立場だけの交換・変化 2交換目

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1名無しさん@ピンキー
いわゆる人格が入れ替わる「入れ替え」や性別が変化するTSではなく、
「肉体や人格はそのまま、突然別の立場に変化する」系統の小説や雑談などをするスレです

たとえば成人会社員と女子小学生の立場が交換されたり、
AV女優と女子高生の立場が交換されたり、
ペットと飼い主の立場が交換されたりと、
周囲は立場の交換に気づいていたりいなかったり
交換や変化の内容はさまざまです
2名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 02:54:52 ID:DkeAZZuR
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1268928099/
本スレから旧スレの立場に変化したスレ

なんだかんだで、2スレ目も自分が立ててしまった
3名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 21:24:01 ID:lrGTpnTX
>>1
スレ立て乙です。

以後、「当主メイド」&「要12歳」もコチラに投下させていただきます。
4保守代わりの小ネタ:2010/11/03(水) 01:01:51 ID:/pk1zno+
「おはよう〜」
「おはよう美咲」
いつものような朝。いつもと変わらない娘との挨拶。
朝の支度をする娘を横目に見ながら、
妻が作った焼きたての目玉焼きをおかずに食パンをかじる。
本当はゆっくりコーヒーでも飲みながら新聞を読みたいところだけど、
時計の針はもうすぐ8時を指そうとしている。
そうのんびりしてもいられない。
「さて、支度するか」
食卓に着く娘と入れ替わるように、自分も朝の支度をはじめる。
「あー!もうこんな時間! ママ、ご飯いらない!」
「だから早く寝なさいって言ったのに」
いつもと同じ妻と娘のやりとりに、少し頬が緩む。
「パンぐらい食べてきなさい!」
「途中で食べるからいい! ママ、早くネクタイ締めて!」
「はいはい……っと、できました」
美咲の首元にささっとネクタイを結びつける妻。
いつもながら手際がいい。
「じゃあ行ってきまーす!」
元気よく娘は会社に出かけていった。
「あなたもそろそろ行かないと遅刻しちゃうんじゃない?」
「そうだな、じゃあ行ってくる」
赤いランドセルを背負い玄関を出ると、
同じクラスの未来ちゃんと奈々ちゃんが待っていた。
「和彦ちゃんおはよー」
「おはよう」
いつものような朝。いつもの登校風景。
今日もいい日になりそうだ。
算数の授業さえなければ。
5名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 01:19:22 ID:IBvI0s2m
>>4
ドキドキ
6名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 00:33:10 ID:pagLXNER
ほしゅ
7名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 00:50:37 ID:WyjL6cfH
小説家になろうの『逆転学園』が
作者はこのスレの住人かと思うぐらいに該当なんだけど、
1話以降もうずっと更新されてないのが残念
8名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 06:42:47 ID:6u3Wu/lZ
>>7
多分私の作品だと思うんですが…
こちらのスレやTS物が好きなので触発されて意気込んで作り始めたものの
色々考えてたら途中で煮詰まってしまって…気になってはいたのですが
すみません。学校を舞台にした学力や環境が入れ替わる作品が好きなので
そんな感じの物をまた投稿できればと思います…逆転学園はもう一度
展開を考えたいと思います。
9保守代わりの小ネタ:2010/11/06(土) 07:25:46 ID:F9wxXfL4
けたたましい電子音をわめきちらす目覚まし時計を黙らせ、ベッドから半身を起こす。
カーテンの隙間から差し込む光は痛いほどまぶしく、
憂鬱なまでにいい天気であることを知らせている。
ひとつため息を吐き、ゆっくりと壁のほうへ振り向く。
数ヶ月前から習慣になった、朝の儀式。
今日はいったいどんな制服なのか、神に祈るような気持ちで視線を動かすと、
そこには……学ランがかかっていた。
黒く地味な厚手の布地。金色にピカピカ輝くボタン。
どこからどう見ても、あの悪名高い不良高校・雄道館高校のものだ。
「はぁ……今日は『コレ』なのね……」
これだったら、昨日の中央小学校のほうがまだよかったかもしれない。
この年齢で九九の勉強とか恥ずかしいけど、後ろ指さされるよりはよっぽどマシだ。
朝から何度目かわからないため息が、一段と気分を重いものにする。
しぶしぶワイシャツに袖を通し、ズボンを履き、そして学ランを身にまとう。
鏡に映った姿は、首から下だけならばどこからどう見ても男子高校生。
でも、本当は、数ヶ月前までは、正反対の女子高生だったはず。
……もう、ずいぶんと『女子高生』やってないけど。間違いなく。本当に。
あまりのんびりしてもいられないので、
手早く髪の毛を整え、歯を磨き、食卓の上においてある1000円札
――つまりは朝食兼昼食代――をポケットに無造作にねじ込んで玄関を出た。
手にしているのは、教科書が一冊も入っていない汚らしいナイロン製のボストンバッグ。
あまりの軽さにブンブン振り回したくなるほどだ。
振り回すのもなんなので、そのまま肩にひっかけて駅への道をとぼとぼ歩く。
本当の雄道館高校の場所なんか知らないけれども、向かうのはいつもと同じ学校。
毎日のように、めまぐるしく通う学校が変わるけれども、
これだけはなぜか変わらない不変のルール。
たった5駅の定期券を改札に通し、混雑したホームへと足を進める。
背広姿のサラリーマンやOL、学生でごった返す朝のラッシュアワー。
そんな中でも、私の目を強烈に惹きつけてやまない制服の集団がいた。
後ろ襟の隅に校章が入った濃紺のセーラー服と、黒いタイツ。
格好だけ見れば、私が本来通っているはずの、
名門女子高として誉れ高い白薔薇女学院の生徒そのもの。
しかし首から上はというと、どこからどうみても男子不良学生で、
コント番組のワンシーンのようなアンバランスさを醸し出している。
電車が来るまでボーッと彼たち――彼女たちかもしれないけど――を眺めていると、
「やだ、白薔薇のヤンキーがこっち見てる」
「だから一本早い電車に乗ろうって言ったのに」
いつか、自分が雄道館の生徒を見ていたような、
おびえながらもどこか軽蔑した目で私を見つめかえしてくる。
視線を彼らの顔のほうに移すと、まるでおびえる子羊のように目を背け、
向こうのほうへと歩いていってしまった。
「よう、今日はやけに早いじゃねーか」
背中をどんと叩かれたので振り返ると、そこには親友の桜子の姿が。
本当は名家の生まれで、箱入り娘を絵に描いたような彼女も、
この制服姿にふさわしい『不良』となって私の前に姿を現した。
「ホント、雄道館の連中はお高くとまってやがんな。
 あーいうのと一度ズコバコやってみたいもんだが、どうすりゃいいのかね」
朝からガムをくちゃくちゃやりながら、信じられないような卑猥な言葉を吐く桜子。
時折つばを線路に吐いたりとマナーもへったくれもないが、
『不良学生』である私たちに注意しようとする勇気のある人は誰もいない。
今日一日、三流高校の不良学生として過ごすことが決まり、さらに気分が重くなる。
そんな私の気持ちも知らないで、桜子はなおも隣で品のない笑みを浮かべていた。


>>4と同じく、たぶん続かない
108:2010/11/06(土) 09:34:15 ID:ZyPiWw00
>>9
名門女子高校⇔不良男子高校なんて美味しいポイントはしっかり押さえていて素晴らしいです。ギャップがいいですね。同性同士ですが名門女子とおバカなギャルの入れ替わりなんてシチュも好きです。
11名無しさん@ピンキー:2010/11/06(土) 18:21:38 ID:JrMu09rI
>>9
凄く好みだー
TS畑から流れてきたせいだろうけど、第二次性徴越え同士の男女の立場交換に凄く興奮します
12名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 12:17:20 ID:0r3qTLYb
>>9
続きが読みたい!
こういうギャップのある、どちらかが蔑んでる立場交換には興奮するなぁ
不良男子と優等生女子、というのもよく電車で見かけて想像しやすいし!
街中で見かけた不良男子が実は、、とか現実世界でも妄想してしまうw

単発ネタでもいいので、次回作楽しみにしてますよ〜!
13名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 06:27:05 ID:rXBhX8VR
なんとなく思いついたので>>9の続き

【その1】
満員電車に揺られて5駅ほど。
小学校からずっと降りているなじみの駅は、
本当ならば紺色のセーラー服を身に纏った白薔薇乙女たちであふれかえっているはず。
しかし、今日は誰も彼もが全身から不良オーラを漂わせている学ラン姿ばかりで、
押し寄せるほどの黒の波に息が詰まりそうになるほどだ。
そして、誰も彼もが白薔薇乙女なのかと疑うほどのマナーがなっておらず、
そこらにゴミを投げ捨てる、道にタンを吐く、
あげくの果てには歩きながらタバコを吸うなど、もうやりたい放題。
以前ならば白薔薇乙女の登校風景を暖かい目で見守ってくれていた
駅員さんや売店のおばさん、駅へと向かう会社員たちは
汚らしいものを見るような目つきで私たちを見ている。
時折、通行人の目が気に入らないのか、怒鳴り声を上げて威嚇する生徒までいる始末。
前方でくわえタバコしながら会社員に因縁をつけているあの人は、
確か風紀委員長の今川さん。
ルールや校則の遵守を訴えている彼女が、先頭切って社会に迷惑をかけている。
その姿はどことなくイキイキとしていて、もしかしたらこれが彼女の本性なんではないか?
とすら思えてくる。
横にいる桜子も、昨日見たテレビの話とかどこそこの学校の生徒がかわいかったとか、
普段だったら絶対しないようなことばかり、バカっぽい口調でまくしたてている。
そんな中身のない話にいちいち相槌を打つのも面倒くさく、
話の切れ間に気のない返事を返していく。
「んでよ、てめぇ聞いてんの?」
下から上にぐいっと、桜子の顔が近づいてきた。
脱色もパーマもかけていないのに、ゆるやかにウェーブした栗色の髪。
ほんのりピンク色に染まっている形のいいくちびる。
整った眉にぱっちりした瞳。長いまつげ。
街を歩いていると1週間に1回はスカウトに声をかけられるような美少女が、
まるで漫画の不良のように、眉間にすごいしわを寄せながらにらみつけてくる。
「あ、ゴメン。ちょっとボーっとしてた」
「なんだ、昨日ヌきすぎたんか?」
またもいやらしく、シシシと歯の間から抜けるような笑い声を上げる桜子。
今朝出会ってから30分も経ってないのに、もう彼女という存在にうんざりしている自分がいる。
14名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 06:28:16 ID:rXBhX8VR
【その2】
さっきよりは身を入れて、しかし聞き流すように空返事をしながら通学路を歩くと、
レンガ造りの校門が見えてきた。
その向こうにはモダンな洋風建築の校舎がそびえ立っており、
校舎だけならば数ヶ月前の白薔薇女学院とまったく変わらない。
だけど普通ならば校門のところで登校風景をニコニコと見つめているシスター様が、
くたびれたジャージを着て竹刀を地面にバシバシ叩きつけながら生徒たちを睨みつけている。
「おら、今川! てめぇタバコ吸ってただろ!」
校門を通り抜けようとした今川さんの胸元に、突きつけるように竹刀を当てるシスター。
いつもの温厚さはどこへやら、今時テレビドラマでしか見ないような鬼教師そのものの形相で、
今川さんに向かって怒鳴り散らしている。
「これで何度目だぁ? ああん?」
「うるせぇクソシスター!」
あれでもちゃんとシスター扱いなのがちょっと面白く、思わず噴き出しそうになる。
そんなやり取りを横目に校舎の中へと入っていくと、さらに『現実』が襲い掛かってきた。
きちんと掃き清められてチリひとつなかった下駄箱は、
砂埃どころか紙くずや菓子の空き袋が散らばっていてゴミ溜めのような有様で、
こんなところで靴を脱ぐのかとためらってしまうほど。
実際、桜子のようにそのまま土足でガシガシ上がっていく生徒も珍しくない。
下駄箱からこんな感じなのだからと、嫌な予感を抱きつつ教室に行ってみると案の定で、
紙くずや空き袋どころか空き缶まで散乱していた。
そして机の上に座ったり背もたれを抱えるようにして座って大声で談笑している子たちや、
携帯電話をなにやらポチポチいじってる子、机の上に足を乗せて漫画を読んでる子、
ちょっと前までの『お嬢様学校の生徒』どころか
昨日の『公立小学校の生徒』だったときには考えられないぐらいにすさみきっている。
そうこうしているうちに始業のチャイムが鳴り、一応形だけでも自分の席に着席しはじめるクラスメイトたち。
しばらくして教壇側のドアが開き、担任の高田優子先生が入ってきた。
去年大学を卒業して白薔薇に赴任してきた新人教師で、
彼女自身もまたOGという、みんなのお姉さん的存在の先生。
「あ、あの……しゅ、出席とります……」
昨日の『いかにも小学校低学年を教えています』といった感じの彼女とは打って変わり、
凶悪な生徒を前にしておびえているのがひしひしと伝わってくる。
そんな小動物のように震えた先生が、教壇に置かれた出席簿を恐る恐る開くと
「きゃっ」
中にあったなにかに驚いたのか、小さな悲鳴とともに出席簿を放り投げた。
宙に舞う出席簿から零れ落ちる一枚の紙切れ。
高田先生の顔写真とおそらくアダルト雑誌に掲載されていた女性の裸を
単純に張り合わせただけの稚拙なコラージュ。
そんな簡単ないたずらにすらおびえ、驚き、泣き出してしまう高田先生。
「ゆーこちゃーん! 泣いてないでおっぱいでも見せてよ!」
「せっかく大きい胸してるんだからさー」
下品な野次と笑い声が教室内に響き渡り、高田先生は泣きながら走って教室を後にした。
出だしからこれなのだから、今日の授業がマトモに行われないような気がしてきて、
もうこの場から逃げ出したい衝動に駆られてきた。
15名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 06:28:58 ID:rXBhX8VR
【その3】
案の定というか。予想通りというか。
授業は学級崩壊状態でまったく進まないか、
先生が生徒たちを無視して黒板に向かってしゃべり続けているか
あるいは何かというと生徒を殴り倒すような暴力教師の授業のどれかしかなかった。
その授業内容というのも、数学といいつつ分数の足し算だったり、
英語といいつつアルファベットの書き方だったりと、
中学レベルどころか小学校高学年でももうちょっと高度なことをやっているといいたくなるようなもので、
噂に聞いていた『雄道館の授業は中学生以下』というのを身をもって体験することとなった。
しかも、そんな内容の授業なのに、まったく勉強についていけない層が大半というのにも驚いた。
そんな生徒ばかりだから、放課後ともなれば授業が終わった開放感からはしゃぎだす子ばかり。
もちろん桜子もその1人で、制服を脱ぎだしてなにやら着替えだした。
体育の時間ですら人前に肌を晒すのを嫌がっていた彼女が、
いまだ生徒であふれている教室で堂々と着替えるのにもびっくりしたけど、
その着替え終わった姿も驚きを隠しきれなかった。
真っ黒なTシャツに、なんだかゴチャゴチャした英文字がプリントされた上下のスウェット、それにスニーカー。
首元や指には鈍く光るシルバーのアクセサリーに、
ずり落ちちゃうんじゃないかと思うぐらいの腰履き。
さらにトドメとばかりに、ワニ皮っぽい加工が施された合皮の野球帽。
もう、普通だったら話したことが親にバレただけでもお説教されてしまうような、
怖い系お兄さんたちっぽいファッション。
ちょっと前までの桜子の『深窓の令嬢』っぷりを覚えている私としては、
そのまま気絶してしまいそうになるぐらいの驚きだった。
「あれ、オマエは着替えないの?」
さも当然のように桜子が聞いてくる。
「え? あ、着替え忘れちゃった」
着替えを忘れたことにしてごまかそうとしたけど、
なぜか用意周到にもう1つ用意してた着替えを突きつけられた。
「俺の予備貸してやんから」
「う、うん」
断る雰囲気もどこへやら、桜子にせかされながらしぶしぶ着替え始める。
肩口からわき腹にかけて金色の民族文様的な意匠が施された真っ黒なロングTシャツに
やけに太いベルトで締める、チェーンがジャラジャラついたダボダボのジーンズとジャケット。
ちょっと不良っぽい装いで、まさか自分がこんな服を着ることになるなんて夢にも思わなかった。
夏場に着ることになた小学生用の競泳パンツも恥ずかしかったけど、
この格好の恥ずかしさも相当なものだ。
もし家族に見られたら、一生口を利いてもらえなくなってしまうぐらいだと思う。
「ま、予備だからこんなもんか。さ、いくべ」
着替えに満足した桜子は、にやりと笑って歩き出した。
ついていかないと、これまたまずい雰囲気なので慌てて歩き出す私。
いまさらどこに行くかなんて、恐れ多くて聞き出せない。
16名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 06:30:01 ID:rXBhX8VR
【その4】
不良っぽい格好のまま、電車で揺られて1時間。
車内では私たちが怖いのか、なんとなく周りが空いていたのが気になったけど、
そんなことを気にしてもどうにもならないことは、もう嫌というほど知っている。
電車から降りた後は桜子に従うままファーストフード店で時間を潰していたら、
時計の針は既に夜の8時。
普通ならば、というか、ここ数ヶ月小中高と『いろいろな学校』に通う羽目になったけど、
ここまで外にいたのは初めてのこと。
なんだか本格的に不良になってしまった気がして、逆にすがすがしくなってきた。
「さ、そろそろ行くか」
おもむろに桜子が立ち上がり、やはりその背中をヒヨコのように後をつけていく。
到着した先は、ネオンの看板が光る怪しげな店。
入り口で料金(これまた桜子に借りた)を支払い、扉を通るとドンという衝撃が体を貫いた。
それが大音量の音楽によるものだと気がついたのは、その数秒後。
『震えるほどの大音響』なんていう言葉があるけど、本当に震えたのは初めてだ。
音だけじゃない。クラクラしてくるほどの光の洪水が押し寄せ、暗いのに目が開けていられないほど。
そんな激しい衝撃ばかりの店内を、さっきのファーストフード店と変わらない顔で歩く桜子は、
2人組の女性を見つけると人懐っこそうな顔で話しかけ始めた。
胸元が編み上げになったゴールドのミニワンピースを着た女性と、
紐とリングでつながっているだけで正面も胸元や下半身の一部とかしか隠れていないような
大胆なパープルのワンピースを着た女性。
どちらもふんわりとした巻き髪に派手めの化粧をして、
どうやって生活するんだろうと思うほど長い爪にネイルアートを施している。
いかにも遊んでいるといった感じの女の人なのだが、身長がおかしい。
どうみても私の胸元ぐらいしかない。
よく見ると、女性ではなくどう見ても男性。しかも小学校高学年ぐらいの男の子。
話によると『彼女』たちは、霧山小学校5年2組の生徒らしい。
それを聞いた桜子が「うわー、お嬢様ばかりで有名な女子大じゃん!」とはしゃぎだす。
どう考えても公立小学校の高学年としか思えないけど、
たぶん『彼女』たちも、私たちと同じように突然学校が変化しちゃったんだろう。
小学男児をやっている女子大生を想像するとちょっと面白いけど、それはそれ。
「こっちのコも結構カッコイイじゃん」
パープルのワンピースを着た男の子が、長い爪で胸元をゆっくりと撫でる。
彼から漂ってくる、むせ返るほどの化粧と香水のにおい。
脳のどこかが「超えちゃダメだ」とけたたましく警報を鳴らす。
「ゴメン、帰る!」
その警報に背中を押されるように、私はその場から走り出していた。
轟音に混じって桜子の怒号が聞こえた気がしたけど、無視してとにかく走り続けた。
17名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 06:30:58 ID:rXBhX8VR
【その5】
気がつくと、私は最寄り駅へと向かう電車の中にいた。
家路へと急ぐ会社員や、学校帰りに予備校に寄った学生などでごった返す車内は、
朝ほどではないが窮屈で、体の向きを変えるにも苦労するほどだ。
そんな中、くたびれた背広を着たサラリーマンのそばにいる白薔薇女学院のセーラー服
――今日は雄道館高校の制服だけど――の子が恥ずかしそうにもじもじしている。

痴漢だ!
そう直感した私は、そのサラリーマンの手をひねり上げ
「その子が嫌がってるだろ」
とにらみつけた。
その瞬間、駅に着いたのか不意に電車が止まり、車両の扉が開いた。
これ幸いとばかりにサラリーマンは私を一発殴りつけ、ひるんで手を離した隙に逃げ出してしまった。
下車する人の波に流されるように私と雄道館の子も車両の外に押し出され、
ぽつんとホームに取り残されてしまった。
「あ、ありがとうございます」
深々と頭を下げる雄道館の『女の子』。
首から上は不良っぽいのに、目つきや物腰は柔らかくお嬢様然としている。
「いや、たいしたことはしてないから」
「あ、血が出ています。大丈夫ですか?」
さっき殴られたときに切ったのだろうか、気がつくと唇の端から血が流れていた。
それをふき取ろうと、『彼女』はポケットからハンカチを出し、そっと私の唇に当てた。
『彼女』の髪が揺れるたびに漂う甘い香り。
さっきの『女子大生』の化粧とはまったく異なる、
自分が女なのにもかかわらず胸が高鳴ってしまうような、
優しくて柔らかい、女の子のにおい。
長いようで短い手当ての時間は終わり、『彼女』は頭を下げて電車に乗って行ってしまった。
あとに残されたのは、鈍い傷の痛みとハンカチ、そして淡い残り香だけだった。
家に帰った後も『彼女』のことが忘れられず、
ベッドの上でハンカチに残った香りを胸いっぱいに吸い込み、
そしてその香りと『彼女』の可憐さをオカズに1人でみだらな行為をしてしまった。
それも普段とは違う、自らの『男』を慰めるような仕方で。何度も。何度も。
18名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 06:31:43 ID:rXBhX8VR
【その6】
翌朝。毎日の儀式。
壁にかかっていた制服は白薔薇女学院のもの。
数ヶ月ぶりの待ち望んでいた『本来の制服』に、いそいそと袖を通す。
その時セーラー服から漂ってきた甘い香りが脳をしびれさせ、
朝からちょっとイタシてしまったのは私だけの秘密。
駅に着くとラッシュアワーの人ごみは相変わらずで、
様々な職業、学校の人でごった返していた。
しばらくすると、後ろから鈴の鳴るような声がする。
桜子だ。
白薔薇女学院の制服に身を包んだ彼女は、昨日とは正反対のお嬢様スタイルで私の前に現れた。
やっぱり桜子はこうでなくては。
と、思っていたら、桜子はおもむろにポケットからガムを取り出し、
くちゃりくちゃりと噛みはじめた。
そして私の肩に腕を回し
「おう、なんでせっかくナンパ決まったのに逃げ出したんだよ」
さっきまでの雰囲気はどこへやら。まるで昨日の不良桜子みたいな雰囲気で私を脅してくる。
「ご、ゴメン」
その迫力に気おされ、謝ることしか出来ない私。
「お、相変わらず雄道館の子はかわいいなぁ!
 昨日のバツとして、あいつらナンパしてこい、ナ・ン・パ!」
その桜子の様子を、向こうにいた黒い学ランの集団はおびえた目つきで私たちを見てくる。
「やだ、白薔薇のヤンキーがこっち見てる」
「だから一本早い電車に乗ろうって言ったのに」
雄道館高校の生徒たちは、逃げ出すようにホームの向こうへと歩いていってしまった。
「ホント、雄道館の連中はお高くとまってやがんな。
 あーいうのと一度ズコバコやってみたいもんだが、どうすりゃいいのかね」
そういうと桜子はシシシと笑い、またくちゃくちゃとガムを噛みはじめた。
19名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 06:34:08 ID:rXBhX8VR
こんどこそおしまい。続かない

オチのシーンを思いついてしまったために、続き書いてしまいました
本当に保守代わりの小ネタ程度だったはずなのに

また、なんかネタが降臨or提供されたらなんか書いてみます
20名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 08:05:28 ID:L1oLtAd2

主人公や桜子は自分の女体見て欲情するのかな、と思ってみたり
21名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 15:44:29 ID:33uGTrbT
女同士の学力シチュもみてみたい。
22名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 23:46:56 ID:yZb7PLU8
これはいいものだ、ツボだな
23名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 23:56:11 ID:h4rb7jor
うおっ、続きが来てた!
ツボすぎてたまらんです
直接的なエロい描写はないのに、なぜこれほど性的興奮するんだろうw
また意外な立場交換話の投下お願いしますm(__)m
24名無しさん@ピンキー:2010/11/09(火) 00:03:33 ID:W82uuYcA
うむ
25名無しさん@ピンキー:2010/11/09(火) 00:18:58 ID:DAovKVSN
>>19
グッジョブだったんだぜ
特に語り手が自覚せずに少しづつ以上に飲み込まれて行く辺り最高だった
女子大生と小学生男子の入れ替わりも見てみたい
いっそシェアワールド化して誰でも書けるように……
まあ、それはないか

ただ、ちょいと小学生男子の小ささに違和感
小学5年男子の背丈と女子高生を比べるとよっぽど小さな子以外、
同じくらいかやや小さめになるのが普通なんじゃないかと思うんだがどうだろう?
まあ、ギャップが出したかったからしょうが無い話だろうし、
重箱の隅をつつくような話なんでどうでもいいっていっちゃあ、いいんだけど

まあ、そんなささいなことが気になるくらい良かったってことでひとつ
26『要12歳、職業・女子高生』その3:2010/11/10(水) 00:33:50 ID:aazthPtr
#ちょいと間が空きましたが、前スレに投下した要くんの話の続きです。
#概略としては、とある魔法の絵の力で、従姉と立場交換された小学生男子のお話



 「それで、美幸ちゃんは下着はどこにしまってるのかな?」
 「あ、それは……コッチの下から二段目のはずです」
 奈津実をシンプルな木目地のタンスの前に案内するミユキ。
 ──しかし、彼、いや「彼女」は気づいているだろうか?
 確かに美幸は要に、寮のタンスに「制服の替えや私服、下着がある」ことは説明していたが、その詳細までは教えていなかったコトに。
 それなのに、今自分が迷うこともなくブラジャーのしまってある場所を奈津実に教えたコトに……。
 それが何を意味するのかは、「彼女」自身が理解するには、いましばらくの時間が必要であった。
 「ふむふむ……相変わらず、素っ気ないデザインの下着だなぁ……って、アレ?」
 物怖じしない性格故か、友人のタンスを物色していた奈津実は、白や薄い水色の地味な下着類に隠れるように、黒や紫、あるいはショッキングピンクなどの派手なカラーのものがしまわれていることに気付く。
 デザインの方も、かなり大胆なハイレグや紐パン、あるいは逆にレースの装飾がたっぷり施されたブラやシミーズなど、15歳の少女としてはなかなか思い切った代物だ。
 「なぁんだ……やっぱりみゆみゆも女の子だね♪」
 奈津実はそれらを美幸がコッソリ買った「勝負用下着」だと思い、ニンマリしたのだが、事実は多少趣きが異なる。
 コスプレの隠れ趣味がある美幸が、こっそり通販で買った衣装を着る時、気分を盛り上げるために着るためのものなのだ。
 まぁ、ソレはソレで、ある意味「勝負用」と言えないこともないのだが……。
 「ミユキちゃーん、ねぇ、どっちがいいかな?」
 悪戯っぽい表情で(いや、完全にからかう気満々で)、ワザとそれら派手な方の下着の上下セットを、ミユキに見せびらかす奈津実。
 「う、あ、えーと……ボクが選ぶの?」
 小学生とは言え、微妙なお年頃のミユキが、顔を真っ赤にしながら奈津実に聞き返す。
 「うん。だって、さすがに毎朝わたしが来て選ぶのもヘンでしょ?」
 確かに、もっともな話だった。
 「ええっと……」
 利発なミユキもソレは理解できたので、努めて意識しないよう心がけつつ、奈津実に示されたふたつの「選択肢」を吟味する。
 そして、冷静に考えると、すぐに答えはひとつしかないことに気付いた。
27『要12歳、職業・女子高生』その3:2010/11/10(水) 00:34:41 ID:aazthPtr
 「み、右の方でお願いします……」
 奈津実が左手に持ってる方は、角度のかなり際どい角度のハイレグショーツとストラップレスのブラジャーだ。デザインが比較的シンプルなのはよいが、まがりなりにも生物的に♂なミユキでは、身体の線やナニの形が明確に浮かび上がってしまう。
 その点、右手のショーツとフルカップブラジャーは、フリルとレースの装飾がごっちゃりついた少女趣味なデザインだが、だからこそ体型その他がカバーしやすそうだった。
 もっとも、実のところ例の鳥魚相換図の魔力?で、ミユキの姿は、本人同士とバレた奈津実以外には完全に「美幸」本人に見えているので、あまり気にする必要はなかったのだが。
 「お、お客さん、お目が高いね〜。コチラはエンジェルドリーム「天使の夢」って人気ブランドの売れ筋商品だよ。コレを着たら、どんなお転婆娘も可愛らしい天使に早変わり、って評判なんだ〜」
 本当か嘘か分からない奈津実のウンチクを素直なミユキは「へー」と感心して聞いている。
 「じゃあ、ミユキちゃん、これに着替えよっか」
 「う、うん……」
 そう返事はしたもののモジモジしているミユキ。
 「うーん、恥ずかしいのはわかるけど、お風呂はもちろん、体育の時の着替えとかもあるし、慣れないとね?」
 優しく言い聞かせる奈津実の言葉にコクリと頷くと、ミユキは躊躇いながらもTシャツとショートパンツを脱ぐ。さらに、耳まで真っ赤になりながら最後の砦──ピンクの水玉模様のショーツを下半身から脱ぎ棄てた。
 「ほぇ〜」
 「あ、あのぅ奈津実、さん?」
 感嘆したように彼の裸身、特に股間のあたりを見つめる奈津実の視線に、落ちつかなげに身をよじるミユキ。
 自然と右手で股間を隠しているのはいいとして、左手を胸に回しているのは何故なのだろうか?
 「あ、ゴメンゴメン。や〜、男の子だとは知ってても、わたしの目には、どう見ても女の子に見えるんだよねー、不思議なコトに」
 どうやら、奈津実からも、鳥魚相換図の影響が完全に抜けたワケではないらしい。
 「そ、そうなんだ……」
 ミユキは微妙に複雑な表情になる。
 (バレないのは助かるけど、男として何か悔しいような……でも、ちょっとホッとしたような……)
 そう思いながら、奈津実に渡された明るいライムグリーンのショーツに足を通す。
 (女の子のパンツって、不思議だよね。元はちっちゃく見えるのに、履いてみたらそんなに窮屈じゃないし……)
 「それに肌触りとか気持ちいいし」という正直な感想は、あえて考えないようにする。
 まったく恥ずかしくないワケではないが、この1週間あまり美幸の自宅で、ミユキとして(できるだけ中性的なものを選んでいたとはいえ)女物で過ごしてきたのだ。多少は慣れて免疫もできている。
 そう、ショーツまでは。問題は、ココからだった。
28『要12歳、職業・女子高生』その3:2010/11/10(水) 00:35:21 ID:aazthPtr
 「は〜い、じゃあミユキちゃん、いよいよ初ブラジャー、試そうか?」
 何が楽しいのかニコニコ笑顔の奈津実が、ショーツとセットのブラジャーを手にミユキの背後に迫る。
 「お、おてやわらかに、おねがいします」
 テレビで聞いたことはあるものの、自分では一度も使ったことのなかったフレーズで、おそるおそる頼み込むミユキ。
 「にゃはは、大丈夫ダイジョ〜ブ、ヘンなことはしないから」
 明るく笑う奈津実の言葉を、とりあえずは信用する。
 「ではまず、最初に前に回したホックをとめます」
 「え!? でも、コレじゃあ後前だよね?」
 「うん。だからホックをとめたらグルリと180度回転させるんだ。わかる?」
 「──こんな感じ?」
 「そうそう。で、次にその状態からストラップの部分を肩にかけるの」
 確かに、奈津実の説明は丁寧でわかりやすかった。また、ミユキが幼く身体が柔らかかったことも幸いしたのだろう。
 「えーーっと……こう?」
 「うん、OK。で、最後に脇腹のお肉とか脂肪を寄せて……」
 「ひゃん! な、奈津実さん、くすぐったいよォ」
 「アハハ、ちょっとだけ我慢してね〜。本来は自分でやるから、そんなくすぐったくはないだろうから」
 「う、うん……でも、何でこんなコトするの?」
 「フフ、乙女のたしなみ……ってか見栄だよン。こうした方が、ブラジャーのカップの中味が充実して、オッパイが大きく見えるんだよ。ミユキちゃんも鏡、見てごらん」
 奈津実がミユキの両肩に手を置き、鏡の前に誘導する。
 「へ? 鏡って……あっ!」
29『要12歳、職業・女子高生』その3:2010/11/10(水) 00:35:57 ID:aazthPtr
 視線の先、鏡の中には、ミユキ自身の目から見ても「今時の女子高生にしては、ちょっと小柄な女の子」にしか見えない「少女」が映っていた。
 親戚とは言え、顔立ち自体は本物の美幸とさほど似てないはずなのだが……今鏡に映っているのは、どういうワケか「美幸」そのものに思えた。
 「え……う、嘘?」
 ミユキ自身も、そんな自らの姿に違和感を覚えることなく、それが当り前のように感じる。
 (あれ? ボクって、本当は早川美幸じゃなくて浅倉要……のはずだよね?)
 自分のアイデンティティが揺らぐような、不安定な感覚に一瞬目眩がしたミユキだったが。
 「ん〜、ミユキちゃん、可愛いっ!」
 背後から奈津実に抱きしめられることで、すぐに現実感覚を取り戻す。
 「うわっ! な、奈津実さん、はなれてよー!!」
 「ヤダよ〜。それに、女の子同士のスキンシップなら、コレくらい普通だよ? 早く慣れないと」
 「わ、わかった。わかったから、いったん離してーー!」
 キャイキャイとはしゃくふたりの様は、すっかり同年代の女の子そのものだ。
 だから、ミユキは気付かなかった。あるいは、見過ごしてしまった。
 自分が、たった今、取り返しのつかない第一歩を踏み出してしまったコトに。

-つづく-

以上。ブラつけるだけで1話とかありえねーですかね。次がお風呂編。その次が翌日の新学期登校編になる予定だったり。
その次あたりに、閑話として「美幸16歳、職業・男子小学生」の方の続きでも挟むつもりです。
30名無しさん@ピンキー:2010/11/10(水) 01:17:49 ID:/WgsJ6aH
続き来てたGJ!

職業男子小学生のほうも期待
31名無しさん@ピンキー:2010/11/10(水) 04:36:27 ID:gBU1fDLx
これはGJ!

要君が女同士のスキンシップに慣れる!
つまり女の子の胸とかを触って楽しむようになるのですね。
鈴村里佳子とか海山幸子みたいな。
32名無しさん@ピンキー:2010/11/10(水) 07:29:00 ID:/WgsJ6aH
【その1】
「ただいまー」
誰もいないのがわかっているのに、ついつい言ってしまう帰宅の挨拶。
電気をつけると、自慢の部屋が蛍光灯に照らし出される。
自分で言うのもなんだけど、家具のチョイスや配置とか、
雑誌とかのモデルケースに使われてもおかしくないほどハイセンスにまとまってると思う。
部屋着に着替え、ベッドに寝転がりながら今日買ってきたファッション誌に目を通す。
女子大生たるもの社会情勢にも精通しておかないと、と、BGMはテレビのニュース。
相変わらずよくならない社会情勢を流し聞きしながら、ファッション誌のページをめくる。
『愛されネルシャツしか欲しくないっ!』
『今日から私、バンダナ使いの達人です!』
『冬のかわいいを完成させる 主役ケミカルウォッシュはコレ!』
『どっちも毎日のコーデに必要だから! カジュアル軍手VSフェミニン指貫グローブ』
『結論! 使えるのは黒ウェストポーチ&ディパック!』
『おねだりしてもカレシもナットク! Xmasプラモ&フィギュア』
ステキでカワイイ厳選されたファッションアイテムの数々と、
それを身にまとって微笑むトップモデルたち。
どのページも見ているだけで胸がときめき、自分も早く冬物をゲットしに行かなくてはと気が焦ってくる。
「しかしみんなスタイルいいなぁ……」
同じぐらいの年頃に絶大な人気を誇るファッション誌のトップモデルたちだけあって、
みんなでっぷりとウェストが出て、スキンケアもしっかりしてるのかニキビがたくさん吹き出ている。
ヘアスタイルだってところどころに天使の粉が浮いているマットブラックな長い髪を、
髪の毛と同系色のゴム製ヘヤアクセでまとめている最新のもの。
自分もスタイルに自信があるほうだし、たまに街を歩いているとスカウトに声をかけられるぐらいだけど、
彼女たちを見ているとそんなものがどこかに吹っ飛んでしまう。
33名無しさん@ピンキー:2010/11/10(水) 07:29:49 ID:/WgsJ6aH
【その2】
『……それでは最新のアキハバラ・オタク事情を見てみましょう』
テレビにふと目を移すと、最近なにかと目にするオタクの特集が始まっていた。
特集といっても、どちらかといえば動物園の珍獣を見るような、そんな感じのものばかりで、
今日も案の定というかそのような内容だった。
『世界に誇る日本のコスメ』とか『アキハバラのドレスアップ文化を世界に発信!』とか、
見ているこっちが恥ずかしくなるような、そんなワードを連発するナレーション。
「ほら、これが新作のマスカラで、つけるだけでまつげがバサバサいうぐらいに長くなるんですよ!」
「こんなに口紅の種類が揃っているのは日本ならでは!」
聖地と呼ばれる秋葉原を歩いているオタクたちは
誰も彼もが気持ち悪いほど痩せてて肌もツルツルと荒れ放題と不健康そのもの。
やれシフォンワンピがどうだのトレンカがどうだの、
新作ファンデが肌へのノリがどうだのと、まるで暗号のような言葉を並べ立てていて、
いい年して気持ち悪いことこの上ない。
「もっともっと、オタク文化をアピールしていきたいですね!」
髪を茶色く染め、ゆるいパーマを当てている奇妙な髪型をした男のオタクが、
満面の笑みでなにやら力説している。
髪型だけでなく服装も何段もヒダがついたスカートや白いブラウスなど悪趣味そのもので、
足許なんていまどきありえないような細かい模様で構成されたストッキングや、
かかとの高さが5cm以上あるヒールなんていうオタク丸出しのファッション。
あれで街を歩けるなんて、本当に恥ずかしくないのかしら。
もしもあんなのが自分の彼氏だったら、あまりの恥ずかしさに死んでしまう。
「ホント、マーくんが彼氏でよかった♪」
携帯を開き、保存してある愛しの彼氏の写真を見る。
太いブレイドヘアにシルバーフレームの眼鏡、
ダメージ加工したワンピースとスニーカーでキメたモデル並にカッコイイ男の子が、
私だけに見せてくれる笑顔で写っている大事な写真。
テレビに映っていたオタクとは比べ物にならないぐらいにオシャレな、
誰に見せても恥ずかしくない自慢のボーイフレンドだ。
ふいに携帯が鳴り、メールの着信を知らせる。
マーくんだ。
「明日『学校の中心で軽音楽を奏でる』見に行かない?」
今日、大学の友達と「見たいね」と話していた、
女の子4人がバンドを組んで学園祭に挑むという話題の感動巨編だ。
話題作だって言っても『こいそら!』みたいなオタク向けの映画だったらどうしようかと思ったけど、
そこは流行に敏感なマーくん。
ちゃんと私の見たい映画の好みもわかってる。
「明日、なにを着ていこうかなぁ」
マーくんに返信したあと、自慢のワードローブを広げて、
明日のデートに備えて勝負服の選定をはじめる。
やっぱかわいいところをカレシに見てもらいたいよね。
女の子だもん。
34名無しさん@ピンキー:2010/11/10(水) 07:31:54 ID:/WgsJ6aH
人同士の立場交換ではなく、もっと大まかに
『オタク文化⇔女の子のファッション文化』
の交換なんてのを思いついたけど、
奇をてらいすぎたか、よくわからないものになってしまった(´・ω・`)

>>25
確かに、ちょっと小さすぎたかなと反省

あと、「ちゃんとお嬢様学校だった頃の白薔薇女学院」の描写をいれておくべきだったかなとか、
あとになっていろいろとやりたかったことが出てきます
35名無しさん@ピンキー:2010/11/10(水) 07:47:39 ID:hidYtY3D
GJ
全然アリだとおもいます
368:2010/11/10(水) 17:49:27 ID:hK66apu+
前スレのデブのキモヲタと美人モデル入れ替わりと共に良作!
オタクと最先端女子ファッションなんていう激しいギャップが面白いです。
そして前作のお嬢様学校と不良校の続きも良かったです。
さらに肉体も男子化して行動もさらに不良化して行ったりして
電車で知り合った女の子?と…とかスレ違いになりそうなので
脳内妄想しておきます。
37名無しさん@ピンキー:2010/11/10(水) 20:39:27 ID:qMiE2p21
豊作でいい感じだなあ
38名無しさん@ピンキー:2010/11/12(金) 00:14:24 ID:gpu5KyGz
ずっと待ってた逆転学園の2話キター(;▽;)
1話に続いて悉くツボな展開でめっちゃうれしー
39次期当主はメイドさん!?:2010/11/14(日) 21:27:23 ID:WIJ31ymj
 その後のゆかりの働きぶりは、いつもにもまして勤勉で素晴らしいものだった。
 「自室」を出て、最初に向かった台所では昼食の用意の手伝いをする。と言っても、野菜の皮むきなどの下拵えが主なのだが、朝以上に巧みな包丁さばきにメイド長が感心したくらいだ。
 昼食の配膳と給仕も「メイドとして」完璧にこなしてみせる。
 あおい達の食事が終わってから厨房で昼食をとり、ひと息入れたのち庭の花壇に水を撒き、雑草を抜いて手入れする。
 そのあとは進んで風呂場の掃除を引き受ける。
 ストッキングを脱ぎ、メイド服の袖を肘までめくりあげて、柄付きブラシで桐生院家の大浴場を丁寧に掃除する様は、誰が見ても「生粋のメイドさん」だったろう。
 「ふぅ……あ、そろそろ、あおい様にお茶を持って行って差し上げないと!」
 風呂掃除が終わっても、休む暇もなく、本来の「主」の世話に戻る。
 傍から見ていると忙しくて大変だろうと思えるのだが、本人はこういう「家の中のお仕事」が好きらしく、あまり苦にならないらしい。
 優れたメイドの必須技能である「美味しい紅茶」を淹れ、ティーポットとクッキー、そしてふカップをふたつ銀色のトレイに載せて、ゆかりは「自室」で仕事をしているだろうあおいの元に向かった。
 ──コン、コン。
 「どうぞ〜」
 中から許可があったのを確認してから、ゆかりは扉を開いた。
 「失礼します」
 トレイを提げ持ちつつ、軽く会釈して葵の部屋に入る。
 「あおい様、あまり根を詰めないほうがよろしいか、と。そろそろご休憩なされてはどうですか?」
 ゆかりの言葉に、ようやくあおいは机から顔を上げ、振り向いた。
 「──そうだね。ちょっと休憩しちゃおうかな。よかったら、一緒に雑談につきあってよ」
 あおいの言葉にニッコリ微笑むゆかり。
 「はい、ありがとうございます♪ 実は、そう言っていただけると思ってました」
 カップをふたつ持って来たのは、それが理由である。
 「本日はダージリンのファーストフラッシュにしてみました」
 透明度の強い液体から爽やかな香りが立ち上る。
 「あ、いい匂い……紅茶淹れるの上手いなぁ」
 「恐縮です」
 お茶とお菓子、そして他愛もない雑談を、しばし楽しむふたり。
40次期当主はメイドさん!?:2010/11/14(日) 21:28:06 ID:WIJ31ymj
 「それにしても……フフッ」
 会話が途切れた際に、フッと苦笑するあおい。
 「? どうかしましたか、あおい様?」
 「いやいや……すっかり、わたしになりきってるなぁ、と思って。ね、「ゆか姉」」
 「!!」
 途端に真っ赤になるゆかり──こと本物の葵。
 「か、からかわないでよ〜、ほかの人にバレないように、必死なんだから」
 「あはは、ごめんごめん。でも、さっきまでの仕草とか言葉づかいとか、わたしなんかよりよっぽどパーフェクトなメイドさんに見えたよ?」
 まぁ、その辺りはふたりの本来の性格の違いだろう。
 紫は、文武両道な学校一の才媛で、前任者からの指名と全校生徒9割以上の信任を受けた生徒会長でもある。
 ここ1年ほど前から葵付きの侍女をやっているとは言え、本来はむしろリーダーシップをとって他の者を引っ張り、あるいは新たな企画を実現させるようなことを得意としている。
 対して葵は、性格的に言えばどう見ても補佐役向きだ。強引なリーダーの気がつかない部分をフォローし、あるいは裏方として支える方が性に合っている。
 さらに言えば、経営者になるより料理人や園芸家の方が絶対に適職だ。小学校のころの作文で、将来の夢として「コックさんかお花屋さん」と書いたのは伊達ではない。
 このふたりの悲劇は、生まれる親を間違ったところだろう。
 もし、紫が本家の娘で、葵がその弟筋の生まれであれば、有能な女当主と気が利く秘書(あるいは執事ないし婿?)として、極めてスムーズに一族やグループ会社の運営に当たれただろう。
 あるいは、葵が家を離れて、コックになるなり花屋を営むなりの選択も許されただろうに。
 「でも、まぁ、仕方ないよ。誰だって生まれは選べないんだし……それに、僕にはユカねぇがいてくれるし」
 「うん、その点だけは、安心してくれていいわ。わたしから離れることは絶対ないから……ついでに言うと、アオイちゃんを逃がす気もね」
 ニヤッと笑う様子は、何と言うか「おとこまえ」な感じで、葵の服を着て男装していることもあって、下手な男よりよっぽど「カッコよく」見えた。
 思わず、ポーッと見とれてしまう、ゆかり。
 「ん? どうかした?」
 「──い、いえ、何でもありません、あおい様」
 「そ。ならいいけど。じゃあ、そろそろボクは仕事に戻るよ。あとひと息でキリのいいところまでできそうだし」
 「はい、承知致しました。では、お夕飯になったら、またお呼び参りますね」
 ゆかりはカップ類を片付けてトレイに載せ、両手を腰の前で揃えて深々と一礼すると、トレイを持って葵の部屋を出た。
41次期当主はメイドさん!?:2010/11/14(日) 21:30:21 ID:WIJ31ymj
 台所に戻りながら、ふと物思いにフケる。
 (それにしても、私なら今日一日掛けても終わらないくらいの量があったはずなのに……さすがは、あおい様、手際良くお仕事片付けてらっしゃいますね)
 そんなコトを考えながら、些細な違和感を感じる。
 「あら? 何かヘンな気が」
 台所の前まで来たところで首をひねっていたゆかりだったが……。
 「あ、紫さん、ちょうどいいトコロに。この瓶のフタがちょっと堅くて。開けてみてもらえないかしら?」
 メイド長に頼まれて我に返る。
 「あ、はい、いいですよ〜、貸してください」
 そんな風に、メイドとしての業務に呑み込まれてしまったが故に、結局「彼女」は違和感の正体に気がつかなかった。
 葵の部屋で本物の紫に指摘されるまで、そして今も、自分が特に意識せずに「あおい付きのメイド、ゆかり」として振る舞っていることに。

#前回と同様のヒキで申し訳ない。紫とゆかり、葵とあおい、両者入り乱れてわかりにくく見えるかもしれませんが、実は半ば意図的です。「あれ、この言葉を言ったのって……?」と混乱してもらいたくて。
#次回は、ちょいエロシーンが入る予定。やっぱりノロノロ進行だなぁ。
42名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 10:06:58 ID:Jql0FdYt
【その1】
チャイムの音が鳴り響き、にわかに周囲が騒がしくなる。
眠い目をこすりながら布団からはいずりだし、時計を確認する。
午後3時半。
いつもどおりの時間だ。
これ以上布団の中でのんびりしていると、『あの時間』に間に合わなくなってしまう。
飲みかけのペットボトルや空のコンビニ弁当箱が散乱する部屋の中から、
的確に財布と携帯電話を探し出して出撃準備を整える。
ぶるり。
「少し肌寒くなったな」
ついこの間まで動くのすら億劫なほど暑かったくせに、
最近はめっきり冷え込んできてTシャツだけでいると寒くてたまらない。
せっかく買った『ばんどだ!』のあきにゃんTシャツを見せびらかせないのは残念だけど、
ここはジャージを羽織っていくのが正解だろう。
中学時代から愛用しているジャージを着込み、
やはり長年履き続けているスニーカーを履けば準備は万端。
「大悟、行きまーす!」
夢と希望に満ち溢れた約束の地へと歩を進めるため、俺は玄関を飛び出した。
あくまで、脳内で。
本当に勢いよく飛び出したら、夜勤明けで寝ている隣のタクシー運転手を起こしてしまう。
なにが楽しくて毎日奴隷のように働いているのかまったくわからんオッサンだけど、
怒るととにかく怖い。おっかない。
普通に歩くだけで足音が響き渡る鉄製の階段を、ゆっくり、そーっと降りていく。
ぎいぃぃぃぃ。
最後の最後になって、びっくりするほどの大きさで階段がうなりをあげた。
まさか。起きては。いないだろうな。
恐る恐る振り返ったけど、オッサンの部屋のドアは開く気配すら感じられない。
おびえて損した。
まったく、このボロアパートめ、脅かしやがって。
せっかくの大事な時間をロスしてしまった。
しかし、時間をロスしたからといって、決して慌てたりしない。
走ったところで息が切れるだけだし、全然早くつかないし、
それにひざが痛くなるし、まったくいいことはない。
紳士たるもの、焦っても走ったりしてはいけないのだ。
まぁ紳士と言っても変態紳士だけどな!
「ふひっ」
普段使い慣れている変態紳士というフレーズがなぜだかツボに入り、笑い声が漏れてしまう。
いけないいけない。
43名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 10:07:39 ID:Jql0FdYt
【その2】
そうこうしているうちに、約束の地である偉大なる神の長椅子
――世間では『公園のベンチ』と呼んでいる――にたどり着く。
そこにいつものように腰掛け、携帯電話をいじっている振りをして
通りがかる小学生を自然に眺める。
見るのはもちろん、小5から小6ぐらいの女の子。
女子小学生。
スイーツ(笑)な思考に支配されて糞ビッチ化したメスブタどもが、
天使のように輝いているわずかな時間。
中学生はスイーツ(笑)予備軍だし、小4だとクソガキすぎる。
この2年間あまりの神に与えられた奇跡の一瞬を目に焼き付けないのは、
それこそ犯罪に等しい行為といえる。
自然が生み出した芸術たる彼女たちを真剣な眼差しで見つめ続ける俺。
まるでピカソの絵を真剣に眺める芸術家のようだ。
「うわ、キモブタがまたいるよ」
「ニヤニヤ笑ってる」
「ゆかちゃん、あっちゃん、あっちから帰ろ?」
人のことを見るなり、キモいとか言う失礼なガキども。
それに、この真剣な顔のどこがにやけているというのか。
「お、おお、俺のどこがキモいんだ!?」
「全身全部」
リーダー格の女の子がずけずけと言い放ちやがる言葉遣いと、
ショートカットに絶対領域がまぶしいショートパンツとニーソックスの組み合わせから
脳内で気の強いボクっ娘だと認識をする。
黙っていればかわいいのに、まったくもったいない。
「クラスのみんな、あんたのこと『キモい』って言ってるよ」
白い上着に黒いスカート、小学生のクセにパーマをかけているような髪形の子が
続いて俺に詰め寄る。
こいつは絶対に将来スイーツ(笑)なヤリマンになるに違いない。
「しかも臭いし」
なんてこと言いやがる。
マナーってものがなってない。
「ねぇみかちゃん、あっちゃん、なにされるかわからないから、逃げよ?」
2人の後ろに隠れるようにして、俺を見つめている美少女が1人。
前髪ぱっつんの姫カットでワンピース、ちょっとおびえているような気の弱そうな顔。
お嬢様キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!と叫びたくなるような、
現代によみがえった天使が、そこにいた。
ぱしゃり。
思わず、反射的に携帯カメラのシャッターを切る。
「あー! なに撮ってるのよ!」
ショートカットの子が俺の携帯を奪い取ろうと飛びついてくる。
スイーツ(笑)予備軍はなぜか泣き出したお嬢様を必死に泣き止ませようとしている。
「あっちゃん、ゆかちゃん、先生呼んでくるね!」
ビッチ予備軍が、突然とんでもないことを言い出してきた。
先生を呼ぶだと!?
いくら言い訳したとしても、あいつらはまったく話を聞いちゃくれない。
紳士だ何だと言っている場合じゃない、俺はその場から慌てて逃げ出した。
44名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 10:08:28 ID:Jql0FdYt
【その3】
「はぁはぁはぁ……ち、ちくしょう……ふぅはぁふぅ」
なんとか公園から逃げ出したはいいが、疲労でその場にへたりこむ。
数年ぶりに走ったせいか、息が切れて仕方がない。
荒れる呼吸を整えながら必死に自販機まではいずり、コーラを購入する。
ごきゅごきゅ……ぷはぁ。げぇぇぇっぷ。
あまりの美味さに、一缶を一気に飲み干してしまった。
コーラの力を借りてようやく動けるようになるまで回復したので、
のっそりと立ち上がって歩き出す。
無理に走ったせいか、ひざが軋むように痛い。
「くそぅ、あのクソガキめ……。
 なんで写真を撮るぐらいで犯罪者扱いしやがるんだ」
思い出しただけでも腹立たしい。
美しい少女を愛でるのは人類の義務だというのに、それを理解できないとは。
やはりスイーツ(笑)予備軍はスイーツ(笑)予備軍でしかないのか。
「くそ! くそ!……いてて」
苛立ちと痛みが、さらに怒りを加速させていく。
この怒りは良質のロリでしか癒せない。癒せるはずがない。
腐れガキの記憶を、天使のような少女たちで上書きしよう、そうしよう。
と、いう訳で、行きつけの本屋へと足を向ける。
自動ドアを通り、ビッチ共御用達のファッション雑誌コーナーを抜け、
誰が買うのかわからない専門書コーナーを越えると、
赤字で『R18』と書かれた黒い暖簾が見えてくる。
そう! ここは一見ただの本屋なのだが、
奥のほうにある18禁コーナーにはお宝書物が山のように置いてある、
現代のオアシスとも言うべきステキな店なのだ。
そこの棚1つを占拠するように陳列されている、様々なジュニアアイドル写真集や雑誌の数々は、
表紙を眺めているだけで股間が盛り上がってきてしまうぐらい素晴しい。
どれもこれも、少女の可憐で美しい一瞬を切り出していて、
どれを買おうか迷って決められないほどだ。
『高木みか写真集 みっかみかにしてやんよ』
『ジュニアアイドル専門誌 シュガー』
『ロリータ専門コミック誌 リータ』
1時間近く悩んで悩んで悩みぬいて、選びに選んだ3冊をレジへと持っていき、
紙袋を抱きしめるようにして家路へと急いだ。
45名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 10:08:52 ID:Jql0FdYt
【その4】
家に着いた瞬間、下半身は既にキャストオフ状態。
股間もすでにピキピキといきり立っていて、これからはじまる快楽の宴を今か今かと待ちわびている。
まずは写真集を開いてステキなページを探しながら、チンコをいじりはじめる。
顔にクリームをつけて微笑んでいる写真とか、体操着姿でストレッチしている写真など、
表紙からフルスロットルで実用的な写真が満載で興奮もいきなりMAX。
さらにはスクール水着で水浴びしている写真や、水着を着替えている風のシーンの写真など
『これでヌけなきゃ男じゃない!』といったものまでバラエティに富んだ、まさに神の一冊。
「……ぅっ」
みかタンが水着を胸元までずらした、うっすら胸にピンク色の「なにか」が見えている写真で
とうとうガマンしきれずに放出してしまう。
「ふぅ……」
放出した後は、まるで世界の真理を解明した賢者のような、悟りの境地にも似た心境になる。
いわゆる『賢者タイム』でこそわかるものもあるわけで、
この写真集で微笑んでいる天使が、
昼間公園で俺のことを「臭い」と言ったあの少女だということに気がついた。
あんなクソガキが……スイーツ(笑)ロリが……ビッチ予備軍が……
こんなステキな天使だったなんて……!
「ほふぅ! みかタン! みかタン! みか様ぁ! みか様ぁぁぁぁぅ!」
みかタン、いや、みか様の蔑んだ目が! 罵倒の言葉が! なにもかもが!
ご褒美に思えてきて、出したばかりにもかかわらず激しい欲情に襲われて、
痛くなるぐらいに勃起してしまう。
触らずともイメージだけでビクンビクンと脈打つチンコの先からは、
噴水のように精液がびゅくびゅくと噴き出してしまっている。
「おほぅふぅるぅぅっ! 出る出る出ちゃうぅぅぅぅぅ!」
なにもかもがわからなくなるぐらいの快楽で頭の中が真っ白にはじけ、そして意識を失ってしまった。
46名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 10:11:50 ID:Jql0FdYt
【その5】
気がついたときには辺り一面自らの精液で汚れ、イヤなにおいを立てていた。
「おふぅ……やってしまった……」
オナホをはじめて買ったときと同じだ。
あまりの気持ちよさに、我を忘れて猿のようにオナニーしまくってしまった。
「ああ……みか様の写真集もデロデロだ……」
旧スクを着て天使のように微笑むみか様に、まるで顔射したかのようにべっとりと精液がついてしまっている。
ところどころふやけ、またはカピカピに固まってしまっている写真集は、
いくら自分のものが原因とはいえ触りたくはない。
「仕方ない……もう1冊買おう」
泣く泣く写真集を捨てる予定の古雑誌の山に積み、部屋の汚れをティッシュで拭いていく。
「おっと、他の本は大丈夫かな」
そうだ。今日買ったのはみか様の写真集だけではない。
ジュニアアイドル専門の雑誌と、ロリコン漫画雑誌も買っていたのだ。
まだ読んですらいないものまで精液まみれだったらどうしよう。
そう思いながら見てみると……紙袋こそぐちょぐちょだったが、
中の2冊は奇跡的に無傷だった。
「ふひっ助かった」
破り捨てるように紙袋をひっぺがし、本を救出する。
と、その時、本の間から透明のビニール袋に入った紙が出てきた。
「なんだこりゃ?」
なにか台紙のようなものに、御札のようなものがくっついている。
台紙には『望んだ人になるためのおまじない』と書かれている。
なんでも御札になりたい人の写真を体液を使って貼りつけ、
それを自分の額に同じく体液を使って貼りつけたあと満月の光を浴びれば、
写真に写った人物になれるらしい。
なんともうさんくさい代物だ。
たぶん、オカルト雑誌だかなんかの付録が、間違えてまぎれてしまったのだろう。
「ゴミだな」
破いた紙袋と一緒にゴミ箱の中に放り投げ、部屋の片付けを再開する。
47名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 10:12:25 ID:Jql0FdYt
【その6】
壁という壁、床という床、あらゆるところに欲望の残滓が飛び散っていて、
手当たりしだい拭いていっても一向に終わらない。
カーテンに飛び散ったものを拭いている時ふと窓の外を見ると、
まん丸の月が煌々と輝いていた。
「……今日は満月なのか」
あの御札の使用条件に適っているな。
ちらりとゴミ箱に視線を動かし、心の奥に湧き上がった『なにか』を否定するように頭を振る。
この科学万能時代に、こんな魔法だか呪いだかわからないようなものが効果を発揮するはずがない。
しかし。万が一。もし本当に。
「ま、試してみるだけ」
そう、試してみるだけ。効果がないのは当然だし。
ゴミ箱から御札を取り出し、パソコンデスクの上に置く。
「さて、写真はどうするかな……」
精液まみれになったみか様の写真集から、お顔だけを切り取って使ってみるか。
しかし、オナニーの対象としてはこれ以上ない女神のような存在のみか様だが、
違いのわかるロリコンとしては『みか様には心が震えない』のだ。
そう、少女とはもっと可憐で! 慎ましく! お淑やかでなければ!
そんな写真があったかな……と、自慢のロリ画像フォルダを開こうと思った瞬間、脳裏に電流が奔る。
そうだ! 今日撮ったものがあったじゃないか!
携帯電話の保存フォルダを開き、写真を確認する。
そこには、まるで小動物のようにおびえる少女の姿が映っていた。
前髪ぱっつんロングヘアーでワンピースを着た、まるで人形のような顔をした天使ちゃん。
理想の少女を具現化したような彼女と比べたら、みか様だってクソブタほどの価値しかない。
そうだ。どうせ試すなら……と、急いで写真をPCに転送し、速攻でプリントアウトする。
インクジェットプリンタが唸りをあげ、程なくして妖精の姿を映し出した写真を吐き出す。
「で、これを御札に貼って……と」
体液ならば、そこらじゅうに文字通り腐臭を立ててる。
ちょっと汚いが、おまじないのため。まだ液状の精液を使って写真を貼りつける。
続いて、自分の額にも……。
さすがの変態紳士といえども、これは気持ち悪すぎる。
が、そうも言っていられない。
ねちょりと微かな音とともに、額に御札を貼りつけた。
「これで満月の光を浴びればいいんだったな」
窓を開き、憎たらしいほど輝く月を見上げる。
すると、額に貼った御札が突然青白い炎を上げて燃え、跡形もなく消え去ってしまった。
「おおほぅっ!? あつ……くない?」
あれだけ派手に燃えたはずなのに、熱いとすら感じないまま炎は消え、
後に残ったのはわずかな精液の臭いだけ。
「なんだったんだ一体……」
なんかとんでもないことをしてしまったんではないか。
一旦そう思ってしまったが最後、急に恐ろしくなってきてしまった。
「いいや、今日は寝てしまえ」
どうせ部屋の中が臭いのはいつものこと。
時間はちょっと早いが、俺はそのまま敷きっぱなしの布団にもぐりこみ眠ることに決めた。
48名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 10:12:54 ID:Jql0FdYt
【その7】
昨晩早く寝たせいだろうか、今日はやけに早く目が覚めてしまった。
時計の針はまだ7時半。
こんな時間に起きるのはコミケとかそういうイベントのときだけだというのに!
なんだか損してしまった気分になったが、起きてしまったものは仕方がない。
まずはパジャマから着替えて……。
いや、パジャマなんてここ10年以上着た覚えがない。
なにを考えているんだ。
とりあえず朝ごはんでも食べるか、と、お湯を沸かしてカップ麺の封を開ける。
もちろん食べるのは、いつものギガントカップ濃厚豚骨醤油味の超特盛。
お湯を注ぎ、3分間待ち、さぁ食べようと蓋を開ける。
むわりと立ち込めるラーメンのにおい。
普段だったらこれだけで腹が鳴るほど好きなにおいのはずなのだが、
今日はやけにこのラーメンのにおいが臭く感じて、どうにもガマンできなかった。
きっと昨日のオナニーで撒き散らした精液のせいだろうと思って、
箸を口に運ぼうとするが、体全体が拒否してしまい吐き気までしてきた。
「……もったいないけど、捨てるか」
カップ麺を流しに置き、他に食べるものがないか探す。
しかし、あるのは違う味のカップ麺か、あるいはカップ焼きそばだけ。
どれも食欲をそそらない。
「仕方ない、コンビニでなんか買ってくるか」
通勤や通学の人たちに混ざり、コンビニへと向かう。
コンビニで買う食い物といえば、カップ麺か弁当、もしくは質より量のスナックパンばかりだが、
今日はやけにジャムパンとヨーグルトが光り輝いて見えていた。
気がつくと既に家に帰っていて、自分の目の前にはジャムパンとりんごヨーグルトが置かれていた。
傍らには、これまた普段絶対飲まないパックのミルクティー。
なんでこんなものを買ってしまったんだろう。
しかも、朝食には全然足りない量。
しかし、いざ食べてみるとこれが意外とボリュームがあり、
ミルクティーを半分飲み終わる頃には腹いっぱいになってしまった。
ジャムパンとヨーグルトは結構腹に溜まるのだな、と思いながら、
流しのラーメンと食べ終わったばかりのりんごヨーグルトの容器を洗い、ゴミに捨てる。
「さて、早起きしちゃったから部屋の片付けでもするか」
ご飯を食べ終わると、今度は部屋の中の散らかり具合が気になってきて、
一念発起して掃除を始めることにした。
まず1年以上敷きっぱなしでじっとりと湿った布団を干し、
続いてテーブルとしてしか用を成していないコタツを一旦家の外にどかす。
そうして広くなったスペースを活用して、本やガラクタを整理したりゴミをまとめたり。
よくもまぁ、この狭いアパートにこれほどのゴミがあったのかと思うほど、
次から次へとゴミが出てくる。
ついでだからと、古雑誌もまとめて捨てる。
もちろん精液まみれのみか様も。
「おう、うるせぇぞ!」
突然怒鳴り声が聞こえたので振り返ったら、隣のタクシー運転手がドアの外に立っていた。
ホコリがこもるからと開けっ放しでやっていたのは失敗だったか。
「……って掃除してるのか。スマンな、がんばれよ」
いつもの剣幕はどこへやら、オッサンは「漫画喫茶で寝てくるかなぁ」
とつぶやきながらどこかへ行ってしまった。
なんか毒気が抜かれてしまったが、怒られなかったのはありがたい限りだ。
俺はさらに気合を入れて、部屋の掃除に全力を注ぐのだった。
49名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 10:13:25 ID:Jql0FdYt
【その8】
ゴミやいらないものをまとめて、すっかり掃除し終えたら、もう夕方になっていた。
部屋の中はびっくりするぐらいすっきりしたが、
棚に並んでいる食玩やフィギュアが浮いて見えるほど殺風景になってしまった。
「うーん……なんか片付けすぎちゃったかな」
ちょっとやりすぎてしまった感じがするけど、そこはそれ。やってしまったものは仕方ない。
またいずれ、いろいろ買えばいいだろう。
「それにしても腹が減ったな」
考えてみれば、朝にジャムパンとヨーグルトを食ってから、何も食べていない。
ラーメン屋で何か食べるか、それとも竹屋で牛飯でも食うか。
いろいろ悩んだ結果、俺が選択したのはなんと『自炊』。
しかもお湯を注いで3分間とかそういう類ではなく、
ご飯に味噌汁、ちゃんとひき肉をこねて作ったハンバーグ。
それと自家製フレンチドレッシングをかけた野菜サラダ。
ちょっと手間はかかるけれども、この前家庭科でやったから作り方はばっちり覚えている。
いや、家庭科なんて学校を卒業してから1回もやってない。
なんで『この前』なんて勘違いしたのだろう。
とにかく、1時間以上かけて夕飯が完成した。
「いただきまーす」
普段だったら絶対言わない言葉も、なぜだか自然と湧き出てくる。
「こういうのもいいな」なんて思いながら、サラダやハンバーグに箸を伸ばす。
もぐもぐ。ぱくぱく。
よく噛んで食べたせいか、いつもの半分以下の米の量で腹がいっぱいになってしまった。
食べ終わった後は、もちろん洗い物。
面倒くさいけれども、すぐに洗い物をしたほうが手早く終わって楽だとママが言ってたし。
ママ? 母親のことはいつもババアって呼んでたはず。
そもそも、うちのババアは洗い物は嫌いだったから、
『食べたらすぐに洗い物』なんて習慣は存在しなかった。
一体、さっきからなにを勘違いしているのだろうか。
前に見たアニメやマンガの話と、記憶がこんがらがっているのだとしたら問題だ。
「……とりあえず、風呂でも入るか」
今日は一日中掃除してホコリまみれ汗まみれになったので、
いつもなら入るのが億劫な風呂もやけに楽しみでしかたがない。
まずは体を流し、頭からお湯を浴びる。
「ええと、シャンプー、シャンプー」
目をつぶりながら、シャンプーを探す。が、そもそもうちにはシャンプーなんて存在しない。
ない物を探しても見つかるはずがない。
「……明日買いに行ってくるか」
ない物は仕方ないので、今日のところは体を洗う石鹸で何とかすることにして、
明日スーパーでシャンプーとリンスを買いに行ってこよう。
「あー、気持ちよかった」
面倒くさくて5分ぐらいで上がってしまうことが多い風呂が、今日はやけに気持ちよかった。
風呂のあとは髪の毛を乾かしつつテレビのバラエティ番組を見て、
芸人のばかばかしさに笑ったり、アイドルのダンスを堪能したり。
「……眠いと思ったら、もう9時か」
壁にかかっている時計の針は、既に9時を回っていた。
『俺の弟がこんなに妹なはずがない』が見たいけど、今日はどうにも眠すぎる。
仕方なく布団を敷いて、部屋の電気を消す。
やけに太陽のにおいがする布団はふかふかと柔らかく、
いつもならオナニーしないと眠れないのに、今日はすぐに寝ついてしまった。
50名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 10:15:57 ID:0FY5Fn+M
【その9】
部屋の大掃除をしてから2週間。
あれからずっと朝7時に起きて9時に寝るような、健康的な生活をしている。
HDDにアニメは溜まりっぱなしだし、ゲームもしていない。
もちろんPCの電源もほとんど入れてないし、それどころかオナニーすらしていない。
「なんか、オタクとしてダメになってきちゃった気がする」
お昼ごはんを食べたあと、ふと自問してしまう。
真人間に近づいているのかもしれないが、どうにも落ち着かないのは確かだ。
「どうしようか、ジュリエッタ」
シャンプーとかクッションとか買って来たときにいっしょに買った、
うさぎのぬいぐるみに話しかける。
ロップイヤーのかわいらしいうさぎは、何も答えずつぶらな瞳で見つめ返してくるだけ。
「……髪の毛、伸びたな」
ボサボサに伸びきった髪の毛が視界に入り、やけにうっとうしい。
「そうだ、今日は髪の毛を切りに行こう」
やっぱり伸びすぎている髪の毛はかわいくないからね。
思い立ってすぐに駅前に出かけ、記憶を頼りに店を探す。
「あったあった」
看板には『ヘアサロン アッシュ』と書いてある。
完全アウェイなはずの美容室だけど、今日は気分もよかったのですんなり入ることができた。
「いらっしゃいませ」
美容師のお姉さんに案内されるまま椅子に座り、手早くシャンプーされる。
わしゃわしゃと洗われ、乾かされ、別の椅子に案内される。
「今日はどうする? いつもと同じようにする?」
初めて来た店だから、いつもも何もないはずだけど、お姉さんの言うままに髪の毛を切ってもらう。
「今日はワンピースじゃないなんて、珍しいね。どうしたの?」とか
「ホント、髪の毛がまっすぐで綺麗ね」とか
さっきから自分のことを前から知っているかのように話すお姉さんに、適当に相槌を打つ。
もしかしたら、お姉さんは別の人と勘違いしているのかもしれないけど、
勘違いしているならばそのままにしておくのがいいだろう。
軽快なはさみのリズムと、髪の毛が切られる微かな音。
「はい、できあがり。こんな感じでいいかな?」
眉毛にかかるぐらいの長さでまっすぐに揃えられた前髪と、すらりと伸びる後ろ髪。
いつもと同じ、お気に入りの髪型だ。
「うん、ありがとう」
微笑むお姉さんに、会心の笑みで返事をする。
「そうだ、今日はちょっと髪型アレンジしてみる?」
お願いします、と返すと、お姉さんはヘアゴムを準備した。
くるり、するりと、瞬く間に髪の毛が頭の左右で結ばれて、いわゆる『ツインテール』へと変貌を遂げた。
「ちょっと幼くなっちゃったかな?」
「わぁ、お姉さんありがとう♪」
普段とは違う髪形に、なんだかうれしくなってきてしまう。
「じゃ、またね」
レジで料金を支払い、お姉さんとお別れする。
髪の毛を切ったことだし、せっかく駅前に来たのだからと、デパートで洋服を買うことにする。
せっかくこんなかわいい髪形にしてもらったんだから、似合う格好したいしね。
久しぶりに来る洋服売り場は、まるで宝物がずらりと並んだ陳列庫のように輝き、
いろいろ目移りしてしまう。
「あー、これかわいいなぁ」
その中でもひときわ目を引いたのが、ボレロがついた赤と黒のチェックのワンピース。
大きさもちょうどいいし、値段もそれほど高くない。
「……足りるかな」
財布の中にいくら入っていただろうと、中を覗いてみる。
大丈夫、この後に今日発売のロリータ雑誌を買っても十分余るほど入っている。
よし、買おう!
レジに持っていって、包んでもらう。
洋服を買った後はもちろん本屋。
最近オタクとして枯れているけど、やはり毎月買っている雑誌は買わないと!
目的のものは決まっているので、悩む必要もない。
さっと買って店を出て、家路を急いだ。
51名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 10:16:33 ID:0FY5Fn+M
【その10】
「だいちゃんだー」
うしろから声をかけられたので振り返ると、そこにはみかちゃんとあっちゃんがいた。
「あ、みかちゃん、あっちゃん」
久しぶりに会った『友達』は、ニコニコと笑っている。
「だいちゃん、髪型変えたんだね」
「ど、どうかな……似合ってる?」
「うん、かわいいよ。とっても似合ってる」
「えへへ……」
おせじだってわかっていても、ほめられるとやっぱりうれしい。
「今日、なに買ったの?」
あっちゃんが、持っている紙袋を覗き込むように聞いてくる。
「うんとね、チェックのワンピース。ボレロもついててとってもかわいいんだ♪」
「今度、着てるとこ見せてね」
「うん、いいよ」
と、3人で仲良く話していると、寒気のする視線を感じた。
なんというか、舐めるような、じっとりとした気持ち悪い視線。
「あ、キモユカだ」
横目でにらむみかちゃんの視線の先には、ジャージを来た女の子が立っていた。
ボサボサで伸び放題の髪の毛にはフケが浮いているし、
着ているジャージはシミだらけで不潔この上ない。
「あいつ、最近キモいんだよね。体育の着替えのとき、ハァハァ言いながら見てるし」
「さっちゃんが笛の先っぽ舐められたって泣いてたよね、この前」
「あいつになんかされる前に、早く行こ?」
「うん、そうだね。早く帰ろ」
じゃあね! と、みかちゃんとさっちゃんは走り去っていく。
ぽつんと1人取り残されると、やけにキモユカが気持ち悪く思えてくる。
このまま一緒にいると、きっとなんかイタズラされちゃう。
一度そういう風に考えてしまうと、ここにいるのがとても怖くなってくる。
私もキモユカから逃げるように、この場から走り去った。
52名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 10:17:01 ID:0FY5Fn+M
【その11】
「ふぅ……」
家に帰り、コクコクと水を飲む。
本当に、あのキモユカは怖かった。
あれは絶対に性犯罪者をする人間の目だ。
みかちゃんとさっちゃん、あんなのがクラスメイトだなんてかわいそうだな。
今日買ってきたワンピースをハンガーにかけ、今日買ってきた本を袋から出す。
高学年の女子に人気のファッション誌『プチアップル』と、少女マンガ雑誌の『はろぉ』。
そして算数のドリル。
あれ? なんでこんなもの買ってきてるんだろう?
今日はジュニアアイドル雑誌の『バニラアイス』とロリコンマンガ雑誌の『幼精天国』を買う予定だったのに。
店員が間違えて渡しちゃったのかな?
でも、これらの本が欲しくないわけじゃないし、別に交換しにいかなくてもいいか。
ペラペラとはろぉをめくり、毎回楽しみにしてる『キャンディマジック』や『ひみつの桜井くん』を読む。
「はぁ面白かった」
マンガを読んだ後は、もちろん勉強。
今日買ってきた算数のドリルを早速はじめる。
時計を見て、決められた時間内に問題を解く練習。
少数は大丈夫だけど、やっぱり分数の計算、特に割り算は難しくて、いくつか間違えてしまう。
「もっと勉強しないとダメだなぁ」
勉強を終えて時計を見ると、もう5時。
そろそろご飯の準備を始めないと……と、冷蔵庫の中を見ると、中はからっぽ。
なんか買いにいかないとダメだな。
なにを作るかは商店街に行きながら考えるとして、
せっかくなので今日買ったワンピースに着替えて買い物に出かけることにした。
家を出る前、洗面の鏡でワンピースを着た自分の姿を映してみる。
髪の毛を頭の左右に結わいたかわいい子が、チェックのワンピースを着て微笑んでいる。
うん、やっぱり私はかわいい!
ワンピースに合う靴を買うのを忘れたけど、それは今度でいいだろう。
お財布を持って商店街へと出かけていった。
「あら大悟ちゃん、かわいいわね」
「あ、こんばんは」
商店街でなにを買おうか悩んでいると、お向かいの田中さんが声をかけてきた。
かわいいなんて……なんか照れちゃうな。
「お母さんのお手伝い?」
「はい!」
「ホント、大悟ちゃんは偉いわねぇ……それに比べてうちのは……」
おせじとはいえ、こうも褒められると心からうれしくなる。
それじゃあね、と田中さんと別れ、頼まれた牛乳とコーン缶を買って家に帰る。
「ただいまー」
玄関のドアを開けると、キッチンのほうからママが姿を現す。
「あら大悟、その靴どうしたの?」
自分が履いていたボロボロのスニーカーを見て、ママが不思議そうに聞いてくる。
「あれ、本当にどうしたんだろ?」
見ているだけで匂いが漂ってくるような、汚らしいボロボロのスニーカー。
ずっと履いていた気がするけど、ママが初めて見たんだから私のじゃない。
なんか気持ち悪くなってきたので、すぐに捨ててしまうことに決めた。
「じゃ、コーンスープ作るから手伝ってね」
「はーい」
ママと2人で並んで、キッチンでお料理。
自分で作った大好物のコーンスープは、いつもよりおいしく感じられた。
53名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 10:17:39 ID:0FY5Fn+M
【その12】
朝。今日もいつも通り7時半に起きられた。
ベッドから飛び起き、パジャマから洋服に着替えて下の階に下りる。
ダイニングではパパがパンをかじり、ママがパパのお弁当の準備をしている。
「おはよう」
「おはよう、大悟」
なんてことはない、朝の挨拶。
今日はそれすらも新鮮に感じてしまう。
昨日の残りのコーンスープとパンで朝食を済ませて、歯を磨き髪を梳かして学校に行く準備をする。
「いってきまーす」
途中でみかちゃん、あっちゃんと合流して、いろいろおしゃべりしながら登校。
苦手な体育こそなかったけど、算数では抜き打ちの小テストがあったり、
給食には苦手なトマトが出たりと嫌なことだらけ。
それでも楽しく過ごせたのは、やっぱり親友のみかちゃん、あっちゃんのおかげかな。
授業も終わり、いつものように3人で下校していると、
公園のベンチに汚らしいジャージを着た、見るからに変質者にしか見えない小太りの人が座っていた。
その気持ち悪い小太りの人は、気持ち悪い笑いを浮かべつつ
「みかちゃーん、あっちゃーん」と2人の名前を呼びながら私たちのほうに近づいてくる。
「うわ、気持ち悪ぅ」
「この時間だから大丈夫だと思ったのに」
2人は目の前にいる小太りの人を、露骨な嫌悪感を示しながらにらみつける。
「ひどいよぅ……親友なのにぃ……ふひっ」
フケだらけでボサボサの髪の毛。汚らしいジャージ。
それとつりあわない、女の子が履くような小さいリボンのついたストラップシューズ。
「おほぅ今日は知らない天使ちゃんがいるよぅ!」
キモい人は携帯電話を取り出し、パシャパシャと写真を撮りだした。
知らない人に写真を撮られるという恐怖に、思わずその場に座り込んで泣き出してしまう。
「泣くとかわいくないよぅほふふふぅ」
写真を撮るのをやめ、キモい人はゆっくりと近づいてきて、じっとりと脂ぎった手で私の頬を撫でる。
「うほぅすべすべだぁ」
一歩も動けない。気がつくとみかちゃんもあっちゃんも既にいない。
「せっかくだから、スカートの中も見せてもらいましょうねぇ」
デヘヘと笑いながら、ヘンタイの手が私のスカートにかかった瞬間
「そこまでだ!」
気がつくとおまわりさんが目の前にいたヘンタイを手をひねりあげ、取り押さえる。
「ごめんね、大悟ちゃん」
逃げ出しておまわりさんを呼びに行ってたのを負い目に感じたのだろうか、
みかちゃんとあっちゃんが泣きながら謝ってきた。
私は、ただ「怖かったよぅ」と泣きながら彼女たちに抱きつくしかできなかった。
54名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 10:19:12 ID:0FY5Fn+M
【その13】
後で聞いたら、あの変質者はこの辺でも有名なロリコンで、
自宅から押収されたパソコンや本棚にはその手の写真でいっぱいだったとか。
でも警察の人が1つだけ不思議がっていたことがあった。
自宅から押収した写真集の1冊から検出されたDNAが、何度検査しても荒木由佳
 ――私を襲おうとした変質者の名前――と一致しないそうなのだ。
それでも、私を襲おうとしたことには変わりなく、このまま裁判になるのは間違いないとか。
やっぱり公立はダメね。とパパとママは、来年私立中学の受験を薦めてきた。
どうせ受験するなら名門のほうがいいだろうと、白薔薇女学院の資料を取り寄せるママ。
その両親の期待に答えるため、私は一段と勉強に励むことにした。
でも……
「どうしたの、大ちゃん?」
体育の前、ボーっとみか様の着替えを見つめていた私に、あっちゃんが声をかけてくる。
「なんか、ちょっと目が怖かったよ?」
なんでみかちゃんの着替えにあんなに惹かれたのだろうか。
なんか「大事なこと」を忘れているんじゃないか、そんな思いが心の中でぐるぐると渦を巻く。
でも、その嫌な気持ちを振り払い、2人に最高の笑顔を見せるのだった。
「ほふぅ、大丈夫だよぅ。あっちゃん、みか様ぁ」
55名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 10:25:37 ID:0FY5Fn+M
おしまい。
連続投稿規制にひっかかって、途中でIP変えたためID違いますが同一投稿者です

いつか「世界や常識がエロくなる話」のほうで出した
「女子高生とおっさんの社会的ステータスが逆転した世界」とかも
こっちでやりたいなぁ

>>36
逆転学園、期待してますですよ

>>39
GJ! じわりじわりと「それぞれの立場になじんでいる」のがたまりません
現在6本ぐらいですか? 他の作品の投稿も楽しみにしております
56名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 20:12:02 ID:H/xgHemL
ひでぇw
でもGJ!
57名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 00:11:29 ID:MmStsmin
GJ
実りあるなあ
58名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 02:49:48 ID:yiEFsUSp
>>54
最高!GJ!!
59名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 21:35:08 ID:D7zWlcNk
>>55
GJ!ユカちゃんサイドも気になる
60名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 21:58:54 ID:wkaWahQq
ネタが下りてこない・・・・・・
61名無しさん@ピンキー:2010/11/20(土) 02:31:02 ID:FTCI6idV
今日、パパがお嫁に行きます
62名無しさん@ピンキー:2010/11/20(土) 10:46:44 ID:xWd4lpHi
このスレってマーク・トウェインの「王子と乞食」とか
エーリッヒ・ケストナーの「ふたりのロッテ」とか、
週刊漫画サンデーの「女神達の二重奏」とかも範疇に入るのかね?
どれも容姿が瓜二つの人物同士がこっそり入れ替わってそれぞれの生活を楽しむって内容だけど。
63名無しさん@ピンキー:2010/11/20(土) 11:19:03 ID:vVIqCtQv
おkだと思うよ

ただ容姿がまったく異なる二人だからこそ
立場が変わった後のギャップの面白さはあると思うけど
64名無しさん@ピンキー:2010/11/20(土) 11:34:08 ID:FdAvZAk1
ただし、このスレでは同性の入れ替わりはうけないらしい

ギャップは大きければ大きいほど楽しいってのはあるけど
65名無しさん@ピンキー:2010/11/20(土) 11:41:18 ID:TEoL5GcQ
個人的には性別容姿その他もろもろ違えば違うほど面白い派だけど
あくまで立場の落差を強調するなら容姿が似通ってる方がより引き立つ気もするんだよね
66名無しさん@ピンキー:2010/11/20(土) 11:51:11 ID:UYzMNuYB
見た目等々全然違うのに、周囲(自分も)がそれに違和感を覚えてないという
異常なシチュがひとつのキモになってると思う。
67名無しさん@ピンキー:2010/11/20(土) 13:31:35 ID:xWd4lpHi
>>63-66
d
一応スレ違いの内容ではないみたいでホッとした
68『要12歳、職業・女子高生』その4:2010/11/23(火) 21:26:53 ID:B8+DI5xR
 ──カッポーーーーン……

 と言う効果音が響くここは、お約束通りに風呂場。ただし、一般家庭の浴室などではなく、星河丘学園女子寮の1階に設置された、温泉A風の大浴場である。
 脱衣場から入って右手に5、60人程度は余裕で入れそうな大きな檜製の湯船があり、その隣りには女生徒の美容を考慮してかジェット風呂なども備えられている。
 左手側は洗い場となっていて、同じく50人分のシャワーと蛇口が風呂椅子とともに備えられていた。簡単な仕切りもついているのは、体型その他でコンプレックスを抱く子への配慮だろうか?
 さらにはガラス戸を開けて外(といっても周囲は高めの塀で囲われてはいるが)に出れば、いわゆる露天風呂(日替わりハーブ入り)を堪能できるし、10人程度が入れる小部屋となったサウナや、水風呂までもある。
 下手なSPAに行くのが馬鹿らしくなるほどの充実ぶりだった。
 ちなみに、クラスメイトの男子によれば、男子寮の方の大浴場は、やや古いこともあってここまで豪華ではなく、昔懐かしい銭湯風の造りなのだとか。
 「まぁ、それはそれで風情があって、おもしろそうだよねぇ〜」
 「あ、う、うん。そうだね……」
 歯切れの悪い答えを返す「クラスメイト」の方を見て、目をパチクリさせる長谷部奈津実。
 彼女の隣りで、真っ赤な顔して湯船浸かっているいるのは、クラスメイトであり、寮の隣室の住人であり、さらに(幽霊部員とはいえ)同じクラブに所属している部活仲間でもある、「早川美幸(はやかわ・みゆき)」のはずなのだが……。
 「あれ、もしかして、みゆみゆ、ノボセちゃった?」
 風呂の温度はややぬるめに設定してあるが、かかり湯もそこそこに、「美幸」は湯船に入ったかと思うと、一番端っこに陣取って以来、ほとんど身動きしていないのだ。湯当たりしてもおかしくない。
 「いや……って言うか、その……」
 言いにくそうに口ごもっている「美幸」の様子に、ようやく「彼女」が何を気にしているか思い当たったようだ。
 「ああ、そうか……そんな心配することないと思うよー、周囲には完全に美幸ちゃんに見えてるみたいだし」
 そう、言うまでもなく、ココにいるミユキは美幸に非ず。実際には、小学六年生の少年で、本物の美幸の従弟にあたる浅倉要(あさくら・かなめ)であった。
 もっとも、アヤしげな魔法の絵の効果によって、一週間程前から従姉と「立場」が入れ替わってしまい、周囲には彼が「彼女」に──星河丘学園高等部1年B組の女生徒、早川美幸に見えているのだが。
69『要12歳、職業・女子高生』その4:2010/11/23(火) 21:27:30 ID:B8+DI5xR
 「そ、それもあるけど、いいのかなぁ、ボクなんかがココにいて……」
 スポーツ大好き少年な要だが、性格的には「やんちゃ」と言うよりは「優等生」と言う方が近い。
 気が弱い……というほどではないが、なまじ頭がよくて礼儀正しいため、覗きをしているような今の状態に罪悪感を覚えているようだ。
 「アハハ、ミユキちゃんは真面目だね。こういう事態なんだから、役得って割り切ればいいのに〜」
 偶然ミユキの事情を知り、「彼女」の協力者となることを約束した奈津実だが、同時に、その軽くて能天気な性格ゆえか、ミユキをよくからかってくる。
 まぁ、からかうとは言え、周囲へのフォローはしてくれてるし、「女子高生」の生活習慣に疎いミユキに対して色々教えてくれるので、助かってはいるのだが。
 (──美幸お姉ちゃんが苦手にしてたのって、わかる気がするなぁ……)
 決して悪い人ではない、むしろ世話好きでお人好しの部類に入るだろう奈津実だが、あのインドア派で騒がしいのが嫌いな従姉にとっては、構われるのはさぞ苦痛だったろう。
 ミユキの場合は、時に「もっと落ち着きなよ」と感じないではないのだが、奈津実が色々気遣ってくれていることも十分理解しているため、その手を振りほどこうとは思わなかった。
 そういう意味では、本物の美幸より「彼女」の方が、KY能力の高い「大人」だと言えるかもしれない。
 「そりゃ、ボクだって興味ないワケじゃないけどさ……さすがに、この状況だと、万が一バレたら、「しめんそか」でしょ」
 「お、難しい言葉知ってるね〜。ま、ミユキちゃん、本来は小六でしょ。なら、銭湯とかで女風呂に入ってもギリギリセーフだと思うよ」
 元々男子の11、2歳という年齢は、かなり成長差が激しい。
 要は、背丈自体は151センチと平均よりやや高い方ではあったが、第二次性徴の兆しはあまり見当たらず、無論声変わりもしていない。陰部に毛も生えていないし、さらに言うなら実は精通自体もまだだったりする。
 たとえば母親などと一緒に女風呂に入っても、笑って許されるだろう。
 「それは……そうかもしんないけど」
 とは言え、ビミョーなオトシゴロ。意識するなと言う方が無理だろう。
 しかし、いつまでも湯船の隅に縮こまっていては悪目立ちするし、本当にノボせて倒れるかもしれない。そうなっては、「周囲に怪しまれないように」大浴場まで来たのに本末転倒だ。
 奈津実に促されて、ミユキは渋々湯船を出、無意識に股間と、なぜか胸元をタオルで隠しながら洗い場の隅へと足を運んだ。
70『要12歳、職業・女子高生』その4:2010/11/23(火) 21:28:20 ID:B8+DI5xR
 「あ、そうそう。念のため聞くけど、ミユキちゃん、ひとりで髪の毛とか身体洗える?」
 「あ、あたりまえでしょ。そこまで子供扱いしないでください!」
 (一応小声で)それでも憤慨するミユキに、奈津実はチッチッチと立てた人差指を振ってみせる。
 「わたしが言ってるのは、「女の子の洗い方が出来るか」ってことなんだけど?」
 「う……」
 そう言われてしまうと、ミユキとしては、ぐぅの音も出ない。
 一昨年くらいまでは、本物の美幸に誘われて一緒にお風呂に入ってたりもしたが、「イトコのお姉ちゃんの裸」を見るのが気恥ずかしいという気持ちもあって、そんなにじっくり観察してたりしてない。
 何となく「こんな感じだったかなー?」という仕草を実演してみせると、奈津実の評価は「60点。もう少し頑張りましょう」といったところで、いくつか細かい部分を指摘され、直された。
 「お湯で軽く流して、シャンプーして洗って流して、そのあともう一度リンスして流す……って、女の子の洗髪ってめんどくさいんだね」
 言葉通りにたっぷりシャンプーを付けて襟を隠す程度の髪を──奈津実に言われた通り丁寧に──洗っているミユキが嘆息する。
 「あはは、まぁ、みんなヤってることだしね。その面倒を乗り越えてでも、少しでも綺麗になりたいと言うのが、乙女心というヤツだよん。それに、ミユキちゃんは、ショートに近いセミロングだから、まだ楽な方だよ」
 確かにザッと風呂場を見渡してみても、さすがは名門私立の女子高生、背中どころかお尻まで届きそうなロングヘアの娘も何人か見受けられる。あれだけ長いと、髪を洗うのはひと苦労だろう。
 目の前の奈津実にしても、普段のサイドポニーをほどくと、背中を覆うくらいの長さはあるのだ。
 「ふぅん……だから、女の人のお風呂って長いんだね」
 慣れない手つきでリンスしながら(ちなみに、シャンプーとリンスは奈津実のものを借りている)、納得したという風にウンウンと頷くミユキ。
 「ミユキちゃんは、家ではカラスの行水?」
 「それって、お風呂が短いことのたとえだっけ? ううん、そうでもないかな。むしろ、お風呂に入る事自体は結構好きかも。ただ、家だと、あんまり長く入ってると、待たされたお父さんが、びみょーに不機嫌になるんだよね」
 現在の早川家の習慣では、寝る時間の早い要が一番、次が父親で、色々手間のかかる母親が最後と決まっているのだ。
71『要12歳、職業・女子高生』その4:2010/11/23(火) 21:28:52 ID:B8+DI5xR
 「だから、こんな風に広いお風呂にのんびり入れる点は、ちょっとだけうれしいかも」
 大浴場備え付けのボディーシャンプーで身体を優しく洗いながら、笑顔になる。
 「あはは、良かったじゃない。今日はもう遅いからあんまりゆっくりしてられないけど、この寮のお風呂は、夕方6時からならいつでも入れるし、明日からはもっと早めに来てみたら?
 扉の向こうの露天風呂とか夜に星空を見ながら入るのも、ロマンチックだし、ハーブの効果でお肌つるつるになれるしね!」
 「そっかー、明日が楽しみだなぁ」
 そんな風に奈津実と会話しているうちに、気づけばミユキは、ここが女風呂だと言うことを忘れ、すっかりリラックスしていた。
 いや、正確には「忘れた」のではなく、「気にならなくなった」と言うべきか。
 最初女風呂に足を踏み入れた時は、自分自身の恥ずかしさを別にしても、見知らぬ外国に迷い込んだ異邦人みたいな恐れを感じていたのだ。
 ところが、ずっといても特に周囲に異端視されることもなく、奈津実と気楽に雑談し、時にはクラスメイトらしき女の子に挨拶されて会釈を返したりしているうちに、自分が今ここにいることが、ごく自然に思えて来たのだ。
 ──実は、コレは例の「絵」の効果が一段階進行したからにほかならないのだが、ミユキがその真相に気づくことはなかった。

-つづく-

#ここでいったんキリますが、次回は奈津実ちゃん視点での短めの幕間を挟む予定。
#自他ともに自覚なく、だんだんじわじわと染まっていく点は、同じ「鳥魚相換図」を使用した「次期当主はメイドさん」と同じ。ただし、こちらの方は男性側が幼いぶん、(無垢な子を染めちゃうという意味で)タチが悪いかも。
72名無しさん@ピンキー:2010/11/23(火) 21:38:22 ID:rBfjnUVX
おつ〜
73名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 12:13:09 ID:340SKA1q
「次期当主メイド」と「要12歳」の作者です。上記2作は、かなりH描写が薄い
(後半になっても、前者はキス〜愛撫くらい、後者も「女の子同士のおふざけ」レベルのタッチとせいぜい自慰くらい?)
のですが、このままココで掲載してていいんでしょうか?
何かどうも求められてるモノと違う気がしてきた。

個人的には、MOTOさんの一連の作品、とくに「もうひとつの場所」でこういう嗜好に目覚めたので、直接的なエロや急激な変化は必須じゃないんだけど(むしろじわじわ浸食/変貌する方が好き)、確かにエロパロ板だしなぁ。

ここでの投下をやめた場合は、自ブログの方で続ける予定です。
74名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 14:09:32 ID:wD9jk4Pm
どんどん続けてくださいな
このジャンルは直接的エロ描写よりも、
精神的にどれだけ興奮できるかどうかですし

というか、あなたがいなくなってしまったら、
書き手が自分だけになってしまう
75名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 19:35:08 ID:RmWLR+rb
離脱反対!
話が面白ければエロ不足など問題ではないのです
だから見捨てないで
76名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 22:19:05 ID:MivRs7jx
2作品のような感じなのが好きで、楽しみにしてます。
出来れば、このまま継続していただけるといいなぁ、と思っています。
7773:2010/11/26(金) 10:52:22 ID:hvkma9FI
>74〜76
暖かいお言葉、ありがとうございます。
とりあえず、現在の2作が完結するまで、こちらで頑張らせていただきます。

実は73で触れた「もうひとつの場所」にインスパイアされた、
「発表会のため、最初は声だけ交換」→「バレないようにするため、立場交換」
→「発表会が終わっても、なぜか戻してもらえない」
 ……という話も考えてはいるのですが、そちらは前述の2作が終わったら(たぶん年内いっぱいかかりそう)とりかかる予定です。
78名無しさん@ピンキー:2010/11/27(土) 01:42:14 ID:JYwYh9+4
>>77
MOTOさんの「もうひとつの場所」
読みました。
なるほど、壺に来る作品でした。
このスレでは歓迎というよりも良作ですね。
ttp://www2u.biglobe.ne.jp/~ftcenter/nsl/

今後の作品も楽しみにしています。
79名無しさん@ピンキー:2010/12/01(水) 14:24:35 ID:RX4oRVJr
動物と人間の立場逆転も読みたい
80名無しさん@ピンキー:2010/12/01(水) 23:13:54 ID:/7OuCijt
某スレにあったんだけど
共学を男子校だと思いこませるってのは面白いと思った

このスレでも女子高と男子校を入れ替えるネタがあったけど
女性徒の方が多い共学校で男子だけ変化前を覚えてるとかどうだろう
81名無しさん@ピンキー:2010/12/02(木) 01:43:43 ID:UZZtErut
>>80
詳細が知りたい…
82名無しさん@ピンキー:2010/12/05(日) 11:28:17 ID:p5AMjiA1
>>80
いいねぇ!
流れで男子校女子校ネタ投下。。

元は華奢な女子なんだけど、立場交換で柔道部員になって体育会系の乱暴な言葉使いで周囲にうざがられる
でも男子はそれを知ってて反抗したいけど暴力が怖くて女子に従うしかない

あともうひとつ
クラスでモテまくりのイケメン、そいつらは実は女子で、周囲でキャーキャー騒いでるのがほんとのイケメン
その立場交換の真実を知ってるのはクラスの一部の人間だけで、その光景をニヤニヤしながら見てる、っていう
83名無しさん@ピンキー:2010/12/05(日) 17:13:00 ID:eYKO1c8m
>>82
> 元は華奢な女子なんだけど、立場交換で柔道部員になって体育会系の乱暴な言葉使いで周囲にうざがられる
> でも男子はそれを知ってて反抗したいけど暴力が怖くて女子に従うしかない
その娘と仲が悪かったお高くとまったモテ系女子がお調子者系キモエロキャラになって
卑猥な会話を大声で話し合ったり、女の子にセクハラするような親友になるとかどうだろう
84名無しさん@ピンキー:2010/12/05(日) 18:27:04 ID:/GOAbIof
やっぱり高慢知己なお嬢様だとかクールな堅物委員長だとかがアホ丸出しのキャラになるのが個人的には一番クるな
85名無しさん@ピンキー:2010/12/06(月) 22:44:59 ID:AZ/qe9+s
ふぅむ。このスレ、やはり「外見も中身・性向も全然違う者同士の交換」の方がやはり需要高いんですかね。
自分みたく、「王子と乞食」「ふたりのロッテ」型、つまり「外見だけはそっくりだけど中身や立場は全然違う者同士の入れ替わり」が好きなのはマイナーなのかな。
その昔、「WishWell(ウイッシュウェル)」ってスペオペ系のエロゲがありまして、ゲーム中で条件を満たすと、メインヒロイン(主人公の幼馴染)と瓜二つな、反逆者に国を追われたお姫様を助ける……という展開になりました。
↓たしか、こんな感じ

セレカ「い……いやぁっ!」
海賊「ええいっ、おとなしゅうせんかい、このアマ!」
光樹「そこまでだっ!」

──ズシュッ! ……ドサ

光樹「大丈夫ですか」
セレカ「は、はい……」
光樹「この声……! やっぱりあなたが僕をここへ呼んだのか?」
セレカ「声? 私が呼んだ?」
光樹「い、いや、話は後にしましょう。その……服を直した方が……」
セレカ「あ……!」
光樹「じゃ、外で待ってますんで……」
セレカ「あ、待って下さい」
光樹「は? 何か」
セレカ「助けて下さってどうもありがとうございます。私の名はセレカ=リィネ=ラクトールと申します」

それから3時間ほど。
オレはセレカと名乗った少女から、彼女の身に起きた事件の概要を聞いた。
なんでもセレカは、エルスィーンとかいう惑星国家の王女らしい。
あいにくオレの知識にその惑星国家の名前はなかったが、王女様ということを聞いて納得するものがあった。
セレカは、どことなく気品を漂わせた少女だったからだ。
それにしても……。
86名無しさん@ピンキー:2010/12/06(月) 22:45:40 ID:AZ/qe9+s
セレカ「あの、私の顔がどうかしました?」
光樹「あ、ごめん。そのぉ、知人によく似ているもんで……」
セレカ「私が光樹さんのお知り合いに?」
光樹「ああ」
そうなのだ。
このセレカという少女は奈緒にクリソツだった。
訊いてみれば年齢も同じだという。
世の中には、自分とそっくりな人が3人いるとはいうが……。
セレカ「その人、光樹さんの恋人ですか?」
光樹「いや、そういうわけじゃないよ、姫」
セレカ「私のことはセレカでいいですよ」
光樹「いや、やっぱりお姫様はお姫様だし……」


当時、「これは、幼馴染と姫様の入れ替わりネタがクるか!?」とドキドキしてプレイしてたのに、結局、姫様ルートでもそれらしいネタもなくアッサリ終わってガッカリした記憶があり、後年ヒゲガンダムで溜飲を下げたものです。
上の「ウィッシュウェル」を元にした「幼馴染←→姫様」なネタは、いつかSSにして書きたいと思ってたりするのですが。
87名無しさん@ピンキー:2010/12/06(月) 22:53:24 ID:sWj2LrAm
特にこのスレでは男⇔男が好まれない傾向にある気がする
一度、同性の入れ替わりを書いた人が追い出されたということもあったしな
禁止までは行かないまでも、テンプレにその旨は書いておいた方がいいかと

このスレはTS物と女装物の中間くらいの存在だと認識してる
88名無しさん@ピンキー:2010/12/06(月) 23:00:24 ID:SFMsVyPs
個人的な意見だが、同性でも母親と娘だとか、堅物教師とバカギャル生徒とか、ギャップがあればあるほど俺は楽しめる
89名無しさん@ピンキー:2010/12/06(月) 23:36:55 ID:/X5Ilefg
俺はどっちも好きだな。ただ容姿が似てる者の入れ替わりは普通にストーリーを楽しみ、
容姿がまるで異なる者の入れ替わりはそれだけでエロいと感じるのでストーリーは割とどうでもいい感じだ。
ただ容姿がまるで異なるといっても女と男の入れ替わりはまるでエロさを覚えないのでその場合はストーリー優先となる。
90名無しさん@ピンキー:2010/12/07(火) 00:39:24 ID:tS5tdKmp
>一度、同性の入れ替わりを書いた人が追い出されたということもあったしな
>禁止までは行かないまでも、テンプレにその旨は書いておいた方がいいかと

キチガイのやることなんて気にしなくても良かったのに
自分の趣向に合わないからって暴言吐いてスレから追い出すのはマジ最低のキチガイ
立場の交換というテーマが合ってれば、同性だろうとギャップの強弱も
関係ないと思うけどね
91名無しさん@ピンキー:2010/12/07(火) 08:06:13 ID:xIKegQUb
ただ、荒らしを除いてもあの作品が投下された時の反応が異常に悪かったのは事実だな
男⇔男の需要がないことには違いない気がする

『俺は大して興味ないけど書いてもいいよ!』ってのは作者にもスレにも悪いから、
需要の有無くらいはテンプレ化してもいいかもね
92名無しさん@ピンキー:2010/12/08(水) 08:35:41 ID:zREnBfPp
SMや腐だったら男娼/エリートとかありそうだな
93名無しさん@ピンキー:2010/12/08(水) 14:27:24 ID:HEqPvHBG
俺が好きなのは、明らかに異常な状況なのに、周りは全く気付いてないっていう狂った世界を描いた作品かな

エリート転落とかよりも、例えばいい年こいたおっさんが幼稚園児になって、周囲の人から子ども扱いされるとかそんなのが好み
赤ちゃんプレイとはまた違うんだが、説明しづらいな・・・
94名無しさん@ピンキー:2010/12/08(水) 15:06:43 ID:jN4pAbI9
>>93
それがおっさんじゃなくてそれなりの地位やプライドを持つ女性ならまさしく俺の好みだわ
そういう意味では前スレにあった母⇔息子、父⇔娘のSSは完全にストライクだった
95次期当主はメイドさん!?:2010/12/08(水) 20:58:28 ID:0YwKvJfj
 結局、朝方聞かされた夕方5時の勤務時間めいっぱい……どころか、それを軽く1時間はオーバーした6時半頃まで、ゆかりは夕食の支度を手伝うことになった。
 「ごめんなさいね、紫さん。もうとっくに勤務時間は終わってるのに……」
 「いえ、気にしないでください、晴香さん。私が好きでやってることですから」
 ニッコリ微笑みながら、手を動かすゆかり。本物の「紫」も優等生らしく如才ないから同様の行動をしたかもしれないが、ゆかりの場合は、コレが素だ。
 元々人の良さと人当たりの良さに関しては天性のものがあるのだ。さらに言えば、気配りも上手い。あおいが半ばフザけて「いいお嫁さんになれる」と言うのもむべなるかな。接客業やサービス業の現場に於いては、得難い才能と言えるだろう。
 「本当にありがとう。配膳はあたしがやるからいいわ。紫さんは……そうねぇ、葵様にそろそろお夕飯だって知らせておいてもらえるかしら。あ、紫さんの分は台所に用意しておくから」
 「はい。それじゃあ、お先に失礼しますね」
 ゆかりはメイド長に一礼してから、台所を出て「葵の部屋」へ向かう。
 コンコンと軽くノックすると、すぐに中から「どうぞ」という返事が返ってきた。
 「失礼します。ゆかりです」
 断った上でドアを開けて中に入り、キチンと頭を下げてから「自らが仕える主」に要件を報告するゆかり。
 「晴香さんから、「そろそろお夕飯の支度ができました」とのことです」
 真剣な顔つきで机に向かっていたあおいは、ゆかりのその言葉を聞いて、ようやく顔を上げてコチラを見た。
96次期当主はメイドさん!?:2010/12/08(水) 20:59:18 ID:0YwKvJfj
 「あれ、もうそんな時間なんだ。ついさっき、ゆか姉とお茶を飲んだばかりだと思ったのに……」
 「あれから、優に3時間は経ってますよ。そろそろ7時前ですから。
 あおい様の集中力はいつもながら感心しますけど、先ほども申しました通り、根を詰め過ぎると身体に悪いですよ?」
 「いやぁ、ついついのめり込んじゃって」
 心配そうなゆかりの視線にポリポリと頭をかくあおい。
 一見したところ、普段の桐生院邸と変わらない光景に見えなくもない。
 だが、もし神の視点を持つ者がその場を目撃すれば、いつもと異なるその「奇妙さ」について、すぐに気付いたことだろう。
 無論、ふたりのキャスティングが入れ替わっているからだが、そればかりではない。
 本来のふたりの関係は、「弱気で頼りない従弟・主と、しっかり者の才女な従姉・メイド」なのだが、それが本来の各人の個性に沿って「意思が強く負担を苦にしない従弟・主と、心配性の可愛らしい従姉・メイド」に微妙に改変されているのだ。
 しかも。
 「うん、わかった。すぐに行くって、晴香さんには言っておいて」
 「はい、かしこまりました」
 ゆかりとあおい──いや、葵と紫のどちらも、その光景になんら違和感を感じておらず、今の役柄を平然と演じていることこそが、異常の証であった。

 「あ、そうだ! ゆか姉、このあとは暇……だよね?」
 一礼して部屋を退出しかけたゆかりを、あおいが呼びとめる。
 「ええ、勤務時間はこれで終わりなので、お夕飯をいただいて着替えたら、手は空くと思いますけど」
 「じゃあ、ちょっと相談したいことがあるから……そうだなぁ。9時過ぎにでも、来てもらえる? あ、それとコレは仕事じゃなくプライベートだからね」
 「──わかりました。それでは、また後で」
 悪戯っぽく笑うあおいの言葉に、ほんの少しだけ胸をときめかせながらも、ゆかりは平静を装って返事する。
97次期当主はメイドさん!?:2010/12/08(水) 20:59:44 ID:0YwKvJfj
 あおいの部屋を出たゆかりが、台所へ足を運ぶと、すでに晴香が用意した使用人向けの夕食が並べられてあった。
 配膳と給仕をしているメイド長の晴香を待とうかと思ったのだが、ほかならぬ本人から「冷めちゃうから先に食べてて」と言われてしまっては是非もない。
 ありがたく、賄いとは思えぬ美味な夕食を、ひと口ひと口、丁寧に味わうように口にする。自分が料理する際に味付けなどを参考にするためだ。
 無論、食べたあとの食器を自分で洗い、乾かしておく気配りも忘れない。
 現実問題としては、桐生院家の台所には食器洗いマシンや乾燥機もあるので、ひとり分の洗い物が増えてもさしたる手間ではないのだが、こういうのは心がけの問題だ。
 このあたりの行動をごく自然できてしまあたりが、このゆかりが「本物」よりメイド適性の高いゆえんなのだろう。

 夕食後、自室──もちろん紫の部屋だ──に戻ったゆかりは、まずはメイド服のエプロンを外して、洗濯かごに入れた。
 続いて胸元のボタンを外し、紺色のワンピースも脱ぎ捨てる。とは言え、こちらは、別途専門の洗濯業者にクリーニングに出すため、普通の汚れものと一緒にするわけにはいかないが。
 白のスリップと黒のパンティストッキングという、ある種のフェティッシュな趣味のある人間が泣いて喜びそうな格好のまま、特に気負うでもなく箪笥を開けて普段着を取り出すゆかり。
 朝方、あれほど女装することに抵抗を示していたのが嘘のようだ。
98次期当主はメイドさん!?:2010/12/08(水) 21:00:18 ID:0YwKvJfj
 もっとも、何も知らない人間がここにいれば、いまのゆかりを(「本物」に比べて、やや胸元は寂しいが)まぎれもなく16、7歳の少女、それもかなりランクの高い美少女だと思い込んだことだろう。
 元々の優しい女顔な容貌や華奢な肢体もさることながら、仕草や雰囲気自体から、どことなく女らしさが醸しだされていたからだ。

 ゆかりが選んだのは、オフショルダー気味なニットのスプリングセーターと、タータンチェックの赤いミディスカートと言う組み合わせだった。
 本物の紫からすればごくありふれた選択だが、ほかならぬゆかりがこの組み合わせを選んだという点は、なかなか興味深い。
 いくらメイドとして働いているとは言え、そこは年頃の女の子。紫とてワードローブの数は、同年代の少年と比べれはかなり多い。
 その中には、生成りダンガリーシャツやジーンズといったマニッシュな服もあったし、実際に紫がそれらを着ている場面を葵も見たことはあるはずなのだ。
 それなのに、あえて普段の紫らしい──いや、むしろよりフェミニンな服装を選んだゆかりの真意は……はたしてどこにあるのだろうか?

 「──あれ?」
 着替えを済ませてドレッサーの前に座り、少し乱れた髪を櫛で整えたあと、鏡を覗き込みながら唇にリップを塗っているところで、ゆかりはふと我に返った。
 「なんで、ぼく、こんなコトを……」
 戸惑いながらも手は止まらず、淡い色つきのリップで口元を彩る。
 微かに困惑した表情を浮かべながら、身だしなみをチェックするゆかり。
 「えーと……うん、問題なし。……じゃなくて!」
99次期当主はメイドさん!?:2010/12/08(水) 21:00:41 ID:0YwKvJfj
 記憶が飛んでいるとか、体が意に反して勝手に動くとか言う訳ではなく、今まで自分がやっていた行動自体は、ちゃんと覚えているし理解もしている。
 最初は普段の紫になりきるべく演技をしていたはずなのに、気が付いたら意識せずとも、「桐生院家のメイド」としてごく当たり前のように働いていたのだ。
 より厳密には、普段の紫と完全に同じ行動をとっていたワケではない。ないのだが、それでも「彼女」なりに現在の「立場」にふさわしいと思われる行動をとっていたのは確かだ。

 それは、考えようによってはヒドく危険で恐ろしい事のはずなのだが……どういうワケか危機感や恐怖心といった切迫した感情がいっこうに湧いて来ない。
 むしろ、そうあること──紫に代わって「メイド」あるいは「あおいの従姉」として行動するのが、ごく自然なことのように思えてくるのだ。
 いや、むしろ、紫に代わって新たな自分なりの「ゆかり」像を築きあげていくことに、密かな喜びさえ感じている。
 自分達以外の誰にもふたりの「入れ替わり」に気付かれず、周囲の人間に「紫」として扱われる度に、自分は背筋がゾクゾクするような興奮を感じていたのでは……。
 
 ──ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン!

 ゆかりの耳に、屋敷の1階玄関前にかけられた振り子時計の鳴る音が聞こえてきて、思索に沈みかけていた「彼女」の心を浮き上がらせた。
 「あ、いけない! そろそろあおい君の部屋に行かないと」
 あおいとの約束を思い出したゆかりは、あわてて思考を切り替え、「従弟」の部屋へと向かう。
 そしてその結果、「彼女」が予想外な事態の進行を止める貴重な機会は、失われてしまったのである。
100次期当主はメイドさん!?:2010/12/08(水) 21:01:05 ID:0YwKvJfj
#あいも変わらず、事件らしい事件は起きず。ただ粛々と「立場交換」の度合いが進むのみ。いや、初日はもっとアッサリ流す予定だったんですけどねー。
#このあと、ふたりの会話ののち、激動?の一日目終了。翌日二日目は、男女逆転カップルによる、甘甘いちゃいちゃなデートとなる予定です。
#で、本来はそのまま元に戻る儀式をするはずだったのに、互いに惜しくなって、翌月曜日、せっかくだからそのまま学校に行ってみることに……という流れ。もっとも、いつになったら、そこまでたどり着けるやら、ですが。
101名無しさん@ピンキー:2010/12/09(木) 23:59:42 ID:YvisBbjf
乙です!続き楽しみにしてます
102名無しさん@ピンキー:2010/12/10(金) 22:51:16 ID:ltip7u8P
乙!どこまでも突き進めばいいさ!
103当主メイドの人:2010/12/15(水) 01:50:35 ID:gw1Wkdym
すみません、本来なら順番的には、次の投下は「要12歳のはずなんですが、「次期当主はメイドさん」
104当主メイドの人:2010/12/15(水) 01:52:40 ID:gw1Wkdym
>130
失礼、途中で送信してしまいました。
「次期当主はメイドさん」が、もうしばらく(あと3回)で終わる予定なので、そちらを連続して投下させていだきます。
週末(金曜夜)、次のを投下予定です。
保守代わりに。
105名無しさん@ピンキー:2010/12/15(水) 04:11:51 ID:M1BFRRKe
金曜夜を楽しみにしてます!
106次期当主はメイドさん!?:2010/12/18(土) 00:17:37 ID:dPfEkbAS
 ──コン、コン
 銀盆を手にした「少女」が、桐生院邸の葵の部屋のドアを軽くノックする。
 「あの……ゆかりです。入ってもいいですか、あおい君?」
 「ゆか姉? どーぞー」
 「部屋の主」の許可を得て扉を開け、ゆか姉と呼ばれた「少女」は中へ足を踏み入れる。
 「ごめんね、わざわざ来てもらって……あ、コーヒー、持って来てくれたの?」
 「ええ、この時間ならその方がいいかと思って……あら?」
 あおいと呼ばれた「少年」は、どうやら未だ書類仕事をしていたらしい。もっとも、夕食前にはまだ半分くらいあったはずの書類の山は、驚くべきことに残りわずかになっている。
 「お仕事、だいぶ片付いたんですね」
 「うん、思った以上にはかどったよ……これなら、なんとかなりそうかな」
 驚嘆と感心を等分に込めたゆかりの言葉に、何でもないという風にうなずくあおい。
 「?」
 「うん、今日中に片づけて、明日はのんびりしようかと思って」
 「それはいい考えですね。何かお手伝いできることがあれば……」
 と目を輝かせるゆかりの様子に苦笑するあおい。
 「いや、あとちょっとだからいいよ。それにしても……また、なりきってる?」
 「え? ……あ!!」
 眼の前の「従弟」に指摘されて、初めて「彼女」──「ゆかりとして振る舞っている葵」は、ハッと我に返った。
 「え、えーと……そのぅ……」
 真っ赤になって言い訳しようとする葵を不自然なほどニコヤカに見つめる紫。いわゆる「生暖かい視線」というヤツだ。
 「あははは、そんなに、わたし──六道紫として振舞うコトが気に入ったの?」
 「い、いや、別にそういうワケじゃ……」
 否定の言葉が尻すぼみになるのは、実のところ満更でもないからだろう。
107次期当主はメイドさん!?:2010/12/18(土) 00:18:27 ID:dPfEkbAS
 「ま、元からアオイちゃんは流されやすいほうだしねぇ。それに下手したらわたしよりよっぽど「良妻賢母」の資格アリだし♪」
 「はぅぅぅ〜」
 意地が悪い(けれど的確な)紫の言葉に、耳まで赤く染めて恥らう葵の様子は、たしかに「可憐な少女」の風情たっぷりだ。今の紫から見て、抱きしめたいほど愛らしい。
 ──というか、気がついたら、実際にギュッと抱きしめていた。
 「え? え? あの、ユカね……」
 「うーん、やわらかくて、あったかくて、いい匂いがする……絶好の抱き心地だね!」
 その様子は、傍目から見れば、少女と見まがう(って言うか生物的には♀な)美少年が、同い年くらいの美少女(ただし性別は♂)を情熱的に抱擁しているようにしか見えなかった。
 最初こそ戸惑いの声を漏らしていた葵も、すぐに自らを支える腕のぬくもりに安らぎ、いつしか目をトロンとさせて、心地よい抱擁に身を委ねながら、最愛のイトコの顔を見つめている。
 「もぅ! そんな顔されたら我慢できなくなるよ!」
 耳元でそうささやくと、情熱的に「彼女」の唇を奪う。無論、「彼女」も抵抗せずにソレを受け入れた。

 ウブな恋人同士の拙い抱擁と接吻が一段落したところで、あおいはゆかりにこの部屋に招いた本題──「明日、ふたりで出かけないか」という提案を伝えた。
 「えっと……それってもしかして……デートのお誘いですか?」
 「うん、そのつもりだけど。嫌かな?」
 少しだけトーンの下がった許婚の声に、慌てて首を横に振る。
 「ううん、そんなことない。むしろ、うれしいです!」

 その後、時間や行き先について簡単な打ち合わせをしたのち、ゆかりは部屋を辞した。
 これ以上、あおいの前にいたら、また妙な雰囲気になりそうな気がしたからだ。というか、ほぼ絶対になることは間違いない。そうしたら、行き着くトコロまで行ってしまう公算も高い。
 もともと幼馴染で、ゆくゆくは結婚して夫婦になる身とは言え、正式に恋人同士になったばかりの、その日の内に抱かれる(性的な意味で)というのは、さすがに抵抗があった。
 (そりゃ、あおい君と結ばれること自体が嫌ってワケじゃないですけど……ちょっと早すぎますよね?)
 ポポッと頬を赤らめながら、弾むような足取りで「自分の部屋」に帰るゆかりの頭からは、その時すでに「自分が本来は桐生院葵である」という事実は、先程指摘されたばかりだと言うのに、すっかり消えうせているのだった。

#遅れた上に、チョッピリで申し訳ありません。デート+αについては、この土日に投下する予定。それで、あとはエピローグを残すのみになるはず……。
108名無しさん@ピンキー:2010/12/18(土) 03:56:27 ID:BK8tMjlZ
>>107
GJ!
続きまってま!
109次期当主はメイドさん!?:2010/12/19(日) 23:44:08 ID:tarIdGZc
 翌日の日曜日。
 朝から気もそぞろなゆかりは、いつの間に起きて顔を洗ったのか……それどころか、朝食を食べたのかもわからないような状態だった。

 それに引き換え、あおいの方は落ち着いたものだ。立場を入れ替えたとは言え、こういう部分は、やはり元の性格などに左右されるのだろうか?
 「ふむ。葵、今日は紫くんとデートだそうだな?」
 「なんですか、お…父さん、やぶから棒に」
 朝食の席で、父からそのことを聞かれても、本物のように狼狽えたりしないあたりに、その個性がよく現れている。
 「フッ……ひとり息子が、許婚と初デートに出かけようと言うのだ。男親として、多少は気になっても致し方あるまい」
 もっとも、これまでの父・馨なら、このテのことに口を挟むことはなかったろう。やはり、妻の回復が当主の精神的な余裕につながっているのだろう。
 「相手があの紫くんだから、余分な心配する必要はないとは思うが……お前もまだ16歳だ。
 初めての逢引に浮かれて、いかがわしい所に行ったりはするなよ?」
 「しませんよ! ぼくを何だと思ってるんですか!?」
 「ははは、まぁ、お前にそんな度胸はないだろうがな。とは言え、やはり男として彼女をキチンとエスコートしてあげるんだぞ」
 「ええ、それはそのつもりですけど……そう言えば、お父さんとお母さんのはどうだったんですか?」
 「ふむ、それはだな……」

  和気藹藹と「父子の会話」(本当は伯父と姪なのだが)を繰り広げているふたりとは対照的に、ゆかりの方は「自室」でタンスから出した数着の「今日のお出かけ着」候補を前に、うんうん唸っていた。
 ──コンコン!
 「どうしたの紫さん、とっくに朝ご飯出来てるんだけど……もしかして体調でも悪い?」
 ドア越しにメイド長の晴香の声が聞こえてくる。どうやら、やはり朝食を食べるのも忘れていたらしい。
 「はるかさぁ〜ん、たすけてぇー!」
 これ幸いと上司を部屋に招き入れて泣きつくゆかり。
 晴香の方は、「やっぱり病気!?」と一瞬焦ったものの、ゆかりの「お願い」──デートにー着て行く服に迷っているという言葉を聞いて、ガックリと肩を落とす。

110次期当主はメイドさん!?:2010/12/19(日) 23:44:40 ID:tarIdGZc
 「──普段はしっかりしてるのに……紫さんて、意外に恋愛事に免疫がないと言うか、奥手なのね」
 「うぅ、でもでも初デートだし……!」
 上目使いの涙目で、抗議するように見つめる「彼女」の様子は、確かに本来の紫にはない凶悪な可愛らしさではあった。
 「(何着てても、その目つきでどんな男もイチコロだと思うけど)はいはい、わかったわかった。あとで相談に乗ってあげるから、まずはご飯食べちゃいましょ」
 ちょっと呆れながらも、微笑ましさを感じた晴香は、朝食後にしばし時間を作ってゆかりの服選びにつきあってくれた。
 それだけでなく、普段の紫がしないちょっと気合いの入ったメイクまでゆかりの顔に施してくれたのは、嬉しい誤算だった。
 「うわぁ……これが私? 夢みたい」
 鏡の中に映る自分の笑顔に思わず見とれるゆかり。
 「アハ、元々の素材がいいからね。まぁ、紫さんは若いから、まだお化粧に頼る必要はないでしょうけど、殿方にたまに違う面を見せるのも女の甲斐性ってヤツよ」
 そう言いながら、晴香も自分の成果に満足そうだ。

 と、その時、部屋の外から、あおいの声がした。
 「ゆか姉ー、そろそろ行かない?」 
 「え、やだ、もうそんな時間? うん、今行くから、あおい君は玄関で待っててくれるかな?」
 「オッケ〜」
 「じゃあ、晴香さん、私、もう出ます。あと、お洋服選びとお化粧手伝ってもらって有難うございました」
 ペコリと頭を下げる紫の様子に相好を崩す晴香。
 「なんのなんの。あたしも可愛い子でリアル着せ替えが出来て、ちょっと楽しかったしね。
 ま、初デート、めいっぱい楽しんできなさいな」
 「はいっ!」
111次期当主はメイドさん!?:2010/12/19(日) 23:45:10 ID:tarIdGZc
 「お待たせしちゃって、ごめんね、あおい君」
 パタパタとはしたなくならない程度の早足で、ゆかりは桐生院家の玄関──正確には門柱の外で待っているあおいの元に駆け寄る。
 「いや、まだそんな遅いって程じゃないし……へぇ」
 振り返ってゆかりの姿を目にしたあおいは、軽く驚きに目を見張った。
 首元がセミタートルネックになったライトパープルのカットソーと、ふくらはぎまでの丈のクリーム色のティアードスカートというと取り合わせは、「彼女」をその年齢以上に大人っぽく、また淑やかに見せていた。
 服の裾と袖口のギャザーや、蝶結びにした首のスカーフがよりフェミニンな印象を強めている。前髪をまとめているベロア地のカチューシャも、その印象を補強していた。
 本来の紫は、どちらかと言うとタイトで動きやすい服装を好むので、こういうタイプの服はあまり持ってないはずなのだが、よく見つけてきたものだ。
 足元は肌色に近いストッキングに、ちょっとヒールがあるサンダル。靴のサイズが紫と違うから、ベルトで多少調節できるサンダルを選んだのだろうが、服とのマッチングも悪くなかった。
 よく見れば、ナチュラルではあるが、それなりに凝ったメイクもしているようだ。
 (ふーん……晴香さんの入れ知恵かな?)
 本人達以外には今の葵は紫に見えているとは言え、例の「絵」の効力が消えて今の「彼女」の容貌がそのまま他人に見られたとしても、どこに出しても恥ずかしくない掛け値なしの「美少女」と、万人が認めたことだろう。
 「えっと……ど、どう、かなぁ?」
 視線を意識して恥じらう
 「うん、可愛いと思うよ。それに、ゆか姉によく似合ってる」
 本来の葵なら、たぶんヘドモドしてまともに答えられなかったろうが、こちらのあおいは、スマートに称賛を口にする。
 「ホント? えへ、ありがとう、あおい君」
 想い人の賛辞に、ゆかりは満面の笑みを浮かべる。
 「じゃあ、行こうか、ゆか姉」
 そう言いながらあおいは、右手を広げてゆかり方に差し出す。
 一瞬、そのポーズに首を傾げたものの、すぐにその意味を悟り、ゆかりはほんのり頬を染める。
 「! そ、そ、それじゃあ、その……」
 おずおずとあおいの手をとり、左手でギュッと握り締める。それだけで、ゆかりの顔はもう真っ赤だった。
 「さ、さぁ、あおい君、レッツ・ゴー、なのですよー!」
 テンパって口調まで何だかヘンになってるゆかりの様子に苦笑しながら、あおいはしっかりとゆかりの手を引いて歩き出したのだった。
112次期当主はメイドさん!?:2010/12/19(日) 23:45:48 ID:tarIdGZc
 「あ、この服なんか、ゆか姉に似合うんじゃないかな?」
 商店街の店先を、いろいろ冷やかしがてら見て回るふたり。
 「そ、そう? 私にはちょっと可愛い過ぎるんじゃないかな」
 セーラーカラーの白い半袖ワンピースは、確かに本来の「六道紫」にとっては、ちょっとイメージが異なる服装だったろう。
 しかし……。
 「でも、今のゆか姉ならピッタリだと思うよ」
 「えっと……もしかして、あおい君、こういうのが好み?」
 「そうだね。女の子が着てるのを見るぶんには」
 「そ、そうなんだ……」
 そう言えば、この人、確かに下級生の女の子とかにこういう可愛らしい服着せるのが好きだったよね……と、本来の「葵」としての記憶が、ゆかりの脳裏を一瞬だけよぎる。
 「よかったら、買ってあげようか?」
 ジーッとワンピースを見つめているゆかりの視線を見て、勘違いしたのか(あるいはワザとか)、あおいがそんな事をニコやかに言いだす。
 「え!? でも、その……悪いよぉ」
 「なぁに、今日のデートの記念さ。ゆか姉は気にしないでいいよ」
 爽やかにそう告げると、店員を呼んで包んでもらうよう頼むあおい。
 まるで絵に描いたような「デート時に於ける理想の男性の行動」だった。このあたりは、やはり、今の「あおい」が本当は女性であることも影響しているのかもしれない。
 しかしながら、店員からワンピースの入った包みをうれしそうに受け取っているあたり、ゆかりの方はかなり「女の子」としての立場に感化されているようだ。

 商店街を出たあと、散策を続けたふたりは、町の中心部からやや離れた場所にある丘の上の公園まで足を伸ばしていた。
 「ここに来るのも久しぶりだね」
 「うん、そうかも……前に来たのって小学生3、4年の頃だっけ?」
 見晴らしのよい展望台で風に吹かれながら、しばし感慨にふける。
 こういう時、イトコ同士かつ幼馴染であり、思い出の大半を共有している間柄というのは、何も言わずとも通じ合っているような気がして、心地よかった。
113次期当主はメイドさん!?:2010/12/19(日) 23:46:16 ID:tarIdGZc
 「あ、そうだ! あおい君、そろそろお昼にしよっか? 私、お弁当持って来たんだ」
 「うん、そうだね。ちょうどおあつらえ向きなベンチもあるし」
 ゆかりが広げたランチボックスを挟んで、ベンチに腰かけるふたり。
 「どう、かな?」
 モグモグと弁当の中身を口にするあおいを、心配げに見守るゆかり。
 「うん、美味しいよ、ゆか姉。もしかしてひとりで全部作ったの?」
 「うーん、実は半分ぐらいは晴香さんに手伝ってもらっちゃった」
 ペロッと舌を出す様が愛らしい。
 「いやいや、それにしたって大したもんだよ。驚いたなぁ」
 「あは、料理するのは好きだしね」
 「やっぱり、ゆか姉はいいお嫁さんになれるよ」
 「え!? や、やだぁ、からかわないでよ……」
 つい昨日も同じような事を言われたのだが、その時以上に女らしい仕草で照れた表情を見せるゆかり。
 その後も、「恋人同士のお約束」である「あーん」や「膝枕でお昼寝」を、あおいに対して嬉々としてやってる事から見ても、どうやら完全に己れの立場に染まっているようだ。

 それに比べればまだあおいの方は、完全に男の子としての立場に染まり切ってはいないようだが、コレは元からどちらかと言うと「意志の強い、男前な女の子」であったからかもしれない。
 ありていに言って、ほとんど自然体で行動しても、さしたる問題がないのだ。
 逆に、ゆかり──本物の葵の方は、元の「真面目で気の弱く、守られがちな弟分」から「よく気がつく世話好きのお姉さん」へと立場が劇的に変化し、また周囲の目もあってそう演技せざるを得なかった点が大きいのだろう。
 あるいは、葵の方が流されやすい性格であることも影響しているのかもしれない。
114次期当主はメイドさん!?:2010/12/19(日) 23:46:40 ID:tarIdGZc
 その後も、夕暮れの公園で抱き合ってキスしたり、「手をつなぐ」ではなく腕を組む(より正確には、あおいの差し出した腕に、ゆかりが抱きつく)形で帰路についたりと、いかにもなイベント続出で、ふたりの仲は大いに進展した。
 もっとも、それとともに、ゆかりの精神的な「女性浸食度」も大幅にアップしたことも間違いない。
 なにせ、このデートの間中、「彼女」は自分が本当は「葵」であるという事実を一度も思いださなかったのみならず、女の子としての立場や行動にも、なんら違和感を感じていなかったのだから。
 そればかりか、桐生院家の自室に戻った途端、買ってもらったワンピースにさっそく袖を通し、鏡の前で今日のデートに於けるあおいのイケメンぶりを思いだして悦に入ってる始末。もはや完全に「恋人にメロメロな女の子」状態だった。
 心のどこかに、その自覚はあるのだが、それが心底快いと感じてしまっているのも、また事実なのだ。
 それは、「桐生院葵」としての日々では得られなかった安らぎだった。

 だからだろうか。そんな馬鹿な提案をしてしまったのは。
 「えっと……ねぇ、もう一日。もう一日だけ、このままでいちゃダメかなぁ?」

#以上。なんか、今回は書いてて背中が痒い気が(w)
#+α(2回目の夢のシーン)までは辿りつけず。そちらは次回のエピローグ前につけます
115名無しさん@ピンキー:2010/12/20(月) 02:03:58 ID:z50I1CWY
>>114
GJ!
甘酸っぱい感じが凄く良いです!
116名無しさん@ピンキー:2010/12/21(火) 22:18:49 ID:/IAIG5H0
あまい。かゆい。
11713だったり32だったり42だったり:2010/12/22(水) 19:51:12 ID:/KW5KtgC
ネタが出てこない(´・ω・`)

なんかいいネタないかなぁ・・・・・・

>>114
GJ!
双方幸せモノは甘甘でいいなぁ・・・・・・
118名無しさん@ピンキー:2010/12/22(水) 21:36:10 ID:WW6Saso7
>>117

俺みたいなののアイデアで良ければぜひ提供させてくれ

・「女優」という職業と「芸人(裸芸やらリアクションやら)」という職業の概念が入れ替わる

・子供と上手く向き合えない女教師が、子供の気持ちを理解するため幼女を教師としたクラスに入れられる

・ヤンキーファッション⇔お嬢様ルック(言葉遣いなどもチェンジ)
119名無しさん@ピンキー:2010/12/25(土) 04:31:17 ID:nqGnfNqF
他のスレに池と言われるのはわかっているが、
どうにも男女が入れ替わらないと物足りないんだよなあ
120名無しさん@ピンキー:2010/12/25(土) 11:09:19 ID:0XAINvM5
いや、普通にここでいいんじゃないか
121名無しさん@ピンキー:2010/12/25(土) 19:08:22 ID:k8byDT1S
色気ムンムンの女教師と厨二病発症してるエロガキの入れ替わりとかwktkするのう
122名無しさん@ピンキー:2010/12/25(土) 20:16:30 ID:sSofuxLH
>>121
それもいいが、それ以前のうんこうんこ言ってるアホガキとの入れ替わりとかどうだい
123名無しさん@ピンキー:2010/12/25(土) 20:26:18 ID:k8byDT1S
>>122
> うんこうんこ言ってるアホガキとの入れ替わり
それもありかなあ?
でもそれは同級生の真面目で潔癖症な女の子と入れ替えたほうが良くないかい?
124名無しさん@ピンキー:2010/12/25(土) 20:34:19 ID:sSofuxLH
>>123
> 真面目で潔癖症な女の子

なるほど。幼稚な方が教職とのギャップが出るかと思ったけど、確かにその方がいいかもな
125次期当主はメイドさん!?:2010/12/26(日) 18:30:14 ID:MY0EKCRg
#先週のつづき。今回でひとまず最終回です。

 「えっと……ねぇ、もう一日。もう一日だけ、このままでいちゃダメかなぁ?」
 日曜の夜、そろそろ元に戻ろうと例の絵を持って来たあおい──紫に向かって、ゆかり──葵は、気が
ついたら、そんな言葉を口から発していた。
 葵自身も意外だったくらいだから、当然のことながら紫も目をパチクリさせている。
 「え!? そりゃもう一日くらい構わないけど……でも、明日は学校があるよ?」
 「う、うん。と言うか、むしろ、だからこそ、なんだけど……」
 モニョモニョと言葉を濁す葵を見て、ピンと来たのか、ニヤリと人の悪い笑みを浮かべる紫。
 「ははぁん……葵ちゃん、もしかして学園(ウチ)の女子制服が着てみたい、とか?」
 「そ、それは、その…………うん」
 一瞬口ごもったものの、覚悟を決めて自分の心に素直になる葵。
 ふたりが通う私立杜宮学園の男子制服はごく普通の紺の詰襟(ボタンでなくファスナータイプ)だが、女子の制服は可愛らしいデザインで人気が高い。「ゆかり」としての立場に流されつつある葵なら、袖を通してみたいと思っても不思議はなかった。
 もっとも、そればかりではなく、せっかくなら「六道紫」としての女子高生ライフも体験してみたいという好奇心があることも、理由のひとつではあったが。
 「うーーん……ま、いいか。ぼくも、男子高校生の日常ってヤツに興味はあるしね」
 咎められるかと思ったのだが、案外簡単に紫は納得してくれた。
 「あ、それじゃあどうせなら、来週いっぱい金曜まで、このままで過ごそうか。家庭科の授業で活躍したり、体育の着替えでアタフタしたり、生徒会で「会長」してたりする葵ちゃんも見てみたいし♪」
 それどころか、突拍子もない提案を出してきたりする。
 「え? ええっ!?」
 「ん、異論はないみたいだから決まりだね! じゃあ、おやすみ〜」
 葵に口を挟ませる余裕を与えず、畳みかけるようにそう宣言すると、紫は「あおい」として「自分の」部屋に帰っていった。
 「はぅぅ〜、トンデモないコトになっちゃったよぉ」
 ハッと我に返り、オロオロする葵だったが、既に後の祭りだ。
 「まぁ、半分は自業自得か」とあきらめて、時間割表を見つつ、「ゆかり」としての明日の学校の用意をする。
 もっとも、本物の紫が言及していた通り、明日の月曜日は体育や家庭科などの特殊な授業のない日のようだから、授業関連でトラブルが起きる可能性は低そうだったが。
 「これでよし、っと。じゃあ、今晩はもぅ寝ちゃおうかな」
 先ほどあおいと会う前に風呂には入っていたのであとは夜着に着替えて布団に入るだけだ。
 「ふん、ふん、ふーん♪」
 ゆかりは、当り前のようにドレッサーの前にすわって、誰に教えられたわけでもないのに鼻歌混じりに就寝前のスキンケアの手順をこなしていく。
 化粧水が乾いた頃合いをみはからって、灯りを消してベッドに入ると、ゆかりはそのまま眠りについたのだった。
126次期当主はメイドさん!?:2010/12/26(日) 18:31:03 ID:MY0EKCRg

 * * * 

 「あれ……ここは?」

 「彼女」は、自分がフワフワと青空の上に浮かんでいることに気がついた。しかも、着替えたはずのミントグリーンのネグリジェではなく、見慣れたメイド服姿になっている。

 「あ、もしかして……」
 「おーーーい!」
 「彼女」が事態を把握するのとほぼ同時に、眼下から聞き覚えのある声で呼ばれる。
 真下に視線を転じると、案の定、透明な翠色の水面の下には、ポロシャツにスラックスという、これまた見慣れた格好の「少年」が手を振っていた。

 「あおい君……じゃなくて、ユカねえ!」
 どうやらココは、2日前と同じく夢の中らしい。より正確には、ふたりが共通して同じ夢を見ている、と言うべきかもしれないが。
 「はは、今はあおい君でいいよ、「ゆか姉」」
 ふたりが互いの姿を認識した瞬間、引き付けあうようにふたりの距離が縮まるのも、以前と同じだ
った。

 「? なにニヤニヤしてるんです?」
 「クックック……さぁ、何でだろうねぇ」 
 どことなく楽しそうな笑みを浮かべているあおい(紫)の視線を辿ったゆかり(葵)は、ハッと気づいて慌ててスカートの裾を押さえる。
 「──あおい君のエッチ」
 「いやいや、不可抗力だよ〜♪ それにしても、ピンクの縞々とは……」
 「わぁ、言っちゃダメェ!!」
 真っ赤になってアワアワするゆかりの表情を見て、ますますニヤケるあおい。シチュエーション自体は2日前とソックリなのに、立場が入れ替わると、これほど互いの反応も変わるとは、なかなか興味深い。
 と言うか、この光景を見たら、本当は「あおい」が女で「ゆかり」が男の子だとは誰も思わないに違いない。
127次期当主はメイドさん!?:2010/12/26(日) 18:31:36 ID:MY0EKCRg
 「まぁまぁ、過ぎたことは水に流して。それより、ほら、ちょっとソッチに引き上げてくれない?
 水面を境にして、上下に分かれて会話するのも2回目とあって、前回ほどの戸惑いはないが、やはり話
しづらいのには変わりはない。
 「あ、はい。じゃあ、手を……」
 水面に横座りしたゆかりが手を差し伸べたのだが……以前と違ってその手は水面に潜り込めない。
 「あ、あれれ?」
 「む、前回とはちょっと違うのかな?」
 あおいの方も手を水から出そうと試みた時に、異変は起こった。

 ポウッ…と何か淡い光のようなものが、あおいの全身から浮かびあがり、そのままソフトボールくらい大きさの光球の形にまとまると、水の境界面を突破してゆかりの身体──正確には鳩尾の辺りに直撃したのだ。
 「きゃあっ!!」
 思わずあげてしまった自らの悲鳴が、先ほどまでより半オクターブほど高く、また艶っぽく聞こえたのは、ゆかりの空耳だろうか?

 そのコトを確認する余裕もなく、ゆかりの意識は白い光に呑み込まれていった。

 * * * 

 夢の名残りか、目覚めの気分はあまり快適とは言えなかったが、それでも重い身体を引きずってベッドから出ると、彼女は昨夜のうちから用意しておいた着替えを手にとった。
 ネグリジェを脱いで畳み、ベッドの枕元へ。
 ピンクのストライプのちょっと子供っぽいショーツも脱いでランドリーボックスへ入れてから、年相応(?)なデザインのライトグレーのショーツへと履き換える。シンプルな意匠だが、前の飾りボタンと縁取りのレースがちょっとお洒落だ。
 そのまま、お揃いの色のブラジャーを付け、制服の白いブラウスも着てしまう。
 いわゆるはだワイ──「裸にワイシャツ」に近いあられもない格好のまま、洗顔する。
 一応立場としては使用人でありながら、当主の姪でもあるという複雑な位置づけの彼女の部屋には、幸いにして洗面台とトイレが備え付けられているのだ。
 次期当主付き侍女とは言え、一介のメイドには過ぎた待遇だったが、何のことはない。この部屋は元々、「桐生院一族」としての彼女がこの屋敷に滞在する際の客室として用意されていたものなのだ。
 まぁ、実際、一昨日からその次期当主の許婚、つまり「次代の若奥様」と当主に認められた以上、不相応だと非難する人間はいないだろうが。
128次期当主はメイドさん!?:2010/12/26(日) 18:31:59 ID:MY0EKCRg
 冷たい水でシャッキリするととともに、夢の残滓をサッパリ洗い流した彼女は、タオルで丁寧に顔を拭いてから、ドレッサーの前に腰かけ、髪を梳かす。
 クセのない艶やかなセミロングの黒髪は、少しも引っかかることなくブラシを通した。
 ブラッシングで襟足を軽く内巻きにカールさせてから、カチューシャを着け、鏡を覗き込んで、おかしなところがないか、検分する。
 「うーん、せっかくだから、もうちょっと髪、伸ばそうかしら」
 何気なく呟いてから、ふと彼女は困惑したような表情を、その可憐な顔に浮かべた。
 「あれ? 私の髪って、こんなに長かったでしょうか?」
 疑問を口にしてしまってから、小首を傾げる。
 (長いって……肩にかかるくらいだから別に長くはないですよね。でも、何だか昨日までとは違うような気が……いえ、きっと着のせいでしょう)
 微細な違和感はあったものの、あまり気に留めず、慣れた手つきでフェイスケアに移る。
 若さのおかげもあってか、彼女の肌は、ほとんどノーメイクでも白く滑らかだが、昨日、メイクしてくれた晴香に「それでもお肌の手入れはキチンとしておいた方がいいわよ」と忠告された。
 「でないと、20代半ばを過ぎてから後悔するからねー。フ、フフフ……」
 30歳目前の独身女性の虚ろな笑いが本気で怖かったため、コクコクと首を縦に激しく振ったのは、あまり思い出したくない記憶だ。
 とは言え、学校に派手な化粧をしていくつもりもない。
 結局、丁寧に美白化粧水をつけて伸ばし、目元に軽くアイブロウを入れ、リップを無色でなく少しだけ薄紅色の着いたものに変えた程度に留まった。

 スツールから立ち上がると、今度は壁にかけられた制服に手を伸ばす。
 杜宮学園の女子制服は、広義にはブレザーに分類されるのだろうが、ややユニークな形状をしている。
 上着は薄い桜色で、一見セーラー襟タイプのタイトなブレザーと言ってもよいデザインなのだが、下に着るブラウスの襟が喉元まで覆うハイカラーになっており、その上に学年色のリボンタイを結ぶのだ。
 ボトムはオレンジを基調とした格子模様のボックスプリーツのミニスカート。中には膝上15センチまで詰めてる娘もいるが、彼女は比較的スカート丈が長いほうだ(もっとも、それでも膝上5センチくらいなので、駅の階段などでは注意する必要がある)。
 靴下に関する規定は「過度に華美なものを禁ずる」とあるだけなので、割合フリーだ。彼女の場合は、その性格ゆえか真夏以外は黒など濃い色合いのタイツを履くのが定番だった。
129次期当主はメイドさん!?:2010/12/26(日) 18:32:40 ID:MY0EKCRg
 ひととおりの準備が出来たところで、ゆかりは厨房へと足を運ぶ。
 学校のある平日は、朝はメイドとしての業務はしないのが習わしだが、それとは別に個人的な用事があるのだ。
 「おはようごさいます、晴香さん、美雨さん」
 「はい、おはよう、紫さん」
 「モーニン、紫っち」
 厨房では、メイド長の晴香と、平日の通いのメイドである東雲美雨(しののめ・みう)が朝食の準備を進めていた──と言っても、もう既に殆ど終わっているようだが。
 「えっと、調理場、使わせてもらってもいいですか?」
 「ええ、あとは配膳だけだから問題ないわ。頑張ってね」
 「は、はい……」
 優しい目をした晴香の言葉に勇気づけられ、早速調理を開始するゆかり。
 無論、言うまでもなく昼食のための「二人分の」弁当を作っているのだ。
 「ニヒヒ〜、聞いたよ紫っち。昨日、坊ちゃんとおデートだったんだって?」
 ふたつ年上の美雨は、このテの話が大好物だ。晴香から聞いたのか、早速、ゆかりをイジリ始める。
 「え、えーと、その……はい」
 「おーおー、赤くなっちゃって、メンコイのぅ。流石「ミス・優等生」も、恋愛関係は完全に専門外なんだねぇ。いやぁ、お姉さん、ちょっと安心したよ」
 バンバンッとゆかりの肩を叩きながらアハハと豪快に笑う美雨。
 「美雨さん、からかわないの! さ、座敷に配膳に行きますよ」
 「ヘイヘイ。あ、初デートの話は、午後にでも聞かせてねン」
 メイド長に叱られつつ、ウィンクを投げて同僚が出て行ったことで、ようやくゆかりは弁当作りに専念できた。
 料理するのは好きだし、晴香などは筋がいいと褒めてくれるが、誰かに食べてもらうお弁当を作ったのなんて、昨日が初めてだ。
 しかも、今日は晴香の手助けもないとあって、卵焼きや鮭の照り焼き、菜の花と大根のおひたしといったメニューを、ゆかりは慎重に仕上げていく。
 その甲斐あってか、どうにか大きな失敗もせずにお弁当箱にできたおかずとご飯を詰めたところで、ふと壁の時計が目に入った。
 「たいへん! そろそろ起こしてあげないと」
 手早くランチマットで弁当を包むと、ゆかりは台所を出て、足早にイトコの部屋へと向かった。
130次期当主はメイドさん!?:2010/12/26(日) 18:33:02 ID:MY0EKCRg
 ──コンコン
 「あおい君、もう起きてますか?」
 軽くノックして遠慮がちに声をかけると、中から「あー」とか「うー」とか言う眠そうな声が聞こえてきた。
 一応起きてはいるようだが、心配なので「入りますよ」と声をかけてから、ドアを開ける。
 中に入ると、ボサボサ頭の少年がボーッと虚ろな目をしつつ、ちょうどベッドの中で上半身を起こしたところだった。
 「おはようございます、あおい君」
 「んーーーあ、ゆか姉、おはよ〜ふわぁ」
 「眠そうですね、昨晩夜ふかしでもしたんですか?」
 「いんや、昨日はそんなに遅くなかったんだけど……ちょっと夢見が悪かったからかなぁ?」
 「あれ、あおい君もですか? 実は私もなんです」
 そう口にした瞬間、ふたりの心に何だか奇妙な違和感が浮かびあがる。
 まるで、結婚式の場に喪服で出席しているような、あるいは部活の剣道着姿で体育の授業を受けているような、「方向性はあってるんだけど、やっぱり何か間違っている」的もどかしい感覚。
 互いの顔を見つめ合い、昨晩の夢に思いを馳せて何かを思い出し……。
 
 ──ジリリリリリリリリリ!!!

 ……かけたところで、唐突に葵のベッドの枕元に置かれた目ざましが古典的なアラーム音をがなり始める。

 「うわっ、確かに7時だ。ごめん、ゆか姉、話はまた今度」
 「ええ、それじゃあ、私は台所に戻りますね」
 言いながら、部屋を出ようと背を向ける直前、パジャマの上を脱ぐあおいの素裸の上半身を目にしてしまい、ゆかりはドギマギする。
 ……と言っても、単に剣士らしく鍛えられ、引き締まった背中を見ただけなのだが、どうやらこの「純情お嬢さん」にはそれだけでも刺激が強かったらしい。
 「じゃ、じゃあ、なるべく早く着替えて、座敷に来てね!」
 頬をほのかに染めながら、台所に戻ったゆかりが、朝食を摂りつつ、美雨にからかわれたのは、言うまでもない。

 * * * 
131次期当主はメイドさん!?:2010/12/26(日) 18:33:26 ID:MY0EKCRg
 いつものように玄関前の廊下で待ち合わせして、いつものようにふたりで学校へと向かうふたり。
 それなのに──。
 「お待たせ、ゆか姉……ゆか姉?」
 「え? あ、ご、御免なさい。何でもないの」
 あおいにポンと肩を叩かれるまで、ゆかりは彼に見とれたままだった。
 (ど、どうしてかなぁ。なんだかあおい君が、いつもよりカッコよく見えるよ〜)
 首にかかるぐらいの長さで揃えた髪を、起きぬけとは異なりキチンと整え、皺ひとつない杜宮学園の男子制服をパリッと着こなしたあおいの姿は、どういうワケかとても「新鮮」な印象をゆかりにもたらしたのだ。
 まるで「初めて詰襟を着ているのを見た」かのように……。
 (そんなはずないよね。確かに、あおい君が杜宮に入ったのは今年の4月からだけど、連休までの一月間、毎日のように目にしてきたんだし……)
 字面だけ言えば、「彼女」の思考は確かに正しい。「六道紫」は、確かに毎朝「桐生院葵」とともに通学しているし、普通に考えれば彼の制服姿も既に見慣れているはずだ。
 ──そう、「普通」に考えれば。
 あるいは、じっくり腰を据えて思考をめぐらせれば、今の状況が「普通」ではないコトに思い至ったのかもしれないが、慌ただしい朝のタイムテーブルが、それを許してくれなかった。
 「それじゃ、行こっか」
 「あ、待って! そのぅ、こ、これ、よかったら……」
 ゆかりは、おそるおそる手に持った包みを差し出した。
 いぶかしげに受け取ったあおいは、中味が何かを察すると、パッと顔を輝かせた。
 「もしかして、コレ、お弁当?」
 「えぇ、あまり巧く出来たか自信はないんだけど……」
 「そんなコトないよ! ゆか姉の作った弁当なら、なんだって美味しいに決まってるさ!」
 「も、もぅ……調子いいこと言っちゃってェ」
 手放しで喜ぶあおいの様子に、謙遜しつつ満更でもないゆかり。
 「あ! あおい君、そろそろ行かないと、朝練に間に合わないかも」
 「おっと! 行ってきまーす! ホラ、ゆか姉も」
 慌てて三和土(たたき)にある学園指定のローファーを履き、晴れて恋人同士となったイトコに手を引かれてに駆け出す「彼女」は、だから気がつかなかった。
 自分が本来何者であるのか。
 そして、昨日までは小さくて履けなかったはずの「紫の靴」に、なぜかすんなり足が入っていたことを……。
132次期当主はメイドさん!?:2010/12/26(日) 18:33:52 ID:MY0EKCRg
 ──それも無理はないのかもしれない。
 そもそも、金曜の夜に「鳥魚相換の図」の説明書を悪戦苦闘しつつ読み解いたふたりは、しかしながら重要な部分を読み飛ばしてしまっていたのだから。

『なお、本図の使用に際しては、以下の点に留意すること。
 壱。入れ替わった後は、七日以内できれば三日以内に元に戻すこと。
 弐。また、入れ替わった者は、可能な限り屋敷内に留まり、外部の人間に接触せぬようにすること。
 これは、入れ替わりが長引くにつれ、「立場」の交換のみに留まらず、仕草や習慣、さらには言葉遣いや考え方なども、立場にふさわしいものに変わっていくからである。さらに長期にわたって戻らないでいると、身体的な影響が生じる可能性もある。
 また、外部の人間と接触することで、ふたりに結ばれた因果の鎖に負担がかかり、前述の「その他の影響」が出るのが早まる公算が強い。とくに、不特定多数の人間と接触することは、本来のあるべき縁を壊し、新しい縁、すなわち今の立場にあることを強めてしまうのだ』
 ─鳥魚相換の図・但書より─

 六道ゆかりと桐生院あおい。ふたりの少年少女が、その後、どのような人生を送ったかについて、詳しく述べる事は省く。
 あえて言うなら、その日以来、ふたりは自他共に認める大変仲睦まじい恋人(許婚)同士であり、また、あおいが大学を出ると同時に婚礼を挙げて、正式に夫婦となった。
 結婚と同時に若くして当主の座を継いだ夫を、優しい妻はよく支え、子宝にも恵まれて幸せな生涯を送ったことだけを記すに留めよう。

 -終-

#以上。以前のダイジェストで述べた通り、これ以上続けるとスレ違いになるので、ボヤかして、ここで終えておきます。まぁ、いつもの私の作品同様、「そしてふたりは幸せに暮らしましたとさ」的エンドなワケですが(笑)。もしかしたらブログで多少補完するかも。
#蛇足ですが、二回目の夢であおい(紫)から出て、ゆかり(葵)に入って行った光球は「女らしさのエッセンス」みたいなモノとお考えください。アレが、徐々に立場に馴染んでいた葵ちゃんに対するトドメとなりました(ある意味「男としての葵」を殺したと言えるかも)
#拙作に目を通して戴き、さらにコメントまで戴いた方々、誠にありがとうございます。他の方々の傑作を待ちつつ、しばらくROMらせていただく所存です。
133名無しさん@ピンキー:2010/12/26(日) 23:56:37 ID:uMaivQuF
完結乙です!

12歳の方と、構想中の新作も期待しておりますですよ
134名無しさん@ピンキー:2010/12/27(月) 19:00:26 ID:c7+TirOa
GJ!
乙でした!
135名無しさん@ピンキー:2010/12/28(火) 11:58:15 ID:GMP5nV61
逆転学園更新キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!
次回は内面の変化っぽいなwktk
136名無しさん@ピンキー:2011/01/02(日) 12:33:59 ID:wxOTb9iS
「はい、できた」
普通の服とは比べ物にならない時間をかけて、ようやく着付けが終了した。
最後に刺した髪飾りが立てる、しゃらしゃらとした音がなんだか耳にここちいい。
「ほらほら、こっちよ」
おばあちゃんに手を引かれて大きな姿見の前に立つと、
淡いピンク色の布地に桜の花びらをあしらった振袖を着た私が映っていた。
「似合ってるわよ」
「そうかな……えへへ」
「さぁお父さんたちに見せに行きましょうね」
「うん♪」
居間でゆっくりしているパパやおじいちゃん、親戚の人たちに振袖姿を披露したら、
みんながみんな「かわいい」と褒めてくれて、なんだかうれしくなってきてしまった。
おじいちゃんなんか、まるでカメラマンみたいにずっとデジカメで私の写真ばかり撮っている。
ただ……パパだけは、なんとなく私の振袖姿をうらやましそうに見つめている。
「雅弘、よかったなぁ」
本当だったらパパが着るはずだった、桜の花びらが素敵なピンク色の振袖。
でも、今は美咲がパパで私が娘だから、私が着て当然。
パパの羨望と嫉妬のまなざしを受けながら、
私はおじいちゃんが構えるカメラに向かってほほえみを浮かべるのだった。
137名無しさん@ピンキー:2011/01/02(日) 12:36:47 ID:wxOTb9iS
お正月保守用小ネタ投下
>>118のネタは結局松の内には間に合いそうにない(´・ω・`)

>>132
完結乙でした
構想中のネタ連載開始と、「次期当主」の続きのblog展開、お待ちしております
138名無しさん@ピンキー:2011/01/03(月) 19:40:15 ID:ZGazDoVg
「小ネタ」というのは謙遜ですか?
こういう一話完結の短編もなかなかいいっす!
短くてもいいので、こういうのどんどん読みたいです。
139名無しさん@ピンキー:2011/01/03(月) 22:40:05 ID:SmGEkrHT
>>136
読後の爽やかな作品、GJです!
でも、ココに至る経緯を読みたくなるなぁ。

あと、白状しますが、「要12歳」がちっともエロくならないので、行き詰まり中。
従姉の「美幸16歳」のほうは確かに性格面からしてエロショタ女子なので、そっちに持ってくのは比較的楽なのですが、
自分的には要くんの立場の方が萌えるので、悩ましいところです。
140名無しさん@ピンキー:2011/01/04(火) 01:37:33 ID:QsNObDiP
#書こうと思ったら、規制されてやんのorz
#書けるといいなぁと思いつつ、当時のコメントを書き込んでみる。。。

>>132
おー、完結来てたー。
まずはお疲れ様です。

結局、彼•彼女も完全な立場交換に飲み込まれちゃったのね(^^;
幸せそうだからいっか。

ふと、もうひと作品との関連も気になったり。
家宝級のものがなんで外に出てるのよ、とか。
効果が違うっぽいから、模写とか複製なのかしらとか(言うだけ野暮ってもんですが)


暫しの休息の後、もう一方もお目にかかれるのを楽しみにしてます。

#ここから新規
>>139
無理にエロエロせずとも、キャラに任せるのでも良いんでないかなぁ、と思ったり。
12歳って事で、妙に初々しいのもありかな。
ほのぼのしたドタバタ(?)も好きだからかな?こう思ってしまうのは。
141名無しさん@ピンキー:2011/01/04(火) 01:47:51 ID:QsNObDiP
>>136
話の一部を切り取った感じですが、
場面を想像してなんかいいなって思いました。
GJです。
142美幸16歳、職業・男子小学生(その2):2011/01/08(土) 06:11:19 ID:dX0Qem6r
#約束通り、「要」の立場になってる美幸のお話第二弾です。非エロ系なので注意。

 「浅倉要」と呼ばれる「少年」──実は他人にそう見えているだけで、本当はその従姉である美幸──は、いささか不機嫌だった。
 正確には、つい先ほど、ほんの10分ほど前まで、極めてご機嫌だったのだ。
 鳥魚なんとか言う魔法の絵の効力で、従弟の要と立場を入れ替えて、はや一週間。
 「要」として浅倉夫妻に連れ出された当初こそ焦ったが、早川家に残った「美幸」──本物の要と連絡がついて、元に戻るための予定を決めると、かえって肝が据わった。むしろ、滅多にないチャンスだとさえ、彼女は考えていたのだ。
 この早川美幸という少女、何しろ高校1年生にして、早くもショタコンかつ腐女子の傾向がある。そんな彼女にとって、ひと月近くも「小学6年生の男の子の生活」を体験出来るというのは、考えようによってはこの上ない「ご褒美」だったのだ。
 例えば、家での生活からしても、「男の子」の暮らしは非常に気が楽だった。
 早川家の両親は、娘のヲタク気味な趣味については、それほどうるさくなかった(ただし、歓迎もしていない)が、部屋の掃除や行儀作法といった生活態度そのものには比較的厳しい方で、美幸はしばしば注意されていたのだ。
 美幸はことさらに男勝りとか活発というタイプではないものの、ガサツというかズボラで整理整頓とか上品だとか言うことが苦手なタチだ。
 それなのに「女の子」だからというだけの理由で「キチンとしなさい」と叱られることに、彼女は常々不満を抱いていたのだ。
 しかしながら、浅倉家の「両親」(本来は叔父叔母にあたる人達)は、元々大らかな性格であり、かつ要が男の子であるためか、カナメ(=美幸)の生活態度に関してあまり口うるさいことを言わなかった。

 さらに言えば、着る服についても同様だ。
 女子高生にあるまじく、お洒落とかファッションにてんで興味のない美幸は、家にいる時ぐらい夏場はTシャツ1枚と短パンで十分だと思うのだが、早川家の両親、とくに母親は何かと可愛らしい格好をさせようとしてくる。
 「あんなのあたしに似合わないってのにさ! それに比べて、コッチはいいなぁ」
 「要」の部屋でベッドに寝転がりながらマンガを読んでいるカナメの格好は、ショートパンツにタンクトップ(と言うよりランニングシャツ)一枚という軽装だった。
 幸か不幸か美幸の胸は高一女子としては悲しくなる程に慎ましい大きさなので、ブラジャーをしなくてもさほど困らない。
 いや、むしろしない方が解放感があって楽だ……とさえ、カナメは思っていた。
 コレが早川家や学園にいると、まがりなりにも女子高生がノーブラというワケにもいかないのだから、面倒くさい。
 その点、「小六の男の子」である現在のカナメは、誰はばかることなく気楽な格好をさらせる、というワケだ。その解放感は推して知るべし。
 「いっそのこと、アイツをだまくらかして、寒くなる頃までこのままでいようかなぁ」
 冗談交じりに自分勝手なコトを呟くカナメ。
143美幸16歳、職業・男子小学生(その2):2011/01/08(土) 06:12:01 ID:dX0Qem6r
 ところが。
 そんな身勝手なコトを考えていた罰が当たったのか、「彼」は10分後、8月最終日に要の通う小学校に足を運ぶことになった。
 なぜかと言えば、原因はカナメのすぐ横を歩いている少年にある。
 少年の名前は有沢耕平。浅倉要の一番仲の良い親友……らしい。少なくとも、要本人はそう言ってたし、耕平の態度からしても、それは間違いなさそうだ。
 「要、夏休み後半のクラブの練習休んだだろ? 事情があったのは知っているけど、このままだとレギュラー外されるぜ?」
 そう言って、耕平少年は渋るカナメを学校のグラウンドまで連れだしたのだ。
 生粋のインドア派ヲタクのカナメとしては、この炎天下にサッカーの練習だなんて勘弁してほしいのだが、一応本物の要の立場も考慮せざるを得ない。
 少なからずちゃらんぽらんなトコロがあるとは言え、自分のことを「姉ちゃん」と慕う従弟の立場を悪くすることはできれば避けたかった。
 (まぁ、間近で小学生男子の健康的なフトモモを存分に観賞できるのを心の支えにしますか)
 そんな邪な妄想で空元気を絞り出すつもりだったカナメだが……本人も意外なコトに、小学生FCチームのトレーニングに意外とスムーズについていけていた。
 (まぁ、考えてみれば、なんだかんだ言ってこの子ら小学生だもんねぇ)
 女とは言え、まがりなりにも自分は本来高校生なのだから、さすがに小学生に劣ることはないか……と納得するカナメ。
 そうとわかると、俄然練習するのがおもしろくなってくる。4、5年の後輩達が、カナメの華麗なドリブルやシュートに見とれ、尊敬の眼差しで見てくるのも、すこぶる愉快だ。
 ──実のところ、「彼」の考えは少々的を外していた。確かに、小六男子と高一女子なら、体力的には互角か、僅かに高一女子の方が有利だろう。しかしそれは、「平均的な生徒」の話だ。
 学期中はもちろん休み中も頻繁にトレーニングしている12歳の少年と、形だけ運動部に籍は置いているとは言え、実質帰宅部でロクに運動しない16歳の少女を比べれば、間違いなく前者に軍配が上がる。
 それが、なぜこのようなコトになっているかと言えば、もちろんあの絵図の能力(ちから)である。現在の立場を全うできるよう、様々な面で補整がかかるようになっているのだ。
 そんなコトとも露知らず、カナメ本人は「サッカーアニメも結構バカに出来ないなぁ。色々見ててよかったぁ」と脳天気なコトを考えていたりする。
 いくら「キ○プ翼」や「ホイ○スル」、あるいは「イナイレ」などを熱心に見ていたからと言って、ズブの素人がいきなり練習試合でハットトリック決められるようになったら、プロ選手は商売上がったりだろう。
 しかし、完全に勘違いしてフィールドを思う存分駆け巡ったカナメは、すっかりサッカーをやることの魅力に目覚めてしまい、以後真面目に練習に出るようになるのだから、それはそれで結果オーライ、なのだろうか?
 そして、このコトがふたりの身に起こる「変化」を加速させていくことになるのだが……それについては、現時点ではどちらも「変化」の兆しにすらまだ気づいていなかったのである。

-つづく-
144美幸16歳、職業・男子小学生(その2):2011/01/08(土) 06:12:46 ID:dX0Qem6r
#以上。前回の「要」な美幸のオナニー話が入れ替わり後2週間目くらいの出来事なので、今回の話は、それより前(1週間目)ということになります。
そして、このサッカーを機に、できるだけ人付き合いを避けて無難に敬老の日を待とうと考えていたカナメ(美幸)は、一転要の友人達と積極的につきあい出し、二学期が始まったこともあって精神的男性化が徐々に進行していくことに……。
まぁ、似たようなことはミユキ(要)の方でも起こるワケですが。
次回は、ミユキちゃんの方のお話、新学期初日です。できるだけ早くお届けできるよう、努めます。
145美幸16歳、職業・男子小学生(その2):2011/01/08(土) 11:21:17 ID:dX0Qem6r
#忘れてた。
>>140さん

>家宝級のものがなんで外に出てるのよ、とか。
>効果が違うっぽいから、模写とか複製なのかしらとか(言うだけ野暮ってもんですが)

おもしろそうなので、そのアイデア、いただきます。
この図自体、なぜか様々な経緯で「紛失」されることが多いという設定なのですが、それに加えて
円山壬挙の手によるオリジナルは迅速・安全かつ純粋に「立場の入れ替え」だけを行うのに対し、
弟子による模写および本人による習作も世に出ており、そちらも同様の効果を持つものの、
色々不具合がある……てな感じに。
146名無しさん@ピンキー:2011/01/08(土) 14:57:57 ID:+22yalvb
>>145
続き楽しみに待ってます。
147『要12歳、職業・女子高生』その5:2011/01/08(土) 22:53:36 ID:dX0Qem6r
#というワケでミユキ(要)編に戻ります。とりあえずは登校風景。

 二学期が始まる9月初日。
 校門から連なる石畳の道は、未だ真夏と遜色ない強い日差しに照らされ、道の両脇に立ち並ぶ銀杏並木も青々とした葉を茂らせている。
 それでも、先月半ばまでのようなけだるい倦怠を感じないのは、まだ時間が早いせいか、あるいは密かに忍びよる秋の気配のおかげか。
 校舎までの短い道程には、年若い少女達の笑いさざめく声と軽やかな靴音が満ち満ちていた。
 ここは私立星河丘学園。昭和初期に設立された由緒正しい名門校である。そのモットーは、「自由・平等・公正」。
 とは言っても、昨今のモンスターペアレントが喧しく囀りたがる悪平等や無秩序な放任の類いではなく、「自由とそれに伴う責任を知り、教育を始めとする機会の平等のもとに、公正に競争し切磋琢磨する」という誠に健全な方針を掲げている。
 高等部は原則全寮制だが、ただし学園より徒歩10分圏内に住む者だけは入寮か自宅通学かを選べることになっている。ちなみに中等部は選択制だ。
 「「「おはようございます、お姉様」」」
 「おはようございます、皆さん」
 そこここで交わされる挨拶はあくまで優雅で柔和に。
 制服のリボンを乱さぬよう、スカートの裾は翻さぬよう、歩くのがこの学園の不文律。

 「……てな感じの光景を想像してたんだけど、案外フツーだね」
 朝8時過ぎに部屋を訪ねて来た奈津実と一緒に寮を出たミユキ(要)がそう囁くと、奈津実はケタケタと笑い出した。
 「ミユキちゃん、「マリ見て」の見過ぎだよ〜。ふた昔前の少女マンガじゃないんだから。それにそもそもウチの学校は共学だし」
 「そ、そう言えばそうだね」
 とは言え、都内や近隣の人間にとっての「星河丘」のイメージは、やはり「名門校」であり、かつ優秀なお嬢様を輩出ているイメージが強い。
 その証拠……と言うワケでもないのだが、共学化して以降の歴代生徒会役員の7割が女子生徒であり、生徒会長に至っては全員女性だ。クラブ活動などに関しても、個人戦はともかく団体戦では圧倒的に女子の方が成績がよい。
 これでかつては男子校だったと言うのだから、何の冗談だと言いたくなる。男子生徒の質も決して悪いワケではないのだが、そり以上に女子のレベル高い、と言うべきだろう。
 実際に現在進行形で「登校」しているミユキとしては、さほど堅苦しい雰囲気ではなかったコトに正直ホッとしているのだが。
148『要12歳、職業・女子高生』その5:2011/01/08(土) 22:54:17 ID:dX0Qem6r
 「あれ、長谷部と……そっちは早川か? お前らが朝から一緒にいるなんて、どうした風の吹きまわしだ?」
 背後から驚いたような声をかけられて、慌てて振り向くミユキと奈津実。
 その瞬間、ミユキの目が僅かに大きく見開かれた。
 「あ、富士見くん、はよ〜ん」
 そこにいたのは、浅黒く陽焼けしたスポーツ刈りの少年。先方と奈津実の言葉づかいからして、どうやらクラスメイトか、あるいは少なくとも同級生の顔見知りらしい。
 「お、おはよう、ふ、富士見…くん」
 ちょっとつっかえながらも、ミユキも慌てて挨拶をした。
 「オッス。にしても、長谷部はともかく、早川がこんな早くに登校してるのって珍しいな。それに何だか大人しいし……ひょっとして、長谷部、何か早川の弱みでも握って脅してるんじゃないだろうな?」
 「あ、ヒド〜い! ミユキちゃんとは夏休み中に仲良くなっただけだモン!」
 心あたりがないでもないミユキは内心ギクリとするが、奈津実が意に介せず抗議してくれたおかげで、ボロは出さずに済んだ。
 「ふーん……ま、何だかんだ言って、お前ら同じクラブだし、寮の部屋も隣り同士なんだろ? 仲良きことは麗しきかな、か」
 富士見少年の方も、本気で疑っていたワケではないのだろう。ニカッと笑うと「じゃ、おっさき〜」とひと声かけて早足で校舎に入って行った。
 「えーと、奈津実さん? あの人は……」
 「うん、クラスメイトの富士見輝くん。わたしや美幸ちゃんと席が近いし、ああいう性格だから、男子では割とよくしゃべる方かな」
 「そう、なんだ……」
 考え込むような表情になったミユキを見て、ニヤリと人の悪い笑みを浮かべる奈津実。
 「なになに? 女子高生初日から、さっそくひと目惚れフラグ!?」
 「そ、そんなんじゃないよ。あの人、私じゃなくて「僕」の──「浅倉要」の知り合いなんだ。て言っても、近所のお兄ちゃんで、小学生の時の集団登校とか生徒会で御世話になったってくらいの関係だけど」
 「ふぇ〜、そりゃまたスゴい偶然だね。あ、だからこそ、運命的と言えるかも」
 「奈津実さん、飛躍し過ぎだって。ただ、数年前とは言え、お兄さんとして見てた人と同じ教室で机を並べてクラスメイトとして過ごすとなると、フクザツな気分かも……」
 「そっか。でも、さっきも気づいた気配はなかったし、平気じゃない? 普通にしてれば大丈夫だよ、きっと」
 「(その普通が難しいんだけど)う、うん、頑張る」
 「あはは、ミユキちゃんは、真面目だなぁ。もっと力抜いた方がいいよ、ほら、リラックスリラックス!」
 「ひゃんっ! そんなコト言いながら後ろから胸揉まないでよ〜!!」
 キャイキャイとかしましくじゃれ合いながら玄関で上履きに履き替え、教室を目指すふたりの姿は、その片割れが本当は「小六の男の子」だとは思えぬほど、学園の風景に馴染ん見えたのだった。

#短くて申し訳ありませんが、いったん切り。明日、明後日にも短めのを投下して、とりあえずその1冒頭の着替えのシーンまでは持って行く予定です。
149名無しさん@ピンキー:2011/01/09(日) 03:17:42 ID:rhxYQy5Z
>>148
続きが、楽しみで眠れない。
150名無しさん@ピンキー:2011/01/09(日) 14:44:11 ID:rhxYQy5Z
>>148
ワクワク!!!
151名無しさん@ピンキー:2011/01/09(日) 17:27:19 ID:YCadsFLS
逆転学園がツボ。ワクワクしながら待ってます。
152『要12歳、職業・女子高生』その6:2011/01/09(日) 23:28:56 ID:2pNwGCqN
 奈津実と連れ立って1−Cの教室へと急ぐミユキ。左手首の内側の腕時計を見る限り、予鈴まではまだ多少時間があるが、初めての場所なのだから余裕を持って行動しておくにこしたことはない。
 ちなみに、星河丘学園では、ケータイ自体の所持は認められているが、授業時間中は電源を切っておくことになっている。無論、授業中にコッソリいじっているのが教師にバレたら没収で、放課後お説教だ。
 元々要自身まだケータイを持っておらず、美幸のケータイを預かっている状態の今もほとんど触っていないため、ミユキはその校則に特に不自由は感じなかった。
 「到着ぅ〜。あ! ミユキちゃん……」
 いつものように窓際の自分の席にカバンを置いた奈津実は、あることを教えようとミユキの方を振り向いたのだが……。
 「ん? 何、奈津実さん?」
 いつも通り、ひとつ前の席にミユキが座ったのを見て、言いかけていた言葉を飲み込み、他愛もない雑談へと切り替える。
 「あ、なんでもないよ。
 (なんだ、美幸ちゃんの席、教えてあげようと思ったけど、本人から聞いてたのかな)
 それよりさぁ……」
 早川美幸の席は、教室の窓際の前から2番目。長谷部奈津実のひとつ前で、今朝がた出会った富士見輝の隣りだ。
 教室に入ったミユキが迷うことなくその席についたため、てっきりあらかじめ知っていたものと奈津実は思い込んだのだが……実は決してそんなことはない。
 誰に教えられたワケでもなく、ミユキとしては、無意識に「いつもの自分の席」として、そこに座っただけだった。
 そのコトが何を意味するのか──賢明な読者の方々はおおよそ見当はつくだろうが、ここではあえて深く触れないこととする。

 * * * 

153『要12歳、職業・女子高生』その6:2011/01/09(日) 23:29:29 ID:2pNwGCqN
 奈津実のフォローを受けつつ、何人かの(美幸の)クラスメイトと軽く朝の挨拶を交わした頃予鈴が鳴、教師が来てホームルームが始まった。
 このあたりの感覚は、日本では小学校でも高校でも大差はない。強いて言うなら、要の担任が中年にさしかかった男性だったのに対して、美幸の担任がまだ二十代前半ばと思しき若い女性教諭だったことくらいか。
 ベテランの学年主任で、「厳しい先生」として恐れられている小学校での担任に比べて、優しげな笑顔と気さくな口調で話す、こちらの美人先生の方がいいなぁ……というのが、ミユキの正直な感想だ。
 「──注意点はこのくらいかしら。まだまだ暑いけど、今日から二学期が始まるんだし、皆さんも心機一転、頑張ってね!
 それと、ホームルームが終わったら、始業式があるからすぐに大講堂に移動してください。
 じゃあ、日下部さん、号令お願い」
 「はいっ。起立……礼。着席!」
 担任の姫川先生(あとで奈津実に聞いたところ、この学園の卒業生らしい)が出て行ったのとほぼ同時に、生徒達も立ち上がって大講堂への移動を開始する。無論、ミユキもその流れに身を任せた。

 始業式にせよ卒業式にせよ、およそ学校行事に於いて「式」と名がつくものは、学生にとって退屈で苦痛なものと相場が決まっているが、この学園に関して言えばあまりあてはまらないようだ。
 大講堂は、優秀な空調設備のおかげか、沈静成分のあるハーブの匂い付きの涼風で快適な室温が保たれているし、学園長の挨拶も要領良くまとめられ、2分足らずの短さで終わる。
 学園長と交替に壇上に上がった高代という女生徒は、どうやら生徒会長らしいが、遠目にもわかる大人びた美貌と、知性的かつウィットに富んだその語り口は、その場にいた生徒の大半を引き付けるに足るものだった。
 ミユキなどは「やっぱり高校の生徒会長さんともなると格が違うなぁ」とコッソリ関心しているが、これはこの星河丘学園だからこそで、他校ではこれほどの逸材はなかなか見られるものではない。
 もっとも、逆に星河丘ではこのレベルの人材でなければ生徒会長は務まらない、とも言えるが。
 ともあれ、学園祭や体育祭などに2学期の行事に関する連絡と諸注意が、高代会長の口から伝えられたのち、始業式はお開きとなった。
154『要12歳、職業・女子高生』その6:2011/01/09(日) 23:30:04 ID:2pNwGCqN
 「このあとは教室に戻るんで…だ、よね?」
 つい丁寧語を使いそうになるのを堪えて、ミユキは隣りの奈津実に小声で聞く。
 「うん、原則的にはそうだけど、始業式と終業式の日の帰りのホームルームはないから、あとは好きにしていいんだよ〜。そーだ! ミユキちゃん、せっかくだから、学食のカフェテリアに行ってみよっか」
 言葉としては質問だが、言うが早いが奈津実はミユキの手を引いて歩き始めている。
 ある意味強引ともいえるが、彼女に悪気はなく、むしろ学園に不案内なミユキのことを気遣ってくれていることが分かるので、不愉快な気はしない。
 要の身近にも耕平という同様に世話焼きな友人がいたので、ミユキは奈津実のことが決して嫌いではなかったが……。
 (美幸お姉ちゃんは、たぶん鬱陶しがるだろうなぁ)
 小学生とは言え12歳ともなれば、幼いころから姉同然に慕っている従姉の性質もおよそ理解できる。
 「本物」の早川美幸は、格好よく言えばセンシティブなローンウルフ気質、ブッちゃけて言えば内向的で人づきあいの苦手な性格だった。おまけにインドア派でアニメとマンガ好きであることも、ミユキ──要はしっかり把握している。
(さすがに、ショタ趣味な腐女子で、最近コスプレにも手を出し始めたことにまでは気づいていないが……)
 ミユキが苦笑気味にそんなコトを考えていると、すぐに食堂らしき場所に着いた。
 「ここが星河丘(ウチ)の学食……の喫茶コーナー「ミルヒシュトラッセ」だよん」
 「へぇ〜。学食って、なんか思ってたよりも立派なんですね」
 少なくともインテリアなどの雰囲気は、下手なファミレスなぞよりは、ずっと品良くまとまっている。
 「まぁ、ウチは私学だからね。公立だと、こんなに綺麗な所は珍しいと思うよ」
 フンフンと奈津実の説明を聞きつつ、カウンターの上に記されたメニューに目を通していたミユキの目が「キラン!」と光る。
 「あ、ここ、バナナシェーキが、あるんだ! わ、アイスココアとかイチゴオーレも! え、チョコレートパフェまで!?」
 今まで、どちらかと言うと実年齢不相応に落ち着いたイメージだったミユキの浮かれぶりを、おもしろそうに見守る奈津実。
 「おろ、ミユキちゃん、もしかして甘い物好き?」
 「うんっ、大好き! ……って、すいません、はしゃいじゃって」
 ちょっと頬を赤らめる様子が可愛らしい。
155『要12歳、職業・女子高生』その6:2011/01/09(日) 23:30:28 ID:2pNwGCqN
 「ううん、いいんじゃないかな。わたしだって好きだし」
 「でも、もうじき中学生になる男が、そういうのって……」
 どうやら友達か誰かに「カッコ悪い」とでも言われたのだろうか。
 (背伸びしてコーヒーが飲みたいお年頃、ってヤツかなぁ)
 奈津実は優しく微笑んだ。
 「うーん、別にイイと思うよ。大人になっても甘党の男の人だっているし。
 それに、ホラ、今はキミが「早川美幸」なんだし。女の子はいくつになっても甘い物が大好きなんだから」
 それと、敬語は禁止ね……と小声で付け加えてウィンクする。
 「! そっか……そうだよね。ボ…ワタシは女子高生なんだし、こういうモノを飲んだりしたって、全然ヘンじゃないよね!」
 天啓を得たような顔つきで満面の笑みを浮かべ、さっそくカウンターへと突貫していくミユキを、奈津実は暖かく見守ったのだが……。
 「さ、さすがに、バナナシェーキとイチゴオーレ飲みながらチョコパフェとショートケーキを一度に食べるのは、行き過ぎじゃないかなぁ」
 「ふぇ?」
 お約束のようにクリームを付けて顔を挙げたミユキを見つつ、冷や汗をひと筋垂らす奈津実。
 「──ミユキちゃん、そんなに甘いものばっか食べると……太るよ?」
 奈津実のそのひと言に、なぜかこの世の終わりのような衝撃を受けるミユキなのだった。

-つづく-

#以上、学校初日編その2でした。微妙にミユキ(要)の乙女化が進行してたりしてなかったり……次回は翌日の平日授業&放課後編です。
156名無しさん@ピンキー:2011/01/10(月) 04:37:56 ID:QKnsMyOs
>>155
続き期待!
157『要12歳、職業・女子高生』その7:2011/01/10(月) 21:57:17 ID:rOZP83KG
#もはやエロとは無縁なナニかになってますが……そのうち、いずれはッ!

 ──ピピピピッ、ピピピ……カチッ!

 9月2日の朝7時。
 星河丘学園女子寮「桜丘寮」の一室で、軽快に鳴り始めた目覚まし時計は3秒後に、その部屋の主の手によってアラームを止められることとなった。
 「んーーーもぅ、7時、なんだ……ほわぁ〜〜あ」
 眠だげな声を漏らしつつ、ベッド中でモゾモゾと身じろぎする少女だったが、程なくパパッと掛け布団を跳ね上げて勢いよくベッドの上に半身を起こす。
 この「少女」の名前は、今年、星河丘学園高等部に入学したばかりの一年生「早川美幸」……というのは仮初の姿で、じつはその従弟の小学生、浅倉要少年であることは、皆さんも既にご存じであろう。
 とある旧家の家宝──「鳥魚相換図」の不思議な力によって、本人同士以外の他人の目には、
要は美幸に、美幸は要にしか、見えなくなっているのだ。
 もっとも、ピンクのナイティ(無論、本物の美幸の持ち物だ)を着て、眠そうに目をこすっているミユキ(要)の姿は、線が細く未だ第二次性徴が訪れていないこともあいまって、ショートカットでボーイッシュな女の子にしか見えなかったが。
 昨日の朝は、緊張していたことの反動かグッスリ寝こけてしまい、時間ギリギリになって隣室の奈津実に起こされたのだが、今朝は目ざましをかけた甲斐もあって、ちゃんといつもの時間に起きられたようだ。
 「んしょっ、と」
 眠気を払い飛ばすようにブンブンと頭を振ってから、ミユキはベッドからカーペットの上に降り立つ。
 「ホントならジョギングとかしたいところだけど……」
 少年サッカーFCに所属する要少年は毎朝2キロのジョギングをしているのだが、さすがに、ミユキとしてこの学校にいる以上、いきなりそれはマズいだろう。
 「じゃあ、部屋の中でストレッチと柔軟でもやっておこうかな」
 あまりドタバタするのも周囲に迷惑だろうし、用具もないのでそれくらいしかできなさそうだ。
 サッカーに限らず、身体をスムーズに動かすためには、関節や筋肉の柔軟性は必須事項だ。
 スポーツ少年のハシクレ(まぁ、今は「少女」にしか見えないワケだが)として、ミユキもそういった基礎的なトレーニングの重要性は、一応理解している。
 だから、4年生の頃まで通っていた体操教室でコーチに教わったストレッチと柔軟運動を久々にやってみたのだが……2年間のブランクがあっても身体は覚えているようで、気持ちよく動くことができた。
158『要12歳、職業・女子高生』その7:2011/01/10(月) 21:57:59 ID:rOZP83KG
 ──もっとも、もし他の人間が今のミユキの様子を見たら、「はしたない」と顔をしかめるか、あるいはスケベ心全開で邪な視線を向けたことだろう。
 なにせ、今、ミユキが着ているのは、ダボッとしたロングTシャツのようなナイティ1枚(+ショーツ)なのだ。
 やや幼い体つきとは言え16歳の少女(にしか見えない人物)が、屈伸程度ならともかく、時には大股開きで、床の上でアクロバティックな姿勢を次々披露しているのだ。当然、しばしばナイティがめくれ上がって、パンチラどころかパンモロと言って良い状態だった。
 傍らに同世代の男の子がいたら、正直襲われても文句が言えないだろう。
 無論、小学6年生の少年に、そういう「女の子としての恥じらい」を持てと言うのも無茶な話であろうが。

 ひととおり身体を動かして満足したのか、ミユキは汗の滲んだナイティを脱ぎ棄てると、ユニットトイレに備え付けの簡易シャワーで軽く汗を流す。
 「本物」の美幸なら、たぶん寝汗の類もあまり気にせず、平気でそのまま制服に着替えたろうから、このあたりは、きれい好きかつ風呂好きなミユキならではの行動だろう。
 無論、脱いだナイティも、「本物」のように脱ぎ散らかしたりせず、ちゃんとランドリーボックスに入れてある。一昨日からの洗濯物とまとめて、夜にでも寮のランドリールームで洗うつもりだった。
 「ふぅ。やっぱり、汗かいたときはシャワーだよね」
 小ざっぱりした顔でシャワースペースから出て来るミユキ。なにげに女の子っぽく、胸元にタオルを巻いてたりするが、コレは早川家にいた間に母親(本来は伯母)から躾られたモノだ。
 ミユキとしても、「女の人の湯上がりは、タオルを巻いて胸元からお尻まで隠す」というイメージがあったので、現状では素直に従っている。

 「えーと、今日の下着は……コレでいっか」
 ミユキは、タンスの引き出しから可愛らしくレースで縁取られたミントグリーンのショーツとブラジャーのセットを取り出して、ベッドの上に並べた。
 胸元のタオルを外し、もう一度身体をよく拭いてから、まずはショーツに足を通す。
 元々要はブリーフ派だったこともあり、女物のパンツを履いてもさして違和感はない。むしろ、薄くて頼りないが、柔らかいシルクの布地が素肌にピタリと貼りつく感触は、口には出さないものの密かに気に入っていたりする。
 女性にはないはずの突起物については、奈津実の意見により、股の下に後ろ向きに寝かせて絆創膏テープで固定することで、外見的な不自然さをなくしてある。
 第二次性徴前ということもあって決して大きいとは言えないミユキのナニも、さすがにそうやって押さえつけると多少は窮屈なのだが、昨日一日でだいぶ慣れた。
 「それに、そうやっておけば、おトイレも座ってしかできないから、便座を上げっぱなしにして怪しまれることがないでしょ」
 と言う奈津実の意見ももっともなので、ミユキとしても素直に従っていた。
159『要12歳、職業・女子高生』その7:2011/01/10(月) 21:58:44 ID:rOZP83KG
 股間を調整し、キチンとショーツを腰まで上げてから、今度はブラジャーに腕を通す。
 実はミユキは、身体が柔らかいこともあって、一昨日奈津実に教わったような先に前でホックを留めるやり方をしなくても、最初から背中で留める事が楽々可能だったりする。
 ただし、脇腹の肉をかき集めてカップに入れる点だけは踏襲している。ソレさえしておけば、まがりなりにもミユキの胸にも僅かに膨らみがあるように見えるのだ。
 「お姉ちゃんは「貧乳はステータスだ!」とか言ってたけど、流石に限度があるよねぇ」
 胸元を見下ろし、ブラジャーによる補整効果で、ごく僅かに「谷間らしきもの」が出来ているのを見ると、誇らしいような情けないような奇妙な感慨が脳裏に湧き上がって来たが、深く追求するのはコワいので、ミユキはそれ以上考えないことにした。

 「それにしても、たった二日間で、すっかり慣れちゃったなぁ」
 男物とは逆サイドに着いているブラウスのボタンを留めながら、ミユキは苦笑する。
 まぁ、下着(ショーツ)自体は、早川家にいた一週間のウチに既に馴染んでいたし、ブラジャーも想像していたほど窮屈な代物ではなかったのは幸いだった。
 もっとも、胸の大きな女性にとっては逆に、ブラとは「窮屈だがないと困る」モノらしいと、奈津実から聞かされた。幸か不幸か奈津実も平均よりは小さめなので、人づての伝聞らしいが。
 スカートの股下がスースーする感覚には、さすがにまだ慣れないが、夏の暑気が多分に残っている気候のおかげか、むしろズボンより涼しくて快適な感じがする。
 (でも、冬場はこの短さだとさすがに寒そうだなぁ)
 制服のスカートのジッパーを上げながら、ハイソックスとスカートの間で完全に露出している膝小僧を見て、ミユキは呑気にそんなコトを考えていた。
 星河丘の女子制服は、数タイプ用意されたモノから生徒自身が自由に選んで組み合わせるようになっており、そのコト自体、学園の人気につながっている。
 早川美幸が選んだのは、一番スタンダードなブレザータイプのようだ。もっとも、まだ夏服の期間なのでブレザー自体は着ず、半袖の白ブラウスと臙脂色のタータンチェックのプリーツスカート&薄手のサマーベストという組み合わせだが。

 ──コン、コン
 「おっはよーー! ミユキちゃ〜ん、起きてますかぁ?」
 ノックの音とともに、奈津実の声が聞こえてくる。
 「おはよう、奈津実さん。今着替えてるところ……あ、鍵開いてるから入ってもらえる?」
 「いいよ〜、それじゃあ失礼しまぁす!」
 部屋に入って来た奈津実に、ミユキは恥ずかしそうにリボンタイを渡す。
 「その、まだタイが巧く結べなくって……」
 「あらら……まぁ、慣れてない人には難しいか。今日はやってあげるけど、ミユキちゃんも、ちゃんと覚えてね」
 と、ドレッサーに向かい、後ろから抱きかかえるられるように腕をまわして、リボンタイを結んでもらうミユキ。
160『要12歳、職業・女子高生』その7:2011/01/10(月) 21:59:20 ID:rOZP83KG
 普通こんな風に年上の女性と接近・接触したら、純情少年の要なら真っ赤になって照れるトコロだが、この二日間で多少は免疫ができたのか、とくに慌てることもなく、鏡の中の奈津実の指の動きを真剣に注目してる。
 「はい、こんな感じかな。わかった?」
 「う、うん、多分……」
 そう答えつつ、あとでコッソリ練習しようと考えている、真面目なミユキ。
 そのまま鏡に向かい、ブラシを通して髪型を整えてから、ミユキは奈津実と共に1階の食堂へと向かった。

 「おはようございます、長谷部さん、早川さん」
 「あ、ムッちゃん、はよ〜ん」
 「おはよう……えっと、西脇さん」
 ふたりに挨拶してきた娘はクラスメイトのひとりだった。ミユキは多少つっかえながらも、かろうじて名前を思い出し、挨拶を返す。
 そのまま流れで、一緒にテーブルに座って朝食を摂る。
 あまり時間に余裕がない朝でも、他愛のない雑談を交わしながら食べてるあたり、いかにも女子寮と言うイメージ通りだ。
 多少はココの雰囲気に慣れてきたのか、ミユキも時々口を挟む程度は出来るようになっていた。
 ……と言うか、それくらいできないと、女子の会話ではかえって浮いてしまうのだ。幼いながらも聡明なミユキは、そういう空気を読める子だった。
 本物の美幸にとっては、そういう普通のガールズトークは「ウザい」だけかもしれないが、「女子高生初心者」なミユキにとっては、色々興味深い話も聞けることだし。
 「それにしても……早川さん、夏前とはちょっと雰囲気が変わりましたね。前より明るくなりました」
 「!」
 だからだろうか。西脇睦美がそんなコトを言って来たのは。
161『要12歳、職業・女子高生』その7:2011/01/10(月) 21:59:43 ID:rOZP83KG
 「にはは、ムッちゃん、夏は女を変える魔性の季節なのだよん」
 一瞬言葉に詰まったミユキを、奈津実が巧みにフォローしてくれる。
 「おや、その割には長谷部さんには何ら変化が見られないようですが……」
 「にゃにぃ! 西脇くん、この5ミリ成長したバストと、小麦色に焼けた肌を見たまえ」
 「でもウエストは1センチ、体重は3キロ程増えたんじゃないですか?」
 「あぅち! どーしてそのコトを!?」
 ふたりがコントモドキを繰り広げるあいだにミユキは考えまとめ、思い切って言葉を紡ぐ。
 「うん……確かに、ちょっと変わったかもね。西脇さん、こんなボ…私はヘンかな?」
 奈津実とのじゃれ合いを中断して、睦美は僅かに真剣な表情になったものの、すぐにニッコリ微笑んだ。
 「──いいえ、むしろ好ましいコトだと思いますわ。
 それと、以前にも言ったような気しますけど、わたくしのことは、よかったら苗字ではなく名前で呼んでくださいな」
 「うん、よろしくね、睦美さん。じゃあ、私のこともミユキでいいよ」
 気がついたら、ミユキは自然にそんな風に返していた。

 こうして、「早川ミユキ」に、この学園に来てふたりめの友達が出来たのだった。

-つづく-

#ごめん、朝の風景を描写してたら、思った以上に時間食いました。授業&放課後編は次回に持ち越し。こういう日常シーンはとばした方がいいのかなぁ。
#ちなみに、完全に余談ですが、舞台が「星河丘学園」なので、サブキャラは、ほぼ全員、過去作からのゲスト出演。無論、知らなくても全然問題ありません。
162名無しさん@ピンキー:2011/01/10(月) 22:46:37 ID:QKnsMyOs
>>161
ワクワクです。

>こういう日常シーンはとばした方がいいのかなぁ。
日常シーンは、あると感情移入しやすいので、あった方が好きです。
163『要12歳、職業・女子高生』その8:2011/01/16(日) 23:37:07 ID:pEH4UYEs
 奈津実や新しく友人になった睦美とともに朝食を食べ終えたミユキは、食事後、ふたりと雑談を交わしながら寮の洗面スペースに同行した。
 男なら食後にそのままカバン持って登校するのが普通だろうが、女の子の場合はそうもいかない。
 ふたりの友人の見よう見真似で、ミユキも身だしなみを整える──と言っても、軽く口をすすいで制服のポケットから取り出した薄い色のリップを引き、髪が跳ねていないか確認するくらいのものだが。
 幸いにして、本物の美幸と大差ないショートカットのミユキは、髪に手間をかける労力を大幅に節約できるのがありがたかった。
 2、3度身体を左右に捻って、特におかしいところがないコトを確認してから、自室に戻る。
 学生寮は学園のすぐそばにあるとは言え、それでも5分くらいはかかるから、すでにあまり時間的余裕はない。昨日のうちに用意しておいた学生カバンを手に、ミユキは足早に部屋を出た。
 「お、来たね、みゆみゆ。じゃ、ちょっと急ごうか。ムッちゃんも一緒に行くって、玄関で待ってるはずだから」
 「そうで…そうだね。睦美さんを待たせちゃ悪いし」
 「廊下を走るな」という寮則に違反しない程度に、ふたりは足を速める。

 そんな朝の慌ただしさに紛れて、ミユキも、事情を知っているはずの奈津実も、些細な違和感を見過ごしてしまったのだ。
 どうしてミユキのポケットにリップが入っていたのか──いや、仮に入れたのは本物の美幸だとしても、どうしてそのコトをミユキが当り前のように知っていたのか。
 さらに言うなら、「彼女」が何の違和感もなく平然とソレを使い、唇を彩ったことも奇妙と言えば奇妙なコトだ。
 純情少年な要なら、たとえ従姉とは言え女の人と間接キスするというコトに動揺しないはずがないし、それがなくとも今まで一度もリップクリームなんて塗ったことがないはずなのだから。
 本人が知らない間に微細な部分で「浸食」は始まっているのだが、未だソレに気づく者はいなかった。
164『要12歳、職業・女子高生』その8:2011/01/16(日) 23:37:30 ID:pEH4UYEs
 「……で、「初めての高校生活」の感想は?」
 昼休みになって、学食の購買でサンドイッチとジュースを買い、ふたり中庭のベンチに腰かけて食べながら、奈津実が小声でミユキに聞いてきた。
 「どうって言われても……よくわかんないからノートとるだけで精いっぱいだよ」
 眉をハの字にして、困ったように言うミユキの答えに、「それもそうか」と頷きかけて、奈津実はあるコトを思い出す。
 「ところで、浅倉要くんは学校の勉強は得意なほうなのかにゃ?」
 「うーーーん、そんなに悪くはないけど……でも、クラスで一番とかそういうレベルじゃないよ? あくまで、「平均よりは上」って程度かな」
 「それにしては、数学の時間、先生に当てられても、普通に答えてたじゃん。しかも正解だし」
 「うん、算数は得意なんだ。もう止めちゃったけど、去年まで公●式に通ってたから」
 「Kまでいったよ〜」と本人はのんきなコトを言っているが、実はK教材の内容はほぼ中学3年クラスである。●文式では珍しくないとは言え、ちょっとした秀才レベルだ。
 「国語は? 小学生には結構難しい漢字もあるんじゃない?」
 「え、そうかなぁ。新聞にないような難しい字とかは出てこなかったと思うけど」
 両親の薫陶の賜物か、この子は12歳にしてふだんから新聞を読んでいるらしい。実家にいた頃はテレビ欄と三面記事くらいしか目を通さなかった奈津実としては、耳が痛い話だ。
 「うわ〜、ミユキちゃんに勉強教えてあげようかと思ったけど、必要なかったかな」
 「ううん、そんなコトないよ。国語とかさ…数学はともかく、全然習ってない事柄はサッパリだし」
 確かに、理科や社会などの暗記系科目は絶対的に知識量が足りていないだろう。
 「よし、それじゃあ、一番問題ありそうな英語から、おねーさんが教えて進ぜよう!」
 「Thank you Miss. But,Please Please teach gently.
(ありがとうございます。でも、お手柔らかにお願いしますね)」
 いくらかたどたどしいものの、十分に英語とわかる言葉がミユキの口から発せられる。
 「……もしかして、それも公●式?」
 「うん。簡単な日常会話くらいだけど」
 「何、このチート小学生、こわい」
 ひょっとして、全教科赤点スレスレの本物の美幸より、いい点取れるんじゃないか……と、心配するのが馬鹿らしくなってきた奈津実だった。
165『要12歳、職業・女子高生』その8:2011/01/16(日) 23:38:15 ID:pEH4UYEs
 昼休みが終わり、午後一の5時間目の授業は体育だった。
 もちろんミユキも、体操着を持って奈津実や睦美と一緒に女子更衣室に移動する。
 (キタっ! 男の娘潜入モノのお約束と言えば、「女子更衣室」!! コレでモジモジと恥じらうミユキちゃんが見れるはず!)
 と、密かにワクテカしていた奈津実の妄想は、睦美や周囲の女の子たちと気軽に会話しながら着替えるミユキの姿にアッサリ打ち砕かれた。
 「あれ、どうかした、奈津実さん?」
 更衣室の隅で、orzな姿勢で打ちひしがれる奈津実を見つけて声をかけるミユキ。
 「み、ミユキちゃん、平気、なの?」
 「?? 何が?」
 「なにって、女子のき……」
 「着替え」と言いかけて、奈津実も自分の愚かさに気づく。
 昨日そして一昨日とミユキは自分と一緒に女子寮のお風呂に入っているのだ。無論、たった二日程度では完全に慣れたとは言えないが、それでも女の子の裸に過剰に反応するようなコトはなくなっている。
 そんな状態のミユキが、いまさら「下着姿になる程度の着替え」でオタオタするワケがないではないか。
 「(そりゃそうだにゃ〜)う、ううん、何でもないよん」
 こっそりミユキのウブな反応を期待していた奈津実としては残念だが、本人のコトを考えれば不審を抱かれてバレる懸念材料が減ったのだから、喜ばしいコトだろう。
 「??? ヘンな奈津実さん……」
 狐につままれたような顔で首を傾げながら、ミユキはタイをほどいてブラウスを脱ぎ、袖口と襟もとにエンジ色の縁取りが入った半袖の体操服をかぶる。
 周囲を見て学習したのか、スカートのまま紺色のブルマに足を通し、腰まで引き上げてから、スカートを脱ぐ。
 「もしかしたらブルマ姿に恥ずかしがるかも」というアテが外れた奈津実だが、これはミユキ──要が小六だからこそ、平然としているのも無理はないのだ。
 今のご時世、高校は元よりほとんどの小中学校から女子の体操着としてのブルマは消滅しており、この学園で採用されているコト自体、冗談みたいな話だ。
 そのため、ミユキにとってはソレは単に「初めて見る体操着」に過ぎず、また幼い純朴さから「ブルマ」という代物に世の男性が抱く欲望の類いも理解していない。
 形状だけ見れば夏にプールで履く水泳パンツ(ビキニ型)と大差なく、むしろ覆う面積は広いとさえ言えるのだ。
 加えて、普段から半ズボンを愛用しており、「生足、とくに太腿を見せるコト」に女の子のような羞恥心がないのだから、恥じらうほうが、むしろおかしいだろう。
166『要12歳、職業・女子高生』その8:2011/01/16(日) 23:39:22 ID:pEH4UYEs
 微妙に期待が外された気分になりつつも、面倒見のいい奈津実は、ミユキのフォローをするべく、柔軟体操の相方を買って出たのだが、そこでもミユキの身体の柔らかさに驚かされることとなった。
 「うわっ、座位前屈であっさり爪先を両手でガッチリ握りしめてる!?」
 「2年前まで、体操教室に通ってたからね」
 苦もなく相撲で言う股割りの姿勢で両脚を広げつつ、身体をペタンと地面に寝かせてみせるミユキ。
 「すごーーーい!」
 男子より身体の柔らかい女子でも、コレが出来る者はそう多くないだろう。
 「エヘヘ、こういうコトもできるよ?」
 感心されて嬉しかったのか、調子に乗ったミユキはさらに色々やって見せる。
 弓なりに身体を後方に逸らし、両手をついてブリッジの姿勢になったのち、シュタッと後方に半回転して立ち上がるミユキを見て、奈津実は本来は本物の美幸に頼むつもりだった、ある懸案事項についての解決方法を思いついた。
 柔軟後はバレーボールの試合となったのだが、そこでもミユキはしなやかに身体を動かして、本来3歳も年上の少女達相手に獅子奮迅の活躍を見せる。
 「体力面でも問題なさそうだし……イケる!」
 「長谷部さん、なんだか悪そうな顔してますわよ?」
 傍らでちょっと引いてる睦美に注意されるまで、奈津実の顔からニヤニヤ笑いが消えることはなかった。

 そして放課後。
 寮に帰る前に、今日は地元の商店街にでも立ち寄ってみようか……と考えていたミユキを、奈津実が呼びとめた。
 「ダメだよ、ミユキちゃん、今日は部活のある日だって」
 はて、本人からは、何かクラブ活動をしているとは聞かされていなかったのだが……。そもそも、あのモノグサな人が真面目に部活に励んでいるとは考えにくいし。
 「一応、この学校は全員部活参加が決まりになってるからね。ま、確かにサボリの常習犯ではあったけどサ」
 幽霊部員というヤツだろうか。
 「うん。でも、どうせだからミユキちゃんも、この学校にいる間だけでも参加してみようよ」
167『要12歳、職業・女子高生』その8:2011/01/16(日) 23:39:53 ID:pEH4UYEs
 そう言えば、奈津実さんも同じ部活なんだっけ……と、昨日、富士見くんからチラッと聞いた話を思い出す。
 あまりも「本来の美幸」と違うコトをするのは問題あるかもしれないが、正直に言えばミユキとしても高校のクラブというものに興味津津だった。
 「同じ部活の奈津実に強引に誘われ、渋々参加する」という体裁をとれば、周囲の人間も不審に思わないだろう。
 ちょっと心を躍らせながら、奈津実の案内でふたりが所属する部活の部室に足を踏み入れたミユキだったが……。
 てっきり漫研や電脳部といった文化系、それもエンタメ系のクラブだとばかり思っていたのだが、奈津実がミユキを引っ張って来られた部室は、沢山のロッカーが並ぶ、いかにも体育会系の場所だった。
 「ちょっと意外かも」
 「にゃはは、確かに美幸ちゃんのイメージとは、ちょっと方向性違うかもね。あ、そこの右端が美幸ちゃんのロッカーだよ。中に入ってる練習着に着替えてね」
 「うん、わかった」
 気楽に返事をして「1年/早川」と書かれたロッカーを開けたミユキだったが、中のハンガーにかけられていたモノを手にして硬直する。
 ソレは、薄いピンク色をした長袖のボディスーツ──いわゆるレオタードと呼ばれる代物だったからだ。
 そう、奈津実や美幸の部活とは、新体操部だったのである。

#ようやっと、ココ(1話冒頭)まで来ました。ブルマは知らなくても、レオタードの何たるかは知っているミユキ(要)ちゃんが、困惑する様は次回に!
168名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 09:21:50 ID:zb7AL9IB
【その1】
もう何度目かわからない下の階からの怒鳴り声にせかされるように、
自分の体格にはちょっと合わなくなったベッドから体を起こす。
カーテンの向こう側には冬晴れの空が広がっていて、
どこまでも澄み切った青空が目に突き刺さる。
どうせならば世界が埋まってしまうぐらいの大雪でも降ってしまえばいいのに、
なんて罪のない晴天に悪態をつきながらエアコンのスイッチを入れると、
天井付近に設置された機械から常夏の空気が吹き出してくる。
しばらく部屋が温まるのを待って、えいや! とパジャマを脱ぎ捨てて、
あらかじめ机の上に用意しておいた着替えを手に取る。
まずは肌着。
締め付けの少ないメッシュ地のスポーツタイプのブラジャーをつけ、
バスト部分をあまり膨らんでいない胸の位置に合わせる。
クラスメイトの中にはワイヤー入りでホックで止めるような、
ちゃんとしたブラジャーをしている子もいるけれども、
ママが言うには私にはまだこれで十分らしい。
ブラジャーを装着したら、その上からキャミソールを着る。
冬の空気に冷やされた布地が肌に触れた瞬間、思わず震え上がってしまうが、
すぐに温められて気にならなくなった。
続いて丸襟のブラウスに袖を通し、プリーツの形を整えながらスカートを履く。
そして白いハイソックスを履き、最後にカーディガンを羽織れば着替えは完成。
みんなはちょっと子供っぽいっていう服装だけど、
ママが買ってくれるのはこういうのばかりだから仕方がない。
ランドセルの中にちゃんと今日の時間割が確認してから部屋を出ようとすると、
また下の階から怒鳴り声が聞こえてきた。
「いい加減に起きてきなさい!」
「もう起きてるってば!」
これ以上遅くなると、さらにカミナリが落ちてくるに違いない。
壁にかかっていたコートをつかみ、あわてて部屋を飛び出した。
169名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 09:22:23 ID:zb7AL9IB
【その2】
「おはよー」
「おはよう。まったく何時だと思ってるの」
ダイニングに入ると、キッチンでお弁当を作っているママが、背を向けたまま小言混じりの挨拶をしてくる。
時計を見ると、7時45分。
早くご飯を食べて支度しないと遅刻してしまう。
「あ、もうこんな時間!」
「いいからしゃべってないで、早く食べなさい!」
言われるままトースターにパンを入れ、インスタントのコンソメスープを作る。
冬の冷えた体をスープでいい感じに温めていると、
トースターが軽快な音を立ててパンが焼けたことを知らせてくれる。
マーマレードとカップスープ、それにプチトマトで朝食を済ませ、
洗面所に向かおうとすると、ダイニングにパパが入ってきた。
ぼさぼさの頭を掻きながら、大きくあくびを1回。
寝起きとはいえ、あまりにもだらしがない。
「んー、おはよう」
眠そうに挨拶をして、もう1回大きなあくび。
「まだ眠いな。顔でも洗うか」
「ちょっと待って! 洗面は今から俺が使うんだから!」
「こら! 女の子が『俺』だなんて言わない!」
ただでさえ忙しい朝の時間、割り込むように洗面を使おうとする行為に対して抗議しようとしたら、
言葉づかいに対して、またもママからの小言。
「それに、顔を洗う時間なんて大したことないでしょ!」
「はーい」
「早く使ってよね」
渋々ながら、ダイニングに入ってきたパパと並ぶようにして洗面所へと向かう。
俺の胸にも届かないぐらいの身長と、抱きしめたら折れそうなほど華奢な体格。
そして、起き抜けなのにひげすら生えていない顔はかわいらしく、
どことなくあどけなささえ残っている。
そう、隣で顔を洗っているパパは、生物学的には俺の娘なのだ。
もはや何が原因だったのか思い出せないけれども、
半年前から俺と娘の美咲は、名前と体以外がそっくりそのまま、何もかも入れ替わってしまった。
つまり、毎日スーツを着て会社勤めをするのは娘の美咲が、
そして、赤いランドセルを背負って小学校に通うのは父親の俺が、と、
お互いがやらなければいけない事が交換されたのだ。
会社や学校だけじゃない。
社会的立場だってそうだ。
世間から父親として、そして何より男として扱われるのは美咲で、
俺はようやく来年度から最高学年へ進級する、小学生の女の子としてしか見られなくなってしまった。
「早く支度しないと遅刻するよ」
まったく生えてないひげを電動シェーバーで手入れしながら、美咲が注意してくる。
「わかってるって」
歯を磨きながら、鏡に映る俺と娘の姿を見る。
すっかり今の立場に順応した感じの美咲は、
俺の横でこれ見よがしにひげを剃り「自分が父親なんだぞ」と、無言の圧力をかけてくる。
一方、いまだ女子小学生という環境に慣れない俺の姿は、
どう見ても男が女装しているようにしか見えず、
まるで出来損ないのコントのようで情けなさすら漂ってくる。
「大丈夫だって、かわいいから」
慰められてもうれしくないが、これも毎日繰り返されている「朝の日課」のようなもの。
どことなく笑っているようにも見える美咲に見送られながら、
俺は淡いピンク色のフード付きコートを着込み、ランドセルを背負って学校に向かうのだった。
170名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 09:23:01 ID:zb7AL9IB
【その3】
黒や赤、たまに水色やピンクといったランドセルを背負った小学生たちに混じり、
同じ目的地へ向かってとぼとぼと歩く。
周囲の子供たちよりも頭一つ以上高い、大人の男がスカートを履いて歩いていても、
誰も変に思わない。とがめない。
当たり前だ。
確かに肉体的には成人男性かもしれないけれども、今の自分は女子小学生なのだ。
女子小学生がスカート履いて、ランドセルを背負って歩いている姿をおかしいと思う人間なんていやしない。
むしろ『変質者め!』と罵られて警察に捕まってしまった方が、少しは気分が楽になったかもしれない。
そうなれば、自分の認識が正常だったということの証明になるのだから。
「和彦ちゃん、おっはよー」
「あ、優子ちゃん」
白い息を弾ませながら俺の隣に駆け寄ってきたのは、同じクラスの加藤優子ちゃん。
幼稚園からずっと一緒の4人組のうち、一番家が近所の子だ。
笑ったときに唇からこぼれる八重歯が印象的な彼女は俺の一番の親友で、
昔からなんでも相談できる仲……ということになっている。
「……でね、昨日『はろぉ』の2月号出たでしょ」
「うん、読んだ読んだ。どうなっちゃうんだろうね『ひみつの桜井くん』」
「やっぱさ、鈴木に正体バレちゃうんじゃない?」
「でもきっとさ、鈴木はニブいからいつものパターンで気づかないと思うよ」
「うーん、実は鈴木ってあきらが女の子って気づいてるんじゃない?」
「そんなことないと思うけどなぁ
 ……あ、ところでさ、話変わるけど……」
昨日のテレビ番組、新発売のお菓子、昨日買ったマンガ、雑誌に載ってたカワイイ洋服、
それから苦手な体育や算数といった授業の話などなど。
これといった中身がない、他愛なく楽しい雑談を繰り返しながら、
優子ちゃんと2人で学校を目指して歩くというのが、ここ半年ばかりの朝の日課だ。
入れ替わったばかりの頃は、何を話していいのかまったくわからなく、
ただただ気のない相槌を打つぐらいしかできなかったけれども、
今では自分から話題を振ることもできるようになった。
戻る方法がない以上、環境に適応しようとするのは当然のこと。
決して、毎月買ってる『はろぅ』の続きや、
優子ちゃんちで読ませてもらった『キラキラ!』に載ってるブランドロゴ入りのパーカーや、
3段になっているかわいいスカートが気になっていたりなんかしない。
「ゆーちゃん、かずちゃん、おはよー」
「おはよー」
昇降口のところで、石田奈々ちゃんと大塚未来ちゃんが手を振って待っていた。
これで仲良し4人組が勢ぞろいしたことになる。
みんなで上履きに履き替え、いつものように雑談しながら教室に向かう。
教室にはもう既にほとんどの生徒が来ていて、俺たち4人はどちらかといえば最後の方の登校だった。
クラスメイトに挨拶してから自分の机の中にランドセルの中身を移し、
教室の後ろに備え付けられている扉のないロッカーにしまう。
1列3段のロッカーは入り口に近い側から出席番号順に割り当てられていて、
真ん中から左側は黒いランドセルが、反対側には赤いランドセルがずらりと並んでいる。
その赤いランドセルばかりが入っている側に自分のランドセルをしまうたびに、
『ああ、自分はこっち側なんだな』と再確認させられているようでなんだかつらい。
171名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 09:23:24 ID:zb7AL9IB
【その4】
教室に入ってしばらくすると始業のチャイムが鳴り、遠藤先生が入ってくる。
まだまだ30歳にもなっていないはずの若い女性教師のはずだが、
保護者会や授業参観なんかで見せていた「美人教師」の面影はなく、
ジャージ姿にすっぴん、髪の毛は後ろで縛っただけと、
男の俺ですら「こんな格好するんだったら、もうちょっとかわいらしくしたい」と思うぐらい地味な服装だ。
放課後は普通に着飾っている――この格好に比べれば、だが――ところを見ると、
噂通り、人気の女性熱血教師モノに影響を受けてのイメチェンなんだろう。
そういえば、俺が小学生だったときも、ドラマに影響された教師がいたっけ。
時代が変わっても、その辺りの思考はまったく変わらないのかもしれない。
「全員出席してるね。
 今日は1時間目から体育だから、早く着替えて体育館に行くんだよ」
体育。一番嫌な授業。
ここ半年間、毎週3回、強制的に運動させられているせいか、
以前よりも動けるようになったとはいえ、
30も半ばを過ぎた男にとって、マラソンや跳び箱などの
小学校の体育でやるような運動は過酷すぎて体がついて行かない。
しかも今日は体育館ということは、今日は縄跳びに違いない。
大きくため息をついて、机の横にかけている体操着袋を持って着替えの準備に入る。
小学校も高学年になれば男女一緒に着替えることはほとんどなく、
大概の女子生徒は空き教室で着替える事が多くなる。
もちろん、俺も女子の1人として扱われているので、空き教室で着替えるのが当たり前。
空き教室の隅の方で、みんなと同じようにスカートの下からハーフパンツを履き、スカートを脱ぐ。
続いてブラウスの前を外して脱ぎやすくしてから体操着の上を首だけ通し、
片袖ずつブラウスと体操着を入れ替えるようにして着替え完了。
誰が始めたか知らないけれども、なぜかこのクラスでは
なるべく肌を見せないようにして着替えるのが「大人っぽい」ということになっていて、
俺もそれにならってこんな着替え方を会得してしまった。
最近、どんどん『女の子』スキルだけが上達していっている気がする。
172名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 09:23:48 ID:zb7AL9IB
【その5】
縄跳び。運動神経はそこそこだった俺が、唯一苦手としていた種目。
小学校を卒業した後は絶対やらないだろうと思っていたこの運動が、
まさか再び小学校に通うことになってやる羽目になるとは、夢にも思わなかった。
クラスのみんなは二重飛びや綾飛びこそ失敗するけれども、
普通の飛び方ではまず失敗なんてしない。
しかし……
「あぅ!」
また飛ぶのに失敗して、ふくらはぎの裏あたりを縄が激しく叩く。
何度も何度も叩いているせいか、なんだか熱を帯びてきているような感じさえしてくる。
「ホント、かずちゃんは縄跳び苦手だよね」
「がんばって5級合格目指そ?」
「大丈夫、がんばろ?」
「……うん」
縄跳びの下手さではクラス最下位に位置している俺が、
なんとか両足跳び連続150回と後ろ跳び50回の5級合格ラインをクリアできるよう、
優子ちゃんや奈々ちゃん、未来ちゃんが慰め励ましてくれる。
しかし、できないものはできない。
何度も何度も挑戦するが失敗続きで、時間だけが過ぎていく。
ヘトヘトになってもう跳べなくなった頃、先生の笛が鳴り響いて集合の合図がかかった。
「じゃ、残り10分間、ドッジボールしていいわよ」
早めに切りあがるのかと思いきや、さらに体を動かせというのか。
しかし自由時間ではないので、休んでいるわけにはいかない。
渋々コートの中に入って、ドッジボールに参加する。
チーム分けはいつものように出席番号の偶数奇数。
この分け方になると、仲良しの3人と別チームになってしまうのがつらい。
「はじめ!」
ゲームが始まるとともに弾丸のようにボール飛び交い、コートは戦場と化す。
逃げ遅れた、あるいはボールを取り損ねた味方が次々と脱落していき、
また、敵もこちらの攻撃によって数を減らしていく。
「それ!」
「岡田狙え岡田!」
数分立たずに敵味方ともにほとんど人がいなくなったコート内。
自陣に残されたのは俺と数人の男子だけ。
そうなると、『女子』である俺が自然と集中砲火を受けることになってしまう。
外野を回すようにボールを投げ合い、俺の隙をうかがう敵軍。
そして一瞬、動くのが遅れたのを狙われてしまう。
最初の一投こそ避けられたが、その代償に足がもつれて大きくバランスを崩し、
グラウンドに転がってしまった。
「あっ」
「よーしトドメだ!」
運動神経抜群の田中が、もう死に体の自分めがけて勢いよくボールを投げつけてくる。
狙いが外れたのか、顔面めがけてボールが迫ってくる。
もうだめだ!
「!」
衝突の瞬間を恐れて、声にならない声をあげたが、いつになってもボールはやってこない。
代わりに目の前には俺を守るかのように山本が立ち、飛んできたボールをガッチリキャッチしていた。
「大丈夫か、岡田」
「う、うん……」
差しのべられた手を、自然と握り返して立ち上がる俺。
気のせいか、山本の顔は赤らんでいるような気がした。
「よ、よし! 反撃するぞ!」
そう言うと山本は敵陣コートに向き直り、ボールを勢いよく投げつけた。
飛んでくるボールを次から次へと受け止め、敵をバッタバッタと倒していく山本。
その姿がなんだかかっこよく、思わず見とれてしまったのは自分だけの秘密だ。
173名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 09:24:23 ID:zb7AL9IB
【その6】
苦痛のような体育の授業も終わり、続いて漢字を学んだり、社会で白地図に色を塗ってみたり。
入れ替わった当初は小学校の授業ぐらいついていけるだろうと高をくくっていたけれども、
いざ改めてやってみるとかなりの範囲で忘れている事が多く、
家でしっかり予習復習しないとついていけないほどだった。
今では分数の足し算だってテストで85点取れるぐらい、しっかり内容を理解している。
午前の授業が終われば、いよいよ給食の時間。
なんでいつも牛乳がついてくるのか疑問だけれども、
ちゃんと飲まないと先生が許してくれないので、パンの味でごまかしながら少しずつ飲んでいく。
本当、今日がレーズンパンじゃなくて本当によかった。
174名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 09:24:52 ID:zb7AL9IB
【その7】
午後の授業が終わると、いよいよ放課後。
今日は4人とも塾も習い事もないので、優子ちゃんの家で遊ぶことに。
遊ぶといっても、みんなでゲームしたりなんてことはほとんどなく、
それぞれ勝手に優子ちゃんの部屋にあるマンガを読んだり、ゲームしたり。
それでもなんだかんだで楽しいのは、きっとこの4人だからに違いない。
「ところでさー和彦ちゃん」
「ん?」
先月号の『フルーツ』を読み返していたら、突然優子ちゃんが話しかけてきた。
「山本のヤツ、絶対和彦ちゃんのこと好きだよね」
「え?」
「うん、あたしもそう思うな!」
「今日の体育の時間なんか、ホントバレバレだよね」
対戦ゲームで盛り上がっていた未来ちゃんも奈々ちゃんも急に振り向いて話に食いついてくる。
「え、え?」
急に『コイバナ』が振られて、困惑してしまう俺。
「だってさ、かずちゃんの手を握った時、あいつ顔真っ赤だったじゃん」
「わたしが同じように転んでも、絶対手なんか差し伸べないね」
「それにさ、しょっちゅう和彦ちゃんのほうをチラチラ見てるし、絶対気があるって」
自分の事をほったらかしにして、コイバナで盛り上がる3人。
「で、さ」
ずいっと目の前に迫る優子ちゃん。
「うんうん」
負けじと寄ってくる未来ちゃん。
「山本の事、どう思ってるん?」
核心に迫る奈々ちゃん。
「え、えっと……俺は別に、そんな気ないし……」
「あー、またかずちゃん『俺』って言ってる!」
「せっかくかわいいのにねー」
「でもでも、口ではこう言ってても、和彦ちゃんも山本の事が好きなんじゃない?」
「うんうん。だってさ、かずちゃんも山本の手を握った時、顔が真っ赤だったもん」
「だから、俺は山本なんかどうでもいいってば!」
いくら取り繕っても、言い訳しても、3人はまったく聞いてくれない。
自分そっちのけでコイバナに花を咲かせ、やがてクラスの男子のカッコいいランキングの話へとスライドしていく。
小さい頃でも女は怖いと、再確認させられた出来事だった。
175名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 09:25:15 ID:zb7AL9IB
【その8】
6時になる前に帰宅して、そのあとは夕ご飯まで宿題をこなす。
今日は漢字の書き取りと、分数の計算。
特に分数の計算は習ったばかりのところだから、間違えないように何度も見直しながら、
1問1問慎重に解いていく。
ちょうど宿題が終わった頃、下の階からママの声がした。
夕飯の時間だ。今日の献立は鮭のムニエルと野菜サラダ。
俺の分は一回り小さく、キッチンのテーブルでラップがかかっている皿に乗っている切り身はちょっと大きい。
『仕事で疲れているお父さんの分は大きくて当然』とママの談。
女の子向けの小さい茶碗では少し食べたりないけど、おかわりしようとすると
「女の子が食べ過ぎ!」
と、ママにたしなめられてしまう。
立場は女の子、体は成人男性のつらいところだ。
「そういえば……パパは?」
美咲の事はママの前では『パパ』と呼ぶことに決めている。
いらぬ波風を立てないようにする、生活の知恵だ。
「パパは今日は残業だって」
「ふぅん」
プチトマトを口に放り込みながら、気のない返事をする。
小学5年の体には残業は酷だろうけど、それはそれ。
残業も『父親』として会社勤めをする美咲の役目だ。
宿題こそあるものの残業しないで家でのんびりできるのは、この立場の数少ない利点。
その利点を最大限活かすために、ご飯を食べ終わった後はクラスでも話題のお笑い番組
『ヒラメけ! はねるくん』にチャンネルを合わせるのだった。
176名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 09:32:06 ID:bv81hEh0
【その9】
みんな寝静まった真夜中。
残業の後に飲んで帰ってきたという美咲も、既にお風呂に入って寝ている時間。
昼間に優子ちゃんたちに言われたことが気になって、今日はなんだかなかなか寝付けず、
ウトウトしてはすぐに目が覚めてしまう。
「トイレにでも行くか」
寒い階段を下りながら、トイレを目指す。
びっくりするほど冷え込んだ個室で用を足し、また温かいベッドに潜り込もうと階段を上がろうとしたら、
どこからか何か軋むような物音がする。
最初は冷蔵庫が動き出したのかと思ったけれども明らかにそれとは違う、
異質な、それでいて聞いたことがあるギシギシという音。
そして、かすかな話し声。
1階の廊下の先にある、寝室のほうからだ。
よく見ると、部屋のドアはわずかながら開いている。
まさか……。
そんなことは……。
あるはずがない……。
恐る恐る、なにかいけないものを見るような、そんな感覚で、ドアの隙間から部屋の様子を覗き込む。
すると……!
「あ、アンッ! あなた! あなたぁ!」
「そんな大きな声を出したら、和彦に聞こえるだろ」
「大丈夫……っ! あの子はもう寝てるから!」
「なら、もっと聞こえるぐらい、大きな声出してみろ!」
「あアンっ!」
そこで繰り広げられていたのは、まさかの『夫婦のセックスシーン』だった。
本来娘であるはずの美咲に対して股を開き、快楽を全身でむさぼるママ。いや我が妻。
彼女の表情には近親相姦や不貞を働いているような憂いはない。
あるのは目の前の『夫』から与えられる肉欲の愛を受け止め、何度も絶頂に導かれた至福の顔だけだ。
「あなた! あなた! ああぃぃんんんん!」
「どうだ! いいか!」
「名前!名前呼んで!」
「ゆかり! ゆかり! ゆかりぃぃぃぃぃ!」
黒いペニスバンドをはめ、妻の名前を呼びながら一心不乱に腰を振る美咲。
そこには自分の知っている『妻』も『娘』もいなかった。
いるのは神聖かつ淫靡な行為を繰り返す『パパ』と『ママ』がいるだけ。
なにかいけないものを見てしまった気がして、頭の中が真っ白になる。
177名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 09:32:44 ID:bv81hEh0
【その10】
気がついたらもう朝。
あれからどうやってベッドまで戻ったのかすら思い出せない。
そのぐらいショックだった妻と美咲の情事。
いや、もう美咲は娘ではなく『男』で『夫』で『父親』なのかもしれない。
俺が悩みながら、染まらないよう一生懸命今日まで過ごしてきたのが馬鹿らしくなってくる。
今日から俺も精いっぱい『娘』として生きてみよう。
そう決意すると、急に目の前がクリアになってきて、この寒さですらすがすがしさすら感じてくる。
ぱっとベッドから跳ね起きると、箪笥の中からワンピースを出して着替える。
本当なら、どこかお出かけするときにしか着ないことになっている、とっておきの1着。
自分の新たな門出にふさわしい、本当にかわいらしい紺色のワンピースに袖を通し、
コートとランドセル、それにリボンを持って階段を下りる。
「おはよう、ママ」
「あら、今日は早いのね」
どことなくツヤツヤしているようなママは、あまりにも早く起きてきた自分に驚いたように返事してくる。
「でね、ママ。
 ちょっとリボン結んで」
「あら、今日はそのワンピース着てるのね。珍しい、どうしたの?」
「えへへ……」
ヘアバンドのようにリボンを結んでもらいながら、ママと他愛のない話を繰り返す。
「お、今日は早いな」
リボンが結び終わったのと同時に、パパがダイニングに入ってくる。
「私だって、早起きするときあるもん」
精いっぱい、かわいらしく、小学生の女の子っぽく。
「お、今日は『俺』って言わないんだな」
感心感心と、パパがにやりと笑う。
心境の変化を見透かされた気がして、なぜだかとっても照れくさい。
このやり取り以降、朝ごはんを食べながらも、洗面で支度している間も、
パパとはなぜか口をきかないまま学校へと出かけてしまった。
私の変化に関しては、今日の夜にでも話せばいい。
178名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 09:33:06 ID:bv81hEh0
【その11】
いつものように通学路の途中で優子ちゃんと合流し、そのまま2人で仲良く登校。
普段と違ってリボンをしていることを聞かれたけれども
「かわいいでしょ」
と返すと、優子ちゃんも笑顔で「かわいい!」って返してくれた。
そして昇降口のところで未来ちゃんと奈々ちゃんと一緒になって、
下駄箱で靴を上履きに履き替える。
と、先っぽが赤い上履きを下駄箱から出したとき、ひらりと封筒が落ちてきた。
水色の封筒の宛名には『岡田 和彦さんへ』とあるが、
裏面には差出人の名前すら書かれていない。
しかし、封に貼られたハートマークのシールから考えると、これは、もしかして……。
「うわー! かずちゃんラブレターもらってる!」
急に優子ちゃんが大声を出し、未来ちゃんと奈々ちゃんもかけよってくる。
「え、えっと、どうしよう」
「開けよ開けよ」
「あとで、ね」
早く中身を見せろとせかす親友たちを抑え、コートのポケットにラブレターをねじ込む。
平静を装っているけれども、生まれて初めてもらったラブレターに、内心かなりドキドキしている。
ふと視線を廊下の方に移すと、真っ赤な顔した山本が私の顔を見るなり走り去ってしまった。
たぶん、差出人は彼だ。間違いない。
なぜだか彼の名前を考えるだけで、ハートがほんのりあったかくなってくる。
人生2度目の初恋に、私の胸は高鳴るばかりだった。
179名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 09:39:15 ID:bv81hEh0
おしまい
相変わらず理由ぶんなげ

本当は>>118で提供された
・「女優」という職業と「芸人(裸芸やらリアクションやら)」という職業の概念が入れ替わる
・子供の気持ちを理解するため幼女を教師としたクラスに入れられる
をネタに書いていたのだけど、突然これを思いついたので形にして投稿(`・ω・´)

「妻とヤる娘」はあるTS系SSで見て、いつか使いたいなぁと思ってたのを使ってみました

>>167
ようやく要ちゃんがレオタードに!
ショタ化したみゆきが友人をだまくらかしてヤオるのも期待しておりますです
180名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 17:41:13 ID:xKtanTGq
>>179さん

相変わらずGJ! この長さで、序破急のしっかりした物語を組めるのは流石。
無論、萌えとしても秀逸で、ダラダラ続けてるワリに萌えドコロの少ない小生など、感心するばかり。
今後も色々期待しております。

にしても、正月の小ネタを除き、最近、貴殿とあっし以外のSS投下がほとんどないような……。
一読者としも、色々な人の作品が読みたいですね。
181名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 19:16:09 ID:ulEIshlr
アイデアはあるんだよ、意欲もあるんだよ、文才が全く無いんだよ……
182179:2011/01/19(水) 20:15:13 ID:bv81hEh0
>>180
実は>>136の正月保守用小ネタも自分だったりします

>>181
文才なんか気にしない!
リビドーをぶつけて!
183名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 20:33:31 ID:ewvy48NS
>>181
文才はやってるうちに身につくはず!
何もやらないとずっと鍛えられないぞ・・・!!
184名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 20:46:22 ID:ulEIshlr
>>182>>183
ありがとう、じゃあ近々とりあえず小ネタ程度にチャレンジしてみるよ

あと>>183さん、わざわざ俺の提案で書こうとしてくれてありがとう
詰まったら全然諦めてくれていいんでね。あと大ファンです
185名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 20:49:09 ID:ulEIshlr
ごめん182さんだった
186名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 22:15:45 ID:ewvy48NS
頑張れ!
とりあえず、長編は何かをきっかけにしてやる気なくなるから
長くても10-20レスに収まる程度がオススメ(;´Д`)

いや、本当すまんかった(´・ω・`)
187名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 22:31:13 ID:RAjDZ9/h
己の立場になった他人に愛しい人が奪われるのに何も出来ないってのはドキワクするのう
最愛の彼女が自分にしか見せないハズの笑顔を義姉に見せてるのを実の兄の嫁という立場で見せつけられるとか
逆に弟の立場になった彼女が弟の想い人の彼氏になってしまう変則的なものもいいなあ
愛しい彼女の声と姿で弟としての初体験を兄の童貞を馬鹿にしたような下卑た口調でねっちり語られるとかゾクゾクする
188名無しさん@ピンキー:2011/01/20(木) 13:03:34 ID:40uYNQ/r
179・182さんに比べるとまったくもってヘッポコな小生ざんスが、SS書き歴だけは無駄に長いので、181・184さんにアドバイス! ←エラそう
1)最初、シチュエーションの概略を1レスに収まるくらいでまとめる
2)次に、そのシチュのキモになる部分の、さらに会話だけをト書き的に妄想
3)もしソレがHシーンなら、「ピチャ、ヌチョ、クチュ」といった擬音も追加
4)2&3で作ったシーンの前後に説明的な、地の文を入れる
 ……と、コレだけで、エロパロ板投下にたえる短編ができます。
 慣れてきたら、5)キモの部分にも地の文を追加して描写を高める 6)4)のり部分を増量・強化していくことで、より読みやすいものになると思います。
(あ、ちなみにコレ、一般的なSSの書き方とは多少違うんで……エロパロや妄想系にのみ通用する仕様です)
189名無しさん@ピンキー:2011/01/22(土) 03:05:52 ID:qIjU1LFG
インクエストのページ、少し前から落ちてる?
190名無しさん@ピンキー:2011/01/25(火) 14:15:10 ID:SMzpbfF8
今年はこの業界のリストラの年か?
あっちこっち消えたりしてるが
191名無しさん@ピンキー:2011/01/29(土) 00:16:58 ID:rDweP6Ui
つる師の数々の作品が未完になっちゃったのは痛いな…
特に一夏の友情のリニューアル版
192名無しさん@ピンキー:2011/01/29(土) 00:43:46 ID:lxX+n4dp
インクエスト復帰したもよう。
今いってみたら再開してた。
193名無しさん@ピンキー:2011/01/29(土) 16:30:52 ID:oEnJhgwx
人間⇔動物間の立場の逆転が見てみたいな
194名無しさん@ピンキー:2011/01/30(日) 01:07:29 ID:S+RPPOal
>>193
Softbankがやってる
195名無しさん@ピンキー:2011/01/30(日) 11:00:06 ID:Mi2RW+YE
>>194
動物の立場の人間が出てきてないじゃん
人間が犬に散歩させられて電柱に向かって排泄を強要させられるとかが見たい
196名無しさん@ピンキー:2011/01/30(日) 11:32:40 ID:M4XYOaNQ
じゃあ自分で書けばいいじゃん
197名無しさん@ピンキー:2011/01/31(月) 01:31:36 ID:AB3CdRM5
シチュが限定されるからな
ただの犬、猫のようなペットと飼い主の立場交換じゃ話が成り立たない
霊長類とか、化け猫とかと立場を交換させられたとかいいかも
198名無しさん@ピンキー:2011/01/31(月) 20:07:57 ID:s1xXIylR
>霊長類や化け猫
お前はこのスレをどうしたいんだよ
199名無しさん@ピンキー:2011/01/31(月) 20:17:11 ID:1yK2tuAM
狸に化かされて人間と動物の立場が逆転した動物園
200名無しさん@ピンキー:2011/01/31(月) 21:38:49 ID:AaJplVlg
動物園って、立場交換の必要なくね?

それはいいとして、このスレはそんなに書き手がいないから、
自分で書くしかないと思うぞ
201名無しさん@ピンキー:2011/01/31(月) 22:00:43 ID:wc9k7avH
熱心に、人←→人外の交換を希望する>>193 には
ttp://tsf9.rdy.jp/cache/
の「竜王子の帰還」というタイトルをススメたい。スレ的には多少外れるけど。
202名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 04:05:26 ID:jTbuEEue
【その1】
「んじゃ行ってくるからな」
ワタシの頭をひと撫でしてから、ご主人様は元気よく学校へと行ってしまった。
誰もいなくなったベッドはまだほんのりと温かく、寝転がるのにはもってこい。
ぴょんとベッドの上に飛び乗って、1つ大きく伸びをして丸くなる。
シーツから、掛布団から、枕から、そこらじゅうからご主人様のにおいが漂ってきて、
とっても幸せな気分になってくる。
幸せなにおいに包まれながらベッドの上で丸くなっていると、
ぐぅ……とおなかが小さく鳴った。
ご飯まだかなぁ……おなかすいたなぁ……と思っていたら
「ミーちゃーん、ご飯よー」
と、ご主人様のお母さんが呼ぶ声がした。
待ち望んでいた朝ごはん!
ベッドの上から跳ね起きて、エサ皿がある玄関まで一気に階段を駆け下りる。
今日のご飯はカリカリのまぐろ味。
なんとなくぽそぽそしてあまりおいしくない。
不満を鳴き声で漏らしても、ご主人様のお母さんは
「あらあら、おいしい?」
なんて言って私の頭をなでるだけ。
これがおいしく見えるなんて、相当飢えている野生のネコぐらいだろうけど、
きっとヒトにはおいしそうに見えるのだろう。
一度もヒトがカリカリを食べてるところなんて見たことないけど。
203名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 04:05:48 ID:jTbuEEue
【その2】
たんまり盛られたカリカリを食べたら、もうやることはなにもない。
ご主人様がいたら一緒に遊んでもらえるのだけど、
火事に忙しいご主人様のお母さんはワタシを邪魔そうに飛び越えたりするだけ。
エサ皿の近くにある毛布の上で丸くなってお昼寝をすることに。
まだ朝だから二度寝の範疇かもしれないけど、とにかくお昼寝。
コタツがあったら最高なのになぁ……と思いながら毛布の上で丸くなっていると、
不意に玄関のチャイムが鳴り響く。
続いて聞こえる声からして、宅配便のお兄さんだ。
はいはい、いま行きますよ……なんていうご主人様のお母さんの声がして、玄関がガチャリと開く。
すると急に冷たい風が吹き込んできて、ワタシの体を切り刻もうとする。
寒い! 早く閉めて!
そう鳴くと、
「ごめんねミーちゃん、寒かった?」
なんて適当に謝るご主人様のお母さん。
「おや、猫ですか。かわいいですね」
「ええ、ミーちゃんっていうんですよ」
褒めてくれるのはうれしいけれども、冬の冷たい風が体にばしばし当たって寒いことこの上ない。
早いところ用事を済ませて出て行ってくれと祈っていると、
ようやく荷物を置いて宅配便のお兄さんは去って行った。
もう二度と来るな! 風邪ひいたらどうしてくれる。
ぶるり。
寒さで体が震えてしまい、急に尿意が近くなる。
あわてて廊下の隅の方にある砂トイレまで行っておしっこタイム。
じょぼぼぼぼぼぼぼ……。
なんとか間に合ってよかった。
もしも廊下に粗相しちゃったら、どんなに怒られるかわかったもんじゃない。
204名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 04:06:25 ID:jTbuEEue
【その3】
また冷たい風に当たるのが嫌なので、また階段を上がってご主人様の部屋へ。
大好きな、大好きな、ご主人様のベッドの上に飛び乗り胸いっぱいににおいを吸い込むと、
幸せとはちょっと違う感情が。
昔はいつも、一緒にいたいと思っていただけの大好きなご主人様。
それが今では毎日一緒に過ごせる幸せ。
そのささやかな喜びをかみしめるように、ベッドで横になる。
ふかふかのベッドの上はぽかぽかした日差しに照らされて気持ちよく、
うっとりとした暖かな眠りをもたらしてくれる。
こんな時に見る夢は、決まってワタシがご主人様と同じ学校に通っている姿。
いつも思うのだけど、ネコのワタシが学校で何を学べばいいのだろう。
そんなありえない夢を見ていると、ふと部屋の扉ががちゃりと鳴った。
全身を耳にしてぴくりと起き上がると、愛しのご主人様が立っていた。
もう下校の時刻だったのか。
おかえりなさい! とご主人様に飛びつこうとしたら、
横に見たことない女のヒトが立っている。
「ああ、これ、うちのネコ。
 かわいいだろ、美由紀って言うんだ」
ワタシの頭を撫でながら、ご主人様は連れてきた女にはにかんだような笑顔を見せる。
なんだか無性に腹が立って仕方がない。
「ところでさ……今日、親は出かけてていないんだ
 だからさ……その」
上ずった声で女のヒトに話しかけるご主人様。
だめ! その続きは聞きたくない!
そんなワタシの悲痛な鳴き声が聞こえているのかいないのか、
女のヒトは甘えるような声でご主人さまに抱きついた。
「じゃ、美由紀、ごめんな」
部屋の外へ追い出されるワタシ。
閉まり際、ご主人様と『恋人』がささやきあう甘い言葉が、
ワタシのココロをズタズタに引き裂いた。
あの言葉は一生忘れられないだろう。
「愛してるよ、ミルク」
「んにゃ〜ん♪」
205名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 04:12:31 ID:jTbuEEue
以上、動物⇔女の子の小ネタ
さすがに動物との大規模交換は自分には無理ぽ

ネタは大小いくつか思いついたのだけど、まとめる体力がない(´・ω・`)
来月半ばまでには教師⇔生徒ネタをなんとか切りのいいところまで書きたいなぁ

別スレで>>180さんが投下したネタもストライクすぎて、
あれでも1本書いてみたいなぁ・・・・・・
206名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 10:41:24 ID:5IDBFArZ
>>205

うーん、小ネタSSとしてはおもしろいと思うけど……身体が入れ替わってるとしたらスレチじゃないかなぁ。読んだ感じでは、主人公、猫そのものになってるみたいだし。
入れ替わった相手(猫)も人間化してるんでしょ?
207名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 20:03:06 ID:+/cChsQl
いちいち文句ばっかりつけてるんじゃねえよ
くれくれ言っといて、書いてもらったらスレチ扱いって馬鹿か

いつも投下してくれてる人なんだから指摘されんでも分かってるだろ
208名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 20:59:00 ID:nAY74kzQ
>>207
>>206は俺じゃないぞ
209名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 21:01:15 ID:3LHjVoXD
>>205
乙です
動物との入れ替わりはやっぱり人間になった動物の描写が難しそうだし、
あんまし旨味がない感じですね。俺もオチで使うくらいしか考えが浮かばないw

立場変化で良かったのだろうけど、何故か交換を所望してる人が多かったから仕方ない
要望がかなりの無茶振りなのに、書いたら書いたで>>206みたいにケチを付ける奴が出るんだよな
210名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 21:05:07 ID:+/cChsQl
>>208
すまん
211206:2011/02/01(火) 21:20:23 ID:5IDBFArZ
やや、ケチつけてるだけに見えたら申し訳ない。確かに「乙」の一言がなかったですね。すんません。
ただ、自分も時々投下してる身として、ココまでの(ネタ的な)逸脱が許容されるのか気になったもんで……。
擁護者・容認派が多いということは、そういう「身体も含めての入れ替わりを書いてもOK」ということなのかな。それならそれで、書いてるモノの結末とか描写も幅ができるんで、むしろ有難いです。
212205:2011/02/01(火) 21:20:36 ID:jTbuEEue
猫の立場になった少女を猫っぽく書くことで
最後に「あ、この子、猫じゃないんだ」って思わせる感じにしたかったけど、
やっぱりうまくいかなかったか・・・・・・(´・ω・`)
最後の『ご主人様』の恋人を、ちゃんと猫だとわかるような描写を入れておくべきだった
いずれリベンジしたいところ


そういや今日から私立中学の受験開始らしいけど
今って面接試験がない学校も多いんだね
替え玉受験的な話とかもいいなぁ
213名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 21:30:00 ID:5IDBFArZ
>>212
作者降臨!? 誠に申し訳ありませぬ。

気を取り直して……
「成績の悪い妹に泣きつかれて、妹の替え玉で女装して受験するひとつ年上のお兄ちゃん」
あたりのネタは定番ですね。その後の展開として

A)ところが、なぜか合格通知は兄の名前で届き、兄は合格した女子高に通わざるを得なくなる
B)ところが、名門女子高に合格したはいいものの、なぜか家族も周囲も兄を「女子高に入学した妹」として扱うようになり、以下略。

……あたりが定番でしょうか。いずれの場合も、妹が「兄」として元の高校に通うことに。妹がそれをa)嫌がるか、b)喜ぶかで話のフレーバーにできそうです。
個人的には、B-bのパターンが好みかも。
214名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 21:34:56 ID:3LHjVoXD
俺もすまんかった(´・ω・`)

そういや、奈落の部屋で立場変化ものが出てたな
やっちゃうだけなんで、個人的にはイマイチだったけど
あと、次の恥辱庵作品も該当っぽい
215『要12歳、職業・女子高生』その9:2011/02/02(水) 14:54:26 ID:XzwQKtjH
#忘れられてるかもしれませんが、お久しぶりの「要12歳」です。


 「コレ……着ないといけないんだよね?」
 白に近い桃色の布地で作られたソレは、女性用水着とよく似た形をしていたが、水着との最大の違いは袖があり、肩から腕にかけても包み込む形状になっているコトだろうか。
 かつて体操教室に通っていたミユキは、ソレが一般に「レオタード」と呼ばれる衣裳(コスチューム)であることは知っていた。
 化繊素材でできたその手触りは滑らかで伸縮性も高く、着心地自体は良さそうだし、実際体格自体が「本物」とほぼ同等なミユキにも苦も無く着ることは可能だろう。
 とは言え、体操着のブルマの時とは違い、ソレがどういう局面で使用されるかよく知っているだけに、ミユキとしても少なからず抵抗感があった。
 「──もしかしてココって、体操部なのかな?」
 「ブブーッ、惜しいけどハズレ〜。ウチはね、「新体操部」だよん」
 ミユキが思わず口にした疑問にも、奈津実が律儀に答えてくれる。
 「えっと……新体操って、リボン回したり、棍棒投げたりするアレ?」
 あまり詳しくはないものの、一応の知識はあったらしい。むしろ小六の男子としては博識と言ってよいだろう。
 「うん、そんな感じだね。旧来の体操競技と比べると、「女の子のお遊戯」って馬鹿にする人もいるけど、実態は結構ハードで難しいスポーツなんだよ」
 「へぇ〜」
 そう聞かされて、実はソレに近い偏見を抱いていたミユキの認識も改まり、少し興味が湧いてきた。
 「練習は火曜と木曜の放課後で、土曜の午前中は自由参加。まぁ、本物のみゆみゆは、入部してから4、5回しか練習に来てくれなかったけど」
 5月に入部したとしても5、6、7の3ヵ月弱でソレはヒドい! と憤慨するミユキ。健全スポーツ少年だけに、サボりとかは許せないタチなのだ。
216『要12歳、職業・女子高生』その9:2011/02/02(水) 14:54:52 ID:XzwQKtjH
 「ん〜、本当にそう思う?」
 ゆるゆるで能天気な奈津実にしては珍しく、目が「キラン!」と鋭い輝きを発している。
 「じつは、新体操部ってウチの学園にしてはあまり強くないし、人数も少ないんだよね〜。二学期の半ば3年生も引退しちゃうし、そしたら部員もみゆみゆ込みで5人しかいなくなっちゃうし」
 この学園で「部活」として正式に認められるのは5人が最小人数らしい。
 「幸いこの学園には9月の半ばに体育系クラブの「成果発表会」ってのがあるんだ。ほら、文化祭って基本的に文化系クラブの校内発表の場でしょう?
 それに対して、体育会系の部にそういう場がないのは不公平だってコトで、一昨年から新設されたらしいの」
 「え、でも、運動会……体育祭は?」
 「アレって、基本的に陸上競技でしょ? そりゃあ普段からスポーツして鍛えている方が有利ではあるけど、陸上部以外は普段の活動とはかけ離れているしねぇ」
 なるほど確かに、とミユキも頷いた。
 「えっと……何の話してたんだっけ?」
 「9月中旬に「成果発表会」があるって……」
 「あ! そうそう。でね、その場にはもちろんウチの部も出場して、集団模範演技を見せることになってるんだけど……」
 チラッとわざとらしく横目でコッチを見てくる奈津実の視線で、ミユキもおおよその事情を理解できた。
 「もしかして、ソレにボ…ワタシも出ろってこと?」
 「だいせいか〜い!」
 ドンドンパフパフ〜と自らの口で擬音を入れて囃したてたのち、一転、奈津実は真剣な目つきになる。
 「さっきも言った通り、ウチは人数的に結構ギリギリなんだよね。だから、できたら運動神経良さそうなミユキちゃんには、ぜひ手伝ってほしいの」
 仮初の立場的にはともかく、実際には年上の(しかも色々世話になっている)お姉さんに、すがるような目で頼まれては、「男のコ」としてミユキも断りづらい。
 「──まぁ、いっか。考えようによっては、ボクがこの学園で過ごした記念にもなるだろうし」
 それに、新体操ってのにもちょっと興味があるし……という部分は、口に出さないミユキ。
 「! わ〜い、ありがとー! みゆみゆ大好き〜」
 嬉しそうに背後からじゃれついてくる奈津実の様子に苦笑しながら、一応釘はさしておく。
 「でも、いくら体操経験があって身体が柔らかいからって、それだけで何とかなるものなの?」
 「あー、うん、それはもちろんいろいろ練習してもらわないといけないかな。
 発表会まであと2週間くらいだから多少スパルタ気味になると思うけど……ミユキちゃんなら、大丈夫だよね? コンジョーありそうだし」
 「う、うん、任せて!」
 サッカー歴わずか1年半足らずで少年サッカークラブのレギュラーを射止めた実績は伊達じゃない。
 無論、要のサッカーセンスや基礎運動能力が高かったのは確かだが、それ以上に、コーチが教えようすることを素直に学びとる勘の良さと、進んで反復練習する根気があればこそ、だ。
217『要12歳、職業・女子高生』その9:2011/02/02(水) 14:55:31 ID:XzwQKtjH
 「うんうん、頼もしいなぁ……ってコトで、みゆっち、早速ソレに着替えてねン♪」
 「はうぅぅッ、やっぱり!?」
 手にしたピンク色のレオタードを、恥ずかしそうな目で見つめるミユキなのだった。

 レオタード用の下着として渡されたインナーショーツは、シンプルな白のコットン製ショーツだが、若干ハイレグ気味なのが、ちょっと気恥しい。
 幸いと言うべきか、オトコノコの部分は股間に絆創膏で固定してあるため、インナーショーツを履いてもモッコリしているようには見えないが、それでも格段に窮屈な感触は否めない。
 サポートブラと呼ばれる、これまた専用のブラジャー(もっともソレで支えるべき乳房は皆無なのだが)を着けたうえで、ミユキは急いでレオタードに脚を通した。
 両の素足の上をナイロン素材のソレが滑っていく感触は、妙にこそばゆく、同時に心地よい。さらに下腹部を布地が覆うと、余計にその感覚は強まる。
 努めてその快感に意識を向けないようにしながら、ミユキはピンク色の布を腹部から胸部にかけて引き上げ、身体をくねらせるようにして腕部にも片方ずつ袖を通す。
 腕や胴に寄っている皺をのばし、ピッチリと身体にフィットさせて……完成だ。
 「どう……かなぁ?」
 背後を振り向くと、ひと足さきにオレンジ色のレオタードに着替えていた奈津実が、イイ笑顔で「GJ!」と親指をサムズアップして見せる。
 「ぱーへくとよ、ミユキちゃん! むしろ本物以上に似合ってるかも!」
 確かに、ややボーイッシュな少女(にしか見えない少年)が、僅かに頬を染めて恥じらいながら、右腕を(あたかも胸元を隠すような姿勢で)前に回して、伸ばした左腕をつかみ、内股になってモジモジしているのだ。
 まさに「愛らしい」と評するべき、その姿には、男女問わず「グッ」とクることは間違いないだろう。
 「お、おだてないでよ〜。で、コレからどうすればいいの?」
 より一層顔を赤らめつつ、褒められて満更でもなさそうに見えるのは、気のせいだろうか。
 「とりあえず、体育館での基礎練からだけど……あ、ちょっと待って」
 部室を出ようとしたミユキを呼びとめると、奈津実はミユキの前髪をかき上げ、「パチン!」と何かを、「彼女」の髪に留める。
 「え? コレって……」
 「うん、安物だけど髪留め。運動するときに前髪が邪魔にならないようにね。それに……ホラ!」
 奈津実はミユキの両肩に手を置くと、部室の奥の鏡の前に連れて行く。
 「この方が可愛いじゃない?」
218『要12歳、職業・女子高生』その9:2011/02/02(水) 14:56:07 ID:XzwQKtjH
 高さ150センチ足らずの姿見に映るのは──微かに頬を赤らめ、驚いたように自らの姿を見つめる、レオタード姿の可憐な女の子にほかならなかった。
 スラリと華奢な体躯は女性的な円みには乏しいが、逆に未成熟な少女特有の稚い魅力を醸し出している。
 あどけない顔つきながら、花飾りのついた銀色の髪留めで額を出した髪型と、身体の線がくっきりと浮き出る衣裳が、鏡に映る人物が、幼いながらもレッキとした女の子であることを証明している。
 (なにコレ……可愛い…けど……コレって……ボク…ワタシ、だよね?)
 驚愕。憧憬。戸惑。羞恥……そして歓喜。
 ミユキの頭の中で、様々な感情がグルグルと渦を巻いている。
 「ん〜? どうしたの、みゆみゆ? もしかして、自分のあまりの可愛らしさに見とれててた?」
 ボンヤリしているミユキを不審に思ったのか、奈津実が声をかけてくれたので、幸いにしてミユキはその思考のループ状態から抜け出すことができた。
 「な、なんでもない。何でもないよ!!」
 (もしかして、あの絵の効力って……)
 一瞬だけ脳裏に浮かんだ疑念を打ち消すようにミユキは、大声で答えた。
 極力鏡を見ないようにしながら、自分の身体をペタペタ触ってみる。12歳の少年にしては多少華奢だが、間違いなく自分の身体であることを確認して、ため息をつくミユキ。
 その嘆息には、大半を占める「安堵」に混じり、ごく微量ながら「落胆」の色が混じっていたのだが、ミユキ自身は気付かなかった。
 「??? ま、いっか。じゃあ、そろそろ行こ。こっちだよん」
 奈津実に先導されてミユキは、今日の5時間目の授業でもお世話になった旧講堂へと足を踏み入れた。
 「みんな〜、ろうほー! 今日からミユキちゃんも練習に復帰してくれるよん!!」
 奈津実の元気な声に続いて、先に来ていた数名の新体操部員に向かって、ミユキは勇気を出してペコリとお辞儀をした。
 「い、今更ですけど、よろしくお願いします」
 それだけで、他の部員達に驚く気配がなんとなく伝わってきて、本物の美幸はどれだけ傍若無人だったんだろうと、内心苦笑するミユキ。
 それでも、部員達は温かくミユキの「復帰」を受け入れてくれたのだった。

-つづく-
-------------------------------
#以上。次回、軽く練習風景をはさみ、ストーリーが加速する予定。そろそろ「入れ替わりにお約束のハプニング」も起こしたいですしね。カナメな美幸の方のエロ話は、そのハプニングの次のくらいかなぁ。
219名無しさん@ピンキー:2011/02/03(木) 12:13:44 ID:3ay9XnzN
「ねぇねぇ!おままごとしよー!」
妹のその一言で、いつもと変わらない朝の一家の団欒に戦慄が走る。
「えーとねぇ、お父さんがお母さん!お母さんがお父さん!私がお兄ちゃんで、お兄ちゃんは私の妹!お姉ちゃんは・・・ペットの犬!」
妹が言い終わると、家族全員の服装が変化した。父と母、俺と妹の服装が逆転し、姉は全裸になった。
「お、おい!早く戻せよ!」と声を荒げるが、この格好では迫力がない。
「こら!女の子がそんな言葉遣いしちゃいけません!お父さんからも何か言ってください」「お母さんの言うとおりだぞ。雄介、お兄ちゃんに謝りなさい」
父と母はお互いの役に完全になりきっている。妹が満足するまで、おままごとは終わらないことをよく分かっているからだ。
「う、うぅ・・・ごめんなさい・・・ゆ、結花・・・お兄ちゃん・・・」俺も仕方なく妹になりきる。
「分かればよろしい!これからは妹らしくお兄ちゃんの言うことをよく聞くように!」妹が調子にのって威張る。
そういえばさっきから姉の姿が見えない。大方自分の部屋に篭っているのだろう。
「ワンちゃんどっかに行っちゃったねー。帰ったら散歩につれてってあげよっかなー」
妹のその無邪気な言葉に、俺は寒気を覚えたのだった。

220名無しさん@ピンキー:2011/02/04(金) 00:23:32 ID:U4ACodZt
>>218
乙です
大分話が進んできましたね

>>219もええのう・・・
221名無しさん@ピンキー:2011/02/05(土) 13:51:02 ID:MxANInGY
>>219

いいね
クラスとか親族の寄り合いとか大規模での「おままごと」も見てみたい
222『要12歳、職業・女子高生』その10:2011/02/07(月) 16:12:20 ID:90Y1n8KL
 ──キーン、コーン、カーン、コーン
 「お、じゃあ、今日の授業はココまで。来週は小テストするから、予習はちゃんとしておくようにな」
 6時限目の担当だった数学の日下部教諭が出て行くとともに、クラスの生徒たちもいっせいに放課後モードに突入する。
 板書をノートに無事に写し終えたミユキも、カバンに教科書類をしまい始めた。
 実は本物の美幸は教科書類の大半を学校の机に置きっぱなしにしていたのだが、真面目なミユキは授業を少しでも理解できるよう、きちんと毎日持ち帰って予復習している。宿題は言わずもがな。
 その甲斐あってか、最近は授業の内容もおおよそはわかるようになってきた。この調子だと、本物が4歳年下の偽物(?)に学力面で追い越される日も遠くないかもしれない。
 「美幸さん、奈津実さん、今日はお二方の部活がない日ですよね。一緒にザ・キャロまで行ってみませかんか?」
 鞄を持った睦美がふたりを、放課後の寄り道(と言うには遠回りだが)に誘ってくる。
 「あ〜、いいねぇ。そろそろアソコの特選白玉パフェが恋しかったし。みゆみゆは?」
 一も二もなく賛成する奈津実の言葉にミユキも頷く。
 「うん、ワタシも新作のシナモンアップルクレープが食べたいかな。あ、そのあとで本屋さんに寄ってもいい?」
 「ええ、もちろん。わたくしも、ちょうど買いたい雑誌がありますので……」
 友達ふたりとワイワイしゃべりながら、教室をあとにしつつ、ふとミユキの心の中に奇妙な感慨が浮かぶ。
 自分は、あくまで従姉の代役(?)として一時的にココにいるだけなのだ。さらに言えば、この学校に通うようになって、まだ10日程しか経っていない。
 ──それなのに、どうしてこんなにココにいるコトが自然で心地よいのだろう。
 まるで、ずっと以前からココにいたような……あるいは、このまま「早川美幸」として過ごすコトが、ごく当たり前のように感じられる。
 いや、もしかして自分は、そうあるコトを……。
223『要12歳、職業・女子高生』その10:2011/02/07(月) 16:12:42 ID:90Y1n8KL
 「どしたの、みゆっち? さっきから何か難しい顔しちゃって。もしかしてお小遣いがピンチ?」
 「何でしたら、お金お貸ししましょうか?」
 「へ?」
 どうやら、いつの間にかファミレス、ザ・キャロッツに到着していたらしい。
 「な、なんでもないよ。ちょっと考え事してただけ」
 慌ててそう言いつくろうと、ふたりともそれ以上は追及してこなかった。
 「ふーん……ま、いっか。あ、わたしはさっき言った通り、特選白玉パフェのドリンクセットね」
 「わたくしは、このスイートポテトパイのセットにします。美幸さんは?」
 「えーっと……新作のシナモンアップルクレープも美味しそうだけど、こっちのメープルマロンワッフルにも惹かれるなぁ。うーん、うーん……」
 しばし悩んだ挙句、睦美の「それじゃあ、ワッフルは皆で三等分してみませんか?」という助け舟に飛び付くミユキ。
 「おいし〜! はぁ、しゃーわせ……」
 満面の笑みをたたえてクレープを口にするミユキを、奈津実は呆れ顔で、睦美はニコニコ笑顔で見守っている。
 「ほんっと、みゆみゆは甘い物に目がないね」
 「フフッ、いいじゃないですか。あんな幸せそうな顔されたら、見ているこちらまで楽しくなってきますわ」
 その場を目にした者は、誰も「ありきたりな女子高生3人組の放課後風景」だと信じて疑わない……いや、気にもとめないだろう。
 実際は、3人のうちひとりは実は男子小学生だったりするワケだが、仮に「鳥魚相換図」の力が発動していなかったとしても、バレることはなかったに違いない。それくらい、ミユキは女子高生としての暮らしに、ごく自然に溶け込んでいた。
224『要12歳、職業・女子高生』その10:2011/02/07(月) 16:13:13 ID:90Y1n8KL
 「それで、どうなのですか、今度の「成果発表会」は?」
 自身は茶道部であり、成果発表会とは直接関係しない睦美が、新体操部のふたりに尋ねる。
 「うーん……個人個人の演技については、なんとか形になってきた感じかにゃ〜」
 パフェのアイスをちょびっとずつ舐めつつ、奈津実がそんな風に答えるのを聞いて、ミユキも昨日の練習のことを思い返してみた。
 クラブにもよるが、新体操部は成果発表会には1、2年生だけが出るのが慣習だ。よって団体演技の規定である5人を満たすためには、ド素人なミユキも出場せざるを得ないのだ。
 とは言え、いくら「この」ミユキの運動神経やスポーツセンスがいいからと言っても、やはり2週間程度の付け焼刃では限界がある。
 そこで、3年の先輩とも相談した結果、ミユキはリボンの扱いのみ専念して覚え、かつ基礎を覚えた段階で発表会に向けた演技だけを繰り返し練習することになった。
 ミユキとしては、どうせなら色々なじみがあるボールを使いたかったのだが、中学からの経験者である奈津実いわく、手具の中でもボールの扱いは比較的難度が高いらしい。
 その点、リボンは動きが派手で目立つし、身体的柔軟性の高いミユキが様々な姿勢で振り回せば見た目も栄えるとのこと。
 その忠告に従い、ミユキは3年の先輩からリボンの使い方の手ほどきを受けることとなった。
 当初はその先輩──元副部長の御門綺羅も、「本物」の美幸の無愛想なイメージがあったのか、あまり気乗りしない様子であった。
 しかし、ミユキが非常に素直で礼儀正しく、かつスポンジが水を吸うように言われた事を貪欲に習得していくにつれて、評価を一変させ、今では「明日の新体操部を背負って立つ逸材」とまで絶賛するようになった。
 最近では、大学の推薦入学が決まったのをいいことに、部活の指導に入り浸り、「私の知るすべてをたたき込んであげます!」と息まいているほどだ。
 ミユキとしては、そこまで過大評価してもらうのは面映ゆい面もあったが、それ以上に誇らしい気分で一杯だった。
225『要12歳、職業・女子高生』その10:2011/02/07(月) 16:13:45 ID:90Y1n8KL
 実のところ、浅倉要少年のサッカー選手としての才能や適正は、せいぜい中の上といった程度だった。
 元来の運動能力が高く小器用なので、GKを除くどんなポジションもソツなくこなせるが、同時にそのポジションのトップクラスの人間には概して競り負ける。
 故に、クラブでもレギュラーでありベンチ入りはしているものの、スタメンではない。誰かが疲れたり不調で精彩を欠いたら、すぐさま代打的に投入し、その穴を埋める。試合では、そういう使われ方をしていたのだ。
 その事に彼が引けめやコンプレックスのようなモノを感じなかった、と言えば嘘になるだろう。彼はお人好しではあったが馬鹿ではない。むしろ、歳の割には人一倍聡い子だ。
 しかし、だからこそ、サッカーに心の底からはのめり込めなかったし、逆にそのコトを自覚してもいたので、親友の有沢耕平のように全身全霊で練習に打ち込む「サッカー馬鹿」には敵わないとあきらめていた部分でもあった。
 誰かの代役ではなく、自分が自分として必要とされる舞台(ばしょ)に立ちたい。
 それは、12歳の少年が抱く想いとしてはいささか早熟で、ややもすれば悲しい想いであったが、皮肉なことに、この学園に「早川美幸」として通うことで彼──いや「彼女」はその願いを叶える機会に恵まれたのだ。
 (成果発表会は17日の金曜日──その晩には、ボクはこの学園を出て、「自宅」に戻らないといけないんだよね……)
 つまり、発表会はミユキにとってまさに最初で最後の晴れ舞台、というワケだ。
 正直に言えば、未練はある。
 仲良くなった奈津実や睦美、あるいはクラスメイトやクラブの仲間達との別れは辛いし、自分でもだいぶ「星河丘学園の女生徒」としての暮らしに馴染んでいるという自覚もある。
 とは言え、ココは本来自分がいるべ場所ではない。ハプニングからとは言え、従姉から一時的に「借りている」だけなのだ。
 (だいじょうぶ。元の暮らしに戻るだけなんだから。きっとうまくいくよ)
 ミユキは懸命に自分にそう言い聞かせていた。
226『要12歳、職業・女子高生』その10:2011/02/07(月) 16:15:07 ID:90Y1n8KL
 (それに……耕平たちのことも気になるし)
 「親友」であるはずの少年やその他の友人の状況が気がかりなのも確かだ。
 自分は来て早々に美幸の友人の奈津実に正体を見破られてしまったが、もしかしたらアチラも同様の事が起こっていたりするのではないだろうか?
 もしそうなら、耕平はどんな風に思っているのだろう?
 ──もっとも、現実には他の友人はもとより、耕平や要の両親ですらソコにいるのが偽者の「カナメ」だなんて、まったく疑う気配すらなかったのだが。
 後日そのことを知ったミユキは少なからず衝撃を受けるのだが、この時点ではそんなコトを夢にも思っていなかった。

 ところが。
 学園側下したとある決定が、ミユキ、そしてカナメの「予定」を狂わせていくコトになるのだった。
 「え? どういうコトなんですか、御門センパイ!?」
 「ですから、成果発表会は19日に延期されると決まったそうですわ」

-つづく-
---------
#今回も、前回予告とは微妙に異なる展開に。サーセン。いかにもな女子高生ライフの描写を入れたかったんで。新体操演技の描写は別の章にて。
#某NSL文庫に収録されているいくつかのSSの影響をそこはかとなく受けている事を告白。一度「大人の世界」に飛び込んで慣れたら、やっぱり「子供の世界」に帰るのって苦痛になる気がします。
#耕平くんや要の両親がカナメのことを見抜けないのは、楽天的な性格に加えて、ちょっと不審を覚えてもカナメの誤魔化し方が上手いから。その辺は、嘘が苦手なミユキとの差ですね。決して情愛や関心が不足してるワケではないのですが。
227名無しさん@ピンキー:2011/02/07(月) 23:55:30 ID:w3jjbLhN
GJ
続き期待してます
228名無しさん@ピンキー:2011/02/07(月) 23:58:11 ID:fK6shX9v
>>226
続きキタ
どんどん染まっていきますねぇ

自分も某NSL文庫が大好きなのが高じて、このジャンルのSS書くようになりましたし

>>219
続きマダー
229『替玉お断り』:2011/02/08(火) 16:10:20 ID:KTobZSaR
 暖房の効いた教室では、生徒達が懸命に答案用紙の空欄を埋めており、ペンが紙の上を走るカリコリという音だけが辺りに微かに響いていた。
 ちなみに、この試験は期末や中間といった定期試験や実力検定ための模擬試験の類いではない。ほかならぬ、ここ、慶聖女学院高等部への入学試験なのだ。
 そのため、普通の学内試験などとは桁違いの緊張感が教室中に溢れている。

 ──キーンコーンカーンコーン……

 「はい、終了です。答案用紙を裏返して机の上に置いてください。今から係の者が回収します」 
 時間終了を告げるチャイムとともに試験官がそう宣告し、裏返しの答案用紙を次々に回収していく。
 (ふぅ〜、やっと終わった……)
 一様にホッとしたような開放感に包まれている生徒達の中でも、その少女はことさらに安心したような表情を見せていた。
 紺色のブレザーと臙脂色のリボンタイ、膝丈のボックスプリーツスカートというオーソドックスな制服からは出身校を特定しづらいが、左胸のワッペンになった校章を見る限りでは、どうやらすぐ近くの公立中学の生徒のようだ。
 肩にかかるくらいの長さの髪をやや外跳ね気味にブローし、口元にごく薄いピンク色のリップを塗っている程度で洒落っ気はほとんどない。まぁ、受験時にわざわざオシャレしていても仕方ないが。
 中学3年生の女子にしては162センチの身長はやや高めと言えるだろうが、それとてとくに目立つという程ではない。
 だが……周囲の女の子たちとはどこか一線を画する雰囲気が、彼女にはあった。観察眼の鋭い者でなければ気付かないような、ごく僅かな違和感。
 ──もっとも、違和感があって当然だろう。彼女は本当は「彼」なのだから。
230『替玉お断り』:2011/02/08(火) 16:11:14 ID:KTobZSaR
 「彼女」──いや、彼こと日輪勝貴(ひのわ・かつき)が、高校一年生の男子の身で、わざわざ女装してまで女子高の入学試験を受けているのは、深い……とは全く言えない単純明快な理由があった。
 中三の妹、香月(かづき)の代役である。
 無論、明らかに違法行為だ。
 たとえばこれが、香月が事故でケガしたとか、当日急病でブッ倒れたとか言うなら、まだ情状酌量の余地があるのだが、そんな事実はまったくない。
 正月になっても遊び呆けていた極楽トンボな妹が、案の定不合格を連発し、最後の慶聖女学院受験の前日になって「お兄ちゃん、あたしの代わりに試験受けて来て〜!」と泣きついてきたのである。
 割かし勤勉で優等生な勝貴にしてみれば妹の受験失敗は自業自得だが、香月を溺愛する両親は、愛娘が高校浪人するかもという状態に耐えられなかったらしい。
 揃って勝貴に頭を下げ、替玉受験を頼んできたのだ。
 (そもそも、息子に娘の不正入試の手伝いさせる親ってどーよ!?)
 だいたい父も母も、我がままで気まぐれな妹に甘過ぎると勝貴は思う。俗に言う「馬鹿な子ほどかわいい」というヤツなのだろうか?
 実のところ、兄である彼が優秀でほとんど手のかからない(かつ自立心旺盛な)息子であったため、子供を構いたくて仕方ない父母の愛情が娘に集中している……という経緯もあるのだが。
 ちなみに、勝貴と香月は1歳違いの兄妹ながら、身長は1センチ違いで香月の方が大きく、顔立ちも非常によく似ているため、よく双子と間違えられる。
 だからこそ、勝貴としては妹のフリをするのは嫌だったのだが、父・母・妹の家族揃って土下座してくるプレッシャーと、小遣い5000円アップという人参に負けて、結局も替玉を承知するハメになった。
 彼が首を縦に振るや否や、母と妹のふたりに連行され、パンツ一丁にさせられた挙句、すね毛はもとより腋の下の気まで処理されたコトに始まり、深夜近くまで「促成・女の子講座」を受けさせられたコトは忘れたい記憶だ。
 まぁ、おかげで、こんな風に妹の制服を着て(プラス、抵抗したが下着類もしっかり妹のを着せられた)、女子中学生としてこの学院に受験に来ても、誰にも見咎められなかったのだから、あのプチトラウマなレッスンにも意味はあったのだろう。
 ──そもそも、こんな替玉事件に加担しなければ、不必要なスキルだったとも言えるが。
231『替玉お断り』:2011/02/08(火) 16:11:47 ID:KTobZSaR
 (ま、この茶番も無事に終わったことだし……あとは、妹の知り合いと顔合わさないようにさっさと帰るか)
 そんなコトを考える「香月」な勝貴だが、言うまでもなく、そんなわかりやすいフラグを立てたら作者の思うツボ……もとい、悪戯な運命の格好の餌食だった。
 「あれ、香月ちゃんも、慶聖受けてたんだぁ」
 よりによって、共通の知り合いと出会うとは……。他のパラメーターはともかく、勝貴の「幸運度」の数値は相当低いようだ。
 「こ、こんにちは、明日香、サン」
 目の前の少女に、ぎこちなく頭を下げる「香月」。
 彼女の名前は、聖宮明日香(きよみや・あすか)。中学の時に引っ越したものの、それまでは日輪家のご近所さんであり、勝貴と香月にとっては幼馴染にあたる娘だ。
 学年的には勝貴の同級生であり、小学校の頃は何度か同じクラスになったこともある。もっとも、同性だからか、どちらかと言うと妹の香月の方が明日香とは親しかったように思うが……。
 「直接会うのは久しぶりだね。どう、今日の受験の手ごたえは?」
 引っ越してからも、香月とは時折手紙や電話のやりとりなどはしていたようだが、幸い顔を合わせる機会はほとんどなかったらしい。
 それが幸いしてか、明日香は目の前にいるのを香月だと思いこんでいるようだ。
 「は、はい。その……たぶん、大丈夫、かな?」
 勝喜としては、ほぼ全問正解に近い手ごたえを得ているが、今の自分は「香月」なのだから、あまり自身満々なのもヘンだろう。
 「そっかー。じゃあ、4月からは私の後輩になるんだネ♪」
 「えっと、そうなれたらいいかナ♪ なんて」
 嬉しそうな明日香に釣られて、つい女の子っぽい語尾で応えてしまう。
 (まぁ、今の俺は「香月」なんだから、コレくらいやって当たり前だよな)
 男として何か大切なモノを失ったような気がしたが、強引そう考えてスルーする。
232『替玉お断り』:2011/02/08(火) 16:12:44 ID:KTobZSaR
 その後も、他愛のない世間話(だが、勝喜には冷や冷やモノの会話)を2、3交わしてからふたりは別れ、「香月」は「何とかバレずに済んだ」と深い安堵の溜息とともに帰路についた。

 「──ふーん。カツくんたら、おもしろいコトしてくれちゃって。
 理事長の娘としては、替玉受験なんて不正をタダで見逃すワケにはいかないけど、幼馴染みの義理やよしみもあるし……」
 どうやら、明日香にはすっかりお見通しだった様子。
 「! そうだ。確かこないだおもしろいモノを見つけたんだっけ」
 急いで自宅に戻った明日香は、物置から一枚、いや二枚の古びた絵を取り出す。
 「コレを上手く使ったら……うふふ、愉快なコトになりそ♪」

−つづく?−
-----------------------------------------
#てなワケで、未だ「要12歳」も大詰めなのに、>213のネタの導入部を妄想してしまいました。お気づきでしょうが、この話のカラクリも例の「鳥魚相換図」……のレプリカのひとつを利用します。
#このレプリカ、使用者の同意がなくても時間をかければ(枕に仕込んでから10日間程度)効果が発動するという欠陥品(?)。受験の翌日、明日香ちゃんが日輪家に遊びに来て……もう、おわかりですね?
#あと「当主メイド」や「要12歳」の主人公達と違って、勝喜くんは、かなり女子高生としての生活に抵抗を示します。そもそも、立場交換の経緯も知りませんし、同意もしてませんしね。
233名無しさん@ピンキー:2011/02/08(火) 16:45:35 ID:u6krgoFM
>>228
続けるつもりで書いたわけじゃないからその先は妄想してくれ
234名無しさん@ピンキー:2011/02/08(火) 21:28:50 ID:J6DWPTQ5
>>232
うわ!また新作来てる!
続き期待してますですよ

>>233
(´・ω・`)
235名無しさん@ピンキー:2011/02/09(水) 02:07:16 ID:nA08Vh8E
>>232
(・∀・)イイヨイイヨー
236*美幸16歳・閑話/幼き少年達の悩み*:2011/02/10(木) 01:46:33 ID:WGPpRlLd
 「ハァ〜、どうしたモンかねぇ」
 ここ、緑乃原小学校に勤める養護教諭の蓮川は、夕暮れの保健室で、生徒の姿がないのをいいコトに腕組みしてウンウンうなっていた。
 男子校でもないのに男性の養護教諭というのは珍しいが、まだ20代半ばで、生徒に時に気さくに時に親身に接する彼は、兄貴分的存在として男女問わず緑乃原の生徒達から慕われていた。
 それゆえ、そろそろ思春期に差し掛かった高学年の生徒(おもに男子が多いが女子も少数存在)から心身の悩み事に関する相談を受けることも少なくないのだが……。
 「まさか、一週間に5人もの男子生徒から、同じ悩みの相談を受けるとはなぁ」
 しかも、その内容というのが、「同級生のコにドキドキする」、「手が触れただけで、過剰に反応してしまう」などという代物だ。
 普通なら、「それは恋だよ!」なんて直接的な表現は避けるにせよ、それとなく「成長過程にはありがちなことで、どこもおかしくない」と言った励ましを送るべきなのだろうが……。
 「その対象が同性の男の子だからなぁ」
 俄然取扱いには細心の注意を払わざるを得ない。
 蓮川も高校時代は男子校に通っており、身近な知人に男性同士のカップルがいたため、決して腐女子の妄想内だけでなく、そういう関係が存在し得ることは、重々承知している。
 とは言え、彼自身はその高校時代に知り合った同い年の少女と結ばれ、一昨年結婚したばかりのノーマルな身であり、また背は低いが美形には程遠い顔立ちのため、その種の誘惑を受ける機会も皆無だった。
 相手が高校生なら、「自分の人生だから、よく考えて、後悔ないようにな」と煙に巻くこともできるのだが。
 「さすがに小学生にソレはないよな。心底悩んで、俺に相談しにきたんだろうし……」
 ともかく、ココでひとり唸っていても仕方ない。
 幸い、例の同性で同棲しているカップルをはじめ、友人には人生経験だけは無駄にバラエティ豊かなメンツが揃っている。彼らにもそれとなく相談してみようと、帰り支度を始める蓮川教諭なのだった。

 * * * 
237*美幸16歳・閑話/幼き少年達の悩み*:2011/02/10(木) 01:47:21 ID:WGPpRlLd
 さて、同級生の男子数人、ならびに相談を受けた蓮川を悩ませているコトの元凶は……言うまでもなく、カナメのふりをしている美幸である。
 少なからずショタ好きな傾向のある彼女は、傍目には小学6年生の男子生徒にしか見えないのをいいコトに、好き放題していたのだ。
 休み時間や体育の時間に悪戯けた風を装って、自分好みの同級生たちに抱きついたり、ワザと太腿やうなじを触ったり、着替え時に裸をガン見したり……と、その「悪行」は枚挙に暇がない。
 また、「彼」自身の着替えも、ガサツで無頓着と言えどやはり女子高生、意識はしていないのだが、どうしても動作の端々がに生粋の男子とは違う「艶」めいたモノがほの見えてしまうようだ。
 その「色香」(と言うのは大げさだが)にアテられ、また「彼」からの「接触」に心をかき乱された少年の数は、蓮川に相談した人数の倍はいる……と言うか、程度の差こそあれ、クラスの男子の半数以上がそうだった。
 ちなみに、要の親友の耕平は、その少数派に属する。直情熱血と言うか、天然と言うか、端的に言えばお子様な彼は、カナメの下心を秘めたスキンシップにも、まるで羞恥を示さなかった。
 かえって、カナメの方が自分の行動に恥ずかしくなったくらいだ。
 とは言え、そんなに稀有な例外を除き、このままでは要のクラスの男子全体が、イケナい嗜好に目覚めるのも時間の問題かと思われたのだが……。

 * * * 

 クラスでもお調子者で知られる友人のひとり、島村に誘われて、放課後、数人の友人たちと体育倉庫に隠れて、ソレを見たコトが、カナメにとっての転機となった。

 「ヘッヘッヘッ、兄貴が隠してたHぃグラビア、持って来たぜ!」
 「「「「おーーーーーっ!」」」」
 どうやら、秘密のお宝本(!)観賞会らしい。
238*美幸16歳・閑話/幼き少年達の悩み*:2011/02/10(木) 01:47:52 ID:WGPpRlLd
 (ふーん、漫画とかであったけど、男の子って放課後、こんな風に集まって猥談したりエロ本見たりするんだ……)
 おそらく女の子の身では一生知らないままであったろう、「男子の秘密の世界」を垣間見たことで、予想以上に興奮するカナメ。
 ──いや、その時は、そう想っていたのだ。
 島村がコソコソとカバンの中から取り出した写真集には『潮風の妖精/元BKAメンバー橘亜紀良 21歳の夏』とタイトルがついており、水色の前開きワンピースのボタンをひとつだけとめた女性の姿が映っている。
 巧みに下半身の一点と乳房の頂点だけは隠しているものの、ノースリーブワンピース自体が薄い素材でできている上、ところどころ水に濡れているため、下手な全裸よりエロティックだ。
 (へぇ……確かに、コレは女の目から見ても、なかなか際どいかな)
 そんなコトを考えつつ、周囲の少年達に合わせて「すげぇーっ!」とか適当な歓声をあげるカナメだったが、どういうワケかその写真集から目が離せなかった。
 「でだ。よく見てみると、この橘亜紀良って……ウチの笹川先生に似てね?」
 「「「「!」」」」」
 島村の言葉は盲点だったが、確かにそう言われてみれば似ている気がする。
 カナメたちの隣りのクラス担任の笹川先生は、今年で25歳になるまだ若い女性教諭だ。
 美人なうえに優しい性格から男女問わず人気が高いが、生徒間の噂では、5年2組の担任の兵頭先生とデキているのではないか、という話がある。
 実際、ふたりが休日にデートしているトコロを見た生徒もいるらしい。
 そんな清楚な女教師が、こんな風に肌も露わな格好で、コチラを挑発するような様々なポーズをとっていると想像したら……。
 「うぉーーーっ、何か萌えてきた!」
 思わず、カナメはそんな言葉を口走っていた。
 だが、その場にいた者は皆同様の気持ちだったのか、ニヤニヤしながら「うんうん」と頷いている。
 もどかしげにページをめくりつつ、時折「すげぇ」だの「うわぁ」だの言葉を口々に呟きつつ、少年達のボルテージが高まる。
 その興奮の渦の中に、ごく自然に巻き込まれているカナメの姿があった。
 その時のカナメには、自分が本来16歳の少女であり、女性の裸体なんて見慣れている……という意識はきれいサッパリ消え失せていた。
 気が付けば、半ズボンの上から股間に手を当て、モゾモゾとソコを刺激していた。
 さすがに、ハッとして周囲に視線をやったものの、他の少年たちも似たりよったりの状況だったため、安心する。
 さすがに、その場は最後まで気をヤるようなコトはなかったものの、「男の子としてのオナニー」のとっかかりを得たことをキッカケに、カナメの性的興味の対象は、それまでの「幼い少年」から一転し、知らず知らず「若い女性」へと変化していったのだった。

 * * * 
239*美幸16歳・閑話/幼き少年達の悩み*:2011/02/10(木) 01:49:02 ID:WGPpRlLd
 その一件以来、カナメの悪戯はピタリと収まった。そればかりか、体育の時間の着替えなどで、不埒な真似を働くこともなくなり、「妙な色っぽさ」を振り撒くことも、徐々に減少していったのである。
 おがで、前途を誤りかけていた少年数名と蓮川教諭の悩み事は、自然に解消されることとなった。
 しかし……。
 「おい、浅倉、有沢、今日はサッカーの練習休みなんだろ。俺ン家に遊びにこねーか?」
 「お、いいな。島村、『スト4』買ったんだろ、『スト4』」
 「ヘヘッ、ソレもいいけど、実は……兄貴の本棚から、ちょいとイイ本を見つけたんだぜ」
 「なにっ、ホントかよ? 見せれ見せれ!」
 「あわてるなって、だから、放課後に俺ン家に集合な!」
 小学生とは思えぬスケベ面をさらす島村とカナメの様子を、キョトンとした顔で見守る耕平。
 「??? なんだ? ゲームよりおもしろいモノなのかよ?」
 「……まったく、コレだから耕平は」
 「お子様だから困るぜ」
 ふたりは、揃って肩をすくめる。
 その後、島村少年とともに息を荒げながら、元アイドル女優の際どい写真集(と言ってもせいぜいがセミヌード程度なのだが)を覗きこむカナメの様子は、すっかり「思春期特有の欲求に悶々とする12歳の少年」そのものだった。

------------------------------------------
#てなワケで、序章と前回の閑話のちょうど中間の時期のお話、カナメ(美幸)が「男の子の欲望に目覚める」一幕でした。このあと、カナメは自覚せずに急速に「12歳のちょいエロ男子道」をまい進していくコトに。
とは言え、サッカーの練習に関しては耕平に引っ張られて真面目にこなしていくのですが(そして、想像以上に上達します)。

#次回は、ふたりが「戻る」予定だった敬老の日に関連して、ミユキとカナメの両方の視点から交互に話を進める予定です。
240名無しさん@ピンキー:2011/02/10(木) 06:57:20 ID:r3jHYlsQ
ちょいエロ少年に染まる少女って
良いなぁ…
どこまで少年化するかカナメ側も期待!
241名無しさん@ピンキー:2011/02/10(木) 07:23:54 ID:iXaxbuWy
今回の逆verでショタに目覚めるミユキにも期待
242名無しさん@ピンキー:2011/02/10(木) 22:00:37 ID:/f3YPV42
>>239
ハイペースGJ!

そういや鳥魚相換図はレプリカだと機能の一部がオミットされてたりするんでしょうかね
名前は交換されなかったり、職業だけしか交換されなかったりとか
243名無しさん@ピンキー:2011/02/11(金) 08:59:20 ID:bqhBNIVk
性的興味の対象が、「幼い少年」から一転、「若い女性」に変化。
腐女子からエロ少年にクラスチェンジ。
性癖の百八十度転換に、読んでいるこっちまでゾクゾクしてきましたよ。

こんな良作を今まで読んでいなかったなんて、なんてもったいない事していたんだろう。
前スレの最初の話が読みたいな。どこかにまとめとかないのだろうか?
244名無しさん@ピンキー:2011/02/11(金) 17:29:09 ID:qW71HMCQ
蓮川ってww
グリーンウッドがこんなとこにまで
245『要12歳、職業・女子高生』その11:2011/02/12(土) 15:25:54 ID:vBfgUkUk
 いつも観ているロボットアニメの再放送が終わったものの、何となくそのままリビングに居座って、テレビのチャンネルをポチポチ変えていたカナメに、台所で夕飯の用意をしていた母親が声をかけた。
 「かなめー、お風呂沸いてるから、ご飯の前に入っちゃいなさい」
 「はーい」
 さして観たい番組もなかったので、素直にカナメはそう返事して、浴室に向かった。
 脱衣場で何の気負いもなくパパッとTシャツと半ズボン、そしてブリーフを脱ぎ捨てると、そのまま風呂場の扉を開けて中に入るカナメ。
 かかり湯もそこそこに、ザブンと浴槽に飛び込む。
 「はぁ〜、極楽ごくらく」
 小学生にしてき妙にジジむさい言葉を漏らしつつ、お湯につかったまま、ふと自分の、二の腕、脚、あるいは腹部を見つめる。
 「うーん、ちょっとは筋肉ついてきたかな?」
 その言葉通り、怠惰な生活をしていた以前とは異なり、連日のサッカークラブの練習によって各部の筋肉が引き締まり、またうっすらとではあるが、剥き出しの手足の肌も日焼けしてきたようだ。
 そのことを誇らしく思いつつ、「男の子らしく」パパッと身体や髪を洗うと、カナメは10分ほどでアッサリ風呂から出た。
 「あがったよー」
 「もう、いいの? 今日はお父さんまだだから、ゆっくりしててもよかったのに……」
 要の風呂好きを知る母は驚いているが、「だって、まだ暑いし」と言うと納得したようだ。
 先日の日曜日に床屋で切ったばかりの髪をゴシゴシとバスタオルで拭きながら、「やっぱり髪の毛が短いと楽だなぁ」と考えるカナメ。
 元は、ミユキと同様に襟を覆うくらいのショートに近いセミロングだったのだが、思い切ってベリーショート……と言うかスポーツ刈りにしてみて、正解だったようだ。
 「要、電話よー」
 夕飯前なので牛乳は我慢して冷たい麦茶でも……と、冷蔵庫を漁るカナメを、いつの間にか席を外していた母がリビングの方から呼んでいる。
 「んー、誰?」
 「早川さんトコの美幸ちゃん。アンタ、向こうに何か忘れ物したんですって?」
 はて、何の用だろう……と思いつつ、カナメは母から受話器を受け取った。
 「もしもし、カナメです。どしたの、ミユキ姉ちゃん?」
 何の躊躇いもなく、その自称と呼びかけを使用したことに、「彼」は気づいているだろうか?
246『要12歳、職業・女子高生』その11:2011/02/12(土) 15:26:39 ID:vBfgUkUk
 『───えっと、ミユキです。今週末の土曜日のことでちょっとお願いがあって……』
 ほんの少し間があったものの、電話の向こうからは聞き覚えのある「従姉の少女」の声が聞こえてくる。
 (えーと、土曜日って……あっ!)
 ようやく、カナメ──美幸は、自分たちふたりが互いの立場を入れ替えているという事象に思い至る。逆に言うと、それまでは完全に失念していたのだ。
 (そうだったそうだった。17日に「オジさん家」に行って元に戻るって約束したんだっけ)
 心の中でも、本来の自宅をまるでよその家のように表現する美幸──いや、カナメ。
 まぁ、それも致し方ないだろう。美幸は元々自分の家の風潮があまり好きではなく、だからこそワザワザ全寮制の高校に入学したくらいなのだから。
 逆に、気さくで放任主義な傾向の強いこの浅倉家の雰囲気は、「彼」の気性と非常にマッチしており、わずか2週間あまりですっかり「浅倉要」としての暮らしに馴染みきっていた。
 (そうか。もう、戻んないといけないんだ……)
 そう自覚した時に、カナメの心に一番に湧き上がったのは「イヤだ、戻りたくない」という強い拒否感だった。

 ──親友の耕平やクラブの仲間と、もっと一緒にサッカーの練習がしたい!
 ──悪友の島村譲たちと、スケベな本を見たり、エロ話をしてみたい!
 ──仲の良いクラスメイト達と別れて、ろくに友達もいない学園なんかに帰りたくない!
 ──「女の子だから、ちゃんとしなさい」なんてうるさいことを言われず、好き勝手なことができるこの家で、のびのび男の子ライフを満喫していたい!

 言葉にすれば、そんなトコロだろうか。
 とは言え、それが自分勝手なワガママだと自覚できる程度にはカナメも理性的ではあったし、内心はどうあれ、そのワガママを我慢する程度の分別はあった。
 「……うん。で、土曜の夕方から、オジさん家に遊びに行けばいいんだっけ?」
 渋々言葉を絞り出したカナメに対して、しかし電話の向こうのミユキは意外な提案をしてきたのだ。
 『それがね……事情があって、その日は帰れそうにないの』
 「へ?」
247『要12歳、職業・女子高生』その11:2011/02/12(土) 15:27:16 ID:vBfgUkUk
 ミユキいわく、新体操部の成果発表会が19日の日曜になったため、どんなに頑張っても、ミユキが「自宅」に戻れるのは日曜の夜になるらしい。
 『でも、「浅倉要」も、日曜の夜には家に戻る予定だったでしょ?』
 確かにその通りだ。そして、例の絵図は、おそらく5、6時間程度は一緒に眠らないと効果が発動しないはずだ。
 「じゃ、じゃあ……」
 『うん。すごく申し訳ないんだけど、元に戻るのを少しだけ延長しちゃってもいい?』
 カナメに異論があろうはずもない。
 「もちろん!」
 『それじゃあ、その次の連休は……えっと、体育の日の10月11日、かな』
 「あ、でも、星河丘学園って、確かその前後に学園祭と体育祭があると思うけど?」
 『……ホントだ。8、9、10日が、まさに学園祭みたい』
 「そんな時に抜けるのは、クラスの人にとって迷惑だろうね」
 「シメた!」と小躍りしたいのを堪えて、カナメが冷静に指摘した。
 『うん、確かにそうだね。でも、その次となると……11月に連休はないし』
 困っているミユキに対して、カナメはアッサリ提案する。
 「いっそのこと、年末までこのままでいいんじゃない? どうせ正月には、毎年ソッチに家族でお邪魔してるワケだし」
 カナメの指摘は正しいが、それは「浅倉家」の側に立つ者の発言だと気づいているのだろうか?
 『う、うん。カナメ、くんがそれでいいならいいけど……大丈夫なの?』
 「あ〜、オレの方はバッチリ。全然ノープロブレムだよ。むしろミユキ姉ちゃんは?」
 遠慮がちにミユキから投げられた質問に、カナメは笑ってそう聞き返す。
 『えっと……ワタシも、たぶん大丈夫、だと思う』
 そんなワケで、今年いっぱいこのままでいられる事が決定したカナメは、その日の夕飯の席で両親に「何かイイことあったの?」と聞かれる程、終始上機嫌なままだった。

 * * * 
248『要12歳、職業・女子高生』その11:2011/02/12(土) 15:28:06 ID:vBfgUkUk
 ──プツン!

 ケータイを切ったミユキは、そのまま自室のベッドの上にコテンと倒れ込んだ。
 「はぁ〜」
 「おりょりょ。で、結局どうなったの、みゆみゆ?」
 ベッドの逆の端に座って、マンガを読んでいた奈津実が尋ねる。
 「うん、大丈夫。しばらく──年末までは、このままでいこうってコトになったから」
 「へぇ〜。そりゃまた、いきなり思いきったね。ま、わたしとしては、コッチのみゆっちの方が好きだから、大歓迎だよん」
 ニャハハと笑いつつ、背後からベタベタと抱きついてくる奈津実に、「ハイハイ」と苦笑を返すミユキ。この程度のスキンシップには、もうすっかり慣れっこだった。
 実際、ミユキ自身も、入れ替わりの継続が決まったことを、内心喜んではいたのだ。
 率直に言えば、できるだけこの女子高生ライフをもう少し続けたいとも感じていたのだから、カナメの提案はまさに「渡りに船」ではあったが、ソレを正直に口に出すのは、さすがに気恥ずかしい。
 ともあれ、コレで発表会に向けての懸念がひとつ減ったことは事実だった。

 * * * 

 そして迎えた9月19日の日曜日。
 奇しくも、この日はカナメ達の少年サッカークラブの練習試合の日でもあった。
 「相手はこの近隣の強豪チームだが、お前達だって決して負けちゃいない。いつも通り、フィールドの上で思いっきり「遊んで」来い!」
 「「「「はいっ!!」」」」
 監督の飛ばす檄に少年達は元気のよい声で答える。
 「あー、ちょっと浅倉、ちょっと待て」
 「? はい、何スか?」
 「キーパーの熊谷が当分ケガで欠席するから、キーパー経験者の八木をソッチに入れる。お前にはセンターバックに入ってもらうが……いけるな?」
 「! 当然っス!」
 アクシデントがらみとは言え、念願のスタメン入りを果たしたことで、カナメのテンションはいやがおうにも高まった。
 「──今日はミユキ姉ちゃんも発表会か。頑張ってるかな……」
 一瞬だけ遠い空に想いを馳せたカナメだが、主審の笛の音とともに、すぐにプレイに集中するのだった。

 * * * 
249『要12歳、職業・女子高生』その11:2011/02/12(土) 15:28:54 ID:vBfgUkUk
 大講堂の高い天井から投げかけられ照明の光が浩々とミユキ達5人を照らしている。
 成果発表会の当日、ついに新体操部の番が回ってきたのだ。
 4人の少女たちが講堂の中央に設けれた舞台の四方の隅に散り、5人目の少女が中央に立つ。それは、5人の団体演技をより綺麗に派手に見せるために考えられた配置だったが、問題は中央にリボンを手に待機しているのが、ほかならぬミユキ自身ということだった。
 (はうぅ〜、なんで、こんな一番目立つ場所に……)
 新体操経験の浅いミユキだからこそ、アラが目立ちやすい長距離の移動を減らし、少しでも演技の穴を減らすため、中央に置く──その理屈は頭で理解できても、羞恥心は別問題だ。
 (それに……いつもより衣裳も派手だし……)
 そう、「彼女」が今日着ているのは普段着ている練習用のピンクのものではなく、本番向け5人お揃いの真紅のレオタードだった。
 首元にチョーカーのようにリボンが巻き付き、そこから伸びた2本の細い紐が交差しつつ鎖骨のやや上くらいの位置でレオタードの布地に繋がり支えている。そのぶん、背面は大きく開いており、背中の半ばくらいまで露出していた。
 また、下半身はパニエを思わせるレースの襞が三段スカート状にヒラヒラと腰を取り巻いている。もっとも、本物のスカートと違って短く、さらに透けているためレオタードの下腹部はほとんど丸見えだ。
 動きやすく、同時に見られることを十二分に考慮した、まさに晴れ舞台のための衣裳だった。
 しかし、そんな愛らしくも女性的なコスチュームを着ていることに対する羞恥心も、今のミユキはほとんど感じていない。慣れもあるが、それ以上に本番を目前にした緊張が、それ以外の事を考える余裕を「彼女」から奪っているのだ。
 すがるような想いで、右端の隅にいる親友の奈津実に目を向けると、予想していたのかわずかに微笑みつつ軽く頷いてくれる。
 (だ〜いじょぶだよ、みゆみゆ。アレだけ練習したんだから、きっと上手くいくって!)
 視線を交わしただけで奈津実がそう言ってるような気がして、ミユキは少しだけ呼吸が楽になった。
 「早川ぁ〜! 長谷部ぇ〜! がんばれーー!!」
 客席の方からは、クラスメイトの少年・富士見の応援が聞こえてきた。おそらく午前中にグラウンドで行われた野球部のエキシビジョンに応援に行ったことへの感謝のつもりかもしれない。少し恥ずかしいが、彼の声もまたミユキの緊張をほぐしてくれた。
 (うん、イケる!)
 ミユキの瞳に気合いが籠るのとほぼ同時に、音楽がスタートした。
 ファンタジックなイメージの曲を背景に、4隅の少女達がゆっくりと動き始める。
 (まだよ、まだ……)
 ただし、ミユキのスタートはほんの少し後だ。頃合いを見計らい、膝立ちの姿勢から立ち上がり、バレエで言うファーストポジションに近い姿勢へとゆっくり身を起していく。
 ツッと一瞬途絶えた曲が、一転、激しく情熱的なメロディへと変わった瞬間。それまでのスローさが嘘のように激しく5人の少女達が動き始めた。
250『要12歳、職業・女子高生』その11:2011/02/12(土) 15:29:43 ID:vBfgUkUk
 奈津実が、ふたつのクラブを上手に振りかざしながら、舞台を軽やかに舞う。
 同じく一年の渚が体操からの転向組だ。その小柄な身体と対照的に大きなフープを、手中でダイナミックに回転させている。
 二年の草壁先輩は、手品同好会にも掛け持ちで所属している事もあってか、ロープの扱いが非常に巧みで、こんがらないのか不思議なくらい複雑な動きを動きを見せて、人目を引く。
 一方、今年のミス星河丘候補に挙げられる久能先輩は、派手な美貌とダイナマイトバディだけでなく、新体操の技量もピカイチであり、ボールをあたかも身体の一部であるかのように、優雅に、自由自在に操っていた。

 ミユキもまた奮闘していた。
 どんなに言い訳しても、ミユキの新体操歴がひと月にも満たない付け焼刃なのは事実。
 それでも、生まれ持った運動神経の良さと身体の柔軟性に裏打ちされた新体操のセンスを、熱心な先輩の指導のもとに積み重ねた練習で開花させ、見事なステップを踏む。
 (体が軽い……こんな楽しい気持ちで動けるなんて……)
 舞台度胸があると言うべきか、ミユキは先ほどまでの緊張が嘘のように、初めての「観客の前での演技」を楽しんですらいた。
 くるくると螺旋の如くリボンを回しながら、床を踏み切って宙に舞ったかと思うと、音もなく着地し、素早くリボンを宙に放り投げる。
 リボンが落ちて来るまでの間に床の上で軽やかに三回転して、小ジャンプとともにピンと身体を伸ばしつつ、リボンを受けとめ、すかさずリボンを波打たせる。
 個々の演技の技巧難度自体はさして高くないのだが、それをキチンと小指の先まで注意を払い、丁寧に演技する様は、見る者に感心と安心感をもたらした。
 同時にミユキはそれまでの練習時にはなかった仲間との「一体感」を感じていた。
 (なぜだろう……みんなの動きが手に取るようにわかる)
 5人の仲間が、それぞれの演技を続けながら、同時にそれは互いの動きを際立たせるための助けにもなっている。
 ──ひとりはみんなのために、そしてみんなはひとりのために。
 そんなある意味使い古されたとも言えるチームワークの基本を表す言葉。
 同じくチームワークが必要とされるはずのサッカークラブで、誰かの「代役」を務めている時には、一度も感じられなかったその感覚を、今ミユキは言葉ではなく心で、あるいは体で理解していた。
 (アハ……きもちいー!)
 そのせいか、抑制の効いた「彼女」にしては珍しくハイになっているようだが、それでも演技に乱れは見られない。
251『要12歳、職業・女子高生』その11:2011/02/12(土) 15:35:18 ID:vBfgUkUk
 ズドン! という爆音とともに曲が終りを告げ、それと同時に5人の少女達が舞台の中央に集まり、並んで決めポーズをとる。
 少女達の放つ「輝き」に、その瞬間だけさらに照明の光が増したように感じられた。
 一瞬の沈黙──そして直後に観客席から湧き上がる拍手と歓声。
 どうやら、新体操部の発表は大成功に終わったようだ。
 「やったね、みゆっち!」
 「うんっ、奈津実!」
 舞台を降りて、部室に戻るや否や、ハイタッチを交わすミユキと奈津実。無論、他の3人とも、口々に喜びを分かちあっている。
 「お疲れ様、みんなとてもよかったわよ」
 すでに引退した3年の元・部長と副部長が下級生たちをねぎらってくれた。
 「どう、早川さん。新体操って、素敵でしょう?」
 「はいっ、サイコーです!」
 興奮と歓喜で頬を薔薇色に染めたミユキの言葉に、「彼女」に特訓してくれていた元副部長の御門は得たりと頷く。
 「じゃあ、これからもキチンと練習に出てくれるかしら?」
 「ええ、喜んで!!」
 この時から、ミユキが本当の意味で新体操選手としての第一歩を踏み出したのだ。
 そしてそれは同時に、「彼女」が今の立場を完全に受け入れ、その存在が「早川美幸の代役を努める少年・浅倉要」から「かつて浅倉要であった少女・早川ミユキ」へと変化したことも意味していた。

-----------------------------------------
#以上。なんか健全スポコンちっくになってしまいましたが……次回はいよいよエピローグ。エロスも(ちょっとだけ)あるよ!
#>242 どちらかと言うと、むしろキチッと制限されているべき機能の一部が暴走する感じ。
本物は「名前と立場だけを一時的に入れ換える」だけなのに、レプリカは「名前や立場だけでなく身体も徐々に」入れ替えたり、「一時的ではなく永続的に」変えてしまったりするのです。
>243 少しあとになるとは思いますが、自ブログに加筆修正してアップすると思いますよ。
まぁ、先に「当主メイド」のリライトが先でしょうけど。
>244 わかる人がいたとはw ちなみに弟の方です。奥様は美也ちゃん。
252名無しさん@ピンキー:2011/02/13(日) 10:58:52 ID:Kt9nkSOL
会社内での男性社員と女性社員の立場が逆転
男子社員は制服を着てスーツ姿の女性社員の手助けをする
「なんでコピーもまともに取れないんだ!」と女性社員に怒鳴られたりセクハラを受ける男性社員
その愚痴を給湯室で言い合う
253『要12歳、職業・女子高生』エピローグ:2011/02/13(日) 11:52:09 ID:lXPNlE9p
 ──ちょっとした好奇心による、イトコ同士の立場入れ替えから、2年の歳月が流れた。

 「はぁ、まだまだアッちぃなぁ……」
 地元の公立中学に進学した浅倉要は、今年2年生になり、サッカー部のレギュラーとして先輩同輩後輩を問わず頼りにされている……のだが、今日は珍しく練習がオフと言うことで、自宅の居間でデロ〜ンとだらしなくダレていた。

 家の中でこそ、このように見る影もないが、いったんフィールドに出れば、センターバックでありながら攻撃にも参加するリベロとして、試合の流れをアグレッシブルにコントロールする彼のプレイぶりは、少なからずサッカー関係者の注目を集めている。
 整ったマスクと、それに反してざっくばらんな性格は、女性の人気も高く、公式大会ともなれば、同じ中学以外の女子が応援に駆けつけることすらあった。
 もっとも、要本人は中学入学時に同じクラスになり、またサッカー部にマネージャーとして入部した海老名咲奈との関係で手いっぱいなようだ。
 ふたりは長らく「ケンカ友達以上恋人未満」な関係を続けていたが、夏休みの合宿の際、ようやく互いの想いを伝えて、晴れて恋人同士になった。
 もっとも、つきあい始めてひと月と経っていないため、セックスどころかキスさえまだ告白時の1回だけしかしてないのだが。
 そうなると、なまじ恋人がいるだけに悶々として、自室で暇ができるとついアソコに手が伸びてしまうのも、中学生というヤりたい盛りの男の子なら無理もないトコロではあった。

 ──とは言え、純粋に生理学的に考えれば、「彼」にその傾向が当てはまるのかは少なからず疑問ではあったが。ここにいる少年・浅倉要は、実はカナメ──つまり、本来は「早川美幸」と呼ばれていた少女にほかならないのだから。
 そう、結局ふたりは、元に戻らなかったのだ。
 最初の何回か──例の敬老の日や、その次の年末年始などは、戻る予定を立てていたのだが、その度に何らかの用事やトラブルが重なり、気が付けばいつの間にか一年が過ぎていた。
 その頃になると、どちらからともなく元に戻る事に関する話題を避けるようになる。
 そしてさらに翌年(つまり今年)の正月に、「彼女」が艶やかな振袖姿で、年始の挨拶に来た浅倉家の面々を出迎えた時、カナメは「ああ、ミユキねぇも、このまま生きていくことを受け入れたんだ」とハッキリ悟った。
 無論、「彼」はすでにだいぶ前からそのつもりだった。なにせ約束の日の不都合の半分は、も彼自身が仕組んだ意図的なモノだったのだから。
 そして、ふたりが互いの立場を完全に受け入れたのち、あの不思議な絵──「鳥魚相換図」はいつの間にか美幸の自宅の机から姿を消していたのだ。まるでそんなモノは始めからなかったかのように。

 もっとも、今の「彼」を見た人間は、カナメが女であった……否、今でも細胞的には♀であるとは、およそ信じないに違いない。
 2年前の夏には150センチ代前半しかなかった身長は、この2年間で10センチ以上伸びて165センチを上回り、まだまだ成長する気配が濃厚なのだ。
 日頃のサッカーの練習で鍛えられた体には、しっかりした骨格が形成されたうえで引き締まった筋肉に覆われ、やや細身ながら周囲の男子の平均を軽く上回る筋力や持久力、敏捷性を示しており、女性の体格とはまるで別物だった。
 さらに言えば、元々かなり貧乳気味だった胸部の膨らみはほぼ完全に消え失せ、しなやかな筋肉に覆われている。手も節くれだって大きいし、靴のサイズも26センチと身長に比してやや大きめだ。髪も部の方針で短めのスポーツ刈りに揃えている。
 どこからどう見ても、「将来イケメンの素質のある、やんちゃなスポーツ少年」といった風情だった。
 そして……。
254『要12歳、職業・女子高生』エピローグ:2011/02/13(日) 11:53:06 ID:lXPNlE9p
 「お、そう言やぁ、そろそろテレビ中継が始まる頃かな?」
 思い出したようにテレビを付けると、都内の体育館で行われている高校女子の新体操の全国大会中継が、ちょうど始まったトコロのようだ。
 「かぁーーーっ、やっぱり高校生にもなると発育いいねぇ。クラスの女子なんかコレに比べりゃあ、まだまだお子様だぜ」
 何やらオジンくさい評を述べつつ、身体の線もあらわなレオタードを着て躍動する「年上」の少女達の肢体に鼻の下を伸ばすカナメ。
 2年前からその傾向はあったものの、今や完全に「健全なる男子中学生」としてのスケベ心を備えているようだ。
 「お、そろそろミユキねぇの番か」
 彼の言葉通り、テレビが次に映し出した可憐な少女の画面下のテロップには「東京都・早川美幸」の文字が流れて記されている。
 無論、言うまでもなく、「彼女」はミユキ──すなわち本来は浅倉要として生きていた少年である。
 もっとも、カナメ少年と同様、彼女の性別が♂であるなどと疑う人間は皆無に違いない。
 ミユキは、元は12歳なのだから現在14歳、つまり本来は伸び盛りのはずなのに、いまだ160センチにも届いていない。おそらく157、8センチといったところだろう。
 また、骨格も華奢なままで、そのせいか筋肉や脂肪のつき方もきわめて女らしく優美だし、舞台用の化粧をしていると思しき顔立ちも、新聞で「遅咲きの桜姫」と評されるにふさわしい美少女ぶりだ。
 そして、最大の謎はその胸部だ。
 決して巨乳という程ではないが、歳相応に女らしい膨らみ──乳房がその胸で揺れている。桃色のレオタードの襟元から、綺麗な谷間が見えているのでパッドやヌーブラというワケでもないだろう。
 股間にも、男性の徴による膨らみは一切見当たらない。例の絵図による幻覚(あるいは認識阻害)は同じ当事者であるカナメには効かないはずだから、見たままミユキが女の身体に(少なくとも一見してわからないレベルで)なっていると考えるしかなかった。
 「やべッ、勃ってきちゃったよ……」
 そんな風に、「従姉」の股間や胸、あるいは太腿、うなじ、ふくらはぎなどなどを凝視していたせいか、カナメの股間が「元気」になってしまったようだ。
 両親とも姪っ子(=ミユキ)の応援に出かけて、家人の目がないのをいいコトに、カナメはソファに腰掛けたまま、ペロンとショートパンツをトランクスごと引き下ろした。
 カナメの股間では、濃いピンク色の突起物がピンと立ち上がってその存在を主張していた。
 大きさは親指よりひと回り大きいくらいだろうか。勃起してコレならペニスとしては短小な部類に入るが、実はコレ、元は美幸であったカナメの陰核(クリトリス)だと知れば、異様なサイズに肥大化していることがわかるだろう。
 あの夏の日、そこ(本人いわく「オレのチンチン」)を刺激してイクことを覚えて以来、カナメはそれによる「男としてのオナニー」の虜になっていた。
 膣や陰唇には触らず、もちろん胸も刺激せずに、ただひたすらにソレをしごいて達することによる鋭く尖った男性的快感は、カナメの心身に、奇妙に倒錯した充足感をもたらしていた。
 思えば、その頃からかもしれない。カナメの身体が、男性的に変化し始めたのは。
 (男性ホルモンがドバーッと出るようになったのかねぇ)
 ま、理屈はどうでもいいけど……と頭の片隅で思いつつ、「従姉」も含めた先ほどテレビで見た新体操選手達の裸を脳裏に思い描きつつ、慣れた手つきで「チンチン」を刺激するカナメ。
255『要12歳、職業・女子高生』エピローグ:2011/02/13(日) 11:54:23 ID:lXPNlE9p
 とくに元の自分の立場になり変わっているミユキのコトを考えると、異様なくらい興奮するのだ。
 (い、今なら、オレがミユキねぇに挿入して犯しちゃうコトもできるんだ……元は男の子だった美少女を、元女のオレが……!)
 そう考えただけで、背筋がゾクゾクしてたまらない。アソコをしごくカナメの興奮は急速に高まり、ついに絶頂に達した。

 ──ドピュッ!!
 すっかりなじんだ、股間から透明な液体が勢いよく噴き出す感覚。
 しかし、どういうワケか今日はいつもと少し違ったように感じた。単なる潮吹きではなく、まるで水鉄砲から水を発射するかのような……。
 けだるい余韻に浸りながら、自らの股間に視線を落としたカナメは、そこにある異常を認めて「あっ!」と声をあげた。
 「はは、そう……そうなんだ」
 (もしかして、ミユキねぇにも、同じコトが?)
 そんな風に想像すると、またカナメの「チンチン」が元気になってきた。
 コレで自分も近い将来、躊躇いなく恋人相手に「童貞」を捨てることができそうだ……なんて考えていたカナメだったが。

 ──ピンポーン!
 「やっほー! 愛しのサクナちゃんが遊びに来てあげたわよ〜!」
 玄関チャイムの音ともに、インターホンから、その恋人の声が聞こえてきたので思わずソファからズリ落ちる。
 「わぁ! さ、咲奈か!?」
 「??? 何慌ててんの?」
 「な、何でもないなんでもない! ちょっと待て。今部屋片付けてから行くから」
 さすがにオナニーしていた直後の姿を、恋人とはいえまだ深い仲になってない女の子に晒すのは気まずい。
 アタフタと周囲に散らばるティッシュその他を片付け始めるカナメだった。

 * * * 
256『要12歳、職業・女子高生』エピローグ:2011/02/13(日) 11:55:03 ID:lXPNlE9p
 「……」
 演技が終わり、半ばトレードマークになっている薄いピンク色のレオタード(だから「桜姫」なのだ)の上に、学校指定のジャージを羽織ったミユキが、ブルッとその身を震わせる。
 「ん? どしたの、みゆみゆ?」
 「──なんか、誰かがイヤラしい目で私を見てたような気がする」
 「あはは、まぁ、いつものコトじゃん。新体操なんてしてる限り、仕方ないよ〜」
 と、男の欲望に存外寛大な奈津実に比べて、元男だったにも関わらずミユキの方は渋い表情だ。
 まぁ、男とは言っても精通もまだな(ひょっとしたら自慰もロクにしてなかったかもしれない)状態で、そのまま女子高生をやるハメになったので、「男性の欲望」というモノにリアリティを感じないのかもしれないが。
 「そうは言ってもねぇ。男はすべからくスケベなモンだよ? それは、みゆっちの彼氏の富士見くんだって、一皮むけばケダモノ……」
 「ち、違うもん! 輝くんはケダモノじゃなくて紳士だもん!!」
 むきになって否定するミユキを、「はいはい、御馳走様」と適当にあやす奈津実。
 (それにしても、元は小学生の男の子が、こ〜んなに女らしく清楚可憐な美少女に成長するとは……)
 当事者以外で唯一ふたりの事情を知る奈津実は、「人生ってわからないモンだよねぇ」と嘆息する。
 幸いつい先日、3年間同じクラスになった友人の少年がついにミユキに告白し、「彼女」も真っ赤になりながらソレを受け入れたので、今後この、スペックは高いがどこかあぶなっかしい親友の面倒をみる仕事は、彼に任せればよいだろう。
 どちらも気があるのはバレバレで、傍から見ていてもどかしかったので、肩の荷が下りた気分だ。
 問題は、ミユキの身体についてなのだが……。
 (まぁ、色々意味でみゆっちも「女」として成長はしてるみたいだし、大丈夫でしょ)
 ニマニマ笑いながら、親友の近頃発達の著しい部位を凝視していると、奈津実の視線に気づいたのか、ミユキが微かに頬を染めながら胸を両腕で隠す。
 「な、奈津実ぃ〜、視線がエッチだよぅ」
 「にゃはは、減るものではなし、よいではないかよいではないか〜」
 少女達のじゃれあう声が、控え室に響く。
 で、恋人を迎えに来たくだんの富士見少年は、控室のドア越しにその会話を偶然耳にしてしまい、鼻血が出そうになるのを慌てて堪えるハメになるのだった。

−おしまい−
────────────────
#以上で、「要12歳」&「美幸16歳」は終了です。
全体にミユキは爽やか&ほのぼの、カナメがちょいエロという路線は、おおよそ成就できたか、と思います。
支援してくださった皆様、誠にありがとうございます。
#ちなみに、次の予定は、書き出しだけ投下した「替玉お断り」ですが、他スレで放置してるネタもあるので、ちょっと間があくかもしれません。
257名無しさん@ピンキー:2011/02/14(月) 07:06:41 ID:N2759HeE
完結おめでとうございます。お疲れ様でした。
でもでも、外伝でもいいからもう少し、この二人が見てみたいですね。

「鳥魚相換図」って、立場を長期間交換していたら、肉体的特徴というか、性別も変化しちゃうんですね。
その辺の設定がどうなっているのか、ちょっと知りたいです。
あと、作者のブログってどこでしょう? 教えていただけると嬉しいです。
258名無しさん@ピンキー:2011/02/14(月) 11:17:31 ID:F7SZQOJh
え〜、そんな〜
今までの流れだとミユキは奈津実と恋人になる流れでしょ。
259要&美幸作者:2011/02/14(月) 13:22:02 ID:zYQpQXQK
>257
外伝……ではありませんが、他のSSでその後の姿を見られる可能性はあります。
とくにミユキの方は、拙作で舞台になることが多々ある「星河丘学園」に通ってますので、何かのSSの脇キャラとして登場する可能性大。
ブログの方は、その「星河丘学園」でググってもらえば、すぐにわかるかと。鳥魚相換図の設定もあります。

>258
え、そ、そうですか? 確かに「一番の理解者」ではありますが、少なくとも作者としても、恋仲になるような描写をしたつもりはなかったのですが……。
前半部に出た「や○い本」も、ミユキが「男性を性的対象と見るようになる」ことの暗示のつもりだったのですが……。
やっぱ、意図したことを伝えるのって難しいですね。
260名無しさん@ピンキー:2011/02/17(木) 15:33:51 ID:8hQoUC/I
楽しませていただきました。
特に後半のカナメがちょいエロ少年に染まる展開が好きでした。
かつての自分になったミユキをおかずにして
そして最後は互いの立場に合った肉体に生まれ変わるなんてたまりませんでした。
これからも気長に作品をお待ちしております。
261名無しさん@ピンキー:2011/02/21(月) 16:42:30.45 ID:P8fjFvkt
新作SSはおろか、小ネタ、妄想すら書き込みないね。
このジャンルはオワタのか……。
(自分も書けてないのでエラそうなコトは言えないけど)

なのでネタフリ。
某隣接ジャンルのスレで最近魔法少女ネタが一時活性化してたけど、
それからヒントを得た
「悪の組織の女幹部と、戦隊ヒーロー(♂)の立場入れ替え」
とかどうだろ?
悪の組織の幹部のマッド科学者が開発した「因果律改変装置」とか
何とかの実戦テストで装置が暴走&爆発。
「悪の女幹部がヒーローを完膚無きまでに叩きのめす」
結果を作り出す予定だったのに、気が付いたら女幹部はボンデージ風の
戦闘服でなく、Tシャツ&ジーンズ姿で、見知らぬ部屋で目が覚める。
周囲にいるのは、普段着姿のにっくき正義戦隊のメンバー。いろいろ
話を聞いてみたところ、自分はどうやら戦隊で一番年下の青年、
グリーンの立場になってるらしい。
「これはある意味好都合。この隙にコイツらの組織の秘密とか探ってやる」
と決意し、何喰わぬ顔でグリーンのフリをする女幹部。

一方、当然のことながら、グリーンの方は女王様チックな女幹部の格好で、
悪の組織のアジトで目覚める(例の装置が爆発したとき、気を失い、
手下の手で運んで来られた)。
事態が把握できず、あわあわするグリーン(戦隊の新人で、まだまだ未熟)。
とは言え、さすがにココが悪の組織の本拠地である以上、下手に
「自分は本当はグリーンです」と言わない方がいいのはわかる。
とっさに頭を打って記憶がトんだフリをする。

こうして、不本意ながら立場が入れ替わってしまった元女幹部(25歳♀)と
元グリーン(19歳♂)のドタバタ&エロスな日々が始まるのであった! ……とか。
262名無しさん@ピンキー:2011/02/21(月) 23:13:58.02 ID:Lux66eAw
>>256
完結おめでとうございます!
楽しませていただきました
もしかしてミユキもヤオイに目覚めるのかなぁ・・・と思ってましたが、そんなことなく

>>261
その設定で、ぜひとも1本

最近はちょいと忙しくて全然書けないんだよなぁ(´・ω・`)
263名無しさん@ピンキー:2011/02/22(火) 01:14:07.69 ID:g5cZccjA
>>261
読みたいです。
264要とか当主の人:2011/02/22(火) 01:52:37.18 ID:IH3SJpLW
#261の設定で、前スレにあった男子中学生とOLの入れ替わりをパロってみました。
 元作品を書いた方、気を悪くしたらゴメンなさい。

 指定されたホテルのカフェはすでに満席だったが、ウェイトレスに名前を告げるとすんなり席へと案内された。
 テーブルには、頼りがいのありそうな好青年が珈琲をすすっており、 私の姿に気づくと、ニコリと微笑んだ。
 「ああ……『倉木眞子』さん、ですね」
 問われた名前は、私が「地上」で活動する時に使う偽名だった。おそらく周囲をはばかって気を使ってくれたのだろう。
 「ええ。お久しぶり……で、いいのかしら?」
 目の前の男性──『緑川進』はちょっとだけ困ったような顔をする。
 「うーん……ま、何だかんだ言って、こんな風に落ち着いて話するのはアノ時以来ですしね。顔を合わせる時は、ほら、お互いバタバタしてましたから」
 彼の言う「バタバタ」の内容を思い浮かべて、私はクスリと笑みを漏らした。
 ──普通、敵対して命のやりとりをしたりコトを、呉越同舟で共闘したりするコトを、そんな風に表現する人も珍しいんじゃないかしら?
 「フフッ、確かにそうね」
 私は椅子に座りながら、彼を軽く観察してみた。
 短めに刈り上げた髪と、意志の強そうな太い眉毛。そして浅黒く日に焼けた肌。
 洗いざらしのポロシャツにチノパン、麻のジャケットという組み合わせはラフだが、健康的で爽やかな彼の印象にはよく似合っていた。
 カップを持つ手がゴツゴツと節くれだっている点も、いかにもアウトドア派な彼の印象とマッチしている。
 それに比べて……と、私は窓ガラスに映る自分の姿をチラと眺めた。
 軽くウェーブがかった栗色のロングヘアと、おとなしめのデザインのOL向けスーツ。
 昼間であることを考慮してに、できるだけナチュラルなメイクに押さえたつもりだけど、それでもどこか女らしい色気が滲み出ている……と感じるのは、自意識過剰だろうか?
 それは、珍しく赤系のルージュを引いているからかもしれないし、タイトスカートから伸びる濃いベージュ色のストッキングに包まれたムッチリした脚のせいかもしれない。
 テーブルの上に揃えられた手も、細く華奢でよく手入れされており、爪も綺麗に整えられたうえ、鮮やかなオレンジのマニキュアで彩られている。
 そして──左手の薬指には、キラリと光る宝石があしらわれた銀色の指輪。
 「あれ、もしかして、それ……」
 「ええ、先日、「あの人」にプロポーズされて、ね」
 口元が幸福そうにほころんでいるのが、自分でもわかる。
 「うわぁ、そうなんですね。おめでとうございます!」
 何か言われるかと思ったが、『緑川進』は目を輝かせて素直に祝福してくれた。
 「フフ……ありがと」
 はた、と会話が途切れる。
 その間を埋めるべく、紅茶の入ったカップを手にとりながら、私はふと2年前に思いを馳せた。
 まさか、あの頃は自分がお嫁に行くことになるだなんて、思ってもみなかった。
 だって、当時の私……ううん、僕は、れっきとした男性で、地底人の侵略から地球を守る正義の戦隊「トランセイヴァー」の一員だったのだから。

#こんな感じ? いや、勝手に結末つーかエピローグにしちゃってますが。
#自分も次回作(替玉話)頑張るので、ぜひ、SSを!
265261:2011/02/22(火) 11:21:35.68 ID:qoAa9nSV
>>262
>>263
いや、あくまで話題提供というか、ネタフリのつもりだったんスがw
書けるものなら書きたいのはやまやま。
つーか、もっと色々みんなの妄想を読みたいっ!!

>>264
というわけなので、「わたしは一向にかまわんッッ!」
ネタ提供者としては、ぜひ続きを! 
あ、でも前スレ作品のパロなら、そっちの許可もいるのか。
266名無しさん@ピンキー:2011/02/22(火) 21:35:15.87 ID:78xoOHEb
FT-type2に新作きてた
267名無しさん@ピンキー:2011/02/24(木) 09:42:29 ID:wZU3tVcX
>>266
新作うれしいんだけど、もうちょっと女子高生になった方の描写があればなぁ、
と痛切に思う。
このスレなら、そちらがメインになったかも。
(たとえば、春からそれなりの中堅企業に就職が決まって浮かれていた
 卒業間近の大学4回生男子が語り部で、ある日クラスでシカトされてる
 冴えない女子高生の立場にされたりとか、かねぇ)
268名無しさん@ピンキー:2011/02/24(木) 10:35:11 ID:40YUHsgg
そうそう。俺も同じ感想だったw

まあ色んな嗜好の方がいるし、気にせずのびのびと書いてるのはいいことだと思うけどね。
だから次に期待、というか掲示板の話の続きが欲しい(;´Д`)
269名無しさん@ピンキー:2011/02/25(金) 17:23:58 ID:6vRFIKkT
新作期待(`・ω・´)
270名無しさん@ピンキー:2011/02/25(金) 20:20:27 ID:iWmMo+Un
このスレに出てくるような話ってよそで見ることがほとんどないからなー
それだけ時代を先取りしてるんだろうか
271名無しさん@ピンキー:2011/02/25(金) 23:03:09 ID:UYZIJSGG
男子高校生とその母親の立場が逆転とかどうかな?
272名無しさん@ピンキー:2011/02/26(土) 00:56:16 ID:R6MPIw+A
清楚で貞淑な新妻とエロガキな厨二弟の立場だけの交換とかどうよ?

本人たちは元の意識があって、交換前の格好、立場を続けたがるんだけど、
周りの目からみれば、結婚した途端痛い男装コスをして同性に変な目を向ける女と、
突如ニューハーフに目覚めたうえ兄に色目を使う弟というようにしか見られないという。
273名無しさん@ピンキー:2011/02/26(土) 16:51:30.30 ID:K/AVR7dv
それって立場交換の意味がないような
単なる入れ替わりでも同じことできるし

個人的には
『自意識は普段と変わらないのに、別人として生活せざるを得ない状況』
ってのが立場交換のミソだと思うのです
274名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 17:12:37.28 ID:0ws2CMti
自分なんかは、同性異性不問で、ソックリさんによる入れ替わりネタ
「僕(私)たち、入れ替わってるのに、誰も気づいてないッ!」
……というドキドキ感が非常に好物だったり。
上記のパターンの場合、わりかし両者入替同意型のケースが多いんだけど、
事故とか不本意な原因で入替が成立した場合でも、当人が開き直ってその
状況を楽しみ、積極的に馴染み始めるってパターンが好きだなぁ。
あ、無論、「あくまで不本意であり、現状の立場に不満を抱き、機会が
あれば元に戻ろうとする」ってパターンも、決して嫌いじゃないけどね。
(でも、大体の場合、戻れないし、気をつけてても馴染んじゃうよね?)
そのまた裏をかいて、「不本意型で、無事に戻れたんだけど、元の生活に
戻ってもなぜかしっくり来ない。実はすでに半分くらい染まってて……」
という結末も味があるなぁ。
275名無しさん@ピンキー:2011/03/01(火) 18:07:33.95 ID:i88QC/Rq
女の生活に戻ったら、自分の裸や周りの女の子の裸に興奮するようになったとか
276274:2011/03/01(火) 19:47:14.51 ID:0ws2CMti
なので、「まりあホリック」とか「サムライハイスクール」みたいな漫画や、
ゲームなら「ワイルドアームズXF」とか「花乙女祝福」とかもグッとくるものが。
主人公(男)がそっくりなお坊ちゃんと入れ替わる(正確には代役する)
ゲームは先日出たけど、ヒロインがそっくりな別のヒロインと入れ替わる
ゲームとかってないのかね?

>>275
それもまた醍醐味だよねぇ。あるいは男なのになぜか着替え時に男性の視線に
恥じらうとか、周囲も変な気分になるとか。
277名無しさん@ピンキー:2011/03/03(木) 20:48:40.75 ID:j4pX5unK
全世界で男と女の立場が逆転する
逆転に気付いてるのは主人公一家だけというのを思いついた
278名無しさん@ピンキー:2011/03/08(火) 08:46:19.16 ID:BgPLXJm2
朝起きたら女の子と立場が変わったりしてないかなあ
279名無しさん@ピンキー:2011/03/08(火) 14:29:47.63 ID:9+huPyag
日本中のありとあらゆる人の立場がランダムに入れ替わり、
1年くらいたってみんな現状に慣れたころに急に元に戻る
280名無しさん@ピンキー:2011/03/08(火) 16:08:33.37 ID:FXvfJgFn
>>279
男子トイレ行ったらスーツ姿の幼女、学ラン姿のオバサン、半袖半ズボンで黒いランドセル背負った巨乳のおねえさんが並んで立ちションしてる光景とか見てみたい
281名無しさん@ピンキー:2011/03/09(水) 07:19:14.53 ID:ahgyJVBf
>>280
そういうの大好き
282名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 12:27:35.19 ID:cR72NWzh
好きな板なので枯れ木の賑わいにでもなればと、
もの凄い久々に作品を書いてみました。
立場だけの交換とは微妙に違うかもしれないのですけれど読んで貰えると嬉しいです。
他にも交換されているものがあるので立場だけって言うところに引っ掛かります。
その辺を多めに見て頂ければ幸いです。
283ありふれた日常:2011/03/10(木) 12:31:22.37 ID:cR72NWzh


ありふれた日常、いつも同じではないが特別過ぎる事など何もなく、
慌しくもなければ穏やかでもない。
小さな会社の小さなオフィスには伝票を整理する女性とパソコンで書類を作成する男性の姿がある。
取り立てて珍しい事は無い。
「よし、終わりっと」
男の方が一言呟く。
名前は大幡 和貴(おおはた かずき)入社3年目の20代。
基本に忠実が信条な草食系男子で、紺のスーツ姿が正に青年サラリーマンそのままだ。
「あら、出来たの?」
声に反応し女も声を掛ける。
女の名前は柚原 美輝(そではら みき)経理と一般職を兼ねている。
和貴とは同い年ではあるのだが、入社は2年ほど早い。
淡いラベンダー色のリボンブラウスにネイビーチェックのベストと同色のタイトスカートの姿はキャリアウーマンと言う訳でもなく、ただ女性職員と言った感じである。
毛先にゆるいパーマの掛かった今風のロングな髪型が尚更そう見せるのかもしれない。
「研修の復命書だけだからね」
今日は土曜日でこの二人以外の職員は出社していない。
和貴にしても先日まで参加していた研修の復命書を作るために出てきただけだった。
美輝に関しては、昨日早退し出来なかった仕事を片付けるためだ。
どちらも個人の都合によるもので、サービス労働なので出社も退社も自由だ。
帰りは戸締りをした後ビルの警備に鍵を渡せばいい。
ビルには同じようなオフィスがいくつもあり、一括して管理されている。
「じゃあ、もう帰るの? こっちはまだ全然終らないのよね」
美輝はため息をつく。
「袖原さんどうしたの?なんかはかどってない見たいだけど」
和貴が言うとおり確かに仕事の進み具合は芳しくない様子が見て取れる。
集中が出来ていないのだ。
「そうなの、昨日早退したでしょ。でもまだ調子良くなくて」
言う美輝の表情は暗い。
「そうなんだ。手伝おうか?」
「ん〜。ありがたいけど、伝票整理だけだから分担するより一人でした方が良いのよね」
心配する和貴にだるそうに美輝が答える。
「でも、その様子だとちょっとほっとけないかな。本当に具合悪そうだし。薬とか飲んだ?なんだったら病院に行った方が良くないかい?いま当番病院調べるから」
「いや、病院は必要ないわよ。私が調子悪いのって、あの日だからなの」
あまりに和貴が心配しだした為、美輝は体調不良の原因が生理である事をお決まりの隠語で伝えた。
「あの日って、俗に言うあの日の事?」
「そう、女の子の日」
その答えに和貴は納得するとともに、どうして良いのか行動に困る。
「ふぅ〜、やっぱり薬飲むかな。眠くなるからとも思ったけどこのままじゃ集中できないし、ちょっと行って来るね」
言って美輝は席を立ちオフィスを出て行く。
「ああ、無理しないでね」
和貴は取りあえず見送るしかなかった。


284ありふれた日常:2011/03/10(木) 12:34:43.45 ID:cR72NWzh


更衣室の中自分のロッカーよりバッグを取り出す美輝。
相変わらず具合は悪そうだ。
中より薬を取り出そうとした手がふと止まる。
「あれ、そう言えばこのアクセってこの前の」
バッグの中にはごくシンプルなシルバーのネックレスが2本あり、本当にそれはどこにでもありそうな変哲のないものだ。
「たしか、『うつし換わりの首飾り』だっけ」
それは4日ほど前の事、露店で購入したものだった。
その露店はパワーストーンやタロット、アミュレットなど売っている俗に言うおまじないグッヅを扱った物で、
なんとなく気が惹かれた美輝はつい覗き込んだのだ。
そこではそう言ったグッヅの他にも、アクセサリーも置いてあり値段も1000円均一とお手頃で、
衝動的に欲しくなってしまい購入したものである。
その時の売り子が、このネックレスはうつし換わりの首飾りと言うもので、
病気で身動きのできない者が元気な者と立場入れ替えて一時的に病気を肩代わりしてもらうと言う目的で創られた物のレプリカで、
しかも中古品との説明をしていた。
売り子は使い方やその効果など事細かに説明してくれたが、美輝としては2本でお得としか思わなかっただけで、
そんな胡散臭い説明は真剣には聞いていなかたのでうろ覚えなのだが。
その記憶を頼りに美輝は使い方を思いだそうとした。
「確かお互いに首飾りを身につけ、呪文を唱えた後に契約の言葉を交わすだったかな?
これって生理も効くのかな」
普段ならそんな事をしようとなど思わないはずだったが、
そのネックレスを見ていると何故か試してみようと言う気持ちになり美輝はそのままオフィスへ戻るのだった。


285ありふれた日常:2011/03/10(木) 12:36:21.32 ID:cR72NWzh


美輝がオフィスに戻ると、和貴は直ぐに声を掛けた。
「袖原さん、具合どう?」
「いや、あまり。ところで大幡君、少しおまじないに付き合ってくれない?」
美輝は早速とばかりに話を切り出す。
「おまじない?」
唐突な事に面を食らう和貴。
「そう、おまじない。ちょっと私の生理を肩代わりしてもらうおまじない」
その言葉にさらに面を食らう和貴。
「なんだよそれ?そんな事本当にできるの?」
「さあ?でもその為の道具があるのよ。ものは試しで付き合ってもらえない?
生理が無くなれば伝票整理なんてあっという間に終われるから。ね、お願い」
「まあ、良いけど」
美輝の言葉に押しに弱い和貴はあっさり承諾する。
「じゃあ、早速このネックレス着けてくれる?」
言うが早いが美輝は和貴の首にうつし換わりの首飾りをつけ自分にも着ける。
そして、うろ覚えな呪文を唱える。
どこの言葉とも知れずもちろん意味など知る由もないものだ。
「ウィルドイングダエグ…… ニイド」
呪文を唱え終ると首飾りが淡い緑色の光に輝きだす。
「うぉ、すご本当になんかなるんじゃないか!?」
その現象に驚きを隠せない和貴。
「じゃ、次は私が台詞を言ったら、大幡君はこう答えて『我は汝を受け入れ、我を貸し与えん』って、OK?」
「ああ、OK」
「じゃあ行くよ。『我は願い訴える。我の枷となりし患いを汝に移し我とする、我汝を借り受けん』」
「『我は汝を受け入れ、我を貸し与えん』」
契約の言葉を和貴が言い終えた途端、首飾りの光が強くなり、それは膨張しあたりを緑色の光で包みこんだ。





286ありふれた日常:2011/03/10(木) 12:41:16.11 ID:cR72NWzh


光が収まり、目が慣れて来るとそこは先程と変わらないオフィスだった。
ただ和貴は身体に物凄い不調を感じていた。
腹部が痛み腰部が物凄くだるいのだ。
加えて股間部に違和感がある。
「どうしたんだ?本当に生理を肩代わりしたのか俺」
自分の身体を見下ろしてみる和貴。
目に飛び込んだのは、さっきまで美輝が着ていたネイビーチックのベストと同色のタイトスカート、
そこから延びるストッキングをはいた足だった。
「んな!?」
一瞬慌てて、身体が入れ替わったのかとも思ったのだが、その考えは違ったようだ。
なぜならば、目の前に和貴のスーツを着た美輝が立っていたからだ。
「うわぁ〜、なになに大幡君のその格好?って私もか」
その反応に和貴は思わず聞き返す。
「ねえ、これってどう言う事?これがおまじないの効果?」
「うーんそうかも。そう言えば身体がすごく楽だわ」
「こっちはすごく悪いよ。お腹と腰が特に。これって生理の感覚な訳?」
「たぶんって言うか、きっとそうだよ。おまじない成功したみたい」
「そうなんだ。生理の感覚を体験するなんて。あう」
「うん、ありがとね。これで仕事がはかどるわ」
お礼を言われたものの、和貴はどうも釈然としない。
おまじないで生理を肩代わりしたのは成り行きとして仕方がない。
しかしなぜ、服装が入れ替わっているのか?
不調を感じる身体で和貴はその疑問を美輝に尋ねてみる。
「袖原さん、なんで服が入れ替わってるんだ?」
その質問に美輝は、露店での説明を思い出しながら和貴に答える。
「なんか、この『うつし換わりの首飾り』って病気を肩代わりしてもらうだけじゃなくて、立場そのものを交換する物らしいよ。
詳しくは分んないけど、私と大幡君の立場がそのまんま入れ替わる見たいなの。
つまり今の私が大幡君で大幡君が袖原美輝になったってことかな?
周りの人から見たら私は大幡君にしか見えないし、大幡君は私にしか見えないって訳みたい」
その答えにますます虚脱する和貴。
「おまじないが発動しただけでもアレなのに、そこまでの効力なんて。
まったく、どうせなら身体が入れ替わってしまう方が面倒くさくない気がするよ」
「こう言うのは得てして融通の利かないものなのよ。たぶん。
あ、それと怪我とかでの時は移した方に傷は無くても痛みはあるし、そこから出血もある見たいよ」
「それってつまり」
「そう、大幡君には膣は無いけど、そこの部分からは出るものは出るって事。」
うろ覚えの割にいったん思い出すと、次々に説明が出て来る。
「そうだ、大幡君そろそろナプキン取り替えた方がいいかも。経血で汚れているはずだし」
「えー良い別に」
「取り替えた方がいいよ。漏れても困るし、汚したままずっと着けていたら臭くなるわよ。一緒について行ってあげるから」
そう言い美輝は小さなポーチを取り出すと、和貴をトイレへ連れ出した。



287ありふれた日常:2011/03/10(木) 12:42:53.75 ID:cR72NWzh


「ちょっとまって、ここって女性用」
連れてこられた和貴は、トイレの前で慌てる。
「良いのよ、大幡君は私なんだから。それに今日は誰も来ないわよ。ナプキン替えるのもこっちの方が良いだろうし」
そう言いながら美輝は和貴を中に連れポーチを渡すと個室へ連れて行きドアを閉め、自分はドアの外に控える。
「ええと、どうすればいいのかな?」
「まずは、下を脱いでトイレに座って、あ、脱ぐときスットキング破かないようにね」
「スカートってどう脱げばいいの?」
「右横にホックとファスナーあるでしょ?それを外して、ズボンと同じようにして大丈夫よ」
「了解」
和貴は言われた通りホックをはずしてスカートを下す。
ストッキングも言われた通り破けないよう慎重に下した。
「あ、ショーツ脱ぐときは血が他のものに付かないように気をつけてね。血ってなかなか落ちないから」
言われて和貴は色気のないサニタリーショーツを慎重に下す。
とたんむわっとした臭いと、経血で汚れたナプキンが現れる。
その事に動揺しつつも、取りあえず和貴は便座に座った。
「座ったよ」
「そしたら、ポーチから新しいナプキン取り出して、広げてから外紙はがして古いのと交換するの。
古いのは丸めて外紙にくるんでそこのごみ箱に捨ててね」
和貴は言われた通りの手順でナプキンを付け替えて行く。
男子トイレにはない個室のごみ箱はこう言う時に使うものかと少し関心もしていた。
「できた?出来たら今度はウォシュレットのビデで洗ってね。最後に拭いたらOKだから」
ビデのボタンを押すとノズルから温水が出て前の方を洗浄する。
その時だった、今まで感じていた腹部の痛みが急に酷くなったのだ。
「はう、な、なんか腹痛が酷くなってきたんだけど」
加えて股間部にも激しい痛みが襲う。
「ちょっと、大幡君大丈夫?」
「大丈夫じゃないかも」
あまりの痛さに、脂汗がにじむ和貴。
手探りでビデを止める。
「もしかして、いま出て来る最中?あ〜酷いんだよねソレ。代わってもらってごめんね」
痛みと不快感に和貴は声が出ない。
そのうち、陰嚢の下あたりからどろりとした赤黒いかたまりが出て来る。
それを見た和貴はさらに気分が悪くなる。
「ちょっとダメっぽい。しばらくここに座ってるから、袖原さんは仕事片付けてきてよ。後で行くから」
それだけを何とか伝えると、和貴は座ったまま壁にぐったりと寄りかかる。
「そう?ほんとゴメンね。すぐ終わらせるから」
美輝はそんな様子を悪いと思いつつも、仕事を終わらせて早く元に戻ってあげなくてはとオフィスに戻ったのだった。


288ありふれた日常:2011/03/10(木) 12:45:12.01 ID:cR72NWzh


美輝がオフィスに戻ってからしばらくしてから和貴が戻ってきた、その表情はだいぶやつれている。
美輝は和貴を直ぐに椅子に座らせると、薬とミネラルウォーターを差し出す。
「これ飲んだらいいよ。効くから、眠くなるけどね」
「ありがとう、生理ってこんなに辛いんだね」
和貴は差し出された薬をミネラルウォーターで服用し、一息つく。
「いえ、こんなに酷いのはあまり無いんだけど今回は特別だったみたい」
「そうなんだ」
「すぐ終わらせるから、楽にして待っていて。と言っても横になれるようなところなんてないしね。ゴメンね」
美輝は心底すまなそうにしている。
「いいよ。取りあえず座っていれば大丈夫だと思う」
和貴は席に着くとそのまま机にうつ伏してしまう。
ファンデーションがブラウスの袖に付いてしまうが、
入れ替わりで化粧まで美輝のしていたものがそのまま自分の顔に移っていたなど気が付かない和貴が気にする事は無かった。
やがて、薬が効いてきたのか少し身体が楽になって来ると、そのまま眠ってしまったのだ。


289ありふれた日常:2011/03/10(木) 12:47:26.51 ID:cR72NWzh


「大幡君、終わったよ。大幡君?」
美輝が眠っていた和貴を揺り起こす。
「あ、うん。寝てた?」
揺すられ和貴も目を覚ます。
「ありがとう。おかげで順調に仕事が出来たわ」
「お役に立てて何より、でももう生理は勘弁してほしいかな」
「でも、大幡君のその格好案外似合ってるかも」
そう言い美輝は改めて和貴の姿を確認する。
タイトスカートにベスト、リボンブラウスにストッキングにパンプスのその姿は化粧もしている事もあり、
ちゃんとした女性職員に見える。
ブラジャーもしているせいか胸もあるように見えるし、ウエストをしぼったベストが腰を細く見せるので尚更だ。
「さ、元に戻ろっか。このネックレスを外せば戻れるはずよ」
言って美輝はうつし換わりの首飾りを外そうとする。が、何故か外れない。
いくらやっても留め具が外れないのだ。
「あれ?おかしいな。大幡君ちょっと外してもらって良い?」
今度は和貴が美輝の首飾りを外そうとするが、これもうまくいかない。
やはり留め具が外れないのだ。
「駄目だ、外れない。どうしよう?」
「困ったわね。外さないと元に戻れないわよ。でもこのままと言う訳にもいかないし。
うーん、もったいないけど切っちゃおう」
「えーっ、良いの切っちゃって?」
「良いの良いの。このままだと困るだけだし。確かペンチがあったはず」
どこからかペンチを取り出した美輝は和貴にそれを渡し、首飾りを切るよう促す。
「じゃ、行くよ」
受け取った和貴は首飾りのチェーンをペンチで挟み力を込める。
「あれ?硬いな、えいっ!」
思いっきり力を込めた途端、ゴキッと言う音とともに欠けたのはペンチの方だった。
「うわ、ペンチの方が壊れちゃったよ」
「どんだけ硬いの、この首飾り」
さすがにこうなってはどうこう出来ない。
この事態に二人はしばらく思案巡らせるが、外せない物は仕方がない。
「仕方がないわ。取りあえず場所を移しましょ。大幡君いまは薬が効いていて良いかもしれないけど、
また生理痛が来たら困ると思うの。だから休める所に移動してからまた考えるのでどう?」
「良いけど、それってどこ?」
「私の住んでいるマンション、わりと近いのよ。電車使って20分ぐらいだから」
「いいの?お邪魔して」
「良いも何も、大幡君と私は立場が交換されているんだから、今はあなたの住んでいる所になるのよ」
「ああ、なるほどそう言う理屈になる訳だ」
「さ、分かったら更衣室行って着替えて来てくれる?」
「え?着替えるって」
「それは仕事着だから、通勤服に着替えるに決まってるじゃない。そして着替えるのは大幡君、分かった?」
美輝はそう言うと和貴を連れ更衣室に向うのだった。



290ありふれた日常:2011/03/10(木) 12:54:53.48 ID:cR72NWzh


更衣室はビル内のテナントで共用である。
その為立場を交換し和貴になっている美輝が中に入るといろいろ問題があるので美輝は外で待っている。
「これに着替える訳か」
美輝のロッカーを開け、中にある服を見て和貴はげんなりとした気持ちになる。
ロッカーの中に美輝の通勤着がつるされているのだが、
和貴のイメージとは裏腹にそれはフェミニンなものであったのだ。
今の服は入れ替わるときに自動的に着ていたものだが、今度は自分で着替えないといけない。
その事が和貴には恥ずかしく、躊躇いが出てしまっている。
「でも、待たせてるのも悪いしな」
まず着ているものを脱がなくてはいけない。
ベストとスカートを脱ぎブラウスも脱ぐ、
そうすると下着女装をしている姿になる訳で意識すると余計恥ずかしくなる。
特にブラジャーをしているというのが変な感じだ。
トイレでも下着は見ていたが、あの時は痛みでそれどころではなかったから改めて見ると変な倒錯感が芽生えそうだ。
幸い姿見がある訳ではないので、下着女装をしている自分の姿を見て嫌悪感に陥る事は無かったと言うのは良かったのか。
脱いだ衣服はハンガーにかけしまっていく、
ブラウスは袖の所が汚れていたのでどうするか迷ったが持ち帰って後でどうするか美輝に聞く事にした。
そして改めて今着る服を確認する。
まず、トップスはブラウンで小花柄の胸元にリボンブローチがあしわられたベロア地のもので
腕やローウエストにギャザーが入っている。
ブラウンの色合いが落ち着いて見えるが、小花柄が可愛らしさを醸し出すものだ。
ボトムはブラックのショートパンツでふわりと広がった裾にレースのフリルが付いており、他にも白いレースで飾られている。
他にはレギンスがあり、こちらは裾が花柄のレース仕様になっている他はシンプルな黒だ。
後はアウターのコートとブーツ、フットカバーがある。
中に着るものは良いとして、問題はコートだ。
それは白いAラインの女性らしいデザインで、
ネックラインのファーと袖口のリボンが可愛らしく裾を飾るスカラップ刺繍もそれに相まっている。
極めつけはラインを強調させる大きなリボンのベルトである。
しかも裏地にはローズ柄が使われており、まさに姫系と言うか愛され系全開な品なのだ。
人の趣味はそれぞれだが、普通会社の通勤にこれは着てこないと思われる。
ブーツの方はスエード素材でダークブラウンのロングブーツだ。
前面をレースリボンで編み上げてあるが、リボンは飾りで実際は側面のファスナーで着脱するものの様だ。
フットカバーは白の花柄レースで、素足でブーツを履かないための靴下代わりのものだろう。
「見ていても仕方がない、寒いし着てしまおう。レギンスが有るみたいだからストッキングも脱がないと」
和貴は声に出すことで恥ずかしさを紛らわす。
着ないといけないと分かっていても、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
しかも、それは朝に美輝が着ていたものなのだ。
そう考えるとますます躊躇ってしまう。
しかしながら、もたもたしていると美輝を待たせる事になってしまうと思うと意を決するしかない。


291ありふれた日常:2011/03/10(木) 12:55:37.66 ID:cR72NWzh


まずはレギンスからはき始める。
これは問題なくはく事が出来た。
ストッキングの様に肌に密着するが、厚手のため温かい気がする。
次はトップスを着た。
デザインはともかく着方は普通の服と変わるもではなくこちらも問題なく着る事が出来る。
続いてボトムのショートパンツをレギンスの上にはく、
はくには問題ないがウエストが閉まるかを杞憂したが問題なくホックもファスナーもする事が出来た。
ここまでは一通り滞りなくこなせたが問題はブーツだ。
まずはフットカバーを履く、足の甲が包まれない慣れない感覚に違和感があるが履くのに難しい事は無い。
そして問題のブーツを手に取る、サイズが合わないだろうと言う事もあるのだが、
側面のファスナーを下しそのまま足を入れると言う作業が割と大変だった。
座って出来ればいいのだが生憎な事に更衣室にはそんなスペースが無く、立ってするしかないのだ。
ふくらはぎの所がどうしても引っかかりなかなか上がらない、
それでもレギンスをはいているのですべりが良くそのおかげでなんとか上げる事が出来き、
ファスナーを閉めると足がぴったりと収まる。
不思議な事にサイズも大丈夫だった。
しかし、問題はここからだった。
反対の足にブーツを履こうとしたのだが、8cmあるブーツのヒールでバランスが取れず片足立ちが出来ないのだ。
悪戦苦闘するがなかなか出来ず、ついには後ろのロッカーに寄りかかって何とか履く事が出来たのだった。
ブーツを履き終え、一息つくとあの可愛すぎる白いコートを着る。
コートのリボンは最初からあつらえてあるもので、ベルトはその裏にある留め具を通すだけでいい。
ネックラインのファーがくすぐったい。
これで着替えは完了した。
和貴はロッカーからブラウンの合皮バッグを取り出すと、小さく畳んだブラウスと持たせられたポーチをしまう。
このバッグもシンプルに見えるがギャザーフリルと持ち手の所に同素材のハート形のチャームが付いていて可愛い系のものだ。
正面に付いている小さなプレートをみるとLIZ LISAとある。
それを見て和貴はこの美輝の服の系統を納得した。
LIZ LISAと言えば愛され系で人気の有名ブランドだったからだ。
まさかそれを自分が着る事になるとは思わなかっただろうが。
とにかく着替えが終わった和貴は更衣室を出る事にした。




292ありふれた日常:2011/03/10(木) 12:58:08.56 ID:cR72NWzh


「さて、だいぶ手間取っちゃったな。早く行かないと」
一度自分の姿を確認し、少し恥ずかしくなりながらも和貴は更衣室を出ようとしたのだが、
その途端再びあの腹部痛みと腰のだるさが襲ってきた。
「う、まただ。我慢できないほどじゃないけどさっき見たくなったらまずいな」
慣れないブーツのヒールと生理の倦怠感からうまく歩く事が出来ない。
ふらつくと言うよりも平らな床にも関わらずつまずく様にのめりながら歩きようやく更衣室から出る事が出来た。
廊下では和貴のコートを着た美輝が待っており和貴に声を掛ける。
「大幡君可愛いわ。私の服なかなか似合っているわね」
「女の人ってすぐになんでも可愛いとか言うよね」
「そう?本当に可愛いと思ったんだけど」
「可愛いのは俺じゃなくてこの服装なんだと思うよ っうぉ」
そんなやり取りをしつつ和貴が歩きだそうとした途端、足がひっかかり前にのめりに体勢を崩した。
「おおっと大丈夫? そのコートお気に入りなんだから転んで傷めたりしないでよ?」
それをすかさず美輝が抱きとめる。
「ごめん、ありがとう。ブーツって慣れなくて歩きづらいし、さっきからまた生理痛がしてさ」
「もしかしてもう薬の効きめ無くなったの?」
「なんかそう見たい。我慢できないほどじゃないけど」
「そっかぁ、でもあまり続けて飲むのも良くないし。
我慢できるって言ってもこのまま電車で帰るのって耐えられないかもね。タクシー使おうか」
「そうした方が助かるよ。女の人ってすごいね、毎月この痛みに耐えて普通に生活してるんだからさ」
「そう言われると代わってもらってゴメンね。
でも今回のは特別つらいのかも、昨日はどうにもならなくて早退しちゃったし」
「それは仕方がないよ。これだけ辛いんだからさ」
「ありがとう。じゃあ、鍵を返してタクシーで帰ろっか」
「うん、そうしよう」
そうして和貴と美輝は鍵を管理室へ帰した後、タクシーを呼んで美輝のマンションへ帰って行ったのだった。


293ありふれた日常:2011/03/10(木) 13:01:12.42 ID:cR72NWzh


タクシーを降り着いた美輝のマンションは割と立派なものだった。
タクシーの運転手にこのちぐはぐな格好を見て何か言われるかと思ったが、
入れ替わった立場通りに見えていたらしく、ごく普通にしか会話をしなかった。
ただ、和貴は女性として美輝は男性として話し掛けられていたが。
「さ、中に入るわよ」
美輝に促されるまま中に入りエントランスでバッグからキーケース取り出し鍵でオートロックを解除する。
和貴の足元がおぼつかない為、美輝が寄り添い支えながら部屋まで案内する。
他の住人とすれ違う事は無かったが、傍から見るとふらつく女性を男性がエスコートしている様に見えているだろう。
「ここが私の部屋よ。今はあなたの部屋って事になるけど」
部屋の玄関のドア開けて中に入ると、フローラルブーケの良い香りがする。
美輝は靴を脱ぐとすぐに中に入って行った。
「御邪魔します」
和貴もブーツを脱いで後に続こうとしたが、ブーツを脱ぐのがまたひと苦労だった。
座って脱ごうとしたのだが、ファスナーを下してもなかなか脱げないのだ。
結構力を入れてようやく脱ぐ事が出来た。
脱ぐと解放された足が軽くなった様な気がする。
「あう、なんかり力んだらまた調子が悪く」
ふらつきながら中に入るとキッチンとリビングがありその横が寝室の様だった。
リビングは毛足の長い絨毯に白いテーブルと可愛いクッションが置かれていた。
和貴は取りあえずコートを脱ぎテーブルに着く。
すると、奥の部屋から美輝が出てきた。
「あ、その格好」
美輝の姿を見て和貴が驚く。
美輝は和貴のスーツを脱いで自分の部屋着を着てきたのだ。
「ん、これ?男物のスーツで居るのもなんだなって思って着替えたんだけど。
なんかサイズが大きくなっていてびっくりしたわ。
きっと立場を交換したから、私のものは大幡君のものになって服とかのサイズも大幡君に合うようになっちゃっていたのね」
「ああ、なるほど。それで袖原さんの服やブーツが着れたのか」
「そう言うことみたいね。さ、大橋君も着替えた方がいいわよ。ナプキンも取り替えた方が良いしね。
あ、夜用にした方がいいわね」
言って美輝は和貴をトイレに連れて行きナプキンを交換させると寝室へ連れて行った。
寝室はリビングとは違い美輝の趣味が強く出ているのか、ベッドリネン類やカーテンが姫系で統一されており、
アロマオイルを焚いた安らぐ香りがしていた。
「生理の時って私の場合身体が冷えるのよ。だから温かくて楽な格好した方が良いのよね。
だからいつもこのフリースのもこもこパジャマを愛用しているの。あとこのルームソックスを履くといいわ。
昨日私が着て洗濯していない物で悪いんだけど、これしかないから我慢してね」
差し出されたのはクリーム色に白い水玉の柄で首元はハイネックになっており
裾にはフリルが付いて両ポケットにはリボンの飾りが付いたものだ。
ルームソックスもお揃いのものである。
それと一緒にUネックのシャツも渡される。
これまた女の子っぽさが全面にただようパジャマではあるが、今の和貴の恰好からしてみればそう変わるものではない。
確かに生理はまたつらくなってきているのだ、それならば楽な格好の方が良いだろうと和貴は思い素直に受け取る。
「ありがとう」
服を脱ぎブラジャーを外すと途端に楽になった。
シャツを着てパジャマを着ると確かに温かく着心地が良い。


294ありふれた日常:2011/03/10(木) 13:03:58.54 ID:cR72NWzh


「着替えた?」
着替える時、隣の部屋に行っていた美輝が戻ってきた。
「どう?楽で良いでしょ?そのパジャマ」
「うん、良い感じだよ」
「たぶんまた生理痛つらくなると思うから、薬飲んで寝ていたら良いわ。
首飾りを外す方法は何とかしておくから。ほんと変わってもらってゴメンね。はい、お水と薬」
「ありがとう」
和貴は礼を言うと受け取った薬を飲む。
「その薬、実はピルなんだ」
「え?ピルって確か避妊薬だよね?」
「そう、そのピルよ。大幡君って痛み止めがあまり効かないみたいだから」
「ピルって生理痛にも効くんだ」
「まあ、即効性があるものじゃないけど、ホルモンバランスに作用して体質を改善させる効果があるからきっと効くと思うわよ。
毎日同じ時間に飲まないといけないけど」
「って俺が生理に対する体質改善してどうするんだよ。ずっとこのままなの前提?」
「それもそうよね。私が自分で試そうと思っていたから、そこまで考えずにやっちゃったわ」
「首飾りの事と言い袖原さんって、思い付きで行動しちゃうタイプなんだね」
「割とそうかも。でも最終手段として一番即効性で効果があるので座薬って言うのが有るけど使う?」
「座薬か、いや、どうしてもひどくなったら使わせてもらうよ」
「ん、りょ〜かい。じゃあ、寝る前にメイク落として来てね。クレンジングオイルはシャンプードレッサーの所にあるから。
化粧水と乳液も使って良いからね」
言われ和貴は洗面所に行き鏡に映った自分の顔を見る。
少し崩れてはいるがメイクをされた顔は女性に見えない事もない。
美輝のメイクがそのまま自分の顔に移ったせいか美輝に似ているように見える。
メイクとは凄いものだと和貴は妙に感心してしまった。
そこでまた生理痛を感じ、和貴はクレンジングオイルを手に取るとそそくさとメイクを落とす。
洗顔後肌が突っ張る様な感じがしたため、化粧水も使って見るととても気持ちが良く、
乳液も使って見ると肌がしっとりして和貴は良い気分になる。
メイクを落とし和貴が寝室に戻ると美輝がベットメイクをしてくれていた。
「寝るときは仰向けになって腰の下にこの丸めたタオルを入れて、膝を立てて寝ると痛みが和らいでいいわよ」
「ありがとう」
和貴は礼を言うとベッドに入り言われた通り腰の下にタオルを入れ仰向けで膝を立てて寝てみた。
すると、本当に腹部の痛みが和らいだ。
痛みが和らぐと共にアロマオイルの香りなのか美輝のベッドからする良い匂いに緊張が解け和貴はそのまま眠りに落ちてしまった。
「眠るの早っ」
それを見て美輝は思わず突っ込んでから部屋を出て行ったのだった。



295ありふれた日常:2011/03/10(木) 13:07:05.74 ID:cR72NWzh


次に和貴が目を覚ました時には美輝のマンションのリビングだった。
テーブルの上にはノートパソコンが広げてある。
意識すると生理痛も消えていた。
元に戻ったのかと思っていると寝室からパジャマ姿の美輝が出てきた。
「首飾り外れて元に戻ったよ。あう、身体がだるい〜。」
「外す方法わかったんだ。良かった」
「うん、外す時にもね、呪文が必要だったみたい。
私度忘れしていてさっき思い出したの」
「それって結局全部袖原さんのせいだったんじゃないか」
散々振り回され職場でしか付き合いの無かった美輝の性格が和貴はなんとなく分かった様な気がした。
完全にトラブルメイカー気質だと。
「ところで大幡君、あなたが今着ている衣類すぐに脱いで洗濯機に入れておいてくれる?」
言われて和貴が自分の恰好を見てみると先程まで美輝が着ていた部屋着を着ていた。
しかも入れ替わっていた時と違ってサイズが合っておらず小さい、
ブラジャーが食い込みショーツが股間を圧迫する。
人のサイズの合わない服を無理に着た完全な女装だった。
「入れ替わっているときは大橋君が私の服を着ていても嫌じゃなかったけど、なんか戻ったらやめてほしくなって」
和貴も入れ替わっているときは恥ずかしはあったが、
美輝の服を着る事に強い抵抗は無かったのだが今は死ぬほど恥ずかしく違和を感じていた。
素早く寝室から自分の服を持ちだすと洗面所横の洗濯機のある所に行き、急いで着替える。
「でも、これって良く考えると入れ替わってるの袖原さんが自分の服を着たからじゃないか」
思わず一人愚痴る和貴だった。
和貴がリビングに戻ると美輝がぐったりしていた。
「今日はいろいろ迷惑かけてゴメンね。
知っての通り私は生理でダウンしているから今日はお礼出来ないけど、今度必ずするから」
「別に良いよ。ある意味貴重な体験だったしね。それよりお大事にね」
「ありがと」
「一人で大丈夫?」
「薬飲んでベッドで休んでいれば大丈夫だと思う。食事とかは玄米ブランとかあるから大丈夫。
動けない訳じゃないから」
「そう。でも本当に大丈夫?」
「心配してくれるのは嬉しいけど、大幡君が居ると逆に落ち着かないから」
「なんか俺警戒されてる?」
「生理で情緒不安定なんだから、予防線張っているのよ。察してくれると嬉しのだけど」
「それは悪かったよ。そこまで言われたら、帰るしかないか」
「分かればよろしい」
美輝がそう言うのだから大丈夫なのだろうと思った和貴はそのまま玄関へでる。
「じゃあ、また月曜日会社で」
「またね」
美輝に見送られ和貴は帰って行った。




296ありふれた日常:2011/03/10(木) 13:08:29.21 ID:cR72NWzh


「ふぅ〜、帰ったか」
一人になった部屋の中で美輝はため息をつく。
そしてベッドに向うかと思いきや、何故か洗濯機の所に行き中から和貴が着ていた衣類を取り出す。
それを眺めにやける美輝。
危ない笑顔だ。
「大幡君には言わなかったけど、実は私って生理になると性欲が増すタイプなのよね。」
そう言い衣類の中よりパンツを取り出し匂いを嗅ぎだした。
「むふふ、大幡君が履いたパンツ」
そうして美輝は一人エッチを始めだすのだった。

果たして、今回の事態は美輝が意図的に仕組んだものなのか、そうなのかは美輝本人のみが知るところである。
ただ、和貴は確実にこれからも美輝に振り回される事なるだろう。
そしてそれが、2人の当たり前となれば、それもまた『ありふれた日常』とされるのだろうか?
それこそ誰も知るところではない。


    〜一応「完」と言う事で〜
297名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 13:20:43.91 ID:cR72NWzh
以上なんですが、お目汚しすいません。
着替えと生理の事ばかり力を入れてしまって、ここの趣旨を思いっきり外してます。
最後の方は疲れてしまって上手くまとまっていませんし。
このネタなら普通にTSでやった方が良い様な気もする今日この頃です。
でも、今回は最後まで書き上げるのが目標だったので最後まで書けて自分的には良かったと思ってます。
そこだけなんですけどね良かったの。
今度書くときは力を抜いて書きたいです。
前スレの「そこはとあるお屋敷」の続きとか。
ああいうノリだ書けるやつ行きたいです。
リクエストも頂いていましたし。

ともあれ、今回は下手な文章でありますが書かせて頂きありがとうございます。
今後また機会がありましたらよろしくお願いします。
298名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 21:06:39.10 ID:QNg46mof
おつですー
この手の作品がどストライクなので、非常に嬉しい限りです

元々女装とTSの中間みたいなものだから、立場交換でいいと思いますよー
299名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 07:01:38.37 ID:jmB219Iu
いいねGJ
趣旨も別に外れてないかと
300名無しさん@ピンキー:2011/03/11(金) 17:09:31.24 ID:qcAsNGk0
>>280
学ラン姿のオバサンってとこから不良高校生と生真面目なオバサン教師の逆転という電波を受信した

生理代わるから逆転して女性特有のイベントとか体験してみたい
301名無しさん@ピンキー:2011/03/12(土) 00:00:53.31 ID:JJ0n/0N2
和貴もどさくさに手に入れた美輝の下着でオナれば完璧ですね
302名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 01:29:38.80 ID:SSPTQtvX
>ありふれた日常

GJです。すごくワクワクしました。
でも、個人的には、こんな展開も見たかったかも……。

(14レス目からの分岐)
次に和貴が目を覚ました時には美輝のマンションのリビングだった。
テーブルの上にはノートパソコンが広げてある。
意識すると下腹部の痛みはだいぶ収まっていた。
さては元に戻ったのかと思っていると寝室から部屋着姿の美輝が出てきた。
「首飾り、じつはまだ外れてないんだよね。方法はわかったんだけど」
「外す方法わかったの!? じゃあ、早くしようよ……あいたたた」
 急激に動いたせいか、和貴の中で再び生理痛がぶり返してくる。
「うん、外す時にもね、呪文が必要だったみたい。
 でも、そのぅ……」
「? どうしたの?」
「肝心の呪文を忘れちゃった。アハハ……」
「ええぇっ!? じゃ、じゃあ、どうするのさ!」
「だ、大丈夫だよ。買ったお店でもう一度聞いてくるからさ」
幸いにして明日は日曜だ。今日はもう遅いから仕方ないとして、明日、そのお店に行って聞いてくればいいだろう。
「なら、いいけどね」
 散々振り回され職場でしか付き合いの無かった美輝の性格が和貴はなんとなく分かった様な気がした。完全にトラブルメイカー気質だ。

──という感じで、すぐには戻れず、美輝の方もコッソリ「生理のあいだはこのままでいいかな」と考え、ズルズルと元に戻るのを引きのばすというパターンも見てみたかったですね。
同じ職場なので、仕事内容や人間関係自体はわかるものの、慣れないOL生活と生理痛のダブルパンチでアンニュイな「美輝」こと和貴とか。
303小ネタ:2011/03/13(日) 17:19:11.14 ID:SSPTQtvX
※近世ファンタジーっぽい世界(ゼロ魔とかアリアンロッドとか)を想像してください。

『愛憎相克』

 今日は太陽神ルーの曜日。つまりは、身分の貴賎を問わず仕事や学業を休める休日だ。
 ここ、ガーシュナー伯の居城・エッフェルバルト城も、主たる伯爵とその家族はもとより、ごくわずかな例外を除いて使用人たちも週に一度の休養を謳歌している。
 否、そのはずだった。
 しかし……。
 「あら、あなたは?」
 芳紀16歳の伯爵令嬢エリスは、お忍びで城下へ抜けだす途中の廊下で、見慣れない顔の侍女と出会った。
 「──エリスお嬢様ですね。リリスと申します。一昨日よりこのお城にご奉公にあがっております」
 なるほど、新米メイドだったらしい。
 聞けば、せっかくの休日なのに、別の地方の出身で親しい知り合いもいないため、町に出かける勝手もわからず、このまま城の自室で休もうかと思っていたとのこと。
 少々勝気(というかお転婆)な傾向はあるものの、根は優しいエリスは、気の毒に思い、 「よければ、自分について来ないか?」とリリスを誘う。
 最初は躊躇う風を見せたものの、エリスが重ねて誘うと彼女も「では、恐縮ですが、お供させていただきます」と首を縦に振った。
 ──しかし、エリスは気づいていただろうか。
 頭を下げたリリスの唇に不遜な微笑が浮かんでいたことに。

 城下町に出かけた貴族の娘エリスと侍女のリリスだが、なぜか初対面とは思えぬほどにふたりは身分の差を超えてうち解けていた。
 エリスの奢りで美味しいスイーツを食べたり、市場を見て回ったり、庶民向けだけどちょっと高級なブティックで色々試着してみたり……と、楽しい「女の子同士の休日」を過ごす。
304小ネタ:2011/03/13(日) 17:19:58.22 ID:SSPTQtvX
 ところが、最後に買う服を決めて、元の服に着替えようか……という段になって、広めの試着室に一緒に入っていたリリスの目付きが豹変。
 彼女の瞳を覗き込んだエリスは、「あっ」と思う間もなく催眠状態に。
 リリスの指示に従い、下着に至るまですべて脱ぎ捨てて全裸になるエリス。
 自らも服を脱ぎながら、リリスは虚ろな目をしたエリスに話し掛ける。
 「貴女とふたりきりになる機会を待っていたんですよ、エリス様。
 よく見てください。わたしの顔、どこかで見たような気がしませんか?」
 髪を下ろし、伊達眼鏡を外したリリスの顔は、眼と髪の色を除けばエリスにソックリだった。じつは、リリスはガーシュナー伯爵が地方巡視の際、平民の呪い師であった女に手をつけて産ませた、エリスの異母姉だったのだ。
 姉妹でありながら、かたや何不自由なく暮らし、王都への留学も決まっている妹と、苦労して育ち、母が亡くなった後は、父の家で使用人として働くことを余儀なくされた姉。
 リリスは異母妹のすべてを奪うことを決意していたのだ。
 「そう、今日からはわたし……いえ、わたくしこそがエリス・ロクサーヌ・フォン・ガーシュナーとなるのですよ」
 魔法の染色薬で自らの髪を金色に、瞳を碧に変えたリリスが高らかにそう宣言する。
 「ち…が……う……わた……し……エ、リス……」
 「あら、それではエリスがふたりになってしまいますわ。それに、ホラ……」
 素早く別の染色薬をエリスの髪と眼に振りかけるリリス。
 「鏡の中を見て御覧なさい。あなたの瞳は何色をしてるかしら? 髪の毛の色は?」
 後ろからエリスの肩に手を掛けたリリスが、優しげな声色でエリスを鏡の前に誘導する。
 鏡に映った自分の姿から目を離せないエリス。
 「……みど、り………と……あ、か……?」
 「ええ、その通りですよ。そして、その色彩を持つ娘を、あなたは知っているのではなくて? 誰だったかしら?」
 「……リ、リス?」
 リリスの笑みが深くなる。
 「そう、先日お城にあがったばかりの、不慣れな新人メイドのリリス。それがあなた」
 「わたし、が…リリス……」
 「じゃあ、もう一度聞きますわね。あなたのお名前は?」
 「──リリス、です」
 「はい、よくできました」
305小ネタ:2011/03/13(日) 17:20:26.58 ID:SSPTQtvX
 暗示が定着したことを確認したリリスは満足げに頷くと、エリスが脱ぎ捨てた高価な絹の下着とドレスを、エリスに手伝わせて身に着け始める。
 自らの身支度が済んだところで、今度は先程まで自分が着ていた衣服を着させた。
 城勤めの侍女として普段から清潔にしているとは言え、すでに朝起きて着替えてから半日あまりが過ぎている。
 春先の陽気に流した汗や、拭ききれなかった尿などで微かに汚れているはずの下着(ソレ)を、高貴なお嬢様であるはずの少女が身に着けていると考えて、リリスの心に倒錯的な欲望が湧き上がってくる。
 それは、無垢なる者を貶め、汚す悦び。
 少女が丈の短いメイド服に着替え、頭頂部に侍女の象徴ともいえるヘッドドレスを着けたところで、リリス──いや、「エリス」は「リリス」の手を引いて試着室を出た。
 傍目には、試着室に入るまでと何ら変わりなく見える、ふたりの娘。
 その主従が実は逆転していると知る者は、それを画策した本人ひとりしかいない。
 「さて、そろそろお城に帰りましょうか、リリス」
 「──はい、エリスさま……」

 城に帰った「エリス」と「リリス」は、当然のことながら、それぞれの立場に相応しく、「城主の娘」と「新米メイド」としてその日の残りを過ごす。
 あるいは、そのまま何日か経てば、エリスの家族や古株の使用人たちが「エリス」に不審を抱いたのかもしれない。
 しかし、その翌日、「エリス」は馬車に乗って王都へと旅立ってしまった。この春から、貴族の子女が集う王立学院へ入学して通うためだ。
 一方、残された「リリス」も、まだ城で働き始めたばかりということで、あまり性格なども知られておらず、メイドの仕事に不慣れなことも「新米だから」ということで納得され、いろいろ指導を受けることになった。
306小ネタ:2011/03/13(日) 17:21:34.12 ID:SSPTQtvX
 その後、「エリス」が再びこの城に戻ったのは、学院を卒業した2年後であり、そして、その頃には、ふたりとも現在の立場にすっかり馴染み、そのまま生涯を「伯爵令嬢」と「メイドとして」過ごすことになるのだった。

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#以上。自分でもちょっと書いてみました。お目汚し失礼。
「女同士の入れ替わり」スレでネタフリした、「令嬢メイド」のダーク版とも言うべきお話(小ネタ)。イメージ画像はコチラ↓
http://up.mugitya.com/img/Lv.1_up137129.jpg
307名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 22:29:55.47 ID:6t4yWdFG
立場の他に能力や身体機能も入れ替わる

子供と入れ替わったら簡単な計算もできなくなったり身体能力もそれ相応になる
生理中の女性と入れ替わったら生理になる
308名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 23:08:16.45 ID:k6IWI86u
>子供と入れ替わったら簡単な計算もできなくなったり身体能力もそれ相応になる

あんまり面白くないな
子供の立場で大人の能力の方がいい
某コナンの「体は(見た目は)子供、頭脳は大人」な感じで
309名無しさん@ピンキー:2011/03/14(月) 23:34:51.08 ID:rn+Z0UXH
だね
できるはずのことができないジレンマみたいなのは一つの要素としてありだけど
それを立場交換物でわざわざやる必要性を感じない

これまでの立場と今の立場のギャップがあってこそなのに、
能力を落として違和感を埋める真似をするのは少々惜しいと思う

生理なんかは体が男のままであればむしろギャップを広げるからいいと思うけど
310名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 00:17:43.37 ID:Q5Rb+rBY
>子供と入れ替わったら簡単な計算もできなくなったり身体能力もそれ相応になる

自分は上記のシチュが結構ツボなんだけど、まぁ、人それぞれだね
311名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 00:25:56.26 ID:IBDfb/HB
どうも、ありふれた日常を書かせて頂いたものです。
反響を頂けて嬉しく思います。
読み返すと間違いがあったりし、拙い文章ですいません。
スカートのファスナーは右ではなくて左です。
サイドファスナーでは右になるものも無い事は無いですが左側になるのが普通ですよね。
つい間違えて書いてしまいました。

>>298
好みに合えて何よりでした。
スレ違いなっていなくて良かったです。

>>299
GJありがとうございます。
そう言ってもらえると安心しました。

>>300
生理の他の女性特有のイベントですか?
となると最大イベントの出産でしょうか?
膣が無くても経血は出るフィクションですから、やおい穴から出産も出来るかと。
描写するの難しいですけど。
あ、おばさんな方と代わって更年期障害を体験してみるのはいかがでしょう?
しかも代わった相手におばさんとして屈辱的に扱われたりして。

>>301
和貴は草食系ですから美輝の下着を失敬出来るほど大胆になれないかと。
でも、美輝の下着を着ていた事を思い出しておかずにする事はするでしょうね。

>>302
GJありがとうございます。
分岐の戻らないルート良いですね。
実は私も考えてはいたのですが、徹夜で書いていたので気力がもたなくてあの様な終わり方になりました。
本当は生理に苦しみながら混んでいる電車に揺られ、空いている優先席に座りたいけど座れない気分を和貴に味わってもらう場面とかも考えたのですが端折りました。
最後の終わり方もまだまだ続く形で、美輝が首飾りを外す方法を調べるため買った露店を探しに出かけている間に美輝の友達が来て対応に困る和貴とか、
露店が見つからず帰ってきた和貴な美輝と友達が部屋で鉢合わせして勘ぐられる事になったりといろいろ続く予定だったのです。
第三者を交えるので恥ずかしがりながら美輝を演じる和貴の描写とかも。
そう言う描写があればもっと満足いただけたでしょうか?
今後精進しますね。


>愛憎相克
GJを送らせていただきます。
このスレに合う立場交換、立場の乗っ取りですね。
成り代わりものって良くありますが、大抵相手を幽閉してしまうか殺してしまうし。
身分が高い相手を低い身分の立場に貶める背徳感を楽しめる作品だと思います。


312名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 01:10:55.26 ID:nvXvyFOp
この流れを見ると、同性の入れ替わりの需要はやっぱり少ないんだな

俺は同性入れ替わりも好きなんだけど――とか言ってる奴は、
いざ投下されても何も書き込まないし、無責任な荒らし以外の何者でもないな
313名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 01:46:18.66 ID:cu6oftBe
というよりは同性同士だとODスレがあるしね。
314名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 08:49:02.53 ID:OVDaiRRp
このスレでの話だろ

(俺もだが)基本TS好きが集まってる印象だし、
同性の入れ替わりが投下されたときの反応の悪さは見てられない

なのに、それを指摘すると「俺は同性も好きなんだけど」とかいう奴が
ひょっこり現れるのは何ともなあ。好きなら好きで盛り上げてくれよと
315302:2011/03/15(火) 11:37:12.03 ID:mcWvwstQ
>>311
すみません。イイ(色々な意味で)話を読むと、ついIFな話も想像したくなるタチなもので……。とくに入れ替わり物は、「戻る・戻らない・最後の最後で戻る」の3パターンがあって、妄想の幅が広がるものですから。
もしご本人に書く予定がなく、許可をいただけるなら、302からのifな続き(妄想?)を書かせていただければ幸い(無論、ダメならあきらめます)。

「愛憎相克」の感想もどうもです。高貴な女性の立場を乗っ取り、かつその女性を低い地位に貶めるのって、やはり基本ですよね。
昔、MMO-RPGの「マビノギ」の看板娘的案内役(そしてファンのアイドル)であるNPCキャラ・ナオと、淫魔サッキュバスの立場入れ替わり物を妄想したことも。
敵の悪女的キャラが、日の当たる清純ヒロインの立場を謳歌し、逆に清純キャラが、男の精をすすらないといけない立場に堕とされるのって萌えません?。

>>312、313、314
まぁ、身体ごと取りかえるOD物でも、確かによく似たことはできるんですけどね。
でも、自分の肉体のまま、貶められたり違う人間として扱われるコトにも、ツボを感じるってのも、アリだと思うんですよ。
316名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 12:06:32.23 ID:PIimYrPo
この状況だから「感想書き込む余裕ない」とかじゃないかな

まぁ自分も女同士を書いたときはほとんど反響なかったけどさ(´・ω・`)
317名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 13:25:45.07 ID:Bud+Xoo4

>>315
このような拙いものにIFなお話を書いて頂けるなんて嬉しいです。
ぜひ読ませて下さい。
妄想は創作の活力ですよね。
もし私が自分で続きを書く場合は場面を切り取った小ネタな的なものか、予定していた内容を入れ話の筋を変えた改定版になると思います。
TSヴァージョンとかも考えたりしてましたし。
別の妄想があるので要望を多く頂かない限り、取りあえず今は書かないともいますが。
恵まれている立場とそうでない者とが立場交換でそうでない者が恵まれた立場を謳歌し、
そうで無い者の立場になった恵まれていた者が惨めな思いをすると言うのは嗜虐的で背徳感を刺激しますね。
いくら訴えても元の自分として受け入れてもらえない元恵まれた者が、元の生活を思い出しながら悲壮感に打ちひしがり惨めな生活を享受する様とか、
うって変わって皆からちやほやされ恵まれた環境を我が物顔で満喫し謳歌する元そうでない者とか想像すると高揚しますね。
そしてどんどん増長して行った元そうでない者は・・・
と妄想が広がります。
318名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 22:58:18.89 ID:U71p68xc
つるぺた貧乳なのにナイスバディ扱いされて
むっちり巨乳なのに貧相な身体扱いされるみたいのは同性でもいいかもって無責任に言う
難しいわな
319名無しさん@ピンキー:2011/03/16(水) 01:55:58.11 ID:WagwDC1Y
>>318
それはいいかも。
なんというか、この手のフェチの人は同性、異性というよりギャップとそれが発生したときの戸惑いなんかが好き何だと思う。
だからギャップが大きくなりやすいTSもののが受けがいいんじゃないかな。
同性でも入れ替わりのギャップが大きいものは好まれてると思う。
320315:2011/03/16(水) 09:30:26.67 ID:vZbQUt2X
>>317
それでは、お言葉に甘えて、293の半ば、美輝の部屋でパジャマに着替えたところから続けさせていただきます。

『そして日常な非日常へ 〜ありふれた日常if〜』

 「着替えた?」
 着替える時、隣の部屋に行っていた美輝が戻ってきた。
 「どう?楽で良いでしょ?そのパジャマ」
 「うん、良い感じだよ」
 「たぶんまた生理痛つらくなると思うから、薬飲んで寝ていたら良いわ。
はい、お水と薬」
 「ありがとう」
 和貴は礼を言うと受け取った薬を飲む。
 気のせいかもしれないが、なんだか身体が楽になったような気がした。
 「その薬ね、実はピルなんだ」
 「え? ピルって……確か経口避妊薬のことだよね?」
 「そう、そのピルよ。大幡君って痛み止めがあまり効かないみたいだから」
 「ピルって生理痛にも効くんだ」
 「ホルモンバランスに作用して体質を改善させる効果があるからきっと効くと思ったの。
ただ、即効性があるものじゃないから、毎日習慣的に飲まないといけないけど」
 「じゃあ、生理が治まるまではしばらく飲み続けたほうがいいのかな?」
 「まぁね。ほんと、ツラいの変わってもらってゴメンね。首飾りを外す方法は何とかしておくから」
 「いいよ。今回の件は、安直に同意しちゃった俺にも責任はあるし。でも、袖原さんって、わりと思い付きで行動しちゃうタイプなんだね」
 「う〜ん、そうかも。あ、そうそう。最終手段として一番即効性で効果があるので座薬が有るけど使う?」
 「座薬か……ううん、今はいいや。あとでどうしてもひどくなったら使わせてもらうよ」
 「ん、りょ〜かい。じゃあ、寝る前にメイク落として来て。
クレンジングオイルはシャンプードレッサーの所にあるから。化粧水と乳液も使って良いからね」
 そう言われた和貴は洗面所に行き、鏡に映った自分の顔を見てみた。
 少し崩れてはいるがメイクをされた顔は、一見したところ女性にしか見えない。
 美輝のメイクがそのまま自分の顔に移ったせいか美輝に似ているように感じる。
 メイクとは凄いものだと和貴は妙に感心してしまった。
 冷たい洗面所にいるせいか、なんとなく下腹部がまた痛くなってきたので、和貴はクレンジングオイルを手に取った。
 独身で恋人もいない和貴だが、幼いころに母親が鏡台の前でやっていた光景を思い出しつつ、手早くメイクを落とす。
 洗顔後は肌が突っ張る様な感じがしたため、化粧水を使って見ると、とても気持ちが良く、さらに乳液も使って見ると肌がしっとりして和貴は良い気分になってきた。
 「うーん、女の人がお肌の手入れに凝る気持ちがわかるような気がするな」
 メイクを落とした和貴が寝室に戻ると美輝がベットメイクをしてくれていた。
 「寝るときは仰向けになって、腰の下にこの丸めたタオルを入れて膝を立てて寝ると、痛みが和らいでいいわよ」
 「うん、お気づかいありがとう」
 和貴は礼を言うとベッドに入り言われた通り腰の下にタオルを入れ仰向けで膝を立てて寝てみると、本当に腹部の痛みが和らいできた。
 そして、痛みが和らぐと共にアロマオイルの香りなのか美輝のベッドからする良い匂いに緊張が解け和貴はそのまま眠りに落ちてしまった。
 「うわ〜、眠るの早っ」
 それを見て美輝は思わず突っ込んでから部屋を出て行ったのだった。

 ……
 …………
 ………………

 夢の中で和貴は、普段通り会社に通っていた。
 いつも通りの時間に部屋を出て、いつもと同じ電車に乗り、いつものように会社で働く……。
 ──いや、ちょっと待った!
 朝、出たのは自分の安アパートではなく、小洒落たマンションではなかったか?
 電車で、なぜわざわざ最後尾の女性専用車両に乗っているのだ?
 どうして、会社に着いた時、女子更衣室で、通勤用のワンピースから、ラベンダー色のリボンブラウスにネイビーチェックのベストと同色のタイトスカートという、ウチの会社の女子制服に着替えているのだ。
 「あら、なにもおかしいことなんてないでしょ?」
 ダークグレーの背広をパリッと着こなした、どこかで見たような気がする人物が目の前に現れた。
 「だって……貴女は、柚原美輝なんだから」
 !!
 ──次に和貴が目を覚ました時には美輝のマンションのリビングだった。
 テーブルの上にはノートパソコンが広げてある。
 下腹部の痛みはだいぶ収まっているようだ。
 さては元に戻ったのかと思っていると寝室から部屋着姿の美輝が出てきた。
 「首飾り、じつはまだ外れてないんだよね。方法はわかったんだけど」
 「外す方法わかったの!? じゃあ、早くしようよ……あいたたた」
 急激に動いたせいか、和貴の中で再び生理痛がぶり返してくる。
 「うん、外す時にもね、呪文が必要だったみたい。でも、そのぅ……」
 「? どうしたの?」
 「肝心の呪文を忘れちゃった。アハハ……」
 「ええぇっ!? じゃ、じゃあ、どうするのさ!」
 「だ、大丈夫だよ。買ったお店でもう一度聞いてくるからさ」
 幸いにして明日は日曜だ。今日はもう夜なので仕方ないとして、明日、そのお店に行って聞いてくればいいだろう。
 「なら、いいけどね」
 美輝とは職場での付き合いしか無かった和貴だが、散々振り回されたおかげで彼女の性格がなんとなく分かった様な気がした。
 (うぅ……袖原さんて、完全にトラブルメイカーなんだなぁ)

#と、立場入れ替わりは戻らず。続きもできるだけ早々に投下させていただきます。
323名無しさん@ピンキー:2011/03/16(水) 10:09:17.24 ID:pky773Qm
いいですね!
続きを楽しみにしてます(`・ω・´)
324名無しさん@ピンキー:2011/03/16(水) 19:37:44.80 ID:kGy9v/7M
>>307
頭の良さが入れ替わるのはあんまり面白くないと思うけど身体能力が入れ替わるのは面白そう
力士と入れ替わった女子中学生とか運動神経抜群の男子と入れ替わったデブで運動音痴な腐女子とか
男の立場になった女が女の立場になった男を力づくで犯したりとか
325名無しさん@ピンキー:2011/03/16(水) 20:04:20.82 ID:kGy9v/7M
あ、あと母親と入れ替わって母乳が出るようになるとかもいいかも
326名無しさん@ピンキー:2011/03/16(水) 21:59:57.81 ID:JnKXKCfr
また>>32みたいな「服装・文化」の交換ネタこないかなぁ

ある日突然JK・ギャル文化とショボクレオヤジ文化が入れ替わった世界
わざわざ脱毛してセットしたバーコードヘアと、
ベージュのヨレヨレスーツ、くたびれたネクタイに革靴が
最先端のギャルファッションになってしまい
逆にいままでのギャルファッションが「オヤジくさいダサファッション」と化した世の中で、
世界が変わる前の記憶を持つ読モJKが急にダサくなったと友人にバカにされながらも
自分が大好きな「オヤジファッション」をし続けるとか
 「とりあえず、今夜はこのままココに泊っていってよ。あ、でもこの場合、キミが「袖原美輝」なんだから、私が「大幡和貴」として泊めてもらうことになるのかな?」
 美輝がおどけた口ぶりでそう言うが、和貴は何かが頭の片隅で引っかかり、素直に笑うことはできなかった。
 (何だろう? どこかで、そんなセリフを聞いたような……)
 「どうしたの? やっぱり、まだ痛い?」
 心配げな美輝の言葉に、和貴は物思いから覚めて頭を横に振る。
 「──大丈夫。だいぶマシにはなったから。それより、俺なんかを泊めちゃっていいの?」
 「ん? 別に構わないけど?」
 一応嫁入り前の娘さんなのに……と気遣いを見せる和貴に対して、美輝の方はアッサリしたものだ。
 「第一、そんな体調なのに大幡君が私を襲えるはずがないじゃない」
 至極もっともな意見だったが、和貴としては美輝の風評その他も含めて気にしたのだが……まぁ、家主がいいと言うのだから、これ以上気にしても仕方あるまい。
 「あ、そうだ。中途半端な時間になっちゃったけど、晩御飯、食べられそう?」
 言われてみれば、確かに和貴も多消空腹を感じていた。
 「うーん……軽いものなら食べられるかも」
 「ふふ〜ん。そう言うと思って、おかゆ用意しといたよ」
 美輝に導かれ、下腹部を気遣いつつ慎重にダイニングキッチンまで足を運んだ和貴だったが、彼女が棚から取り出したレトルトのおかゆを耐熱皿に入れてレンジで温めるのを見て、目が点になった。
 おかゆとは言え女の子の手料理が食べられるかもと期待していたのだ。
 「ああ、これ? いやぁ、私、普段はパンだし、お米とかウチに置いてないのよね」
 和貴の視線に気づいたのか、美輝はあっけらかんとそう言い放つ。
 「それに、あんまり凝った料理とかしないから、レトルトのほうが味的には信頼できると思うよ?」
 確かに、今時「ひとり暮らしの女性は料理が上手」というのは幻想なのだろう。
 微妙に納得しきれないものを感じつつ、和貴はおかゆを平らげ、食休みがてらしばらく美輝と話をする。
 先ほども感じたことだが、袖原美輝という女性は、会社で話していた時に感じていた以上に、どうやらざっくばらんで大雑把な性格らしい。
 一応、今の状況をもたらしたことで多少は責任を感じてはいるものの、それ以上にこんな非日常的な"ハプニング"が発生したことにワクワクしているようだ。
 あるいは、憂ウツな生理の苦痛から思いがけず解放された反動もあるのかもしれない。
 「そろそろ私はお風呂に入るつもりだけど……大幡君はどうする?」
 「えっと……たしか生理の時って、女の人はあまりお風呂に入らないんじゃないの?」
 遠慮がちな和貴の言葉に改めて気がついたようにポンと手を叩く美輝。
 「あぁ、そう言えば、私今生理なんだっけ。うーん、でも、その痛みとか出血とかは全部大幡君が肩代わりしてくれてるんだし……大丈夫でしょ」
 割り切りが良すぎる気もするが、一面の真理ではある。
 「逆に大幡くんは止めておいた方がいいかな。本当の女の子ならタンポンをするって手もあるけど……」
 言いかけて、美輝は、ふと考え込む表情になるった。
 (まさか……)
 和貴は何だか嫌な予感がした。
 「ねぇ、今の和貴くんなら、タンポン使うこともできるんじゃないかな」
 予想にたがわず、美輝は無茶苦茶な提案をしてきた。
 「む、無理だよ! 入れるトコロもないのにできっこないって!! それに、そうまでして風呂に入りたいわけじゃないから」
 慌てて、全力で断る。
 「そう? それを言うなら、何もないとこから血が出てるんだし、アリだと思うけどな〜。ま、本人がいいって言うなら別にいいけどね」
 思ったよりもアッサリ美輝は引き下がってくれた。
 「じゃあ、もう一度痛み止めを飲んでから、せっかくだしそのまま寝たほうがいいかな」
 「う、うん。でも……袖原さんはどこで寝るの?」
 「心配ご無用。居間のソファを倒せばベッドになるし、予備の布団もあるから。
 じゃあ、生理が重い「美輝」ちゃんは、暖かくして寝ちゃいなさい」
 同い年のはずなのに、まるで母親か姉のような口ぶりでそう言い残すと、美輝はバスルームの方へ消えて行った。
 このまま留まっていると、「なぁに? やっぱりお風呂入りたいんだ?」などと曲解されそうな気がしたので、和喜も食器を流しに運んでから、今夜は大人しく寝ることにしたのだった。
329315:2011/03/16(水) 23:33:57.65 ID:vZbQUt2X
#というワケでつづきです。「本当に何気ない、一見ごく普通に見える日常。でも、しっかりと異常もある」という世界を描写できていればよいのですが。今回は危地?を脱した和貴君ですが、後日……。
330名無しさん@ピンキー:2011/03/17(木) 03:11:06.23 ID:bQRNvy1w
スレに活気があって良い感じで嬉しいです。
このスレのポイントは交換とギャップ萌えなんですね。
あと、女装とかも好まれると。
心得ました。


『そして日常な非日常へ 〜ありふれた日常if〜』とっても良いです。
やっぱり上手い人が書くと違いますね。
最後の方の描写がおざなりになっている所を見事に直して頂いたうえに
良いエッセンスを加えて頂けて流石としか言い様がないです。
ちなみにですが、座薬の下りは本気にして人には勧めないで下さいね。
ボルタレン座薬は解熱にも痛み止めにも使える便利な薬ですが、
血流に作用して痛みの知覚を減らすものなので、血圧が下がるし身体も冷えます。
生理痛の原因の一つ血流障害による冷えが悪化するので多用は厳禁です。
1、2回なら本当に効きますけどね。
あと、生理中はお風呂に入った方が良いんですよ実は。
清潔にするのはもちろんですが、身体は温めた方が血流が良くなって痛みも緩和されますし
それにお湯の中で経血はほとんど出ないものなんです。
生理の時でも皆さん割と普通に入浴してますし。
まあ、中には普段から面倒だとシャワーしかしない人もいますし、
浴槽掃除が嫌だとか言う人も居ますから人それぞれでしょうか。
次は生理3日目ですね。
l3日目までは結構辛いですが、それを過ぎれば良くなっていきますので和貴にも頑張って欲しいです。


331名無しさん@ピンキー:2011/03/17(木) 09:56:03.15 ID:yVF9e/UL
>>324
それやるなら、女の立場になった男が女同士の気安さから周りの女の子に触りまくるとか
表向きは女同士だからレイプにならないと襲ったりとか。
 その夜は、とくにおかしな夢を見ることもなく、和貴はグッスリ眠ることができた。
 また、夜中に尿意を覚えてトイレに行ったときも、半分寝ぼけていたものの、とくにトラブルは起こさなかった。
 ──そう、便座を上げたりせずにパジャマとショーツを下して腰かけ、座ったまま小用を済ませ、終わったらキチンとペーパーで拭き取り、さらにはナプキンをトイレ内の棚に置かれた夜用の新品と取り換えたのだから。
 「生理中の女性の行動」としては、何もおかしいところはない。
 問題は、和貴がほぼ無意識のまま、一連の行動をとったコトなのだが……。
 この時点で、その事実に気付いた者は、本人も含めてまだ誰もいなかった。

 翌朝の目覚めは、最悪とまではいかなくとも、生理初体験中の和貴にとっては到底愉快とは言い難かった。
 「うぁ……腰が重い……お腹の奥がズキズキする……頭もなんかシャキッとしないし……」
 本来の和貴は寝坊とは無縁なのだが、今朝ばかりはむしょうにこのままベッドから出たくない気分だった。
 「おっはよ〜! 大幡君、もう目が覚めた?」
 彼とは対称的に、美輝の方はどうやら絶好調のようだ。
 「うん、一応は。気分はあんまりよくないけどね」
 「ま、そうだろうねぇ。私、ただでさえ低血圧気味で寝起きが辛いのに、生理の時はそれがいっそうヒドくなるから」
 「ふぅん。ん? もしかして、低血圧ってのも、昨日言ってた「枷となりし患い」に含まれてるんじゃあ……」
 「おぉ! 道理で今朝のお目覚めがスッキリ爽やか爽快だったわけね」
 和貴の指摘にポンと手を打つ美輝。
 逆に和貴はボフンと布団に顔を埋める。
 「勘弁してよ〜」
 「あはは……まぁまぁ、あと半日の辛抱だしさ」
 慌てて美輝が慰めたので、ようやく和貴も気をとりなおして、ベッドから起き上がった。
 美輝の薦めに従い、まずはトイレに入って用を足し、ナプキンを昼用のものと交換する。
 和貴がトイレから出て来た時には、朝食の用意はできていた──と言っても、トーストとレタスとプチトマトのサラダだけだが。
 普段の和貴なら6枚切りの食パン1枚程度では物足りないと感じたのだろうが、体調不良せいか、その1枚をホットミルクで流しこむのがやっとだ。
 対して美輝の方は、たっぷりバターと蜂蜜を塗ったトーストの2枚目をペロリと平らげているうえ、サラダの方も和貴の倍近くは食べているようだ。
 食後のお茶を飲みながら、今日の予定をふたりで話しあう。
 「とりあえず、私はこのあと例のネックレスを買ったお店に行くつもりだけど、大幡くんはどうする?」
 美輝に聞かれて和貴はしばし考え込む。
 彼女について行ったとしても、さすがに外で例の呪文とやらを試すワケにはいかないだろう。必然的に、人目がなくて邪魔の入らない場所で実行することになる。
 ならば、体調の優れない自分はこの部屋で待っている方がいいのではないだろうか?
 「それもそうか。じゃあ、大幡君は居間でテレビでも見て待っててよ。あ、身体が辛くなったら、ベッドを使ってもいいからね」
 恋人でもない男を自室にあげたまま外出しても平気なのだろうか……いや、それは今更
か。なにせ昨晩は、成り行きとは言え普段美輝が寝ているはずのベッドをアッサリ貸してくれたのだから。
 それに、美輝のこういうサバサバしたトコロは和貴も気に入っているのだ。恋人いない歴と年齢がイコールで結ばれる和貴にとって、ヘンに異性を意識しなくても済む分、気は楽だ。
 「じゃ、行って来るね〜」と手を振って出て行く美輝を見送ったあと、和貴はひとりこの部屋に残された。
 とりあえず言われた通りにテレビをつけてはみたものの、日曜の午前とあってあまり面白い番組はやっておらず、しばらくして和貴はスイッチを切った。
 幸いにしてお腹の調子も落ち着いているので眠る気にもならず、暇を持て余した和貴は、ソファ横のマガジンラックに置かれていた何冊かの雑誌を手にとり、ペラペラとめくってみる。
 それらは、いわゆる女性週刊誌やファッション誌の類いだったが、少なくとも中味の薄いテレビの番組よりは和貴の好奇心を満たしてくれた。
 「昨日袖原さんが着てた服、ちょうどこんな感じだったな。でも、俺はどっちかって言うと、コッチの方が……」
 LIZ LISAのブランドムックと、spoon.を見比べて、和貴がそんな感想を漏らしているところに、「ただいま〜」とこの部屋の主が帰って来た。
 「おかえり、早かったね。で、どうだった?」
 「いやぁ、それがね〜」
 あのネックレスを買ったのは、ちゃんとしたショップじゃなく露店だったため、今日は同じ場所に見当たらなかったのだ……と、美輝が説明する。
 「ええっ! そんなぁ〜」
 「あ、心配しなくても大丈夫。付近の人にも聞いてみたけど、あの店、毎週火曜日にはアソコに来てるみたいだから」
 確かに、まったく行方がわからないワケではないぶんマシだが……。
 「でも、それって逆に言うと火曜日にならないと戻れないってコトじゃないか!」
 「うん、そうなるね」
 愕然とする和貴を前に、美輝の方は涼しい顔をしている。もしかしたら、半ば不可抗力でつらい生理を丸々肩代わりしてもらえることを内心喜んでいるのかもしれない。
 「明日は会社もあるんだけど」
 「大丈夫でしょ。私達、同じ職場なんだし、互いの仕事内容もおおよそわかってるワケだから、一日くらいなんとかなるって!」
 あまりにお気楽な美輝の調子に、和喜は目眩がしてきたが、いずれにしてもなんとかするしかないのだ。そういう意味では、ふたりの職場が同じだったことは確かに不幸中の幸いかもしれない。
 「ふぅ……わかった。お互い、ボロを出さないように頑張ろう」
 美輝ほど楽観的になれない和貴としても、そう答えるしかなかった。

#続きをポツポツと。短めで申し訳ない。
 >330 原作者本人からのエールは励みになります。ちなみにあと3回で終了予定です。
335名無しさん@ピンキー:2011/03/17(木) 21:58:30.50 ID:WVkXLAnP
GJ!
336名無しさん@ピンキー:2011/03/17(木) 22:53:46.47 ID:1JoZAJG/
gj
337名無しさん@ピンキー:2011/03/18(金) 10:54:27.66 ID:R4ppO7Rg
334、乙っす。

ところで、話は変わるけど、身代わりとか影武者の類いも、
このスレの範疇に含めていいのかな?
web上で昔「女帝の屈辱」ってエロ触手小説を読んだんだけど、
敵国に捕えられた凌辱される女王が実は影武者(正体は女官)
という設定で、結構興奮した記憶が。
アレで、逃亡した女王が一介の女官とかに変装してて、
さらに逃げる途上で盗賊とか傭兵崩れとかに辱められてたら、
よりいっそうココの住人好みかも。
338名無しさん@ピンキー:2011/03/18(金) 12:35:11.66 ID:7O789nqN
影武者いいよね、影武者
339[妄想ネタ]影武者姫:2011/03/18(金) 20:55:56.04 ID:yMHGfHdL
影武者というシチュから妄想。

新興だが強力な帝国に攻められて、王都すら陥落寸前の歴史ある王国。
その若き女王は、せめて誇り高い最後を迎えようとするが、
重臣たちに「王国の血を絶やすつもりか」と諭され、渋々落ち伸びることを
承知する。
城で働く侍女(メイド)の姿に身をやつし、秘密の抜け穴から脱出していく女王。
一方、女王が着替えたメイド服の元の持ち主である少女は、少しでも
敵の目をくらませるため、女王の影武者として城に残ることに。
(そのために、歳格好や、髪・瞳の色が女王に似た娘が選ばれた)
豪奢なドレスをまとい、王冠や先祖伝来の首飾りを身に着け、王笏を手に、
精一杯の威厳を誇示して玉座で敵軍の到来を待つ偽女王。
エロパロ的文脈に違わず、敵国の皇帝自らが軍を率いて王都を陥落させ、
偽女王も、しばしの問答の末、魔道皇帝の手に落ちる。
(自害しようとしたところを、魔法で眠らされた)
当然、偽女王(ただし、敵側にはバレていない)は皇帝のハレムに入れられ、
時には皇帝本人、時には彼の愛妾たちからエロエロな仕打ちを受ける。

一方、一介の侍女として城外に落ち伸のびたはずの本物の女王は、
暗い山道を抜ける際に足を滑らせて谷川に転落。僅かな伴回りの者達も、
帝国の残党狩りに遭い、散り散りになる。
川に落ちたメイド姿の女王は、しばらく下流に流されたのち、
運よく旅の冒険者達に助けられるが、目覚めた時、頭を打ったせいか
記憶喪失になっていた……。
340[妄想ネタ]影武者姫:2011/03/18(金) 20:56:43.06 ID:yMHGfHdL
そして王国が帝国に併合されてから半年あまりが過ぎた頃。
その頃には、偽女王もすっかり絶倫な皇帝のイチモツとテクニックに
メロメロになり、言われるがままに彼に妃として嫁ぐことに同意する。
軍事面や領土面での実力に加えて、古代王国の由緒正しい血を自国に
取り入れることに成功した(と思っている)皇帝はご満悦。
彼の寵妃として開花した偽女王は、その美貌に加えて身体の方も絶品で、
しかも一旦屈服したあとは、皇帝にとことん尽くすタイプだったため、
政治的意図抜きにしても「いい妻(おんな)を手に入れた」と上機嫌な皇帝。
閨で偽女王を可愛がりつつ、世界征服に向けて次なる目標を練っている。
(偽女王の方は、今は皇帝のトリコなので、「もし偽物と知れたら愛して
もらえない」ことを恐れて、自分の素性は決して口にしない)

一方、冒険者達が助けた「メイド」は、しばらくは彼らの知り合いの
宿屋兼酒場で看板娘として働いていたが、初歩的な白魔法や護身術の
心得があることが判明してからは、彼らの仲間となって活躍。
冒険者のリーダー格との間にロマンスも芽生え、近々結婚する予定。

──てな、お話は萌えないだろうか?
問題は、これをSSに起こす技量が自分にないことだが。
341名無しさん@ピンキー:2011/03/18(金) 22:34:46.12 ID:E6XbHHXJ
GJ!
好きだったら頑張れば書けるものさ。
342名無しさん@ピンキー:2011/03/18(金) 22:45:48.17 ID:7O789nqN
>>339
GJ!
つか、これだけでもかなりおなか一杯になれるほど、濃密なんだけど
343名無しさん@ピンキー:2011/03/19(土) 20:25:27.65 ID:vst8Sfhm
>>331
女の立場で女を襲ったらどうなるのかと
考えだしたら気になって夜も眠れない(眠れるけど)
※今回は、ちょいエロ&微グロかも。

 「ところで、大幡君、体調の方はどうかな?」
 「うん、快調とは到底言えないけど、お腹の痛みとかは昨日よりはだいぶマシみたい」
 鈍い疼痛めいたものは感じるものの、昨日のように歩けないほどではない。
 「そう、よかった。じゃあ、念のために痛み止めを飲んでから、ちょっと外出するのに付き合ってくれない?」
 「え? うーーん……どこに行くつもりなの?」
 痛みは「あまり」ないとは言え、決して快適とは言い難いのだ。和貴としては、できれば、あまり遠出はしたくなかった。
 「もちろん、君の部屋だよ。ほら、月曜は私が「大幡和貴」として出社しないといけないじゃない? さすがにスーツの着替えとかもいるだろうしね」
 なるほど、言われてみれば当然の話だ。
 この部屋の衣類は全て、いまの和貴のサイズになってしまっているし、たとえ美輝に着れたとしても、他人から「大幡和貴」が女装してるみたいに見えるのは嫌過ぎる。
 今の美輝の格好は、洗いざらしのダンガリーシャツとジーンズというユニセックスなものだが、この服装で出社するわけにもいくまい。
 「大幡君、ひとり暮らしだよね? 家ってどこだっけ?」
 「ここからなら、電車で2駅ほど離れたところだけど……ちょっとわかりづらい場所にあるから、確かについて行ったほうがいいかな」
 そんなワケで、和喜もふたりで外出することを了解したワケなのだが……。
 「ね、ねぇ、やっぱりコレ着ないとダメかな?」
 「当り前でしょ。小学生じゃあるまいし、いい歳した女がブラジャーしないで外に出かけるなんてあり得ないわよ!」
 「うぅ……」
 今の和貴の姿は他人から「袖原美輝」に見えるのだから、確かにその辺は気を使うべきなのかもしれない。
 渋々納得した和貴は、風呂場の脱衣スペースで、美輝に渡されたクリームイエローの下着を身に着ける。
 サニタリーショーツの方は、前開きのないビキニブリーフだと思えばそれほど違和感はないが、やはり胸元を締め付けるブラジャーの感覚にはどうにも慣れない。
 「どう? ちゃんと着けられた?」
 頃合いを見計らったようにバスルームのドアが開き、美輝が入って来る。
 「わっ……ちょ、袖原さんッ!?」
 下着姿、それも女物を見に着けているところを見られるのは、さすがに恥ずかしい。思わず、手近にあったバスタオルで身体を隠しながら和貴は抗議したが、美輝の方はどこ吹く風だ。
 「あ〜、ダメダメ。ブラジャーを着ける時はね。こーやって……」
 背後から和貴の胸に手をやり、脇腹や周辺の肉や脂肪を寄せて無理矢理ブラのカップに押し込む美輝。
 「イテテ……ちょっと、乱暴だよ」
 「おとこのコでしょ。それくらい我慢しなよ。それにほら、これでそれなりに膨らみが出来たじゃない」
 昨日の会社からの帰宅時と同様、キチンとブラジャーを着けた和貴の胸は、僅かながら膨らんでいるように見える。
 「さすが寄せて上げるブラ、おそるべしね」
 どうやらそういう豊胸機能が付いた品だったらしい。
 「いやぁ、私もあんまし大きい方じゃないから。やっぱり多少はね?」
 和貴の視線に気づいたのか、アハハと笑って誤魔化す美輝。言われてみれば、確かに今の美輝の胸には、皆無とまでは言わないが、あまり隆起が目立たない。
 「えっと、袖原さんの方は大丈夫なの? その……ブラジャーしなくて」
 「私? うん、まぁね。大きい人ならともかく、私くらいだとノーブラの方が解放感があって楽なんだよね。まぁ、先端部は敏感だからニプレスだけは付けてるけど。
 激しい運動するなら別だけど、普通に歩いたり動いたりする分には問題ないかな。それに、万が一薄着の時にシャツからブラの線が透けて見えたら大変でしょ。「大幡和貴」に下着女装疑惑ができちゃうよ?」
 和貴としてもそれは勘弁してほしい。
 まぁ実際には、今まさに言い逃れできないレベルで女装しているワケだが。

 「あとはお出かけ着だね〜♪」
 何だか美輝は無性に楽しそうだ。あるいは、和貴のことを等身大着せ替え人形だとでも思っているのかもしれない。
 「あ、そうだ。袖原さん、服のことなんだけど、昨日みたいな愛され系じゃなくて、できたらコッチの雑誌に載ってるような、もうちょっとおとなしめの格好の方が……」
 と、先ほどまで見ていた雑誌のひとつを指差す和貴。
 女性の服装をすることはこの際仕方ないが、さすがに可愛らし過ぎるのは勘弁してほしい。
 「ん? ああ、「spoon.」かぁ。へぇ、大幡くんの好みって森ガ系なんだ。うん、少し前は私もソッチに手を出してたから、イケると思うよ」
 幸い、美輝は和貴のリクエストを聞き入れてくれたようだ。
 勝手知ったる(本人のだから当り前だが)タンスから、美輝が取り出して来たのは、ダボッとした感じコットン素材の半袖ワンピース。
 前身頃にギャザーが寄せられ、袖口やスカートの裾にレース飾りがついているものの、色合いは白とグレイと生成りに近いナチュラル系だし、男の和貴が来ても体型が目立たずにすむだろう。
 「スリップを着てからこれを着て、さらにニットのボレロを羽織れば、今の季節にはちょうどいいんじゃないかな。パンストも履いておいた方が寒くなくていいと思うよ」
 ファッションセンスという言葉とは縁の遠い和貴は、美輝言われるがままの衣裳を身に着ける。

 「ナチュラル系でいいけど、メイクもしとかないとね。できるだけ簡単にするから、大幡くんも自分でできるよう覚えてね」
 「え、どうしてさ?」
 「明日会社にスッピンで出てくるつもり?」
 そう問い返されればぐぅの音も出ない。
 昨日は立場を入れ替えた時点ですでに顔に化粧が施されていたからあまり気に留めていなかったのだが、今日の和貴はその過程をつぶさに観察するハメになった。
 「と、こんな感じかな。どう、覚えられた?」
 「えーと、たぶん」
 あまり自信はなかったが、一応何とかなるだろう。
 「それにしても……ちょっとメイクしただけで、結構違うもんなんだね」
 昨日の美輝の目ヂカラに重点をおいた愛され系メイクに比べると、かなり押さえめなのだが、それでも今の和貴の顔は、自分で見ても十分女らしく見えた。
 和貴は気づいていないが、眉の形が昨日の時点で整えてあることも関係しているのだろう。
 「あとは髪をブローしてっと……うん、大幡くんの元の髪が長めでよかったわ」
 本来なら先月床屋に行くはずのところを、忙しさにかまけてサボっていたたため、今の和貴の髪は襟足を隠すくらいの長さがあり、セットの仕方次第で女性のショートカットに見せることができるのだ。
 「はい、これで完成。すごーい、どこからどう見たって女の子だよ〜」
 自分で仕上げたクセに美輝が感嘆の声をあげるが、それも無理はない。鏡に映る和貴の姿は、彼自身の目にも「美人とは言わないまでもごく普通にその辺にいそうな20代前半の女性」に見えたからだ。
 「ねーねー、頬っぺに手を当てて、「コレがアタシ?」って言ってみてよ」
 「いや、言わないから! それより袖原さんも早く用意しなよ。俺はリビングで待ってるから」
 ブーブーと不満げな声をあげる美輝を寝室に残して、足早に居間へと歩き去る和貴。
 実は、美輝のツッコミが入らなければ、まさによく似たコトを鏡の前でやりかねなかったのは、彼の心の中だけの秘密だ。
 一方、美輝の方は5分もしないうちに寝室から出てくる。
 「よく考えたら、今の私は「大幡和貴」なんだから、お化粧する必要はないんだよね」
 昨日和貴が着ていた背広をノーネクタイで着崩しているのだが、着ているのが女性なだけあって、何となくお洒落に見える。
 「じゃあ、大幡家へレッツゴー!」
 無闇にテンションの高い美輝に辟易しつつ、和喜も玄関へと向かい、美輝が靴箱の奥から用意したスエードのブーツを履く。昨日のロングブーツと異なり、ヒールがほとんどなく、長さもハーフ程度なので履くのが格段に楽だったのは助かった。
 そのまま美輝と連れ立って美輝の部屋を出る。
 「あ、このバッグは大幡君が持ってないとね」
 確かに背広姿の(しかも他人には男に見える)美輝が女物のトートバッグを持っているのは不自然だろう。中味はそれほど入ってないらしく軽かったので、体調が不安な今の和貴にも負担にならない。

 そのまま、美輝のマンションをあとにして、和貴の部屋に着くまで特にアクシデントもトラブルもなかったのは幸いだった。
 「ふ〜ん、ここが大幡君の部屋かぁ。独身の男の部屋ってもっと散らかってると思ってた」
 「まぁね。昨日掃除したばかりだから」
 築4年・軽鉄モルタル造りのアパートで、8畳和室+キッチン2畳の和貴の部屋は、美輝のマンションと比べれば安さと静かさだけが取り柄だ。その分、掃除するのも楽だが。
 「じゃあ、早速だけどタンス開けさせてもらっていい?」
 「うん、どうぞ。女の子と違って、見られて困るものなんてないし」
 和貴の了解を得ると、美輝は本当に無造作に部屋の隅に置かれたタンスをゴソゴソ漁り出した。
 「スーツとズボンはコレと……Yシャツはこれ。下着とか靴下は下の段かな?」
 止める暇もなくタンスの最下段を開けて、トランクスやボクサーパンツを平然と手に取る美輝。
 「わわっ、そ、袖原さんっ!」
 かえって和貴の方が恥ずかしくなって慌てている。
 「ん? どしたの?」
 「どうしたって……そのぅ……」
 「ああ、コレ? 私、半年くらい前まで彼氏いたし、ウチに泊りに来た時に洗濯とかもしてたから、男物の扱いにも慣れてるんだよね」
 と、そこで言葉を切り、美輝は「いぢめっ子の表情」を浮かべる。
 「──童貞の大幡君と違って」
 「うぐっ!!」
 精神的なクリティカルヒットをくらって畳の上に崩れ落ちる和貴。
 「あ、やっぱそーなんだ。当てずっぽうで言ったんだけど」
 きゃらきゃらと笑う美輝を、和貴は横目で恨めしそうに睨む。
 「──俺って、そんなにモテないオーラ発してる?」
 「うーん、そうねぇ……顔も性格も決して悪くはないんだけど、草食系って言うか、どうにも押しが足りない感じ?」
 自分でも薄々気にしている欠点をハッキリ口にされて、和貴は凹む。
 「そんなコト言われても……今更性格なんて簡単に変えられないし」
 「ま、強引なタイプの女性とうまく噛み合えば何とかなるんじゃない? もっとも、完全に尻に敷かれることになるだろうけど」
 他人事なので、美輝はお気楽にアドバイスする。
 部屋の隅で横座りして畳にのの字を書いてる和貴を尻目に、美輝はテキパキと必要なものを選び出し、押し入れから見つけた手提げ紙袋に詰めている。
 「うん、二日分ならこんなものかな。大幡君は、とくにやっておくコトある?」
 「うーん……特には。ケータイも入れ替わっちゃってるみたいだし」
 そう、今朝になって気付いたのだが、ふたりが普段使用している携帯電話の方も、当然ながら入れ替わった服のポケットやカバンに入っていたのだ。
 とりあえず今は交換して着信記録などを確認しているが、明日出社する時は、それぞれ「袖原美輝」と「大幡和貴」にふさわしい方を持っていないと不自然だろう。
 メールなどについては、緊急の場合を除き、それぞれに相談してから返信することになっていたが、普通に電話がかかってきた場合は出るしかない。
 「ま、そのヘンは臨機応変に考えるしかないよね。じゃあ、外で何かお昼食べてから、私の部屋に戻ろ!」

 駅前のパスタ屋でランチを頼んだものの、健啖な食欲を見せる美輝とは対照的に、和貴の方は体調が優れないせいか一部を残してしまう。
 どうやら薬の効果が切れてきたらしいので、それからは寄り道せず、まっすぐに美輝のマンションに帰ることになった。
 美輝の部屋に着いたところで、ぐったりした和貴は、美輝にも薦められてまたパジャマに着替えてベッドで横になることになった。
 幸い、生理3日目ということもあって、3時間程うとうとしていれば、だいぶ楽にはなったのだが……。
 「ほ、ホントにしないとダメ?」
 「だって、大幡君、もう丸二日お風呂に入ってないでしょ? 明日は「袖原美輝」として会社に行くんだから、さすがに匂いとか気にしないと」
 「私の評判に関わってくるんだからね!」という美輝の主張き誠にもっともで、和貴としても風呂に入ること自体はやぶさかではないのだが……。
 「だからってコレは……」
 目の前に差し出されたプラスチックのスティックを、こわごわ見つめる和貴。
 そう。昨晩と同様、美輝は和貴にタンポンを使うよう提案(というか命令?)しているのだ。
 ──実は、以前と異なり、最近の女性は生理中もタンポン無しで風呂に入ることは珍しくないし、3日目で出血量もだいぶ収まっているとあってはなおさらなのだが、あえて美輝はこの生理用品を持ちだしていた。
 理由はもちろん「その方がおもしろそうだから♪」。
 「第一、本当に入るかわかんないし……」
 「じゃ、確かめてみましょ。えいっ!」
 ベッドに腰かけた和貴を、美輝はいともたやすく押し倒し、パジャマのズボンをショーツごとずり下ろす。
 「ちょ、袖原さんッ!」
 慌ててもがく和貴の抵抗をものともせずに、彼の下肢をグイと押し広げて身体を割り込ませ、その局部を覗き込む。
 (うーん、女の子をレイプする男性の気持ちがちょっとわかっちゃったかも)
 そんな倒錯的なことを考えながら、美輝は素早くアプリケーターの先端部を、じくじくと赤黒い血が染み出している部位──陰嚢と肛門の中間部あたりに押し付けた。
 不思議なことに、細いプラスチックのスティックはほとんど抵抗感なく飲み込まれていく。
 「ひはぁンッ!?」
 和貴の口から息が詰まったような甲高い悲鳴が漏れた。
 男である自分には何もないはずのソコに、確かに何かが入って来るのを、和喜は感じていた。
 痛みはない。むしろ、むず痒いトコロを巧みに掻かれているような心地良さが、かえって恐ろしい。
 (や……やめて……くれ……)
  このままでは、自分の男としてのアイデンティティが崩壊してしまいそうな予感を感じて、和貴は心の中で叫ぶものの、美輝の手は止まらない。
 外筒部がすべて和貴の体内に没したところで、さらに内筒を押し込む。
 「あ……あぁ……」
 和貴は自分の体内、いや「胎内」の奥に何か小さなモノが押し出され、それが水分を吸って徐々に大きくなっていくのを確かに感じていた。
 「はいっ、コレでOKだよ」
 キュポンッ!と軽い音ともに、プラスチックのアプリケーターが引き抜かれたところで、和貴は我に返った。
 「ひ、ヒドいよ、袖原さん!」
 「だって、大幡君じゃあタンポンの使い方なんてよくわからないでしょ。こういうのは「案ずるより産むが安し」、よ。それにちゃんと入ったみたいだし」
 美輝の視線の先、和貴の局部に目をやると、そこには、たしかに紐のようなものがふたつブラ下がっている。肌自体には穴など何もないので、接着剤で張り付けたようにシュールな光景だった。
 おそるおそる和貴が紐を引いてみると、身体の中にある「何か」が動くような感触がする。
 「あ、ダメダメ、せっかく入れたんだから。それは風呂から出たあと取り出す時に引っ張るのよ。
 ともかく、これで経血を気にせずお風呂に入れるはずだから。さ、行った行った!」
 替えの下着とネグリジェを持たされ、和貴は浴室に押し込まれる。
 「うぅ……なんか、身体の中に異物感がぁ……」
 顔を赤らめ、ブツブツ言いながらも、和貴はパジャマの上を脱いで、風呂場に入るのだった。

-つづく-
────────────────
というわけで、お着替え&初タンポン編。やり過ぎたかなぁ……。
次は、月曜出社編です。
351名無しさん@ピンキー:2011/03/19(土) 23:07:33.40 ID:k4lawP/H
GJ!
良い服のセンスしてます。
和貴もフィンガータイプのタンポンじゃなくて良かったですね。
慣れない人が使うと挟まってる感じが違和感強くて駄目だったりするみたいだし。
それで余計イライラしてくる訳で。
和貴は大丈夫な所みるとやおい穴が広いのか開発されてるかのどちらかですねw
352名無しさん@ピンキー:2011/03/19(土) 23:26:37.37 ID:k4lawP/H
この流れに乗って小ネタを投下。
最初の導入部分だけで続きはありません。
ごめんなさい。
本当は「ここはとあるお屋敷」をぽつぽつと書いているんですが、
キャラが和貴と美輝に被ってるので、こちらはそのうちに投下します。


353宿なし汚ギャルは電波系:2011/03/19(土) 23:29:03.56 ID:k4lawP/H


「ふーっ、面倒な」
おっと、つい声に出してしまった。
俺は高校教師をしている。
とは言っても片田舎の三流高校のだ。
そして今は平日の昼間だと言うのに町外れを流れる川沿いの鉄橋に来ている。
別にサボっている訳ではない。
この鉄橋下に高校生ぐらいの少女が居付いているらしいと学校に電話があったのだ。
なんでも昼夜度々に姿が目撃されているとか。
そんな事は警察に任せても良いはずなのだが、
地域振興のため地域と学校の密接な関係構築を図ると言うお題目にてこうして教師が駆り出されていると言う訳だ。
そして面倒な事にその鉄橋と言うのが道路からは遠く、歩かなければ辿りつかない場所なのだ。
今の時間は受け持ちの授業が無いとは言え、やる事は沢山ある。
その時間を余計な事に取られるのは甚だ迷惑な事だ。
その分は残業か持ち帰りになるだろうしな。
ま、愚痴っていても仕方がない、まずは確認だ。
その少女とやらは居るのかな?って居た居た。
黄色いダウンベストに原色系のロンTにピンクのサロペットスカート、
これまた派手なオレンジのネオンカラーロングスパッツにパステルカラーのハイカットスニーカー、
おまけに金髪の様な脱色した髪と水色とピンクの蛍光キャップが遠目にも目立っている。
サーフ系コーデのギャルの様だがこんな場所に居れば浮きまくっている事請け合いだ。
なんでこんな所に居るかは知らないが、さっさと補導するなり保護するなりして済ませたい所だな。
まあ、その前に尾崎先生に連絡だな。
尾崎先生と言うのは一緒に少女を探しに来た同僚だ。
どちらに居るのか分からないため反対岸の方を探しに行っている。
「あ〜もしもし、尾崎先生ですか?例の少女こちらに居ましたよ。これから話し掛けてみますので…。はい、お待ちしています」
さて、これでよし。
では、接触開始しますか。
354宿なし汚ギャルは電波系:2011/03/19(土) 23:34:01.83 ID:k4lawP/H


俺は鉄橋下へすたすたと近づき、少女の元へ寄る。
少女もこちらに気が付いた様だ。
「あ〜君、ちょっと良いかな?」
俺は努めて平然とした表情で話しかける。
「なんですかぁ?なにか用事ですか?」
この少女、見かけのよらず敬語を使えるようだ。
イントネーションはともかくとして。
「いや、こんな所で何をしているのかと思ってね」
「別に何もしてないですよ?ちょっと一人になってただけだし」
「何か考え事かい?」
「そうかなー?そうなのかも」
のれんに腕押しな答えだ。
少女を改めて見ると、全体的になんだかすすけている感じがするな
髪の毛もべたついた感じだし、そう思うと何だか臭う。
いや、確実に臭っているぞこの娘。
風呂入って無いんだろうな確実に。
顔はまあ、かわいい部類なんだが不潔が残念な娘と言った所か。
汚ギャル系なら重ね塗りメイクで酷い事になってると思いきや、意外な事にメイクはしていない様だ。
「もしかして流行りの家出だったりするのかな?」
「関係無いですよ。わたしの事じゃないですか?かまわないでほしいんですけどぉ」
拒否入ったな。
こっちだって仕事じゃなきゃかまわないんだが
「いや、関係無くないんだよ。実は僕は高校の先生をしていてね」
「先生なんですか」
「そう。だから放っておけなくてね」
「補導って言うのですか?わたしされる覚えないんですけどぉ?」
ギャルは派手な配色なネイルとおもちゃの様なライトイエローの何かのロゴが入ったバンクルを付けた右手を
顔の前でひらひらさせて拒否を示しているらしい。

355宿なし汚ギャルは電波系:2011/03/19(土) 23:34:50.09 ID:k4lawP/H


「補導とかそう言うのじゃないんだ。何か困っている事があるなら力になろうと思ってだね」
「わたし自分の事は自分でしますからいいですよぉ」
ここで引き下がる訳にはいかない。
まだまだ押しだ。
「話だけでも出来ないかな?そうだ食事でもしながらでどうだろう?」
「おごってくれるんですか?ナンパ?」
良し食い付いた。
家出ギャルは食べ物で結構簡単に釣れるって言うのは本当なんだな。
「ナンパと言うと不謹慎になるかな。僕は教師だしね。ただ君の親身になって助けになれたらと思っての事なんだよ」
「ふーん。そんなに言うんだったら、話しても良いですよぉ」
「本当かい?」
「ただしぃ、絶対に私の気持ちになってちゃんと聞いて下さいよぉ」
「ああ、約束する」
なんかあっさりだな。
今の娘って心変わりが早いんだろうか?
まあ、しめたものだ。
「じゃあ、私の事どう思いますぅ?」
「どうって、何か事情があってこんな所に居る女の子かな?」
「それじゃ次ね。先生は今の生活は充実してますぅ?」
なんだ質問攻めか?
まあ、会話の糸口だまずは向こうからの話に合わせて行くか。
「それは、まあ充実しているかな?」
「そうなんですかぁ、じゃあ、わたしの事かわいそうだって思います?」
脈絡もなくかわいそうだとか聞かれてもな。
さて、どう答えるか。答えは
「いや、そうは思わないよ」
「本当ですかぁ?」
「ああ、本当だとも」
「じゃあじゃあ、お願いなんですけど私と代わって下さい。良いですよねぇ?わたしかわいそうじゃないんだしぃ」
は?言っている意味が分からないぞ?
この娘はギャルじゃなくて電波な娘だったのか??
俺が混乱していると、ギャル電波が満面の笑みを浮かべ、そうかと思うと俺はその瞳に吸い込まれる様な感覚におちいった。
356宿なし汚ギャルは電波系:2011/03/19(土) 23:37:27.48 ID:k4lawP/H


眩暈にも似た視界のぼやけと共に浮揚感を感じた後、
意識を取り戻した俺は自分が自分ではない様な不思議な気持ちになっていた。
「今のはいったい?」
思わずあたりを見渡すと、そこに奇妙なものが、
それは俺の服を着たさっきのギャル電波だった。
「代わってくれてありがとうございますぅ」
ギャル電波はさっきの満面の笑顔をしたままに言う。
俺は訳が分からず手を額に当てようとしたのだが、視界に有り得ないものが飛び込んだ。
ギャル電波がしていたのと同じ派手な配色なネイルとおもちゃの様なライトイエローのバンクルだ!
慌てて自分を見下ろすと俺は先程までギャル電波が着ていたあの派手な原色のギャル服を着ている!?
「んな!? なんで俺がこんな服を??」
意識すると物凄い違和感だ。
恥ずかしさもあるが、着心地も悪い。
なんと言うかベトつくと言うかムレている感覚がするのだ。
特に靴の中が酷い、
水の中に靴を突っ込んでそのまま濡れたままにしている様なぐちょぐちょした感じと言えば伝わるか。
加えて臭いだ、垢と乾いた汗のすえた臭いがこの衣類から立ち込めるのだ。
「これはいったいどういう事なんだ?」
「だから、わたしと代わってもらったんですよぉ。わたしと立場を交換してもらって、
先生にはわたしとして問題を解決してほしいんですよぅ」
意味は分った。
だがそんな事がおきてたまるものか。
「根本先生お待たせしました」
まずいこのタイミングで尾崎先生が来た。
俺のこの格好をどう説明すればいいんだ?
「あ、尾崎先生。この格好はですね」
「ん?君は私の事を知っているのか?と言う事はうちの生徒なのか」
「え?尾崎先生なにを言っているのですか?」
尾崎先生の言葉に俺は戸惑う。
「まあ、そんな恰好をしていたら誰かわからないのは確かだ。君の名前は?」
尾崎先生は完全に俺の事をあのギャル電波として扱ってくる。
「名前?そう言えば名前はなんだっけ?」
「なんだ、記憶喪失のふりとかか?まあいい、とにかく一緒に学校まで来なさい。話はそれからだ」
言って俺の手を引く尾崎先生。
「尾崎先生も行きますよ」
「了解です」
俺の服を着たギャル電波に声を掛け、それに答えるギャル電波。
完全に立場が入れ替わっているようだ。
されるがままに歩かされる俺。
俺の立場になったギャル電波はニヤニヤとこちらを見ながら付いてくる。
このまま学校へギャル電波として連行されるのか?
一体俺はどうすればいいんだ?


〜ここまでです〜
357名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 01:17:14.66 ID:ut8cOmca
gj
ひとまずシャワーを浴びさせられて、女子制服を着る羽目になってしまうのでしょうか
358名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 08:41:46.17 ID:D9wi0ebV
>>344
>>353
両方ともGJ!

最近は新しい書き手が増えて充実してるなぁ
359名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 14:43:40.90 ID:iiR1zcPi
しょうもない間違いに気が付きました OTL
最後の所で尾崎先生自分に行きますよって声かけてる…。
見逃して下さい。

>>357
GJありがとうございます。先生が保健室の予備に置いてある女子の制服着させられるのも良いですね。
>>358
GJありがとうございます。スレが伸びるよう頑張ります。
360日常な非日常の人:2011/03/20(日) 16:20:53.33 ID:b4mI4rhc
>351
お褒めにあずかり、恐悦至極!
色々ネットでイメージに近い服装を探しながら描写してます。
言われてみれば、確かに「やおい穴」だ!


>宿なし汚ギャルは電波系
これはユニーク、発想の勝利かな。乙です。今後の展開に期待。
(個人的には汚ギャルはイマイチ勘弁な属性ですが、お話としてはおもしろそう)
制服を着せられる展開とかはソソられますね。

自分としては、「ここはとあるお屋敷」の続きがすごく読みたいです。
そもそも、前スレ〜現スレにかけて連載・完結した「次期当主はメイドさん」を書いたのも、
「ここはとあるお屋敷」の影響が大きいですし。


というワケで、「ありふれた日常if」の続き、投下させていただきます〜
 月曜日の朝8時。
 とあるマンションの一室から一組の男女が出て来て、駅へと向かっている。
 学生も社会人もおそらく一週間で一番憂鬱になるであろう月朝にも関わらず、はつらつとした元気を周囲にふりまいている男性と、彼に引っ張られるようにして恥ずかしそうに歩いている女性の組み合わせは、周囲には微笑ましい光景と映っているようだ。
 ──もっとも、そのカップル(?)の活発な男性に見える方が本当は女性で、控えめな女性にしか見えない方が実は男性であることては、皆さんもよく御存じであろう。
 そう、言うまでもなくこのふたりは袖原美輝と大幡和貴である。無論、不思議なネックレスの力で、今は本人達以外には美輝は「和貴」に、和貴は「美輝」に互いの容姿が入れ違って見えるわけだが。
 「和貴」な美輝は、昨日和貴のマンションから取って来た背広姿なのだが、ライトグレーの上着にサンドベージュのスラックスを合わせ、薄水色のカッターシャツに黒と赤の格子縞のニットタイを締めている。
 会社に行くにしてはやや砕けた格好だが、今日は社外の人間と会う予定はないので問題はないだろう(実際、会社に着いたところ、いつも上下同じ背広に地味な色のネクタイを締めている本物の和貴と異なり、「センスがいい」と好評だったりする)。
 対して、「美輝」の立場となっている和貴の方は、膝丈の白い七分袖ワンピースの下にオーキッシュブラウンのサブリナパンツを履き、その上から大きめのストールをポンチョ風にまとっている。足元はかかとが低めな黒のチャイナシューズだ。
 美輝のワードローブの中で、できればボトムをスカート以外にしたい和貴が選んだ苦肉の策なのだが、縮れコットンの素材のワンピースがフェミニンな印象を醸し出しており、結果的に普段の美輝より淑やかな雰囲気なのは皮肉だった(和貴は気づいてないが)。
 「うぅ……ホントに大丈夫かなぁ」
 「もうっ! 往生際が悪いわよ、大幡君」
 これまでと違い、よく見知った会社の人々相手に「美輝」を演じなければならないとあって、和貴はどうにも及び腰なのだが、美輝に叱咤されつつ、結局は無事8時半過ぎに会社に着いた。

 幸いと言うべきか、和貴たちの会社は9時半始業なので、職場にまだほとんど人はいない。
 辺りに人目がないことを確認してから、美輝は和貴を女子更衣室へと押し込んだ。
 「ほら、覚悟を決めてチャッチャと着替える!」
 さすがに和貴も現状は理解しているので、溜め息をつきながら「袖原美輝」のロッカーを開けて、会社の女子制服に袖を通し始めた。
 土曜日はこの姿でいた時間が短かったため、あまりそう思わなかったが、改めて自分が着るとなると、ボトムがタイトスカートのこの制服はいささか気恥ずかしい。
 それでも、この二日間で女物の衣類に幾分慣れたせいか、さして戸惑うことなく着替えることはできた。
 数分後、更衣室近くの自販機前で缶コーヒー片手に待っていた美輝は、もじもじしながら近寄って来る、和貴の姿に相好を崩した。
 「お、ちゃんと着替えられたみたいだね。うん、偉い偉い。ブラウスのリボンも……曲がってないか。残念、「タイが曲がっていてよ」をしようかと思ったのに」
 「か、からかわないでよ、袖原さん」
 和貴の反論を意に介さず、そのOL姿を頭のてっぺんからつま先までジロジロ凝視する美輝。
 「うーん、お化粧も崩れてないか。でも一応、トイレで口紅だけはひき直した方がいいかな」
 「えっと……それって、女子トイレで?」
 「当然でしょ。それとも「袖原美輝」を男子トイレに忍びこむ痴女にしようっての?」
 美輝の視線は、もしそんなコトしたら、「大幡和貴」もタダじゃ済ませないわよ……という脅しを言外に語っていた。
 「──ハイ、ワカリマシタ」
 となれば、和貴としてもほかに選択肢はなく、「人生初体験の女子トイレ」でメイクを直すハメになるのだった。

 さて、その後、しばらくして他の会社の者も出社し、始業時間となったワケだが、いざ仕事を始めてみると思いの他、トラブルもなくスムーズに時間を進めることができた。
 コレは、昨日美輝が言っていた通り、ふたりが同じ部署で互いの業務をおおよそ呑み込んでいるからだろう。
 美輝の方は経理の仕事は土曜で一段落したため今週頭はほぼ一般事務だけだし、和貴のほうも外回りの営業ではなく内勤の事務方の人間だ。概要さえあらかじめ教え合っておけば、ボロが出ない程度に仕事をこなすことは十分可能だった。
 いつもなら美輝の後輩として何かと彼女に話しかけてくる女性社員の小杉明子も、幸いにして今日は休みのようだ。
 一番問題になりそうなトイレについて、小心者な和貴も一度入ったことでふんぎりがついたのだろう。昼前に一回堂々と女子トイレを使っていた。
 美輝に関しては言わずもがな。むしろ立ち小便ができないことをコッソリ残念に思っているくらいだ。
 問題は休み時間のそれぞれの社内の友人たちとのコミュニケーションだが……。
 「あ、『袖原さん』、よかったら今日、お昼一緒に行かない?」
 「そ…『大幡くん』? えっと……うん、いい、わよ」
 こうして「和貴」な美輝が「美輝」な和貴を釣れ出すことで、長時間のおしゃべりを巧く回避していた。
 「でも、よかったの? たぶん、アレだと周囲の人に勘違いされたと思うけど……」
 会社から少し離れた場所にあるが「美味しい」と評判のうどん屋に入り、向かい合わせのふたり席に座って注文をしたあとで、和貴が美輝に囁いた。
 「ん? 何で?」
 「いや、なんでって……アレだと、袖原さんが俺に──いや、今は逆なのか。「大幡和貴」が「袖原美輝」に気があるように見えるだろうし、「袖原美輝」もソレを嫌がってない風に見えると思うんだけど」
 「あはは、お昼ご飯くらいで大げさだなぁ。でも……私は別に構わないけど」
 チラリと美輝から流し目を投げかけられて、一瞬ドキッとする和貴。
 男装しているにも関わらず(あるいはだからこそ)、普段のサバサバした印象の彼女とは、少し異なる不思議な色気が、スーツ姿の美輝にはあった。
 「か、からかわないでよ……」
 「あら、別にからかってないわよ。言ったでしょ、「顔も性格も決して悪くはない」って。
 反面、頼りない感じがマイナスだったけど……でも、今の「美輝ちゃん」な和貴くんは可愛いし、イイ線行ってると思う」
 本来なら、いい歳した成人男性に対して「可愛い」というのは褒め言葉ではないし、怒ってもいいところなのだろうが、なぜか胸が熱くなるねような感覚を和貴は覚えていた。
 「か、可愛いなんて、そんな……」
 ドギマギして目を逸らす和貴を、愛でるような眼差しで見つめる美輝。
 「フフッ、そういう初心(ウブ)なトコロが特にね。とても、同い年とは思えないなぁ」
 何か言い返そうと和貴が言葉を選んでいるあいだに、折悪しく注文していた品が届く。
 「いっただきまーす!」
 「──いただきます」
 天ぷらうどんと焚き込みご飯のセットを美味しそうにパクパク頬張る美輝と、小盛りのざるそばをちゅるちゅるすする和貴の様子は、本来の男女関係からすると逆のようだが、今の立場的にはふさわしいだろう。
 「にしても、和貴くん、それだけで足りるの? 朝もパン一枚だったし」
 「生理の影響かな。あまり食欲ないんだ」
 4日目とあって、下腹部の痛みや出血はほぼ治まっているが、体調自体は万全とは言い難い。元々大食漢とはほど遠いが、どうやら和貴は身体の調子を崩すと格段に食欲がなくなるタチのようだ。
 「美輝さんは、よく食べるね」
 「えへへ、まーねー。大丈夫、私は食べても太らない体質だから」
 多少嫌みを込めた和貴の言葉にも、美輝は悪びれずに世の女性から殺されそうな台詞を吐く。
 結局そのあと午後の仕事に関して簡単な確認をしたところで、昼休みも終わりの時間帯となり、ふたりは慌ただしく会社へ戻り、それぞれの立場での仕事に精を出すことになるのだった。
 午後から夜にかけても大きなトラブルはなく、このまま無事に終わるかと思われたのだが……。
 「相談アリ・資料室へ」というメモを見て、会社の資料室にやって来た和貴に対して、美輝が意外なことを聞いてきた。
 「えっ、仁科課長に飲みに誘われた!?」
 「うん。これって、断らないほうがいいよね?」
 どうやら「大幡和貴」している美輝に、上司から飲みの誘いがあったようだ。
 「そりゃあ、同僚とか単なる先輩ならともかく、課長の誘いはなぁ……袖原さんて、お酒強い方だっけ?」
 「ま〜かせて! ザルとまでは言わないけど、私けっこうウワバミよ」
 その言葉を信じて、代役を任せるしかないのだろう。
 「でも、仁科課長って、家がウチと近いから、たぶん帰りに一緒のタクシーで送ってくれると思うんだけど……」
 「そうなんだ。うん、でも大丈夫。昨日行ったから、和貴くんの部屋はちゃんと覚えてるから」
 「ええっ!? もしかして美輝さん、そのままウチの部屋に泊まるつもり?」
 「ん? 何か変? 今の私は「大幡和貴」なんだから、むしろその方が普通でしょ。だいたい昨日一昨日と私の部屋に泊っておいて、自分は拒否するつもり?」
 ジロリとニラまれで慌てる和貴。
 「あ、いや、美輝さんがいいなら別に構わないんだけどさ。じゃあ、俺も今日はウチの部屋の方に帰っておこうか?」
 「それじゃあ、明日の着替えとかに困るでしょ。だーいじょーぶ。部屋に泊まるのはお互い様なんだから、悪いようにはしないって。Hな本見つけても知らないフリしたげるから」
 結局、至極筋の通った美輝の言い分に、和貴も従うしかないのだった。

-つづく-
──────
出社初日は以上です。フェチっぽい嗜好があまり仕込めなかった……。
次回は最終回……の予定ですが、もしかしたらエピローグ部分がハミだして残るかも。
365名無しさん@ピンキー:2011/03/21(月) 11:42:56.21 ID:g6ReF6ti
続き期待
366名無しさん@ピンキー:2011/03/23(水) 17:28:49.57 ID:VxGRtDMT
幼女と逆転してみたいな
俺の立場になった幼女にセクハラとかされたい
367名無しさん@ピンキー:2011/03/23(水) 19:02:00.72 ID:ZBHp75la
>>366
うまく書けるか否かではなく、妄想を形にする意思が尊いのです。
>339みたく、概要だけでも、その妄想(ネタ)、さらしてプリーズ!
368名無しさん@ピンキー:2011/03/23(水) 21:52:56.88 ID:VxGRtDMT
ひょんな事から小学校低学年くらいの妹と立場が逆転してそのまま生活することに
服のサイズや部屋の位置も全部逆転
兄の立場を利用した妹から事あるごとにスカートめくりやおしり叩かれたりとかのセクハラを受ける

妹の立場だから立ちションなんかすると大目玉食らったり
逆に兄の立場になった妹は普通に立ちションしないといけない
逆転したままの状態でプール行たりとか
369名無しさん@ピンキー:2011/03/23(水) 22:55:32.09 ID:0Y86rkBl
このスレは自分以外の人間の立場が入れ替わったりってのはスレ違い?
自分の父親が憧れの同級生になったり自分以外の水泳部の男子と女子が入れ替わったりみたいな。

まあ書くわけじゃないけど
370名無しさん@ピンキー:2011/03/23(水) 23:34:58.41 ID:VxGRtDMT
アリだと思うが
371名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 00:06:03.55 ID:w7Y4r68m
>>368
いいなぁ、ソレ。
お兄ちゃん(男だよね?)の方は何歳くらいなんだろう? 中学生?
あまり歳が離れていると兄&妹ってあんまし干渉しあわないので、
個人的には、妹:小3、兄:小6くらいがイイ気がする。
思春期突入中の兄と、まだまだおこちゃまな妹。その立場が入れ替わったら……。

>>369
普通にアリだと思いますよ。
ふたりの立場入れ替わりを、第三者としては自分だけが知ってるってのもイイですな。
大体そういう時って、入れ替えの首謀者な気もすめけど。

それでは、「そして日常な非日常へ」の続き、投下させていただきます。
 「お、お先に失礼しまーす」
 午後8時過ぎ。なぜか少し申し訳なさそうな顔をした女子社員(の格好をした和貴)が、未だ会社残っている面々に挨拶しつつ、会社を出ようとしていた。
 「お、袖原さん、お疲れさん」
 「おつかれ〜」
 快く声をかけて見送ってくれる残業社員達。
 これが「袖原美輝」ではなく大幡和貴なら、こんな早く(と言っても就業時間はとっくに過ぎているのだが)に帰ったら嫌みのひとつも言われたかもしれない。
 「美輝」のフリをしている和貴も、もう少し残ろうかとは思っていたが、本物の美輝に「生理で辛い……ってことになってるし、あんまり遅くまで残らないこと」と釘を刺されているので、仕事が一段落したのをみはからって退社することにしたのだ。
 ちなみに、「和貴」になっている美輝の方は、7時前に課長に連れられて得意先との打ち合わせに出かけている。今日は、そのまま飲み明かすつもりなのだろう。
 (美輝さんの酒癖って、どんなだったかなぁ……)
 そんな事を考えつつ、会社を出て駅へと向かう和貴。普段の和貴はJRなのだが、美輝の部屋は私鉄沿線にあるので、最寄り駅も乗る電車もまったく違う。
 こうしていると、改めて自分がまったく異なる立場の人間になっている(正確には、その人間の立場に置かれている)ことを、しみじみ痛感する。
 しかも、今夜はその相手の部屋でひとり過ごさないといけないのだ。
 持ち主本人の了解は得ているとはいえ、なんとも落ち着かない気分だ──少なくとも、その電車に乗る前の和貴は、そう考えていたのだ。
 ところが。
 普段と帰宅時と異なり、人の多い電車に詰め込まれて揺られる。一応生理はほぼ終わったとはいえ、まだ万全でない体調の和貴にとって、この帰宅ラッシュは少々酷だった。
 さらに、偶然かもしれないが、お尻のあたりを誰かに触られているような……。
 (痴漢!? いや、まさかなぁ……)
 しかしながら、今の自分は、周囲の人間にとっては、女らしい服を着た若い女性──「袖原美輝」にしか見えないのだということを思い出し、背筋を怖気が走る。
 幸いその直後に電車が下りる駅に着いたため、真相を追求する間もなく、急いで「美輝」は電車から降りて、足早にホームの階段を駆け降りた。
 (あ〜、気色悪い……)
 満員電車に乗る度に……ということはないだろうが、それでもあんなメに遭う危険性がある女性は、本当に大変だな、と思う。
 同時に、そんな卑劣な真似をする男がいること──そして、自分もまた同じその男であることが、和貴はつくづくイヤになった。
 (ふぅ……なんか、外で夕飯食べていく気分でもないなぁ。角のコンビニで適当にご飯買って、さっさと部屋に帰ろ)
 溜め息をひとつ漏らして、トボトボ歩き出す和貴は、だから気づいていなかった。
 ──自分が今、ごく自然に帰るべき場所として「袖原美輝」の部屋を思い浮かべたことに。
 ──一度も入ったことのないはずの美輝の家の近くのコンビニの場所と、その品揃えまで思い浮かべられたことに。
 「家」に帰った「美輝」──和貴は、いまいち体調の優れない身体を引きずりつつ、部屋着に着替えると、ほとんど惰性でテレビをつけ、それを見ながらコンビニで買って来たおにぎりと惣菜を食べた。
 食べ終えると、とくにおもしろい番組もやっていないので消し、風呂を沸かす。
 準備が出来るまでの手持ち無沙汰な時間は、適当な女性週刊誌を見てつぶした。
 「ピローン!」と風呂が湧いたアラームが鳴ったので、そのまま寝間着と下着を用意して、お風呂に入ろうとして……自分がまだ化粧を落としていなかったことに気づいて、慌ててシャンプードレッサーに向かってメイクを落とし……。
 鏡の中の顔を見て、自分がやってることに、はたと気づく。
 「な、何やってんだ、俺……」
 別段、これと言って変わったことをしていたワケではない。ごく当たり前の日常的な暮らしを営んでいただけだ。
 ──ただし、大幡和貴ではなく、「袖原美輝」としての。
 「くそぅ……なんだかんだ言って、この3日間で結構慣れちゃったのかなぁ」
 元に戻っても女っぽい行動とったりしたら、シャレにならないのだが……。
 「ま、まぁ、女性の立場での暮らしも、明日までなんだ。もぅ大丈夫だよな」
 そう自分に言い聞かせるように呟きながら、風呂に入る和貴。
 昨日、無理矢理風呂に入らされた時の「指導」が効いているのか、いつものようなカラスの行水ではなく、ややぬるめのお湯に、きちんと肩まで浸かってリラックスする。
 身体の芯に、ほんの僅かに残ったダルさがお湯の中に溶けていくように気持ちよかった。
 その幸福な気分のまま、ボディシャンプーとスポンジで全身の肌を磨きあげ、頭髪もシャンプーとリンスをたっぷり使って丁寧に洗う。
 風呂から上がった和貴は、ほとんど無意識に胸を隠すようにバスタオルを巻いた格好のまま、シャンプードレッサーに向かって、眉毛と顔の無駄毛の状態をチェックする。
 元々体毛は濃くない和貴だが、不思議なことに例のネックレスをしてからは髭もまったく伸びていないようだ。化粧水や乳液で手入れしているせいか、つるんとした肌を保っている。
 眉毛のほうは少し不揃いになっていたので、何本か抜いて形を整える。
 鏡に映る自分の顔の、細く弧を描く眉を満足げに見て……再び和貴は我に返った。
 「いや、だから、そこまでする必要ないって!」
 大丈夫だろうか? しかし、土曜日に立場が入れ替わった時は、いきなり和貴の眉も細く整えられていたのだ。そう言えば、昼間うどん屋で見た「和貴」してる美輝の眉は、いつもより太かった気がする。
 それから考えると、明日の夜、ふたりが元に戻れば、この整えられた眉の状態は、美輝の方に移行するはずだから、何も問題はないはずだ。自分は、美輝が行うべき労力を肩代わりしてやっただけなのだ、ウン。
 素早くそう理論武装すると、和貴はさっさと寝間着に着換え、手早くフェイスケアを済ませる。
 (これも、美輝さんの代わりにやってるだけ……あくまで、仕方なく……)
 手入れ後の肌の気持ちよさに気づかないフリをしつつ、念のためピルを水で飲み下してから、今夜は早々に寝てしまうことにした。
 ベッドに入ると、この3日間で慣れ親しんだアロマオイルの香りと、おそらく美輝のものであろう女性らしいほのかな匂いに包まれて、早速眠くなってくる。
 なんだかんだ言って、慣れない「袖原美輝」としての行動(えんぎ)で、緊張してたのかもしれない。
 だが、夢の中までは、自分を偽る必要はない。
 和貴は、ゆっくりの睡魔の腕に囚われていった。

 ……
 …………
 ………………

 その日の夢で、和貴は、短大に入り、大学の授業の傍ら、テニスサークルや合コンに精を出す女子大生の生活を体験することになった。
 時には女友達と一緒に海に遊びに行き、時には合コンで知り合った彼氏とデートする。
 もっとも、その時の彼氏とは長続きせず、キスまで止まりで別れてしまったが。
 2年後、大手の入社試験は全滅し、受かった中で給与面でいちばん条件の良かった今の会社へ就職。
 初出社の日、制服を着て挨拶回りをしているところで……朝になり、目が覚めた。
 目覚めた時の体調は、昨日までと異なり気分爽快だったが、何か大切なことを忘れているような気がして、和喜は首をひねった。
 (確か……ヘンな夢を見たような気がするんだけど……)
 どうしてもその夢の内容が思い出せない。
 とは言え、今日は平日だ。いつもより早めに目が覚めたからと言って、あまりゆっくりしている暇はない。
 思いだせない夢の記憶を頭の隅に追いやると、和貴はベッドから起き上がって、テキパキと着替え始めるのだった。

 #すみません、どう転んでもあと一回で終わらないことに気付き、開き直って、逆に描写を念入りに。たぶん、さらにあと2回くらいかかりそうです。
376なりきらされる世界:2011/03/24(木) 06:20:08.79 ID:XJHzlQrN

「じゃあ、このもんだいは川上さんにやってもらいますね」
あてられた。
「はい」
返事をし、教壇へ向いチョークを受け取り黒板に答えを書く。
拙い字。
もっとまともな字が書けたはずなのに。
「はい、せいかいです。ちゃんとくり下げが出来てますね」
頭を撫でられた。
どこにでもある様な小学校一年生の算数の授業風景。
それはさも当たり前のように。
だが違う。
違うんだ。
教壇に立っている人物は先生か?
先生だとして、それはサイズの合わない大人の服を着た幼女がそうなのか?
身体に合わない女の子の服を着こんでいる自分は本当に女子児童なのか?
おかしい。
おかしいはずだが、世界がそう望んでいるが如く逆らう事は出来ない。
ただ演じる事。
そうせざるを得ない。
サイズの合わない大人の服を着た幼女に頭を撫でられ嬉しがる女児服を着た男。
異様な光景なはずだ。
しかしこの教室はそれに留まらない、とても小学一年生に見えない者たちが老若男女と席に座っている。
年相応の子がいても男児が女児の服を着ていたり、その逆もある。
こんな混沌とした状況であるにかかわらず、その事で騒ぎ立てるものは誰一人として居ない。
混沌の中で保たれる平穏。
そして、この異常な状況は何もこの教室この学校だけの事ではない。
いつの頃だったか、まだ自分が自分であった頃。
世界は変わった。
突然自分と他の人間の存在が入れ替わってしまった。
自分は自分のままなのに存在が他の人間になってしまう。
おかしい筈なのに自分は入れ替わってしまったその人になりきってしまうのだ。
心では自分は違う人間だと思いつつも。
他の人も同じか解からない。
なぜなら、その事を尋ねる事が出来ないから、いくら思おうが行動に移せない。
ただこの異常な出来事を享受し日々の営みを続けるだけ。
入れ替わりは1回だけで終わる訳ではない。
挨拶を交わした時、顔を合わせた時、すれ違った時、人と人が出会う時にそれは唐突に起こる。
もう自分は元の自分の名前さえ思い出せない。
いまは川上愛美と言う小学一年生の女の子だと言う事は解かるのだが…。
それすらも次の瞬間にはどうなっているのか解からない。
次はどんなに人物に入れ替わって演じる事になるのか。
人々は入れ替わりを繰り返し、この混沌は蔓延していると言うのに世界は以前と変わらぬ在り様を保つ。
混沌の中の秩序に自分たちは抗う事は出来ない。
それがこの世界の意思なのだろうから。
いまこの世界は不条理に満ちている。

377名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 06:21:05.69 ID:XJHzlQrN
どうも、朝活して見ました(?)ヘボ投稿者です。
小ネタです。
今回は独白っぽくして見ました。
なので、このスレ的においしい描写は無いに近いです。
おいしい描写のある体験記編もいつかは。
こんな世界に住みたい人はいますか?

>>366
その望みに近いもので叶えましょうか?
SSで。
ただダークになるかもしれませんがよろしいです?( ̄▽ ̄)ニヤリッ


>『そして日常な非日常へ 〜ありふれた日常if〜』
(*^ー゚)b グッジョブ!!
和貴はおちましたね(両方の意味で)。
袖原さんから何気に美輝さんに呼び方変えてますし。
草食系男子は女子を下の名前でなかなか呼べないので、
下の名前で呼ばせるようにするとおち易いと何かで読んだような。
でもそこじゃなくて、このお話の流れですとあのルート決定です?
わくわくしながら続きお待ちしています。

ちなみにギャル電の話は、男女の入れ替わりでギャップがあってフェチ的要素があればと書いただけですので。
人為的な入れ替わりものの理屈の定番『相手の身になって考える為、相手と入れ替わる』をしただけです。
褒めて頂いて光栄ですが発想の勝利とかそんな大それたものではないですよ。
汚ギャルは狭いフェチをつきすぎたかとは思いますが(^_^;)
378名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 22:03:59.82 ID:RU88XrCI
>>377
乙です。ただ、376は、SFとしてはよさそうですけど、萌えるSSにするのは難しいかもと思ったり。

366設定の話を実現されるなら、個人的には超期待です。

拙作へのgjもどうもです。「非日常」が終わったら、私も「替玉お断り」(書きかけの、1歳差兄妹入れ替わり物)再開します。
379名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 22:09:06.25 ID:hCzy+W+2
>>368
ステキ!
個人的には年齢差がかなりある兄妹だとさらにツボ

>>372
GJ!
じんわりとなじんでるのがいい感じであります

>>376
なんとなく「ミスキャスト」を髣髴させます
確か掲示板だかに掲載された2がこんな感じだったなぁ、と
380名無しさん@ピンキー:2011/03/27(日) 02:45:08.55 ID:ml71hbS0
377で書き込んだ通りロリもの書いてみました。
ただ要望と違って幼女じゃ無く女児です。
あと、書いてみたらSSじゃなくなってた。
いつもお目汚しですいませんがよろしくお願いします。
381ゆあ・ゆうじぁりー:2011/03/27(日) 02:50:51.47 ID:ml71hbS0


自分はロリコンだ。
彼は常々そう公言して憚らない。
それをオタクのキャラ作りとして捉えるか、
変態呼ばわりして遠ざかるかはその言葉を受け取る人さまざまである。
そしてそんな彼が今ご執心なのが、8歳になる姪の結愛(ゆあ)だ。
結愛の母である彼の姉は、オタク趣味でロリコンだのとのたまう彼に対し良い感情をもつ訳もなく、
さりとて強く拒絶しない程度で自分の娘を遠ざけている節がある。
だが結愛の事を猫可愛がりする叔父の彼を当の結愛は好いており、
おじいちゃんとおばあちゃんの所に行くという名目で度々訪れている。
そして今日も結愛は学校帰りに遊びに来ていた。
「悠二おじちゃん遊びに来たよ〜」
部屋のドアを開けて結愛が姿を見せる。
「おお、結愛ちゃんいらっしゃい」
満面の笑みで結愛を迎える青年の名は悠二。
ロリコンと公言して憚らない彼、その人だ。
「よく来たね。結愛ちゃんに良いものをあげよう」
言って取り出したのは、女の子向けアニメキャラのビニール製ナップサックだ。
中はお菓子がつまっている。
「わぁスイートプリキュアだ。やったぁーありがとう悠二おじちゃん」
受け取り喜びはしゃぐ結愛。
結愛はこのアニメが大好きだ、
悠二も心得ており近所には無いものをこうしてわざわざネット注文で取寄せたりしているのだ。
結愛のためのリサーチは抜かりがない。
「結愛ちゃん、プリキュアオールスターズDX3の映画観るかい?」
「え?見たい見たい」
今度はアニメで釣る。
実はこの映画は劇場公開中の作品で、まだDVDになどになってはいない。
では何故映像があるのかと言えば、要は違法なものなのだ。
犯罪であるのだが、結愛に好かれたい悠二はそれに構わずダウンロードをしたのである。
「じゃあ、結愛ちゃんこっちにおいでよ」
悠二はノートパソコンを床に置くとソフトを起動させる。
そして胡坐の上に結愛を座らせると悦に浸るのだった。
結愛も真剣にアニメに見入っている。
382ゆあ・ゆうじぁりー:2011/03/27(日) 02:51:31.47 ID:ml71hbS0


「(うぉ〜俺は今猛烈に幸せを感じている)」
声には出さないが悠二は萌えまくっている状態だ。
さり気無く結愛の頭に手を置いたりしている。
撫でると結愛の気が散るのでそれはしない。
「(妖精?いや天使だ。天使が俺の膝の上に居る)」
悠二の弛緩したニヤケ顔は真剣にアニメに見入っている結愛には見えないのは幸いだ。
そしてアニメも中盤に差し掛かった頃だ。
突然ノートパソコンが変調をきたしたのだ、画面がフリーズしビープ音が鳴っている。
「あー止まっちゃったぁ」
残念そうな声を上げる結愛。
悠二は焦り結愛を膝の上から下ろす。
「なんだ固まったか?ごめんな結愛ちゃん、直ぐに直すから」
強制終了をさせようと電源を長押しするのだが反応がない、
ビープ音はいつまでも続き苛立ちを掻き立てる。
ノートパソコンなのでコンセントを抜くと言う荒業も使えない。
「このっ」
苛立ちに任せキーボードを闇雲に押すが効果の程は無い。
がっかりしている様な結愛の表情に悠二はますます苛立ちを募らせる。
そしていよいよもってバッテリーを取り外そうとしたその時、
鳴り響くビープ音が奇妙な旋律を奏で出した。
「なんだ?」
異変はそれだけではない、
モニターより靄の様なものが広がりだし部屋全体を包みだしたのだ。
「げっ!煙でたか?」
「大変だぁ火事だよ」
2人は慌てて声をあげたのだが、
靄はさらに広がり危険を感じた悠二が結愛を抱きかかえ逃げようとする。
だがその靄は急に収束したかと思うと小さな球体となりボンッと音を立て消えた。
383ゆあ・ゆうじぁりー:2011/03/27(日) 02:59:59.71 ID:ml71hbS0


そして、靄が消え去りそこにあったもの、
それはファンシーなマスコット的な何かだった。
『やあ、ボクの名前はペルペル。魔法使いだきゅん』
そしてそれは言葉を話した。
「うわぁ〜かわいい〜」
結愛は無邪気に喜んでいる。
『お願いを叶える為にやってきたのだきゅん』
犬なのかウサギなのか?その容姿はぬいぐるみとしか言いようがない。
『さあ、願いを言うのだきゅん』
しかもこのきゅんきゅん言うたれ耳ウサギは願いを叶えると言う。
オタクの順応性と言うのか、性と言うのか悠二はすぐにその言葉に反応する。
「ならば叶えて貰おう!世界をこの手に!今こそロリの帝国を!! ジーク・ロリ!」
アホだ、アホが居る。
『お前の願いは受け付けてないきゅん。お願いできるのは女の子限定だきゅん。
そこの女の子、お願いを言うのだきゅん』
言われ結愛は瞳を輝かせる。
「あたし?うーんとね、結愛はプリキュアになりたい」
『ゴメンだきゅん。残念ながらそれは叶えられないきゅん』
「なんだ?いかにも魔法少女のマスコットな姿してるくせに出来ないのか?」
『仕方がないきゅん。ペルペルの魔法は存在のエネルギーを扱うものだきゅん。
だからこの世界に存在しない力は与えられないきゅん』
「使い勝手悪いな。じゃあ、もしアイドルになりたいとかお姫様になりたいとかだったら出来るのか?」
『それなら出来るきゅん。この世界に実在する存在なら大丈夫だきゅん』
「だってさ、結愛ちゃん。」
「えー、プリキュアは本当にいるんだよ」
結愛はプリキュアが本当にいると信じている。
悠二も結愛のそんな夢を壊すのは忍びないのでそこは否定しないでおいた。

384ゆあ・ゆうじぁりー:2011/03/27(日) 03:00:31.30 ID:ml71hbS0


「結愛ちゃん、大金持ちになりたいとかお願いしたら?」
『お前の卑しく浅ましい矮小な願いを押しつけるなきゅん』
「こいつ結構毒舌系なのな。まあ、今の流行りと言えば流行りなんだが」
『そんなの知らんきゅん。勝手に定義付けるなきゅん』
悠二はずいっと顔をペルペルに近づけると値踏みするようにじろじろと観察する。
「可愛いくファンシーな姿で毒舌はかなりのポイントだ。
おまえ女子受けをかなり意識したキャラ作りしているな」
『お前と一緒にするなきゅん』
「しかしだ、何故に語尾がきゅんなのだ?
ペルペルという名前からしてそこはペルと付けるべきだろう?」
悠二的にそこは重要なポイントらしい。
『大きなお世話だきゅん。語尾はアイデンティティとして大切な所なんだきゅん。
お前なんかにとやかく言われる筋合いは無いんだきゅん』
いきなり現れ願いを叶えるなどのたまう不思議生物に対し、
物怖じせず応対する悠二はやはり普通ではない。
そんなやり取りをしている中、
結愛は何かを考えていたかと思うとペルペルの側に近付きそっと顔を寄せた。
「ねえねえ、ペルペルお願いの事なんだけどいい?」
言って小声でごにょごにょと耳打ちする。
『解ったきゅん。そのお願いなら大丈夫だきゅん。ちょうど良いのがそこに居るきゅん』
言う悠二を見るペルペルの目が怖い。
「な、なんだその目は?まさか生贄にする気か?」
『いたいけな女の子の願いを叶えるため協力するのだきゅん』
ペルペルが何やら呪文を唱え短い手をかざすと悠二と結愛の周りに紋様文字の様な陣が浮かび始める。
「ぬを、立体複合魔方陣だと!? ハイレベルな術式をするとは!」
オタクはと言われる人種はしばし普通の人には解らない大声を上げるものだ。
悠二の言うそれが正しいのか解からないが、
周りの紋様は悠二と結愛を包む様にどんどん増え膨張して行く。
『マンナズ ペルペル!』
ペルペルの呪文が唱え終ると同時にそれは集束し、
ポンっと言うやけにコミカルな音と共に白い煙の様な靄とカラフルな星模様を撒き散らしたのだった。

385ゆあ・ゆうじぁりー:2011/03/27(日) 03:05:55.83 ID:ml71hbS0


部屋には裸の女児と裸の男が倒れている。
もしここに誰かが入ってきたのなら確実に事件を疑わないだろう。
犯罪の類で。
そこで動くのはたれ耳ウサギのぬいぐるみ、ペルペルだけだ。
ペルペルは倒れている女児に近付くとその短い手でゆり起こす。
『結愛ちゃん、起きるきゅん』
「う〜ん」
女児が気が付く。
『お願いは叶えたきゅん』
「ほんと? やったぁ〜。あれ?服着てない??それに何も変わって無いよ〜?」
『ちゃんと叶っているきゅん。
結愛ちゃんの大人になりたいと言うお願いと男の子にもなって見たいと言うお願いをボクの魔法で叶えただきゅん』
「ぜんぜん叶って無いよ〜」
『ボクの魔法では姿形は変化させられないのきゅん。
でも存在の置き換えにより結愛ちゃんに大人の能力と男の能力を与える事が出来るのだきゅん。
しかも周囲の認識もそれに合ったものに変換できるのだきゅん』
「う〜、よくわかんない〜」
『ぶっちゃけ言うと、見た目変わらなくても結愛ちゃんは大人の男性と同じ事が出来て周りからもそう見られるって事だきゅん』
「そうなの?」
『さらに言うと、結愛ちゃんはそこの転がってる奴になったんだきゅん』
素っ裸で床に倒れている男、悠二を据えた目で一瞥するペルペル。
「あたし悠二おじちゃんになったの?」
『そうだきゅん。代わりにそこにいる奴は結愛ちゃんになったんだきゅん。
試しにベッドの上まで運んでみるきゅん』
「え〜、重たくて無理だよ〜」
『大丈夫だきゅん。結愛ちゃんはそこに転がる男になってるきゅん。
逆にそこにいる奴は結愛ちゃんになってるからとっても軽くなってるきゅん』
言われて結愛は恐る恐る悠二を持ち上げて見ると本当に軽々と持ち上がった。
「うわぁ〜ほんとだ凄い〜」
悠二を抱えベッドに運び結愛はペルペルの言う事をようやく信じて理解した様だ。
『解ってもらえたできゅん?じゃあ、結愛ちゃん服を着るといいきゅん。
もちろん着るのはあいつが来ていた服だきゅん』
「うん、分かった〜」
素直に言われた通りにする。
大きいはずの悠二の服は結愛が着こむと何故か丁度良いサイズになり、ぴったりだ。
「これでわたしは悠二おじちゃんだね〜」
『そうだきゅん。それで大人の男になって結愛ちゃんは何がしたいきゅん?』
「うんとね。いろいろあるよ〜」
386ゆあ・ゆうじぁりー:2011/03/27(日) 03:07:08.30 ID:ml71hbS0


結愛とペルペルが話をしていると、ベッドに運ばれた悠二に動きが見えた。
「う、いったい何の魔法だったんだ?」
目を覚ました様だ。
「って裸じゃねーか、スケベ魔法かおい。野郎を脱がせてどうするんだよ」
身を起こすと悠二は自分が服を着ていない事に気づきぼやく。
『あ、馬鹿が目を覚ましたきゅん』
「誰が馬鹿だ、誰が」
『お前がだきゅん。そんな事よりとっととその服を着るきゅん。見苦しいきゅん』
言ってペルペルが示したのは結愛の服だ。
「アホか?なんで俺が結愛ちゃんのを着なくちゃならん」
「悠二おじちゃんは結愛になったから、結愛の服を着るんだよ」
横から結愛が口をはさむ。
「結愛ちゃんまで何を。って結愛ちゃん?それは俺の服?でもサイズがぴったり??って言うかこっちは見ないでね」
結愛の存在を思い出し照れる悠二。
「大丈夫だよ。悠二おじちゃんパパと一緒だって知ってるもん。
パパねお風呂に一緒に入ってくれるんだよ」
「なにっ!?お風呂だって?(くそう、結愛ちゃんと一緒に入りたいぜっ!)」
そんな事、結愛の両親が許す訳が無い。
もし実行したとして、その後は姉から親に告げ口されて説教を延々とさせた上に、
結愛に二度と近づけない状況にされ、さらに人間関係は崩壊悪化の一途を辿るだろう。
『お前何を考えてるきゅん?変態通り越して犯罪者だきゅん。この変態犯罪者きゅん』
「人を犯罪者扱いするな」
『まあ聞くんだきゅん、結愛ちゃんのお願いを叶える為に、お前と結愛ちゃんの存在を入れ替えただきゅん』
「なるほど。そう言う魔法か」
普通ならそこは在り得ないとか騒ぐ所だが、たったこれだけの説明であっさり納得する悠二。
面倒が無くて良いが人間性としてはどうなのだろう。
387ゆあ・ゆうじぁりー:2011/03/27(日) 03:11:24.30 ID:ml71hbS0


『解ったらさっさと服を着るきゅん。きっと見苦しいのは変わらないけど今よりはましだきゅん』
「そうか…。 だが断る!」
悠二はこぶしを作り「くわっっ」と言う表情で言い放つ。
素っ裸で。
「よしんば俺が結愛ちゃんになっているとしても結愛ちゃんの服を着なければならないと言う道理は無い! 
俺は自分の服を着るぜ」
悠二はベッド下の収納からトランクスを出すと素早く穿く。
「ありゃ?」
穿くのだが、それはぶかぶかのサイズになり直ぐにずり落ちてしまう。
『お前は結愛ちゃんになっているから、
着る服のサイズもそれに合わせて自動変換されるきゅん。だからあきらめるきゅん』
「なんと!?」
「もう、悠二おじちゃん、いい加減服着なきゃダメだよ。結愛が着せてあげる」
言って結愛はパンツをとると悠二に近付き穿かせようとする。
「あ、ちょ、結愛ちゃん待って」
悠二は抵抗しようとするのだが、簡単にひっくり返された。
「お着替えしっかりしましょうねぇ」
小さいはずの結愛の女児ショーツをするすると足に通し、しっかり上まで引き上げる。
その変態行為に少しぞくぞくしてしまう悠二。
ショーツのサイズはぴったりになる。
日頃悠二は、プリキュア好きの結愛の下着はきっとプリキュアのアニメプリントの物だろうなと勝手に想像している変態であったが、
その予想に反してショーツは赤いタータンチェックの可愛いものであった。
それは結愛の母親が二年生にもなってプリキュアショーツは恥ずかしいだろうと言う育成方針によるものだ。
いまどきの一人っ子の例にもれず、結愛の服にはかなりお金が掛かっている。
しかも女の子全開な可愛い服を親は好んでおり着せる事が多い、
結愛自体はわりと活発な性格をしており趣味が微妙に違って来ていたりするのだが、それはこの際置いておく。
とにかく今ある結愛の服が可愛い系の服なのだと言う事を述べておく。

388ゆあ・ゆうじぁりー:2011/03/27(日) 03:16:07.69 ID:ml71hbS0


「次はうえ、はーい手をあげてバンザーイ」
言われ抵抗もせず両手をあげる悠二。
結愛は頭からリボン通しの水玉プリントのキャミソールをかぶせる。
もともと結愛に弱い上に力でも抵抗できない悠二は、すっかり言いなりで着せ替え人形状態だ。
「じゃあ今度はまた下のだよ。はい、足あげて」
今度は下穿きのフリルとレースが可愛いペチパンツを穿かされる
女児下着姿の自分を見下ろし悠二は、自分はロリコンだがこれは違うなとひしひしと感じている
「なんかアレだな、これ何てエロゲ?ってやつか?」
ヤケクソ気味につぶやく。
結愛はお構いなしに着せ替えごっこを楽しんでいる様子で、
パフスリーブのカットソーに2段フリルのスカート、フリルフードのリボン付きパーカーを着せられ、
最後にはハートのクルーソックスに同じような柄のレッグウォーマーをルーズに履かされた。
「かんせ〜い、悠二おじちゃんの結愛の出来上がり〜」
結愛は着せ替えが楽しくて仕方がない様子でご機嫌だ。
『お前のその恰好は絶対変態だきゅん』
「うるさい黙れぬいぐるみ」
「めっ、女の子はそんな言葉づかいしちゃダメでしょ」
着せ替えの延長で結愛は悠二を女の子扱いして遊んでいる様だ。
ただ悠二はその「めっ」の仕種が悠二の萌えにツボった様で恍惚としている。
「ほら、ペルペルにゴメンなさいしないと」
促され、仕方なしに悠二は頭を下げる。
「ごめんなさい」
「情けない奴だきゅん」
「な!?この」
謝罪の言葉に対し馬鹿にされ、憤る悠二だったがいきなり結愛に後ろから抱きかかえられてそのままお姫様抱っこをされてしまう。
「はーい、怒らない怒らない。ペルペルも悪いよ〜」
抱っこされた悠二は思わず結愛の首に腕を回し自分からしがみ付いてしまう。
だいの男をお姫様抱っこする女児、普通在り得ない光景だ。
だがこの光景が存在の入れ替わりと言う事を語っているようではあった。
そして、そんな事をしている中の事。
悠二の部屋のドアがノックされる。
そして女性の声が聞こえた。
「悠二、結愛来てるでしょ?入るわよ」
「げっ、姉さん!?」


ドアを開け、部屋に入ってきた人物それは悠二の姉、結愛の母親だったのだ。




                                  〜To Be Continued〜
389名無しさん@ピンキー:2011/03/27(日) 03:19:08.49 ID:ml71hbS0
はい、これは続きます。
続きを書きます。
なので次の投稿でもまたお付き合いください。
下手なのは解っているのですが、自分で少し気にいったりしてるので。
あとタイトルは、ダジャレです^^;


>>378
そうですね、ランダムに入れ替わるものだから人物の描写が面倒な設定でした。
あの設定で少し書いてみましたがすぐ断念しましたし。
おっしゃる通り萌え難い設定ではあります。
あと『ここはとあるお屋敷』の続きを楽しみにして頂きありがとうございます。
フェチな要素を全然入れれていないのですが、
書いていて楽しい作品なのでそう言ってもらえるとモチベーションが上がります。


>>379
言われてみればミスキャストのパクリっぽいですね。
そうミスキャストですよね。
あの偉大な作品をパクっていたとは申し訳ない感じです。
しかも下手な文章で。
お気を悪くされた方も居られると思いますが、申し訳ありませんでした。

390名無しさん@ピンキー:2011/03/27(日) 03:41:46.16 ID:4KQG0VYg
深夜に乙

うーん想像すると、やはり不気味だw続きに期待
391名無しさん@ピンキー:2011/03/27(日) 14:03:25.47 ID:ml71hbS0
昔のドラえもんの入れ替えロープは身体が入れ替わらずに立場だけが入れ替わるらしいのですが
このスレ的に完全に当てはまりますよね。
その該当の漫画やアニメを見て見たいものです。
見た事のある方は居られますか?
392名無しさん@ピンキー:2011/03/27(日) 15:29:32.79 ID:6h5BB1IS
>>381
GJ!続き期待しておりますです

>言われてみればミスキャストのパクリっぽいですね
なんかいらぬ物言いで傷つけてしまったようで申し訳ないです

>>391
入れ替えロープじゃなくてクロススイッチの方かなぁ
393名無しさん@ピンキー:2011/03/27(日) 16:34:44.87 ID:5kM21oeo
ところで、ミスキャストというものをkwsk
394名無しさん@ピンキー:2011/03/27(日) 16:47:14.06 ID:gqmbFDXI
ノースフライトの産駒
>ゆあ・ゆうじぁりー
GJ! 次回のお約束の展開を期待してwktkです。

そして、私も『そして日常な非日常へ』の続きを投下!
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 とりあえず、あまりにも可愛い系のは避けて、かといって本来の「袖原美輝」のイメージを極端に壊し過ぎない程度にはフェミニンな服装を、手早くタンスから選び出す。
 ルゥデルゥブランドの大きめの襟の白いブラウスにドットスカーフをネクタイ風に締め、その上からレースをあしらったノーカラーのボーダージャケットを羽織る。
 ボトムは、一見ティアードスカートに見える黒のショートパンツと、40デニールのベージュのタイツだ。
 普段通勤に5着の背広の上下を順繰りに着回して済ませているものぐさな青年だとは、とても思えないセンスと手際の良さだった。

 昨日コンビニで買ったツナマヨの手巻きを食べ、レンジで温めた烏龍茶をすすりながら、何気なくテレビの天気予報を見ていると、どうやら午後から雨が降るらしい。
 「傘を持って行ったほうがいいのかな?」
 幸い、玄関脇の傘立てスペースに、花柄の折り畳み傘があったので、押し入れで見つけたキャメルカラーのエディターズバッグを持つことにして、その中に入れておく。
 一昨日、美輝から受けたレクチャーを思い出しつつ、最低限のメイクを済ませ、髪もスプレーしてから軽くブロウして整えると、そろそろ出る時間だった。
 靴は少し迷ったものの、雨になることも考慮し、あまりヒールの高くないブラウンのオックスフォードパンプスにしておくことにした。


 マンションの鍵を締め、やや足早に最寄り駅へと向かう和貴。
 カツカツと響くヒールの音が、自分の足元から聞こえるのは、なんだか新鮮な気分だった。土曜日に履かされたロングブーツに比べれば、この程度の高さのヒールなど楽なものだ。
 本人はまったく気づいていないが、颯爽と歩く和貴の姿は、生理が終わった解放感ともあいまって、溌剌と輝いているように見えた。
 電車を見た時、一瞬、昨日の痴漢(?)のことが頭をよぎる。少し表情が翳った和貴だったが、ふと足元の「女性専用車両」の表示を見て、元気を取り戻す。
 (今のオレは「袖原美輝」なんだから、コレに乗る権利があるよな)
 躊躇いもなくそちらの列に並び、やがて来た「女性専用車両」へと乗り込む。
 車内に充満する、女性特有のパヒュームやフレグランスの香りにいったん圧倒されかけたものの、自分も化粧品を使っている今の和貴にとっては、それほど異質な匂いではない。
 むしろ、男性の汗やキツい整髪料の匂いに比べれば、100万倍こちらの方が好ましかったし、痴漢の恐怖に怯える必要もない。
 時々見かける「もっと女性専用車両を増やそう!」という主張に、共感を覚える和貴だった。

 会社の近くまで来たところで、少しだけボーッとしている美輝を発見する。
 「……おはよう、「和貴くん」!」
 少しだけ迷ったものの、周囲に人がたくさんいることも考慮して、和貴は今の「立場」に沿った名前で呼びかけてみた。
 「ん? ああ、おはよう、「美輝さん」」
 振り返った美輝は、すぐに和貴の意図に気づいたようで、そう返してくれた。
 「昨日の飲み会は、どうだったの?」
 「バッチリ!」
 なんだか美輝はエラくご機嫌なようだ。
 「最初は、知ってるとおりミワ興業のお得意さんと打ち合わせがてらご飯食べてたんだけどね。そのあと課長たちにキャバクラに連れて行ってもらったんだ!」
 「へぇ〜」
 それがどう言うものかおおよその知識はあるが、和貴自身は飲みにそれほど金をかけないタイプなので、彼もまだキャバクラというものを体験したことはない。
 「おもしろかったよー」
 しかし、アレは一応男性向けのサービスだろう。女性が行っても楽しいモノなのだろうか?
 「別にお店自体はフーゾクってワケじゃないからね。綺麗なお姉さんと会話をしながら、楽しくお酒を飲むトコロだよ」
 確かに、間違ってはいないが……。
 「ボクについてくれた女性がね、すごく素敵な人でさぁ。話もすごく盛り上がったんだぁ」
 そう言えば、キャバクラでモテるためのコツは、金払いもさることながら、いかにホステスと巧みに会話できるかだと聞いた記憶が、和貴もあった。
 「そりゃ、「和貴くん」なら、女性心理も女の子の流行もバッチリだもん。意気投合するわけだよ」
 「ニャハハ……まぁね。ちょ〜っとズルいかも」
 そんな風に話をしながら、ふたりは会社に着いた。
 「じゃあ、また後でね!」
 「大幡和貴」の席に向かう美輝と別れて、和喜は女子更衣室に入った。
 「あ、おはようございます、美輝センパイ」
 「! おはよう、こ…明子ちゃん」
 小杉さん、と言いかけて慌てて呼び方を変える。
 美輝の2年後輩にあたる、和貴と同期入社の小杉明子だ。
 明子はもうほとんど着替え終えていたので、彼女の下着姿を見て動揺するようなメに遭わずに済んだのは幸いだった。
 「──明子ちゃん、昨日休みだったみたいだけど、身体の方はもういいの?」
 和喜も制服に着替えつつ、何も会話しないのも変かと思い、無難な話題をフッてみる。
 「はい、単にアレがちょっと重かっただけですから。センパイの方は大丈夫なんですか? 先週の金曜日お休みされてましたよね」
 「ええ、もう平気。でも、今回のはすごく重くてホント苦しかったわ」
 まぎれもない実感がこもった言葉に、明子は心底同情した風に頷く。
 「大変でしたねぇ。センパイ、いつもアレの時は辛そうですけど、お薬とか飲まないんですか?」
 「鎮痛剤と体質改善のためのピルを少し、ね。でも、痛み止めが効きにくい体質らしいのが、悩みの種なのよねー」
 そんな風に明子と気安く会話できる自分に、和貴は内心驚いていた。
 これまで和貴は、小杉明子のようないかにもキャピキャピした女の子っぽいタイプの女性と話すのは、どうも苦手だったのだが……。
 けれど、こうして「袖原美輝」として同性の立場で話してみると、案外礼儀正しいし、先輩思いで優しい普通の「いい子」なのだ。
 結局、「美輝」が着替え終わるまで、明子も女子更衣室に留まり、ふたりは仲良く雑談しながら、各々の席──と言っても隣り同士だが──へ向かうこととなった。
 席に着いた和貴が、斜め向かいにある本来の自分の席にチラと目をやると、美輝は意外な程キリリと引き締まった顔でパソコンに向かい、何かの文書を作成しているようだった。
 その表情に、ほんの一瞬だけドキリとしたものの、その理由がわからず、内心狼狽える和貴。
 慌てて目を逸らし、自分の──美輝のパソコンに意識を戻す。ポチポチと、本来は美輝がするはずだったデータ整理をしていると、ふと右側からの視線を感じる。
 「──何か用かしら、明子ちゃん?」
 キツい口調にならないよう気をつけながら、小声で隣席の「後輩」に聞く。
 「いえいえ〜、なんでもないです。何だかセンパイが熱い視線を大幡さんに送ってるなーなんて、別に思ってないですよ?」
 ニコニコと邪気のない笑みを浮かべる明子に、何と答えればいいのかわからない。
 「……業務時間中だから、私語はほどほどにね」
 そんな風に誤魔化してしまったが、これでは明子の疑惑を認めたも同然だろう。
 (まぁ、どの道、昨日で噂になってるし、いいか)
 とりあえずその事は頭の片隅に棚上げして、仕事に集中するのだった。
 「「美輝さん」、お昼、いっしょにどう?」
 「──えぇ、いいわ。行きましょ」
 何かを期待しているように目を輝かせている明子は、あえて無視して、今日も和喜は美輝ともに出かける。
 無論、今日は昼食よりも例の露店に行く方が本題だ。

 ところが……。
 「──雨、降ってるね」
 「──うん」
 天気予報では午後からとあったが、少し早めに降り出していたようで、会社を出てすぐにふたりはUターンして傘を取りに戻るハメになった。
 「えっと……常識的に考えると、露店って雨の時は普通やってないよね?」
 「まぁ、そうだろうね」
 「「…………」」
 嫌な沈黙が落ちる。

 それでも、一縷の望みを託して、会社から歩いて10分程の場所にある繁華街の一角──例の露天商が店を開いているはずの場所を覗いてみたのだが……。
 当然ながら、そこには誰もいなかった。
 「えーと……そうなると、来週の火曜日まで、このままってコトになるんだけど……」
 傘の下、その場所を無言で見つめる和貴の背中に、美輝はおそるおそる声をかける。
 「……」
 「その……まさかこんなコトになるとはね。ははは……」
 「…………」
 「あのぅ……和貴クン?」
 「………………プッ!」
 あまりに美輝の口調が申し訳なさそうだったので、和喜は思わず噴き出してしまった。
 「大丈夫、怒ってないから。雨が降ったのは美輝さんの責任じゃないでしょ。それとも、密かに雨乞いでもしてたの?」
 「まさか! まぁ、「確かに男性としての暮らしはちょっと面白いなぁ」とか、「もうしばらくこのままでもいいかな〜」とは思ってたけどさぁ」
 「ヲイヲイ……」
 ノリで物事を進める美輝らしい答えに呆れる和貴。
 「ま、まぁ、それはソレとして……和貴くんの方は大丈夫? どうしても「袖原美輝」を続けるのが無理なら、最終手段として有給取ってひきこもるって手もあるけど」
 とは言え、旅行その他で有給を消化する機会の多い美輝にとって、それは断腸の思いだろう。
 「いや、さすがにそこまでするのは申し訳ないよ。昨日今日で、美輝さんの仕事の要領は大体つかんだと思うし、何とかなると思うよ」
 「本当!? いやぁ、そうしてもらえると二重の意味で助かるよ!」
 有給休暇を減らさず、かつ仕事も片付けてもらえるからだろう。和貴は苦笑した。
 「ま、ポジティブに考えれば、女性の生活とか本音を垣間見るいい機会だし。何事も経験だと思って頑張るさ」
 「うんうん、異性としての生活なんて、滅多にできない経験だもんね。それじゃあ、「美輝さん」、あと一週間、よろしくな!」
 「はいはい。「和貴くん」も、お仕事キチンと片付けてね」

#というワケで、元に戻るのは雨天順延(笑)。まぁ、梅雨時でもない限り(季節は3月頭を想定してます)、そうそう雨が続くこともないでしょう。雨は、ね(ニヤリ)。
400名無しさん@ピンキー:2011/03/28(月) 00:25:00.55 ID:gMfBmCl5
>>392
クロススイッチと言う道具だったんですね。
検索して該当を見つける事が出来ました。
ありがとうございました。
ドラえもんの道具は何でもありますね。
検索していて解ったのですが、デンゲキトレードと言う道具も該当なんですね。
376については自分で気が付くべきでしたので申し訳ないです。
お気になさらないで下さい。

>>393
ミスキャストはTSF界隈で御大の一人にあたる方が書いた作品です。
今では見る事は出来ませんが、すばらしいショートショートの作品でした。
とは言っても私の記憶も10年以上前のものなので、内容についてはすいません。

401名無しさん@ピンキー:2011/03/28(月) 01:10:34.20 ID:gI7tid3w
Inquestの旧作(18)に英明さんのミスキャスト3が残ってるよ
402名無しさん@ピンキー:2011/03/28(月) 09:55:37.48 ID:3zU48xnY
詳細ありがとうございました
403名無しさん@ピンキー:2011/03/28(月) 21:44:48.48 ID:t7afLK0w
らんおうさんが書いた元祖の「ミスキャスト」はウェブアーカイブから拾わないと読めないんだよなぁ

英明さんのは最後肉体が変化してしまうのが惜しい
404名無しさん@ピンキー:2011/03/28(月) 23:02:07.05 ID:VQwPpn5h
405名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 00:14:03.94 ID:xYVmdk/l
これか!
立場交換物という言葉がなかった当時、相当ツボにはまったのを覚えてるわ

>>399
ラストを楽しみにしてます
※どうもコレを投下しても、喜んでるのが本人とほか約1、2名のみのようですし、あまりダラダラ続けてもナンなので、今後の予定していた展開を要約して、最終回に代えさせていただきます。

 会社に戻ったふたりは、テキパキ仕事を片づけて、揃っていつもより早めに退社(当然そのコトは噂に)。和貴のアパートで、今後のことについて話し合う。
 基本的にはこの2日間と同様、人目がある場所では互いの立場になりきって行動すること。ただし、自宅では自由にしていいこと……などで合意する。
 だが、ふたりは気づいていなかった──「自宅」と言う言葉で本来とは逆の場所を自然に思い浮かべていること。そして、「お互いのフリをする」ではなく「立場になりきる」と決めてしまったことが、どんな結果をもたらすのかを。
 「大幡和貴」としての美輝は、それなりに変化に富んだ毎日の仕事に、意欲的に取り組み、周囲の評価も上々。
 対して「袖原美輝」として働く和貴は、ルーティンな業務にも細やかな気配りを忘れず、ややガサツなところのある美輝の株を大いに上げる。和貴自身、本来の仕事に比べて今の方が気が楽だな、と感じていた。
 積極的に女性週刊誌やファッション誌に目を通しているおかげか、後輩の明子をはじめとする女子社員とも、意外なほど順調にコミュニケーショがとれている。
 木曜の夜、美輝のプライベートの友人から電話があったが、和貴はそれほど慌てることなく対応できるようになっていた。

 土曜日は、その女性に誘われて、一緒のショッピングに出かける和貴。服の趣味が変わったことを指摘されるものの、「前より今の方がセンスいいし、似合ってる」と言われて、(女としての)自信を持つように。
 さらにその翌日の日曜日は、「和貴」な美輝からの誘いによって、ふたりは初めてデートに出かける。名目は「この一週間の互いの仕事関係の情報を交換する」だが、ソチラは適当に済ませて、楽しい半日を過ごすふたり。

 そして迎えた翌週の火曜日。ようやくふたり揃って問題の露天商と会うことができたものの、「個々のネックレスで呪文が違うので、ちょっと調べないとわからない」とのこと。
 仕方なく、メアドを伝えて、呪文がわかったら連絡してくれるように依頼する。
 さすがに、少し不安になってくる「美輝」だが、「和貴」になだめられて落ち着きを取り戻す。この頃すでに社内では「ふたりの仲」は公然の秘密になっていた。

 それから、半月が経過するが、ふたりはまだ戻れずにいた。
 その間、「美輝」は2度目の生理に苦しむハメになるが、多少は慣れたのと、親しくなった「和貴」が公私両面で色々気遣ってくれたので、以前よりは楽に過ごせた。

 そして、「美輝」の2度目の生理が終わった数日後。ふたりで飲みに出かける。ホロ酔い気分になった頃、「和貴」に恋人としてつきあってくれと言われ、しばし動揺したものの、頬を染めて頷く「美輝」。
 その晩、すっかり酔ってしまった「美輝」を「和貴」は部屋まで送る。酔いのせいかしどけなく乱れた「美輝」の格好に興奮を抑えきれなくなった「和貴」は、「彼女」を押し倒す。
 下着姿にされ、ディープな口づけに始まって、耳やうなじ、鎖骨の辺りに舌を這わされ、まろやかな尻や太腿などを優しく揉みしだかれて、快楽に喘ぐ「美輝」。
 次々に「女の弱い場所」を攻められた後、さらには、肌蹴た胸元から覗く左右の乳首を指先と舌で執拗に愛撫され、軽くイッてしまう。
 頃はよし、と見た「和貴」はトランクスを脱ぐと、「何もないはずの股間」をしごきつつ、「美輝」の下肢からストッキングごとショーツをズリ下ろす。そして、足を大きく開かせると、同じく「何もないはず」の「美輝」の会陰のあたりに「ソレ」を押しつけ、さらに押し込む。
 「ああぁぁぁーーーっっ! う、ウソ!?」
 何かが自分の体内(なか)に入ってくる感触に戸惑い、ほんの一瞬我に返った和貴だったが、リズミカルな抽送とともに、下腹部から全身へと広がる快感に、すぐに「美輝」として溺れてしまう。
 その夜、「美輝」は幾度となく「和貴」の腕の中で、絶頂を極めることとなったのだった。
 そして1年後。ふたりは、元に戻れない──いや、戻らないまま結婚式を迎える。頼もしい旦那様となった「和貴」の隣りで、純白のウェディングドレスをまとい、輝くような笑顔を見せる「美輝」。
 新婚初夜を迎えたふたりが、翌朝目を覚ますと、不思議なことにあのネックレスは消えていたのだが、その後も周囲の認識に変化はなかった。

 さらに翌年、「美輝」は会社を辞めて専業主婦となっていた。だいぶ膨らんできたお腹を抱えつつ、家事に勤しむ「美輝」。時折、胎内で我が子が動くのを感じると、自然と笑みがこぼれる。
 夕方帰宅した夫「和貴」と熱烈な抱擁を交わす。そろそろ安定期に入ったということで、夕食後、久しぶりにセックスに励むふたり。
 「美輝」の身体自体は相変わらず男のままなのだが、「妊娠している」せいか、心なしか胸が大きくなり、「和貴」に強く吸われると母乳も出るようになっている。
 「和貴」の股間に生えた見えない男根(ソレ)が、自分にないはずの膣(ソコ)を満たす感触に、陶然となる「美輝」。「彼女」の身を気遣い、優しく腰を突き上げる夫に抱かれながら、「美輝」は女としてこの上もない幸福を感じていた。

-fin-

………なんか、間違った方向に突貫した気もしますが、こんな流れです。まともに書くと、どうみても、あと4、5回はかかるので、こんな形にさせていだきました。不足分は各自妄想力で補完プリーズ。
 それでは、IF物を書くご許可をいただいた原作者様、そして拙い愚作を読んで乙を下さった方々、誠にありがとうございました。
408名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 00:40:02.39 ID:YnN5sjvQ
最終回乙です
うーん、残念

> ※どうもコレを投下しても、喜んでるのが本人とほか約1、2名のみのようですし
ぶっちゃけ、もともとスレにいるのもそれぐらいな気(ry
409名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 02:15:18.85 ID:SAfbQbPF
『そして日常な非日常へ 〜ありふれた日常if〜』完結お疲れさまでした。
やはり元には戻りませんでしたか。
個人的にはもっと沢山読みたかったのですが、とても良い終わりでした。
結婚妊娠のハッピーエンドで嬉しいです。
和貴も美輝になって子供も産むんですね。
出来れば出産の描写も見て見たかったですw
人に聞いても、何がどうだとか考えたりする様なそれどころじゃない状態だそうで、
その描写は難しいかと思うので。
前回更新分も相変わらず良い服装センスで、すぐにコーディネートが目に浮かびました。
ルゥデルゥをチョイスするとかナイスです。
美輝もそろそろピンキーガールズやリズリサを卒業しそうなお年頃ですしw
私の稚拙な作品をこの様な素敵な作品にして頂きありがとうございました。
他作品も楽しみにしております。


>喜んでるのが本人とほか約1、2名のみのよう
このスレにあまり人が居ないのは事実として仕方がないかと。
自分は文を書くのがとても遅いんです。
それで、前回書きこんだ時に作品が投下されている事に気付かずそのまましてしまい、
その後気が付いたのですが睡魔に負けて感想を書きませんでした。
以後気を付けて、書き込む前に更新するようにしますので。
あと今、ゆあ・ゆうじゅありーの続きを書いていますのでこれが上がったら、
ここはとあるお屋敷の続きを投稿しますので来週には見て頂けるかと。
お目汚しになるかもしれませんが。
2時間で1ページぐらいしか書けない自分なので、どうしてもスロウペースです。
忙しい訳ではないのですが、まとまった暇があると良いのですが…。


>>404
まさか再びこれを見る事が出来るとは。
やはり素晴らしいです。
感謝致します。

410名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 06:14:34.34 ID:qC2nAQz8
【その1】
「本当に、本当にやるんだな?」
そう問いかける親友の裕治に、無言で返事する。
今日は大安吉日。めざまし占いで乙女座は1位。
通学途中にある神社で引いたおみくじは大吉。
さらにチョコボールからは金のエンゼルが出現!
びっくりするぐらい、今日の運勢は絶好調。告白するなら今日以外にありえない。
「じゃ、行って来い!」
強く背中を叩かれて気合を入れてくれた裕治を背に、俺は『戦場』に向けて歩き始めた。
ターゲットはいつものように廊下で談笑している稲葉ゆかり。
艶やかに伸びた黒髪に優しげに見えるぱっちりした瞳。
通った鼻筋と形のいいくちびる。
整った顔立ちの女の子に対して『人形のよう』だなんてよく言うけど、
彼女以上にその言葉が似合う娘はいないんじゃないかと思うほど、本当に綺麗な子だ。
しかし、綺麗なのは顔だけじゃないのが彼女のすごいところ。
いつも一番早く登校して花瓶に花を生けているとか、
美化委員でもないのに校内清掃に参加しているとか、
地域ボランティアで児童保育所の手伝いをしているとか、
とにかく彼女に関するいい人エピソードは枚挙にいとまがない。
そんな彼女だから当然モテるかと思いきや、意外や意外、彼氏がいるなんていう噂はひとつもない。
男子連中がお互いけん制しているとか、既に許嫁がいるとか、いろいろな説が飛び交っているけれども、
一番有力なのは……
「アンタ、ゆかりになんの用?」
彼女とおしゃべりしていた女の子が、稲葉さんを守るかのように俺の前に立ちはだかった。
180cm近くある身長にスレンダーな体型。キリリとした顔立ちとショートヘア。
まるでマンガの中から飛び出てきたような『女の子アイドル的存在の女の子』と言った感じの彼女――牧野茜は、
稲葉さんに近づく男子を片っ端から追い払っている、まさしくボディーガード的な存在なのだ。
「うん、ちょっと話がしたくて」
「ゆかりは話したくないってさ」
手でどこか行けとゼスチャーする牧野さん。
切れ長の目が露骨に敵意を示していて、視線だけなのに痛さすら感じる。
411名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 06:15:06.90 ID:qC2nAQz8
【その2】
しかし、ここで怯んではダメだ。
今日は、今日こそは思いのたけをぶつけると固く誓ったんだ。
「牧野さんじゃなくて、稲葉さんに聞いてるんだけど」
「だから! ゆかりはアンタとは話さないって言ってるの!」
「稲葉さんがいつ言ったのさ!」
「ゆかりは気が小さいから、代わりに私が言ってあげてるの!」
「じゃあお前が勝手に言ってるだけじゃないか!」
売り言葉に買い言葉。牧野さんとの言い争いがヒートアップして
取っ組み合いの喧嘩にまで発展しそうになったその時、
稲葉さんが牧野さんの服の裾をつかんで小さくつぶやいた。
「……話、聞くから。私、守屋くんの話聞くから」
「いいの!? こんなヤツと喋る必要なんてないんだよ?」
「茜ちゃん」
「……っ! じゃあ勝手にすれば!」
稲葉さんが自分の意思を示したのがちょっと気に入らないのか、
牧野さんはイライラを周囲にまき散らしながら一歩後ろに下がった。
「で、なんでしょうか?」
先ほどまでの喧騒がなかったかのような微笑みを浮かべる稲葉さん。
「……ここじゃ話しにくいから、ちょっといいかな」
「……うん。
 茜ちゃんはちょっと待っててね」
「あ、ゆかり!」
叫ぶ牧野さんを後目に、俺は階段の陰まで稲葉さんを連れて行った。
「ええと、その……」
いざ告白のチャンス! そう思ったら逆に緊張で声が出ない。
手のひらにじっとりと汗がにじみ、口の中がカラカラに乾いていく。
しかし! ここが一世一代の勇気の見せ所!
すぅと大きく息を吸い、絞り出すかのようにその一言を紡ぎだした。
「稲葉さん、好きです。俺と付き合ってください!」
永遠の長さに等しい数秒間の沈黙の中、自分の心臓の鼓動だけがうるさいぐらいに響き渡る。
「……ごめんなさい」
あっさりと、ためらいもなく。
「あの、その……たぶん、知っていると思うのですが……」
「……うん」
「あの、私には、その、ええと、既に恋人が……」
「牧野さん……ですね?」
自分の問いかけに、無言で肯定する稲葉さん。
わかってた。わかってたんだ。すべて噂通り。
いつもいつでも一緒にいて、不必要なまでに過剰なスキンシップを繰り返す彼女たちが、
ただの仲の良い親友同士じゃなくて一線を越えてしまった関係だってことぐらい、
そんなにゴシップに耳聡い方ではない俺ですら知っていたことだ。
だからといって言わなければ、告白しなければ、一生後悔すると思っての行動だった。
「だから、その、……ごめんなさい」
再び深々と頭を下げて、稲葉さんはこの場から逃げだすように歩き出した。
気がつけば、彼女の傍らには寄り添うように牧野さんが立っている。
一瞬だけこちらに向けた顔は、まるで「当然だろ」と言わんばかりの勝者の顔をしていた。
412名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 06:17:18.22 ID:qC2nAQz8
その3】
「ま、残念だったな。
 相手が悪かったというか、相手の趣味が悪かったというか」
裕治に慰められながら、とぼとぼと駅へ続く道を歩く。
「しかしガチでレズだったとはなぁ、そりゃアタックしても砕け散る野郎が絶えないわけだ」
「俺以外に告白したって話、あまり聞かないけど」
「いや、なにね。大概は直接告白できずにラブレター止まりらしいけど、
 今月に入ってもう10人目らしいぞ、お前含めて。
 気づかなかったのか?」
「……まったく」
「稲葉だけじゃなく、あの牧野もかなり人気なんだぜ、実際。
 こっちもなんだかんだでラブレター貰ったり呼び出されたりしてるって話だ。
 ま、半分は女子らしいけどな」
「よくそんなことまで知ってるな」
「まぁな。
 なぜかこういうゴシップが俺のところに集まってくるんだよな、な・ぜ・か」
と、裕治は声を上げずに笑った。
俺と違って裕治は男女問わず交友関係が広く、そのせいなのかこういう噂話をよく拾ってくる。
その拾った噂話はなぜか俺にしかしゃべらないのも不思議なのだが、
前に一度聞いてみたところ
「誰彼かまわずしゃべっちゃうと、噂話が入ってこなくなるからな。
 噂話をしゃべりたい欲求は、お前に話す事で解消することにしてるんだ」
だそうだ。
まぁあまり友人のいない俺だったら、やたらめったら噂話を広めないって算段なんだろう。
「だけど、やっぱり……稲葉さんと付き合いたかったなぁ」
思い出すと悲しくなって涙がこぼれそうになるが、それでも思い返さずにはいられない。
自分でもびっくりするぐらい、彼女の事が好きだったんだと実感する。
「稲葉はレズだったんだから、お前が女じゃない段階で無理だったんだよ、あきらめな」
「でもなぁ……やっぱり」
「それともあれか? 女になるってか?」
「いまから女になるぐらいなら、最初から恋人同士の牧野さんになった方がよっぽどいいなぁ」
「お前、そっちのほうが無理だろ」
「だよなぁ」
413名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 06:20:45.09 ID:qC2nAQz8
【その4】
「その願い、かなえましょうか?」
「うわぁ!」
突然後ろから声をかけられ、あわてて振り向くと、そこには正体不明の黒い影が立っていた。
振り向いた瞬間は親父っぽかったのに、気がつくと幼稚園ぐらいの女の子に見え、
まばたきしたら今度は老婆、青年、女子大生と黒い影は目まぐるしく姿を変える。
いや、姿を変えるというのは間違いだ。
目の前に立っている黒いヒトガタは、1ミリたりとも形を変えていない。
なのに受ける印象は1秒ごとに変化し続けている。
「あ、あんたは……」
「ああ、名乗るのを忘れていましたね。
 私の名前は人間の発声器官で表現するのは無理なので……
 そうですね……『存在』とでも呼んでください」
裕治の問いかけに対し、黒いヒトガタはうやうやしく頭を下げた。
「で、俺たちに一体何の用なんだ?」
いつでも逃げだせるように少し腰を落として身構えつつ、『存在』の出方を待つ。
さすがに突然獲って食うような真似はしないとは思うけれども、そこは正体不明の物体。
何があるかわかったもんじゃない。
「そこのアナタ」
ずい、と指(らしきもの)を俺の方に突き出しながら、『存在』が一歩接近してきた。
「さっき、『牧野さんになった方がよっぽどいい』とおっしゃりましたよね?」
無言でうなずく俺。
「ワタシがその願い、かなえてあげましょうか?」
「そ、そんなこと、できるはずないだろう」
「それができるんです。ワタシなら、ね。
 原理はアナタたちに説明してもわからないと思います。
 なにせ『ワタシどもの世界』の技術は、アナタたちにはいわゆる魔法にしか見えないのですから」
と、言うと『存在』は何もない空間に手を突っ込んだ。
ある一点から急に消え失せた手は、数秒ほどで元通り俺たちの目の前に現れ、
そしてその手には1羽のスズメが止まっていた。
まるで空中に見えない引き出しがあって、そこに仕舞ってあったスズメを取り出したような、
あまりにも信じられない光景。
414名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 06:21:31.16 ID:qC2nAQz8
【その5】
「さて」
スズメを撫でながら『存在』が問いかけてきた。
「これはなんでしょう?」
あまりにもバカにしすぎている。
「スズメに決まってるだろ」
「不正解です」
「どう見てもスズメだろ!」
「いいえ、これはネコなのです」
すると『存在』に抱きかかえられているスズメがニャーと鳴いた。
「え?」
「これはですね、『スズメ』という立場になったネコなんですよ。
 アナタ方にはスズメにしか見えない、
 いえ、人間たちのどんな分析機械にかけてもこれは『スズメ』としか扱われないのです。
 たとえ、耳がピンと立っていて、尻尾があって、4本足で、羽が生えていなくても、です」
確かに言われてみれば、目の前のスズメはキラキラと輝く肉食獣のような瞳をしていて、
灰色がかった虎っぽい模様をしている。羽もないし、それどころかゴロゴロと喉を鳴らしている。
しかし、何度見てもこれはスズメにしか見えない。
いや、いつも街中で飛んでいるスズメそのものだ。
「ちょっとあちらの電線を見てください」
言われるがまま視線を上げると、スズメの群れが電線に止まっているのが見える。
茶色い羽毛に包まれた小さい体にくちばし、チュンチュンというさえずり。
どこからどう見てもスズメだ。
「あれがスズメです。
 では、こちらは?」
大きくあくびをして、めんどうくさそうにニャーと鳴くスズメ。
違いなんてあるはずがない。
「スズメだろ?」
「つまり、そういうことなんですよ」
「どういうことだ」
「ワタシの力を使えば、他人の立場になるなんて簡単な事なんです。
 アナタの望み通り『牧野さん』になることだって」
ごくり。喉が鳴る。
こいつは、俺を、牧野さんに、つまり、稲葉さんの恋人にしてくれると言っているのか。
415名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 06:22:18.53 ID:qC2nAQz8
【その6】
「ただ1つだけ条件がありますけどね」
「……魂を寄越せ、ってやつか?」
俺の代わりに裕治が問いかける。
古今東西、こういう取引をしてくるやつは悪魔と相場が決まっていて、
まず間違いなく対価として魂を要求してくることになっている。
『魂を受け取るのは死んだ後だから、今は気にしなくていい』とかなんとかうまいことを言って契約を結び、
そしてなんだかんだで契約者を破滅させて魂を奪い去っていくのだ。
「いいえ、魂なんていただきません」
「そんな都合のいい話なんてあるものか」
「アナタ方にとってみたら都合のいい話かもしれませんが、
 ワタシはそんな対価なんていただくような真似はいたしません。
 ただ、望みを叶えたいだけなのです」
「信じられないな」
『存在』を睨みつける裕治に、無言でうなずく俺。
「こればっかりは『価値観の相違』としか言いようがないのですが。
 まぁ強いて言うなら……混乱を引き起こしたい、と、そんなところでしょうか」
「混乱?」
今度は俺が問いただす。
「ええ、混乱です。
 このスズメとネコのような『立場の交換』を何度も繰り返すと、
 ワタシどもの世界で困る人がでてくるのです。
 ワタシは、その人を困らせ、混乱させたい。
 それだけなのです」
「つまり、俺にはなんの代償もない、と、そういうことなんだな?」
「その通りです。
 『今の人生を捨てなくてはいけない』というのが、最大にして唯一の代償ですかね」
「で、俺が『牧野さん』になったら、牧野さんはどうなるんだ?
 まさか同じ人間が2人になるわけにはいかないだろ」
「いい質問です!」
待ってましたとばかりに受け答える『存在』。
「『牧野さん』でしたっけ? 彼女になったアナタの代わりに、
 彼女が『アナタ』になるんですよ」
「つまり、魂が入れ替わるってことか?」
「違います。
 生物の魂を入れ替えるのはワタシではなく同僚のシゴトです。
 ワタシはただ『立場を入れ替える』だけなのです。
 立場だけを入れ替えるので、当事者の肉体や記憶には一切変化が起きません。
 1つだけ入れかえられないものがありますが、それは特に問題はないでしょう」
「入れかえられないものって?」
「『名前』です。
 苗字は立場を交換したときに入れ替わるのですが、名前だけはそうもいきません」
「なんでさ」
そう尋ねると『存在』は少しばつの悪そうな顔をして頬を掻いた。
「恥ずかしながら、『名前』にはワタシの力が通用しないのです。
 それだけ『名前』には力があると申しましょうか……」
「なるほどね……。
 で、どうやったら入れ替えてもらえるんだ?」
「お、おい浩志!」
「止めないでくれ! 俺は何としても稲葉さんと恋人になりたいんだ!」
「浩志……」
「さぁ『存在』さん、とっとと入れ替えてくれ!」
「わかりました、行きますよ?」
そう言って『存在』が右手を挙げると、視界が暗闇に包まれ音すら消えた。
416名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 06:22:46.27 ID:qC2nAQz8
【その7】
体が宙に浮きあがるような感覚に襲われた次の瞬間、耳に音が戻り、視界が元に戻る。
体には何一つ異変は起きていない……
と思って足元を見たら、脚が制服のズボンではなく黒々としたストッキングに包まれて、
スニーカーの代わりに黒のローファーを履いていた。
脚だけじゃない。
太もも半ばぐらいまでの丈しかないチェックのスカートに、濃紺色のブレザー。
ワイシャツの代わりにブラウス、襟元はネクタイではなくリボン。
見えないけれども締めつけ具合からすると、下着も女性ものをつけているに違いない。
数秒も経っていないのに、一瞬にして俺は女子の制服に着替えさせられていた。
胸ポケットに入っている生徒手帳を見ると、生徒名は本来の守屋浩志ではなく『牧野浩志』と書いてあり、
性別の欄には女子にマルがついていた。
「はい、入れ替えは終わりました。
 くれぐれも、帰る家を間違えないでくださいね」
そう言うや否や、『存在』の姿は消えてしまった。
夢か。いや夢ではない。
夢じゃないことは、今の俺の姿が証明している。
「あれ? 俺、なにしてるんだ?」
今までの出来事をすべて忘れたかのように、裕治が辺りを見渡している。
「って、なんで牧野がいるんだ!?
 おい、牧野。茜のヤツ知らないか?
 さっきまで一緒にいたはずなんだけどな」
おかしいな、としきりにこぼしながら、さっきまで一緒にいた親友の『俺』を無視し、
牧野さんを探す裕治。
いや、牧野さんは既に『守屋』になってるんだった。
すると通りの向こうから男子の制服に身を包んだ牧野さん、いや『守屋さん』が走ってきた。
そして俺を見つけるなり、とんでもない怒りの形相で襟をつかんで激しく揺さぶった。
「貴様、私に何をした!」
「お、おい茜! 相手は女の子だぞ!」
『親友が女の子に暴力を振るっている』ようにしか見えないのだろう、
突然やってきて俺に激しく詰問する守屋さんをやっとの思いで引きはがし、
羽交い絞めにして動きを止める裕治
「離せ! それにこいつが女なはずがあるか!」
「何言ってるんだ、茜!」
「うるさい! お前に茜と呼ばれる筋合いもない!」
「……なるほど、本当に『入れ替わった』んだな」
振りほどこうと暴れる『守屋さん』と裕治の様子を見て、ようやく実感がわいてきた。
「『入れ替わった』ってどういうことだ!」
「簡単にいうとね、立場を入れ替えてもらったんだよ」
「……なっ!?」
「なんで一瞬にして男子の制服に着替えていたのか。
 なんで急に裕治が馴れ馴れしくなったのか。
 それはね、あんたと俺の立場が入れ替わったからだよ。
 あんたはこれから男子高校生として生きていくんだ。
 俺はあんたの代わりに、女子高生として、稲葉さんの恋人として暮らしていくんだ」
「そんなバカな!」
「バカなって言っても、これが現実なんだよ」
417名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 06:23:10.25 ID:qC2nAQz8
【その8】
俺にとってはもはや意味のない言い争いをしていると、
通りの向こうの方から稲葉さんの声が聞こえてきた。
「浩志ちゃん!」
俺のそばに駆け寄ってきた稲葉さんは、ようやくお母さんを見つけた迷子の子のように
心から安心した笑顔を見せてくれる。
「ゆかり! どうしてそんな奴のそばに!」
それを見た『守屋さん』が彼女の名前を呼ぶが、びくりと震えて俺の陰に隠れてしまう。
「浩志ちゃん……私、怖い」
叫ぶ『守屋さん』におびえ、俺の制服の裾をつかんで震えている。
「ゆかりはね、男の人が怖いんだってさ。
 特にあんたみたいに怒鳴り散らすヤツが、ね」
稲葉さんを『ゆかり』と呼ぶ優越感に、脳の奥がしびれるような快感を覚える。
それが自分の事を『ゆかりの恋人』だと信じ込んでいる哀れな人の前でなら、なおさらだ。
「なんだって!?」
「こんな怖い人のそばにいたら何されるかわからないから、
 さっさと家に帰りましょう、ゆかり」
俺がそっとゆかりの手を握ると、彼女も優しく握り返してくる。
柔らかい手のひらから彼女の体温が伝わり、幸せな気持ちが胸の中にあふれてきた。
背後で聞くに堪えない罵声が響いているが気にしない。
「じゃあね『守屋くん』」
後ろ向きに手を振って、ゆっくりその場から歩き出す。
なんだか笑いが止まらない。
たぶん今の俺の笑顔は悪魔のような形相に違いない。
418名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 06:28:50.98 ID:liLabwL9
【その9】
「本当、怖かったね」
どことなく甘い香りのする稲葉さんの部屋のベッドに並んで座り、
彼女が語る恐怖の出来事に耳を傾ける。
『守屋くん』に告白され、断り、親友の『俺』と下校していたはずなのに、
気がついたら横に『守屋くん』がいて……。
彼女の口から聞く今日の出来事はどれだけ彼女を怖い目に合わせたか、
自分が引き起こしたこととはいえ、なんだか申し訳なく思えてくる。
「やっぱり男の人は怖い……。
 私、浩志ちゃんがいれば! 大好きな浩志ちゃんがいれば!
 浩志ちゃんの愛さえあれば!」
本来ならば牧野さん――今は『守屋さん』に向けられているはずの愛の言葉を一身に受ける。
本当に俺は彼女の恋人になったんだと、心から実感する。
「浩志ちゃん……好き……」
「ゆかり……」
瞳を閉じた彼女の顔が近づき、柔らかな唇が俺に触れる。
やがて触れていただけの唇はお互いの舌を絡めあう。
彼女の舌が俺のほほの内側を舐め、歯茎を撫で、唾液を交換し合う、深い深いキス。
どのぐらい口づけを交わしていたのだろうか。
ゆっくりと彼女の顔が離れていき、お互いの唇から唾液がビーズのような珠を作って糸を引いた。
「ホント、浩志ちゃんはキスに弱いんだから」
あまりの気持ちよさにぽーっとしていると、ゆかりがなにやらベッドの陰から取り出して
まるでパンツを履くようにそれを身に着けた。
普段学校で見せるような優しい笑顔とは違う、どこか小悪魔的で肉食獣のような微笑を浮かべる彼女の股間には、
黒光りするペニスバンドがそそり立っている。
「さ、今日も可愛がってあげるからね」
数分後、俺はゆかりのオンナになった。
419名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 06:39:26.28 ID:liLabwL9
おしまい
連続投稿にひっかかってしまったので、IP変えて投稿してますが同一投稿者です
最近は書き手が増えてうれしい限りです

「リハビリに」と久方ぶりに書いてみたら、やっぱりよくわからないものに(´・ω・`)
やはり書き続けてないとダメですね

・大学受験生と中学受験生の入れ替わり
・花嫁と父の立場交換
・ある企業の研究に巻き込まれてしまった青年
・やっとの思いで再就職した先の業務内容が『ある女性の身代わり』
・出来の悪い新米女教師が『男児児童の気持ちになりきってみる』研修を受けさせられる

とかネタは思いつくのだけど、形にできない
誰かしてくれませんか

>>407
完結お疲れ様でした
丁寧なファッション描写と表現が素晴らしく楽しみにしていたのですが、
駆け足のような形で終わってしまったのが残念です
いつか補完されることを期待しております

>>409
『ゆあ・ゆうじゅありー』『ここはとあるお屋敷』、ともに楽しみにしています
自分のペースでゆっくりお書きになってくださいませ
420407:2011/03/29(火) 13:30:57.42 ID:wTc3b3gq
>409さん
原作者ご自身からの感想ありがとうございます。
少しでも満足していただけたようで幸いです。服装については、自分も色々勉強になりました。
書きかけの2作については、とても期待しております。

──それと、厚かましいお願いなのですが、私の書いたテキストを自ブログの方に掲載させていただいてもよろしいでしょうか?
 (409さんが書かれたそこに至る過程の部分については、ダイジェスト形式にまとめさせていただきますので。もしくは、ご自分のサイトなどに「ありふれた日常」を掲載されているようでしたら、そちらにリンクさせていただきます)
 ご許可いただければ幸いです。

>419
ブラボー! あいかわらず、短くキッチリまとめつつ、起承転結つけられる芸風は流石ですね。ダラダラと長くなりがちな自分は、ソコに痺れる憧れる! ふたりの今後に幸あれw

>>いつか補完されることを期待しております
原作の方の許可が下りたら、ブログ掲載時には最終パートをもう少し文章らしくするつもりです。

・やっとの思いで再就職した先の業務内容が『ある女性の身代わり』
・出来の悪い新米女教師が『男児児童の気持ちになりきってみる』研修を受けさせられる

これは読みたい!
たとえば、「再就職先を探して、ようやくコネで弱小芸能プロに就職した青年(25歳)。しかし、マネージャーとして担当するはずだったアイドル候補生(16歳・♀)が恋人と駆け落ちしてしまったため、急きょ、その身代わりでデビューすることに……」なんてのもおもしろそう。
その子が駆け落ちしたことは極秘なので、名前は元より、住む部屋も普段の服もすべて残されたその子のモノを使用。さらに芸能科のある高校にまで通わされる……とか。
あるいは真逆にシンプルに「海外にアバンチュールに出かけた社長夫人の代役」なんてのもアリですね。
後者は、たとえば「イジメで不登校になっている中2の少年と、ドジだけど熱意だけはある新米女教師」とかが考えられますね。
中二男子の立場になった女教師が、いじめグループ(クラスの女子の一団)に持ち前のガッツで乗り切り、半年あまりかけてようやく普通の学園生活を送れるようになった……と思いきや、「女教師」になった男子が寿退職してしまう、とか。
夢が広がりますね!
421名無しさん@ピンキー:2011/03/29(火) 23:55:21.72 ID:nULWLJnA
>>418
GJ!
洗脳されたりせずにちゃんと女の子と結ばれたのがいいですね。
そういう問題じゃないような気がしますがとりあえずハッピーエンドですし。
422名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 21:14:14.14 ID:lLoDVP5H
>>419
いいですね
さすがに人の心を歪めて男とくっ付ける展開は見てて気分いいもんじゃないですから。
423名無しさん@ピンキー:2011/03/30(水) 23:46:11.28 ID:uU9PC3ie
同感
人の人格・キャラクター性を破壊する展開はおかしいと思う。
424名無しさん@ピンキー:2011/03/31(木) 02:53:48.19 ID:O7NWlFoS
テスト
425名無しさん@ピンキー:2011/04/01(金) 13:55:37.79 ID:G2B8NCb3
エイプリルフールを生かして何か出来ないだろうか
426名無しさん@ピンキー:2011/04/01(金) 15:39:14.62 ID:/xDDNcp1
前スレの最初の方のネタに
エイプリルフールに自分が今日から妹で妹は今日から兄だとか言ったら本当に立場逆転されたってのがあったな
427名無しさん@ピンキー:2011/04/01(金) 16:55:09.51 ID:d5hrvhlq
主人公が他の人の立場を変えて行くのも楽しそう。
親友と好きな人とか。
本人達も変わった意識は無く。
428名無しさん@ピンキー:2011/04/01(金) 17:55:21.88 ID:/xDDNcp1
>>427
立場逆転で人助けとか面白そう
429名無しさん@ピンキー:2011/04/01(金) 21:52:33.92 ID:GpAWXZdT
辞令   ○○殿

本日4月1日付で当社経営さくら幼稚園星組園児としての通園を命じます
430名無しさん@ピンキー:2011/04/02(土) 02:01:00.64 ID:odaFUvw7
どうも。
少々立て込んでまして、ゆあ・ゆうじぁりーの続きが完成していないので代わりに「ここはとあるお屋敷」の続きを投下します。
その前にレスを。

>>390
続きに期待して下さりありがとうございます。
すいません、上記の通りまだ続きが書けていないのです。

>>419
GJです。
テンポも良いし、オチも良いでね。
見た目に反して茜が攻めではなく受けだったと言うのは面白かったです。
茜の逆襲はあるのでしょうか?
あと浩志はリバなしでずっと受けでいそうw
あと、応援ありがとうございます。
自分のペースでゆるゆる書いておりますが、頑張ります。

>>420
いつもありがとうございます。
私はとても文を書くのがとても遅いので、ブログは向かないんですよ。
自分のサイトも持っていないので作品の掲載はしていないです。
「ありふれた日常」についてはどうぞお好きにして下さい。
あの様な稚拙なもので良ければ、そのまま使っても良いです。
お目汚しになるので逆に迷惑になるかもしれませんが。
もし、使って頂けるのでしたら手直ししないといけない所もあるので、
直したものをwordファイルを添付してメールさせて頂きますので。

>>421〜423
ハッピーエンドは自分も大好きですが、
MC系とか精神浸食ものとかはお嫌いですか?
書くときは気をつけますね。


では、投下します。
でも、これもまだ書ききれていないので最初の部分だけですが^^;
そうそう、最初にこれだけは断っておきます。
遥人はハイティーンでもショタっ子ですw
431続・そこはとあるお屋敷:2011/04/02(土) 02:04:25.26 ID:odaFUvw7


そこはとあるお屋敷。
夏の朝、風は清々しく差し込む日差しは輝かしい。
燦々と降り注ぐ陽光が夏の盛りを報せるまでの静かなひと時。
緩やかな時間。
朝食後の優雅なティータイム。
給仕するメイドとそれを受ける年若い主人。
でもそれは今日に限っては少し違っている様だ。

「雛子、お茶のお代わりを」
「かしこまりました」

この二人何かが違う。
メイドの動きがぎこちないのはただ不慣れなだけだろう。
その様子を見てやたら主人がニヤついているのも、そのメイドを気にかけているからか。
何が違うと言うのか?

「遥人様、茶葉を取り替えますので少々お待ちください」

お代わりの要求を受けメイドが支度をする。
しかしその言葉に主人が反応を示した。

「雛子ちゃん、言葉使いがなってないわよ〜。最後に『ませ』をつけなきゃ。
はい言い直し」

言われメイドは面食らいながら言い直した。

「ええと、遥人様、茶葉を取り替えますので少々お待ち下さいませ」
「はい、良くできました。偉い偉い、メイドとしてちゃんと覚えておいてね」

主人は完全にメイドをあしらっている。
よくよく二人を見ると、その違和感の正体がはっきりしてきた。
主人の方は娘の様なのだが、何故か男装しているのだ。
まあ、これは服装の趣味と言えなくもない。
だがしかし、メイドの方だ。
遠目に見ては女性とも思えるのだが、仕種などを良く見ればそれが少年だと直ぐに見てとれる。
昨今『男の娘』なるものが認識されるようになって来ているとは言え、
格式に拘るお屋敷の使用人と言う仕事において認可されるものではない。
ならば何故なのか?
答えは男装の娘が謀った事に他ならない。
娘の名前は雛子と言う。
本来はこのお屋敷の使用人で、今メイドの姿をしている少年のお傍付きメイドをしている。
メイド姿の少年の方の名は遥人(はると)、この屋敷の子息であり、
本来は紛れもなく雛子の主人にあたる人物だ。
それがメイド服を着込み、本来は使用人であるはずの雛子の給仕をしていると言うこのおかしな光景は何故か。
訳は雛子と遥人が幼馴染であった事が起因しているのだ。
遥人は雛子の誕生日に彼女が望むものをプレゼントする事を約束したのだが、なかなか答えない雛子。
なかなか決められないとの答えに遥人も待っていたのだが、知らされないまま日にちは過ぎて行った。
そして雛子の誕生日である今日を迎えた朝、雛子の望みが伝えられたのだ。
なんとそれは遥人と雛子が立場を交換すると言うものだったのだ。
一日雛子が主人として過ごし、換わりに遥人がメイドとして雛子に仕える事。
それが雛子の望みだったのである。
雛子の一方的な押しにより名前も交換し、なおかつ衣類も下着に至るまで交換したのだ。
そして雛子はご主人様の立場と遥人をメイドとして扱う事をすっかり楽しんでいると言う訳である。
432続・そこはとあるお屋敷:2011/04/02(土) 02:09:26.94 ID:odaFUvw7

「だけど、雛子ちゃんは紅茶入れるの上手なのね。知らなかったわ」
「まあ、嗜みの一つって言うのだよ。俺が紅茶好きなのもあるけどね」
「ほうほう、それはお茶の時間が楽しみ楽しみ」

姿はともかくそのやり取りは仲の良い男女そのものだ。

「あっと」

不意に雛子がティースプーンをひっかけ床に落としてしまう。
だがそれを見てすぐ何かを思いついたようで含み笑いを浮かべた。

「ほら、雛子。ぼーっとしていないで拾わないか」
「あ、はい、只今お取り換えをいたします」

言われ遥人は反応し新しいスプーンを用意しテーブルにセットしたその途端だった。

バシッ
「はう」
「こら、雛子ダメじゃないか」

雛子に額を思いっきり叩かれた。
かなり痛い様で堪らず両手で額を抑えじんわり涙を浮かべうずくまる遥人。
その仕種が少し可愛いかったりする。
遥人にして見れば、どこにも粗相のない対応だったはずなのだが、何故叩かれたのか分からない。

「メイドは直接旦那様を見ちゃいけない」

雛子がわざと抑揚のない声で言う。

「本来ならその目を抉られても文句を言えないところさ」
「なんだよそれ。怖い事言うな」

そんな作法は聞いたことがない。
そしてその処罰に慄く遥人。

「ふっふっふ。 by黒執事」
「アニメかっ!」

どうやら、今の件は雛子が好きなアニメのシーンを真似て見ただけらしい。
思わずツッコミを入れる遥人もノリが良い。

433続・そこはとあるお屋敷:2011/04/02(土) 02:10:42.36 ID:odaFUvw7

「まあ、冗談はさておき。雛子ちゃんのこれからの仕事なんだけど、まずはここの後片付けよ。
調理室に下げたら朝食摂って良いから。食べたら洗いものね。その後は寝室のリネン交換。
次は奥様よりお預している温室お手入れね」
「あの温室って雛子が世話をしていたのか。
てっきり庭師の高井戸さんがしているものだと思ってたよ」
「温室だけは特別なのよ。
ずっと奥様がお世話をされておられたのだけれど、
私がメイドの仕事を専属でするようになってから任されるようになったのよ」
「そうだったのか。知らなかったな」
「さ、無駄話は置いて片付け片付け。しっかり働くんだぞ雛子」

所々素に戻る二人だが、立場交換の方も演じるのを忘れない。

「かしこまりました遥人様」

遥人の方はまだ雛子を自分の名前で呼ぶのが少し恥ずかしい様で、
恥ずかしさを隠すようにティーセットを食器のワゴンに乗せる。

「御用があればお呼び下さい」

ドアの前で退室の際の決まり文句を言いお辞儀をした後、遥人はそのまま部屋をでる。
雛子はその姿を見送り満足そうだ。
遥人はワゴンを押し調理室へ向かう。
調理室とは言ってもお屋敷の厨房とは違い簡易なもので、ほとんど遥人の為にある様なものだ。
使う人間も雛子がメイドの仕事を専属でするようになってからは、ほぼ雛子しか居ない。
このお屋敷では家族がそろって食事をするのは夕食時のみなのである。
朝は各々が自室などでとるのが通常だ。
同じお屋敷に住んで居ながらそれまで顔を合わせない事も多い。
少し寂しい事の様な気もするが、それも仕方がない。
実際の所はお屋敷が広すぎるために移動が大変なのだ。
遥人の部屋のあるエリアはホールや食堂がある場所よりだいぶ離れており、
そのエリア全体が小分けされた遥人の屋敷と言う感じだ。
小分けと言っても一通りの設備は整っており、作りが古い他は高級マンション並みなのだが。
434続・そこはとあるお屋敷:2011/04/02(土) 02:12:44.65 ID:odaFUvw7

「さて、洗いものか」

キッチンに立つ事などはお湯を沸かす以外にない遥人だが、
洗いものの仕方ぐらいは分かると言うもの。
メイド服の袖をまくると慣れない手つきで洗剤を付けたスポンジで洗いものをこなして行く。
実は食器洗浄機があったりするのだが、
遥人は解っておらずわざわざ手洗いをしてしまったのだ。

「あとは乾いたら棚に戻せばいいか」

洗いものを終えた遥人は、朝食をとる事にする。
この朝食は遥人を起こす前に雛子が用意したもので、
先程雛子に出した朝食も雛子が予め自分で作ったものを運んだのだ。
朝食は雛子に出したものと同じ、ロールパンにオムレツとジャーマンポテト、
サラダにオニオンスープ、デザートにフルーツのヨーグルト掛けといったメニューだ。
ただ雛子の趣味なのか、スープカップがデフォルメされたパステルピンクの熊の顔を模した形をしており少し照れる。
メモ書きに従い、ジャーマンポテトとオムレツをオーブンレンジで温める。
使い方が良く解かっていないようだが、温めボタンを押せば良いとの事でそれに従った。
後は火にかけたスープをカップに注いで準備を整え食事にする。

「いただきます」

いつもと違う場所で食べる朝食は不思議な感じだ。
そしてメイド服を着ていることが余計変な感じだ。
スカートの丈は長いので、よくあるスースーする感じと言うのは無いのだが布地が足に纏わりつく感じがするのだ。
布地も結構な重さがある。
これなら少々の動きや風ではめくれあがる事は無いだろう。
貞淑さをイメージしてデザインされているのか肌の露出がほとんどなく、首元も詰襟になっている。
ただパフスリーブの袖や大きく真っ赤なリボンタイが地味さを感じさせない。
レースとフリルがたっぷりのバッククロスの白いエプロンも相まっている。
いつも見ている雛子のメイド服だが自分がそれを着ているのを見ると遥人は本当に雛子になってしまった様な気がしていた。
435続・そこはとあるお屋敷:2011/04/02(土) 02:17:50.07 ID:odaFUvw7

そんな事を考えながら遥人が食べていると、突然調理室に雛子が現れた。

「おや?雛子ちゃんまだ食べてたの?そんなにゆっくりしてちゃ仕事は終わらないわよ」

言って流しの方を見た雛子は先程下げた食器が洗われているのを見てため息をつく。

「あのねぇ雛子ちゃん。どうして先に洗いものをしちゃう訳?
今自分の食べた分の食器はいつ洗うのかしら?二度手間になるでしょ。それに食器洗浄機使いなさいって」

その指摘に遥人は自分の手際の悪さに言葉がない。

「まあ、メイド初心者の雛子ちゃんだからしょうがないか。謝れば許してあげるわ」
そう言う雛子の表情は何かを企んだあの含み笑いだ。
左手を腰に当て右手の人差し指を口もとで立てながら言う。

「た・だ・し、かわい〜くご主人様に謝らないとダメよ」

遥人は知っていた。
雛子がそんな仕種をした時は必ず悪戯を思いついた時だ。
そして、その対象はいつも自分であった事を。


「か、可愛くってどんな?」
「そうねぇ、こう両手の指を組んで祈るように上目遣いでこう言うの
『お許し下さい遥人様。雛子は、雛子は遥人様の事をお慕いしております。
遥人様にだけを想い続けております。ですからどうかこのままお傍にお置き下さい』って感じでどうかしら?」
「ちょっと長いって。それに可愛いとか言うより思いつめてる感じだよ」
「まぁ確かに。じゃあ『もう雛子ってばドジっ娘さん♪遥人さまゴメンなさい。てへ☆』でウインクってのは?」
「いまいち感性が古くない?」
「むぅ古いとは何よ。古いとは。だったら自分が可愛いと思うのをやって見せなさいよ」
「えー、いやー、そう言われても」
「出来ないんだったら、さっきの両方やってもらうから。そしてそれを動画で保存して好きな時に楽しませてもらうから」
「うわ、横暴な」

使用人の仕事を放れた時の幼馴染である雛子の顔はいつもこんな調子だ。
だがいざ仕事となれば遥人に付き従いきっちりとメイドの仕事をこなし、一人で何でもこなせる万能さを発揮する。
オンオフのスイッチが確りとしているのである。
雛子はやると言ったらやる娘だ。
ここは遥人が自分で考えた可愛い謝り方をしなければ、
絶対に先程の恥ずかしい謝り方をさせられたうえに携帯で動画保存される事だろう。
遥人はそう考え意を決する。
436続・そこはとあるお屋敷:2011/04/02(土) 02:19:53.51 ID:odaFUvw7

「べ、別に悪いだなんて思って無いんだからね。
初めてなんだからしょうがないじゃない!初めてなのよ?初めて。私だって頑張ってるんだからね。
遥人さまはもっと私を労うべきよ。
そう、私は悪くないったら悪くないわっ!   …でも、あの、気付かせてくれてありがと」
「おおっ♪ツンデレね。なかなかやるわね」

雛子は今のに大変満足した様だ。
対する遥人は渾身の台詞に恥ずかしさのあまり顔が真っ赤だ。
その表情が照れ隠しをした時のツンデレ娘そのものなので、さらに雛子は御満悦と言うものである。

「完成度高いわね。私を萌え殺す気なの?」

遥人は恥ずかしくて返事が出来ない。

「予想以上に良いものが見られたわ。これはもう永久保存版ね」


言って雛子は携帯を操作しデータをすぐさま保存し保護をかける。

「ええっ!ちょっ!?今の撮ってたの???」

慌てふためく遥人。

「当たり前じゃない。大丈夫これは私だけの至宝の品として門外不出よ」
「そういう問題じゃない、そんなの公開されたら100回は死ねるよ!」
「ふっふー、ご馳走さま〜。重畳、重畳」

悪ノリが好きな雛子だが今日は特に凄い。
遥人がこんなにはしゃぐ雛子を見るのは子供の時以来だ。
これも誕生日のお祝いの一つかとも思い遥人はもう諦める事にし、
さっさと食事を済ませようと、ため息とともにジャーマンポテトを口に運ぶのだった。


                                             〜続く〜

437続・そこはとあるお屋敷:2011/04/02(土) 02:25:33.03 ID:odaFUvw7
取りあえず今投稿できるのはここまでです。
この作品書いていてすごい楽しいのですが、おいしいシーンとかフェチな要素とか全然入れてないんです。
自分だけ楽しくて御免なさい。
このお話は、美少年ショタの遥人がいじられまくると言った内容でずっと続きますのでw
温かく見て下さい。
438407:2011/04/02(土) 05:06:45.33 ID:h/htC9tf
ヒヤッハー! 「そこはとあるお屋敷」の続き、ついにキターーッ!
テンションが自然と高まります。GJ!
 「おいしいシーンとかフェチな要素とかなんて、人それぞれじゃない」byみつを
無理に一般的萌え・エロシーンを入れなくても、十分wktkできる作品だと思いますよ。

それと掲載許可、ありがとうございます。
修正版のお申し出も有難いのですが、さすがにココでメアド自体をさらすのは、ちょっと躊躇いますので……。
もしお手数でなければ、「星河丘学園」という単語をググッて出るSSブログの、筆者宛てにいただければ助かります。
439名無しさん@ピンキー:2011/04/02(土) 22:11:49.91 ID:xtzOp0oK
ゆあ・ゆうじぁりーの続きが気になる
440名無しさん@ピンキー:2011/04/03(日) 22:18:05.38 ID:P+lXaurA
逆に熟女との立場逆転ってアリ?
熟女と高校生男子が入れ替わって男子高校生がフィットネスクラブだスイミングスクールだエステだと忙しくしてる間熟女が高校生活エンジョイとか
441名無しさん@ピンキー:2011/04/03(日) 22:59:44.31 ID:KH0ltH4E
ギャップがあって良いと思う。
ついでに家事の苦労と夜の営みまで体験してもらいたいですね。
あと近所付き合いの大変さとかも。
逆に男子高校生になった熟女にはジュネレーションギャップに戸惑ったり、
男子のアホな行動に面食らったりして欲しいです。

>>439
お待たせしてすいません。
思ったより長くなってしまってまだ時間がかかりそうです。
続きは書いてますので気長にお待ちいただけると。
気にかけて頂けると励みになりますので、頑張ります。
442名無しさん@ピンキー:2011/04/03(日) 23:38:18.21 ID:zSir3HpD
個人的には立場入れ替わりの他者視点が見たい。
肉体変化無し、本人の意志継続の状態で。

男性ホストと若妻の入れ替わりを夫の立場でとか。
妻の立場になったホストと喧嘩しながら、
ホストとして年上の女性を満足させなきゃいけない妻を慰めているうち、
妻の立場のホストが見せる女らしさにドキッとしたり、
ホストの立場の妻の仕事とは思えぬ女性への熱中ぶりに不安がったり。
だんだん慣れてきたころ、いつの間にか入れ替わりは戻ってるんだけど、
当事者たちは誰も気がつかず入れ替わった生活を続けてるとか面白いと思う。
443名無しさん@ピンキー:2011/04/04(月) 00:18:31.90 ID:NM2A5u2D
個人的には
肉体と好みと名前だけ入れ替わるのもアリかと。周りの認識はそのままで
444名無しさん@ピンキー:2011/04/04(月) 03:06:14.85 ID:CamIda5c
デブ女とスポーツマンの入れ替わり
運動ができないことをスポーツマンにバカにされたデブ女が仕返しとして立場を入れ替える
「スポーツマン」になったデブ女は100m走で他の男子に大差を付けて一等を取って体育の授業で大活躍
逆に「デブ女」になったスポーツマンは他の女子に大差を付けられてビリで体育の授業の笑われ者に
445名無しさん@ピンキー:2011/04/04(月) 20:38:39.93 ID:arCD+VrQ
>>440
それなら高校生男子がフィットネスクラブやスイミングスクールの女子更衣室でハァハァして
女同士?の気安さで周りの女性に手を出してメロメロにさせるとかがいいな。
446名無しさん@ピンキー:2011/04/04(月) 22:01:50.37 ID:CamIda5c
周りもみんな熟女なんだろうしそこで自分の母親と対面とか
もしくは最初から母親と入れ替わるとかも面白いかも
母親と入れ替わった状態で三者面談とか
447名無しさん@ピンキー:2011/04/05(火) 17:31:56.74 ID:3WZnX+/n
正確にはTS物の範疇に入るんだろうけど、受験生と母親ネタで、

1)ガミガミ教育ママのせいで、ノイローゼになり痩せ衰える息子。
 見かねた継父が特殊な皮を作り、妻を息子の、息子を妻の姿に
 変えてしまう。息子になった元妻を、かつての妻の計画通りに
 ハードスケジュールで追いつめる夫。心を閉ざした「息子」を、
 今度は夫と「妻」は優しく見守ることにしたのだった。
2)受験生なのに性的なことで気が散り、勉強に集中できない息子。
 見かねた母が、合格するまで息子のチンコを預かることに。
 医者によって、息子のチンコ&睾丸が母に移植される。
 煩悩の元がなくなって勉強がはかどり、無事合格した息子だが、
 なぜかチンコを返してもらえず、幼馴染の女の子とともに女子
 として高校に通うことに……。

という作品を昔読んだ気がする。
コレを、このスレ的に「立場交換」で応用すると、おもしろいかもね。
448日常な非日常の人:2011/04/06(水) 02:11:44.33 ID:kLmrDoUf
#原作者の人の許可をいただいたので、ブログで加筆修正! ……の予定なんですが、どの道エロエロな描写は掲載できないことに気付いた罠。
#せっかく書いたのに悔しいので、コチラに投下させていただきます。
#406の後半部に入るべき描写だと思ってください。


 「美輝さん、ちょっとゴメン」
 部屋の前まで来てドアを開けたところで、「和貴」は姿勢を変えて、右腕を「美輝」の両脇に通し、チャコールグレーのストッキングに包まれた脚に左腕をかけると、それを払うようにして、抱き上げる。いわゆる「お姫様抱っこ」の姿勢だ。
 思った以上に「美輝」の体重は軽く、長時間はムリだが、多少の見栄を張ることはできそうだった。
 「あ! か、和貴くん……」
 さすがに驚いたのか「美輝」の酔いも少し醒めたようだが、それでも「彼女」は抵抗しなかった。むしろ、嬉しそうに「彼」の首に腕をまわしている。
 「和貴」は「美輝」を抱いたまま、部屋の入口を通る。ドアは自動ロックなので、施錠を気にする必要はない。
 「和貴」は、リビングに来ても「美輝」を降ろさず、そのままベッドルームまで運ぶ。そして、「美輝」を、ベッドの上にそっと降ろした。
 「う……かずき、くん」
 頭に血が回ったせいか、それまで以上に赤い顔で「美輝」はベッドの上で身じろぎする。
 「あつい……の」
 酔った勢いも手伝って、「彼女」が自ら誘うようにワンピースのボタンを外すと、胸元からチラリとブラジャーのラインが覗き見える。
 「美輝!」
 しどけなく乱れた「美輝」の格好に興奮を抑えきれなくなった「和貴」は、そのまま「彼女」に覆いかぶさった。気持ちを確かめるようにゆっくりと唇を奪う。「美輝」の唇も、それに応えていた。
 お互いの唇が重なり求め合う中、「和貴」の舌が口の中に入ってきたときも、「美輝」にはもう、なんのためらいも尻込みもなかった。
 「和貴」は、右手を「美輝」のドレスのすそへと這わせ、ストッキングに包まれた脚を愛撫し始める。
 その一方で、左手で「美輝」の髪を撫でつつ、唇を頬の上に走らせ、耳たぶを軽く噛み、さらにうなじをチロチロと舐める。
 「美輝」はもう、それだけで耐えられず、体をのけぞらせて声をあげていた。自らの耳に届くその声は、まごうことなく、発情した「雌」の声だった。
 「和貴」の唇は、さらに位置を変え、鎖骨の辺りに舌を這わせる。同時に、右手は「美輝」のまろやかな尻や太腿などを優しく揉みしだき、左手は露わになったブラジャー越しに乳首をつまみ、刺激する。
 すでに「美輝」の口からは、意味を為さない喘ぎしか漏れ出てこない。かろうじて時折「和貴」の名前を切なげに呼んでいるのが聞こえる程度だ。
449日常な非日常(エロスパート):2011/04/06(水) 02:12:53.40 ID:kLmrDoUf
 執拗に「女の弱い場所」を攻めたてた後、さらには「和貴」は肌蹴た「美輝」の胸元からブラジャーをズラし、可憐なその桃色の蕾を露出させる。
 そして、左手で片方の乳首をいらいつつ、舌先で逆の乳首を念入りに愛撫する。
 「やっ……かず…く、ん……やめっ…て……あっ、あっ……あぅっ!」
 それだけで、どうやら「美輝」は軽くイッてしまったようだ。
 無論、それで終わりではない。
 「和貴」は「美輝」のスカートをめくりあげ、履いているレースのショーツに指をかけ、ずり下ろす。
 こうなることを予想、いや期待していたのか、今日の「美輝」はパンストではなくガーター&ストッキングなので下着を脱がせるのも楽だった。
 ショーツの下には、「美輝」の秘部が隠されていた。
 股間には、「彼女」の本来の性別を表す突起と球体がついているのだが、不思議なことに、これだけ感じているにも関わらず、そちらはほとんど堅くなっていない。
 しかし……性器とアナルのあいだ、嚢部分の付け根のすぐ下あたりが、ヌルヌルとした液体で濡れているのだ。無論、カウパー腺液──いわゆる「先走り」ではない。
 「ふふふ、やっぱり。ビショビショだ」
 「あぁ……み、見ないで……」
 「だーめ。美輝さんのこんな可愛いトコロ見れるのは、僕だけなんだから」
 悪戯っ子のように笑うと、「和貴」は何もないのに液体が湧きだしていると思しき場所をペロリと舐め上げた。
 「くひィンッ!!!」
 それだけで、「美輝」の快楽のボルテージがMAX付近まで跳ねあがる。
 「感度も良好っと」
 「美輝」が何とか息を整えようとしている隙に「和貴」はスラックスとボクサーパンツを脱ぐ。
 一見したところ、その股間の黒々とした茂みには、何もないように見える。だが……。
 (あぁ……ナニか、ある!)
 本能的に、「美輝」は目に見えないソレの存在に気づいたようだった。
 「やっぱり、「美輝」さんにもわかるんだね。うん、コレが僕のモノだよ」
 「和貴」が右手でソレをサッと扱くと、透明な液が「何もないはずの」場所から滲みだしているのが、「美輝」にはわかった。
 (あれって……ペニス?)
 信じ難いその事実を、快楽に蕩けた「美輝」の脳が理解しきる前に、「和貴」が「美輝」の下肢を大きく広げて、ソレを「彼女」の「穴」にあてがい、押し付ける。
 ソレの先端から出た液と「美輝」中から湧き出る液とがヌチャリと混ざり合い、「目に見えないのに確かにある」熱い肉の先が、「美輝」の「存在しない膣口」を探り当て、押し込まれる。
 ゆっくりと、「和貴」はその体重を「美輝」の中に向かってかけてくる。
 「ああぁぁぁーーーっっ! う、ウソ!?」
 何かが自分の体内(なか)に入ってくる感触に戸惑い、ほんの一瞬我に返った和貴だったが……。
450日常な非日常(エロスパート):2011/04/06(水) 02:13:20.20 ID:kLmrDoUf
 「すごい……美輝さんの膣内(なか)、すごく熱いよ」
 耳元でささやきながら、ゆっくりと「和貴」がペニスを押し進めていくと、コツンと「美輝」の奥にたどり着いた。
 その瞬間、「和貴」の「男性自身」全部が「美輝」の「女性自身」にちょうどぴったり収まったのだ。
 「はひィ!」
 「ほら、美輝さん、全部入っちゃったよ? わかる?」
 「うん……うんッ!」
 例えようもない「充足感」、恋人との「一体感」に、たちまち「美輝」としての意識が強く喚起される。
 「来て、和貴くん!」
 下腹部から全身へと広がる快感に「美輝」は、知らず知らずそう叫んでいた。
 「ははっ……うん、もちろん、もっと気持ちよくさせてあげるよ、美輝さん」
 「和貴」の体がリズミカルな抽送を開始する。その動きによって「美輝」は自分が満たされるのを感じていた。
 激しく、けれど決して荒々しくはない、体内を断続的に突き上げるその感覚に、「美輝」はいつの間にか涙を流していた。
 けっして嫌だったからではない。むしろ逆だ。
 (あぁ……わたしは愛されてる!)
 愛する「男」に、「美輝」は犯され、貫かれていた。「美輝」のすべてが「彼」のもので、同時に「和貴」のすべてが「彼女」のものだった
 「美輝さん……いいよ……すごくいい……もう、イきそう………中に出しちゃってもいい?」
 「んあっ……あ、いい……いいわ! ああっ……そのまま出して……ああっ!」
 もはや自分が何を言ってるのかすら、「美輝」にはわかっていない。
 「和貴」の腰の動きが最高潮に達し、「美輝」もまた、「和貴」のペニスがもたらす刺激にすっかり染まり、絶頂に達しようとしていた。
 「いくっ……美輝さんの中でイクっ」
 「ああっ……あっ! あっ! ああ、ああぁぁぁぁーーーーーーッ!」

 ──どぴゅっ! びゅっ! びゅくっ!

 「美輝」の「体内」に、「和貴」は「目に見えないペニス」を通じて大量の精液を放つ。
 ほぼ同時に、ないはずの「美輝」の「膣」が、ぎゅっと収縮し、自らを埋めたペニスから最後の一滴まで絞りださんとばかりに締め上げる。
 「あっ、ああんっ……ひぁぁぁぁーーーっ!」
 噴き出した熱い液体が「胎内」を満たすのを感じるとともに、体全体をわしづかみするようなオルガスムが「美輝」の全身を貫き、その感覚は「彼女」の意識を真っ白に染め上げた。
 その夜、「美輝」は幾度となく「和貴」の腕の中で、絶頂を極めることとなったのだった。
451日常な非日常の人:2011/04/06(水) 02:15:45.37 ID:kLmrDoUf
#以上です。どうにも拙い描写ですが、多少なりとも「おっき」していただければ、恐悦至極。
#「替玉お断り」もそのうち必ず書きまする〜
452名無しさん@ピンキー:2011/04/07(木) 06:36:15.41 ID:RyVUEqAR
おお!ここがエロパロ板なのを思い出したw
GJ!
ところでこのスレもうすぐ限界ぽいね。
453名無しさん@ピンキー:2011/04/07(木) 19:27:19.73 ID:CzAvI4n3
>>444
個人的にはアリかな
454名無しさん@ピンキー:2011/04/07(木) 23:44:50.44 ID:c0jDmZDn
>>447
それもミスキャストの人だ
らんおうさん戻ってきてー…
455名無しさん@ピンキー:2011/04/07(木) 23:48:07.20 ID:cj1ce+Zw
変態ストーカーとハメられて学校中の笑われ者にされた男子生徒と首謀者の女子生徒の名前と肉体、立場を交換
首謀者は男子生徒の体で学校中から笑われ者に。(家族はそのまま)今までの人間関係崩壊。
1年後、元男子生徒が戻してやるよと交換。女子生徒は元に戻れて嬉しがるも、変態ストーカーという立場だけはそのままなので、結局後ろ指をさされ続ける人生に。(男子生徒は女子生徒の時の人間関係もそのままなので、女友達が増えた)
456名無しさん@ピンキー:2011/04/08(金) 11:14:17.65 ID:4Ap76c6q
>455
>>名前と肉体、立場を交換
 ↑肉体まで変えちゃうのは、このスレ的にNGね。
 名前と立場なら、ウン、いいと思う。
 あともうひとつ変えるとしたら……そうだなぁ、性癖?
457名無しさん@ピンキー:2011/04/08(金) 17:43:42.83 ID:u/xRQ6G6
pixivで見つけた女子高生力士という絵が該当っぽく見える
458名無しさん@ピンキー:2011/04/09(土) 01:33:07.98 ID:o9VsxIYZ
ttp://www.giga-web.jp/mousou/plots/view/2312
ここ的には該当になる?
459名無しさん@ピンキー:2011/04/09(土) 04:17:36.32 ID:gREQpJfs
>>458

広義ではあてはまるかもね。「正義の魔法少女」の立場を奪って、相手を「悪魔女」におとしめてるようだし。
これで、悪コス着せられたヒロイン側が、ちゃんと意識はあるのに、体が勝手に悪女として行動してしまったりしたら最高なんだけどなぁ。

こーゆーケースって、悪墜ちというか、体に引きずられててすぐに心まで染まっちゃうけど、MC(マインドコントロール)ならぬBC(ボディコントロール)というか、

 1)悪の衣裳(+呪いとか)の力で体(言葉や表情含む)が勝手に動かされる。
  本人の意識は心の中で檻のようなものに閉じ込められて、自分の行動を見せられ、「やめてやめて」と叫んでいる
 2)悪の首領に、「悪の女幹部」として忠誠を誓って、悪行を尽くし、あるいは首領の愛人として抱かれる「ヒロインの身体」。
  本人(の意識)は少し弱り、目や耳をふさごうとするが、強制的に「残虐行為による興奮」や「セックスの快感」を知覚させられる。
 3)半月もすると、本人の意識もあきらめムード。抵抗を止めて、外から流れ込む情報に身を委ねているうちに、「悪の女幹部」としての思考や趣味に、徐々に浸食されていく
 4)ある日、再び自分の意思で動けるようになっていることに気付くヒロイン。しかし、ヒロインは今度は自ら首領の腕に身を委ね、部下達を指揮するのだった……。

 ……くらい手間暇かけてくれるといいんだが。
 その一方で逆に、女幹部の中の人をやってた女性は、衣裳と立場の呪いから解放されて、正義の味方側に保護され、正気を取り戻す。
 「これまでの贖罪がしたい」という意思を認められて、囚われたヒロインに代わって正義側メンバーとして戦うことに。
 (しかし、それを目にしたヒロインは、自分の戻るべき場所を奪われたと感じて、なおさら悪に傾倒、とか)
 ──これなら、ちゃんと「立場交換」してるよね?
460名無しさん@ピンキー:2011/04/09(土) 07:15:22.82 ID:HGGODsQn
人によって定義は少しずつ違うだろうし、
細かいことにこだわらなくても、ぼんやり当てはまってて
話が面白ければそれでおk
461名無しさん@ピンキー:2011/04/10(日) 12:18:32.59 ID:f+ejZKVp
>468、>459

あぁ……こういう展開で一作書いてみたいなぁ。
勝手に書いちゃってもいいものですかね? もちろん、名前とか細部はアレンジ・変更するつもりですが。

※原作者氏と共同で、「ありふれた日常」「そして日常な非日常へ」の加筆修正版をブログに掲載しました。
 興味のある方は、「ありふれた日常・完全版」でググってみてください。
462名無しさん@ピンキー:2011/04/12(火) 20:25:19.65 ID:+6g/27fI
あーまじで誰か女の子と立場交換してーわ
463名無しさん@ピンキー:2011/04/13(水) 00:30:10.31 ID:6zjfELxO
>459 >460
どこまでが該当かというと判断難しいですよね。
でも完全な変化でないこの曖昧さがTS AR AP・・・
他には存在しないこの広い範囲が、自分の謎の
ツボを刺激していることは間違いないです。w

>>461
自分が言いたい本質は一つなので単刀直入にいきます。
私はとても読みたいです。待ってますw
464名無しさん@ピンキー:2011/04/13(水) 20:41:40.40 ID:D1m71lyx
そういや立場逆転系のAVがあったな
服装も逆転してくれたら面白かったのに
465名無しさん@ピンキー:2011/04/13(水) 21:14:07.17 ID:FOyYS1xk
>>464
何ソレkwsk

ロケットの奴だっけ?
466名無しさん@ピンキー:2011/04/13(水) 23:17:19.26 ID:D1m71lyx
ナース 立場逆転でググれ
他にも男女の立場が逆転したAVとかもあったような気がする
467名無しさん@ピンキー:2011/04/13(水) 23:51:35.92 ID:FOyYS1xk
>>466
トンクス
468『黒の誘惑と白への回帰』:2011/04/14(木) 00:11:48.99 ID:EVzZ+2kk
 ついに浄魔部隊エクサイザーズの秘密基地を突き止めた、悪の組織DUSTYの女幹部サブキュース。
 しかし、近頃失態続きで功を焦った彼女は、組織に知らせず単身エクサイザーズの基地に潜入しようとして失敗。基地近くの採石場に追い込まれてしまった。
 それでも幹部の意地を見せ、パールストームを気絶させ、捨て身の攻撃によってサファイアオーシャンとトパーズガイアまでも負傷で戦闘不能状態に追い込むサブキュース。
 しかし、奮戦もそこまで。満身創痍に近くエネルギーも枯渇した状態で、唯一軽傷で残ったエクサイザーズのリーダー、ルビーフレイムとの戦いに勝ち目はなかった。
 「これで終わりだ! エクソイズム・バースト・フルドライブ!!」
 生身でも剣道のインターハイで優勝した経験を持つフレイムが、化焔剣レイヴァーテンを振り下ろすと、剣から龍の形をした炎が噴出し、螺旋を描くような軌跡でサブキュースを取り囲み、襲いかかる。
 「きゃああああああぁぁぁーーーーーっ!!」
 豊満な若い女性ではあるが、いかにもな黒いコスチュームとアーマーを着て、毒々しいメイクを施したケバい印象の女幹部は、意外に可愛らしい悲鳴をあげて、ついに大地に斃れた。
 「グッ……やった……か?」
 負傷自体は軽いとは言え、全エネルギーを放出する必殺技を出した直後だけに、全身に力が入らず、フレイムは片膝をついた。
 「いやリーダー、それ負けフラグだから」
 どんな時も軽口を忘れないオーシャンがツッコミを入れるが、幸いにしてサブキュースが「今のはちょっと痛かったわね」などと起き上がることはなかった。
 「勝ったんですね、私たち……」
 その事実が信じられないように、ポツリと呟くガイア。
 当然だろう。DUSTYのサブキュースと言えば、実力はもちろん、搦め手からの嫌な作戦で散々彼らを手こずらせて来たのだ。あるいは伏兵でも……と思ったが、周囲に敵が潜んでいる様子もない。
 「ったぁ〜、よくもやってくれたわね、オバさん……って、あれ?」
 ようやく、「勝った」という実感を3人が噛み締めているところで、気絶していた仲間も目を覚ましたようだ。
 「ストーム、お前なぁ……」
 「こら、おちゃらけ男! あたしのことはパールって呼べって言ってるでしょ!!」
 他の3人は変身中はコードネームの下半分を略称として呼び合っているのだが、パールストームだけは、「ストームなんて可愛くないから」という理由で、「パール」と呼ばせているのだ。
 ちなみに、フレイムとオーシャンが男性、ガイアと「パール」が女性である。
469『黒の誘惑と白への回帰』:2011/04/14(木) 00:12:21.54 ID:EVzZ+2kk
 「さて、サポート班を呼んで、俺達は基地に帰るか」
 周囲に敵の気配がないことを確認したうえで、4人はexスーツのアクティブモードを解除し、パッシブモードに切り替える。
 これは、いわゆる「変身」を解いてブレスレットを着けただけの状態で、一見生身の時と変わりなく見えるが、負傷や疲労が通常の10倍から100倍近い速度で治っていくのだ。
 また、耐久力自体もある程度強化されてるため、時速60キロで走る車にはね飛ばされても「イタタタ」と呻く程度でケロリと立ち上がれるというチートぶりだ。
 これのおかげで、4人は半年間にもわたるDUSTYとの激しい戦いにも耐え抜いてこれたのだ。
 実際、数分前までは立つことすらおぼつかなかったオーシャンとガイアが、互いに支え合うようにしてだが、ゆっくり歩くことができるくらいには回復しているのだから。
 「……ぅぅっ……」
 いざ、4人が帰ろうとしたところで、フレイム──穂村憲一の耳が小さな呻き声を耳にした。 「! まさか!?」
 すでに戦闘でのダメージが半分以上回復した憲一は、注意深く、サブキュースの死骸へと駆け寄る。
 いや、それは「死骸」ではなかった。全身をエクソイズム・バーストの高温の炎に灼かれながらも、この女幹部はかろうじで生きていたのだ。
 「あー、このオバさん、まだシブとく生きてたんだ。よーし、あたしがトドメを……「よせっ!」……えっ!?」
 パール──珠城真奈実がブレスレットから彼女の武器である銃を出したところで、フレイムが制止する。
 「どうするんだ、リーダー?」
 「……捕虜として基地に連れて帰ろう。俺たちは、DUSTYのような無法者集団じゃない。敵とは言え、重傷で戦闘能力を無くした者をいたぶり殺すような真似はするべきじゃない。
 それに、基地で武装解除したのち、尋問で情報を聞き出せるかもしれない」
 オーシャン──蒼木洋の問いに対して、数秒の葛藤の後、憲一が下した決断に、他の3人も──まことは不満そうだったが──従う。
 なぜなら、DUSTYに肉親を殺された憲一は、かの組織を他の誰よりも強く憎んでいることを知っていたからだ。
 その彼が、私情を抑えて、エクサイザーズのリーダーとしてとるべき道を選ぶというのに、どうして異議を唱えられるだろう。
 幸いと言うべきか、サブキュースは、ほぼ完全に意識を失い、また負傷のために戦闘能力は残っていないようだ。
470『黒の誘惑と白への回帰』:2011/04/14(木) 00:12:49.88 ID:EVzZ+2kk
 それでも背負うのは首を絞められるなどの危険がある、ということで、憲一が彼女を両手に抱き上げて、基地に運ぶこととなった。
 憲一の横で、洋とガイア──土萌英美は、女幹部の様子が暴れたりしないか、注視しつつ足を進めている。
 (チッ……なによ、あのオバさん、ムカつく!)
 密かにフレイムに憧れている真奈実としては、まるで「お姫様だっこ」のようなその体勢が羨ましくで仕方がない。
 腹立ち紛れに足元の石を蹴り飛ばしたつもりだったのだが……。
 「あら、これは……?」
 それが大粒の赤い宝石が嵌った指輪であることに気づき、拾い上げる。
 色味が紅玉(ルビー)のような明るいものではなく、やや暗めの赤なので、おそらくは柘榴石(ガーネット)なのだろう。
 (そう言えば、あのサブキュースとか言うオバさん、ジャラジャラ沢山指輪してたっけ)
 彼女は、それらの指輪にはまった宝石を使って様々な大規模な術を行使することを得意としていたようだ。
 もっとも、宝石は1度使うと消費してしまうようで、最近はその数が大分減っていたのだが……。
 (! なら、ここでコレをあたしが貰っちゃっても、わかんないよね?)
 普段なら、さすがにそんな事はしないのだが、魔がさしたと言うのだろうか、自分でも理解できないイライラと衝動に突き動かされて、ついそんな考えに至ってしまう。
 (どうせ没収されるくらいなら……)
 「おーい、何やってんだストーム、行くぞ!」
 「あたしをストームと呼ぶなぁ!!」
 反射的に言い返しながら、真奈実はポケットにその指輪を突っ込むと、仲間を追って走り出した。
 ──ほんの一瞬、指輪に嵌められた宝石が鈍く光ったことに気づかないまま。

#一応、書き始めてみたけど……先生、書きたい場面になかなか辿りつきません!
471『黒の誘惑と白への回帰』:2011/04/14(木) 12:20:53.16 ID:tX/li18z
<人物説明>
・穂村憲一(ほむら・けんいち)/ルビーレッド
 真紅の「炎」の戦士。正義感の強い真面目な剣術家の青年。武器は剣。
 養父母をDUSTYに殺され、義姉は行方不明だった。
・珠城真奈実(たまき・まなみ)/パールストーム
 白き「嵐」の戦士。少し霊感が強いが、ごく普通の今時の若い女性。武器は銃。
・蒼木洋(あおき・ひろし)/サファイアオーシャン
 青き「海」の戦士。飄々とした軽い性格。一応これでも僧侶。武器は槍。
・土萌英美(ともえ・えみ)/トパーズガイア
 黄色い「地」の戦士。委員長気質な見習いシスター。洋の恋人。武器はハンマー。
・梓左矢香(あずさ・さやか)/ダイヤモンドエア
 新たに加わる純白の「風」の戦士。清楚で控えめな性格の巫女さん。武器は弓。
・魔隷姫サブキュース
 DUSTYの三幹部のひとり。黒衣に身を包んだ妖艶な女将軍。魔術師タイプ。
 ついにエクサイザーズに敗北し、捕えられるが……。
・魔妾姫エシュベイン
 サブキュースに代わる新たな女幹部。パッ見の印象はサブキュースそっくり。
 ただし、性格はより攻撃的。また、術も使えるが鞭を振るう方を好む。

 ※真奈実のイメージは、「地獄先生ぬ〜べ〜に出会わないまま成長したイタコギャルのいずな」。決して悪い娘ではないが、短気で軽率、かつ物欲・名声欲も強い。ちなみに、それに対比して言うなら、左矢香は美奈子先生。
472『黒の誘惑と白への回帰』:2011/04/14(木) 12:21:29.46 ID:tX/li18z
 捕虜としてエクサイザー基地に連れてこられたサブキュースは、武装や鎧はもとより、全身にまとったその衣裳や装飾品に至るまでをすべて剥ぎ取られたうえで、医療部の特別室に監禁されることとなった。
 もっとも、監禁と言っても、全身いたるところに1度から2度の火傷があるうえ、頭を強く打ったせいか本人の意識が戻らないので、ひとととおり治療を施したうえで、外から鍵のかかる部屋で質素なベッドに寝かされているだけなのが。

 エクサイザーチームを指揮する司令以下数名は、基地を知られたことによるDUSTYの襲撃も警戒していたのだが、あれから24時間経っても、その兆候は見えない。
 待機状態のエクサイザーズ達も、さすがに少しずつダレてきた。
 もっとも、恋人同士でもある洋と英美は、これ幸いとふたりで部屋にこもってイチャイチャしているらしい。一応、ふたりとも聖職者のハシクレのはずだが……いいのだろうか?
 憲一を狙う真奈実としても、この機会にぜひアプローチをかけたいところなのだが、肝心の憲一は……。
 「まさか……左矢香姉さん!?」
 捕えた敵の女幹部サブキュースを武装解除し、そのメイクもすべて取り払って素顔が明らかにしたところ、その正体は、憲一の行方不明の姉、左矢香だったのだ!
 2年前、両親を亡くした憲一が中学生の頃から世話になっていた梓家が、何者かの襲撃を受けた。
 幸か不幸か当時の憲一は剣道部の合宿で家にいなかったのだが、知らせを受けて家に戻ると、養父はすでに死亡。養母も手当の甲斐なく病院で息を引き取った。
 そして、もうひとりの家族である義理の姉、左矢香は行方不明。
 復讐に燃える憲一の前に現れたのが、国立浄魔研究所の所長、御堂博士だった。
 博士は、梓家を襲ったのが謎の組織DUSTYであることを告げ、彼らを倒すのに力を貸して欲しいと、憲一に要請。無論、彼は即座に頷いたのだった……。
 「あの優しかった姉さんが、どうしてDUSTYの幹部なんかに……」
 「憲一くん。君も知っての通り、奴らは高度な洗脳技術を持っている。おそらく、2年前その高い霊力資質を見込まれて連れ去られた左矢香さんは、洗脳処理を受け、サブキュースとして働かされていたのだろう」
 「くそッ、どこまでも汚い連中だ! 博士、姉さんの洗脳は解除できないのか?」
 「無論、全力を尽くそう。うまくいけば、君のお姉さんを助けらればかりでなく、DUSTYの内部情報を詳しく知る絶好のチャンスだからね」
 ──と、そんなやりとりがあった後、憲一は未だ目が覚めない義姉につきっきりだった。
473『黒の誘惑と白への回帰』:2011/04/14(木) 12:21:53.22 ID:tX/li18z
 当然、真奈実としてはおもしろくないが、「ほとんど生存が絶望視されていた家族と、ようやく再会できた」憲一の気持ちがわからない程、KYではない。
 仕方なく、基地内をブラブラして暇を潰すしかなかった。
 そんな中で……。
 「あれ? コレって……」
 ファッションやスイーツ関連で趣味が合うため、割合仲がいい博士の秘書、緑丘恭子の部屋を訪ねた真奈実は、意外なモノを目にすることとなる。
 「あ、マナちゃん、こんちわ〜」
 レディススーツにネクタイを締め、タイトスカートを履いた恭子は、それだけなら大手企業のやり手OLに見えないこともないが、その上から糊の利いた白衣を羽織っている。
 彼女は理工系の大学を優秀な成績で卒業した才媛であり、秘書業務の傍ら博士の助手も務めているのだ。
 色々な意味で「濃い」メンツの多いこの基地では数少ない常識人なので、自称「普通のカワイイ女の子」である真奈実は、彼女とよく話をしにくる。
 今日も彼女は美味しいカフェオレを入れてくれた。そのまましばし雑談する。
 「そこの台に並べてあるのって、あのオバ……おっと、サブキュースのコスチューム?」
 さすがに、想い人の姉をオバさん呼ばわりするのはマズいだろう。
 実際、左矢香は憲一より2歳年上なので22歳。19歳の真奈実がオバさん呼ばわりする程の年ではない。どうやら、あのケバいメイクが彼女を5、6歳老けて見せていたらしい。
 「ええ。DUSTYの、とくに幹部クラスの装備は、私達から見ても桁外れの代物が多いでしょう? 分析できれば今後の戦いの助けになると思って」
 「へぇ〜、確かにそうだね。あ、でも昨日の戦いで、結構壊れたんじゃ……」
 その割に、焼け焦げや破損の痕跡はほとんど見られなかった。
 「それがね、スゴいのよ! 昨日の夕方ここに運ばれた時はボロボロだったんだけど、ひと晩経ったら殆ど直ってるの。どうやら、自己修復機能があるみたいね」
 真奈実達が使用しているexスーツにも、多少の修復機能はついているが、あくまで「無いよりマシ」というレベルだ。もし、このDUSTYの装備の秘密を解明できれば、確かにより安全に戦うことができるだろう。
 「で、何かわかったの?」
 「うー、それがねぇ……」プルルルルッ!「……はい、緑丘です。え、今すぐですか? はい、了解しました」
 チンっと内線電話を置くと、恭子は真奈実に頭を下げた。
 「ゴメン、博士が呼んでるから行かなきゃ」
 「大変だね〜」
 「まぁ、その分、やり甲斐もあるけどね。マナちゃんは、それ飲んだらカップは適当にかたしといて」
 パタパタと、あわただしく部屋を出て行く恭子。
 中身が半分以上残ったカップを手に、所在なさげに辺りを見回した真奈実の視線が、それに止まったのは、はたして偶然だろうか?
474『黒の誘惑と白への回帰』:2011/04/16(土) 12:48:43.25 ID:ghHThNUv
 「サブキュースの装備、かぁ……」
 先ほどの恭子の話を聞く限り、悪の組織の産物ながら、なかなか大した装備のようだ。
 実は、真奈実はふたつ程、自分たちが使用しているexスーツに不満があった。

 ひとつは、その燃費の悪さ。
 このスーツは、確かに桁外れの性能を持っているが、その反面非常に大量のエネルギーを必要とする。しかもエネルギー源は電力などのように簡単に補えるものではなく、着用者の生体エネルギーだった。
 それゆえ、戦闘後や負傷後のエクサイザーたちは、華奢で小柄な英美でさえ、周囲がドン引きするほどの大量の食事を必要とする。
 エクサイザーの4人の給料(一応、国家公務員なのだ!)が高めなのは、危険手当以外にこの食費手当がついてるからだというもっぱらの噂だ。
 食べる端から消費するので、ダイエットの必要がないのはある意味利点かもしれないが、大食いキャラはどうも……と思う真奈実。
 一応、緊急用として博士が開発した「ひと粒で800kcal」のエネルギータブレットもあるのだが、これがまた死ぬほど不味い。ある意味、究極の選択だった。

 ふたつめは、「スーツのデザインがダサい」こと。
 基地(研究所)の総責任者であり、exスーツの開発者でもある朱鷺多博士は、少年時代に80年代系特撮番組を見て育った人間で、自身の発明品にも当時の「古き良き戦隊物」的センスをしばしば盛り込みたがる。
 あまりにアレな場合は助手を務める恭子が修正してくれるが、exスーツは最初期の発明品で、かつ戦いの中で長年増築を重ねたホテルのごとく後づけでバージョンアップしているため、根本的な改良にまで手が回っていないのが現状だ。
 「だからって、全身タイツ+フルフェイスヘルメットはないわよね〜」
 この件に関して、一番不平を漏らしているのは真奈実だろう。
 そもそも硬派な憲一は機能性重視で格好にはあまりこだわらないし、洋はある意味博士の同類(マニア)だ。英美も、元が修道女見習いであったせいか、オシャレにいまいち疎いところがある。
 恭子が気をつかって、ただの単色ではなく別の色でラインを入れたり、手袋とブーツは別の素材で作ったりはしてくれたが、シルエット自体が「全タイ+ヘルメット」という事実には変わりはない。
475『黒の誘惑と白への回帰』:2011/04/16(土) 12:49:08.29 ID:ghHThNUv
 そんな彼女にとって、魔隷姫サブキュースのコスチュームは、ベース色が黒だということを差し引いても興味を覚えるに足る代物だった。
 アンダーウェアに相当するのは、レオタードに近い形状のノースリーブの漆黒のボディスーツだ。ボトム部は際どい角度のハイレグ仕様で、逆に上半身は喉元まで覆うハイネックになっている。
 特筆すべきは、その胸部でエナメルのようなラバーのような、あるいは昆虫の甲殻のような不思議な素材で出来た胸当てが付いている。
 また、ちょうど左右の鎖骨の中間あたりが菱形にくりぬかれていて、下の肌──というか胸の谷間が見える形になっていた。
 ボディスーツの上には、半袖の丈の短い軍服のような上着を着るのだが、この上着には黒の地に暗め赤のラインと金の縁取りがいくつか施されており、「幹部」「将軍」らしさを演出している。
 しかも、布製に見えるこの上着自体が、防弾チョッキなどメじゃない高い防御力を持っていることは、これまでの戦いで実証済みだ。
 パールの通常モードの銃撃が当たったくらいではロクにダメージを与えられなかったし、フレイムが振るう剣でも切り裂くことはできなかったのだから。
 脚部については、まず太腿までの黒い網タイツに脚を通し、その後、ニーガードの付いたロングブーツを履く。
 剥き出しの腕部の方は、左手は肘の上まである黒い長手袋を付けるので、肌が露出する部分はほとんどない。右手の方が、手首から肘までをアームカバーで覆う形なのは、利き手の細かい動きを阻害しないためだろうか。
 ブーツと手袋&アームカバーは、胸当てと同様の不思議な黒い素材でできているので、防御力はかなり高そうだ。
 ほかには、武骨なショルダーガードのついたマント(表が黒、裏が暗い赤)と、悪魔のような湾曲した角が左右についている額当てが置いてあった。

 何気なく、ボディスーツを手に取った真奈実は、そのあまりの手触りの良さに驚嘆する。
 最高級のシルク……いや、一度だけ友人に触らせてもらった高級ミンクの毛皮の手触りを連想させるソレは、ゴワゴワしたナイロンのようなexスーツとは雲泥の差だった。
 誰もいないことを承知で、部屋の中をキョロキョロ見回す真奈実。
 「──ちょ、ちょっと着てみようかな?」
 好奇心に負けて、今着ている私服──サンドベーシュのジャケットと、オフホワイトのワンピースを脱ぎ始める。
 部屋の主の恭子が博士の部屋に行った以上、おそらく1〜2時間は戻って来ないだろう。
 それに、このボディスーツの特性を身を以て実体験してから、恭子や博士に進言すれば、exスーツの改良に役立ててくれるかもしれない。
 ……などと自分に言い訳をしていたが、客観的に見れば、真奈実のその心理は明らかに異常だった。
 友人の部屋で、全裸になって、敵の女幹部が着ていた服に着替えようと言うのだから。
 だが、目の前の衣裳に気を取られている彼女は、そのことに気づかない。
476『黒の誘惑と白への回帰』:2011/04/16(土) 12:49:33.29 ID:ghHThNUv
 黒いボディスーツは、下着まですべて脱ぎ捨てた真奈実が手に取ると、胸元の切れ込みから頸部と腹部にかけてスッと自然に切れ目が広がる。
 「ここから着るのかしら?」
 一瞬躊躇ったものの、好奇心には勝てず、両脚を通し、腰までたぐり寄せる。
 「ふわぁ……」
 思わず嘆声のような呻きが口からこぼれる。
 クロッチから下腹部にかけてが密着しただけなのに、その気持ちよさは筆舌に尽くし難いほどなのだ。
 夢中で、両袖を通し、首のカラー部分の位置も調整すると、自然に前の切れ込みが閉じた。
 「ハア……すごい」
 先程以上の心地良さが体中を覆っている。
 ボディスーツは、ピッタリと彼女の肌に密着し、皺のひとつも出来ていない。まるで皮膚に張り付いてしまったようだ。
 驚くことに、ノーブラなのに胸当て部分がぴったりと彼女の乳房に密着して、ツンと幾分上向きに持ち上げているせいか、いつもより胸が大きくなったかのように見える。
 ほんのり潤んだ目で、真奈美は残りの装備品にも視線を向けた。
 「ここまできたら……他のも試してみないとね」
 上着を着る。肩から二の腕にかけてが優しく包まれると感触が頼もしく、かつ一軍の女幹部にふさわしく背筋がピンと伸びた気がする。
 網タイツとブーツに足を通す。こちらもボディスーツと同様の心地よい感触が彼女を魅了した。手袋とアームガードも同様だ。
 さらにマントを羽織り、角付きの額当てを被ると、全身の装備の相乗効果か、それだけで彼女はイッてしまいそうな快感にうち震えた。
 さすがに若い女性の部屋だけあって、壁に30センチ程の鏡がかけてある。彼女は、ブーツの踵をカツカツと鳴らしながら、鏡の前に移動して、自分の姿を覗きこんでみた。
 「フフフ、妾(わらわ)はDUSTYの女幹部サブキュース。愚民どもよ、我が軍勢の前にひれ伏すがいい! ……なぁーんてね」
 マントを翻し、右手を前に突き出す、見覚えのあるポーズをとってみたところ、まさにありし日のサブキュースそっくりに見えたのだが……。
 (うーーん、何か、物足りないのよねぇ……! そうだ)
 先程脱ぎ捨てたジャケットから、昨日拾ったガーネットの指輪を取り出し、右手の薬指にはめる。
 「やっぱり、サブキュースと言えば、光りものよね〜」
 そんなことを言いながら、満足げに深紅の柘榴石を眺めていた真奈実だったが、いつとの間にか、頭がボーッとしてくるのを感じていた。
 「そろそろ……着替えない、と……」
 名残り惜しげにマントと額当てを外したものの、そこから先は、どうしても体が動かない。
 この気持ちのよい服を脱ぐことを彼女の体が拒否しているようだ。
 「じゃあ……」
 少し考え込んだのち、何とか上着だけは脱ぐと、そのままワンピースを身に着ける。
 これで、一見したところ、彼女の姿は先ほどまでとあまり変わらないように見えた。もっとも、左手は黒い手袋に覆われ、足元もブーツを履いているのだが。
 そして、脱いだ上着とマント、額当てを部屋の隅にあった大型のスーツケースに丁寧に畳んで入れる。
 「早く……行かなきゃ……」
 焦点の合わない目つきで、トランクを片手に恭子の部屋から出る真奈実。
 おりしも、基地の厳戒態勢が解除された直後ということもあって、虚ろな目をした彼女が基地から出るのを咎める者はいなかった。
477『黒の誘惑と白への回帰』:2011/04/16(土) 12:50:31.72 ID:ghHThNUv
#ようやっと、白が黒に。次回は視点を移して元黒さん側の話です。
478名無しさん@ピンキー:2011/04/16(土) 12:56:38.09 ID:SLbwhWnS
>>477
GJ!
なのだが・・・・・・スレ容量がいっぱいいっぱいだ

自分はレベルが足りなくて立てられなかった
479名無しさん@ピンキー:2011/04/17(日) 02:41:23.39 ID:66Nd1TWA
禁書のエンゼルフォールってこのスレド真中だよな
480名無しさん@ピンキー
読んだ時はおおっと思ったもんだけど
収束後に地の文で「体がかすんで元の姿に戻った」的な事が書いてあって酷くがっかりした覚えがある
あれは結局回りくどい肉体変化か入れ替わりだったんだろうか
例外的に元のままの人間、巻き込まれてるけど自意識を保ってる人間、その他無差別立場交換とかなり美味しいのになぁ