みつどもえでエロパロ 6卵生

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1名無しさん@自治スレで設定変更議論中
みつどもえのエロSSを書いたりエロ妄想をしたりするスレ
エロなしもおk

前スレ
みつどもえでエロパロ 4卵生
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1292296565/

まとめ
ttp://www43.atwiki.jp/mitudomoe_eroparo/
2名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 18:48:36.92 ID:TucRTum4
慌てててミスった
前スレ
みつどもえでエロパロ 5卵生
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1299594131/
3ガンプラ:2011/06/26(日) 19:04:08.95 ID:vV4dB9ov
>>1
スレ立てありがとうございます。

使い切ってびっくりした…。
4丸井ひとはの憂鬱35:2011/06/26(日) 19:05:41.73 ID:vV4dB9ov
「だっ…だけど突然扱いが変わった説明になってないよ!」
「中2の夏休み明けに、突然雰囲気が柔らかくなったんだよね。
よく覚えてる。私もびっくりしたから。
ふと見たら突然アゲハ蝶…しかもオオルリアゲハが羽化してたんだもの」
「……昔の私は芋虫だったの……」
「はっきり言うとね?」
「むぐぐ……」
体育のときの仕返しか。ひどい言い様だ。

………だけど。
だけど話の整合性はとれてる。信じられないけど、本当に私って……?

「でも……いやけど…それじゃ、まさか………」モニョモニョ
「……ずいぶん話が逸れてしまったなぁ…。
結局さ、好きな人のために努力してる姿は素晴らしいんだけど、
ちょっといらぬ苦労と無理が多くなっちゃってますよ、ってことを言いたかったんだよ。このところ疲れてるみたいだし。
あんまり言いたかないが、キミのそんな姿を見てると、『彼』はやめた「無いよ」

「なら卒業するまで距離をと「それも無い」

「…なるほど、『無い』、ですか。『嫌』とかじゃなく。
とはいえもし……いや…。
とにかく『彼』以外の選択肢は無いわけだ。三女には」
「うん」
「ならせめて、日曜日に会うのは避けるべきだね。木曜日はいいとしても。
金曜日に機嫌が良いのはかまわないさ、週末なんだから。
だけど月曜にそれじゃあ余計な疑いを生んじゃうよ。
こっそり会ってる『彼』とイイコトがあったのかも知れない、って」
「……私、そんなに顔に出てる?」
昨日、柳さんにもそんな事を言われたような……。

「顔っていうかオーラに………いや、バカを言うなって私。マンガじゃない……。
とっ…とにかく上手く言えないんだけど、雰囲気にモロに出てるよ。こないだまでは特にだった。
気づいてなかった?」
「そうだったのか……」
ううむ…気をつけねば……。
5丸井ひとはの憂鬱36:2011/06/26(日) 19:06:55.68 ID:vV4dB9ov
「土曜に会えば?」
「それだと会いに行く理由が作れないんだよね……」
「めんどくさいなぁ…。
無礼を承知で言うと、三女がそこまで気を使わなきゃなんない相手に見えないんだけど。
さっきの話と矛盾するけどさ、実際見ると信憑性がまるで無いってくらいだよ。
童顔だったからオジサンには見えなかったけど…あれ程の高評価を受ける人間にも見えなかったよなぁ……。
正直いま、三女におっっそろしい目で睨まれるまで、私も『無い』と思ってた。
もちろん優しさは大きな魅力だと思うし、君に群がる男子の姿はガキ過ぎる。
にしても、ちょっとなぁ。
……想い出は美化されやすいませんごめんなさい許してくださいそんなつもりじゃなかったんです。
……………。
あ…あれじゃ女日照りだろうし、上目遣いのひとつでもして誘惑してみたら?」
「そんなの何度もやったよ」
「何度もトライしたのかよ、この女……。
…しかしだとしたら思った以上に強敵だね。
うちの男子相手なら、真冬の川に飛び込ませることもできるのに」
「そんなのやった覚えないし、絶対思いもしないよ……」
なんでみんな男子を川に飛び込ませたいの?流行ってるの?

「それはそれとして、『髪長姫』と密室で2人きりになるだけじゃなく、誘惑までされても手を出さないなんて、
やっぱりおかしいと言っても過言じゃないな。
…不能かホモじゃないの?」
「………あの人、巨乳フェチなんだ…」
「次はアッサムティーはどうかな?」
「あからさまに話題を変えないで」
「………………………………………………………………………………」
「顔を背けて沈黙しないで」
「通販にバキュームDXというのがあってね」
「そのネタ昔やったから」
「……」

さぁ、どう返す!?

「……モノの本によると」
「?」
「胸で挟むという技は、男性からすると視覚効果メインで刺激的にはさほど気持ちよく無いそうだ。
なのでもっと実用的な…キミが『狭い』ことなどをアピールしてみてはどうだろう?
食い千切っちゃうくらいキツイです、とか」
「な…………ッ」
「…………どうだろう?」
6丸井ひとはの憂鬱37:2011/06/26(日) 19:07:23.45 ID:vV4dB9ov
「……負けた…!」
ちょっとだけ『なるほど』と思ってしまった…。

「クックックッ。
肉を切らせて骨を断つというやつさ。
……こっちも真顔で言うのはかなりキツかった…」

…まぁ私も、こういう会話がしたいときだって有るよ。

「でもそうだったのか。キミが自分の魅力に自信を持てないのは…えぇ〜?
ちょっと待って、アレに振り向いてもらえないから『髪長姫』が……?
それって力学的におかしい……」ブツブツ
「どうしたの急に?」深刻そうな顔して。
「あぁ、いや…ちょっと新たに世界の不条理を突きつけられたんでね……」
「??」

キーンコーンカーンコーン

「あっと…予鈴だ。そろそろ行くね。
ごちそうさま…それにありがとう。いろいろためになりました」
「いえいえ。麗しの姫に…友達にそう言って貰えて嬉しいよ。
あっ、覚えてると思うけど、今週の金曜は委員会があるから頼むね。
キミが出席するしないで、男どもの出席率が大きく変わりやがるから、できれば早めに図書室に来ておいて。
まったく…雄って単純だよなあ」
「うん。じゃあまた」

スイ...

「ねえ、三女?」
「うん?」
「『とはいえもし『彼』に、別に意中の女性がいたらどうするの?お見合いだってある歳だろう。いつまでも今のままじゃない』」

ああ、そんなことか。

わらっちゃうよ。



「もちろん、そんなの、ずぅっとまえからきめてるよぉ……」



「聞かなかった事にしよう。…させて。
巻き込まれて共犯者とかにされたくない」
「ギャグだよ。笑ってよ」
「………アハハハハハハハハハ。もしくは(笑)」
「ほんとにギャグだって」
「(笑)」


………ほんとだよ?

7中書き4:2011/06/26(日) 19:12:02.35 ID:vV4dB9ov
今月はここまでです。恐ろしい事にこれで『火曜日』のプロットの半分……。
私設定の解説が多すぎてアレなんですが許してください。
さすがにひとは周りのオリキャラは、これで最後です。

なお、矢部ひとですが、意図的に矢部の出番は少なくなるようにしています。
高校生になったキャラたちに、過度の干渉は不要な人なので。
そしてシリーズ全般通してみっちゃんの出番もなるべく少なくなるよう心がけてます。
みっちゃんの設定も細かくは決めてますが、露出は最低限。
8名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 19:14:48.73 ID:TucRTum4

次が待ち遠しいわ
9ガンプラ:2011/06/26(日) 22:26:37.47 ID:vV4dB9ov
そういえば前スレが埋まった記念なんですが…『幼なじみの無用な心配』、
ふたばSSのページに入れていただけないでしょうか…?
ふたしんの絡みが少ないんですが、一応『晴れたり〜』の対になるよう意識した、
ふたしんSSだったので……。すみません。
10名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/27(月) 01:00:37.43 ID:Kqj3B5r7
ガンプラさん乙でござる
11名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/27(月) 22:55:10.16 ID:ZQGeBA97
乙です
そうですか、ちょっとみつばと杉崎のネタをついでに楽しみにしてたんですが

それはそうとオリキャラはやっぱり難しいですね原作のキャラほどイメージ出来ない僕が悪いのかも知れませんが
12名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 19:18:26.24 ID:rdKMi/dw
>>9
ガンプラさんいつもお疲れ様です。


>『幼なじみの無用な心配』
すいません
しんちゃん視点だったためどうしようか迷ってましたが、本日ふたばSSに追加しました。

13名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 19:26:10.03 ID:rdKMi/dw
>ガンプラさん
前スレが埋まってしまったため、『丸井ひとはの憂鬱』の34と35の空白の間隔が間違ってるかもしれません。
大変申し訳ないとは思いますが、確認をしていただいてもよろしいでしょうか?
14ガンプラ:2011/06/28(火) 21:31:37.06 ID:AjGCKyxT
>>12
いつもいつもマナー悪くてすみません。
こんなに勝手やるなら自分のHPやブログ持てよ、という説もあると思うのですが、
ちょっと過去にいろいろありまして……。こりごり。私は『維持』に向いていない性格です。

>>11
『杉みつ』は杉視点で少しやる予定はあります。プロット打ち中。
みつばを出さない意図としては、彼女の生活を出すと絶対誰かの『みつば像』に引っかかりそうだからです。

オリキャラはお話を作る意図ありきの存在なので、気になる方は第一パートと
最終パート(いつになるやら)だけ読んでくだされば、の連中です。
とりまき3人のデザインテーマは『4コマには出られない人たち』です。
なるべく『華』のない存在を目指してるので、想像しにくいならむしろ成功です!(負け惜しみではなく)
15名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 22:31:13.05 ID:Un8gepBC
女の人?そんな感じがするわ
16SSS隊の終焉1:2011/06/28(火) 23:31:12.99 ID:PGWK4HX/
鴨橋小6年3組もなんだかんだで卒業式を迎えた

加藤「あっ、詩織ちゃん」
伊藤「真由美ちゃん」
加藤&伊藤「………………」
伊藤「卒業式、終わっちゃったね」
加藤「あ、うん……あのさ…私達、結局…」

緒方「真由美!詩織!こんなところにいたのね!」
加藤&伊藤「おがちん!」
緒方「壇上に上がる佐藤君の勇姿、見た!?すっごくカッコ良かった!」
伊藤「う、うん…でも、おがちんはそこで鼻血噴いて気絶しちゃって、卒業証書を受け取る佐藤君は見てないよね…」
加藤「良いなぁ、私も見たかったな…私はおがちんを保健室に運ぶのに忙しかったから…。
   ……あ!違うの!おがちんのことを責めてるわけじゃないよ!?」
緒方「え!保健室に運んでくれたのは真由美だったの!?てっきり佐藤君がお姫様抱っこしてくれたんだと…」
伊藤「それは、おがちんの幻覚じゃないかな…」
緒方「それじゃあ私のせいで真由美は佐藤君の勇姿を見れなかったのね…ごめんね、真由美!
   私ったら、SSS隊の隊長のくせに…真由美に迷惑を…」
加藤「そ、そんな!謝らないで、おがちん!私は別に良いの…気にしてないよ?
   それに…保健室に運んでる間、おがちんが嬉しそうで、私もとっても嬉しかったんだ」
緒方「…え?」
17SSS隊の終焉2:2011/06/28(火) 23:33:56.06 ID:PGWK4HX/
加藤「私ね、卒業が近くなってから、ずっと考えていたの…佐藤君は確かに憧れの存在だけど、私にとって一番大切なのは、SSS隊じゃないのかなって」
緒方&伊藤「………………」
加藤「もちろん佐藤君のことは大好きだけど、結局見ているだけだった…。
   でもね、SSS隊があって、二人がいてくれたから、私の学校生活は充実したものになったんだと思う。
   おがちん、詩織ちゃん、本当にありがとう…私、中学生になっても、SSS隊の思い出…絶対に忘れないよ!」

緒方「……なによ、真由美。お別れの挨拶なんかしちゃって」
加藤「…え?」
緒方「つまり真由美は佐藤君のことが嫌いになったわけでは無いんでしょ?
   確かにSSS隊の活動は、卒業まで佐藤君を見ているだけだったわ…。
   でもそれは、私達の佐藤君への強い想いがあったからこそ出来たものじゃない。
   後悔なんて微塵もしていない。それは私もそうだし、詩織もそう」
加藤「おがちん…」
緒方「地球に佐藤君がいる限り、SSS隊は存在し続ける…。
   佐藤君への忠誠を抱き続ける限り、SSS隊は一心同体…。
   中学生になっても、私達SSS隊は、永久に不滅よ!」
加藤「おがちん!」
緒方「真由美!」

ガシィ!

伊藤「………………」
18SSS隊の終焉3:2011/06/29(水) 00:45:43.21 ID:lz6PwzIq
緒方「…さぁ、いつまでも抱き合ってる暇は無いわ、真由美!
   今夜は卒業記念に佐藤君家の前でパーティーよ!」
加藤「わぁー楽しみ!それじゃあ中学に上がってからの心機一転も兼ねて豪華にしなきゃね!」

伊藤「……二人はさ、それで満足なの?」
緒方&加藤「……え?」
伊藤「想いだの、忠誠だの、カッコ付けた言葉で着飾って、結局見てるだけ?
   SSS隊の活動の4年間で、得たものはたったそれだけなの?」
加藤「し、詩織ちゃん、何言って…」
伊藤「事実を述べたまででしょ。考えてみなよ、私達が佐藤君に話しかけられたりしたことあった?
   それどころか、目を合わせてもらったことも無いでしょ。私もう飽きちゃったよ。」
緒方「"飽きた"だなんて…。詩織、最近SSS隊の活動に身が入っていないと思ったら、まさか…」
伊藤「勘違いしないで。黙っててくれない?卒業式での佐藤君の勇姿を見る前に倒れたくせに。
   真由美もおがちんを運んでたから知らないでしょうけど、佐藤君、ドン引きしてたんだよ」
19SSS隊の終焉4:2011/06/29(水) 00:54:11.57 ID:lz6PwzIq
緒方「……!」
加藤「し、詩織ちゃ…」

伊藤「ハッキリ言うけど、SSS隊は佐藤君にとって迷惑な存在でしかなかった。
   おがちん、真由美、あなた達…いえ、私達は佐藤君から 嫌 わ れ て い た の よ」
緒方「くっ……!」
加藤「(ビクッ!)……」
伊藤「二人はいつまでもSなんたら隊を続けたらいいわ。私は抜ける。これ以上佐藤君に嫌われたくないからね」

緒方「し、詩織!あんた、いい加減に…」
加藤「ちょ、おがち…」

ブスッ

緒方「ギャアァァーッ!」

バタリッ
20SSS隊の終焉5:2011/06/29(水) 00:56:51.31 ID:lz6PwzIq
加藤「!?おがちん!?おがちん!!そうしたの!?しっかりして!!」
緒方「か…体がっ…!!腐る…っ!!」

伊藤「安心して、真由美。今おがちんに注射したのは、佐藤君以外の男の血液だから。
   もちろんおがちんと同じ血液型よ、実害は無いわ」
加藤「そ…そんなもの…どこで…?」
伊藤「失われた信用を取り戻せるなら、どんな手段でも講じるわ。
   見てるだけなんて終わり。私はもう迷わない」
加藤「ど…どうして…?なぜ…こんな事を…」   
伊藤「実力行使よ、真由美。佐藤君を手に入れるためなら、私は何だってする…!
   ……じゃあね、真由美ちゃん。二度と話し掛けないでね。
   あなた達とはもう、友達でも何でも無いんだから」

ダッ!

加藤「ま、待って!詩織ちゃん!どこへ…!?…おがちん!起きて!大変よ!
   (実力行使って…詩織ちゃん、何する気?まさか…佐藤君が危ない!)」
21名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 03:33:07.01 ID:lz6PwzIq
続きは後日に書くでゲソ

ガンプラ氏乙、いつも楽しませてもらってます
22名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 23:04:40.46 ID:1X9Eq1IW
スレチかも知らんが、
今月の某低年齢系エロ雑誌の先生×生徒が矢部ひとに見えて仕方ない…
ビジュアル的にもかなり近いし狙ってんのかな?
23名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 22:18:50.46 ID:abjN8SRh
放課○は恋人って奴か?
確かに、わからんでもないが、偶然じゃないか?
そんなシチュエーション沢山あるし、そう見える俺たちがみつどもえに毒されてるんだろうよ
俺なんて眉毛太い奴見たら吉岡に見える時あるんだぜw
24名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/07/01(金) 14:51:47.74 ID:LV95yKx2
本編で話したかもしれんが

丸井家にはペット居るけど他の子達はペット飼ってないよね


松岡→式神とかいいそう
吉岡→小型犬とかを普通に……ただし♂♀セットで
宮下→ハムスターを飼い三女と仲良くなろうとして失敗
杉崎→みっちゃんとか言ってしまって引かれる
って所まで頭に浮かんだ
25名無しさん@ピンキー:2011/07/01(金) 18:03:02.63 ID:Q1ySjAqo
杉崎はキリンとか家の中に居るかもしれないぞ?
26名無しさん@ピンキー:2011/07/01(金) 21:58:04.78 ID:d2h5GL6z
暗黒面を突っ走る伊藤さんイイ!
続き楽しみにしてます。
27SSS隊の終焉6:2011/07/02(土) 01:20:49.57 ID:FR5KU1+T
その頃佐藤達も帰路についていた。

佐藤「はぁ…卒業式までロクなことなかったなぁ…」
千葉「ほほぉ?学年の女子ほぼ全員が校門前で涙でお見送りしていたのに、まだ不満があるとはさすがイケメン様だな」
佐藤「ちっ、違えよ!そのことじゃねえよ!卒業証書受け取るときだよ!
   あの変態集団が噴いた鼻血を、こっちはもろに背中に浴びたんだぞ!
   おまけに卒業証書まで汚れちまって、最悪だよ!」
田渕「おいこいつつまり校門前のお見送りは悪く無いと言ったぞ」
千葉「さすがイケメン」
佐藤「ばっ、おまっ、別にそれは…そういうわけじゃ…!あぁ〜もう!
   中学生になってもこのメンバーとほぼ一緒だと思うとウンザリだよ!」
ふたば「え…?しんちゃん…小生と中学一緒は…イヤ…?」
田渕「また女泣かしたな」
佐藤「!!待て待て、違うんだ、ふたば!それとこれは…イヤじゃない!イヤじゃないから!
   一緒の中学行けて嬉しいからな!だから泣くなよふたば!」
千葉「おいおいおい、どうして俺らと反応がこうも違うんだ?ああ?」
田渕「俺らも涙を見せたら"一緒の中学で嬉しい"って言ってくれるのか?」
千葉「進学の腐れ外道イケメン」
佐藤「お前らっ……!!」
28SSS隊の終焉7:2011/07/02(土) 01:23:39.14 ID:FR5KU1+T
タッ タッ タッ タッ タッ タッ

加藤「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…
   おがちん置いて来ちゃったけど…佐藤君を守るためだもの…仕方ないよねっ…
   ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…
   それにしても詩織ちゃん…一人だとこんなに速いなんて…見失っちゃったよ…
   ハァ…ゼェ…ハァ…ゼェ…
   ここは佐藤君家の方角だけど、大丈夫かな…………!?……佐藤君の臭い…!!」

佐藤「お前らっ……!!」

加藤「……あの美しい後ろ姿は、まさしく佐藤君!!
   あああどうしようぅ、警告したいけど…話し掛けるの恥ずかしいよっ…」

バッ! コソコソコソ……
29SSS隊の終焉8:2011/07/02(土) 01:26:11.60 ID:FR5KU1+T
千葉「……おい、さっきから後ろに変なのが付いて来てるぞ…」
佐藤「げっ!あれは変態集団の一人!
   卒業式にしては大人しいと思ったけど、まだこういうの続ける気かよ…」

加藤「どうしよう……早く、危険を知らせないと……
   …あ、あと、ついでに告白も……!?何言ってるの、真由美!
   今はそれどころじゃないし、おがちんを置いて抜け駆けなんて……!
   …で、でも、想いを伝えるなら今……ううん!ダメ!!
   早く警告を……あああもう!学ラン姿の佐藤君、かっこいいよぉ〜!!」

千葉「(ゾッ)……な、なぁ、何かブツブツ言ってるぞ…」
佐藤「や、やめろ、俺も怖いんだよ…放っておいて早く行こうぜ……」

ザッ!!

伊藤「佐藤君っ!!!!」

加藤&佐藤&他「(な……待ち伏せされてた……!?)」
30SSS隊の終焉9:2011/07/02(土) 02:00:09.95 ID:FR5KU1+T
佐藤「(へ、変態集団の、確か、伊藤……!!
   こいつは特に最近大人しいと思ってたけど、まさか……!)」
伊藤「……佐藤君、ずっと、待ってたんだよ……。 話 が あ る の」

カッ コッ カッ コッ カッ コッ

佐藤「(こっちに来るし、目付きがいつもと違う!!……こ、殺されるぅ〜っ!!)」
加藤「(あぁっ!佐藤君が危ないっ…!!)ま、待って、佐藤く……」

ピタッ……!!

ぺこり

伊藤「佐藤君、今までの学校生活でたくさん迷惑をかけて、本当にごめんなさい!!」

佐藤&加藤「…………えぇ!?」
31SSS隊の終焉10:2011/07/02(土) 02:02:59.69 ID:FR5KU1+T
伊藤「私…佐藤君のこと…昔からずうっと大好きで…その気持ちに正直でいたくて……
   それで、おがちんとか、真由美ちゃんとかに、そそのかされて、ずっと一緒に追いかけてて……
   でも、大きな過ちだった…佐藤君に迷惑ばかりかけてた……それなのに…それなのに…」
佐藤「えええぇぇええぇっ!!??」
加藤「(な!?ちょっ…何!?えぇえぇ!?)」
伊藤「ごめんね、ごめんね、佐藤君……もっと早く辞めるべきだったよね…?
   でも、おがちんや真由美ちゃんは、佐藤君を嫌いにならなきゃ辞めちゃダメって…
   ……ううん、言い訳だよね、悪いのは弱かった私だよね……」
佐藤「伊藤…お前…」
加藤「(詩織ちゃん…何言って……とにかく、私も何か言わなきゃ…)」

伊藤「佐藤君も気持ち悪かったよね?SSS隊なんてストーカー集団…」
加藤「!?」
伊藤「だよね…嫌だったよね?…迷惑だったよね!?…」
佐藤「え!?…ああ…あぁ、まぁ…そ、そうだな…うん…」
32SSS隊の終焉11:2011/07/02(土) 02:40:50.31 ID:FR5KU1+T
加藤「(詩織ちゃん…?私がいるのに気付いて…?)」
伊藤「今日の卒業式でも、おがちんが壇上の佐藤君に鼻血かけて…
   私ドン引きしたのに、真由美ちゃんはおがちんをかばって保健室に行くし…」
加藤「(止めて)」
伊藤「さっきの帰り道でも、おがちんが"中学になっても佐藤君追いかけよう"って宣言して…
   真由美ちゃんも、それに賛成しちゃうし…」
加藤「(お願い、止めて)」
伊藤「それからおがちん、今夜は佐藤君家の前でパーティーだって…
   そしたら真由美ちゃん、"わぁー楽しみ!"って言って…」
加藤「(止めて、止めて止めて止めて止めて 止 め て)」

伊藤「佐藤君どう思う?」
佐藤「それは……気持ち悪いな…」

加藤「(〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!)」
33SSS隊の終焉12:2011/07/02(土) 02:44:56.30 ID:FR5KU1+T
伊藤「それでも佐藤君優しいから、今まで面と向かって文句も言わずに…」
佐藤「い、いやっ!?それは優しいとかそういうアレじゃ…まぁ慣れっつーかな…」
伊藤「ごめんね、ごめんね佐藤君…私、けじめをつけてあの二人とは縁を切ったからっ…
   ……それだけじゃない、もう中学生になっても、佐藤君のこと追いかけたりしないっ…!」
佐藤「縁って……まぁ、そこまでしなくても…」
伊藤「ありがとう、佐藤君。やっぱり優しいのね……でも、それでいいの…
   …とにかく、今まで本当にごめんね、佐藤君……」
佐藤「あ、あぁ…まぁ良いよ。せっかく同じ中学へ行く相手に、わだかまりを残す気はねーよ…」

伊藤「千葉君も、田渕君も、"体が腐る"とか言って、ごめんね」
千葉&田渕「……!!俺達ですかい!?」
伊藤「あの二人のノリに付き合うためとは言え、酷いこと言ったよね…(うるうるっ)」
千葉&田渕「(うっ…女の涙…)ま、まぁ、べ、別に気にしてないっスよ!(デレデレ)」
34名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 02:50:19.08 ID:FR5KU1+T
続きはまた近日に
35無題:2011/07/02(土) 20:28:07.25 ID:LaQg1f8X
「うぅ、く、はぁ……だい、じょうぶか…っ!ふたばっ…!!」


く、く、く、と、小刻みに入ってくる。
お腹の中、ちょっとずつ。

「うん。2階から落ちたときくらいだから、余裕っス。しんちゃんこそ大丈夫?とっても苦しそう……」
「いや、お、れはっ……!気持ちよ………はぁっ!過ぎて…!!」

おお〜、なんだかしんちゃんのカタチがよく分かるっス。
こんなふうになってたんスね〜〜!

ジブンを動かして確かめてみる。
口のときはもっと硬い感じがしてたけど、こっちだとそんなでもない…かな?

…あんまり力を入れるとつぶしちゃうかも。

「うあぁ!?ちょっ、なんっ!握られ……!!?」
「ふむふむ…」

アタマのところの段差って結構あったんだ。
あとこのふにふにしてるのは……血管、かな?

「待って待って待って!ふたば動かさないで!!」
「へ?うん」

??何かいけなかったのかな?
まぁいいや。ちょうど全体を確かめるためにぎゅっとしたとこだったし。

「あっあああ、ダメ…っ!!出っ……!!」
「おお!?」

わ。ビリビリビリ〜って動…『動かさない』ようにもっとぎゅっとしとこう。
…何だか先っちょがぷく〜って膨らんで、ぷにぷにしたのが……。
おお〜〜、すごくあったかい…というかちょっと熱いっス。面白いな〜。

「〜〜〜〜〜っ!!?あぐぅ、絞っ!出すぎ、怖っ…!!〜〜〜ー〜きひぃっ、か、はぁあ、あ……ぅ」
「あれれ?」

何だか柔らかくなった。

「…………」
「え?え?え?な…何で泣いちゃうんスか、しんちゃん!?」
36名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 20:28:54.70 ID:LaQg1f8X
どうやらゴムはしてるようですよ?
37名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 22:42:16.74 ID:FR5KU1+T
>>35
チンコ勃った
38名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 00:50:56.98 ID:+5oh5NCD
>>34
乙っす!
うわー続き気になるよー!
>>35
おつ!
自己嫌悪すかね。泣いちゃうしんちゃんかわいー★ぎゅっとしたい!
39SSS隊の終焉13:2011/07/04(月) 01:26:20.79 ID:NAQ1EMOG
伊藤「ふたばちゃんも…今まで佐藤君と仲が良いからって、敵視してごめんね」
ふたば「…ほぇ?なんで小生?」
佐藤「やっ!ちょ、待っ!俺らは別に、そういう仲じゃ…」
伊藤「私も佐藤君のこと好きだからさ…ふたばちゃん、仲良くしてくれるかな…?」
ふたば「小生もしんちゃんのこと大好きっスよ!だから詩織ちゃんも友達っス!」
伊藤「ありがとうね、ふたばちゃん。
   佐藤君…もし私で良かったら…中学生から、お友達でいられないかな…?」
佐藤「お前、何言って…」
伊藤「そうだよね、ダメだよね…今更都合良過ぎるもんね。私、最悪な女だもんね…(泣きっ)」
佐藤「!?いやいや!今のはそういう意味じゃなくて…」
千葉&田渕「(チッ、イケメンがまた女泣かしたよ)」
佐藤「(うぅ…後ろの視線が痛い)…ま、まぁ、友達なら全然構わないよ」
伊藤「(ケロッ)本当!?本当に良いの!?ありがとう佐藤君!
   やっぱり優しいんだね!佐藤君のそういうところ、大好きよ!」
佐藤「そりゃどうも…」

加藤「…………」
40SSS隊の終焉14:2011/07/04(月) 01:28:32.19 ID:NAQ1EMOG
伊藤「私も家、こっちの方角なんだ…一緒に帰って良いかな?みんな…」
千葉&田渕「俺達は別に…(あんまりイチャイチャしないなら)」
ふたば「詩織ちゃんも一緒に帰るっスよ!」
佐藤「あ、あぁ…もちろん、良いよ」
伊藤「ありがとう、佐藤君、みんな…。そういえば、この後予定とかあるのかな?」
ふたば「杉ちゃん家で卒業パーティーがあるっスよ!」
伊藤「佐藤君…と、千葉君達は行かないの?」
佐藤「俺ら男子は特に呼ばれてるわけじゃないんだけど…」
伊藤「でも、ほら、今夜はおがちんと真由美ちゃんが佐藤君家に…」
佐藤「うっ、あいつらがいたか…じゃあ、行くしかないか…」
ふたば「しんちゃんも千葉氏も詩織ちゃんもみんな行くっスよ!
    杉ちゃんのママが賑やかな方が楽しいって言ってたっス!」
詩織「じゃあ私もお邪魔するね。ウフフ、ありがとう、ふたばちゃん」

加藤「…………」
41SSS隊の終焉15:2011/07/04(月) 01:39:56.36 ID:NAQ1EMOG
ふたば「それじゃあ早く帰って、杉ちゃん家に行く準備するっスよ!」

とてちてとてちて

伊藤「…そうだ、佐藤くん!私ね、最近サッカーに興味あってね、この前の試合…」
佐藤「お、おう…」
千葉&田渕「(チッ、やっぱりイチャイチャかよ…)」
伊藤「…千葉君と田渕君もサッカーするんだよね?どう思う?」
千葉&田渕「えっ!?あ、えーと、それはですね…」

ワイワイ……

加藤「……………………佐藤君」

スッ……

てくてく……
42SSS隊の終焉16:2011/07/04(月) 01:41:58.07 ID:NAQ1EMOG
加藤「(さっきの詩織ちゃんは、すごく"普通"だった。同じ"佐藤君が好き"なのに、
   私達が今までしなかったこと、当たり前なのに、気付けなかったこと…)」

緒方「……真由美!!こんなところにいたのね!」
加藤「!?おがちん!?か…体の具合は大丈夫なの!?私ったら、置いて行ってごめ…」
緒方「何でだか分からないけど、卒業式で倒れてからさっきまでの記憶が無いのよ!
   きっと壇上に上がった佐藤君の勇姿を見た影響ね!さすが佐藤君!!」
加藤「……へ?……う、うん、そうだよ!おがちんったら、今まで放心状態で大変で…」
緒方「詩織は?詩織はどこへ行ったの!?」
加藤「(うぅっ…!)し、詩織、ちゃんはね……」

…………………………

緒方「どうしたの、真由美?悲しそうな顔しちゃって」
加藤「詩織ちゃんは……佐藤君が……好きで無くなったの……」
43SSS隊の終焉17:2011/07/04(月) 02:19:16.54 ID:NAQ1EMOG
緒方「詩織が!?何で!?つまりSSS隊を…」
加藤「……あ!?あ、いや!そうじゃなくって、そのね!えぇっとねっ……
   ちょっと説明が難しいんだけど、佐藤君が恋愛対象としては好きで無くなったと言うか…
   と、友達!佐藤君とは友達でいたい感じになったんだって!だからSSS隊は抜けるって!」
緒方「佐藤君と友達…?それは今までと違うの?」
加藤「う、うんうん!全然気持ちが違うって言うか、その…すでに友達って言うか…。
   とにかく、中学生になって佐藤君と詩織ちゃんが仲良くても、それはあくまで"友達"としてだからね!」
緒方「???よく意味が分からないけど、とにかく詩織が抜けて、佐藤君と友達になったのは事実なのね…。
   残念だわ…。つまり中学生になったら、私達SSS隊は……」
加藤「(そうだよね、隊の一人の想いが成就しちゃったもんね…もう、解散だよね…)」

緒方「……私達SSS隊は、今後、真由美と二人だけなのね!」
加藤「…えぇ!?」
44SSS隊の終焉18:2011/07/04(月) 02:23:52.82 ID:NAQ1EMOG
緒方「真由美はまだ佐藤君が"好き"なのよね!?それなら私もそうよ!
   佐藤君を愛する同好の志として、私達の絆は永遠に揺るがないわ!
   中学生になっても、私と真由美、SSS隊は永久に不滅よ!!」
加藤「……んもぅ、おがちんの、ばかぁっ!!」

ガシィッ!!

緒方「ちょ、真由美、何泣いてんのよぉ…」
加藤「そうだよ、おがちん…私達は、ずぅとずぅっと、友達だよ……」

こうして私は気付いた。見ているだけより、本当に大切だったもの。築かれたもの。
中学生になっても私達は相変わらず(それでもおがちんをなだめることが多くなったけど)。
佐藤君への気持ちもずっと変わらなかったし、特に最近仲の良いあの二人を見るのは、少し辛い。
いつか後悔するときが来るかも知れないけど、今はただ、本当に大切な人達のそばに、
友情と愛情の間でバランスを保ちながら、ずっとこうしていられたい。

そして加藤は、次の卒業式を迎える頃に、少しの後悔を経験するのだった。

45名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 04:19:23.53 ID:YyVzj96P
おっつー
46名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 20:04:34.14 ID:hd6F3Aq8
過疎だからageてやんよ!
47ガンプラ:2011/07/15(金) 11:46:30.37 ID:Cl9t+A7p
本来『息抜きの趣味』なはずの創作だけど、
長編は設定とかつじつまとか気にしなきゃなんなくてむしろストレス溜まるよ!
最近暑くてやる気でないし!ダブルオーライザー結局手出さなかった!
そもそもアニメは冨野作品しか見ないから00見てないよ私!
いっそ『ダブルオーザンライザーセブンソード』くらいやってくれたら買うかも!

というわけで徹子の部屋より。タイトルも考える気なし。
48矢部っちの部屋1:2011/07/15(金) 11:47:11.92 ID:Cl9t+A7p
別に。


「………………」

日曜日、朝6時前。
右手にはいつものように合鍵。
左手には久しぶりにチクビのケージ。
目的地は…ま、今日返しに行くって約束だったからね。不本意だけどしょうがない。

スイー

早朝は気持ち良い。
私以外には新聞配達の人くらいしか活動していない。
数が少ないのに加えて、バイクや自転車の音が大きいから、簡単に誰にも見つからず動き回れる。
みんなの知らないところで私ひとりが世界を組み立ててる。ちょっと楽しい。

むふ…。





カシャン パタン...

ゆっくり、静かに。いつものように先生の部屋へ上がる。
先生に起きられると面倒な会話を強制させられちゃうし、そもそも大きな音は近所迷惑だ。
……変に隣に怪しまれると先生は笑えない事になっちゃうから、というのもちょっとはある。
まぁ実際にそうなったらそうなったで、私は笑って済ませるけどね。

さて、いつものように……あれ?

「いない……」

ゴミと趣味の悪いエロ本が散らばる部屋の中、唯一の空間であるベッドの上。
いつもなら情けない姿をさらしている主が居ない。
だらしない先生がこの時間に活動してるなんてありえない。
必然的に考えられるのは、
「朝帰りか……」

一番可能性が高いのは、『楠』さんとまだ一緒にいるって事だな。

「ふん…別にいいですけどね。
私はいつものようにチクビと遊ぶだけですから。
チクビ、おいで」
「チー」
ケージからチクビを出してあげて、ベッドで一緒に遊ぶ。
ふふっ…指先、そんなに舐めないで。くすぐったいよ。
49矢部っちの部屋2:2011/07/15(金) 11:47:44.76 ID:Cl9t+A7p
………可能性は考えてた。
昨日、いつもように先生の携帯をチェックしたら、楠という人と東京でお酒を飲もうってメールのやりとりが残ってた。
家主がいつも来客をほっといてグースカ寝てるから、手持ち無沙汰になってしまって、
仕方なく時間つぶしとして携帯で遊んでいるだけなんだけど、たまにこうやって役に立つときもある。
…いい歳のくせに、しっかりしてるところがひとつも無い人だ。
多少気をつけて見ておいてあげないと、何が有るかわかったもんじゃない。

「そのくせ徹夜で遊びまわってるんだから、良いご身分だね」

……今日だけじゃなく、最近先生は勝手な行動が目に余るな。
二学期になってからは特にひどい。
席替えのときは、私が廊下に立ってる間に席を宮代さんと入れ替えていた。
…隣の人も一緒に入れ替える、なんてくらいに気をまわせるんなら、ついでにうっとうしい宮野さんとは席を離しておいて欲しかったよ。
吉岡さんには気を使ったくせに。
こないだの体育じゃ丸山さんと本庄くんの相手ばっかりしてた。私だって高飛びできてなかったのに。
そりゃ杉ちゃんや松岡さんが練習手伝ってくれてたけど、だからって担任なら生徒をしっかり見ておくべきだ。
見ておくべきと言えば、図工で壁時計を作ったときだって。
せっかく、たまにはやる気を出してあげようと思って頑張ったというのに、私の作品にひと言も無かったのはどういうことだろう。
確かに、針のところまで手を入れていたふたばのがすごかったのは認める。だけど周りが見えなくなるほどじゃなかったはずだよ。

最近の先生はどう考えても調子に乗っているとしか思えない。
1度、自分の立場というものを思い出させて上げなければ。

「チー……」
「あっ…ゴメンねチクビ」
いけないいけない。せっかくふたりきりの時間が持てたっていうのに、余計なことを考えてた。

「チチチッ」
「……先生のこと、心配?」
「チー」
「そっか。優しいな、チクビは」
「チチッ!」

チクビは先生が好きだ。もちろん私の事ほどじゃないけど。
だけど長い時間先生から離れてると、だらしない童貞が孤独死してないかを心配して、この部屋に帰りたがりだすんだよね。
まったくもう!チクビにまで心配かけて!

「チーチチ、チチチッ」

……先生は不思議と動物に好かれる。
飼育小屋のウサギたちも先生が小屋に入ると集まってくるし、野良猫だって無警戒で近寄ってくる。餌も持ってないのに。
動物園で象に鼻を寄せられた事もあるって言ってたな。
…ま、先生の方が無警戒で隙だらけだからか。いざというときは先生自体を餌にできそうだと思われてるんだろう。
なんせ先生は『YES』しか言えないもんなぁ。『餌になって』と言われても、断れないかもしれない。
情けない話…だけど、すごいのはすごい。動物王国でもひらいた方が似合ってるんじゃないだろうか?
……いやいや、だめだだめだ。甲斐性なしの先生じゃ、集まってくれた動物達が不幸になるだけだよ。
最低限、ギリギリ、限りなくボーダーに近いけど、それでも適正の見られる『先生』の方が向いている。
今のままが1番世の中に迷惑を掛けないよ。
50矢部っちの部屋3:2011/07/15(金) 11:48:04.36 ID:Cl9t+A7p
「…チー……?」
「あっ…ゴメンねチクビ」
「チ」

いけない。まただ。
なんでこんなにつまらない事をつらつらと……疲れてるのかな、私?
……うん。ちょっと疲れてるかも。

「今日はほんとにゴメンね、チクビ…」
「チチー」
少しケージに戻っていて。

「ふう………」

ポフン

ベッドに仰向けに倒れる。と、少しホコリが舞った。
やれやれ…どれだけ干してないんだか。シーツも最後に洗濯したのはいつだろう?汗の匂い、染み付いちゃってるよ。
よくこんな状態で気にならないなぁ。しかもあれだけガーガー熟睡できるなんて、信じられないよ。
服に匂いが染みちゃうかも……。
…でもしょうがない。今日は疲れてるし、この部屋は他に寝転べるところなんてないんだ。
ちょっと休憩するだけだから………。
51矢部っちの部屋4:2011/07/15(金) 11:48:42.19 ID:Cl9t+A7p




ガチャガチャ

「ん…」
ちょっとウトウトしちゃってたか……。
まったく…先生のくせに私を待たせるなんて、今日はちょっと色々言っておかなければ。

……でも立ち上がるのはもうちょっと後にしよう。
もうちょっと、このベッドで……。

ガチャン!

「おぉい、さとやん!開いたぞ!起きろ!自立歩行しろっ!!」
えええぇぇ!?誰っ!!?

「ふ…ぐぅ……。
ごめん、くす…のき……」
「マジで反省しやがれ。カラオケんときほとんど寝てたくせによ。
俺なんて完徹だぜ?」
「う…悪、い……」
「……すまん。俺が引き止めたせいで終電逃しちまったんだもんな。
その後も酒付き合ってくれてサンキュ。
工学部のノリで、ちょっと調子に乗りすぎたよ。
でも久々で楽しかった。ありがとうな」
「ああ…。
ボクも、久しぶりで楽しかった……ありが…うぅ……」
「良かった。また機会つくって飲もうぜ。
…さて、悪ぃけどちょい便所貸してくれよ。
すぐ駅に……ッ!!?」

まずいまずいまずい!見つかっちゃった!!
って、ベッドで金縛りになってただけなんだから当たり前だけど!

「…?
トイレならそこだよ……ぶぅっ!!
んなっ…ひとっ……!!」
「なっ…え…?
女の子…?
えっ、何?なん……?不法侵入?
やっ、え?真っ白…死体とかじゃない、よな?」
誰が死体なんです誰が!みっちゃんといい先生といい、みんなしていちいち人を死人扱いして!!
そっちこそ目が腐ってるじゃないですか!?
…なんていつものように言い返してやりたいところだけど、さすがにこの状況じゃはばかられる。
52矢部っちの部屋5:2011/07/15(金) 11:49:25.13 ID:Cl9t+A7p
「やっ…した……じゃないんだってコレ…あっ!
ああああっ!しまった!人形!!
人形しまい忘れてた!!!」
アホですか先生!そんな言い訳信じるわけないでしょう!!もっと上手くやってくださいよ!!

「人形ってお前、これ……」
「楠!トイレ行きたかったんだろ!
とりあえず行けって!話しはあとでするからさ!!」
「いやお前「後で後で!!人形がちょっとさ!!事情あるんだって!!ちょっと長くなるから!!」 …聞かせてもらうからな」

バタン

「ちょっとぉぉ!ひとはちゃん!いったい何してるの!!?」モニョモニョ
「あっ、いえその…チクビを返しに……」モニョモニョ
「とにかく目を瞑って動かないでいて!何とかごまかすから!」モニョモニョ
「人形設定なんてどう考えても無理 ジャー わかりました!」モニョモニョ

こうなったらヤケだよ!行けるところまで行ってみよう!
……先生が行きつくところは、牢屋かな………。

「便所はサンキュ。
…んで、その子なんなんだよ?」
「え…『その子』って、どういう事だよ…?
あはは……」

ええっと、人形らしく人形らしく…ってどうすればいいんだろう?
…とりあえずなるべく無表情で、息は浅く……ゆったりめの服でよかった…。

「おい!ふざけて言ってないぞ、俺。
冗談抜きで、なんで女の子がこんな時間にお前のベッドで寝てるんだ?
…教え子、なんじゃないのか?」

いきなりバレた!
そりゃそうだよ!こんなネタ信じるのは漫画だけだよ!
やっぱり素直に謝って…だけど、最低でもこの部屋は出入り禁止になっちゃう………。

「いやっ、だから人形だって!
ほらほら、良く見ろって!!」
言葉の降る中、浮遊感。抱え上げられたんだろう。

…って、だからアホですか先生!?良く見せたらバレるに決まってるでしょ!!

「う…ん……?」

めっちゃ見てるめっちゃ見てる!!ビシビシ感じる!!

「……………う〜ん…………?」

さすがに今回は私が…ちょっとだけ悪いところもあった…気がするから……え〜っと、
もしものときは居候くらいは考えてあげようかな。…次の働き口が見つかるまで。
53矢部っちの部屋6:2011/07/15(金) 11:50:06.36 ID:Cl9t+A7p
「…………これ、は………」

ああでも、ロリコンのレッテル貼られた人が再就職なんて無理か……。
特にこの町じゃ…それでもバイトくらいはできるだろうから、食費だけ入れてくれれば長期でも……。
しばらくは色々厳しいだろうけど、根本的には誤解なんだから徐々には何とかなるよ。たぶん。

「………人形…」

とっ…とにかく勝手にこの町を出て行かれるのは非常に困る!何が困るってわけじゃないけど色々困る!!

「……ふむ」

お願い神様!!

「なんだ人形か。マジでびびった」


信じた!!?


ええええっ!?信じちゃったよこの人!!
ちょっ…失礼とは思いますけど先生、友達は選んだほうがいいですよ!?

「確かにさとやんがそんな事するわけないか」

あっ…そっか。先生だから……。

「この人形も凝りすぎだしな。
寝顔…顔立ちとか肌の色とか…アレすぎてありえないよ。
ほんとに……見てると寒気がしてくるくらい……」

どういう意味ですか。祟りますよ。

「だいたい、さとやんは6年のクラスもってるんだもんな。
コレ、どう見ても10歳以下の子だ」

連帯責任で先生も祟ります。
54矢部っちの部屋7:2011/07/15(金) 11:50:43.26 ID:Cl9t+A7p
「そっ…そうそう!人形なんだよ人形!こんな女の子がボクの部屋に毎週来てるわけないだろ!
アキバのマニアな店で売ってるヤツなんだ!」
「お前大学のときも近所のちっさいプラモ屋とか行ってたもんなぁ。
……だからって正直引くぞコレ。どういうつもりだ?
職場行ってて趣味変わった…おいおい、待て。自分で言ってて余計に引いた。やっぱヤバイだろお前」
「いやっ、ちがっ…!
ボクのじゃないんだってば!預かってるんだ!ちょっと事情があって!」
「しょうもない言い訳すんなよ。
誰がこんなもん他人に預けるんだ。しかも無造作に部屋におきっぱにしてたし」
「いやいやいや!ほんとなんだって!
特撮仲間でこういうのも好きな知り合いがいてさ!ちょっと引越しの間だけ預かってるだけ!」
「…………人の趣味趣向をどうこう言うのは本意じゃないが…しかしなぁ……。
俺みたいにフラスコ振ってるってならまだ見逃すけど……。
……リアルでヤバイこと、してないよな?」
「してない!絶対しない!
ボクは子供たちをそんな目で見ることなんてない!!」

…………ふん。それで当然です……。

「……保留にしとく。
散らばってるエロ本見ると、嘘じゃなさそうだ」
「あっ!
あはは……」
「俺も人のことは言えないけど…お互い掃除しないとな」
「そうだなぁ。
ボクもたびたび言われてるんだけど、なかなかなぁ」
「言われてるって、誰に?」
「へっ!?」
バカーッ!せっかく上手くごまかせそうだったのに!!

「えっとあのっ!ちょっとあれだよ、母さんにさ!
たまに見に来るんだよ!困るんだよな、口うるさいことばっかり言ってさ!!」
悪かったですね、口うるさくて。

「ああ、そういう事か。
大変だな」
「大変なんだよ〜。ほんと大変でさ〜。
…心休まる日がない………」
いっつも熟睡してるくせに、よく言えますね。

「…ふぅ…しっかし、びっくりし過ぎて酔いが覚めたわ」
「ほんとに。ボクも完全に覚めた」
「ポカリとかねえ?」
「冷蔵庫見てみて」
「ああ。100円払うから」
「いいって。
ふう……」
55矢部っちの部屋8:2011/07/15(金) 11:51:24.17 ID:Cl9t+A7p
ボスン

ひと息ついて、ベッドに座り込む先生。…私を抱えたまま。
「チャンスなんだから押入れに隠すとかしてくださいよ」モニョモニョ
「あっ、そうだった」モニョモニョ
「ところでさとやん」
「はひぃ!
あっ、タバコは禁止!
やめてくれ」
……珍しく…口調も強いし……。

「えっ、スマン。…大学のときは許してくれたじゃん」
「あの頃は強く断る理由が無かったからだよ。
でも臭い、子供たちが嫌がるからさ。
だから今はだめだ。守ってくれ」
………。

「…プロ意識だな。了解だ、従うよ。
…で、さ。ちょっとそれ触らせてくれないか?」

「は?」 は?

「いや、んな趣味があるってわけじゃないけどさ、職業柄やっぱ素材や構造が気になるんだ。
できれば中身もいじらせてくれよ」
「え…なか…み…!?
ダメダメダメ!コレは触らせられないよ!絶対だめ!!!」

ムギュウ

ふむっ…!
少しでも友達の人から遠ざけようとしてくれるのはいいんですけどね!こんな力いっぱい抱き締められたら苦しいんですけど!!
ああもうっ!状況がピンチなんだからしょうがないけど、うるさいぞ私の心臓!!

「頼むって!せめて触らせてくれ!いいじゃん!
気になるんだよ。さとやんは気にしてないかもだが、それすごいよ。ゴムとかじゃその質感は絶対ありえない!」
「だからダメだってば!やめてくれ…やめろ!」

……少し、空気が尖りだしてきた。

「…キレなくてもいいだろ」
「家主はボクなんだから、ここじゃボクに従えよ。
ダメだ」
「触るのもダメってのはさ…やっぱそれ、『生きてる』って事か?」

ううっ…!

「なっ…なんでそうなるんだよ!ただの人形だって言ってるだろ!」
「じゃあ触るくらいいいだろ」
「………それ、は……」

やっぱりダメなの!?
頑張って!もうちょっとですから!何でもいいから誤魔化して!お願い!!!
56矢部っちの部屋9:2011/07/15(金) 11:52:33.66 ID:Cl9t+A7p
「……そのっ…コレはさ、アレに使う用の人形だから。だから他人には触って欲しくないんだ。
言いたくなかったんだけど」
「アレ……げっ、大人のオモチャかよ!
おまっ…………」


「「「……………………」」」


「……とっとと片付けてくれ…」
「……ああ」

ゴソゴソ

「……独身貴族の無駄遣いにしても…そういうパターンもあるか…。
…相当しただろ」
「ま…まあ。給料3ヶ月分、ってところあ痛っ!!」
「うわっ!なんだ急に!?」
「いやっ、ちょっと噛まれた…こないだ噛まれたところが痛んで。ネコに」
「…珍しいな、さとやんが動物に噛まれるなんて」
「そっ…そうだな。ちょっと近所に気まぐれで手のかかる黒ネコが痛い!!」

バタン

暗闇。
ふぅ……落ち着いた…って、こんな狭いところじゃ落ち着けないよ!
今は我慢してあげますけど、さっきの事もあわせて、あの人が帰ったらひどいですからね!!

「……さて、帰るわ……」
「そうか………」

なんていうか、言葉にできない空気だよ。
表現する言葉を一生覚えたくないけど。

「お。
今さら気付いたけど、ハム朗いたんだな。元気か〜、うりうり」
その子は『ハム朗』なんて名前じゃありません。しかも私に許可無く触らないで。

「やめろってそういうの。小動物はストレスになるんだから。
あと勝手に名前つけるなよ」
「まだ我輩はハムスターである太郎なのか?
いいじゃん、ハム朗で。お前の彼女もそう呼んでたし」
「めったな事いうなよなぁ…。
扇さんはただの友達だよ。だった。卒業後は会ってない」
「もったいねぇの。
はっきり言っとけばいけてたんじゃないか?」
「無理だって」
「そうかぁ?
あの自転車のときだって、さとやんが走り回って……」
帰るんじゃなかったんですか。昔話なんて始めて。……さっきから私の知らない話ばっかりして。
だいたい先生は『さとやん』なんて名前じゃありません。勝手な名前で呼ばないで。
57:2011/07/15(金) 11:52:59.54 ID:Cl9t+A7p
「あのなぁ…。
あれはボクのせいじゃなかっただろ。だいたいお前にしてもやっさんにしても、いっつも後片付け押し付けやがって……」
先生もそんなどうでもいい話に花を咲かせてないで、さっさと帰ってもらってください。
それにさっきからちょっと言葉遣いが悪いですよ。あとで生活態度も含めて、色々言わせてもらいますから。

「だけど知ってるか?さとやんが帰った後、篠崎とかも集まって……」
知る必要ありません。私は十分先生を知ってます。全部知ってるんです。余計な話をしないで。
先生には、私としなきゃならない話がたくさんあるの。


「昔のメンバー集まるんだけど、さとやんも……」



早く帰って。



「…………」
「…?どうした?」
「いや……なんか背筋が……。
…悪い、帰るわ俺。また今度連絡するよ」
「あ…ああ……」
「じゃ、またな」

バタム

………………………。
「………………………」

………………………戻ってこないな。

ギィ...

「ひとはちゃん……」
「とりあえず下ろしてください」
「うん。
よっと」

ポスン

「えっと、ひとはちゃん……」
「そこ、私の前。床で正座」
「……うん」

さて、まずは「悪い!タバコ忘れた!!」




「………………………」
「………………………」
「………………………」


58矢部っちの部屋11:2011/07/15(金) 11:53:29.06 ID:Cl9t+A7p
あ…危なかった……。
大丈夫だ。とっさに先生が覆いかぶさってくれたおかげで、ドアの方は見えない。という事は向こうからも表情は見えてない。
大丈夫だ。股の間に先生が割り込んできてて、布を介してお互いの腰が当たってるけど、意識しなければ大丈夫。
パンツ越しに感じるのはファスナーだから大丈夫!!

「……帰るわ。
じゃあな」

パタン...

「…………」
先生がのろのろと身を起こし、そして。


「うっ…ううっ……。ひっく……」


……色々言いたかったけど、この水溜りを見てると……しょうがないなぁ。
「今後は断りなく知らない人を連れてこないでください。
あと帰宅が深夜以降になるときは必ず連絡してください。
それとケージのネームプレート買ってください。
当然この部屋は永久禁煙です」

このくらいにしてあげよう。

「…そこまで……」
『ひとはちゃんのこといっつも見てるよ!!』
「するに決まってるよね〜……。
ひっ…ぐぅ……」

むふぅ。



<おわり>
59あとがき:2011/07/15(金) 11:55:27.30 ID:Cl9t+A7p
高校生ひとはをデザインしてたら派生しました。というか副産物。
私としては『本編外』の話なので、小ネタ扱いです。

……ところで久しぶりに初心者質問なんですが、2ちゃんって板を立てるの
有料だったりするんですか?
60名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 17:51:05.36 ID:SeRqAFzr
乙です
久々のロリひとはイイ!
スレ立て一回しかやってないけど無料ですよ。
61名無しさん@ピンキー:2011/07/16(土) 00:57:57.08 ID:Xh4wpSxr
矢部ひと良い!乙でした!
この前のりびんぐでっど思い出しましたよw
スレ立てはもちろん無料だけど、最近は規制厳しいんで気を付けて下さい
62名無しさん@ピンキー:2011/07/16(土) 09:13:27.52 ID:zkH0raJI
スレじゃなくて板(掲示板)を作るって意味じゃないの?
63ガンプラ:2011/07/16(土) 12:48:27.00 ID:YW/GoSG3
>>60
>>61
スレ立てであってます。無料でしたか。ヨカッタヨカッタ。
余計な事書きまくってるので、ちょっと気になったのもので。

>>62
恐らく私が超素人質問したせいで、ですね。気にしていただいてありがとうございます。
基本的に私、インターネット…というか、機械が苦手なので。
2ちゃんのルール説明、長すぎてよくわからなくて……。
『規制』も複雑なので、書き込めなくなったらなったで、しばらく放っとこうくらいしか考えられません。

機械が苦手なのにロボット大好きという矛盾に今気付きました。
そして今日本屋行ったら『モンジュ』終わってた……。
64ガンプラ:2011/07/18(月) 19:39:14.32 ID:rMVksyyj
気付けばライフワークのように。
終わりが…終わりが見えない……。
このしばらくのパートは、書いてても読んでても面白くないところです。
65丸井ひとはの憂鬱38:2011/07/18(月) 19:39:48.99 ID:rMVksyyj
――――――――――


キーンコーンカーンコーン

学び舎に今日の終わりを告げる鐘の音が響く。
……あの後は時間の過ぎるのが速かったな……。

「さぁ〜って、今日もひと汗流すといたしますか!」
「トッキーはハンド部か。
そしたら私も、将棋部にひと狩りしにいこっと」
「………名詞と動詞がつながってない…よな?」
「ゲームよゲーム。
うちの将棋部、実質ゲームマニアの溜まり場になってるから。なんか多人数でやるやつが流行ってるみたいよ。
神戸、春休みからずっとそれやってるの。こないだゲームの時間みたら300時間超えてたわ」
「さんびゃく!?」
「ファッファッファッ!
そう、このメモリには私の貴重な青春の時間がつまっとんねん。
まさに『青春のメモリー』!!」
「脳が腐ってるとしか…でも成績負けてんだよなぁ……」
「ファッファッファッファッファッ!
ひれふせ愚か者どもー!!」
「その『青春のメモリー』貸してみ。
…なるほど。これなら簡単にペキッといけるな」
「やめてー!!返してー!!!」
「やれやれ……。
ま、私も今日は野球部の練習見に行こうかな」
「柳、そんなにたびたび行くんならもうマネージャーになったら?」
「ちっ!
男持ちは地獄に落ちろ」

「「「……………………」」」

「な…なんだよいきなり……」
「ま…まさか現実社会でその台詞を耳にする事になるなんて………」
「驚愕のあまり心臓が止まるとこやったで……」
「さすがトッキー、予想のはるか下を行く小物ぶりね……!」
「ちょっ…なんでそこまで言われんだよ!
普通じゃん!あたしの中学じゃみんな言ってたって!」
「ないわー。それはないわー」
「せめて言い訳くらいもうちょっと捻ったら?」

「う…うわーん!!!」ダダダッ

「廊下は走っちゃダメよー!
…さて三女、私たちも帰りましょ」
「うん……」
杉ちゃんの声も今は遠い。
ずっと考えているから。
あの後…さくらちゃんと話した後、授業中もずっと考えてるけど……やっぱり。
66丸井ひとはの憂鬱39:2011/07/18(月) 19:40:50.18 ID:rMVksyyj
やっぱり、さくらちゃんにからかわれただけな気がしてならない。

あの場では相手の雰囲気に飲まれてなんとなく納得してしまったけど、冷静になって考えるとやっぱりいくらなんでも無茶苦茶だ。
地味だった女の子がある日突然美少女に、なんて今時少女漫画でもやらないよ。
実際、図書室での1年生のあの反応。あの目。
昔から千葉くんたちがたまに見せて来たのと同じだった(いい加減傷つきはしないけどさ)。
まぁ…見ようによってはこの髪も不気味だろうしなぁ……。
みっちゃんにも『夜道の後姿が恐いから、せめて半分にしなさい』って、度々言われるもんな……。
正直私もさすがにここまで長いのはめんどうだから、切れるものなら切りたいというのはある。
だけど先生のためにも、私の都合のためにも絶対短くするわけにはいかないんだよね。

ワイワイ...

ゆっくりと下駄箱を覗く……ふぅ…。今日も何も無しか。
よかった。

……最近は無かったけど、あんな話を聞いた後だったからちょっと緊張しちゃったよ。…ただ帰るだけなのに。

「どうしたの三女?のろのろして。
今日は夕方から雨っていうし、私たちは早めに帰りましょうよ。
……それともまた入ってたの?」
「あっ…ううん。そうだね、帰ろう。
……みっちゃんも降る前に帰ってこれればいいんだけど…多分無理だろうなぁ。
一応カッパは渡しといたけど」
「東高は遠いっていったって、自転車飛ばせばそんなにかからないでしょ?」
「今日は久しぶりに部に顔を出してくるって言ってたから。
またさっちゃんが何かやらかしたみたいだよ。プリプリしてた。
『いつもいつも面倒な事になってから私に連絡しくさって〜』って」
「ああ…なるほど。
松岡も昔よりは落ちついたとはいえ、行動範囲が広くなった分余計にやっかいになってる気がするわねぇ。
宮下もちょくちょく捕まってるって言ってたくらいだから、みつばの逃げ足じゃちょっと逃げきるのは無理ね」
「ふふっ、確かに。
だから結局いつもこうなっちゃうんだよね」

……結局、みっちゃんは世話好きなんだよね。ぶちぶち文句を言いながらだけど、迷わず引っ張って行く。

誰かに手を差し出すのは難しい。やってみて初めてわかった。
自分に相手を引っ張るだけの力が無いと、何の意味もない…どころか、一緒にこけて目も当てられないことになっちゃう。
目に見えてるのは簡単そうでも、先に何があるかなんてわからないんだから、最後まで引っ張って行けるかなんて誰にもわからない。
だからそれはとっても難しくて怖い事。
『できるんだったら助けて』なんて…それで逆恨みまでするなんて、本当に子供だった。
67丸井ひとはの憂鬱40:2011/07/18(月) 19:41:28.00 ID:rMVksyyj
だから『今』の私は、思う。
みっちゃんはすごい。いつも必ず最後は笑ってる。

……もし私が……。

「……………………」
「……ねぇ、さんじ「おっ、三女さん。お帰りっスか?お疲れ様です」 ……私もいるんだけど」
「千葉くん、久しぶり。
最近会わなかったから、進級できてないのかと思ってたよ」
「がくっ……。
ひでぇっスよ三女さん〜」

とぼとぼした足取りで、うなだれ、背を丸めたままこちらへやってくる千葉くん。
それでも私よりはるかに大きい。前に180を超えたって言ってたもんな。
……ちょっとわけて欲しいよ……なんてベタなことは考えないけど。

考えてないってば。

「冗談だよ、じょうだん…に、ならなかったかもだもんね…。
ゴメン……」
「ま…真顔で謝ってもらうと余計にキツいんスけど……」
「身から出た錆でしょうが。
いっそ部活とかやったら?そんだけ図体でかいんだし、いい結果を出せるのもあるんじゃない?
そしたら意外と点数も甘くなるもんよ」
「………補習でそれどころじゃねぇ…」
「アホ」
「ちょっとは同情しろよ!
今日だってこれから数学の補習なんだぞ俺!」
「はあ?どこに同情する余地が…って今から!?
あんた四月なのにいきなり補習って、どんだけなのよ!!?」
「うるせえな!ほっとけよ!」
「同情しろって言ったり、ほっとけって言ったり、どっちなのよあんた」
「だからうるせえ!」

ギャーギャー

なんだかんだでずっと、千葉くんも杉ちゃんと仲いいな。
もちろんみっちゃんとも、ふたばとも、私とも、ずっと仲良くしてくれてる。
数少ない男の子の友達。
同性だけじゃどうしても手に入らない情報や視点があるから、ずっと助かってるんだよね。
ふざけて騒いでることも多いけど、根っこは真摯だからいざというときは頼りになるし。
……しんちゃんという『弟』は、頼りにならない事はなはだしいからなぁ…。

…あっ、そうだ。

「ねぇ…千葉くん。ちょっと意見が聞きたいんだけど……」
「…おめーもだろうが、ピョンピョン女!…って、え?
ウッス。
俺なんかで良ければいくらでも」
「………私って……。
…先に言っておくけど、絶対笑わないでね」
「笑いません!んな事絶対しませんから!」
そう言って私に向き直り、姿勢を正して話を聞く体勢をとってくれる。
…私の言葉を待ってくれてるその表情には、真剣さが現れていて…これならきっと大丈夫。そう思える。

「うん…あのね……」
だから私もしっかり向き直り、千葉くんの目を見る。
…しっかり見るようにしている。人と話をするときは…知らない人が相手のときだったら、特に。
68丸井ひとはの憂鬱41:2011/07/18(月) 19:42:09.00 ID:rMVksyyj
礼儀っていうのもあるけど、私はただでさえ暗い性格なんだから、うつむいてたら余計に聞いてもらえなくなっちゃう。
何より、『想い』を伝えるために必要な事だって思うから。
わざわざ椅子を引き、身をかがめて覗き込んでくれたあの日々に、そう想ったから。

だから、しっかり相手の目を見て話をする。そう決めた。

「ぅ…にじが……」
………まぁなんか余計にたじろがれてる気がしてならないけど。
さすがにちょっと傷つく………いやいや、今は覚悟を決めてしっかり聞こう。

すぅはぁ……よし。
「私って『美少女』かな?」


「えっ……」
千葉くんが止まった。

「さん………」
杉ちゃんも止まった。

「……………………」
そして私も止まった。

…ちょっと待て、なんだこの質問。大丈夫か私?暖かくなってきたからか?


「…えっ……ぁう…!
もっ…もち……」
うわぁ…千葉くん、完全に引いてるし。

「ごめん…忘れて。本当に忘れて。絶対に忘れて」

危なかった…。
さくらちゃん達にだまされて、『絶世の』とか『超』とか意味不明な修飾語を付けなくてよかったよ。

「はぁ〜…。
ちょっといくらなんでもどうかしてた。
ごめんね、変な事聞いて…っていうかホントに聞かれたこと自体忘れて。お願い」オオオ
「うおっ、オーラが久々に……!
いやっ、違う…違うんスよ三女さん!
まっ…マジで三女さんは、そのっ……」
「いいって、フォローしなくて。余計にキツいから」
「そうじゃないんですって!」
「いつもありがとう、千葉くん。
ずっと私たちのフォローしてくれて。ずっと仲良くしてくれて。
だけど無理なことは無理でいいからさ……」
「いえいえいえ!無理じゃないっス!!全然無理なんかないっス!!
俺マジで、本気で三女さんのことかっ…かわっ……!」
「だからそんな無理なんてしてくれなくても、今のままで十分助かってるって。
私、男子の友達全然いないから。
それにさ、さくらちゃんに聞いたよ。私のために『噂』を流してくれてるんでしょ?
本当にありがとう。
先生に迷惑かけるの絶対嫌だし…こんな事言ったら悪いとは思うんだけど、男の子に言い寄られたりするのって苦手で……。
だからね、これからも、今までどおり仲良くしてくれたら嬉しいな」
「…………いえ、そんな…。
俺こそ勉強教えてもらったりりとか、ありがとうございます……」
69丸井ひとはの憂鬱42:2011/07/18(月) 19:42:39.84 ID:rMVksyyj
「んぶふぅ!ヒヒヒッ!あっ…哀れすぎる……!!
わらっ…笑うしかない……っ!!ヒヒヒ〜!!」

「んも〜!そんなに笑わないでよ、杉ちゃん!
聞かなかったことにしてってば!!」
「イヒヒヒッ!!
あぁ〜かっわいそ〜っ!ほんっきで…ヒヒッ!笑える!!」
「てめえ…松原といい、ほんと性格わりぃな……。
いつか絶対バチ当たるぞ。てか祟るからな。覚えてろ」
「そこまでは言わないけどね……」

とはいえ許すまじ、さくらちゃん…!次は必ずこっちが勝つからね!!

「ウヒヒヒヒィッ!しっ…死んじゃう…!!
呼吸が……ッ!助けて……!!」

杉ちゃん笑いすぎ。
70丸井ひとはの憂鬱43:2011/07/18(月) 19:43:06.41 ID:rMVksyyj




「あー…危なかった。ちょっと走馬灯が見えちゃったわ。
…あの顔……ッ!ヒッヒッヒッ!
ダメッ、腹筋が……!」

帰り道も半分以上を過ぎた(といっても、歩いて20分程度の通学路だけど)というのに、杉ちゃんはまだ笑いっぱなし。
呆れる…っていうか、そろそろ怒ってもいいよね私?

「いい加減にしてよ杉ちゃん……。
今日はお腹まずいんでしょ、いろんな意味で。体育休んだくせに」
「私軽いから大丈夫よ。
それこそお昼は生徒会の仕事もやってたんだし。この後だってピアノのお稽古が待ってるんだから」
「………『姫』っていうなら、杉ちゃんの方だよね」

実際、お城みたいな豪邸で優雅な趣味(盗撮は置いとくとして)を嗜んでるわけだし。
髪形だって絵本に出てくるお姫様みたいだし。
……私もたまには変えてみようかな、と思ったことが無いわけじゃないけど、癖が無さ過ぎて全然パーマがもたないんだよね。
昔みたいなお団子は、子供っぽくて似合わないとか言われて不評だったしなぁ…。
…多少は身長をごまかせるのに……。

「そんないいものじゃないわよ。単に成り行きでやってる部分も大きいし。
楽しい事なんてまるでない、とまでは言わないけど、私全然才能ないのわかってるしね」
「じゃあなんで続けてるの?」
「言ったでしょ、成り行き。
義務に近いのかな?パパのパーティについてった時とかに、教養が無いと恥をかいちゃうから。
…私以上に、パパが。
やりくりも覚えて、やってるつもりだけど、やっぱりうちに居るからにはその都合にも合わせるべきだと思ってる…って、
もちろん強制じゃなくて自分からやりたいってお願いしたのよ。
私むしろ自由にさせてもらい過ぎだからね。
高校だって結局行きたいところに行かせてもらってるわけだしさ」
「……『結局』ってことは、やっぱりゆきちゃんと同じ私立に行けって話もあったんだ」
「せぇ〜っかく近所にこんな良い高校があるんだから、行かない手は無いわよ。
偏差値だってそんなに違わないんだから。Aクラに居れば尚のことね。
むしろ登下校時間の差分を有効に使って、もっと自分を磨いてるって自負があるわ。生徒会だってそう。
思った以上に面白かったし、秋の生徒会長選挙出てみようかな?」
「杉ちゃんなら楽勝だろうね。
男子からも、女子からも人気あるし。というよりむしろ女子に大人気だし」
「やめて。
ったく、同い年…どころか上級生まで『お姉さま』とか呼ぶ人いるし…どうなってんだか。
しかも三女は知らないでしょうけど、あの松原との百合説とかあるのよ?気持ち悪っ!
あいつはともかく、私にそんな趣味ないっての!」
知ってる知ってる。有名有名。
…にしてもこのふたり、裏でネタ合わせしてるんじゃないかってくらい息の合った事言うよなぁ…。
71丸井ひとはの憂鬱44:2011/07/18(月) 19:43:53.74 ID:rMVksyyj
「とにかくいつまでも子供じゃないんだし、多少は家の事も考えなきゃなんないからね」
「進路が法学部なのもそういう事?」
「ま、ね。
今時、娘がいずれ跡を…な〜んてありえないけど、
どうせなら生かせる可能性のある知識を学ぶべきだと思うから」
「……すごいなぁ」
「そう?」
「うん。
目標を持って勉強して、生徒会の仕事もして、お稽古事までして。…家や家族のことまでしっかり考えて。
私なんかじゃとてもじゃないけど無理だよ……。
はぁ〜…進路調査、何を書けばいいんだか……」

みっちゃんも、ふたばも、杉ちゃんも…みんな頑張ってる。前に進んでる。
なのに私はいつまで経っても家の中に、同じ場所に閉じこもってるだけ。
いつまでも、同じ夢を見ているだけ……。

「……はぁ〜あ。
なに言ってるんだか。ここまで来るとさすがに呆れが声にでちゃうわ」
「…?」

杉ちゃんが立ち止まり、ひと呼吸。
子供の頃はほとんど同じ高さだったけど、いつの間にか結構差がついた。
見上げる視線の先、私に向けられる微笑みはどこまでも優しい。
……いつの間にか結構差がついた。纏う空気は本当に『お姉さん』で。


微笑みを彩る、艶やかな唇が開かれて――…
「1番すごいのは三女よ」


「…私が?」
「そう!私の友達の中で1番すごいわ!
もちろん私なんかよりずっとずっとすごい!!」
「そんな…私、何もやってないよ。
誰かに自慢できるような仕事も、趣味も持ってない……」
今もそう。こうやってすぐ帰り道。
いつも同じ毎日を繰り返してる。

「やってる!ずっとやってきてるじゃない!家の事、家族の事!!
…本当に、私たちの『仕事』や『趣味』なんかとはレベルが違うすごい事を、子供の頃からずっとやってきてるわ。
生徒会の仕事も、お稽古も、みつばのバイトやふたばの部活も、その気になればいつでもサボれるの。
眠かったら、疲れてたら、お腹が痛かったら、明日にしようって片付けられるの。
だけど三女のやってる事は違う。
辛いから、面倒だからなんて言ってサボれない。毎日やらなくちゃいけない。
ほっといたってお腹をすかせる。服を汚す。病気になる。今日だって言わなきゃカッパを持って行かなかった。
しかも家計っていう限られた条件の中で、全部を上手くやりくりしてきてる」
「……そんなふうに考えたこと無かった……。
ただ私がやらなきゃって…ううん、外に出るのが苦手なのをごまかしてただけで……」
「違うわ。やらないでいる理由なんていくらでも作れたはずよ。
家の中でゲームして、ゴロゴロしてたってよかったじゃない。特に昔は、ふたりは外で遊びまわってるだけだったんだから。
ていうか今も半分以上遊びほうけてるみたいなもんだし。
なのにずっとずっと頑張り続けてる。本当にすごいわ。
…同い年の友達がすぐ近くでこんなに頑張ってるっていうのに、ひるがえって自分はどうなのかしら?
そう思ったから私、頑張ることにしたの。今、頑張れるの。
そうよ、お礼を言うのがずいぶん遅くなっちゃった。
友達になってくれてありがとう。ずっと友達でいてくれてありがとう。
これからもずっとよろしくね、三女」
72丸井ひとはの憂鬱45:2011/07/18(月) 19:44:30.86 ID:rMVksyyj
差し出された手。
そこに込められた想いに、引き付けられるように、

ゆっくりと

     握る。


あたたかい。


私には、手を差し出してくれる友達が沢山いる。
幸せ。
信じられないくらい幸せで……まいったなぁ…。本当にまいったよ……。

「すっ…すごいな、杉ちゃんは。やっぱり」
震える声、とてもじゃないけど隠せない。

「………ありがと、三女」
「うん……。私も、あり……と………」
もっとちゃんとお礼を言いたいけど、今はちょっと無理だな。顔も、上げられない。目を見て言えない。
でも大丈夫。これは明日にしたって大丈夫だ。

『これからもずっと』って、言ってくれたんだから。

「…………………………」
「…………………………」


だから今、待っててくれてありがとう。

73丸井ひとはの憂鬱46:2011/07/18(月) 19:46:19.04 ID:rMVksyyj
「………うん…もう大丈夫……。
ほんとに色々……嬉しかった。
ありがとう」
「うぁ…キラキラ全開で面と向かって言われると、ちょっと心臓にキツイわ……。
しかも…あ〜……これで黙って私の手柄にしちゃうのは、かなり卑怯よねぇ…。
ホントは言うなって言われてるんだけど……」
「…なにを?」
「ぜったい私が言ったこと、ばらさないでね」
「う…うん」

どうしたんだろう?いつもハキハキしてる杉ちゃんが、こんなふうに口ごもるなんて……。
杉ちゃんがこんなになる相手は、ひとりだけなのに。

「さっきのは、みつばの言葉なの。
三女がすごいって事、すっごく頑張ってるって事、はっきり教えてくれたのはみつばなの」

「えっ…?」
「中3の頃にね。
いつもみたいに『私ほどじゃないけど』って、オマケつきで。
でも、真っ赤になっちゃって。
…にしてもまったく……1番伝えなきゃなんない相手に伝えられないって辺りがみつばよねぇ……。
ま、それも含めていつもの事だと許してあげて、今日からちょっとそういう目であいつを見てみなさいな。
きっとあいつが何て言ってるか、すぐわかっちゃうわよ。
素直じゃなさすぎてわかり易いのが、みつばなんだから」
「…みっちゃんが……」

そっか……そうだったんだ。
そうだよ。
頑張って稼いだアルバイト代、家に入れてくれて。
手元が危ういのにお料理頑張ってくれて。
他にもお洗濯や買い物、先生に会いに行く日のフォロー。
いつも言ってくれてた。
いつも、誰よりも、大きな声で伝えてくれてたじゃないか。
…私のために。

「なんだかなぁ…最近、ずっとみっちゃんにやられっぱなしな気がするよ」
「大げさ、大げさ」
言いつつも、誇らしげに笑う杉ちゃん。
杉ちゃんだけじゃない。みんながそう。

みんなを引っ張る、みんなを惹きつける、自慢の姉さん。

74丸井ひとはの憂鬱47:2011/07/18(月) 19:46:39.36 ID:rMVksyyj
……もし私が…
「……………ったら、先生に……」
「……ねぇ三女。久しぶりに私の家に寄ってかない?
時間あればなんだけどさ」
「えっ…いいけど……。
でも……」
「そんなに遅くならないって。
私もピアノあるし……もし雨が降ってきちゃったら、タクシー呼ばせてもらうから」
「いいよ別に。近所なんだから。
…でもどうして急に?」
「うん……まぁ友達なんだから、たまには来て欲しいって感じかな。
最近吉岡たちとも集まれなくて、ちょっと寂しいのが続いてるし……そうだっ!
こないだいい葉が手に入ったからごちそうさせて。ひとりだけで楽しむのはもったいないくらいなの。
ね?」
「………うん」

……今日はそういう星回りの日、なのかな?

75中書き5:2011/07/18(月) 19:52:01.61 ID:rMVksyyj
全然進んでないんですが、文章量的にはこないだの小ネタより多いんです……。
もうちょっと続く壁を越えたら、あとは速いです。

○生活描写について
髪や肌のこと、みっちゃんの化粧品、服飾関連などはまるごと削る事にしました。
ちょっと書いたらグダグダがひどい事になったので。
そもそもひとはの『腰下まで届く髪』ってありえないよ(色んなものにケンカを売った)。
ていうか髪形自由の校則にしてもフリーダム過ぎる。ストライクフリーダム。
まあ原作でも水泳帽かぶってなかったり、ブルマだったり、非番に警官服だったりなので流してください。
76名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 22:04:39.73 ID:rvm4MtOW
>>75
乙です、毎回楽しみにしてます
77名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 22:49:22.15 ID:wgqXHo7a
>>75乙がとう
78名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 22:55:22.46 ID:TrTN5Lsa
乙です。楽しく読ませていただきました
杉ちゃんの心くばりがいいなあ
79名無しさん@ピンキー:2011/07/23(土) 01:42:21.46 ID:HX0ebkix
よし、変わったカップリングでささっと書いてみる
自分でも「ありえねーw」と思うんで、ちょっとキャラがブレるかもw

舞台は214卵性、SSS隊佐藤家前クリスマスパーティー回の直前と絵理追跡後です
80SSS(詩織が好きでしょうがないのは…?)1:2011/07/23(土) 01:44:43.22 ID:HX0ebkix
クリスマスの日の夕方、加藤はパーティーのため佐藤家前へと一人向かっていた

てくてく…

加藤「んもぅ、おがちんったら…パーティーの準備張り切っちゃって…。
   でも嬉しいな。卒業前にSSS隊らしい行動が出来て…。」
伊藤「…あっ、真由美ちゃんじゃない?」
加藤「あっ!詩織ちゃん!詩織ちゃんも、今から佐藤君家に向かうところ?」
伊藤「ええ、そうよ。ウフフ。一緒に行きましょ?」
加藤「うん!」

てくてく…てくてく…

加藤「(…あれ?詩織ちゃん、なんだか元気無いな…)」
伊藤「…この春休みが終わったら、私達、もう卒業だね」
加藤「…えぇ?う、うん、そーだね」
伊藤「…真由美ちゃんはさ、卒業式を迎えたら、佐藤君のこと、どうするの?」
加藤「えっ!?(急に何でそんな核心を!?)…う、う〜ん…。
   やっぱり、諦めることなんて出来ないから、SSS隊を続けていくと、思うな…」
81SSS(詩織が好きでしょうがないのは…?)2:2011/07/23(土) 01:47:01.53 ID:HX0ebkix
伊藤「ウフフ、真由美ちゃんならやっぱりそう言うと思ったな。
   …でも、佐藤君に告白はしないんだね」
加藤「だ、だって、抜け駆けはよくないし…。し、詩織ちゃんは、どうするの…?」
伊藤「私はねぇ…どうしよっかなぁ♪
   おがちんはずっとああだし、真由美ちゃんも、もたもたしてるみたいだし…」
加藤「え!?えぇ〜っ!?酷いよ、詩織ちゃ…」

伊藤「…なぁーんてねっ!冗談よ、冗談♪真由美ちゃんったら、慌てちゃって。ウフフ」
加藤「あ、そうだよね、もちろん冗談だよね、ごめんね…。
   (なんか今日の詩織ちゃん、変な感じ…)」
伊藤「でも嬉しいな。真由美ちゃんもまだSSS隊、続けてくれるみたいで…。
   私もSSS隊はたぶん続けるからさ、これからもよろしくね、真由美ちゃん♪」
加藤「う、うん!こちらこそ、よろしくね、詩織ちゃん!
   (今まで詩織ちゃんのこと、怖いと思ったこともあったけど、やっぱり大切な友達なんだ…)」
伊藤&加藤「………………」
82SSS(詩織が好きでしょうがないのは…?)3:2011/07/23(土) 02:08:43.19 ID:HX0ebkix
伊藤「…ねぇ真由美ちゃん。佐藤君家に行く前に、少し寄り道しない?」
加藤「えぇっ!?い、今からだと、遅くない!?」
伊藤「フフ、平気だって。どうせおがちんのことだから、遅れたところで
   『んもぅ!遅いわよ!真由美!詩織!』くらいのことで済んじゃうよ」
加藤「で、でもぉ…きっと先に着いて準備してるおがちんに悪いし…」
伊藤「(…チッ)…そう、そんなにおがちんが大事なの…フーン…」
加藤「(あ!!今嫌な感じだ!!)う、あ…で、でも!帰りなら、少し…」

緒方「いたわね!真由美!詩織!」
伊藤&加藤「おがちん!!」
緒方「二人が遅いから迎えに行くところだったのよ!
   さぁ、もうパーティーの準備は出来てるわ、急ぎましょ!」
加藤「う、うん!(助かった…でも"遅い"って、まだ夕方だよおがちん…)」

伊藤「(…ぼそぼそ)…じゃあ帰りにしましょ。ね?おがちんに内緒で・抜・け・駆・け・よ?」
加藤「う、うん、そーだね…(何なんだろ…いつもは抜け駆け・厳・禁・なのに…)」
83SSS(詩織が好きでしょうがないのは…?)4:2011/07/23(土) 02:25:04.10 ID:HX0ebkix
そしてSSS隊によるクリスマスパーティーin佐藤家前は始まった
プレゼントの話や、まさかのサンタさん出現に加藤の気分も高揚し、
この約束をすっかり忘れたが、そこに佐藤姉が登場し…

緒方「出たわね変態ストーカー女!!」
絵理「(えぇ〜っ!!??)」

ダダッ!!

緒方「あっ逃げた!追うのよーっ!!」

ドドドドドッ…!!

伊藤「私達も追いましょ!ねっ、真由美ちゃん!」
加藤「え!?あ、うん!!ちょっ、待って〜おがちん!!」

タタタタタッ…

加藤「はぁ…はぁ…おがちん…速っ…もうっ…」
伊藤「…ウフフ。こっちが近道よ、真由美ちゃん」

ギュッ

加藤「え?(珍しいな、詩織ちゃんに手、握られちゃった…)あ…うん」

タッタッタッ…
84名無しさん@ピンキー:2011/07/23(土) 02:27:27.97 ID:HX0ebkix
続きは近日に
85名無しさん@ピンキー:2011/07/24(日) 00:54:09.61 ID:zng7EOmN
GJ!
期待してるよ
86SSS(詩織が好きでしょうがないのは…)5:2011/07/24(日) 03:53:30.97 ID:RsNhUWgl
タッタッタッタッ…くるり…

加藤「あれ!?詩織ちゃん、その方角は違…」
伊藤「もー、約束したじゃない真由美ちゃん。帰りに二人で寄り道しようって」
加藤「あ…うん…でも、おがちんが…」
伊藤「(チッ)…イヤなの?」
加藤「!?ううん!そうじゃないけど…」
伊藤「じゃあ決まりだね。行きましょ♪」
加藤「う、うん!(た…たまには詩織ちゃんと二人も…良い…かな…?)」

加藤は伊藤に手を引かれながら、イルミネーションに彩られた上尾の街を疾走してゆく

タッタッタッタッ…

伊藤「…ねぇ、すっごく綺麗だと思わない?真由美ちゃん」
加藤「う、うん。そうだねっ」
伊藤「おがちんとパーティーもいいけど、クリスマスって、こういうものでしょ?」
加藤「う…うん…(確かに、おがちんと一緒だったら、こういう景色は観なかったな…)」
87SSS(詩織が好きでしょうがないのは…?)6:2011/07/24(日) 03:58:55.88 ID:RsNhUWgl
やがて二人が辿り着いたのは、街並を一望出来る丘の上だった

伊藤「フゥ…観て、真由美ちゃん」
加藤「はぁ…はぁ…わぁ、すごく綺麗…」

二人の眼下には、様々な光にきらめく夜景が広がっていた

伊藤「連れ回してごめんね、真由美ちゃん。でも、この景色を真由美ちゃんにも見せたかったの」
加藤「そ、そんな!謝ること無いよ!?ありがとう、詩織ちゃん!」

伊藤&加藤「………………」

伊藤「…私ね、SSS隊を抜け駆けして、よくここへ来てたの。
   佐藤君と二人で、こうやってこの景色を眺めてる妄想してね…」
加藤「そ、そうだったんだ…良いね、それ…(詩織ちゃん、そんなロマンチックな面もあったんだ…)」
伊藤「真由美ちゃんは考えたこと無い?そういうの…」
加藤「えっ?私は…その…佐藤君と二人きりは…あまり無い…かも…。
   確かに、佐藤君のことは好きだけど、おがちんや、詩織ちゃんもいてのSSS隊だし…」
88SSS(詩織が好きでしょうがないのは…?)7:2011/07/24(日) 04:59:09.37 ID:RsNhUWgl
伊藤「クス…真由美ちゃんらしいね。
   でもね、私、真由美ちゃんのそういう優しいところ好きよ」
加藤「えっ(///)…あ…うん…ありがとう…。
   (うぅ…今の、すごく嬉しいな…こっちも何か言い返さなきゃ…)
   わ、私も…詩織ちゃんのこと…す、好きだよ…?(…あ、変な言い方になっちゃった)」
伊藤「…私が好き?ウフフ…どの辺が?」
加藤「ど、どの辺って…その…詩織ちゃん、び…美人だし、上品だし…。
   わ、私なんて、あまり目立たないし…地味だし…。
   (あぁもう!なんで外見しか言えないの?私ったら馬鹿…)」
伊藤「真由美ちゃん、そんなに卑下することないんじゃないかな(汗)…。
   …でも確かに、あまり女の子って感じしないね。背も高いし、その反目、大人しいし」
加藤「(うっ…気にしてることを…)う、うん…」
伊藤「…でもね」

スッ

加藤「!?(詩織ちゃん、なんで私の頬に手を…!?)」
伊藤「真由美ちゃんのそういうところ、私、可愛いと思うな…」
加藤「えっ!?(ドキッ)」
89SSS(詩織が好きでしょうがないのは…?)8:2011/07/24(日) 05:06:07.60 ID:RsNhUWgl
伊藤「クスクス…驚いちゃった?そういういじらしいところも素敵…」
加藤「(何か企んでいる…?)し、詩織ちゃん…からかっているんだよね…?」
伊藤「(ムスッ)…からかってなんか、いないわよ」

ススッ…

加藤「うっ!?(今度は両手を頬に…!!)」
伊藤「…ねぇ。真由美ちゃんは、キッスってしたこと、ある…?」
加藤「…な、無い…よ…(何?何これ…?)」
伊藤「(ニコ…)私もね、無いの…。試してみたいと思わない…?」
加藤「試すって…お、女同士だよ…ね…?(何これ何これ…?詩織ちゃんおかしいよ…)」
伊藤「クス…いいじゃない…佐藤君との練習だと思って、ね…?」
加藤「…れ、れんしゅ…なら…(顔が…近いよ…詩織ちゃん…)」

ぴちゅっ…

加藤「(!?)…………ぷはっ」
伊藤「ふぅ…どうだった…?真由美ちゃん。キッスの練習…」
加藤「うぅ〜…(ゴシゴシ)…は、恥ずかしい…よ…」
90SSS(詩織が好きでしょうがないのは…?)9:2011/07/24(日) 05:19:33.47 ID:RsNhUWgl
伊藤「だから、練習よ。れ・ん・しゅ・う♪」
加藤「練習って言っても…詩織ちゃん…女同士だし…」
伊藤「…じゃあさ、目をつむって、私を佐藤君だと思えばいいのよ」
加藤「目をつむ…って…(えっ?えぇ〜!?また…?)」

スッ…

伊藤「ほら…私が塞いでてあげるから…」
加藤「あ…!」

くちゅり…くちゃぁ…

加藤「(はっ…はっ…はぁっ…あっ…!舌までそんな…!
   あぁ…唇や…歯の裏…そんなに舐められちゃ…頭まで…おかしく…
   ああぁ…もう………〜〜っ!)ダ、ダメ〜ッ!!」

バッ!!

伊藤「プハッ…はぁ…はぁ…はぁ…なんで止めちゃったの?真由美ちゃん…」
加藤「うっうっ…(ゴシゴシゴシ)だ、だって…無理だよ…こんなの!」
91SSS(詩織は好きでしょうがないのは…?)10:2011/07/24(日) 05:54:01.36 ID:RsNhUWgl
伊藤「…無理?」
加藤「だって…だって…女同士だよっ!?こんなのおかしいよ!」
伊藤「…別におかしくないでしょう?真由美ちゃん。相手は佐藤君だと思えば…」
加藤「思えないよ、無理だよ!詩織ちゃんは私を佐藤君だと思えるの!?
   詩織ちゃん、なんだか変だよっ!?」
伊藤「興奮しないで。…変、ね…。確かに変かもね。
   …認めるけど、私は真由美ちゃんを佐藤君だと思ってないわ」
加藤「……!!??詩織ちゃん…??」

ギュッ…

伊藤「…あのね、真由美ちゃん…」
加藤「し…詩織ちゃん…?(また手を握…)」
伊藤「…いつの頃からか、私が好きなのは…真由美ちゃん、あなたにかわったの」
加藤「!!??」
92SSS(詩織が好きでしょうがないのは…?)11:2011/07/24(日) 06:26:03.12 ID:RsNhUWgl
伊藤&加藤「…………」

加藤「…じょ、冗談だよね?からかっているんだよね…?詩織ちゃん…?
   だって、詩織ちゃんは佐藤君のこと…」
伊藤「佐藤君への想いは、もう過去のことよ。真由美ちゃん。
   もう一度言うね。私が好きなのは、真由美ちゃん、あ・な・た・だ・け♪」
加藤「…う、うそだよね…?だって、女同士だし…」
伊藤「(イラッ)…うそな訳ないじゃない。あんなキッスまでして…。
   あのまま気持ち良くさせて、真由美ちゃん墜とせたらなぁって、思ってたんだけどね。
   なかなか上手くいかないね。どう思う?真由美ちゃん」
加藤「(うっ、怖い…)ど、どうって…分かんない、分かんないよ…」
伊藤「私が真由美ちゃんを好きな気持ちは、真由美ちゃんが佐藤君を好きな気持ちと同じなんだよ?
   そう言えば分かってくれる?」
加藤「う、うぅんと…クラスに、そういう感じっぽい人はいるけど…やっぱり、女同士だし…」
伊藤「(チッ)…ううん、あの盗撮魔やデカくてウザいのとは違うから。私は真剣よ?真由美ちゃん」

ギュゥッ…

加藤「(う、ちょっと痛っ…)…で、でも!私は…佐藤君が好きだから…」
93SSS(詩織が好きでしょうがないのは…?)12:2011/07/24(日) 07:03:01.25 ID:RsNhUWgl
伊藤「…だから?」
加藤「あ…あ…えっと…し、詩織ちゃんは、友達だしっ、大事な…SSS隊で…
   その…友達で、おがちんと一緒でっ、大好きだけど…」
伊藤「…だけど?」
加藤「…う…うぅ…詩織ちゃんの、そういう気持ちは…ごめん、応えられないの…。
   …う、うぅぅうっ…ごめんね、詩織ちゃん…ううぅ…。
   ひっく…ひっく…うぅ…ごめん…もう、何がなんだか、分からないよ…」

伊藤「……そう。泣かないで、真由美ちゃん。最初から良い返事は、期待してないから」
加藤「…え?…あ…うん…ごめんね、詩織ちゃん…」
伊藤「私も、こんな重荷背負わせちゃってごめんね、真由美ちゃん。
   最後に、クリスマス一緒にいられて、楽しかったな…。ありがとうね」
加藤「さ、最後…?でも、同じ中学に…」
伊藤「進学のことじゃないの。SSS隊としてよ…。
   佐藤君を好きでなくなった私は、もうSSS隊ではいられない…」
加藤「そ、そんな…」
伊藤「佐藤君を好きなフリをして、SSS隊に、真由美ちゃんのそばに居続けることも出来たわ。
   でも、真由美ちゃんの一途な気持ちを見て、私もこうでありたいと思ったの。
   私に告白する勇気をくれたのは…真由美ちゃん、あなただったのよ…」
加藤「…………!!」
94SSS(詩織が好きでしょうがないのは…?)13:2011/07/24(日) 07:20:49.12 ID:RsNhUWgl
伊藤「(ぐすっ)…じゃあね、真由美ちゃん…。おがちんには、適当なこと言っておいて。
   真由美ちゃんと一緒にいられた4年間、本当に楽しかった。ありがとう…。
   今までも、これからも、大好きよ…」

スッ…

てくてくてく…

加藤「あ…あ…(佐藤君に告白も出来ていない私に、詩織ちゃんをふる資格なんてあるの…?
   そんなの…間違ってるよ…!!)…ま、待って!!詩織ちゃん!!」
伊藤「!?」

タッタッタッ…

ぎゅぅ…

加藤「詩織ちゃんはSSS隊として…ううん、友達としてだけど、私の…大切な人だから…。
   おがちんには、黙っていれば良いよ。そうすれば私達、ずっと一緒だよ?」
伊藤「真由美ちゃん…」
加藤「詩織ちゃん…。私も詩織ちゃんのこと…大好きだからっ!!」

ガバッ!!

ぎゅうぅっ…!!
95SSS(詩織が好きでしょうがないのは…?)14:2011/07/24(日) 07:45:28.02 ID:RsNhUWgl
伊藤「真由美ちゃん…嬉しいっ…」
加藤「詩織ちゃん…私もっ…」
加藤「……はくしょん!」
伊藤「真由美ちゃん、寒いんじゃない?
   ごめんね、こんなところ連れて来ちゃって…」
加藤「ううん、良いの。気にしないで」
伊藤「私の責任ね。…ほら、こうしてもっと強く抱き合えば、暖かくなるから…」

ゴソゴソ…

ぎゅうぅ

加藤「あ…ありがと…ちょっと恥ずかしいけど…。
   (でも、すごく暖かいな…詩織ちゃん、優しい…)」
伊藤「ふふ、真由美ちゃん、可愛い。…あら?唇まで乾燥しちゃって…」
加藤「あ…ほんと。これは…」
伊藤「こうして、重ね合わせればね…」

ちゅっ…くちゅぅ…

加藤「んっ…(ま、まぁ…減るもんじゃないし、練習にもなるなら、良いよね…)」
96SSS(詩織が好きでしょうがないのは…?)15:2011/07/24(日) 08:43:10.21 ID:RsNhUWgl
二人は強く抱き合い、時折唇を重ね合わせながら夜を過ごした
そして仲良く朝日が昇るのを眺めた

翌日

緒方「…あ!真由美!詩織!昨夜はどこ行ってたのよ!?」
加藤「おがちん!あの…えっと…その…」
伊藤「ごめんねおがちん!真由美ちゃんと道に迷っちゃって…ね?」
加藤「う、うん!そうそう!…てかおがちん、なんで体操着…?」
緒方「まあいいわ。今はとにかく佐藤君を見つけて、サンタさんのサインを渡すのよ!
   ああ、なんて可哀想な佐藤君!」
伊藤「…あ、あそこにいるの佐藤君じゃないかな」
緒方「あ!本当だ!佐藤くーん!!…」

ドドドドドッ…

加藤が緒方の後を追おうとした矢先、伊藤は後ろ手に加藤の手を握り、それを引き止めた
指を絡めてそっと隣に寄り添うと、愛おしそうに加藤の肩に頭をもたげる

加藤「!!…詩織ちゃん…恥ずかしいよ…」
伊藤「うふふ、少しの間だけ、ね?」
加藤「う、うん…(佐藤君に会いたかったけど…ま、まあ、良いか…)」
伊藤「…(まんざらでもなさそうね。あとはどうやって佐藤君を諦めさせるか…。
   …それなら、佐藤君が真由美ちゃんを嫌うよう仕向けた方が早いかもね。
   ごめんね、真由美ちゃん。でも、私がいくらでも愛してあげるからね…)」

97名無しさん@ピンキー:2011/07/24(日) 09:03:06.57 ID:RsNhUWgl
ムシャクシャして書いた
詩織と真由美の百合なら何でもよかった
今は反省している
98名無しさん@ピンキー:2011/07/24(日) 21:14:18.71 ID:+r0MjnWa
乙!
レアなカップリングだが、詩織が好きな俺得だったよ
反省なんてしてないで次を書く準備をするんだ!
99名無しさん@ピンキー:2011/07/24(日) 21:55:27.00 ID:sVSGFCkj
吉岡が見ていたらややこしくなりそうな
100名無しさん@ピンキー:2011/07/26(火) 15:56:24.94 ID:/X82n6ZI
さすがのオチ おっかないからageとく
101名無しさん@ピンキー:2011/07/28(木) 01:56:00.00 ID:RsFXOY3x
いちばんえろいのはだれなのかと考えてみて吉岡ママンという結論にたどりついた。
102名無しさん@ピンキー:2011/07/30(土) 10:37:39.80 ID:SpN8wBel
矢部ひと書いてみた
オチも無いただの短編です
1031:2011/07/30(土) 10:39:18.78 ID:SpN8wBel
「いくらなんでも早く来すぎてしまった…」
現在時刻は午前4時40分。人によっては深夜に分類されるかもしれない時間帯。遅めの日の出くらいの時間だ。
人には時々訳も無く早起きに成功してしまう場合があるが、私の場合元々朝早いものだからそれが更に早くなってしまった。
日曜は先生の家でチクビと遊びながらガチレンジャーを観賞する習慣があって、今日もその週末の恒例通りに来ただけなのに
基本私が先生の家に着いた時、先生本人は気持良さそうに寝ている。だからといって、流石に5時前はちょっと非常識な気もする。
チクビを愛しすぎて私まで夜行性になってしまったのだろうか。それともみっちゃんの言う通りババ臭くなってきているのが顕著に顕れてしまったというのか。
先生の住む安いアパートのドアの前で、がらにも無く優柔不断な挙動をとってしまう。
いつまでも肌寒い外気に触れているほどマゾじゃないので、いい加減ふっきれよう。
「お邪魔します」
いつもは言わない挨拶もついしてしまう。あと30分もすれば先生も私につられて起きるだろうし、さも今来たかのように振る舞えば何ら問題はない。
それまでチクビと遊んでいよう。

掌の上で私を可愛らしく見上げるチクビの姿は小動物特有の愛らしさをフルに活用するようで、うっとりするほど抱きしめたくなる。
まともに教師らしい事をした事が少ない先生も、チクビを連れてきた事だけは褒めてあげなくては。
しかし、いくらチクビと一緒でも朝の時間は長く感じる。餌もあげたし小屋の掃除を済んだ。はっきり言って暇に近い倦怠感がある。
いつも来ていた時間は丁度良かったんだなぁとつくづく感じる。暇でしょうがないので、先生が寝言で何回栗山先生の名前を呼ぶか数えてみようか。
…いや、別に面白くは無いしやめておこう。甲斐性無しの先生は夢の中でくらいしか幸せを掴めそうにないし、それを邪魔する程私は悪女じゃない。
話相手もとい、からかい相手に先生を起こそうか。前みたいにチクビが枕元に逃げたふりしてのしかかれば眠りの深い先生も起きるだろう。
でも…そうだ、先生は寝ていて、私は起きている。時間ばかりが余っている。この状況はとびきりの悪戯をしかけろと神様が言っているんだよ。
1042:2011/07/30(土) 10:40:29.19 ID:SpN8wBel
「ふあぁ〜…んー……あれ、ひとはちゃん?今日は日曜だったよね、来てないのかな…」
「あ、先生…」
「あぁ、そこにいたの。おはよう、台所なんかで何してんの?」
「起きちゃいましたか…」
「そりゃ起きるよ、ガチレンジャーが始まるまでに目を覚醒させておかないとね」
まだ終わってないのに…本当間の悪い先生だよ。
「あれ、それって…ひょっとして朝ご飯作ってくれたの?わぁ、嬉しいな」
「チクビにもたまには餌以外で何か食べさせてあげないよ可哀想だと思いまして。
 もちろんハムスター用に作ってありますよ」
「何だやっぱりチクビか…」
「……せ、先生の分も、まぁ、一応…」
「へ、本当?」
「台所使わせてもらったお礼だと思ってください、ついでなので質素ですが、どうぞ」
「うん、全然美味しそうだよ、ひとはちゃんの料理一回食べてみたかったんだ」
「作ったといっても目玉焼きとトーストですよ」
「あぁ、そうなの…まぁでもありがとう、いただきます…
 あれ、チクビの分はもうチクビが食べちゃったの?」
「いえ、今からですよ、卵焼きあたりがいいかな」
「だって、ついでの僕よりチクビの分が遅いってどういうこと?」
「…え、いや……チクビの分は豪華に作ってあげようかと思って、試行錯誤してたんです」
「それで卵焼き?ふーん」
「別にいいじゃないですか、私が本気で作ったらそれはもう美味しい卵焼きが…」
「そんな凄い卵焼きが…」

先生が起きる前、顔に落書きしようかとか、歯磨き粉をすり替えようとか
寝言を録音しようかとか色々考えたけどどれもしっくりこなくて…それで結局
私が朝食を作っていたらなんていう、今考えると別に悪戯でも何でもない事に思い至ってしまい
それだけならまだよかったものの
作っている途中で先生が起きてしまったが為に先生をからかうネタも無いままに
いつもよりずっとキレの悪い言い訳しか思いつかず、勝手に恥をかいた気分。
これじゃただの優等生だよまったく…。

「ところでひとはちゃん」
「はい?」
「顔赤いけど、具合悪くない?」
「…え」
105名無しさん@ピンキー:2011/07/30(土) 10:41:36.48 ID:SpN8wBel
終わりです
見返してみると起承転結なってないなぁ…
レベル低いけど勘弁してください
106名無しさん@ピンキー:2011/07/30(土) 12:30:46.58 ID:g5XVjkvd
あんまり卑下しなさんな
十分面白かったよ
107名無しさん@ピンキー:2011/07/30(土) 15:36:42.00 ID:UBMgWCts
あんまり卑下すると読み手もテンション下がるからヤメテ、書いてくれるだけでありがたいんよ
短くて読みやすく十分楽しめたよ
ひとはのくどくど続く独白がツンデレで可愛い
108名無しさん@ピンキー:2011/07/31(日) 17:43:44.68 ID:aSjuEnM1
こんにちは。
久しぶりに投下させていただきます。
4レス程度の短編です。
エロは特にありません。
場面は、杉ちゃんの誕生日に招かれた三つ子の帰りの道中です。

では。
109夕日ロールケーキ☆1:2011/07/31(日) 17:47:17.23 ID:aSjuEnM1
「あー。食べた食べた!もう食べらんないわよ!」
「みっちゃん、ずっと食べ続けてたね。この世の物すべてを食い尽くしてしまうんじゃないかと思ったよ。」
「んなわけないでしょ!大体あの変態ぴょんぴょんの親玉が悪いのよ!美味しいもの作りすぎ!
エコよ!エコなのよ世の中は!食べ残すのは罪なことなの!ひとは、料理作ってるんだからそんぐらいわかりなさいよ!」
「どうしてそういう話になるの…(怒)」

「でも杉ちゃん嬉しそうだったっスよ。みっちゃんの食べっぷりに。」
「そ、そう?まあ、私の美しい食べる姿には杉崎に限らず誰でも釘づけになるわよね!」
「…美しい…へえ…あれが…」
「そっか!なるほど!口の周りにいっぱい食べかすつけるのが本当の食事の作法なんだ!小生も明日から実践実践!」
「う、うそよ…」
「冗談っス」

「みっちゃん…よだれと涙で汚らしいくて恥ずかしいからこれで拭いて」
「ううう…」

「あ、あれ!きれいな夕日っス!」
「もう7時前なのにまだ日が完全に落ちないね。…でも、きれいだね。」
「でもさ、なんで夕日って赤いのかねぇ?」
「みっちゃん、事細かに説明してあげようか?」
「…やっぱいい。」

「みっちゃんもひとも…夕日で真っ赤だ…」


キレイダナ…


「みっちゃん」
「ん?なによ?ふたば」
110夕日ロールケーキ☆2:2011/07/31(日) 17:49:05.25 ID:aSjuEnM1

ぎゅむむ!

「ち、ちょっと!い、痛いでしょ!?いきなり抱きついてなんなのよ!馬鹿!離しなさいよ!」

「ごめんっス…。なんだか急に抱きしめたくなって…」

「え…?ば、バッカじゃない///そーゆー趣味ないわよ!しかも近親で///
あ、そ、そっか。あははは///。姉妹であっても私の魅力には抗えないってことね…なるほど…」

「ひと!」ぎゅむ!
「痛いよ、ふたば!」
「ちょ、ちょっと!わたしだけじゃなかったの!?ふたばの馬鹿馬鹿!」


「夕日見てたら…いつも小生…ふたりに迷惑かけてばかりなのに…仲良くしてくれて…思わず嬉しくなってそれで…」

「な、なにしんみりしちゃってるのよ…。」


ぎゅむむ!


「ひ、ひと?」

「ふたばは大切な姉妹だよ?そんなこといちいち考えなくたっていいよ。」
「ひと…」

「ちょっとひとは!自分だけいい子になってずるい!私だってふたば抱きしめてあげるんだから!」

ぎゅむ!

「ど、どう?ひとはより愛情こもってるでしょ?」

くんくん

「何嗅いでるのよ?」
111夕日ロールケーキ☆3:2011/07/31(日) 17:50:10.73 ID:aSjuEnM1

「…塩キャラメルの匂い…。今お腹一杯だから…ちょっと…」

「!! せ、折角抱きしめてあげたのに!ふたばのくせに生意気言ってんじゃないわよ!全く!」
「だって…」
「だってもへったくれもないわよ!全く!人の親切な行為を無にして!」
「・・・ごめんス。わかったっス…小生我慢するからみっちゃん抱きしめてもいいっスよ。」
「じゃ、お言葉に甘え…って何でこっちが下手に出なきゃいけないのよ!」
「みっちゃん、ひとりのりつっこみ…もう古いよ」
「もうわけわかんないわよ!馬鹿馬鹿!」



「あ、ここの街灯の蛍光灯まだ替えてないね。ちかちかして薄暗いよ。早く替えればいいのに。」
「そうよね。この暗さのせいで私が痴漢に襲われたら上尾市長、訴えてやるんだからね!」
「ないない」
「ユニゾンでいうなー!」
112夕日ロールケーキ☆4:2011/07/31(日) 17:51:16.13 ID:aSjuEnM1

「でもさ、今日なんでみっちゃん、パンツはいて来なかったの?それなのにひっくり返って。スカートだし。
しんちゃんにも千葉君にもまともに見られちゃったし。」

「自分で捨てたバナナの皮でひっくりかえったっスよね。」
「行儀悪すぎた天罰だね」
「う、うるさい!」
「そういえば、その時しんちゃん『まただー!』とか言って落ち込んでたけど…なんでだろ?」
「おまただから『またー』なんじゃないの?そういえば千葉君も顔を背けてたね。一体どんな醜いおまたなんだろう?」

「あ、あんたいっつも私とお風呂はいってんだからそんぐらい知ってるでしょ///!
美しいものを直視したらそうなるもんなのよ!たぶん!
って、人の思い出したくないことを今ここでいちいち展開しないでくれる!?
元はといえば、ふたば!あんたが悪いんだからね!
洗濯取り込んだ時、雨上がりのぬかるんだ庭に全部ひっくり返したから、
それで履くのがなくなったんでしょ!もう!」

「新しい柔軟剤買ってきたからって洗ってあるパンツも全部洗いなおすって、
他に洗うものあったのに洗濯機ひとりじめして…やっぱり天罰だよ」
「て、天罰なんて…あるわけないじゃないーー!もう!神様の馬鹿馬鹿ーー!賽銭返しなさいよね!全くもうー!」
113夕日ロールケーキ☆5:2011/07/31(日) 17:54:10.77 ID:aSjuEnM1

「おまたといえば、おがちんなんて毎日見えてるっスよね。ちらっとだけど。」
「クラス全員見てると思うよ。し、佐藤くんも。私はもう慣れたけど。」
「加藤のガードがなければ…たぶん今頃拘置所に入ってるよね。
でもそのほうが大好きな変態警官といつも一緒で幸せなんじゃないの?」
「…だよね」
「兄妹愛っていいことっスよね!」

「でも私のはあんな変態集団といっしょにしないでよね。私のはたまたまなんだから。たまたま!」
「え?みっちゃんて…たま…あるの?」
「あ、そういえばふたばには言ってなかったけど最近、みっちゃん…アレがついて…性転換?」
「そうなんすか…じゃ今度からお兄ちゃんって言わなければいけないっスね…みっちゃんにいちゃん!」
「ふたりとも馬鹿馬鹿ー!いい加減にしなさいー!」

「さてみっちゃんは今日、馬鹿を何回言ったでしょうか?当たった人には今日パパとお風呂入る権利を譲ってあげまーす!」
「そんな権利いらないわよ!」
「えー?パパとお風呂だよ?」
「いりません!」
「ふむー。ひとは?」
「私もいらない」
「パパとお風呂なのに?」
「いらない」
「いいのになー…パパとお風呂…。でもこれでパパひとりじめできるからま、いっか。」
114夕日ロールケーキ☆6:2011/07/31(日) 17:56:36.30 ID:aSjuEnM1

なんだか楽しいな。
みっちゃんとふたばと一緒にこうやって馬鹿話しながら家路に向かうのは…。

いつの間にか日も暮れて、薄暗くなったこの時間…。
私は好き…だなぁ…。



そういえば。

先生。

元気にしているかな…。



「ひと!」
「ひとは!」

「え?」

「何ぼーっとしてるのよ。家についたわよ。玄関開けてよ。鍵持ってんのあんたなんだから。」
「あ、もうついちゃった…。」
「パパ…やっぱりまだ帰ってなかったっスね…家の中明かり点いてないもん。」
「今日遅くなるって言ってたから。…じゃ開けるね。」


カチャ


<おしまい>
115夕日ロールケーキ☆あとがき:2011/07/31(日) 17:58:22.44 ID:aSjuEnM1
予定よりレス数増えてしまいました・・・すみません。
116名無しさん@ピンキー:2011/07/31(日) 19:04:24.08 ID:zg+zen9j
いいなぁいいなぁ姉妹愛
乙です
117名無しさん@ピンキー:2011/08/01(月) 00:11:27.96 ID:0yT6dr1r
GJ
118名無しさん@ピンキー:2011/08/01(月) 22:19:54.18 ID:DUHoMUFz
乙、姉妹愛最高だ!

ところで、先生って死んじゃったの?
夕日が沈み夜空に写る先生の姿が見えたのは俺だけでいい
無茶しやがって(AA略
119ガンプラ:2011/08/01(月) 22:25:56.87 ID:IiIr0VMa
こんな私信的な事を書くのは悪いと思いつつ、少し今後について。

『〜憂鬱』が中途半端な状態なのですが、数ヶ月単位で執筆を止めます。
スランプ(趣味の作文に大げさですが)になりました。

少し表現について悩んでいたため、とあるスレで添削指導いただいていたのですが、
その指導が非常に的確で、自分の文章のダメなところが明確になり「すぎ」ました。
今まで書いた全作品に許せない程気に入らないところが出てきて、全く身動き取れない状態です。

『〜憂鬱』はガチで終わらせる気はあるので、読んでいただいている方は申し訳ありませんが、
気長にお待ちください。

私信ですみません。
120名無しさん@ピンキー:2011/08/02(火) 02:26:38.77 ID:2GZoIkur
おk、気軽で全然構わんが、楽しみに待ってるわ〜
まぁ気が向いたら合間に短編でもちょこちょこ投下して下さい
俺もそうする!
121名無しさん@ピンキー:2011/08/02(火) 19:26:00.26 ID:Hq8CZkBI
添削指導を受けちゃうとね……
プロのラノベ作家ですら半数くらいが指導されるくらいそこの人たちは厳しいかと思います(きっと作家の担当者志望の方とか多いでしょうし)
作家と担当が居て本当に完成した文章が出来るわけだから一人で満足いくものを作るのは難しいです
あまり気にしすぎると泥沼から抜け出せないので注意です!
122名無しさん@ピンキー:2011/08/02(火) 22:22:44.40 ID:xAlg2wMZ
ガンプラさんの言ってる添削って、〜叩かれたスレのやつですよね?
いやいやいや!じゅうぶんクオリティ高いですから!
むしろ今すぐ続きがよみたいっす!!
123名無しさん@ピンキー:2011/08/02(火) 22:55:06.55 ID:caREq/Cz
今でもすごいのにその向上心はすばらしいです…。
新生ガンプラ氏に期待してます!
124名無しさん@ピンキー:2011/08/02(火) 23:21:10.70 ID:AOa4w1g5
物書きしてるとわかるけど、向上心とはちょっと違うんですよね……
今まで自分で満足の出来るものが書けてたのに、急に自分の書いてるものに自信がもてなくなる。
そして昔の見直すと、……orzって感じになる。
絵を描いてる人でもたまにあるかも

スレで書く人も仕事にしてる人も絶対に歩む道かと思いますね。
125名無しさん@ピンキー:2011/08/03(水) 00:12:18.41 ID:o0g7Tcj9
なるほど…。
確かにそうかもしれませんね。
すべての創作活動(どういう形であれ)に言えることかもしれないですね。
向上心というより、もがき苦しんでいる最中、と言えるのでしょうか。
そういえばジブリの魔女宅でもそういうシーンありましたね。
キキが箒で飛べなくなるという…。
自分の場合は兎に角描く!と画家のたまごのウルスラさんはおっしゃっておりました。
でも、これも案外難しい…。根気が必要ですから…。
もしかしたらちょっと時間をおいてみるのもいいかもしれませんね。
126ガンプラ:2011/08/07(日) 22:02:00.62 ID:YKMAKdgH
>>122
まぁそれなんですが、あんまり読まないことをお勧めします…。
思いっきりネタバレなので。
多分、その板には何度かやっかいになりそうな予感です。
いや〜…日本語についての姿勢が改められます……。


全体的に、>>121様、>>124様の言ってることが的を射てるんですが、
『みつどもえ』という作品に思い入れが強すぎて、自縄自縛になってるというかなんというか…。
所詮作文なので、気軽に書けばいいのはわかってるんですけどねぇ……。
127名無しさん@ピンキー:2011/08/07(日) 23:31:00.90 ID:yHuHq8+0
思い入れが強くて良いに越したことは無いから、気長に待ってますよ〜
128名無しさん@ピンキー:2011/08/13(土) 14:14:06.10 ID:r3jJaiO8
犯罪を目的とした悪質なスレ。

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129名無しさん@ピンキー:2011/08/17(水) 01:02:36.25 ID:jSJAc/AZ
優しく受け止めてあげるっス!
だからそんなこと言っちゃだめっスよ!
130名無しさん@ピンキー:2011/08/17(水) 23:45:02.10 ID:xvoa+Cqm
ぷあっ…
131ガンプラ:2011/08/20(土) 22:15:42.25 ID:sSYUpH4D
リハビリにこねた。
タイトル無し。そろそろ少女マンガを元にタイトルをつけたいです・・・。
『なんて素敵にジャパネスク』とかから。
132リハビリこねた1:2011/08/20(土) 22:16:32.67 ID:sSYUpH4D
「それでねっ!2組の須藤くんと里中さんが熱愛中なの!」
今日もまた目をキラキラさせながら、吉岡が『重大ニュース』とやらをあたしと杉崎に『こっそり』大声で報告してくる。
なぁ〜んか最近、昼休みはコレが定番になってきてるな。
………そろそろ時間の有効な使い方ってやつを、真面目に考えた方がいい気がする……。

「確かに見えたの!
須藤くんが落ちたハンカチを手渡すとき、ふたりだけの秘密のサインが!」
それは絶対に気のせいだ。

真っ赤になって鼻息荒く語ってくれてる吉岡には悪いけど(?)、里中は佐藤派なんだよな。
女バスで一緒だからよく知ってるんだよ。

「…それにしても、よくまあ毎日こんなオリジナルストーリーを作れるわねぇ。
シチュエーションとか背景も毎回丁寧に作りこんでるし、なんかもう感動の域に達してるわ」
なんて言葉とは裏腹に、杉崎の顔に浮かんでるのはもちろん呆れだ。

「確かにな。
吉岡のパパの職業が職業だし、やっぱそういう才能とかあるんじゃね?」
「ちょっとふたりとも!もっとちゃんと聞いてよ!
超超重大ニュースなんだから!!」
「「はぁ〜い」」

やれやれ、今日も長くなりそうだ……。
ま、吉岡が楽しそうだから良しとしとくかね。

「……そういえばさ、吉岡から見て佐藤はどうなの?」
しかし杉崎はこの状況を打開したかったのか、いきなり違う話題をふってきた。

「えっ?
えっ…えええぇぇっ!?なっ…なんでいきなり!?
そんな、えっと、もちろん佐藤くんは悪い人じゃないけど、正直ごめんなさいっていうか……」
「うぉい!ほんとに正直だな!」
そりゃそうだろうと思うけど。

「違う違う。そうじゃなくて、佐藤の周りに恋のオーラは見えないの?って事」
「ああ…なるほどな」

確かにあたしも気になってた。
クラスで、っていうより鴨小で…っつーか世界中探してもあれ以上わかりやすい男子はいないのに、
吉岡のセンサーは全くの無反応を続けてるってことに。
なんでなんだろ?
133リハビリこねた2:2011/08/20(土) 22:17:00.69 ID:sSYUpH4D
「なぁ〜んだ、そういうことかぁ。
う〜ん…杉ちゃんが期待してるところに悪いんだけど、佐藤くんの周りには特に何も感じないなぁ」
「……なんでよ?」
「だって佐藤くんも奇行が多いから」
「奇行〜…?
そりゃ確かに佐藤はバカだけど、そこまでは行ってないだろ」
言いつつ、視線を移動させてみる。

「だからさ、エアロ系のスキルで固めたほうが強いって!」
「うっせ。
俺は弱点をカバーするより特徴を延ばすのが好きなんだよ」
「それで田渕はいつもスキルポイント余らせるじゃん!もったいねぇよ!」
と、佐藤は机をはさんで田渕と意味不明な事を真剣に語り合ってるところだった。
……多分ゲームかなんかの事だろうけど、確かにあのイタい姿は奇行といえなくも無いな。

「じゃあグラムザンバーは捨てろって言うのかよ!?」
「どうせタルカジャの重ねがけの方が強いだろ!」
議論はどんどん熱を帯びていって、もう殴りあいでも始めそうな雰囲気だ。すっげぇバカ丸出し。
ったく…男子って暇さえあればゲームの話ばっかして、ほんっとにガキだよなぁ。
余計なお世話なんだろうけど、もうちょっとマシな時間の使い方を考えた方がいいと思うぜ。

トテチテトテチテ

「しんちゃ〜ん!」
「なんだよふたば」
明るい声で呼ばれた途端、いつも通り直前の行動をサクッっと打ち切って向き直る佐藤。
なんかスイッチでもついてんのかこいつ?
いい加減慣れたもんだが、それでもこの急激な温度の変わり方には呆れてしまう。
田渕も同じなんだろう、微妙に顔をゆがませて席に戻っていった。

…奇行ってこれか。

「昨日杉ちゃんにチブサの写真を沢山撮ってもらったんス!見て見て〜!」
嬉しくてしょうがないって顔で、ふたばが写真を机に並べていく。前から思ってたけど、ふたばってネコバカなところがあるな。
三女もチクビのことになると目の色変えるし、似てないんだか似てるんだかわかんねぇ三つ子だよ。
134リハビリこねた3:2011/08/20(土) 22:17:28.58 ID:sSYUpH4D
「これはご飯食べてるとこ!チブサはカリカリが好きなんだよ!
そんでこっちは洗濯機に落ちちゃったとこ!ちょっとドジなんスよね〜!」
一枚一枚、丁寧に状況を語りながら写真に込められた想いを説明していく。

「…へぇ…。
ふぅん……」
だけど返事はそれと正反対に、気の無いものばっかりだ。

だって佐藤の視線が写真を向いていたのは最初の3秒だけだから。

「…ははっ、そっか」
ゆったりと頬杖をついた佐藤が、優しい微笑を浮かべながら甘い声で囁いている。

なんて勘違いする女子もいるんだろうけど、中身がすっからかんな実態を知ってるあたしらは、
『また美化300%のしょーもない想い出に浸ってるんだろうなぁ。キモ』、くらいしか思い浮かばない。
いやほんと、こいつくらい単純に生きられたら人生楽しくてしょうがねえだろうな。

「ねっ!かわいいでしょ!!」
ふたばが顔を上げる、だけで教室が明るくなる。
…気のせい、じゃないと思う。だって今はクラスのみんなが視線を向けているから。

「お前が1番かわ……」
そして視線の集まる中、思わず本音を漏らしかけるバカが1人。

「………………………………………………………………………………………………」
完全にフリーズした…お?

ガタン

……勢いよく立ったと思ったら、黒板に歩いていって ガツン! うわっ!なんか頭をぶつけだしたぞ!!

ガツン ガツン ガツン

さらに3度ぶつけてやっと気が済んだ(なんのだか)のか、また席に戻っていく。

「ああそうだな。この鯵の切り身に警戒してるのなんて、すっげぇ可愛いよ」
「し…しんちゃん、頭から血が……」


視線を戻し、呆然としちゃってる吉岡に賛辞を送る。
「お前が正しい」


<おわり>
135ガンプラ:2011/08/20(土) 22:19:23.54 ID:sSYUpH4D
かなり状況描写多めです。
どっちかというと、テンポ重視で状況描写はわざと削ってたんですが、
思い直して読み返すと、削りすぎなところが多かった……。

私の『本編』扱いの作品は全体的に見直し中です……。

ていうか、エロって本当に難しい…。
136名無しさん@ピンキー:2011/08/20(土) 23:12:35.76 ID:CAzIv0Iz
おぉお、乙です!
ガンプラさんの書くしんちゃんはすっかりふたばに憑かれてますねw
ニヨニヨ出来て楽しいですw
そんなしんちゃんを過小評価(?)しまくる宮下視線も面白いです
137名無しさん@ピンキー:2011/09/05(月) 20:17:17.90 ID:1ZVdl43T
もしかしたらもう落ちてしまったかと思ったが別にそんなことはなかった
よかったよかった

>>135
亀だけどGJ
第三者視点のふたしんって良いね、思わず頬がゆるんでしまったよ
138名無しさん@ピンキー:2011/09/06(火) 23:06:57.73 ID:I92RZHG9
過疎ってるからageるぜ
139ガンプラ:2011/09/09(金) 22:15:42.10 ID:mz3Mv9nx
うぅん、スランプ。というか迷走中です。
ちょっと状況描写を意識してリテイクしてみました。ご感想などあれば嬉しいです。
140名無しさん@ピンキー:2011/09/09(金) 22:16:37.15 ID:TnweumfL
投下少なくて寂しい
復帰待ってます
141せんせいでいれません1:2011/09/09(金) 22:16:49.42 ID:mz3Mv9nx
友達たくさんいるし!


「ふぁ〜…。
ひとはちゃん、おはよう…」
「おはようございます」

…このやりとりにも慣れちゃったなぁ……。

日曜日の早朝。
寝ているボクの足元、ベッドの脇にちょこんと座ってる幼い教え子へ、朝1番の挨拶をする。
そしてその子が、視線を手の上の小さな同居人に固定したまま、興味なさそうに返事をする。
もう1年近く繰り返してきた、ボクの日常。

……ほんとは良くないことなんだよな…と思いつつ、注意できない弱いボク…。
早くあのカセットテープを返してもらわないと……!

……………………。

もうすでに、取り返しのつかないところまで来てるような気もするけど……。

不意によぎった不吉な考えを追い出すべく、かゆくもない頭をボリボリ掻きながら身体を起こすことする。と、

「寒っ…!」

途端に容赦なく襲い掛かってきた冬の空気から身を守るため、あわてて自分の両肩を抱く。
ひぃ〜…エアコンのリモコン、昨日どこに片付けたっけ?
1月の第2週、3連休の初日を丸々使って綺麗にした部屋を見回すと、リモコンはすぐテーブルの上に見つかった。
いやぁ、頑張って掃除した甲斐がさっそくあったなぁ。

ピッ

スイッチを押すとすぐに、希望通りに温風が送り出されてきた。これで後ちょっとの辛抱だ。
…にしても、こんなに寒かったらさすがのひとはちゃんもつらいだろうに。

「ひとはちゃん、寒かったら遠慮なく暖房使ってね。風邪なんて引いたら大変なんだから」
「………やだチクビ(*ハムスター)、くすぐったいってば」
142せんせいでいれません2:2011/09/09(金) 22:17:19.51 ID:mz3Mv9nx
やっぱり無視か………。
ボクの心配なんてどこ吹く風で、変わらず手の上のチクビと遊び続ける教え子の姿に、思わず目頭が熱くなってしまう。
いつもの事とはいえ、傷つくなぁ……。
まぁ子供が遊びに集中してるときに声をかけても、反応が無いのは当たり前なんだろうけどさ。

「チー、チチチ」
「…………」

微笑みながら指でハムスターの鼻をくすぐってる少女の姿は、まるで1枚の絵画のようで、なんとなくそのまま見続けてしまう。
っていうかこの子はちょっと現実離れしてるから、余計に『絵』っぽくなってる気がする。
今日だってそうだけど、ひとはちゃんは滅多な事じゃ寒がりも熱がりもしない(もちろん服装は季節に合わせてかわるけど)。
性格も基本的には静かだし、姿も小さくて…ちょっと恐いくらいだから、
なんだかひとり現実世界と壁を隔てたところに居るみたいだ……。
なんてぼぅっと考えてると、不意にひとはちゃんが顔を上げた。

「先生、今日はちょっとだけ部屋の散らかりがマシなってますね。
ほんのちょっとだけですけど。
あの汚さでは、ゴミで窒息死してしまうことにやっと危機感を覚えましたか?」

そしてボクに向けられる、無表情と冷たく響く声。
……百分の一でもいいから、チクビに向ける優しさをこっちにもくれないかなぁ……。

「…これでも頑張って掃除したんだけどね」
「空き箱を捨てただけで『掃除した』なんて、先生の常識を疑います。
まぁこれからガチレンを視聴するので、ほんのちょっとでもマシな方が私も助かりますけど」
「…今日も6時前には来て、チクビとは十分遊んだんだろうし、家に帰って見てくれないかな?」
「嫌です。
家ではみっちゃんとふたばがうるさいので。
ここは精神的苦痛を受けるほど汚いですが、
『ガチレンを落ち着いて見れる』という一点についてのみは評価していますよ」
「…それはどうも……。
………そこまで言うなら、たまには掃除を手伝って欲しいな〜…とか思ってみたり……」
「部屋中の黒いアレがいなくなるくらい綺麗にした後なら、少しは手伝ってあげてもいいです」
「……ありがとう」
143せんせいでいれません3:2011/09/09(金) 22:18:25.32 ID:mz3Mv9nx




「やっぱり15体合体ジェネシックガチガイガーは最強だった…!」むふー
「うん!合体シーンもかっこいいしね!
初合体のときなんてスロー再生で10回以上見直しちゃった!」
「あれはもはや芸術です。
そうそう、芸術といえばスーパーレッドの……」

ふたりでベッドに腰かけ今日のガチレンについて熱く語り合う、週に1度の楽しい時間。
なんだかんだあるけど、こうやってリアルタイムで感動を分かち合える仲間がいるのは嬉しいな。
今の職場は…この町はもちろん良い所だけど、まだまだ馴染んでない身としちゃ、
こういう時間が持てるのはありがたい……っと、いかんいかん。これじゃ公私混同だぞ。しっかりしろ。

……あぁ…でも、

「……で、やっぱり私としてはガチDDTが1番だと思うんです」むふう
こうしてる時は本当に楽しそうに笑ってくれるから、ますます弱るんだよなぁ…。

いつもは気後れさせられるお人形みたいな顔も、陶器みたいな肌も、塗れたような黒髪も、
こうやって歳相応の笑顔に彩られると本当に可愛いくて、輝くほどに綺麗で、つい注意が後回しになっちゃう(理由は他にもあるけど)。
………まあここまで来たんだし、もう少しくらいはこのままで良いか。

「そうだね。
予告だとさらに新装備も出るみたいだったし、来週も楽しみだね〜…」

……とは言え、せっかくの休日に早くから起こされ続けるのはちょっと……。
早起きが良い事なのはわかってるけど、たまにはゆっくり寝かせといて欲しいよ……。
ふあぁ〜〜…ひと段落したら…ねむ……。

「……さて、それじゃ…」
「ああ、うん。また明日学校でね」
やれやれ…今日はこれで帰ってくれるか……。
まだ時間あるし、二度寝しようかな。
などと考えるボク視線の先で、ひとはちゃんが腰を浮かせ、

「なぜ部屋をマシにしたのか、理由を聞いておきましょうか」

こちらに向き直って、声と目で詰問してきた。

「…いや、なんで……?」
「普段と違う行動をとるということは、何かしらの犯罪計画の可能性が考えられるので。
場合によってはあのテープを持って、通報しに行かなくてはなりません」

ナチュラルに脅してくるな…。
144せんせいでいれません4:2011/09/09(金) 22:18:49.02 ID:mz3Mv9nx
「……今日、大学時代の友達とこっちで新年会をすることになっててね。
駅前で飲むんだけど、二次会にボクの部屋に来ることになるかも知れない…っていうか、
多分なると思うから、片付けたんだ」
「そんなに親しい友達がいたんですね。驚きです」
「当たり前だよ!
ていうかキミに言われたくないよ!!」
「まあどうせ男の人ばっかりなんでしょうけど。
世の中は成人式の3連休で明るいというのに、本当に寂しい人生ですね。
しかもべろべろに酔わされた挙句、キャバクラの支払いを全部押し付けられ、
足りない分を身ぐるみ剥がされて泣いて帰ってくるなんて、まるで先生の今年の運勢を暗示しているかのようですね」
「ボクも怒るときは怒るからね?」
「でも、男の人ばっかりなんでしょう?」
「……まあ」
「やっぱりそんなところでしょうね」むふぅ
そしていつものように『むふぅ』と、満足そうな顔で勝ち誇られてしまう。

はぁ〜…今日もこっちの負けか。情けない。どうもボクはこの子に弱いなぁ。
相性が悪いというかなんというか……。

[ガッチガチに決めるぜ〜]

「あっ、電話だ…っと、ちょうど友達からだ。
…やあ、やっさん。
…いや、起きてた起きてた。
…ああそうだよ、戦隊モノを見てたんだよ。いいだろ、ほっといて!」

「……………………」

「…うん。今日の店はこっちの駅前で予約してるから。ボク入れて3人でいいんだろ?
…へ?1人追加?いいけど…誰が来るの?
…ええっ!扇さんが!?
…いや…彼女、実家のある広島の方に赴任したんじゃなかったっけ?」

「……………………」ピクリ

「…へー、そりゃいいね。扇さんもホテルは駅前で取るの?
…あー…確かに、彼女ならボクの部屋を見に来そうだなぁ……。
…了解。真面目に片付けとくよ。じゃ」

ピッ

「奇跡的に女性も来るようですね」
「ん?そうだね……女性なんだけどね……」
「先生のテンションが低いということは、おっぱいの小さい人なんですね」
「いったいボクをどんな人間だと思ってるの!!?そんなことで言いよどんだんじゃ無いよ!!」
「じゃあ、どうしてなんですか?」
「……その…ちょっとエネルギーが有り過ぎる人というか…酒癖が悪いというか…。
昔、振り回された思い出が…」
「部屋に押しかけてきたり?」
「何度かね…。
戦隊モノ好きのこととか、結構言われたなぁ。
今日はガチレンフィギュアも片付けておくか」
「……部屋に泊まっていったり?」
「…1度だけ、ね。
あの時はベッドに吐かれてひどい目にあったよ……」
「……………ふーん、そうですか」

…なんだか今度は、答えるたびにどんどん表情が消えていってる気が……。
145せんせいでいれません5:2011/09/09(金) 22:19:12.50 ID:mz3Mv9nx
「素敵なお友達が来てくれることになって、良かったですね。
……どうやら珍しく本当に忙しいみたいですから、帰ります」
言葉のとおり、今度こそベッドから降り立ち、出口へと向かう。無音で。

ずっと気になってるんだけど、この『スイー』って感じで滑るように歩くのって、どうやってるんだろう?
音がまったく立ってなくて挙動もすごく小さいのに、結構速いから不思議でしょうがない……おや、玄関前で止まった。

「……ちなみに、駅前には何時集合なんですか?」
銀鈴を鳴らすような声は、けれど小さく、あんまりにも透き通り過ぎていて、持ち主の気持ちを推し量るのにはいつも苦労させられる。
今は表情を読み取る事もできないから余計に。
だって背中を向けられたままだもんなぁ。

……お話しするときは相手を見ようよ。

「…6時だよ。
まあ、それまでにもうちょっと部屋を掃除しておくよ。
確かに言われたとおり、まだまだ汚いわけだし」
「………頑張ってください」

バタム

……?
ひとはちゃんが応援してくれるなんて珍しいな。それに…なんていうか、怒ってる…って感じでもないし……?
…学校で聞けばいいか。今は頑張って掃除だ!

まずはフィギュアを箱に仕舞って……。





「よし、そこそこ綺麗になったな。
そろそろ行くか!」

バタム ガチャガチャ タンタンタン




スイー ガチャガチャ バタム
146せんせいでいれません6:2011/09/09(金) 22:20:28.41 ID:mz3Mv9nx




「うぃ〜…もうダメぇ〜〜」

10時を回ったところで一次会はお開きとなり、予定通りに二次会会場へ移動と相成った。
ボクは男友達2人に両脇を支えられ、『運搬』してもらってる状態だけど……。

「ったく、さとやんは相変らず酒弱ぇなぁ。
オラっ、部屋に着いたぞ!鍵出せ鍵!」
「…うい。
え〜〜っと、どこだっけ…?
…あ、汚い部屋だけどびっくりしないでね」ゴソゴソ
「別に期待してねぇって」
「おうおう、遂に新・矢部君邸のベールが解かれますなぁ!
やっぱり昔みたいに、特撮のビデオとか人形が飾ってあるのかな〜?」
「ははっ!そうそう!」
「いやいや、大穴で彼女が掃除とかして待っててくれてたりして!
『智さんお帰りなさい。お夜食もできてますよ』みたいな!」
「ないない!」 「それは絶対ないな〜!」

「「「わははははは」」」

うう…みんなひどいや……。
……でもほんと懐かしいな、この感じ…。
おっと、鍵、あったあった。

ガチャガチャ

「開いたよ〜」
「お、サンキュ」 「お邪魔しまっす」 「お邪魔するね〜」

電気電気…。

パチッ

………!!?

「うわっ、すっげー綺麗にしてんじゃん!
ちっとは片付けてると思ってたけど、予想のはるか上を行く綺麗さ!!」
「ふえ〜……こりゃすごいねぇ〜。
なんか、磨き上げられてまぶしいくらいだよ」
「なんだなんだ〜。
扇が来るから気合入れたのか〜?」
「えっ!?いや、その…あはは……。
いや〜、普段からこんなもんだって〜」
ええええ??なんでこんなに綺麗になってるの????

「嘘つけって!お前が普段からこんなに掃除してるわけねぇだろ!!
…なにお前、本当に彼女が…?」
「いやいやいやいや!何言ってるんだよ!ボクにそんな甲斐甲斐しい彼女がつくれるわけ無いでしょ!!」
…自分で言ってて悲しいや……。

「お?
でもさとやんらしく、なんとかレンジャーの人形も飾ってるじゃん」
「ええ!?」
確かに片付けたのに!?
147せんせいでいれません7:2011/09/09(金) 22:21:31.20 ID:mz3Mv9nx
「あら?このお皿、フタ…わっ!美味しそう!!
ひょっとして…これも!こっちもだ!!
すっごい豪華!!」
「はあ!?」
ちょっ、何それ!!?

「マジで!?うおっ、すげぇ!
どれどれ……おお、すっげーうめぇ!
こりゃほんと、ツマミにするには豪華過ぎだな〜」
「おいおいさとやん〜、白状しろよ〜。
これ、明らかに手作りだよな〜〜?」
「へえ!?
そっ…それは……あれだよ、料理が…料理に…っ!
そう!こっちに来てから、料理に目覚めちゃって!!いまどき自炊くらいできないとね〜!
あははは……」
「ん…床に……?
髪の毛…長さからして矢部君のじゃないよね」

ぶぅ!!

「むむ…この細さ、この艶!明らかに女の子のだね〜!
……ほんと、恐いくらいに綺麗な髪だな…」
「おっ、ベッドにもおんなじような髪が落ちてたぜ?
……ベッド…ってことは!」
「さぁ証拠は全てあがってるんだ!白状せい!」
「観念しなよ、矢部くん!!」
あれよあれよという間に、弾劾の言葉を突きつけられてしまう。滴るほどの艶を湛えた黒髪と一緒に。

なんでみんなそんなに楽しそうなの!?目がめちゃくちゃキラキラしてるし!!酔ってるでしょ!!
って当たり前だけど!!

「ええええっと、それはどういうことかと言いますとだね…!」

………マズイ。
犯人はわかりすぎるくらいわかってるけど、バレたら全部終わっちゃう!!
あぁでも、適当な言い訳が思いつかないよ〜!!

「あ〜そのぅ…彼女、的な人がボクにもやっとできて…っていう感じもあったりとか…」
「おお!?あのさとやんに彼女が!!
……いや、そりゃマジでめでたいよ。ほんと、おめでとう。
今度ちゃんと紹介してくれよ」
148せんせいでいれません8:2011/09/09(金) 22:22:00.70 ID:mz3Mv9nx
「むしろオレに譲って。これマジで美味いわ。
こんな料理上手な彼女なんて、うらやましすぎ!」
「しかもこの髪。
あたしのプロファイリングからすると、かなりの美人と見たね!
手入れに気を使ってるんだろうけど、この艶はやっぱり本人の髪質が良いんだよ。
経験的に、髪の綺麗な娘って美人が多いんだよね〜」
「そ…そうだね。真っ黒な髪が…それに笑顔が綺麗な子、だよ…。
アハハハ」
「なんで声が上ずってんだ?
…まぁいいや。
とにかくさぁ、ほんとにちゃんと紹介してくれって。
友達としてさとやんのこと、お願いしときたいしよ!」
「あ…ああ、そのうち…ね。
もちろんボクも紹介したいんだけど、ちょっと人見知りする子でさ。
だからもう少し待っててもらえると嬉しいんだよな〜…。
他のみんなにも、まだ内緒にしといて欲しいというか……。
時期が来るまで、頼む!!」
「……いいけどさ。
さとやんがそう言うなら、事情あんだろし。
…しっかし美人で、家事万能で、趣味に理解がある上、『ボクにだけ心を開いてる』ってか〜?
どんだけだよ!
いったいどこでそんなスペック高い娘と出会ったんだ?
言い方からすると年下みたいだけど」

どっきぃ!

「い…いやぁ〜、なんていうか…職場での出会いがあったような無かったような…。
あは…あはは…」
「職場って…鴨橋小学校だろ?
でも年下……ははぁ〜ん、さてはお前、ついに独りに耐え切れなくなって、教え子を連れ込んだな〜?」

どっっっっきぃぃぃぃ!!

「アハハハハハ、ナニイッテルンダヨ。ソンナコトアルワケナイダロ」
「……………」
「アハ…ハハハ……」


ごくり………。

149せんせいでいれません9:2011/09/09(金) 22:27:50.99 ID:mz3Mv9nx
「ぷっ…はははっ!悪ぃ悪ぃ!ネタだネタ!
用務とか教材業者の娘だろ?わぁ〜ってるって!!」
「お前そりゃさすがにキツいぜ〜!
だって小学生だぜ?即通報レベルじゃん!
いくら何でもさとやんに失礼っしょ!」
「あはは、そうだよ!
真面目で、それ以上に巨乳フェチな矢部君に、そんなスキャンダルはありえないから!」

「「「あははははっ!!」」」

「アハハハハハ〜〜」


……なんとかごまかせたか……。


ワイワイ


「でも、矢部君に彼女か…」
「そっ…そうなんだよ〜」
その話題にはもう触れて欲しくないないだけどなぁ…。

ベッドに座る扇さんをどぎまぎしながら床から見上げる。と、心臓が別の意味で鼓動を早めた。
アルコールのせいだろう、ほんのり紅潮した頬に浮かぶ微笑みは昔よりずっと艶やかで…だけどその目は寂しそうに伏せられていて、
まるで………おいおい、自意識過剰だぞボク。

「やっぱり寂しいな………」

「え…?」
ひょ…ひょっとして扇さん、ほんとに実はボクのことを……!?

「もうあんまり矢部君で遊べないや」
がくっ。

「ちょっと…遊ぶって……」
「ん?ああ、すねるなすねるな!悪い意味じゃないんだから!
でもほんと、彼女さんが恐いから今後は付き合い方に気を付けよっと!」
「恐い、か……」
確かにあのオーラとかは……。

「うん。
矢部君も気をつけなよ〜。こうやって自分の痕跡をはっきり残して行くタイプは、か〜な〜り嫉妬深いからね。
冗談じゃなくて、対応間違えるとサクッと刺されて終わるよ?」
「刺っ……!
もっ…もぉ〜、変な脅し方しないでよ〜。
痕跡って…髪の毛はたまたま落ちちゃってたんだってば」

……でも。

確かにひとはちゃんには、嫉妬深いところがあるよなぁ…。
前にチクビのことでふたばちゃんとケンカにしそうになってたし…。
矛先がボクに向くことは絶対ないけど、あの子の将来のためにちょっと注意しといてあげたほうがいいかな。

「さあ、今日はさとやんに彼女ができた記念だ!
朝まで飲もうぜー!!」
「「お〜〜!」」
「うへぇ、お手柔らかに…」

150せんせいでいれません10:2011/09/09(金) 22:28:19.60 ID:mz3Mv9nx
――――――――――


「いたた…何とか回復したけど、おとといはかなり飲まされたなぁ……」
おかげで昨日は一日中寝込んで、何もできなかったよ…。
今朝も起きるのがかなり辛かったし……。
ひとはちゃんがタンスの中まで整頓してくれてたから、朝の準備に時間をかけずに済んで助かったよ。

「ふぅ……」
なんとか職員室の机に辿り着き、ふらふらの我が身を預ける。
うぅ〜…まだちょっと気持ち悪い……。

「二日酔いのまま学校に来るなんて、大した生活態度ですね」
「面目ない……。
教室に行くまでにはしゃんとするよ。
…というかひとはちゃん。せめて休み明けの朝くらい、机の下は遠慮してもらえないかな……」
「先生に指図される筋合いはありません」
「あるよ!
……それと、こないだボクの部屋の掃除とかしたでしょ?」
「しましたよ」
「…なんで?」
「せっかく部屋を綺麗にしてもらったんですから、まず言うべきことがあるんじゃ無いですか?」
「あっと、そうだった。ありがとうございます。
…だけど何で急に?」
「たまには手伝って欲しいって言ったのは、先生じゃないですか。
あの日の夕方はたまたま時間が空いたので、ちょっと気分転換も兼ねてしてあげたんですよ」
「…確かに言ったし、ありがたかったけど……。
来客がある事も言ってたんだから、電話とかで教えておいてくれたらもっと嬉しかったなぁ」
「そんなの私の知ったことじゃありません」
「……料理は?」
「最近いろいろ手の込んだものに挑戦してまして。
さすがにちょっと自信が無かったので、実験台になってもらおうかと」
「実験台って!ひどい!!
あっ…ううん。でもとっても美味しかったよ。来たみんなもすごく喜んでくれたし。
ありがとう」
「そこまで感謝されるということは、力を入れ過ぎましたね。
無駄な労力を使いました」

………やっぱりいたずらとか気まぐれか。
とは言え、掃除して美味しい料理を用意してくれたのはほんとのことなんだし、もっとちゃんとお礼を言わなきゃな。

「よいしょ」
いつものように膝を抱えて丸くなってる生徒と目をあわせるために、椅子を引いてかがみこむ。
151せんせいでいれません11:2011/09/09(金) 22:30:19.90 ID:mz3Mv9nx
ネコみたいだ。

薄暗い中で煌き浮かぶ瞳に、その頭へと思わず手を伸ばし…かけて、やめる。
この子は子ども扱いされるのが嫌いだもんな。
だから今日も、言葉ではっきりと伝えよう。

「本当にありがとう、ひとはちゃん」

「…………別に」
ありゃりゃ、今日も目を逸らされちゃった。残念。
もっとあの綺麗な輝きを見ていたかったのに。

「…まあ、あの部屋は私も使ってますから。
せっかくあれだけ綺麗にしてあげたんです。せめて今月くらいは掃除に気を使ってください」
だけど耳に届いた音色はちょっと嬉しそうで、花びらみたいな唇にはうっすら笑みが浮かんでて。

「うん!!
ひとはちゃんが今度来たときに、気持ちよくガチレンを見てもらえるよう頑張るよ!」

…ボクはバカだ。
ひとはちゃんがボクのために頑張ってくれたっていうのに、いたずらだなんて思ってしまって……。
そうだよ!この子は姉妹想いで友達想いの、優しい良い子なんだから!

「あぁ、それと」
「なにかな?」

机の下から伸びてきた手には…紙切れ?

「コレ、食材のレシートです。調理費は2割増しでいいですよ。
あと…いえ。趣味の悪いエロ本とDVDを全て処分してあげた分は、サービスにしておいてあげましょう。
泣いて感謝してくださいね」
「やっぱり恐ろしい子だよ!!」



<おわり>
152ガンプラ:2011/09/09(金) 22:35:18.34 ID:mz3Mv9nx
タイトルを僅かに変更してます。
本来、「ら」抜き言葉は美しくないと思っているのですが、
タイトル元ネタが『せんせいになれません』なのでこちらの方がふさわしい気がしたので。

『〜憂鬱』もちょこちょこ書いてるんですけどね。


>>136
憑かれてる…『取り憑かれてる』っていうのは、言いえて妙ですね。
私はしんちゃんを『狂っている』としてデザインしていたのですが、『憑かれている』の方が正しいかも。
ちょっと劇中つかわせていただくかも知れません。
153名無しさん@ピンキー:2011/09/09(金) 22:58:38.45 ID:jA79eaZl
このネタ前見た事ある気がするんだが、気のせいか?
154名無しさん@ピンキー:2011/09/09(金) 23:13:03.31 ID:mz3Mv9nx
リテイク
155名無しさん@ピンキー:2011/09/10(土) 11:24:04.43 ID:Vf20RyYS
投下します
高校生ぐらいの感じで
規制もらったらゴメン
156名無しさん@ピンキー:2011/09/10(土) 11:26:36.45 ID:Vf20RyYS
うぅ…私、足りないのかなぁ。二人きりでいることだって多いのに。
おっぱいも結構あると思うし、ちゃんと意識してもらってる思うのに…。
しんちゃんが手を出してくれないよーーー!!
何が足りないんだろ…。

でも手を出してもらいたいって淫乱なのかなぁ…。でもでも…。

「どうしたの、ふたば」
「あ、ひと。何がー?」
「えっ…そんな表情しておいて何がって…」
「…そんなに顔に出てる?」
「いかにも悩んでますって感じ。泣きそうに見える」
「うぅ…やっぱ好きな人のことは考え込んじゃうよ」
「…っ」
「えっ!?今笑うところあった!?」
「ごめんごめん、我が姉ながら随分乙女チックだな、と」
「そりゃひとはから見れば子供じみて見えるかもしれないケド…」
「どういう意味?」
「私も早く大人になりたいってコト」
「あぁ…」

納得されるとそれはそれで不満!!
157名無しさん@ピンキー:2011/09/10(土) 11:34:31.56 ID:Vf20RyYS
「ひとはがちょっと羨ましいよ。何かあっても相手は責任取れる立場だもんね」
「捕まると思うよ…」
「結婚してでも乗り切るでしょ?」
「…私のことはいいんだよ。ふたばのことだよ。二人きりでいること多いけど、全然何も?」
「うんうん」
「アプローチとかは?」
「してる!腕に抱きついたりとかもうすっごく!」
「…ということは、ふたばのソレ当たってるよね」
「当ててる」
「ぐ…し、しんちゃん、よく耐えられるね…」

ちょっと詰まりながら答えてくれたけど、ひとはのも成長していたりする。
というかアレは揉んでもらってるからと見てるんだけどね。
私のほうは…そーだよね、正直たまに男の子の目がガチだったりするから、もう少し慎ましやかでもいーかも。
しんちゃん相手に効果があんまり無いみたいだもん。
…私って、イマイチなのかなぁ…。

「また暗くなってるし」
「うぅー、だってー…私だって女なんだよ?好きな人には触れて欲しいよう」
「…だね」

ひとははもう触れて貰っているケド、色々あったのかな?なんかすごい実感が…。
158名無しさん@ピンキー:2011/09/10(土) 11:40:07.16 ID:Vf20RyYS
「私、あんまり魅力ないのかなぁ…」
「ふたばに無かったら私はどうすればいいの」
「えぇ!?ひとははエロいよ!?」
「えっ…あ、また脱線しちゃうから。とりあえず、ふたばは身内贔屓ナシでいいと思うよ」
「でも、しんちゃんが全然見てくれて無い…」

あぁちょっとひとはが頭抱えてる。

「…しんちゃんに私からそれとなく聞いてみよっか」
「お、お願いっ!!」

持つべきものは相談できる姉妹だー…!

―――――――――――――――
いや、原因は分かってるんだけどね。何せあの優秀真面目なイケメン君は、責任が、とかで悩んでるんだろう。
はぁ…ホントにもう…。ヘタレも真面目も変わらない。
女の子は触って壊れるようなシロモノじゃあないのに。無くなるけどね。
それだけ好きだし相手を欲してるし欲されたいと思ってるってことなんだけどなぁ。真面目すぎるよ。
とはいってふたばのおっぱいを我慢できるあたり、ガチガチな考え方なのは間違いないだろうね。
でも、それはね。大間違いなんだよ。

っと、ついたついた。
159誤爆した死にたい:2011/09/10(土) 11:42:38.07 ID:Vf20RyYS
「あれ…三女?」
「どうも。ふたばじゃなくて残念だったね」
「いや…何か用か?」
「うん、できればお話したいかな」
「んじゃ、あがれよ」
「お邪魔します」

階段を上がっていく。互いに無言。向こうは面食らっているし、私は今急いで話すことも無い。
部屋に入ってからで充分だ。

「で、何の話があるんだ?」

ふたばにはそれとなくと言ったがあれは嘘。直球しか投げるつもりは無い。
でもこれ、しんちゃんあたりが相手じゃないとできないことなんだけどね。

「はい、コレ」
「ん、何だこ…ブフッ、三女、何持ってきてんだよ!」
「ゴム」
「じゃねーよ!何で渡してきたんだよ!」
「明るい将来のため?」
「意味が分からん!」
「嘘つき」
「…」

考えたことも無いなんて言わせない。相手が好きで好きでずっと傍にいて、考えたことも無いなんてありえない。
ましてやふたばが抱きついているのに。考えたことも無いのが事実であれば、不能を疑うよ。
160名無しさん@ピンキー:2011/09/10(土) 11:50:10.54 ID:Vf20RyYS

「つーかお前おかしいだろ、こんなの渡したら襲えって言ってるようなもんだぞ」
「ふたば相手にもしたことないのに、そんな節操無しなの?」
「うぐっ…いやでも順番とかおかしいだろ、普通理由とか聞くべきじゃね?」
「そんなことより早くふたばを抱けってことだよ、言わせないでよ恥ずかしい」
「恥ずかしがるやつがこんなもん渡すか!」
「理由なんてね」
「ん?」
「どうでもいいんだよ」
「んな!」

嘘をついているのは私。しんちゃんの理由は分かってるつもりだ。それが大切なことであるということも。それでもね。

「泣きそうなぐらい悩んでるふたばを、自分の大切な人をほったらかしにするような理由なんてね、どうでもいいんだよ」
「何…?」
「最近本当に泣きそうになってるんだよ。知ってた?」
「いや…」
「だよね。ふたばだって結構考えてるんだよ。
暗い顔してたら心配されるだけで終わっちゃうとか、どうしたらしんちゃんが自分に魅力を感じてくれるのかとか。
腕に抱きついてるのだって彼女だからそうするかもしれないけどね、明らかに押し付けてることだってあるでしょ。
小学生の頃の仲良しの延長じゃない、私はこんなになってるんだって。こんなにも女の子なんだって。
なのに、全然伝わらないから泣きそうになってる」
「……」
161名無しさん@ピンキー:2011/09/10(土) 11:52:51.43 ID:Vf20RyYS
「伝えたいんだよ。私はしんちゃんを待ってるんだって。自分を求めてもらいたいって。だから懸命に主張してるんだよ。
なんでそうしなきゃいけないか分かるよね、しんちゃんなら」
「…嫌味か」
「あんな顔してる姉を見て気分のいい妹なんていないよ」
「うぐっ」
「しんちゃんの理由なんて私には興味ない。ふたばに言ってあげて。
それと、理由を黙っていることは、ふたばを泣かせることよりも大切なことなの?」
「そんなこと、ない」
「そう、じゃあふたばに話してあげてよ」
「あぁ、そうするよ」
「あとね、しんちゃんが悩んでるそれ、ふたば以外に取る気ある?」
「!!?…全く、無い」

はぁ…世話の焼ける。

「もう分かったでしょ、自分がどうしたいか。それとね。
ふたば、自分に魅力がないんじゃないかとか、イマイチなのかとか本気で悩んでるからね」
「んなわけ!」
「はいはい、ノロケは勝手にやってね。じゃあいってらっしゃい。今ふたば以外は家にいないし、ソレはあげるから使っていいよ」
「う、うるせー!」

――――――――――――――
162名無しさん@ピンキー:2011/09/10(土) 11:54:52.14 ID:Vf20RyYS
ごめん、忍法帖なめてた。続きは後ほど
163ガンプラ:2011/09/10(土) 22:57:51.00 ID:KdVQem6Q
>>153

言葉足らずだったので。

前に見たことある=『せんせいでいられません』は私の書いたものです。
二ヶ月ほど前、違う板で文章の校正をいただいたところ
『状況描写が足りなすぎてキャラの状況がわからない』という指摘を多数受けたため、
最近、状況描写をどのように入れるか、を試行錯誤しています。

とはいえ、もとの『せんせいでいられません』のテンポもそれなりに好きだったので、
コレに関しては二種類置いておけたらなぁ、と思いリテイク版を作ってみました。

私の(昔からの)悪癖で、wiki保存版もちょいちょい手を入れているのですが、
せっかくなので、こちらはこちらで別に保存していただければ幸いです。


まぁこれだけではマナーが悪すぎるので、別途なにか小ネタでも書きます。
164名無しさん@ピンキー:2011/09/10(土) 23:44:12.05 ID:AAX47b46
>>162乙!あたいは続きを待ってるよ
165 忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2011/09/11(日) 00:15:28.78 ID:POTt/fmu
>>162
投下乙です
続き期待してます

>>163 >ガンプラさん
了解しました
リテイク版という事でまとめさせて頂きます。
166>>161続き:2011/09/11(日) 21:33:37.25 ID:A7wKjWtQ
あれ、誰か帰ってきた。…ひとはかな?の割りに急いでる足音だけど。

「ふたばっ!」
「し、しんちゃん!?」

びびびび、びっくりした!でもとりあえず。

「の、ノックはして欲しいなぁ…なんて」
「あ、あぁ、悪い」

それにしてもしんちゃん急にどうしたのかな。ってわわ、抱き寄せられっ!

「ふたばはスゲー可愛いぞ!俺は大好きだ!」

え、えーと…何が起こってるのかな?

「あれ…?」
「しんちゃん、どうしたの?」
「いや…あれ?三女からふたばが自分はあんまり可愛くないんじゃないのか悩んでるみたいな話を…」

あ、ひとはそんなことも言っちゃったんだ。
うん、私じゃしんちゃんは満足させてあげれないのかな…。

「う、うん、そうだね。あ、あはは…」
「え、何でへこむんだ!?」
「だってしんちゃんが欲しいような女の子じゃ…」
「いや、ふたばは可愛いって!絶対!」
「でも…」
「あー、もう!」
167名無しさん@ピンキー:2011/09/11(日) 21:35:37.80 ID:A7wKjWtQ
――っ!?し、しんちゃん、急にするなんて!
キスはもう何度もしたけど、こういうのは初めて…。なんか…落ち着く…。
あぁ、私はやっぱりしんちゃんが大好きなんだぁ。

「あのな、ふたば」
「うん」
「話すよ、俺がどう思っているか、考えているかとか」
「…うん」
「正直言うとさ、ふたばの体、意識してる。
ふたばが抱きついてくる度にドキドキするし、触ってみてぇなって思ってる」

本当なのかな…。触ってもいいのに…。

「我慢してるの?」
「してるよ。すげーしてる」
「そんな必要…」
「まぁ聞けって。やっぱそーやって何も考えずに触っちゃうとさ、絶対歯止め効かなくなる。
だからなるべく考えないようにしてたんだよ。止まらなくなったら、ふたばの大事なモン貰っちまうだろ。
俺、そんな責任取れるのかなって考えたりさ。ずーっと一人でンな事考えてた。ふたばが泣いてるのも知らずにな」
「責任…」

しんちゃん、私のこと色々考えてくれてるんだね。

「あーそうだよ。好きなだけじゃどうにもならないソレだ。俺まだ学生だからな。
それに将来何があるかわかんねーとかな。けど、それだけを考えて大切なモン見失ってた。
俺、ふたば以外の責任なんて取る気がない」
「えっと…」
「この先もずっとふたばと一緒ってことだ」
「しんちゃん!」
「うわっ!?いきなり飛びついたらびっくりするだろ」
「だってー、我慢できないもん!」
168名無しさん@ピンキー:2011/09/11(日) 21:38:02.71 ID:A7wKjWtQ
えへへー。しんちゃんしんちゃーん。んー、ドキドキさせてみよっ!えいっ。
あ、しんちゃん目逸らしてる。

「しんちゃんは、嫌い?」
「んなっ、バ、バカ」
「だって、いつもそうやって目を…」
「ーっ!!あー、好きだよ好き。ふたばのソレ」
「…いいよ?」
「んぐっ……。触るぞ」
「うん…」

ふぁ…やっ…触られただけなのに、なんか、せ、背中っ!ふわわ!

「ど、どうかな…」
「やわらか…ていうかお前ブラ…」
「今日はお休みだったから…んっ…じゃなくて、私のおっぱい、しんちゃんの好みなのかな…?」

あ、あれ、しんちゃんの手が止まってる。それに、きょとんとしてる??

「え、俺の好み?」
「う、うん…」
「そんなの全部ふたばだぞ?」
「えっと?」
「好きな髪はって聞かれたらふたばみたいなのだし、顔はって聞かれたらふばたの。
手や足、胸の大きさ、どこの好みを聞かれても全部ふたばだぞ?」

わー!わー!しんちゃん!!?

「な、ななななに言って」
「?」

そ、そんな何当たり前のこと聞いてるんだって顔しないでよー!
169名無しさん@ピンキー:2011/09/11(日) 21:40:03.88 ID:A7wKjWtQ
「嬉しいけど、恥ずかしいー!」
「いやだって、俺ふたば以外好きになったことねーもん」

うわわわわわ!!

「し、しんちゃんズルい!!」
「はぁ?」
「しんちゃん色んな女の子が寄ってくるんだから、色んな可愛い知ってるでしょ?なのにそんなコト真面目な顔で!!」
「いや、ふたば以上なんていねーし」

な、何を言っても自分に返ってきちゃうよー!

「何度も言ってるけど、俺、本当にふたば以外どうでもいいんだぞ?」

うー!うー!

「しんちゃん恥ずかしい台詞禁止ー!!」
「なっ!別に恥ずかしくねーよ!」
「私が恥ずかしいのー!」

しんちゃんのバカー!ドキドキするよー…。

「ていうかふたばも結構モテてたりするじゃん」
「私のは…見られてるだけだよ」
「…まぁそういうのが多いのは否定しないが…」
「…しんちゃんも見ちゃう?」
「んなっ!?ま、まぁ、ふたばのだし…」

ふふ、しんちゃんが見てくれてるなら別にいーや。
170名無しさん@ピンキー:2011/09/11(日) 21:42:05.19 ID:A7wKjWtQ
「しんちゃん」
「ん?」
「続き、して?」
「うぐっ…あ、あぁ」

もう一回あたるしんちゃんの手。さっきの言葉を思い出して、体が熱くなる。
しんちゃんはあんなにも私のこと大好きなんだなぁって嬉しくなる。
やっぱりあったかいしんちゃんの手。あぁ、なんだかさっきよりも、ふぁぁって…!!
しんちゃん、しんちゃん…!

「えーと…する、ぞ?」
「…しよ?」
「痛い、らしいぞ」

ひとはに聞いたことがある。とっても痛かったって。
でも、それでも、すごく満たされたって。あぁ、自分はこの人のものなんだって気持ちになるって。
だから。

「いいよ。しんちゃんなら」
「そっか」
「あんまエロい本みたいなの期待すんなよ、俺だって初めてなんだから」

そういって私のおっぱいを触り続けるしんちゃん。
なんかさっきからずっと触ってるような…。

「おっぱい以外もいいよ?」
「あ、あぁっ。いや、うん、分かってるんだけどな。皆ふたばの見てたし、その、なんだ。
俺のなんだぞってことで、思いっきり触っておこうかと…」
「我慢してた分とかあるからいっぱい触りたいの?」
「…そうだよ」
「しんちゃんのえっち」
「んぐっ、わ、悪いかよ」
「んーん。しんちゃんもちゃんとえっちな目で見てくれてたんだなって」
「…目立つしな、ふたば」
「むー!そういう言い方っふみゅっ」

また急にキスするー!ドキドキしちゃうでしょー!!

「さ、脱がせるぞ」
171名無しさん@ピンキー:2011/09/11(日) 21:44:27.01 ID:A7wKjWtQ
あ…。そうだった…する、んだった。い、いっぱい、ドキドキ、してきた。
上着…脱…あ、袖、通さなきゃ…。あ、あれ、手ってどうやって通したら…。
あ…しんちゃんが脱がせてくれて…とっ、襟が、っとと。あ、髪…下りてきた。
ぶ、ブラ…、あ、してないっけ…。

「うぐっ…」
「し、しんちゃん?」
「い、いや、う、うん、驚いたんだ」
「わ、私も…」
「だ、だよな、いや、多分ちょっと違うんだろうけど、うん」
「?」
「いや、下も、脱がせる…ぞ?」
「…うん」

話してもらうと少し落ち着く。けど、今起こっていることはどうしても頭が真っ白になっちゃいそうだよ。
ずっとこうしてもらいたいって思ってたのに…。や、やっぱり現実になると、う、うん。
あ、ぱ、パンツ…、あ、ま、待って。

「し、しんちゃん」
「ん…どうした?」
「しんちゃんは、脱がない、の?」
「あ、そ、そうだな、脱ぐよ」

うぅぅぅ…は、恥ずかしいよぅ。小さい頃からずっと見てきたのに、今は、み、見れない…。
でもでも、もう直ぐしんちゃんの体が目の前に来ちゃうわけで、あうー。

「…ふたば?」
「ひゃ、ひゃい!」
「…これからすること、怖いか?」
「えっ……」

怖い?怖いわけ、無い。しんちゃんだもん。だから、だから…。

「ちょっと、怖い…」
「だよな。痛いって言うし、初めてのことだもんな。だから」
172名無しさん@ピンキー:2011/09/11(日) 21:46:30.22 ID:A7wKjWtQ
えっ、えっ??抱きしめて…くれてる…。

「こうしててやる。お前が少しでも怖くなくなるように。俺をきっちり見れるように。それまでずっと抱きしめててやる。
それでも怖かったら、言えよ?俺はお前と納得した上でしたい」

あ。

「泣いて、る?」
「う、うぅん、しんちゃんがいっぱい過ぎて、嬉しく、なって」
「…そっか」
「もう少し、このままがいい」
「…あぁ」

どんどん溢れてくる、大好きって気持ち。あぁそうだ、私、こんなにも幸せなんだ。
だけど、もっともっとしんちゃんが欲しい。そうだった、しんちゃんが、欲しいんだ。

「しんちゃん」
「ん、なんだ?」
「大好き」
「俺も、な」
「もう大丈夫だよ」
「そっか」

解かれるしんちゃんの腕。今度はちゃんとしんちゃんを見れる。しっかりと見つめられる。
しんちゃんも残りはぱんつだけだ。お相子だね。

「それじゃ、取るぞ」
「…お願い」

私を守ってた最後の一枚。それも剥ぎ取られて、私は、しんちゃんに見られることになる。
なんだか悔しいからしんちゃんも剥ぎ取っちゃおう。

「しんちゃん、最後は私が取るね」
「えっ、ちょおま」
「えいっ」

……おっきくなってる。

「ね、しんちゃん、これ」
「ふたばの裸が目の前にあるんだから、そりゃこうなるよ」
「ふふ、そうなんだ」
「ってふたば何してんだ!?」
「こぅふぅものひゃらいの?」
「さっきまで怖がってたやつとは思えないな…」
「らって、ほうらいひょうふらもん」
「うぐっ、くすぐってぇ」
173名無しさん@ピンキー:2011/09/11(日) 21:48:54.75 ID:A7wKjWtQ
なんか…くすっ。さっきまで結構いっぱいいっぱいだった私。でも今はちょっとしんちゃんが可愛い。
ちょっと真剣にしてみよう。

「ふ、ふたば、それっ」
「?」
「す、すげっ、変な、感じ」
「きもひひょくひゃい?」
「いや、なんか、今までにないから、さ。俺も、さ、触っていいんだよ、な?」

聞くまでもないんだけどなー。もうこうなった以上しんちゃんと最後までしたい。
それならしんちゃんにどんどん触って欲しい。そだ、しんちゃんに見せちゃおう。
恥ずかしいケド、これでお相子だよね。
しんちゃん倒しちゃえ。

「うわっ」

んと、頭はこっちで…。しんちゃんを跨って…。っと、よし。これでいいよね。

「ふたば、お前いきなりこんな」
「こ、これでお相子かなぁって。もう、しんちゃんに全部、見せたいって決めちゃったし」
「うぐ…わ、分かったよ」

ひ、ひゃぁ!?ひ、人に触れるのって初めてだけど、なんか、自分でするのと全然っ…!
指入れてもないのにっ、触られるだけで、は、はうっ!!

「っ、ふあっ!うくっ、し、しんちゃん、いいよ、ちゃんと、触れて?」
「…ん」
「ゆ、指はゆっくり、入れて…」
174名無しさん@ピンキー:2011/09/11(日) 21:51:02.15 ID:A7wKjWtQ
はぁんっ!ゆ、指、あ、あ、自分でシちゃうのと全然ちがっ、動き、わかんないからっ!!んぁん!
咥えて、らんないっ!!さ、さわ、んっんんっ!あたってるよ、ぅぅ。
やっん!んんっ、あ、壁、んあんっ!

「そ、そこっ、んあっ」
「な、なんか可愛いな」
「ふあぁっ、か、かわいいっ?」
「ん、ふたばが気持ちよさそうにしてるの見るとな」

こ、こんな時にっ、ふあっ、ひ、酷いっ!あんっんっ!!
ていうか、しんちゃ、なんでこんなっ気持ちっいっ!あっく、ぁぁぁんんっ!!
や、い、イっちゃ、んっうっ!

「う、うわ」
「…い、イっちゃ、んぅん…気持ちイイよ、しんちゃぁん」

あ、しんちゃんに倒れちゃった…。んぅ、気持ちいい、んだもん…。

「うぐ…。ふ、ふたば、俺が、も、もう挿れてみたい」
「いいよ…」

しんちゃんのが当たってる。指とは違うものが私にあたってる。ちょっとずつ入っ!!?!
や、い、痛っ、指、ぜんぜ、ちが、い、いた。

「んんんんっ!」
「ふたば?」
「や、止めちゃやっ、ちゃ、ちゃんとっ」
「…ん」

ま、また入っ、や、広がらない、よ、い、い

「いくぞ」
175名無しさん@ピンキー:2011/09/11(日) 21:53:12.04 ID:A7wKjWtQ
!!!!!!!!!!!!!?
はっ、はぐっ、はっ、はっ…ひぐっ、はっ…!

「大丈夫か…?」
「んっ、んぅっ、い、痛い、けど、だいじょ、ぶ。けど、ちょ、ちょっとだけ、待っ、て。抱き、しめて」
「あ、あぁ…」

い、痛いけど、それでも、しんちゃんの、だから。んう、しんちゃんの腕あったかい…。っひぐ、だ、だから。

「も、い、いよ」
「…それじゃ動くぞ」
「んぅぅぅぅっ、った、んっ」

う、動っ、しんちゃ、うんんんんん!いた、いけど、しんちゃ、ん。

「し、んちゃん、どっ、かな、わっ、たし!」
「なんか、絡んでる、なんていえばいいんだろうな、すげぇ、気持ちいい」
「そ、よ、よかっ、私もっ、うれしっ」
「無理して、喋るな…」
「だっ、う、嬉し、からっ」

痛い痛い痛い痛い痛い。でもでもでもしんちゃんがしんちゃんがしんちゃんが私と一つで。
全部全部全部私はしんちゃんの。それがそれがそれがそれでそれだけで。

「ふたば、好きだぞ」
「んぅっ!」

やっ、しんちゃんっ、き、キス、んっ!はっ、んっ。も、これ、これ好き、キス好き。もっとして、でももっともっと。

「しんちゃんっ、す、好きにして、わたし!好きにして!」
「悪ぃ、正直もう我慢してない」
「いいっよっ、がまん、して欲しく、なぁっ、もう、ぜんっぜん、が、まんっゃん!」
176名無しさん@ピンキー:2011/09/11(日) 21:55:42.65 ID:A7wKjWtQ
い、痛いけどけど、なんかちが、う、あうぅんっ、や、それっ、あっ。はげしっ、ん!
しんちゃ、もっとしてしてしてしてしてして。

「やっいっ、あっんぅぅぅぅぅ!そ、それが、やんっ!」
「ふたば、なんか、違うのか?」
「わか、んなっ、でも、そこっああああぁ、ん!」
「分かった」
「んんんぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

だ、だめだめあん、いた、きもち、ああ、やんん!!す、すごっ、んんん!!

「な、なんれ、きもちいいのあんんん!」
「うっく、ふたばの、顔、見ればっ、分かるって!」
「っっっ!!やっ、ら、見ちゃ」
「っ!ふたば、その顔、可愛いぞっ」
「やぁっ!しんちゃ、なん、あっん!」

見られてる見られてる見られてる見て見て見て見て。こんなにこんなにこんなに嬉しいから。

「んっ、くぅぅぅ、や、ひぐっ、ああああ」
「ふたば、俺も、気持ち、いっ」
「なんか、へっん、あ、うあぁ」
「おっれも、なんかっ、いきそっ」
「あ、あ、くるくるくる、きちゃぅああぁぁ」
「ふたばっふたばっ!バカっ、足、離…っ!」
「な、にぃっ、あぅぅぅあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっーーーー!!」
「出、るっ!」

つっっ!!!

「っはぁっ!はぁっ!」
「っっっーーーー!!!」
177名無しさん@ピンキー:2011/09/11(日) 21:57:43.65 ID:A7wKjWtQ
ま、真っ白、だっ…。

っは、っは…!し、しんちゃんが、まだ、被さってる…。

「どうしたの?」
「すっげぇ、気持ちよく、ってさ…、ふたばの顔も、見たくてな」
「…そんなに?」
「あぁ、そんなに、だっ。と、とりあえず、これ、抜くぞ」

あぁ、気持ちよくなってたんだね、よかtっっっ!!?

「ふ、たば?」
「ふぃぃ、な、なんかとろって…」
「!!??!?」
「ふあっ!」

うぅぅ、な、何コレ…。

「うぉ、俺のが…垂れてる…じゃねー!ふ、拭いておくから!」
「えっ、って、い、いきなりはだ、めっ!ゃんっ!」
「う、うわ、悪い」

しんちゃんー…恥ずかしいよぉ。でも…なんだか幸せ。
これからは、しんちゃんにこうやっていっぱい求められたいな。
って、あれ…しんちゃん?

「しんちゃん?」
「んー?」
「沈んでる?なんか変だよ?」
「あ、あぁ…うん、次は、うん、使おうってな…(すまん、三女)」
「?よくわかんないケド、しんちゃん、これからもちゃんとこういうことしてね?」
「ブフッ…お、おう」

ふふ、これからはちゃんとしんちゃんに女として扱ってもらえる。期待してもいいよね、しんちゃん。
178名無しさん@ピンキー:2011/09/11(日) 22:00:02.04 ID:A7wKjWtQ
終わり。

>>164-165
続かせといてこんなのでした。

仕様変わりすぎて戸惑ったわ…テンポ良く投下できねぇ
179名無しさん@ピンキー:2011/09/16(金) 18:17:50.85 ID:miOzVJr+
GJ!
180名無しさん@ピンキー:2011/09/16(金) 23:40:13.32 ID:uNfYHWBz
>>179
優しさに泣いた


気づけば既に黄昏時。放課後の時間にかまけて、チクビと遊びすぎてしまったようだ。
校舎内にする気配はまばらで、不気味な静けさを漂わせている。
急ぎランドセルを背負い、家路へとつく。

校庭に出たところで気づいたのは迫り来る雨雲。
この時期の風物詩ではあるけれども、それに降られる前に帰っておきたい。
急ごう。

「あれ、ひとはちゃん?」

こんな時に空気を読まないのは私の知り合いでは一人しか居ない。どんよりと見上げる見知った顔。

「先生」
「今、帰りかな?」

生徒がこの時間にランドセルを背負い、校門に向かっているとしたら答えは一つしかないだろうに。
ただ、その問答も今は時間の浪費になる。だから私は素直に応じる。

「はい、先生もですか?」
「そうだよ、じゃ、帰ろうか」

…小学生と大人が歩いていたらそれだけで通報されそうなこのご時勢に、この人はかなりお気楽だ。
最も、忠告などはしてあげないが。

「あんまり天気が良くないね」

先生と歩く通学路。時期が時期だけにただ歩いているだけで汗ばんでくる。
話をするのも疲れるので会話はしない。別にそれで居心地が悪いわけじゃないから構わない。
私と先生。それでいいのだ。
…っと。

「あちゃー、降ってきちゃったね、急ごうか」

とか言いながら先生は歩調を早めた。それについていく私も律儀なものだ。
が、それでどうなるわけでもなく、無情に雨は吹き付ける。勢いを強めながら。
…これはダメだね、雨宿りしよう。先生、ちょっと止まりましょう。
181名無しさん@ピンキー:2011/09/16(金) 23:42:15.48 ID:uNfYHWBz
「あはは、濡れちゃったねぇ…」
「まぁ、まだずぶ濡れじゃないからマシですけどね…傘があれば良かったんですけどね」
「あっ!あ、あは、あはは…」

…先生、私、先生が童貞の理由が良く分かります。

「持ってるんですね」
「お、折り畳み傘だけどね」

ふぅ、この人は…。

「ちょっと待ってね、傘を開くから」
「傘があるのは正直助かりますが、先生にしては準備がいいですね」
「ひとはちゃん、ひどっ!?」

酷くないです。

「さて、傘はあるんだけど…ひとはちゃん、これじゃ濡れちゃうよね」

私と先生の相合傘。言葉だけならば悪くないんだけど…現実を見れば、大きな身長差。
一緒に歩くのは不恰好だろうか。
なんだか、気分がよろしくない。

「問題ないです、私が借りれば済む話なので」
「えぇ!?僕は!?」
「濡れて帰るか、雨宿りを続けるかを選ぶしかないじゃないですか」

そんなわけない、先生と歩んでる道。自分で投げ出すはずが無い。

「ひとはちゃん、僕泣いちゃうよ!?」
「はぁ…仕方が無いので一緒に帰りましょう」

本当にめんどくさい人だ。私は…。

「え、でもさっきも言ったけど濡れちゃうんじゃないかな」

この人もめんどくさい人だ。私はそれでも同じ傘に入りたいと思っているのに…。
けど、絶対止めるんだろうなぁ…。だから。

「どこかコンビニでも寄ってください。そこでビニール傘を買います」
「ん、そっか。じゃあそれまで一緒に行こうか」

先生の傘は小さくて。小さな私の肩は濡れていて。大きな先生の肩はびしょ濡れで。

だから。

いつか、肩を並べて一つの傘に――――。
182名無しさん@ピンキー:2011/09/16(金) 23:44:32.14 ID:uNfYHWBz
おしまい

これをつけるのを忘れてしまうぜ…
183名無しさん@ピンキー:2011/09/19(月) 00:36:01.41 ID:dTZVHap/
>>178>>182GJ!age
184名無しさん@ピンキー:2011/09/19(月) 08:58:21.49 ID:QOwyp0vZ
みさおnp冬野でギリギリ買いだな
世代交代を感じさせる面子だな

画鋲かほかま・いさわ・
185名無しさん@ピンキー:2011/09/19(月) 08:58:50.07 ID:QOwyp0vZ
誤爆すまん…
186名無しさん@ピンキー:2011/09/19(月) 23:36:08.24 ID:f5vphjrH
書いてて思ってたけど、みつどもえって完全に少年漫画だよなー。
当たり前なんだけど。
なんか久しぶりに君に届け読んでたら、余計にそう思った秋の夜。
187名無しさん@ピンキー:2011/09/22(木) 21:08:48.08 ID:AfsUShV+
どなたか机×みっちゃんでお願いします。
188名無しさん@ピンキー:2011/09/25(日) 22:10:26.05 ID:DUSa0/vb
机って誰?
189名無しさん@ピンキー:2011/09/26(月) 09:07:31.13 ID:K+iIMvaZ
みっちゃんの旦那。
小一時間で離婚したけど
190名無しさん@ピンキー:2011/09/26(月) 10:17:05.94 ID:eV50v4bq
おしっこプレイも見れるかもしれないよね
191名無しさん@ピンキー:2011/09/30(金) 11:09:02.00 ID:EfWHoE3/
過疎age
192名無しさん@ピンキー:2011/10/02(日) 00:28:57.63 ID:6H6kutwx
>>182
遅レスだけどGJ。沈黙が苦にならない二人のナチュラルな感じがいいね
193名無しさん@ピンキー:2011/10/02(日) 11:29:49.65 ID:YClzivCu
吉岡さんのおっぱいを揉みまくる痴漢の腕を、ねじり上げる宮下さん
痴漢の恨みをかってしまい、不意打ちで気絶させられる宮下さん
手足を縛られ、レイプ寸前の宮下さん
偶然通りかかった矢部っちが助けに入るがボコボコにされる。
でもちゃんと110番してた矢部っち、痴漢タイーホ
以後ウザイくらい矢部っちにつきまとう宮下さん
ダークオーラ全開ひとは


というのは思いついた。
纏める文才がなかった。
194名無しさん@ピンキー:2011/10/03(月) 22:54:22.21 ID:n0cY2LjT
ダークオーラひとはの部分だけでも死に物狂いで書き上げるんだ早く
195名無しさん@ピンキー:2011/10/05(水) 19:57:41.17 ID:gidgDToi
のりお戻ってきて〜
196名無しさん@ピンキー:2011/10/07(金) 08:48:38.86 ID:5da4TMYW
>>188
夏の暑さでヘロヘロだったみつばが机の上に倒れて「冷たくてきもち〜…私机と結婚する〜」って言う話がある
乗ってたら脚折れて傾いたから「アンタとは離婚よ!!」ってキレられた
197ガンプラ:2011/10/09(日) 20:13:10.12 ID:ovkzHtG0
そろそろ来週あたりからちょっとずつ再開予定です。
全体的に修正入れたので、思い出しがてらどぞう。
198名無しさん@ピンキー:2011/10/09(日) 21:34:52.39 ID:z3cUVTK3
期待してますwktk
199名無しさん@ピンキー:2011/10/10(月) 00:09:15.57 ID:srLc3iEO
待っとります
200ガンプラ:2011/10/13(木) 01:09:45.02 ID:Vb0PX7/X
ちょこちょこ進めるスタンスは変わらずです。
『太陽の〜』の頃は、この辺でエロシーン入ってたなぁ。

ところで最近仮面ライダーが無茶苦茶面白いんですけど。
今時あんなシナリオを書いたライターがすごいし、それをOKした局もすごすぎる。
そしてラグビー部の先輩が輝きすぎていて、自分の話でも似たキャラを出せないか迷って、やめました。
201丸井ひとはの憂鬱48:2011/10/13(木) 01:10:30.28 ID:Vb0PX7/X
――――――――――


ここだけ世界が違うよなぁ。

杉ちゃんちには何度来ても、何年経ってもその感想が頭をよぎってしまう。
豪奢な門と高い塀に守られた、西洋式の見事な庭園。
ヒナギク、マーガレット、スズラン、スミレ…色とりどりの花に囲まれた石畳を進んでゆくと、
やがて私の大好きな白バラのアーチが見えてくる。

むふぅ……。

ここをくぐるときは、いつも胸がいっぱいになる。
鮮やかな緑の中に息づく清廉な純白が目を楽しませてくれるだけじゃなく、
春風に乗せて届けられる優雅な香り「三女にそこに立たれると、画になり過ぎて恐いから早く来て」 ………。

気を取り直して顔を前に向ける。すると、目には碧い屋根を戴く白亜の豪邸が映った。
春の日差しと噴水の飛沫が作る虹彩が、その美しさを更に引き立てていて、
見てると童話の世界に迷い込んでるみたいな気持ちになっちゃう。

いやほんと、ここって上尾市だよね?

まぁこの少女趣味も合わせて、それだけ真里菜さんのセンスが優れているって事の証明だ。
杉ちゃんちが常識外れに広いっていったって、もちろん本物のお城や庭園と比べられるほどじゃない。
だけどこの庭は、高い木々や敷地の僅かな高低を上手く使って、実際の数倍の広さに感じられるよう設計してあるのだ。
いつもおっとりし(過ぎ)ているように見えるけど、ひとりでこの庭園を計算し、維持できる真里菜さんは、
まさに『良家の才媛』って言葉が似合うすごい女性なんだって、大人になった今はよくわかる。
しかも美人で清楚でいつまでも若々しくて、おまけにあんなにおっぱいが大きいなんて、
ふたばが可愛く見えるくらいの勝ち組っぷりだよ……。

ちょっと、明らかに変なところがあるけど。

「ただい「いってきまーす!!」 キャッ!」
手をかけようとした玄関が突然開いたせいで、杉ちゃんから驚きの声が上がる。
知らない間に最新式の自動開閉ドアに改造されていた、わけではもちろん無くて、別の住人が中から勢いよく開けたんだ。

「なんだよ、ぼーっとしてんなよな姉ちゃん!!」
龍ちゃんは今日も元気いっぱいだな。
それにしばらく見ないうちにまた大きく…って、待ってこれは……いや、まさか……。

「龍太!!ドアは静かに開け閉めしなさいっていつも言ってるでしょ!
それにまず、ぶつかりそうになった私に謝りなさい!!」
隣を駆け抜けていこうとした弟の腕を、お姉さんがガシッと掴んでお説教を始める。
その光景があんまりにも微笑ましくて、頭に浮かんだ不吉な予感はどこかへ飛んでいってしまった。

決して現実逃避なんかじゃないよ。
202丸井ひとはの憂鬱49:2011/10/13(木) 01:12:00.20 ID:Vb0PX7/X
「そっちがボヤボヤしてんのが悪いんだろ!
俺、チームの奴らと遊んでやらなくちゃなんねぇから急いでんだよ!!は〜な〜せ〜っ!!」
掴まれた右腕をジタバタさせながら、龍ちゃんが声を張り上げる。
その中身と左手のゲーム機(神戸さんのとおんなじ機種だ)から察するに、友達と遊びに行くところだったんだろう。
ふふふっ、そりゃ男の子にとってはお姉さんのお小言を聞いてる場合じゃないよね。

「なんて言い様!
もうっ、ママと違って私はいつまでも甘い顔してないわよ!!
三女からも言ってやって!!」
「えっ…!?
三女!!久しぶり!!」
杉ちゃんの言葉でやっとこっちに気付いたみたいだ。
宝石みたいに輝くどんぐりまなこが私に向いてくれた。

「うん、ちょっとご無沙汰だったね龍ちゃん。
元気そうで嬉しいけど、お姉さんを困らせちゃだめだよ」
「べっ…別にそんな事してねぇよ!」
「じゃ、ぶつかりそうになったの謝らなきゃね」
「うっ……くそっ。
……悪かったな、姉ちゃん」
一旦口を波線にしたけれど、やっぱり龍ちゃんは素直だ。ちゃんと杉ちゃんに頭を下げられる。偉い偉い。

「それで三女は今日、うちへ遊びに来たのか!?」
のはあっという間で、瞳をすぐまたこっちへ。
こらこら。もっとちゃんと謝らないと、お姉さんをもっと怒らせちゃうよ。

「龍太…まぁいいわ」
でもとりあえず許す事にしたんだろう、杉ちゃんは呆れ顔になりながらだけど、腕を放した。

「うん。杉ちゃんに美味しい紅茶をご馳走してもらいにきちゃった」
「そっか!じゃあ俺も一緒に行くぜ!!」
「龍ちゃんは友達と遊ぶ約束なんでしょ?」
「別にいいんだって、あんなやつら!!三女が久しぶりに来てくれた事の方が……あ〜っと、
こっ…こないだカード全種コンプしたからさ、見せたかったんだよ!!」
龍ちゃんが興奮で顔を赤くしながらまくしたてる。
う〜ん、久しぶりに会えたのは私も嬉しいし、カードも見たいけど、これは……

「龍ちゃん。
私、約束を守らない子や友達を大事にしない子は嫌いだな」

私からも少しお説教だ。
大きくなった弟分のおでこに人差し指をちょんと突きつけ、反省を促す事にする。

「だっ…だから別にあいつらは友達じゃ……う〜………。
わかったよ……。
でもまたすぐうちに遊びに来いよな!絶対だぞ!!」
やっぱり子供は可愛いな。ころころ表情が変わって、まるで万華鏡みたいだ。

「うん。約束するよ」
「約束だからな!忘れんなよ!
絶対だからな〜!!」
「いってらっしゃい」
腕をぶんぶん振りながら駆けていく龍ちゃんへ、私は軽く手を振って見送ってあげる。
その横で、杉ちゃんがやっぱり呆れ顔のまま大げさにため息をついた。
203丸井ひとはの憂鬱50:2011/10/13(木) 01:12:53.57 ID:Vb0PX7/X
「はぁ〜……。
まったく…どいつもこいつも私を無視して……」
「ん?あはは…でも可愛いじゃない」
「そういう時期はもうとっくに過ぎちゃったわよ。いつまでも俺様主義で困っちゃうわ。
ちょっと甘やかしすぎちゃったのよねぇ……。
ママは私に輪をかけてお嬢様だし、パパもほとんど家に居なかったせいで誰も抑えなかったからなぁ。
時すでに遅し、じゃなければいいんだど……」
「そんなに心配する事ないって。あのくらいの頃はしんちゃんもあんな感じだったし。
それにバスケットのチームの子ともちゃんと友達になれてるじゃない」
「ま、誰かさんがいい影響を与えてくれましたから」
『誰か』を思い出すふんわり優しい笑顔を浮かべて、お姉さんは弟の駆けていった道をまぶしそうに見つめる。

…先生……。

「あいつ、背伸びたでしょ?」
そして笑顔のまま、余計なひと言。



小学6年生に負けた………!!!







「お待たせいたしました、髪長姫」
ティーセットを乗せたトレーを手に自室へ戻ってきた杉ちゃんが、早速ふざけてくる。
んも〜。

「ありがとうだけど、姫はやめてってば」
「そんな姫様、恐れ多いですわ〜」
あくまで口からは冗談を発しながら、滑らかな手つきで毛糸のティーコゼーを開け、ポットを取りだしカップへ注いでゆく。

流れる水のように淀みない動きで、白磁のカップを琥珀色に染めていく姿は正に『優雅』の一言に尽きて、
私は非難の言葉を続けられなくなってしまう。ズルイなぁ。
おまけに……
「それ、使ってくれてるのは嬉しいんだけど、そんなに良いカップと一緒に出されちゃうと申し訳ないよ」

カップもサーブ用のポットも、間違いなく相当高価なものだ。
金箔で縁取りされ、淡い彩りの花々が描かれたその上品なデザインは、素人の私ですらただのものではない事がひと目でわかってしまう。
なのにそれらを包んでいる桜色の毛糸のティーコゼーと、乗せてあるパッチワークのマットには、手作り感が丸出しで、
製作者としてはいたたまれなくなってきちゃうよ。

「なんで?私としてはカップなんかよりこっちの方を人に自慢したいんだけど。ちょうど季節に合った色で素敵じゃない。
ママも度々使わせてってお願いしてくるんだから。
もちろん、こればっかりは貸してあげられないけどね」
カップを私に差し出しながら、ウインクひとつ。

「あ…ありがと……」
うう…顔が熱い……。
波立つ心内を悟られたくなくて、顔を俯かせながら紅茶を口内へ導く。
「美味しい…!」
そしたらすぐに、思わず感嘆の声が漏れてしまった。

口に含んだ瞬間鼻を通り抜ける花のような香り。舌いっぱいに広がり、そしてスッと消えていく爽やかな甘さ。
まいったなぁ。こんなの知っちゃったら、明日からは他の紅茶なんて飲めないよ。
204丸井ひとはの憂鬱51:2011/10/13(木) 01:13:24.96 ID:Vb0PX7/X
「すっごく美味しいよ。さすが杉ちゃんだね」
「葉がすごいのよ。言ったでしょ、良いのが手に入ったって。
パパがイギリスへ行った時のお土産なの。
日本は大抵良質のものが揃う国だけど、なんでか紅茶の葉だけは苦いのしか無いわよねぇ。
さて、せっかくだから、お菓子も良いものをどうぞ」
と、渡されたシュークリームの台紙はおなじみの黄昏屋(鴨橋駅前店)だ。こんなにいたせりつくせりでいいのかな?

「って言っても、連日甘いものってちょっとマズイけどね」
「たまには大丈夫だよ。誰かさんと違って普段は気をつけてるんだし」
「そうね。誰かさんと違ってね」

そして重なる笑い声。始まるお茶会。
むふぅ…。

「いただきます」

サクッ

やっぱり黄昏屋は美味しい。
クリームの上品な甘さもさることながら、ここはシューの焼き加減が絶妙なんだよね。
表面はザックリしてるけど、すぐ下にはフカフカの層が待っていて、二重の食感がアゴを楽しませてくれる。
さすが名店。ガチピンクもまっしぐらだっただけの事はある。

「そうね。本店に負けず劣らずのこの味が、手軽に楽しめるようになったのはホントありがたいわよね。
あっ、そう言えばあのお店のパティシエの噂って知ってる?」
「ちょっとだけ聞いたよ。かっこいいけど引くくらいのシスコンで――…」





「ふぅ…ご馳走さまでした」
「最後にもう一杯いかがかしら?」
「もちろんいただきます。
…ありがとう」

今度はあせらず、目を閉じてゆっくりと香りを楽しむ。
ん……ストレートティーなのに、香りも味もこんなに甘いなんて不思議だなぁ…。

「…ねぇ、三女」
「なぁに、杉ちゃん?」
瞼の向こうから届いてくる声に、だけどもうちょっとだけこの香りを楽しんでいたくて、目を閉じたまま返事をする。
めんごめんご。

「……その…みつばのファミレス、今週の土曜日はちょっとした工事でお休みになったから、バイトも無いわよ」
「ふ〜ん」
この香りって、何の花に似てるのかな?う〜ん……。

「………三女」
「うん」
ラン系かなぁ…。庭に咲いていたスズランみたいな優しい感じの。

205丸井ひとはの憂鬱52:2011/10/13(木) 01:14:05.34 ID:Vb0PX7/X
「矢部っちの所へ行くの、ちょっとの間やめてみない?」


「無理だし嫌だしそもそも意味がわからないよ」
瞼を開けて瞳に映した友達の姿は、落ち着き無く空に目を彷徨わせて、次に口に乗せる言葉を探しているようだった。
だけど杉ちゃん、どんなに探したって私の答えを変える言葉なんて見つからないよ。

「…そうね、急にごめんね。そんなに恐い顔しないで。
ちゃんと話す順番は考えてたんだけど……えっと、三女は矢部っちのこと、どのくらい好き?」
「世界で1番大好き」
「……そうよね、わかってる。あなたのその想いは絶対に変わらないものだって知ってるわ。
だけど……絶対変わらないんだから、少しの間だけでも距離を置いてみてくれないかな。1ヵ月くらいでもいいの。
…ほら、恋の駆け引きとして、たまには引いてみるのも効果的っていうか……ね?」
「無理」
ふざけた言葉に、頭の中が真っ赤になる。
グツグツした熱が眉間に集まってきて、睨みつける目にますます力が籠もってしまう。
私はそんなことしたくないのに。
なんで私にこんなことさせるの?

させないで。

「……ごめん。これは本当にごめん。私の卑怯な嘘だったわ。
正直に言うわ、三女」
だけど私の願いは空しく、友達は佇まいを直してまっすぐ凛々しい瞳を返してきた。

やめてよ。こんなときこそ大人しく顔を伏せてよ。

「今のあなたはこんなに矢部っ…先生にこだわることはないって思うの。
1度でもいいから、矢部先生から離れる道も考えてみてくれないかな」
「無理」
「そうやって考える事を放棄しないで。
自分で選択肢を狭めないで」
「絶対無理」
「…ごめんね。
三女の気持ちをわかってるから、私も言うのが辛い。だけど最近の三女を見てるのはもっと辛いの。
このところずっと考え込んでるじゃない。ずっと矢部先生との事を考えてるじゃない」
「好きな人のことなんだから、ずっと考えてたって悪くないでしょ」
「柳が言ってたわよね、三女に笑っていて欲しいって。
私もそう。大事な友達が笑ってくれるなら、何だって頑張れるわ。
だけどやっと笑ってくれたと思ってちょっと目を離したら、すぐまた沈んじゃってる。
こんなこと繰り返してたら、あなたがもたない」
「別に杉ちゃんには関係ないでしょ。ほっといて」
「……そうやって矢部先生の事になると、突然昔のあなたに戻ってしまうのも悲しいわ。
それはあなたが自分で道を閉ざしてしまってるって事だから。
…進路も悩んでたわよね」
「悩んでなんかないよ」
「三女はすごく頭がいいわ。料理だって本格的に学べばお客さんに出せるものになるはずよ。
それに何度も言うけど、冗談なんて一切無く、あなたは信じられないくらい綺麗なの。
笑ってるときなんて、同じ女の私たちでも胸が痛くなるくらい。当然、男子なんてもっと放っておかないわ。
何よりあなたはとっても優しい。私、みんなのためにって頑張れるあなたをすごく尊敬してる。
私だけじゃない、みんながあなたを想ってる。
だから今のあなたは望めば何だってできるの。こんな無理しなくても、進む道なんていくらでも見つかるの。
三女の力を生かせる道を選ぶべきなの」
206丸井ひとはの憂鬱53:2011/10/13(木) 01:15:05.44 ID:Vb0PX7/X

男子が放っておかない?何だってできる?
何を見てるの?
見てよこの薄っぺらい身体。何一つ欲しいものを…先生の『好き』を手に入れられてないじゃない。

喉元までせり上がってきた本音をなんとか押し殺して、私はなんとかいつも通りに、なんでもないよって返してあげる。
いつもに戻ろうよ、杉ちゃん。

「私の進路なんて気にしないで。
最近は委員会とかでちょっと忙しいから、先のイメージがわかないだけなんだって。
いいでしょ、まだ今のままでも」
「…そうね。私たちまだ2年生になったばかりだし、進路を決めてない子なんていくらでも居るわ。
だけど……」

やめて。
どうしてそんなこと言うの?

これからもずっとって言ってくれたのに!!



「いつまでも今のままでいるのが無理なのも、わかってるんでしょう?」



「なにそれ、全然わかんないよ。やめて」
「嘘。あなたがそれをわかってないはずがないわ。
ただ今より矢部先生と離れたくないから、それを考えるのが怖いから、考える事をやめてしまってる。
道を閉ざしてしまってる」
「家の都合だよ。うちは杉崎さんちと違って色々苦労があるから、選べる進路が少ないんだ。
毎日こんなに美味しいものを食べてるお金持ちにはわからないだろうけどね。
それに手がかかるのばっかりいるから、いつまで経っても私は安心して家を出られないの。出る事を考えられないの。
先生は関係ないんだよ。
世間を知らない子が変な勘違いしないで。やめて」

いつまでもふざけた事を言う女の子に、お腹の奥からせり上がってくる苦いものをどんどんぶつけてやる。
その声は甲高くてギザギザした、ガラスを引っかいたときみたいに嫌な音で、自分の喉から出ているなんて信じられないくらい。
だけどいい。これでこの子が大人しくなってくれるなら。
そう思って首筋が総毛だつのもかまわずに、私は全部を吐き出した。
207丸井ひとはの憂鬱54:2011/10/13(木) 01:15:31.17 ID:Vb0PX7/X
のに、彼女は気丈にも涙をぐっと堪えて私から目を逸らしもしない。

「……そうね。昔柳にも怒られたけど、私は何もわかってないのよね。三女の苦労を知らずに無神経な事言ってごめんなさい。
でもお願い、少しだけでもいいから私の話も聞いて。私を信用して。
私も矢部先生はすごいって思ってるわ。
本当よ?いつも笑っていて、優しくて、居て欲しいときに隣に居てくれる先生だったもん。
1歩前に進んだときは一緒に大喜びしてくれた。疲れたときは、大丈夫だからねって待っててくれた。
いつだって安心していられたから、色んな子とゆっくりお話しして、いろんなものをゆっくり眺めて、
沢山素敵なものを見つけることができたわ。
だから私も6年生のときは、学校が毎日楽しかった」
「………………」

ならなんで今、そんな泣きそうな顔をするの?
楽しい毎日が続くならそれでいいでしょ。夢みたいに素敵だよ。

「何よりもふたばの事よ。あの子こそ矢部先生と出会ってなかったら、きっと『今』は無かった。
もちろん佐藤はすごいけど、あいつ極端な馬鹿だからあのままじゃ絶対駄目だったはずよ。
でも今のふたばは、ちゃんと自分で自分の道を考えようって頑張ってる。
そんなふうに誰かの世界を変えられる人は、本当にすごいわ。本当にそう思ってる。
だからね、私もあなたが笑ってくれてる間は、矢部先生との事を本気で応援してた」
「わあ嬉しいな。じゃあ何も問題ないよね。この話は終わりだね」
「…すごい先生だったけど、今のあなたを見ていて気付いたの。
私たちはもう卒業したんだって。先生の役目はもう終わってたんだって。
子供の頃に出会ったすごくて素敵な先生だったけど、あなた達みたいにいつまでもその想いに引っ張られるのは寂しいことよ。
特に三女、あなたはそれしか道が無いって自分を追い込んですらいる」
「実際無いよ」
「違うの。お願い、聞いてちょうだい。
矢部先生が全部じゃないのよ。あなた自身の夢を見つけて、そのために頑張るのが1番大事なの。
そしたらその道に、あなたが自然に寄り添える人だって見つかるはずよ。もちろん私だって全力で応援させてもらうわ。
それがみつ……私は三女に幸せになって欲しい。みんながそう想ってる。
だから少しだけ周りを見回してみて。
矢部先生も、きっとそれを望んでるから」
「へぇ……。
私よりも先生の考えがわかってるなんて、全然笑えない冗談だね。
それに私に幸せになって欲しいなら、何より先生との事を応援してよ。
先生と一緒じゃないと私は幸せになれないんだよ」

そうだよ、先生が一緒なら。
いつだって先生は私を幸せにしてくれるんだから。
5年間ずっとそうだった。これかもずっとそうに決まってるんだ。

「………………三女」
私の心からの言葉は、だけど空回りして届いてくれず、目の前の瞳は晴れないままどころか今にも大雨になりそう。

……いいけどね、別に。

「話は終わったかな?
こんなに美味しいお茶とシュークリームありがとう。それじゃ」

1秒でも早くこのくだらない時間から抜け出したくて、私はまだ温かい紅茶を置き去りにしていく。

バタン!!

ずっと…背中を向けてもまだ私に向けられていた優しい『視線』が、ドアを閉めた途端床に伏せられたのを感じて、
それが門を出ても気になり続けた。

208ガンプラ:2011/10/13(木) 01:17:37.24 ID:Vb0PX7/X
あれ?想像以上に短かったですね。

ちなみに私は日本茶派なので、紅茶はさっぱりわかりません。
でも葉の値段があがるほど美味しくなるのはきっと同じだろうと踏んでます。

玉露も100g3000円超えたあたりから一気に美味しくなるし。
209名無しさん@ピンキー:2011/10/13(木) 19:28:25.16 ID:4JPomYxB
>>208乙ッス
ナンバに続きケルベロスまで終了 みつどもえ早く帰ってこねえかな・・・
210名無しさん@ピンキー:2011/10/14(金) 19:52:58.78 ID:GQNUdbGW
>>208
乙です
もう俺のみつどもえ分の摂取はここでしかできないのか…
211名無しさん@ピンキー:2011/10/15(土) 03:17:13.32 ID:BZlJKlkl
新作記念age
212ガンプラ:2011/10/15(土) 15:03:05.84 ID:P4nPOFS5
もうちょっと
213丸井ひとはの憂鬱55:2011/10/15(土) 15:03:43.32 ID:P4nPOFS5
――――――――――


先生……。


――――――――――


私って最低だ……。

街路灯が照らす夜の帰り道を、ひとりフラフラと歩く。我ながら今にも倒れそうな弱々しい足取りだ。
でもしょうがない。
後悔と自己嫌悪でお腹の下辺りがジクジクと痛むせいで、今の私には雨の近づく大気は重過ぎる。

「…いっそこのまま押し潰されて、雨に流されたいな……」

杉ちゃんの言うことの方が正しいのはよくわかってる。言われるまでもないんだ、『今』がいつか覚めてしまう夢だって事は。
わかってるくせに、あともうちょっとっていつまでもぐずって、みんなに心配かけて。
それだけじゃなく、せっかく心配してくれた友達にあんなにひどい事を言うなんて……。

脳裏に浮かぶのは、杉ちゃんの泣きそうな顔。
一生懸命頑張って積み上げた『自分』を否定されて心が割れそうなくらい痛いのに、それでも私を心配してくれている顔。

家の事なんて関係ないじゃないか。
今の杉ちゃんは誰が見ても、自分の力で立って周りまで引っ張ってくれてる、とっても魅力的な女の子だよ。
なのに私は図星をつかれたからって、相手の弱いところを踏みにじって、すぐ安全地帯に逃げ出して……まるっきりあの頃のままだ。

あぁ…明日、どんな顔して教室で会えばいいんだろう……。

息を吸って大気を取り込むほどに、胸とお腹はますます重くなって、私は今すぐ道を引き返したい衝動に駆られる。
先生にいっぱい慰めてもらいたい。あのあったかい腕の中で思いっきり泣きたい。
だけど、できない。先生と約束したから。
それに私は家に帰らなくちゃいけないんだ。
これで自分の仕事まで放棄したら、私には何もなくなっちゃうよ……。

「………着いた、か…」
俯いた視界に見慣れた門柱が映り、私は何とか涙を引っ込めて顔を上げる。

「あ…」
家に電気がついてる。みっちゃん帰ってきてたんだ。
まいったな…もっとちゃんと涙を消さなきゃ……。

すぅ…はぁ……。

「ただいま…」
「おっかえり〜!」
「え?」

返事があった事は予想通り。だけどその音色の予想がまるで無かったせいで、一瞬頭が真っ白になってしまう。
再始動して発信源の居間に上がると、そこには机に向かってシャーペンを動かす赤ジャージがいた。

「ふたば、部活はどうしたの?」
「んむ〜…?
古文と英語で宿題が沢山出たから、お休みにしてもらったっス」
「ああ……」監督さんの判断か。
214丸井ひとはの憂鬱56:2011/10/15(土) 15:04:30.26 ID:P4nPOFS5
ふたばを指導してくれている女子陸上部の監督さんは、本当によく考えてる。しんちゃんとは大違いだ。
とにかくふたばを如何にして集中させるかを第一にしてるから、こうやって他に気になる事があるときはさっさと帰らせる。
さらに合宿や遠征を多用して、環境を変えることで練習に飽きさせないようにするなど工夫も多い。
そもそも部活をさせる時間自体、他の部員より短くさせてるし。
…こっちについても、いつも遅くに帰ってきて日曜まで練習に出掛けるしんちゃんとは大違いだな。

「ぬぐぐ……あぁ〜ぜんぜんわかんないっス〜!
んも〜、一緒に遊びたいならその子の家に走っていって、遊ぼって言えばいいのに〜!!」
「昔の人は大変だったんだよ。
ちょっと私にも見せてみて……。
うっ」
む…難しい……。

ふたばの通っている私立校はスポーツに力を入れていて、
野球やサッカー、バスケットに水泳…色んな競技で県内強豪のレベルにある。
けれど勉強の方もかなりハイレベルで、全国模試の平均点はうちよりも高いくらいだ。
私も成績にはそれなりに自信のあるほうだけど、同等以上のレベルで、しかも使ってる教科書が全く違うとなると、
さすがにパッと見て教えるってわけにはいかないわけで……。

「これは……ちょっと考えさせて」
「あっ!いっ…いいっスよ!ひとはは晩ゴハンの準備があるんだし!
これも来週の月曜までの宿題だから、なんとかなるっス!」
私が眉根を寄せようとしたところで、ふたばがバッと身体を教科書とノートにおしつけて、隠してしまう。
うわっ、テーブルでひしゃげたおっぱいがエロい……はどうでもいいとして、そんなに気にする事ないのに。

「まだご飯まで時間あるから、少しくらいなら大丈夫だよ」
「いいの!ひとはは自分の事して!」

……嬉しいけど、ちょっと寂しいな。苦手な教科くらい手伝わせて欲しいのに……。
まぁふたばが大丈夫って言ってるんだから、あんまりかまうのは失礼かな。

そう。今のふたばには、大丈夫って言う資格がある。かなりハイレベルの勉強になんとかだけどついていってる。
それどころか、物理や化学といった理系科目は得意なくらいで、捻った問題になればなるほど正答率が上がるらしい。
定期テストで学年でも数人しか…しんちゃんでも解けなかった問題を解いて、先生に褒められたって喜んでた事もあった。

「ふむ〜……」
ふたばが唸りながら起き上がって、アゴにシャーペンをあてながらもう一度問題と格闘を始める。
なんとか集中しようって頑張りだす。

要は興味を持てるか、集中力を発揮できるかどうかがふたばの成績の良し悪しに直結してるんだと思う。
ふたばは興味のあることについては驚くくらいの記憶力を見せるから、上手くやれれば英語とかも好成績を出す事ができるに違いない。

…『万能の天才』って言葉がある。けれど私は、それは逆なんじゃないかって思ってる。
ひとつの事でも飛びぬけたセンスを持っていれば、それを応用してどんな事でもできてしまうじゃないかって。
『天賦の才は万能』なんじゃないか、って。
だからきっと、ふたばはその気にさえなれば何だってできるはずなのだ。

……それはとっても残酷なこと、なのだけど。

「あう〜…」
真面目に締めようとした私の前で、ボフッと湯気が上がる。

ま、そうは何もかも都合よくいかないのが現実だけどね。だからふたばも毎日頑張ってるんだよ。
さてさて、とは言え今回はかなり強敵みたいだ。これは援軍が必要だろう。
215丸井ひとはの憂鬱57:2011/10/15(土) 15:05:15.42 ID:P4nPOFS5
「土曜日にしんちゃんに教えてもらえば?」

しんちゃんは変わらない。
高校生にもなったというのに、ふたばは予定を立てるということを全くしない。
なのでいつも朝ごはんを食べてから『今日はどうしよう?』を考える。
そして長年それに合わせてきたしんちゃんも、基本的には部活の無い土曜は暇をしている。
さらにふたりが通ってる高校はかなり遠いため、近所に通ってる子が非常に少ないという要素が加わる。
結果、どちらかが『暇だどうしよう?』⇒『とりあえず相手に会いに行こう』という超短絡的な思考を展開して、
高確率でデートが成立することになる。
………デートと言っても空き地でバドミントンしたり、部屋でゲームしたり漫画読んだりと、
これまた昔から変わらない行動がほとんど(まぁふたばと私は街に出にくいっていうのもあるけど)なんだから、
土曜日も勉強会にしたっていいと思うけど。むしろその方がしんちゃんも喜ぶし。

「……しんちゃん、土曜日は練習試合で……。
最近試合の後は元気無いから、迷惑かけたくないんス」
「そっか……」またそのローテーションに入ったのか、めんどくさいなぁ。

しんちゃんは変わらない。
高校生にもなったというのに、相変わらず金魚すくいのポイよりも薄っぺらなプライドを大事にしている。
むしろ命を懸けている。正直理解に苦しむよ。
なのでなにやらお悩みな事があるようだ。丸わかりだけど。
そして悩みも薄っぺらだからすぐに自己解決して、イラッとするテンションでデートに出かける。しばらくするとまた悩みだす。
相手にするのはめんどくさい上、純粋に時間の無駄になるから今度も流しておこう。

どうせしんちゃんにとって1番大事なものは、何があっても絶対変わらないんだから。

ヴィー... ウイィン...

静かな居間に突然HDレコーダーの機械的な起動音が響いたせいで、一瞬ふたりでビクッと身体を震わせてしまう。
どうもこの音って慣れないな。

「あっ…もう時間なんだ」

時計を見ると、思ったとおりちょうど19時を指したところだった。
朝、パパに頼まれて録画予約しておいたものだけど、こんなときに限ってふたばが帰ってきてるなんてタイミングが悪いなぁ……。

「なんか新番組っスか?それとも特番?」
「…ん…ニュースなんだけど……。
鴨テレでふたばが映るから、パパが録っといてって……」
「えっ……。
あっ、あっ…あの、じゃあ小生、上で宿題してるね」
「録画してるんだから、テレビは消したままでいいよ」
「ううん、そろそろ上に行こうと思ってたんス。
お皿運ぶときになったら呼んでね!お手伝いするから!」
そんなふたばには珍しい大焦りの声を残して、目にも留まらない速さで2階に消えてしまう。

……しょうがない、か。
216丸井ひとはの憂鬱58:2011/10/15(土) 15:06:51.93 ID:P4nPOFS5
「……………」

ピッ

居間の静けさに肌寒さを感じて、ちょっと迷いながらもテレビに助けを求めることにする。

[…年生になり、丸井ふたばさんも新たな目標に向かって練習をスタートさせました]
すると、液晶にはふたばが学校のトラックを駆ける姿が映った。

あぁ…見たいシーンでよかった。

[タタタタッ]

「綺麗…」
心の底からそう思う。

オレンジ色のタンクトップと短パンから伸びる美しい手足からは、筋肉の躍動がはっきりわかって、
その『速さ』が自然な認識として伝わる。
なびくサイドポニーが、気持ちよさそうな笑顔が、画面越しにも風を感じさせてくれて、自分も駆け出したくてむずむずしてきちゃう。
『今なら私も速く走れそう』、そう頭に浮かんで居ても立ってもいられなくなってくる。

ただ見ているだけで、心と身体に元気をくれる。

[ことしのもくひょうとしてもっとじぶんのちょうしんをいかしたすとらいどそうほうを――…]

だから余計に、このインタビューシーンが悲しい。
引きつり、目を揺らしながら暗記した原稿を棒読みする作り笑顔。
こんなのふたばの魅力がほとんど消え失せちゃってるよ……。
誰だってそう思うはずだ。

はず、なんだけど。

[う〜ん…そうですねぇ……。わたしはちゅうばんのかけひきがぜんぜんだから――…」
思案顔(らしきもの)を作ったふたばが、右手を左肩にやり、そのままゆっくりと腕をなでおろす。
大きなおっぱいが腕に押されて自在に形を変え、その圧倒的な存在感をアピールしてくる。
……いつも通り、走ってるときのサラシを外してブラに替えているんだ。

こうやって『女』をアピールするようになってから、ふたばの人気は一気に上がった。
今じゃ鴨テレみたいな地方局だけじゃなく、全国局からもちょこちょこ取材が来るほどだ。

「………結局、男はそうなんだよね……」
呆れるくらい薄っぺらい現実だよ。笑いが乾いちゃう。

[それにつかれてくるとどうしてもうでのふりへのいしきがさんまんになるので――…」
本当に薄っぺらな言葉たち。

当たり前だ。
具体的な『目標』『抱負』『勝因』『戦略』『好敵手』『仕上がり』…そんなもの、ふたばにとっての陸上には存在しないんだろう。
もちろんそれらの言葉の意味自体は分かってるし、指導内容だって理解してる。もう高校生なんだから当然だよ。
でも、走ること対して抱く必要の無い概念だから、全く悩む必要が無いから全然結びつかないんだ。
受けた指導を飛びぬけたセンスですぐに習得して、それを使って自分の全力で走る。それでもう誰も追いつけない。
217丸井ひとはの憂鬱59:2011/10/15(土) 15:07:45.16 ID:P4nPOFS5

[もちろんいんたーはいにれんぱをねらってます!]

………中学生のとき、私たちの友達は言った。

『目標も理由も積み重ねる事なく、『強い』にいきなり手が届く。
そんな奴がいる。いる事が許されてる。……現実がこんなに残酷だなんて思わなかった』、と。

そしてそのとき私は、友達に何も言ってあげられなかった。……今も、何も言う事ができていない。
三つ子の私ですら否定できない現実が確かにあるから。

……あるけど、


[はいっ!頑張ります!!]
1番大きな現実は、ふたばが私たちのために頑張ってくれてる事なんだよ。


大好きなちょんまげをやめて、時枝さんたちからみたいな誤解を受けて、自分でも嫌悪する姿を晒して、
それでもふたばが頑張ってくれてる現実があるんだよ。

それを言おうと思い続けて、だけど弱い私はいつも声を出せない…。

[ありがとうございました!]

「…本当にありがとう、ふたば」
『せめて今は』、そう思ってお礼をつぶやきながら、液晶から消え行く笑顔に触れてみる。
と、思わずもうひとつつぶやきが漏れた。

「もう十分なのに、どうしてそんなに無理するの……?」

疑問。
今のままで十分我が家は潤ってる。こうやって高校生活を続ける事に何の不安も無いんだよって、何度も伝えた。
なのに、ふたばはますます積極的にテレビに出ようとしてる。お金を家に入れてくれようとしてる。
無理してまで頑張っている。

「どうして…?」

だんだんとわかなくなっていく姉の考え。
変わっていく三つ子の姉妹。
当たり前の事だってわかっているけど、やっぱりたまらなく寂しい……。

「……ううん、誰だって変わらなきゃいけないんだよね…」
明日の天気に切り替わった画面から手を離す。いちいち名残惜しんでなんていられないんだよ、ひとは。
ふたばは変わったのは、当たり前の事なんだ。

……当たり前に、ふたばですら変わったのに………。

ふと、玄関を振り向く。
今朝もそこに立っていた、何があっても変わらず毎日そこに立つ、ブレザー姿の男の子を思い浮かべる。
218丸井ひとはの憂鬱60:2011/10/15(土) 15:08:26.34 ID:P4nPOFS5
毎日変わって行く現実があるのに、変わらない。
ふたばですら変わってしまったというのに、しんちゃんは変わらない。これからも絶対に変わらない。
しんちゃんはすごい。本当にすごい。


[それでは今日のニュースは、丸井ふたばさんの練習風景を見ながらお別れしましょう。また明日]
『今』の私は、思う。
ひょっとしたらしんちゃんには、最初からこの姿が見えていたのかもしれないって。

小さな男の子が『きれいな花がさくから』と、全部の恵みを注いで、全部の害から守って育てた『ふたば』。
そして今私たちの目に映るのは、華どころかまるで輝く……「なわけないって」

浮かんだ、我ながらあんまりにもくだらない考えに、少しだけ笑いが戻ってきた。

「ふたばは、ただ家族のために頑張ってくれてる私のお姉さんだよ。そんなのじゃない。
しんちゃんなんてもっとそんなのじゃない。絶対何も考えてないんだから。最初なにも無いから変わりようが無いだけだって」

ザー

部屋に最後のひとり言が溶けたのと同時に、外で雨音が鳴り出した。
みっちゃんは間に合わなかったか。可哀相に。

ガシャン!

なんて思ったところで、今度は自転車を停める音が耳に届いた。
このタッチの差って、みっちゃんらしいな。
笑いを大きくしてくれた御礼も兼ねて、私はバスタオルを持って玄関へ行く。

「あーもう!この私の帰りが待てないなんて、空気の読めない空ね!!
ひとは、バスタオ……あら、気が利くわね」
胸元まで伸ばした色味の薄い髪から雨粒を滴らせながら、みっちゃんが顔を上げる。

「はい。
今は3枚しかないんだけど、足りるかな?」
「ギリギリねぇ。私って面積広いから…って1枚で十分に決まってるでしょ!」
目を三角にして、ワシッと1枚掴み取るみっちゃん。
相変わらず微妙なノリツッコミだなぁ。

「んも〜っ!ほんっといい度胸してる天候ね!!
この私に風邪を引かせたりなんてしたら、どんな目にあうのかわかってるのかしら!!」ゴシゴシ
バスタオルから零れ落ちる、伸ばされた髪。昔は両側で結んでたけど、今は真っ直ぐ垂らしてる。
日に透かすと金色に輝く、綺麗な色合い。少しうらやましい。

「……1番小さいタオル取っちゃったわ。やっぱもう1枚ちょうだい」
高校生になってから、髪形を変えた私の姉さんたち。

「ちょっと!聞いてんの!?
……なによ、ぼーっとして?」
「……別に」

そうだ、誰だって変わらなきゃいけないんだよ。しんちゃんが『特別』なだけ。
みんないつまでも昔のままじゃない。
『今』もいつかは『昔』になっていく。
わかってる。


なのに私は……。

219ガンプラ:2011/10/15(土) 15:16:40.98 ID:P4nPOFS5
ずうずうしい連絡。
前回が短すぎたので、ここまででFにしていただけると嬉しいです。
あと、『丸井ひとはの憂鬱F』じゃなくて、『青空に誓ってF』になってました…。すみません。


というわけで、やっと火曜日が終了。長いよ!
ここまではチマチマ考えていた設定部分の説明ばかりなので、あんまり面白く無かったと思います。
当然書いてる私も全然面白くないパートでした。むしろ私が憂鬱になりました。
プロット的には半分超えてるので、100ちょっとくらいで最終パートかなぁ…?
220名無しさん@ピンキー:2011/10/15(土) 18:33:53.54 ID:n+2Ojq2a
>>219
乙です
続き楽しみにしてます
221ガンプラ:2011/10/15(土) 19:49:21.63 ID:P4nPOFS5
そういえばナンバは好きでしたねぇ。
真面目に暴力について向き合う不良漫画って、かなり新しかった。

今は『ましのの』が面白いです。
222名無しさん@ピンキー:2011/10/15(土) 20:31:53.76 ID:vhki3v2W
タイトルミスってました
すいません

>ガンプラさん
お疲れ様です
223名無しさん@ピンキー:2011/10/15(土) 22:08:30.15 ID:BZlJKlkl
>>221
ナンバは退学したあたりから泣けるエピソードがたくさんあったよねえ
224名無しさん@ピンキー:2011/10/15(土) 23:43:01.69 ID:zuE8rppY
ガンプラさん乙です
相変わらず上手いねー

ちなみにSSS隊、特に伊藤さんは出す予定ってあります?
ガンプラさんの描くあの腹黒お嬢様を読んでみたいw
225ガンプラ:2011/10/16(日) 07:21:33.36 ID:oZeLoDDr
>>222
いつもすみません。
このシリーズはまとめサイトありきの物なので、本当にありがとうございます。

>>224
小学生ふた・しんではなんとか出せたSSS隊ですが、高校生話では予定なしです。
緒方、加藤はみつば達と同じ高校のため、チョイ役程度は出すかも。
伊藤は…言われてから再考したんですが、非常に難しいです。以下、再考時のロジック。長い。

@ふたばに勝てない
今回のパートの通り、高校生ふたばは真面目に勝負するのが馬鹿らしいくらい無敵です。
どころか下手に手を出すと、自分が村八分にされるリスクまで生じます。伊藤さんは勝てない勝負はしないと思う。
今さらですが高校生ふたばのデザインテーマは「コストの馬鹿高い超天才美少女」。
全スペックが高いですが関係すると応じたコストを払わされるタイプです(本来当たり前だけど)。
丸井家としんちゃんだけではすでに足が出てます。

Aしんちゃんのブランド価値が落ちてる
イケメンで文武両道なんですが、相対価値的に一般認識が「ふたばのオマケ」に成り下がってます。
さらに上手く落とせたとしても、絶対にふたばの影(噂とか比較)がくっついてきます。
ので、付き合えてもあんまりメリットが無い。本気で好き!ふたばから奪いたい!だとドロドロになるし。

B高校生の腹黒行為はシャレにならない
ていうか、伊藤さんは少女漫画用キャラだと思います。緒方とギャグで少年漫画世界に落とし込んでるだけで。
あと、私自身がふたば(小学生を含め)を、『女子から虐められててしかるべきキャラクタ』だと内心思ってるので、
そういう話を構築するとかなり黒くなりそうな気がします。そうしないための無敵設定ですし。
226>>224:2011/10/16(日) 12:39:54.54 ID:AkdAOW7l
>>225
ありがとうございます
そっかー出ないのか
伊藤さんは個人的に一番好きなキャラなんでwスマソw
伊藤さんが少女漫画用キャラだというのは同意です!ドロドロで暗い話でも大歓迎ですので気が向いたらお願いしますw

続き楽しみに待ってます!
227名無しさん@ピンキー:2011/10/19(水) 17:06:20.11 ID:X6Ea7po2
かなり黒い伊藤さん…だと…
228ガンプラ:2011/10/21(金) 23:56:17.30 ID:CK8Zqqyi
えぇ〜…。

@ムダにふたばとの関係で落ち込むしんちゃん
Aを、酒と媚薬で関係にこじつける伊藤さん。
B「やってしまった…」なしんちゃん、不本意なところもありつつも伊藤さんとの交際を真剣に向き合う。
C3日後、薬を打たれて乱交シーンを動画アップされる伊藤さん。
D「しんちゃん、何だか知らないけど落ち込まないで!」「ふたば…」

みたいな?絶対書きませんけど。


その気になれば何でもできるんだから、↑な流れが自然かな。
ふたばに『敵』と認識されたら、まずロクなENDに辿り着けなさそう。

改めて考えたら、『負けるふたば』って全く想像できませんでした。
229名無しさん@ピンキー:2011/10/22(土) 00:59:31.62 ID:ByxQXg8N
さらっと書いてる内容が怖いw
まぁ屍織ちゃんならやりかねんが
230名無しさん@ピンキー:2011/10/23(日) 13:46:37.42 ID:Lei909dF
ガンプラさんの作品内ではチーム杉崎の面々は杉ちゃん以外は何やってんですか?
231ガンプラ:2011/10/26(水) 23:06:44.19 ID:Oej2V+Rg
今月中は投下が無理なので、返信です。

>>230
吉松宮の三人もそれぞれ設定は考えてます。みんな適当に女子高生やってます。
そのうち各人視点を書きます(宮は『ももいろ〜』をリテイク)。
一応、宮松みつば(+緒方、加藤)は同じ高校という設定、吉岡は1人だけ偏差値の高い女子高(私立)で考えてます。
各人のIQと家の財力から大雑把に考えて。

ほんと伊藤さんはどうしようかなぁ…。吉岡と同じ学校にしようかなぁ…。
女子高だけど合コン女王で、ある日何故か参加してきたふたば(とひとは)にお株を奪われる話を考えたけど、
全てが終わった後に余裕があったらレベル…。

しかし、設定まとめのネタ帳がすごい事になってきました。
そして初めの方にくらもちふさこの『チープスリル』みたいなプロットがあって自分で笑いました。
232名無しさん@ピンキー:2011/10/27(木) 22:01:53.54 ID:tGaE3KXq
>>231レスどうも いろいろ考えてるんですね
しかし、もう休載から半年も経ってしまったんだなあ・・・
233ガンプラ:2011/10/29(土) 19:03:00.45 ID:i/WjIh9a
うわぁ〜ん、修正があったりするのは毎回許してください〜…。

今月はもう無理かと思ってましたが、以外に行けたので、続きです。

そういえばもう半年なんですね。うへぇ…。
みつどもえが無いとチャンピオンは魅力半減…だったんですが、
最近は『ましのの』と『空が灰色だから〜』が面白いので、ちょっと持ち直した気がするけどやっぱり寂しい。
234丸井ひとはの憂鬱61:2011/10/29(土) 19:03:26.09 ID:i/WjIh9a
==========


[…――して今日、1番ついてないのは…魚座のあなた。ふとしたひと言で友達とギスギスした空気になっちゃうかも……。
ラッキーアイテムは花柄のハンカチ――…]

「…ふん。
テレビの占いなんて信じるようなガキじゃないけど、でもまぁハンカチなんて持ってるのが当たり前だし。
今日はたまたまそういう柄のを持っていこうと思ってたところだし?
え〜っと……おかしいわね、昨日この辺に1枚……」ガサゴソ
「……みっちゃん、いいけどもう遅刻する時間じゃないの?」
「ちょっ…あんたいつからそこに!?」
「いつからも何も、私はいつも朝1番に起きて、最後まで家にいるよ」

今日も今日とて目に見えない、戦う必要の無い『何か』と全力で勝負している姉にひと言入れてあげる。
…いつもならもうひと言、ふた言くらい付け足して追い立てるところだけど、今日の私にはその元気は無いんだよね…。

「はあ……」
エプロンを取って髪を解く。それだけの動作でさえ億劫だ。

学校へ行きたくない。杉ちゃんに会わせる顔がない。
昨日からずっとそればかり頭に浮かんできて、夜もなかなか寝付けなかった。
優しい杉ちゃんならきっと、しっかり謝れば許してくれる…そう思いたいけど、だけど昨日私がぶつけた言葉は許されるものじゃない。
それでも謝らなきゃ。謝りたい。その想いは何よりも大きいのに、
伝えるための言葉は何も思い浮かばず、喉からお腹へと重いものがどんどん沈み込んでいく。

[それでは今日も1日頑張ってください!]

……そろそろ私も家を出ないといけない時間だ。
でも行きたくない。こんなにお腹が痛いんだから、今日は休んでしまおうか。
……休んだからってどうなるの。ずっと杉ちゃんと会わないつもり?謝らないで済ませるつもり?そんなの無理だよ。…嫌だよ。
わかってる。
やりたいことも、やらなきゃいけないこともわかっているのに、それでも身体は動いてくれない。心が前に進まない。

「ふう〜……」
「……昨日から鬱陶しいオーラ振りまきくさって。
ほんっと、あんたらっていつまで経ってもつまんない事でぐずぐずしてるわね!」
「…ぐずぐずしてるのはみっちゃんの方でしょ。
遅刻したらパパにだって怒られるよ。早く行きなよ」
こっちの気も知らずにはきはきと言葉を発する姿が疎ましくなってきて、思わず声に棘を生やしてしまう。
つまらない事なんかじゃないんだよ。何年も一緒だった親友を無くしちゃうかも知れない、一大事なんだから。
そんなにキョロキョロ時計を見るくらい時間が気になるなら、さっさと学校へ行ってよ……。

「私は別にいいのよ。私はあんたらとは違うの」
「………」
相変わらず無茶苦茶言って……。
235丸井ひとはの憂鬱62:2011/10/29(土) 19:03:52.15 ID:i/WjIh9a
「いい、ひとは?
今あんたが悩んでるのは、どーでもいい事なの。心配しなくていい事ばっかりなのよ。
それがわかってないのはあんただけなの」
「………いきなり何を……」
いきなり、あっちこっちへ行っていた『視線』が私に集中する。
本当にいきなり真っ直ぐに向けられたせいで、久しぶりにその輝く瞳をまともに覗き込んでしまって、私は何も言えなくなる。
日を受けてキラキラと輝く、金色の瞳……。

「今まであんたが頑張ってきたことは、ちょっとやそっとじゃ変わんないわ。
だからあんたは思ったとおりにやればいいのよ。それで大丈夫なの。
ていうかいちいちそんなに心配すんのは、あいつらを馬鹿にしてるのと一緒よ。
もっと信じなさい」
「信じる……」
「そうよ。それができないからあんたは変わんないのよ。
ついでに言っとくけどね、ケンカするのもぶん殴るのも、悪口考えるのもめんどくさい事なのよ。
私たちの…あいつの周りにチマチマんな事やってるほど暇な奴はいないわ。
だってのに、いつまでもガキみたいに怖がってるのはみっともないだけよ」
「……私は……」

私は、みっちゃんとは違うんだよ………。

「……ま、あんた長い間そういうのサボってたもんね。
ずっと練習してなかったのに、いきなりやるのは無理ってもんよ。
しょーがないから世界一優しい私が、もうちょっとだけ助けてあげるわ。
しっかり感謝して ピンポーン …いってきなさい」
チャイムの音に呼び出されたように、みっちゃんに笑顔が浮かぶ。

「え…。
ちょっ…待って、時間が…。先にみっちゃんが行かないと……」
「いいからさっさと行きなさい。
戸締りも私がやっとくから」
明るく弾む口調と一緒に、姉さんの手が私の背を押してくれる。
身体が、心が前へと進んでいく。

扉を開ける勇気をくれる。

「…オハヨ、三女。
昨日はごめんなさい。あなたの気持ちをちゃんと考えずに、自分勝手なこと言って。
私、あなたに幸せになって欲しいって言ってたくせに、ただ自分が楽になりたくて、そのための言葉ばっかり口にしてた。
世の中には10歳差のカップルなんていくらでもいるんだもん。いくらでも、道はあるはずよ。
だからその道を進むお手伝いを、私にさせて」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「ほんっと、いつもいつもいつまでも手のかかるのばっかりなんだから。
この私に貴重な通話料支払わせたんだから、とっとと来なさいっての」



「水曜の1時間目は……田中の古文か。
課題、増やされるわよねぇ……」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
236丸井ひとはの憂鬱63:2011/10/29(土) 19:04:59.49 ID:i/WjIh9a
――――――――――


「きりーつ、れーい」

「「「さようならー」」」

ガヤガヤ

「さて!今日は急いで帰らなきゃ!」
私の『仕事』が待ってるんだから!

帰りの挨拶と同時に騒がしくなった教室の中、私の手が素早く動いて鞄に教科書を詰め込んでいく。
こういうとき、やっぱり人間って心の生き物なんだなって思う。
心が軽いと、腕も足も、身体の全部が軽くなったみたいで、今日は立ち止まってる時間がもったいないくらい。
「夜空の星を見上げると〜♪」
おっと、思わず鼻歌まで…うん、いいよね。たまには私も明るく行こう!

「おっ?姫が鼻歌……やんな?抑揚がぜんぜんないけど。
今日は朝からずっと元気やったけど、帰りは一段とやん。
これからなんか重要ミッション?」
「うん!!
今日はマルエツで卵が安いんだ!」

ガタンッ

「ちょっ…どうしたの時枝さん!?」

大きな音にびっくりして振り向いたら、なぜか時枝さんが顔を机につっぷしてピクピクと痙攣していた。
ピクピクっていうか、ビクンビクンって感じだ。足なんて生まれたての小鹿みたいに、立ち上がろうとしては崩れ落ちてを繰り返してるし。
そしてその押し付けられたままの顔(痛くないの?)から、蚊の鳴くような声が立ち上ってきた。
ちょっと怖……。

「ま…マルエツで卵て……。
ファンタジーの住人なんだから、もうちょっと夢のある事言えよ……」
「だから勝手に人をフィクションに押し込まないでってば。
…恥ずかしながら、我が家の家計は苦しいので。よく使う食材ほどチャンスを逃しちゃいけないのです。
今日は他にも歯ブラシにシャンプー、トイレットペーパーも特売だから、気合を入れていかないと!」
押忍!と、両腕を腰に当ててふたばの真似をしてみる。
おお…これ、かなり気合が入るな。

「…そっか。
や、ごめん。つまんないちゃちゃ入れて申し訳ありませんでした!」
頬を掻きながら起き上がった時枝さんが、今度は謝罪のために頭を下げてくれる。
大騒ぎしてる事が多い子だけど、こういう真面目ではっきりしたところはいつもグダグダしてる私にとってすごくまぶしい。
だからこんなふうにいきなり真っ直ぐ向けられると、ちょっと赤面しちゃうよ。

「い…いいんだよ、そんな。気にしてないから」
気恥ずかしさから思わず早口でまくしたててしまう。うぅん…やっぱりこういうのは慣れないや。
…いい加減慣れないとね。今の私には、これが普通なんだから。

「……また光の粒子が……。
…ちなみに姫の使ってるシャンプーってな「あかーん!!」 うわっと!?」

再度顔を上げて何か言おうとした時枝さんを、神戸さんの大声がさえぎり、さらに畳み掛けるように柳さんと杉ちゃんが続く。
『悲壮』って言っていいほどに深刻な表情で……。何故?
237丸井ひとはの憂鬱64:2011/10/29(土) 19:05:41.82 ID:i/WjIh9a
「だめよトッキー!それは聞いちゃダメなの!!」
「そう!わざわざ残酷な真実を確かめる必要は無いわ!
三女の髪や肌には、何か秘密があるの!そういう事になってるの!」
「それはどういう事になってるの?」

なんだかみんな、たまに私を放り出して『私』の話をするなぁ。

「せめて…せめて下ごしらえに秘密があるって事にしとかんと、素材の負けがはっきりと……!」
「わかるトッキー!?これは私達の友情を左右しかねない、ひっっじょーにデリケートな機密なの!!
うかつに口に出していいものじゃないの!!
ただ自然に生きてるだけで超美少女とか、実在されるとほんともうマジむかつくわー!!!」

……たまに柳さんには別の人格が宿るなぁ。

「いや…私も髪の手入れにはかなり気を使ってるけど……」
「あの程度で『気を使ってる』とか言ってんじゃねー!
この妖怪モチモチほっぺ!!」
オーバーヒート気味に顔を赤くした柳さんが、私の頬に指を伸ばしてくる。
デジャブ……

ギュムム!

「あいひゃひゃひゃひゃ!」
って、今日は指に優しさが全く感じられないよ!?
ほっぺがちぎれる!ちぎれるぅ〜!!

「いい加減つっこんどくけど、何なのこのゆで卵みたいに真っ白ツルツルな肌!液体みたいになめらかな髪!
私のパック代返さんかいごらぁー!」

ダメだ、完全に目がすわっちゃってる。杉ちゃん助けて…っ!
痛みと恐怖で滲む視界の中、それでも何とか助けを求めて幼い頃からの友達を探す。と、

「ホントにねぇ……。
三女を前にすると、エステもブランドも全部空しくなっちゃうのよねぇ……。
まぁおかげでそういうの卒業する気になれたけど。ふ…ふふふ……」
「それを言うなら、去年からずっと隣で引き立て役になっとる私らは、存在自体が空しいでぇ……。
まぁ次元がちゃいすぎるから、いっそすがすがしいくらい諦めもついとるけどな。うへへ…」
明後日の方を向いて乾いた笑いを浮かべる杉ちゃんと神戸さんが映った。

うわっ、こっちの目は焦点が定まってなくて怖い!!
こうなったら…時枝さん!!やっぱりいざというとき頼れるのは、真面目な時枝さんだよっ!
238丸井ひとはの憂鬱65:2011/10/29(土) 19:06:09.39 ID:i/WjIh9a
「…!
わかった!」
救済の願いを込めた視線の先で、最後の希望はまぶしいイイ笑顔を作ってくれる。
あぁ…さすがは運動部!やっぱり義理人情に厚いよねっ!!

「じゃあ、こうしとこう!」
イイ笑顔のまま、グッと親指を立てて言葉を続ける最後の希望。
いやいやいや、そうじゃなくて早く柳さんをなんとかして!

「『そっか手作りシャンプーか。じゃあ聞いても真似できないから聞かないわ』」

「「「それだぁっ!!!」」」

「どれにゃの〜!?」

ギュムムー

あーもう何でもいいから、納得したなら早くほっぺを離して〜!


助けてふたばぁ〜!!






「うぅ…顔の形が変わっちゃうかと思ったよ……」

身体はもう昇降口に辿り着いたっていうのに、ほっぺはまだじんじんして熱っぽい。
昔からそうだけど、なんでみんなほっぺばっかり狙ってくるかなぁ。
そんなに目立つの?やっぱり私の『唯一の』チャームポイントだったりしちゃうの……?

「でも三女はちょっとくらいデザイン崩したほうが、自然になっていいかもね」
などと隣でのたまう杉ちゃんを、キッと睨みつけてやる。

「わっとと……怒らないで。
私も言っててむちゃくちゃとは思うけど、真面目な話として三女は綺麗すぎて近寄りがたいところがあるから。
こんなに優しい良い子なのに恐がられるなんて、とっても損しちゃってるわぁ〜。
と言うわけで私は生徒会があるからこれで」
バイバイ、と軽く手を振りながら小走りで向かいの校舎へ逃げていってしまう。

まったく…緒方さんがレジの日だったら、問い詰めてやるところなんだけど。
……やっぱりさくらちゃんとネタあわせしてるな、これは。
昨日の自分の予想が正しかった事を確信しながら、下駄箱から靴を「あ」

……油断してた…っていうのはちょっと違うか。

「ふぅ……」
靴の上に置かれた手紙にため息ひとつ。
の間に覚悟を決めて、パッとそれを取り出し大急ぎで校舎に戻る。
こんなの『視線』のあるところじゃ読めないよ。

スイー

落ち着ける場所を探して駆け足気味に校舎へ入り、階段を上る。
2階…3階……屋上へ続く踊り場。ここなら。
周囲の気配を探ってひとりになれた事を確認してから、震える指先で手紙の封を切る。
どくんどくん。自分の心臓から伝わってくる振動に、鼓膜が痛いくらいに揺さぶられてしまう。
239丸井ひとはの憂鬱66:2011/10/29(土) 19:07:11.86 ID:i/WjIh9a
「ぜぃ…はぁ……」
主に体力の問題で。

………さすがに自分でもどうかと思うよ……。
突きつけられた現実にちょっとだけ目頭を熱くしつつ、手紙の中身を確認する。


『第三理科室前で待ってます』
ただ1文。
飾り気の無い便箋に、綺麗な字で大きく。


「………………」
短い文章を頭の中で反すうしながら、手紙を丁寧に折ってしまい直し、ゆっくりと顔を上げて窓の外を確かめる。

僅かに傾きだした太陽。手紙に込められた意味。これまでに得てきた経験。
それらの材料から、私はひとつの結論に辿り着く。

「……今日は卵は諦めなきゃダメか…」

目頭がもうちょっと熱くなった。





「あ…丸井さん」
階段を上りきった途端、階の中間の教室前から、ひとりの男子が慌てた挙動で強い『視線』を向けてきた。

…彼が手紙の差出人だな。
間違えようが無い。今この廊下には私と彼しかいないんだから。

第三校舎の3階。ここに集まるのは『第三理科室』、『書庫』、『第二備品倉庫』……などと名前はついているけど、
実質は少子化のあおりを受けて今は使われなくなった教室ばかり。つまり、生徒も教師もほとんど寄り付かない。
だけど私はすでに何度もこの場所に来ている。というか呼び出されている。
もちろん果たし状でなわけは…その方がいっそ気楽だよ。すぐに白旗上げれば終われるんだから。

スイー...

待ち受ける展開を考えると、足が重い。
現実に待ってる男子もポケットをまさぐったり腕を組んだりと落ち着きが無くて、心を軽くしてくれる要素は見当たらない。
どころか焦りと心配、期待の入り混じった『視線』で、前に進もうとする私の意思をどんどん削り取っていってしまう。

痛い、痛い、痛い。

スイー

それでも頑張って歩を進め、相手から5mくらい離れた位置で足を止める。…このくらいが適正な距離だろう。
だってこの子には覚えが無いんだから。
240丸井ひとはの憂鬱67:2011/10/29(土) 19:07:47.39 ID:i/WjIh9a
見上げる先の襟元には『U‐B』の学年章。つまりクラスは違う。
その上に載っているイケメン顔も記憶に引っ掛かるものは……無い…かな?…まぁほとんど無いって言っていいレベルだ。
真っ黒な髪と襟のホックまでしっかり閉じた制服の着こなしから、真面目そうな雰囲気が伝わってくるといったって、
知らない相手とこんな状況で並んで立つほど、私は無用心じゃない。
………そりゃ自意識過剰かもしれないけどさ、この身体は人一倍か弱いんだ。多少の警戒は許してよ。
正直言うともっと離れたい…いっそどこかに隠れて糸電話で会話したいくらいなんだから。

…なんだけど、私だってもう小さな女の子じゃない。ずっと壁に隠れてるわけにはいかないんだ。
痛くても、怖くても我慢してしっかり前に出て行かなくちゃ。
これくらい、普通の子には当たり前の事だよ。

「マ…丸井さん、来テくれたんだ」
誰もいない廊下に響くテノール…なんだろう、本来は。

少しは綺麗な発音も聞こえるけれど、そのほとんどはか細く震えて、ところどころ裏声にまでなっちゃってる。
おかげで聞いてるこっちまでどんどん心細くなってきちゃうよ。
…落ち着き払ってっていうのも難しいとは思うけど、もうちょっと女の子に気を使ってくれないものか……。

「……………………」
なんて考えを悟られないよう無表情を意識しつつ、私は次の言葉を待つ。
ぎゅっと手を握り締め、勇気を出して話相手の目を追いかけながら。

「……っ……」
けれど相手は沈黙を保ったまま、せわしなく目と顔と腕と指をバラバラに動かしてるだけで。

あぁもうっ、せっかく頑張って目線を合わせようとしてるのに、こんなにギョロギョロされてちゃ無理だよ……って違うのか。
ここは私が返事をしなきゃなんないシーンなのか…待て待て、『シーン』ってなんだ『シーン』って!
落ち着け私!!
とにかくまずは返事をしよう。『はい』…はちょっと上からな気がするな。『気にしないで』…卵が……う〜ん…。
…ぅぅぅ…とりあえず『うん』にしとこう!それがいい!

煙が出そうになりながらなんとか導いた結論を、引きつる喉へと移す。
「…………ぅ「あっ…ありがとう!あっ、やっ…チガうな。順番が違うんだ、お礼を言う順番が。ごめん」

いきなりさえぎられてしまった……。

………まぁこれは、慣れてない人が相手だと上手くしゃべれない私が悪いんだろうな……。
いい加減自分の人見知りはなんとかしなきゃ…って思い続けてもう何年経ったっけ?
『あがり症を治す薬』とか発明されないかなぁ。そしたら先生にだって………小学生か、私は。

「…――と思うよね。あっ、そういう意味じゃなくてさ!
丸井さんが『髪長姫』だからってわけじゃないんだ!本当に俺、あの日は助かって!だから嬉しくて!!」
「……………………」
いけない、意識がそれちゃってた。

少し気を逸らせてる間に、男の子は矢継ぎ早に言葉を並べるようになっていた。
自己紹介はとっくに通り過ぎて、もうずいぶん先に行かれてしまったみたい。
ちょっと待ってちょっと待ってね…ってほんとに待って。
まずい、この言い方は……見たこと無いわけじゃない気はしてたけど……。
241丸井ひとはの憂鬱68:2011/10/29(土) 19:08:58.38 ID:i/WjIh9a
「丸井さん!!」
「……………………」

よぎった不吉な予感に(悟られないよう無表情を維持したまま)慌てる私を置いて、相手の方は覚悟を決めたのか、
ビシッと定規を当てたみたいに姿勢を正し、同じくらい真っ直ぐに視線を向けてきた。
その強さに、薄っぺらい自分の身体が穴だらけになっていくような錯覚に陥いり、血管がギュッと縮こまる。
いたたっ…なんだけど、今はそれより次の言葉を聞き逃さないよう、なんとか耳に意識を集中させる。

お願い、気のせいであって……っ!!


「だからまずあの日のこと、ありがとう!
お礼を言うのがこんなに遅くなってごめん!」


「……………………」
うあああああっ!やっぱり会った事のある子だったか!!
神様は肝心なときにお願いをスルーするよ!

「俺、あの時驚いてちゃんと言えなかったのがずっと気になってて――…」
「……………………」
きっ…気まずい!お願いだから、すぐ思い出すからちょっと待ってぇ〜!
背中に嫌な汗をダラダラかきつつ、改めて男子を確認する。

まず顔。はさっき検索に引っ掛からなかったので、全体の印象からヒントを探す。
背は高い(私から見ればみんな高いけどね!ほっといてよ!)。170後半はあるだろう。
学生服に包まれた身体は、がっしりしてるって程じゃないけど頼りなさは全く感じない。
むしろピッ伸ばされた長い手足からは凛とした印象を受けるから、運動部の子…と言いたいけど、
それほど日には焼けてないから断定はできない。

お手上げだぁ……。

「…――からもう結構経っちゃてて、ごめん。
もっと早くちゃんとお礼言いたかったんだけど、なんか丸井さんって話しかけようとしたら消えちゃうっていうか――…」
「……………………」
まいったなぁ…誰だっけなぁ……。
もう一度、もっと真剣に相手の顔を確認しながら記憶のタンスをひっくり返してみる。整理整頓は得意なんだけど…。

「だから俺さ、って……ぁ…?
な…ぅ……ほんとに、色がっ……」
「……………………」
うぅん……こんなイケメン、いつ知り合ってたっけ?

真っ赤になってうろたえていても、細い顎と高い鼻から感じる印象は十分に『かっこいい』の分類に入っている。
耳にかかる長さで整えられた黒髪は、清潔感があって顔立ちの爽やかさをさらに引き立ててる。
なにより印象的なのが大きな鳶色の瞳。丸く柔らかな輪郭が優しさを、色合いが誠実さをあらわしているみたいで、
きっと心奪われてる子が沢山いるんだろうなぁって、簡単に想像できてしまう。

……で、誰だっけ?

印象的、なはずなんだけど、私『誰か』と話をするときは『相手の目を見ること』に集中しすぎてて、
他の事が頭に入ってないんだよね……。
242丸井ひとはの憂鬱69:2011/10/29(土) 19:10:16.40 ID:i/WjIh9a
「ぁ…のっ、まるいさん……っ。
んぐっ……俺っ……!」
「……………………」
はっ!しまった、相手の目を凝視し過ぎちゃってたか!

息も絶え絶えな男子の姿から慌てて目線を落とし、そのまま軽く瞼を閉じて入学後に繰り返されてきた『現実』を投影する。
………ほんとみんな同じリアクションで、いい加減傷つく事に飽きちゃうよ。

「ふっ…はぁ…っ。
あ…ごっ…ごめん!なんていうか…丸井さんの目が綺麗すぎてびっくりしちゃって……。
いっ…いやっ、丸井さんは何もかも綺麗なんだけどって何言ってんだ俺!」
ほら今だって、私が目を逸らした途端に早送りで言い訳を降り注がせてくる。
みんなわざわざ人を呼び出しておいてそんなに怖がるなんて、いったい何がしたいの?

「……………………」
はぁ〜…それにしてもこの子とは、いつどこで会ったのかなぁ…?
今さら名前を聞けそうな雰囲気じゃないし……。
申し訳ないなぁ……だけど、自分の名前と呼び出す理由くらい手紙に書くのが最低限のマナーじゃなかろうか。
あんなひと言だけで女の子を呼び出すなんて、ちょっと…かなり礼儀がなってないよ。

「きょっ…今日来てもらったのはさ、こないだのお礼に……違う。そんなんじゃないんだ。
俺、丸井さんのことが好きです。だからもしよければ今度の日曜日、お礼も兼ねて映画に誘わせてください」
「……………………」
まぁ私も『弟』がいる身だから、少しはわかってあげられるけどね。

そうだ。

『男の子』ってこうなんだっていうのは、少しくらいはわかる。
特にこういうかっこつけようって頑張ってる男の子は、手紙を書く事を恥だって思ってるんだろう。
『長々と文章を綴るなんて女々しい』とか、『面と向かって伝えなきゃ』なんてところか。
逆でしょ。大事な事だからこそ、まずは手紙でしっかり伝えてくれなくちゃ何にもわからないよ。
あんまり言いたくないけど、そんな自分勝手に『告白』を決めないで欲しいな。

……さっちゃんがうらやましいよ…。

「…――の駅前に新しいモールができたの知ってる?……って、誰だって知ってるよね…ごめん。
えぇっと…でもさ、俺こないだ奥の方で面白いアイス屋みつけてさ、多分丸井さんも知らないと思うんだ」
瞼のスクリーンの向こうで、男の子の告白は続く。

「……………………」

そりゃ私だって、多少枯れてる自覚があるとはいえ花の女子高生だ。
こんなふうに漫画みたいに、学校でかっこいい男の子に告白されたら嬉しい…と思ってた頃もあったよ。
けど実際経験してみると、はっきり言ってそれどころじゃないっていうのがよくわかった。
想像してみて欲しい。
こんな人気のないところで、よく知らない身体の大きな男子とふたりだけになって、
しかも全く覚えの無いストーリーをいきなり追いかけさせられる。
こんな状況で胸に警戒以外の何を覚えろっていうの。

それでも今、目の前に居る男の子は、ただ自分のことに一生懸命になってるだけなんだってわかるから。
だからせめて逃げずに受け止めなくちゃって、私は手のひらにかいた気持ち悪い汗を我慢する。

「…――には大きな映画館もあって、今は丸井さんの好きな『特撮もの』もやってるから――…」
「……………………」
春休みにとっくに神戸さんと見に行ったんだよね…。
それにタイトルも言えないって事は、あなたは全然興味がないんでしょう?
243丸井ひとはの憂鬱70:2011/10/29(土) 19:10:55.17 ID:i/WjIh9a
私に気を使ってくれてる。私の好みに合わせてくれようとしてる。それくらいは、わかる。
だけどこんな取って付けたような扱いされちゃ、自分がオタクなのを馬鹿にされてるみたいでいい気はしない。
そもそも話した覚えの無い相手に趣味を把握されてるなんて、不気味以外の何でもないよ。
……『そもそも』って言うならそもそもこの人たち、小学生にも劣る私の貧相な身体に何を期待してるんだろうか?
自分で言うのも何だけど、こんな薄っぺらくちゃ何にもできないと思うけど。
どころか下手するとあっさり壊れちゃうかも知れないよ。
見てわからないかな?
それとも『食いちぎっちゃうくらいキツい』のが、男の子にはすっごく魅力的だったりするの?

なんてね。

「……………………ッ」
くだらない妄想に誘われ漏れ出そうになった自嘲を、奥歯を噛み締めて堪える。

「ぁ……っ、ごめっ…ごめん……。
俺、丸井さんの気持ちを全然考えずに、ひとりではしゃいじゃって……。
ごめん…みっともなくて………」
けれど私の意識が逸れた事に気付いたんだろう、頭に降りかかる声は悲しい音色に変わってしまった。

あぁ…またしまったよ……。いくらなんでもこれは私が酷すぎる。
この子はこんなに一生懸命に想いを伝え「丸井さんはそんなに真剣に考えなくていいからさ!」 ………。

「丸井さんはちょっと俺を試すくらいのつもりで十分だよ!
1日だけでいいから、気軽な感じで付き合ってみて欲しいんだ!!」
続く言葉に、身体と心はますます冷えていく。

気軽に。

『気軽に男の子と付き合う』って、いったいどうやればいいの?あなたにとって誰かを好きになるのはそんなに軽い事なの?
それとも普通はそうなのかな?この状況を、この告白を喜べない私の方が変なのかな?
軽くない私の想いは、やっぱり先生に迷惑なのかな?

『今』の私はそんなに不器用で暗い、自分勝手な女の子なんだろうか………?

グルグル回る疑問たちが心臓へ鎖を巻きつけていくせいで、血の流れが滞って指先がピリピリとかじかんでくる。
胸の奥から湧き出してくるものがあまりにも大きくて、瞼をギュッと瞑っていてももう堰き止められない。
もう無理だよ。
お願い、逃げ出させて……!

「………俺なんかじゃ、髪長姫に釣り合わないのはわかってるけど……」
「……………………」
何がわかってるの?私には全然わからないよ。
もし私がイタズラしても、からかっても、騙しても、叩いても蹴っ飛ばしても。泣かせてしまったとしても。
何があっても絶対に優しく手を差し出してくれるっていう証拠は、いったいどこにあるの?

244丸井ひとはの憂鬱71:2011/10/29(土) 19:11:36.16 ID:i/WjIh9a
「……………………」
「……………………」


そしていつものように沈黙の時間が訪れる。
いつものように、並べる言葉が尽きた男の子。
いつものように、告げる言葉に迷い果てた私。
……言葉は決まってる。ただ、それを告げた時の相手の姿を見るのが辛くて、告げる事を迷ってしまう。
想いを破られた姿がまるで明日の自分みたいで、その想いを破る自分の残酷さが辛くて、目を逸らしてしまう。

そして、結局自分の事しか考えていない事実に気付いて、胸が張り裂けそうになる…。

だからせめてこの時だけは、しっかり相手を見て告げよう。
覚えておきます。あなたが痛みに耐える姿を、悲しい瞳を、私があなたを傷つけた事を――


「ごめんなさい」私はまだ夢を見続けていたいの。


痛い。それしか考えられない。


「〜〜ぐっ……」
だけど俯き、唇を噛み締めている男の子の胸はもっと痛いはずだ。

……もう本当に見ていられない。涙を見られたくない。

「………」
軽く頭を下げてから、逃げ道へと振り返る。
嗚咽を噛み殺すのが精一杯で、別れの言葉も告げられない、情けない私……。

スイ「っ!待って!!」 「えっ…キャッ!?」 ひっぱられ――

突然降りかかったアクシデント。鈍い私の身体はその瞬間、ただ目を回すことしかできない。
後ろから腕を引かれたせいで、こけそうになったんだ。
認識が届いたときには、

「あっ…まるっ……」 「……っ」

目の前に現れた硬い胸板と、二の腕を握り締める手の感触に身も心もすくんでしまっていた。
ダメだ、指1本動かせない……っ!

「まるい、さん……っ」
「ぁ…くっ……」
頭上から届いた声に、ゆっくりと顔を上げる。上げてしまった。
『視線』がダイレクトに私の瞳を射抜く。
相手の心がはっきり伝わってくる。
驚いて、いる。

あまりにも手ごたえが無い事に。


弱くて小さい髪長姫。これなら簡単に自分のものに――「そこまでだ!!」


245丸井ひとはの憂鬱72:2011/10/29(土) 19:12:05.75 ID:i/WjIh9a
「ぁっ…!」
突然空気を震わせた凛々しい声色に、私の目の前まで近づいてきていた唇が止まる。

唇……!

置かれた状況を理解して、身体がやっとガタガタと震えだす。

「たっ…たすけ……っ」
震えて上手く動いてくれない身体を必死で叱咤して、私はなんとか声の主に手を伸ばそうとする。
伸ばそうとする、だけ。小学生にも劣るこの身体では当然高校生男子の力から逃れることなんてできやしない。
恐怖のせいで視界が、友達の姿が涙で霞み、ますます恐怖が募っていく。

いやっ…!お願い、助けて…っ!

「やめろ、止まれ。
彼女から離れろ!!」

さくらちゃん!!!

「あっ…ちがっ……。
お…俺、は……」
「離れろよ。早く」
「うっ…!」

身も凍るほどに冷たいさくらちゃんの表情と声に、男子の身体が大きく震え、のろのろと私の身体を解放する。
と同時に今度はさくらちゃんが私を力いっぱい抱き締め、その頭ひとつ高い背で防壁を作ってくれる。
視界を女の子の胸元だけでいっぱいにしてくれる。

「うっ…ううっ……。
うぐっ…ふぅ……っ」
「よかった……。
もう大丈夫だからね、三女」
押し付けられる柔らかな胸に、甘い香りに、優しい声に、安心して一気に堰が決壊する。
情けないとか考える余裕なんて無い。今はただ必死に、溢れる涙と鼻水をさくらちゃんの胸元で拭うことしかできない。

あ…あぁ…うぅ……。
こわ、かった……っ。

「俺、そんなつもりじゃ……」
「黙れ。
いいか、黙って聞けよ。お前のくだらない言い訳なんか聞く気はない」

さくらちゃんが首を背中の男子に向けたんだろう、声の位置が右上に移動する。
触れれば切り裂かれそうな程に鋭い声。
けれどそれを発する間も、柔らかな手がゆっくりと背中をさすってくれるおかげで、私はただ心を安らがせる事に集中できる……。
246丸井ひとはの憂鬱73:2011/10/29(土) 19:12:35.45 ID:i/WjIh9a
「私はお前を知ってるよ。
残念だったな、私はお前を知ってるよ。有名人だ。
弓道部の野崎智也。
失うものの多い身だろう」
「う……」
「もちろんそんなもの私の知った事じゃあないが、彼女の名誉がある。学校での生活がある。
だから今は胸にしまってやるよ。
妙な気は起こすなよ。『髪長姫』を襲ったと知られれば、学校どころか鴨橋町にすら居られなくなるぞ。
今だけじゃない、これからずっとだ。『髪長姫』に何かあったら、いの1番に貴様を疑ってやるからな。
行け」
「そんな、襲うだなんて……」
「行けと言ってる!!」
「ぐっ……」

タッタッタッタッ...

遠ざかる足音が耳に届く。
あ…ダメだ、やっと涙が収まってきたと思ってたのに……。

「う…うぅ〜……。
ひっく…」
「大丈夫、大丈夫だから……」

柔らかな手がゆっくりと私の背を踊り、髪の中を泳ぐ。
友達のぬくもりがゆっくりと、恐怖で固まった私の心を溶かしてくれる。
……大丈夫だよね、『今』の私でも。
だって、

「ぐすっ…ふっ……。
あ…あり、がとう……。
ほんとに、ありが…と、う……うぅっ…」

こんなに強くて優しい友達を作れたんだから……。
247ガンプラ:2011/10/29(土) 19:17:14.05 ID:i/WjIh9a
弓道部なのは私がくらもちふさこの大ファンだからかも知れない。なんとなく思いついた。

それにしても、人生において「そこまでだ!」って使う/使われる確立って、どの程度のものだろう?
と、学園仮面ライダーを見ながら思いました。アメフトとラグビーって何が違うのさ?
では来月〜。
248名無しさん@ピンキー:2011/10/30(日) 15:15:30.06 ID:jZt1UdTx
>>247乙です!みつばはやっぱりいいお姉ちゃんですね
249名無しさん@ピンキー:2011/11/01(火) 22:25:36.40 ID:kY1bcDn/
>>247
乙です
オレもフォーゼ見てます
アメフト→最初にボール持ってる人(隼のポジ)が作戦通りに前にいる仲間にロングパスして相手のゴールまでボールを運んでもらうスポーツ
ラグビー→ボールを持った人は前の仲間にパスする事は出来ないので自分でゴールまで持って行くか後ろの仲間にパスしながら相手のゴールを目指すスポーツ
大まかな違いはこうですね、詳しくはアメフト漫画のアイシールド21を読んでみてください
と、みつどもえ関係ない事言ってすいません。(隼って誰だよとか思いますよね)まあいつも頑張ってるガンプラ様への気持ちって事で……
250名無しさん@ピンキー:2011/11/01(火) 23:58:55.82 ID:pyAwMwsn
すいません。PCの組み直しやら環境構築のため、
まとめるのが遅くなりました。

後、「丸井ひとはの憂鬱編F」のリンクのミスを修正しましたので
もう見れるようになっていると思います。


>>247 >ガンプラさん
お疲れ様です!
251名無しさん@ピンキー:2011/11/03(木) 06:20:13.73 ID:puPiu1cK
しかしひとはの憂鬱長いな……後どれくらいあるんだろ
252名無しさん@ピンキー:2011/11/05(土) 01:30:52.76 ID:8PLJDs0a
そういや去年のみつどもえ法人誌で矢部ひとファン歓喜な絵があったとか聞いたけど、
何が描いてあったんだ…?
253名無しさん@ピンキー:2011/11/05(土) 04:51:35.32 ID:uFiiyPDQ
>>252作画の一人がタキシード&ウェディング姿の矢部ひと描いた
個人的にはのりおがラブコメを意識的に匂わすだけにしてるのになんちゅうことをしとるんだと思った
254名無しさん@ピンキー:2011/11/11(金) 07:25:19.57 ID:wePgrJg2
過疎age
255ガンプラ:2011/11/12(土) 02:54:36.05 ID:vLO/yz9B
おや、規制とやらは終わったようですね。

>>249
こちらこそすみません。そもそも私が関係ないことを振るのが悪いのは、わかってます。
あのお話はディフォルメされた一つの視点として、非常におもしろいなぁと思ってます。

人によって見えているものが違う、という考えがあるので、私は一人称の物語にこだわってます。

事前の戦隊ものはとっくに見なくなりました。あっちは全然おもしろくない。

>>251
正直、私もそろそろ終わりたいです。
文章量的には、2/3を過ぎてます。
執筆時間的には、私の暇が無くなってきたので年を越しそうです。
256名無しさん@ピンキー:2011/11/21(月) 23:26:31.30 ID:KkHBBM7R
※謎矢部松
『狂った校長』
第一話「校長の無茶振り〜童貞卒業」
257名無しさん@ピンキー:2011/11/21(月) 23:26:59.30 ID:KkHBBM7R
【矢部宅】

始まりはとある休日の夜のこと
勤めている学校の校長先生から突然電話があったのだ

校長『と、言うわけで今夜ね。君の家にデリヘル嬢を頼んでおいたよ』
矢部「いきなり意味がわからないっ!」

校長「ほら、前に言っただろ。いい店を紹介するって」
矢部「知りませんよ!」

校長「君もコンプレックスを捨てられれば、生徒をキャバ嬢に仕立てあげるような馬鹿な真似もしなくなるだろう?」
矢部「もしやあの時の件ですか・・・って!だからあれはガチレンごっこでして・・・っ!」

校長「楽しみにしていたまえ。『びっくりするほど若くて、君の知り合いにそっくりな女の子を選んだ。本人のように接してくれるよう特注までしておいてあげたぞ』」
矢部「えぅ・・・!?な、なんて都合のいい背徳サービス・・・////」

校長「今期待したね?」
矢部「ち、違いますよっ!ほんとまずいですから!今からでも断ってくださいよ!」

校長「もうキャンセルはできないし、何よりこれは君のためなんだ。受け入れるも追い返すにしてひとりのも男としてうまく対応してくれることに期待しているよ」プツン
矢部「そんな勝手な!あっ!・・・・・・切られた」
258名無しさん@ピンキー:2011/11/21(月) 23:27:28.25 ID:KkHBBM7R
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

矢部「どうしよう・・・どうしよう・・・どうしよう・・・でも・・・いっそ今こそ童貞を捨てるべき?」
矢部「いやいや!教師の僕がこんな不埒なこと・・・うーんでもなぁ」
矢部「そういえば校長先生の話を信じるとして、いったい誰のそっくりさんが来るんだろう?さすがに栗山先生みたいな天使はありえないだろうな」
矢部「・・・海江田先生似?うわぁー想像できちゃうな。でもびっくりするほど若いらしいし・・・まさか生徒似?それまずいよね・・・やっぱり断るべきかなぁ」

(ひとは「え?他人の情けで呼んで貰った女の子にすら逃げてしまったんですか?やはりというかさすがの童貞ですね」)

矢部「ヌギギ・・・な、なぜこんな時に・・・・・・っ。もっもう、どうにでもなれ!せっかくのチャンス!どんな娘だろうとやってやるぞ!ここ、今夜で童貞卒業だぁ!」

―ピンポーン!

矢部「ぎゃああああああああああああああぁぁぁ来たぁああああ!!」

ガチャ!

????「お邪魔しまーす♪矢部っちにとり憑いた悪霊さん♪」
259名無しさん@ピンキー:2011/11/21(月) 23:28:07.91 ID:KkHBBM7R
【矢部宅:風呂場】

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

シコシコシコ
シコシコシコ

浴室には機械的な摩擦音が響き続けていた
風呂場にいるのは息を荒げた裸の男女が二人

矢部「はぁ・・・はぁ・・・・・・くぅっ・・・」

一人は自らの手を上下運動させるのに夢中な男、教師矢部
そしてもうひとりは

シコシコシコ・・・シコシコシコ

松岡「あ・・・あ・・・すご・・・ぃ・・・どんどん大きくなって・・・あ・・・・・////」

担任教師の手淫をおっかなびっくりと見守るオカルト好きの少女、生徒松岡咲子だった
260名無しさん@ピンキー:2011/11/21(月) 23:28:41.87 ID:KkHBBM7R
一体どんな勘違いの数々が重なりこんな状況に至ってしまったのか
あろうことか彼らは教師と教え子の身でありながら男女の関係を結ぶ準備を整えつつある
肉体関係の契り、SEXの準備だ

この二人を止める者はいない

そして彼らは気変わりもしない
それどころか互いに気持ちを高めつつある

この夜、まもなく二人は過ちを犯すことになるのだ
261名無しさん@ピンキー:2011/11/21(月) 23:29:10.64 ID:KkHBBM7R


シコシコシコシコシコ

松岡「ハァ・・・ハァ・・・前見たときよりも・・・ずっと・・・あ・・・また膨らんで・・・矢部っち・・・・すっごぃ・・・・・・////」

シコシコシコシコシコ

松岡「はぁ・・・・あ、あ・・・・矢部っち?気持ちいいの?・・・・・オチンチン擦るの気持ちいいの?・・・あぁ・・・矢部っち・・・・・矢部っちぃ・・・・・////」

担任教師の剛直を熱い視線で見つめながら、責めにも似た呟きを発し続ける松岡咲子
その顔はすでにオカルトではしゃぐ少女ではなく男の物を受け入れるオンナのそれになりつつある

シュッシュッシュッ・・・!シュッシュッシュッ・・・!ググ…ッ!

矢部「うっ」
松岡「きゃ・・・・////」

ドピュ!ビュルルルー! ポタ ポタ ポタ・・・

この30分後、二人はシャワーを浴び
262名無しさん@ピンキー:2011/11/21(月) 23:30:40.69 ID:KkHBBM7R
【1時間後】

―パン!パン!パン!パン!パン!

松岡「あ!あ!あ!あ!あ!あ!やべっ・・・ぃ!あ!あ!ング〜〜〜〜・・・! あ!あ!あ!あ!あ!////」


風呂場には激しい水音と情熱的に担任教師を求める松岡咲子の嬌声が響き続けるのだった




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




―ピンポーンピンポーンピンポーン

クリヤマ「留守かな?」
カイエダ「はぁ?なによそれ。童貞って聞いたけど、もしかして逃げた?」
クリヤマ「前払いで料金はもう貰ってるし、時間が空いてよかったじゃないですか」
カイエダ「ったく、不愉快ね!今日は飲んで帰るわよ!」


                〜続く(嘘)〜
263名無しさん@ピンキー:2011/11/22(火) 00:38:21.15 ID:/CnuKwjA
>>262新職人さん乙 記念age
264名無しさん@ピンキー:2011/12/01(木) 15:47:45.11 ID:jrgsTNno
月曜日 AM6:30 教室 フェラチオ

ピチャ…ペロペロ…ピチュ…
ペロ…チゥ〜…ピチャピチャ…ペロペロ…

松岡「んっんっんっん…ペロ…チュ…ズズ…」

ジュポ ジュポ ジュポ クチュチュチュチュッ

矢部「うっく!」
松岡「ひゃ///」

ドピュッ…ドピュッ…ビュ…

矢部「ハァ…ハァ…」
松岡「ンゥ…ハァ…ハァ…ネクタイにかかっちゃった…///」

ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…
ハァ…………
………
265名無しさん@ピンキー:2011/12/01(木) 15:48:09.08 ID:jrgsTNno
火曜日 AM12:40 プールサイド スク水素股

シュッシュッ シュッシュッ

矢部「フッ…!ハッ…!ンッ…!」
松岡「ハッ…/// アッ…/// アン…/// ふともっ……くすぐった…い///」

シュッシュッ
シュコシュコシュコ…
シュコシュコシュコシュコ…!

ビュルル…ッ!ビュッビュッ! ポタタ…

松岡「あ!……ぁ熱い……矢部っちのが…お尻にぃ…///」
矢部「ハァ…!ハァ…!………フゥ」

松岡「ハァハァ…洗わなきゃ……ね? こ、今度は水の中で/// きゃ!?」ドン

ザブーン!!

……………
………
266名無しさん@ピンキー:2011/12/01(木) 15:48:31.01 ID:jrgsTNno
水曜日 PM3:30 体育倉庫 体操義足コキ

グッグッグッ…

矢部「ぐぅ…!うぁぁ……あ…!う…!」
松岡「矢部っちの…/// 柔らかいよぉ…でも熱くて硬いよぉ……///」

グィグィグィ…
グッグッグッグッグ…
シュッシュッ…シュッシュッシュッ…

矢部「くっ…!松岡さ…!もぅ…出!」

ピタ

松岡「ハァハァハァ…ッ!ハァ…!ごめんね、疲れ……ちゃった…///」

松岡「ハァ…ハァ……ん………スー…スー……」
矢部「ハァ……フゥ……」

ギュ……スー…スー……

……………
………
267名無しさん@ピンキー:2011/12/01(木) 15:48:51.88 ID:jrgsTNno
木曜日 PM4:30 放課後トイレ キス

チュ…チュ…レロ…
チュパ…ピチャ…チュ…

松岡「ぷはぁ…/// はぁ…はぁ……///」
矢部「はぁ…はぁ…」

松岡「ん!? チュ…チュー…レロ…ンン…/// ン……///」

ピチャ…レロレロ…
チュ…チュ…クチュ…

松岡「ン、ン…/// ン…!チュポ…ン…ン〜〜〜///」ビクン!

松岡「チュポン!あ!ハァ…!ハァ……!す、すごい……/// んあ…///」

チュ…クチュ…チュッ……
ペロペロ…レロ…

……………
………
268名無しさん@ピンキー:2011/12/01(木) 15:49:22.47 ID:jrgsTNno
金曜日 PM8:00 矢部宅 風呂ローション手コキ

ヌコヌコヌコ…
にゅこにゅこ……にゅこにゅこ……

グィ!

松岡「あっ…!?矢部っち?立っちゃダメだよ……! あ!?きゃ!」ドン

グイグイ…!

松岡「だ、だめだよ!それ以上は!…入れるのはだめぇ……っ///」

ズヌヌヌ…ッ!

松岡「ひああぁあああぁあー!」

ヌップ…!ヌプヌプヌプ…!

松岡「あ!あ!…すごっ…ぃ…ヌルヌルで硬いぃ…///」

ズッコズッコッズッコ…!

松岡「あー!あー!矢部っちー!矢部っちー!あー!あー///」

ヌコヌコヌコヌコヌコヌコヌコ…!
ヌコヌコヌコヌコヌコヌコヌコ…!

……………
………


どぴゅ

松岡「あ…///」

妊娠END
269ガンプラ:2011/12/06(火) 00:39:40.58 ID:aBnRgrnZ
>>268
乙です。
寂しくなってきたので、書き手にきてもらえるのは非常に嬉しいです。

ついでに、いつが上げるべき時期なのかはわかりませんが、上げておきましょう。
この板が消えてしまっては非常にこまるので……。

後、今年はもう書く暇なしなのですが、一応PIX○Vに1本上げてます。いや、何の代わりにもならないんですが。
すみません。
『憂鬱』は余裕ができたら続きを書きます。
ちょっと今、私が憂鬱状態で……。
270名無しさん@ピンキー:2011/12/06(火) 17:11:20.11 ID:5zI8nOQ6
藤林丈司
271名無しさん@ピンキー:2011/12/17(土) 03:19:14.28 ID:ZI4fITI1
俺がageてやる
272名無しさん@ピンキー:2011/12/24(土) 00:02:59.61 ID:pI5hv86t
DLSiteのみつどもえ同人まとめ
http://doujinlist.info/mitsudomoe
273名無しさん@ピンキー:2011/12/25(日) 12:48:34.20 ID:J9xDfwIa
>>272ふたばのが少ない怒りのage
ガンプラさんはピクシブに行ってしまったん?
274ガンプラ:2011/12/25(日) 21:18:52.03 ID:+8GrF0sJ
否、そんな事はないです。
PIXIVは気分転換+こっちに書き手さんが流れてこないかな〜的な意図で、
少し置いてみました。
たまには他の話も書いてみたかったので、土台作りも兼ねて。
(久しぶりに剣と魔法な二次創作も書きたいな〜)

少なくともみつどもえ系は、あれ以上あちらに置くことはありません。
あと、『憂鬱』は来年持ち越しです。
275名無しさん@ピンキー:2011/12/25(日) 23:29:34.16 ID:J9xDfwIa
>>274それなら良かったっス
なんかのりお先生が仙台の書店に書き下ろしのペーパーと色紙を用意したとか これは復帰フラグでしょうか?
なにはともあれ良いお年を〜
276名無しさん@ピンキー:2011/12/30(金) 23:49:24.49 ID:rUc01hov
ふたば×しんちゃん。25歳設定。
進路とかは捏造しました。ご容赦下さい。大人のおもちゃネタです。苦手な人スルーで。
ちょっと長くなったから、切り切り投稿します。前半部分エロなし、まず投稿します。エロは後半から…
ケータイからなのでお見苦しい点あるかと思いますが、ご了承下さい。
277名無しさん@ピンキー:2011/12/30(金) 23:52:45.36 ID:rUc01hov
サクッとお手軽に死ね

これは誰の言葉だったか。
いや、今それはどうでもいい。
ともかく、俺はいま心の底からそんな気分だ。
目の前で満足気にビールを飲む、小学校からの「落書き顔」の友人に対して。


事のおこりは2時間ほど前に遡る。
夕方のふたば来訪に備え、色々見られたらまずいものをかだしている時に、携帯がなった。
発信者は「千葉雄大」。普段はメールなのに珍しいと思いつつ出ると、
夜、友人と約束をしていたが、相手側の都合で待ち合わせ時間が延びてしまったらしく、
それまで俺の家で時間を潰させて欲しいとの事だった。
断る理由もなかったので二つ返事で了承したが…今思えば、不自然だ。
俺は、もともと大学進学を機に東京で一人暮らしを始めたが、
就職後は住まいを神奈川県海老名市に移している。
大学では工学系の修士課程に進み、就職はメーカーの研究職として採用されたが、
工場併設の研究所が海老名にあった為だ。
企業の研究所や工場というのは、土地や環境の問題から郊外や地方にあることが多い。
海老名は上尾からは決して近くはないが、首都圏内だし、まぁ悪くはないと思う。
278名無しさん@ピンキー:2011/12/30(金) 23:55:39.37 ID:rUc01hov
千葉は東京の大学を卒業後は、埼玉に戻り、なぜか郵便局に勤めている。
「地域の皆様に夢と愛を運ぶのが我々の指名なのです」とか
「楚々とした人妻が、そっとゆうパックを差し出す。
宛名は縁もゆかりもなさそうな男の名前。
その包みの中に何が詰まっているのでしょうか。
ただの愛でしょうか。背徳にまみれた欲望でしょうか。
郵便局はエロスのターミナルなのです。」とか。
諸々意味不明な事を言っていたが、まぁあいつもひとりっこだし、
なるべく親の近くにいてやりたいというのが真相なんじゃないかと思う。
というわけで、俺は神奈川、あいつは埼玉に生活拠点があるわけで、
ふらりと俺のアパートに来れるわけがないし、今までのあいつの交流関係からして、
海老名に友人がいるとはきいた事がない。
あいつの偶然を装った訪問は、あからさまに仕組まれていたのだ。
しかし、その時の俺は二週間ぶりにふたばに会うんで浮かれていたし、
なんだかんだで千葉に会えるのも嬉しかったから、
そこら辺の不自然さに頓着しなかった。
思えば、ここから既に千葉の計算の範疇だったのかもしれない。
279名無しさん@ピンキー:2011/12/30(金) 23:57:12.98 ID:rUc01hov
電話から程なくして、千葉から最寄駅についたと連絡があった。
駅からアパートまではわかりやすい道なので電話で道を教えてやると、
迷う事もなかったようで、すぐに玄関のチャイムが鳴った。

「久しぶりだな、千葉。」
「おぅ。相変わらずイケメンだな。」
「お前も相変わらず帽子被ってんだな。」
「イケメンは否定しないところも変わらずだな。」

軽口を叩きながら招き入れる。
子供の頃からの友達は、久しぶりの再開でもあっという間に昔の空気になってしまい、自然と盛り上がる。
千葉は手土産としてビールと乾き物を買ってきていたので、
即席の飲み会が始まった。

「どーよ、仕事は。イケメンだけじゃ社会を渡っていけない事がわかったか」
「イケメンイケメンうるせーよ。
まぁ、しかし、ほんと働くって大変だな。上司はムカつくし、残業あるし。
いや、マジで俺が院にいる間も社会人してたお前らを尊敬するよ。」
「そうだろう、そうだろう。働くのは大変なんだぞ。
秘技を繰り出したらあっという間にクビにされるぞ。」
「お前まさか職場で」
「俺がそんなヘマをするはずなかろう。
毎日笑顔と優しさをお届けしているさ!特に人妻にな!」
「クビも時間の問題だな…」
280名無しさん@ピンキー:2011/12/30(金) 23:58:43.14 ID:rUc01hov
久しぶり…俺の引越し以来だから、半年ぶりの再会というのもあり、
話はずいぶんと盛り上がった。

「佐藤はふたばとは順調か?」
「まぁな」
「あいつ、今東京都の教員だっけ」
「中学の体育」
「まさかあいつが教員採用試験受かるとは…」
「俺が自分の勉強そっちのけで教えたんだよ。
試験当日も会場つくまでの間にヤマかけたとこ叩きこんでやったよ。」
「相変わらず過保護だな。」
「長女三女、おじさん、はてはうちの両親や姉ちゃんからも毎日のように電話きてさ…
何とかして受からせてやってくれって。
魔法使いじゃねーっての。」
「一族郎党、ふたばに過保護だな。
でも、本人もそうとう頑張ったんだろ?」
「そりゃそうだよ。
なんつーか、天才肌の奴の集中力っつーか火事場の馬鹿力は侮れねぇと思ったわ。
俺には真似出来ないわ。」

話しながら、当時のふたばを思いだす。
スポーツ特待生で、都内の某大学教育学部に進んだふたばは、
卒業後の進路に迷う事なく教員の道を選んだ。
在学中もスプリンターとして数々の功績を残したあいつにはアスリートとしての道もあったが、
「子供の頃、ひとや龍ちゃんに運動を教えたのが、本当に楽しかったから」と、
実にあっさり教職の道をとった。
281名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 00:00:17.27 ID:FehnDiL1
その選択に間違いはなかったようで、
教員生活三年目だが、新任当初と変わらず楽しそうに仕事している。
ふたばの飾らないキャラが難しい年頃の子供らにも受け入れられやすいのか、
話をきくかぎりなかなか人気のある教師なんじゃないだろうか。

「おい、今日はまだふたばは来ないのか?」

千葉の声に、ふと我にかえる。

「あ、あぁ…新宿で長女と昼ご飯食べて買い物してから来るっつってたから、5時頃…
あぁ、そろそろ来るんじゃね?
…って、なんで今日ふたばが俺んち来る事知ってるんだよ。」
「いや、まぁ細かい事は気にするな。あぁ、ところで。」
「なんだよ。」
「この間、飲み会で貰った景品を今偶然持ち合わせているんだが。」
「ほぅ。」
「よければ貰ってくれないか。」
「はぁ?」

ガサガサと鞄を漁り、千葉がしれっと机の上に置いた『景品』…。それは。

「ぶはぁっ!」
「…佐藤よ、童貞でもないのに驚きすぎだろ。
何もビール吹かなくても。」
「がはっげほっ…お前、これ」
「うむ」

千葉の細い目の奥が光った。

「ピンクローターだ。
今日、こちら方面で用事があるというのは嘘だ。
佐藤、今日はお前にこれを託しにきた。」
282名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 00:01:26.68 ID:FehnDiL1
「な、何考えてるんだ!」
「ふ。その狼狽っぷり、やはり佐藤だな。
ガキの頃にパンツを見て鼻血吹いてたのを思いだすぜ。
あの頃とちっとも変わらないようで俺は嬉しいぞ。」
「話きけよ!
お前、わざわざこのために埼玉から海老名まで来たのか!?馬鹿なのか!?」
「人ぎきの悪い。新宿にもともと用事があったんだ。
ちょいと足をのばしただけだ。」
「ちょっとってレベルじゃねぇよ!」

俺は心底呆れていた。
こいつのエロスにかける並々ならぬ熱情は知っていたが、ここまでとは。
こんなオモチャを渡す為だけに、埼玉から片道2時間近くかけてくるとは…

283名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 00:04:52.30 ID:FehnDiL1
「まぁ落ち着いてきけよ、佐藤」

千葉がニヤリと笑う。

「お前、ふたばと付き合って何年だ」
「…大学の三年からだから、今五年目だ」

周囲には驚かれるが、俺とふたばが正式に恋人になったのは、決して早くない。
高校までは同じ学校だったが、お互い部活なんかに忙しくて一緒にいる時間がなかったし、大学は別だった。
まぁ、色々諸々紆余曲折を経て、晴れて恋人同士になったのが大学三年の春だ。

「五年か…。ということは、週一でヤッたとして、月4回×12か月×5年=240回はヤッているわけか。
付き合いたての熱い時期と、記念日、疲れマラも加わえると、お前は既に300回近くふたばとの性交に成功しているわけだな。ふっ、さすがは佐藤というべきか。」
「なんなんだその計算は!雑すぎるだろ!」
「…佐藤よ。それだけこなしていたらマンネリするだろう。
最近、Sexの時に彼女をちゃんと見ているか?お前の目を盗んで、退屈げにため息ついたりしてやいまいか?ツイッターに最近マンネリなうとか書かれてないか?」
「ア・ホ・かー!!」

284名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 00:06:11.29 ID:FehnDiL1
・・・
それから数時間後…俺は今、ふたばと向かいあっている。
あのあと、千葉と押し問答してる最中に、ふたばがやってきた。
チャイムも押さずにいきなり合鍵で入ってきた為、場合が場合だけにワタワタする俺を尻目に、千葉はしれっと「邪魔してるぜ」などと挨拶していた。
…そういえば、気付いたらローターが見当たらないんだが、千葉のやつが持って帰ったんだろうか?
なんだか、嫌な予感がしないでもない。

「しんちゃん、千葉氏をもっと引き止めてよー」
「あいつにだって予定あるだろ」
「久しぶりだったのに…」

千葉は、ふたばが来て二言三言話すやいなや、そそくさと帰っていった。
ドアを閉め際に、俺に向かって親指をたてていたのが、実に腹立たしく…怪しい。
きっと、すべてあいつの計算どおりなのだろう。俺が断ること前提で、あえてふたばが来る直前にきて、どさくさにまぎれてブツを押し付けて帰るという…
…サクッとお手軽お気軽お気楽に死ねばいいのに…
285名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 00:07:25.34 ID:FehnDiL1
「千葉氏と久しぶりにおっぱい談義がしたい!小生、今なら自分のおっぱいを例にあげてより真にせまった話ができるのに!」
「お前…彼氏の前でそんな話しようと思わないでくれよ…」
「しんちゃんは…やっぱりパンツの話の方が嬉しいの?」
「そうじゃなくて!」
「男心は複雑っす」
「あのなぁ…」

俺の話をまったく気にせず、ふたばは気難しい顔で夕飯をツマミに千葉の買ってきたビールを飲んでいる。
俺の家に来ると、たいていふたばは飯を作ってくれる。今日も、千葉が帰ったあとすぐ作ってくれた。見てくれはいまだに若干微妙な事もあるが、味はほぼ狙いどおりのものができるようになっているので、以前のように張り付きで監視する必要がなくなった。
千葉の持ってきたビールはまだ余ってたから、夕飯ついでに二人で飲んでいたのだ。

「しんちゃん、ご飯足りてる?」
「うん、大丈夫。うまいな、この…卵で餃子の具をとじたみたいなやつ」
「ニラタマだよ」
「…なるほど。うん、コレうまいよ。」
「へへ、よかった。ありがとう!」

料理をほめただけなのに、ふたばはでかい花を咲かせたみたいに笑う。俺は気恥ずかしくなって、ニラタマ(らしきもの)を黙ってかきこんだ。
286名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 00:08:31.77 ID:FehnDiL1
ふたばに関して、周囲から「なぜあの子を選んだの?」ときかれる事がたまに…いや、かなりある。
皆の言い分はこうだ。
「丸井ふたばは、確かに顔はかわいい。身体つきもエロい。性格も良い。
でも…超がつく変わり種だ。まともな会話が成立しない。他の女相手で通じた事が通じない。マイペースすぎて、他人があわせることができない。
なぜ、あえてそこへいく??」

人によって言い方は色々だが、大まかにまとめるとこんな感じだ。
まぁ、言いたい事もよくわかる。なんだかんだで三女とくっついた矢部っちについて、俺も似たような感想を抱いている事は否定しない。

しかし、ふたばに関して、みんなわかってないなと思う。

確かに、こいつはかなりの変わり種で、正直扱いにくい。今まで付き合った彼女の方が何倍も楽に付き合えていたと思う。
でも…こいつの素直で、まっすぐで、嘘のない性格は、他の女じゃ真似できないと思う。
幸か不幸か、母親に良く似たこの見た目のおかげで、SSSしかり、女は自分から過剰なアピールとともに寄ってきた。そのせいで、女のドロドロした部分や、怖いところは、それなりに目にしてきた。

287名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 00:09:05.19 ID:FehnDiL1
でも、ふたばだけは、いつも裏表なく、俺に接してくれた。こいつは信頼できるし、何より一緒にいて安心する。

実際のところ、恥ずかしくて到底口には出せないが、俺にとってふたばは、可愛いの一言につきるのだ。
ほんの些細な一言に心から喜んだり、傷ついたり。こんなにまっすぐ、何も求めず俺を慕ってくれる。
そりゃあ、ふたばにムカつく事も、呆れる事もたくさんある。でも、最終的にはその居心地の良さと、反則技の可愛さで許してしまうのだ。
288名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 00:10:08.23 ID:FehnDiL1
そう、可愛いといえば…。

まだビール片手に「おっぱいの話をあんなに熱く語れるのは小生以外は千葉氏だけ」とか「そもそもおっぱいを愛せない人間に何が出来るのか」とか、ブツクサ呟いてるふたばを見ながら、俺は「あの日」の事を思い出した。

あの日、俺とふたばが初めてセックスした日。

俺は、そういう事は初めてではなかったし、非常に…非常に残念な事に、ふたばも初めてではなかった。
ハタチも越えていたし、俺と付き合う前にも彼氏はいたらしいから、その事自体に不思議はない。
しかし、ふたばは過剰なまでに恥ずかしがった。
289名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 00:13:01.64 ID:FehnDiL1
===

「しんちゃん、やっぱり嫌だ!やめよ!」
「ちょっ、お、お前、ベッドまできておいて…」
「お願いっ!あとで小生愛用のおっぱい枕かしてさしあげるから!」
「いらねぇよ!ってか何年前のだよ!」
「汚れたら買い替えてるから汚くないよ?」
「そういう問題じゃねぇよ!」
「…しんちゃーん…」
「…あのさ、ふたば、俺と…するの、嫌か?俺はすごく、その、したいんだけど。」
「うぅ…小生だってしたいよ」
「っておい。」
「でも、でも恥ずかしいっス!しんちゃんに見られたり触られるの恥ずかしいっス……」
「ふたば」
「なんか、もうこんな感じ初めてで、小生どうしたらいいか。
すごく、し、したいんスけど、恥ずかしいし、なんか、しんちゃんとの事を色々想像しただけで、すごい事になってて。
それをしんちゃんに見られたり触られたりなんて……
もう、恥ずかしすぎるっす……」

===
290名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 00:14:39.84 ID:FehnDiL1
そのあとは、劣情が爆発して襲い掛かりそうになる自分を騙してごまかして………
まぁ、通常の倍以上の時間をかけて、なんとかかんとか事を成し遂げた。
あの忍耐を思えば、たいていの事は耐えられると思った。

あの時の真っ赤な頬、涙目で訴える様子や、その後の、恥ずかしがりながら俺の拙い指の動きに激しく反応する様子には、正直、今でもたまに一人でスる時にお世話になっている。
普段おっぱいおっぱい言っているのに自分の事となるとひたすら恥ずかしがって、でも反応だけは激しくて。
そのギャップがたまらなく可愛くていやらしかった。

…あ、やべ。
思い出したら、下半身が………。

「しんちゃんっ」

ふたばの声が、妄想を断ちきった。

「どしたの?ボーっとして。」
「い、いや、別に。」

気付くと、ふたばは既に自分の洗い物をまとめて台所に運んでいた。こういう手早さは三女仕込みだろう。

「仕事で疲れてる?」
「いや、まーそれもあるけど…」
…言えない。お前のやらしい姿想像してたなんて。
俺の無言をどう解釈したのか、ふたばは優しく笑った。
「しんちゃんは座ってて。今日は小生が片付けもお風呂もぜーんぶやるから、のんびりしてて。」
291名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 00:16:04.45 ID:FehnDiL1
先に社会人になったふたばは、新社会人の俺をいつも気遣かってくれる。
それが非常に自然な振る舞いで、嫌味も押し付けがましさもないから、なんとなく素直に甘えたくなる。
そして…早くふたばの為に一人前になろうと思うのだ。

「…ふたば、サンキューな」
「ふふ、いいっすよ。だって、一年目って疲れるもんね。小生がして差し上げられるのはこのくらいだから気にしないで。
あ、ところでしんちゃん。」
「ん?」
「冷蔵庫に入ってたこれなに?」

!!!!!!

「ねぇ、なぁに?」

ふたばがニコニコと手にしていたものをみて、頭が真っ白になった。

そして思い出される、落書き顔の意味深な微笑み…………

「なんかの調理器具??…あ、ここ押すと震えるんだね。泡立器の仲間?」

やめろ、やめてくれ、無邪気に弄ぶのは…!

ふたばが不思議そうにいじってるのは…………、そう、消えたはずのピンクローターだった。
292名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 00:19:10.51 ID:FehnDiL1
前半の書き込み、以上です。長々使ってごめんなさい!
次からエロシーン入ります。ここからラストまで同じくらいの長さです。
年末休みのうちに書き込みする予定です。
293名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 13:14:05.43 ID:45tjpamg
>>292乙!一足早いお年玉ありがとうございます
294名無しさん@ピンキー:2011/12/31(土) 13:50:59.74 ID:sd7WzwXH
>>292
GJ!

続きを楽しみに待ってるっス!
295名無しさん@ピンキー:2012/01/02(月) 10:14:46.81 ID:81kHeBzg
杉崎さん「そうそう矢部っちの。で、みつば何コレって言ったらさあ┏(^o^)┓サイタマシンブンってもうすごい声で┏(^o^)┓サイタマシンブンwwwww」
みつばさん「もうすごい勇気がいっちゃうわけwww」
杉崎さん「ノリオセンセイノスピーチーってwwwもうwwwすごかったよwwwww」
みつばさん「いや、そんな九官鳥みたいな声じゃないけどさぁ」
杉崎さん「九官鳥みたいな声だったよ。にわとり首絞めたみたいな声みたいだったwww」
みつばさん「wwwwwwwwお前ばかじゃないのwwwwwwもういい加減にしろって感じだよ(怒る」
杉崎さん「なんてやつだーwwww」
296名無しさん@ピンキー:2012/01/05(木) 23:17:29.17 ID:ayT8sHxb
ふたばしんちゃんのおもちゃ話後半です。まとめて一気に投下します。
297名無しさん@ピンキー:2012/01/05(木) 23:19:09.73 ID:ayT8sHxb
ヴィ〜……・・・

静まり返った部屋に、ローターの振動音が響く。
ふたばは、ピンクローターを本当に知らないらしく、不思議そうに色んな角度から観察している…

「こんなに細かい震えじゃ、泡立てるの時間かかりそうだね。仕上げ用?そんなマニアックな泡立て器もあるの?」
「……………」
「あ、もしかして、フォームミルク用とか?」
「……………」

無知は時に罪だ。
ふたばは、スイッチを入れたりきったりし、しまいには
「あ、まさかマッサージ器?にしちゃ揺れが細かすぎるかな?ひゃ、冷たい…っ」
なんて、その華奢な首筋にあてている。

「頼む、頼むからやめてくれ…」
「ねぇねぇ、教えてよ〜」
「後生だからやめてくれ…親父さんに殺される……」

千葉は、ふたばが俺の家で飯を作ることなんかもすべて知っていて、ふたばが見つけて俺が言い逃れできない状況を作るために、わざわざ冷蔵庫になんかいれたのだろう。まったく………なんてやつなんだ!
どこから俺んちでのふたばの行動を知ったのかなど、よく考えれば突っ込むべきところは多いのだが、その時の俺にそこまで考える余裕などあるはずもなかった。

ええい、くそ!なんなんだよもう!
やけっぱちで、すっかり温くなったビールを飲み干す。

…もしかしたら、この時の一口が、俺が平静を保てる酒量を飛び越えたのかもしれない。

一瞬、視界が揺らいだ気がした。

歪む視界のど真ん中で、ふたばは相変わらずローターをいじっている。

その手つきがいやにやらしく見えて、豊かな胸の盛り上がりが妙にくっきり見える。
さっき思い出した、初めての時のふたばの表情がフラッシュバックする。
ローターの音がきこえる。

ふたばに会うの、二週間ぶりだなぁ…

俺の中で、何かがふっきれた。
298名無しさん@ピンキー:2012/01/05(木) 23:20:27.89 ID:ayT8sHxb
・・・

部屋の中は、アルコール、乾きものと料理のにおい、それに俺達のにおいがまじって、なんというか、生臭いというか生々しいようなにおいがしていた。
照明は小さい豆電球はだけつけてある。
ふたばも俺も既に洋服は脱いでいて、微かな光に、身体の線が浮かんでいた。

あのあと、ふたばに千葉の一件をすべて話した。ふたばは半ば呆れながら、半ば…好奇心を隠せない様子できいていた。
手にしていたピンク色のソレの用途を知ると、顔を赤くして思わず取り落としそうになっている様子は、そりゃあもうかわいかった。

「ためす?」

と俺がきいた時の、あのびっくりしたような、怯えたような…どこか嬉しそうな顔を、俺は忘れないだろう。

おおぶりなふたばの乳房を下からもちあげるようにし、そのてっぺんを口に含む。ふたばが呻く。口の中で、舌を使ってつついたり、舐めたり。わざと音をたてて吸ったり。
酔いと、これから初めて使う大人のおもちゃへの興奮も手伝って、今日は我ながらねちっこい。
空いた手は彼女の脚の間にさしいれ、すっかり潤っているなかに沈めていき、中で動かす。ふたばの好きな動かし方だ。
ふたばは感じている時、猫みたいな、甲高い声をだす。ふたばが気持ちよさそうにしていると、俺も嬉しい。

このまま、どうすればふたばをいかせられるかはわかってるけど、今日は、あれを試すからあえてしない。加減して、少しふたばが物足りないくらいにする。
299名無しさん@ピンキー:2012/01/05(木) 23:22:01.15 ID:ayT8sHxb
案の定、だんだんふたばが焦れてきた。

しんちゃん、もっと。

ねだられるけど、聞こえないふり。
それどころか、俺も気持ち良くしてよと、ねだり返してやる。
さっき、天然の無邪気さでさんざん俺を困らせたんだから、俺だって少しくらいわがまま言ってもいいだろう。
俺が思うに、ふたばはかなりスケベなんだと思う。
俺のおねだりに、嬉しそうな顔すらして、俺の腹の下に顔をうずめた。
…あぁ、至福。ふたばの職人芸が炸裂していて、まさに夢心地だ。舌と、添えた手と指と、唇が全く別の動きで、絡み付く。
なお、余談だが、最初からふたばだってこんなに積極的だったわけでも、匠の技をもっていたわけではない。時間をかけて一緒に試行錯誤してきたのだ。
300名無しさん@ピンキー:2012/01/05(木) 23:23:54.92 ID:ayT8sHxb
このままだと俺自身が終わりを迎えそうだったので、礼を言ってふたばを離すと、ふたばを仰向けにして、脚を広げて高くあげて、腰を浮かさせて、ひくつくそこが俺によく見えるようにした。
恥ずかしいと言い、ふたばは顔を背けるが、本気の抵抗はしてこない。
身体がほんのりと汗をかいている。俺の目の前のそこは、汗じゃないものでしっとり潤っている。

わざとふたばに見せつけるように、指でつつく。舌を伸ばして、そっと舐める。もちろんここも、後に備えて今日は加減する。ふたばの声が、ひどくせつなく響く。
もうあとのこととか忘れて、めちゃくちゃにしてやりたい衝動が沸き上がるが、必死に押さえる。

「しんちゃん、小生、もう、我慢できないよぉ。」

ふたばが涙目で訴える。
よし、もういいだろ。
てゆーか、俺も限界だ。
301名無しさん@ピンキー:2012/01/05(木) 23:25:06.66 ID:ayT8sHxb
さっきみたいな、明るい雰囲気の中とは違って、振動音はひどく大仰に響いた。
「ちょっと、怖い、かも」
ふたばが、少し怯えた顔をする。
俺も、大人のおもちゃなんか初めてだから、内心かなり焦っていたが、ふたばを安心させるために、「大丈夫だよ」なんて余裕があるふりをして、頭をなでてやった。

まずは首筋にそっとあてる。小さく身体がふるえ、少し、吐息が漏れた。あまりふたばがローターを意識しないですむよう、ふたばをじっくり見たい気持ちを泣く泣く諦め、ふたばの乳首をしゃぶった。
首筋の次は、胸。
片方の胸は引き続き俺の口、もう片方にローター。固くなっている胸の周りから、ジリジリとのぼらせていく。
先端にあてた時、ふたばが激しく反応した。
声にならない声をあげて、身をくねらせて、苦しそうに眉をよせて目をとじて、全身で新しい刺激を感じていた。
スケベだ、ほんとこいつはスケベだ。でも、すごくすごくかわいい。

キスをしながら、ローターの位置をずらした。ふたばの脚の間にいれて、ふたばが一番好きな場所…すでに固くなり、小さいながらもしっかり存在を主張しているところにあてた。

俺の身体の下でふたばの身体が跳ね、キスを交わす口の隙間から、悲鳴のような声が漏れた。

しばらくあてていると、ふたばの腰が動いて、もっととねだるような動きをした。おもちゃにこすりつけるように自ら動きだした。声は、ずっともれている。
ふたばの身体が熱い。俺はローターを持っていない手でふたばを抱きしめていたが、それをはなして半身をおこした。

302名無しさん@ピンキー:2012/01/05(木) 23:26:23.34 ID:ayT8sHxb
全身をほてらせたふたばが、とろんとした顔で息をあらくし、シーツを掴んで、身をよじらせ、大きい胸をはずませ、腰をやらしく動かしている。口からは、俺の名前とか、気持ちいいとか、声にならない声とか。
なんていう絶景。めまいがする。
むしゃぶりつきたいが、修行僧の気持ちでぐっとこらえた。
ローターを角度を変えてあてながら、指を挿入する。外に溢れるくらいそこは潤いに満たされていてあとからあとから湧いてくるようだった。ふたばが本気で感じている時の反応だ。
もう、俺も我慢できない。指の動きを強くし、ローターを、ぐいっと押し当てた。
一際大きい声。

それからしばらくして。
身体がビクビクっとなって、だらし無いような、間の抜けたような声がして、俺の指を包んでいるところが、奥に誘い込むようにうごめいた。

ふたばは苦しそうに目をとじ、薄く口元をあけている。
ふたばは達したらしい。
303名無しさん@ピンキー:2012/01/05(木) 23:27:29.16 ID:ayT8sHxb
・・・

一週間後の土曜、午後3時。新宿駅に程近い、俺と同世代の若者であふれかえったスターバックスにて。
俺は、千葉と向き合っていた。
ピンクローターの一件の二日後千葉から連絡があり、改めて会う事になったのだ。千葉としては、はめるような事をして悪かった、詫びをさせてくれ、ついでに感想をきかせてくれ…との事だった。
結果的に楽しんだとはいえ、さすがに今回の千葉は悪ふざけがすぎる部分があったと思う。そこに釘をさすつもりで、俺は千葉の申し出を遠慮なく受ける事にした。
もちろん、感想なんか話すつもりはない。だから、場所はこっちから真昼間のカフェを指定してやった。
千葉もなんとなく俺の意図を汲んだのか、「ま、それなりに楽しめたって事か。」なんて、テキトーな解釈をして、一人頷いていた。
304名無しさん@ピンキー:2012/01/05(木) 23:29:08.09 ID:ayT8sHxb
楽しめたというか…

ローターに関しては、想像以上だったといわざるを得ない。
俺の指とか口とかでふたばをいかせようと思うと、これがまた案外時間がかかる。エロビデオみたいに、触る!濡れる!いくっ!じゃないということに、驚いたものだ。
今はだいぶふたばのツボみたいのがわかって、当初よりは随分早くなったとは思うが、それでもそれなりに時間はかかるし、こちらも生身である以上、疲れても焦れてもくる。ふたばのコンディション次第なところもある。
ところが、ローターは、あっという間に ふたばを絶頂まで導いた。それまでの前戯もきっちりやっていたとはいえ、ローターを使ってからイくまで、たった数分だった。

ふたばに言わせると、ローターを使うと「イく」というより「イかされる」感覚らしい。無理矢理押し出されるそうだ。本人も、相当衝撃を受けていた。

「これが……大人のおもちゃの実力っすか……小生の完敗っす……」

イったあと、荒い息の中あいつはこう呟いたのだが、完敗したのは俺だろう。
おもちゃのパワーに感激するよりも、俺はすごく悔しかった。ふたばが、おもちゃに激しく反応したのが、ショックだった。
なんとなくそれを察したのか、ふたばは
「おもちゃにイかされるより、しんちゃんに触ってもらってエッチする方が何倍も気持ちいいし嬉しいの!」
なんていって、あの後も果敢に攻めてきて、見事な騎乗位テクを披露してくれたし、俺も精一杯愛して、もう一度ふたばをイかせる事に成功したが、一度生まれたおもちゃへのライバル心は消えそうにない。
305名無しさん@ピンキー:2012/01/05(木) 23:33:17.27 ID:ayT8sHxb
俺はあいつには負けねぇ、生身の人間の底力見せてやる……

千葉の存在を忘れて追想に浸っていると、千葉が不審気に見つめているのに気がついた。

「イケメン様、どうされたのですか。ニヤついたり、悲しい顔したり…そんなにもローターはよかったんですか」
「ばっ…馬鹿、ちげーよ」
「そうですかーそうなんですかー」

…こいつ、馬鹿にしてやがる。ってか、大きい声でローター言うな!隣の席のカップルがこっちみてるじゃねぇか。
ああ恥ずかしい……

「おい、場所かえようぜ」
「もっとローター談議が出来るところか?ふっ、さすが院卒イケメン。探究心ハンパないな。お見それしたぜ…」
「違う!」

誰かこいつをなんとかしてくれ…
肩を落とす俺とは裏腹に、千葉は落ち着いていた。腕時計を一瞥し、
「まぁ落ち着け。
実はお前に紹介したい人がいてな。今ここに向かってるんだよ。もうすぐ着く。」
「人?紹介?」
「うむ。なんてゆーか、まぁ、俺の彼女だ。」
「へぇ」
「彼女という名の肉便器ではないぞ。」
「お前最低だな……」

意外な展開だった。
俺と千葉は付き合いが長いが、彼女を紹介されるのは初めてだ。
千葉はなんだかんだで途切れず彼女がいる。が、移り変わりが早い。
「俺のエロス道に理解を示さない女など、こちらから願い下げだ」
とか
「薄々気付いてはいたが、どうやら二股されたらしい。てゆーか俺が浮気相手っぽい。てゆーか俺セフレだったみたい。」
とか。まぁ理由は様々だが、長続きしない。
昔は「紹介しろよ」なんて言ってたが、あまりに移り変わりが激しいため、次第にそれも言わなくなった。
「まぁ、待て佐藤よ。実は、今日は人を紹介しようと思ってな。そいつが、このスタバに今向かってるんだよ。」
306名無しさん@ピンキー:2012/01/05(木) 23:35:53.10 ID:ayT8sHxb
千葉から、彼女を紹介するなんて言われたのは初めてだ。
それだけ、今までの恋愛とは違うということか。

「どんな子?」
「美人な方だと思う。かわいいっていうよか、キツめの美人タイプか」
「ほぉ。性格は?」
「う〜ん、ま、お人よしだな。口では色々きつい言うけど。面倒見がいいな。最後に自分が損してでも、周りを助ける感じ。」
「…ツンデレ系?」
「まぁ、そうかも」

ここで千葉の電話がなった。

「はいよ。…あぁ、新宿ついた?
場所わかるか?よく入る、駅のとこの…そうそう。窓際の席だからな。」

千葉の表情が、柔らかく緩んでいる。口調も優しい。てゆーか甘い。
千葉は、いつも人を食ったような、飄々とした顔、態度だが…こんな千葉、初めてみた。

「じゃあすぐ着くな。…うん、待ってるよ。
ん?先に買っておけって?あぁ、俺達の分はもう…ってお前の分かよ。
はいはい、了解しましたよ。早く来いよ。何頼む?
…あ?ホワイトショコラモカの…え、もう一回。ホワイトショコラモカの…クリーム二倍…チョコシロップかけ…それとチョコスコーン…
……。お前…」

…ずいぶんと甘党な彼女だな。きいてるだけで胸やけしそうだ…
307名無しさん@ピンキー:2012/01/05(木) 23:37:15.56 ID:ayT8sHxb
千葉の電話をききながら、思わず胸を抑えた…

その時。

「あっ…!」

俺の中で色んなキーワードが一気に思い出された。

…きつめの美人、お人よし、面倒見いい、大甘党…

「あれ、それってまさか」

その全てのキーワードに、ピッタリ当て嵌まる女が一人。

気付くと、千葉はクリームごてごてのドリンクと、温められてほっこりしたスコーンを手に戻ってくるところだった。
俺をみて、あの時、ピンクローターを差し出した時みたいににやりと笑う。

そして、俺は全てを悟った。

千葉が、ふたばの行動を細かく知ってた理由も、千葉の彼女の正体も。

そりゃあ三つ子だから、ふたばも色々話すよな。そりゃあ恋人同士だから、彼女も千葉に色々話すよな。

噂の主が現れた。
よく手入れされた、薄茶色の髪をなびかせて。

「変態パンツ佐藤、久しぶりね。いつもふたばが世話になってるみたいで、姉としてお礼をいってあげてもいいわ!」

…みつどもえ!
308名無しさん@ピンキー:2012/01/05(木) 23:39:13.90 ID:ayT8sHxb
終わり!

お目汚し失礼しました。
309名無しさん@ピンキー:2012/01/06(金) 00:04:37.33 ID:eoOPAQS1
>>308乙!みつどもえ成分補給できたよ ありがとう
310名無しさん@ピンキー:2012/01/06(金) 17:15:43.69 ID:nEhTsFNn
>>308
GJ!
なるほどなーそうきたか!って感じでオチに説得力があっておもしろかった!
311ガンプラ:2012/01/07(土) 23:47:35.71 ID:hcwJBvTu
半端な文量なんですが、二ヶ月も投下していないことに気付いたので。
312丸井ひとはの憂鬱74:2012/01/07(土) 23:48:13.94 ID:hcwJBvTu




「あったかいもの、どうぞ」
「ありがとう……」
書庫の硬いソファに身体を預けたまま、さくらちゃんが淹れてくれたミルクティーを受け取る。
けれどすぐには口に運ばず、両手でカップを抱いて暖を取る事にする。
手のひら全体にじんわりと伝わる熱が、心をゆっくりほどいていってくれる……。

「毒なんて入っていませんよ」
私の様子を立ったまま見つめていたさくらちゃんが、珍しくおどけた声をかけてくれる。
その心遣いも、やっぱりあったかい。

「くすっ…。
そっか。安心した」

たくさんのぬくもりが包んでくれるおかげで、琥珀の湖面に映る人形みたいな貌に少しずつ表情が戻ってきた。
やっぱり『友達』ってすごいな……。

「いただきます。
ん……おいしい……」

ミルクとお砂糖たっぷりの紅茶が、優しく身体に染みこんで行くのをはっきり感じる。
こうやって私の事を自然に慮ってくれるのが、そんな誰かが傍に居てくれる事が、すごく、すごく嬉しい。

「それは僥倖。
こっちにも一式用意しておいてよかった。やはり文学少女は偉大だね」
私の空気が柔らかくなったことに安心したんだろう、さくらちゃんも声音をいつものキザな色に戻して、カップを右手に窓際の本棚に腰掛けた。
自然、窓から差込む茜色によって、モデルみたいにスラッと伸びた手足の輪郭がますますはっきりと浮かび上がる。
誘われるように流線に沿って目線を上らせると、ミルクティーで塗れた唇と輝く白い歯に彩られた微笑に辿り着く。
その余りの美しさに、私の胸はギュッと締め付けられちゃう。

……もちろん私にそんな趣味はない。
けどさっきみたいな事があった後じゃ、やっぱり女の子はいいなって思ってしまう部分があるのも確かで…。

「………………」
「どうしたの?」
「あっ…ごめん。
さくらちゃんが綺麗だから、見とれちゃってたよ……」
メガネの奥に輝く黒曜石のような瞳のせいで、本音がそのまま引き出されてしまう。
ひと呼吸遅れて自分の台詞の恥ずかしさに気付いた私は、ドギマギしながらカップの中身に視線を逃がす。

うあぁ…顔が熱い……。
でもでも、あんな優しくて綺麗な微笑みを見せられたら、どんな女の子もイチコロに決まってるよ……。

「そりゃどうもって言いたいけれど……クククッ!
かび臭い書庫の一角を、神話の舞台に塗り替えてるような美少女に言われても、皮肉としかねぇ。
ま、姫様のユーモアって事にしておくかな」
笑い声は心底愉快そうだ。
だけどその中身には抗議せざるを得ないよ。
私ははっきり声を上げるために、唇をミルクティーで軽く濡らしてから再度顔を上げる。

「さくらちゃん、そういうのもうやめてくれないかな……。
さ…さっきみたいな事の後じゃ、やっぱりい…嫌、だよ……」

『さっき』。
自分で口にした言葉のせいで二の腕に硬い手の感触が甦って、また声を震わせてしまう。
さくらちゃんがこんなに暖めてくれてるっていうのに、情けない……。
313丸井ひとはの憂鬱75:2012/01/07(土) 23:49:14.60 ID:hcwJBvTu
「いい加減、三女とこいう会話するのは不毛なんだけど……ううん、そうだよね。ごめん……」
「………………」

ワーワー カキーン!

私たちが沈黙すると、それを待っていたかのようにグラウンドから活発な声が駆け込んできた。
部活以外の用事で残ってるのは、もう私たちくらいかな……。
そういえば……
「どうしてこっちの校舎に?」
「うん?
……うん……ちょっとまぁ、図書委員長らしく整理でもしようかなって……。
本が好きなもんでね……という感じかな……」
またさくらちゃんの声色が変わっていく。言い訳を探す『迷い』に。情けない嘘を返した自分への『嫌悪』に。
それに合わせて、美しい黒曜石も濁って炭へと堕ちてしまった。
しまった……私の馬鹿。わかりってるくせに。

「ごめん……」
ダメだ、想いを伝えるのにふさわしい言葉が何ひとつ浮かばない。
こんな薄っぺらいひと言でしか謝れないなんて、本当に情けない。
穴があったら飛び込みたいよ……。

「なんで謝るのさ。当然の疑問だよ。
……塾の無い日は帰ってもやる事ないっていうか…母さんを心配させるだけだしさぁ。
どうも、時間の使い方が下手なんだよね。
……だけど今日はそのおかげで友達のピンチに駆けつけられたんだし、悪いことばっかりでもないか」
「ごめん……」
声にすぐ明かりを灯し直してくれた優しさが余計に辛くて、ふたたび不恰好な謝罪を口にしてしまう。
そしてまた、さくらちゃんの戸惑いが生まれる……どうして私は悪循環しか生めないんだろう。情けない。くやしい。

「ええい、だから謝るなって言ってるのに。
……いや、でもあえてキツイ事を言わせてもらうと、今日みたいな迂闊さはちょっと反省して欲しいかな。
あんな猿どもの呼び出しなんて、いちいち相手にしちゃダメだって」
「猿って…そんな言い方……。
それに、せっかく勇気を出して手紙を出してくれたんだし……。
無視するなんて、絶対できないよ」
怖い目にあったけど、ロリコン趣味であったとしても、それでもはっきりそう思う。
『好き』っていう、とっても大事な想いを向けてくれたんだから、って。

けれど片隅には『そうだよ。甘いよ』と、せせら笑う自分が居るのも確かで……。

「やれやれ。
そんなに無理して優しい髪長姫様にならなくてもいいんだよ。
今時佐藤のバカや千葉みたいなのはむしろ希少種なんだから、そんな無防備じゃ危ないって。
男子だけじゃない、教師だって何考えてるんだか。
数学の里中の嫌らしい目つき、気付いてるだろ?」
「……………」

『視線』を感じられる私が気付かないわけが無い。
もっと直接的に、不自然な居残りを命じられたり、携帯番号を訊いてきた教師までいた。
そして結局今日と同じく、さくらちゃんや杉ちゃん、柳さんに助けられて……結局私は、誰かの背に隠れることしかできていない。

いつまでも、誰かに手を引かれなきゃ何もできない小さな女の子のまま。
314丸井ひとはの憂鬱76:2012/01/07(土) 23:49:41.16 ID:hcwJBvTu
「まあ呼び出しに応えるにしても、本来の三女ならもっと聡い会い方をしてるはずだ。
こうも行動を制限されるようじゃ、あの王子様はやっぱりキミにとって負担になってるんだよ。
きっとキミの中では宝石みたいに美しい想い出なんだろうけど、ソレにいつまでも引っ張られてちゃ………ごめん」
言葉を並べていく中、苛立ちすら混じり始めたさくらちゃんの声が、また沈む。
そしてひと呼吸置いて、ガリガリと頭を掻き、視線を宙に舞わせながらさくらちゃんがもう一度同じ言葉を口にする。
「ごめん。
最後のは完全に余計だった。ダメだな、私は……。
自分で時間を無駄にしてるだけのくせに、勝手にイライラして、友達に八つ当たりするなんてさ……」

違うよ、さくらちゃんは悪くない。さくらちゃんが言ってる事は全部本当のことなんだから。
悪いのはいつまでもぐずってる私なんだよ。
本当はわかってるんだ。

グラウンドを寂しそうに見つめる横顔へ、そう伝えなくちゃいけないのに、私の心は頑なに拒否をする。
自分で夢を壊したくないって、我がままを言う。

……………。

「……………」

俯く私とさくらちゃんの間に、寒々しい沈黙が横たわる。
せっかく友達が一生懸命あたたかな空気を呼び込んでくれたっていうのに……。

ワーワー...

…何か話題……さくらちゃんの好きなもので……そうだ。

「ねえ、昨日の準備室での話だけど……」
「…なんだい?」
弱々しく首を動かし、眉の下がった作り笑顔を向けるさくらちゃんを、いつもの姿に戻せる話題といえば、

「さくらちゃんに先生のことを教えたのって、みっちゃんでしょう?」


みっちゃんの話題だ。


「……どうして?」
「『教えていただいて』なんて…あなたがあんなに自然に敬語を使うのは、みっちゃん以外にいないから。
すぐに気がついたよ」
「…なるほど。
うん。ちょっと黄昏屋でケーキセットをご馳走させていただきながら、ね」
少しずつ張りの戻ってきた声に手ごたえを感じた私は、空になったカップを置き、この話題を本格的に進めることにした。
聞き捨てならない単語も聞こえたし。

「あの雌豚……」
いくら相手がさくらちゃんだとはいえ、スイーツにつられて重要機密を漏らすとは……!
315丸井ひとはの憂鬱77:2012/01/07(土) 23:50:24.21 ID:hcwJBvTu
「そう怒らないで。誤解無きよう言わせてもらうと、元々誘われたのは私の方だったから。
みつばさんは最近キミに元気が無いことを、とても心配してらしたよ。
それで私に事情を話してくださったんだ。学校の生活でできる事があれば協力してあげて欲しい、って」
「だからって奢らせるなんて……。
さくらちゃんもあんまりみっちゃんを甘やかさないで」
「あははっ。
ごめんごめん。久しぶりに憧れの女性とお茶出来て、ちょっと舞い上がっちゃってた」
過日の幸福を思い出し、味わってるんだろう。花のような笑顔を浮かべるさくらちゃんの姿は、恋する乙女そのものだ。

う〜ん、狙った引き出したものとはいえ、こうもはっきり示されるとちょっと引く……。
杉ちゃんよりストレートだけど、だからこそ余計に心配になっちゃう部分があるよ。
いやまぁ、もちろんふたりに本気でそんな趣味があるわけじゃ無い……よね?信じてるよ、さくらちゃん。杉ちゃん。

「そんな冗談言ってるから、百合説とか流れるんじゃない?」
「人の純粋な敬意を貶めるとは、下種な連中がいたもんだ」
「敬意、ねぇ……」
「うん。
今だって想ってる。出来る事ならあの人のような女の子になりたかった。
嘘偽り無い、私の本音さ。
心の底から憧れてるんだ。
もちろんもし私が男だったら、出会って即、告白してたけどね。
そしたらきっと、こんなかっこつけの根暗は、即ふってくれただろうな。そうに決まってる。
それでこそみつばさんだ……!」
語るうちに恋する乙女は加速して行き、瞳に星を浮かべながら大仰な身振り手振りさえ交えて、中空に夢物語を描き始める。
あえてそこはスルーしとくけど……何故ふられる物語を嬉しそうに語れるのかが、全く理解できないよ…。

などとこめかみに汗を流している私の前で、さくらちゃんは完全に調子を取り戻し、お得意の肩すくめのポーズを取る。
「あぁ……!
私の想いはこんなに純粋なのに、みつばさんの態度はイマイチ冷たいんだよなぁ。
それもこれも、おかしな噂を立てる連中のせいだ。まったく、腹が立つ」
「……そうじゃなくて、さくらちゃんがふたばをいじめるから……っ」

しまった!!!

ああもう!何なんだ今日の私は!!不注意にも程があるよ!!

「…………」
どすんと、壁が降りてくる。
さくらちゃんの周りに、目に見えない、けれど鋼鉄よりも硬く冷たい壁が現れたのをはっきり感じる。

「あ…ちがっ……。ごめっ……。
そうじゃなくて、単に私は……みっちゃんが…あのっ!」
「ふん…イジメ、か。イジメね。
そうだね、私は一方的に次女をイジメるからねぇ。ホント根暗な女だよ。
次女がやり返さないのをいい事に、貶し、なじり、厚意を目の前で踏み躙ることすらやってのける。
ひどい女だね、まったく」

壁の向こうで私が言葉を探しまわる間にも、さくらちゃんの声はどんどん凍えていく。
まるで合成音みたいに無機質なのに、小さな女の子みたいに儚い。……痛々しい。
いつも私を助けてくれる、強くて優しいさくらちゃんが、縋るものを求めて彷徨っているっていうのに。
なのに私は分厚い壁に阻まれて、近づくことすらできない。
何も言えなくとも、せめて声を張り上げなきゃ。声だけでも友達の傍に行かなきゃ。
……けれどこんなに弱い私では、こんなに高い壁を越えることなんてできるわけがない。

「だけどさぁ、しょうがないじゃないか。
私だって人間なんだ…ただの凡人だもの。天才様に嫉妬くらいするって。
いいじゃないか、あいつはなんだって持ってるんだ。こんな小さな私がつついたからって、何が減るっていうんだよ。
実際私が何やったって、あの女は能天気に笑ってるだけだろう。
いやはや、さすがは陸上界のアイドル。器が大きくてらっしゃる」
316丸井ひとはの憂鬱78:2012/01/07(土) 23:50:59.53 ID:hcwJBvTu
違う。違うよ、さくらちゃん。
ふたばはただの女の子なんだよ。友達と…好きな人とまた笑いあいたいって、一生懸命頑張ってるんだよ!
「ち…ぅ………っ」
「そうだ!小さな私はあっさり居場所を奪われたっていうのにさ!
覚えてるだろ、中学の陸上部!どいつもこいつもふたばちゃん、ふたばちゃん、ふたばちゃん!!
……顧問はまだいいさ、あの輝かしい戦歴だもの。
中体連もインハイも国体も、みんなあいつのひとり舞台だったんだからさ。
だけど部の連中までなんであんなあっさり手のひら返すよ!」

築き上げられた凍土の裡から、今度は熱いマグマがドロドロとあふれ出す。
三つ子のお前も同罪だというかのように、さくらちゃんが激情を私へぶつけてくる。
弱い私は傍に近づくどころか、ただぎゅっと目を瞑って身をすくませ、この激痛が過ぎ去ってくれるのを待つ事しかできない。

痛い、痛い、痛い。

ドクドクと心臓が狂ったように激しく脈打ち、無理やり押し流される血液があらゆる血管を押し破ろうとする。
神経が皮膚へと押し上げられ、叩きつけられる高熱をますます鋭敏に感じ取ってしまう。

「おかしいだろう!次女がお前らになにしてやったよ!
溢れるほどの才能を自分のためだけに使って、それでも足りないって欲しがって!
チヤホヤしてくれる相手と毎日遊びまわってるだけじゃないか!
どいつもこいつも騙されやがって!
変態佐藤を見て気づけよ、滑稽さに!
おっぱいに騙されて、血反吐を吐きながら擦り寄ってるヤりたがりの猿と同類になりたいのか!?
男を囲ってゲラゲラ笑うあんな女の何がいい!?

ちくしょう!!」

違うんだよ。ふたばは、しんちゃんは、みんなはそうじゃないんだよ!
……呪文のようにただ頭の中で繰り返すことに、なんの意味があるっていうんだ。


「はぁ、はぁ、はぁ……っく、は…ぁ……」


頭を抱え、奥歯を噛み締めて涙を堪えながら嵐が過ぎ去るのを待つ私の耳に、さくらちゃんの荒い息がくっきりと響く。
もう行ってしまったかな……だめだ、まだ恐い。まだ顔を上げられないよ……。

「はぁ……ふっ…。は、ぁ………っ。
………………………」

段々と、波が静かになっていく。冷たくなっていく。
友達が本当は凍えていたことをやっと思い出した私は、なのに無意味に床の木目を数えて恐怖を紛らわせている。
あんなに助けてもらっておいて、何やってるの……!!
317丸井ひとはの憂鬱79:2012/01/07(土) 23:51:43.11 ID:hcwJBvTu
「…………………………………………」

…………………………………………。

ぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼた。

水滴が床を叩く音が、うるさいくらい書庫に響き渡る。
俯く私の視線の先で、すごい速さで床に水溜りができていく。
……いったい…?

騒音と疑問が恐怖を追い払ってくれたおかげで、やっと顔を上げられた私を待っていたのは……

「…………………………………………」
一切の嗚咽をあげずに泣いている、さくらちゃんだった。

音も、表情も無く虚空を見つめながらも、滂沱の涙で顔中を濡らしている友達の痛々しい姿に、
私は心臓を握りつぶされて、結局何もできない。
何も、してあげられない。

どうすればいいのか、こんなにはっきりわかっているのに。

「ち…がうんだ……」
さくらちゃんは虚空を見つめたまま、かすれた声を絞り出す。

「こん、な…事がっ、言いたかったんじゃ……ない……。
わかってるんだ、次女が頑張ってる事は……。
あの恐がりがテレビに出るなんて、どんなに辛いだろうって、そのくらいわかってるんだよ。
みんな、あのまっすぐな姿に、笑顔に力づけられてるんだって、知ってるんだよぉ……ひっく…ぁ…あぁ……」

いつも凛々しく、まぶしいくらいに輝いているさくらちゃんは此処には居ない。
道に迷って、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにした小さな女の子が私のすぐ傍にいる。

「誰だって…知ってる……んだ…。
次女がみんなのために…頑張ってること……うぅ〜、ふぅ……。佐藤っ…がっ、あんなに綺麗で、すごいこと……。
手のひらを返したのは、私じゃ…ないか……っ。
背についてきてる間は……チヤホヤしてくれてる間は、走り方を教えて、妹みたいに可愛がってたくせに…はあっ……ぅぐっ……。
追い抜かれた途端……っ。
こんな嫌な女の子に、誰が味方するんだよぉ……。あたり…まえ………。
なのに次女は、ずっと私に優しくて……もう、惨めで……消えて、しまい…たいぃ……」

どうすればいいのか、わかってる。
誰だってわかってるんだ。私も、さくらちゃんも。

わかってるから、難しい。
目の前の壁があまりにも高くて、分厚い事がわかっているから。
壁にぶつかって、これ以上傷つくのが恐くて、踏み出すことができなくなっちゃうんだ。
誰だって、無駄に傷つくのは嫌に決まってるよ。

「みっ…つば、さん…に、怒られたばかりだったのに……。
せっかくみつばさんが、私の代わりに、泣いてくれたばっかりだった、のに………」
深い茜色の中、友達は塗れた右頬を撫でながら彷徨い続ける。
318丸井ひとはの憂鬱80:2012/01/07(土) 23:53:09.46 ID:hcwJBvTu
……『今』の私は、思う。
自分に迷う子ほど、高い理想を見つめる子ほど、みっちゃんに惹かれるんだって。

誰かと一緒に笑って、誰かのために怒って、誰かに代わりに泣く私のお姉ちゃんは、1番魅力的な女の子なんだって。

「う……うぐっ……」

もし私がみっちゃんだったら、こんな壁今すぐ越えて行けるのに。

もし私がみっちゃんだったら、先生に胸を張って告白できるのに………。



沈み行くお日様が、それでも暖かく照らしてくれていたのに、私は頭で想って足を止めているだけだった。
31980修正:2012/01/07(土) 23:54:59.87 ID:hcwJBvTu
……『今』の私は、思う。
自分に迷う子ほど、高い理想を見つめる子ほど、みっちゃんに惹かれるんだって。

誰かと一緒に笑って、誰かのために怒って、誰かに代わりに泣く私の姉さんが、1番魅力的な女の子なんだって。

「う……うぐっ……」

もし私がみっちゃんだったら、こんな壁今すぐ越えて行けるのに。

もし私がみっちゃんだったら、先生に胸を張って告白できるのに………。



沈み行くお日様が、それでも暖かく照らしてくれていたのに、私は頭で想って足を止めているだけだった。
320中書き(たぶん)5:2012/01/08(日) 00:04:14.90 ID:hcwJBvTu
いきなり修正かます私。
そして何回目の中書きか忘れました。


松原さくら(オリキャラ)について
っていうか、ふたばについて。

ひとはと並び、ふたばと隔し、みつばを掲げる女の子です。
ちなみに苗字は『杉⇔松』、『崎⇔原』と、対にしてるつもりです。
たまにはふたばに逆らう子がいてもおかしくないよね?という感じで作ってみました。
ふたばは踏み潰した蟻の痛みは理解できないタイプだと思うので、
バッドコミュニケーションに陥ると、単独では解決不可能な気がします。

中学時代は三人ともいろいろあった…というのを間接的に語らせるためにも必要性の有るキャラです。
なので、基本的にオリキャラは1話単独なんですが、
こいつについては今後チョコチョコ他の高校生話に出てくる予定。

あと、今月中にもう一回くらい投下予定っス。
321名無しさん@ピンキー:2012/01/08(日) 01:00:29.80 ID:U9JmVjWf
>>320乙です こっちのさくらさんもディスコードばりに悩んでますね
322ガンプラ:2012/01/09(月) 19:03:39.18 ID:IL3zMMFG
水曜日ラスト部分。書いてみたら少なかったので投下します。
半端が続いてすみません。
323丸井ひとはの憂鬱81:2012/01/09(月) 19:04:07.59 ID:IL3zMMFG
――――――――――


先生……。

昨日と同様、路地の暗がりに身を隠し、先生の部屋の様子を確認する。
窓には光がない。今日はまだ帰ってきてないんだ……。
せめてカーテン越しに影だけでも…先生の生活の雰囲気だけでも見たいって、息も絶え絶えになりながら何とか辿りついたのに、
はたして待っていたのは空虚でしかなくて。
圧し掛かってきた残酷な現実に耐え切れず、私は膝から崩れ落ちそうになる。

先生に会いたい。

『辛かったね。沢山頑張ったんだね』って、優しい声に慰めてもらいたい。
先生のあったかい腕に抱かれて、大きな手でいっぱいいっぱいなでなでしてもらいたい。
先生の身体全部をゆりかごにして、ずっとずっとヌクヌクしてたい。
そしたらこの嫌な気持ち全部、すぐに溶けて消えてしまうのに。

「う…うぐっ……。
う、ふぅ〜……」

脳裏に描いた甘美な幻想は、夜風のひと吹きで千々に吹き飛び、
とりまく温度の落差にどすんとお腹全部を揺さぶられて、ついに私は嗚咽を堪えられなくなってしまう。

「ぐ……ふぐぅ……」
鞄を抱く私の袖口は、とめどなく溢れる涙ですぐにびしょびしょになっていく。
寒風に、塗れた手から容赦なく熱を奪われ、私はますます追い詰められる。

痛い。苦しい。怖い。もう嫌だよ。

いっぱい頑張ったけど、やっぱり私には、上手に友達と付き合うなんて難しすぎるんだよ。
みんなに沢山あったかいものをもらったのに、私には何ひとつお返しできない。
こんなんじゃ、せっかく出来た友達が、せっかく見つけられた大好きな人達が、離れていってしまう。
みんなに嫌われちゃう。またひとりになっちゃう。

あの楽しい毎日を失わないために、もっと頑張らなくちゃって思っても、足元の薄氷が割れるのが怖くて、一歩も動けない。
壁が目の前も背中も、頭からつま先まで私を覆って、押し潰そうとずんずん迫ってくる。

先生、助けて。

喉元までせり上がって来た悲鳴を、抱えた鞄を力いっぱい噛み締める事でなんとか我慢する。
「ふーっ……ふーっ…ふぐっ」

これ以上先生に迷惑をかけて、もし嫌われてしまったら……。

可能性を想像するだけで、身体中に鳥肌が立ち、足がガクガクと震える。ダメだ。それだけは絶対ダメだ。
もっと声を殺さなきゃ。誰かに見つかったら大変だ。
そもそも今日は、先生に会いに来ちゃいけない日なんだよ、ひとは。
先生と約束したじゃない。
324丸井ひとはの憂鬱82:2012/01/09(月) 19:04:32.17 ID:IL3zMMFG
高校生になってすぐ、先生と交わした大事な約束。
先生に会いに行けるのは、木曜日と日曜日だけ。その日以外は部屋にも入っちゃダメ。
私を縛る絶対のルール。
だからどんなに嫌な事のあった日でも、こうやって誰にも気付かれないよう遠くから眺めるだけで我慢しなきゃいけない。
……けど、今日はそれすら出来ない……。
左手の時計は、刻々と夕食の準備…『仕事』が迫っていることを伝えてくる。

「……せ…んせぇ……っ、んぐっ。
何があったんですか?どうして帰ってきてくれないんですか?
会議ですか?学校で何か事件に巻き込まれたんですか?……ひょっとして、女の人と会ってるんですか?」

泣き声は、星空に溶けて消えていく。

こんなとき携帯を持っていれば。そう何度も思った。電話やメールでいつだって先生の事を確認できるのに。
でも、あんなに沢山頑張ってるふたばが我慢してるんだ。なんのアルバイトもしていない私が、そんな我がまま口にできるわけがない。
……それに、学校での事もある。
日直で、委員会で、学校行事で、男子たちは事有るごとに私の番号を聞いてくる。
あんまり親しくない男の子に、いきなり電話やメールをされるなんて心臓に悪いし、上手く返すなんて私には絶対無理に決まってる。
『私は持ってないんだ』って答えるのが1番楽で確実だ。

「…………やっぱり私は、ひとりが1番楽な子なんだよね……」

まぶしいけど、あったかいけど、嬉しいけれど、いつも片隅には『ほっといて』と拒絶する、小さな私が居る。
壁に隠れてひとりで哂う女の子を見つけるたび、結局私はみんなみたいになれないんだって思い知らされる。

「ずっ…ふっ……。
…帰らなきゃ……」
涙と鼻水をハンカチで拭い、なんとか足をアスファルトから引き剥がす。
みんながお腹を空かせて待ってるんだから……。


男の子も、友達も、家族も。
みんなもっと私をほっといて。

私は、先生が居てくれればいいんだよ。

325ガンプラ:2012/01/09(月) 19:07:49.37 ID:IL3zMMFG
74〜82まででHですね。

予告というかなんというか、次のパートでやっと矢部の出番です。
なんとか今月中を目標にします……。
326名無しさん@ピンキー:2012/01/09(月) 23:15:44.70 ID:PKMtve4W
>>325乙です ゆるりと待つぜ
327名無しさん@ピンキー:2012/01/10(火) 21:53:37.24 ID:L3d9YynF
乙です
やべっち何やってんだよ、さっさと帰ってきてひとはを抱き締めてやれよ!
・・・と思ってたら、次回ついにやべっちの出番と聞いてwktkが止まらない

328名無しさん@ピンキー:2012/01/12(木) 23:22:49.70 ID:WHFoSNcI
乙です。待ってましたよ。
鬱展開の果て、甘々は来るのか?
くると良いなぁ。
329名無しさん@ピンキー:2012/01/13(金) 22:33:19.32 ID:hDaaEK77
矢部とかいらんの龍ちゃんと三姉妹のオネショタを オナシャス(^o^)
330名無しさん@ピンキー:2012/01/14(土) 19:36:43.42 ID:zeqnPVfb
小1って性が分化してない年齢の上、あの年頃で5歳差って凄まじく難度高いんですよねぇ。
成長させても中1・高3ですし。
中3・大2(20歳)くらいまで行けば、ですけど大学生になると物語が作りにくいという。
ひとはがどちらかというと依存相手を求めるタイプなのも、難しい要因ですね。

1.杉崎家のお風呂が壊れて、ママの気まぐれで銭湯へ。
2.龍ちゃん当然女湯へ。三つ子と合流。
3.お風呂で強がったり、三女に頭洗ってもらったり、
三女の白い背中を流すときにドキドキする龍ちゃん。

みたいなプロットを苺大福かじりながら考えてみましたが、
いい加減書かなきゃならないモノが多すぎるので封印。

ついでに上げておきます。
331名無しさん@ピンキー:2012/01/29(日) 08:45:33.25 ID:5CBtIMjW
あげ
332名無しさん@ピンキー:2012/01/29(日) 08:46:13.76 ID:5CBtIMjW
間違った 過疎ってるのでageます
333ガンプラ:2012/02/04(土) 23:49:19.58 ID:mApEN0Bj
ちょこちょこ。ごめんなさい。
334丸井ひとはの憂鬱83:2012/02/04(土) 23:50:11.58 ID:mApEN0Bj
==========


「はあ、はあ、はあ………」

アスファルトをローファーで打つたび、荒い呼吸で鼓膜が内側から激しく揺さぶられる。
激しく脈打つ心臓の痛みと、指に食い込むレジ袋の重みによって、貧弱な矮躯は今にも倒れこんでしまいそう。
だけど立ち止まってなんていられない。一秒でも早く、あの場所へ。

先生の部屋へ。

やっと、やっと木曜の放課後になってくれた。
やっと先生の所へ行ける。やっと先生に会える。お話しできる!!
待ちに待った至福の時間に向かって、私はまるで人参を目前に吊るされた馬のように一心不乱に脚を動かし続ける。

先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。先生。

「……っく、はぁっ、ぜっ……!
はぁ〜〜…っ!ふぅう、うっ……くはっ……」

夕日に彩られたアパートが見えたところで、逸る気持ちをなんとか押さえつけ、壁際に身を隠して呼吸を整える。
気配察知には自信があるといっても、こうも呼吸と心臓に感覚をかき乱されていたら、周囲の『視線』を見逃してしまうかもしれない。
誰かに見つけられちゃったら、この夢はすぐさま壊れてしまうんだ。細心の注意を払わなくちゃ。

「ふう、はあ……ふう………。
すぅ〜〜…はあぁ〜〜〜」

…………………よし、今日は誰もいないな。

学校周辺、スーパー、先生のアパート、どこもかしこも私が高校に上がる頃から、何故か急に人の数が増えてしまった。
しかもセーラー服が食材や生活雑貨を抱えて駆けているのが、そんなに珍しいんだろうか。
私が通り過ぎると、空間を散漫に漂っている『視線』のほとんどがこちらの顔や背に収束し、突き刺さってくる。
一寸遅れて追いすがってくる『視線』まであるくらいだ。鬱陶しいことこの上ないよ。
幸いこのあたりは小道が多いから撒くのは簡単だけど、かといって一直線に目的地に向かっていたら、
『視線』の誰かに私たちの関係に辿り着かれてしまうかも知れない。
おかげでただでさえ時間が貴重だというのに、私はわざと遠回りさせられる上、定期的なルート変更を余儀なくされている。
なんでみんな私の夢の邪魔をするんだ。こんな小さな子の事なんて、ほっといてよ。
335丸井ひとはの憂鬱84:2012/02/04(土) 23:51:09.33 ID:mApEN0Bj
   …〜〜*

……いけない。気を逸らせているあいだに、アパートの二階に誰かが……いや、これならちょうどいいな。
そう判断を下し、手製ナプキンポーチの隠しポケットから合鍵を取り出した私は、ひと時の隠れ家から足を踏み出す。

スイー

足音だけじゃなく、衣擦れやレジ袋の音にすら気をつけながら、道路、入り口、階段へと移動する。そして、

タンタンタンタン!

二階に差し掛かったあたりで、階段を踏み鳴らしながら駆け上がり、振動で周囲の空間を攪拌させる!

 *――

見られた――なびく髪の先端だけ。
もちろん私の顔とか、セーラー服であるとか、『誰』であるかを特定する材料については、絶対に見つからせなんてしない。
気付かせるのはあくまで『女』が上がって行ったって、それだけだよ。

スイ... カチャカチャ パタン

目的を達した後は、余計な動作を一切カットして、素早くドアの内側へと身体をもぐりこませる。
そして後ろ手にドアを締め切ったところで、

「ふぅ〜……」
深くひと呼吸ついて、全身の筋肉と神経を弛緩させる。

もう何度も繰り返してきた日常とは言え、一切の失敗が許されないだけに、やっぱりここまでやって来るのには緊張する。
………緊張しなければならない、後ろめたい行為をこんなに長い間続けてしまっている私は、
どうしようもない女の子だという自覚は、ある。

「………もう少しの間だけ、だよ」
そう自分に言い聞かせ、意識をつま先から持ち上げる。

むふ……。

鞄とレジ袋を冷蔵庫前に置いて、進む。
カーテンから漏れ込む夕日に晒されながら、先生の部屋の中心にひとり立つ。
テーブルの上にはカップ麺の空き容器とペットボトルが、
床には少しの漫画雑誌と教育書籍が散らばっているけれど、出会った頃と比べれば格段に綺麗に変わった先生の生活空間。
だけど満たす空気はずっと変わらないまま。

ふっくらと優しい先生の匂い。

「先生…………」

匂いの最も濃い空間へ、私はふらふらと引き寄せられる。
床に膝をつき、ベッドの中心へ顔からボフンと倒れこむ。
336丸井ひとはの憂鬱85:2012/02/05(日) 00:00:17.00 ID:mApEN0Bj
そしてそのままお布団を頭からかぶり、先生の空気に満たされた、私だけのお城を築き上げる。

「すぅ〜……はぁ〜……」

身体に塗りこむように、深く、深く深呼吸を繰り返す。
たちまち鼻腔に満ちる、男の人の匂い。塩気の中に僅かな酸味の混じった、大好きな匂い。
数度取り込んだだけでもう視界に深い霧が立ちこめて、身体はふわふわ宙を浮いてるみたい……。

「……あ〜、ううう〜〜。う、うう〜〜」

まいったなぁ…いつもこうだ。とろんとした心地よさで心もお腹もいっぱいになると、あかちゃんみたいなぐずり声が漏れてきちゃう。
頭の片隅で理性に、情けない、みっともないって注意されちゃう……いいや、別に。
どうせ今此処には私だけなんだし。
あぁ……幸せ………。

「うう〜……う、うう………」

此処では、理性も意識も霧の中に迷い込んでどこかへ行ってくれる。
私の芯を曝け出して、胸に我慢していたものを裸のまま吐き出すことができる。
特に今週は、辛い事が次々あったから……。

「う…うぅっ……。
せんせぇ……私、いっぱい頑張ってます……ぐすっ……。
勉強頑張って、苦手な体育も逃げてません。
沢山友達を作って、一緒にお茶して、普通の女子高生らしくなれるよう頑張ってるんです。
下級生を助けてあげたり、男の子の気持ちを受けてあげたり……ひっく、ともだちの…悩みを、悩みを聞いて、あげたり……っ。
もう小さな子じゃないって……私、でも、うぐっ……ひぅ…。
もう、つかれたよぉ〜。うう、うぅ〜〜……ほっ、といて……っ」

こんなこと言っちゃいけない。
家族も、友達も、学校のみんなも、私を気遣ってくれてるからこそ声を掛けてくれてるんだから。
一生懸命頑張ってるのは、みんな一緒なんだから。
わかってるよ。わかってるけど……!

「うくっ……わかってるんだよ、いつまでも……。進路、だって……っ。
でも、だけどっ…いいじゃない、もうちょっとくら、いっ……う、ぐぅっ……。
いいですよね、せんせ……」

そうだよ、先生はいいって言ってくれてる。
こうやって鍵を変えずに、ずっと私を部屋に入れてくれてる。
学校の話を楽しそうに聞いてくれる。毎週熱く語り合ってくれる。
私の全部を受け入れてくれてるじゃないか。
だからまだ大丈夫だよ。もうちょっと、こうやってまどろんでいたって………。

「う…うう………。すんっ、はぁ……。ずっ……。
すう〜……ふう………。ふふっ…ふふふっ……!」

溜め込んでいたものをシーツが吸い取ってくれたおかげで、気分がずいぶん軽くなった。
どころか、そのまま顔をグリグリしながら深呼吸してると空いた胸がふわふわ幸せで満たされて、もう笑いまで。
我ながらゲンキンなものだ……けど、むふふ〜……。

「すー…ふ〜〜〜…。
……さて」

いつまでもこうやっていたいのは山々だけど、もちろんそんなわけには行かない。やらなくちゃならないことが山積みなんだから。
私は一念発起してベッドから身体を起こし、温かな巣から旅立つ。
337丸井ひとはの憂鬱86:2012/02/05(日) 00:00:45.26 ID:mApEN0Bj
最初の目的地は、すぐ隣にある先生のパソコンだ。
まずはポケットから取り出した付箋を使って、座椅子とマウスの初期位置が後でわかるよう目印をつける。
そしてLANケーブルを取り外してからパソコンの電源を入れる。
パスワードは3・1・0・4(さとし)……っと。

「あれ?」

パスワードが変わってる………。

「ふむ」

なら……誕生日。西暦かな。クレジットカード番号を四桁ずつ。教員免許の上四桁、下四桁…うん、これか。
結局四桁なんだよね。まったく……こんな分かり易いパスワードを設定するなんて、セキュリティ意識が足りないなぁ。
先生の将来が心配だよ。
……まあそれはおいおい注意してあげるとして、今はいつも通りメールチェックから………。
338丸井ひとはの憂鬱87:2012/02/05(日) 00:01:08.68 ID:mApEN0Bj




「先生、遅いな……」
煮付けたカレイを盛り終えた左腕を持ち上げ、腕時計を確認する。
もう19時だ。木曜日は会議も何もないから、18時過ぎには帰れるハズなのに……。

「また何かあったのかな……」

もちろんこんなこと、今までだって何度もあった。
生徒の逆上がりの練習に付き合ってたり、新任教師の授業作成を手伝ってあげてたり、色々な理由で。
『先生』のお仕事はいつもいつも予定通りになんていかないんだから、遅くなることがあるのは当たり前だ。
だからいつもなら寂しいのを我慢して、ラップをかけたおかずのお皿と置手紙を残して帰るんだけど……。

「今日は絶対会いたいのに……」

色んな出来事に揉みくちゃにされた今週は、今日だけは直接会って先生の声が聞きたい。お話ししたい。
学校であったこと、家であったこと、感じたことを先生に聞いてもらいたい。
ううん、せめてひと目だけでもいいから……っ!
ギリギリと締め付けられる胸を右手でさすりながら、もう一度腕時計を確認する。19時08分。
もうダメだ、帰らなきゃ晩御飯の用意ができない。家でみんなが待ってるよ。
でもイヤだ、先生に会いたい。どうしても、絶対に会いたい。お願い、ちょっとだけでいいから……!

「う……うぅ……」

私は奥歯を力いっぱい噛み締め、両手を胸の前で組み合わせて、胸の内から襲いかかってくる激痛を我慢する。
帰ってきてって、祈る。

お願い。

みんな邪魔しないで。誰なの、先生を引き止めてるのは。やめて。早く返して。
私の、私だけの。私だけに!!

「せ、んせぇ……っ」

ガチャガチャ

!!!
339丸井ひとはの憂鬱88:2012/02/05(日) 00:02:19.09 ID:OfWSmaEi
はっとして顔を上げるのと、ドアが開くのは同時だった。
そして同時に、さっきまで私を攻め立てていた嫌なもの達が、パッと散り散りに逃げ去っていく。
廊下の電灯の光が、信じられないくらい輝いて見える。

この人の傍は、いつも明るくて広い。


「ぜぇっ…はっ……。
ぅぐっ……ま、にあった……。
ただい、ま……ごほっ、ふぅ……。
…ただいま、ひとはちゃん」


「おか……っ、おかえりなさい」
ああもう…震えて引きつって、なんてみっともない声だろう。もっと可愛い声で先生をお出迎えしたいのに。
先生には、私のいいところだけをあげたいのに。

「あっ……!
ごめっ…ごめんねひとはちゃん。んぐっ、はぁ……。
もっと早く帰ってきたかったんだけど、ちょっと、ぜっ、ケンカした子たちの話を聞いてあげてて……っ。
走って帰ってきたけど、心配させっ、あぁでも……間に合ってよかった〜〜!」

先生……!

膝に手をついた息も絶え絶えな様子に、次いで湧き上がった明るい笑顔に、私の胸はまた締め付けられる。
でも今度のは嫌じゃない。
だって先生が、私と会えたのが嬉しいって身体中で示してくれてるんだから。
先生も、私と一緒の時間がとっても大切だって……!!

こんなに幸せなことなんてないよ!

「ぐっ…ふぐっ……っ!」

けどダメだ。泣くな、ひとは。我慢するんだ。涙を見せちゃいけない。
悲しいのも嬉しいのも伝えちゃダメなんだよ。先生のことなんてなんとも思ってないって、嘘をつかなくちゃ。
今此処に居るのは、日曜日に気持ちよくテレビを見るためしょうがなくって事になってるんだから。

「あ……ひとはちゃん、ごめんね。
ボクのせいで……」

ゆらゆら揺れる世界の中で、先生がゆっくりと近づいてくる。
大きな手を差し出して、彷徨うようにふらふらと、でも確かに私の傍へ。
ダメだ、あの手に触れられちゃ。
あれはとても温かいけど、優しいけど、私を幸せにしてくれるけれど。
けれど、触れられたらこの夢は終わっちゃう。ひと時の幸せと引き換えに、先生の答が生まれちゃう。
早く逃げなきゃ。先生が迷ってくれてるうちに……!

「ひとはちゃ……っ」

スイ、と。一歩身を引く。私の頭に置かれるはずだった手が、虚しく宙を通り過ぎていく。

「あ………」

悲しそうな、でもどこかほっとしたかのような先生の声。
……実際のところはわからない。もう私は背を向けてしまったから。
今は何よりも、溢れ出そうな涙を見せないことが大切だから。
340丸井ひとはの憂鬱89:2012/02/05(日) 00:03:03.34 ID:OfWSmaEi
「…………別に、心配なんてしてません。
気まぐれでエサをあげてる野良犬がいつもの時間に現れなかったから、ちょっと気にかかったくらいですよ」

『いつもの私たち』を続けることが、1番大切だから。
だから私は、精一杯平坦な声を絞り出す。私たちの関係は出会った頃から変わってないって証明してみせる。

「……………野良犬って、ひどいよひとはちゃん。
せっかく一所懸命走って帰ってきたのに」
「それはそれは。相変わらず無駄な気の回し方をしてるみたいですね。
まぁ、置手紙を書く手間が省けたくらいは助かりましたよ。
こないだ持って帰って洗ったシャツは、たたんで2段目に入れておきましたから。
それとYシャツ類の洗濯終わってますから、干しておいてください。いつも通り日曜日にアイロンしてあげます。
あと、晩御飯は……」
「ねえ、それだけど、もし良かったらひとはちゃんがおかずを温めてくれないかな?」
「………そのくらい自分やってください。私は早く帰りたいんです」

私は次々に嘘を積み上げる。
先生が私に触れられないよう、高くて分厚い壁を築き上げていく。
その虚しい作業のたびに、世界が揺れて、喉に酸っぱいものがせりあがって来る。
うぅ…まずいよ。吐いちゃいそう……。

「うん…ごめんね。ひとはちゃんが忙しいのは知ってるんだけど、できたらお話ししたいんだ。
ちょっとでもいいから。
ほらほら、みつばちゃんからメールも来てるんだよ。
『今日は料理がしたい気分だから、下ごしらえくらいはしてあげるって伝えといて』って。
門限、もうちょっとなら大丈夫だよね?……って言っても、暗い夜道を女の子ひとりで帰らせちゃうのは……。
ごめんね。もちろん送ってあげたいんだけど、ボクらは…そのぅ……ごめん……」
「……何回謝ってるんですか。情け無い。
どうせ近所なんだし、私は誰かに見つからないようにするの得意ですから、大したことじゃないですよ」
先生とお話しすることより大事なことなんてないんですから。

「……うん。ありがとう、ひとはちゃん」
先生の優しい声を聞けるのが、何よりも嬉しいことなんですから。

「……ほら、いつまで人の背中で突っ立ってるんですか。
邪魔ですから向こうの部屋でおとなしくお座りしといてください」
「は〜〜い」

足音は声と一緒に背中から遠ざかり、すぐに大音量が部屋を満たすようになる。

まいったなぁ。
なんでみんなこんなに優しいんだろう。

「う……ううう……」

せっかく私が我慢してるっていうのに。
341ガンプラ:2012/02/05(日) 00:06:34.93 ID:OfWSmaEi
私はラブの女神に見放されてるので、基本的にラブいシーンは書けません。あしからず。

全然進まない……。ちょっと今、忙しいもので。屋移り多しな私。
恐らく星回り的に根無し草だな。
……PIXVに投下してるのはなんなんだといわれると、あっちはてきとーに書けるものなので。
『憂鬱』は思いいれも力もかなり入っているため、なかなか進められないんです。

というわけで、また月末くらいを目標に。


いい加減はやく終わらせたい……。
342名無しさん@ピンキー:2012/02/05(日) 00:41:40.55 ID:5MkZ3tZZ
乙!
だらだらしながらあまあま待ってるよ
343名無しさん@ピンキー:2012/02/05(日) 07:13:19.91 ID:wnD0zhLj
乙!待ってたよ&待ってるよ
344名無しさん@ピンキー:2012/02/07(火) 21:32:10.80 ID:htqPW3rH
乙です
ひとはのいじらしさと、矢部っちを含めた周囲の人達のあったかさがいいね
続きはwktkしつつのんびり待ってるので、無理せずご自分のペースでやっていただければと思う

あと、ひとはがやべっちの布団にもぐりこんだ場面で、ひとはのオナシーンktkr
とか思ってしまった自分はきっと心が汚れてる
345ガンプラ:2012/02/08(水) 22:49:49.44 ID:MDhdnWqx
>>344
いい勘されてます。プロット段階では自慰シーンがありました。
各段階になってめんどくさ…ごほん。
『他人の部屋でその行動はどうか?』と思ったので削りました。後片付け&証拠隠滅面倒だし。
346丸井ひとはの憂鬱90:2012/02/12(日) 14:12:36.12 ID:8NZWbdJj




「温まりましたよ」
「ありがとう、ひとはちゃん」

お行儀良く正座している先生の前に、温めなおした晩御飯を並べていく。
今日のメニューはカレイの煮付け、菜の花と卵の炒め物、小松菜のおひたし。
先生は普段コンビニのお弁当やカップ麺ばっかりだから、たくさん緑のお野菜をとってもらわなくっちゃ。

「わぁ…今日も美味しそう!」
自分の作ったお料理に、好きな人が声を上げて喜んでくれる。
女の子に生まれて…お料理が得意でよかったって、心の底からそう想う。
気持ちが浮かび上がろうとするのを押さえるのが大変だよ。

「はいはい。
たまにはもうちょっと気の利いたお世辞を言ってくれてもいいですよ。
そんなのでちゃんと子供たちに国語を教えられてるんですか?……はい、ご飯」
「う……。
え〜っと……おお、これは……国産のカレイだね」
左手でお茶碗を受け取り、右手で頭を掻きながら、眉を寄せた先生がトンチンカンな賛辞を口にする。
むふう、可愛い。ていうか可愛いすぎて真っ直ぐ見れないよ。

「ああっ、そんな!顔を背けなくたっていいじゃない!」
「………せめてため息くらいは隠れてついてあげようって、気を使ってるんですけど」
「好きなだけそっちを向いててね……」
私の頭の後ろで、先生の声がしょぼんと縮こまる。まるでちっちゃな子供みたい。
むふ……いちいち可愛いんだから。
今すぐ振り返って、先生の姿を目に焼き付けたい欲望に駆られる……けど、ガマンガマン。
この熱さからして、きっと私の顔はすっごく赤くなっちゃってる。ちょっと冷まさなきゃダメだよ。
そう自分に言い聞かせて、後ろ髪引かれるのを振り払い、私はもう一度キッチンへと向かう。

「先生、お味噌汁はなんにします?豆腐とワカメとアサリがありますけど」
「ん〜〜…ワカメがいいな」
「わかりました」

シュンシュン鳴ってるヤカンの火を止めて、引き出しからインスタントのお味噌汁を取り出す。
ホントはこれも作ってあげたいけど、1杯分だけっていうのは無理だし、遅くなったときの温めなおす手間なんかを考えて、
木曜日は市販のもので我慢してもらってるのだ。
日曜みたいに一緒食べて、後片付けまでできる余裕があればな……。
やっぱりこう…『お味噌汁を作ってあげる』っていうのは、特別な関係を象徴する行為なわけだし。むふぅ。
などと、放っておくととめどなく湧き上がってくる想いにフタをして、努めて無表情に一式を運び、テーブルを挟んで先生の正面に座る。
……髪がカーペットに触れないよう、正座で。
めんどくさいなぁ。

「あっ、味噌汁くらい自分で作るよ!」
「ヤケドされて余計な手間を増やされると面倒ですから。
……ほらほら、せっかく温めなおしてあげたんです。冷めないうちに早く食べてください」
「……ありがとう。
いただきます!」
「召し上がれ」
女の子に生まれてよかった。
347丸井ひとはの憂鬱91:2012/02/12(日) 14:13:21.26 ID:8NZWbdJj
「むぐむぐ……美味しい!」
「ま、旬のものですし」
「そうだね、いつも季節のものを入れてくれてありがとう!
いやぁ〜、ボクひとりだと年がら年中おんなじようなご飯になっちゃうから、こういうのが1番嬉しいよ」
「せっかく四つも季節があるんだから、1年中同じなんてもったいないですよ。
特に今の時期、菜の花なんかは安くて美味しくて栄養があって、いたせりつくせりなんですから。
今日のが少し余ってますから、土曜日にでも使ってください。油とお塩でちょと炒めるだけで十分ですよ」
「うん、わかった。
それにしても、最初に菜の花を食べてみようって思った人はすごいよね」
「よほど食い意地が張ってたんでしょうね。みっちゃん並に」
「あはははっ!そうかも!!
あんなに綺麗な花なのにね!」
「そうですね。でもさすがに食用と観賞用のものは、種類が違いそうですけど。
そういえば河川敷のところの花畑、菜の花が満開で今すごく綺麗ですよ」
「あっ、ボクも見た見た!毎年あれを見ると、春になったなぁって実感がわくんだよね。
なんていうか、桜よりも優しくて可愛い感じがいいよね〜。学校の花壇にも植えてみようかな?」
「いいかも知れませんね。今はパンジーとかヒナギクとか背の低いのがほとんどですから。
色だけじゃなくて姿の違う花もあった方が、賑やかになって喜んでくれると思います」
「でしょ?
ちょっと育てるのが難しそうだけど、今年は園芸委員にとっても頼りになる子が入ってくれたから、一緒に頑張ってみようっと。
あっ、こないだその子と夏用の苗を色々植えたから、綺麗に咲いたらまた教えるね」
「楽しみにしてます」

不思議だな。
先生が一緒だと、こんなに自然に、こんなにふっくらな世界があっという間に膨らんでいく。
いつの間にか置き去りにしてしまっていた綺麗なものたちが、次々に芽吹いて花を咲かせていく。
色とりどりの想いに囲まれて、声と一緒に心が弾みだす。

好きな人がいるって、なんて素敵なんだろう。なんて幸せなんだろう。

「ひとはちゃんの方は今週、学校どうだった?
ほら、なんて言ったっけ…今年から新しくクラスに入ってきた、ハンドボール部の……」
「時枝さんです」
「そうそう、時枝さん。
その子、クラスに慣れたみたい?」
「もうずいぶんクラスに馴染んでますよ。やっぱり運動部の子って、そういうの得意ですよね」

むしろ私よりよっぽどクラスに溶け込んでるよ。
どうも私、杉ちゃんたち以外の女子からは距離を一歩置かれてるんだよね(別に悪意的なものは感じないけど)……。
男子にいたっては腫れ物扱いだし。
やっぱり暗い性格を直さなきゃだめかなぁ……。

「もちろんその子の努力もあったんだろうけど、ひとはちゃんが頑張ったのが大きいんだよ。
お弁当誘ってもらったの、きっとすごく感謝してるよ」
「……そういえば、こないだお礼だってケーキまでおごってくれました。
ちょっと大げさですよね」
「そんなことないって!
クラスが変わって心細い中、優しく声を掛けてもらえたこと、絶対その子は一生覚えてる。
ひとはちゃんはとってもすごいことをしたんだよ」
「やめてください。大したことなんてしてません」

嘘だ。大したことだった。怖い怖い冒険だった。
知らない背中に声を掛けるとき、不安で心臓が潰れそうだった。
振り返った顔が驚きで染まってるのを見たとき、後悔で泣きそうになった。
でも、先生にはそんなところは見せたくない。
私のいいところだけを見せたくて、薄っぺらな見栄を張ってしまう。
348丸井ひとはの憂鬱92:2012/02/12(日) 14:13:56.73 ID:8NZWbdJj
「そっか、良かった。
ひとはちゃんがみんなと仲良く、楽しい高校生活を送ってて」

なのに先生は、目を線にして嬉しそうに微笑んでくれる。
この胸の高鳴りを失いたくなくて、私はさらに嘘を積み重ねてしまう。

苦しい。

「先生に心配なんてされなくても、
今の私の周りには、私を気遣ってくれる男の子達がいくらでもいるんですけど。
ていうかちょっとモテ過ぎて困ってるくらいです。
……昨日も告白されちゃったんですよね」
「だろうね」

……見栄でついた嘘とは言え、そんな適当な即答で返されるとさすがにちょっとムッとしちゃうんですけど。
しかもなんですか、その表情は?菜の花はそんなに苦くないでしょう。右目なんて引きつってますよ。

「信じてませんね……?」
なのでまぁ、いくら大好きな先生とはいえ、ちょっと本気で睨んでしまったのはしょうがないことだよ。

「ひぃっ!
いやいやいや!逆だよ!信じきってるから!
むしろひとはちゃんがモテモテじゃなかったら、おかしいくらいだよ!
ていうかもしボクが同級生だったら……本当なら絶対話しかけることもできなかったはずなんだ。
だから余計にこうやってご飯まで作らせちゃってるのが………ごめんね、ひとはちゃん。ボクもわか「やめてください」

予想外にいきなりしぼみきってしまった声を、私は大慌てで通せんぼして部屋に入り込めないようにする。
けれど私の言葉は、先生の中にこそ嵐を呼び込んでしまったみたい。
唇を噛み締め、眉の下がりきったその表情は、
其処で後悔の念と良心の呵責が激しく吹き荒れている事を物語っている。

ええええ!?ちょっ…いまの嘘くささ丸出しな話のどこに、そこまで真に受ける要因があったんですか!?

「いえあの、少し見栄をはってみただけですよ。
ギャグの通じない人ですね。もっと空気を読んで下さい。
告白されたって言っても、全然真剣なのじゃなくてすっごく軽くですし。
しかも一方的にベラベラしゃべられただけで……あんなの、はっきりいって告白の範疇にありません」
だからお願い、そんな悲しい顔をしないで。
ふっくら笑って下さい。

「うん……」
でも、肝心なお願いはいつもスルー。
ダメだ、もっと違う話題だ。急げ急げ。

「そうそう、今週は他にも色々あったんですよ。
体育のテニスで大活躍したり、杉ちゃんと美味しい紅茶で盛り上がったり、友達と図書室で

―――『消えて、しまい…たいぃ……』――

……とも、だちが……」

嘘が、途切れる。
助けを求める悲鳴が、嘘で咲かせた花たちを散らしていく。
何もできない小さな私を容赦なく責め立てる。

痛い。
349丸井ひとはの憂鬱92:2012/02/12(日) 14:14:21.76 ID:8NZWbdJj
降り注いできた明るい声に向かって、顔を上げる。
見上げる先にはいつも笑顔が待ってくれてる。
いつも私の見上げてきた、世界で1番大好きな笑顔。
優しく日に焼けた肌。緩やかなU字に引かれた唇。くりっと小さな、だけどキラキラ輝く宝石みたいな瞳。
今はアゴヒゲがあるけれど、でも、先生はずっと変わってない。
ずっと、此処に居てくれてる。

「ボクは『先生』だから、こうやってひとはちゃんのお話を聞かせてもらえてすごく幸せだよ。
本当なら卒業していった子たちがどうしてるかなんて、すぐにわからなくなっちゃう。
あの子はケガしてないかな、泣いてないかなって、心配することしかできない。
でも今のボクはこうやって、ひとはちゃんからみんなのことを聞かせてもらえてる。
悲しんで、苦しんでる子に、今も手を差し出すことができる。こんなに幸せなことなんてないよ。
さっきみたいに、幸せ過ぎて恐くなっちゃう時があるくらいだよ〜。
いやぁ〜ごめんね、いつまでも情けない『先生』で」
「……めぃ…くじゃ、ないんですか……?」
「とんでもない!
学校生活って、楽しいことばっかりじゃないでしょう。
嫌なことも辛いことも沢山ある本当の『今』を教えてもらえるから嬉しいんだ。
みんなが頑張ってる『今』を知れるのが幸せなんだ。
それでね、ちょっとでも『今』より前に進む手助けができたら、もっともっと幸せ。
だって、ボクはそのために『先生』になったんだから」

ずるいです、先生。
そんなに幸せそうな笑顔を見せられたら、嘘をつき通せないじゃないですか。
そんなに誇らしそうに胸を張られたら、頼りたくなっちゃうじゃないですか。

ほら、今だって、

「………………」
エヘン、と胸を張ったまま、ふっくら笑い続けてる。

先生はいつもそうだ。
机の向こうで、私が話しかけるのをずっと待っててくれる。

いいんですよね、もうちょっとだけなら。

私は心を決めて背を伸ばし、先生の正面に向きなおる。
あわせて先生もおハシを置いて、聞く姿勢をとってくれる。

ゆっくりと、自分の言葉で自分の心を紡いで行ける。
350丸井ひとはの憂鬱93:2012/02/12(日) 14:15:14.96 ID:8NZWbdJj
「……友達の事なんですけど…あっ、私のじゃなくて友達の友達の事なんですけど。
走るのが大好きなのに、走れなくなっちゃった子がいるんです。
……と言っても、ケガとかじゃないんです。むしろ身体はすごく元気で、だから余計に走れないのを見てるのが辛くって……」

「うん」

「で、なんで走れないかって言うと……。
えっと……その子がすごくまっすぐだから、なんです。
昔、走ることで友達を……そう、友達を傷つけちゃったから自分にはもう走る資格が無いって、自分を縛り付けちゃってる」

「うん」

「でもそれはもう昔の話なんです。……ううん、違うな。
今もずっと続いてるけど、その傷つけられた子の方はもう気にしてなくて……その子と仲直りしたいってずっと願ってる。
……願ってるだけじゃなくて、一生懸命頑張ってもう一度手を握ろうってしてる。
ずっとその子のことを好きでいるんです」

「うん」

「………わかってるんです、どうすればいいか。
だけど……」

わかってるから、難しい。
それは強くなろうと汗を流して練習してきた毎日を、否定してしまうことだから。
一生懸命頑張って積み上げた『自分』を、自分自身で叩き壊してしまうことだから。
進みたい道を塞ぐ壁になってしまっていると、わかっているんだけど。

「だけど…………」

喉が引きつる。
紡ぐ言葉が止ってしまう。
『できない』と、1度形にしてしまったら、もうそれが永遠になってしまいそうで、怖い。

「………どうすればいいの、ひとはちゃん?」
「……謝ればいいんです。ひどい事してごめんって。
ふた…ふたばにはそれだけで十分なんです。
その子もふたばもまっすぐだから、ちゃんと謝って、ちゃんと許してもらえばそれでまた並んで一緒に走れるんです」
「じゃあ簡単だね!
ひとはちゃんがその子にそれを教えてあげればいいんだもん!」

がく。
流れに全く沿わない、明るく軽い声が響いたせいで、せっかく正した背筋が崩れてしまった。もうっ!

「先生、ちゃんと私の話を聞いてましたか……?」
「ひっ、睨まないで!聞いてたよ!すっごい真面目に聞いてたから!!」
私が目に力を込めた途端、先生はまたグイッと方向転換。
腰を引いて両手を突き出し、青い顔で言い訳のバーゲンセールを開催しているその姿は、情け無いことこの上ない。

締まらないなぁ。
まぁ先生は小学生の『先生』なわけだし、さくらちゃんのことも知らないんだし、
そもそも女の子の気持ちなんて全く理解できないんだから、しょうがないか。

「……私、言いましたよね?わかってるって。
そんなの当然その子もわかってるんです」
「そ…そうかな?」
睨みを緩めてあげると、先生は恐る恐るかつ神妙に正座に直った。
とはいえやっぱり、何もわかってないのは直ってないよ。
ここはさすがにお説教だな。
351丸井ひとはの憂鬱94:2012/02/12(日) 14:20:02.73 ID:8NZWbdJj
「そうです。こんな簡単なこと、誰だってわかってるに決まってるじゃないですか」
「う〜ん……ひとはちゃんには簡単でも、その子とっては難しいかも知れないじゃない?
本当にその子はわかってるのかな?ちゃんと訊いてみた?」
「だから、そんなの訊かなくてもわかりますって。ふたばの事なんですよ?
それにその子は、昔からずっと沢山の友達がいる子なんです。
私なんかに言われなくたってわかってるに決まってます」

やれやれ……。

「はぁ〜〜〜」
気を張っていた分、落差の激しさが余計に身にしみて、ついため息が深くなってしまう。
先生には悪いけど。

「でもでも、ふたばちゃんの事だからこそ、ひとはちゃんが教えてあげなくちゃって思うんだけど。
だって、世界中探したってひとはちゃんより…ひとはちゃんとみつばちゃんよりふたばちゃんの事をわかってる子はいないんだから」
「そんなわけないでしょう。
もちろん家族なんだから、全然わかってないとは言いませんけど」
私たちは『日本一似てない三つ子』ですよ。みんな全然違うんです。

「うん。
家族で、三つ子の姉妹だもん。とってもよく似てる姉妹だよ」
「似てる……私たちが?
……言い訳するにしても、もうちょっとマシなのを考えてくれませんか。
ひょっとしてウケを狙ったんですか?今そういうのは求めてませんから。さっきも言いましたが、もっと空気読んでください。
ていうかいい加減読めるようにならないと、いつまで経っても独りのままですよ」
「えぇ〜〜、本気で似てると思ってるよ!」
「そんな事言うの、先生だけです」

友達はみんな言う。全然似てないって。
……そうだ、時枝さんの言ったとおりだ。
違い過ぎていざというときまで助けられないんじゃ、三つ子の意味が無いよ……。

「う〜〜ん、おかしいなぁ。
こんなにそっくりなのに」
「どこがですか?」
「絵を描いたらいつも同じ構図。写生会のときは同じものを描いてた。
夏休みの感想文だって同じ登場人物について書いてたし、楽しいと感じたところも悲しいと感じたところも全部同じだったよ。
そうそう、好きな給食のおかずもおんなじだったよね。三人ともクリームシチューを真っ先に空にしてたもん。
友達も…好きになる人もおんなじだ。だって三人共通のお友達ばっかり。
いろんな兄弟の子たちを見てきたけど、こんなにおんなじなのはひとはちゃんたちだけだよ」
「え……?
あれ?えっと……そうでした、っけ?」

全然気付いてなかったよ。
352丸井ひとはの憂鬱95:2012/02/12(日) 14:20:39.05 ID:8NZWbdJj
「うん。
優しいところも、家族想いなところも、友達を大切にするところも、みんなを元気にしてくれるところも。
意地っ張りなところも、怖がりなところも、ちょっとズルしちゃうところも、でも最後まで嘘をつき通せないところもみんな良く似てる。
違うのは表現の仕方だけ。1番大事なところはみんなとってもそっくりで、見分けがつかないくらいだよ」
「1番、大事なところ……」
「そう、1番大事なところ。
だからひとはちゃんは、ふたばちゃんがずっとその子のことが好きでいるって、はっきり言えるんだ。
ボクだったら、ケンカし始めたのが『昔』になっちゃった相手は、もう絶対仲直りできないって諦めちゃうよ。
例え相手がどんなに良い子だったとしても、時間が経つと色んな糸がこんがらがっちゃって、どうしようもなくなってるって」
「そう、なんですか?
……だけどそうだとしても、ふたばが仲直りできなかったのに……ううん、みっちゃんだって何度も……」
「ふたばちゃんとみつばちゃんが上手くできなかったんなら、なお更ひとはちゃんが助けてあげようよ。
言ったでしょう、表現の仕方が違うって。
真っ直ぐぶつけられたら痛かったのかも知れない。誰かに引っ張られるのは嫌いだったのかも知れない。
じゃあ、言葉で応援してあげたらどうかな?
頑張って立ち上がってって」
「でも……でもっ!
私なんかが何を言ったって……!」

先生は何もわかってない。私が頼りになる女の子だって、騙されてるから。
だからそんな自信たっぷりに胸を張れるんです。
本当の私は、弱くて小さい髪長姫。どっちを向いても壁に阻まれて、箱の中に閉じこもってるのとおんなじ。
強くて優しいさくらちゃんの力になんて、なれやしないんです。

どうだったって、どうやったって、私はみっちゃんみたいにはなれないよ。

「大丈夫だよ、ひとはちゃん」
今日も先生は、なんにもわかってないお気楽な声。

先生はいつもそうだ。
ずっとずっと変わらない。
私達は…誰もかれもみんな、出会った頃とはまるで変わってしまったのに。

「だってひとはちゃんがこんなにその子の事を好きなんだから」
「………?
私が、さくらちゃんを?」
「そう。
友達って、一方通行じゃないんだ。ひとはちゃんがその子の事が好きなのと同じくらい、その子もひとはちゃんの事が大好きだよ。
ふたばちゃんと同じくらい仲直りしたいって願ってるよ
だって好きだから友達なんだ。自分もこの子みたいになりたいって憧れてるから、ずっと一緒に居るんだ。居たいんだよ。
ひとはちゃんも、そうでしょう?」
「……でも……さくらちゃんは、泣いちゃうくらいに……」
「優しくてまっすぐな子なんだね。
ふたばちゃんを傷つけちゃったからって、大好きな走ることをやめちゃうくらいに。
自分が走ることよりも、ふたばちゃんが笑ってくれることの方がずっと大事な子なんだね」
353丸井ひとはの憂鬱96:2012/02/12(日) 14:21:02.12 ID:8NZWbdJj
「…………」

「大丈夫だよ、ひとはちゃん。
好きな人に応援してもらえたら、好きな人が傍に居てくれたら、勇気100倍でどんなことだってできるようになっちゃうよ!!」

ふぅ……ああ言えばこう言う。
せっかく私が一生懸命壁を築いてるのに、ふわふわ笑って通り抜けちゃう。
出会った頃から全然変わってないよ。

ずっとずっと、



「先生は単純ですね」
 私達は幸せですよ。



「そう?」
「はい。断言できます」
「う〜〜ん、厳しいなぁ……。
でもまぁ前に、こうやってたらいつの間にか可愛く笑ってくれるようになった子がいたからね。
だからボクは、ずっとこうやっていたいなって思ってるよ。
いいじゃない、こういう『先生』がいたって。
ね?」
「そういうセリフを、教え子じゃなくてちゃんとした女性に言える日が来ればいいですね。
先生もそろそろ魔法使いが見えてきてますし、本格的に焦った方がいいですよ。
さて、時間ですから今日はこれで帰ります」
「……………またね」

バタン ガチャガチャ

願わくば、そんな日が来ませんように。
優しい先生、私だけに優しくして下さい。


自然にそんな事を考えてしまえる私こそが、1番嫌な女の子だ………。

35491と92の間に:2012/02/12(日) 14:23:25.00 ID:8NZWbdJj
「ひとはちゃん?」
「あ…いえ、なん……でも………」

嘘だ。何でもないはずなんてない。わかりきってるよ。
こんな苦しそうに胸を押さえてうずくまってちゃ、こんな薄っぺらな嘘が通るはずないじゃないか。
でも嘘をつかなきゃ。先生を心配させちゃいけない。先生にはいいところだけを……!

「べつに…わた「ねえ、ボクは幸せだよ」 ……え?」
355中書き7:2012/02/12(日) 14:45:53.99 ID:8NZWbdJj
美少女について

美的センスは人によって違うため、100人中99人が振り返る美少女なんてありえないわけで。
しかしそれをデザインするのが創作の楽しみのひとつでもあると、最近気付きました。
漫画では髪表現が、アニメでは肌の色がひとりだけ違う子なので、そのあたりの表現はし易いんですが、
もうちょっと欲しくて、『虹色の瞳』をつけたしました。
正直、この表現とこんな長いこと付き合うと思ってなかったんですが。
っていうか、前向きで良い子になったひとはって、驚くほど個性がなくてびっくりしました。
『君に届け』にもできないし。
でも最近、『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』みたいにしても良かったとちょっと思った。

参考にしたのは『電波女と青春男』、『主に泣いてます』です。
美的感覚は有る程度相対的なもので、自覚の無い美少女は理屈上ありえないと考えているため、
カウンターウエイトとして体格に対するコンプレックスを置いています。
147ってAKBのたかみなより低いよ。『バンブーブレード』のタマちゃんでも149だよ。
『マテリアル・パズル』早く再開して。
しかもバストAAって、いくらなんでも貧相すぎてさすがにモテ無い気がするんですが、
スルーの方向で読んで下さい。

完結までもうちょっとなので。
356名無しさん@ピンキー:2012/02/13(月) 19:04:57.93 ID:nfGaDg8W
>でも最近、『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』みたいにしても良かったとちょっと思った。
昔SS書いてた身としてはすごい共感できるからつい書き込んでみる

でも、ひとはの元々の性格に手を加えないとそれはそれで難しかったりするだよね
こういうところが「原作より未来の話」を作る上で障害になりうる
原作でのキャラを生かしつつ、成長させたキャラクターを作らなければいけない……
その過程で作られたキャラクターは決して全ての原作ファンに受け入れられるものではないとわかっていても……ね

そういうは意味ではとてつもなく尊敬できる……すばらしい完結を期待しますね

>しかもバストAAって、いくらなんでも貧相すぎてさすがにモテ無い気がするんですが
漫画や小説の中では現実と比べる必要は無いですね
非現実的であっても此処の世界観があるので問題ないです
私は貧乳がすk(ry
357名無しさん@ピンキー:2012/02/13(月) 21:41:30.29 ID:peNTTDLQ
>>355乙ですよ〜
もうバレンタインのオールカラー回から一年も経ってしまったですね・・・
あれはまだ単行本未収録なんだなあ
358名無しさん@ピンキー:2012/02/17(金) 23:36:08.43 ID:jx8piA9+
陝?蜀暦スャ陷エ貊??シ?陞滂スァ
陝?蜀暦スャ陷エ? 鬩慕§?ス、?スァ繝サ蛹サ笙邵コ蠕鯉シ?郢ァ荳奇ス? 邵コ?スソ邵コ?ス。邵コ?スイ郢ァ髦ェ?1973陝キ?スエ10隴??25隴鯉ス・ - 繝サ
蟲ィ繝サ邵イ?髫ア?スュ陞「?スイ郢ァ?スク郢晢ス」郢ァ?ス、郢ァ?ス「郢晢スウ郢??邵コ?スォ隰?陞サ讒ュ笘?郢ァ?郢晏干ホ滄ゥ・螳亥ク・鬩包スク隰??繝サ?陷繝サ纃ス隰??繝サ蟲ィ?

7雎??スウ邵コ?スァ鬩・螳亥ク・郢ァ雋橸スァ荵晢ス∫クイ竏晞エサ髣。闃ス?ス・?スソ郢晢スェ郢晏現ホ晉ケ晢スェ郢晢スシ郢ァ?スー邵コ?スァ郢晏干ホ樒ケ晢スシ邵コ蜷カ?ス狗クイ?
9800陝キ?スエ邵コ?スォ隴俄扱蠑瑚摎?スス鬮ォ蟷??スォ蛟。?スュ迚呻スュ?スヲ隴ャ?ス。邵コ?スォ鬨セ?スイ陝??スヲ邵イ繧?繝サ陝??スヲ隴弱e繝サ陷茨スィ邵コ蜀冷伯陷キ髦ェ繝サ鬩包スク隰?荵昴堤クイ竏?
?スス謐コ蜃セ邵コ?スョ騾カ?ス」騾ケ?ス」隴厄スー邵コ荳?334334334334謔滄エサ髣。闃ス?ス・?スソ郢晢スェ郢晏現ホ晉クコ?スョ繝サ莠包スク?スュ陝??スヲ繝サ?2陝キ?スエ騾墓コ倥定ーコ?スイ邵コ蜉ア?シ樣ゥ包スク隰?荵昶イ
邵コ繝サ窶サ邵イ竏壺落邵コ?スョ鬩包スク隰?荵晢ス定ソッ?スイ郢ァ蛟カ?スサ?ス」郢ァ荳奇ス顔クコ?スォ鬯??スシ邵コ?スセ郢ァ蠕娯螺邵コ?スョ邵コ蠕娯?壺?千クコ阮卍ー郢ァ蟲ィ?スり椶?スー邵コ?スョ邵コ荵?
ツー郢ァ蟲ィ竊醍クコ繝サ?スー蜀暦スャ陷エ貅倪味邵コ?ス」邵コ貅倬亂竊堤クコ繝サ竕ァ[1]邵イ繧?笳守ケァ蠕娯穐邵コ?スァ邵コ?スッ鬩暮�題幻隰??郢晢スサ闕ウ迚呻ス。竏オ辟皮ケ晢スサ陞溷、懊鎖隰??邵コ?スョ髫阪?サ辟夂クコ?スョ郢晄亢縺夂ケァ?スキ郢晢スァ郢晢スウ郢ァ蛛オ?シ?邵コ?スェ邵コ蜉ア窶サ邵コ繝サ
笳?邵コ蠕??闔�謔滂ス。竏オ辟皮クコ?スォ郢ァ?スウ郢晢スウ郢晁?後?サ郢??邵コ霈費ス檎ケァ荵昴i?スソ?1990陝キ?スエ邵コ?スォ郢昶?壹?サ郢晁滋蛹コ繝・邵コ荵晢ス芽ャ仙「鍋?皮クコ?スォ陷蟠趣スサ?ス「陷キ謇假スシ蛹サ笳?邵コ邵コ邇イ謔ス闔�?スコ邵コ?スッ邵イ譴ァ鮟定ャ?荵昴?サ闕ウ騾。
?スェ髮門セ娯?醍ケ晄亢縺夂ケァ?スキ郢晢スァ郢晢スウ邵イ髦ェ笆。邵コ?ス」邵コ貅倪?堤クコ繝サ竕ァ繝サ?[1]邵イ繧具スォ菫カ?ス。2陝キ?スエ隴弱e繝サ陋ケ諤懶スキ譎乗?ァ闕オ?邵コ?スィ陷茨スア邵コ?スォ陞滉ク翫?サ騾オ謔滂ス、?スァ闔ィ螢ス?スコ髢笏∬恪譏エ繧?竊醍クコ鄙ォ竏ス?スサ鄙ォ縲堤クコ阮吮落騾?
繝サ髦懆椽蝓滓ャ�邵コ?スョ陟托スキ隰?讌「繝サ竊堤クコ蜉ア窶サ驕擾ス・郢ァ蟲ィ?ス檎ケァ荵昶イ邵イ繝サ?スォ菫カ?ス。鬨セ螟ゑスョ邇イ謔ス陜ェ竏オ驕�邵コ?スッ0隴幢スャ邵コ?スァ邵イ竏ォ諱∬怙繝サ縲堤ケァ繧茨スウ?スィ騾カ?スョ邵コ霈費ス檎クコ貊?竏郁ャ?荵昴堤クコ?スッ邵コ?スェ邵コ荵昶夢邵コ?[2]邵イ?
359名無しさん@ピンキー:2012/02/17(金) 23:59:02.17 ID:EFs5cwQj
1階から7階へエレベーターを乗ったとき
矢部「学生時代はマンションだったんだけど、エレベーターで怖いことがあってさ
   上に登ろうとしたら2階のガラス越しにこっちを覗いてる男性と目が合ってね
   次の瞬間その人が笑いながら外階段をかけ上がる姿が見えたんだ
   どこで降りようか悩んじゃって、それで社会人になったら絶対アパートにしようって」


360名無しさん@ピンキー:2012/02/18(土) 15:32:26.88 ID:Eiv0nmcB
>>356
昔と言わず、新作を頑張って!
361名無しさん@ピンキー:2012/02/29(水) 22:23:36.83 ID:Vi5giErN
『ハイスコアガール』読んでたら
自転車の荷台に三女を乗せて超頑張って自転車こいでる千葉が頭をよぎった
けど書く暇ないから誰か書いてあげ
362名無しさん@ピンキー:2012/03/01(木) 12:39:46.09 ID:t6IGkzia
みつば「どすこいどすこい」
千葉 「俺超頑張ってる」キコキコチャリンチャリン
363名無しさん@ピンキー:2012/03/01(木) 21:10:14.98 ID:Hlgs9xmS
wwwwwww
364名無しさん@ピンキー:2012/03/02(金) 15:02:28.89 ID:6VQ6J2eC
クッソWWW
365丸井ひとはの憂鬱97:2012/03/03(土) 23:06:57.47 ID:sAWrAVGO
――――――――――


「熱っ!」

玄関を開けた途端耳をつんざいた悲鳴に驚いて、キッチンへ駆け込むと、
エプロンにポニテ姿のみっちゃんが、お鍋の前で耳たぶを摘んでいるところだった。

「大丈夫みっちゃん!?」
「そんなに慌てなくたって、大丈夫に決まってるでしょ!心配性ね!」
今日もみっちゃんの声が、ゴム毬みたいに家中を跳ね回る。
あっちこっちにぶつかって、素直に私の手元へ来る気なんてサラサラ無いって主張してるみたい。
でも中身の気持ちはもう届いちゃってるんだけど。
ヤケドしたのは指のはずなのに、顔の方がよっぽど真っ赤になってるよ。

「いや、みっちゃんじゃなくてお味噌汁の方。
あ〜あ〜、そんな煮立てちゃって。
前にも言ったでしょ。お味噌汁は煮立てると風味が飛んじゃうんだよ」
「うっさい!味噌汁かぶって死ね!!」
すぐさまいつもの台詞が飛び出すってことは、ほんとに全然大丈夫みたいだな。まったく…いつまで経っても人騒がせな姉だよ。
……にしても、ふたばもパパも顔を出さないって事は、まだ帰ってきてないのか。
ちょっとふたばが遅くなっちゃってるな……暗くなる日は親衛隊の人たちが影ながらガードしてくれるから、大丈夫だろうけど。
とすると今大丈夫じゃなさそうなのは、晩御飯だけか。

「んも〜…みっちゃん、いったいどういう段取りでご飯の用意してるの?
メインのおかずができてないのにお味噌汁が煮立ってるなんて、信じられないよ。
はぁ〜…いつになったらまともにお手伝いしてもらえるんだか」
「うっさいうっさいうっさ〜〜〜い!!」

…ま、しっかりコンロの火を止めてから怒るようになったあたりは、成長したかな?

ワンテンポ遅れてほっぺに迫ってきた指を軽くかわしながら、私もエプロンを着けて髪をくくる。
できれば一旦部屋で着替えて、セーラー服についちゃった先生の部屋のホコリを払いたいところだけど……軌道修正は早いほうがいいし、
今日はこのままいくか。
『体育のジャージで掃除をすればよかったのに』?
そんな可愛くない姿、先生に見せられるわけないよ。
……オホン。はてさて、まな板に乗っている『下ごしらえ』はいかがなものか……。
366丸井ひとはの憂鬱98:2012/03/03(土) 23:08:05.65 ID:sAWrAVGO
「ブタバラ、小麦粉、卵、パン粉……ミルフィーユカツにするつもり?」
「………なによ。文句あんの」
「文句ってわけじゃないけど、テンプラ油があるの確認してくれた?」
「えっ!ウソっ!?」
私の問いかけに、もちろん素直な『YES』/『NO』が返ってくるはずなんてなく。
だけどブスッと尖ってたのが一転、まん丸に開いた口が、これ以上無いくらいわかりやすい回答になってくれてる。

はぁ〜…見事な抜けっぷり。さすが我らが長姉だよ。期待を裏切らない。

「上の棚に買い置きのがあるかもしれないから、ちょっと見てみて。右の奥の方」
私は普段使わないものは、その辺りにまとめて置いてるから。台に登って。

……だというのに、

「んげっ、マジで無いの?」
つま先立ちとはいえ届いてるし。むぐぐ……。

「んう〜〜……?」
晩御飯が掛かってるとなって、みっちゃんの背中が結構必死な様子で棚の奥をガサゴソ鳴らしてくれる。
まぁ実際はまだまだどうとでもできるんだけど、真面目にやってくれるのはいいことだから言わないでおこうか。
背中といっしょに色々が揺れるのも、見ててそこそこ楽しいし。
この太ももの揺れ具合、またダイエットをサボってるな。いい加減脂肪だけじゃなくて管理能力と忍耐を身に着けようよ。
大体、アルバイトで立ちっ放しの歩きっ放しなのに、なんでそんなにすぐに横幅を増やせるのか教えて欲しいくらいだよ。
太ももだけじゃなくてお腹もまたちょっと揺れ始めちゃってるし。その上おっぱいも…揺れている……っ!?

なっ!?
こないだ洗濯カゴに入っていたCは、見栄じゃなかったんだ……!!

突然飛び込んできた残酷な現実のせいで、今度はこっちの世界の方がグラグラ揺れだしてしまう。
平衡感覚すら弱い私の身体は、すぐさまガクリと膝から崩れ落ちてしまう。
どころか、足元にできた地割れに飲み込まれて沈んでいってしまう……ところだったけど。
けどまぁ、今は目の前にみっちゃんが居てくれてるので。

「ん〜…暗くてよくわかんないじゃない、もうっ!
テンプラ油もテンプラ油よ!この私が必要としてあげてるんだから、1秒でパパッと出てきなさいっての!」
「もう高校生なんだから、いい加減物にまで女王様気取りはやめようよ」
「熱した油ぶっ掛けるわよ!」
跳ねる声も揺れる姿も何もかもが派手で騒がしくて、沈み込んでる暇なんて1秒もくれないんだよね。
こんなふうに今みたいに背中を向けられてても……そうだ、ちょうど良いや。

「ねえ、みっちゃん」
「なによ?」

背中が相手なら、少し気が楽だ。
367丸井ひとはの憂鬱99:2012/03/03(土) 23:08:48.87 ID:sAWrAVGO
「最近……えっと…さくらちゃんにあ…会った、でしょ?」
「会ったわよ」
それでも震えてしまった私の声と違って、姉のそれは自然なまま。背中も腕も、滞ることなく揺れ続けてる。
……やっぱり私たちは似てなんて……。

「眼鏡に変えてもキモいのはあいっかわらずだったわ〜。
人が食べてるのをニヤニヤしながら見てきて、そのこと注意したら、、
『いやぁ、みつばさんのお食事姿があまりに幸せそうで、見ているだけでお腹が一杯になってしまったんです』とか言って。
うぅ…思い出したら寒気が……」
……さくらちゃん…。

みっちゃんを好きになる子は何故か…『だから』なんだろうけど、愛情表現が微妙に歪んでるんだよね。
将来どんな人がお義兄さんになるのか、ちょっと…かなり不安だよ。
って、そんな先のことは置いといて。

「先生の話、した?」
「したわよ。みすぼらしい童貞がいるって。
ついでに魔法が見れるかも知れないから、暇つぶしに行ってみたらって勧めたわ」
やっぱり似てるんだろうか?
まぁみっちゃんは、先生がもう魔法使いになれないことを知らないはずだから、単純な軽口なんだろうけど。

「松原、なんか感想言ってた?」
「……優しそうだって。
あとアドバイスとかもちょっとしてくれたよ」
「ふ〜ん……。
普段無駄に口まわしてるくせに、肝心なときは当たり前の事しか言えないなんて、思ってた以上につまんない奴ねぇ」
「………他に……」
「ん〜?」

ごくり。自分の喉の鳴る音が、耳に響く。
さっき先生からあんなにたくさんの勇気をもらったのに。
今目の前にいるのは三つ子の姉なのに。
なのに、それでも私の喉はひきつって、自分の仕事をズル休みしようとする。
ダメだよ。確かめなきゃいけないんだ。
さくらちゃんとみっちゃんの間に何があったのか。今、ふたりにどんな壁があるのかを。
さくらちゃんが安心して近づいて来れるのかどうかを。

「他にも何か話した?」

言わなければよかった。

決意はやっぱり薄っぺら。
目の前の背中がちょっと止まっただけで、あっさり『後悔』で塗り変わってしまう程度。
所詮その程度のものしか持つことのできない、私……。

「……他につまんない話をした気もするわ。あんまりつまんなかったからもう忘れちゃった。
…あっ、な〜んだあるじゃない!
ほらっ、テンプラ油!これでいいんでしょ!」
それでも淀んだのは一瞬だけで、私へ振り返る頃にはもういつもの『みっちゃん』に戻ってくれる。
……ううん、違うな。これは『いつも』に戻りなさいってことか。
こっちはついこないだの事だもんね。そにれみっちゃんが本気で怒ったときは、なかなか熱が冷めないもんな……。

しょうがない、また今度にしよう。

そう決めたのと同時に、片隅で小さな私がほっと胸をなでおろした。
その現実が、何より苦しい。
368丸井ひとはの憂鬱100:2012/03/03(土) 23:09:13.41 ID:sAWrAVGO
「どうしたのよ?
これでいいんでしょ?それとも油の賞味期限とかあんの?」
「え…ううん、大丈夫だよ」
「……あんた、最近ボーっとし過ぎよ。
気になることは無くなったんだし、ささっと衣を着けちゃいましょ」

好きな人の前じゃあんなにはっきりと決意したくせに、いざとなったら立ち止まってしまう。
いつになるかわからない『また今度』に先延ばしして、壁の後ろに隠れたまま。

「あっ、ダメだよみっちゃん。お肉は一旦1枚1枚はがさなきゃ。
それから脂身のところをずらして重ねなおすんだよ」
どころか手元を得意なもので埋め尽くして、嫌なものが見えないようにまで。
そうやって誤魔化さないと、怖くて姉と並んで立つことすらできない。

……ダメだ、やっぱり私たちは全然似てないよ。
隣の姉は怒ることも泣くことも怖れずに、はっきり伝えたっていうのに。

「えぇ〜…めんどいわねぇ……」
ほら今だって。
口ではこう言ってても『今』のみっちゃんはしっかりお手伝いしてくれる。
苦手な事にも自分から進んで頑張ってる。

やっぱり私には……。

「よっと……そういや何枚重ねで1個にすんの、コレ?」
「……4枚だよ。みっちゃんのお腹の段数と一緒だから覚えやすいでしょ」
「なるほど、確かに覚えやすいわね!…なんて言うわけ無いでしょ!
って、あっと!」
あ…お肉の真ん中を突き破って、ひとさし指がコンニチハしちゃってる。
ふふっ…ただでさえ不器用なのに、集中してやらないから。爪を短くキレイに切ってたって、それじゃあダメだよ。

「気をつけてよ、みっちゃん。
重ねて貼ればいいって言っても、あんまり細切れにされるとハンバーグにメニュー変更になっちゃうよ」

あぁ…やっぱりみっちゃんの隣は気持ちいいな。
いつだって、楽しい『いつも』を引っ張ってきてくれる。
だからみんなも、いつも此処に集まるんだよね。そうでしょう、みんな?

「コレはあんたが余計な事言うからでしょ!!
ったく…あ〜、それにしてもチマチマめんどくさいわねぇ。こんなの最初から4枚ずつはがしていけばいいじゃない」
「面倒でも何でもやらなくちゃダメだってば。このひと手間が美味しさの秘訣なんだから。
料理は辛いから、面倒だからなんて言ってサボっちゃダメなんだよ」
うむ、我ながらなかなか上手いこと言ったな。むふ。
パクリだけど。
369丸井ひとはの憂鬱101:2012/03/03(土) 23:09:44.15 ID:sAWrAVGO
「……あんた、その台詞」
「へ?……あっ!!」
今さら慌てて口を押さえたって、もちろんもう遅いのはわかってる。
だけど押さえずにはいられないよ!

ああ〜っ、杉ちゃんにぜったいばらさないでって言われてたのに!
しかもパクリ元の本人に、ドヤ顔して言っちゃったよ!
もうっ、もうっ、もう〜〜〜っ!!
近頃の私は完全にダメな子だよ!!

「あ…これは、そのぅ……」
無かったことにはしてくれまいか。まんじゅう味ポップコーン3袋…いや、5袋出すから……。

「……ふんっ、いつまで経ってもそんな事言ってるんだ、あいつ。
全然変わんないわねぇ。
なっさけない。みっともない」
心の交渉術が成功するはずはなく。
見上げる姉の表情は、すでに一面蔑みで染まりきってしまってる。
違うよみっちゃん。杉ちゃんは約束を覚えてたんだよ。だけど私を元気付けるために……!

「ち…ちがっ…!すぎ……」



「ほんっと、いつまで経っても変わり映えしない童貞ね」


え?

「………先生……?」
杉ちゃんじゃなくて?

「なによ?
童貞が醜いドヤ顔して言ったんでしょ。
『生活を組み立てるっていう事は、辛いから、面倒だからってサボれない。とっても大変な事なんだ。
今日だってきっと、みつばちゃんが遊んで帰る頃にはあったかいご飯ができあがってる。
ひとはちゃんが、みつばちゃんたちが帰ってくるのを見計らって作ってくれてるんだ。すごいよね。
お料理も、お洗濯も、お掃除も小さい頃からずっと毎日頑張ってる。今日もみんなが楽しく元気に過ごせるようにって。
今日だけじゃない。明日から先のことまで考えて、おうちのお金をしっかり管理してる。
こんなに頑張ってる子は、世界中探したってひとはちゃんだけだよ』とかなんとか。
姉妹にまでおんなじこと言うなんて、かっこつけのバリエーションの少ないヤツ!」
「あ……えっと、うん。そう、だね……」

どういうこと?なんで先生?
370丸井ひとはの憂鬱102:2012/03/03(土) 23:10:09.91 ID:sAWrAVGO
「しかも何年も同じ事言ってるなんて、呆れを通り越して引くわぁ。
私がそれ聞いたの6年生のときよ?
…ま、だからいつまで経っても童貞のままなんでしょうけど」

…あっ、そっか。
これ、元々先生が言った事だったんだ。
先生の言葉を自分のものにして、杉ちゃんに伝えたんだ。
きっと、今みたいなすごい上機嫌で。

「…ぷっ、あはは!なにそれ、かっこ悪い!」
「えっ、あ……そりゃそうなんだけど、そこまで笑うほどじゃなくない?
童貞も童貞なりに色々考えて言ったんだろうとは思うし……そこそこ良い事言ってるって思わなくもないし……」
「そ…だね、ぷふっ。
ごめんごめん…くくっ……!
笑っちゃ悪い…よね……っ!みっちゃんも大好きなんだからっ!!」

その言葉が。
今も…今までずっと想い続けてるくらいに。

「へっ!!??」
こ〜んな真っ赤になっちゃうくらいに。
くふふっ、耳までそまっちゃってるよ。どれだけ図星なの!
ダメだ、我慢できない……!


「あはははははっ!」


「はっ…はぁああっ!?
ななななに勘違いしてるわけ!?んなわけないでしょ!!ばっかじゃないの!!
ぜんっぜん!これっぽちもすっ…好き、とかじゃないわよ!世界がひっくり返ったってありえないから!!
気持ち悪い事言わないでよね!!」
「くふっ…ふ、はぁ〜っ、わかっ…てるって!わかってるよみっちゃん!
あはははは!必死すぎ!!」
「なっ…なによその上から目線……。
っていうかいつの間にそんな大笑いできるくらい余裕になったわけ?
……まさかあんた、今日遅かったのって……っ!!」
「いやいや、ちがっ…ぷふっ!
ごめっ…本気で悪いと思っ……あはははっ!」
「……………」

あ〜ダメだ。ツボに入っちゃったよ。
やめてみっちゃん。顔をプクってしないで。火に油だよ!

「あはははははははっ!苦しっ…あははっ!」
「いい加減にしなさいよ〜!」
「ごめんごめんって!くくっ…ふぅ〜、はっ。
でもっ、元々はみっちゃんがズルするからだしさ……っ!」
「なっ…なにがズルいってのよ」
しかも最後まで嘘をつき通せない。
そんな露骨に及び腰になっちゃ、後ろに何か隠してるのが丸わかりだってば。

「いやぁ〜、別に。
まっ、私から言うようなことはもちろんしないけど、これを知ったらどう思うかな〜?」

きっと呆れるだろうな、杉ちゃん。
久しぶりにあの頃みたいに、『みつばめぇ〜!』ってムキムキ怒り出すかも。
むふう、ちょっと見たい。
371丸井ひとはの憂鬱103:2012/03/03(土) 23:11:12.00 ID:sAWrAVGO
「う……」
効果てきめん。
私の言葉に押されて、みっちゃんはさらに引き下がる。
下がりながらも目をあっちこっちにやって、反撃の糸口を捜してるみたいだけど、
お口の方はパクパクと「あ…うぅ……」って、意味無い音を洩らすのが精一杯。
むふふぅ。これは相当かっこつけて言ったみたいだな。

「……わかったわよ、もうっ。
でも別にそういうのじゃないからねっ!
今さらあいつのウザいお説教なんて絶対聞きたくないだけだから!しょうがなくよ、しょうがなく!」
「はいはい」

どうやらグルグルしてたものを飲み込めたみたいだ。
みっちゃんは胸が反るくらいに背を伸ばて、腰に両手をあてたいつものポーズ。
「勘違いしないでよね!!」
これまたいつもの台詞。……なんだけど…ふふふっ、顔が真っ赤なままだよ。ヤカンを乗せたらお湯が沸きそう。

「今度松原に会ったら言っといて。
あんたの話を最後まで聞いてあげなかったのは、ちょっとだけ悪かったって」

「え?」

今度はさくらちゃん?
なんでいきなりそっちに話が飛ぶの???

「何よ、まだ文句あんの?」
「え…いや……」
文句なんてつけようが無い。
だけど突然進路が変わった理由が不明すぎて、思わずマジマジと見つめてしまう。
顔はまだちょっと赤いまま。
でも、壁は綺麗さっぱりなくなってる。はっきりとわかる。

「でもなんでとつ「さあ、もういいでしょ!この話は終わり!さっさと衣を…あっ!?」 あっ!」

『終わり』って主張したみっちゃんの方こそ、気持ちの切り替えができてなかったみたいだ。
照れとかふてくされとか、わけのわからないものとか。
色々籠もったままの指は、ボウルの中へ黄身と一緒に殻までパラリ。
だから料理のときは集中しなきゃダメだってば。っていうかそもそも片手割りなんてできないでしょ。

「せめて両手をつか「大丈夫っスかひとっ!?みっちゃん!?」

「あ〜もうっ!どいつもこいつも!
別に私は大丈夫だっての!!あんたたちと一緒にしないで!!」

やれやれ…ほんとそっくりすぎて参っちゃうよ、私達。
372丸井ひとはの憂鬱104:2012/03/03(土) 23:11:33.56 ID:sAWrAVGO
「ふふ…あははははっ!」
「あんたもいちいち笑うな!キラキラがウザいのよ!!」
「おお〜、久しぶりに超キレイなひとはっス!」

「ただいま〜。帰ったぞ〜」

「あっ、パパまで帰ってきちゃったし!
ほらほら急ぐわよ!ふたばも手ぇ洗って手伝いなさい!
ひとはが卵、ふたばが小麦粉、私がパン粉!」
「パン粉が1番指が汚れないもんね!ズルいズルい!」
「みっちゃんズルいっス!」


「うるさ〜〜〜い!!」

373ガンプラ:2012/03/03(土) 23:14:07.74 ID:sAWrAVGO
ああ〜〜、結局100越えてしまいました。
越えたくなかったのに……。

調理や食事のシーンが多いなぁ、私。
なお、私がチーズもシソも嫌いなので、うちでは肉になにも挟みません。

みつごが並んで揚げ物の衣を着けてるのが、なにやら頭に浮かんだのです。


もうちょっとで完結!!
374名無しさん@ピンキー:2012/03/04(日) 01:17:02.74 ID:kHQYFJ4M
>>373楽しみにしてます 完結まで頑張って下さい
ふたば編、ひとは編ときたらみつば編もあるのでしょうか(異性のパートナー不在ですけど・・・)
太陽のちょんまげ冒頭のみつばとふたばがひとはのためになにやら頑張っている伏線もあるようですし
375ガンプラ:2012/03/05(月) 01:53:54.34 ID:QWGerLmB
ぐわ〜!衣は小麦粉→卵→パン粉の順だよ!
指が汚れないのは小麦粉だよ!
寝ぼけてたの私!?大丈夫なの!??
376丸井ひとはの憂鬱105:2012/03/05(月) 01:54:35.45 ID:QWGerLmB
==========


「それでは今日の図書委員会はこれで閉会とします」

ザワザワザワ...

くっきりとした輪郭を持つアルト声が明確に『終わり』を告げたというのに、半分近くの委員は中々腰を上げようとしない。
黒板を向いてたって、私には『視線』でわかる。
せっかくの金曜日なのに、みんな予定とか無いんだろうか?
ていうかそろそろ背中に穴が空きそうだから、早く帰って欲しいんだけど。

「雑談なら外でやってくれ。
私はさっさと部屋を閉めて帰りたいんだ。
おっと、丸井書記は残ってよ。今日の議事録の確認があるんだから」
さすがさくらちゃん。
それこそもし私が男の子だったら、確実に惚れてたよ。

「俺も奥の書棚の整理を……いや、じゃあ戸締り頼むよ委員長。
また再来週もよろしくね、丸井さん」

ピシャン!

何故かよくわからない理由で残ろうとしていた副委員長の田島くんも、ほどなく氷の視線に追いやられ、
私はやっとひと息つけるようになった。

「ったく、アホ猿どもめ」
「助かったよ。ありがとう」
ドアに向かって呆れ声をあびせているさくらちゃんに、まずはお礼を告げる。

「礼を言ってもらうようなことじゃないって。事実、仕事なんだから。
それにしても…やれやれ、三女を書記に任命したのは失敗だったな。あいつらどれだけ話を聞いていたんだか。
気持ちはわからんでもないが、せめて時間の半分くらいは黒板を見ろ、黒板を」
長身が私へと振り返る。そこに乗せられた顔にはまだまだ呆れの色が濃い。
そして発される意見には私も同意だ。

「まったくだよ……。
私の背中のなにがそんなに面白いんだか」
「面白いっていうか、髪が踊るたびに光が……よそう。なんでもない」
「?」
「ええい、あどけない表情で小首をかしげるな。心臓に悪い」
「ちょっ…どういう意味!?」
「ま、色んな意味さ。悪い意味じゃないから気にしない気にしない」
「その言い方で気にするなっていうの、絶対無理なんだけど」
「気にしない気にしない」
「んもー」

明るい声。楽しい会話。少なくとも見た目には。
ううん、もちろん本当にじゅうぶん幸せなんだよ。このままでも。ここまででも。

此処が世界の果てだって決めてしまえば、此れが世界で1番の幸せにできるんだ。

「さて、これだけタイミングをずらせば男子共も散っただろうし、私たちも帰ろう。
途中までは送るよ」
「ねえ、さくらちゃん」

だけど、まずは1歩。
377丸井ひとはの憂鬱106:2012/03/05(月) 01:55:24.84 ID:QWGerLmB
「なに?」
「みっちゃんがね、松原さんの気持ちを考えずにひどい事言ってごめんって。
そう伝えてって」
「……そうか。
やっぱりみつばさんには敵わないなあ。謝らなきゃいけないのは私の方なのに」

後悔なんてしないよ。
今だって、止まってしまったのは一瞬だけ。その後にはもっと綺麗な笑顔が広がったじゃない。

「三女、悪いけど帰ったらみつばさんに……ううん、私からメールしておくよ。
自分の言葉で伝えたいしね」
「ねえ、さくらちゃん」

だから、もう一歩。

「その言葉、明日うちに来て直接伝えない?
ちょうど明日はみっちゃんのバイトがお休みだから、家に引き止めとくよ。
それでたまには私たちがびっくりさせてあげよう。いつもいつも『敵わない』じゃあ悔しいよ」
「……そう、なんだけどさ。その方がいいんだろうけど……」
「ならそうしようよ。
それに私たち、友達になって結構経つのに、一回もお互いの家にお邪魔したことなかったよね。
たまには遊びに来てよ」
「うん…考えとくよ。ただ今週末はちょっと色々あってね。
それにC組は来週、物理のテストがあるからさ。勉強しなきゃ」
「ますますちょうどいいよ。
みんなで勉強会にしよ。みっちゃんたちもいっぱい宿題が出てるみたいだし。
苦手な教科なんて、ひとりでやったってはかどらないよ。
ついでに息抜きがてら、みっちゃんの英語とふたばの古文を見てあげてくれないかな。
さくらちゃん、得意でしょ?」
「……!
三女……っ!」

ごつんと、壁にぶつかる。
此処から先には進ませない、引き返せって通せんぼされる。
だけどそんなのどうってことない。
だって私は知ってるんだ。とっくの昔に教えてもらってるんだ。

「ね、さんくらちゃん。
もちろんふたばも来て欲しいって言ってたよ」

世界はとっても明るくて広いんだって。道なんていくらだってあるんだって。
こんな壁1枚、どうとでも越えられるよ。

「三女、ごめん。
それならはっきり言わせてもらうけど、私らが会っても不毛なだけだよ」

冷たいのも鋭いのも怖くないよ。
怖がってるのはあなたの方だってわかってるから。それはあの頃の私と一緒だから。
弱くて小さい私だけど、1度通った道をたどるくらいはできるよ。

「なんで?
ふたばも会いたいって言ってたよ」
「そりゃそう言うに決まってるさ。あいつは妙なところで律儀だから…キミに似てそうだからさ。
昔ちょっと手助けしただけなのに師匠、師匠って……だからこそ、いつまでもそんなつまらない義務感で次女を縛りたくないんだ。
いい加減、私のことは忘れて欲しいんだよ」

教えてもらった道を進むくらいはできるよ。

378丸井ひとはの憂鬱106:2012/03/05(月) 01:55:59.35 ID:QWGerLmB
「全然違うよ、さくらちゃん。
ふたばはずっとさくらちゃんの事が大好きだよ。だから今も会いたいんだよ」
「気楽に言わないでくれ。
……三女は私があいつにどんなことをしたのか、知らないだろう?」
「うん、知らないよ。
でも、ふたばの事はわかってるから。
ふたばはそんな昔の事より、今さくらちゃんが会ってくれない事の方がずっと辛いって思ってる」
「ごめん、違うんだ三女。やめてくれ。
私、本当にひどいことしたんだ」
「じゃあなおさらちゃんと会って、謝ろうよ。
謝ってくれないとふたばも許してあげられない。お互いずっとモヤモヤしたままだよ」
「………いい加減にして。そんな簡単な事じゃないんだ。
なんにもわかってないだろ、キミ」
「わかってるよ、三つ子の姉のふたばのことだから。
さくらちゃんもさっき言ったよね?似てるって。
似たもの姉妹だから、ふたばも私と同じでさくらちゃんの事が大好きだよ」

『自分』の気持ちを言葉にするなんて、もっと簡単。なんせ昨日1回作ってるからね。

「……ッ!
な…んだよ、本の読みすぎじゃないのか?バカバカしい。そんな台詞、真顔で言われると引くんだけど。
かっこつけてるつもりか?ふざけないでくれ」
「いやいやいや、さくらちゃんには負けるから。
毎日毎日キザな台詞でキラキラかっこよくてさ。
中学のときからずっとそうだったよ。ふたばが陸上部に溶け込めるよう毎日声を掛けてくれた。一緒に練習してくれた。
すごくかっこよかったよ」
「……大したことじゃない。そもそもみつばさんの妹じゃなければ、あんなに気にかけたりしなかった」

ああ言えばこう言う。
そんな下手くそな嘘、子供にだって通じない。

「嘘。
あんなに浮いてたふたばに声を掛けるのが、大したことじゃないはずないよ。
違うクラスだったのに、毎日一緒にお弁当食べて、部活の迎えにまで来てくれたじゃない。
毎日だよ?ポーズとかついでなんかじゃ絶対できないよ。
ずっと覚えてる。一生覚えてるよ。絶対忘れない」
「次女にとっては大したことじゃないんだよ。
私とのことは頭の片隅に置いてる程度だ。今日だって、毎日元気に走り回ってるじゃないか。
ノロマなヤツの事なんて放っておいて、どんどん先に行ってる」
「さくらちゃんに元気になって欲しいから走ってるんだよ。
自分が楽しそうに走ってるのを見たら、またさくらちゃんも走りたくなってくれるかも知れないって思って。
また一緒に走ってもらえるようになったとき、師匠にサボってたって思われないように毎日練習してるんだよ。
さくらちゃんみたいにカッコいい女の子になりたくて、毎日頑張ってるんだよ」
「え……」
「ふたばはそれしかできないから。……言葉にするのが下手なんだよね。
だから中学のときもあんなふうに浮いちゃってた、でしょう?」
「………だとしても…なおの事、今さらどうしろって言うんだい?
インハイ王者で国体強化選手に、師匠師匠ってまとわりつかれても、私は………」

んもー、そんなの気にしてるのはさくらちゃんだけだよ。

「ひとに『髪長姫』なんてつけて笑っといて、自分だけあだ名に変な拗ね方しないでよ。
まーどうしてもって言うなら、勉強教えてあげて。
好きな人が教えてくれたら、ふたばも勉強はかどるから。
ついでにさくらちゃんも物理や化学を教えてもらったら?」
「……次女に?」

そのきょとんとした顔、傷つくなぁ。
379丸井ひとはの憂鬱107:2012/03/05(月) 01:57:25.91 ID:QWGerLmB
「うん。私立高でかなり難しいのに、数学や物理は結構成績良いよ。
それに教え方がすごくわかり易くて面白いんだ。教科書や参考書なんかよりずっと勉強が進むよ」
「次女が………」
「あたりまえでしょ。
高校生なんだから普通に赤点が怖くて、普通に勉強頑張ってるんだよ。
得意な事もあれば苦手な事もあるよ。
まだまだ出来ない事が沢山あるから、勇気を出して頑張ってる。
こないださくらちゃんも、知ってるって言ってたじゃない。
走ってるだけが『ふたば』じゃないよ。
ふたばと仲良くする事と走るのが好きな事は、全然別の事だよ」

「…………」


「大丈夫だよ、さくらちゃん。
私もみっちゃんも、一緒に家で待ってるから」
ずっと傍にいるから。
どこかに行ったりなんてしないよ。さくらちゃんが大好きだもん。

「……………………」

だから、ねえ?
ゆっくりと、さくらちゃんが決めて。


「………なんだよ、お気楽に言いやがって」

あぁ…良かった。

「これで断ったら、私ひとりが嫌な女ってことになるんだろう?」
声も表情も、中身はもうじゅうぶんふっくらだ。

「はっきり言って欲しい?」
「ちっ……。
あ〜くそっ、わかったよ!わかりました!
行けばいいんだろ行けば!お邪魔させてもらいますよ!」
「うん。
お菓子とお茶用意して、待ってるよ」
ふふふっ、口をへの字に曲げちゃって。
小さな女の子みたいだよ。

「あ……ぅ……。
ぅん……。
やっぱり卑怯だな、美少女ってのは……」モニョモニョ
「なに?」
「なんでも!
ただまぁアレだよ、その…っ、あり……ぅって言うか、うう〜〜!」
「顔、真っ赤だよ」
まるでみっちゃんみたい。
380丸井ひとはの憂鬱108:2012/03/05(月) 01:58:21.69 ID:QWGerLmB
「うっさい!
ったく、おとといの今日でなんでいきなりこんなに引き離されるかな。
たった1日……ふぅん、なるほど。そういうことか」
と、ばつの悪そうな顔で頬に掛かる髪をいじっていたさくらちゃんはいきなり終わって、
瞬きひとつで今度は意地の悪そうな顔へと変わる。

おや?

「これがキミの王子様の力ってことかい?」
「うん!!」
「ちくしょー!死ねっ!ほっぺに埋もれて死ね!!」

ギュムム

「むぐぅ……」
だからなんでみんなほっぺを狙うの!
それにそんなところはみっちゃんの真似しなくてもいいよ!
しかもさくらちゃんは摘むところないし!ズル「っていうかキミらズルいぞ!」

「三人でよってたかって、あの手この手で来やがって!!
いつも三人がかりなんて、絶対勝てるわけないだろ!!」
「……ひょうらね」

……うん、やっぱりそうだ。
想い出とか、卒業したとか、そうじゃないんだよ。
いつだってそう。

「くそう、ニコニコ勝ち誇りやがって。
まったくもってそっくりだよ、キミたちは。
ちょっと弱みを見せた途端、ずけずけ入り込んできやがる」

先生を目指していれば、


「わかったよ!今回は私の負け!完全敗北!だから言ってやる!
よく聞いとけ虹色!!」


きっとみんな、



「ありがとう、三女」



幸せになるよ。


381丸井ひとはの憂鬱109:2012/03/05(月) 01:59:02.08 ID:QWGerLmB
==========


土曜の夜。
久しぶりの回転寿司で、お腹も心も幸せいっぱいになった帰り道。
まだすこし冷たい春の夜風だけど、コートの中は別世界みたいにあったかいから、家までのお散歩が楽しくてしょうがない。
月に向かって歌いだしたくなるくらい。

「夜空の星を見上げると〜♪」
「なんだひとは、ご機嫌だな。歌まで歌って」
いけない、ほんとに歌っちゃってたか。
しかも前を行くパパにまで届いてたってことは……。

「あんたあいかわらず歌が下手ね」
「次はアーミレンジャー歌ってー!」
当然右隣のみっちゃんにも、左隣のふたばにも聞こえてるよね……。

「ほ…ほっといてよ。今日はこれからお皿洗いも何もないからね。
ちょっとくらい機嫌よくなってもいいでしょ」
顔色を見られてなるものか。
私はフードを目深にかぶりなおす。

……でも、そもそも今日は機嫌よくなるなって方が無理だよ。
友達と家で楽しく勉強会して、宿題全部終わって、進路もはっきり決められて。

幸せ過ぎて怖いくらいだよ。

「いつもありがとう、ひと!」
「この方が楽だっていうなら、私も毎日お寿司でいいわよ。
回転するのじゃなくて、静かに落ち着いて座れるところならもっと」
「みっちゃんが食べる量を100分の1にしてくれるなら、考えてあげるよ」
「あんただって今日は8枚食べたでしょ!4枚しか違わないじゃない!」
「1.5倍はかなりの差だよ」
「ケンカしちゃダメっス!
せっかく今日は師匠と仲直りできた、すっごく特別な日なんスから!!」

「なんだ、今日はいい事があったのか?」
もう1度パパが振り返って、今度は私たち3人に問いかける。

当然答は、

「別に」
「うん!」
「あいつが度々遊びに来るとか、ぞっとするわ……」

みんなバラバラ。

「けどま、私の宿題を片付けされる下僕ができたって考えれば、悪くは無いか」

もちろんみんな一緒だけどね。
382丸井ひとはの憂鬱110:2012/03/05(月) 01:59:28.19 ID:QWGerLmB
「だから今日は……あ…ありが……」モニョモニョ
いいよ、わかってる。
声がモニョモニョ小さくても、顔が私の反対向いてても、はっきり聞こえるよ。
すごく嬉しいよ。

「え、なに?
蟻がみっちゃんのおやつを運んで行ったの?
それはダイエットを手伝ってくれてるんだよ。よかったね」
「あんたね〜!
……ったく。あんたは前見て歩くことだけに集中してなさい。ただでさえこけやすいんだから」

ギュッ

「あ……」

今日は完勝だと思ったのに、さすがはみっちゃんだ。
右手に…指と指の間にまでギュッと温もりを押し付けられたせいで、不覚にも一瞬フリーズしてしまった。むぐぐ……。
しかも…マズイ。あったかすぎて口元まで熱くなってきた。これじゃフードでも隠しきれないよ。

「あー!小生も小生も!!」

ギュッ

おまけには左手まで。
あーもうっ!
パパもチラチラ見ないで!背中が震えてるよ!

「あったかいね!楽しいね!」
「「…………」」

ま、いいか。
今日はこのままあったかくして、ぐっすり眠…れるかなぁ?
明日、先生に話すことが多すぎて、楽しみでなかなか寝付けないかも。
むふぅ。
早く会いたいな。


ガラッ
「ちょっ…ちょっと外で酔いを醒ましてきますぅ〜〜…」

神様もたまにはお願いを聞いてくれるみたいだ。
手を繋いで真っ直ぐ進む道の先、居酒屋さんからふらふらと、赤い顔の男の人が。
まだ遠いけど、薄暗い街路灯しかないけど、間違えるはずなんてない。

今日は本当に、

「大丈夫ですか矢部先生!?
お水もらってきましたから、飲んでください!」


383丸井ひとはの憂鬱111:2012/03/05(月) 02:00:10.39 ID:QWGerLmB
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「道のど真ん中に座り込んで、なっさけないわね、童貞。
しかもこの寒い中シャツ1枚とか、変態なの?」
「あっ、ごめんなさい!
職場の先輩なんですけど、お酒に弱いのに私の同期が無理に勧めて……」
「ごめ…んね、みつばちゃん」
「え?
お知り合いの子たちなんですか、矢部先生?」
「ああ、うん。真壁先生も聞いたことあったでしょう?
丸井みつばちゃん。それに……」
「大丈夫っスか、矢部っち!?」
「わっ、丸井ふたばさん!
キャーすごいすごい!テレビ見てます!握手してください!!」
「へっ?
あ…押忍…じゃなくて、ありがとうございます……!
おおっ!96.3のF!!」
「え…キャッ!?
なんで知って……!?」
「ややこしくなるからふたばは黙ってなさい。
童貞、誰よこいつ」
「この…人は……うぷっ」
「矢部先生!
お水お水!ゆっくり飲んでください!」
「あり…がと……。うぅ……」
「少し休んでいてくださいね。
えっと…それで私ですけど、去年度から鴨橋小学校に赴任した真壁かおりっていいます。
丸井さんたちのことは先輩の先生方からよく聞いてますよ。
とっても元気で可愛い三つ子ちゃんたちだったって。
でも本当に全然似てないのね…あっ、ごめんなさい。変な意味じゃないのよ」
「ふ〜ん」
「会うことができて本当に嬉しいわ。
丸井さんたちのことは、職員室でもたびたび話題にあがってて…野田校長なんて、
『丸井さんたちがいなくなった学校は、まるで火が消えてしまったみたいだ』って、よく寂しがってるのよ」
「へえ、そう」
「そう、なのよ……。
あの…私なにか……」
「どうでもいいけど、童貞が凍死しそうになってるわよ」
「ああっ!?ごめんなさい矢部先生!
今すぐコート取ってきます!頑張ってください!」

ガラッ ドタドタ
384丸井ひとはの憂鬱112:2012/03/05(月) 02:01:37.58 ID:QWGerLmB
「良かったじゃない童貞。巨乳で可愛い後輩ができて」
「ま…かべ、せんせ……は、そんな……」
「いいけど別に。帰るわよ、ふたば」
「え…でも、みっちゃん……」
「ふたば」
「おす……」
「待って……。
あの……ひとはちゃんは……?」
「あんたの姿があんまりにも情けないから、呆れてパパと先に帰った。
呆れすぎて家で泣いてるかも知れないわ」
「……そっか……」
「…………それだけ?」
「え?
それだけって……ボクは…ボクらは………。
ボクには……」

ガラッ

「コート持って来ました!
それでこっちはあったかいお茶です。ゆっくり飲んでください、先生」
「す…すみません、真壁先生。んぐ…ふぅ」
「あら、丸井さんたちはお帰り?」
「帰るわ、家に。当然でしょ。
ひとはが待ってるんだから」
「ひとは……ああ、丸井ひとはさん。もうひとりの三つ子ちゃんね。
その子にも会いたかったな〜。残念。
こうやって実際に会える機会なんて、そうそうないから……」

「ひとはちゃんに!!」

「矢部先生?」
「わっ、びっくりしたっス」


「……………なによ」


「……ひとはちゃんに伝えて欲し「嫌よ」 …え?」

「嫌よ。
あんたが自分で言いなさい。自分で本人に面と向かって伝えなさい。
会えるわ、どこででも。
狭い町だもの。駅でもスーパーでも、どこでだって会うことはあるわ。普通に。
あんたが逃げなきゃね」
「………そっか、そうだね」



「そうよ。はっきり伝えなさい。
あんたは先生なんだから」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
385丸井ひとはの憂鬱113:2012/03/05(月) 02:06:22.96 ID:QWGerLmB
==========


カチャカチャ パタン...

日曜の早朝。
いつものように合鍵を使い、先生の部屋に入る。
先生を起こさないよう静かに、静かに……。

「…………」

いつものように壁にコートを掛ける。
いつものようにベッドに腰掛け、可愛い寝顔を眺める。

「先生……」
「ぐお〜……」


私と先生。


他に誰もいない。
先生への言い訳を気にする必要もない。
先生を私だけのものにできる。

先生が起きるまでの、短い、私だけの時間。

「うぅん…みず……」
「……昨日はずいぶん飲んだんですね」

ひとり口にする言葉は差し込む朝日で溶かされて、どこにもたどり着けずに消えていく。
これも、いつものこと。
私はこれでじゅうぶん幸せだよ。

「ぐか〜……」
今日は特別ぐっすりだ。口は半開き。涎れまで垂らしてる。
シャツもズボンも昨日のままだ。
お酒に弱い先生がこんなになるまで飲むなんて珍しいな。

「そんなに楽しかったんですか?」
「ぐ〜……」

私の知らないところで、知らない人に、知らない笑顔を見せていたのかな。
その姿を思い浮かべ…ようとして、やめる。
そんな事できない。
胸が張り裂けちゃうよ。
386丸井ひとはの憂鬱114:2012/03/05(月) 02:06:49.87 ID:QWGerLmB
「ふぐ…お〜…」

先生は寝てる。
だからなんだってできる。

「先生……」

先生のアゴに触れる。ふわふわ。指先に柔らかいヒゲの感触。

「先生、好きです。大好きです。
ずっと傍にいて。もっと近くに来て。その手で触れて。
世界一大好きです」

先生に告白する。こんなに簡単。
幸せだよ。
幸せなんだ。

「がー…」

…………笑っちゃうよ。なんて不毛なひとり遊びだろう。
結局私は出会った頃のままなんだ。
みんなは外に踏み出しているのに、ひとりだけずっと壁に隠れてる。
みんなには偉ぶって追い立てるくせに、自分の番になるとすぐ言い訳して逃げ出しちゃう。

いつまでも、誰かに手を引いてもらわなきゃ何もできない小さな女の子。
わかってる。

「先生、好きです。大好きです。
世界一大好きです」
「うむぅ…………ゃん…」

今、どんな夢を見ているんですか?
楽しい夢ですか?
幸せな夢ですか?

傍に私はいますか?

「先生、好きです。大好きです。
世界一大好きです」
「う……好き、だよぉ…」

……栗山(旧姓)先生ですか?それともあの真壁さんって人ですか?



「ひとはちゃん…」




「え?」



387丸井ひとはの憂鬱115:2012/03/05(月) 02:07:29.14 ID:QWGerLmB
「せ…先生、誰が…好き、なんです?」
声が、震える。
声だけじゃない。指が、身体が、視界が、心が。世界の全てが震えて、すぐ目の前すらはっきり見えなくなる。

「ひとはちゃん…だい、すきだぁ…」

!!?

私は身を乗り出す。
先生の顔をはっきり見つめるために、目の前よりももっと近くへと。
吐息がくすぐったくなるくらい、傍へ。

「ぐおぉ〜…」
今日は特別ぐっすりだ。口は半開き。よだれまで垂らしてる。
寝てる。少なくとも見た目では。

「…ふん。その手には乗りませんよ。起きてるんでしょう?
そんな子供のいたずらに引っかかる私じゃありませんから」

「すか〜」

「いい加減寝たふりはやめて下さい。怒りますよ」

「ぐ〜」

「セクハラと名誉毀損で訴えます。いいんですか?」

「か〜」

「辞典カバーに隠したDVD。1枚だけ髪の長い女子高生ものがありますよね。
あれってどういう事なんですか?」

「ぐご〜」

………。

「寝てる…という事は本当にただの寝言か。まぁ、そんなところだよね」

「私のひとり言を反復しただけに決まってる」

「そもそもどんな『好き』なのかもわからないんだから」

「生徒として『好き』になってもらってるのは、最初からわかってたことじゃないか」

「2番目かも。5番目とか10番目かも。どうせ1番好きなのはおっぱいの大きい女だよ」

「こんな小さな子供、相手にされるわけないって」

「まったく…変な勘違いしてうろたえて。みっともないなぁ」

「………雨漏り…?」
388丸井ひとはの憂鬱116:2012/03/05(月) 02:07:52.81 ID:QWGerLmB
天井を見上げる。
穴なんて無い。そもそも今朝は雲ひとつ無い青空だ。今もほら、カーテンから光が漏れてきてる。

……?

じゃあこれは何だろう?
ぼたぼたとすごい勢いで水滴が落ちて、先生の肘とシーツを濡らしていく。変だな。

ぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼた。
すごい勢い。

「あ…れ……?」

何だろう?私も変だ。
こんなに近づいてるのに、また先生が見えなくなった。
それに苦しい。胸が張り裂けそうなくらい。息もできないよ。


ぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼた。
水滴は止むことなく降り続ける。

……これ、なんだっけ…こないだ見たような……?
確か……あぁ、そっか。



「わたし、の…なみ……」



ぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼた。
止まらない。

後から後から溢れ出てくる。
当たり前だよ。
5年分もあるんだから。
389丸井ひとはの憂鬱117:2012/03/05(月) 02:10:12.54 ID:QWGerLmB
「あ…ぅ……。
まいった…なぁ……」

こんな顔、先生に見せられない。ものすごく心配されちゃう。
『もう来ないで』って、言われちゃうかも。
まさか起きてないよね。

もう目では何もわからない。
だから両手で先生の輪郭をなぞる。

「ぐおぉ〜…」
今日は特別ぐっすりだ。口は半開き。よだれまで垂らしてる。
寝てる。ぼたぼたと頬に当たる雨に気付きもせず。

「先生…」

ひとさし指に吐息を感じる。
先生の口は半分閉じられてる。
先生の唇が、すぐ傍にある。

「ん……」
吸い寄せられるように、重ねる。
大丈夫、軽く触れるだけ。

だけどはっきりとぬくもりが伝わってくる。
だから触れたところに想いが伝わっていく。触れた分だけ私で染まる。気が、して。

「むぐ…ん……」
先生は寝てる。

「れるっ…んぅ…」
唇はカサカサになってる。お酒を沢山飲んだから渇いてるんだ。
このままじゃ可哀相。
舌でなぞって濡らしてあげなきゃ。

「ふぁふぅ………」
先生は寝てる。

「ちゅ…ずるっ……ぅん」
口は半分開いている。ずっと開いてたから中まで渇いてるかも。
もしそうだったら大変だ。
舌を差し入れて確認してみよう。

「ん……ぅ……」
先生は寝てる。

「じゅる……ぴちゃ…じゅぅ……」
喉も渇いてるはずだ。とっても渇いてる。
そうに決まってるよ。
かわいそうな先生。今すぐ奥まで濡らしてあげますね。

「んふっ…せんせ……じゅち…」
両手で先生の頬を包んでしっかり捕まえ、溢れ出てくる唾液を舌を伝わせ送り込む。
たくさんたくさん注いでいく。
ふわふわ。手のひらに柔らかいヒゲの感触。
手の中に、私の好きな人がいる。
390丸井ひとはの憂鬱118:2012/03/05(月) 02:11:00.76 ID:QWGerLmB
「…こくん」
先生の喉が鳴る、のと同時に、私の背筋が震える。


気持いい。


「ん…じゅるっ……。んくっ……ぅ…」
もっと飲んで。もっと私で染まって。私だけの先生になって。



「んくっ…んくっ……くっ……こくん…。こくっ…ぐ…ふぅ…」



あぁ…気持ちいい……!
ガクガクと背筋が震える。
ジュワッと唾液が湧く。
じんわりお胎が熱くなる。
こんなに簡単に、こんなに気持ちよくなれるなら、もっと早くやっておけばよかった!!

「……こくっ…はぁっ、ふっ…くふっ……ぷあっ!
ふぁっ……あ!!!?」
先生が起きた。


しまった!!


「ぷぁっ…じゅるっ……!
ち…ちがうっ…んです!ちがうんです!!」

これじゃただの痴女だよ!変な子に思われちゃう!
早く離れなきゃ!
でもだめだ!

どうして!?

頬から両手が離れない!!瞳から目を離せない!!
離れてくれない!

離れたくない!!!

やっとこんな近くに来れたのに!!!

391丸井ひとはの憂鬱119:2012/03/05(月) 02:11:44.54 ID:QWGerLmB
「ちがうんです!あんまり先生が間抜けで、いたずらを我慢できなかったんです!」
 そうなんです。あんまり先生が愛しくて、くちづけを我慢できなかったんです。


「勘違いしないで下さい!先生の事なんて何とも思ってませんから!」
 お願いわかって下さい。先生の事だけをずっと想ってきたんです。


「こんなに寂しい部屋に来てるのだって、ひとりじゃ哀れだからです!」
 こんなに優しい世界を知ってしまって、ひとりじゃ居れないんです。


「違います!」
 そうです。



「変態教師!」
 好きです。



「キモオタ!ロリコン!」
 好きです。好きです。



「ヘタレ!足臭い!カマっぽい!」
 好きです好きです大好きです。



「もう寄らないで!」
 ずっと傍にいて。



「どこか遠くへ行け!」
 もっと近くに来て。




「私に触らないで!」
 その手で触れて。





「とんでもない変態!!」
 世界一大好きです!!
392丸井ひとはの憂鬱120:2012/03/05(月) 02:13:14.60 ID:QWGerLmB
「はぁっ、はぁっ、はあぁー…っ。
ふぅっ、く……はぁ…ぐすっ………」



ぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼた。



「ああ…そっか、そうだね」
私の手に先生の手が重なる。大きくて硬い手。ずっと欲しかったぬくもり。
私の手が先生の手と頬に挟まれる。ぬくもりに包まれる。
もうだめだ、これじゃ逃げられない。

「やっとわかった」

声は、瞳は、微笑みは、どこまでも優しくて。何もかもが夢みたいで。
いつか終わってしまう夢でしかなくて。
もういやだよ、こんなに苦しいのは。

「ずっとわかってたんだ」

ゆっくりと、身体を起こす、私たち。
いつも見上げてきた微笑み。いつも見上げてる私。
ずっと埋まらない差。

苦しくて、痛くて。
怖くて涙が止まらない。

ぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼた。
だけど想いはいつまでも溢れ出てくる。

ずっと終わらせたくない。いつまでも、夢を見続けていたい。


ずっと『今』が続いて欲しいの!!


「ひとはちゃん」

「ひぅっ…!
や…やめてっ!お願い!!」

『今』を終わらせないで!!



神様!!!




「ボク‘も’大好きだ」



393丸井ひとはの憂鬱121:2012/03/05(月) 02:20:49.00 ID:QWGerLmB
「え………?」


今、なんて……?


「ボクもひとはちゃんが大好きだ」
「うそだ……嘘、です」
「本当だよ」
「どうせ5番目とか生徒としてとか…大した意味はないんでしょう?」
「世界で1番好きだ。ひとりの女性としてのキミが、大好きだ。
ボクの全部をかけたっていい」
「ふざけないで下さい!どれだけ歳が離れてると思ってるんですか!」
「ふざけてなんかないよ。10歳以上離れたおじさんのボクだけど。
でも、好きだ。大好きだ。
いつだって、誰にだって、大声で言えるよ」
「嘘です!!
こんな子供を好きになるはずありません!好きになったとしたら犯罪です!!
ロリコン!さっさと死んで下さい!


死ね!!!!」


「いたたた……。
いやぁ〜…うん。いや、犯罪と言われるとそうかもなぁ……。
というかその通りなんだけど……。
もちろん、出会ったときから好きでしたってわけじゃないよ。
だけど好きになったんだ。
『今』はひとはちゃんが大好きなんだ。
え〜っと…そのう……本気で好きになった女性が、たまたまずいぶん年下だったって事で……。
なので、死ぬのは許してもらえないかなぁ…?」

「低い背!薄い胸!貧相な身体!心!!
いったいどこを好きになったっていうんですか!!?」

「ひとはちゃんと一緒に居る時間が好きだ。
テレビを見てる時、おしゃべりをしてる時、ふたりでボーッとしてる時。
心から安らぐ。心があったかくなる。ボクの1番大好きな時間だよ。
ひとはちゃんの優しい心が好きだ。
友達を…ううん、みんなを想って、みんなのために一生懸命頑張って。
みんなで笑ってるのがいいって想う、ひとはちゃんの心。本当に綺麗だ。
ひとはちゃんが作ってくれるご飯が好きだ。
毎週あんなに美味しいご飯が食べられるから、だらしないボクでもいつも元気に暮らせてる。いつも頑張れる。
ひとはちゃんの可愛い笑顔が好きだ。
あんなにびっくりするくらい可愛い笑顔を向けてくれるなんて…ボクに向けられてるなんて。
夢みたい「もういい!嘘です!嘘なんです!!」

何もわかってない。全然わかってない!
絶対そうだよ!だから今、こんなにゆったり優しく笑えるんだ!
こんな私をあったかく包みこめるんだ!

情けなくてみっともない先生!いい加減現実を見てください!!
394丸井ひとはの憂鬱122:2012/03/05(月) 02:21:27.01 ID:QWGerLmB
「うそうそうそうそ!ぜんぶ嘘!
私は悪い生徒なんです!嫌な女の子なんです!!
先生の気を引きたくて押し付けてるんです!見返りが欲しいんです!
私が優しい!?目が曇ってるんですか!!
良い子でいれば見てくれるって期待してたんです!
可愛いだって!!心の中はグチャグチャのドロドロなのに!!
バーカ!!見事に騙されましたね!!
そうだ!!
みんなみんな騙されてるんです!!」

「でも、みんながひとはちゃんに言ってるでしょう?
『ありがとう』って。
それはみんなが本当に嬉しかったからだよ。
ボクからも、いつもありがとう」

「みんななんて知らない!私だけでいい!!
ふたばが嫌いなんです!!あんな何でも持ってるなんてズルイよ!!
しんちゃんが嫌いなんです!!ずっと綺麗でなんていられないよ!!
みっちゃんが大嫌いなんです!!!
私もみっちゃんになりたかった!!なりたい!!

無理だよ!!

嫌い嫌い嫌い!大嫌い!!
だからひとりでいいんです!ずっとひとりが楽なんです!
余計な事しないで!!!」

「でも、ひとはちゃんはみんなに言ってるでしょう?
『ありがとう』って。
それはみんなが本当に大好きだからだよ。
ボクにはいつもはっきり聞こえてた。出会ったときからずっと」

「嘘つき!!そんなの聞こえない!!私なにも言ってない!!
おせっかいはやめて!!迷惑なの!!
私は先生なんて!先生なんて!!

先生なんて!!!」

「ボクも大好きだ」

「うるさい!!
勝手に決めるな!!勝手に私の世界に入ってくるな!!!
私は!

私は!!」

「そっか……そうだよね。
ごめんね」




ぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼた。




「ボクはひとはちゃんが世界で1番大好きです」
395丸井ひとはの憂鬱123:2012/03/05(月) 02:23:50.17 ID:QWGerLmB
「ふぐぅ……あ…ああっ……!
人、の…はなしっ…ひぐっ…」

「うん。わがまま言ってごめんね。
だけど好きなんだ。
キミにどう想われてても、ボクがキミのことを大好きなんだ。
キミがどう想ってても、ボクはキミの全部が大好きなんだ。
大好きだよ、ひとはちゃん」

「ぐすっ…ふ、くぅ……っ」

「情けなくてみっともないボクだけど…あぁ、そうなんだよなぁ。こんな時までかっこつけられない。
ボクは『先生』だから。キミを好きでいるために『先生』で居たいから。
だから今はまだ、いつも傍にいるなんて言えない。そんな嘘はつけない。
だけど、ずっと傍にいるよ。
だってボクは、世界で1番ひとはちゃんに泣いて欲しくないって想ってるもん。
そうだ。今決めた。
もうひとはちゃんを泣かせない。絶対に幸せにしてみせる。
そのために、ずっと傍にいさせてください」


「ふぅっ…く……。ひ…あぁ…あ、うぅ…」


ぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼたぼた。


せんせい……。


「……え〜〜っとですねぇ…」
張り裂けた胸に、ゆっくりと優しい声が広がっていく。
胸に、心に染み渡って、少しずつ痛みが消えて行く。

「…ふぅっ……な…んです、か?」
「それで、ボクの…あのぉ〜、あれです」
目はきょろきょろ、口はもごもご。顔を真っ赤にして、大汗をかいて。
いつも大慌てな先生。
だけど今向けられているこの表情は、初めてで。

「ぐすっ…なん、です……?」
「あーっと、そのぅ……うぅん……ますます泣かせちゃったみたいで、あれなんだけど。
うわぁ…やっぱりボクはダメだなぁ……。
いやいや、でも今は」
軽く深呼吸して、静かに私を覗き込んでくれる。キラキラ輝く瞳が目の前にある。
いつも優しい先生。
だけど私をこんなにはっきり映してくれたのは、あの頃以来で。

私に映る先生が、大きく息を吸い込んで。
そして、はっきり伝えてくれる。


「ひとはちゃん!
ぼっ…ボクの告ひゃくの返事はいかがなんでしょふか!!」
396丸井ひとはの憂鬱124:2012/03/05(月) 02:24:36.97 ID:QWGerLmB
「!!」

告白。
先生が。

告白!私に!!


そうか!!そうなんだ!!!


「………そうだよ。
雨が通り過ぎたあとには、必ず、虹がかかるんだ。
やっと真っ直ぐ見ることができた」


声は、瞳は、微笑みは、どこまでも優しくて。何もかもが夢みたいで。


だけど両手に感じるぬくもりは、確かな現実だ。


「しょう、が…ないですね…」

「うん」

「せんせ…の…っく、相手をしてあげられるのは…うぅ…っ。
わたしくらいです……」

「うん」

「野良犬の世話を、し始めて…っ、途中でやめるのは、寝覚めが……悪い、です…から!
しょうがないしょうがないしょうがない!」

「うん」



「傍にいさせてあげます!!!!」



「ありがとう、ひとはちゃん」
「むぐ」

先生が私の頭を抱き寄せる。私を抱き締めてくれる。
先生に埋まる。顔が。全部が。

先生は全部を受け入れてくれる。
397丸井ひとはの憂鬱125:2012/03/05(月) 02:25:02.15 ID:QWGerLmB
どくんどくん。

先生の心臓、すごい音だ。
本当に緊張してたんだ。本当に心から告白してくれたんだ。
何もかも本当の本当に本当なんだ。

どくんどくん。

先生の音、先生の匂い、先生のぬくもり。
むふぅ……気持ちいい。

溶けちゃいそう………。


あぁ………。



ああ!!!!




これがこの安らぎがぬくもりが全部ぜんぶゼンブ私のものずっとこのままいたい絶対離さない誰にも渡さないひとカケラだってわけてやるもんか…ッ!



…ああ。
そうだ。そうだった。
398丸井ひとはの憂鬱126:2012/03/05(月) 02:25:53.83 ID:QWGerLmB
「先生!」

湧き上がって来たものと共に顔を上げ、先生を見据える。
先生の瞳に私だけを映す。

「はひぃ!?
な…何でしょう!?
…やっぱりさっきの無しとか…?もしかして、ほんとに実はからかってただけでしたとか?」

「証拠を下さい」

「え?」
「私が先生の恋人なんだっていう証拠を下さい」
「しょっ…証拠……。あー…」

ごくり。
先生が喉を鳴らす。
唇が近づいて来る。私に触れてくれる。

「ん……」

ただ触れ合うだけの、優しいくちづけ。恥ずかしがり屋の先生の精一杯。
だからこそ、先生の想いがはっきり伝わってきて。
さっきのひとり遊びよりずっとずっと気持ちよくて。

「………大好きだよ」
私もです。

でも、

「足りません」
私の5年を埋めるには。

「ええっ!?
え〜っと他には……プレゼントとかは月末まで待ってくれないかなぁ〜…。
いや、今でもそれなりに持ち合わせはあるんだけど、やっぱり恋人に贈るならちゃんとしたのを用意したいし……」
「そんなモノじゃありません。
先生がずっと一緒にいてくれるっていう証拠を下さい。
私の全部が大好きだって証明してください。
先生の全部で触れて欲しいんです」
「全部……触れ…あっ!!?
そっ…それはっ!
ほらっ!ボクらにはまだ早いって言うかあれだよ!!
そういうのは先にとっておきたいというか!!心の準備があるし!!」
「…いい歳して気持ち悪いこと言わないでください。
それに『まだ早い』って、私たちもう5年も付き合ってるんですよ。
本当に……」

まったく。本当に。


「どうしようもない素人童貞ですね」
399丸井ひとはの憂鬱127:2012/03/05(月) 02:26:40.30 ID:QWGerLmB
「しろっ……!?
…………な…何を言ってらっしゃるでしょうか?
んも〜!女の子がそんな言葉使っちゃだめだよ!
あはは……」
「パソコン。
見られてる自覚があるんなら、ネットの閲覧履歴も消さないと意味ないですよ。
あと携帯。
店の名前をそのまま登録するなんて、正気を疑います。
発信履歴を見れば、どのくらいのペースで行ってたかも丸わかりですよ」
「………………」
ぐるぐると先生の瞳が廻る。
わかりますよ。必死で言い訳を考えてますね。
私に隠し事なんて無駄な努力です。こっちは5年も見てきたんですから。

「…まぁ5年間付き合ってきたっていっても、はっきりはさせてませんでしたしね。
これまでの分は浮気としてカウントしないであげます。
先生の焦りもわかりますから、目をつむりましょう。
けど、今。
商売女にはできて、恋人の私にはできないって言うんですか?」

お願いします。わかって下さい、この気持ち。
このぬくもりを絶対離したくないんです。
だから『絶対』が欲しいんです。
苦しいのも痛いのも怖いのもここで最後にしたいんです。

此処で『今』を『ずっと』にしてしまいたいんです!!

「えぇ〜〜っとぉ………アレというかゴムというかもないし、またにしない?
そしたらきっとお互い落ち着いてる……と、思うし」
「私、今日は『大丈夫』です」ギリギリ。たぶん。
「…あのねひとはちゃん、それはちゃんと大丈夫ってものじゃないんだ」

む…小学校のとはいえ、さすが『先生』。ちゃんと知ってるんだ。

まずいな。

「……そりゃ絶対大丈夫なんて言えないですけど、先生こそせっかく経験を買ったんですから上手くやってください。
それとも遊びすぎて、私に伝染るのが怖いものとかあるんですか」
はっきりと口にして伝える。恥ずかしがってなんていられない。
恥なんてどうでもいい。
『今』、先生からもらう事だけが大切なんだから。
400丸井ひとはの憂鬱128:2012/03/05(月) 02:27:02.85 ID:QWGerLmB
「いやいやいや!いつもちゃんと着けてた…って違う違う!!
あのね、ひとはちゃん。
たとえ…あの…アレを……中にしなかったとしても、可能性はあるものだから…って、そういうことでもなくて!
ああもうっ、何言ってるんだボクは!
とにかくボクらにはまだ早い事だから……」
「できないんですか……?」
傷ついた表情をつくり、上目遣いで先生を見つめる。もちろん涙だって忘れない。
手段なんてどうでもいい。
『今』、先生にもらえなかったらつぶれてしまう。

ズルくても汚くてもなんでもいい。なにもかもどうでもいい。


このぬくもりが離れていってしまうかも知れない恐怖に比べれば、なにもかもくだらない事だよ。


「…………」
ぐるぐると先生の瞳が廻る。
お願い、迷わないで。

廻る、廻る、廻る、廻る、廻る、廻る。ぴたりと定まる。

「…わかったよ、ひとはちゃん」
「先生……」やった!!むふぅ!!

嬉しすぎて笑いを堪えるのがたいへ「でも」

「えっ…?」

『でも』?
『でも』何なんです?言ってください。早く。なんでもします。だから……!

「シャワー浴びてきていいかな?
ボク、昨日は帰ってきてそのまま寝ちゃったんで……ごめん」
「……………ついでにヒゲも剃ってください」
401ガンプラ:2012/03/05(月) 02:37:18.52 ID:QWGerLmB
やっと……やっとここまで来た……。
今日を延ばすとまたグダグダ行きそうだったので、区切りまでいきました。
こっから先はエロパートですが、まだ途中なので間が空きます。

>>356
このひとはを気に入ってくださってもらえて嬉しいです。
自身としても、物語構成とコンプレックス設定がかなり上手く合致したな〜とは、自画自賛しております。

>>374
申し訳ありませんが、みつば視点はありません。
このシリーズは彼女に狂言回しの役割を与えているので、表に出てこられると構成がくずれてしまう……。

SOUND ONLYなみつば視点が稀に挟まるのは、一応の救済策です。
今回の矢部のよいつぶれとか『太陽』のメール送信とか。
402名無しさん@ピンキー:2012/03/05(月) 22:27:28.62 ID:8RJaL3kt
うわあ
403名無しさん@ピンキー:2012/03/06(火) 14:08:05.61 ID:/x4Gythq
生殺しかよ!ww
404名無しさん@ピンキー:2012/03/07(水) 22:33:41.69 ID:Bir4pHcc
ここまで昂ぶらせて待ったかけるとはとんだ畜生だよ
405ガンプラ:2012/03/09(金) 22:55:38.28 ID:6/NWRHm9
あらら、ここで止めるのはダメでしたか。
とはいえ、ちょっと時間かかるのでご勘弁を。

そもそも書きかけ段階ですでに70kB越えてるので、次回は次の板が立ってからのつもりです。
申し訳ありません。


いやぁ〜、『続きは夏コミで』とかネタを振らなくて良かった。
406ガンプラ:2012/03/10(土) 23:18:07.91 ID:9xRyVkEt
ころころ気の変わる私なので。
かなり長くなりそうなので、4、5回に分割して投下させてもらいます。
あと、この板が無くなったらどなたか次をお願いします。
私、立て方とかまったくわからないので……。
すみません。
407丸井ひとはの憂鬱129:2012/03/10(土) 23:18:48.74 ID:9xRyVkEt




シャー ジャバジャバ

ベッドにひとり座り、扉の向こうのシャワー音を聞きながら『次』に想いを馳せる。
普通は逆な気もするけど、まぁ私と先生ならこんなものだろう。

「さて」
とりあえずひとりの時間ができたんだ。
今の間に……
「ふぐ〜…むぐぐ」
ベッドに顔をうずめて残り香を……違う。落ち着け。

まず自分の状況から。

顔。泣きすぎて目がはれぼったい。せめて朝、ケチらず新しいリップ使っておけばよかった。
服。ここに来るときはいつも気を使ってるけど、かと言って1番のお気に入りというわけでもない。下着も。
身体。コートのせいで来るときに汗をかいてる。いつものように、足元まで視線を遮るものは何も無い。

「いきなり心が折れそうになったよ……」

とりあえず次にシャワーを借りて…いやダメだ。
‘あの’先生の決心なんだ。なるべく間を置かずにたたみかけた方がいいだろう。いっそ服は先に脱いでおこうか。
……うん。いいかも知れない。
時間短縮になるし、面倒だと思われるようなプロセスも省ける。

とにかく躊躇させずに動かさなければ。

「……………………」

カーディガン、ワンピース、キャミソール……靴下………ブラ、そしてパンツ。
脱いだ服を丁寧にたたみ、先生の目に付くようテーブルに置く。

いつもの先生の部屋。その中心に立つ裸の私。
いつもと違う、いつもにはなかった時間にさらされて、心臓は痛いくらいに早鐘を打つ。
うう…このままドアを開けた先生とばったりって言うのも……なにかないかな……そうだ。

先生のお布団。

ちょうどいい隠れ家を見つけた私は、さっそくベッドの上で膝を抱えて座り、頭からすっぽりとお布団をかぶる。

むふ…いいなぁ、コレ。先生の匂いにつつまれて、周りの全てから守られて。
机の下を想い出す……。
やっぱり先生はすごいな。さっきまでは胸の中があんなにぐるぐるしてたのに、もう青空になった。
これさえあれば他に何もいらないよ。

ガチャ

来た。
408丸井ひとはの憂鬱130:2012/03/10(土) 23:19:22.54 ID:9xRyVkEt
「ひとはちゃん……」

近づいてくる優しい『視線』。
ドアをくぐり、テーブルを通り過ぎて、私の右隣へ。
ギシリ、とスプリングを軋ませて、あたたかな重みが私の右腰に触れる。
お布団を隔てて、先生と触れ合う。

「…………」 「…………」

いけない、先生を止めさせちゃ。迷う時間を与えるな。動け。
頭はどんどん指令を送ってる。
だけど動けない。動いてくれない。
弱くて薄っぺらなだけじゃなく、肝心なときには言うことまで聞かないなんて、この身体はどこまで……!

「好きだよ、ひとはちゃん」
「あ……」

先生がお布団ごしに、ゆっくりと、背中をなでてくれる。
ゆっくり、何度も。何度も。
大きくて硬い、そしてなによりも、あったかい手。ずっと私を引いてくれる手。
私の欲しかったものが、今此処にある。

「隠れてないで出ておいで〜」
ふんわり丸い声がお布団を通り抜け、私の耳に入る。
硬いところも尖ってるとこも全然無い、ただ安心だけをくれる大好きな音色。……だけど。

「………私は小さな女の子じゃありません」
「あ…ごめん。違うんだ。
こうやって丸まってる隠れてるひとはちゃんがネコみたいで、つい。
ほらボク、ネコ好きだからさ」
進むほど、『これから』にはそぐわない、明るく賑やかなものになっていく。
……リラックスさせてくれようとしてるんでしょうけど、もうちょっとムードの方にも気を使ってくださいよ。もうっ。

「何が『つい』なんです。それじゃ一緒じゃないですか。
……出てきて欲しいですか?」
「うん」
「………見たい、ですか?」
「……はい。見たいです」
「がっかりしないって約束してくれます?」
「がっかりなんて絶対しないよ!!ありえない!!」
「…………おっぱい、ありませんよ」
言い切ったところで、お布団の向こうの気配はブルリと震え、背中の手も止まってしまった。
やっぱりか……。

わかってたことだけど、自分で言いたくなんて無かったけど、
でもこれだけは、まだ見えないうちに少しでも通り過ぎておかなきゃいけない。
目の前で眉をひそめられたりなんかしたら、涙を堪えきれる自信が無いよ。

「で…でも完全に全く無いってわ「あのさぁ…それ系のネタ引っ張るの、もうやめない?」 ……」
409丸井ひとはの憂鬱131:2012/03/10(土) 23:20:13.54 ID:9xRyVkEt
「ボクそれ、あと何年言われ続けなきゃなんないの……」
へなへな漏れ出た声とため息は、少なくとも『今』の私に向けられたものじゃない。……と、思う。思いたい。
もっとはっきり確かめるために、勇気を出してもう一歩。

「本当に完全にネタなんですか?」
「…………100パーセントとは言えないけど……。
だけど今好きなのは、ひとはちゃんだよ。
今はひとはちゃんに触れたいんだ。お願い」

………………………まあ、先生らしいか。

「じゃあまずは頭だけ触れさせてあげます。
そこで誠実さが感じられたら、その先のことも考えてあげましょう」

覚悟を決めて、ゆっくりと、外へ。
光差し込む出口の向こう、明るい世界へと。
其処に広がるのはいつもの部屋。
知らないところなんてどこにもない。怖いものなんて何もない。気持ちいい優しさだけで満たされた大好きな世界。
だけど、今はまだ隣を見れない。
見たら心臓が爆発しちゃうかも。まだもうちょっと助走が必要だよ。

「ありがとう」
「感謝してください。
ん……」

ごしごし、強い力でなでられる。
気持ちいい。
アゴを膝に乗せ、目をゆったり閉じて、私はその感覚だけに集中する。

幸せ……。

今までの『幸せ』が冗談みたい。そうだよ、これが本当の『幸せ』なんだ!

「ひとはちゃんの髪はサラサラしてて、本当に気持ちいいなぁ〜……。
こうやって思う存分なでられるなんて、夢みたいだ」
「…じゃあもっと早くしてくれたら良かったのに……」
私はずっと待ってたのに。我慢してたのに。
いつだって、何だってさせてあげたのに。
先生のヘタレ。

「そうはいかない……ううん、そうだね。もっと早くこうしてあげたら良かったんだね。
ごめん」
ごしごし、ごしごし、気持ちいい。

………しょうがないなぁ。

「許してあげましょう」
「うん、ありがとう。
やっぱりひとはちゃんは優しいなぁ」

ごしごし、ごしごし。気持ちいい。だから許してあげよう。私は優しい。心が広いのだ。
「………んぅ……」
むふ〜。

ごしごし、ごしごし。ごしごし、ごしごし。ごしごし、ごしご「あのう」
410丸井ひとはの憂鬱133:2012/03/10(土) 23:20:52.49 ID:9xRyVkEt
「何ですか?
手、止まってますよ」
「あっ、ごめんね。
………いつまで…っていうか…ううん、そうだよね。ごめん。なんでもないよ。
ひとはちゃんが幸せなら、ボクも幸せだよ」

いけない、そうだった。

いちいち幸せだから『次』を忘れちゃうよ。
……あ〜、でももうちょっとだけ。むふふー。
今日はどんどん幸せの最高値が更新されていくなぁ。『最後』はどこまで行っちゃうんだろう。
楽しみなような、怖いような。

ごしごし、ごしごし。ごしごし、ごしごし。ごしごし、ごしごし。ごしごし、ごしごし。

……さて、私は優しいから、そろそろ『待て』を解除してあげましょうか。
なんてね。

「ふぅ…まったく。
こらえ性のない人ですね」
でも最後にもうひと助走。
私は右目だけ開けて、ちらりと隣を見てみる。

「うぅ……っ!
ごめんなさい………」
そしたら、其処には顔中を真っ赤に染めて俯く先生が。
しかも目に涙までためちゃって……!

むふぅ!むちゃくちゃ可愛い!

「女子高生とできるからってがっついて。みっともない。
完全に野良犬そのものですね。
生きてて恥ずかしくないですか?」
「ご…ごめん…。返す言葉もないです……」
私の言葉で先生はますます赤くなっていく。りんご飴みたいで美味しそう。

目の前にゴチソウを置かれた私は、はしたなくもお布団にヨダレの染みを作ってしまう。
お胎がきゅんと疼いて、シーツまで濡らしちゃいそう。
もっともっと可愛い姿が見たくて、頭の中に色んな台詞がポコポコ浮かんでくる…けど、ちょっと落ち着けひとは。
あんまり調子に乗って勢いを削いじゃったら意味ないよ。楽しむのは一旦『最後』まで行ってからにしなさい。

その後なら、いくらでも好きにできるんだから。

「まぁ私は優しいですからね。先生にだけ特別です。
死ぬほど感謝してください」

先生にだけ。特別。

はっきり宣言してからお尻をずりずりずらしてベッドの中心へ移動し、仰向けになる。お布団を掴んだまま。
だって私の心臓、こんなにドクドクいってるんだよ?手を放しりなんかしたら飛び出していっちゃうよ。
411丸井ひとはの憂鬱134:2012/03/10(土) 23:22:02.80 ID:9xRyVkEt
「…うん。
ありがとう、ひとはちゃん」

大きな手が、お布団を掴んで持ち上げ「その前に、恋人にする事があるでしょう?」

「あっ、そうだった。ごめん」
「もうっ…。
ん……」

おでこ、まぶた、鼻、ほっぺ。くちづけの雨が次々に降り注ぐ。
私に幸せを注いでくれる。

「大好きだよ、ひとはちゃん」

また触れ合う、唇。
不思議だ。触れるたびに新しい発見がある。伝わる想いがある。
これならきっと、これから一生、何度やっても飽きないな。

「……取るね」
「………………………」
私は目を閉じて、うなずく。
祈りを込めて。

……お願い、がっかりしないで。

ほどなく、身体は少し冷たい春の空気に晒される。
「う………っ!」
と同時に、空気を伝って震えと動揺が私に届いた。

「な…なんですか?」薄すぎる?何か変?やっぱりクリの触りすぎ!?

胸を貫く痛みに耐え切れず目を見開くと、先生は青ざめた顔でお布団を持ち上げたまま固まってしまっていた。

そんな!!

「ちっ…ちが…っ!
ひとはちゃんが綺麗過ぎて、ほっ…本当に綺麗で!
びっくり、して……!」

えっ……。

「おっ…お世辞も度が過ぎると気持ち悪いですから!」
「本気で言ってるよ!
うぐっ…ちょっ……信じられないくらい綺麗……過ぎて、こんなっ、シミひとつ無いって現実に見ると恐い……。
それに身体中真っ白でツヤツヤしてて、雪みたい……ごくっ。
ボクなんかが触ったら……」
「ヘタレ」
 嬉しい。

…けどちょっと大げさ過ぎじゃないかな?
412丸井ひとはの憂鬱136:2012/03/10(土) 23:23:33.19 ID:9xRyVkEt
「うわ…えぇ〜……?
ボクこれ、後で訴えられないかなぁ……」
「私が良いって言ってるんですから、誰も訴えません」
 私が良いって言って認めていても、パパが殺すかも。


……………危ない。


『私』を見た途端、先生からみるみる熱が消えていってしまった。
ここでさらに余計な事を言ったら、完全にフリーズしちゃうかもしれないよ。
……やっぱりこんな身体じゃ興奮できませんか?

「……ここまで来て触れないんなら、それこそ末代まで祟りますよ…」
「ひぃっ!
いやいやいや!触れます!触れさせてください!!」
それでもなんとか、震える声を押さえつけて先生を突っついてみると、
動き出したはいいけど首をぶんぶん振りながら必死で言い訳されてしまった。

…………傷つくなぁ…。

ガリガリ。耳に異音。
いけない、無意識に爪を噛んじゃってた。こんなときに、こんなみっともない姿を見せちゃうなんて。
ああ〜、さっきから全然上手く進んでくれない!!

「あっ…違うんだよ。本当にごめんね。
本当にひとはちゃんが綺麗過ぎて、びっくりしちゃったんだ。
こんなに綺麗な子がボクの恋人だなんて、幸せ過ぎてちょっと恐くなったっていうか……それくらい嬉しくて、舞い上がっちゃってたよ!
もう落ち着いたからね。……落ち着いたら、もっと触れたくなった」
「……なら証明してください」

私は両腕を広げる。恥ずかしさなんて追い出して、先生の全部を受け入れられますって示して見せる。
もらってください。こんなに小さな身体だけど。

「うん」

ふわり。先生が手を肩に乗せてくれる。
シャワーの火照りの残ったあたたかくてしっとりした感触が気持ちよくて、それだけで私は鼻から吐息を洩らしてしまう。
「ん……」
「う…わぁ…なんてスベスベ……っ!」

ふわふわ。少しずつ、下へ。優しく丁寧に、塗り広げるように進んでいく。
気持ちいい……。

「あっ!」
「うわわっ!ごごごごめんひとはちゃん!痛かった!?
ごめんね!」
もっと塗りこんで欲しいのに、ちょっと声のオクターブを上げただけで幸せは逃げてしまい、
空いた胸にはすぐさま痛みが襲い掛かってきた。

あっ、そうじゃないの……っ!

「ち…うんです。
さっきのは、その……き…ち、よ…くて……」
う…うぅ……恥ずかしい……。けど、幸せに帰ってきてもらう事の方が重要だ。
顔が熱いのなんかなんでもないよ!
413丸井ひとはの憂鬱136:2012/03/10(土) 23:24:30.89 ID:9xRyVkEt
「ち…うんです。
さっきのは、その……き…ち、よ…くて……」
う…うぅ……恥ずかしい……。けど、幸せに帰ってきてもらう事の方が重要だ。
顔が熱いのなんかなんでもないよ!

「そっ…そうなんだ!よかっ…よかったぁ〜…!
はぁ〜、緊張する……。
美術館で芸術品を扱う人って、こんな気持ちなんだろうな……」
『慣れてる』はずの先生だけど、言葉のとおりすごく緊張してくれてるみたいだ。
汗だくの顔でむちゃくちゃな事を言っちゃってるよ。

……でも…褒めてくれてるんだろうけど、ここまで来られるとちょっと引いちゃうかな…。

「……そんなに緊張しないでいいですよ」
なんていうか、なんだかなぁ。

「う…うん。
続けるね」

ふわふわ。だけど幸せは帰ってきてくれた。
良かった……。
私はほっと胸をなでおろし、もう一度先生のくれる感覚に全身を預ける。

「は…ぁ」
「ひとはちゃん……」

たどり着いた、薄い丘……平原。わかってるよ、私はAすらないんだから。
こうやって寝転がると、完全にまっ平ら。薄っすらとアバラすら浮いた、正しく洗濯板になっちゃうんだ……。

「…先生、ごめんなさ「大好きだよ、ひとはちゃんの全部が」 ……」
ずるい。
そんな真っ直ぐ告白されたら、ふわふわ柔らかく笑われたら、これでも良いんだって勘違いしちゃいます。
嘘だってわかっていても、嬉しくなっちゃいます。
本もDVDもパソコンの画像も、大きいのばっかりなくせに。

「好きだよ」
ふわり。軽く、触れるか触れないかくらいのソフトなタッチ。
だけどふたりの汗で濡れて柔らかくなった手のひらは、私の肌を吸い付け、吐息に切なさ乗せるのに十分な刺激を送ってくる。

「あ……」
上手い…のが、悔しい。『誰』でどれだけ『練習』したんだ、この人は。
後で絶対問い詰めてやる…っ。

「う…わあっ。スベスベなのに吸い付いてきてっ。
なんかもう、夢みたいに気持ちいい手触り……っ」

ゆっくりゆっくり丁寧に、円を描いて。滑らせるような優しさから、塗りこむような力強さへ。
ううん、違う。潰されちゃってる。
先生の手のひらで、私の乳首が……っ。

「あ…うぅ…ん」

くにくにと潰されるたび、うなじがぽぉぉ…として。
いっしょに、背中からおしりに向かってク、ク、クッ…てねじられちゃうような電気が走って。

「あ…うくっ……」
414丸井ひとはの憂鬱137:2012/03/10(土) 23:25:57.52 ID:9xRyVkEt
「うくっ……」

ころころと転がされるたび、自分のだなんて信じられないくらいに甘く蕩けた声が漏れ出しちゃう。
う、うう、ぅ〜……だってしょうがないよ!こんな、の…っ、自分でするのの、100倍以上……!

「うんっ…くっ、ふぅ〜……はぁっ。
せん、せ……。
そんな…っ、面白くない、ところ、はぁ……。
長々、触ってくれなく、てっ…んっ…」
「ひとはちゃんのおっぱい、柔らかくて、すべすべしてて、すっごく気持ちいいよ。触ってると幸せなんだ。
だからもっと触ってたいけど…だめ?」

うぐっ…ずるい。
そんな上目遣いと甘えた声を使われたら、断れないに決まってるじゃないですか。

「…ダ…メじゃ、ないです…あはぁ…。
もうっ、人がしゃべってるときは…んやぁっ」
「ありがとう。
ごめんね、ひとはちゃんが綺麗だから止められなくて」
「さっきから、同じ事……!」
「ごめん。それしか言えなくて。
だけど本当に『綺麗』って言葉しか思い浮かばないんだ。
声も綺麗で…ちょっと動かすだけで、こんなに綺麗に啼いてくれるのがなんだか嬉しくてさ」
握るように手が、指が閉じて、最後にキュッてつままれ「引っ張っちゃダメ!」

「そう?
それじゃ」
「きゅうっ!」
プッ。上へ引き伸ばされていた乳首が、はじかれるように解放される。
最後の最後の瞬間まで、先生の指に擦られて、電気、すご過ぎるよ……!

「ひとはちゃんのおっぱい、すごく綺麗だよ。
真っ白で、真ん中は桜色で…こんな、蕾みたいな……」
先生の声も、熱さ、すごくて。
すごく気になって、『視線』をたどる。思わずたどってしまった。

うそ…っ!

辿りついた場所には、言葉通りの桜の蕾。見たことの無いくらいに勃ち上がった、私の乳首。
自分でしてるときは摘むほども無くて、ただ手のひらに『粒』としてしか感じられなかったはずのそこは、
繰り返し受けた刺激のせいで硬くしこり、はち切れそうなくらいに膨らんで、ツンと上を向いていた。

「やぁっ…これっ…!」
「うん。すごく綺麗だよ」
先生は止まらない。休ませてくれない。
大きな手で小さな乳房を包み、人差し指と中指の間に乳首を挟んで、今度は左右から押し潰すみたいに……っ!

「んっああっ」
また高い声、はじけてしまう。
限界まで張り詰めた表皮には、指紋や手の皺まではっきり感じられて、
ちょっと動かれただけでも驚くくらいの摩擦を感じちゃう。

「ひとはちゃん、気持ちいい?」
ころころ、蕾を弄びながら、なんて嬉しそうな声を出すんだ、この人は。
むぐぐ……。
415丸井ひとはの憂鬱137:2012/03/10(土) 23:26:43.70 ID:9xRyVkEt
「んぅ…くっ……。
ま…だ、まだです、ね。こんな程度、じゃ…あっ、ひぐっ!」
「うーん、じゃあもっと頑張るね」

不躾な質問にたっぷと皮肉を返してあげたというのに、先生はますます嬉しそう。手もいっそう元気にはしゃぎまわる。
今度は尖った乳首に人差し指の背を沿えて、親指でゴシゴシとシゴかれる。私の乳首がシゴかれちゃってる!

「うああっ!やっ、きぃっ!」

柔らかな指のお腹、少し硬い関節、鋭い爪。
強弱だけじゃなく、質まで次々変わって、頭が追いつかない!!

「ひとはちゃん、気持ちいい?」
「んやぁっ!気持ち…っ、いいですっ!気持ちいいですから!ちょっと、待っ…んふぅっ!」
「ほんとう?」
「ほんとです!あっ…く!こんな、大きくなったの、はじ、めてっ…!
あ…ふぅ……」
全身が燃えそうなくらい恥ずかしい告白と引き換えに、「はあっ、ふぅ〜…ふっ……」 やっとひと息。
ああもうっ!これも後で覚えといてくださいよ!!

「………ほんとだ。さっきよりもっと大きくなってる……」
ぼうっと、熱に浮かされた先生が顔を上げる。
ふたりの目が合う。
瞳が語りかけてくる。

『くちづけしたい』

触れて。

先生が右手を肩に。左腕を背に。唇をおっぱい…その中心へ近づけながら、私を持ち上げ……………。

………………………………。

「……続けないんですか?」

目が合う。
先生の目がぐるぐる廻ってる。

「………大好きだ」
「なんでもう一度」迷うんです?

…ううん、わかってます。伝わりました。
驚いたんですよね、あんまりにも『手ごたえが無い』から。

結局そうか。そりゃそうだよ。こんな身体、触れても面白い事なんてひとつも無いんだ。

「ひとはちゃん違うっ!誤解しないで!!
本当に好きだ。世界一幸せにしたいって想ってる。ひとはちゃんに触れたい。
…抱きたい。
たださっきはちょっと…ちょとだけ、びっくりしちゃって……。
何ていうか細……ボクの……違う、ごめん。心の底からひとはちゃんを抱きたい。嘘じゃないよ」

先生が私に真っ直ぐ目を合わせて、真摯な態度で謝罪を並べる。その中には、ひとカケラだって嘘は無い。
肩と背に触れる手からも、同じく。
心の底から、私の事が大好きだって伝えてくれる。

「いいんですよ。
わかりました」
416丸井ひとはの憂鬱140:2012/03/10(土) 23:27:31.61 ID:9xRyVkEt
だけどもう遅いよ。


「私が触れます」
「えっ…んぐっ」
返事、の前に塞ぐ。

ほらほら、危ないですよ?下手にしゃべったら歯の間の薄い舌を噛み切っちゃうかも。
だめだめ、逃げられない。下手に引き剥がしたら首に回った細い腕が抜けちゃうかも。
弱くて小さいひとはちゃん。
硝子細工よりも慎重に扱ってください。

「ん…んぐ……ぅ…」
「ぺちゃ…んぅぅ…。ちゅぅ……」

……さてと。

まぁこうなる気はしてたから、これはこれでいい。むしろ冷静になれて良かった。
先生、がっかりさせてごめんなさい。だけどその分いろいろサービスしてあげます。
大丈夫、私は何でも知ってますから。『初めて』だってきっと上手くしてみせますよ。

「くふぅ…せん、せい……」
私は冷静。

恥なんてどうでもいい。手段なんてどうでもいい。
苦しいのも綺麗じゃないのも薄っぺらなのも。例えどんなに痛くなったって。なにもかもどうでもいい。

とにかく『今』、『最後』まで行ってしまうことだけが重要なんだ。

「んふっ…くちゅ……」
冷静に、本から仕入れたノウハウをたどる。
唇をなぞり、差し入れ、歯茎をくすぐり、相手の舌に絡ませ、唾液を流し込む。
おっと、先生のを飲んであげるのも忘れないようにしなきゃ。

「あ…うくっ…ひとっ…くちゅ……」

たどるうち、たどたどしかった先生に熱が戻ってくる。
自分の舌をこちらの舌に巻きつけ、とろとろの唾液をたっぷり乗せて、私の口内へと押し戻してくる。

「んくっ…。こくん」
精一杯喉を鳴らして飲み込んであげたら、目の前の瞳は嬉しそうに細まった。
ふふっ…もっともっと下さい。私、先生のならいくらでも飲んであげれますよぉ。

「ぷぁ…あ…。
先生……」
「ひとは、ちゃん……」
ぽおっと、瞳の中に炎が灯り始めたのが、見える。
そうです。それでいいんです、先生。

「さあ、今度は先生が寝転んでください」
「ひとはちゃ「早く」

わかってます。先生のことなら何でも。
強い先生。弱い私が傷つかないよう、精一杯手加減してくれる。
優しい先生。小さな私をつぶさないよう、動きを停めてくれる。

だからこんな小さな身体でも、簡単に組み敷ける。
417丸井ひとはの憂鬱141:2012/03/10(土) 23:28:05.02 ID:9xRyVkEt
「ぺちゃ……」
顎、首筋、鎖骨…順々にチロチロと舌を這わせてあげる。
もちろん軽く噛んでマーキングも忘れない。しっかり痕を残さなきゃ。
この人は私の恋人なの。誰も近寄らないで、って。

「うぁ……」
さっきのお返しに、先生の乳首を爪ではじいてあげたら、あま〜い吐息と仕草が返ってきた。
むふう。

「ふふふっ…ぴくってした。
男の人もここが気持ち良いんですね」
「あ…いや、気持ち良いって言うか、くすぐったいって言うか……」
「じゃあ気持ち良くなるまで舐めてあげます」
「そうじゃなくて…はっ…ぁ……っ。
ひとはちゃん…っ」
私のよりちっちゃなツブを、舌でクリクリしてあげる。一周するたび、声の音階が上がって…やぁん、背中がゾクゾクしちゃうよ。
それに…むふう。そんなにおめめをウルウルさせっちゃって。
んもうっ、なんでそんなに私を喜ばせるのが上手いんですか?

「ちゅう…ちゅっ……」
舌の動きはそのまま、さらに手のひらでゆっくりと先生の身体をなぞる。
う〜ん…なんだかんだ言って鍛えてるんだ。本当に硬い。『私』と全然違うよ。
さすが『先生』。鉄棒も、跳び箱も、水泳も。何だってできますもんね。

「んふぅ……」
「ひぁっ!ひとはちゃん!!」
先生が可愛い悲鳴を上げる――お腹でソコに触れた瞬間に。
『手ごたえあり』だ。私はそのまま自分の全身を先生の身体に乗せる。
擦り付けるながら圧し掛かり、お腹ぜんぶを使ってグリグリ押し潰してあげる。

「う、あぁ……ひとはちゃんの身体、スベスベで気持ちいい……!」
グリグリするたび、先生が夢見心地の表情を見せてくれる。
どんどん弱いトコロを晒してくれる!
ああっ!ここまで来れば、もう私の方が『上』ですよ!

………はいいけど、コレ……。

確かめるため、舌を腹筋に移しつつ両手で包むようにして触れて……握って、みる。
「うあっ…ちょっ…!ひとっ…!
そんな、ぎゅって…ぇ…!」
「なにがどうなんです?どうしたんですか?はっきり言ってください」
 ちょっちょっちょっ!待って待ってコレ!はっきり言って無理だよ!

どっくんどっくん。

心臓みたいな…それ以上の鼓動を伝えてくる、硬質的な熱が手の中で暴れてる。見れない。正直見るのが怖い。
いやホント無理!こんなの絶対入らないって!

「ほらほら、どうしたんですか?」
言葉で時間を稼ぎつつ、私は思考を最高速で走らせる。

そりゃ神戸さんも最初見たときは無理だと思ったって言ってたし、だから『破れる』んだろうけど……。
だけどこんなの入れたら『痛い』なんてレベルじゃ済まないよ!
だって私の入り口がアレだよ!?直径が全然違ってるって!ほらっ、力を込めないと指がまわらないじゃない!
え…えぇ〜…。裸のまま病院とか行きたくないなぁ……。
418丸井ひとはの憂鬱142:2012/03/10(土) 23:30:57.96 ID:9xRyVkEt
「…ほら、先生……」
落ち着け、再確認だ。
私はさらに力を込めて握る。するとすぐ、硬さが手のひらの肉を押し返してきた。
…やはりこの大きさなのか……。

むむむ…ここまではある程度、本が役立ったけど……。
神戸さんがよく言ってた『ファンタジー』ってこういう事だったのか?
でも逆に言えば、彼女も最初は無理と思ったけど最後は無事入ったわけで……背、5センチ以上違うんだよなぁ……。
神戸さんの彼がどんな人なのかも知らないし。いや、会っててもコレのサイズなんてわかるわけないんだけど。

「………ほら……」
「……ひとはちゃん……?」

はっ!

いけないいけない、手を停めるな。サービスを止めるな。『私』を飽きさせるな。
少なくとも台詞はまだまだ使えるはずだ。

「カチカチになってますね。私のお腹、そんなに気持ち良かったですか?」
「……ごめん」
「私は気持ちよかったかどうかって聞いてるんですけど?
……もういいです。こっちのセンセイに聞きますから」

先生がまごまごと目線を反らせてくれてる間に、私は勇気を出して直視する。

……大きさ、は一旦意識から外そう。外せ!
形は…別にグロテスクとは思わないな。ちょっと根元のもじゃもじゃが気になるけど。
それに膨らんだりくびれたり…単純な『棒』ってわけじゃないんだ。先っぽはシューマイみたいになってるし。
まぁ先生は多分……
「やれやれ、こっちのセンセイも恥ずかしがり屋なんですね」
「うぐっ……」
私の率直な感想に、先生は露骨に声を詰まらせ泣き顔を作る。

……この反応、やはりそうなのか。
つまり下に引いて剥いてあげた方がいいわけだな。

今度はそっちが味わう番だよ。

「隠れてないで出ておいで〜」
「うううっ……やめて…っ」
私はとっても優しくしてあげてるというのに、
先生ってば両手で顔を隠しながらイヤイヤって駄々をこねて、まるでちっちゃな子供みたい。

むふぅ!!!

この画は一生覚えておこう。

「おやおや、情けないですね。
せっかくこっちはお顔を出そうとしてるのに」
お宝映像をたっぷり脳裏に焼き付けてから、私はもう一度『そこ』へと視線を落とす。添えた両手をゆっくり下ろりながら。
わ、わ、わ。ピンクの中身が出てきた。亀の頭…というより、そら豆みたい。
思ってたよりずっとツルってしてるんだ。朝日を照り返してピカピカ光ってるよ。

むりゅりゅりゅ。

そんな音が聞こえてきそうなくらい、生々しい動きで剥けていくおちんちん。
外側はサラサラした皮膚なのに、内側は軽く張り付いて、自身が粘膜であることを強く主張してくる。
剥かれるほどに、複雑な生き物へと変わっていく(やっぱりちょっとグロいな)……ところでこれ、どこまで下ろせばいいんだろう?
419丸井ひとはの憂鬱143:2012/03/10(土) 23:32:15.43 ID:9xRyVkEt
「痛っ!待って引っ張りすぎ!」
「あっ、ごめんなさい!」

まずい!失敗しちゃった!
血とかは出てないから大丈夫…でも大事なトコロなわけだし…。

「ごっ…ごめんなさい先生!わた…私…!」
「あっ…大丈夫だよ。全然大丈夫だった。
ごめんごめん、ちょっと大げさに痛がっちゃった」
そう言って、いつもみたいにふわふわと笑ってくれる。私の心を軽くしてくれる。
だけど…ううっ、目の端には薄っすらと涙が。やっぱりかなり痛かったんですね。
おちんちんもピクピク震えてるし。

「ごめんなさい……。
……お詫びに痛かったところを舐めてあげますから」
うむ。いい流れに持ち込めた。
これで一気に名誉挽回だよ!

「いやだから痛くなかったんだってば…ひとはちゃん!」

無視無視。
根元に両手を添えてしっかり固定し、顔を寄せていく…けれどあと数ミリに近づいたところで、唇に熱を感じて思わず止まってしまう。
触れたら火傷しちゃいそう……まずは舌先で、温度と味を確認してみようか。

「ん…ちろっ……」
おそるおそる頂点の切れ目に沿わせると、まずとじわっと熱さが伝わってきた。…大丈夫だ。これなら私のお胎の方が熱いよ。
味の方も大丈夫。特になにも感じない。さっきしっかり洗ってくれたんだ。
……ちょっと残念かも。

「ダメだって!汚いよ!」
「ちゅっ…ん……」
大きく張ったエラの周囲を舌先で撫であげ、ツルツルの頭に舌腹を押し付ける。
そのたびに、両手の中でおちんちんが嬉しそうにビクビク跳ね回る。
すごい。
明らかに身体の外にあるものなのに、こんなに強い力で動かせられるんだ。

「んちゅっ……。
ふぅ……」
最後に先っぽにくちづけしてから離れ、ひと息つく。

「あ……」
すると、こっちまで悲しくなっちゃいそうなくらい切ない声が上がった。わかりやすい人だなぁ。
だけどありがたい。
こんなにはっきり弱いところを見せてくれたら、こっちは落ち着ける。冷静になれる。
心配しなくていいですよ。大丈夫。さっきまでのは練習ですから。

「うぁ…あん……」
小さな身体。だから精一杯口を開いて。

「んぁぐ……」
大きなそら豆、ぱくん。
420ガンプラ:2012/03/10(土) 23:33:09.99 ID:9xRyVkEt
おお、意外に書けた。

上手く筆が進めば、月末までにもう一回くらい落とします。

目標は来月中に完結です。
421名無しさん@ピンキー:2012/03/11(日) 12:29:01.77 ID:OqYqFeDX
乙!完結待ってます
422名無しさん@ピンキー:2012/03/20(火) 23:58:40.87 ID:wDQFoFlh
(*ツエ?ス・マ会ス・)(?ス・マ会ス・?ス*)?セ茨スー
423名無しさん@ピンキー:2012/04/08(日) 01:03:48.27 ID:PUva2Rzu
続き、マダー?
424ガンプラ:2012/04/12(木) 21:07:10.67 ID:QeZvESy4
いやぁ〜、生きてはいるんですが、もろもろの事情で今月中完結すら無理になってしまいました。
申し訳ないです。
エロい文章って難しい……。
もう少しお待ち下さい。

ところでこのスレッドは(やっと板とスレッドを間違ってることに気付いた!)、後どのくらい容量が残っているんですか?
425名無しさん@ピンキー:2012/04/12(木) 23:23:46.33 ID:8u0/zAkB
専ブラの下の方に417KBとある、この書き込みで少し増えるが
ウィキペディアにはスレ容量は約500KBと書いてあるので80KBくらいかな
426ガンプラ:2012/04/15(日) 22:38:33.16 ID:upUSCB7j
細々と落としてすみません。
スレが寂しいのもあるので、また途中まで。
427丸井ひとはの憂鬱141:2012/04/15(日) 22:39:11.03 ID:upUSCB7j
「うはあっ!!」

びくびくびくっ!

口にふくんだ、だけ。入れられたのは先っぽだけ。
なのに先生は全身をブルブル震わせて大悦び。
おちんちんの方も、しっかり唇で押さえつけておかないと今にも飛び出しちゃいそうなくらいだ。
嘘のつけない先生。そんなところも大好きです。

「ん……」
髪が……。

さあここからが本番、と意気込んだところで垂れてきた長い髪を、右手でかきあげ背中へ流す。傍から、またひと房がパラリ。
むぅ……邪魔だ。
深く俯くことになるから、どうしてもこうなっちゃうか。ご飯のときみたいに結んどけばよかった…むふぅ……っ!

私、先生を食べちゃってるんだ!!

パッと浮かんだ素敵な発見は、満足感と征服感へと変換され、またすぐお胎の疼きへと変わる。
キュンキュン甘痒い律動が身体の中心から外へ外へと広がって、油断してるともう外へ溢れ出ちゃいそう。
うぅ…いつもみたいに指でクチュクチュしたいよぉ。

「ひとは、ちゃぁん……」
本格的に欲望との綱引きを始めだした私の頭に、子犬みたいに甘えた声が掛けられる。
一緒にポフンと、手が置かれたのを感じる。そもまま優しくナデナデ。
むふぅ、いきなり大サービス…じゃなくて『催促』か。
ふふっ…しょうがない人ですね。今はサービスに集中してあげましょう。

「くじゅっ……」
えっと…本だと確か……『歯を当てない』ように、『唇でくびれをしごく』と同時に、『舌を押し付けるように舐める』だけじゃなく、
『彼を上目遣いで見つめる』のも忘れずに…ってやる事多いよ!そんないっぺんにできないって!!
428丸井ひとはの憂鬱142:2012/04/15(日) 22:39:35.12 ID:upUSCB7j
本で読んだときは簡単だと思っていたフェラチオだけど、実際にやってみるとすごく難しい。この身体はなにもかもが小さいから特に。
パンパンに膨らんだ亀頭に歯を当てないためには、アゴをいっぱいに開いておかなくちゃいけない。
だけど先生に気持ちよくなってもらうには唇をできるだけ窄める必要があるし、
垂れていくヨダレを啜る時は口全体が小さくなるから、余計にアゴに力を込める必要がある。こうして咥えてるだけでも凄く疲れちゃうよ。

「ちゅ…ぷ……」
「うはぁっ……」
唇をちょっと動かすだけで、おちんちんが大きく震えるところからして、
このまま前後に動いてあげればいいんだろうけど…私の口はカリ首まで咥えたところでもう満杯だ。とてもじゃないけどこれ以上は入れられない。
かと言って引き抜く……口をすぼめながらの愛撫は、歯を当てない自信がない。
…唇でこすってあげるのは、やめておいた方が無難かなぁ……?

「ひとはちゃん………」

いけない。サービスを止めるな。

最初から何もかもはできない。この身体は特にそう。エッチだって身体を動かすんだから、反復練習が必要なんだ。
できる事から、ひとつずつ。余計な事は考えず、ひとつの動きに集中して。
まずは……見上げる。先生の瞳をしっかり見つめる。
咥えたまま。

「うくっ…ぁっ……。
ごめん…っ!
別にそんなつもりじゃあ…なく、て……ごめん!」
ただそれだけなのに、可哀相になるくらい慌てふためいて。耳まで赤く染めて。
そのくせ、右手は私の頭を押さえつけたままで。

むふ…!すごい効果!反応がこれまでと全然違うよ!!
なんて簡単!なんて単純!ちょっと咥えてあげてるだけなのに!
こんなことなら最初からやっておけば良かった!!

「んちゅ…れるっ……」
もっと大きな『変化』への期待に胸をふくらませ、次は舌での愛撫を開始する。
柔硬い亀頭を押し潰すように舌を擦り付け、私の唾液を刷り込んであげる。
ゆっくり、ねっとり円を描きながら、徐々に中心へ。

「ひゃっ…そこっ」
ぱっくり裂けた頂点に辿り着くと、先生がひと際嬉しそうにわなないた。

ふむ…やはりここがイイのか。本に書いてあった通りだな。

舌先を尖らせ、チロチロと鈴口をくすぐってあげる。やがて奥からとろとろした液体があふれ出してきた。
おお…これが噂のカウパー液、か。どれどれ。

「ちゅうっ、ちゅるっ……こくん、ふ、ぅ…っ」
僅かな塩味を感じるそれを舌で掬いとってごっくんしたら、鼻にすうっとエッチな匂いが……。
むふぅ〜…男の人の匂い…。クラクラしちゃうよぉ……。

「え…うそ?ちょっとひとはちゃん、そんなの飲んじゃダメだって!
ほんと汚いから!」

遠くからボヤッと声が聞こえるけど、そんなのにかまってられない。
掬って喉に運ぶたび、頭の中にピンクのモヤモヤ濃くなって、私はますます鈴口の奥へ舌をもぐりこませるのに夢中になっていく。

「ちゅっ、れりゅ、ふ、じゅるっ……!」
もっと、もっと頂戴。全然足りないよ。はやくはやく!
429丸井ひとはの憂鬱143:2012/04/15(日) 22:40:17.76 ID:upUSCB7j
「っ…やっ…待っま、まっ……」
「りゅっ…う〜〜…」
掬う量、湧き出すよりも多かったみたい。美味しい泉はすぐに枯れてしまった。
力いっぱい舌を差し入れても、とろとろは引っ掛からない。
むむ……それなら。

「ふぅ〜…ちゅうぅぅうぅ〜〜〜〜っ!!」
「うっ…わああっ!?ひとはちゃん!!
ダメだよ!吸わないで!やめて!!」

一旦、肺の中の空気を全部吐き出して、渾身の力で吸い上げてみると、「じゅるん!」 むふっ!塊で来た!

「ぐっ、あかっ……!
ごめんね、ぺって吐き出して!!」

こんなに沢山手に入ったんだし、せっかくだから……
「くちゅくちゅ…ん…じゅるっ、ちゅっ、くちゅぅ」
たっぷり味わおうっと。

ん〜〜…ちょっと苦くて、潮味があって……これが私の大好きな人の味なのかぁ……。

「そんなっ、お口でくちゅくちゅって!うはっ…ひとっ…くちびる擦れて……っ!
お願いやめてひとはちゃん!」

んも〜、いつまでそんな嘘つくんですか?
カリを唇でシゴかれるの、堪らないんですよね?
鈴口をグリグリされるの、大好きなんですよね?
ごっくんしてもらえるの、嬉しいんですよね?
だってほら、先生の右手。いい子いい子って、いっぱい撫でてくれてる。ごしごし、ごしごし。
お返しに「ん…ごくっ」 ごちそうさまです。って、結局私がもらっちゃう側なんですけどね。

「あ…あぁ〜〜!やめてよひとはちゃんっ!!」

……ふぅん。そこまで言うなら。
私もアゴが疲れちゃいましたし、休ませてもらいましょうかね。

「じゅるっ……んあ、ふぅ……」
「うぁ…あ…?」
なのに。
希望に応えてあげたというのに、声は切なくて、瞳は潤んで。捨てられた子犬そのままのお顔。
むふうぅ〜〜!

その姿に、その姿を引き出したのが『私』だという事実に胸がぎゅうっと締め付けられる。
お胎のキュンキュンもすごすぎて、あう…クリが皮の中でぷっくり膨らんじゃってる…。
指、持って行きたい。いっぱいいじめたい。剥いて戻して、クニュクニュしたら絶対すごく気持ちいい。
でもでも、先生の前でなんて……うう〜〜…っ。

「ふぅ〜……ふっ、ふう……」
欲望、我慢できなくて、思わずお尻がクネクネと動いてしまう。
やっぱり手もそっちに…だけどこうやって、硬いおちんちんグリグリしてるのも楽しいんだよなぁ。どうしよう。
もう2本くらい腕が欲しいよぉ。
430丸井ひとはの憂鬱144:2012/04/15(日) 22:40:58.69 ID:upUSCB7j
「ぁ…ひと、は…ちゃん……。
あの、ね…その〜…もうちょっとだけ……」
んも〜っ、こっちの悩みも知らずに自分の事ばっかり!!
大体、先生がやめて欲しいって言ったからやめてあげたんじゃないですかっ。

「ひとはちゃん……。
ごめん、お願いだから……あのっ…」

ふぅ…私、ちょっと恋人に甘すぎるかな。
こんなふうにおねだりされると、ついつい応えてあげたくなっちゃう。

「さっふぃひゃふぇ…ふ、じゅるぅ……っ」
…と思ったけど、今は口が満杯だった。
どうしようかな……せっかく握ったイニシアチブ、絶対放したくないし……。

「ふ、ぐ〜……じゅ……」
悩めどもいい案は思い浮かばず、とりあえず自由な目でもう一度先生を見つめてみる。

「んふっ…!」
「あわっ……虹色…!
こんなときにまで……っ!
えとえとっ、ごめんね!自分勝手で!!」

ちょうどバチッと目が合った…瞬間、先生はびくんと全身を震わせて、すぐさまペコペコ平謝り。
ふむ……なるほど、そうですね。私たちもう5年も付き合ってるんですから、目を見れば言いたい事くらいわかってくれますよね。

「あ……のう…」
「……………」

何も言わない。何もしない。ただ見つめるだけ。
さあ先生、どうして欲しいのかはっきり私に伝えてください。

「う…ぁ……えっと……。
さっきはなんていうか…恥ずかしくてついっていうか……ごめん。
でも…飲んだりとかはしなくて、いいんだけど……」
「じゅるっ…ふっ……」
やれやれ、面白いことを言いますねぇ。それって何かの譲歩のつもりなんですか?自分で言ってて死にたくなりませんか?
しかも右手。今さらそんな必死で頭を撫でられたって……なっ…何にもならないんですから!

露骨なご機嫌取りにムッと来た私は、口の力は抜いたまま、代わりに目にキッと力を込めてやる。
431丸井ひとはの憂鬱145:2012/04/15(日) 22:41:25.60 ID:upUSCB7j
「あ、あ、あっ!馬鹿なこと言ってごめんね!調子に乗ってました!
ひとはちゃんが一生懸命フェ……してくれるからつい……あっ、そうだ!ありがとう!うん、そう!
すごく気持ちよかったよ!嬉しかった!
えっと、だから……ありがとうなので、もう少しだけ……」
「……………」
多少は立場がわかってきたようですけど、結局なんなんです?どうして欲しいんですか?はっきり、ハキハキ言ってくださいよ。
子供たちにお手本を見せなきゃならない立場なんでしょう?

ごにょごにょとよくわからない事を呟く姿にますます呆れて、表情筋から力が抜けていく。
当然、それに合わせて唇も離れていく。もう垂れていくヨダレをすする気にもならないよ。

「えとっ、だからね!もうちょっとだけ……でっ…でもひとはちゃんが嫌ならいいんだけど……。
ぅ……もうちょっとだけ……口で、してくれると…嬉しいなー……とか、思っちゃったり……。
だっ…だって男ってさ、途中でこういうのをやめられると……ごめん……」
「…………ちゅうぅ」
ま、先生のこらえ性は平均値って事にしといてあげましょう。けどそれが人にものを頼むときの態度なんですか?
これだから野良犬は。尻尾をぶんぶん振ることしか知らないんだから。

……ふむ、ちょうどいい。ここでビシッと躾をしてあげようか。

ちろり。
まずはアメだ。ガチガチに硬い尻尾の先端をかる〜くひと舐めしてあげる。

「ふひゃっ!?
……え…それだけ……?」
「…………………………」
そう、これだけです。
もっと欲しいなら、その分おねだりして下さい。じゃないといつまで経っても私の唇はポカンと開いたままですよ。

「え……あ…あの、ひとはちゃん。して…………の、かなぁ……?」
目はキョロキョロあっちへ行ったり、そっちへ行ったり。
声は蚊の鳴くように小さくて、全然聞き取れない。
しかもその表情。唇なんて噛んで…なんで拗ねてるんですか。やっぱり自分の立場がわかってないみたいですね。0点です。

「…………………………」
ダラダラ。開いた口からヨダレが垂れて、先生の茂みをべとべとにしていく。
432丸井ひとはの憂鬱146:2012/04/15(日) 22:41:50.27 ID:upUSCB7j
「う……。
ごめんね、わがまま言って。
だけどもう一度……さっきまでみたいに……欲しい…。お願い……」
そうそう、お話しするときは相手の目を見ましょうね。声もだんだんは聞き取りやすくなってきましたよ。
ちゃあんと『お願い』できたのも偉いです。
が、まだまだ必死さが感じられません。赤点です。

「…………………………」
ほら、もう一回。

「う…ぐっ……そんなぁ……。
……ひと……くっ、ひとはちゃんお願いします!もう一回さっきみたいにいっぱい舐め回して下さい!!」

ついに。

ついに羞恥のあまり半泣きになった先生が、それでも堪えきれず自分の欲望を口にする。
ご主人様におねだりするわんちゃんのように、懸命に、正直に、甘酸っぱい鳴き声をあげる。
ぎゅっと瞑った目から、つぅ〜ってひとすじ涙が零れて……むふぅ!

けど45点。

主語が足りてません。最後まで私の目を見て言えなかったのも減点対象です。
はぁ〜あ、せっかく私が3度もチャンスを上げたというのに……そんなのじゃいっぱい気持ちよくなれませんよ?

「うぅ…ひとはちゃぁん……」
……でもまぁ私は優しいですからね。45点分はしてあげましょう。

「じゅっ…。
れる……ちゅう……」
垂れっぱなしになっていたヨダレと一緒におちんちんを吸い上げ、緩めていた唇を再び絞ってしっかり固定する。
そしてゆ〜っくり、軽く。くるくると、飴玉を転がすようにを亀頭全体を舐め回してあげる。
もちろん、先生の大好きな先っぽのお口には触れないよう気をつけながら。

「んはぁ……。あり…がと……」
私がフェラを再開してあげた途端に、先生はあっさり涙を引っ込めてしまった。ゲンキンな人だよ、まったく。

「んぅ…ひとは、ちゃ……もうちょっと、先っちょ……」
だけど本当に触れて欲しいところには触れてもらえないじれったさに耐え切れなくなったんだろう、
右手で私の頭をガシッと掴んで腰をゆすり始めた。
むむっ、すぐに調子に乗って。
恋人をこんな乱暴に扱うなんてずいぶんな振る舞いですねぇ。当然舌はバイバイですよ。

「あ…っ!
ごめんね!びっくりしちゃったよね!」
「ふ…じゅぅ……」
そうですよ。いいこいいこは、そうやってちゃあんと心を込めて、丁寧にしてくれなくちゃいけません。
わかればいいんです、わかれば。
433丸井ひとはの憂鬱147:2012/04/15(日) 22:42:20.21 ID:upUSCB7j
………まいったなぁ…これ、本気で楽しいや。
舌先ひとつで、ほんのちょっと転がすだけで、先生を好きにできる。オモチャにできる。
『私』を大事に大事にしてくれる。

「ひとはちゃん、もうしないから……お願いしますぅ…」
はいはい。
じゅうぶん反省したみたいですし、45点の続きを…今の声が可愛かったから、60点にしてあげましょう。
舌をキュッと尖らせ、力いっぱい鈴口をホジホジ。そのたびにおちんちんはおおはしゃぎ。
……ちょっとはしゃぎすぎじゃないですか?

「はぁ…はぁ…あっ…ひと……っ」
あ〜あ、息も絶え絶えで、口の端からヨダレまで垂らしちゃって。
『私』ってそんなに気持ちいいんですね。嬉しい……けど、後頭部にずっと感じるこの圧力は……。
ぐいぐい押しても、私の口の中には先っぽまでしか入らないって事ぐらい、ひと目でわかるでしょうに。
う〜ん…やっぱり男の人って全部入れないと気がすまないものなのか。

……ごめんなさい、先生。
それは後のお楽しみにとっておいてください。
今は私の全力のフェラチオ、愉しんで……っ!

「ちゅずっ…!じゅるっ、ぅるっ!ふっ、はぐ…っ!じゅるるっ……んぐ。じゅううぅ〜〜〜……!」
「くあぁっ、いきなり……すごっ、いいよっ!
ひとはちゃん、あっ、おね、がい……」
はいっ!言ってください!
鈴口ですか?カリ首ですか?裏スジですか?
私、いっぱい知ってます!きっと上手にできますから!

「お尻…はふっ、こっちに向けて」
はいっ、お尻ですね……え?

「じゅ……ふぇえ?」
疑問符は頭の中だけでは収まらず、唇とおちんちんの間の僅かな隙間すら押し通って、外へ。

お尻………私のを…先生に向ける……シックス……!?いやいやいや!えええぇ!?こんな明るい部屋でっ!!?
もちろん知ってますしできますし何でもしますって……します、けど……っ!いくらなんでも私の人権というかなんと言うか…。
そりゃ私だって先生のおちんちんをしっかり見ましたけど!!好きにしちゃってますけど!!
ちょっ…私『初めて』ですよ!?このフェラだってむちゃくちゃ頑張ってますよね!!?

いきなり突きつけられたあんまりなハードルを確認するため、勢い込んで顔をあげる。咥えたままで(歯を当てなかった私は偉い)。

「ひとはちゃん……?」

私の望んだ熱い吐息、潤んだ瞳。蕩けきった先生が確かに其処に居てくれてる。
けれど声にははっきりとした疑問符が乗せられてて。
つまりは当然としての要求…しまった、この人遊んでるんだった。これくらいのサービスじゃ当たり前なのか……。
え…ええぇ〜…だけどいくらなんでも…丸見えは……っ!!
434丸井ひとはの憂鬱148:2012/04/15(日) 22:43:07.86 ID:upUSCB7j
いや、そうか。

先生は今、見たいんだ。触れたいんだ。今度こそ迷い無く『ソノ気』になってくれたんだ。

「ね…ひとはちゃん……。お願い……」

ぐずぐずするな。先生が醒めちゃう。
冷静になれ。サービスを止めるな。『私』を飽きさせるな。恥なんてどうでもいいんだ。
こんな身体と交換で先生が手に入るんなら、びっくりするくらい安いよ!
435ガンプラ:2012/04/15(日) 22:44:32.69 ID:upUSCB7j
というわけで今回はここまで。
エロ文って難しい。
っていうか、これだけ書くのに相当時間かかってます。びっくりするくらい。

今月中に前戯シーンは終わらせたいなぁ。
436名無しさん@ピンキー:2012/04/16(月) 01:16:49.77 ID:iENwKJTR
>>435
いやいや充分いいよ!だって俺!もう!


ふぅ…
ね?
437ガンプラ:2012/04/30(月) 06:24:35.51 ID:InmI3Xoq
なんだかもう、何がなにやらわからなくなってきました……。
どうせ書くなら実用性のあるものを、と目指してはいたんですが…ううん。
あんまり悩むといつまでも完結できないので、とりあえずコレで……。

そのうち修正するかも……。
本当にどう書けばいいのか、全然わからない……。
438丸井ひとはの憂鬱148:2012/04/30(月) 06:26:43.54 ID:InmI3Xoq
「じゅるっ…。
ふっ、ふぅ〜〜…」

ひと呼吸……せめて。
シーツで『湿り』を拭って、私は意を決する。

「ん…ふちゅ……」
シーツに手を突き、咥えたおちんちんを支点に180度左回り。
ぷっくりふくらんだ傘の段差に唇を引っ掛けて、力いっぱい擦りながら。
少しでも悦んでもらえるように。
私から悲鳴が漏れないように。

「うっ…ひとはちゃん……」

右膝に相手を感じたところで…うぐぐっ……ぐいっと脚を上げて先生の身体を跨いで、シーツに両膝を下ろす。
当然、両脚は大きく開いてしまう。
普通の子なら、少しはヘアが隠してくれるんだろうけど……中3でやっと茂りだした私のそれは、
薄っすら過ぎて何も守ってはくれない。
すっかり膨らみきったクリの頭がひんやりする。だけじゃない、お尻の穴にまで春の空気を感じる。

1番はしたない部分が無防備に晒されてしまった。

顔が熱い。
頭へ血が流れ込む音が、耳の中でうるさいくらいざあざあ木霊する。
世界の全部が真っ赤に染まってグラグラ揺れる。
そしてさらに、

「あぁ…ありがとう」
背中すら通り越して、お尻から声が聞こえてくるという非現実が、私の頭をますます揺さぶる。

あ…うああぁっ!全部見せてる!見せ付けちゃってる!!
誰だよこんなロクでもない遊びを考えたのは!!絶対祟ってやる…本人もういないだろうから、子孫を全部!!末代まで!!

「〜〜ふっ…うぅ…ぐっ……!」
いくら相手が大好きな人だからって、こんなの恥女どころか動物だよぉ……。

大きすぎる羞恥によって、薄っぺらい胸はあっさり切り刻まれる。
口いっぱいにおちんちんを咥えている今は、歯を食いしばることもできない。
恥ずかしくて情けなくて、いろんなモノがこみ上げてきて、鼻の奥がツンと…ダメだ、泣くな。我慢するんだ!
恥なんてどうでもいい!もうすぐ先生が私だけのものに!
何度も頭の中で繰り返し、シーツを掴んだ両手を握り締めて耐える。耐えられる。
439丸井ひとはの憂鬱149:2012/04/30(月) 06:28:06.97 ID:InmI3Xoq
「わ…脚、こんな開いてる、のに…ぴったりタテスジ……」  「ボクこれ、完全に犯罪……あうぅ…」
だってほらっ!この嬉しそうな声!熱い吐息!夢中の『視線』!!
おちんちんもブルンと震えて大喜びだ!!

口は塞がり切ってるから嗚咽は聞こえない。反対向いてるから涙は見えない。先生には『良いところ』だけをあげられてる!
なにもかも上手くいってるじゃないか!!

「お尻も真っ白で艶々してて…桃みたい……」
「んひゅっ!?」

走り出した先生の欲望は止まらない。そう私が望んだから。
お尻がいきなり鷲掴みにされ、左右それぞれを逆廻りで捏ねられる。左右を外側に割られて、内側に寄せられて。
肉付きの薄いお尻を割られると、中心の窄まりまで一緒に引っ張られて、パクッと開きそうになっちゃう。

「んっ…!」
もちろん私は全力で閉じる。と、アソコも一緒に力が入って奥までキュッとなる。
寄せられると今度は力が抜けて、その落差に全身がふわっとした感覚に包まれる。
キュッ、ふわっ。キュッ、ふわっ。一定の周期で繰り返されるせいで、うくっ…なんだかアソコがむずむずしてきた……。

「ふっ…ふっ…ふっ…ふっ…」

くり返し与えられる刺激に、私は徐々に没頭していく。そうだ、先生がくれるものだけで『私』を埋めてしまおう。
恥ずかしいのなんて見えなくなるように。

「ふっ…ふっ…ふ…ふぅんっ……」

割られて、寄せられて、割られて、寄せられて、割られて、寄せられて、割られて、さらに割られて。

………!!!?
えっ、やっ…そんなことしたら…っ!!?

「なんっ、か、もう…なんでこんなに綺麗……。
窄まってる最後まで、真っ白なまま……っ」
440丸井ひとはの憂鬱150:2012/04/30(月) 06:28:51.56 ID:InmI3Xoq
嘘でしょ!?いくらなんでもそんなところに『視線』が突き刺さるなんて!!
えっ!?まさか…たまたま!!気まぐれだよきっと!!

「この、向こうは……」
けれど私の希望は虚しく、今度は触覚が明確に感じ取ってしまう。
お尻を割る手のひらはそのままに、窄まりの左右に…親指が、添えられる。
意識ごと身体が硬直してしまった私を置き去りにして、

ぐっ!!

皺、引き延ばされた……っ!!

「〜〜〜〜〜〜ッ!!!?」

咥えたままの私は悲鳴をあげる事すら許されず、ただ喉を震わせることしかできない。
頭の中は大嵐の大混線。それでも足腰は反射で力が入ってくれた。お尻の穴をしっかり閉じ……られない!

「わ…透き通りそうなピンク……」
小学生にも劣るこの身体じゃ、大人の先生の手から、意思から逃げだすなんて土台無理な話だった。
逆に抵抗する私を押さえつけるように、ふたつの親指にさらに力を込められて、
痛いくらいにぴっちりと皺を延ばされてしまう。
朝の空気が、刺激が、包み込むなんてあっさり通り越して、私の『中』に侵入してくる。

〜〜〜ッ!見られてる!先生にお尻の穴を見られちゃってるよ!
中身まで!!!

大好きな人に、1番恥ずかしい箇所を間近で、焦げそうなくらい注視されてしまう。
16年間の人生で、これほど死にたくなった時はなかっ‘た’。

「ぺちゅ……」
「んぅっ!?」

力ずくで引き延ばされた窄まりの上端に、温かなぬめぬめが触れる。
これは何?…ううん、わかってる。さっきのくちづけで散々触れ合い、絡め合い、味わったものだ。
これは舌だ。あったかくて、柔らかくて、私の好きな先生の舌だ……!

「ちゅっ…る……」
ぬめぬめは探るような動きで、空洞の周囲を這う。奇妙なくすぐったさを引き連れて。
だけど円はすぐに狭まり、中心…わずかとはいえ曝け出された私の『内側』に添えられてしまう。

「ふっ…ぐぅう…!?」
嘘ぉ…っ!?
そりゃ本棚のDVDには『そういうの』もあったけど、まさかホントにそんな趣味があるなんて…っ!

それでも大好きな人を信じたくて、その可能性を否定する要素を探す。お尻の穴に意識を集中する。
するとちょうど先生の舌が中心から背中側…外側に向かって離れて行き――安心する間もなく、また中心に。

「るりゅっ」
さっきとは僅かに違う角度で、また放射線状に舐め上げられる。また中心に添えられる。

『皺の1本1本を順番に舐めていってるんだ』。
認識に載ったあまりの事実に、今度こそ私は完全に停止してしまう。
けれど、粘膜に配置されたセンサーは最大感度で稼動を続け、私の脳を焼いていく。
鳥肌の立つような不気味なくすぐったさが、何度も何度も執拗にくり返される。
逃げなきゃって思うけど、同時に先生がくれるものは受け入れなきゃって想いが綱引きして、やっぱり動けない。
その間も、ピリピリ弱電流が文字通りお尻から背筋を上って、く、る……っ。
441丸井ひとはの憂鬱151:2012/04/30(月) 06:29:43.00 ID:InmI3Xoq
「ちゅる………。ん」

たっぷり10分を掛けて、『1周り』し終えた先生が満足気にに鼻を鳴らす。
うぅ…舌は離れたっていうのに、お尻、まだあったかい、どころか熱いよぉ。
それにヌルヌルしてる……私の粘膜の方が。
絶対今、トロトロになっちゃってる。心なしかさっきよりも開いちゃった気が、する……っ!?

さらに、衝撃。

もう受け止め切れなくて、ビクンと身体が跳ねる。鷲掴みされてるお尻以外。
だってさっきまでの添えるような動きじゃない。

「ん…ちゅ…っ」
初めて、刺し貫くような強さで――絶対ダメッ!!!

思った瞬間にはすでに遅く、ううん、私の方が速い!渾身の力を込める!!

にゅるん。

無駄だった。

執拗な愛撫でたっぷりふやかされた窄まりは、すでに粘膜の集まりでしかなく、侵入者を阻む門の役目を果たさない。
押し返す力なんてない。
内側の浅い部分に感じる不気味な異物感。そしてほんの僅かな、妖しい気持ちよさ――
「ぷあっ…!
先生!!!」

私はよつんばいのまま、獣のように天井へ向かって吼える!

「ひゃっ!?
なっ…なに!?」
「なにって……っ!
先生こそなにしてるんですか!どこ触ってるんですか!!」
前を向いてお尻に居る人と会話する奇妙さに、若干混乱しながら、それでもはっきり抗議の声を継続する。
さすがにコレは、これ以上は無理だよ!!

「えっ!?あっ…うああっ、ごめんごめんごめん!!」

ぱっと先生の手が離れる。やっと開放される。
急いでぎゅっと力を込める…けど、うああ、ちゃんと閉じてるの?
ずっと延ばされて、ふやかされて、なんだか感覚、ふわふわしておかしいよぉ。

「ごめんね!ひとはちゃんがあんまり綺麗だから、つい……!
もうしないよ!絶対しないから!」
「当たり前です!!」

『つい』じゃありませんよ!!いくらなんでもそんなところ褒められたって嬉しくないです!!もうっ!!

「はっ、ぜっ、はっ、はっ、はっ……」
酸素が足りない。身体中が熱い。顔から吹き出た汗がポタポタと、先生のもじゃもじゃに落ちて消えていく。
あんまりにも予想外の展開に、恥ずかしさも涙も消し飛んだ。
心臓、生きてきて1番大暴れしてる。ほんとに、痛い……っ。

「はっ、ふっ…はぁっ……はぁ〜……っ」
「ご…ごめん、ひとはちゃん……」
お尻から、耳をたたんだ子犬を思わせる反省の声が聞こえる。だからって!
442丸井ひとはの憂鬱152:2012/04/30(月) 06:30:35.46 ID:InmI3Xoq
「……先生、謝ればなんでも許してもらえるとか思ってませんよね?」
「思ってません!!大変反省してます!!本気で、心の底から反省しております!!!」
先生の顔も何も見えないけど、耳に入る声の慌て様からして、きっと私のお尻にペコペコ謝ってるんだろう。

……反省してる、のは間違いない。だけどこの人、かなり簡単に調子に乗るからなぁ……。

「………次は無いですよ。
ちゃっ…ちゃんと、正しいところに触れてくだ…さい……」
あーもうっ!こんな事言うはめになるなんて!
『最後』まで行った後は、とこっとんひどいですからね!覚えておいてください!
どんなに泣き喚こうが絶対許してあげませんから!!

「ふうっ…まったくもう……。
あぐっ……ちゅぅ……」
口を空にしてると色々本音が出そうなので、再度、口元で勃ち上がったままのおちんちんを咥える。

……………少しだけ、ほんの少しだけ、こうやってるのが好き、というのもある。ちょっと自分が怖い。

「ちゅうっ…んちっ……」
熱い肉のおしゃぶり。
唇を段差に引っ掛けて、ツルリと丸い矢印をころころねぶってると、なんだか心が落ち着いてくる。
触れるたび、ビクビクと悦びを反射してくれる相手が、素直で可愛いとすら思えて……。

「あ…ひとはちゃん……。
さっきので少し濡れちゃった?」

かりっ。

「うあ痛っ!!
ごめんなさい!!何でもありません!!」

次は本気で噛んでやる。

「……えぇっと…ひとはちゃん、綺麗だよ。
おっ…怒らないでね!本気でそう思ってる!だからどうしても言いたくなったんだ!!」

今日何度目になるかわからない、賛美が届けられる。『視線』をはっきり私のアソコに向けたまま。
女性への接し方を…お世辞を知らない先生の、心からの褒め言葉。
…とはいえ、こんな状況でまで胸が高鳴ってしまう私は、どうかしてる気がしなくもない。

「それじゃ…ん…ちゅっ」
「ふっああっ!?」

いきなり、来た。

与えられた鋭い感覚によって、また私は遠吠えを上げさせられる。
さっきよりも強く腕をピーンと伸ばして、シーツを力いっぱい握り締めて。
押し付けられている感覚を、少しでも外に逃がしたくて。
感覚…先生の舌によって運ばれてきた、快感を。

「ふわっ、ひっ、きゅうっ!」

これは舌だ。間違いない。口でよりも、お尻でよりもはっきりわかる。
はっきりわかる。とっても小さなプチプチの粒が隙間無く敷き詰められた柔らかい布。人体の複雑さに驚いてしまう。
はっきりわかる。だってこの身体で1番敏感な部位だから。今までにないくらい敏感になってる部位だから。

私のクリトリスに、先生の舌が押し付けてられているから。

443丸井ひとはの憂鬱153:2012/04/30(月) 06:31:31.23 ID:InmI3Xoq
おっぱいへの愛撫。フェラチオの興奮。……お尻にまだ残ってるふわふわ。
散々焦らされた私のクリは、ぱんぱんに膨らんで頭を出して…どころか、
最大直径部でなんとかフードをひっかけてるだけの状態だ。
普段ですら感じ過ぎて、指では痛みしか与えられないピンクの芽。その剥き身。
空気の流れを感じ取れるほど感度が上がった今の状態じゃ、
フードを戻してその上から撫でてあげるのが正しい触れ方なのに。
なのに、先生は直接押し付けてる……!

「ひ、ひゃう!」
バチバチッ、火花が散る。頭の中で『気持ちいい』のバクダンが次々はじける。
背中を弓反りにして、意味不明の遠吠えをあげて、私、完全にケダモノだ。
先生が見てるのに。全部見せちゃってるのに「きゅふっ、ふうっ」ダメだっ!我慢できないよ!!

「ひっ、はっ、はひっ、はっ、はっ、きひぃ…!」
甲高い鳴き声、どんどん増える。呼吸が減る。まずい、酸素が、足り、無い……!

けれど喉の震えは止められない。快感の供給速度が速過ぎて、処理が全然間に合わない。
酸欠で頭が霞む。ほどに、クリに感じる刺激はますますくっきりしてきて、あぐっ、溺れちゃうぅ…!

「はふ、はふ、ひゅうっ!?」
ガクガク揺れる私の腰を先生の腕が押さえつける。ますますミッチャクしちゃう。
自在に形を変える柔布にぴっちり包み込まれて、右も左も頂点も、360度からやすり掛け。
プチプチ。ゾリゾリ。神経に直接響く。
ダメダメダメっ!取れちゃうよ!

「んふっ…ふは……」
「ひうっ、きゅう!?」
アソコに感じた鼻息に思わず震えてしまった。だけの動きでまたゾリゾリゾリ。
私の口から上がるのは、もう完全に悲鳴だ。

本で読んで想像してたのと全然違う。クンニってこんなに気持ちいいのか。
無数のプチプチは絶妙な軟らかさで、的確に快感だけをクリへと刷り込んでくる。私の意識を磨り減らしていく。
このままじゃ本当に『私』が消えてしまいそう。先生はただ押し付けているだけだって言うのに……って!

「待ってせんせっ!動かしちゃ「れるりゅっ」 〜〜〜ッ!!」


ぞりりりりりりりぃっ!


「          !!!」


白。完全に真っ白。
押し付けたまま捻るように蠢かされた舌によって、フードを引き剥がされて『全身』を研磨されただけじゃなく、
1番弱い付け根と包皮の境目を思いっきり掻き毟られた。
こんなの耐えられるわけ無い。
腕も脚も身体を支えられなくなって、ガクッと浮遊感。一瞬後に、額をこつんと先生の腰骨にぶつけて、止まる。
ちょっ…ちょっとタンマ。無理。下半身がシュワッと溶けたかと…あっ、何かあったかいのが……?
444丸井ひとはの憂鬱154:2012/04/30(月) 06:33:21.43 ID:InmI3Xoq
「わぷっ…。ピュピュッって、コレ?
…あっ、でもしょっぱくない……。
大丈夫だよひとはちゃん。漏ら…えっと、安心してね。
……でも凄い…ひとはちゃんの、さらさらしてて味とか何も無くて…真水みたいだ……」


後で絶対噛み切ってやる!!!


「なんかそんなに気持ちよくなってくれると、嬉しくなっちゃうな…。
あはは……」

『あはは』じゃないです変態教師!こんなときまでふわふわ笑って!
「はあ、はあ、ふぅ…は、ああ…くぐ…っ」
くそう、今は何も言えない。悔しい……っ!

「ごめんね。ひとはちゃんがこんなに感じ易いなんて思わなくって……。
や…ううん、声が可愛い過ぎて、ちょっとやりすぎちゃった。
……んだけ、ど……あう……。
こん、なに濡れてる、のに……まだぴったり…閉じてるんだね……」

……さっきからときどき先生の『視線』に戸惑いが混じるけど、何なんだろう?
女の子のアソコって、ぴったり閉じて『線』になってるものじゃないの??

まだクラクラする頭に浮かび上がった疑問。実は昔から気になっていた。
小説じゃ『赤貝の剥き身』とか『厚い房状の花層』なんて見るけど、私のソコは子供の頃からずっと1本線のまま。
もちろん割って中を覗けば、保体で習った小陰唇はあるけれど…有るか無いかわからないくらいの薄いヒラヒラで、
とてもじゃないけど『表現』に見合う形状じゃない。
お風呂で見た(小学生の頃の)みっちゃんたちも同じようなものだったからって、
なるべく気にしないようにしてたけど…私の身体はこんなトコロまで人と違ってるんだろうか………。

「………………………」
「しまっ…また……っ。
ひとっ…ひとはちゃん!
……触れる、ね。ボク、えっと…我慢、できないよ。こんなに綺麗な……」
お尻からの声も台詞もやっぱり不自然で、胸は余計に締め付けられる。
……いや、いいんだ、そんなのは。大事なのは結果だけだよ。

「ふうっ……はっ……。
どっ、うせ…ふぅ……ダメって…は、ふぅ〜〜…。
ダメって言っても触るんでしょう。しょうがない野良犬ですね。
……特別に許してあげますよ」
落としたままの額を腰骨にゴリゴリ当てながら、あくまで私がさせてあげているんだって責めてみせる。
枯れ木のようなつまらない身体、押し付けてるだけだけど……。
あくまで私がさせてあげてるって結果を残すのが大事なんだから。

「うん…ありがとう」

両の腿の付け根それぞれに手が置かれ、一瞬遅れてアソコの左右に指が添えられたのを、感じる。
痛いくらいの『視線』も。
いよいよ、この時が来た。
緊張。期待。プレッシャー。いろんなものがごちゃ混ぜになって、胸中を跳ね回る。
心臓はさっきからばくんばくんと破裂しそう。

私の、1番大事なトコロ……

くち。

くつろげられた!
445丸井ひとはの憂鬱155:2012/04/30(月) 06:38:05.84 ID:InmI3Xoq
「…小っちゃい……」


「ちょっ…せんっ……!」
いきなり漏れたあんまりな感想に、さっきまでの脱力もなんのその。
身体を持ち上げ限界まで首をめぐらせ、先生に直接抗議の声をぶつけてやる。
人が1番気にしてる言葉をっ!よりによってソコに!!

「ええっ!?だってホントに小っちゃ…あっ、ううん!ごめんね!
もちっ…もちろんすごく綺麗だよ!こんなに綺麗な…あの、そのぅ……見たことない!!
だけど思ってたよりずっと……だから、大丈夫かなって……」
『思ってたより』って!!悪かったですね何もかも小さくて!!

「…これじゃ指でも恐い……あ、でも張り付いてるのがあるから……コレがそう、なの…?」
「いちいち…口に……っ!!
素人童貞だからって、気持ち悪い感動しないでください!
……ソレ、調子に乗って今破らないでくださいよ」
「ああっ、ごめん!」

此処まで来ても、私たちってこうなのか……。
ムードなんて完全無視で、何をどう思っていいやら、頭の中、ぐちゃぐちゃになり過ぎて目が回ってきたよ。

また激しい脱力感に襲われて、私は肘を折る。
胸とお腹を互い違いにくっつけ合うと、先生の身体の硬さと熱が伝わってきて、
その『確かさ』に、ふぅ……ちょっと落ち着いた。
………もうあまり細かい(?)事は気にせず、このまま先生に身を任せてしまおう。

「……触っていい…かな?」
「………はい。
ん……」

相当興味があったんだろう。許しを出してあげたのと同時に、入り口付近……膜に沿って指の感触が。
探るような動きで…ううん、探ってる。確かめてるんですね。後で上手く破れるかどうか。
それに…ふふっ、おちんちんをブルンブルン振り回して、そんなに嬉しいんですね。
気持ち、丸分かりです。本当にお尻尾みたい。
いいですよ、先生。たっぷり触れて。『私』を愉しんで。

「透けるくらい薄い……」
「んふっ」
「あっ!?だだっ…大丈夫?」
「はくっ…ひゃい……」
そろりそろり、円を描くようなソフトタッチが気持ちいい。
なぞられた所に電気が走って、腰が…孔までぴくぴくしちゃう。

「わ、あ……やっぱりひとはちゃんの一部なんだ……」
そうです。私、先生で感じてます。見えるでしょう?赤ちゃんの通り道が、たくたくおツユを吐き出してるのが。
もっと先生を感じさせてください。もっと私に夢中になってください。
もっとお尻尾ぱたぱた振ってください。
446丸井ひとはの憂鬱156:2012/04/30(月) 06:39:09.81 ID:InmI3Xoq
「んあっ、あっ、ふ、ふぅ……」
右手の人差し指を軽く噛んで、ピンクの吐息を漏らす。
リズムに乗って身体の力を抜いて、気持ちいいのを上手に受け止める。
ああ…すごい…。アソコもくぱくぱ喘いじゃってるよ。先生の目の前で。
でももっとだ。もっと感じよう。もっと愉しんでもらおう。
先生がくれるモノは全部大好きな、エッチな女の子なんだって見せてあげよう。

「柔らかい……。
これなら、指……。
ひとはちゃん、中も触れるね」
「んぅ…どう、ぞ……。
んっ」

一旦両手が離れ、次はもっと狭い間隔で割り広げられる……V字にした指でアソコを割られる。
そしてピトリと、指の腹が軽く押し付けられる。
太い……。まさかこれで小指じゃないですよね?ちゃんと中指ですよね?

「…いくよ」
「はぃ……んんん……くっ…」

うあっ…き…つい……。お腹、破れそう……っ。
「くあっ…キツい…。指が痛いくらいに……」

押し広げられる方と、押し広げる方。正反対だけど、同じ感想。
く、うっ……思ってた以上に、苦し、い…がっ…はっ!

硬いコブ――たぶん第一関節――を何とか通す。
痛みはそんなにないけど、とにかく異物感が凄い。
私のそれとは明らかに違う、骨のゴツゴツがはっきり感じられる男性の指がじりじりと進むに従って、
喉がせり出して来る感じがする。

「ひとはちゃんの中、すごいみっしりしてる…っ」
「くっ……そりゃ、そうです。新品、ですからね。はっ…」
「あうう…ひとは、ちゃん……」

またひとつ、『結果』を残しておく。

使い古した商売女のとは違うんです。
自分でもほとんど指を入れたことの無い、ぴったり合掌したままのお肉の路を割り広げさせてあげてるんです。
世界中探したって、私以外にこんな事させてあげる女はいませんよ。

「はあ〜、ふぅ〜……」
「………………………」
「はぁ〜……?
どう、したんですか…?」

次のコブ、第二間接を入り口に感じ、さらに力を抜くため深呼吸したところで……先生の進行が止まってしまった。
ああ、もう……またですか。
447丸井ひとはの憂鬱157:2012/04/30(月) 06:41:32.19 ID:InmI3Xoq
「これ以上は…ちょっと……かな」
「よ、ゆう…です……」
「でも……」
「ここ、コレ、こんなガチガチにしておいて、よく言いますね…っ。
ふくっ…とにかく、まだ大丈夫ですから……」
「ひとはちゃん……」
「ふっ…は……くっ。
大丈夫です。これくらいじゃ壊れません」
いい加減わかってください。私にとっては先生が近づいて来てくれない事の方が大丈夫じゃないんです。
まだ指なんですよ。今からそんな調子じゃ、本番なんてできないじゃないですか。

「だからまだまだ楽勝です!」
「……痛かったら言ってね」

ゆっくりと指に力が入り、進行が再開する。
入り口はぴちぴちに広がり、痛みと共に破瓜の恐怖を私に訴えてくる。
だけど奥はもっと辛い。
指先はついに、自分じゃ届かなかった未知の領域に達し、初めての侵入者に対して身体が激しく拒絶してしまう。
違うよ!これは大好きな人の一部なんだ、受け入れろ……っ!!

「うあぁ…ぐねぐね動いて……っ」
「くっ…あぁ…はぁっ……!」

必死で深い呼吸を繰り返し、身体を広げて、先生の指を受け入れる。受け入れたい、のに、上手く力が抜けない…!
恐怖と焦りでますます余計な力と熱が籠もってしまう。
こめかみから吹き出た汗がアゴを伝って流れ落ちていく。

「ふっ、ふっ、ふっ……はっ、は〜……」
それでもなんとか、1番太いところが入り口を通過し、ちょっとひと息ついコツン「はぁっ、あぁ〜〜ん」

えっ、あっ、なにこれからっ…だっ、ちからがはいらない……っ?
こんっ、なっ!?

「え?あれっ?
ひとはちゃん、だいじょうぶ…いや、ええ?」
先生も初めてのことなんだろう、困惑の声を上げて再び指を止めてしまう。ううん、止まるに決まってる。
だってもうこれ以上進めないんだから。

「あっ、あっ、あはぁっ…んぅ〜ん」
身体の中心、『気持ちいい』の発生源を直接撫でられてるせいで、腰が蕩けちゃいそうな快感がどんどん襲ってくる。
強制的に甘い声を搾り出され、膣壁のヒダから蛇口が壊れたみたいにドプドプとおツユが溢れてくる。
クンニのときとは違う、大きな波のような気持ちよさが、私の意識を押し流そうとする

「なんっ…なんなの、これ?
つるつるしてて硬い…コリッとしてるのが、いきなり……??」
先生はまだ混乱で硬直したままだ。そりゃそうだろう。
此れが此処にあるのは小学生だって知ってるくらい当然のことだけど、男の人には全く縁の無いものなんだから。

「行き止まりになって……ってまさか!!?」
そうです。
今先生が触れてるのは、私の、本当に1番大事な……



「しきゅ…っ!!?」
その、入り口です……!


448丸井ひとはの憂鬱158:2012/04/30(月) 06:43:03.32 ID:InmI3Xoq
「ちょちょちょっ!?ゴメン!だいっ…大丈夫ひとはちゃん!?
えっ…まさかっ…触っちゃうなんて思ってなくて!!
痛くない!?苦しくない!!?
うわっ、嘘…だって中指、まだ余って……こんっ…浅い……っ!?」
「あぐぅ…い痛ぅ…っ、止まっひぇっ!!膜!!」
「うぐっ…!」

先生の震えが『浅い』ところで鋭い痛みに変換されて、急速に現実へと引き戻された私は、
回らないろれつをなんとか押さえつけて状況を伝える。
痛ぅ…こんなので『初めて』になっちゃったら、マヌケ過ぎて泣けないよ…っ!

「はっ…ふっ…はっ……あ…だい、じょうぶ。血は出てないよ」

は、あぁ〜〜…良かった……。

「はあ、ふう……ふくっ……」
「ふう、は、あ…ふ、はぁ〜……」

私も先生も、突如襲ってきた巨大な衝撃のせいで、呼吸を整えることしかできなくなってしまう。
シックスナインのまま……女の方はお尻だけ掲げて崩れ落ちた体勢で、男の方は中指を挿入した状態で、フリーズ。
もし第三者が見たら滑稽極まりない画だろうけど、当事者の私たちは真剣に身動きが取れない。

「ふう〜…ふぅ〜〜…ふは、ふー………」
ちょと落ち着いてきた…ら、うんっ…お胎がまた…っ。

「ふう…ふう……ひとはちゃん……」
「は…はひ……」
「……大丈夫……?」
「なん、とか……うくっ!」
お胎、またコツンて来たっ!!

「うわっ、ごめん!ちょっと動いちゃった!」
「くふっ…ちが……気持ちい……から、です……」
まともな状態だったらとてもじゃないけど口にできない、恥ずかしい告白。
…違うよ。これは先生に悦んでもらうためにしょうがなく、だよ。
気持ちよさに負けてエッチなお願いをする女の子を、演じてあげてるんだよっ。

「だから、もっと触ってくだ、さいっ……くっ」
「あ…うん……。
痛かったり気持ち悪かったりしたら、絶対に言ってね。
…こうしたら、ちょっと楽?」
ぐっ、と恥丘に手のひらが添えられ、そのまま下半身を持ち上げるように支えられる。
自然、『中』を狭める方向に力が加えられて、張り詰めていた感覚が少しマシになった。

「は…ふぅ……。
ありが……くだらない知恵ばっかりまわして…野良犬は……」
「それじゃ……」
「んん〜〜…」

自分じゃ絶対辿り着けなかった奥底を、恋人の指がまさぐる。
お肉の筒とのつなぎ目に沿ってくるくる踊る度、
抗いようの無い切ない快感が子宮に満ちて、身体がガクンガクン震えてしまう。
449丸井ひとはの憂鬱159:2012/04/30(月) 06:45:48.19 ID:InmI3Xoq
「おお、お、おおふぅ……っ」
「あぁ…すごいよひとはちゃん。キュキュキュ〜って動いて、指が食べられちゃいそう。
それにココ、ツルツルでコリコリで…すごい気持ちいい指ざわり……あっ?」
「ふきゅうう!?」
すご…いっ!コツーンッて!!
あっ…あああっ、見つかっちゃったよ!触られちゃったよっ!

「ここだけ…少しふわっってして窪んで……。
これ、が……」

ホントの入り口!真ん中!グリグリされてるっ!
コンコン響くぅ……!子宮凄いよっ!脳みそ溶けちゃうっ!!

「せんひぇっ、あぐっ、すご、気持ち、ああっ!くはっ!」
「う…わぁ……。
うわっ、うわわぁ…っ!ここから人が生まれてくるのか……っ!
なんっ…だか…んぐっ。感動す、る……」

コン、コン、コンコンコン。ノックのリズム、どんどん早くなる。
お腹のお部屋に響く気持ちいい振動が、頭の芯まで昇って来る。『私』がどんどんドロドロになっていく。

「ああう、くぅふ、ふはっ、ああんっ」
口からダラダラよだれを垂らして、お尻をガクガク振って、ケダモノの咆哮を上げて。
はしたないとか浅ましいとか、もう片隅にもない。
ただただ、先生がくれるモノを貪るだけ。
だってそう、コレでいいんだよ。

「ひとはちゃん…どんどん溢れてくるよ……。
んくっ……やっぱり水みたいに……美味しい…」
先生もおちんちんも、こんなに嬉しそうなんだから!

コンコンコンゴンゴンゴンッ!

あっ、くあぁっ!これ、強いの、イイっ!
け、ど、ちょっ……
「せん、せぇっ!」
「っ!?
……な、に……?」
私の絶叫によって指はビタリと止まり、ワンテンポ遅れて焦りのたっぷり乗った声が返ってくる。
…やっぱりそうでしたか。

「……はふっ、ソコ、それ以上、入れてあげられませ…っ」
「〜〜〜〜ッッ!
ごめん!!そんなつもりじゃなくって、つい出来心だったんです!ごめんなさい!」
『つい』だったんなら、やっぱりお部屋に入ろうとしてたって事じゃないですか。
450丸井ひとはの憂鬱160:2012/04/30(月) 06:46:47.62 ID:InmI3Xoq
「痛かった!?ごめんね!!」
「まだ、だいじょうぶです、から…っ。
それくらいなら気持ち……ぃ」
「…うん。ありがとう。
もっと丁寧に触るからね。ごめんね何度も……」

コン、コン、コン。
ふくっ…あぁ……うん、これくらいが、1番、イイ……。

「あっ、あっ、あふうっ」
「………コリコリ、気持ちいい?ひとはちゃん」
「はひっ、気持ちい、ですっ!あう、くっ!」
「じゃあ、コッチとどっちの方が気持ちいいかな?
…れるっ」
「んきゅうううっ!!」
またクリっ!削れちゃう!!

ゆっくりと遥かな高みに向かって進んでいたところへ、強制的に急加速が加えられる。
再開されたピンク真珠の研磨。
付け根をクルッと磨いたと思ったら、今度は下から上へゾリリ。
離れていったのもつかの間、今度はぎゅっと押しつぶされる。
もちろんその間も、ずっとお部屋のノックは続いてる。
ものすごいスピードで、私の全部が真っ白に塗りつぶされていく。消え……はじけちゃう!!

「くあっ!ああっ!ああ〜〜っ!!
せんせっ、やめっ!クリ、苛めないで!あうぅ!ピカピカになっちゃう!!
コンコン休憩っ!」
「〜〜♪」
「あっ、あっ、あっ、ああああ!!やっ、イク!イッちゃう!!
せんせっ!おっきっ!飛んじゃう!!」
「ちゅるっ……。
いいよ、イッてひとはちゃん」
「やっ、怖い!先生…っ!!どこ!?先生!!」
ぶわーっと浮遊感。昇ってるの?堕ちてるの?もう何もわからない。
このままじゃイッた事の無い、何も無い世界に放り出されちゃう。
身体とは正反対に、心臓が小さな箱に閉じ込められてギリギリと全方位から押しつぶされる。
ぽろぽろ涙が搾り出されて堕ちていく。
助けを求めて、大好きな人を求めて、声のする方向へと右手を精一杯伸ばす。

ひとりは嫌!ずっと傍に居て!私を放さないで!!
451丸井ひとはの憂鬱161:2012/04/30(月) 06:47:16.19 ID:InmI3Xoq
「大丈夫、ボクはここにいるから」
ぎゅっ…と、握られる。硬くて大きい手を、先生を感じる。確かに此処に居てくれてる。

「ずっといて!ずっとずっとここにいて!放さないで!ぜったいぜったい!!イッ…ああっ!!」
「うん。ず〜〜っとひとはちゃんの傍に居るよ。絶対に。だから安心して。
もう泣かないで」
「あっ、あっ、あっ!やくっ、そく!!」

誰よりも私の近くに!!私だけに!!
そのためだったら、私、何だって!!

「うん、約束する」


ぎゅううっ!


全力で先生の手を握る。先生も全力で、でも痛くないように、握り返してくれる。
ああっ!夢じゃない!なんて、し、あわ、せっ!!!

「だから安心して、たくさんイッてね。
…ちゅっ」
「うああっ!」

クリに感じるくちづけ、そのまま「ちゅうっ」吸い込こまれた!
フードを置き去りにしてクリが全部先生のお口の中に!
凄いです、先生の唇…粘膜にこしゅこしゅ扱かれるの、あっ、ああっ、私、大好き!

「あああっ!イきます!せんせっ、イきます私!」
クリトリスをフェラされて……うあっ、熱、舌近づいてきた!
来て!先っちょゾリゾリして!!取れてもいいから思いっきりして!!


「じゅ……ん!」
「あああああああっ!!!」

452ガンプラ:2012/04/30(月) 06:47:47.09 ID:InmI3Xoq
てなわけで、今回はここまで。
453名無しさん@ピンキー:2012/05/01(火) 21:12:53.18 ID:YeHmB3IO
乙です
ひとはの強気がどんどん崩されていく描写がたまらんですね

そういやスレ容量が残り36kBだが、次スレは次回の投稿直後くらいに立てればいいのかな
454ガンプラ:2012/05/05(土) 21:21:33.42 ID:j/r1VnCi
>>453

次スレは次回投稿後にお願いします。
書きかけ状態で、残りのエロシーンが31kB……いけるかな?
455ガンプラ:2012/05/20(日) 09:13:21.75 ID:qJkX4kFR
今月のたわごと。
富野信者なので、ユニコーンは見てません。
456丸井ひとはの憂鬱161:2012/05/20(日) 09:14:15.08 ID:qJkX4kFR
・ ・ ・ ・ ・あったかい……。

右手に、『全て』が在るのがはっきりわかる。
包み込んでくれる大きさがあって、導いてくれる強さがあって、気遣ってくれる優しさがあって、
心地いい温もりが確かにある。
感じるのは右手だけじゃない。頭の上から髪先までの長い旅路を、奏でるようにゆっくり何度も行き来してる。
いい子だねって軽く踊ってから、風合いを変えながら髪を流れ、やがて微かな余韻を残して、消える。
最後だけは寂しくなって、ちょっとだけ胸が苦しくなるけど、すぐさまちゃんと頭上へ帰ってくる。
想いの通りに帰ってきてくれる度、ぽぉ…っと身体中にあったかさが広がって、その分力が抜けていく。
温水プールにプカプカ浮いてるみたいな、心地いいものだけでで包まれた世界を、漂う。

「ん、ふぅ……」
「ひとはちゃん、起きた?」

まぶたの向こうから、大好きな人の声が意識をゆっくり引き起こしてくれる。
むふ、これも幸せ……あ、ダメだ、もうちょっとまどろんでいたいのに、笑いが堪えられない。

「ん…ふふっ……。
うふふふ……」
「よかった。
起きられそう?」
「ふふっ…えへへぇ〜……。
ちゅーしてくれたら、起きられるかも知れません」
「うん。
ん……」

此れも、想いの通りに。
唇にふわりとした温もりが触れる。
あ〜う〜…えへへ。幸せすぎて溶けちゃいそうだよ。

「どう?」
「う〜ん。
これからもずっと、私を起こすときはこうしてくれるって約束してくれますか?」
「うん。約束するよ」
「じゃあ、起きてあげましょう」

ゆったりとした速さで、まぶたを開ける。
当然、当たり前で、想っていた通りに、私の世界いっぱいに優しい微笑みが描かれる。
同時に右手に繋がっている先生の左手に、いっそうの力が籠もる。
『ひとはちゃんとの約束は絶対守るからね』って先生の想いが、はっきりと聞こえてくる。

「むふ……ふふ…ふへへぇ〜…」

言葉にし尽くせないくらい沢山のものたちが溢れてきて、手足がパタパタはしゃいじゃうのを抑えられない。

「えっへっへ…あ……」

パタパタ、動かしたことで、私はやっと自分の体勢を把握する。
最後の記憶とは逆で、今度は私が仰向けでシーツに乗っていて、少し開いた脚の間には先生が座ってる。
私と先生が、正常位で向かい合ってる。
そしてお腹の上…恥丘からおヘソに渡って、熱くて重い塊が、乗ってる……。

「先生……」

大好きな人を呼ぶ。
するとその人は目をさらに細めて、両手を私の腰へと移した。
空いていた右手はしっかりとお尻ごと掴むように、繋がったままの左手は横から押さえるようにして、『私』を固定する。
457丸井ひとはの憂鬱163:2012/05/20(日) 09:15:27.40 ID:qJkX4kFR
「入れるよ」

無理だ。
きっと小学生にだってひと目でわかる。入るわけない。
だって指1本でもあんなにキチキチだったんだよ?
こんなに大きくなものを入れたりなんてしたら、絶対『痛い』じゃ済まないに決まってる。
そもそもこの身体はただでさえ容積が無いんだ。替わりにいくつか中身を抜かなきゃ。

だけど先生は『恋人にする』って言ってくれた。迷い無く。

だからね?
もちろん私は、

「はい」


幸せだよ。




―――みちっ――




「ぐっ…ふぐううぅっ!」
痛い痛い痛い痛い痛い!!
裂ける!裂けてる!!身体が割れる!!!

身体の中から音が聞こえた瞬間、用意していた覚悟なんてあっさり粉々になるくらいの強烈な痛みに下腹部が襲われる。
股間を引き裂かれるような激痛と、鉄塊に分け入られる異物感でせり上がってきた内臓によって、心臓も肺も押さえつけられて、
呼吸すらまともにできなくなってしまう。
まだ始まったばかりだっていうのに、もう世界の全部が真っ赤に染まってしまった。

「くっ…ひとはちゃん…!」
そして聞こえてくるのは、恐怖と哀しみで染まりきった声。

違います、先生。怖がらないで。
悦んで!

想いを伝えるため、私は右手に力を込める。

「ひと…っ、ボクは…っ!」
先生が私の腰を、右手を一層の力で握り、もっと近くへ。ゼロを遥かに通り越して、マイナスになる。
指1本すら通るのに苦労する肉の道が、灼熱の鉄塊によって押し広げられ、た。

夢が叶って、私は先生に『女』にしてもらった。

嬉しい。

はずなのに、私は喉が裂けるほど大きな悲鳴を上げて…たまるもんか!!

「ぐっ、ぎい、がぎっ!!」
458丸井ひとはの憂鬱164:2012/05/20(日) 09:16:07.20 ID:qJkX4kFR
昇ってきた震えを、歯を食いしばって噛み殺し、喉の奥へと飲み込み返してやる。
絶え間なく襲い来る肉を灼かれるような痛みを、奥歯が欠けるくらいに噛み締めてシャットアウトする。
けれど裡に籠もった振動は、反響によってますます大きくなり、熱として変換されて私の身体が更に灼かれていく。
熱い。血液が沸騰しているみたいだ。
顔から吹き出た汗が目に入り、瞬きする間もなく涙と混ざり合って零れ落ちる。

「んぐっ…がっ、ぐぅうっ!!」
駄目だ、こんな獣みたいな声じゃ。もっと可愛い声で啼かなくちゃ。
先生には私の良いところだけをあげなくちゃ!!

「ぐぶっ、ぎ、はぁ…がっ!」
「ぐっ…ひとはちゃん……!
ごめ…っ!」
「ちが…ぐぅっ、ぎ、もぢいび、でずっから!」
「むちゃくちゃ言わないで!!」

こんなに頑張ってもまだ、悲鳴が木霊してしまう。止まってしまう。
違うって言ってるでしょう!
私が欲しいのは謝罪でも、後悔でも、泣きだしそうな顔でもないんです!

「もう入ったから!もう十分だから!
ねっ!?」
「がはっ…っ、うぐっ、ふっ…ふうぅ……っ。
は、あぁ〜……。ふー…はー……。
はいっ…た……?ぜんぶ…?」
 「うん」
返答は、僅かな間を伴って私に辿り着く。
…ほんの僅か、でも、5年間の時間を経た私にはそれだけで十分。

「嘘っ!」
「あ…いや……」
「ぐ…ぅぅっ」
血まみれになってるかも、なんて恐怖を無視して、結合部へと目を向ける。

「〜〜〜ッ!」
果たして、其処には一縷の赤も存在してはいなかった。
血の海よりも酷い惨状が広がっていた。

『繋がってる』なんて優しいものじゃない。打ち込まれてる。
なだらかだった白い丘は、巨大な杭の形そのままに盛り上がり、
入り口に至っては、限界まで引き延ばされてもまるで足りずに、周りの柔らかい肉ごと巻き込まれて内側へと沈み込んでしまっている。
歪に変形してしまった『私』はあまりに不気味で、吐き気がこみ上げてくるほどだ。
……ううん、そんなの些細なことだよ。
だって、
「ほらっ!まだ半分も入ってない!!」

「う…で、も……っ、もう十分だよ!
ひとはちゃんの中、すごく温かくて、ぎゅってしてて…くっ、すごく気持ちいいよ。
頑張ってくれて…あっ、りがとう」
「はがっ、んくっ…くだらない嘘…つがっ…はぁ、つかないで!
せっ…かく、うぐぅ、女子高生と生でしてるんですよ!!
ほらっ、野良犬らしくがつがつ押し込んで!!」
「ひとは…ちゃん……はふっ、はぁ〜…。
……ねぇ、落ち着いて。無理しないで。
こんなに涙が……」
私の頬を人差し指で拭いながら、穏やかな声音で先生が語る。
小さな女の子に語るみたいに。聞き分けの無い生徒を諭すみたいに。

違うよ。私が欲しいのはこれでもない。
459丸井ひとはの憂鬱165:2012/05/20(日) 09:16:52.23 ID:qJkX4kFR
「涙なんて…アクビ!アクビしたからです!
もっ…もう入ってたんですか!?先生のが小さ過ぎて、全然気付きませんでした!!」
ヒステリックな声が壁に反響して、耳を揺さぶる。
痛い。
鼓膜が、頭が、身体が、なによりも心が。今にも壊れてしまいそう。
やっと此処まで来れたのに、なんでこうなんだろう。忌まわしい矮躯。大好きな人とひとつになる事すら、満足にできない。

そんなの嫌だ。

「だから気にせず全部入れてっ!!」
「………ひとはちゃん…………」

先生の目を見る。心を覗く。
ぐるぐると廻って、迷って、どうすれば私を傷つけないのかを必死で考えてる。

「ボク…は……」
先生は迷いのままにノロノロと腕を動かし、ふたりの腰を縦向きに変える。
先生が上に。私が下に。

ごめんなさい、先生。
だけど私は貴方の全部が欲しいんです。

お願い、わかってください。

「………ごめん」

先生が、腰の重みごと、落ちて来た。



「ぅぐっ、あああぁぁあぁっっ!!!!」



中の傷がさらに拡がる。中の肉がぞりぞり削がれる。中に新たな臓器が無理矢理埋められる。
膣壁はたっぷりの愛撫で潤みきっていたけれど、そもそも私の分泌液は粘度が無さ過ぎて、潤滑油の役目をまるで果たさない。
肉の皺もヒダも無くなるくらいにビッチリ引き延ばされて、粘膜全部に焼け付くような摩擦をたっぷり味あわされてしまう。
痛い。

痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い!!!

先生!!早く!!

「来て!!」
「うっ、あああっ!!」

ごにゅり、と。内臓の配置が変わったのを感覚が捕らえる。
おちんちんが子宮を持ち上げた画が、怖いくらい鮮明に頭に浮かんで、身体中から嫌な汗がどっと吹き出てくる。

「あがっ!?
あ、ああ、あぁっ!ぎはっ!!」

外側だけでなく、中身まで形を変えられた衝撃を受けて、私は眼球が飛び出しそうなくらいに目を見開いて泣き叫ぶ。
衝撃を逃すために四肢を限界まで伸ばし、
それでも最後に残った理性で、先生にしがみついちゃいけない、爪を立てちゃいけないって、左手でシーツを握り締めてひたすら耐える。
460丸井ひとはの憂鬱166:2012/05/20(日) 09:18:15.40 ID:qJkX4kFR
「うがっ、ぐぐうっ、が、はああっ!」
「ひとはちゃん!全部入ったよ!
頑張ったね!本当に頑張ったね!」
「あぐっ、ふ、うう……は、ああ〜……。
はひ、った…?
あぐっ、ぜんぶ……?」
「うん!
今度こそ全部!もういいんだよ!痛いのは終わったよ!」

終わった。やっと『最後』に辿り着いた。やっと先生とひとつになれた。
想いが身体を満たして、張り詰めていたものが少しだけ引いていく。

「あかっ……うぐ…はふぅ、はぁ〜…あ…。
せんせい……せんせい……せん、せい……」
「うん。
ボクはここにいるよ。大丈夫。ずっと傍にいるからね」
私の右手を両手で掴んで掲げ、先生が告げる。まるで祈るみたいに。
涙をこぼしながら。

………ごめんなさい。
先生はもっと痛かったんですよね。痛いんですよね。
ありがとうございます。
私は今、すごく幸せです。今度は私にもわかります。
先生が私の奥底に触れてくれたって。私の全部を埋めてくれたって。

「あ…ぅ……。
うれ、しい……」
まだすごくすごくすごく痛いけど、涙が溢れちゃうけど、いっぱい頑張って良かった。

私は幸せをもっとはっきり確かめるため、自由な左手を向かわせ、順になぞっていく。
ぱんぱんに膨らんだ亀頭。大きく開いた笠。確かな括れのカリ首。膣内をめいっぱい押し広げている太い幹。
鉄のように硬くて、けど熱い血潮を脈打たせている先生の分身が、私を隙間なく埋め尽くしている。
すごいな。私の中に、こんなに大きなものが入ってるなんて。

「ん…痛っ……」
外側から軽く傷口を、お腹側の壁にある特に大きなものを押さえつけてしまったせいで、私は呻き声をもらす。

…なんだかもう、どこまでが私のなのかよくわかんないや。
だけどこの痛み。手のひらにさわさわ触れる微かな柔毛。ここが私の入り口…『私』は終点だな。
じゃあ、ここからは……


「…………え?」


嘘。


「う…そ……。
これ、こんな……」
声が、掠れる。

信じられない。信じたくない。でも、確かに今、私は指をまわして掴んでしまっている……!
461丸井ひとはの憂鬱167:2012/05/20(日) 09:19:12.37 ID:qJkX4kFR
「んっ…ああっ…嘘じゃない、よ…。
ひとはちゃんの奥まで全部…はくっ…う、気持ちいい……。本当にありがとう……。」
「え……。
こ、れ…せんせ……。
私の身体、これだけしか無いの…?」
「………?
ど…どういうこと?」
「これでこの身体は全部なの?もう入らないんですか!?
そんな、だって……!!」


おちんちんが残ってる……!


「ぜん……?
うん…今度はひとはちゃんもわかるでしょ?だってほら」

ごり。
少しだけ、ほんの少しだけ先生が私に向かい、子宮を押し込む。
粘膜に生まれた傷口を盛大にやすりがけながら。

「うっ…くっ!」
「うぐっ…!
ごめん!痛かったね!!ごめんね!!」

わかる。
確かに、私の1番奥に触れてくれてる。……私の中はもう満杯だ。

「ぐ…そんなぁ……。
まだ、残ってる…のにぃ……。
こんなに……」
先生が外に放りだされてしまってるのに。もう3センチ。ちょうど足りない分だけ。

……嫌だ。
嫌だ!!こんなの嫌だよっ!!

「入れ、て…ください…っ」
「ふ、はあっ…ひとはちゃん…。
もう全部入ってるんだ。すごく頑張ってくれた。
ありがとう。大好きだよ」
額にうっすら汗をかき、眉根を寄せた先生が、うめくように『此処まで』だって告げる。
右手で優しく私の頭を撫でながら、自分がすごく幸せだって伝えてくれる。

嘘だよ。さっきはあんなに根元まで入れたがってたのに。

「う…ぅ……。
ふくっ…勝手に終わりにしないでぇ……。
もっとちゃんと、入れて……。
だいじょうぶだからぁ……!」
「……さっき見たでしょ?おヘソのところまであったよね。
今はちょっと無理だよ。
大丈夫、ひとはちゃんはこれからまだまだ大きくなれるさ」
「今は、まだ……」

そうなの?ちゃんと最後まで行けないの?
462丸井ひとはの憂鬱168:2012/05/20(日) 09:20:22.98 ID:qJkX4kFR
……違うよ。そんなはずない。先生が変に我慢してるのがいけないんだよ。
だってほら、本にはあったじゃないか。『お胎が上がった』とか『子宮の奥まで入った』とか。
躊躇も遠慮もなく、思いっきりしてくれば、きっと全部入るはずだ。そうなってるんだって。

「大丈夫。ずっと傍にいるからね」

入れなきゃ。
今、此処で、全部を最後にしなきゃ……!!
私が!!
先生の手を振り払ってでも!!

「あっ」
ふたりの手が離れたとき、泣き出しそうな顔が目に入って、胸が身体中のどこよりも軋んで私は一瞬だけ動きを止めてしまう。
一瞬だけで後悔も振り払って、私は前に進む。
いいんだよ。今すぐ悦び一色で塗り潰してあげるんだから。

「ぜんっ…ぶ、入れます…っ!」
「ちょっ、ひとはちゃん!
ダメだよ!これ以上無理しないで!」
「無理じゃない!!」

無理だ。
身体が言う。これ以上は受け入れられないって。
うるさいよ私。『初めて』くせに何がわかるの。

「うっ…ぐうぅう〜…っ!」

脚は痛みのせいで麻痺して、伸びきったまま動かない。
代わりに右手で先生の肩を掴み、左手を先生の膝について、腕の力で起き上がる。
崩し正座の先生の上に乗る…対面座位へと体位を変える。

「ぐ、ぐぐぅっ!」
ただそれだけなのに、動作の毎に激痛が走って、噛み締めた歯の隙間から呻き声が漏れ出てしまう。
お腹がはち切れそうなくらいに詰め込まれているせいで、僅かに屈むだけでも内臓を抉られて、意識が断線しそうになる。
身体のあらゆるところから悲鳴が上がる。
もちろんそんなものは全て無視して、私は黙々と『最後』へと向かう。

「あ…なんでそんな……。
ダメだよ……」

宙をさまよう大きな腕をすり抜けて、先生の真上へと移動する。
これで、身体を支えている左腕の力を抜けば、私の全体重がかかるはずだ。

「はー……ぐっ、は、ああ〜……」
ガクガクと震え、とめどなく涙を流しながら、身体は絶叫し続ける。
無理だよ。
やめよう、危ないよ。赤ちゃんできなくなっちゃう。もう十分だよ。先生だってそう言ってくれてるじゃない。

うるさい。

腕から、身体中から力を、

「入れ!!」


抜く!!
463丸井ひとはの憂鬱169:2012/05/20(日) 09:24:22.23 ID:qJkX4kFR
めきぃ
464丸井ひとはの憂鬱170:2012/05/20(日) 09:25:14.24 ID:qJkX4kFR
最初に届いたのは音。
身体の中心、1番大事なところから背骨を伝って頭の奥の奥へ。一生忘れない場所へ。
次に届いたのは感覚。
硬い先端がお部屋の壁にめりこんでる。目に見える場所だけじゃない、中身もカタチが変わった。ずっと先生専用になるように。


そしてやっと、ノロマな身体が反応する。


「ぅああああああああああああああああああああああッ!!!!」


「ひぃっ…ちょっと入っ…!!?
それにぐにぐに動いて……っ!!
ひとはちゃん!?」
「ああああッ、ああっ、あー!ああああーーー!!」

大地震が起こってるみたいに、ガクガクと視界が揺れる。
お腹も胸も頭も、全色の絵の具を混ぜたみたいにぐちゃぐちゃのどろどろで、何がどうなってるのか全然わからない。
何もわからなくて、ひたすら怖くて、喉が裂けるくらいに叫びをあげてのたうつだけしかできない。

「うああああぅ!あああっ、あ、ああああっ!!」
先生の背後に突き出た手足が、ばたばたと揺れる。意味不明な動きで…違う、足はシーツを蹴って先生から離れようとしてる。
身体が拒否反応を起こして、逃げ出そうとしてる。
させるものかと私はあわてて手で腿を押さえつける。
ダメだ、震えて力が入らない……っ!

「やッ…!
せんせっ、押さえてぇッ!私をっ、押さえつけて!!
早く!!」
「えっ…押さえ、る…?
何言ってるの!?抜くよ!
ひとはちゃんが壊れちゃう!!」
「ダメっ!!」
「だって身体がミシミシ鳴ってる!!」
「入れるの!ぜんぶ入れなきゃダメなの!!恋人だから!!誰にもあげない!!全部私の!
先生が取られちゃう!!!」
「ひと……くっ!」
「あうっ!」

ぎゅむっと、髪と腕を巻き込んで身体全部が抱きしめられる。
太く剛い幹に縛りつけてもらえたおかげで、激しい揺れが収まる。
それでもまだ裡に渦巻く嵐に震えていると、右頬にぴとりと温もりが触れた。感触に、はっと焦点が合う。
先生のうなじが目の前にある。恋人が私を抱きしめ、頬を寄せてくれている。

「せんっ、ぐはっ、う、はあぁっ〜っ!」
まだダメだ。息をするので精一杯。
せっかくこんなに近づけたのに。先生の腰に乗って、ちょうど目線が合う高さに来れたのに。
唇に先生の左肩…盛り上がった強そうな僧帽筋が当たるくらいに……っ。
ああっ、大好きな先生の身体がすぐ口元にある!
465丸井ひとはの憂鬱171:2012/05/20(日) 09:27:10.41 ID:qJkX4kFR
「いいよっ!噛んで!
ちょっとでも痛みをボクに逃がして!お願い!」

『お願い』!!

言葉を認識した瞬間、私の中で何かがプツンと切れた。
今は抱きしめられない手足の分も込めて、籠もる衝動の全てを収束させて、ゴチソウに噛み付く!

「ぐっううう〜〜〜っ!!!」
「痛う…っ!
いいよひとはちゃん!もっと噛んで!」

言われるままに、更にアゴへと力を込める。
前歯と犬歯が柔らかな皮膚を破り、肉に食い込むのを感じる。その下に在る、堅い筋肉も。
アゴを押し返す噛み応えの強さが、私を安心させてくれる。
噛み込む程に抱き締めが強くなり、私はもっと幸せになる。
もっと、もっと先生に近づきたくて、一心不乱に温もりを噛み締める。

「ぐっふ、はふっ、ふぅんっ、ふうっ!」
「ぐっあ…くそっ、収まれ…っ!
この子がこんなに痛がってるのに、情けない……っ!」

ふたり、ぶるぶる震えるひとつの塊になる。
汗と涙と血を流し合って、暴風雨を耐える。

「はぁ〜…ふ、う……。ふじゅるっ…はくっ」
やがて、私の裡でびくびくと暴れていた獣もおとなしくなり、ひと息つける程度の余裕が生まれてくる。
少しずつ、少しずつ。身体の様子がはっきりしてくる。
わかる。進んだ。奥から奥へ。進んじゃいけないところまで、大きく。

だけど。私にとっては大きな進行だったけど。

「う…うぅ……っ。ぷ、はぁっ……。
入って、ない……」

肌と肉が感じ取った現実はまるで進んでなくて。全部を受け入れるなんてできなくて。
大好きな人を上手に愛せない自分だけが、此処に居る。
胸が痛い。身体よりもずっとずっと痛いよ。

「あ…ううぅ…ごめ…。せんせ……ぐず…」
「ちがっ…!
ごめっ…ごめんはボクだ!
くっ…ううっ…こんなっ…怖がらせてっ……。
気持ち知ってて…ずっと、ひどい…っ、ごめんっ…うう〜、ごめんねぇ…っ」

くっつけあった頬に、熱いものが伝わり零れ落ちていく。
私の涙と、それよりももっと熱い……
「あ…泣か、ないで…せんせい…」
「う、ぐっ…違うよ、ごめ……ありがとう、ひとはちゃん。
大好きだよ。絶対幸せにするからね」
「……こんな…弱くて、小さくても……?」
「違うよ!ひとはちゃんはとっても強くて、優しくて、ボクなんかにはもったいないすごい女の子だよ!
そんな事を言わないで!」
「ほんとう……?」
「うん!
……ごめんね、ずっと怖い思いをさせ続けて。こんなに泣かせて。
絶対幸せにするからね。
ひとはちゃんのためだったら、何でもしてみせるよ。どんなお願いでも叶えてみせるから…っ!」
466丸井ひとはの憂鬱172:2012/05/20(日) 09:27:56.37 ID:qJkX4kFR
………『何でも』……。

「やく、そく……」
「約束する!」





むふう。





「もっとぎゅってして」
「うん」

ぎゅうっ。私を抱き締めている腕に、もっと力が籠もる。身体がますます先生に埋まる。
気持ちいい。このまま埋まってひとつになれたらいいのに。

「なでなでして」
「うん」

ごしごし。背中に回った右腕が肘で私を抱きしめたまま、いっぱい頭を撫でてくれる。
気持ちいい。頑張ってきてよかった。良い子にしてたからこんなに褒めてもらえる。

「『ひとはちゃん大好き』って、100回言って」
「うん。
ひとはちゃん大好き。ひとはちゃん、大好き。ひとはちゃんだーい好き。ひとはちゃん――…」

すぐ耳元から優しい囁きが聞こえてくる。1回1回丁寧に想いを込めて、何回も何回も告白してくれる。
気持ちいい。むふぅ。先生ってば、こんなに私が大好きなんだ。大好きでしょうがないんだ。

「は、ああ……。
あ…」
吐息とともに目線を下ろすと、鎖骨の窪みに小さな赤い水溜りができていた。
源泉は、U字の歯型。ジワリと溢れ出し、細い滝を作っている。

「ん…ちろっ」

美味しい。

赤色を舌に乗せたら、潮の中に僅かな鉄味が混じった独特の風味が広がった。
フェラの時とは違う、輪郭のくっきりした『先生』の味に、私はすぐに虜になる。
水溜りをすぐに飲み干し、湧き出す源流そのものにかぶり付いて、ちゅうちゅうと吸い出す。
うああ…美味しいよお。
旨みももちろんだけど、飲み込んだときに鼻腔を通り抜ける、りんごを切った包丁みたいな甘い金臭さがたまらない。
飲み込めば飲み込むほど、先生が頭の中にクリアに浮かぶ。
外も内も、五感全部で先生を愉しむ。心の中まで先生で満たされていく。
467丸井ひとはの憂鬱173:2012/05/20(日) 09:28:47.29 ID:qJkX4kFR
「…――とはちゃんだい…くっ…大好き、だ…っ。ひとはちゃんが大好き――…」

温もりで包まれながら、汗と血潮をたっぷり味わい、心地いい告白を間近で聞き取る。
誰よりも近くで、先生の『大好き』を感じられる。自然な形で受け入れられる。
あつらえたように全部ぴったりだ。
…そうだよ。私の身体が小さいのは、全部このためだったんだ。これがあるべき自然な形だったんだ。
やっとわかった。やっと辿り着けた。

むふふぅ…。


「…――ひとはちゃん、んくっ、大好き、はあっ…だよー。ひとはちゃん、大好きなんだ。んうっ……」


………うぐっ…くぅっ……。ぐ、ううっ…。……しょうがないなぁ。

ひとまず滲み出ている分を吸い切って飲み込んでから、口を先生の耳元へと移す。
吐息が吹きかかるよう意識しながら、ひと言呟く。

「我慢できませんか?」

「ひとはちゃんが大好きだ。大好きだよ、ひとはちゃん。何がかな?大好きです、ひとはちゃん」
「ぴくんぴくんって…っ、くはっ…動いて、ます」
「ひと……はちゃん、だいすき。ひとはちゃん、ごめん、大好きです。ひとはちゃん、大好きだからね」
またみるみるうちにりんご飴が出来上がる。
もうそれ言い訳になってますよね。まったく。

「んぅっ……大好き、なのは…はあぁ……。
一旦休憩にしてあげます。
ちゃん…とっ、答えて」
「………ごめんね。えっと…ひとはちゃんの中がきっ…気持ちよくて、ちょっと動いちゃいました。
ごめんなさい。
ほんとごめ…んっ」
なんて上では謝ってるくせに、下の動きはむしろ大きくなっていく。
尻尾をただ振るだけじゃなく、腰ごと円を描くように動かして膣壁へと擦りつける。
その度に亀頭の先端が子宮口を圧迫し、開いた笠が肉皺を逆撫でする。
うくっ…もうっ、すぐ調子に乗って。

「……野良犬。『お座り』も満足に…ああっ。
『ちんちん』ばっかり…っ、じょうずな、駄犬……っ!」
「……ごめんなさい」
だから謝るくらいなら腰を止めてくださいよ。
ギチギチに詰め込まれてるから、こっちは中身がまとめて揺さぶられるんです。

「ふくっ…はぁ…。
ごめっ…ひとはちゃ……ごめんねっ」
性愛の紅に頬を染めた先生が、鼻に掛かった声で私に許しを請い続ける。
その額には玉の汗が浮かび、春の日差しを受けてキラキラと輝いていて、私は思わず目を奪われる。

…まぁ、これはこれで可愛いけど……。
それだけ『私』が気持ちいいってことなんだし。

……ふむ。
468丸井ひとはの憂鬱174:2012/05/20(日) 09:30:13.14 ID:qJkX4kFR
「どんなふうに、気持ちいい…ふはっ…。
…気持ちいいですか?」
「えっ?
どんなって……へぇっ!?」
いつものようにすっとんきょうな声を出して、先生が止まる。
いつもそうしていたあの頃のように、私はどんどん攻め立てる。

「言って。お願い」

気になる。

本で読んだときはこんな台詞ありえないって思ったけど、実際こうなってみると気持ちがよくわかるよ。
大好きな人がどんなふうに感じてくれてるのか、『私』がどんなに特別なのか、聞きたい。知りたい。

「あ…ぅ……。
えっと…ひとはちゃんの中、あったかくて…きっ…気持ちいい、よ」
「ダメで、す…ふうっ…。
全然、わかりませ……っ。もっと丁寧に、詳しっ…く。ほ、ら…国語、教え…ああっ、あっ…。
ナデナデ、休憩しちゃダメ…っ」
んもう。
尻尾はずっと振ってるくせに。優先順位がまるわかりですよ。男の人って結局こうなんですね。

「う…うう〜〜っ……」
「お願い、何でも…。約束っ」
目を瞑っていやいやしたってダメです。
こっちは先生の1番弱いところを、とっくに握っちゃってるんですからね。

「ひとはちゃんの……ううっ!わかったよ!」
むふう、やっと観念したか。
頭に感じる右手の動きが活発になったことに安心して、私は口を血の滲む左肩へと戻す。
あーあ、先生が早くしてくれないから、ちょっと背中側に流れ落ちちゃったよ。もったいない。

「ひとはちゃんの、キツくて、押し潰されそうなくらいで…あぁ……特に入り口、が…はふっ……すごい……。
柔らかいお肉に、噛み付かれてるみたいだ……。
それに…なんでこんな…これ、中、すごい張り付…くっ。気持ちよすぎる……っ。
あちこち引っ張られて、我慢が…ごめんね…っ」
「んじゅっ…ふっ……ふじゅっ」

先生は言葉にする度はっきりしてくるみたいだ。
告白が進むに従って、オクターブが上がっていく。おちんちんの暴れ方も激しくなる。
ギッチリ固定された根元近くを支点にして、おちんちんが私の中に逆三角錐を描く。
潤滑性の足りない膣粘膜は、剛直が押し付けられる度その表面へ張り付き、著しい摩擦を与えながら次のヒダへと引き渡す。
肉ヒダのたっぷり重なり合った浅井戸が、大きな肉棒に掻き混ぜられてぷちゅぷちゅと音を鳴らす。
469丸井ひとはの憂鬱175:2012/05/20(日) 09:30:51.31 ID:qJkX4kFR
「じゅるっ、ふっ…くはっ!」
大胆になっていく動きによって、入り口の傷を引っかかれたせいで、私は大きく喘ぐ。
あわせて身体も…膣内までもが軽い痙攣を起こす。

「うあっ!
ちょっ…ひとはちゃ…!
このグネグネ動くの…押し潰されそうで…良すぎっ!
待って…!」
「ふ、うっ…噛み付かれて、潰されそ、でっ……はあっ…。
それでもよがる…節操、なし……っ」
「ふー…ふー……。
んぁっ…ごめっ、ああっ…。
壁の全部がぎゅっと握ってきて…ううっ…出ちゃ、いそ……っ」
「早漏」
「うぐっ…!
だっ…だって、えっと……あの、ね?指でも気になってた、けど…っ、はぁ、ふぅ……。
奥が、なんか、ツブツブがびっしりで…プチプチっていうか、ザラザラで……ひょっとしてって言うか、コレ……」

ザラザラ……?

荒い息を右肩に感じながら、頭の中で台詞を反芻する。
何だっけ…なにかで読んだような……。確か良い事だった気が…?
記憶のたどる…途中、たびたび痛みに邪魔される。ええい、ちょっと止まりなさい駄犬。

「わひゃっ!?」
『待て』の命令代わりに耳たぶを強めに噛んであげたら、やっと少し落ち着いた。
そのまま前歯でコリコリしながら、糸の先の答えへと向かう。
え〜〜っと……そうそう。

「…カズノコ、天井?」
「うう…っ、たぶん…初めてだからわかんない、けど…。
それに天井っていうか奥が一周グルっとザラザラ…うあっ、だから動かないで!
カリがゾリゾリってソレやばい!!」
前壁を亀頭に押し付けるように腰を動かした途端、先生の口調が切羽詰った早口に切り替わった。
おまけに両腕には凄い力が籠もって、首と背骨が軋みそうなくらい。
むふ……凄い反応だよ。
私はとっても痛いけど。

「はぁ〜…はぁ〜……ふ、うぅ〜〜。
うくっ、あと、あのぅ…だいじょうぶ、なの…?」
「何が、ですか?」
嘘でもやせ我慢でもなく、正直に疑問だ。
だって身体中大丈夫じゃないところが多すぎて、何の事を聴かれてるのかわからない。

「えっと………コリコリ。
ずっと当たって…っていうか当たり過ぎてて、恐い……。
いやあのっ、ボクはすごく気持ちいいんだけど……」
さっきあれだけ触っておいて今更何が恥ずかしいのか、頬の朱が深くなる。
…そういえば今日はまだ、一度も先生の口から聞いてなかったな。

「ぅんっ…『コリコリ』ってなんっ、ですか?」
「うえええっ!!?
そんなっ………それは、コリコリでぇ……」
「お願い」
「言わなきゃ、ダメぇ…?」
「お願い」
泣きそうな顔したって、許してあげません。
私は5年も泣いたんです。まだまだお相子には程遠いですよ。
470丸井ひとはの憂鬱176:2012/05/20(日) 09:34:26.92 ID:qJkX4kFR
「……………ひとはちゃんのコリコリのし…子宮が当たって、むちゃくちゃ気持ちいいです!!」
先生が羞恥に染まりきった表情で、天井に向かって吠えるように告白する。
むふぅ。そっかそっか。むちゃくちゃ気持ちいいんだ。
いやぁ、この身体、コッチはすっごく優秀なんだな。
ロリコンじゃない先生を、こんなに啼いて悦ばせることができるなんて。

「うぐっ…口にしたら、ますますはっきりしてきちゃった……っ!
うあっ……ちょっ…すごっ!もっ…このままイっちゃいそう……!」
「くっ…痛っ……!
もうっ、調子に乗って暴れないでください……っ!」
「ごめんっ!ひとはちゃんが気持ち良すぎて…っ!!」
びくんびくん、私のお腹をかき混ぜるたび、先生の額に汗が浮く。荒い吐息が漏れる。
はっ、はっ、はっ…って耳元をくすぐられる。
お腹痛い…けど、ふふっ……私が気持ち良すぎるんならしょうがない。
正直に告白できたご褒美に、ちょっと頑張ってあげるとしましょうか。

「んぐっ……」
奥歯を噛み締め覚悟を決めて、わざと傷口を押し当てる。
すぐさま肉壁がグネグネと蠢き、絡めとった巨柱を凄まじい力で絞り上げ始める。
長い幹を余すところ無く柔ヒダで扱きあげ、先端部にはカズノコをたっぷりご馳走してあげる。
柔らかい膣肉は開いたエラの裏側にまでぴったり張り付いて、極小のツブツブで敏感な粘膜を弾くように何度も何度も執拗に攻め立てる。

「うわっ!?また締ま…っ!!
だからカリが凄すぎるってちょっと待ってってば!!」
甲高いわななきが、部屋に響き渡る。
甘美な締め付けと研磨の競演に、眼下の大きな背中がブルブルと波打った。

「くふ…ふ……」
予想通りに導き出された結果を目の当たりにして、胸の中で歓喜の渦が巻きこもる。笑いを堪えきれない。
やっぱりそうだ。
私が痛いほど、苦しいほど、先生は気持ちいいんだ。
考えてみれば当たり前だよ。
噛み付かれても気持ちよくなっちゃう先生なんだ。
私の受けてる許容外の圧迫感も摩擦も全部、物凄い快感になってるに決まってる。
強く締め付けるほど、粘膜を掻き毟るほど、『私』に病みつきになってくれるんだ…!

「ほ…らぁっ、『大好き』、休憩、おわっ…りぃ!
ひゃっかい言って!!終わるまでイッちゃだめですよ!!」
「ひとは、ちゃん、だいすきっ!ひと…は、ちゃん!大好き!!ひとはちゃん大好き!!1番大好きだ!!」
気持ちよくなってる先生は、とっても素直だ。
刹那の間も置かず、熱唱で私の鼓膜を痛いくらいに震わせ始めた。
『ぎゅうっ』と『ごしごし』もどんどん熱が入って、触れ合う肌が焼けどしそう。
そうですよ。ひとはちゃんが1番なんです。
脂肪だらけでぶよぶよの女なんて、不味くて二度と食べられないようにしてあげますから!
471丸井ひとはの憂鬱179:2012/05/20(日) 09:49:57.47 ID:qJkX4kFR
「ん…じゅるっ……。ぐ、ぢゅうっ…!」
三度、左肩の泉に口をつけ、私はアゴと膣で先生の身体を噛み締める。
食いちぎるつもりで。

膣口の柔らかいお肉で陰茎の脈が止まるくらいに締め付けながら、半円を描くように腰を左右に振って粘膜を擦り合わせる。
コリコリの子宮口で亀頭を押し潰すように撫で、無数に敷き詰められた肉粒を使っておちんちんを磨いてあげる。
竿扱きだってもうすっごく上手になった。
壁をたっぷり絡みつけ、ミルクを搾り取るように螺旋に蠢かせば「ひとはちゃんっ!」 ねえ、とっても嬉しそうに啼くでしょう?

「ひとはちゃん大好き!」
優しい忠犬は、今にも爆発しそうな衝動を我慢して健気にご主人様との約束を守り続ける。
もう悲鳴そのものになった告白が終わる度、ガチンと歯を食いしばって射精を押し留める。
天井知らずに音程が上がっていき、切ない響きが寒気をもよおすくらいに私を震わせる。

「んじゅっ、ふぅ…っ、くふぅ、ぢゅふっ……!」
私はもっと高く綺麗に啼いて欲しくて、弧を描く動きを加速させていく。
身体の痛みなんて気にしてられない。
こんなの止められないよ……っ!!

「ひとはちゃん!」

頑張れ。あと10回。

もっと啼いて。


「ひとはちゃん、ひとはちゃん、ひとはちゃん、ひとはちゃんひとはちゃんひとはちゃんひとはちゃんひとはちゃんひとはちゃん!!!」

 もっと啼いて、もっと啼いて、もっと啼いて、もっと啼いてもっと啼いてもっと啼いてもっと啼いてもっと啼いてもっと啼いて!!!


「ひとはちゃん!!!
抜くよっ!!」

もちろん、


「嫌です」
「えっ?」
472ガンプラ:2012/05/20(日) 09:56:48.66 ID:qJkX4kFR
というわけで今月はここまで。
エロい文章を目指していたら、エグい文章になってしまった気がしなくもない。

エロスは難しい…。


次回で完結です。このところ完結するする詐欺が多かったんですが、
今度こそ本当に完結です。
来月中旬以降を目指します。

次スレよろ!(1度言ってみたかった)
473名無しさん@ピンキー:2012/05/20(日) 12:35:18.72 ID:q+VT61LH
test
474名無しさん@ピンキー