【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ2【昭和のかほり】

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1名無しさん@ピンキー
村井夫妻でちょっこし妄想

前スレ
【朝ドラ】ゲゲゲの女房でエロパロ【昭和のかほり】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1273028858/

保管庫
ttp://www.h01.i-friends.st/?in=llgegegell  
2名無しさん@ピンキー:2010/08/05(木) 14:21:07 ID:Updqmq63
もちろん村井夫妻以外もおk。
3名無しさん@ピンキー:2010/08/05(木) 22:13:25 ID:tdVWcQ0J
4名無しさん@ピンキー:2010/08/05(木) 23:32:33 ID:vHYDF4W3
>>1乙!&だんだん!

今日、早くも予約してたDVDBOX1キタコレ!
飛ばし見してるんだが、初期の頃の二人が初々しくてたまらん。
また前スレ1から見直したりしてw
5名無しさん@ピンキー:2010/08/06(金) 14:50:25 ID:3mtvXUf5
>>1
おうゲゲ、新スレ立てたんか。まあ一応、乙とは言ってやるがな
6名無しさん@ピンキー:2010/08/06(金) 20:49:34 ID:9d+xOR94
>>5

浦木www


新スレだんだん!

7名無しさん@ピンキー:2010/08/06(金) 21:37:43 ID:tB6bI2n1
新スレおめ!

誰か>>5のために

イタチ×はるこ
イタチ×郁子
イタチvsイカル

をお願いします。
8名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 22:25:23 ID:EYl5PlsH
職人さん新スレにも来てごしない〜
9名無しさん@ピンキー:2010/08/08(日) 10:45:41 ID:PfF+xfDf
スレ立て乙
10名無しさん@ピンキー:2010/08/09(月) 16:56:45 ID:bpzBQE6H
ゲゲ老けたねー
もう50くらいになったのかな?
ということはふみちゃんは40くらい?
40でもスカート丈は膝上のふみちゃんにぐっときました。
11木婚式1:2010/08/11(水) 00:21:03 ID:CLCNRs7i
「先生?これ、そのペン立ての、ちゃいますか?」
今日も忙しい一日が終わり、三人のアシスタントが帰り支度をしているとき
倉田が床に落ちていた小さなボタンを拾って茂に差し出した。
見ると、確かに布美枝にもらったペン立ての飾りになっていたボタンだった。
「だいぶ長いこと使っとるけん、取れたんだな」

「先生、これ、奥さんからのプレゼントじゃないですか?」
妙に何事にも鋭い小峰が、ずばりと当ててみせた。
「そういえば〜。先生のものにしてはずいぶん可愛いらしいとは思ってたんだよな〜」
菅井が、ひょうたん顔をにやにやさせながら、倉田の後ろから茂をちらりと見る。
茂は頭をぽりぽり掻いてから、少し乱暴に件のペン立てを引き寄せて、被害状況を確認する。
これは、結婚一周年のときに布美枝からもらったもので…などと、
惚気ながら説明するのはこの無愛想な男には到底無理な話だった。

「…あっ!!」
とたんに茂が大声を出してイスから立ち上がったので、三人は驚いてそれぞれ一歩づつ引いた。
「しまった…」
「ど、どないしはったんですか?」
強ばった表情でカレンダーを睨む茂に、三人は眉をひそめて顔を見合わせる。

「先生?」
後ろから呼ばれて、はっとして振り返った茂は、
「…な、なんでもない。お疲れさん、また…明日も頼む」
そう言って三人を残し、そそくさと仕事場から撤収した。
12木婚式2:2010/08/11(水) 00:22:08 ID:CLCNRs7i
もう0時近くになっていた。
台所を覗いてみると、寝巻き姿の布美枝がまだ片付けをしているところだった。
ほっとしたが、すぐに緊張して、義妹のいずみが居ないか周りを確かめる。
その気配に気づいた布美枝が、茂の姿を認めると「お疲れ様です」と言ってにこっと笑ってくれた。

「コーヒー入れましょうか?お風呂に入りますか?」
「うん…コーヒー」
「はい」
「…喜子は?」
「よー寝とります」
「藍子は?」
「最近はあたしより、いずみの方がええみたいで。一緒に寝とります」
「そげか」

最近では、愛娘の顔を愛でる時間もさほど取れない。
そんな状態だから、愛妻と愛し合う暇など到底…。
というよりも、喜子を身ごもって以来ずっと…ということになるので、
果たして前回の営みがいつであったのか、
その行為への誘い方でさえ、もう既にすっかり忘れてしまっている。
40も過ぎた大の男が、こんな欲丸出しのことを考えているのも滑稽だが、
30を過ぎて2人も子どもを生んだにも関わらず、
なおその身体のライン美しく、艶かしい布美枝も異常だと思った。
長い間見ていない、あの寝巻きに隠された向こう側はどうなっているのだろう…。
などと考えていると、ふわっとコーヒーの香りが茂の鼻腔をくすぐった。

「どげしましたか?」
「え?」
「何か考えこんどるみたい」
「あ…いや…」
見透かされるのかと思って、慌てて角砂糖をどばどばと投入する。
布美枝は苦笑いして茂を見ていた。「甘そう…」味を想像して、うえーっと舌を出す。
13木婚式3:2010/08/11(水) 00:23:22 ID:CLCNRs7i
「…すっかり、忘れとった」
コーヒーを一口飲んで、茂は詫びの気持ちを含めて呟いた。
「え?」
「今日…30日、だったな」
「……思い出しましたか」
やれやれ、という顔で布美枝は茂を見たが、すぐに笑顔になって
「思い出してくれただけでも嬉しいです。
 忙しいんだけん、今日が何月何日かなんて、意識しとらんのでしょう?」

今日は1月30日。
茂と布美枝の、結婚記念日だった。
きっかけは、先ほどのペン立て。
倉田がボタンを拾わなければ、あるいは何も思い出さずにいたかも知れなかった。

「何年になる」
「36年だから…丸5年です」
「ふぅ…ん、なんかまだ、全然だな」
「何がですか?」
「えっ…と…」
何がと訊かれると、具体的にこうだと言えることがなかった。
まだ全然、月日としては浅いな、とか。
まだ全然、これからが長いよな、とか。
まだ全然、お前は若いな、とか。
まだ全然、あの頃と同じくらいに、お前のことを…………とか…。

出会って5日で結婚したのだ。つまり、知り合ってからもまだ5年ということ。
それにしては、ずいぶん密度の濃い5年を過ごしてきた二人である。
5年の月日の様々なことを思い出して、しばし二人の間には沈黙が流れた。

「今夜は雪が降るそうです」
布美枝が窓を見やりながら「テレビで言うとりました」と言った。
「1年目のときと同じ。あの日も雪が降って…。あなたが雪かぶって帰って来て」
「ああ、そげだったな。深沢さんが倒れたときだ」
「なーんもない、粗末な記念日でしたけど。でも」
幸せだったぁ…と呟いて、目を伏せた布美枝の横顔の美しさに、茂はどきりとさせられた。
「あ、でも、今日だってしあわ…」
続きを言わせてもらえずに、布美枝の唇は茂の唇に塞がれた。
14木婚式4:2010/08/11(水) 00:24:11 ID:CLCNRs7i
重ねる唇の隙間から、茂の舌が忍び込んできて布美枝のそれと交わりあう。
絡み合っては離れ、また互いを求め合って行き交う。
茂の右手が、布美枝の頬を軽く撫でて、それから人差し指を首筋から辿りながら降下させ、
布美枝の柔らかい胸に到達すると、ノックをするように軽くつついた。
布美枝にはそれが何の合図なのか、一瞬で分かった…。

唇が離れると、布美枝は急にすっくと立ち上がり、茂のコーヒーカップを取って流しへ向かった。
その突然の行動に茂はためらった。拒否、されたのだろうか。
イスに座ったまま、そんな布美枝の後姿をじっと見つめていると、
ふいに布美枝が振り返って、茂の手を取って引っ張った。
よろけながらその誘いに任せていると、隣の居間まで来てぴたりと止まり、
茂に振り返りざま、ぎゅっと抱きついた。
肩に顔を押し付けて、蚊の鳴くような声でぼそぼそと
「…二階は…いずみがおりますけん…」
と、呟いた。

考えてみれば、結婚した当初こそ中森という同居人が居たけれども、
もともとこの狭い家に出入りする人間などいくらもいなかったはずなのだ。
しかし、ここのところの村井家の人口密度の高さは、こういうときに障害になる。

喜子を妊娠してからの布美枝の手伝いとして、
いずみが来てくれたのは、茂も心底感謝しているが、
身内であるいずみは、こういうときには気兼ねをしてしまう人間の最たるものではある。
まったくの他人の中森とはまた少し、気の使い方が違う。

アシスタントの三人だって、独身の若い男どもばかり。
茂と布美枝が、どこかそういう艶っぽい雰囲気をかもし出してしまえば、
とたんに沸き立ってしまいそうな勢いがあった。

加えて、殺到する仕事に付きまとう編集者。
これがまた、仕事を運んで来てくれる福の神とは言え、
まだかまだかと迫ってくるときは、鬼のようにも思えて、
布美枝との距離を最も遠ざけてくれている原因と言ってもいいだろう。
15木婚式5:2010/08/11(水) 00:25:14 ID:CLCNRs7i
久々の営みが、台所横の居間というのはずいぶん色っぽさがないが、
ぜいたくを言っているほど、茂の欲も品が良いわけではない。
強く抱きついている布美枝の肩を押して、少し自分の身体から離すと、
すとん、とその場に腰を下ろし、布美枝の手を引っ張って自分の胡坐の上に座らせた。

自分の足に跨った布美枝の、白い太ももが寝巻きから露わになって、思わず撫でる。
「…ゃっ…」
過敏に反応して、細い指が茂の肩を掴んだ。
図らずも互いの顔が間近になって、そのまま深く口づけを交わす。
口づけたまま寝巻きの帯を解いて、背中を手でまさぐるだけで、また敏感に反応する。

ホックを外して、ブラジャーだけをずらすと、寝巻きの隙間から形の良い乳房が茂の眼前に現れた。
思わず果実に食らいつくように吸い付く。
柔らかい乳房の先端に、実るピンク色の実を認めて舌を伸ばした。
「…っあ…っ」
よがる布美枝の身体を右腕で支え、なおもその実を口に咥えて遊んでいると、
ふと、赤ん坊の匂いがする。
気になって少し顔を離して見ると、先端からじわじわ母乳が出ていた。

喜子が生まれてまだ1ヶ月なのだ。当然といえば当然である。
布美枝はそれに気づいて慌てて胸を隠してみたが、茂がそれを制し、
滴りはじめた乳を舌ですくって舐めた。
「っ…」
「…甘いな」
本来なら、今この時期の布美枝の身体は、「母」としてのもので
自分が抱いて良いものではなかったのかも知れない…。
けれど、甘い乳の匂いは、大の男をも夢中にさせるほどの効力を持っていたようで
茂はまた布美枝の乳房を揉みしだき、果実から零れる甘い汁を吸った。
「はっ…ん…んんっ…ぁあっ…」
数ヶ月ぶりの熱い愛撫に、布美枝の遠慮がちな嬌声の中にも昂ぶりを感じる。
16木婚式6:2010/08/11(水) 00:26:26 ID:CLCNRs7i
やっぱり…と茂は思った。
しばらくぶりに見た布美枝の細く、美しい身体は、2人の子どもを生んでなお崩れることなく
柔らかいところは柔らかく、しなやかなところはしなやかに、さらさらとした肌も健在だった。
早くその先も確かめたい…茂の手が、布美枝の寝巻きを全て脱がそうとしたとき。

「いやっ……」

それまで無抵抗で茂に身を任せていた布美枝が、急に寝巻きをぐいとひきよせ、
まるで剥ぎ取られまいとするように、胸の前でぎゅっと握り締めた。
そして、申し訳なさそうにずるずると茂の膝から降りて、畳の上にへたりこんだ。
突然のことに驚いた茂は、かける言葉もなくしばらく呆然と布美枝を見ていた。

「さ…寒いのか?」

やっとのことで出た茂の言葉に、布美枝はぶるぶると首を横に振った。
何やら言いたげな顔で、所在なさそうに肩をすくめている。
「あの…」
「どげした?」
今さら、やっぱり無理だとか言うのだろうか。
茂は先ほどから張り切って突っ張っている自身の下半身を思って、少し同情した。

「そのぅ…」
「なんだ、はやこと言え」
「…びっくり…せんでね」
「え?」
「傷痕…」
「あ…」

布美枝が慌てて寝巻きを着込んだ理由が、茂にもやっと分かった。
帝王切開の傷が、まだ癒えていないのか…。

「見せてみろ」
「…」
17木婚式7:2010/08/11(水) 00:27:01 ID:CLCNRs7i
しばし戸惑い、躊躇する布美枝だったが、茂が手をかして膝立ちにさせると、素直に従った。
ゆっくり寝巻きを観音開きに解いた。
細い首から筋が延びて、鎖骨がくっきりと美しく浮かぶ、その下には形のよい乳房。
ウエストのラインはくびれをくっきり造って、尻へと続く綺麗な湾曲線…。
何も、変わらない布美枝の美しい身体…。
その中心に、縦に赤い手術痕が見えた。

「痛むのか」
「違和感はありますけど…痛みはもう、ないです」

そっと、指先でそれに触れると、ぴくりと布美枝が反応する。
まるで申し訳なさそうに、少し潤んだ瞳で茂を見下ろしている。
茂は傷痕にそっと唇を押し当てると、布美枝を見上げて
「おかあちゃんの勲章だな」
言ってから、にこっと笑った。

布美枝の表情が一瞬にして緩み、いつもの笑顔が戻る。
抱きついてきた布美枝の肩越しに見えた背中は、以前と同じようにしなやかだった。

布美枝の身体をゆっくり支えながら、そうっと横たえると、
傷痕を少し撫でてから、秘所へと指を伸ばす。
以前なら、もうそこには茂を迎え入れる準備が万端整っているほどの潤いが溜め込まれていたころだが、
今日はいかんせん、前回の営みから日にちが経ちすぎているせいか、
布美枝の緊張そのままに、下着の中はじんわりと汗ばんでいるだけだった。

指で突起を弄んでみても、布美枝はわずかに腰をゆすらせるだけでかたくなに入り口は閉ざされたまま。
茂は恥ずかしそうに閉じられた布美枝の脚を割って、顔を埋めた。布美枝の身体がそれだけで反応する。
ざらっとひと舐めすると、はあっと大きく息を吸い込んで身を震わせる。
それが誘い水となって、反応した場所からじわっと液がにじんでくる。
18木婚式8:2010/08/11(水) 00:27:39 ID:CLCNRs7i
「あっ…ん…」
身をよじる布美枝の腰を捕まえて、さらに舌で攻めると
堰を切ったように、泉の水が溢れ出してきた。
指を浸入させれば、内襞が驚いて弾くように抵抗する。
それでも無理矢理に奥へ進めば、布美枝がのけぞって声をあげた。
蜜を味わうようにねっとりと舌を這わせて、探し物でもするように指を掻き分ければ、
布美枝の肢体が淫らにくねり、「し…げ…さ…」うわ言のように茂の名を呼ぶ。

外は予報どおり雪が降るほどに冷えてきたが、
二人の身体は、強く互いを求めるあまりに足先まで火照り、
茂は思わず乱暴に上着を脱ぎ捨て、自身の最も熱く昂ぶる場所を勢いよく解放した。
そのまま乱暴に攻めてしまいたくなる衝動を抑え、だらりと横たわる布美枝の、
赤い傷痕に今一度口づけてから、ゆっくり、その身を挿し入れる。

「…っっ…んっあ…」
熱いため息が洩れて、布美枝がまたその背中をのけぞらせる。
のそりのそりと進んでいく分身が、内襞にじわじわと押し返され、
長い禁欲生活のせいで、何もせずにもすぐに達してしまいそうになる。

「…大丈夫か」
気をそらせるために、布美枝に問いかけてみる。
眉をしかめて、半分涙目になっている布美枝が、それでもこくこくと頷いた。

最奥まで挿入すると、茂は届く範囲の布美枝の全てに口づけを繰り返した。
その間にも、腰を軽く突き上げて攻める。
「ふっ…んんっ…あっ…、あ…ん…」
布美枝の艶かしい声に、茂の欲はいっそう深くなって、もっと乱してやりたくなる。
指で敏感な突起を弄んでやると、さらにハラハラするような声が響いた。
「やっ…あっ、あっ…ん、あん、ああっ…ああっ」
19木婚式9:2010/08/11(水) 00:28:09 ID:CLCNRs7i
上下する乳房にも吸い付くと、懇願するようにまた名前を呼ばれる。
「しげぇさ…ん、も…ぅ、はぁっ…あっ…も、ぅ…やめっ…」
茂の肩に掴まっていた布美枝の手が、ずるずると力を失っていく。
溜めこんでいた涙がぽろぽろと零れていくのが見えた。
茂はそれを唇ですくいとって、布美枝の耳元でひとつ大きく息を吐くと、一気に腰を打ちつけた。
「あああ…っ!」

布美枝は思わず茂にしがみついた。
茂も布美枝を強く抱いて、唇を塞ぐと、腰の動きをさらに速める。
布美枝が鼻を鳴らして、その動きに任せて身を揺らす。
やがて茂自身は、布美枝の奥底へ、数か月分の精を全て吐き出した。

息を整える間も、二人は強く抱きしめあったまま、じっとしていた。
ふと、傷は大丈夫だろうかと気になって、茂は身体を起こして布美枝を見下ろした。
「大丈夫か」
布美枝はそれに笑顔で答えた。
そして、両手を広げて子どもが抱っこをねだるように、茂に催促をする。
「ん?」
「起こして、ください」

茂は布美枝の腕をひっぱって、繋がったまま座る格好になった。
布美枝はぎゅっと茂に抱きついたまま、しばらく動かない。
「どげした?」
「…おとうちゃんとこうしておるの、久しぶりですけん…」
確かに、夫婦の営みもご無沙汰であったが、
二人でゆっくり話すこと自体も、ずいぶん久々のことだった。

「…ああ、そげだ」
「はい?」
「ペン立て、お前にもらったやつだ。飾りが取れてな」
「あら、そげですか」
「直るか」
「はい。長いこと使ってもらえとって、嬉しいです」

にっこり笑う布美枝の顔を撫でて、茂も微笑んだ。
二人はまた、何度目かの口づけをした。


おわり
20名無しさん@ピンキー:2010/08/11(水) 07:21:45 ID:XBLG7QRd
GJ!ペン立ての役回りが憎いね!
21名無しさん@ピンキー:2010/08/11(水) 12:13:09 ID:8gAw0faF
(*´Д`)
22名無しさん@ピンキー:2010/08/11(水) 18:38:24 ID:jKOPUJZy
>>1
乙&だんだんですけん!

>>21
新スレ第一弾作品キター!だんだん!
ゲゲ母乳プレイできて良かったなw
最後に抱きつく辺りが特にカワイイ!
やっぱゲゲフミのイチャイチャ&エロはええですねww
勿論それ以外も良いけどw
23名無しさん@ピンキー:2010/08/12(木) 00:35:54 ID:jHUCbDQ2
GJ
24名無しさん@ピンキー:2010/08/12(木) 17:49:00 ID:5GKNUBAh
素晴らしいです・・!
25名無しさん@ピンキー:2010/08/12(木) 19:01:39 ID:aEmcmh4o
久々に燃える二人に萌えますた!GJ!実はフミちゃん作のペン立てを自慢したそうな茂が可愛い。
26名無しさん@ピンキー:2010/08/12(木) 21:12:44 ID:Mqk7b1T/
フハッ
父母、夫婦、恋人、そっち方面でもぴったりな比翼の2人。
完璧ですね。
なにか、子供が大きくなってもふみさんはゲゲと話す時は
語尾にwがつくんだろうな〜と思いました
27名無しさん@ピンキー:2010/08/13(金) 04:35:34 ID:LKdlYr6K
新スレ初投下作品gj!
母乳プレイktkr
「おかあちゃんの勲章だな」に危うく目から汁が…
やっぱエロイ夫婦はええですな
28名無しさん@ピンキー:2010/08/14(土) 12:10:35 ID:eYz5X4fg
ぬおお新作が読みたい〜〜
29名無しさん@ピンキー:2010/08/14(土) 13:17:02 ID:+NkKa3e9
今日のゲゲフミ、「暗いとムードが出る」って連呼しすぎじゃねw?ってオモタww

前スレのフミちゃんコスプレ編早く読みてー!
30名無しさん@ピンキー:2010/08/14(土) 16:58:38 ID:8hXF+j4Z
>>29
「ムード」に反応した人、自分だけじゃなかったw
せっかく家族水いらずの別荘なんだから、
子供は早く寝かしてろうそくのあかりで夫婦水入らず・・・w
31名無しさん@ピンキー:2010/08/14(土) 20:04:33 ID:eYz5X4fg
ゲゲがあんまり好きすぎてもしかしてムカイリのファンになっちゃったのか
と思って他の見てみたけどそうでもなかった
やっぱセンセじゃないと萌えん

前スレやっと埋まったみたいよ
32名無しさん@ピンキー:2010/08/14(土) 20:18:58 ID:IZXK2LXO
フミちゃんのパンツ姿をもっとじっくり見たかった。
あと、子ども達が眠った後、二人で話すところも見たかった…
もっと言えばごにょごにょ
33名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 01:12:45 ID:udF8LapW
少し遡り、第15週「チャンス到来!?」後半の設定で投下。
はるこ帰郷と豊川来訪の幕間。
34【黎明】1/2:2010/08/15(日) 01:16:53 ID:udF8LapW
 ゆるりと覚醒する感覚が最初に捉えたのは、水の音だった。
 薄暗く煙る窓の向こうに、さらさらと規則的な雨足の響き。
 今日は洗濯物を干せないなと、ぼんやり考えた。


 ふるりと肩を竦めて、頭を擡げる。
 ひたりと触れる肌の感触に、隣で横たわる男を見た。
 馴染んだ輪郭の影と温もりに、我知らず綻ぶ。
「…あ。いけん」
 放り出された長い腕を、慌てて仕舞い、掛け布団を引き寄せた。
 文字通り、彼の生業を担う、大事な右腕だ。
 痺れさせたりしてはいけないと、こっそり腕枕も外している。
 本当は、彼の腕に身を預けるのは、至福のひとときなのだけれど。
 むにむにと何やら呟く夫の寝言に耳をすませ、再び傍らに潜り込んだ。
 汗が乾いた、肌の匂い。
 狂おしく縋りついた記憶の生々しさに、一人赤面する。
 この人がずるいのだ。
 普段は鷹揚で淡泊なのに、共寝の時は、濃厚に掻き抱き、あんな声で名を呼んで。
 幾度も熱く焼かれた心と躰は、自分の知らない生き物に蘇生する。
 叶うわけがない。
 日々、気持ちは累積し、これ以上は無いくらい、想いは充満しているのに。
 今日もまた、昨日よりも。
(…あなたを)
 好きになっている。
 子供のような寝顔を見上げた。
 意外と整った鼻梁の、眼鏡の痕に、指先で触れる。
35【黎明】2/2:2010/08/15(日) 01:19:50 ID:udF8LapW
 ほのかな夜明けの雨音に、ふと、婚礼の晩を思い出した。
 初めて交わした夫婦の会話は、狐の嫁入り。
 慌ただしい上京と、出逢ったばかりの相手と暮らす不安に、押し潰されそうだった
頃。
 今は、この腕の中こそが、どこよりも安堵できる空間だ。
 不思議な包容力。
 柔らかな笑顔。
 少年みたいな無邪気さ。
 仕事に打ち込む気迫。
 惹かれた背中。

  『見てるだけ』

 帰郷した彼女の言う通りだ。
 夫の仲間達も、次々と筆を折った。
 漫画家の世界は厳しい。
 創作の悩みや苦しみを、自分は理解も共有もできない。
 苦闘する夫の姿を、ただ見つめるだけだ。
「…し、げぇ…さ」
 見ていることしかできないなら、せめて、見続けてさせてほしい。
 お願いだから。
 その背が見えなくなってしまう程、遠くへは。
(――いかんでごしない)
 そばに、いさせて。
 それしかできないけれど。
 どうか、近くに。
 ずっと、置いていて。


 花冷えの雨は、寺の桜を残してくれるだろうか。
 仕事が一段落したら、親子三人で花見に行こうと約束していた。
 彼が昨夜、胸元に散らした花びらを、そっとなぞってみる。
 ちくりと、小さな痛みが走った。


 夫の寝息を聴きながら、布美枝は目を閉じる。
 あと少し、もう少し、このまま。
 春の曙まで。


 了
36名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 03:21:50 ID:149Meydl
>>34
ムッハー!!THE萌える!だんだん!
はるこの「先生がすき」が下地にあっての、コレですな!
布美ちゃんの切ない想いが、きゅん(w とするわ。


スレチでごめんだけど、さっきまで録画してた「帰国」をみてた。
ゲゲひとりエロ要員だったので思わず3度見。
あれを布美ちゃんと思って妄想する。
てかオパーイ丸見えのディープキスて、
朝と夜、局の違いでどんだけ差があるんだーーー!!
37名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 09:36:07 ID:zoTHRLji
>>34
また〜りしてシアワセ気分になったGJ

38名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 11:39:19 ID:6yFAgd0d
>>37
だんだん!
切ない気持ちのフミちゃん、かわゆすぎて萌えww
雨や春の描写も美しい・・・!
ゲゲ編も激しく読みたいです!
39名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 19:30:52 ID:q10/qMjp
ふみちゃん表紙の25ansウェディング秋号ってやつ誰か見た?結婚情報誌みたいなの…
ムカイリとふみちゃんがタキシードとドレス姿で載ってるよ!
40名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 23:01:35 ID:7lyWtyFf
どちらかというと、“いちごとせんべい”……
41名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 00:29:22 ID:4iz+U/ei
>>39
春に発売されたMissウエディングみたいな感じかな?
あれは確かに「いちせん」の「ゆうちゃんand綾子」っぽいw
42 ◆ChdC8VZqyE :2010/08/16(月) 14:57:42 ID:rsIbT1G2
貧乏神です
ちょっと疫病神が逝去したもんで、更新遅れます
ふだんからゆっくりで、1スレも終わってないのにすみません

このスレの住民は、普段から部屋を片付けておくんだぞ!
43名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 15:08:05 ID:xKsKog5X
最近フミちゃんと藍子がいい感じ。ゲゲとよっちゃんに負けるなw
藍子はあんなに可愛いんだから男子は密かに好きだと思ってるだろうね
44名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 16:07:41 ID:X+K1lvLk
>>42
貧乏神さんお疲れ様です。部屋片付けます…。

小学生男児は好きな子をいじめたりからかったりしちゃうから、実は藍子を気にしてる子もいるんでしょうな。
45名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 20:21:33 ID:cJq7NH4Z
>>42
だんだん
掃除がんばります

相変わらずドラマはいい感じだけど
年齢上がって萌えポイント減ったかなー
さびしいことよ
46名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 21:54:54 ID:owCioGYy
ああ〜、そうか。
自分もあの雑誌見て、イイんだが何か違うと思っていた。
>>40>>41の言うとおり、ゲゲ布美ではなく
ゆうちゃん綾子に雰囲気近かったんだ。
気づかせてくれてだんだん。

最近はめっきり年とったからね〜。
実際、今ふたりって何歳?
ゲゲは50いってる?
実生活で50と40の夫婦って、夜の営業あるの?
47名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 22:01:03 ID:58iYzcH6
夫婦仲が良ければ普通にあるでしょう
でも両親同居で子供が隣の部屋
仕事が忙しく締切で徹夜続きとなると大変そうだなあ
48名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 22:16:28 ID:cJq7NH4Z
>>46
現在放送中の設定年齢はゲゲ50、フミちゃん40ですね。

夜の営業は…う〜ん人それぞれだからね。
ある夫婦はあるだろうし、無い夫婦は無いだろうし…
気持ちしだいかな。
49名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 22:24:58 ID:iOx95jo1
>>34
フハーッ
文学の世界ですね!
ふみえさんの思いだけでなくて、表現のポイントポイントが
色っぽかったです。そして想像させられる先生の狂乱ぶりがw
ふみえさんだからこそ熱く焼きたくなってしまうのでしょう・・

>>42
お疲れ様です。
まだ暑いので体には気をつけてごしない
50名無しさん@ピンキー:2010/08/17(火) 00:55:31 ID:6ES59yH9
土人の踊りが再現出来るハートと体力があるんだったら無問題と思われるなあ
51名無しさん@ピンキー:2010/08/17(火) 06:34:28 ID:V7DSOma3
>>48
そうか・・・もう、そんな年か
2人とも見た目が若いから気づかなかった

ツイッターやってる漫画家さんでゲゲゲの同人誌出してるけど、
ほぼギャグ系とドラマの感想みたいだね

ついにゲゲフミ萌え本が出たのか!と思ってしまったぜw
52名無しさん@ピンキー:2010/08/17(火) 22:35:12 ID:6ES59yH9
うう
新作ほしい
53名無しさん@ピンキー:2010/08/17(火) 23:15:11 ID:d6Us/YcG
昭和37年1月30日。今日は初めての結婚記念日。

茂が家を出た後、掃除を終え、買い物から帰ってきた布美枝は早速
夕飯作りに取りかかった。今日は、新聞で見つけた新しい料理に
挑戦する予定だった。
「本当は、もっとお肉を多くしたいとこだけど…」
独り言を言って、大量の玉ねぎを刻み始めた。ひき肉の代わりに、
玉ねぎとパンくずでボリュームを出す作戦だ。

あとは煮込むだけのロールキャベツ。
火を点けて鍋にフタをすると、一息ついて、窓から外を眺めた。

結婚して一年。振り返ってみれば、あっという間の一年だった。
実家にいた頃よりもずっと濃い時間だった気がする。
「あの人の40年生きた内の1年、かあ…」十歳年上の夫を想った。
40分の1というとほんの一時に感じた。
(私、あの人の人生の一部になれとるんだろか)
思わずそんな事を考えてしまうのは、亭主に惚れた女房の宿命か。

家事をする人間がいなかったら茂は多少は困るだろうが、
いないならいないで一人でなんとかするだろうとも思う。
漫画のアシスタントもしているが、所詮は素人の仕事だということも
わかっている。布美枝は、ほんのり切ない気持ちになった。

旦那様は優しく、毎日は穏やかなのに。

茂にとって必要な女房になりたい、いなくてはならない存在で
ありたいと望んでしまうのは、欲張りだろうか。


カタタタタッ、と鍋の中の蒸気がフタを持ち上げた音で布美枝は我に返った。

「『40年、50年と一緒に生きた果てに、これで良かったと思えたら
それでええんだ』」結婚式前夜の源兵衛の言葉を復唱した。
まだまだ結婚生活は先が長い。そのうちの一年を終えたぐらいで、
焦ってどうする。
「いつまでも新婚気分でいけんな、うんっ」
自分を叱咤し、目の前のロールキャベツの味見に集中した。
54ロールキャベツ 2:2010/08/17(火) 23:16:43 ID:d6Us/YcG
その夜、茂は遅くに帰ってきた。倒れた深沢に病院まで付き添って
色々時間をくったせいで、先ほどおでんをつまんでいたのに空腹だった。

布美枝がよく煮込んだロールキャベツを皿によそう。
茂の目の前に出されたのは、見た事がないものだった。

「ロールキャベツです。今日初めて作ってみたんで、うまく出来たか
ちょっこし心配なんですけど…」
「ハイカラな料理だな」
食欲をそそるコンソメの匂いを漂わせるロールキャベツに、茂は大きく
かぶりついた。

「うん、美味い」ほおばりながら感想を述べた。
「そげですか?良かった」
好き嫌いのない茂だが、はっきり褒めてくれる事は少ない。
布美枝は嬉しくなって、他の料理も張り切って器に盛り付けた。
「これ、またたまに作ってくれ」
淡々と茂が言った。
「……はいっ!」美味しい、と二度言われた気がして、心の中で
両のこぶしを握った。


食べながら、頬を紅潮させて笑顔になる布美枝が視界に入って
茂もこっそり口元に笑みを浮かべた。
喜ばせる為に褒めた訳ではない。だが、自分の言葉にこうも素直な
反応を見せる女房を、可愛いと思った。
55ロールキャベツ 3:2010/08/17(火) 23:19:33 ID:d6Us/YcG
茂の後に布美枝が風呂から上がって、二人の布団を敷いている間、
茂は外の雪を眺めていた。当初布美枝が出窓だと期待していた所で、
目の前には墓場が広がって、ある意味で絶景だ。

布美枝も茂の隣に並んで、舞い散る雪を眺めているうちに、
結婚式の夜の記憶が蘇ってきた。

「一年前も、こげな風に雪が降っとりました」
「一年前?」
「境港の実家で、あなたと外を眺めてた時です」
「雪なんて降っとったか?」茂が首をかしげた。
「降っとりましたよ!あなたは先に眠っちょったけん、覚えとらんですけど」
布美枝はふふっと笑った。そんな妻を茂は横目で見た。

一年前までは存在すら知らずにいた女。
布美枝が自分の生活にもたらしたものを思い起こしてみた。

温かい食事、清潔なシャツ、掃除が行き届いた部屋、お帰りなさいと
迎えてくれる声、生姜の湿布、机に飾られた野の花、時々口ずさむ
故郷の唄…そんなものは、なくとも平気なはずだった。

何より、鬼太郎の新刊を涙を流して喜んでくれる女性がいるとは
想像しなかった。自分が心血を注いで描いている漫画を、同じように
大事に思ってくれる女房が傍にいるのなら、結婚も思いの外いいものだ。

布美枝は今夜のロールキャベツと同じだ。それまでは知らなくとも
生きてこれたのに、一度その味を知ってしまったら知る前にはもう戻れない。

「どげしました?」
いつの間にか隣の布美枝を凝視していたらしい。
「あー、いや……」
今考えていた事を伝えたら、きっと妻は喜ぶのだろう。
その瞬間の顔を見たいと思わないでもなかったが、結局何も言わなかった。
口に出すと軽々しく、情緒に欠ける気がしたし、
(だいたい、こっぱずかしいでなーか)
茂はくしゃくしゃと髪を掻き、次の瞬間、布美枝の首の後ろに手をかけ
引き寄せて唇を奪った。どうせなら、言葉以外で伝えたい。


夫の口付けに、夜が始まる気配を感じた。
56ロールキャベツ 4:2010/08/17(火) 23:21:15 ID:d6Us/YcG
結婚記念日だし、〆切明けだし、全く期待していなかったと言ったら
嘘になる。唇を離した後、布団に行くか、とボソっと茂が言い
布美枝がうなずいた。

布団の中で二人は向かい合って座り、もう一度深い口付けをした。
その間も、茂の右手は布美枝の髪や首や肩を点検するように撫でていく。
浴衣越しにその手が胸の膨らみを捉えたとき、体をびくっと緊張させた
のがわかった。
(まだ慣れとらんのか…)
初心な女房に感心するやら呆れるやら。浴衣の帯をほどくと、
湯上がりで下着を着けていない裸の胸に簡単にたどり着いた。
左の乳房に吸い付くと、その先端が舌の上ですぐに硬くなった。
「ん……っ」

そのまま胸の中に顔を埋めようとしたがこの位置では体が遠い。
「俺の横に、足置けるか」
「え…あ、はい」
言われた通り、膝をたてて両足を開いた。既に浴衣は脱がされていたので
ショーツひとつでこの体勢は恥ずかしい。
ずるい、そっちは脱いでないのに…。心の中の抗議も虚しく
最後の砦も茂の手で外され、すぐに布美枝の入り口に指が侵入してきた。
57ロールキャベツ 5:2010/08/17(火) 23:23:00 ID:d6Us/YcG
その刺激に、思わず自分の体の後ろに両手を付いた。
やわやわと攻める指に反応して、分泌液が沁みでて内側が絡み付いてくる。
「指、食っとる…」
茂がつぶやいた。
「やだっ…!」恥ずかしくて死にそうだった。感じている表情を見られたくなくて
顔を背けると、茂がまるで心を読んだように、指を抜いて布美枝の顎を掴み
また唇に吸い付いた。

布美枝は意を決して頼んだ。
「あの…、あなたも、脱いでごしない…」
「おう」言われずとも、といった風で茂が身に付けている物を脱ぎ捨てた。

既に茂のものが、布美枝の中に入りたいと主張している。
布美枝の臀部を片手で掴み、、濡れそぼった入り口にそれをあてがうと
一気に貫いた。

「いやぁっ……っ!!」
体重を後ろ手で支えていられなくなって、後ろに倒れこんだ。
58ロールキャベツ 6:2010/08/17(火) 23:24:23 ID:d6Us/YcG
茂が前後に動くと、合わせて布美枝の胸も揺れた。
汗ばんだ白い乳房に長い髪が張り付いて、ひどく淫らだった。
「ぁあ…やだ、…はぁっ…」
甘やかな声が漏れた。


眉間に皺を寄せ、快感に耐えていた布美枝がふいにつぶっていた目を
開き、何かを訴えるように茂を見つめてきた。
「あ…な、た」
「…どげした」荒い息遣いで訊く。
「あなた……」
「……うん…」

布美枝は、ただ夫を呼んだ。今こうして結ばれているのに
なぜだか無性に切なくて、茂という存在を確認したかった。

布美枝の目が潤み、涙がひとすじこめかみに流れて―――――
その光景が茂の、男としての征服欲を煽った。
相手が泣く理由に考えを巡らせる余裕もない。骨盤を押さえつけ、
布美枝の中をかき回す。布美枝も無意識のうちに茂の腰に
脚を絡めていた。

離したくない。離れたくない。今この瞬間だけでなくお互いが同じく
想っていることを、二人とも知らないまま繋がっていた。

やがて、布美枝の奥が痙攣したのを合図に、茂は中に精を吐き出した。
59ロールキャベツ 7:2010/08/17(火) 23:26:43 ID:d6Us/YcG
営みが終わった後も、布団の中で二人は裸で身を寄せていた。

「…寝間着、着んといけませんね」
「あー…まあええだろ。このままでもぬくいけん……」
気だるげな声で答えると、茂は布美枝の背中に回した右腕に
かすかに力を込めた。


そのままとろとろと眠りにつくかという時、茂が思い出したように質問した。
「そういえばさっき、何言い掛けとったんだ?」
涙のわけが知りたかった。

「あ…ええと」
さっきとは、まさに営みの最中の事だ。あの時の感情を布美枝自身も
うまく説明できなくて、だから言った。
「……私も、忘れました」

茂の胸に頬をすり寄せる。このひとときはただ、夫に甘えていたかった。
茂もそれ以上は訊かずに、布美枝の髪を撫で、指ですいて玩んだ。


やがて寝息が聴こえ始めた部屋の外では、雪がしんしんと
降り積もってゆく。こうして、新婚時期から次の季節へと移り変わろうと
してゆく二人だった。


(終)
60名無しさん@ピンキー:2010/08/18(水) 00:05:31 ID:20TWSeGU
うまそうなロールキャベツ
ご馳走様でした
61名無しさん@ピンキー:2010/08/18(水) 09:05:48 ID:iGVpbt77
>>53
GJ〜!だんだん!
ふたり外の雪を眺めるとこがエエね!
狐の話のときと重なって情緒ある。
62名無しさん@ピンキー:2010/08/18(水) 16:16:35 ID:5sodimMD
だんだん!

ドラマの今の年齢だと激しいのは無理だとしても
戦争の話を聞いてフミちゃんが涙した後

「あなたが生きていて本当に良かった」
「そうだ、生きていたから今がある
となりにお母ちゃんがいて、、、」ぎゅーっと

みたいなお話もあるといいなぁ。

「ロールキャベツ3」のしげーさんの言葉にしなかった思いもふまえて。
63名無しさん@ピンキー:2010/08/18(水) 16:32:30 ID:vb7mly/f
>>53
だんだん!だんだん!!
自分、結婚記念日の回にかなり萌えて色々妄想してたから嬉しかった!
ゲゲ視点もフミちゃん視点も可愛くて萌え転がりましたww

そして、ある意味で絶景にワロタw
64名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 00:53:51 ID:iZ/2gNZQ
>>53
だんだん!
あぁ布美ちゃん可愛らしかー…
事後いちゃいちゃも良かった!

>>62
そげだねぇ
ただ二人が寄り添うだけでも良いよね〜
小ネタも待っちょります!
65名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 02:22:18 ID:Y5igNzam
時期は第7週「消えた紙芝居」の後くらいで、投下。
間借り人はお留守の、二人だけの夜。
66【素描】1/3:2010/08/19(木) 02:28:11 ID:Y5igNzam
 スケッチブックに向かう夫の姿があった。
 普段は横顔しか見られず、珍しい正面での姿勢に、“やっぱり男前だなぁ”と密かに惚気る。
「…、ら」
 布美枝は瞬き、じっと彼に見入り、やっと自身の状態に気付いた。
「ッあ」
「起きるな」
 穏やかに、だが鋭く制止され、ぴたりと固まる。
 でも、これでは。
「あ、な…た」
 煌々と蛍光灯に素肌を晒したまま、身動ぎもできずに夫を窺う。
「何、しとるん…ですか」
「おまえを描いちょる」
 暫し意識を失っていた妻の寝姿を前に、茂は淡々と鉛筆を走らせていた。
 無防備な裸体を明かりの下に露出していた時間に、布美枝は頬を熱くする。
「そげな…」
「もう十分もかからん。じっとしちょれ」
 爪の先から髪の毛一本に至るまで、躰の隅も奥も全て暴かれている相手とはいえ、改めて注視されると消え入りそうになる。
 恥ずかしくて堪らず、けれど動いたら叱られそうで、布美枝は肌を粟立たせた。
 敷布の皺に頬を寄せ、目線の遣り場に困り、瞼を閉じる。
 逐情の果てに投げ出されたままの両足が気になり、こっそり股を閉じかけては「姿勢を変えるな」と注意される。
 乱れた寝床に横たわり、緊張を解こうと深呼吸するたびに、剥き出しの乳房が上下した。
 ふっと、空気が揺れる。
 彼のまなざしに、嘗められる。
 架空の愛撫に、思わず溜め息が零れた。
 視界が塞いでいる分、相手の視線が余すところなく肌を這い回るのを感じる。
「…ッ」
 唇を震わせ、首をのけ反らせ、布美枝は恍惚となった。
 見えずともわかる。
 あの黒目がちの、夫の双眸は今、布美枝の全身を愛してくれている。
 先刻、胎内に放たれた残滓が、熱い記憶を呼び覚ます。
「――、は…ぁ」
 小さく呻き、うっとりと目を開けた。
67【素描】2/3:2010/08/19(木) 02:34:10 ID:Y5igNzam
 真横で紙面を滑る鉛筆の、掠れた音さえ堪らない。
 躰の芯がじくじくと疼く。
 下腹に乗せた片手が、独りでにぴくりと動いた。
 無表情だった夫の瞳が、すっと細められる。
 互いに淀んだ、濃厚な沈黙。
 布美枝の指が、秘部の淡い繁みにそろりと絡み、潤んだ花芯に届いても、今度は何も言われなかった。
 この男だけに許した、女の秘境に自ら触れ、確かめる。
 彼を受け入れた証が奥から溢れ、とろりと爪を濡らす。
 そっと挿し入れた指を不器用に蠢かし、布美枝は吐息でもって鳴いた。
 …違う。
 夫の愛撫は、こんなに生温くない。
 もっと丁寧で、執拗で、容赦がない。
 懸命に耐えても、いつも最後には懇願させられる。
 つい先程も、彼の肩にしがみつきながら、幾度も請うたのだ。
 律動の激しさに引き摺られ、しどけなく腰を揺らしつつ、名を呼ぶ狭間に必死にねだった。
 早く連れて行ってほしい。
 まだ終わってほしくない。
 甘美で切実な嘆願。
 自分の欲しいものがわからずに乱れる時も、彼は布美枝を手放さず、ちゃんと与えては、手に入れてくれる。
 ――きっと、今も。
 絵描きの本能と、雄の熱情が混在した目で凝視する、端正な顔を見つめる。
 秒数程度しか過ぎなかったろう。
 傍らに静かに置かれた画帳を横目に、布美枝は、適当に巻かれた夫の浴衣に腕を伸ばした。
 衿合わせをツツっとなぞり、そろそろと引き下ろす。
 妻の鎖骨に絡む黒髪を、節張った茂の手がそっと除けた。
 彼の眼鏡の縁に指を掛け、ゆっくりと引き抜く。
 布美枝の汗ばんだうなじが、大きく温かな掌で支えられ。
 ねっとりと、呼気と唾液を吸われた。
「ふ、ッ――」
 逞しい二の腕に包まれ、逸る下肢を押し付けられ、波打つ敷布の上に再び組み敷かれる。
 唇を漁られながら、夫の頬を撫で、髪をまさぐり、脚をうねらせた。
(あたしだけ、の)
 とびきり好(い)い人。
 やがて激流に飲まれ、甘やかな絶叫が喉を迸る瞬間を、粛々と待ち望んだ。
68【素描】3/4:2010/08/19(木) 02:40:52 ID:Y5igNzam
 何度目かの交歓を終え、毛布を腰に巻き付けて起き上がった布美枝は、出来た鉛筆画を見せてもらった。
 漠然と想像したイラストとも、子供の頃に描いたという絵とも違う。
 写実的かつ立体的に寝そべる、しなやかな裸女がそこにいる。
「こげな絵も、あなた、描くんですね」
「一反木綿に胸やら尻やら描き足すとでも思ったか」
 満足そうに仰臥する茂に、わざと呆れてみせた。
「うっかり居眠りしとる間(ま)に、油断も隙もありません」
「だら。裸婦画は立派な芸術だぞ。ルノワールもマネもセザンヌも描いちょるわ」
 「ゴヤ、ゴーギャン、ムンク、モディリアーニ…」と指折り数えている。
「ヌードデッサンくらい、昔もやっとった。ずっと画家になりたかったしな」
「え」
 まじまじ見入ると、飄々と茂は頷く。
「武蔵野の美術学校に通ってたことがあってな。神戸に行く前だ。
金がないけん、結局は中退して、画家は諦めた。食っていけんのではどうしようもない」
 引っ掛かった点を、恐る恐る尋ねる。
「他の人の裸を描くんですか、女の人の?」
「おお。モデルを呼んでな、そういう授業がある。船と女の絵は、ようけ描いたなぁ」
 その頃は吉祥寺のアパートに住んでおり、電車の女性客をスケッチすることもあったという。
「…」
 ぴん、と軽く額を弾かれた。
「なにを妬いちょお。絵の修業だ」
「だって」
「あのなぁ」
 のそりと身を起こした夫は、肘枕で欠伸する。
「女を描くたびに、いちいち発情したりせんわ」
 あんなに熱っぽい瞳に囚われて、こちらは翻弄されてばかりだというのに。
 暢気な物言いに膨れたくもなる。
 けれど。
「――」
 仰ぐ彼の微笑みが、あまりに優しげだったから。
 また、鼓動が高鳴る。
 これ以上、この人を好きになったら。
 胸が、割れてしまいそうだ。
 子供を宥めるみたいに、ぽんぽんと頭を撫でられる。
 …ずるい。
 やがて、ストンと眠りに落ちた夫の寝顔に苦笑し、隣に寄り添って目を閉じた。
69【素描】4/4:2010/08/19(木) 02:45:41 ID:Y5igNzam
 昔の夢を見た。
 深き森で遭遇した怪異と、不思議な少年。
 幼い布美枝を導いてくれた、絵の上手なあの少年が彼なのかどうか、これからもわからないままかもしれない。
 それでも。
 かつての自分に、「心配せんでええよ」と伝えたい。
 娘時分に描いた人生の青写真とも、朧げに夢想した憧れとも、現在の生活は隔たっているけれど。
 漸く巡り逢えた相手と暮らす日々が、どれほど色鮮やかで、温もりに満ちているか。
 縁談を断られ、周囲から取り残され、誰からも必要とされていないかのような遣り切れなさを潜り抜けて。
 長い長い御縁の糸を、ゆっくり辿って来ればいい。
 糸の先には、その片方を握って無邪気に笑う、唯一人の人がいる。

 了
70名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 02:50:00 ID:Y5igNzam
分割数を途中で変えてしまったのでタイトルの数字が変ですが、全4編です。
失礼しました。
71名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 03:44:30 ID:/uIrNWvB
>>66
ムハー!!GJすぐる!
こんな朝方に起きてきて良かった!
ゲゲには布美ちゃん裸婦画を描いてほしいとずっと思ってた!
実際の本番より描いてるときの描写のがエロい!
だんだん!そしてもっかい読む!
72名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 21:04:57 ID:2AYgp/Th
すっげええろいっす
そんで何度も読みたくなる
クオリティたけえー
73名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 22:34:33 ID:J9GNuzEz
>>66
うぉぉぉお!!だんだん!
凄く凄くザラッときました!!!
二人のエロさパネェwww
そしてラストのまとめ方も素晴らしいです!
74名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 22:45:48 ID:zXivCTGs
>>66
GJ
雰囲気ある文章だわ〜
昭和の香りがしてエロい
75名無しさん@ピンキー:2010/08/20(金) 02:31:10 ID:Qr8ll1Ln
>>62にヒントを得て書いてみました。
大作のあとに投下しづらいけど、時期のがすと闇になりそうなんで…。
76デジャブ1:2010/08/20(金) 02:32:28 ID:Qr8ll1Ln
「深大寺、商店街、喫茶店…。駅まで行きましたけどいません、どこにも。もう…先生はほんっとに…」
夕暮れが近づいた頃。
ずいぶん前にふらふらと出ていった茂を、
探しに行っていた菅井が戻ってきて、口惜しげに布美枝に報告した。

その間にもリンリン鳴る電話に幸夫が対応し、他のアシスタントはあくせくと仕事をしている。
夕飯の時間もすぐだと言うのに…。

「…おとうちゃんどこ行ったんだろうね」
本気で訊ねたわけではない。
居間で遊ぶ二人の娘に、ただ呟いただけだったのだが、意外な返事が返ってきた。
「喜子、知ってるよ」
「え?」
「でもおとうちゃんと秘密にしてるから言わな〜い」
「よっちゃん」
藍子がたしなめる。
「おとうちゃん、迷子になってるかもよ」
「え〜」
姉の言葉に少し不安になった喜子は、布美枝に「秘密の場所」を教えてくれた。

家からほんの5分ほどの場所に、公園があった。
二人の娘がよく遊んだ小さな公園。
あまりに小さいので、年長の喜子ももう卒業したほどの遊び場に、
タイヤを組んで山状に盛り上げた遊具があった。その下の土管の中に…。

「…いたぁ…」

探し人が居た。
大きな図体を折り曲げて、スケッチブックを片手に、すやすやと眠っている。

布美枝が四つん這いで上半身を中に入れると、中はひんやりとして心地良い。
夏の日差しが土管の中には届かず、絶好の避暑地というわけだ。

「おとうちゃん」
軽く揺さぶってみても、寝坊介が起きるはずもない。
はあ、と軽くため息をついて、少しその顔を愛でる。
白いものが髪にまじってきたけれど、まだまだ男ぶりは下がっていない、
そう思うのは惚れた女房の贔屓目だろうか。

疲れとるんだな…。しばしの戦士の休息に、ふっと目を細めた。
77デジャブ2:2010/08/20(金) 02:33:19 ID:Qr8ll1Ln
『敗走記』の練り直しを始めた茂が、今までになく苦悩する姿がこの数日続いていた。
夏が来るたびに強く思い出すのだろう、あの戦地での壮絶な体験を、
この身ひとつで乗り越えてきたのだと思うと涙が溢れる。
万にひとつの可能性で、左腕と引き換えに掴んで地獄から戻ってきた「命」が、
自分という女のもとで息づいていてくれている今このときが、心から嬉しかった。

柔く、接吻。
本当に触れるだけの。

急いで離れて様子を伺ったが、まだ眠っているようだった。
ほっと息を吐いて、もう一度。
今度はもう少し、口づけに近く。そして永く。

すると、向こうから反応がある。
食むように絡めてくる唇。

「…おとうちゃん…起きとったね…」
「ばれたか」

いつから?と訊くより先に、茂の右腕が布美枝の顎を捉えた。
「ん…」
甘い口づけの繰り返し。
永遠に続いて欲しいと思った。

「…おかあちゃ〜ん」
「しげぇ〜さ〜…」

遠くから、二人を呼ぶ藍子と絹代の声がした。

「おお、捜索隊が増員されとるぞ」
「ふふっ、そげですね」
「喜子のやつ、喋ったな、秘密の場所」
「叱らんでね」
「新基地を開拓せねばならん」

スケッチブックを抱えた少年のような茂の背中に、
少女の頃に体験した不思議な時間の、デジャヴを感じた。

おわり
78名無しさん@ピンキー:2010/08/20(金) 08:19:43 ID:f++hPh0Q
>66神!
素晴らしい作品だんだん!
雰囲気があって、らしさもあってエロくていい!
またぜひお願いします
79名無しさん@ピンキー:2010/08/20(金) 17:19:17 ID:kibNNbVX
GJ!

しげぇさんが使いそうな言葉の完璧なセレクト具合がたまりません。
>捜索隊の増員
80名無しさん@ピンキー:2010/08/20(金) 20:26:37 ID:+FD06aXh
今ぴったんこカンカン見たけど、リアル水木夫妻がカワイすぐる!!!!!!!!!
ムッハー!!!!!!!!!!!!!!

『ヌノエ(フミエ)のゲゲゲの女房毎週放送』
ていう直筆の貼紙を事務所のそこら中に貼ってるて!!!!!!!!!
萌ゆる!!!!!!!!!

しかもムカイリ出てるし
81名無しさん@ピンキー:2010/08/20(金) 20:43:09 ID:+MYaiIf6
>>76
いいなあ
ほんとうらやましい夫婦だな
82名無しさん@ピンキー:2010/08/20(金) 23:56:08 ID:GlVMWEtb
>>76GJ
年を重ねた感じのいちゃいちゃですな
あと、イカルと藍子に見つからなくて良かった
83名無しさん@ピンキー:2010/08/21(土) 10:52:37 ID:lRVpCmFD
>>76
GJ!土管の中のゲゲと2人のイチャイチャが良いなw

昨日のクランクアップのニュースを見て、
あと1ヶ月でゲゲフミとお別れなんだと実感した。
10月からどげしよー・・・orz
84名無しさん@ピンキー:2010/08/21(土) 11:19:38 ID:kgou3adr
来週は何かとウツ展開みたいだな
唯一の救いは、布団で寝てたっぽいゲゲと布美ちゃんの
イチャコラあ〜ん?でなんか食ってたとこ?

ゲゲはパジャマぽかったけど、
布美ちゃんも今はパジャマなのかな。
浴衣のがエロっぽくていいのに。
85名無しさん@ピンキー:2010/08/21(土) 11:25:26 ID:lRVpCmFD
>>84
予告よく見るとフミちゃんもパジャマ着てるよ
浴衣の方がエロくて良かったの同意だ
86名無しさん@ピンキー:2010/08/22(日) 01:38:15 ID:ztJDiAbR
>>85
布美ちゃんパジャマあった。だんだん。
てか、一瞬過ぎて確信持てんけど、
あれは飯田4姉妹でないの?
ということは、前スレであった4姉妹猥談クルー?!
87名無しさん@ピンキー:2010/08/22(日) 15:01:15 ID:lssFHvFy
公式の山梨ロケ
ゲゲの「布美枝のパンツ姿って初めてじゃない?」に軽く萌えた
88名無しさん@ピンキー:2010/08/22(日) 23:41:39 ID:/eIn3Vsg
完璧に向井口調だったなwだが萌えた
89名無しさん@ピンキー:2010/08/23(月) 09:25:45 ID:qkz6mdi4
月曜日にしてウツだ。
ドラマだし、どうせ金・土で回収されるんだろうけど、
舌打ちとかされると、もうね…。

山梨ロケの写真充実しててエエね。
今思うとあの小屋での1日をたった1話で終了させたのは
もったいないよな。
ロウソクとか、山小屋とか、家族(夜は夫婦)の談笑とか
せめて2話分くらいはかけてほしいシチュエーションだった。
まあ、夜の夫婦はせいぜい星空の下で語る程度しか無理だろうけど。
(その後はここで補完させてもらう。さりげに期待)
90名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 00:34:46 ID:T53bRVtv
鬱展開の後には、夫婦のイチャイチャ・家族のほのぼのが待っているはずだ
91名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 02:14:05 ID:UWKXXpWb
前スレの後半でもりあがった?コスプレネタ、
メイド布美ちゃんは自分にはどうしても無理wだったので
ゲゲシャツ1枚でなんとかやってみた。
服が少ない前提だから、設定は貧乏時代になる。
92雨のせいで1:2010/08/24(火) 02:16:20 ID:UWKXXpWb
6月の雨はもう1週間も降ったり止んだりを繰り返し
じめじめした湿気は、おんぼろの村井家をじっとりと包み込んでいた。
柱から壁から箪笥まで、家の隅々が水を含んでどす黒く見える。

原稿を届けた先でまた雨に足止めをくっていた茂が、
ようやく止んだその合間をぬって急いで家に辿りつくと、
見事なまでに家の中は、洗濯物の展覧会場と化していた。
吊るされた服と服の隙間から、ちらりと覗く布美枝の下着を斜め下方向から確認していると
「…おかえりなさい…」
控えめな声で、仕事部屋の襖の向こうから布美枝が顔だけを覗かせた。

慌てて背筋を伸ばして「おう」と胸をはってみたが、
布美枝は顔を赤くして飾られた洗濯物の数々に目を泳がせているだけで、
一向にこちらに出てこようとしないでいる。
いつもなら頼まなくてもお茶を淹れてくれたり、出先であったことなどをあれこれ問いかけてくるのに、
今日に限って何事だろうかと、茂は訝しがった。

「どげした?」
「…ちょっこし…向こうに行っとってもらってええですか?」
「は?」
仮にも一仕事終えて原稿料ももらってきた夫に、向こうへ行けとは随分な言い草である。
茂はむっとして布美枝に向き直ると、じりじりと近づいていった。
「何かあるのか?」
「や…あの…」
おどおどして布美枝は襖の向こうに隠れようとする。
不審と不満を抱いた茂は、思い切り音を立ててその襖を開いた。

「……え?」
93雨のせいで2:2010/08/24(火) 02:16:57 ID:UWKXXpWb
そこに立っていた布美枝の姿に、呆然とする。
それもそのはず、いつもならブラウスにスカートといういでたちの布美枝が、
今はグレーのシャツ1枚でもじもじと佇んでいたのだ。
しかもどこかで見たことがあると思えば自分のシャツではないか。

男性でも大柄な部類の茂のシャツは、
電信柱の妙名に違わぬ布美枝の身体を、すっぽりと包んでくれてなお余ってはいるものの、
それでも下はせいぜい股下くらいまでしか隠すことができずにおり、
布美枝が手で隠さなければ、裾からちらちらと白い下着が見え隠れしてしまう。

「な…え?ど…」
動揺して言葉が出てこない。慌てて布美枝に背を向けた。
その背中から、申し訳なさそうな声がする。

「す、すんません…部屋の掃除をしとったら、服に墨をこぼしてしまって…。
 あ!原稿は汚しとりません。床も机も拭きましたけん。…けど」
はあっとひとつため息をついて。
「乾いとる服がなくて…貴方のをちょっこし借りてしまいました…」
「そ、そげか…」
「ちょっこしだけです!アイロンかけて乾かしたら、すぐに脱ぎますけん」
「別に、怒っとるわけでは…」

怒っているわけではない、墨をこぼしたことも。自分の服を着ていることも。
けれど、その格好はいただけない。
特にこれまで締め切りに追われていて、しばらく我慢を強いられてきた下半身にとっては。
蒸し暑い部屋で、さらに布美枝の格好に蒸された茂の顔から、玉のように汗が噴きだした。

身体に悪い。
茂はそう直感して、布美枝を居間へ追いやると
「早よアイロンあてろ」言うなり後ろ手に襖を閉めて仕事部屋へ逃げ込んだ。
ぱたぱたと団扇で扇いでみても、だらだらと汗が流れてくる。

背は高くとも華奢な布美枝の身体には、茂のシャツはミスマッチで滑稽だった。
が、いつもは硬い自分の身体にまとわれている服が、
今日は柔らかな布美枝の肌を包んでいると思うと
その柔肌の感触が思い起こされて、じわじわ股の間が落ち着かなくなる。
94雨のせいで3:2010/08/24(火) 02:17:51 ID:UWKXXpWb
今夜あたり、吐き出させてもらわねばもたん…。
ひとつため息をついてから、机に向かって次回作の構想を練りだした。
しかしその構想がやがて妄想へと変わっていき、布美枝の淫らな姿ばかりが頭を充満していく。
(いけん…)
ぶんぶんと頭を振り、茂が自分の助平ぶりにがっくりと肩を落とした、次の瞬間。

布美枝が断りもせずに勢いよく襖を開けて仕事部屋に飛び込んできた。
ぎょっとして振り返ると、一生懸命口だけをぱくぱくさせて何かを訴えてくる。
立ち上がって襖の向こうを見やると、ちょうど中森が二階から降りてきたところだった。
なるほど確かに布美枝にしてみれば、
このあられもない姿を中森に見られるのだけは絶対に避けたかったことだろう。

中森は茂に気づいて「どうも」と、頭を下げた。
襖の向こうで、身を縮めている布美枝には気づかない。
「出版社まわりをしてきます」
「そげですか。雨が降るかも知れん。そこのボロ傘でもよければ持っていって下さい」
「これはどうも」
茂の親切に、中森はもう一度頭を下げると、傘を持って出ていった。
はあーっと深くため息をついて、布美枝はずるずるとしゃがみこんだ。
その裾から、白いショーツと丸い尻が覗く。

「…アイロンは?」
「あっ!すんません、すぐにっ!」

頭上からの茂の声に、布美枝ははっとして慌てて居間に戻ろうとした。
しかしその手を、無意識のうちに茂の右手が捕まえていた。

「待てん」
「え?」

このまま机に向かっていても、構想など一向にまとまる気配がない。
まして描きかけの原稿にペンを入れるにも集中できそうにない。
本を読もうにも、昼寝をしようにも、全ては布美枝に支配される。
それならいっそ…。
95雨のせいで4:2010/08/24(火) 02:18:24 ID:UWKXXpWb
掴んだ手首をぐいと引き寄せ、半ば強引に唇を奪った。
「…んっ…」
驚いた布美枝が茂の胸を押して引き離そうとするが、
茂の唇は布美枝のそれに吸い付いたままかたくなに離れようとはせず、
さらに右手を布美枝の細い背中に回して、ぎゅっと自分の胸へ押し付けた。

(…ん?)

いつもと違う感覚に、唇を合わせたまま茂は考えた。
布美枝の背中をわさわさと探ってみて、その違和感に確信を得る。
いつもその胸を支えているモノがない。
やっと唇を離すと、まじまじと布美枝の胸元を見下ろした。
「着けてない…のか」
布美枝が素肌でシャツを羽織っていたことに、今さらながら気づいた。

ようやく離れてくれた隙に、布美枝はぐいぐいと茂の身体を自分から引き離そうとする。
「い、いけんです、…こげに明るいのに…」

その初心な様子が、愛しくもあったが、歯がゆくも感じた。
もう結婚して半年近く経ち、互いの距離もずいぶん縮まってきていたし、
何度か熱い夜を過ごしてきたりもしていた。
けれど、昼食も食べていないうちからコトに及ぶのは、
貞淑な性格の布美枝にはいささか抵抗があったのだろう。
「いけん、いけん」と念仏でも唱えるように茂を押し戻す。

「…昼とか夜とかに拘らんでもええだろ」
「拘ります…」
「何で」
「…何でって…」
「…どっちにしても、あんたにその格好でウロウロされたら落ち着かん」
「す、すぐにアイロンあてます…けんっ…あっ…」

必死に抵抗する布美枝を、茂は無理矢理押し倒した。
再び口づけようとすると、「やっ…」顔を背ける。
「あーもうっ!」
茂が声を荒げたので、布美枝はびくっとして肩をすくめた。
まるで子羊のように、おびえた目で茂を見上げる。
96雨のせいで5:2010/08/24(火) 02:18:57 ID:UWKXXpWb
布美枝に怒ったのではない。
自身の欲深さと節操のなさにいらだったのだ。
血気さかんな十代や二十代の青二才ならまだしも、
四十路に突入した男が、女房の色気だった姿に興奮して迫るなど。
つくづく痛感させられたのだ。信じられないくらいに、布美枝に堕ちている。
…そんな自分に、焦れる。
それでも止まらないこの欲情は、その身体で受け止めてもらうよりほかなかった。

「今すぐあんたが欲しい。要するに…それだけだ」
「っ…」

茂の一大告白とでも言うべき、強烈な圧し言葉に、
布美枝の顔はみるみる真っ赤になって、一気にしゅんとなった。
抵抗しなくなった布美枝の様子をしばらく伺ってから、
今度は強引にではなく、優しく口づける。
布美枝もそれをゆっくりと受け止めてくれた。
唇をずらして舌を絡めても、それに応じて鼻を鳴らす。

脱がせるのが自分の服とくれば、ボタンをはずすのも慣れたもので、
するすると解くと、はだけたシャツの胸元から柔らかな乳房がダイレクトに現れる。
欲に駆り立てられるままに、それに吸い付いた。
シャツの上から胸の先端をいじると、形が浮き上がるほどに硬く尖る。

「っ…、はあ…」
反応する布美枝の喉から、甘い喘ぎが洩れ始めた。
自分の服に包まれて、自分の腕に翻弄される布美枝を見下ろすと、ぞくぞくするほど淫らで美しい。
舌で甘い実を吸いながら、右手を秘所へと伸ばすと、驚くほどぐっしょりと濡れていた。

布美枝もさほど自分と考えていることは違わないのだろうか…。
しばらく間が空いていた営みに、身体は素直に反応してくれているようだ。
それでもこんな真昼間から「致す」のは予想だにしなかったかも知れないが。
97雨のせいで6:2010/08/24(火) 02:19:38 ID:UWKXXpWb
節ばった中指を布美枝の中へ潜りこませ、ちょうど指の関節が曲がるあたりで中をまさぐる。
反応した内側から、とろとろと蕩けた液が溢れ出して茂の手を濡らした。
「ああっ……やっ…」
湿度の上がった室内に、布美枝の甘い声が響く。

はっと我れにかえった布美枝が、慌てて手の甲で口を塞いだ。
「…今日は気にせんでええ」
「だ…って…」
ちらりと視線が天井へ向いた。
「…さっき出ていったでないか」
「あ…」
にやりと笑って、茂はまた指で布美枝の中を刺激した。
「あっ…もぅっ…やっ…んんっ…」

縋り付いてきた布美枝が、図らずも茂の耳元で喘ぐ。
その声と息遣いに思わず奮い立たされ、茂は布美枝のショーツを脱がせると
自分のズボンにも手をかけ、昂ぶる分身を勢いそのまま布美枝の中へ挿入した。
「っ…あ!」
いまこの部屋とまるで同じように、布美枝の内側は湿った熱が充満していた。
熱い侵入者に、肉襞が大いに反応してぎゅうぎゅうと押し返してくる。

「あぁっ、あっ、んっ、あんっ、あ…っ」
茂の腰が突き上げる律動に、布美枝の淫らな声が同調する。
右肩に白い左足を抱えて突けば、最奥まで分身が到達する。
「っ…は…あっ…!」
長い髪と、茂のシャツが、汗ばんだ布美枝の身体にまとわりついていて
自分の腕の中で悶える何とも言えない淫靡な布美枝を、渾身の力で貫いた。
98雨のせいで7:2010/08/24(火) 02:20:07 ID:UWKXXpWb
「あっ…なた…あ…っ」
苦しそうな顔と声に、自分の欲に布美枝を付き合わせた罪悪感が沸き起こってきたが、
一方でもう、どうすることもできない奮えが茂を突き動かしてしまう。
潤んだ瞳が何かを懇願するように訴えかけるが、それに答えることもままならない。
やがて艶やかな布美枝の声が、ふと途絶えたのに気づいてそちらを見ると
荒い息遣いでぐったりと、ただもう茂の動きに身を任せているだけだった。
何度目かの激しい打ち込みののち、ぐっと布美枝の中の襞に刺激されて、
茂は蜜の溢れる坩の中へ、白濁の欲を全て吐き出した。

息を整えている間、閉じた瞳から零れた布美枝の涙に、茂はがっくりと肩を落とした。
まるで強姦のようだったかもしれない。脅して、犯したような…。
果てた分身を布美枝の中から引きずり出して、いたたまれない思いでその涙に手を伸ばす。

ようやく色を取り戻した瞳が、茂の方を見ると
「もぅ…」
ゆっくり起き上がりながら、すっかり汗で身体に張り付いた互いのシャツを見やって、
唇を尖らせて抗議した。
「洗濯物が…また増えたじゃないですか…」
その口調に、いささかも茂を責める風が見えず、いくぶんほっとする。
しかし…。

「お昼ごはんは…ちょっこしおあずけです…」
助平な夫に、ささやかな罰がくだされた。


おわり

99名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 12:57:48 ID:rzgCi6Qe
GJ!
梅雨の雰囲気が出てていい!!
こんなふみちゃんならば茂が肉欲に堕ちても致し方かたないw
素晴らしいSSをだんだん〜
100名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 17:38:11 ID:UfD6oHoB
中森さんにもGJあげてーw
ドSしげぇさんはたまらんです、だんだん。
101名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 19:53:24 ID:mFszdO9G
>>92
大作だんだん!
恥ずかしがるフミちゃんがカワエエ!
ムラムラしてるゲゲの描写も良かったですw
102名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 20:22:49 ID:8pc/Q6lG
> 「待てん」

キャー
103名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 22:59:49 ID:mjwzQBcm
>>92
GJ
この時期の、恥ずかしがってるふみえとやや強引な茂がいいなー
104名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 01:28:24 ID:gJfCxXE5
>>92
だんだん!うわぁ〜だんだん!
夢にまで見た布美ちゃんシャツ一枚姿…!
感動した!あんさん神様や…!(´;ω;`)

本放送が辛くて見返せない今、貧乏の頃のばかり見てる…
あの頃は良かったなぁ…って、布美ちゃんと同じ事言ってるよ
早く週末になって、安心させて欲しい

それまでは此処で補完させて頂く所存(`・ω・´)

105三本の腕1:2010/08/25(水) 15:46:35 ID:LT2dTncU
「おい。ラーメン2つ、出前たのんでくれ。」
ある日の昼前、台所にやってきた茂がそう頼んだ。
「お客さんですか?」
「・・・倉田が来とる。ああ、仕事のことだけん、お前は来るな。」
「・・・はい。」

 最近の茂はいつもこうだった。仕事場へは来るな、口を出すな、
引っこんどれ、結婚以来、茂を支えてくることに生きがいを見出して
来たフミエは、疎外感を感じずにはいられなかった。
(倉田さんなら、私も会いたいのに・・・。)
倉田は、プロダクション設立当初のアシスタントで、今はプロの漫画家
として自立していた。
(あの頃は、アシスタントさん達とももっと関わりがあって、上京したて
 の時は下宿やお布団の面倒みたり、お昼にお味噌汁つくったり・・・。
 家族みたいだったのに・・・。)
仕事場への立ち入りを禁じられ、なじみのないアシスタント達は、いつも
〆切りと超過労働に追われ、殺気だっていて、声もかけにくかった。

 それでもお茶を入れて丼を下げに行くと、ネーム室で茂と談笑していた
倉田が、パッと立ち上がった。
「奥さん・・・!ごぶさたしとります。」
「倉田さん・・・お元気そうで、よかった。」
「今日は、俺の初めての単行本が出ましたんで、先生と奥さんに真っ先に
 お目にかけよう思うて。」
倉田はうれしそうにそう言った。茂は「仕事のことだから来るな。」と
言っていたが、別に仕事の話ではないではないか。
フミエは、またしても茂につまはじきにされた気がして、笑顔もひきつった。
106三本の腕2:2010/08/25(水) 15:47:06 ID:LT2dTncU
 倉田が帰った後、フミエは夕食の買い物に出かけた。
「奥さん!」
喫茶「再開」の前を通りかかった時、出て来た倉田に声をかけられた。
「倉田さん・・・。まだお帰りじゃなかったんですか?」
「つい懐かしゅうて・・・。コーヒー飲んどったんですわ。さっきはたいして
 話もできなんださかい、駅まで送ってくれませんか?」
27歳にもなるのに、倉田は相変わらず弟のようにフミエに甘えてみせた。

「奥さんとこないして、商店街歩くのん、初めて水木プロに来た日以来ですわ。
 あん時は、西も東もわからん俺のこと、えらいお世話になりました。」
「深沢さんの所で、偶然上京したばかりの倉田さんとお会いしたんでしたね。」
「・・・あの頃はよかったなあ。仕事はどんどん舞い込むし、ポッと出の俺に、
 先生は大事な場面をまかしてくれはって、尊敬する小峰さんはおるし、
 がぜんやる気が出て、バリバリ描いとった。」
「初めてウチに来て、座ったとたん描きはじめて、腱鞘炎になるほど
 描いとられましたよね。」
「給料もらえてプロの仕事が勉強できるだけでもありがたいのに、先生は
 作品の指導までしてくれはった・・・。奥さんも何くれと俺らの世話やいて
 くれはって。あの味噌汁の味、忘れられまへんわ。」
「・・・ほんとに、あの頃はよかったですね・・・。」
 思わずさびしそうにそう言って遠くを見つめていたフミエは、その顔を
倉田がじっとのぞきこむように見ているのに気づいてハッとした。

「・・・奥さん。なんぞ悩んではることでもあるんとちゃいますか?」
「え・・・そげなこと・・・。」
「菅井が言うとりました。近頃、先生と奥さん、ロクに口もきかへん、て。
 俺、信じられへんで・・・。ほんま言うたら、奥さんが買い物に来はるの、
 待っとったんですわ。」

 いつの間にか二人は、商店街のはずれの、人気のない祠の前まで来ていた。
フミエは多くを語らなかったが、倉田は事情通の菅井からいろいろ聞いている
らしく、最近の茂のフミエに対する仕打ちに憤っていた。
「奥さん、俺・・・。奥さんさえイヤやなかったら、俺のところに来て
 くれまへんか?俺、昔っから、奥さんのことが・・・好きで・・・好きで。
 でも、先生と奥さんの間に割り込んだりでけへんこと、わかっとって・・・。 
 好きで好きでしかたないけど、泣きのなみだで、あきらめたんや。
 こんな若造じゃ頼りないのんは、わかっとるけど、今のままじゃ、
 あんまり奥さんがかわいそうや。」
「倉田さん・・・。」
フミエは、若い倉田の燃え上がるような熱情に、圧倒されていた。
107三本の腕3:2010/08/25(水) 15:48:20 ID:LT2dTncU
 倉田がアシスタントをしていた頃、フミエに懸想しているということを、
茂から聞かされた。ひとまわりも歳の違う青年に恋されていると信じられる
ほど、フミエはうぬぼれてはいなかった。だが茂は確信しており、それでも
彼を許し、育てたいと言う。フミエは夫のため、前途ある倉田のため、
半信半疑ながら自重する決意をした。
 フミエが喜子を出産して退院するその日、なぜか迎えに来させられた倉田は、
赤子を抱くなり、タクシーの中で泣き出した。フミエが彼の気持ちを
確信したのは、やっとその時になってからだった。

 フミエにとって倉田は弟のような存在にほかならなかったが、彼の真摯な想いを
はぐらかすことはできなかった。フミエは正面から彼の想いに向き合った。
「倉田さん、ありがとう・・・。私のこと、そこまで・・・。誰かに、『好きだ。』
 って言ってもらうのって、本当に救われるわね。私、そんなことも忘れとった・・・。
 倉田さんの気持ち、あの頃、お父ちゃんにそう言われても、正直本気にできなかった。
 まさか、若い人がこげなおばさんを・・・ってね。でも、あの時よりもっと
 おばさんになっとるのに、そげな風に言うてくれるなんて・・・本当にありがとう。
 ・・・あのね、お父ちゃんが、たった一度だけ、『マンガをやめる』って言った
 ことがあるんですよ。藍子のミルク代にも事欠いて、私が風邪引いても
 ハナ紙買うお金もなかった。・・・よっぽど情けないと思うたんでしょうね。
『マンガやめて、ポスター描きにでもなるか。』って。私、『私の腕と合わせて
 三本あるけん、一緒にがんばらせて下さい。』って言ったの。
 私のこの腕は、その時お父ちゃんにあげたけん、もう離れることはできん。
 あの人は私の腕なんてもういらんかも知れないけど、それでもお父ちゃんの
 もんだけん・・・。私はどこへも行けないんです。」

 倉田はいたましそうにフミエの顔を見ながら話を聞いていたが、やがて自分を
納得させるかのように話し始めた。
「・・・俺らがここでアシスタントしてた頃が、今思えば俺の青春っちゅうか、
 会社も始まったばっかりで、ドラマ化にアニメ化、毎日が新鮮で笑いが絶えなくて、
 奥さんとそれを共有できとることがうれしかった。・・・そやけど、先生と奥さん
 には、それより前の、つらい時代を一緒に生き抜いた年月があったんやな。
 ・・・俺、奥さんの、先生に尽くして尽くして尽くしぬいとる姿を見て好きに
 なったんです。アホやな。そんな恋、つらいだけやのに・・・。」
「お父ちゃんが、倉田さんのこと『火のタマみたいな奴』言うとったけど、
 倉田さんは変わらんね。純粋で、一途で・・・。それが倉田さんのええところだけど、
 一歩間違えると、大きく道を踏み外すかもしれんって、心配しとった・・・。
 一回りも年上のおばさんなんかより、倉田さんにふさわしい相手をみつけて、
 早ことお母さんを安心させてあげてごしなさい。」
「俺、奥さんのこと、ずっと好きでおってもええですか?俺のところへ来いなんて
 ずうずうしいこと、もう言わへんけど・・・奥さんのこと、これからも心配しとっても、
 ええですか?」
「倉田さん・・・。だんだん・・・。」

倉田とはその祠で別れ、フミエは大急ぎで家路に着いた。
108三本の腕4:2010/08/25(水) 15:48:54 ID:LT2dTncU
倉田とはその祠で別れ、フミエは大急ぎで家路に着いた。

 その夜。昼間のこともあり、眠れなくて布団の上で輾転反側していたフミエの
ところに、茂がものも言わず入り込んできた。当然のように唇を奪い、身体を
まさぐって、自分の欲望を満たしにかかっってくる。
長年慣れ親しんだ身体は、こんな情緒のない交わりにも自然とうるみ、茂を
受け入れて勝手に喜びの声をあげはじめる。
疲れなんとかというやつか、昼間の冷淡さにもかかわらず、こうして求められる
ことは、珍しいことではなかった。
 だが、今夜の茂はちょっと違っていた。
乱暴ではないのに容赦のない責めはいつものことだが、いつになく執拗で、フミエは
声を漏らさぬよう必死でかみ殺していたにも関わらず、のどが嗄れるほど啼かされた。
「お願・・・い・・・。もう・・・終わら・・・せ・・・て。」
フミエの身体の弱いところを知り尽くしている茂に追いつめられ、内側から身体を
焦がすような快感にさいなまれて、哀願を繰り返すフミエの声はかすれ、茂の
劣情をますます煽り立てるだけだった。
 茂に翻弄され、混濁する意識の中で、フミエは今日の倉田とのことを思い出していた。
ひとりの男に、心から求められたことが、フミエの心を久しぶりに温めていた。
茂に抱かれながら、他の男のことを思い浮かべる自分を、(悪い女かもしれん・・・。)
と思いながら、フミエは近頃の茂の冷たさ、今夜の交わりの意地悪さに、すこしだけ
復讐できたような気もしていた。
109三本の腕5:2010/08/25(水) 15:49:25 ID:LT2dTncU
倉田とはその祠で別れ、フミエは大急ぎで家路に着いた。

 その夜。昼間のこともあり、眠れなくて布団の上で輾転反側していたフミエの
ところに、茂がものも言わず入り込んできた。当然のように唇を奪い、身体を
まさぐって、自分の欲望を満たしにかかっってくる。
長年慣れ親しんだ身体は、こんな情緒のない交わりにも自然とうるみ、茂を
受け入れて勝手に喜びの声をあげはじめる。
疲れなんとかというやつか、昼間の冷淡さにもかかわらず、こうして求められる
ことは、珍しいことではなかった。
 だが、今夜の茂はちょっと違っていた。
乱暴ではないのに容赦のない責めはいつものことだが、いつになく執拗で、フミエは
声を漏らさぬよう必死でかみ殺していたにも関わらず、のどが嗄れるほど啼かされた。
「お願・・・い・・・。もう・・・終わら・・・せ・・・て。」
フミエの身体の弱いところを知り尽くしている茂に追いつめられ、内側から身体を
焦がすような快感にさいなまれて、哀願を繰り返すフミエの声はかすれ、茂の
劣情をますます煽り立てるだけだった。
 茂に翻弄され、混濁する意識の中で、フミエは今日の倉田とのことを思い出していた。
ひとりの男に、心から求められたことが、フミエの心を久しぶりに温めていた。
茂に抱かれながら、他の男のことを思い浮かべる自分を、(悪い女かもしれん・・・。)
と思いながら、フミエは近頃の茂の冷たさ、今夜の交わりの意地悪さに、すこしだけ
復讐できたような気もしていた。
110三本の腕6:2010/08/25(水) 15:50:48 ID:LT2dTncU
 フミエをさんざんに蹂躙し、自分の存在をたっぷりときざみ込んで、ようやく
身体を離した茂は、また衣服を身に着け始めた。
「・・・まだ、お仕事なんですか・・・?」
けだるそうに問うフミエには答えず、立ち去りながらボソッとつぶやいた。
「倉田が来たからって、そわそわするんじゃない。・・・みっともない。」
「?・・・はい・・・。」
「お前はもう、おばさんなんだからな。」
「はい、はい・・・。」

(ほったらかしにしとった縄張りを荒らされそうになって、あわてて取り返しに来た
 ガキ大将みたい・・・。)
フミエはなんだかおかしくなった。
 甘だるい身体をなんとか起こそうとして、茂の放ったものが自分の内部を下りてくる
感触に、フミエはもう一度身を横たえた。茂が全力で所有権を主張する領土にでも
なった気分だった。
 宙空に、さっきまで茂に巻きついていた腕を伸ばしてみる。長い腕は、夜目にも白く
なまめかしく動き、フミエを妖しい気分にさせた。
この腕は、茂を抱きしめ、茂のために料理をし、茂の子供たちを抱き寄せる腕だ。
(・・・何があってもお父ちゃんから離れんけん・・・覚悟しとってごしなさいよ・・・。)
白く長い二本の腕は、今はもうそこにいない茂の幻影を抱きしめた
111名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 15:53:50 ID:LT2dTncU
うわ〜!書き込み失敗してしまいました。すみません…。
そのうえものすごい長文…orz。

倉田くんをダシに使って申し訳ないんですが、また嫉妬ばなしを書いてしまいました。
いちおう『火のタマの片思い』の続編になります。
無駄に長くてすみません…。

今日早くもラブラブ復活してましたが、月・火曜日の冷たい茂に萌えてしまう
私は変態でしょうか?
茂ヒドスの後には、必ずイチャイチャが待っているとわかっているのに、いちいち
萌えてしまうのはどうしてなんだぜ?
112名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 20:53:16 ID:eKmqxXoW
>>111
いやいや乙でした。やはり嫉妬ゲゲはよいですのう。倉田くんも出してもらえて嬉しいですよ。
冷たいドS状態でも、根本的に愛がある事はわかってるからいいよね。本当にいなくなるかと思ったら、ビビってあたふたしてたんだしw
113名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 21:27:09 ID:c9k1m4ge
>>111
だんだん!

今日ゲゲがやらしい空気作るからキスする気かと思って焦ったw
手がエロいよー
114名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 23:41:13 ID:dixLKD6p
>>111
いいよねえ冷たい茂
もっとひやひやでもいいのにうれしそうにおかゆなぞ食いおって

倉田くん良い出汁だしてますな
次回作もきたいsちょります
115名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 23:46:29 ID:81+J2hXw
>>111
だんだん!ドS嫉妬ゲゲはたまりませんねw

布団の上で「何考えてるかわかるか」とか言われたら…ねえ…w
ふみえが「私ったら、何も気付かんで><」とか言いながら顔近付けてきたらどうするよ、ゲゲ。
116名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 00:38:27 ID:6yLxpIST
>>111
GJ!
倉田と2人きりになったとき、ついに寝取られキター!?と思ったら、
やっぱり布美ちゃんはゲゲ一筋だったという。
縄張り荒らされてぶすっとしてるのがまた萌えるw
そんでもって、プチ悪女布美ちゃんもまた良し。

今日のシーンはマジここの住人向けだとオモ。
あのときのゲゲの目がエロい!

本スレで
「何考えてるかわかるか」
「三人目ですか」
ってのがあって噴いたw
117名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 23:25:55 ID:zKYOVjLj
ほんとに3人目できそうなムードだったな
家に両親やアシスタントがいなかったら家族が増えてたかも試練
118名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 00:36:33 ID:S3e3Zn5l
四姉妹猥談クルー?!
とか言っててゴメン、貴司…(泣)

でも肩ポンだけじゃなくて、
布美ちゃんにはゲゲにすがって泣いて欲しかった。
ゲゲにもぎゅってして欲しかったんだ…。
嗚呼、成仏してくれ、自分の妄想。
119名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 08:28:49 ID:MSDp+m4l
肩ポンでも萌えたぜ
120名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 14:36:15 ID:WIv4GO7O
規制がやっと解除された隙に…作家の皆さんいつも素晴らしい作品だんだん!
>>69のラスト数行素敵すぎ。何度読んでもじーんとしてしまう

TVnaviのインタビューで、茂と布美枝お互いにメッセージを送りあってて
ふみちゃんが「無理だろうけど一度でいいから茂さんに好きだと言ってほしかった」
茂が「キツイことばかり言ってるけど、本当は好きなんだよと言いたい」
って息ピッタリなコメントしているのに萌えた〜

121名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 17:16:38 ID:uwMbo4kv
なにその萌えコメントw
これからつらいシーンがあっても自分の脳内では
「本当は好きなんだ本当は好きなんだ」と言い聞かせることにするw
122名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 20:45:14 ID:2vKc+370
>>120
このスレ住人の期待を裏切らないゲゲのツンデレ、パネエw
本スレでも買ったっていう書き込みあったね
まだチェック出来てないが、NAVIもハイビジョンもSAPIOも気になるな・・・
自分のとこにも雑誌貧乏神がやってきそうだw
123名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 20:49:49 ID:NypPUktj
>>120
TVナビ買っちゃったw
お互いのコメントを知らずにこの呼応だったらすごいな〜

しかし、これ月刊誌だから
9/25の番組表も載ってるんだね…
ゲゲゲの女房[終]って…さびしすぎる(′;ω;`)
124名無しさん@ピンキー:2010/08/27(金) 21:30:20 ID:7ZnW9Q5Q
TVナビ、月刊ハイビジョン、SAPIO全部買いました。
もうすでに雑誌貧乏神がやってきておりますww

月刊誌はあらすじの最終週という表示を見るたびに
すごくさびしくなる…
125名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 20:15:16 ID:U2V5vARv
まあ、あんまりさびしいさびしい言ってもね…。
いつかは終わってしまうものだし。

でもたとえ放送は終わっても、妄想は終わらないんだぜ。
126名無しさん@ピンキー:2010/08/28(土) 20:40:26 ID:xviWpSzw
今飲み屋街で大きいシャツ1枚で客引きしてる姉ちゃん達見て、このスレ思い出したw
どんだけ、このスレ大好きなんだw自分
127名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 00:05:47 ID:kS1SrNGO
test
128名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 02:47:53 ID:FSdfEomS
>>125
誰がうまいこと言えとw

そして>>126はそれに誘われて行ったんだろうか
ぼったくりとかじゃないのかw
129名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 20:10:12 ID:QSKPzTk5
12年目の結婚記念日に2人旅、で投下。
長くなりました。
130【花と戦場】1/9:2010/08/29(日) 20:12:49 ID:QSKPzTk5
「我が娘ながら末恐ろしいな」
 乗り換えた列車の座席で、ぼそりと茂が零す。
「そげですか?」
 布美枝は隣で首を傾げた。
「がいなこと、こっそり準備しとったのは驚きましたけど」
「そのやり方だ。光男にスケジュール調整させて、義姉さんにリサーチ頼んで、とどめにイカルを担ぎ出して説得させるなんぞ、大した策士だ。
俺にそっくりだの、おまえに似とるだの言われてきたが、あの参謀ぶりはイカルの血を継いだのかもしれん。隔世遺伝だ」
 あれよあれよという内に段取りをつけられた当惑が落ち着いたのか、ぼんやりしつつも夫は饒舌だ。
 締切明けの寝ぼけ眼を、こしこしと擦っている。
 大の男がそんな稚い仕草も似合うのだから、やはり不思議な人だ。
「あの子なりに、気を遣ってくれたんですよ」
 その実、心配させてもいたのだろう。
 日々、激務に追われて多忙を極め、妻子と顔を合わせる機会さえ減っていた彼の消耗は、娘の目から見ても痛ましかったに違いない。
 遂には過労に倒れ、休養を余儀なくされたのは、数ヶ月前のことだ。
 回復してからも仕事に没頭しがちな身を案じる人々は、だから長女の発案にも賛同してくれたのだろう。
 「疲れを取るのも仕事の内」と休暇を捻出され、「偶には夫婦水入らずで」と計らわれ、「亭主の体調管理も女房の役目」とはっぱをかけられ、結婚記念日にかこつけて送り出された。
 突然の運びに戸惑ったのは布美枝も同じだが、ありがたいと思わぬわけもない。
 同じ家に居ながら、殆ど会話もできない暮らしは寂しかった。
 そばにいて、目を見て話してほしい、話を聞いてほしい、笑顔を向けてほしい。
 無理をさせたくはないが、願わずにはいられなかった。
「あたしは、嬉しいです。お父ちゃんが皆の為に必死に頑張ってくれて、毎日大変なんだってわかっとっても、一緒に過ごせるのは嬉しいです」
 「我儘言ってすみません」と窺う。
 茂は黙ってこちらを見つめ、ゆるりと瞬くと、「…寝る」と目を瞑った。
「着いたら起こせ」
「はい」
 照れたふうに、眠り込む横顔。
 やがて、静かな呼吸と共に傾いだ頭を、自分の肩に寄り掛からせる。
 長い睫を堪能できる距離に、胸が凪ぐ。
 車両の振動と、窓の外を流れゆく冬景色。
“お母ちゃんはお父ちゃんに、恋してるんだね”
 娘に指摘されるまでもなく、もう十年以上、ずっと自覚している。
131【花と戦場】2/9:2010/08/29(日) 20:14:06 ID:QSKPzTk5
 佐知子が薦めてくれたのは、湯河原温泉だった。
 一昔前は「新婚旅行は熱海」が定番であったが、昨今は趣も変わり、東京近辺で数泊ならこの辺りが適しているのではと、手配を買って出てくれた。
 奥湯河原の山懐、渓谷と藤木川に沿って庭園と池泉を臨む宿は、老舗料亭といった佇まいの風情のある旅館だった。
 案内された部屋は50u程あろうか、露天風呂付きの上品な客室で、今更のように躊躇う。
 絹婚式の祝い代わりとはいえ、自分には勿体ないのではと考えてしまうのは、染みついた貧乏性だ。
 こっそりと夫の袖を引く。
「あの、良いんでしょうか。こげな高そうな所」
「まあ、大丈夫だろう。景色はええし、露天風呂も付いとるし、あとは飯が旨ければ文句はない」
 暢気な大雑把さは相変わらずだ。
 静謐な山翠に囲まれた、野趣ある露天風呂に浸り、(夫曰く「旨いが、ちまちま出てくるのが食い難い」)繊細な懐石料理をいただき、食後の茶を淹れる。
 家事の一切をしなくていいという状況が、却って居心地悪かったりもするのは内緒だ。
132【花と戦場】3/9:2010/08/29(日) 20:15:07 ID:QSKPzTk5
「お父ちゃん?」
 広縁に面した池庭を前に、夫はじっと一点に見入っている。
「どげしたんですか」
「椿が化けて来んかと待っとった」
 夜目にも鮮やかな、寒椿が美しく映える。
「化ける?」
「古い椿の木は、精霊が宿って化けて出るそうだ。ここの椿も、結構年季が入ってそうだけんな」
「椿の精ですか。どげな姿なんでしょうね」
「化け椿、夜泣き椿、椿女。伝承はいろいろだが、美女が現れるという話がある」
「だから待っとるんですか」
 ささやかに咎めるつもりが、振り向いたまなざしの柔らかさに怯(ひる)み、からかわれたのだと知る。
「…もぅ」
 茂は声を出さずに笑った。
「どうせ、あたしはナズナですけん」
 意趣返しにもならない。
「ん?」
「前に、はるこさんに言われたことがあるんです。ナズナみたいだって」
「ふぅん。なるほどなあ」
 何故か、今度は笑われなかった。
「≪天、此の物を、幽人山居為るの為に生ず≫か」
「え、何ですか」
133【花と戦場】4/9:2010/08/29(日) 20:16:07 ID:QSKPzTk5
 答えはなく、逆に訊かれた。
「ナズナの由来を知っとるか」
「あ、いえ」
「夏になると枯れる、夏に無いけん、『夏無(なつな)』という」
「はぁ」
「あるいは、撫でたいほど愛らしい花だけん、『撫菜(なでな)』と呼ばれた説もある」
「…え」
 庭を眺めたまま、ぽつりと茂は呟く。
「確かに、椿は観賞用だが、ナズナは愛でる花かな」
 ふわりと頬が熱くなった気がした。
 視線は合わないのに、身動ぎができなくなる。
「ナズナで、一反木綿で、電信柱か。お母ちゃんもなかなか芸達者だな」
 茶化す口振りは、照れ隠しにしても優しかった。
「ずいたで、寝ぼすけで、鬼太郎で、悪魔くんのお父ちゃんには敵いません」
 思わずつられながら、小声で言い添える。
「けど、ナズナも撫でてもらったら、凄く…嬉しいと思います」
 精一杯の勇気で告げてみると、茂は肩を丸めた。
 ごろんと畳に寝転び、顔を背けつつも、くつくつと笑っている。
「もぅ!ええです」
 膝立ちしたところで、素早く掌が縫い止められた。
 仰臥する夫を覗き込む姿勢になる。
 見慣れた穏やかな、この瞳に布美枝は滅法弱い。
 夜の翳りが、彼の表情を少し隠す。
「誰も水を遣ったり、手入れをしたりもせんのに、あれはいつも強く道端に咲いとるな」
 湯上がりの肌の照り。
 乾かしたばかりのぼさついた髪。
 薄らと生えた無精鬚。
 ふと、こんなに艶めかしい男だったかと動揺する。
「…きっと、目を留めてほしい人がおって、その人に摘んで手許に置いてもらいたくて、小さくても花を咲かそうと頑張っとるんです。それだけです」
 沈黙が落ちた。
「そげか」
「はい」
「そげだな」
「ええ」
 手首を引かれ、懐かしい匂いのする胸板へと、布美枝はゆっくり倒れ込んだ。
134【花と戦場】5/9:2010/08/29(日) 20:17:03 ID:QSKPzTk5
 静かに唇が離れた後、「お疲れではないですか」と問えば、「年寄り扱いするな」と苦笑された。
 大きな掌に、頬を包まれる。
 濡れた唇をなぞり、耳元から鎖骨へ、髪を梳いては遊ぶ、長い指。
 擽ったがって肩を竦める布美枝を、眇めて茂は見つめていた。
 布団を汚しては申し訳ないからと、大きなタオルを重ねて敷いた上に折り重なる。
 見慣れぬ天井、覚えのある凹凸、それもが馴染んで落ち着いてゆく。
 自ら帯を解いた布美枝の浴衣が、やんわりと寛げられた。
 覆い被さる彼の重みに安堵し、無言の腕に柔らかく縛られる。
 口接ける合間の呼気が、空気を濃密に変える。
 夫の唇は、妻の永い苦渋と痛みを嘗め取るように、膚(はだえ)の隅々までを辿ってゆく。
 布美枝を傷つけることができるのも、至上の幸福を与えてくれるのも、この男だけだ。
 そして、この腕こそが、自分が女だということを思い知らせてくれる。
 一本ずつ絡ませた指が、祈りの形になる。
 固く組まれたそれは、縋られているようでもあり、布美枝は黙ってふわりと握り返した。
135【花と戦場】6/9:2010/08/29(日) 20:18:02 ID:QSKPzTk5
 節くれた指が内股を擦り上げ、熱を帯びてぬめる柔肉の狭間に滑り込む。
「ぁ、――そ…っ」
 久しぶりに躰を開く布美枝を、前にもまして気遣う動きで、指先が襞を探る。
 妻の癖を会得した、老練な愛撫。
 輪郭を追う仕草は丁寧で、荒々しさは一つもない。
 初めて抱かれた日から、そうだった。
 無理強いも、酷い仕打ちも、決してされないのに、逆らえない。
 ただ、澄んだ黒い眸が、布美枝を従わせる。
 視姦の鎖に絡め取られ、浅ましく昂揚する。
 知らず寄せていた眉間に、夫の唇が届いた。
 瞼に、頬に、鼻頭にも。
 指が抜き取られ、脆く熔けた花芯に、ひたりと硬度が密着する。
 丹念に均(なら)された狭い肉淵に、濡れた音をたてて怒張が割り入ってきた。
 振動しながら包み込んだ部分が硬直し、布美枝は一瞬、熱さを忘れる。
 慣れた筈の形がいつも以上に容積がある気がして、夫を見上げた。
 折り曲げて抱え上げた腿をぽんぽんと軽く叩き、茂は、吸い痕の濃い乳房を更に咬んだ。
 透き通った白さに、ぷつんと紅く腫れた粒を、そっと指で弾いてから、尖らせた舌で柔らかく潰しては吸う。
「ふ、…ッ」
 堪らない、と首を反らせ、布美枝は喉を捩った。
 呼吸が鼻を抜け、余計に胸を預ける形で晒す。
 敷布から腰を浮かせ、茂の髪を探り、ぎゅっとしがみついた。
 首筋を喰われ、耳の裏を嘗められ、口接けの位置が変わる度に、男根の脈動が深く潜り、蕩けた膣を抉られて、布美枝は声を途切れさせる。
「――は、っ…――ぁ、ア」
 火照った躰に電流めいた痺れが走り、しっとりと四肢が麻痺してゆく。
 ずくりと揺れる下肢の動きに合わせて、かぶりを振った。
 鮮烈な触覚しかない生き物に成り果て、奔放にくねっては、呻く。
 淡泊な男の、ひとときの執拗さを、全身で受けとめる。
「ん――、ッ…」
 ずんッと重い圧迫感に衝かれて息が詰まりながら、咀嚼される肉の音を聞く。
 裡に飲み込んだ勃起に、更地の奥を拓かれ、突き崩され、甘美な高みへと導かれる。
136【花と戦場】7/9:2010/08/29(日) 20:18:55 ID:QSKPzTk5
 熱い視線を浴び、焔(ほむら)の如く、布美枝は歓喜した。
「…し、げぇ…、――さ」
 手繰り寄せたタオルを皺くちゃに乱し、寸足らずの呼び声で懇願する。
 刹那。
 茂が、固く詰く、掻き抱いた。
「花の――香りがする」
 白い胸に鼻を埋(うず)め、陶然と匂いを嗅いでいる。
「俺の、知らん所に、咲くな」
 体内に響く低い声に、びくりと腰が震えた。
 破裂の兆し。
「■■■―――■■!」
 悲鳴を飲み込んで、布美枝は瞳を澱ませた。
(あなた、こそ)
 一族の大黒柱であり、父親であり、創作者であり、師範であり。
 多くの顔を持つことは知っている。
 けれど。
 今は、この瞬間は。
(あたしだけの、――あなたでいて)
 撓(たわ)んだ背骨と、飛びかけた意識を、茂が強く抱いて引き戻す。
 布美枝のか細い嬌声と、引き絞る痙攣が、彼の雄を極めさせた。
 打ちつけられて流し込まれた精の熱度に、朦朧とする。
 茫と目線を浮かせる布美枝の顔を手で包み、姿を認識させてから、茂はゆったりと口接けた。
 深く填っていた異物が抜けていき、しどけなく綻んだ双丘から吐精が溢れ、腿を滴り伝う。
 身に纏う汗の匂いに混じり、情動が静かに沈んでゆく。
137【花と戦場】8/9:2010/08/29(日) 20:19:42 ID:QSKPzTk5
 気づくと、広縁で夫が煙草を吹かしていた。
「お。煙いか」
「あ、いえ」
 以前から仕事場で吸っているのは知っていたが、直接見たことはない。
「量は減らした。そうそう不摂生するわけにもいかん」
 たしなめたわけではなかったが、身体を大事にしてほしいのも本当だったので頷いた。
 浴衣を着直し、彼の足元に腰を下ろす。
「ええ所だ」
「そげですね」
「小豆洗いでも出そうだな」
「明日、探しに行きますか」
「娘を持つ女が小豆を持って谷川で遭遇すると、娘が早く縁づくとも言われるぞ」
「あら。じゃあ、藍子や喜子の縁結びになりますかね」
「まだ早い」
「それはそげですよ。お父ちゃんったら」
 他愛のない会話が楽しくて、心地好い。
 彼の強さと忍耐はとても頼もしいけれど、自分の前で寛いでくれる夫を抱き留めるのも、嬉しいものだ。
138【花と戦場】9/9:2010/08/29(日) 20:28:16 ID:QSKPzTk5
「皆に感謝せんとな」
 椅子に凭れ掛かり、箱根外輪山の稜線と、深遠な夜空を見上げる横顔は柔和だ。
「よう働いてくれとるし、協力してくれる」
「ホントに」
「戦況はこれからも厳しいだろうが、一個師団、全員生還が目標だけんな」
「ええ」
「後方の歩哨は頼んだぞ」
「はい。何があっても、あたしはお父ちゃんについていきますけん」
 信頼してくれと豪語したものの、自分にできることなど然程無いのもわかっている。
 個人の自由で描いていられた頃とは違うと彼自身が言うように、この人の存在は、内にも外にもあまりに巨きくなっていた。
 隣で支えている実感も持てないくらいに。
 結局のところ、碌に手助けする術(すべ)を持たない自分は、庇護される立場でしかなく、漫画家の妻として至らぬ点も多かったろう。
 それでも、彼は布美枝を認め、懐に入れ、背後を預けてきてくれた。
 信じなければならなかったのは、布美枝の方だ。
 彼の、生き抜くことへの貪欲さを、情の厚さを、誠意を、不可視の愛情を。
 自身の手足に向かって、愛を囁く者はいないように。
 彼にとって、伴侶はもはや、身体の一部なのだろう。
 たとえ、映画のように甘い台詞の一つも言われなくとも、自分は、彼の命に寄り添い、一体となって生きている。
 己の寂しさにかまけ、この人の背中ばかりを探して、彼に任されているものの重さを見過ごしていた、昔を省みる。
 せめて、これからは。
 この人が往く戦地の道程の、傍らに咲き続ける花でいよう。
 彼の帰還を迎える道を彩る、標(しるべ)になろう。
 あの大きな手が撫でてくれる時に、笑顔を返せる自分でありたい。
「お父ちゃん」
「ん」
「お父ちゃんのナズナは」
 夏が巡っても、どの季節も。
「きっと、枯れない花ですよ」

 了

  ※蘇東坡『天生此物為幽人山居之為』(天は世を捨て暮らしている人の為にナズナを生じた。)
139名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 16:27:38 ID:FQUJ2n5j
>>130
ネ申!!だんだん!
情緒たっぷりのエロが堪らん・・・w
あと年月を重ねた二人のやり取りにジーンときた

今日の「ゲゲ、はたきでフミちゃんのほっぺをつつく」
はこのスレ向けか?あれ良かったw

>>128
自分>>126だけど行ってないよ
フミちゃんが居ればぼったくられても行くけどw
140名無しさん@ピンキー:2010/08/30(月) 22:24:37 ID:Gj4EhCcG
>>130
感動した
ナズナにこれほど萌える日が来るとは
141名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 00:41:28 ID:qJF6Mac8
>>130
だんだん!萌えた!
> 「確かに、椿は観賞用だが、ナズナは愛でる花かな」
この台詞に、一番のエロスを感じてしまったw
その後の愛でている最中の描写も、エロくて且つ情緒的で、萌えですね。
142名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 00:42:58 ID:o6fDJrky
>>130
もうなんつーかな、GJじゃ言葉足りねぇ…
完成された官能小説じゃん!
昨日から自分、5回以上読んでるw

そういや新婚旅行行ってないんだな、このふたり。
こういう旅行があってもおかしくないよな。
昔有馬温泉に行ったとき
やたら壮年と初老の間くらいのアベックwが大勢いたな。
温泉宿ってそういうふいんき(r
143名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 00:53:17 ID:jL6EAHWy
>>130
GB! だんだん!
今週のしげーさんも、枯れないナズナが
144名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 00:58:33 ID:jL6EAHWy
>>143
途中で送ってしまった…しかもGBって何だ…orz
>>130 GJです!

よっちゃんや小豆洗いのエピが中心だろうけど、
ナズナふみちゃんの笑顔がしげーさんのそばでキラキラしてますように〜
145名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 19:39:15 ID:AoaHCIIo
ここが楽園の間か
146名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 23:52:28 ID:o6fDJrky
倉庫に仕舞いこんでいる宝物もあります。
でも箱を開けると虫がゾロゾロでてきますw
147名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 23:54:28 ID:aEn4szl8
>>142
そういえば結婚前にフミちゃんとチヨちゃんが
新婚旅行は熱海がどーとか・・・って言ってたなw
148告白1:2010/09/01(水) 10:09:09 ID:Ai/wAZ11
読者のつどいの後、美智子の心づくしの夕飯をごちそうになり、
茂とフミエは帰途に着いた。フミエは何時間も吹きさらしでサインを
し続けた茂のために、帰ってくるとすぐ風呂をたてた。

「お風呂、わきましたよ・・・?」
 茂がなんだかニヤニヤしている。
「?・・・私の顔に、何かついてますか?」
「いや・・・。親父さん、あんたの見幕にはびっくりしとったな。
 俺も、あんたがあげな大勢の前で俺に惚れとる、と宣言するとは
 思わんだった。」
「ほっ・・・惚れとるなんて、そげな意味で言うたんじゃ・・・。
 私は、あなたの仕事ぶりのことを言うただけです。」
「ふーん・・・、仕事だけ・・・。男としてはなんとも思うとらん、と・・・。」
茂は少しさびしそうに、
「風呂、入ってくる。」
と行ってしまった。背中を流しましょうかと声をかけても、
今日はええわ、とすげない返事だ。

 茂の後で風呂に入りながら、
(惚れたはれたなんて、今さら・・・。お見合い結婚だし、私たち
 もうええ年だけん・・・。そりゃあ、すごく幸せ!って思う時もあるけど。)
フミエは何を思い出したのか、ひとり呼吸を荒くした。
(でも、あの人、ちょっこしがっかりした顔 しとったな。
 私、「好いとらん。」と同じこと言うてしまったんだろうか?)
 なんだか落ち着かなくなってきた。今まであらためて言葉にしたことは
なくとも、フミエにとって茂ほど大切な存在はなかった。
茂が与えてくれたもの、奪っていったもの。それらのことを思い、今初めて
失うことへの恐れがわきおこった。
149告白2:2010/09/01(水) 10:09:48 ID:Ai/wAZ11
湯ぶねの中で赤くなったり青くなったりしていたのですっかりのぼせて
しまい、フミエは急いで風呂からあがった。
 部屋に戻ると、机で資料を見ている茂の傍らには布団がひと組。
「仕事部屋に布団」というのは、房事の合図でもあるが、「仕事に疲れたら
ひとりで寝るため」の場合もある。
(怒っとるんだろうか・・・?)
「あ、あの・・・。」
フミエはおそるおそる声をかけた。ふり返った茂の顔を見たら、ヘタに
意識したものだから、真っ赤になってしまい、うまく言葉が出てこない。
「何をひとりで赤うなっとるんだ。」
「あの・・・さっきの話ですけど・・・。す、好いとらんということではないんですっ。
 私はトウもたっとるし、お見合い結婚だし、おかしいかもしれませんけど、
 ちゃんと・・・好き、です・・・けん・・・。」
あっけにとられていた茂が笑い出した。
「フ・・・フフフ・・・フハハハハハ!」
(ひどい!こっちは真剣なのに・・・!)
「あー、すまんすまん。大まじめな顔して、何を言い出すかと思うたら。
 今日はガイにええ日だー。フミエの大告白を、二度も聞けるとはな。
 まあ、そげなこと、わざわざ言わんでもようわかっとるけどな。
 だいたい、アン時のよろこび様ときたら、女房のつとめとしてイヤイヤ
 つきおうとる、というようでもないしな。」
「や、やめてください!そげなこと・・・。」
「なんだー。アッチの相性がええ、というのは「好き」ということと
 おおいに関係があるんだぞ。だいたいあんた、俺以外の男と、
 あんなことしたいと思うのか?」
フミエはあわててかぶりをふった。
「それに、年がいっとるだの、見合いだのにとらわれとったら、
 つまらんだろう。物事は、経緯より本質が大事じゃと、ゲーテも
 言っとる・・・ような気がする。
 ・・・まあ、白状せんようならコッチに聞いてみてもええとは
 思うとったが・・・。」
150告白3:2010/09/01(水) 10:10:32 ID:Ai/wAZ11
 茂は、長広舌にあっけにとられているフミエの胸を、指でちょん、と
つついた。
「ま、今日はよしとくか。」
 浴衣の上から、さして豊かでもない胸のいただきを的確につかれ、
フミエはうろたえた。早くも下着をぬらすほどあふれさせていることを
茂に知られたくない気持ちと、今すぐ茂に満たしてほしい気持ちが
あいまって、泣きそうな表情になってしまう。
「なんだ、そげに情けない顔して。うそうそ。」
フミエは茂に胸をつかれて後ろにのけぞったまま、呆然としていた。
その無防備なヒザを割って、茂の指が秘所にさしこまれた。
「もう、こげなっとる。」
フミエはますます狼狽して、茂の手からのがれようと身をよじった。
茂はぬきとった指をぺろりとなめると、
「何を恥ずかしがっとる。これはお前が俺に惚れとる証拠じゃなーか。
 俺の方の証拠も見てみろやい。」
茂はフミエの右手をつかむと自らのたけりたつものを握らせた。
フミエの手の中で息づくそれは、たしかな脈動をつたえ、フミエが
欲しいと訴えかけていた。
 二人はものも言わずに衣服を取り去ると、もどかしげに抱き合った。
すぐに茂がフミエの中に押し入ってきた。
口づけも、前戯もない挿入は初めてだったけれど、フミエの身体は
歓喜してむかえ入れた。こうまで茂に馴らされた自分だと思うと、
うれしくもあり、少し悲しくもあった。だが、そんな感慨も、すぐに
溶けていく。
 唇をなめあげられ、思わずあえぎをもらすと、舌がしのびこんできて
フミエの舌をからめとり、強く吸った。官能に直結するような、
深くて甘い、恋人どうしの口づけだった。今まで考えたこともなかった
けれど、こんなことを好きでもない相手とできるわけがなかった。
上も下も、茂とひとつにとけあって、判然としなくなっていく。
151告白4:2010/09/01(水) 10:11:19 ID:Ai/wAZ11
 茂が上体を起こして、腰を大きくつかい始めた。責める腰が、大きく
離れる瞬間が心もとなくて、フミエは思わず茂の足に自分の足をからめ、
置いていかれまいとした。茂が動きを止め、身を固くした。
「あっ、すみません。・・・つい・・・。」
「いや、ええんだ。感じるままに動けばええよ。」
そう言いつつも、茂は女房の思わぬ奇襲に虚をつかれ、危ういところで
踏みとどまっていたのだ。言葉とはうらはらに、自分の足にからまった
フミエの左足をはずすと高く抱えあげると、右足はフミエに抱えさせ、
のしかかるようにしてフミエの動きを封じた。
こんなあられもない体勢は初めてだった。むきだしになった敏感な部分を
くりかえしこすられ、身体のすみずみまでするどい快感がはしった。
墜ちていくのか昇っていくのかわからなくなる浮遊感に、恐ろしくなって
茂の背にしがみついた。茂も強い力で抱きかえし、わななきの中に
自らを存分に注ぎ込んだ。
 
 寝巻を着なおしてひとつ布団に横になった後も、二人はなんとなく離れがたくて
寄り添っていたが、茂は先に眠ってしまった。フミエはその寝顔を見ながら
(・・・この人の方が、一枚うわてだわね。ふだんは子供みたいで、やること
 なすこと変わっとるけど、後で納得させられる・・・。)
「やっぱり、大きな人・・・なのかな。」
フミエは、茂の右手を持ち上げて、自分の胸にあてた。茂の大きな手に
ふれると、フミエはいつも心からやすらぎを感じる。
そういえば茂は、フミエには好きと言わせておいて、自分は一度も言ってくれなかった。
「ずるいんだから・・・。ま、ええか…。」
言葉じゃなくても・・・。フミエは茂のそんな所にも、慣れてきている自分に
気づいて、おかしそうに笑った。
152名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 10:12:31 ID:Ai/wAZ11
「あなたの選ぶ名場面」には必ずノミネートされるであろう、
フミちゃんの中の人も一番印象に残ったシーンと言っていた、
こみち書房での「告白」のその後を書いてしまいました。
「感動が台無し・・・。」かもしれませんが、お許し下さい。
 実況でも「今夜は激しいぞ」とか書かれてたっけ・・・。
(なんかあると必ずあるレスですけどねww。)
153名無しさん@ピンキー:2010/09/01(水) 23:59:00 ID:iX5oMB7A
>>148
GJ!

そこハイビジョンの名場面ランキングでも上位だったな

これがあって、次の日の「笑って暮らしとるよ」に繋がる訳ですねw
154名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 00:11:28 ID:WTgbAdBz
>>153
自己レス
「笑って暮らしとるよ」は同日の出来事でしたな

ちょっこし安来に逝ってくる
155名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 00:21:06 ID:VxwJfFbz
むっはー
GJ!!
156名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 00:47:01 ID:fPCwSK4f
>>148
GJ!なんかエロを明るく語るゲゲがいいかもw
確かにあの日の夜は激しいだろうことは予想できたw
自分、実況とか見れないんだけど、そういうときは賑わうんだろうな
この間の「何考えてるかわかるか」のときとか。

このふたり、特にゲゲは「好き」とか言わないからな、本編では。
どんどんここで補完させてほしい。
157名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 06:27:52 ID:SAgWvLfD
>>148
GJだんだんGJ!
お風呂でアレコレ考えちゃう布美ちゃん可愛いw
ションボリしたり、布美ちゃんからの告白宣言に喜んだり
イラヤシクからかったりするゲゲも大変宜しい!
台詞にセンスを感じるなあ〜
是非また投下してごしない!
158名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 23:40:23 ID:2JvUQ3cv
>>148
GJ!!
なんか良いな!このゲゲふみ、すっげえ良いな!!
159名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 18:29:22 ID:yFYIs60j
月刊ハイビジョン買ったぞ!
現代版ゲゲフミも爽やかでええですな〜

本スレで誰か書いてたが好きなキャラ・笑えた場面ランキングでの
浦木の人気に噴いたw
160名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 21:36:15 ID:d63XmGxz
喜子って今の時代だったら、中二病に当てはまるのだろうか?
161名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 22:10:57 ID:Tm2GhxHH
いわんだろ
162名無しさん@ピンキー:2010/09/03(金) 22:29:53 ID:elo3coqv
>>148
お互いの事が好きで好きでたまらんっ!て感じでええですなぁ〜。また次回作お待ちしてますけん。
163名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 02:26:09 ID:8Cxs5YRg
ノベライズの下巻買った。
ページ数の関係上仕方ないのかも知らんが、
本編の萌えシーンがことごとく1行以内で終わっているのが無念。
(喜子生まれて病院から帰ってきたときのゲゲの慌てぶりとか)

逆を言えばまだ放送されてないあたりには
萌えが転がっているかも知らんということか。
164名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 09:40:00 ID:Fkfwt1hv
>>163
私も買ったよ〜。確かに、ちょっと肩すかし食らうところあるね。
脚本が出来て、かなり早い段階で書いてるのかなあ、と思うんだけど。
(撮影の時、どんどんふくらませる)
それでも、録画もしてないしDVDもまだ買ってないので、思い出す
よすがにしちょります。
また一個ポコッと物語が・・・。いずれ投下しますね。
165名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 12:28:58 ID:hFU0Auu7
>>164
わぁ投下楽しみだ〜ショキショキ
今日はとにかくフミちゃんの表情が良かった!
お父ちゃんを尊敬と愛情と慈しみとその他諸々…
色んな感情を込めて見つめるまなざしがすんごい良かった!
自分に文才があればこの情熱を表せるのに〜!
職人様にお任せして、楽しみ待っちょりますショキショキ

何か…改めてゲゲゲって良い作品だね…大好きだ
166名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 12:55:13 ID:DrQ87xFk
167名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 14:35:08 ID:pQ0yUBm9
>>163
まだ読んでないけど、そうなっているのか。
上巻の自転車デートの辺りとかはちゃんと書いてあったんだがな

>>164
投下楽しみにしちょります!


>>165
フミちゃんの表情良かったよな〜
二人で一つの本広げてる所と最後のイチャイチャも良かったw
168名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 23:50:32 ID:ao6x0OrV
ゲゲ絵のこれ良い
ttp://twitpic.com/2bnsma
169名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 00:46:50 ID:y18CFXem
一泊する予定が日帰りになったのは、小豆あらいに会ったのを一刻も早くふみえに伝えたかったから、と解釈したw
今日はなんかもう、久しぶりに「イチャイチャしやがってヽ(`Д´*)ノ」という気分になってしまったよw
170名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 02:28:34 ID:gYVDhJ48
>>168
そういや歌詞が出来た時も、真っ先にフミちゃんに見せたそうだったな。
171ゆびきり1:2010/09/05(日) 04:28:22 ID:54dCw4Qj
「おとうちゃん、お土産の羊羹まだ余っとるよ。食べますか?」
「おう」

境港の両親(というより絹代)から、ずっと催促を受けていた里帰りを
やっと終わらせて今朝戻ってきたばかりの布美枝である。
たった1週間足らずの里帰りだったが、
結婚以来この調布の家を、こんなに長い間離れることはなかったので、
既にどこか懐かしい想いさえ抱いてしまう。
そして、茂とも。
勤め人ではない夫はいつも家に居て、その傍に自分が居るのが当たり前だった。
茂と離れている時間はともすると、布美枝にとっては永遠より永かったかも知れない。
いつまでも、恋に堕ちたままの初心な女房だった。

「はい」
風呂上りの洗いざらしの髪を、耳にひっかけながら
茂の横に座って羊羹を差し出す。
原稿に向かって真剣な眼差しを落とす夫の、その男ぶりのよさに布美枝は目を細めた。
「あん」
「え?」
真剣な横顔に見蕩れていたので、急なその挙動に一瞬意味が分からず固まる。
右手にペンを持ったまま、口を開けて羊羹と布美枝を交互に見る茂は、
さながら巣で餌が落ちてくるのを待っている雛鳥のようで。
思わず噴きだしてしまう。

「ほれ、早く。なにしとるんだ」
どうやら本人は至って真面目にそうしていたようだ。
「あはは、ああ、はいはい」
やっと餌にありつけた雛鳥が、満足して原稿に顔を戻す。
しばらくしてまた「あん」と口を開けて、布美枝からの餌を待つ。
布美枝はにこにこしながらそれに応じて、茂の口に羊羹を運んでやりながら
ぽつりぽつりと里帰り先での出来事を話し始めた。
172ゆびきり2:2010/09/05(日) 04:28:58 ID:54dCw4Qj
安来での藍子の様子や、源兵衛の孫に対する溺愛ぶりを話すと、茂は苦笑する。
(藍子ビー玉呑みこみ騒動については伏せておいた。余計な心配はかけたくない)
いずみの東京への「恋」にも似た憧れや、貴司の意外なほどの熱愛を語れば、
ふっと柔らかい笑みを浮かべて、うんうんと頷いてくれる。
境港では修平が何やら妙な事業に手を出そうとして、絹代にしたたかに諭されていたこと。
布美枝がイカルの口調をオーバーに真似してみせると、声をあげて笑った。

「ははは、おかあちゃんもイトツに影響されとるのか、役者染みてきたな」
「ええ?」
「イカルの口ぶり、よう似ちょう」
「そげですか?」
「ずいぶん機嫌がええんだな、珍しくさっきからええ調子でよう喋る」
「えっ…あ…すんません…邪魔して…」
「構わん」

布美枝は俯いて赤くなった。
茂の傍で、ふたりきり、こうして居られることが嬉しくてたまらなくて
知らぬ間に調子付いてお喋りになっていた自分が恥ずかしくなった。

さすがにお茶だけは自分の手で呑んだ茂が、空の湯呑みを布美枝に差し出す。

「あ、そうだ。あたしがおらん間に、どなたかいらっしゃいましたか?」
「ん?」
「お客様用の湯呑みが出してあったもんだけん」
「ああ…」
茂は思い出したように頷いて、少しの間、目で空を仰いだ。
そして布美枝の顔を見てから、にやりと口の片端を上げて言った。
「俺の漫画の熱心なファンだという女性が来とった」
「え…」
173ゆびきり3:2010/09/05(日) 04:29:30 ID:54dCw4Qj
どきり、布美枝の心臓が嫌な音で高く跳ねた。
流しに向かおうとしていた足を止めて、茂の方に向きなおり、ぐっとその懐まで近づく。
「女の…ひと?」
壊れそうなほどに高鳴る鼓動と格闘しながら、声を絞り出す。
茂は今にも泣き出しそうな布美枝の顔をじっと見つめていたが、
やがてふるふると肩が震えだし、耐えきれなくなって
「…ぶっ…はははははは!」
大笑いし始めた。

呆然とその爆笑を見つめていた布美枝が、やがてはっと気づいて
「からかったんですか!」
真っ赤になって口を尖らせる。
「はは、いや、嘘というわけでもないんだぞ」
「え?」
「河合さんだよ。また缶詰やら色々持ってきてくれた」
「あ…」
茂の漫画の熱心なファンの女性…それがはるこなら、確かにそれは嘘ではない。
ほっと脱力した。
「どこから嗅ぎつけてきたのか、あとからイタチが来てな、
 騒々しくなったもんだけん、さっさと引き上げてもらった」
「そげですか」
見てもいないのに、布美枝にもその場面が思い浮かぶ気がして苦笑した。
174ゆびきり4:2010/09/05(日) 04:29:56 ID:54dCw4Qj
「それにしても今の顔っ…くっくっく…」
思い出して笑う茂に、布美枝は膨れて「もうっ」とそっぽを向いた。
嘘でからかったわけではなくとも、明らかに布美枝の反応を伺っていた感がある。
狙い通りに反応してしまった自分が恥ずかしくて悔しくて、歯がゆさのやり場がない。

すると、茂の右手が伸びてきて、顎を引かれてそちらに向き直される。
「もいっぺん見せてみ?」
意地悪そうな笑みを浮かべて布美枝を見つめる。
恨めしそうに睨み返してみたが、ふとその接近に、布美枝は甘いひとときの訪れを予感した。

やがて薄ら笑いを浮かべた茂の唇が、そっと布美枝のそれと合わさった。
合わさってのち、深く触れ合って、触れ合ってのち、隙間から息が洩れる。
洩れた息を吸い込むように茂の舌が割って入ってきて、
息と一緒に、舌も唾液も全てを吸い込んで、音がするほど深く口づけられた。

左頬を撫でていた右手が、するすると胸まで降りてきてそこを弄り始めると、
離れた唇が、首の筋を辿って降下していく。
ちらと茂の背中越しに、机上に放っておかれた原稿がひらりと揺れるのが見えた。
「…お仕事は…ええんです…か…」
半ば力が抜けかけていた布美枝が、小声で問いかけると「うん…」と篭った声がする。
名残惜しむように胸の谷間にひとつキスを落とすと、茂は体勢を元に戻した。
「ほんなら先に横になっとけ。あとちょっとだけん、終わったらすぐ行く」
「…はい」
火照る顔を両手で覆いながら、そう返事をするのがやっとだった。
175ゆびきり5:2010/09/05(日) 04:30:26 ID:54dCw4Qj
あとちょっとと言いながら、もう小一時間は経っている気がした。
寝返りもしないで熟睡する藍子を見ていると、布美枝もうとうとし始める。
そうすると、夢と現の間で先ほどの愛撫を思い出し、また少し胸が高鳴り始める。

たった1週間足らず離れていただけで、これほど茂への愛おしさが増すとは
出かける前までは全く予想だにしなかったことだった。
そっと指で唇をなぞり、茂の感覚を手繰り寄せると、じわりと何かが溢れてくる。
恐る恐るその源泉へ指を進めると、ひたと冷たい水を確認できた。

想い出すだけで濡れる救いようのないその場所を、茂がいつもしてくれるように
そうっと指でなぞってみてから、尖りに行き当たり、それを摘んでみた。
「…は…っ」
目を閉じて茂を想像してみるが、稚拙な自分の指では何かが違う。
蜜の溢れる場所へもゆっくり挿し込んでみるけれど、小さく水音がしただけで
あの、背中がぞくぞくするような快感は得られない。
このまま独りで朝を迎えるのだろうか。布美枝がきゅっと目を閉じた瞬間。

「…独りで先に始めるな」
耳元で低い声が囁いた。
驚いて目を開けて振り返った瞬間、また目の前が真っ暗になる。
唇を塞がれて、息も出来なくなった。
「ふ…ぅ…っ」

茂の奇襲攻撃に、まどろんでいた神経が一気に目覚めて活動を始める。
全身の脈がどくどく鳴り始めて、心臓が壊れるのかと思うほどに締め付けられる。
激しい口づけの合間に寝巻きの帯が解かれ、大きな手が胸元に侵入してきた。
その手の温度と、指が先端を捉えて弄られる心地よさに刺激され、
ようやく本能的に身構えていた力が抜けていった。
と同時に、怒涛の羞恥心が布美枝を包んで、一気に火照りが身体中を占領する。
茂が2階に上がってきていたことに気づかずに、独り淫らな快感を得ようとしていたことを
果たして彼はどう思っただろうか…。
176ゆびきり6:2010/09/05(日) 04:31:05 ID:54dCw4Qj
一方の茂は、その再会を喜ぶように、唇と舌を布美枝の乳房へと降ろして行き、
果実にかぶりつくように大きくそれを口に含んで、先端の赤い実を吸う。
舌で形作るように、丁寧に尖らせて、また吸って遊ぶ。
「ふむ」
「…んっ…?」
「おかあちゃんの貧しい胸でも、しばらく見れんと寂しいもんだな」
「…も…もぅ!」
布美枝の反応に笑いながら、茂はまた胸の谷間に顔を埋めて口づけを繰り返す。
そのまなざしが真剣な色を帯びてきたので、布美枝はうっとりと身を任せた。

のしかかってくる茂の重みと、男の匂いをかすかに感じていると
先ほどまで自分で弄っていた場所が、再びにわかに反応してくる。
くすぐったいような、熱いような、奇妙な感覚に腰をくねらせると、
それを合図と思ったのか、茂の右手がすすっとそちらへ伸びて、
下着の上から割れ目をなぞる。

「こっちは…さっき自分で馴らしとったみたいだが?」
またあの意地悪い笑みを浮かべているのが、薄暗い中でも見てとれた。
やっぱり気づかれていたのだ…動揺して目が泳ぐ。

その間も、尻や太ももをくすぐるようになぞられるが、
いつもと違って過敏に反応する深みに入ってこようとはしてくれない。
伺うような視線を茂に向けると、ふふんと鼻で笑ったように見えた。

「どげして欲しい?」
「え…」
「口があるんだけん、言わなわからんだろうが」

言ってから、ぺろりと舌で布美枝の唇を舐めた。
言う?何を?混乱する頭を抱える布美枝をよそに、
茂は相変わらず乳房の果実をほおばっている。
右手はもどかしく、敏感な突起を軽く突ついているだけだ。
177ゆびきり7:2010/09/05(日) 04:31:38 ID:54dCw4Qj
強請れということだろうか…。
布美枝は茂の肩に手を置いて、震える声で訊ねた。

「…なして今日はそげに…っ…意地悪…なんですか」
「お前の百面相が面白いけん。もっと見たい」
「…」
「ほれ、どげしたらええのか早よ言わんと、俺もお前も生殺しだ」
「そ…んな…」

茂のそれが既に猛りたって硬く、内腿あたりを突いて催促してくる。
布美枝の泣きそうな表情を見て、また愉しむような笑みを浮かべる。
何度も何度も焦れるように落とされる口づけ。
それもまた茂からの督促状のような気がして、布美枝はごくりと唾を飲んだ。

「…あの…ぇっと…」
「ん?」
「…指…で」
「指で?」
「触れて…ください」
指が下着の中に差し入れられた。
けれどまだ茂みの辺りを散策するのみで、本当に「触れる」だけ。
何も言わずに布美枝を見下ろしている。

「…っ…指…挿れて…くださっ…」
ようやく節ばった指が挿しいれられた。
それだけでびくっと反応する。
自分の細い指では得られなかった快感を、
どうしてこの人にはいとも簡単に与えてくれるのだろう。

「んっ……ぁ…もっと…」
「もっと?」
「…もっと…もっと…」
挿しいれられた指が、神経の集中する1点を攻める。
脚が落ち着きなく暴れ始める。
178ゆびきり8:2010/09/05(日) 04:32:09 ID:54dCw4Qj
「あっ…もっと…お願い…は…ぁ」
神経が昂ぶってくる。
「…口で…」
「ん」
想いが勝手に言葉に変換される。
「舌で…お願い…愛して…ください」

茂の顔を見ることはできなかった。ぎゅっと目を閉じたまま身を縮めて横を向いた。
悶える脚の間から、指が抜き取られる感覚があった。
そして次の瞬間には、温く柔い感覚が、布美枝の最も敏感な場所を舐め上げた。
「っ…っはっ…!」
たまらず目が見開かれた。息を呑む。

自分で懇願しておきながら、津波のように押し寄せた快感に慄く。
波に押し流されないように、ぎゅっと布団を握り締めて必死に耐えた。
背中がのけぞる。茂の腕がそれを抑えるように右脚を掴む。
まるでそれ自体が生き物のように、舌は布美枝の中まで侵入してきて
強請ったことを後悔させられるほどの痺れを呼び起こす。
「…ぁっ…ああっ…は…あっ…」

それだけで独り、越境しそうになった。
自分の脚に置かれた茂の腕に手探りで触れると、その手を取ってぎゅっと握り返してくれた。
その確かな感覚が、布美枝を呼び戻す。

「挿れて…くださ…もぅ…ぁあ…おねが…」
息も絶え絶え、最後の願いを告げる。
生温かい舌の感覚が消え、じんじんと熱くなった秘所が、ひとときひんやりと静まり返った。
――とたんに、熱い塊がその静寂を破る。
179ゆびきり9:2010/09/05(日) 04:32:39 ID:54dCw4Qj
「――――――っ!あ!」

覆いかぶさってきた茂の肩に、思わずしがみついた。
揺り動かされる振動が、布美枝の喉から喘ぎを誘う。
熱い茂の分身が、布美枝の中でますます主張を強めていき、
逆に布美枝の内部では、熱い侵入者を内襞が手荒く押し返す。
互いが互いを刺激しあって、とろとろと液が溢れ出して脚を伝う。
ふたつあったはずの身体が、ひとつになって熱を帯び、
高みに昇っていく快感を必死で追いかける。

「っぅ…あ…あ…ふ…っ、ぁっ…」
見上げた先にあるはずの、茂の顔がだんだんぼやけてきて、
時折、気遣うように落とされる口づけにも、もううまく応じることさえできなくなってきた。
茂も眉間に皺を寄せて目を閉じ、自身の限界を計りはじめた。
「んっ…あ…おと…ちゃ」
「…なんだ…」
何か伝えたくて、けれど思考がままならず言葉にならない。
「…あ…あぁ…」
このまま目を閉じてしまえば、もう茂に会えないような気がした。
それほど遠くまで連れて行かれるような不安があった。
最後の力を振り絞って、布美枝は茂の首に腕を伸ばし、引き寄せる。
自らの唇に茂を誘って口づけると、ぱたりと記憶を無くした。
180ゆびきり10:2010/09/05(日) 04:33:07 ID:54dCw4Qj
髪を撫でられるくすぐったい感覚に、おもむろに起こされてぼんやり目を開くと
優しい表情の茂がじっと布美枝を見つめていた。
乱れた布美枝の髪を、おもちゃのようにくるくるといじって遊んでいる。
「大丈夫か」
低音の声が耳に心地よく、自然と微笑んでしまう。
少し腰をずらすと、布美枝の中に放たれた営みの証拠が、零れて脚を伝う。
さっと布美枝の頬が薄紅色に染まった。

「おとうちゃん…」
「ん」
「うん…と」
「どげした」
いまいちはっきりしない様子に、訝しがって顔を覗き込んできた。
「はっきり言え、口ついとるんだろ」
「…おとうちゃんの顔…1日でも見られんと、寂しい」
言ってから、茂の広い胸にぎゅっと顔を埋めた。
恥ずかしさ半分、愛おしさ半分。

しばらく茂は何も言わずに、また布美枝の髪で遊んでいたが、
ふと思い出したように呟いた。
「…安来の家は、古うてなんか住んどりそうだったな」
「え?」
「座敷わらしとか、あずきはかりとか」
「はあ…」
「見合い以来行ってないけん、今度は一緒に行くか」

布美枝の顔がまた嬉しさで紅潮した。
満面の笑みで茂を見上げる。

「約束ですよ?」
「金と暇ができたらな」
「指きり」
「ん」
茂のごつごつした指と、布美枝の細くしなやかな指が、
ふたりの笑顔の前できゅっと結ばれた。


おわり
181名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 13:19:54 ID:BEUBHFaW
>>171
GJ!
ドSなゲゲがスッゲーエロくて良いwww
182名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 19:09:59 ID:1suaOFa/
羊羹うまそう
セルフあ〜んして食べようっと。買ってくる
183名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 21:25:19 ID:gYVDhJ48
>>171
ドSでじらしまくる茂がええですなあ〜!一週間は本当に長かったんでしょうな。
184名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 21:39:24 ID:bgsFCj7X
ドSと聞いて飛んできました!
Sデレな茂さんはとても良いと思います!
185名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 23:13:55 ID:Tc071KXa
「あ〜ん」はバカップルの定番と思っていたが、
こんな使い方もあるとはwww

しかしみんなドSしげさん好きだな。
自分もだけどw
186名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 00:41:13 ID:sIwylzUf
素朴な疑問なのですが
このスレの住人の男女比率ってどうなのだろうかと思ったり

自分が投下してきたのは専ら女性向けのポルノだったような気が…(というかそれしか書けない)
男性が読んで萌えるエロってたぶんポイントが違いますよね?
187名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 00:57:26 ID:GxF7ElpZ
>>186
男ですノシ
藍子タンがクラスの男子からエロいイタズラをされるSSとか読みたいです
188名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 01:38:15 ID:Iy0MpWVR
ベアード様が「ロリコンどもめ!」って出てきそうだなwゲゲゲ展の会場でも入口付近で見張っておられた。
189名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 02:04:58 ID:talhFruC
>>171
ドSなしげるがエロかっこ良過ぎ…
おねだりふみえが可愛すぎ!!
190名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 02:52:30 ID:2COXOTwB
エロとは関係無いが喜子が中二病を発症したら面白いなと思います。
191茂のたくらみ1:2010/09/06(月) 14:57:28 ID:pkSxRCFX
(そろそろ、ええかなあ・・・。)
 今、茂の腕の中にはフミエがいる。深い口づけに陶然となり、うっとりと
目を閉じている。
初めての夜から、何度フミエを抱いたろうか。何もかも初めてのフミエを、
茂はしんぼう強く開花させてきた。まっさらだったフミエが、だんだんと
自分の色に染められ、お互いにしっくりと馴染んでくるのはこのうえない喜び
だった。だが、茂の飽くなき探求心は、さらなる開発を求めていた。

 茂は、向かい合って座っているフミエの帯を解くと、浴衣をするりと脱がし、
はじらっている妻の肩を押して、後ろを向かせた。茂の命令で、浴衣の下には
何もつけていない。長い髪をどかすと、雪のように白い背中にしばし見とれた。
後ろから抱きしめ、首、うなじと唇をはわす。そのまま、前に倒れるよう
うながすと、背中、そして尻へと口づけを移動させていった。
 フミエが戸惑っているのがわかったが、かまわずヒザを割って尻を持ち上げ
させ、早くも泉をたたえている谷間にも口づけた。
「やっ・・・やめて下さいっ。そげな・・・とこ・・・!」
フミエは強く抵抗した。
「じっとしとれ!」
命令すると、茂は、十分にうるおったそこを指で慣らしはじめた。はじめての
恥ずかしい姿勢に、フミエは身を固くして耐えた。
 次の瞬間、指ではない圧倒的な存在が、ゆっくりと押し入ってきた。
「い・・・やぁっ。いやですっ。こげなっ・・・!」
フミエは必死で前に逃れようとしたが、茂の足ががっちりとからまっていて
そうはさせなかった。
192茂のたくらみ2:2010/09/06(月) 14:58:14 ID:pkSxRCFX
全部、入ったところで、茂はなだめる様に、また背中や首筋に口づけを始め、
右手は乳房をまさぐった。ひとしきり乳首をいじめた後、手はさらに下へ
おりてゆき、いちばん感じる部分をもてあそんだ。フミエはもう観念したと
見え、枕に顔をうずめて、次々に与えられる新しい試練に耐えていた。
 本格的な責めを始めるため、茂が背中にのしかかると、フミエは顔の横に
つかれた茂の手に唇を寄せた。茂の手が、フミエの涙で濡れた。フミエが
無理な姿勢で振り返って茂を見あげる。涙でいっぱいの目。
茂は吸い寄せられるように口づけした。
「あぁぁぁっ・・・!」
そのとたん、なかの角度が変わったのか、フミエは悲鳴を上げて向きなおり、
唇は離れてしまった。
 茂はフミエの大腿をつかむと、腰を打ちつけるようにして、浅く深く穿った。
フミエの嬌声は、今や嗚咽に変わっていたが、その声の末は甘く尾をひき、
どうしようもなく感じていることを茂に教えていた。
茂の手で女になってからまだ日も浅いフミエに、これほど強い刺激を与える
のはかわいそうだと思う心と、もっと苛めてやりたい、狂わせてやりたいという
嗜虐心が茂の中で葛藤した。
 再び上体を密着させ、深く貫いたまま強く揺すぶる。
終わりに向かって激しく腰を波打たせる白い背中は、茂に何かを連想させた。
(こげすると、ますます一反もめんに似ちょるなあ・・・。)
茂はいとしさがこみあげて、白くなるほどきつくシーツを握りしめている
フミエの右手に、自分の手をからませて握ってやった。
フミエがその手に再び唇を押し当てた。
絶頂の悲鳴はくぐもった響きとなり、その収縮の中に、茂も自らを解き放った。
193茂のたくらみ3:2010/09/06(月) 14:59:43 ID:pkSxRCFX
 しばらくそのままで、荒い息をととのえた。フミエは絶頂の余韻にこきざみに
震えていたが、やがてそれがおさまっても、うつ伏せたまま身じろぎもしない。
「・・・怒っとるのか?こげな犬コロみたいな格好させられて。」
茂はフミエをあおむかせ、顔にまつわりついた髪をかきあげてやった。
フミエは黙ったまま両手を茂の首にまわし、下から口づけてきた。
唇をはなすと、また新たな涙が流れ出し、茂のほおをぬらした。
「あ・・・あなたが見えんけん。口づけもできん、すがりつくことも・・・。
 誰か知らん人にされとるようで・・・。」
茂は、フミエがあんなにも自分の手と唇を求めていたことを思い出した。
「すまんだったな。そげにいやなら、もうせんよ。ただ・・・この格好なら、
 あんたにさわったりするのに便利だと思うたけん。」
フミエはハッとした。
「すみません。私・・・気がつかんくて。何でもお手伝いしますなんて言うとった
 のに。アノ、私、この・・・格好でも、かまわんです・・・けん。」
茂は、ニヤニヤしながらフミエを見ている。
「ふーん・・・。この格好が、そげによかったかー。まあ、あげに喜んどった
 もんなあ。」
「なっ・・・?!」
「ほんなら、またしてやるけん、たのしみに待っちょけ。」
(もうっ・・・!人の気も知らんと・・・!)
真っ赤になって茂をにらみながら、フミエはなんとなく心が温かくなるのを感じた。
茂があまりにも自然体なので、周囲の人は彼のハンデをつい忘れてしまう。
気づいた時の気まずさを、大らかなユーモアで救ってくれるのも、また茂であった。

 さっき出来なかった口づけを、たくさんしてもらっている内に、泣きつかれたのか
フミエは眠ってしまった。
 その寝顔を見ながら、茂はひとりつぶやいた。
「『何でもお手伝いします。』・・・と言うとったっけな。」
ニヤリと笑うと、また新たなたくらみをめぐらせ始めるのだった。
194名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 18:07:22 ID:p5yAkZho
>>171>>189
自演かっこよすぎ…!!
195名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 18:54:42 ID:5JgptPdo
職人さん方、連日の投下素晴らしいです!
もうこのスレの虜だ。
一日何回も覗いてしまうよ〜
196名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 20:28:12 ID:qdSM8m8P
>>191
エロエロえっさいむゲゲる君イイ!
次の企みもぜひぜひ!

職人さんのおかげて通勤がたのしくなりますた
放送が終わってもずっと楽しめるよう、たくさん
お待ちしておりますー
197名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 20:32:34 ID:n+RptKUG
>>191
漫画への探究心もあれほどだもん
フミエにも想像つくわ
だんだん!
198名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 22:11:35 ID:LrVDQ7h3
>>191
だんだん!泣いちゃうフミちゃんがカワエエ〜
ゲゲの新たなたくらみとは何だw?

今日紙芝居まで見返したんだが
初期の初々しい二人にニヤニヤが止まらなかったw
199名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 22:45:36 ID:YGuP9bZa
>>191
謝っときながらソッコー悪だくみするゲゲw
ドSだな

>>186
自分女子だけど、ゲゲの台詞を借りて言うなら
「何でもええです、嫌いなもんはないですけん」
イチャイチャでもガチエロでも
寝取られでも百合でも、ゲゲゲパロならバッチコーイ!
200 ◆ChdC8VZqyE :2010/09/06(月) 23:06:28 ID:RsTXS/39
ジュモクとか貧乏神には性別はないってひろゆきが言ってました
それはつまり何でも保管するって事です

それより10月からどげんして生きていけば良かですか!?
201名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 19:40:59 ID:d1k4Ocqe
>>168
イイ!ツイッターじゃゲゲフミの萌え絵って少ないから貴重だな
その分ここで思う存分萌えさせてもらってるけどw

>>200
いつもだんだんです
ドラマは終わってしまうと寂しくなりますが、引き続き萌え談義は盛り上がるといいな
202名無しさん@ピンキー:2010/09/07(火) 23:17:36 ID:meaw3e7/
>>200
ジュモクって諸星大二郎のあれですな?
って保管庫見たら初見の避難所の名作が!
貧乏神様GJ〜
203名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 00:16:11 ID:BPWfAXuf
>>200
ジュモクって、朝のアレでないの?
いずれにしろ、いつもだんだん。

>>202だんだん、言ってくれなかったら見逃してたw
あの山小屋でもやっぱり色々あったんだなw
204名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 01:36:27 ID:0Vw2lB3a
>>200
いつもだんだん貧乏神様
10月になるのが自分も怖いです…
でも「見えんけど、おる」精神でいきますけん!
貧乏神様もこれからも宜しくです

>>202
教えてくれてだんだん!
早速読んできた〜野外プレイ最高!wwww
やっぱり致しておったんですね〜w
流石ゲゲ、期待を裏切らない!そこに痺れるっ憧れるぅ!
205名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 04:43:03 ID:fT/GVO/1
好奇心と探求心旺盛のゲゲでもまだ未開発の場所がフミエの身体にあるな
どこかはあえて言わんが時代背景考えたら当時は変態過ぎるだろうし、情報も無かっただろうから
多分有り得ないな。
206名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 04:54:37 ID:i2pSjqye
水木しげるさんの戦時中の体験を絵入りで書いた本を読んだことがあるけど、
原住民の性生活について結構興味があったようで
「なんで女も裸なのに彼らはムラムラこないのか?」
「雑魚寝している高床式住居ではできないから野外でやってるんだろうが見かけたことがない」
とか生きるか死ぬかの戦地での生活の中で真剣にどうでも良さそうなこと考えてて吹いたw
207名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 05:01:21 ID:xtCa3nMo
性の営みも生きるか死ぬかと聞いて
208名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 07:30:59 ID:YqIIj99q
>>206
だって性欲は本能ぅぅぅぅぅぅ!
209名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 09:44:36 ID:ilXflTXk
>>200
管理人様、いつもありがとうございます。
が・・・、保管庫が見られないのです。
どなたかお知恵をお貸し下さい。
210名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 12:48:15 ID:1DRMt2y6
つ
211名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 13:46:13 ID:xtCa3nMo
まさかとは思いますが、hを抜いたままコピペしてるのでは無いでしょうか
あとは何だろ?
設定やフィルターと相談?
212名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 14:29:22 ID:EXkQPf0B
>>211
レスありがとうございます。
hぬき・・・それはないですよ〜。
コピペじゃだめで、直打ちしたらイケました・・・お騒がせしました。
213茂のたくらみ再び1:2010/09/08(水) 15:21:14 ID:WskTGRuj
 あれから半月近く後・・・。
今日の締め切りに間に合わせるため、明け方まで仕事をしていた茂は、
好きなだけ眠れるように仕事部屋に敷いた布団で、昼近くまで惰眠を
むさぼっていた。
 ふと目覚める。台所ではフミエが昼食の支度をする音がしている。
茂はしばらく考え事をしていたが、起き上がってフミエを呼びつけた。
「おーい、ちょっこし、手伝うてくれんかね。」
「はーい。」
フミエはエプロンで手をふき、火を止めて仕事部屋のフスマを開けた。
布団の傍らに座ったフミエを、茂がいきなり抱きすくめた。
「てっ・・・手伝うてくれって・・・?」
戸惑うフミエに、茂は起き抜けにみなぎっているものを誇示してみせた。
「こげなっちょるけん、あんたがしずめてくれや。」
「こっ・・・こげな明るいうちから、やめてごしない。」
「前にも、明るい時にしたでなーか。」
「あれは・・・朝、起きた時ですけん。今は昼ひなかですよ?
 誰か来たらどげしますか?」
「下宿人はどうしちょる?」
「今朝早く、出版社まわりをすると言って出かけられました。」
「そりゃええ。夜まで帰って来んわ。電車賃がもったいないけんな。」
「でも、お客さんが来たら・・・。」
「そげに気になるんなら、玄関しめてこい!」
214茂のたくらみ再び2:2010/09/08(水) 15:21:54 ID:WskTGRuj
フミエは、着衣の乱れを直しながら玄関の鍵を閉めに行った。
わずかな愛撫で火をつけられ、茂に抱かれる為に玄関を閉めに行くという
行為の淫靡さに、歩くのがつらいほど感じてしまっていた。
 部屋にたどり着くと、茂は寝巻きを脱ぎ捨てて布団に入り、頭から
すっぽり掛け布団をかぶっていた。
「見んようにしとってやるから、早やとこ脱いで来い!」
フミエはあわてて服を脱ぐと、きちんとたたもうとしたが、布団から
出て来た腕に引きずり込まれた。
 抱きしめられ、口づけされる。素肌と素肌のふれ合うここちよさに、
ずっとこうしていたい気持ちになるが、茂は性急にフミエの両腿を
ヒザで割った。ヒザが濡れるほどしたたらせているのを知ると、先ほど
見せつけた昂ぶりを突き入れてくる。
一気に根元まで突き入れられ、フミエはうめき声をあげた。
これから加えられるであろう責め、与えられる快感を半ば恐れ、半ばは
期待しながら待っていると、茂がフミエの両腿を極限までひろげ、
抱えあげるようにして自分の太腿の上に乗せた。
 これでは、つながっているところが、まる見えになってしまう・・・!
あわてて上体を起こそうとすると、肩をつかまれて引き起こされ、茂の
ヒザの上に乗せられてしまった。
明るい日ざしの中、茂の顔とまぢかに向き合う恥ずかしさに、フミエは
目を伏せた。
 下から貫いているものが、自分の体重でさらにもう一段めりこんでくる。
フミエは唇をかんで耐えた。
215茂のたくらみ再び3:2010/09/08(水) 15:22:34 ID:WskTGRuj
 茂は、ねっとりとひとつ口づけをくれると、
「これなら、いくらでも抱きつけるし、セップンもし放題だ。ええだろ?
 ただ、ひとつ難を言うと・・・あんたが動かんと、始まらんということだ。」
そう言ったくせに、そのまま後ろに寝そべってしまった。
フミエはすがるものもなく、取り残されて途方にくれた。
ただ下から貫かれているだけでも、たまらなく感じるのに、このうえ自分で
動くなんて、出来っこない。泣きたい気持ちを押しとどめたのは、
「何でもお手伝いします。」と言う自分の言葉だった。
フミエは、茂がいつも自分にしていることを思い出し、ヒザをついて
おそるおそる腰を上下に動かしてみた。
「・・・・・・っ!」
ぬるつく自分の入り口と、そこに出入りする茂を否応なく意識させられ、
ひどく感じるうえに、慣れぬ動きにすぐ疲れてしまい、息があがった。
「無理に俺のマネをせんで、自分のエエ所を探して動けばええよ。
 疲れたら、代わってやるけん。」
それならばと、今度は前後に動かしてみる。・・・敏感な部分がこすれて、
ますます自分で自分を追い込んでしまい、茂の胸に手をついて、
結合部分から全身にひろがってくる快感をやりすごした。
 下から見上げている茂にとって、新妻が自分の上でつたない技巧をつくし、
かえって自分で自分を追いつめて乱れるさまは、このうえない目の
ごちそうだった。目からの刺激が加わって、あなどっていたフミエの
手管に、ややもすればもっていかれそうになる。
216茂のたくらみ再び4:2010/09/08(水) 15:23:14 ID:WskTGRuj
フミエは、涙にぼやける目で茂を見おろした。茂は、さきほどの余裕の
ある口ぶりはどこへやら、目を閉じ、眉をひそめて時折乱れる息を
おさめながら、何かを必死にこらえる表情をしていた。
(感じてくれとる・・・?!かっ・・・かわいい!)
10歳も年上で、いつもフミエを引っ張っていってくれる茂。とりわけ
夜の生活では、何もかもを茂に教え込まれ、フミエの初めては、すべて
茂のものだった。そんな茂が、自分の責めに、感に耐えぬという表情で
必死にこらえている。
うれしくて、つい責める腰に力が入った。だが、それがいけなかった。
フミエは激しく感じ、のけぞって後ろに倒れそうになった。
茂があわててヒザを立てて支えてくれる。
「あなた・・・私、もう・・・。」
茂は上体を起こしてフミエの両腕を自分の首にまわさせると、
「なんだー、もう降参か。しょうがないなあ。ほんなら、俺の首ッタマに、
 しっかりつかまっとけよ。」
後ろに片手をつくと、ひと突き、ふた突き、大きな力で突き上げた。
ただのふた突きで、フミエは自分では越えられなかった壁を乗り越え、
絶頂に達した。甘い悲鳴を耳にここちよく聞きながら、茂も熱情の
たぎりをフミエの奥深くたたきつけた。
217茂のたくらみ再び5:2010/09/08(水) 15:25:11 ID:WskTGRuj
しばらくの間、きつく抱きあったまま息をととのえていた二人は、
深く唇を結びあわせた。まだ息がおさまらないのにむさぼりあうものだから、
くるしくてハアハア言いながら思わず笑いあった。お互いに、いとおしくて
たまらなかった。しばらくして、茂が聞いた。
「エラかった(しんどかった)か?」
「・・・はい。男の人って、大変なんですね・・・。でも、アノ・・・私、どうでしたか?」
茂は内心、思わず吹き出した。フミエの手管など、かわいいものであり、
茂を感じさせたのは、その肉身の柔らかさと、たくまざる媚態の方だったからだ。
「初めてにしては、よかったぞ。」
茂は、笑いをこらえながら、それでも新妻をほめてやった。
「ふふ・・・。あなたがイキそうなのをこらえとる顔見たら、私、かわいいなって・・・。」
「なっ・・・?!///」
茂は思わぬフミエの言葉に、激昂しそうになった。その時、
「キューッ!グルグルグルッ」
茂のお腹が派手な音をたてた。
「たいへん!お昼の用意しとるとこだった!お腹、すいたでしょう?」
フミエはすばやく身支度をととのえると、台所へ立って行ってしまった。
ひとり取り残された茂は、
(かっ・・・かわいいだと?あげにメロメロになっとったくせに、エライ余裕
 じゃなーか・・・?これだから女は油断ならん!今度は、そげなヒマがないほど
 メッチャクチャにしてやるけん、覚えちょけよ!)
「は〜・・・、しかし、朝メシを食うとる奴にはかなわん・・・。」
茂はまぬけな姿をさらしたまま、またしてもよからぬ考えをめぐらせ始めた。

おばば:「あのなあ茂さん・・・男というもんは、女房にかわいい、思われとるのが
     いちばぁ〜ん、得というもんなんですよ・・・。
     ま、今にわかるようになるでしょうが。
     それまでは、せいぜい、たぁ〜んと、おしげりなされ。」
218名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 15:27:03 ID:WskTGRuj
誰も待ってないと思いますが、『茂のたくらみ』の続編です。
いちおう完結です。
219名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 16:18:13 ID:AqB0Fay5
>>213さん
たくらみ激しく乙です

んでもって
自分もついでに「おかゆ」のあたり
小ネタの妄想しました。

三日間寝込んでようやく元気になってきた頃
藍子と喜子が茂の添い寝をしながらぐっすり寝てしまい
フミエはそっと二人をベッドに運ぶ。

茂のところに戻ると
「おかあちゃんは添い寝をしてくれんのか?」
「もう、おとうちゃんたら」
はじまりはじまりー
220名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 17:15:50 ID:iUiceEWS
ここリアル藍子ちゃんとよしこちゃんが見てると想像してしまうw
221名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 20:08:50 ID:h2UWOUqC
ふみちゃん裸エプロン
http://img.ly/22zJ
222名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 20:38:35 ID:duQCiZid
>>213
おばばのナレーションがw全部見とんのかい!
223名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 00:47:10 ID:eStiiBqz
>>213
明るいエロゲゲもいいですなあ
おばばも見たくなるわw
224名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 02:05:24 ID:fiOR+QMQ
>>213
おばばGJ!
そして朝ごはんは大事という教訓。

>>219
激しく好きな展開だ…!

225名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 04:06:47 ID:SX7Q+MdC
>>223
エロゲゲがエロゲに見えて、うっかりエロゲ原画家として働く茂を想像してしまった……

茂「墓場が舞台のエロゲですよ! これは斬新です、きっと売れますよ!」
富田「あのねぇ水木さん、今は学園ものが全盛なんだ、
   第一ね、君の妖姫伝、あちこちからグロゲーだって返品の山なんだよ?」
226名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 10:16:31 ID:O5TMgIN7
>エロゲ
なかなか良いですなwww

朝から笑わせて貰った
227名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 20:24:05 ID:bBM69jp+
>>213
だんだん!
おばばオチとゲゲの次のたくらみへ考えを巡らせるまでの早さにワロタw
228名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 21:53:31 ID:pUoQEMI/
茂のツンデレはイカルゆずりだったか
229名無しさん@ピンキー:2010/09/09(木) 22:47:53 ID:8D/etTcq
神様職人様がたGJ!
でもちょっこし熟年ゲゲフミエロも読みたいんだぜ
と言い逃げしてみる

しかし今日の藍子嫁にやらん発言は自分的に萌えた
藍子ってフミたんに似てるしww
これがフミたんだった場合のゲゲの嫉妬ぶりに置き換えると…
とか妄想した
230名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 01:41:21 ID:DzO+2mOH
>>225
ワロタw
「妖姫伝」w

>>229
今日藍子嫁にやらん発言あったっけ…
けどなんか、そのへんは来週の方が盛り上がるぽい。
明日は久々スーツ&酔っ払いゲゲだ!
酔いつぶれゲゲは結婚式以来だ〜〜wktk
231名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 02:09:33 ID:jEmYc0UU
思春期の娘さんに一緒に風呂に入るのを断られ、「じゃあお父ちゃん一人で入るよ…」と、少ししょぼんとした水木先生に萌えた事はあるw
ふみちゃん娘の代わりに一緒に入ってやってくれ。
232名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 02:44:00 ID:/zCHmGLe
布美さんが茂さんの背中を流すカットが本編に出てこないかとギリギリまで期待してたんだが
(原案本だとスランプの時に描写があったんだっけ?)
角度的に巧く撮れば何とかいけるんじゃないかと思ったんだけど
上半身とはいえ裸シーンはやはりマズイのか…
それとも向井&松下で撮ると生々し過ぎるから?
233名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 05:16:45 ID:lmGOuytz
ヒント:隻腕
234名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 09:40:01 ID:a8arlopP
>>213
>たぁ〜んと、おしげりなされ
「おしげりなされ」の動詞形は、「しげる」?
やっぱりww。
235名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 12:38:20 ID:uRrOnLbZ
イトツ…
236名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 20:22:53 ID:CemwBC/4
スマソ
保管庫に行けない
助けて・・・
237名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 22:38:47 ID:LfKZU6v5
パソコンだと大丈夫だが
まあ人生は流れる雲のようなもんだけんの
238名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 22:53:15 ID:2PZAbJA6
少し先に行ってふみちゃんを振り返るしげさんたまらなかった
おやおやあららら喧嘩とかいくつになってもほんとかわいい夫婦だわ…
239名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 23:06:19 ID:jEmYc0UU
>>236
携帯でも普通に保管庫見られたよ。
240名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 00:40:48 ID:nVZySKcm
あと7時間半・・・・
ハンカチ用意して寝よう。
241名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 11:32:30 ID:+bvD06Qj
イトツ…。・゚・(ノД`)・゚・。

イトツの帰りをいそいそと待つ若きイカルもよかったなぁ。
242名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 19:06:13 ID:YBqM1Bi5
今週はとにかく
和服のフミちゃんが色っぺえええええ
243名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 19:45:52 ID:zswuQ5V7
誰ぞ文才のある方、若きイトツとイカルの話を…
244名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 20:08:53 ID:XOnTIUUa
>>238
二人で浦木に詰め寄る所も萌えたぜw

>>242
そげだな〜
浴衣がパジャマに変わった事がつくづく悔やまれる。
245名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 23:39:54 ID:AQGZxvtq
ふみえが密かにしげるの膝に手を乗せてるのが萌え>浦木に詰め寄る所

イトツがいなくなるのは寂しいなあ…実に良いキャラでした。
246名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 02:34:49 ID:QT1md0ag
和服のフミちゃんはマジで綺麗だな。本物の水木先生が「お母ちゃんは昔から綺麗だよ」と言ってたの思い出す。
ドラマの茂にも言って欲しいが、もうちょっと年齢を重ねないと恥ずかしがって言えないだろうなw
247お静かに…1:2010/09/12(日) 03:34:23 ID:LKabtQy9
過労がたたって突然倒れた茂が、数日の休養を強制されている間、
喜子は嬉々として、茂の傍にまとわりついていた。
最初はそんな喜子を制するのは藍子の役回りだったが、
休養が3日目になるころには、普段なかなか相手をしてもらえない分、
茂を取り合って二人の小競り合いが始まった。
布美枝は二人を叱ったが、茂はそれを制して子どもたちを傍らに置き、
のんのんばあの話や、妖怪図鑑を持ち出しては、季節はずれの怪談話で盛り上がっていた。

結局、どちらが病人かわからないほどに、二人の娘はぱったりと倒れこむように眠りにつき、
3日布団の上で過ごした茂の方は、深夜にも関わらず睨むようにして雑誌を読み耽っている。
布美枝はその横で枕に新しいカバーを付けながら、少し口調に怒気を含めて言った。

「休養するのに、子どもと遊んどってどげするんですか」
「体力使うようなことはしとらん。まあ、藍子の宿題見たときは頭痛がしたが」
小学生の宿題に頭を痛めてしまう父親というのはどうなのだろう…。
呆れて、ついため息が出る。一緒に怒りも何処かに連れて行かれてしまった。

やがて茂は、雑誌を閉じてのそりと起き上がると
「明日からは仕事するぞ」
宣言するように言ってから大きく伸びをした。

「…もう1日休んだらどげですか?」
「もうすっかり良くなった。寝るのはええが、ずっとは退屈だ」

まだ不安の残る布美枝のまなざしが、
知らず知らず口より先に「大丈夫ですか」と問うていたようで、
「心配するな、大丈夫だ」
顔をしかめて枕を受け取りながら言った。

言い出したら聞かないのがこの男の常だ。
それに、あまり食い下がると「仕事のことには口を出すな」と言い出しかねない。
そのことでつい先日大喧嘩をして、布美枝は家を飛び出したのだ。
3日はきちんと休んでいたのだし、これ以上はもう言うまい。
自分を納得させるように、布美枝は「うん」と頷いた。
248お静かに…2:2010/09/12(日) 03:36:04 ID:LKabtQy9
「…試してみるか」
「え?」

茂の言葉に顔を上げたと思った次の瞬間には、
もう布美枝の目は天井に向けられていた。
ゆっくり降りてくる唇。
触れあってもなお、何が起こったのか悟るのに数秒かかった。

「…いけんっ…おとうちゃ…」
無理矢理顔を背けて、口づけから逃れる。
しかし振り払われた唇はすぐに首に落とされて、筋に沿って滑る。
「も…いけんっ…って」
抵抗する布美枝を嘲笑うように、耳たぶを甘く咬まれてふっと息を吹きかけられた。
それが布美枝の「何か」に障った。
かっと目を見開いて、全身の力を振り絞って茂を押し戻し、自身の体勢を起こした。

「もうっ!いけんって言ってるでしょう!」
「ちょ…静かにせぇ」
「休養しとったんですよ?わかっとりますか?」
「わかっちょう!」
「自分をいくつだと思っとるんですか!若くないんです、無理したらまた倒れますよ?」
「人を年寄りみたいに言うな!」
「早い人なら孫もおる年です!」
「だらっ!」

珍しいくらいの布美枝の剣幕に、思わず茂も語気が強くなった。
険悪な雰囲気で互いに背を向ける。

「電気消しますよ。ええですね、寝てくださいよ!」

小さくなっていじける夫を無視して、布美枝は明かりを消すと自分の布団に潜り込んだ。
しばらくして、茂も自分の布団へ戻っていく気配があった。
ほっと息を吐く。
鼓動がまだ激しく内側から胸を叩いている。
本音を言えば、一瞬そのまま流されてしまいそうになった。
249お静かに…3:2010/09/12(日) 03:37:56 ID:LKabtQy9
以前のように、激しい営みが日を空けずにあった若さはもう今はなく、
時おり、思い出したように求められ、胸を高鳴らせてそれに応じていたのだ。
けれど今日は、茂の身体を第一に考えなければならないと思った。
怒ることで必死に自分を抑え込んだ。
無理をさせてはいけない、まして自分のためになど…。

思えば思うほど、目が冴えて眠れなくなった。
口づけさえも、以前がいつだったのか思い出せないほど久々だったのに。
咬まれた耳が、痛いわけでもないのにじんじんと脈打つ。
息苦しくなって、ぱっと布団から顔を出した。
すると、暗闇の向こうでそれに気づいた茂が、反射的に布美枝を振り返る。
闇の中でも、互いの視線がかち合ったことが分かった。
急いで身体を捻ってその視線から逃れる。

ブレーキをかけたのは自分の方なのに、茂の肌をもっと感じたくてうずうずする。
自分の中の制御がだんだん利かなくなり始めたことに、布美枝は焦った。
もう一度求めてきてくれたら、きっと今度は拒まない。
そんな身勝手でずるいことを考えてしまうことに、嫌気がさす。
先ほどのいたずらのような愛撫が、まるで媚薬のように
今さらながら布美枝の身体と心を蝕み、悩ませる。

そのとき。
バタバタっと畳が鳴った。布美枝はびっくりしてがばっと起き上がる。
同時に茂も異変を察知して起き上がった。
二人は顔を見合わせたが、布美枝は顔面蒼白といったふうで、
逆に茂は少しわくわくしたような、少年のような笑みを浮かべていた。

「…畳たたきだな」
「え?」
「妖怪だよ」
「ええっ?!」
250お静かに…4:2010/09/12(日) 03:38:37 ID:LKabtQy9
しんと静まり返る部屋。音はもう聞こえなかったが、逆にそれが妙な恐怖を呼び、
思わず布美枝は這って茂の傍までいくと、その懐にしがみついた。

「…なんも悪さはせんよ」
頭のすぐ上からした茂の声に、少しほっとする。
と同時に、はたと我れにかえって、目前の分厚い胸に意識が移る。

「あ…」
撥ね返しておきながら、またその腕の中に戻ってしまっていた。
落ち着かない鼓動は、いたずらな妖怪のせいではなく
今まさに理性と欲の間に立たされた、どうしようもない焦りのせいだ。
火照る顔をよそに、頭だけがやたら冷静に心の中の矛盾を指摘していた。

「妖怪に感謝した方がええかな」

冗談のような、少し本気なような、茂の言葉に救われた。
愛おしさの勝ちだ、と布美枝は思った。
茂への想いと、そこから生まれるどうしようもない性の欲。
優等生の布美枝の形ばかりの言い訳は押し込められ、愛欲が布美枝の身体を乗っ取った。

ゆるりと茂を仰ぐと、自ら唇を差し出した。
応じる茂の唇から、やがて柔い舌が割り込まれ、絡まって淫らな音を立てる。
隙間から洩れる湿気たため息と、甘い呻きに、身体が熱を帯び始めた。

「…さっきの…」
「ん?」
「おとうちゃんが呼んだの?」
「…俺を妖怪の頭領かなんかかと思っとるのか?」
「ふふ…」

奇妙な現象も、茂の腕の中なら不思議と怖くなかった。
茂と結婚してから、ときたま背筋の寒くなるような気配を感じたり、
「いそがし」などという妖怪の姿だって、この目で見てきた。
きっと、布美枝の気持ちを後押ししてくれた、おせっかい焼きの妖怪なのだろう。
251お静かに…5:2010/09/12(日) 03:39:16 ID:LKabtQy9
「…大丈夫ですか?」
「重病人みたいに言うな」

甘い口づけの合間に、布美枝は茂のパジャマのボタンをはずしていった。
淡いブルーの合わせを開くと、広くて厚い胸が現れる。
頬をすり寄せ、その熱を確認すると、骨を辿るように接吻する。
両耳から顎下にも唇を寄せて、ちらりと舌を這わせてみると、
くすぐったそうに身をよじる茂が、また愛しくてたまらず抱きしめた。

そのままそっとその身体に体重をかけた。
茂の身体がゆっくり布団に沈んでいく。
布美枝は自ら服を脱ぐと、あとから追いかけて覆いかぶさる。

まるで乳房を子どもに与えるように、茂の顔を胸の谷間に抱きしめ、
そして茂は存分にその乳房を口に含んで、先端を舌で舐め吸う。
「あっ…ん…」
その愛撫には、激しさこそ薄れたが、年齢を重ねた丁寧な刺激が練りこまれていた。
何度も何度も愛されて、布美枝の身体に刻み込まれた、茂の愛撫。
この男にしか与えられない快感が、確かにそこにはある。
触れられてもいないのに、両脚の間からじわりと溢れてくるものがあった。

しばらくそうして、布美枝はうっとりと茂を見下ろしていたが、
何やらその動きが妙にぎこちなくなってきて、やがてぴたりと止まる。
布美枝の背中に回された右手にぐっと力が入り、抱きしめられたかと思うと、
柔らかなその胸の中で、はあっと息を吐いた。

「…いけんな」
「どげしました?気分が悪いですか?」
焦って顔を覗き込む。
少し情けない顔をして、茂は布美枝から目を逸らした。

「…年を取るといけん…タイミングを逃すと…」
「え?」
「…下が言うことをきかん」
「…?」
布美枝は身体を少しずらして、茂の脚の間に自分の脚をそっと差し入れた。
いつもなら硬い反応があるはずの場所が、今はどうも事情が違っていた。
茂は顔を横に向けて、布美枝を見ようとしない。
252お静かに…6:2010/09/12(日) 03:39:57 ID:LKabtQy9
「…あたしが…一度止めたからですか…」
「いや…」
「すみません…」
「だから謝るな」

重い空気がその場を包んで、二人は釘を打たれたかのように動けなくなってしまった。
布美枝は身体を起こして座り込み、顔を背けたままの茂の横顔をそっと撫でた。
拗ねたような、しゅんとしたその顔に、きゅっと胸が絞まる。
茂の顔を撫でていた手が、自然とその身体の上を滑るように降下しはじめたのは、
あるいは布美枝の本能が突き動かしたことだったのかも知れない。

胸から腹、そしてその場所へたどり着いた布美枝の手に、
少し驚いた様子で茂は顔を上げた。
見上げたとたんに唇を塞がれて、また少し虚をつかれたかのようだった。
口づけの間に、手が下着の中に挿しいれられ、そのモノへ直接刺激が与えられる。
根元から先へ指が這い、やがて包み込まれて上下する。
身構えて力の入っていた茂の身体が、少しずつ脱力していく。

唇が離れると、布美枝は茂に向かって柔く微笑んだ。
その微笑みの中に何かを見て取った茂が「…待て」と小さく制したが、
布美枝は、胸と腹にひとつづつ唇を落としてから、茂のそれと対面した。

温い唾液と舌の感触に、その場所は一瞬脈打った。
頭をもたげたそのモノに、布美枝は無心で舌を這わせた。
唾液とそうでない液が混ざり合って、微かな光に照らされる。
口内に含んでまた吐き出して、丁寧に先端を吸い、また含む。

「…っ…ぅ…」

その繰り返しに、茂が熱い息を洩らすのが微かに聞こえた。
淫らな水音が部屋の中に響いて、それが布美枝の下半身へも影響を及ぼしていた。
脈打つ生き物はやがてその生命力を回復させはじめ、形を変えていく。
ゆっくり変化していく様を、根元から頭部へ舐め上げて後押しすると、
そこからまた舌と一緒に咥えて下へ上へと刺激した。
布美枝の中で、もう咥えることも困難なほどに別物に成り上がったそれを
荒い息とともにようやく口から取り出して、ちらと茂を伺った。
253お静かに…7:2010/09/12(日) 03:40:38 ID:LKabtQy9
「…どげですか…?」
「訊くなっ」

照れているのか、背けた横顔が何とも可愛らしく、
安心とともに自然と笑みが零れた。

「このまま…」
「いや」

かぶりをふった茂が布美枝の手を引き、自分の胸に抱きしめると
労うように額や頬に口づけをくれた。
その合間に耳元で囁く。
「入れてくれ、お前の中に」
茂の声はこういうときに、どうにもその低音が背中をくすぐる。
そして布美枝の中に潜む淫らな部分を、否応なく引きずり出す。
逆らうことなどできない、だが強制とは違う、不思議な声音。

確認せずとも、茂を受け入れる潤いが十分なのは分かっていた。
布美枝は下着を取ると、今一度、茂の上へ重なり、胸に頬を寄せた。
その鼓動を確かめてから、上体を起こし、
眠りから覚ましてしまった茂の性を、自らの入り口にあてがいゆっくり腰を下ろす。

「ん…っ…」

身体を支える腕が震えていたが、茂の右手がその細腕を掴んでくれていた。
その頼もしく愛しい男も、寄せてくる快感に今は目を閉じている。
頭を下げて覗き込めば、自分の中へと消えていくもうひとりの茂が見えた。
全て呑み込んだあと、大きなため息とともにいったん動きを止める。

「大丈夫…ですか…っ?」
「…その言葉、そっくり返す」
不敵な笑みを浮かべて茂は、ぐっと腰を上げた。
「あっ…も、いけんっ!」
茂を制するように首に腕をまわし、唇が触れる1ミリ手前で囁く。
「無理したらいけん…」
言ってから口づけ、そのまま布美枝の方からゆっくり腰を前後させた。
254お静かに…8:2010/09/12(日) 03:41:14 ID:LKabtQy9
とは言え、布美枝にもさほどの余裕があるわけではなかった。
自分の中の茂が大きくその存在を誇示し始め、膣奥の行き止まりで
まだ先へ進もうとするかのように、強く圧迫してきてハラハラする。
だからといって腰を引けば、すぐさま茂の右手がその腰を押し戻し、
ぐっと貫いたまま離れようとしてくれない。
声を洩らさないよう気遣って塞いでいた唇も、息があがってそれどころではなく
激しい喘息と甘い嬌声が相まって、この上なく艶な空気が部屋を包んでいた。

見下ろした先にぼんやりとにじむ茂の顔に、じわりと浮いた汗が光って
眉間に寄せた皺が、布美枝の腰の動きとともに一段と深くなる。
感じてくれているのだろうか…。そう思うと少しだけ頬が緩む。
いつもは与えてもらう快感を、今日は与える側に居るちょっとした優越感。
それでいて、この上なく蕩けそうな感覚にも包まれている。
このふたりだけの特別な時間を、もっとずっと共に味わっていたい…。

しかし慣れない攻めに、布美枝の体力もリミットを迎えそうだった。
いったん動きを止め、息を整えながら腰にまわされた茂の手をとった。
指を交互に強く握りしめ、布団に押さえ込むと、意識を下半身に集中させて
全体力を総動員して腰の動きを加速させた。

「っは…」
茂が小さく呻いた。
大きな脈動を感じた瞬間、握っていた手を振りほどいて茂が布美枝の腰を強く抱いた。
思わずバランスを崩して、広い胸になだれ墜ちる。
布美枝の中で脈打つ茂から、熱いものが遡っていく感覚を確かめ、
荒い息を整えつつ、張っていた肩の力が抜けていく。
汗の中に混じる茂の匂いに酔いしれて、その胸の上で目を閉じた。
255お静かに…9:2010/09/12(日) 03:41:58 ID:LKabtQy9
翌朝。

藍子と喜子を送り出したあと、一通りの家事を済ませて台所で一息ついていると、
絹代が現れて「買い物に行く」と言う。
「今日から仕事?そげなら鰻でも買ってこようかね」
「…はあ」
母の愛は微笑ましいが、どうしても笑顔がひきつってしまう。

そこへパジャマ姿の茂があくびと共に現れた。
そのボタンが掛け違っているのに気づき、昨日の睦みごとを思い出して、
布美枝は慌てて台所に向き直ると、茂のコーヒーを用意し始めた。

「このだらずが、何時だと思っとるの。50になっても寝坊が直らんとは…」
見上げる絹代に顔をしかめながら、茂は新聞を取って席につく。
「ほんなら、行ってくるけんね」
「はい、気をつけて」
笑顔で送り出す布美枝。全く我関せずといった風の茂。
すると
「…ああ、そうだ」
絹代は玄関へ向かう足を止め、今一度部屋に向き直った。

「しげぇさん」
「あ?」
「布美枝さん」
「…はい?」

「あんたやち、夫婦喧嘩も、仲直りも、夜中にするならもちっと音量下げなさい」

瞬間、二人は石のごとく固まった。
布美枝の手から茂に差し出されたコーヒーカップが、
ごとり、と音を立てて落ち、
受け取ろうとして差し出された茂の右手も、それに間に合わず。
机を伝った熱いコーヒーが、茂の膝に零れ落ちた。

「…あっつ!!」


おわり
256名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 17:31:25 ID:bleiC8ac
GJ!
読みたいものを読める幸せかみしめています。
257名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 17:35:06 ID:0ucDs4Dt
ドラマの続きみたいなテンポがイイ!

イカル聞いてたんかw
258名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 19:34:55 ID:w+yaapXV
タイトルの意味が最後に分かった!上手いなぁ〜w

密かに大好物な布美ちゃん攻めにヒーハーした!!
布美ちゃんも大人の女になったんだなぁ〜色っぽくて堪らん!
拗ねたりいじけたりするゲゲルも良かった

年を重ねてもお熱い夫婦でいらして欲しいですな
あと2週間か…(´;ω;`)ブワッ
259名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 22:21:02 ID:QT1md0ag
イカルは夫婦喧嘩も仲直りもお見通しかw一生懸命なフミちゃんが可愛いっす。
260名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 23:52:49 ID:2jlaAC4Y
仲直り編ごちそうさまでした
それにしてもイカルかっけええ
261名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 23:58:22 ID:/RsRq7CO
本スレで散々ガイシュツのフミちゃんシーツ干しエピが、今更だが気になったw
「いつも一枚しか干してない」とか指摘されとるしw
262名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 14:27:04 ID:gpXaXIpA
>>261
それはもちろん、一枚でむにゃむにゃ・・・で汚し、
キレイな方で寄り添って眠るからです!(キッパリ)
263名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 23:29:34 ID:msrTJRU1
>>262
漢らしい答えに惚れた

和服・浴衣の寝乱れフミちゃんを想像して
今日の肴にしようっと
264名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 00:37:29 ID:VxJ3g5hB
浴衣>>>超えられない壁>>>パジャマ
なんだよなぁ
「帯を解いて…」とかのフレーズがそもそもエロいじゃないか。
寝乱れもしやすいしw
265名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 00:41:34 ID:thpVQpwU
そうそう
フミちゃんのパンツを、なんてやだw
266名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 22:08:28 ID:1Hyi71Hk
>>263
寝乱れフミちゃん・・・ええですな〜
>>264
浴衣の方が脱がせるの楽しいだろうしなw
267名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 22:48:45 ID:FjR3r+K3
裏木がフミエをだまして寝取り未遂するのをおながいしまつ。
あくまで未遂w
268名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 23:46:58 ID:poePI52i
すんでのところでしげるがふみえを救出→浦木つまみ出される→その後、ゲゲふみイチャラブ
こうですね。わかります。
269名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 23:51:35 ID:H+x0ULsI
浦木はつまみ出されるのが日本一似合う男w

ゲゲふみイチャラブの前に
「騙されるな!だらっ」のようなドSしげさんお願いします。
270名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 00:49:40 ID:MrcK3Dkd
今度は浦木をダシにw
271名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 00:57:59 ID:2ZQmnBT7
>>268 >>269
その展開、激しく期待…!

窪田ミナさんのスタジオパーク再放送キタコレ!
わけーな、ゲゲフミ萌える…w
272名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 13:10:50 ID:XjHAslWG
今日の話、藍子の見合い話にハラハラしながらも
ゲゲの「お母ちゃんをいじめるな!」にちょっこし萌えてしまった。
273名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 13:13:15 ID:u2wu08UO
おかあちゃんをいじめるな萌えた
本スレのおかあちゃんをいじめていいのは自分だけ説に転げ回った
274名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 15:36:53 ID:8bAH0w4G
>>271
無言で肩ポンにフハーッですた
新婚時代見直したいなあ……
275名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 15:42:02 ID:7yxllDkE
ガキ大将だからなあw
俺のものは俺のもの
お前のものは俺のもの
大正男がさらっとああいうラブラブ台詞を言うところがええわあ
276名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 22:46:07 ID:VPwNMoXQ
「お母ちゃんを苛めるな!」
萌えに任せて叫んでやろう!と思ってたら
もう既に書き込まれておったw
流石このスレの住人の皆様だwww

ノッポのフミちゃんが、涙目で小っさくなってる所を
“よ〜しよし”って、頭いい子いい子してあげるゲゲが浮かんださw
全然色っぽくない…
ギャグになってしまう…

277名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 23:06:07 ID:XmaVlc2J
お母ちゃんをいじめるなは良かった
歴代萌えシーン10位以内には入るな
278名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 23:19:56 ID:SprfP4FO
こんなのもあったw藍子のセリフがナイス
http://twitpic.com/2oksl0
279名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 23:32:51 ID:2ZQmnBT7
>>275
それなんてジャイアンw

>>278
ナイス!
藍子、おもっきし悪役みてぇw

今日ステラ買ってきた。
ネタバレになるからアレだが、写真が(・∀・)イイ!!
280名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 23:58:42 ID:cNsmkY6q
「お母ちゃんをいじめるな」発言盛り上がってるねw

>>279
ステラ自分も買ってきた。
写真良いよね。何か泣きそうになってしまったけどw
昨日の窪田さんのスタパも良かった
あの映像や写真の数々はココの住人向けだと思うw

明日のスタパはフミちゃんか・・・
281名無しさん@ピンキー:2010/09/16(木) 01:24:24 ID:cs8OdWDD
困ってるだけで何も助けてくれない母親って感じ
フミちゃんの母親っぷりはイラッとくる
282名無しさん@ピンキー:2010/09/16(木) 07:20:49 ID:xDZvsIv1
>>278
茂可愛いのう
お母ちゃんがいじめられるのは自分のせいなのに〜。
この前の夫婦げんかもイチャイチャしてるようにしか見えなかった。

ステラの写真、戌井さん夫婦もちょっとあって嬉しかった。

283名無しさん@ピンキー:2010/09/16(木) 09:27:31 ID:KKDd+TVa
>>268
激しく読みてぇぇぇ!
職人さん降臨求む。

娘も大きくなって2人の年齢も上がったし
萌えも減るかなーと思っとけど
全然そんな事なかったぜ!
お母ちゃんをいじめるな とか
おやおやあららら とか
まだまだ萌えシーン期待できそうだのぅ
284おしおき1:2010/09/16(木) 10:03:44 ID:G3GGWs3K
 ガタッ、ガタガタッ。ワワワワン!ギャン!ガラガラッ。バシッ!
「しっしっ!あっち行け!このクソ犬!」
乱暴に木戸を閉める音と犬の鳴き声に、フミエは何事かと外の様子を
うかがった。茂は出版社めぐりに出かけて留守だった。
浦木が青い顔をして玄関に飛び込んできた。
「いや〜、ひどい目に合いました。石をけっとばしたら野良犬にあたって・・・。」
犬に食いつかれたらしく、浦木のズボンには大きなかぎざきが出来ていた。
フミエはしかたなく裁縫箱とバスタオルを持ってきて、
「これに着替えて待っとってください。かがりますけん。」
浦木をうながした。
「いや〜、すまんですな、奥さん。助かります。」

 浦木は遠慮もなにもあったものではなく、ベルトをはずしてズボンを
おろしにかかった。フミエがあわてて顔をそむける。
・・・浦木はなんだか妙な気分になった。
今、自分はあるじのいない家で、細君を前にズボンをおろそうとしている。
(な、なんだ?この気持ちは・・・。)
今の今まで、幼なじみの茂の妻に、けしからぬ気持ちなど抱いたことはなかった。
晩婚の茂が見合いでやっと迎えた嫁は、10歳年下とはいえもう30まぢかで、
浦木とタメをはるほどのっぽでやせぎすの、およそ色気のない地味な女だった。
(だが、この女、最近みょうに色っぽいんだよな・・・。)
浦木が妙な気を起こしたのは、この家の雰囲気もあった。赤貧洗うがごとし
と言った感じのボロ家なのに、一歩はいるとあたたかく、幸せな空気に
あふれている。茂にかいがいしく仕えるフミエ、そんなフミエに対して
ぶっきらぼうに振る舞いながら、明らかにぞっこん参っているらしい茂を、
(このイタチ様の目はごまかせねえ。だが、なさけないねぇ・・・。)
ほほえましくもばかばかしく、浦木は観察していた。
285おしおき2:2010/09/16(木) 10:04:34 ID:G3GGWs3K
 だが、それだけではなかった・・・。この家に漂うものは、茂とフミエの間に
かもし出される、濃厚な愛の気配・・・。
(さぞかし毎晩はげんどるんだろう、ご苦労なこった。)
だが、二人目の妻にも逃げられ、さびしい生活を送る浦木は、この家の
甘すぎる空気にあてられてもいた。
「お、奥さん・・・!」
浦木は思わずフミエの後姿に抱きつこうとした。だがズボンがおろしかけ
だったため、歩幅が狂ってフミエをまきぞえにして倒れこんだ。

「だらっっっ!何をやっとるーーっっ!」
大喝とともに、浦木はえりくびをつかまれて引きはがされた。
「ま、待てゲゲ、これにはわけが・・・。」
フミエは押し倒されてわけもわからずぼう然と二人を見上げていた。
「???あら、あなた、お帰りなさい。」

浦木はほうほうの体で逃げ出した。
(いけんいけん。俺は何をやっとるんだ!ゲゲの女房に手を出そうとする
 なんて・・・!)
ようやく安全なところまで来ると、今来た方向を振り返って
(ふぅ〜。死ぬかと思った。・・・しかし、女房を寝取られでもしたら、
 ゲゲの奴、ほんとに俺を殺しかねん。あぶないあぶない・・・。
 それにしても、あの家の雰囲気には、男を狂わせる何かがあるな・・・。)
当分あの家には近づくまいと、浦木は走るようにして駅へ向かった。
286おしおき3:2010/09/16(木) 10:05:19 ID:G3GGWs3K
 浦木を玄関まで追いかけたが、逃げ足の速い浦木の姿はとうになく、
茂は鬼の形相で部屋にもどって来た。
「イタチに何をされたっ!」
「?・・・あの、浦木さんが犬にズボンを破られたんで、直してあげようと
 して・・・。そしたら浦木さんがズボンにひっかかって転んだんです。」
たしかにかたわらには裁縫箱とバスタオルがあり、何よりも無邪気な
フミエの表情が、何もなかったことを証明していた。
(だが、浦木のあの目・・・。俺にはわかる。あいつは明らかにフミエに
 欲情しとった・・・!)
フミエに関してはおそろしくするどい茂のカンはあたっていた。救いなのは、
フミエにその気がなかったことだが、無用心なことこのうえない。
「おまえ、女学校で婦徳というものを習わんかったのか?」
「?」
「亭主の留守に他の男を家に上げてはいけん!」
「いやだ、浦木さんですよ・・・?」
「浦木だろうがなんだろうが、男は思いもかけん相手に発情することが
 あるんだ!魔がさすと言うやつだ!たとえ二階の下宿人のような
 かそけき男でもな!
 だけん、女の方が身をつつしんで用心せねばならんのだ!」

 あきれたように微笑むフミエを乱暴に押し倒し、スカートの中に手を
つっこんで秘所をさぐりあてる。あまりのことにフミエの身体は硬直し、
いつもならすぐにうるんで茂への愛を示すその場所は、固くとじられ、
何のうるおいもなかった。
濡れていたらどうしよう、と思っていたのもたしかだ。茂はひっこみが
つかなくなってフミエの唇を奪った。
強引にこじあけ、舌を吸って愛撫する。指をさし込んだままの場所がゆるみ、
茂の指が動きやすくなった。
(お前が、うっかりしたことをするけんだ・・・!)
茂は、身勝手な理屈で自分をごまかし、フミエの下着をはぎとると、
今の出来事に思いがけず勃興したものをつき入れた。
287おしおき4:2010/09/16(木) 10:06:03 ID:G3GGWs3K
「いやっ・・・いやぁっ・・・!」
フミエはあらがったが、茂にくさびを打ち込まれた下半身は動かすことも
できない。畳の上に押さえ込まれ、茂の激しい腰の動きに責めあげられて
次第に言葉は意味をうしなっていった。
 強引な挿入が、いつしかいつもどおりの愛の行為となる。きょうの茂は
いつもより激しく、ちょっとこわかったけれど、フミエを絶対に離さない、
という執着が感じられて、フミエは愛される喜びにおぼれた。

 嵐のような時間がすぎて、茂は身支度をととのえると、まだ起き上がれず、
散らされたままのフミエを見下ろして、
「お前は危なっかしくていけん。俺が言ったことを忘れるなよっ。」
言い捨てると、仕事部屋に入ってフスマを閉めた。
 玄関に人の気配を感じ、フミエはあわてて洗面所に走った。
身づくろいをしながら、やっと今までの出来事を振り返る余裕ができた。
どうやら、茂は浦木とのことを、過大に誤解しているらしい。
(だけんといって・・・。こげな乱暴するなんて・・・。)
だが、今フミエの中を通り過ぎた嵐は激しくも甘く、思い出すだけで胸が
たかなった。
茂以外の男など、考えたこともなかった。だが、たしかに茂の言ったとおり、
フミエにその気がなくても、男の力にはかなわない。
(そんなことになったら生きておられんわ・・・。でも・・・。)
その時は茂に殺してもらいたい・・・、フミエはそんな非日常的な幻想に
とらわれ、夢見ごこちで洗面所を出た。

「やあ奥さん。ただいま帰りました。これ、畑で安く売ってもらったんです。
 家賃が遅れとるおわびです。」
中森が、真っ赤に熟れたトマトを、満面の笑みを白い顔にうかべて差し出した。
(この人も・・・?まさか・・・。)
「あ、ありがとうございます・・・。」
フミエは、いくらなんでも心配性にすぎる、とおかしく思いながら、
トマトを受け取った。
288名無しさん@ピンキー:2010/09/16(木) 23:37:08 ID:TfoND4fu
>>284
GJ!!リクエストSSキター!!
ちゃんとゲゲもドSだ…萌えた。だんだん!
中森さんは次回へのフラグ…?!

こうやってすぐにレスポンスできる職人さん尊敬する。
289名無しさん@ピンキー:2010/09/17(金) 00:05:41 ID:thaGbA/z
熟練の職人技だ!
およそ色気のない地味な女のところで
水木画伯の家内の絵が浮かんで困った
290名無しさん@ピンキー:2010/09/17(金) 00:09:19 ID:Ar1SpQn2
かそけき男、中森さんorz

荒々しい茂さん萌え
だんだん!
291名無しさん@ピンキー:2010/09/17(金) 03:35:42 ID:ajMejD/l
職人神様キター!
だんだん!
292名無しさん@ピンキー:2010/09/17(金) 03:54:53 ID:A07VIOS7
リクエスト小説投下ktkr!!
職人神様だんだん〜!
ふみちゃんが濡れてないか指突っ込むゲゲの容赦ない所が良かったw
たまには無理矢理もええもんですなぁw

甘々ねちねち苛めるゲゲとか〜
苛められた仕返しに小悪魔ふみちゃん降臨!とか
拝読したいでげす('・ω・`)
293名無しさん@ピンキー:2010/09/17(金) 09:21:26 ID:0ShVML2E
怒りの勃興編キター!www
中森さんのタイミングに笑った〜あぶなかったもう少しで(ry
ドSしげさんも読めて幸せです、だんだん。

浦木はズボンが中途半端なまま、つまみ出されたのかw
294名無しさん@ピンキー:2010/09/17(金) 09:33:22 ID:sLfGijC5
けさの
芋ぜんざいの「も」に過剰反応したゲゲ

お母ちゃんの作る料理はみんな俺のもの
俺が主役でなくちゃイヤ
お母ちゃんは俺ひとりのもの

みたいな激しい独占欲を感じましたw
295名無しさん@ピンキー:2010/09/17(金) 10:48:04 ID:VAP6KWq/
>>294
私も聞きのがさなかったよ〜ww。
ふみちゃんの料理は、あくまでも自分のために作られるものであって、
他の人間はそのご相伴にあずかるだけ・・・ってこと?
さすがふみちゃんの実家で「オラが全部食う!」って言える先生だw。
296名無しさん@ピンキー:2010/09/17(金) 19:13:01 ID:/vQrofDX
今更ながら松下さんのスタジオパークを見た。クランクアップのくす玉の紐を引っ張る時、茂がふみちゃんの手をにぎにぎしてる動きが妙にエロかったw
しかもアップでずっと映してるし。カメラマンはここの住人か?
297名無しさん@ピンキー:2010/09/17(金) 20:08:11 ID:lVqhG/mf
ワロタw
298名無しさん@ピンキー:2010/09/17(金) 23:58:10 ID:TDW0O2sp
>>296
しかもスローモーションと解説つきw
299名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 00:24:11 ID:oPMlqRol
スローモーションも相まってやたらエロく見えた…
追いかけて全体をぎゅって包む動きがたまらなかった

あとずぶ濡れのあいこさんエロかった
300名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 00:42:23 ID:RWptAjJh
あの、手にぎにぎ、良いよね。
「離さんぞ」「逃がさんぞ」って言ってる感じw
301名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 03:25:59 ID:ZsFMUSsu
ドラマ本編ではせいぜい肩に触れるとか、頭なでなでぐらいだったからねえ。
最後だからお父ちゃんにぎってやる!って何かスシ王子みたいだな。
302名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 11:36:39 ID:gqXlaa0l
茂「お母ちゃんをいぢめるな」
藍子「何よお父ちゃんなんか毎晩お母ちゃんをいぢめてるじゃない」
布美枝・雄一「………」
喜子「そうだよー、お母ちゃん『もう堪忍』って叫んでたもんね」
303名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 11:45:43 ID:oDdJCbak
おとうちゃん壁の防音をなんとかしなきゃ
304名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 16:31:22 ID:DMZXsJQ8

>>301
「あんたは手先が器用だなあ」
→手首つかんでしげしげ見る→はっとして離す
というのはあったなあ

>>302
ワロタw
305名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 18:25:54 ID:z5ZYRfc1
>>304
あの場面にはたぎりましたなぁ〜
触った!褒めた!照れた!…と、自分の中でまつりになったよw
306名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 22:58:19 ID:eMdsECZh
>>304-305
その週はラストにヤッターダンスに頭なでなでという祭りもありましたな

もう、本当に来週で終わってしまう・・・(涙)
307【冬来たりなば】前書:2010/09/18(土) 23:59:43 ID:lrzvGBoy
ぐっと遡り、新婚当初の挿話。
深大寺初デート(&初夜)から、少年戦記の会発足までの幕間。
またも長くなった上に、需要に逆行してしまっているようで申し訳ない。

ナズナ開花…もとい開発。
大好きな旦那に目覚めさせられる布美さん

女房の笑顔がお気に入りで涙には弱い、優しいゲゲさんの巻。
308【冬来たりなば】1/9:2010/09/19(日) 00:01:16 ID:lrzvGBoy

 あの夜のことは、あまりよく覚えていない。
 漠然と想像くらいはしたとはいえ、床入(とこい)りの知識などろくになかったし、
緊張と羞恥と驚きのくり返しの中、ひたすら相手に身を任せ耐えていただけだった。
 涙が止まらず、彼を困らせてしまったような気もする。
(呆れてしまわれたかな)
 初めて贈られた自転車で深緑の寺へ連れられ、少しあの人に近づけたと思えたのに。
 少々風変わりだけど、笑顔が無邪気な、花を愛する、少年みたいな男(ひと)。
(…しげぇ、さん)
 まだ名を呼べない気後れはあるものの、もっともっと彼を知りたいという気持ちは止まらない。
 自分はちゃんと、あの人の妻が務まるだろうか。
 何か役には立てないか。
 少しは好いてもらえるだろうか。
 結婚して、ひと月足らず。
 その実、最初に枕を交わした日以来、一度も求められていない。
 ぼんやりと湯船に浸かりながら、布美枝は、輪郭の滲む躰を見下ろす。
 背ばかりがひょろひょろと伸び、胸はさほど大きくならず、腰の張りもあまりない。
 義父は美人好きの映画道楽らしいし、息子の茂もまた、女優のような女が好(い)いのだろうか。
 そうすることが義務だから新妻を抱いただけで、事を済ませれば必要とされないのか。
 もう、抱きしめてはくれないのだろうか。
 触れてはもらえないのか。
 湯煙の中、布美枝は、自身の乳房を包み込んだ。
 茂の愛撫の感触を思い出そうとする。
 あの人は、熱かった――。
 瞼を閉じ、夢想の彼に縋る。
309【冬来たりなば】2/9:2010/09/19(日) 00:03:04 ID:jkxpNrR0

   *   *   *

 風呂を済ませた夫は、既に寝(やす)んでいるかもしれない。
 居間の戸口から覗くと、火の気のない仕事部屋で、茂が背中を丸めて何かしているのが見えた。
 原稿描きではないようだ。
「よし」
 満足げに頷いている、彼のそばに近寄る。
「、あの」
「お」
 茂は顔を上げ、にこっと笑った。
 眼鏡を外した、子供みたいな笑顔にどぎまぎする。
「どげだ」
 指差す先に、盆に載せた楕円の雪の塊があった。
 南天の実と葉、炭団のかけらを付けた、ウサギの造形。
 夜になってやんだ雪を、庭で集めて作ったらしい。
「よう出来とるだろ」
「ええ」
 隣に膝をついて、身を乗り出す。
 尾に見立てた雪玉も愛らしく、ヘラで削り上げた足も巧みだ。
「可愛らしいですね」
「あんたもな」
「え」
 不意打ちの一言に、鼓動が跳ねる。
「あれ、あの一反木綿。えらい丁寧に作ったなあ」
 彼に貰った描画を端切れで縁取った、手製の額縁を指しているのだと気づいた。
「あんたの作るもんは可愛げがある。境港の実家は男兄弟ばかりだったけん、
イカルはあげな可愛いもんは置かんだった」
 茂は居間を振り返り、親指で空(くう)を指す。
「知らんうちに、綻びもあちこち繕ってあるな」
「あ、あの、いけんでした?」
「いや。毎日ちょっこしずつ、ウチの様子が変わっとるのは面白い」
 茂と暮らし始めたこの家を、自分の手で整えていくのは、布美枝の日々の楽しみでもあった。
 そのささやかな努力を認めてもらえたようで、ほわりと温もる胸元を押さえる。
 夫の一挙手一投足に翻弄される、自分を静めるふうに。
「どげした、赤い顔して。風呂場でのぼせたか」
 慌てて首を横に振る。
「あの」
「ん?」
「もう1つ、作らんとですか」
 雪像を指差す。
「1羽きりでは、きっと寂しいですけん。かわいそうです」
 瞬いた茂が、ふっと微笑む。
「そげだな。連れがおるのも――悪くない」
 間近で見つめられて、動けなくなる。
 出逢った時に惹かれた、笑顔。
(…ああ)
 自分は、この男(ひと)が、好きだ。
 瞼の裏が熱くなり、布美枝は思わず目を伏せた。
310【冬来たりなば】3/9:2010/09/19(日) 00:04:16 ID:jkxpNrR0

「おい?」
 顔を覗き込まれ、涙が滲むのをこらえる。
「灯油代、節約し過ぎたか。風邪でもひいたか?」
 さらりと前髪を持ち上げられ、大きな掌が額を覆った。
 やがて顔が近づき、こつん、と額がくっつく。
 綺麗な、黒く澄んだ瞳が、目の前にあった。
「ん〜、わからんな」
 離れかけた茂の寝間着を、とっさに掴んで引き留める。
「、お」
「あ」
 正直な自分の手に驚く。
 できるなら、そばにいたいのだとか。
 話すだけでなく、触れていたいのだとか。
 伝えたいことはいろいろあっても、うまく言葉にできない。
「――どげした?」
 さっきよりも低く、柔らかく問う声が、躰に沁み入る。
 布美枝は、こくんと喉を鳴らした。
 正座を整える。
「あ、の。お仕事」
「うん?」
「今日も、遅くまでされますか」
「いや。締め切りはまだ先だけん。急いで仕上げるもんはない」
 きょとんとした彼のまなざしを正視できず、俯きがちになる。
「ほんなら…あたし、一緒におっても…ええですか?」
「一緒に、って」
 訝る茂の前で、頬が熱くなるのを感じる。
 切ないような焦りに急かされた。
「あ、あたしがなんも知らんですけん、物足りないと思われとるかもしれません。
まな板みたいな一反木綿なのも直せません。けど、あの」
 女の方から懇願めいた我儘など、はしたないと疎まれまいか。
 けれど、布美枝が切り出さなければ、おそらく彼はそんな素振りを見せないのではないか。
 もしかしたら、このまま、ずっと。
 それは、――嫌だ。
 ようやく、この人のことをわかりかけてきたのだ。
 もっと知りたい。
 近くにいきたい。
 温もりを感じたい。
 せめて、もう一度。

311【冬来たりなば】4/9:2010/09/19(日) 00:05:10 ID:jkxpNrR0

 茂は黙って、こちらに見入っている。
 顔を赤らめて身を固くしている妻の様子に気づいただろうか。
「あんた」
「は、はい」
 びくりと反応すると、苦笑された。
「辛いことを、無理してせんでもええ。ああいうことが苦手なら、それでもええんだ。
俺は気にしとらんし、あんたも気にせんときなさい」
「…気にして、くれんとですか…?」
 穏やかな気配に、途方に暮れる。
 ぽふっと頭に手を置かれ、ふわふわと撫でられた。
「あの晩、ようけ泣かれたけんなあ。さすがに気が咎めた」
「す、すんません」
「初めてだけん、躰がびっくりしたんだろう」
「…はぃ」
「あんたの目玉はおしゃべりだ。このウサギみたいな目、しちょったな」
 茂は、手元の塊をちょいとつつく。
「あんたは、笑っとる方がええ。家ン中が明るくなる。それで充分だ」
 「外に出してくる」と盆を持って、茂は濡れ縁に向かった。
 半纏を羽織った、その背中を見つめる。
 ――あの広さに、縋れたら。
 彼の動きを目で追っていると、戻ってきた茂が不思議そうに立ち止まる。
 布美枝は、膝上の拳から力を抜いた。
「…ウサギが」
「ン」
「寂しいと死んでしまうというのは、本当でしょうか」
 静寂に、呟きが響く。
 しばらく噤み、佇んでいた茂は、おもむろに机に向かい胡座(あぐら)をかいた。
 所在なげに、後ろ髪を掻いている。
 ついさっきまで、それが鎮座した場所を見ていた。
「――飼い主がちゃんと面倒をみんかったり、相手してやらんかったら、どげな動物でも元気をなくすだろうな」
 体力のない仔ウサギは、親兄弟と引き離されると、体温を保てなくて死ぬという。
 保温が必要なのは、変わらない。
 動物も、人も。
 茂は宙を仰ぎ、軽く息を吐いた。
 その横顔を、布美枝はじっと待つ。
「また、泣かせてしまうかもしれん」
「…はい」
「途中では、やめられんぞ」
 返事の代わりに頷き、向き直った夫にそっと腕を引かれ、厚い肩に額を寄せた。

312【冬来たりなば】5/9:2010/09/19(日) 00:06:17 ID:jkxpNrR0

   *   *   *

 雪面に月光が反射し、灯りを消してもほのかに明るい夜だった。
 布美枝の長い髪を、茂の大きな手がゆっくりと梳く。
 普段から撫でられる折もあり、髪に触れるのが好きな人なのかな、とぼんやり考えた。
 夜具に敷き伸べられ、頭を抱え込まれるように、髪の生え際に口づけられる。
 ちょこんと鼻先も啄まれ、擽ったくて肩を竦めたら、「こら」と囁かれた。
 視線が重なり、ゆったりと唇が重なる。
 緩慢かつ濃やかに、舌を搦めとられる心地好さに、布美枝はとろんと弛緩した。
 耳からうなじを撫でていた手は脇腹を伝い、浴衣の上から軽く乳房を揺すぶる。
「ッん、――ふ」
 乳輪に円を描くように、先端を捏ねられるたび、布美枝は吐息を漏らす。
 茂の唇が喉を這い、顎が衿の重ねを寛げた。
 尖り始めた乳頭を、上歯と舌でねぶられ、吸われる。
「は、…ぁ、ン――あ」
 舌は谷間を下り、臍の辺りを舐め、帯を解かないまま、裾をまさぐられる。
 内股をさすりながら押し開かれ、下腹に茂の顔が埋まった。
「!ッあ」
 メリヤスの布地の上から、敏感な部分を食(は)まれる。
 とっさに、手の甲に口を押し当てた。
 急激に刺激を与えないよう、配慮してくれているのかもしれない。
 が、布越しに伝わる息の温かさと間接的な接触に、焦らされ昂(たか)ぶってしまう。
 窄めた舌に強めに圧(お)され、じわりと奥から濡れ出した。
「…は、――ぅ…」
 恥ずかしさともどかしさでもがくうちに、自然と足が開いてゆく。
 下着を外され、立てた膝を大きく割られ、布美枝は思わず腰を浮かせた。
 恥毛に唇が置かれ、やがて中央へ辿り、じかに襞に触れる。
「あッ…ん、ぅ――」
 包皮に潜む花芽を舌で慈しまれ、転がされたり弾かれたりしては、ぴくんと躰が跳ねた。
 息づかいは荒くなり、腰は無意識に揺れ、突き出す動きになる。
 充血した割れ目を舐められる頃には、愛液が溢れ出していた。
 脚を肩に担ぎ上げられ、露わになった膣口に舌が挿し入れられ、擽るように愛撫される。
「ぁあ、…ハ、――ん、ッあ、あ…」
 感極まった涙声で、布美枝は身を捩る。
 深く泳ぐ舌の、粘膜と内壁が擦れ合う感触に、背を撓らせた。

313【冬来たりなば】6/9:2010/09/19(日) 00:07:18 ID:jkxpNrR0

「ん、…ンッ、――あ!」
 綻んだ陰唇に、つぷりとめり込んだ長い指の、関節が曲がる。
 しこりの上部を緩やかに押し上げられ、下腹の奥が膨らむような感覚に戸惑った。
 違和感が、強烈な快感にすり替わる。
 次第に速まる慰撫に、布美枝は敷布を掻き毟った。
 ぽろぽろと零れる涙を、茂が唇で吸ってくれる。
「あ、――あ…やッ」
 ふと手を止めた夫に、叫ぶように乞うた。
「や、…めんッ――で…」
 やめないで、と舌足らずにねだる。
 再び始まった圧迫に、首をのけ反らせて悦んだ。
 ひくひくと跳ね上がる腰を、自分では止められずに嗚咽する。
「…もぅ、がま、ッ――きな…」
「せんでええ」
 内に溜まった熱が破裂しそうになった時、すっと指を引き抜かれる。
 痙攣する大腿が、がくんと揺れて、硬直し。
 「あ」と思った瞬間、せっぱつまった朱室は爆ぜた。
 火照(ほて)った丹穴から噴き零れた体液が、腰に纏わりついたままの浴衣を濡らす。
 数度の極まりを、投げ出した手で畳を引っ掻き、布美枝は耐えようとした。
「ァ、ふ。…ッ、――ぅ」
 放出の後味に、自失の眩暈を感じる。
 随喜で泣きじゃくるほどの快楽を、生まれて初めて思い知った。

「大丈夫か」
 涙を拭われ、口づけられ、顔を覗き込まれる。
 何が起きたか、わからなかった。
 絶頂へ導き促した夫を、茫然と仰ぐ。
「あ、た…し」
 額に張り付いた髪を払い、彼はそこにも唇を置く。
 胸に抱き寄せられて、優しく肩を撫でられ、呼吸を整えた。
 躰の熱を下げるような休止の仕草に、おずおずと窺う。
「あ、の…、あな…たは」
「まあ、なんとかなる」
 そこまで気を遣われるのかと驚く。
 密着していれば、彼の変化と我慢にも、当然気づく。
「あたしは、大丈夫ですけん。あの、ちゃんと…欲しい、です」
 上擦った台詞に、布美枝は頬を紅潮させる。
 ぽりぽりと頬を掻き、茂は、「すまん」と耳元に落とした。
 謝らないでと答える代わりに、彼の顔を撫で、布美枝は初めて、自分から口づける。

314【冬来たりなば】7/9:2010/09/19(日) 00:08:16 ID:jkxpNrR0

 甘えるように、夫の首に腕を回した。
 熱く膨張し、じわじわと割り入ってくる陽根に、息が切れる。
「ひぁ、――ッ…」
 やはり気遣われているのか、先端だけを挿し込まれ、いったん止められる。
「辛い、か」
 慣らせるように小刻みの振動を加えられ、却って堪らない。
「あ、…はや、――く」
 もっと、深く。
 全て、奪われたい。
 軸を中心に、ゆっくりと掻き回すように進入される。
「あ、ぁア、…あ――」
 迸る声が、段々と高くなってゆく。
 奥まで到達した彼が、頭上で深呼吸する。
 今、夫が自分の中にいる。
 充足感と疼痛の間を浮遊した。
「…動く、ぞ」
 低い宣告に夢中で頷き、目の前の肩にしがみついた。
 銜え込んだ熱量の塊を、引き抜かれては押し込まれ、胎内に刻まれる。
「ん、ッン、――あ!…ぁ、ア」
 酷く反応した箇所を幾度も攻められ、布美枝は、蕩けるような悲鳴を上げた。
 涙が溜まる目尻に、茂が痛ましげに口づけてくれる。
 苦しいわけでも、辛いのでもない。
 誤解させたくなくて、懸命に言い募る。
「あ、な…た」
「…ああ」
「好きに…して、ええですけん…――離れんで、ごしない」
 お願いだから。
 ――離さないで。

315【冬来たりなば】8/9:2010/09/19(日) 00:09:21 ID:jkxpNrR0

 ふっと茂の動きが止まった。
 意に染まぬことでも言ったかとうろたえた布美枝は、夫を見上げる。
 真上の男の、澄んだ眸の底に、何かが揺らめくのを見た。
「…」
 言いかけて噤んだ、茂の唇が静かに届き、やがて、噛みつくような激しさに変わる。
「…ッ、――っ、ん…ぁ」
 鋭く膣を抜き挿す、卑猥な音が響いた。
 硬い激情に炙(あぶ)られた、狭い柔肉が馴染んでゆくのがわかる。
 彼の、形に。
「ぁ、…な、ッた――」
 忙しなく肩を喘がせては、うねる抽入に痺れ、布美枝は甘く呻いた。
 覆い被さる茂がくぐもった声で、「食い、千切…られる」と呟く。
 その端正な眉根が詰く寄せられているのを見、己の躰で夫が感じてくれることが素直に嬉しかった。
 体臭が混じり合い、蒸れた熱気が満ちる。
「ッ、ン。は…ぁ――あ」
 月夜に冴える、布美枝の裸体は、水揚げの魚めいて過敏にのたうつ。
 結合の隙間から滴る愛液に、臀部まで濡れそぼった。
「――て…」
 絶える息の下、茂の胸に縋りつき、必死に哀願する。
 どうか、そばに。
「置い…て、ごし…な」
 膝を持ち上げて押し広げられ、圧伏される勢いで突き上げられ、角度の深い接吻を交わす。
 詰く内壁に包まれた茂の質感が、一際大きく脈打った。
 彼の肩越しに、踵(かかと)が空(くう)を蹴る。
「ッん――!」
 駆け上がる昇天を、最も深い場所で共有した。
 熱い奔流が、躰の奥底に押し寄せる。
「…っ、…は…ぅ――」
 荒い呼気を鎮め、伸し掛かる夫の重みがもたらす幸福感に、布美枝はうっとりと目を閉じた。

316【冬来たりなば】9/9:2010/09/19(日) 00:10:28 ID:jkxpNrR0

   *   *   *

 痴態を晒した気怠さと悦楽の名残で、夢見心地で仰臥する布美枝に、茂が半纏を掛けてくれた。
 彼の匂いが、じかに肌に香る。
「寒くないか」
「平気です」
(あなたが、いてくれるから)
 にこりと返せば、茂も笑って、綿の上からぽんぽんとはたいた。
 そのまま布団ごと、抱きしめられる。
「境港の西風に比べたらマシだが、もうしばらくは辛抱だ」
「はい」
 明日晴れたら雪掃きして、洗濯して、そして雪ウサギを作ろう。
「来月の頭にな」
 茂の手櫛が、もつれた布美枝の髪を解く。
「深大寺でだるま市がある」
「だるま市、ですか」
「日本三大だるま市の1つでな、東京に春を呼ぶ風物詩だ」
「そげに、がいなお祭りなんですね」
「境内や門前にずらりと縁起だるまが並んでな、なかなか壮観だぞ。露店もようけ出る。
百味供養に大護摩奉修、お練り行列も見ものだ。人出も多いが、見てるだけでも面白い」
 指に絡めた黒髪を、茂は口許に寄せた。
「一緒に、行くか」
「――はい!」
 その昔、縁結びの大師である寺の縁日は、嫁探しや婿探しで賑わったそうだ。
 遠く故郷を離れた自分も、御縁の糸に引かれて、この地で暮らし始めた。
 上京してからの心細さは少しずつ氷解し、やがてナズナが根を下ろすように、
この家にも彼のそばにも、自分の居場所が出来ると良い。
 布美枝は、広い胸に頬を寄せる。
「明日、雪だるまも作りましょうね」
「そげだな」
「それと」
「なんだ」
「…また、――して、ごしない…?」
 上目で頼んでみると、茂は意表を突かれた様子で、直後、大笑した。
 布美枝も微笑み、つがいのウサギよろしく、二人で丸まり、寄り添って眠る。
 春が来ても、きっと融(と)けない、消えない、想いの行方を祈って。
 一足早く訪れた、温もりに包まれる、腕の中。


 了

317名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 00:18:38 ID:8RIsy/N2
GJ!

夜更かししてて良かったー
夜中のスイーツ(笑ごちそうになりましたー
318名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 00:23:00 ID:Eh5JAtwD
GJ!だんだん!!
やばい。キュンキュンし過ぎて泣きそうになってしまったw
319名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 00:33:57 ID:ZyH0YkRj
GJ!
新婚さんだなあw
320名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 01:05:50 ID:aYM514fo
>>308
新婚キターーーー!!GJすぐる!!
まだ2回目という遠慮深いこの初々しさよ…萌えw
全編にわたって描写上手いよねぇ、どきどきするんだもんな。
「(我慢)せんでええ」というとこ鳥肌たった。
ゲゲに優しく攻められる布美ちゃん羨ましい。

ところで9レスくらいって長い?
前々から気にされてるみたいなので…。
自分は読みごたえあって全然イイと思ってる。
もちろん、短くまとめられてるのだって充実してるんだけど。
321名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 01:06:44 ID:8bFwklRu
GJ!
甘い!甘いよ〜
やっぱ新婚時代はいいな〜
甘さに酔ってしまったよw
322名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 01:25:16 ID:avDlt5w+
新婚さんならではの初々しさと激しさがええですなあ!フミちゃんが可愛くてたまりません。
323名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 02:05:06 ID:n6ix+JI0
だんだん!
ふみちゃんの、胸苦しいまでにつのる恋心が最高
がいに優しくて男前でエロい茂さん、どうしてくれよう
くいちぎられるとか呻いてるし

あと時々敬語まじりでふみちゃんに話しかけるのが萌えなんだ…
互いに恋に落ちていく新婚時代大好き
324名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 03:00:29 ID:woTcRe2Y
おお…大作が投下されちょる! だんだん!

ホント、このドラマってラブストーリーなんだよね
きっかけが結婚だったというだけで、
お互いのことを知って、近付いて、ひとつになっていく過程がええんだわ〜
もちろん、ラブな部分以外も面白いんだけどさ
325名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 17:52:19 ID:HyW9I56Q
>>308
・・・ネ申!だんだん!!
新婚時代大好きだー。
何かもう、甘さもエロさも可愛いさも切なさもスゲーずば抜けてるもんだから
萌えすぎて胸が苦しいw

次回作、また是非よろしくお願いします!
326名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 20:41:32 ID:KolHre3o
いやあ、良かった!!
新婚時代の初々しさが滲み出ているね♪
茂がイイ!!!

前に初夜編を描いてくれた職人さんがいたけど(割と常連の職人さんだよね?)
大好きなんだ!
>>308タン版・初夜編も是非是非よみたい
いつかきっとお願いします
327名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 21:26:45 ID:Do8eGSSo
>>308さん
萌をだんだん
初々しい二人が可愛いな

ついに明日からの一週間で終わっちゃうんだなー
328名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 20:40:06 ID:4XEaNo6R
フミちゃんのしげぇさん呼びが萌える
329名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 22:43:46 ID:Pjghf0AC
予告を見直してたんだが、二人おててつないでるな…。
330名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 23:55:57 ID:m9gn+PAG
>>328
萌えるね。
初めて言ってくれた時は感動したw
あと、ゲゲのフミちゃんに対する「お前」呼びもw

331名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 00:03:43 ID:4K3LCQZ4
お前呼びは萌える。
妊娠中は「あんた」呼びだったのに子供が生まれたとたんに「お前」なあたり
何か茂の基準を満たしたんだろうな
332名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 01:13:14 ID:2/3wEmb1
ゲゲパロのスピンオフとして
いちせんの祐ちゃん&綾子のエロって
ここでアリだろうか?
333名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 01:31:31 ID:Ji6pgLHb
いいとおもふ!
334名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 02:21:36 ID:uFD46Q0c
げげふみ夫婦だと村井家軍治予算的に難儀な生クリーム系プレイがいちせん夫婦なら練乳でやり放題ですね…!
335名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 06:01:31 ID:maZIw+FM
>>332
アリですwktk

ふとんのシーンとか、新作に妻の名前つけるとか、
スタッフからのプレゼントだと思ってみていますからw
336名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 06:17:11 ID:0XaEBjJ/
>>332
実は読みたいと思ってますた!
いちせんもいい夫婦だ。
どっちの嫁も旦那大好きオーラを
ビビビン感じて萌えるw
337名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 15:40:55 ID:ir5OOBeK
いちせんの人はまだ来ないのかな?
待ってる間に変わりダネを、投下してもいいでしょうか?
今、自分の中で源兵衛まつりなもので、書き逃げさせてください。

上京した時とかに、源兵衛さんがミヤコさんをいたわってる感じがすきです。
338秘密1:2010/09/22(水) 15:41:43 ID:ir5OOBeK
「お父さん、今、歌、歌ってました?安来節・・・。」
「いや、歌っちょらん。」
「ほんなら、夢でしょうか・・・。」
蜂に刺されたショック症状でたおれたミヤコは、フミエの活躍と横山の親切で
一命をとりとめ、夜になって意識をとりもどした。そばには源兵衛がいる。
心配を必死で押し隠しているらしい夫を、ミヤコはほほえんでみつめた・・・。

 婚礼の夜。ミヤコは嫁ぎ先の飯田家の離れ座敷で、ひとりきりで
花婿の訪れを待っていた。
女たちの手で、重い花嫁衣裳を解かれ、じゅばん姿で、初めて来た家の
真新しい夜具の前に座っている自分が、現実のものとも思えない。
この時代の女にとって、顔を見たこともない相手と結婚し、子を産み、
その家の人間となっていくことは当たり前のことであり、ミヤコには
女としての覚悟と、そして生涯の伴侶となる男性へのほのかな期待もあった。
 だが・・・。
この宵、初めて顔を合わせた花婿は、無骨で挙措も乱暴そう、仲間らしい
男たちを迎えるのに忙しく、ミヤコからの挨拶もろくに聞いていなかった。
何よりも恐ろしかったのは、その大声。
「おいあんた!そげな持ち方ではいけん!」
三々九度の杯を取り落としそうな大声で注意され、ミヤコの心はすくみあがった。
宴の間も、仲間や親戚の杯を受けるのに忙しく、大酒を飲んで気炎をあげ、
姑が気を利かせて退らせてくれなかったら、気分が悪くなるところだった。

 月は雲に隠れ、暗い夜だった。
・・・遠い座敷から、まだ喧騒が聞こえる。
(今夜は、来ないかもしれない。)
それを期待している自分がいた。今すぐこの座敷を出て、下着姿のまま
家を抜け出し、実家に向かって駆け出す自分の姿が繰り返し頭にうかんだ。
父や母のなげき、一人前の女にもなれない自分への恥・・・。そして、さきほど
酒席でぽつねんとしている自分を助けてくれた姑の登志・・・あの人を悲しませ
たくない。夫を失ってから女でひとつで家業を切り盛りしてきた気丈夫なひと、
と聞いて恐れる気持ちがあったが、やさしいひとだった・・・。
心は千々に乱れたまま、こおりついたように動けないでいると・・・。
「ガラッ。」
襖があいて、源兵衛が入ってきた。
(もう、逃げられない・・・。)
絶望的な気分におおわれ、ミヤコは顔を伏せた。
「あーあ、がいに疲れたわ。」
羽織袴を脱ぎちらし、、ミヤコのそばにドッカリと座り込む。酒臭い息が鼻をついた。
「あんたも疲れただろ?今夜は・・・。」
源兵衛は、ミヤコが震えているのに気づいた。黒目がちの瞳は、今にも決壊しそうだ。
(困ったな・・・。)
339秘密2:2010/09/22(水) 15:42:23 ID:ir5OOBeK
 源兵衛は、ミヤコを見るのが初めてではなかった。縁談が来た時、仲間に
そそのかされてミヤコの住む村までその顔を垣間見に行ったのだ。
黒目がちな瞳が印象的な好ましい娘で、おとなしい働き者と言う仲人口にも
うそはなさそうだった。源兵衛はひと目で気に入った。
好ましい娘を嫁に迎えるこの夜。うれしい気持ちを、仲間にからかわれるのが
照れくさく、わざと杯を重ね、怪気炎をあげて花嫁をほったらかしにしてしまった。
初めて嫁いで来たこの家で、どんなにか心細かったろう。母が面倒を見てくれた
ようだったが、花婿の自分は、どうやら嫌われてしまったようだ。

 下着姿で、新床にいるミヤコは、まな板の上のコイのようなもので、源兵衛が
その気になれば手折るのはたやすいことだ。正式に夫婦になったのだから、誰にも
非難されるすじあいはない。
だが、源兵衛は無体なことはしたくなかった。村の青年たちや仕事のつきあいで、
女を知らぬわけではなかった。しかし、そういう女たちと花嫁はちがう。
女房とは仲むつまじく、子をたくさん産んで家を守ってもらい、苦労してきた
母にもやさしくしてほしかった。初めてのこの夜、無理やり身体を奪うことから
長い結婚生活を始めたくはなかった。

「やすぅ〜ぎぃ〜 めい〜ぶぅつ〜 」
源兵衛の口から、安来節が流れ出したのは、その時だった。
ミヤコが、びっくりしたように顔をあげて、源兵衛の顔を見た。源兵衛がにっこり
笑った。あたたかい笑顔だと思った。自然に、ミヤコの口からも歌が出て、
ふたりで声を合わせて歌った。なつかしいふるさとの歌が、ふたりの心を
むすびつけた。
「これから、よろしくな。」
源兵衛が頭をさげた。ミヤコもあわてて三つ指をついて深々と頭をさげた。
・・・その手を握り、源兵衛が自分の方に引き寄せる。広い胸に、初めてミヤコは
抱かれ、不思議なやすらぎを覚えた。
340秘密3:2010/09/22(水) 15:43:20 ID:ir5OOBeK
 下着姿のままふたりは抱き合って床に横になった。源兵衛が口づけてくる。
浅いものだったが、初めての濡れた感触にとまどい、ますます身を固くしていると、
「あのな、今日は飲みすぎて役にたたんけん、これ以上は明日のことにしよう。」
そう言ってミヤコの頭をなで、ギュッと抱きしめた。骨細できゃしゃな身体の
やわらかさに、とても離すことができなくて、もう一度口づける。
抱きしめられ、ミヤコの前に源兵衛の固い感触があたった。ミヤコもまったく
知識がないわけではない。源兵衛が自分を欲しながらも、生娘のミヤコを気づかって
今夜はがまんしてくれようとしているのがわかった。
 口づけがだんだん深くなり、ミヤコが思わずあえいだ。源兵衛が唇を離すと、
黒目がちの瞳がもの言いたげに見あげてくる。
「やっぱり・・・今夜、抱いてもええか?」
がまんできずに問う源兵衛に、
「・・・はい・・・。」ミヤコがうなずいた。
源兵衛は、はやる気持ちを抑えながら、ミヤコの帯をとき、襦袢を脱がせた。
自分も下着を脱ぎ、そっと身体を重ねる。下着の上からでもここちよかった肌身が
直接ふれあい、自分が自分でなくなりそうなほどの欲望がつきあげた。
口を吸い、まるく柔らかい乳房を無骨な手でつつんでやさしく転がす。手のひらに
あたる乳首がこりこりと固くなる。無意識に身をよじって逃げようとするミヤコの
肩を抱いて動きを封じ、桜色の乳首を吸った。
「あ・・・あぁ・・・ん・・・。」
こみあげる快感に、ミヤコが声をあげる。源兵衛がミヤコに深く口づけながら
茂みに手をやると、そこはあたたかく、しめっていた。さら奥をさぐり、
広げようとすると、口づけに夢中になっていたミヤコが、ぴくりと震えた。
「ちっと痛いが、がまんしてごせ。」
羞じらいの強い両腿をひらかせ、たかぶりをあてがった。抱きしめながら少しずつ
奥へ進む。下から肩にすがる手が、痛いほど強くつかんでくる。
「じりじりやっとると、かえってつらいけん、一気にいくぞ。」
強く口を吸われると同時に、奥まで貫かれる。痛みに思わず唇をはなして声を上げた。
源兵衛は、なだめるようにほおに口づけると、
「早く終わらせてやるけん、がまんしちょれよ。」
遠慮がちに腰をつかい始めた。破瓜のいたみにさいなまれるミヤコがかわいそうだ
とは思うが、ここまできてやめることはできなかった。
好きな娘と初めて結ばれたこの瞬間を、急いで終わらせるのはもったいなかったが、
ミヤコのために急いで快感を追う。だが、そんな努力は必要ではなかった。
魂を吸い取られるようなこころよさに、源兵衛はミヤコの中で果てた。
 ・・・しばらくは動くこともできず、息をととのえた。そっと身体をはなすと、
横になってミヤコの肩を抱いた。ミヤコのほおに静かに流れる涙をそっとぬぐってやる。
自分のために花を散らした新妻が、いとおしくてならなかった
341秘密4:2010/09/22(水) 15:44:06 ID:ir5OOBeK
「あのな、ひとつ・・・たのみがある。」
「・・・はい?」
「わしも、生まれた時から源兵衛という名ではない。子供の頃は、建蔵と
 呼ばれておった。12歳の時、親父が死んで、代々の名を継いで源兵衛と名乗った。
 今では誰も建蔵と呼ぶものはおらん。おふくろも、スジをとおす人だけん、
 元の名は呼ばん。・・・だが、あんたは、建蔵と呼んでくれんか?」
「はい。・・・建・・・蔵さん。」
「おう。」
「建蔵さん。」
「だらっ。用もないのに何度も呼ぶな!それからな、これは閨(ねや)のなかだけの
 ことだぞ。決して昼間そう呼んではいけん。これはわしとお前だけの秘密だぞ。」
ふたりだけの秘密・・・。自分の口から出た言葉に照れ、源兵衛はミヤコの唇を奪った。
ミヤコもつたないながら応えてくる。それはもう、奪う奪われるものではない、
共犯者の口づけだった。ミヤコのかわいい舌が源兵衛のそれと出会い、からみ合う。
若い源兵衛がふたたび勃然となるのも自然のことだった。
「も、もういっぺん、ええか?」
たまらずに問うと、ミヤコの返事も聞かずに襲いかかった。
「あ・・・けん・・・ぞ・・・さ・・・。」
ミヤコは必死で源兵衛の広い背中にすがりつき、熱にうかされたように、いとしい
夫の名を呼びつづけた。
 いつの間にか雲間から顔を出した月が、睦みあう二人をやさしく照らしていた。

「祝言の日に、私、お父さんに初めて会ったでしょ。ほんとはあの晩、親の家に
 逃げて帰ろうと思っとったんですよ。お父さんが恐ろしくて・・・。私がずっと
 黙っとったら、お父さん、安来節、歌ってくれましたよね。」
「そげだったかな・・・。」
「忘れたんですか?・・・建蔵さん。」
「だ、だらっ。子供やちに聞かれたらどげする?」
「ここは閨のなかですけん、約束はやぶっとりませんよ?」
源兵衛は浅黒い顔を赤黒くすると、苦しまぎれに安来節をうたいだした。ミヤコも
声をそろえて、小さな声でうたった。

 歌声にさそわれ、その様子を、ユキエとフミエがのぞきこんだ。
「お母さん、あれでけっこう幸せなのかもしれんな・・・。」
ユキエが心底驚いたように言った。
(私もいつか、あげな幸せな顔ができるような、ご縁に出会えるだろうか・・・?)
フミエの胸に、まだ見ぬその人への淡いあこがれがぽっと灯った。
342名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 17:56:53 ID:uFD46Q0c
>>338
げんべーさんとミヤコさん…だと…!?
GJGJ!
ミヤコさん可愛すぎる
343名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 19:07:16 ID:TQ4w+9OR
>>338
ここに居たのですか。
ずいぶん
探しました。
GJ
344名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 20:21:46 ID:MY0DWVab
GJ!やばい、なんか目から汁出て来た
345名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 23:40:44 ID:bzXIBdBI
>>338
ウホッ!なんだこの角度からの攻め!GJ!!
なんたって暁子姉ちゃんからいずみまでの年齢差っていくつよ?!
というくらいの仲良し夫婦ですけん、
そりゃああれだよ、1晩2回くらいは余裕でしょw

>>338が近いうちに戌井夫婦まつりになりますように…。
346名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 02:00:53 ID:jrsYtcyl
ゲゲの「だらっ!」は愛があるよな
菅ちゃん羨ましかったわw
347名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 02:12:34 ID:sxw56BPj
歳とってからの夫婦生活について以前ちらっと話題が出てたけど

50〜60代でもバリバリ現役の男性はいるし
あれだけ生命力の強いゲゲさんなら余裕で子作りいけると思うんだが
仕事が忙しいのと家人や出入りの多い家だというのが難点か

いっそ近場に(富士山麓とは別に)もう一つ別荘というか別宅買わせて
二人きりでいちゃこらさせてあげたくなる
348名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 06:21:07 ID:oTt5D1Ay
>>338
おそるおそる読んでみたけど萌えた!だんだん!
初対面でいきなり夫婦ってエロいよな…

あーふみちゃんに見とれるおとーちゃん楽しみだ
349名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 09:24:40 ID:6lwr8mzq
今日のおとうちゃんはデレ満載でしたな!
餃子作れとか着物作れとかみとれてぼーっとするとか…ホントごちそうさまでした
350名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 10:32:05 ID:xwr9SH88
ミヤコさんが若い頃だったら性格は控えめだろうけど
色気満載超絶美女じゃないか
351名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 10:56:43 ID:4ert16ck
>>350
中の人もそりゃー綺麗でしたぜ。
今でももちろん綺麗な方なんですけども。
源兵衛さんそりゃメロメロになりますって。
352名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 11:28:07 ID:ZfCQPnsL
>>332
首長〜くして待っちょりますけん!
353名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 14:29:35 ID:3mSMgcbC
ふみちゃんの着物姿にぽーっとしてる茂に萌えたw「べ、別に見とれてなんていないんだからね!」と言いそうな顔だった。
354名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 16:51:59 ID:IuqBW+W2
>>338
ミヤコさんが初々しくて可愛いすぎるw
この作品読んで源兵衛さんミヤコさん夫婦をみるめが変わったw

ぜひ続編を!
355名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 19:54:20 ID:NV/1VEys
ふみえの着物姿に見惚れるしげるも萌えだが、謝恩パーティーでみんなに「おめでとう」と言われてるふみえを見つめるしげるも萌えでした。
しげぇさん、本当にふみちゃんが大切で大好きなのね…とw
356名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 23:11:04 ID:3OSmzaHE
>>353
THE ツンデレw あ、デレツンか?
自分、巻き戻して10回くらい見た。

最終回に向けて「夫婦」に焦点あたってきたから
萌えどころも増えたな。
明日、明後日が楽しみだが、同時に寂しくもあり…
357名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 01:18:32 ID:Mx8zVS7/
フミちゃん、設定の年齢と着物が合わなかったのが残念
358いぬまんま/0:2010/09/24(金) 02:14:38 ID:8SvjrBDz
こんな時になんですが、遅ればせながら、先日のいちせん夫婦ネタをこっそり投下。
お嫌な方はスルー推奨。
「割れたせんべい」のその後です。
359いぬまんま/1:2010/09/24(金) 02:15:55 ID:8SvjrBDz

 初めての喧嘩と家出は、振り返ってみれば、何やら気恥かしくもある。
 父親のとりなしで誤解も解け、戻ってきた婚家が、妙に懐かしく思えた。
 夫のそばにいたいのに、いたたまれずに夕飯の買い出しを口実に出てきてしまった自分が情けない。
 残された彼がどんな顔をしていたか、その時まだ、綾子は知らなかった。

  □□□

 買い物から帰ると、待ちかねたように夫が仕事場から顔を覗かせた。
「今日は、鰤の照焼にするね」
 話しかけられるのを遮るように早口で、支度にとりかかる。
 冷蔵庫を開けた時、ふと昨日はなかったものを見つけた。
 パック詰めの、苺。
 離れていた間、妻の好物をどんな気持ちで用意して、彼は一人、待っていてくれたのだろう。
 胸にこみ上げるものをこらえるように、立ち上がった。
 エプロンの紐を腰に回そうとした手を、不意に掴まれる。
 振り返ろうとして、できなかった。
 肩口に鼻先を埋めた夫に、背後から抱きしめられる。
「…祐ちゃん?」
 返事はなく、ただ腕に力がこもった。
 交差する彼の肘に、そっと触れる。
「ごはん、作るから」
「…」
「支度、できないよ…?」
 ぎゅうっと固く包み込まれて、立ち尽くす。
 沈黙に、体のどこかが急かされるような気がした。
「…た」
「え」
 くぐもった声が、ぽつりと零れる。
「…どうしようって思ってた。昨夜、何度も考えた。もし、もしも帰ってこなかったら――」
「そんなこと」
 あるわけないと言おうとし、綾子は、己の迂闊さに気づいた。
 想像よりずっと、自分の存在が彼を支えていることに。
 少しは困ってほしいなんて、安易に家を空けて。
 結婚して以来、ひと晩だって彼を独りにさせたことなどなかったのに。
 子供が母親に縋りつくような強さで掻き抱かれ、相反する感情が混ざり合う。
 いっときでも置き去りにしてしまった罪悪感と。
 彼に必要とされ、その心を占めている優越感。
(――あたしは)
 ずるい女だ。
 すまなさと悦びに苛まれ、綾子は目を伏せる。

360いぬまんま/2:2010/09/24(金) 02:17:31 ID:8SvjrBDz

 すいと顎を取られた。
「ッ…」
 深く絡んでくる舌。
 息継ぎさえ許してくれない強引さで、腕の内に閉じ込められる。
 この狭さが、綾子が選んだ楽園だ。

“新婚旅行も行けなかったから、余裕の出てきた今くらい、どこかへ連れて行ってやりたくて――”

 ぼそぼそと照れくさげに、彼は打ち明けてくれたけれど。
 どこへ行っても、行かなくても。
 この人のそばに勝るエデンはない。
 窒息ぎみに崩れ折れた綾子の体を、力強い腕が抱きとめている。
 大きな手。
 香ばしい匂いがしみついた手。
 綾子の未来を委ねた手。
 腕の中の妻を、じっと見つめていた祐一が呟いた。
「綾子に触るの、久しぶりな気がする」
「そ…かな?」
「ここんトコ、忙しかったし」
「お客さん、増えたよね」
「うん」
「雑誌に取材もされたし」
「あれはびっくりした」
「今日出てたよ。祐ちゃんのこと、≪老舗の三代目は韓流イケメン≫って見出しで紹介してた」
「読んだんだ?」
 家出中だったのに、と言外に聞かれ、慌てて繕う。
「お父さんが本屋寄りたいって言うから付き合って、そしたらたまたま目について、
あたしも一緒に写真撮ってもらったし、お店の宣伝なんだし、一応確認しとこうって」
 矢継ぎ早の言い訳が、ぴたりと止まる。
「…嘘」
 彼の二の腕を、きゅっと掴んだ。
「ホントは、顔、見たかった…」
 写真だけでも。
「うん、俺も」
 腕の囲いが強くなり、さらさらとした髪がうなじをかすり、綾子は僅かに首を竦める。
「怒鳴ったりして、悪かった」
「おあいこだから」
 互いのことばかり考え過ぎて、相手に想われている自分を忘れていた。
「祐ちゃん」
「ン」
「困らせて、ごめんね。それと」
 困ってくれて。
「――ありがとう」

361いぬまんま/3:2010/09/24(金) 02:19:07 ID:8SvjrBDz

  □□□

 頚動脈に頬を寄せ、共鳴する鼓動を感じた。
 伸びをして、彼の首を抱く。
 触れられるだけでなく、自分も触りたい。
 彼の熱っぽい瞳を見上げ、それ以上の火種を宿した目で見返す。
 体の燠(おき)が、じわじわと燻ぶった。
 互いの間にまとわりつく布を剥がし、二人は裸になる。
 波打つ布団の上で、指先を絡め合った。
 真上の男の四肢の熱さに、綾子は、熔けるようなため息をつく。
 性急さを押し殺した夫の指と唇が、肌のあちこちに点火する。
 顎を上げて首を反らせると、カーテンの隙間から注ぐ、淡い陽光を浴びた。
(ここが)
 自分だけが手に入れた、幻でない楽園だ。
 うっすらと微笑む綾子に、覆い被さった祐一が口づける。
 まだどことなく不安そうな、彼の後れ毛を掻き上げた。
「あたしはちゃんと、ここに、いるよ…? だから、祐ちゃんも」
 ここに、――きて。
 なじんだ愛しい唇に、伸び上がって応えた。

 芯を貫く、焼けそうな異物感に酔う。
 両手で掴み寄せられた腰が麻痺したようで、綾子は髪を打ち振るった。
「…ん、――ッう、…あ、――ぁ、ん…」
 粘ついた音をたてる巧緻な動きに、力を失くした体を預ける。
 きれぎれの呼吸で名前を呼べば、いくども優しいキスが降り、反対に、奪う勢いは速まった。
「――ぅ、ちゃ…」
 朦朧とする意識に抗い、すべてを欲し、見届けようと懸命になる。
 熱い情が放たれた直後、汗ばんだ身を添わせ、何も逃すまい離すまいと、互いにきつく抱きしめ合っていた。

362いぬまんま/4:2010/09/24(金) 02:20:10 ID:8SvjrBDz

  □□□

 携帯に着信したメールを開く。
 昼間別れた父からだ。
 言い残した説教だろうかとの予想に反し、短い本文は、割れせんべいの命名候補。
「…≪いぬまんま≫?」
 考え込んでから、綾子は噴き出した。
 犬も食わない夫婦喧嘩、ならぬ。
「犬でも食える、仲直りか」
 『仲良し』の頃合いまで計られているのは、少し癪だし、恥ずかしいけれど。
 お節介で人の好い父には感謝している。
 夫に提案してみたら、どんな顔をするだろう。
 楽しみと幸福感を胸に、傍らで子供みたいな寝顔を晒す、彼の目許にそっと唇を寄せた。

 <終>

363名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 08:07:27 ID:9xLLAEAD
>>357
無地の着物でむしろ年齢的には地味なのでは?布枝さんの写真でも違和感なかった。フミエ綺麗だったし、やっと着れて感動したな。
茂の衣装にフミエや家族が突っ込むとこ見たかった。

>>359
源兵衛大好きだが、いちせんのパパもいいよね。
茂と違って家出に素直な反応する祐ちゃん可愛いです。
364名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 08:36:22 ID:iGlrTg3a
>>359
いちせんktkr
ありがとうございます!
ゆう綾もやっぱりいいなぁ。

このスレはすごいな。職人さん達はみんな神だし、
住民の皆さんのコメにはゲゲゲへの愛が溢れてる。
たくさんたくさん萌えをだんだん!

365名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 10:34:45 ID:ipVw52c+
明朝9時頃みんな呆然とするんでしょ、分かります
366名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 12:38:01 ID:9mroYeDf
ここ見てるよねご本人たち
367名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 12:42:33 ID:zQlvFur5
俳優さんたちならいいけど
なぜか水木夫妻にはちょっと見られたくない不思議
368名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 12:46:49 ID:fQ1wtRh3
萌えスレが盛り上がるのはいいカポーの証拠
百万が一見つけても許してごしない(*´д`*)
369名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 13:03:11 ID:CDNSce7L
茂が肩に手を置き、その手にフミエの手が重なる。



そんなじーんとするシーンでも私は
後ろに写りこんだ「ベッド二つ」を見逃しませんw
370名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 13:21:31 ID:ZxMWiY9j
>>369
あなたは私ですか…w
371名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 14:08:11 ID:r0Jlyz26
>>365
まだまだ!BSがあるさ!!

・・・でも明日の夕方ごろにはさびしくてガックリきてるかも。
372名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 14:33:36 ID:7thX5Rlq
明日の9時にはありがとう祭りがここで開催
373名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 14:53:08 ID:aGMvIZ4l
テスト
374名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 14:56:46 ID:aGMvIZ4l
うわっ書き込めたーではねーですか!!(感涙)
すみません、今までずっとロムして来ました。
大好きなゲゲゲで職人の皆さんが愛あるエロを届けて下さるのを
本当にありがたく思ってました。
御礼も書きたかったのにずっと規制されてて…
今日になって書き込めたよー。

先週末の、最終週予告を見て
思いついたネタがあるから1度投下したいです。
ちょっと変則技ですがw
375名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 20:36:21 ID:QblkREAY
>>359
おおっ!いちせんネタ待ってました!
ゆう綾も可愛くて大好きだから嬉しい。
これからは南国の旅行のパンフを見る度にニヤニヤしてしまいそうだw

出会い編や交際中の2人の話等もドラマか、このスレで見たいなぁ…(さりげなくリク)

>>374
楽しみにしちょりますw
376名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 21:15:55 ID:HJaCq1wb
ふみちゃんの着物、派手だって思った人も意外といるみたいなんで、ちょっこし小ネタを
投下させてごしない。


「やっぱり、お父ちゃんの言うように着物を新調した方がよかったかもしれんですね。
 こげな晴れの日には、おばばにもらった大切な着物を身につけたいと思っとったんですが
 私の歳には、ちょっこし派手な色だったみたいで」
「だらっ!あの着物の代わりなんぞあるか!」
「でも、お父ちゃんだって着物新調せえって言ってたじゃなーですか」
「それは!20年間支え続けてくれたお母ちゃんに何か贈る機会を潰してはいかんと思っただけだ!」
「お父ちゃん…」
「よう似合っとった」
「…だんだん」
「こっちは皆が帰ったあとどう押し倒そうか、頭を悩ませとったんだぞ」
「え?」
「これから、よろしく頼むぞ」
「は…はい!」

すがちゃんと同じようにふみちゃんも叱りつけるゲゲw
まあ、ふみちゃんがあの着物を恥じるわけないがな。
377名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 21:19:27 ID:HJaCq1wb
いけね!おばばにもらったのはかんざしで、着物は母ちゃんだった!
肝心なとこ間違えてすまんです。
378月光1:2010/09/24(金) 23:16:35 ID:aGMvIZ4l
「おい」
「あ、ごめんなさい。気づかなくて」
「いや、ええんだ。ええんだが…お母ちゃん、それ、」
「はい?」
 すっかり夜も更けた頃、アシスタント達も帰り人気の無い仕事場から居間へ出て来た茂を迎えた
布美枝の手にあったもの。それは茂からすればやや意外だった。
「ああ、お茶ですね。今持って来ます。ちょっこし待ってごしない」
 ぱたぱたと台所に引き返す。テーブルの上には、今朝方出版社から届けられた漫画雑誌が何げなく置かれていった。
しかしそれは、茂の作品が掲載されている少年漫画雑誌ではなく、同じ出版社が発行している、
いわゆる青年誌である。
「ふーん…」
 茂は雑誌に目を落とし、表情を変えずに表紙の文字を爪先でなぞる。すぐに羅列される描き手の名の
ひとつの上で、人差し指がぴたりと止まった。
「おお、これかぁ」
「はい、お父ちゃん」
 湯呑み茶碗を手に戻って来た布美枝へ、茂は顔を上げる。
「これ、倉田が描いとるな」
「ええ、倉田さん今この雑誌で連載されとるんですね。最近出版社からの郵便はまとめて光男さんに
お渡ししとりますんで、あたしは殆ど見ないようなってしまいましたけん。
でも今日は光男さんがお休みでしたでしょう。これ、ずっと下駄箱の上に置いてあったんですよ。
だから封筒にハサミだけ入れようと思って。でも、そうしたら」
 執筆者の中に、懐かしい名前があった。
 ようやく世間に広く知られた茂の仕事が爆発的に忙しくなってしまったその頃、集まってくれた三人のアシスタント。
 その一人、倉田圭一は懸命の努力の末、水木プロで働いている最中にプロデビューし、そのまま独立した。
 茂も倉田もこの稼業である以上そう簡単に時間は取れない。ましてや家を預かる布美枝が
漫画家に会う機会など、向こうから自宅兼仕事場である我が家へ訪れない限りはまずあり得ないのだ。
 倉田はデビュー後数度は顔を見せてくれたが、即連載を任されたほどの実力だ。
どんどん仕事量が増えたのだろう、最近は互いの新刊のやり取りのみになっていた。
「あん頃はまだまだ小僧だったなあ。でも人一倍漫画に対して情熱を持っちょった。
ほれ、寝る間も惜しんで描いとったろう。きっと今もそのまんま、頑張っとるよ」
「そげですね」
 あの時代は、夫婦にとってもかけがえのない喜びと希望のつまった思い出になっている。
379名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 23:19:45 ID:aGMvIZ4l
 湯気が柔らかく二人の前に立ち上る。布美枝がにっこり笑った。
「ですけどー…」
「うん?」
 ソファに腰掛け湯呑みを手に取った茂の代わりに、布美枝が傍らに佇んだまま再び雑誌を手元に取り上げる。
「ちょっこし驚きましたね。倉田さんの漫画、あたしはあんまり詳しくないですけど、昔はSFが多かったと思っとったのに、
今描いてごしなさるのは随分雰囲気が変わった気がします」
 ぱらぱらとページをめくり、布美枝は倉田の漫画を探して、
「ほら」
と茂の頭上から見開きのカラー絵を向けた。
「! だらっ」
 思わず茂が上げた叱責に布美枝はきょとんとする。が、構わず、
「ねっ。綺麗ですよねえ」
目をきらきらさせて布美枝が見せた倉田の絵は艶かしい女性の裸体であった。
 当然茂は同業者として、原作者のついた倉田の作風がエロティックなものであるというのを承知している。
それは極端な程に性を前面に押し出した作品が多いのだ。
「本当に倉田さん、昔から絵が上手だったですけんね。でも今は怖いぐらいに綺麗。何だか洋画のポスターみたい」
 素直な感想を述べながら次々ページを繰る布美枝を、茂は何も答えずに見上げている。
「美男美女ばっかり出てくるわぁ、すごいなあ。本当に肌に触われそう」
「ああ?」
「これとか」
「――」
 そこには絡み合う男女の一対が画面一杯に描かれていた。
 欲望のまま男に奉仕する女。汗ばみ女を貫く男の姿。
 赤裸々な人間の生態がエンターテイメントに昇華されている。
「このお腹とか、筋肉とか。本当に」
 自分もセックスが絡む作品をいくらかは描いた。とは言え近年の自作を振り返ると、
「大人が読んでも耐え得る内容を、子供に向けて真摯に描いている」自覚はあるが、
わざわざそれを主題にすることは殆どなくなっている。
 だから、布美枝が普通にこうした漫画に目を通す姿が一種奇妙に感じられた。しかも至極冷静に。
(……十何年も漫画家の女房だけん、どんな内容を読んだところでびくともせんのは当たり前だ)
 ましてや自分は妖怪やあの世を主に扱っているのだ。新婚当初、幽霊の醜女の絵に涙を浮かべて
驚いていた布美枝の顔を思い出す。
(それに較べりゃ、男と女の営みなんぞ)
 布美枝自身も体験していることだ。
「――藍子はどげした」
「藍子ですか?夕方からお友達の家にお泊まりに行きましたよ」
「そげか。確か喜子も…」
「小学校の林海学校ですね」
「それで、イカルとイトツも鎌倉だ言うとったな」
「ええ、今晩だけみんなおらんmpですよ。久しぶりに二人だけの晩ご飯だったでしょう」
「そげだったか」
(えらく夕刊を熱心に読んでいたから、ぼんやりしていたのかな)
 くすりと笑う。
 明日にはお義父さんお義母さんがお帰りです、藍子もですよ、そう言って雑誌を閉じ、
布美枝が自分の分もお茶を淹れようと横を向きかけたのへ、
「おい」
「はい?」
「もう、今日の仕事はしまいだ」
「あらそうですか。〆切、大丈夫ですか」
「仕事のことは、口を出すな。お母ちゃんが心配せんでええ」
「……すみません」
また余計なことを言った自分を責められたと感じた布美枝がしょんぼりとうなだれる。
はっとして茂はかぶりを振った。
「お母ちゃんも、もう寝え」
「は?」
「一緒に寝ろ、言うとるんだ」
「……」
 ぽかんと口を開けた布美枝の側でがりがりと頭を掻き、次に布美枝のスカートを
抱えるように座ったまま茂の右手が抱き寄せた。
380月光3:2010/09/24(金) 23:21:11 ID:aGMvIZ4l
「きゃっ」
 慌てて横向きに両手をソファにつく。勢い余って肘掛けにがくりとよろめくと、
ちょうど茂の額が布美枝の顎に触れた。
「おまえも寝ろ」
「しげぇ、さん…」
 続いて吐息が触れる。茂が見上げてくる。目が合う。
「ええな」
 囁く声が、夜にいざなう。
「…はい…」
 どちらの声も掠れていたのは、情欲の溶け出した証拠だ。



 ぎしりとスプリングが二人分の重みを訴える。
 ゆっくりと唇を触れ合わせながら、布美枝は目を閉じてうっとりと息を吐いた。
 茂の手が布美枝のこめかみから頬、肩、腕、脇腹を辿る。大きな掌、太い指。あたたかな右手。
多くを語らない茂だが、閨での茂の手は雄弁に伝えるのだ。布美枝を欲しいと。
(あたしも、欲しい…)
 二人はまだ茂のベッドに並んで腰掛けていた。茂の背に腕を回し、ぎゅっとしがみつく。
 意志めいた布美枝の行動に茂はやはり無言で答える。胸元に収まっている布美枝の身体を不意に離した。
「?」
 顔を上げた布美枝に構わずその身体をぐいと押しのけ、自分は布美枝の背後に回る。
片膝をベッドに乗り上げ、後ろから抱き込んだ。
 ブラウスをするりとスカートから引き出し、みぞおちからなぞり上げた。
「あっ…」
 長い黒髪がぱさぱさと軽い音を立てる。下着の上から胸の頂きを弾かれた。
引っ掻いたり、きゅっとつねったり、悪戯な指がそこで蠢き続けている。
あっという間に固く凝ったそこを今度は直接掌が包み込む。
「――こいつは、あいつの絵のボリュームにはちょっこし足りんな」
「え…っ…」
「まあ、お母ちゃんは外人じゃあないけんな。背丈は外人並みだが」
「も、しげぇさ…、! は…ッ」
 がば、と布美枝に片腕を上げさせ体勢を少し後ろに振り返させると、
それをくぐって茂の頭が布美枝の胸元に潜り込んできた。着ているものを全てたくし上げ、
乳房をこねるように揉み、剥き出しにした乳首を口に含む。
 茂の性急な愛撫に耐え切れず身体は刺激される度にびくびくと跳ねる。
太腿を擦り合せるように身をよじる布美枝に気づき、唇を胸に寄せたまま茂は右手をスカートの内側に伸ばした。
ところが素直に核心へ触れるかと思ったら、内股をこじ開けるように力を込めて来たものだから布美枝はぎょっとする。
「い、いや…なんで、こげな」
「ええんじゃ」
「や、だって」
 露にされ、窓越しの月光に照らされる己の脚はおろか下着までもが自分から見える。慌てて反対側に寄せた脚を、
それでは駄目だと言うように再び茂の手が割り開いた。
「うん。これならあいつの描いた女の脚にも勝っちょうわ」
 長うて、白い。ひとりごちる茂に布美枝の胸がどきどきと高鳴る。
(そんな、倉田さんのあんな綺麗な絵の女性と較べるなんて、)
 確かになまめいた描写が続いていたが、自分は茂の元で頑張っていた青年の活躍を確かめるために、
彼の作品に目を通していただけなのに。
 くすくすと笑いが込み上げてくる。
「なに笑うちょる。余裕だな」
「そんな訳ないでしょう」
「ほうだな」
 するっと下着の端から二本の指を差し入れ、茂みの奥で既に濡れていた秘部につぷりと押し込んだ。
「うん、ええ塩梅だ」
「ひぁ…」
 潤む中を探るように動かされ、太い中指が布美枝を追いつめる。
固くザラザラとしたある箇所を繰り返しなぞられると、たまらなくなった。
381月光4:2010/09/24(金) 23:24:52 ID:aGMvIZ4l
「や、あ、ああ」
 耐え切れず、ずるずると茂の身体を滑り落ち、布美枝はやがて俯せにベッドに倒れ込んでしまった。
それを良いことに布美枝から上半身から着ていたものを全て取り去り、夜目にも真白いその肌、
真っすぐな背骨がふるりと震えたのを見、茂は己の奥底から滾る疼きを覚えた。改めて布美枝の傍らに左半身を伸べ、
自分も慌ただしく前立てを開く。
「ええわ、このままで…」
 スカートの奥から下着を引きずり下ろし細い足首から抜くと開かせた脚の間に自ら入り込み、
猛々しい怒張の先端をぬるりと含ませた。
「ア、ああ…しげぇ、さ…っ」
 シーツを両手でぎゅっと握りしめ、目を固くつぶり背後から襲いかかる夫の熱を受け止める。
浅く、深く、自分を貫くものの激しさに布美枝は身も世もなく戦慄いた。
「あ、あ、あ…、だ、だめ…っも…」
 白く柔らかなラインを描く脇腹とベッドの間に腕を差し入れられると、腰を上げさせられた。
常なら恥ずかしいと困惑するその格好だったが、余りの快楽に布美枝は我を忘れたように喘いだ。
ぞくぞくとした感覚が茂のいるところからせり上がって来、その返礼として茂のいるところが強く収縮する。
「ち…ッ」
(こりゃかなわん)
 理性の吹き飛びそうな脳裏の端で負けを感じながら、茂は細い腰を掴む腕に力を込めると、
込み上げる劣情のままに大きく揺さぶり、互いを求め奪い与え刻み、共に極みを目指した。

「あーあ…」
「何だあ、その気の抜けた声は」
「だって…、洋服がしわくちゃ…。布団も…」
「だらっ。布いう布はしわが寄るのが道理だけんっ」
 サイドテーブルに置かれた眼鏡がきらりと光を弾く。
身体を離した二人は双方ごろりとベッドに横たわったままだった。
 両腕で自らの身体を抱くように隠す布美枝が茂の喉元に擦り寄って来た。
「寒いか?」
「いえ、大丈夫です」
「だな。お母ちゃんの身体は、がいに火照っとったけんな」
「まあ」
 じろりと睨む。
「…でも、倉田さんの漫画の中の人達に負けんぐらい、」
悦かったですけん…、聞こえないような声で呟く。
「何か言うたか?」
「いいえ」
 ふんっと鼻を鳴らした茂の腕が布美枝の背まで回された。
「もう寝よう。洗濯は明日せえ」
「わかっちょります」
 眼差しを交わし、そっと笑い合う。
 時に激しいこの幸福がいつまでも穏やかに続くように。
二人は気怠く蕩ける身体を最愛の伴侶に絡めて委ね、まだ明けぬ夜を惜しむように目を閉じた。


というわけで初投稿でした(涙)。最終回前夜にぎりぎり間に合えて感激です。
先週末の、最終週予告で初代アシ揃った図を見た時何故か倉田くんをダシにして書きたい!と
降って来た変則ネタでした。
とにかく感無量です。だんだん。
382名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 06:33:32 ID:oTfex1TN
あと1時間ちょっこし・・・か
383名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 10:12:28 ID:/YZtJcMy
http://imepita.jp/20100925/365891


源兵衛さんも惚れるわ…
384名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 10:13:23 ID:/YZtJcMy
源兵衛さんじゃなくてイトツだ。ゴメン
385名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 10:59:29 ID:MEH+5+hC
源兵衛さえも惚れる勢いですね
386名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 11:10:52 ID:ioNow4hZ
もう最後だけん
入り乱れての無礼講はどげでしょうw
387名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 13:10:44 ID:/YZtJcMy
ラストの写真で写ってたのは茂・布枝夫妻らしいねえ。…ホントいい作品だった
388名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 13:27:48 ID:l3jxbOzR
あれフミちゃんだよ

しかしこのスレ的には最後の最後で大サービスでした
389名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 15:39:45 ID:n2gNyMjG
総集編はないのかなー
390名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 19:51:12 ID:S7kmZUdW
>>378
GJ!
新婚時代も初々しくていいですが、
時間を重ねて安定感のある熟年時代も好きです!
投下だんだん!
391名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 22:38:18 ID:5m2GtC48
>>389
総集編はあるみたいですよ。
谷口CPが講演会で時期は未定だがやると言っていたと
本スレで見ました。

あと今までの朝ドラが年末に総集編を放送してるので
そのころにやると思うと本スレでは言われていますね。
392名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 23:16:44 ID:zxB1hmTU
最終回今見た
よかったー、ほんと楽しかったよ

と本スレではなくここでレスw
393名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 23:31:41 ID:xDh08h5U
>>376
どう押し倒そうかずっと悩んでたのかwきっと帯をつかんでくるくる回しながら「あ〜れ〜!」 だな。

>>378
エレクチオンネタも大丈夫なのかフミちゃんw肝が据わり過ぎだ。
394名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 01:41:28 ID:Qw+3CK2u
亀だが>>359のいちせんパロ好きだ。
ゆうちゃんが意外と甘えたなんだな、
ゲゲフミとはちょっこし違ってて、そこがまたイイ!
しかし何故「韓流」ワロタ。ただのイケメンではいけんのかw

>>376台詞の使い方上手すぎw
自分も>>393みたいな「あ〜れ〜」を想像した

>>378
小さい喜子が読んでたヤツだな<エレクチオン雑誌
強引なゲゲ萌えるw
倉田倉田いうから、出てくるのかと思ったぞ

最終週に怒涛の投下があって嬉しすぎ
けど、このスレはまだまだ続いていくんですよね!先生?!
395ジュモク ◆ChdC8VZqyE :2010/09/26(日) 13:48:35 ID:Mf4JBPDE
シャキーンと投下がなくなるまでは更新したいです
396名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 15:29:54 ID:JDjExPqv
戌井さん夫婦まつりだよ、全員集合!(スミマセン言ってみたかっただけです。)
一応、>>345さんのリクエストに応えたものです。

ものすごく奥さんの情報が少ないので、今まで書けずにいたのですが、

@戌井さんが出入りしてた出版社の事務員だったらしい。
Aしたがって恋愛結婚かもしれない。
B戌井さんには、もったいないくらいのいい女。
C二人とも、ウィスキーが好きらしい。
D早苗さんは、男性に人気がある。(「エッチしたり、一緒に酒飲んだりするなら、
 こっちの女房がいい。」って書かれてたっけ。)

以上から、お話を作ってみました。全くのフィクションです。おゆるし下さい。
特にBの観点から、個人的に大好物の「俺じゃ、ダメか?」的展開になりました。
397約束1:2010/09/26(日) 15:30:27 ID:JDjExPqv
「水木さんは、すごいよなあ。」
水木プロ設立の祝賀会から帰った戌井は、家でひとり、祝杯をあげていた。
つまみを運んできた早苗も、一杯つきあう。
 戌井は、水木の祝いに駆けつけたものの、出版社やTV局の歴々に囲まれる
盟友に、なんだか気後れがして、ろくに話もできずに帰ってきてしまった。

「やっかんでるわけじゃ、ないんだよ。あの人たちが、とうとう水木さんを、
 陽のあたる場所へひっぱり出してくれたんだ。オレは、水木さんの才能を、
 一番理解していながら、世に出すことができなかった・・・。それがふがいなくてな。」
「元気出してよ。小さな出版社じゃなきゃ、出来ないことだってあるわ。」
「うん・・・。だけど、お前にも苦労ばっかりかけて・・・。オレと結婚したこと、
 後悔してないか?」
「やだ。今さら何言ってんのよぉ。あなたが『結婚してくれなきゃ、死ぬ。』
 って言ったんじゃないのさ。」
「オレ、そんなこと言ってないよ!」
「ふふ・・・ウ・ソ。忘れるわけないじゃない・・・。あとにも先にも、あんなに
 うれしかったこと、なかったもん。」


 早苗は、戌井が仕事でよく行く出版社の事務員だった。おきゃんで溌剌とした
彼女は、会社に出入りする男たちに人気があり、いつも噂の的だった。
 戌井も、そんな彼女にあこがれてはいたが、容姿にも甲斐性にも自信はなく、
ただ遠くからみつめるだけで満足していた。ちょっと姉御肌で面倒見がよい
早苗は、ひっこみ思案な戌井にもわけへだてなく接してくれ、彼女に会えると
思うだけで、出版社に行く日が楽しみだった。

 そんなある日、神保町の行きつけのバーに入ると、カウンターで早苗が
水割りを飲んでいた。
「あれ?早苗さん。珍しいところでお会いしますね。」
「ああ、戌井さん・・・。ふふ。おかしいでしょ。女がひとりでこんなところで・・・。」
「いや、酒にお強いんですね。ウィスキー飲むなんて。」
「ううん。いつも一杯だけ。亡くなった父がね、ウィスキーが好きだったのよ。
 何かあると、ここで父のこと思い出しながら飲むの。一本買うの大変だから。」
戌井は、いつも明るい早苗の、意外な一面を見た気がした。
「ふうん。じゃあ、今日は原稿料が入ったから、それは僕におごらせて下さい。」
・・・そんなわけで、それから二人は、戌井の懐が温かい時、このバーで一杯のむ
ようになった。
398約束2:2010/09/26(日) 15:30:56 ID:JDjExPqv
「早苗ちゃん、彼氏がいるんだってなあ。」
「そうよ。相手はあの紙問屋の若旦那。玉の輿だよなあ。ちくしょう。」
「ありゃあ、もう出来てるな。あの若旦那、女には手が早いらしいからな。」
「あーあ、金があって男前、俺たちじゃ、束になってもかなわねえな。」
 会社の男たちが早苗の噂をしていた。戌井は、あきらめてはいたものの、
心にぽっかり穴が開いたような気がした。好きな女がみすみす他の男のものに
なっていくのを、指をくわえて見ているしかないのか・・・。

 それからしばらく経ったある日。
戌井は早苗のいる出版社に原稿を届けに行った。ところが早苗の席には別の
女事務員がいる。戌井は出入りの業者の男をつかまえて聞いた。
「早苗さんは?」
「彼女なら昨日やめたよ。かわいそうに・・・。あの男に捨てられたんだよ。
 いいとこの娘と結婚するらしい。彼女は、恥ずかしくて、もうここには
 いられないんだろ。」
 
 戌井は、信じられない気持ちで例のバーへ行った。驚いたことに、そこには
 早苗がいた。
「早苗さん・・・。会社やめたんだって?」
「ああ・・・・・・。ふふ、戌井さんも聞いたでしょ。あたし・・・母が入院してるから
 仕事やめられなくて、恥をしのんで続けてたんだけど、一昨日その母も
 亡くなったの。あたしもう、ひとりぼっちになっちゃった・・・。」
「早苗さん・・・。」
「父のお墓がね、箱根にあるの。母をそこに入れて、箱根で温泉女中にでも
 なろうかと思って。ふふ・・・あたしに向いてそうでしょ?」
戌井は黙って早苗の隣りでウィスキーを飲んだ。
「あたしの父はね、下町でパン屋やってたの。ハイカラで楽しい人だった。
 でも、空襲で死んじゃって・・・。母はそりゃ苦労してあたしを育ててくれたの。
 バカね・・・あたし、あの人と結婚したら、母に楽させられる、なんて考えて。」
早苗は、二杯目のウィスキーをぐっと飲み干した。 
「戌井さん、ありがとう・・・。あたしね、ほんとはこんな店でひとりで飲むの、
 ちょっとこわかったんだ。でも、戌井さんがいてくれたから・・・。
 旅立つ前にここへ来たの、あなたに会えるかもしれないと思ったから・・・。
 向こうに行っても、ウィスキー飲んだら、あなたのこと思い出すわね。」

 早苗は立ち上がろうとして、ぐらっとよろめいた。そんなに酒に強くないうえに、
このところあまり眠っていなかったようだ。戌井は彼女に肩を貸して、自分の部屋へ
連れ帰った。
399約束3:2010/09/26(日) 15:31:26 ID:JDjExPqv
・・・早苗は目覚めると、自分が見知らぬ部屋の布団に寝ているのに気づいた。
かたわらで、毛布にくるまって寝ていた戌井も、眼を覚ました。
「戌井さん・・・。あたしに、なんにもしなかったの・・・?あたし、もう何もかも
 どうでもいいと思ってるのに・・・。」
「・・・もうどうでもいいと思ってる女なんか、オレはお断りだよ!なんだよ!
 心配してるのに!なんでもっと自分を大事にしないんだよ!」
こんなに怒っている戌井を見るのは初めてで、早苗は目を丸くした。
「ごめんなさい・・・。失礼なこと言っちゃって・・・。」
「ああ、失礼だね!オレは、あんたのこと、ずっと好きだったんだ。あんたには、
 幸せになってほしいと思ってたのに・・・。男に振られたくらいで、なんだよ!」
戌井の剣幕に、早苗は圧倒された。
「あたしの、ことを・・・?」
戌井は、激情にかられて、早苗を布団に押し倒して口づけした。唇がはなれても、
重なったままの戌井に、早苗がささやいた。
「戌井さん・・・いいのよ。」
「イヤだ!」
「?」
「結婚してからじゃなきゃ、イヤだ!」
「戌井さん・・・。ダメよ。会社の人、みんなあたしのこと知ってるのよ。きっと
 みんな嘲笑(わら)うわ。」
「なんでそんなことで、あんたをあきらめなきゃならないんだ!他の奴らなんか、
 どうでもいい。あんたはどう思ってるんだ?」
早苗は、何も言わずに、下から腕を回して戌井を抱きしめた。
「オレが忘れさせてやる、なんて言えないけど、忘れてほしいんだ・・・。あんたが
 東京にいるのがイヤなら、オレが箱根に行ってもいい。結婚してくれ・・・。」
「ふふ、バカね・・・。あなたがマンガを捨てられるわけ、ないじゃない・・・。
 それに、順番が逆よ。あたしにも、あなたを好きにならせてよ・・・。」
早苗が目を閉じ、二人は口づけをかわした。

 数日後、二人は神社で祝詞を挙げてもらってから婚姻届を出し、その足で箱根に
向かった。早苗の父の墓に母をほうむり、二人は手をあわせた。
「お母さん・・・。こんな僕だけど早苗さんをまかせてくれますか?」

 もう少し結婚式らしいことをしたかった戌井だが、早苗が新生活のためにお金を
とっておいた方がよいと反対したのだ。そのかわり、墓参りのあと、箱根の
温泉旅館に一泊することにした。
400約束4:2010/09/26(日) 15:32:04 ID:JDjExPqv
「ここ、すてきね。川の音がする・・・。」
風呂からあがってくると、電気を消した部屋で、早苗が窓に腰かけて外を見ていた。
ゆかた姿に、戌井が声も出ずに見とれていると、
「結婚したんだから、もういいわよね・・・。」
早苗が、戌井の胸に顔を寄せた。戌井がおずおずと早苗の身体に手をまわす。
「早苗さん・・・。」
「早苗って呼んでよ。」
二人は抱き合ったまま布団に倒れ込み、激しく口づけをかわした。
戌井は、ふるえる手で早苗の帯をといた。ゆかたの下から表れた裸身は、ほそく
しなやかで、戌井は夢を見ているような思いでなめらかな肌に唇をはわせた。
 本当に惚れた女を、その腕に抱くことなど、初めての戌井だった。
あまりにも細い身体が、幻のように消えてしまいそうで、戌井は早苗をつよく
抱きしめた。くるしさに、早苗がもがいた。戌井はあわてて手をゆるめる。
「ご、ごめん・・・。」
早苗は、何も言わず、幸せそうにほほ笑んだ。両目からあふれ出す涙を、戌井が
ぬぐうと、早苗はその手をとって自分の頬に押しあてた。戌井がゆっくりと
口づける。早苗のやわらかい唇に、とけていきそうだった。
 秘所に手をのばすと、早苗の身体がピクリと緊張した。戌井が手を止めた。
「・・・ごめんね。あたし、あなたと・・・もっと早く出会えていたら・・・。」
戌井は、早苗を抱きしめてささやいた。
「なあ・・・約束してくれないか。今日からは、もうオレしか見ない・・・って。」
「ウン。・・・ウウン、はい。・・・ありがと、慎二さん・・・。」
戌井は、燃えるような情熱で、早苗の中に分け入った。
戌井のたくましいものに貫かれ、早苗の細い身体が、哀しく美しい動物のように
しなった。
ひとつにつながった身体から、早苗の想いが自分に向かって全て流れ込んで
くるような気がした。
「う・・・早苗・・・さな・・・え・・・。」
「・・・あなた・・・。」
戌井は、早苗の喜びも、悲しみも・・さびしさも、全部オレが受けとめてやる、
そんな想いを抱きながら、あたたかい早苗の中に、おぼれていった。


「忘れてないわ。あの約束だって・・・。」
早苗が、顔を近づけて、まっすぐに戌井をみつめた。
「よ、よせよ・・・。」
戌井は、真っ赤になって早苗の唇を奪った。
「なあ、ひさしぶりに・・・。」
「もぉ、バカ・・・ふふっ。」
早苗は戌井の厚い胸に抱かれ、口づけが深くなっていった・・・。
401名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 17:01:23 ID:em2iUnYV
故郷に帰り、幼い時の思い出の場所に行き、あの時のお兄ちゃんはやっぱりゲゲだった?
最終回はキャンディ・キャンディのラスト思い出したわ
402名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 22:45:44 ID:Qw+3CK2u
>>397
うをーーー!!自分345ですけど!マジでだんだん!
つーか驚いたのが、戌井嫁のイメージが
結構自分が思ってたのと一致してた。
キャリアウーマンでモテてて、
戌井さんには高嶺の花だった…みたいな。
どっかで他の人が書いてたけど、この二人ってなぜか
見合いじゃなさそうなニオイがしてたんだよな…。

ウイスキーと箱根温泉の演出が上手いよ〜。
第二弾もおねがいします!
あとゲンベエまつりも平行して続けてねw
403名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 23:04:04 ID:PB0gmGLT
投下が続いてうれしすぐる…
職人さんたち、本当にだんだん!
このスレがすきだーーーー

最終週の安来節のくだりでも>>338が浮かんで、
より深くドラマ世界に入れた気がする

404【翡翠飛来】前書:2010/09/27(月) 00:51:32 ID:F52ZeYFh
ゲゲさん総モテ(?)ネタ。
時期は、菅ちゃん漫画賞受賞後。
またもニーズとズレている気がしますが、「皆、しげぇさんのことが大好きなんだよー!」と叫びたくて書きました。
なお、一部誤解を招くかもしれませんが、あくまで・当然・ゲゲフミがメインです(強調)。
405【翡翠飛来】1/9:2010/09/27(月) 00:53:07 ID:F52ZeYFh

T.<S>

 鬼太郎の再々アニメ化を機に、月刊誌に加え週刊誌での連載も決まり、プロダクションは再び活気に満ちていた。
「あの、先生」
 最終確認を終えた原稿用紙を握ったまま、菅井が突っ立っている。
「なんだ」
「また雇っていただいて、ありがとうございます」
「どげした、改まって」
 机から目を離さず、茂は応じる。
「お礼を言いたくて。それと、これも伝えたくて。僕やっぱり、先生のことが好きです」
 瞬間、仕事場の空気が凍りついた。
 相沢と光男も固まっている。
 原稿に没頭しかけていた茂は、硬直から脱し、ぬっと顔を上げた。
「…あんた、菅ちゃん」
「はい?」
「夏も来とらんのに、恐ろしいこと言わんでくれ。ただでさえ、妖怪の仲間みたいな顔しとるんだけん」
「は。あの、ギャグではありません」
「むしろ、そっちの方が助かる」
「先生の漫画が大好きだという意味です」
「それ以外では困ると言っとるんだ。この忙しい時に、ウケを狙っとる暇はないぞ。ほれ、点々」
 新たに手渡された原稿と茂を見比べ、菅井は肩を落とす。
 行き場がないから留まりたいのではなく、最初からずっとここにいたくて、だから必要とされて嬉しかったのだと。
「…伝わってないのかなあ、僕の気持ち」
「だら」
 不意に一喝した茂は、くるりと椅子を半回転させる。
「せっかくの独立の機会をふいにしてまで、あんたは水木プロに残りたいと言った。俺は、あんたの代わりはおらんと言った」
 手元のペンがくるりと回る。
「あんたの方に辞める理由がない限り、みすみすこっちから手放す気なんぞなかったんだぞ」
 菅井がぱちぱちと瞬いた。
「もしも、菅ちゃんが路頭に迷ってそこらに落ちていたら、よそに奪(と)られる前に、俺が拾って持って帰るけんな」
 ぴたりとペンを止め、茂はにっと笑う。
「わかっとると思うが、ウチの仕事は楽ではないぞ。覚悟しとけ」
「せ…」
 感涙せんばかりに引っ付こうとする菅井の肩をやんわり押しとどめ、「ほれ、仕事せい」と茂は作業机を指差す。
「不肖、菅井伸、44歳。今後も精進し、邁進します!」
「よし」
 重々しく頷く茂に頭を下げ、脱兎の勢いで戻った菅井は、猛烈な集中力で原稿を凝視する。
「さすが、先生。妖怪を手懐けるのも、お手のものですね」
 感心する相沢をよそに、事態を静観していた光男は、賢明に沈黙を守ることにした。

406【翡翠飛来】2/9:2010/09/27(月) 00:54:28 ID:F52ZeYFh

U.<F>

 仕事場へお茶出しを終えた布美枝は、ダイニングテーブルで頬杖をつく。
「…良いなあ、菅井さん」
 ため息混じりにぼやいてしまう。
 昼間見た光景を思い返す。
 あんなふうに、はっきりと茂に気持ちを伝えることができて。
 茂に、正面から受けとめてもらえて。
 あの日。
 菅井が無断欠勤を続けて荒れていた夜。
 二人に、女の身には立ち入れない、強固な繋がりを感じた。
 いつのまに、彼らの間には、ああも熱い師弟感情が芽生えていたのだろう。
 そばでやりとりを聞きながら、感激や感謝とは別に、布美枝は無性に羨ましくなった。
 茂に、愛情をもって叱ってもらえる菅井が、羨ましかったのだ。
 淡泊そうに見えても、夫は決して冷淡ではない。
 その実、情に厚くて責任感が強く、面倒見が良くて愛情深い男だ。
 だからこそ、多くの人々が彼を慕い、助力を惜しまず、集う。
 そんな夫が誇らしくて愛しくて、けれど、近寄りがたい距離を感じてしまう時もある。
 自分だけのものではない人を前に、ふと寂しくなる一瞬がある。
 もういい歳だというのに、茂を想うたび、初恋に戸惑う少女みたいな有り様になる。
 考えてみれば、今まで一度も、彼に好きだと伝えたことはなかった。
 もしかしたら、伝わっていないのかもしれない。
(…いけん)
 今更とはいえ、きちんと気持ちを話すべきではないのか。
 きっかけも方法もわからないけれど、何かをせずにはいられなかった。

407【翡翠飛来】3/9:2010/09/27(月) 00:55:55 ID:F52ZeYFh

V.<A>

 頑固一徹。
 いつだったか父親をそう評したら、「そりゃあ、藍子のお父ちゃんだけん」と心外な反応が返ってきた。
 あの父に比べたら、自分ははるかに常識人だと自負している。
 『水木しげるの娘』ではなく、ただの一個人として世間に認められたくてあがいてきたけれど、
結局のところ、『村井藍子』を育んだ土壌もまた、父母によって養われたものだ。
 就職早々、挫折しかけた自分を支えてくれたのは、背後を守る父の温かい掌だった。
 古臭い家父長制に反発はしたものの、実際、力量のある人が中心になって引っ張っていかないと、
人間の集団はまとまらないのだと、社会人になって思い知った。
 父が強い紐帯となっているからこそ、身内は団結し、支え合って困難にも立ち向かっていける。
 その事実を、今なら素直な心地で認められる。
 巨き過ぎる影響力に怯むことも多々あったけれど、本人すら頓着しない著名な看板を外してしまえば、
彼はあくまで一人の男であり、夫であり、父親であった。
 父が信条とする、ゲーテの本も密かに読み始めた。
 感化されていると周囲に知られるのは恥ずかしいので、カバーを外さずにこっそり目を通しているのだが。
 父が太平洋戦争に従軍した折に左腕を失くしたことも、幼い頃から薄々わかっていたし、
母が詳しく話すのをためらう様子だったので、あえて知ろうという素振りは見せなかった。
 それでも、内緒で祖父母に話を聞いたり、自分でも本を読んだりして勉強した。
 実体験に基づいて描かれた戦争漫画を読んだ際には、立ち上がれないほどの衝撃を受けた。
 父の人生観、死生観。
 甘ったるい希望や理想論を語らずに、力強く前進してゆく強靭な精神力に圧倒されては、
同じ血がこの体に流れていることが不思議な気もした。
 自分がこれから歩む道に、どんな運命が待ち受けるのか、それはわからない。
 けれども、『水木しげるの娘』ではなく、『村井茂と布美枝の娘』として慈しまれ、守られ、育てられてきた過程が、
きっと力となり、自信に繋がり、乗り越えてゆける。
 そう、信じることに決めた。

408【翡翠飛来】4/9:2010/09/27(月) 00:58:05 ID:F52ZeYFh

   *   *   *

「藍子は、好きな人とかおらんの」
 父と妹の朝寝は毎度のこと。
 祖母と三人での朝食を終えた休日、居間で寛いでいると、母から珍しい話題が出た。
「なに、急に」
「もう年頃なんだし、そげな人もおるのかなって」
「別に。今は仕事で手いっぱいだし、そういうことは考えてないよ」
「…そう」
「で?」
「ん」
「本当に聞きたいことは、なあに」
 きょろりと瞠目した母が、頬を赤らめて俯く。
 我が親ながら、相変わらず隙のある人だなあとは思うが、そんな微笑ましさも、父に愛されている一因かもしれない。
「…好きな人にね、どげなふうに気持ちを伝えたらええのかなあって」
「娘相手に不倫の相談?」
「ッ、なに言うとるの。お母ちゃんはずっと、お父ちゃんだけだけん」
 夫一筋、他はまったく眼中になしを地でいく母は、父の幼なじみにもからかわれていた。
「わかってるって。冗談に決まってるでしょ」
 だいたい、どこをどうしたら、この母にそんな芸当ができるというのか。
「お父ちゃんに、告白したいんだ?」
 赤い顔でこくんと頷く母を見、つい父の心中をおもんぱかる。
 一途で可愛らしい妻を持った男性は、気苦労も多いのだろうな、とか。
 あの父なら逆に、それすらも楽しんでしまうのではなかろうか、とか。
 最終的にあてられ損なのは周囲ではないか、とか。
 あれこれ考えるとばからしくなり、嘆息する。
「藍子?」
「そのままで、いいんじゃない」
 苦笑を抑えきれずに、母を見つめる。
「何を言おうかとか、考えて言葉を決めるよりも。お父ちゃんといて、顔を見て、言いたくなったことを、
そのまま伝えればいいんじゃないの?」
 たとえ、何も言えなかったとしても。
 人を見抜く目に長けた父なら、母の無言でさえ受けとめてくれるはずだから。
 男とか女とか、一般化した名詞で考えるのはやめるようにと言ったのは、父が敬する哲学者だ。
 世間の意見に惑わされ矛盾した存在に見えてしまうから、ただ、目の前の一人を信じればいい。
 その人の言葉だけを信じれば、矛盾は解決するのだと。
「お父ちゃんが好き、その気持ちだけ持っていればいいんだよ」

409【翡翠飛来】5/9:2010/09/27(月) 01:01:06 ID:F52ZeYFh

   *   *   *

 母とすれ違いに起きてきた妹が、ぽけっとした顔で髪を掻く。
「お母ちゃん、どうしたの」
「お父ちゃんに愛の告白するんだって意気込んでる」
「え、今更? あんなにあからさまなのに」
「伝わってないって思ってるの、お母ちゃんくらいだよね」
 パジャマ姿のまま考え込んでいた喜子は、ぱぁっと明るい顔になる。
「ねえ。もしかしたらあたし、お姉さんになれるかな」
「よっちゃん、飛躍し過ぎ」
「でも、お父ちゃんだよ?」
「…」
 ないと言いきれないところが、あの両親だ。
「あたし、弟がいいな。お父ちゃんに似た男の子とか面白そう」
 父と気の合う妹は、無邪気に空想している。
 いつもまっすぐに父を慕う妹の姿は、昔からまぶしかった。
 自分は、そんなふうに振る舞えなかったから。
 多忙な父がたまに母と語らう穏やかな時間を邪魔するのは気が引けたし、幼心に構ってほしい気持ちがあっても、
妹の方が先に飛びついてしまう場合が多く、出遅れて自然と諦めるのが常だった。
 隻腕の父は、二人の娘を同時に抱きとめることはできない。
 それでも時折、話を聞いてもらったり、頭を撫でられるのが嬉しかった。
 本当に父のミニサイズ版でも誕生したら、妹も祖母も、何より母が、さぞ可愛がるだろう。
 いや、手こずるのか。
 そもそも、あんな厄介な生き物なんて。
「一家に一人で、充分よ」
 愛情と苦労も背中合わせだ。

410【翡翠飛来】6/9:2010/09/27(月) 01:05:50 ID:F52ZeYFh

W.再び<F>

 昼少し前に起き出してから、茂はずっと机に向かっている。
 アシスタントが出勤しない日も、昼夜問わず働く姿に頭が下がる。
 締め切りは越えたようだが、連載を複数抱え、彼でなければできない作業は山とあるのだ。
「お茶、置いておきますね」
 そっと声をかけ、邪魔にならないように退出するつもりだった。
 今日のところは、ゆっくり話せそうにないのが残念だけれど。
「おい」
 手を休めた茂が振り返る。
「はい?」
「ちょっこし出るぞ」
 すっくと立ち上がって伸びをし、どうやら外出するらしい。
 気分転換にでも行くのだろうか。
「いってらっしゃい」
「おまえもだ」
 ぽん、と腕をはたかれた。
「え」
 廊下で行き合った娘達に、「お母ちゃんと出かけてくる」と告げている。
「あら、デート?」
「おお」
 長女の茶化しを、あっさりと真顔で肯(うべな)う夫に驚いた。
 日頃は照れ屋な彼の、淡々とした返しに、娘二人も面食らっている。
「夕飯までには帰る。行くぞ」
 こちらを待っている茂に、慌ててついていった。

411【翡翠飛来】7/9:2010/09/27(月) 01:07:24 ID:F52ZeYFh

   *   *   *

 連れ立って訪れたのは、深大寺に隣接する神代植物公園。
 元は東京の街路樹を育てる苗圃であったが、戦後に神代緑地となり、茂と布美枝が結婚した年に、都立公園として開園した。
 40万uを越す広大な敷地には、4000種以上もの樹木が植えられているという。
 快い風に吹かれる中、色濃い緑がきらめき、懐かしい森に迷い込んだ心地になる。
 バラ園はまだ咲いていないが、ツツジの大群植に菜の花、桃にボタン、ベコニアが華やかだ。
 気ままにのんびりと、二人で散策した。
 一昨年できた大温室には、熱帯の植物が集められ、さながらジャングルみたいな景色だ。
 夫にしてみれば、戦時中の南方を思い出しはしないかと案じるが、飄々とした横顔にその気配はなく、
水やりのシャワーにかかった虹を見て微笑んでいる。
 安易に触れられない領域は、既に彼の内に深く根づいており、揺るぎないものとなっているのだろうか。
 スミレや山ツツジが咲く山野草園で、人気(ひとけ)の途切れた小路を歩いた。
「あの、お父ちゃん」
 今なら、言える気がする。
「…す、――ッ」
「? どげした」
「す、菅井さん、良かったですね、ウチに残ってくれて。げ、元気になったみたいですし」
「そげだな。昨日も張り切って、点々打っとったぞ」
「そ、そげですか」
 機嫌の良さそうな茂の横で、切り出せないふがいなさに、布美枝はうなだれた。
 涼しげな木蔭の水辺に立ち寄る。
 せせらぎに新緑が映り込み、水に揺れる様(さま)が幻想的だ。
 まるで、世界に二人きりしかいないような錯覚。
「あ、あたし。すっ、――ぅ」
「なんだ?」
「す、…睡蓮の花、綺麗でしたね…」
「おお」
 首を傾げながらも応じる夫を前に、いっそ泣きたくなる。
 彼には、たくさん愛されて、大事にしてきてもらったのに。
 自分は、少しも返しきれていないし、伝えられてもいない。
 落ち込みそうになった、刹那。
 手に、触れられた。

412【翡翠飛来】8/9:2010/09/27(月) 01:09:00 ID:F52ZeYFh

「え」
 顔を上げると、「しっ」と茂が唇に指を立てる。
「…」
 辺りを見渡してみるが、何か起きた気配はない。
「カワセミだ」
 低い声で囁かれる。
 茂が指差す先、わずか数mの近さに、鮮やかに青い鳥がいた。
 翡翠の名にふさわしい美しい姿で、ちんまりと枝に止まっている。
 遠くでちらりと見かけたことはあっても、これほど間近に接近したのは初めてだ。
 じっと見守っていると、チーッと鳴き声をあげて、水面(みなも)の上を飛んでいった。
 二人で顔を見合わせ、笑う。
「綺麗ですねえ」
「ああ」
 渓流の宝石と呼ばれるその残像が、木漏れ日に霞む。
「西洋の、比翼の鳥だけんな」
 茂が目を細めて、消えていった痕跡を仰いだ。
「比翼の鳥?」
「ギリシャ神話に、そげな話がある。海難で夫を失くした妻が、波間に漂う遺体を見つけ、夢中になってそばへ行こうとすると、鳥の姿になった。
悲しげな声で鳴きながら遺体にとまり、くちばしで口づけようとする。同情した神が、夫も同じ鳥に変えて、生まれ変わった二人は睦まじく暮らした。
それが、カワセミだとな」
 哀しくも美しい、魂の鳥。
 知らず、布美枝は胸元の手を握り締めていた。
 もしも、とか、いつか、なんて。
 考えたらキリはないし、どうなるものでもない。
 けれど、人の姿を失くしてまで、夫の許へ行こうとした女の必死さだけは、――わかると思った。
 ふわり、と頭を撫でられて、我に返る。
 指先が柔らかく、布美枝の眉間をこすった。
「ココに皺が寄っとるぞ。お母ちゃんは、神さんの心配までしとるのか」
 穏やかなまなざしが、視界に滲む。
 気づけば、正面から茂に抱きついていた。

413【翡翠飛来】9/9:2010/09/27(月) 01:11:00 ID:F52ZeYFh

 愛おしい匂いを、目を閉じて吸い込む。
 噎せ返るような緑の香の中、彼の生と鼓動を確かめた。
 茂は何も言わず、布美枝の好きなようにさせている。
 ただ、背中を撫でる掌が、優しかった。
(お父ちゃん。…しげぇさん。――あなた)
 好きだと言えないのは、そんな言葉では到底足りないからだ。
 告げようとすれば、言葉からはみ出た想いが溢れてきて、胸がいっぱいになってしまうからだ。
 こんなにも幸せにしてもらえて、何も返すことができなくても。
 ――そばに、いたい。
 ぽんぽん、と背をさすられる。
「そげん怖がらんでも、俺はしぶといぞ」
「…怖くは、ないです」
 肩に押し付けた唇を動かす。
「お父ちゃんと一緒にいられるなら、あたしは、怖いことないです」
 ふと、茂が微笑う気配がした。
「懐かしいな」
「え」
「調布に来たばっかりの頃から、そげなこと言うとった」
 覚えがない。
「…あたし、言うとりました?」
「まあ、覚えとらんかもしれんな。おまえ、朦朧としとったし」
「え…――え?」
 記憶を辿る布美枝を、楽しそうに茂が覗き込む。
「寝床のおまえは、普段の倍は正直だけんな」
 かぁっと頬が熱くなる。
 呵呵と笑う夫を、上目で睨んでも効果はない。
 おそらく、素直な気持ちは、何度も口にしてしまっていたのだろう。
「…もぅ」
 再び頭を垂れて肩に寄せると、力強い腕が抱きしめてくれた。
「おまえの方が、へばるなよ。まだまだ、先は長いぞ」
 存外、真剣な声に、ゆっくりと頷く。
 見えない赤い糸の感触を、しっかりと確かめる。
 大きな掌に頬を掬われ、瞼を閉じた。
 乾いた唇の感触を、また胸に焼きつける。
 どこかで遠く、青い鳥の鳴き声がした。


 了

414名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 10:06:43 ID:20ZmMtdc
>>405
感激で言葉が出ないよ・・・・

だんだん
415名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 10:24:10 ID:580ydiha
このスレには素晴らしい職人さんが
「見えんけどおる」なぁ。

ありがとう〜って伝えたくて〜。
416名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 10:33:32 ID:lAwg9KA9
>>397
戌井さんキター!やっぱりこの二人は恋愛ぽいよね。見合いもいいけど恋愛もいい!

>>405
告白しようとするフミちゃんかわゆす。いつまでも初々しいなぁ〜。
417名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 12:12:57 ID:YwdQmsmw
>>405
げげふみの熟年いちゃこらも素晴らしいけど藍子の心情描写がすごくイイ!
弟を期待するよっちゃんカワユスw
418名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 23:31:36 ID:uFTX0EH4
>>405
萌えーーーーーー!!
スガちゃんワロタw
娘に恋愛相談する布美ちゃん
そして弟期待の喜子w ありえないとは言い切れない両親て…
なにこのかわいすぐる世界!!
藍子の心の声もせつなくて、おもしろくてヨカタです!
419名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 23:58:52 ID:Q87PNm5S
>>405
だんだん!萌えた!
フミちゃんは本当にゲゲに激ラブだな〜w
いくつになっても本当に可愛い二人だw


しかし、いつかは終わると分かってても喪失感が半端ねー
ゲゲフミに会いたいぞ(泣)
420風邪の妙薬1:2010/09/28(火) 14:47:24 ID:SoCkfbvP
 北風の吹きつける寒い日が続いていた。村井家の財政は逼迫の度合いを
きわめており、冷たい風がひときわ身にしみるようだった。
 フミエは風邪をひいて熱を出した。ハナをかもうにも、ハナ紙を買う
金すらなかった。
「なあ、映画の看板描きにでもなるか。・・・マンガ、やめるか。」
ハナ紙を買う金すらなかった事実が、よっぽどこたえたのか、めずらしく
茂が弱音をはいた。

 フミエが、うつらうつらとした眠りから覚めると、茂は仕事部屋の机で
軍艦の模型を作っていた。どん底の経済状況で、のんきに見えるかもしれない。
けれど、フミエは茂を責める気にならなかった。一生懸命描いたマンガの
原稿料がもらえなかった。原稿料を払う側の戌井もお手上げ状態なのもわかっている。
つらい時こそ、楽しいことをして、心を明るくしなければならないのだ。
フミエは、茂の心に寄り添うように、模型作りの手伝いを始めた。
「私、一緒にやっていきますけん。・・・私の腕と合わせて三本ありますけん、
 なんとかなりますよ。」
茂は、プラモデルのパーツを注意深くニッパーで切り取るフミエの顔を
じっと見ていたが、やがて二人して模型作りに没頭していった。

 フミエがセメダインをつけてさし出す部品を、茂がピンセットではさみ、
艦橋にとりつけた。
「これでええ。」
嬉しそうにのぞきこむフミエ。顔が近い。
「おい・・・。」
茂が顔をぐっと近寄せると、唇を重ねてきた。
「いけんよ・・・。風邪がうつりますけん。」
「誰かにうつすと、治るというだろう。」
「だって・・・。」
なおも何か言いかける唇を、茂がふさいだ
421風邪の妙薬2:2010/09/28(火) 14:47:48 ID:SoCkfbvP
 茂は、ハナ紙も買えないほど家計を逼迫させたうえ、漫画をあきらめるなどと
弱音をはいた自分を責めもせず、励ましてくれた妻に深い感動を覚えていた。
だが、そんなことを口に出して言えるような男ではない。
こみあげる愛をおさえきれず、ただフミエの唇を奪い続けるだけだった。
フミエの身体から力がぬけ、机からニッパーの落ちる音がした。
「ここじゃ、またお前の大きな尻で、金剛に甚大な被害が出るかもしれん。」
「もうっ・・・。」
 二人はもつれあうようにしてフミエの布団まで歩いた。ひさしぶりの
深い口づけに、早くも身体の中心に火がつき、フミエは布団までの数歩が
つらかった。
 フミエがひざまずき、浴衣を脱ごうとして帯を解くと、
「冷えるといけんけぇ、そのままでええ。」
茂はそう言って、えりの間からこぼれた乳房に唇をはわせた。
フミエは、そんな茂の髪をいとおしそうに梳きながら、大きく吐息をついた。
茂がフミエの下着に手をかけ、もどかしそうに
「邪魔っけなもん、とってしまえ。俺も脱ぐけん。」
フミエが後ろを向いて立ち上がり、下ばきを脱いで振り返ると、信じられない
速さで服を脱ぎ散らかした茂が、浴衣ごとフミエを抱きしめた。
舌をからめあいながら、くずおれるように布団の上にひざ立ちになる。
茂がフミエの両腿の間に片足をさし入れて広げさせた。
舌で首すじや耳を愛撫しながら、茂の指は無防備にひらかれたフミエの秘所を
もてあそんだ。あふれる愛液が腿をつたわり落ちる。
「あぁ・・・。だめ、そげにしたら・・・。」
フミエが腰をよじり、座り込みそうになる。
「おっと。座るんなら、この上に座れ。」
茂は指を抜き取ると、フミエの腰をつかんで引き寄せた。
急に愛撫を中断され、フミエはたまらずに茂の胸に倒れかかった。
茂はフミエの顔を上げさせ、ねっとりと口づけると、
「ほれ。」
たけりたつものを手で支え、フミエをうながした。
フミエはのろのろと身体を起こし、茂の肩につかまって腰を浮かせた。
茂が先端を含ませる。フミエは大きく息を吸うと、ゆっくりと吐きながら
茂をのみこみ始める。少し入れては、また深呼吸をする。
目の周りが赤らみ、目に涙がいっぱい溜まっているが、真剣な表情だ。
(大マジメな顔しちょる・・・。)
一児の母になっても、まだ初心さを失わず、何事にも一生懸命な妻が
可愛いかった。そんなフミエを見ることも、この体勢をとらせるたのしみの
ひとつだった。
422風邪の妙薬3:2010/09/28(火) 14:48:18 ID:SoCkfbvP
「は・・・あ・・・。」
全部のみこんで、フミエがため息をついた。
 何度もこの形をとらされているけれど、どうしても慣れることはできなかった。
茂をのみこんでいく自分の入り口を、否応なく意識させられ、わきおこる
快感に耐えながら、律動を繰り返さなければならない。
茂に全てを見られながら乱れていく自分が、恥ずかしくてならなかった。
 だが一方で、この体勢だからこそできることもあった。
自分が茂を感じさせている、と実感できることだ。茂に組み敷かれ、あるいは
後ろから抱かれる時、巧みな愛撫にとろかされ、侵入を心待ちにしているところを
貫かれた後は、茂に追いつめられ、はぐらかされ、何もわからなくなるまで
感じさせられる。そんな時、茂がどんな顔をしているかなど、見ている余裕はなかった。

 取りすがりたい気持ちを抑え、茂の胸に手をついて身体を起こし、腰をゆすり
始める。つながった所からじわじわと広がる快感をやりすごし、茂の表情を見る。
思いがけず目が合い、どぎまぎする。
「ん?どげした?」
あなたのエエ顔が見たくて・・・とは言えず、目を閉じると、身体の底から快感が
こみあげる。思わずあえぎをもらすと、茂がその口を吸い、口内を犯した。
「んん・・・ん・・・。はっ・・・はぁ・・・あ・・・。」
フミエの目尻から涙があふれ出し、茂の上でいやいやをするように身体がよじれた。
「くっ・・・。」
茂も感じている・・・!フミエの心は喜びにおどった。だが、感じすぎていて、
これ以上どうしたらいいかわからず、茂の胸にすがってただあえぎにあえいだ。
茂が下から数度つきあげ、リズムをつくってやると、フミエもそれに合わせてまた
動き出す。次第に動きが激しくなり、自分の意思とは関係なく、止まらなくなる。
「はっ・・・はっ。あっ・・・あぁっっっ・・・んんっ・・・。」
もう何も考えられなくなり、頂きに向かって腰をふり続けるだけの、みだらな
生き物になり果ててしまう。
 フミエが放った絶叫が、茂の口内に吸い込まれる。茂はそのまま唇をはなさず、
むさぼり続けた。頭が真っ白になるような絶頂感と、息が出来ぬ苦しさに、フミエは
意識をうしないかけた。

 茂はだらりとなったフミエをそっと布団に横たえると、そっと腰をひいた。
ずるりと引き抜かれる感覚に、フミエがひくっと震えた。
まだわなないている身体に掌を這わせると、うっすらと汗をかいた肌は、吸いつく
ようになめらかだった。胸にほおを寄せると、「とくん、とくん・・・。」いつもより
早い鼓動が聞こえる。今、ここに二人きりで生きている・・・突然そんな感傷に
おそわれ、茂はさっきまでフミエを貫いていたものを、再び突き入れた。
「だっ・・・だめっ・・・。も・・・だめぇっ。」
フミエは力なく抵抗したが、もう自分の身体が自分のものでないように自由にならない。
「俺は・・・まだ、終わっとらんぞ・・・。」
達したばかりのフミエの内部は熱く、ひくつきながら茂にからみついた。
茂も激しい快感につつみこまれ、フミエの中に精をはなった。
423風邪の妙薬4:2010/09/28(火) 14:49:00 ID:SoCkfbvP
翌朝。
「へーーーっっっ・・・くしょん!・・・くっそーっ。おーい、お母ちゃん。おーーい!」
茂は案の定風邪をひき、のどが痛いと言って寝ていた。
「はーーーい。」
(もぉ〜。昨日いちにち寝とったけん、洗濯物がたまって大変なのに・・・。
 のどが痛かったら大きな声出さんといてごしない。)
フミエは外で洗濯をしていたが、ぶつぶつ言いながら手をふき、部屋に入って来た。
「何かご用ですか?」
ひざまずいたフミエに抱きつき、唇を奪おうとする。
「もぉっ・・・。おとなしく寝とってごしなさいよ。」
「風邪は、人にうつしたら治るけん。」
「もう私にはうつりませんよ・・・。」
フミエはなおも腕をからめてくる茂のおでこに自分のおでこをそっとくっつけると、
「まだ熱があるわ。しょうが湯でも作りますね。」

 フミエがお盆に乗せてきた湯飲みの横に、ハチミツのびんをみつけ、茂の目が輝いた。
「あ〜、そげにちょんぼしでは、ちーっとも甘くないわ。ケチケチせんと、
 もっとたっぷり入れぇ。」
大騒ぎする茂をよそに、フミエはハチミツをたっぷりすくったスプーンを口にふくんだ。
「あーーーっっ!ずるいぞ!自分ばっかり。」
フミエはスプーンを置くと、茂にずいっと顔を近寄せ、騒ぐ唇を封じた。
「むむ・・・。」
熱で乾いた唇に、フミエのしっとりと冷たい唇がここちよい。茂は蜜の味がする
フミエの唾液を、甘露のようにむさぼった。

 茂はあれからすっかりおとなしくなってしまい、しょうが湯を飲んだ後は、
布団に横になって静かに眠りについた。
(目病み女に風邪ひき男と言うけれど・・・。)
「かわいいこと・・・。」
フミエは抑えきれない笑いをもらし、茂に食べさせるカユを煮はじめた。
424名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 21:34:55 ID:e5KpW5K0
寂しくなって来てみたら…
>>420
だんだん!
425名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 22:39:21 ID:metI4dQA
>>405
姉妹の会話が笑えたw
藍子の心理描写はなんだか切ないな…
笑いと哀がかける職人さんてすごい!
終わり方もツボでした。美しい作品をだんだん

>>420
え、エロい…
ちょっと積極的?なふみちゃんもいいな
426名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 00:02:47 ID:ps6cL774
>>420
GJ〜〜!
最後の「かわいいこと」のつぶやきが萌え!!
あのときの布美ちゃんは、風邪ひきに浴衣という
非常に萌えシチュエーションを整えていたので
このSS実は待っていた…だんだん!
427名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 09:27:21 ID:sN9eNaP+
>>405
「冬来たりなば」とリンクしてるのがええですね…
布美枝さんのベタ惚れっぷりが最高
菅ちゃんもステキ
菅ちゃん→茂←→布美枝な感じにワラタ

>>420
早めのパブロンならぬ早めのセ(ry
左腕の事考えると座位か騎乗位が多いんでしょうね…
口移しがちょっこし妖艶な布美枝さんモエス

職人様方だんだん!
428名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 16:15:25 ID:SZ24rYQM
>「俺は・・・まだ、終わっとらんぞ・・・。」

ドSしげぇさんktkr
429名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 23:07:05 ID:Mbk+h6mZ
今から投下失礼します。
茂がふみえに無理強いしてる描写があるので、ダメな方は飛ばしてください

「おかあちゃんの家出」の2ヵ月後ぐらいです
430迷路 1:2010/09/29(水) 23:08:23 ID:Mbk+h6mZ
夢を見ていた。

夢の中で、それが夢だと自覚しているという状況がしばしばある。
今茂は空中を飛行していて、だから、ああこれは夢なのだと分かっていた。

正確には空の上を飛ぶ一反木綿の背中に乗っていたのだ。茂の漫画の中で
鬼太郎達を乗せて活躍する「魔法の絨毯」こと一反木綿の広々として
白い体は、今は鬼太郎ではなく生みの親たる茂を乗せていた。

面白い夢だ。どこかは分からないが、街並みの上を飛んでいるというのは
なかなか愉快な気分だった。よろしく頼むぞ、と一反木綿に声をかけると
意思を持ったその布が、頭の部分を器用にひねり背中の茂を振り返る。
妖の黒目のないつり目が、茂に微笑んだ気がした。
―――お母ちゃん?
布美枝の顔が頭に浮かんだ。そうだ、一反木綿は自分の漫画のキャラクターで
あると同時に、いやそれ以上に妻の分身でもあるのだ。茂にとっては
二重の意味で愛着のある存在だった。
茂の心の声に応えるように一反木綿はひとつうなずき、また前方を向いた。
「そうか、お母ちゃんが俺を運んでくれちょるんだな、すまん」
ぽんぽん、と右手で彼女(?)の薄っぺらい体を叩く。いくらなんでも
これよりは本物の布美枝のほうが厚みがあるな、などと思いながら。

一瞬なのか、それとも時間が経っていたのかは分からない。気が付くと
辺りは霧に包まれていた。視界が悪く前に進んでいるのかどうかも怪しい。
夢の中だというのを忘れて、つい茂は不安を覚えた。
「おい、お母ちゃん……」
また一反木綿が茂の方へ顔を向けた。先程は親しげに感じたその目が、
今は茂を睨んでいるのがはっきりと分かった。

(何だ、急に……)その視線に、背中をゾクッと冷たいものが走るのを
感じた瞬間。
一反木綿が体を大きく揺らし、茂はその背中から振り落とされた。
(えっ)空中に放り出され茂の体が真っ逆さまに落ちる。天地が逆になり、
体内で内臓がぐるりと回る感覚が襲った。

(お前、なして俺を――――)
伸ばした手が虚しく空を掴む。急速に距離が遠くなる白い布切れは
茂に何も応えてはくれなかった。
431迷路 2:2010/09/29(水) 23:10:11 ID:Mbk+h6mZ
「ぅあああーーーーーーっ!」

ガバッと茂は頭を上げた。そこは空の上ではなく、自分の家の物干し場
だった。仕事の合間、休憩のつもりで腰掛けていただけだったのに
どうやら座ったままうたた寝してしまったらしい。
「また最近、ろくに眠っとらんけんな…」

あんな夢を見た理由には心当たりがあった。
女房の布美枝が最近、家出をした。家出といっても小1時間で戻ってきたが、
正直肝が冷えたのを覚えている。
『私にだって、気持ちはあるんです』
大人しい妻が、初めてあんな風に感情を爆発させた。
(一反木綿の反乱、か)
いざとなれば布美枝には、茂の手を振り払い、茂を、―――――精神的な
意味でだが――――突き落とすという強みがあるのだと、あの柔和な性格の
女を脅威に感じた瞬間だった。その後過労で倒れたのをきっかけに
打ち解けたとはいえ、意外にあの事件は自分の中で尾をひいていたらしい。
自嘲して苦く笑った。

最悪な寝覚めだったが、それでも少しは眠ったことだしそろそろ仕事に
戻るか、と腰を上げたその時、パタパタとスリッパの足音が近付いてきた。
突き落とした張本人が飛んできたか……、正直、今は傍に来て欲しくない
気分だった。
「お父ちゃん!?どげしたの?大きな声出して!」
茂の悲鳴を聞きつけた布美枝が駆け寄ってきた。

「別に……、何でもなーわ」
今の夢の話をする訳にもいかず、何となく顔を逸らす。だから妻が寂しげな
表情になった事には気付かなかった。
「そう…?無理せんでね」
布美枝はやっとそれだけ言った。詳しく聞き出したかったが、夫がこういう
素振りを見せる時はそっとしておいた方がいいのだと学習している。
静かにその場を立ち去ろうとした。が。「おい、ちょっこし来い」
はい?と振り返ると同時に、布美枝は茂に手首を掴まれていた。早足で
ずんずん歩いていく茂に引っ張られるまま付いていくと、茂は物置に入った。
432迷路 3:2010/09/29(水) 23:12:03 ID:Mbk+h6mZ
布美枝の手を引きながら茂は頭の中で計算する。
今日は平日だから子供たちはまだ帰ってこない。運良く両親も外出中だ。
仕事部屋から離れればアシスタントや弟には声は聞こえないだろう。

無言で物置に入ると、布美枝が不安げな顔をした。何か重大な話が
あるとでも思っているのかもしれないが大きな間違いだ。
なぜなら、これから自分は彼女を抱くのだから。疲労と焦燥と独占欲が
化学反応を起こし、衝動に生まれ変わるのを体の中心で感じていた。


「お父ちゃん…?」
布美枝の腕を引き寄せると、茂と壁の間に、後ろ向きに体を挟んだ。
小さく声を上げる布美枝の臀部をひと撫でして、スカートを捲り上げ
一気にショーツを下げた。
「やっ……やだ、おとう、ちゃ…」夫が何を始めるつもりなのか
察知したらしい布美枝が、急な展開に逃げようとしたが、腰をがっちりと掴まれ
また壁に押さえ付けられる。
「でかい声を出すと、光男やちが飛んでくるぞ」
布美枝の耳もとで低く囁くと、抵抗する力が一瞬弱まった。その隙を逃さず
自分も下着ごとスラックスを下げると、ものも言わずに布美枝の中を
自分自身で突き刺した。

「………っ!!」声にならない悲鳴が漏れる。
スカートの中にしまわれたブラウスをたくし上げ、後ろから手を廻し
ブラジャーごと乳房を鷲掴んだ。愛撫というにはあまりにも荒々しい行為に、
布美枝はただ混乱するしかなかった。
ホックを外すのも面倒なのか、布の隙間から手の平が侵入し左の乳房を握る。
「待、……って、お父ちゃ…ぁ」
抗議にならない声を漏らし、茂の動きに翻弄される布美枝の背中に
茂が額を付けた。湿った熱がブラウス越しに伝わった。
433迷路 4:2010/09/29(水) 23:13:56 ID:Mbk+h6mZ
いつもの夫ではない。意識が飛びそうな頭で思った。
仕事が忙しくて余裕のない様子の時はしばしばあったが、こんなにも強引に、
まるで犯すように自分を抱く事はなかった。なぜ。

両手を壁に付けて精一杯体を支えながら、布美枝は首を捻って茂を
振り返った。その瞳の奥に隠れているものを必死で探ろうとするのに
読み取れない。
「何が…、あった、んですか」
涙を浮かべた目に、茂は激しい既視感に囚われた。それは皮肉にも、
夢で見た一反木綿を思い起こさせた。そんな目で見るな――――――
「…ええけん、大人しくしとけ」
一層激しくなる夫の動きに、布美枝は快感と虚無感に同時に襲われ
心をどこに置けばいいのか分からないまま、それを高く放り上げた。


行為が終わった後は茂が一言もなく物置から出て行ったので、布美枝は
次に茂と顔を合わせるのが怖かった。
夕食時、テーブルで新聞を読む彼が気になりながらも、声を掛けずに済む
状況が作られた事にホッとする。そうでなければ、聡い藍子などは
両親の間に流れる気まずい空気を敏感に感じ取っていただろうから。

居心地の悪い思いをしているのはしかし布美枝だけではなく、茂もまた
布美枝にどう接すればいいか図りかねていた。
自分達は夫婦だ。亭主が女房を抱いて何が悪い。そう正当化する一方で
違うそうじゃないと良心が叫ぶ。布美枝が自分を心配していたのは分かって
いたのに、乱暴に彼女を抱いた。自分が勝手に見た夢のせいで
勝手に不安定になり、勝手に欲情した。自分にも感情があるのだと
妻に訴えられて間もないというのに。
「どげしたもんかな……」


結局その夜は、二人とも言葉を交わさずにそれぞれ布団に入った。
434迷路 5:2010/09/29(水) 23:15:50 ID:Mbk+h6mZ
夜中、布美枝はふと目が覚ました。(喉渇いたな…)
台所で水でも飲もうと布団から出る。隣で茂が眠っているのを
暗がりの中で確認した。


10分後、非常に困った事態になった、と布美枝は冷や汗をかいていた。
迷ったのだ。自分の家の中で迷うなど間抜けな話だが、最近改装に改装を
重ねていた村井家はまるで迷路だった。
(だけん、あんまりやり過ぎんで、って言ったのに……!)
心の中で恨み言を吐いた。せめて電気を点けたいが、明かりのせいで
他の人を起こしてしまうかもしれないと思うとそれもできない。
部屋に戻るのも台所を探すのもままならずに壁づたいに歩いていると、
どん、と何かにぶつかった。「きゃっ……!」

「お前、何しとるんだ」抑えた声が尋ねてきた。
「お父ちゃん…?」茂だった。「何しちょーだ、こんな夜中に…」
「お父ちゃんっ」
来てくれた嬉しさに気まずかった事も忘れて、布美枝は茂のパジャマの裾を
ガシッと掴んだ。「お願い、台所に連れてってごせ」

設計の段階から改装に携わっていた茂は、さすがに見取図が頭の中に
入っているらしい。台所に辿りつき水を飲んだ後、部屋に向かった。
暗いので、またパジャマの裾を掴んでいてもいいかと茂に問うと
「歩きにくいけん、こっちにせえ」
左腕の袖をぷらりと差し出された。口調がぶっきらぼうなのは照れている時の
癖だと知っている。家の中とはいえ、こんな風に夜二人きりで歩いていると
まるで逢引みたいだと暢気な事を考えてしまう。
――――昨日、あんな事があったばかりだというのに。

「悪かったな、今日は」
「え…?」いやもう昨日か、と茂はもごもごと訂正した。
「いきなりで、びっくりさせた」
その口調には少し硬さがあり、やはりこの人も気にしていたのだ、と思った。
435迷路 6:2010/09/29(水) 23:18:13 ID:Mbk+h6mZ
「あなたはほんとにわからん人です」布美枝はつぶやいた。

「昼間はあげに怖かったのに、今はとっても優しくて…、私には
お父ちゃんの心の中がどげなっとるのかさっぱりわからん」
半分独り言のように心情を吐露する。
「いっつも私ばっかり振り回されとる……」


「だら、俺から見ればお前こそ何考えとるのかわからんわ」
「え……?」意外な発言に、つい袖を強く引っ張ってしまった。
「こらそげに引っ張るな。…ぼんやりしとるかと思えば、急に泣いたり叫んだり
家から飛び出したりするけんな。さっぱりわからん」
「もうっそげな、前の話持ち出して…」

咎めてみせたが、自分も少しはこのマイペースな夫を振り回せる存在
なのだろうか。想像したこともなかったが、少し新鮮で、こっそり嬉しくもあった。

話をしても、肌を重ねても、お互いに理解できない部分はたくさんあるのだろう。
それでも、こうして寄り添ってさえいればいい。そう思った。
暗がりの中でどちらからともなくくすりと笑い出す。日常の中に潜む
ちょっとした非日常が、二人の心を素直にさせてくれたようだった。

そうこう話しているうちに部屋に到着してしまい、物足りなく思いつつ
布美枝が茂のパジャマの袖を離すと、茂が振り返った。
「おい、今からでも久しぶりに一緒に寝るか?」
「…えっ…」
冗談だ。布美枝の声が裏返ったのを確認し、ニヤリと笑ってさっさと
布団に入る茂に、布美枝が返す。
「残念」
「ん?」

「……ちょっこし、期待したのに」
今度は、茂が顔を熱くさせる番だった。


(終)
436名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 00:11:27 ID:gNaDMJBV
>>430
GJ〜〜!
おかあちゃんの家出ボディブローじわじわ効いてる〜!
好きなのに意地悪しちゃう、どSゲゲの真髄ですな。
布美ちゃんの「期待したのに」萌えw

ドラマ終わってロストゲゲゲ症候群。
でも毎晩ここは賑わっててマジで救われてる!だんだん!
437名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 01:30:38 ID:+1S+lKUD
>>420
ハチミツで大騒ぎする茂がつぼった
かわいいわー

>>430
やっぱ強引な茂もイイw

結局フミちゃん幸せって所に落ち着くんだな、いいなあ
438名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 02:21:08 ID:A0B32W4K
>>420
あなたのエエ顔が見たくて・・ってのがいいですなぁ!この夫婦延々風邪を移し続けそうだw

>>430
しげーさん、家の中を迷路にしておいて良かったねw
439名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 15:28:24 ID:Ks5KkeLk
源兵衛さんミヤコさん夫婦があれば、イトツ・イカル夫婦もあります。
 
お題はみなさんご想像のとおり『じゃじゃ馬ならし』・・・。
440じゃじゃ馬ならし1:2010/09/30(木) 15:28:52 ID:Ks5KkeLk
「ヨロシクタノム」
ときは大正。故郷をはなれ花の都東京に暮らす村井修平は、父からの縁談をすすめる
手紙に、(穏便に断っておいてくれ。)という意味で、電報でこう返事を打った。
それが間違いの元ともしらず・・・。

 ひと月後、村井修平は、境港へ帰る汽車の車上の人となっていた。
縁談を断ったつもりの電報は、実家で好意的に解釈され、父からは
「向こうも承諾された。吉日をえらんで式をあげるから、東京をひきあげて
 帰って来い。就職先も世話してやる。もしも帰って来なかったら勘当だ!」
という主旨の最後通牒がもたらされた。

(あーあ、俺も年貢のおさめ時かぁ・・・。花の都をはなれ、泥くさい田舎娘と
 所帯をもって、小さくまとまって生涯を終えるのか・・・。)
一族の期待を一身にになって早稲田大学へ入学したものの、勉学はそっちのけで
芝居や映画にうつつをぬかし、また生来の女好き、学生の身で芸者に貢いでは
裏切られ、いつもすかんぴん。卒業後についた仕事もクビになり、下宿代にも
こと欠いて、資産家の父の仕送りがたのみだった。
(花の東京ぐらしも、先立つものがなくてはどげだいならん。おとっつあんに
 見放されては生きて行けん。しかたない、帰るとするか・・・。)
入れあげていた芸者にも振りつけられ、修平はなかばヤケで結婚する気になった。

 祝言の夜。
白いつの隠しからのぞく花嫁の顔は、つぶらな瞳に小作りな鼻と口、まるで
おひな様のように愛らしかった。
(むむ。なかなかええな。田舎娘も捨てたもんではない。)
祝言の会場となった祖母の実家の屋敷の広い庭に、白梅が香っている。
修平はぺらぺらとしゃべり出した。
「ほほう、ええ香りだ。今頃は湯島の梅も梅見のさかりですかなあ。
 湯島の白梅といえば、『わかれろきれろは芸者の時に言う言葉、
 いっそ今のあたしには、死ねとおっしゃってくださいな・・・。」
忌みことば満載のおしゃべりに、花嫁の絹代のこめかみにサッと青筋がたった。
修平側の親族が、あわてて新郎に酒をつぐふりをしながら話をさえぎった。
「あー、おっほん。花嫁さんはがいに疲れましたろう。気分でも悪うなったら
 新床の夢も台無しじゃ。おんな衆、部屋で休ませてあげたらどげじゃろ?」
女たちも心得たもので、花嫁の手を取って、用意の離れ座敷へいざなった。
441じゃじゃ馬ならし2:2010/09/30(木) 15:29:16 ID:Ks5KkeLk
「修平!いらんおしゃべりはするなと、あれほど言うておいたに。お前と
 いうやつは・・・。花嫁はちぃとキつそうだが、お前のような極楽トンボには、
 あげなしっかり者がちょうどええ。所帯を持ったからには一人前の男、
 今度と言う今度は 真人間になってもらうけんな。ええか、嫁に逃げられる
 ようなことがあれば、勘当じゃけん、そげ肝に銘じちょけ!」
絶対的権力者の父に、そう脅しあげられ、修平は花嫁の待つ座敷へ向かった。

 燭台の灯がぼんやりと照らし出す部屋の中には、二ツ枕になまめかしい絹夜具が
しかれ、花嫁衣裳を脱いで髪もおろした花嫁が待っていた。
・・・だが、その顔には、銀色につめたく光るメガネがのっていた。
(なんだ、メガネ女か・・・。興ざめだな。)
修平は少しがっかりしながら、声をかけた。
「女のメガネは美観をそこねるなあ・・・。とってくれんか。」
とたんに、小柄な絹代からは想像もつかない力強い声がぴしりと返ってきた。
「私はひどい近眼(ちかめ)ですけん!とるつもりはありまっせん!」
(生意気な女だなあ・・・。)
へらへらしているようでも、そこは男。おぼっちゃん育ちもあって、修平は
花嫁のとんだ鼻っ柱に腹を立て、さっさと羽織袴を脱いで布団にもぐりこみ、
「あーあ、疲れた。あんたも早やこと寝たらええ。」
花嫁に背を向けて、ぐーぐー眠ってしまった。

 ひとり取り残された絹代は、小さな身体を烈火のごとき怒りでいっぱいにして
修平をにらみつけていた。
・・・花婿は東京の大学を出た秀才、そう聞いて、絹代は大きな期待を抱いていた。
絹代の家は苗字帯刀御免の家柄、とは言え、祖父の代に家は没落してしまっていた。
絹代は生来気が強く、曲がったことが大きらい。名家の生まれへの誇りと、貧乏ゆえ
ひとにわらわれたくない、と言う矜持が気の強さに拍車をかけ、縁談は連戦連敗、
親族からは密かに「鬼娘」と呼ばれる始末だった。
だが今度の縁談は、なぜかとんとん拍子にすすみ、今夜祝言のはこびとなった。
「ええな、祝言の席では、誰に何を言われても『はい。』『いいえ。』としか
 言うたらいけんぞ。この縁談をしくじったら、もう後がないんだけんな!」
両親にそう言い含められ、祝言の席では我慢をしていたが、修平の軽薄才子ぶりに
我慢も限界にきていたところに、容貌をくさすようなことを言われ、
(どうせ私は、鬼むすめですけん!)
すっかり意固地になってしまっていた。 
442じゃじゃ馬ならし3:2010/09/30(木) 15:29:52 ID:Ks5KkeLk
 翌朝、二人はお互いの顔も見ずに朝食をいただき、新居へと向かった。
修平の父が用意してくれた家は、修平に人生を一から築いてほしいという
親ごころから、質素なものだった。
(あんがい、小さな家だな・・・。)
「お前は、家と結婚したのではない。俺と結婚したのだ!」
気持ちを見透かされたような修平の言葉に、絹代はギョッとした。
「セイクスピヤをもじったんですよ。知らんのですか?」
「セイクスピヤくらい知っとります!『ロメオとジュリエット』とか・・・。」
(ほほう、才媛とは聞いておったが、文学もたしなむか・・・。)
「ふふん、ジュリエットと言うよりは、マクベス夫人・・・いやいや、なんでもない。」
修平はそそくさと家に入り、新婚生活がはじまった。

 ところが・・・。一事が万事、かみあわない。さっそく昼食の献立に文句を言い、
口論になって修平はぷいと家を出た。夜になってやっと帰ってきたと思ったら、
風呂に入って寝てしまった。絹代は泣きたい思いを押し隠し、知らぬ顔をして
隣りの布団に入った。新婚二夜め、夫に手もふれられぬのはあまりにみじめだった。
 祝言の後、メガネをかけて初めてよく見た修平はなかなかの男ぶりで、メガネの
奥の理知的な光がこのましく、絹代は胸をときめかせていたのだ。
「おい、あんた。」
絹代の後ろ姿がピクリと緊張した。はためにも震えているのがわかる。修平は
なんだかかわいそうになった。精いっぱい身体をふくらませたハリネズミのようで、
気は強くてもしょせんは十九の乙女、男が恐ろしいのかもしれない。
粋人を自負する修平にとって、こわがっている女を手込めにするほど無粋なことはない。
「・・・いや、なんでもない・・・。」
またしても、二人は複雑な思いをそれぞれに抱きながら別々に眠ることとなった。

 次の日。修平は朝食も食べずに出かけていった。絹代は絶望的な気分になった。
(もう、いけん。おしまいだわ・・・。離縁されたら、どげしよう・・・。)
夕方になって、玄関が騒がしいので、何事かと出てみると、青い顔をした修平が
屈強の男たちに運び込まれているところだった。
「このダンナが、そこで倒れて、家はここだとおっしゃるもんで、アッシどもで
 お助けしたようなわけで。」
絹代は、丁重に男たちに礼を言った。
「新婚さんですかい。ダンナ、お楽しみもええが、ほどほどにしてごしなさいよ。」
男たちはドッと笑い、とんでもない誤解をしたまま帰って行った。
屈辱に耐え、絹代は医者を呼ぼうとした。
「待て。なんでもない。ハラが減っとるだけだけん。」
「お腹が?!いったいどげして・・・?」
修平は意地を張って絹代の料理を食べなかったが、実は婚礼の翌朝以来、何も
食べていなかった。フラフラと遊びにでも行かれたら一大事、と父が生活費を
全て絹代にあずけたので、修平は一文無しだった。昔なじみにおごってもらおうとしたが、
父の命令がゆきとどいていて、「新婚の嫁さんをほっといたら、いけんじゃなーか。」
と、相手にされなかった。  
443じゃじゃ馬ならし4:2010/09/30(木) 15:30:31 ID:Ks5KkeLk
絹代は、卵ぞうすいを作って修平に食べさせた。
「ふぅ・・・。やっと人ごこちがついたわ。あんたの料理、なかなかうまいな。」
ほめられて、絹代はポッとほほを染めた。
「ここに・・・置いてもらえませんか?私、もう帰るところがないんです。」
「それじゃあ俺たち、似合いの夫婦だな。俺は、親父から、嫁に逃げられたら
 勘当すると言われとってな。」
ふたりは、顔を見合わせて笑った。  
                    
「お互いに、はらんでもええ意地をはっとったな。」
修平は、手をのばして絹代のメガネをはずした。
「あんた、かわいいな。祝言の夜から、そう思っとった。」
「わ、私なんか、どうせマクベス夫人ですけん・・・。」
「・・・読んだのか?すまんだったな。だけど、女は男しだいで鬼にもなれば
 菩薩にもなる。・・・俺は、あんたが鬼にならんよう、大事にするつもりだ。」
修平は、驚いて声も出ない絹代の唇に、そっと口づけた。絹代も抱きしめられるまま、
修平のワイシャツの香りにつつまれて目を閉じた。

 そのまま、二人は修平の布団の上で抱き合った。口づけがだんだん深くなる。
絹代の着物の身八ツ口から手を入れて、乳房をまさぐると、小柄な身体からは
想像できないような豊満な手ごたえがあった。
「このままじゃあ、手ごめのようで、具合が悪いな。」
昼間の着物は脱がすのが大変だが、修平はしんぼう強くひもを外し、帯をといて
絹代の白い裸身にたどりついた。自分も衣服を脱いで身体を重ねあう。
持ちおもりのするふたつの乳房の間に顔を埋め、乳首を指でつまんでこすり
あわせると、いじらしく紅く色づいて、修平の唇をさそった。
胸からへそ、腰骨のあたりに唇をはわすと、
「だ、だめっ・・・。そげなことしたら・・・いけん・・・。」
泣きそうな声をあげて身体をよじった。
「かわいいな・・・ほんとに。」
修平は顔を上げて絹代の唇を奪った。こんなにかわいい女は、いない。
「そげに突っぱらかっとったら、天国へ連れてってやれんぞ。」
修平は、絹代の口内を犯しながら、やわらかな和毛(にこげ)のしげるかわいい丘の
はざまに指をすべりこませ、やさしく刺激をくわえ始めた。
・・・じわじわと広がるはじめての快感に、絹代は悲鳴をあげて修平の指から
のがれようとした。修平がのしかかるようにして動きを封じ、絹代は
あられもない声をあげて昇りつめさせられた。              
444じゃじゃ馬ならし5:2010/09/30(木) 15:31:12 ID:Ks5KkeLk
・・・それから、すっかりやわらかくほぐれた部分に、やっと修平自身を
押しつけ、征服に乗り出した。初めて味わう絶頂感に、ぼう然としていた絹代が、
破瓜のいたみに我に返り、目に涙をいっぱいためて修平の腕を強くつかんだ。
「・・・こっちの方では、まだ天国と言うわけにはいかんけん、ちょっこし
 がまんしてくれ、な。」
生娘など、面倒なだけだと通を気取っていたが、今まで修平のまわりにいたのは、
しょせん金の切れ目が縁の切れ目の商売女や、学生と言う学生にコナをかける、
すれっからしの下宿の娘・・・。
(俺だけのために咲く花というのも、わるくない・・・。)
修平は、絹代のやわらかい肉身をふかく味わい、自分も天国にあそぶここちで
絹代の中に精をはなった。

 色とりどりのひもや帯、着物の散らばる中に、散らされたまま横たわる絹代。
結い上げた髪がくずれ、しどけなく顔にかかっている。修平はその髪を解き、
いとおしげに梳いて絹代の身体のまわりに流した。
「ええな・・・オフェーリヤのようだ。」
絹代は幸福そうにほほえみ、修平はその腕の中にまた戻っていった。

 翌朝。
「あなた・・・。修平さん、起きて下さい。・・・修平さん!」
今日から勤めに出なければならないのに、修平はさっぱり起きて来ない。
業をにやした絹代は、布団をバサッと引き剥がし、
「今日から会社だと言うちょーますが!起きてと言うたら、起きてごしなさい!」
大声で怒鳴った。
(・・・ゆうべは、あげに可愛かったのにな・・・。)
あくびをしながら、修平は会社へ行く支度をした。
(まあ、また今夜かわいくしてやるけん。・・・調教しがいがあるじゃじゃ馬だわ。)
まんざらでもなさそうに、修平は朝飯をしたためた。
445名無しさん@ピンキー:2010/10/01(金) 00:33:29 ID:qhbRwZXq
おお、ツンデレ比翼連理な二人の馴れ初め話が読めるとは…!
イトツのディレッタントな雰囲気がようでちょーますなあ

だんだん!
446名無しさん@ピンキー:2010/10/01(金) 01:11:35 ID:CrfigmvG
>>440
エロとそこに持っていくまでの話も秀逸なんだが、
イトツのイトツっぽさ、イカルのイカルっぽさ、
すごく特徴つかんでてびっくりですよ。
正直、湯島の白梅なんていわれてもわからんのですが
結婚式にKY発言とか、いかにもイトツぽくて感動した!
447名無しさん@ピンキー:2010/10/01(金) 01:27:12 ID:AxzVuTwf
良作GJ!!
本当にイトツらしい、イカルらしい、素晴らしい作品だ
この夫婦から村井三兄弟が産まれ
ゆくゆくは三男が酒屋の娘さんと結ばれる訳ですな
はぁ〜めでたい
448名無しさん@ピンキー:2010/10/01(金) 01:31:52 ID:6Kixjttx
じ、次男…
449名無しさん@ピンキー:2010/10/01(金) 03:33:34 ID:KAfYpdX/
職人さん方どの作品もGJすぎる…
気がついたらこのスレ読み耽ってた
450幸福罪1:2010/10/02(土) 19:23:49 ID:4ISXZ/FS
いずみが安来へ戻り、話し相手が居ないしんと静まり返った部屋で、
心地よい寝息をたてる二人の愛娘の寝顔を確認しながら、
布美枝は、いずみと倉田の別れのやりとりを思い出し、少し切ない思いでいた。

互いを想い合っていた二人の別れ…。
自分がもっとしっかりした姉だったら、安来の両親をなんとか説得して、
二人の想いを成就させてあげられたかも知れない。

(不甲斐無いなぁ…)

やがて、のろのろと茂がやってきて、くたびれた身体を大の字で布団へ投げ出し、
大きくため息をついた。

「お疲れさまです」
「安来から電話あったのか」
「はい、無事に着きましたって」
「そげか…」

目を閉じたまま茂が、「明日、倉田にもそげ言っといてくれ」と呟いた。

「…好き合うとったんだろ」
「…!…ご存知だったんですか」
「まあな」
「驚いた。おとうちゃんはこういうこと、疎い人だと思っとった」
「バカにするな」

布美枝は、倉田がいずみにプレゼントした絵のことを話した。
笑顔のいずみの絵は、布美枝の女心をもくすぐる眩しいほどの一枚だった。

「何度も描き直したって言っとられました。いずみも嬉しかっただろうな」
「…絵描きは口下手なヤツが多いけんな。絵でないと伝えられんだったんだろ」
「ええなあ。あんなキレイに描いてもらえて、羨ましい」

ちら、と寝転んだままの茂に視線を寄越す。
目は口ほどに物を言い。
布美枝の視線の中にある、期待を含んだ言葉を察知したように、
「なんだ、描いて欲しいのか?」
狙い通りの答えが返ってきた。

「描いてくれるんですか?」
思わず声が少し裏返る。
倉田が描いた、いずみの絵を思い出してわくわくした。
が、寝転んだまま茂は、頭の上の棚にあったメモ帳と鉛筆を取り、
うつ伏せの体勢ですらすらと描いたかと思うと、ほいっと布美枝にそれを差し出した。
ひらひらと舞う、白い一反木綿。
451幸福罪2:2010/10/02(土) 19:25:25 ID:4ISXZ/FS
「む…」
「どげした、いくらでも描いてやるぞ。また額縁にでも入れて飾っとくか」

布美枝の思惑は、茂に憎らしくも上手くあしらわれ、
はしゃいでしまった恥ずかしさに頬が火照った。
肩を震わせてくくく、と笑う茂に枕を放り投げ、掛け布団を頭から被る。

「明日色入れてやろうか。今のお前みたく紅い一反木綿も面白い」
「もうええですっ」

また、くすくすと笑い声。
鼻息荒く背を丸めてぎゅっと目を閉じていると、ふいに後ろから茂の腕が布団に探り入ってきた。
胸の前で組んでいた布美枝の手を探し当て、ぎゅっと握りしめると
そのままぐい、と引っぱって強引に身体を仰向けさせる。
あ、と思ったときには、もう唇がすぐそこまで接近してきていて、
言おうとした文句の言葉が、茂の唇に吸い込まれてしまった。

ちらちらと唇を舐めてくる舌の合図に、わざと乗らずに頑なに口を真一文字に結んでいると、
やがて顔を離して布美枝の様子を窺ってくる。
「お、随分むくれとるな」
「…一反木綿なんか抱いても、つまらんでしょう」
「刺々しいな。厭味が効いとる」
ふいと横を向くと、却って首筋が留守になってしまい、すかさず温い舌がざらりと滑る。
「ふ…っ…」
布美枝の反応にまた、くすと笑う。

「意地悪…」
瞳を伏せ気味に、口を尖らせた布美枝を見て、首を傾げて茂が問う。
「絵なんか描かせてどげするんだ?遺影にでもするつもりか」
「もう!ええですっ。ちょっこし羨ましかっただけです。
 あたしもおとうちゃんにあんな風に描いてもらえたら、嬉しいなあって…思っただけです…」

少し真顔になった茂が小さくため息をついたので、しょんぼりしてしまう。
「あのな」
やおら体勢を起こしながら、茂の真剣な低音調の声がした。
452幸福罪3:2010/10/02(土) 19:26:10 ID:4ISXZ/FS
「絵は絵描きの魂を宿すもんだ。あいつ、何度も描き直したと言っとったんだろ?
 魂を宿すのは、並大抵の労力じゃない。想っとる相手の絵なら尚更な。
 手を抜けんのだ、自分に嘘をつくことになるけん。想いのぶんだけ、魂も削る」

茂の言葉に、もう一度あの絵を思い出す。
絵の中に垣間見えた倉田の想い。
口下手な絵描きが、絵に載せて託す自らの熱情…。
別離のために描いた、切なすぎる一枚。

「絵描きなら皆同じだ。俺だって。
 魂込めるほど大事な人間の絵なぞ、簡単に描けるもんではない」
「……え…?」

自分の言葉に感心して頷く茂だったが、
見つめる布美枝の熱い眼差しに気づいて、はっとして固まった。
「おとうちゃん……」
『魂込めるほど大事な人間』…?
まさか…自惚れてもいいのだろうか。
激しく高鳴る鼓動に、思わず潤む布美枝の瞳。

自分で自分を追い込んだ茂は、慌てて目をそらして髪を掻きむしった。
「あー、いやっ、その…と、とにかくっ!
 今の仕事量では…どげだい他の絵を描く時間はないわっ」
照れくさそうに言う茂を見つめて、布美枝は熱くなる胸を抑えて微笑んだ。
胡坐を組みなおしたり、咳払いをしたり、忙しく落ち着かない茂に、
そっと近寄り、身体を預けた。広い胸が優しく受け止めてくれた。

髭のざらつく顎が、遠慮がちに布美枝の頬を擦り上げると、
耳を甘く噛まれ、ぺろりと舐められる。
くすぐるような愛撫に布美枝は肩をすくめた。

茂の右手は、甘い時間へ誘うように布美枝の髪を梳き、
二つの唇は深く重なり合い、身体はゆるりと布団へ堕ちていった。
453幸福罪4:2010/10/02(土) 19:26:47 ID:4ISXZ/FS
湿った息と共に割り込んでくる舌を迎えながら、ボタンにかける右手を手伝う。
服の合わせからするりと入り込んでくる温かな五指に、やがて弄ばれる柔い乳房。
袖から腕を抜いて、服と肌着を身から離すと、布を纏わぬ上半身を全て茂に曝した。

「…っ…あ…」
下から持ち上げるように揉みしだかれる胸。
それによって疼く乳首が、茂の舌の思うままに操られる。
口の中で保温された唾液が、舌先から布美枝の胸の先端に絡まった途端、
一気に冷やされてぞくっと背中に冷気が走る。
薄暗い部屋に照らされる尖った影。そしてそれを覆っては周囲を這う紅い長舌。

上半身の快感が伝染して、むずむずとする脚を擦りあわせていると
茂の膝がその間へ割って入ってくる。
勃起した硬直が服越しに宛てられて、ずいと腰を密着させて主張する。
「や…っ…ん…」
ただそれだけで、疼く場所から熱い液が蕩けだす感覚があった。
布美枝の反応に、茂は愉快そうにその戯れを繰り返す。

「もぅ」小さく頬を膨らませて、布美枝が茂を睨みつけると、
ふっと笑って口づけをくれる。
頬、耳、鼻、瞼、降ってくる柔らかさに愛おしさが募る。
口づけられながら、秘所へと挿しいれられる右手をそっと迎え、
ぬるりと入れられた指に息を呑んだ。
「は……っ…ぁ…」
454幸福罪5:2010/10/02(土) 19:27:53 ID:4ISXZ/FS
どうしようもなく身悶える様を、あの眼差しが見ているのかと思うと
その羞恥がさらにぞくぞくと身体への反応を促す。
指で摘まれ、弾かれる芯に、一段と胎の奥からの疼痛が増していく。
茂の指の刺激が、子宮に響く。
胸の谷間に埋めた茂の頭を、ぎゅっと抱きしめた。
「………げぇさ…ぁん…」
懇願するように名を呼べば、一層愛撫の熱が昇華する。
たまらず布美枝の艶声が高く啼き響く。

やがて今度は布越しではなく、直に分け入ってくる男根の感覚。
強引にではなく、じわりじわりと進んでくる。
「あ…っ…」
思わず寄せた眉間の皺に、湿気た唇が優しく降ってきた。
重なり合う身体、触れ合う肌と肌、伝わる鼓動、汗の中に混じる愛しい男の匂い。
震えるほどの幸せ…。

(いずみ…)

思いがけずいずみの顔が浮かんだ瞬間、刺されたように心臓が痛んだ。
とたんにぽろぽろと涙が零れだす。
驚いた茂が動きを止め、布美枝を覗きこんだ。

「痛かったか?」
ふるふると首を横に振って答えるのが精一杯だった。

「…どげした…?」
また、あの優しく低い声と、頬を撫でる温かな右手。
表しようのない言葉が、涙となって次々溢れる。

「…わからん…わからんの…」

この涙をどう説明すればいいか分からず、ただ泣きながら茂に縋りついた。
思い浮かぶのは、倉田といずみの切ない別れの光景。
愛しい男に抱かれる極上の幸福、それを知らぬままに去っていった妹。
言葉に出来ない想いを絵に注ぎ込んで、別れを受け入れた倉田の悲哀の背中。

二人の想いを知っていながら何もできずにいたくせに、
皮肉にもそんな自分はいままさに、愛しい男から与えられるこれ以上ない程の幸せに包まれている。
別離た二人に対する罪悪感と、茂からもらう最高級の幸せ。
布美枝を二つに引き裂く感情を、果たしてこの深い眼差しの最愛の男に
どう説明すればいいのだろう。
455幸福罪6:2010/10/02(土) 19:28:48 ID:4ISXZ/FS
戸惑いながら、幾度も口づけをくれる茂を仰ぎながら
「…っ…もう…ええです…けん…」
喉の奥から絞りだすようにせがんだ。
「何も…考えられんくらいに…っ…」
「…」
「…して…っ…!」

何か問いたげな瞳がそこにはあったが、茂はその求めに小さく頷くと、
布美枝の左脚に手をかけ、一気に脈動を貫いた。
「…っあっ…!」

背をのけぞって一瞬耐えたが、波動はそれだけに留まらず次々と押し寄せる。
いずみの涙も、倉田の哀しい笑顔も、その波に流されて消えた。
脚にかかっていた茂の右手が、布美枝の左手を絡め取って強く握り締められる。
痛いほどの力だったが、伝わる温もりに不思議と胸がじんとなった。

「はっ…あっ―――…っあっ…!」
硬度した熱情を貫かれ、そぞろ起つ襞が蠢いて捕らえる。
突き上げては去っていく快感が、布美枝の身体と思考を占拠していく。
意思とは無関係に淫れる肢体、呼吸もままならない深い口づけの嵐。
褥に撒き散らされた長い髪が、握られた手に絡まる。

目を閉じれば聴こえるのは、茂の荒い息と強く脈打つ鼓動の音。
そして目を開けば見えるのは、茂の苦しそうな表情と光る汗。
ゆっくり滲んでいく光景に、また涙腺が決壊したのだと悟った。
濡れた窓ガラスを拭くように、茂の唇が涙を掬ってくれた。視界が晴れる。
この人を、絶対に失いたくない…。

「―――――…ふ、ぅっ!…っ……あっ…!」

その瞬間は真っ白だった。

跳ね上がった布美枝の身体を、茂がぐっと押さえつけた。
ひととき息を止めた茂が、大きくため息をついて、その肩から力が抜ける。
膣奥に充填される茂の精を感じながら、その重みと温もりに今一度しがみつく。
上下する茂の肩に唇を寄せて、声に出さずに呟いた。
『…愛してます…』
456幸福罪7:2010/10/02(土) 19:30:32 ID:4ISXZ/FS
※ ※ ※

「…あたしがもっと…力になってやれば良かった」
茂の胸の中に収まったまま、布美枝がぽつりと呟いた。
茂は何も言わずに、腕枕の向こう側の布美枝の髪を弄んでいた。

「何もできんだったのに…あたしだけ…幸せで」
「…」
「いずみに…二人に…申し訳なくて…」
そしてまた感情と一緒に溢れ出す涙。
茂の右手がぽんぽんと布美枝の背中を撫でてくれる。

「好き合っとる二人が…なして別離れなならんだったんだろう…」
言ってから自分の言葉に怯えて、茂の胸に今一歩沈み込んだ。
(あたしだったら耐えられん…)
ぎゅっと目を瞑る。

静かに息を吐いた茂が、寝床の上を仰いだ気配があった。
「なあ」
「…はい」
「おばば殿なら何と言うだろうな」
茂が仰いでいたのは、箪笥の上の登志の遺影だった。

「おばば…?」
「お前が言うとっただろ、ご縁の糸の話。おばば殿が言うとったと」
随分前に話したような気もするが、茂がそのことを覚えていたのが少し意外だった。

「残念だが二人は糸で繋がれとらんだった…ということでないのか」
「ご縁の、糸…?」
今度は茂が頷く。
「どっかにおるんだろ、あの二人にも。繋がれとる糸の先に。
 きっとおばば殿なら知っとられるんだろうがな」

言葉が出てこず、布美枝は頷くしかできなかった。壊れた蛇口からまた涙。
「あーもう泣くな」
さすがに呆れたような顔で、しかし優しく抱きしめられる。
目を閉じて全て委ねた。


うつらうつら、夢に堕ちていく途中で、布美枝は微かな声を聴いた気がした。


「…幸せなのが罪だ、言うなら…」

――――俺も一緒に罰を受けてやる。


おわり
457名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 23:56:28 ID:FEkeT2XY
>>450
GJ!なんか色々ツボ
茂のアーティスト魂を感じる語りとか
おばばの話ちゃんと覚えてるのとか(そういやドラマではそういうシーンなかった)
458名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 00:00:18 ID:owcSPi83
>>450
GJ!だんだん!
二人の仲が更に燃え上がるのであれば、一緒に罰を受けちゃっても良いと思います(キリッ

ドラマが終わって凄く寂しいが
萌え続けられる場所があるのは幸せだ
459名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 00:49:51 ID:q915dtQT
>>450
GJです!「魂込めるほど大事な人間の絵なぞ、簡単に描けるもんではない」ってのがええですなあ。つい言っちゃった後に慌てる辺りがw
460名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 01:16:14 ID:hI4zkV3S
>>450
GJです!!ええわぁ。
461名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 01:19:41 ID:wONaW5hA
>>450
神職人様や〜だんだん!
いちゃこらの二人かわゆし〜!
いずみちゃんと倉田君に胸を痛める布美ちゃん…優しいなぁ
今回は優し気ゲゲで胸キュンでした

本放送が終わってしまって、寂しさ一杯だったけど
このスレがある限り生きてゆける!
462名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 01:33:14 ID:hI4zkV3S
大作の後でお目汚しですが、私も短いのを一本投下させていただきます。
次の職人さん登場までのつなぎ程度で軽く読んでいただければ幸いです。

茂が見合いを持ちかけられた時のエピが元ネタなのですが、なんせ録画して
いなかったのでうろ覚えで書いてます。ドラマとは台詞やシチュエーションが
かなり違っているのは許して下さい。
463出逢う前から 1:2010/10/03(日) 01:35:00 ID:hI4zkV3S
「しげーさんっ!今度こそお見合いしてもらいますけんねっ!!」
絹代の怒号が茂の家中に響き渡った。修平はまぁまぁと言いながらも止める
つもりはさらさらないらしい。

「…そげなこと言ったって、こげな貧乏漫画家に来る女なぞおらんし、そもそも
嫁を養う余裕なんかないけん。」
「『ひとり口では無理でもふたり口なら何とかなる』という言葉があります!」
「一人も養えんのに二人も養えるわけなぁが。」
「屁理屈を言うもんじゃありません!!」
引き下がる気配はまったくないようだ。ちらりと修平を見やると来る途中で
買ってきたらしい新聞を眺めては「今度の歌舞伎座は…」と我関せずだ。

今度こそ見合いをしろと言うがこれまでにもしてみてもいいかと思わなくは
なかった。
だが、全て見合いをする以前に先方から断ってきたのだ。片腕を失った売れない
漫画家なぞに嫁ごうとするような物好きな女がいるわけない。
「もうええけん、早く兄貴んとこ行ったらええが。」
怒りを抑えて早く二人を帰そうと促した。

「先方は見合いをすると言うとられます。」
絹代は打って変わってぐっと落ちついた声になった。が、すぐに元のイカルに
戻った。
「と〜に〜か〜く〜!写真と釣書は置いていきます。先方と日取りが決まったら
また連絡しますけんね!!」
嵐のようにやって来たかと思うとまた、嵐のように去って行った。

(見合いをするだと…?どうせ、仲人に借りがあって断れんのだろ。)
二人を見送るとちゃぶ台に置かれた写真と釣書を見ようともせずに仕事部屋に
入ってしまった。
464出逢う前から 2:2010/10/03(日) 01:35:47 ID:hI4zkV3S
どれくらい時間が経ったのだろうか。辺りはもう真っ暗だった。ひどい空腹を
覚えた茂は絹代が置いていったふかし芋でも食べようと再びちゃぶ台の前に腰を
下ろした。
(うん、やっぱり芋は境港に限る。)
食べながらふと目に入るのは絹代が置いていった写真と釣書だった。
無造作に端の方へ押しやったが嫌でも目に入る。

(顔くらいは見ておくか。)
再び手に取ってまずは釣書の方から読み始めた。
「飯田布美枝…か。」
そして写真を手に取った。
印象的な目をしている、と茂は思った。少しはにかんだ笑顔が可愛らしいと
思った。


………とくん。


茂の胸が弾んだ。
慌てて写真をしまいこんで何かを振り切るように頭を振るとそそくさと仕事部屋に
戻った。


『・・・さん、朝ですよ…起きて…。』
「…もうちょっこし寝かせてくれ、・・ぇ…」
優しい声に起こされたような気がしてがばっと茂は起き上がった。どうやら
そのまま仕事机に突っ伏して寝てしまったらしい。
(俺は今、何て…?)
いつもなら改めて寝直すところだが、しっかりと目が覚めてしまい、仕方なく
顔を洗ってまた仕事部屋に戻ろうとした。
ちゃぶ台を見ると茂が無造作に置いたままの写真と釣書がまた目に入って
しまった。無視して昨夜の残りのふかし芋を朝食代わりに食べ始めたが
どうしても目がそちらの方へと引き寄せられてしまった。
怖い物でも見るかのように引き寄せて再び写真を取り出した。


……とくん。


とうの昔に忘れたと思っていた胸の高鳴りに茂はひどく戸惑ってしまい、
「いけん、墓へ行こう。」
ばりばりと頭を掻きむしりながら出かけてしまった。

茂がその目玉に”一目惚れ”をするのは、もうあと少し…。
465名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 03:40:32 ID:xWw4ABrO
>>463
しげーさんが初々しくて可愛いw見合いとは言え一目ぼれ同士のような気がする。
娘さんのエッセーで、水木先生が嫌いなタイプの女性の例を上げてったら、それが全部布枝さんと正反対なタイプだったと書いてたな。結局理想の女性だったんだ。
だからお母ちゃんを選んだんだね!と言われて、ゆでダコのように赤くなった先生が可愛かったw
466名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 23:44:20 ID:5f39S+el
>>463
もう「ふみえ」って呼ぶ準備してたんだなw

次女の本の、だからお母ちゃんを選んだんだね!の話は可愛かった
あれドラマでもやってたら萌えただろうな
467名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 02:57:56 ID:rp8bf1Xw
イトツが
「まことの恋をするものは皆ひと目惚れである」
って言ってたね〜
468名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 03:15:37 ID:guSQKcuh
>>463
ゲゲルかわいいよゲゲルw
フミちゃんは丁寧に結婚前の描写がされたけど
ゲゲル側はイカルの印象が強かったからなぁ
ゲゲルもフミちゃんにもっとときめけ!w
469名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 16:38:01 ID:Z92jNjHl
たしか御大がお見合いの席で気に入られようと必死に都会人ぶってアピールしたと本に書いてあったよ。
普段はのんびり屋なのに頑張ってしゃべったって。
あと結婚して生活が劇的に変わったと言ってるのも萌えるな。
470名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 17:06:41 ID:3I3X7xm6
劇的変化

ひとりでできるもん  が  ふたりでないとできへん  へ
(↑過去ログ参照)
471名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 22:24:19 ID:SsIU/oVO
写真を見てまあまあだと思っていたが、本人をひと目見て即決した。って書いてあったな
顔が長いとか言っときながら普通に好みだったのか
472名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 23:23:27 ID:LG6llp7c
見合いのとき「あ、さっきの目玉だ」ってぼそっと言うのがエエ。
あと、結婚式のとき控え室から出てきて、
布美ちゃんとご対面してちょっとだけ見とれる場面も好きだw

ああ!もうたまらん!DVD見てやる!!
473名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 01:04:01 ID:T2b5DeRq
うんうん、ホント可愛い二人だよ。
深大寺デートの場面で「目玉見てこっちは即決だった」と言ってたね。
あれってさあ、普通に考えても「一目ぼれでした」ってコクってるよな。
ふみちゃん気づいてなさそうだったけどww
474名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 02:44:47 ID:9sofXfue
フハッ!自分も茂がサラッと言ったので告白に気づきませんでした!
見合いの後、一反木綿の絵を興奮気味に描いてるシーンは漫画のネタ浮かんだっていうよりも、フミエに会ってご機嫌だったんだな。
茂が一反木綿とフミエが似てるでしょって周りに言うのは完全にノロケだよね。
475名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 20:24:39 ID:btpknClr
もうっ

完全にノロケです
476名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 23:15:17 ID:oqR0pSTs
航空母艦に挿入したい
477名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 23:51:13 ID:sEmWdTBJ
>>474
最後までノロケてたよなw
478名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 01:29:03 ID:cUXBkLYk
ちゅらさんみたいに続編作ってくれないかな〜

実在の人物だから難しいだろうけど平成版て感じでさ…
479名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 01:43:51 ID:LtHResZz
20代に60代演じさせるのは酷だよ
実際そんな暇なさそう
480名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 01:51:00 ID:VFJ+2pk8
>>479
だな。
それに本スレ辺りじゃ、老けメイク老けメイク・・・って
やたら、やかましい人達が居るし。
ゲゲフミに焦点が当たらないなら、スピンオフや単発も無くていいや
481名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 01:51:37 ID:BkAkicUY
布美さんがノロケるのも良い
授賞式のお見送りで「ええ男だなあ」とか
いずみに向かって「ウチの人はすごいんだから」とか

でも後者だと夜の生活込みで聞こえてくるw
482名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 09:07:19 ID:Uhm1Nsnd
続編やるより、再放送希望だな




できれば、ここの職人さんたちの作品を映像化の上
再編集で、ってNHKで放送できないかw
483名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 16:05:42 ID:p2DWHSdA
R18ゲゲゲの女房
…役者違いならもう作ってそうなw
484名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 21:53:21 ID:cUXBkLYk
>>482
NHKの前に中の人がダメだろw
スレのGJ作品映像化したやつめっちゃ見てみたいけどな
485名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 00:05:13 ID:zwBpPn6k
閉めきってアイロン掛けしてるシーンのふみちゃんのしっとりした肌の艶めかしさは異常
486名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 00:22:12 ID:fCUlU0Os
座って寝てしまったはずのゲゲが、
翌朝キレイに布団で寝てたのは何故だろう。

ということで、投下。
エロなくてサーセン。
487初夜?1/4:2010/10/07(木) 00:24:30 ID:fCUlU0Os
真冬の境港の夜風を、これ以上浴びていたらさすがに風邪をひく。
まして先ほどからは雪まで降ってきていた。
静かに窓を閉めて、布美枝は隣で眠り込んでしまった茂を振り返る。

(どげしよう…)

新婚初夜。
かなりの覚悟をして臨んだつもりだったが、どうやら空振りに終わってしまったようだ。
酔いつぶれた夫は、布美枝に指一本触れることなくすやすやと夢の中。
ほっとしたのが大半だったが、ほんの少しだけがっかりした気持ちもあった。
それにしても。

「重…」

このまま窓際で座らせて置くわけにもいかず、
茂の右腕を一生懸命引っ張ってみるのだが、びくともしない。

「風邪ひきますよ、起きてください」

控えめに声をかけてみても、反応はない。
ため息をつくしかなかった。

義父母を呼んでこようか…しかしそれも何となく気が引ける。
このまま布団だけ掛けておこうか…けれどそれも可哀想だ。
あれこれと思案するが、やっぱりどうにかして布団へ運ぼうということに至る。

本格的に腰を入れて、よっこらせと腕を引っ張る。

と。
少しだけ持ち上がった重い身体が、途中で支えきれずにぐらりと傾く。

「あ、あ、あ…」

反射的に布美枝はそれを身体で受け止めようとし、どさりと倒れこんだ。

「…!」

一瞬にして顔に火がついた。鼓動が跳ね上がる。
茂の顔が、布美枝の胸元にあった。
が、目は堅く閉じられたまま、起きた気配がない。

浅い呼吸で動揺しながらも、茂が気づいていないことだけは何とか確認し、
慌てて身体を捻ると、上に被さった重い身体がごろりと横たわる。
どくどくと激しく脈打つ心臓をどうにか抑え込んで、
半ばやけくそになって、丸太を転がすように茂の身体を布団まで押し転がした。
大急ぎで掛け布団をかけ、さっと身を引いて固唾を呑む。
乱暴に扱った割には、しばらくしても全く起きる様子のない茂に
ようやく呆れる余裕ができ、全身から力が抜けていくのがわかった。
488初夜?2/4:2010/10/07(木) 00:25:37 ID:fCUlU0Os
布美枝は、そっと隣に敷かれた布団へと移動して、
横になろうと着ていた半纏を脱ごうとした。
が、相変わらず心臓が壊れたように独り激しく膨萎を繰り返し、手が震えて上手く脱げない。
何度か深呼吸をして、自らを鎮めようとするが、容易ではなかった。

原因となった男をちらりと見やると、すやすやと少年のような寝顔を曝している。
その寝顔がまた、改めて布美枝の胸をきゅっと締め付け苦しめる。

たった5日前まで、すれ違っても振り返ることすらなかった存在が、
もし酔いつぶれていなかったら今頃は、自分の身を抱いていたかも知れないと思うと
我ながら随分と大胆なことに踏み切ってしまったものだと、今さらながら腰が引けた。
けれど、見合いのときに見せた笑顔に、確実に惹かれていたのもまた事実で。
布美枝は再度茂に近づくと、しげしげと夫となる男の顔を眺めた。

眼鏡をはずすと若く見える。意外と端整な顔立ち。
鼻筋が通っていて、閉じた瞳から零れる睫も均整だ。
顎がすっと尖っていて、ぽかんと開いた口だけが幼稚さを醸していて可愛らしい。
くすっと思わず笑ってしまった。

大柄な布美枝が、見上げることのできるほどの背の高さ。
一本しかない腕は、片方分をカバーするかのように太く、硬かった。
のしかかってきた重みと、男性特有の身体の堅さ、そして体温を思い出す。

布美枝の鼓動が、今度は静かに、とく、とくと脈打ちはじめる。

――――― 知りたい。
この男のことを、もっと知りたいと思った。

戸惑いと共に、布美枝の中で花の蕾がゆっくりと膨らみ始めていた。

※ ※ ※
489初夜?3/4:2010/10/07(木) 00:27:05 ID:fCUlU0Os
※ ※ ※

ぶるっとひとつ身震いをして、茂は目を覚ました。
頭はぼーっとしているが、下半身のコトは急を要している。
ふらつきながら暗い廊下を出て階下へ降り、あたふたと不浄の戸を開いて用を足した。
ほっと息を吐いて、戻ろうと廊下へ出る。

(…いけん)

一瞬、調布の家と勘違いをして行き先を間違えた。
酒を呑み過ぎたせいで、頭ががんがんと痛い。
ようやく部屋へ辿りついて、出てきたときに開けたままになっていた襖に手をかけた。

「…!」

部屋の中の光景に、思わず後ずさった。
どっどっど、急に鼓動が激しく脈打ち始める。

脱ぎ散らかした自分の布団の横には、長い髪の女が寝ていた。

「…そうか…そうか…」

呟きながら、昨日の出来事を反芻するように、眉をひそめて天井を仰ぐ。
やがて廊下の寒さに耐えられず、おずおずと部屋へ入り襖を閉めた。

布団に座り、布美枝を指差し確認しながら、頷く。
結婚したのだ。この女は言わば新妻で。
はて、と思い至り、今一度布美枝をじっくり観察するように見つめた。

窓際で話をしていたような気がするが、そこから記憶がない。
もしかして酔った勢いで押し倒し、事に及んだだろうか?
それにしては、それらしい感覚も残っていないし、
自分も相手もしっかり着込んで別々の布団に寝ていたようだ。
ということは、未だ初夜は成立していないというのが結論か。

(しまったな…)

新婚初夜に、新妻を放ったらかしにして眠ってしまったことを
茂は少し後ろめたく感じ、そして勿体無いことをしたと肩を落とした。

親に無理矢理な形で押し進められた結婚だったが、
事ここに及んでは、もうその事態を粛々と受け止めるしかない。
それに、存外この新妻を気に入っていないわけでもなかった。
490初夜?4/4:2010/10/07(木) 00:28:00 ID:fCUlU0Os
(細うて、白いなぁ…)

布美枝の寝顔にしばし見蕩れた。

見合いの時の布美枝は終始俯き加減で、
また、茂にもよく顔を観察する余裕はなかったし、
今日は今日で、角隠しの下に白塗りの化粧が素顔を隠していたため、
寝顔とは言え、布美枝の顔をまともに見るのは初めてだった。

白い肌、艶やかな髪。長い睫が鼓動とともに震えている。
少し潤おいを溜めたような紅色の唇。柔らかそうな頬。
ささやかな寝息に合わせて、小さく上下する肩。
横向きに眠る顔の前に、無造作に放り投げられた両手の、尖る細いピンクの指先。

月明かりが窓から差し込んで、布美枝をやや艶かしく照らした。
光に誘われる虫さながら、すすす…と身体が引き寄せられる。
布美枝の傍らに座り込むと、寝息に吸い込まれるようにして顔を近づけた。
ふわりと鼻腔をくすぐる、女の香り。
いつの間にか妙な刻み方をする心臓の早鐘に気づき、茂は慌てて顔を上げた。

(…いや、ええんだ。女房なんだけん。何をしても…)

などと、身勝手な言い訳を自分自身に投げかける。
今一度、布美枝の頬を照らす月光を追うように、顔を近づけ息遣いを肌で感じる。
そのとき。

「…ん」

布美枝が小さく呻って寝返りを打った。
横臥から天を仰ぐその動線を描く途中、計らずもその唇が茂の顎を軽く掠めた。

「!」

どっと心臓へ血液が集中する感覚に襲われ、異常に動じてしまった。
幸い、布美枝は何も気づかずに眠っている。
しかしどこか薄っぺらな下心が見透かされたような気分で、ハラハラした。
ぶんぶんと頭を振り、ため息とともに茂は布団に逃げ込んだ。

しばらく悶々としていると、ふと腹の奥から笑いがこみ上げてきた。
40を前にして、10も年下の女に動揺する自分が滑稽だった。

身体を捻って、改めて布美枝を振り返る。

見合いの席で、襖の向こうに見えた印象的な丸い目玉を思い出すと、
茂の内側を何かがくすぐったく撫で去っていく。
ふ、と苦笑った。

白々と明けていく夜の帳に逆らうように、目を閉じ闇に身を投じた。
自らの中に、息づいて芽生え始める形容しがたい気配を感じながら、
やがて筋金入りの寝坊介は、すとんと眠りに落ちた。


おわり

491名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 00:58:20 ID:OqCCkTCH
>>487
GJ!起きててよかった。
初々しい2人が本当に可愛くて懐かしいな〜
492名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 02:56:17 ID:NggjPXfE
>>487
このシーン、ロマンチックでドラマの中でも一番お気に入りかもって所なのでウレシス!!だんだん!
あのあとこんな可愛い出来事があったのかと思うとさらに萌える
しかし茂はどんだけ眠りが深いんだw

このスレの優しい雰囲気にはほんと癒されます……
493名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 20:06:51 ID:ZnE6cRTE
>>487
おお、なにか初々しい二人が可愛いですなあ。感想が「薄くて、白いなあ…」だったらまさに一反木綿だったけど、さすがに違うかw
494名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 20:30:45 ID:fCjCbFpZ
ふみちゃんに猫耳とかはえてもしげさんだと研究対象にしかみてくれなさそうだよね
どげなっとるんだとか言いながら触ったらふみちゃんが震えながら声を我慢してくれてたらいい
495名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 21:31:09 ID:d7RBrshk
一反木綿の次は猫娘かぁ〜なんていいながら眺めてそうだなw
496名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 22:56:38 ID:+HV/05BJ
>>494
猫耳フミちゃん・・・ハァハァ
497名無しさん@ピンキー:2010/10/09(土) 00:57:24 ID:LzYNQlw2
>>494
猫耳ふみえには欲情しなくても、震えながら声を我慢するふみえにはガッツリ欲情しそうだねw
498名無しさん@ピンキー:2010/10/10(日) 03:38:28 ID:hWhFep/M
顔真っ赤で震えながら声我慢なんてされたらもう無理でしょ
貧乏時代ならソッコーだな
499名無しさん@ピンキー:2010/10/10(日) 05:36:11 ID:BwCSc8ZT
ネコミミ付けて涙目で声我慢するほど感じてれば無問題
エロパロ板とゲゲル的に何故か耳もぴくってしますよ!
500【Home!Sweet Home!】前書:2010/10/10(日) 06:53:39 ID:3YFS6Rby
流れ的に場違いな投下で申し訳ない。
第8週「父の上京」、読者の集い直後の挿話です。
本編で観られなかったシーンの妄想補完

ナズナさん開発編、第2弾。

併せて亀レス
>>487
「幸福罪」や「お静かに…」、「ゆびきり」等と同じ職人さんでしょうか。
貴方の作品がとても好きで、励みになっています。
僭越ながら、エール&『ありがとう』を。
501【Home!Sweet Home!】1/8:2010/10/10(日) 06:56:10 ID:3YFS6Rby

 子供の頃から、軽視されたり悪く言われることくらい、慣れていた。
 平気ではなくとも、耐えられる。
 けれど。
 彼を、腐(くさ)されるのは我慢ならない。
 父に抗い、夫の許に駆け寄り、その腕を掴んだ時より前に、とうに気持ちは選んでいた。
(あたしは)
 他の誰でもなく。
(この人と――生きていく)
 布美枝の腕と足、胸の痛みは、最も望む場所をすでに知っていたのだ。

   *   *   *

 夕食時、夫は、普段よりもどことなく口数が少ないように思えた。
 機嫌が悪いわけではない。
 声をかければ返事はするし、話もきちんと聞いてくれ、ほころんで相槌を打つ。
 けれど時折、こちらを見つめる目が、涼やかすぎるほど静かな色をしている。
 やはり疲れているのだろうか。
 仕事の宣伝も兼ねてとはいえ、貸本屋の女主人に頼みこまれ、気の乗らぬ催しに引っ張り出され、あげく、上京した安来の父に難詰された。
 水増しされた客にも淡々と応じ、周囲にも不機嫌な顔一つ見せなかった。
 誤解した父に詰め寄られても、いっさい弁解せずに潔く低頭した。
 入り組んだ思惑を最後に背負わされたにもかかわらず、彼は終始、泰然と朗らかだったのだ。
 源兵衛や美智子、太一らの方を気にかけるばかりで、夫の心中まで思いやれなかったことが、布美枝には、今更のように申し訳なく感じられた。

「どこまでついてくる気だ」
 見入っていた背中が振り返り、彼が苦笑う。
 浴後の着替えを用意した後、何とはなしにぼんやりと突っ立っていた。
「す、すんません。ゆっくり温まってくださいね」
 立ち去ろうとして足が止まる。
 ほんのわずかでも、離れがたい。
「…あの」
「ん」
「お背中、流しましょうか? 今日はお疲れでしたでしょう」
 きょとんと瞬いた夫が、小首を傾げる。
「今日はなんだ。珍しいことをする日なのか」
 布美枝としては彼をいたわりたく、謝りたくもあったが、何より片時も離れていたくなかった。
「え、…と」
「まあ、ええ。好きにせえ」
 「ほれ」と差し伸べられる、右手。
 あの時、布美枝が掴み取った、腕。
 つかのま、遠い昔の温もりもよみがえった気がした。
502【Home!Sweet Home!】2/8:2010/10/10(日) 06:58:01 ID:3YFS6Rby

   *   *   *

 ブラウスの袖をまくり上げ、スカートと前掛けの裾をからげる。
 風呂場に踏み入ると、床の感触が足裏をひやりとさせた。
 目の前には、淡い湯気に揺れる、広い背中。
 こんなに明るいところで見るのは初めてだ。
 水滴に照り返る艶。
 着痩せする男の、まぶしい裸体に魅入られる。
 ぽかりと透けた左の空間が、寂しくも、たまらなく愛おしかった。
 風呂椅子に腰かけた、夫のかたわらに膝をつく。
 そっと湯をかけ、石鹸を泡立てた。
 張りのある肌を、丁寧にこすってゆく。
「痛くないですか」
「もっと強くてもええぞ」
 本人は器用に、あちこちを自分で済ませている。
 右腕を預かって洗い流した際、ふと膝頭に目がとまった。
 薄く色の違う皮膚。
「これ、どげしたんですか」
「ン。あー、子供の頃、有刺鉄線に引っかけた跡だな」
「足の小指は」
「川で遊んでた時に生爪剥がして、形が変わった」
 よく見れば、細かい傷跡がそこかしこに残っている。
「やんちゃ坊主だったんですねえ」
 外を駆けずり回る、腕白少年の面影を想像した。
「あら、ここにも」
 肩胛骨の下に、引っ掻いたような筋。
 他よりも新しい。
「それは最近だ。あんたがようしがみつくけん」
「え」
 茂の指の背が、布美枝の頬をつつく。
「治りかけると、また引っ掻かれる、そのくり返しだ。悪くはないが、爪はなるたけ切っといてくれ」
 首から紅潮するのが、自分でもわかる。
 情事のさなかは無我夢中で、いつも必死で夫に縋りついてしまう覚えはあった。
 のぼせるような羞恥の裏で、だが、知らず彼の体を傷つけてしまっていたことにおののく。
「す…すんません。あたし、気がつかなくて」
「構わん。原因は俺だけんな。半分この、おあいこだ」
 痛みも悦びも、分け合って。
 躰も、――心も。
 本当に、そうであれたらいい。
 赤い筋を指先でかすめ、布美枝はそっと唇を寄せた。
「おい」
 茂が噴き出して咎める。
「こげな狭いところで煽られても、困るのはお互いさまだぞ」
「っ――ち、違います!」
 くつくつと笑われて言い訳もできなかったが、くだけた空気に少し気が緩んだ。
「…あの」
「なんだ」
「今日はホントに、すんませんでした」
「だけん、ええって」
「いえ。その、お店で…嫌な思い、させてしまって」
 自然、声が小さくなる。
「まあ、面白いもんは見れたな」
 気楽そうな彼の口ぶりは変わらない。
「おぼこい安来のお嬢さんが、えらく剛毅になったもんだ」
「お嬢さんて…。あたしはもう、あなたの妻ですよ」
「――そげだな」
 静かな肯定が、沁みいるように響いた。
503【Home!Sweet Home!】3/8:2010/10/10(日) 06:59:46 ID:3YFS6Rby

 ちゃぽんと、湯の揺れる音。
「なあ」
「はい?」
「あんた、実家に帰ろうとは思わんだったのか」
「…え」
 まじまじと、夫の横顔に見入る。
「この家の経済情勢を早々に知っとったら、親父さん、あんたを離縁させて連れ戻したかもわからん。
あんたも、こげにやりくりに頭悩ませんと、もっと楽な暮らしのできるところへ嫁(い)けたかもしれん」
 どこまで本気かわからぬ想定に、布美枝は面食らう。
 上京してまもない当初、夫婦の会話もろくにないまま、勝手知らぬ土地に取り残されたようで心細かった時もある。
 やりくり算段に日々奮戦していることも。
 けれど、今は。
「あたしの家は、ここですけん。ここで、あなたと一緒にやっていくって、決心(きめ)たんです」
 いっときの揺らぎは、もはや遠い。
 ならば、彼は。
 確かめたい気持ちを抑えられなかった。
「もし、もしもですけど」
(あなたは)
「父が、別れさせると言ったら」
(あたしを)
「…引きとめて、くれますか…?」
 返事はない。
 布美枝の胸に、曇りが射す。
 低い嘆息が聞こえた。
「あんまり稼げとらんのは事実だ。甲斐性がないと言われても、申し開きはできんな」
 落ちかけた布美枝の視線を、「けどな」と穏やかな声が留める。
「もし、そげなったら。あんた、泣くだろう?」
 夫はのんびりと宙を仰いでいる。
「境港におった頃、俺はいっぱしのガキ大将を気どっとったが、子供心にも仁義は持っとったつもりだ。
いったん懐に入れたヤツの面倒はみる。見放したりはできん。それが、上に立つモンの務めだとな」
 うなじを掻く仕草は、照れ隠しのようで。
「あんたに泣かれるのは困る。笑っとる方が何倍もええ。そんならこっちは、多少の無理をしたところで、たいしたことはない」
 柔らかな笑みが向けられる。
「あんたは俺の、女房だろう?」
 布美枝は精一杯に頷く。
「だけん、あんたはここに――おればええ」
 確約よりも強い眸が、雄弁に語る。
 不安の霧が、うっすらと晴れてゆく。
 …この男(ひと)はきっと、守ってくれるだろう。
 妻を、共に暮らす道を、二人の未来を。
 言葉少なでも信じられる相手と、出逢えることもある。
 ふと、着衣のままの自分を、布美枝は惜しんだ。
 素肌の彼を、思いきり抱きしめたくて。
504【Home!Sweet Home!】4/8:2010/10/10(日) 07:03:19 ID:3YFS6Rby

   *   *   *

 前屈みになった夫の横に、膝をそろえる。
 少し癖のある髪に手を絡ませ、洗髪剤を泡立てながら、指の腹で揉んだ。
 茂は顔を伏せ、いっさいを妻に任せている。
「痒いところはないですか」
「おー」
 間延びした声が、なんだか可愛い。
 耳の後ろや首筋も洗い、丁寧に流す。
「ちょっこし、上向いてごしなさい」
「こげか」
 額の生え際にも泡が残らないよう、念入りに落とした。
「えらいマメだな」
「こげするとええって、徳子さんに聞いたんです」
「誰だ」
「床屋のおかみさんですよ」
「あ〜、商店街の」
「おでこに泡が残ると、…後退しやすくなるって」
「だら、俺はハゲとらんぞ。イトツを見ろ。ウチは白髪の家系だ」
 「いや、でも兄貴は…」とぶつぶつ考えこむ茂の秀でた額に、ちゅ、と軽く口づける。
「はい。男前の出来上がり」
「おう」
 無造作に髪を掻き上げる姿は、ひいき目抜きでも、十二分に見栄えがする。
「他人(ひと)に洗ってもらうのも、なかなかええもんだな。菜っぱにでもなった気分だ」
 妙なたとえを訝ると、
「目の前に大根があるけん、一緒に漬け物にでもされそうだわ」
 と、ふくらはぎを指差される。
「まぁ、ひどい」
「白くて頃合いで、旨そうだ」
 さりげない掌が、ぺちりとかすめてゆく。
 不意打ちに身が竦んだが、向こうは平然とすましたものだ。
 布美枝は軽く頬をふくらませる。
「おいたが過ぎると、ホントにお漬け物にしちゃいますよ」
 仔犬のように雫を払う夫の髪を、タオルで軽く押さえる。
「寝床でか。あんたの尻は、漬け物石にちょうどええけんな」
「もぅ!おとなしくしとってください」
 陽気にからかう茂に、先刻までの真摯さは影を潜めている。
 軽口もまた、彼の気遣いの裏返しなのだと、薄々わかっていた。

 「よし」と、夫が腰を上げる。
「しばらく浸かったら出る。あんたも支度しとけ」
「あ、はい」
「あんまり長風呂はするなよ。待ちくたびれたら、先に寝るぞ」
 あっさりと言い置かれ、ぴたりと固まる。
 見上げると、悪戯めいた瞳にぶつかった。
「傷の一つや二つ、構わんと言ったろ。ついでに、あんたの目玉はやっぱりおしゃべりだ。いろいろ言いたそうだし、したそうだ」
 赤らんだ顔はごまかせない。
 恥ずかしいのと待ち遠しいのとで、つい拗ねたように噤んだ。
 茂が、ひょいと屈んで覗き込む。
「嫌か」
「…わかってて、訊かんでください」
「わかってて、言わせるな」
 笑みは優しいが、彼のまなざしも熱い。
 その柔らかい唇に近づきたいのを、布美枝は懸命に我慢する。
 触れてしまったら、戻れなくなるのはあきらかだった。
505【Home!Sweet Home!】5/8:2010/10/10(日) 07:05:53 ID:3YFS6Rby

   *   *   *

 急いであがるのもさもしいが、待たせてしまうのも悪く、それなりに手早く入浴を済ませて、部屋へ戻った。
 敷き伸べた布団の上に、大の字になった夫が寝ている。
 身じろぎもせず、本当に眠ってしまったかのようだ。
 足音を忍ばせて近寄り、脇に膝をついて窺う。
「ッ、きゃ」
 ぐいと手首を引かれて、彼の体に乗り上げる。
 視界には長い睫、唇は重なっていた。
「っ、…ふ」
 温かい感触に瞼を閉じ、広い肩に手をすべらせると、ぬるりと舌に唇をこじ開けられ、逆らわずに迎え入れる。
 折り重なっての、長い接吻。
 背後でシュッと布地を引かれる音がし、帯をほどかれたのがわかった。
 唇が離れないまま、肌蹴られる浴衣を、自ら助けて脱ぎ捨てる。
 ぴたりと額を合わせ、見つめ合ううちに、くすりと互いに噴き出した。
「笑っとる場合か」
「あなたこそ」
 起き上がろうとする茂を、布美枝はそっと制す。
「…このままで」
 不思議そうな夫に、さらりと軽く口づけた。
「あなたに、傷をつけたくないんです。せめて今日は、このまま――」
 目(ま)の当たりにして以来、強烈に惹かれてやまない、大事な背中。
 ついていきたいと思った。
 ずっと見つめていたい、支えたいと。
 まじまじと見上げていた茂は、ふわりと微笑む。
「本当に、珍しい日だ」
 何より、この人の笑顔が、一番好きだった。

 跨ったきり、慣れぬ姿勢にとまどっていると、先を促す仕草で内股を撫でられる。
「――っ」
「どげした」
「…わからん、のです。どげしたら、ええのか…」
 情けないが、経験の浅い身では、実際に主導権などとれない。
 彼に負担をかけたくはないのだけれど。
 ふむ、と考えるそぶりで、茂が手招きする。
「もうちょっこし、上に来い」
 仰向けの夫に導かれ、おそるおそる膝を進める。
「もっとだ。こっち」
 言われるがままに四つん這いになった布美枝の下腹に、茂の頭がずり下がった。
「、あ」
 口づけだけで潤んでいた秘部を、温かな掌で広げられる。
 不安定で大胆な体勢に驚いたが、腰が引けると彼の顔に座り込んでしまう位置なので、慌てて踏ん張った。
 濡れた溝の中に、急には挿し込まれない。
 ただ、周辺を優しく舌で慰められる。
 焦らされるのを我慢するうち、唇は中央に寄り、割れ目に沿って下から上へと舐め上げられた。
「…ッ、ふ、…ン、ぁ――」
 跨いだ頭を挟みそうになり、震えながらこらえる。
 彼しか知らない、秘めた蕾も、舌先で剥かれた。
「ひゃ、ッ…ア」
 過敏な小粒を円周に転がされ、突っ張っていた腕が崩れる。
 縦横自在に泳ぐ舌に翻弄される。
 および腰になっても、太股を抱えた腕が逃してくれない。
 褥に肘をつき、かろうじて立たせた腰を震わせ、布美枝は、まとわりついていた帯を噛んで耐えた。
 滴る愛液を舌で掬いとるように吸われる頃には、もうどうにもならない。
 ねだりながら、許しを請う矛盾。
 すぼめた舌に女陰を穿たれ、蜜を啜られ、がくがくと首が揺れる。
「も…ッ、――もぅ、――ぃけ、ん…!」
 膣の前壁を、ザラついた粘膜がこすり上げる刺激に、瀕死の獣のように達した。
506【Home!Sweet Home!】6/8:2010/10/10(日) 07:08:24 ID:3YFS6Rby

 息も絶え絶えに、布美枝は蹲(うずくま)る。
 なだめる夫の腕は、さっきまでの愛撫の激しさと裏腹に、ひどく優しい。
 のろのろと身を起こし、彼と視線を合わせられる場所に下がる。
 局部が沸騰しそうに熱い。
 求めずには収まらないほど疼いている。
「…ええですか…?」
 返事を待つのもつらい。
 腰の両脇に膝立ち、手で支えた硬い隆起を花弁に含ませる。
 ゆるゆると重心を落とし、やがて填(は)まった安堵と快感に、ため息をついた。
 夫の様子を窺うと、面白そうにこちらを眺めている。
「ゆっくりでええけん。動いてみ」
「ど、どっちに…?」
 ふっと笑った茂は、布美枝の腰の後ろを掌で押さえた。
 そのまま手前に引き寄せられる。
「――ッ…」
 銜(くわ)え込んだ太い軸に、内部をえぐられてのけ反った。
 走り抜けた痺れに、びくびくと震える。
 見下ろす先の夫は、軽く眉をひそめて息を吐き、感じたのが自分だけではないと知った。
 体重をかけるのはためらわれたので、おずおずと後ろ手をつく。
 彼の視線に晒されつつ、充填が外れないよう、ゆっくりと腰を引いてみた。
「ッぁ、は…」
 骨盤が巻き込まれるような刺激に、ひくんと顎が上がる。
 腰を前に突き出すと結合が浅くなり、また引けば挿入が深くなる。
 均衡がくずれぬように揺するたび、膣壁がこすられ、振動が伝播した。
「ふ、…ン」
 息を荒げて茂を見つめると、繋がる箇所も乱れる様も、熱っぽい眸で注視されている。
 互いの表情と反応を確かめながら、高め合う。
 蕩ける肌のすべてを暴かれる淫靡な悦楽に、布美枝は目を閉じて没頭した。
「あ!」
 襞から覗く剥き出しの花芽を、彼の指先に摘まれる。
「…ぁ、ん――」
 くすぐるようにいじられては昂(たかぶ)り、髪を打ち振るってよがった。
「ハ…――ぁ、な――た…」
 耐えられず前傾し、茂の胸に手をつく。
 蕾の包皮を、相手の恥骨に擦りつけては、もっとと乞うた。
 熱い掌が乳房を包んでくれる。
 尖りを捻られたかと思うと、大きく揉みしだかれ、そこにも躰の重みを預けた。
「あ、ぁ――ん、ア…ッ」
 腹を前後させれば、胎内を勃起が抽入し、絡まる愛液と先走りが粘ついた音を立てる。
 先端が子宮口に当たったらしく、夫の呻きが低く掠れた。
 次第に慣れてきた布美枝の腰は自然と揺らめき、さらなる高みを欲してうごめく。
507【Home!Sweet Home!】7/8:2010/10/10(日) 07:10:47 ID:3YFS6Rby

「ひぁ…ッ」
 ぐっと、肘を掴まれた。
 茂が腕を引き寄せ、接合したままの腰を強く突き上げてくる。
「ッや、そ…げ、に…、――ンあ!」
 浮き上がった状態で揺さぶられ、下から捻じ込まれる勢いに、感極まって涙がこぼれた。
 恍惚と酔いしれ、半開きになった口内に、彼の指が進入してくる。
 長くしなやかなそれを、夢中でしゃぶった。
「ぅ…ふ、ンッ、――ん、あ…ぁ」
 連動する指と男根の動きに、容赦なく感帯を刺激され、愉悦に浸る。
 唾液で濡れた指に、いっぱいに割り広げられた陰唇をなぞられ、芽を揉まれ、布美枝は歓喜の悲鳴をあげた。
「し、…げぇ――さ…!」
 きゅっと膣内が収縮し、爆ぜた熱が充満する。
 茂が何か囁くのが見えた。
 一瞬硬直した布美枝の躰は、ゆったりと弛緩し、崩れ折れる。
 力を失って前屈した上体を、茂が受けとめてくれた。
 首筋や肩を撫でられ、触れるだけの口づけに鎮(しず)められ、少しずつ落ち着きを取り戻す。
 躰が浮いて浅くなった挿入を補うように、密着して重ねる唇は深くなった。
 摩擦の具合が変わり、布美枝はもどかしく腰をずらす。
 触れ合う夫の唇が、笑みの形になる。
 ひくつく襞の入口を、軽やかに掻き回された。
「…は…」
 せつなく悶えながら、布美枝は、意識が飛ぶ間際に応え損ねた言葉を思い出そうとする。

“――ここに、…――”

 多くは本音を語らぬ男の、素顔に接近できるのは、稀なひとときだ。
 それをずるいと言いきるには、彼の優しさは随分と甘くて。
 愛するばかりでは返しきれないものも、与えられている気がする。
 高揚する肌も心もすべて明け渡し、空っぽになった心身はこの男だけに満たされている。
 同じ分、それ以上に、彼にも伝えたいし、尽くしたいのに。
 無力な自分が歯がゆく、それでも愛される幸せに泣けてくる。
 現実の熱と充足感に凌駕され、布美枝の儚いわずらいは徐々に消し飛んでいった。
508【Home!Sweet Home!】8/8:2010/10/10(日) 07:13:02 ID:3YFS6Rby

   *   *   *

 着直した浴衣の膝上に、夫の頭を載せ、髪に指を絡めて撫ぜる。
 寝物語代わりに頼まれた、『埴生の宿』を小さく口ずさむ。
 聴きながら横たわっていた茂が、いつのまにか眠りについてはいたが、布美枝は手許から離せずにいた。
 つましい暮らしが続き、時にささいな諍いがあっても、彼と共に過ごせる日々は千鈞の重みだ。
 木枯らしの吹く季節でも、かけがえのない温もりをもたらしてくれる。
 あとふた月もすれば、結婚して一周年になる。
 贅沢な祝いはできないけれど、感謝と想いを存分に贈りたい。
 もしお返しがもらえるなら、布美枝の大好きな笑顔を見せて、また抱きしめてほしい。
「あたしはずぅっと、あなたと一緒ですけん。そばに、置いてくださいね…」
 応えるかのようにむにむにと口が動く、無邪気な寝顔。
 投げ出された右腕をそっと握り、爪の先に口づけた。

  ――瑠璃の床も 羨まじ 清らなりや 秋の夜半(よわ)
     …我が窓よ たのしとも たのもしや――


509名無しさん@ピンキー:2010/10/10(日) 18:49:26 ID:kujCbpi6
>>500
GJ!
愛にあふれてるしエロいし素晴らしいです
なずなさんどんどん開発されていきますな…w
510名無しさん@ピンキー:2010/10/10(日) 19:46:56 ID:cV1ZouIz
>>501
GJ!風呂プレイキタコレ!と思ったが違ったw
けど爪で引っかきキズ作って繰り返し云々…のとこが
妙にエロ可愛いくて好きだ!
終わったあとの膝枕もエエな〜布美ちゃんが子守唄みたいにうたって
ゲゲが眠るってのがまたなんつーかたまらん〜〜!
511名無しさん@ピンキー:2010/10/10(日) 23:55:43 ID:QXWlioqK
>>501
だんだん!
密かに待ってた膝枕ktkr!
フミちゃん、どんどん大人の女になっていくな〜
堪らんのう!
きっと、ゲゲもそう思っているんだろうなw
512名無しさん@ピンキー:2010/10/11(月) 00:38:52 ID:ikVlsy1j
>>501
GJ!!!
エロい…エロいよ!旦那様!!
513名無しさん@ピンキー:2010/10/11(月) 14:31:45 ID:Qt9UbjGF
>>501
GJ! 萌える〜(*´д`*)
もし劇中でお風呂場のセットが出てきていたら
きっとみなさんの職人魂で風呂場プレイも花盛りだったろうな…

と、昼の日テレ(毎日一緒にお風呂に入ってたらしい)を見て
ちょっと残念におもたw
514名無しさん@ピンキー:2010/10/11(月) 15:17:50 ID:G4vy8o2z
風呂場シーンはムカイリの体のみフルCGになってしまいますがよろしいでしょうかw
515名無しさん@ピンキー:2010/10/11(月) 15:40:34 ID:W/4flcg1
『じゃじゃ馬ならし』の続編です。
あの香水瓶の由来を書いてみました。
なんとなくオチがまるわかりかもしれませんが・・・。

茂のツンデレは母親ゆずり。
じゃあドSは・・・意外と父親ゆずりかも・・・?
516貴婦人の香り1:2010/10/11(月) 15:41:12 ID:W/4flcg1
「まあ、お父さんが明後日お帰りですって。」
「ほんと?やったー!」
電報で、夫の急な帰省を知った絹代の心はときめいた。子供たちも
大喜びではしゃぎまわり、大好きな父親に会える日を心待ちにした。
村井家の主人である修平は、大阪に単身赴任している。鳥取と大阪は遠く、
修平は数ヶ月に一度帰ってくるかどうかのさびしい家庭だった。妻の絹代は、
9歳を頭に3人の男の子を育てながら、留守を守っていた。

 修平が帰ってくる当日、絹代は家中をそうじし、髪や化粧をととのえ、
ごちそうを用意して待っていた。子供たちも、遊びにも行かず、通りに出ては
修平の帰りを今か今かと待っていた。
 ・・・ところが、午前中早くに汽車が着くはずが、昼近くなっても帰ってこない。
雄一と茂がしびれをきらし、その辺まで様子を見に出て行った。
 さらに1時間ばかりが経ち、やっと子供たちにまといつかれながら修平が
玄関に姿を現した。絹代が柳眉をさかだてて詰問する。
「汽車はとっくに着いとるのに、何をしとられたんですかっ?」
「いや何、ちっと知りあいに会ってな。つい話し込んでしもうて。」
「知りあい?お父さん、ゼゲンのおばさんと今日初めて会ったんでしょ?」
茂が無邪気に暴露する。
「わっ。お前ちっと黙っとれ!」
絹代の怒りが爆発した。
「あなたっ!あげないかがわしい女と!どこで会ったんですか?!」
「いや何、こいつらがあんみつを食べたいと言うもんだけん・・・。」
「うそだー。おばさんが店に入ってったから後をついて入ったんだよ。」
茂が泣きそうになりながら反論する。
よく怒るからイカル、とあだ名した母の怒りが恐ろしかった。
絹代はくるりときびすを返すと、台所から塩の壷をひっつかんで来て、
「汚らわしい!あれはやり手婆ァですよ!あげな女と!」
わしづかみにした塩を、修平と子供たちの頭から浴びせかけた。   
517貴婦人の香り2:2010/10/11(月) 15:41:40 ID:W/4flcg1
「やれやれ。帰ってくるなりこれか・・・。」
修平は、頭髪からまだ落ちてくる塩をはらいながら、家着に着替えた。
(それにしても、ちょいと渋皮のむけた、ええ女だったなあ。あの女の
 亭主は、女衒(ぜげん)なのか・・・。やけにあだっぽいと思ったが、やっぱり
 堅気ではなかったな。)
修平は、駅から家に向かう途中、この辺では珍しい垢抜けた女を見かけ、
子供たちが知っていたのをさいわい、あんみつ屋に入るのを追いかけて入り、
親しく口をきくようになっていた。                           

 絹代は、昼食の後片付けをしながら、頭の中は怒りでいっぱいだった。
(まったくあの人ときたら・・・。美人ときたら見さかいがないんだけん・・・!
 大阪でも、私がおらんのをさいわい、いったい何をしとるんだか・・・!)
絹代はなさけなくなった。だいたい、こんな風に離れて暮らさなければ
ならなくなったのも、修平が生来のなまけぐせを発揮して、前の会社をクビに
なったせいだった。大学出の勤め人といえば、女中の一人や二人、住み込みで
家に置けるはずだが、その余裕もなく、ばあやが一人通いで来てくれるだけ。
絹代は、いたずらざかりの3人の男の子を抱え、孤軍奮闘していた。
 それでも、数ヶ月ぶりで修平に会えると思えば、胸をときめかせ、
普段はする余裕のないおしゃれをして待っていたというのに・・・。
 
 それから、ぷんぷん怒りながら修平の背広を片付けた。使ったハンカチーフを
取り出そうとポケットを探ると、一枚の紙片が出てきた。
「ミツコ S氏に謝礼。」
と書いてある。
(女の名?謝礼って?まさか身請け??)
絹代は目の前が真っ暗になって頭の中がぐるぐるまわった。
(まさか。そげなお金はないはず・・・。)
だが、油断はならない。修平というのは不思議な男で、妙に人に好かれる
ところがあり、ヤマっ気も多く、わけのわからない事業にさそわれては、
ひともうけすることがあった。もちろん、そんなお金はいつの間にやら
雲散霧消してしまうわけであるが・・・。
絹代は、もう近所の女衒の女房のことなどどうでもよくなってしまった。
紙片をにぎりしめていたことに気づき、しわを伸ばして元に戻すと、
最大級に悪い想像になやまされながらその場を去った。             
518貴婦人の香り3:2010/10/11(月) 15:42:22 ID:W/4flcg1
 修平は、絹代の怒りには慣れたもので、平気の平左で昼食をたいらげ、
くつろいで新聞を読んでいた。
 ・・・勝手口に人の気配がし、絹代が応対しているのが聞こえる。
どうやら子供らしい。修平は気になってのぞいてみた。
「はい・・・はい。じゃあ、切手を貼って出しておくからね。」
「うん。・・・おばちゃん、だんだん!」
きれいな顔をしているが、着物はみすぼらしく、幸薄そうな女の子は、
にっこり笑うと、あわてて帰って行った。
「ありゃあ、売られて行く子ですよ。」
ばあやが、いつの間にか後ろに立っていた。
「あの女衒の野郎が近在の村から買い集めてきては、少しの間ここに置いて、
 いろいろ言い含めてから売りに行くんですよ。里心がつくからって、
 親兄弟に手紙も書かせんのですよ。だけん、奥様がああやって切手を貼って
 出してやったり、字の書けん子には代筆してやったりしとられるんです。」
「ふーん、そげか・・・。」
「ああいう子の中には、元はええ家だったのが落ちぶれて売られてきたのも
 おるんですわ。奥様も、ご自分の家が没落したけん、他人事とは思われん、
 とおっしゃって・・・。」
(だから、俺が女衒の女房と親しくしたのが、あげに気に入らんかったのか・・・。)
修平は、絹代の意外な一面を見た気がした。                      

 夕食時。
「ほほう。カツレツか。はりこんだな。」
洋食好きの修平のために用意したカツレツに、子供たちも大喜びで相伴に
あずかった。絹代はせっかくのごちそうものどを通らず、黙りこんでいる。
・・・両親の間にただよう不穏な気配に、子供たちはみやげのチョコレートを
大事そうに胸に抱いて、早々に部屋にひきあげた。                
519貴婦人の香り4:2010/10/11(月) 15:43:05 ID:W/4flcg1
 風呂からあがった修平は、探し物をしていて背広のポケットの紙片をみつけ、
それがしわになっているのに気づいた。
(ははあ、不機嫌の原因はこっちか。)
寝間に戻ると、寝巻きに着替えた絹代が髪を梳いている。額から耳にかけて
ウェーブをかけた髪が顔にかかり、泰西名画のようにうつくしかった。 
「その髪はどげした?今流行りの耳かくしだな。」
「・・・・・・。」
「俺のためにおしゃれしてくれたんだろ?よう似合っとる。」
「・・・知りません!」
「お前はいくつになっても可愛い女だの。ヤキモチなんぞ焼いて。
 ・・・覚えとるか?お前と初めて情を交わした時、俺たち似合いの夫婦だって
 言うたこと・・・。」
忘れたことなどなかった。紆余曲折があったぶん、むすばれた時のうれしさは
ひとしおだった。自分のような女を、可愛いと言ってくれるのは修平だけだ。
「お前はちっときついが、ここの熱い女だ。」
修平は、絹代の胸の真ん中をこぶしでぐっと押した。
「俺のようなふらふらもんには、お前のようなしっかりした女房がちょうどええ。
 子供やちも、立派に育っとる。お前のおかげだ。」
絹代は、びっくりして修平の顔をまじまじと見守った。
「だけどな、お前にも、俺以上の亭主はおらんと思うぞ。お前のような
 暴れ馬を、上手に乗りこなせるのは、俺ぐらいなものだ。
 それにな、俺がお前の新しい髪形に気づいてやれたのも、俺がご婦人に
 興味をいだいとるけんだ。普通は気づきもせんもんだぞ。」          
520貴婦人の香り5:2010/10/11(月) 15:43:51 ID:W/4flcg1
修平は、旅行かばんから、包装紙に包まれた小箱をふたつとり出すと、絹代に
手渡した。
「西洋では、夫婦が結婚した日を記念日にして祝う習慣があるそうだ。
 ちっと遅くなってしまったが、俺たちも、今年で10年めになるな。」
忙しい生活の中で、そんなことを考えたこともなかったが、たしかに修平と
結婚して10年が経っていた。
 修平にうながされ、贈り物を開けると、ひとつは流れるような細工の美しい
香水瓶、もうひとつは何やら横文字の書かれた外国の香水だった。
「この瓶はな、昔、昇三おじがパリーから送ってくれたもんだ。
 『大事な女にやれ。』と言うてな。」
大事な女に・・・、絹代はうれしくて、香水瓶のうつくしい模様を手でなぞった。
「それに入れる香水をさがしておったんだが、ちょうどええのがみつかってな。
 これは『ミツコ』と言うて、ウィーンの伯爵夫人になった日本女性の名を
 つけたそうだ。舶来の品を扱っとる知り合いにたのんで取り寄せてもらったんだ」
・・・あの紙切れは・・・。絹代はいろいろ邪推した自分が恥ずかしくなった。
「・・・においをかいでみても、ええでしょうか?」
修平が封を切ってやると、絹代は栓をあけて少し指につけ、顔に近づけた。
「さっぱりしとって、ええ香り・・・。」
「そげだろ?たおやかな中にも、気品があって、まさに伯爵夫人という感じだ。」
絹代は、香水のついた指を、着物の袖にしのばせた。
「ああ、つけ方を教えてやる。こげして血の流れとるところにつければ、
 香りがたつんだ。」
そう言って、修平は絹代の首すじに、指で数滴の香水をなじませた。
やさしく繊細な中にも、気品のある香りにつつまれ、絹代はうっとりと目を閉じた。 
521貴婦人の香り6:2010/10/11(月) 15:44:37 ID:W/4flcg1
「香水はな、つける人によって香りが変わるんだ。闇夜にも、誰なのかわかる
 ほどにな。」
修平が、絹代の耳の後ろに鼻をつっこむようにして大きく息を吸い込んだ。
「・・・お前のは、かわいい香りだな。」
「・・・あなたのは、浮気ものの香り・・・。」
絹代は、修平に耳元でささやかれるだけで四肢にしびれるような快感がはしるのを
我慢しながら、ふるえる声で強がりを言った。
「また、そげなかわいくないことを・・・。どうなってもしらんぞ。」
修平は、絹代を抱き倒しながら、ひさしぶりの逢瀬に、力がみなぎってくるのを
感じていた。
(どげな風にいじめてやろうか・・・。)
まとっているものを脱がせば、下には熱い肌身が息づいている。それを知っているのは
修平だけだった。修平の足跡しかついていない雪原のような肌と、その中に燃えている
熱い心は、すべて修平だけのもの・・・。
自分だけの花に、香りをまとわせて、修平は絹代をこころゆくまで愛でた。
(お前は俺の腕の中でだけ、かわいくなればええ。)
風変わりなおんなと一緒になったものだ・・・。だが、だからこそ人生は面白い。
こうして愛でてやって味わえば、かぎりなく優しくたおやかで、情趣ぶかい。
だが、絹代のなかには、キリッと一本、スジが通っている。
この貴婦人の香りのように・・・。


「ぁ・・・あああぁっ・・・」
 兄や弟の寝ているかたわらで、自作の絵巻物に色を塗っていた茂は、遠くで
女のなき声を聞いたような気がして、筆を止めた。
「なんだろ?・・・妖怪かな?」
妖怪といえば、今日のイカルはなんだか変だった。いつもつけないような白粉を
はたき、髪にコテをあててカールさせては、鏡の前で百面相をしていた。
(面妖な・・・。でも、そういえば、イカルって女だったな。)
今ごろ母親の性別に気づいた自分にちょっとおかしくなって笑ったが、またすぐ
絵巻物に没頭していった。
 後年、父に似ずまったくの朴念仁に育つ茂が、男女の機微を少しでも解する
ようになるまでは、よき伴侶を得る数十年後を待たなければならないだろう。
522名無しさん@ピンキー:2010/10/11(月) 22:17:45 ID:8oqqEoVO
>>516
ぐはぁ…なにこの世界?凄すぎない?
小道具の使い方から、心理描写の細やかさから、
時代背景の精密さから…マジで何者ですか?!

それにしてもあれだな
イトツは軟派なSで、ゲゲは硬派なSなんだなw
そう考えると、気の強いイカルは軟派なSにぴったりで
気の弱い布美ちゃんは硬派なSにぴったりだ…
523名無しさん@ピンキー:2010/10/11(月) 22:43:18 ID:rV5fO2OD
>>500
これはエロ素晴らしいっ!ラストの幸せそうな膝枕がまたいい!

>>516
イトツは確かに軟派と言うか、ソフトなドSだなwイカルも乙女で可愛い。そして母親の性別が女な事に今頃気がつく茂w今まで何だと思ってたのか。
524名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 01:49:22 ID:4jZd+Pih
>>500
職神様〜最高に幸せでエロエロですけん!
ふみちゃんが本当に可愛くってしょーがない!
どんどん開発されてごしなさい!

はぁ〜素晴らしい作品が読めて本当に幸せだ…
投下して下さる職人様、住人の皆様に、だんだん。
525名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 22:38:54 ID:dlns3a5g
>>516
村井家いいなぁ!
子供達もかわいい
イトツは髪型変わったのちゃんと気づいてあげれるけど、しげーさんは布美ちゃんの髪型変わったら気づくんだろうか…
526名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 00:18:09 ID:9PiFuakG
そういやふみちゃんがお母ちゃんになる前と後で
髪型変えたけどさすがに気づく…よな?

ちょっこしエロい目線で考えれば、うなじが隠れているのと
いないのとでは大きな違いだと思うが…

そのあたりをネタにした職人さんの光臨お待ちしちょりますw
527名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 00:30:48 ID:kjXc1927
最初はリボンの色がブルーから海老茶っぽい色にかわってサイドでくくる
そのあとに子供たちがある程度大きくなってから後ろだったっけ
528名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 00:43:19 ID:wVTYVUSl
>>527
茶色のリボンの方が先じゃなかったっけ?
529名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 13:02:42 ID:rEDDsQqK
チヨちゃんが東京に来た時ふみえは髪を巻いていたけど、あれもさすがに気付いたよな?
髪については何にも言ってなかったけど、ツンデレゲゲは敢えて何も言わなかっただけだと信じたいw
530名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 15:19:10 ID:cXHUOHIJ
巻き髪におしゃれフミちゃん
ゲゲはやきもきして
夜追及したとかそんなジェラシーな感じで
よろしくお願いいたします。
531名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 22:42:53 ID:jEVsod79
あの時キャンディー云々で喧嘩してたから、髪の事に触れる余裕なかったんだな
532名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 09:19:14 ID:zaY8lUDw
巻き髪の時の青ワンピ、なんかおっぱい少し大きく見えるな…
しげさんと話してるときはもういつもの服になってて…勿体ない…
533名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 22:35:07 ID:DJx09vO2
しげぇさんが育ててくれたんだから
成長具合はきっとちゃんとわかってる

何を着ててもどんな髪型でも
あんまり気づいてくれないかもしれないけど
布美さんを嬉しくさせることを天然でやってのける
そんなしげぇさんが好きだ
534名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 23:59:20 ID:rOOEwQFF
巻き髪に青ワンピのフミちゃん、すっごく可愛くて
全話通して一番好きなファッションだったな。
ゲゲもきっと「可愛い」と思ってたに違いない
535名無しさん@ピンキー:2010/10/15(金) 01:04:40 ID:jMWas0lS
ここのSSでも、イチャコラの代表として
ゲゲの布美ちゃん髪いじりがよく出てくるよねw
正直、すんごい好きです
536名無しさん@ピンキー:2010/10/15(金) 12:51:26 ID:nVwoT9u3
>>516
通いのばあやがのんのんばあだと言う事に
なぜか通勤途中突然気がついたのでカキコ
537名無しさん@ピンキー:2010/10/15(金) 22:47:02 ID:FxagK8sE
風邪ひいた
鼻紙はあるけど、でっかい手で熱を測ってくれるゲゲや
アンカの代わりに布団に入ってくれるふみちゃんはおらん
(´・ω・`)
538名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 00:21:13 ID:1N74DZhm
(´・ω・`)(´ω`*)
自分でよけりゃ寄り添ってやるからさっさと風邪治してゲゲゲ語りしような
539名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 00:56:45 ID:MedxxzHC
よかったな、>>537 
蜂蜜口移ししてもらえw

じゃあ自分は南国の神様の置物取ってきて
戻って来い!って変顔して祈っててやるよ
540名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 02:07:08 ID:uFDIYlD8
このスレの住人は優しい人ばっかりだな
温度差が激しいからみんな体調くずさないよう気をつけてね
541537:2010/10/16(土) 12:31:50 ID:v+yjHGY7
ありがとうありがとうありがとう
・゚・(つД`*)・゚・
みんなあったかくして寝てくれ
ゲゲふみも、いつもどおりくっついてあったかくして寝てくれ
542たき火の後始末1:2010/10/16(土) 16:09:31 ID:Nn2oqpIQ
「お父ちゃん、鳥さんたくさんいたねー!」
「富士山、きれいだったねー!」
喜子は、ふだん忙しすぎる茂がたっぷり相手をしてくれるので、ずっと笑いっぱなし。
ふだんは冷静な藍子も今日は喜子といっしょになってはしゃいでいる。
 富士山の小屋を手に入れてから、一家は茂が仕事を調整しては時折ここを
訪れるようになっていた。
茂は先日過労でたおれ、3日間床についただけで仕事に復帰した。
だが、その間にたまった仕事にまた追われ、ようやく休みがとれた週末、
ここにやって来ることができたのだ。

 昼間、はしゃぎ過ぎた子供たちは、夕食の後あっけなく眠ってしまった。
晴れ渡った夜空に、月がこうこうと照りかがやいている。
フミエは茂に誘われて小屋の外に出た。
「ええお月さま・・・。」
子供の頃のことなど思い出しながら、月のおもてに見入っていたフミエのかたわらで、
茂が何かごそごそやっている。
「何しとるんですか?お父ちゃん。」
茂は、そこら辺の枯れ枝を集め、マッチで火をつけた。
火は魔法のように燃え上がり、安定した炎となった。
「火ぃつけるの、うまいんですね。」
「兵隊に行っとったけん、こげなことは朝めし前だ。」
「あったかい・・・。やっぱり、夜はちょっこし冷えますね。」
「俺は、たき火がしたいけん、別荘を買ったようなもんだ。ええだろう?
 こげして月の下で火をたいとると、原始時代の人の気持ちがわかるようだ。」 
543たき火の後始末2:2010/10/16(土) 16:10:08 ID:Nn2oqpIQ
 フミエがやかんを持ってきて、茂が器用に組んだ石の上にかけた。
コーヒーを飲もうというのだ。インスタントだけれど、こうして野外で飲むと、
 ことのほかおいしかった。
「意外とうまいな・・・。」
「便利になりましたね。昔はコーヒー豆買うのもたいへんで・・・。」
「高かったけんな。でも、コーヒー飲んどる間だけは、貧乏も忘れられた。
 お前はぜいたくだと言うて怒っとったが、これのおかげで生きる力がわいたんだ。」
フミエには、今まで茂といっしょに飲んだ数え切れないコーヒーの中でも、
忘れられない味があった。だが、あえて口には出さなかった。
茂も同じことを考えている、なぜかそう思えたからだった。           
     
「あの出版社の社長は、今どげしとるかな?お前を相手に値切ったりして、
 ひどい奴だった。」
「あの人も苦労しとられたんですよ。奥さんも乳飲み子をかかえて働いてる、
 あんたはのんきだね・・・って言われました。私も働こうと思ったとたん、
 藍子が出来てしもうて・・・。役に立たんだったですね。」
「・・・いや、それでよかったんだ。お前はうちにおるのがええ。航空母艦は、
 決まった場所におるのが仕事だけん。」
「・・・また、航空母艦って言う〜!」
「だらっ!空母がそこにおらんかったら、どげな撃墜王でも、補給が出来んで
 海に落ちてしまうんだぞ。」
(空母は、そこにおるだけでええ・・・。)
おまえが、俺の帰る場所だ、どこへも行くな・・・そう言われているのだ。
茂の愛情表現は、いつも突拍子もなくてわかりにくいが、フミエにはだんだん
それを感じ取ることができるようになっていた。    
544たき火の後始末3:2010/10/16(土) 16:10:44 ID:Nn2oqpIQ
 たき火の火はじょじょに小さくなり、夜気が二人をつつんだ。並んで
丸太に腰かけた、お互いの身体のぬくもりだけが感じられる。
 茂がフミエの肩を抱いて、口づけしてきた。
口づけはしだいに深くなり、お互いの欲しているものがわかる。
茂が立ち上がってやかんの水をたき火にかけて消した。
「ほんなら、行くぞ。」
小屋に帰るのかと思っていたフミエが手を引かれ、連れて行かれた先は・・・。
「ええっ?」
茂が車のドアを開け、助手席にドッカリと座りこんで、躊躇するフミエを
中に引っぱりこんだ。女としては長身のフミエが、天井に頭をぶつけないためには、
茂に密着するしかない。フミエはしかたなく茂の上にのしかかるようにして
シートにひざまずき、ドアを閉めて背もたれにつかまった。            
茂は下からフミエに口づけながら、ズボンのボタンをはずして、脱ぐように
うながした。
「俺のも脱がしてくれ。お母ちゃんは昔っから、おツユが多いけんな。」
「もうっ!イヤラシイことばっかり言って・・・!」
軽口をたたきながらも、茂が切実にフミエを求めていることは、茂の前の
固い感触が教えていた。フミエは頭の中がじぃん・・・としびれ、自分も茂をもとめて
身体の芯がとけてゆくのを感じた。            
545たき火の後始末4:2010/10/16(土) 16:11:25 ID:Nn2oqpIQ
 茂が自らの屹立したものを手でささえ、フミエがたっぷりとうるおった
秘所をそれに近づけた。ゆっくりと茂を食んでゆく・・・。
途中まで来た時、茂が待ちきれない、というように突き上げた。
「んっ・・・!お、とう・・・ちゃん・・・たらっ・・・。」
「もうベテランなんだけん、そげにおそるおそるやらんでもええだろう?」
心も身体も、茂でいっぱいになる・・・。フミエはそれでも、ちょっと怨じてみせた。
「もう、古女房にはイヤ気がさしたのかと思うちょりました・・・。」
「だらっ!このトシになって、イヤなもん相手に、勃つわけがなかろう。
 男なんて、単純なもんだ。そげなこともわからんのか?」
「わかりません・・・。あなたしか・・・知らんのですけん。」
あなたにしか、恋をしたことがないから・・・。
お互いをよく知らぬまま結ばれたふたりだったけれど、いっしょに暮らしていく
うちに知った、ときめき、よろこび、悲しみ・・・。
フミエは、急激な繁栄をとげる世の中とは隔絶したようなあの小さな家で、茂と
ふたりきりで必死で生きた若い日々を思った。
茂の仕事が評価されるようになって、生活は激変したが、フミエはいつもかわらず、
茂だけをみつめて生きてきた。茂が多忙すぎて、いつしかフミエの目を見て話さなくなり、
身体を求められる時だけがわずかな救いとなっていた。昼間の茂のつめたさに傷つき
ながら、夜はそんな夫の訪れを待っている自分がみじめだったこのごろ・・・。     

 フミエは、茂のメガネをはずして、ダッシュボードの上に置くと、茂のうえで
身をくねらせ、全身全霊で茂を愛しはじめた。茂の顔にほおずりし、唇をあわせて
舌をからめあう。お互いに知りつくした身体が、鍵と錠のようにぴったりとはまり、
重い扉がひらこうとしていた。
茂は、フミエの思わぬ熱情にたじろぎながら、快感に身をまかせた。
「あ・・・ぁああああっ―――――!」
絶頂の悲鳴とともに、きゅううっとしめつけられ、茂は愛する女の中に放った。
やわやわとかかってくる重みを受けとめ、ただじっと抱いていてやる。
息がおさまっても、フミエは茂の胸に顔をつけたまま動かない。  
546たき火の後始末5:2010/10/16(土) 16:12:24 ID:Nn2oqpIQ
「・・・どげした?お母ちゃん。」
「お願い・・・もう少し、このまま・・・。」
フミエは、茂に甘えた。もう少し、茂を独占していたかった。
ベンチシートとはいえ、せまい車内で、無理な体勢のため、身体が痛くなってきた。
しばらくして身体が自然に離れても、茂の胸に顔を寄せているフミエを、茂は
ただ黙って抱きしめていてくれた。いつまでも、茂の体温を感じていたかった。
外は涼しく、車内は二人の熱気で窓ガラスが曇っている。
「ほれ、交通安全のお守りだ。」
茂が、フロントガラスに目玉親父の絵を描いた。

 ふたりは、車を降りると、手をつないで小屋まで歩いた。
小屋に着くと、父親と母親にもどって、二人の娘をはさんで眠りについた。      
                                       
 翌朝。
「あーーーっ!お父ちゃん、ゆうべ喜子にナイショでたき火したねーーっ?!
 喜子もしたかったよーーー。」
目を皿のようにして、ゆうべの痕跡がないかどうか車を調べていたフミエは、
喜子の泣き声にとびあがるほどびっくりした。たき火のあとを目ざとくみつけた
喜子が、茂に抗議の声をあげたのだ。
「あー、すまんすまん。お前たちが早く寝てしもうたけん。わるかったわるかった。
 泣くな。・・・そうだ、今度来た時、ヤキイモしよう。うまいぞー。」
喜子が、ようやく機嫌をなおし、四人は車に乗り込んだ。
「あーーーっ!」
またもや喜子の大声に、車をスタートさせたばかりのフミエは、急ブレーキをふんだ。
「窓ガラスにお絵かきしたんだー!喜子もしたかったよーーー。」
「わかったわかった。うちに帰ったら、なんでも喜子の好きなもん描いてやるけん。」

ひさしぶりの甘い一夜に、ずいぶんとツケがまわってきたものだ・・・。茂は苦笑しながら、
背もたれに隠れてフミエの膝に手を置いた。
ふたりとも、熾き火のような情熱のなごりを、身体の奥に感じていた。 
547名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 23:27:19 ID:WRFH019J
>>542
GJ!
カーセックル、キター
548名無しさん@ピンキー:2010/10/17(日) 00:18:54 ID:hLIlB2oh
>>542
GJ!
>もうベテランなんだけん が良いな
しげる節が絶好調
549名無しさん@ピンキー:2010/10/17(日) 00:35:15 ID:YFQoqn+6
交通安全のお守りも良いな。
しげるらしい言い回しが満載だ。
>>542
だんだん!
550名無しさん@ピンキー:2010/10/17(日) 00:37:04 ID:4tj7KXal
>>542
GJ!!
車を購入したときからこういう日がくると思ってました、だんだん。
目玉オヤジのお守りエエな!
二人の熱気が伝わる設定でエロいし、
ゲゲのちょっこし右斜め上の愛情表現も感じる。
喜子めざといw
551名無しさん@ピンキー:2010/10/17(日) 01:09:15 ID:tITHjBBZ
新作ありがとう、ありがとう
このまま老け込む所だったよ
552名無しさん@ピンキー:2010/10/18(月) 22:56:32 ID:fnUBF+CO
放送当時は気付かなかったけど
車って色々おいしい設定だったんだな
553名無しさん@ピンキー:2010/10/19(火) 01:53:48 ID:LHiiB8xS
ゲゲゲの最終日頃と重なって埋もれてる感が否めないが、
いちせんのSSもっと読みたい。
あの職人さん、まだここにいるんだろうか。
554名無しさん@ピンキー:2010/10/19(火) 20:21:11 ID:LMwmS5T+
いちせん夫婦には是非イチゴプレイを…
555名無しさん@ピンキー:2010/10/19(火) 23:51:27 ID:FBQS++O+
>>553
ハゲドウ
ゆう綾も萌えすぎるw
ここで神作品読めて嬉しかったから、他のも是非読みたい
556名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 00:18:31 ID:dqfvKybf
ゲゲふみ、戌井夫妻、源兵衛ミヤコ、イトツイカル、と来たので、深沢加納とか読んでみたい。
少数派な自覚はありますw
豊川さんも好きなんだけど、如何せん相手がいないw
557名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 01:22:28 ID:4JXXwYFx
正直、ゲゲ&フミ以外は読みたくない…
558名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 01:25:53 ID:4JXXwYFx
祐一&綾子を忘れてた

結局、自分的には
向井&松下でないと駄目なんだなw
559名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 03:40:34 ID:g0gNZGSI
>>553
はい、おりますよ。
ちょっこし時間がかかるかもしれませんが
また書いてみようかな…と思っとります。
560名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 05:54:28 ID:wwuvmKDY
>>558
自分も同じく、
松下&向井じゃないとダメだw
561名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 06:17:39 ID:GnuP/2Mp
「読みたくない」発言は作家さんに失礼だしスレが荒れる元。
ご自分でスルーなさってお静かにどうぞ。
562名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 11:48:43 ID:+unt8sAs
他人に書くなと強制するより
専ブラ導入してあぼーんする方が手早く確実でオススメ
自分が見たいものでもたい人もいるんだよ
563名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 11:49:42 ID:+unt8sAs
自分が見たくないものでも見たい人の間違いです…
564名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 15:18:28 ID:LhSwRdxj
職人さんあってのスレですけん。
いつも投下して下さる職人様がた、だんだん。
いつでも新作お待ちしちょります。
565名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 18:09:56 ID:fpxVOiei
自分もげげふみが好きで他はスルーしてたんだけど投下がないとき他のカップルも読んで萌がひろがったから職人さんには感謝してる

源×ミヤコを書いてくれた職人さんまた書いて下さい
566名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 19:26:39 ID:QsBH22z4
>>559
ヤッタ♪ヤッタ♪
楽しみに待っちょります!
567名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 00:46:02 ID:xnfpcmw4
自分はどんなカプでも好きです。
色んなのを読みたいので職人様、楽しみにしてます。
568名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 01:04:14 ID:QuiuJp1J
豊川さんは紳士すぎて、布美ちゃん寝取るみたいな展開も
いまいちウーン…になってしまう。
ゲゲが豊川さんに怒鳴りつけるのも想像できんし、
やっぱり浦木って何かと動かしやすいヤツだったんだなw

あんま関係ないが、昼ドラの豊川さんはおもっきしエロかったけどな
569名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 01:17:55 ID:OCs5l8f0
どのカプでも萌えられる自信はあるけど、ゲゲの相手はふみちゃん、ふみちゃんの相手はゲゲ!
ここだけは譲れんw
570名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 09:50:25 ID:Zs7Rkwld
>>568
豊川さんは単体萌えだよね〜。
浦木は、すごく便利なヨゴレですねw。
>>569
ハゲ同!
他のキャラがからむことがあっても、それはスパイスに過ぎませんww。
571名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 11:13:51 ID:F8WjI7kn
>ゲゲの相手はふみちゃん、ふみちゃんの相手はゲゲ!
ここだけは譲れんw

それだけは【お約束】だよね!!

作家さんから伝わる「ゲゲゲの女房が好き、ゲゲと布美ちゃんの夫婦が大好き!」
ってものが無かったら、いくら文章が上手くても萌えないもんねっ
572名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 18:47:38 ID:dK0hwEq4
今までの作品は全部おいしく拝読しました。
573名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 21:52:16 ID:B0DXxTia
しげーさんにとって裸エプロンはロマンになりうるんだろうか
574名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 23:54:12 ID:QuiuJp1J
投下しますノシ
えらい亀レスで申し訳ないが、
>>500のエールに感激した…だんだん。
多分貴方の作品だと思うが「素描」と「花と戦場」は今でも何回も読む。
っていうか、スレを1から読み直すこと、休み前だと結構してるw
575つめきり1:2010/10/21(木) 23:56:05 ID:QuiuJp1J
(爪噛むの、癖、なのかなぁ)

家計簿からふと顔を上げて、仕事部屋の茂をぼんやりと眺める。
仕事机に背を向けて、何やら本を広げて考え事をしている。
足でページを抑えて、右手の爪を噛む仕草。
そういえばこの姿はよく目にする光景だ。
ふと首を傾げてしばし目を閉じると、瞬間、ぴんと弾かれたような閃きが走った。

「…あっ!」

布美枝の突然の奇声に茂は驚いて、びくっと肩をすくませた。
「どげした」
自分の顔を凝視する妻の顔に、いささかたじろいだ様子で問いかける。
布美枝はまるで大発見でもしたかのように、大真面目な顔で、
「爪…切れんのじゃないんですか?」
少し声を震わせるようにして慎重に訊いた。
その質問に、茂は「はあ」と答えただけだった。
なんだ、そんなことかといった風に、緊張していた肩が下がった。

「いつもどうされとったんですか?」
「どうって…別に。噛んだり」
「仰ってくれたら切るのに」
「いや、ええ」

突き放されたようで、少し気落ちしてしまう。

結婚相手が隻腕だと聴かされて、全く気にならなかったわけではなかった。
色々な不自由があるのだろう、自分がその腕となって文字通り手助けしなければ、
と意気込んでいたものの、当の本人はかなり器用な男で、
服を着るのも、仕事をするのも、飯を食べるのも、腕一本で何でもやってしまう。
不便を手伝って欲しいなどということは一切言ってこなかった。
布美枝は時折、この男が片腕だということを忘れてしまうほどだった。
576つめきり2:2010/10/21(木) 23:56:42 ID:QuiuJp1J
「すこおし…薄くなったかな」
風呂上りの身体を鏡に映して、布美枝は独り呟いた。
数日前に胸の谷間に付けられた茂の口づけの痕が、濃い紅色から薄い桜色に変わっていた。

結婚してそろそろ一ヶ月になる。

普段はどちらかといえば素っ気無い夫が、
夜の床では時に執拗にも思える程、熱い愛撫をくれることが布美枝には驚きだった。
少しはにかみながら、茂が残した痕跡を辿っていると、
その所々に引っ掻いたような傷痕があることに気づく。
(どこかで引っ掛けたんだろうか…)
特に気にすることもなく、さっと寝間着を羽織った。

もうすぐ3月になろうかというのに、夜はしんと冷え、
布美枝の風呂上りの濡れた長い髪は、氷つくかのようにすぐに冷たくなる。
その髪の水気を丁寧に拭き取りながら居間へ戻ると、
茂は既にあどけない寝顔を曝してすやすやと眠っていた。
隣に座り、その寝顔をしばし愛で、にんまりしながら髪を梳かす。
ふと、無防備に放り出された右手に目が留まった。

目を細めてじっくり観察すると、短い爪は噛んだ痕がガタガタになっていて
なんとも不揃いな様がいただけない。
そのとき、はっと先ほどの引っ掻き傷を思い出した。
(もしかして…)

痛みも感じないので気づかなかったが、もしかすると「情事」の際に、
この噛み剥がしただけの粗い爪が、布美枝の肌を引っ掻いていたのではないか。
少し考えてから「よし」と小さく呟き、布美枝は爪切りを手に取ると、
そっと構えて、左手を茂の右手に添えた。
親指の先に狙いを定めた次の瞬間。

「こら」
「ひゃあ!」

ぐっと手を掴まれ、驚いて声を上げてしまった。
寝入っていると思っていた茂が、ぱっちりと目を覚まして恨めしそうに見ている。
577つめきり3:2010/10/21(木) 23:57:19 ID:QuiuJp1J
「殺気がしたと思ったら」
「殺気って…」
「爪切りはええと言っただろう」
「す…すんません…」

怒られる…。
布美枝はぎゅっと目を閉じて茂の怒声が降りかかってくるのに備えた。
が、身体を起こした茂は、小さくため息を吐いただけで、怒った様子はなかった。

「お…怒っとらん…ですか」
「んー…」

眠そうな目をこすってから、茂は胡坐で布団に座り込むと、
寒さに身震いしてから、しゅんと鼻をすすった。
おずおずとその様子を窺いながら、布美枝は小声で話しかける。

「爪…キレイに揃っとらんので、どこかに引っ掛けたら危ない…ですよ」
「大丈夫だろ」
「けど…」
「あーもう、ええったらええんだ」

またきっぱりと言われる。

不自由なことを蔑んでいるわけではないのに。
けれどきっとそれも分かっていて、『不自由と思われること』自体が嫌なのだろう。
東京に出てくる汽車の中でも、蜜柑の皮を剥こうと申し出た布美枝に、
ぴしゃりと断ってきた茂の物言いが思い出された。
が、何とかして茂の力になりたいと思うこの気持ちも分かって欲しかった。

ぐっと喉の奥にぶら下がった重い石のようなものを飲み込んで食い下がる。

「…何でも言って欲しいんです。貴方は、器用な方ですけん、
 どげなことでも独りで出来るんでしょうけど…。どうにも、ならんことは…言って欲しいんです…」
「…」
「要らんお世話ですか…?」

身をすぼめて見上げる。
茂は布美枝ではなく、窓の方に視線をやったまま、無言でいた。
無言というのが、肯定の返事でもあるような気がして、布美枝は落ち込んだ。
しばらくの沈黙の後、はあっと大きなため息をついた茂が、がしがしと頭を掻いて、
また小さく鼻をすすると、咳払いをして布美枝を横目で見やった。
578つめきり4:2010/10/21(木) 23:57:58 ID:QuiuJp1J
「…好かんのだ、人に爪切られるの」
「え?」
「こう…肉までえぐられそうな気がする」
「はあ…」

そしてまた黙ってしまう。

「…それだけ?」
「悪いか」

拍子抜けした布美枝が、眉を八の字にさせて脱力すると、
茂は自分の爪を見ながら、「好かんもんは好かんのだ」とふてくされたように呟いた。

「ちゃんと切りますけん、信頼してごしなさい」
まるで子どもに言ってきかせるようにして手を差し出してみたが、頑として茂は応じない。
ため息をついて布美枝は、思わず独りごちてしまった。
「このままでは全身傷だらけになってしまうわ」

それを聞き逃さなかった茂が、ふと布美枝に向き直る。
「ん?」
「あ、いえ」
「なんだ」
「…お、大袈裟なことではないんです」

俯いて少し顔を赤らめた布美枝を見て、はた、と茂は何かに気づいたようで、
そっと布美枝に近寄り、下から顎をすくって自分の方へ向けさせる。
「どこか、引っ掻いたか」
あまりの接近に、思わず目をそらす布美枝。

黙っている妻に焦れた様子を見せるが、逆にそれが答えなのだと悟ったようで、
自らを省みて「うーん」と呻ると、
「あーもう、わかった。早ぅ終わらせぇよ。慎重にやれ!」
と、遂に観念してその右手を差し出したのである。
ぱっと笑顔になった布美枝は、いそいそとその右手を取り、
親指、人差し指と爪を切り揃えていった。

「…そげにじっと見られたら緊張して手元が狂います」
「目を閉じとる方が逆に恐ろしいわ!あ、あ、切りすぎでないか?もっとゆっくり、早う終わらせ」
「無茶言わんでください。すぐに終わりますけん…じっとしとって」
そわそわと落ち着かない茂の右手をしっかり捕まえて、その指先に集中する。
恐々その様子を窺っている茂が、妙に可愛らしく思えて、知らず知らずに口元が緩んでいた。
579つめきり5:2010/10/21(木) 23:58:45 ID:QuiuJp1J
小指の爪を切り揃え終わると、茂は待ちきれずにさっと手を引っ込める。
しげしげと爪を観察して、ふっと息を吹きかけ、強張っていた肩を降ろした。
くすり、と布美枝がその様子を見て笑うと、咎めるようにじろりと睨む。
そして、ずい、と間合いを詰めてくると
「これでもう触っても文句ないな」
言うなり、布美枝の後頭部を引き寄せ、やや乱暴に唇を奪った。

驚く間もなく、咥えるように唇が覆いかぶさり、音を立てて舌を吸われる。
「ん…ふっ…」
鼻から洩れる息とともに、震えた喘ぎがこぼれた。
何度も何度も、追いかけてきては掬われていく舌の動きに、
布美枝の身体はじわじわと快感を示して花開いてゆく。

やがて、茂の肩に置かれた布美枝の手から、するりと爪きりが茂の懐に滑り落ちた。
そのはずみに思わず口づけを中断した二人が、同時にそちらを見たので

――ごちっ。

見事に互いの額をぶつけた。

「痛…」
二人は顔を見合わせて、はにかむように笑った。

「どこだ?」
「え?」
寝間着の合わせ目を探り、落ち込んだ爪きりを取り出して、茂が問う。

「引っ掻いた痕。どこに付いとる」
「…」

身体を縛る帯を解きながら、
問いかける唇が顎を持ち上げ、首筋に沿って啄ばむように転々と吸い付く。

「…貴方が付けたんですけん…貴方が、探して、ください」
「お。言うたな」
まるでこれから宝探しでも始めるかのように、茂は愉快そうに口の片端を上げた。
580つめきり6:2010/10/21(木) 23:59:13 ID:QuiuJp1J
右手を背中に回して布美枝の身体を支えながら、肩に舌を滑らせて寝間着をずらす。
至るところに口づけを落としながら、また紅色の印を付けてまわる。
胸の谷間に顔を埋めれば、背中から移動してきた大きな右手が、
布美枝の乳房を優しく、強く、撫で揺すり、揉み揺らす。
支えがなくなった身体を、さらに不安定にさせる茂の愛撫が、
たまらなく心地よくて、後ろに突いた布美枝の両腕が、がくがくと震えた。

「…あった」

ぽつりと呟いた茂の言葉に、そちらを見下ろすと、
左の乳房の谷間側に、問題の引っ掻き傷を見つけたようで。
傷痕に軽く口づけ、そして舌の腹全体で大袈裟に舐め上げた。

「あっ……っ!」

ついに耐え切れなくなった布美枝の腕が崩れ、そのままどさりと後ろに倒れた。
追いかけて覆いかぶさる茂は、追撃の手を緩めようとしない。
柔い双丘のふもとから、一気に頂上を攻め上げ、突端の尖りを吸い上げたかと思うと、
一方を指が捏ねくり、一方を舌が巻き取る。
背をのけぞらせて快感をやり過ごそうとすると、その姿勢はまるで
「もっと」とせがんでいるように思えて、布美枝は身を捩ってぎゅっと目を閉じた。

「ここにも」
つ、と茂の指が脇腹を這い、また薬でも塗るかのように舐める。
「ふっ…あ…」
真剣なのか、遊んでいるのか、茂の挙動全てに翻弄される。
それでも甘んじてそれを受けている生来の性は、否定など出来ない。
この男以外を知らない布美枝だが、これ以上の愛され方はない、と本能は知っていた。

一糸纏わぬ姿態を曝して、どうにも落ち着かない脚を摺り寄せていると、
左の脚をすくわれて少し驚いた。
「ここもだ」
足首に唇が触れたが、果たして本当にそんな所を引っ掻かれたりなどされるだろうか?
「本当ですか?」
「ああ。ここも」
布美枝の白い脚を持ち上げたまま、今度は膝をぺろりと舐めた。
「…嘘」
訝しげに見上げる布美枝に、茂はふっと笑みを投げると
「ここも、ここも」と言いながら脚を溯って口づける。

「あ…んっ…んんっ」
くすぐったさと、恥ずかしさが相まって我ながら随分甘い声だと思った。
茂の愛撫が内股を掠めたとき、布美枝の心臓はこれまでになく一段と高鳴った。
581つめきり7:2010/10/21(木) 23:59:43 ID:QuiuJp1J
「…や、あっ…!」
熱湯をかけられたかと思ったほどに、布美枝の秘所が一瞬沸き上がった。
既に十分なほどに潤いを潜めていたその場所で、茂の舌がそれ自体別の生物のように蠢く。
花びらを割り開いて、上部にひくつく突起を探し当てると、絡め取るように貪られた。
淫らしく、猥らな水音。
布美枝の耳に届くと、それがまた引き金となって止めどなく愛液が染み出してくる。
「…ふっ…んぅ…あぁ…」
腰を捩っても、強く押さえつける右腕からは逃れられない。
やがて女陰を割り入ってくる舌の温もりに侵され、背をのけぞらせて褥を乱す。
掻き乱される内側に痺れをきらせて、耐えることができずに声を上げた。

そうしてひとしきり弄ばれ、朦朧とした意識の中、視界の端に茂の顔を認める。
何も語りはしないが、優しく降りてくる唇が、布美枝との「交じり」を切望している。
そのまま口づけは背にまわり、うつ伏せられた布美枝は茂の動きを気配で感じるしかなかった。
それでも予想のつかない愛撫の行方は、茂の為すがまま。
腹の下に右手を差し入れられ、気怠るい腰を上げざるをえなくなる。
持ち上げた尻から滴っていく、淫らな愛液を体感し羞恥していると、
突然、硬度と熱を保った塊が、その間に分け入って突き上げてきた。

「…っあっ…っ!」

虚を衝かれた熱情の貫きに、一瞬真っ白の世界を見た。
しかしすぐに現実に引き戻される。
奥深くに勢いを叩きつけられれば、すぐにスッと去っていく虚空。そしてまた充填。
茂の寝間着は肌蹴られ、堅く熱い胸板を布美枝は背中に感じながら、
前身は右手に、背後は口づけに、激しいほど淫らな攻めを受け、獣のような声を引きずり出される。

「…腰を、下げたらいけんっ…」
背後からの茂の声に、はっとして下がりかけた腰を持ち上げる。
けれど脚に力が入らず、上半身を布団に擦り付けるようにして支えた。
肉のぶつかる乾いた音、互いの液が交じり合う湿った音。
相反する卑猥な物音に重ねて、茂の短く荒い息の中に、昂ぶる興奮の掠れた声も聞こえる。

「はあっ…あ、あ、んっ…あ、ふ…っ」
動物のような繋がりに、野生のごとく喘ぐ。
より一層速度を上げる摩擦に、押し出されるように涙が溢れた。
大きな熱い胸に、背中からぎゅっと抱きしめられる。
その温もりに言い知れぬ安堵を感じた。
直線的な運動の果てに、大熱の飛沫が胎奥に射たれる頃、
布美枝の意識は既にその身体の中には無かった。
582つめきり8:2010/10/22(金) 00:00:11 ID:QuiuJp1J
耳元で、ちゅ、ちゅ、と鳥が啄ばむような音がして、布美枝はうっすら目を開けた。
布団にうつ伏せたまま、頬や耳に茂の口づけを受けていた。
乱れた髪を、手櫛で優しく梳かしてくれている。
目線だけでそちらを見やると、心配気に覗き込まれ、恥ずかしくなってさっと布団に顔を押し付けた。
茂は、布美枝の挙動に静かに微笑うと、また軽い口づけを続けた。
今度は布美枝もふふふ、と笑って顔を上げ、ようやく唇で受け止めた。

「…あ」
「ん?」

はた、とまた閃きに弾かれた布美枝が、茂を見上げた。
「耳掻きは…不自由じゃないですか?」
「…」
その言葉に、とたんにサッと雲を宿した茂の顔を、布美枝は見逃さなかった。
「苦手なんですね」
「…」
「貴方って、案外怖がりなんですねぇ」
「…だらっ!黙れっ」

その後、しばらく二人はなんだかんだと言い合って、
やがてしぶしぶといった様子で、茂は布美枝の膝枕についた。
ぎゅっと目を閉じて肩をすくめ、右手は拳を作って構える。
「そげに大袈裟な」
「ええけん、早ことせ」
「はいはい」
呆れながらその横顔を見つめ、くすっと笑った。
この大男が、耳掻きひとつに小さくなるのは滑稽としか言いようがない。

しばらく茂は、布美枝の操る耳かき棒に、あれやこれやと文句をつけていたが、
しかし間もなく、すう、と寝息を立て始めた。
頬を軽く捻ってみても、小さく呻るだけで全く起きる気配がない。
「呆れた…」
布美枝はため息まじりに微笑んで、
そっと頬に口づけた。


おわり

583名無しさん@ピンキー:2010/10/22(金) 00:45:08 ID:uXOhKEk+
>>575
だんだん!エロかわええw
イイ意味でバカップルなゲゲフミだなw
584名無しさん@ピンキー:2010/10/22(金) 13:39:46 ID:JgBhwMQ4
そうだ…茂さん自分で爪切れないんだね
読んで初めて思い当たった
すごい着眼点だ

傷探しにかこつけて全身を舐めまくる茂さん萌え
ホントにエロエロエッサイムな人だなw
だんだん!
585名無しさん@ピンキー:2010/10/22(金) 14:25:40 ID:iqO95Gf1
ドラマの爪切りシーンでも恐がる茂さん可愛かったし、ナチュラルにいちゃつく二人が良かったから、
誰か書いてくれるかもと待っていた!

茂さんはフミちゃんになら背中引っ掻かれてもOKだし、
フミちゃんは茂さんになら何されても感じちゃうんだろうな。
もう毎日存分にいちゃこらしててくれ。
586名無しさん@ピンキー:2010/10/22(金) 14:56:42 ID:PHXyeJ9j
>>585
普段は胡座なのに、ちょこんと正座してるゲゲがかわいかったw>爪切り
>>575
エロかわええいちゃこらだんだん!
587名無しさん@ピンキー:2010/10/22(金) 18:51:00 ID:limGSlfp
>>575
GJ!ふみちゃんエロい…エロいよ…
殺気ワロタww


DVD届いたから見てるけどゲゲふみホントかわいいな…
結婚記念日でゲゲを見送ったふみちゃんがデレデレしてるあたりとか悶える
588名無しさん@ピンキー:2010/10/23(土) 01:19:35 ID:204R0i/T
>>587
授賞式のお見送りでの「ええ男だなあ」発言もかわいい。

おまいらいちゃつき過ぎだなんて思ってたけど
実際のお二方は、出かける御大を夫人が投げキスで見送って
数10m離れた先で御大がキスを飲みこむ仕草をして投げ返す…なんて場面を
次女さんに目撃されてたりするんだから敵わんなw
ドラマの二人も遠慮せずにもっともっといちゃついてくれて良かったのに。
589名無しさん@ピンキー:2010/10/23(土) 18:15:49 ID:0yw4BuHQ
>>588
なにそれ!すっごく可愛いエピソードだなw
ぜひドラマでもやってほしかった…
水木夫妻のラブラブぶりはすごいな〜
590名無しさん@ピンキー:2010/10/23(土) 21:09:05 ID:IegSxxXx
>>575
ふみちゃんの全身を嘗めるしげさんのエロさと爪切りと耳かきに怯えるしげさんいいなー
キスマーク気にするふみちゃんエロいよふみちゃん
GJでした

>>588
リアル夫婦…恐ろしい子…
ドラマ夫婦でキスの投げあいとかされたら萌え死んでしまうわい
しかも次女さんの記憶にあるってことはドラマだといちゃいちゃが少ない時期じゃないか…!
591名無しさん@ピンキー:2010/10/23(土) 23:21:31 ID:HnxSRVwd
>>588
それ、なんかの本のあとがきに書いてたなw
普通は長年たつと倦怠期が来るのに、逆に新婚に近づく不思議な夫婦だw
592名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 22:38:58 ID:tX19I4tB
この週末、届いた第2弾DVD鑑賞しまくっていた

初めての結婚記念日の夜は、あのSS…
連合艦隊再建の風邪ひきの夜は、あのSS…
とかって、ここのスレのことが蘇るよw
593名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 23:23:12 ID:BlINECsW
>>591
「水木サンの幸福論」だな
栗?を二人で分け合って食べてたっていう話も可愛かった
594名無しさん@ピンキー:2010/10/25(月) 02:28:48 ID:JsnWBYXg
>>575
爪切りも耳かきもラブラブな感じでええですなあ。ドラマでも爪切りを怖がるのは萌えシーンで好きだった。怖がるのが実話って所が輪をかけて萌える。
595名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 00:08:40 ID:G0Hbb49H
>>588
ドラマでは「エエ男だなあと思って」のあとに「おう」って言ってだけど、
ノベライズでは「だらっ」で、デレるということになっていた。
後者も見てみたかったな。
このシーン、ネクタイ締めるとこでなんか言い争ってるのも
イチャコラしてて、繰り返し見てしまうw
596名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 23:51:45 ID:b2NeECPy
本スレに前あったフミエロボについてふと考えてたんだけど
よく考えたらおとうちゃん機械苦手だった…orz
597名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 00:14:55 ID:wJl2HJBP
ラジオやテレビをぶったたくお父ちゃん素敵だったw
ブーフーウー(だっけ?)見て豚っ鼻鳴らすアドリブっぽいのも良かった

食卓でごはん食べるとかテレビ見るとか一緒に本を見るとか
ごく日常の光景がかわいい夫婦って良いな
598【冬夏青青】前書:2010/10/27(水) 05:25:29 ID:wJl2HJBP

第18週「悪魔くん復活」、次女出産・退院後の一幕。
しげぇさんの、ほのぼのハーレム(?)。

次女さんだけでなく、きっと長女さんも、いろいろ目撃してきたのだろうなあ。

599【冬夏青青】1/3:2010/10/27(水) 05:30:25 ID:wJl2HJBP

「あら」
 珍しく早起きの夫に驚く。
「早いですね。どげしました」
「…よしこは?」
 寝ぼけ声の、ひらがなしゃべり。
「眠っとりますよ」
 居間の布団に寝かせた次女の許へ、茂はのそのそと近づく。
 どうやら赤ん坊にかまいたくて、早々と起き出してきたらしい。
 長女も生まれたばかりの妹に興味津津の態(てい)で、ずっと寝顔を覗き込んでいる。
「藍子、幼稚園はええのか」
「きょうはおやすみー」
「3学期は来週からですよ」
 布団の脇にごろんと寝転び、茂は、赤子の頭に鼻を寄せる。
 そういえば藍子が生まれた時も、同じようによく匂いを嗅いでいた。
 くんくんと鼻を鳴らして、「芋の匂いがする」と呟く。
「お芋ですか」
「すりつぶしたスープみたいな、あれだ」
 炭水化物を連想したようだ。
「ころころとよう太って、旨そうだ」
「食べんでくださいね?」
 布美枝が茶化すと、彼は大真面目に、ぷっくりとふくらんだ赤子の頬に、はむっと吸いつく。
 次女が、きゃらきゃらと声をあげた。
 睡眠と覚醒が数時間おきにくる時期だが、ちょうど目が覚める頃合いだったようだ。
「お。喜子はお父ちゃんが好きか」
 応えるふうに、にぎった拳を揺らす我が子に、堅物な男も相好をくずす。
 そのまま、ちょん、と娘の唇をついばんだ。
「あいこも、おとうちゃんすきー」
 日頃多忙な父親にここぞと甘えたいのか、藍子は茂の右腕をつかむ。
 長女の小さな唇の端にも触れて、
「両手に花だな」
 愛娘たちに囲まれた夫はご満悦だ。
 微笑ましいような、羨ましいような、妙な心地になり、布美枝は肩をすくめる。

600【冬夏青青】2/3:2010/10/27(水) 05:34:58 ID:wJl2HJBP

「よし。二人とも手放さんぞ」
 頷いて立ち上がり、茂は妻を振り返る。
「藍子も喜子も、よそへはやらん。婿をとる」
 気の早すぎる宣言に、呆気にとられるより噴き出してしまった。
「二十年は先の話じゃありませんか」
「今からそのつもりでいろと言っとるんだ」
 戯れでなく本気の様子だ。
「相手は次男か三男だな。転勤のない仕事でないといけん。兄貴や義姉さんは顔が広いけん、
ええのを見繕ってもらうように早いうちから頼んどかんとな」
「はいはい」
 幼い長女は、将来の見合い話が構想されていることもわからぬふうに、小首を傾げて父母を見比べている。
「喜子のほっぺもええですけど、朝ごはん食べませんか。今日は七草粥ですよ」
 用意の良い妹が、前日から支度してくれている。
「おまえ、寝てなくてええのか。腹は痛まんのか」
 昨日も、彼はしきりに心配していた。
「大丈夫ですよ。手術後の回復も順調だと、お医者さんも言っておられましたし。もう痛みもないです」
「無理はするなよ。家事も代わってもらえ」
「はい」
 今朝も妹が洗濯を引き受けてくれているし、年越しの準備も担ってくれた。
 本当は、家計にゆとりが出て以来、まともに祝える初めての正月だから、自分でおせちも作りたかったのだけれど。
「いろいろ、ありましたねえ」
「? なにがだ」
「去年はいろんなことが次々とあって、ずいぶん生活が変わりましたけん。なんだか不思議な気がして」
 一昨年末の受賞を契機に、夫をとりまく環境は激変した。
 引きも切らずに仕事の注文が舞い込み、助手を雇い、会社を立ち上げ、家を改築し、作品がテレビ放送までされた。
 夢物語のように目まぐるしい毎日の隙間にふっと訪れる、こんな穏やかなひとときが、ことのほか嬉しく、身にしみる。
「なにを言うとる。まだまだ、これからだ。鬼太郎がテレビになるかもしれんのだしな」
「そげですね」
 これ以上は望むべくもない。
 願うは、何が起きようとも、自分は常に、この人の傍らにあり続けたいということ。
 ただ、それだけでいい。

601【冬夏青青】3/3:2010/10/27(水) 05:39:27 ID:wJl2HJBP

「そうだ。お父ちゃん」
「ん」
「後で、爪切ってあげますね。新年、初爪切りです」
「いらん」
「七草をひたした水につけてから切ると、その年は風邪をひかないそうですよ」
「いらんといったら、いらん」
「相変わらずですねえ」
 唇を尖らせてテーブルにつき、新聞を広げる姿は、意固地なでっかい子どもみたいだ。
 苦笑しつつ、温めた粥を椀によそう。
 セリにナズナ、ゴギョウとハコベラ、スズナにスズシロとなじみの他に、ネギやホウレンソウ、ミツバも刻んである。
 商店街の主婦仲間に、若菜を豊富に加えると良いと教わった。
「今年もみんな、健康で元気に暮らせるように、おまじないです」
「まじないなら、俺はいつも食っとるぞ」
「え?」
「我が家には、とびきりのナズナが常備されとるけん。一番の滋養だ」
 匙に盛った粥を吹きながらぱくつく夫は、涼しげに平然としている。
「…もぅ」
 布美枝は、かすかに頬を赤らめ、上目で見やる。
「藍子も喜子も、俺とおまえの養分を吸収して生まれたんだけん」
「養分って」
「そげだろう? 元々は俺の中におって、おまえに行き渡って、ようやっと外に出てきたんだ。丈夫にたくましく育つさ」
 変わらぬ飄々と自由な、この大黒柱に守られる道程は、きっとこれからも、少しせつなく、だが胸温まる日々だろう。
 めったに揺るがず、周りを率いてゆく男が頼もしい反面、たまには独り占めして、娘たちのように素直に甘えたい本音もまじる。
 たたまれた新聞の横から近づき、一瞬、茂の目許に唇を寄せた。
 きょとんと見上げる彼の瞳が、やがて、ふわりとやわらぐ。
 そっと手首をにぎられてかがむ。
 子どもたちの目を盗んでの、年明けて最初の口づけは、軽やかに優しく。
 夫の唇からは、ほのかに甘い、ミルクに似た香りがした。


 了

602名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 10:09:36 ID:5BBrtrh7
(´∀`)=3
603名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 19:58:17 ID:eSQJ+ION
>>599
家族かわいいしゲゲふみかわいいし!だんだん!
やっぱ盗みきれてなくて藍子さまに見られてるわけですか
604名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 20:06:15 ID:DC6ejV0/
ナズナ、いつも食っとるわけですなw
さらっと言うのう〜(*´Д`)
605名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 20:42:24 ID:yNeuBcOa
>>599
ほのぼの家族、ほっこりしますなあ〜。親バカしげーさんや、何気ない日常の幸せな感じがええですわ。
606名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 23:19:06 ID:fCr/xgRu
>>599
ゲゲにとって一番の滋養は、とびきりのナズナを食うことかw
是非これからもどんどん続けてほしいw
可愛い話をだんだん!
607名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 08:56:04 ID:pp1Odaed
>>599
萌えーーーーーーーーっ!!
ゲゲが藍子の匂いくんかくんかする画がスゴイすきだったんで
今回のほっぺパクつくゲゲにも萌える…。
そんで娘にちょっとジェラシーの布美ちゃんも可愛いw
608名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 00:09:04 ID:P3BIOIJu
>>599
GJ!
そうか倒れた時はナズナをあまり食べていなかったからだったのか…!
609名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 02:15:42 ID:54asF0WU
あのう…今ゲゲが57、8の設定で書いてるのがひとつあるんだが
エロ大丈夫だろうか?
60でも現役の人がいるとかってレスを前に見たことがあるんで
ついつい進めてしまっているのですが…。
610名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 05:48:14 ID:stWaMftR
無問題
ビジュアルはnhkで脳内再生するので大丈夫です。
wktk
全裸で正座してお待ちしております。
611名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 05:51:48 ID:w1xjKPoU
>>609
ゲゲふみは年をとってもかわいくて萌える夫婦なので
自分的にはエロ大丈夫。
むしろすごく楽しみです。
612名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 23:48:05 ID:3ew01/1Z
>>596
嫌だスレにもあったなw>フミちゃんロボ
613名無しさん@ピンキー:2010/10/30(土) 01:50:32 ID:htDKB9G5
>>609
ビジュアルがムカイリゲゲと松下ふみちゃんなら、むしろ萌えなので無問題。
リアル夫妻も可愛らしい2人でそれはそれで萌えるけど、エロは想像したくないからねw
614名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 00:14:37 ID:JL9i0Vsx
亀レスだけど
>>573
裸かっぽう着はどうだろう
615名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 02:48:53 ID:DMDrnz48
そういえばもうすぐ映画が公開になるが
やっぱり自分のゲゲフミ脳内再生は向井・松下コンビに限る。
映画はみてみたいけど。
616名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 04:32:15 ID:BmD91eQA
>>615
チラッと予告見たが、自転車二人乗りのシーンとかあるみたいだな
「何故ドラマでやってくれなかったんだ・・・!?」とオモタ
自分も向井・松下コンビが好きだから映画は正直興味無い
617名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 12:41:25 ID:7xgzyvk+
>>614
割烹着とは…和の心ですな
ふみちゃん裸エプロン向きのエプロンあんまりつけないよね…
618名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 12:50:53 ID:VqU/XcHR
向井松下コンビで見たら、確実に萌え氏んでたのに>自転車二人乗り
619名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 17:44:50 ID:lhzwTsW5
自分も向井松下が好きすぎて映画に興味がわかない…
この二人でベタ甘な夫婦ものやってくれないかな〜
620名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 00:56:15 ID:ocarumGK
>>619
夫婦ものもまた見たいけど、恋人同士としての王道ラブコメも見たい
今時需要無さそうだが
621名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 01:08:11 ID:UWD3ybO7
「いちごとせんべい」のゆうちゃんとあやちゃんがすきです
でもげげふみはも〜っとすきです
622名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 01:13:54 ID:HNXlJFfJ
        ,rィ≡=、_,,.、、-‐r‐-、、.,_
       ,イ;:;:/;:;:;:ィ'¨´ ̄``'´` ̄``ヾ、
      j;:;:;:;:;,ィ´   ー- 、  _,,、-‐  ヽ
      カ;:;:/;,.   ,二ニ、    ,ィニ二、 i
      ,レ'´ ;:;、 /    ヽ  7´   `, !
      ,ノ レ;、.  〈     ・ } ,{ ・   ,j .!
      ゝ    'ト、.    ,:'  `ト、  ,ィ´ .|
      ,〉'´   ミ三≡''´ 、  ゞ三彡  l
     / `,          r‐-、     ,!l
    /:;`、  ヽ         ,イ    / ゙i、
   ,/:;:;:;:;:;i   `ヽ、       ´   ,ィ´   |;l
  /;:;:;:;:;:;:;l     ``''ーt‐'´  'フ,イ     |;i、
  ,!;::;:;:;:;:;:;:;| /^i  , -‐っ ゝ,   // ! ,ィ'´I´`Ij;:;:|
  !;:;:;:;:;:;:;:;:;,i!  V´ ,r'"つ 、 ``´ / ,j ;!  I ,I:|i;:;l
 ,!;:;:;:;:;:;:;:;:;:;|     ,ィ'´つ \/ / j  .i! i!.|ト;:|

623名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 23:54:38 ID:6YksRs4/
時代的に厳しいけどふみちゃんにベビードールを着てほしい
是非もじもじしてほしい
624名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 00:24:14 ID:JZHuNU77
保管庫久々に更新されてた
貧乏神様、だんだん
625これまでと、これからと1:2010/11/02(火) 15:12:22 ID:+wtptJpM
「しげぇさんが、あげに興奮するのを、初めて見たわ。」
藍子が生まれたとき、産院で茂が全身で喜びを表現したという話を暁子から
聞かされた時、フミエはうれしさでいっぱいになったものだ。
 同じことを、やはりその場にいた義姉からも後になって聞いた。
数えるほどしか茂に会ったことがない姉と違って、兄嫁の佐知子は
フミエより茂を知っている年月が長い。その義姉の言葉だから、
茂が藍子の誕生をどんなに喜んでくれたかが伝わって、フミエは
ますますうれしかった。
(でも・・・。)
フミエはちょっとさびしくも思った。佐知子は、境港や神戸時代の茂を
知っているのに、妻である自分は知らない。わずかに知っていることも、
紙芝居の親方や浦木から断片的に聞いただけで、茂が語ってくれることは
あまりなかった。

 ある夜、寝間で浴衣に着替えたフミエは、藍子を寝かしつけながら、
一冊のアルバムを見ていた。すこしでも昔の茂のことを知りたいと、
義姉に貸してもらったものだ。義兄のものらしいそのアルバムには、
数は少ないが若き日の茂の写真もあった。
 義兄夫婦の婚礼に参列した茂、義姉と神戸の家で笑っている茂・・・。
写真の中の義姉は、若く美しく、茂とふたりで写っているとまるで若夫婦の
ようで、フミエの胸はわれ知らずざわめいた。
(いけんいけん。お義姉さんはこのころ大変だったんだけん。私は何を
 考えとるんだか・・・。)
茂と違って海軍のエリート士官だった義兄の雄一は、戦後その身分がわざわいして
戦犯に問われ、長い間収監されていた。のこされた義姉と子供は神戸の茂のもとに
身を寄せていたのだった。
 婚礼写真の中の花嫁は、輝くように美しかったが、その義姉がたどった苦難の
歳月を思うと、胸がいたんだ。今の生活も楽ではないが、佐知子が親子4人一緒に
暮らせる幸せをかみしめて生きているのをフミエはよく知っていた。       
626これまでと、これからと2:2010/11/02(火) 15:13:07 ID:+wtptJpM
「何を見とるんだ?」
突然茂に声をかけられ、フミエはとっさにアルバムを隠した。
「こらっ!何を隠した?見せぇ。」
フミエはアルバムを傷めてはいけないと、しかたなく茂に渡した。
「お義姉さんに・・・貸してもらったんです。あなたの昔の写真、見たこと
 なかったけん・・・。」
「そげなもの、何で見たいんだ?」
「あなたは、昔のこと、何にも教えて下さらんのですもん。」
「昔のことなんて、知ってもしょうがないだろう。」
「だんな様のこと、よう知らんでは、女房がつとまりませんけん・・・!」
(好きなひとのこと、よう知りたいと思うのは、あたり前なのに・・・。)
うまく言えなくて、涙ぐみそうになる。
「私、ほんとのこと言うと、浦木さんがうちに来るの、ちょっこし楽しみ
 でもあるんですよ。あなたの昔のこと、話して下さるけん・・・。」
「な、なんだと!?」
浦木が来るのが楽しみ、などと言われては黙っていられない。フミエの女心は
理解しないまま、茂は一生懸命昔のことを思い出してフミエに語り始めた。

「神戸におったころ・・・親父と、よく宝塚歌劇を見に行ったなあ。
 お前は歌や踊りが好きだけん、いつか連れてってやりたいな。
 まー、当分は無理だろうがなあ。」
今の経済状況では、とてもではないが観劇など夢のまた夢だ。それでも
フミエはうれしかった。
「神戸はなー、食い物はうまいが、イモがやせておって、ちっともうまくない。
 ええ屁が出らんのだ。」
「・・・また、屁のはなしですか・・・。」
フミエはがっかりするやら、おかしいやらで脱力したが、茂ははやばやと
思い出話を投げ出してしまった。
「あーー!!改めて昔のことと言われても、思い浮かばん! 俺が偉くなったら、
 自伝を書いてやるけん、それでも読め。なんだったら、お前が書くか?」
「えー?そげなこと、無理です・・・。」
「『私がいちばん近くで見とるけん、いちばんよう知っとります。』と
 豪語しとったのは、どなたさんだったかな?」
「も・・・もぅ、そのことは、忘れてください・・・。」
(忘れてなんぞ、やるものか・・・。)
ここに、自分の一番の理解者がいた・・・。あの時のことを忘れるはずがなかった。
お嬢さんぽいところが抜けなかったフミエが、茂の女房になった瞬間だった。
627これまでと、これからと3:2010/11/02(火) 15:14:11 ID:+wtptJpM
 藍子を生んでから、フミエは髪を束ねるようになった。すこし首をかしげて
熱心にアルバムに見入っているフミエの、白いうなじがいやでも目につく。
茂が引き寄せられるように唇をつけると、すべらかな肌は甘く、心なしか赤子の
においがした。
「今、こげして一緒におるのに、昔のことなぞ知る必要があるのか?」
うなじから首すじ、耳へと舌が這いあがり、ささやきながらやわらかな耳たぶを
ねぶった。フミエの身体におののきが走り、アルバムがひざから落ちる。
答える声が思わずうわずった。
「だっ・・・て・・・。」
「俺ばっかりじゃなくて、お前の昔の話も聞かせぇ。」
「わ、私なんて、何にもありませんけん・・・。」
「好きなヤツとか、おらんかったのか?」
「そげなもの・・・。あなたが、初めてで・・・。」
「俺が初めてなのは、ようわかっとる。あん時は、大騒ぎだったけんな。」
「!・・・大騒ぎなんて・・・。」
茂が後ろからゆかたの身八ツ口に手をさし入れてきた。母になったフミエの
身体は、胸がすこし豊かになり、肌は以前よりさらになめらかに茂の手に
吸いついてくる。
フミエの首すじを味わいながら、耳元でささやいた。
「ふ・・・冗談だ。ちゃんと覚えとるよ。あれから、いろんなことがあったな・・・。
 それもみんな、お前がいちばんよう知っとる。・・・それで、ええんじゃないのか?」
「は・・・い・・・。」
指と唇で愛撫されながら、低い声でささやかれ、フミエは身体の芯が
とけてしまったかのように、茂にもたれかかってあえいだ。          
628これまでと、これからと4:2010/11/02(火) 15:15:07 ID:+wtptJpM
「もう・・・大丈夫なのか?・・・その、こういうことをしても?」
ここまで来て、今さら駄目と言われても困るが・・・。
「せ、先生は、ひと月過ぎたらええ、と言っとられましたけど・・・。」
あえぎながらフミエが答えると、茂が手を抜き取って、前で結ばれた帯を解いた。
ゆかたをすべり落とすと、そのまま肩を抱いていっしょに布団に横になった。
後ろから抱いたまま、乳首を指の間にはさんで胸をもみしだく。
「ぁ・・・ああ・・・んっ。」
フミエがその手を抱くようにして身をくねらせた。
茂の手が下へとおりていき、狭間に指をすべりこませる。
「ま、待って・・・!」
フミエがその手をつかんで止めた。
「どげした?・・・まだ無理か?」
「わか・・・わからんのです・・・。自分でも、どげなっとるのか・・・。」
大きな変化が、身体におとずれ、また、茂をもう何ヶ月も受け入れていない。
「子供を生んだ女が、もうこれが出来んと言うのなら、とっくに人類は滅亡しとる。」
茂の長い指が、蜜をからめながらうごめき、深いところへ沈み込んだ。
「やっ・・・ん・・・ああっ。」
フミエは茂の腕を両手で押さえ、腰をくねらせて快感から逃げようとした。
茂はフミエの内部をいとおしむように指で深くさぐり、軽く責めた。
「・・・お前はなんにも変わっとらん。大丈夫だ。」
「・・・は・・・い・・・。」                       
629これまでと、これからと5:2010/11/02(火) 15:16:02 ID:+wtptJpM
茂がフミエを仰向かせ、深く口づけながら身体をひらかせた。
自身の先端でフミエのその場所にふれると、そこはもう、あたたかくうるんで、
なめらかに茂を招きいれた。なかは快く、茂は懐かしい幸福感に包まれた。
「お母ちゃんになって、一段と味がようなったな。」
「も、もぉ・・・。」
軽口の中にも、茂らしいいたわりを感じ、フミエはうれしかった。
茂は、フミエを気遣ってか、中の感触をたのしむようにじっとして動かない。
フミエは、身内から泡のようにわきあがる快感に、むずがゆく責めたてられ、
大きく身体をうねらせて身悶えた。
「あ・・・しげぇ・・・さん・・・。」
茂がようやく腰をゆっくりとまわしはじめた。フミエのむずがゆさが一層増してくる。
(た・・・すけ・・・て・・・。)
「お願・・・い・・・。っ・・・ぃ・・・。」
「なんだ?はっきり言え。」
はしたないと思われてもいい、茂を全部、感じたかった。
「つい・・・て・・・くださ・・・い・・・。」
「もっと、きつうしても、ええのか?」
「は・・・い。」
茂が、フミエの肩をつかんで、ぐっと突き上げた。フミエが悲鳴をあげる。
大きく腰をひいては突き上げることを繰り返され、フミエの足は茂の腰にあやしく
からまり、腕は茂の首に巻きついた。
フミエを貫くものを回転させるように突き上げると、フミエは髪をふりみだして
小さく達した。茂は身体をふるわせるフミエを抱きしめ、なおも揺すぶりたてる。
「あ・・・え・・・え・・・快えの・・・しげぇ・・・さん。」
フミエは、揺すぶられながら、茂の耳元で繰り返し訴えつづけた。
耳にそそぎ込まれるせつないあえぎに、茂の官能もかきたてられる。
フミエが茂の背につめを立て、四肢をふるわせてかぼそい悲鳴をあげた。
ギュッと抱き合ったまま、茂もフミエの中で果てた。         
630これまでと、これからと6:2010/11/02(火) 15:16:52 ID:+wtptJpM
 情交のあと、ぐったりとなったフミエを、茂が包み込むように抱いてくれている。
温かく、すこし汗ばんだ肌が重なりあい、身体がつながっている時とは
また違った一体感とやすらぎを覚えた。
(この時が、すこしでも長くつづきますように・・・。)
フミエは、自分の身体に回された茂の手を両手で抱きしめた。
(女心は、ようわからんが、フミエを安心させてやらんといけんな・・・。)
茂のことを懸命に知りたがったり、こうして茂の手をいつまでも抱きしめて
いたり、フミエが自分のことをせつないほど慕ってくれているのは茂にも
よくわかった。なぜ自分のような男をこれほどまでに愛してくれるのか、
不思議に思いながら、茂もそんなフミエをこの上なくいとおしく思っていた。

「これ以上近づけんというほど近づいても、俺たちはそれぞれ別の人間だけん、
 お互いの考えとることが全部わかるわけじゃない・・・。けど、わからんから
 面白いのじゃないか?」
「はい・・・。」
「それにな、そこにおる藍子は、正真正銘、俺とお前を半分ずつ混ぜて出来とる。
 それだけは、間違いない・・・。」
フミエは、ちいさな布団ですやすやと眠る藍子をみつめた。
(しげぇさんと、私を半分ずつ・・・。)
ストーブの灯油も満足に買えないほど貧しいけれど、こうして茂につつまれて
いれば温かく、目の前にはふたりの愛の結晶ともいえる藍子がいる。
あたたかい涙がにじんできて、藍子の姿がぼやけて見えた。
「昔のことは、おいおい思い出したら話してやるけん・・・。それより、これから
 何十年も一緒におるんだけん、これから起こることを全部忘れんようにして
 いったらええ。」
「そげですね・・・。」
ほんの小さなことでも、大事に拾い集めて胸にあたためていけばいい・・・。
フミエは身体をよじって茂の方に向き直ると、ほほえんで茂を見上げた。
どちらからともなく求めあった唇がかさなりあい、やがて深くなっていった。
631名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 18:55:27 ID:+um8/nE0
フハッ
632名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 21:02:04 ID:we6ifnNu
>>625
GJ!
妊娠中や出産直後の設定が好きなんで、
出産後の布美枝の体を心配する辺りがイイ!

前にあった、妊娠中の布美枝のお腹を触るとか、
帝王切開跡を触るとか、
妊娠中or出産後設定好きって変かな…
633名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 23:38:47 ID:nrqLQV9Y
>>625
だんだん
特にラストにグッときた

>>623
見たいなw
ここで時々出てくるフミちゃんエロコスプレネタ好きだ
634名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 14:19:45 ID:q1FKH3Sy
>>625
GJ!
おねだりするふみちゃんがとてもエロくて可愛い
635名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 19:13:23 ID:7FgTBW5K
>>625
GJ!
どさくさにまぎれて布美ちゃんの過去もチェックするゲゲ
好きな人いたとでも言おうものなら…w

妊娠中・後はゲゲが布美ちゃんをいたわる話が多いから
ほのぼのするよね〜自分も好きだよ

あ、おかあちゃん紅白司会オメ!
636名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 17:36:03 ID:JS2uvhiG
>>635
総集編もあるし年末は忙しいな
できれば生放送でゲゲふみを観たい
637名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 18:04:20 ID:ckYab6v1
609でゲゲの年齢を気にしてた者です。投下しますノシ
えらく長くなってしまったのと、途中>>542さんの
焚き火シチュを勝手に引用させてもらったので、この場を借りてお詫び。
638仲直り大作戦1:2010/11/04(木) 18:06:24 ID:ckYab6v1
昭和54年、初夏。
騒動の発端は、何気ない喜子の一言だった。

「ねぇ、おとうちゃん、おかあちゃん。私、弟か妹が欲しいんだけど、ダメかな?」

茂は口に含んだばかりの味噌汁を噴き出し、
布美枝は茶碗を持ったまま石のごとく固まった。
藍子はポテトサラダを喉に詰まらせている。

「〜〜〜よっちゃん!」
赤面する両親より先に、姉が真っ赤になって一喝した。
「何言い出すの、こんな夕食時に!」
「え、だって、おとうちゃんとおかあちゃんが揃ってるときのがいいかと思って」
「揃ってって…」
娘から見ても純情一直線の母などは、まるで茹でダコのような状態になっているというのに
きょとんと姉を見つめる喜子の顔はさっぱりしたものだった。
「いくらなんでも無神経すぎない?」
「ええ〜そうかな」
「あんたには思春期ってもんがないの?ぽんと買ってもらえる物じゃないんだよ?」
「そんなこと解ってるよ〜」
「だったらどうやったら子どもができるか、理解して言ってるってこと?」
「うん、だからさ〜」
「おい」

それまで黙っていた茂が、眼鏡を拭きながらやや俯き加減で二人を制した。
「藍子、お前もだいぶ身も蓋もないこと言うとるぞ」
はっとして、勢いをなくす藍子。代わりに茂が続けた。
「どげしたんだ、なんか理由があるのか」
その言葉に、喜子はうん、と頷いて話し始めた。
「今日もね、遅刻したんだけど。先生がさ、もっとしっかりしなさいって言うわけよ」
もっともだ、と布美枝と藍子は頷いた。
「それからね、この前の小テストの答案が却ってきたんだけど。点も悪かったうえに、
 私、名前書き忘れちゃっててさ〜。ま〜た先生に怒られて呆れられちゃった」
「喜子…」
娘のあまりのドジぶりに、布美枝は情けなくなってきてしまった。
しかし茂は大真面目に、箸を進めながら聴き入っている。
639仲直り大作戦2:2010/11/04(木) 18:07:01 ID:ckYab6v1
「あとね、体育があったのに体操着忘れちゃって。クラスの子に笑われるし」
「よっちゃん…」
「帰り道でちょっとお菓子を買って帰ってたら、お店にお財布忘れちゃって!
 あとから小学生が追っかけてきてくれたんだけど、延々お説教されちゃった」
開いた口が塞がらない、という言葉を今までこの身で経験したことのなかった布美枝が、
初めて今その状態になっていることに、心底哀しくなってしまった。

「で?」茂が続きを促すように問いかける。
「でね、私考えたの。私がどうしてこんなにしっかりしてないのか」
「ほう」
「それは、私が妹だからなのよ」
「意味解んないんだけど」
藍子が呆れたようにため息をついた。
「だから〜、お姉ちゃんが昔からしっかり者って言われるのは、私みたいな妹の世話をしてきたからでしょ。
 私にだって手のかかる下の兄弟がいたら、自然としっかりしてくるんじゃないかなって」
「どうやったらそんな飛躍的な考えになるのかなぁ…」
全く相手にしない藍子の横で、茂はふむふむと頷いている。
喜子は、そんな茂に向かって身を乗り出した。
「おとうちゃん、ダメかな?もう無理なの?」
「何を言うか、おとうちゃんはまだまだ現役だ」
「おとうちゃんっ」
胸をはって言う茂に、藍子は慌てて牽制した。が、茂は無視して続ける。
「おかあちゃんの方がもう上がっとるんじゃないのか」
「あ、上がってなんかないですよ!」
急に妙な振られ方をしたので、慌てて反応してしまった自分を反省しつつ、
それでも茂の言葉に少しムッとする。
横で喜子が「アガルって何?」と無邪気に姉に問いかけていたが、
「おかあちゃんまで。もうやめてよ」
泣きそうな声で藍子が二人の間に割って入り、しばしその場は静まった。
640仲直り大作戦3:2010/11/04(木) 18:07:45 ID:ckYab6v1
しん、としてしまった食卓を、何とかせねばと布美枝は懸命に言葉を探した。
「よ、喜子はちょっこしおっちょこちょいだけど、それは生まれつきの性格だわね。
 下がおってもしっかりするとは限らんし。ねえ、藍子」
げんなりした様子で軽く頷いて、藍子は食器を片付け始めた。
布美枝もそれに倣ってそそくさと皿を重ねる。
ちらと窺った喜子の肩が、ずいぶんがっかりと落ち込んでいるのを見て、ちく、と胸が痛む。
あれこれ考えて、布美枝は喜子に笑いかけながら言った。

「ほ、ほら喜子。おとうちゃんだってねえ?下に光おじちゃんがいるけど、
 どっちが弟かわからんくらいに、おじちゃんの方がしっかりしとるじゃない」
が、この言葉が今度は茂の神経を逆撫でたようで。
反応した茂の眼鏡が、きらりと光ったように見えた。

「おい、なんだ?まるで俺がしっかりしとらんみたいな言い草でないか」
「だって、おとうちゃんは何でもかんでも勝手にあれこれ進めて、
 自分の好きなことはぜえーったい譲れんって押し通すじゃないですか。
 光男さんは堅実な方だけん、マネージャーとして上手くフォローしてくれとるけど、
 どっちが兄かわからんて、たまに編集の方も…」
「俺は一個部隊を統率しとるんだぞ!」
茂得意の「一個部隊」が出た。布美枝は思わず応戦する。
「それがそもそも子ども染みとるんです!いつまでもガキ大将みたいなこと言って」
「なにを!」
計らずも、夫婦喧嘩の装いを呈してきた食卓に、娘二人はただあわあわするだけだった。
ちっと舌打ちをして茂は、吐き捨てるように呟く。
「…自分のことは棚に上げて、よう言うわ」
「ど、どういう意味ですか」
「お前だって下がおるくせに、とても姉とは思えんぼんやりした性格しとるでないか」
「あ、あたしは!6人兄弟の、真ん中だけん!あんまりしっかりせんでも周りが…」
「それが棚に上げとると言うんだ!」
「放っといてください!」
布美枝と茂は、口を尖らせてにらみ合うと、やがてふんっとそっぽを向いた。
間に挟まれた藍子と喜子は、かける言葉も見つからずに互いの顔を見合わせた。
641仲直り大作戦4:2010/11/04(木) 18:08:23 ID:ckYab6v1
茂と布美枝の喧嘩は3日目に突入し、
殺伐とした2人の間の空気に、娘ふたりをはじめ、アシスタントや光男、
果ては原稿を取りに来る編集者まで、周囲は日々振り回されていた。

「よっちゃんのせいだからね」
うんざりした顔で机に突っ伏し、藍子は隣のベッドで寝転がる喜子を責めた。
「このままじゃ、弟や妹どころか、離婚の危機だよ」
「えっ、それは困るよ」
茂の漫画から顔を上げた喜子が、慌ててその身を起こした。
「そうだ」と独りごちて、名案の閃きに顔をキラキラさせて姉を見上げる。
「映画のチケットでも渡してさ、一緒に行かせて仲直りさせるってのはどうかな」
「うーん、でもあのふたり、趣味があんまり合わないからねぇ」
茂はアクションや戦争物を好むが、布美枝はまったりとした純愛話が好きな方だ。
映画館の前で諍いになったのでは元も子もない。
「深大寺あたりでお蕎麦でも食べさせれば、おとうちゃんの機嫌も直るかな」
「おかあちゃんはどうするの」
「そのあとデパートにでも連れていけば…」
「ダメだよ、どうせおとうちゃんがウロウロして好きなとこに行っちゃうだけよ」
娘ふたりは同時に腕組みをして、同じように眉間に皺を寄せ、深く頭を悩ませた。
やおら、喜子がゆるりと頭を上げ、少し低音調で静かに呟いた。
「…こうなったら、一芝居打つしかないか」
喜子のその表情に、藍子はどこか「ねずみ男」の片鱗を垣間見、ぞくっと身を震わせた。

翌日―――。

「おかあちゃん!大変!」
買い物から帰り、布美枝が玄関の扉を開けた途端、顔面蒼白の藍子が駆け寄ってきた。
テスト期間中だったので、半日の授業で帰宅していたらしい。
「今…警察の人から電話があって」
「警察?」
尋常でない事態に、布美枝は眉をひそめた。
言葉が続かない藍子の肩を揺すり、先を促す。
藍子はやっとのことで震える声を発した。
「富士山の…あの山小屋…か、火事になって…」
「えっ?!」
642仲直り大作戦5:2010/11/04(木) 18:09:05 ID:ckYab6v1
すると、ただならぬ気配を感じたのか、向こうから茂がやってきて藍子を覗き込む。
「どげしたんだ」
「山小屋…燃えちゃったって…」
そう言ってから、藍子はその場にへたり込んだ。
泣いているのか、顔を覆ってぼそぼそと呟く。
「警察のひとが…おとうちゃんに、すぐ来て欲しいって…」
茂と布美枝は顔を見合わせた。
布美枝は酷く動揺して、藍子をどうにか慰めようと思うのだが、
自分自身の中の整理がなかなかつかずに呆然と佇んでいた。

子どもたちが大きくなってしまって、しばらく訪れることのなかった富士山麓の山小屋。
けれど、村井家の思い出がたくさん詰まった、大切な第二の我が家だった。
その山小屋が燃えた…?
布美枝の胸の奥がぐっと熱重くなって、一気に瞳まで熱が上昇したかと思うと、
とたんに大粒の涙となって頬を伝った。
「落ち着け」
茂は藍子の手を引きながら、布美枝に向かって言った。
その声にはっとして、我にかえる。

「とりあえず、行ってくる」
「あ…あ、車!車、まわします」
「ええ。タクシーで行く」
動揺する布美枝を気遣ってか、茂は静かに布美枝を制した。
が、居ても立ってもいられないのが本音だった。
「いえ!あたしも行きます」
凛とした瞳を向ける布美枝を茂はしばし見つめていたが、やがて藍子の肩をぽんと叩くと、
「ほんなら、おかあちゃんと行って来るけん、留守番頼む」
言ってから奥へ戻っていった。

布美枝は、ほうとため息をついてから、慌てて涙を拭き取り、藍子に無理矢理微笑んでみせた。
「喜子は?」
「まだ帰ってない…。おじいちゃんたちも出掛けちゃってるし」
「…独りで、大丈夫?」
「菅井さんたちがいるし。大丈夫だよ」
力なく微笑む藍子を不憫に思いつつも、布美枝は身支度を整えた。
643仲直り大作戦6:2010/11/04(木) 18:09:55 ID:ckYab6v1
車中、茂も布美枝も言葉は無かった。
先日から引きずっている喧嘩のことも相まって、正直茂との距離を量りかねていた。
窓の外に過ぎ行く景色を、ただ黙って見つめる夫は、今何を考えているのか。
多忙を極める中でも、幼い子どもたちを連れて過ごしたあの山小屋での時間。
そして時折、子どもたちの目を盗んで星降る夜空をふたりで眺めたひとときを、
この人も大切に記憶してくれているだろうか…。

信号が青に変わったことに気づかずに、布美枝はじっと一点を見つめていた。
後方からクラクションを鳴らされても気づかない。
「おい」茂が布美枝の肩を軽く揺らした。
「え、あ!すみません」
慌ててギヤを入れると、とたんにエンストを起こした。
「落ち着け」
呆れたように、後ろの車は布美枝たちを追い越して行ってしまった。
焦る布美枝の手を、茂の手がぎゅっと握った。
「…おとうちゃん」
「慌てんでもええんだ。ゆっくりで、ええんだけん」
言葉にも温度がある、と布美枝は思った。
茂の言葉と大きな右手に、心も身体も温められて、じわりとまた涙が浮かんできた。

※ ※ ※

村井家の電話が、けたたましく鳴り響いた。
藍子と喜子はその前に揃って正座をし、何度もジャンケンを繰り返している。
何度目かの勝負で藍子が負け、怒りと悲しみが入り混じった顔で喜子を睨む。
喜子は「はやくはやく!」と電話を指差し、藍子は震えながら受話器を手に取った。
そっと耳に宛てて「…はい」
644仲直り大作戦7:2010/11/04(木) 18:10:50 ID:ckYab6v1
『あ〜い〜こ〜!』
受話器の向こうの布美枝の声は、地の底から這い出してきた魍魎のように怨めしく響いた。
『どげなっとるのっ!山小屋、火事どころかボヤひとつ起きとらんじゃない!!』
「ごめんなさいっ!!」
平謝りの藍子の横で、喜子も顔をしかめて念仏を唱えている。
『なして嘘なんかついたの?!』
「それは…そのぅ…ふたりに、仲直りしてほしかったから…」
『大袈裟なことして!』
「だからごめんってば…」
口を尖らせながら、それでもこちらの分が悪いことは藍子も承知していた。
『ついてええ嘘と、そうでない…』
布美枝の声が遮られて、今度は電話口に茂が出た。
『藍子か』
「おとうちゃん、あの…ご」
『作戦参謀は喜子だな』
「えっ」
思わず喜子を振り返る。参謀は「ん?」と目玉をきょろりとさせた。
『お前はこげな大胆で荒っぽいことはせんだろ。けど実行部隊に使われたか。
 まあええ。お前らふたり、首洗って待っとけ、ええな』
言うなり、がちゃんと一方的に切られた。
サーと血の気が引いて行く音が聴こえた気がした。

茂の言うとおり、今回のシナリオを作ったのは全て喜子だった。
そして、嘘の情報を両親に報せる役回りは、藍子が適任だと言い出したのも喜子だった。
自分より、真面目一徹の姉が演じる方が説得力があるのだ、などと押し通されたのだ。
しかし今になって考えれば、妹の口車に乗せられてとんでもないことをしでかしたのではないか。
藍子は悔やんでも悔やみきれない大後悔の渦に飲み込まれて行った。
「…おとうちゃん、何て?」
姉のただならぬ様子を見て取ったのか、さすがの喜子も作り笑顔が引きつっていた。
645仲直り大作戦8:2010/11/04(木) 18:11:33 ID:ckYab6v1
「米が食いたいな」
電話を切ったあと、茂は2個めの菓子パンをむしゃむしゃと食べ始めた。

山小屋からしばらく下った先にある商店の軒先で、ふたりはベンチに腰掛けていた。
布美枝はまだ、斜め前の赤い公衆電話を睨みつけてぶつぶつと文句を言っている。
「信じられんわ、藍子があげな芝居がかった嘘つくなんて!」
「黒幕はもう一匹の方だわ。まあ、俺たちの仲裁が目的だったんだけん、多少は大目に見んとな」
布美枝の手元の菓子パンを指差して「食わんのか」と茂。
「おとうちゃんは許せるの?あんな嘘つかれて!」
飄々としている茂に、半ば呆れる。
思い出の詰まった山小屋を失ったと信じ込んで、重苦しい胸をずっと抱えていた布美枝は、
その胸苦しさをぶつける先を求めて興奮していた。

「あーもう!早く帰ってお灸据えてやらんと!」
目を吊り上げて持っていたパンを茂に渡し、勢いよく立ち上がった。
「帰るのか?」
「え?」
渡されたパンの袋を器用に開けながら、茂は布美枝を見上げた。
「今から帰っとったら夜中になるぞ。お前も運転し通しでは辛いだろう」
「え…けど…」
「折角だ、参謀殿の策に乗ってやれ」
涼しい顔の茂を見下ろしながら、布美枝は早鐘を打ち始めた鼓動に戸惑った。
喜子の…策に乗る。
つまりそれは。
「…三人目…」
思わず布美枝が呟いた言葉に、茂は一瞬きょとんとして、それからぶっと噴き出した。
「そこまで露骨には言っとらん」
げらげらと茂が笑う横で、かーっと全身の血が顔に向かって走り始めるのを感じて、
布美枝は乱暴にベンチに座りなおすと、飲みかけのぬるくなったお茶を、ぐっと飲み干した。
646仲直り大作戦9:2010/11/04(木) 18:12:23 ID:ckYab6v1
しばらくぶりに訪れた山小屋は、それでも何とか電気も通っていて、
少し埃っぽいのを我慢すれば、置いてあった布団も使える程度のものだった。
布美枝が小屋の掃除をしている間、茂は外で火を起こしていた。
ここに来たときには、茂が起こす火でインスタントコーヒーを飲むのが、いつしか恒例になっていた。

初夏の富士山麓の夜は涼しく、むしろ少し寒いくらいで、布美枝は茂の上着を持って外に出た。
「火を起こしとったけん暑い。俺はええけん、お前着とけ」
上着には洗濯をしているにも関わらず、夫の匂いが染み付いている。
ふわりと羽織ると、まるで抱きしめられているかのように心地良い。
そっと茂の隣に腰を下ろして、コーヒーを淹れたカップを渡す。
揺れる炎に照らされて、橙色に浮かぶ茂の顔をちらと窺いながら、
目が合いそうになって、さっと自分のカップに視線を戻す。
が、慌てて視線を逸らしたのに気づかれて、くくく、と笑われた。
「なーにをさっきからそわそわしとるんだ」
「べ、別に」
今さらふたりきりになったところで、緊張するのも可笑しな話だ。
何年夫婦をやってきているのか…。などと。
自分を誤魔化し、昂ぶる鼓動を押しとどめてみるのだが、一向に鎮まる気配がない。

ぱちぱちと踊る火の音を聴きながら、布美枝は再び茂の横顔に視線を向けた。
ゆるりと微笑む愛しい男は、やがてその腕で布美枝を引き寄せ、
そ…っと、柔らかな唇で触れてくれた。
激しく奪うような口づけではなく、甘く蕩けるような口づけでもない。
どこか恥ずかしそうな、戸惑い、布美枝の反応を窺うような、多少硬ささえも感じられるような。
唇が離れてから、茂は「ふ」と笑った。
「久々だけん、ちょっこし緊張した」
「…おとうちゃん…」
ようやく布美枝も肩の力が抜け、くすくすと笑った。
647仲直り大作戦10:2010/11/04(木) 18:13:34 ID:ckYab6v1
小屋へ戻ると、茂は奥から蝋燭を出してきて火を点けるよう促した。
月明かりだけでは乏しかった部屋の明かりが、ぱあっと蛍光に染まる。
茂を振り返ると、またあの優しい微笑みが布美枝を見つめていた。
「ほい、こっち来てみろ」
壁に背中を預けて、脚を放り出した格好で手招きで呼ばれる。
「猫呼ぶみたいに」少し不満げにむくれてみる。
「なんだ、難しい奴だな」
言いながら眼鏡をはずして窓際に置くと、布美枝の手を引いて後ろから抱きしめた。
茂の腕に収まるのは、本当に久しぶりだった。
これほど安心できる場所は他にないのに、どうして今までこの場所を忘れていられたのだろう。
しかし布美枝はすぐに俯いて、茂の右腕を両手でぎゅっと掴んだ。
「…おとうちゃん」
「ん」
茂の返事は耳のすぐ後ろから聴こえた。
布美枝の次の言葉を待つ間、促すように唇で項を突つかれる。
「あたし…やっぱり」
少し逃げるように、茂の腕を解いた。
向かい合う形で茂に向き直り、俯いたまま言葉を探した。
「嫌か」
咎める風はなく、優しく問われる。ぶるぶると首を振った。
「ちょっこし…癪で」
「ん?」
「子どもたちにお膳立てしてもらうなんて」
茂は苦笑したが、すぐにまた布美枝の手を引いて自分の胸に収める。
「こうなったら喜子のリクエストに応えてやらんとな」
「え」
「俺は一向に構わんぞ。子どもが何人おったって」
「あたしの身がもちませんっ」
膨れ面をした布美枝の左頬を軽く捻って、茂は笑った。つられて布美枝も笑う。
笑顔が途切れた頃、どちらからともなく唇が触れ合い、
隙間なく合わさった身体は、ゆっくりと傾き堕ちていった。
648仲直り大作戦11:2010/11/04(木) 18:16:31 ID:ckYab6v1
瞼から頬へ、頬から耳へ、耳から顔のラインを辿って顎へ。
茂の唇はゆっくりと下降し、ひとつボタンをはずすたびに、
焦れるようにブラウスの合わせを顎で除けて開いていく。
やがて露わになった乳房を、慈しむように眺め、頬を寄せる。
「…あんまり…見んでください」
「なして」
「…年を取りましたけん…」
恥らうように顔を背け、ぼそぼそと呟く。

元々凹凸の激しい体型ではないことは、昔からの悩みの種だったけれど、
寄る年波に衰える身体をじっと見られるのは、尚更惨めな気持ちがした。
茂は少し肩をすくめると、震える乳輪に沿うようにぐるりと舌を這わせた。
「あ…っん…」
瞬時に尖った先端から、ねっとりと包み込んで赤子のように吸い上げる。
一方の乳房は大きな右手に翻弄され、揉み上げられる度に形を変えた。
「お前は何も変わっとらん」
胸の谷間でくぐもった声。
見下ろすと、先端に絡みついた唾液を蝋燭の火が煌々と反射して照らしていた。
「敏感な場所も」囁きながら、耳たぶを齧られる。
「っ…ゃあ…」
「猫みたいな声も」喉元に口づけ。
「ふ…」
「白い肌も」臍から胸へ、節ばんだ指が滑り上がる。
「…あ」
「昔と同じだ、何もかも…」
落ち着いた声とはうらはらな、激しい愛撫。
茂の唇が落とされる先々に、転々と付いていく紅い痕。
いつも机上の原稿に向かっている夫の身体と、指と、瞳と、意識。
その全てを独り占めできる時間はこのひとときだけだ。
せめて心地のよい時間を提供したいと常々思い続けてきたけれど、
結局翻弄されるのは布美枝の方で、それはずっとずっと、今になっても変わらない。
649仲直り大作戦12:2010/11/04(木) 18:17:56 ID:ckYab6v1
いつの間にか、身に纏う全てを剥ぎ取られ、白い肌に月光が落ちていた。
見上げた先には、肌蹴た自らのシャツと格闘する男の姿。
そっと腕を伸ばして手助けをすると、伏し目がちの眼が静かにこちらに向けられた。
漆黒の瞳に捕まって、そこから逃れられずにじっと見つめ上げた。
落とされる視姦に暴走する鼓動が、猥らな欲を呼び起こし布美枝を急き立てる。
伸ばした腕をそのまま首の後ろへ絡みつかせて引き寄せた。
深く重なり、交差する唇。呼吸と舌の応酬。
茂の右手が布美枝の腰骨を撫でると、するりと秘部へ持ち込まれる。
「あ…」
迎え入れるための潤いは未だ不十分で、それは布美枝の緊張の証拠でもあった。
指先でそれを感じ取った茂が、ゆっくりと下から上へ擦り上げる。
行き止まりの先に隠された尖りを探し当て、二指で摘み弄ぶ。
「っ…はぁ…」
弛緩していく脚の間から、とろとろと熱いものが溢れ出す感覚。
潤滑油を指に纏わせ、そのまま挿し入れられ、奥を探られはじめた。
「あ…あ…んぅ…」
快感に打ち震え、背をのけぞらせて布団を握り締めた。
す、と覆いかぶさった温もりが消え、ぽかんと空間を仰いだ。
刹那。
「や!」
力を無くしかけた脚の間に、茂の顔が埋もれる。
柔毛を掻き分け、まるで蛇のようにちろちろと、ぬめる液に艶光る尖り先を刺激する。
「は…っ…んん、あっ…」
自然と捩れる腰を掴み取られ、会陰に広がる愛液を余すことなく掬い取られた。
源泉と思しき開口部に辿りつくと、若干硬さを帯びた舌先で侵入する。
いつしか恥も忘れて開脚し、とめどない快感の波に呑まれていった。
650仲直り大作戦13:2010/11/04(木) 18:18:36 ID:ckYab6v1
痺れに疲れた脚をだらりと放り投げて、恍惚の瞳で見るともなしに厚い胸板を見る。
じわりと浮かんだ汗の玉が、すっと落ちていく様を追いかけ、ゆっくりと視線を戻した。
半分開いた口に、何とはなしにかざしてあった左手を掬い取られて、甲や手のひらに唇を宛てられた。
「…なぁ」
問いかけに、首を傾げて返答する。
「今日は誰もおらんのだけん」
「…?」
「声は我慢せんでもええだろ?」
言ってから優しく降り注いでくる口づけに、今さらながらぽっと顔が火照った。
重ねあう唇の隙間から、呻くように自然と声が洩れる。
最中、茂の右腕が布美枝の左脚を抱えて、ゆるりとその硬度した陰茎を宛がった。
湿地の沼に入り込むように、その場所でしか発せないような卑猥なぬめり音と共に、
のそりのそりと、熱の塊に胎を犯されていく。
「…っ!は、ああっ!」
気怠だるく侍らせていた腰が思わず浮き上がると、計らずも侵入に加速度がついた。
一瞬、茂の呻きが響いた。
「あ…あ…」
茂の背中に腕を廻し、離れまいとする意思を全身で示す。
腰を押し引きする動きに合わせて、擦られ、逆上せていく陰部の快感にぎゅっと目を閉じた。
「しげ…ぇさ…しげ…さぁ…んっ…!」
「ああ」
少し髭のあたる頬に唇を摺り寄せ、喘ぎと共に何度も何度も名を呼んだ。
「…えぇ、な…」
不敵な笑みを浮かべながら、茂は応えるように口づけをくれる。
「お前の声に…呼ばれると…」
「は…ぁっ…」
「やみつきになる…っ…」
速度を上げる腰使いに、たまらず背に爪を立てた。
動きに合わせて軋む床、淫靡な液が混ざり合い、粘つく音、
ときたま弾くようにぶつかる肌と肌の響。啄ばむ唇。絡む舌。零れる汗と涙。
「あ、ああああっ!しげぇさぁんっ…!!」
咆哮にも近い声で、布美枝は己を失っていった。
きゅっと締め上げる膣襞の絞りに、やがて爆ぜる白濁の性。
茂は目を閉じてその快感に入り浸り、労わる気も遣えずに、力任せに布美枝を抱きしめた。
651仲直り大作戦14:2010/11/04(木) 18:20:00 ID:ckYab6v1

※ ※ ※

「実になっとるかな」
さわさわと、布美枝の腹を撫でる茂を見ていると、微笑ましくて妙に可笑しかった。
(この人、子どもみたいだわ)
もう40代も終わりに近い布美枝だったが、もし、もしこの実が結ばれたなら、
きっとなんとしてでも守り抜こうと心に誓った。
「けど」
ふうとため息をついて、ごろりと仰向けになった茂は
「下ができようができまいが、藍子の生真面目さに輪がかかっても、喜子はあのまんまのような気がするな」
「…ぷっ…そげですね」
ふたりはくすくすと笑った。

そう言われて、ふと娘たちの顔が思い浮かんだ。
明日、帰ったときのことを考えると少し憂鬱だ。
特に喜子になど、根掘り葉掘り訊きだされるのではないかとドキドキする。
逆に藍子などは何も訊いてこなさそうで、全てを悟っている風があってそれも恐ろしい。
「どげした?」
布美枝が顔を赤くしたり青くしたりしているものだから、怪訝そうな表情で茂が窺ってきた。
両親の朝帰りをどう思うか、娘たちのことが不安だと告げると、茂は屈託なく笑った。
「気にするな。親が仲良くて何が悪い」
「おとうちゃんには思春期の娘を持っとる自覚がないっ」
よく考えれば、心配の種は娘たちだけに限らない。
アシスタントや光男、茂の両親には何と言い訳を?
ため息をついて茂を見やると、呆れることにもうすやすやと眠っている。
「もうっ!」
子どものように口をぽっかり開けて、子どもたち以上に子どもっぽいこの男に、
それでも愛おしさしかこみあげてこない自分自身を思い、
布美枝は可笑しくなって、独りいつまでも笑っていた。
652仲直り大作戦15:2010/11/04(木) 18:21:09 ID:ckYab6v1

※ ※ ※

玄関の扉を開けると、思いきり作り笑顔の藍子と喜子が出迎えた。
「おかえりなさい…」
肩をすくめ、様子を窺うように上目遣いで両親を迎える藍子。
「おじいちゃんたちには上手いこと言ってあるからね!」
笑顔を引きつらせながらも、無理矢理に声を張る喜子。

茂はふたりをしばし観察したあとで、
―――――ごんっ!
それぞれにゲンコツを落とした。布美枝は顔をしかめる。
「いったぁ…」
「おとうちゃぁん…」
「覚悟しとけと言っといたはずだぞ。つまらん嘘をついておかあちゃんを泣かせた罰だ」
思わず布美枝ははっと顔を上げた。茂の広い背中がそこにはあった。
ふたりの娘はしゅんとして、「ごめんなさい」と呟いている。
「喧嘩の仲裁料分は割り引いてやっとる。さて、俺は仕事だ」
三人を残して、茂は行ってしまった。
頭を押さえるふたりを交互に見やって、やがて布美枝は笑った。
それにつられて、ふたりもようやく緊張を解き、自然の笑みを零した。
「ねえ、今度は4人で行こうね。山小屋。久しぶりに、ね」
布美枝の優しい声に、ふたりは笑って頷いた。

「埴生の宿」を口ずさみながら部屋へ向かう布美枝を見て、
藍子と喜子はほっと息を吐いて、苦笑いしながら顔を見合わせた。
「お姉ちゃん」
「ん?」
「おかあちゃんて、本当におとうちゃんのこと好きだよね」
茂と朝帰り、優しい笑顔、十八番の鼻歌。
感情表現が分かりやすい母を見ていると、
思春期の娘は「運命の人」という名の淡い妄想に胸躍らせてしまうものだ。
しかし冷静な姉は、ふむと腕組み考えて諭すように言った。
「逆よ」
「え?」
「おとうちゃんが、おかあちゃんのこと、大好きなの」

仕事部屋の方から、ひときわ大きいクシャミが聞こえてきた。


おわり

653名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 22:20:26 ID:m4gLEPOv
>>638
大作だんだん
ゲゲふみ熟年エロもいいな
よっちゃんの発想の飛躍の仕方が凄いw
654名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 23:33:54 ID:iihx0rAY
恩人である紙芝居屋の音松さんにふみえちゃんを一晩差し出したが気になり過ぎて覗いてしまうしげるさんの話が読みたい
655名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 00:45:06 ID:w7HR/phO
>>638
熟年夫婦GJ!
やみつきになるのしげーさんのエロさぱねぇ
村井姉妹かわいいよ姉妹
656名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 12:43:03 ID:9sLVi64o
どんな恩人でも、
フミエを差し出すような事を、ゲゲは絶対しないよ

金の都合くらいは頼むがな
657名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 15:35:00 ID:B7yOp2c7
>>638
大作だんだん
日常会話が上手すぎますもうGJGJGJ〜
娘が恥ずかしくなってしまうくらいラブラブな夫婦可愛いよ。
658名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 20:48:10 ID:92W4O0CI
>>638
GJ〜!
ムダのない構成とたしかな表現力に舌を巻きました。
特に、絵を描いたのは喜子で、実行犯は藍子というところとか・・・。
赤電話とか、エンストとかの時代考証も、芸コマ。
フミちゃんが、富士山の小屋の思い出をすごく大切に思ってる感じが泣けます。

ところで、自分>>542なんですが、お詫びなんてとんでもない。
使ってもらえて光栄です。もしかして、このシチュを「いいな。」って
思ってくださったのかな?と勝手に解釈して、大事に胸にしまっときますw。
ドラマの世界がつながったようで、とてもうれしかったです。
もちろん、同じ場面を違う解釈でいろいろ読むのも楽しいし、なんでもおKwですが。
659名無しさん@ピンキー:2010/11/06(土) 01:19:52 ID:p6sdmc55
>>638
だんだん!!
最中のゲゲが色っぽいわあ…
ふみえと娘2人が可愛いくて良い。
660名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 01:30:45 ID:5xokK69T
>>636
ゲゲ「さて、紅白でも見るか」
藍「そういえばお母ちゃん朝から見ないけどどこいったんだろう」
喜「うわあ、お父ちゃんが紅組の司会のひとに見とれてるよ」
ゲゲ「だ、だらっ」
661名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 14:36:16 ID:NK0d3aTh
紅白にお父ちゃんと娘達がでて「お母ちゃん頑張れー」とか出ないかな?
662名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 20:14:24 ID:9FUuVTlX
>>661
お父ちゃんは来る、きっと来るw
663名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 22:29:58 ID:LMiRWwhC
>>662
貞子ゲゲかw
664名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 23:55:15 ID:5i4h/qRi
テレビ画面からムカイリゲゲがにゅっ…と
665名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 00:16:00 ID:TM02EGUf
それいいなぁ
一家にひとり
にゅっと出てきたムカイリゲゲ
いろんな遊びに使えそうw
666名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 00:20:30 ID:yjoLffFl
ゲゲさんも捨て難いがふみちゃんに出てきてほしい
667名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 10:46:56 ID:jHSLF970
ふみちゃんに逮捕されたい
668名無しさん@ピンキー:2010/11/08(月) 15:00:56 ID:FEnaTVC7
このスレで、初夜はいくつも書かれましたが、掟破りの「境港説」です・・・。
自分も深大寺デートの夜だろうなあとは思っているのですが、
昔の結婚てこんな感じが多かったろうし、これはこれでエロいかも・・・と
思いまして。
パラレルワールドと思ってお読みくだされば幸甚です。

ほんとのところは、婚礼の夜のゲゲのラクダのシャツとネルの寝巻きが
可愛かったから、というのがこのSSを書かせた原動力ですがww。
669河童の嫁とり1:2010/11/08(月) 15:01:46 ID:FEnaTVC7
「あれ?今、鳴いたようですな・・・・・・コーンと。」
「えっ、そげですか?」
茂にならって目を閉じ、狐の声に耳をすませてみたが、何も聞こえない。
傍らの茂はといえば、窓にもたれて寝息をたてている。
(ええ〜っ?困ったな。私では運べんし・・・。)
「こんなところで寝たら風邪ひきますけん。布団に入ってごしない。」
フミエは必死で茂を起こして布団に向かわせた。

 お見合いで初めて出会ってからたったの五日、あわただしく婚礼を挙げた
二人の、これが初めて一緒に過ごす夜だった。

 窓を閉め、自分も茂の隣りの布団に入って横になった。
夫婦になったとは言え、ほとんど知らないと言ってもいい男と、
夜、ひとつ部屋で隣り合って寝ていることが信じられない。
(でも、今日は飲めないお酒で気分が悪うなっておられるけん・・・。)
少し猶予を与えられてホッとしたような、拍子ぬけしたような。
(結婚したんだし、私もええ年なんだけん、覚悟はできとるけど・・・。)
複雑な気持ちで、目を閉じて眠ろうとした、その時。

「・・・そっちに行っても、ええですか?」
「・・・は、はい。」
ドキンと飛び上がった心臓は、落ち着いてくれないどころか、ますます
暴れ出して、のどから飛び出して来そうになる。
気がつくと茂はもう、上からフミエを見下ろしていた。
じっとみつめられ、思わず目を伏せると、下からすくいあげるように
口づけられる。
初めての感触に身を固くしていると、前で結んだ帯はいつの間にかほどかれて、
浴衣の前をはだけられ、あらわになった胸へと口づけが下りていく。
(ふ、夫婦になったんだけん。誰でもすることだけん・・・!
 茂さんに恥をかかせたら、いけん・・・!)
フミエは必死で恥ずかしさや恐れと闘った。 
670河童の嫁とり2:2010/11/08(月) 15:02:51 ID:FEnaTVC7
下ばきを脱がされ、固く閉じていた両腿を、茂が膝で割った。
「・・・!」
うるおいを確かめられるだけでも、死ぬほど恥ずかしいのに、指はさらに
奥を探りはじめる。
受け入れる場所を探り当てると、茂はフミエの目をのぞきこみ、
「・・・ええな?」
とささやいた。フミエがかすかにうなずくと、茂はおのれの昂ぶりを
フミエのうるおいに何度かなじませてから、ゆっくりと進みはじめた。
今日まで大切に守ってきたその場所を、男の力でじりじりと押し開かれてゆく。
泣くまいと思っても、自然に涙があふれた。                     
「そげにガチガチにならんと、もうちっと力をぬいてごしない。」
涙でぼやける目をあけると、まぢかに茂の顔があり、またじっとフミエを
みつめている。ふ・・・とその目が微笑んだ。
「全部・・・入ったけんな。」
フミエはホッとしたが、
「このままでは終われんけん、ちょっこし動くぞ。もうちっとがまんしてごせ。」
茂が律動を開始すると、痛みはますますつのり、しまいにはしびれたように
なってしまった。
敷布をにぎりしめ、ひたすら耐えていると、茂は動きを速め、身を固くして
何度か腰を打ちつけると、ぐったりとフミエの上におおいかぶさった。
(終わる・・・ってこういうことなのかな?)
フミエはホッと安堵すると、そっと目を開けて、今結ばれたばかりの
男の顔を見た。
・・・またもや眠っている!しかも今度は熟睡だ。
フミエはあっけにとられた。いくら夫婦とは言え、大切な最初の夜に、
事を済ませたら、即、爆睡とは・・・。
「お、おもい・・・。」
フミエは必死で茂の下から抜け出し、正体のない茂に浴衣を着せかけた。
(今日は、お疲れかもしれん。明日は長旅だけん、いろいろお話も
 できるよね・・・。)
フミエはあじけない思いをなんとか封じ込め、眠りについた。
671河童の嫁とり3:2010/11/08(月) 15:04:39 ID:FEnaTVC7
 翌朝、ぎりぎりまで寝ていたくせに朝ごはんはしっかり食べようとする茂を
イカルが追い立て、二人は大急ぎで駅に向かった。
見送りに来てくれた家族との別れに、フミエは涙を流したが、
茂はなんだかボーッとしており、その後の車中での会話もかみあわなかった。

 東京に着いて数日がまたたく間に過ぎ、フミエは茶の間のちゃぶ台の前で
ぼう然としていた。夢に描いていた新居は想像を絶するボロ家、
集金人をおそれて居留守を使う生活、貯えもいっさいないと言う。
下宿代のためとは言え、新婚早々得体の知れぬ男に部屋を貸すことになり・・・。

 だが、それよりもフミエの心に重くのしかかっていたのは、
「一週間も帰省したのが、致命的でした。」
という茂のひと言だった。
(茂さんは、結婚などしたくなかったのではないか・・・?)
という恐ろしい疑念が、黒雲のようにわき起こってくるのを止めることが
できなかった。
婚礼の夜以来、茂はフミエに指一本ふれるでもなく、フスマの向こうに
こもったままだ。
(あれは、夢だったのかも・・・。)
そんなはずはない。初めての口づけの感触、身体をひらかれる痛み、茂の
息づかい・・・今もなまなましくよみがえってくる。
本来は、無口な人なのかもしれない。お互いのことを何も知らないに
等しいのだから、話が合わないのはしかたないが、もう少しふれあいが
ほしいと思うのは、はしたないことなのだろうか?
フミエの家族は、両親を始め、兄や姉たちもみなそれぞれ仲の良い、
幸せな夫婦ばかりだった。
(私だけが、とんでもない道を選んでしまったのでは・・・?)
不安とみじめな気持ちが、フミエの心を凍りつかせていた。  
672河童の嫁とり4:2010/11/08(月) 15:05:42 ID:FEnaTVC7
 それからまた数日がたったある日。原稿が完成し、出版社で原稿料を
もらって来た茂は、帰ってくると、仕事部屋が勝手に整理されていることに
腹を立て、フミエを叱りつけた。・・・フミエの中で何かがプツリと切れた。
「村井さんの考えとること、少しは話してもらえんと・・・。
 これから、一緒に暮らしていくんですけん・・・!」
おとなしいフミエの、精いっぱいの訴えだった。
 逃げるように買い物に出かけ、暗い気持ちで帰って来たフミエを待って
いたのは、思いもかけないプレゼントだった。
 茂がフミエ用の自転車を買ってくれ、深大寺まで一緒にサイクリングに
出かけた。ささやかなデートだったが、フミエは心から楽しんだ。
水の音を聞いたり、いい感じのお墓をさがしたりしながら、ふたりは
さまざまな話をした。ふるさとのこと、子供のころのこと・・・。
ふたりの間を隔てていた暗雲がどんどん晴れて、茂という人の顔が
見えてきた感じだった。

 その夜、やっと二人でなごやかに食卓を囲んでいるところへ、思わぬ闖入者が
現れた。だがそれは、茂の大ファンで、後々とても大切な友人となる戌井との
うれしい出会いであった。
貸本マンガ界の将来を憂える戌井に、
「マンガ家は、黙ーってマンガを描きつづけとりゃええんです。」
と言う茂。茂の言葉や態度には、人を納得させ、やすらがせる何かが
あるようだった。
(私もこの場所で、自分にできることを精いっぱいやって、この人を
 ささえて行こう。)
フミエも自然にそう思えるのだった。
673河童の嫁とり5:2010/11/08(月) 15:07:24 ID:FEnaTVC7
 ようやく静かな時間がおとずれた。
茂がさしのべる手に身をゆだねて、フミエは広い胸に抱きこまれた。
初めてのときは、何もわからないまま抱かれ、ただ必死で耐えていたフミエ
だったが、今は茂に向かって急速に傾いていく心を止めることができない。
 茂の指がふれるたび、そこからとけていきそうな自分に戸惑いながら、
唇を重ねる。舌と舌をからめあう大人の口づけに、すべてを奪い去られる。
茂が自分を求めてくれていることがうれしくて、自分もうるおっていく。
 フミエを貫きながら、茂がゆっくりと身体を重ねてくる。いとしい重さと
いうものがあることを、フミエは初めて知った。
身体がつながると、茂がフミエをまっすぐにみつめた。やさしい目だった。
(あの時と、おなじ・・・。)
抱きしめられ、素肌と素肌のふれ合うここちよさに、おずおずと茂の背に
腕をまわすと、息がつまるほど強く抱きかえされる。
まだ本当の悦びというものは知らないけれど、初めて茂と身も心も結ばれた
幸福感にフミエは酔い、しらずしらず涙があふれた。
茂がしだいに動きを早め、フミエをギュッと抱きしめて、果てた。フミエは
その瞬間を感じとり、なんともいえないいとおしさを感じながら、奥ふかくで
茂の精を受けとめた。
強く抱きしめあったまま、ふたりは荒い息をおさめた。           
やがて顔をあげた茂は、フミエの涙を見るとあわてて聞いた。
「どげした?・・・痛かったか?」
「いいえ・・・。」
茂を困らせてはいけないと思っても、涙がとまらない。
 茂は今日の昼間、自転車をもらって泣き出したフミエを思い出した。
自転車くらいで何も泣かなくても・・・と思ったが、考えてみれば、結婚以来ろくに
話もしてやっていなかった。
(こころ細かったんだろうな・・・。)
茂はそっと身体をはなすと、フミエの涙をふいてやった。
674河童の嫁とり6:2010/11/08(月) 15:08:20 ID:FEnaTVC7
「・・・すまんだったな。ずっとほったらかしにしとって。〆切前のマンガ家というのは
 人間じゃないけんな。あんたを思いやっとる余裕がなかった・・・。」
「私と結婚したこと、後悔しとられるんじゃないかと思うちょりました・・・。」
フミエは、今まで聞けなかったことを、思わず言葉に出してしまった。
「何を言っとるんだ・・・。俺はしたくもないことを我慢してするような人間じゃない。
 子供のころから、我慢というものはあんまりせんことにしちょる。 
 婚礼の晩もな、ろくに話したこともないのにいきなりじゃ、かわいそうだとは
 思うたけど・・・あんたが欲しくて、ガマンできんだった。」
ドキン!とフミエの心臓が飛び上がった。
「それに・・・早いこと俺のもんにしとかんと、逃げられたら困る、とも
 思うとったけんな。」
「・・・逃げる?私が?」
「イトツの方の親戚に、婚礼の晩に花嫁に逃げられたのがおってな。」
「・・・そういえば、私の母も、婚礼の日に父がこわくて逃げ帰ろうと思ってたら、
 父が安来節を歌ってくれて、うちとけることができたんですって。」
「ほう。あの親父さんがなあ。」
茂がたのしそうに笑い、フミエも笑った。
「今日は、おしゃべりなんですね。」
「俺は生来、興味のあること以外はそんなにしゃべらんのです。」
「お見合いの時は、気さくでほがらかな方だとみんな言うてました。」
「ああ・・・あの時は特別です。あんたや親御さんに気に入られようと必死で・・・。
 河童の嫁とりのようなわけにはいかんけん。」
「あ、その話なら知ってます。小さいころ、おばばがよう話してくれました。
 ・・・でも私、いつも思っとった。あげに好いてくれとるものを、だまして
 殺すなんてかわいそう。私ならお嫁に行ってあげるのに・・・って。」
「やさしいんだな、あんたは。」
フミエは、うす闇の中でもわかるのではないかと思うくらい真っ赤になった。
675河童の嫁とり7:2010/11/08(月) 15:09:38 ID:FEnaTVC7
 やがて茂は眠ってしまったが、フミエはなかなか寝つけなかった。
思いもかけない茂のまっすぐな言葉や態度が、フミエの心を打ち抜いて、
布団の上で身体がふわふわと浮いているように夢ごこちだった。
初めてひとつになった時、フミエを見つめていたあの優しい目・・・。
なぜ今まで思い出さなかったのだろう?昨日まで悩んでいたのが嘘のようだった。

 翌朝、起きてきた茂の顔を見たフミエは、意識するまいと思えば思うほど、
顔が赤くなってしまうのを止められなかった。
「ん?あんた、顔が赤いぞ。裸で寝るけん、風邪ひくんだ!」
「や、やめて下さい。そげなこと大きな声で。それに、寝巻きならちゃんと
 着て寝ましたけん!」
ますます真っ赤になったフミエだったが、それはもうトキメキゆえでは
なかった。フミエは怒りながら、おかしくて笑ってしまった。
「まったく、もぉ・・・。」
(この人と一緒に暮らしていくってことは、ドキドキしたりときめいたり
 するよりは、ビックリしたり笑ったりすることの方が多そうだな・・・。
 それも悪くないか・・・。ずっとドキドキしとったら、心臓に悪いけんね。)

 早春の朝の日差しが射し込む窓に立って、茂がまぶしそうに顔をしかめた。
フミエはそんな夫のとなりに並んで、さわやかな風を胸いっぱいに吸い込んだ。
676名無しさん@ピンキー:2010/11/09(火) 00:51:54 ID:iZo/y4g2
>>669
GJ!掟破りの境港編か…自分はアリだとオモw
この頃はゲゲのですます調がまだ残ってるのがエエんだよな。
んで二回目終了とともにお互いほぐれてきてる二人がまたイイ!

ついでに、ゲゲのらくだとネル寝間着、自分も好きだ。
677名無しさん@ピンキー:2010/11/09(火) 18:52:16 ID:FHqRTL+v
>>669
新婚のふみちゃんの初々しさがたまらないです
自分も好きだぜ、境港の時のしげーさんの寝巻
678名無しさん@ピンキー:2010/11/09(火) 23:42:14 ID:OM8HNofq
>>669
初夜でのふみえが、よくわからないうちに済ませちゃった感がリアルだな
パラレルでも全然アリです!
679名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 00:37:14 ID:iZbVELBx
このペースだと1000は無理だな。
3スレ目が勃つと信じていいですよね?
680名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 03:27:19 ID:nVCqWj4W
別にいいんでは?
書き込みする方々は妖怪ではないから、仕事も学校もあるんだよ。
681名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 18:36:59 ID:ELXTiXIe
しげぇさん、ウイスキーボンボン一個くらいならべろべろにならないで適度に酔ってくれるかな…
ふみちゃんに甘えてくれないかな…
682名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 19:03:10 ID:iZbVELBx
>>680
あ、なんかごめん。残りの容量的に1000は無理だと思ったんだ。
スローペースなのは自分も別にいいんだ。

>>681
むしろべろんべろんに酔ってすんごいエロいのをやってほしい…
683名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 22:20:53 ID:J6+f1RnP
>>682
どんまい!

甘え上戸なしげさんwktk
684寒い夜だから 1:2010/11/11(木) 23:18:13 ID:cbRvM34M
「藍子は寝付きが良くて助かるわ…」
寝息を立て始めた娘の頭をひと撫ですると、起こさないようにそっと
階段を降りて仕事部屋へ戻った。
長女、藍子がもうじき3歳になろうとするある秋の日のこと。
その日は漫画の原稿の〆切が迫っており、藍子と一緒に風呂からあがった
後、布美枝も手伝いに駆り出されていた。
折しも今夜は冬の到来を思わせる寒さ。質素倹約を信条とする村井家でも
さすがに夜はストーブを焚いていたが、日をまたぐ時間にはもう灯油が
切れてしまい、仕方なく半纏やら何やらを羽織って二人とも原稿を
仕上げ続けていた。

黙々と描いていた茂がふいに顔を上げ、凝った肩を廻す。と、横を見やり
妙な事に気付いた。布美枝がベタ塗りの筆を持ったまま動かしていない。
じっと手元を見ているだけだ。そのうちに、筆すら置いてごそごそ
自分の手をさすり始めた。
「疲れたか」
声をかけると申し訳なさそうに茂を見る。
「あ、すんません。その、指がかじかんで動かんもんで……」
はかどらない仕事ぶりを詫びた。

寒いのは我慢できても指先が冷えるのはどうにもならない。しかし、筆先が
震えれば失敗に繋がるのだから何とか温めようと、布美枝は息をはぁっと
吹きかけた。すると。
「手え貸せ」
「あ…」茂の右手が布美枝の右手を掴んでいた。
「……ったかい」
「だろう」
彼の熱が、じんわりと移動してくる。指の一本一本を手の平で握られると
さっきまでの痺れるほどの冷たさがほぐれてきた。
寒いのは茂も同じはずなのに。
(男の人は皆、こげにあったかいんだろうか…)
安来の父はどうだったろう、と思いを馳せてしばし大人しく温められていたが。
685寒い夜だから 2:2010/11/11(木) 23:19:11 ID:cbRvM34M
「は、離してええよ。お父ちゃんの手が冷たくなるけん、もう十分…」
「ほい、次そっち」
右手を離して左手を握ってくれる。さすがに茂の手も、今度は
ぬるくなっているのが分かった。
「すんません…、だなくて、だんだん」
「おう」
茂が目を細めた。世話を焼かせてしまった申し訳なさと、気遣って
くれる嬉しさに、布美枝は礼を述べる事しかできなかった。

「あ!待って、お父ちゃん」
布美枝が茂の手を取って両手で包んだ。そしてその手を上に持っていき
自分の首筋にぴたり、と当てた。「ほら、これなら」
素敵な発見をしたように微笑んでそのままじっと目をつぶる。
「お父ちゃんもあったかいでしょう?」
確かに首なら体温が高い。が、茂は少々面食らっていた。
(たまに思い切った事をするけん、こいつは侮れん……)
おそらく本人は、茂にも暖をとらせたい一心なのだろうが。
手の平から首の脈がとくとくと伝わった。茂の手が移動し、布美枝のうなじを
撫でる。それから耳の後ろの髪に指を滑らせた。
「風呂上がりなのに薄着するけん寒いんだ」
ふっと目を開けると、茂の眼差しが布美枝を捕らえた。
「髪も、濡らして」
これでも羽織っとるんですけどね、眉を下げて笑う。
「湯冷めせんうちに藍子寝かしつけて、良かっ…ひゃっ」
茂は布美枝を引き寄せると、足の間に入れる形で後ろ向きに抱きしめた。
686寒い夜だから 3:2010/11/11(木) 23:21:02 ID:cbRvM34M
ちょうど目の前に細い首が見える。鼻の頭で髪をかき分けるように
顔を埋め、うなじを甘噛みすると、フワッと女の匂いが鼻をくすぐる。
毎日同じ物を食べて同じ石鹸を使っているのに、こんなにも
自分と違う匂いを発する生き物が、茂にはもはや神秘に思われた。


「ふ…」くすぐったいのか、布美枝が肩をすくめる。
「お父ちゃん、あの、原稿は……?〆切…」
うーん、と唸り机の上の原稿に目を遣った。
「終わってからやるか」
「――――――どっちを?」
「また遅れるけん、お前責任とって手伝えよ」
首筋に口付けたまま宣告した。
「責任て、何の…」理不尽な理屈に後ろを振り向くと、うなじに落とされていた
唇が、今度は唇に吸い付く。
「お母ちゃんのせっかくの誘いだけん、乗ってやらんとな」
「誘っ…、人のせいにせんでごしなさい!」
軽口を叩き合いながらも、二人とも笑顔になっていた。口付けながら
喋るので、唇が擦れあう。吐息の湿気が与えられる代わりに、熱を奪われる
感触がこそばゆい。
「ふふ、くすぐった…」
「ほれ集中せえ、集中」
もう一度首筋に顔を埋められた。まるでその表面に蜜でも塗ってあるかのように
布美枝のうなじや肩が後ろから食まれる。背骨に沿って唇を受けると、
刺激が全身を走った。思わず体を前に折った布美枝を茂がぐいと引き戻し、
そしてそのまま下着の中へ手が侵入する。

茂みの奥の湿地を慣れた指が掻き回すにつれ、布美枝の体が弛緩していく。
奥から湧くものが畳の上に伝うのを、明日掃除しなくちゃ、と酔った頭で考えた。
687寒い夜だから 4:2010/11/11(木) 23:22:18 ID:cbRvM34M
おもむろに茂が指を抜き、布美枝の肌の上を滑らせる。まろやかな線を
指の腹でつつ、となぞられ、愛液で乳房に円を描かれた。
自らの透明な絵の具で夫に文字通り遊ばれている事に、甘美な羞恥が襲う。
「もっと…ちゃんと、触って」
珍しい妻のねだりに、茂の目が愉快そうに細められた。
大きな手の平にすっぽりと包まれた乳房が水風船のように揉まれる。既に
布美枝の浴衣は、腰回りにぐしゃぐしゃとまとわり付いているだけの布に
なり果てていた。結局その時になれば、布美枝を『集中』させる事など
茂にとっては簡単なのだ。

布美枝は茂の方を向き腰を上げると、茂の中心に照準を合わせる。
そろそろと下ろした腰を掴まれ、その上に降ろされた。
「ひっ……!」
一瞬、胎内が突き破られたかと思った。自重で簡単に奥まで届く
夫の熱い一部。粘膜が擦れあい、血が交じり合う。

「あ……あっ」
布美枝が両腕で茂の頭を胸に抱え込んだ。癖のある髪の中に指を入れて
夢中でかき抱く。
「もっと…おねが…」
「…待て、苦し…」
茂の漏らした息を吸い込むように唇を強く合わせてきた。
こんな時、布美枝はしばしば茂を惑わせる。抱いているのに逆に抱かれている
ようで、征服しているつもりが実は彼女に囚われているような――――――。
臀部を持ち上げ、一気に下に縫い止めると、喉をひゅうっと鳴らして
のけぞらせるのが見えた。

茂が奪っているのか、奪われているのか。それとも布美枝が与えているのか、
与えられているのか。互いの肉にまみれる中で、境界線はぼやけていく。
果たして茂が布美枝の中で白く熔けた瞬間、二人はそれぞれを共に所有した。
688寒い夜だから 5:2010/11/11(木) 23:23:18 ID:cbRvM34M
乱れた衣類を毛布がわりに引っ掛けて、さっきのように布美枝が
茂の足の間で寄りかかった。汗を含んだ茂の前髪を、指で横に払ってやる。
「いけんな」
布美枝の肩に額が乗る。
「もう今日は仕事する気にならん。こげな予定じゃなかったんだがなあ」
後悔の言に、甘く気だるい響きが滲んでいた。
「明日は私も頑張るけん、もう今日は遅いし寝ようか。…眠たいんでしょう?」
「うん」
子供みたいな返事があったかと思うと、数秒後には、肩に乗った頭が
しっとりと重みを増した。その時自分がしたい事をする、夫の
天真爛漫さが布美枝にはどこまでも微笑ましくて、緩く笑った。

明くる朝、珍しく茂が早く起きてきたので3人が揃った朝食になった。
「はい、お父ちゃんお味噌汁」
「おう」
手渡された椀を茂が受け取る。窓から差し込んだ朝日が布美枝を
後ろから照らして、陽光が彼女の細い体をあわあわと縁取った。
藍子の方を向く時などに、昨夜自分が愛撫したうなじの産毛が
金茶色に輝くのをぼんやりと眺めながら、味噌汁の椀を口に運んだ。

「…あ」
689寒い夜だから 6:2010/11/11(木) 23:24:20 ID:cbRvM34M
「あらま、お父ちゃんまでこぼして!藍子とそっくり」
セーターの胸元を濡らした茂に、布美枝が笑って布巾を手渡し
ちゃぶ台を拭こうと前に屈んだ。

その時、娘が何かに気付いた。
「おかあちゃん、よごしたの?」
「え?」
藍子が指差した先には、布美枝の首に、昨夜茂から受けた口付けが
紅く掠れた印となって残っていた。
「これはっ……」
慌てて手で隠す。
「とれないの?」
物をこぼした染みか何かとでも思っているのかもしれない。
子供の純真な眼差しが心苦しい。
「あの、大丈夫、放っておけば消えるけんね」
つい正直に答えて、ブラウスで何とか隠そうと襟を直す。
一人そ知らぬ顔で沈黙を守りつつ、そのくせ忍び笑いしている目の前の
夫をねめつける布美枝だった。今日こそは途中で中断せずに
しっかり仕事しなければ、と改めて心に誓いながら。

(終)
690名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 23:53:38 ID:IwDuoT7g
>>684
だんだん!
リアルで楽しませてもらいました
エロかわいくて、らしさもあって最高ですけん!
無邪気なフミちゃんがかわゆすぐる
691名無しさん@ピンキー:2010/11/12(金) 01:31:18 ID:ScUOg1/x
>>684
フハッ!GJ!
後ろから抱きしめられてせめられるというのが自分はめっちゃ好きなんだw
積極的な布美ちゃんにちょっこし圧され気味のゲゲがイイ!
藍子につっこまれて慌てる布美ちゃん&忍び笑いのゲゲも可愛い
692名無しさん@ピンキー:2010/11/12(金) 21:01:37 ID:78ZG/Sn2
>>684
GJ!
ふみちゃんの母性的な余裕がエロにも優しさにも繋がってて良いなぁ
夫婦かわいいよ夫婦
693名無しさん@ピンキー:2010/11/13(土) 22:02:13 ID:cKVKlwuF
良い作品が並ぶ中、お目汚しに参上いたしました。
忘れもしない、6月14日の放送分で、「決して間男に来たのではない!」という浦木から、
深読みをしまして。
微エロ程度の小話ができてしまいました。
投下しようとするたび、規制に引っ掛かり…。
遅ればせながらの投下です。
誤字脱字方言間違いは、ご容赦ください。

時期は、藍子ちゃんの誕生より前、とお考えください。
694間男未満 1:2010/11/13(土) 22:07:18 ID:cKVKlwuF
「浦木さん、浦木さん!」
「・・・かーっ。」
「どげしよう・・・。」
村井家の茶の間で、布美枝は途方にくれる。

少し前まで、ここでは夫、浦木、はるこ、そして自分の4人で、夕餉を囲んでいたのだ。
昼から、はるこが「勉強を兼ねて!」と茂のアシスタントに来ていた。そこへ以前、彼女の予定を聞きだしていた浦木がまた「奇遇ですね!」と偶然を装いやって来た。
すったもんだの末に、気がつけば夜。時間も時間だったため食事を出した、という流れだった。
茂を尊敬しているはるこは、色々と夫に話しかけ、どれが面白くない浦木は、ものすごい速さでお酒を飲み、つぶれた。
今現在、夫ははるこをアパートまで送ってやっている。
「すぐ帰る。」
と言い残して出かけた夫を思い出し、なんだか唇の端が上がった。
「はるこさん・・・。」
むにゃむにゃと呟く声に布美枝はわれに返り、再び起こす作業に入る。
「浦木さん、起きてごしない!」
「んー。」
やっとぼんやり目を開いた浦木に、ほっとする布美枝。
「夜も遅うなりますけん、早いとこ」
「はるこさん!」
「は?」
ぼんやりと自分を見上げていた浦木が、焦点の定まらない目のまま、自分ではない名前を呼ぶ。
「はるこさんー!」
「きゃーっ!」
しゃがんでいる所へ飛び掛られ、布美枝はバランスを崩す。浦木はそのまま、体を押し付け、ぎゅうぎゅうと抱きしめてきた。
「違います!浦木さん、私は、はるこさんで、ふゃんっ!」
はるこさんではありません、と言おうとした。しかし、浦木が顔を胸にこすりつけたのが、胸の先を刺激し、思わぬ声が出てしまった。
そのまま、胸に顔を埋められ、がっちりと捕獲され、布美枝は焦った。

するり、と何かが尻に触れる。それが浦木の手だと理解して、布美枝は血の気が引く。
そのまま、触れた手は片方の丸みを鷲づかんできた。
怖くて目に涙がにじむ。必死になって、何かを叫ぼうとした時。
695間男未満 2:2010/11/13(土) 22:08:15 ID:cKVKlwuF
「「こんの…だらずがぁっ!」

ドカッという鈍い音ともに、上にのしかかっていた重みが消えた。
「あなた!」
「布美枝…。」
いつの間にか帰ってきた茂が、浦木を思い切り蹴飛ばしたのだ。
「無事か。」
「え、ええ。」
確認をとるとすぐ、茂は浦木の襟首をつかみ、ゆすり始めた。
「おい、イタチ!起きろ!」
「う、ぐ、ぅ?」
首が閉まって起きた浦木は、唸り声をあげる。
「おう、ゲゲ。」
「おうじゃ無いわ!貴様、今、何しちょった!」
「何って…夢を見ちょった。」
「ほーう、どんな夢じゃ?」
間男する夢でも見ていたなら、今後出入り禁止にしてやる!と茂は心に決めていた。
「は…はるこさんの夢だ!」
「嘘つけ!」
「本当だ!はるこさんと、甘美なひと時をすごしとったのに、お前が首絞めたせいでだなぁ!」
今度は浦木が茂に詰め寄る。そこで、はたと浦木が気付く。
「って、おい、はるこさんはどげした?」
「お、お前が寝てる間に、帰られたわ。」
「なぁにぃ?!はるこさんをこの暗い中、歩かせたのか!」
「いや、ちゃ」
「こうしちゃおれん!奥さん、ごちそうさまでした!」
「は、い。」
上着をひっつかむと、嵐のような音ともに、浦木は出ていった。

「なんじゃあいつは、本当に騒がしい。」
「そげですねぇ。」
「はるこさんなら、ちゃんと送って行ったっちゅうに。」
と、ここまで普通に会話して思い出す。
さっきまで妻は、イタチに襲われていたのではないか。
幸い、ことに至る前に救えたものの、やはり、胸にいら立ちが募る。
「…すまんかったな、あんな男と二人にしてしまって。」
「いえ、最初から、私のこと、はるこさんと間違っておられたので…。」
しかし、確かに怖かった。
自分の愛する人以外に触られるのがあんなに恐ろしいものだと、初めて知った。
今さら、震えが来る。
「おい!」
ほろり、と涙が落ちたのを見て、茂が慌てた。
「す、すみません、なんか、急に、怖くなって。」
二滴、三滴と、涙はゆっくりと流れ落ちる。
右往左往していた茂だったが、ふう、と深呼吸すると、布美枝を抱きしめた。
「すまんかった。もう、怖くない。」
小声ながら、はっきりとしたその言葉を、夫の腕の中で聞いた。布美枝は身体から緊張が抜けていくのを感じ、頭を茂の肩にもたれさせた。
696間男未満 3:2010/11/13(土) 22:10:02 ID:cKVKlwuF
「ちなみに…何をされた。」
「へぇっ?!」
唐突に聞かれ、布美枝は素っ頓狂な声を上げる。
「イタチにだ。どんなことされた。」
言葉に詰まる。具体的に言うのも恥ずかしいうえ、夫がなぜそんなことを尋ねるのかが分からない。
「えと、その…抱きつかれ、まして。」
「ほーう、それで?」
「そ、それから、うぅ…お、お、お尻を、ちょっこし、触られました。」
言葉にすれば短いものだが、いつまでたっても純情な布美枝には、恥ずかしすぎた。
おずおずと、上目遣いになりながら、茂を見る。
「そうか、そんなことをされたか。なら…」
茂は、なぜかにっこりと笑う。
「消毒せんとな。」
「は?」
「イタチなんぞに触られたままでは、良くないからなぁ。ここはやはり、一晩かけて、俺が消毒してやらんと。」
とてもいい笑顔で茂が言う。しかしその心の中では、俺の嫁に触りやがって!というイタチへの嫉妬が渦巻いている。
「え?え?」
なんで怪我もしてないのに消毒?一晩もかけて?と布美枝は訳が分からない。
「さあ、頑張るか。」
「はぁ?」
疑問符をまき散らす布美枝の手を引き、茂は布団を目指すのだった。


そのころ。
「ったく、ゲゲの奴、思い切り揺さぶりおって。首ががくがくしたわ。」
浦木は終電に揺られながら、独りごちていた。
「しかし、ゲゲの奥さんは、良い反応を返してたなぁ。涙目もこう、ぐっとくるものが…いかんいかん、俺にははるこさんという人があるんだ!」
そうブツブツつぶやきつつも、機会があれば、ちょっと間男の真似をしてみるのもいいかもしれない、と心の隅で思った浦木だった。

おわり。
697名無しさん@ピンキー:2010/11/13(土) 23:55:52 ID:i1Ze8P6/
>>694
GJ!萌えた!
やっぱ嫉妬ゲゲは良いな〜
一晩かけて消毒してる様子も読みたいw
698名無しさん@ピンキー:2010/11/14(日) 00:31:46 ID:C3eBTvSR
>>694
GJ!
イタチ、完全にはふみえとはるこ間違えてなかったんだなw
ぜひ次は消毒の描写もry
699名無しさん@ピンキー:2010/11/14(日) 02:55:12 ID:0S0Zi98c
>>694
未遂キター!思わずゲゲの「だらずがあ!」にニヤけた。
前にもあったけど、今回のはなんか全体が可愛いなw
はるこはゲゲに逆送りオオカミはしなかったのか?
700名無しさん@ピンキー:2010/11/14(日) 21:38:22 ID:cbVqSjHe
はるこ大嫌い
701名無しさん@ピンキー:2010/11/14(日) 23:42:05 ID:8wNbxz/v
部屋にあがっていきませんか?と誘うはるこ
イタチと2人っきりにしてしまったふみえが気になり、はるこの言葉が耳に入らないしげる
702名無しさん@ピンキー:2010/11/14(日) 23:43:48 ID:MRhy9jlJ
>>684
手を温めあう夫婦かわいいな
積極的なふみちゃんイイ!

>>694
胸に擦りつけられたのがバレて胸だけで一回イカされてしまうんですねわかります
703【魔法使いの弟子】前書:2010/11/15(月) 02:30:54 ID:XMmHaA3g

需要は皆無、場違いなお目汚しと知りつつ、タイミングも悪くて気が引けますが、あえて投下に踏み切ります。
ゲゲ&はるの、出逢いから20年以上を振り返っての、拡大妄想。
布美さんは登場しないので、お嫌な方はどうぞ平にご容赦いただき、華麗にスルー願います。
704【魔法使いの弟子】1/9:2010/11/15(月) 02:35:50 ID:XMmHaA3g

T.エッカーマン未満

「あれ」
 襖を開けた茂は、居間を見渡す。
 女房に娘を連れて里帰りさせて以来、無頓着に散らかしていた部屋が、すっきりと片付いている。
 洗いものも、洗濯も済ませてある。
 そういえば、知り合いの娘が訪ねてきて、掃除やら何やらしていた気配はあった。
 その後、幼なじみの男まで上がり込んでは、隣室で言い合いをされるのが煩わしく、つい一喝してしまったが。
 卓袱台の上には、小さな置き手紙。
 “お仕事の邪魔してすみませんでした”。
 ぽりぽりと襟足を掻く。
「…ちょっこし、強く言い過ぎたかな」
 仕事に没頭すると周囲への配慮を怠ってしまうのは、昔からの悪癖だ。
 わかってはいても、治るものでもない。
 せめて、せっかく綺麗にしてくれた部屋を、なるべく汚さずに使おうかと考えてみる。

 深沢の許で知り合った若い少女漫画家は、気の置けない後輩だ。
 向こう見ずなところもあるが、猪突猛進の勢いで漫画に打ち込む情熱は、微笑ましいものがある。
 以前、締め切り前の窮地を手助けしてもらったこともあり、身内めいた意識もあって、彼女の貸本にも目を通していたりする。
 暢気に先輩ぶれるほど、こちらも安定した立場ではないが、彼女にもいずれ芽が出れば良いと、見守る思いで気にはかけていた。
705【魔法使いの弟子】2/9:2010/11/15(月) 02:45:15 ID:XMmHaA3g

   *   *   *

 上京した当初、三海社の消滅と共に頼れる当てがなくなり、途方に暮れた時。
 脳裏に浮かんだのは、唯一面識のある漫画家の、水木しげるその人だった。
 自宅へ押しかけた自分に、急場凌ぎとはいえ、仕事を手伝わせてくれた上、アルバイト代まで出してくれた。
 デビューどころか入賞もしていない新人の卵に、そこまでしてもらえるとは予想しなかったので驚いた。
 対等な同業者として扱い、労力に対する正当な報酬を払ってくれたのかと思うと、本格的にこの業界に足を踏み入れた実感が湧き、改めて奮い立った。
 まだ漫画への理解が浸透したとは言えない御時世、東京で独立すべく一念発起はしたものの、度胸や努力だけでは補えないものもある。
 自分にとって彼は、夢を目指すための心張り棒だった。
 あの人のいる空間、時間。
 そこに僅かでも関われるだけで、嬉しかったし、励みになった。
 一心不乱に仕事に打ち込む広い背中に、身動(じろ)ぎできないほど魅了された。
 あの背を毎日見つめることのできる、彼の妻がたまらなく羨ましく、また、男が酷く遠くも感じられた。
 惹かれるな、なんて、どうしたって無理だ。
 陽射しに温もりを感じるな、というくらいに無茶な話だ。
 細君が実家に帰っていると聞いた時、まさか彼らに限ってと驚いた反面、少し…ほんの少し、何かを期待する漣(さざなみ)が胸の内を揺らしたのも事実だった。
 その波に直面し、敬愛の名の下(もと)に埋(うず)めていた初心な恋情が、ひょっこり顔を覗かせるのを自覚してしまった。
 自分は、迷い猫だ。
 故郷を飛び出し、都会で一人、夢に生きる道を必死に模索した。
 あの人のいる家を仰ぎ、偶に会って笑顔を見られれば、心は軽くなり、元気が充電される。
 隣になんて、立てなくてもいい。
 そんなことは、端(はな)から無理とわかっている。
 温かく朗らかなその家の空気は、時にいたたまれなくて、敷居が高くもなるけれど。
 ただ、あの優しい黒檀色の眸が、時折向けられるだけで良かった。
 それで充分だと、己の甘えを戒めては、押し殺した。
 せめて訪ねる際は、多少なりとも仕事の進展を、胸張って報告できる自分でありたい。
 堂々と背中を追えるようになりたい。
 そう、思っていた。
706【魔法使いの弟子】3/9:2010/11/15(月) 02:50:19 ID:XMmHaA3g

   *   *   *

 他人の事情に自ら首を突っ込むなど柄でもないと、内心では照れ臭い気もした。
 だが訪問早々、悄然と去っていこうとする背中が、いつも以上に小さく見えて、妙に引っ掛かり。
 男の自分でさえ生半にはこたえる生業を、若い女の身で懸命に背負う姿がいじらしくもあった。
 しかし、同業者だからこそ、安易な慰めなど無意味と知っている。
 力量はあっても、運と機会を掴みきれずにやむなく筆を折った者たちを、これまで数々見てきた。
 厳しくも、それが現実だ。
 が、冷徹には片付かない、距離感を測りかねた戸惑いも、この子に対してはあった。
 まして、涙には困る。
 泣く女に、男は最初から負けているようで、太刀打ちできない。
 か細い肩を震わせる、仔猫みたいな娘に縋りつかれ、どうしてやればいいのかと狼狽する。
 それは、師弟めいた関わりの淵に不意に立たされた、無意識の危機感に近かったかもしれない。
707【魔法使いの弟子】4/9:2010/11/15(月) 02:55:07 ID:XMmHaA3g

   *   *   *

 どの雑誌社でもまともに扱ってもらえなかった原稿を、彼だけは無下にしなかった。
 同業者として、それは漫画家の精魂を注ぎ入れた血肉に等しいという、礼儀や共感に過ぎなかったとしても。
 感激を通り越して、…痛かった。
 一人前になろうと尽力していたはずなのに、甘えて泣きつくなんて真似を晒してしまったのが恥ずかしい。
 東京を離れる前日。
 報告と挨拶に出向いた日、細君の在宅にほっとした。
 最後まで一後輩として、自制を失わず、きちんと暇(いとま)を告げることができる。
「気持ちが残ってたって、つらいだけですから」
 漫画への未練も、彼への想いも、この場所ですべて、終わらせるつもりだったのに。
 懇切に諭してくれる笑顔に、自分はこの人にとって、どうでもいい相手ではなかったのだと知った。
 まるで、想いまでも諦めなくていいと言われているようで。
 妻女の同席がなかったら、きっとまた泣き出していただろう。
 一度でいいから、この人を――好きだと、声に出してみたかった。
 咲いて散るだけの、永遠に実ることのない、憧憬。
 それでも、その存在に支えられた歳月は嘘ではない。
 共に過ごせた僅かな時間、かけられた言葉、微笑み、まなざし。
 少ない想い出を、一つも取り零さず抱きしめて。
 新しい道を探してみよう。
 たとえ、もう一度、人生を選び直せるのだとしても。
 また苦しむのだと、最初から知っていても。
 やはり、この人に出逢いたいから。
 彼に感化された、情熱の軌跡を誇りたい。
 未熟な弟子を支え、導いてくれた、大切な――。
(先生)
 一度も名を呼ぶことのないまま、呼称の輪郭のみを残し、その中味を守ってゆく。
 彼とこそ同行したかった寺巡りも、空想の内に留め。
 最後まで迷った、御守代わりの家族写真も、東京に置いていくことにした。
 気持ちを残すことだけ許してもらえたら、欲しいものはもう無い。
 立つ鳥、跡を濁さず。
 それが、精一杯のけじめだ。
708【魔法使いの弟子】5/9:2010/11/15(月) 03:00:01 ID:XMmHaA3g

   *   *   *

 夢破れた同業者を見送るのは、珍しくない。
 なのに、あの娘に限って、多弁に励ましめいた言葉をかけていた。
“何とかなる…か。そうですね”
 やはり女は、泣いているより、笑っている方が良い。
 彼女のその後の消息を知ったのは、年の暮れ、漫画賞受賞の折だった。
 授賞式の記事が新聞に載り、電報が届いた。
 祝いに連ねて、教師を目指して勉強中であることが添えられていた。
 努力を弛(たゆ)まぬ強さを持った娘の、真っ直ぐな目を思い出す。
 創作とは、孤独な作業だ。
 誰にも代わってもらえず、心身が枯渇するまで絞りきって尚も生み出し、立ち止まらずに走り続けねばならない。
 苦労しても認められるとは限らない。
 労力に比例する上乗せ報酬もない。
 それでも。
 己が心血注いだことを、自分自身は知っている。
 全身全霊で燃焼させた漫画家魂は、形を変えても存続する。
 突撃は命懸けだが、退却も勇気の要ることだ。
 命を懸けるにしろ、勇気を持つにしろ、どちらかでもあれば、どこであっても何をしても、生きていける。
 茂は、電報を畳み直し、受賞の記念楯と共に置いた。
 頑張れ、とは言わない。
 頑張っているのは、他の者も同じ。
 生きることは闘いだ。
 常に、闘志と矜持と、楽しむ心を。
(――忘れるな)
 唯一人の女弟子へ。
 自らの生を語る術(すべ)を失ってくれるなと、願う。
709【魔法使いの弟子】6/9:2010/11/15(月) 03:03:33 ID:XMmHaA3g

U.二十年愛

 妻子や肉親に向けるのとは違う。
 助手や編集者への態度とも異なる。
 そんな父が、なぜか見知らぬ男性めいて、胸がざわめいた。

 プロダクション設立二十周年記念パーティは、予想以上に盛況であった。
 父の長年の稼業を見守り、助力してきた人々が、引きも切らずに言祝(ことほ)ぎ、村井一族の面々は対応に追われた。
 娘の自分にも挨拶してくれる人は少なくなく、懐かしい顔ぶれとの再会に喜び、直接の面識はなかった相手からも温かい言葉をかけられ、
改めて父の偉業と母の内助を顧みた。
 妹と共に感慨に耽っていた藍子はふと、会場の人混みの中、一人の女性と語らう父の姿を見出した。
 母よりも若く、ショートボブの似合う、小柄で愛らしい人だ。
 彼女の話を、父は穏やかな表情で聞いている。
 その横顔に、心臓が小さく鳴った。
「誰かな」
 妹より四年分長く、父の周辺を見てきた自分は、かろうじて覚えている。
「…昔、漫画を描いていた人で、お父ちゃんのアシスタントやったこともあるって」
「あ〜、あの人がそうかあ。お父ちゃんが招待したんだよね。学校の遠足にも呼ばれたんじゃなかったっけ」
 かつて、スランプに陥った父を再生させる、きっかけをもたらした人。
 だが、それよりも。
 鮮烈に記憶に焼きついている場面がある。
 母以外の女性に、寄り添われた父。
 その実、二人の間には何もなかったようだし、父もまったく頓着していないけれど。
 幼い直感の延長は、おそらく外れてはいないだろう。
 話を終えた様子で、父はこちらを指し示している。
 彼女の円(つぶ)らな猫目が、姉妹を見てふわりと和んだ。
710【魔法使いの弟子】7/9:2010/11/15(月) 03:07:36 ID:XMmHaA3g

「こんにちは、藍子ちゃん」
 懐かしげに目を細めた女性が、歩み寄ってくる。
 黙って、会釈を返した。
「前にお宅にお邪魔した時は、挨拶だけでゆっくり話せなかったけど。本当に大きくなったね。って言っても、覚えてないか」
「…いえ」
「こちらは喜子ちゃんね。お父さまに雰囲気が似てる」
「こんにちは」
 妹は明るく返事する。
「水木先生に聞いたの。藍子ちゃんとは同業者になったのね。子どもたち相手の仕事は神経使うし、体力的にも大変でしょう」
「…はい」
「あたしは最初に目指した道とは違うから、慣れるまで結構かかったけど、それでもなんとかやれているし。藍子ちゃんも、気を楽に、ゆったり構えてね」
 こくりと、首で頷くだけに留めた。
 反応の悪い自分を、隣で妹が訝っている。
 会場の喧噪が遠のき、いつかの光景が脳裡に点滅した。
「河合、さん」
「なあに」
「不躾かもしれませんが。まだ、父のことを…想っていらっしゃいますか」
「え」
 瞬く眸に、僅かに翳りが差す。
 父に向けられた、異性としての慕情の健在を、その時確信した。
「そ、っか。藍子ちゃん、覚えてるんだね。あの時は、みっともないトコ見られちゃったな。
先生にもご迷惑かけたし、ご家族の方たちまで驚かせてしまって。本当に、ごめんなさい」
 ぺこりと詫びる相手と姉を、喜子が見比べているが、説明する気にはなれなかった。
「父はもう、イイ歳をしたおじさんですよ」
「そうね」
「頑固だし、わがままだし、寝ぼすけだし、食いしん坊だし。しょっちゅうおならするし、南国ボケするし、お墓巡りが趣味の、おばけ大好きな変人です」
「ええ」
「第一」
 父には、母がいる。
 両の拳をきゅっと握り締めて、俯いた。
 彼女のまなざしは、静かだ。
 もっと後ろめたげにうろたえてくれたら、本気でなじれるのに。
「…」
 向こうよりも、なぜかこちらに、気まずい空気が流れた。
711【魔法使いの弟子】8/9:2010/11/15(月) 03:11:40 ID:XMmHaA3g

「あたし、ね」
 はるこは、姉妹を交互に見やる。
「初めて水木先生の漫画を読んだ時、…凄いと思った。こんな人がいるんだ、こんなふうに描ける人がいるんだって、衝撃を受けた。
あたしにとって先生は、誰かの夫であるとか父親である前に、最も尊敬する、第一級の漫画家だった」
 彼女の面差しが、未来を語る少女のそれに戻る。
「元々、漫画家になるのは、子どもの頃からの夢だったけど。先生に逢って、目標ができた。
いつか、あの人と同じ土俵に上がれるような、プロの漫画家になるんだって」
 「力不足だったけど」と、おどけて肩を竦めてみせる。
「それでも、東京で漫画修業をした三年間は、無我夢中だった。あんなに必死になれた時間は、他にないくらい。
結局、結果は出なかったけど、根性だけは培ったと思ってる。あの頃の苦しさに比べたら、大抵のことはなんとかなるって」
 夢にも恋にも苦しんだろう、その人は今、晴れやかな笑みを浮かべる。
「漫画を諦めて、郷里に帰ることになった時も、先生に励まされた。漫画を描く以外の生き方を考えてなくて、
抜け殻になってたあたしに、不滅の漫画家魂を吹き込んでくれた」
 それは父の、不屈の情熱の片鱗。
「先生の近くにいられたのは、三年。ご家族との二十年以上の歴史に比べたら、たった三年きり。でもね、あの三年間がなかったら」
 不意に、強い瞳に射抜かれる。
「あたしは、――あたしではいられなかった」
 まるで父に似た光のようで、藍子は怯んだ。
「だから、決めたの。夢が叶わなかったからといって、人生に捨て鉢になるのはやめようって。頑張ることも、諦めることも、それでも挫けないことも。
あたしは全部、知っている。幸運な人や、成功した人とは、違うやり方ができるかもしれないって」
 夢も恋も、叶わなくとも。
 擦れ違うだけの出逢いでも、確かに意義はあったのだと。
「先生と逢えたから、先生に教わったから、できたこともあるんだって、一つでも見つけて成し遂げて、報告に行こうとずっと思っていた。
それが、せめてもの恩返しだから」
 新たな道を選び直し、一人前になった姿を、父はきちんと認めてくれたのだという。
712【魔法使いの弟子】9/9:2010/11/15(月) 03:15:08 ID:XMmHaA3g

「あのね。あたし、結婚することになったの」
「え?」
 声を揃える姉妹に、はるこは頷く。
「あたしももうイイ歳なのに、今更貰ってくれるような奇特な人も、世の中には案外いたみたいね」
 相手は、同じ職場の教員なのだとか。
「あたしの漫画家魂の話を、真面目に、莫迦にしないで聞いてくれた。あたしの中の、先生の存在を受け入れてくれた」
「そのこと、父には」
「さっき、お話しした。“めでたいな”って言ってくれた。それと、“あんたの地元は良ぇ所だな”って。いつか、ご家族の皆さんを連れていきたいって」
 父が妖(あやか)しに遭遇したという、清やかな緑深き郷(さと)へ。
 「実はね」と声を潜め、はるこは唇に人差し指を立てる。
「その人、笑った時の印象が、少し水木先生に似てるの」
 「先生には内緒ね」と悪戯っぽく目を輝かせている。
(…ああ)
 藍子は、すんなりと肩の力を抜くことができた。
 二十年の歳月が流れたのは、村井家だけではない。
 父を想う、数多(あまた)の人々それぞれに、日々の暮らしがあり、歩みがあったのだ。
「藍子ちゃんが心配するようなことは、何もないし、何も起こらないよ。先生もご家族も、もう困らせたりしない」
 凛と佇む彼女を、藍子は率直に、綺麗だと思った。
 姉妹の許を辞去する後ろ姿を見つめ、喜子がぽつりと呟く。
「あの人、男の人を見る目はあったってことだね」
「河合さん!」
 思わず、藍子は呼びとめた。
 振り向いたはるこが、首を傾ける。
「本日はお越しいただいて、父を祝ってくださって、ありがとうございました。あたしも、仕事頑張ります、負けないくらいに。それから」
 父を慕ってくれた人の、不幸を願う気性など、持ち合わせてはいない。
「どうぞ――お幸せになってください」
 彼女の柔らかな微笑みに、ようやく笑顔を返せた。

 どうか、父を支えてくれた総ての人たちに、嘉(よ)き未来が訪れますように――。


713名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 22:49:57 ID:Oob/EXM3
>>704
乙!
そーいやはるこって藍子がふみちゃんのお腹の中に居た頃から知ってるんだよな
最終形態の藍子は同業者になってるし相当感慨深いだろうな…
714名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 23:53:26 ID:fiaedYbU
>>704
乙!!
心情の表現が深いなぁ。
そういえば20周年パーティのときはるこいなかったな。
ゲゲがスランプから立ち直るきっかけを作ってくれたんだし、
いてもおかしくはなかったんだが、中の人の都合かな。
今回のでそこんところが補完されたので、だんだん。
715名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 01:39:07 ID:vWpzUH4P
三者の想いが絡み合うのがいいね
物語上のはるこの存在は割と気に入ってるので
美味しく頂きました
だんだん
716名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 02:04:50 ID:QDM5eVGm
自分は、はるこもだけどそれ以上に中森さんがいないのが気になった>20周年記念パーティー
ふみえなら「はるこさんや中森さんも招待したらどげでしょう」とか言いそうだし
717名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 02:31:30 ID:46pDuFIr
はるこや中森さんは、
ゲゲの漫画家人生を左右する存在ではなかったのかなー、と思って
あまり不在は気にならなかったなぁ…
(はるこがゲゲ復活のきっかけをくれたんだけどさ)
中森さんは、悪魔くんのキター!のあとに調布にキター!!があったから、
結構たくさん会えた印象がある
718名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 07:01:03 ID:AjlLtEvb
パーティーは出版の関係者向けだからあの時点で一般人のはること中森さんは呼べなかったのでは
はるこは小峰さんみたいに正式に雇ったアシストじゃないし
719名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 07:07:47 ID:AjlLtEvb
アシストじゃないよアシスタントだよ…orz

そういやあきねーちゃん夫婦も一般人だ…
けど身内だしね
720名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 12:24:30 ID:Wteguxer
元々ゲゲはそれ程はるこに思い入れがある感じはしなかったしな。
田舎から出てきて漫画家になるために頑張ってる女の子が女房と仲良くなり、自分のアシスタントも時々してくれる
くらいの認識かなと。
721名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 13:15:58 ID:gWGUexp3
そういうのは倉田といずみも同じだろうな。いずみは姉みたいにもしかしたら自分は倉田と結婚するかもと考えても
いずみは単に若くて可愛いだけで結婚したいとは考えてないだろな
722名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 13:45:15 ID:IdiQysD6
>>720
>元々ゲゲはそれ程はるこに思い入れがある感じはしなかったしな。

禿同!
特に「女性としてのはるこ」には、全く興味を示さなかったよね

漫画家魂を語るくだりも、こみち書房の政志を優しく説いた時と変わらない
最初から最後まで、ゲゲにとってはるこは、気になる存在でも特別な存在でも無いよ
723名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 14:03:33 ID:Jlnk+y/M
あれはイヤこれはキライ言ってないでもっとポジティブに萌えを語れよ…
724名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 14:34:00 ID:Wteguxer
イヤとか嫌いって言ってるわけじゃなく、そういう感じなのかな…と思っただけだよ。
725名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 21:44:25 ID:tD2qpFzO
>>704 の書き手です。

正直、総スカンで無視されるのを覚悟してたので、読んでもらったりコメントをもらえたことに吃驚してます。
でもスレの雰囲気を悪くするのは本意ではありません…(投下しておいて今更ですが)。

今までゲゲふみばかり書いてきましたが、たまには番外編的なサイドストーリーをやろうと思ったのと、
はるちゃん視点で本編を観直してみたら、しげぇさんが随分と優しかったんで(アッキーナに対する向井氏の気遣いかも?)ちょっと驚き、
情愛抜きのほんのり男女風味の師弟関係もアリかな…くらいで試みたお話でした。

彼女のことが嫌いな人もいるだろうし、ゲゲふみが『最大のお約束』なのは重々承知してますし、自分もこの二人が基本設定ではありますが、
あのドラマの、特定の人物の想いや価値観だけを絶対視しない温かさが好きだったので、
蔑ろにされやすい当て馬的キャラでもそこで終わらせずに、一度くらいは一対一の関わりを大事にして書いてあげたかったのです。
決して浮気だの不倫だのトライアングルだのを推奨しているわけではないです。
しげぇさんを好きになってくれた人を自分は厭えなかった(だからラストの藍子の願いは個人的な代弁)、というだけのことですので、なにとぞご容赦くださいませ。

ちょっこし言い訳の追加でした、はい。
726名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 23:19:26 ID:aguJtLAO
>>725
改めて、乙!

プロデューサーのブログがちょこちょこ更新されてるけど、
「紅白必見」とあるから、やっぱりおかあちゃんの応援におとうちゃん参戦するかな。
けど、審査員席に来年の妻がいると思われるので、そのあたり泥沼化したりしてw
727名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 23:38:14 ID:U1oT/RYC
>>726
ゲゲゲのグランドフィナーレーらしいから、そういう展開にはならないと思うが
NHKだから、どうなるか分からないねw

楽しみだけど、グランドフィナーレーと言われると何か寂しいな
728名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 00:18:54 ID:ZrnEAlSw
…ごめんなさい。
一方的かつ自己チューなはるこは、
好きになれなかったので、
とりあえずスルーさせて頂きました。


ゲゲさんとフミちゃんの、
心暖まる萌え虹なら、いくらでも読みたいで〜す♪

紅白(応援)も楽しみ♪♪
729名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 00:22:12 ID:B7TUCyXS
わざわざ煽るなんてやなやつw
730名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 00:55:43 ID:0QPpgH8L
>>725
ほんと乙
また思いついたら遠慮なく投下してごしない
あなたの書く大人藍子が家族想いで好きだ
731名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 01:11:23 ID:LkouAL9N
>>725
720ですが、あくまでドラマを見ての感想であって>>725さんの作品は楽しませていただきましたよ。だんだん!
自分も>>725さんの描く大人藍子が好きです。
7322.5DAY/0:2010/11/18(木) 04:40:26 ID:7O+KRaCI

変にスレを掻き回してしまったお詫びとお口直しに(でもスピンオフ)、以前こっそり投下した、いちせんパロの続編を連投。
>>566 さんがまだいらしてるかわかりませんが、時間経過は >>359 のさらに後日談です。
馴れ初めは公式サイトに準じてアレンジしてありますが、プロフィールや嗜好などは御本人を参考にしました。
7332.5DAY/1:2010/11/18(木) 04:42:49 ID:7O+KRaCI

 男の人を、綺麗だと感じたのは初めてだ。
 バイト先の居酒屋のキッチンで働いていた彼の姿は、多忙な店内にあっても、不思議と端然だった。
 賑わうホールの忙しなさに振り回されそうになる時も、てきぱきと注文を捌(さば)くその落ち着きぶりに、よく励まされた。
 黙々と調理に打ち込む真剣なまなざしを、ずっと見ていたいような、振り向いてほしいような。
 そんなもどかしさが、しばしば身を熱くさせた。
 言葉を交わす機会が増え、少しずつ親しむ雰囲気が深まり。
 大人びた佇まいとは裏腹に、少年みたいな笑顔を向けられるたび、胸の奥がさざめいた。
 途方に暮れたように、明かりが灯るように、想いはしっとりと自覚される。
 2人が付き合い始める、半年前のことだった。


「店、継ごうと思うんだ」
 バイトからの帰り道、連れ立って駅まで向かう途中、祐一がぽつりと語った。
 彼の家が、地元でも有数の老舗であることは、前から聞いていた。
 密かに進路に迷っていたことも。
 生半な決断ではないだろう。
 それでもこの人は、自らが進む道を決めたのだ。
 淡々と将来を志す横顔は、いつも以上に爽やかで、綺麗で。
「大丈夫よ」
 餞(はなむけ)には、自分の言葉など無力かもしれない。
「職人さんの大変さとか、伝統とか、難しいことはあたしにはわからないけど」
 静かに眩しい人に、何か伝えたかった。
「一緒に働いてて、あたしも皆も、いつも祐一くんを頼りにしてた。周りの人の頑張りも、ちゃんと見ててくれた。
それがすごく、励みになってたんだよ」
 派手に前に出るタイプではないが、常に全体を見、必要なことを指示し、率先して動き、他人の努力を認めてくれる人。
 自らが背負うものの意味も、きっとわかっている彼ならば、半世紀の重みも継いでいけるだろう。
「祐一くんなら、大丈夫だよ」
 彼がバイトを辞めれば、今までのようには会えなくなる。
 けれど。
 これから新しい道を歩こうとする人に、余計な気持ちを告げて、紛らわせたくはない。
 ただ、精一杯の笑顔で、背中を見送ろう。
「頑張ってね」
 困らせないように、寂しげには見えないようにと、願う。
「…」
 彼は、黙ってこちらを見ている。
 駅はもうすぐだ。
 離れたくない本心が、自然と足取りを遅くさせた。
 ぴたりと祐一が立ち止まる。
 ふぅっと肩で呼吸する彼を、隣で仰いだ。
「――付き合おうか」
 何度も惹かれた、柔らかな微笑み。
「え。…って、どこに? これから?」
 真面目に訊き返せば、直後、彼は噴き出した。
 くつくつと笑われて、戸惑う。
「しっかりしてるかと思えば、結構天然だもんなあ、綾ちゃん」
 大きな掌に、ぽん、と頭を撫でられる。
「そういうところも、――好きだよ」
 夜陰に流れる風を縫って、優しい声が届く。

 この日、彼は綾子の恋人になり、やがて老舗の3代目となり、数年後には夫となった。
7342.5DAY/2:2010/11/18(木) 04:44:32 ID:7O+KRaCI

  □□□

 2人の誕生日は、1日違いだ。
 2月7日が祐一、8日は綾子。
 結婚する前から、合同で祝うのが恒例だった。
 今年は8日が店の定休日に当たるので、7日の夜に祝いも兼ねてのんびりしようと決めている。
 料理全般が得意な祐一は、毎年ケーキやデザートを作ってくれ、そのレパートリーを綾子はいつも楽しみにしていた。
 お酒好きの彼と一緒に飲もうと、スパークリング・ワインも買ってある。
 もう1つサプライズがあるが、それはまだ内緒だ。
 聡い相手に気づかれぬよう、さりげなく振る舞うのは結構難しい。
「なにニヤニヤしてんの」
 店番中のカウンターの背後から、ひょいと声が掛かる。
「祐ちゃんの手作りケーキ、楽しみだなあって考えてたの」
「新作、自信あるよ」
 スマートなウィンクを1つ。
 佐々木家の若旦那は、いちいち男前だ。
「そろそろ店仕舞いにしようか。夕飯、俺が作るから」
 心遣いが嬉しく、こちらからのお披露目にも驚いてほしいし、喜んでほしいと祈った。


 濃いピンクにデコレートされたホールケーキが、シュガー製のリボンに覆われている。
 リボン地も淡いピンクの水玉模様に見立てられ、間に瑞々しい苺がいくつも飾られている。
 まるでケーキ型のプレゼントBOXのようだ。
「可愛い…」
 食べてしまうのがもったいない。
 携帯で撮って、実家の父親にもメールしておくことにする。
 甘いもの好きで食いしん坊な父は常々、婿の手料理を羨ましがっていたから、妻の特権で自慢したい。
 ワインを開けてもらい、フリュート・グラスが満たされる。
 金のボトルから注がれるシャンパンゴールドに、繊細な泡が立ち上(のぼ)った。
「それじゃ、一足早く」
「お誕生日」
「おめでと」
「おめでとう」
 また1つ、2人の想い出を刻む。
 ささやかで、大切な歩みを確かめる。
 夕食も夫お手製の、ビーフシチュー。
 ほのかに甘い、桃の香りのワインを一口飲んでから、美味しくいただいた。
「祐ちゃん」
「ん〜」
 ハムスターみたいにシチューの南瓜を頬張っている、夫に告げる。
「もう1つ、お知らせがあるの」
7352.5DAY/3:2010/11/18(木) 04:46:05 ID:7O+KRaCI

「? なに」
「――名前、考えて」
 ぱちりと瞬く彼の瞳に、じっと見入る。
「4代目の名前、祐ちゃんに決めてほしいの」
 しばし固まっていた祐一が、やがて、ごくんと飲み下す。
「綾子」
「はい」
「…ホント?」
「ほんと」
「どれ、くらい」
「2ヶ月半だって」
 まじまじと、夫は目を見開く。
「…すごい」
「え」
「すごいよ、綾子」
 実感の重みに吸い寄せられたように、彼は、妻の腹部を凝視している。
 みるみるうちに、喜色が露わになる。
「そっか」
「ん」
「子どもか」
「うん」
「――ありがとう」
 少し潤んだ目で感激され、綾子も感極まって、声を詰まらせ頷いた。
 さらなる幸せが、いずれ目に見える形となる。
「予定日は秋かぁ」
「来年の今頃はもう、3人で迎えてるんだね」
「じゃあ今年は、2.5人でお祝いだ」
 グラスを飲み干した祐一が、はたと止まった。
「待った!」
 綾子の手首が掴まれる。
「酒はダメだ」
「これ、ノンアルコールだよ」
「ちょっとは残存アルコール分があるだろ」
「グレープジュースやりんごジュースと変わらないぐらいだって。1日当たり1杯未満で、週1回程度なら問題ないって、
お医者さんに聞いてきた」
 「今日はお祝いだから1杯だけ、ね?」と上目で窺うと、夫は「う〜」と唸り、渋々了承した。
「でも、これからは極力、禁酒だからな。俺も付き合う」
「祐ちゃんまで無理しなくていいよ」
「いーや。綾子が大変な時なのに、俺だけ暢気にしてられない」
 家族想いの彼に、新しく家族を増やしてあげられることが喜ばしい。
「仕事、しっかりやんないとな」
「祐ちゃんは、良くやってくれてるよ」
「もっと、もっとだ」
 頼もしい夫の決意に、綾子は目を細める。
 2人は、少し前まで『彼氏と彼女』で、今は『夫と妻』で、もうじき『父と母』になる。
7362.5DAY/4:2010/11/18(木) 04:47:46 ID:7O+KRaCI

  □□□

 入浴を済ませて、寝室に上がると、床(とこ)は整っていた。
「体、冷やすなよ」
 掛け布団を持って、寝かしつける気満々の夫に、ちょっと笑ってしまう。
 大人しく横になると、静かに羽毛布団が置かれる。
 じっと見ていた祐一が、「入っていいか」と訊いた。
「ん」
 隣に潜り込んできた彼に、やんわりと抱きしめられる。
 まだぺたんこの腹を、そうっと手で摩(さす)られた。
 徐(おもむ)ろに胸の弾力に顔を埋めてくる、安らいだ空気が微笑ましい。
 彼の髪に指を絡め、じっと動かぬ頭を撫でた。
「…っ」
 不意に、パジャマの上から、膨らみに唇が押し当てられる。
 乳頭を探られ、甘噛みされて震えた。
「ゆ、ッ…」
「しないよ」
 「最後まではしない」と夫は微笑む。
「触りたいだけ。すごく嬉しいから」
 腰を撫でる動きは、愛撫よりもいたわりに近い。
「俺は店を継げたけど、命を繋いでくれたのは、綾子のお手柄だ」
 服越しの間接で乳首を吸われ、堪らず頭を包み込んだ。
 妊娠の影響なのか、久しぶりの接触の所為か、感覚が過敏になっている気がする。
「ゆぅ、ちゃ」
 舌足らずな甘えに気づいたのか、夫は顔を上げ、軽く口を啄ばんだ。
 そのまま離れていこうとする唇を、綾子は追う。
「、ッふ」
 滑らかに互いの舌が絡まった。
 くちり、と音を立てながら、吐息を奪い合う。
「は、…ぁ」
 解(ほど)けた唇を彼の耳元に寄せ、広い肩に縋る。
「祐、ちゃん」
 囁くように、「…して」とせがむ。
「だめだよ」
 腹に触れた祐一が、「コッチのが大事」と苦笑する。
「でも」
 彼を困らせたくはないのだけれど、体内に点(つ)いた、火照りが消えてくれない。
 ぎゅっと胸にしがみついていると、上から小さく溜め息が落ちた。
「仕事の為なら、何でも努力できるのに」
 夫がもぞりと腕を動かす。
「俺って、綾子に関しては、昔から辛抱できないんだよな」
 見上げると、甘い光を湛えた瞳に迎えられる。
「付き合う前も。本当は、気持ちを言わずにおこうと思ってたのに」
 2人がただのバイト仲間だった、遠い過去。
「あの時も、綾子、そんな目をしてた」
「…あたし?」
「“離れたくない”って、泣きそうな顔してたろ。だから俺も、言う気になったんだ」

 “離したくない”って。
7372.5DAY/5:2010/11/18(木) 04:49:35 ID:7O+KRaCI

 口を触れ合わせての動きで「いい?」と問われ、こちらが欲しがったのにと、綻んで肯(うべな)った。
 擽るような頬へのキスに、軽く首を竦める。
 着痩せする夫は、その実、腕が太く、胸板も厚い。
 強く抱き込まれると、安堵と高揚が混じり合う。
 髪を掻き上げられて項(うなじ)を柔く噛まれ、綾子は、のけ反って息を漏らした。
 負担を掛けぬ気遣いか、横抱きにされて、首に肩に鎖骨に吸い付かれる。
 歯と唇で巧みにパジャマのボタンを外され、剥き出しになった乳房を揉みしだかれた。
「あ、――ッ、…ン」
 肌を弄(なぶ)る指の隙間から、舌にも襲われる。
 尖った乳首に軟らかく歯を立てられ、舌先で執拗に押し潰されては、猫みたいに鳴いた。
「ふ…、ぁッん――もぅ、そこ…ばっかり…」
「綾子はさっき、ケーキの苺食べたろ。俺はコッチ」
 ちゅ、と吸い上げられるたび、足の奥がじわりと熱く潤む。
 シーツに耳を擦(こす)り付けて、自分の指を銜えた。
「ん、…もぉ、――も、っと…」
 もっと、この人のものになりたい。
 とろみが湧き出す下肢を、もどかしく蠢かす。
 するりと寝巻きを滑り下ろした祐一の手が、下着の上から陰部の縁(ふち)を確かめる。
 じっとりと湿っているそこを、爪先で優しくいじられ、綾子は悶えながら腕を伸ばした。
「ぁ――あ…、ぅちゃ…」
 片手を絡ませ合い、指をくねらせて急かす。
「ね、…ッ…舐め、て――」
 全部にキスして、どうか愛して。
 晒された秘部が、彼の視線に囚われる。
 大腿を押し広げられ、臍の下に唇が置かれた。
「聞こえるかな」
「…え」
「こういうコトしてるから、おまえがそこにいるんだよって、わかるかな」
「もぅ」
 笑いが零れ、夫の癖っ毛を愛おしく梳いた。
 そのまま、淫液の源泉に口づけられる。
 充血した襞に舌が潜り、自在に遊泳する。
「ハ…、――ん、ッん…ぅ」
 大好きな長い指に、濡れた萌芽を開花させられる愉悦に、綾子はうっとりと酔った。
 自ら膝を広げて、腰を突き出してしまう。
 恥じらう余裕は、とうにない。
 器用な指数本に愛撫され、乳暈を詰く吸われつつ、自身の望み通り、快楽の淵から落下した。


 絶頂感に惚け、肩で息をしていると、夫が下肢を拭ってくれているのに気づく。
「…ぅ、ちゃ…」
 始末を終えた彼に、ぽんぽんと頭を撫でられ、まさかと瞬いた。
「あた…し、だけ?」
 祐一が笑って、ちょん、と額にキスをした。
「控えめになんて、抑えられる自信、ないよ」
 淡泊な彼の、意外な情熱は知っているし、それが嬉しいとも思っている。
 まして、我慢などさせたくない。
 意を決し、気怠い体を起こした。
 きょとんと訝る夫を座らせ、その足の間に入り込む。
「綾子?」
 下腹に顔を近付けると、慌てて止められた。
「え、っと。無理、しなくていいよ。俺は大丈夫だから」
「あたしだけなんて…イヤ」
 大切に慈しまれるばかりで、十二分に返せたことなどないけれど。
「あたしだって、祐ちゃんに、してあげたいの」
 愛される以上に、彼にも与えたいと、ずっと考えている。
7382.5DAY/6

  □□□

 既にそそり立つ男根の先端を、ふわりと掌で撫でてみる。
 ぴくりと反応したそれを、筒状に曲げた指でやんわりと握り込み、口内に招き入れた。
「…ッ」
 頭上で夫が、小さく息を飲むのが聞こえる。
 舌で雁首を押し上げると、滲み出た先走りと唾液が絡まって、粘つく音がした。
 大きな手にゆったりと髪を梳かれ、綾子は快く目を閉じる。
 裏筋に舌を這わせるたび、硬度はますます強まった。
 歯を当てないように注意しつつ、全体を舐め回す。
「ふ、――ぅ」
 祐一が低く嘆息する。
 熱い猛りに頬擦りし、ぐっと奥まで含んだ。
「…綾、――」
 呼ばれて、彼と視線を合わせる。
 普段は涼しげに端正な面差しが、耐えるように歪んでいるのを、恍惚と見上げた。
 唇を窄めて隆起に吸い付き、頭を上下に動かす。
「も、…ぃい、よ。マズ、イ」
 引き離そうとされるのを、黙って首を横に振ることで答える。
 このまま、――食べてあげたい。
 決壊が迫る気配を察知し、陰茎を摩りながら、敏感な鋒(ほこさき)に甘噛みを施す。
「――ッ、…!」
 祐一が鋭く呻いた。
 烈(はげ)しい射精に直面した綾子は、濃厚な液をどうにか飲み干し、果てた彼の分身をも丁寧に舐め取る。
「擽ったいって」
「まだダメ」
 体を捩(よじ)っていた夫は、観念したふうに大の字になって寝転ぶ。
 素直に身を預けてくれる無防備さ。
 仰臥する相手を見つめて信頼感に浸っていると、ひょいと伸びてきた腕に、頭ごと抱き寄せられた。
 わざと大雑把なキスが、それでも濃やかさに満ちている。
「あたし、ちゃんと…できてた?」
 唇が重なる寸前で訊いてみると、満面の笑みが返る。
 悦んでもらえたことにほっとすれば、多少の顎の痺れも気にならない。
 彼のこめかみ、髪の生え際に、伸び上がって口づけた。
 肩口に寄り掛かるように、腕枕をしてもらう。
「…ナンか」
「なあに」
「気持ち良過ぎて…眠たくなった」
 ぽやんとした声で、目元を擦る夫が可愛い。
 あどけない子どものようにも見え、両手に囲い込んで守ってあげたくなる。
 常に守られてばかりの自分にも、母性の芽生えを実感した。
「祐ちゃんに、似てると良いなあ」
 腹を撫でる手の上に、彼の掌が重なる。
「俺は、綾子に似てる方が良い」
「じゃあ、両方にしとこっか」
 くすりと噴いては、また抱きしめ合い。
 2人、至福の眠りへ溶けていく。
 やがて、3人分の明日を迎える、その日の訪れを指折り数えながら。


<終>