがよく、口中を擦られると挿入れられているかのように
淫らな気持ちになって、なんだか大人の女になれたような気がした。自分が茂を感じさせて
いると思うと可愛くていとおしく、少しだけ自分に自信を持つことができた。
「・・・いやだったのか?」
「いやなんかじゃ・・・あの・・・なんだか大人になった感じがして・・・うれしかったんです。
それに・・・しげぇさんのこと、ちょっこし深く知れた気がして。」
「そげだな・・・本当にゆるしあえたもん同志なら、何をしたってええんだ。」
本当に、ゆるしあえた者どうし・・・そう思ってくれていると思うと、うれしくて涙が出そうに
なり、フミエは茂にぎゅっと抱きついた。
(さくらの花は・・・散りたいから散っとるんだ・・・。)
駒に散らされるのでもなく、風に吹かれるからでもない。時が熟して咲いた花は、愛する人に
向かって自らとめどなく散るものなのだ。フミエの心の中の白い花びらは、しずかにしずかに、
隣りに眠る人を埋めつくしていった。
久方ぶりなのでこっそり紛れ込もうとしたつもりが、なぜか前回、バレまくっていたようで…(照)。
今回もいちせん夫婦で、ずっと書きたかった祐ちゃん目線のお話。
ちなみに、涼しげなカオして巨根+絶倫説に一票。
サッカーで鍛えた下半身と持久力で、じっくりたっぷり奥さんを愛でてもらいたい。
「ただいま」
帰宅した祐一を迎える綾子の顔に、安堵の色が浮かぶ。
やはり案じていたのかと、密かに苦笑う。
別段、疾しくなど無いが、不安は取り除いてやろうと思う。
独り合点から擦れ違い、喧嘩にまで発展してしまったのは、ついこの間のことだ。
* * *
秋の彼岸に、佐々木家の墓参りへと連れ立った。
結婚して数ヶ月。
亡き祖父母、初代に嫁のお披露目も兼ねていた。
菩提寺からの帰り道、墨田公園に足を延ばす。
隅田川沿いを、二人でのんびり散策した。
春は桜、秋は彼岸花が美しい。
スカイツリーを見上げ、以前の家出紛いさえも、笑って話せた。
道行くカップルにつられたわけではないけれど、自然と手を繋いで歩く。
「――祐ちゃん?」
妻以外の、声に呼ばれた。
祐一は立ち止まり、声を掛けてきた女性に見入る。
十年ぶりに再会した、懐かしい面差しの人がいた。
連れがいるのを気遣ってか、相手は、簡単な挨拶に留めて別れていった。
隣の綾子も会釈を返していたが、祐一は碌に返事もできず。
口数が減ったまま、若干上の空になって、家に戻った。
年賀状の束を引っ張り出し、連絡先を探す。
携帯のメールアドレスが載っているのを覚えていた。
使ったことはなかったけれど。
≪今から会える?≫
送信する前に迷わなかったわけではないが、おそらく、今日を逃したら会えなくなる。
返信は、直ぐに来た。
土産の煎餅を用意し、綾子には「もっかい出掛けてくる」とだけ言い残す。
一瞬、その瞳が揺れたのに気づき、「遅くはならないから」とも付け加えて。
帰る場所はここだけれど、あの人とまた離れてしまう前に、直接確かめて伝えたかった。
* * *
「幼稚園からの同級生なんだ」
軽く晩酌をしながら話し出す。
実際は赤ん坊の頃から知り合いだったらしいが、そこまでは覚えていない。
「母親同士も仲良かったし、家は20mも離れてないし、ウチは客商売だったから、おばさんに面倒見てもらって、よく一緒に遊んでた。
お互い一人っ子だから、きょうだいができたみたいでさ。俺、女の子の遊びも、結構得意だったよ」
同い年でも女の子の方が成長は早いから、しょっちゅう姉さんぶられて、少し悔しかった記憶もある。
小学校までは身長が低かったが、中学の三年間で30cm以上伸び、彼女の背丈を追い越した時は嬉しかった。
「好きかどうかで言えば、好きだったよ」
たぶん、あれが初恋だった。
そう告げた時、さすがに妻の顔が曇る。
それでも、正直に打ち明けた。
「親は知らないだろうけど、ちょっとだけ付き合ったりもしたんだ」
高校が別々になり、離れ難くて、何となくそういう流れになった。
今更のようで、改まって告白などはしなかったが。
「――でも、ダメだった」
過ぎ去った、淡い苦み。
「なんていうか、近過ぎて、家族みたいな感覚になっててさ。いざ付き合ってみても、距離の取り方はわかんないわ、
近親相姦みたいで手も握れないわ。寧ろ、そういう対象にしちゃいけないような気がして。暫くして、言われた」
“私たちって、やっぱり、きょうだいだね”
高校を卒業する頃、彼女の父親が病気で亡くなり、母親も身体が丈夫ではなかったため、彼女は、遠方にある母方の実家に揃って身を寄せるようになり。
あちらで就職したこともあり、それきりずっと会っていなかった。
「今日は、会社の研修がてら、親父さんの墓参りも兼ねて来たらしい。言っとくけど、久しぶりに会ったからって、どうもしないよ。向こうも結婚してるしさ」
根っこの本音を言えば、姉を奪(と)られた弟みたいな寂しさも混じってはいるのだが。
それでも。
「なんか、…ほっとしたんだ。色々苦労してたし、その分、幸せになってほしかったし」
それは、自分にはできなかったから。
仮に祐一の方が歳上で、もっとしっかりしていたら、何かが変わったかもしれないけれど。
もしもの話なんて、言い出したらキリがない。
だから。
「今は、これで良かったんだって思うよ。本当にね」
顛末はおしまい、と締め括って、祐一は笑った。
「心配させて、ごめんね?」
ふるふると首を振る妻が、無性にいじらしい。
抱き締めたいなぁと、目を細める。
「土産に」
「…?」
「あれ、持って行ったんだ。苺煎餅」
妻の好物と発案で作った、新商品。
「俺は、俺の選んだ人と一緒に、ちゃんと人生歩いてるよって。毎日笑って、偶に喧嘩して、でも凄く幸せでいるから、こっちも大丈夫だよって安心させたくて」
自分が満たされていることを、けれど伝えるまでもなく、相手には見抜かれた。
「女房自慢、うんとしてきた。あっちからは旦那のノロケで返されたけど」
幸福の持ち寄りは、何倍にも増して伝染するのだろう。
少年の時分の焦燥が、穏やかに昇華しているのを、祐一は実感した。
* * *
日が落ちれば、季節の推移は明らかで。
だいぶ涼しくなってきた気配に、祐一は縁側の硝子戸を閉める。
跳ねた洗い髪をくしゃりと掻いた。
同じく風呂を済ませた綾子が近寄ってきて、背後からこつんと肩に額を置く。
黙って向きを変えた祐一の懐に、彼女は凭れ、掌で胸板を撫でた。
首筋に口づけられ、その細い顎を掬い上げる。
「珍しいね」
妻から誘われることは、そう多くない。
心細くさせた申し訳なさに改めて詫びると、「違うの」と否まれる。
「祐ちゃんの小さい頃を知ってる人が羨ましいなって思うけど、それだけじゃなくて。祐ちゃんが、友だちやご近所や、
周りの人を大切にしてるってこともわかってるし、その人たちが幸せになるのを願ってるのも知ってる。それが…嬉しいから。
そういう祐ちゃんが、あたしは好き」
「好きよ」と繰り返され、きゅっと抱きつかれる。
「――うん」
俺も、と答える代わりに、強く抱き返した。
『家族』と恋はできなかったけれど、恋をして家族になった女がいる。
* * *
舌を絡ませ、詰く吸いつつ、薄い寝間着の上から乳房に掌を這わす。
持ち上げて揉み、後ろ抱きにして囲う。
尖り出した乳頭を、捏ねて弾いてやると、綾子は頸を倒して声を漏らした。
呼吸も乱れてきている。
「ゆぅ、ッア…」
彼女の手が、求めるように祐一の下肢に伸びてくる。
「…こら」
無意識なのか、ねだっているのか、形をなぞるふうに指で辿られ、笑いながら、キスで咎めてみせた。
敷布に座らせ、ネグリジェを捲り上げ、ゆるりと足を開かせる。
下着越しに蕾を転がして弄(いじ)ると、押し殺した呻きが零れた。
じわりと湿る縁(ふち)を、弾力をつけて押し、次第に速く擦る。
「っぁア…、――ッあ!…ダ…め――」
彼女の顔が左右に揺れる。
「綾子。もう、こんなに…濡れてる」
「や、ぅ…ゆう――ちゃ…」
腕に縋って震える姿が、余計に嗜虐を煽ると気づく筈もなく。
祐一と逢うまで、男を知らなかった彼女だ。
夫の愛撫に従順に身を委ねる素直さこそ、この女の秘められた淫乱さ。
「あッ、ア、…ぁあ――」
膝を折り曲げて腰を浮かし、綾子が首をのけ反らせた。
「イきそう?良いよ」
「っハ…、ぅ…うン―――!ッ」
止めたいのか促したいのか、祐一の手を引っ掻く仕草で、彼女は身動(じろ)ぐ。
びくん、と跳ねて到達した躰が、肩に寄り掛かってきた。
「熱、ぃ…」
ぼんやりと呟く唇を、軽く啄ばむ。
「綾子、…脱いで」
自分で、と導くと、頬を赤らめつつも、おずおずと従う。
レースのショーツを膝まで下ろし、困ったように見上げてくる。
捩(ね)じれた布地をそっと引っ張ってやると、意を決した様子で足首を抜いた。
胸元に纏わりついていたネグリジェも剥ぎ、布団に横たわらせる。
白い全裸。
身に付けているのは、薬指の指輪だけ。
己(おの)が妻の証に、祐一は口づけた。
この躰の外にも内にも、最初に快楽の火種を焚き付けたのは自分だ。
腿を広げる姿勢を、初めは恥ずかしがっても、最後には彼女が悦ぶのも知っている。
露わになった充血を、指先で追った。
「ココ、すげぇ欲しがってる…」
体毛の薄い、薄紅色の秘肉が、物欲しげに開いている。
「ぁ、ハ…」
表面を覗かせた花芽を、こりこりと突いては摘まむ。
眉根を寄せて耐える変化を、じっと観察し。
徐(おもむ)ろに口を近付け、ぺろりとそこを舐めた。
「あッン、あ――ふ」
窄めた舌で、割れ目から滴る雫を、丁寧に掬い取る。
「や、…ぁ…うンッ!」
ひくひくと尻を捻り、再び達した相手の耳元に、微笑って囁く。
「イき過ぎ」
普段にも増して敏感さを指摘してやると、「だって」と消え入りそうな声が零れた。
「だって、祐ちゃんが…」
「俺が?」
胸に顔を伏せてきた彼女が、ぽそりと拗ねる。
「いつもより、もっと…Hなんだもん…」
噴き出しかけて、黒髪に指を絡めた。
「Hな俺は嫌?」
口籠もる上目遣いが愛らしいと思う辺り、Sっ気が擽られて堪らない。
意地悪くも、目一杯、可愛がってやりたい。
ぬちゅりと差し入れた指で、内壁を解(ほぐ)す。
「ゥッ、くぅ…ン、ん…」
勝手次第に摩擦を速めると、薄い腹が波打った。
「ひゃ、ッぅ…!――」
屈伸する膝が、彼女の官能を示す。
「ダ…だめ、そ…こ、ダメ…そんな、しちゃ――ッ」
甲高い声と共に、汗ばんだ女体が撓(たわ)む。
とろりと大量に溢れ出た愛液が、秘腔から伝い落ちた。
「まだだよ」
淫靡な液体を、ゆっくりと秘部に塗りたくる。
触れられるだけで感じるのか、彼女の呼気は益々荒くなる。
滑りの良くなった膣内を、ぐちゅぐちゅと掻き回した。
「ヤ、…やぁ――また、出ちゃ、ぅ…」
「綾子、見ててごらん」
腰を支え、自らの秘花を確かめさせ、深く指を抽入する。
「ア、ふぅ…ンァ、あ、あッ―――!」
背を反らせ、蕩けるように絶叫した綾子の下腹から、透明な液が噴き上げた。
「…、…――」
放心した彼女の目が焦点を失う。
「綾子」
瞳を覗き込みながら、静かに指を抜いてゆく。
「ハ…ぅ、ん…」
「ホント、すご…。ぐしょぐしょだ」
濡れそぼつ陰唇を晒し、綾子は必死で息を整えている。
縺れた髪を片手で梳いてやると、その目線が切なげに揺れた。
「おね、が…ぃ…、祐、ちゃ――」
「欲しい?」
こくりと頷く彼女に、真っ直ぐ見つめられる。
「…挿れて」
疾うに余裕でいられないのはお互い様で。
臨戦態勢を堪え通した男根は、はち切れんばかりに膨れ上がり、爆発まで引火を待つだけだ。
両腿を左右に持たせて、仰向けに寝かせる。
無防備に剥き出しになった秘部が、ひくりと待ち受けているのが見てとれる。
愛蜜のとろみで濡れて光る襞に招かれ、ずぶりと雄を含ませた。
「あふ…ン…」
小振りの乳房を揉み寄せながら、隆起を進ませ、奥底まで貫く。
膝頭を撫で、彼女の胎内の熱と狭さを味わう。
「ん、ンぅ…、ふ――」
「相変わらず…良い、締まり…」
唇を重ねたまま、「動くよ」と囁いた。
返事もできないほど陶酔している綾子の腰を掴み、縦横無尽に征服する。
「ッあ!――ア、…やゥ、う…アッ、あ、あぁ―――」
汗と体液で滑る肉体を、強く揺さぶり、軋ませる。
妻の嬌声と表情と、膣の熱さに煽られ、脳内の理性がじりじりと焼き切れるのを、祐一は快く感じた。
沈着冷静、そんなもの二束三文で売り叩いてやる。
「い…ィ、好い――ゆぅちゃ…あ…気持ちいぃ――」
髪を乱し、自ら胸を抱き、立てた膝を震わせ、綾子は善(よ)がる。
愛欲の儀式に無垢だった女が、祐一の腕の中でのみ変貌する。
漸く手に入れた、運命の女。
白い腿ががくがくと揺れ、彼女の限界が近いことが窺えた。
片足を肩に掲げ、首に縋らせ、腰の振動のギアを上げる。
祐一の肩甲骨に爪を立て、泣きそうに喘いでは、綾子は何度も懇願する。
“もっと”
“もうダメ”
“早く”
“やめないで”
混乱と快感の渦に押し流される妻を、絶頂まで容赦なく、獣めいて追いつめた。
「■■――■■■――!!」
硬直した女の秘壺に、怒涛の射精を遂げる。
詰く収縮する柔肉の奥に、熱くすべてを放出した。
長く、最後の一滴までも余さず注ぎ入れ、祐一は息を吐(つ)く。
火照った肌の上に寝そべった。
繋がったままの彼女のそこは、まだひくついていて、その感覚が心地好い。
一向に萎えない硬度に、反応した綾子が小さく喘ぐ。
ずるりと引き抜くと、咄嗟にしがみつかれた。
「…ヤぁ…」
「ん?」
虚ろに潤んだ瞳にせがまれる。
「抜いちゃ…嫌――もっと…」
声にならず「して」と呟く唇を塞ぎ、体勢を入れ替えて腹に乗らせた。
脇を掴み、まろい尻を撫で摩る。
形の良いそこを押し広げ、張り詰めた勃起を挿し込んだ。
「アんッ」
腰を震わせ、深く男を呑(の)む媚態に、綺麗だと見惚れる。
後ろ手を突いて股を開かせ、腰を上下させた。
「そう…、上手になったね…綾子。もっと、動いてみ」
夢中になって腰を振る女は、他の誰も知らない、祐一だけの女豹。
目の前で揺れる、二つの果実の白さが眼福だ。
「あ、アぁ、…ん、――ハ、ん…」
粘着質な音を立て、結合部が擦れる。
彼女が下腹を回す度、内を抉るペニスへの刺激に呻く。
翻弄されるのは不本意なので、下から勢い良く突き上げると、彼女は高く啼(な)いた。
「ハ…ふン、ッ――う、ウんっ…ア、あン…あ――」
長い髪を振り乱し、とりとめもなく叫んでいる。
「ぁん、あ…すご、ィ…――ゆぅちゃ、…凄い――!」
小刻みに穿つ程に揺れ動いていた躰が、がくんと倒れ込んだ。
「祐、ちゃん…、キス…し、て――」
切れ切れに乞う妻に、唇を寄せる。
躰が離れている時間が続くと、しばしば口づけを望まれる。
殊更優しく、ねっとりと舌を奪い、糸を引いて唇は解(ほど)けた。
彼女の瞳の潤んだ熱に、再び、雄の欲情が暴発しそうになる。
起き上がり、素早く躰を伏せさせ、休ませてやれずに、後背から鋭く挿入した。
「やンッ!…ん、う――ぁ…アあ――」
卑猥に蠢く陰唇を、太く赤黒い陽根がずぶずぶと襲う。
「ア、あッ…――ひン、…う――ゅウ…ちゃ…」
「綾――あゃ、こ…」
肉のぶつかる乾いた音と、妻を呼ぶ声が重なり。
乱雑な動きで激しく腰を突き出しながら、祐一は思わず天を仰ぐ。
彼女がもたらす、和やかな日常の至福と情愛、極上の愉悦。
これだけ雁字搦めにされて、手放せるわけがない。
(ちくしょう)
どこぞで眺めているかもしれない、恋愛の神様とやらに、笑って悪態をつきたい気分だ。
お望み通り、二人で手を取り、睦み合い、命も躰も昇天して。
この幸せを全うしてやろう。
「――んック、…ぃく、ッア――あァ…、…イ、くぅ――、もぉ…ッ」
悦楽に甘く悲鳴を迸らせる妻を、固く抱き締める。
「ゆ…ッ、ちゃ―――!!」
痙攣する柔らかな深奥に、低く吼(ほ)えながら、全力で精を注ぎ込んだ。
* * *
くたりと寝入る綾子の横顔を見つめ、裸の肩を覆うように上掛けを被せる。
指の背で頬を撫でては、途中で加減を忘れて求め続けた己を少しばかり省みた。
大事にしてやりたいのも、すべてを奪いたいのも、本当で。
彼女の前では、ただの男でしかなくなる有り様に、我ながら苦笑してしまう。
勇気も励ましも、幾度となく与えられ、照れを隠して偶に礼を言えば、満開の笑顔で応えられる。
“祐ちゃんが、大好き”
素直で、明るくて、愛嬌があって、涙脆くて。
一見、正反対の二人が付き合い始めた頃は、周囲に多少驚かれもしたけれど。
欠けたものを補われるような心地好さに、誰より不思議がっていたのは祐一自身だ。
もう少し早く逢いたかった気もするし、逆に、今だからこそ良かったのかもしれないとも考える。
ふと、昼間再会した幼馴染みを思い浮かべた。
あの人と自分は、きっと、彼岸花の花と葉のようなものだ。
同じ根から育っても、一緒に生きてゆくことはできない。
花が咲く時、葉は出ておらず、葉が出れば花は散ってしまい、実は結ばれない。
花と葉が最後まで相見(まみ)えることのない、相思華(そうしばな)。
違う土地で、会えることなく、けれど幸せに花開いているのであれば、それでいい。
「…ん…」
小さく寝息を漏らす妻の、瞼と頬にキスをして、静かに自分の胸に抱き寄せる。
確かな温もりに、目を閉じた。
祐一が見つけ、共に生きてゆく花は、今、腕の中に鮮やかに咲いている。
了.
花詞:「情熱」「諦め」「独立」「悲しい思い出」「再会」「また会う日を楽しみに」
270 :
252:2011/09/29(木) 16:33:22.84 ID:S7k4ZuKh
・・・えっ・・・と・・・
>>252です。*****以下の説明文を投下できなくて、
間をおいてやって来たのですが・・・。
なんというか・・・前にもこんなことがあったような・・・。
特にそういうルールはないのかもしれませんが、出来ればもう少し間を
あけて下さると、みなさんも読みやすいかもしれません。
*****
今さらですが、前スレに投下した新婚シリーズ(当初は童貞ゲゲ物語でしたがw)3編
(その前に書いてた『初鳴き』もいれると4編)につづく第5弾です。
ご注文のw初めてのフ○ラ&ク○ニと、ドS覚醒編はいっぺんにはまとまらなかったので、
ふたつに分けてしまいました。ので、この後第6弾もあります(しつこくてすみません・・・)。
昔の人はオーラルどころかキスもあんまりしなかったという話もありますが、それじゃあんまり
萌えないし、しげぇさんは常識にとらわれず研究熱心wwな人だと思うので・・・。
実は以前まで、「大正生まれの男にク○ニはなぁ。」と、今まで書いたものの中では
大サービスデーwに一回しただけでした。今は、ゲゲはおおらかになんでも試してみるけど、
フミちゃんは(羞ずかしすぎるからイヤ・・・。)と思ってる(ので少ない)、と解釈しております。
ひさしぶりにスレがぐんと伸びてる、
これは職人さん降臨か… とwktkしてたら、なんと2本も!
>>252さん、
>>262さん、だんだん(*´∀`*)
ゲゲもゆうちゃんもエロい…
それに応えるふみちゃんあやちゃんもバッチリ育てられてるし
なんたってお互いメロメロだし…萌える…
タイミングとかいろいろ悩ましいかもですが、
いちファンとしては、ご馳走を山盛り出してもらったような気分です
美味しく頂戴しました〜 GJ!!
>>252 恥ずかしがりながらも、色々開拓されちゃうフミちゃんエロかわいいよぉ!
桜のモチーフがイヤらしくて、美しくて、趣があって素晴らしい‼
GJ!
>>262 いちせんパロ、ありがとうございます‼
幼馴染が出てきて、お?綾ちゃんヤキモチネタかな?と思ったら
ゆうちゃんの綾子すきすき、惚気大爆発!
でいちゃいちゃしやがってこんにゃろーww祝ってやる!
>>252 GJ!初期のころの遠慮がちでも、強引ぽさが出てきてるゲゲがやらしい!
なんでこんなに散りゆく桜がエロいんだろう。
>>262 GJ!巨根&絶倫祐ちゃんキタ!エロがまじでよだれもんだよ…。
ところで自分はこの板で常駐してるスレが少ないので他スレのことはよくわからんですが、
投下間隔についてはある程度空けるというのが、先に投下してくれた方への配慮みたいな気はする。
もちろん、久々に投下があったと思ってwktkして見たら、二作もあったというのは嬉しいんだけど。
この度は大変失礼致しました。
>>252様の過去投稿(らしき物)を拝見した折、本文の数分後には解説を載せていらしたことを鑑みて、
今回、記事から1時間以上待った上で投下に踏み切ったものです。
ですが、半日くらいは待つべきだったかと反省しております。
読みが浅かったために、ご不快にさせて申し訳ありませんでした。
スレの進行に伴う新たな不文律を会得しきれていないようですので、今後は投下を自粛し、改めてROM専に戻る所存でおります。
ご迷惑をおかけしてしまい、本当にすみませんでした。
以前と、そして今回にも返信を下さった方々。
お気を煩わせてしまい、恐縮しております。
昨年の休筆の際にもご挨拶できませんでしたが、皆様の温かいコメントの数々が励みでした。
本当にお世話になりまして、とても感謝しています。
ありがとうございました。
275 :
252:2011/10/01(土) 09:51:28.39 ID:o11DC6vq
>>274様
感情的なレスをしてしまってすみませんでした。にもかかわらず、ごていねいな
レスをいただいて、恐縮しております。
以前書いた『バッド・トリップ』の時のこともあって、考えすぎてしまったようです。
スレ番号が若い頃はもっと入れ食い状態で、連続投稿もあったかもしれませんね。
自分もせっかく盛り上がってる雑談を豚切ったり、空気が読めない投稿をして
きているかもしれません。反省します。
自分も、この板はこのスレしか知りません。前々スレで、自分の投稿のわりとすぐ後で
投下された方を注意してくださるレスがあったので、それがマナーかなと思ったのです。
・・・でも!!
>>今後は投下を自粛し、改めてROM専に戻る所存でおります。
これは考え直していただけませんか?せっかく戻ってきてくださったのに。
>>274さんは、このスレを引っ張ってきてくださった大切な方と認識しております。
ROM専ということは、まだ読んでくださっていると信じて、お願いします。
スレ住人の皆様。
平和なスレの雰囲気を悪くしてしまって申し訳ありません。
皆様の、何があっても純粋にゲゲゲ(&いちせん)の世界を愛でるという
姿勢が素晴らしくて、ありがたいです。
皆様からも、
>>274さんを慰留していただけないでしょうか。お願いいたします。
2つも読める!!とわくわくドキドキと進んできたらアレレレレ??
ある程度のルールはあるだろうけど、そんなに渋滞するとこじゃないし
あまり堅苦しく考えなくてもいいのでは?
個人的には祐ちゃんと綾子が大好きなので、ただそれだけを待つだけの身です
でも正直、投下されてから一日くらい待つのがこのスレだけじゃなくてエロパロ板全体の暗黙のルールというかマナーだと思う
作品はすばらしいのだから余計に惜しいので、今後は気をつけて欲しいです…
投下する際は前の方と時間を空けたほうが無難だとは思います。
んで、職人さんの投下を本当にお待ちしてますとしか言えないです
>>274 大好きな職人様です。
強制はできません、でもいつでも戻ってきて下さい(´;ω;`)
投下のタイミングは控え室とか愚痴スレで時々話題にのぼってるのを見るけど、
スレによって考え方が違うようなので、ルールというよりはマナーな気がする。
と思って私見として言ってみた自分は
>>273ですが。
だからといって、マナー違反は即投下ヤメロなんてことは微塵も思ってないわけで、
>>275さんの言ってることも本心だと思うし、このまま
>>274さんがいなくなると
逆に追い出したみたいな後ろめたさで275さんがやりにくくなるんじゃないかな?と案じてます。
というわけで、274さんには筆が進んでるんであればまた投下してほしいです。
>>274さん、
>>275さんをはじめとする凄腕職人の皆さん、
暖かい感想と素敵な妄想を残される住人の皆さん、
そしてきっと大勢いらっしゃるであろう“見えんけどおる”読者の皆さん、
そんな皆さんの、元作品と職人さんへの敬愛にあふれたこのスレが大好きです
いつでも待っとりますけん!
もうっ ナンなんだろこのスレ
エロパロとは思えないほどの真面目さw
いやいや、それもこれもひっくるめてゲゲゲが大好きな人の集まりなんですよねえ
>>282に和んだ。そろそろ寒くなってきたし、
またゲゲ布美(祐綾)が寄り添って温めあう妄想でも再開しましょうよ。
>>279 禿同
>>262も投下後何度も読み返して、感想書き込もうとスレ開いたら、こういう流れになってて悲しい
ハロウィンで忙しいジュモクに誰か産業で
最近あんましまとめてないけど、別スレは一時期一日に5投下くらいあったけど何か問題あったんんだろうか
過疎よりマシかと思ってたんですが
とはいえ最近あんましまとめてなくてサーセン
ああ、あとがき投下が遅れたのですね把握
…別スレでは「書きまとめてから淡々とスムーズに投下しようず、さるさん注意」
なんてスレルールがあったりしますが
まあまとめにはたいした問題ではないです
以上このスレここまで更新
3スレ目だかの更新が遅れてて最高にサーセン
>>286 あとがき投下が遅れたからショックだったわけじゃないと思うよ
>>275は
一生懸命長文投下したのに、レスもつかないうちに流されたらイヤでしょフツー
今はのんびりまったりのスレなんだから、一日くらい待てばよかったね
レスも少なくなるし、先の人にも後の人にもいいことひとつもないじゃん
>>275さん
第6弾あるんなら、投下して下さい。待ってますよ
ジュモクですが把握
>>287 自分はこの曲初めて知った
一人称僕だし言葉も男の人のだけど、漫画賞受賞後の忙しくなりだす頃のふみちゃん目線かなーと思った
萌えというよりは、なんだかすごく愛おしくなったよ…
>>290 そう思いながら聞くと歌詞がすんなり入ってくるね
「おとうちゃん、おめでとう・・・」
お風呂と聞いて村井家の風呂が壊れて二人で銭湯に行って
滅多に出来ない待ち合わせに少し嬉しそうなふみちゃんを妄想してきゅんとした
そして銭湯から家に着く頃には冷えてるだろうから暖めあえば良いと思います
>>293 GJです!自分は逆にゲゲが先に出て待ってて
「遅い!」「すんません、こんなに冷えて」とかなんとかで、手を温めるなんつー妄想で。
そしてもちろん、家に帰って全身温めあうということで。
神田川ですね
先に出る時に男湯から女湯に向かって大声で名前を呼んで二人して真っ赤になってたら良いな
布美ちゃんがちょっこし逆上せるとなお良し
そういえば靖代さんは風呂屋のおかみさんだったな。
番台から密かにゲゲの裸をチェックする靖代さんを想像したw
祐綾は混浴に対する抵抗があまり無さそうだな
現代っ子だし
夜だったらくっついて歩いても人目につかなさそうだな
電灯も少ないだろうし
夜道で危ないから(左袖)掴んどれとか言ったら萌える
>>298 綾子さんはまあそういうのもアリよねと思ってるけど
ゆうちゃんが下町の老舗三代目としてw若干抵抗があったら楽しい
マルモに出てた布美ちゃんは、どっちかっていうと綾子さんぽかったけど、
付き合ってる人が河童に詳しいということは、やっぱり布美ちゃんだったのか…?
連休に深大寺にふらりと行ってみたら蚊に刺されたので
まだこの季節でもふみちゃんはキスマークをごまかせるなと思った自分はここに入り浸りすぎ
いきなりですが投下失礼します。
「読者の集い」での紙奪い合いシーンから妄想しました
あと、忍法帖の規制がどう影響してくるかちょっとわからないので
投下途中でもし見苦しくなったらほんとすいません
305 :
時短仲直り 1:2011/10/12(水) 21:55:03.78 ID:E/uMtFHj
秋の乾いた空の下。散歩に行く夫をきちんと見送ることもできず、
洗濯物を干しながら、布美枝は後悔していた。
(なんであげなこと言ったんだろう)
昨夜の、初めての本格的な夫婦喧嘩。きっかけは些細な会話だった。
実家から父が上京してくるということで、夫の茂と話していた時だ。
『いつまでも、体裁繕ってはおられんけん』
茂の言葉が、妙に癇に障った。体裁を繕っていたわけではないのに。
自分達は順調にやっているのだと親に心配かけまいとする気遣いを
曲解されたようで、ついつっかかっていってしまった。――――――親友の
チヨ子に、まさにその日つまらない見栄をはった自分を棚に上げて。
挙句、夫が義父にキャンディーを送ったことまで持ち出す始末だ。もっとも
これは、先日の夫の散財がよほど頭に残っていたのかもしれないが。
(私だってチヨちゃんに、自分じゃ買わないお菓子、持たせたりしたくせに……)
時間が経つほどに後悔は膨らんでいく。やはり謝るべきなのだろうか。
でも、今更どんな風に切り出せば?それに、茂に以前からの散財癖があるのは
事実なのに、その点までこちらから折れた形になるのは大いに困る。
葛藤のため息をつく布美枝の耳に、家の前から耳慣れた声が飛び込んだ。
数十分後。
茂が受けた貸本屋の女主人からの頼みごとにより、布美枝は、ガリ版の
インクをローラーで伸ばしていた。
「これ頼む」「はい」
茂が作った原本の紙をごく自然に受け取り、普通に喋ることができるのが
とても嬉しかった。仲直りなんて難しく考えなくてもいいのかもしれないな、と
ひとつ学べた気分で渡された紙の文面を眺める。
思わず笑ってしまった。
306 :
時短仲直り 2:2011/10/12(水) 21:57:03.06 ID:E/uMtFHj
『調布の星』の文句に布美枝が笑ってしまったのがやはり良くなかったらしい。
茂が、原本を直したいと言って手を伸ばしてきた。
「ええですって。早こと刷って届けんといけんのですけん」
「…そげか」
それもそうかという風に茂がしぶしぶ頷いた次の瞬間、またも噴き出して
しまった。
「だらっ、笑うんなら返せっ」
「宣伝ですけん?」
「いいから戻……」
や、と布美枝は紙を奪われまいととっさに体を捻る。茂が身を乗り出してきた。
「あ、ちょっ……」
「お」
「破れっ、やぶ…」
「このっ」
「あー!あー!」
半透明の紙が茂と布美枝の頭上でぴらぴらと舞う。茂が、冗談を通り越して
半分本気で奪い取ろうとしているのを感じとり、布美枝も負けじとムキになって
体を反らした。(あ、危な……)
「よこせっ……!」
茂の右手が勢いよく伸ばされた瞬間、布美枝は持っていた紙を右手から左手に
移した。それが茂にとってフェイントのような形になった。
前のめりになった茂が手で空を掻く。「うわっ」
「ひゃっ……!?」
バランスを崩され、茂はとっさに畳に手を付こうとした。―――――が、
間に合わなかった。
そのまま布美枝の方にもたれこまれると、とても男の体重を支えきれない。
ドサリと二人折り重なって倒れこんだ。
「……すまん」
仰向けになった布美枝の肩口で、くぐもった声が聞こえた。目の前に茂の
つむじが見えた。
307 :
時短仲直り 3:2011/10/12(水) 21:58:14.20 ID:E/uMtFHj
はっと我にかえった。左腕のない夫には
倒れたときに反射的にとる受け身がとり辛いのではないか。今のでどこか
打ったりひねったりしていないだろうか。ついムキになっていた自分を恥じた。
「す、すんません、ふざけすぎて。怪我は…」
ないですか、と訊こうとした布美枝の体の上で、茂がむくりと起き上がった。
「あ、いや…」
その右手が、布美枝の左の乳房を掴んでいた。
「あ、あなた」
先に気付いたのは布美枝の方だった。
「ん?」
茂が、何か言いたそうな真っ赤な顔の妻の、その視線の先を追いかける。
倒れた際にとっさに目の前のそれを掴んでしまったのだろう。
「………あ」
やっと夫も気付いたようだ。
「け、怪我はなくて、良かった」
胸を触られて動揺するなんて、夫婦の間では今更すぎるとわかっている。
けれど、いや、だからこそというべきか、二人重なったこの体勢は
布美枝に夫婦の夜を連想させた。事故なのに意識している自分が恥ずかしい。
『恥ずかしい』を燃料にして頭の中でぐるぐると熱が生まれる。
ひとりのぼせ上がった布美枝の胸の上を、かっぽう着越しに
茂の手が移動した。
「あなた…?」
いつまでも自分の上からどかない茂のその動きに、そこで初めて
布美枝は不穏な気配を感じた。
「そういやあんたとは、喧嘩しとる最中だったな」
「え…」
308 :
時短仲直り 4:2011/10/12(水) 21:59:38.23 ID:E/uMtFHj
今それを持ち出すのか、とギクリとした。確かに昨夜の言い争いから
ろくに口をきいていなかったし、内心その気まずさに音を上げそうだった。
しかし、美智子や戌井が村井家を訪問してきた後は何となくその気まずさも
消えてしまったのだと思っていた。うやむやな決着だけれど、これはこれで
穏便に終わって良かったのかもしれないと。
それなのに茂がまた蒸し返してきた意図が掴めないのと、密着している
この体勢も相まって、再び焦ってきた。
「け、喧嘩ってほどでもないですけど、あ、ほんとは喧嘩だったのかもしれん
けど、私もちょっこしいらんこと言っちょったし…あ、でもやっぱり、キャン…
キャンディーとかはっ」
自分でも整理できないまま言葉を繰り出す布美枝の唇が、茂の指に
ぎゅ、とつままれた。
「んむ…?」
「もうええ」
つまんだ指の力を緩めた夫の声音は穏やかだった。
「俺も、キャンディーはちょっこし奮発しすぎたかもしれんしな」
布美枝からしてみれば、全然『ちょっこし』『かもしれん』ではないと
言いたかったが、せっかく謝ってくれているのだからこの際素直に
聞いておくべきだろう。喧嘩のそもそもの原因は義父にキャンディーを
送ったことではなかった気がするが、昨晩の気まずい空気を引きずるのは
もう嫌だった。そして、相手に下手に出られると、こちらも神妙になってしまう
のが情というものだ。
「そんな、私こそ…」
「だけん」
布美枝の詫びの台詞を、やけにきっぱりとした茂の声がさえぎった。
「仲直りするか」
309 :
時短仲直り 5:2011/10/12(水) 22:01:33.46 ID:E/uMtFHj
「え?」
まさに今その仲直りをしている最中ではないか、夫は何を
言っているのだ―――――と怪訝に思った次の瞬間、唐突に布美枝は
その『仲直り』の意味を理解した。普段、ぼんやりしていると他人から
よく言われる布美枝だが、真上にいる夫の悪戯めいた瞳と、さっそく
自分の身体をまさぐる不埒な右手を見れば、さすがに嫌でも察する。
「な、何考えとるんですか」
「だから、仲直りを」
「こんな昼間っから、な…」
「夕べの替わりだけん」
頬がさあっと熱くなる。
「そげなことええからっ、は、早くどいてください!こげなとこ誰かに見られたら…
中森さんだって降りてくるかも…」
「あの人は今日おらんよ。出版社周りに行っとる」
ここは毅然とした態度をとらねばならない。布美枝は声を張った。
「私、急いでチラシ刷って美智子さんの所に届けんといけんのですよ!?
ふざけとる時間ないんですけん!早…」
「ほんなら、早こと済ますか」
喋っている間に、茂の手がスカートの中に侵入してきた。
「!」身をよじって逃げようとするが、上半身は茂の胸でびったりと固定され、
左脚は右手で捕まえられている。
「ちょっ…」
その右手が太腿をすべり、脚の間を目指す。
「…ほんとに、やめ…」
腿の内側のその奥を茂の指が掠めた。
「やっ!!」
勢いよくばふっと脚を閉じた時には既に遅く、茂の手を腿に挟んでしまった。
「なんだ」
茂が嬉しそうに笑った。
「濡れとるじゃないか」
「〜〜っ…!」
行為の淫らさに反して、それはまったく邪気のない笑みだった。
310 :
時短仲直り 6:2011/10/12(水) 22:03:13.95 ID:E/uMtFHj
(ひどい)
喧嘩をしていた期間は丸一日にも満たなかったが、茂の〆切りやら
月の障りやらで、夫婦の行為に至るのは実は久しぶりだった。
予期せぬとはいえこうやって組み敷かれれば、身体が反応してしまうのは
仕方がないではないか…心の中で自己弁護する。
反面、口では拒みつつもしっかり感じている自分は、酷くスキモノかも
しれないと思うと情けなかった。
日の高いうちからこんなみだらな行為をしようとしているのに、背徳感とかを
夫は感じないのだろうか。
「ええだろ」
…結局、彼には抗えない。
好きなのかもしれない、この夫に性急に求められるのが。彼という気まぐれな
波に翻弄され、流されることを望んでいるのは布美枝自身だった。
閉じた脚の力を緩めて軽く曲げる。それが布美枝からの意思表示だった。
「…すぐ、済ませる」
チラシを届ける為の時間を気にしてというより、茂自身が急いているように
見えた。先ほどまでの余裕ある笑みは消えて早くも少し息が荒い。
実は彼も我慢していたのだとすれば、それはお互い様だ。布美枝の秘所は
既に、慣らす必要がないほど濡れていた。
貞淑ぶってみても、身体はこんなにも正直なのだと我ながらそら恐ろしくなる。
一刻も早く夫を飲み込みたくてだらしなく唾液を垂らしているこの身体は、
自分のものでありながら自分のものではなくなってしまったのだ。
初めて夫に抱かれた、あの夜から。
茂がもどかしそうにスラックスを下にずらした。布美枝も、スカートは着けたまま
腰を浮かせて濡れた下着を下ろした。脱がせられるのを待たずに自らそうする
のは初めてだった。開かせた布美枝の脚の間に位置どると、茂が一気に
布美枝の中に入ってきた。
311 :
時短仲直り 7:2011/10/12(水) 22:05:54.85 ID:E/uMtFHj
「あ………っん…!」
電流が布美枝の背中から頭の裏側を駆け抜けた。欲しいものが与えられる
喜び。茂が性急に突いて布美枝の入り口と奥を行き来した。
いつもより余裕のないその動きに呼応して、布美枝も自然と腰を動かした。
内側の壁がひくついて茂に絡みつく。
仰向けになった胸はブラジャーの中を泳ぎ、布地を擦った先端が充血して
硬く尖った。その刺激も布美枝を快楽へと導いた。
服を着たまま下半身を繋げているはしたなさも、昼日中から行為に耽っている
ことへの罪悪感も、むしろ欲の炎を煽る風に変わる。
(何も、悪くない……なんも)
「あぅ……んっ!あんっ!!」
『仲直り』だと茂は言った。それは行為に及ぶ為の口実と思っていたが、
なるほどこれ以上の仲直りはないと今この時実感する。こうして肌をぴったりと
付けて、温かなもので満たされてしまえば、見栄も、矜持も、熱い息に
溶けて消えてしまう。夫婦だけに許された特権だ。
「―――――――ぐ」
ここで、茂はいったん身体を離すと、布美枝の腰を掴んでうつぶせにさせた。
「あ……?」
「膝。…立ててくれ」
のろのろと言われた通りにすると、ちょうど彼の目の前に裸の尻を突き出す
格好になった。
犬みたい、とちらりと思ったが不思議に抵抗はなかった。
再び侵入してくる茂を、布美枝はなめらかにくるむ。ほら、自分の胎内は
こんなにも彼の仕様ではないか。確かめるつもりは一生ないけれど、おそらく
この器は、もう夫以外の男性は受け入れないように仕上げられたに違いない。
「ああ…っは…っあ、ふぁ…」
「う……」
動物の交尾さながらの交わりは、いつも以上に本能を呼び覚ましていく。
「あう………っ!!!」
布美枝がばさりと髪の毛を振り乱した。後ろに大きく反り返った瞬間を
追いかけて、茂は素早く布美枝の中から自身を引き抜いた。先から迸るものが
布美枝の白い尻を濡らすと、それは外からの陽光を受けて奇妙に映えた。
312 :
時短仲直り 8:2011/10/12(水) 22:08:04.57 ID:E/uMtFHj
布美枝は今度こそ急いでチラシを刷っていた。猫の手も借りたいとは
このことだ。茂は呑気に、奇麗にできとるなとかなんとか感想を述べながら
ちゃぶ台に肘をついて見物ときている。
「もう、ただでさえ時間ないのに……」
布美枝がぼそっと呟いたのを茂は聞き逃さなかった。
「『ないのに』?昼間っからあんなことしてって?」
わざと言葉尻を拾われたのだ。赤くなっただろう頬を、下を向いて隠した。
「喧嘩の後の仲直りは大事だけん。それに、大して時間くっとらんだろ」
「も…もうええですって」
忙しさを強調する為にことさらせわしなく手を動かす。雰囲気に呑まれた
とはいえ、すっかり乱された先ほどの自分を切り離したかった。
ずるいなぁこの人、と内心布美枝は脱力する。こんな仲直りの方法が
この世にあるなんて、結婚するまでは考えもつかなかった。また未来に
訪れるかもしれないいくつかの諍いも、今回のように流されて終わるのかも
しれない。それでもいいと思ってしまう辺り、だいぶ自分は夫のいい加減さに
毒されてきたような気がする。
(ほんと…ずるい)
自由奔放で、少しええ格好しいで、無駄遣いする夫。それでも、全身全霊で
仕事に打ち込む姿を見ているからこそ何とかして力になりたいと日々願って
いるし、太一を貸本屋に足を運ばせるというもう一つの目的はさておき、
こうしてチラシを刷って客を集めて読者の集いを成功させようと奮迅している
自分がいるのだ。
(しょうがないね、大好きな旦那様の為だけん)
「おい、何一人で笑っとる」
「えぇっ!!?」
茂の指摘に、知らず緩んだ頬を無理やり引き締めた。
この時の布美枝は知らなかった。読者の集いを開いたために、結局は
父の源兵衛の不興を買ってしまうこと。父は夫を責め、逆に布美枝は父から
夫を庇い、そしてその姿が父の信頼を勝ち取るという予想外の顛末。
けして完璧ではない茂と布美枝の夫婦が、地域の人々と共に一生懸命
やれることをやっていく。読者の集いという行事が始まろうとしていた。
(終)
>>305 GJ〜〜〜!!いや〜、自分もあのチラシの奪い合いはニヤニヤしたシーンだったですよ!
そのあとに仲直りエチーとは、やりますなぁ〜w強引にコトを進めるゲゲと、押し切られる布美ちゃんに萌えた。
ということは、その後こみち書房に笑顔でチラシを届けにいった布美ちゃんは、
ゲゲとの濃密な仲直り事後、ということだったのですな。これは今からでもDVDを見直さねば!
>>305 GJ!ガリ版いちゃいちゃ後に改めて仲直りとはまた萌える…!
ふみちゃんを黙らせるために唇をつまむしげーさんとか
事後チラシを刷りながら心の中でノロケるふみちゃんがものすごいかわいかったです
本スレでゲゲ布美の初夜を気にしてた人、ここのぞいてくれたかなあ
>>305 GJ!
うっかりパイタッチな展開と割烹着プレイなのがツボった
>>305 GJ!ラストのふみちゃんの心の声がいじらしくて愛おしすぎる!
昨日ふみちゃんの中の人のコンサートの番組見てたんだけど
肩があまりに細くて綺麗でじっと見てたらよだれ出てきて自分でもびっくりしたw
投下させていただきます。
村井家の風呂が壊れる→銭湯ネタの雑談のあたりから妄想してみました。
321 :
福の神の算段1:2011/10/16(日) 15:10:20.61 ID:0b15bYhk
かじかむ指に息を吹きかけつつ、折角風呂の掃除をしたのに、肝心の火種が点かない。
仕方なく茂を呼び出してそこらじゅうを見てもらったものの、
「分からん」
と、簡単に匙を投げられてしまった。
「冬なんだけん、1日くらい風呂に入らんでも死にはせん。明日プロパン屋に来てもらったらええ」
「あたしたちはそれでもええかも知れませんけど…」
布美枝が口籠もっていると、やがてどやどやといつものご一行様が風呂桶を抱えてやってきた。
布美枝が気にかかっていたのは、このご一行様、つまり茂の兄、雄一一家のことだった。
家に風呂のないこの一家は、ほとんど毎日弟の家の風呂に浸かりに来る。
もう慣れっこになったとはいえ、この家に来た当初は随分戸惑ったことのひとつだ。
「水風呂なら入れんこともないが、真冬の今は止めといたほうがええな」
笑いながら事情を話し、茂は子どもたちの頭を撫でた。
甥と姪は、きゃっきゃと笑いながら茂に飛びついて遊ぶ。
「おじちゃん、戦闘機描いて」
「私、お姫様〜」
健太と波子の可愛らしいおねだりに、茂は仕事の手を止めて相手をしてやっていた。
比較的茂は子ども受けがいいのではないかと、布美枝は密かに思っていた。
子ども向けの漫画を描いている所為もあるのか、甥や姪には随分懐かれている。
近所の子どもにも「絵描きのおじさん」と言われているのを耳にしたことがあった。
スケッチブックを持ってうろつき、ときおり絵を描いているというのが目立つのだろう。
普段は無口でおよそ愛想が良いと言える類の人種ではない茂の、
子どもたちの前で見せる自然な笑顔が、布美枝はとても好きだったし、
むしろそんな表情を引き出せる子どもたちを少し羨ましくも思っていた。
「仕方ない。銭湯に行くか」
腕を組んで苦い顔をしていた雄一が、佐知子を振り返る。佐知子も頷いた。
子どもたちがそれを聞いて、にわかに活気付く。やはり広い風呂は嬉しいのだろう。
それぞれがリクエストした絵を茂から受け取ると、早く早くと両親を急っつく。
「…たまには布美枝さんたちも一緒に行かない?」
波子に手を引かれながら、佐知子が布美枝を覗う。
すると雄一が
「おう、そうだな、一緒に行くか。2人分の銭湯代くらい、出してやるぞ」
まるで渋る様子もなく言ってのけた。
「ええ?!」
ふたりは同時に叫んだ。そして顔を見合わせる。
「な、なんだなんだその、鳩が豆鉄砲喰らったような顔は?!」
「兄貴がそげなことを言いだすとは思わんだった」
「人を守銭奴みたいに言うな!なあ?」
と、雄一は佐知子を見る。しかし、佐知子も茂たちと同じ顔をして夫を凝視していた。
「お前もか!」
見栄は張るけれど、身内にはとにかく遠慮なくけち臭さを発揮する雄一が、
たかが銭湯代とはいえ、自ら払ってやると言い出したことには、布美枝も大いに驚いた。
「ったく、汗水垂らして働いた金で風呂を馳走してやろうという、
兄の温かくも広いこの心が、お前らには解らんのかなあ」
「とうちゃんボーナス貰ったもんな」
健太が横からしたり顔で入り込んでくる。
「そげか。そりゃあ懐が温いはずだな」
「馬鹿野郎、スズメの涙みたいなもんだわ」
「ああ、ああ、わかったわかった。そげなら今日は兄貴に甘えさせてもらうわ」
そう言って茂は布美枝に目配せをした。
本当に機嫌を損ねる前に、この展開に便乗させてもらおうという、
苦笑の入り混じった茂の表情が可笑しくて、布美枝は準備をしながらクスクスと笑った。
322 :
福の神の算段2:2011/10/16(日) 15:11:53.46 ID:0b15bYhk
― ― ―
しかして布美枝は戸惑っていた。
佐知子の身体つきは思っていたより均整がとれていて、出るところは出、締まるところは締まっている。
それに比べて平べったい自分の裸は、色の白さが貧相さを増して見せ、何とも情けなかった。
佐知子が手際よく波子の世話をしている横で、布美枝はもじもじと肌を撫でていた。
「広いお風呂はいいでしょう。あ、茂さんの家のが狭いって文句言ってるわけじゃないけど」
慌てる佐知子に苦笑いながら応じる。
なるべく胸は見られないよう、隣にやや背を向ける恰好で身体を洗った。
すると、洗い終えた波子が布美枝の背中を流してやると申し出てきた。
「だんだん」
「それってありがとうって意味でしょ」
布美枝にも懐いてくれる波子は、年の離れた妹のいずみの幼い頃を思い起こす。
布美枝は目を細めて背中を波子に任せた。
「おかあちゃんはあとでしてあげるからね」
「女の子はええですね。色々お手伝いもしてくれそう」
「じゃあ早く産めばいいのに」
「え…」
おそらく佐知子は何気なく言ったのだろうが、布美枝が瞬時に真っ赤になったのを見て、
けらけらと笑い始めた。
すると後ろから波子が心配げに声をかける。
「おばちゃん、背中、虫にさされてるよ」
「え?ほ、ほんと?」
「うん、赤くなってる。いち、にい…ろく、なな!7個!」
もう正月も近いというのに、蚊やダニなどいるだろうか、それとも面皰?
「痛いの?」
「ううん、全然気づかんだった。変だねえ」
波子をふり返りつつ、背に腕を廻してみた。
すい、と前方を覗き込んできた波子が、布美枝の胸元を見て小さく叫ぶ。
「おばちゃん、こっちもだよ」
「え?」
見ると、布美枝の胸元や乳房に点々と、紅色の痕が散らばっていた。
「―――――っ!」
風呂に入って熱に温められた所為で、その痕跡を白い肌の上に浮き上がらせた。
まさしく、それは茂が辿った経路。おそらく背中にもあるという赤い痕も…。
「あ、あの、これは…」
ちらりと佐知子を見ると、肩が小刻みに震えている。
あえて聞こえていないふりをして、顔を背けた向こう側で笑っていた。
「もぅっ…お、お義姉さんっ…」
湯あたりして逆上せたかのように、布美枝は真っ赤になって佐知子を揺すった。
笑い上戸の佐知子は、不思議顔の波子をそのままに、いつまでも笑っていた。
― ― ―
「そんなに仲がいいならそろそろできたっておかしくないのにねぇ」
湯船に浸かりながら、佐知子はしみじみと呟いた。
それは布美枝も常々思っていたことで。
結婚して以来、もう数えきれないほど褥を乱してきた熱い情事の末に、
もたらされてもよいはずのものは、なかなか訪れてはくれなかった。
茂はそれについて何も言わなかったし、布美枝も当事者の夫はもちろん、
誰に対して相談することもできずにいた。
323 :
福の神の算段3:2011/10/16(日) 15:13:27.00 ID:0b15bYhk
「あたしの身体がおかしいのかも知れません…。もう30だし」
「年のことを言うなら茂さんは10も上でしょう。自分ばっかり責めるのはよくないわ」
「けど…」
ぷかぷかと浮かんで遊ぶ波子の無邪気さを愛しく見つめながら、布美枝は切なくなった。
甥や姪でさえ、あんなに楽しそうに相手をしてやる茂なのだ。
それが我が子であれば、いかばかりかと想像すると、
いつまでたってもそれを実現できない、我が身を責めてしまいたくなるのも自然だった。
三海社の仕事がここのところ順調で、家計にも少しずつ余裕が出てきたこの頃では、
そのときがいつ来てもいいようにと、密かな貯蓄も始めたというのに。
「きっと…できたら喜んでくれると思うんです」
「そうねえ。健太や波子にも優しいからねえ」
「だけん…余計」
「茂さんとは話したりしてるの?」
「いえ、何も」
考えればどうしようもなく締め付けられる胸の内が苦しく、
打ち消すように布美枝はざばっと湯で顔を覆って、大きくため息を吐く。
「…病院に行ったほうがええんでしょうか」
「そんなに気負わないの。独りで考えてたってしょうがないじゃない。これは夫婦ふたりの問題よ」
だからといって、茂にどう切り出せばいいのか、布美枝には皆目見当がつかなかった。
「子どもは授かりものなんだから。それに…」
佐知子はちらりと布美枝の胸元を見て、ふふ、とほくそ笑む。
「できてからじゃ、そこまで激しくはなかなか…ねえ」
「え、ちょ…も、もぅっ!」
「意外ねえ、本当に。持ち上げるわけじゃないけど、本当に布美枝さんが来るまでは
女っ気なんてこれっぽっちもなかったのよ。私も義理ながら姉として心配してたんだから。
でも良かったわ。茂さんがこーんなに情熱的な人だったなんて」
「………」
強い接吻の痕をじろじろと見ながら、佐知子はいたぶるようにして冷やかした。
怒りつつも照れくさく布美枝は、しかし佐知子には少し感謝していた。
気楽になりなさい、という義姉の言葉に、僅かばかりでも気持ちは救われていた。
やがて、先ほどは居なかった靖代が番台に座ると、布美枝を見つけて声をかけてきた。
「布美枝ちゃん、先生たちもう出て待ちくたびれてるわよ」
佐知子と波子、布美枝は顔を見合わせて微笑んだ。
― ― ―
「初めてだねえ、布美枝ちゃんがうちに来てくれるの。風呂が壊れたときだけじゃなくて、
もっと来なさいよね。まけてあげるからさ」
豪快に笑う靖代に、申し訳なく頭を下げて、布美枝たちは風呂屋をあとにした。
店先で雄一一家と別れ、茂とふたりとぼとぼと家路につく。
「中森さんにも声をかければ良かったですねぇ」
「あの人も色々節約しとるようだからな。兄貴がもう1人分出すと言えば誘ったんだが、
さすがにそれは無理だろうと思ってな」
と茂は苦笑した。
昼間は賑やかな商店街も、夜の帳が降りれば途端に静かになる。
茂とふたり歩く靴音だけがやたら響いて、無言の空気を際立たせる。
佐知子にからかわれた肌の朱色を思い出し、布美枝が独りで勝手に照れていると…。
ひょいっと、茂の右手に左手を掬われた。
324 :
福の神の算段4:2011/10/16(日) 15:15:08.13 ID:0b15bYhk
「えっ」
冷たい指が布美枝の指と絡んで、ぎゅっと強く握られる。
突然のことに驚いて、けれど反射的に布美枝も思わず握り返してしまった。
「あ、あの…」
嬉しいけれど戸惑う布美枝が、おずおずと茂を覗う。
茂は夜目に慣れないまま、じっと目を細めて、繋がれたまま布美枝の手を凝視していた。
…かと思えばそのままの姿勢、表情で
「あんた、爪が伸びとるな」
と言い捨て、同時に握っていた手もぽいっと投げるように解放した。
「…え?」
拍子抜けした布美枝は、しばし呆然とその場で佇んでいたが、はっと気づいて慌てて茂を追った。
「あの…」
追いついて、改めて茂を横顔から覗う。
すると何やら頬を弛めて、くっくっと笑っていた。
「…?」
からかわれたのだろうか、いつものように?
布美枝が少し唇を尖らせると、茂はあはは、と笑いだした。
「何ですか、もぅ!」
「いやなに、兄貴に目ざとく見つけられたもんでな」
「…お義兄さんに…?何を…ですか?」
茂は自分の肩のあたりを指差して、
「猫の爪痕、だ」
いたずらっぽく言った。
「…猫?」
「肩のあたりとな、背中を引っ掻かれとるらしい」
「え、いつの間に?」
「うちに猫はおらんはずだがな。けどよう考えたら1匹おったわ。大きくて白いのが」
「え?え?あたし、知りませんよ?いつの間に住みついとったんですか?」
「…普段は物静かに過ごしとるがな、夜になると布団の中で甘ったるい声でよう啼く。
耳をいじったりあちこち撫でたりしとったら、そのうち俺の肩に引っ掻き傷をつけるんだわ」
そこまできて、布美枝の顔がみるみる真っ赤に染まっていくのが、
闇の中でも見て取れるようになった。
それを見て茂はますます可笑しくて堪らなくなった様子で、にやにやと続けた。
「引っ掻かれるのは俺の所為だと兄貴は言うとったがな。けど、昼間の猫からは
想像がつかんくらいに、夜はずいぶんと激しい猫なんだな、とも言うとったぞ」
「も!やめてください…っ!」
義姉だけでなく、義兄にまで、夫婦の睦み事の名残りを見つけられ、
次にふたりに会ったときに、どんな顔をすればよいのか分からなくなってしまった。
茂はというと、そんなことはどうとも思っていない素振りで、「爪切っとけよ」と笑っていた。
先を行く茂の背中を追いつつ、火照った頬に手を宛てる。
意外にも自分の手は温かく、先ほど握った茂の手の冷たさを思い出した。
「貴方」
振り返らないまま、背中で「うん?」と返ってきた。
後ろから、今度は布美枝が茂の右手を掬った。やはり、氷のように冷たかった。
夫の手は温かいのが常だと思っていた。随分待たせた証拠だろうか。
「…なんだ」
少しだけ虚をつかれたらしく、小さく驚いた茂が布美枝を見下ろす。
「手が…冷たい。すみません、長いこと待たせてしまって」
325 :
福の神の算段5:2011/10/16(日) 15:17:00.85 ID:0b15bYhk
はあっと息を吐けば、白い空気が茂の右手を包んで消えた。
たったひとつのこの右手は、なんとしてでも守らなければ。
しもやけや、小さな怪我ひとつ、絵を描く負担になりやしないか。
冬の冷気にかじかんだ茂の手を、布美枝は自らの頬に宛てて目を閉じた。
その冷たさが、蒸気した顔に心地良く、思わずすりすりと頬ずりした。
布美枝の頬に宿っていた熱が、やがて節ばんだ茂の右手に移っていく。
ゆっくり目を開けると、じっとこちらを見る茂の視線とぶつかって、
はた、と我れに返った布美枝は自分の行動を振り返った。
くすくすと笑う茂を、再び頬を染めて八の字眉で見上げる。
「…本物の猫みたいだな」
口元に笑みを保ちつつ、頬に置いた手のままに、ふわりと茂の唇が降りてくる。
まるで口下手な男の、「ありがとう」の言葉のような、温かく、優しい、口づけ。
目を閉じて、安心して闇に身を投じる。
触れ合った場所から伝わる温もりだけで、布美枝は全てを茂に委ねられる…。
― ― ―
床を整えた途端に、茂の胸へ誘われた。それまで平然と外を眺めていたくせに。
ずるい、と思いつつ、早くも唇に翻弄される自分自身に、腹の中で苦笑した。
髪がまだ濡れていて、冷たさが茂を冷やしてしまわないだろうか、密かに案じていると。
「…冬の風呂屋はいけんな。せっかく温もっても家に着くまでにこげに冷たくなる」
布美枝の髪にも唇を滑らせながら、耳元で愚痴めいた。
「すみませ…、っん、少し、乾かし…」
「ええ。すぐに温もる」
「ゃ…」
言葉を奪われて、代わりに彼の舌を与えられる。
腔内で絡み合い、音を立てて互いを求めあう。荒い息とともに、交換する声にならない睦言。
淫らに奏でる吐息と、水音。興奮のうちに零れる喘ぎ。
ふわりと組み敷かれて、首筋に茂の鼻が沿って下る。
顎髭がざらついて、肌が反応して粟立つ。
舌先でちろりと舐められると、さらにぞくぞくした。
「待…っぁ…爪…まだ切ってな…」
「あとにせえ」
「でも」
「猫は爪を切ると調子を崩すらしいぞ?」
それはヒゲじゃなかったかな…と思いつつ、目を閉じると、
今はもうすっかりいつもの温かさを取り戻した茂の右手が、
寝間着の上からゆっくりと、布美枝の乳房を揉みあげてくる感触に身悶えた。
一気に身体をかけ昇る、ふしだらな熱に侵され始める。
確かに今更爪を切るような段階でもなさそうだ、としみじみ反省した。
雄一のものを借りたのだろう、いつもと違う石鹸の香りがする茂の髪にくすぐられ、目を細める。
鎖骨を啄まれる鳥の音のような響きに、大きく息を吸って充足感を得る。
愛する男を胸に抱き、その情熱で以て愛される至高の悦びに、布美枝は全てを投じようとした。
―――――『…そろそろできたっておかしくないのにねぇ』
突然脳裏を過ったのは、先ほどの佐知子の言葉だった。
326 :
福の神の算段6:2011/10/16(日) 15:18:53.35 ID:0b15bYhk
年が明ければ、茂と結婚して1年になる。
何度も何度も愛し合って、幾度となく注がれた熱い種子を、
実らせることもできずにこのまま、ただ彼に愛されるだけの身体で良いのだろうか。
いつもいつも、熱情のままに溺れて流される、それだけの女で…。
布美枝の喉がごくりと鳴った。
そこへ口づけた茂が、ふと強張ったままの表情の布美枝に気づいた。
「…どげした」
怪訝な顔で覗き込まれ、布美枝は慌てて首を横に振った。
しかし、付け足すように無理矢理頬を弛ませたのが余計だった。
ますます茂はむっとして、布美枝を睨み付ける。
「なんだ。嫌なら無理するな」
「違…そげなこと、ないです…」
「なら、なんだ」
「…」
黙り込んだ布美枝にため息を吐き、茂は姿勢を戻した。
がしがしと乱暴に頭を掻いて、胡坐に組んだ脚の上に頬杖をついて、苦い顔をしている。
「すみません…」
布美枝もゆっくりと身を起こし、やや乱れかかった寝間着の合わせを直した。
「考え事か」
責めるというよりは、いじけた調子で投げられた茂の言葉に、
少しの間考えてから、やがて布美枝はこくりと小さく頷いた。
「あの…」
布美枝は佐知子の言葉を思い出していた。
――――― 『夫婦ふたりの問題よ』
茂はどう思っているのか、知りたかった。
打開策があるとするなら、彼が握っているような気がした。
「…貴方は…考えたことありますか。こ、子ども…の、こと」
尻すぼみに俯いてしまったので、茂の表情を覗うことはできなかった。
「もう、い、1年…近くに、なるのに、あたし…たち、全然…で、できんで…」
けれど、茂の返事もすぐには返ってこなかった。
何とも思っていないとか、むしろそんなものは邪魔だとか、そういう答えが返ってきやしまいか。
そう思うと、自分自身の鼓動の音が、やけに大きく聴こえる気がした。
やがて静まり返った部屋で、しゅん、と小さく茂が鼻をすすった。
それを合図に、ふっと布美枝は顔を上げた。
「気にしとるのか」
「あたしが…!」
思わず茂にしがみついた。支えがないと、どうにも不安だった。
「…あたしが、悪いのかも知れません。ちゃんと調べてもらったほうが」
吐精を受け止める器はあっても、それを育む胎内が機能しないというのは、
妻として、女として嘆かわしい思いだった。
「そこまでせんでも」
「けど…。けど…お義兄さんだって、光男さんだって、お子さんがおられるのに」
「順番の問題だわ。俺は一番結婚するのが遅かったんだけん」
「でももう、何回も…ずっと、あたし、貴方にその、…して、い、いただいとる、のに…何度も。
それに、や、やっぱり…いつまでも子どもがおらんと、境港のご両親にも、嫁として顔向け出来んし…。
周りにも変に思われるんじゃないかと、思って」
布美枝の必死さは伝わったのか、茂はふうと肩を落とし、背中を丸めた。
腕に縋る妻を見下ろし、ほんの少し口元を持ち上げてみせた。
327 :
福の神の算段7:2011/10/16(日) 15:20:59.86 ID:0b15bYhk
「あんたが生真面目なのはよう知っとるけどな、別に家だの世間だのに制限されて暮らす必要はない。
子どもがおらんならおらんで、なんも困ることはないし、後ろめたく思うこともない」
自分を気遣ってくれているのだろうか。布美枝は茂の優しい言葉に、逆に居心地の悪さを感じた。
子どもがいなくてもいい…。それが茂の本心なのだろうか。
「欲しくは…ないですか」
肯定されたらどうしようと思いつつ、つい問うてしまった。
茂はふむ、と天井を仰ぎ、照れくさそうに口籠った。
「まあ、どげなもんかは、見てみたい気はする」
「…」
「だけんといってあんたを責めるつもりはないぞ。俺に原因がないとも限らんのだけんな」
茂に庇われれば、それにつれて自分が歯痒い。
夫の命を受け継ぐことができないこの身を、そんなに優しく労わらないで欲しい。
ぽろぽろと零れる涙は、哀しいというより悔しい味がした。
「…そげに頭でっかちに悩むことない…」
寝間着の裾で、乱暴にごしごしと顔を拭われる。そんな茂なりの思いやりが、むしろ胸に痛い。
縋りついた腕から、広い胸に額を宛てて声を殺した。
背中を擦る右手の大きさに、いつまでも甘えたままで。
「こう考えたらどげだ」
耳元で囁かれながら、頬に唇が触れた。
撫でられる髪とともに、顔を掬われる。
「あんたも俺も、まだ未熟なんだ、多分」
「み…じゅく?」
鼻をすすって、茂の言葉に首を傾げる。
「子どもを持つということはすなわち、父親と母親になることだ」
「…はぃ」
「あんたは未だにそげしてすぐにグズグズ泣きだすし」
「む…」
「俺は毎日漫画のことばーっかり考えとる」
「…はい」
「こげな調子ではまだ多分、子どもなんぞ到底無理だと、福の神が算段しとるんだろ」
にっと笑った茂の顔に、布美枝もつられてようやく微笑んだ。
それにほっとしたのか、茂はまたも乱暴に布美枝の頬を抓って歯を見せた。
子どもにするように、布美枝の頭を撫で、
「慌てんでええ。今はただ…」
言いかけて、口を噤む。
「?…ただ?」
乱れた髪を手櫛で直しながら、中断された言葉を待った。
が、続きの代わりに力強く抱きすくめられ、小さく驚いた。
ずっと何も言わない茂を、その胸の中から仰ぎ見る。
けれどそれすらも許されず、ぐっと頭を肩に埋め込まれた。
「…」
布美枝のものではない、温かな鼓動の響きを感じた。
茂の左胸が、忙しく振動を伝えていた。
「ぁな…た?」
肩に埋められた唇のまま、籠った声に少しだけ反応があった。
ゆっくりと解かれた身体。けれど瞳はそのまま、眼前の男に縛り付けられて…。
「今は…」
近づく唇に、緩やかに目を伏せる。
唇が触れると同時に、ようやく届いた低音は確かに。
328 :
福の神の算段8:2011/10/16(日) 15:22:59.61 ID:0b15bYhk
「ただ、あんたとふたり…」
―――――― それだけで、ええ…。
敷布に沈んでいく布美枝の身体から、重苦しいわだかまりは霧消していく。
茂の体温が包み込む、不可思議な空間の中では、もう何も考えることはない。出来ない。
煩悩は必要ない。ただ本能のみで、堕ちていけばいいだけだ。
唇、頬、耳を辿り、髪の絡みつく首筋へ、茂の口づけは流動していく。
こんな間近で夫の顔を、しかも夜の闇に映える獣の表情を見れるのは今しかない。
けれど、あまりに淫らなその視線に、捉えられるのも少し怖い。
どうしても伏せてしまう布美枝の瞼の上で、ちゅ、という軽快な音がした。
「寝るな」
「ね、寝とりませんよ」
茂の軽口は、実はひとつに照れ隠しのためということを、布美枝は密かに知っていた。
きっと先ほどの台詞を、呟いてしまった今になって悔やんでいるのだろう。
布美枝が微笑うと、口を曲げて目を逸らした。とても年上には思えない仕草が愛しい。
茂はいじけた表情のまま、布美枝の腰に巻き付いた帯を荒っぽく解いた。
「あんた、子どもがどうの言う前にもうちっと太れ?」
「え?」
「こげな細い腰では、お産に向いとらんと思うが?」
見下ろす恰好のままするりと、茂の右手が寝間着に入り込んで、布美枝の腰を撫でた。
「…ゃっん!もぅっ!」
下半身を捩った布美枝を見てほくそ笑み、再び覆いかぶさった茂の唇は布美枝の耳元へ。
「あ…ふ…」
うなじ、耳の裏、布美枝の薄い皮の上を、ぬるぬると舌が這い廻った。
外耳の縁を咥えられ、軟骨を舌でなぞられる。
茂の荒い呼吸が、鼓膜に直振動を与え、ぴちゃぴちゃと舐られる音が、直に脳を刺激する。
「ん…ぁぁ…ん」
右手はいつの間にか乳房を寄せて持ち上げ、先端の桜色をいたぶっている。
口づけは胸元へ降りて行き、ちくちくと柔らかな場所に吸い付かれた。
(また…)
ぼんやり見下ろしながら、布美枝は佐知子にからかわれたときのことを思い出す。
自分の印を刻み、満足げにそれを確認する茂が可笑しくて思わず噴きだすと、
目ざとく茂が布美枝を睨み上げた。
「なんだ」
文句あるか、という顔が幼さを醸していて胸がきゅっと鳴る。
「ふふ…あの、ね…?」
風呂屋での一件を手短に話した。
波子を誤魔化すのに、佐知子とふたり大慌てになったこと。
佐知子が茂を、意外にも情熱的な人だと言ったこと。
密かにあのあと、靖代にも指摘されたこと。
「風呂屋の女将さんにもか…。あの人は拡声器みたいなもんだけんな」
身内程度なら恥もさほどでない茂も、どうやら靖代は苦手分野らしかった。
「少し控えるかな」と呟いた茂に、布美枝は思わず「そんな…」と洩らした。
がっかりして夫を覗き込むと、何とも言えない愉快げな顔を向けてきた。
「あんたが不憫だと思ったんだが。もっとして欲しいか?」
「………っ」
鼻先が触れる距離で、わざと視線を逸らさせないように、意地悪く尋ねられる。
こうなってしまえば布美枝も頷くしかなかった。当然茂を調子付かせることになる。
けれどそれは布美枝の本心で。
むしろ茂だけのものという証の刻印なら、ずっと消えないものが欲しかった。
329 :
福の神の算段9:2011/10/16(日) 15:24:24.18 ID:0b15bYhk
再開される乳房への愛撫は、さきほどよりも心なしか熱を帯びてきて、
吸い付かれる接吻と、舐られる舌の動きが同時に、激しく布美枝を攻めたてる。
そして優しく撫でるような口づけの合間に、朱色の痕を刻むことも忘れない。
首を振って感応すれば、くすりと笑われる。その吐息にすら身悶える。
「…ん…ん、…ふ…」
やがて互いに全裸となり、冷たい部屋にそこだけ熱い身体を擦りつけ合った。
茂の堅い筋肉に、布美枝の柔らかな肌はぴたりと馴染んで、
触れ合う場所から互いへの想いを交わし、受け取るたびに情熱に昇華していく。
縺れて絡む肉体がしなやかに伸縮し、闇の中で蠢くふたつの塊を、美しく月光が照らしだす。
ふいに脚を掬われて、どきりと心臓が疼いた。
太腿の内側の、一段と肉が柔らかい場所を甘く齧られる。
「やっ…、あん…っ…」
唇と舌がするすると脚の付け根一帯を摩り、軽い鼻息にくすぐられて肌が震えた。
薄い繁みの向こうの開口部は、淫らな唾液を滴らせてひくついている。
乱暴にでもいい、弄んで欲しいと待ち焦がれても、もどかしく焦らされる。
(いじわる…)
腹の中で悪態を吐くけれど、布美枝はただ腰を捩ってそのときを待つしかできない。
「…見とるだけだぞ?」
「え…」
「見とるだけでどんどん濡れてくる」
笑いながらなじられて、火が飛んだように頭が沸騰したけれど、
茂に対してはとにかく素直すぎるこの身体は、今更否定のしようもなく。
ただ愛しい男だけにいたぶられる瞬間をひたすら待っている。
「…て、…くだ、さ…」
「ん?」
ここまできて羞恥など、この男の前では無用の飾りだ。
「舐…めて」
布美枝が素顔を晒せば、茂は決してそれを拒まない。
望みどおりに、望んだ以上のものを与えてくれる。
「――――― っ…!」
その刹那は声のみならず、意識まで吹っ飛ばされた。
茂の舌は絵筆のように、歪むことなく確実に布美枝の陰唇の縁どりを辿り、
包み隠してあった熟れた花芯に、甘く軽い口づけを落とした。
「は……っ、あぁ…ん、ぁぁっ…!」
ちう、と音がして花から蜜を吸うごとく、優しく吸い付かれると、
びくびくと全身が反応して、もろく砕けそうになる。
布美枝の身体が勝手に撥ねださないよう、茂が腕でがっちりと脚を抑えつける。
指の腹で最も敏感な粒に円を描き、弄ぶように何度も擦られた。
「ああ…っ!…は、ぁ…ん…は、…ぁ、はぁ…!」
繰り返し指が抜き差しされ、溢れ出す蜜を舌で舐られる。
茂の息遣いは荒く、発情する雄の四つ足そのものだ。
「ん、あ…ぁ…ん、…ふ、…っ」
布美枝の伸ばした両手は、くしゃりと茂の黒髪に絡まり、もっと、と切なく乞い願う。
甘い痺れに神経を狂わされ、やがて布美枝は淫らな喘ぎの中に、自らを失っていった。
放り投げてあった左手に、茂の指が絡まった。
その指先の感覚に、ようやく我れに帰った布美枝が、のぼせた表情で夫を見上げた。
「ええか?」
短いそのたった一言に、たちまち全身総毛起ってしまう。
それは茂が与えてくれる、快感への予告状。
受け取ってしまえば最後、麻薬のようにそれなしでは耐えられなくなるほどの。
早くください、などと。1年前の布美枝では考えられない言葉が、喉元まで上ってくる。
秘裂に押し当てられた茂の硬直は、いとも簡単にずぶりと呑み込まれていく。
「は…ぅ…っ」
仰け反って喉を鳴らす。根本まで入り込んだと同時にきつく抱きしめられた。
茂の形を記憶して、それを噛みしめる内襞はまるで生き物のようにさざめく。
「やぁ……あ……ん」
押し引きする茂の腰に合わせて、布美枝も身体を揺らした。
シーツをぎゅっと握りしめ、例えようのない感覚の波の狭間を浮き沈みした。
「…おい」
しばらくして律動を緩めた茂が、布美枝の耳元で囁いた。
「遠慮するな。俺にしがみついとれ」
「…っ…けど…」
このままではまた、新しい爪痕をつけてしまう。
布美枝はいまひとたびシーツを握りしめ、もじもじと躊躇った。
「気にせんでええ。痛くはないし、それに…」
茂は態勢をぐっと押し倒し、布美枝の耳元へ口を近寄せ
「あんたがえらく感じとる、という証拠だけん」
ぼそりと囁いて、ふふんと笑った。
布美枝が困惑顔になるのを、愉しむのが茂の軽口だ。
「もぅ」布美枝が唇を尖らせて、軽く茂の肩を押し戻す。
そして見つめ合って、互いに表情を弛ませた。
甘美で、濃厚な口づけを交わし、覆いかぶさる茂に両腕を絡めた。
最も密着した体勢で再び、官能の揺さぶりが始まる。
「あっ、…あっ、んっ、ふ、あ、あ、…ぁっ…!」
布美枝の奥の、確実な場所を穿たれる。そのたびに嬌声が零れる。
咥えこんだ男根の力強さにも圧倒され、ぎりぎりと指先へ力が籠もっていく。
紅色の刻印と猫の爪痕。互いが互いのものだという証。
それが間違いなく刻まれているのなら、願わくはそれを結晶として、
人形(ひとがた)にして我が身に宿して欲しい。
それはすなわち、茂の命を預かるということに等しい、と布美枝は思った。
苦しく胸の内にこみあげる、形容し難い想いが、涙となって瞳から溢れた。
気づいた茂が、そっと唇で掬いとってくれる。
「また…余計なこと、…っ、考えとるという、顔…だ」
漲る射精欲を押しとどめながらも、布美枝の涙の真意を瞬時に悟る。
そういうところに、甘えてしまう。茂が年上だからというだけではなく、
夫として、男としての、目に見えない包容力の大きさを、痛感する。
「あな、た…」
「なんも…考えるな。俺だけの、こと…を…」
よりいっそうの抽送に声を失った布美枝が、白い喉を留守にすれば、
吸血鬼のように噛みつかれ、ついには首筋にも印が残された。
「あっ…!あ…んんっ!は、っ、ああ、く…ふ…ぅん…っ!」
そんなことを知る余裕もなく布美枝は、襲いくる官能の痺れに震え、悶えた。
「っ…つ…」
やがて苦悶を解放した茂が、熱い精子を布美枝の奥深くへ吐き出した。
肩を上下させ、全身へ拡がっていく心地よい疲労に目を瞑っている。
その様子を下から眺めながら、布美枝は再び溢れそうになる涙を必死で堪えた。
震える睫毛、汗ばんだ鼻筋、乾いた唇、揺れる前髪、
堅い腕の筋肉、厚い胸板、弛緩した肌の温もり、
そして幻の左腕…。
全てが愛しい。
愛しい男の艶やかな表情と、逞しい肉体をしかと見つめるために、
今だけはひたすら、涙を堪えることに集中した。
― ― ―
翌日、ガス周りを見てもらい、風呂の火種は元通りになった。
どやどやと様子を見に来た雄一一家が、さっそく一番風呂に浸かる。
「修理代はまあ、昨日の銭湯代ということでうちも負担したということにしとけ」
と、いつもどおりの義兄の調子で、結局一銭も置いていくことはなかった。
もちろん、茂も布美枝も期待はしていなかったけれど。
その代わり、波子が手紙をくれた。学校で字を習い始めたところらしい。
『おじちゃんおばちゃん、いつもおふろありがとう』
たどたどしい字が微笑ましく、布美枝は波子の頭を撫でた。
「だんだん」
子どもらしい照れた笑顔が可愛らしい。目を細めていつの日かの我が子を想像した。
帰り際、佐知子がぼそっと布美枝に声をかけてきた。
「茂さんと、ちゃんと話したの?子どものこと」
「…はい。まあ、そげに慌てることはない、と…」
福の神の算段ですけん、と嬉しそうに言った布美枝には、佐知子もきょとんとなったが、
すぐににこっと笑顔になって、ぽんぽんと背中を叩いてくれた。
「良かった。でもなんだかもうすぐのような気がしてきた」
「え?そ、そげですか?」
ぽっと赤くなった布美枝を見て、うふふと横目でにやける佐知子。
その後ろから、波子が布美枝を指さして言った。
「おばちゃん、また虫に刺されてるよ。昨日はなかったとこ」
「へ?」
いっせいに、雄一、健太、茂が布美枝をふり返り、佐知子がわたわたと波子の口を塞いだ。
雄一の視線が布美枝の首筋の朱色に留まると、これ以上のないにやけ顔になる。
横にいた茂の首を腕にはさみこんで、脇腹を小突いた。
「子どもに隠し事はなかなか難しいもんですなあ」
わざとらしく雄一が言った。茂は仏頂面で兄を押し退けた。
親子4人、手を繋いで仲良く帰っていく後姿を見送りながら、
布美枝は夕日の所為にしてずっと赤くなって俯いているしかなかった。
下を向く布美枝の額を指で軽く弾いて、茂が顔をあげるよう促す。
「…ったぁい」
「だら」
「だ、誰のせいで…」
ふふん、と勝ち誇ったような表情の茂を、むっとして睨みあげる。
すると、ひょいと右手が差し出された。
「…?」
夫の狙いが解らず、けれど差し出された手前、おずおずと左手をそれに乗せてみた。
ぎゅっと握りしめられ、少しどきどきした。
「あの?」
「いつか、ああなるときが来るかも知れん」
顎で指した先には、雄一一家が去った道だけ。ひゅるりと風が舞っていた。
「…来んかも知れん」
「…」
「けど、元はお互いひとりだっただろ」
「はい」
「…それが今はふたりだ」
「…はい」
「意味、解るな?」
「…………はい」
「そういうことだ」
不器用な男の、ぶっきらぼうな言葉。
けれど布美枝には熱く胸に響いた。
今はただ、茂にだけ付いていこう。
彼の命を継ぐ方法は、何も形だけに拘らなくても良いのかも知れない。
自分という妻が、彼の全てになれるように。それが神の意志ならそれも最上だ。
ふたりは微笑みあうと、手を携えて戻っていった。
――― 茂と布美枝の、小さな命が芽吹き始める、少し前のお話…。
おわり
>>321 GJ!
何故、子供が出来ないか心配する程に仲が良すぎる二人に萌えたw
最後らへんの茂さんの語りにじーんときました。
兄さん家族もいい味出してて、よかったです!
>>321 GJ!
佐知子さんとの絡みが新鮮で楽しかったです
冬らしさ満開で雰囲気あった!この夫婦は冬が似合うなあ
>>321 自分
>>293ですが293での妄想や他の方の雑談がこんな素敵な話になるとか嬉しすぎる!
ゲゲふみらしいイチャイチャも兄貴一家の優しさや面白さもほんとGJでした
>>321 GJ!
なんかあったまったよ〜。
本スレにあった「強烈なヲタが集まるスレ」とはここのことだろうか?
『強烈』じゃなくて『熱烈』にしてほしかったなww。
>>321 GJ!帰り道の二人の描写が素敵すぎて思わず妄想してしまいました
>>334 自分もゲゲふみのイメージってわりと冬だ
なんでだろ…結婚が冬だからか?
貧乏なのも一因じゃない?<イメージが冬
「貧乏」って、冬に暖房器具がなくて家の中に隙間風吹いて凍えてるみたいなベタなイメージがある
んで上の話みたいに二人であっためあってるのが似合うっつーか。
これが夏なら、扇風機なくて二人で仰ぎっこってのもいいかもしれないけど若干弱い
いや、結局夏でも春でも似合うけどなんとなく
まとめサイトのSSを読んでて思ったんだが、
どの職人様も綾ちゃんの初めての相手は祐ちゃんって設定で書いてるんだな
確かに別の男を知っていたら何か寂しいかもしれん
ゲゲ布美のイメージ、なんとなく「冬」に同意
概ね
>>339と同じ意見だが、あとは二人の萌えシーンて冬場が多いと思いません?
境港できつねの声きくとことか、初めてのニヤニヤ結婚記念日、藍子、喜子誕生も冬
夏はどっちかっつーと、ゲゲが汗だくで漫画描いてるとこばっか思い出す
>>340 かといって祐ちゃんが童貞ってふうには見えないんだよな
処女崇拝じゃないけど、その設定のほうがしっくりくるというか…
最初冬だったのが、だんだん身も心もとけていって春に…みたいな感じかな。
春って言っても、爛漫!じゃなくて、まだ寒いけれど陽だまりにナズナとか
ハコベをみつけるってのが「小さな幸せを大事に集める」って感じで好きだ。
実際の季節もすごくよく描かれてるけど、売れっ子になって熱い季節を迎え、
子供たちが大きくなって実りの秋を迎える、みたいな人生の季節感もありそう。
放映時期も、戦争の話は八月、最終回は彼岸花の咲く秋って感じであってた。
夏は送り火と一緒に去って行く茄子の牛たちを見ながら二人が寄り添う姿が浮かぶな
冬が新婚時代で夏は線香花火とか山小屋のシーンの影響かその時代の家族四人ってイメージだ
そうすると春は藍子と三人で秋は最終回付近の時代って感じか
>>341 確かに冬場の萌えシーン多い
>>339の、二人で扇ぎっこっていうのは可愛いかもしれないw
ゲゲ「疲れた。俺は腕が一本しかないけん。あんたは交互に扇げよ。」
布美「あ、ずるい!」
→イチャコラ…みたいな画が浮かんだ
>>345 やだ超かわいい
しげーさんがからかってふみちゃんがふくれる図ってのはほんと萌えるよ
冬はもちろんだが夏もよかったよ
アシスタント1年生の並んだふたりの長い腕がかすかに汗ばんでて
明け方には寄り添って寝てたもんなあ
>>347 あ〜そげですなあ
そういえばヤッターダンスで布美ちゃんのスカートがひるがえるのも美しかったなあ
そのあとに「あなたほんとにすごいです!」から、「よかったな」頭ポンポンも萌えたなあ
>>348 スキンシップシーンがあまりにも少なかったからこそ
こうやって萌え苦しみ妄想し集うわけですなw
ハロウィンに盛り上がるここのところの街並みをみるたび
>>248あたりを思い出すじゃないか、どうしてくれる!
「お菓子をくれんと悪戯するぞ」
「お菓子?そげなものあるわけ…」
「なら悪戯する」
「きゃ…ああん…」
綾子さんが「イチゴくれないとイタズラしちゃうぞー」って言って
「今十月だから無理だなーというわけで思う存分どうぞ」とニヤニヤするゆうちゃんを妄想してしまった
綾子さんがイタズラしてるんだかされてるんだかな状態にもっていってくれるに違いない
んじゃ中の人の場合だと…
松「向井さん、ハロウィンですね〜。トリックオアトリート♪」
向「『Trick or treat』でしょ。何その発音」
松「…」
やぐP「さすがだ、向井君…!」
>>350 「お菓子じゃないですけど、ちょうどカボチャの種を炒ったとこなんですよ」でかわされたら、と妄想してちょっこしワロタ
かわしたとこで夜に倍返しが待ってるだろうけどw
356 :
352:2011/10/29(土) 18:32:12.03 ID:bIA03bzN
おおマジか…!スマンorz
この前の紀行番組でちょっこし喋ってたね
猫とじゃれて猫の真似してて超可愛かった
>>347 今日鍋蓋で車の練習をふと思い出したけどあれは夏の萌えシーンでいいんだろうかw
見られて恥じらうふみちゃんやらその後のしげぇさん呼びやら
あーDVD見たくなってきた
最近いちせん見ていると、裸エプロン展開はどうだろう?と妄想してしまう
>>359 運転の練習シーンもっと見たかったな
>>360 ゆうちゃんのおやじさんが倒れたばっかでおふくろさんがつきっきりで看病してて、
ゆうちゃんが一人で家に居るときに綾子さんがこっそり夕飯を作りにいって
もしキャミソールとホットパンツだったら裸エプロンに見えてしまっても仕方ないよね!という妄想をしてしまった
そのまま致しても萌えるけど疲れきってて綾子さんにほっとして寝てしまっても萌える…
前に調布を散策したら神社で骨董市しててゲゲさん絶対なんか怪しい物買ってきそう!と妄想してしまった
ふみちゃんがなにか掴まされるのも良いよなー
>>360 自分はベビードール展開を
ゆうちゃんに内緒で休みの日に試着したら何らかの理由で休みじゃなくなって一日中それで接客とか
働いてる間はうっかり忘れてて閉店ギリギリにゆうちゃんが気づいて慌てれば良いよ
>>362 骨董市いいなあ。ググったら来週あるみたいだけど、遠くてムリだ。
しげーさんに骨董市、似合いすぎww
骨董市に二人で行って、安いお茶碗を前にうんうん悩むふみちゃんをよそに
南国系のあやしいものを値引き交渉するしげぇさんが思い浮かんだw
366 :
362:2011/11/07(月) 20:00:57.32 ID:6fvxgY47
>>364 木々にかこまれた神社の中でやっててすごい雰囲気あってよかったよー
深大寺に聖地巡礼する際にはついでに是非
ほんと、見た瞬間ゲゲさんにぴったりだ!と思ってしまったよw
>>364 凄いな・・・エロエロせんべい屋じゃないか
おっさんはベビードールがわからんで思わずググったぞ!
子供服が出てきたが、そっちじゃない…んだよな?
>>368 「ベビードール ランジェリー」でググったら分かると思うよ
>>369 ありがとう、さっきまでwikiってたw
つかあれは下着なんだよな?
>>363の妄想はあくまで服の下にあれを着て…ということでいいんだよな?!
でなきゃ確かにエロエロせんべい屋だ…!
>>370 363だけども、もちろん服の下に下着としてだよ!w
そのまんまとかそんなオープンエロなせんべい屋は間違いなくゆうちゃん専用だw
風邪ネタを公式でふたりともやってるのがゲゲふみの侮れないとこだよなーと今風邪をひいて思う
そしてふたりとも風邪をひいてても相手を励ますのが素晴らしい
>>363 清楚な白とか似合いそうだが、妖艶な黒や紫辺りも良さそうだと妄想した
内容:
新婚シリーズを書いている者です。
前回はお騒がせしてしまい、申し訳ありませんでした。
第6弾、予告したので投下します。
あと、2〜3書きたい構想も残っているので、もう少しここにいさせて
ほしいなと思っています・・・。
375 :
鬼の岩屋1:2011/11/11(金) 14:59:38.30 ID:pQlMtztu
(やっと、少しは慣れてきたか・・・?)
下腹部に顔を寄せ、雄芯を口に含んで懸命に愛しているフミエを、茂は下目づかいでこそばゆげに
見下ろした。目の前には、少し開いて枕を貸したものの、肝心な部分はきゅっと力を入れて閉じた
フミエの白い太腿が迫っている。
上になった脚の膝頭を持って拡げ、内側の柔らかい肌に歯をあてると、フミエの口の動きが
ぴたりと止まった。くぐもった悲鳴とともに、逃れようとする大腿を頭で押さえ、紅く暴かれた
秘裂に口づけると、フミエはあわてて雄芯を口から離し、抗議の声をあげた。
「・・・ゎ・・・私はっ・・・ええですけん!」
「だら・・・何のためにこげなかっこしとると思うとるんだ?」
ふたりはお互いに相手の大腿に頭を乗せ、逆向きに向かい合う二つ巴の体勢で横たわっていた。
閨ごとの始まりに、ふたりがお互いを口唇で愛するようになったのは、つい最近のことだった。
とは言え、もう何度も施されているというのに、フミエはいまだにこの行為に慣れることができない
ようだ。他のどんな行為よりも羞ずかしがって、そこを舌で侵されるたび、初めてのように抗うの
だが、その様がかえって茂をかきたててしまっていることには気づかないらしい。
(こっちの方は素直なんだがな・・・。)
言葉とはうらはらに、フミエの花は蜜をこぼし、紅く濡れて茂の唇を誘っている。女体というもの
には、どんな羞ずかしい行為でも受け入れ、やがて悦楽へと昇華させてしまう柔軟さと貪婪さがある。
だが、その身体の持ち主の、心はいまだ初心でものなれていないのだった。
「ぃや・・・ゃめ・・・ほんとに・・・だめ、なの・・・。」
哀願する声を聞き流し、さらに強く大腿を押さえつけ、もう片方の脚をフミエに持たせる。
さらされた蕾を指の腹でゆるりと撫でると、フミエが悲鳴をあげて茂の大腿にしがみついた。
唇にするように秘裂に口づけして、花びらに舌をからめながら指を秘口にしのびこませる。
見えないフミエの顔がどんなに乱れ、許しを乞うているかを想像しながら、指で快いところを圧迫し、
舌を蕾に押しつけた。
「・・・めぇっ・・・っちゃ・・・ぅう―――――!」
フミエが脚にしがみついた指が皮膚にめりこみ、大腿は無意識に茂の頭をはさんで締めつけた。
茂は、顔は見えなくともフミエの身体が伝えてくる絶頂をつぶさに感じとっていた。
頭を締めつける脚と大腿に喰いこむ爪の力がゆるみ、絶頂に張りつめたフミエの身体が徐々に
弛緩していく。そっと舌と指を離すと、開かされたまま硬直していた脚を伸ばしてやり、
身体の向きを変えてゆっくりと覆いかぶさった。少し汗ばんで一段と柔らかく吸いつくような肌に
このまま溶けていってしまいそうな自分を奮い立たせ、半ば開いた唇を喰らうように奪う。
「・・・んんっ・・・ぅ・・・ん・・・。」
自らの蜜の残る舌に口じゅうを翻弄され、フミエは夢中で応えながら広い背にしがみついた。
今味わわされたばかりの絶頂に頭も身体も痺れ、両脚はしどけなく開いたまま・・・。
376 :
鬼の岩屋2:2011/11/11(金) 15:00:35.98 ID:pQlMtztu
「・・・んんっ――!ん―――っ!!」
とろとろに蕩け、無防備にほどけていた秘所を、なんの前触れもなく剛直がつらぬいた。
悲鳴はふさがれた口の中で鈍くひびき、ぎゅっと閉じられた目尻から涙がこぼれ落ちた。
「・・・っはぁっ・・・はぁ・・・ぁ・・・。」
唇を離すと、フミエが夢中で息を吸い込んだ。少し呼吸がととのったところを見計らって、
つながったままくるりと反転し、上にさせる。
「きゃ・・・ゃ・・・んっ・・・。」
不安定さにもがいて、思わぬ快感に貫かれ、フミエは必死で膝で身体を支えた。自らの
身体の重みに、ずん、と一段ふかく呑みこまされ、喉に悲鳴がこみあげてくる。
「お・・・ねがっ・・・いま、上は・・・だめ・・・。」
達かされたばかりですぐに充たされた場所から、甘い毒のような悦びが全身にじんじんと拡がる。
フミエは身体を起こしていられず、茂の胸にすがりついて身悶えた。
「・・・だめだめ言っとらんで、自分で快うなってみい。」
指に指をからませて、手をぐっと押してやると、フミエはしかたなくその手にすがるようにして
身を起こし、ぎこちなく前後に腰を揺らし始めた。
「ぁっ・・・あん・・・ぁ・・・ぁぁっ・・・。」
見られている羞恥に肌を染めながらも、腰の動きは次第に滑らかになっていく。茂が下から動きを
添えてやると、フミエは茂の肩にしがみついて、夢中で自分のいい所を固い芯にこすりつけた。
「・・・だめ・・・だめぇっ・・・も・・・ぁあ―――――!」
繰り返し到達を訴えながら、フミエは茂の胸に倒れこんだ。フミエのやわやわとした重みは、
まだ天上に魂があそんだままのせいか、はかなく軽く、その軽さはなぜか茂の胸を衝いた。
・・・とくん、とくん・・・胸に伝わる脈動が、フミエの身体にいやというほど刻みこまれた絶頂を
伝えてくる。フミエは涙に濡れた顔を胸に埋めたまま身動きもしない。
「ゃぁっ・・・も・・・ぁ・・・ふっ・・・ぅ・・・。」
茂が、大きな手で臀をわしづかみにして自らの下腹部にこすりつけるようにしながら、下から
腰を使い始めた。弛緩していた身体がぴくりと引き締まり、顔を胸にうずめたままのフミエが
肩にしがみつく指が再び強まった。
「・・・めっ・・・ま・・・た・・・っちゃうぅっ・・・。」
腰が自分の意思とは全く関係なく前後左右めちゃくちゃに踊り、フミエをみたびの絶頂へと
追い上げていく。
「くぅ・・・ん・・・んぅ・・・ん―――――!」
爪が食い込むほど茂の肩をつかみしめ、肩口につよく唇を押しつけると、哀切な悲鳴は
頭蓋骨の中で鳴り響き、フミエの意識を遠のかせた。
がくがくと激しく動かされていた腰の動きが止まり、フミエは死んだように茂の身体の上に
覆いかぶさったまま、またぴくりとも動かなくなった。
377 :
鬼の岩屋3:2011/11/11(金) 15:01:31.18 ID:pQlMtztu
「どげした?・・・エラかったか?」
・・・やさしい声に、まっ白な世界から呼び戻される。容赦のない行為とは裏腹なその声に、
こらえていたものがあふれ出した。
「ふ・・・ふぁ・・・ぅ・・・ぅえ・・・ぅっ・・・。」
フミエは汗ばんだ胸に顔を押しつけたまま、肩をふるわせて泣きだした。
(ちょっこし、やりすぎたか、な・・・?)
いまだ慣れぬ口淫の味を刻み込まれるだけでも、おぼこっぽさの抜けきらないフミエには
刺激が強すぎるのかもしれない。そのうえ、休む間も与えずつらぬいて、自分で快感を追わせ、
一度の絶頂では飽き足らずにさらにもう一度音をあげさせた・・・。
(また、泣かれてしもうた・・・。)
あきれるほどおぼこだったフミエが、悦びを素直に表現することを覚え、魂が抜け出るような
絶頂を初めて味わってからまだ日も浅かった。未知のことを教えるたび、フミエは羞恥に戸惑い
ながらもけなげに応え、新しい悦びを知っていく。まだおののきやすい心と身体をやさしく抱いて
やろうと思っているのに、気がつけば奪いつくし、むさぼりつくしてしまうのは、
(俺にも、余裕なぞないということか・・・。)
罪悪感がちくりと胸を刺し、茂は身体の上で震える妻をせめて泣きたいだけ泣かせてやっていた。
しゃくりあげが徐々におさまり、我に返ったものの、子供のように泣きじゃくってしまった
ことや、終わりを迎えたというのにまだ茂の上に乗ったままの自分が恥ずかしく、フミエは
どうしていいかわからずにじっとしていた。
「ぁん・・・。」
ずるりと引き出される感触に、フミエが思わず声を上げて身をふるわせた。肩を抱いてそっと
降ろしてやると、胸に顔をうずめてくる。
ほおに残る幾筋もの涙の痕を指でふいてやると、顔を上げたフミエの瞳はもの問いたげに揺れ、
また新たな涙をふくらませていた。初めて会った時から、茂の心をとらえて離さないその大きな瞳が
(なして、こげに・・・いじめるの?)
と問うているように思え、茂は心の中で自分でもよくわからない論理を叫んだ。
(あんたが、あんただけん・・・いけんのだ!)
長いこと独りで暮らしてきたが、その間女がいなくても特に不自由は感じてこなかった茂だった。
夫婦の交わりなどというものはもっと淡いものと思っていたのに、フミエを抱くたび、のめり込む
ように奪いつくしてしまう自分が意外だった。
フミエの中にある何か、たとえて言えば磁力のようなものが、茂の本能を呼び覚ましている・・・
としか言いようがない。そしてまた、奪えば奪うほどその磁力は強くなっていくのだ。
(そげな眼で、見るな・・・!)
まっすぐな視線に耐えられず、また唇を盗んだ。
「ふ・・・ぅぅ・・・ん・・・んんっ・・・。」
なだめる為の口づけのはずが、柔らかい感触に思わずむさぼる。フミエの苦しげなあえぎに、
再び嗜虐的な衝動がよみがえってくる。
(いけん・・・これではきりがないが。)
今夜のように激しく責めた後は、何か言葉をかけてやった方がいいのだろうか。だが、結婚前は
おろか、結ばれてからでさえ、わかりやすい愛の言葉など囁いたことのない茂にそんなことは
できそうもない。今の自分のこころが自分でも説明しかねて、茂はただ目の前の唇を奪いつづけた。
378 :
鬼の岩屋4:2011/11/11(金) 15:02:33.40 ID:pQlMtztu
翌日。茂は今日も、読者からの手紙で『神が差し』、復活が決まった鬼太郎の執筆に没頭
していた。ふと昨夜のことを思い出し、ペンが止まる。
「そういえばあいつ・・・最近なんだかおかしいな。」
ここ数日、フミエの様子はなんとなくいつもと違うようだった。台所にいる後ろ姿に声をかけた
だけなのに、飛び上がるほど驚いたかと思うと、つくろいものの手を止めたまま、大きな瞳をぼうと
潤ませてぼんやりしていたり・・・。さらに昨夜は、茂が手を触れた瞬間、びくりと身体をすくませ、
明らかな震えを隠して無理やり微笑んでみせた・・・。
(今さら、怖いというわけでもあるまい・・・?)
結婚してからもうじき半年が経とうとしていた。最初の頃は夫婦の間でそういう空気になる
たびドギマギしていたフミエも、慣れてくるにつれ、しっとりと身をまかせ、何もかもを受け入れて
くれるようになっていた。だが、この頃ではそれをよいことに、熱情の赴くままフミエをむさぼり
尽くしすぎてはいなかったか・・・?
(あんまりいじめ過ぎて、嫌われてもいけんか・・・。)
涙をいっぱいにたたえたあの瞳を思い出すと少し不安になり、茂には珍しく、少しは「反省」
などという気持ちもわいてくる。
(だいたいあいつは、お固過ぎるところがある。まあ、そこがええんだが・・・。)
ふだん貞淑なフミエだからこそ、あらがいながらも乱れ、やがて身も世もなく奪いつくされる
様子がたまらなくそそる・・・さっきまで少しは反省していたというのに、もうやにさがっている
自分に気づいて、茂は苦笑した。
「いや・・・今はこんなことを考えとる時ではない!しめ切りに向かってばく進だ!」
頭をぼりぼりとかきむしると、また原稿に向かって没入していった。
それから数日後。しめ切りは明日に迫り、徹夜もふた晩めに突入した茂は、せめて顔でも
洗って眠気を覚まそうと、仕事部屋のフスマを開けた。
「おい、何をしとる・・・?まだ寝とらんかったのか?」
深夜というのに台所でフミエが何かやっているのに驚き、茂は少し責めるようにそう言った。
「おばばに教えてもらった、ショウガの湿布をつくっとるんです。」
女房はうちのことに専念していればいい、自分の仕事は自分だけが責任をもつ・・・それが茂の
考え方だった。フミエがいくら献身的な妻でも、自分の仕事のペースに巻き込みたくなかった。
「そげなこと、せんでええ。肩こりは漫画家の宿命みたいなもんだ。」
「私もなんか・・・役にたちたいんです。」
フミエは大量のショウガをすりおろしつづけた。しばらくその後ろ姿をみつめていた茂は、
もう何も言わなかった。フミエが温かいタオルにおろしたショウガを包み、パンパンに張った
肩に乗せてくれた時、茂は素直にそのじんわり沁みこんで来る熱さに身をまかせた。
379 :
鬼の岩屋5:2011/11/11(金) 15:03:27.76 ID:pQlMtztu
「ああ・・・ぽかぽかして具合がええ。」
昔ながらの年寄りの知恵と言うものもバカにはできない。ショウガの成分が血のめぐりを良く
してくれ、たまらなく気持ちがよかった。
「・・・あんた、そこに座ってくれんか。その『スミ』と書いてあるとこな、そこにこれ塗ってくれ。」
明らかに顔色さえ良くなった茂が、意外なことを言い出した。戸惑いながらも、フミエはおずおず
隣の机に座って筆をとったが、固まってしまって筆をおろすことができない。
「私・・・こげなことするの初めてで。・・・私がやってもええんですか?」
「・・・あんたならできる。手先が器用なのはわかっとるけん。」
フミエがこれ以上ないというくらい嬉しそうな顔をした。息をつめて小さな枠の中に墨を塗っていく。
机の前に正座して精神を統一し、一心不乱に筆を動かすフミエを、茂はこそばゆい思いで眺め、
自分もまた原稿に没頭していった。
・・・朝の光が射し込んで来た時、完成した原稿を前に、二人は机に向かったまま、身体を寄せ合って
眠っていた。
原稿を届けに行った茂は、帰るなり仕事部屋に敷いた布団に倒れこみ、徹夜つづきの疲れから
夜になるまで眠り続けた。自分の腹の音で目が覚め、遅っぱぐれの夕飯をかきこみ、風呂に入った。
「あんたも早こと寝ろよ。昨夜はほとんど寝てないだけん。」
茂はまたすぐ眠るつもりで風呂へ向かうフミエにそう言ったが、ふと次回作の構想がわいて、
スタンドの灯だけをつけ、机に向かって鉛筆をはしらせた。
ちょっとメモをとるだけのつもりが、時計を見るともう30分も経っていた。ふと気配を
感じてフスマの方を見ると、暗闇に電灯の光を映して大きな目玉がひとつ。茂はギョッとして
フスマをガラリと開け放った。
「きゃ・・・。」
フスマの向こうには、妖怪ひとつ目小僧ならぬフミエがびっくりした顔でのけぞり気味に座っていた。
「あ・・・す、すんません。寝とられるかと思ったら、電気がついとったけん・・・。」
フミエはドギマギして、言い訳にもならぬことを口ばしった。
「・・・用があるんなら声をかけえ。のぞく必要がどこにある?」
茂はなんだかおかしくなった。見合いのときといい、この女は自分の目玉が人一倍大きいことを
自覚していないらしい。
「なんか言いにくい事でもあるのか?」
「・・・今日は、ほとんどお話ができんだったけん・・・。今朝あなたが出かけられる時、私、
目も覚まさんで・・・すんませんでした。」
「なんだ、そげなことか・・・ええよ。徹夜なんてしたの、初めてだろ?ゆうべはあんたが
手伝ってくれて、えらいこと助かったぞ。」
「ほ、本当に・・・?」
「ああ、ほんとだ。」
茂を見つめるフミエの瞳が、また涙をたたえてぼうっと霞んでいた。
380 :
鬼の岩屋6:2011/11/11(金) 15:04:23.04 ID:pQlMtztu
(あれ?また、この眼だ・・・。)
それは、茂を責めている眼ではなかった。言葉には出さなくとも、その眼はせつないほど茂が
好きだと語っていた。
(・・・俺、なんか惚れられるようなええことしたっけか・・・?)
今度は茂の方がドギマギして目をそらし、何か話題はないかと辺りを見回したあげく、
「お・・・ええ月だ。梅雨にはめずらしいな。」
珍しく風流なことを言いながら灯りを消し、窓辺に近づいた。
「ほんと・・・ええお月さま。」
フミエも窓に寄って茂と並び、ふたり仲良く中天の月をながめた。むら雲から顔を出した月は
煌々と照り、澄んだ光を投げかけてくる。くっきりと陰翳をきざまれたフミエの横顔は、
昼間見慣れた顔となんだか違って見え、茂を少し不安にさせた。
「・・・女が月の面に見入るのは不吉だと言われとるけん、そのぐらいにせえ。」
「え・・・なしてですか?」
「魔に魅入られる・・・と言うてな。まあ実際には、夜、女が端近におるとかどわかされたりするけん、
そげ言うたんだろうけどな。昔の人は、それを鬼にさらわれて喰われた、と言い伝えたんだろう。」
昼間なら、鬼の話など非現代的過ぎてさほど怖くはないのだろうが、暗い中、さえざえとした
月の光に照らされながら聞くと王朝の闇も身近く感じられるのか、フミエは少し身震いした。
「喰われた・・・言うても文字通りガブリとやられたのか、それとも・・・。」
茂はニヤリと笑ってフミエの唇に喰らいついた。深く口づけていくうちに、驚いて一瞬こわばった
フミエの身体も、腕の中でたちまち柔らかくほぐれていく。
「・・・あんた、大江山の鬼の話を知っとるか?・・・酒呑童子の一党が金品は奪うわ女はさらうわで、
悪事のかぎりを尽くすけん、源頼光と四天王がそれを退治する・・・というのがお定まりの筋書き
だが・・・。果たして、真実はどげだったのかな?」
「ふぇ・・・?」
唇が離れたとたん、茂はまた熱心に話の続きをしはじめた。フミエは力の抜けてしまった身体を
茂にもたせかけて、息を弾ませている。
「なんだ、ちゃんと聞いとるのか?・・・おしゃべりなんぞより、早ことしてほしいんだろ。」
「ちゃ・・・ちゃんと聞いとります!」
フミエが真っ赤になって座り直し、乱れたえりや裾を取りつくろった。茂は笑いを押し殺して
机の上の本をとりあげ、挿絵をフミエに見せた。
「土着のカミが新興のカミに追いやられ、妖怪や悪神とされる・・・という例は多いな。まつろわぬ
民をおとしめるために作られた悪評かもしれん。一説には、異国からの漂着者だったともいうな。」
「肌や髪の色、肉食や血の色の酒・・・ほんに、異人さんだったのかもしれませんね。」
妖怪の話となると熱が入る茂が、次々と繰り出す知識に、フミエは感心して聞き入っていた。
381 :
鬼の岩屋7:2011/11/11(金) 15:05:15.14 ID:pQlMtztu
「けど・・・。」
フミエがふと暗い顔になった。
「・・・鬼の悪行が濡れ衣だったとしたら、かわいそうですねえ。さらわれて来たお姫さまも、
ええ鬼さんだったら馴染んどったかもしれんのに。」
「そげだなあ・・・鬼どもが退治された後、さらわれた姫たちは都に帰ったというが、その後幸せに
なれたとは思えんけんな。酒呑童子は人間だった頃、あまたの女を狂わせたというので里を
追われたほどの美男子だったともいうし、惚れてしもうた姫もおったかもな。」
「鬼なのに、美男子・・・ですか?」
「人間だった時はそげだし、老婆や美女に化けたりできるんだけん、ええ男に戻るのなんぞ朝飯前
だろう。生まれた時から異常に大きうて歯や髪が生えとったけん、『鬼っ子』と言われてうとまれ
たんだ。いつの世も、異能・異形のものは排除されるもんだ・・・俺のマンガがさっぱり売れんのも、
天才過ぎて凡夫には理解できんのだろう。」
「ほんなら、鬼も最初は人間だったんですか・・・。ちょっこし人と姿が違うだけでそげに悪者にされて
かわいそうに・・・。お姫様も、帰りたくなかったかもしれんのに・・・。」
フミエは鬼と姫君を、もうすっかり引き裂かれた恋人たちの様に思い、少し涙ぐんでさえいる。
「なんだ、あんたは感情移入がはげしいなあ。そげな昔の人のことでそこまで悲しまんでも。」
関係のない者にここまで同情するなんて、おめでたい女だ・・・。めったなことで他人に同情などしない
茂は、やれやれと思いながらもそんなフミエがいとおしかった。
「・・・こげな筋書きはどうだ・・・鬼の住処が楽園のような所だけん、頼光たちも宮仕えが嫌になって、
都に帰るのをやめてしまう・・・みんなそれぞれ豪傑だけん、鬼の仲間になって幸せに暮らすんだ・・・
『ミイラとりがミイラ』というやつだな。」
「・・・それ、あなたが宮仕えが嫌いだけん、思いついたんじゃないですか?」
「まあ・・・そげだ。」
茂が頭をぼりぼりとかき、フミエがうふふと笑った。どちらからともなく手が伸びて、フミエは
すっぽりと茂の膝の中におさまった。
「ん・・・ふ・・・ぅ・・・。」
浴衣ごしにフミエの熱が伝わってくる。合わさった唇はてもなく溶け出し、激しい欲望が突き上げた。
絶え間なく口づけ、息をはずませながらお互いの着衣を剥ぎ取っていく。下穿きに手をかけると、
フミエが脱がせやすいように腰を浮かせることは、羞ずかしいけれどもうふたりの間の暗黙の了解
だった。ふたりとも素裸になり、肌と肌をあわせてさらに唇を食みあう。
382 :
鬼の岩屋8:2011/11/11(金) 15:06:03.69 ID:pQlMtztu
行儀よく横ずわりで茂のあぐらの間に抱かれているフミエの脚をつかんで拡げさせ、真正面から
抱き合うと、茂の男性にフミエの蜜に濡れた女性が感じられる。フミエも、屹立を内腿にじかに
感じて、耐えきれないようにもじもじと腰をうごめかせた。
「このまんま・・・ええか?」
耳朶をねぶりながら囁くと、フミエが身をふるわせてうなずいた。腰を持ち上げさせて下から貫くと、
フミエは肩にしがみついてせつなげに茂の名を呼んだ。
「しげ・・・さん・・・しげぇ・・・さんっ・・・。」
「顔・・・見せぇ。」
「ぃや・・・。」
「ええけん、見せぇ。」
肩にむしゃぶりついているフミエの顔をそっと離させ、唇で唇をもとめる。口づけを解くと、
あの瞳がまた茂を見つめ返した。腰をつかんで上下に揺すぶると、甘い苦悶に顔をゆがめながら、
フミエもまた腰をゆらめかせて茂の動きに呼応した。
「んふぁ・・・ぁっ・・・ぁ・・・。」
結んでは離れる唇からとぎれとぎれに漏れるあえぎは次第に切迫し、フミエは長い髪を振り乱し、
弓なりに身体をのけ反らせた。上半身が離れ、ふたりの結び合わさった部分が如実に眺められる。
剛直を呑みこまされ、張りつめた玉門の上には、蜜をまとって紅く光るひなさきが顔をのぞかせて
いた。淫らにも可愛いその光景に魅了され、剥き出されたひなさきに指の腹をそっと押し当てる。
「・・・んっ・・・ぁ・・・ゃっ・・・だめっ・・・だめぇぇ―――――!」
茂の肩をつかみ、すがるような表情であらがうのにかまわずやさしく愛撫し続けると、フミエは腰を
振りたててあっけなく達した。到達の瞬間、びくびくと締めつけてくる肉壁が誘うつよい射精感に
耐え、だらりと弛緩したフミエの身体を膝で支えながら息をおさめる。
背を支えていた膝を外し、腰を支えてやると、フミエは自然に茂の首につかまりながらもう片方の
腕をうしろに伸ばし、しなやかに抱き倒された。やさしく横たえてやると、甘いうめきをあげながらも、
このうえなく幸せそうにほほ笑んだ。見下ろす茂のほおを手で包み、見上げてくる瞳はとろけるようで、
したたる愛情にあふれていた。ほおを包む手をとって、茂がいとおしそうに手のひらに口づける。
「ふふ・・・・・・っん・・・んんっ・・・。」
手のひらを舌でくすぐられ、笑った拍子に振動が伝わって、走り抜ける快感にフミエが身悶えた。
そっとおおいかぶさり、大きくあたたかな手で乳房をこねまわす。
「んぁぅ・・・ん・・・んふ・・・ぅ・・・。」
下から口づけてくるフミエに舌を与えてやると、大切そうに口に含んで強く吸った。注ぎ込まれる
唾液を、なんの躊躇もなく甘露のように受け入れる様子はたまらなく淫らで、思わずその頬を
つかんで激しくむさぼった。
383 :
鬼の岩屋9:2011/11/11(金) 15:06:51.05 ID:pQlMtztu
気が遠くなるほど口づけあってから唇を離すと、また涙をたたえた揺れる瞳にみつめ返される。
(吸いこまれそうだ・・・。)
瞳に魅入られるまま、だらしなく放ってしまいそうだった。
(いや・・・もう少し・・・。)
視線から逃げるように胸乳に口づけ、わざと腰は動かさぬまま、唇と指でふたつの果実をもてあそぶ。
乳頭から拡がる甘苦しさと、挿入れられたまま責めてもらえない秘口が絶え間なく訴えてくる焦燥・・・。
「ゃっ・・・ん・・・ぁ・・・し、げぇさ・・・んっ・・・ゃめっ・・・。」
フミエはたまらずに背にしがみつき、腰をうごめかして焦れた。フミエの渇望を知りながら、なおも
腰に体重をかけて押さえつけ、つよく食んでくる内部の責めに耐えた。あとひと息・・・で到達できない
フミエが身も世もなく悶え、息も絶えだえに懇願してくる様がいとしくもたまらなくそそる。
「はぁ・・・んっ・・・ぁ・・・お・・・ねが・・・ぁあっ・・・。」
「達きたい・・・か・・・?」
抱きついてあえぎながら解放を乞うフミエに、茂は聞かずもがなの質問をした。
「・・・き・・・た・・・。いかせ・・・て・・・。」
『達く』という言葉さえ知らなかったフミエが、それを口の端にのぼらせるようになったのはつい
最近のことだ。救いを求めて訴える甘く切迫した声が、男の本能をたまらなくかきたてる。
衝きあげるために茂が腰を上げると、フミエも無意識に腰を上げて離れまいとしてくる。
「・・・こら。くっついとったら快うしてやれんだろうが。」
茂は苦笑してまた腰を下げ、今度はずるりと引き抜きながら腰を上げた。
「ぁあ・・・ん。」
名残惜しそうなあえぎにかまわず、フミエの中心に再び猛りを突き込むと、
「ひぁあっ・・・。」
甘くせつない表情が、激しい悦びと苦悶に変わる。後はもう、浅く深く穿ち、捏ね上げ、最奥に
剛直をたたきつけた。
「だっ・・・ぁっ・・・ぁあっ・・・も・・・。」
「もっ・・・と・・・か・・・?」
激しい動きに息を切らしながらも、そう聞いた。フミエの口から需めを聞きたかった。
「ん・・・んっ・・・もっ・・・と・・・ぁ・・・ぁあ―――――!」
梅雨の晴れ間にひととき姿を現した月は、ふたりが尽くす情愛のあまりの淫らさに羞じいるかのように、
再びむら雲の陰に隠れた。
384 :
鬼の岩屋10:2011/11/11(金) 15:07:44.43 ID:pQlMtztu
・・・水面に映った月がばらばらに散り、また元の姿に戻るように、砕けて飛び散ったフミエの意識が
ゆっくりと集まり、茂の腕の中でまたひとつになる。
「ん・・・。」
そっと引き抜くと、フミエが小さくあえいで身体を震わせた。抱きしめあうと、今の今までふたりを
つないでいたものの感触がいやでも意識される。それはまだ温かく、ふたりの体液に濡れていた。
愛し合った後のしっとりと馴染んだ肌と肌を合わせたままでいると、様々な記憶がそこから伝わり、
よみがえってくる。舌や唇、手指に残る味、感触、フミエの匂い、表情、涙、息遣い、啼き声・・・。
ほぅ、と小さなため息を吐いて、フミエが目を開けた。ほおに伝わる涙の痕は、先ほどの哀しい話
のためか、それとも・・・。
「・・・酒呑童子の一党に、茨木童子というのがおってな・・・鬼どもが根こそぎ退治された中、ただひとり
逃れたと言う。後に渡辺綱に切り落とされた腕を、乳母に化けて取り返しに来たというくらいの
奴だけん、お姫さんを抱えて宙を翔け、またどこぞの山奥で仲良う暮らすこともできたかもしれんな。」
茂が、ふと思い出したようにまた鬼の話をした。彼には珍しく、ロマンチックな結末を。
「・・・そげだったら、ええですねえ・・・。」
フミエの顔がうれしそうに輝いた。
乱れ髪を梳いてやり、撫でるうち、徹夜の疲れかフミエは小さな寝息をたて始めた。褥の上に
広がる黒髪は月の光を映して、せんべい布団のくたびれた布地にふさわしくない輝きを放っている。
突然、茂の脳裏に美しくも凄まじい光景が浮かんだ。人里をはるか離れた深山の、月の光の
射し込む岩屋。固い石の床の上で、色褪せた姫君の袿と長い黒髪を褥に睦みあった後、隣りに眠る
異形の男に女が寄せる想いは、愛かうらみか・・・。
(あんたも、さらわれて来たようなもんかもしれん・・・。)
たった一週間の帰省の間に見合いから結納から婚礼まで済ませ、フミエをこの家に拉して来た。
持ち家といっても月賦の残っているボロ家、不安定で将来性のない仕事、貯蓄もない・・・次々に
明らかになる新事実に打ちのめされながらも、フミエはここで茂と一緒に暮らしていくという心構え
を変えなかった。やがて結ばれ、夜ごと深まり・・・今や夫婦の仲は分かちがたいものだった。
(もう帰れんのか、帰りたくないのか・・・どっちだ?)
つよい愛おしさに充たされながらも、小さな痛みがちくりと胸を刺す。
(どっちでもええ・・・もう帰さんのだけん。)
思わずぎゅっと抱きしめると、フミエが何事かつぶやいて夢うつつにしがみついてくる。髪に顔を
埋めて甘い香りを吸い込んだ。
(わかっとらんと思うが・・・。)
腕の中のフミエの寝顔をのぞきこむ。寝息が肩に当たってこそばゆい。
(あんたは、ちょっ・・・こし、意地悪された方が、よう感じるんだよな・・・。)
無邪気に眠るフミエのぷっくりとした唇を指でなぞると、わずかに開いた口からのぞく
二本の前歯がまたたまらなくそそる。
(はぁ・・・きりがないが・・・。)
その前歯を舌でなぞり、めちゃめちゃに奪いたくなる衝動を無理やりおさえつけてぎゅっと目を閉じ、
茂は生まれて初めて眠ろうと努力した。
>>375 GJ!ふみちゃんをいろんな意味で愛したくて仕方ないしげぇさんがたまりません
あと少しといわずに、これからも是非…
>>373 白はもちろんだが紫もいいな!
>>375 GJ!GJ!
フミちゃんの心と身体にメロンメロンな茂さん萌え!
妖怪や古典話と絡ませるのが上手いですね〜。
鬼と姫をゲゲふみに変換して楽しく妄想しましたw
またの投下、お待ちしています!
>>375 ゲゲさんふみちゃんにぞっこんでかわいい!
キスの後でまたすぐ話しはじめるマイペースさがゲゲさんらしくてワラタw
GJでした
ここで何回か話題になってたおひとりさまの再放送がやってるから見はじめた
脳内変換はもちろんだけど、このクリオネ女子にはしげーさんを狙ってみてほしいと思ったw
>>375 GJ!ラストのゲゲの心の声(きりがないが…)に悶えたw
そんなに好きなら一回くらい好きっていってみろよ!と言いたくなる
>>388 クリオネ女子って最近は普通に言うのか…意味わからんでググったわw
そのドラマ見たことないけど、どうやら布美ちゃんとは真逆なタイプみたいだな
つか、松下さんはゲゲゲ見るまで他のドラマの役どころ知らんかったんだが、
布美ちゃんみたいなタイプの役の方が少ない気がするな〜…
>>388 自分は「しんいち君」を「ゆういち君」に置き換えて妄想した
391 :
388:2011/11/16(水) 19:19:52.06 ID:QaNjngXu
>>389 すまん、多分世間ではほぼ使われてない言葉だと思うw>クリオネ女子
自分も知らなくて、松下さんのブログでおひとりさまでの役柄を表す言葉として使われてるのを見て初めて知ったからつい愛称的な意味で使ってしまった
自分も松下さんをゲゲゲまで知らなかったから、始まる前に合わないって言われてたのはこういう事だったのかーと納得してしまったw
>>390 「いち」被りで変換しやすいよね
付き合う前の祐一くん呼びを妄想しやすくなる
昨晩流星群だったっていうから願い事するゲゲふみ妄想しようと思ってふと考えてたら
もうすでに公式で放屁星してた…!
ベタベタはしてないけどほんとちいさくてかわいいいちゃいちゃ萌えは山ほどあったんだなぁと再確認した
>>392だけど、流星群今日だった…orz
とりあえず店の繁盛と胸が大きくなるように祈る綾ちゃんを妄想
>>393 その後、何を祈ったのか祐ちゃんにバレて胸を揉まれる展開になるんですね。分かります
>>389 ゲゲゲ後だけど、時代劇でやった役は一途でけなげな女性だったみたい
自分未見だけど2CHで絶賛されてて、書き込み読んだだけで妄想炸裂してしまった
DVD出てるみたいだから、見てみようかな
>>392 今の朝ドラ楽しく見てるけど、正直萌え度ゼロなんだよね(そこがいいんだけど)
お父ちゃんが時たま漏らす色気はあるけどw
こんなスレが立って、終わって1年以上経っても存続してるゲゲゲ、恐ろしい子(白眼)
>>394 「自分で揉んだけど大きくならなかったもん!」
「それは綾子のやり方がいけないんじゃないかなぁ」
ってどんどん墓穴を掘ってく綾子さんを妄想
>>395 あの時代劇は良かった!ドラマとしても普通にオススメだよ
>>395 時代劇好きなら楽しめると思うよ
作品としても凄く良く出来てる
ベタの一つでもある「酔っ払って…」的な事がしげぇさんには絶対できないのがほんとに惜しい
素直に甘えるとか…
まあ素直じゃない甘えを汲み取れるふみちゃんだからその必要もないかもだけどそれでも…!
ウイスキーボンボンとかラムレーズンとか
ほんのひと齧りくらいなら
程よい酔っ払いになってくれるだろうか…
胸をデカくする特集のバラエティー番組の宣伝を見た瞬間
それを密かにチェックする綾ちゃんを妄想して一人ニヤニヤしてしまった・・・
>>399 甘いもの好きだし、つまみ食いしそうだし…
ほんと、程よく酔ってほしいんだよなーw
>>400 そんな感じのコーナーやってた番組見た時に同じような妄想してニヤニヤしたぜw
ゆうちゃんにバレないように録画したはいいけど録画のランプに気づいて問い詰められて…とか
今日は良い夫婦の日
>>402 投稿時刻惜しい!!
あと0.01秒遅ければ、日付も含めて全部ゾロ目…!
ツーショットの写真集出してくれないかな〜
…と妄想してたら、
アンナと羽賀研二のペアヌードなんてものを思いだしてしまった
>>402 ほんとだ!すげーーー惜しい!
>>403 アンナと羽賀てw年ばれるぞw
写真集は難しいだろうが、来年二人ともフジのドラマあるから、
番宣のバラエティとかでツーショット見れるといいなと期待してる
年明けからはTVっ子になってしまいそうだ
平泉さんも出ている某家政婦ドラマの美術工房担当スタッフに佐々木綾子さんがいる!
テロップ見た途端かなり興奮してしまったw
>>406 おお同姓同名、しかも美術担当かw
総集編再放送するらしいな!
>>404 バラエティ2ショットイイ!
食わず嫌いリベンジとかやってくれないかな。
ゲゲゲ総集編再放送きたこれ!
やった、やった!
>>409 ほんと、早海さんがゲゲふみコンビだったら良かったのになぁ
でももっとちゃんとしたので共演してほしくもあるし…
>>399 ふみちゃんのぷち家出後くらいに
近所に配るクッキーを作ろうとして台所に置いといたラムレーズンをつまみ食いして
相沢くん結婚式の時の如くへばって昼間からふみちゃんに膝枕してもらうゲゲさんの妄想がとまらない
学校から帰ってきた藍子がこっそり眺めてたりしたら良いなあ
貧乏時代に良い肉の日だから良い肉が食べたいと駄々をこねてケンカするゲゲふみがふと頭をよぎった
>>412 家の裏の寺にかw
劇中歌が話題になってたタイヨウのうたが再放送してたから見てみた
ドラマに萌えどころはあんまりないのね…でもwishはやっぱり萌えたw
プチ出家ワロタw
豊川さんは洋酒入りのお菓子とか持ってきてくれそう
知らずに食ったゲゲ→
>>411に同じ
ところで祐ちゃんはアルコール強いのだろうか?
ゲゲは酒に弱いドS
祐ちゃんは酒に強いドS
…であってほしい、なんとなく。
>>416 ゆうちゃんの方が、素に近い感じかな。
話豚切り&亀ですいませんが、
>>362さんの骨董市ネタでひとつ・・・。
調布には、フミちゃんとご縁の糸で結ばれてそうな名前の神社があって、そこで
骨董市が開かれているのですね・・・。
小峰さんと出会った石段は?と見直したら、いつもの街はずれのお堂で神社では
なかったけど、『調布の風景』がちょうど骨董市でうれしかったw
418 :
笑ひの効能1:2011/12/02(金) 10:06:47.31 ID:xF3HChEG
晩秋の陽射しは早くも傾き、少し肌寒い風が吹き始めた。赤や黄に紅葉した木々がうつくしい
小さな神社の境内を、フミエは人さがし顔で歩いていた。
「あれ?こげなところに骨董の市が立っとる・・・。」
久しぶりに戌井が訪ねて来てくれたのに、茂は例によってふらりと散歩に出てしまっていた。
遠慮する戌井を引きとめ、フミエは心あたりをさがしに家を出て、家の近所のこの神社まで
やって来たのだ。
ここは茂が時おり石段に腰かけて漫画の構想を練る、お気に入りの場所だった。ふだんは
あまりひと気がないのだが、今日はたくさんの人や物でにぎわっている。さほど広くない
境内には、所狭しと広げられた店々の敷物の上に、小箪笥やらひな人形、鉄カブト、サーベル、
勲章、果ては古い手紙や写真まで・・・価値のありそうなものから到底無さそうなものまで、
ありとあらゆる骨董品が並べられていた。
(こげなもの・・・誰か買う人おるんだろうか?・・・あ、うちの人なら買うかも。)
この手の物に、数寄者的ではない関心を寄せるであろう茂の顔を思い出し、フミエの顔に
微苦笑がひろがった。
年ふりた道具には付喪神(つくもがみ)というものが生じ、手足が生えて『百鬼夜行』
という行列を成して練り歩く、と茂に教えられて以来、フミエは古い道具がなんとなく怖く
なった。茂の見せてくれた百鬼夜行の図は、ひしゃくやら楽器やらに目や手足がついて
歩き出し、怖いというよりはむしろユーモラスで可愛くさえあったが、実際に自分の家の道具に
手足が生えて動き出したりしたら正気ではいられまい。一方、そんなことを教えてくれた
当の茂は、古いものに何ら恐怖を感じていないらしいのが不思議だった。
茂を探しに来た当初の目的をつい忘れ、フミエは珍しげにある店の前に足を止めた。
赤い毛せんの上に置かれた蒔絵の手箱の上に、いくつかの髪道具が飾ってある。こんな所に
無造作に置いておいていいのかと思われるような由緒ありげな品々の中で、とりわけひとつの
飾り櫛にフミエの目は釘づけになった。さほど古くはない、大正あたりの上流夫人が髪に
挿したであろう、和装にも洋装にも似合う意匠のものだ。目にした瞬間、まわりの喧騒も、
ここがどこであるかも消え失せ、世界にこの櫛とフミエのみになったような気がした。
419 :
笑ひの効能2:2011/12/02(金) 10:08:04.74 ID:xF3HChEG
「・・・奥さん。そんなにこの櫛が気に入ったかね?」
なんとなく不快な感じの声にハッと我に返ると、そこには法衣のようなぞろりとした物を
身につけた不潔な男が立っていた。なんとなく鼠を思わせる風貌である。
(お坊・・・さま?)
「安くしとくよ・・・うんと安く、ね・・・。」
「ええっ?!・・・そんな、買うなんてとんでもない!きれいだなって見とっただけで・・・。」
「まあまあ。安くしとくって言ってるでしょ。」
男は手を伸ばして、魔法のようにフミエのエプロンのポケットから財布をつまみ出した。
「そうねえ・・・こんなもんでどお?」
男はがま口をパチンと開けて五円玉を取り出し、引き換えにフミエの手に櫛を押しつけた。
「・・・ね?これで商談成立。あんた、いい買い物したね。」
男に勝手に財布を抜き取られ、五円玉を取り出され、櫛を売りつけられ・・・この間フミエは
金縛りにあったように何も出来なかった。『買うつもりはない。』と反論することさえも。
「ちょっ・・・待って!待ってください!!」
声が出るようになって、あわてて男を呼び止めようとしたが、すでに影もかたちもない。
何かの間違いではないかと手を見ると、鬱金(うこん)のきれの中にあの櫛がちゃんとあった。
(か・・・返さなくちゃ。こげな高価なもん、もらうわけにいかん・・・。)
この櫛をみつけた店・・・と振り返ってみたが、そこにはさっきとは似ても似つかないガラクタ
ばかりが山積みにされ、蒔絵の手箱も髪道具も見当たらない。フミエが怪訝そうに店番の
老婆をみつめると、数層倍するうさんくさそうな目つきでにらみ返された。
(困ったな・・・あの人、もう店たたんでしまったんかな?)
気づけば、短い秋の日はもう暮れかかり、たくさんあった店々もおおかたが店じまいを始めて
いた。帰り始めた人々の間に、あの法衣の男は見当たらない。
(そうだ、戌井さん・・・!お待たせしたまんまだし、もう帰らなきゃ。)
フミエはしかたなく飾り櫛を包んだ鬱金の布をエプロンのポケットに入れ、家路を急いだ。
(ん・・・あれ、フミエじゃないか?)
雑踏の中、フミエの赤いカーディガンの後ろ姿を見かけて、茂は声をかけようとした。だが、
間に人が入ったと思った次の瞬間、もうその影も形も見当たらなくなっていた。
(おかしいな。あいつがこげにすばしこいはずないんだが・・・。)
狐につままれたような気分で茂は人ごみの中に立ち尽くしていた。ふと気づくと、目の前に
奇妙な老人が立ちはだかっている。
「・・・これをとっておくがよい。」
老人は茂に一冊の本を押しつけた。
420 :
笑ひの効能3:2011/12/02(金) 10:09:13.69 ID:xF3HChEG
(・・・このじいさん、人間ではないな・・・。)
老人の声はカン高く、頭の上から降ってくるような気がした。子供のように小柄なのだが、
何か逆らいがたい迫力があり、茂は人ならぬ相手に警戒しつつもその本を受け取らざるを
得なかった。
「何かの役に立つじゃろう・・・。」
「お・・・おい。待ってくれ、じいさん・・・!」
老人はぷいと向きを変えると雑踏に消えてしまった。しばし茫然としていた茂はようやく我に
返って、押しつけられた本をあらためて見た。
「・・・これを、何の役にたてろと・・・?」
横長の和綴じの本を開いて中を見た茂は、意外な内容に驚いてもう一度さっきの老人の姿を
雑踏の中に求めた。だが、もうそこにいるはずもなく、茂はしかたなく本を手にその場を去った。
茂が戻った時、戌井はまた来ると言って帰ってしまった後だった。茂はそれを聞いても特に
残念がりもせず、また仕事部屋にこもってしまった。フミエは夕食の支度をしながらも、例の
櫛のことで頭がいっぱいだった。
(あの人に返さんといけんけど、市・・・来月まで立たんのかなあ?)
飾り櫛はとりあえず、おばばからもらった珊瑚のかんざしの入っている引き出しにしまったが、
どうにも気になって、もう一度引き出しを開け、鬱金の布を開いて確かめた。
本物の鼈甲で出来た流麗な馬蹄形の上に精巧な彫り模様や象嵌がほどこされ、巻きの厚い
真珠がいくつも嵌め込まれた櫛は、宝飾品といってもよい豪華さだった。
(本当にきれい・・・だけど。)
豪奢に過ぎて、たとえばフミエが持っている着物の中で一番上等の、母が嫁入りの時に持たせて
くれた朱鷺色の青海波にさえも似合わなさそうだ。
(私には、おばばのくれた珊瑚のかんざしがいちばん似合うとる・・・。)
これが自分の手元にあることは、何かの間違いとしか思えない。そう思いながらも、フミエは
手の中の櫛から目を離す事ができないでいた。
管弦のひびき、人々のざわめき、煌くシャンデリア・・・櫛が何事か物語を語りかけてくるようで、
フミエは魅入られたように櫛をみつめ続けていた。
「おい。飯はまだか?」
フスマがガラリと開いて、茂が声をかけた。
「は・・・はい。もうじきですけん。」
フミエはハッと我に返り、慌てて櫛を引き出しに戻すと、そそくさと夕食の支度に戻った。
421 :
笑ひの効能4:2011/12/02(金) 10:10:07.35 ID:xF3HChEG
その夜。フミエは夢の中で、見知らぬ屋敷にいた。重厚な材木がふんだんに使われた
部屋べやは、日本家屋なのに建具や照明がどこかハイカラで、大正あたりのかなり富裕な
邸宅のようだった。じゅうたんの敷かれた洋間の一隅にはマントルピースがしつらえてある。
ソファに座って刺繍をしていたフミエは、暖炉の上の時計が止まっているのに気づいて
立ち上がった。
(私・・・なしてこの家のことこげにわかっとるんだろう?)
いぶかりながらも、手は自然に動いて時計のねじを巻く。
「そんなこと、女中にやらせればいいだろう?」
驚いて顔を上げると、暖炉の上の鏡に映る見知らぬ女の背後に、これまた見知らぬ男が立って
いた。鏡のまん前に立っているのに、映っている顔が全く自分と似ても似つかないことに、
フミエの心は恐怖の叫び声をあげた。
「奥様はご機嫌斜めだな。・・・これで機嫌を直してもらえるかい?」
男があの飾り櫛をフミエの髪に挿した。ウェーブをかけてふんわりと結い上げた髪に、精緻な
細工の櫛はよく映え、鏡の中の女の顔が幸せそうに輝いた。豪壮な邸宅、贅沢な生活、優しい夫
・・・絵に描いたような幸福・・・だが、この後に恐ろしい事が待っていそうで、フミエは続きを
見たくなかった。
(いや・・・っ!なして私に見せるの?)
最後まで見たら戻れなくなりそうで、フミエは必死で抵抗し、夢から覚めた。けれど、眠りに
落ちるたび際限なく同じ夢を見せられる。頭がおかしくなりそうで、ついに起き上がって
タンスの引き出しを開けた。
(私に話しても、何にもしてあげられんよ・・・!)
飾り櫛を取り出して触れたとたん、手が操られるように動いて櫛を髪に挿した。櫛の思念が
冷たい水のようにフミエの心に流れ込んでくる。幸せな日々、出産、子供の死、口々にののしる
人々・・・心を病んだ妻を、夫は洋行に連れ出した・・・船べりから見下ろす青い海・・・飾り櫛だけが
甲板に残された・・・櫛の記憶はここまでだ。
(私はあんたの持ち主じゃない言うとるのに・・・!!)
必死の抵抗もむなしく、フミエの心は女主人をつよく欲する櫛に支配されていた。
「私・・・帰らんと・・・。」
フミエはふらりと立ち上がって、滑るように玄関を出た。
422 :
笑ひの効能5:2011/12/02(金) 10:11:20.12 ID:xF3HChEG
風が強い晩で、吹き流される雲に見え隠れする月が照らし出す風景は、昼間の牧歌的な
田園風景とはうって変わって不穏な感じだった。普段のフミエならこんな時間に畑の中の
一本道を歩くことなど出来ないだろう。だが、今夜のフミエは、何か強い力に引き寄せられる
ように、何処かに向って確信的な足取りで飛ぶように歩いて行った。
(ここ・・・知っとる・・・。)
かなりの素封家らしい大邸宅の前に立ったフミエはそうつぶやいた。高い塀と鬱蒼とした木々に
囲まれた重厚な門は深夜にもかかわらず大きく開かれ、灯りの煌々とついた玄関はフミエを
待っているかのようだった。
「おかえり・・・やっと自分の家を思い出したかい?」
夢の中で見た男が満面の笑みでフミエを出迎えた。フミエは心の中にわずかに残る自分自身を
必死で振り絞って答えた。
「わ・・・私は・・・あなたの奥さんじゃありません!」
男は、困った人だというように苦笑した。
「その櫛・・・よく似合っているよ。やっと見つけた・・・その櫛が君を女主人と認めているのが
何よりの証拠だ。さあ、君の仮の名を教えておくれ・・・もうそんな名は捨てて、僕のかけがえの
ない妻としてまた一緒に暮らそう。」
名前を捨てるなんてとんでもない・・・『私は村井フミエ以外の誰にもなるつもりありません!』
フミエは思わずそう叫びそうになった。
『名前を教えたらいけんよ・・・。』
耳元で、おばばの声が聞こえた気がして、フミエはハッとした。
「何も恐れることはないよ。うるさい親戚の奴らにももう邪魔はさせない・・・。」
男は何も言わないフミエに焦れて、距離をちぢめて来た。フミエは逃げようにも身体が
動かなくなっていることにその時初めて気づいた・・・。
「こらぁっ!!何をしちょる?!」
一喝と共に、何物かが飛んできてバサッと男の顔を直撃した。金縛りが解けたフミエは、
男から逃れようと後ずさった。脚に力が入らずよろめいたところを、受け止めたのは茂だった。
「あ・・・あなた・・・!」
「あんたは、ちょっこしのいちょれ!」
腰が抜けたフミエを庇うように前に出た茂の大きな身体の向こうに、男が見えた。
(・・・何かしら?あれ・・・。)
男は投げつけられた物を取りあげて、しげしげと見ていた。男の眉根が下がり、ふっと
微笑んだ・・・と思ったとたん、男の顔はさらさらと崩れ始めた。
「きゃあああ・・・!」
フミエは目の前の茂の脚にしがみついて恐ろしい光景から眼をそらした。男が消えていく
のと同時に、櫛は髪から抜け落ち、地面にぶつかって粉々に割れ、風化して飛び去った。
423 :
笑ひの効能6:2011/12/02(金) 10:12:35.32 ID:xF3HChEG
「・・・おい。立てるか?もう大丈夫だけん、帰ろう。」
茂の声に眼を開けると、男はもういなかった。手を引っ張ってもらって立ち上がると、
あたりの光景はさっきとは全く違っていた。
「え・・・お屋敷は?」
広壮な邸宅などどこにもなく、わずかに崩れた礎石の後が草むらの中に散見されるのみ。
フミエが玄関と思っていた場所には、立派な墓所が丈高い草にうずもれていた。
「見るな・・・!こげな所に長居は無用だ。」
茂はフミエの手を引っつかみ、怒ったようにずんずん歩いて行った。どこをどう歩いたのか
・・・まだ痺れた心のまま、フミエはただ茂の手のぬくもりだけを頼りに夜の道を辿った。
家に着くと、玄関に入ろうとするフミエを茂が制止した。
「わ・・・っぷ。何・・・するんですかっ?」
茂が塩の壷をフミエの頭の上で逆さまにした。ドサッという音と共に、大量の塩が顔に
降りかかってくる。それでは足りず、茂は大きな手でフミエの肩や背中をバンバン叩き
始めた。
「いた・・・痛いっ・・・しげぇさっ・・・やめ・・・!」
茂は亭主関白だが、フミエに手をあげたことなどない。何がなんだかわからず、フミエは
半泣きになって身体を庇った。
「ふー。こんなもんでええかな。もう入ってええぞ。」
茂は叩くのをやめると、さっさと家に入ってしまった。フミエはぐすんぐすん言いながら
髪の間に入り込んだ塩を庭で落とし、やっとのことで家に戻った。
「なんだ・・・何を泣いとる?」
「・・・叩くなんて・・・ひど・・・お塩も・・・もったいないし・・・。」
「あんた、自分がどげな危ない目に遭ったかわかっとらんのか?窮地はなんとか脱したが、
まだ何か憑いて来とるといけんから、浄めてやったんだぞ。」
茂はあきれたようにフミエの顔を見た。怒っているのかと思ったけれど、茂も必死だった
のだ。肩や背中の茂の手の痕がじんわりと温かくなり、瘴気に冷え切った心と身体を包んだ。
茂はやかんに水を汲んで湯をわかし、コーヒーを淹れる用意を始めた。
424 :
笑ひの効能7:2011/12/02(金) 10:13:30.12 ID:xF3HChEG
「・・・あいつと、何を話しとったんだ?」
「名前を聞かれて・・・。でも、教えませんでした。昔、おばばがしてくれた昔話で、魔物に
名前を教えたばっかりに、魂をとられてしもうた小僧さんの話を思い出して・・・。」
「ふうむ・・・おばばに感謝するんだな。名前を教えとったら、引きずり込まれとるとこだ。
あんた、危機感がないのにも程があるぞ。あいつの顔を見んだったのか?」
「え・・・?ハンサムな人でしたけど・・・。」
「俺が見たところでは・・・ガイコツそのものだったがな。」
それを聞いたフミエは、真っ青になってガタガタ震え始めた。
「やれやれ、今ごろ怖くなったのか・・・。これでも飲んで落ち着いたらどげだ。」
茂の淹れてくれた砂糖たっぷりのコーヒーは熱くて甘く、フミエは泣きたいような気持ちに
なって、茂に抱きついた。
「あー、わかったわかった。こら、そげにしがみつくな・・・コーヒーに塩が入ったでねか。」
茂は笑いながら、フミエの髪にまだ残る塩を払い落としてくれた。
腕の中で震えているフミエをあやしながら、茂は一冊の本をフミエの目の前に差し出した。
それは、先ほどフミエを捕らえようとしていた死霊の男に茂が投げつけたものだった。
「・・・やだ。何ですか?これ・・・。」
開いて見て、フミエは思わず本を茂に押し返した。多色刷りの浮世絵の中で、江戸時代の
風俗の男女がやけに淡々とした様子で抱き合っているが、下半身に眼を移すとしっかりと
媾合している。その局部は克明に描かれ、特に男性の物はあり得ないほど誇張してあった。
「まあ遠慮せんでよう見ろ。・・・実にええ顔をしとるだろう?」
言われて見れば、男女はなんだか猫のような表情で、駘蕩とした風情で事におよんでいる。
(こげな時は、もっとこう、必死な顔にならんもんかなあ・・・。)
茂に抱かれている最中の自分は、こんな余裕のある表情はとてもしていられない・・・そう
思ったとたん、甘い記憶がよみがえり、身体の中がざわめいた。一瞬、今夜の恐ろしい
出来事も忘れそうになる・・・だが、この本はさっきフミエを死霊から救った物なのだ。
「あの時、なしてこげな物を持っとったんですか?」
「今日、骨董市でおかしなじいさんからもらってな・・・。『何かの役に立つだろう。』と
言うとったが、何の役に立つのかさっぱりわからんだった。だが、あんたが夕方から
どうも挙動不審だったけん、追っかける時これを持って行ったんだ。」
茂も骨董市で見知らぬ人物から不審な物をもらっていた・・・フミエは不思議な符丁に
驚いて茂の顔をまじまじと見た。
425 :
笑ひの効能8:2011/12/02(金) 10:14:45.94 ID:xF3HChEG
「俺は、あのじいさんは神様じゃないかとにらんどる。俺の腹あたりまでしか背がない
くせに、頭の上から声が聞こえてきたし・・・それに日本の神様っちゅうのは、意外と
こげなもんが好きだったりするけんな。」
「でも・・・なしてこげな物で、死霊を撃退できたんですか?」
「これは春画、枕絵というもんだが、『笑ひ絵』とも言うてな、どげなお堅い人間でも、
ひと目見たらついつい笑顔になる。だけん、縁起ものでもあるんだ。昔の武将が甲冑の
中にしのばせたり、嫁に行く娘に持たせたりもしたらしい・・・。」
確かに、淫らな絵ではあるけれど、男女は幸せそうで、不思議と不快な感じはしなかった。
「それが、あの人・・・が消えたことと、どげな関係が?」
「あいつもこれを見て、ふっと笑ったんだ・・・。人間らしい心を取り戻したとたんに、
妄執から解き放たれたんだろう。何があったか知らんが、つよい執念に捕らわれて、
自縄自縛に陥っとったんだな。」
「・・・奥さんと同じお墓に入れんだったけん、ずっと探しとったんでしょうか・・・。」
フミエは、櫛に見せられた悲しい記憶を茂に語った。
「そげか・・・。幸福の度合いも、不幸の度合いも強すぎたけん、さほど古くもないあの櫛が
意思を持ってしまったんだな・・・あんたはあげな物騒なもん、どこで手に入れたんだ?」
「う・・・。」
フミエは言葉につまった。だが、話さないわけにはいかなくて、骨董市での出来事を
くわしく話した。櫛をくれた男のことも。
「ネズミ顔の僧形の男・・・鉄鼠かな?いや、死霊の使い走りなんぞするわけないか・・・。
だが、悪知恵のはたらく奴だ。たとえ五円でも金を取られたのはまずかったな。それで、
櫛とあんたの間には強い縁が出来てしもうたんだ。」
フミエは、法衣の男のぺらぺらとしたしゃべり方や素早い手の動きなどを思い出し、
つくづく隙だらけな自分を情けなく思った。
「・・・まあええ。それより、これからは気をつけろよ。あんたはフラフラしとるくせに、
ああいうもんと妙に波長が合ってしまうけん、危なくていけん。」
「はい・・・本当にすんませんでした。これからは重々気をつけますけん・・・。」
フミエは心からすまなく思ってうなだれた。
(・・・?)
深く頭を下げていたフミエが、紙の音に気づいて目を上げると、茂はもう例の本に
見入っていて、フミエの謝罪など聞いていない様子だった。
426 :
笑ひの効能9:2011/12/02(金) 10:15:58.92 ID:xF3HChEG
「・・・さて、これを役立てんといけんわけだが・・・。」
「え・・・?もうさっき役に立ったじゃないですか・・・。」
開かれた頁は、解説文らしき物がついた白黒刷りの、さっきとは少し趣の違う絵だった。
さっきほど叙情的でないひと組の男女が、ちょっと見ただけではどうなっているのか
わからないような複雑な体位で交わっている。
「これは四十八手と言うてな・・・。」
「しじゅう・・・はち・・・お相撲の決まり手ですか?」
「まあ相撲と掛けてあるんだが・・・四十八種類もないもんだけん、中にはかぶっとるのや、
挿入れることだけに意義があるようなのも混じっとるな。」
次々と繰られる頁には、ありとあらゆる男女の痴態が、律儀に分類され、解説されている。
「こげなことにこれだけの情熱を注いで研究するとは、この本の作者は俺みたいな人間
かもしれんな・・・実に好感が持てる。」
「はあ・・・。」
「この本はな、いちおう建前として、全部夫婦のこととして描いてある。」
・・・言われてみれば、描かれている痴態はどれも普通の家で行われているようで、
生活感がある。中には、仕事から帰ってきたばかりと見える職人風の亭主が、待ちきれず
あねさんかぶりの女房に後ろから襲いかかっているものまであった。
「・・・まあ、商売女は計算高いもんだけん、こげな酔狂につきあってくれるのは、
古女房くらいのもんだろう。」
フミエは、今ごろ茂の言わんとすることに気づいてドキドキしてきた。
「難度の高い技には、『日頃の夫婦和合ぶりが問われる。』と書き添えてある。」
「はぁ・・・夫婦・・・和合・・・。」
「まあ、あんまり難度の高くないやつからにしてやるけん、ほれ・・・。」
後ろから抱きしめられ、フミエは焦った。難度の高くないやつ『から』ということは、
徐々に難度が上がるということなのか・・・。それは困る。
「・・・こ、今夜は・・・あげなことがあった後だけん・・・。」
「だら。あげなことがあったけん、するんじゃないか。だいいちな、死霊に間男され
そうになった俺の身にもなれ!」
「まお・・・とこ、だなんて、そげな・・・。」
死霊の魔力に惑わされたとは言え、他の男に引き寄せられてしまった自分を、強い力で
取り戻してほしいと思う一方、四十八手とやらを試されるのには抵抗があった。
「で・・・でも、曲芸みたいなのは勘弁して・・・!」
「心配せんで、俺にまかせとけばええんだ。」
427 :
笑ひの効能10:2011/12/02(金) 10:16:49.64 ID:xF3HChEG
言いながらもう、その手は後ろから帯を解き、胸乳をまさぐりながら浴衣を剥いでいく。
露わになった背や肩の赤くなった肌に唇を這わされて、フミエがひくりと身体をすくめた。
「まだ・・・痛いか?」
フミエは返事をするかわりに首を後ろにねじ向けて、微笑みながら茂の唇を求めた。
茂は応えながら大きく硬起した男性をフミエの手に握らせた。
「んん・・・は・・・ぁ・・・は・・・。」
激しく唇を求め合いながら、布団の上に倒れこむ。素裸でうつ伏せにされ、高く腰を
掲げさせられたと思ったとたん、秘口に剛直が捻じ込まれた。
「ゃあ・・・ん・・・!」
あまりに性急な侵入に戸惑いながらも、内部は早くも順応して全身に快感を送り出す。
刺激的な絵を見せられ、怒張を握らされ・・・羞ずかしくもフミエの中心はとうに蕩け、
充たされるのを待っていた。
「ゃっ・・・ぁっ・・・んんっ・・・。」
やがて始まる抽送・・・突き上げ・・・フミエは布団に顔を押しつけて洩れ出る声を殺した。
今ではすっかり馴染んだ激しさに身をまかせていると、背中に体重をかけて押しつぶされ、
うつ伏せにされた。
「ひぁっ・・・?」
ふいに右腰の骨盤のあたりをつかまれてひっくり返され、茂の上に仰向けにさせられた。
急に上下が入れ替わり、自分が今どんな格好をしているのかわからずじたばたして
しまう。宙に浮いた右脚を、茂がつかんで自分の腰に巻きつけた。
「ぃやっ・・・こわい・・・。」
「さて・・・手はどげなっとったか・・・。」
ぺらぺらと頁を繰る音がする。
「へ・・・変な格好、させんでごしない・・・!」
フミエは世にも恥ずかしい体勢で、自分の下になっている夫に抗議した。
「変な格好、ではないぞ。先人の叡知を結集した、合理的な組み手だ。」
フミエの前面には何もなく、貫かれたまま大きく開かされた女陰が、つけたままの電灯の
あかりにさらされている。
428 :
笑ひの効能11:2011/12/02(金) 10:17:50.67 ID:xF3HChEG
「こげな・・・羞ずか・・・し・・・んぁんっ・・・。」
フミエの右側から顔を寄せ、茂が乳房に吸いついた。前にまわった手は、剥き出しに
なった核をもてあそぶ。
「ゃっ・・・んぁっ・・・ん・・・だめっ・・・!」
思わず前に逃れようとする腰をとらえ、茂がゆっくりといとおしむ様に揺すぶり始めた。
「ぁ・・・んん・・・ふ・・・。」
首をねじ向けて、必死で唇を求める。口づけを交わした瞬間、つよい幸福感に襲われた。
(は・・・羞ずかしいけど、これ・・・好きかも・・・。)
おかしな姿勢ではあるけれど、後ろからぴったりと抱かれ、唇を溶かしあっていると、
背後から責められる時につきものの寂しさを感じなかった。赤子のように自分に
抱きついている茂をいとおしく感じ、右手をまわして抱きしめた。
「も・・・ぃき・・・そ・・・ぁ・・・でも・・・だめ・・・。」
到達が近づいている。だが、身体を硬直させると抜け落ちてしまいそうで不安だった。
「だっ・・・ぬけ・・・ちゃ・・・ぅうっ・・・。」
茂が上になった脚に脚をからめて押さえ、腰をつかんで激しく打ちつけた。
「・・・ゃ・・・ぁああ―――――!」
茂の上に磔になったまま、フミエは身体をびくびくと痙攣させて達した。
・・・茂が上体を起こす気配にふと我に返る。まだ痺れている右脚を持ち上げられ、腕に
抱え込まれた。結合の角度が変わり、まだ脈動を繰り返している内部がざわめいた。
「だめっ・・・だめぇ・・・。」
またもや何がどうなっているのかわからず、フミエは哀願した。茂はそれにかまわず
脚を肩にかつぐようにして太腿を抱きしめ、ぐっと腰を入れた。
「ぃやぁああ―――っ!」
ふたりの脚が二本の松葉のように重なりあい、結合がより深くなる。いつもと違う
角度で押し拡げられ、子宮を突き上げられる。
「ゃ・・・ぁたっ・・・て・・・ぅあぅ・・・んん・・・ん―――っ!」
獣のような声が出そうになるのを、必死で掛け布団をつかんで顔に押しつけて消した。
声も出ず、高く掲げた脚を硬直させて震えていたフミエの身体が、ゆっくりと
ゆるんでいく。ぎゅっとつかんでいる布団をのけてやると、絶頂と布団に蒸された
のとで赤くなった顔が現れた。
「・・・ゆでダコみたいだな。」
言い返す気力もないフミエの脚を下ろしてやり、ゆっくりと上にかぶさって赤い顔に
口づけた。
「ん・・・ふぅ・・・んん・・・。」
深く口づけあいながらぴったりと抱き合う。フミエの脚が淫らにからんで、かすかに
揺れあうだけで強い悦楽がふたりの身体じゅうを走り抜けた。
「ぁ・・・ぁあ―――――」
つよく強く抱きしめ合いながら、茂もなまめかしい収縮の中へ熱く放った。
429 :
笑ひの効能12:2011/12/02(金) 10:19:18.86 ID:xF3HChEG
荒い息がととのうと、どちらからともなく求めあって、また深い口づけをかわした。
やがて顔を上げた茂が、おかしそうに笑った。
「あんた、あの絵と同じ顔しとる・・・日なたの猫みたいな。今にもゴロゴロ言いそうだ。
・・・そげに満足したか?」
「・・・やだ、もう!」
フミエは両手で顔を覆った。茂がその耳にささやいた。
「なあ・・・どのカタチが一番快かった?」
「もぉ・・・知らん!」
真っ赤になった顔をますます強く両手で隠した・・・その手をふいに温かいものが濡らす。
フミエの両手を顔から引き剥がそうとしていた茂が、涙に気づいて手を離した。
「・・・どげした?」
「・・・すんません・・・なんか・・・私、しあわせだなって思ったら・・・。」
フミエは赤い眼を無理に微笑ませ、両手で顔をこすって涙をぬぐった。
「あいつのことを考えとるんだろ・・・。あんたは、すぐそうやって他人に同情するけん、
あげなモノに寄ってこられるんだぞ。」
「はい・・・。でも、あの・・・人、あの世で奥さんに会えたでしょうか?」
「わからん・・・だが、くびきから自由になって、今は安らかだろう。女房とだって、
ひとつ蓮の台(うてな)と言うわけにはいかんだろうが、生まれ変わり経めぐって、
いつかはまた会えるかもしれん。」
「そげですか・・・。」
茂はこういう時、気休めのおためごかしは言わない男だ。それゆえに、その言葉に
含まれる一片のやさしさが心にしみた。
「一番ええのは忘れることだが・・・そげに気になるなら、あいつと女房が、一番幸せ
だった時の記憶だけ思い出してやるとええ。それにな・・・。」
「・・・それに?」
「あんたが、笑って暮らす、言うのが一番ええんだ。・・・それが功徳にもなる。」
「そげなもんでしょうか・・・。」
「うん・・・。満足した時は猫みたいな顔してゴロゴロ言う、とかな・・・。」
「まだ言う・・・!」
フミエは怒ってみせながらも目は笑って、茂の胸に顔をうずめた・・・。
「電気消すぞ。」
「・・・は・・・ぃ・・・。」
フミエはもう眠りに落ちようとしていた。苦笑しながら立ち上がろうとして、布団の
陰に落ちている例の本に気づく。
「・・・あんたらも、幸せそうだな。」
いにしえの時代から永遠に愛し合う姿勢のままの二人が、ふと微笑んだように見えた。
>>418 骨董市ネタぐっじょぶっ!
フミちゃんを間一髪で助けるしげぇさんはあんなにかっこいいのに
すぐエロ覚醒するのはワロタww
しかし自然に48手ネタにもっていくのはさすが上手いですね〜。
確かにフミちゃんは色んなモノにつけ込まれそうだw
>>418 GJ!
不思議な感じも夫婦のイチャイチャもたまらんでした
玄関先の大雑把なお清めとか本めくりながら体位の確認するゲゲさんにワロタw
>>415 豊さんは洋酒入りと入ってないのをゲゲさんのために分けて買ってくれそう
そして洋酒入りをこっちは奥さんに、と言ってふみちゃんに渡してる所をゲゲさんが覗き見て
若干嫉妬して一人で全部食べて…という妄想をしてしまった
あとゆうちゃんはやはり中の人寄りで強そう
>>418 GJ!
ゲゲふみいちゃこらももちろんですが、櫛を売り付ける男wや春画をくれる神様がツボでした
>>418 GJ!事後のピロートークのゲゲが優しめで胸キュンw
ゲゲはエロ本をもらって帰って仕事部屋にこもったあとに熱心に勉強していたに違いない
>>410 新ドラマのキャストが発表されたが、自分はやっぱゲゲゲコンビじゃないと萌えられそうにない
>>434 禿同 だからこのスレにずっと居ついてしまってるわけだな
ゲゲゲが終わったあと寂しさ紛らすためにゲゲ布美それぞれの過去ドラマを色々見たけど、
やっぱりゲゲゲがドラマ的にもコンビ的にも最高だと思い知ったよ
>>418 GJ!!
ふみちゃん×エロだとゲゲの研究熱も温度あがりまくりだねw
久々に自転車プレゼント〜初デートを見た
やっぱりこのふたりは良すぎる!
>>418 >>362ですが、骨董市ネタを活用してくださってほんにだんだん!
四十八手に持ち込む流れが物語的にもしげぇさん的にもすごく納得してしまいましたw
>>436 デート回いいなぁ久しぶりに見ようかなー
ゲゲさんは「月が綺麗ですね」を好きだの意味で使うかな?
博学だから意味は知ってそうなんだよなー
ふとした時に普通に言って意味を思い出して真っ赤になってそう
それを見てなして真っ赤なんだろう…と不思議がるふみちゃん
そしてゆうちゃんは綾子さんにさらっと知識自慢をするタイプだと思う
>>414 綾ちゃんとの2人だけの場所があるならそれでいいのかwニヤニヤ・・・と萌えに変換してしまう>wish
師走だというのに真夏にディープキスで氷を分け合うゲゲふみの妄想がとまらない
ゆうちゃんに綾子さんをおんぶしてほしい…
バイトの忘年会で酔った綾子さんをおんぶできるのが身長的にゆうちゃんだけだったりしないかなー
そこから綾子さんがゆうちゃんに惚れたりしたら萌えすぎて爆発するw
そういえばゲゲふみだとおんぶはできないんだな…
ゲゲさんの性格的にやってくれそうなのに惜しい
>>441 忘年会、クリスマス、温泉、カウントダウン、初詣、バレンタイン・・・冬のおいしいイベントってこの辺?
イルミネーション見に行く2人を妄想して萌え
>>442 どれもおいしい冬のイベントだな
初詣で振り袖とか良いな…和服似合うのはふみちゃんで実証済みだしw
ゆうちゃんが大学卒業してバイト辞めて付き合いだして、綾子さんは一年遅れくらいで辞めたと仮定して、
ゆうちゃんが辞めたあとの忘年会で綾子さんの彼氏としてドヤ顔で迎えにきたら萌えるw
>>443 脱がせた振り袖はどうするのかと妄想した自分が嫌だ・・・
ゆうちゃんの中の人がいちご味のお菓子のCMしてて、思わず反応してしまった
>>444 いいじゃない、エロパロ板だもの
「ゆうちゃん駄目汚れちゃう!」くらいがっついてほしいw
イチゴ味のCMマジか!
妄想しよっとw
総集編再放送のプレマップのヤッターダンスとか結婚式とかみたらほんとたまらなくなった
ゲゲふみも祐綾もなんでこんな萌えるんだ
それはですね
本編には超プラトニック映像しかなかったからですよ
スキンシップの少なさ故になおさら・・・ってとこでしょうね
クリスマスイブ生まれの娘達だけど、1月生まれ予定だったんだよね
十ヶ月前ってゲゲさんの誕生日あたりだよね
つまり誕生日プレゼントはふみちゃんだったわけか…
それはちょっこし違いますなw
28日周期だとして予定日が1月初旬、仮に5日とすると
最終月経が3月末〜4月頭
4月中旬あたりに××ですね
>>446 自分は、まだ若いけど落ち着いて見える二人が妙にエロくて萌える・・・w
素朴で真面目そうな美男美女のツンデレってもポイント高い
いちせんパロです。興味ない方はスルーでお願いします。
皆さんのアイディアを拝借してまとめてみたけど、全部は入れられなかったかな。
自分の設定では祐一と綾子は同時に卒業だったのですが、もし他にも皆さんの
設定と違っていたら、補完お願いします。
「ねぇ、どう思う?出張、出張ってさあ・・入社してまだ1年経たない新入社員が、
いきなりそんなにいっぱい仕事まかせられるもんなの?・・・絶対あやしいよね?」
12月なかばのとある金曜日。綾子は学生時代のバイト仲間の女子ふたりと飲み会を
していた。
「綾子さぁん、私の話も聞いて下さいよぉ。うちの彼氏なんすけど、仕事やめて
ミュージシャン目指すとか、もう終わってないすかぁ?」
ひとりは綾子と同い年の女子大生の遥香。社会人の彼が忙しくてなかなか会えない
ことへの不安を訴えている。もうひとりは綾子よりひとつ年下のフリーターの紗絵。
生活力のない彼に対する愚痴を、遥香と争うように綾子に訴えた。
「ちょっとサエちゃん。私が先に綾子に相談してるんだよ。順番守ってよ順番!」
「・・・遥香さんこそ、さっきから自分ばっかしゃべって、ズルイっす。」
3人は、同じ居酒屋でバイトしていた頃から仲がよく、綾子が就職してバイトを
やめた後も、会社員・学生・フリーターという立場の違いにもかかわらず、
こうして年に数回くらいは会っていた。話す内容はもっぱら恋愛のこと。それも、
ふたりの悩みを綾子が一方的に聞かされることが多かった。
「ま・・・まぁまぁ。そんな順番なんて。あんたたちの方が私よりよっぽど経験豊富
なんだし、なんでそんなに私に相談してくるわけ?」
「綾子って、なんかこう頼もしいって言うか、思わず悩みを打ち明けたくなる存在
なわけ。」
「そうそう。人に言えないことでも綾子さんに打ち明けるとスッキリするっつーか?」
「・・・何それ?ひとを木のウロみたいに言わないでよ。」
子供の頃から一貫して女子の中で一番背が高かった綾子は、なぜか精神的にも
大人だと思い込まれ、友人達から何くれと相談を持ちかけられる存在だった。
(私・・・身体がデカイだけで、別に大人じゃないし。それに・・・。)
中学、高校・・・と進んでくるにつれ、綾子などよりよっぽど早くいろいろ経験している
友人たちから恋愛相談を持ちかけられ、綾子は複雑な気持ちで過ごしてきた。
(でも、ほんのちょっとだけ、わかるようになったかも・・・。)
綾子にも、今は恋人と呼べる人がいた。二十歳の時からもうすぐ2年越しのつきあい
になる。見かけはゴージャスなのに中身はおくてで乙女な綾子が、初めて身も心も
奪われるような恋をしている相手は、二人もよく知っている元バイト仲間の祐一だった。
(この子たちには、まだ言ってないんだよね・・・。)
もったいつけているわけではない。たしかに祐一はバイトの仲間うちで男女共に
人気があったし、祐一目当てで来る客もいるほどモテる存在だった。けれど、綾子は
自分が恋の勝者、とドヤ顔で言い放てる気分にはなれなかった。
(いまいち自信持てないんだもん・・・。)
心はもちろん、祐一にすみずみまで奪いつくされてしまっている身体の関係も含めて、
綾子が苦しいほど祐一が好きなことを、祐一にはすっかり覚られてしまっている。
けれど、祐一の方はどうなのかと言えば・・・。
「・・・綾子の方はどうなのよ?彼氏いるんでしょ?うまくいってるの?」
祐一のことを思い浮かべていたところに、遥香のタイミングの良過ぎるツッコミ。
「え・・・いゃ・・・あはは・・・。」
祐一に与えられる甘すぎる責め苦がふとよみがえり、身の内を熱くしていた綾子は、
どぎまぎした。彼のことが好き過ぎてつらいなど、のろけとしか受け取られない
だろう。笑ってごまかす他なかった。
「ねぇ〜もう一軒いこうよ〜。明日休みでしょ?」
「いや・・・今日、実家に帰らなきゃいけないんだ・・・ごめんね。」
まだまだしゃべり足りない感じの二人をなんとかなだめ、祐一との待ち合わせ場所へ
急ごうと思っていた矢先。見覚えのある黒のSUVがすーっと近づいてきて止まった。
(ぅわ・・・どうしよ・・・。)
「いたいた、綾子。今日ここで飲むって言ってたし、早く着いたからこっちまで
来ちゃったよ。なんであんな遠くで待ち合わせにしたの?・・・あれ?・・・ハルカと
サエじゃん、ひさしぶり!」
車から降りてきた祐一は、屈託なく遥香と紗絵に笑いかけた。
遥香たちに見られないように、わざと遠くの場所で待ち合わせにしておいたのに・・・。
「あ〜や〜こ〜。よくも私たちに隠してたね?」
「い・・・いゃ・・・なんかその・・・言い出しそびれちゃって・・・。」
「私が、綾子の身長に負けない男って、佐々木さんくらいだからつきあっちゃえって
言った時、綾子『まさか〜!2万パーセントあり得ない!!』って断言したよね?」
「え・・・う・・・またそんな昔のことを・・・。」
綾子はうろたえてこっそり祐一の顔色をうかがった。祐一は相変わらずの余裕の表情
だけれど、ほんの少し意地悪な光が目にやどっている。
「ち・・・力いっぱい否定しちゃった手前、つきあってるって言えなかったのよ。」
「綾子さんの彼氏の『ゆうちゃん』がまさかあの『佐々木祐一氏』だったなんてぇ。
あたしらずっとだまされてたんすね・・・。」
紗絵も負けずにうらんでみせる。祐一のSがかってきた視線と、遥香と紗絵の
裏切られたと言いたげな表情にはさまれてほとんど泣きそうな綾子に、遥香が一転、
ニカッと笑ってみせた。
「まあいいよ。・・・よかったね。本当は心配してたんだ。人の相談ばっかり聞いて、
綾子自身はどうなの?ってね。」
「スゲーお似合いだからいいっすけど・・・まあ、黙ってた罰に今度おごって下さいね?」
紗絵も、笑って祝福してくれた。3人は新年会の約束をして別れた。
「ふーーーーーん。2万パーセント・・・ありえない・・・と。」
遥香たちと別れ、車に乗り込んでホッとしたのもつかの間、今度は祐一の尋問が
待っていた。
「あ・・・だ、だからぁ、その頃は私、バイト始めたばっかりで、ゆうちゃんに怒られて
ばっかりいたし、将来こんなことになるなんて思ってもみなかったし・・・。」
「こんなことに・・・ねぇ。」
「い・・・いや、まさか私なんかが祐ちゃんの守備範囲内にあるなんて思っても
いなかったっていうか・・・。」
「ま、言い訳はこれからじっくり聞かせてもらうよ。」
(意地悪・・・私が祐ちゃんのことどれだけ好きか、知ってるくせに・・・。)
車を発進させた祐一の、完全にSモードに入った横顔に、綾子は泣きたい気分だった。
大晦日、綾子は振袖を着て祐一の実家の近所の神社に二年参りに行く予定だった。
大晦日に家にいない代わりに、綾子はこの週末実家で過ごすことになっている。
祐一は修行中の身で、綾子も仕事があり、なかなかゆっくり会うことも出来ない。
こうして車で実家まで送ってくれる間だけでも、ふたりにとって大事な時間だった。
「ゃ・・・だ、ゆうちゃん。」
交差点で止まるたび、手が伸びてくる。祐一は信号が変わるのを見逃さないように
ろくにこっちを見もしないのに、服の上から綾子のポイントを確実についてきた。
「んっ・・・ゃ・・・めて・・・。」
車が公園の横の暗い一角に静かに止まった。いつの間にか雨が降り始めていた。
「ゆうちゃん・・・?」
少し不安そうな綾子におおいかぶさるようにして口づけながら、祐一がシートを
倒した。
「ん・・・ふっ・・・だ、め・・・こんな、とこじゃ・・・。」
どこまでも追ってくる唇からのがれながら、途切れ途切れに綾子があらがった。
言葉とは裏腹に、先ほどからの軽いタッチが効いて、身体の内側はもうとろけ
始めていた。
たくみにブラジャーのホックをはずしてずらすと、ハイゲージのニットに
くっきりと二つの尖りが浮かび上がる。それをわざと服の上から、円を描くように
指先でこすると、綾子が耐えきれないように座席の上で腰をうごめかせた。
「・・・とろとろになってるよ?」
スカートをまくりあげて、ガーターベルトの上の下着の中にすべりこませた指を
抜き取ると、糸をひく粘液を綾子にわざわざ見せつけた。
「ぃや・・・あ・・・。」
ニットをたくしあげて晒された紅い実に興奮のしるしを塗りつけられ、ぬるぬると
こすられる。激しくなった雨脚が、綾子の理性のように窓ガラスを流れ落ちていた。
「これじゃ、やりにくいな・・・ちょっとあっち向いて。」
「だめ・・・だめ・・・ゆうちゃ・・・。」
目に涙をいっぱいためて振り返る綾子にかまわず窓の方を向かせ、スカートも
下着も引きおろすと、後ろから秘所に指を挿し入れる。
「んぁん・・・ゆ・・・ちゃ・・・だめっ・・・だっ・・・ぁあ―――――!」
もう片方の手を前にまわして、敏感な核をやさしくこすってやると、綾子の内部が
可愛らしいリズムを刻んで、祐一の指を締めつけた。
「イッてるイッテる・・・ふふ・・・可愛いよ、あや・・・。」
綾子の絶頂をたっぷり楽しんでから、祐一がようやく指を離してくれた。綾子は
座席にすがるようにつかまって荒い息をつきながら、絶頂の余韻に耐えていた。
「ほら・・・。」
綾子の震える手をとって、祐一が自分の下腹部へと導く。そそり立つ硬い肉塊に
触れさせられ、綾子の内部がまた妖しくざわめいた。
(で、でも・・・ここじゃ・・・。)
今の行為だけでも死ぬほど羞ずかしいのに、誰に見られるともわからないこの場所で、
祐一とつながりあうなんて・・・。
祐一の手が、やさしく綾子の頭を押し下げた。口で愛してほしいという意味だ。
綾子はホッとして、素直に顔を寄せた。
「ふ・・・。」
祐一も運転席のシートを倒して綾子に身をまかせる。綾子は祐一の膝に上半身を預け、
絹のような手ざわりの先端に口づけた。はだけられたままのストロベリーレッドの
ニットに映える白い肌とブーツをはいた脚が、この光景をより淫らに見せていた。
本当はいっぱいに充たして欲しい下半身の疼きを秘めながら、綾子は夢中で口の
中の剛直を愛撫した。綾子の髪をいとおしそうに撫でていた祐一の指が、髪をつかんで
しまわないように外され、綾子の指を握りしめた・・・瞬間、祐一の下腹部の筋肉が緊張し、
口の中に絶頂のしるしが放たれた。
「あや・・・のんで、くれたの?」
断続的に口蓋に浴びせられるそれを、綾子は最後まで受け止め、こくりと飲み下した。
ゆうちゃんだって・・・可愛い。祐一の吐く息、熱くなった肌、刻む脈動・・・全ていとおしい。
綾子はゆっくりと雄芯を口から離して顔をあげ、祐一を見て羞ずかしそうにほほ笑んだ。
「んっ・・・。」
強い力で抱き寄せられ、唇と唇がぶつかり合う。たった今かわしあったばかりの官能が、
ふたりの身体の中で渦巻き、合わさった唇から流れこみ混じりあうようだった。
それからはもうあまり言葉もかわさず、祐一はハンドルを握っていない方の手で
綾子の手を握ったまま車を走らせ続けた。
「・・・じゃあ。大晦日に。」
「うん・・・待ってる。」
家の前に着くと、綾子は車を降り、運転席側にまわってのぞきこんだ。交わす視線すら
まだ濡れているようで、離れがたい気持ちでそっと口づけあって別れた。
祐一と愛し合ったばかりの身体で、両親のいる家に帰るのはやはりなんとなく
気恥ずかしい。時刻はもう午前二時をまわっていた。綾子は音を立てないように鍵を
開け、足音をしのばせて二階の自室へ入った。
ベッドに倒れこみ、ほんの数十分前の愛の行為を反芻する。まだ身に残っている
気がする祐一の感触が、綾子の呼吸を早くさせる。・・・だが、綾子をより幸せな気持ちに
させるのは、その後ただ手を握りあったまま、言葉もなく過ごした時間の記憶の方だった。
「・・・おかしいな。ゆうちゃん、どうしたんだろ?」
綾子が高校時代の友人とルームシェアしている都内のマンション。友人は実家に
帰省していて、大晦日の今日は綾子ひとりだ。
綾子は近所の美容院で振袖を着付けてもらい、祐一が迎えに来るのを待っていた。
祐一は大晦日でも仕事が片付かないらしく、今日は遅い夕食を一緒に食べてから
初詣に行くため、七時に迎えに来るはずが、八時になってもまだ連絡がなかった。
携帯の呼び出し音。綾子はハッとして電話に飛びついた。
「・・・遅くなってごめん。親父が急に具合わるくなってさ。病院行ったりなんかで、
連絡できなかったんだ。」
「ええっ?!お父さんが・・・。大丈夫なの?」
「とりあえずはね・・・後でくわしく話すよ。ごめん・・・一緒に食事には行けないけど、
待っててくれないかな?綾子、着物着たんだろ?・・・見たいよ。」
「え・・・私はいいけど・・・病院にいなくていいの?」
「お袋がつきそってるから・・・。それより、大晦日にずれこんじゃった納品があって、
家でそれ仕上げなきゃならなかったんだ。お客さんに迷惑かけられないからね。
配達が済んだら絶対行くから・・・待っててくれる?」
「うん・・・。無理しないで。12時に間に合わなくてもいいからね。」
電話を切ってから、急にドキドキしてきた。祐一のお父さんが大変な時なのに、初詣
デートなんかしていいのだろうか?
不安な気持ちを抱えながら、着物を脱ぐわけにもいかず、綾子はひとり待ち続けた。
祐一が現れたのは、これから神社に向って二年参りに間に合うかどうかという
時刻だった。
「ごめん・・・ほんっとごめん。待ちくたびれただろ?」
「ううん・・・お父さんは?」
「うん・・・手術は成功したから。また明日病院に行くよ。こんな時に初詣なんてって
思ってるだろ?でも、こんな時だからこそ綾子と一緒に行きたかったんだ。」
「ゆうちゃん・・・。」
「きれいだな・・・すごく似合ってるよ。」
祐一は、少し離れて綾子の振袖姿を感心したようにみつめた。少し濃い目の水色の地に、
流れるような花々の文様の振袖は、綾子の長身とキリッとした貌によく似合っていた。
(ゆうちゃん・・・照れてるのかな?)
それ以上言葉もなく、祐一は目をそらした。なんだかいつもより距離を置かれている
気がする。
「行こう。急げば間に合うよ。」
外に出てみると『せんべい ささき』と書かれたワンボックスカーが止まっていた。
「ごめん・・・配達先から直接来たもんだから、こんな車で。あ、バスタオルかなんか
敷く?着物よごれたら大変だ。」
「い、いいよ・・・大丈夫だって。」
気づかう祐一にかまわず、綾子は助手席に乗り込んだ。
(おせんべいの匂いがする・・・。)
仕事用の車とはいえ、食べ物を扱う車は清潔で、香ばしいお醤油の香りがした。
綾子は祐一の働く姿を少し垣間見た気がして、ハンドルを握る横顔をそっと見やった。
祐一の家の近所の神社は、TVで取り上げられるような大きな所とは違うけれど、
下町で昔からみんなに親しまれている神社らしい風情と伝統を感じさせ、いい具合に
にぎわっていた。
お参りを済ませ、二人は屋台の甘酒を買って身体をあたためた。
「ここ、いい神社だね・・・。」
「うん。俺は子供の頃から初詣はここなんだ・・・氏子だしね。それに、酉の市には、
うちでもここに出店を出して、せんべいを手焼きして売るんだよ。俺は、店番が
あるから仕込みと搬入しか手伝ったことないけど。」」
お守りや甘酒などの屋台をみつめながら、祐一が意を決したように言った。
「綾子さ・・・来年の酉の市の時、手伝ってくれないかな?」
綾子はびっくりして祐一の顔を見返した。
「え・・・でも、私なんかでいいの?・・・全然、素人だよ?」
「親父さ・・・闘病、長くなると思うんだ。お袋はつきっきりにならなきゃならない
だろうし。だけど、待っててくれるお客さんがいる限り、店は出さなきゃ。
初めてだし親父もいなくて不安だけど、綾子がいてくれたら・・・。」
祐一はちょっと言葉をつまらせ、照れ隠しのように甘酒をすすった。
「ゆうちゃん・・・もちろん!もちろん手伝わせて・・・私でよければ。」
祐一が自分を頼りにしてくれたと思うと、綾子は嬉しくて胸がドキドキした。
ふたりはしばらく、何も言わずに甘酒をすすっていた。
「あ・・・除夜の鐘・・・。」
あちこちで『あけましておめでとう。』の声があがる。祐一と綾子も、あらたまって
頭を下げ、おめでとうございますを言い合った。
祐一の家は家人がすっかり出払って寒く、祐一は慌ててヒーターをつけた。
「いいよ・・・着物が汚れるから、綾子は座ってて。」
綾子がお茶をいれようとするのを制止して、祐一がココアをいれてくれた。
「おいしい・・・けど、さっきから甘いものばかりだね。」
部屋が暖まり、温かい飲み物を身体に入れると、急に眠くなってきた。隣りを見ると、
祐一がソファにもたれて目を閉じている。
「ゆうちゃん・・・。」
そっと身を寄せると、祐一がもたれかかってきた。綾子はやさしく祐一の頭をひざに
乗せ、髪を撫でた。
(かわいそうに・・・疲れきって。)
昨日からのめまぐるしい展開に加え、何もかもが急に祐一ひとりの肩にのしかかって
来た重圧に、心身ともに疲れきっているのだろう。綾子は胸が締めつけられる様な
想いで、眠る祐一の頬にそっと触れた。
「・・・ん。あ、あれ?・・・寝ちまったのか?ぅわ、着物、大丈夫?」
祐一にひざを貸したまま、綾子もいつの間にか眠ってしまっていた。外はまだ暗い。
そんなに時間は経っていなかった。
「綾子・・・それ、脱がない?」
「え・・・?」
「疲れただろ・・・ってか、俺も気ぃつかっちゃって、綾子に触れないよ・・・。」
なんとなくよそよそしい距離感は、そのせいだったのか・・・綾子は少しおかしくなった。
祐一が自分の部屋のヒーターをつけてくれ、そこで着替えることになった。
帯を解き、着物を脱ぐと、綾子もやはりホッとした。苦しくないように着つけて
もらっても、やはり気の張るものだ。
「綾子・・・これ着る?」
長じゅばん姿で、結い上げた髪を梳きおろしているところへ、祐一が入ってきた。
手にスウェットを持っている。
「ぅわ・・・それ、エロいな。」
あけぼの色の長じゅばんは、白い半襟に愛らしい花の刺繍があり、娘らしくきっちりと
閉じられた襟あわせも清楚な感じで、別にそういう淫靡さはなかった・・・はずなのだが、
祐一の目には明らかな欲望の光がやどっていた。
「な・・・なんかゆうちゃん、着物よりこっちの方が食いつきがいいんですけど・・・。」
綾子は危険を感じ、身体をかばうように胸を抱いて横を向いた。
「これなら、触ってもいいよね?」
祐一が後ろから抱きしめる。うすい絹をとおして綾子の体温が感じられる。冷たいのに
あたたかい、不思議な感触にそっと手をすべらせ、前でしめた紐を解く。身体の線に
沿って動く手が、下着をすべり落とした。
くるりと回転させられ、深く口づけられる。じゅばんはもう、羽織っただけの状態に
なり、その間からのぞく素肌を、祐一の唇がゆっくりと下りていった。
「ゃ・・・ぁあ・・・あ・・・。」
立ったまま、茂みに口づけられ、綾子は思わず指を噛んだ。
「脚、ひらいて・・・。」
「だめ・・・だめ・・・。」
ふらりと後ろへ倒れそうな綾子を、祐一が支えてベッドに座らせる。ホッとしたのも
つかの間、脚を大きく割られ、中心部に吸いつかれた。
「ひぁっ・・・やっ・・・ぁ・・・ああ・・・。」
吸い上げる唇から突き出た舌が、ひだをさぐり、孔に侵入し、花芽をつつき・・・。
綾子は身を起こしていられず、後ろに倒れて祐一のするにまかせた。
「・・・すごくあふれてる・・・汚したら大変だ。」
祐一が唇を離し、綾子の上体を支えながらじゅばんをすべり脱がせた。
「ふっ・・・くっ・・・ぁぅ・・・。」
急に愛撫を止められ、綾子はせつなげに身体を震わせた。待つ間もなく、熱い素肌が
綾子を包み、熟しきった果物にナイフを入れるように剛直が押し入ってきた。
「ぁあっ・・・ゆ・・・ちゃ・・・ぁあ―――――!」
昂ぶらされ、たまらなくなっていた内部は、ただ挿入れられただけで激しく蠕動し、
びくびくとけいれんした。精をしぼり取ろうと祐一をしめあげる強い肉の力に抗い、
祐一は上体を起こした。
「・・・ゆう・・・ちゃ・・・ん・・・。」
まだふるえている綾子の手を引き起こし、しっかりと抱き合ってキスを深める。
「綾子・・・あやこ・・・。」
祐一は膝の上に乗って少し高くなっている綾子の胸に顔をうずめて綾子の名を呼んだ。
いつも愛を交わし合う時だけ祐一が綾子を呼ぶ呼び名とは違う、いたいけない響きを
感じ、綾子は母のような気持ちで祐一の頭を抱きしめた。
「んん・・・ふ・・・ぅ・・・んぁんっ・・・。」
しばらくそうしていた祐一が目の前の乳首吸い、両手で腰を抱いて揺さぶった。
つかの間凪いだ水面はあっという間に波立ち、綾子の中で荒れ狂った。綾子は膝をついて
腰を上下させ、自らを貫く祐一を呑みこんでは吐き出すことを夢中で繰り返した。
「ぁあ・・・ぁ・・・ぁあ―――――!」
頂点に達した綾子ががっくりと身体をもたせかけた。祐一は綾子を乗せたままそっと
後ろに倒れた。
「ぁ・・・ぁん・・・。」
祐一が右脚を綾子の腰にからめ、半ば身を起こした。横に抱き合う形で脚を交互に
かみあわせ、ゆっくりと揺れあう。
「ゅうちゃ・・・ん・・・すき・・・。」
「・・・ん・・・。」
綾子のささやきに答える代わりに、祐一は腕に力を込め、優しい言葉を呑みこむ様に
綾子の唇を唇で包み込んだ。
「んぁぅ・・・んっ・・・ぁ・・・くっ・・・。」
次第に激しくなる揺れ合いの中に、ふたりの情熱がはじけた。うすい膜をへだてて、
祐一は綾子の中に熱くほとばしらせた。強いいとおしさに襲われて、綾子は祐一を
抱きしめつづけた。
「・・・ゆうちゃん、起きて。」
綾子に起こされ、祐一は一瞬、ここがどこなのかわからなくなった。眠い目をこすり
ながら階下におりると、祐一のスウェットを着た綾子が、台所に立っている。
「お雑煮つくってみたんだけど・・・ゆうちゃんちのと違ってたらごめんね。」
ふわりと湯気の立つお椀を前に、二人はいただきますを言った。
「ん・・・うまいよ。」
昨日から何も食べていないに等しいふたりは、お雑煮をおかわりして食べた。
「ちょ、綾子・・・オトコ前過ぎ。」
祐一のシャツとセーターとピーコート。一番タイトなものを選んで貸してもらった
とはいえ、それらはさほど大き過ぎはしなかった。
「普通さ・・・自分の服着た彼女ってのは、男の萌えポイントなわけ。」
「もぉ・・・だから借りるのいやだって言ったのに・・・。」
「さっきのスウェットだってさ・・・全然遜色ないじゃん。」
昨日、少し弱みを見せてくれたのに、今朝はもういつものちょっと意地悪な祐一に
戻っていた。コンプレックスを衝かれた綾子は少し涙ぐんだ。
「ごめんごめん・・・綾子はそんじょそこらにいない女の子だってことだよ。」
祐一が焦って綾子を抱きしめた。
「・・・綾子・・・昨夜はいっしょにいてくれてありがとな・・・。」
急に真剣な声でささやいた。ゆうちゃんはズルい。綾子は泣きそうになる。
「・・・それにしてもオトコ前だな。なんか、イケナイことしてる気になるよ。」
「・・・もぉ・・・っ!」
綾子は祐一の腕の中で思い切りにらんだ。なだめるように祐一が口づける。
窓ガラスの向こうは新春にふさわしい真っ青な空だった。今年最初の朝の光の中で、
ふたりはお互いにいちばん大切な存在をたしかめあっていた。
>>451 きてよかった、サンクス!です
オトコマエの綾子、いいなあ
>>452 GJ!GJ!
色んなネタが詰まってる〜‼すんばらしい!
カーセックスにハァハァしました(*´Д`)
>>452 GJ!着物で誘惑したかと思ったら、翌朝にはゆうちゃんの服を着こなしてしまう綾子さん萌えw
お父さんの件で、ちょっこし弱ってるゆうちゃんもイイ感じだったです
>>452 GJ!泣いちゃう綾子がカワイイ
和服って色々おいしいんだなぁと改めて感じたw
>>452 ほんとにネタたっぷりでもうどうしようw
女子達の話を聞いてる時や車の中ゆうちゃんのドSっぷりやらその反面の弱ってる時やら…
綾子さんのニットやら振袖やらガーターベルトやら男前っぷりやら…
どれもたまらんでした!GJ!
wishを聴きながら
ケーキプレイやイチゴを口移しで食べさせ合う2人を妄想してニヤニヤが止まらない
ケーキ屋さんで割引になったクリスマスケーキを買って嬉しそうな綾子さんと
ケーキプレイの計画を立ててニヤニヤしてるゆうちゃんを妄想してしまったじゃないか!どうしてくれる!
ふみちゃんの中の人の新しいドラマでほっぺにちゅーしてて思わずゲゲさんやゆうちゃんに変換して悶えた
ゲゲふみはともかくゆうあやは公式でもっとイチャイチャしてくれても良かったと思うんだ…!
>>470 見た見た
いきなりそのシーンかよ・・・と思い、何か悲しくなった
>>471 なんで悲しくなるんだよw
ポジティブに、ほがらかーに萌え妄想しとったらええんですよ
おせちの準備に勤しむふみちゃんと片っ端からつまみ食いしてくゲゲさんを妄想しながら総集編待機
>>473 それをふみちゃんに窘められて
じゃあ、とふみちゃんのあちらこちらをつまむんですね
>>474 総集編見て、それを毎年やっても全く違和感ないなこいつら!と思った
お粥もっとれよが相変わらずネ申すぎてニヤニヤがとまらなかった
>>475 総集編3のオープニングだけやたら記憶に残っててなんでだろうと思ったら
お粥見まくったからだった…w
しかしなんだかんだで久しぶりに見たけどやっぱりものすごい萌える夫婦だわ
元旦にやってたふみちゃんの中の人が出てた映画を見てつい病み気味の妄想をしてしまった
でもゲゲふみも祐綾もあんまそっち系似合わないんだよなー
やっぱりほっこりしてるのが似合うっていうか
祐ちゃんと綾ちゃんって、
バイト仲間で、互いが互いを意識している段階で、
それぞれ恋敵がきっといたよね
ちょっとした誤解で失恋?して、相手から距離を置いてみたり…
嗚呼、祐綾のご縁の糸に色をつけたい
今更だがあけおめ、ことよろ>みんな
ホンマでっか?の予告見たんだが、待望のゲゲ布美ツーショットが期待できるかも?!
放送で絡みはなくても、布美ちゃんの中の人はまだゲゲの中の人を
「おとうちゃん」と呼んでるんだろうか
あけおめです。
今年も皆様の妄想と職人様の腕に期待してます。
そして今夜のほんまでっかのさんまちゃんにもちょっとだけ期待。
>>478 障害がある方が燃えるかもしれない
新ドラマ、料理が出来ないお嬢様OLとドSでベーシストの料理人によるツンデレラブコメに変更しちゃえばいいよと思う
妄想ネタの宝庫だった<ホンマでっかTV
あけおめことよろです!
ホンマでっか!?録画してみたんだけど萌えたわぁ。
奈緒ちゃんが解答席で後ろを向くと、ムカイリの席でニヤニヤしてたり、全員前に出て2択クイズではいつの間にか隣に居たりして。
やっぱり二人が並んでるの良いなぁ。いちせん 朝ドラにならないかな。奈緒ちゃんに「私のこと好き?」って言って欲しい…。
ホンマでっか、すごかったねぇ…w
とりあえず車からぶっきらぼうにふみちゃんを庇うゲゲさんとか
綾子さんの天性のキスの上手さに戸惑うゆうちゃんとか妄想したw
私の事好き?は祐綾かなー
>>478 ゆうちゃんのライバルが綾子さんに懐いてる女の子だったら面白いなー…なんてw
布美ちゃんの「私のこと好き?」のあとに激ニヤケのゲゲを抜くあたり、繰り返し見たw
二択クイズのときに小手川さんも混じって話してるのも嬉しかったな
何気に相沢君とも話してたな、ゲゲ
>>485 なにその百合展開wいちせんは話が短いだけに無限に妄想がひろがるな
ホンマでっかは楽しかったですな
最近フジはちょっとイケてないけど、ああいう抜き方はフジならでは!
じょうずに撮ってうまく編集してました
そういえばふみちゃんぬのえさん誕生日おめでとう!
去年は食わずで盛り上がったんだなぁ…懐かしいw
>>484 ふみちゃんの中の人が前に来たときはちらちら見てたのに、後ろ向いたら顔を背けたのが
なんかしげーさんっぽくて無性に萌えてしまったw
>>486 相沢くんに話し掛けたとき、なんかのんびりしてて意外だった
しかし見れば見るほどなんていうか幸せになってしまうな…>ホンマでっか
今夜のスマスマもニヤけてしょうがなかったw
やるなフジテレビw
ゲゲの中の人が、撮影期間中は妻として布美ちゃんのことが好きだったって云ってましたね@スマスマ
もう夫婦にしか見えなかったもんね、あの二人w
スマスマ見なかったけどそんなこと言ってたんだ!
ふみちゃんの中の人もスタジオパークで同じ事言ってたような気がする…。
長い間夫婦役やってると気になっちゃいますよねーみたいな感じだったかな
名指しじゃなかったし長い間夫婦ってのはもう一作品あるけど、多分ゲゲゲだろうw
ゲゲさんの中の人が出てたスペシャルドラマをやっと見た
下町が舞台の一つって不純な動機で録画したけど普通に面白かったのでオススメ
もちろんゆうあや妄想の補完にも役立たせてもらったw
495 :
純情 1:2012/01/12(木) 11:14:24.30 ID:7RkRtlH4
秋も深まってきたある日の午後。藍子をおんぶして買い物から帰ってきた
フミエは、我が家へとつづく小路で、奇妙なふたり連れの老人に出会った。
(ここで知らん人に会うなんて、珍しいなあ・・・。)
ご近所の家の客かと、愛想よく会釈してすれ違った。
「ただいま帰りましたー。」
仕事部屋にも、二階にも茂はいなかった。散歩にでも出かけたらしい。
(あれ・・・すきま風?)
ふと風を感じて、仕事部屋の窓を見ると、少し開いている。
「開けっ放し・・・もぉ、お父ちゃんは無用心なんだから!」
ぼやきながら締めに行こうとして、何かがいつもと違う気がした。後戻りして
見直すと・・・いない。
「い・・・一反もめんが、おらん!」
額の中でズレたのでは、と壁から外して調べてみたが、影もかたちもない。
「一反もめんがおらんようになった・・・?何のことだ。」
帰ってきた茂は、フミエの涙ながらの訴えに面食らった。
「帰ってきたら、窓が開いとって・・・。いなくなっとったんです。」
フミエは一反もめんの絵を入れてあった手製の額を見せた。
「ふーむ・・・こげなもん、一文にもならんのに、盗む奴がおるかなあ・・・?
俺のファンにしても、もっと他の物に目をつけそうなもんだが。」
「・・・他には、何も盗られたもんはないようです。・・・でも、泥棒に入られた
言うだけでも、気持ちが悪くて・・・。」
「うーむ・・・。だが、紙きれ一枚では、警察も動いてはくれんだろうしなあ。」
「それに・・・。」
フミエの目から、つつーっと涙がしたたった。あれはただの絵ではなかった。
結婚して間もない頃、茂がフミエのために自転車を買ってくれ、初めて一緒に
深大寺に出かけた。ぎこちなかった二人がやっと少し打ち解けて、お互いの
第一印象などを話すことができた・・・その日、フミエに似ていると言って茂が
描いてくれた絵なのだ。
お化けに似ていると言われるのはちょっと微妙な気持ちだったが、茂が自分に
興味を持ってくれていたのだと思うと嬉しくて、フミエはそれを大切に額装し、
おばばの写真のそばの壁にかけて飾った。
496 :
純情 2:2012/01/12(木) 11:15:14.85 ID:7RkRtlH4
「・・・自分で飛んで行ったのかもしれんぞ。」
「ええっ・・・?!」
新婚時代の甘い思い出にひたっていたフミエに、茂は思いがけないことを言った。
「昔から、名人上手の描いた動物や美女が絵から抜け出す話は枚挙にいとまがない。
・・・俺の絵だって、そげな事があってもおかしくはない。」
茂はちょっと得意げにそううそぶいた。
「まあ、そう嘆くな。・・・また描いてやるけん。」
茂が自分を慰めようとしてくれているのはフミエにもわかった。けれど、あの絵は
特別なのだ。
「いいえ・・・あれでないと、だめなんです・・・。」
おばばの写真や、茂が初めて買ってくれた赤駒・・・それらと共に、いつも部屋の
一隅にあるだけでフミエがホッとできるもののひとつがこの絵なのだ。
「あ・・・でも、そう言えば・・・。」
フミエは、家の前の小路で出会った見知らぬふたり連れのことを茂に話した。
「白い着物を着た、全体に灰色っぽい婆さんと、今どき蓑のようなもんを着た、赤ん坊
じみた爺さん・・・なあ。話だけではわからんが・・・どうも人外の者のような気がするな。」
「じ、人外って・・・お化けですか?」
「うん・・・そいつらが、仲間を助けに来たのかもしれん。」
「そんな・・・。」
家に妖怪が入りこんだというのは、泥棒とはまた違った気味の悪さだ、それに、
仲間が迎えに来たからと言って、ついて行ってしまったということは、一反もめんに
とって、この家は居心地が悪かったということなのだろうか?
「まあ、妖怪とは本来自由なもんだけん、紙に閉じ込めておいたのは気の毒だった
かもしれん。・・・奴のことは忘れてやれ。」
何よりも自由を愛する茂はそう言ったが、フミエは寂しい気持ちでいっぱいだった。
「あなたが似とると言うけん、なんだか自分の分身のような気がしとったんです。」
フミエがうれしい時は、しっぽをひらひらさせて喜び、悲しい時にはしおれている
ように見えた。つらい時や苦しい時を共有して来た仲間を急に失って、心に穴が
開いたような気がした。
497 :
純情 3:2012/01/12(木) 11:16:41.03 ID:7RkRtlH4
一反もめんがいなくなってから半月近く経ったというのに、フミエはまだ
なんとなく元気がない。壁にかかったままの空っぽの額を見るたび、寂しさが
フミエの心を覆った。
ため息をつきながら台所の流しに向って洗い物をしていたフミエがふと振り返ると、
さっきまでいい子で遊んでいたはずの藍子が見当たらない。
「・・・藍子?・・・藍子っ!・・・どこにいるの?!」
玄関の三和土に落ちていないか、二階に上ってしまったのではないか・・・家中を探して
みたが、どこにもいない。フミエは狭い庭から果ては汲み取り便所の中までのぞいて見た。
「どげしよう・・・またこの間みたいに・・・。」
フミエがちょっと目を離した隙に外へ出た藍子が野犬に襲われそうになり、みち子の
夫の政志が助けてくれた時のことを思い出す。茂は出かけているし、心配でたまらなく
なり、フミエは門の外へ出てあたりを見回した。
「ウゥ〜・・・グルル・・・ワン!・・・ゥワワワワン!!」
複数の犬の激しい鳴き声に、フミエはハッとして声のする方向へ駆け出した。
家の裏手は大きな墓地。走ってくるフミエの気配に、数匹の犬が逃げ去るのが見えたが、
藍子はどこにもいなかった。
「・・・キャッ!・・・キャキャキャッ!」
頭の上の方で藍子の笑い声が聞こえた気がして見上げても、何もいない。フミエは
ハッとして家に取って返すと、二階に駆けのぼった。
・・・座敷の真ん中に、藍子がごきげんな様子でちょこん、と座っている。
「あいこぉっ!!」
すごい勢いでフミエに抱きしめられ、藍子はいやいやをして逃れようとした。
「あ・・・あんた、どこ行っとったの?」
「・・・わんわ、いたの・・・こわかったの。」
「どこも噛まれんでよかった・・・どうやって逃げたの?」
「しろいひらひら・・・ふわふわーって、おそら、とんだの・・・ふふっ。」
何かよほど楽しいことがあったのか、藍子はにこにこして空を飛ぶ真似をした。
498 :
純情 4:2012/01/12(木) 11:17:33.72 ID:7RkRtlH4
夕方帰ってきた茂に、フミエは先ほどの出来事を語った。
「でも・・・あれだけ探したのに、部屋の真ん中におったなんて・・・。窓も開いとって
・・・あそこから入ってきたとしか思えん。」
「ふうむ・・・。神隠し、というやつかもしれんな。」
「いえ、それが・・・出て行ったのは、自分でだと思うんですけど・・・。」
二歳の藍子のカタコトではらちがあかないが、母親として精一杯解釈したところでは、
裏の墓場あたりで野犬に会って危なかったところを、白い布のようなものにくるまれて
助け上げられ、そのまま空を飛んで二階の窓から入ってきたらしい・・・。
フミエは自分の推理をそう茂に語った。
「白い布・・・か。」
「お父ちゃん・・・私と同じこと考えてます?」
「うむ・・・一反もめんの奴、まだそのへんをうろうろしとるのかな?それにしても、
藍子を助けてくれるなんぞ、奴が恩義を感じるようなことをしてやったっけかな。」
「・・・そのへんにおるんなら、帰ってきてくれたらええのに。」
「仲間と自由を謳歌しとるんだろう。ほっといてやれ。」
その夜。
「お前はおとなしい代わりに、静かだと思うと消えとったりするけん、ほんとに
目が離せんな・・・。」
珍しく藍子を寝かしつけていた茂が、やれやれという風に言った。神隠し騒ぎに
肝を冷やした母親の気も知らず、空を飛ぶ夢でも見ているのか、藍子はやすらかな
寝息をたてながら微笑んでいる。
「・・・すんません。藍子見てもろうて。」
風呂からあがったフミエはそっと部屋に入って来ると、声をひそめて礼を言った。
「ええ顔して寝とる・・・。今日のことがよっぽど楽しかったんだろう。」
「私は寿命がちぢんだのに・・・もしも一反もめんが助けてくれんだったら・・・。」
「それにしても、奴はどげして自由の身になったんだろうなあ。仲間が紙を焼いて
魂を取り出してでもやったのか・・・ううむ、これは漫画のネタになりそうだ。」
フミエの心配をよそに、茂は今日の出来事をもう漫画のネタにしようと、右腕と
左袖を組んで考え込み始めた。
499 :
純情 5:2012/01/12(木) 11:18:38.62 ID:7RkRtlH4
仲間、と聞いてフミエは、あの時すれ違った奇妙なふたり連れの老人のことを
思い出した。
「私・・・不思議に思っとったんですけど・・・あの、一反もめんを連れて行ったかも
しれんお爺さんとお婆さん、なして人間の空き巣みたいに窓から出入りして、
それから歩いて逃げたんでしょう?お化けなら、ドロンと消えたり、鍵のかかった
ドアをすり抜けたりできんのですか?」
「妖怪は幽霊とはちがうぞ。それぞれひとつくらいしか得意わざはない。だけん、
人間の隙をついては悪さをするんだ。」
「へええ。お父ちゃん、妖怪の知り合いでもおるみたいに詳しいですねえ。」
「だら。俺が何年妖怪でめしを食っとると思っとるんだ。」
薄暗い部屋の中でお化けの話などしたものだから、フミエはなんとなく寒気を
覚えて茂に寄り添った。大きな腕で肩を抱かれ、温かさが伝わってくる。
「けど、そげだな・・・一反もめんなら、長細うて薄っぺらだけん、すき間から出入り
できるかもしれん。・・・なんせ、あんたの分身だけんな。」
茂は意味ありげに笑って、腕の中のフミエの胸のあたりを見た。
「な・・・なしてそこを見るんですか?」
フミエはちょっと怖い顔をして茂をにらんだ。
「俺は何にも言っとりゃせんよ。」
茂はとぼけて、フミエがとがらせた唇にちょん、と口づけた。
「・・・ええかげんに、元気出せ。」
言いながらまた口づける。何度も触れ合う唇。次第に深くなり、呼吸が乱れる。
「・・・っは・・・ん・・・ふっ・・・ぁ・・・。」
繰り返される口づけのあい間からもれるせつなげなあえぎに、帯をすべらせる衣ずれの
音が混じる。さらけ出された胸の突先の少し冷えた粒を舌でねぶると、耐え切れない
うめきが洩れ、フミエの足先が畳をひっかく音がした。下着に手をかけると、自然と
腰が揺れて抜き取らせる。温かい腹に顔を乗せると、乱れる息に激しく上下していた。
「・・・ぃや・・・ぁ・・・んっ・・・。」
拡げられた両腿の中心に向って熱い唇が下りていく。もじもじとうごめいてしまう脚を、
フミエの手にいましめさせると、わざと音を立てて腿のつけ根に口づけた。
「・・・ふぁ・・・ぅ・・・ゃっ・・・し、げぇさ・・・ん・・・。」
フミエの手が耐えられないように下りてきて、押しとどめようとする。茂はかまわずに
露をふくんだ花芯に口づけた。フミエの震えがはげしくなった・・・。
500 :
純情 6:2012/01/12(木) 11:19:42.33 ID:7RkRtlH4
濃密な愛の気配がただよい始めた閨のうす闇の中に、カーテンもない窓のすき間から
白い影が入ってきた。
影は、ふたりの視界に入らないように死角を選んでゆらゆらと漂っていた。もっとも、
そんな努力をしなくとも、急速にたかまっていくふたりの目にはもう、お互いの姿しか
見えていないのだろうけれど・・・。
うすく細長い白い影は、消えた一反もめんだった。
彼がふたりの愛しあう姿を見るのはずいぶんひさしぶりだった。フミエが藍子を
身ごもった頃、ちょうど二階の下宿人が家を出て行き、夫婦は、やっと本来の寝間で
寝ることが出来るようになった。一階の壁にかけられたまま、それ以来ふたりの
交歓を目にすることはなくなったけれど、この家に起こる悲喜こもごもの出来事を、
彼はそれからもずっと目撃しつづけてきた。
思えば、彼が茂の筆先にとらえられ、この家の住人となった日は、フミエと茂が
初めて結ばれた日でもあった。
小さな四角い空間に閉じ込められ、用が済んだらくしゃくしゃと丸められてポイ、と
捨てられる運命におびえていた彼を、手づくりの額に入れ、大切に飾ってくれたフミエ。
すらりと背が高く、色白でつつましやかな美しさをたたえたフミエに、彼はたちまち
淡い恋心をいだいた。
だが、よりによってその夜―――フミエはあの男のものになってしまった。
初恋の人が目の前で散らされる光景を見なければならないとは・・・彼は運命を呪った。
はじめの頃、慣れない行為に戸惑うフミエは痛々しく、心を傷めずにいられなかった。
だが、その先にはもっとつらい日々が待っていた。次第に身も心もゆるし合うように
なったふたりが交わす愛は夜ごと深まり、激しいものになっていったのだ。
清楚なフミエが、容赦なく暴かれ、翻弄され、啼かされて、身も世もなく乱れ、
奪いつくされる。彼はフミエにそんな仕打ちをする茂に憤りを覚えた。
「好きあっている夫婦なら当たり前のこと、ああ見えてもフミエは幸せなんだよ・・・。」
見守り仲間のおばばは彼をそう諭したが、とうてい納得することなどできなかった。
「あいつ、甲斐性なしのくせに大いばりでフミちゃんをこき使って、夜は夜であげに
虐めおって・・・ゆるせん!」
フミエはみすぼらしい家をすみずみまで磨き、とぼしい食材を工夫して食卓を飾り、
夜遅くまで茂の仕事を手伝って、働きづめだった。家計簿を前にため息をつく彼女を
見るたび、同情はますますつのり、亭主関白な茂を憎々しく思う彼だった。
501 :
純情 7:2012/01/12(木) 11:20:53.13 ID:7RkRtlH4
「・・・んゃあっ・・・っふ・・・ぁあっ・・・ん・・・。」
甘い責め苦を与える男の頭を、大きく拡げた両腿の間に受け入れているフミエの姿を、
彼は初めて天井から俯瞰で眺めた。このうえなく淫らな光景のはずなのに、フミエの
肌は艶めき、長い髪は白い布団の上に拡がって美しかった。羞じらい、抗いながらも、
身体は解放を求めて快感を追わずにはいられない・・・やさしく育ちの良さそうな彼女が、
最も羞ずかしい場所を剥かれ、なぶられ、どうしようもなく淫らになっていくこの姿に、
何度やるせない思いで目を伏せたことだろう。
「んんっ・・・く・・・ぅう・・・ん―――!」
茂が首を傾けて上唇と下唇で花芽をはさみ、さらに舌でなぶると、フミエは両手で口を
押さえ、のどの奥に悦びの悲鳴を閉じ込めようとした。拡げられた両腿は、無意識に
閉じようとして茂の首をしめつけた。
頭をはさんでいた脚の力がやがて力なくゆるみ、茂が顔をあげた。ぐったりと開いた
ままの両腿の間に、紅い秘裂が濡れて光っている。まだ震えているその花びらの上に、
たくましい腰がのしかかった。
「・・・ゃ・・・ぁあっ・・・し、げぇ・・・さん・・・っ!」
たかまりきった柔肉を熱い刃に押しつらぬかれ、男の重い身体の下でフミエの細い腰が
慄えた。茂を押し戻そうとする両手が肩をつかみ、かすれた声は、まるで助けを求めるかの
ようにその凶器の持ち主の名を呼んだ。けれど、フミエの顔はゆがみながらも内側からの
悦びに輝き、悲鳴にはかくしきれない甘さが混じっていた。
一反もめんはつらそうに目をそむけ、ふたりの真上から窓の方へ、ゆらゆらと移動
していった。
ふたりから目を転じると、そこには小さな藍子が両親の痴態も知らずスヤスヤと
眠っていた。思えば彼は、フミエのお腹に宿った時からずっと、藍子のことも
見守り続けてきた。
妊娠を告げた時の茂の冷たい態度にショックを受けたフミエの家出・・・。欲望の
おもむくままに好きなだけフミエを抱いて、野放図に精を注ぎ続けてきた結果なのに、
『子供は困る。』とは、なんと無責任な男だろう。
「おばば・・・あんたこれでも、この男がフミちゃんの大事な旦那だって言うのか?!」
彼は、二階へ移されてもう隣りにはいないフミエのおばばに向って、心の中で叫んだ。
今度こそ茂を絞め殺してやりたいほどの怒りを覚えたが、とらわれの身の悲しさ、
狭い額縁の中でいくら暴れても、外へ出ることはできなかった。
502 :
純情 8:2012/01/12(木) 11:21:56.41 ID:7RkRtlH4
だが・・・。たった二日で茂に連れ戻されたフミエは、母になる喜びと静かな強さに
満ちていた。茂もそんなフミエに気圧されたのか、覚悟を決めたようだった。
それから月が満ちるまでの間にも、困難は次々襲ってきた。電気代すら満足に
払えず居留守を使い、野の草を摘んで食卓に供する日々・・・。ハラハラして見守る中、
藍子は無事生まれ、人々のやさしさに包まれて大きくなっていった。
貧しいながらも幸せそうな一家を見守リ続けるうちに、彼も認めないわけには
いかなくなっていった。フミエが茂を心から愛していることを。茂も不器用ながら
フミエを愛し、妻と娘を守るため懸命に闘っていることを。
彼は何百年もの間孤独に眠りつづけてきた。妖怪は、人間が彼らをこわがる心の中に
住んでいる。人々に忘れられ、消えかかっていた彼をよみがえらせてくれたのは
茂だった。昔のことをほとんど忘れてしまった彼の、真っ白な紙のような空疎な心に、
愛の灯をともしてくれたのはフミエだった。
何百年もの間彼を待っていてくれた仲間が、彼の境遇を伝え聞いて助けに来てくれた。
彼を紙の檻から解放し、これからは妖怪らしく生きようと誘ってくれた。どこへ行くのも
何をするのも気の向くまま・・・彼は自由を謳歌した。けれど、日が経つにつれ、心に
ぽっかり開いた穴を風が吹き抜けるような空虚さに襲われるようになった。
「ごめん・・・やっぱ俺、帰るわ。」
引き止める仲間にぺこりと頭を下げ、一反もめんは調布の空を目指した。なつかしい
ボロ家の屋根が近づいた時、野犬に囲まれた幼い藍子を見た彼は、何の迷いもなく
野犬の群れの中に飛び込んでいた・・・。
503 :
純情 9:2012/01/12(木) 11:23:04.64 ID:7RkRtlH4
「ぃやぁ・・・ぁあ・・・っ!」
悲鳴にハッとして振り返ると、茂がなにやら体位の入れ替えを行っていた。自分の
左脚をフミエの右脚の上に乗せ、もう片方は逆にして、脚をたがい違いに組み合わせる。
くい、と腰をひねると、交わりの角度が少し斜めになって、敏感になっている秘唇を擦り、
内部の思わぬところを突いた。
「ゃっ・・・こす、れ・・・んぁん・・・だめっ・・・!」
抗議にかまわず、腰をぐっと入れ、ふたりの結合をより深くかみあわせる。たまらずに
フミエが伸ばしてきた手を引っ張り、上体を起こしてやる。フミエは片手で茂の肩に
つかまり、片手を後ろについて、甘く啼きながら腰を揺すった。
「・・・ゃっ・・・んっ・・・しげ・・・さ・・・だめぇっ・・・。」
強い波が来るたび、フミエのすらりとした背が弓なりにのけぞる。茂は突き出された
乳房を喰らいつくように吸いながら、腰を引いては打ちつけることを繰り返した。
「・・・ゃ・・・だっ・・・ぁああ――――!」
のけぞりすぎたフミエがとうとう後ろにくず折れた。茂はからみあった脚を伸ばしてやり、
ゆっくりとフミエの上に覆いかぶさった。
ぴったりと閉じさせたフミエの脚を両膝ではさみ、小刻みに腰を上下させる。
「ん・・・ふっ・・・しげ・・・さ・・・し、げぇさ・・・んんっ・・・。」
小さな蜜の壷を出入りする、硬い肉の筒に繰り返し花芽をこすられ、茂の名を呼ぶ
フミエの声が次第にうわずってくる。
「・・・んゃあっ・・・んぅ――――!」
フミエの爪が、はたから見ていて痛みを感じるほど茂の背に喰いこんだ。そろえられた
両足がぴんと反り、ぶるぶると震える。絶頂の瞬間、悲鳴すら独占するかのように茂が
唇で唇をふさいだ。茂の臀の筋肉がきゅっと緊張し、フミエの中に精を注いでいる。
静寂が支配する闇の中、ふたりの体内で無数の爆発が起こっているのが見えるようだった。
504 :
純情 10:2012/01/12(木) 11:26:17.57 ID:7RkRtlH4
・・・ふたりをさらい、押し上げていた波が徐々に引いて、張りつめていた身体が
ぐったりと弛緩した。全身に刻まれる同じリズムの脈動をともに感じながら、ふたりは
息がととのうのを待ちきれず深く口づけをかわしあった。
「・・・ふぁ・・・ぅ・・・。」
藍子が寝ぼけた声をあげて布団をはねのけた。ふたりはピクリと動きを止め、そっと
身体を離した。フミエが起き上がって、浴衣を羽織りながら藍子の上にかがみこみ、
布団を直してやる。茂がその背を抱くようにして、ふたりの宝物をのぞきこんだ。
至福のときを共有しているふたりを後に、影はフスマのすき間にするり、と入り込み
姿を消した。
「一反もめんの奴、やっぱり帰ってしまいよったな。せっかくわしらが助け出して
やったものを・・・。」
「ああ、あいつを連れに来た時、ここの奥さんに会ってしもうて、肝を冷やしたにのう。」
村井家の裏手の墓場で、おぼろな月の光の下、ふたりの妖怪が話し合っていた。
「あいつ、あの女房に岡惚れしよって・・・。人間の女なんぞ、いくら好きになっても
なんにもいいことなんかありゃせんのになあ。」
「まったくじゃ。いくら長細うて薄い言うても人間は人間だもの、妖怪の嫁にはなれん。
・・・まあ、一時のなぐさめに、ダンナの方を絞め殺して女をさらってくりゃええと
言うても、あのひとの不幸せになることはできん、とこうだからのう。」
「・・・奴は純情だからなあ。それにしても、好きな女が他の男と睦み合うとる家で暮らす
なんぞ、あいつは変態じゃないのか?」
「そう言うのは、近頃では『まぞ』と言うんじゃ。」
「ふうん・・・おばばは物知りじゃのお。」
赤子のような老爺にそう言われて、グレーな印象の老婆は得意気に胸を張った。
・・・その視線が、一反もめんの帰っていったボロ家に止まる。
「・・・いやになったら、いつでも帰ってくりゃええ。あいつはもう自由の身じゃからな。」
「ああ・・・そうとも。俺たちはいつでも待っとるでな。」
二人の老人はそう言うと、落ち葉がくるくると渦巻くつむじ風の中、墓場の向こうへと
消えていった。
505 :
純情 11:2012/01/12(木) 11:27:21.90 ID:7RkRtlH4
「あれ・・・?しげぇさん、新しいの描いてくれたのかな・・・?」
翌朝。茂が起きてくる前にと、仕事部屋のそうじをしようとして、フミエはあるものを
みつけた。それは漫画用の原稿用紙に描かれた一反もめんだった。
「お父ちゃん、新しいの描いてごしなさったんですね・・・だんだん。」
フミエは、自分があまり嘆くので、茂が新しい絵を描いてくれたのだと思って礼を言った。
あれでなくては、と言ったけれど、茂のやさしい気持ちはうれしかった。
「・・・ん?なんのことだ?」
ねぼけまなこで朝食の食卓に向っていた茂は、一反もめんの絵を見せられて怪訝な表情
をした。
「俺はこげなもの描いとりゃせんぞ。・・・最近は時代劇にかかりっきりだからな。」
「え・・・。ほんならこれは・・・。」
「見てみい。こいつ、しっぽが破れとる。」
たしかに、よく見ると一反もめんのしっぽは以前より短くなり、先端がいたんでいる。
「藍子を助けてくれた時、野犬に噛みとられたのかしら・・・かわいそうに。」
茂は、ホワイトで破れた部分を消し、新しくしっぽを描きなおしてくれた。
「ふーむ・・・どうやら自分の意思で戻ってきたらしいな。」
フミエは懐かしいお化けの絵をじっとみつめた。
「あんた・・・なして出て行ったりしたの?・・・でも、よう戻ってきてくれたね。」
「ここが居心地ええのかもしれんが・・・戻って来たいうことは、また出て行くことも
あるかもしれんぞ。自由の身だけんな。」
506 :
純情 12:2012/01/12(木) 11:28:20.29 ID:7RkRtlH4
フミエは元の額縁に、新しい紙に住み着いた一反もめんを入れてやった。
「もうどこへも行かんで、ここにおってね・・・。」
今日の一反もめんは、なんとなく後ろめたそうに見える。
「あ・・・それから、藍子を助けてごしなって、本当にだんだん。」
一反もめんの白い顔が、心なしかほんのり紅くなった気がした。フミエは安心した
ように微笑むと、台所に立った。
「・・・俺がおらんようになって、心配してくれとったんだな・・・だんだん。」
一反もめんは流し台に向うフミエの後ろ姿に話しかけた。フミエは何も知らず朝食の
後片づけを続けている。
「自由になって、最初のうちは嬉しかったけど、ひとしきり飛び回った後、寂しくて
たまらんようになって・・・やっぱり、帰って来ちまった。」
フミエに彼の声は届かないが、一反もめんの独白は続いた。
「フミちゃんは、ほんとにあいつのことが好きで、幸せなんだな・・・。俺はもう少し
ここにいて、フミちゃんの幸せを祈っとるよ・・・。」
ただの紙に描かれた墨汁の線のはずの彼の目から、ぽろり、と涙がこぼれた。
「・・・おめん・・・ないてるの?」
いつの間にか額の下に立っていた藍子が額に向って話しかけた。一反もめんは
あわてて涙をふいて首を横にふった。
「どっかいたいの?・・・よしよししてあげるね。」
藍子は危なっかしい足取りで額の下にある低いタンスによじ登り、立ち上がろうと
して、よろり、とよろけた。
「・・・藍ちゃん!!」
瞬間、紙の中から飛び出した一反もめん彼に抱き止められ、藍子はふわりと空中に
浮いた。
「・・・シーッ。」
彼は口があると思しきあたりに人差し指を立て、声を出さないように合図した。
そっと畳の上に下ろされた藍子はうれしそうにきゃっきゃと笑った。台所の
フミエが振り返らないうちに、一反もめんは急いで額の中に戻った。
「藍子・・・何をそんなに楽しそうに笑っとるの?」
娘がお化けと友情を深めつつあるとも知らず、フミエは雑巾とバケツを持ってにっこりと
藍子に笑いかけ、ご機嫌で玄関のそうじを始めた。
>>495 投下ありがとうござまーす‼
一反木綿、あんたいい奴!フミちゃんの事泣く程好きなのに
見守り続ける事にしたんだね、切ない(´;ω;`)
しかし、しげぇさんを憎む気持ちは分かるww
何があっても、フミちゃんはしげぇさん一筋だもんねぇw
子泣きじじい&砂かけババァの友情出演にワロタ
>>495 GJです!あーがとござーます!
一反木綿の純情とは…ステキでした。
ふみちゃんに惚れてしまいながら 村井家の家族にもなってたんですね。
明日はふみちゃんの中の人が朝からTVにでますね。いいともは録画だな。
>>495 一反さんのふみちゃん好き故のドMっぷりは好き故にドSなゲゲさんと正反対なんですなぁ
ほろりときたと同時に砂かけ婆の『まぞ』にワロタw
自分は胸の貧しさを気にするふみちゃんが大好物なのでそれもGJでしたw
>>495 GJです!
みんな、一緒におったんですね…色んな意味でw
>>508 いろんな番組で見れて幸せだー
今日のある番組でケーキ切るのにまごまごしてるのを見て祐綾妄想してしまった…
>>510 ハリネズミの顔だけ切っちゃったねwww
ゲゲゲの時は、カステラの切り方が悪いってムカイリに言われてたな。
先週いいとも!は月曜日ゲゲさんではじまり、金曜日ふみちゃんで終わったんだよね。いっぱい見られて嬉しい。
番宣万歳\(^O^)/
早海さん、概要読むとニヤニヤ展開が色々あるっぽい
楽しみすぎるw
>>512 なんか、早海夫婦のお互いが惚れた流れが自分が祐綾で妄想してた流れと似てて悶えたw
変換妄想がはかどりそうだ
イノッチの立場はww
>>514 だってゲゲゲの女房スレだしw
いのっちも好きな方だから早海さんは早海さんで萌えるけどもちろん変換妄想もするって話さ
>>514 なんだろう
可愛いけど、今の所イチャイチャしまくってる場面が想像つかないw
早海さん見逃した!ゲゲ布美二人とも番宣出まくりでHDDの容量がねえよorz
ゲゲの朝ドラキャスト勢ぞろいドラマは見たが、今のところ妄想できる場面はない
ドSシェフって設定らしいが、あれはSという感じではないしなー
同じ局なんだし、コラボで布美ちゃんがゲゲの店に食べにきたりとかしてくれないかな
>>517 コラボ見たいね!
でもムカイリと並ばせたらまたイノッチがオチみたいな扱いになっちゃいそう。
明朝はめざましゲゲだ。
>>517 早海さんなかなか普通に面白かったよ
何よりふみちゃんの中の人超かわいい
首都圏だけかわからないけど22日の昼に再放送するらしいよ
ゲゲさんの方は確かに妄想しづらかった…w
>>519 あまりの可愛さに萌え転がっているぜ!
それだけで見る価値があるな
夫に尽くすハリネズミの奥さんって… ふみちゃんだな。
かとうかずこママンの「夫の実家とは 付かず付かず付かず 離れず」にワロタ。
>>520 ぬいぐるみ劇場がかわいすぎてどうしようかと思った
私の事好き?がつべにあがってた
ニヤつくゲゲさんの中の人まで込みの超GJな動画だった
>>522 禿道!萌え死にした!>ぬいぐるみ劇場
このスレの影響のせいか、早く純喫茶をメイド喫茶で立て直してほしいとオモタ
突然ゲゲふみ祐綾の遊園地デートってどんなもんだろうという妄想にとりつかれてしまった
なんか絶叫マシーンでふみちゃんが直前まで怯えてるのに乗った後は案外楽しかったですねぇとか言いそうw
>>523 メイド喫茶だとww
メイド服な奈緒さんはものすごく見てみたい
ロングスカートが良いなぁ…
イチゴは冬の寒さにいじめられると甘くなるという話を聞いて
ゆうちゃんに性的な意味でいじめられてどんどん可愛くなる綾子さんを妄想してしまった
↑あれ?自分がいる・・・
さては
>>525もいいとも見たなw
527 :
525:2012/01/22(日) 21:44:55.06 ID:9EAe6/2T
>>526 見たw
まさかふみちゃんの中の人の共演者ってだけでなんとなく録画してみたいいともであんな萌えネタを拾えるとは思わなかった…
いじめられると甘くなるってのがツボすぎたw
今日も変換萌え要素だらけだった!
そだね!変換萌えだらけ!
家出のお迎えとか、掃除して怒られるとことか。
要潤の合コン相手 藍子タンの人だったね!
ふみちゃんの中の人の方は萌え満載なんだけど
ゲゲさんの方は個人的にレストランと仲間達が楽しくて良い意味で変換萌えできないw
CSでやってるゲゲさん執事のドラマの方がよっぽど変換しやすいw
>>530 予告ではゲゲがお粥をてっぱん娘に食わせていたような気がするぞ?
しかしゲゲゲでお粥といえば、やっぱり「持っとれよ、持っとれよ」だし、
「俺が今何を考えとるかわかるか?」→「三人目ですか(ぽっ)」の名シーン…もとい、迷妄想だなw
久しぶりに総集編を見た。
やっぱり自分は自転車買って来た時のふみちゃんの「お帰りなさい」と泣き顔が一番カワイイと思う。
>>532 あれはほんとにもう、たまらんですよねぇ…
車の練習で蓋に隠れるのもかわいい
自分は割れせんを久しぶりに見た
10分に満たないし喧嘩してるのにこの萌え力…
>>533 せんべいの釜?の前でのふたりの冷たい雰囲気がたまりませんねえ
ふたりの新ドラマでそれぞれのカップル見てもなんか気持ちが伝わって来ないんだなあ
ゲゲもふみちゃんもスイッチ入ってないのか・・・
>>525 大根や漫画も冷たい風にあたって甘くなるんだっけ
ふみちゃんのドラマ 家出のお迎えは完全にゲゲさんで変換萌えしました。
そこからゆうちゃんが実家に帰っちゃった綾ちゃんを迎えに行って平泉お父様にニヤニヤされる妄想してみたが、それ以上は力不足で断念。
>>535 そういえばそげでしたねぇ>漫画と大根
ゲゲさんのもふみちゃんのもようやく最新回見れた
続けて見たせいかゲゲさんの冒頭で怒ってる演技がふみちゃんの方の義父さんの演技と似てるなとふと思ってしまって
自分の中で妙な変換妄想の糧になりつつあるw
BSで四月から再放送キター!
ホントに!?
うれしすぎる〜\(^O^)/
ビンボーでDVD買えなかったから 今度こそ全部録画だ!
>>531 ゲゲゲのお粥シーンが至宝すぎて…と思ってたけど
年取ってデレてるゲゲさんがふみちゃんに食べさせる妄想とか
ゆうちゃんが綾子さんに甘えられてデレデレになりながら食べさせる妄想とかが
あのシーンによっとできるって事なのか…!
540 :
名無しさん@ピンキー:2012/01/30(月) 21:18:41.88 ID:l6fhLLYR
今日はゲゲふみ結婚記念日!
>>538 DVDは特典が付いてるから、是非手に入れてほしい!もちろん全録も是非!!
今はもう見れなくなった村井家の見取り図とかあるし、個人的には放送前スペシャルは
全然見てなかったもんだから、こんなのやってたのかーっ!と嬉しかった
役者さんがそれぞれの役について、いろいろと語ってるのがしみじみ…イイ!
メイキングとかもちょっこしあるしね
>>540 さすれば今日は上京初日か?今頃はまだ汽車の中かなw
オンデマンドのCM、いろんな番組が額縁?の中で動いてるんだけど、
ゲゲゲが大きな額縁でわりと多めにセンターで映っていてうれしい。
案内役のオバケのバックに映るのも、ゲゲゲと、その同年の大河。
もっと最近の朝ドラや大河の立場は〜w
オバケが花と自転車のシーンの前で「いいな〜幸せそうだな〜。」って
悶えてるの見て、ここの一反さん思い出したw(ウロで間違ってたらごめん)
>>542 それ見た!
次々変わってくのかなーと思って見てたらほぼゲゲゲで嬉しかったしワロタw
自分もあの幽霊で一反さん思い出したよw
節分だけどやっぱゲゲふみは豆を買えず寒さに身を寄せ合ってイチャイチャかな
でも締め切りが月末だからお金ありそうかな…?
DVD特典で見たかったものはクランクアップ挨拶の後
いったん玄関から下がった時に思わずしたというふたりの抱擁シーン
ドアのすりガラスにそれらしきシルエットは見えたけど
このいちごのお菓子とかが期間限定で出てくる今の時期は
綾子さんがおおはしゃぎなんだろうなとニヤニヤしてしまう
>>547 いちご狩りいいなw
綾子さんが練乳こぼしてゆうちゃんがうっかりムラッとしてしまえばいいよ!
上京して一週間くらいだとして、今日か明日あたりそろそろ自転車デート、初夜の日くらいかな?
そういや明日はゲゲ、明後日は布美ちゃん、それぞれの中の人の誕生日だったな
朝めざましで中の人二人の誕生日祝いを一緒に流してたね
リアルゲゲふみの誕生日の真ん中くらいにドラマゲゲふみ誕生日ってのは、なんかステキだなぁ
中の人達誕生日おめでとう!
それぞれのドラマがザリガニとか大根の葉っぱとか、ビミョーにリンクしてる気がしてしまうw
>>549 暦の上で春になってから結ばれたのか…と思って何故か無性に萌えたw
>>551 ロールキャベツは結婚1周年記念だったな
今後さつまいも、バナナも出てくるかな
いちごは下の方がより甘いとここ的には「ちゃーんと使いこなしていかなくっちゃー」で
お馴染みの番組で言ってたけど、これはさすがに萌え変換は厳しいと思ったw
>>553 自分はその言葉なんとなくエロいと思ったクチですがw
合羽橋に行ったついでに、いちせんで使われたお店に寄ってみた
いちせんの撮影風景の写真やゲゲ女のポスターが貼ってあってニマニマ
してしまったよー
月刊誌で綾ちゃんの中の人が下町紹介してるけど、特に言及はなかったな
556 :
553:2012/02/12(日) 20:20:22.38 ID:oDw1vaTY
>>554 なんかストレートにエロすぎて躊躇ったw
レポだんだん!ポスターとか写真良いなあ…!今度絶対行こうと決めたよ!
自分は以前リアル水木家周辺をうろついた事があるw
ほんとにドラマみたいな行き止まりで裏にお墓があって感動と妄想が入り混じった気分になったw
>>555 ドンマイですー
個人的には保守して使いたいけど今ここの残りが50kbだから保守しきれるか不安…
ここんところ職人さんも忙しいのか、なかなか投下こないけど、
春になったら再放送あるし!
それまでは妄想の切れ端をちょっこしずつ落として我慢だ。
>>557 奈緒ちゃん好きな人は「早海さん」にハマってて、ムカイリ好きな人は「ハングリー」にハマってるから過疎ってるんじゃね?
どちらも好きだし観てるけど、ハマれないなぁ…。
>>557 今書きかけのがあるんですが、時間がとれなくてなかなか完成できません。
そのうえ異様に長いので、スレ終盤になったら入りきらないかもしれないw
このスレが終わって、もしも次スレが立たなかったら、もう潮時ってこと
かなあ…と思って寂しかったので、新スレ立ててやろうという方がいてホッ。
>>555さんの新スレのサブタイどおり、再放送も始まることだし、またのんびり
まったり楽しんでいきたいですね。
お待ちしてます。
もし新スレが落ちてしまっても、スレ立てなどお手伝いさせていただきます。
なんたって再放送〜。
待ってます!!
自分を含め、早く読みたい人も沢山いると思うので、
何回かに分けて連載 っていう手もありますです♪
綾子さんがチョコは貰ってばっかりで、あげるのはゆうちゃんが初めてとかだったら萌え死ぬなぁ
ベタに、あんまり上手に出来なくて、でも全部食べるとか
自分的に佑綾は思いっ切りベタな妄想を当て嵌めたくなるカップルw
>>560 楽しみです!
>>563 バイト仲間達が、立派な手作りチョコを祐ちゃんに渡しているのを見て、
「こんなの渡せないや…」と、しょんぼりしている綾ちゃんを想像したよ〜
(一方、家では、平泉パパが“昨日、台所で四苦八苦して綾子が作っていたチョコは誰の手に渡ったたんだ――(`へ´)”と、やきもき中)
ゲゲふみのバレンタインは時代的にも経済的にも熟年いちゃいちゃ期向けって感じだね
>>564 頭の中でゆうちゃんがしょんぼりしてる綾子さんを目敏く見つけて二人になれる空間を作り出す策士になりつつあるw
>>564>>565 妄想リレー?
まざりたいけど自分じゃ力不足。
バレンタインに誕生日も絡まないかなあ…
チョコのほかにももうひとつプレゼントがあるんだって。
付き合い初めてからそのもじもじっぷりをからかわれて真っ赤になりながら言い訳する綾子さんと
それをニヤニヤ見ながらでれっでれなゆうちゃんを妄想w
付き合う前に励ました時に『祐一くん』でいちせんの時には『ゆうちゃん』な過程が知りたくてたまらんですよ…
>>565 ゲゲふみだとバレンタインとズレるけど、熟年期だとお歳暮とかに先生の好みを知らない若手編集者がチョコレートボンボンを送っちゃって
あら大変とふみちゃんが隠したらゲゲさんのお菓子センサーに引っ掛かって見つけられて
風邪気味で鼻が詰まってて酒臭さに気づかずに食べちゃってほろ酔いで久しぶりにイチャイチャとか…w
藍子が中学校卒業する頃に使わない制服をクリーニングに出す前にちょっこし着てみて
当然しげーさんに目撃され真っ赤になるふみちゃんを妄想
>>569 制服と恥じらう姿のコラボレーションとは素晴らしいな
ゲゲさんが鍋蓋で練習の時みたいな反応をした後で仕事始めたら案外頭から離れなくて夜は…w
流れ豚切で投下、とかいってエロなしショートでスマソ
新スレ立ってるみたいなんで、スレ埋めに
574 :
生命継ぐ者 前:2012/02/23(木) 18:37:07.31 ID:POKLBmRE
その後ろ姿を見て、布美枝は軽く噴き出した。
腹ばいに寝そべり、曲げた両足をそわそわと交差させながら、
頬杖をついた顔は、藍子に喰いつくかのように、その鼻先で微動だにしていなかった。
(子どもみたい…)
抵抗などできるはずもない生まれたばかりの娘は、
ざらざらの無精髭にやや顔をしかめながら、それでも、
眼前の父の温もりと匂いに、安らぎを認めて泣きもせずじっとしている。
「何しとるんですか?」
布美枝の問いかけに頬を緩め、茂は戦時中の話をしてくれた。
「生命の匂いだ」
赤子特有の香りを、茂はそう言った。
ああ、言い得て妙だなと布美枝は思った。
飽きもせず、茂はずっと藍子の香りを嗅いでいる。
時折頬や鼻先を啄ばんで反応を見、くすくすと笑った。
この男がこんなにも、我が子に対して相好を崩して接するとは思いもよらなかった。
妊娠を告げたときのあの素っ気なさを、映写機にでもかけて見せてやりたいと、
少し憎らしく思う程に。
藍子も藍子で、まだ笑うことはできないものの、決して泣き出すことはなく、
不思議そうに茂の眼を見つめ、触れられれば小さく「きゃ」と啼いた。
布美枝はぽつんと座り込んだまま、しばらくふたりの様子を伺っていた。
こうなると妙な気持ちになるもので、知らず知らず「ほう」とため息を吐いたところ。
「なんだ」
茂がひょいと振り返った。
「疲れとるなら寝とってもええぞ」
「いえ…そげでなくて」
「ん?」
何と言えばいいのか、布美枝にも解らなかったけれど。
稚拙な言葉を使うなら…
「…ええなぁ、と思って」
「何が」
「…」
嫉妬、とでも。
尖らせた唇の向こう側に、いささか不服言があるのを見て取った茂が、ぷっと噴き出した。
「拗ねとるのか」
「もうっ」
茂はごろりと仰向けになり、布美枝の膝枕から膨れっ面の頬を軽く捻った。
優しく微笑むその表情は、藍子に向けられていたものとはまた少し違って。
575 :
生命継ぐ者 後:2012/02/23(木) 18:37:54.98 ID:POKLBmRE
「――― お前は」
一瞬、布美枝の胸がどきっと高鳴った。
ときめいたというよりは、驚いた。
「すぐに妬く」
呟きながら、肩からしだれたまとめ髪を、さらりと撫でられる。
布美枝の鼓動は高鳴ったまま、まるで初めて会った頃のように。
けれど理由は茂の微笑みの所為だけでなく。
「お前」と呼ばれた、初めての声音に戸惑ったからだ。
不快などではなくむしろ、高揚感に逆上せてしまう程だ。
用があるときにでも名前などもってのほかで、茂が布美枝を呼ぶのは常に「あんた」。
他人行儀な気がしなくはない、けれど、男性というのはそういうものかなとずっと思っていた。
けれど「お前」は全然違う。
言うなれば、父、源兵衛が母をそう呼び、兄が邦子をそう呼んでいたように。
特別の、証。
「だら」
布美枝の髪の毛先をくるくると弄び、怒るわけでもなく独りごちた茂に、
ふいに布美枝は口づけた。
衝動は、彼を愛しいと思うたびに、しばしば布美枝の理性を奪って身体を乗っ取る。
けれど茂はたじろぐこともなく、それを受け止め、むしろ利用するように甘い時間を紡ぎ始める。
愉しんでさえいるような、したり顔が憎らしい。
「正月は明後日だ。餅を焼くにはまだ早い。まして自分の娘にはな」
そのからかい口調に、また拗ねてみせると、茂は可笑しそうに小さく肩を震わせた。
そして顎でちょいと合図をしてみせ、布美枝を呼び寄せる。
触れ合う唇からわずかに藍子の香り。
茂が生み出し、布美枝が育んだ生命の香りが。
合わさって、交わし合う、言葉にはならない、最上の睦言。
「…おとうちゃん?」
「ん」
「藍子に見られとるね」
「…ま、それも教育だ」
やっと照れてみせた茂の表情に、ふっと頬が緩む。
不思議顔の藍子にふたりして微笑みかけ、まだ薄い髪を撫でた。
愛しい男の生命を継ぎ、愛しい娘が温かな鼓動を打つ。
どうぞこの時間が、永遠のものでありますようにと、布美枝は誰にともなく祈った。
おわり
>>574 GJです!
この、親子のシーン大好きなんです!
可愛くてほんわかしました(*´∀`*)
あーがとございます!
>>574 スレ埋めなんてとんでもない!良作をありがとう
この短さの中に、あの空気感があふれていて、初心に還らされました
エロなしと言いながらちゃんとエロい上に初めての「お前」呼びまで・・・
子供が生まれてからなんだよね、そう言えば
>>574 すごくイイ!
自分もこのシーン大好きだ〜
嫉妬ふみちゃんもかわいいし
お前呼びはやっぱり萌える(*´д`*)GJ!
>>574 家族かわいいし夫婦エロいし!
ほんにGJでした!
再放送の正式発表もやっとwあったし
また萌え転がれるかと思うと楽しみだ
>>574 村井家っぽくありながらもなんとなくエロいw
空気感が好きだーGJ!
エアひな祭りとゲゲさん誕生日の季節になりましたね
ゲゲさんが催眠にかかりやすいタチで、飲んだつもりで酔ってくれたら良かったのにw
ゲゲさんは催眠とか効かなそう
ふみちゃんはかかりやすそうw
書きかけのがあると書いた
>>560です。
いちせんパロです。興味のない方はスルーでお願いします。
>>452の『ニューイヤーズ・イヴ』の続編になりますが、前作を読んでなくても
だいたいわかると思います。
50KBオーバーしてしまい、とても一度には投下できないし、読まれる方も
大変かと思い、前中後編に分けました。
>>562さんもありがとう。
2、3日中にはまた投下予定ですが、スレをまたぐことになるかな?
最近、ほのぼのしたいちせん妄想ネタが多いのに、なんだかアダルト風味に
なってしまいました。不快に思われた方はごめんなさい。
583 :
小さい男 1:2012/02/29(水) 16:09:23.54 ID:Ej5n+QV5
「・・・綾ちゃん?」
「あ・・・佐古さん?」
食事を終え、店を出てきた綾子に、男が声をかけた。
「あれ・・・なんか今日、いつもより背、たかくない?」
退社する時、綾子はデート用に普段履かないハイヒールに履き替えていた。
佐古と呼ばれた男は、綾子にかなり近づいて少し見上げるように背をくらべてみた。
・・・ちょっと接近しすぎ、と綾子が思った時、向かい合った佐古の視線が綾子の
後ろに泳いだ。綾子が振り返って見ると、そこには少し遅れて出て来た祐一が
立っていた。佐古はあわてる風でもなく、綾子との距離を元に戻した。
「あ・・・祐ちゃん。あの・・・こちらは会社の同僚の、佐古さん。」
「佐古雄一郎です。あゃ・・・平泉さんには、いつもお世話になってます。」
「・・・どうも。」
「ぇと・・・お、友達の・・・佐々木、祐一さんです。」
綾子がなんとなく気まずそうに祐一を紹介する。すぐさま営業用の笑顔を浮かべ、
はっきりと自己紹介した佐古とちがい、祐一は無言でうっそりとうなずいただけ
だった。
「じゃ・・・平泉さん、またね。」
佐古はそれ以上よけいなことを言わず、サッと歩み去った。それを見送っていた
綾子も、祐一にうながされて歩き出した。
金曜日の夜。どう見てもデート中のところを、会社の同僚、しかも男性に
出くわすのはかなり恥ずかしい。食事が終わったら次はベッド・・・そう決まっている
ものでもないけれど、休みがズレている上に仕事が忙しいふたりは、会うたび
求め合わずにはいられない。
げんに今夜も、ふたりの足取りは自然とホテル街に向っていた。佐古も、それを
想像しただろうか?・・・そう思うだけで、いたたまれなくなる。
584 :
小さい男 2:2012/02/29(水) 16:10:14.89 ID:Ej5n+QV5
「あ、あの人ね・・・佐古さん・・・あ、今の人・・・。」
ちょっと白けた雰囲気を破るように、綾子が今の人物について説明を始めた。
「中途採用でウチに来る前は大手にいたとかで、才能もあるし、いずれ独立する
だろうって言われてるの。入社したのは私より1年あとだけど、祐ちゃんより
年上だし、私みたいなヒヨッコとは雲泥の差で、いつも助けてもらってるんだ。」
なんとなく気まずい空気をまぎらすため、綾子はいつになく饒舌だった。
「そんなデキる人なのに、な〜んか軽いから『残念なイケメン』とか『バブルの
忘れ物』とか言われて気の毒なの。でも、頭イイ人だから、敵をつくらないように
計算してわざとそう振舞ってるのかも・・・。」
「・・・綾子、どこ行くの?・・・着いたよ。」
祐一に言われてハッと気づくと、そこは二人が何度か夜を過ごしたことのある
ホテルの前だった。いつもにも増して綾子は、人目を避けるように目を伏せて
祐一の後から建物に入った。
この種の目的のホテルはみなそういうシステムになっているのか、誰とも会わずに
チェックインでき、料金も前払いなのだが、それでも綾子は誰かに見られている
ような気がして、廊下を歩いている間も落ち着かない気分だった。
「・・・ここだよ。」
祐一にうながされて部屋に入る。この手のホテルにありがちな淫靡で安っぽい
雰囲気は微塵もない。シンプルなインテリアに、リネン類は清潔で、アメニティも
豊富だった。
「・・・!」
コートも脱がないうちに、祐一に抱きしめられる。外を歩いてきて冷たくなった
唇と唇がかさなり、熱が生まれる。
「・・・ん・・・待・・・って・・・ゆ・・・ちゃ・・・。」
きれぎれに抗う綾子の声、服と服のこすれあう音しか聞こえない、閉ざされた静かな
空間・・・。佐古と言う『日常』と出会ってしまったために醒めてしまった綾子の心が、
祐一との『夢』の時間に切り替わっていこうとしていた。
585 :
小さい男 3:2012/02/29(水) 16:11:17.98 ID:Ej5n+QV5
「・・・会社では、ヒールじゃないんだ?」
祐一がふと唇を離し、綾子の足元を見下ろして言った。官能に身をまかせつつあった
綾子は、急にまた話を会社に戻されてすこし戸惑った。
「え?あ・・・うん。お客様を見下ろしちゃダメだって・・・佐古さん・・・がアドバイス
してくれて。」
「ふーん・・・あいつのためでもあるわけ?」
佐古は、綾子がフラットな靴にすれば、綾子よりほんの少し低いくらいの身長だった。
「べ、別にあの人のためじゃ・・・他の人だってみんな、目線が合って話しやすいって
好評なんだよ。」
「・・・俺は、こっちの方がいいな。」
言いながら、祐一がジッパーを下ろして、綾子のスカートだけをするりと落とした。
「ゃ・・・だ。」
続いてコートも脱がされる。ピンと糊のきいた白いシャツに、小さなビジューの
いっぱいついたモカブラウンのカーディガン・・・上品な上半身と対照的に、下は
ガーターとストッキングとショーツ、そしてハイヒールという、かなり羞ずかしい
格好になった。つづいてカーディガンのボタンにも指がかかる。
「ま・・・って・・・シャワー、浴びてくるっ!」
綾子はあわててスカートを拾いあげ、逃げるようにバスルームに飛び込んだ。
(あいつ・・・さっきからなんかそわそわしてるな・・・。)
綾子がこうした場所にいつまでも狎れないことは、祐一にとってそれはそれで嬉しい
ことだった。綾子のそういう初心なところが好きだし、羞じらう綾子を徐々に乱して
いくのも楽しい。
(けど、今日のはちょっと度が過ぎてるな。)
さっき会った男が原因だろうか・・・?綾子とずいぶん親しそうだった。綾子の口ぶりに、
あの男に対する敬意と、そこはかとない好意がにじむのも面白くない。
(そんな気分じゃなくなった・・・とか?)
まだあの男の空気が残っているうちに、祐一に抱かれるのが恥ずかしいのだとしたら、
それは綾子が、あの男を男性として意識しているということではないのか?
(・・・まあいい。あんな奴のこと、消し去ってやる。)
「あ・・・アレ、切らしてたんだっけ。」
祐一は立ち上がってキーを取ると、部屋の外へ出た。廊下の一隅の、死角に隠れる
ような場所に、ぼんやりと灯のともった小さな自販機があった。
586 :
小さい男 4:2012/02/29(水) 16:12:22.43 ID:Ej5n+QV5
綾子が出てくると、入れ替わりに祐一がバスルームに入った。
(ゆうちゃん・・・今日、なんか機嫌わるい?)
綾子はますます身の置き所が無くなる気がした。本当は、素裸になってベッドで
待ってたりするといいんだろうけれど・・・。なんだか今日はそれも羞ずかしくて
たまらない。
(あ・・・明日の資料、目を通しとかなきゃ。)
所在ないまま、綾子はバスローブ姿のままソファに座り、バッグから仕事関係の書類を
出して読み始めた。
「・・・仕事?」
濡れた頭をゴシゴシ拭きながら祐一が覗き込んだ。
「あ・・・うん。明日、会議なんだけど、今日は時間無くて読んでられなかったんだ。
明日の朝も、読む暇ないだろうし・・・。」
「それって・・・朝起きられないくらい、してほしいって意味?」
「ち・・・ちがうよ!」
祐一は資料をそっと取り上げてサイドテーブルの上に置くと、わざと綾子の膝の
間に身体を割り込ませて膝立ちし、顔を寄せて唇を奪った。
「・・・ん・・・っふ・・・。」
バスローブの下には何もつけていない。大きく開かされた両腿の間が、早くも
溶けはじめる。
紐を解いてバスローブを左右に拡げると、白いパイル地にくるまれ、祐一が贈った
プチネックレスだけを身につけた綾子は、祐一のためだけのプレゼントのようだった。
「・・・んゃっ・・・ぁ・・・ん・・・。」
ネックレスに口づけてから、その下のふたつの宝石にも交互にキスをする。
吸い込むように口に入れては出してみたり、強く舌で転がしてみたり・・・。
「・・・ゆ・・・ぅちゃ・・・キ、ス・・・して・・・。」
綾子にキスをせがまれ、顔を上げて下からくわえるように口づける。綾子が両手で
祐一の顔をはさんで、舌を入れてきた。祐一の指は、なおもふたつの尖りを責め
つづけている。綾子は耐え切れなくなって唇を離し、身をよじって顔を俯けた。
「どうしたの?珍しくあやの方から舌を入れてくれたのに・・・。」
キスを続けられないほど弄っておきながら、祐一がとぼけて聞いた。おでこを
くっつけて顔を押し上げ、目をのぞきこむ。にらみながらも綾子の目元は官能に
染まり、涙でいっぱいの瞳にはどうしようもなく情欲がにじんでいた。
587 :
小さい男 5:2012/02/29(水) 16:13:24.46 ID:Ej5n+QV5
すくいあげるようにキスしてから、祐一が立ち上がって綾子の手をとった。
「ゃっ・・・ある、けな・・・。」
引っ張られて腰をあげたものの、脚に力が入らない綾子を支えながら、祐一が
ベッドに座らせる。並んで腰かけた祐一が、綾子の両脚を抱え上げてベッドに
抱き倒した。火照った身体にシーツの冷たさがここちよく、これから刻み
込まれる絶頂の予感に胸が苦しくなる。
・・・ここからが長いのはいつものことだ。けれど、今夜の祐一はいつにも増して
意地悪だった。綾子の弱いところばかりを執拗に責めて、肝心の部分には触れもしない。
横抱きにして肩をぎゅっと寄せられ、長い指でふたつの尖りを同時に責めながら、
口中を犯される・・・快感が絶え間なく綾子の全身を駆けめぐり、ふさがれた唇からは
せつないあえぎが切れ切れに洩れつづけた。
(・・・ゆうちゃんだって・・・こんなに・・・。)
綾子の腰に押しつけられた男性は、充分に怒張している。いつもは握らせて
くれるそれにそっと手を触れると、やさしくその手をつかんで押し戻された。
(ひどい・・・ゆうちゃん・・・。)
ここに至って綾子はようやく、すこし様子がおかしいと思い始めた。祐一に優しく
虐められることで綾子がより感じてしまう・・・というのは、ふたりにとって
お約束のプレイのようなものなのだけれど・・・。
綾子のあえぎが、泣き声に変わりそうになるギリギリのタイミングで、祐一が
手と唇を離した。向かい合った綾子の目を見て、無言でそっと頭を押し下げる。
綾子はもうろうとした頭で、言われるまま痺れる身体を持ち上げて下へさがった。
祐一の脚の間にひざまずき、中心にそびえる塔に顔を寄せる。
「・・・あっち向いて、して・・・?」
充血しうるんでいる秘唇を、祐一に見られるのは耐え難いほど羞ずかしいけれど、
綾子は何でもいいから今の状況から先に進みたかった。
祐一に臀を向け、脚を大きく拡げてまたがると、疼きすぎてズキズキ痛むほどの
秘唇が祐一の眼前にさらけ出された。その一点に意識が集中し、カッと全身が燃える。
火照る頬を雄芯にすりつけ、浮かび上がる血管に口づけた。手を添え、頭を傾けて
横咥えに口に含むと、固い芯と表皮をずらすように唇でしごく。
588 :
小さい男 6:2012/02/29(水) 16:14:16.10 ID:Ej5n+QV5
「・・・ふぅ・・・あゃ・・・。」
祐一の声が少しかすれている。先端に少し露を含むほど昂ぶっているのに、祐一は
ただ綾子の臀から大腿を撫でさするだけで、シックスナインすらするつもりは
ないらしい。綾子は身体の内に燃えさかる情欲の炎から意識をそらし、雄根に奉仕
することだけに没頭しようとした。
「あや・・・すごいよ。したたり落ちそう・・・。」
突然、燃えるような花芯に、冷たく硬い無機質なものが当たり、綾子は祐一のものを
深く呑みこんだまま固まった。これを・・・挿入れるつもりなの?まさか・・・けれど、
冷たい塊はぐるりと輪を描くように周縁をなぞり、哀れな花唇がこぼしつづける
涙をすくいとっただけだった。
「・・・・・・?!」
ホッとしたのもつかの間、いちども侵入をゆるしたことのないもうひとつの孔に、
その無粋な人工物がつぷり、とすべり込んだ。
「・・・ゃっ・・・な・・・に・・・?」
綾子は思わず口を離し、身を固くして、その侵入物がもたらしたなんともいえない
異物感に耐えた。
「ん・・・ちょっと思いついてさ。ここ、こんなのも売ってるんだね。」
綾子が正視できなかった、アダルトグッズの自動販売機・・・あそこでわざわざ
こんなものを・・・?綾子は羞ずかしくて振り返ることも出来ず、固まったままだ。
「・・・あや、口がお留守になってるよ?」
カチリ、と音がした。「ブゥゥゥンン・・・。」鈍いモーター音と共に、綾子の体内の
異物が、邪悪に身を震わせはじめる。
「いやっ・・・やめてっ・・・!!」
綾子は祐一の身体から横に這い下り、自分で異物をとろうと手を伸ばした。
「ダメダメ・・・動いてる時に引っ張ったりしたら、切れちゃうかもよ?」
せめて振動だけでも止めようと必死で臀の周囲を見ても、それらしいものはない。
祐一の手に握られたリモコンに気づいて奪い取ろうとする綾子の両手をとらえ、
祐一は子供をあやすように抱きかかえて耳に囁いた。
589 :
小さい男 7:2012/02/29(水) 16:15:11.75 ID:Ej5n+QV5
「力を抜いて、身を任せてみて・・・きっと快くなるから。」
淫らな蠕動に馴らされ始めた内奥の感覚が、綾子の四肢から力を奪っていく・・・。
「ちょっと我慢して・・・あやをもっと可愛くしてやるからさ・・・。」
祐一が手を離して起き上がり、力なくシーツに突っ伏した綾子の腰を抱えて大腿を
開いた。拡げさせられた脚の中心に、あれほど渇望した刀身がつきつけられる。
挿入れられる・・・そう思ったとたん、綾子は力を振り絞って祐一の手から逃れた。
「いやっ・・・!!」
祐一を怖いと思ったのは初めてだった。彼のもとめを拒んだことも・・・。
我慢してこのまま受け入れてしまえば、きっと自分はいつものように乱れ、
啼かされ、何度も何度も達するだろう。あるいは新しい快楽の地平を見られる
のかもしれない・・・。
今までも、愛し合う流れの中でみちびかれ、時にはやさしくなだめられて、
綾子は戸惑いながらも新しいことを覚え、さらに深い悦びと結びつきを得てきた。
けれど今夜はなぜか何かが違う気がして、この羞ずかしい仕打ちをすんなり
受け入れることができなかった。もしもこのまま許してしまったら、綾子自身も
ふたりの関係も、取り返しのつかないことになるような気がした。
「本当に・・・いやなの。とって・・・ください・・・お願い。」
自尊心を奪ってしまいそうな未知の感覚を必死でこらえながら、綾子は祐一の方に
向き直り、震える声ではっきりと言った。大きな瞳から、ぽろぽろと涙が
こぼれ落ちた。
祐一はハッとしてすぐにスイッチを切った。綾子が大切な存在であることを
やっと思い出したかのように、優しく身体を押さえながら異物をそっと引き抜いた。
「私、帰る・・・ね。」
身体に残る不快感を振り払うように立ち上がり、綾子は小走りにバスルームに
駆け込んだ。呆然としていた祐一がようやく我に返った時、綾子は早くもブラウスと
スカートを身につけてバスルームを出て来た。
「待って、綾子・・・送ってくよ。」
「いい・・・大丈夫だから!」
綾子はソファのそばにあったバッグとコートをつかむと、部屋を飛び出した。
590 :
小さい男 8:2012/02/29(水) 16:21:32.54 ID:Ej5n+QV5
「おねえさん、どうしたの?・・・ひとり?」
ホテルを出て歩き出した綾子に、一台の車が近づいてきた。無視して足を速める
綾子に、ゆっくりとした速度で着いてくる。
「ねえねえ。そんな寒いカッコでどしたの?・・・彼氏とケンカしてホテルから
飛び出してきたとか?」
都会の真ん中だというのに、ぬぐったように人がいない。人目を避けるカップルに
優しいつくりの建物の並びは閉鎖的で、もともと道行く人も少ない通りだ。
表通りの灯はまだ遠い。急に方向を変えて別の道をとるべきか、でも車を降りて
追ってこられたら・・・綾子は全身をハリネズミのように緊張させながらひたすら
歩いた。
「おい!・・・さっきから話しかけてんのに返事くらいしろよ!お高く止まってても、
どうせ男とヤろうとしてたんだろ?」
男が車を止めて降りて来た。綾子は足がすくんだ。走り出そうとして、前に立ち
ふさがられ、今にも身体に触れられそうになった時、背後に力強い足音を聞いた。
「彼女に何か用か!」
祐一が綾子をかばうように男との間に割って入った。こうして見ると、男は意外と
背が低く、綾子よりも小さかった。
「ちぇっ・・・なんだよ。そんなデカい女、用はねえよ。」
男は捨てゼリフを吐くと、車に乗って走り去った。
「大丈夫?・・・綾子。ひとりで飛び出したりするから・・・。」
怖かった・・・祐一の胸に飛び込んでワッと泣き出したい綾子を、もうひとりの綾子が
押しとどめた。
「ごめんなさい・・・でも、もう大丈夫だから。」
やっとのことでそれだけ言うと、クルッと踵を返してスタスタと歩き出した。
祐一が慌てて追いかける。
「待てよ!・・・悪かった、謝るよ。だから、ひとりで帰るのはやめて?」
大慌てで服を身につけて来たらしい祐一は、上半身は半そでのTシャツだけ、
ベルトはちゃんと通っていず、とりあえず引っつかんできた服を両手にいっぱい
抱えていた。
591 :
小さい男 9:2012/02/29(水) 16:22:44.35 ID:Ej5n+QV5
綾子は何も言わず最後のブロックを歩ききり、表通りに出た。祐一が先んじて
タクシーを拾った。ドアが開き、綾子は素直にそれに乗り込んだが、祐一が続いて
乗り込もうとするのを目顔で止めた。
「さっきは、助けてくれてありがと。・・・でも、今はひとりになりたいの。」
綾子の口調と表情はむしろ悲しそうで、怒っている風ではないのが、かえって
祐一の心を凍りつかせた。思わず身を引いた祐一の前でドアが閉まり、綾子が
行く先を告げると、車は静かに走り出した。
「待って、綾子・・・忘れもの!」
祐一が抱えあぐねているたくさんの衣類の中に、綾子が浴室に忘れていった
カーディガンがあった。上質のニットの軽くなめらかな手ざわりが、綾子の
しなやかな裸身を思い出させる。今、手をすりぬけていった人の面影のような
それを握りしめ、祐一はいつまでもそこに立ちつくしていた。
タクシーの中で泣き崩れてしまいそうになるのを、綾子は必死で堪えた。
家に着くと、ルームメイトがまだ帰宅していないのを幸い、自室のベッドに
倒れこんで思い切り泣いた。
(ゆうちゃんのこと、怖いと思うなんて・・・。)
何よりも、それが悲しかった。
(いつも意地悪してくるけど、怖いなんて思ったことなかったのに・・・。)
綾子を焦らしたり、羞ずかしい言葉でかき乱したり・・・ひと筋縄ではいかない
祐一の愛し方だけれど、それを越えてふたり登りつめる高みのことを思うと、
こんな時でさえ幸福感に胸がいっぱいになる。それにひきかえ、あの無機質な性具が
もたらす感覚は、祐一の指や舌、そして祐一自身が与える体温のある責めとはまるで
違い、ただ冷たく虚しいだけだった。
(もう私のこと、大事に思ってくれてないのかな・・・?)
祐一に拓かれ、馴らされ、知り尽くされてしまっている綾子の身体だった。
急に自分の素肌が無防備にさらされているような恥ずかしさと寂寥感に襲われ、
綾子は両腕で自分を抱きしめた。
592 :
小さい男 10:2012/02/29(水) 16:29:21.98 ID:Ej5n+QV5
『どうせ男とヤろうとしてたんだろ?』
さっきの男の下卑た台詞が耳にのこる。あんな時間にあんな場所を、彼氏と
ケンカして飛び出して来たことが丸わかりの薄着で歩いているから、つけこまれ
たのだ。実際、その直前まで綾子は素裸で祐一に苛まれ、あまつさえ恥ずかしい
場所に恥ずかしい玩具を埋め込まれていたのだから。
さっきの異物が与えた、たやすく快感に変わってしまいそうな違和感が、
身体の奥に怪しくよみがえり、みじめな気持ちになる。
(ゆうちゃんを信じてる・・・信じたい・・・のに・・・。)
恋人とは言っても元々は他人同士、ふたりきりの密室で素肌をさらし、男性に
身をゆだねるということは、考えてみればとても危険なことなのだ。だからこそ、
二人の間には深い信頼と思いやりが必要なはずだった。
『綾子。本当にごめん。許して欲しい。』
『電話に出て下さい。そして謝らせて。お願いします。』
『今から謝りに行ったら・・・迷惑?』
さっきから鳴り続けている祐一からの電話に出られないでいたら、今度は次々と
メールが届き始めた。矢継ぎ早な謝罪のメールには、祐一の誠意と必死さが表れていた。
さっき変な男にからまれた時、助けに来てくれた祐一のことを思い出すと、
胸が高鳴ってしまう。綾子は今怒っているはずなのに、恋しくて気が狂いそうだった。
『今夜はもう寝ます。家には来ないで。』
恋しくてたまらない気持ちと不信感とに引き裂かれる思いの中で、とにかく頭を
冷やそうと、綾子はいささか冷淡ともとれる返信をした。
電源を切ろうとした瞬間、再び着信音が鳴った。手の中で明滅する祐一の名が、
綾子の心臓を跳びあがらせる。
『わかった。行かないからゆっくりやすんで。でも木曜のこと忘れないで。』
木曜のこと・・・それは、祐一の家の近所の神社で行われる酉の市のことだった。
そのお祭りには、毎年祐一の店が手焼きせんべいの出店を出す。祐一の父が病に倒れた
去年の大晦日、綾子は祐一に「今年の酉の市には店を手伝ってほしい。」と頼まれたのだ。
(酉の市・・・どうしよう・・・。)
よりによってこんな時に・・・。食事をしながら、当日の仕事の内容や服装についてなど、
ふたりで楽しく打ち合わせしたのがもう何年も昔のような気がした。
『小さい男』前編 おわり
>>583 投下、お待ちしていました!
前中後編の大作なんて嬉しいです!
ゆうちゃんの嫉妬が思いがけない方向に…。
帰った部屋で泣く綾ちゃんが可哀想で( ; ; )あぁっどうなってしまうの?
続きも楽しみにしています。
GJGJ!
ドSのゆうちゃん好きだけど、度が過ぎちゃったよー!
ここで前編終了とか
>>582さんもイケズw
続き、お待ちしています。
次スレも立ってますしねw
>>582 描写とか丁寧ですごく読み応えがありました
が、こんな状態の二人にしたまま数ヶ月放置だけはご勘弁を〜(泣)
早く仲直りさせてあげてください
中編・後編楽しみにしています
>>582 新作ありがとうございました!
ドS全開すんごくエロくて なのに真っ最中にキモチがすれ違ってしまうなんて…
早く仲直りする二人を読みたいです!
正座で続きをお待ちしてます!
>>582 いいですねえ、祐ちゃんと綾子
ありがとうございました
中・後編が待ち遠しいです
『小さい男』中篇です。
内容でなく容量でだいたい三つに分けているだけなので、ストーリー豚切り。
そのうえ、スレをまたいで読みにくくなりますが、あんまり間を空けるのも
なんなので・・・。
599 :
小さい男 11:2012/03/02(金) 21:59:43.78 ID:FcsHhtSe
月曜日。土日を泣き暮らした綾子は、泣きすぎて重く感じる身体を引きずって
出社した。
「綾ちゃん・・・なんか元気なくない?」
会議室に向うため廊下を歩いていると、佐古が話しかけてきた。この人には特に
泣き腫らした顔を見られたくない。あの後何かがあったと思われるのが嫌だった。
「い・・・いや、そんなことないですよ・・・。あ、私ちょっと忘れ物・・・。」
忘れ物をとりに行くふりをして佐古を振り切ろうと急に向きを変えたとたん、ぐき、と
足をひねってしまった。
「・・・い、痛・・・。」
「大丈夫?」
「だ、大丈夫ですよ〜。これくらい。」
痛みをこらえ、なんでもないふりで綾子は自分のデスクに戻ったが、歩こうとすると
足首ににぶい痛みが走る。会社の入っているビル内のクリニックで診てもらうと、
軽い捻挫と言われ、松葉杖を貸してくれた。
「松葉杖なんて、大げさだなあ・・・。」
「捻挫はこじらせると面倒だよ。2、3日はなるべく歩かない方がいい。」
綾子は遠慮したが、周囲のつよい勧めで、佐古に会社の車で送ってもらうことになった。
「待って。杖出してあげるから。」
綾子のマンションの前に着くと、佐古が車の後ろをまわってドアを開けてくれた。
「あ、ありがとう・・・。」
元はと言えば佐古に顔を見られたくないがためにこんなことになったのに、手を貸して
くれようとしている佐古と超近距離で目が合った。慌てて立ち上がろうとして、
痛いほうの足をついてしまい、バランスをくずして佐古に身体を支えられた。
意識しすぎて失敗が続き、かえって佐古とからむ機会を増やしてしまっている・・・綾子は
気まずい思いで手を貸してもらって身体を起こした。
「も・・・もう大丈夫だから、手、はなして・・・。」
だが、佐古は手を離さない。真剣な顔をした佐古は『残念なイケメン』から残念の
二字がはずれて、綾子の胸は妖しく高鳴り始めた。
600 :
小さい男 12:2012/03/02(金) 22:00:51.13 ID:FcsHhtSe
「・・・大丈夫じゃないよ。今朝からずっと様子が変だし、ほっておけない。」
心臓がドキドキしてくるのをさとられたくなくて、綾子が振り切ろうとした手を、
佐古はさらに強い力でつかんだ。
「・・・あいつのせいなのか?俺・・・綾ちゃんにそんな顔させとく奴に、君をまかせて
おきたくないよ。」
「ちっ、ちが・・・。」
綾子が痛みに顔をしかめると、佐古はハッとして手を離した。
「ごめん・・・こんなことしたら、俺も偉そうなこと言えないな。でも、俺ずっと
綾ちゃんのこと・・・。」
綾子は思わず後ろの車の座席に座りこんだ。佐古が心配そうにかがみこむ。
「ごめん・・・弱ってるところにつけこむつもりじゃないんだ。でも・・・俺ならもっと、
綾ちゃんを大切にするよ。」
佐古はくるりと背中を向けると、背に沿わせた手をおどけた調子で振って手招きした。
「どうぞ。お姫様。」」
「やっ、やだ・・・いいですよぉ。」
佐古はしゃがんだままもう一度振り向くと、下から綾子を見上げた。
「・・・下からのキスっていうのも、萌えると思うんだ・・・試してみない?」
(バ・・・バブルの忘れもの・・・。)
真剣に迫っておいて、このセリフ・・・綾子は脱力してしまった。けれど、軽い言葉とは
裏腹に真剣な佐古の目が、視界の中で急速に近づいてきた・・・。
「バタン!・・・ブゥーッッ・・・。」
どこかでドアが閉まり、車が走り去る音がした。綾子ははじかれたように立ち上がった。
車の後ろ姿を追いかけようとして転びそうになり、がっくりと膝をついた。
見慣れた黒のSUV・・・どうして一番見られたくないシーンを見られてしまったのか。
「大丈夫?・・・今の車って、もしかして・・・。」
助け起こすと、綾子の瞳からは涙が流れていた。佐古は松葉杖を取って来てやり、
黙って部屋まで送った。
「ごめん・・・俺、悪いことしちゃったな。」
「・・・いえ・・・佐古さんのせいじゃないんです・・・送ってくださって、ありがとう。」
佐古は何か言いたそうなのをぐっとこらえた表情で、
「・・・足、大事にしろよ。」
とだけ言って帰って行った。
「おやすみなさい。」
綾子は涙をぬぐうとそっと玄関を閉めた。ルームメイトのサチが松葉杖姿を見て
心配していろいろ聞いてくるのに笑顔でこたえ、自分の部屋に入るとくず折れるように
ベッドに顔をうずめた。
601 :
小さい男 13:2012/03/02(金) 22:01:49.52 ID:FcsHhtSe
水曜日。綾子はずっと前から酉の市のために木曜日は有給休暇をとってあった。
(やっぱり、明日は行こう・・・約束したんだもん。そして・・・。)
祐一と仲直りしたい。佐古とのことも、誤解を解かなければ・・・。たった五日、
それも綾子から連絡を絶ったというのに、祐一と意思の疎通ができないこの日々、
綾子は心にぽっかり穴が開いたようなさびしさに耐え切れなくなっていた。
「平泉くん。足の痛いとこ悪いけど、明日出てもらえないかな?」
退社時刻も近づいた頃、部長のデスクに呼ばれ、同僚のピンチヒッターを頼まれた。
「山脇くんね、家族にご不幸があって急に田舎に帰らなきゃならなくなったんだ。
彼女が担当してる資料、僕の明後日の商談にどうしても必要でね。君が代わりに
作ってもらえないか?」
山脇は綾子の二年先輩で、日頃世話になっているし、元々急な代打や休日出勤など
日常茶飯事の職場だった。綾子は何も言わずにその仕事を引き受けた。
その夜。少しでも早く仕上げて、明日たとえ遅れてもいいから祐一の元に駆けつけ
ようと、綾子は徹夜を覚悟でPCに向かっていた。
「もう11時だよ・・・いったん帰って、明日ゆっくりやったら?俺も手伝うからさ。」
誰もいないオフィス。コーヒーを片手に佐古が声をかけてきた。
「部長は明日出張だから、明後日の朝、説明すればいいんですよね?私、明日
どうしても行かなきゃいけない約束があって・・・。今夜じゅうに仕上げちゃい
たいんです。」
「徹夜してでも行きたい約束って・・・もしかして、あの彼?」
「え・・・は、はい。」
「前にも言ったけど・・・俺、綾ちゃんが無理してる感じなのが嫌なんだ。急な仕事で
行けないって説明してもわかってくれないような奴なのか?」
「ち、ちがうんです。私、ゆうちゃんと・・・あ、彼・・・とケンカしちゃって・・・。
でも、 明日は彼がお祭りに出すおせんべいの出店を手伝うって、ずっと前からの
約束なんです。」
去年の大晦日、父親が急病に倒れ、心細そうだった祐一を思うと、愛しさがつのる。
「お父さんが年末に倒れちゃって、彼独りでお店出すの初めてなんです。だから
私、役に立たないかも知れないけど・・・そばにいてあげたいんです。」
602 :
小さい男 14:2012/03/02(金) 22:02:44.77 ID:FcsHhtSe
「ふうん・・・。」
佐古は苦い顔をして聞いていたが、ふっと笑って自分のパソコンを開いた。
「じゃ、俺のPCにデータ送って。二人でやれば明日の朝までには間に合うだろ。」
「え・・・で、でも、そんなの悪いです。」
「言ったろ?綾ちゃんが悲しい顔してるのは嫌なんだって。ほら、さっさと送れよ。」
「佐古さん・・・。」
「この間、彼氏に誤解させるようなことしちゃったから、お詫びだよ。」
朝。同僚達が出社する時間にはまだ早いとは言え、街はもう目覚め始める時間。
佐古のサポートのおかげで資料は無事完成した。
「あ〜あ。やっぱり完徹になっちまったな。」
「佐古さん・・・ありがとうございました。」
「”ゆうちゃん”によろしくな。・・・まあ、俺も”ゆうちゃん”なんだけどさ。
・・・忘れてるみたいだけど。」
「・・・あ。」
また微妙なことを言い出す佐古だったが、綾子はその軽さになんとなく救われる
思いで会社を出た。
約束の時間に間に合わせるには、もう家に帰っている暇はない。綾子はそのまま
祐一の家に向かった。最寄の駅を出ると、神社のある町は、祭りの準備に心なしか
浮き立って見える。綾子は逸る心を抑え、傷めた足を気づかいながらも足早に歩いた。
「・・・ゆうちゃん。」
「・・・綾子?!」
店の前で、器材や商品をワンボックスカーに積み込んでいた祐一が、驚いて顔を上げた。
「今日、手伝う約束・・・でしょ?」
「あ・・・うん!ありがとう。・・・でも、そのカッコ・・・?」
会社から直行してきた綾子は、かっちりしたジャケットにブラウスというOLスタイル
のままだった。
603 :
小さい男 15:2012/03/02(金) 22:04:04.35 ID:FcsHhtSe
「あ、あの・・・会社から来たから・・・。」
「下はパンツだからいいとして・・・じゃ、上脱いでこれ着て。ずっと外だと冷えるから。」
祐一は一瞬怪訝な顔をしたが、綾子が会社から来たわけについて深く考える暇も無いらしく、
自分が来ていたパーカを脱いで、エプロンと一緒に綾子に渡した。
「え・・・でも、ゆうちゃんは?」
「俺はずっと火の前だからじき暑くなるし、もう時間ないからとりあえずこれでいいや。」
白い仕事着の上に、車内に置いてあった○○農協とネームの入ったカストロコートを
羽織る。
「これ、いいだろ?ウチがせんべい用の米買う契約してる農家のじいちゃんが、
寒いだろってくれたんだ。」
「なんか・・・妙に似合うね。」
綾子の言葉に、祐一がニヤッと笑った。祐一の笑顔を、ずいぶん久しぶりに見た気がした。
(もぉ・・・何着てもカッコいいんだから・・・。)
かなり微妙なスタイルでも素敵に見えるのは、働く男の魅力か、綾子の惚れた弱みか・・・。
時間がないおかげで、気まずい思いをしている暇もなく、二人は車で神社に向った。
境内の指定された場所にテントや机を組み立て、開店の用意をする。商品を並べながら
祐一が説明してくれた、せんべいの種類や値段、販売の段取りを綾子は一生懸命覚えた。
せんべいを焼く器械に火が入り、香ばしい匂いが漂いはじめる。
「わあ、おいしそう。一枚ください。」
境内が活気に満ちてくる。一日かぎりの「せんべい ささき」の支店の開店だ。
客は切れ目なく訪れ、祐一は汗だくになってせんべいを焼いている。
(やっぱり、無理しても来てよかった・・・。)
客から受け取った代金を箱にしまいながら、ふと祐一の店で一緒に働く自分を思い浮かべ、
綾子は真剣な顔でせんべいを焼いている祐一をみつめた。
「ん?・・・なんだよ。ボーッとしてて、おつり間違えんなよ。」
「だ・・・大丈夫だもん!」
「あ、そうだ・・・。これ、今のうちに食っとけよ。」
渡されたレジ袋には、祐一が握ったらしいおにぎりと、水筒に入ったお茶。物陰で
流し込むように交代で昼食を済ませ、二人は午後もめいっぱい働いた。
604 :
小さい男 16:2012/03/02(金) 22:07:08.68 ID:FcsHhtSe
「いらっしゃい。」
「あの・・・ユウお兄ちゃんは?」
晩秋の日が落ち、店々に灯が入り始めた頃、超有名校の制服を着た女子高生が店の前に
立った。真っ黒な髪のバングスが印象的な、かなりの美少女だ。
「え・・・お、にい・・・?」
「おう!マユリかぁ。お前学校は?」
「もう終わったよ!・・・塾はサボったけど。」
「サボったぁ?・・・んなことじゃ、東大入れねーぞ!・・・あ、こいつさ、俺の幼なじみの
ケンスケの妹で・・・。」
「ユウお兄ちゃんの幼なじみの!長谷真百合です。」
「俺が子供の頃は、お前は赤ちゃんだったっつーの。・・・ケンスケって、綾子も会ったこと
あるだろ?ほら、フットサルの試合の時・・・。俺とは家が近所でサッカー仲間でさ。
真百合には小さい頃よく勉強教えてやったもんだけど、とっくの昔に追い越されたな。」
綾子がふと視線を感じて真百合を見ると、ジトッとした表情で綾子をみつめている。
「・・・お兄ちゃん、もしかしてこのひととつきあってるの?」
「え・・・?・・・い、いや・・・まあ・・・。」
「私との約束、忘れてないよね?」
「・・・は?・・・約束ってなんだよ。」
「私を!お嫁さんにするって!」
「それはお前が一方的に宣言しただけだろーが。しかも7才の時に。お前、来年受験
だってのに、こんなとこで油売ってちゃだめだろ?・・・さあもう帰れ!」
祐一は帰りしぶる少女にわれせんをいっぱい渡し、なんとかなだめて帰らせた。
「ふーーーん。ゆうちゃんって、ほんっと守備範囲広いよね・・・。」
「おま・・・あんな子供の言う事本気にしてんの?だいたいあいつは俺の中学はじまって
以来の秀才で、せんべい屋の女房なんてなったらもったいないって・・・あ。」
「ふーーーーーん。私ならもったいなくないんだ・・・。」
「だーかーらー。」
いつの間にか、以前のような気の置けない言い合いが復活していた。わだかまりが消え、
ふたりの間の親密な空気がよみがえってくる。
605 :
小さい男 17:
「あ・・・綾子・・・今日、さ・・・。」
祐一が綾子の目をじっと見つめ、商品の陰に隠れてギュッと手を握った。もしかして、
この間のことを謝ろうとしているのだろうか・・・?心よりも先に身体が強烈にあの日の
記憶を呼び覚まし、綾子は身をすくませた。けれど、祐一の温かい手と強いまなざしを
離すことができない。
「ちょっと・・・ザラメせんべい下さい。」
「あ、は、はいっ・・・!」
握っていた手がパッと離れ、綾子は慌てて客に応対した。
「それは生姜せんべい・・・ザラメはこっちでしょ。まったく・・・ゆうちゃん、
お嫁さんになる人には、もっと教育しとかなきゃ。」
「あ、元木さん、いつもありがとうございます。・・・いや〜、コイツ初めてなもんで、
長い眼でみてやってくださいよ。」
(ちょ・・・ゆうちゃん、もうヨメあつかい?)
祐一が身内あつかいしてくれたことはちょっと嬉しかったけれど、それにしても
今日はこの手の客が少なくなかった。祭りだけの常連にしろ、店の方の常連にしろ、
こうした年配の女性客たちは、まるで綾子が息子や孫の嫁のようにチェックを入れてくる。
「なんか・・・アウェー感ハンパないんですけど・・・。」
うるさそうな客が去った後、綾子はちょっと憂鬱そうにため息をついた。
「まあまあ・・・客商売なんてこんなもんだよ。じいさんの代から来てくれてる
人たちなんだから、大事にしなくっちゃ、ね。」
さっき祐一が言いかけたことはなんだったのか・・・それきり二人はまた少し増えてきた
客の応対に追われ、祭りが果てるまで懸命に働いた。