【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。10【エロパロ】
1乙
うちのドワ男の抜け毛をやろう。
過去ログ見てみたらフェルパーとドワーフの発情期ネタは割とあることに気付いた
皆考えること一緒なんだな・・・
とりあえずフェル子×クラ男の妄想をしている
近いうちに書く
>>1乙
これは私のおごりだ!!
つ『ブルマ−9』
>>1乙でございまス。あなたにはうちのセレが着てたきわどいビキニを贈ろう。
今晩投下とかいっときながら出来てなくて申し訳ない。もうちょっと待って下さいませ
1乙
あなたには石になったゲシュタルト校長を贈ろう
1乙
うちのツンデレエル子が着用したあぶない下着を進呈する
ついでにノム男が着けてたふんどしもつけよう
1乙
未使用のきわどいビキニを進呈しよう
ところでシュトレンの性別は女でいいんだろうか?
なんか男の娘臭がするんだが…
ゲーム内プロフィールには女性って書いてあったよ
でも、「ボク彼女いるし」発言を聞いたときは自分もお前って男の娘だったの?!ってビビったわw
間もなく投下いたします。今回はエロ展開に至るまでの前哨戦のようなものでございます。
なにぶんこちらの板では初投下となりますので到らぬところもあるでしょうが、どうぞよろしくお願いいたします。
プリシアナ学院の影、とも言うべき人気のない塀と建物の隙間に、一筋の紫煙が立ち昇っている。
ドワーフがギリギリ二人通れる程度の狭い空地には、安っぽい紙煙草を咥えた少年がいつも一人だけでいた。
学院は生徒教師を問わず全域が禁煙指定されており、ましていつも同じ場所で煙が上がれば決して同学生や教師に見つからないはずはないのだが……。彼がこの件で補導をされたことはなかった。
黙認の理由は実は彼が睨みを利かせていることが学院の秩序に貢献しているとか、実は教師たちですら力ずくでは敵わなかった、とかいう噂なのだが、真実は定かではない。
そして、そんな大げさな噂が学院中に広まるくらい、彼自身が相当の実力者であることは周知の事実であった。
彼は特定のパーティには所属せず、ある時間帯に決まってそこで暇を潰している。雨水溝があるだけのそこに時たまやって来るのは、決まった理由で彼に用がある者ばかりだ。
彼がこの場所で寛いでいるのは、依頼を募集している合図でもある。
「……フーッ」
塀を背に足を放るようにして地べたに座った彼は、指に挟んだ煙草を口から離し、より大きな煙を口から吐き出す。
と、彼の一連の仕草を震えながら見つめているのは、彼にとって数週間ぶりの来客であった。怖い話の1つで気絶しそうな気弱な印象の、青い短髪のドワーフの少女。
彼女から話を切り出してくるのを待つために火をつけていた煙草が、シケモクとなって溝に落ちる。
「……助っ人の話だろ?」
いつまでも何も言わず立ち尽くしている相手に痺れをきらして見上げると、少女はビクリと身を竦ませる。
色あせた金色の刺々しい短髪、そして髪と同じ色の瞳を宿す三白眼。彼がバハムーンである由縁の巨大な体躯と尖った角と耳も相まって、このドワーフに限らずたいていの相手は上目遣いに見上げただけでも睨まれたように震え上がるのが常だった。
いつものことであるがゆえに彼女の反応に対しては眉一つ動かさない。もっとも、無表情とはいえ元が強面なので相手には怒っているように見えるらしいが。
見つめるだけで威圧してしまうことは数ある経験で分かりきっているので、少年はすぐに目を逸らすと新しい煙草にごく小さなブレスで火を灯す。
「とりあえず、行き先と目的とパーティの数、それに伴うスポットあるいは飛竜召喚札の有無、そして帰還札かバックドアル使用の有無。
他にも聞きてえことはあるが、ひとまずそのぐらいは分からねえとこっちも要求する報酬の見積もりようが無え。
……分からんって言い分が多いほど、余計に高くつくぜ?」
いわゆる傭兵稼業。
特定のパーティに所属しない代わりに、報酬と引き換えにそれに見合った期間の助っ人としてどんなパーティの仲間にもなるのである。
「……あ、あの……」
彼女は、どもった口調のままなかなか話を進めない。
少年は壁を蹴り飛ばしたくなるほどに苛立ったが、これ以上怯えさせては逆効果と判断してそのままの口調で話しかける。
「ビビってんじゃねえよ。金額分の仕事はしてやるし、それ以上余計なことはしねえ。都合の悪い評判が立つと後の商売が上がったりになっちまうからな」
「……ごめんなさい、その、違うんですっ」
「は?」
目だけで見上げると、ドワーフが1枚の白い封筒を両手で持っているのが見えた。
「これ、あなたに渡してほしいって。わ、私の友達から頼まれたんですけど」
と言いながら、そのまま両手を突き出して少年の手の届く距離に封筒を差し出す。
少年がおもむろにそれを取り上げると、
「ご、ご用事はそれだけです! さようなら!」
と言って、ドワーフは逃げるように走り去っていった。
「……」
封筒を真っ二つに引き裂いて開き、中に入っていた紙片を手に取る。
紙片には学院の敷地内のとある場所と、明日の夕方の某時刻にここに来て欲しい、という旨が流麗な筆跡で認められていた。
約束の時刻。
バハムーンの少年は律儀にも手紙の場所へ約束よりかなり早く到着していた。
だが、この行為は間違っても相手のことを考えてというものではない。基本的に授業に出ない彼が他にすることもなく暇だったというだけである。
この場所も学院で人気が無い空き地の1つだが、ある程度の広さはあるので時々生徒が決闘に使うことはあるため日によっては騒がしく、彼がここで紫煙を燻らせたことは無かった。
そして、彼はこの空き地が『そういう場所』であることを知っていたが故に、手紙の差出人が何をしようとしているのかもおおよそ察しがついていた。
「お待たせしてしまったかしら」
時間の10分ほど前になって、樹木を背もたれに居眠りしていた少年に声がかかった。
「別に」
紛れも無く寝息を立てていた少年は、特に大きくも無いその声にすぐ覚醒する。
開けた視界の真ん中に現れていたのは、紫色の長い巻き毛をしたセレスティアの少女。
「フリードさん、で間違いありませんわね?」
「そういうお前は、昨日ドワーフを遣いに寄越した奴か。アリス……つったか?」
手紙の最後に記された名を思い出して問うと、少女は肯定するようにクスリと微笑んだ。
手を後ろに回して足を揃えて立ち、堅苦しい学院制服をきっちり着こなしているその所作は、多種族から見たセレスティアの典型的なイメージである清楚なものである。
……後ろ手で交差させるように構えられた、禍々しい二本の巨大鎌を除けば。
(学科は堕天使。あの一対の鎌は本来どちらも両手持ち、『真・二刀龍』を会得してなけりゃ同時にゃ使いこなせねえ。ハッタリじゃなけりゃこの女、かなり骨のある使い手だな)
多少の警戒を保ちながら、少年フリードは立ち上がる。
「どうやら助っ人の依頼でも、愛の告白でもねえみてえだな」
フリードは断言するように言い放ち、アリスと目を合わせながら障害物の無い空き地の中心へと歩いていく。
両手に、刃から重厚な鈍い輝きを放つ二本の槍を握り締めて。こちらも本来、1つ1つが両手持ちの武器である。
「始めに聞いとくぜ。……誰の差し金だ?」
ねっとりと絡みつくような殺気を頬に感じつつ、フリードは問う。
依頼内容はパーティ同士の決闘の助太刀も珍しいことではなく、それが原因で倒した奴らから逆恨みの襲撃を受けることもまた珍しくないことであった。
ただ、彼はこのセレスティアの少女に見覚えがなかったのだ。これに対してフリードは、彼女がそういう連中に雇われた腕の立つ用心棒のようなものなのだろうとアタリをつけていたのである。
「説明の必要がございまして?」
「心当たりが多すぎてな。とりあえず、殺る気十分なのはツラ見りゃあ分かるがよ」
フリードは言うが、彼女は別に凄みを利かせてこちらを睨みつけているわけではない。
しかし、口に微笑をたたえながらも藍緑色の瞳は決して逸れる事がない絶え間ない殺気を発し、後ろに構えられた鎌は次にどのように動くのかを予想させない。
この常に隙を伺っているような彼女の立ち振る舞いが、彼に気を抜くことを許さなかったのだ。
「ま、アンタの言うことももっともだ。遠慮は要らねえ、本気で俺の命を奪いに来い」
「その代わり、あなたも殺すつもりでいらっしゃる、と?」
「つもりじゃねえ、殺すんだよ。仕事柄、アンタみてえな別嬪だろうと豚と分け隔てはしてられねえからな。……後で蘇生はさせてやるさ、真っ向から喧嘩売ってきたことに免じてな」
話しながらフリードは眼前に十字を作るように、それぞれ地面に直角と水平に槍を交差させる。
眼光は鋭く射抜くように目前の敵を見据えた時、もはやお互いに言葉は必要なくなっていた。
アリスは更に笑みを深くし、足を交差させると後ろ手に持っていた鎌を緩やかな動作で左右に突き出す。まるで、ドレスの裾を摘んで一礼する時の貴婦人のように。
そして、彼女の交差した両足がフワリと浮かぶと、
――軽やかな足音が、小気味良いリズムを奏で始めた。
「……」
体の捻りは交えない、前後左右に素早くステップを踏むだけのタップダンス。
フリードはそれが無駄な動きでもハッタリでもないことを理解しつつ、彼女の『踊り』が終わるのを待つ。
否、待つというほどの時間はかからなかったかもしれない。
彼女の踊りは唐突に若干大きく跳んで、両足で着地することで終わりを告げる。
しかし、着地する乾いた革靴の音こそすれ、姿はとうにそこには無い。
――かの足捌きは、『快足の踊り』。
疾風が遅れて続くほどのスピードは、速い以上にテレポルで現れたようであった。
いきなりフリードの目と鼻の先に迫ったアリスは、既に右手の鎌を横薙ぎに振りかぶっている。
彼の首の高さに。
「!!」
だが。
完全に不意をついて敵を仕留めたかに見えた先手は、激しい金属音によって失敗したことを告げる。
彼の左手に握られた槍の柄が、薙がれた鎌の刃を受けていたのだ。
(……メインは『堕天使』、サブ学科は『ダンサー』か)
フリードは、ただ彼女の踊りに見とれていたわけではない。
目前の敵に意識を集中し、刹那を駆ける動きをも瞳に捕らえる身体向上術、『心眼』の発動を狙っていたのだ。
開いた右手の槍が、薙いだ姿勢のままのアリスの横脇腹目掛けて突き出される。
「くっ!!」
しかし、隙を突いたと思われた一撃の手ごたえは掠る程度のものであった。
後ろ飛びではリーチの長い槍に捕らえられると判断したアリスが、横跳びで距離を取ったためだ。
後を追って飛び出そうとフリードが足を踏みしめた頃には、彼女は熟練の術師並みの早口で詠唱を終えていた。
――『サンダガン』!!
壁のように大量に発生した強烈な稲妻が、二人の間を阻むような位置を縦横無尽に駆け巡る。彼の心眼をもってしても複数の稲光の動き全てを見切ることはできない。
ところが、フリードは構わず真っ直ぐに突進した。躊躇わず、雷が幾重にも交差する中心へ。
「!?」
両腕から同時に突き出された二つの槍が、咄嗟に交差された二つの鎌にそれぞれ受け止められる。
フリードは大量に直撃した稲妻で体のあちこちを焦がしながらも、目を剥いた彼女を見つめて笑った。
「……何を驚いているんだ?」
互いの刃を拮抗させつつ、フリードは余裕たっぷりに笑みを浮かべて語りかける。
「俺は竜騎士。守りを固めて仲間を庇い、時に回復も担うパーティの『最後の砦』。
静電気にビビる腰抜けに務まる役じゃねえんだよ」
『真・二刀龍』を会得しているセレスティア、アリスの腕力は同種族中で相当高いものと認めていい。
だが同じ技術を会得し、しかも全種族中でも恵まれた腕力を秘めるバハムーン族のフリードを止めきれるものではなかった。
例え刃同士が拮抗しようと力は決して拮抗し得ず、次第にアリスが押されて姿勢が後に反り始めていく。
「『癒しの踊り』は躍らせねえ。一撃で……」
「――フフッ」
「!?」
今度は、フリードが驚き目を剥く番であった。
あと一息で体勢を崩され一突き見舞われるであろうその時に、彼女がこの上なく楽しそうに笑ったのだ。
藍青色の瞳に影が差す。
「……素晴らしいわ」
「っ!!」
賞賛の言葉は、寸分たりとも負け惜しみとは思えぬ響きを含んでいた。
異様さに背筋の毛が逆立ち、反射的に守りを省みぬ全力を叩き込む。ついに二本の鎌のガードが破れ、彼女の左右の二の腕を貫いた。
「くあっ……!!」
(よしっ、これで……!)
ダンサーには『癒しの踊り』があるが、堕天使は回復魔法を覚えないことをフリードは知っている。
要の武器を操る両腕に致命的なダメージを与えた以上、あとは踊る暇を与えず畳み掛ければ勝てると……普段なら確信できたのだ。
だが今の一撃は、いくら全力を注いだ結果とはいえ拍子抜けするほどあっさり決まったような気がしてならなかったのである。
……まるで、わざと守りを解かれたような……。
「……?」
そんなことをする理由は無いだろう、と普段の己は告げている。
何せ、こちらは両腕の守りのがら空きになった相手に、心の臓目掛けて槍を叩き込めばいいだけなのだから。
最後の抵抗手段となろう、攻撃魔法の詠唱をされるよりも早く。例え魔法が直撃しようと、あと数発程度なら容易く耐える自信も有る。
それでも、フリードはこの瞬間奇妙な胸騒ぎで動きを鈍らせた。
自らの生命力に不安を覚えたわけではない。何か、この思考に恐ろしく大きな落とし穴がある気がしたのだ。
この時、彼は右腕に握る槍を大きく手前に引き、今まさに少女にとどめを刺すべく狙いをつけたところであった。彼女は鎌を取り落としており、物理的な反撃はまず不可能といっていい。
だが、誰が見ても殺される寸前の状況に立たされていた少女は、両腕から血を噴出しながら、
――仄暗い微笑みを浮かべていた。
「!!!」
考えるよりも早く、
フリードは地面に転がるように不恰好な回避を取る。
地面に尻餅をつくような姿勢で止まった彼は、全身にびっしり脂汗をかいている自身に遅れて気づいた。
そして、今しがた自分が立っていた場所を、漆黒よりも毒々しい混沌とした輝きをたたえた球体が通り過ぎるのを目撃する。
(……イカレて、やがる)
人の歩みほどの速さで飛ぶそれは、ヒューマンの女子供でも避けるのは容易い。
だが直撃したならばいかなる守りも生命力も度外視し、平等な死を与える即死魔法『デス』。
無論フリードとて、当たれば死の洗礼は免れられない。アリスはこの魔法1つの発動のために両腕を犠牲にし、彼が勝利を確信し気を緩める瞬間を待っていたのだ。
敵の攻撃に打たれることに慣れた竜騎士の心理を利用した、狡猾な戦術。
否、それよりも彼が戦慄したのは、
(詠唱も、予備動作すら無かっただと!? 待て、だとすればあのサンダガンは『フリ』だったということに……!)
と、そこまで考えた彼の喉が恐怖に干上がった。
もし、彼女が他の魔法もノーモーションで発動出来るとしたら。今、自分は愚かにも無防備に何秒静止していた?
もはや彼の思考からとどめという単語は消し飛び、ただこの場から離れようとした時には何もかも手遅れとなっていた。
渾身の力を振り絞る全身は震えるだけで、全く言うことをきかなくなっていたのだ。
「……堕天使は、実力が低いうちは器用貧乏と軽蔑されますの。前衛の戦士ほどの力も生命力も無く、後衛の魔術師ほど魔力も強力では無いからですわ」
血まみれになった両腕をダラリと両脇に垂らし、少女が麻痺(パラライズ)に囚われた少年に歩みをもって迫る。
「しかし裏を返せばそれは、『役割を選ばない』ということでもあるのです」
鎌による近接攻撃と攻撃魔法による一掃に加え、補助魔法による『状態異常』をも狙える『堕天使』。
そのどれもが専門職に劣る彼らはいざ敵に回ったとき、極めて攻撃の型が読み辛い難敵と化す。
そして読みを外した相手の致命的な隙を、狡猾な彼らは決して見逃さない。
「く、そ……っ!!」
「けれど、今の『デス』が避けられることは本当に予想外でした……いいわ、最高よ。知れば知るほどに、あなたが欲しくてたまらなくなる」
彼女の白く長い指が首筋を撫でても、こちらは指の関節1つ動かせない。
暗い喜びに満ちた端正な顔が目と鼻の先に迫っても、彼には競り上がる悪寒から逃れるために目を背けることすら許されない。
何故か彼女の頬が朱に染まっていたことも含め、フリードには今のアリスの行動が全く理解できないでいた。
「ねえ……もっとお話しましょうよ、素敵な人」
「何、を」
腕を首の後ろに、顎を彼の肩の上に乗せ。耳元でこそばゆい吐息と共に、アリスは囁く。
「続きは私のお部屋で、ね……」
次の瞬間。
何の前触れも無しに『テレポル』を発動させたアリスは、その赤黒い血に染まった腕に抱きしめた一人の少年と共に、
人気のない空き地から、姿を消した……。
……すみません、名前についての警告を忘れていたことに今気づきました。以後気をつけます。
登場人物二人のモデルは二人ともうちの前衛です。
こんなものでよろしければまた次の機会に続きを投下する所存です。
それでは。
20 :
名無しさん@ピンキー:2010/10/22(金) 04:48:51 ID:nqrt0roj
W i z a r d r y X T H
1乙。です
『冒険の彼方』投下します。
注意、この話では、キャラクターに各種族と関係ない名前がついています。
以下の通り
カナタ……ヒューマン・男、普通科
ショウン……ノーム・見た目男、レンジャー
カレリア……フェルパー・女、戦士
ピコ……フェアリー・女、魔法使い
22 :
冒険の彼方:2010/10/23(土) 07:55:55 ID:3ZArmFRH
さて、今日も午前の授業が終わり、僕達は食堂にやって来た。
今日は朝からずっと全学科共通の授業だったから、カレリアにショウンの言っていたボブテイルの話をしてあげた。
カレリアの反応はと言うと、自分の尻尾が病気や呪いではないとわかって凄く喜んでくれた。
でも、いくら嬉しいからって教室で抱きつかれたのは恥ずかしい。……と、言うか
「カナタ。恥ずかしがるか見せ付けるか、どっちかにしなよ」
「ショウン、僕が見せ付けてるわけじゃないだろ」
正面に座ったショウンは呆れ顔をし、僕と僕の隣に座ったカレリアを眺めている。
「……スリスリ」
カレリアはと言うと、ショウンの言葉なんか気にせずに僕に頬擦りをしてくる。
実は、今朝話をしてからずっとこうなのだ。
授業中にもチラチラ僕の方を見てきて、休み時間になれば直ぐ様僕の席にやって来て、お喋りしつつ僕に頬を寄せる。
お陰で僕はクラス中から冷やかされてしまった。……まあ、カレリアは可愛いいから良いけど。
それに、少し寂しかったというのもある。疎ましいぐらいに僕にまとわりついていたピコと離れてから、もう一月も経つんだから。
23 :
冒険の彼方:2010/10/23(土) 07:56:31 ID:3ZArmFRH
「でも、今日の午後は学科別授業だからイチャイチャ出来ないだろ」
「だからイチャイチャなんてしていないってば!」
ショウンの言う通り、午後から僕とショウンはパーネ先生の授業。カレリアはロッシ先生の授業だ。
食事を終えて別れる時、カレリアは僕にしがみついてしばらく離れなかった。
「カナタにはよく懐いてるね」
「懐いてるってレベルかな。まあ、悪い気はしない」
僕としてはビルグリムみたいな他のフェルパーとも仲良くして欲しいと思うんだけど。
カレリアと別れた僕達はパーネ先生の授業を受ける為に教室へ向かった。
「僕、パーネ先生苦手なんだよね」
「カナタも? パンナもパーネ先生を苦手そうにしていたな」
尻尾(?)の一件以来、僕はパーネ先生が分からなくなってしまった。
僕とショウンは魔法基礎の授業に並んで出席していた。ショウンはレンジャーだけど、将来は錬金術士を目指してるから魔法を習っている。
パーネ先生は始業のチャイムが鳴ってから教室に入ってきた。
そして、授業に入らずにかねてから話が出ていた転入生を紹介する、と言った。
「では、ピコさん。入って来て下さい」
「ハーイ」
ん?
24 :
冒険の彼方:2010/10/23(土) 07:59:36 ID:3ZArmFRH
ピコさん? まさか……
先生に促されて女生徒が一人、入って来た。
「初めまして。魔法使い学科のピコです」
「って、ピコぉっ!?」
僕は驚いて叫んでしまった。本当にピコだ。隣でショウンもポカンとしている。
「あら。知り合いですか?」
パーネ先生の尋ねる声になんとか頷く。
「はい。おさなな……」
「ハイ。私はカナタのものですから!」
マテ。今ナント言ヒマシタカ?
「私は頭の天辺から爪先まで」
ピコはそう言って自分の頭の上に右手を置き、右足を曲げて爪先を空いてる左手で掴んで続ける。
「髪の毛一本、血の一滴までカナタのものです」
とんでもない事を宣言した。周りからの視線が突き刺さる。
「ピコ! 誤解を招くような事を言うな! しかもソレ、悪魔との契約のポーズだろ!」
「あら、悪魔との契約なら全裸のはずですよ?」
横からパーネ先生が的外れなことを言ってくるがスルーする。
「ほら、ショウンからも何か言って」
隣に座るショウンに助けを求めるけれど、そこには誰も座ってなかった。
ショウンはいつの間にか席を移動していた。
「ゴメン、カナタ。僕もソッチの趣味はムリ」
「オイ!」
25 :
冒険の彼方:2010/10/23(土) 08:00:12 ID:3ZArmFRH
午後の授業は針のムシロに座っているみたいだった。
授業が終わってすぐに食堂に移動したのに、既に噂が広まっているのか周りからの視線が痛い。
何だか分からないけれど、ショウンがニヤつきながら隣に戻って来た。
「カナタ凄いなぁ〜。一部のフェアリーから大人気だよ」
「アレで人気出るってドユコト?」
思わずカタコトになってしまった。
「ちなみに、ピコ。君はフェアリーの選ぶ『死ねば良いフェアリー』の5位にランクインしたよ」
「ふーん。そうなんだ」
僕の肩に座ったピコが、無感動に返事をする。物騒なランキングに突っ込むべきか、ピコに突っ込むべきか……。
「突っ込み所が多すぎて困る」
僕は頭を抱えた。
「カナタ、どうしたの? 頭痛い?」
「うん。いや、大丈夫」
横から顔を覗き込んでくるピコに『お前のせいで』と、言おうとしたけれど、ピコの心配そうな顔を見ると言えなくなった。
「カナタもピコには弱いねぇ」
「うるさい」
ショウンがにやついているけれど、無視しよう。
「そういえば、カナタとショウンと、もう一人は?」
ピコが食事の手を止めて訊いてきた。
「カレリアってフェルパーの子だよ」
26 :
冒険の彼方:2010/10/23(土) 08:00:46 ID:3ZArmFRH
ピタリとピコの動きが止まる。
「……女の子?」
「ああ。可愛い子でさ。ちょっと人見知りだけど、ピコも仲良くしてくれ」
そう言って僕はテーブルの下に手を突っ込んだ。
「ふにゃア!」
隠れていたカレリアを、引っ張り出す。
「このコがカレリア」
「わぁ! カワイイ〜」
ピコが引き出されたカレリアにじゃれつく。
「私はピコだよ。カレリアさん、よろしくね!」
「……」
にこやかに挨拶するピコに対し、カレリアは反応が鈍い。困惑するピコだけど、ふと、カレリアの尻尾に気付いた。
最近、その尻尾が恥ずかしいモノではないと分かったカレリアは、スカートの下に隠す事をやめ、外に出していた。
「あれ? 変わった尻尾だね」
ピコの手が尻尾に伸び……
「!! フーーーッ!」
触るか触らないかで、カレリアは僕の背に隠れてピコを威嚇した。
「あ、ご、ごめんなさい、カレリアさん」
「ちょっと、カレリア?」
「にゃ! す、すみません、取り乱して」
謝るピコと僕の呼び掛けにカレリアはハッとなる。
「まあ、落ち着いて座ろうよ」
一人冷静なショウンの言葉で、みんな席についた。
「それで、これからなんだけど」
27 :
冒険の彼方:2010/10/23(土) 08:01:21 ID:3ZArmFRH
みんなの視線が集中した事を確認して、ショウンは咳払いを一つして話を進める。
「ピコは僕達のパーティーに加わるんだよね?」
「うん! 私はカナタの側にいたくて来たんだから当然だよ!」
ピコの恥ずかしいセリフを聞き流して、僕は目で先を促す。
……ってゆーか、カレリアが何か怖い。
「じっ」
蛇に睨まれた蛙状態だ。目玉以外動かせないよ。
「じゃあ、これで僕達のパーティーは4人になるわけだけど……」
僕とカレリアの様子に構わず、ショウンが話しを続ける。気付いてても触れない、さすがショウンだ。
「実技試験、かなり厳しいらしいから出来れば6人パーティーを組みたいんだ」
「オリーブとルオーテは?」
「ルオーテって誰?」
ピコが訊いてくるけど、後で教える事にして話しを続ける。
「二人はそれぞれでやってるみたいだし。邪魔しない方がいいよ」
「そっか」
ちなみに、みんなコッパは始めからあてにしてない。酷いよね。
「……でも、二人なら僕に心当たりがあるから、任せてくれるかな?」
「いいともー」
「私もいいよー」
「わ、私も……」
メンバー募集はショウンの心当たりに期待する事にした。
28 :
冒険の彼方:2010/10/23(土) 08:02:06 ID:3ZArmFRH
ピコの加入と新規メンバーの募集以外には特に何もないから、そのまま解散となった。
「じゃあ、みんな。改めてよろしくお願いします!」
ピコが深々と頭を下げる。
「ピコ、こっちこそよろしく」
「また、楽しくやろう」
「……よろしくお願いします」
カレリアだけ重苦しく返し、なんとなく雰囲気が悪くなってしまった。
「ねぇねぇ、カナタ」
気まずいので皆バラバラに帰っていたんだけど、『迷い子になりそうだから』と、ピコは僕の肩に座っていた。
この配置、ピコの羽とか髪が非常にくすぐったい。
「ねぇってばー」
「ん? 何?」
耳元のくすぐったさに耐え、なんとか話しを聞く。
「あのね、後で私の部屋に来てくれない?」
「……は? なんで?」
「備え付けの家具が大き過ぎて使えないから、カナタに作って欲しいなぁー、なんて。ダメ?」
確かに、備え付けのタンスとか、フェアリーのピコには開けるだけで一苦労だろう。
「わかった。後で道具持って行くよ」
「うん! ありがとうねー!」
頭に抱きついてくるピコ。そのくすぐったさと笑顔に、僕は目が眩んでいるんだと思う。
今回はここまでです。
携帯からだとスレ消費量がわからないのでこっちに投下しました。
不良少年の受難、GJです。
30 :
19:2010/10/23(土) 08:49:07 ID:bpjxygAC
>>29 こちらこそGJ
平和な雰囲気の中で着々と紡がれる修羅場フラグ…いやそれでもこんなにほほえましくやってるなら大丈夫かな? 次も楽しみにしております
>>9 ありがとう。俺も「彼女いる」発言にびっくりしちまったよ
セレスティア♂とディアボロス♀で二人旅してるけど
まったくシチュエーションが思い浮かばないぜっ☆
身体の関係は無いが、エロネタも気軽に話せる関係になったある日
○○男「あー、可愛い女の子に逆レイプされたいなー…。」
○○子「あなただったら和姦になるだけじゃないかしら?」
○○男「それもそうかー…、じゃ○○子をここでレイプしてみるかー。」
○○子「無理よ、和姦になっちゃうから…。」
○○男「だよなーハハハハハえっ!?」
○○子「…///」
○○男「えとつまりその…///」
○○子「…は、早く襲いなさいよ!」
的なシチュエーションを思い付いた。
リリィ先生が書きたいのに、いまいちキャラがつかめない…
無口な割には、怒ったりする時もあるしな…
セルシア×フリージア「(イチャイチャ)」
キルシュ×クラティ「(いちゃいちゃ)」
バロータ「なんか、あっついな。」
シュトレン「だよねー」
バロータ「なあ、もしかして俺らって邪魔?」
シュトレン「かもねー」
バロータ「んじゃ、邪魔者同士、俺らもイチャるか」
シュトレン「……死にます?」
バロータ「……ふ、腹上死なら」
シュトレン「じゃ、死んでください(ハート)」
この後、バロータとシュトレンがどうなったかはご想像にお任せする。
確かにバロータとシュトレンはくっついても良かったと思うなぁ
なんで公式で百合なんかにしたんだ…
最終的にキルシュとセルシアがくっつく
そう思っていた時期が私にもありました
シュトレン あっちの方も 二刀流
だったりしたり しなかったり (字足らず)
このスレ的には百合はありなのか?
投下前に注意書きしときゃ大丈夫だろ
絶望したッ!
現在、三校交流戦が終わったあたりまでゲーム進めたんだけど、
密かに「鈍感オリ主にツンデレ姫が徐々にデレる」展開を妄想してたのに、
そのキル姫が「百合…だと……」。
いや、確かにその傾向はあったんだけどさぁ。
この行き場のない妄想をどうしたモノか。
1)主人公を女性にする
2)主人公をショタないし美少年にして「男の娘ならアリじゃ」と姫に言わせる
3)いい雰囲気になった……と見せかけて、土壇場でフられる
>>37 自分もwフラグ立ってたように見えたんだが…
昨日三周目プリシアナで暗黒校舎のベコニア戦やったが報われなさすぎw
舞踏会イベントでレオノチスとチューリップにフラグが立ったと思った。
>>41 二番に一票。新しいと思ったがこれと展開が似たSSが前にあった気がするな。
>>41 そのまま主に惚れさせてもいいんじゃよ?
キャラ崩壊さえしてなければさほど問題無い気がする
というわけで二番でお願いします!
両方まとめてちゅっちゅ
>>45 同意。つまり簡略した流れを言うと、百合にしか興味がなかったコがある日突然男に惚れる、と。
……ってコレ普通にただの初恋じゃね?
48 :
王女様と私:2010/10/25(月) 23:42:57 ID:Y/ABQZ+6
黒と白で構成された修道服(実は、特注のホーリークロス)姿のエルフの少女が、どことなく高貴な雰囲気のディアボロスの娘に魔法をかける。
「リフレッシュ! ……ハイ、これで終わりです。如何ですか、キルシュトルテさん?」
「おぉ、さすがはエルファリア、回復呪文はお手の物じゃな。うむ、褒めて遣わすぞ」
滅多に他人を認めることなどないキルシュトルテが素直にそう称賛するのだから、エルフ娘のシスターとしての技量は確かなのだろう。
「どういたしまして、これくらいお安い御用です」
パーティーリーダーであり想い人でもある王女の言葉に、エルファリアと呼ばれた少女はニッコリ微笑んだ。
「確かに、豊富な回復呪文や魔法壁の能力を持つシスターが仲間にいると、冒険時の安定感が段違いですね」
「うんうん、ホント、エルちゃんが仲間になってくれて助かったよー」
クラティウスやシュトレンと言った、古くからのキルシュトルテの従者ふたりも殆ど手放しで褒める。
「アハハハ……そんなに褒められると照れくさいですよ〜」
明るい笑顔で、仲間からの称賛を受け止めるエルファリア。
「さて、もう少しで学園じゃ。まだ日は高いが、わらわは早ぅ休みたい。急ぐぞ!」
キルシュトルテの言葉に他の3人も異論はなく、一行は円陣(キャンプ)を解いて、再び冒険行へと戻る。
だが……最後尾を歩くエルファリアの顔は、何故か先ほどまでと異なり、微妙に浮かない顔だった。
(回復役として役に立ち、頼りにしてもらえるのはうれしいけど……)
チラと自分の装備に目をやる。
黒地のワンピースに白襟がついた修道衣。本来ふくらはぎか足首近くまであるはずの裾が膝丈に改造されているのは、冒険時の動きやすさを考慮した結果か。
頭部には、本来のベールの代わりに、白と金糸で聖印が縫いとられた黒の聖帽をかぶっており、エルフらしく整った彼女の繊細な美貌と見事な亜麻色の髪を過不足なく引き立てている。
腕部に装着した煌びやかな籠手と足元のパンプスは、やや聖職者らしくないとも言えるが、いずれも王女からの贈り物であり、実用品としても優れているため、エルファリアとしても外す気はない。
49 :
王女様と私:2010/10/25(月) 23:43:30 ID:Y/ABQZ+6
まぁ、そういう意味では、修道衣や聖帽も同様にキルシュトルテがくれたものであり、実用面でも心情面でも簡単に変えるわけにはいかないのだが。
唯一修道衣の胸元で揺れるハート型の護符だけが彼女本来の持ち物だが、こちらも精神力を回復してくれる効果があるため回復魔法の使い手としては手放せない。
いずれにしても、絵に描いたような「冒険に赴く修道女(シスター)」姿だ。あえて言うなら、頭に「美しい」とか「魅力的な」といった形容を付け加えてもよい。
エルフの種族特性故か、胸や腰のボリュームには多少欠けるきらいはあるが、同族はもとよりヒューマンやクラッズなど他の種族も含め男性を100人連れて来たら、その7割方は彼女を「美人」ないし「美少女」と評価するだろう。
──もっとも、そう言われてもエルファリアは微塵も嬉しくなかったろうが。
(ハァ……まさか狩人からシスターに転科させられるとはね)
無論、エルファリアとて「冒険にはパーティバランスが重要」と言うことは心得ている。
そもそも、キルシュトルテたちに3人に後から合流したのは自分なのだし、種族的な適正から言っても、エルフの自分が術師系の後衛に転科するのが妥当なコトも十分理解してはいた。
しかし……。
(どうして、よりにもよって「シスター」なんだよ〜!?
ボクは……ボクは、男なのにィーーーー!!!)
エルファリア・ノーザンライト
年齢・17歳
種族・エルフ
メイン学科・シスター/サブ学科・狩人
性別…………♂(!!)
コレは、決して恋してはイケナイ姫君に恋したが故に、その後、苦難の道を歩むこととなった、ひとりの男の娘の物語である。
……なんちて。
-つづく?-
せっかくなので、皆さんの意見に従い、2番なネタで書いてみた。
ただし、オリ主人公(パーティーリーダーまのヒューマン)じゃなく、その仲間のエルフ、戦隊物で言う緑ポジの少年で。
なお、「王女は常に大量の仲間を連れてるから、回復役なんて不要だろ」というツッコミは勘弁。
彼女もきっと少しは(冒険者として)成長してるんですよ。身内だけで身軽に動きたいときもあるだろうし。
>>35 ちょっとまてっ!?
もしかして、あの生徒会長もキルシュとは別の意味で
アブノーマルだったのかっ!?
と言うか…まともだと思った セルシアがホモだったなんて
ぜつぼうしたぁーっ!!
まともなのはタカチホの連中だけかいっ!!
>>50 何か勘違いしているようだがフリージアは♀だ。
そして
>>49ぐっじょぶ。
ぜひ続きを。
勘違いしてたのは俺だった…逝って来る
>>50 会長は氷窟の魔王時点で、男どころか女にも興味ないのは判明済み。
執事はどっちだがわからない。
>>52 大丈夫だ。勘違いじゃない。
奴は書類改竄してるからな。
PS3だと声が
55 :
王女様と私:2010/10/26(火) 13:56:05 ID:SDYXt1GF
「(ブッ)なにィーーッ!? 正気か、エル?」
弟分とも言えるエルフから相談を受けたヒューマンの少年は、思わず飲みかけていた紅茶を吹き出した。
「しょ、正気かって……ヒドいや、ヒュー兄(にぃ)」
「いや、だって、なぁ?」
振り返って他の仲間に意見を求めようとしたヒューマンの少年だったが。
「あぁ、ダメですよ、ヒューくん。今拭きますからじっとしていて下さい」
傍らにいたディアボロスの少女が、少年を制止して、甲斐甲斐しくその世話を焼く。
「あ、すまん、アップル。せっかく淹れてくれたお茶を……」
「いえ、それは別によろしいんですけれど……」
とりあえず少年の服とテーブルに飛んだ液体を拭き取った少女は、ナプキンを傍らに置くと、少年の隣に腰かけた。
少年と少女、そしてエルフの少年は、幼い頃からの友人──いわゆる幼馴染というヤツだった。
たまにやんちゃや無茶もするが、基本的には頼りになるリーダー格のヒューマンの少年ヒューレット。
淑やかで優しく、オマケに美人で有能という、天が二物も三物も与えまくったようなディアポロス貴族の娘、アップルタルト。
ひとつ年下で、ふたりを兄・姉と慕う、ちょっと内気だが頭の良いエルフの少年、エルファリア。
父親同士が旧友──青年時代にパーティーを組んで冒険していたという彼らは、物心つくかつかないかの頃からの15年越しのつきあいであり、血の繋がりこそないものの、本当の兄弟のように仲がよかった。
そして、今から一年程前、エルファリアが16歳の誕生日を迎える年に、揃ってドラッケン学園へ入学し、本格的に冒険者としての勉強と修行に取り組むようになったのだ。
幸いにして、入学後間もなく3人の気のいい同級生と出会い、無事に6人パーティーを組むことができ、これまで順調に冒険者(候補生)としてのキャリアを重ねてくることができた。
もっとも、幸か不幸か、入学直後に図書委員長にしてこの国の王女たるキルシュトルテ・ノイツェシュタイン達とも遭遇することになったのだが。
──余談ながら、エルファリアは、貴族やディアボロスと言えば、それまでアップルタルトやその家族にしか知り合いがいなかったため、キルシュトルテの我儘で傍若無人な態度に、大いに度肝を抜かれるコトとなる。
もっとも、世間一般的にはアップルタルトの生家ノヴァシュタイン伯爵家のごとく「気さくで慈悲深い貴族」という方が少数派だろう。
56 :
王女様と私:2010/10/26(火) 13:56:26 ID:SDYXt1GF
閑話休題。
ヒューレットたちのパーティーは、同期の中では頭ひとつ抜けた存在としてすぐに頭角を現し、ついには三校合同戦において最優秀生徒に選ばれるまでに成長した。
パーティ内の人間関係も良好で、単位の履修も順調。何も障害はないかと思われたのだが……ココへ来て、ひとつ困った問題が露呈することとなった。
彼らのパーティは、男女3人ずつで構成されている。
内訳は──
ヒューマン・男・ガンナー/盗賊
ディアボロス・女・ヴァルキリー/普通科
エルフ・男・狩人
ノーム・女・錬金術師/予報士
バハムーン・男・竜騎士
フェアリー・女・賢者
……といった組み合わせだ。
この内、ノームのメグとバハムーンのマイクロフトはパーティーに参加した当初から仲が良く、二週間もしないウチに恋人になっていた。
また、ヒューレットとアップルタルトの関係も、長らく「友達以上、恋人未満」のハッキリしない状況だったが、三校戦の少し前にようやくヒューが告白して(無論アップルはずっと待っていた)、正式にカップル成立となった。
ふたりをやきもきしながら見守ってきたエルとしては、ひと安心といったトコロだったが、いざそうなると今度は自分の色恋沙汰にも頭が回り始める。
(ちなみに、フェアリーのブリギッタは、パーティ外にフェルパー侍のボーイフレンドがいたりする)
イチャつく幼馴染や仲間達から少し距離をとり、ひとりになって自分の感情を見つめ直してみたところで、エルファリアは自分にもずっと気にかかっている女性がいたことを、改めて自覚したのだ。
57 :
王女様と私:2010/10/26(火) 13:57:07 ID:SDYXt1GF
「──それが、キルシュトルテ王女、というわけデスか」
やれやれと肩をすくめるメグ。あまり感情を顔に出さない彼女にしては珍しく、「呆れた」という表情になっている。
「えー? いろいろ悪い噂もあるけど、彼女は決してそんな人じゃないよ!」
おとなしいエルにしては珍しく力説しているが、仲間達は顔を見合わせるばかり。
「……確かに、キルシュトルテ様は、上から目線で物を言われることが多いため誤解されやすいですが、本質的には決して悪い方ではありませんわ」
ただ、ヒューの分の紅茶を淹れ直していたアップルのみが、静かにうなずく。
「ですが同時に、言葉は悪いですが「甘やかされた我儘姫」という評価も、決して的を射てないわけでもありません。エルちゃん、あなたはそれにキチンと対応できるのかしら?」
「アップル姉(ねぇ)……」
彼女の場合、この学園に来る前にも伯爵令嬢として王女と面識があった分、その人物評には説得力があった。
「第一、お前、どうやって相手に気持ちを伝えるつもりだ? こう言っちゃナンだが、相手はお姫様なんだぞ?」
「あ、その点は大丈夫だよ、ヒュー兄。お付きのシュトレンさんに手紙を渡してあるから」
「ふむ。いきなりラブレターとは……エルファリアにしては珍しく積極的だな」
皆から一歩引いた位置に座り、腕組みしていた竜騎士が、感心したように言う。
「ニヒヒ〜、これが恋する男のコっていうヤツなのかしらん」
対照的にワクワクと目を輝かせて話を聞いていたブリギッタの表情は、誰が見ても正しく「悪戯妖精」そのものだ。
「ブリギッタ、あんな相手でも一応エルの初恋なんだ。とっかかりからブチ壊すようなことはやめてくれよ?」
「しっつれーねぇ。恋のキューピッドたるあたしが、そんな無粋なコトするワケないでしょ」
ヒューが釘を刺すと、フェアリー娘はプンプンと憤慨する。
58 :
王女様と私:2010/10/26(火) 13:57:28 ID:SDYXt1GF
「まぁまぁ、ヒューくんもブリギッタちゃんも落ち着いて……でも、エルちゃんが、シュトレンさんに手紙を渡せたのは運が良かったですわ。あの方、軽佻浮薄に見えて、頼まれた仕事はキッチリこなす方ですから」
これがもしクラティウスさんでしたら、途中で握り潰されたでしょうし……と続けるアップル。
「──確かに、あのメイド剣士には「姫様命」的な昏い執着が感じられマスね」
メグが同意し、ブリギッタもウンウンと頷いている。女性陣の意見が一致しているところからして、あながち見当違いというわけでもないだろう。
「で、エル、お前、手紙になんて書いたんだ?」
兄貴分の問いに、とたんにモヂモヂし始めるエルフ少年。
「そのぅ……「明日の放課後、図書室裏の中庭に来てください」って」
「呼び出しか。普通の相手なら、そう悪い手じゃないんだが……」
あのお姫さんが、素直にやって来るモンかね、とヒューは首をかしげる。
「仮に本人が興味を持たれても、お付きの方々が止められるかもしれませんね」
「──あるいは、ふたりを従えて堂々と来るというケースも考えられマス」
頼りになる姉貴分たち(無論お気楽妖精は除外)の冷静な指摘に「ぇえ〜」と涙目になるエルファリア。
「ま、今ココで議論していても始まるまい。我々はせめて、明日のエルファリアの健闘と幸運を祈ろうではないか」
「だな。おし、明日の探索は丸々休みにするぞー。各自十分な休養をとるように!」
落ち着いたマイクロフトの言葉を受けて、リーダーのヒューレットが解散を宣言し、夕食後のひとときはそれでお開きとなった。
#エルきゅんの告白前夜の光景。彼がなぜ姫様に惹かれたのかというエピソードは、また後ほど。次回は告白場面、その次くらいにHシーンが入るかも。
>>58 GJなの。次回も楽しみなの。エルちゃんとはおいしい力豆腐が食べられそうなの。
>>58 GJGJ。クラティウスがどう絡んでくるか、今から楽しみ……もとい不安でしょうがないぜw
遅れたけど
>>11GJ
この2人というか堕天子いいわーw
パー子の要領で種族名の下2〜3文字+「子」で名付けていったら、ヒュム子がえらいことになった件
64 :
王女様と私:2010/10/28(木) 14:59:04 ID:BP4JNyG+
>>63 「いらない」のかよw
ところで、「王女様と私」の続きを投下させていただきます。
パーティー仲間達の温かい激励(その大半が玉砕前提だったのには凹んだが)を受けたエルファリアは、翌日、自らが所属する「狩人科」の午後の授業をサボってまで、中庭の合歓の木の元で想い人の到着を待っていた。
(とは言っても、あの人のことだから、仮に来てくれるとしても1時間オーバーとかザラだろうけど……)
などと思いつつ、それでも約束の時間より大幅に早めに来てしまうのが、恋する男の子の純情というヤツだろうか。
しかし、予想に反して、キルシュトルテは授業が終わる時間から30分足らずで中庭に姿を現す。
「やはり、この手紙を寄越したのはお主か……ん? なんじゃ、わらわの顔を見るなりボーッとしよって」
「あ、いえ、すみません。まさかこんな早く、しかもおひとりで来ていただけるとは思わなかったもので……」
無論、少なくともクラティウスあたりは姿を隠してコッソリ見守っているのだろうが、席を外してくれているだけでも十分有難い。
ちょっとした感動に身を震わせていたエルファリアだが、ここまでは前フリ、ココからが本番である。
「あの、キルシュトルテ先輩!」
あまり人の目を正面から見ない内気なエルだが、この時ばかりは意を決して、王女の瞳を見つめる。
「うむ」
尊大に腕組みをしてうなずく様ディアボロス少女の様子は、とてもこれから告白を受ける乙女とは思えないが、そういうトコロもまた彼女らしい……と思ってしまうのは、惚れた弱みだろうか。
頭の片隅でそんなコトを思いながら、勇気を振り絞って、告白する。
「好きです! おつきあいしていただけませんか?」
「…………」
10秒……30秒……1分……沈黙が辺りに落ちる。
そして、その沈黙に耐えきれなくなったエルが何か言おうとしたところで、キルシュトルテが口を開いた。
「その前にひとつ聞きたいのじゃが……」
「は、はい!」
「何ゆえ、お主、今日に限って似合わぬ男装なぞしておるのじゃ?」
「────え?」
65 :
王女様と私:2010/10/28(木) 14:59:50 ID:BP4JNyG+
さて、ココでいったん視点を王女の側に移そう。
エルファリアから手紙を受け取ったシュトレンは、歳の割に世知に長けた娘であり、王女のお目付け役兼保護者を自認するクラティウスの目を盗んで、キルシュトルテ王女に手紙を渡すことに成功していた。
エルの手紙を受け取り、目を通した時の王女の心は、「喜び」、「昂揚」、そして意外に思われるかもしれないが「照れ」といった感情に満たされていた。
無論、彼女は一国の王女であり、宮廷に帰ればおべんちゃらや歯が浮くようなお世辞を言う家臣その他にはこと欠かない。
また、この学園でも王女の覚えめでたくなろうと打算づくで近づいてくる学生も少なからずいる(もっとも、様々な理由から敬遠する者のほうが多いが)。
キルシュトルテとてまんざら馬鹿ではない。そういった輩がいることを承知で有象無象と切り捨て、「我儘王女」と言われようとも、あえて自らの心のままに振舞っているのだ。
無論、ゴーマイウェイで尊大なのが彼女の地の性格であることも確かだが。
さて、そんな彼女だが、(口ではともかく内心)認めている人材は決して多くはないが、いないワケでもない。
たとえばジークなども、どうしようもないバカだと思いつつ、自分に対して物怖じせずにズケズケ物を言うところなぞ多少は気に入っているのだ。
そして、入学以来何かと因縁のあるヒューレットのパーティーも、彼女が「個体識別」している数少ない学生の一団であり、さらにその中でもエルファリアとは、ひょんなキッカケから多少面識があった。
会話を交わした時間はそれほど多くはないが、エルファリアという狩人が純真無垢で優しい子であることは、キルシュトルテにもわかっていた。
そして、今、手の中にある手紙の意味も。
(アヤツのことじゃ。きっと、顔を真っ赤にしながら、この手紙をシュトレンに差し出したのであろうな)
その場面を自分の目で見れなかったのが残念だ──そう思う程度には、キルシュトルテはエルファリアのことを気に入っていたし、興味や好意も抱いていた。
(それに……一国の王女を手紙ひとつで呼び出す気概も気に入ったぞ)
ある意味、この手紙は彼女が生まれて初めてもらった「ラブレター」と言えなくもない。そう思うと、なんとなく気分が浮き浮きしてくる。
自分を呼び出す要件とは、まず間違いなく告白かそれに類することだろう。
(まぁ、なんじゃ。アヤツが頭を下げて頼むなら、わらわの側仕えに取り立ててやることも、やぶさかではない)
無論、単に「側に置いて仕えさせる」だけで終わりにするつもりもないが、ソレは先方とて望むところだろう。
「フフフ……明日が楽しみじゃな」
キルシュトルテは、自らの陣営にさらに一輪、可憐な花が加わることを想像し、胸を熱くしながら眠りについたのだった。
66 :
王女様と私:2010/10/28(木) 15:00:39 ID:BP4JNyG+
* * *
「何ゆえ、お主、今日に限って似合わぬ男装なぞしておるのじゃ?」
「────え?」
キルシュトルテから、その言葉を聞いた時、エルファリアは一瞬その真意が理解できなかった。
今日の彼は、年上の想い人(しかも一国の姫!)へ告白するとあって、入学式以来、ほとんど袖を通していないドラッケン学園の制服と製靴に身を包み、長い髪にも綺麗に櫛を入れて、精一杯正装っぽい格好をしているのだ。
確かに、プリシアなのオシャレな制服と比べると、ドラッケンのそれは「古臭い」と言われることも多いが、種族を選ばず着映えがするし、華奢な自分の体格にだってフィット……いや、待て!
エルファリアは、再度キルシュトルテの言葉の意味を考え直してみた。
「今日に限って」──彼女に制服姿を見せたことは入学式の一度しかないし、あの時の王女は主にヒュー兄やアップル姉と話してたから、ボクのことなど印象に残っていないのだろう。
「似合わぬ」──確かに少し大きめで、とくに肩のあたりなんかも余ってるし、その意味では、認めたくないがあまり似合ってないのかもしれない。
「男装なぞ」──いや、男が男の服を着るのはあたり前……って!
エルは重大な事実を思い出した。
彼がこれまでキルシュトルテと顔を合わせたのは、たいてい冒険中かその直後で、それ相応の装備に身を固めていたのだが……。
その7割以上が、パーティー内の都合で「貴婦人の衣装+5」を着せられていたコトを!
おまけに、それ以外の時も「着物+4」とかの性別がわかりにくいものだったし、頭部防具も、「うさみみ+5」とか「魔女っ子ぼうし+3」とかの萌え系ばかりだ。
前衛に立つものから優先的に良い防具を装備するのは冒険者の常識だし、また後衛の中でも体力の低いフェアリーの術者などからを補強するのがセオリーだ。
エルフとは言え、狩人でそこそこ体力のある彼は、それ故、「みんなのお下がり」を身に着けざるを得なかった。
で、運が悪いと言うべきか、彼用には「貴婦人の衣装+5」を超える体装備が長らく出なかったのだ。
実際、学生の間でも、エルファリアのことを「エルフの美少女狩人」と誤解している人間は少なくなかったりする。おそらく、キルシュトルテも、そのクチなのだろう。
「あのぅ……ボク、男なんですけど」
しかし、そうとわかっていても、彼としてはココでソレを言わないワケにはいかなかった。
67 :
王女様と私:2010/10/28(木) 15:01:34 ID:BP4JNyG+
「はぁ? 何、バカなことを言ってるのじゃ」
と、最初は冗談扱いしていたキルシュトルテも、エルファリアの態度が真剣なので、徐々に信じ始める。
「ふむ。そうか、男、とな……それでは、残念ながらお主の気持ちを受け入れるワケにはいかぬ。
聡明なお主ならわかるであろうが、わらわはノイツェシュタインの王女。その王女のそばに素性が確かならぬ男を侍らすのは外聞が悪いでな」
「そ、そうですか……」
半ば覚悟していたこととは言え、想い人本人の口から改めて宣言されると、やはりダメージが大きい。
悄然として立ち去ろうとしたエルファリアだが、「待て!」とグイと襟元を引っつかまれる。
「──と言うのは建前じゃ。本当のことを言えば……わらわが、男が嫌いだからじゃ!」
「……へ!?」
「男なぞ、ゴツくて、毛むくじゃらで、汗くさくてたまらん! 「でりかしー」に欠けておるし、すぐに女を見下しおるからな」
「は、はぁ」
力説する王女の様子にエルとしては相槌をうつしかない。
「しかし」
キルシュトルテはそこで言葉を切ると、チラと流し目でエルファリアの方を見た。
「幸いにしてお主は、そういったむくつけき男共の範疇にはまったくと言ってよいほどあてはまらぬ。ゆえに──今からわらわが出すふたつの条件を守れるなら、そばに置いてやってもよいぞ。
下々の言う「おともだちからはじめましょう」というヤツじゃな。単なる取り巻きで終わるか、わらわの想い人になれるかは、お主次第じゃ」
と、そこで急に顔を赤らめ、モジモジし始めるキルシュトルテ。
「か、勘違いするでないぞ? わらわはどちらでもよいのじゃ。しかし、絶世の美姫たるわらわの魅力の虜となったお主を哀れに思うてじゃな……」
恋愛関係にはいまひとつ不慣れなエルファリアだが、それでも王女が言いたいことの真意は理解できた。
何か条件付きではあるが、自分にそばにいて欲しいと思ってくれているのだ。
惚れた女の子にそこまで言わせて応えないのは、男が廃る!
そう思ったエルは、即座に了承したのだが……。
──その直後に出された「条件」を聞いて、「早まったかも」と後悔するハメになるのだった。
-つづく-
以上。もちろん「条件」に関しては皆さん容易に予測がつくでしょう。次回はエルたんの「初めての×××」です。
>>67 ぐっじょぶ。
え、まさか次でいきなり×××しちゃうのか
尿道性器肛門の三穴責め?
GJを送る以外に私にできることはない
>>67 こ、このGJはグッドジョブの略じゃなくてジョルジオの略なんだからねっ!!
冗談はさておきGJ
>>67乙次回を楽しみにまってます。
あと、くだらないネタを投下させていただくます
『ドラッケン学園のとあるヒューマンの記録:疾風怒濤編』
75 :
1/5:2010/10/30(土) 06:10:47 ID:Cu9ApdBW
○月1日
俺がアイテム等の買い出しや戦闘時の陣形の構成とか色々やっている間にフェルパー君がハーレムを形成していることを知った。
羨ましい、しにたい。こんなことならもっと積極的に絡んどくんだったよ…。嗚呼ノームさん…さようなら、俺の初恋
○月2日
傷心の一人旅の途中行商人がモンスターに襲われていた。腹いsゲフンゲフン、使命感に駆られ取りあえずモンスターは
千鳥でヘッドショットしといた。お礼に大層高価なものらしい宝珠を貰った。何でも肌身離さず持ってると異性を魅了する効果があるんだとか
…昨日失恋した俺への当てつけかこの野郎。
いやまあ勿論いただきましたよ、はい。
○月3日
僅かに、ほんの少し、フェアリー賢者のLv1時のHP位に期待して学園に帰ってきたが宝珠の効果は一向に表れない。しかもすぐに壊れた。
やっぱりなあ…あの行商人のおじさん人良さそうだったもんなあ。他にも太刀の悪い粗悪品掴まされてなきゃいいけど…。
ん?向こうにいるのはクラティウスか、えらく大きな荷物運んでるな。大変そうだし少し手伝ってあげますか。おーいクラティウs
○月5日
気がついたら1日が過ぎていた。確かクラティウスに声を掛けた辺りまでは覚えてるんだよなあ…さてはて。
76 :
2/5:2010/10/30(土) 06:13:14 ID:Cu9ApdBW
○月16日
ここ最近意識が飛ぶことが多い。疲れているんだろうか…今度カーチャ先生に診て貰おう。
○月20日
久しぶりにみんなと冒険へ繰り出した。フェルパー君は今日も絶賛ハーレム展開中ですよ畜生。嗚呼ノームさんのあんな笑顔今まで見たことねぇよ…。
それとあフェアリーさーんもうちょっとこっちにも回復を…って敵がやたらとこっちに!こっちくんな!こっちkウボァー!
本作ではロストすることがない、その素晴らしさを神に感謝しつつ学園に帰還。微妙に体の節々が痛む中搾取したアイテムで不用品を売却。
そんで購買部をでた所でばったりクラティウスと出会った。ちょうど昨日のことを訊ねようと思ったらどうにも顔色がおかしい。紅潮していて息が荒い、
ひょっとしてどこか悪いのだろうか?声をかけようとしたら有無を言わさずクラティウスの部屋に連れて行かれた。え、何、俺何かした?
部屋に着くなりベッドに押し倒された。ちょ、君はアレだろ、百合っ子のはずだろ!落ち着け!もう我慢できないって何よ!?あ、うぇ、だっ
○月21日
え、クラティウスなら俺の隣で寝てるよ?……うん、冗談だったらどれだけ良かったろうね。まさかこんなことになろうとは…まじで怖い。
何が怖いって知らないはずの彼女の弱点(性的な意味で)を完 全 に 把 握 し て い た 自 分 自 身 が で す よ ! !
それから行為の最中何故か俺は「ご主人さま」と呼ばれていた。いや、君のご主人様は何でも基本お付き任せのディアボロちゃんだからね?
ちなみに、息絶え絶えに「ご主人さまぁ」と乱れまくっていた彼女に正直辛抱たまらんで9回フルイニングしてしまったのは秘密である。
77 :
3/5:2010/10/30(土) 06:14:46 ID:Cu9ApdBW
○月22日
キルシュトルテに出会い頭に泥棒猫呼ばわりされた。おいおい俺はヒューマンだぜ、とまあ冗談はさて置き言いたいことは理解できる。
取りあえず放課後じっくり3者交えて話しあう事になった。
○月23日
放 課 後 何 が あ っ た か お ぼ え て ね え ! ?
○月30日
結論だけ言おう。キルシュトルテってベッドの中だと大人しいんだよ(笑)
って違あああああああああう!!!!何だこの状況マジで異常だろ!なんで?どうしてこうなった?
ご主人様ってキルシュトルテお前もか!?ヤバい頭がどうにかなりそうだ……。
78 :
4/5:2010/10/30(土) 06:16:54 ID:Cu9ApdBW
□月1日
失恋から早一月、誰がこんな展開を予想しただろうか。何と言うか今のおれ達は正に「(性)奴隷とその主人」である。
これはまずい、ひっじょーにまずい。ちょっと「役得じゃんうへへ」とか思いだしてる俺はもっとまずい。
□月3日
キルとクラが段々自重しなくなってきた。ちょ、君らひっつきすぎ。公衆の面前ですぞ!む、胸が、胸が!
う、うわああああああああああああ!!
□月5日
パーティーメンバーからお祝いされた。フェルパー君に「お前もやるなwww」と言われノームさんからは
「お似合い」と言われた。複数の意味でしにたくなった。
79 :
5/5:2010/10/30(土) 06:20:21 ID:Cu9ApdBW
□月6日
何か色々限界になってきたのでカーチャ先生のカウンセリングを受けに行った。何でも過去の記憶を遡ってみるらしい。
ああ意識が遠く…。
目を覚ますともう日が暮れていた。心なしか体が軽い。カウンセリングの効果がでたのだろうか。しかし先生曰く
まだまだカウンセリングが必要とのこと、まあ仕方ないか
……心なしか先生の顔が赤かった気がするが、気の性だと言う事にしておこう。
□月18日
爛れた肉欲の日々…まさかこの年で味わうことになろうとは。はい、察しの通り先生も仲間入りしちゃったよーわーいわーい。
大人が女性の登場によってお互いが切磋琢磨し合う(性的な意味で)関係。うん、素晴らし…くねえよ!!
□月20日
トコヨ交易所のおばちゃんに「厄介なのに取り憑かれてる」と言われた。え、霊感あるんですかあなた。
て言うかアレか最近の異常事態は悪霊の仕業か!?おばちゃん曰くお祓いはタカチホ義塾のロクロに頼めば良いとのこと。。
うっひょーおばちゃん情報ありがとう!早速行ってくる!。結構な金が必要とか言っていたけどそんなこと気にしてられないぜ!!
待ってろタカチホ義塾!
実はこのおばちゃんはそのロクロが小遣い稼ぎの為に化けていたというのはこの時の俺には知る由もなかったのであった…
80 :
おわり:2010/10/30(土) 06:22:04 ID:Cu9ApdBW
終わりです。エロシーンは徹夜明けのテンションでは書く気が起きなんだ、すまない。
て言うかおれは寝ないでなにやってるんだろ…
ねんがんのせいどれいをてにいれたぞ!
→ ころしてでもGJする
>>80 GJ!ってか最後どう見ても解決する気がしねえ…!
ブーゲンビリアが来い
タカチホプレイ中。
そうか、ウヅメ先生、酔うと脱ぐのか……
銘酒鬼姫とオイロケアロマを組み合わせたまったく新しいプレイ
かゆうまの類かと思ったら見事に違った
でもGJ
このGJは解呪に失敗したロクロや未だ性の定まらないトウフッコや興味本位で取材にきたチューリップや笑いにきたアマリリスとかを交えた酒池肉林を描くまで取っておいてやる
>>86 俺はそれらに加えてネコマさんに期待している
89 :
名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 21:37:31 ID:DC7SINvw
どういう展開になるのやら・・?
まあ期待しとりますわ〜
お久しぶりです。やはり新作が出ると賑やかになりますね
投下したいと思いますが、長くなりすぎたんで分けて投下します
おまけに今回はエロ分なしで、ほぼ人物紹介に終始してます。そしてすごく半端なところで切れます
それでもいいという方はどうぞ
大きな力を持つ者は、不思議なことに単体で現れることは少なく、同時期に複数現れることが多い。
この年、三つの冒険者養成学校では、それぞれ優秀な生徒が多く入学し、その中でも特に急速な成長を遂げるパーティがあった。
それはドラッケン学園、プリシアナ学院、そしてタカチホ義塾でも、まったく時期を同じくして現れていた。
ドラッケンのパーティは、前衛、後衛を基本通りに組み合わせ、個々がそれぞれの役割を果たし、手堅い冒険の仕方で知られている。
戦闘ではリーダーの指示により、実に統率のとれた動きを見せ、それはもはや冒険者ではなく、訓練された軍隊の動きに近い。
また、彼等は黙々と自身の単位取得のために動き、他校の課題も積極的に受けることから『フリーランサー』と呼ばれていた。
プリシアナのパーティは、ある意味でその対極を成している。後衛が四人、前衛が二人であり、各自の判断で戦闘を行う。統率という
ものは望むべくもないが、それぞれの力量は高く、また前衛二人がヒーロー学科とナイト学科ということもあり、これまでに危機らしい
危機に陥ったことはない。何より特徴的なのは、その大半が女子生徒であり、また髪色も好き好きに染めているため、非常に目立つのだ。
性格も良い者が多く、女子が多く、成績や言動に華のある者達。そんなところから、彼女達のパーティは『リトルブーケ』と呼ばれていた。
タカチホのパーティは、独特の校風を持つタカチホらしく、一風変わった経緯がある。リーダーは普通科のヒューマンであり、
入学生よりも一年ほど先輩である。それに加え、常に彼と一緒のフェアリーに、新入生四人が加わったのが、現在のパーティである。
彼等はリーダーに絶対の信頼を置き、結果を焦ることなくコツコツと鍛錬を積み、今では『六傑衆』と呼ばれるほどになっている。
さらに、その中でも普通科のリーダーに侍学科のクラッズ、くのいち学科のエルフはタカチホの誇る得物、刀を武器としていることもあり、
特にその三人を指して『三本刀』と呼ばれることもあった。
交流戦でも、彼等の活躍は群を抜いていた。当然、お互いの噂は耳にしており、興味を持つことはあった。しかし、他校の生徒と交流を
持つことはあっても、普通ならばそれだけである。彼等も本来なら、単に他にも強いパーティがいる、というだけで終わるはずだった。
ある日、彼等は全く偶然に、ローズガーデンの宿屋で出会った。そして全く偶然にも、出会ったのがリーダー同士であり、さらに彼等の
種族は、クラッズにエルフにヒューマンだった。
元々気の合いやすい種族である上、実際に彼等は気が合った。まして、お互いが他校にも名の響くパーティの一員となれば、
なおさらである。瞬く間に旧来の親友の如き付き合いを始めた彼等だが、話題がそれぞれのパーティのことになり、自分達こそ一番だと
主張し始め、しかし喧嘩になりかかった時、タカチホのヒューマンが言った。
「潰し合うのは簡単だけど、それよりお互いの力を、一番近くで見てみないかい?つまり、僕達とあなた方と、それぞれの学校の
混成班を作るというのはどうかな。きっと戦うよりも、色んなものが見えると思うよ」
その案に、エルフはすぐ賛成の意を示したが、クラッズは返事を渋った。元々、彼女は卒業の単位獲得を主な目標としているため、
単位取得に関わらないことには消極的なのだ。とはいえ、魅力がなかったわけでもないらしく、仲間と相談すると言って部屋へと戻った。
その後、ヒューマンとエルフもそれぞれのパーティに戻り、事の経緯と現在の案を説明した。結果、プリシアナは全員一致で賛成。
タカチホの面々は多少の反対意見もあったものの、最終的には全員賛成。そして問題のドラッケンは、かなり議論が紛糾したものの、
一部の強い要望によって結局は賛成となった。
夕食後、フリーランサー、リトルブーケ、六傑衆の面々は宿屋の入り口の広間に集合した。名前は聞いていても、実際にその姿を見るのは
全員初めてであり、各々相手を観察したり、仲間と何か話していたりと反応は様々だった。
「ふーん……プリシアナは特に、思い切った構成だね」
「装備がすごいね、装備が。それに比べてタカチホ……特に後衛陣、大丈夫かあれ?」
「逆に言えば、それで六傑衆なんて言われてるんだから、見た目で判断しないことね」
そんなことを話すドラッケンとは別に、プリシアナの生徒は実に楽しそうだった。
「うわー、あれがフリーランサーのみんなかあ!ねね、リーダー可愛いのにすごいね!」
「三本刀もしっぶいなー。あそこだけ全然雰囲気違うね」
「これから、あの皆さんの誰かと組むんですよね。わたくし、少し緊張してきちゃいました」
タカチホはタカチホで、やはり他の二校とは多少雰囲気が異なっており、彼等は仲間の方に視線を向けていた。
「これから、このうちの四人とは離れ離れになってしまうわけですが……皆さん、無茶はなさらないでくださいね」
「ははは、相変わらずだねセレスティア。気持ちもわかるけどさ……班長、誰と組むことになっても、お達者で」
「君達もね。そして、タカチホ義塾の名を誇れるよう、今まで以上に精進してくれ」
一通りの話が済むと、それぞれの代表が前に出る。プリシアナのエルフが出ると、その背中にやたらと『リーダー』を強調した声がかかる。
「……男は辛いね」
「僕はリーダーじゃなくて、ブーケを束ねるリボンだよ、はは」
「リボンがなきゃ、花束も作れないでしょ。ま、それはそうと……決め方はどうする?くじでも作る?」
「いや、それだと時間かかるだろう。好きに決めたら?」
「それも難しいと思うよ。希望が被ることもあるだろうし」
「じゃ、グーとパー……とチョキで、二人ずつに分けようか。それが公平でしょ」
話は決まり、各パーティからじゃんけんの掛け声が響く。ややあって、それぞれグーとパーとチョキを出した者達が集まる。
「やぁーだぁー!!!やり直したいー!!!」
早速響いた声に、全員がそちらに顔を向ける。そこには、本気で嫌そうな顔をしたドワーフと、困った笑顔を浮かべるバハムーンの
女子がいた。どちらも、ドラッケンの制服である。
「そんなこと言うなよー。せっかく一緒になれたのにー」
「あんたと一緒だから嫌なのー!このくそトカゲー!やっと離れられると思ったのにぃー!」
可愛らしい容姿と声からは想像もつかない言葉に、彼女を知らないものは苦笑いを浮かべるしかなかった。そこに、リーダーのクラッズが
声を掛けた。
「わふちゃん……どうなっても一回勝負。文句なしって約束でしょ?気持ちはわかるけど、文句言うな」
彼女の顔は微笑みを湛えていたが、その目はどろどろと濁っている。というのも、彼女のパーティの構成がバランスの欠片もない、
あまりにひどいものだったからだ。
「うーん、ここまで被るとはね……でもリーダー、逆に死ぬことはないさ」
その構成とは、戦士のクラッズ、風術師のエルフ、賢者と盗賊のフェアリー男女、光術師のセレスティア男女である。前衛は見事に
彼女ただ一人である。
「そうですよ。危なくなったら、わたくしがヒールしますから」
「わたくしも同じく」
「僕もいけるよ」
「僕もヒールエアーなら」
「……っは…」
目だけが笑わない笑みのまま、彼女は首を振った。
そんな彼女に言われては、もはや文句も不平も言えず、ドワーフは渋々自分のパーティへと向かう。
プリシアナの生徒達は、ほぼ全員が楽しげに騒いでいたが、その中で二人だけがはしゃぎもせず、喋りもせずにいた。そしてその二人が、
奇しくも同じパーティになることが決まった。
「……あんたと一緒ね」
「………」
「まあ、どうでもいい。誰だってどうせ同じ。このパーティも……今度のパーティもね」
「………」
「いつものだんまりね。まあ、どうでもいいけど。行くわよ、悪魔」
ノームらしく、感情の篭らない声ではあったが、その口調からは端々に悪意が見て取れた。だが、悪魔と呼ばれたディアボロスは何も
言わず、黙って彼女のあとについて行く。
彼女達の向かった先には、二人の男子生徒がいた。どちらもタカチホの制服であり、その二人が残る仲間なのだろう。
「お、君達チョキの人?これからしばらくの間、よろしく」
人懐っこい笑みを浮かべ、頭を下げるクラッズ。それに続き、隣のフェルパーも頭を下げる。
「みんな、初めまして。こっちのクラッズは、知っての通り三本刀の一人、侍学科。自分は炎術師を学んでる。よろしく」
「なーんか、堅っ苦しいなあ。挨拶なんか適当でいいよー」
「そうは言っても、初対面だから。みんなが良くても、自分が落ち着かないんでね」
「ま、学科だけ言っておこっか。私はドクターだよ。まだ勉強中だから、あんまり大怪我されると困るけど、回復は任せて」
そう言うと、ドワーフは隣のバハムーンに視線を移す。
「……小さいのと、猫かぁ……可愛いなあ…」
「くそトカゲ、自分の学科ぐらい言ってよ。うざい上にきもいんだからー」
「わかったよー。私はパティシエ!よろしくな!」
「……ぱてぃしえ?」
聞き慣れない名前らしく、クラッズが聞き返す。
「そ、パティシエ!お菓子作りの専門家なんだぞー!甘いものなら任せろ!」
その、一体何の役に立つのかわからない学科に一同が戸惑っていると、ドワーフが口を開いた。
「あー、お菓子作りって言っても、材料は自力調達だから。下手な戦士より強いし、あと……認めたくないけど、このトカゲ優秀だから」
優秀と言われたのに気を良くしたのか、バハムーンは誇らしげに胸を張る。
「……で、そっちの二人は?」
プリシアナの二人に目を向けると、ノームがやれやれといった感じで口を開いた。
「あたしは盗賊。これが終わったら錬金術師学科に進む予定。で、これは」
隣のディアボロスを指さし、ノームは『これ』と言い放った。
「ダンサーね。これ、ほとんど喋らないから」
「へー、さすがリトルブーケ。女の子多いんだなー」
「ああ、それと」
バハムーンの言葉で気づいたらしく、ノームは再びディアボロスを指さした。
「これ、こう見えて男だから」
「ええっ!?」
その場にいた全員が、思わず声に出してしまった。それというのも、ディアボロスの顔つきは女にしか見えず、おまけに彼はスカートを
穿いているのだ。誰が見たところで、男だと思うわけがない。
「え……え〜と……ほ、本当に男…?」
「………」
ディアボロスは黙ったまま、こっくりと頷いた。
「どうしてスカート……そ、そう言う趣味なのか?」
「………」
やはり黙ったまま、彼はふるふると首を振った。
「この方が、ダンスが映えるらしいけど。趣味だったとしても、そう言えば言い訳にはなるから、実際はどうだか」
「………」
ディアボロスは無言で、ノームを見つめた。喋りこそしないものの、その目は少し不快そうだった。
そんな彼女達を見て、フェルパーはそっとクラッズに耳打ちする。
「なあ……この子達、仲悪い同士が組んじゃったんじゃないか、これ…」
「ぽいよねー、僕も思った……まあ、何とかなるでしょ」
とりあえずの自己紹介も終わり、何か雑談でもしようかと思った時、ノームが口を開いた。
「先に言っておくけど、あたしはあんた達を信じる気はない。その辺よろしく」
突然の物言いに、一瞬時間が止まった。それに対して、クラッズが苦笑いを浮かべて話しかける。
「いきなりだなあ。でもさ、僕達これから仲間になるんだし、少しぐらい信じてよ」
すると、ノームは明らかな嘲笑を浮かべ、クラッズを見つめた。
「自分で『信じて』なんて言わないと、相手を信用させられない奴を、どう信じればいいの。そういう奴が、一番信用できない」
「う…」
クラッズも、これには参ってしまった。だが、それに言い返す前にフェルパーが口を開いた。
「ははは、一本取られたなクラッズ。まあ……自分は、それでもいいと思うよ。そもそも、初対面の相手をいきなり信じるなんて、
無理な話だろうしね。信じられないなら、それでいいよ。信じる信じないは、君次第なんだから」
そんな彼を、ノームは黙って見つめていたが、やがてクラッズに向けたものと同じ笑みをフェルパーに向ける。
「ふん。失敗を目の前で見てると、次が楽でいいわね」
「ははは、まったくもって。クラッズ、ありがとな!」
「フェルパー……それ、ちょっとひどいよー」
そう言いつつも笑顔のクラッズに、楽しげに笑うフェルパー。この二人は、どうやら旧来の親友らしかった。
「いいなー、あの二人……ドワーフ、私達もあれぐら…!」
「うざい!このくそトカゲー!いい加減、私に構うのやめてよね!」
「………」
五人を見つめながら、ディアボロスは一人、小さなため息をついていた。
こうして、彼等の冒険は幕を開けた。
彼等が最初に目指したところは、タカチホ義塾だった。別に学校紹介というわけではなく、単にクラッズとフェルパーが寮に置いてある
荷物を回収したいから、という理由である。
編成は、少し変わった構成になった。というのも、ディアボロスはタルワールを持ち、ノームは毒のナイフしか持っていない。本来の
前衛であるバハムーンは、ウォーピックを持っていたために後列から攻撃が可能であり、無駄に被害を出すこともないだろうと、彼女は
後列に控えることとなった。
「ねえフェルパー、私こいつの隣やだ。真ん中入って」
編成が決まるなり、ドワーフはそう言った。
「え、いいけど…」
「ええー!?私真ん中じゃないのかー!?」
「ぜぇったい、嫌!!!あんたはそっち行って!私に近づかないで!」
「むぅ〜、まあいいけど……うん、まあいいか!」
バハムーンは満面の笑みを浮かべると、不意にフェルパーに近づいた。何をするのかと訝る間もなく、彼女はフェルパーを思いっきり
抱き締めた。
「うわっ!?」
「ちっちゃくはないけど、お前も可愛いなー!ああっ、耳ピコピコしてるっ!!」
「ちょっ、ちょっ……は、放してくれよ!!」
必死にもがき、やっとの思いで彼女の腕から逃れると、ドワーフが笑っているのが見えた。
「わかるでしょ?私がそいつのこと『くそトカゲ』って言ってるの」
「………」
肯定も否定もしなかったものの、彼の耳は戦闘中のようにべったりと寝ており、見る者が見れば、彼がドワーフの言葉を全力で肯定して
いるのはすぐにわかった。
「ちょっと抱っこしてるだけだろー?なのにそんな言い方…」
「うるさい、くそトカゲ」
そんな後衛達を、前の三人は何とも言えない目で見つめていた。
「……バハムーン、こっち来てもらおっか?」
「で、あたしとそれと、どっちが置物になればいいの。それとも、無駄に回復の手間増やすの」
「……わかったよ」
第一印象のせいもあり、クラッズはこのノームがひどく苦手だった。ディアボロスも種族自体好きではなく、しかも極度の無口で、
その上女装している男だということもあり、こちらもひどく近づき難い相手だった。
「ま、まあとにかく……みんな、これからよろしく!」
新しいパーティの、記念すべき第一歩。それを心底楽しんでいるのは、能天気なバハムーンただ一人だった。
プリシアナ学院を抜け、ヨモツヒラサカに向かう頃には、少しずつ固さも取れ始めていた。前衛は相変わらず無言だが、後衛の三人は
多少なりとも会話を始めている。
「それにしても、君の髪の色は珍しいね。元々白いの?」
「白じゃなくって銀ですー。君とこのトカゲは、よく見る色だよね」
「前の奴等も、そんなに変わってないよなー。あ、でもノームは他の奴より青味が深いし、ディアボロスはフェルパーと同じ色かな?」
クラッズとしては、楽しげなその会話に参加したくてたまらなかったのだが、先頭を歩く者としては後ろを向くわけにもいかず、
ただじっとその衝動を堪えていた。
「それにしても、なんか、いいなー!こう、色んな奴等入り乱れてさ、こうやってパーティ組むのって」
「はは、君は本当に楽しそうだな」
「………」
ドワーフはそれには答えず、どこかボーっとした顔で正面を見つめていた。
「……入り乱れて……パーティ……乱…」
「ん?おいドワーフ、どうした?」
フェルパーが尋ねると、ドワーフはハッとしたように顔を向けた。
「えっ!?な、何でもないですよ!?わふっと元気ですよ!」
「そうか?ならいいけど」
「ん、敵。フェルパー、みんな、いくよ!」
クラッズの言葉に、全員が戦闘態勢を取る。現れたのは、残虐ピクシーと一つ目魔道の群れだった。さほど強い相手ではないが、
油断はできない。
「クラッズ、前列は任せる。後列は任せろ」
「承知!」
だが、そのクラッズが動く前に、ノームが素早く攻撃を仕掛けていた。さすが盗賊学科を学ぶだけあり、素早さは群を抜いている。
「うわ、速いなあ。僕も、負けてられないや!」
ノームが引くのに合わせ、クラッズが刀を一閃する。風切り音がしたかと思うと、敵の前列は一斉に体を切り裂かれ、倒れた。
「とどめいくぞ!ファイガン!」
直後、フェルパーが魔法を詠唱し、後ろに控えていた敵を焼き尽くした。ドワーフとバハムーンが動く間もなく、敵は既に全滅していた。
「うーん、さすがリトルブーケと六傑衆。このトカゲとかいらないんじゃない?」
「ひどいこと言うなよー!動く前に倒されてただけなんだからー!」
「……あれ?」
不意に、戦利品を漁っていたクラッズが間の抜けた声を出した。
「お金……いつもより多くない?」
「ああ、それはあれ」
宝箱と格闘しつつ、ノームはディアボロスを指さした。そこには、踊りを終えて一息つくディアボロスの姿があった。
「強欲の踊り。相手の持ってる金をさらに引き寄せる踊り……ちっ、修士の靴だけか」
「へ、へえー、そういえば踊ってるのは見えたけど……魔法の一種なのかな」
「踊り魔法かあ。そういえば、アイドルにも歌魔法とかあっ…」
そこまで言った瞬間、全員が一斉に後ろを向いた。その瞬間、隠れていたモンスターが襲いかかってきた。
「やばいっ、バックアタックか!」
「ちいっ、相手が上手だったか!?」
残虐ピクシーの群れが、フェルパーに襲いかかった。
「けどな……お前等ができるのは、そこまでだ!」
振られた斧を、まさに紙一重でかわす。瞬間、頭上で杖が回転し、フェルパーは引きながらそれを相手に叩きつけた。倒れた仲間の仇を
討とうとするかのように、残虐ピクシー達はさらに襲ってくる。フェルパーはその攻撃全てを苦も無くかわし、さらに二匹ほどを
叩き伏せてしまった。
「おお……何、今の動き!?」
杖をぐるぐると回し、相手が来ないのを見てから腋に挟んで止めると、フェルパーは目だけをドワーフに向けた。
「実は、サブ学科は格闘家。元々はそっちが本職だったんだ」
「ええー!?じゃあお前、もう格闘家の単位全部取っちゃったのか!?」
驚くバハムーンに、フェルパーは笑って頷いた。そこで初めて、他の面々は六傑衆と呼ばれる彼等の強さを知った。
「なるほどねー。装備とかにこだわらないで、ひたすら馬鹿みたいに訓練積んだんだ。強いわけだよー」
その後、彼は他の仲間が隊形を整える前に、再びファイガンを唱えて敵を殲滅してしまった。そしてやはり、獲得金額はいつもより
ほんの少しだけ増えていた。
ヨモツヒラサカに着いたとき、外は既に暗くなっていた。一行はそこで宿を取ることに決めたが、部屋割で再び揉めた。
「やだっ!私、このトカゲとは絶対やだからね!」
「ええー、一緒でいいじゃないかぁ…」
「い・や・な・の!!」
「参ったなー。それぞれの学校でいいかと思ったけど……よく考えたら、そうなるとディアボロスとノームもまずいのか」
一人部屋が取れればよかったのだが、生憎とこの日は一人部屋がいっぱいであり、二人部屋しかないらしい。
「ねえ、ディアボロス。このトカゲと一緒でいい?」
「え!?ちょっ、待て!!そ、それは私がちょっと……あっ、フェルパーかクラッズなら!」
「や、フェルパーとはなるべく一緒にいたいんだよね」
「俺は別に、他の人でも構わないけど?」
「僕が構わなくないんだ。でも、そうも言ってられないか〜…」
「じゃ、私ディアボロスとでもいいよ。トカゲはノームと一緒にいれば?」
すると、バハムーンの顔が明らかに曇った。
「……あいつ、怖い」
「あーもう、このままじゃ決まらないから、僕がバハムーンと一緒。で、ディアボロスとフェルパー、ノームとドワーフでいい?」
「いいよ!!」
即答したのはバハムーンである。他の仲間からも、特に反対意見は出なかった。
「よし、じゃあこれで確定。みんな、今日はゆっくり休んでね」
各自、部屋の鍵を受け取り、部屋に向かう。途中、ディアボロスの背中に声がかかった。
「あ、ちょっとディアボロス……いいかな?」
「……?」
首を傾げつつも立ち止まる彼に、クラッズは少し重い口を開いた。
「あのー、ね。寝起きのフェルパーには、気をつけて」
「……??」
「あいつさ、寝起きだけは本当にただの猫になるんだ……知らない人が近づいたりすると、怪我する可能性もあるから、起きたと思っても
数分は近づかないでね」
ディアボロスは何も言わなかったが、こっくりと頷いた。これまでに彼の声を聞いたのは、戦闘での掛け声だけである。
「手に負えなかったら、呼んでくれれば行くからさ。それだけ、頭に留めといてね。それじゃ、また明日」
去っていくクラッズを見送ると、ディアボロスは部屋へと歩き出した。結局、彼はこの日一日、一言も会話を交わすことはなかった。
その頃、ノームとドワーフの部屋は沈黙に包まれていた。とはいえ気まずい沈黙ではなく、それぞれに本を読んでいるだけである。
二人とも、分厚い本を黙々とめくっていたが、不意にノームが顔をあげた。
「そこの毛だらけの」
「……あ、はい!?何ですか!?」
「何をそんなに焦ってるの。まあいいわ、辞書持ってないかな」
「辞書?あるけど、そんなの何に使うの?」
「あたしは錬金術師目指してる。そのために今から勉強してるけど、こういうのは言葉の解釈一つとっても疎かにできない。これで満足」
「あー、勉強してるんだー。私と一緒だね。あるけど、ちょっと待ってね……っと、これでいい?」
ドワーフが鞄から取り出したものは、辞書というより百科事典といった方がいいような、恐ろしく分厚い物だった。
「……何、それ」
「辞書だって、いい物使わなきゃ!それにさ、普通の辞書だと医学書の言葉にまで対応してないんだよねー。じゃ、投げるよー」
ひょいっと投げ渡されたそれを受け取ると、ノームはあまりの重さにつんのめった。これを頭にでも落とせば、フェアリーやクラッズなら
殺せるかもしれないほどの重さである。それを片手で軽そうに投げる辺り、彼女もやはりドワーフなのだと実感できた。
「……ありがとう」
「どういたしましてー」
そしてまた、ドワーフは医学書を読み始めた。ノームは早速辞書を開こうとして、ところどころに飛びだしている折目に顔をしかめた。
「……汚い使い方」
文句を言いつつ、ノームは辞書を開き、錬金術の本と見比べながら、自身の本に注釈を書き足していく。
その後もちょくちょく辞書を使ったが、やはり折り目が付いているため扱いにくい。しかもやたらに重いので、探したい言葉を
探すのも一苦労である。そのせいで、別の言葉を引こうとした時、誤って折り目のついたページが開いてしまった。
舌打ちをしてページをめくろうとした時、不意にノームの目に止まった項目があった。それには、丁寧にペンで印が付けられている。
その項目には、こうあった。
『手淫:しゅいん 手などで自分の性器を刺激して性的快感を得る行為』
「………」
それにはさらに、手書きで『自慰、自涜、オナニー』と書き加えられ、それらのページ数までもが記してある。
まさかと思い、ノームは他の折り目が付いたページをめくって見た。
「フェラチオ、男性の性器を舌や唇で愛撫する性技……関連はイラマチオ、ね…」
ノームはゆっくりと後ろを振り返った。ドワーフは医学書を熟読しているようだが、その目はどこか遠くを見つめているようでもあった。
さらに、よく耳を澄ましてみると、彼女は何やらぶつぶつと呟いていた。
「ポルチオ……中イキ……同時に中出し……どんなんだろうなぁ…」
にまーっとした笑みを浮かべるドワーフ。ノームは再び、ゆっくりと首を戻す。
「……極めて残念な子なのね」
何も見なかったことにして、再び錬金術の本をめくる。しかし、ふと辞書に目を戻すと、パラパラとページをめくり始めた。
「か……き……くら、くり……ここは押さえてるか。じゃあ、くろ、くわ、くん……へえ、これ見落としてるんだ」
ノームは新たな項目に印を付け、さらに折り目も付けて辞書を閉じた。
「毛むくじゃら」
「………」
「毛むくじゃら」
「……はいっ!?何かありました!?」
「辞書返す。ありがと」
「あ、なんだ。もういいの?」
「もういいの」
辞書を手渡すと、ドワーフはそれを傍らに置いて再び医学書に目を落とした。それを見届けると、ノームは錬金術の本をしまい、
寝ることに決めた。その時彼女の胸には、何だか一仕事終えたような、そんな達成感があるのだった。
翌朝、クラッズはバハムーンに思い切り抱き締められたせいで、背中を痛めた上に寝不足に陥っていた。しかし、そんな様子はおくびにも
出さず、普段と変わらない様子で歯磨きに向かった。
共通の洗面所では、数人の生徒が歯磨きをしている。見覚えのある人物はいないので、近場の適当なところを使うことにする。
背中の痛みは多少強いが、支障が出るほどでもない。それでも、あとで一応ドワーフに診てもらおうかと考えていると、不意に隣の
生徒がちょんちょんと肩を叩いてきた。
「ん…?何?」
見上げた先にいるのは、ディアボロスの男子生徒だった。特に見覚えはなく、肩を叩かれる覚えもない。
が、よくよく顔を見ると、その顔つきは女性のようでもあり、何とも中性的な顔立ちだった。男物のパジャマを着ているが、クラッズは
もしやと思い、脳内でその服装をプリシアナの女子生徒のものに変換してみた。
「……あ、ああ、ディアボロス!ごめん、気付かなくって……制服じゃなかったからさ」
そう言い繕うと、彼は注意しないとわからないぐらいの微笑みを浮かべた。どうやら気にしてはいないらしい。
「それで、どうしたの?あ……もしかして、フェルパー?」
やはり返事はなく、ディアボロスはこくんと頷く。
「やっぱり……ごめんね、迷惑かけて」
ディアボロスは気にしていない、と言うように首を振った。
口を漱いで歯ブラシを水で流すと、クラッズは改めて彼の方に向き直る。
「じゃ、起こしに行こっか。ほんと、ごめんね」
もう一度首を振ると、ディアボロスは黙ってクラッズの後をついてきた。その途中、なぜか異様に仲の良さそうなノームとドワーフ、
そしてドワーフを前にそわそわしているバハムーンに出会った。
「ノームぅー、このトカゲ何とかしてよー。私、ほんとこいつ嫌いなんだけど」
「なんでそう嫌うんだよー。別にいじめてるわけでもないのに…」
「いじめっ子はみんなそう言う。……ん、悪魔と小さいの」
徹底的に人をまともに呼ばないノームに苦笑いしつつ、クラッズは手をあげて挨拶する。
「どうしたの二人してー?変わった組み合わせだけど……ふ、二人でどこか……行くんですか…?」
「どうしていきなり丁寧語なの?フェルパー起こしに行く途中なんだ」
バハムーンの腕の中で答えるクラッズ。バハムーンは気前よく抱っこさせてくれる彼に、既に懐き始めている。
せっかく会ったからということで、一行はそのまま全員でフェルパーを起こしに向かう。道すがら、クラッズはフェルパーの寝起きの
危険さを説明したが、ディアボロスを除いて誰一人信じられない様子だった。
「フェルパー、入るよ」
一応声を掛けてからドアを開けると、ベッドの上で寝ているフェルパーと、入口間際に畳んである布団が目に入った。
「……ごめん……ほんとごめん、ディアボロス……あの距離でもダメだったんだね…」
「………」
「にしても、完全に猫化かあ……うひひ、ちょっと実験してみよっと!」
「きゃあ!?」
バハムーンは一瞬の隙を突いてドワーフを抱きかかえると、ずんずんフェルパーに近づいて行く。
「あっ、ちょっとダメだって!危ないから!」
「やめてよ馬鹿トカゲ!!きもいから触んないで!!下ろしてよ!!」
「ああ、寝顔可愛いなぁー!猫化って、どんな風に…」
目の前まで近づいたとき、フェルパーの耳がピクンと動き、その目が開いた。そしてバハムーンとドワーフの姿を認めた瞬間、
フェルパーの耳がべたりと後ろに倒れた。
「フシャアァー!!!」
「うわっ!?」
凄まじい威嚇の声と共に、フェルパーは全身の毛を逆立てた。そこには、もはや人間らしさなど微塵も存在していない。
「きゃっ!?ちょ、ちょっとこの馬鹿トカゲ!!私巻き込まないでよ!!」
「うわ、すごいなぁ……ほんとに猫みたいだぁ…」
それでもめげずにバハムーンが手を出すと、フェルパーの右手、というより右前脚が一閃した。
「危なっ!!」
「タッ!!フヴァー!!!」
「はいはいはい、フェルパーどうどう!大丈夫だから、僕ここにいるから!」
そこに慌ててクラッズが割り込む。手を出してやると、フェルパーはまだ低く唸りながらもその匂いを嗅ぎ、やがて少しずつ尻尾の毛が
元通りになっていく。それに従い、耳もゆっくりと立ちあがり、目は再び閉じられていった。
「あ、ちょっと、二度寝する気じゃ…?」
「や、大丈夫。このまま少し待ってね。この人、猫からフェルパーに進化するまで少し時間かかるから」
フェルパーは目を閉じると、膝をかくんと折って座り込んだ。目をつぶり、静かな呼吸を繰り返す姿は寝ているようにも見えるが、
一同はそのまま彼を見守る。その隙に、ドワーフはバハムーンの腕を脱出し、ノームの隣に逃げ込んだ。
二分ほど経った時、ゆっくりとフェルパーの目が開いた。そして続けざまに大きな欠伸をし、腕を大きく広げて伸びをする。
「んんっ……ふあ〜〜〜〜〜ぁ……おう、クラッズおはよ……って、なんでみんないるんだ?」
不思議そうに尋ねるフェルパー。どうやら彼は、さっきまでのことは全く記憶にないらしかった。
「なんでって……お前、ほんと猫みたいになってて…」
「あー、またクラッズか。お前さあ、会う人全員に変なこと吹き込むのやめろよなー」
「……興味深いなあ、この症例。今度調べてみよっと」
ドワーフが、後ろでぽつんと呟いた。
「あ、あはは……まあ、とにかく、おはようフェルパー。君、あんまり起きるの遅いからさ」
「え……あ、ああ、そうか!悪い!もうみんな起きてるんだもんな!ごめん、すぐ支度する!」
一大イベントも終わり、フェルパーとディアボロスを除く一行は部屋の外へ出る。バハムーンは早速ドワーフを抱き上げようとしたが、
ドワーフはすぐに逃げてしまった。
「ちぇ……それにしても、あのフェルパーすごかったな。ほんと、完全に猫だった」
「フェルパーの割に人見知りしないなーって思ってたけど、実際はそうでもないんだねー」
ドワーフが言うと、クラッズは笑った。
「あはは、実際に人見知りしない方ではあるけどね。でも、寝起きはもう本能のままだから……しかも、本人はそのこと覚えてないし。
だからフェルパーは、僕がいなきゃダメなんだよねー」
「君とフェルパーは、昔からの知り合い?」
「そうそう、幼馴染。地元でもここでも、ずーっと一緒だから、腐れ縁とも呼べるかもね、あはは」
そう笑うクラッズに対し、ドワーフは微笑みを湛えたまま遠くを見つめる。
「……幼馴染……いっつも一緒……一緒にお風呂で洗いっこ…」
「……ふさふさの、勝手にどこか行かないの」
「ふえ!?だ、大丈夫ですよ!ここにいますよ!……にしても、ノーム昨日はありがとねぇ〜。あんなの見落としてたなんて…」
「見た瞬間、折り目増えてんのに気付くあんたもあんたね。さすがとしか言い様がない」
「そりゃあ持ち主だもん。ふふふ〜、私とノームって、髪型も似てるし、タイプも似てるのかなぁ?」
「……あんたには負ける。ていうか、勝ちたくない」
「……?」
ノームとドワーフのやりとりはよくわからなかったが、なぜか二人がたった一日で仲良くなっているのは、もっとわからなかった。
しかし、悪いことではないため、クラッズはあえてその疑問を口にはしなかった。
フェルパーとディアボロスの準備が整ったところで、一行は宿を出た。しかし、母校に戻るというのにフェルパーの顔は浮かない。
というのも、そこに至るまでに炎熱櫓という火山地帯と、飢渇之土俵という砂漠地帯を越えなければならないからだ。当然のことながら、
どちらもひどく暑く、温度変化にあまり強くないフェルパーには厳しい環境なのだ。
「大丈夫だってー。熱中症になっても私がいるし、わふっと気合入れていけば平気だよ!」
出発前にそう語ったドワーフは、トコヨに着いた時にはフェルパーと並んでぐったりしていた。二人ともすっかり汗だくになり、
見ているこちらが暑くなるほど、ぜえぜえ、はあはあと荒い息をついている。
「あ……あつい〜……タカチホ行くの、また今度にしようよぉ〜…」
「だ……だから、言ったろ……しかもこの次……さ、砂漠だぜ…?」
「……獣は大変ね」
二人を見つめ、そう吐き捨てるノーム。バハムーンはチャンスとばかりに二人を抱き上げようとしていたが、見かねたクラッズに
止められている。
「……きついな、君は…」
「きゅ、休憩きぼ〜……もうやだー、歩きたくないー…」
「うーん、特にドワーフは暑そうだよねえ……帰るのはまた今度にして、蹲踞御殿にでも行く?」
「い、いずれにしろ、ちょっと休ませてくれ……ほんと、きつい…」
あまりに辛そうなため、結局一行はここで少し休むことになった。ノームは交易所を見に行き、バハムーンはあちらこちらを物珍しげに
見回っている。放っておくと、そのまま迷宮にでも行ってしまいそうなため、一応クラッズが彼女について行った。
残ったドワーフとフェルパーは、宿屋の陰でぐったりしていたが、不意に誰かが目の前に立った。見上げると、ディアボロスが
アイスクリームとかき氷を持ち、二人に差し出していた。
「あ、ありがとう……いいのか…?」
「ありがとっ!気が利くねー!」
ドワーフは素早くかき氷を奪うと、しゃくしゃくと賑やかな音を立てて食べ始めた。フェルパーも少し躊躇ったものの、素直に受け取る
ことにする。二人が受け取ると、ディアボロスは目だけで笑いかけた。
「助かるよ……でも、君はいいのか?」
「………」
小さく頷くと、ディアボロスは二人から少し離れ、空を仰いだ。一体何をするのかと思うと、息を大きく吸いこみ、いきなり空に向かって
一発、豪快なブレスを放った。それが済むと、今度は二人の隣に腰を下ろした。
「……ああやると気分的に涼しいとか、そんな感じか?」
ディアボロスは頷いた。外見からは想像もつかないが、どうやら相応の茶目っ気もある人物らしかった。
「ははっ、君面白いなあ」
「あうっ……頭いたぁ…!ふー、ごちそうさま!」
かき氷を食べ終えたドワーフは、一息つくとフェルパーの持つアイスクリームに視線を注ぐ。それに気付いたフェルパーは、さりげなく
体の陰にアイスクリームを隠した。
「それにしても、蹲踞御殿とか言ってたけど……それはそれできついよなあ。炎熱櫓歩いた直後なのに」
「んー、砂漠も嫌だけどね。でもさ、君ってタカチホ出身でしょ?なのに暑いのダメなの?」
「いやー、しばらくいると慣れるんだけどさ。自分もちょっと前まで雪原行ったりしてたから…」
「あー、それじゃきついよねー。抜け毛もすごくなるしさ」
そんな話をしていると、向こうからバハムーンとクラッズが歩いてくるのが見えた。
「たっだいまー!お前達、そんなところで何してるんだー?」
「うるさいなあトカゲ。暑いから休んでるのに決まってるでしょー」
「えー、暑いのいいだろー。私は好きだけどなー、元気になるし」
「あんたはね、この変温動物」
「ただいまフェルパー。ノームはまだ?」
その時ちょうど、二人と反対側からノームが姿を現した。
「お、おかえり。何かいい物でもあったかい?」
そう尋ねるフェルパーに、ノームは冷たい視線を向ける。
「報告の義務でもあるわけ」
「気になったからさ。別に義務なんかないよ」
彼女の物言いにも、フェルパーは気にする素振り一つない。ノームはしばらく彼を見つめてから、ぷいっと視線を逸らした。
「みんな揃ったとこで、どうしようか?」
「飛竜召喚札……は、高いんだよな〜。お金も全員で分けちゃったし……やっぱり路銀稼ぎがてら、蹲踞御殿行こうか?」
「それでいいよー。私も毛が抜け変わるまで、砂漠行きたくないもん」
「他のみんなはどう?それでもいい?」
特に反対もなく、話はそれで決まった。一行はすぐに蹲踞御殿へと足を運ぶ。
迷宮内部は地下だということもあり、ひんやりとしている。今までの暑さから比べれば、天国だとも言えた。
だが、ここに初めて来たドラッケンとプリシアナの四人とは違い、クラッズとフェルパーの表情はやや硬い。その変化に、バハムーンが
真っ先に気付いた。
「あれ?二人ともどうしたー?そんな怖い顔してさー」
「あー、ちょっとね。君達に会う前、ここで修練してたんだけど……ここ、出てくるモノノケが結構強いんだ」
「モノノケ?ああ、モンスターか。大丈夫だって、私達だって強いんだからなー!」
そんな会話があって、最初の一戦。出会ったモンスターは、イナズマホースとお化け猫魔の群れだった。そのどちらも厄介な部類であり、
ましてまだパーティを組んで間もない一行は、思わぬ苦戦を強いられた。
「くそー、なんで倒れないんだこいつー!」
「おー、トカゲの一撃耐える相手なんて、久しぶりに見たなー」
「くっ……か、体が…」
「大丈夫かノーム!?ちっ、おいクラッズ!」
麻痺を受け、倒れるノーム。クラッズは後ろを一瞥すると、刀を逆脇構えに変えた。
「承知!そりゃあ!」
刀が一閃する。その刃は確かに相手を捉えたが、生命力の高いイナズマホースは辛うじて耐え抜いた。
そこに、フェルパーが走っていた。
「はぁー!!」
フェルパーの杖が頭を殴り付ける。さすがにその連撃は耐えきれず、イナズマホースは倒れた。フェルパーはそのまま標的をお化け猫魔に
変更し、今度は棒尻を使って相手を殴り付ける。
「そりゃあぁー!!」
そこへ、クラッズが追い打ちをかける。フェルパーに気を取られたところを斬られ、お化け猫魔はその身を両断され、倒れた。
「ふー、辛勝ってとこか。こりゃ鍛え直しにもちょうどいいな」
「うーん、まだみんなとの連携が取れてないからねえ。ぼちぼちやってこうよ」
クラッズが刀を納めると同時に、フェルパーはドワーフの処置を受けるノームに近づいた。
「大丈夫か?あ、ドワーフ、回復は自分が」
「ん、じゃあお願いねー」
麻痺が取れ、回復も受けたところで、ノームが立ちあがる。そんな彼女に、フェルパーは真面目な顔を向けた。
「ここ、君が前だとちょっときついみたいだな。自分変わるよ」
「……あたしじゃ、脆すぎて不安ってわけね」
「悪い言い方すると、な。あ、武器はこれでよかったら使って。打根っていうんだけど、投げ物は得意だろ?」
フェルパーが渡したのは、大型の投げ矢に紐の付いた武器だった。これならば、後列からでも攻撃できるだろう。
「ふーん……どこでこんなの」
「前にうちのフェアリーが使ってたやつなんだけど、自分が預かりっぱなしだったみたいでさ」
「ふーん、そう」
気のない風に言うと、ノームは打根を受け取った。紐を腕に巻いている最中、クラッズはディアボロスの使うタルワールを見ていた。
「うわ、これ結構な業物じゃない?どれだけ鍛えてるの、これ」
「………」
「……まあ、いいけど……ノームのナイフも、よく見たらすごいなあ。これなら、大抵のモノノケとは渡り合えるね」
「それは皮肉のつもり」
「い、いや……はは、ほんときついなあ…」
「冒険家なら、武器を強化するのは当然でしょ。なまくらで戦いに出るなんて、死にに行くのと同じよ」
リトルブーケの強さの一つは、そこにあるようだった。彼女達は全員、武器や防具を徹底的に鍛え、その上で冒険に出ているのだ。
「うーん、僕達は武器に頼るより、まず自分が強くなれって言われたなあ…」
「強くなる前に死ねば、何の意味もないわね。道具に頼るのが恥とでも考えてるなら、見上げた馬鹿としか言いようがない」
「………」
「まあまあノーム、そこは各々の考え方なんだから、そう責めてくれるな。それにほら、武器に頼らないで強くなった結果が、
そいつなんだぜ。そういう考えもあるんだ、くらいに考えてくれ」
「……ま、確かに強い人ではあるわね。信用はできないけど」
そんな彼等を、バハムーンは何となくつまらなそうに見ていた。
「なあドワーフ、私達のとこって、何かアピールできるのないかな?」
「ないねー。武器も普通だし、クーちゃんいないし。でも、別にいいんじゃないの?」
「そっかー、なんかつまんないなー」
「面白いこと求めてるんなら、他行っていいよ。うん、それがいいよ。さ、他行って馬鹿トカゲ」
「ひどいなー!嫌だよ、こんなとこに一人なんてー!」
一行は完全に油断していた。話に夢中になりすぎ、幾人かがおかしな羽音に気付いた時には、敵はもう目前に迫っていた。
「うわあっ!?や、やばい!敵だ!」
現れたのは、殺人バチの大群だった。二桁を超える数のモンスターに囲まれ、一行は完全に浮足立った。
その隙を逃してくれるわけもない。たちまちクラッズが重傷を負い、隊形が整っていなかったためにフェルパーとノームも傷を負った。
バハムーンは多少の傷を負ったものの、さほど深くはなく、ディアボロスは相手の攻撃をゆらりゆらりとかわしきっていた。
「ぐっ……ふ、不覚…!こんなところで…!」
「クラッズ、大丈夫か!?すぐに回復……いや、それより殲滅か!?くっ、どうしたら…!?」
「ここは、みんな一度回復に回った方が……でも、敵が多すぎる…」
慌てふためく仲間を、ドワーフは呆れた目で見つめていた。やがて、彼女は大きく息を吸い込んだ。
「いい加減落ち着いてよっ!!情けないなあっ!!!」
迷宮を揺るがすほどの大声に、一行は驚いて彼女に目を向けた。
「焦ってどうなるもんでもないでしょ。それに、前衛が回復に回るなんて、そこまでのピンチだと思ってんの?いい、本分を忘れないで。
後衛は後衛の、前衛は前衛のできることをやる。それが助かるための道でしょ?……トカゲ、前衛の指示!後衛は私がやる!」
「おう!じゃあクラッズ、お前は防御に専念な!ディアボロスは右側を引きつけろ!私は左側の相手してやる!」
バハムーンが指示を出すのを確認すると、ドワーフはフェルパーとノームに目を向けた。
「フェルパー、ここはクラッズにヒール。ノーム、すぐに下がって。攻撃は忘れていい。私は回復の準備して待ってる。いい?」
「わ、わかった!」
「了解」
「よし、いい返事」
二人に笑いかけてから、ドワーフはもう一度声を張り上げた。
「各自、できることをやる!大丈夫、私はドクターなんだから、誰も死なせない!!」
「おう!!」
各自がやるべきことを自覚し、落ち着きを取り戻していく。そこに檄が飛び、一行は完全に士気を取り戻した。
本人達の自覚は全くないのだが、これこそがフリーランサーの強さだった。どんな危機であろうと、決して各自が本分を忘れず、
また士気を盛り上げ、的確な指示を下す指揮官がいる。リーダーであるクラッズを近くで見続けた結果、二人ともそれを自然と
会得していたのだ。
「さあ、反撃いくよ!!」
その言葉を合図に、戦いの火蓋が切って落とされた。
以上、今回分終了。
何とも半端なところではありますが、配分の都合上ご容赦を…。
続きは近いうちに投下します。
それではこの辺で。
うおおおGJ
ひさびさですなぁ
>>79 GJです!何これ楽しい。3はクリスマスまでとっとくつもりだったけど欲しくなってきた。
>>106 医学書に折り目w女子の友情構築法としておかしいw
熱い!GJ!エロパロ板だけどその熱さ…!GJ!
と、
>>75殿の作品があまりにエロスだったので一枚描いてしまいますた…。
ttp://pic-loader.net/view/976erokurakiru.html クラティウス「ご主人様、どうか私を可愛がってください…」
キルシュ「ま、待ていクラティウス!昨晩あれだけご主人様を独り占めしておいて!
わ、わらわも可愛がってもらいたいのじゃ!」
ていうシーンを妄想しますた。うん俺キメェ。本当はカーチャ先生も入れたかったけど
時間切れなんだぜ・・ガクッ
>とあるヒューマンの記録
あなたが神か?(違
私が望む楽園(えいえん)がココにある! 続きに期待です
>107
あなたが神(止
戦闘シーンの織り交ぜ具合がナイスです。
後編にも期待! ところで本作のタイトルは?
>110
なに、コレ、可愛い!
先生を……カーチャ先生をリリィ先生と女教師コンビでぜひお願いします!!
よーし、私も続き(王女様)がむばろう!
>>107 GJ! この板に来て3の作品出揃ってきましたねえ、シリーズ期待!
>>110 ナニコノ天国。いやバルハラか?バルキリー(ドラッケン学園)だけに。
この二人相手にしてなお元に戻ろうとするヒューマンの理性パねえぜ
113 :
二番煎じ:2010/11/02(火) 22:22:16 ID:KOVbSL2q
前々回?のスレで散々やらかした二番煎じです。
今更確認なのですが、シリーズ物ではないのにキャラ使いまわして書くのは自重したほうがいいですかね?
自分の腕じゃシリーズ物は書けそうにないので…
大丈夫でしたらまたちょくちょく書こうかと思いました。携帯からですが。
書き手は書きたいものを書く
読み手は読みたいものを読む
君がシリーズにしなくても読み手がシリーズにするかもしれないし
それを君が新たなインスピレーションのもととするかもしれない
好きにしていいと思いますよ
>>113 良いんじゃないかと思われ。基本的には自分の好きなように書いていいんじゃないかなー、と。
それと、どうも。
思いの外好評で焦っている
>>74です。
自分の書いた話が絵になりうれし恥ずかしどうしよう
(゚д゚)<エロいよ、
>>110さん!
今作の注意:設定的におかしな点が多々あると思いますので出来れば笑ってスルーして欲しいな、
なんて言ってみる。あと原作崩壊注意+展開早いよ!がんばってエロ書いた!!
前回までのあらすじ
・クラティウスは尻が弱い
・キルシュトルテは胸が弱い
・カーチャせんせは耳が弱い
・ま、待っててねロ、ロクロちゃんぐへへ
ヒューマン「ま て や こ ら」
前回までのあらすじ(訂正)
・ヒューマン、初恋終了のおしらせ
・ヒューマン、性奴隷×3獲得のお知らせ
・タカチホ義塾へお祓いへ行こう!
ヒューマン「あ、あれ?あんま変わってない…」
カーチャ「それじゃ『ドラッケン学園のとあるヒューマンの記録:696通りの責め編』始まるわよ。
え、今回は出番無し?…残念。なら今のうちに楽しんでおこうかしら…ねぇご主人様?」
ヒューマン「お、おれのそばにちかよるなぁー!!!」
□月22日
やあ皆、ヒューマンだよ☆
え、ウザい?ごめん。でもテンション上がっちゃうぜ。なんてったってあの異常な日々とも今日で
オサラバだ、テンションもあがって来るってもんさ。
このままじゃシュピール先生にも手を出しかねなかったしな。だ、誰だ今「出せば良かったのに」
とか思った奴は!?YESロリNOタッチの精神を忘れなさんな!
ん?あれは…見えてきたぞ、タカチホ義塾。いざ!!
視点変更:ロクロ
妙に目を輝かせたヒューマンがやって来た。よく見ると一昨日に話したヒューマンだ(もっとも
私は変装していたのだけれど)。
でも何がそんなに楽しみなのかしら?たかだか装備の解呪をするだけなのに…。まあ私にとっては
丁度良いお小遣い稼ぎになるんだけどね♪
…………………………………
……………………………
………………………
………………
…………
……
…
はい、おしまいってそんなに喜ばれると何だか罪悪感が…別に学校でもできることだしねー。
そんな事を考えてるとヒューマンがお礼にご飯を御馳走させてくれって言ってきた。
そこまでのことはやってないんだけど…ま、いっか。
119 :
2/8:2010/11/03(水) 01:29:19 ID:bWZJn0G9
視点変更:ヒューマン
足取りが軽い、視界が広い、鼻歌が自然と出る、最高だ。まぁクラティウスとかキルシュトルテとか
カーチャ先生との問題はあるのだが、いきなり意識が飛んでしまう事が無くなったからじっくり説得して
いけば良い。
それよりも今日はお祓いでメシが美味い!酒も美味い!ジャンジャン持ってこーい!!わははははは!!
□月23日
飲みすぎた!頭痛い!途中から記憶曖昧だし!ハメを外しすぎたな…。っていうか誰の部屋だ、ここ?
部屋を見わたしつつ佇まいを整えているとポケットの中に何か入っているのに気がついた。なんぞ、これは?
…………………………………
……………………………
………………………
………………
…………
……
…
なにこれ楽しい。俺は謎の箱の突起をカチカチと指で傾けながら遊んでいた。何と言うかこれは謎の中毒性があるなあ、
引っ越しとかでよく使われる荷物への衝撃を殺すあのプチプチみたいな。た、たまらん…!!
箱をいじりながらふと思う。そもそも何が原因でこんな事になったんだ?少し冷静になって考えてみるか…うーん
120 :
3/8:2010/11/03(水) 01:31:40 ID:bWZJn0G9
視点変更:ロクロ
私は追い詰められていた。もう何度イかされたか分からない、しかも授業中にだ。それも下着の中で一定の振動を続けている
モノのせいなのだけれど。「それ」を止めようにも今の私にはそれを止めるだけの力を持ち合わせてはいない。今はただ
誰にもバレないようにこの時間を耐えていくことしかできなかった。
そんな時いきなり「それ」の振動が強くなった。僅かに声が出てしまい、一気に脂汗が噴き出してくる。周りの生徒が
不思議そうに見てくる。「何でもない」と言うが全くそんなことなかった。ようやく何とか耐えられることができていたのに
振動が強くなったことで刺激される範囲が広がり私から余裕を奪ってく。あ、あ、だめ、また…来る…っ
すると「それ」は突然振動を止めた。え、何で?もう少しで…イけそうだったのに。
そこから明らかに「それ」の動きが変わった。ただ振動し続けるのではなく、緩急をつけるようになった。最初は
激しく責め立て、私が達しそうになると急に勢いをなくす、そんな生殺しの状態がさっきから続いている。どこかで
あのヒューマンがこんな私をみて笑っているのだろうか。
秘所への刺激に耐えながらふと思う。どうしてこんなことになったのだろうと、私は昨日のことを思い出していった…。
121 :
3/8:2010/11/03(水) 01:33:02 ID:bWZJn0G9
昨日食事の途中私の意識は途絶えた。気が付くと私はベッドに縛られていて、目の前にはさっきまで無邪気に笑って自らの
パーティーの自慢をしていた少年の姿があった。先程とは違い目に生気が全く灯っておらず、まるで人形のようだった。
そして彼は私の躰を這うように愛撫していき、私は何度も、何度も、絶頂に追いやられた。
勿論抵抗しなかった訳じゃない。ただ、彼は私一人の抵抗でどうにかできるような存在ではなかったのだ。何をしても彼は
まるでそよ風が吹いたかのように気にすることが無い。試すだけの事を試した後、私にはこの悪夢が終わるまでただ耐えるしか
できなかった。観念してただただ彼の愛撫に身を任せる中、カシャカシャという音が聞こえてくることに気がついた。
目を凝らすと何とカメラがシャッターを切っているではないか。
一気に顔を青くして喚く私に構う事無く、彼はズボンの中から怒張したモノを出してきた。さっきとは違う意味で顔を青くして
声を張り上げる。すると彼が無機質な声で一つ聞いてきた。
「お前、処女か?」
きっとその時の私の顔は真っ赤だっただろう、鏡を見ないでも分かった。どうなのかと聞かれ蚊のようなか細い声で肯定する。
すると彼はあっさりとアレをズボンに仕舞い愛撫を再開した。キョトンと油断していたら一気に絶頂を迎えてしまった。
122 :
5/8:2010/11/03(水) 01:35:15 ID:bWZJn0G9
それから数えきれない程絶頂を迎え、気がついたら日が昇っていた。すると突然股の当たりに違和感を感じた。見てみると何かを
付けられていた。急いで外そうとするが何故か外れない。外してくれるよう懇願すると、「今日一日それを付けていたら外してやる」
とカメラのフィルムをポンポン放りつつ言ってきた。私はしぶしぶとではあるが了承した、いやこの現状からするとしてしまったと
言うべきかも知れない。
回想に耽っているともうそろそろ今日最後の授業も終わりそうだった。やっと終わる、そう思う傍らでこの時間では一度もイく
ことが無かったことに対して憤っている自分に私はまだ気づいていなかった。
123 :
6/8:2010/11/03(水) 01:36:18 ID:bWZJn0G9
視点変更:ヒューマン
……ここ最近のことから導き出された答え、それは……!
どう考えてもあの時の行商人さんがくれた宝珠だよなぁ。厄介なもの貰っちまったよ、お礼なのに。ま、解決したから良いんだけどさ。
ってか俺はいつまでここに居るんだ、さっさと帰らないと。と、ベッドから起き上がると突然ドアが開いた。
ドアの開く音に顔を挙げるとそこにはロクロさんがいた。息を荒くして潤んだ瞳でこちらを見ている…嫌な予感しかしなかった。
フ、フィルム?何それ?気づいたら足元にカメラのフィルムが転がっていた。踏みつぶす。で、土下座した。
それからの向こうの反応で確信した。悪 夢 は 終 わ っ て い な か っ た ! !
……煮るなり焼くなり撃つなり斬るなり好きにしてください。
124 :
7/8:2010/11/03(水) 01:38:02 ID:bWZJn0G9
視点変更:ロクロ
驚いた、本当に驚いた。本当に目の前で土下座しているのは昨日私を散々嬲ったあのヒューマンなのだろうか?何でも言ってくれ、
と言われ取りあえず下着の下の拘束具を外すよう頼んだ。彼は顔を真っ赤にして拘束具を外しす、そんな姿に何だか一回りして可笑しく
なってしまった。
いきなり「さあ来い!」と言い彼が眼をつぶる。どうやら好きにしろ、という意味らしい。…一発殴ってやろうと思い握り拳をつくる。
でもそんな時に熱がとれない下腹部に気がいってしまった。途端に劣情がわきだしてきて止まらなくなった。どうしよう、体の内側が
ムズムズして堪らない。だんだん頭が回らなくなってきた。今、今イけたらどれだけ…
今自分は何を考えた!?でも、でも、でも…!!
好きにして良いんだから、いい、よね?
125 :
8/8:2010/11/03(水) 01:40:00 ID:bWZJn0G9
視点変更:ヒューマン
目をつぶって歯を食いしばっているとロクロさんから立たされた。来るか…っ!そう思い覚悟を決めると優しく、ベッドに倒された。
え、ちょっと待った。その、てんかいは、おかしい、よね?
落ち着くよう促そうとした声はキスされたことによって発せられることはなかった。
□月24日
……やっちまった。どれだけ意思が弱いんだよ、俺は。ロクロさんは初めてだった。キルシュトルテとクラティウスは元々二人が
恋人同士みたいなものだからか、カーチャ先生は大人の女性という事もあって初めてではなかった。故に今回のような誰かの初めてを
奪ってしまったことに精神的にダメージを喰らっている、例えると「2」でのセラフィムが弾き出すダメージ並に。いや、でも3人
を軽く見ているわけじゃないよ?
かなり抜いたせいか頭が妙にクリアだ、しにたい。悪夢は続いている、しにたい。行為中に思った「あ、完全に堕ちた顔だ」しにたい。
延長12回、しにたい。寒そうにロクロさんが腕にしがみついてくる、髪を撫でる、イケメンのつもりかしにたい。
…………………………………
……………………………
………………………
………………
…………
……
…
朝になった。帰ろう。今すぐ帰ろう。そして隔離してもらうんだ!身支度をしていると眼を覚ましたロクロさんが抱きついてきた。
しまった、こんなことなら夜に帰っとくんだったよ、馬鹿じゃん俺!?どうしようもなくわたわたしている俺にロクロさんが蕩けた
表情で耳元で囁いた。
「また…来てくれるよね?」
…………うんとか言っちゃったよしにたい。
まあ割とすぐに戻ってくることになるのだが、それは今は勘弁していただきたい。
ちなみに帰り着いたらイケナイ保健体育が待っていた。わははしにたい
おわりです。先に謝っときます、ごめんなさい。
エロシーンを書いた!すげぇ、エロくもないのに無駄に時間かかったし、滅茶苦茶恥ずかしい!
ちなみに
>>120辺りはバイブとかローターとかで補完しとくとニヤニヤ…できるかぁ?
ととモノ3は個人的に旧作2つと違ってかわいいキャラばっかりだから困る。
あ、後
>>107さんもGJです。続き待ってます。
リアルタイムで読んだ。
GJ
しにたいクソワロタw
129 :
二番煎じ:2010/11/03(水) 02:12:21 ID:BctPW6js
>>114-116 なるほど…ありがとうございます。
とりあえず自己満足でもいいからこれからもマッタリ書いていきます。
それとGJでしたw
>>117 ああ、次はしゅぴーるせんせいの格闘技講座だ……
いや冗談ですが。GJ。ロクロかわいい。
ちょいと埋めネタに用意したものの容量限界が調べられなかったのでこっちに投下します。
短めのエロパートだけ、触手、モンスター。ちょっと百合。
「さていきなりですが、やって参りましたのはここ、水に守られし宮殿」
「……ノム子、誰に話してんの」
「いえお気になさらず。アストラル体ですし」
「アストラル体なら仕方ないね」
「ちなみにお付き合い頂きますのは私の魂の恋人ヒュマ子様」
「……まあいいけど。でもなんで今更こんな所に?」
「魔物図鑑にて気になる記述を見つけましたもので」
「追調査って訳?意外とマメだねぇ」
「お褒めに預かり恐悦至極」
「……褒めたのかな」
「早速ですが目標を捕捉しました」
「セラフィム・フィッシュか。あのクラゲ天使がどうしたって?」
「ここです、ここ」
「ええと……『ニュルニュルした身体の感触は好き嫌いが分かれる』……食べるつもり?」
「食べるといいますか美味しく召し上がっていただくといいますか」
「やな予感、してきたなぁ……っと」
「気付かれましたね。あ、魔除けになりそうなものは外しておいていただけると」
「まあ、あの位ならもう素手でも……他には?」
「いえ、特には」
「よし、それじゃっ」
「♪子〜守〜歌〜♪」
「って、ちょ、おまっ……」
……さてさて目論見通り上手いこと寝てくれましたね。寝ると申しましても、中程度の催眠状態みたいなもので、能動的な行動が
取れなくなる程度という例のアレですけれども。虚ろなヒュマ子様の表情がなんともセクシー。所謂レイプ目。このまま頂きたいほ
どですが、今回の目的を考えると「出来上がらせて」しまうのも、フェアでは有りませんよね。
そんな状態のヒュマ子様に、水母野郎の触手が襲い掛かります。流石はガンナーを極めた人間の謎ボディ。ほとんど棒立ちで受け
ているのに外傷らしい外傷が出来ている様子はなさそうです。我ながら最適な人選でした。
しかしながら無反応でも困りますので、ここは少し協力してあげることにして差し上げましょう。ええ、水母さんに。
私はヒュマ子様の背後に回りますと、軽く頭を抱きかかえるようにして引き寄せます。筋力に差が有るとはいえ、今の状態のヒュ
マ子様相手ならこの位は出来ます。背丈もヒュマ子様の方が僅かに高いものの、足元を崩しているため丁度私の胸に彼女の後頭部が
収まります。
「大丈夫、心配しないで。ええ、いつものように、気持ちよくなりましょう……」
そっと耳元に囁くと、朦朧とした意識のままで頷いて見せるヒュマ子様。ベネ。
さてそれでは、手早く脱がせてしまうとしましょう。こっそり魔法壁を張ってみてはいますが、水母もいつまで空気読んでくれる
かは分かりませんから。
ヒュマ子様の耳朶を舌になぞらせながら、複雑に組まれたボタンを外していきます。冒険時にも用いられる制服、デザイン性だけ
でなく耐久性も考えられて組まれた構造は、意外と脱がせるのに面倒なんですよね。……当たりだと思ったらまたポシェットですし。
てこずりながらもなんとか前をくつろげる事に成功しました。ちらりと覗くインナーは限りなく白に近いブルー。健康的ではあり
ますが学校指定のものでは有りませんね。急に呼びつけたからでしょうか。飾り気のないそれはセクシーというよりも健康的なイメ
ージですね。フロントホックを外してやると、布地の下で主張を押さえられていた柔肉が零れ落ちます。薄明かりの下、ほんのり日
焼けした肌に浮かぶ桜色。ベネ。
程よく筋肉の乗った、しかしながら確かな柔らかさを持った腹部を愛撫しつつ、次はスカートへ。上をある程度外してしまえば、
後はスカートは捲り上げてしまえばよろしい。私のタイツほどではないにせよ、この下にも然るべきものがあると思うのですがそ
こは浪漫ですよね。
捲り上げた手をそのままで、下着のクロッチ部分に指を走らせると、僅かな湿り気を指に覚えます。
「汗……じゃ、ないですよね。あんなに勇ましいのに、相変わらずこっちの方面に関しては、本当に可愛らしい……」
上気した顔が、朦朧から陶酔へと色を変えたと思ったのは、気のせいではありませんでした。
「でも、嫌いじゃないでしょう? ほら、もっと気持ちよくなりましょう……?」
私の囁きに、ゆっくりと頷くヒュマ子様。そんな素直なヒュマ子様に、彼女の股間に置いたままの指が蠢いてしまいます。一々反
応を見せてくれるヒュマ子様。本当に可愛らしい。
とはいえここで達させてしまえば目的を果たすことは出来ません。最後に私は下着も脱がしてしまい、直接触れてそこが十分に濡
れている事を確認してから、彼女を床に横たえました。 乱れた着衣のまま──乱したのは他ならぬ私ですが──水辺にせり出した
ステージ状の床に横たわった姿は、崩れた壁から差し込む一筋の光条に照らされ、いっそ幻想的でございます。そんな彼女を手放
すのは惜しいのですが、ヤジューやら余計な敵が近寄らないように見張る必要があります。獣姦は今回の趣旨とは外れますしね。
周囲を見回し、安全を確認してから一度魔法壁を解除。セラフィム・フィッシュ一名様、ご案内でございます。
性欲というものがあるのかないのかは分かりませんが、だいぶお預けを食らっていた水母が、無抵抗のヒュマ子様に襲い掛かりま
す。
先程のやりとりで、多少叩いたところで己の攻撃がほぼ通じないことを理解したのか、今度はより接近し、触手を絡めて組み付き
ました。そのまま食らいついた所で文字通り歯は立たない様子で(むしろ感じてませんかヒュマ子様)、少しでも弱いところを探し
て触手が蠢き始めます。足に腕に、
まずは胸。普段の服の上からだと分かり辛いかもしれませんが、彼女の胸はそれなりに豊かなものでして、柔らかさに惹かれたの
か数本の触手が狙いをつけました。
捻りあげるように、根元から。とはいえかなりのぬめりをもった触手では、原始的な締め付けは愛撫にしかならず、人型種族の手
指では不可能な責め方に、少しずつヒュマ子様の息が荒くなってまいります。
程なく触手は胸の頂点へと辿り着きます。恐らくは、触手の構造で粘着力の強い部分だったのでしょう。ぬとり、と、そんな音が
聞こえてくるような張り付き方で、先端部分が張り付きます。
「んっ……」
ヒュマ子様の口から、小さな声が漏れ、身体が僅かな硬直を見せます。反応を示した事で「弱点」を理解した水母が、触手の動き
を強めます。絞り上げ、揉み込むように押し潰し、その度、触れた部分の触手に引きずられて蹂躙される乳首。
「あっ、やっ……はぁっ……」
段々と息の荒くなるヒュマ子様。カサに掛かった水母の責めも勢いを増し、胸だけでなく、脇や太もも、足首、体中に巻きつい
た触手達がよりきつくヒュマ子様を責め上げる。太ももを拘束していたそれが滑り、充血した付け根の敏感な部分を掠めた瞬間、
「ふぁっ……あ、あぁっ……!!」
一際甲高い声とともに響く小さな飛沫音。完全に脱力し、触手に身を預けるヒュマ子様。未だ続く触手の責めに身体を震わせは
しても、先程までの様な反応は見せません。イッちゃっています。
ああしかし、なぜ私はメイド/アイドルなのでしょう……!! ジャーナリスト学科であれば、この仔細を確りと記録できたのに!!
等と煩悶しておりますと、絶頂とともに催眠も解けたのか、少しずつヒュマ子様の目に光が戻ってきています。とはいえ未だ拘束
を自力で解けるほどでは無さそうですけども。
「御目覚めですか。いかがですか、ご気分は?」
「最悪と最高が半分くらい……」
「セラフィム・フィッシュはいかがでしたか?」
「そぅねぇ……ぼんやりとしてて良く覚えてないけど……悪くはなかったわ……」
「それはなにより」
「……ああ、召し上がって頂くってそういう……なるほど、ね……」
「どうやらヒュマ子様は『好き』の方で間違いなさそうでしたね」
「……アンタ、覚えときなさいよ……?」
「楽しみです」
お粗末さまでした。続くかもしれないし続かないかもしれない。多分続かない。
133 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 05:13:07 ID:MNgYef9r
「ととモノ。」の二次創作を探してここに行きつき驚愕。どれもこれも面白すぎる。レベル高すぎだろ…。
…今晩はここの神々に感化されて書き上げたものを投下しに来ました。…うん、こんな時間なら問題ないはず。
エルフ♂×フェルパー♀。楽しんでいただければ何よりです。
134 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 05:20:42 ID:BmNsIUSX
エクスの丸コピゲーですか?
135 :
使用人(1/9):2010/11/03(水) 05:28:25 ID:MNgYef9r
空は既に山吹色に染まっていた。彼方に見える東の空にはまだ微かに青色が残っているが、西の空を振り返れば夕焼け色の去った後が黒くなりつつある。
眼下には山間の開けた平原が見渡せ、中央に一筋通った道以外はススキが覆い尽くしている。それらが肌に心地よい風に揺られてカーテンのごとく波打ち、大きいのに不思議とうるさく感じないざわめきを上げる。
やがて広々としたススキばかりの原の中に、屋敷と呼ぶには小さめな一軒の二階建ての和風家屋が見えてきた。飛竜はゆっくりと速度を落としながら高度を下げ、門の前に降り立った。竜の翼の立てる風圧を受け、周囲のススキがさわさわと騒ぐ。
やがて竜が太い両足を落ち着けて翼をたたむと、その背中からマントを羽織った人物が飛び降りた。
マントの人物がフードを退けると、まだあどけなさの残る丸みの強い顔が現れた。黒く短い髪に覆われた頭頂部には、同じく黒い毛に覆われた三角型の耳が二つ付いている。
フェルパーは担いだ袋を前に置くと、その中から何かの肉の塊を一切れ取り出し、竜の眼前に差し出した。竜はそれを口で受け取って咀嚼し飲み込むと、仕事は終わったとばかりに再び翼を広げて飛び去っていった。
それを見送ったフェルパーは再び荷物を持ち上げ、生垣に挟まれた門を押し開けて庭へと入っていく。
庭といっても、種種雑多な花が入り口の左側の隅に植えられているのが唯一の飾り気で、その奥(入り口から見て左奥)にはろくに使われず埃にまみれた物置が侘しげにたたずんでいる。
花の植えられた隅と縁側の間の空間には、何本かの物干し竿が刺股のような長い棒に掲げられ、ハンガーなどで竿から吊るされた洗濯物が一様に風になびいている。
右側には馬小屋があり、中では数頭の馬が飼い葉を食んでいる。
「ただいま、ウラク。オリベ、調子はどう?秋だからって、あんまり太っちゃ駄目よ」
フェルパーが居並ぶ馬の頭をなで、頬擦りしながら親しげに挨拶する。その口調と声から、このフェルパーは女性と分かる。
フェルパーは馬への挨拶をひとしきり済ませると、今度は馬小屋の隅へ歩を進めた。そこでは背中に刀を差した魔人の男が、木箱のようなものを椅子代わりにしてうつらうつらとしている。フェルパーはその肩を掴んで軽く揺すってやった。
「真面目にやりなさいよ。用心棒でしょ」
顔を近づけて厳しさの感じられない口調で言葉をかけると、男は額に手を当ててから首を振り、次に首を回して伸びをした。
そしてあくびをしながらフェルパーに目を向ける。すると呑気にまどろんだ赤い目に突如光が戻った。
「フェルパー……?」
フェルパーは親しみを込めた笑顔を浮かべ、
「ただいま」
と再会の言葉をかけながら、馴染みの同僚の額を人差し指で軽く弾いた。
厩番兼用心棒の男は額をかきながら立ち上がると、やけに生き生きとした顔になって、
「旦那様に報せてくる」
と走り去っていった。
136 :
使用人(2/10):2010/11/03(水) 05:36:13 ID:MNgYef9r
暫く後、涼しげに着物を着こなした中年のエルフの男と、クロスティーニ学園の制服を着込んだフェルパーの少女が縁側に並んで座っていた。ススキや洗濯物を揺らす風が程よい冷気を含んで肌に心地良い。
久方ぶりに帰ってきた家は、フェルパーにとって安らぎに満ちた場であった。ひしめく人の放つ淀んだ熱気も、混沌とした喧騒も、ここには全く感じられない。聞こえるのは台所の方から遠く聞こえる包丁の音と、風に揺れるススキの斉唱だけだ。
「学校はどうだ?」
今吹いている柔らかな風のような優しく穏やかな声で、エルフの男がフェルパーに尋ねる。その顔からは愛娘に対するような慈愛を感じさせる。
「手紙に書いてある通りでございます。とても、充実しております」
フェルパーは自分を見るエルフと目を合わせず、正面を向いて目を伏せたまま答えた。その声と表情からは、先の魔人に対していたときにはなかった照れのようなものが見える。心なしか頬に赤みが差しているようだ。
エルフはそんな彼女の態度を楽しむような笑みを浮かべながら、自分の左側に座る彼女の左肩に手をかけ、そっとその体を引き寄せた。
「だ、旦那様……」
抱き寄せられた体がエルフの脇腹に密着する。細長い尻尾をほとんど反射的にエルフの背中に巻きつけるようにしてしまう。
「随分、逞しくなったものだ。以前とは張りが違う」
涼しい風に冷まされた体が急に体温で温められたことと、突然抱き寄せられた恥ずかしさから、フェルパーの肌は急激に熱を帯び始めた。
「お、お戯れを……」
発せられた声が恥ずかしそうにかすれている。
「いい友達が出来たようだね」
エルフはフェルパーの上腕をゆっくりと、繰り返し撫でさすりながら、そう言葉をかけた。子供を落ち着かせるようなその撫で方に気持ち良さそうに目を細めながら、フェルパーはエルフの肩に頭をもたれさせた。弛緩した耳が横に垂れている。
「はい。全体的に卑怯で素っ気無いところはありますが、人を害するような人達ではありません。良いパーティーに入れました」
そう、クールに見えて気のいい人達だ。でも、ここにいる安らぎとは比べるべくもない。
「ヒューマンのガンナーの子がいるのですが、その子、ジャパニーズの子孫だそうで、時々和食をご馳走してくれるんです」
エルフの落ち着いた目に、どこか少年めいた光が走った。
「ほう、ニッポンの血を継ぐ子か。終末に故郷が消えようとも、その血と心を継ぐ者まで途絶えたわけではないのだな。会ってみたいものだ」
「大げさですよ。旦那様が憧れるようなニッポン人とは程遠いですが、ある程度は風流の分かる、いわゆる文学少女ですから、旦那様のお気には召すかと」
「興味深いな。次に帰省するときには、ぜひとも招待してくれ」
「仰せのままに。でも……」
フェルパーは頭をエルフの方に持たせかけたまま顔を上に向け、上目遣いで彼の顔を見上げた。猫じみた黄色い目に微かながら不安げな揺らぎが見える。
エルフはその意味するところを読み取ると、慈しむように撫でていた彼女の肩を掴み、より強く抱き寄せた。
「私がお前に嘘を付いたことがあるか?私の女は今やお前だけだ。私がお前を裏切ったなら、その時はお前の刃が私を貫くだろう」
そう言って、見上げるフェルパーの額に接吻する。彼女はくすぐったそうに顔を綻ばせ、上げた顔を下ろした。そして嬉しそうに喉を鳴らしながら、エルフの腕に頬を擦りつけた。
「やめてください。私の剣は、旦那様を守るためのものです」
「だが、誤った主君を正すのも臣下の勤めだ。耳を持たぬ正しようのない主ならば、臣や民のために誅するのもやむをえんだろう」
「旦那様の民って、ススキと虫と蛙ですか?」
「はっはっはっは、言うじゃないか」
「ふふっ、だって……」
エルフは一本取られたとばかりに笑った。フェルパーもつられて控えめに笑ってしまう。
137 :
使用人(3/10):2010/11/03(水) 05:39:05 ID:MNgYef9r
「例の彼女に、豚汁の作り方を教えてもらったんです」
「トンジル?味噌汁のようなものか?」
「はい。豚肉を初めとしたいろんな具を入れた、具沢山の味噌汁です。彼女は小さく切った豚肉の他に、輪切りにした牛蒡やなめこを入れています。赤味噌と一緒に材料も持ってきましたので、明日バッツに仕込んでおきましょう」
エルフの顔から平静さが薄れ、深く上がった眉や口角が頬や目元に嬉しそうな皺を刻む。
「赤味噌!ありがたい。こっちでは手に入りづらくてな。あの濃厚な味を知ってからでは、白味噌では物足りん。よくやったぞフェルパー」
フェルパーは照れくさそうな笑みを浮かべながら、両手をエルフの脇腹に添えて、全身を摺り寄せるようにした。言葉遣いこそ使用人のようではあるが、その振る舞いはどう見ても恋人のそれであった。
「喜んでいただけるなら、……光栄の至りです」
うっとりとしたようなその声は、まるで褒められた嬉しさに酔いしれているかのようだった。
肩を労わるように撫でられ続けているせいか、その顔も徐々にとろんとしたものになっていき、全身の力も抜けていっているようだ。
「眠いのか?」
「……はい、……とっても、……気持ちよくて」
エルフはフェルパーの両肩をそっと掴むと、その体をゆっくりと横たえた。
「旦那様……?」
下ろされた頭がエルフの膝の上に乗せられた。
「今日は疲れただろう。夕飯ができるまで休んでいるといい。お前の好きな鮭を焼いている。楽しみにしていろ」
フェルパーは嬉しそうにごろごろと喉を鳴らしながら、エルフの膝に頬を擦りつけた。その動きが徐々に緩慢になり、やがて止まると安らかな寝息が聞こえてくる。
エルフは彼女を起こさないように、その頭を撫でてやっていた。その姿は幼い子を慈しむ優しい父親のようでもあり、純粋な愛情に満たされた恋人のようでもあった。
138 :
使用人(4/10):2010/11/03(水) 05:41:23 ID:MNgYef9r
物心付いたときから、フェルパーは身寄りのない娼婦だった。そんな彼女にエルフが通うようになったのは随分前からのことだった。
娼婦に対する客の態度など、大抵の場合は横柄なものだ。彼女の雇われていた店は、ある程度の規模の町になら必ずあるような安っぽい売春宿だったので、本来彼女の今の主人のような高貴な人間が来る場所ではなかったのだ。
何故あんなうらぶれた通りの寂れた宿に慰みを求めたのか分からなかった。そう思うほどに、あの男はそれまでの客とは毛色が違っていた。
フェルパーよりも美しい娘はいた。店の主人は当然のごとくその娘らを薦めた。にも拘らず、エルフはフェルパーを選んだ。迷った様子さえなかった。
猫が好みだったのか。いや、彼女よりも美しい猫はいた。あるいは、よりあどけない猫が好きだったのか。
エルフの態度は実に紳士的だった。これから体を好きにする小娘相手にも、店の主人に対するのと変わらない、……いや、ひょっとしたらさらに丁寧な態度で接してきた。後にも先にもこれほど感じのいい客は現れなかった。
娼婦はいくらかの金と引き換えに一晩体を貸す商売……と認識されている。つまり金をもらったその晩は、娼婦の体は彼女自身のものではない。痛みしか感じないほどに荒々しく揉まれ、濡れる前から激しくされるなど言うに及ばない。
暴力的なSMプレイ、窓から突如押しかけてきた仲間との輪姦(当然追加料金は踏み倒される)、果てには屋外で交渉して前金を払ってきたと思ったら、人目も憚らずその場で無理やりするような変態さえいた。
こういったことにも慣れているフェルパーにとって、エルフ相手の商売はある種の後ろめたさを感じさせるものだった。今更淫行に背徳感を感じていたわけではない。問題はエルフとすることが“商売”と思えないことだった。
139 :
使用人:2010/11/03(水) 05:49:38 ID:MNgYef9r
とうに外は月の時間となり、この山間の支配者たる蛙や鈴虫どもが遠慮なく歌い狂っている。多く集まればけたたましいその声を意にも介さず、わずかな使用人たちは寝静まっている。この静かで寂しい地では、たった数人の人間たちは間借り人でしかない。
外の喧騒と内の静寂。昼間とは逆だ。しかしだからといって、家の中が完全に静まっているわけではないようだ。
二階の奥の家主の寝室の中、布団の上でエルフとフェルパーは互いの口を貪っていた。
いや、フェルパーはあまり積極的ではない。猫の名残であるざらついた舌を遠慮なく動かせば、主人の粘膜を傷つけかねないからだ。
口内を侵し侵されながら、口の隙間や鼻から熱っぽく甘ったるい息と声が漏れている。
エルフの舌はいつになく遠慮のない動きで少女の口の中を這い回っている。舌が唾液を舐め取るたびに、口内から耳にぴちゃくちゃと水音が伝わってくる。
その感触と音を聞くほどにフェルパーの心臓の鼓動は急激に激しくなり、口を塞がれて制限された呼吸が苦しくなってくる。
フェルパーはたまらず主人の胸を押して口を離した。うなだれて荒くなった呼吸を整える。
彼女が落ち着いてきたのを見て取るとエルフはその顔を上げさせ、寝間着である浴衣に包まれた体を正面から抱きしめた。回された右手は夕方に縁側でしたように彼女の背中を優しく撫でる。ゆっくりと、一定のリズムで。
「許せよ、可愛い奴。こうしてお前を誘うのは半年振りだからな、年甲斐もなく取り乱してしまった」
いつもの優しげな声を保とうとしてはいるが、その声は興奮を誤魔化せていない。囁かれる声と共に出たやけに熱い吐息が、左肩に顔を預けたフェルパーの耳にかかる。フェルパーの両手がエルフの腰に触れ、滑るように動きながら背中へ回された。
「はぁ……、旦那、様……、はぁ……、熱いです……、とっても……」
フェルパーの呼吸が再び乱れ始めた。
「体が……、溶け、ちゃいそうで……」
エルフの背中に回された腕にはやけに力がこもり、主人の広い背中を貪欲に引き寄せようとしていた。密着した体の体温に、赤く火照った肌がさらに熱を帯びる。フェルパーの全身はじっとりと汗ばみ、浴衣はいつの間にか無視できないほどの水分を吸っていた。
エルフは首元と背中に回していた腕を放して少女の華奢な両肩に置いた。汗に濡れた肩を押すと、背中に回された細い腕が名残惜しそうに解けた。肩を離れた顔は少しうつむいており、暗い中でも微かな光を放つ黄色い目が上目遣いに見上げている。
「随分濡れている。風邪をひいてはいけないな」
言いながら、濡れた浴衣の肩に置いた手をゆっくりと左右に開いていく。掴まれた浴衣が、普段日にさらされていない白い肌の上をゆっくりとすべり、覆われていた肩と胸元がゆっくりと露出していく。
顔や腕よりも白いその肌は、内側からの熱によって赤みが差す様がより鮮明だった。エルフがそこまで楽しんだところで、フェルパーは胸元を押さえて脱がすのを止めてしまった。
「焦らさないで欲しいんだが」
エルフは少々嗜虐的な笑みを浮かべながら、軽めの口調で言った。
「は、恥ずかしいです……」
切なげにそういうフェルパーの目は熱っぽく潤み、胸元で浴衣を押さえる手は微かに震えている。肩と胸が大きく上下し、切れ切れな息の間から辛うじて出る声はかすれている。
エルフの口元がニヤリと意地悪げにゆがんだ。横から届くランタンの光によって皺の周りに影ができ、夕方の穏やかさからは想像も付かない禍々しささえ感じさせる。
140 :
使用人:2010/11/03(水) 05:52:51 ID:MNgYef9r
「では恥ずかしがってもらおう」
エルフは二の腕の辺りまで滑らせた手を離して、胸元を押さえたフェルパーの手を掴むと、容赦ない勢いでその手を下に下ろさせた。
「にゃっ!」
優しい主人の突然の荒々しい行いに、フェルパーは思わず身をすくませて甲高い悲鳴を上げてしまった。エルフはほくそえんだ。押さえていた手を無理やり下ろした反動で乳房がぶるんと大きく揺れながら飛び出し、そのまま浴衣は腰の辺りまで滑り落ちた。
「また、綺麗になったな……」
ほとんど露わになった少女の上半身を眺めながら、エルフは鑑賞家のような恍惚を漂わせて呟いた。フェルパーは苦しそうな息をさらに荒くして、恥ずかしそうに身をよじった。
「はぁ、はぁ、……ひどいです……ひどいですよ……」
責めるような涙声と、顔を背けながら横向きに主人を責める涙ぐんだ目。まっすぐ下に下ろされた両腕が乳房を内に寄せるように挟んでいる。
寄せられた乳房は呼吸に合わせて上下に揺れ、手を引っ張られてやや猫背になっていることもあってやけに大きく見える。
「旦那様ぁ、はぁ……、そ、そんな、はぁ……、見ないで……」
身をよじって顔をそらしながら、哀願するような横目を向けている。
弱々しく下がった眉と耳からは、生意気な言い回しで主人を笑わせた威勢など感じられない。細長い尻尾も布団の上に力なく投げ出されて動かない。
全てが劣情を煽る火種にしかならなかった。しかし年甲斐もない興奮に身を任せるそんな自分に、エルフは心のどこかで苦笑していた。
「こんないい胸を鑑賞せずにいられるか。大きさといい形といい。緩く垂れた肩、胸の張り出しとくびれた腰のコントラスト、そこから腰で一旦膨らみ、腿からだんだん閉まっていくライン。こんな体を愛せずにいられるものか」
「んん……や、やめて……、はぁ……、」
恥ずかしさに耐え切れず、湧き出した涙が溢れ出した。胸筋が鍛えられたからか、以前より明らかに大きく見える乳房をいやらしく突き出すような姿勢と恥らう態度のミスマッチに、サディスティックなものを刺激される。
娘同然のフェルパー相手にこんな気分になるのはあまりないことだが、それもこの娘なら本気で嫌がらないだろうからだ。
「だが、そうだな。見るだけでは足りん」
エルフはフェルパーの手首を掴んだまま顔を近づけ、赤くなった乳首を舐め上げた。
「はうぅっ!」
高く鋭い、しかし甘いものを含んだ叫び声と共に、フェルパーの全身がびくんと一瞬跳ねるように震えた。下がっていた耳がぴんと立ち、顎と背が弓なりに仰け反り、投げ出された尻尾が電気でも通ったように波打った。
ただでさえ強調された胸がぷるんと揺れながらさらに突き出される。顔に柔らかなふくらみを押し付けられたエルフは、さらに口を大きく開いて、膨らみそのものにかぶりつくように揉み始めた。
舌では乳首を転がすように弄び、空いた手はもう片方の乳房を弄る。柔らかさを楽しむように撫でながら、指を強く押し付けて硬くとがった乳首を蹂躙させるのも忘れない。
「はんっ、あっ、あぁん!だ、だ、旦那、様ぁ、こんな……、ああっ!こんな、こんな、ひゃう!」
恥ずかしいところをいやらしく強調し好き放題にされる羞恥心に苛まれ、フェルパーは意味を成さない嬌声を上げ続けた。敏感なところを刺激されるたびに、それに反応して細身の体がびくんと仰け反り、汗にまみれた上半身をぶるぶると震わせていた。
「お前も欲しかったのか?そんなにはしたなく乱れて、まるで盛りのついた猫だな」
「あぁ、あっ、はぁぁん……あっ!あん!そ、そんな、言わ、ないで、ああっ!」
エビのように反らした体を震わせて天井を仰いだまま、フェルパーは狂ったように泣き叫んだ。
141 :
使用人:2010/11/03(水) 05:57:42 ID:MNgYef9r
エルフの行いはそもそもの初めから娼婦に対するそれではなかった。脱がせもせず押し倒しもせず、服の上から弄ることもせずにまずは唇を重ねる。
フェルパーにとっては慣れない行為だった。まっとうな性交を知らない彼女には、恋人同士の秘め事の手始めともいうべきそれは斬新なものだったのだ。
エルフの手つきはまるで割れ物を扱うようだった。壊れることのないようにそっと頬に触れ、質感を楽しむように丁寧に撫でた後、その顔を抱き寄せて唇を合わせ、暫くその表面を吸うようにする。
その未知の行いに、フェルパーはどこか思考を溶かされるような快さを感じていた。
暫くして唇が離され、エルフは熱っぽく語りかけた。
「これが貴女への冒涜になるというなら、どうか私を追い出してください。返金は要求しません。今夜一晩、私は貴女を、貴女でない別の女性として扱いたいのです。
その人は貴女と同じフェルパーで、私にとって何にも代えられない存在でした。しかし、あの人と私の道が交わることはもうありません。
貴女は、私の失ったあの人を思わせます。貴女があの人でないことは百も承知ですが……、どうか今夜だけは、私の見苦しい追憶にお付き合いください。お願いします」
無教養な彼女には分かりづらい話し方だったが、何であろうと問題ではなかった。妥当な金を払うなら同じことだ。
とはいえ、ここに来る男たちは娼婦を特定の個人として見ていないはずだ。そういう意味では、この男はあまりに場違いな客だった。
……などという思考をはっきりと巡らしていたわけではないが、違和感を拭えなかったことは確かだ。この人はあたしに何を求めているのか。
そんな困惑を知ってか知らずか、エルフは彼女を優しく抱きすくめ、ゆっくりと押し倒した。耳元で彼女のものでない名前を呼びながら。
しかし悪い気はしなかった。呼ばれる名前こそ違っても、その声は今までフェルパーが受けた事のないような慈愛に満ちていた。
割れ物のように大事に扱われるその感覚は、慣れないながらも心地良いものだった。自分を損得抜きで大事にしてくれる人――家族?――の記憶など、もはや無きに等しかった。
その後の行為は到底仕事といえるようなものではなかった。エルフは彼女に何もさせようとはせず、彼女の体を隅々まで、ゆっくりと撫でたり舐めたり、口付けたりした。性急さがまるで感じられない。
フェルパーの頭の中は困惑で埋め尽くされた。これが性交か。あなたはあたしをどうしたいんですか。あたしの体で何をしたいんですか。そう聞きたいのを必死で堪えていた。
この人の要望は私を“あの人”として扱うことだ。なら私のしたいようにしてはいけない。
そう考えるといくらか気が楽になった。なんだ、いつもと同じだ。どうぞお好きに。投げやりにそう思いながら、肌の上を這い回る手や唇の感触に意識を向けた。初めはくすぐったい程度だったが、彼女の反応を見てその手つきもだんだんと変わっていった。
やがてフェルパーは、腹の中が温まっていくような感覚を覚え始めた。だがそれは熱とも違う。腹の内側から湧き上がり、新陳代謝が良くなるような快さを感じさせる、不可解な快感。性的なものとは少し違う。
「あの……」
買われた身で頼みごとなどという気もしたが、もう暫くこの感覚を楽しみたかった。性的な意味で気持ちよくなる前に。
「お腹、撫でて欲しいです」
エルフの目が向けられた。笑っている。何かをねだる子供に仕方ないな、と応じるように。彼は腹の横に頭が来る位置に寝そべると、老婆が孫にするような手つきで腹を撫で始めた。ゆっくりと、何度も、何度も、ひたすらに一定のリズムで。
撫でられるたびに、腹の奥から何かが溶けたような快楽がじんわりと湧き出してくる。その気持ちよさをもっと落ち着いて感じたくなり、フェルパーは大きく息を吸って吐いた。
するとそれに連動するように、腹に溜まり込んでいた暖かなものが全身に拡散していった。体全体がじんわりと温まっていく快楽に眠気すら感じ始める。許されるならこのまま眠ってしまいたかった。今眠ればとてもいい夢が見れそうだ。
「眠いのか?」
労わるような優しい声が聞こえる。フェルパーはぼやけた意識の中ではいと答えた。
「そんな良い顔をされては、駄目だとは言えないな。では、お休み。良い夢を」
そう言って布団までかけてくれた。彼の愛撫で温められた体が布団の柔らかさに包まれ、体の中の程よい熱は意識を現世につなぐ鎖を溶かし去った。
全身を包む心地良い暖かさの中で、彼女の意識は晴天の雲の中へ送り出されていった。
142 :
使用人:2010/11/03(水) 05:59:13 ID:MNgYef9r
エルフの胸に持たれかかり、フェルパーは荒い息をついていた。浴衣の帯より上の前を完全にはだけたままで、汗ばんだ肩や胸を大きく上下させている。
「我ながら、らしくないな」
エルフは少し疲れた様子で一つ深呼吸をした。
「痛くなかったか?」
寄りかかる少女の頭をいつものように優しくなでさすりながら声をかける。
「いいえ……。でも、はぁ……、今日は、どうしたんですか?」
荒れた息を整えながらフェルパーは答え、そして尋ねる。普段のエルフの、じわじわと温めるような行為とはまるで違う。
「半年振りにお前を抱けるのが嬉しくて、つい、な……」
答えるエルフは少し気まずそうだった。自分でも柄でないと思っているのだろう。
「いつも通りが良かったか?」
言いながら、エルフはフェルパーの背中を撫で始めた。例の手つきで。しかしフェルパーはそれを遠慮がちに跳ね除けた。
「いえ、たまには、こういうのも……」
恥ずかしそうにくぐもった声。元娼婦の彼女も、主人の前ではまるで生娘だった。エルフは優しい旦那様の顔を再び意地悪くゆがめた。
「ふ、好き者め。一眠りして疲れが飛んだか?臭いがきついぞ。本当に猫みたいだ」
「にゃぁん」
フェルパーはふざけて猫の鳴き真似をしながら主人にしがみついた。
「完璧な物真似だな、私の子猫ちゃん。物欲しそうなところなど猫そのものだ」
するりと衣擦れの音が聞こえた。いつの間にかフェルパーの帯が解かれていたのだ。
フェルパーがそれに気を取られている間にエルフは彼女の肩を掴んで、その体を布団の上に押し倒した。空いたほう手では彼女の浴衣の腰から下を開きながら。露わになった全身を堪能するのももどかしく、少女の細長い両足を左右に開いて持ち上げる。
少女のほっそりとした体がびくりと震え、尻尾がまた一つ波打った。失禁したかと思わせるほどに濡れそぼった秘所が彼女の羞恥心に反応してひくつき、どくんと液をこぼした。
「旦那様ぁ……」
フェルパーの切なげにねだるような声に応じ、エルフも自分の帯を解いた。
143 :
使用人:2010/11/03(水) 06:02:44 ID:MNgYef9r
あの後も大体三カ月おきに、エルフは彼女の元に通ってきた。フェルパーとしても、彼が常連になったのは素直に嬉しいことだった。
金払いがいいし、何より他の客とは比べようもないほどに優しい。金を取って悪いと思わせるほどに大事に扱ってくれる。ゆっくり過ぎて多少焦らされる感じはあるが、いつも気持ちよくしてくれる。しかも中で出さない。
こういった魅力を思えば、自分でない誰かとして扱われるなど問題ではなかった。彼女には教養もプライドもなかった。自分が何者なのかなどどうでもいいことだった。いや、そのはずだった。
“あの人”はどうしてこの人を裏切ったんだろう。こんなに優しくて、大事にしてくれるのに。この人は自分を裏切った“あの人”をどうして憎まないのだろう。
こんなに良くしたのに裏切られて、高貴な身分を奪われて、ただの行商人に成り下がって、こんな汚いところに通う程に落ちぶれて。
――“あの人”って、奥様だったんですか?
――そうなるはずだった。そうしたかったんだが……。
――あたしはその人に似てるんですか?
――よく似ている。顔立ちも体つきも。……だが、こうして体を重ねるごとに、違いがはっきりするばかりだ。貴女はあの人ではない。当然のことなのに。
――じゃあ……、もう、来ないんですか?
――気を悪くしたことをお許しください、可愛い人。……貴女は、気付いてくれましたか?二回ほど前から、私は貴女を、あの人の名で呼んでいません。あの人でなくとも、貴女は魅力的だ。だから、これからも、お願いしますよ。
――至らないことがあったなら、何でも言って下さい。“あの人”になれって言うなら、なります。何でもエルフさんのいいようにしますから……。
――……今日は、どうしたのですか?
――どうしてそんなに優しくするんですか。あたしは“あの人”じゃないのに。エルフさんが優しすぎるから、他の男に抱かれるのが辛いんです。みんなみんな、ろくでなしの糞野郎ばっかり。
あと何日たてばエルフさんが来るか、もしかしてもう来ないんじゃないか、毎日毎日そんなことばっかり。もしエルフさんが来なくなったら、もうこんな仕事続けられません。これ以外の生き方なんて知らないのに。
――……
――“あの人”ってどんな人だったんですか。教えてください!あたし、“あの人”になりますから!絶対に裏切らない“あの人”に!
――……
――それが駄目なら、せめてあたしにも“仕事”をさせてください。いっつも良くして貰ってばっかり……、お金貰ってるのに。お金は働いて貰うものじゃないんですか?あなた相手に働いた気なんてしません。あたしたち、娼婦と客なのに、こんなのおかしいです。
あたしは物乞いじゃありません!あなたにとって、あたしは何なんですか?“あの人”でもない淫売に、どうしてそんなに優しくするんですか!
――あの人が私の元に戻って来ることはもうない。いや、私が戻ることを許さないといったほうがいいか。何がいけなかったのか、今でも分からない。
――“あの人”が悪巧みしてたからです。そうじゃないんですか?
――……あの人を愚弄するな。
――ひっ……
――……許してください。確かに、あなたの言う通りかもしれないし、それを裏付ける証拠もいくつかあった。……だがそうだとしても、あの人を憎むことはできない。あの人が望んだなら、陥れられたのも悪くはない。それがあの人の幸せにつながったなら……
――馬鹿です!
――……
――エルフさんみたいな優しい人、めったにいません。みんなみんな、自分のことしか考えてません。私だってそうです。みんな自分のことに精一杯で、他人なんてどうでもいいんです。そう思ってたから、続けてこれたのに……。
こんな優しい人がいて、私なんかを大事にしてくれて、どうしてその人に酷いことができるんですか!“あの人”は馬鹿です!自分で幸せを捨てた、救いようのない馬鹿です!そんな人をまだ好きなあなたも大馬鹿野郎です!
――……
――エルフさんは、最初に来たとき言いましたよね。“あの人”の代わりになって欲しいって。私、エルフさんが大好きです。裏切るなんて考えたくもありません。エルフさんのためなら何だってします。殺されたって構いません。
……もう、こんな所、嫌なんです!あたしをさらってください!あたしの体と心は、全てあなたのものです!エルフさんだけのものになりたいんです!“あの人”みたいにしてもらえるような……。
迷惑なら殺してください!エルフさんと一緒にいられなかったら、もう生きていけません!
144 :
使用人:2010/11/03(水) 06:06:48 ID:MNgYef9r
「ああん!」
亀頭を秘唇にこすり付けただけで、フェルパーは甲高い声を上げて顎をのけ反らし、体をびくびくと震わせた。
「よほど飢えていたと見える。あまり早く果てるなよ」
「は、早くぅ!旦那様ぁ!」
あくまで余裕に構える主人に対して、フェルパーは息を切らしながら狂おしい声でねだっている。命乞いをするような必死な眼差しで見上げながら、腰をがくがくと主人のものに擦り付けてくる。
「あまり急かさないでくれ。そう何度もできる歳じゃないんだ」
エルフは左手で少女の震える体をなだめるように押さえ、右手で自分のものを秘唇にあてがい、速くなり過ぎないように挿し込んでいった。
すると、左右に開かれたフェルパーの足が急に動いた。伸ばされた長い足はエルフの腰に引っ掛けられ、彼女の体を一気にエルフへ引き寄せた。それによってエルフのものは急速にフェルパーの奥へ突き入れられた。
「うぐあっ……」
「にゃぁっ!」
二人が同時に呻いた。主人は苦しげに。少女は嬉しげに。
「はぁ、はぁ、すぅ……はぁ……。ああ、旦那様……」
フェルパーの顔と声は至福に満ちていた。望んで止まなかったものをようやく手に入れたといわんばかりに。
エルフは苦しげな息をついた。急に引き寄せられた彼の屹立は、膣壁とその襞に物欲しげに撫で上げられ、容赦なく締め付けられていた。
「く……、フェルパー、あまり激しくするな。私は若くない。何度も出せん」
「旦那様ぁ、いっぱい、はぁ……、いっぱい、してぇ……」
半開きになったままのフェルパーの目と口は、自身の体温で溶けたかのように締りがなくなっている。声からも人間らしい理性が感じられない。
今の彼女は、強引にでも甘えてねだりむしり取る、貪欲な猫でしかなかった。
「はぁ……、無茶をさせるな。身がもたんではないか」
「ごめんなさいぃ……、はぁ……、おしおきしてぇ……、私の、いっぱい、ずぼずぼしてぇ……、はぁ……、ぐちゃぐちゃにしてぇ、壊してぇ……」
もう何も聞こえていないも同然のようだ。今夜は腹を括ろう。エルフは観念して、フェルパーの両腿を掴んで腰を前後させ始めた。
亀頭の根元のくびれがまとわりつく膣壁をこすり、少女の口から甘ったるい悦びの声が上がる。亀頭のくびれが抜けそうなところまで引き、再び押し込む。
するとそれにタイミングを合わせるように、フェルパーが腰を挟みこんだ足を引き寄せた。互いに前進しあうことで亀頭の先端と膣の奥が強く衝突し、その衝撃が背骨を突き抜けて脳髄に強い刺激を与える。低い呻きと高い叫びがほとんど同時に上がった。
そんなことを繰り返す。その動きは徐々に速まっていく。
「はうぅっ!……はぁ、旦那、様ぁ、ああっ……」
「ぐっ、うう……、はぁ……。フ、フェルパー、はぁ……、き、気持ち、いいか?」
「すごく、いいです……、ああんっ!だ、旦那様ぁ、もっとぉ、あっ!もっと、してぇ!」
エルフのものがフェルパーの中を擦るたびに、溢れ続ける体液がグチュッと音を立てる。結合部が普段なら到底耐えられないような温度に火照り、動くたびに二人の汗が飛び散る。
フェルパーは布団の両端を握り締めながら、エルフの腰を挟んだ足で自分の体を前後、というより上下に揺さぶるようにしている。奥と先端ががぶつかり合うと、甘い叫びと共に彼女の全身が大きく跳ね、汗に濡れて怪しい光沢を放つ乳房がぶるんと大きく揺れた。
突き入れられた屹立が引き返すと、まとわりついた粘っこい愛液がどろりとこぼれ落ちる。再び突き入れられて少女の体が跳ねると、汗や愛液で濡れた布団の上で尻尾が蛇のようにのたうった。
145 :
使用人:2010/11/03(水) 06:09:29 ID:MNgYef9r
――旦那様、どうして行商に連れてってくれないんですか。
――何度も言っている。危険だからだ。
――私の命はあの時旦那様に渡したも同然です。私が死んででも、旦那様には生きていて欲しいんです。私の見えないところで殺されたりなんてして欲しくありません。
――だからそんな修練をしているのか。
――はい。私が強くなれば、用心棒として連れていってくれますか。
――お前が待っていてくれるから、私は余計な危険を冒さずに帰ってこようとするんだ。ここで家の面倒を見てくれているだけで、お前は私の命を救っているのだぞ。
――私はそんな気になれません!もっと分かりやすい形で役に立ちたいんです!それに、こうして鍛えてれば良い体を長く保てると思いますけど?鍛え方によってはもっとやらしくなれるかもしれませんね。
エルフはフェルパーの足を離そうとした。が、腰をがっちりと挟みこんで体を揺さぶり続ける足は頑として離れようとしない。
「く、フェルパー、あ、足を……」
エルフとしては中で出したくはなかった。今まで彼女の中に出したのは数えるほどだ。しかしそろそろ限界だ。
「だめぇ!出してぇ!いっぱい、いっぱい、くださいぃ!」
フェルパーは足を離すどころか、エルフの腰に絡めてきた。さらに腹筋で急に起き上がり、エルフにひしと抱きついた。
そして手足で主人の体を締め付けながら、上下運動を再開した。跳ね上げた腰が落ちるたびに、彼女の奥がグチュリと音を立てて深々と突き上げられる。
「んぬうっ……、い、今、孕むのは、まずいだろう。んっ、か、仮にも、学生、なんだぞ」
「あううっ!だ、大丈夫、今日は、大丈夫、ですからぁ、ふにゃぁっ!ああ、深いぃ……」
フェルパーの力は随分強い。引き剥がすのは無理そうだった。エルフは観念し、左手でフェルパーの背中を抱き寄せ、右手で尻尾の根元を掴んだ。
「にゃうっ!」
彼女の体がびくりと震え、跳ねる動きが止まった。エルフはさらに、ぴんとたった彼女の耳を口にくわえた。
「はん!だめぇ!あっ!そこは、だめなのぉ!」
エルフはフェルパーの悲鳴に近い嬌声にも構わず、尻尾の根元を五本の指で弄ぶように撫で始めた。
「言うことを聞かない子には、おしおきだ」
指たちが尻尾をつまんで弄びながら、撫でるようにその先端へと動いていく。
「ああっ、やだぁ!イっちゃうぅ!あっ、どうか、なっちゃうぅ!」
上下運動がなくなった代わりに、フェルパーの体は仰け反ってびくんびくんと痙攣したように震えていた。強く押し付けられた乳房の振動がエルフの胸にも直接伝わり、破裂しそうなほどの速さで脈打つ両者の心臓の音が混然となって脳に直接響いてくる。
断続的な振動はフェルパーの奥深くに突き刺さったものも刺激した。ただでさえ膣が貪欲に引き寄せ容赦なく圧迫するのに加えてである。いよいよ堪えきれず、膨張しきったと思われたものがさらに膨れ上がった。
「逝ってしまえ……」
エルフは呻き、くわえた耳に歯を立てた。突き刺さり膨れ上がったペニスが少女の中でびくんと跳ねた。
「あぁぁぁぁっ!あ、熱いぃぃっ!だ、旦那様!旦那様ぁ〜〜!」
「ん、あ、あぁぁ……、フェルパー……、私のフェルパー……」
主人と使用人はあらん限りの力で身を寄せ合い、、意識を崩壊させんばかりの快楽に溺れきっていた。
鉛のような気だるい余韻に浸りながら、フェルパーは夢現の間をさまよっていた。
そんな召使の汗にまみれた体を、主人は手早くタオルで拭いていた。いよいよ冷え込む秋の夜に汗だくなままで眠るのは危険だ。出来る限り早く拭くのは、この少女の猫じみた欲情を再燃させないためである。
体を拭き終えたら、用意しておいた別の浴衣を着せる。そしてあらかじめ敷いておいた濡れていない布団に寝かせる。濡れた布団のシーツをはがし、二着の濡れた浴衣同様畳んで置いておく。
エルフ自身は既に汗を拭き取り、着替えも済ませてある。最後に残った布団は窓の外の金属製の柵に干しておく。こうして流れるように事後処理は終わった。
エルフは布団に入る前にフェルパーの顔を覗き込んだ。何者にも負けない力をつけて主人に騎士の誓いを立てると豪語した少女は、心地良さそうな憔悴をその顔に漂わせ、安らかな寝息を立てている。エルフはその額に軽く接吻し、起こさないように声をかけた。
「よくお休み。私の可愛い騎士。良い夢をな」
146 :
使用人:2010/11/03(水) 06:26:32 ID:MNgYef9r
投下完了。まずは謝らなければ…。
9回で区切るつもりでしたが、一行や一区切りが長すぎて修正することになり、、このような無様なことになってしまいました。
この失敗を肝に銘じ、以後気をつけます。
>>75 何度も読み返したくなる軽妙さ…。いや、本当に何度も読んでしまいましたよ。
基本笑えるノリなのに妙にエロい…。GJ!
>>91 また長編を一つ始めるようですね。あなたの諸作品はあらかた読みました。
あんなに沢山のキャラを一度に出して、全く破綻せず動かせるなんて…。しかもそれぞれのキャラが見事に立ってる…。
到底かなう気がしません。GJ!我らがグレートマイスターよ!
147 :
110:2010/11/03(水) 16:06:10 ID:wZmR4MXU
投下した絵が好評のようで嬉しい限りです。リクエストまで頂いてしまって。
ということで今度はリクエスト通り、
リリィ「あの、あのご主人様…」
カーチャ「今夜はどちらからお召し上がりになりますか・・・?」
「カーチャ先生とリリィ先生のイケナイ保健室〜どっちの校医ショー〜」
をどうぞ。
ttp://pic-loader.net/view/835doublekoui.html え。ネタが古い。すいまそん。でもこの2人相手にしたら服上死するまで搾られても
すぐ蘇生させられて無限コンボな気がするの。校医さんコワイ。
>>130様魔物図鑑にはそんなネタがあったのか・・・!チェックを面倒くさがって全然図鑑埋めてない・・・!
ノム子さんってば鬼畜さん。いいぞもっとやれ。
>>133様
濃厚なえろーす!こんな可愛いフェル子を放っておくなんてけしからん!
けしからんので続きお願いします。ムフン。
148 :
110:2010/11/03(水) 17:30:06 ID:wZmR4MXU
はっ。気がついたので追記です。リリィ先生にもうっかり首輪させちゃったのでヒュム男さん頑張ってリリィ先生も
攻略してください。(・ω・)<ファイトオー
149 :
王女様の人:2010/11/03(水) 19:25:05 ID:fT8gKvCq
「2」の発売直後同様、軒並み充実してきましたね!
>127
乙です。いいぞもっとやれ、ヒュム男!
>132
やっぱりセラフィム・フィッシュって気になるよね、エロゲ的な意味で。
GJ!
>使用人
(;´Д⊂) よかったね、フェル子……
GJです!!
>147
女教師ダブルエロース、バンザーイ! 想像していたとおりの絵面、御馳走様です。
そういや、確かに両方ともドクタースキル持ちだ。むしろ女医さんズと言うべきかも。
力作のあとでいささかアレですが、勢いに任せて投下させていただきます。
150 :
王女様と私:2010/11/03(水) 19:26:03 ID:fT8gKvCq
「よぅ、どうだった、エル?」
「その浮かない表情からすると、もしかしてダメだったのかしら?」
寮の自分の部屋では、兄貴分&姉代わりがエルファリアの帰りを待っていてくれた。
もっとも、ヒューの方は元々同室のルームメイトだし、アップルも恋人である彼と一緒にいただけかもしれないが。
「ううん、一応、ボクの気持ちは受け入れてもらえたんだけど……」
ただし、少々厄介な条件がついていたのだが。
この際なので、エルファリアは、ふたりにも相談してみることにした。
「4人目のメンバーとして、キルシュトルテ様のパーティーに入れ……ですか」
「ふむ……少々ワガママだが、その条件自体は、まぁ納得できないでもないかな」
恋人同士であるヒューとアップルとしても、時には命の掛かった冒険行で愛する人が身近にいることの幸せは常々感じている。「恋人(候補)にそばにいて欲しい」という気持ち自体には理解できた。
そう言わせるほど弟分が相手に思われているなら、むしろ歓迎するべき事態だろう。
「そして、冒険に関する事項は、パーティーリーダーたる王女の言う事に従うこと、か。ワンマンなあのお姫様らしい言い草だよな」
「でも、意見を言うことはできるのでしょう?」
「う、うん、一応……」
告白時のキルシュトルテの言い草を思い出して、口籠るエル。
「ただし、わらわのパーティーに入った以上は、冒険に関するいっさいの事柄はわらわの方針に従ってもらうぞ。
相応の理由があるなら、意見くらいは聞いてやらんでもないが、それでも最終的に判断を下すのはわらわじゃ。そのことを肝に銘じておくようにな」
(それって「異論は受け付けない」のとほぼ同義じゃないのかなぁ……)
と思いつつ、幼馴染ふたりを心配させないために、詳しくは説明しない。
「じゃあ、そっちはいいとして、ふたつ目の条件てのは何なんだよ?」
ヒューレットの問いに、目に見えてエルファリアはモジモジし始める。
「? どうした?」
「もしかして、大きな声では言いにくいことなのかしら?」
「……うん。実は……」
アップルタルトの助け舟に乗って、彼女の耳元でヒソヒソと囁く。
「えーーっ、キルシュトルテ様の前では女装しろ!?」
──もっとも、やや天然なアップルが、素っ頓狂な声をあげたため、その心遣いも無駄になってしまったが。
151 :
王女様と私:2010/11/03(水) 19:26:46 ID:fT8gKvCq
「クックックッ……あの王女が男嫌いという噂はあったが、まさかソチラのケがあったとはな」
「うぷぷ……確かにそれなら、エルっちに「女装しろ」って命じるのも道理よね」
「フフッ……でも、よいではありマセんか。幸いエルファリアさんは中性的、いえ、どちらかと言えば女顔な少年です。これまで女性用装備もそれなり以上に似合ってマシたし」
あのあと、他のパーティーメンバーも集めて協議することとなったのだが、マイクロフトたちの反応は、以上のようなモノだった。
「三人ともヒドいや〜! ボク、本気で悩んでるのにィ」
と、半ベソをかくエルファリア。
一方、幼馴染ーズのカップルふたりは対照的に真面目な顔で考え込んでいる。
「エル……少し考えてみたんだがな」
珍しくシリアスな顔つきで彼の両肩に手を置くヒューレット。
「うぅっ……ヒュー兄ィ」
それほど自分のことを心配してくれるのかと、ちょっと感動するエル。
「お前が今さら女装するかどうかで悩むなんて、ハッキリ言って無意味だ」
「えっ!?」
「だって、そうだろう? さっきメグも言ってたが、この学校入ってから冒険実習時に着ていたお前の防具のコト考えてみろよ」
一番長く愛用していたのは貴婦人の衣装+5(HP増加機能付き)だが、それ以後も……。
・ブルーインナー+1
→水色のタンクトップ&ボクサーショーツ。手足はほぼ剥き出し。
・着物+4
→ピンクの花柄で明らかに女物の浴衣。帯は着付けの出来るアップルが蝶結びにしてくれてた。
・魔女っ子ローブ+4(MP増加付)
→膝がギリギリ隠れる丈のローブ……というよりワンピース? 魔女っ子ぼうしとセットで。
・千早+2(回避増加付)
→現在の装備。いわゆる巫女さんの正装。袖が長いのになぜか邪魔にならない。
「──い、言われてみれば……ボクの冒険時装備って、もしかして大抵女物!?」
「そもそも狩人のお前に後衛女性陣のお古が回ってくるのも仕方ないだろ」
「そ、それは……そうだけど」
「それに、お前だって別段に気にしてなかったじゃないか」
そう言われるとグゥの音も出ない。
「ううっ、ボクってもしかして、とっくに変態さんだったの?」
ガックリと肩を落とすエルファリア。
152 :
王女様と私:2010/11/03(水) 19:27:12 ID:fT8gKvCq
「まぁまぁ、ヒューくんも、あまりエルちゃんを追い詰めないで。ね?」
orzな姿勢で落ち込むエルを見かねたのか、アップルタルトがなだめる。
「アップル姉ぇ……」
半ベソをかいてるエルの頭をアップルがよしよしと撫でる。
「済んだことより、これからのことを考えましょ。
キルシュトルテ様には、パーティーに参加する気があれば、特別棟に引っ越すよう言われているのでしょう?」
「うん……通行証も、もうもらってるし」
ドラッケン学園の学生寮は、男子棟と女子棟に別れているが、そのどちらにも属さないのが、特別棟だ。
本来は学園に訪問してきたVIPのゲストルームとして使われるべき場所なのだが、キルシュトルテ一行(と言っても3人)は、昨年の入学以来、「王女の保安」を理由に、ここを占拠して使っている(もちろん、学園側の許可は得ている)。
「そして、エルちゃんは姫様のおそばにいたいんですよね?」
いつもはニコやかな笑みを絶やさない姉代わりの少女が、真剣な瞳をしてエルの顔を覗きこんでいた。
「──うん。確かにみんなが言うような欠点もある女性だけど、ボク、できればそばで支えてあげたいんだ」
多少の気遅れや躊躇いを振り払い、はっはりそう告げるエルファリアは、小柄で女顔ながら、その瞬間、確かに「男の子」に見えた。
「そう。だったら、自分のやるべきコトは何かわかるんじゃないかしら」
「うんっ!」
パアッと晴れやかな表情になって力強く頷くエル。
「子供だとばかり思ってたけど、エルちゃんも大きくなったんですね。
──それじゃあ、皆さん、今夜はエルちゃんの送別会ということで、よろしいですか?」
幼馴染の弟分を一度だけギュッと抱き締めると、アップルは明るい声でパーティーの面々に尋ねる。
「おぅ! じゃじゃ馬王女のお相手は大変だろうが、頑張れよ、エル!」
「──かげながら、応援してマス」
「うむ。惚れた女性を護り抜くのも男子の本懐。その初心忘れんようにな」
「あ、コッチのことは気にしないでいいよン。今ちょうどダーリンがフリーだからに、ウチに入ってもらうから。エルっちが抜けても戦力ダウンはしないはずだしね!」
なんだかんだ言って自分のことを思い、暖かく送り出してくれる仲間の温情に、感激屋のエルファリアは、早くも目がウルウルになっていたのだ──その時は。
153 :
王女様と私:2010/11/03(水) 19:28:11 ID:fT8gKvCq
翌朝早く、自室の荷物をアップルからもらった大きめのトランクに詰め込み、いざ思い人の待つ特別棟へ赴かん! と気合を入れていたエルファリアだったが、まさにそのタイミングでドアがノックされた。
「? どなたですか?」
「アップルです。エルちゃん、開けてもらえるかしら?」
「あ、うん」
相手が姉代わりの少女なら否やはない。同室のヒューレットは彼女の恋人なのだし、別に部屋を見られて困るということもないだろう。
「……もしかして、エルちゃん、そのまま出るつもりだったでしょう?」
部屋に入って来るなりアップルタルトにメッと指を突きつけられて、エルファリアは気まずそうに視線を逸らした。
「う……だって、なんだかわざわざ挨拶するのもヘンな感じだし。そもそも部屋が変わるだけで、これからも同じ学園には通ってるんだし……」
と、言いつつ、実は自分の涙腺が一番心配だったからなのだが。
ところが、アップルは緩やかに首を横に振った。
「いいえ、そうではなくて、「その格好」で行くつもりなのかって聞いたのですよ」
「??」
どういう意味だろう? キルシュトルテの「女装して来い」という指示どおり、現在冒険時に愛用している千早姿に、サークレット(と言うより前天冠?)を着け、足袋を履いている。
タカチホ辺りの学生が見たら、エルの学科は完全に「巫女」だと勘違いするだろう。
「それはそれで可愛いですけど……」
と困ったようにアップルは口ごもる。
「ニシシシ……お姫様から、エルっちの嫁入り衣裳が届いてるんだよん」
「あ、ブリギッタ、それにメグさんも」
「──おはようございマス、エルファリアさん」
人の悪い笑みを浮かべているフェアリー娘と、いつも同様無表情だが、ほんの僅かに頬が紅潮しているように見えるノーム娘が入って来たことに戸惑うエル。
ブリギッタの言う通り、メグが何やら白い衣装ケースのようなものを抱えていた。
「えっと、コレって……?」
タラリとひと筋の冷や汗を流しながらアップルの方を振り返る。
「昨晩の送別会のあと、わたくしの方からキルシュトルテ様に「エルちゃんをよろしく」ってご挨拶に行ったのですけど……」
右掌を頬に当てて首を傾げるアップルタルト。
「キルシュトルテ様は、すこぶる上機嫌になられて、わたくしにその服を渡されたんです。エルちゃんに着て来なさいって意味だと思いますわ」
まさかウェディングドレスでも入ってるのでは……と危惧しつつ、衣裳ケースを開けたエルファリアだったが、幸いにしてその悪い予想は外れた。
154 :
王女様と私:2010/11/03(水) 19:29:00 ID:fT8gKvCq
「コレって……プリシアナ学院の制服!?」
その斬新な教育方針から、他の古手の2校からは「イロモノ」扱いされることも多々あるプリシアナ学院だが、少なくともオシャレな制服については他校も含めて定評がある。
問題は──その学院制服が女子用であることくらいか?
(だ、だいじょうぶ! このくらいは覚悟の範囲内だよ。大体、恥ずかしさからしたら、フリフリヒラヒラ度の高い貴婦人の衣装のほうが上だし)
クラシカルなパーティドレスと言ってもよい「貴婦人衣装」に慣れてるんだから、コレくらい……と思ったエルファリアは、しかしながらまだ甘かった。
着ている和装を脱ぎ捨てて、まずはブラウスに袖を通そうとしたエルに、アップルが待ったをかける。
「エルちゃん、制服以外もキチンと着替えないといけませんわよ」
「え?」
ニコやかに微笑む姉貴分が手にしているモノ。その正体をエルは理解できなかった──いや、理解してはいたが、理性が認めることを拒んでいたのだ。
──それが、純白のショーツとブラジャー、スリップという女物の下着一式だとは。
「ささっ、あんまり時間もないことだし、パパッとマッパになっちゃいなよ、エルっち」
彼の葛藤を微塵も一顧だにせず、カル〜い口調で促すブリギッタ。
「──仕方ありマセんね。私たちで着替えさせマシょう」
それでも動かないエルに痺れを切らしたのか、珍しくメグが強行手段に出る。
「わーーーーッ! ちょ、タンマぁ!!」
3人の少女に迫られて、ようやく再起動したエルファリアが、悲鳴を上げる。
「……ンだよぉ、ウルセぇぞ、エル。まだこんな時間じゃねーか」
と、ちょうどその時、隣のベッドでグースカ寝ていたヒューレットが寝ぼけまなこをこすりつつ、目を覚ます。
天の助けか、と一瞬期待したエルだったが……。
「ごめんなさい、ヒューくん。今からエルちゃんのお着替えタイムなので、しばらく席を外してもらえないでしょうか?」
「んー、りょーかい。食堂でお茶でも飲んでる」
頼りの兄貴分は、恋人に優しく言いきかされてアッサリ部屋を出ていってしまう。
パタン! とドアの閉まる音が、エルには猛獣を捕える檻が閉じる音のようにも聞こえた。
「では、エルちゃん……」
「──覚悟はよろしいデスか?」
「ま、覚悟できてなくてもひん剥くけどさ!」
その直後、早朝の学生寮に、絹を裂くような悲鳴が響くのを聞いたという学生も数名いたが、真偽のほどは確かではない。
-つづく-
155 :
王女様と私:2010/11/03(水) 19:29:35 ID:fT8gKvCq
以上。とりあえず、ここでいったん切ります。「エルきゅん、初めての(したぎ)」の巻でした。
Hまでイケなかったなぁ。
次回こそ、王女様の前で恥じらいつつ、言葉責めによる辱め(&お触り)シーンの描写を実現します。
(あまりにニッチ過ぎてドン引きされてなければいいのですが)
>>155 よくやってくだされた。
このGJは、私の心ばかりだ。
続きもきたいしておりまするー
>>146 エロスwwwそして2828している自分の顔を見るのが恐ろしいですwGJですた!
>>147 性格ミスマッチな天使と悪魔のW女体盛ですね、実に美味しそうです。
……っと、いかん、ヒュマ男に殺意沸き始めてる俺がきめえw
>>155 GJ! 男の娘をイジメる美少女とか何と言う俺得w 続きを気長な姿勢にてお待ちしております。
……俺も頑張らないとナ
従順なメイド・クラディウスが、ベッドの上ではケダモノ(ビースト)に・・・
という電波がどこからともなく届いた。
>>155 GJ
ちょっと失礼。
最近になってととモノに触れ、このスレと保管庫の素晴らしい作品に心打たれたものなんだが……
エロが入らない(入れられないorz)作品って何処かに揚げられる場所って無いだろうか。
なんか、ちゃんと二次創作やってるのってここしか見つからなかったんだorz
スレちなのは承知だが、どなたか迷子を導いてくださいお願いします(´;ω;`)
無いなら作るしかないんじゃない
携帯ゲーキャラに萌えスレがあったな
そこで聞いてみれば?
162 :
1:2010/11/04(木) 15:51:50 ID:H2OPMU/C
最近の投下ラッシュに便乗してみる。
読む上での注意。
・フェルパーが二人になってしまったので名前をつけた。
二人だけだとおかしいので全キャラにつけた。
そのへん嫌な人は脳内変換かスルー推奨。
・甘々な純愛。こっぱずかしくて読んでられるかって人は読み飛ばしおk。
以下キャラ名、学科。
ミリ:フェルパー♀ ダンサー/ツンデレ
ミケ:フェルパー♀ ビースト/ジャーナリスト
リオ:ドワーフ♀ 狂戦士/狩人
アルト:クラッズ♂ 盗賊/狩人
アリア:ディアボロス♀ まにまに/予報士
ジークリンデ:セレスティア♀ 光術師/アイドル
では、投下開始。
これは、プリシアナ学園のあるパーティのお話。
大魔道士アガシオンと大魔王アゴラモートを倒し、平和な学園生活が戻ってから早数ヶ月。
世界を救った立役者であるフェルパー、ミリがリーダーのパーティは退屈していた。
彼女らは、モーディアル学園に隠された洞窟に長期にわたって滞在していたために、その実力は他の生徒とは一線を画している。
新入生からは憧れと尊敬のまなざしで見られるが、中には畏怖するものもいる。
彼女らの力が強大すぎるのだ。
学校の授業で使うような模擬ダンジョンではもはや彼女らを止められるものはなく、常に成績はトップを独走していた。
そのために同級生からは嫉妬されることも多々ある。
いかに世界を救った英雄とはいえ、力の差が歴然としているからだ。
「ふにゃぁぁぁ…」
今もそんな授業の最中なのだが、全く緊張感がない。
大きなあくびをして退屈そうにしているフェルパーに、クラッズの男子が声をかける。
同じパーティのアルトだ。
「ずいぶん大きいあくびだね」
「だって退屈にゃ…ふぁぁ」
再びあくびをするフェルパー、ミケにミリが言う。
「気持ちはわかるけど。もうちょっとしゃきっとしなさいよ」
「はぁ。さっさと終わらせて、森羅で敵ボコりたいにゃ…」
ぶつぶつと言うミケに今度はドワーフの女子が言った。
「ほらミケ。もうすぐ授業終わるし、放課後つきあったげるから、頑張ろ?」
彼女はリオ。ミケと共にパーティの前衛を務めている。
身の丈ほどもある大斧を片手で振り回し、必殺の超・鬼神斬りは想像を絶する威力を持つ。
その後ろから歩いてくる2人の魔術師も、どこかやる気がなさそうにしている。
「ミケの言うこともわからんでもないな…最近の授業は退屈すぎる」
ディアボロスのアリア。元々闇術師だったが、とある洞窟の最深部にいる強大なモンスターを倒してからは
絶大な力を手に入れ、今やプリシアナ学園最強の魔術師である。
「仕方ありませんわ。力の制御も修練のうち。わたくしたちが思い切り力を振るう機会なんて、そうそうありませんもの」
上品な口調のセレスティアはジークリンデという。
光術と歌を得意とし、支援と回復を役割としている。
そんなことを話しているうちに、授業の課題であるボスモンスターの元へ到着したようだ。
それを見るなりミケが飛びだし、たちまち拳でボコボコにしてしまった。
そんな様子を見てミリは溜め息まじりに言う。
「あーあ。かわいそう…」
他のメンバーたちも呆れたような表情をしながら、模擬ダンジョンを脱出した。
1日の授業を終え、寮に戻るミリたち。
授業が終われば生徒たちは基本的に自由である。
学園内での戦闘、魔法の詠唱などは禁じられているものの、それ以外は特に制限されていない。
就寝時間までに寮に戻ることは原則とされているが、洞窟探検などで寮を離れる場合は届け出をすれば許可される。
プリシアナはその自由な校風が生徒の人気を呼び、入学希望者が後を絶たない。
その影響で入学歓迎会が毎週のように開かれ、アマリリスが美声を披露している。
ブーゲンビリアはまだ修業中らしい。
そうした平和な学園生活も、ミリたちにとっては退屈でしかなかった。
あり余る力をどこにぶつけていいか分からず、毎日のように洞窟に入り、わけもなくモンスターを討伐する日々。
今日も退屈な一日が終わろうとしていた。
そんなある日のこと。
授業を終え、いつものようにモーディアル学園の洞窟を目指していたミリたち。
洞窟の入り口に到着したところで、仲間たちは気づいた。
ミリの様子がいつもと違う。
顔が紅潮し、息づかいが荒い。
彼女に大丈夫かと問いかけても、必要なら帰還するかと言っても「大丈夫、何でもない」の一点張り。
どう見ても大丈夫ではないのだが、本人がこの様子ではどうしようもない。
仕方なく洞窟に進入していくミリたち。
平然を装って鞭を振るう彼女だが、やはり動きが鈍い。
こまめに仲間たちがフォローし、なんとかモンスターを撃破していった。
しばらく洞窟を進んだところで、ミリに異変が起きる。
突然地面に倒れこんでしまったのだ。
心配した仲間たちが駆け寄って来る。
「ミリさん? 大丈夫ですの?」
「やはり体調がよくなかったのか」
「どうしたの、ミリ?」
その中で同じフェルパーのミケだけが彼女の異変に気づいていた。
「…発情期だにゃ」
「発情期!?」
それに驚いたアルトがひときわ大きな声を上げる。
「…バカ。そんな大声出さないでよ…」
ミケに手を借りてどうにか立ちあがり、ミリがか細い声で彼に言った。
フェルパーやドワーフ達は、種族特有の特徴として、一定期間発情期を迎える。
いつ来るかは個体差があり、ミリのように突然来る者もいれば兆候が表れてから来る者もいる。
一度来てしまうとしばらくは発情が収まらず、大抵は自慰か親しい異性に頼んで静めてもらうのだ。
「言ってくれれば連れてこなかったのに…」
発情期の辛さを知っているリオが、沈痛な面持ちで言った。
「言えるわけ、ないでしょ…恥ずかしいじゃない」
それにやはりか細い声で彼女に反論する。
「ふむ。ここはアルトに連れて帰ってもらうしかないな」
「そうですわね。あなたたちは先に帰った方がいいですわ」
アリアとジークリンデがそう勧めると、アルトが顔を真っ赤にする。
「え?え!?」
そんな彼をよそに、アリアが帰還札と飛竜召喚カードを取り出して彼らに手渡す。
「それじゃアルト、あとは頼んだぞ」
「ま、頑張りなさいな。死なない程度に、ね?」
二人に茶化され、恥ずかしさのあまりアルトは先に帰還札を発動させてしまう。
ミリも二人を睨みながら、帰還札で戻っていった。
モーディアル学園に帰還した二人は、飛竜召喚カードでプリシアナ学園に戻っていった。
アルトはミリを背中に担いで、急いで学生寮に向かった。
自分たちの部屋に入ると、ミリは自分で彼の背から降りる。
「ミリ、だいじょ…うわっ!?」
見れば彼女はいきなり服を脱ぎだし、下着に手をかけているところであった。
「え、ちょ、いきなり?こ、心の準備が…」
「ごめ…もう、我慢…できな…っ!」
掠れた声でそう言うと、下着を取り去り生まれたままの姿になる。
彼女の美しい肢体に見惚れる暇もなく、アルトは強引に手を引かれ、ベッドに押し倒されてしまった。
荒い息づかいと上気した顔が、すぐ目の前に迫ってくる。
ミリはアルトの服にも手をかけ、めくりあげて脱がそうとした。
しかし、さすがに恥ずかしかったのか、それとも男のプライドがあるのか、服は自分で脱いだ。
密かに彼女に想いを寄せていたアルトからしてみれば、この状況は望むところである。
だが、発情に乗じて、というのは卑怯である気がして、あまりこの状況を喜んでいないのも事実。
複雑な心境で改めてベッドに横たわると、彼女はのしかかるように身体をくっつけてくる。
彼女の身体はかなり火照っていて、何かの病にでも侵されたかと思うほどだった。
ミリの両手が自分の顔に添えられたかと思うと、すぐに口づけてきた。
「……!!」
ファーストキスの味は想像していたような甘いものではなく、ただただ熱かった。
そしてすぐ舌を差し入れられる。
フェルパー特有のざらついた舌が彼の口内を蹂躙する。
唾液で幾分濡れていたものの、そのざらつきは痛みを感じさせるのには十分だった。
「…ッ!」
常の彼女であれば、もしこういう機会があったとしても、配慮していたであろう。
だが、発情して我を失っている彼女にそれを望むのは無理な相談であった。
嵐のような口づけが終わると、今度はアルトの手で自慰をするように自らの乳房を揉み始めた。
小ぶりではあるが張りがあり、揉むとしっかりとした弾力がある。
(されるばっかりじゃない、こっちからもしないと…)
彼としてはいささか不本意だが、彼女を悦ばせたいと思い、自ら手を動かす。
それを感じたのか、ミリはアルトの手を離し、彼の手に任せた。
最初はゆっくりと優しくし、徐々に揉む力を強めていく。
「んっ…ぁ…はぁ…あん…」
荒い吐息だけだったミリが、甘い声をあげる。
アルトはそれに気を良くし、胸の先端を親指と人差し指で摘んでコリコリと弄ぶ。
「んぁっ!」
すると彼女の声が甲高くなった。どうやらここが弱いらしい。
すでに硬く勃起したそこは、綺麗な桜色をしていて、とても美しく見えた。
アルトは続けて指で弄び、片方を口に含んだ。
「あぁんっ!んぁっ…は…ふぁぁ…」
彼の手から口から送られてくる快感を味わいつつ、ミリは彼の顔を抱きしめた。
思い切り抱きしめられてアルトは驚いたものの、もっとして、という合図だと思い、彼は舌を乱暴に動かす。
先ほどのキスでされたように。
「あっ、あぁっ、あ…あっ、はぁあっ…」
それに応えるようにミリは細かく身体を震わせて、上げる嬌声も細かくなる。
ひとしきり舐めしゃぶったあと、ミリの腕の力が抜けているのを確認して、彼は顔を離した。
アルトもすっかり興奮してしまったのか、顔を紅潮させている。
熱に浮かされたように、しかしはっきりと彼は言い放った。
「ミリ、僕でいいなら好きなだけ使って。発情した時だけなんて言わない。
好きな時に、好きなだけ…」
彼女が望むなら、死ぬまでしてもかまわないというほどの覚悟で。
それに対してミリは反応を見せなかったが、彼にはわずかに微笑んだように見えた。
ミリはアルトの下腹部に手をかけ、ズボンとパンツをあっという間に脱がしてしまう。
そして硬く膨れ上がった肉棒を握り、先端を舐めあげる。
「…くッ!」
舌のざらつきとぬめりが同時に襲いかかってきて、言い知れぬ感覚に呻いてしまうアルト。
なぜかキスの時より痛みは感じなかったが、それは快感のせいだと彼は思っていた。
一方のミリは、彼の肉棒を見て目をとろんとさせて、恍惚した表情を浮かべている。
キスの時とは真逆に、ゆっくりと丁寧に、彼のモノを味わった。
「んは…ん…ぺろ…んむ…ちゅ…はぁ…はむ…ちゅぷ…」
「うぅっ…く…うぁあ…ッ!」
痛いほど膨れ上がっていたアルトのモノは痛みすら快感に変え、味わったことのない快楽に喘ぐ。
ミリは舐めていた先端をぱくりと咥えて、上目づかいに彼を見つめながら口を動かした。
(……!!)
その様子がなんとも扇情的で、アルトはかつてないほどに興奮する。
発情しているとはいえ、想いを寄せていた女性が、自らのモノを咥えて奉仕している。
夢のような光景だった。
しかしこれは夢ではない。今目の前で起きている現実である。
ミリの舌の感触が、自らの鼓動が、熱い吐息が、そう認識させる。
「んっ…はぷ…ちゅむ…んふ…はぁ…あむ…」
愛おしそうにミリは彼のモノに奉仕を続ける。
しかし、経験のない彼には刺激が強すぎた。
すぐに限界が訪れてしまう。
「くぅっ…ミリ、ごめんっ、もう…ダメだっ…!」
それを知ってか知らずか、ミリは動きを速め、射精を促しているようだった
彼がそれに抗えるわけもなく、あっけなく達してしまう。
「うぁあッ……!!」
「……っ」
勢いよく彼女の口内に多量の精液を放つも、彼のモノはまだ萎えていない。
さすがにミリも一瞬たじろいだが、放たれた精液をなんとか飲み下した。
「…んんっ、こく……こく……」
「ミ、ミリ…その、ごめん…」
自分の不甲斐なさが申し訳なくなり、思わず謝ってしまう。
だが、ミリはそれに首を横に振って答える。
「…ふぅ。いいのよ。初めてだったんでしょ?」
「あれ、ミリ…収まってきた?」
さっきまで喋らなかった彼女が喋ったので、アルトは驚いてしまった。
「ん…まだもう少し。最後まで…させて…」
「わかった」
ミリは彼の手を優しく引いて、自らの秘所にあてがった。
そこはもうかなり濡れていて、アルトはこれ以上する必要もないだろうと思っていた。
だが、ミリの言葉に衝撃を受ける。
「触って…ほしいの。舐めてほしい…ここ、熱くて…」
アルトは彼女をめちゃくちゃにしたい衝動に駆られるが、ぐっと堪えて優しくそこに触れる。
しっとりと濡れているのに確かに熱い。
薄い和毛もぺったりと側面にくっついてしまい、隠す役割を果たしていない。
指全体でゆっくりと擦るようにすると、ミリはぴくんと身体を震わせた。
「あぁっ…そこ…イイ…っ」
快楽に喘ぐ彼女の顔はとても艶めかしく、美しかった。
そんな彼女の顔をもっと見たくて、アルトは指を動かし続ける。あくまでも優しく。
「はぁ…はぁ…そこ…しびれて…ふぁあっ…」
ミリは一度態勢を変えて、秘所を彼の顔に押しつけるようにする。
苦しくならないように、上体は浮かせてあるが。
先ほどの希望どおり、アルトはそこを舐めまわした。
「にゃぁあっ…!あぁ…舌…きもちい…んぁっ!」
ぞくぞくとした快楽の波にミリは酔いしれる。
秘所はすでに唾液と愛液でべたべたになっていて、舌が這うたびにぴちゃぴちゃと淫靡な音を立てた。
ひとしきり舐めると、アルトは彼女に請う。
「ねぇ、ミリ…もう、いれたい…」
「うん…私も、ほしい…」
ミリは身体を彼の下腹部の真上に移動させ、モノを握って位置を確認すると、一息に突き入れた。
「………〜〜〜ッ!!」
どちらのものともしれない、声にならない声が木霊する。
アルトは何かを突き破ったような感覚があったような気がしたが、そんなことは気にしていられなかった。
先ほど口でした時の何倍の快感であろうか、というほどの快感が、一度に襲ってきた。
まだ挿入しただけだというのに。
ミリはまだ熱を帯びた身体を、快楽に委ねんがため、腰を動かし始めた。
「んあぁッ!にゃぁ…っ…はっ…ふにゃぁぁっ…!」
まるで子猫のような声をあげて、ミリは快楽に喘ぐ。
破瓜の痛みなどなかったかのように。
発情の熱が消してくれたのだ、と彼女は思い、行為に熱中した。
アルトも、自らのモノを包む言い知れぬ熱と快楽に酔いしれていた。
想像していたよりもずっと気持ちがいい。
できるなら、ずっとこの快楽を味わっていたい。
二人はそう思っていた。
つながった秘所からは、破瓜の血と愛液が混ざったものがぐちゅぐちゅという音が聞こえる。
それも心地の良いBGMになり、二人の感情を盛り上げていた。
「ひぁっ!あぅっ、ぅんっ!ふぁぁっ!にゃぁぁッ!」
「くぅぁっ…はぁっ…くッ!うぅッ…!」
嬌声とうめき声が部屋に響く。
知らず知らずお互いに腰を振り、その動きは不思議と調和し、加速していく。
「あぁあっ!はぁっ!アルトっ、アルトぉっ!」
「くっ!ミリっ…!」
互いの名を呼びあい、快楽を貪る。
絶頂に至るまで。
「アルトっ、なんかっ、くるっ!もう、ダメぇっ!」
「大丈夫っ、僕がっ、ついてるっ!」
アルトは汗や他の体液で濡れた手で、同じく濡れたミリの手をしっかりと握る。
その手に安心を得て、ミリは下腹部から襲いかかって来る未知の感覚に身を委ねた。
「ふぁっ、あぁぁぁッ……!!」
ミリの絶頂に伴い、膣内が激しく収縮すると、アルトもあえなく果ててしまう。
「うぁあっ……!!」
アルトの精液が迸って来るのを感じ、ミリは快楽にとろけきった声で呟く。
「あは…お腹、熱い…とけちゃいそう…」
絶頂の余韻の中、ミリは自らの身体の熱が去ったのを感じた。
アルトは自分が中で出してしまったことを今さらのように知って、またしても彼女に謝る。
「ご、ごめん!その…責任なら、取るから!」
「…大丈夫よ。今日は平気。明日だったら危険だったけど」
さらりと言って、ミリは後処理をしていた。
「…んんっ」
彼のモノを抜くと、ごぽりとさまざまな体液が混ざり合ったモノがこぼれおちてくる。
それがうっすらと赤みを帯びているのを見て、アルトは顔を青くする。
「…あれ、ひょっとしてミリって…初めて?」
「そ、そうよ。悪い?発情してたから、痛くなかったけど…」
「い、いや…僕なんかで、よかったの?」
「べ、別に、あんたじゃなくてもよかったけど、たまたま男があんたしかいなかっただけなんだから!」
プイっと顔をそむけるが、アルトは思わずくすっと笑ってしまった。
「な、なによ…」
「それでこそ、いつものミリだと思ってさ。さすがツンデレ学科を全単位取得してるだけある」
「ふんっ…あんなの、簡単よ。ツンとデレの使い分けだとか言ってたけど」
言いながら身支度を整えて、ミリはさっさとベッドに入ってしまった。
さっきまで、二人が交わっていたベッドに。
アルトも隣に行こうとすると、ミリが声を上げる。
「来ないで!」
「え?」
「…余韻にくらい浸らせなさいよ。気がきかないんだから…」
二人の匂いが充満したベッドで、幸せそうに眠るミリ。
「…はいはい」
アルトも身支度を整え、彼女の寝息が聞こえるまで彼女を見守っていた。
そんな彼らを、入口から見る人影が。
「ねぇミケ、撮れた?」
「ばっちりにゃ。あとで見せるから待つにゃ」
「他人の交尾を観賞とは、なかなかいい趣味をしているな、ミケ」
「全くですわ。趣味のわるいこと」
当の二人がこれに気づくのは、数日後のこと。
〜fin〜
171 :
1:2010/11/04(木) 16:01:56 ID:H2OPMU/C
ということで、フェルパーのコイゴコロ。をお届けしますた。
推敲はしたつもりだけどおかしいところあったらスマン。
また機会とネタがあったら書く。
>>160 最後の手段として視野に入れてた選択肢でしたorz
>>161 なるほど、ありがとうちょっと見てくるね
投下ラッシュというか、投下超・鬼神斬り?
とりあえず前回の続き投下します。ちなみにタイトルは特に考えてなかったけど、付けた方がいいのかな。
基本付けない人なので、あまりその辺は考えてなかったり。
今回のお相手はノーム。でも俺のいつものノームネタなので、本番はなし。
同じネタが多いけど、今回は特に譲れないのでご容赦を。
それでは、楽しんでいただければ幸いです。
それからの探索は、割と順調に進んだ。不意打ちの一件以来、各人がするべき動きを把握してきたらしく、これまでのように各々が
好き勝手に動くようなこともなくなってきた。
そうなってくると、元々が学園を代表する者達である。一行はあっという間に力を付け、さらに下層へと足を伸ばし始める。一つ階層が
変わるだけでも、敵の強さは格段に変わり、時には後衛であるノームやドワーフなどが攻撃を受けることもあった。
手強い相手の多い迷宮ではあるが、その分実入りは多い。彼等はしばらくトコヨに留まり、この迷宮の探索をすることに決めた。
数日経つ頃には、一行はかなり深くまで足を伸ばせるようになっていた。それは各自が力をつけたということもあるが、やはり連携が
取れてきたことが大きいのだろう。前衛も後衛も、動きのぎこちなさはだいぶ消えていた。
ほとんどが専門職である中、フェルパーは少し忙しい立場だった。炎術師ではあるが、ヒールも使え、またドワーフの行動が遅いことも
あって、本当に危ないときには彼が回復に回ることも多かった。また、格闘家の技能も持つため、敵が少ない、あるいは強敵の場合には
肉弾戦を挑み、群れが出れば魔法で一掃する。そのため、彼の魔力の残り具合が、探索のやめ時を示す指標代わりにされていた。
そんな彼に救われる機会が多かったのが、ノームである。元々生命力に劣る上、軽装である彼女は一撃が重傷となることが多かった。
その度に、フェルパーは真っ先にヒールを唱え、あるいは危険な敵を倒し、彼女を救っていた。
自身の危機を必ず救ってくれる彼に、ノームの態度はほんの僅かではあるが、変わり始めていた。以前のように辛辣な言葉を吐くことも
減り、彼を見る目もそれほど冷たいものではなくなっていた。
「なあなあ、フェルパー」
「ん?何だ?」
「お前さ、他の奴には仲良さそうにしてるのにさ、私だけ避けてないかぁ?」
「あ〜……うん。悪いけど、ちょっと君は苦手で…」
「どうしてぇー!?ぎゅってしてあげたりしてるのにーぃ!」
「いや……それが嫌なんだ、ほんと、何度も言ってるけど」
「ええー!?じゃあなでなでぐらいの方がいいのかな…」
「いや、だからそれもやめてくれってば。こうやって話すぐらいの距離感がちょうどいいんだ、自分には」
彼は嘘をつくことがなかった。というより、本人が苦手なのだろう。言い難いことでも、彼は必ずそれを相手に伝えた。
そんなところも、ノームがフェルパーへの態度を変えた理由の一つだった。口には出さなくとも、彼女がフェルパーに信頼感を抱き始めて
いることは、周りにも伝わり始めていた。
そんな、ある日のことだった。いつもの如く蹲踞御殿を探索し、モンスターと戦う。幾度かの戦いを経て多少の手傷を負い始めた頃、
彼等はサイスピアを含む群れと戦った。後列にも攻撃を仕掛けるこのモンスターは、非常に厄介な相手だった。当然、最初に狙うのは
この危険なモンスターなのだが、運悪くこちらの攻撃をかわされてしまい、初手で相手を仕留めることができなかった。
反撃とばかりに、敵の猛攻が始まった。
「あっ……く、うっ…」
真っ先にノームが狙われ、体勢の整っていなかった彼女は攻撃をまともに食らってしまった。依代はひどく破壊され、素人目にも彼女が
危険だということはわかった。だが、その直後。
「うあっ!!痛ててて…!」
暴れ歯車の攻撃を受け、クラッズが吹っ飛ぶ。こちらも命の危険とまではいかないが、かなりの重傷を負ったようだった。一歩遅れて、
バハムーンがサイスピアの頭を砕いた。
「ノーム!クラッズ!」
「く……だ、大丈夫だよフェルパー……これぐらい、何とも…!」
「……う……う…」
放っておけば、確実に死に至るノーム。そこまでではないにしろ、かなりの重傷のクラッズ。二人の姿を見比べ、フェルパーは
目を瞑った。
「クラッズ、無理はするな!」
フェルパーが詠唱すると、クラッズの体を柔らかい光が包み、傷が癒えていく。それを受けて、クラッズは再び立ちあがった。
「ごめん、ありがとうフェルパー!」
クラッズはすぐに駆けだすと、たちまち暴れ歯車一体を切り伏せた。別の暴れ歯車から反撃を受けたものの、クラッズはもうそれを
受けるような不覚は取らなかった。彼がそこから飛び退いたのを見届けると、バハムーンがブレスを吐きだし、それで残りの敵も
片付いた。
「みんな、お疲れ様。こっちはもうちょっと……っと、もういいよノーム。処置完了」
「ノーム、大丈夫か?」
フェルパーが声を掛けたが、ノームは答えなかった。そしてゆらりと立ちあがると、ぼそっと呟く。
「……どうして…」
「え?」
「どうして……どうして、助けてくれなかったのっ」
強い怒りと悲しみを帯びた目で、ノームは叫んだ。
「お、おいノーム…!」
「本当に……本当に、死にそうだったのにっ……あんたもやっぱり、あたしなんかより幼馴染の方が大切なんだっ」
「おい、落ちつけ……そりゃ、その言葉を否定はできないよ。こいつは古くからの親友だから。けど、自分はそんな理由で…」
「嘘だっ」
「嘘じゃないって!いいか!?あの状況だと、もう君に攻撃できる奴はいなかった!だけど、クラッズは前列にいて、あのまま攻撃を
受けたら確実に死んだ!だから、クラッズの方が危険だって判断して、こっちにヒールを唱えたんだ!それに、あれほどの怪我なら
ドワーフに任せた方が確実だろ!」
その言葉を、ノームは表情を変えずに聞いていた。だが、やがてその顔に以前のような嘲笑が浮かぶ。
「……そう言えば、こっちは何も言えない。言い訳としては、完璧よね」
「言い訳って……だから自分は…」
「信じてたのにっ」
悲しみに満ちた声で、ノームは叫んだ。その一言で、ノームがどれほど彼を信じていたかが、周囲にも痛いほどに伝わった。
が、それを聞いた瞬間、フェルパーの表情が一変した。
「……信じてたぁ?」
「ちょ、ちょっとフェルパー!待って!やめ…!」
制止しようとするクラッズを振り払い、フェルパーは怒りに満ちた目を向けた。
「ふざけんじゃねえぞ、この馬鹿野郎!!」
あまりの豹変ぶりに、ノームのみならず、バハムーンまでビクリと肩を震わせた。
「言い訳としては完璧?はっ、そりゃ俺の台詞だ!信じてた、ね……信じないって言ってた奴に信じられてたってわかれば、相手が
折れてくれるとでも思ったのかよ?ああ!?」
初めて見せる、感情を剥き出しにしたフェルパー。他の仲間は誰も止めることができず、遠巻きに二人を見つめることしかできない。
「都合のいい言葉だよな、『信じてた』とかよ……お前は結局、俺のことなんか見てもいなかったんだ!ただお前に都合のいい俺の
幻想を作りあげて、それが俺だって勝手に『信じてた』だけじゃねえか!」
「……でも、否定しないんでしょっ、だったら結局…」
「ちっ、胸糞悪い……お前にとっちゃ、俺は私情で仲間を見捨てる奴にしか見えなかったんだな……信じてたのにって、それもこっちの
台詞だよ…」
寂しげに呟くと、フェルパーは小さなため息をついて黙り込んだ。ノームも彼の言葉がよほど効いたのか、何も言えなくなっていた。
二人の間に、さりげなくディアボロスが割り込んだ。それに続き、ドワーフも二人に近づく。
「はいはいはい、痴話喧嘩はもう終わり?」
「……痴話喧嘩じゃない」
「似たような感じだったけどねー。とにかく、それ以上続けるつもりなら戻ってから宿屋で…………二人で……痴話…」
「……ドワーフ?ドワーフ!?」
「あ、ああっ、とにかくそういうことですよ!他のみんな、二人の言い合い終わるまで待ってたんだから。そろそろ探索再開しようよ」
「そうか……ごめん、悪かったな」
気の抜けたように言うと、フェルパーは持ち場に戻った。ノームはしばらく俯いていたが、ディアボロスが手を差し出すと、それを
追い払うように腕を振り、隊列に戻る。
それからのノームは、見るからに元気をなくしていた。もちろん、戦闘や罠の解除などはまともにこなしているが、そうでないときには
しょんぼりと俯いていることが多く、その姿は見ていて痛々しかった。
それに見かねたのか、バハムーンが声を掛けた。
「お前、いいよなー。フェルパーと喧嘩できて」
突然かけられた訳のわからない言葉に、ノームは不快そうな顔で彼女を睨んだ。
「何が」
「だってさー、私なんか喧嘩にもならないんだぞー?」
「……それはあんたが、相手にされてないだけでしょ」
「そうなんだよー。だからいいよなーって」
自業自得だ、と返そうとしたが、そこでノームは彼女の言いたいことに気付いた。
「そもそもさー、喧嘩って本心ぶつけ合わないとできないんだぞー。だから喧嘩できるっていうのはさ、その、ええっとぉ……そう!
信頼関係ないとできないんだからなー」
「………」
それ以降、ノームはますます沈鬱な表情になり、すっかり黙ってしまった。対するフェルパーも、ほとんど喋ることもなく、黙々と
戦闘や探索をこなしていた。
再び大きな事件が起こったのは、その数分後だった。
モンスターの不意打ちを受け、またもノームが重傷を負い、さらにフェルパーも手傷を負った。
何とか体勢を整え、敵に向かい合う一行。先程と似たような状況に、ノームは自身へのヒールが来ないことを知っていた。傷ついた体を
何とか動かし、打根を投擲しようとした時だった。
柔らかい光が全身を包み、傷が塞がっていく。ノームは一瞬、何が起きているのかわからなかった。
「……え」
視線を滑らせると、フェルパーがこちらに手をかざし、ヒールを詠唱していた。だが、その後ろにはジジンガが迫っている。
「フェルパーっ」
「むっ!よっと……くっ、あつつ…!や、やば…!」
ジジンガの攻撃をかわした直後、傷の痛みに動きが止まってしまった。そこへ、サイスピアが突撃する。さすがにかわしきれず、
一瞬後、サイスピアの角がフェルパーの腹を突き刺し、背中まで貫いた。
「ぐあああぁぁ!!」
「うわわわっ!?大丈夫かお前ー!?このっ、放せぇー!!」
ウォーピックを思い切り振りおろし、バハムーンが角を叩き折る。そこへさらにジジンガが迫ったが、ノームが素早く打根を投擲し、
その体を刺し貫いた。
解放されたフェルパーは、角を掴んだままその場にへたり込んだ。真っ先にドワーフが駆けつけ、他の仲間も残りの敵を片づけると
駆け寄ってくる。
「あっつつつつ…!」
「はいはい、みんな邪魔。そこ、影作らないで……おー、さすが格闘家。急所だけはしっかり外してるね」
当たる瞬間に体を開いたのだろう。角が貫いたのは脇腹から背中への僅かな部分であり、そこまで致命的なものではなかった。しかし、
重傷には変わりない。
「お願い、どいてっ……フェルパー、どうして…」
駆け寄るなり、ノームはフェルパーの顔を覗き込んだ。痛みに顔を歪めつつも、フェルパーは何とか笑顔を作った。
「あ、ああ……いや、な……後で考えたらさ……そりゃ、死にかけてるのに放っておかれたら……怖かったよなって……思ってさ…。
今回、似た感じだったから……俺も、そんなひどい怪我じゃなかったし、お詫びのつもりで……結果は、迷惑かけちゃったな…」
「フェルパー、喋らないでよ。処置しにくいから」
「フェルパーさ、それノームにも失礼じゃないの?」
後ろから、クラッズが厳しい口調で話しかける。
「それってさ、つまり君の言葉を、ノームが聞かないと思ったからでしょ?あれだけ言っておいて、結局自分の行動変えるとかさ…」
「やめてよ、小さいのっ。フェルパー責めないでっ」
そのノームが、クラッズを睨みつける。
「だって……あたしが、わがまま言って……そのせいで、フェルパー…」
「ノーム、邪魔。クラッズ、患者を刺激しないで。あとフェルパー、動かないで」
折れた角を強く掴み、ドワーフは慎重に引き抜いていく。相当な痛みを伴っているはずだが、フェルパーは歯を食いしばり、呻き声一つ
あげずに耐えている。
「うわ、痛そ……私、血はダメだー。無理。あっち行ってる」
「そのまま帰ってこないでね」
ようやく角を抜き終わると、ドワーフは傷口に手を当て、ヒールの詠唱を始めた。
「くっ……と、とにかく、ごめんな……みんなに、迷惑かけまくってるな…」
「ううん、フェルパーのせいじゃない。あたしが、変なこと言ったせいで…」
「よせよ……あの状況じゃ、ああ言いたくなるのもしょうがな…」
「二人とも……だ・ま・っ・て・よ!!」
言うなり、ドワーフはノームとフェルパーの頭をダガーの柄で小突いた。結構力が入っていたらしく、辺りにガツッと鈍い音が響く。
「ドクターの言うことはちゃんと聞くのー!ただでさえ重傷なんだからー!喋ってると処置しにくいって、何度も言ってるでしょー!?
いい加減にしないと、治療やめて解剖の標本にするよ!?」
「あつつ……わ、悪かったよ…」
「まったくもう!魔力も無駄に使っちゃったしさー、今日はここで帰らない?ドクターとしては、これ以上の探索はお勧めできないよ」
「うーん、その方がいいかもね。二回も重傷者出てるし……よし、帰ろうか」
結局、そこで探索は終了となった。フェルパーの処置が済んだところで、離れていたディアボロスとバハムーンを呼び寄せ、クラッズは
帰還札を使った。
宿への道すがら、ノームはちょんちょんとフェルパーの肩をつついた。
「ん?何だ?」
「あの、今日は本当に……ごめんなさい…。いっぱい、迷惑かけた…」
珍しく神妙な顔つきをするノームに、フェルパーは笑いかけた。
「いいっていいって。俺だって言うこと言ったし、もうそのことは水に流してさ、また仲良くやろうよ」
そして、フェルパーは右手を差し出した。最初はその意味がわからなかったが、握手を求められているのだと気付き、ノームはおずおずと
その手を取った。
指先が触れた瞬間、フェルパーは彼女の手をがっしりと握った。
「よろしくな!」
「う、うん」
そんな二人を、クラッズは意外そうに見つめていた。やがて、フェルパーが宿に向かい、彼と握り合った右手を見つめるノームが残る。
「へえ……珍しいなあ、フェルパー」
「……いたの、小さいの」
もはや、この呼び方にもすっかり慣れてしまい、クラッズは気にする風もなく続ける。
「普段はもうちょっと、慣れるの時間かかるんだけどねー。ノームには、もうフェルパー全然人見知りしてないや」
「そう、なの」
「フェルパーさ、君と話してる時、自分のこと『俺』って言ってるでしょ?慣れてない人にはさ、あいつ『自分』って言い方するんだよ。
気付いてた?それだけ、君のこと気にかけてるんだろうね」
彼の言葉は、ノームに大きな喜びの思いと、それをかき消すほどの困惑を与えていた。
一人の部屋に戻ると、ノームは荷物を投げだし、ベッドの上で膝を抱えて座り込んだ。
「………」
右手を見つめる。そこにはまだ、フェルパーの手の温かさと力強さがはっきりと残っていた。
「もう……誰も信じないって決めたのに…」
一人呟き、ノームは顔を伏せる。
「どうせ……どうせ、同じなのに……こんな気持ち……ならないって、決めたのに…」
震える声で呟くノーム。だが、彼女が涙を流すことはなかった。顔は泣いていても、その目に涙が光ることはない。
ノームはそのまま一晩中、ずっと声も涙もなく泣き続けていた。
それから数日。あれ以来これといった事件もなく、日々が過ぎていく。ノームとフェルパーの関係も思ったよりは変わらず、周りとしては
些か拍子抜けするほどだった。とはいえ、二人とも喧嘩をした分、相手への理解は深まったらしく、時にはしっかりと連携を取って
攻撃を仕掛けることもあるようになった。しかし、やはりそれ以上の進展はない。
その日も、一行はいつものように蹲踞御殿の探索を終え、宿へと戻った。部屋に戻り、ノームはいつものように錬金術の本を開くと、
黙々と読み始めた。初日こそ二人部屋だったものの、最近は個々で部屋を取れることが多く、ノームも一人でいることが多い。
ノームはそんな一人の時間を大切にしていたが、それは不意のノックの音に破られる。
「……誰」
不機嫌そうに尋ねるノーム。しかし返ってきた声に、彼女は目を丸くした。
「じ……俺だよ。ちょっといいかな?」
「え、あ、フェルパー。うん、えっと、ちょっと待って」
鍵を開けると、フェルパーは優しげに笑って挨拶し、部屋に入ってきた。ノームは本に栞を挟んで閉じ、フェルパーに椅子を勧める。
「それで、何の用事」
「んー、そうだな……時間とらせてもなんだし、いきなりだけど本題な」
気持ちを落ち着かせるように息をつくと、フェルパーは口を開いた。
「君さ、この前以来、俺のこと避けてない?」
「……どうしてそう思うの」
避けるどころか、付き合いが良くなっているのは周知の事実である。だが、聞き返すノームの表情は硬かった。
「いや、確かに、何て言うか、仲良くなった気はするんだ。でも、肝心なところで避けられてるっていうか……えーとね、例えるなら、
擦り寄っては来るのに、絶対にお腹は見せないというか……最後の最後、一番深いところで信用されてないって、そんな感じ」
「………」
「俺の勘違いならいいんだけどさ、何か君……一定以上、仲良くなろうとしてない気がするんだよね」
フェルパーは反応を探るようにノームを見つめるが、彼女は何も答えなかった。
そのまま、二人とも喋らなかった。ただ、フェルパーはノームを見つめ、ノームは視線を避けるように俯くばかりである。
沈黙を先に破ったのは、ノームの方だった。
「……あたしの手」
「え?」
「握った時、どう思った」
「どう……って?」
意味がわからず聞き返すと、ノームはフェルパーの目をまっすぐに見据えた。
「普通じゃないでしょ、この体」
「……ああ、まあ言われてみれば、なんか手触り違うよね。でもそれは、依代っていうのもあるし、しょうがないんじゃないの?」
「しょうがない、ね。本当にそう思う」
「うん、俺はね」
「ふーん」
気のないように言って、ノームは不意にニヤリと笑った。
「ねえ、フェルパー」
「何?」
「抱いてほしいって言ったら、どうする」
「は?」
突然の質問に、フェルパーは目が点になった。
「やっ、いや……どうもこうも……ダメ。今禁欲記録更新中だから」
「そうよね、断るよね。適当な理由付けてさ」
「適当なって、ほんとだぞ!?大体それと別に、いきなり抱いてくれって…!い、いきなりそんなこと出来ないだろ普通!?」
「そうね、それにこんな体だし、無理もないわ。正直に、お前じゃ無理だって断ってもいいのに」
「………」
フェルパーは深い溜め息をつくと、それまでとは違う目でノームを見つめた。
「なるほど……それだけ挑発しまくっておいて、あとで泣き言とか言わないだろうな?」
「脅しならいらないけど」
「俺だって男だし、禁欲中だったって言っただろ?抑えが利かなくなるかもしれないけど、文句言うなよ」
言うが早いか、フェルパーは椅子から立ち上がると、ノームの体を強引に抱き寄せた。
「あっ……フェルパー、男の顔になってる」
「君がそうさせたんだろ、ったく……一応断っておくけど、俺初めてだから、気遣いとかあんまり期待しないでな」
そんなことをわざわざ断る辺りが、やはりフェルパーらしい。ノームは呆れ半分に笑いつつ、彼の顔を見つめる。
「いいよ、別に。フェルパーのしたいようにして」
フェルパーの顔が近づく。ノームは目を瞑り、それに応えようとしたが、彼はノームの唇ではなく、耳に口を付けた。
「ひゃっ」
初っ端の不意打ちに、ノームは思わず悲鳴を上げた。それに構わず、フェルパーはノームの耳朶を噛み、舌を這わせ、なぞる。
「い、いきなり……ふあっ、あっ、んんっ…」
ノームは力なくフェルパーの体を押し返そうとするが、元々本気ではないのか、それとも力が入らないのか、何の抵抗にもなっていない。
そのためフェルパーも構うことなく、彼女の耳をしつこく刺激している。
甘噛みだったものが、少しずつ顎に力が入り始める。しかし、それが痛みになった瞬間、フェルパーは見計らったように口を開き、
噛んだ部分を舌先で丁寧に舐める。交互に来る痛みとくすぐったさに、ノームは容易く翻弄された。
「やっ……フェルパー、だめ……痛いのと優しいの、交互にしないで…」
「そう。じゃ、こっちは?」
言うなり、フェルパーは片手をノームの胸に這わせた。途端に、仰け反っていたノームの体が前のめりに変わる。
「あうっ……そこも、やっ……んあっ…」
「……君、もしかしてかなり敏感?」
どことなしに楽しげな笑みを浮かべて聞くと、ノームは少し唇を尖らせた。
「と、盗賊用に、感覚特化の神経調整してるから……んっ……あ、あまり遊ばないで…」
「遊んでない。俺は真剣だよ」
本気なのか冗談なのか、フェルパーはそう言うと耳から口を離し、ノームを後ろから抱き締めるように体勢を変えた。そして、今度は
両手で彼女の胸をまさぐり始める。
「うあ、あ……フェルパー、そんな……あっ」
服の上からでも、それは十分な刺激だった。フェルパーの手が動く度に、ノームは体をよじり、小さな喘ぎ声を漏らす。
その反応が面白いのか、フェルパーはノームの胸から手を離さず、時に強く、時に弱く、反応を探りながら揉み続ける。
「フェルパー、そんな、胸ばっかり……やっ…」
首を反らした瞬間、フェルパーが再び耳を噛んだ。そのために首の動きまで封じられ、ノームはただ震えながら快感に耐える。
だが、今度はさほど長くはなく、フェルパーは耳朶を甘噛みしてから一舐めすると、不意に口を離した。
「耳の感触とか、確かにちょっと違うね。なんか面白いな」
それを聞いた瞬間、ノームの体がピクッと震えた。同時に、それまであった嬌声も減り、震えが一層強くなる。
「……くっ……うう…」
フェルパーはその変化に気付かない。そのため彼女を気遣うこともなく、右手を少しずつ下へと滑らせていく。
胸を撫で、腹を通り、スカートをまくったとき、ノームは突然、本気の抵抗を始めた。
「やっ、やっぱりダメっ、お願いフェルパー、もうやめてっ」
「な、何だよいきなり!?泣き言とか言わないって…!」
「そうじゃないのっ、とにかくダメ、もうダメなのっ、お願いだから、もう許してっ」
体をよじり、抱き締める手を引き剥がそうとし、ノームは必死に抵抗する。だが、暴れれば暴れるほど、フェルパーはますます強く
抱き締める。
「元々、君が言いだしたことだろ。やめてやんない」
「ダメっ、ダメぇっ」
左手でがっちりとノームを押さえつけると、フェルパーは右手をスカートの中へ滑り込ませ、そしてショーツの中へと突っ込んだ。
途端に、ノームの抵抗は止み、同時にフェルパーの動きも止まった。
「……あれ?」
「う……うぅ……だ、だからダメって言ったのに…」
今にも泣きそうな顔で、ノームは声を震わせる。
そこには、何もなかった。それこそ、ただの人形のようにつるりとした手触りがあるだけで、本来あるはずのものは存在していなかった。
「君……ここ、作られてないの?」
「……どうせ、あたしは普通じゃないもん……フェルパーも、もうあたしのこと嫌いになったでしょ…」
「なんでそうなるのよ?」
フェルパーが言うと、ノームは不安げな顔で彼の顔を見上げた。
「嫌いに……ならないの」
「別に、嫌いになるようなことじゃないだろ。そりゃ、まあ、期待した分残念ではあるけどさ…」
「だって、だって……前に付き合ってた奴には、これでフラれたから…」
「………」
彼女の言葉に、フェルパーは大きな大きな溜め息をついた。
「……ノーム、君に心底がっかりしたのはこれで二回目だよ…」
「やっぱり、できないのが…」
「違う、そこじゃない。あのさ、どうして君は、そう最低な相手を基準にしちゃうのかなあ。そんなのと俺を比べるなよ」
怒りを通り越してすっかり呆れてしまったらしく、フェルパーの声は溜め息混じりのものだった。
「そもそも、それ事前に君は伝えたのかい?」
「……ううん」
「なら、そりゃ君にも少しは責任あるだろ。君から誘っておいて、いざその時がきたら『実はできません』なんて、馬鹿にされたと
思っても不思議じゃないぞ。俺だってちょっと思ったし」
「でも……『やれない女なんか価値ない』って言われた…」
「ああ、じゃあ最低なのは変わりないな。なおさら、俺をそんなのと一緒にしないで」
言いながら、なぜかフェルパーはノームの服を脱がせにかかっていた。
「ちょ、ちょっと、フェルパー何してるの」
「何って、続きだけど」
「え、あの、だってあたし、できる体じゃ…」
「交わるばかりが、抱くってことでもないだろ?それに、君も気持ちいいみたいだし、俺もせっかくだから、気が済むまで触ることにした」
「ええっ、で、でもフェル……きゃっ」
前をはだけさせると、フェルパーはノームを軽々と抱き上げ、ベッドの上に置いた。そして彼女が逃げる暇を与えず、その上に覆い被さる。
「フェルパー、待っ……んんっ」
再び耳を噛みつつ、舌先で優しく撫でる。抵抗が弱まった瞬間、さらに片手を胸に伸ばし、全体を包むように揉みしだく。
「うっ、あ…」
「……ん、よく見たら、乳首もついてないんだね。でも先端は気持ちよかったりする?」
言いながら、フェルパーは何もない乳房の頂点を指先で撫でる。
「んんん……わ、わかんない……気持ち、いいけど…」
「じゃあ続行」
先程の言葉通り、フェルパーはこの状況を存分に楽しんでいるようだった。ノームとしても、この初めての感覚は思った以上に
気持ちよく、このままずっと続けて欲しくもあったが、頭のどこかでそれではダメだという思いが生まれていた。
「やっ……また耳…」
だが、またも耳を舐められると、あっさり快感に流されそうになってしまう。それでも必死の思いでそれに抵抗し、ノームは何とか
声を絞り出した。
「あう……フ、フェル、パー……お願、い……んうっ……ちょっと、やめて…」
それまでと異なる口調に気付き、フェルパーはすぐに体を離した。
「ん?どうしたの?」
「あ、あの…」
ノームは恥ずかしげに視線を逸らしていたが、やがておずおずとフェルパーの顔を見上げた。
「あの……試すようなことして、ごめんなさい…。えと、それで、それのお詫びと……気持ちいいの、あたしだけだから……その、
お返し、したいな…」
一瞬意味を考え、それを理解すると、途端にフェルパーの尻尾が落ち着きなく動き始める。
「あ、いや……これでも、結構楽しんでるつもりだけど…」
「……ダメ、かな」
「ダメ、とは別に言わないけど…」
「じゃあ、する」
腕を伸ばしてフェルパーの体を抱き、自分の横に寝かせると、ノームは彼の下半身に手を伸ばした。
指先が、硬いものに当たる。触れると同時に、フェルパーが小さく呻いた。
「あ……大丈夫」
「ああ、平気……気にしないで」
ズボンの上からでも、はっきりとわかるそれに、ノームは一瞬たじろいだ。しかしすぐに気を取り直し、まずはズボンを脱がせにかかる。
ベルトを外し、ズボンと下着を一緒に下ろすと、ピクンピクンと脈打つそれをそっと握る。
「すごい……熱くて、動いてる…」
そう呟くと、ノームはゆっくりと手を動かし始める。
「くっ…!」
同時に、ノームの肩に置かれたフェルパーの手に、グッと力が入った。
「あ……痛かったかな…」
「あ、いや、全然痛くない……気持ちいいよ」
「そ、そうなんだ……嬉しいな」
自分の手で、フェルパーが気持ちよくなっている。それだけで無性に嬉しくなり、自然と笑みがこぼれる。
もう少し早く手を動かす。彼女の手の中で、フェルパーのモノはますます硬くなり、感じる熱さもそれに比例する。
「くぅぅ…!うっ……あぁ…!」
ノームの肩を掴む手に、さらに力が入る。快感を耐えるフェルパーの顔は、もはや苦悶に近いものになっている。つまりは、それほどに
気持ちいいのだということに気付き、ノームは何とも言えない喜びを覚える。
できることなら、もっと気持ちよくなって欲しい。そう思った時、ノームの頭にふと、ドワーフから借りた辞書のことが浮かんだ。
「……今度は、口でしてあげるね」
「え……うああっ!」
言うなり、ノームはフェルパーのモノを口に含んだ。唾液すら出はしないが、自身のモノを咥えられるということ自体が、フェルパーに
激しい興奮をもたらす。
ノームは咥えたまま先端を舐め、一度口を離すと、根元を横から唇で咥えた。そして、甘噛みを繰り返しながら、ゆっくりと先端へ
口を動かしていく。
「あっ……ぐっ、ノームっ…!やばっ、ごめっ……もう出る!」
「え、きゃっ」
顔をあげた瞬間、フェルパーのモノが大きく震え、顔面に白濁液が吐き出される。驚きはしたものの、ノームはすぐさま彼のモノを
再び口に含んだ。
二度三度とモノが脈打ち、その度にどろりとしたものが口の中に注ぎ込まれる。それを何度か繰り返し、やがて動きが止まると、
ノームは強く吸いながら、一度根元までを口に含んだ。
「うう……ノーム…!」
肩を痛いほどに掴んでいた手から、少しずつ力が抜けていく。それを見計らって、ノームは強く吸い上げながら、チュッと大きな音を
立てて口を離した。
「……んく……はあ……顔にも、いっぱいかかっちゃった…」
「ご、ごめん……我慢できなくて…」
「ううん、いいの。気持ちよくなってくれて、嬉しかった。ん〜……これ、もったいないなあ」
言いながら、ノームは顔にかかった精液を指で掬った。
「いや、もったいないようなもんじゃないよ…」
「でも、フェルパーが出したものだし……あたしの口で、出してくれたものだもん。んっ…」
無邪気な笑顔を浮かべながら、ノームは精液を掬った指を口に含んだ。それも同じように飲み下すと、ノームはフェルパーを見つめる。
「……こんな体でも、気持ちよくなってくれるんだね」
「そりゃ、まあ……体が人形でも、女の子には違いないしね」
「ふふっ」
もはやノームの表情は、それまでとは完全に別人だった。あの冷たい表情はどこにもなく、むしろどこにでもいる少女のような笑顔を
浮かべている。そんな彼女の顔を見て、フェルパーは純粋に彼女を可愛いと思っていた。
「ね、フェルパー……キス、してほしいな」
「や、その、ごめん……もうちょっと早く言ってくれたらできたけど、さすがにその口は…」
「あ、そっか。失敗しちゃったなあ。んー、じゃあ今度、してほしいな」
「……じゃ、今日はその代わり」
そう言うと、フェルパーはノームをぎゅっと抱きしめた。一瞬目を丸くして驚き、そしてノームは満面の笑みを浮かべた。
「ね、フェルパー」
「ん?」
「フェルパーは、あたしのこと……女の子だって、思ってくれるんだよね」
「ああ、もちろん……それぐらい、信じてくれよ」
おどけて『信じてくれ』を強調するフェルパーに、ノームもわざとらしく頬を膨らませて見せる。
「もう、そう言う人は信じられないって言ったのに」
「はは、知ってる。冗談だよ」
「……でも、フェルパーになら」
彼の胸にしなだれかかり、ノームは静かな声で続ける。
「信じろって言われたら、信じるよ」
「そっか……ありがとな」
そのまま、どちらからともなくベッドに寝転ぶ。ノームが甘えるように体を擦り寄せると、フェルパーの尻尾が腰を抱き寄せた。
嬉しそうな笑みを浮かべ、目を瞑る。それを見てから、フェルパーも静かに目を瞑った。
少し前なら、触れられることすら嫌だった他人の体。それに大きな安らぎを感じながら、ノームは幸せな眠りに落ちていった。
翌日、一行は探索には行かず、その日一日を休養日にすることに決めた。宿を出て交易所を覗いたり、辺りをふらふらと散歩したりと、
それぞれ好き勝手に過ごしていたが、やがて誰からともなしに集まりだし、結局は六人揃ってのんびりと過ごしている。
そして今、暖かい気温に誘われ、フェルパーがのんびりと昼寝をしている。他の仲間はそこからやや離れたところにいたが、ノームは
彼の方をじっと見つめていた。
―――ああは言ってくれたけど…。
フェルパーを見つめながら、ノームはぼんやりと考えていた。
―――本当に……本当に、そう思ってくれてるかな……あたしのこと、気遣ってくれただけじゃないかな…。
男女の関係を持ち、一緒に寝た仲だとはいえ、やはりノームは不安だった。もちろん、彼を信じたいという気はあるのだが、
心のどこかで期待してはいけないという気持ちが働いてしまう。彼の優しさを知っている分だけ、不安も大きい。
本心を探る方法は、一つだけある。ノームはしばらく躊躇っていたが、やがて意を決したようにフェルパーの側へ近寄る。
熟睡しているらしく、近くまで来てもフェルパーは目を覚まさない。寝顔をじっと見つめ、やがて彼の頭におずおずと手を伸ばす。
「……んん〜…」
小さな鳴き声と共に、フェルパーが薄く眼を開く。その目は、ノームの手をじっと見ていた。
直後、フェルパーの手が伸びた。ノームは驚いて手を引っこめようとしたが、フェルパーの方が僅かに速かった。
「あ…」
フェルパーはノームの手を掴み、両手で自分の頭にぎゅうっと押し付けると、足をピンと伸ばした。
「んぐるぁー…」
伸びをしながら甘えるような鳴き声をあげると、フェルパーは大きく息をつき、再び眠りについた。ノームは手を取られたまま呆然と
していたが、やがてその顔に弾けるような笑顔が浮かんだ。
「ふふっ」
もう片方の手で頭を撫でてやる。フェルパーは耳をパタパタと動かしつつ、安らかな寝息を立て続けていた。
そんな二人の様子を、他の仲間は唖然として見つめている。
「何、あれ…?ノームって、あんな顔できたんだね」
クラッズが言うと、バハムーンも頷いた。ディアボロスも、未だ会話をしたことはないものの、一緒に頷いている。
「ノームいいなー。私が近づいたら、引っ掻かれそうになったのにさ……どうやってフェルパー懐かせたんだろ?」
「そりゃあ、あんな喧嘩もしたんだしさ。やっぱり体……体、張ったんだと……思いますよ…」
ドワーフが遠い目をしながら、それに答える。
「だよなー。でも、私も結構、体張ってると思うんだけどなー。抱っことかしてあげてるのに…」
「そうね……抱いたり……撫でたり……舐め…」
「……ドワーフ?大丈夫?なんかボーっとしてない?」
クラッズの言葉に、ドワーフはハッと我に返ったようだった。
「だ、大丈夫ですよ!?わふっと普通ですよ!?」
「……君、時々丁寧語になるよね。まあいいけど。ノームも少しは、丸くなってくれたかな?」
言いながら、クラッズは立ち上がると、二人の方へ歩き出した。
「やあノーム、フェルパーは…」
「来るな、小さいの。あっち行ってよ。邪魔しないで」
「……はい」
あっさりと追い返され、クラッズはすごすごと引き上げる。
「全っ然丸くないや。むしろ、前より刺々しくなってるような…」
「あははー、懐いたのはフェルパーだけになんだなー。でもほら、フェルパーには懐いたんだし、のんびりやってこうな」
バハムーンが言うと、全員が頷いた。そして、全員の目がディアボロスに向く。
「……お前も、まだ一回も喋ってるの見たことないけど……喋れるよな?」
ディアボロスはこくんと頷く。とりあえず、喋る気はないらしかった。
「声は結構渋いのにねー。喋ったらかっこいいと思うんだけどなあ」
「だよなー。顔は女っぽいけど、声は低いもんなー」
「あはは。そういう意味では、喋らないから余計に女の子っぽく見えるのかもね」
何だかんだで、楽しく話す一行。そこから少し離れ、幸せそうなフェルパーとノーム。
それぞれに着る制服は異なるが、もはや彼等は立派な一つのパーティとなっていた。
今までの仲間と別れ、始まった新たなパーティでの旅。仲間との旅は、始まったばかりである。
以上、投下終了。
それにしても最近は活気がすごいですね。一応、俺は鳥付いてると基本は他の人と絡まない主義なので、
感想とか絶対述べないけど気を悪くしないでください。感想は名無しで述べる主義です。
それではこの辺で。
うっうぉう、GJです!ノームせつない!
オリエント工業製みたいなそっちの機能バッチリも浪漫だけど
つるんとしたりかちゃん状も素晴らしいな!
>>189 GJ
把握。あなたの作品は勉強になります
ネタにできるモンスター居ないかなーとか思いながら図鑑眺めてたわけですが、巻貝とかウミウシとか雌雄同体なんですよね……
>>192 出入り両方できるってことは、フタから始まるあのネタでもやる気かい?
3はエロイモンスター少ないよなーと思ってたけど
ゴルダイモンの触手がえらい卑猥に見えるのは俺だけだろうか
あれ? 流れとまった?
今作ではSDじゃないまともな学科グラがないのが、やっぱりさびしいなぁ。
せめて種族固有学科ぐらい作れなかったものか。妄想燃料にもなるのに……。
(2と同じでよいって言われたらそれまでだけど)
立ち絵も武器持ってない方が良かったしな。
まぁその辺含めて妄想するのもいいんじゃないか?
イラストの武器持ち変えられるとして、そうなるとこけし二刀流とかちょっと卑猥すぎません?
それはそうとちょいと投下させていただきますよ。
長くなるのでひとまず導入部分だけ。*戦闘不能は まいそうされます*な感じプレイログから。
南方の砂漠に位置するタカチホは、故に昼夜の寒暖の差が激しく、日が沈むと凍えてしまうほどだ。
そのタカチホに、味方の屍を幾重にも積み、実績を手にした女がいた。
魔法・科学ともに医療技術の発展著しい現代にあってなお、危険に望む若き冒険者たちにとって死は免れえぬもの
であるが、彼女の周りにはそれが多すぎた。
取り返しのつかぬ危機からもただ一人生還してのける彼女に、良からぬ噂が生まれるのもそう遠い話ではなかった。
「死神」とは彼女の呼び名であり、また同時に彼女の率いる精鋭の名である。
大層な肩書きを持ってはいるものの、彼女らは学生に過ぎず、住まう世界は学び舎である。知る者は死神の名が
不運の積み重ねの末に生まれたことを理解しているとはいえ、向けられる悪意はあまりに若い。これには「死神」に
加わる生徒の多くが何らかの理由で爪弾きにされた者達である事にも起因している。
行過ぎた事態を防ぐべく、タカチホ義塾は彼らに専用の隊舎を用意した。表向きには、その手柄に対しての褒章と
いうことになる。
暗黒校舎での一件後、各校が隊の再編を終え、地下世界への進撃が決行されようかという前日。満月の銀光が映
えるその夜も、やはり身を切るような寒さであった。
隊舎の一室にて、「死神」が文机に広げられた隊士の名簿を、火皿に灯された蝋燭の明かりを頼りに眺めていた。
紫を基調とした制服に身を包んだ猫人族である。名を、カナエという。医術と格闘術を始めとして、多くの技を身に
付けた少女は、延べ20人を数える隊員を率いるに不相応な若さと、肩書きに恥じぬ風格を備えていた。
名簿から懐紙へと、名前に各員が身に付けた技を添えて書き出している。明日、敵地に乗り込む人員の選別を
行っているのだが、書き捨てられた懐紙はとうに数十枚を越えていた。
亜麻色の髪間から天を突く、猫の耳が揺れた。障子の向う、中庭に面した縁側から小さなくしゃみが聞こえてきた
のだ。
「いい加減入りなよ」
名簿から目をそらさずに声を掛ける。逡巡を感じさせる衣擦れの音が聞こえ、一拍おいて静かに襖が開かれた。
雨戸を背に、長い青髪を高い位置で纏めた青年が正座していた。制服姿であるが、羽織は付けずに黒の胴着を晒
している。名をキリュウといい、「死神」の副長を務める竜人族の若者である。
ようやく顔を見せたものの、不動の姿勢を貫くキリュウに、カナエは長い尻尾を立てて揺らしてみせる。苛立ってい
るのだ。
「いつからそうしてたっけ?」
「さて、時を計れるものは持っておりませぬので」
「そうかい」
「それはそうと、キズナ殿から伺いましたが、この一週間ほとんどお休みになられてないとか」
身の回りを世話していた隊士が、心配してわざわざ副長へ告げたのだ。カナエは嘆息する。
「こないだの一件で、腕利きの奴らも大分減ってしまったからねぇ。ミズキまで逝ってくれたのは困ったね。事務仕事
は任せっきりだったから、どうにもコツが分からん」
「細々としたことは我々に申し付けていただければ」
「自分で見て回れない訓練の報告にも目を通さなきゃならんし、新入りたちの出来栄えも整理しなきゃならん。来週以
降のこともあるから、こればっかりはね」
「どうぞ、ご自愛下さい。体調に倒れられては隊が持ちませぬ」
「お前が言うかね、さっきくしゃみしてただろ、副隊長殿?」
「あれは……」
からかい半分に言ってやると、案の定キリュウは口ごもる。笑いながらカナエは続けた。
「まあいいさ。まあ、心配してくれるなら、だ。ひとつ頼みがある」
「は、何なりと」
うむ、と一拍挟んで、重々しく告げる。
「頼みと、言うのは、だ」
「は……」
板間に両の拳を突き、真剣な面持ちでキリュウは聞き入る。手火鉢の炭が熾り、甲高い音を立てて爆ぜた。
「いい加減中に入れ」
「……は?」
キリュウの目が点になった。
「雨戸出してるとはいえ、やっぱり冷えが差してくるからさ。そこ、閉めて欲しいんだよ」
「これは失礼を。では、私はこれにて」
一度頭を下げ、障子に手を掛けたキリュウに、カナエは手元にあった文鎮を投げ付ける。昇竜を象った縁起物は重
く、綺麗な放物線を描いて飛び、見事障子を閉める手を遮った。
「入れっつってんだろうがよ」
「いや、しかしこのような夜更けに」
カナエは立ち上がり、部屋に散らかった諸々を足で寄せる。
「夜更けになんだってんだよ。隊長と副長殿が語り合うのになんか遠慮する必要あるか? ええと、座布団は……と」
寄せた山の中から、座布団を一枚、引っ張り出した。軽く払ってみると、埃が舞う、舞う。軽くむせながら、カナエは
眉をしかめた。
「……客に出せるもんじゃないな。ほれ、お前さんはこっち」
それまで使っていた座布団を部屋の中ほどまで引っ張り出して指し示す。
「……失礼します」
観念したキリュウが、渋々といった風で入ってくるのを背中越しに見ながら、そこだけは整理されている棚を漁りだした。
「なにか呑むか?あ、足はくつろげといて良いよ」
カナエの体温が残っている座布団がどうにもむず痒く、落ち着かない様子のキリュウに声を掛ける。
「は、では林檎で」
「洒落たもん頼むね。だけど生憎とタカチホの酒しか備えてなくてさ。軽めのがいいなら想星恋慕なんかでいいか?」
「……え?」
「……え?」
見合う。
「……竜人族って、いかにもウワバミでございって面構えなのになぁ」
「不覚……」
学生の身分である以上はと、渋るキリュウにカナエが面白がって無理やり一口だけ飲ませてみたのだが。
「まさか新月酒の一口で潰れるとはね。いや、アタシが悪かった」
洒落た名の酒だが、その味、その酒精の薄さに皮肉られて付けられた銘である。
「しばらく横になって寛いでな。しかし前に普通に飲んでた気が……ああ、アギトの方か」
「……おそらくは」
双子の弟である。素行が荒れているとはキリュウの弁で、瓜二つの外見とはちがい兄とは正反対の性質に見える
が、両の根元に見える一本気質はやはりお互いが兄弟であることを感じさせる。
目を閉じたまま、キリュウは寝返りをうつ。頬に触れる枕の、少し冷たい感触が心地いい。
「良い枕ですね、隊長」
「そりゃ良かった。自分じゃ使った事は無いんだけどね」
「なんと勿体無い。この枕であれば、例え一刻しか眠れずとも疲れが吹き飛びますよ」
「でもなぁ、少し硬くないか? スジばっかりだろ?」
「とんでもない、特にこの辺りの絶妙な柔らかさは……」
「あら、いやん」
珍妙な声に、キリュウは目を開けた。滲む視界に移るのは、白く、長い枕。もう一度寝返りを打つ。背の翼を痛めぬ
よう、回転は下向きに。紫色の布地。布地から生える枕。
首を擡げる。双丘の奥、嫣然と微笑む、カナエの顔。唇が動く。
「おはよう」
首を下ろす。適度な弾力が頭を支えてくれる。
「つまり、だ」
「おう」
「この枕は」
撫でる。親指で押し込んでみる。
「凝っていますね、隊長」
「もう少し優しくやってくれた方が気持ちいいかもね」
「こうですか」
「もうちょっと下の方も」
言われるままに指を動かす。
「らしくない事をしている気がします」
「酔ってるからさ。お互いにね……そこから、内側に頼むよ」
「承知」
力を掛けるのは親指で、凝り固まった筋を解すように残りの指で揉みこむ。
「中々上手いじゃないか。気持ちいいよ」
「祖父に良くやらされていましたからね」
良いながら、按摩の手を動かし続ける。丁寧に揉み解しながら、付け根の方へ。
「スカートは邪魔かい?」
「寄せて頂いた方がやり易いのは確かです」
「あいよ」
躊躇い無く摺りあげられ、隠されていたものが露になる。枕の付け根に見える、白い布に目を奪われる。収まりきら
ない飾り毛が覗いている。
「折角だし、こっちまで頼むよ」
「承……ち……」
手を伸ばしかけて、ふと気がつく。俺は何をしているんだ?
ここは隊長の自室である。働き詰めの姿勢を諌めに来たのだ。それが何故かもてなされ、半ば強制される形で酒
を呷り……
「大変なご無礼をっ!」
身を起こしたキリュウは、形振り構わずの勢いで土下座してみせた。苦笑を浮かべ、カナエはキリュウを見下ろして
いる。
「アタシは別に最後までしてくれたって構わないんだけどね。それより、顔上げとくれよ」
「……出来ませぬ」
「どうしてさ」
「……その、足を、お隠し下さい」
「足だね、よし分かった」
ごそごそと、何かを漁る音。
「……これがいいかな」
続いて聞こえる、衣擦れの音。着衣を正してくれたのだろう。
「あいよ、これで満足かい」
「は、ありがとうございま……」
安堵の溜息とともに顔を上げたキリュウは、絶句してしまう。
確かに、足を隠していた。長い足袋を履いている。膝の少し上まである白足袋だった。それはいい。
腰を覆うものがなくなっている。 先ほどまでは刷り上げられた状態で、露出しているのは片側で、その奥を隠すも
のも僅かに見えていただけだった筈なのに。上も、袖を外しており、引き締まった腕が露になっている。
「こういう趣味が男にはあるとドラッケンのお姫様から聞いたことがあるが、まさか堅物で鳴らしたお前さんもそうだっ
たとはねぇ。いや、人は見かけによらないね、ホント」
「……おたわ……むれを……」
掠れた声で、なんとかそう漏らすのが精一杯だった。目は逸らせずにいる。こみ上げる若い情欲を、キリュウは臨
界寸前で押し留めていた。
「まだ言うかい。どうせだからこっちも脱いじまうか」
金縛りにあったかのように身動きの取れぬキリュウの前で、カナエは帯の留め具を外す。褌の隙間から外に出さ
れた、髪と同じ色の毛に包まれた尾が、ふわふわと揺れている。制服の上着は落とし、黒の半襦袢まで寛げ、
胸元を曝け出す。晒しに押しつぶされた胸の谷間を見せ付けるように、カナエは身を屈めた。
「全部脱ぐより、こんな感じのほうが好きなんだろ? ん?」
限界だった。 キリュウは小さな唸り声を上げ、カナエに挑み掛かる。両手を捕らえ、一息に押し倒す。語気を荒げて
告げる。
「いい加減にしてくださいよ、隊長。俺だって男です」
「しないと、どうだってんだい」
いつもの調子でおどけるカナエであるが、いささか硬い声に感じるのは気のせいだろうか。抑えこんだ手も、震えて
いる様に感じる。
「……強姦(おか)します」
躊躇いながらも、言い放った時である。抑えていた両の手が、こちらのそれを跳ね除けるかのように力が込められ
た。そうはさせぬと、体重を乗せて押さえ込んだ。つもりだったのだが。
キリュウが腹にカナエの膝を当てられたと思った次の瞬間、勢い良く世界が回る。巴投げに近い形で投げられたの
だとは、気付けなかった。受身を取り損ねた翼の付け根が痛む。
「十年はやいよ」
混乱ているキリュウに、体勢を入れ替えたカナエはそう言って笑ってみせるが、やはりその表情は硬い。だけど、と
カナエは続ける。
「大体こっちから誘ってんのに『強姦します』はないだろ?」
呆れ口調で告げながら、カナエは戒めを解き立ち上がる。火鉢の炭を灰の中に埋めたカナエは、卓の火皿を取り上げて襖に手をかける。
「向こうに布団があるからさ。万年床だけど、こんな所でするよりはいいだろ」
*ここまで かいた*
続き期待
201まで見てwktkしながらF5押したら *ここまで かいた* だと…!?
うおぉぉン生殺しじゃぁ〜。続きお待ちしてます。
これはいい生殺し
こんばんは。初のパッチが来ましたね。俺はまだ入れてませんが。
前回の続き投下します。お相手はドワ子。
注意としては、5レス目に残虐描写あり。それと8レス目に動物虐待描写があるので苦手な方はご注意を。
それでは楽しんでいただければ幸いです。
「その……本当に大丈夫?痛いと思うけど…」
不安げに尋ねるフェルパーに、ドワーフは笑いかけた。
「だーいじょぶだって!私達ドワーフは丈夫だし、これぐらいじゃ壊れたりしないから、わふっと突いてきて!」
「わかった……じゃ、いくよ?」
「うん、来て。遠慮しないで、思いっきり、ね?」
「ああ。それじゃあ……ふっ!」
思い切り突かれ、さすがにドワーフの顔が苦痛に歪む。
「あうっ…!くっ、痛たたた…!」
「ご、ごめん!大丈夫か!?」
「へ、平気平気……でも、こんなの初めてだから……ちょっとびっくりしたかな…」
弱々しくも笑顔を見せるドワーフに、フェルパーは心配そうな視線を向ける。
「やっぱり、いきなり思いっきりはきつかったんじゃ…」
「いいの。私がしてほしかったんだから」
そして、二人の様子を大人しく見ていたノームが口を開いた。
「それでどう、ドワーフ。壊れてない」
「あ、大丈夫だよー。さっすが、ノームが作っただけあるね」
そう言いながら、ドワーフは制服の中に入れてあったバックラーを取り出した。
「いや〜、びっくりだねー。これ入れてるのに、直接殴られたみたいな衝撃が来るんだもん」
「まあ、格闘家が本職だったしなあ……俺としては、今の突きに耐えてるのがすごいと思う」
「あたしとしても、耐久実験になるからちょうどよかった。それにしても、さっきの会話。会話だけ聞くと変な勘違いを生みそうね」
「会話だけ…?」
ノームの言葉に、ドワーフはちょっと上を向いて考える仕草をした。そして、その顔がだんだんと締まりのない笑顔に変わる。
「……えへへ〜…」
「……ドワーフ、行くんじゃない」
若干距離を取りつつ、フェルパーが声を掛ける。さすがにしばらく付き合っていると、彼女が時折妄想の世界に浸ることは理解していた。
「へ!?だ、大丈夫ですよ!ちゃんといますよ!」
慌てて言ってから、ドワーフはふと真面目な顔になった。
「でも、すごいなあ。寸止めでも、直接当てても、一ミリもずれてないところに拳叩きこむんだもんなあ。それも、肝臓のあるところ
ぴったりだもん。これだけ距離があって、種族も違って、そうでなくても同じところを突くなんて難しいのにさ。ほんと、フェルパーって
すっごく興味深いサンプルだよ」
「標本かい……けど、まあ、それは日々の訓練の賜物だよ。続けてれば、誰でも出来るさ」
「続ければね。でも、それだけじゃないよ。あのしなやかな動き、体の柔らかさとばねを十分に活かした踏み込み……元々の種族的に
優れた部分を、さらに強化した君の体って、医学的な面から見てもすっごく興味深いよ」
医学的以外の面ではどう興味深いのか、と聞こうかと思ったが、答えを聞くのが恐ろしいので、フェルパーは黙っていた。
「同じ部分を正確に突く能力、踏み込みとかの体捌き……ちょっとやそっとでお目にかかれるものじゃないもんねー。ねね、次は
武器使って、同じとこやってみてよ。その棒、飾りじゃないんでしょ?」
そう言って笑いかけるドワーフ。だが、不意にその目が焦点を失っていく。楽しげに揺れていた尻尾も、だんだんと動きが止まる。
「……その、棒……飾りじゃ……ないんですよね…?」
「……ドワーフ、帰っておいで」
「え!?あ、うん!平気ですよ!?と、とにかくそれ使って……あ、でも今回は止めてね。さすがにそれで殴られたら、怪我じゃ
済まないかもしれないから」
「わかってるよ。それじゃ……いくぞ」
太陽の杖を構え、フェルパーは一旦呼吸を整えると、踏み込みざまにドワーフの脇腹目掛けて杖を繰り出す。そして、まさに触れるか
触れないかの距離で、杖はピタリと止まった。
「……さっすが。さっきと全く同じ位置なんて……素手でも、棒使ってもまったく同じところ攻撃するなんて、普通じゃないよ」
「まあ、普通にいられても、ちょっと自信失うよね」
「そう。普通はできないよ、そんなこと。なのに、君はそれをやってのける……つまり、やってできないわけじゃない。人の可能性って、
まだまだいっぱいあるんだって、フェルパー見てると素直に思えるよ」
「ああ、ありがと」
「それでドワーフは」
ドワーフがずっとフェルパーと話しているのが気に入らないのか、ノームが少し不機嫌そうな声を出す。
「どうしていきなり、フェルパーとこんなことする気になったの」
「え?うーん、医者として興味深いっていうのもあるんだけどねー。あと、場合によっては私が前に出て戦おうかなとも思ってさ」
「君が?」
「うん。ほら、体力には自信あるしさ!で、私はドクターだから、生き物の体の構造には詳しいの。だから治療行為ができるんだけど、
逆に言うと…」
ドワーフはにっこりと笑い、常に携帯しているダガーを取り出して見せた。
「壊し方にも、詳しいってことなんだよねー」
「……そこは、錬金術も同じね」
「そそ!フェルパーもそうじゃない?」
「え、俺?何が?」
「ほら、フェルパーも急所とかわかるでしょ?どこを突いたら死ぬとか、どこが痛いとか、逆にどこは大丈夫とか」
「あ、ああ……まあね」
「だからある意味では、フェルパーも医学の基礎はできてるんだよね。ただ、壊し方に特化してるだけ。私はそれを、経験的にも
知識としても、ちゃんと持ってる。差なんてそんなもんだよ。生かし方を知ってれば、殺し方を知ることにも繋がる……ドクターって、
結構危ないんだからね」
よくよく考えてみれば、生死を司るほどの職である。その言葉に、フェルパーもノームも納得してしまった。
「ただねー、壊し方は知ってても、戦い方を知らないんだよねー。だから、フェルパーの動きを見るついでに、戦い方の
参考にしようと思ってさ」
「殊勝な心がけね」
「でも、うーん……フェルパーの動きって、種族の特徴を活かしすぎてるんだよねー。私じゃ、ちょっと真似できないや」
「あー、なるほど……もっと根本的な部分なら、教えられるけど」
「あ、大丈夫大丈夫。これでも得るものはあったからさ」
事あるごとに妄想の世界へ旅立つことを除けば、ドワーフはかなり真面目な性格だった。ドクターとしても順調に腕をあげており、
今はこうして戦闘訓練も熱心に行っている。
「ほんと、精の出ることね」
「精が……出る…………激しい運動で……精が……出る…」
「……毛むくじゃら、今日は絶好調ね」
「はい!?え、ええ!体調はわふっと好調ですよ!」
そんな三人を、バハムーンは仲間外れにされた子供のような目で見つめている。
「いいないいなぁ〜……私もフェルパーとかドワーフと仲良くしたいのになぁ…」
「じゃあ無理矢理抱っこ迫るのやめてあげなよ。それが主な原因なんだから」
「え〜?抱っこって、一番可愛がってあげてると思うんだけどなあ…」
「………」
ディアボロスは特に誰と話すわけでもなく、黙って他の仲間を見つめていたが、そこで不意に立ち上がった。しかし、動作の一つ一つが
静かであり、しかも普段から喋らないため、バハムーンもクラッズも気づかない。
「最近フェルパー、ノームとずっと一緒だしさ……私が近づくと、ノーム怒るし…」
「なんか、ノームってドワーフとフェルパー以外が近づくと怒るよね」
「そうなんだよぉー!だからさ、最近全然あいつらと喋れなくて…」
その時、バハムーンはちょんちょんと肩を叩かれた。振り向いてみると、ディアボロスがタオルを差し出している。
「ん?タオル?私、別に使わないけど…」
「………」
ディアボロスは首を振り、ドワーフ達の方を指差した。
「?……あっ、もしかして渡して来いって!?」
バハムーンの言葉に、ディアボロスはやはり、黙って頷いた。
「そうだよな、汗かいてるもんな!よぉし、行ってくる!ありがとな!」
タオルを受け取ると、バハムーンは嬉しそうに三人の元へ走って行った。それを見送ってから、クラッズはディアボロスに笑顔を向ける。
「君って、優しいよね」
「………」
ディアボロスは笑顔だけでそれに答え、再び腰を下ろした。
それは普通の、というより、ようやく普通の光景になった、ある休日の一場面だった。
翌日、一行は相変わらず蹲踞御殿の探索に出ていた。今はもうだいぶ下層にまで行けるようになっており、この時も最下層付近まで
足を踏み入れていた。現れるモンスターは強いが、今ではそれぞれ互角以上の戦いができるまでに腕を上げている。
しかし、それはあくまでも正面から対峙した時の話である。
「どうする?あと二回ぐらい戦ったら戻るか?」
「そうだねー。ドワーフも、魔力少し減ってきてるでしょ?」
「うん。調子良ければまだ数回いけるけど、それぐらいが無難かな」
「よし、それじゃああと二回…」
そこまで言った時、フェルパーの動きが止まった。
何気なく踏み込んだ曲がり角。その陰から、一本の刀が伸び、フェルパーの脇腹に突き刺さっていた。
「っ!?フェルパー!!」
クラッズが気付き、刀に手を掛ける。直後、風を切る音が鳴り、クラッズまでもが倒れた。
「な、なんだ!?」
「こいつっ……フェルパーを放せっ」
「あ!ノーム、ダメだよ!」
ドワーフの忠告も聞かず、ノームは前列に躍り出ると、フェルパーに刀を突き立てるはぐれ忍者に打根を投げつけた。
しかし、その攻撃は容易くかわされ、さらなる状況の悪化を招いた。
「ぐっ」
陰に隠れていたのは、はぐれ忍者だけではなかった。ドラゴンデスの一撃で、ノームは地面に激しく叩き付けられ、動かなくなった。
同時に、突き刺さっていた刀の抜けたフェルパーは、杖を支えに辛うじて立っていたものの、やがて力尽きたように倒れた。
「うわっ、ノーム!フェルパー!うぅ〜、こいつらぁ…!」
「ちょっとまずい状況だね。トカゲ、前衛頼める?」
「う……い、痛いのやだけど……しょうがないな、やる!」
「頼むよ。ディアボロス、トカゲの援護お願い」
言い終えると、ドワーフはヒーラスを詠唱した。しかし、あまりに傷が深すぎるため、先に倒れた三人にはほとんど効果が
ないらしかった。
「おい、ドワーフぅ!こいつら死んじゃうよぉ!早くしないとぉ…!」
「わかってるっ!!なら、今やることは何!?この状況をどうにかしなきゃ、私達だって死ぬ!!そしたら、誰も助けられない!!」
「く……そう、だよな…!このおおぉぉ!!お前等、覚悟しろおおぉぉ!!」
自棄になったように叫び、バハムーンはウォーピックを振り回した。力任せで技術の欠片もない攻撃とはいえ、その速さは到底
見切れるものではなかった。一体のはぐれ忍者が吹っ飛び、動かなくなるのを見届けると、バハムーンは次の獲物に目を移す。
その隙に、ディアボロスは癒しの踊りを踊り、ドワーフの補助をする。自身への攻撃は、それこそ踊りのような動きでかわしてしまい、
まだ一撃も受けてはいない。敵もそれがわかったのか、だんだんとバハムーンに攻撃が集中し始める。
「トカゲ、大丈夫!?」
「うぅ……痛いよぉ……でも、負けないんだからなぁ!!」
再び、バハムーンはウォーピックを振り回す。しかし、その危険さは敵も身に沁みてわかったらしく、残ったはぐれ忍者は
ドラゴンデスと隊列を入れ替えた。
「あっ、このっ!!逃げるんじゃ……うああぁぁ!!!」
ドラゴンデスが尻尾を振り回し、バハムーンの腹に直撃する。その一撃は異常なほどに重く、バハムーンの巨体が吹っ飛び、
壁に叩きつけられた。
「トカゲっ!!」
「ぐ……あ…」
一声呻くと、バハムーンはぐったりと倒れ込んだ。どうやら気絶してしまったらしい。
「くっ……ディアボロス、クラッズとノームの回収、どれくらいかかりそう…!?」
煙玉を後ろ手に持ちながら、ドワーフが尋ねる。しかし、ディアボロスは険しい表情で首を振った。
「あの位置じゃきついか……でもやらなきゃ……ああっ!?」
ドラゴンデスが足を踏み出す。その先には、倒れたままのクラッズの姿があった。
「死なせない!!」
一声叫ぶと、ドワーフは止める間もなくドラゴンデスに突進した。しかし、何の準備もなかったわけではない。
相手が腕を振り上げた瞬間、ドワーフは煙玉を叩きつけようとした。
瞬間、はぐれ忍者が懐に飛び込み、煙玉を蹴り飛ばしてしまった。
「ちぃ!!でも、やらせない!!」
流れるような動きで、はぐれ忍者が刀を振るう。しかし、ドワーフはあえて相手の懐に飛び込み、胸倉を掴むと片手で投げ飛ばした。
その隙に、ドワーフはクラッズを抱きかかえ、その場を離れようとした。その瞬間、ドラゴンデスがドワーフ目掛けて腕を振り回す。
「きゃあっ!?あう……ぅ…」
派手に吹っ飛ばされ、ドワーフとクラッズが地面に横たわる。
「っ!」
そこに、ディアボロスが慌てて駆け寄る。ドワーフを抱き起こし、体を調べると、幸い大した怪我ではないものの、
ドワーフは完全に気を失ってしまっていた。
「………」
優しくその体を横たえると、ディアボロスはゆらりと立ちあがった。そして、両腰に下げたタルワールをゆっくりと引き抜く。
凄まじい殺気を放ち、相手を睨む。同時にモンスター達は、最後の獲物に向かって突進した。
ドワーフは誰かに体を揺さぶられる感覚に、ゆっくりと目を開けた。
「う……あれ、私…?」
「……大丈夫か?」
目の前に、不安そうな顔をしたディアボロスの顔がある。辺りの景色を見る限り、どうやらまだ迷宮の中のようだった。
「あ……気ぃ失っちゃったんだ……ごめん、迷惑かけたでしょ?」
「………」
ディアボロスは黙って首を振る。ドワーフは感覚を探るように体を動かし、ゆっくりと立ち上がった。
「場所は……ちょっと移動した?よかった、逃げられたんだね」
「………」
「あ、しかも全員いるし!ちょっと!ちょっとトカゲ!起きてよ!」
角をゴンゴン叩くと、バハムーンは顔をしかめながら体を起こした。
「うあぁ、角やめてよぉ……あれ、ドワーフ?え、あの、敵は?」
「ディアボロスが、連れて逃げてくれたみたい。トカゲ、傷は平気でしょ?他の運ぶの、手伝って。あいつら、私の手に負える
怪我じゃないからさ」
「え、ちょっとお腹痛い……で、でも、他のみんなの方がやばいんだよな?じゃあ、我慢する」
残った三人は、それぞれ一人ずつ倒れた仲間を抱きかかえた。仲間が揃ったのを確認すると、ドワーフは帰還札を使い、一行は地上へと
戻って行った。
それ故に、彼女達は気づくことがなかった。
彼女達のいたところから、僅かに離れた場所。そこでは四肢を切り取られ、それでもなお死ぬことができず、苦悶の呻きをあげ続ける
モンスター達が、血だまりの中に横たわっていた。
ドワーフの応急処置と、治療所での手当ての甲斐あり、倒れた三人は無事、一命を取り留めた。その後、ドワーフが魔力の続く限り
回復魔法をかけ続けたおかげで、翌日には全員が再び探索に出られるほどに回復していた。
「迂闊だったよなあ……あんな不意打ち受けるなんて、本当に迂闊だった…」
「僕も、抜刀前に斬られたのは悔しいな……もっと精進しないと」
最初にやられた二人は、それが相当にショックだったらしく、しきりと反省の言葉を口にしている。
「で、ノーム。私、あの時ダメって言ったよね?なのに勝手な行動して、挙句に一発でやられて、全滅したらどうするつもりだったの?」
「……どうだかね」
「感情に任せた行動っていうのは、極々一部の特殊な状況下ではすごい力発揮するけどね、不意打ち受けた時なんて最悪だよ?
相手はそれも踏まえた上で待ち構えてるんだから。今度また同じことしたら、お尻百叩きにするからね」
「……覚えとく」
ノームの方は、ドワーフに叱られっぱなしである。彼女が残っていれば、また状況は違っていただけに、無理のない話である。
「なあなあ。それで、今日はどうするんだ?また蹲踞御殿行くのかー?」
「僕はそれでもいいと思うけど、どう?」
「あ、俺ちょっと交易所見てきていい?何か面白い物でも入ってないか、見てみたい」
「あたしも行く」
「じゃ、ひとまず解散かな?またあとでね」
フェルパーとノームが交易所に向かい、他の四人はその辺で適当に時間を潰すことにした。その時、一人のタカチホの生徒がクラッズに
声を掛けた。
「あれ、クラッズ!?久しぶりだね!どうしたの、君一人?」
「え?ああ、フェアリー!久しぶり!いやね、ちょっと事情があってね…」
話によると、二人は同期だということだった。クラッズは現状を説明し、簡単に仲間を紹介する。
「へー、なるほど。噂には聞いてたけど、この人達が…」
「……小さいなあ…」
「トカゲ、やめてよ。これ以上余計な騒動起こさないで」
「あ、そうそう。クラッズ、ここを拠点にしてるってことは、蹲踞御殿に?」
「うん。昨日も行ってきたばっかりだよ」
「お、奇遇だね。僕も行ってきたんだけど……君、どこまで行った?」
急に声を潜め、喋り出すフェアリーに、クラッズも表情を改める。
「え、何かあったの?」
「うん、実はね……昨日、僕達かなり深いとこまで行ったんだ」
「おお、腕上げたね」
「……煙玉様々だよ」
「……そ、そう」
「まあとにかく。そしたらさ、気持ち悪いもの見ちゃって…」
「ど、どんなの?」
「それがさあ、すごいんだ。ドラゴンデスと、はぐれ忍者がさ、手足斬り落とされて、倒れてんの。しかも、生きてるんだこれが」
「うわ……何それ」
「どうも、わざととどめ刺さないでおいたみたいでさ、モノノケ相手とはいえ、さすがにかわいそうだったよあれは……だから、
とどめはしっかり僕達が刺してきたけど」
「ひどいことする人もいるんだね」
「それが怖いんだよね。つまり、そんなことした奴がどこかにいるってことだろ?クラッズ、一応気を付けてな」
その会話を聞きながら、ドワーフはバハムーンに耳打ちした。
「ねえ……私達が襲われたのも、はぐれ忍者とドラゴンデスじゃなかった?」
「だよなー。お前とかフェルパーとかにひどいことするから、バチが当たったんだろ」
「……ま、そうかもね」
「絶対そうだって……あっ、猫!」
いつの間にか、ディアボロスの足元に一匹の子猫がまとわりついていた。それを目ざとく見つけ、バハムーンは文字通り跳び付いた。
「ああっ、可愛いなあ〜!うりうり、ニャーニャー」
子猫を抱き上げ、撫で回すバハムーン。それを、ドワーフは呆れたように見つめている。
「まあ、かわいいけどさ。懐かれたら、色々大変だよ?」
「ええー、懐いてほしいのに…」
「その子ガリガリだし、変な病気持ってる可能性もあるんだからね。まあ、トカゲは引っ掻かれても怪我しなさそうだけどさ」
ミイミイと小さな鳴き声をあげる子猫。バハムーンは蕩けるような笑顔でそれを見つめており、下手をすれば持ち帰ろうと
言い出しかねない雰囲気である。
「あと、餌もダメだからね。飼うわけじゃないんだから」
「うぅ……痩せちゃってるのになあ…」
「自然の摂理に手出ししないの。誰かが拾ってくれること祈れば?」
「お前、ドクターなのに冷たいこと言うよなー」
「そりゃ、助けたいから仕事にしたわけじゃないもん。むしろ、パティシエのトカゲの方が、出番なんじゃないの?」
「……お菓子の材料、今はないもんなあ…」
そんなことを話しているうちに、いつしかフェアリーはいなくなっており、交易所にいたフェルパーとノームが帰ってくるのが見えた。
「おーい、クラッズ!いい収穫あったぞー!」
「おかえりー。何があったの?」
「これ!破れた転移札!安かったからさ、買ってきちゃったよ!これで、楽にタカチホ戻れるぜ!」
「ああ!そういえば、タカチホ行く予定だったんだもんね!よし、じゃあみんな、半分忘れてたけど、タカチホ向かっていい?」
無論、断るはずがない。目的地が決まったところで、バハムーンは子猫を下ろした。
「連れて行きたいけど、そうもいかないんだよなー。強く生きろよー」
フェルパーとノーム、そしてクラッズは既に歩き出しており、バハムーンとドワーフも後を追う。
最後尾になったディアボロスは、再び足元にまとわりついてきた子猫に目を移した。
「………」
ちらりと仲間の方を見、ディアボロスは上体を屈め、子猫の頭を撫で始めた。
ゆっくりと、右足が上がる。ディアボロスの手が視界を遮っているせいで、子猫はそれに気付きもしない。
愛情の籠った手で子猫の頭を優しく撫でると、ディアボロスは大きく息を吸い込んだ。
「……ああそうだ!ディアボロス、きの…!」
バハムーンが振り返るのと、ディアボロスが足を振り下ろすのはほぼ同時だった。
辺りに嫌な音が響き、ディアボロスが明らかに狼狽した顔を向ける。だが、バハムーンの方は狼狽どころではなく、
完全に怯えきった目をしていた。
「な、な……何、して……るんだよぉ…!?」
「ん?トカゲ、どうし…」
異変に気付き、仲間が次々に振り返る。そして全員が、ディアボロスの凶行を目にすることになった。
「……え?な……何、してんの…!?」
「ど……どう、して…!?」
「………」
ディアボロスは表情を曇らせ、俯いた。
「……ド、ドワーフ!あの子、助けられないか!?何とかしてやれないか!?」
「無理だと思うけどねぇ……一応見てみるよ」
ドワーフは、さして大きな反応もせず、堂々とディアボロスに近づく。彼女が近づくと、ディアボロスは一歩後ろに下がった。
しかし足元の亡骸を見るなり、ドワーフは首を振る。
「……どうしようもないね。頭砕かれたんじゃ、蘇生のしようもないよ」
「そ、そんなぁ……なんで……なんで、そんなひどいことするんだよぉ!?」
泣きそうになりながら叫ぶバハムーン。しかしディアボロスの方も、沈痛な表情で俯くばかりだった。
「……とにかく、目的地に向かおう。バハムーン、その話は悪いけど後にしてくれ。あと、ディアボロス…」
一瞬言葉に詰まり、フェルパーは後ろを向いてから口を開いた。
「……遅れるなよ」
異様な雰囲気を湛えたまま、一行はのろのろと歩き出した。初めての砂漠にバハムーンがはしゃぐこともなく、クラッズやフェルパーが
帰郷の言葉を発することもなく、ただ黙々と歩き、飢渇之土俵に着くと、何も言わないまま破れた転移札を使う。
結局、彼等はタカチホ義塾に着くまで、誰一人として言葉を発することはなかった。
その日はもう、探索に出ようという話は出なかった。元々、この周囲の迷宮はさほど強いモンスターがいないため、あまり鍛錬に
ならないというのもあるが、仲間の突然の凶行に、どうしていいかわからなかったというのが大きい。
だが当のディアボロスは、それに対して何か釈明をするでもなく、あてがわれた寮の一室に篭ったまま出てこない。昼食にも姿を
見せず、それどころか夕食にも姿を見せなかった。
当然、話題はその彼のことになる。三校の制服が入り混じった編成に好奇の目を注がれつつ、一行は小声で話をしている。
「なあ、あれからディアボロス見た奴、いる?」
「誰も見てないみたいだよ。僕も見てないし」
「……あんな悪魔、放っておけば」
冷たいノームの言葉に、バハムーンも賛成の意を示す。
「そうだよー!あんなひどいことする奴ー!なんで、あんなかわいそうなことできるんだよ……ん、この饅頭っていうの、おいしい…」
「まあ、気になるよねえ。あんなの、今までしたこともなかったのに…」
「何か、嫌なことでもあったのかな?」
「……豆、か?これに砂糖と……砂糖だけかな?柔らかいのは、煮て、潰して……なるほど……皮はパンみたいだけど、
イースト使ってないなこれ…」
バハムーンは途中から意識を別のところに奪われ、完全に自分の世界に入ってしまっている。
「八つ当たりする奴でもないと思うんだけど……わかんないなあ…」
「わかんないんならさ」
気のない感じで、ドワーフが口を開く。
「直接聞けばいいじゃん。簡単なことでしょ?」
「直接、ねえ……そうは、言うけどさ…」
「子猫を平気で殺すような変人とは、話したくもない?」
遠慮のない物言いに、フェルパーは一瞬言葉に詰まった。
「……胸を張っては、否定できないな…」
「もー。そこは嘘でも否定しなきゃ、女の子にもてないよ?」
「毛むくじゃらっ」
「でもさ、本人に聞きもしないで、どうなんだろどうなんだろって話してたって、わかるわけないじゃん。憶測だけで
解決する話でもないしさ」
「でも、ドワーフ。あんなこと平気で出来る人と…」
「気持ちはわかるよ。怖いんでしょ?理解できない存在が。だから、たとえ間違ってても、一応の類型化をしたくて、話し合ってる。
そうすれば、未知への恐怖は消える。つまりそういうことでしょ?」
「………」
ドクターだからなのか、それとも元々の性格なのか、ドワーフは極めて冷静だった。その言葉に、誰も反論できない。
「大体さ、あれ、平気で出来てたわけじゃないと思うよ」
「え?」
「あの時の顔、見た?なんかさ、見られちゃったー、みたいな顔してて、だからあれがひどいことだっていう自覚はあると思うんだよね。
わかっててやるんだから、何かしら理由はあると思うんだ。そもそも、ディアボロスって優しい人でしょ?フェルパーだって、
アイスクリームおごってもらったの覚えてるでしょ?」
「まあ、確かに…」
「てわけで、私は本人に直接聞いてくるよ。長話になるかもしれないし、結果は明日にでも教えてあげるから、安心して」
そう言うと、ドワーフは席を立った。
「……あれ?もう食べ終わったのか?」
「トカゲがボーっとしてる間にねー。えっと……食器返すのってどこ?」
「ああ、それはあっち。ほら、あの角の…」
「ああ、あそこね。ありがと」
ドワーフは食器を返してから、学生寮へと向かう。さすがに他校の生徒が珍しいらしく、周囲からは好奇の視線がいくつも飛んできたが、
特に気にすることもなく歩き続ける。
そして、他校の生徒用の部屋が並ぶ階に出ると、ディアボロスの部屋のドアをノックする。
「ディアボロス、いるー?入っていい?」
返事はない。ドワーフはもう一度、中に声を掛ける。
「返事ないなら入るけど、いいよねー?」
やはり、返事はない。ドアの取っ手に手を掛けると、鍵はかかっていないようだった。
少しだけ開けて、中を覗いてみる。ディアボロスはベッドの上で、膝を抱えて座り込んでいた。
「お邪魔しまーす」
一声かけて、部屋の中に入る。ディアボロスは僅かに顔を上げ、ドワーフの顔を見つめている。
「何やってんの、着替えもしないでさ。その格好、パンツ丸見えだよ」
冗談めかして言うと、ディアボロスは軽く息をついた。
「……見て楽しいもんでもないだろう」
「まあねー。でも……パンツ越しに、見えるものが…」
そう言いかけると、ディアボロスは片足を伸ばし、スカートと膝でその部分を隠した。
「ちぇ……ま、いいや。隣座っていい?」
「………」
ディアボロスは答えず、黙って頷いた。だがそれ以前に、ドワーフはぴょんとベッドに飛び乗り、勝手に隣に座っていた。
「でさ、私が何しに来たか、わかるよね?」
「……パーティから、出て行けとでも?」
「ちーがーう。その判断下すにしても、話聞いてからじゃないと下せないでしょ?」
ドワーフの言葉に、ディアボロスは小さく笑った。だがそれは、自嘲のようなものも多分に含まれていた。
「話して、わかるもんか」
「かもねー。でもさ、話してくれなきゃ、もっとわかんない。それがわかるかどうかだってわかんないよ。どうしても話したくないなら
別にいいけど、そうじゃないなら話してほしいな」
「………」
それでも答えずにいると、ドワーフはにんまりと笑った。
「じゃ、こういうこと?『俺はバハムーンに撫でてもらえないのに、どうしてお前は撫でてもらえるんだ!?気に入らない!死ねー!』
って、そう思って殺した?」
「違うっ…!」
呆れと怒りの入り混じった声で、ディアボロスが否定する。すると、ドワーフはまた笑う。
「じゃ、教えて。それが理解できるかどうかはわかんないけど、とりあえず聞かなきゃそれもわかんないから」
「……変わった人だ」
「それはお互い様」
ドワーフの言葉に、ほんの少しの笑顔を浮かべてから、ディアボロスはぽつぽつと語りだした。
「あの猫……あんなガリガリに痩せ細って……つまり、餌ももらえていない、獲物も獲れてないってことだろ?それに、親もいない。
あのままじゃ、あの子猫は散々苦しんで死ぬのは目に見えてる。餓死か、モンスターに食われるか、いずれにしろ楽には死ねない。
だから、そんな苦しみを味わう前に、殺してやったんだ」
「………」
その言葉を、ドワーフは頭の中で整理していく。
「誰かが拾ってくれるとか、そういうのは考えなかったの?」
「その可能性より、そのまま死に至る可能性の方が高い」
「頭を砕くなんて殺し方したのはどうして?」
「俺の知る限り、あれが一番苦痛が少ない」
「なるほどね。確かに脳を破壊するんだから、痛みを感じるかどうかも微妙なとこだね」
つまるところ、彼はやはり善人なのだ。しかし、その基準が違う。普通の者が、あの子猫に対して『幸せになってほしい』と
考えるところを、彼は『不幸になってほしくない』と考えるのだ。その結果、『頑張って生きて幸せになる』という答えではなく、
『不幸が訪れる前に、今この場で楽にしてやる』という結論に至ったのだ。
「あのさあ、もしかして、蹲踞御殿の四肢切られたモンスターとか言うの、あれも君の仕業?」
ディアボロスは黙って頷いた。
「あれはどうして?」
「当たり前だろ…?お前……お前達を、あんな目に遭わせたあいつらを、楽に死なせてやるつもりはない」
むしろその質問が意外だと言うように、ディアボロスは答えた。
「お前、火刑を見たことは?」
「ないよ、そんなの。後学のために、一度は見てみたいんだけど」
「あれだって、本当に生きたまま焼かれる奴は少ない。普通は、執行人が隙を見て、火を付ける前に慈悲の一撃をくれてやるもんだ。
重罪人であれば、それすらもらえず、わざと火勢を弱めて炙り殺されるのが普通だ……それが、普通だろ…」
そこまで話して、ドワーフはようやく彼の考えを理解した。
確かに善人ではある。しかし、基準があまりに違っているのだ。受けた苦痛は何倍にもして返して溜飲を下げ、苦痛だらけの生を
続けるよりは、速やかな死という安らぎをもたらしてやる。それが彼の善行であり、いわゆる世の『善』とは、明らかに異なっている。
「……私の、ドクターとしての目標はね」
突然、ドワーフはそう切り出した。
「百人見て、百人が絶対助からないって言う患者も助けること。だから、私は君の考えには賛成できない」
「………」
「でも、理解はできるよ」
その言葉に、ディアボロスはハッとしたようにドワーフを見つめる。
「医学にも、聖術にも、限界はある。そのどっちでも、もう絶対に助けられないってなった場合……最後にできることは、苦しみを
引き延ばさないための、安楽死って手段がある。私は、その必要をなくすのが目標。だから賛成はできないんだけど、理解は十分に
できるよ」
「………」
「まったくもう。最初っから言ってくれれば、こんな面倒臭くなかったのにさ……それにしても、君ちゃんと喋れるんだね。
本当に喋れないんなら、カウンセリングでもしようかとか考えてたんだけど、必要ないかな。あはは」
そう笑いかけると、ディアボロスも微笑を浮かべた。
「……ねえねえ、せっかく珍しく喋ってるんだからさ、もっと色々聞かせてよ。たとえば……あっ、そうだ!今の仲間のこととかどう?
フェルパーとかどう思ってる?」
「フェルパー……いい男だな、あいつは」
「いい男……ですか……や、やっぱり女の子として…」
「あいつは飾らない。言葉も自分も。信頼のおける相手だ。寝起きだけは厄介だが」
「なぁんだ……まあいいや。じゃあさ、そのフェルパーにべったりのノームは?」
「……あまり、好きじゃない。言葉も性格も、冷たい奴だ」
「君も、知らない人が見ればいい勝負だと思うけどね……トカゲとかは?」
次々に振りかかる質問にも、ディアボロスは嫌な顔一つせずに答える。
「……子供みたいな奴だな。独善的なところが、子供らしくもあり、バハムーンらしくもある。純真でいい奴なのは間違いない」
「買い被りすぎじゃない?まあいいや、じゃあ同じく純真そうなクラッズは?」
「クラッズ……あいつは、わからないな…」
意外な言葉に、ドワーフは首を傾げた。
「一見、純真そうだが……隠しきれない陰がちらつく。たぶん、人に言えない何かを抱えてるはずだ。恐らくは、フェルパーも」
「……そ、そんな奴だったっけ?へえ、よく見てるなあ…」
ちょっと息をついてから、ドワーフはにまーっと笑う。
「じゃ、最後、私のことはどう思ってる?」
「………」
一瞬の間が空き、ディアボロスは口を開いた。
「……可愛い奴だと思ってる」
「可愛い?あ〜、トカゲと一緒か。ま、ねー。このわふっともふっと獣っぽいところが可愛いって、よく…」
「いや……女の子として、可愛いと思ってる」
一瞬、時が止まった。
「……は、はい?」
「……可愛い、女の子だと、思ってる。それに、ドクターとしての誇りを持ち、自分なりの矜持を持ってるところは、好感が持てる」
「え、ええと……それは、あの、あれですか?いわゆる告白?なんですか?」
再び一瞬の間が空き、ディアボロスが答える。
「……そうとも言える」
あっさり肯定され、ドワーフは凍った笑顔のままでディアボロスを見つめる。
「へえ……女の子として、可愛い?」
「ああ」
「そっかそっか……そうかあ…」
特に、彼を男と意識したことはなかった。無論、妄想の対象にしたことはよくあったが、彼を一人の男として見たことはない。
しかし、こうして面と向かって、女として見ていると言われると、途端に彼を一人の男として意識し始める。
その上で、改めて彼を見た場合、少なくともドワーフとしては十分に魅力的だった。顔立ちもよく、ダンサーならではの均整のとれた
体を持ち、また女装しているというところも、ある種の倒錯的な魅力を感じる要因だった。
そして、頭の中で現状把握と相手の吟味、さらに自身の感情などの整理がついた瞬間、ドワーフはディアボロスを押し倒していた。
「っ…!?」
「……女の子として、可愛いと思ってるよね!?」
鼻息荒く、そう尋ねるドワーフ。戸惑いつつもディアボロスが頷くと、彼女はぺろりと舌舐めずりをした。
「あのさ!最近探索ばっかだったでしょ!?溜まって、ませんか!?私は、溜まって、ます!」
丁寧語になったことに不安を覚える間もなく、ドワーフはディアボロスの体に馬乗りになりつつ、制服を脱ぎ始めた。
「お、おいっ!?」
「いいでしょ!?男なら嫌じゃないでしょ!?大体、男の部屋に女の子入れた時点で、覚悟はできてますよね!?」
「普通逆だ…!」
「ちょっとぐらい期待しましたよね!?男なら!それに、君だって溜まってるでしょ!?それとも何気に抜いてましたか!?」
「い、いや…」
答えるまでもなく、ドワーフの尻尾に何かが当たる。それに気付くと、彼女の尻尾がビクッと震えた。
「あっ……ほ、ほら、スカートの下で元気になってますよ?あ、なんかいいな、この光景……それに、ほんとに私のこと、
女の子として見てるんだね……ちょっと嬉しいかも」
わざとか無意識か、ドワーフはぱたぱたと尻尾を振り始めた。その付け根がモノの先端を撫で、ディアボロスは呻きをあげる。
「……ね?いいよね?お互い気持ちよくなって、すっきりできるんだし。それに、私も……君のこと、嫌いじゃないよ」
上着を脱ぎ捨て、ドワーフはディアボロスに顔を近づける。そして、固まっている彼の頬をペロッと舐めた。
「ふふ、ちょっとしょっぱい。汗の味と、涙もちょっと?」
「……泣いた覚えはない」
「ほんとかなー?じゃ、他のとこと味、比べてみないとね」
笑いながら言うと、鼻の頭をかぷっと噛み、すぐに顔を離すと、今度は耳朶に舌を這わせる。
「う……く、くすぐったい…」
「ん〜、男の子はここ、そんなによくないかな〜?でも、ここ舐めるのは好きなんだよね」
言いながら、ドワーフはディアボロスの制服に手を掛け、留め具を外していく。
胸元をはだけさせ、少し体をずらすと、そこに舌を這わせる。胸板を舐め、うなじをなぞるように舐め、一瞬口を離したかと思うと、
不意打ちのように乳首を舐める。
「くっ……ドワーフ…!」
「舐められるの、嫌い?えへへ、私は舐めるの好き。すべすべの肌、舐め心地いいんだもん」
言いながら、ドワーフは腰を動かし、自身の秘部をディアボロスのモノへ擦り付ける。お互いの下着越しとはいえ、その刺激は
十分すぎるものであり、既に彼のモノは大きく屹立していた。
「ふふふ〜、男の子の味。こうしてるだけでも、濡れてきちゃうよ……ね、ディアボロス。私にも、して?」
ドワーフはディアボロスの腕を取ると、自分の胸に押し付けた。
「……手の方が余っちゃう代物なのは、知ってるつもりだけど…」
「………」
ディアボロスはあえて何も答えず、胸をそっと撫でる。同時に、ドワーフの体がピクンと震えた。
「んっ……あっ、ディアボロス……もうちょと、内側……きゃんっ!そ、そこぉ…!もっと触ってぇ…!」
確かに、肉付きはいいが脂肪の少ない胸だった。それでも控えめな膨らみは存在しており、円を描くように揉みしだくと、ドワーフは
甘い吐息を漏らす。
「んあぅ……それ、いいよぉ……やっ……もっとしてぇ…」
その言葉に応えるように、ディアボロスはさらに強く刺激する。ドワーフは軽く体を仰け反らせつつも、ディアボロスの下着を
手探りで掴むと、一気に引き下ろした。
「はう……ふぁう……気持ちいい…!」
うっとりと呟き、ドワーフは突然ディアボロスの首を掻き抱くと、その口元をぺろっと舐めた。そして間髪入れず、彼の口を
自身の唇で塞いだ。
「んむ……ふ……ん…!」
ディアボロスの口内で、ドワーフの舌はまるで生き物のように動く。舌同士を絡め合い、頬を舐め、歯茎を撫で、喉の奥まで舌が
侵入する。えずく直前まで舌が挿入されると、ディアボロスは苦しげな表情を浮かべたが、ドワーフはそれを見て陶然とした顔をする。
「んん……ぷはっ!えへへ、また君の味知っちゃったね」
「………」
「ね……そろそろ私、我慢できないよ。まずさ、私のスパッツ、脱がせてくれると嬉しいな」
そう言い、ドワーフは甘えるように頬を擦り寄せる。拒否権はなさそうだと判断し、ディアボロスは片手で彼女を抱き、
手探りでスパッツを掴むと、グッと引き下ろしてやる。ドワーフも尻尾と足を動かし、脱がされるのをしっかり手伝っている。
「……下着はつけてないのか」
「だって、パンツ穿いたらラインがくっきり出ちゃうんだもん。あ、もしかしてその方がいい?」
「………」
呆れた溜め息をつきつつ、尻尾の付け根に手を這わせる。ドワーフの体が、びっくりしたように震えた。
「やんっ、いきなりそこ……あ、やめないで。いっぱい触って」
「……けど、いいのか。今までに経験は?」
「ん、男の人とするのは初めてだけど、心配しなくていいよ。自分でいっぱいしてるから、もう中イキもできるんですよ!?」
「………」
それが具体的にどれほどの経験を指すのかはわからなかったが、少なくとも彼女は相当に経験豊富なのだということは理解できた。
「ね…?だから、楽しみなの。早く、このすっごく大きくて硬いおちんちん、私のおまんこに入れたいの」
そんな言葉を、満面の笑みで吐く彼女に、ディアボロスは改めてドワーフの性格を再確認した。
スカートを捲り、彼のモノを掴み出すと、ドワーフは膝立ちになって位置を調整する。自分で秘裂を開き、そこに先端をあてがうと、
ディアボロスに笑いかける。
「それじゃ、いくね。これ、入れちゃうねっ……んっ…!」
くちゅ、と小さな音が響き、ディアボロスのモノは大した抵抗もなく彼女の中に入り込む。
「うっ…!」
「んああっ!すごっ……おっきくて、熱くて、動いてるよぉ…!」
そのまま一気に腰を落とした。腰と腰がぶつかり、ぱふ、と小さな音が鳴る。
彼女の中は熱く、ほとんど愛撫を受けていないにもかかわらず、とろとろとした粘液に包まれていた。初めての感覚に、ディアボロスは
いきなり射精してしまわないように耐えるのが精一杯だった。
「あっ……はぁ……はぁ……お、おっきいよ……おっきくて、硬くて…」
苦しげな呼吸をするドワーフ。ディアボロスは少し心配になり、彼女の太股に手を置いた。
だが、ドワーフは苦しげな笑みを浮かべ、こう続けた。
「……気持ちいい…!」
ゆっくりと、腰を浮かせる。それに従い、ぬちぬちと音を立ててディアボロスのモノが扱き上げられる。
彼のモノが抜ける直前まで腰を上げ、一瞬の間を置いて、ドワーフは一気に腰を落とした。
「ふああぁぁっ!!!」
「うあぁっ…!」
一際大きな嬌声。ドワーフはそれこそ犬のように舌を突きだし、その顔に恍惚の表情を浮かべていた。一方のディアボロスは、
片方の手で硬くシーツを握りしめ、もう片方の手はドワーフの太股の毛を握り締めている。歯を食いしばり、必死にその快感に
耐える顔は苦悶にも似ていて、もはやどちらが犯されているのかわからない。
「ああ、あっ……い、いいよぅ!ディアボロスも、もっと突いてぇ!おまんこ壊れるぐらいにぃ!おちんちんいっぱい感じさせてぇ!」
叫ぶなり、ドワーフは激しく腰を上下させ始めた。ベッドが激しく軋み、腰がぶつかりあう度に、溢れた愛液がぐちゅぐちゅと
湿った音を響かせる。
十分すぎるほど濡れているにもかかわらず、ドワーフの中はディアボロスのモノを、まるで吸いつくかのようにきつく締めつけてくる。
その上で上下に扱かれ、耐える一方だったディアボロスも、ドワーフの言葉を受けて両手を彼女の尻を掴み、腰を強く突き上げた。
「ふあっ…!?あっ、あっ、あっ!!す、すごいいぃぃ…!」
突然の反撃に、ドワーフは全身を仰け反らせ、快感に震える。尻尾もピンと上に伸びて震え、口からは熱い吐息と嬌声が漏れる。
「あうっ!あっ!ふっ!わうあぁ!やっ、すごっ……すごいよぉ!ディアボロス、もっとぉ!!」
ディアボロスに対抗するように、ドワーフも腰を動かし、彼の動きに合わせる。ディアボロスが思わず動きを止めると、奥深くまで
咥え込んだまま腰を前後に動かし、快感を貪る。
「ひ、久しぶり、でっ……も、もうっ!い、イっちゃいそっ…!」
その言葉を証明するように、徐々に動きが荒く性急になり始める。だがそこで、ディアボロスが声を漏らす。
「ぐうぅ……で、出そうだ…!」
「えっ!?やっ、うそっ!?ま、まだダメぇ!!!わっ、私もイキそうだからあっ、まだ出しちゃダメぇ!!」
叫ぶなり、ドワーフはディアボロスのモノの付け根を、親指と人差し指で強く摘んだ。
「痛っででででっ!!!!」
恐らく、今まで聞いた中で最も大きな悲鳴を上げるディアボロス。それに構わず、ドワーフはさらに強く腰を打ちつけ、
さらに空いている手で自身の胸を滅茶苦茶に揉みしだく。
「ああっ!!あっ!!やっ、あ!!き、きた!!きたぁ!!ああぁぁイキそう、イク、イっちゃうよぉ!!!もっと突いて!!
滅茶苦茶にしてええぇぇ!!あああ、もうダメ!!出して!!出してええぇぇ!!!」
獣のような叫びをあげると、ドワーフは摘んでいたモノを放した。途端に、せき止められていた精液が噴出し、ドワーフの膣内に
注ぎ込まれていく。
「うあああぁぁぁ!!!お腹がじわってぇ!!やあぁぁもうダメぇ!!私もぉぉ……う、うわぁうううぅぅ!!!」
悲鳴とも嬌声ともつかない叫びが上がり、ドワーフの体が弓なりに反り、ガクガクと震える。同時に膣内も激しく収縮し、
注ぎ込まれる精液を残らず吸い上げようとするかのように蠢動する。
二度、三度とドワーフの中で精液を吐きだしていたモノが、少しずつ動きを弱め、やがて動きを止める。それでもしばらくの間、
二人は余韻を楽しんでいた。ディアボロスのモノは未だ硬く、ドワーフの中にはっきりと存在を感じられる。一方のドワーフも、
時折思い出したようにそれを締め付け、体内の異物の存在を楽しんでいた。
「フーッ、フーッ、フー……フー……ふー……ふぅー…」
長い時間をかけ、ドワーフの荒い呼吸が治まっていく。やがて完全にいつもの呼吸に戻ると、ぱたりとディアボロスの胸に体を預ける。
「はぁ……はぁ……すごかったよぉ……きもち、よかった…」
「………」
「んっ…!」
軽く腰を持ち上げ、彼のモノを引き抜く。途端に、出されたばかりの精液が溢れ出す。
「あう、すごい量……こんなに出したんだ、えへへ」
それをハンカチで拭うと、ついでにディアボロスのモノも軽く拭いてやり、そのハンカチをベッドの下に投げ捨てる。
「あ、君も私も、ちょっとスカート汚れた?」
「……俺は大丈夫だ」
「そう?私も、気になるほどじゃないか……ね、それよりさ」
ディアボロスを見上げ、ドワーフはにんまりと笑った。
「またさ、私とセックスしてくれる?」
「今は無理だ」
「あうー、残念。でも別に今じゃないって。また溜まった時にでもさ、どう、です、か?」
「それなら」
「えへへ、やったぁ!君の、大きいし硬いしいっぱい出るし、気に入っちゃった!」
途端に、ドワーフの尻尾が元気よくパタパタと動きだす。しかしふと、ドワーフは表情を改めた。
「ねえ。明日、ちゃんとみんなに、子猫のこと説明してよ。じゃないと、変にぎくしゃくしちゃうから」
ディアボロスは答えなかったものの、黙って頷いた。
「約束だよ?それじゃ、おやすみ!また明日!」
唇に、ちゅっと軽いキスをする。そしてドワーフは、当たり前のように目を瞑った。
胸の上のドワーフを見つめ、ディアボロスは呆れた溜め息をついた。だが振り落としたりはせず、代わりに頭と背中に腕を回し、
ディアボロスもそっと目を閉じる。
恋人とは違う。しかし、体だけの関係でもない。そんな微妙な関係の二人の寝顔は、しかしとても幸せそうだった。
翌朝、ディアボロスは少し気が重かったものの、ドワーフに腕を引かれて仲間の待つ部屋までやってきた。
だが、いざ話すとなると、どこから話せばいいかわからない。しばらく無言でいると、ドワーフが口を開いた。
「……何も言わないなら、私が代わりに言うねー。あのね、昨日聞いてみたら、バハムーンに抱っこされて撫でてもらってるのに
嫉妬したから、ムカついて殺したんだって」
「嘘を言うな。俺はそんなことを言った覚えはない」
すると、ドワーフはディアボロスに笑顔を向ける。
「そうだっけー?じゃ、もう一回お願いね」
ディアボロスは溜め息をつき、昨夜ドワーフに話した内容を一言一句間違えずに再現してみせる。
その言葉に対し、仲間は多少の戸惑いを見せていた。
「けど、だからって殺すことないじゃないかぁ……子猫の方だって、死にたいなんて思ってなかっただろうし…」
「いかにも、悪魔らしい善意ね。他から見れば、悪行と変わらない」
「でもまあ、言いたいことはわからなくもないよ。それを実行しちゃうのはどうかと思うけどさ」
ディアボロスはやはり理解を得られないかと、寂しげに溜め息をついた。そこで再び、ドワーフが口を開いた。
「でね、どうせみんな理解できないでしょ?だから、ディアボロスはパーティ抜けたいらしいよ」
「おい、だから嘘を言うな!そんなこと、俺は思ってな…!」
言いかけて、ディアボロスは慌てて口をつぐんだ。恥ずかしげに頬を染め、俯く彼の姿は、残念なほどに可愛らしく映った。
「ディアボロス、その仕草やめてくれ……誰も出て行けなんて言わないし、抜けて欲しいとも思ってないから」
「……まあ、モノノケは良くて子猫はダメっていうのも、変な話か。あと、受けた痛みは返すっていう考え、僕は嫌いじゃないなあ。
それに関しては、僕は全面的に支持するよ」
「………」
笑顔で言うクラッズを、フェルパーは黙って見つめていた。
「でも、もう二度とあんなことするなよー?次やったら、私怒るからなー」
「私は別にどうでもいいけど……フェルパーがいいなら」
とりあえず、無事に話もまとまり、ドワーフはにんまりとした笑顔でディアボロスに話しかける。
「ね?話してみないとわからないでしょ?」
「……ああ」
それに、ディアボロスも小さな笑顔で答える。そこでようやく、一行の間に和やかな空気が漂い始めた。
「それじゃ、今日どうする?どこか迷宮でも行く?」
「あ、私砂漠とか初めてだから、飢渇之土俵とか回ってみたいなー。それに、饅頭っての作れるようになりたいし!」
「そう?じゃあそれでもいいよ。僕も、これ試しておきたいし」
そう言って、クラッズは腰に差した脇差を叩く。
「ん、長秀の脇差。いい物ね、小さいのにはもったいないぐらいに。どうしたの、それ」
「ひどいなノームは……本当は班長が、僕がそれなりの腕になった時くれる予定だったんだけどさ、今回の混成班作るにあたって、
より力を発揮できるようにって。鬼切とこれで、ようやく侍らしく大小差せるよ」
その言葉に、ドワーフが早速反応した。
「だ……大小……刺すんですか…」
「う、うん。侍は普通、こうやって二本腰に……またどうしたの、ドワーフは…?」
「二本刺し……大きいのは下の口で……小さいのは上の口…」
妄想の世界に入り込んだドワーフを、ノームが何も言わずに引きずっていく。
「まったく、あんたは……でも意外ね。毛むくじゃらなら、口じゃなくてお尻とって言うと思ったのに」
「いやあり得ないから」
突然、素に戻り、ドワーフが反駁した。
「アナルなんて、雑菌だらけで不潔なんだからね?普通そんな所でしないよ」
「でも、あんたは男同士もいけたと思ったけど」
「それは、いいの……そこしかないし……しちゃいけないところでするって、なんか背徳的で……いいですよね…?」
「……なら、なおさらあんたもいけるんじゃないの」
「いや、だからあり得ないから。おまんこあるんだから、そっちでするのが普通でしょ」
「……よくわからない、毛むくじゃらの考えは」
朝っぱらから猥談に華を咲かせる女子二人を無視し、四人は今後の予定を話し合っている。
「それじゃ、少しここに滞在して、それから三大陸一周でもしてみようか?」
「いいなーそれ!ケーキ食べ比べとかもしてみたいぞー!」
「はは、それもいいな。それまでに、防寒着でも用意しとくか」
「フェルパー、寒がりだもんね。……ねえ、ディアボロス」
「……?」
不意に呼ばれ、ディアボロスは不思議そうにクラッズを見つめる。すると、クラッズはにっこり笑った。
「これからも、今まで通りよろしく!」
一瞬反応に迷ったものの、すぐにディアボロスも笑顔を返した。
「ああ……よろしく」
その言葉に、フェルパーとバハムーンも笑顔を浮かべる。そして、フェルパーは少し離れている女子二人に声を掛ける。
「おーい、ノーム、ドワーフ。話聞こえてたかー?」
「うん、聞こえてるよ。この毛玉はどうか知らないけど」
「ふえ!?あ、あ、しばらく滞在でしょ!?大丈夫、聞こえてますよ!今日もわふっと頑張ろうね!」
明らかに考え方の違う者もいる。同じような者もいる。やたらに気の合う者もいれば、気の合わない者もいる。
それらをすべてひっくるめ、彼等はそれでもパーティを組んでいる。
理解しがたいこともある。できないこともある。しかし、それを認めることはできる。
たとえ理解しがたくとも、その考えを認めたこの日、彼等がまた一歩、パーティとして進んだ瞬間だった。
以上、投下終了。
隠語?系をまんま書いたのは初めてのような気が。
ドワ子はガンガン動いてくれるけど、台詞とかズバッと書くのはとても恥ずかしかった。超苦手。
それではこの辺で。
GJ!!
ドワ子かっこいい!ディア男かわいい!
・・・ん? 違うか・・・?
いや、違わないな。これで合ってる!
あとドラゴンデスさんが凄く強敵に見える! ふしぎ!
出だしでフイタしドワ子攻めで萌えたし
なんかもうGJすぎて困る
228 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/13(土) 23:13:30 ID:VutijzWh
出だしで勘違いしたのは俺だけではないはず
ディア男をかわいいって思ったのは初めてだ、GJ!
229 :
228:2010/11/13(土) 23:14:36 ID:VutijzWh
すまん、下げ忘れてた…
231 :
198:2010/11/16(火) 07:55:42 ID:8jGVWWbr
事情によりまだ終わってないですが書きあがった部分だけ投下させてもらいます。
オレ設定満載、名前つき、今回単独だとトトものである必要性ほぼ皆無な気がしますが……許して。
232 :
198:2010/11/16(火) 07:56:27 ID:8jGVWWbr
「宜しくお願い仕る」
敷かれた夜具の上、着衣を解き、下着姿で二人は向かい合っていた。少女は膝を崩し、少年は
正座したまま、普段以上の生真面目さで頭をさげてみせた。共に赤く染まった頬は、火皿に灯さ
れた蝋燭の炎で照らされているから、というだけではあるまい。
「おう、よろしく」
そう答えるカナエもまた、照れた表情で頬を掻いている。顔を上げたキリュウと、視線が重なった。
じりじりと、短くなった蝋燭の燃える音が聞こえる。
「ちょいとひとつだけ、謝っておかなければならないことがある」
「は……」
しかし、カナエは口をもごもごとさせるばかりで後の言葉が続かない。忙しなく尾や耳を動かす姿が、
キリュウの眼にひどく愛らしく映っていた。
ひとつ深呼吸すると、カナエは言った。
「その、なんだな。誘っておいてなんだが、こういうときに、どうしていいもんだかまったく分からん」
「そうなのですか?」
さも意外、といったふうでキリュウが聞きかえした。
「だってそうだろ、こんな事やってるヒマなんて今までのどこにあったんだよ?」
「言われてみれば、たしかに」
「なあ、お前さん、春画とか艶本とか、そういうのを読んだことは」
「いえ、自戒していたもので」
「……ったく、しょうがねぇなぁ」
「申し訳ありませぬ」
律儀に頭を下げるキリュウの姿に、カナエは苦笑する。
「お前さんが謝るところじゃないだろ、そこは……こうしていても始まらない、か」
「あまり無理をなさらずとも」
「バカ言うなって。ここまできて、引っ込みがつかないだろ、お互い」
そうやって口にしてみれば、性根も座ったような気がしてくる。カナエは、布団の上に仰向けになった。
「まあ、好きにしていい。任せるよ」
言いながらも、気恥ずかしげに視線は逸らされ、晒しに包まれた柔肉が上下している。キリュウは
息を呑む。揺れる小さな灯りに照らされた肌が儚げに浮かび、ここに来て尚犯しがたいものにみえていた。
「怖気ついてないで、せめて晒しくらいは解いてくれよ」
顔をこちらへ向けて笑いかけるカナエであったが、やはり羞恥心をこらえきれぬようで、所在なさ
げに瞳をさ迷わせていた。
「早くしとくれよ。それともあれか、女に恥ずかしい思いをさせて楽しむつもりかい?」
ようやくキリュウは晒しに手を伸ばす。端を胸の下で折り込み固定しているのだが、それを外そう
とすると、どうしてもその奥の柔らかな感触が指に伝わってくる。昂ぶる鼓動を抑えることもできず、
震える手で片側の晒しをを引っ張りだした。だが、きつく絞られたそれは寝そべられたままでは解
けそうにもない。
一拍の逡巡ののち、キリュウはカナエの体を抱き起こす。わずかに体が強張ったような気がした。
「少し、失礼します」
左手で腰を支えたまま、締め付けの硬い部分に手をを差し込んで解きほぐしてやると、内側に隠
されたものが自ら押し出るように晒しが落ちた。強い女の汗の香が、鼻をつく。
233 :
198:2010/11/16(火) 07:57:08 ID:8jGVWWbr
耳元でカナエが囁いた。
「どうだい、中々立派なもんだろ……ほら」
顔を交わした姿勢のまま、カナエの手に導かれてキリュウはその乳房に触れた。長く覆われてい
た肌は汗に濡れ、手からやや零れるほどのそれは掌にしっとりと吸い付くような弾力を返してきた。
男の本能であろうか、我知らず、キリュウはあてがった手を動かしていた。
「ん……」
「痛みますか」
カナエの口から漏れた切なげな声に、キリュウは手を止め問いかける。カナエを首を横に振って
笑った。
「いや、悪くないよ。続けて」
促されるままに、また手を動かし始める。愛撫とも呼べぬような、勘任せの荒々しい戯れであった
が、なお感じるところがあるようで、カナエの吐息に色艶がさし始めてきた。堪えきれぬ昂ぶりを含
んだその吐息が耳をくすぐり、キリュウの官能を甘く刺激する。
ふと首に、重みを持った温かみを覚えた。気がつけば手が廻され、目の前に、熱っぽい色を湛
えたカナエの顔があった。半身がもたれ掛けさせるように預けられていて、太ももから胸まで、心地
よい柔らかさがある。
閉じられた瞳の下、濡れた唇は赤く、誘うように舌が蠢いているのが覗いて見える。こみ上げて来
る情動に逆らわず、キリュウは唇を重ねた。ほのかに酒の香が嗅ぎ取れたが、それを不快と思うこ
ともなかった。
如何程そうしていたものか、甘美な感触に名残惜しみながらも顔を離すと、眼を開いたカナエの
表情は不満げであった。
「……これだけ?」
「と、いいますと」
「……いや、お前さんにこっちの知識を期待したアタシがバカだった」
何かひどい言われようの気がしたが、事実、彼女の気に召さぬところが有ったようだから仕方な
いのだろう。ため息を付きながら、カナエは自らの下帯を解く。
「さて、次は……・こっち、だな」
カナエは再び、キリュウの手を取った。冷たい手だ、とキリュウが思うまもなく、その部分へと導か
れる。指先にに強わごわとした飾り毛が触れた。
「もうちょっと下……だ、な……と……」
キリュウの指が、一際柔らかい部分に触れる。一番外側に触れただけだったが、カナエの体が大
きな反応を見せる。感じているのか、とも思ったが、そうというわけでもないらしい。
「……あはは、続けて……ってもやり方とか分からねぇよな、うん……」
笑って見せるが覇気はなく、続く声もかすかに震えていた。
「割れ目の部分は、見えてるよな? そう、そこに指を使って……」
言われるままに指を動かす。その愛撫にカナエは身体を震わせるが、キリュウは何か、胸への
愛撫とはまた違う、艶めいたものの少ない反応であると直感した。
キリュウの指が奥まった部分へと触れたときである。カナエは突き飛ばすかのような勢いでキリュ
ウから身を引いた。
胸元を押さえ、ひどく荒れた息遣いをしている。暗がりの中分かりづらいが、耳まで朱に染まって
いるようだった。
「……」
「……」
言葉少なに肌を合わせていた二人だが、心地よかった静寂が、ひどく重いもののように感じられた。
234 :
198:2010/11/16(火) 07:57:59 ID:8jGVWWbr
先に口を開いたのは、カナエだった。
「……いや、すまん。そっちにすりゃ訳わかんねぇよな、クソ」
胡坐をかいて、頭を抱えたカナエはぼやくように語り始めた。
「別に、急に嫌になったとか、そういうことじゃねぇんだよ」
キリュウは神妙な面持ちで沈黙を保っている。
「いや、そういうことなのかな? さっきも言ったろ、こういうのは初めてだって」
「……はい」
「アタシの操なんざ大したもんじゃねぇやなんて、誘ったときは思ってたんだけどさ、その、アソコ
触られたとたん、妙に強くなってきてさ。らしくねぇことしてるっつうか。、何か間違えたっつうか……」
「……」
「いやもうホント、我ながら情けねぇなぁ……大体よ、お前だって男の癖になんでそんな受身なんだよ……」
「申し訳ありませぬ」
「謝るところじゃないっつの」
苦笑しなながら、カナエは膝をつめた。
「仕切りなおし、ってのもおかしな話だが、ここまで来て投げ出すってのもアタシの名が廃る」
「隊長、俺は……」
「隊長じゃない、今ここにいるのは、アンタに惚れて惚れて仕方ない一人の女だ」
「よろしく頼む……カナエ」
「上出来だ」
不意に、押し倒された。先のような抵抗はとらない。
235 :
198:2010/11/16(火) 07:58:50 ID:8jGVWWbr
ひとまずここまで。御目汚し失礼しました。
237 :
王女様と私:2010/11/16(火) 14:31:04 ID:J7otvOSp
#>225 乙です。ディアっち、おっとこまえ〜!(カッコはアレだけど) 続き期待しております。
#>235 エロかっこいいとは、こういうコトか。自分では逆立ちしても書けないなぁ。GJ
#巧い人のあとの投下は気がひけますが、エルフの男の娘の話のつづきです。
その朝、ドラッケン学園学生寮特別棟の入り口で番をしている中年の警備員──元・戦士のヒューマンは、片手に大きなトランクを提げた見慣れぬ赤い制服を着た女学生が、近づいてくるのを目にした。
「おっと、嬢ちゃん、止まってくれ」
声をかけられ、ハルバードの柄で通せんぼされたエルフの少女は、ビクッと立ち止まり自信なさげな視線を彼に向けてくる。
「すまないが、ココは特別棟だ。見たところ、別の学校の生徒さんみたいだが、ココには文字通り特別に許可を得た者しか入れないんだ。中にいる人に用事があるなら……」
取り次ごうかと続ける前に、彼の言葉は鈴を振るような可憐な声に遮られた。
「あの……知ってます。えっと……コレを」
少女が差し出したのは特別棟通行許可証。それも1回限りの臨時通行証ではなく、常時行き来を可能とする代物だった。
「こりゃあ、タマげた。アンタ、王室関係者か何かかい?」
「いえ、その……」
エルフ娘が口を濁しているトコロを見て、世知長けた警備員は、慌てて首を横に振った。
「いやいや、いいんだ。無用な詮索するのが俺の仕事じゃないからな。ほら、どうぞ」
「はい……すみません」
ペコリと頭を下げると、他校の──警備員は知らなかったがプリシアナ学院の女子制服を着た少女は、特別棟の建物の中へと消えて行った。
彼女の姿が完全に視界から消えたのを確認してから、警備員は溜息をついた。
「はぁ〜、かなりのペッピンさんだったけど……やっぱり、あの娘も、姫様のお手付きか、もしくはこれから喰われるのかねぇ」
──どうやら一部の人間には、男嫌いなキルシュトルテのストロベリーなシュミについては周知の事実のようだ。
「非生産的っつーか、もったいない話だぜ……っと、イカンイカン。姫様やあのメイドに聞かれたら、首がトんじまわぁ」
ブルルッと背中を震わせて、警備員は再びその職務に戻った。
238 :
王女様と私:2010/11/16(火) 14:31:54 ID:J7otvOSp
もし、先ほどのエルフの「少女」が、警備員のひとり言を聞いていたら、かなり複雑な表情を浮かべたことだろう。
確かに、「彼女」がこの特別棟に来た目的のひとつは、これから王女とねんごろな関係になることではあるし、立場や性格的な面からして「喰われる」という表現もあながち間違いではない
しかし、後半については本人は断固として抗議したいトコロだろう。
「非生産的じゃないです! ボクは男なんだから!!」と。
言うまでもなく、この「少女」は、ヒューレットパーティの弓使いの少年、エルファリアだった。
女生徒を可愛く見せることに定評のあるプリシアナ学院の女子制服をまとい(ニーソとヘアバンドも完備)、アップルの手で薄く化粧(と言っても、口紅を引き軽く香水をつけたくらいだが)を施された姿は、まさに美少女そのものだ。
これでは、間近で会話を交わした警備員が女の子と思い込んでも無理はない。──もっとも、それを本人が喜んでいたかと言うと大いに疑問だが。
想い人に早く会いたい気持ちと、この姿をさらしたくないという気分が拮抗して、エルの歩みは結果的にゆっくりと落ち着いたものになったが、それでも程なく広間に通じる扉の前に着いてしまう。
フゥとひとつ深呼吸してから、エルはノックをしようと右手を持ち上げた……ところで、音もなくドアが開く。
「え! あ、あれ!?」
「ふむ。やはり、お主か。わらわの仮初の住居(すまい)に、よく来たの」
突然の事態に戸惑うエルに、聞き覚えのある声がかけられる。無論、正面のソファに横柄な態度で座ったキルシュトルテから投げ掛けられたものだ。
「あ、はい、こんにちは、お邪魔します」
一瞬目を白黒させてはいたものの、姉貴分の薫陶の賜物か、室内に一歩足を踏み入れ、両手を腰の前で揃えて礼儀正しくペコリと頭を下げるエルファリア。その様子は、外観ともあいまって「初々しい女学生」そのものだ。
ちなみに、もし貴婦人の衣装などを着ていればスカートを摘まんで膝を曲げただろうし、着物姿なら正座して三つ指ついていたかもしれない。どうやら仕草に関しても、(主に姉の仕込みで)知らず知らずに矯正されているらしい。
「(おぉ、可憐じゃ……よいよい)」
そんなエルの様子に一瞬見惚れていたキルシュトルテだが、傍らの侍メイドが「コホン」と空咳をすることで我に返る。
239 :
王女様と私:2010/11/16(火) 14:32:37 ID:J7otvOSp
「あ〜、その……あの伯爵令嬢から一応話は聞いておるが、お主の口から改めて聞こうか。エルファリアよ、お主がココに来たということは、我がパーティーに入り、わらわのそばに侍る覚悟が出来たからとみなしてよいのじゃな?」
いつになく真剣な表情の王女の問いに、エルもまた精一杯の誠意を込めて頷く。
「はい。ボクは、キルシュトルテさんの側にいたいです。盾となって貴女を護り、あるいは弓となって貴女の敵を射抜きましょう……」
(そしていつか、貴女の恋人になりたいです)
という後半部分は、人目(クラティウス&シュトレン)もあったので、自重する。
「よし、あいわかった。それでは今日からお主はわらわのモノじゃ」
字面だけ見れば不遜このうえない物言いだが、この姫君は我儘放題に見えて案外抜け目がない。
その彼女があえて「自分のモノ」と宣言するということはエルをクラティウスやシュトレン同様、自分直属の「身内」として遇するということだ。
王女の傍らに控えたクラティウスは、ごく一瞬だけピクリと眉を吊り上げたが、主の決定に異議を差し挟むような真似はしない。
また、シュトレンの方は、姫のお守役が増えて自分の負担が多少減るだろうことを単純に喜んでいるようだった。
「ありがとうございます! 不束者ですが、よろしくお願いします」
これまでの経緯で拒まれることはないだろうとは思っていたが、それでも正式に想い人のパーティーに加入できたのは、恋するエルフ少年にとっては喜ばしいことだった。
だがそこで、彼がホッと肩の力を抜いた瞬間をみはからったかのように、キルシュトルテの指示が飛ぶ。
「ふふふ……まぁ、細かいコトは後回しじゃ。エルファリアよ。荷物を置いて、もそっと近う寄れ」
先ほどまでは、やや驕慢な響きがあるとは言え、確かに王女と呼ぶにふさわしい威厳と気品が感じられたキルシュトルテの顔は、一転イタズラを企む年相応のワガママ娘のそれに変貌している。
さて、どんな無理難題を言いつけられるのかと思いつつ、それでも嬉しそうに近寄って行ってしまうエルは、けなげと言うか一途と言うか……。
ソファのすぐ前、わずかあと一歩踏み出せば手が届くという場所まで来たところで、キルシュトルテは身振りで彼の歩みを止め、とんでもないコトを言い出した。
240 :
王女様と私:2010/11/16(火) 14:33:21 ID:J7otvOSp
「ふむ。そう言えば、あのアップルとかいう娘に託したその衣装は気に入ったかえ?」
「え。あの……は、はい」
「女装」自体は王女のそばにいる必須条件なのだから、その点について今さら不満を言っても仕方ない。
だとすれば、動きやすく、かといって極端に露出が多かったり奇天烈なデザインというワケでもない学院の制服というのは、確かにベストではなくともベターな選択だろう。
「そうか、それはよかったのぅ。わらわも苦心して選んだ甲斐があったと言うものじゃ♪」
「キルシュトルテさん……」
ニッコリ微笑む想い人の言葉に、エルも「わざわざボクのために」と感激する。
そのまま、ほのぼのした空気が漂うかと思われたのだが。
「ところで……」
と意味ありげに言葉を切るキルシュトルテ。
「わらわが贈ったものは「すべて」キチンと身に着けておろうな?」
一瞬、その意味がわからなかったエルだが、すぐに彼女の真意を悟って、頬を微かに赤らめる。
「──はい、ちゃんと着て来ました」
「ほぅ、そうかそうか。しかし、お主を疑うワケではないが、わらわは何事も自分の目で確認せねば気が済まぬタチでな」
なんだか雲行きがアヤしくなってきたようだ。
「えっと……ボクにどうしろ、と?」
「何、簡単なことよ──エルファリア、スカートを自らまくってみせるがよい」
「!!」
まったく予想していなかったわけではないが、いざ本当に言われてみると、ショックなセリフだった。
「えっと……その……自分で、ですか?」
せめて他の人がまくって確認するというのではダメなのか、という意図を込めて聞いてみたのだが。
「他人の手を煩わせるまでもなかろう。お主が、自分で、そのスカートを、めくって、お主の履いている下着を、わらわに見せるのじゃ」
イジメっ子の本領発揮と言うべきか、キルシュトルテはワザと作った厳粛な面持ち浮かべながら、一言ひとこと区切って克明に命じた。
241 :
王女様と私:2010/11/16(火) 14:33:52 ID:J7otvOSp
「はぅ〜〜〜…………わ、わかりました」
しばし躊躇ってはいたものの、断るためのそれらしい言い訳は思いつかなかったらしい。
純情少年はおずおずと赤いプリーツスカートの裾を両手で握りしめ、ゆっくりまくり上げ始める。
すばやさに長けたエルフの狩人とは思えぬほどノロノロした動作だったが、逆にソレが見ている者にとっては絶妙な焦らしとなっていた。
はしたなくも鼻息を荒くしたキルシュトルテは無論のこと、シュトレンは「うわぁ」と言いつつニヤニヤしているし、あのクラティウスさえこの成り行きに興味を隠せずにいる。
ほどなく、スカートの裾をつかんだエルの手が胸元近くまで持ち上げられた。
「あ、あの……どうでしょう?」
エルフ特有の長い耳まで真っ赤になった彼が、羞恥をこらえて尋ねるが、キルシュトルテは首を振る。
「いかんなぁ。これ、クラティウス。こういう時は、どういうセリフを言うべきか、あやつに教えてやれ」
「はい、姫様」
スッと足音も立てずに背後に近寄ったメイド侍が耳元で囁く言葉に、「ほ、ホントに、そんなコト言うんですか!?」と涙目になるエルフ少年。
「ぼ、ボク、いただいた可愛らしい下着をキチンと履いて来ました。どうかじっくりご覧になって、ご確認くださぃ……」
(はぅぅ〜、は、恥ずかしいよぅ! ボク、男のコなのに、自分でスカートめくって……女の子のパンツ履いてるトコロ、見られてちゃってるぅ)
だが、その恥じらいこそが王女が見たかったものであり、またそんな羞恥を晒すことに自分が微かな快感を覚えていることに、エルはまだ気付かなかった。
「よかろう。新入りとは言え側近に、そうまで熱心に頼まれては、わらわも主として応えぬワケにはいかぬからな」
口ぶりとは逆に、並々ならぬ熱意を込めてエルのスカートの下から現れた下腹部をガン見するキルシュトルテ──とオマケのふたり。
3対の視線が集中する感覚に、たまらず身をよじるエルだが、それがまた一層見る者の萌え心を刺激すると、わかっているのだろうか?
242 :
王女様と私:2010/11/16(火) 14:34:36 ID:J7otvOSp
「──のぅ、クラティウス、シュトレン?」
しばしエルの下着(レース飾りがふんだんにあしらわれた白のショーツ)を凝視していたキルシュトルテは、ふたりに側近に尋ねる。
「はい」
「何ですか、姫様?」
「男の股間には女とは異なる棒状の突起物がついていると聞いていたのじゃが……?」
確かに、エルの下腹部を覆うショーツには、ほとんど膨らみらしきものは見当たらない。
「姫様、アレが俗に言う短小というヤツなのでは?」
「おぉ、なるほど」
メイド娘の軽侮の込められた言葉に、ポンと手を打つキルシュトルテ。
そこまで言われては、さすがにエルも抗議する。
「ち、違います! その……後ろに回して折り曲げてから、パンツ履いてるんです!!」
ちなみに、そうすることを着替え時に提案したのは、元のパーティの知恵袋たるノームの錬金術師メグだった。
おそらく、王女が百合趣味ということで、できるだけ女の子に近い外見の方がウケがいいと考えたのだろう。
「ほほぅ、男のアソコはそんなコトもできるのか」
幸いにして、その処置は姫君の興味を惹いたようだ。
カツカツとヒールを鳴らして近づいてきたキルシュトルテが、さわさわとエルの股間に触れる。
「ひゃンッ!!」
「ふむ、確かに、何か固いモノがあるな。それにしても、お主、可愛い声で啼くのぅ」
王女はとくに嫌悪感を示すこともなくソコの形を確かめた後、そのまま素早く背後からエルの体に抱きつく。
「あ! き、キルシュトルテさぁん……」
ふたりの身長はほとんどないが、ヒールの高い靴を履いているせいか、キルシュトルテのほうが、わずかに大きく見える。
年上の想い人に包み込むように抱き締められ、陶然となってソレを受け入れてしまうエルファリア。
「ふふふ、抱き心地も匂いもよいのぅ。まっこと男とは思えぬ逸材よ」
243 :
王女様と私:2010/11/16(火) 14:35:10 ID:J7otvOSp
王女はその体勢のまま、エルの制服のベストの下に手を差し入れる。
「な、何をスるんですか!?」
「大したことではない。上もちゃんと付けてるか、確かめるまでの話じゃ」
エルのか細い疑問も意に介することなく、手慣れた風に腕の中の少女(にしか見えない少年)の制服のボタンを外してしまうと、肌蹴られたベストとブラウスの襟元からは、ショーツと対になった白いブラジャーが覗いていた。
「うむ、キチンと着けてるようじゃな。感心感心」
言いながら、エルの胸をブラジャーの上から円を描くように撫でる。
「ふぁ……ンっ! や、やめて……くださいよぅ」
無論、エルの弱々しい懇願は聞き入れられない。
乳房など皆無に等しい(むしろあったら問題だ)エルの胸ではあるが、着用時に脇の余った肉などをブラ押し込んである(コレもメグの入れ知恵)せいか、一見したところ、貧乳というか微乳と呼べる程度の膨らみはあるように見えた。
そのわずかな盛り上がりを掌で愛でつつ、キルシュトルテの指先が巧みに男の胸には無用はずの突起を探りあてる。
「お! なんじゃ、ココをこんなに尖らせおって。お主も感じておるのじゃろう?」
「ひン……そ、そんなことォ……」
口では否定しているものの、甘い声と熱い吐息を洩らしている様からは、エルの真意は明らかだった。
ニヤリと笑うと、だが、そこでキルシュトルテは唐突に体を離した。
中途半端に火照ったまま放置されて、「エッ!?」と驚くエルファリア。
「さて。確かにお主が下着を着けておることは確認したぞ。では、クラティウスよ、部屋に案内してやるがよい」
#ここでまさかの寸止め焦らしプレイ。
「馬鹿姫様がエロ過ぎねぇ? それに我慢(性的な意味で)とかできるの、あの人?」という疑問もあるかもしれませんが、このSSにおける姫様は、意外と(いろん意味で)デキる子です。
次回は、小姑な侍女侍による言葉責めと、焦らされて我慢できなくなったエルきゅんは……という展開になる予定。
気長にお待ちください。
>>243 乙、何かイケナイことに目覚めそうなお話ですねえ。俺には今更ですが。
さて、今夜か明日には私も続き投下できそうですね。よし、もーひと踏ん張り
245 :
sage:2010/11/16(火) 17:17:50 ID:tzcBuKXR
乙乙
>>235 GJ!初々しい感じがたまらんね
>>243 こちらもGJ!エルの末r……行く末が楽しみでならんわw
初めまして。小ネタを投下します。エロはない。登場人物は
男……ヒューマン、フェルパー
女……バハムーン、ディアボロス、ノーム
です。
ではどうぞ。
――とある廊下
「バハ子、ちょっといいか?」
「……何? ヒュム男」
「いや、大した事ではないのだがな」
「大した事ないなら……」
「い、いや! 違っ、その、大した事ないというのは言葉のアヤで……」
「そう。で?」
「あ、あぁ……バハ子、昼休みは暇か? 暇なら一緒に昼食をとらないかと思ってだな」
「……ごめんなさい。ちょっと用事があって」
「……そうか」
「ごめんなさい。また今度にでも……」
「あぁ、楽しみにしてるよ。呼び止めてすまなかったな」
「気にしてないから……じゃあ」
「はぁ……」
「コレで17回目だな。ヒュム男」
「……覗き見とは感心しないな、フェル男」
「不純異性交遊は感心出来ることなのかい?」
「……」
「んにしても一月前までは堅物だったお前さんがよくまぁ、食事のお誘いをする気になったな」
「黙れ」
「はいはい。ま、俺は応援してるからな。我が戦友(とも)よ。さて、昼が暇なら俺につき合え。奢ってやるぜ?」
「はぁ……どうせノム子についてだろ? お前も懲りないな」
「類は友を呼ぶのさ。それにノム子は可愛い。異論反論異議却下その他一切は認めない。絶対認めん。
ノム子があの可愛い顔を俯かせながら手をモジモジさせて消えそうな声で『可愛いくなんか……』とかメッチャ悶え死ぬ事をしても俺は絶対ノム子は可愛いとショック床のド真ん中で叫んでやる」
「いっそ清々しいな。貴様」
「誉めるなよ。ホレ、行くぞ同士よ」
「同士言うな。馬鹿猫め」
◇◇◇
――女子寮
タッタッタッ バタン! ガチャ! バタン!
ディア「ん? あれ? バハ子……食堂に行ったんじゃ?」
バハ「ハァ……ハァ……ハァ……」
ノム「……またヒュム男に会ったの?」
バハ「でぃ、ディア子、ノム子……」
ディア「いい加減昼食ぐらい一緒に食べればいいのに」
バハ「む、無理無理無理! 絶対無理! だ、だってヒュム男だよ!?
あんなキリッとした顔で優しく『バハ子』って名前を呼ばれるとか、もう私はそれだけで胸が爆発しそうなのに一緒にお昼? 笑顔で血を吐いて死んじゃうよ!」
ディア「そん時はノム子にリバイバル頼むから安心して行ってらっしゃい」
ノム「……ドクターノム子に任せて。ブイ」
バハ「ヒドいっ! で、でもそんな事言ってるノム子はどうなのよ!? フェル男と進展したの!?」
ノム「だっ、だって……フェル男……肝心な時にいないんだもん……」
ディア「まぁ、実際はフェル男の精神攻撃(ホメゴロシ)で顔を真っ赤にしてフリーズしたノム子が戻ってくるまでに、フェル男がどっかに行っちゃうからなんだけどね」
バハ「何だ。私と同じか」
ノム「あなたと一緒にはされたくない」
バハ「何だと!?」
ノム「じゃあバハ子。ヒュム男に出会って第一声が『おはよう。今日も可愛いな』って言われながら頭撫でられたらどうする?」
バハ「え……ヒュム男に可愛い……カワイイ……頭……撫で……ナデナデ……グハァッ!」
ディア「ちょっ! ノム子! バハ子に手を繋ぐ以上の事言っちゃダメでしょう!?」
ノム「ゴメン……」
ディア「バハ子もそろそろ慣れなきゃダメでしょう……? ハァ……そんなんじゃ赤ちゃんつくる時どうするの?」
バハ「グハァ……ハァ……ハァ……え? ……何で?」
ディア「え?」
ノム「え?」
バハ「え? だ、だって赤ちゃんってドラゴンが運んでくるんじゃないの?」
ディア「」
ノム「」
バハ「? 2人ともどうしたの?」
ディア「……ノム子、頼んだわ」
ノム「……バハ子、ちょっとこっち来て」
バハ「え? 何で? え?」
ディア「純情な子だとは思っていたけれど……まさかそんなレベルの純情だった何て……」
バハ「でぃ、ディア子?」
ノム「バハ子のお父さん、お母さん……ごめんなさい。純情なバハ子のままいさせられなくてごめんなさい。
でも友人として、バハ子にはヒュム男と一緒になって幸せになって貰いたいんです」
バハ「ノ、ノム子? 2人ともどうしたの……ねぇ、ねぇったら!」
ディア「さらば純情バハ子」
ノム「いざ南無三」
〜おしべめしべについて講義中〜
バハ「」
ディア「生きてる?」
ノム「何とか。でも貧血気味」
ディア「血ってなかなか落ちないのよね……」
バハ「グハァ!」
ディア「あ、おはようバハ子」
バハ「おはよう。あ、何だ夢だったのね。ヨカッター」
ノム「いい? バハ子。男の性器はね――」
バハ「(л゚Д゚)アーアーキコエナーイ」
ノム「……だからヒュム男と付き合ったら最終的には1つのベッドの中、裸で抱き合いながら朝を迎える事になるのよ?」
バハ「(л゚Д゚)」
ディア「……フリーズしたわ」
ノム「……」
ディア「……あんなんで本当にヒュム男と付き合えるのかしら?」
ノム「むしろ明日目を合わせられるかが心配」
ディア「心配、ねぇ……」
ノム「……何?」
ディア「何だかんだ言って、ノム子も優しいわね」
ノム「……」
ディア「ふふっ、そんかノム子も私は応援してるからね?」
ノム「……ありがとう」
ディア「どういたしまして。さて、私はバハ子を見てるからノム子は食堂に行ってらっしゃい。今頃フェル男が昼食を食べてる頃よ?」
ノム「いいの?」
ディア「大丈夫。それに、私は後からバハ子を引きずってでも食堂に連れて行かなきゃね」
ノム「……じゃあお言葉に甘える。行ってきます」
ディア「行ってらっしゃい……さて、昼食は遅くなりそうだけど……友達の為だから仕方ないわね。ホラ、バハ子。起きて」
バハ「ハッ!? ……何だ白昼夢か。ヨカッター」
ディア「そうね。白昼夢ね。じゃあバハ子。食堂に行きましょうか。もうお昼よ」
バハ「え? あ……ヒュム男のお誘い断ったんだった……」
ディア「そこは私がフォローするから。ね?」
バハ「あ、ありがとうディア子! このお礼は必ずや!」
ディア「はいはい。期待しないで待ってるわ。そんな事より早く行きましょう?」
バハ「うん!」
バハ「ところでディア子」
ディア「? どうしたの?」
バハ「えっと……その、ね……せ、せっくすってどうするのかなって……(ゴニョゴニョ)」
ディア「……ふふっ、バーハー子ー?」
バハ「な、何!?」
ディア「ちゃんと聞いてるじゃない」
バハ「(л;゚Д゚)ア、アーアーキコエナーイー! キコエナーイ!」
以上です。ノームは元々入れる気は無かったのですが、一目惚れしてついつい入れてしまいました。可愛いですよね。ノーム。シリーズ化したい。
ではノシ
キャラ萌えスレでやれ?
ここはGJ送ってエロまで繋ぐシリーズ化を期待するところだろうGJ先生
失礼します。
『不良少年の受難』
>>11を書いた者です。間もなく続きを投下します。
※このお話の登場人物には種族に関係ない名前が付けられています。
また、一部グロ展開の描写が含まれますので、許容できかねるという方は閲覧をお控え下さい。
(駄目か、ビクともしやがらねえ……)
バハムーンの少年、フリードが拉致同然にテレポルで連れてこられたのは、学院に通う生徒たちが使用する寮の一室。
長い間独りで落ちこぼれて野宿を繰り返していた彼がその内装を見るのは久しかったが、今は懐かしさに感慨深くなっている場合ではなかった。
壁一枚隔てた向こうに、他の生徒が寝泊りしている可能性は大いにある。だが、彼らに聞こえることを望んで大声を張り上げようとした喉は、掠れた小声を搾り出すことが精一杯だった。
(喉にもパラライズが効いていやがるな……糞ッタレ)
麻痺に侵された肢体に感覚が戻る様子は無い。
抵抗そのものが出来ぬ状態のまま刻々と時は過ぎていき、ついに扉の鍵が回ってしまう。
勿論、都合よく他の誰かが来てくれるわけがない。
「待たせてごめんなさいね、思ったより刺された傷が大きくて……けれど、流石はリリィ先生ですわ」
後ろ手に鍵を閉め、ベッドに寝かされた状態の彼にも見えるところまで歩いてくるのはセレスティアの少女。アリスと名乗る彼女こそが、戦いの末少年をここまで連れてきた張本人。
彼女の両腕からは、先刻の決闘で槍に刺された傷が血痕ごと消えうせていた。もう、両腕が使えないというハンデもない。
「……このまま、依頼主に引き渡すハラかよ」
苦虫を噛み潰した顔で、フリードは吐き棄てる。
逆恨みか何かは知らないが、間もなく自分を痛めつけようとした奴がここに現れる……、彼はこの時までそう考えていたのである。
だが同時に、こう結論づけるには妙な所が多々あることにも気がつき始めていた。
「何か勘違いなさっていますわね」
「俺は頭が悪いんでな」
「そうかしら? 学内の噂ではむしろ逆と聞いていたのですが」
「…………昔の話だ。おつむってモンは、ちょっと使わないでいりゃすぐバカんなる」
彼が開き直って言うと、アリスは特に呆れた様子も無く笑い、ベッドの端に足を組んで座る。学院制服の短いスカートはそれだけで衣服の意味の大半を失い、色白の肌に覆われた太腿が露わになった。
フリードはそんなものには目を向けずに疑問符を浮かべる。彼女の態度に無様な敗北を喫した彼を嘲ったり、自身が勝利に酔ったような仕草が微塵も無いことについてだ。
かといって彼女は事務的に徹しているわけでもなく、他の何かで喜んでいるように見えるのである。
「先程のあなたのお言葉を使わせて頂くなら、『誰の差し金』でもありませんわ。誰かにあなたを連れてくるよう頼まれてもいませんの」
「何だと? ……オイ待て、話がまるで見えねえ。報復じゃ無えってんなら何のつもりで連れてきやがったってんだよ」
直接聞きはしなかったが、フリードにとって一番の疑問は目の前の少女が顔を赤らめていることについてだ。病気で熱が出ただけなら少しは苦しいはずで、こんな風に力の抜けた笑みを浮かべていられるとは考えにくい。
すると、少女が今度はうつ伏せに這うようにベッドに両手を付いて乗り上がり、片足がフリードの臍の上を跨いだ。
そして彼の両耳の隣に手を付けば、息のかかる距離で二人は見詰め合うことになる。彼もここまで来るとおぼろげながら理解してしまう。
理由が何であれこの少女が、何をしようとしているのかを。
「……今日は五本吸ったぞ」
「そうですか。けれど私、煙草味のベーゼも嫌いではありませんわ」
「チッ……背中の白い羽が泣いてるぜ、天使様」
大きく舌打ちしてフリードが皮肉たっぷりに言ったのを皮切りに、アリスが唇を重ねる。
否、重ねるだけではすまなかった。
最初から口を開いて重ねたそれは、初めからむしゃぶるためのもの。麻痺で弱った口をこじ開け、口腔を歯茎周りから広く嘗めなぞっていく。
「……ふぅ、っ…ちゅ……じゅるっ」
「……! くっ、ン………じゅ…ぶっ」
両足は腰に、両手は彼の頭に逃がさないとばかりに絡みつく。どのみち、目の前の獲物は痺れて動けないのにもかかわらず。
淫靡な水音が繰り返されていくにつれ、セレスティアの証ともいえるコメカミと背中の白い羽が、根元から黒に染まっていった。
世間では過去の事件やらの関係で、堕天使には裏切り者や悪人のレッテルがつきまとう。
現在は一職業として見直され理解されてきたとはいえ、こういう偏見のせいで彼らの烏のごとき漆黒の羽に生理的嫌悪感を持つ者は、どの種族にも根強く現れてくる。
そこで最近の堕天使学科は、白羽へカムフラージュする技の授業も受けられ るのである。
そしてこの技は無意識下の制御に慣れるのに時間がかかる上、感情の波や理性が突出した時に解けてしまうこともあるのだ。
「ふっ…! ぐっ……ぅ」
低い声に激しい鼻息を交え、フリードが呻く。口の中を蹂躙され続けていれば酸素は鼻から取り込む他ないためだ。
呼吸器官すら麻痺が蝕んでいることも手伝って、流石の体力自慢の竜騎士も息継ぎの苦しみに顔を赤紫色にしていた。息苦しいほどにアリスのキスは、激しい。
彼の動きの鈍った舌は奥に逃げる間もなく堕天使の舌に引きずり出され、絡められたり唇に挟まれたりを繰り返した。
そして、こんな濃厚な責めを絶えず続けていてなお、アリスの藍緑色の瞳は彼の金眼から目を逸らさない。
陶酔したように潤みきった瞳は、恋に落ちた少女のそれと変わりは無い。互いの口の中で行われている淫らな秘め事とは、あまりにかけ離れている。
「んっ…………はぁ。しあわ、せえ……」
五分ほど続いてようやく唇が離れると、アリスは唇からシーツに滴る唾液にも構わず恍惚とした表情で呟いた。
「ぷはぁっ、ハァッ、ハァッ……! ……そ…の、セリフ、何人の、男の前、で、言った、んだ?」
ようやく開放されたフリードは必死で息を整え、疲労に歪んだ顔を無理やり嘲笑に変えて問う。
「フフッ……あなたが初めてよ?」
「ほざきやがって……そう言って幾つ咥え込んだのか言ってみろよ売女」
「むしろ上客とおっしゃって頂きたいですわね。はてさて、あなたの貞操はお幾らかしら?」
投げつける侮辱の言葉は、彼女の笑顔の眉間の皺1つ増やすことすら叶わない。
「知るか、てめえが俺の体でオナってただけだろ」
「どうかしら……あなただって、しっかり愉しんでるじゃない」
手馴れた口責めの合間にも胸を押し付けたり、股間をすり合わせるように腰を動かしたりもしていた。
彼自身、『別嬪』と口にするくらいに目前の堕天使の器量が良いことは認めている。
いくら殺しあった相手とはいえ彼も若い男、そんな彼女に積極的に求められて耐えられるものではなく、彼のズボンには布地が張り詰めるほどの怒張が出来ていた。
アリスは彼の太股部分までずれるように移動すると、怒張に鼻先を近づけて言う。
「服の中で出してはお気の毒ですわね」
「余計なお世話だ、さっさと退きやがれ。尻軽のクセに重いケツ乗っけてんじゃねえよ」
怒張に手がかかり、チャックの摘み部分を探り当てるように指がなぞる。
「耳悪いのかコラ。くびり殺されてえかサノバビッチ」
「son of a bitch……売女の息子? これ殿方向けの喧嘩文句じゃないかしら」
「黙れ。退けっつってんだろうが」
「……何を焦っていらっしゃるの?」
間を置いて意味深に問うと、フリードが口をつぐんだ。
「……っ、犯されそうな奴が焦らないわけあるかよ」
「正論だけれど、あなた今嘘をつきましたわね? 何を隠していらっしゃるのかしら」
「オイてめえ、やめろ本当に殺……」
ジッパーが開かれ、中で自己主張を続けていた怒張の正体が、穴から起き上がるようにしてそそり立つ。
この瞬間、アリスは行為の中で始めて驚きに目を瞠ることとなった。
「……!」
「…………畜生」
フリードが、つい今しがたまでの噛み付くような表情を引っ込め、情けない顔つきになって目を逸らした。
皮かむりというわけではない。大きさもバハムーンとしての平均の域で、首の太さはヒューマンのモノとは比べ物にならないほど立派。
だが、形状が通常とは著しく異なっていたのだ。
「……奇形を見るのは初めてだわ」
「……元は普通だったんだ」
先端が二股に分かれた、切り口のグロテスクな『剛直』と言えぬソレ。
覇気の消えうせた声でポツリ、と彼が語り始める。
「もう一年も前だが……わけの分からない連中にとっ捕まって、奴ら散々汚い真似しやがったついでに何とかインジョンだとかほざいて切り刻みやがったんだ。
思い出したくねえほどの痛みの上にショックか何かで熱にもうなされて、ようやく我に返ったと思った時には手遅れだった。
回復かけても今や『この形状』に治っちまうだけだ。こんなスパナみてえなモンぶらさげてちゃ、ダチとの連れションすらロクにできやしねえ」
「……! まさか、あなたがパーティに所属していないのって……」
「小便も堂々と出来やしねえ、んな情けねえ状態で仲間持ったとこで隠し続けるのが辛えだけだからな……。くそ、死にてえ……」
自嘲するように毒づき続けるフリードに三白眼の強面は見る影も無く、今や泣き出す寸前の幼児のように歪みきっていた。
「……もういい、いっそあんたが殺してくれ。いくらお前だって、こんなイカレたモン受け入れられやしないだろ?」
と言ったのを最後に彼は毒づくのをやめ、太股にまたがった少女を眉を八の字に下げた顔で見つめた。
アリスは彼と少しだけ見詰め合うと、目前にある歪に変わり果てた性器を見下ろした。
一拍置いて、膝立ちに体を起こす。
彼女はスカートの中に手を入れ、自身の黒い下着に手をかけずり下ろした。
「何してんだ、着替えてる暇があったらさっさと……」
彼女は新しい下着をはき直すことなく、もう一度同じところに手を突っ込む。スカートにさえぎられ、フリードの目には見えない。
だが、さえぎられていない手首下部分から粘り気のある液体が伝っている。そして、彼女が徐々に腰を下ろし始めている場所は。
気がついたフリードの顔から血の気が一気に引いた。
「おいやめろフザけんなテメエ! 同情なんざいらな……むぐぐふぐぅぅっ!!!!」
喚く彼の口の中に、先ほど彼女が脱いだ下着……黒の紐パンツが押し込まれる。続けて、元から用意していたのか……手の届くところにあったガムテープで、そのまま口をふさいでしまった。
「んっく……うう、むぐうううっ!!!」
下着に染み付いていたのか、唾液とは違う粘り気と淫靡な香りが口の中に広がる。
彼は混乱して叫ぼうとするが、塞がれた唇は意味のある言葉を発せられない。
「……もう何もおっしゃらないで。ソレをセックスに使うことをあなたが罪だと思っているということは……私にもよく伝わりましたから」
「ンン!? ふぐぅ、ふぐぅぅぅぅっ!!」
「大丈夫、私に全て任せて頂戴……。あんな顔を見せられては、私も我慢できませんわ」
麻痺が解け始めているのか。彼は必死に首を振り、何かを伝えようとしていた。
アリスは、それら一切を無視し、指で開いた裂け目に二股を同時に包み込むように受け入れていく。
「ん……アッ。はああ……っ! 入っ、たわ……!」
「ング、ン、ンンゥゥーッ!?」
「あんっ……これ、す、すごい、奥で分かれて、当た、当たって……!」
体を弓なりに反らし、フリードの腰を腿で挟み込んでアリスは歓喜の声を張り上げる。
「あ……はっあ……いいわ、もっと……!!」
「ンンンーっ! ン、ンムンン!! ンンンンンンムー!!」
彼女は叫ぶが早いか、その姿勢のまま上下に腰を動かし始める。加減も休みも無く、その運動は初めから、パンパンと肌のぶつかり合う音がするほどに速い。
1つになった部分から漏れ出る愛液からは泡が絶えず出来ては弾け、粘りついた嫌らしい水音を響かせていく。
肉襞はただ挟み込むのではなく、出し入れするごとに形を変えて肉棒に絡みついてくるようだった。
それは甘美で目もくらむほどに刺激が強く、フリードは目を白黒させる。
「うっく……ま、まだ大きくなりますの!? こんなの裂けちゃ……ッ!」
アリスの側も、表情から余裕が消えうせていた。だが行為そのものはかえって激しさを増し、肌のぶつかり合いは更に騒々しくなっていく。
性器のコンプレックスのせいで長い間自慰に耽ることの無かったフリードは、瞬く間に限界まで上り詰めようとしていた。
「ン、ングゥゥ!! ングゥゥ!!」
もはや己の欲望をせき止めることはできない、それを目前の少女に知らせるためフリードは呻き、再び首を横に振る。これ以上、続けるわけにはいかないと。
「あはっ、あ、あなたも限界、なのですね!?」
アリスは、よがり狂ったように顔を弛緩させ舌を出しながらも、彼の意思を汲み取る。
「!?」
ただし、その答えは肉襞の締めをよりキツくすることだった。
まとわりつくものの締め付けが強くなり、彼の肉棒がビクビクと痙攣を始める。
「ングウ!? ンンン!!! ンムグウウウーッ!!!」
陰嚢に溜まり切っていた白いマグマは、とっくに道をこじ開ける所まで上り詰めている。
今更、彼がその衝動に打ち勝つことなど不可能だった。
「キャ、ああああ、わ、わたしも、もう、あ、あああ、ああああああああーっ!!!」
目前に、白い閃光が迸ったような錯覚と同時。
フリードは半ば白目を剥き、アリスは背骨が折れるのではないかと思えるほどに体を反らし、二人まとめて絶頂に達する。
形の歪な肉棒からはあちこちに精液が飛び出してしまうが、アリスの陰唇は彼のモノを丸ごと根元までくわえ込んでいたためそれらを丸ごと受け止める。
だがガス抜きの欠けていたフリードの欲望はそれでも全て収まりきることはなく、透明度の低い白色の粘液が、結合部からじわりとあふれ出していた。
*
彼が目を覚ました時、傍らにアリスは居なかった。
それどころか、ここは彼女の部屋ですらない。白いカーテンと壁に周りを阻まれた、鉄パイプによる骨組みのベッド。
竜騎士になりたての頃は、しょっちゅう『かばう』で攻撃を受けては倒れ通い詰めだった場所。
しかし、仲間や自分が蘇生技を覚えて以降、行くことが殆ど無くなった場所。独りになって落ちぶれてからは、この部屋に来たのは初めてだった。
「う……っ」
麻痺は完全に解けていたが、体は疲労感で上半身を起こすだけでも重苦しい。
淫乱な堕天使はあの最初の一度の絶頂だけでは飽き足らず、底知れぬほどの精力で腰を振り続け、途中で脱ぎ脱がされまた腰を振り、彼の溜めていたおよそ一年分以上の精液を奪っていたのだ。
多くの生徒に使い古されたベッドは重心が変化しただけでギィと軋む。
「やっと、お目覚めね……。お久しぶりね、フリード君」
音に気がついたのか、足音が近づいてきた。
静かな、悪く言えば暗い印象の声は、彼女の根も葉もない恐ろしげな噂を膨らませてしまうことに一役買ってしまっているのだろう。
フリードは、彼女の噂に惑わされない数少ない生徒の一人だった。
「……リリィ先生」
角のついた長髪……女性のディアボロスのシルエット。
一枚の白いカーテンを隔てて、お互いに影しか分からぬ状態で対面する。
「二日間、眠り続けていたわ。あの子も疲れ果ててたし、余程無茶をしたらしいわね……」
「…………その様子だと、全部知ってるらしいな畜生」
彼女より暗い声で諦めたようにフリードは言うと、「でも、先生はあの堕天使を知ってんのか?」とすぐに問う。
「ええ、勿論よ。アリスちゃんはよくここに遊びに来てくれるもの。色々と手伝ってもらったこともあるし、相談に乗ってあげたこともあるわ……」
彼女の声が若干明るみを帯びている辺り、先生はアリスのことをとても気に入っているのだろう。
「相談と言えば、あなたをここに運び込んだ時もだったわ……」
「俺が気絶したから助けてくれってか?」
「いいえ、あなたのペ○スのこと」
フリードの体がグラリと傾ぎ、傍の壁にゴツンと頭を打ち付ける。痛みに悲鳴もあげず、たんこぶが出来るのも構わず彼は項垂れた。
ちなみに、彼女が躊躇うことなく隠語を口にしたことについてはどうでも良かった。医学に精通したドクターなら一々気にしてはいられないだろう。
「眠り続けている間に全て終わったわ」
「ああ、終わったな俺の人生」
「本当に、そう思う?」
当たり前だ、とフリードは心の中で吐き捨てる。この先こうして徐々に事実が広まっていくと考えるだけで死にたくなった。
……が、ここでようやく彼は下腹部に違和感を覚えた。
今の彼は入院患者のような衣装を着せられていたが、股間の感触がどこか違っていたのだ。
「一応、私は後ろを向いておいてあげるから、脱いで確かめてみて。包帯は取って大丈夫よ……」
と、彼の心を見透かしたようなことを言うと、リリィ先生はキィと回る椅子ごと背を向けたようだった。
「……?」
意図は測りかねたが、言われた通りに下を脱いでみる。
股間にあるのは当然彼の肉棒。ただし、今は清潔な包帯が巻きつけられている。そして、まさかという期待と共にその包みを剥ぐと。
「……先生、これは一体」
キノコ型の、健康な肉棒が顔を出したのだ。
傷跡1つなく、忌まわしきスパナは見る影も無い。
包帯を剥がす瞬間の痛みは本物だった。よって、作り物ではない。
「性器のようなデリケートな部分を、回復や蘇生の魔法『だけ』で治すのには限界があるわ。
ここで皆勘違いしてしまうのだけれど……魔法的観点からではなく、人体の仕組みから回復について理解を深めていくドクターなら、勉強すれば元に戻すことは不可能じゃ無いのよ」
フリードは先生の話が聞こえているのかいないのか、信じられない様相であんぐり口を開け、自身の愚息を見つめ呆然としていた。
「一年前……優等生だったあなたが突然不良になってしまった時はビックリしたわ。けれど、原因がこんなことだとは思いもしなかった……。
どうせ私と話してくれる生徒なんて数えるほどなんだから、こっそり相談に来てくれたらよかったのに。まあ、言いにくいのは仕方が無いことだけれどね……
いずれにしても、あなたはこれで再出発が出来るんじゃない?」
「先生には大きな借りが出来たのは確かだが、今更俺にやり直すアテも目指すものもないぜ?」
「そうかしら……? いえ、それより先に、アリスちゃんにお礼を言ってあげて。
私は、学院の保険医としての仕事をしただけだもの」
「ケッ……ったく、天使みてえな悪魔も居たもんだ。話の筋は通ってるとはいえ、アイツとは真逆……」
その時控えめなノックの音が響き、フリードは話を止め、慌てて下半身の衣類を整える。
「失礼いたします。リリィ先生、頼まれていたお花の種ですわ」
「まあ、いつもありがとう……ちょっと待っててね、今お茶を淹れてあげるから」
「いえ、どうぞお構いなく」
カーテンを横に寄せるように引くと、一瞬、背を向けて戸棚に向かうディアボロスの女性の白衣姿が映った後……あの紫巻き毛のセレスティアが戸口に居るのを認めた。
目が合うと、彼女が一瞬戸惑ったように視線を逸らしたが、すぐにこちらに微笑みかけてきた。
「フフ、お目覚めはどうかしら?」
「誰かさんのせいで疲労困憊だ。……まあ、気持ちは軽くなったがね。
っつーかそれだよ、聞きたかったのは。何で俺なんかとヤったんだ? ここまでしてくれたんだ、ただ溜まっていて誰でも良かったわけじゃねえんだろ?」
「……、え、えっと、それは……」
演技だとするならそれでも見上げたものだが、フリードには彼女が恥じ入るように動揺し始めたのが信じられなかった。
これでは男と手を繋いだこともないような少女と、さして変わらないではないか。
「あの、あ、あなたのことが前から気になってて、いつかあんな……あんなコトをしたいってずっと考えていたからなんですけれ、ど……。り、理由まで言わないと……ダメ、ですか?」
しかし、彼はこの不可解さについて、何となく理解し始めていた。
性行為に慣れた様子と処女でなかったことから、彼女に男と体を重ねる経験があったことは間違いないだろう。
だが、行為のみならば売春などに代表されるように、愛が無くとも出来ること。彼女にとって、『愛する人』としたことがあの時で初めてであったとすれば。
そこまで考えて、フリード自身恥ずかしくなってきてしまった。有り得る事とは思いにくいが、この少女が普通でないことは分かっているため納得ならできる。
「……あー、なんと言うか、スマン。正直気になるとこだが、言いにくいなら無理すんな」
俯いて赤面する彼女の初々しい態度を見て、彼は頬に熱が浮き上がるのを抑えるのに苦心した。あの部屋で淫魔のごとくペ○スを貪っていた堕天使とはとても似つかわしくない態度。
彼は、それに合わせた照れ隠しのように指で頬を掻いた。これ以上この話題を引き伸ばすと更に恥ずかしいことをしでかしそうだったので、半ば強引に本題に入る。
「ともかく、俺は今後リリィ先生に足向けて寝れねえのは当然として……。果たして、アンタにどうやって恩を返したものか、方法に困ってる」
「え……?」
と、ここまではばつの悪そうに笑いながら言ったが、彼女が呆けたように顔を上げて目が合った時には、彼は出来うる限りの誠意を込めて真っ直ぐにその目を見つめる。
「アンタがここに連れてきてくれなけりゃ俺は、下手すりゃ一生あのコンプレックスと付き合ってくところだった。そいつを変えてくれた感謝してもしきれねえ。
何でも……と言うと出来ないこともあるかもしれんが、言ってくれりゃ最大限その期待に答えようと思ってんだよ」
フリードとて、不良となって続けていた助っ人は慣れはしても楽しんでいたわけではない。
自分の尊厳が傷つく可能性に怯え、大勢の生徒と関わっていく学院生活に戻るに戻れなかっただけなのだ。
彼女は経緯はどうあれ、その原因を打ち砕く道しるべとなってくれた。そのことについて彼は口にこそ出さなかったが、一生分の借りを作ったと感じている。
アリスはその思いの片鱗を彼の瞳から見つけることができた。
そして、何でも頼みを聞いてくれるというのなら……。否、たとえ聞いてくれずとも。
「それでしたら――――」
願うことなど、初めから決まっている。
学院の裏で煙草をふかして客を待つ、報酬次第でどんなパーティの助っ人にもなる腕利きの竜騎士。
ある日を境に、彼はその傭兵稼業を廃業し、二度とその場所に戻ることはなかった。
彼は一人の堕天使から恩義という名の報酬を受け取り、卒業の日まで彼女の力になることを承諾したのである。
以上です。ストーリー仕立てにしようとしてみた末路がこれでした、すみません。
とりあえず続きが書けるような伏線ぽいものは撒きましたが、芽が出るかは分かりません(未定です)。
では失礼いたします
>>272 GJ!
堕天使好きの自分にはマジご褒美!
リリィ先生の扱いがいいのが追加報酬!
>>272 ぐっじょぶ。
逆レイプ風味なのにしっかり愛があるのに萌えた。
2人のこの先に幸あれ。
>>272 遅くなったがGJ
堕天使が羽隠してるってのは面白いな
このスレには投下してる人間しかいない?
>>276 それはしらんがねえ、俺も投下経験ある人やけんど。
もしかして、雑談ばかりになるからって発言自重しちゃってんじゃない?
住人自体がさほど多くはなさそうだけど、読み手専門がいるかどうかはさすがにわからんね
そもそも書き込み自体しない人もいるだろうし、いないことはないんじゃないかと思うけどね
#「王女様と私」番外です
「それでは、こちらがエルファリアさんの部屋になります」
敬愛する我が主たる姫様に命じられては、従うほかありません。
わたくしは、今日からこの特別棟の住人となったエルフの狩人を部屋へと案内しています。
「はい。すみません、お手数をおかけします」
大きなトランクを両手で体の前に提げ、ペコリと頭を下げるプリシアナ学院の女子制服を着たエルフの少女……にしか見えない少年。
その姿は、姫様ひと筋と堅く心に決めているわたしにさえ可愛らしく映るのは確かで、正直、素性を知っていても、時々この子が「男」であることを忘れそうになります。
(まったく……)
これで、この子が本当に女の子か、あるいは、いかにも男っぽいタイプの少年なら、ココまでややこしい話にならずに済んだのですが。
女の子であれば、姫様の好意を受けているという点で、多少は妬ましい部分がないでもありませんが、それでも素直に仲間として受け入れられたでしょう。
いかにもな男であれば、そもそも姫様がさほど興味を示したりしなかったはずです。
てっきり前者だと思ったからこそ、姫様が「わらわのパーティーにもうひとり仲間を加えるぞ!」とおっしゃった時、わたくしも気は進まぬながらも受け入れたのです。
実際、「彼女」(どうも彼と呼ぶのは抵抗があります)が今朝まで所属していたパーティーに負けた時などを鑑みても、姫様、わたくし、シュトレンさんの3人だけでは戦力不足気味なのは明らかでしたから。
無論、王家の権力と財力で雇った「仲間」はいますが……言うまでもなく、こちらはある意味単なる人海戦術の駒ですし、ハイレベルな戦いについて来られるとも思えません。
その点、「彼女」は優れた弓の使い手でしたし、エルフですから術師系の学科に転科してもそれなり以上に役立つでしょう。
実際に言葉を交わしたことは4、5回。それもダンジョン内での世間話が大半でしたが、頭に「ド」か「バカ」の字がつきそうなくらいの善良なお人好しであることも、推察はしていました。
姫様をお慕いするひとりの女としては物申したい点がなきにしもあらずですが、それでも姫様の本当の意味での「味方」が増えるのは、総合的に考えて悪いことではない。
そう思ったからこそ、わたくしも(こっそり涙を呑んで)、「彼女」──エルファリアさんを受け入れることに賛成しました。
ですが。
その「彼女」が本当は「彼」であると言うなら、色々話は違ってきます。
姫様はノイツェシュタイン王家の第一王位継承者です。将来王位に就いた暁には、しかるべき家柄の男性を王配として迎える義務があります(あまり考えたくないことではありますが)
その姫様が男を身近に置いていた……という情報は、一歩間違えればスキャンダルにもなりかねません。
無論、昨晩、姫様からことのなりゆきを聞かされたわたくしは、「彼」を迎えることに反対しました。ですが、姫様の意思は固く、翻意されることはなかったのです。
我儘気ままに見えて、姫様は存外執着心の薄い方です。あの方に、そこまで気に留めていただけたということの幸運を、この女装エルフは理解しているのでしょうか?
「あの、クラティウス、さん?」
「──何でしょう?」
「ボク、何かお気に障るようなことでもしましたか?」
何をいきなり……いえ、そうですね。以前、「彼女」と(思っていた頃)は、世間話程度ですがそれなりに気さくに会話していたのに、いきなりむっつり黙りこんでいれば、そう思われるのも無理ないでしょう。
実際、わたくしの機嫌が悪いのは確かで、また、その原因がエルファリアさんにあることも確か。彼に責任があるのかと言われれば微妙ですが、感情はそんな理屈では納得できません。
「──気にしないでください。貴方が悪いわけではありませんから」
できるだけ刺々しい口調にならないよう努めて、そう答えるのが精一杯です。
「はい……」
見るからにショボンとした様子は、こんな時でもなければ(そしてわたくし自身が原因でなければ)、即座に駆け寄って慰めてあげたいような気分になります。
「庇護欲をそそる」とでも言うのでしょうか。姫様の気持ちが少しだけわかったような気がしますね。
「──謝らないんですね?」
その点だけは少し意外です。もっと内罰的な人かと思ってました。
「ええ、クラティウスさんは、ボクが悪いわけではないと言ってくださいましたから。それを無碍にするようなことはできません」
「…………ハァ〜」
あぁ、もう、わたくしの負けですわ!
ええ、もちろんわかってはいたのです。この子が、財力や権力を目当てに姫様に近づくような不逞の輩ではないことは。
でも、それを認めたら、自分の居場所がなくなる──は大げさにしても、少し狭まるような、自分に向けられる姫様の情愛が少なくなるような、そんな気がして、嫌だったんです。
いいでしょう、姫様の側に侍る「資格」はあると、認めてさしあげましょう!
「ここが、今日から貴方の部屋になります」
案内したのは、元はこの特別棟付きの使用人のための控室。全体にお金のかかった豪華なこの特別棟に比して極めて簡素な造りで、広さも学生寮の普通の部屋よりひと回り狭いはずです。
ちょっとした嫌がらせとテストのつもりで(つまり、贅沢な生活を期待してたならアテが外れるように)、この部屋を選んだのですが、エルファリアさんの反応は予想外でした。
「わぁ、感じいいお部屋ですねー」
……は?
「いえ、けっこう狭いですけど……よろしいんですか?」
「? 確かに男子寮の部屋よりは狭いかもしれませんけど、アッチはふたり部屋ですし」
しまった! 言われてみれば確かにその通り。さすがに半分の広さってわけではありませんから、ひとりで暮らすなら別段問題ありませんね。
客室と違って庭園が見えるわけでもない殺風景な窓に駆け寄り、「彼女」はうれしそうに窓を開けます。
「いい風……窓も南向きで日当たりもいいですし……」
なるほど、種族的に木々の緑を好むエルフにとっては、目に入るのが学園裏の雑木林でも気にはならないワケですか。
「それに、クラティウスさんが、キチンとお掃除や手入れをしておいてくださったのが、よくわかりますから」
キチンと糊のきいたシーツや、埃ひとつないテーブルを指さしてニッコリ微笑むエルファリアさん。
「! め、メイドとして当たり前のことをしたまでです」
不覚です。ちょっとどもってしまいました。これ以上部屋のことを追及するのはヤブヘビになりそうですね。
精神的な体勢を立て直すために、わたくしは今後の予定について極力事務的に伝達することにしました。
「起床時間は午前7時。ただし、姫様の指示で早く起きねばならないこともあります。
朝食と夕食は姫様次第ですが、基本的には姫様と同席して食べてもらいます。
昼食は自由ですが、昼休みはあまり長くないので注意してください。また、冒険に同行している間は、わたくしの作ったお弁当を差し上げます。
入浴は、申し訳ありませんがエルファリアさんは一番最後になります。
お部屋の掃除は自分で行っていただきますが、洗濯についてはお引き受けしても構いませんよ?」
「えっ、ホントですか?」
「ええ。女物の衣類の扱いは、まだご存知ないでしょう?」
そう言ってチラと意地悪げな視線を投げかけると、朱を散らしたように「彼女」の頬が赤く染まりました。
「は、はい、助かります。あ! でも、いつまでもお世話になるのは悪いので、お時間がある時にでも教えていただければ、ボクも覚えますから」
ふぅ……確かに、とても「純心」で「いい子」ではあるんですよね。
でも、そのあまりの優等生ぶりが微妙に気に障ることもあります。
「そうですね……いいでしょう。ですが、どうせなら洗濯だけと言わず、炊事から清掃、さらには給仕のマナーに至るまで、徹底的に叩き込んでさしあげますわ」
「あ、あのぅ……それ、もしかしてメイドさんのお仕事全部なのでは?」
「ええ、その通りですが、何か?」ジロリ……
別に意地悪の「ためだけ」で言ってるワケではありませんよ? 姫様の御側で仕える以上、いつなん時、姫様のご要望にお応えする必要に迫られないとも限りません。
あのシュトレンさんでさえ、今言ったことは一通りこなせるのですから。
「わ、わかりました! ご指導のほど、よろしくお願い致します」
ビシッと気をつけして返事をするエルファリアさん。
そんなに脅したつもりはなかったのですけれど……いえ、この流れは好都合ですね。
「色々言いましたが、わたくしたち姫様のパーティーに加わった人間は、基本的に起きている時間の大半を姫様とご一緒して過ごすものと考えてください」
「キルシュトルテさんと、ずっと一緒……」
「自由になる時間なぞほとんどない」と伝えたつもりなのですが、逆に何とも言えない嬉しそうな表情になるのが腹立たしいですね。
ここは、昨日手に入れたアレの出番でしょうか。
「……そうそう。ひとつ言い忘れていました。エルファリアさん。今後あなたは、対外的には「キルシュトルテ王女付きの護衛兼侍女のひとり」として扱われます」
「──はい」
複雑そうな顔をされてますね。確かに「彼女」の本来の性別を知ってる人間はこの学校にも多数いますし、そもそも別段女装趣味や女性化願望があるワケでもない普通の少年なのだから、当然でしょうが。
「とは言え、エルファリアさんも身体的には男性の端くれ。時には、よからぬコトを想像し、イケナイ妄想にフケることもあるでしょう」
「は、ハシクレはヒドいです」と言う小声の抗議は、この際無視です。
「ですが、その淫らな妄想で汚れた手で姫様に触れたり、あまつさえ姫様を思い浮かべてひとり遊びに勤しむような真似は、厳に慎んでいただかなければなりません」
「し、しませんよ、そんなコト!」
「口では何とでも言えます……しかし、たとえば姫様のあられもない下着姿を目撃して、思わず押し倒したり、そこまでいかなくとも、あとで夜のオカズにしたりということがないと言い切れますか?」
「う……しません。そんなコトしたらキルシュトルテさんが悲しみますから」
「絶対に?」
「絶対に!!」
「それでは、万が一のことがないよう、貴方にある「枷」を付けさせていただいても問題ありませんね?」
たぶん、今のわたくしは、すごく「イイ笑顔」を浮かべていることでしょう
「………わかり、ました」
ここで反論すると言うことは、「そういうコトをしたい」と言っているのと同意義だと気付いたようですね。一瞬ためらったものの、大きくうなずくエルファリアさん。
──よし、かかりました!
「それでは、早速ですが、スカートをめくって、ショーツを膝まで下ろしてください」
-つづく-
#過疎り気味なので、おバカなSSですが、投下してみました。ココまでだと、あんましエロくないなぁ。続きは、再び三人称視点で。
#最近、このSSのエルファリア(asシスター)が、某輝心なゲームのエアリィさんに脳内変換されてる罠。まぁ、アレよりはスカートの裾は多少長めですが。
ちなみに、クラティウスさんは、同作の獣耳刀メイドで再生され……ません。Sだし、黒いし(w)。
なにこの暗黒メイド。超可愛い。
ぐっじょぶです。本編も期待してます。
エルファリアかわいいよエルファリア
男の娘だが大丈夫か?
大丈夫だ、問題ない。
さて、タイミングが被り気味で少し申し訳ない気もしますが、拙作の投下を、
>>198 >>232 の続きです。終わります。
「さっき触った場所は、覚えてる?」
「ああ」
キリュウは首肯し、もう一度その部分に手を伸ばした。また、カナエの体に力が入る。カナエは笑った。
「大丈夫、もう逃げないさ」
「分かっている」
指を沈める。男を招いたことのないその穴は狭く、中指を半ばまで呑み込んだところで侵入を阻んだ。
(こんな場所に、俺のものが納まるのか……)
湿り、甘く締め付けてくる肉の感触に、そんな感慨が浮かぶ。指でこれだけの抵抗があるならば、
あるいは逸物の挿入では彼女の身体を壊してしまうのではないかと思ったのだ。その怖気に似た
感覚のうちに、なにか黒々とした衝動が混じっていることに、キリュウは気づいていない。
そのまま指に受ける感触を味わっていたキリュウを、カナエが促す。
「上の方を撫でるつもりでさ、指を動かしてみて……」
言われるままに愛撫する。はじめはきつく、その場で指を揉むように動かしていただけだったが、
少しずつ肉がほぐれ、やがて中指が根元まで納まるほどになった。
指を動かしながら、カナエの顔を盗み見る。目はきつく閉じられ、いかにも切なげな表情で途切
れ途切れの吐息を漏らしていたが、ここで苦痛を問うのは流石に違うと思えた。
だから、というのでもないのだが、キリュウは唇を重ねてやった。
一瞬、驚いたようにカナエの眼が開かれたが、次には安堵の表情へと変えてまた瞳を閉ざした。
背に回された腕の力は強いものの、身体からも緊張が解かれた気がした。
無意識のうちに、愛撫する指を日本へと増やしていた。未だ抵抗はあるものの少しずつほぐれは
じめた穴から、だんだんと水音が大きくなる。やがて愛撫を堪えきれなくなったものか、身を離したカナエが囁いた。
「そろそろ……いいだろ?」
なにが、とは問わない。キリュウは身を起こし、指を引き抜いた。褌をほどき、取り出した己のそれ
はきつくそそり立ち、先走りにひどく濡れていた。
ぬらりと照る先端を、入り口にあてがうと、吸い付かれるような愉悦に襲われた。堪え、声を掛ける。
「……参ります」
返事を待たず、キリュウは腰を押し付ける。
「……っ、はっ」
剛直は七分までを打ち込まれた。文字通り、肉を裂くような感触ののち、痛みすらともなうほどの
締め付けが自身にかかる。カナエに破瓜の血はなかったが、それでも歯を食いしばり苦痛を堪え
ているのが分かった。猫人族の爪が背中に食い込むのを感じていたが、相手の感じてい る痛み
はその比ではないだろうと、知識のないキリュウにも直感できた。
「……今しばらく、ご容赦を」
「……っ最初に、いっ、たなっ……『好きにしろ』、ってさ……」
息も絶え絶えながらに強がるカナエの言葉に、キリュウは己の中で何かが外れる音を聞いた。
ただ、己が快楽を貪るためだけに、きつく締め付ける秘奥を蹂躙する。痛みを堪えるくぐもったカ
ナエの声も、もはや男の欲望を煽るだけであった。
「……カナエっ」
「……出しちまえ、全部」
苦痛を堪えながらも笑みを浮かべてみせるカナエ。今のキリュウに堪えるものなどありはしない。
限界までの昂ぶりを覚えたとき、そのまま全てをカナエの内側へと吐き出していた。
「……謝ったら、全力でひっぱたくぜ」
「……は」
事を終え、二人はひとつの夜具の中で横になっていた。ひとつしかない枕を使っているのはキ
リュウの方で、カナエは彼の伸ばした腕を枕にしていた。 処女を失ったばかりの身体が落ちつか
ぬようで、腕の上で度々寝返りを打たれるのはどうにもむず痒かったが、悪い気はしなかった。
「さっきも言ったが誘ったのはアタシなんだから、気に病むことなんてないのさ」
「……そのことですが」
口調が戻ってるな、と思いながらカナエは尋ね返した。
「なんだよ」
「何故、今この大事なときに俺を?」
「理由はいるか?」
「貴方の言葉を借りれば、余りに『らしくない』」
「……だよなぁ」
呟いて、カナエはまた寝返りを繰り返しだす。
「……答えないと駄目か?」
「是非にも」
「なんだよ、えらく強気じゃないか」
苦笑しながら向き直り、カナエは観念したようにぽつぽつと語り始めた。
「お前さ、最近死にたがってるだろ」
「……」
「いや、最近じゃねえな、多分、アタシの下に来る前からずっとだと思うんだけど」
「……分かりませぬ」
「自分じゃ分からないかもな。だけどさ、ここ最近は特にだな。お前のうちでの役目は、若いのの稽
古付けるのと、実戦じゃ敵を引き付けて隊の被害を抑えることだ」
「心得ています」
「だが、上手くいっていない。実力及ばず、幾らかの死者を出してしまっている」
「……いかにも」
「そこで無駄に責任を感じちまうのがお前さんだな。実際のところお前にほとんど咎はない」
「しかし」
「責められるならアタシだな。アタシの甘え、油断が戦術の過ちを招く。それが皆死んでく一番の理由だ」
「……」
「納得できなくてもそういう事にしとけって。『死神』がアタシの名だ」
キリュウの腑に落ちたわけではないが、カナエが自分の背負っていたものを預かるつもりでいると
いうことは理解できた。だが、
「それがどうこれと繋がるのです」
「……女でも知れば、よ」
「……は?」
「堅物のお前さんだが、守る女が居れば、少しは生き汚くなるんじゃねぇかな、と思ってさ」
「……侮られていますか」
「まあ、怒んなよ、アタシだってちょいと安直だったかもなぁ、なんて反省してんだから」
「……事は、いざという時にならねば分かりませぬ」
「まぁな、だけど、そういう相手がいるのに、、てめえが満足するためだけに死んでけるような奴じゃ
ない、くらいは期待してみてもいいだろ?」
「……」
「……なんてな、やっぱりらしくねぇや」
そこで言葉が途切れた。カナエは逃げるように背を向けた。
いかほどばかり、そうしていたか。不意に、キリュウは咳払いをひとつした。我ながらわざとらしい、
と思いながら言葉を続ける。
「そういえば隊長」
カナエは背を向けたまま、なんだよ、と聞き返した。
「いえ、先ほど『惚れていて』とかなんとか言っていましたが、あれは……」
ぴんと、カナエの耳が跳ねた。
「あ〜、あれはだな……」
掛布の下で尻尾がせわしなく暴れ、身体をくすぐる。
「そう、あれはあれだ、酒だ。ちょいと前まで飲んでただろ、酒がいらん本音を漏らさせたのだ」
「……本音?」
「だ、大体だな、お前もさっき言ったろ、今は大事なときでアタシ達がそういう話にうつつを抜かしてるときじゃない」
今日限りだ、と続けて口を閉ざした。が、
「……今のところはな」
「……は」
「ああもう、ホント、らしくねぇ……」
ボヤキながらカナエは丸くなる。 その背中に、キリュウは手を伸ばした。
「……んだよ」
「いや、今日限りらしいので、折角だから俺も、もう少し『らしくない』振りを」
「……このムッツリめ、今度は一人だけ楽しんでんじゃないぞ?」
夜具の隙間から差し込む寒さを覚え、カナエはキリュウへと身を寄せる。月はまだ高々と砂漠を
照らしている。夜明けにはもうしばらく、時間がかかりそうだった。
(嫌な夢を見た……)
明り取りの窓から差し込む日の光を顔に受けながら、まどろみの中でカナエは思った。
ありきたりの悪夢、と言ってしまえばそうなのかもしれない。死んでいったものたちがその時の凄
惨な姿で呻き声をあげ、少女に群がってくる夢だった。決戦を前に、
(弱気になっている……)
そう思えば、隣に感じる男の体温が、妙に憎たらしいものに感じてくるのだった。
「こういう時は、大概誰か逝っちまうもんだけど、さ……」
夜具から半身を起こす。予想よりも痛みは残っていない。だがあの後、三度精を受けた胎内は何
か大事なものをそぎ落とされたような、腹の奥に欠けた感覚が有って、剥き出しになった自分の体が
妙に頼りなく感じられた。
隣で動く気配がした。起こしたか、とも思ったが、キリュウは寝返りをひとつ打っただけで、間抜け
な寝息を響かせ続けている。
「いい加減、アタシの番なのかもね……」
苦笑しながらカナエは床に戻った。日の傾き方からすれば、出立まではまだ余裕がありそうだった。
目を閉じたカナエの耳へ、夢に見た死者達の呻き声が蘇る。思わず身を縮め、男の体へ温もりを求める。
(ひとりは、嫌だ……)
それは、幾度となく味方の死を見取った少女に一隊を組織させた、秘められた本音の部分だった。
<了>
という事で御仕舞いでございます。ぶつ切りの拙文にお付き合い頂き有り難うございました。
乙乙
カナエさん、カッコかわええ〜!
乙でした。
独特の雰囲気のある作品だった、GJでした
なんか最後がそこはかとなく死亡フラグっぽくて不穏だが…
GJ
こういう雰囲気大好きだ
決戦前のフラグはぐっとくる・・・
しかし誤字でおもいっきり吹いてしまった
ほしゅ………
ふと、思ったのだが、ノームの性別ってどうなってるのかね?
いや、体の方は擬体をどれだけ性交……もとい精巧に作るかで、色々精度やらエロ度やらは調節できるんだろうけど、そもそも精神生命体とも言うべきノームの本体に性差はあるのか?
仮にあるとして、「本体の性別は男なんだけど、空いてる擬体が女の子向けのものしかなくて涙目、しぶしぶ女性の体になるノームの少年」……とか想像すると、TS好きとしてはミナギってクルものがあるんだけど。
性感がなくて、だけど飯食ってブツ出すから尻では少し感じられて、
だから相手が前で感じられるということに共感を示せずひたすら
相手のアナルばかり責める百合ノームというのを考えている
典型的だがノームに性的な羞恥心がないせいでお相手が大混乱的なものは前から考えてたなあ。
この板でノーム祭でも始まるの? 何だ只の俺得か
つーか混血って居ないんだろうか?
NPCが種族(性別)無視した恋愛してる分尚更
>>299 それはオリジナル設定やりすぎってことにならない? ととモノNPCに混血キャラがいないからさ
>299
昔ココで書いたSSでは、自分は、
「異種族婚では、同種族婚より受胎率が下がる」
「種族的に近いほど生まれやすく、遠いほど生まれにくい」
「仮に受胎した場合、生まれる子供は母体と同じ種族になる」
という理論を提唱したことがある。
(でないと小さい種族の妻が大きい種族の夫の子生むと大惨事だし)
いや、あくまで個人的な考えだけど。
>299
セレとディアの異種族兄妹とかいるから
交配はできても混じらないんじゃないかと
ノームはほら錬金術があるから
1.精液と薬草をフラスコに入れて40日間保温します
2.小さな人型が出来るので馬の血を加えながら40週間保温します
3.できあがり!!
ではないかと
ヒュム男「そういえばノームって死んだりするのか」
ノム子「当然。素体を壊されるのは、いわばフラスコを割られたホムンクルス。永くは持たない」
ヒュム男「そうなのか。……じゃあ生殖ってどうするんだ? ほら、お前とは結構ヤってるけど」
ノム子「……それは私に子供を産んで欲しいという遠まわしな問いかけ?」
ヒュム男「いや! その、ほら……なんだ。毎回ナマでヤってるわけで、ヒューマン同士なら妊娠確実だし……」
ノム子「……そ。さすがはヒューマン。繁殖のことしか考えてない」
ヒュム男「いたた。抓らないでくださいノム子さん」
ノム子「ヒュム男が悪い。女たらし。性欲魔人。えっち」
ヒュム男「わかったから。……(チュッ)……で、実際のところどうなんだ?」
ノム子「そんなので誤魔化されない。……もっとしてくれたら教えなくもない」
ヒュム男「はいはい。それじゃ頑張っちゃおうかな」
……結局ヒュム男はノームがどうやって繁殖するのか教えてもらえませんでしたとさ
実際どうなってるんでしょうね
ノームとフェアリーが一番謎。バハムーンは卵生? いや、それはないか
きっとノームは生命の岩から成人の姿で生まれて、
歳をとって寿命が近づくと生命の岩に戻っていく一生を送るに違いない。
ついでに地下に長時間いると冬眠状態に陥る。
月に一度ほど、ノームの身体に大地の精霊力の淀みがたまります。
それは基本的に血のような見た目で排出されますが
(この時ノームの肉体・精神に強い負荷がかかります)
この時ノームの体内に強い生命力が干渉した場合、
時として排出される精霊力に意識が宿ることがあります。
この意識を持った大地の精霊力に肉体を用意してやることで、
新たなノームが生まれます。
という俺設定。
その設定だと♂でも子供作れるんだがw
308 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/02(木) 01:48:57 ID:0EDAXNt6
>>307ととモノで性別なんてなんの意味ももたんよ
手違いでオリエント工業謹製の素体に入ってしまった外見セレ子なノム男
みたいな俺以外に得する奴がいない話を誰か書いて下さい
君が書けばいいじゃない(−w−
ってかノームさん人気だな
PSPがディスるとか屋上
>>312 PSPはプレイステーションポータブルの略だから、きっと
>>313はPSPも持っていないんだろう
315 :
王女様と私:2010/12/05(日) 19:38:10 ID:SQUmJwZg
「それでは、早速ですが、スカートをめくって、ショーツを膝まで下ろしてください」
その言葉を耳にした時、エルファリアは自分の自慢の耳が遠くなったのか、と一瞬あり得ない疑念を抱いた。
「あ、あの……」
「冗談」ですよね?」と言葉を続けることはできなかった。
目の前の侍メイドの瞳はあくまで真剣であり、酷薄な光さえ帯びていたからだ。いわゆる「目がマジ」と言われる状況を、エルは言葉ではなく心で理解するハメになった。
(はぅぅ〜、どうしてこんなコトにぃ)
心中でそう悲鳴をあげつつも、様々な面で立場の弱いエルに抗う術はない。
(だ、大丈夫。こういう辱めを受けることも、まったく想定してなかったワケじゃないし……)
ただ、ソレはちょっとSっ気のある愛する姫君からの(性的な)プレイとしての「想定」である。実際、先ほどの対面では、それに近いことをさせられたのだし。
だが、まさか主に忠実なメイドたるこのフェルパーに、さらに過激な行為を強制させられるとは、夢にも思っていなかった。
それでも、けなげなエルフ娘(にしか見えない女装少年)は、おずおずとスカートをめくり上げ、おずおずとショーツを下ろして陰部を剥き出しにする。
「先ほど姫様の前では短小疑惑を否定されていましたが……ソレは何ですか?」
窮屈な女物の下着から解放されたエルファリアの陰茎は、しかしながらあまり大きいとは言えないようだ。
クラティスとて男性との性交経験は無く、実物を目にしたのはこれが初めてだが、そのテの書物などで仕入れた知識と比較すると、予想よりふた回りは小さい。
確かにエルフの男根はヒューマンに比べると、やや細めな傾向があるらしいが、エルのは長さの面でも明らかに短く、当然「皮つき」である。
自らの粗末なモノに無遠慮な視線を向けられ、エルファリアはカッと頬を赤らめる。
「姫様に見栄を張った挙句に、そのザマですか。恥ずかしくないのですか?」
「ぅぅぅ……」
同じパーティの兄貴分ふたりの立派な逸物と比較して、まるで思春期前の子供のような持ち物に、エルは密かにコンプレックスを抱いていたから、クラティウスの言葉は、正確にその弱点をえぐっていた。
もっとも、コレは体格的・種族的な差異もあるし、何よりあのふたりは、各々のパートナー相手に「男」を磨いている──性的な意味で──のだから、無理もない面もあったのだが。
316 :
王女様と私:2010/12/05(日) 19:38:35 ID:SQUmJwZg
涙目になって見返すエルフ少年の視線を、しかしクラティウスは意に介さなかった。
「……ですが、現在の状況下ではむしろ好都合ですね。そのまま、じっとしていなさい」
「?」
羞恥に身悶えしながらもメイドの言葉に疑問を抱いたエルだが、クラティウスが懐から取り出した三角形がふたつつながった蝶のような形の紙に目を奪われる。
「あのぅ……それは?」
「呪符です」
単純明快な答えだったが、短過ぎて逆に理解できない。
確かに、その紙──いや符(ふだ)には、黒い墨で何かの呪文ような模様のようなものが書き込まれているようだ。
しかし、それ以上説明することなく、猫耳メイドはエルの脚元にしゃがみ込むと、止める暇もなく、グイと彼の局部をつかんだ。
「い、痛いですよ、クラティウスさん。もっと優しく……」
「お黙りなさい」
ピシャリとエルの反論を封じると、クラティウスはそのまま少年のわずかに堅くなった陰茎を無理矢理に後ろに倒し、そのまま上から手にした呪符で押さえこみ、何か短い呪文のようなものを唱える。
紙でできているであろう符は、しかし予想外の力をもってエルの「竿」と「球」を圧迫して抑え込む。
「イタタタ……って、あれ? 痛く、ない」
「ええ、そのための呪いがかかってますから……もう、ショーツを上げてもよいですよ」
そう許可されて、エルファリアは慌てて膝まで下ろしていた純白の下着を履き直した。
これまでの冒険行での長い女装(正確には女物装備の愛用)経験故か、丁寧にスカートの裾などを整える仕草は、堂に入ったものだ──不憫な。
317 :
王女様と私:2010/12/05(日) 19:39:03 ID:SQUmJwZg
「あの、結局コレは何なのでしょう?」
「そうですね。エルファリアさん。貴方は「宦官」と言う言葉を知ってますか?」
「えぇっと……たしか、タカチホの方で移民前にあった制度、でしたっけ? 詳しくは知りませんけど」
「ええ、その通りです。宦官とは、国王のもとに侍るべく去勢を施された官吏を指します。国王の後宮や大奥で、官吏が王の妃や愛妾と密通することを警戒して出来た制度だとも云われていますが……」
そこまで聞けば、エルファリアにも、おおよその目的は理解できた。
「つ、つまり、ボクは、ここでは宦官になれ、と」
「ご理解いただけたようで何よりです。心配せずとも、その魔法のマエバリは貴方のモノを勃起しないよう押さえつけているだけで、モノ自体がなくなったわけではありませんから」
先ほどの口論でクラティウスが言っていた「枷」とはこれのことなのだろう。
これみよがしな男性用貞操帯など付けられるよりは、目立たないだけマシだろう。
「言うまでもなく、ソレは貴方の手では外せません。いえ、今呪文を唱えたわたくし以外には外せない、というほうが正確ですね。
無理に剥がそうとすれば、周囲の皮膚ごと焼き切れるそうですので、試さない方が賢明ですよ?」
ますます貞操帯じみている。もっとも、このメイドが危惧しているのは、愛する姫様の貞操の方なのだろうが。
「はぁ……わかりました。でも、風呂とか……お、おしっことかは」
「安心しなさい。完全防水なうえ、付けたままでも用は足せるそうです。もっとも、トイレでは、女性と同じくしゃがんですることになるでしょうが」
この部屋に入ってから初めて、満面の笑顔でニッコリとエルファリアに微笑みかけるクラティウスなのだった。
-つづく-
#つまりはこういう形に。これが、侍メイドとしてのギリギリの妥協点。文句を言うようなら、チョン切る気満々だったため、エルファリアとしてもすごすご引き下がるしかありませんでした。
#「あれ、これじゃあ、エロいことできないの?」と落胆した方はご心配なく。男の娘なら、ピーがなくたってエロい部位は他にも3ヵ所あるじゃないですか!
#……と言いつつ、次回は日常シーンの予定。シュト×エルはその次くらいかなぁ。
GJ!!
何この羞恥プレイ萌える
ってか、悶えっぱなしで辛いので続きをお願いします
また止まった?
やはり今、PSPユーザーはモンハンに魂を奪われているのか……。
>>319 PSPの十字キーが効かない俺はPS3でプレイ中
忙しくて修理に出せないorz
モンハンは時計があるが、なまじ時計のないととモノとかマインスイーパーとか
ゲームメーカーとかの方がよっぽど時間泥棒だと思います。
投下したいと思いますが、いくつか注意。
今回はエロ分入れられませんでした。ですがとても長いです。
そしてその大半が殺伐とした殺し合いになっていますので、苦手な方はスルーしてください。
大丈夫だという方は、楽しんでいただければ幸いです。
燦々と輝く太陽の下、乾いた風が吹き抜ける。
乾ききった砂の上であれば、それはこの上もない苦痛をもたらすが、水辺と木陰、それに日除けの木でも存在していれば、
むしろ心地よい刺激となる。
それを体現するかのように、飢渇之土俵にフェルパーの喉を鳴らす音が響く。
「グルルルル、フルルルル……グルルルル……フルルルル…」
半分眠っているらしく、その音は途切れがちである。だが、彼に膝枕をしているノームが頭を撫でると、思い出したように再開する。
その二人の傍らでは、ドワーフが気持ちよさそうに寝そべっていた。
「ん〜〜〜、もうちょっと上……あ、そこそこ〜。いい気持ち〜…」
「………」
制服を捲り、背中にブラシを掛けるディアボロス。黙々と作業をこなしているようにも見えるが、既に何十分もそれを続けているため、
本人も嫌ではないのだろう。ばっさばっさと揺れる尻尾に、たまに手を止めつつも、文句の一つすら言わない。
そんな四人を、バハムーンは少し離れた所に座り、どんよりとした目で見つめていた。
「……いいなあ、あいつら……どうして私だけ、触っちゃいけないんだよぉ…」
「だって、君、構いすぎだもん。そりゃ逃げるって」
「む〜〜〜…」
拗ねた子供のように唇を尖らせ、直後、バハムーンは思いっきり叫んだ。
「私だってフェルパーなでなでしたいーっ!!ドワーフふかふかしたいーっ!一緒にお昼寝とかしたいよぉーっ!!!!」
言い終えると、バハムーンはバタッとうつ伏せに倒れ込んだ。クラッズは隣で、それを呆れたように見つめている。
「……くすん」
「大丈夫?」
「……なでなでして…」
「よしよし」
「ありがと…」
頭を撫でてやると、少しは気が紛れたのか、バハムーンはのそりと体を起こした。だが、自分を見つめる視線にクラッズが
不安を覚えた瞬間、彼女の手が伸びた。
「お前だけだよぉー!私に優しくしてくれるのー!」
「おぐぁっ……く、苦しっ……て、手加減っ……手加減してっ…!」
思い切り抱き締められ、背骨がゴキリと音を立てる。さらに腰もパキポキと音を立て、クラッズの顔が苦痛に歪む。
「え?あ、ごめん。ポキポキ言ってたな」
解放されると、クラッズはハアハアと荒い息をつく。彼女はたまに加減ができなくなり、こうしてクラッズやフェルパーを
負傷させることもある。ドワーフはというと、そもそも抱き締める以前に逃げられるため、被害には遭っていない。
「いったたた……だから抱っこさせてもらえなくなるんだってば、もう…」
「じゃ、じゃあ、もっと優しくしてあげたら、抱っこさせてくれるかな…?」
「いや、それ以前に構いすぎっていうのが大きいよ、君は」
「ちぇ〜…」
言いながら、バハムーンはクラッズを膝の上に乗せ、後ろからギュッと抱きしめた。これは反省していなさそうだと、クラッズは
彼女の腕の中で、大きな溜め息をつくのだった。
見た目とは違い、バハムーンはひどく子供っぽいところがある。可愛いものや小さいものが大好きで、そういうものを見ると
抱き締めずにはいられないのだが、そのせいでフェルパーやドワーフなどからは敬遠されている。クラッズはというと、
さすがに全員が嫌ってはかわいそうだと思い、バハムーンの為すがままになっている。おかげで最近は、バハムーンも
捕まえにくいフェルパーやドワーフではなく、最初からクラッズを標的にすることが増えてきた。
ただ、行動は非常に子供っぽいが、何から何までがそうというわけでもない。
「お、フェルパー!ちょうどいいところに!」
早めに探索を終え、学生寮に戻った一行。フェルパーはノームから本でも借りようと来客用の部屋へと向かったのだが、
そこで部屋から出てきたバハムーンと鉢合わせした。
「あ、ああ。バハムーン、どうした?」
「あのなあのなー!今、餡子っての作ってみてるんだけど、味見してもらえないかな!?」
「餡子?まあいいけど……俺でいいの?気の利いた感想言えないと思うけど」
「なんで?気ぃ利かせる必要なんてないだろ?」
バハムーンは、いかにも不思議そうに聞き返す。
「そりゃ、アドバイスもらえるなら嬉しいけどさ。でも、味付けがどうこうとか調味料のバランスがどうこうとか言われたってさ、
うまいと思ってるかどうか、全然わかんないんだもん。バランス良くたって、まずかったらそれまでだろ?だから、うまいかどうかだけ
聞かせてくれればいいからさ!」
「うーん、なるほどね。そっか、じゃあ俺でよければ」
「やった!うまくできてると思うんだけどなー!」
バハムーンは嬉々として部屋に戻り、フェルパーもその後に続く。部屋の中には小豆の匂いが立ちこめ、鍋がぐつぐつと音を立てている。
「結構煮込んでるから、そろそろいいと思うんだけど……水分飛んだら出来上がりだよな?」
言いながら、バハムーンは鍋を火から上げ、机に布巾を敷いてから、その上に鍋を乗せる。
「……これを食えと?」
「あ、お前猫舌?」
「猫舌じゃなくたって、こんな煮えたぎった餡子食えるかっ!」
「あはは、スプーンはあるって!適当に冷ましてから食べてみてくれよ!」
バハムーンはフェルパーにスプーンを差し出す。それを受け取り、餡子に突っ込んだ瞬間、フェルパーは僅かに首を傾げた。
部屋に、フーフーフーフーと息を吹きかける音が響く。たっぷり一分ほどをそれに費やしてから、フェルパーは餡子を恐る恐る
口に運んだ。
「どう?うまい?」
それなりに自信はあるらしく、バハムーンは笑顔を浮かべている。だが、フェルパーは難しい顔で答える。
「……なんか、ぐしゃってしててうまくない…」
「えええー!?嘘ぉー!?ちょ、ちょっといいか!?スプーン貸して!」
フェルパーからスプーンを受け取ると、バハムーンは餡子をろくに冷ましもせず口の中へ放り込んだ。それでも熱いと言わない辺り、
恐らくはブレスで慣れているのだろう。
「……うわ、ほんとだ…」
見る間に、バハムーンの表情が曇っていく。それはまるで、楽しみにしていたおやつを、目の前で取られてしまった子供のような
表情だった。
「なんでぇ…?作り方、間違ってないはずなのにぃ…」
「う……バ、バハムーン、そこまで気を落とさなくても…」
だが、慰めようとした瞬間、バハムーンの顔が職人の顔になった。
「いや……間違ってなきゃ、おいしくできるはずだよな……きっとどこかで、作り方間違ったんだ……砂糖入れるタイミングか…?」
バハムーンはぶつぶつと呟き、そしてハッとしたようにフェルパーを見た。
「あ、フェルパーごめんなぁー、うまいの食べさせてやれなくって。次は絶対うまく作るからさ!その時は、またお願いしてもいいか?」
「ああ、いいよ。俺も楽しみにしとくよ」
「おう!楽しみにしといてくれ!悪かったなー、引き止めて!またな!」
お菓子作りに関してだけは、彼女は妥協しない職人の顔を持っていた。クッキーやケーキを作るのは得意らしく、たまに宿屋でそれを
作っては、仲間に振る舞うことも多い。ドワーフもお菓子作りの腕は純粋に評価しているらしく、彼女が作ったものの半分以上は
ドワーフの胃袋に納まるのが常である。また意外なところでは、ディアボロスも彼女のケーキが気に入ったらしく、ドワーフに
取られる前にしっかり自分の分を確保するようになってきている。
そんな所がある故か、彼女は仲間の多くに嫌がられつつも、心底嫌われているというわけでもない。その証拠に、部屋を出る
フェルパーの顔は、次の味見への期待に満ちた笑顔だった。
翌日、一行はタカチホ義塾を出てトコヨへと向かった。フェルパーとクラッズにとっては家みたいなところだが、他の仲間にとっては
自分達が明らかに異邦人だと感じられてしまうため、落ち着かないのだ。なので、学園ではない中継点ならば、まだその感覚も
薄れるということで、気晴らしも兼ねている。バハムーンにとっては、お菓子作りの素材調達でもある。
「いやー、やっぱりここも暑いよね。タカチホが天国に思えてくるよー」
「寮は涼しいもんなー。私は暑いの好きだけど」
特に目的があったわけでもないため、一行は全員で交易所に来ており、各自好き好きに物色している。
少し離れたところでは、ここに住む子供達が物珍しそうに一行を見ていた。フェルパーとクラッズ以外は制服が違うこともあって、
制服の違う冒険者というものが珍しいのだろう。
「……後ろの子供達、こっち凝視してるな。あんなに見られると、少し落ち着かないや」
「子供可愛いよなー!少し遊んでやろうかな…?」
「あんたが遊ぶと、確実に怪我人出るでしょ。頼むから、こんなとこに来てまで余計な事件起こさないでよね」
「ちぇ〜、可愛いのになあ」
冒険者は子供にとって憧れであることも多い。この子供達もそうらしく、その手には木製の剣や、背中を撃っても怪我すらさせない
銀玉鉄砲が握られていた。
「元気そうな子達だね。玩具とか持って…………さ、さてと、僕は先に宿屋でも行ってようかな」
「お?どうした?疲れたのか?」
「………」
明らかに態度のおかしくなったクラッズを、フェルパーはじっと見つめていた。その目はクラッズだけでなく、後ろの子供達にも
油断なく注がれている。視線の先では、子供達が何やら相談しているらしく、顔を寄せ合って話し合っている。
「フェルパー、どうしたの。何かあった」
「え?あ、ああ……いや、別に何でも…」
一瞬、気を抜いた瞬間だった。何やらじゃんけんをしていた子供の一人が走り出て、クラッズに銀玉鉄砲を突きつけた。
「バンバーン!」
恐らく、じゃんけんで負けた者が、冒険者の一人に対して攻撃の真似事をしてみせるという、他愛もない遊びだったのだろう。
しかし、途端にフェルパーの顔がさっと青ざめた。
「……やべえ…」
聞いたこともないほどに、深刻な声。そして、クラッズは異様な殺気を放ち、その子供を睨みつけていた。
「え…?あ、うあぁ…!」
それに恐れをなし、子供が逃げようとした瞬間。
「うおおぉぉあああぁぁ!!!」
抜刀とフェルパーが飛び込むのは、ほぼ同時だった。子供に向けられた抜き打ちの一閃を、フェルパーは危ういところで跳ね上げた。
「ノーム!ディアボロス!子供達を頼む!」
「任せて」
「クラッズ!やめろ!やめろって…!」
「ああああああああ!!!!殺す殺す殺す殺してやる殺してやる殺してやるあああぁぁぁ!!!!」
もはやその目に理性はなく、焦点すら失っている。狂気の叫びと共に繰り出される斬撃は、風切り音すら立てないほどに鋭い。
それをフェルパーが何とか凌いでいる隙に、俊足の二人は子供達を連れて安全な場所へ退避する。
「うわぁーん!!僕、ちょっといたずらしただけだよぉ!!なのになんでぇ!?」
「さあ。とにかく、死にたくなければ逃げた方がいいと思うけど」
「……行け」
何とか避難が済んだのを見ると、フェルパーはクラッズと距離を取った。
「おい、よせ!あいつらは違う!あいつらはただの子供だぞ!」
「うるさいうるさいうるさいどけよ黙れ邪魔するなああぁぁ!!!」
「馬っ鹿野郎ぉ!!!」
首目掛けて飛んできた一撃を引いてかわし、追撃の前に杖で相手の腕を封じる。それでもなお攻撃しようとするクラッズの鳩尾に、
フェルパーは渾身の蹴りを叩き込んだ。
「がはっ!?ぐっ……うああぁぁ…!」
普通ならば、敵の存在すら忘れて悶絶するほどの威力がある一撃だった。だがクラッズは倒れもせず、目の前のフェルパーを睨みつけた。
そこでようやく相手が誰かを認識したのか、クラッズの顔に狂気を孕んだ笑みが浮かんだ。
「……あはははぁー、フェルパーじゃない?どうしたんだよそんなどうしたのそんなとこでさあ、なんで僕の邪魔するのさなんで…」
「おいっ!!!!」
腹の底から怒鳴り付け、フェルパーはクラッズの肩を強く揺さぶった。
「ここはどこだ!お前は何をしてる!しっかり目を開けて、周りを見ろ!!!」
「え…」
その言葉に茫然と立ちすくみ、やがて少しずつ、クラッズの顔から狂気が消えていく。周囲を見回し、自分を見つめる仲間を見、自分を
見て怯える子供達を目にし、その顔に強い戸惑いと悲しみの表情が浮かびあがる。
「あ……あ、あぁぁ……ああぁぁ…!」
刀を取り落としたクラッズを、フェルパーは優しく抱きしめた。仲間が声を掛けられずにいると、フェルパーが静かな声で言う。
「悪い……ちょっと、二人だけにしてくれ」
「……わかった。あとの始末はこっちで付けとく」
ドワーフとバハムーンが子供達を宥めすかし、ノームとディアボロスが交易所の者に謝りに向かう。その間も、フェルパーはクラッズの
頭を胸に抱き寄せ、クラッズはずっと胸の中で震えていた。
あらかたの始末がついたところで、四人は宿屋で待っていようということになり、それぞれに部屋を取る。だが、一人ずつで
いるわけもなく、全員でドワーフの部屋に集まった。
「あいつ、いきなりどうしたんだろうな…?あんな怖いの、初めて見た」
「何か、トラウマでもあるのかもね。あんなの、普通じゃない。ドワーフはどう…」
そのドワーフは、一人どこか遠い目で、ぶつぶつ呟いていた。
「どうって……おいしいよね……幼馴染で、あんな優しく抱きしめて……二人だけに…」
「不謹慎も何のそのね、毛むくじゃら」
「え!?あ!?はい!?な、何ですか!?何でもないですよ!?」
「ドクターの分析はどう。あの小さいの、明らかにおかしかったでしょ」
そう言われると、ドワーフの顔は一転して大真面目に変わった。
「ん、心的外傷後ストレス障害だろうね」
「し、しんてき…?」
「心的外傷後ストレス障害。ま、トラウマでも間違ってないよ。それのもっとひどいやつね。状況から判断すると、
子供が銃を向けて撃つ真似したら、我を忘れるどころか、幼馴染の存在も忘れて大暴れする始末。となると、あの子供のせいで、
フラッシュバック引き起こしたんだろうね。フェルパーも『あいつらは違う』って言ってるから、何か知ってるんでしょ。
ディアボロスの予想、大当たりだったねー」
「……嬉しくはない」
その時、部屋のドアがノックされた。ノームが出ると、そこにはフェルパーが一人で立っていた。
「フェルパー、お帰り。小さいのは」
「ん、少し一人にしてくれって言うから、俺だけ帰ってきたよ」
フェルパーが言うと、バハムーンが驚いたように聞き返す。
「ええー!?置いてきちゃったのかあ!?」
「ああ……そっとしておいてやった方がいいと思って」
「そんなこと言ったって、あんなになってたあいつ、ほっといていいのかー!?」
すると、ドワーフが呆れたように溜め息をついた。
「一人の方がいいと思うよ。向こうが一人にしてくれって言ってるんだしさ。大体トカゲ、構いすぎなの。構ってほしくない時も
あることぐらい、いい加減わかってよね」
「け、けどさぁ〜…」
「付いていたいってのは、トカゲの勝手な希望でしょ。向こうは一人になりたいって言ってるんだよ?」
バハムーンは叱られた子供のようにしゅんとしていたが、やがて顔をあげた。
「……でもやっぱり、こんなときに一人になんてさせられないよ。誰かいてやった方が…」
「今までフェルパーがいて、その上で言ったってことは理解してる?幼馴染で、一番仲のいい……大好きな……愛する…」
「ん?」
「え?あ、何でもないですよ!?とにかくフェルパーにだって一人にしてくれって言ってるんだから、トカゲが行って
どうこうなるものでもないよ」
「……でも、行く」
「はぁ……じゃ、勝手にすれば。追い返されても泣かないでよね」
説得を諦め、ドワーフは虫でも追い払うように腕を振る。バハムーンが出ていくと、残った面子は大きな溜め息をついた。
「……なんか、ごめんな。あいつのことで、色々ごたごた…」
「フェルパーのせいじゃないよ。でも、何があったのかは、聞かせて欲しいな」
「……やっぱ、話しとくべきかなあ…」
頭をがりがりと掻いてから、フェルパーはもう一度深い溜め息をついた。
「えっとな……あいつ、妹がいたんだよ。二歳年下の、可愛い子がさ。あいつとは、昔から家族ぐるみの付き合いで、その妹は
俺の妹みたいなもんでもあってさ、よく三人で遊んでたよ」
「へえ、初耳。そういえばクラッズって、トカゲなんかにお兄ちゃんオーラ出してるよね」
「だよな。でな、六年前にな……俺達の住んでたとこに、冒険者が来たんだよ。まあ、今の俺達と似たようなもんだ。
中継点に、ちょっと補給に寄ったって感じ。その中の一人が、銃を持ってて……持ってて…」
当時のことを思い出したのか、フェルパーの顔に悲痛な表情が浮かぶ。
「……何してたんだか知らないけど、暴発させやがった。俺達は、外で遊んでて、いきなりあいつの妹が血、噴いて…!
すぐに処置すれば、助かってたかもしれないんだ。なのに、あいつらはっ……自分達だけ逃げやがって、妹は結局っ…!」
抑えきれなくなってきたのか、フェルパーの表情は鬼気迫るものになっていた。だが、フェルパーは左手を広げると、そこに炎を
浮かべた。最初は、その炎はフェルパーの内面を示すように激しく燃え盛っていたが、少しずつ勢いが衰え、やがて蝋燭のように
静かな火になると、フェルパーは左手を握ってその火を消した。
「ふーっ……以来な、あいつ銃がダメなんだ。銃を向けられると、そのこと思い出して、ああなる。だから俺も、炎術師なのに、
サブ学科で格闘家のままじゃなきゃいけないんだよなあ。じゃないと止められる奴いないしさ」
最後は冗談を言う余裕もできたのか、フェルパーはそう言って笑う。
「……すまなかった」
突然のディアボロスの言葉に、フェルパーはぎょっとして振り向いた。
「な、何が!?」
「ずっと、おかしな学科の取り方をしてると思ってた。理由があったなら、おかしなことなど一つもない」
「あ、ああ……いや、実際変だから、気にしないでいいよ」
「ふぅん……そんな理由があったんだね。でも、それで同じ冒険者になったのはどうして?」
ドワーフの質問に、フェルパーは事もなげに答えた。
「復讐。あいつらを、見付けて殺す。冒険者なら、三つの学校のどれかを出てる可能性は高い。それに、力もつけられる。うってつけだ」
「……フェルパーも、そのつもりなの」
ノームが尋ねると、フェルパーは少し考える仕草をした。
「……まあ、できることなら。でもそれ以上に、あいつを一人にできないだろ?今だって、夜中にうなされることもあるんだ。
妹のこと、本当に可愛がってたから、俺よりよっぽど辛いんだよ、あいつは。暴れられても困るしさ。だからあいつは、
俺がいなきゃダメなんだよなあ」
「フェルパー…」
彼の言葉に、ノームは固い友情に対する感動を覚えたようだったが、ドワーフは全く違う感動に打ち震えていた。
「ふ、二人とも、自分がいなきゃダメなんて……共依存、ですね…!身近にこんなっ……学園祭で、本が出せる…!」
「……あれ?ディアボロスはどこだ?」
その言葉に、全員がハッと我に返る。見回しても、ディアボロスの姿はいつの間にか消えていた。
「あれ?ほんとについさっきまでいたのに」
「なあノーム、あいつ本当にダンサーだよな?忍者学科に転科とかしてないよな?」
「……たぶん、ね」
その頃、バハムーンは外でクラッズを探していた。交易所の近くを探したが見つからず、宿屋付近にもおらず、町の外れまで来て
ようやく彼の姿を見つけた。
だが、すぐには声が掛けられなかった。というのも、クラッズは地面に座り込み、俯いたまま小声でぶつぶつと呟き続けているのだ。
「死ねばいい死ねばいい死ねばいい死ねばいい殺してやる殺してやる殺してやる…」
そんな内容の言葉を、途切れることなく呟き続けるクラッズの姿は、ひどく不気味だった。
「お、おい、クラッズ…」
バハムーンは散々迷いつつも、彼に近づき、何とか声を掛ける。それに気付き、クラッズが顔を上げた。
「ひっ!」
途端に、バハムーンは腰を抜かしてへたり込んでしまった。
その目は、もはや人の目ではなかった。うつろな視線に深い殺意が宿り、目が合えばたちまち相手を殺さんばかりの、底の見えぬ狂気が
漂っている。今まで見たこともない、深い闇のような、焦点の合わぬ目に射竦められ、バハムーンは歯の根も合わぬほどに震えだす。
しゃあ、と小さな水音が響き、バハムーンの下の砂が黒く湿っていく。同時に、バハムーンの顔はくしゃくしゃに歪み、
唇はへの字に結ばれる。
それと同時に、クラッズの顔から一瞬にして狂気が消え失せた。
「……あ……あ、ああっ!?ご、ごめんバハムーン!ほんと、ほんとごめん!」
「ふ……ふえぇ〜…!」
完全にいつもの彼に戻り、バハムーンを宥めるクラッズ。バハムーンはベソをかきながら、クラッズの顔を見つめている。
「驚かすつもりなんかなかったんだけど……ほんとに、ごめん!」
「うぅ……ぐすっ……お、お漏らししちゃった……もうお嫁さんいけない…」
「そこなんだ……いや、誰にも言わないから安心して。ちゃんと秘密にしとくから」
ともかくも手を差し伸べ、クラッズはバハムーンを立たせてやる。涙を拭う彼女にどう声を掛けたものか思案していると、
不意にディアボロスが姿を見せた。
「あれ、ディアボロス?」
「ええっ!?あ、あのっ、お前っ、そのっ…!」
慌てるバハムーンに、ディアボロスは黙って下着を渡した。
「俺のでよければ」
「……あ、ああ……ありがと……って、お前見てたのか!?見たんだな!?」
ディアボロスは答えず、黙って頷く。
「絶対言うなよ!?他の奴には絶対に言うなよな!?いいな!?絶対だぞ!!」
やはり答えず、ディアボロスはこっくりと頷いた。それでようやく満足したのか、バハムーンは手渡された下着に目を落とす。
「……トランクス?」
「………」
「男物だよな、これ……ま、いいや、ありがと。借りるな」
「ね、ねえディアボロス……まさかそれ、今脱いだんじゃないよね…?」
その言葉に、バハムーンも一瞬手を止めてディアボロスを見たが、彼はぶんぶん首を振っている。
「あーよかった。んじゃ、私穿き替えるから、絶対こっち見ないでな……あ、濡れたのどうしよ…」
「ちょっと干しとけば、すぐ乾くよ。それ乾いたら宿屋戻ろっか?みんな心配してるかもしれないし、迷惑かけちゃったし…」
クラッズの言葉通り、乾燥した空気の中で太陽に晒しておくと、ものの五分程度ですっかり乾いてしまった。それを確認してから、
三人は宿屋へと戻った。
宿屋に残っていた三人は、いつもと変わらぬ態度でクラッズを迎えた。既に彼がそうなる理由を聞いていたこともあり、またフェルパーは
元々それに慣れている。ノームは彼のことなど大して気にしておらず、ドワーフは彼をあまり刺激しない方がいいと判断していた。
仲間が揃ったことで、他の面子は好き勝手に過ごしていたが、フェルパーはクラッズと同じ部屋で、彼の相手をしていた。
「は〜ぁ……バハムーン、せっかく心配して来てくれたのに……怖がらせちゃって、ほんと悪い事したよぉ…」
「でも、それに関してはあいつも根に持ってはいないんだろ?そこまで気にしなくたって…」
「あの子は仲間で、純粋に心配してくれただけなんだよ?なのに、あんな態度……ああ……ほんと、悪いことしちゃった…」
クラッズは子供達を殺しかけた以上に、バハムーンを怖がらせたことを相当に気にしているらしく、理由こそ変わったものの、
やはりひどく落ち込んでいた。
「バハムーンだって、お前を落ち込ませるために行ったわけじゃないよ。そんなに気にしてたら、逆にあいつに悪いぞ」
「……ありがとね、フェルパー。でも……はぁ〜…」
「ま、いいさ。今のうちに、思う存分沈んでおけよ」
少しそっとしておいてやろうと思い、フェルパーは部屋を出た。するとちょうど、色々な食材を買い込んできたバハムーンと出会った。
「お、バハムーン。お菓子の材料?」
「おう!饅頭だけじゃなくって、ケーキもまた作りたいしなー!タカチホだと、お菓子の材料少ないんだよなー」
そのまま少し立ち話をして、話題がクラッズのことになった時、フェルパーは表情を改めた。
「それにしても、君すごいよね」
「え?何が?」
「俺さ、クラッズがああなったのは見慣れてるけど、あんなに早く元通りになったの見たのは初めてだよ。どうやったのか
教えて欲しいぐらいだよ、ほんとに」
「ど、どうって……そ、それはいいだろ別に!?ちょっと話しただけだよ!」
「ああ、話したくないんならいいけど。でも……俺のやり方、間違ってたのかなあ…?」
そう言って遠い目をするフェルパーに、バハムーンは少し慌てた。しかし何をする間もなく、フェルパーはすぐいつもの表情に戻った。
「君とクラッズは、相性いいのかもね。無理矢理にでも構うぐらいが、あいつにはちょうどいいのかも」
「……誉められてる?」
「感想を述べたまでで、特に他意はないかな。とにかく、あいつのことよろしくな」
「おう、任せ…!」
続くはずの言葉を飲み込み、バハムーンは一瞬考えるような仕草をした。
「……って、なんで私に言うんだ?お前の方が適任じゃないのか?」
「そういえばなんでだろ…?なんか、当たり前みたいにそう思ったんだよね。でもまあ、あいつのこと宥められる人が増えるのは、
俺もありがたいからさ。嫌じゃなければ、よろしく頼むよ」
その日は、それで終わりだった。後は各人、思い思いに一日を過ごし、夜には完全にいつも通りの雰囲気で食事をし、部屋に戻る。
昼間に思わぬ事件はあったものの、それでも普段の日常から見れば、平和な一日だった。
それから一週間後。仲間達にとっては、不意の大事件が、当事者にとっては、追い求め続けた事態が起こった。
その日、彼等は炎熱櫓にいた。別に探索というわけではなく、ヨモツヒラサカへ向かおうという話になったためである。転移札や
飛竜召喚札はやはり高いため、どうしても徒歩が多いのだ。また、ドワーフとフェルパーも徐々に気候に慣れ始めたので、
多少は無理が利くようになったことも大きい。
道程の半ばまで差しかかった頃、彼等の前から別の冒険者が来るのが見えた。それ自体は特に珍しいことでもなく、彼等はすれ違いざまに
軽く挨拶をして、そのまま通り過ぎようとした。
その時、クラッズとフェルパーの足が止まった。
「……待てよ」
ゾッとするほど冷たい声に、全員が足を止める。しかもその声は、明らかにクラッズの声だった。
「……俺達に、何か用かい?」
別の冒険者の一人、ドワーフの男がそれに答える。口調こそ比較的軽いものの、その手はランスの柄をいつでも掴めるようになっていた。
「ああ、こいつと、俺も用事があるな」
今度はフェルパーが口を開いた。
「……あんたら、六年前に、ここらの小さな村にいなかったか?」
「………」
「いや、聞くまでもない。いたはずだ。ヒューマンにドワーフにセレスティアの三人組。ヒューマンは銃を持ってた。それに、そこの
ナイトのあんた。あんたは匂い強いからな」
言われて、ドワーフの男は自分の体の匂いを嗅ぐ。
「は、はは、は、はははは、はは。こんなに早く会えるなんてね。会いたかったよ会いたかったずっと会いたかったよ」
じわじわと狂気をまとい始めるクラッズを、フェルパーが手をあげて止める。
「あんたら、覚えてるだろ?まさか、忘れちゃいないよな?そこのあんたが、銃を暴発させて、一人の女の子を死なせたこと」
途端に、ヒューマンの顔がサッと青ざめ、その顔に怯えの色が浮かぶ。
「久しぶり。こいつは、その女の子の兄貴。俺はこいつの幼馴染。あの時、その子と一緒にいた子供だよ」
いつもの口調に、笑みすら浮かべながら、フェルパーはそう言った。だがそれが逆に、彼の内の狂気を強く表していた。
「あの子は、死んだ……のか…」
「死んだんじゃない、殺されたんだ。街中で不用意に銃をいじった冒険者のせいでな。で、ここまで言えば、俺達が何したいか、
わかるよな?」
その一言に、全員が戦闘態勢を取った。しかし、フェルパーは仲間を押し留める。
「フェルパー、どうして…」
「みんな、悪い。みんなは仲間だけど、これは俺とこいつの目的であり、ここまで冒険を続けた理由。何より、俺達の手で為すべき仇討。
だからここは、俺達だけでやらせてくれ」
「……そっか。じゃ、私は後ろで見てるよ。死にそうになっても助けないけど、いいんだよね?」
「ああ、頼む」
「待ってください!」
その時、セレスティアが両者の前に飛びだした。
「セレスティア、君は下がって…!」
「いえ、言わせてください!あの日からずっと、彼も苦しみ続けてたんです!あの場から逃げ出したことを、ずっと後悔して……だから、
お願いです!彼を許して下さい!彼ももう、充分に罰を受けたはずです!」
「そうなんだ苦しかったんだあ。僕はもっと苦しかったよずっと忘れられないよ……ねえわかる?妹がさあ、腕の中でさあ、
死んでいくんだよ。冷たくなってくんだよ。おかしな痙攣して血ぃ吐いて『痛いよ死にたくない助けて』って言い続けながら
死んだんだよお!!貴様等のせいでええぇぇ!!!」
今にも斬りかかろうとするクラッズを、フェルパーは危ういところで捕まえた。そこに、今度はナイトのドワーフが口を開く。
「……俺がこんなこと言えた義理じゃないけど、あんたの妹さん、自分のせいで兄貴がそんなんなってるのは、辛いんじゃないか?」
「ああ…?」
「あんたをそこまで狂わせたのは、俺達だ。それは否定しない。だけど、そこまで狂った兄貴を見て、妹さんはどう思うよ?
そんなの、誰だって見たくないだろ?」
「っ…」
その言葉に、クラッズの表情が歪んだ。
「あんたの妹さんを死なせた上に、あんた自身をそこまで狂わせたことは詫びる。だけど、こいつもずっと苦しんできた。
だからもう、許してやってくれねえか?あんたの妹さんだって……きっと、狂った兄貴が人殺しするところなんて、見たくねえだろ?」
「………」
噛みしめたクラッズの唇から、血が流れる。変わらず強い狂気を宿しつつも、彼は迷っていた。
だがそこで、ディアボロスが口を開いた。
「それで納得できるのか」
「え?」
「お前がじゃない、妹がだ。身内である兄が『復讐など馬鹿げてる、お前が正しい』と言って、自分を殺した殺害者と手を取り合って、
それで妹は納得できるのか」
余計なことを、とでも言いたげな顔で、ドワーフは小さく舌打ちをした。
「……どう……だろうね…」
小さな小さな声で、クラッズは呟いた。
「あの子……優しかったんだよ……すごく優しくて……だから、僕がそう言ったら、納得するかもしれないね…。でも……もう、
それを聞くこともできないんだよ…」
「なら、お前はどうしたい」
ディアボロスの言葉に、クラッズは顔を上げた。
「死者は何も答えない。何も言えない。何も感じない。なら、お前はどうしたい。妹を殺した殺害者を、六年も追い続けたお前は、
今ここでどうしたいと思うんだ」
全員が、クラッズを見つめていた。彼の行動次第で、この後に起こる全ての事態が変わるのだ。
やけに静かだった。時折マグマが噴出する音がする以外は、モンスターの鳴き声一つ聞こえない。まるで、彼等の周囲全てのものが、
クラッズの言葉を待っているかのようだった。
その沈黙を破ったのは、フェルパーだった。彼はクラッズの肩に優しく手を置き、言った。
「俺は、いつでもお前の隣にいるよ」
その一言は、クラッズに最後の決断をさせるのに十分なものだった。
ハァハァと荒い息遣いを背中に感じながら、クラッズは顔を上げた。気配は既に以前のような狂気をまとい、その目は待ち望んだ瞬間への
期待に炯々と光っている。
「なら……決まってるよね。その首、刎ねさせてもらう!」
もはや説得は無駄だと悟ったのか、相手は再び身構えた。そして、フェルパーもクラッズを放し、杖を構える。
「いつかこうなると、思ったよ」
溜め息をつきながら、ヒューマンが口を開く。
「ただ、一つ頼みがある。セレスティアだけは……見逃してやってくれ」
「そんな、ヒューマンさん…!」
クラッズはセレスティアを一瞥すると、鬼切を抜き放った。
「それで二対二。ちょうどいい」
「悪いな。なら、始めようか」
「お前、俺は巻き込む気満々かよ……ま、言われなくてもやるつもりだけどさ」
もはや介入することはできない。四人とセレスティアは後方に下がり、クラッズはヒューマンと、フェルパーはドワーフと睨み合う。
「君にはつくづく悪いけど、俺はここで死ぬ気はない。来るというなら、君も殺す」
「妹も、僕も、殺すって?ははっははは!死ぬのは貴様だぁ!」
クラッズが踏み込む瞬間、ヒューマンは銃を抜き様に発砲した。
目にも留まらぬ早撃ちだったが、クラッズはそれを刀で流し、真っ向から斬り下げた。ヒューマンは半身になってかわし、左手でさらに
銃を抜くと、すぐさま引き金を引く。今度はクラッズが半身になってかわし、さらに戻る勢いを利用して斬り付ける。
ヒューマンは左手を上げ、刀をトリガーガードで受け止めた。そして放り投げるように流すと、右手でクラッズの額を狙った。
瞬間、クラッズは刀を引き戻し、再び刃で銃弾を受け流す。その状態から素早く斬りあげると、さすがに避けきれず、ヒューマンは
腕を軽く斬られた。
しかし、飛び退りながら発砲する。直撃こそ免れたものの、クラッズの左腕を銃弾が掠めた。
「……強いな。まさか刀でいなされるとは」
「………」
クラッズは答えなかったが、彼も内心驚いていた。相手は思った以上に、強い。
これはもしかすると、逆に殺されるかもしれないと思いながらも、クラッズは僅かに笑顔を浮かべていた。
一方のドワーフとフェルパーは、お互いに微笑を浮かべつつ対峙していた。
「あいつの邪魔はさせない。そして、あんたを許す気もない。ここで死んでもらうよ」
「俺は、あいつを死なせる気はない。お前を殺したくはないけど、来るというなら殺す。お互い、譲れねえんだよなあ」
ドワーフは耳を畳んでバルビューダを被り、盾とランスを構えた。だが、その時既に、フェルパーの詠唱は完成していた。
「燃えちまえ……ファイガン!」
杖を一振りすると、途端に巨大な炎が噴き出し、ドワーフに襲いかかる。しかし彼は盾を構えると、その後ろに姿を隠した。
そのまま盾で体を庇いつつ、ランスを構えて突進する。一気にフェルパーへ肉薄すると、ドワーフはランスを突き出した。
間一髪、フェルパーはその一撃をかわす。だがそのまま懐に飛び込み、反撃しようとした瞬間、盾が唸りをあげて襲いかかった。
「ぐあっ!?」
たまらずよろめき、膝をつく。そこを狙ってランスが突き出されたが、フェルパーは地面に身を投げて距離を取った。
「……魔法の盾、か。厄介だな」
「炎術師じゃ、俺相手は荷が重いだろ?諦めてくれねえかな」
「俺もあいつも、諦めだけは悪いんでね」
今度はフェルパーが間合いを詰める。突き出されたランスをかわし、さらに襲い来る盾を屈んで避ける。
直後、フェルパーの掌打がドワーフの腹に打ち込まれた。鎧越しとはいえ、その衝撃は並ではなく、ドワーフはたまらずよろめいた。
フェルパーは背を向けると、大きく杖を振りかざした。そして、それを思い切り後方へと突き入れる。
「がはっ!」
再び襲いかかった衝撃に、ドワーフは辛うじて耐え抜いた。膝すらつかず、即座に体勢を整える相手を見て、フェルパーは皮肉っぽい
笑みを浮かべた。
「衝撃は鎧も突き通せるぜ。にしても、なんで倒れないかなあ」
「炎術師にして格闘家、か。思ったよりいい腕だ。ならこっちも、全力でいくぞ」
身を屈め、盾で全身を庇うドワーフ。その陰から覗く目が、虎視眈々とフェルパーの隙を窺う。一方のフェルパーは、杖を両手で
構えつつ、更なる詠唱を開始する。
「おらぁ!」
「ブラストォ!」
守りたい者、殺したい者。譲れない者同士の戦いが始まった。
彼等の戦いを、仲間達はじっと見守っていた。助太刀に行きたいという思いはあるが、そうすれば彼等の意思を無視することになる。
それ故に、歯痒い気持ちを抑え、ただ見ているしかない。
状況としては、両者の実力は拮抗しているようだった。しかし、始まったばかりではその判別もつかない。
「……変わった方達、ですよね」
不意に、セレスティアが四人に話しかけた。
「ん〜?何が?」
「そちらのお二人は、プリシアナ。あちらの二人はタカチホ。あなた達お二人は、ドラッケンの制服ですよね」
「ああ、なんかそんな話になってねー。何だかんだで、仲良くやってるよ」
戦いの様子からは目を離さず、ドワーフが軽い調子で答える。
「ドラッケンは、わたくし達の母校でもあるんですよ」
「へ〜、じゃあ先輩なんだ」
「ええ。三人で、入学した時から、ずっと…」
そう言い、セレスティアは目を瞑った。
「……ですから……わたくしは、彼等を失いたくないんです」
独り言のように呟くセレスティア。だが、ドワーフはその口がもごもごと小さく動いているのを見た。
「……っ!?みんな、気を付け…!」
直後、セレスティアが大きく翼を広げた。途端に、四人に異変が起こった。
「な、何!?や、やだ!やだぁ!怖いよぉ!!」
「ぐっ……うっ…!」
「嫌……嫌っ……フェルパー、助けてっ…」
「うわぅぅ…!」
恐怖に震える四人に、セレスティアは憐れむような視線を向ける。同時にその翼が、見る間に黒く染まっていく。
「ごめんなさいね。わたくしは、絶対に彼等を失いたくないんです。負けることはないと思いますけど……万一に備えて、あなた達を
人質にさせていただきます」
彼女達を捕縛しようと、セレスティアはゆっくりと四人に近づく。だが、あと一歩というところまで迫った瞬間、ドワーフが走った。
「おぅりゃあー!」
「くっ!?」
目の前をクリスが斬り裂く。大きく羽ばたいて体勢を立て直すセレスティアに、ドワーフは笑顔を向ける。
「惜っしいなあ。あとちょっとで頸動脈もらえたのに」
「わたくしの魔法が、効かなかったんですか」
「そりゃあねー。後衛が、そんな簡単に無力化されても困るでしょ?それに、その程度の恐怖、私には効かないよ」
クリスを構え、ドワーフはセレスティアと対峙する。大きく息をつくと、セレスティアはどこからか大きな鎌を取り出した。
「なら……これはどうですか?」
「させない!」
新たに詠唱を始めたのを見て、ドワーフは走った。しかし、瞬発力に欠ける彼女に対し、セレスティアの詠唱はあまりにも速かった。
「パラライズ!」
「うわっ!?あっ……が、ぅ…!」
たちまち全身の力が抜け、ドワーフは顔面から地面に倒れ込んだ。
「あなたは、何かと厄介な存在みたいですね。なら、麻痺だけでは物足りないかもしれませんね?」
セレスティアが、鎌を振りかざす。ドワーフは避けることもできず、倒れたままでそれを見つめるしかない。
だがその瞬間、ディアボロスが猛然と走った。
「なっ!?」
セレスティアが飛び退くのと、ディアボロスが回転しながら突っ込んでくるのはほぼ同時だった。一瞬でも反応が遅れていれば、
今頃は回転するタルワールの餌食になっていただろう。
「ディ……ア…」
「バハムーン、ドワーフを頼む。連れて下がれ」
「ううぅぅ……そ、そいつ怖い……ち、近づけないでぇ…!」
恐怖に支配されながらも、バハムーンは何とかドワーフを抱きかかえ、後方へと下がった。
「うう……せめ、て、ノー……ム、に…」
「………」
もはや恐怖など完全に消え失せたらしく、ディアボロスは怒りに満ちた目でセレスティアを睨む。
「これは驚きました。これほど早く解けてしまうなんて……それにあなた、男の人だったんですね」
「………」
「まあ、いいでしょう。あなたも、そのドワーフと同じ状態に…」
そこまで言った瞬間、ディアボロスは一瞬にして間合いに飛び込んだ。
左下からの切り上げを下がってかわし、回転しながらの薙ぎ払いを鎌で受け止める。そのまま角度を変えて突き刺しにかかると、
ディアボロスはひらりと身を翻し、その一撃をかわす。
両者は素早く距離を取り、再び武器を構え直した。
「ダンサー、ですか。無駄な動きが多いですよ?」
「仲間を裏切り、ドワーフを傷つけたお前を、生かしておく気はない」
「格好と違って勇ましいですね。ですが、わたくしも負けられません。わたくしも、仲間が大切なんです!」
再び、両者が距離を詰める。本来ならば起こってはいけない戦いが、非情にも幕を開けた。
最初こそ拮抗していた戦いも、徐々に変化を見せ始めていた。
続けざまに響く銃声。五発目の銃声が鳴ったところで、クラッズの悲鳴が響き、血飛沫があがる。
「ぐぅぅ…!くそぉ…!」
「敵うわけないんだ。お前は確かに強いけど、所詮は学生だ」
「ふざ、けるな……天剣、絶刀ぉ!」
クラッズが叫ぶと同時に、天からいくつもの剣が降り注ぐ。さすがにそれをかわすことはできず、ヒューマンはいくつかの傷を負ったが、
そのどれ一つとして決定打とはなりえないものだった。
そこに、クラッズがさらに飛び込む。逆脇構えからの斬り払いを下がってかわし、ヒューマンはさらに銃を撃ち込む。
咄嗟に首を曲げるも、銃弾はクラッズの耳の一部を抉り取った。
「はぁーっ、はぁーっ……負ける、かぁ…!」
「……狂気も積もれば、ここまでなるかよ…」
もはやクラッズの構えは、侍らしさなどまったくない。背は丸まり、足運びも滅茶苦茶になり、刀はだらりとぶら下がっている。
だが、その品格の欠片もない構えから繰り出される斬撃は、異常なまでに速い。むしろ、構えが崩れれば崩れるほどに、技の切れと
威圧感だけは増していく。
「絶対に……殺してやる!!」
「悪いが、返り討ちだ!」
再び響く銃声。二人の戦いは、未だ終わる気配を見せない。
一方のフェルパーも、予想以上の苦戦を強いられていた。元より、魔法のろくに効かない相手であり、重装備に身を固めた相手では、
圧倒的に不利なのだ。しかも肉弾戦を挑めば、正確なランスでの突きが襲いかかり、懐に飛び込めば盾で殴り返される。
その上で、ドワーフは徹底的に持久戦の構えを崩さない。いくら鍛えているとはいえ、フェルパーは種族的に持久力がない。
それに比べ、無尽蔵とも言える体力を持つドワーフは、こうなると恐ろしく強い。
「はっ!」
「ぐっ!?ぬ、う……ファイガン!」
灼熱の炎が襲いかかる。しかし、ドワーフは盾に身を隠し、それを容易く凌いでしまう。全く効いていないわけではないが、
消耗の度合いで言えば、フェルパーの方が圧倒的に不利だった。しかも、ドワーフは絶対に無理をせず、小さな隙を見付けては
ランスで攻撃できるところを攻撃するという戦法を取っている。細かい傷でも血は流れ、それは確実にフェルパーの体力を奪っていく。
「……なあ、もうわかったろ?相性が悪すぎるんだよ、頼むからもう諦めろ」
「………」
既に、フェルパーは肩で息をしている有様だった。しかしドワーフの言葉に、彼は口元だけの笑みを見せる。
「火は水に消え、水は風に巻かれ、風は土に押し留められ、土は火に溶ける。光は闇を切り裂き、闇なければ光はなし。されど
侮るならば、火は土に覆われ、土は風に散らされ、風は水に押し流され、水は火に焼き消される。あんたも習っただろ?」
「諦めるつもりはないってことか。殺したくは、ないんだけどな」
「へえ。俺とは気が合わないな」
「言ってくれるよ、牙も生えてねえような若造が。けどな、その体たらくで、どうやって俺に勝つんだ?」
「……舐めんなよ」
フェルパーは一度、大きく息を吐き、肺の空気を残らず押し出してから、大きく息を吸い込む。次に細かく二度息をつくと、
最後に大きく息を吸った。
シュッと音を立て、一際鋭く息を吐く。すると、あれだけ乱れていた呼吸が、すっかり治まっていた。
「へえ……大した集中力だ」
「毛の一本も残らず、焼き尽くしてやる!」
今度は肉弾戦を挑むフェルパーに、ドワーフも応戦の構えを見せる。しかし、その四人とも、仲間達の異変には気づいていなかった。
セレスティアとディアボロスの戦いは熾烈を極めていた。
大鎌を振り回し、背中の翼で宙を舞うセレスティアに、二本の剣を全身で扱うディアボロスの姿は、ともすれば剣舞でも
しているかのように、華麗で見応えのあるものだった。
鎌が弧を描き、ディアボロスの腹に迫る。その切っ先をくるりと回ってかわしながら、その勢いで両手の剣で斬り付ける。
セレスティアは宙に飛んでかわし、真っ向から斬り下げる。揺らめくような動きでそれをかわすと、今度は攻撃をせず、
癒しの踊りのステップを踏む。
一見すると、互角の勝負にも見えた。だが、両者ともほとんど傷ついてはいないが、ディアボロスの場合は癒しの踊りによって
傷が回復しているというのが大きい。また、疾風の踊りを踊ってからの攻撃は苛烈を極めるが、それすらもセレスティアに有効な
攻撃とはなっていない。逆にセレスティアの攻撃は、ちょっとやそっとの攻撃は全て見切ってしまうディアボロスをもってしても、
避けきれるものではなかった。
言い換えるならば、自己の強化を行ったディアボロスが、彼女と同等よりやや下という程度なのだ。
「そこです!」
「ぐっ!」
鎌の切っ先が、ディアボロスの腹を掠める。多少の傷なら、癒しの踊りで治るのだが、その表情は硬い。
踊りとはいえ、それは魔力を使う一種の魔法である。もう何度も踊っているために、残りの魔力は少ない。
次の手をどうするか、考えた一瞬。その隙を、セレスティアは逃さなかった。
鎌が唸りをあげ、襲いかかる。ディアボロスはすぐに避けようとしたが、一瞬遅かった。
「ぐあっ!!」
「終わりです!」
太股が、骨までざっくりと切り裂かれる。たまらず膝をついたディアボロスに、セレスティアは鎌を振り上げた。
避けようにも、足を深く切られ、動くことができない。防ごうにも、鎌が相手では止める前に刃が突き刺さってしまう。
だが、勝負が決したかに見えた瞬間、セレスティアは不意に鎌を取り落とし、口元を押さえた。
「うっ…!?うえっ……げほっ!うっ……おえ…!」
突然、嘔吐するセレスティア。他の仲間達は訳も分からずそれを見つめていたが、ドワーフだけはその原因を推察できた。
「……つ、わり…?」
「………」
セレスティアはしばらく喘いでいたが、ようやく吐き気が治まったのか、顔を上げた。
その眼前に、ディアボロスが剣を突きつけていた。
癒しの踊りの効果は、まだ切れていなかったのだ。骨まで達したほどの傷も、今はやや出血が多い程度の傷でしかない。
ただでさえ顔色の悪くなっていたセレスティアの顔が、たちまち真っ青に変わる。そして、その顔がくしゃくしゃに歪む。
「ああ……お、お願いです…!どうか、許してください…!謝ります、ごめんなさい…!もう二度と、あなた達とは関わりませんから、
どうか命だけは……今、わたくしのお腹には子供がいるんです!」
そう言い、セレスティアは両手を合わせ、涙を流す。だが、ディアボロスは表情一つ変えず、また剣先を動かすこともない。
「お願いします……お願いします…!」
縋りつくような目で必死の哀願をする彼女を、ディアボロスは黙って見つめていた。
やがて、ゆっくりと剣先が下りていく。セレスティアの顔に、僅かながらも喜びの表情が浮かぶ。
トスっと、小さな衝撃。セレスティアの体がガクッと震える。
一瞬、唖然とした表情を浮かべ、セレスティアは恐る恐る、視線を下げていく。
「これで、未練もないだろう」
湾曲した剣が、彼女の腹を貫いていた。
「……ぐ……ぶはあっ!」
フェルパーは大きく息を吐きだし、体勢を崩した。そこに、ドワーフが盾を構えて突進する。
「これで終わりだ!」
「ハッ、ハッ……くそ……がは!」
残った体力の全てを使い尽したフェルパーは、もはや避ける力も残っていなかった。直撃を受けて吹っ飛ばされたフェルパーに、
ドワーフはさらに槍を突き出す。
「あがぁ!!ぐっ……あぐっ!」
腕と足と尻尾までもを使い、辛うじて直撃は避けた。しかし、鋭いランスの穂先は、フェルパーの脇腹を貫き、肉の一部を引きちぎった。
「まだ避けるかよ……お前、もう体力使い尽しただろ?俺は、敵をいたぶる趣味はない。諦めるか、大人しくやられてくれ」
相性の悪さもさることながら、実力差がありすぎた。精神力だけで残る体力をかき集め、起死回生を狙うも、現状はこの有様である。
ドワーフはフェルパーが気力だけで戦っていることを見抜き、徹底的に防御を固めた。その結果、フェルパーは攻めきることができず、
結局はこうして最後の体力まで使い切ってしまった。しかしそれでも、フェルパーは戦闘の構えを崩さなかった。
「誰がっ……ハッ……がはっ……殺したきゃ……っく……殺してみろ…!」
「……なら、次は外さない」
ドワーフは盾とランスを構え、狙いを定めた。もはや、フェルパーにはそれを避ける体力もなく、起死回生の策もない。
その時だった。
「いやああああぁぁ!!!!あああああああぁぁぁ!!!!いやあああああぁぁぁ!!!」
突如響いた絶叫に、二人は驚いて振り返った。その視線の先では、いつの間にか翼を真っ黒に染めたセレスティアが、ディアボロスに
腹を貫かれていた。
大きく開いた口に、ディアボロスは躊躇うことなくもう一つの剣を突き刺した。途端に声は止まり、セレスティアは数回痙攣を
繰り返し、その動きを止めた。
「セレスティア!?馬鹿なっ、どうして…!?」
注意が逸れた一瞬の隙を、フェルパーは逃さなかった。最後の気力を振り絞り、フェルパーは静かに、しかし強く地面を蹴った。
「ぜやぁ!!」
「なっ!?うあっ!?」
直前まで声も足音もなかったため、ドワーフはその接近に気付かなかった。渾身の体当たりを食らい、さすがによろめいたものの、
ドワーフは何とか体勢を立て直そうとした。
フェルパーは杖を捨てると、そのまま深く腰を落とし、右手を伸ばした。そして、空気を引き寄せるように腕を引くと同時に踏み込み、
両腕を大きく開いてドワーフの腹に左の掌打を叩きこむ。
「くっ…!」
再びよろめいたものの、ドワーフはやはりその衝撃に耐え抜いた。
「この程度、なめるな!」
しっかりと地面を踏みしめ、盾を振りかざす。だがフェルパーは避けようとせず、自身の左手に右手を添えた。
「……防いでみろよ」
その時既に、詠唱は完成していた。フェルパーは手先に意識を集中し、ドワーフの体内に直接火球を叩き込んだ。
ドワーフの体が、雷にでも打たれたようにガクンと震える。
「ぐっ……ごぼっ!」
フェルパーが体を引いた瞬間、ドワーフの口から真っ黒に沸騰した血が吐き出される。体内から直接焼かれ、ドワーフは全身から
煙を噴き上げ、息絶えた。
「……奇跡だ、な…」
一声呟くと、フェルパーはとうとう力尽き、その場にばったりと倒れこんだ。
クラッズとヒューマンの戦いも佳境を迎えていた。足を撃たれ、動きの鈍ったクラッズは、もはや格好の的でしかなかった。
それでも、急所への直撃だけを防ぎ、クラッズは何とか耐えていたが、もはや殺されるのも時間の問題と言ったところだった。
そこに、突如セレスティアの悲鳴が響いた。慌てて振り返ったヒューマンが見たものは、腹と口を刺し貫かれたセレスティアの
無残な姿だった。
「うわああぁぁ!!セレスティア!!う、嘘だああぁぁ!!」
思わず、そっちに意識が向かった瞬間、クラッズは撃たれた足で思い切り地面を蹴った。
「うりゃああぁぁぁ!!」
銃創から血が噴き出す。しかしその痛みは、彼を止めるものにはなり得なかった。
「くっ!?こいつっ!」
真っ向から振り下ろされた刀を、辛うじて銃で受ける。その瞬間、クラッズは左手を離した。
脇差の鯉口を切る。ヒューマンはそれに気付き、咄嗟に下がろうとした。
柄を逆手で掴み、抜き打ちに斬り上げる。同時に、血が舞った。
「ぐああっ!」
ヒューマンの右手の親指が地面に落ちる。それでもなお飛び退り、左手の銃を構えようとしたが、クラッズは鬼切を振りかぶった。
「食らえぇ!!」
そのまま鬼切を投擲する。それは狙いを外さず、ヒューマンの爪先を地面に縫い止めた。
「つっ……まずいっ…!」
「そっちも、もらうよ!」
構えられた銃の射線から体を外し、再び脇差を振り上げる。ヒュッと風を切る音と共に、左手の親指が斬り落とされた。
「くそっ……うああああ!!」
まともに把持できない状態ながらも、ヒューマンは狙いを定め、両手の銃の引き金を引いた。
銃弾が、クラッズの眉間と左胸目掛けて襲いかかる。だが、その狙いはあまりに正確すぎた。
体を開いて心臓への一撃をかわし、脇差をかざして眉間への銃弾を受ける。細くも強靭な刃は、その角度も相まって、銃弾を
容易く受け流してしまった。
乾いた破裂音と共に、銃が吹っ飛ぶ。二丁の銃が地面に落ち、あとには荒い息遣いだけが響いていた。
足を地面に縫い付けられたヒューマンと、刀を突きつけるクラッズ。その近くには、未だ煙のくすぶるドワーフの死体と、
力尽きたフェルパーが横たわる。そして、少し離れたところでは、ようやく恐怖から解放されたノームが、他の仲間の回復を始めている。
「……殺せ。銃を握れない体にされて、ドワーフにセレスティアまで殺されて……これ以上、抵抗する意味もない」
そう呟くヒューマンを、クラッズはじっと睨みつける。刀は突きつけられたまま、微動だにしない。
やがて、迷いを断ち切るかのように刀が振り上げられた瞬間、後ろから声がかかった。
「それで満足なのか」
「え?」
見れば、後ろにはまだ所々に怪我の残るディアボロスが立っていた。ドワーフはフェルパーにヒールを唱え、その傍らではノームが
泣きそうな顔をしている。バハムーンはまだ恐怖が残っているのか、治療を行うドワーフにべったりと張り付いている。
「妹を殺し、お前まで殺そうとした相手を、あっさり殺してやる理由がどこにある。考えうる限りの苦痛を与えた上でも、
遅くないと思うぞ」
「お?何、何?拷問でも始めんのー?」
ドワーフの耳がピコリと動き、続いてトコトコとクラッズに走り寄る。
「せっかくだから私も混ぜてよ。人間の限界って実際に見てみたいし、私がいたら簡単には死なせないよ!」
まるで楽しい遊びでも始まるかのように言うドワーフ。そこに、さらにノームが近づいてきた。
「拷問器具がいるなら、いくらでも作るけど。幸い、素材は多いしね」
「な、な……お、お前等っ…!」
当のヒューマンの顔は真っ青になり、引きつった顔で彼等を見つめる。そんな相手を見下ろし、クラッズは禍々しい笑みを浮かべた。
「……はははは、それもいいかもねえ。この脇差が、どれくらいで切れなくなるかも試せそうだし」
「ちょ、ちょっと待てよお前達!いくら何でも、そんなことっ…!」
唯一、バハムーンが四人を止めようとしたが、もはや彼女の言葉は誰の耳にも届いていなかった。
「さぁって、何から始めるー?意識朦朧としちゃうから、血の出るやつは後に回した方がいいよー」
「なら、吊り落としはどう。そこの木も使えそうだし」
「……僕は、指先から刻んでやろうと思うけどなあ」
「プロドキンを履かせてやる…」
異様な気配にバハムーンが怯えていると、回復したフェルパーが彼女の肩にがっちりと腕を回し、歩き出した。
「ちょっ、おい、フェルパー!?」
「この先は、君みたいな子が見るもんじゃないよ。先に宿屋で待ってよう」
「あれ、フェルパー行っちゃうんだ…」
寂しげに言うノームに、フェルパーは軽く手をあげる。
「疲れたし、な。君等は、存分に楽しんでくれ」
「楽しむって……フェルパー、いいのか!?ほんとにそれでいいのか!?」
「君は優しいな。でも、忘れないでくれ。俺もあいつには、殺しても殺し足りないほどの恨みがあるんだよ」
そう言われてしまうと、もはやバハムーンは何も言えなかった。同時に、隣のフェルパーに対して、言い様のない恐怖が湧き上がる。
「……俺のことも、やっぱり怖いか?」
「………」
「まあ、そうなんだろうな。でも、それでいいよ。こんな気持ち、わかる奴なんて……いない方がいいんだ」
その悲しげな声は、いつまでもずっと、バハムーンの耳にこびりついていた。
以上、投下終了。
このままだと剣と魔法の誰得モノと化しそうですが、この一番厄介な部分はどうしても必要だったのでご勘弁を。
あとはそれほど殺伐としたものはない予定。
それではこの辺で。
投下乙です。
しかし、たしかに誰得な展開かも……。
いや、個人的には「目には目を」主義なんで、「仇」や「敵」を殺すこと自体には抵抗はないんですが、
拷問して楽しんで殺すってのは、ちょっとね。
GJです!割と俺得です!
バハムーンもディアボロスもいい子。
GJです!毎回楽しみにさせてもらってます!
345 :
王女様と私:2010/12/13(月) 00:08:01 ID:hMhg4zua
#チンタラしてると、スレが廃れそうな予感もするので、当初の予定を変更して一気にエロまで。
#あいかわらずキルシュトルテがエロいです。「俺の王女様がこんなにHなはずがない!」と言う方は、ご覧にならない方が賢明でしょう。
エルファリアが4人目のメンバーとして、キルシュトルテのパーティーに加わってから、ひと月あまりの時が流れた。
当初の予想に反して、エルは非常にうまく王女達3人のグループに溶け込んでいると言ってよいだろう。
「プライドが高く我が道を行くキルシュトルテ」、「礼儀正しく有能だが姫様命なクラティウス」、「明るく脳天気に見えて実はちゃっかり屋のシュトレン」という取り合わせに、「温和で優しいが常識人かつ苦労人」なエルの性格がピタリとハマったからだろう。
これまで、王女の我儘に振り回されっぱなしだったこのパーティに、内部から控えめながら異議を唱えたり、(ごくわずかではあるが)軌道修正したりできる人間が入っただけで、周囲の被害は格段に減った。
それは、メイド娘とクノイチ娘にとっても例外ではなく、そのため引っ越しから一週間ほどで、エルの存在を、ふたりも好意的に受け止めるようになったのである。
──まぁ、そのぶん、エルが苦労する機会は少なくないワケだが。
そして、意外かもしれないが、キルシュトルテ王女自身もエルの存在を極めて歓迎しているようだった。
これはおそらく、一部の身内や老臣を除いて、これまで「反対意見や忠告を述べる味方」と呼べる者がほとんどいなかっただけに、新鮮に思えたのだろう。
また、エルは決して真っ向から反対したりせず、あくまで控えめに、かつできるだけキルシュトルテの意に添うような形での修正案を出すので、反発が少ないというのもあるだろう。
346 :
王女様と私:2010/12/13(月) 00:08:56 ID:iKPfdbbQ
そんなワケで、当のエル自身も(気苦労がないわけではないものの)、仲間として皆に受け入れられていることで、新たなパーティへと急速に馴染みつつあるワケだが……。
実のところ、気がかりな点がない、というワケでもない。
──断っておくと、女装や女の子扱いについてではない。コチラは当初から早々にあきらめている。
ひとつは、単位コンプリートを目前にして狩人科から聖職者に転科されられたこと。とは言え、狩人の場合、単位100になったからと言って特別強力なスキルや魔法を覚えられるワケではないので、あくまで気持ちの問題だし、そこはさほど拘っていない。
また、前衛に偏ったこのパーティーで、自分がサポート役の後衛になる必然性も理解していたし、防御や回復面を考えれば聖職者という選択肢にも頷ける。
問題は──ドラッケン学園の固有学科である聖職者のうち、なぜか「修道女(シスター)」として登録されていたことだ。
迂闊なことに、エルがそのコトに気付いたのは、初めての授業に出て点呼を受けた時のことだった(牧師、シスターの順に名前を呼ばれたので気がついた)。
王女の差し金であろうことは明白だったが、以前クラティウスに釘を刺されたように、「このパーティに在籍する限り、女の子扱いされる」のだから、彼女達に抗議するワケにはいかない。
微かな期待を込めて学園側に問い合わせてみたのだが、仮に身体的性別が♂であっても、本人が希望するなら「シスター」となることに手続き上の問題はないらしい。
(余談ながら、この点はプリシアナ学院の執事/メイドや、タカチホ義塾の神主/巫女なども同様である。リベラルというか何と言うか……)
さらに、ご丁寧にも、転科後初めて冒険実習に出かける際に、キルシュトルテに手ずから特製の修道服や聖帽など(無論、いずれも女物)を贈られてしまっては、「嫌です」と言うワケにもいかず、そのままシスターをやっているワケだ。
もっとも、神に祈って仲間を癒し、あるいは守り支える修道女という役回りは、エルファリアの性に合っていたことも確かだろう。とくに「魔法壁」を覚えた現在では、パーティの守護神として、強敵相手にはなくてはならない存在となりつつある。
その意味では「天職」と言えないこともないし、「彼女」の不満もさほど大きなものではない。
347 :
王女様と私:2010/12/13(月) 00:09:23 ID:iKPfdbbQ
しかし、もうひとつの方は幾分深刻だった。
同じ屋根の下で暮らし始めて1ヶ月あまりが経つというのに、キルシュトルテがエルファリアにアプローチしてくることが皆無だったのだ。
いや、スキンシップや触れ合いなどが、まったくなかったワケではない。むしろ、(以前から顔見知りだったとは言え)わずかひと月前に仲間になったとは思えないほど、王女は親しげにエルに接している。
気軽に背後から抱きついたり、手をつないで(それも恋人つなぎ!)買い物だの観劇だのに引っ張り回したり(その際、王女の選んだドレスを着せられたりもしたが、それくらいは我慢するべきだろう)。
中庭で昼寝する際、エルに膝枕をねだった時なぞ、それはもうメイド猫娘が嫉妬して黒い波動を全身から発する程の懐きぶりだ。
エルとて、想い人に気安く接してもらってうれしくないワケではないのだが……何というか、それらはすべて「仲の良い友達」に対する態度ではないか、と思えてしまうのだ。
王女という立場(と性格)上、キルシュトルテには友人と呼べる人間が極めて少ない。その上に「親しい」と付くような友など皆無に等しいだろう。
そんな中でエルファリアは、王家の家臣でも、雇われ人でもなく、自分自身の意思で彼女に近づき、また彼女が自ら受け入れた稀有な人材なのだ。
さらに性格的な面での相性も悪くなく、戦友としても頼りになるとなれば、彼女が親友、マブダチ扱いしたくなるのも無理もない話だと言えよう。
とは言え、エルも(こんな格好しているとは言え、一応は)男のコ。好きな女性が自分を「お友達」としか見てくれないとなると、多少は切ない気持ちになったりする。
──もっとも、結論から言うと、それは「彼女」の取り越し苦労だったりするワケだが。
348 :
王女様と私:2010/12/13(月) 00:10:24 ID:iKPfdbbQ
その夜、クラティウスによる「メイド修行」をそれなり以上に巧くこなして、彼女に褒められたエルファリアは、上機嫌で風呂から出て、眠りに就くところだった。
「うーん、お料理はもとより、お掃除やお裁縫もだいぶ上達してきたし、もうじきクラティウスさんのレッスンも卒業かなぁ」
「やったね♪」と浮かれながらエルがベッドに入ろうとしたところで、「コンコン!」と小さいが鋭いノックの音が部屋に響いた。
「エルファリアよ、わらわじゃ」
「え、キルシュトルテさん!? ど、どうぞ」
「うむ、邪魔するぞよ」
あいかわらず尊大な物言いとともに入って来た想い人の様子に微笑むエル。
こういう話し方なので誤解されやすいが、身近で見るキルシュトルテは、意外に繊細で優しい女の子だ。いや、そのコトは以前からわかってはいた(だからこそ、ココへ来た)のだが、こうやって一緒に暮らしていると、そのコトがよりいっそうよく分かるのだ。
一応、キルシュトルテの方がひとつ年上なのだが、よくできた姉(的存在)がいるエルとしては、どこか「手のかかる甘えん坊な妹」的な感慨を抱いてしまう。
だから、珍しく彼女が自分でお盆に載せて持って来たお茶を、何気なく飲み干して……そのまま意識を失ってしまったのだ。
「……んんっ」
意識を取り戻したとき、エルファリアはほかならぬキルシュトルテに唇を奪われていた。
ほどよい弾力感と湿り気を帯びた感触が、唇にジワジワと広がる。どうやら上唇と下唇を丁寧に王女の舌で砥め回されているらしい。
「ふふふ、お主の唇は、まことに柔らかくて甘いのぅ」
「き、キルシュトルテ、さん……」
身じろぎをしようとして、エルは痺れたように身体が動かないことに気付いた。
「大丈夫じゃ、わらわに身を任せるがよい」
強い力で抱きしめられ、今度は舌を差し入れられたかと思うと、トロリとした唾液を注がれる。甘酸っぱい柑橘系の匂いが、エルの喉の奥に広がった。
「ん……だ、ダメですよぅ……」
何とか顔を背けると、ふたりの唇の間に唾液の糸がツーッと伸びて切れた。
「おぉ、この期に及んで、そうまで自力で動けるとは、さすがエルファリアじゃな」
王女は、エルのほつれた髪を華奢の指で梳りながらニコリと笑った。
普段の歳の割に無邪気な笑顔ではない。明確に「女」を意識した淫靡な笑みがそこにはあった。
349 :
王女様と私:2010/12/13(月) 00:10:57 ID:iKPfdbbQ
「しかし、逃げずともよかろう。お主も、わらわとこうなることを望んでいたのではないかえ?」
「そ、それは……はい」
確かに否定はできない。こうなって嬉しいという気持ちもないワケではない、と言うか大いにあるのだ。
「まったく。一応身体的性別は男であるお主の顔を立てて、このひと月待ってやったと言うに、わらわのしとねを一向に訪ねて来ぬとは。とんだヘタレよ」
「そんなコトを言われても」と内心苦笑するエル。無論、王女の寝室の隣りの部屋には侍メイドが控えており、夜這いなどすれば最悪首が飛び、良くても男根を斬られていただろう。
そんなエルの気も知らず、キルシュトルテは尖らせていた唇を、ニィと三日月型に歪める。
「じゃからな、もぅ待つのはヤメにした。お主に抱いてもらうのではなく、わらわがお主を抱いてやろう」
「えーーーーーっ!? ちょ、ちょっと……」
「大丈夫じゃ。何も苦しいことなぞない。それどころか、わらわにかかればどんな娘とてメロメロ故、お主も気を楽にして身を任せるがよい」
想い人に、とてもとても優しく甘い声で言われたのに、エルの顔が引きつる。なんとか身体を起こして逃げようとするのだが、どういうワケかおそろしく緩慢にしか動けない。
「無駄じゃ。シュトレンからもらったシノビ特製の弛緩剤ゆえ、あと半時間は思うように動けんはずよ」
「で、でも、こんなコトしてたら、クラティウスさんが……」
「安心せい。今夜は王宮の方に使いにやっておる。戻るのは明日の昼じゃ」
──どうやら、完全に逃げ道は塞がれていたらしい。
#と、いったんここで切り、一時間後に再度投下開始します。
>321
エロなしでも相変わらずの高クオリティ・・・!
幼女殺しておいて被害者面してる奴なんか死して屍拾う者なし
剣と魔法のファンタジーなんだから殺伐でもぜんぜん構わんと思います!
あと粗相しちゃうバハ子にものすごく滾った
351 :
王女様と私:2010/12/13(月) 01:31:20 ID:iKPfdbbQ
再三キルシュトルテに唇を奪われ、先ほど以上に深く舌がエルの口腔内に侵入してくる。
顎にうまく力が入らないのは、薬だけのせいでないだろう。唇から広がる感覚が全身に広がり、抵抗する気力を端から奪い去っているらしい。
「そう、大人しくしておれば……悪いようにはせん。わらわに身を委ねよ……」
まるで、スケベなヒヒ爺が言いそうな台詞であったが、キルシュトルテの可憐な声でそう言い聞かせられると、思わず反抗心が揺らいでしまう。
「お主、初めてであろう? フッ……優しくしてやるぞよ。なに、誰にだって初めての時はあるのじゃ。わらわが、忘れられない思い出にしてやろうて」
「百合王女」の異名にふさわしく、「女性経験」がそれなりに豊富らしく、王女の舌の動きは俊敏かつ巧みで、エルの口腔をクチュクチュといやらしくかき混ぜてくる。
嚥下させられた唾液が□の端からトロリと溢れる。
(あぅぅ……キルシュトルテさん、キスがすごくウマいよぅ……)
身体の奥底に火が灯ったかのように、ジリジリとした欲望が湧きあがってくるのをエルは感じていた。
そんなエルの様子を見てとったのか、キルシュトルテの指先が、夜着越しに胸を揉んできた。
先ほど風呂に入ったばかりで軽く火照った身体は、敏感に刺激に反応する。
「……はんッッッ! だ、だめぇ!」
エルは思わず拒絶の悲鳴を漏らしたが、男のコでありながら乳首がピンと堅く尖っていくのが、薄い布越しにハッキリとわかった。
「ほほぅ、それならこちらはどうじゃ?」
「そ、そこは……あぁン、らめえ〜」
意図せず舌っ足らずな嬌声をあげてしまう。
どうやらその言葉がツボだったらしい王女は、顔を真っ赤にして鼻息を荒くする。
「もっとじゃ! もっとお主の素敵な声を聞かせるのじゃ!!」
夜着の裾に手をかけられ、めくりあげられた瞬間、不覚にもエルの腰がビクンと大袈裟に反応してしまった。
(だ、ダメ、そこ、は………み、見られ、ちゃったら……)
「おお、すっかり熱くなっておるわ……フフ。安心せい。わらわは、お主がこんな風に弄られて感じてしまういやらしいコでも、幻滅したりはせぬからな」
勝手なことを言いながら、王女は右手でエルの内股を撫でさすりながら股奥を目指しつつ、左手で夜着を脱がせにかかっている。
ほどなく、半裸に剥かれたエルの股間にキルシュトルテの手が触れた。
ネグリジェの下に履いた女物の下着の中で、後ろ向きに窮屈に折り畳まれたまま、その先端から先走りの液体をジクジクと滲ませている部位を、その指先がかすめる。
352 :
王女様と私:2010/12/13(月) 01:32:10 ID:iKPfdbbQ
「きゃンッ!」
魔法のマエバリによって封印された陰茎の先に柔らかな指が触れた瞬間、声を上擦らせてしまう。
(うぅぅ……ボク、なんて声を出してるんだよ〜、これじゃあ、完全に女の子みたいだよぉ)
「クックック……男とスるのは初めてじゃが……意外と悪くはないのぅ。ま、お主は女顔じゃし反応も可愛いゆえ、男とヤっておる気はあんまり、と言うか全然せぬがな」
などと悪役っぽい笑いを漏らしつつキルシュトルテは、積極的にエルをを責める。ベッドの上でエルの両足首をつかむと、グイと持ち上げ、いわゆるまんぐり返しの姿勢にさせる。 「やぁ……やめてくださいよぉ……」
蚊の鳴くような弱弱しエルの抗議を意にも介さずショーツをはぎ取り、王女はジロジロと「彼女」の下半身を見つめる。
その恥ずかしい体位のおかげで、男のものとは思えないほっそりと形のよい太腿から、丸く引き締まった尻、そしてひくつく肛門まで、あまさず王女の目にさらされていた。
「ふむ……あいかわらず、下手な女以上に愛らしい肢体じゃが……その札は、何じゃ? 変わったシュミじゃのぅ」
「ち、違いますぅ!」
エルに侍メイドがした事の説明を受けたキルシュトルテは、しばし考え込んでいたものの、程なく何事もなかったかのようにエルへの愛撫を再開する。
「ま、男性器を封印されておっても、何とかなるじゃろ……穴は他にもあるワケじゃしな」
「ひ、ひぇええ〜」
王女の不穏な言葉におののくエルをよそに、マイペースかつ念入りに「彼女」の身体を開発していく。
「あぁぁンッ……」
エルの全身に電流のような快感が走った。王女はマエバリ越しに陰茎の先端を弄って来たのだ。その巧みな指使いに、股間はますます熱を帯び、いやらしい体液を滲ませてしまう。
「ふむ……陰核(クリトリス)と同じように刺激してやれば、よいようじゃな。札の下でビクビクと震えておる様は、なかなか可愛いのぅ……フフ、まだまだ、たっぷりと楽しませてやるから、楽しみにしておるがよいぞ」
布越しに染みてくる先走りを潤滑油代わりに、さらにソコを攻め立てる。
「ぅくっ……そ、ソコはあっ……アァン、ダメですぅ……び、敏感、だ、だからぁ」
女の子のような──と言うより発情した少女そのものの甲高い喘ぎを漏らしながら、エルが懇願する。
「ほほぅ。ソコとはココのことか? ココがよいのか?」
キルシュトルテは、ワザとらしく集中的に急所を刺激した。
もちろん、エルは局部から全身へと波及する快楽の波に翻弄されてしまう。
「ふぁ……やぁっ、やめてえ……ひぃぃん、か、感じ過ぎるぅ! だ、ダメぇ………」
途切れ途切れの喘ぎを漏らすエルだが、陰茎を不自然に折り曲げられているせいか、あるいは魔法のマエパリの効果なのか、射精するには至らず、際限なく快感が体内に蓄積される。
「なんと、札がすっかりベトベトになってしまったぞ。男も感じると濡れるのじゃな。またひとつ賢くなったぞよ」
王女の感心したような言葉に、奥歯を噛みしめて懸命に堪え、はしたない痴態を見せまいとしたエルだったが、すぐに白旗を上げる。
353 :
王女様と私:2010/12/13(月) 01:32:47 ID:iKPfdbbQ
「ああっ………き、キルシュトルテさん……ゆ、許して……そんなに……ひんッ! お、同じトコばっかり、し、刺激されちゃったら……ぼ、ボク、お、おかしくなっちゃうよぅ」
「いやいや、我慢は身体に毒じゃぞ。ここは我慢なぞせず、素直にわらわの手にすべてを委ねるがよい」
「きゃうんんんっ!!! ああぁぁぁ……そ、そんなにされたら……ぼ、ボク……もぅ、ほ、ホント……ダメになっちゃうよぉ!」
大好きな女性に、恥ずかしい格好のままで、まるで本物の女の子みたいに感じさせられる。
その倒錯した快感に身悶えしつつ、それでもかろうじて正気を保っていたエルファリアだが、続くキルシュトルテの行動で、その微かな理性さえはじけ飛ぶことになる。
「そ、そこは、お、おしりぃっ!」
思わぬところへ感じた違和感に、正真正銘の悲鳴をあげる。
「そ、そんなトコロ……だめェ!!」
「いやいや、そう頭から決めつけるモノでもないぞえ。女子の中にも、ここを刺激されて悦ぶ者が決して少なくはないのじゃ。ふむ……男の場合はどうなのかのぅ?」
「そ、そんなに……はうゥンンンッ!」
キルシュトルテの人差指が、エルのひくつくアヌスへと忍び込む。王女の細い指は、驚くほど簡単に菊門に入り、エルの身体は反射的にその指を締めつけてしまう。
「おお、なかなか具合は好さそうじゃな。安心せい。わらわがタップリと時間をかけて、愛でてやろう」
そのまま無造作に人差指を根元まで差し入れるキルシュトルテ。
その時エルが感じたのは、ただひたすらに違和感だった。
正直決して痛くはない。しかし、気持ちいいというわけでもない。
それでも、腹の奥に大きな石でも埋め込まれたような圧迫感があり、息苦しいような気分にさせられる。
しかし。
──ズルッ
「はうンッッ……」」
アヌスに差し込まれた指が、ゆっくりと抜かれるのに合わせて、思わず声をあげてしまう。
「ほほぅ、感じておるの」
「…………」
その感覚を否定するには、エルはあまりに正直で、また純真過ぎた。
(こ、これ……く、苦しいのに……そのはずなのに……なんか……なんだか……お
腹が熱いっ!)
体内に生まれた熱は、王女の指が往復する度にだんだんと存在感を増してていく。
その「熱」の名前を、エルは知っていた──それは、まぎれもなく「快感」だった。
354 :
王女様と私:2010/12/13(月) 01:33:35 ID:iKPfdbbQ
(嘘……お、お尻なんかで、感じるなんて……あぁ……でも、でも……)
「気持ち……いぃ……」
思わず心の中の呟きが唇からこぼれる。
ハッと気がついた時には、キルシュトルテがニヤニヤしながらエルを見つめていた。
「ふむ。そうかそうか。ようやく素直になったようじゃな。では、さらにピッチを上げるとするか」
「だ、だめぇ! こ、これ以上したら、ボクの尻、壊れちゃうよぉ……ひぃああああ!」
悲鳴をあげるエルとは裏腹に、そのアヌスは、あっけなく中指までも飲み込む。むしろ、その悲鳴には、心なしか嬉しげな色がにじんでいるようだ。
二本の指が体内で蠢くたびに、エルの下半身に鈍い疼痛走るが、それさえも今の「彼女」にとっては悦楽へと繋がる刺激なのだろう。
会いも変わらず、股間の一部からはヌルヌルと快楽の証の液体が、これまで以上に大量に染み出してきているのだから。
「わらわの指に吸いつくようじゃ。お主のココは、なかなかの名器じゃな」
「そ、そんなトコ褒められても……」
「嬉しくない、か? じゃが……お主の肉体は悦んでおるようじゃぞ?」
「くぅはあっ……」
指の出入りがいっそう激しくなるが、すでにその刺激は、エルの身体に苦痛ではなく快楽として認識されるようになっていた。
腸内の粘膜がエグられるたびに身体の奥で燃え上がる炎に、理性が徐々に焼き尽くされていく。
「こんなの……こんなのヘンだよぉ……ボク、男の子なのに…お尻で気持ちよくなるなんて……」
「──なるほど。確かに、男が入れられて喘ぐのは奇妙じゃな」
うんうん、と頷くキルシュトルテ。どうやら、一応正常な男女の性交に関する知識も持ってはいるらしい。
「じゃが、お主は、わらわに尻穴を弄られて快楽に悶えておる。つまり……」
「つ、つまり……」
その先を聞いてはイケナイ……そう囁く心の声を無視して、エルはオウム返しに問うてしまう。
355 :
王女様と私:2010/12/13(月) 01:34:20 ID:iKPfdbbQ
「つまり、お主はわらわの愛人(おんな)じゃろと言うことよ!」
ニンマリ笑った王女は指の動きを一気に速めた。
「ぼ、ボクがおんな……女の子……」
一気に高まる快感とともに、エルの脳に刷り込みのように王女の言葉が染み込んでいく。
「そうじゃ。可愛い可愛い女の子じゃ。付けくわえるなら、わらわのモノじゃ。誰にも渡さぬぞ」
「ぼ、ボクは……あたしは……ひぃああああああッ!」
──ヌチュ……ヌプッ……クチュッ……
それ以上考えさせない、とばかりに指のピストン運動が激しさを増す。
「あぁぁ……ダメ、だめですぅ……そ、そんな強く、こす、ったらぁ……そんなの……きゃはああああああン!!」
とどめとばかりに、前立腺を突かれると同時に、アヌスがひと際キツく収縮し、ついにエルファリアは射精することを許されないまま、快楽の高みへと至るのだった。
#以上。やっぱり我ながらエロは下手ですねぇ。それと男の娘属性のない方、ゴメンなさい。次回のエピローグで、この話は終りです。
>>321 投下お疲れ様
う〜ん……確かに、敵討ちや復讐は否定しないけど
それはやり過ぎと言うか、何と言うか……
>>350の人が
そう言う事を言ってるけど
個人的には、そこまでやると
復讐の正当性が、皆無になると思う…しかも、バハムーン
以外(フェルパーも)が楽しんで拷問してそこまでやると…
そいつ等の方が、悪役に見えてくる
本当は、嬲って人を殺せれば、如何でも良いんじゃないかと思うくらい
特に、あのクラッズ…幾ら当時の被害者とは言え
あの言動は痛すぎると言うかなんと言うか…思わず見てて
コイツこそ、首をはねて、両目を潰して、舌を引っこ抜いて
頭を砕いて、脳みそをくりぬいて…地面にバターみたいに塗り付けたい
衝動に襲われたよ、思わずね。
>>341 乙です。
ただ、342とか356とかも書いてるとおり、自分もちょっとココまでエグいのは……。
例のガンナーって、たとえるなら偶発的な事故による轢き逃げ犯ですよね。
確かに「逃げた」部分は責められるべきだけど、最初から殺意を持って残酷に殺しているワケじゃないのに、ココまでされる必然性はあるのかなぁ、と。
これで負の連鎖が収まれば、まだ救いはあるんですけどね。
でも、「復讐を遂げた復讐者はいつか、自らも復讐される」とか「狂気の刃はいつか同じ狂気に斃れる」とか言うしなぁ。
(そういう意味では、認めたくないけど妊婦を殺したのは、ある意味合理的。生きてたら、将来絶対父親の敵討ちにくるでしょうし)
はたして、このクラッズは、これでもう銃を見ても狂わずにすむのか? トラウマが癒されたのなら、まだしもマシなのですが、相変わらずバーサクヤンデレ状態になるようなら、自分もいつか罪もない人を手に掛けるような気がします。
いずれにせよ、続きをドキドキしつつ見守らせていただきます。
>>355 こちらも乙。ここからどんなエピローグにつなぐのか、期待。
まとめて乙乙
流れからして、
クラとフェルはこの後間違いなくバッドエンドだろ
手遅れなレベルで精神が腐っちゃってるし
生きる目的を失って廃人程度ならまだマシな方なんじゃね?
お前ら感想と自分の希望は区別して書けよ
作者からネタ奪う気か
残虐描写好きな奴もいるんだぜ
冒頭で注意書きしてるんだし
気に入らないなら黙ってスルーしろよ鬱陶しいな
BEO9EFkUEQ氏の作品は残虐描写が結構あるからな。
文字で見る限りは平気だが絵で見せられたら無理だ。
妊婦セレの腹ぶち抜いてるとことか想像しただけでグロい。
とりあえず氏の作品の完結を期待。お話としては面白いし。
王女様の人もGJ。
いいぞもっとやれ。
妊婦っても話見る限り見た目分からん程度だろ
悪行を受け入れていつか報いを受ける用な落ちは個人的に好きな部類なので問題無し
それよりセレスティアの下道っぷりが実にいい具合に表現されてて素晴らしかった
エルきゅんの方も可愛いしキルシュがおっさん過ぎて面白かったw
両者とも乙です
何度あの人と交わっても、私には子ができない。ヒューマンのあの人の子が孕みたい!
……と、願いが叶う伝説の秘宝を探し求める微ヤンデレ気味なノームの薄幸美少女の話とか、
誰か書いてくれんかね?
似たような話は保管庫にあった気がする
やっぱノームの身体って孕めないのかねえ
マジでノームはどうやって増えるんだろう
ノーム同士が交わったらアストラル体で孕むのかな?
海洋堂やマックスファクトリーが作ってくれます
生まれたときはねんどろいどみたいな感じ
という妄想
アニメやラノベでありがちな「ゲーム→現実」なタイプの話とかって、ココでやるのアリなのかな?
具体的には、「青髪ロングのノームっ娘さんが、アクシデントで実体化して俺の部屋に!」って感じのヤツ。
パッと見かは人間(ヒューマン)そっくりだけど、細かい部分(まばたきとか鼓動とか体温とか)が違ったり、高性能アンドロイドと勘違いされて追い回されたりといったドタバタな感じ。
(最後は、彼女を「ととモノ」世界に送り返すか、否か迫られるような展開だとなおよし)
オリキャラがマズいようなら、キルシュとかクラティとかロクロとか、あるいはパーネ先生といったシリーズのNPCとかならOK?
(逆パターンの「現実→ゲーム」は、個人的にはあまりそそられないかもなぁ)
面白いならシチュやプレイ内容は気にしないよ
けど主人公=妄想世界の俺みたいな設定はマジ勘弁な
371 :
王女様と私:2010/12/23(木) 22:09:58 ID:wG8bTf+l
#エピローグです。
「──そして、男のコと女の子は幸せに暮らしましたとさ……とは、やっぱりいかないものなんだよね、やっぱり」
ハァ〜と、軽く溜め息をつくエルフの修道女。
「ん? どうかしたのかえ、エリー?」
食事をとる手を止めて、けげんそうに(そして心なしか心配げに)自分の方を見つめるキルシュトルテに、安心させるように微笑いかける。
「なんでもありませんよ、キルシュさん」
そう愛称で呼びかける度に王女の傍らに控える侍メイドの視線がイタイのだが、逆にそう呼ばないと、王女自身が不機嫌になるのだ。
アチラを立てたらコチラが立たない二律背反──であれば、想い人の気持ちを尊重するのが筋というものだろう。
エルファリアがキルシュトルテに抱かれて(まさしく、そう呼ぶべきシチュエーションだった)から、すでに3ヵ月近くの時が過ぎていた。
「ふむ。こうしてめでたくわらわの愛人になったからには、そなたのコトは以後「エリー」と呼ぶかの」
実はあの夜、同じベッドで眠りに就く前に、キルシュトルテは彼に向ってそんな言葉をのたまったのだ。
「えっと……私、親しい人達からは「エル」って呼ばれてるんですけど……」
まさか面と向かって「そんな女の子そのものな愛称は嫌です」とも言えず、そう遠まわしに異議を唱えてはみたのだが、無論、我儘王女は歯牙にもかけない。
「うむ。知っておる。だからこそ、ワザワザそれとは違う愛称を考えたのじゃ」
一瞬意味が呑み込めなかったものの、すぐにエルファリアは彼女の言葉の裏の意味を理解して、顔を赤らめた。
──つまり、キルシュトルテは、みんなと違う「自分だけの呼び方」をしたいと言ったも同然だからだ。
「か、勘違いするでないぞ? 別にそなたが特別気に入ったとか、手放したくないとかそういうワケではないのじゃからな!」
そんなお約束過ぎる反応も微笑ましく愛おしい。
だからだろうか。ついつい調子に乗ってしまったのは。
「はい、じゃあ、今後はそう呼んでください……あ、それなら、ボクも貴女のことを皆と違った風に呼ぶ方がいいですかね? たとえばキルシュさん、とか」
無論、あくまで寝物語の合間のほんの戯言のつもりだったのだが、予想外に王女がその呼び方を気に入り、今後自分のことはそう呼べと彼に厳命してきたのだ。
確かに、よく考えてみれば姫君たる彼女のことを略称や通称で呼ぶような存在がいたとは思えないし、実は密かに「友人同士のあだ名呼び」に憧れていたのかもしれない。
とは言え、そこは腐っても一国の王女。とくに周囲の人間の中でもヤンデレ気味にキルシュトルテを慕っているクラティウスは、冒険の仲間とは言え、「彼女」がそんなに親しげな呼び方をすることにいい顔をしなかった──と言うか怒気も露わに問い詰められた。
その度に、腰を低くして、なだめ、すかし、頭を下げて、侍メイドのやり場のない怒りをいなすという高等技術を求められることとなったのである。
372 :
王女様と私:2010/12/23(木) 22:10:25 ID:wG8bTf+l
もっとも、さすがに最近では慣れたというか諦めたのか、クラティウスも表立って文句を言ってくるようなコトは無くなっている。
また、ふた月前に起きた「暗黒学園事件」で、(やむにやまれぬ理由があったとは言え)王女達を裏切ったことを、やはり気にしているのか多少はエリーに対する当たりも弱くなった気がする。
ちなみに、クラティウスが闇の生徒会側についた理由の一部として、王女の寵愛を受けるエリーへの嫉妬があった可能性も強い──対峙した時、執拗に「彼女」を狙って来たし。
その後、雨降って地固まるで彼女が王女パーティーに復帰する経緯は、皆さんもよくご存じだろう。
そもそも、エリー自身に言わせれば「むしろ普段からキルシュさんのクラティウスさんの絆の強さと深さに、いつもアテられっぱなしですよ〜」というコトなのだから、「岡目八目」、「隣の芝は青い」という好例なのかもしれない。
ちなみに、流石にキルシュトルテもコレはマズいと思ったのか、自らの閨にクラティウスとエリーを個別に呼ぶだけでなく、時折はふたりまとめて呼びつけて夜伽をさせるようになった。
時には、縛り上げたエリーの眼の前でふたりが絡み合ったり、逆に目隠しして正座させたクラティウスを尻目に、キルシュトルテがエリーを弄んだり……。
あるいは時には、メイド服を着たままで下着だけ脱いだクラティウスに対して、エリーにクンニさせつつ、キルシュトルテ自らは、エリーのアナルをディルドーで攻めたり……。
教師陣に知れたら「若いから仕方ないとは思うが──ほどほどにな」とたしなめられそうな性活(誤字にあらず)を送る過程で、ようやく3人の関係も少しずつ巧く回るようになってきたのだ。
ちなみに、この件で一番ワリを食ったのは唯一第三者の立場に置かれたシュトレンだろう。もっとも、その事で謝るエリーに対して彼女は「別にいいよ。雨降って地固まったみたいだしね」と、サバけた態度を見せてはいたが。
無論、肝心の冒険実習のほうも順調だ。
闇の生徒会が登場した当初こそ色々と不覚をとったものの、エリーの古巣であるヒューレット達のパーティーの尽力や、他の学校の協力もあって、そしてもちろんキルシュトルテ達の頑張りもあって、先日ついに魔王を倒すことができたのだ。
おかげで、戦闘に関してはすでに一流冒険者と遜色のない技量にキルシュトルテ達は成長していた。
もっとも、王女自身はヒューレット達のパーティに未だ勝てないことを気にしているようだが……元々4対6なのだから、仕方あるまい。
あとは、いくつかの座学の単位をとれば(ちなみにエリーのシスターの単位はとっくに100に達している)、めでたく学園を卒業できるのだが……。
373 :
王女様と私:2010/12/23(木) 22:10:56 ID:wG8bTf+l
部屋でひとりなった時、ふぅと再び溜め息をつくエリー……いや、エルファリア。
「卒業、かぁ」
いざ、その段になってみると、何とも実感がなく、また未来の展望も見えてこないものらしい。
「どうしたらいいのかなぁ……」
親たちの冒険話を聞いて育った子供の頃から、立派な冒険者になるのが夢だった。
そのためにこの学校に入り色々努力してきたのだ。
そして、今、当初目指していたのとはやや方向性は違うとは言え、立派な冒険者──少なくともそのとっかかりと言えるレベルには達することは出来たと思う。
だが……今の彼には、「冒険者になる」こと以上に気になる存在が出来てしまった。
王女キルシュトルテ。
姉貴分のアップルタルトのような貴族でもない限り、本来なら顔を合わせる機会もないはずのその存在に、彼は出会って、心惹かれてしまった。
さらに幸運にも、先方も自分に興味を持ち、憎からず想ってくれたようで、色々な犠牲(おもに男のプライド的な意味で)を払いつつ、彼女と想いを通じることまでできた。
だが、それが、現在のこの状況が「冒険者学校」という特異な状況だからこそ許されるイレギュラーであることも、聡明な彼は理解していた。
エルファリアの願いとしては、これからもキルシュトルテのそばにいたい。それは一番明確な希望だ。
はたして、それが許されるものなのか……。
もっとも、結論から言うと、その心配は杞憂だった。
エリーが悩んでる様子を敏感に察知したキルシュトルテの詰問によって、あっさり白状させられてしまったのだが、エリーの不安を聞いても、王女はむしろきょとんとした顔をしている。
「ん? そなたが身のふりかたを考える必要はないぞ。卒業後は、わらわとともに王宮に帰り、クラティウス同様、護衛兼侍女として仕えればよかろ」
「そ、そんな簡単に決めちゃっていいんですか? クラティウスさんの意見は?」
「正直、大歓迎とは言いませんが……貴女でしたら、実力は折り紙付きで、気心も知れてますし、十分許容範囲内でしょう。諸事情は踏まえた上で、すでに侍従長の許可はとりつけてあります」
どうやら、本人の了承抜きで既にそーゆー風に決まっていたらしい。
374 :
王女様と私:2010/12/23(木) 22:11:48 ID:wG8bTf+l
「で、でも、よりによって王宮の女官なんて……私に務まると思います?」
半ば流されつつも、問題点を指摘するエリー。
「ククク、心配はいらぬ。言い忘れていたが、明後日からわらわ達は交換留学生として、プリシアナ学院に編入することが決まっておるからの」
例の事件の際に出来た交流から、政治的理由もあってそのコトが決まったらしい。
「プリシアナにはメイド学科がありますので、そこでみっちりメイドの基礎を学んでください。わたくしも、及ばずながら手助けはしますので」
「なーに、安心せい。留学期間は半年じゃから、王宮に帰るのはまだ先の話じゃ。
おお、そうじゃ、せっかくじゃから、わらわもプリシアナが本場の「アイドル」にでも転科してみようかのぅ」
「素敵ですわ、姫様!」
楽しそうな主従の様子に苦笑しつつ、エルファリアも己に振りかかった運命を甘んじて受け入れることを決意する(開き直ったとも言う)のだった。
* * *
──数年後、即位したキルシュトルテ女王の傍らには、常に影の如く付き従うふたりの侍女兼護衛の姿があった。
ひとりは、居合を修めた剣の達人のフェルパー、そしてもうひとりは、神の奇跡を顕現するエルフの聖女だったとされるが……真偽の程は定かではない。
<おわり>
#と言うワケで、「王女様と私」は、これにて完結。最後の後日談は余分だったかなぁ。
#読んで下さった方、とくに乙とGJを下さった方、ありがとうございました。
ついに完結ですか。エル君もすっかり馴染んじゃって…w
何はともあれ、乙でした!
クラッズに対してどういう感情を覚えたかで、あなたの性格が善・悪・中立のどれなのか簡単に判別できます。
というか、思った以上の反響があって色々ドキドキしました。
そんなわけで続き投下します。今回のお相手はバハ子。
注意としては、前回からそのまま続いてるので1−2レス目に残虐表現あり。
楽しんでもらえれば幸いです。
炎熱櫓を抜け、宿屋に着いてからも、バハムーンの表情は晴れなかった。もっとも、今この瞬間にも、仲間が一人の人間に
地獄の責め苦を与えているのだと思えば、晴れる方がおかしいだろう。
フェルパーの方も、また声を掛けあぐねていた。元々が、クラッズ寄りの思考をする人間なのだ。仲間の蛮行に狼狽する彼女を
宥めることなど、できるはずもない。それ故に、フェルパーは黙って彼女といることを選んだ。
だが、時計の長針が半周ほどしたとき、不意にバハムーンが席を立った。
「……やっぱり、私あいつら止めてくる…」
「どうした、いきなり?それに、止めて止まるような奴等じゃ…」
「それでもっ!」
必死の表情で叫ぶ彼女に、フェルパーは続く言葉を飲み込んだ。
「あんなこと……ダメだよ……誰も喜ばないよ…」
「誰も……か」
フェルパーは目を瞑り、その意味をじっくりと噛み締める。
正確には、喜ぶ人間はいる。知的好奇心を満たせるドワーフと、錬金術の練習台にできるノーム。そして普通とは違う善意の塊である
ディアボロスに、追い続けた妹の仇をいたぶることのできるクラッズは、それこそ大喜びだろう。
だが、彼女が言いたいことは、そうではない。
「私、戻る!」
そう言って、バハムーンは走り出した。その後ろ姿を見て、フェルパーは笑う。
「……よく、似てるんだよなあ」
どこか寂しげに呟き、フェルパーも彼女の後を追って走り出した。
炎熱櫓に飛び込み、先程の場所まで戻る。そこで繰り広げられている光景を見た時、バハムーンはあまりの凄惨さに絶句した。
さっきまでは、まだまともな姿だったヒューマンは、今や血塗れになっていた。地面には爪と肉の間に針を刺された指が落ち、
足はもはや元の形を失っている。その上で、彼は後ろ手に縛られ、そこだけで木にぶら下げられていた。
「……ひ、ひどい…!」
恐怖か、それとも同情か。バハムーンは震える声で呟き、しかしそれではダメだと、大きく首を振った。
「ク、クラッズ!もうやめろよぉ!」
その声に、四人が振り向く。特にクラッズの顔は、以前のような狂った笑みが浮かんでおり、バハムーンは萎縮しかけた。
だが、持てる勇気を振り絞り、さらに続ける。
「もう十分だろ!?それ以上、そんなひどいことして……何になるんだよぉ!?」
「まだこいつ死んでないし、私にはいい実験台なんだけどな。で、何?トカゲは邪魔しに来たわけ?」
「お、お前じゃない!私はクラッズに言ってるんだ!」
いつもとは全く違う様子のバハムーンに、ドワーフは開きかけていた口を閉じた。
「……僕に、何?」
ゾッとするほど冷たい声。それでも、バハムーンは怯まなかった。
「もう、やめろよ……こんなの、もうただの弱い者いじめじゃないかぁ!」
「それが何?」
「だって……お前は、妹の仇取りたかっただけなんだろ!?でも、それを言い訳にして、こんなことして…!」
そこで一度言葉が途切れ、バハムーンは俯き、固く目を瞑る。そして顔を上げ、クラッズを正面から見据えると、堪えきれずに
涙が溢れた。
「私っ……お前のそんな姿見るのやだよ!それに、もし私がお前の妹だったとして、そいつに殺されててもっ……自分の仇討ちを
言い訳にされて、兄ちゃんがそんなことしてたら、私嫌だよぉ!」
「っ!」
その言葉に、クラッズはビクッと震えた。同時に、表情から狂気も笑みも消え失せ、代わりに深い苦悩が浮かぶ。
そんな様子を、他の三人はじっと見つめていた。
「……で、どうすんの?私は、もうちょっと色々試したいんだけど」
「あたしもいい練習だから、やめたくないけどな」
「………」
クラッズはそっと、抜き身の脇差を持ち上げ、血と脂ですっかり汚れた刀身を、丁寧に布で拭った。
「……もう、いいや。十分だよ、ね。これで、終わらせる」
クラッズは顔を上げた。その気配に気づいたのか、ヒューマンが消え入りそうな声で呟く。
「も、う……殺、して……くれ…」
「言われるまでもない。ただ……一太刀では終わらせない!」
いつもの逆脇構えから、クラッズはヒューマンの腰のすぐ上を薙ぎ払った。光が一閃したかと思うと、両断された下半身が地面に落ちる。
途端に、後ろ手で吊られていた体はバランスを失って反転し、今度は頭が下になる。その時既に、返す刃が首筋に迫っていた。
僅か一秒にも満たない時間だった。その一瞬で、ヒューマンの体は首と上半身と下半身とに切り分けられていた。
「……生吊るし胴、三段斬り。お目汚し、失礼」
再び刃を丁寧に拭い、クラッズは刀を鞘に収めた。傍らではドワーフが、斬り落とされた首に大声で呼びかけている。
「小さいのにしては、大した技ね。脇差で両断なんて、できるものなのね」
「持ってる技術は、全部使ったよ……本当に、終わったんだなぁ…」
どこか気の抜けた表情で、クラッズは呟いた。
「おーーーい!!!……反応なし、か。約十五秒ってとこかなー?うふふー、貴重な経験できたなあ!」
それとは反対に、ドワーフは満面の笑みである。そんな彼女を、ディアボロスは呆れたように見つめていた。
「やあ、クラッズ」
今まで黙っていたフェルパーが、声を掛ける。すると、クラッズは寂しそうな笑顔を見せた。
「……終わったね、フェルパー。ようやく、全部…」
「そうだな、やっとだ。……あ、バハムーン」
「え?」
「クラッズ頼む。俺は後片付けするから」
「あ、ああ…」
バハムーンにクラッズを任せ、フェルパーは転がる死体とその一部を溶岩の中へ放り込み始めた。そこにドワーフが慌てて、
解剖してみたいから大きな部分は後回しにしてくれと告げる。
殺伐とした後片付けを尻目に、バハムーンはおずおずとクラッズに近寄る。すると、クラッズは自分から彼女にもたれかかった。
「あっ…」
「ごめん……ちょっと、こうしてていいかな…?なんか、疲れちゃったよ…」
「……ああ、いいぞ」
思わず抱き締めると、クラッズはそのまま体を預けてきた。普段であれば、発狂しかねないほどに喜ぶ場面ではあるが、
今はそんな気も湧かない。ただ、以前見たフェルパーがしていたように、バハムーンはずっとクラッズを抱き締めていた。
その後、後片付けという名の証拠隠滅を終えた彼等は、ヨモツヒラサカの宿屋へと向かった。バハムーンはずっとクラッズに
ついていたかったのだが、部屋割ではクラッズ自身がフェルパーとの相部屋を望んだ。
バハムーンと、なぜかドワーフがそれを承諾し、二人は早々に部屋へと引き上げた。それが、今から一時間ほど前の話である。
部屋の中では、クラッズが俯き、ベッドに座っており、隣にフェルパーが黙って座っている。
「僕は……正しかったのかな…?」
震える声で、クラッズが呟く。フェルパーは答えず、黙って彼を見つめている。
「人を斬ったのは、初めてだった……そのために鍛えた技術だったけど、初めて斬って…」
「………」
「あの感覚、手から消えない……だって、すごくっ…!」
「………」
「ああ、フェルパー……妹の仇っていうのは、言い訳だったのかな?それを言い訳にして、僕は…!」
苦悩の表情を浮かべ、絞り出すような声で言うクラッズ。そんな彼に対し、フェルパーはようやく口を開いた。
「言い訳じゃあないさ。きっかけではあるだろうけど。それに、正しいか正しくないかなんて、俺にはわからない」
「………」
今度はクラッズが口を閉じる。
「それはお前の中の問題だからな。班長だったら、正しくないって言うだろうね。エルフなら、正しいも正しくないもないって
言うだろうし、あいつ、ディアボロスなら正しいって言うだろうな。けど、お前自身言ってただろ?モノノケを斬るのはよくて、
子猫がダメってことはないか……ってさ」
「けどフェルパー、僕…!」
言いかけたクラッズの肩を、フェルパーは強く抱き寄せた。そして、優しく声を掛ける。
「邪道も、また道。外道に堕ちることがあれば、その時は俺がお前を焼き殺す。道を歩く限りは……俺は、ずっとお前の隣にいるよ」
「……ありがとう」
フェルパーはクラッズに笑いかけ、軽くポンと肩を叩くと、ベッドから立ち上がった。
「さて、他の奴も心配してるだろうし、ちょっと出てくる。適当にぶらぶらしてるから、何かあったらいつでも呼んでくれよ」
「うん、ありがとう」
ドアを開け、廊下に出る。すると、部屋のすぐ脇にドワーフが立っていた。
「お、ドワーフ」
「ごちそうさまでした」
「なんだお前は」
「それはともかく、クラッズはどう?カウンセリング必要?」
「ん、あー、いや、たぶん平気だろ。色々迷ってはいるみたいだけど」
それを聞くと、ドワーフはつまらなそうに溜め息をついた。
「なんで迷うんだかねえ?たかだか人一人殺したくらいで、そこまで気になるかなあ?」
「その発言は医者としてどうなんだ」
「確かに仕事は人の命を救うことだけど、敵なら私だって殺すよ。別に、人が救いたいからこの仕事選んだわけじゃないしねー」
「割り切ってるなあ。あいつもそれぐらい、すっぱり割り切れればなあ」
話をする二人に、誰かがおずおずと近づいてきた。そちらに目を向けると、見覚えのある尻尾と翼が目に入る。
「あの……クラッズ、平気か?」
「ああ、バハムーン。一応な。色々気にはしてるみたいだけど」
「そうかあ…」
不安げに答えると、バハムーンは部屋のドアを見つめる。
「……入っちゃダメ?」
「ようやく落ち着いたとこだから、一人にしてやってくれ」
「わかった……またあとで来る」
珍しく聞きわけの言いバハムーンの背中を見送ると、フェルパーは不意にドワーフの方へ向き直った。
「ま、君にもバハムーンにも、クラッズは大丈夫って言ったけど……実は、ちょっと心配なんだよね。宿屋で腹切るような真似は
しないって信じてるけど」
「それ、気にしまくってるよね?腹切りはちょっと見てみたいけど、死なれるのは困るしなー」
「そこでなんだけど……ちょっと耳貸して」
フェルパーは極限まで抑えた声で、ぼそぼそとドワーフに耳打ちする。最初は訝しげだったドワーフの表情も、それを聞くにつれ、
少しずつにんまりとした笑顔へと変わっていった。
その頃、バハムーンは部屋で休むこともできず、かといってクラッズの元へ行くわけにもいかず、悶々とした時間を過ごしていた。
何をするでもなく廊下をうろうろしていると、そこにノームが通りかかった。
「大きいの、そこで何してんの」
「あ、ノーム。何って……何もできないから、何もしてない…」
「部屋にでも戻れば」
「……それも、なんか、やだ…」
「死ねば」
「やだよっ!ひどいなあ!それより、お前はクラッズのこと気にならないのか!?」
その言葉に、ノームは馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「あの小さいのがどうなったって、あたしには関係ない」
「仲間だろ!?関係ないわけないだろ!?」
「そんなに気になるなら、あんたが何とかすればいいのに」
「何とかって……どうすんだよ…?」
「そうね…」
少し考えるような仕草をしてから、ノームはバハムーンの顔をまっすぐに見つめた。
「小さいのだって男なんだから、あんたが恋人にでもなってやれば」
「え、ええっ!?」
途端に、バハムーンの顔が真っ赤に染まった。
「なっ、なっ、なんでそんなっ!?」
「気が紛れるでしょ」
「気が紛れるったって……だからってそんなっ…!」
「それより、あたしはあんたと話すために来たわけじゃない。じゃあね」
一方的に言って、ノームは去ってしまった。バハムーンは何か言いたそうだったものの、無視されてはどうにもならない。
逡巡の末、結局は出来ることもなく、また出歩いている意味もないため、バハムーンは部屋に戻ることにした。
ベッドに寝転び、ごろんごろんと寝返りを打っていると、部屋のドアがノックされる。一体誰かと思いながら出迎えると、
そこにはドワーフが立っていた。
「やっほー、トカゲ。お邪魔するよー」
「え、ドワーフ!?あ、うん、別にいいけど…」
バハムーンが答える前から、ドワーフはさっさと部屋に入っていた。そんな勝手なところはいつものことなので、バハムーンは特に
気にすることもない。
「あの……どうしたんだ?」
「ん?いや、ちょっとクラッズ心配かなーってさ」
「だよな!?心配だよな!?」
途端に、バハムーンは身を乗り出して食いついてきた。
「だってあいつ、あんな顔でっ……それに、すっごく辛そうでっ…!」
「うん、そうだね。辛そうだね。でもさ、私は『ちょっと心配』なんであって、すごく心配してるわけじゃないんだけど」
「え〜…」
「……そんなに気になるの?」
そう尋ねるドワーフの顔は、何かを企んでいるような笑みが浮かんでいたが、バハムーンは気づかない。
「気になるよ!だって、あいつ、その…!」
「じゃー慰めてあげればいいんじゃない?」
事もなげに言うドワーフに対し、バハムーンは少し困った表情を浮かべた。
「慰めるって……でも、どうやって?」
「そりゃ、女の子が男の子慰めるって言ったら……一つしかないですよね?」
にまーっとした笑みを浮かべ、ドワーフはバハムーンに恐ろしいほど純粋な目を向けた。
「一発ヤッてきちゃってください」
「やる?何を?」
「男と女がやることなんて一つですよ!つまり、抱くの!セックスするの!」
それを聞いた瞬間、ボッと音が出そうなほどの早さで、バハムーンの顔が真っ赤に染まった。
「なっ……ちょ、ちょっ……と、それ、は……おま、何を…!?」
「馬鹿にしてるかもしれないけど、男なんて大体性欲の塊ですよ!?あのクラッズだって一皮剥けば……やっぱり、剥くんですかね…?」
「な、何なんだよ!?いきなり何言い出してるんだよ!?お前っ、常識で考え…!」
「何のためにおまんこ付いてると思ってんですか!?そこに、おちんちんを入れるためですよ!?」
ドワーフは右手の親指を人差し指と中指の間に挟み、グッとバハムーンの目の前に突き付けた。
「で、で、でも、そんなの慰めるのと違う…」
「自分を慰めるって書いてオナニーなんですよ!?だからセックスは相手を慰めることになるんですよ!?」
「ええっ!?そ、そうなのかっ!?」
「そうですよ!大体、男は性欲の権化なんだから、一発抜いとけばすっきり冷静になるんですよ!むしろ抜かないといつも獣ですよ!」
「な……何を抜くの?その……えっと……おち…」
「精液ね精液。そっち抜いたら男は死ぬよ。割と本気で」
普段口に出さないどころか、耳にもしないような言葉を連発され、バハムーンの顔は羞恥のあまり泣きそうなほどになっている。
だが、妙なところで純真すぎる彼女にとって、ドワーフの言葉は無視できない響きを持っていた。
「……そ、それで……ほ、ほんとに元気になる?エッチなことするだけで?」
「なるなる、絶対なるから。だから頑張って行ってらっしゃい」
半ば無理矢理送り出され、バハムーンは廊下に出た。だが、さすがにまだ決心がつかず、その足取りは重い。
だからと言って部屋に戻るとなると、それはクラッズを見捨てるような気もしてしまい、戻る気にもなれない。
迷子の子供のように廊下をうろうろしていると、そこに一人の生徒が通りかかった。一瞬誰かわからなかったものの、それが男物の
部屋着に着替えたディアボロスだと気付くと、バハムーンは急いで駆け寄った。
「ディ、ディアボロス!あの、ちょっといいか!?」
「?」
返事こそないものの、ディアボロスは大人しく立ち止まり、バハムーンの言葉を待つ。
「あ、あの……こ、こ、こんなこと聞くのって、ちょっと、あれだけど…」
「……?」
小首を傾げるディアボロスに、バハムーンはやっとの思いで言葉を絞り出した。
「え……エッチなことすると、元気って出るのか…?」
「っ!」
途端に、ディアボロスの顔がかあっと赤くなった。だが視線を泳がせつつも、ディアボロスは遠慮がちに頷いた。
「ほんとに?ほんとにそれだけで、落ち込んでても元気になれるぐらい?」
「……げ、元気になるというのは、語弊があるかもしれないが……男としては、その、嬉しい……人にも、よるとは思うが…」
「や……やっぱりそうなのか…。あ、ありがとな」
「………」
お互いに顔を真っ赤にしつつ別れると、バハムーンは大きく深呼吸をした。
正直に言えば、そういった行為への恐怖はあるし、恥ずかしいという気持ちもある。だが、それでクラッズが元気づけられるのならば、
もはや迷ってなどいられなかった。
今までと違い、バハムーンはしっかりとした足取りで歩き出した。そしてクラッズの部屋の前に立つと、コンコンと軽くノックする。
「ん、誰?」
「私だけど、入っていいか?」
「バハムーン?あ、うん、ちょっと待ってね」
ドアが開き、クラッズが姿を見せる。それを見た瞬間、バハムーンは胸が締め付けられるような感じがした。
声の調子や表情こそいつも通りだが、その目はどこか虚ろで、生気も狂気も感じることはできない。
「どうしたの?急に来たりして」
「あ、ごめん……ちょっと、その、話とか……したい…」
クラッズは拒否することもなく、すんなりとバハムーンを部屋に通した。もしかしたら追い返されたりしないかと、内心不安に思っていた
バハムーンは、ホッと安堵の息をつく。
勧められた席に座り、改めてクラッズを見つめる。
とても小さな男の子だった。今までに、彼がこれほどまで小さく、また頼りなく見えたことはない。
「クラッズ……平気か?」
掛ける言葉が見つからず、とりあえず無難にそう尋ねた。すると、クラッズは明らかな作り笑いを浮かべた。
「大丈夫だよ、ありがとう。心配してくれるのは嬉しいけど、気にするほどじゃないって」
言葉と実情が正反対なのは、誰の目にも明らかだった。ならば、もう手段に迷ってなどいられない。
「ク、クラッズ!」
いきなり大声で呼ばれ、クラッズはビクッと体を震わせた。
「な、何いきなり?」
「そ、その……え、えいっ!」
突然、バハムーンは目をぎゅっと瞑り、上着を捲り上げた。しかも、勢い余って下着ごと掴んでいたらしく、大きな胸がクラッズの
眼前に惜しげもなく晒される。
唐突すぎる上に全く意味不明な行動に、クラッズはしばらく固まっていた。そしてバハムーンも顔を真っ赤にしつつ、そのままの格好で
固まっている。
「……バハムーン」
空恐ろしいほどに優しい声と表情で、クラッズが声を掛けた。
「正直に答えてね。それ、どちら様の差し金?」
「え?え、え……えっと……ドワーフとかノームとか?」
「……よし、ちょっと待っててね。今日は斬る相手が多いなあ」
「ま、待って!待ってよっ!」
割と本気でドアに向かいかけたクラッズを、バハムーンは慌てて捕まえた。
「な、なんで無視するんだ!?わ、私じゃダメか!?ノームとかドワーフとか……それとも同種じゃないとダメか!?」
「いや、その……そういうんじゃなくてね?」
「お、男って、エッチなことすると気が紛れるんだろ!?な、ならこれぐらい、わた、わた……私、は、平気、だぞ!」
「誰よ、そんな間違ってないけど微妙に歪んだ情報吹き込んだの」
「ま、間違ってないんだろ!?じゃあ、その……私、じゃ……ダメ、か…?」
悲しげな目つきで見つめられ、クラッズの表情が本気で困惑したものになっていく。
「いや、だからその……そういうんじゃなくて…」
「私……お前の辛そうな顔、見るのやだよ……でも、手伝えることなんか全然なくって……今まで、ただ横で見てるばっかりでっ…」
じわっと、バハムーンの目に涙が浮かぶ。
「だからっ……だから、これぐらい手伝わせてよぉ……何もできないなんてやだよぉ……これぐらいしか、できることないのに……
それもしちゃダメなんて、言わないでくれよぉ…」
これが誰かに用意された言葉だったのなら、容易く跳ねのけることも出来ただろう。しかし困ったことに、その言葉は全て彼女の
本心であり、涙の浮かんだ純真な瞳がそれを裏付ける。
「わ、わかったよ……でも、その、もうちょっと別の手段とかないの…?大体、その、そういう初めてっていうのは、女の子にとって
大切なもので、えーっと、そう、慰めとかじゃなくって本当に好きな人相手に…」
「お、お前のこと、嫌いなわけないだろ!?大好きだぞ!」
「……いや、その好きとは違…」
「そ、そういうこと言って、結局私に何もさせてくれないつもりだろ!?わ、私そんなの絶対やだよ!絶対やめないからな!」
どんどん墓穴を掘り進めていることに気付き、クラッズは口を閉じた。もはやここまで来ると、彼女の説得は無理だろう。
ならばいっそ、彼女の気が済むまで適当に少し相手をすればいいかと考え、クラッズは軽く息をつく。
「ふう……わかった、わかったよ。じゃあ、その、本当にいいんだよね?」
「え…」
そう聞き返すと一転、バハムーンの顔が真っ赤に染まる。しかし、今更引くわけにもいかず、バハムーンはやや表情を
引きつらせつつも頷いた。
「じゃ、こっち来て。立ったままじゃ落ち着かないし」
「う、うん…」
クラッズはバハムーンの手を引き、ベッドに座らせる。バハムーンは不安げな目でクラッズを見つめ、尻尾が落ち着きなく太股に
巻きついたり、腰に巻きついたりと動いている。
「その、じゃあ……えっと、胸……さっきみたいに、見せてくれる?」
「わ、わかった……けど、あ、あんまり、見ないで…」
さっきの勢いはどこへやら、バハムーンは震える手で服を捲り、目をぎゅっと瞑りながら胸が見えるギリギリのところまでたくし上げる。
改めて見た時、クラッズは彼女が着痩せする方なのだということを悟った。
思った以上に大きく、張りのある胸に、クラッズは目を奪われた。本人が全体的に大きい方なので、服を着ると余計に目立たないのだが、
恐らく彼女と同種族でも手に余る大きさだろう。しかし形は崩れておらず、乳首は割と小さいが、可愛らしくつんと上を向いている。
「うぅ〜……も、もういい…?」
「まだダメ」
反射的にそう答え、クラッズは手を伸ばした。それに気付き、バハムーンは慌てて体を引く。
「さ、触るの!?」
「え、あ、うん。嫌だった?」
「あっ……い、嫌じゃない……で、でも、あんまり変なことしないで…」
顔だけでなく、全身を赤く染めながら、バハムーンはグッと胸を突き出してみせる。そこまでしなくてもいいのにな、と思いつつも、
クラッズは改めて彼女の胸に手を伸ばした。
片手で、全体を包むようにそっと触れる。
「はぅ…!」
驚いたようにバハムーンの体が跳ねる。
「なんか、肌の感じは硬いけど……柔らかいね」
「うぅ……ふあぅ…!」
胸を触られるという初めての経験に、バハムーンは激しい羞恥を覚える。だが手を振り払ったりはせず、微かに震えながらも、
彼の為すがままになっている。
一方のクラッズは、その初めての感覚を存分に楽しんでいた。乳房を覆う指に力を入れれば形を崩し、その隙間から肉が溢れる。
反応を探るように、ゆっくりと手を動かしてみる。
軽く触れただけでは、種族ゆえの硬質な皮膚と相まって硬く感じるものの、彼女の大きな胸は、その手の動きに合わせて
柔らかく形を変え、力を入れれば適度に押し返してくる。力を抜いてやれば、そうして崩れた形もすぐ元へと戻る。
全体を丁寧に揉みほぐしつつ、クラッズは指先で尖り始めた乳首を撫でた。
「あうっ!」
途端に、バハムーンはビクッと体を震わせ、反射的に体を引いた。
「ごめん、平気?」
「あ……へ、平気……ごめん」
バハムーンは再び、胸をクラッズの手に押し付けるように突き出す。もはや片手で触るようなことはせず、クラッズは両手でしっかりと
彼女の胸に触れた。
ふにふにとした感触を味わうように指を動かし、その隙間からはみ出る肉の感触を満喫する。そして、小さくもはっきりと存在を
主張する乳首を軽く挟み、あるいは指の腹で撫で、徐々に硬くなる感触を楽しむ。
そうしてクラッズが手を動かす度に、バハムーンは小さな声をあげ、未知の感覚に体をくねらせる。
「んっ……あっ、うっ…!やっ……な、なんで声がぁ…!あんっ!」
「……気持ちいい?」
少し意地の悪い笑顔を浮かべ、そう尋ねると、バハムーンは震える声で何とか答える。
「く、くすぐったい……のに、くすぐったいんだけど……なんか、それが、変な、体があっつくなるみたいなっ……んんっ…!」
必死に答えるバハムーンの姿は何とも可愛らしく、羞恥に耐えながら必死に尽くそうとしてくれるところもまた、健気でもあり、
扇情的でもあった。
徐々に、自分の中で抑えが利かなくなっていくのを、クラッズははっきりと感じていた。初めこそ、適当に触らせてもらって
終わりにしようと考えていたのだが、実際にこうして触れ、それに対する彼女の反応を見ていると、男としての欲望がむらむらと
頭をもたげてくる。
左手を胸から離し、下へと滑らせ、腹を撫でる。戦闘中心の学科ではないためか、彼女の腹は適度に肉が付いており、触るとふにふにと
柔らかい。とはいえ、その下には筋肉がしっかりと付いており、彼女もいっぱしの冒険者なのだとわかる。
その手触りも心地よく、クラッズはそのまま腹を撫で回す。胸よりは恥ずかしくないのか、バハムーンは口をやや歪んだ一文字に結び、
黙ってその刺激に耐えている。
「ん……はふ……は、はぁ…」
少し呼吸が落ち着いてきたのを見計らい、クラッズは不意打ちのように左手を彼女のスカートへと入れた。
「きゃあっ!?」
途端に甲高い悲鳴を上げ、バハムーンはクラッズの手を尻尾で絡め取ってしまった。
「そそそそんなとこも触るの!?触らなきゃダメか!?」
「うん、普通はね」
「う…」
さらりと答えられ、バハムーンは続く言葉を失った。やがて、尻尾がするするとクラッズの腕から離れていく。
完全に尻尾が離れると同時に、クラッズはスカートに入れた手をそっと動かす。が、途端に動きが止まった。
「……あれ?君、何か変な…」
「え?あ、あのっ……えっと、それは…」
一度手を抜くと、クラッズはバハムーンのスカートを捲ってみる。その下にあったものは、いわゆる女物のショーツなどではなく、
明らかに男物のトランクスだった。
「こ、この前、あいつに借りた時、履きやすくって……だから、その…」
「……うん、まあ、いいんだけどね。びっくりしたけど」
とはいえ、これはこれでいいかとクラッズは思っていた。
スカートの下から手を入れ、トランクスの裾を除けると、クラッズは直接彼女の秘部に触れた。
「うあぁっ!?やっ……くっ……うぅ〜…!」
再び、尻尾がクラッズの腕に巻き付くが、すぐにその力が緩む。心臓はバクバクと早鐘のように胸を打ち、そこに触れている
右手を通して、その鼓動がクラッズにもはっきりと伝わってくる。
「バハムーン、大丈夫?辛い?」
クラッズが尋ねると、バハムーンは顔を歪めつつも、ふるふると首を振る。
「はっ……はぁっ……へ、平気……はっ……ふっ…!」
だいぶ辛そうではあったが、もはやクラッズは彼女を本当に気遣えるほどの余裕がなくなってきていた。
彼女のそこは、意外なことにまったく毛が生えていない。その周囲を撫で、割れ目をそっと開く。
「ふあぅ…!」
泣きそうな声を出し、バハムーンの体が強張る。それでも、クラッズの手を止めようとはしない。
彼女自身、かなり緊張している上に、こういった経験は初めてなのだろうが、快感がないわけではないらしい。事実、クラッズが
手を伸ばした時から、既にそこは湿り気を帯びており、優しく開かせれば微かな水音が鳴る。
目をぎゅっと瞑るバハムーンを見つめ、抵抗の意思がないことを確認すると、クラッズはそこに人差し指を差し込んだ。
「いっ、痛ぁっ!!」
途端に、バハムーンは悲鳴をあげてクラッズの腕を掴んだ。それに驚き、クラッズもすぐに指を抜く。
「ごめん、痛かった?濡れてるから大丈夫だと思ったんだけど」
「い、痛かった……びっくりした…。あんまり、痛いことしないで…」
突然の痛みに怯えてしまったらしく、バハムーンは不安げにクラッズの顔を見つめる。普段ならば、そんな顔をされたらすぐにでも
やめるところなのだが、今の彼にはそれすら扇情的な表情としか映らなかった。
もはや我慢も限界だった。多少の罪悪感を覚えつつも、クラッズは自分の腕を掴むバハムーンの手を、そっと放させた。
「バハムーン……僕もう、我慢できないよ。ちょっと痛いとは思うけど、その……この先、いいかな?」
一瞬意味を考え、それを理解すると、バハムーンの顔はいよいよ怯えたものになる。しかしそれでも、彼女は首を振らず、
泣きそうな顔になりながらも頷いた。
それを受けて、クラッズは彼女のトランクスを脱がせ、自身も服を脱ぎ始める。上着を脱ぎ、袴状のズボンを脱ぎ、さらに下着を
脱いだ瞬間、バハムーンはのしかかるクラッズを大慌てで押さえた。
「ちょちょちょ、ちょっと待てぇ!」
「な、何!?」
「そ、それ…!」
震える手で、バハムーンはクラッズの股間を指差した。
「……それ……入れるの…?」
「う、うん」
「お前の指、見せて…」
「ん」
彼の人差し指と股間のモノとを、交互に何度か見比べる。それが終わると、バハムーンは一気にベッドの端まで後ずさった。
「無理無理無理ぃ!!そんなでっかいの入るわけないだろぉ!?ゆ、指であんなに痛かったのに、そんなの入れたら死んじゃうよぉ!!」
「いや、大丈夫だから。その、さっきはびっくりさせちゃったと思うけど、ゆっくり入れるし…」
「い、痛いのやだよぉ!無理だって!やっぱり無理ぃ!」
「あの……ほんとに大丈夫だから。痛いのは最初だけだとも聞くし、死ぬようなことじゃないから……ほら、大丈夫。よしよし」
とりあえず落ち着かせるのが先決だと判断し、クラッズはバハムーンの頭を優しく撫でてやる。最初は近づかれただけで怯えていた
バハムーンも、少しずつ震えが治まっていく。
「ほ……ほんとに、痛いの最初だけ?」
「だと思う……うん、最初だけだよ。ダメだったら、言ってくれれば何とかするから」
痛みへの恐怖が和らいだところで、バハムーンはようやく、彼を元気づけるのだという決意を思い出した。怖いものはやはり怖いが、
彼が望んでいるというのであれば、それを断るという選択肢は消え失せる。
「わ、わかった……でも、ほんとに優しくして…」
「うんうん、わかってる。大丈夫。じゃ……足、開いて」
言われて、バハムーンは大人しく足を開くが、股間にしっかりと尻尾を回してしまう。クラッズは黙ってそれを掴み、横にどけてから
足の間に体を割り込ませた。
震えるバハムーンの頭を優しく撫で、自身のモノをバハムーンの秘裂にあてがう。そして、クラッズはゆっくりと腰を突き出した。
「あっ…!くっ、う…!」
途端にバハムーンの体が強張り、その顔は苦痛に歪む。それでも少しは健気に耐えていたが、先端部分が入り込んだところで、
とうとう大きな悲鳴をあげた。
「いっ、痛いっ!!痛いよ!!やっぱり無理ぃ!!クラッズ、もう抜いて!!無理っ、無理だよぉ!!」
「バ、バハムーン暴れないで!もうちょっと、もうちょっとだから…!」
「痛っ……う、うああぁぁ…!」
既にベッドの端まで逃げていたため、無理矢理抜こうにも下がることができない。かといってクラッズを突き飛ばすような真似もできず、
バハムーンは痛みに涙を流しつつ、クラッズを受け入れるしかなかった。
一方のクラッズは、ぴっちりと閉じられた肉を無理矢理押し広げつつ侵入するその感覚に、大きな快感を覚えていた。彼女の中は
熱く、きつく、その感覚は今までに味わったことのないものだった。
だが、ふと顔を上げれば、バハムーンの泣き顔が目に入る。さすがに罪悪感を覚え、クラッズは半ばまで入ったところで腰を止めた。
「大丈夫、バハムーン?痛い?」
「うう、ぐす……痛いってばぁ……お腹が裂けちゃうよぉ…」
さすがに、こんな時どうすればいいかなどはわからず、クラッズはまた頭でも撫でてやろうと手を伸ばした。そこでふと、彼女の
大きな胸が目に入り、標的を変更する。
そっと、全体を覆うように手を触れる。バハムーンの体がピクンと震え、震える吐息に僅かながらも違う色が混じる。
「あうっ……また、くすぐったいのっ……やっ……ダメぇ…!」
「……どう?少しは痛くなくなった?」
「うえ…?い、痛いよ……でも、くすぐったいのも……あくっ…!な、なんか、くすぐったいの、強くなってきたよぉ…」
試しに、少し腰を突き出す。しかし、バハムーンが痛みを訴えることはなかった。
「それじゃ、少しこうしてよっか」
「あうっ……う、うん……あふ…!」
再び、両手で胸を包み、ゆっくりと捏ねるように手を動かす。バハムーンは切れ切れに息を吐き、交互に来る苦痛と快感に
戸惑っているようだった。しかし、若干快感が勝っているらしく、それまでのように逃げようとはしない。
尖った乳首を、触るか触らないかといった強さで撫でる。
「あんっ!やぁ……あん…!」
途端に、バハムーンは艶っぽい声をあげ、身を捩る。それを見計らって、クラッズは再び腰を突き出すが、バハムーンは一瞬ピクンと
体を震わせただけで、痛がる気配はなかった。
胸を優しく揉みながら、ゆっくりと腰を突き出していく。バハムーンは僅かに顔を歪めるものの、胸への愛撫による快感が強いらしく、
痛みを訴えることはない。
程なく、クラッズのモノはバハムーンの中に根元まで入り込んでいた。
「くうっ……バハムーン、入ったよ…!」
「ふえ…?あ……腰、くっついてる…」
どこか呆けたように、バハムーンが呟く。同時に、そこを意識したためか、クラッズのモノが急に強く締め付けられる。
「うあっ!?バ、バハムーン、そんな締め付けたら…!」
「あつっ…!お、お腹になんか、はまってるみたい……変な感じ…」
「……ごめん、バハムーン、動くよ。少し、我慢してね」
とうとう我慢の限界に達し、クラッズは彼女の背中を抱くと、腰を動かし始めた。途端に、バハムーンの顔が苦痛に歪む。
「あううっ!い、痛っ!ま、待ってぇ!まだ、そんな……くうっ!い、痛いのばっかりはやだよぉ!せめて、お、おっぱい触ってぇ…!」
「ん……わかった、ごめん」
強く動くことはできなくなるが、あまりバハムーンを苦しめるのも本意ではない。クラッズは背中に回していた腕を放し、
再び彼女の胸を揉み始める。
「くっ……はぁ、う…!ク……クラッズぅ…!」
切なげに彼を呼び、バハムーンは足と尻尾を彼の腰に絡めた。しかし動きを邪魔することはなく、彼女はただただ彼の動きに耐えている。
突き上げる度にくちゅっと小さな音が鳴り、腰を引けば結合部から愛液と僅かに血が零れる。それでも、バハムーンは彼を
ただ受け入れ、クラッズは欲望のままに腰を叩きつける。
やがて、その動きが激しさを増し、腰のぶつかり合うパン、パン、という音が部屋の中に響く。クラッズは限界が近いのか、
バハムーンの胸を掴むようにして腰を打ちつけている。
「あうぅ……クラッズぅ…!」
「く……ああっ…!バハムーン、もう出そう!」
「いいよっ……が、がまん、するからぁ…!好きに、してっ…!」
「くぅぅ……バハ……ああっ!」
切羽詰まった声をあげ、クラッズは思い切り腰を叩きつけた。同時に、一番奥まで突き入れられたモノがビクンと跳ね、彼女の中に
熱い精を放った。
「うあ……おなか、あったかいのが……なんか、でてるぅ…」
流し込まれる度に、バハムーンはピクリと体を震わせ、同時に彼のモノを締め付ける。それを何度か繰り返し、彼女の中に全てを
吐き出したクラッズがモノを引き抜くと、バハムーンの全身から力が抜けた。同時に、まだひくひくと震える秘部から、精液と
血が混じったものが零れる。
「お……おわ、り…?」
「バ、バハムーン、平気!?ごめん、その、僕…!」
一度射精して冷静になったクラッズは、ようやく事の重大さに気付き、バハムーンを抱き起こそうとした。しかしバハムーンは
疲れ切っていたらしく、ぐったりと体を横たえると、そのまま気を失うように眠りこんでしまった。
「………」
起こそうとして、しかしそれも可哀想だと思い直し、クラッズは彼女の体を軽く拭いてやり、布団を掛けてやった。そして自身の体も
拭いてから、彼女の隣に潜り込む。
「……ありがとね、バハムーン…」
小さな声で呼びかけ、頭を優しく撫でてやる。すると、バハムーンは少し嬉しそうに息を吐き、クラッズに擦り寄った。
「……ダメだよなあ……この子に、こんなことまでさせてるんじゃ……僕が、しっかりしなきゃ、ね」
そう呟くと、クラッズも目を瞑った。隣のバハムーンの温もりが、何だかとても暖かく感じられた。
「ヤッたな」
「ヤッたね」
「ハァハァハァハァハァハァ…!」
「………」
その頃、隣の部屋では四人の仲間が、揃いも揃って壁に耳を押し当てていた。本来、この部屋は見ず知らずのドラッケンの生徒が
使っていた部屋なのだが、無理を言ってドワーフの部屋と変えてもらったのだ。しかし、訳のわからない四人組が突然現れ、
部屋の交換を持ちかけた挙句、四人揃って一つの部屋に消えていく光景を見た彼の心境はいかばかりか。
「とりあえず、これでクラッズは平気だろうし、バハムーンもあいつだけにくっついてくれるかなー」
まだ耳を壁に押し当てつつ、フェルパーは軽い調子で言う。
「そうだといいね。たぶん、うまくいくと思うな」
ノームは彼の下で、手を筒のようにして、そこに耳を押し当てている。
「トカゲ、初々しすぎっ……クラッズも童貞らしいがっつきぶりでっ……ああ、トカゲの声可愛すぎですよっ…!」
「………」
ドワーフはもはや何も目に入っておらず、それこそ貪るようにして聞き入っている。その下で、コップを壁に当て、
そこに耳を当てていたディアボロスは、上から降ってくる彼女の涎で頭をべとべとにされていた。しかし彼も楽しんでいたのか、
それについての文句は一言もない。
「ま、たぶんうまくいくとは思うけど……もうちょっと、ダメ押しの一発が欲しいかなー」
「ダメ押し……あ、それなら、あたしに考えがあるよ。悪魔、あんたの手貸して」
「………」
ディアボロスは何も言わず、黙って頷いた。そしてこの後、部屋の中では仲間四人の密談が夜遅くまで続いていた。
翌日、一行はノームとディアボロスが久しぶりにプリシアナに帰りたいということで、行先をそこに決めた。
ヨモツヒラサカにいたため、さほど長い道のりではない。また実力も十分すぎるほどに付いているため、一行はその日のうちに
プリシアナに辿りつき、そのまま寮で一泊した。
その翌朝。学食に一人二人と集まり、揃って食事をしていると、バハムーンが血相を変えて飛び込んできた。
「お前等ぁー!!!」
「お、トカゲおはよ。どうしたの?」
「どうしたもこうしたもあるかぁー!」
バン!と大きな音を立て、バハムーンは紙切れを机に叩きつけた。
「どうして私が、妹学科の授業を受けることになってるんだよっ!?私こんなの申請した覚えないぞ!?」
「えー、いいじゃん。行ってくれば?」
「やだよっ!どうして私が、そんな訳のわからない学科っ…!」
言いかけて、バハムーンは慌てて口をつぐんだ。周囲からの冷ややかな視線が、バハムーンに突き刺さる。
「ご、ごめんなさい……えと、その、そんな内容のわからない学科っ…!」
「わからないなら受けてくれば。うちもれっきとした冒険者養成学校だから、悪いようにはならないはずだけど」
「やだってば!何だよノームまで!ていうか、大体私はこんなの申請した覚えはないってばっ!」
「ふーん。でもこんなのあるけど」
そう言って、ノームは一枚の紙切れをバハムーンに突き付けた。それはバハムーンの筆跡による、他学校の授業の受講届だった。
「え……えええっ!?何これ!?わ、私の字だけど……こ、こんなの書いた覚えないぞ!?誰だよ、こんなの作ったの!?」
「………」
すると、黙々と食事をしていたディアボロスが、誇らしげに親指をグッと立てて見せた。
「お前かああぁぁ!!!」
「すごいよねー、ディアボロス!みんなの筆跡、完璧に真似できるんだもんねー!」
「変わった隠し芸よね。使い道も色々だし」
「そんな隠し芸、こんないたずらに使うなっ!とにかく、私は絶対行かないからなっ!」
「ん、行かないのか?」
そこに、今まで黙っていたフェルパーが声を掛けた。
「行かないよっ!」
「そうか……まあ、確かに、妹とか弟学科って言うと、ドワーフとかクラッズとかフェアリーとか、そういう小さい種族の方が
多そうだし、君だと浮いちゃうかもね」
「ん…?」
ピクッと、バハムーンの眉が動いた。
「まあ色んな種族の人はいるだろうけど、全員可愛さに磨きをかけようって人達だろうしねえ。俺としては、君も行けるとは
思うけど……まあ、本人が行きたくないなら、無理にとは…」
「ちょ、ちょっと待てっ!」
フェルパーの言葉を、バハムーンは慌てて遮った。
「え、えっと……その、受講届は、もう出しちゃったんだろ!?なら、その、キャンセルってのもあれだし……一回くらい、
出てみようかな……あっ!べ、別に、興味湧いたってわけじゃないからな!?受講届出しちゃったから行くだけだからな!?」
はいはい、とでも言いたげな様子で、クラッズを除く全員が頷いた。
「……じゃ、その、朝ご飯の前に、正式な手続き行ってくる。またあとでな」
そう言って去っていくバハムーン。その背中を見ながら、ディアボロスがぽつりと呟いた。
「……ツンデレ学科でもいけそうだな」
その言葉に、やはりクラッズ以外の全員が頷いた。
「ねえ、君達……一体何考えてるの?」
どことなく責めるような響きを持って、クラッズが尋ねる。
「ん、べ〜つにぃ。ただ、似合いそうだよな?」
「いや、それはそうかもしれないけど…」
「あの学科は、意外と戦力としても侮れない学科よ。パーティの戦力が充実するのが不満なの」
「いや、そんなことは言わないよ!けど……なんか、裏がありそうな気が…」
「気のせい気のせい。さ、トカゲが来るまでに、今後の予定少しぐらい話しとこうよ」
ドワーフが無理矢理話題を打ち切り、クラッズの疑念は結局、解消されることがなかった。そしてその後、バハムーンが意外と
授業を気に入ってしまい、一週間ほどプリシアナに滞在することに決まるのだった。
バハムーンが妹学科の基本的な授業を終えたところで、一行は再び冒険へと旅立つことにした。今度は近くにある冥府の迷宮に
行ってみようという話になっており、拠点は一行の出会いの地、ローズガーデンである。
「それでトカゲ、どうだった?妹学科って楽しかった?」
「ん〜、なんか、思ったより体育会系だった……発声練習がすごかったなー。あと、私は純情型健気系ギャップ類の妹属性らしくって…」
「何、そのヒト科ヒト目ヒューマン種みたいな分け方」
そんな話をする二人とは別に、クラッズは腰に差していた鬼切を手に取り、何やら思案していた。
「どうした、クラッズ?」
「ん?いやね……考え事」
一度鯉口を切り、少し刃を出してみる。しかしすぐにパチンと元に戻し、クラッズは大きな溜め息をついた。
「……ノーム、ちょっといい?」
「やだ」
「………」
「ノーム、聞いてやってくれよ」
「フェルパーが言うなら…」
「……君の基準は全てがフェルパーなんだね…」
物悲しい思いを覚えつつ、クラッズは彼女に鬼切を渡した。
「これ、分解してくれないかな」
「侍は、大小差すんじゃなかったの」
「ははは、いいんだ。だって、切腹にしか使えない刀持ってたって、しょうがないでしょ?」
ノームはしばらくクラッズの顔を見つめ、やがてフッと笑った。
「わかった。それじゃ、分解するよ」
ノームが意識を集中すると、たちまち鬼切はねじ曲がり、いくつかの鉄片と用を為さなくなった本体とに分解された。
「意外と粗末な素材使ってたのね。そのうち、新しい武器作るときの足しにでもする」
「うん、そうして」
うきうきとした足取りで素材をしまいに行くノーム。それを見送ってから、フェルパーはクラッズに声を掛ける。
「……迷いは、無くなったみたいだな?」
「うん」
「新しい目標、できたのか?」
フェルパーは優しい笑顔と、僅かな殺気をクラッズに向ける。それに対し、クラッズも笑顔を返す。
「……あいつを殺すのは、楽しかったよ。思えば、モノノケと戦って、それを斬り捨てて、自分が強くなったって実感するのも、
楽しかった。根本は、きっと同じなんだよね」
「………」
「でも、それに溺れるつもりはないよ。それに、敵意のない相手を殺すのは、気分悪いだけ。君のお世話になることはないから、
安心して」
「そうか……残念だな、はは」
「何だよー、僕に何か積もる恨みでもあるわけ?」
殺気を消して笑うフェルパーに、クラッズも楽しげな笑顔を返す。
「とにかく、僕は強くなる。あのときだって、ディアボロスがいなかったら僕は負けてた。もう二度と、負けない。
誰にも負けないぐらい、強く強く……邪魔をする者は、全部斬り捨てられるくらいに」
「それで、誰かを守るのか?」
「そんな下らない理由で、強くなろうとは思わないよ」
あっさりと、クラッズは言い放った。
「誰かを守れるくらいなんて、そんなところで止まる気はないよ。強くなれば、そんなの自然にできるようになるしね。もちろん、
守りたい相手がいないわけじゃないけど…」
そう言って、クラッズはちらりとバハムーンを見た。
「……ま、それなら安心だな。俺もついてく。頑張ろうな、クラッズ!」
「後ろは任せるよ」
二人はがっしりと腕を絡め、笑顔を交わした。そこに、バハムーンが近寄ってくる。
「なあなあ、クラッズー。あとでお菓子の味見頼んでもいいかー?」
「ん、いいよ。何作ったの?」
「えっとなー、大福だっけ?タカチホの方のお菓子。餡子っての、やっとそれなりにできるようになってさ。あ、フェルパーも一緒に
食べてみてくれるか?」
「ああ、いいよ。今度はおいしい餡子なんだろ?」
「そうだぞー!頑張ってうまいの作れるようになったんだからなー!」
「……トカゲー、妹学科の授業受けてきたんでしょ?その成果、クラッズに見せてあげれば?」
そう声を掛けると、バハムーンは一瞬躊躇い、少しもじもじしながらクラッズを見つめた。
「あ、あの……恥ずかしいな……そ、それじゃあ、頼むな、兄ちゃん…」
兄ちゃん、と言われると、一瞬クラッズの表情が引きつった。だがそれも一瞬のことで、すぐに困った笑顔へと変わる。
「そ、その呼び方はあまりしないでほしいな…」
「なんでー?私は平気だぞ?」
「その〜……色々罪悪感が出てくるからさ、普通に呼んで、普通に…」
「そっか……でも、ほんとに兄ちゃんみたいでぴったりなんだけどなあ」
「だぁかぁらぁ、それはやめてって…」
仲良く話し始めた二人を置いて、ドワーフとフェルパーはそっとその場を離れた。そこに、素材を置いてきたノームも合流する。
「うまくいったみたいだね、代理の妹作戦」
「バハムーンには悪い事したけどなあ……でも、毎回骨が折れそうなほど抱き締められるのもうんざりだし、まあいいよな」
軽く息をついて、フェルパーは続ける。
「にしても、俺の判断、間違ってたのかなあ」
「ん、何が?」
「あいつ……クラッズに必要だったのはさ、俺みたいに面倒を見てやる奴じゃなくって、むしろあいつに手を掛けさせる
存在だったんだよな。そんなことも気づかないでさ……あいつのこと、余計に苦しめさせちまったかなあ…」
「ううん、フェルパーは間違ってないよ」
ノームが珍しく、強い口調で断言した。
「フェルパーがいなかったら、あの小さいのはとっくの昔に潰れてる。今までフェルパーが支えてたから、あの小さいのは
今まで生きてこられたんだよ。だから、フェルパーは間違ってないよ」
「そっか……そうかもな。ありがとな、ノーム」
お礼を言われると、ノームは恥ずかしげに目を逸らした。
「はいはい、惚気るのはその辺にしてね。今度行くとこって、行方不明者とか結構出した迷宮でしょ?少しは緊張感持って行かないとね」
「それもそうか。おーい、クラッズ、バハムーン。準備はできてるか?」
「あ、うん。僕はもう平気。バハムーンは?」
「私も大丈夫だぞー」
「よし、じゃあ全員準備よしかな。ディアボロス……も、いいみたいだな」
もうとっくの昔に準備を終えていたらしく、ディアボロスは荷物を椅子代わりにして座っていた。
「それじゃ、そろそろ行くかー。バハムーン、探索終わったら饅頭よろしくな!」
「おう!まっかせろー!」
元気よく答えるバハムーンを、クラッズは微笑ましい思いで見つめていた。するとふと、彼女と目が合った。
「……それにしても、よかったー。お前が元気になって。ほんとに男って、エッチなことすると元気になるんだな」
「だから、その知識は微妙に間違ってるってば。君のおかげなのは確かだけど…」
「お前元気なくって、ほんと心配だったんだからなー。あの……その……ま、また兄ちゃん元気なくなったらさ、痛かったけど、その、
またああいうのしてもいいからな…」
「やめてバハムーン……兄ちゃんって言葉とその言葉組み合わせて使わないで……死にたくなるから…」
いきなりとんでもなく暗い顔になったクラッズに、バハムーンは大慌てで声を掛ける。
「わ、わかった!わかったよ!と、とにかくおいしいお菓子なんかも作るからな!その……お、お前が元気になるんなら、私、何でも
頑張るからな!」
「……いや、その必要もないよ。君に心配させたり、手かけさせたりするようなことは、もうしないって決めたんだ」
「そうなのかー?でも、ほんとに辛いときは頼ってくれよな。何か手助けできるって、嬉しいんだぞー」
「わかったよ。その時は、よろしくね」
「おう!」
偶然と策略によって築かれた、二人の変わった関係。兄妹のような、恋人のような、しかしそのどちらとも言い難い間柄。
ともあれ、二人はそれで満足だった。そのどちらであっても、大切な存在であることは変わらない。
この時、彼等の道ははっきりと変わり始め、また一連の事件により、仲間達の結束はさらに固いものとなっていた。
共犯という名の結束。クラッズの底知れぬ狂気の中に、一筋の光明を投げかけるバハムーン。恐らくは元の仲間達が望まぬ方向へと
進み始めたクラッズとフェルパー。
茨と闇に包まれた道。その中へと、彼等は確実に一歩を踏み出していた。
以上、投下終了。
ドワーフばっかり動いて大変だった。主役は違うというのに。
ついでに容量が一杯になってきたので次スレ立ててきます。
では皆様、よいお年を。
体格差カップルGJです。
トランクスが楽、ということはこの女履きかたをわきまえておる……!
女性の皆さんへ。
トランクスは上までぴっちりあげる下着ではありません。
そんなことしたら食い込んで痛いよ?ゆったり腰履き推奨。
ディアボロスが思いのほか駄目で楽しい。
楽しんでるのは盗み聞きですよね?涎プレイじゃないですよね?
今さらながら感想を。
バハ子がかわいくて萌えた。
あとクラッズの「やめてバハムーン〜」のセリフでワロタw
ともかく、GJですた。