キモ姉&キモウト小説を書こう!part25

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1名無しさん@ピンキー
ここは、キモ姉&キモウトの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○キモ姉&キモウトの小説やネタやプロットは大歓迎です。
愛しいお兄ちゃん又は弟くんに欲情してしまったキモ姉又はキモウトによる
尋常ではない独占欲から・・ライバルの泥棒猫を抹殺するまでの

お兄ちゃん、どいてそいつ殺せない!! とハードなネタまで・・。

主にキモ姉&キモウトの常識外の行動を扱うSSスレです。

■関連サイト

キモ姉&キモウトの小説を書こう第二保管庫@ ウィキ
http://www7.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/1.html

キモ姉&キモウト小説まとめサイト
http://matomeya.web.fc2.com/

■前スレ
キモ姉&キモウト小説を書こう!part23
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1251275428/

■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。

SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー!荒らしに構う人も荒らしです!!
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・スレは作品を評価する場ではありません
2名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 21:27:07 ID:SOlQfkrl
みすった
サーセンwww

■前スレ
キモ姉&キモウト小説を書こう!part24
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1254891760/l50
3名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 23:06:19 ID:UoMC/WDe
>>1 お兄ちゃんスレ立て乙
>>2 弟君ドンマイ
4名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 23:37:22 ID:On7vN7vL
>>1

そんな1には高規格戦闘攻撃妹を差し上げよう。
今ならなんと追尾偵察機能もついてるぞ! 
5名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 00:26:34 ID:3B/s9aFa
>>4
それなんて妹ですかwww
6名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 00:33:30 ID:7F+HUeXV
要するに泥棒猫を抹殺するだけの武芸の心得があって兄貴のストーキングもこなすんだろ?
よくあるキモウトじゃないか
7名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 12:28:01 ID:2IfXIy9/
お兄ちゃんの中の倫理観を書き換え妹=嫁と認識させる
MCキモウト
8名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 12:46:29 ID:B78LVM/P
>>5
最終兵器彼女ならぬ最終兵器妹(キモウト)ってわけだよ
さあ、ソウカンジャーカモン!
9名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 12:57:54 ID:AEGuCMzN
逃げる奴は兄だ!
逃げない奴は訓練された兄だ!
10名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 14:12:23 ID:+su4jXXf
向かって来る奴は?
11名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 14:24:07 ID:2IfXIy9/
>>10
もちろんキm
おっと誰か来たようだ
12名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 17:12:29 ID:1ZqF7UX3
あくまでも俺の推測だからスルーしてもらって構わないが
三つの鎖の京子さんは父親の姉又は妹か、
もしくは前の妻がそれらであったことを知ってる人なんじゃないか?
13名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 23:45:53 ID:1bHfnZ/u
>>12
みんなうすうす気づいてることをどや顔で言われても困るので…
お帰りください

>>1
14名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 00:23:21 ID:GHy5jL0V
>>13
すまんみんなでいろいろ考えるのも小説の醍醐味かなと・・・
   半日ROMっとくわ
15名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 00:37:16 ID:WmgZN/VZ
>>14
逆に言うと一日に2回はレスすると?
16名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 02:04:47 ID:xy3LmugD
キモ姉妹って兄弟の自慰を目撃したらやっぱり大興奮なんだろうか
17名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 02:09:14 ID:xkO4Qx21
自慰のオカズが泥棒猫だったら
それこそ、大興奮するだろうよ
18代理投下 ◆j3gvf0a2hI :2009/11/27(金) 02:31:39 ID:mCL+aq3V
74 : ◆ JyN1LsaiM2 2009/11/25(水) 22:12:38 ID:Q5NWnF9o
規制中ということもあり、かなり間が空きましたが投下します。
時間経過と視点が変わったりするので読みづらいかもしれません。
19いつかのソラ ◆j3gvf0a2hI :2009/11/27(金) 02:32:49 ID:mCL+aq3V
〈11〉

 寝覚めは悪くなかった。
 睡眠時間はさほど長くはなかったのだが、体の調子は悪くない。
「ふぁぁぁ〜〜〜」
 欠伸が妙に響いて驚いた。
 簡素な部屋には布団と……布団と毛布しかないな。
 あれ、なんかおかしい。
 改めてこの部屋を見回して……そうやって、やっと納得する。

 ああ、夢ではなかったのだと。

 思い返すと昨日は異常だった。
 姉は情緒不安定になってしまうし、妹は妹で寝たままだし、友人は未来から来た妹だと言い張る。
 その上、昨夜は…………ああ、もう!!
 頭の中を引っ掻き回されて、上手く整理しておかないとおかしくなりそうだ。
 そういえば、一番の頭痛の種が見当たらない。
 今日、あいつには聞かなくてはならないことがたくさんある。
 さっさととっ捕まえていろいろとゲロさせなければ、どうにも明日からの寝つきが悪くなりそうだ。
 最後の記憶では確かに隣にいたはず。
 起き上がって、部屋の外に出て呼びかけてみても反応がない。
 二人の紗那が眠っていた寝室には小さい紗那が眠っているだけで、床に敷いてあった布団も片付けられていた。
 廊下にも、玄関にも、浴室や台所、リビングにも紗那の姿が見当たらない。
 もぬけの殻。
 辺り一面は真っ白な壁と簡素な家具だけで、まだ片付けの上手くない紗那からすれば成長したとも言えなくはないが、
 本当にここで生活していたのかも疑わしいほど必要最低限の物しかない。

 家や部屋は主を映す鏡のようなものだと聞いたことがある。

 部屋には個人の痕跡が残るという意味らしく、
 部屋の様子から趣味や興味、特性や性分といった個性を現す記号が部屋の中から読み取れるということらしい。
 でも、この家からは紗那の個性が見えてこない。
 この空間の印象は会うたびに馬鹿を言い合っていたあの宙のイメージとはかけ離れている。
 ただ生きてる。
 それが、何も無いこの家に残された記号。

 ―――そういえば、一つだけあったな。

 リビングの棚の上。
 この広い空間でたった一つ自己主張する存在。
 本人は見られたくは無いらしいが、本当に見られたくないのなら隠して外出するだろう。
 俺だって、出かけるときはエロ本を隠して出かける。
 知られたくないなら、自衛するのは基本。
 居ない人間に言い訳をこぼしながら、棚の前まで歩を進める。
 本音を漏らせば秘密を覗き見るというよりも、何でもいいから未来の紗那を知る手がかりが欲しかった。
 『悪い』と、心の中で一言呟きながら、昨日から横倒しになったままの写真立てに指を伸ばす。
20いつかのソラ ◆j3gvf0a2hI :2009/11/27(金) 02:33:36 ID:mCL+aq3V
なんで?

 口には出さなかったものの、頭の中を疑問符が埋めてゆく。
 わざわざこの写真である理由が分からない。
 もう古くなって色褪せているけれど、俺自身もよく知っている写真。
 二人で『入園式』の看板が立てかけられた校門の前で撮ってもらったもので、
 周りの親子が記念となる写真を残している中、不真面目な兄妹が馬鹿みたいな笑顔で思いっきりピースしている写真。
 こんなものが入ってるなんて思わなかった。
 期待していたのは未来の写真で、今よりもさらに昔の写真だとは思ってもみなかった。
 まぁ、俺からしてみればつい最近の写真ではあるが、
 この写真から読み取れるのは一年くらい前の写真にしてはそれ以上の年期を感じるということくらい。
 おそらくこの写真は紗那が未来から持ってきたものなのだろう。
 何度か取り出しては手にとって眺めているうちに手の油が染み込んで、写真の左隅は独特の色調に変色している。

 じゃあ、裏側はどうなってる?

 取り出した形跡があるなら、その理由は裏にあるかもしれない。 
 写真立て裏返して、止め具を外す。
 滑らかに動くところをみると、やはり何度か取り出しているのだろう。
 ぴったりとはまった裏地の木の板のわずかな隙間に爪を引っ掛けて、ゆっくりと力を込める。

『バイバイ』

 空白だらけの写真の裏側には真新しいインクでそれだけが残されていて、理由もなく全身が震えた。
「意味わかんねぇし」
 突然のゴールに膝が抜けそうになった。
 俺が教えた言葉だから、本当はこの『バイバイ』の意味をよく知っている。
 多分、あいつはもう帰ってこない。
 この部屋にも、俺の前にも……。
 俺たちが兄妹だったのはほんの一瞬で、たった一晩であっけなく終わった。

 夢から―――醒めてしまった。

「……なんでだ」
 やり場のない感情を止められない。
 答えてくれる人間が帰ってこないと知っていても、問いかける。
「助けが欲しいんじゃなかったのか?」
 だから今になって正体を明かした。
 本当に信じられる味方が必要だから、俺だった。
 違うのかよ。
「頼ってくれよ……」
 これでも一生懸命やってきたつもりだ。
 足りないながら紗那とはちゃんと向き合ってきた。まっすぐに育って欲しかったから、意地を張ってきた。
 少なくとも現在までは。
 それでも足りなかったのか? それとも、未来の俺は紗那の信用を裏切るようなことをしたのだろうか?
 考え始めるとキリがない。
「じゃあ、もう知らねーよ」
 もう子供じゃない。
 単純にそういうことなのかもしれない。
 未来の紗那はもう俺の手を離れているというだけ話。
 紗那が自分で出した結論がこの状態。
 そう思うことで気分を落ち着かせようとするけれど……そうじゃない。
21いつかのソラ ◆j3gvf0a2hI :2009/11/27(金) 02:34:05 ID:mCL+aq3V
悔しかった。

 紗那に気を使われたことが悔しい。
 そういう付き合い方はしてこなかった。
 だから、なさけなくて、悔しい。
 でも、俺は紗那が苦しんでいることを知っている。だったら……

「………………なめるなよ」

 このままで終わらせない。
 あの愚妹にはまだ聞きたいことがある。
 巻き込んだのだからそれくらいの責任は果たしてもらう。
 それに……
 本当は紗那にも、まだ伝えたいことがあったはずなんだ。
 でなければ、こんな見つかるような場所に言葉を残したりなんかしない。
 まったく、何年紗那の兄貴をやってると思ってるんだ。
 姿に惑わされて、見るべきところを見ていなかった。
 きちんと向き合えたはずなのに、心の何処かで有り得ないって誤魔化そうとしてた。

 ならば今度は、どんな姿であろうと信じてやる。

 紗那は妹で、大切な家族だ。
 生まれた頃はまだ子供の腕にさえ余るくらい小さくて初めて抱いたときはひどく恐ろしかったのを覚えてる。
 こんなに小さいのに呼吸をして、生きていた。
 触れ合って肌から伝わる鼓動と温もりでそれを理解すると、今度はその小さな身体がとても重く感じた。
 重いくせに粗末に扱えば簡単に壊れてしまいそうで、ベットに寝かせるだけでもすごく気を使った。
 そして彼女が家に来てからは大変だった。
 あやしたり、オムツを替えたり、夜中にたたき起こされたり、同じ時間を共有しながら、
 やっとたどたどしくも言葉をしゃべれるようになったかと思えば、今では二足歩行して意味も分かってるのか知れないようなマセた事を言う。
 たくさん困らせられたけれど、思い返せばあっという間。
 ちょっとした成長に喜びを与えてくれて、今も特異な環境にも負けずに元気に明るく育ってくれている。
 だから、たとえ俺の知らない過去を背負って多少性格や見た目が変わってしまっていても、俺の妹であるならば何も変わりはない。
 俺の自慢の妹だ。
 守るのも、助けるのも、心配するのも、お節介を焼くのも、当たり前なんだ。

「すぐに追いつく」

 着替えを済ませて大急ぎで準備を整えた後、まだ眠ってる小さな紗那にそう伝えて部屋から駆け出した。
22いつかのソラ ◆j3gvf0a2hI :2009/11/27(金) 02:34:32 ID:mCL+aq3V
〈××××〉

 透き通るような青。
 高くて広くて、どこか遠い。
 ここからでは届かない空。
 辺りからは草の匂い。
 ここは馴染みの場所であり、忌むべき場所でもある。

「ごめんね、お兄ちゃん。また来ちゃった」

 学校からの帰り道。
 私が毎日ここに通っていたのは、ここ以外には私の居場所が無いからだった。
 友人や先生。
 知り合い。
 そして、家族。
 みんな私を心配してくれている。
 あの事件から四年。
 全ての始まりからすればもう十年近くになる。

「今日もいつもどおりだった」

 あの事件の後から私を取り巻く環境は様変わりした。
 仕事中毒だった両親はようやく家庭を顧みるようになり、今では不出来ではあるがそれなりの家庭の形を取り戻しつつある。
 内心ではそれが不愉快ではあるが、周りから見ればそうは映らないらしい。
 不幸を背負って支えあう家族。
 同情を惹く存在となった私達家族に本当の事情を知らないものは皆、親切という名のお節介を焼いてくる。

『大丈夫?』『大変でしょう?』『がんばってね』『苦しかったら頼ってもいいんだよ』

 はっきり言って、反吐が出る。
 どいつもこいつも私をネタにオナニーしてるだけだ。
 失意のどん底でもがき苦しんでいる哀れな少女を救って、
 生きているうちに何か善い事を一つでもしたって自己満足に浸りたいだけの偽善者。
 そのくせ、本気で私と対峙する度胸もない。
 有るのは鬱陶しい好奇心と刺激に対する飢え。
 心と腹の底から私を救いたいのなら、その冗談みたいな顔面で笑いながら全員首から上を掻っ捌いて死んでくれ。
 でなければ、その傲慢と欲深さとくだらない自尊心が腹の中で程好く醗酵して今にも臭い立ちそうなその口を閉じていて欲しい。

 悪人は上っ面の笑顔で近づいてくる。
 本人に自覚がなくとも同じ顔をして近づいてくるのなら、そいつは同類だ。
 そして、私の周りには悪人しか居ない。
23いつかのソラ ◆j3gvf0a2hI :2009/11/27(金) 02:34:57 ID:mCL+aq3V
だから―――私はいつだって平気な振りをしてきた。

 俯いてしまわないように顔を上げて、感情を殺して笑顔を貼り付けて、思い出させないように明るく振舞う。
 弱いからこそ興味を誘う。救ってやりたいなんて勘違いをする。
 ならば、平気な顔をしていればいい。
 自分が必要とされていないと知れば、そういう奴等は興味を失う。
 幸いにも私は上手くこなせた。
 そして、すぐに慣れた。
 形だけの日常は底が浅くて、泳ぐのも難しくはない。
 流れに身を任せれば、幸せではなくとも生きてゆくのに不自由もない。
 ただその影で、私はわからなくなってしまった。
 いつまで続ければいいかさえわからない演技と本当の自分の境界。

 誰も、本当の私を知らない。
 誰も、本当の私に気づかない。
 誰も、本当の私には近づかない。

 本当の私は、とうに錆付いてしまっている。
 本当の私を見てくれていた人が居なくなってしまった四年前から。

「お兄ちゃん、もう明日だから……ここに来るのはこれで最後になるかもしれないね」

 返事は無い。
 それもそのはず、兄はここにはいない。ここにあるのは兄を表すものだけだ。

「多分……これからする事をお兄ちゃんが許してくれないのは知ってる。
 だから許してもらおうとは思ってないし、助けて欲しいなんて思わない」

 また、私は嘘をついた。
 別に本心を伝えてもかまわないのに、私にはそれができない。
 いつしか私は嘘をつくのにも慣れてしまっていた。

「ただ、これでもう最後になるかもしれないから……挨拶だけしておきたかったの」

 下手糞な嘘。自分勝手な言い分だとは思う。
 でも、こんな我が儘を聞いてくれそうなのはやっぱり兄しかいなかった。

「バイバイ。そっちに行くことになったらよろしくね」

 私に答えるように凪いでいた風が動き出す。
 柔らかな風が頬に触れるとなんだか涙が出そうになった。

「さよなら」

 別れの言葉。
 風に揺られて言の葉が遥か高く舞い上がる。
 最後にもう一度、兄の墓に手を振ってその場を後にした。
24いつかのソラ ◆j3gvf0a2hI :2009/11/27(金) 02:35:23 ID:mCL+aq3V
〈0.3〉

 こちらに来てから一週間。
 ここでの生活には相変わらず馴染めない。
 知っている町並み。
 知っている人々。
 知っている世界。
 あらかじめ得ておいた情報や未来の技術のおかげで生活には困らないし、何一つ不自由は無い。
 むしろ、無遠慮な心配をする人達から解放されて自由になったくらいだ。

 けれど、ここへ来ても何も変わらなかった。

 私はここに存在するはずのない人間。
 本来あるはずのないパズルの1ピース。
 当てはまる場所などなく、完成した絵の中にさえ居場所がない。
 誰も私を知らないということは、誰とも私は繋がっていないということ。
 逃げてきた先は今まで以上の孤独を突きつけてくる。
 何処に居ようと人は独りで、思い出にさえ居場所などないのだと。


 ただ、もう一度会いたい。


 初めはただその一念だけだった。
 もう一度顔を見ればそれで満足。
 その為にここに来た。
 だから、こちらに着いてからすぐに私は『実家』に向かった。
 なにしろ、ここは私の故郷。
 一歩踏み出すごとに記憶にあった懐かしい町並みが蘇る。
 進んだ少子化で取り壊しになる前の幼稚園。
 公園のブランコのペンキもまだ新しい。
 よくお菓子をくれた近所のおばあちゃんもまだ生きてる。
 擦れていた記憶が彩りを帯びてゆき、胸の奥で眠っていたはず感情が歓声を上げる。
 商店街から住宅街へ向かう坂を息を切らせながら駆け登り、
 早く、速くと急かしてくる本能のままに加速度を上げて最短距離を駆け抜ける。
 風を切って、風を切って。
 アスファルトを踏みしめ、住宅街の一角でブレーキを掛けた。
 表札を見るまでもない。
 ここだ。
 そのまま玄関を眺めて、どのくらい呆けていたかは覚えていない。
 そして、待ち望んだ瞬間はこちらの都合など考えてはくれなかった。
「んじゃ、行ってくるから」
 突然玄関から出てきた彼は家に居る“どちらか”に軽く手を振ると、身を翻してこちらに向かってくる。
 心の準備なんて悠長なことを言う暇も無く、ごく自然な足取りで私達は擦れ違い―――その瞬間、嬉しくて体が震えた。
 当たり前だけれど、こちらではまだ生きている。
 その当たり前が大切すぎて息が詰まった。

 でも、次の瞬間に私は対峙する事になる。
 視界の端、足元を駆け抜けてゆく小さな現実と。
25いつかのソラ ◆j3gvf0a2hI :2009/11/27(金) 02:36:14 ID:mCL+aq3V
「こら!! 紗那、ズボンを引っ張るなよ」
「だってきょ〜はおやすみなんだよ!!」
 玄関から飛び出してきた少女が兄を行かせまいとズボンの裾を強く引っ張る。
「今日は練習があるんだってば」
「いっつもれんしゅーしてるんだから、たまにはあそんでよぅ!!」
「ちゃんと帰ったら相手してやるからさ。だから、ほら」
「うそつき!! かいしょ〜なし!!」
「そんな言葉、どこで覚えてくるんだよ……」
 困ったような呆れたような表情で兄は少女を引き剥がす。
「だっでぇ……さいきんぜんぜんあそんでくれない……」
 既に泣きそうになっている少女はもう一度、兄のズボンを掴み直す。
 あれは当時の徹底抗戦の構えなんだろう。
「あのな、お兄ちゃんは試合が近いから忙しいのは話したよな?」
 黙って俯いた少女はふるふると首を横に振る。
「ほんとに?」
「うぅ……」
 しばらく黙りこくっていた少女は、やがて名残惜しむように握っていた裾をゆっくりと放す。
「……ごめんなさい」
 鼻声で降参する少女の頭を兄は荒い手つきでぐしゃぐしゃと掻き回す。
「まぁ、確かに最近構ってやれなかったもんな。
 試合が終わったらちゃんと遊びに連れて行くから、いい子にしてお姉ちゃんと待ってろ」
 乱れた少女の髪を手櫛で整えると、まだ少し不満顔の少女の頬を横に引っ張って無理やり笑わせる。
「ちゃんと約束したからな。それじゃ、お兄ちゃんいってくるな」
「………………いっへらっひゃい」
 少し硬い手のひらがご褒美といわんばかりに少女の頭を優しく撫でる。
 兄が幼い私に向ける笑顔。
 包み込んでくれるような優しい声音。
 真っ直ぐな眼差し。
 失ったすべてがそこにあって……まぶしすぎて目を開けていられなくなる。

 あの頃は……
 それが当たり前のように、いつまでも続くと信じてた。

 少女のあんなに幸せそうな笑顔が滑稽に見える。
 あの娘はまだ知らない。その日常が儚いものだなんて。
 そんな笑顔はそのうちできなくなる。笑い方さえも忘れてしまう。
 そうして今の私みたいに指をくわえて見ていることしかできなくなるのだ。

 あの二階の窓から恨めしそうに幸福そうな兄妹を見下ろす影と同じように。
26いつかのソラ ◆j3gvf0a2hI :2009/11/27(金) 02:37:06 ID:mCL+aq3V
〈0.5〉

 22回。

 これはこの一週間で私と彼がすれ違った回数。
 一度も気づいてもらえず、目を合わせることさえなかった。

 馬鹿なことをしている。

 頭では重々承知している。
 私と兄はここでは他人。
 兄の世界に私は居ないのに―――私は愚行を繰り返す。

 気付いてもらってどうしたいの?

 真実を話せば気味悪がられるだけだし、無理に干渉して歴史を変えれば私という存在は危うくなる。
 今は息を潜めて待つしかない。
 私は私の要事だけ済ませてしまえばいい。
 それが一番安全で効率の良い模範解答。
 情報収集の期間を長めに確保したのはそのためだ。
 しかし私はもう何日も脳が導き出す正解を放り出してストーカー紛いのことをしている。
 正体がばれないようにと髪型とメガネで変装して、そのくせ事ある毎に先回りをして兄を待ち構える。
 姉の目もあるから、あまり目立った行動は危険なはずなのに……これくらいならまだ大丈夫だと自分で引いたボーダーラインを何度も修正する。
 偶然に目が合いそうになったりすると一喜一憂して……帰り着く頃には疲れだけが身体を支配している。

 私、なにやってるんだろ?

 矛盾だらけで少しも美しくない。
 わかっていて……今回は23回目。

 つい先日に兄の試合は終わっているので、日曜日の練習も午前中の軽めの調整だけのようだ。
 今回は兄と同じ学校の制服まで用意してくる周到ぶり。
 同じ学年のリボンをした見知らぬ顔が居れば、少しは興味を引くのではないかという可愛げのある罠。
 少し前の私が今の私を見たら抱腹絶倒するような光景だが、今の私は至極真剣に兄の後方に陣取る。
 あくまでさりげなく、かといって悟られないように距離を保ちながら、いつでも視界に入り込めるような位置取り。
「なぁ、一緒にメシ食って帰らないか?」
 校門でチームメイトの一人が兄の肩を叩く。
「悪い。俺、今晩メシ作らないといけないんだ」
 申し訳なさそうに断る兄に、チームメイトが不機嫌そうな顔を寄せる。
「いつもそう言って帰るよな。たまには付き合ってもいいんじゃないの?」
「俺もそうしたいんだけど……」
「だったらいいじゃん。電話すれば問題ないだろ」
 馴れ馴れしい態度で勝手に兄と肩を組んで、帰り道の方向転換を図る。
「いや、実は前から約束してて……」
「そんなに時間は取らせないって。最悪、弁当買って帰れば文句も言わないだろ。
 実はな、最近知り合った女の子のグループにオマエのファンがいてさ、ちょっと顔出してくれれば俺も助かるわけ。
 適当に話を合わせて、話が盛り上がり始めたら帰ってもいい。
 だけど、お前だって独り身なんだろ? 家事もいいけど、たまには青春したって罰は当たらないさ」
 そいつは兄を利用しようとニヤニヤと軽薄な笑顔で食い下がる。


 ねぇ、いい加減お兄ちゃんが嫌がってるのがわからないのかな?


 今にも歯を押し上げて噴出してきそうな怒りを何とか押し留める。
 ここで出て行けば全てが台無しになる。
 それに兄ならば心配ない。こんな下賎な誘惑に負けるような……
「しょうがない、ちょっとだけな」

 ―――何だろう、今の聞き間違い。
27いつかのソラ ◆j3gvf0a2hI :2009/11/27(金) 02:39:26 ID:mCL+aq3V
「よく言った!! そうと決まればじっとしている暇も惜しい!!」
 バンバンと兄の背中を叩くとそいつは携帯電話を取り出して何処かに連絡を取る。

 『約束』したのは、“私”とじゃなかったの?
 試合が終わったら遊びに連れてってくれるって先週約束したはず。

「むこうは駅前で待ってるってさ。さっさと行こうぜ」
 携帯でいくらかの会話を交わした後、そいつはまた兄と肩を組んでぐいぐいと引っ張ってゆく。
「はいはい。わかったからはしゃぐな」
「な〜に、すぐに『ちょっとだけ』なんて言えなくしてやるからか覚悟しとけよ」
 そのまま家とは逆方向に歩いてゆく二人の影を無意識のうちに忌々しげに踏みつけていた。

 あいつは邪魔。

 どうせ兄の興味を引くような存在はそこには居ない。
 先を知ってる私が言うんだから間違いは無い。
 だったらここで多少の干渉があったとしても結果が同じなら問題ない。
 歴史など知ったことか。
 たとえ幼い妹との口約束とはいえ約束は約束。きっちり守ってもらうのが道理。
 決して私は激してなんかいない。ただ、気に入らないだけだ。
 私が怒りを覚える理由なんか無い。
 おかしいな、自分はこんなに感情のある人間だっただろうか?
 こちらに来てからずっとそう、私が私じゃない気分だ。

 気配を殺し歩くこと二十分。
 駅前で三人組の女の一人が二人に手を振る。
 うるさそうな女と卑屈そうな女と頭の弱そうな女。
 どいつもこいつも兄とは釣り合いそうにない。
 おい、そこの卑屈。そんな露骨に卑しい目で兄を見るな。
 残念だけど、いかにも勝負してますってスカートの丈で誘惑したって無駄。
 なんだその猫撫で声は? 気持ちが悪い。
 さり気なく兄の横に移動しようとするな。うっとおしい。
 ああ、もう!! 鼓動がうるさい。
 出来の悪い芝居を見ている気分。結末を知っているはずなのに何でこんなにもイライラするのだろう。
 腹の奥底から食道を駆け上がってくる、熱くて濁った血溜まりのような何か。
 ―――落ち着け。
 兄の彼女になるのはもっと普通な女だったはずだ。
 私も幼い頃に数回しか会っていないけれど、あいつと違うのはわかるし、会えば思い出す。
 そうそう……ちょうど今すれ違った女みたいな―――

 え?

 まずい。
 もしかして、今日かもしれない。
 そうすると、ここに居るのはひどくまずい。
 少し離れた柱の裏から身を離し、撤収しようと振り向いた瞬間―――目の前にスッと影が差す。
28いつかのソラ ◆j3gvf0a2hI :2009/11/27(金) 02:40:05 ID:mCL+aq3V
「ねえ、ちょっと話があるんだけどいいかな?」
 身長165cm前後。歳は中年。薄毛でメタボで嫌らしい眼つき。
 一発でピンときた。
 こいつだ!!
 兄さんとその彼女を引き合わせるはずの男。
 そいつが私の目の前で行く手を阻んでいる。
「お構いなく……」
 彼女の後を追おうと早足で横をすり抜けようとした道筋をブヨブヨと膨らんだ手のひらに阻まれる。
「いや、ちょっと話を聞いて貰うだけでいいんだけどね」
 そのままアブラギッシュな視線でねめつけられて、先程まで身を隠していた柱に背中を預ける状態にまで押し切られてしまう。
 腕の隙間、そこから覗く後ろ姿は次第に遠ざかってゆく行く。

 まずい!?
 こんなところで過去を変えるのはまずい。変えなきゃいけないのはもう少し先だ。
 まずい!?
 調子に乗りすぎた。なんでこんな馬鹿な真似をしたんだろう。
 まずいまずい!!
 違う。お前が絡む相手は私じゃない!! その汚い手を退けてさっさとあの娘を追いかけろ!!
 まずい。
 早くしないと、過去が変わる……

 その瞬間、ここに来て始めて目が合った。

「おい、何見てるんだよ? さっさと行こうぜ」
「えっ!? いや、あれ」
「いいから行きましょう」
 私と兄の繋がった視線はあの卑屈に断ち切られ、そのまま力ずくで兄が引きずられてゆく。
 彼女になるはず娘はこちらをチラッと見て不憫そうな目を向け、それを振り払うように背を向けて歩き出す。
 そして、兄と私とあの娘の距離はどんどん離れてゆく。



 終わった。

 もう今更修復できるような状況じゃない。
 こんな凡ミスで私はたった一度のかけがえのないチャンスを失った。
 ……いや、もしかしたら、これで助かるかもしれない。
 兄に彼女が居なければ原因は発現しない。
 ……それこそ馬鹿な考えだな、アレはそんなに甘くはない。
 きっと兄は殺される。
 それが早くなったか遅くなったか、予想が出来なくなっただけの話。
 その証明が“ここ”にある。

 もう一度兄達が居た方向を見やると、一団は姿を消していた。
 兄は私を助けない。
 私はあの娘ではないのだから。

「ごめんね……お兄ちゃん……」

 救えなかった。
 そのために来たのに、私は……
29いつかのソラ ◆j3gvf0a2hI :2009/11/27(金) 02:41:56 ID:mCL+aq3V
「いい場所知ってるから、そこで話そうか」
 私の了解も得ずに、腐った肉塊が肩を抱く。
 気持ち悪い。
 不愉快だけど、それを振り払う気力さえ湧いてこない。
 お尻の辺りを脂ぎった指先が這い回ると吐き気がする。
 でも、もういいのかもしれない。
 もう私はここに存在する意義さえ失っている。

「ちょっと、おっさん」

 声が降ってきた。
 なんだかとても安心する声。
 なんだろう……
 顔を上げると、彼がいた。

「へぇ……おっさん課長なんだな。いいのか? 課長がこんなことしてさ」
「な!?」
 彼は名刺入れを課長らしき薄毛に付き返す。
「財布と一緒にポケットからはみ出てたぞ。普通は胸元に入れとくもんだろうに」
「ど、どうするつもりだ」
「一枚貰っとく。ついでに友達を離して欲しいな………課長?」
 一連のやり取りも、醜く走り去って行く後姿も視界には入ってこなかった。
 ただ兄の顔を間近で見つめながら一つの言葉を思い浮かべる。

 運命。

 安っぽい言葉ではあるけれど、私はそれを疑ったりはしなかった。
 私達は本来なら意図して出会うことの決してできない二人。
 こんな素敵な偶然に理由を付けるのならば、それ以外の言葉は見つからない。
 だから、これはやっぱり運命という解釈で間違いない。
30いつかのソラ ◆j3gvf0a2hI :2009/11/27(金) 02:42:31 ID:mCL+aq3V
「………」
 私は何かを呟いた。
 だけど、少しも感情が言葉に乗らない。湿った空気が唇を薄く湿らせただけ。
「とんだ島○作だったな」
 兄は奪った名刺を私に渡す。
「ん? 前に会ったことあるか?」
 声が出ないので、思わず首を横に振ると勘違いした兄が少し距離をとる。
「ああ、悪い。これじゃ下手なナンパだな。
 でもどっかであったような気がするんだよな。既知感ってやつ? ま、学年も同じみたいだから当然か」
 照れ笑いしながら兄はスッと手を上げて踵を返す。
「まぁ、よろしくな。俺はB組の紅崎」
 何気なく兄に微笑みかけられた。

 その刹那―――衝撃が疾く、雷のように私の心臓を貫いていった。

 ああ、そっか。
 私は私にさえ嘘をついていた。
 顔を見れば満足、ただ救えればいいだなんて、そんな理想論で誤魔化していた。
 兄が私に向けていたあの笑顔……私はどうしてもあれが欲しかった。
 私の手元に取り戻したかった。

 やっと気づいた。
 私、恋してる。

 気づいてしまった瞬間から、錆付いていた乙女ココロが動き出す。
 最初は錆を落とすようにギシギシと不快な音をたてていた心臓が次第にテンポを上げて高鳴ってゆく。
「ち、近いうちに礼に行くから」
 伝えたいはずの感謝の言葉が素直に出てこない。
 出てきたのは搾り出すようなつよがり。これでは少しも可愛くない。
「いや、そういうのは期待してないから」
 話しかけられるとは思ってなかったのか少し驚いた表情で手を横に振ると、兄は早足で家の方角へ帰ってゆく。
 どうやら、私は体裁良く家に帰るための言い訳にされたらしい。
 それでもかまわない。
 やっぱりあの人は私のお兄ちゃんだ。
 駅前の人混みに霞んでゆく後姿。
 ずっと追いかけてた懐かしい背中を私は見えなくなるまで眺めていた。
31代理投下 ◆j3gvf0a2hI :2009/11/27(金) 02:45:51 ID:mCL+aq3V
86 : ◆ JyN1LsaiM2 2009/11/25(水) 22:26:56 ID:Q5NWnF9o
ここまでです。
前回と話が食い違っている部分は宙の説明にいくつかの嘘が混じっているからです。
思った以上に寄り道しましたが、次回が最後になります。

キモ成分は薄口なので箸休めになるような作品になれば良いとおもってます。

──────────

>>29-30は本来1レスですが、途中で改行が多すぎると怒られたので独断で2レスに分けました
ご了承ください
32名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 06:25:32 ID:p4h9JTkB
乙です!楽しみにしてる作品の一つだから、次回で最終回とか寂しいな。
33名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 11:05:52 ID:0ZiWvqGF
>>32
まぁ、寂しいのもわかるけど、最終話があるから期待も膨らむんだよ。
34名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 14:30:14 ID:0GjNrQls
最終回を迎えられるだけ有難い事だと思わなきゃ…
35名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 14:46:05 ID:tVNc9nxu
この雰囲気好きだわー。
代理の人もGJです。
完結してくれるのは貴重ですし嬉しいですね。
36名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 16:45:05 ID:P+1TtdlU
兄かっこいいな。これは惚れるわ。
37名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 17:47:51 ID:GHy5jL0V
>>34
その通りですね。
 でも完結が寂しいですね。
38血啜青眼 前篇:2009/11/27(金) 20:26:39 ID:A87FtMBq
投下します。現代剣術ものですが全然斬り合いません。
前篇後編でさくりと終わる予定です。
39血啜青眼 前篇:2009/11/27(金) 20:28:11 ID:A87FtMBq
「……こいつはひどいな」
鼻孔に充満する腐ったような臭いに顔をしかめながら、篠北署の刑事、北沢は呟いた。
深夜の住宅街である。
北沢のいる建物の外では二台のパトカーが横付け、赤色灯で辺りを照らしているはずだった。
何事かと付近住民が野次馬に押し掛けているはずだが、その相手をするのはこの地区の巡査の仕事だ。北沢の相手は目の前にいる二人である。
現場は道場だった。木造の板張り。昨今流行の、雑居ビルのフロアを拠点とするようなところではない。本来なら木の匂いのするであろう建物だ。
そんな中で、辺りを動き回る鑑識の青い制服はひどく場違いだった。着流し姿の北沢の方がまだ馴染んでいる。
広さは小学校の教室を二つ、三つ足した程度。剣術の稽古をするなら同時に十人程度が限度だろう。素振りだけなら倍は入ろうが。
正面には神棚。奉納されているはずの刀は、今は外されている。向かって左側は母屋に続く扉。右側の壁には、門下生の名札がずらりと並んでいる。
北沢は右側の壁際に寄り、最も神棚寄りにある名札の一枚を手に取った。
師範、浅賀行正。
この道場の主であり、浅賀流剣術の元締であり、そして、道場の真ん中で死んでいる男でもある。
仏は二人だった。共に道場の真ん中に伏して、板張りに血を染み込ませている。
一人は浅賀行正。年の頃は60前後。紺色の作務衣に包まれた体躯は、熊の如く鍛え上げられている。
もちろん全盛期と比べれば多少は衰えているが、それでもそこらの若者とは比べ物にならないだろう。彼が屈強の剣術使いであった証である。
もっとも、彼を知っていたからと云って判別がつくとは限らなかっただろう。
浅賀行正の顔は、縦真っ二つに断ち割られていた。
二つに割れた頭蓋骨の断面から、血と脳漿がどろりと溢れ出している。この場所を覆う耐え難い臭いの半分は、それが原因だった。
「……ったく、浅賀の爺さん。最後の最後まで剣術家かよ」
無残な躯を晒す浅賀行正の右手には、一振りの太刀が握られていた。つくりから見て、神棚に奉じられていたものに間違いない。死してなお刀を手放すまいとする姿は、悪鬼の類にも通じて見える。
損傷は顔だけではない。左手の指が、人差し指から小指まで、第二関節の辺りで一直線に断ち切られていた。その先端はぼろぼろと床に四つ転がっている。しばらくソーセージは食いたくないな、と北沢はちらりと思った。
北沢は生前の浅賀行正を良く知っていた。
それは傷害事件を度々起こす(決まって正当防衛ではあるが)のに加え、かつて北沢自身がこの道場に通っていたことがあるのだ。つまり門下生になる、もう二十年も前の話だが。
北沢の知る、浅賀行正という男は、豪放磊落を絵に描いたような男だった。道場でも署でも、一度もやり込めた試しがない。常にふてぶてしい態度を崩さない老人だった。
それがこうして顔を割られて、無惨な死体になっている――――
「……すみませんでした北沢さん」
「おう、榊」
よろよろと、気分を悪くしていた後輩の刑事が、北沢の横に戻ってきた。服装は北沢とは違いスラックスにYシャツ。その顔色はまだ青い。
彼は配属されてまだ半年の新米刑事だった。ベテランの北沢とは二十年以上の経験差がある。
「しっかりしろよお、榊。殺しも辻も初めてじゃあないだろが」
「はい、そうなんですが……さすがにここまでひどいのは……」
殺しは殺人事件、辻は刀剣類による傷害事件を指す。
榊が顔をしかめて見やるのは、老人ではなくもう一つの方の死体だった。
着物を着た女性だった。年の頃は四十前後。顔に傷はなく、籐は立っていたが中々の美人だと言えた。
腹を裂かれ、はらわた――小腸か大腸――を周囲にぶちまけている女に、そういう感想を抱ければ、だが。
女の名前は浅賀春江。浅賀行正の娘である。それは既に確認が取れていた。
彼女の腹は無惨にも抉られ、着物ごとぐちゃぐちゃになり、周囲には絡まったロープのように腸が飛び出し千切れている。死体を中心に半径3mの範囲では血の雨でも降ったかのように血痕が散らばっていた。
道場に充満する、血の臭いをも凌駕する腐敗臭は、撒き散らされた内蔵が主な原因だった。無惨な躯と併せて、気分が悪くなるのも仕方がない。
だが北沢は平然としたものだ。治安が悪化した昨今、辻斬り事件など珍しくもない。
「そうだな……まず爺さんを叩っ斬って、それから女に手をかけて嬲り殺したってところか」
「やっぱりこれ、辻なんすか?」
「ああ。腹のも頭のも、こりゃ刀傷だ。特に爺さんの方は、見事な唐竹割だな」
「……よくわからないんすけど、刀でこんなふうに、人の頭って斬れるもんなんすか?」
「おお、いいところに目えつけたな。無理とは言わんが、難しいだろうな」
40血啜青眼 前篇:2009/11/27(金) 20:28:48 ID:A87FtMBq
北沢は着流しの袖をまさぐる。気付いた榊が、先輩の名前を呼んで注意を促した。現場で喫煙など当然法度である。
ベテラン刑事は舌打ちし、手にした名札を弄んだ。
「日本刀ってのは刃筋を立てなきゃどうにも斬れねえ。どんな怪力で殴ろうが、巻藁一本斬れねえのさ」
「はあ……それじゃ、下手人も剣術家ってことですか?」
「それも相当な、だな。考えてもみろ。巻き藁じゃあるまいし、浅賀の爺さんも黙って斬られるわけがないだろ」
「じゃあ、まずその線で当たってみるべきっすね。この近辺で、強い剣術家っと」
榊がカリカリと、メモ帳に何やら書き込む。その様を見て、北沢は僅かに嘆息した。
剣術家にとって強い弱いなどと言うものは、本質的には存在しないのだ。たとえ無敗の者とて、言うなれば薄氷の上の勝利を重ねてきたようなものだ。
何故ならば、剣術の勝負というものは機を奪い合うもの。そしてその機が本当か見せかけか、見抜けるか否かは運と観察力にかかっている。見誤れば――負ける。
確かに浅賀行正は屈強の剣術家であった。技の冴えも眼力も、北沢が知る限り随一である。
しかしそれでも、体調が悪い時もある、たまたま機を見抜けなかった時や、あるいは逆に相手が上手な時もあるだろう。
これが例えばパワーとスピードのぶつかり合いならば、なるほど強い方ははっきりしているのかもしれない。だが剣術の勝利とはそういうものではないのだ。
とはいえ北沢は、そういった講釈を長々と後輩に垂れることはなかった。どちらにしろ、素人に毛の生えたような人間に斬られるような人間ではないのだ。浅賀行正という男は
ただ
「……どっちにしろ、この道場も終わりかもな」
「え、そうなんですか?」
きょとんとした顔で問い返す榊に、北沢は舌打ちをしかけた。この青年は空手道場に通っているはずだった。確か国内でも有数の規模を誇る。
ならばわからないのも無理はないかもしれない。
「考えてもみろ。こういう小さな道場が、どうして門下生を集められるっつったら理由は一つしかない」
学ぶ環境が良いとか、道場主の性格が良いとか、そういうのは関係ない。そんなもので門下生は来ないし、もっと大きな、道場をいくつも持っているような大流派に行く。
あそこの流派は強い――――それだけが支えである。
風評が全てだ。
浅賀流剣術という、この流派自体、あの老人が興したものである。正確には、それまで修めていた流派から一流を起こしたということだ。
そして浅賀行正は、あの廃都東京で暴れていたと言われている男なのだ(少なくとも生きて戻ったことは間違いない)。それだけでなく、実際にいくつもの大道場に挑んでは武勇を知らしめている。
それらの蛮勇あるいは愚行と呼ばれかねない行為も、全て一門の名を上げ、門下生を集めるためだろう。少なくとも、流派が組織として確立するまでは、そういう風評は必要なのだ。
だからこそ武術流派は、風評に拘る。それは面子などではなく、もっと切実に経済的な事情からだ。
それでは、その風評が破られてしまったらどうなるか。
例えば、師範が他の剣術家に斬り殺されでもしたのなら。
北沢は、手の中で弄んでいた師範の名札を壁に掛け直した。その右側には、ずらりと門下生の札が並んでいる。
「この名札のうち、何枚が残るか。この道場が果たして残るか……そういう問題になるだろうな」
「じゃあ、もしかしてそれを狙ったヤマなんじゃないんですか!? それなら立派に動機ですよ! まず同業者を当たりましょう」
「……まあ、そうなんだがな」
北沢は無性に煙草が吸いたくなった。ここでは駄目だ、まず外に出よう。現場を見るのはこれで、十分だ。
彼にとってこの道場は青春の一部だった。まだ榊程の年齢だった自分たち。道場主の一人娘である春江は、門下生にとっては憧れだった。結局、その想いは他の男が射止めたにしても。
もちろん態度としては、この新米の方が正しいのだろう。浅賀道場がどうなろうが、刑事としての職務には関係ない。切り離して考えるべきなのだ。
それが自らの過去にあった青春の終焉を示すものだとしても。
北沢は踵を返して、道場の外に向かった。慌ててついてくる後輩に、いつもの手順を確認する。
「第一発見は?」
「ええと、浅賀徹。浅賀行正の孫で、浅賀春菜の息子ですね」




血啜青眼

前篇
41血啜青眼 前篇:2009/11/27(金) 20:29:54 ID:A87FtMBq
西暦2000年を過ぎたころ、とくに武道道場が盛況を示したことについては、テロリズムの流行を抜きにしては語れない。
合衆国の主導による西側諸国の中東情勢への介入は、西側大都市を狙った中東勢力のテロ攻撃を招いた。それに対して西側は制裁攻撃を行い、中東はさらなるテロで応じた。
救いのない連鎖が始まったのである。
日本も攻撃対象になり、名古屋、大阪、福岡といった都市に大規模テロを受けた。
これに加えてアジア系の外国人犯罪者が急増したこともあり、世情は一気に不安化した。
このことが国民の危機管理意識を煽り、護身術を教える武道道場の繁栄に繋がったのだ。
戦後三期続いた石馬政権の政策により、元々武道が推奨されていたこと、刀剣類の規制が大幅に緩和された下地はあったのだろう。
爆弾テロに対して刀剣の扱い方や人の殴り方は役に立たないが、個人レベルの犯罪者に対する備えとしてならそれなりに意味はある。
また危機に臨んでの気構えを学べる、護身術を身につけることで安心感を得られる、といった面も重要だった。
かくして、治安の悪化に伴って諸流派の武道道場は乱立し、幕末以来の発展期を迎えていた。
――――とはいえ。
商売として見るのなら、武道道場も客の奪い合いである。武道を志す層の限られた人間を、まず剣術槍術空手柔道等というジャンルで分け合い、更にそのパイを諸流派が奪い合うのだ。
剣術道場は(幕末期がそうであったように)武術として選択する人間が多く、パイは大きかったがその分流派も多く競争は熾烈だった。
浅賀流剣術道場も多分に洩れずそういった争いはしてきた。最大のライバルは、川向うにある一刀流の大道場である。
いや、規模を考えればライバルにもならない。それでも浅賀流がそれなりの門下生を向こうから奪えていたのは、師範の勇名に依るところが多かったのだ。
……過去形である。

かたり、かたりと、静かな道場に木札の当たる音が規則正しく響いている。
それは、俺が壁に掛けられた門下生の名札を一つずつ外していく音だった。
祖父と母の死から一カ月。
既に道場は綺麗に掃除されていた。染みついていた血の臭いも、板張りの痕も拭い去られている。二人の遺体は司法解剖が終わり、葬儀も済み、既に荼毘に服している。
道場は事件が終わる前の静寂を取り戻していた。
だがそれは、以前の静謐な静かさではなく、がらんとした空虚な静けさだった。
「……ふう」
嘆息する。
不要な名札を外し終わる。残った札は、両手の指で数えられる程しかなかった。手元の札はその倍に上る。
外した名札の主は、全員この一カ月で道場を辞めている。残った人間も、いつ去るか分からない。
門下生が減れば、月謝即ち収入が減る。収入が減れば道場が立ち行かなくなる。そうなれば道場を畳むしかない。
この先のことを考える必要があった。
道場に漂う、空虚な雰囲気は。あまりにも巨大な祖父の死と、先行きの暗さが所以するものだったのかもしれない。
名札を床に置く。壁に掛けられた木刀を、取る。
道場の真ん中に立つ。神棚に一礼し、上段に構える。素振りを開始。
「ふっ……ふっ……」
風切り音が道場を支配する。
体に染みついた術理のみで、無心に素振りをする。
――――……
祖父と母の司法解剖は終わり、葬儀も済み、荼毘に服した。四十九日を待たずして、道場は再開していた。
師範は俺が継いでいた。祖父の孫、だからと言ってしまえばそれまで、だが。
その旨は既に門下生たちには伝えてある。
だがそれでも、この一カ月で門下生のほとんどは去って行った。
つまり……この俺では、浅賀流剣術の師範として役不足だということだ。少なくとも、去って行った彼らはそう判断したからこそ去ったのだろう。
それに憤慨してくれた人もいる。俺を支えると言ってくれた人もいる。
けれど俺には、去っていった人たちを責めることはできない。彼等が道場に求めているのは強さである以上、当然のことなのだ。
俺よりも年上で、腕の立つ門下生もいる。ならばそういった人に、師範を譲るべきなのかもしれない。
だが、それは
――――……
腕が上がらなくなって、木刀での素振りを終える。
気付けば、予定していた回数を大幅に越えていた。600回は振っただろうか。
俺が腕を休めるのと同時、横合いから声がかかった。素振りが終わるのを待っていたのだろう。

「徹兄様」

42血啜青眼 前篇:2009/11/27(金) 20:30:41 ID:A87FtMBq
夜だ。
何時からそこにいたのだろうか。彼女が母屋から道場に入ってくるのも気付かなかったらしい。不覚だ。
浅賀夜。二つ違いの、血の繋がりのない、俺の妹。
艶やかな黒髪は肩で切り揃えられ、切れ長の瞳はまっすぐに俺を見据えてきている。
女性としては長身な方だが、整った顔立ちと落ち着いた雰囲気が、彼女をひとかど以上の大和撫子に仕立てていた。
今は紺無地の着物に割烹着姿だが、しっかりと立つその姿の美しさは些かも損なわれていない。
時刻は昼前。彼女の体からは僅かに味噌の匂いがした。
「昼食か」
「はい」
「わかった。体を拭いてから行こう」
「どうぞ」
妹が近づき、手に持ったタオルをふわりと俺の首に掛ける。
そのまま離れるかと思いきや、夜はタオルの両端を握ったまま、俺の胸元に額を当てた。
艶やかな黒髪が、顔を下げた俺の視界を占める。乱れた道着の隙間から当たる妹の腕が、ひどく冷たくて心地よい。先程まで運動をしていた体と、洗い物をしていた手の温度差だ。
俺は空いている左手でそっと妹の肩を掴んだ。体を離させようとすると、ぐいとタオルに力を込めて妹が抵抗する。
「夜。今の俺は汗で汚れている。離れた方が良い」
「兄様、徹兄様。気にすることはありません。兄様が師範を立派に果たせると、夜は心より信じています」
「……」
俺が何を思い悩んでいたか、彼女にはお見通しのようだった。いや、壁際に積まれた不要の名札と、憑かれたように素振りを続けるにわか師範を見れば誰にでもわかることか。
去っていった門下生に対し、誰より憤慨し、そして俺を支えると宣言しているのは夜だった。
その証拠とするように、本来なら名古屋で大学生をしているはずの妹は、未だに実家で家事をしている。聞いてみればとっくに休学届を出しているらしい。
彼女は昔から道場を愛していた。女だてらに(というと夜は怒るが)幼い頃から剣術を学び、並の相手には負けないだけの腕前を身につけている。自らの刀も持っていた。
道場での稽古自体は高校のときに終えていたが、名古屋でも素振りは欠かしていなかったらしい。いい運動になりますし、首都は物騒ですから、とは彼女の弁だ。
「茂野様も師範代として支えてくれます。兄様ならば、すぐに門下生も戻ってきます。だから自分を責めるような悩み方はやめて下さい」
茂野殿は祖父の一番弟子のような人で、浅賀流で一二を争う腕前の剣士でもある。ここしばらくは隣町に道場を立てるために東奔西走していたが、事件に伴い戻ってきていた。
歳は俺よりも二十も上だ。父を早くに亡くした俺にとっては父代わりのような人で、葬儀の時も随分世話になった。
剣の腕も、実務も、指導も、俺よりずっと優れた人だ。ならば師範代などではなく
「……茂野殿に師範の座を譲った方が、道場のためなのかもしれない」
それは、俺の惰弱な精神が生み出した、あまりに情けない、妄言にも近い弱音だったのかもしれないが
その呟きがもたらしたものは劇的だった。
胸元の妹が、タオルではなく俺の襟元を凄まじい力で掴んだ。夜叉もかくやという、万力のような圧力。その細い体のどこからそんな力を搾り出したというのか。
夜が、顔を上げる。その整った顔立ちには何の表情も浮かんでいない。能面のような無表情。
だが、至近距離でじっと俺を見上げるその瞳の中には、焼きごてのような情念の炎が燃えていた。
ほんの少し、ぞっとする。いつも大人しすぎる妹の中に、なんであれそんな強さを持つものを見ることは滅多になかった。
「徹兄様……それがどういう意味か、お分かりですか」
「あ、いや……」
「兄様は夜を、捨てるのですか……?」
「そんなことはない!」
木刀を捨て、夜の両肩を掴む。がらんと、道場の床に転がる音。
妹の肩には信じがたいほどの力が篭っていた。火事場の馬鹿力というものか。がちがちに固まった部分をそっと包む。
顎を喉につけるように頭を垂れ、瞼を閉じる。
「すまない、今のは失言だった。どう詰ってくれてもかまわない。許してくれ」
「……いいえ、いいんです。こちらこそ取り乱してしまい、申し訳ありませんでした」
「お前を捨てるなんて、そんなわけはない。絶対に、絶対にだ」
ふ、と襟元と肩から力が抜ける。すがるように、胸に手が添えられた。
そっと目を開くと、そこには普段の通りの、いや普段以上に愛らしい妹がいた。ほっとする。
頬を染め、目を潤ませ、熱い吐息が首元をくすぐった。何を求められているのか直感的に理解する。妹のこういうサインを覚えたのは、ごく最近だ。
「はい。夜は徹兄様をお慕いしております」
「ああ、俺もだ……愛してる、夜」
そっと目を閉じた妹をかき抱いて、俺はその小さな唇に口付けた。

43血啜青眼 前篇:2009/11/27(金) 20:32:02 ID:A87FtMBq



俺が八歳の頃。夜が六歳の頃だ。
当時、俺は事故で父親を亡くし、悲しみに暮れていた。その時に、浅賀家に引き取られてきたのが彼女だった。
その少女は同じ事故で死んだ、父親の親友の娘らしかった。以前の苗字はたしか上成と言ったか。
その時から彼女の髪は艶やかで長かった。それは以降もずっと続く、夜のトレードマークとなる。
元々片親で他に親戚もおらず、身寄りをなくした夜は、母の養女となることになった。
最も、子供にはそんな難しいことはわからない。俺にわかることは、父と入れ替わりに妹ができたということだけだ。
祖父と父は元々折り合いが余りよくなかった。父が入婿で、浅賀流剣術を修めなかったことが諍いの元だったようだ。
父は心根が優しく、他人を傷つけることに耐えられない人だった。祖父はそれを指して惰弱と罵ったが、俺はそうは思わない。そんな父から学ぶことはとても多かった。
だから、そんな父の親友の娘を、どうして祖父が引き取ったのか。それは少し不思議なことだった。母は父の死によって、しばらくショック状態に陥っていたことだし。
とにかく、そうして、夜は俺の妹になった。俺達は、すぐに打ち解けた。
何より俺達は、悲嘆に暮れる仲間だった。お互い、喪ったものを埋め合わせるように、いつも一緒にいた。
当時から俺は(父の代わりだったのだろう)剣術の修行に明け暮れていた。その内に、夜はそれを自分もやりたいと言い出した。
子供の門下生も、女性の門下生もいないわけではない。だが両方となると、当然いない。周囲が止めても、彼女は聞きはしなかった。そう、その時から妹は妙に頑固なところがあった。
その行動は、祖父の歓心を大いに買ったようだった。夜は髪を後ろでまとめ、祖父を師として仰ぎ、母のことも実の母親のように慕った。一年も経った頃、妹はすっかり浅賀家の一員となっていた。
後になって、夜に何故、剣術を始めたのか聞いたことがある。彼女は少しだけ頬を染めて答えてくれた。
「今は剣術も好きです。けど最初は……徹兄様と一緒にいたかったからです」
俺達はとても仲の良い兄妹だった。
…………
けれど
夜が俺を見る目は、決して妹としての視線だけではなかったし
俺が夜を抱く腕には、家族に対する愛情以外のものが確かに込められていた。
元々義理の兄妹だ。そうなったとしても不思議はない。
だけど二人とも、関係が変わってしまうのを心底恐れていた。だからずっと仲の良い兄妹を続けていた。
そんな関係が壊れたのは、祖父の言葉が切っ掛けだった。
…………
元々、祖父は剣術の強さだけを追及するような人間だった。それは本人の気質もあるだろうが、何より流派のためだった。
新興の流派に必要なのは何より強いこと、負けないこと。武術である以上は何であれそうだが、浅賀流では特に実戦性を重視していた。
基本的には一刀流の流れを汲むオーソドックスなものだが、祖父が実戦経験から会得したあらゆる工夫が技となっている。その中には裏技の類も多い。
たとえば目潰しや投剣を代表とする不意打ち騙し討ちの類だ。そればかりに頼ることを戒めてはいるが、綺麗な流派とはとても言えない。精神性も殆ど重視はされない。
一門の為には、強くあることが何より重要だったのだ。そうして祖父は、血縁に固執はしなかった。
「素養ある男なら、孫以外に師範を譲っても良いとはわしは思っておる」
それは、いい。何より指導者が強くなければ武道道場が立ち行かないことは、俺も良くわかっている。
そうして俺自身は、凡才の域を決して出ない器であることも。
「夜の婿になり浅賀家の一員となることが条件ではあるがな」
そ、れ、は。
それは。
道場に、流派にとっては何より強い指導者が必要だ。
そのためならば、夜を使って浅賀家に取り込み、一門を継がせる選択肢もある。
そういうことだ。
…………
44血啜青眼 前篇:2009/11/27(金) 20:33:19 ID:A87FtMBq
祖父は浅賀家の絶対権力者だった。母を溺愛していたが彼女はあまり自分の意見をもたない人で、門下生の誰かが諫めても、祖父は考えを撤回しなかった。
流派が栄えなければ、道場は潰れる。そうなれば一家は路頭に迷う。家長として合理的なあらゆる手段を用意するのは当然の義務だった。ましてや祖父は廃都東京で斬り合ってきた男なのだ。
俺と夜の間柄は、壊れた。
それまでお互いに、なんとなく、こうしてずっと人生が続いていくような、そんな夢想を共有していたのだ。紆余曲折あったが良い家族に恵まれ、家業を継ぎ、その手伝いをし、今と同じような日々が続いていく。
けれど夢想は夢想だった。祖父から突きつけられた明白な未来を、俺たちは恐れた。今が変わってしまうのを恐れたのだ。
当時は二人とも高校生だった。
俺は剣士としてまだまだ未熟だったし、俺よりも剣腕で勝る大人は道場に何人もいた。
だから。このままでは、夜は他の男と結婚し、道場を継ぐのだと。殆ど確定したようなものだった。
妹は道場にあまり顔を出さなくなり、一緒にいる時間も格段に減った。そのうち名古屋の大学に進学し、殆ど会うこともなくなった。
俺たちは仲の良い兄妹ではいられなかった。
……ならば問題は、そこで終わるか、否かだ。







座敷で、妹と二人きりの昼食を取る。
門下生が使用することもあるので、座敷は広い。以前は祖父と母と俺の三人で、広い座敷を持て余し気味だった。
今はさらに広い。俺と妹しかいないのだ。持て余すというよりも、間借りしているような感覚。
対面の夜も、同じことを思ったようだった。困ったように微笑む。
「やっぱり、少し広すぎるかもしれませんね」
「別の場所で取るようにするか?」
「そうですね。それでも良いかもしれませんけど……家族が増えれば、ここも埋まるのではないでしょうか」
「……そ、そうだな」
家族が増える、とは言うまでもなく、俺と夜の子供のことであろう。彼女は頬をわずかに赤らめている。ある種の催促なのだろうか、これは。
俺と夜は体の契りを交わしたことはない。もしも交わすとしたら祖父に己を認めさせた後であるべきだし、なんとなれば式を挙げた後で十分と思っていたからだ。
性欲はある。当然、妹への愛欲はある。だが、そういった衝動が満たされないことを、全て稽古に費やしてきたからこそ今の俺があるのだ。それを我慢するのは当然だった。
多少気まずくなりながら、食後の茶をすする。夜も既に常態を取り戻し、穏やかに俺の急須に茶を注いでくれた。
「兄様は、午後は如何しますか」
「しばらく一人稽古をするつもりだ」
「もう、またですか……本当に徹兄様は剣術が好きなんですね」
「いや、まあ……」
その声音に責めるような響きを感じて、俺は返事に窮した。一体どう返答すべきなのか、頭を動かす。
剣術自体は、夜も愛着があるはずだった。今も素振りをしているというし(それは手の剣ダコで知れる)下宿先からも刀は持ってきている。
ならば俺のほうに問題があると考えるのが自然だ。つまり剣術ばかりやっていないで、少しはかまってくれという意思表示……なの……か?
「剣術も好きだが、最も愛してるのは夜だ」
「まっ……もう、兄様ったら! 兄様ったら!」
ばしんばしんと背中を叩かれ、危うく口に含んでいた茶を噴出しそうになった。や、やっぱり何か間違ったのか?
けれども妹はいたって上機嫌なようで、取って置きと思わしき栗羊羹を台所から持ってきて、さくりさくりと包丁を入れた。
小皿に移した数枚の栗羊羹が、昼下がりの陽光を浴びて黒く輝いている。
「どうぞ」
「ああ」
穏やかな時間が流れていた。
祖父が死に、母が死に、妹が戻ってきて、俺が道場を継ぐことになり。
何もかもが激変し、その対処に追われていた毎日がやっと終わり、日常というものに組み込まれようとしている。
永遠に続くものなどない。それはただの夢想でしかない。
関係性とは、いつか必ず変わるものだ。束の間の安息と急変の繰り返し。
だがそれでも、束の間の安息の為に、人はいかなる苦難にも立ち向かうことができるはずだ。

昼下がりの穏やかな時間は、来客を知らせるチャイムによって破られた。
45血啜青眼 前篇:2009/11/27(金) 20:34:13 ID:A87FtMBq
来客は北沢刑事だった。
薄汚れた着流しに身を包んだ冴えない中年男性だが、この辺りではベテランで通っている。
祖父と母の殺人事件の担当であると同時に、浅賀道場の門下生だった人だ。俺が生まれる前の話だが。
帯には今も刀と十手が差してある。身のこなしから見て腕は錆びつかせていないようだった。
もっとも警察官なら拳銃を所持しているはずだが……東京府ではないが、この地域でも愛刀嫌銃の風潮は強い。ひけらかすものでもないのだろう。
「おお、栗羊羹か。わりいな嬢ちゃん」
「……どうぞ」
座敷に上がった北沢刑事によって、栗羊羹は客人へのもてなしに消えた。今は夜にお茶を催促している。
いや、そんな目をされてもな。北沢刑事はれっきとした客なのだからにこやかにしてくれないか。
葬儀の時も顔を出していたが、あの時は忙しくて話す暇もなかった。
腰の刀を床に置き、どっかりと座布団に胡座をかいて、北沢刑事はまじまじと夜を見た。
「それにしても見違えたなあ、嬢ちゃん。随分別嬪さんになったな」
「どうも、ありがとうございます」
「前に浅賀の爺さんに聞いたことがあるぜ。たしか、名古屋の大学に通ってるんだったか?」
「はい」
「きゃんぱすらいふって奴か。どうだ、彼氏の一人でもできたかい?」
「はい」
「ああそうかそうか……ってできたのかよ!?」
「……」
湯飲みを取り落とし掛けて驚く北沢刑事と、しれっと答えて俺を見つめる妹。やれやれ、口を挟まずにいたが当て擦りだろうか。
しかし、丁度良いといえば丁度良い。俺は居住まいを正して、北沢刑事にその旨を告げた。
「実は、夜とは少し前から交際をしております」
「お、おお、ああ。坊主かよ。年寄りをあんまり吃驚させるんじゃねえ。そうか、お前らとうとう付き合うのか」
「はい。しかし、そんなにも驚かれていないようですね」
「そりゃそうだろ。お前と嬢ちゃんはずっと前から恋人同士みたいな空気だったしな。周りは随分やきもきしただろうよ」
「は……そういうものでしょうか」
「徹兄様は鈍感過ぎます」
妹にまでなじられる。今の受け答えに何か問題でもあったのだろうか。
「ま、とにかく目出度いな。こんな時だが祝わせて貰うぜ」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「で、だ。爺さんの話なんだが、いいかね」
「ええ。夜」
「はい。どうぞごゆっくり」
目配せすると、夜が一礼してから座敷から去る。血生臭い話になりそうだ。妹に聞かせる必要もない。
北沢刑事が袖からタバコを取り出す。いいかい、と聞かれて頷いた。しばしの後、座敷に紫煙が燻る。座敷の机には祖父の使っていた灰皿がある。
旨そうに一服した北沢刑事は、事件の進捗状況をぽつぽつと語りだした。細かいことはいろいろあったが、結局
――――まだ犯人は捕まってない。
46血啜青眼 前篇:2009/11/27(金) 20:34:52 ID:A87FtMBq
「大体あの爺さんを恨んでる奴は多かったからな。有象無象を含めればどれだけいるやら。動機のある人間には事欠かねえ」
「確かに。しかしそれが祖父の生き様でしたから」
「まあ死人にどうこう言うつもりはねえけどよ。刑事の身にもなってくれってんだ」
「身内として申し訳なく思います」
「一応ホシは剣術家らしいってことなんで、榊に近くの道場を回らせてるけどな」
動機の面で言うならば、祖父の一件では付近の道場が最も利益をこうむっているだろう。いまや浅賀流は風前の灯だ。
とはいえ話したように怨恨の線も充分有り得る。
ただし金銭の類は奪われていない。物盗りではないことはわかっていた。
考えてみれば当然だ。何が悲しくて、刃物を持って剣術道場に押し込まないといけないのか。
北沢刑事が使い古した手帳を袖から取り出し、ぺらぺらとめくった。あちこちに付箋が挟まっている。
「おさらいするぜ。当日19時、坊主が出稽古から帰ってきたら、道場で二人が倒れてたんだな?」
「はい」
「出稽古に出たのは15時だったな。そのとき家には二人以外には誰もいなかった。二人に何か変わった様子は?」
「特には。祖父は趣味の仏像彫を、母は自室にいたようでした」
「で、倒れていた二人を見つけたらすぐに110番したと」
「はい」
「ふうむ」
がりがりと北沢刑事がボールペンで頭をかく。ぱらぱらとふけが舞った。
……忙しいのはわかるが、風呂は入ったほうがよろしいかと。
「どうも参ったな。ホシの足取りが全くつかめん。帯刀ぐらいなら珍しくもないし、たまたま人目につかなかったかもしれんが」
「が?」
「行きはともかく帰りはどうだろうな。相当返り血を浴びた痕跡がある。とてもじゃないが表通りは歩けねえよ」
「では犯人は付近の住人?」
「いや、それもない。だったら返り血が地面に落ちただろうが、道場の周囲に血痕はなかった。鑑識の連中はご苦労様だな」
「それでは、あらかじめ着替えを用意しておいた」
「だろうな、用意周到な奴だ。もしかしたら一風呂浴びていったのかもしれん」
「なるほど」
道場の裏手には門下生用のシャワールームがある。それを使えば痕跡を洗い流せるかもしれない。どちらにしろ着替えは必要だが。
「ところでこれは俺が疑われている流れなのでしょうか」
「お、わかったか? いやそう考えると流れがすっきりするんだよな。坊主なら必要充分な腕前もあるし、第一発見者が犯人なんて良くあるだろ?」
ぐはは、と北沢刑事が下品そうに笑う。もちろん冗談だ。昨今は警察機能の飽和に伴い検挙率もずいぶん落ちているらしいし、彼も他に幾つも事件を抱えているはずだ。疲れているのかもしれない。
少し、その息抜きに付き合うことにした。
「しかし動機はどうでしょう。俺が祖父と母を殺さなければいけない理由は?」
「そうだな。道場を奪いたかった……」
「門下生が1/3になってしまいましたが。本末転倒ではないでしょうか」
「……ってのはないだろうな。そうだな、嬢ちゃん絡みではどうだ」
「はい」
「坊主は嬢ちゃんに惚れていた。しかし道ならぬ恋。爺さんは夜ちゃんを他の男に宛がって、道場を継がせるつもりだった。嫉妬に狂った坊主は出稽古で腕を磨き、爺さんと居合わせた母親をばっさり……」
「いろいろ突っ込みどころがあるのですが、刑事ドラマの見すぎですか?」
「うはははは。いや下のガキが良く見てる探偵アニメの方だな。どうだい」
「まあ最初だけは合ってますよ」
47血啜青眼 前篇:2009/11/27(金) 20:35:30 ID:A87FtMBq



…………
一年、悩んで、決めた。
俺は――――俺は、夜を娶る。
他の才ある男など要らない。
誰よりも強くなって、誰からも文句を言われることなく、堂々と一門を継ぐ。
何故なら、俺が、夜を愛しているからだ。
剣術への愛情もある。浅賀流への愛着もある。
だが、何より俺は、妹を愛している。
あの艶やかな髪も、整った顔立ちも、小さな唇も、その背丈も、匂いも。
一所懸命に素振りをする姿を、後ろをちまちまとついてくる愛らしさを、軽い冗談で真っ赤になる純真さを、細かなところへの心配りを、丁寧な立ち居振る舞いを。
これまでも、これからも、過去と現在と未来の全てに於いて、浅賀夜を愛している。
俺と夜は義理の兄妹だ。血縁という障害はない。
障害があるとするならば、俺が弱いことだ。
ならば強くなろう。夜のために、俺は誰より強くなろう。
…………
覚悟を決めた俺は、全てを剣術に注ぎ込んだ。
高校卒業後、進学をせず道場の師範代として薄給を貰う身分となった。だが実際は、俺よりも腕の立つ門下生に教えを請う毎日だった。
道場が休みの日は、他の剣術道場に出稽古に出かけた。祖父の行状もあって当初はあまり良い顔もされなかったが、頭を下げて教えを乞うた。
夜は、体調が許す限りで、祖父と一対一での稽古だ。祖父との稽古は古参の門下生でも嫌がる。容赦の基準がずれた人なのだ。実際、嘔吐や細かい怪我は日常茶飯事だった。それでも俺はできる限り稽古を申し込んだ。
実戦も、経験した。真剣で斬り合うことに比べたら飯事のようなものだが、隣町のごろつき相手に幾度か大立ち回りをした。危うく警察の世話になるところだったときもある。
何より重要だったのは、日々の稽古の一振り、一振りに重みが宿ったことだ。
稽古をする目的ができた。果たさなければいけない目的ができた。目的ができた人間は、強い。
三年。
三年で、俺は道場の殆どの人間から勝ちを取れるようになっていた。機の読み方、技の鋭さ、判断力。いずれも以前よりも比べ物にならないほどに。
まだ祖父には歯が立たなかった(勝ちを取れるのは五回に一度程度だ)が、道場の門下生では一目置かれる存在となっていた。
残る当座の目標は、最古参にして、隣町で道場建設にかかりきりの茂野殿のみ。
夜が名古屋から帰ってきたのは、そんな冬の日のことだった。
…………



48血啜青眼 前篇:2009/11/27(金) 20:36:15 ID:A87FtMBq
昼下がりの座敷で、北沢刑事との益体もない雑談は続いていた。
「俺と夜は結婚できます。そして祖父を斬れるだけの腕前があるのなら、普通に一門を継ぐ資格を主張しますよ。出稽古もそのためです」
「おお、そりゃそうか。こりゃ一本取られたな」
「それに、たしか俺にはアリバイがあったのでは?」
「おう。犯行推定時刻当時、ちょうど出稽古が終わってるな。向こうの道場の証言もたっぷり取れてる」
「なるほど……そういえば、犯行時刻は特定されたのですか?」
「ああ。二つ隣の家で、道場の悲鳴を聞いた家族がいてな。この世のものとは思えない凄まじいもんだったそうだ」
それでは俺は瞬間移動でもしない限り犯人にはなれない。
動機、手段、アリバイの三つの要素のうち、手段しか満たしていないのだ。手段とて、俺が祖父と真剣勝負して勝ちを拾えるかどうか。
タバコを灰皿でもみ消して、よっこいしょと北沢刑事が立ち上がる。どうやらそろそろ帰るらしい。
「ま、思ったより落ち着いてて良かったぜ。うちの榊に見習わせたいぐらいだ」
「いえ、さっきまでずいぶん取り乱してましたよ。俺のような若輩者が祖父に代わって師範を勤められるのかと」
「へえ、そうは見えねえけどな」
「一人でだったなら取り乱したままでしょうが。俺には夜がいますから」
そうだ。
俺には守らなければいけない人間がいる。俺には愛する人がいる。それは重荷などではない。それは幸いなことだ。
北沢刑事が御馳走様、とばかりに肩を竦めた。
帰り際、ふとこんなことを聞かれる。
「そういや嬢ちゃんだが、大学やめてこっち手伝うのか?」
「どうでしょう。本人はそのつもりのようですが、俺としてはあと二年学生を全うして欲しいですね」
「しっかりしてんなあ。しかし手伝うとしたら……たしか嬢ちゃんも剣術はやってたんだよな、どれくらいの腕だ?」
「そうですね。やめてから四年ほど経ってますし、今の北沢さんぐらいでしょうか」
「おいおい、これでもまだまだ若い奴に負けるつもりはないぜ。ま、腹は随分出ちまったがよ」
「時間とその気があるならうちの道場に通ったらどうでしょう?」
「うはは、商売熱心だな。まあ、今は忙しすぎてそんな暇もねえんだ。じゃあ、またな」
「はい。よろしくお願いします」
49血啜青眼 前篇:2009/11/27(金) 20:44:03 ID:A87FtMBq
以上です。誤字脱字、誤設定があれば失礼。
一応、刃鳴散らすというゲームの世界観を使用してますが気にしないでも結構です。
後編はそのうち書きます。
50名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 21:50:36 ID:2CsdTdSE
最近このスレに来たばかりです。
本日投下された作品はどちらも本当に素晴らしいですね。
有料でも読みたい。いやもう本当に。
過去ログをあさりつつ、続きを楽しみにしております。
51名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 01:11:46 ID:UPqZBbz3
ニトロか
妹が赤音ポジで兄が義阿ポジになるのかな?
52名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 06:50:13 ID:+SPRbBrY
>>49
GJです。
いや面白い!読み応えあった。
何がいいって主人公がいいですね。
53名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 08:13:11 ID:LMe5sCCp
>>49
GJ! いかにも妹がやりましたって感じだが、兄の言うとおり動機がないな?
続きが気になる。
54名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 11:30:22 ID:bnLD1OTO
>>49

世界観いいねえ
GJ
55名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 12:37:55 ID:4mCKSo0L
>>49
GJ
続き楽しみにしてる!
56名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 16:15:01 ID:zP6/54tE
>>49
GJです
最初に現代で剣術と聞いて刃鳴散らすみたいだと思ったら、そのままだった。
てか奈良橋繋がりで主人公の声が景明さんで再生されて困る。
57名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 16:39:11 ID:4ePS2+90
>>49
GJ
ニトロゲー好きなせいかこういう雰囲気好きだわ〜
>>56
確かに景明さんの声はマッチするな
そういえばあの人にもキモウトさんがいましたね
58名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 16:52:00 ID:sUXIhhxi
いいよなあ。
こういうインモラルな空気にはやはり日本刀がよく似合う。
59名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 17:30:15 ID:nDVHmXar
>>57
キモウトじゃなくてむす‥おや、誰か来たようだ
60三つの鎖7 前編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/28(土) 23:51:59 ID:64sg6+dx
今回は長いので前後編に分けて投下します

以下注意
エロは(まだ)ありません

投下します
61三つの鎖7 前編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/28(土) 23:54:22 ID:64sg6+dx
三つの鎖 7

 「それじゃあ行ってくる」
 「私も行くわ」
 食後のお茶の後、父さんと京子さんは立ち上がった。二人ともスーツケースに手をかける。
 「京子さん。入口まで持つよ」
 僕は京子さんのスーツケースを持った。
 「ありがとう幸一君」
 京子さんはにっこり笑った。
 「幸一」
 父さんが僕を見た。
 「私たちがいない間、家を頼む」
 僕はうなずいた。今日からこの二人は出張だ。といっても明日の夜には帰ってくる。
 「春子ちゃんに伝えてあるから、何かあったら頼りなさいね。向こうもご両親が今日の夜いないらしいから、お互い助け合うのよ」
 京子さんはそう言って笑った。僕の両親も春子の両親も仕事の関係で家にいない事が昔から多い。そんな時はお互いの家に子供たちが泊まった。子供だけを家に残すのが心配なのだろ。
 もう泊まらないような歳になった今でも、大人たちがいない時はお互いに連絡を入れている。
 「では行ってくる」
 「行ってきまーす」
 父さんと京子さんは手を振って出て行った。僕はその姿を見送ると、いつも通り朝の家事をして登校した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 午前の授業が終わり、いつも通り僕は梓の教室にお弁当を届けに行くために教室を出た。
 お昼休みの廊下は生徒でごった返している。学食に向かう男子生徒、お弁当を片手に外に向かう女子生徒…etc。
 すれ違う生徒たちは僕に遠慮のない視線を向ける。
 確かに僕は目立つ。身長はもうすぐ190cmに届こうとする。片手で二つの弁当を持っているのも目立つかもしれない。
 しかし今この瞬間に僕が目立っているのは春子が原因だ。
 春子は僕の左腕に抱きつきながら頬ずりしている。ものすごくいい笑顔だ。今にも涎を垂らしそうなとろけた表情。
 周りの視線が痛い。
 「はー。お姉ちゃん幸せー」
 僕の腕に胸が当たる。柔らかい。嬉しくないと言えば嘘になるが、それ以上に恥ずかしすぎる。
 「春子。お願いだから離して」
 何回この言葉を言っただろう。春子の抱きつく力が増す。胸がさらに強く当たる。
 「ふふふ。恥ずかしいのですか」
 にやにやする春子。
 「お願いだから離れて」
 僕はため息をついて繰り返した。恥ずかしい。
 そんな事を話しながら梓の教室に着く。入口でこっそりのぞく僕。梓と夏美ちゃんを発見。
 「春子。離して」
 「ふっふーん。ダメです」
 「このままじゃ入れないよ」
 「最近お姉ちゃんに冷たい罰なのでーす」
 離してくれない。
 「おにーさーん!」
 夏美ちゃんが僕に手を振る。梓が不機嫌そうに立ち上がり近づいてくる。
 「春子お願い。離して」
 「幸一君の腕ほっかほか」
 聞いてない。
 春子に気がつく梓。梓がさらに不機嫌になったような気がする。梓は無言で僕から弁当を奪い教室の扉を乱暴に閉めた。
 「ちょっと梓!なんで閉めるのよ!」
 夏美ちゃんの声が扉の奥から聞こえる。足音が近づいてくる。開く扉。
 「おにーさん!今日は一緒に食べませんか!」
 夏美ちゃんの笑顔が固まる。
 「ハル先輩!何やってるんですか!」
 顔を真っ赤にする夏美ちゃん。
 目を覚ましたように春子の表情が戻る。
 「いけない。新しい世界に目覚めるとこだったよ」
 どんな世界だ。
 「あれ?夏美ちゃん。梓ちゃん知らないかな?」
 「あのですねハル先輩」
62三つの鎖7 前編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/28(土) 23:57:11 ID:64sg6+dx
 「あ!梓ちゃーん!」
 夏美ちゃんに質問しておいてスルーする春子。僕を放り出して梓に近づく。梓はすでに一人でお弁当を開いていた。
 「ちょっとハル先輩!」
 夏美ちゃんを無視して春子は梓に駆け寄りそのまま抱きつき頬ずりする。
 「梓ちゃーん!幸一君が最近冷たいよー。お姉ちゃん寂しい!」
 「うるさい」
 春子に頬ずりされて心底うっとうしそうな梓。
 「梓ちゃんまで冷たい!てゆうかお昼一人なの?よーし。今日はお姉ちゃんと一緒に食べよ!」
 そう言って梓の隣に座りお弁当を開く春子。僕たちを見て大きく手をふった
 「幸一君!夏美ちゃん!そんなとこで突っ立ってないでこっちにおいで!」
 僕と夏美ちゃんはお互いの顔を見て苦笑した。
 
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 「お兄さんとハル先輩って付き合ってないんですか?」
 お弁当を食べ終えて夏美ちゃんが尋ねた。
 「付き合ってないよ」
 この質問はいろんな人に何度もされた。
 「ハル先輩。どうなんですか?」
 「好きだし愛してるし大切に思ってるよ」
 むせる夏美ちゃん。春子は昔から愛情表現が過激でストレートだ。昔から何度も言われているが、それでも恥ずかしい。
 「でもね、それは恋人になりたいって思う訳じゃないよ」
 にこにこ笑う春子。
 「ええと、好きだけど、あえて恋人にならないってことですか」
 赤い顔で質問する夏美ちゃん。
 「違うよ。私は幸一君と梓ちゃんが大好き。でも恋人の関係になりたいとか、そういう訳じゃないよ」
 春子は言う。
 「何でですか?好きなら恋人になりたいとか、一緒にいたいとか、独占したいとか思わないんですか?」
 夏美ちゃんは納得していない感じだ。
 「あのね夏美ちゃん」
 春子は相変わらずにこにこしている。
 「私と幸一君と夏美ちゃんは物心ついた時からずっと一緒にいたよ。ずっと独占してたよ。今さら恋人になって独占したいとかは思わないかな。弟みたいな存在ってのが一番しっくりくるよ」
 腕を組んで首をかしげる夏美ちゃん。
 「よく分からないです。お兄さんはハル先輩の事どう思っているんですか?」
 「僕は家族みたいに思っている」
 「家族ですか」
 きょとんとする夏美ちゃん。
 「小さい時からずっと一緒にいたし。僕のお姉さんみたいな存在だよ」
 僕の正直な気持ちだ。昔から僕と梓の世話を焼き見守ってくれた身近な人。
 「じゃあなんであんなにべたべたするんですか」
 夏美ちゃんは不機嫌そうだ。その表情を僕は見たことある気がする。
 「お二人の言うとおり恋人じゃなくて姉と弟みたいな関係としてもですよ」
 すぐに思い出した。
 「姉と弟でべたべたするなんておかしいですよ」
 梓の表情に似ている。
 
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 あの後、少し気まずいままお昼御飯を終えた。自分の教室に戻って春子と話す。
 「夏美ちゃんどう思う」
 「どういうこと?」
 「嫉妬してたね」
 僕もそう思う。春子はにやにやしながら僕を見た。
 「もてる男はつらいね」
 「まだ決まったわけじゃないよ」
 「夏美ちゃんの事が嫌いなの?」
 僕はため息をついた。
 「嫌いじゃないけど、それだけだよ」
 僕の正直な気持ち。妹の友人以上でも以下でもない。
 「そう」
63三つの鎖7 前編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/28(土) 23:59:59 ID:64sg6+dx
 春子はあっさり引き下がった。午後の授業が始まる。
 夏美ちゃんの声が耳に蘇る。
 姉と弟でべたべたするなんておかしいですよ。
 確かにそうだ。ずっと昔から春子はくっつくのが好きだった。僕にも梓にも。でも春子も僕ももう高校生だ。恋人でもない年頃の男女がべたべたするのはよくない。
 何度も春子に言っているけど、春子は笑ってすますだけだ。今日にでも真面目に話をしよう。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 授業が終わって耕平と宿題について話していると春子が話しかけてきた。
 「今日泊まりに行っていい?」
 耕平が噴き出す。クラスメイト達の視線が突き刺さる。僕は大きくため息をついた。
 「あのね春子」
 「今日はお父さんもお母さんも出張でいないの。一人はちょっと怖いし」
 僕を見つめる春子。ざわめく教室。本当に止めて欲しい。
 「それに幸一君の家も今日はおばさんもおじさんもいないんでしょ?ご飯作ってあげるから。ね?」
 春子はウインクする。可愛くない。
 お互いの家に泊まること自体は珍しい事ではなかった。仕事の関係で保護者が家にいない時はよく泊めてもらった。逆に春子が泊まりに来たことも少ないがあった。
 しかし、それはせいぜい中学校の時までだ。高校生になってからは一度もない。
 春子が耳を寄せる。
 「いろいろ話したいこともあるでしょ」
 「…分かったよ」
 春子の言うとおりだ。いい加減にべたべたするのは止めるべきだときっちり言わないといけない。
 「じゃあ生徒会が終わってから行くね。おいしい牛肉があるからそれでローストビーフを作るよ」
 そう言って春子は教室を出て行った。
 「なあ幸一」
 耕平が話しかけてくる。
 「本当に村田と付き合ってへんの」
 「今日はその質問が多いな」
 「いやだってさ。今日は特にすごかったやん」
 昼休みの春子を思い出す。確かに高二になってからの春子の行動は少しエスカレートしている。
 「同じクラスになったのが初めてだからテンションがおかしいんだよ」
 「それもそやな。クラスが違うときにたまに来たけど、その時は今ほどやなかったし」
 春子とは高二になってから初めて同じクラスになった。耕平とは今まで何度も同じクラスになっている。だから耕平は僕と春子の関係も知っている。
 「でも幸一ええよなー。俺も村田みたいな幼馴染にべたべたされたいでホンマ」
 「耕平は彼女がいるじゃないか」
 「この前別れたっちゅーねん」
 肩を落とす耕平。
 「またすぐできるんだろ」
 耕平はいつも違う彼女がいる。別れてもすぐに別の彼女ができるのだ。
 「まあその話は置いといてや」
 耕平が僕を見る。
 「ちょっと村田に言っといた方がええで。いくらなんでも今日のはやり過ぎや。教師に目付けられるんもアホらしいやろ」
 真剣に耕平が言う。
 「ま、今日泊まりに来るんを許したんもそのことを話すためやろ」
 僕はうなずいた。
 「ま、いちゃつくんやったら他人がいない場所でってことやで」
 そう言って耕平は帰った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 気分は最悪だった。
 わたくし、中村夏美は帰り道の商店街でため息をついた。
 今日のお昼に思い切り気まずくしてしまった。
 「どうしてこんな事になったんだろ」
 私はもう一度ため息をついた。
 あの日、お兄さんが泣いている姿を見てから私はおかしい。べたべたするお兄さんとハル先輩を見ると胸が痛い。
 「好き…なのかな」
 お兄さんを思い浮かべる。顔が熱くなる。会いたい。
 「夏美ちゃーん!」
 一人で悶悶していると、聞き覚えのある声が私を呼んだ。
64三つの鎖7 前編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/29(日) 00:02:41 ID:64sg6+dx
 「こんなとこで何してるの?」
 ハル先輩だ。スーパーの袋を持っている。隣には黒い大きな犬が私を見上げてワンとないた。
 「…別に何でもないです」
 私はそっけなく言った。だめだ。わたし格好悪すぎる。ハル先輩に嫉妬して冷たくしてしまう。
 「幸一君の事考えていたんでしょ」
 頬が熱くなる。お兄さんにくっついているハル先輩の姿を思い出す。
 「ハル先輩には関係ないです!」
 思わずきつい言い方をしてしまう。私は馬鹿だ。醜くてみっともない八つ当たり。
 「協力してあげようか?」
 私はハル先輩の言った事が分からなかった。
 顔を上げると、ハル先輩はにこにこしながら私を見ていた。
 「今から幸一君の家に泊まりに行くんだけど、夏美ちゃんも来ない?」
 お兄さんの家。泊まり。
 その言葉だけで頭がくらくらする。どれだけ妄想しているんだ私。
 「幸一君が好きなんでしょ?」
 ハル先輩が囁く。
 「…何で協力してくれるんですか?」
 その言葉は自分の気持ちを認めたも同然だった。
 「今日の事を謝りたいでしょ?」
 確かに。気まずいままはいやだ。
 でも、会って自分の気持ちを抑えられるだろうか。抑えきれずに好きという気持ちを言ってしまうかもしれない。そうなれば今より気まずくなるかもしれない。
 それに、もし自分の気持ちを伝えたら梓やハル先輩とも気まずくなるかもしれない。せっかく仲が良くなったのに。
 ふとお兄さんの涙を思い出す。あのとき私は涙すら拭けなかった。
 忘れていた。好きっていう気持ちの他に伝えたいことがあるんだ。
 「来る?」
 ハル先輩の囁きに私はうなずいた。
 お兄さんに会いたい。会って話したい。
 黒い犬がワンとないた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 家のチャイムが鳴る。
 「はーい」
 僕は掃除機を止めて玄関に駆け寄った。しかし、鍵をあける前に勝手にカギが開いた。
 「ちーっす!」
 夏美ちゃんがドアを開けてあいさつした。
 「夏美ちゃんどうしたの?それに鍵は?」
 「お世話になります!」
 意味が分からない。
 「幸一君」
 後ろで春子が変な道具を片手ににっこり笑う。シロもいる。くーんと申し訳なさそうにないた。まるでうちの春子が申し訳ないと言っているようだ。
 僕はため息をついた。春子は多趣味で変な特技をたくさん持っている。ピッキングもその一つだ。春子の祖父が鍵屋だった影響もあるだろう。今までにも何度も勝手に上がりこんだ事があった。
 「夏美ちゃんを拾っちゃいました」
 舌をぺろりと出す春子。可愛くないし意味が分からない。
 「まま。とりあえず上がってね」
 春子が言う。それは本来僕が言う言葉だろ。
 「春子。ピッキングは止めてって何度も言っているだろ。ここは一応警察官の家だよ」
 「細かい事は言わないの。これお願いね」
 春子は僕にビニール袋を差し出した。僕はため息をついた。父さんに逮捕されても知らないよ。
 とりあえず春子の持つスーパーの袋を受け取りリビングに案内する。春子はシロの足を拭いた。シロも家に上がる。
 「お兄さんの家って広いですねー。おっ!庭が広い!」
 はしゃぐ夏美ちゃん。春子はキッチンでお茶を入れてくれた。今日は割と寒いから熱い緑茶を入れてくれる。
 「うわー。ハル先輩、勝手知ったる他人の家ですか」
 感心する夏美ちゃん。
 「粗茶ですがどうぞ」
 コップを渡す春子。粗茶で悪かったな。
 「いただきます!…うんめー!」
 夏美ちゃんテンション高過ぎ。
 「くぅー!胃にしみるぜ!」
 「夏美ちゃん。それ緑茶」
65三つの鎖7 前編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/29(日) 00:05:03 ID:FzAfdehw
 「この一杯のために生きているべー」
 聞いてないよこの子。
 「で、今日はどうしたの?」
 「はっ!お泊まり会をすると聞いたので私も参加します!」
 元気よく答える夏美ちゃん。
 「あれ?何で夏美がいるの?シロも」
 梓がリビングにやってきて不思議そうに夏美ちゃんを見る。シロがくーんとないた。
 「拾っちゃいました」
 てへと笑う春子。可愛くない。
 「春子。可愛くないよ。まあいいわ。それよりご飯」
 興味無さそうな梓。珍しく意見が合う兄妹。もちろん口には出さない。梓を不機嫌にすることはない。
 「あずさー。私よりご飯なの」
 「当然でしょ」
 そっけない梓。
 「おにーさーん!梓が冷たいです」
 「ええと、うん。ごめんね」
 「何その投げやりな態度!兄妹そろってひどっ!」
 ショックを受けてる夏美ちゃん。シロが慰めるように夏美ちゃんに体をすり寄せた。ちょっとひどい事したかな。
 「はいはい梓ちゃん。すぐにご飯作るからちょっと待ってね」
 キッチンに行く春子。スーパーの袋を持って僕もついて行く。
 「で。夏美ちゃんどうしたの?」
 「偶然会ったの。相談されちゃった。謝りたいんだって」
 のんびり言う春子。
 「ちゃんと謝罪を受け入れるんだよ」
 春子は笑いながら食材を並べる。
 「ここは任せてあっちに行って」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 私はリビングで夏美とのんびりとお茶を飲んでいた。
 今日は面白くない一日だ。私の家に春子と夏美が止まりに来るなんて。兄さんと二人でいられるのは家だけなのに。
 昔から私と兄さんが春子に家に泊まりに行くことは多かった。春子の家に泊まるに行くのは好きだった。春子はいつも私と兄さんと一緒に寝たがるからだ。そうなると布団を敷いて三人で寝る事になる。一晩中兄さんにくっつける。
 「大きい犬だよねー。でも大人しい」
 夏美はシロの頭を撫でている。シロは大人しく座って夏美の好きなように撫でられていた。
 「お手」
 シロはわうと吠えて夏美の差し出した手にお手をした。
 「お座り」
 シロは足を夏美の手からのけお座りした。
 「拍手」
 シロは後ろ足で器用に立ち上がり前足を何度か合わせた。残念ながら拍手みたいな音はしない。
 「わーお。賢い」
 夏美がシロの頭をなでる。付き合いの長い私にはシロが少し迷惑そうにしているのが分かる。と言ってもシロは春子の飼い犬だ。あの春子に飼われているのだ。忍耐力は折り紙つきだ。
 「ねー梓。この子のなんていう名前なの?」
 「シロよ」
 「へ?」
 夏美がぽかんとシロを見た。
 「君ってシロちゃんっていうの?」
 シロはそうだと言うようにワンとないてうなずいた。
 「でも君黒くない?」
 シュンとするシロ。確かにシロは真っ黒だ。 
 そんな事を話していると兄さんがお菓子の乗ったお盆を持ってリビングに来た。
 「シロは二代目なんだよ。初代のシロが白い犬だったんだ」
 兄さんはお菓子をテーブルに置きながらそう言った。
 「おにーさん。突然押し掛けてすいません」
 夏美は兄さんに頭を下げた。分かっているなら来るな。
 「ぜんぜんいいよ。ゆっくりしていってね」
 「ゆっくりしすぎた結果がこれだよ!」
 「?」
 私は兄さんと顔を合わせた。夏美は何を言っているのだろう。兄さんも不思議そうな顔をしている。シロだけは夏美を見つめた。何というか少し呆れたような感じ。
 「うわっ!兄妹そろって同じ反応!?かなしー」
66三つの鎖7 前編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/29(日) 00:05:47 ID:FzAfdehw
 頭を抱えて大げさに嘆く夏美。意味不明。シロはドンマイと言うように前足を挙げた。
 「夏美うるさい」
 「梓冷たいよ」
 ちょっとうっとうしい。春子が一人増えたみたいだ。春子みたいにうっとうしいのは一人でも十分だ。気のせいか、シロも全くだというようにワンとないた。苦労しているんだろうな。
 「お兄さん」
 夏美は立ち上がって兄さんの方を向いた。真剣な顔。
 「今日は生意気言ってすいませんでした」
 夏美は兄さんに深く頭を下げる。突然の事に私は目をぱちくりした。
 「ハル先輩とお兄さんの事は二人の問題ですし、お兄さん自身はいつもハル先輩にやめるように言ってますし、私の傲慢でした」
 私は合点がいった。夏美が今日来た目的は兄さんに謝りに来たのだろう。今日のお昼の事を気にしているのか。意外と繊細な子だ。兄さんは心が広いからそれぐらいの事を気にはしない。
 「そんなに気にしなくていいよ。確かにこの年になって大勢の人前でべたべたするのは良くない事だし」
 兄さんは穏やかに答えた。分かっているなら止めて欲しい。私の精神衛生上よろしくない。
 「すいませんでした」
 「僕は気にしてないから夏美ちゃんも気にしないで」
 「はい」
 顔を上げる夏美。ちょっとだけ安心した表情。なんか腹が立つ。
 「いやー。良かったです。お兄さんに嫌われたと思いましたよ」
 夏美は安心したように笑った。その笑顔がむかつく。兄さんに嫌われてしまえ。
 「このシスコンにそんな根性ないわよ」
 私は罵倒しつつも考えた。兄さんが夏美を嫌う事はないだろう。実際、気難しい私から見ても夏美はいい子だ。
 「あずさー。お兄さんに厳しすぎだよ」
 夏美は朗らかに笑った。夏美は隠しているつもりかもしれないが、兄さんに好意を抱いているのは丸分かりだ。
 しかし私は何の心配もしていなかった。夏美が兄さんに告白しても、兄さんが受けるはずはないと確信していた。
 兄さんが私に罪悪感を感じている限り、兄さんは私のものだから。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 晩御飯はローストビーフだった。ソースまで手作りの力作。シロも食卓のそばでドッグフードを食べいている。
 「幸一君?どうかな?」
春子は僕に尋ねた。僕よりもはるかにうまい。僕は無言で食べた。いい牛肉だ。高いんだろうな。
 四人と一匹ででたらふく食べた。
 「ぷはーっ!ハル先輩ごちそうさまでした」
 「お粗末さまです」
 春子はにこにこしながらお皿を洗っている。僕がやると言っても聞かなかった。昔の事が脳裏に浮かぶ。家事を始めて間もない頃、二人でキッチンに並んで料理を教えてもらった日々。
 「あーずーさーちゃーん!私のご飯どうだった?」
 「…牛肉も悪くないわね」
 そっけなく答える梓。僕の次にたくさん食べたくせに。
 「何よ兄さん」
 「何でもないよ」
 僕は笑った。梓が不満そうな顔をする。最近、梓と何気ない会話が増えた気がする。
 「ちょっとデザートにアイス買ってきます。みなさん何がいいですか?」
 夏美ちゃんが立ち上がる。今日はちょっと寒いのに。まあいいけど。
 「バニラ」
 「私も」
 春子と梓が答える。
 「お兄さんは何がいいですか?」
 「僕も行くよ」
 夜に女の子が一人で歩くのは危ない。夏美ちゃんは驚いたようだがすぐに笑った。
 「お願いしますねお兄さん」
 「兄さん」
 梓が睨む。
 「襲っちゃだめよ」
 「はいはい」
 笑いながら僕と夏美ちゃんはリビングを出た。
 シロが玄関まで見送ってくれた。気をつけてというようにワンとないた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
67三つの鎖7 前編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/29(日) 00:07:54 ID:FzAfdehw
 「ハル先輩の料理すごかったですね」
 アイスを買った帰りに僕らはのんびり歩いていた。
 「僕に料理を教えてくれた一人だから」
 「昔から仲いいんすね」
 朗らかに笑う夏美ちゃん。お昼のように不機嫌そうに言うことはない。
 「お兄さん」
 改まって夏美ちゃんが言う。
 「あの日すいませんでした」
 あの日。
 「梓を背負って帰った時の事?」
 「はい」
 夏美ちゃんが謝る理由が分からない。
 「あの時、お兄さんの涙を見て、私涙を拭こうと思ったんです」
 ぽつりぽつりと言う夏美ちゃん。
 「でもできませんでした。なんか恥ずかしくて」
 夏美ちゃんは恥ずかしそうに笑った。
 「そう考えるとハル先輩ってすごいですよね。もしハル先輩がいたら涙拭くだけじゃなくて抱きしめますよ」
 「ありがとう」
 僕は言った。
 「涙を拭こうと思ってくれたその気持ちだけでもうれしいよ」
 そんな事を言ってくれた人はいなかった。本当なら年下の女の子にそんな事を言われるのは情けない限りだ。それでも不思議と温かい気持ちになれた。
 「お兄さん」
 夏美ちゃんは立ち止った。僕も立ち止まる。
 「お兄さんの涙だけじゃなくて、苦しみも拭いたいんです」
 僕は夏美ちゃんの顔を見た。真剣な眼差し。気持ちは嬉しかった。でも僕の答えは決まっていた。
 「夏美ちゃん」
 夏美ちゃんは少し緊張していた。
 「気持はすごくうれしい。そんな事言ってくれたのは夏美ちゃんが初めてだ」
 心がくすぐったい不思議な感覚。嬉しいのか恥ずかしいのか分からない。
 「確かに僕は悩みがある。夏美ちゃんから見れば苦しんでいるように見えるのかもしれない。でも、それらは僕自身で解決しないといけない事だ」
 梓に家事を押し付けていた事。そして梓が非行に走った事。僕は何も気がついていなかった事。その結果、梓は僕を嫌っていること。
 これはすべて僕の責任だ。そして僕一人で解決しないといけない。
 辛くないと言えば嘘になる。梓は僕を嫌ったままだ。家族に嫌われ続けるのは苦しい。
 いつか昔のように仲の良い兄妹に戻りたい。それが無理でもせめて梓にゆるして欲しい。僕が願うのはそれだけだ。
 「一つだけ聞かせてください」
 夏美ちゃんは僕の顔を見上げながら言った。まっすぐな瞳。
 「お兄さんの悩みが解決される事を、お兄さん自身は信じているのですか」
 胸に鈍い痛みが走る。脳裏に冷めた梓の表情が浮かぶ。
 僕の悩みが解決するという事は、梓と仲直りする事。
 無意識のうちに目を背けていた考え。梓がゆるしてくれる日は本当に来るのだろうか。僕には来るとは思えない。一生、梓に嫌われるとしか思えない。
 考えるだけで身が竦む恐ろしい未来。震えそうな自分を必死に抑えた。
 「お兄さん」
 両手に温かくて柔らかい感触。夏美ちゃんが僕の両手を握っていた。
 「私はお兄さんの悩みが解決されると信じています」
 真っすぐで澄んだ瞳が僕を見上げる。
 「信じています」
 夏美ちゃんの言葉が心にしみわたる。恐怖が薄らいでいく。
 不思議な気持ちだ。夏美ちゃんは僕と梓の関係を何も知らないはずだ。仮に知っていたとしても何も関係ない。それなのに夏美ちゃんが信じると言ってくれただけで不思議と胸が軽くなる。
 僕自身が信じたくても信じられない事を信じると言ってくれた夏美ちゃん。ふれる手の温かさが頑張れと勇気づけてくれるように感じる。
 それが泣きたくなるほど嬉しい。
 「…ありがとう」
 僕はそっぽを向いた。梓ちゃんの顔を見るのが気恥ずかしかった。
 「生意気なこと言ってすいません」
 夏美ちゃんはそう言って笑った。
 「お兄さんにもう一つ伝えたいことがあります」
 「何?」
 「私はお兄さんが好きです」
 僕は夏美ちゃんの顔を見た。夏美ちゃんは顔を赤くして恥ずかしそうに笑った。
 「でも、私のこの気持は、お兄さんを信じるのとは全く別です」
 好きだから信じるのではない。信じるから好きなのではない。
68三つの鎖7 前編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/29(日) 00:08:32 ID:FzAfdehw
 あくまでも好きという気持ちと、信じるという気持ちは別。
 「だから返事は今じゃなくていいです。むしろ今はいやです。なんだかお兄さんの涙に付け込む気がします」
 まっすぐに僕を見る夏美ちゃん。
 「本当は別の機会に気持ちを伝えたい方がいいと思いました。でも、私がお兄さんを好きな気持ちと、信じる気持ちは違う事だけ知ってほしかったのです」
 夏美ちゃんは僕の事情には一切関係ない。僕と梓の問題は当事者二人の問題だ。
 それでも僕は夏美ちゃんの言葉を嬉しく思った。僕が信じられない事を信じていると言ってくれた。
 「ありがとう」
 僕はそれだけ伝えた。夏美ちゃんは僕の手を握ったまま笑った。温かい笑顔。
 夏美ちゃんが手を離そうと力を緩めたとき、僕は思わず握り返してしまった。夏美ちゃんが驚いたように僕を見る。
 自分自身の行動に驚く。僕は何をやっているんだ。
 すぐに手を離そうとしたら今度は夏美ちゃんが握り返してきた。赤くなった顔でそっぽを向く夏美ちゃん。
 結局、家に着くまで僕らは手をつないだままだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
69三つの鎖7 前編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/29(日) 00:15:03 ID:FzAfdehw
投下終わりです
読んでくれた方に感謝します
前半はキモ成分の無さに作者もびっくりです
すいません
近いうちに後編を投下します

>>12
な、なんだってー!?
その設定にびっくりです
読み返してもどこでそう思ったのか作者には分かりません
でもその設定もありかもです
親が兄妹、生まれた子ども二人も同じ道を歩む…
その話もいいかもしれません
どこかで読んだ気はしますが…
70名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 01:16:04 ID:6WfGTF6Q
>>69
GJ!!
いつも読ませてもらってるよ
夏美ちゃんかわぇぇなぁ・・・
でも幸一君が優しすぎる。
もう仏レベルになってて鈍感を通り過ぎて悟り開いちゃってる!!
71名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 01:28:13 ID:LDM8IeEz
>>69
GJ
梓の兄以外本当にどうでもいい感じが堪らんです
あと春子からじわじわとキモ成分が分泌されてて大変良いと思います
72名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 01:49:58 ID:tPhIB9/L
>>69
GJ
次回に期待
73名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 01:58:36 ID:Jxiyc3TX
>>69
おお、作者様からのコメ感謝
 余計なことしたかなと内心びくついていたがやはりその上をいってましたか
 今後とも良い作品をこの板に生み出していってください


74名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 03:06:13 ID:VvrVAsZW
>>73
ものすごく新参の香りがする
75名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 04:13:56 ID:07k94uUz
>>73新参どうこうよりただの痛い人。
76名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 05:33:49 ID:2y4Nhfrh
>>69
作品はすごく面白いし次回にも期待してるんですが
あの……レス返しとかはやめた方がいいですよ
ここは理想郷とかと違って「自分語り」をする書き手を嫌う傾向にありますから
77名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 06:06:57 ID:WRYUV1yC
GJー
>>76別にちょっと位いいんじゃね?
投下オンリーの書き手じゃつまらんしょ
78名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 08:12:48 ID:vgAcSv/K
書き手は一参加者でもあるのだから少しぐらいレスを返すのはいいだろ。
「書き手はSS書くこと以外に余計なことをするな」では息が詰まってしまう。
79名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 08:39:03 ID:j+gHwpgA
>>77-78
言いたいことは分かるが、そういうゴタゴタが原因で事実上潰れたスレも実際にあるのでやっぱり控えた方がいいと思う
80名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 09:18:20 ID:UFKJguq9
あの話はなるべく出したくないが、あの時は明らかにやり過ぎてたからだろ
少し位なら別に目くじら立てる必要ない
81名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 10:08:50 ID:ye9A1CkQ
まあまあ、なにごともホドホドがちょうど良いってことですよ
キモウトもキモ姉もセックスも
82名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 11:15:34 ID:0QCknLIb
>>なにごともホドホドがちょうど良い

兄妹、姉弟でセックスはまずいけどアナルならおk、みたいにね!
83名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 11:53:14 ID:WCX7r8VC
>>69は今回もGJだと思うが、後書きで一言返す程度の作者も潰すのがこのスレの流儀なのか?
84名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 13:33:54 ID:F4PjKSg2
このスレの住民ってくだらないことでさんざん作者を潰してきたからなーほんとw
85名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 14:04:42 ID:VvrVAsZW
>>83
前レス嫁。
実際にエロパロ最強のまとめサイトを持つスレが
それによって潰れたんだよ。
86名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 14:14:16 ID:3GGAvLg7
そこまで書き手に息苦しさを強要しなければ存続できないほど民度の低いスレなら、いっそ跡形もなく潰れてもらった方が板のためだと思うが。
わけのわからんローカルルールをよそへ押し売りされずに済むからな。

>>83みたいに前例を上げるなら、俺の他の常駐はここまで作者を締め上げようとしてるところはどこにもなかったぞ。
あつものに懲りてなますを吹くと言うが、>>69みたいに自重してる作者でも叩くべきということなら、このスレは廃墟になって大いに結構と言いたいとしか思えん。
87名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 14:24:03 ID:aN2dfmSb
>>86
お前みたいな奴を隔離し続けるために、このスレは潰してはならない
88名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 14:35:46 ID:yyZyYU6y
>>86
はあ、前の流れをまた貼らにゃならんのか……

589 2009/06/16(火) 14:45:57 ID:32vlcDBH
名無しさん@ピンキー(sage)
書き手はただの自販機だからな
人間様相手に口を利こうなんて百年早いよ

592 2009/06/16(火) 15:27:02 ID:0UxEeZ3I
名無しさん@ピンキー(sage)
>>589が言ってるのは、ただのこの板全体に共通する基本ルールでしょ?
書き手は自販機、よけいなことを口走るような壊れた自販機は排除しましょうっていうのはさ。
むしろ、なんで>>590がそんなに噛みつくのかのほうが意味分からないんだけど?

595 2009/06/16(火) 15:36:03 ID:Ojw5my/9
名無しさん@ピンキー(sage)
腐ったみかんが増えないように、壊れた自販機は逐次廃棄処分していくしかないとオモ…

597 2009/06/16(火) 15:42:48 ID:gkiJzxkb
名無しさん@ピンキー(sage)
ていうか、ここのスレ住人は……時間という貴重な代価を払ってここへSSを読みに来ているのに、
そこにSS以外の何かが混入していたときの読み手の精神的被害を軽く見過ぎていないか?
そういう書き手は、それこそ毒餃子の天洋食品に等しい倫理観と言われても仕方がないだろう。
そのセンスは確実にこの板のスタンダードからは乖離している、とローカルルールに通暁している俺は思う。

602 2009/06/16(火) 16:07:41 ID:Q26lJbOi
名無しさん@ピンキー(sage)
自販機ってのは確かに言い得て妙だな
俺らはただSSが読みたくてここへ来てるだけなのに
そこに余計な語りや個性を混ぜてくるのってウヘアってなるもんな
SSだけ読ませろよ、いらんもん混ぜんなよって思う
一番いい書き手は自販機だよな、やっぱり
ま、SSの質がいいに越したとはないが、なにはなくともw
89名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 14:36:09 ID:yyZyYU6y
607 2009/06/16(火) 16:38:58 ID:ZjS7o5nt
名無しさん@ピンキー(sage)
よく分からんが……
SSは楽しみたいが、SS以外のことを書き手が書いていると楽しめない
だからそういう書き手にいなくなってもらいたい
そういう風に考える連中が一定数このスレに(この板全体に?)いて、
なおかつこの板ではそういう連中の方が主流派なので、スタンダードになっている

こういう理解でおk?

610 2009/06/16(火) 17:37:13 ID:n1tidJUN
名無しさん@ピンキー(sage)
>>607
> こういう理解でおk?
1:書き手がSS以外を何か書くと難癖をつける馬鹿
2:書き手がSS以外を書くと喜ぶ人たち
3:好き嫌いは別として書き手がSS以外を書くと1が湧くのでできれば自重したほうが良いんじゃないかと思ってる人たち

主流は3じゃないかと
噛み付いてるのは1
3は多くの場合、作者のコメントも1の荒らしもスルーしている
まあこの書き込みしている時点で俺もスルー力検定落ちかもしれんが

611 2009/06/16(火) 18:07:10 ID:bfhBzq6q
名無しさん@ピンキー(sage)
なんつうか、スレ民の忌憚ない意見が聞けておもしろかった。
自販機かー。言い方はちょっとアレかなとは思うが、まあ、本質的には確かにそうなのかもしれんね。
そういうのが理想型なのか。なるほど。勉強になるわ。

616 2009/06/16(火) 18:27:20 ID:sXNu3DiF
名無しさん@ピンキー(sage)
ていうかそもそも、書き手にSS以外の情報を書き込んで余韻をつぶす権利なんてあるのかね?
自販機うんぬんは書き手スレとか読み書きスレとか、この板の自治系スレではかなり市民権を得てる概念だよ。
それも知らずに叩くのは無知すぎ。

639 2009/06/16(火) 22:42:01 ID:aTd3NW/j
名無しさん@ピンキー(sage)
板のローカルルールは一スレの生死よりはるかに重いからな・・・
楽しみにしていたいくつかのSSの続きが今後いっさい読めなくなるのは少々残念だが、
自分語りというこの板にとって絶対不可侵の禁忌を犯す不良自販機の増殖をここで食い止めるためなら、
今のうちにこうしてスレごと根絶されてしまった方が皆にとって幸せなのかもな
それがスレと板の総意、そして自然の法則ということか・・・

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
この流れが前回荒れたときに決定されたこのスレのLRだよ。書き手の後書きは禁止。
だから>>77=78=80=83=84=86の言うことは、少なくともこのスレでは決定的に大間違い。

まあ>>69も今回だけは大目に見るから、次からこのようなことはないようにしてもらいたい。
90名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 14:36:52 ID:akvAnWtX
態度がBIGだな
ここは、キモ姉&キモウトの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○キモ姉&キモウトの小説やネタやプロットは大歓迎です。
愛しいお兄ちゃん又は弟くんに欲情してしまったキモ姉又はキモウトによる
尋常ではない独占欲から・・ライバルの泥棒猫を抹殺するまでの

お兄ちゃん、どいてそいつ殺せない!! とハードなネタまで・・。

主にキモ姉&キモウトの常識外の行動を扱うSSスレです。

■関連サイト

キモ姉&キモウトの小説を書こう第二保管庫@ ウィキ
http://www7.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/1.html

キモ姉&キモウト小説まとめサイト
http://matomeya.web.fc2.com/

■前スレ
キモ姉&キモウト小説を書こう!part25
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1259151879/

■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
 ・前書き・後書き・レス厳禁。言いたいことはSSの中だけで語ってください。

SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー!荒らしに構う人も荒らしです!!
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・スレは作品を評価する場ではありません
・SS以外のことを少しでも語ろうとする書き手には、即座に指導の愛の鞭を!
92名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 14:57:32 ID:4w1qeY/b
>>91
矛盾点が多いような・・・
93名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 15:02:15 ID:7+gUJRiP
>>92
・・・はあ?
お前は>>76、79、85、87、88、89みたいなスレを思う真摯な書き込みを、いったい何だと思っているんだ?
94名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 15:09:14 ID:qZYbvws1
見てればわかるように頭おかしい連中も中にはいてそういう奴に限ってしつこいから
作者さんは黙ってた方が賢明だよ
95名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 15:12:21 ID:4w1qeY/b
・荒らしはスルー!荒らしに構う人も荒らしです!!
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう

とりあえずこれだけは守りたいものですね
96名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 15:12:53 ID:S6IU/oqE
>>93
放置しろって

>>92
いいと思う!次の>>1からはこれで行こう。
97名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 15:20:13 ID:N8ELX50D
>>86
お前の常駐過疎スレのことなど知ったことではないが、生憎とこのキモ姉キモウトスレは大いに賑わってるんでな。
時折出てくる>>69みたいな書き手を間引いても、まともな書き手はいくらでもいる。十分スレは回るんだよw

で、だ。だからこそ今回のような無駄な諍いを避けるためにも、これを機会に>>92のように>>1を訂正して、
あらかじめ勘違い書き手君が迷い込んでくるのを防止しておくのは非常に有意義だと思う。
98名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 15:32:00 ID:PLM1wvve
匿名掲示板で不特定多数の名無しと、特定コテハン(またはそれに準じる存在)のどちらが強いかなんて、少し考えれば誰にでも分かる話なわけで……。
で、これだけ『作者の語り許すまじ!』な世論が強い以上、次スレからは>>92の採用もやむを得ないと思う。
少しの語りも絶対に許されないのなら。最初から明記しておくべきだ。でなければ、後付けで叩きにかかるなどアンフェアにすぎる。
どうしても必要なら、裏話スレなんてのもあるし。

>>69は本当に気の毒だった。アプローチに斬新さを感じるし、作品はすごく面白い。
一部便乗して荒らしになってる連中に乗せられたりせず、このまま筆を折ったりしないでほしいと切実に思う。
99名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 17:04:43 ID:WRYUV1yC
>>77だけど俺が間違ってたよ。
ごめんなさい。以後この話題は無しで頼む。
100名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 17:11:54 ID:hue5Q1Zx
>>69
GJ 
テンポ良く読めて,時折笑いを混ぜて話を展開させていてとても面白いです。
登場するキャラがとても魅力的ですね。今後も期待しています。
101名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 18:44:32 ID:S/9EQ7M5
俺はこのスレに投下したこともないし、今まで投下開始と投下終了としか本文以外にレスをしたこともない
むしろ自分語りを長文で投下する書き手には、苦いものを感じる性質たけど

さすがに>>88の意見等を目にすると多少の憤りを感じるな
恐らく大多数の書き手も同じではないだろうかと思う

別に書き手が読み手に対して上位だなんて言わないから、対等な立場を意識して双方尊重し合えると喜ばしい
昨今の小さな問題でも書き手或いは、読み手を叩きのめして追い出そうという風潮は、やはり目に余る

今回のような件も反社会的でも個人を貶める文言でもないのだから、寛容な心で許容ないしは、見ない振りをされては如何か
102名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 18:47:34 ID:3kVJEItN
>>69
お疲れ〜
確かに、読む人の解釈に書き手が新発見することもあるね


書き手レスへの反応が少し神経過敏な気がするが、まあ結論がついて今後モメなけりゃいいか
103名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 19:22:27 ID:BOg1UAcw
>>88みたいなのは他スレじゃありえない妄言だな
書き手を追い出して過疎った廃虚スレならいくらでもあるが
書き手を間引くとか言ってるスレが繁栄したためしがない
書き手が投下しづらい空気そのものじゃねーか
104名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 20:04:06 ID:4w1qeY/b
まさに>>88みたいな事言って母なる大地は滅びたのだ!
105名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 20:19:16 ID:Ui8riwUx
>>103-104が何と言おうが、現実問題として、投下オンリーの書き手しか存在を許さない、
一言でも語った職人はただちに排除する、という現在の鉄則らしきものはもう変わらないのでは?

しかし、すごいスレだな。このスレの職人でなくて心底良かったと思うよ。常駐スレの風通しの良さに感謝せにゃならんな。
106名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 20:25:10 ID:2z6iUvtf
単発が暴れるなよ
107名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 20:36:26 ID:I1sb5HcI
>>97
大いに賑わってるのか?
今 長編の作品を投下してくれてるのは3〜4しか無いと思うけど
他の作品は更新されてないし
あと>>91の即座に指導の愛の鞭を!なんて何か気持ち悪い
普通に此処はSS以外のことを語るのは好まれてませんで良いと思う
108名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 20:39:21 ID:YWZ4Lllh
>>107
>>76みたいな愛の鞭を打つ読み手がいなければ、>>69は次も同じ過ちを繰り返しただろう。
住人による指導は常に必要だよ。
109名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 20:40:36 ID:ye9A1CkQ
なにこの流れ
住人がキモ化したのか?
荒し耐性が低いな
多少のツンデレは放置しとけよ
淋しくて、かまってほしいだけなんだから
110名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 20:43:13 ID:2z6iUvtf
あら?規制解除されてたか

書き手が何かしら反応するのはありだけどこの手の荒らしが涌きやすいのも事実
ただ一旦この流れになったら書き手の反応を容認してもしなくても
いちゃもんや自演で荒らすやつは出てくると思う
住人は荒らしに釣られない事、書き手は的外れな反応を無視できる事が大事
ただ書き手の自己アピールのやりすぎが嫌われるのはここに限らった話じゃないのもホント
何事もほどほどが一番
111名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 20:43:34 ID:VhPgesbb
>>108
"住人"を"基地外"と言い換えればその通りだね。
112名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 20:49:49 ID:6kPXeVfJ
>>111
真っ先に勇気を奮って>>69を指導した>>76>>79が基地外だってのか?そいつはあんまりだろ。
113名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 20:54:34 ID:Ui8riwUx
後書きに入れたちょっとのレス一つでこんだけ荒れるんだから、次スレからは>>91を採用するにしろ多少文面変えるにしろ、なんらかのローカルルール可視化処置は必要だろ。
でなきゃ後ろからいきなり撃たれた>>69が不憫すぎる。
114名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 21:00:39 ID:6KgGEJ6d
もう投下開始と投下終了の合図を○×式とか記号選択式のマークシート式にしちまえよ。

問1 ○
問2 ×
問3 4
問4 1

みたいな感じの奴。
んで一個でもそれ以外の文が混じったらアウト。これでさすがに次から揉めないだろ。
115名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 21:01:22 ID:I1sb5HcI
>>110
確かに嫉妬スレみたくなりたくない
行き過ぎた自己アピールは嫌われるけど
何で指導とか愛の鞭なんて言葉を使うのかな?
これじゃまるで読み手が上の立場で書き手が下の立場みたいで新規の書き手とか
今,投下してくるれる書き手も減りそうで嫌だ
>>113
後書きは他の書き手もしてるからレス返しが批判されてるんじゃ無いの?


 
116名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 21:09:41 ID:2z6iUvtf
大事なことを忘れてた

>>69
GJ!
勢いのあるキモイ文も好きだが丁寧に段階を踏む起伏のある文章も凄い好きだ
毎回楽しく読ませてもらってます

>>115
指導とか言ってるのは荒らしだと思うよ
書き手にはある種の図太さも必要だけど読み手には最低限の常識が必要だよね
117名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 21:22:04 ID:BF3YF3mI
勇気振るって>>69の蛮行指導した>>76さんの男気マジカッケーッス。パネーッス!
つうことでこれ以上悲劇が繰り返されないよう、投下前シート試作してみました!

問1 ヒロインの区分
 1……姉 2……妹 3……両方 4……その他
問2 エロの有無
 1……有 2……無 3……要注意属性有り
問3 レス数(予想レス数の実数を記述)

問4 続編の有無
 1……完結 2……連載続行

こんなとこですかね?投下後シートはいわゆる『語り』になりやすいから、このスレだといらないような気がしますけど、どうでしょ。
118名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 21:44:49 ID:JMw6+/Ym
最初に>>76が『愛の鞭で指導〜』とか考えていらんこと言わなければ、こんなことにならなかったんじゃないのか?
119名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 21:52:29 ID:Ui8riwUx
なんにせよ、レス返し一つでこれだけ噛みつく奴が大勢いるんだ。
>>117のシートを採用するかどうかはともかく、スレのローカルルールの変更は絶対に
必要だろ。
120名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 21:54:29 ID:qZYbvws1
キチガイが多いのでやむを得ず採用した旨は明記しておいて欲しいが
121名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 21:55:21 ID:L5NpSC79
唐突だけど
血縁関係の有無がキモ成分を加味する上での絶対条件だと思う
義理とか他人だよね
122名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 21:57:15 ID:2srUrPJK
>>76は超一流の釣り師だなw
爆釣れのうえに25まで続いたスレを崩壊寸前まで追い込んでる。今頃笑いが止まらんだろうなw
123名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 22:23:24 ID:F4PjKSg2
読み手がこんなキチガイばかりだとは予想外だった
どのみち長くないなこのスレも
124名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 22:44:13 ID:W9XFrygP
なんで?>>76を筆頭に、今時珍しいほど自治の体制がしっかりしてることを示した良スレだと思うが。
125名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 22:55:13 ID:nMugtLZi
くだらないレスでスレを伸ばすなカス共
投下までしにくい雰囲気にしやがって
126名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 23:05:27 ID:VvAaqTdN
>>125
御託はいいから書けたんならさっさと投下しろよ
ただしレス返しは無しでなw
127名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 23:08:52 ID:FkmdtXp+
>>121
そうかな? 義理なればこその恐ろしさも追求の余地が有るのではなかろうか。
128名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 23:22:05 ID:8bNBHAjH
いいぞもっとやれ
この調子で職人駆逐してこんなスレ滅ぼしちまえ
129名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 23:26:31 ID:nsLsNf6j
>>76は不特定多数のスレ民に責任転嫁してるけど、要は自分が>>69のレス返しにイラッと来たから率先して愛のムチ(笑)を振るったんだろ?
よかったな、狙い通りにお仲間が大勢で>>69たちを叩いてくれて。
これでまた糞みたいなローカルルールが増えると思うと嫌になってくる。
130名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 23:34:56 ID:QLyR7Xsr
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131名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 23:52:42 ID:I1sb5HcI
>>123
流石に荒らしと思いたいなぁ
何でさっきから単発が異常に多いの?
それに書き手の後書き禁止って此処のローカルルールだったけ?
132名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 23:55:02 ID:Ui8riwUx
>>131
後書きというか、レス返し禁止じゃないのか?
133名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 23:55:47 ID:Q1FQSaCq
コテハンすらやろうと思えば複数用意できる匿名掲示板じゃ荒らしが携帯やID切り換えで複数人を装うなんて余裕だしなあ
そんなところで言われもしないうちから多数派を唱える「自治」厨の戯言には笑わされる

あと、愛の鞭(笑)や指導(笑)がありなら指導の指導もありだよなぁ
批判なんかぶってるやつがいたらそいつを批判する自由もあるのが筋ってもんだろ


ただ、まあ、あれだ
いつマジキチが凶器持って部屋に押し込もうとするかわからん以上
書き手も防犯の意味で戸締まり(レス)には気をつけざるを得ないだろうな
134名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 23:59:21 ID:I1sb5HcI
>>132
レス返し禁止だった。 すみません

135名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 00:02:02 ID:Ui8riwUx
>>133
すでに>>79が、>>76に指導返しをしようとした>>77>>78へさらに愛の鞭を振るってるんだが
136名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 00:12:02 ID:8Yl29nCs
>>127
義理のほうが箍が外れやすいイメージはあるな。血の縛りが無い分
爆発したら実妹のほうがやばそうだけど。
137名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 00:13:26 ID:hzEsUY7J
>>133
今回の>>69はマジキチにストーキングされて刃物持って追い回されたレベルだろ
>>69は泣いていい
最初に因縁つけた>>76と煽った>>79は氏ね
138名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 00:24:17 ID:C+OD34h+
>>135
例のやつはたぶん自分が何して何を返されてるのかはっきり言われないとわからないと思う

それとよく読み返すとキチガイ代表扱いされちゃってる>>76からしばらくのやり取りは穏やかなんだな
>>88-89,91,93,97「一派」(何だろうね、この単発の連続)から一気におかしくなる
139名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 00:26:34 ID:Bqx0zz7i
>>76も単発なんだがな
140名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 00:30:25 ID:hzEsUY7J
>>69にイラッと来た>>76>>77>>78に突っかかられて>>79で軽く反論、
その後>>80、83、84と反論されて次第に頭に血が上り、>>85で再度反論するも、
>>86に思いっきり突っ込んでこられて、>>87から怒涛の大攻勢を開始した…

と読み解くと、いろいろスッキリするんだが。
141名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 00:30:43 ID:Ypf8Cg/S
投下かと思ったら紛らわしい
142名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 00:32:18 ID:i0CIXovW
>>136
義妹が、婚姻可能年齢になるまで兄に近づく敵を排除し続ける…これも一種のキモウトかも
143名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 00:34:56 ID:BUqrG1Wi
もういいだろ、日を跨いでまで荒れる話題を引っ張らんでも
この手の、職人さんやSSに難癖つけてスレを廃れさせようとする輩は
どこのスレにでも出没するんだし、気にしない方がいい
こっちはSSを楽しみにしてるってのに、
スレが荒れてるせいで職人さんだちが投下してくれなくなったらたまらない

>>136
「血縁」ってのは最大の障壁であると同時に絶対の繋がりでもあるから、
義理の場合はかえって姉弟/兄妹という関係に縛られてそうだ

想いを伝えることはできるけど、もしそれで今の繋がりが崩れてしまったら…
と思い悩んでいるうちに徐々に心が病んでいって……みたいなね
144名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 00:41:59 ID:Bqx0zz7i
>>140
なるほど、それっぽいな。
得てしてこういうマジキチは、最初はこういう親切の押し売り、
いかにもこうすることがあなたやみんなのためなんですよって善人面で、自分の独善を押しつけてくるもんだからな。
145名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 00:48:01 ID:VD5fjFie
>>140
改めて>>76>>79>>85>>87>>88という一連の流れで読むと、ヒートアップしていく過程がすごい分かりやすくておもしろいなw
146名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 01:00:11 ID:hzEsUY7J
>>76とかの最初のほうだけ丁寧で、後で一気にブチぎれるあたり、なんかフリーザ思い出した。いや、フリーザは途中でぞんざいにならなかったような気もするが。
>>88のあたりなんか「ぜったいに許さんぞ虫ケラども!! じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!」って感じだったのかな。
147名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 01:04:26 ID:YjLLra/U
義理より血が繋がってる方がため込むものが大きいと思うんだ
それが爆発した時が見たいんですよ。ええ
148名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 01:06:36 ID:9cS1AAcQ
フリーザが妹でクウラが兄 まで読んだ
149名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 01:12:58 ID:i0CIXovW
>>143
失敗すれば「兄妹」でいることすら難しくなるか。これは血がつながっていない故のリスクですな。
150名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 01:22:41 ID:eZMPS0ze
義理だと禁断の関係って感じが薄れるので
そのぶんキモさが出し辛い感じはする

義理が無しってことはないけど
書き手のハードルが一段階あがりそう
151名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 01:26:08 ID:7+G0+m9G
あぁ膣で精液が呑みたい
皆様こんばんわ。>>69です。
以下はマジレスです。不快に思う方はスルーでお願いします。

今日バイトから帰ってスレを見たらものすごい事になっていてびっくりしました。
私のレス返しからこの様な騒ぎになった事は残念に思います。

皆様の様々な意見を拝読しました。以下は全て私の意見です。「てめーの意見なんて聞いてねえよ!」と思う方は重ね重ね申し上げますがスルーでお願いします。
多くの人が集まれば、それだけ多くの意見が集まります。
人の数だけ意見があるでしょうし、人の数だけ作品の感想もあると思います。
意見の衝突や対立は必ず存在します
それでも最低限守るべき事はあると思います。
それは、続きを投下したくなくなるレスをしない事だと思います。
私も多くの作品を拝読するなかで、「パネーッス!」と思う事も「ねーよwww」と思う事もあります。
それでも罵倒をレスすることはしません。
そんな事をすれば書いた本人も他の書き手も投下しにくくなるからです。
私がこのスレを知ったのはキモウトwikiです。そこには素晴らしい作品が多数存在します。
しかし、残念なことに未完の作品が多いのも事実です。
私は素晴らしい作品を未完で放置する作者の方の気持ちは分かりませんでしたが、今回理解できました。

一人の書き手としての意見を申し上げます。
書き手は自販機ではありません
「なんだぁこの自販機は?こんなクソなSSを投下するんじゃねえよ!」
「全くだな。こんな自販機は潰してしまえ!」
「汚物は消毒だー!」
そうして潰された自販機の中には実は素晴らしい作品が存在していたかもしれません。
その可能性をわざわざ潰す必要はあるのでしょうか。
そして潰されなかった自販機は潰された自販機を見てどう思うでしょうか?
「ヒャッハー!あの自販機は潰されて当然だぜ!」
「だよな!あんなのが俺らと同じ自販機と思うと反吐が出るぜ!」
そんな風に思う事はありません。嫌になってスレを去るのはある意味当然かもしれません。

エロパロは作品を投下する書き手の存在に支えられています。書き手が去ればスレは廃墟となるだけです。
そして書き手は読み手に支えられています。
作品を投下するのは、理由は何であれ読んでほしいからです。
そしてどう思ったかを知りたいのです。
私は書き手も読み手もどちらとも大切だと思います。
GJ!を返してくださる読み手の存在は、書き手にとってこの上ない応援です。

私が皆様にお願いすることは、書き手を潰さないでほしいという事です。
現在のレベルが何であれ、書き手の存在は貴重です。
今は駄作でも、将来は名作を生み出すかもしれません。
「この程度でつぶれるのは甘いんだよー!甘えんじゃねー!」と思う方もいらっしゃるでしょうが、罵倒されて平気な人間が少数派なのも事実です。
投下された作品が玉石混合なのは仕方がありません。長い目でお願い申しあげます。
一人の読み手として、作品を投下しやすいレスであるようにと願います。

長文失礼しました。励ましのレスをしてくださった皆様とマジレスを拝読してくださった皆様に感謝申し上げます。
これからは出来るだけ作品で語るようにします。未熟者ですが、どうか長い目でお願い申しあげます。







口直しに続きを投下します。
三つの鎖7 後編です。
※注意
エロあり
凌辱表現あり
血のつながらない自称キモ姉あり
153三つの鎖 7 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/30(月) 01:49:56 ID:UGPLKTCt
 夏美と兄さんはアイスを買いに家を出た。
 私はアイスティーを飲みながらぼんやりしていた。春子は客間の布団の用意をしていた。シロは私の横で丸くなっている。私がシロの背中をなでると気持ちよさそうにする。私はシロの背中から手を離し扇子で顔をあおぎながらため息をついた。夏美が羨ましかった。
 兄さんは私に尽くしてくれる。私はそれに何の不満もない。ただ、兄さんに甘える事が出来ないのは私にとって大きな不満だ。
 兄さんと一緒に登校したいし、今の夏美みたいに兄さんと一緒に買い物したいし、春子みたいに甘えたい。
 だがそんな事は出来ない。兄さんは私に嫌われていると思っているから尽くしてくれる。傍にいてくれる。私が兄さんに甘えると前提条件がおかしくなる。
 兄さんに甘えるか、兄さんを傍に縛るか。どちらかしか選べない。
 いや、私はもう高校生だ。兄さんにべったり甘えるのが許される年頃ではない。それにいずれ兄さんに恋人ができると、傍にすらいられない。
 やはり兄さんを騙してでも私のそばに縛り付けるしかない。
 私は扇子で顔をあおいだ。涼しい。この扇子は去年の誕生日に兄さんがくれた物だ。いつも手で顔をあおぐ私のために兄さんが選んでくれた。品の良い落ち着いた色と柄。私の宝物。
 年頃の妹に扇子というのがいかにも兄さんらしかった。
 兄さんは春子と相談して一生懸命考えて選んでくれたらしい。春子はインターネットに詳しく、いいお店を調べて兄さんに教えたらしい。私はこの扇子を一目見て気に入った。
 春子と一緒に兄さんは笑顔で渡してくれた。私は本当に感動した。兄さんに抱きついて頬ずりしたかった。兄さんが私のために考えて選んでくれたのが泣きそうなぐらい嬉しかった。
 でも私は兄さんを思い切り罵倒した。素直になると、自分の気持ちをさらけ出してしまいそうだったから。
 春子は怒った。兄さんはそれを苦笑いして止めた。いつも通りの兄さんだった。
 その日の夜、私は部屋で扇子を見ながら頬が緩むのを止められなかった。ずっと嬉しさの余韻浸っていた。
 のどが渇いて私は部屋を出た時、もう夜は遅かった。両親も兄さんもとっくに寝ている時間だった。
 兄さんの部屋の前を通るとき、兄さんの部屋から何かが聞こえた。私は兄さんの部屋の扉に耳を近づけた。
 「…ぐすっ…ひぐっ…うくっ」
 兄さんのすすり泣く音が聞こえた。胸を締め付けられるような悲しい嗚咽。
 私は驚いて部屋に戻った。兄さんのくれた扇子を握りしめて布団をかぶった。
 信じられなかった。兄さんは私がどれだけ罵倒しても少し悲しそうに苦笑いするだけだった。その兄さんがあんなに悲しそうに泣くなど、想像してなかった。
 罪悪感に胸が痛んだ。昔の兄さんはお調子者で明るい人だった。今の兄さんはそんな面影はない。今の兄さんはいつも困ったように笑う静かな人だ。だが、裏では私に冷たくされ泣くほど悲しんでいる。
 私は頭を振って過去の思い出を振り払った。今更引き返せない。兄さんを傍に置くにはこれしか無い。
 「幸一君と夏美ちゃん遅いね」
 春子はリビングに入ってそう言った。私は扇子を隠した。
 「何かあったのかな」
 不安そうに春子は言った。その瞬間、玄関から音がした。
 シロは素早く立ち上がり、玄関に走った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 「ただいまー!」
 夏美の元気いっぱいの声。腹が立つ。何がただいまだ。ここは私と兄さんの家だ。
 春子が安心したように笑った。
 「おかえり。遅かったから心配したよ」
 何がお帰りだ。春子の家はここではない。
 シロもくーんとなく。シロの家も隣でしょ。何を馴染んでいるの。
 とても腹が立つ。他の女に私と兄さんの聖域を侵された気分だ。
 夏美のアイスは火照った体にはひんやりとしておいしかった。それがさらに私を苛立たせた。
 アイスを食べながら夏美は口を開いた。
 「ハル先輩。シロちゃんはどこで寝るんですか?」
 「私の家となりだから戻って犬小屋で寝てもらうよ」
 わうっ、とないて春子を見るシロ。ちょっとショックを受けているようだ。
 「そうなんですか。シロちゃんおやすみなさい」
 シロはくーんと寂しそうにないてリビングを出て行った。犬小屋に帰ったのだろうか。シロは賢くて器用だ。自分で家の扉どころか鍵まで開ける。後で戸締りをしっかりしておこう。
 「お風呂誰から入る?もう準備はできているよ」
 春子はアイスをぺろぺろと舐めながら言った。子供みたいな食べ方。
 「先に入る」
 私は返事を待たずに立ち上がりリビングを出た。今日は腹立たしい一日だ。
154三つの鎖 7 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/30(月) 01:53:49 ID:UGPLKTCt
 お風呂を手早く上がると、私はリビングに戻った。兄さんは私にアイスティーを淹れてくれた。冷えていておいしい。私は兄さんにブラシを乱暴に投げつけた。兄さんは難なくキャッチした。
 「梓。危ないよ」
 兄さんが困ったようにたしなめるが私は無視してソファーに座った。
 「突っ立ってないで早く」
 兄さんは苦笑して私の背に立った。兄さんの手が私の髪にふれる。いつものとおり兄さんは優しく私の髪をすく。
 「幸一君。お姉ちゃんも後でお願いね」
 春子は笑ってリビングを出た。次のお風呂は春子のようだ。
 兄さんのひんやりした手が気持いい。私のささくれ立った心が嘘のように穏やかになる。夏美は顔を赤くして私と兄さんを見ていた。
 「いいなー」
 夏美が指をくわえて羨ましそうに言った。その顔は真っ赤だ。ふん。せいぜい羨ましがれ。
 私は春子が風呂を上がってくるまで丹念に兄さんに髪をすかせた。
 「あれれー?梓ちゃん、まだ終わってないの」
 風呂あがりの春子は薄着でむき出しの白い肌が微かに桜色に染まっている。健康的な色気を発散していた。
 「あずさー。お兄さんをこき使いすぎだよ」
 夏美が羨ましそうに言った。
 「夏美ちゃん」
 兄さんが夏美を見た。ちょっと顔を赤くしている。むかつく。春子の薄着に見とれているんだ。
 しかし次の兄さんの発言は私を驚愕させた。
 「よかったら夏美ちゃんの髪もすこうか?」
 夏美は目を見開き両手で口元を覆った。耳まで赤くなる。
 私は信じられなかった。兄さんから髪をすくなど私にも言った事がない。兄さんは女性に対して奥手だ。自分から積極的に女性にふれることは無い。
 「わ、わわわ、私でよければお願いひまふっ!」
 噛みまくって答える夏美。
 「お風呂いただきます!」
 夏美は脱兎の如くリビングを出て行った。私はそれを呆然と見送った。
 「梓。これぐらいでいいかな」
 私は何も言わなかった。兄さんはそれをイエスと受け取ったのか、私から離れた。兄さんの温もりが消える。
 「春子?」
 兄さんは春子に声をかけた。春子はぼんやりと私たちを見ていた。いや、兄さんを見ていた。
 「ええと、春子も髪をすくんだよね」
 春子はぼんやりと兄さんを見て私の横にちょこんと座った。兄さんは春子の髪をすきはじめた。
 「幸一君」
 春子がぼんやりと兄さんの名前を呼んだ。
 「珍しいね」
 春子はひとり言のように呟いた。
 私は立ち上がって兄さんを見た。赤い顔。私は直感で春子の髪をすいて恥ずかしがっているのではないと分かった。夏美の髪をすくと言った事を恥ずかしがっているんだ。
 それが分かった瞬間、醜い感情が私の心で荒れ狂った。
 「私もう寝る」
 不愉快だった。私はリビングを出て自分の部屋に入った。
 ベッドに転がり扇子を取り出す。握りしめ布団をかぶった。
 何で兄さんは夏美の髪をすくなんて自分から言ったんだろう。今日のお昼の二人はちょっと気まずかったのに。仲直りしたからなのだろうか。
 そうだ。兄さんは優しいから羨ましがっている夏美が可哀そうになって髪をすいてあげるって言ったんだ。そうに違いない。いや、それ以外にあり得ないし、あってはならない。
 体が熱い。私は扇子で顔をあおいだ。少しだけ気分が落ち着いた。
 今日は苛々して疲れていたのだろう。私はすぐに眠気に包まれた。
 
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 私はお風呂の中でぼんやりしていた。
 お兄さんの事が脳裏に蘇る。
 恥ずかしい。お兄さんに告白してしまった。それだけじゃない。お兄さんと手をつないでお兄さんの家まで帰った。さらにこの後お兄さんが髪をすいてくれる。
 私は立ち上がった。体が火照っている。だめだ。思いきり叫びたい。奇声をあげて走り回りたい。
 何度も深呼吸した。熱い息を吐き出す。お風呂を出て体を拭いて寝間着に着替えた。
 リビングに戻るとお兄さんとハル先輩がのんびりお茶を飲んでいた。
 お兄さんが私に気がついて飲み物を淹れてくれた。冷たいアイスティー。私はほとんど一気飲みした。火照った体に心地よい。
 私は気合を入れなおしお兄さんを見た。うわっ。恥ずかしい。
 「おにいひゃん!」
 思いきり噛んでしまった。仕方ないよね。恥ずかしいんだもん。
 「お、お願いします」
 小さい声しか出なかった。私はソファーにちょこんと座った。お兄さんが私の後ろに立つ気配に心臓が暴れる。
 髪に何かが触れる感触。私はびくっと震えた。お兄さんは優しくゆっくりと髪をすく。
155三つの鎖 7 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/30(月) 01:56:55 ID:UGPLKTCt
 私の髪にお兄さんが触れる感触。ブラシが私の髪をすく感覚。何もかもが嬉しくて恥ずかしい。
 「私もう寝るね」
 ハル先輩はそう言ってリビングを出て行った。ってちょっと!待って!置いてかないで!
 私の心の中の叫びは当然ハル先輩には届かない。リビングに私とお兄さんは二人きり。
 だめだ。お兄さんをすごく意識してしまう。恥ずかしい。頭が爆発しそうだ。
 天国のような地獄のような時間は過ぎて行く。
 終わりは突然だった。髪からお兄さんの感触が離れる。
 「こんな感じでいいかな」
 振り向いてお兄さんを見ると、お兄さんも顔を赤くしていた。ちょっと安心してしまった。お兄さんも私も同じだ。恥ずかしいんだ。
 「ありがとうございました。梓がお兄さんに髪をすかせる理由が分かりました」
 私は少し余裕を取り戻してお礼を言う事ができた。
 「どういたしまして」
 お兄さんは恥ずかしそうに頬を指でかいた。お兄さんの頬。柔らかそう。
 頭が爆発しそうだった。取り戻した余裕など一瞬で吹き飛んだ。
 「お兄さん!これを見てください!」
 私はお兄さんに左手を見せた。お兄さんは不思議そうに私の手を見た。もちろん何もない。
 「もっとよく見てください」
 お兄さんは腰をかがめて私の手に頭を近づけた。お兄さんの顔が低くなる。
 私は背伸びをしてお兄さんの頬に口づけした。
 驚いたように私を見るお兄さんの顔が赤く染まる。
 「お、おやすみなさい!」
 呆然としているお兄さんをリビングに置き去りにして私は逃げた。用意してもらった部屋に入り布団に飛び込んだ。
 恥ずかしくて死にそうだった。私は何て事をしてしまったんだ。
 すぐに眠気が襲う。今日の出来事に疲れ切っていたのだろう。私はすぐに寝てしまった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 僕はシャワーを浴びていた。
 頭がぼうっとする。あの後、ずっとぼんやりしていて気がつけば日付が変わっていた。
 今日の僕はおかしかった。夏美ちゃんの手を握ったり、夏美ちゃんの髪をすくと言ったり。どこからどう見ても変態以外の何物でもない。
 自分の頬を触る。まだ感触があった。顔に血が上るのが分かる。落ち着け。深呼吸する。吐く息が熱い。
 その時、扉が開く音がした。誰かが洗面所に入ってきた。
 こんな夜遅くに誰が?
 耳を澄ます。衣擦れの音。
 浴室の扉が開く。そこには春子が一糸まとわぬ姿でいた。
 大きな胸にくびれた腰。滑らかな白い肌。匂い立つような成熟した女性の裸身。
 僕は思わず見とれた。見とれずにはいられない魅力があった。
 春子が近づく。僕は慌てて春子に背を向けた。
 「春子!何を考えているんだ?」
 「静かに」
 春子の声は震えていた。
 「梓ちゃんと夏美ちゃんが起きるよ」
 背中に柔らかくて熱い感触。白い腕が回される。春子の体温と震えが伝わる。柔らかい感触に頭がくらくらする。
 「春子。何を考えている」
 無言。
 「今すぐ出て行って」
 春子の腕に微かに力がこもる。
 「お姉ちゃんがいやなの?」
 春子の熱い吐息が背中に触れる。鳥肌が立つ。
 「春子お願い。離れて」
 「いや」
 僕は春子の腕をつかみ引きはがした。春子が出ていかないなら僕が出ていくしかない。
 振り向いた瞬間。頬に触れる手。唇に熱い感触。
 目の前に春子の顔。目を閉じた春子の顔。
 唇に熱い何かが入ってくる。
 口の中をかき回される。
 「ん…ちゅ…んむ…ちゅ…ちゅ…は…ちゅ」
 春子の肩を押して離そうとするが、あまりに細く感じる春子の腕を握って躊躇してしまった。
 永遠とも思える時間の後、春子の唇が離れた。
 かすかに赤い春子の顔が目の前にある。少し恥ずかしそうな表情。
156三つの鎖 7 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/30(月) 02:02:45 ID:UGPLKTCt
 「春子。離して」
 「いや」
 春子の顔が迫る。僕は春子の肩を押さえた。
 「落ち着いて。何があったの」
 春子が笑う。悲しそうな笑顔。
 「お姉ちゃんのキスはいやなの?」
 話が通じない。
 力ずくで引きはがすしかない。春子の腕を掴む。細い腕。再び躊躇してしまう。思いきり力を入れるとどうなるか分からない。
 「ここはこんなに喜んでいるのに」
 おもわず腰を引く。春子の指が僕の剛直をつかんでいる。白い春子の指が剛直に絡みつく。そのまま春子の手が上下に動く。腰が引けるほどの快感。声が出そうになるのを必死でこらえた。
 「気持いいの?」
 春子の手を止めようと腕を伸ばす。
 そのとたんに激痛が走る。
 「変な動きをしたら潰すよ?」
 春子の手が僕の金玉を強く圧迫する。剛直を握る春子の手がさらに動く。
 「はる、こ。やめっ…!」
 春子はさらに僕の剛直をする。快感に腰が砕けそうになる。
 「お姉ちゃんの手が気持いいの?」
 春子がほほ笑む。嬉しくて恥ずかしそうな表情。いつもと全く変わらない笑顔に僕は強い恐怖を感じた。
 「はるこっ!」
 僕は一か八か春子の腕をつかむ。春子の反応は迅速だった。股間に走る激痛に膝をつく。腕を背中にまわされる。
 「幸一君大丈夫?」
 優しげな声。
 「ほら深呼吸して」
 春子の手が金玉をなでる。くすぐったい感触に痛みがゆっくり引いていく。
 「あまりお姉ちゃんを困らせないでね」
 頬に口づけ。熱い。
 そのまま押し倒された。春子の白い体が覆いかぶさる。引き離そうとして後ろに回された腕が動かない事に気がついた。
 カチャカチャという金属音。これは手錠か?両手が後ろで拘束されている。力を込めるがびくともしない。
 春子の腕が僕の顔をつかむ。そのまま口づけされる。
 「ちゅ…はん…ちゅ…む…ん…ちゅ」
 口内に入り込もうとする春子の下を歯をかみしめて防ぐ。僕の歯茎を春子の舌がなめまわす。春子は顔をあげた。
 「幸一君。口を開けて」
 「春子。手錠を外して」
 股間に感触。春子の膝。硬い膝が金玉にふれる感触に背筋が寒くなる。
 「お姉ちゃんの言う事を聞いて」
 「もう一度言う。手錠を離して」
 春子は再び僕の唇にキスする。春子の舌が僕の唇をなめまわす。時々僕の唇を甘噛みする。
 「ちゅ…ん…ちゅ…あふ…ちゅ…ん」
 春子の唇が離れる。涎が垂れる。
 「体の方は正直なんだね」
 カチカチになった剛直に春子の指が触れる。うめき声を上げそうになるのをこらえる。
 「ふふ。可愛い顔だよ」
 楽しそうな表情。そのまま剛直をこすりつつ僕の体中にキスしてくる。唇の熱い感触が体中に残る。
 「ちゅ、ん、こういちくん、ちゅ、む」
 「うっ、く」
 まずい。射精感が高まる。
 こうなれば大声を出して梓か夏美ちゃんに来てもらうしかない。こんな状況を見られるとどうなるか分からないが、このままだと危険すぎる。
 そう思って口を開いた瞬間、何かが口に詰められた。
 「幸一君ひどいよ。そこまで嫌がるなんて。お姉ちゃん悲しいよ」
 舌に布の感触。タオルか?
 「ん!んー!」
 ほとんど声が出ない。
 春子が僕の体をまたいで座る。胸に春子のお尻の柔らかい感触。
 「お姉ちゃんが気持よくしてあげるね」
 春子は僕に背を向けた。春子の性器が目の前に迫る。
 思わず見とれてしまった。春子の膣の入り口は薄い桜色をして綺麗だった。そこは頭のくらくらするほど女の匂いがした。すでに見て分かるほど濡れていた。
 突然股間が温かい感触に包まれる。
 「ん、ちゅ、はむ」
 「ん?ん?」
157三つの鎖 7 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/30(月) 02:04:52 ID:UGPLKTCt
 「ちゅ、はむ、お姉ちゃんの、ちゅ、お口は、ん、ちゅ、どう?」
 剛直を熱い何かが包む。快感に腰が引ける。
 「んっ、ちゅ、はむ」
 意思とは無関係に腰が跳ねる。目の前の春子の性器が目に飛び込む。
 熱くてざらざらした感触が剛直の先端を包み込むように何度もこする。たまらない快感。
 「ん!んー!」
 まずい。イッてしまう。そう思った瞬間、剛直が涼しい空気にふれた。
 「ふふ。お姉ちゃんのお口はそんなに気持いい?」
 春子が嬉しそうに微笑む。その笑顔を僕は睨みつけた。
 「いいよ幸一君。その強気な顔。ぞくぞくするよ。本当に立派になったね」
 春子が僕の腰にお尻を落とす。
 「その顔が崩れる瞬間を想像するとお姉ちゃん興奮しちゃうよ」
 白い指が剛直をつかむ。そのまま膣の入り口に誘導する。剛直の先端が膣の入り口にふれる。クチュリと音がした。
 「ん!んー!!!」
 僕は体をよじる。拘束はびくともしない。
 「こら!あばれないの」
 春子がゆっくりと腰を落とす。
 「ん……は……あ……大きい」
 少しずつ僕の剛直が熱い膣に包まれていく。お互いの性器がこすり合う感覚が腰が引けるほど気持いい。
 「んっ……あっ……いっ……つっう」
 春子の顔がゆがむ。
 「あっ……ふふっ……んっ」
 春子は微笑んだ。その直後一気に腰が落ちる。
 「あっ、ああっ、つっ、ふっ、あっ、あああああああああーーーーーーっ!」
 息を荒くして僕の胸に腕をつく春子。顔が痛みと、悦びに染まっている。
 「ふっ、ふふっ、んっ、幸一君、お姉ちゃんの中っ、どうっ?」
 痛みを堪えて微笑む春子。春子の中は熱い。からみつく感触が経験した事のない快感をもたらす。
 「っう……つっ……あっ……んんんっ」
 春子が身をよじる。そのたびに膣が剛直を刺激する。
 「んっ、幸一君、動くっ、よっ」
 春子がゆっくりと腰をあげる。剛直を擦られる快感が全身に駆け巡る。
 「うっ……ああっ……こすれるっ……幸一君のが……お姉ちゃんの中をこするよぉ」
 春子が再び腰を落とす。剛直の先端が子宮の入り口にぶつかる。膣がきゅっと締まる。
 「んっ……いっ……あっ……んんんんっ!」
 剛直をこする膣の感触に声を上げそうになる。春子の白い胸が揺れる。
 「すごっ……これっ……すごいよっ……幸一君……あっ……んっ」
 春子が腰を揺らす。たどたどしい動き。胸が不規則に大きく揺れる。
 「あっ……あんっ……はっ……いいっ……幸一君……ああっ……んっ」
 僕は膣が擦れ合う快感を必死にこらえた。
 「んっ……幸一君……感じてるんだね」
 春子が嬉しそうに微笑み見下ろす。
 「お姉ちゃん頑張るよっ……んっ……あん……ああっ……はんっ」
 腰を振り続ける春子。剛直の先に春子の膣の奥がコツンコツンとぶつかる。
 「いいっ……いいよっ……お姉ちゃんのっ……奥に……幸一君のが当たるよっ……あん!」
 春子の白い体が僕の上でいやらしくくねる。
 結合部のこする水音と春子の喘ぎ声が浴槽に響く。
 「んー!んんー!」
 僕は逃れようと暴れる。
 「あああ!いいよっ!幸一君!動いてっ!」
 そんな必死の抵抗も春子にとっては快感にしかならない。
 射精感がじわりと腰に来る。
 「ああんっ、んあっ、んっ、ああっ、ひゃんっ、いいっ」
 容赦なく腰を振る春子。白い体が僕の上で揺れる。僕は必死に射精しようとするのをこらえた。
 「んっ、幸一君、イきそうなのっ?」
 春子が僕の頬を両手ではさむ。そのままタオルをはずす。
 「ごほっ、春子、お願い、止めて!」
 そのまま僕にキスする春子。歯と歯の間に春子の舌が入り込む。
 「んっ、ちゅ、じゅるっ、ちゅっ、むっ、じゅる」
 僕の咥内を春子の舌がなめまわす。春子の唇が離れる。春子の唇からよだれが垂れる。
 嬉しそうに笑う春子。腰の動きが再開する。
158名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 02:06:29 ID:+Pv9qmcE
リアルタイム支援
159三つの鎖 7 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/30(月) 02:09:32 ID:UGPLKTCt
 「春子、うっ、止めろ、でる!」
 「いいよっ、あんっ、ああっ、こういちくんっ、ひゃん、やっ、お姉ちゃんの、ああんっ、中に、あっ、あっ、あああっ」
 「うっ、くっ、やめろ!」
 「いくのっ、いいよっ、出して、ああっ、あんっ」
 目もくらむような快感。
 春子の膣がぼくの剛直の先端にぶつかった瞬間、僕は達した。
 「あああああ!」
 春子はひときわ大きな嬌声をあげた。
 頭が真っ白になるような快感。食いしばった歯の間から声が漏れる。
 「んあっ……あっ……熱いよっ……んっ……あっ……ひゃん……奥にっ……当たって……ああっ……んっ」
 膣が僕の剛直を締め付ける。春子は大きく背をそらし震えていた。春子がびくっと震えるたびに膣が締め付ける。
 「んっ……あっ……はぁ……はぁ……はぁ」
 肩で呼吸しながら春子が僕にもたれこむ。そのまま僕に口づけをする。僕は歯を噛み合わせ春子の舌を防いだ。
 「んっ、ちゅっ、じゅる、はんっ、じゅるっ、ちゅ」
 春子がゆっくりと腰を上げる。
 「んっ……ああっ……あふれるよぉ」
 春子の膣の入り口から精液と愛液が混ざった何かがこぼれる。かすかに血が混ざっていた。僕は歯をくいしばってその光景から目をそむけた。
 「ふふ、すごいよ幸一君。お姉ちゃんの中いっぱいだよ」
 「手錠を外して」
 僕は声を押さえて告げた。
 「ふふ、立派だね幸一君。ごめんね、今外してあげる」
 春子は僕の手錠を外した。僕はゆっくり起き上がった。春子に背を向けシャワー出す。冷たい水が二人の体液を流す。
 「春子、何でこんな事を」
 僕は春子に背を向けたまま尋ねた。春子は後ろから僕を抱きしめた。春子の素肌の温かい感触が悲しかった。
 「幸一君。夏美ちゃんをどう思ってるの?」
 春子の表情が見えない。
 「いい子でしょ?幸せにしてあげなきゃね」
 「春子。僕の質問に答えて」
 背中から春子の感触が離れる。振り向いた瞬間唇に柔らかい感触。
 春子はゆっくりと唇を離した。
 「おやすみなさい」
 春子は浴室を出て行った。僕はそれを止めなかった。
 浴室の窓を開け換気する。梓はいつも朝にシャワーを浴びる。換気して掃除しなければ。時間を確認する。すでに深夜の三時を回っていた。
 寒気を感じて身をすくめた。部屋に戻ろうとして止めた。眠れるとは思えなかった。リビング座り体を震わせる。
 春子の笑顔が浮かぶ。物心ついた時から一緒にいた明るくて優しい笑顔。
 いつもお姉さんぶって僕と梓の世話を焼いてくれた一番身近な女性。
 僕は手首を見た。手錠をかけられて暴れたせいか、血がにじんでいた。
 訳が分からなかった。悪い夢でも見ているのかと思ったが、手首の痛みは本物だった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 寒い。寒くて動けない。
 あまりの寒さに震えていると、温もりが僕を包んだ。
 温かい。温かさに涙が出そうになる。僕はうっすら目を開けた。
 寝ていたのか?
 そして寝る前の事を思い出す。思わず体が震える。
 立ち上がろうとしたとき、初めて抱きしめられているのに気がついた。
 柔らかくて温かい。
 春子が僕を抱きしめていた。僕は思わず春子を突き飛ばした。
 「いたっ」
 春子は転がった。
 「幸一君!当然起きないでよ。びっくりしたなあもう」
 ぷんぷんする春子。いつもと全く変わらない。
 僕は呆然とした。あれは夢だったのか?
 「ご、ごめん春子」
 春子に手を差し伸べる。背筋に寒気が走る。僕の手首には傷が残っていた。
 「しっかりしてよね。お姉ちゃん心配だよ」
 差し伸べた手を握る春子。僕は呆然としながらも引っ張って春子を立ち上がらせた。
 そのままに勢いで春子は僕に近づき僕の頬を両手で包む。自然にお互いの唇が触れる。
 「んっ」
160三つの鎖 7 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/30(月) 02:12:23 ID:UGPLKTCt
 春子の唇が僕の口の中に侵入する。
 「はんっ、ちゅっ、んむっ」
 僕の口内を暴れる春子の舌が熱い。頭がくらくらする。
 「んっ」
 春子の唇が離れる。春子はそのまま抱きついてきた。
 「ふふっ、可愛い」
 幸せそうに僕の胸板に頬ずりしてくる春子。
 僕は悟った。あれは夢ではない。僕は春子の肩をゆっくり押して引き離した。
 「春子。どうして」
 どうしてあんな事を。
 「どうして、って?」
 春子は微笑んだ。いつもとは違う寂しそうな笑顔。
 「好きだから」
 春子はまっすぐに僕を見つめる。
 「幸一君を愛しているから」
 理解できない。愛しているなら何であんな事を。
 春子は僕を見て優しく微笑んだ。いつもの笑顔。いや違う。今まで見たことのない寂しさの混ざった笑顔。
 「幸一君。そろそろ梓ちゃんと夏美ちゃんを起こしてあげて。もうすぐ朝御飯ができるよ」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 僕は自分の部屋からジャージを持って一階に降りた。着て袖を確認する。手首の傷はうまい具合に隠れた。
 春子が何であんな事をしたかはわからない。だけど、今は他の者に気がつかれるわけにはいかない。
 そんな事を考えていると梓が降りてきた。
 「おはよう」
 「兄さんおはよう」
 お互いにあいさつをする。僕を見つめる梓。
 「どうしたの?」
 「別に」
 梓はそっけなくつぶやいた。
 「おはよーございます!」
 夏美ちゃんが降りてきた。
 「…?お兄さん。どうしたんですか?元気なさそうですよ」
 不思議そうに尋ねる夏美ちゃん。
 「あまり眠れなくて」
 僕は無理やりほほ笑んだ。
 「私はすぐに寝ちゃいました」
 夏美ちゃんは照れたように笑った。夏美ちゃんの笑顔が遠く感じる。
 「みんなー。朝ごはんできたよー!」
 春子の声がリビングに響いた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 朝ごはんはトーストとサラダ、ベーコンエッグ。この家では珍しい洋食だった。
 朝食は静かだった。時々夏美ちゃんと視線が合った。その度に夏美ちゃんは恥ずかしそうに視線をそらした。
 朝食が終わって食器を洗ってから春子は帰った。用事があるらしい。風呂場での事をみじんも感じさせない普段の春子だった。
 梓は「寝る」と言って部屋に引きこもった。
 僕は夏美ちゃんと二人でリビングのソファーに並んで座りぼんやりしていた。
 「お兄さん」
 夏美ちゃんが僕の顔を覗き込む。おもわず目線を逸らしたくなるのを我慢した。
 「私そろそろ帰りますね」
 「…うん」
 僕は玄関まで夏美ちゃんを見送った。
 「お兄さん。今日はゆっくりしてくださいね」
 夏美ちゃんは僕が体調不良だと思っているようだ。実際頭が重い。
 「ありがとう夏美ちゃん」
 僕は無理やり微笑んだ。
 「無理しないでくださいね」
 夏美ちゃんは優しく微笑んだ。昨日の言葉が耳に蘇る。
 「夏美ちゃん」
161三つの鎖 7 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/30(月) 02:15:47 ID:UGPLKTCt
 「はい」
 「昨日言ってたことだけど」
 昨日の事。春子の寂しそうな表情と夏美ちゃんの恥ずかしそうな笑顔が脳裏に浮かぶ。何て答えればいいのだろう。
 夏美ちゃんは僕を見て口を開いた。
 「私はお兄さんを信じています」
 僕でも信じられない事を夏美ちゃんは信じてくれるのか。
 「例え何があってもです」
 春子との出来事を知ってもこの子はそう思えるのだろうか。
 夏美ちゃんの手が僕の頬を包む。
 「だから安心してください」
 顔が近い。目を閉じた夏美ちゃんの顔がゆっくり近づく。
 お互いの唇が触れる。柔らかくて温かい。
 春子のそれが脳裏によぎる。思わず夏美ちゃんから唇を離した。
 「あっ」
 夏美ちゃんが驚いたように目を開ける。
 「その、あの、お兄さん」
 慌てる夏美ちゃん。
 「えと、あの、ご、ごめんなさい」
 目に涙を浮かべ震える夏美ちゃん。思わず僕は夏美ちゃんを抱きしめた。
 「きゃっ!?」
 唇を強引にふさぐ。
 「ん?んんっ!」
 夏美ちゃんは驚いたようだが、すぐに目を閉じた。
 ついばむように夏美ちゃんに何度もキスする。
 「ん、ちゅっ、ちゅっ、んっ」
 夏美ちゃんの口をこじ開け舌を入れる。
 「んっ?んんんっ!」
 口内を滅茶苦茶にかき混ぜる。
 「はんっ!ちゅっ!じゅっ!んんんんっ!」
 震える夏美ちゃん。
 「んっ!ちゅっ!ん、ちゅっ、んんっ」
 ゆっくりと唇を離す。
 夏美ちゃんはとろんとした目で僕を見た。
 「…お兄さん」
 甘い囁き。僕は我に帰る。
 「ご、ごめん!」
 夏美ちゃんの顔は真っ赤だった。
 「いえ、嬉しいです」
 軽くキスする夏美ちゃん
 「キスってこんなに気持ちいいんですね」
 夏美ちゃんは幸せそうにつぶやいた。
 「お兄さん。私帰ります。これ以上いたら名残惜しくて帰れなくなっちゃいます」
 離れる夏美ちゃん。
 「ありがとうございました」
 夏美ちゃんは頭を下げた。
 「またね」
 僕は手を振る。夏美ちゃんも手を振って去った。
 玄関で僕は立ち尽くした。強烈な罪悪感が胸を渦巻く。
 何をやってるんだ僕は。
 思わず唇にふれる。春子と夏美ちゃんの唇の感触が蘇る。
 頭を振って階段を昇る。恥ずかしさと罪悪感と寝不足が混ざって最悪の気分だった。
 部屋に入ると梓がいた。
 梓は僕のベッドの上で布団にくるまっていた。
 「梓?どうしたの」
 梓は起きて僕を見た。
 「兄さん」
 無表情に僕を見上げる梓。暗い瞳が僕を射抜く。
 「昨日の夜どこにいたの?」
 心臓が跳ね上がる。
162三つの鎖 7 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/30(月) 02:18:03 ID:UGPLKTCt
 僕は必死に平静を装った。
 「家にいたけど」
 「家のどこに?」
 梓はベッドを出て僕に近づく。幽鬼のような不気味さを感じさせる足取りで一歩一歩近づいてくる。
 「今日起きたらお風呂が掃除されてた」
 僕の頬に梓の手が伸びる。
 「何で?」
 頬にふれる梓の手が熱い。梓は何かを感づいている。だけど何といえばいいのか。
 春子に襲われたとなど。
 言えない。
 梓が僕を見上げる。突然地面の感触が消える。違う。梓に足を払われた。かろうじて受け身をとる。
 床に転がった僕に梓がのしかかる。僕の頬を梓の両手が包む。
 唇に熱い感触。
 「んっ!」
 お互いの唇が触れる。熱くて柔らかい。
 「ちゅっ、んっ、じゅるっ、ちゅっ」
 歯の隙間を割って梓の舌が侵入する。僕の口内を舐めまわす梓の舌。
 「じゅるっ、んっ、じゅむっ、ちゅっ、れろっ」
 僕は梓の顔を引き離した。
 「梓!何を」
 「誰とキスしたの」
 底冷えするような声。
 「誰」
 梓の視線が僕を射抜く。
 「どっち」
 僕の顔をつかむ梓の手に力がこもる。梓の手は燃えるように熱かった。
 「昨日の夜、お風呂で誰と何をしていたの」
 無表情な梓の両眼が恐ろしい光を放っている。僕は何も言わなかった。言えなかった。
 梓は起き上がり部屋を出て行った。
 僕は何も分からなかった。梓も春子も僕自身も。
 生まれた時からずっと一緒にいる人がまったく理解できなかった。
 脳裏に夏美ちゃんの笑顔が浮かぶ。無性に夏美ちゃんに会いたいと思った。
163三つの鎖 7 後編  ◆tgTIsAaCTij7 :2009/11/30(月) 02:22:49 ID:UGPLKTCt
投下終わりです。
呼んでくださった方に感謝します。
続きは規制がなければ今週の週末にでも投下したいと思います。
164名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 02:24:44 ID:wyQEyNZe
>>163
GJ、感動した
これに尽きる
165名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 02:31:08 ID:+Pv9qmcE
GJ!!! ヤラれてしまったな!
夏美ルートに行ったか…後が怖い、怖すぎる。
Fete並みに[選択ミス=死亡]の予感。
166名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 03:32:30 ID:3V21TgcJ
>>163
GJ!続きが気になるわ…
167名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 05:54:33 ID:ZcyQm5aT
GJ、ゾクゾクするぜ
ワンコにまで苛つく梓はいい感じにキてるね
夏美は幸一にとっても作品自体においても癒しだな
168名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 06:43:02 ID:ryPU96gb
>>163
GJ
一気に三人とも動き出してこれからwktk
風呂掃除しただけで勘づく梓すげぇw
169名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 06:50:44 ID:uC9oIgtu
GJ!
春子さんかわええw
170名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 09:24:23 ID:A9UErIO3
お兄さんも何気に可愛い。続きも楽しみです。
171名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 13:05:03 ID:XC2bMeqD
三つの鎖更新はええええ
>>163GJ!
172名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 13:44:22 ID:j2b0RIM5
>>163
GJ!!
春子視点がまだないあたり期待
あと私案になってしまうんだけど
「剛直」と表してるなら「金玉」を[睾丸]
と表現したほうがいいんじゃないかなぁと思った。
こまかくてサーセン
173名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 16:37:25 ID:C/3KcYb9
>>163
GJ!!
ドロドロ展開に期待
174名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 18:54:47 ID:+4GgmL36
>>140 そんな顔真っ赤にして安価拾ってこなくてもwwwwww
175名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 19:11:31 ID:i6zbrJEE
>>163乙です。
お兄さんが最終的に誰を穫るか、誰に盗られるか、早く続きが読みたい。
でも何だか、全員とヤって誰かに殺られる伊藤誠パターンになる気も…
176名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 19:42:08 ID:XC2bMeqD
てか春子は黒かったんだな
だまされたー
177名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 20:09:59 ID:mb4ckZWj
>>163
GJ 
久しぶりにゾクゾクきたぜ
178名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 20:12:05 ID:mb4ckZWj
sage忘れスマソ
179名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 20:44:08 ID:kptViLF7
>>163
すげええええ
なんだこの展開w
黒春子は証拠隠滅しやすい風呂場で襲ってくるし、兄貴はやけになって夏美襲うし、梓も気づきはじめてるっぽいし……
マジでGJでした
次回も楽しみにしてます!
180名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 21:01:52 ID:dOH0Beb6
>>163
GJ

次の更新まで全裸待機するぜ!
181名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 21:16:31 ID:uC9oIgtu
>>180もう冬だろう、靴下は忘れるな
182名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 22:23:44 ID:6cWIaR58
>>163
GJ 次を楽しみに待つわ!

>>180
ネクタイもな
183名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 00:29:47 ID:neGIac5A
>>163
GJ 
週末まで全裸待機する紳士が多そうだなw
184名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 05:26:17 ID:owoEUQi9
いつまでGJ、GJ、ぼさいてんだよ。
185名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 07:56:27 ID:Z1KfVaKZ
単芝とかキンモー(^ω^;)
186名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 08:38:09 ID:GNA5NP8R
誰も『ぼさ』いてなんかいないよ(^ω^;)
187名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 08:44:40 ID:viKEfKKd
>>163
GJ!!いきなり急展開すぎてびっくりしたわw
まさかの展開に先が気になりすぎる。久しぶりにメタボなバディで全裸待機でもするか…

外野(荒らし含め)がなんかグチャグチャ騒いでたが気にしないで頑張ってくれ
188名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 12:32:09 ID:lbk4Z2iy
>>163
いいわー
最近ギスギスしてたから心が洗われるね
189名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 13:18:49 ID:Z1KfVaKZ
>>187 みたいなキモ過ぎる奴がいるから荒らしたくなるんですしおすし(^ω^;)

全裸待機wwwwww本当にしてろよな!!!!111
190名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 14:41:57 ID:yB5whrhj
ウナギ、お前はやり方がまずい。これでは誰もお前の真意に気づかないぞ。
191名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 16:41:27 ID:nznSFmOS
>>189>>190
みんな自演だからスルーしろよ
192名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 18:42:40 ID:WtLUPmvn
>>163
面白い。続きが気になる。グッジョブ
193名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 23:45:15 ID:8H41rRpd
GJ
断然春子姉派の俺歓喜次もまってますよ
194名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 00:04:18 ID:owoEUQi9
なにか作品の特徴を掴んで書き込んでるなら分かるけど、何故アホの一つ覚えみたいに同じ様な書き込みを何度もするの?
195名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 00:11:00 ID:kfwBePPX
荒れた反動みたいなもんだろ
ぶった切りたいならネタでも投下しろや
196名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 00:20:23 ID:fRdGtgFh
ただのGJにまでイチャモンつけてどうするww
197名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 00:30:33 ID:bgtq71Jr
スルーしろよ
気になるならIDをあぼーんに突っ込んどけ
198名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 00:32:51 ID:gwbL0uJp
過剰だからだろ?
199名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 00:46:12 ID:ZOcesc99
犬までに嫉妬というので小ネタ

妹「兄さん。どこに行くの?」
兄「犬の散歩に行ってくるよ」
犬「ワウ!」
妹(犬の分際で兄さんと散歩なんて。ゆるせない)

次の日の夜

兄「今日の晩ご飯な何なのかな?」
妹「カレーよ」
兄「いただきまーす。モグモグ。何の肉?」
妹「ふふふ。兄さんの好きなお肉よ」
兄「何だろう?いままでに食べた事ない味だな。でもおいしいや」
妹(ふふふ。良かったわね。おいしいだって)

スマソ
怖すぎる
これじゃヤンデレな妹だ
下手したら兄の女の調理して出すかもしれん

妹「兄さん。あの雌猫の味はどうでしたか」
200名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 01:09:43 ID:1k/vJ39W
>>199
ありだな
201名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 01:13:32 ID:GNgbqseH
半島では、実際にワンコ食うらしいね
202名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 01:30:51 ID:ZMp6gcAX
自分の体を料理にして食わせるサイコな妹を連想して、血の気が失せた。


でも雪山遭難とかならやりかねないな。兄に自分の体を食わせるの
203名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 01:45:44 ID:DzMrtY/Y
雪山遭難だと、食糧よりも体温の確保がまず問題
つまり肌の触れあいで暖め合うだろJK
捜索隊が到着したときにはすっかり事後というわけだ
204名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 02:19:30 ID:LDBsltXO
>>201
いちいちくんなキモウヨ
205名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 04:12:56 ID:05fRNOYL
>>203
でもシてる最中に汗かくから、事後は気化熱でさらに冷えるという・・・
206名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 04:39:10 ID:4uDCd6FW
船舶遭難とかどうかな…
二人しか生き残っていない救命筏とか、転覆した船の中の船室とかで二人きりになって…  
207名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 05:44:13 ID:05fRNOYL
>>206
どう考えてもそれを仕組んだのがキモウトにしか思えない件

「計画通り!」
208名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 06:01:44 ID:9MugvRAi
遭難した二人は救助された時三人になっていました
209名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 06:11:48 ID:05fRNOYL
>>208
妹「なんであそこであんたが来るのよ!?」
姉「偶然よ、偶然。『たまたま』二人と同じ船に乗って、『たまたま』事故に巻き込まれて、『たまたま』二人と同じ方向に流されて、『たまたま』同じ島に漂流して、『たまたま』二人に会ったってわけ」
妹「チッ!折角『ドキッ!二人っきりの無人島!?子作りもあるよ♪』作戦だったのに!!」
姉「残念だったわね〜?それよりも妹ちゃん?全裸で裸の弟君にナニをしようとしてたのかなぁ?」
妹「ナニに決まってるでしょ!!あそこであんたが現れなければ、間違いなくお兄ちゃんを堕とせたのにぃっ!!」
姉「ぷっ♪そんな限りなくAに近いBカップの胸で、おっぱい星人の弟君が堕とせるわけないでしょwww」
妹「笑うなぁぁぁぁぁっ!!」

弟「救助された翌日だってのに、二人とも元気だなぁ…」
210名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 09:14:25 ID:UGEAJeuT
>>199
散歩だけで料理というのもアレだから
犬が兄の顔をペロペロしたりするのはどうだろうか?

>>209
ギリギリとはいえBあるんならいいじゃないか
某作品にはAAカップのキモウトだっているんだぜ
211名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 12:26:17 ID:drtb4Cxa
キスシスって漫画を読んでて思ったんだが、最近兄or弟の服とかをクンカクンカするぐらいで済ませるキモ姉妹が足りない
隠れて衣服クンカクンカシチュエーション大好きだ
212名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 12:34:59 ID:eAmxyAsa
>>211
お前のお姉ちゃんがなんかお前のっぽいTシャツもったままトイレにこもりっきりなんだが
213名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 15:13:33 ID:S5v2FT4A
キスシスって義理姉なんだよな。
でも結婚可能な姉が複数故に可能なシチュをいろいろ作り出してるのが面白い。
214名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 22:24:49 ID:4IY9CElx
>>212
うちの弟に変なこと吹き込むのやめてくんない?
トイレ入ってるときお腹冷えるから、服借りただけなんですけど。
いつも巻いてるタオル無かったし。
215名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 22:36:21 ID:4IY9CElx
>>212
あと、言っとくけど、姉が弟の服の匂い嗅ぐとか無いからww
汗臭くて、いかにも「男」みたいな変な匂い嗅いだら吐く。
脇の所とか首元とか最悪。
絶対有り得ない。
216名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 22:55:11 ID:rrHU0PHW
と、経験者が語っています
217名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 22:55:16 ID:GVLBZFKC
こういう、弟を子供だとしか思ってないお姉ちゃんが、
ある日急に弟が男であることを知ってどきどきしちゃうんだよ。
自分より背が高くなってきた弟にあぐらかかせて、その上に座ってテレビとか見てて、
不意に、弟の膝の上で(前はこんなにおい嫌いだったのに・・・)とか、(前は私が抱っこしてたのに・・・)とか思うの。

弟がお風呂に入ってるときに
「もう、こんなに脱ぎ散らかして。図体ばっかり大きくなって……」とかつぶやきながら
弟がリビングに脱ぎ散らかしたシャツとか拾って洗濯機に入れようとするんだけど、
ふと手を止めてにおいを嗅いでみるの。
最初はそっと嗅いでたんだけど、気づかないうちに「すぅー、はぁー」とかやっちゃって
お風呂場から「えれ?姉ちゃんそこにいる?」って声かけられて正気に戻って顔真っ赤にして
「あ、ああ、あんたが脱ぎ散らかした服持ってきたの!!あんた、く、臭いんだから脱いだらちゃんと洗濯機入れなさいよ!!ばか!!」
「な、なんだよ……怒鳴るなよ……」

(何やってるのよ私、あんなこと……弟の服のにおいなんて……)

(*゚∀゚)=3 ムッハー
218血啜青眼 中篇:2009/12/02(水) 22:59:42 ID:qyTud38y
現代剣劇ものの続き投稿します。
前後編のつもりですが思ったより長引いたので前中後になりました。
作中で記述してませんが、舞台は中規模の地方都市を想定しています。
219血啜青眼 中篇:2009/12/02(水) 23:01:14 ID:qyTud38y
夕食後、俺は一人、道場の中心で構えていた。
練習用の道着に袴、素足。手には木刀。構えは上段。真正面には神棚がある。
だが向かい合うのは神棚ではない。4m程前方に存在すると想定した敵手。
構えは同じく上段、俺よりも体格はやや大きい。同流派。実戦経験は10倍以上。体力はこちらが上。
じわり、と足指で間を詰める。呼吸を隠す。相手の呼吸を探る。
撃尺の間合いは相手の方が上。このまま進めば、相手の攻撃が届き、こちらの攻撃が届かない間合いに入る。狙うは、そこ。
10cm進むのに一分も掛け、間合いを詰める。その間ずっと、相手の動きに即応できる体勢を維持する。相手の先の先を警戒する。
一足一刀。相手の間合いに、入る。
気合いと共に、敵手が上段から刀を振り下ろしてくる。軌道はこちらの左肩から入り右脇腹に抜ける袈裟斬り。
即時、こちらも裂帛と共に一歩踏み込みながら鏡合わせの軌道で刀を振り下ろす。ただし狙いは振り下ろされてくる刀。
中空で激突。相手の想定よりも早いはずのタイミングでの衝撃に、競り勝つ。
結果、敵手の太刀筋は俺の左腕をかすめて過ぎ、俺の刃は相手の左鎖骨から入り、肋骨を断ち切って胸の半ばまで斬り込んだ。
――――浅賀流、鳥落(トリオトシ)
一刀流の流れを汲む流派では一般的な技法、切り落としである。
相手の攻撃を防ぎつつ攻撃、理想的に後の先を取る技である。今の想定では上手くいったが、無論問題も多い。
まず、難易度。刀に刀を、それも落下同士をぶつけるのは極めて難しい。敵手の運剣が想定よりも早いか、遅いかすれば良くて相討ち、悪ければ一方的に斬られて終わる。力で負けても同じことだ。
それから、機の読み方。今の想定では先を捕らえることができたが、もしも敵手がこちらの意図を読みとり、偽攻(フェイント)をかけられこちらが暴発したなら、無為に空振る。当然即座に斬られるだろう。
そして今の敵手はこちらの十倍以上の実戦経験を積む相手だった。意図が読み切られていないとは、考えにくい。
技の選択を誤ったか。
これが実戦ならば、斬られていたのはこちらだった、か。
目を閉じ、今一度構え直す。
想定。
俺は祖父に勝てるのだろうか。


だが、それは永遠に叶わない。
祖父は死んだのだ。
浅賀流が、かつての盛況を取り戻すことは最早無いだろう。あれは祖父の勇名あってのものだった。
その勇名は既に浅賀流のものではない。祖父を斬り殺した誰かのものだ。
ならば、どうすればいい。
かつての祖父のように廃都東京に出向き、この身に培った術理を駆使して勇名を――――馬鹿な! 夜を残して、そんなことができるわけがない。
ならば、祖父を殺した相手を追い詰め、打ち倒すか。警察よりも先に見つけることができたのなら、だが。
だが、それは永遠に叶わない。
叶わないのだ。
220血啜青眼 中篇:2009/12/02(水) 23:01:50 ID:qyTud38y



そうして幾度、斬り殺されたか。
気付けば汗みずくになっていた。敵手を想定しての稽古は、素振りよりも遙かに体力を使う。ましてやその相手が祖父となれば。
無益と言えばそうなのだ。存在し得ない状況を想定したところで、現実にはまみえる機会など無い。生者の相手を想定をした方がまだ有益だ。
例えば、祖父を殺した相手。
目を閉じ、その相手を想定する。
祖父がいかなる術理にて斬られたか。それはわからない。だが検死解剖の結果は北沢刑事から聞き及んでいる。
致命傷は、頭部の切断。
下から入ったものではなく、上から入ったものであることは間違いないという。ならば太刀筋は上段からの唐竹割、か。
だがもう一つ、祖父には傷があった。致命傷ではないが浅手とも言えない。左手の指が、人差し指から小指まで軒並み切断されていたという。
左手の指だ。
おかしな話ではある。これが手首というのなら、わかる。小手を打った後に唐竹割でトドメを刺したということだろう。新陰流は言うまでもなく、小手打ちを主とする流派は数多ある。
だが、わざわざ左手の指を切り落とす技、となるとわからない。いや、あるにはあるのだろう。浅賀流にも、鍔迫の中で相手の指を切り落とす術理が存在する。
しかし、祖父は右手で刀をしっかりと握りしめていた。戦闘は可能な状態だったのだ。指を切り落とされるのは浅手ではないが、それだけで即座に行動不能にはなるまい。
では……指は術理によって切り落とされたのではない?
たとえば、こう。左手をかざす。唐竹割を咄嗟に腕で防ごうとして、指ごと頭を割られたのか?
一つ先が繋がった気がする。だが、また一つ疑問が浮かび上がった。
どうして祖父はそんな真似をしたのか?
そもそも刀剣の一撃を防ぐのは簡単ではない。腕力だけで振られる棒振り芸ならともかく、体重が乗った運剣を防ぐには、こちらもがっちりと体を固めないといけない。
ただ太刀筋にひょいと刀を置くだけでは、勢いの差で弾き飛ばされ、防御ごと叩き潰される。ましてや今回は、人体の中でもっとも頑丈な頭蓋骨を一刀両断する一撃だ。指などかざしたところで足しになるかどうか。
これは、論理的な行動ではない。大体、何故右手の刀で防御の型を取らなかったのか。
取れなかった、と考えるべきだろう。何らかの方法で刀が封じられ、しかし左手は自由。こういう状態に陥ったのではないだろうか。
例えば、刀を叩き落とされていた。
これはありそうな想像だった。十手術を筆頭として(北沢刑事を疑うような短慮はすまい)古今武器落としの技法は数多い。
少なくとも、浅賀流において刀とは腕の力を抜いて振るうもの。不意の強打で取り落とす可能性は充分にある。
推定してみよう。
祖父は敵手の(何らかの)術理によって刀を落とされた。膝を突き、右手で転がった刀を取る。それとほぼ同時に、敵手が渾身の唐竹割。祖父は咄嗟に左手をかざすも、指ごと叩き斬られる――――
待て。
祖父は大の字になって倒れていた。膝を突いた上体で斬られたなら、膝を折るか膝を立てた状態で果てていなければおかしい。
それに敵の目の前で武器を拾うなど愚策だ。一度間を取り、他の武器を調達するのが(それを敵手が許すなら)正しいだろう。道場の壁には木刀が幾つも掛けられている。それは充分人間に対する殺傷力を保持している。
ならば、一体如何にして、祖父は斬られたというのか。
そして……母。
検死によると、引きずり出された腸の断裂には生体反応があったという。つまり、母は、生きながらにして腸を引きずり出された。雨が降ったかのように、周囲に血が飛び散っていた。
一体、どうして彼女がそのような苦痛と辱めを受けなければいけなかったのか。
歯を食いしばる。ぎし、ぎしと奥歯が軋む。
母は情の深い人だった。幼い頃の記憶では、いつも父の名前を呼んでいたように思う。母の人生はその頃が最も輝いていたのだろう。
父が死んでしまってからは抜け殻のようになって。家事や、祖父の言うことに唯々諾々と行うだけの、蜻蛉のような人になってしまった。
それでも、断じて、あんな死に方をしていい人ではなかった。
なれば、どうする。
斬るのか。見つけだして、斬るのか、下手人を。
……できるわけがない。

「徹兄様。夜もよろしいですか?」

そうして物思いにふけっていると
何時来たのか。
目を開けると袴姿の妹が、俺の前で小さく微笑んでいた。




血啜青眼

中篇

221血啜青眼 中篇:2009/12/02(水) 23:02:43 ID:qyTud38y




まだ祖父と母が生きており、俺が名実共に流派を継ぐため剣に全てを注ぎ、道場の殆どの人間から勝ちを取れる程になった頃。
ある冬の日に、妹が名古屋から帰ってきた。
連絡の一つもなかったので、俺や家族は驚いたが、喜んで迎えた。
夜は、この数年ですっかり大人びていた。
背丈が伸びたし、なにより服装が変わっていた。家にいた頃は地味な和服かセーラー服だったが、センスのいい洋服に、洒落たバッグ。化粧に、髪飾り。
そういうものに身を包んだ妹は、まるで別人のようだった。田舎の道場の一人娘などではなく、首都で一人暮らしをする大学生だった。
けれどトレードマークの艶やかな髪は前のまま、背中まで伸びていた。それがかろうじて、彼女が俺の妹であることを示してくれるようで。
「久しぶりです、兄さん」
「あ、ああ。久しぶりだな、夜。見違えたぞ」
「やだ、兄さんったら」
「くはは。こいつは剣術馬鹿もいいところだからな。いやしかし、徹の言うことも分からんでもない。これは男が放っておかんだろう」
「あのねえ、お父さん……でも、そうね。誰か佳い人でもできたのかしら、夜」
「もう、母さんまで」
……俺はひどく落ち着かなかった。
佳い人がいるのかと聞かれた時。もしも夜があの瞬間、頷いていたらどうなっていたのか。いや、俺はどうすれば良かったのか。
考えてみれば、妹は日本の首都名古屋で一人暮らしをしているのだ。俺の知らない出会いの十や二十、有っても不思議ではない。そして夜がそれになびいたとしても。
夜を娶ると決めたのは、あくまで俺個人の誓いで、夜がそのことを知るはずがないのだ。祖父の決めた相手と引き合わせられるぐらいなら、と思うのは当然なのかもしれない。
祖父自身がそれに寛容な態度を示したのは(皮肉なことに)俺が次期師範として頭角を現していることの証左なのだろう。
情けない話だが、絶望しそうになった。
夜が不意に帰ってきたのは、そういう存在を紹介するためではないのか?
乗り越えられる壁なら乗り越えよう。戦える相手なら戦えよう。だが愛する妹が自らの意志で決めたことを、一体どうして覆せるのか。
妹がひどく遠くなった気がした。いや、俺が現実の距離を初めて認識しただけなのだろう。

しばらく妹は実家で過ごすことになった。大学は春休みだという。
俺は迷いと絶望を抱えながら稽古と指導を行い、古参の門下生に心配されたり、祖父にどやされたりした。
運剣が明らかに鈍っていた。その時の俺は、子供相手にすら疑心暗鬼となり破れていただろう。機を奪い合う剣術において、迷いはそのまま勝敗に直結する。
これでは次期師範の正当性を示すどころではない。
幾度も後悔した。どうして妹に最初から、師範を目指してお前を娶ると伝えなかったのか。
だが、それは今だから言えることだ。あの時に言えるはずもなかった。内なる誓いならばともかく、実現するかもわからないものを妹に押しつけることなどできない。
ならば、夜を信じていたのか。
いや、俺は疑わなかっただけだ。
全ては移り変わるものだと俺は思い知っていたはずなのに、俺は互いの想いだけは変わらないのだと、何の根拠もなく楽観していたのだ。
俺がそうだからといって、夜もそうだとは限らないのに!
どちらにしろ、全てを試される時が来ていた。

222血啜青眼 中篇:2009/12/02(水) 23:03:50 ID:qyTud38y

妹が帰ってきてから数日後。
日が暮れた後、夕食の後夕涼みに中庭に出ると、そこには先客がいた。
夜だった。
帯刀している。服装は黄色のカーディガンに水色のスカートという洋装だが、スカートに通したベルトに刀を差していた。よく見るとそれ用の金具があるようだ。
そういえば、妹は帰郷に伴い大きなバッグを抱えていた。あの中に愛刀も入っていたのだろう。
彼女は素振りをするでもなく、両手をだらんと下げ、庭の真ん中でぼうっと月を見上げていたようだった。あるいは、誰かが来るのを待っていたような。
背中まで伸びる艶やかな黒髪が、月明かりに照らされていた。
下駄を庭石で鳴らしながら、近づき、声を掛ける。
「お前が帯刀とは珍しいな、夜」
「徹兄さん」
妹が振り返る。
兄さん、か……
帰ってきてから、夜は俺のことをずっとそう呼んでいた。前は、兄様兄様と慕ってくれたのだが。
こんなところにも断絶を感じるのは、俺の心が狭いからなのだろうか。
俺の表情から、言いたいことを見て取ったのだろう。夜は僅かに俯いた。
「大学の友達に、兄のことを兄様と呼ぶのはおかしいと言われているので……」
「友達か。仲良くしているか」
「はい」
その中には異性もいるのだろうか。きっといるのだろう。妹に惚れている男だって一人や二人じゃあるまい。
もしも夜が連れてきた男が『お義兄さん、妹さんを俺にください』等と言って来たらどうすればいいのだろう。
殴るか? 斬るか? まさか! 夜が身命を賭して行った決断を、俺が否定できるものか。
ならば俺が腹でも切るか。ああ、それは悪くない、悪くないかもしれない。けれど夜を悲しませてしまうことになるか。
そうだ、東京に行こう。剣々轟々たるかの街なら、無意味と果てた我が剣理も置き所があるかもしれない。及ばず果てるも一興だ。
「兄さん? 兄さん? 戻ってきてください、兄さん」
「お、ああ。どうした、夜」
「どうしたもこうしたもありません。話の途中なのに突然遠いところに旅立って、いったい何処に行っていたのですか」
「ちょっと、東京にだな……」
「東京府?」
「いや、なんでもない。ところで何の話だったか」
「もう……」
頬を膨らまして拗ねてしまう。少しだけ、以前の関係に戻れた気がした。
それはきっと、砂を素手で掬うような、ほとんど意味のないものだろうが。
ともあれ、妹は話していたらしい話題を再開する。
「兄さんは、誰か佳い人ができましたか?」
「俺がか? いや……」
この三年、刀ばかり振っていた俺にそんな相手ができるわけがない。付き合いがあるのは女性の門下生ぐらいだ。
即座に首を振って否定しようとして、留まる。
いや、俺にはずっと想ってきた女性がいる。
それはずっと口には出せず、気付けば出してはいけない言葉になっていた。だが、これは良い機会なのかもしれない。
俺がこれまで骨身を削るようにして努力してきたこと、全て無意味と化すか否か、今わかる。
「ああ、いる」
「――――そう、ですか」
「夜、俺は」

「兄様」

キン、と涼やかな音がした。それは、夜が鞘に添えた左手親指で、刀の鯉口を切る音だった。
そのまま、左手が逆手で柄元を掴み、刃が抜かれていく。
「もう嫌です」
「夜?」
「もう夜は嫌です。兄様のいない場所も、兄様のいない時間も、兄様のいない未来も、兄様のいない夜も、全て」
夜がいた。
見慣れない洋服に身を包んで、ベルトの金具で帯刀して、それでも彼女は夜だった。
左手で刀を半ばまで抜いた夜が、俺に柄を差し出してくる。
「兄様、徹兄様。夜を哀れに思うなら、どうか斬ってください。夜は兄様以外の男に自分を委ねたくなどありません。夜以外の女が兄様の傍にいるのも見たくありません。兄様、哀れに思うなら、どうか」
その眼は、まるで泥沼の中で沈んでいく小鳥のようだった。
223血啜青眼 中篇:2009/12/02(水) 23:04:35 ID:qyTud38y
悟る。
ああ、夜。俺の妹よ。そんなところにいたのか。
俺にはこの四年、夜を欲する心があり、師範に相応しい力量となって夜を娶るという誓いがあり、そのために剣術に全てを費やすという道があった。
だが、妹には欲求しかなかった。
それを叶えるための誓いも、そこに至るための道もなかった。ただ無意味にもがくことしかできなかったのだ。
それはある種の地獄だ。
沼に落ちた鳥と同じ、蜘蛛の網にかかった蝶と同じ、無意味だけが約束された残りの人生。
更に残酷なのは、そこから抜け出す手段だけがわかっていたことだろう。捕らわれた部分を捨てればいいのだ。
沼なら脚を、網なら腕を、人間ならば欲求を。自らの大切なものを、自ら切り捨てれば、その地獄から解放される。
だが、夜にはそれができなかったし、それを選ぶかもしれない己の弱さを憎んだ。
だから、そうなる前に――――斬ってくれと。
「兄様、愚かな妹をお許しください。夜は、夜は徹兄様を」
「待て、夜。先に俺に言わせてくれ」
俺は……俺は、感謝する。
妹がずっと地獄にいたことを、感謝などするのは兄として失格なのだろう。だがそれでも俺は感謝せずにはいられない。
ああ、夜、夜よ。俺の妹よ。
ありがとう。
俺の人生に意味を与えてくれて。俺の誓いを無意味にしないでくれて。
お前が想い続けてくれたからこそ、俺は救われた。全ては移り変わるものだというのに、それでもお前は変わることを必死で拒否してくれた。
俺がそうだったように、お前もそうだった。
その奇跡に感謝する。

「夜よ――――愛している。必ず幸せにするから、俺の妻になってくれ」
「――――え」

妹の目が、大きく見開かれた。
一歩踏み出し一足一刀の間合いへ。更に踏み出し、近間へ。そのまま両手で、夜の体をかき抱いた。
手に伝わる艶やかな髪の感触。しなやかな背中。胸に当たる膨らみ。肩に感じる吐息。化粧に隠れた懐かしい匂い。
それら全ては、かつて当たり前のように手にしていて、そして引き離されたものだった。胸に溢れる愛おしさと、ずっと長い間留守にしていた我が家にやっと戻ってきたような暖かさ。
ただいま、夜。俺は今帰ってきた。
「ずっと前から愛していた。お前と一緒にいる未来が俺には当たり前だった。離れ離れになってからやっとそれがわかった。愚鈍な兄を許してくれ」
「あ……兄様……兄様……!」
「夜。ああ夜よ。お前を苦しめてすまなかった。最初に伝えるべきだった。俺も、お前のいない未来など真っ平御免だ」
かきん、と鯉口とハバキが組み合う音がした。夜が刀から手を離し、重力に従って鞘に収まったのだ。
ぎゅう、と俺の背中に夜の腕が回り、痛いほどにしがみ付いてくる。迷子になった子供が、母親にすがりつくような必死さだった。
「にい、さまっ……とおる、にいさまっ……夜は、よるは……!」
「ああ」
「夜も……夜も……うあああああああ……!」
妹の顔がくしゃりと歪み、大声で嗚咽を吐きだした。子供のような泣き声が、しんと冷えた中庭に響く。
名古屋に行ってからの二年……俺と疎遠になってからの四年……俺の妹になってからの十四年……嵩を増してきたものが、堰を切って溢れ出したようだった。
その嗚咽を胸に抱いて噛みしめる。
これこそが、夜が俺に抱く愛なのだ。
大きく、深く、硬く、強い。自らを害するほどに、愛する人間に自分を刻みつけようとするほどに。
それは既に病理の域にまで達しているのかもしれない。だが、それは俺とて似たようなものだ。
浅賀夜は俺の妹で、最愛の女性だ。本来は別れるべきその二つが、俺の中では分かち難く結びついているのだ。それが異常でなくて何なのだろう。

妹はしばらく、俺の胸の中で泣きじゃくり
その後、こくりと頷いた。

「はい……徹兄様。喜んで……」

「夜は……兄様の妻になりますね……」




224血啜青眼 中篇:2009/12/02(水) 23:06:14 ID:qyTud38y
それが
二か月前のことだった。
あれから祖父が死に、母が死に、妹が再び帰ってきて、葬儀が終わり、俺が道場主となり、そうして
稽古をする俺の前に、何時来たのか。袴姿の夜が、小さく微笑んでいた。
「徹兄様。夜もよろしいですか?」
「ああ、構わないぞ」
俺が頷くと、妹は手に持ったタオルを俺に手渡してから壁際の木刀を取り、神棚に刀礼をした。俺は壁際に寄り、夜が入れ替わり道場の真ん中へ。
首筋を中心に拭うと、すぐにタオルは汗を吸取った。壁際にはポットが置いてある。夜が持ってきてくれたようだ。
蓋を外し、中身を蓋の内側に注いで飲む。よく冷えた麦茶が、熱く火照った体を程良く冷ましてくれる。
一方、夜は木刀を手に素振りを開始していた。振りかぶり、振り下ろすごとに勢いよく踏み込み、しっかと道場の床を踏みしめている。
浅賀流では刀を振るのに腕の力を重視はしない。むしろ脱力を叩きこまれる。
運剣の源とするのは全身の体重の力である。
足腰が進むことで体重が移動する。その力を剣に伝達し、斬撃を為すのだ。
腕力よりも体重移動力の方が圧倒的に強大だ。いわば体の一部分と、全身との比較なのだから。
自らの体重を1kgの剣先が為す遠心力に余さず乗せることができたなら。女子供でも剣を折り、肉を裂き、骨を断ち、内腑を斬ることができるだろう。
浅賀流では、腕を脱力して尚斬撃ができたのなら基礎ができたとみなす。各部の捻りに体重を乗せる技法もあるが、一先ず前進を力に変えるのが基本とされた。
……
見たところ、夜の基礎は出来ているようだった。四年ほど道場からは遠ざかっていたはずだが、素振りは欠かしていないというのは本当だったようだ。
素振りが百を数え、艶やかな黒髪から汗の滴が散るようになる頃合いを見計らって俺は声をかけた。
「夜」
「はい、兄様」
振り向いた妹は僅かに汗をかき、胴着から覗く肌はひどく艶めかしかった。
元々、夜は肉感的な性質ではない。引き締まった体躯はしなやかではあるが脂肪は薄い。
年頃の女性であり十分以上に美人ではあったが、色気よりは清楚とした雰囲気の方が強いのが、浅賀夜という人間だった。
そのことを妹が密かに気にしていたのは知っている。もちろん俺はそんな彼女をずっと好いてきたのだから、悩む必要はないと思うのだが。
しかし、今の夜には色気が備わっていた。汗をかいた首筋は、健康的な美しさではなく、むしゃぶりつきたくなるような艶めかしさを発している。
それは最近の、一度名古屋から帰ってきた後の変化だった。俺と想いを通じ合ったことが、妹の中で大きな変化を引き起こしたようだった。
一度眼を閉じ、雑念を払う。
「汗を拭いたら、一仕合しないか」
「夜が、徹兄様とですか?」
妹が、こくんと首を傾げる。俺は頷いた。
夜の門下生としての腕前は、基礎ができ術理のなんたるかも弁えてはいるが、中堅の一人といった程度でしかない。
もちろん剣術の強さとは不確かなものだ。夜が俺と打ち合ったとして、俺が負ける可能性はある。だが勝率で言うならば、十度に一度以上は取らせるつもりはない。
これが例えば祖父が相手ならば、夜が勝てる目は五十に一度あるかというところだろう。
腕からするなら、夜が胸を借りる立場になる。にも関わらず提案したのは俺からだった。加えて竹刀稽古ではない仕合とは危険なもの、軽々しく行うものではない。
そのことに対してしばらく首を傾げていた夜だったが、やがてこくりと頷いた。
225血啜青眼 中篇:2009/12/02(水) 23:06:59 ID:qyTud38y
籠手を嵌める。
いわゆる鬼籠手と呼ばれる分厚いものだ。小野派一刀流で使うものだが、浅賀流でも採用していた。
つける防具はそれだけだ。後は木刀。面と胴はつけない。
浅賀流では基本として、真剣と同じ重さの木刀を稽古に使う。
防具をつけての竹刀稽古もするが、理合が乱れれば激しい叱責が飛ぶ。そも、竹刀の重さに慣れては人体の切断など体が忘れてしまうだろう。
基本は型稽古であり、仕合は滅多に行われない。浅賀流の理合で木刀を振るえば、人間は充分死に至る。
この道場で仕合をするということは、少なからず命の危険を負うことになる。
とはいえ基本は、寸止めだ。ただし小手は近いため、止めが間に合わないかもしれない。そのため籠手だけは身につけることになっている。
籠手越しに木刀を握り締める。右手を鍔元に、左手を柄頭に添える(鍔のついた木刀だ)。
いささか不自由だが、それはお互い様だろう。向かい合った夜も、同じように籠手を嵌めたうえで木刀を握った。
「良いか」
「はい、兄様」
ピン、道場の空気が張り詰めた。互いの間合いは約5m。一足一刀の間合いには、3m程の距離がある。
構える。
俺の構えは、上段。木刀を肩で担ぐようにし、右腕を畳み、左腕を胸に引き付ける。剣先が天井を指す。
示現流でトンボと呼ばれる構えに近い。体重移動に加え、重力も加味した袈裟斬りは、敵を防御ごと打ち砕く威力をもつ。
更に威力を重視した最上段あるが、どちらも祖父が好んだ構えだ。
対して、夜は下段。
両腕をまっすぐに垂らし、剣先を地面すれすれに構えている。青眼をそのまま下ろしたような構えだ。上半身はがら空き。
これが夜の最も好む構えであり、術理だった。
「――――」
「――――」
同時、夜の体が動く。下段のままやや摺足で、見る間に間合いを詰めてくる。3m程の余分な距離が瞬く間に無くなっていく。
――――浅賀流、地滑(ジスベリ)

あるいは、地摺り青眼と云う。古流剣術の技法である。
太刀を低い位置に取り、素早く間合いを詰めることで、下段からの圧迫と時間制限で相手の思考能力を奪い、がら空きの頭部に上段を誘う。
だが、腰の浮いた切り込みが届くより先に、下段から跳ね上がった刺突が、喉元あるいは鳩尾を貫くのだ。
相手に攻撃を仕掛けさせておき、その攻撃が届く前に倒すのだから、これは典型的な先の機を狙う技である。
この術理の肝要は二つ。
一つ、心理的に敵手より優位に立っていること。
二つ、術理の詳しい内容を敵手が知らぬこと。
この技は相手の思考能力を奪って、軽挙な行動に出させることが肝。自分よりも優位に立つ相手に使うべきではない。
二つ目も同様である。術理を知られていれば動揺は半減する。もっともこれはあらゆる技に共通する条件ではあるが。
また当然ながら、先の機を狙う以上、相討ちの危険性も多分に孕んでいる。相手の鳩尾を貫くと同時、こちらの頭が割られる……というようなことも十分考えられるのだ。
持ち技としては有用だが、好んで使うような術理ではない。
どうしてその技なのか、と夜に聞いてみたことがあるが。帰ってきた答えは予想外の、ある意味女性らしいものだった。
『夜の腕力では、上段や青眼をずっと続けられませんから』
なるほど。
確かに、腕力を重視しないとは言っても限度がある。構えを維持する程度には必要なのだ。
だが、刀とは1kgの鉄棒である。
女性の力で、これが天頂を指す構えを維持し続けるのは確かに辛いかもしれない。構えることはできようが、制限時間がある。そして制限時間は思考能力を奪う。
ひょっとしたらその焦りを切実に知るからこそ、夜はこの術理を好むのかもしれなかった。

226血啜青眼 中篇:2009/12/02(水) 23:08:00 ID:qyTud38y
だが。
やはりこの場、この状況において、この技は不適応である。技とはある状況において勝つためのマニュアルであり、機と状況を選ばなければ意味がない。
間合いが、詰まる。三、二、一――――
「ッ!」
刃圏に捕らえた瞬間、俺は夜の小手目掛けて、上段から袈裟の軌道で斬撃を繰り出していた。
――――浅賀流、強(キョウ)
夜は女性にしては長身だが、彼我の体格には頭半分程の差がある。それはそのまま間合の差となって現れていた。
こちらは攻撃できないが相手が攻撃できる距離。その瞬間を狙い打たれては、先など取れるはずもなく。
夜は――僅かに後退することで刃圏から逃れていた。
木刀が空を斬る。
断じて反射神経での回避ではない。妹が突きを放つつもりでいたのなら、為す術もなく斬られていただろうし、受け止められる威力でもない。
間合いの差で先手を取ってくると見た夜が、予め仕込んでおいた動きだった。
直後、後退した足が道場の床を蹴りつけ、反動で夜の体が前方に射出される。彼女の体と木刀が一直線に伸び、裂帛の気合いと共に刺突となる。
「鋭ッ!」
――――浅賀流、奔馬(ホンバ)
前進、後退、前進の組み合わせで後の先を取る間合の術理である。
狙いは水月。
袈裟斬りを空振りした直後の無防備な体では防ぎようが無く、打ち抜けば悶絶確定の一撃――のはず、を。
回避。
右足を軸に、体を反時計回りに半回転させることで、俺は刺突をかわしていた。腹部をかすめて木刀が通り過ぎていく。
こちらの回避は半ば反射神経の賜物である。想定内ではあったが、僅か首筋に冷や汗をかいた。だが
勝機、後の先。
彼我の距離は近い。腕を伸ばさなくても手が届く。斬撃の繰り出せる距離ではない。加えて、俺の木刀は夜の木刀の下にある。
ならば、この状況での手は斬撃に非ず。
左足を蹴り出し、重心を低くし、俺は右肩をすくい上げるように夜の肩に叩きつけた。つまり、体当たりだ。
「きゃっ!」
原始的な技術だが、体重で劣り体勢を崩した相手には極めて効果的な攻撃だった。
勢いに押されて夜がたたらを踏む、のみならず転倒した。小さな悲鳴。彼我の間合いが開く。
その時には、俺は再び上段に構えなおし、夜を最適な刃圏に捕らえていた。
――――浅賀流、牛追(ウシオイ)
勝負有り。


夜の敗因は明らかだ。彼女は使うべきではない術理を二つ、重ねている。
直接的には、奔馬からの突きを回避されたからである。しかしそれには理由があった。
既にあの時、俺は攻撃直後の無防備から体勢を立て直していたのだ。つまり、あの刺突は当たるかどうかわからない状況で繰り出されたものということになる。
一定以上の反射神経があり、狙いが正中線とわかっていればかわすのは難しくない。
ただし、夜の刺突が常通りの速度で放たれていたならば、俺は体勢を立て直す暇もなく打ち抜かれていただろう。
これは彼女の使用した、奔馬という術理の構造的な欠陥だった。
浅賀流の斬撃刺突は全て体重移動で行うものである。しかし奔馬は前進、後退、前進とベクトルがコロコロ変わるため、動作の遅延が避けられないのだ。相手を見て使うべき技、と言うことだ。
また、これは地滑……地擦り青眼にも同じことが言える。前進して行う技である以上、後退しての後の先は極めて取りにくくなっている。だからこそ、俺は後退以外に避けようのない袈裟斬りを放ったわけだが。
故に夜の敗因は、使うべきでない術理を二つ重ねていることにある。
もちろん、夜の刺突が俺の想定を越えて鋭かったら、あるいは何らかの方法でこの術理の問題を克服したのなら、違う結果が出ていただろう。
しかしそれは剣術での勝利につきまとう不確かさだ。まず順当な結果と言える。
勝負は有った。

だが、俺は構えを崩さない。
227血啜青眼 中篇:2009/12/02(水) 23:09:10 ID:qyTud38y
「……兄様?」
「…………」
俺は木刀を肩に担ぐような上段に構え、夜は道場の床に尻餅をついている。
彼我の間合いは1.5m。このまま木刀を振り下ろせば、妹は為す術もなく頭を割られるだろう。故に勝負は既に付いている。
だが、俺は構えを崩さなかった。
立ち上がろうとしていた夜も、その空気に触れて動きを止める。止めざるを得なかっただろう。
つまるところ、俺が発していたのは『動けば斬る』という気配だったのだから。
「……」
「……」
夜がじっと俺の顔を見上げ
俺はじっと夜の顔を見下ろす。
夜の表情は当初、俺を不審がるものだった。だが、それも徐々に消えていく。俺の意図を察したのではなく、俺が何を言い出そうと受け止める、そういう覚悟の表情だった。
対して俺の表情は、巌のように強ばっていただろう。この場を台無しにしてくれるものがいたのなら、俺は悪魔だろうと縋り付いたに違いない。
だが
やはり俺は――――浅賀夜に、問わざるを得なかった。

「何故……」

「何故、祖父と母を斬ったのだ」



しん、と道場に沈黙が降りた。
夜が僅かに目を見開く。
痛い程の静寂。
それは心を苛む静けさだった。
あの日、祖父と母が事切れているのを、帰ってきた道場で発見した時のように。
………………
………………
………………
「どうして、ですか、兄様」
「……お前の」
あの日、妹は名古屋にいるはずだった。確かにしばらく帰省していたが、それは一ヶ月も前のことで。
しかし、それならば、どうして
「お前の髪が……道場の床に散っていた」
艶やかな黒髪。背中にまで伸びるそれが、幼い頃から浅賀夜のトレードマークだった。
だがそれは、今は肩の当たりで切り揃えられている。それは、夜が二度目に帰ってきてからの変化だった。
そして、どうしてあの場に、血に塗れた夜の髪が散らばっていたのだ!
いるはずのない場所に、いるはずのない人間がいた。そのことに、納得のいく説明が必要だった。
そして、そんなものは一つしかなかった。
「よく、わかりましたね」
「俺が……お前の髪を見違えるわけがないだろう」
「ああ、それもそうですね」
そうして夜は
ゆっくりと微笑んだ。
共犯者の笑みだった。
「ありがとうございます、徹兄様」
「…………」
俺は答えない。
答えられるはずもない。
だが、妹の意図は確かだった。
俺は共犯者だ。
俺が夜の髪を全て回収して捨てなければ、他にも痕跡を消さねば、あの場に夜がいたことは、すぐに警察の知ることとなっていただろう。
俺にはそれが我慢ならなかった。
俺は夜を失うことに耐えられなかった。
祖父と母を斬ったのだとしても、それでも夜を愛していた。
だが
だが何故
だが、何故、夜は二人を斬ったのだ。
そして、どうやって。
228血啜青眼 中篇:2009/12/02(水) 23:10:08 ID:qyTud38y
夜が、動いた。
立ち上がるのではなく、その場に正座をし直す。ピクリと木刀は反応したが、結局打ち込むことはなかった。
それを見切ったわけではなかったのだろう。ただ、俺に殺されようと受け入れるという、覚悟を決めただけの動きだった。
背筋をピンと伸ばし、籠手を外し、傍らに木刀を置き、じっと俺の目を見上げて
浅賀夜は

「夜は……あの日も、こうしてこの場所で、御爺様と母様を迎えました」

そうして
あの日起きたことを、語り出した。
229血啜青眼 中篇:2009/12/02(水) 23:13:31 ID:qyTud38y
以上です。誤字脱字は失礼。
技の名前は、考えるのが面倒だったしわかりやすいのがいいと思って…!
後篇は鋭意執筆中です。
230名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 23:14:44 ID:u8NWC1p/
231名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 23:24:36 ID:ZOcesc99
>>229
GJ!
232名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 00:53:04 ID:gai6pTfd
>>229
GJ、今回もえがったよ。
こういうの普段あんまり読まないから新鮮だった。
後編楽しみに待つ。
233名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 07:36:34 ID:uHG70fgi
いいねぇ、時代劇好きだからこういうの楽しい
本格派剣術漫画ってないかな?
バガボンドみたいな哲学的なものじゃなく
234名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 07:45:25 ID:GqRVvcM7
うっわ〜
凄え続きが気になるヒキ

GJです
235名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 09:11:37 ID:hPwJJqE1
剣術もキャラの関係もすごくいい。
続きも楽しみです。最後、どうなるんだろう。
執筆頑張ってください。
236名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 13:16:13 ID:7HZbsNbX
>>233
スレチ。
ご退場願います。
237名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 15:40:45 ID:PoCQNFJG
>>229
GJ

後編に期待
238名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 17:26:32 ID:uHG70fgi
>>236
すまん。独り言みたいなもんだから許してくれ
239名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 18:39:17 ID:YZVZU+Qz
>>238
許さないよ 私の大切な兄さんを傷つけたんだから!!
240名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 19:41:06 ID:twMkdbRY
ここってリアルの話は厳禁?
241名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 19:44:44 ID:EFN5ZGhu
リアルだと言わずに書けばよかろうなのだ
242名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 19:46:05 ID:t4W44kDM
いいと思う
というより気になるw
243名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 20:01:54 ID:UpeFZijC
>>240
何があった?
244名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 20:19:58 ID:NGp15q0E
    ___
   /     \
 / ⌒  ⌒ ヽ       _________
/  (●)  (●) |     /
| ::: ⌒(__人__)⌒:: |   <  ま、そんな事はどうでもいいんですけどね
|      |r┬|   i     \_________
\    ー―' _/.   | |            |
  ⌒ヽ ヽノ ヽ     | |            |
/   ノ::::::::::::::::::l\.   | |            |
ヽ  `ー― ⌒、ヽ    |_|______|
  ー――、_ヾ⌒ヽ〜== | |  |
245名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 20:30:42 ID:dEqK+PwG
昔ここでリアル語りをした奴がいて
後々ウザがられて最終的に誰も反応しなくなったんじゃよ…

まぁ要するにやめとけって事だ
246名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 20:42:06 ID:tyTsYDCu
うん、リアルの話はやめた方がいいな。
247240:2009/12/03(木) 20:50:51 ID:twMkdbRY
わかりました。
すいませんでした。
248名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 20:56:20 ID:hMMncHnP
1、2レスくらいなら良いんじゃないのと思うんだけどダメなの?
SSのネタになったりするかもしれないし。そりゃ延々と自分語りされたらウザイけどさ
249名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 21:04:32 ID:5UEKyvI0
姉のいない俺が嫉妬に狂うからやめてください
250名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 21:04:56 ID:lNRIqz1a
そういう奴に限って全レスを付けたりするからな
1.2レスならいいとか、3.4レスならいいとか、レスを返すぐらいいいとか
「こんぐらいならok」の感覚なんて個人差があってきりがない
ここは創作の板なんだから体験談は板違いというのが一番わかりやすいんだよ
251名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 21:25:21 ID:t4W44kDM
体験談って何?
このスレ的に近親相姦?
252名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 21:40:00 ID:UpeFZijC
>>240
創作って形でSSにして投下してくれるのを楽しみにしているぜ
253名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 23:59:21 ID:lQ69AIga
派手
254名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 02:55:52 ID:GzqxvB+3
板名とスレッド名を見れば
場違いな話なのはいうまでもないだろ
語りたいなら創作の形にうまく脚色しろ
255名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 05:58:52 ID:PE2XLcAR
>>250
それは心配ない
一回でもレス返しなんぞする輩は書き手だろうと何だろうと即座に指導することがこのスレのLRだし、それは次スレから>>1に明記されることになったから
256名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 09:18:26 ID:09JYs+uV
>>255
いい加減に指導とかウザイし何時からレス返し禁止ってここのLRになったの?
あのテンプレも荒らしで賛成したのも全て単発だったし
257名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 09:30:03 ID:fRjT+UAj
>>256
俺もそう思う
「なんだぁてめーはー!?レス返ししてんじゃねーよ!指導されてーかぁ!?」
アホだろこんなの
職人さんが投下しにくくなるだけだ
258名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 10:24:11 ID:8Pa7qZVa
>>256-257
ご「指導」人間に議論しかけるな
応酬すればするほど過激な反応してきて荒れるのがオチ
259名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 10:29:00 ID:SPHsWH1t
まあ>>1には明記しとけ
260名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 10:54:15 ID:2iKNrQ7w
体験談だったら何板がいいんだ?
261名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 11:13:53 ID:C3NpQhwx
>>257
しかし基地外黙らせるにはもうそれしか無いわけで…
262名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 11:39:59 ID:qWhXUlbA
要はぐちゃぐちゃ言ってる暇があんなら一行でも萌えるss作れよ兄弟、って事なんですし。

263名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 12:11:08 ID:+FQjC5so
賢人黙す
264名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 12:24:24 ID:BdBouGdp
>>260
VIP

いきなりだけど男女の双子っていいよな
265名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 13:06:21 ID:3N1X7P86
ドラクエXのことか FFWのことか
266小ネタ キモウトの見る夢:2009/12/04(金) 14:06:56 ID:YPmodAM5
小ネタ投下します
ころころと視点が変わります、読みにくかったらすいません

「ああ、課題今日中に終わるかなぁ・・・」
俺は今とても現実逃避したい
何故なら課題が明日の昼に締め切りだから
「まあ後は纏めるだけだしな」
現在深夜0時、良い子は寝る時間
うちの良い子のはずの妹は俺の胸に身体を預ける形で寝ている、悪い奴だ、良い子は自分の部屋で寝るものである
「このやろ」
ぺしりとデコピンしてやる、いつまでも兄離れできん奴め
「んふぅ・・・おにいちゃん・・・いたいよぉ」
妹は少しうなされているようだ
「ふへへぇ・・・ほめてぇ・・・」
と思ったら今度は褒めろと来た
一体どんな夢を見てるんだか
戯れに二、三度頭を撫でてやると俺は欠伸をひとつしてまた作業に戻った



『えへへ、褒めて?』
消してやった
お兄ちゃんをずっと騙して、独り占めして、お兄ちゃんの幸せを奪った奴
消えて当然だ、お兄ちゃんのお嫁さんはあたしなのに『結婚を前提でお付き合いしてる』なんて戯言を言ってた
気持ち悪い、見るも不快なソイツはもういない
気分が良かった
『ねぇっ!褒めて褒めてっ!!」
あたしは大喜びでお兄ちゃんに抱きつく
『いい子だな、良く出来たな』
お兄ちゃんは優しい笑顔で頭を撫でてくれた
あの女にちょっかいを出されていた頃からお兄ちゃんはあたしの頭を撫でてくれなかったから久し振りだった
良かった、アイツが消えて良かった
これで元通りだ、これが正しい事だ
そう思っていたら段々辺りが真っ白になっていって



「んぅ〜〜」
うちの悪い子の目が覚めたらしい
時刻は午前7時ごろ、課題は・・・終わった、いい意味で
今朝はとてもいい気分だ、寝不足だが
今日はこの課題を提出したら彼女とデートなのだ、そう決めてある
「時間確認しとかなきゃな」
「お兄ちゃん・・・どこか行くの?」
妹が目を擦りながら聞いてくる
「おう、ちょっとな」



ちょっと、か
きっとまたあの女に振り回されてしまうんだろう、可哀相なお兄ちゃん
そうだ、いい事を思いついた
今日はとてもいい夢を見たじゃないか、あれはきっと天からの思召しに違いない
あの女を消して、お兄ちゃんにいっぱい褒めてもらおう
あの女にお兄ちゃんのお嫁さんは誰なのか教えてあげよう
そう思うと身体中に力が湧いてきた、きっと今日はいい日になる
「いってらっしゃい、お兄ちゃん」

以上です
267名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 15:00:10 ID:l4ld7mEG
>>266
短いながらもほのぼので、ちょっぴり怖いキモウト、GJでした。
268名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 16:53:36 ID:xUEez5m5
GJ
269名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 17:40:14 ID:HUwxiJLZ
GJ!
でも本当に殺しても兄は褒めてくれないだろうから
それでまた発狂というコンボが成立しそうだw
270名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 20:16:10 ID:fRjT+UAj
GJ!
こぇぇぇ
最近小ネタの投稿が多い気がする
面白いからOK
271名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 22:06:57 ID:VL++AgyK
>>267
面白かった
GJ!!

やっぱり俺は短編の方が好きなんだなと改めて思った
272三つの鎖 8 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/05(土) 00:53:22 ID:tRtYc6li
三つの鎖 8 前編です

※以下注意
性的表現を含む
本番無し
血のつながらない自称姉あり


投下します
273三つの鎖 8 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/05(土) 00:55:54 ID:tRtYc6li
三つの鎖 8

 あの日。多くが変わった日から次の登校日。
 僕はいつも通り早朝から家事を行っていた。思った以上に平静でいられるのが自分でも意外だった。
 もしかしたら習慣になっていることを行うことで平静を保とうとしているだけかもしれない。
 もちろん分かっていた。やらなくてはいけない事は春子と梓と話すこと。
 二人の行動の理由を聞かなくてはならない。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 兄さんが朝食の片付けをしているのをしり目に私は風呂場に向かった。朝食が終わって父さんと京子さんは出勤する前に私はシャワーを浴びるために風呂場に入った。
 あの日。兄さんはおかしかった。見た目こそいつもと変わらないがかすかに動揺していた。何があったのか。
 推測する材料はいくつかある。
 一つ。兄さんは自分のベッドで寝なかった。
 あの日、兄さんと夏美が玄関で話している間、私は兄さんの部屋の布団にもぐりこんだ。兄さんの匂いはあまりなく、洗濯したてのシーツに匂いしかしなかった。
 二つ。お風呂が念入りに掃除されていた。
 私がいつも通り朝のシャワーを浴びるために浴室に行くと、なぜか念入りに掃除されていた。前日お風呂に入る前に私が掃除したのに。
 三つ。兄さんと夏美の間に何かがあった。
 朝食のとき、夏美はちらちら兄さんを見ていた。兄さんと目が合うと恥ずかしそうにうつむいた。
 結論。夏美は兄さんと寝た
 沸騰する感情の中、私は意外と冷静に考えていた。寝たとしたらどこで寝たのか。夏美と春子は同じ部屋で寝ていた。他に人が寝られるスペースも布団もない。
 ならば風呂場でやったのだろうか。それならばお風呂が念入りに掃除されている理由も説明がつく。しかし証拠がない。
 私は手っ取り早く確かめるために兄さんに質問した。兄さんは何も答えなかった。
 それが私を苛立たせた。私が兄さんの足を払いのしかかったのも、関節を決めて無理やりにでも聞き出すつもりだったからだ。
 だけど兄さんの唇を見た瞬間、我慢の限界を超えた。夏美か春子が兄さんの唇を奪ったと思うだけで感情が爆発した。
 私は兄さんの唇を奪った。久しぶりの兄さんの唇は兄さん以外の味が微かにした。
 頭をふり私はシャワーの温度を下げた。熱くなった体に冷たいシャワーが心地よい。突き止めなくてはならない。兄さんが誰とキスしたのか。
 浴室を出て時計を確認すると思った以上に長い時間シャワーを浴びていた。手早く準備をする。今日は自分で簡単に髪を手入れした。髪を下ろしリビングに入った。
 兄さんはいない。二階の掃除をしているのだろう。キッチンの弁当を鞄に入れ家を出た。
 いま兄さんと顔を合して冷静でいる自信が無かった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 兄さんに髪をすいてもらわなかった分、学校には早めに着いた。
 教室にはすでに夏美がいた。ぼんやりとしている。私はすぐに分かった。恋する女の顔。
 「夏美」
 私は名前を呼んだ。びくっと震え夏美は私の方を見た。
 「あずさー。おはよう!」
 にっこりと笑う梓。笑顔が嘘くさい。私は椅子に座った夏美を見下ろした。
 「この前は私の家で面白い事をしてくれたわね」
 夏美の顔色が変わる。もちろん、私は何があったかは知らない。だけど、夏美の反応だけで十分だ。
 「ばれてないつもりなの?」
 自分の唇にふれる夏美。
 兄さんの唇を奪ったのはお前か。
 「兄さんの唇はどうだった」
 全身の血液が沸騰する感覚を押さえ私は夏美に尋ねた。夏美の頬が赤くなる。
 気持ち良かったんだ。嬉しかったんだ。そうでしょうね。私の兄さんだもの。ゆるせない。
 「その、えと、あの」
 夏美は赤い顔でもじもじする。その顔を引き裂きたい。
 「ご、ごめん!隠すつもりじゃなかったの」
 ふざけるな。殺してやる。
 「まあいいわ」
 私は熱い息を吐いた。今は何があったか聞き出すのが先決だ。制裁はその後でも遅くない。
 「よかったら詳しい話を教えてくれない?」
 私が夏美に囁くと、夏美はさらに顔を赤くした。
 「言えないの?」
 夏美が私を見上げる。発情した雌猫の表情。苛々する。きっと兄さんにもこんな表情で迫ったに違いない。
 「そのね、お兄さんに、その、告白、しちゃったんだ」
 恥ずかしそうに言う夏美。
 いつだ。二人でアイスを買いに行った時か?朝食の後か?
274三つの鎖 8 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/05(土) 01:00:41 ID:tRtYc6li
 兄さんは夏美の告白を受けたのか?断ったのか?
 「あの兄さんのどこがいいのか理解に苦しむわ」
 お前に私の兄さんの良さが分かるのか。
 「で?兄さんは何て言ったの?」
 夏美は恥ずかしそうにうつむいた。
 「私が返事は後でいいって言ったから、まだ返事はもらってない」
 少し意外な気がした。キスまでしたのだから兄さんは夏美の気持ちを受け入れたと思ったのに。まだ返事をしていないなんて。兄さんに今まで告白した女は何人かいるが、後から聞いた話では兄さんは全てその場で断ったらしい。
 これは吉か凶か。
 「そうなの。だから兄さんも夏美も眠そうにしていたのね」
 「ううん。私はすぐに寝ちゃったんだ。緊張して疲れちゃって」
 夏美の目を見る。まっすぐで綺麗な瞳。嘘をついているようには見えない。兄さんはあの日の夜、どこで寝たのか。どこにいたのか。
 「私はてっきり春子と話し込んでいると思ったけど。一緒の部屋だったのでしょ?」
 春子と夏美は同じ部屋で寝ていたはず。
 「うん。でも私はすぐに寝ちゃって」
 そういえば夏美は春子に連れられて来た。
 「家に泊まりに来たのも兄さんに告白するのが目的だったの」
 もしそうなら春子も共犯。
 「違うよ」
 夏美は頭を振った。
 「あの日の放課後にハル先輩に会ったんだ。ほら、私あの日のお昼にきまずかったじゃない。春子先輩が協力するって言ってくれたんだ。お泊まり会するから一緒に来ないかって」
 ますます分からない。
 あの日のお昼の夏美を見れば、兄さんに気があるのは一目で分かる。春子はその場にいた。つまり春子は夏美の気持ちを知った上で連れて来た。
 春子は夏美に協力した。夏美は兄さんに告白してキスまでした。夏美は夜寝ていた。
 じゃあ兄さんは夜どこにいた?誰かといた?もしそうなら誰といた?そして何をしていた?
 おそらく兄さんはお風呂にいた。そしてなぜか掃除した。
 消去法でいくと春子といたことになる。しかし春子は夏美に協力していたからそんな事をする理由が無い。
 考えられるのは夏美が嘘をついている可能性。
 「春子も相変わらずおせっかいね。兄さんがちゃんと夏美に優しくキスできたか心配だわ」
 夏美は顔を真っ赤にした。
 「そのさ、私、ファーストキスだったから、よく分からないよ」
 夏美が嘘をついている可能性は低そうだ。夏美は良くも悪くも単純で考えがすぐに顔に出る。
 「意外ね。夏美ってもてそうなのに」
 夏美は可愛くてノリがいい。男が寄ってくるだけの魅力は十分にある。
 「私さ、いつもはテンション高く見えるかもしれないけど、すごく恥ずかしがり屋なんだ。お兄さんに髪をすいてもらっている時とか恥ずかしくて頭が変になるかと思った」
 顔を赤くする夏美。その表情から羞恥と喜びが読み取れる。殺したい。
 「梓ってすごいよね。毎日お兄さんに髪をすいてもらってるんでしょ」
 「別に毎日ってわけじゃないわよ」
 嘘。毎日の楽しみだ。今日はまだだけど。
 「私は無理。嬉しいけど恥ずかしすぎるよ」
 夏美はため息をついて机にへばりついた。
 「わたしさー、梓とかハル先輩とか羨ましいと思ってたんだ。梓はお兄さんと一緒に住んでるし、ハル先輩はお兄さんにいっつもべったりしてるし。
 でも好きな人とずっと一緒にいたりべったりするのってすごく大変だと思う。髪の毛さわられるだけで初めて寝る布団で熟睡しちゃうほど疲ちゃったよ」
 そんなものなのかな。私は好きな人の側にずっといたいけど。
 「兄さんは夏美の告白を受け入れそう?」
 私は一番気になることを尋ねた。
 「うーん。分からない」
 夏美はため息をついた。切なそうな表情。むかつく。
 他のクラスメイトが教室に入ってきた。私たちの会話はここで途切れた。
 とりあえず夏美の事は放置しておいて大丈夫だろう。告白してキスしただけのようだ。それだけで万死に値するが。そうせ兄さんは夏美をふるだろうし。
 私は夏美を見た。顔を微かに染めてぼんやりしている。兄さんの事を考えているのだろう。
 怒りに頭が沸騰する。よくも私の兄さんを穢したな。私だけの兄さんを。兄さんは私のものなのに。
 私は教室を出て屋上に向かった。怒りで頭が変になりそうだった。
 屋上から校門を見下ろす。大勢の生徒が登校している。その中に春子を見つけた。
 そうだ。春子も問い詰めなくては。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 僕は一人で登校した。
 梓は僕が二階を掃除している間にお弁当を持って家を出た。これは今日は話しかけるなということだろう。
275三つの鎖 8 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/05(土) 01:06:04 ID:tRtYc6li
 のんびりはしてられないが、お昼に梓の教室に行っても梓は不機嫌になるだけで話を聞かないだろう。
 夏美ちゃんの顔が浮かんだがすぐに消した。まずは春子と話そう。
 春子との情事が脳裏に蘇る。なぜ春子はあんな事をしたのか。
 ずっと僕と梓のお姉さん代わりだった春子。いつも僕と梓の世話を焼いてくれたいちばん身近な女性。何があったのか。何を考えているのか。そんな事を考えながら教室に入った。
 春子は黒板を拭いていた。
 思わず身構える僕。春子は僕に気がついた。
 「おはよう幸一君」
 いつもより控え目な笑顔。また黒板を拭く。
 僕は驚いた。いつもの朝なら僕に抱きついて頬ずりしてくるのに。釈然としないまま自分の席に座った。
 耕平が話しかけてきた。
 「村田としっかり話合ったみたいやな」
 違う。
 「村田は納得してくれたんか?」
 僕はあいまいに笑った。チャイムが鳴る。ホームルームが終わって一時間目の授業が始まる。
 授業中にノートの切れ端が僕に回ってきた。
 『話したいことがあるからお昼に二人でご飯を食べよ 春子』
 春子を見ると視線が合った。断る理由はない。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 お昼休みに耕平が話しかけてきた。
 「飯どないするん?」
 「春子と話があるから、生徒会準備室で食べる」
 生徒会準備室は人が来ない。聞かれたくない話をするにはいい場所だ。場所を耕平に告げたのは、万が一春子に拘束された時の用心。
 「そか。俺は学食行くわ」
 春子が話しかけてきた。
 「どこで食べる?」
 「生徒会準備室に行こう」
 春子は頷いて歩き出した。僕はその後ろを歩く。春子に先導させるのは春子に背中を見せないため。
 僕と春子は生徒会準備室に入った。この部屋は人が通ることのない廊下の先にある。生徒会準備室とは名前だけで、不便な場所にあるため物置として使われている。
 それを春子は掃除し、整理した。僕も手伝わされた。滅多に使う事がないため湿っぽい匂いがするが、整理され清掃されている。
 特に目につくのはなぜかベッドがあることだろう。保健室の余りなのか、放置されていた。春子は布で飾り立てホテルのベッドのようにした。時々ここでお昼寝しているらしい。
 昔の事が脳裏に蘇る。春子に生徒会の仕事を手伝ってとこの部屋に呼び出された時、春子はベッドの下に隠れていた。
 ベッドはスチールの骨組だが、春子の改造でベッドの横にカーテンのように布が垂れていて下は見えない。僕は全く気がつかなかった。ベッドの下から春子が這い出てきた時は文字通り飛び上がって驚いた。そんな僕を見て春子は嬉しそうに笑った。
 昔の事を脳裏から追い出す。僕は椅子だけを出して春子と少し距離をとって座った。
 「心配しなくても何もしないよ」
 笑う春子。僕は黙殺した。油断はできない。
 「それにお姉ちゃんが何かしても無駄だよ。幸一君は同じ失敗はしないもん」
 春子が僕を拘束しようとするなら、何らかの薬品か手錠やスタンガンなどの道具。手の届く範囲にいてはいけない。
 二人でお弁当を無言で食べる。
 「梓ちゃんに話した?」
 春子は内容を言わないが、何なのかは分かった。僕は頭を横にふった。
 「あの日はね、お風呂に入っている幸一君を私が背中を流してあげようとお風呂に突撃して、私の裸を見た幸一君が鼻血を出してお風呂を掃除することになった。その後幸一君は怒って私とずっと話合って、私は反省して幸一君にべたべたしないと約束した」
 すらすらと春子は話す。
 「そういう事にしておいてね。梓ちゃんにもそう言ってね」
 「あの時、何であんな事をしたんだ」
 僕は春子を見た。いつも僕を見守ってくれた明るい笑顔。その笑顔に嫌悪を感じてしまう。
 「幸一君を愛しているから」
 「あれが春子の愛し方なのか」
 春子はお弁当を置いて椅子から立ち上がった。僕も警戒して立ち上がる。
 「幸一君はお姉ちゃんの体良くなかった?」
 恥ずかしそうに春子は言った。脳裏に春子の白い裸体が浮かぶのを無理やり追い出した。
 「あんな状況でなければ別の感想もあったかもしれない」
 「そんな状況ありえないよ」
 春子は断言した。
 「幸一君にとって私はお姉ちゃんだもん。もし私が幸一君を好きって言っても幸一君は断るよ」
 「そうかもしれない」
 春子は僕にとって一人の女性というより家族としての気持ちの方がはるかに大きい。
 「でも、だからってあんな事をする理由にはならない。それに春子は僕をふったじゃないか」
 まだ僕が中学の柔道部で天狗になっていた頃、僕は春子に告白したことあがる。春子は僕をふった。
276三つの鎖 8 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/05(土) 01:07:46 ID:tRtYc6li
 「あの時の幸一君は本気じゃなかったじゃない」
 春子の言う事は正しい。あの時の僕は単に彼女が欲しいと思い、春子なら断らないと思ったのだ。柔道の腕を鼻にかけ愚かで最低な昔の自分。
 「それにあの時の幸一君は少なくとも誰のものでもなかった。付き合ってまで独占する必要はなかったよ」
 言い方が引っかかる。
 「まるで今は誰かのものみたいな言い方だな」
 春子は僕を見た。見たことのある表情。どこだ。
 「嘘だよ」
 思い出した。春子が僕にくっついているのを見て不機嫌になった梓の表情に似ている。
 「分かっているでしょ?今の幸一君は梓ちゃんのものだよ」
 春子の言う事が胸に突き刺さる。
 「梓ちゃんはずるいよ。あんな方法で幸一君を手に入れるなんて」
 「梓は僕の妹で僕は梓の兄だ」
 春子はうつむきながらスカートの裾を両手でつかんだ。僕は身構えた。スカートの下に何かを隠しているのか。
 しかし春子はそのままスカートをゆっくりたくしあげた。白い太ももと黄色い下着が徐々に姿を現す。
 罠だ。
 僕は春子の全身を視界にとらえた。視線を逸らすと襲いかかってくるに違いない。
 春子が顔を上げる。その顔は恍惚としていた。恥ずかしそうに、嬉しそうに僕を見つめる。濡れた視線が僕に突き刺さる。
 「幸一君覚えてる?まだ幸一君のが入っている感触があるよ」
 春子は白い太ももを悩ましげにすり合わせた。もじもじと何かを我慢するように。艶めかしい動き。
 「昨日の休み幸一君はなにをしてたの?お姉ちゃんはね、幸一君とのセックスを思い出してずっと一人でシてたよ」
 恥ずかしそうにうつむく春子。桜色に染まった頬。震える肩。切ない吐息。男の劣情を誘う女の仕草。
 自らスカートをたくし上げ下着をさらしうつむく春子は壮絶な色気を放っていた。
 「幸一君のが何度もお姉ちゃんの膣をこすりあげる感覚が気持よすぎて、思い出すだけでお姉ちゃんあそこがビショビショになるんだよ」
 すでに春子の黄色い下着は見て分かるほど濡れていた。
 「春子。やめろ」
 「必死に我慢する幸一君の表情が可愛すぎて、お姉ちゃん興奮したよ」
 恍惚とした表情で僕を見る春子。僕にのしかかり嬉しそうに腰を振る春子の姿が脳裏に浮かぶ。僕は唇を噛み締めた。
 「腰を振る度にお姉ちゃんの膣がこすられて頭が真っ白になって」
 春子は白い太ももを悩ましくこすり合わせた。長くて綺麗な素足が付け根まで露わに動く。春子の視線は僕の股間にくぎ付けになっている。
 「幸一君がイってお姉ちゃんの膣に熱い精液を出したとき、やけどするかと思うほど熱かったよ」
 大きく息を吐き出して春子は床にへたり込んだ。
 「お姉ちゃんの膣で幸一君のが震えながら精液を出す度に、頭が真っ白になって何も考えられなくなったよ」
 女の子座りのまま僕を見上げる春子。震える肩。濡れた視線。スカートから白い脚がはみ出る。
 僕は動かない。
 「ふふ、幸一君のが少し大きくなってるのがここからでも分かるよ」
 春子の視線は僕の股間に向けられる。屈辱的だが、春子の言うとおり僕の剛直は少し大きくなっていた。
 「その手には乗らない」
 「ふふっ、幸一君すごいね。お姉ちゃん自信をなくしそうだよ」
 「目をそらしたりしたら襲いかかるつもりなんだろ」
 春子は笑った。嬉しいのか悲しいのか分からない笑顔。
 「幸一君はお姉ちゃんの自慢の弟だよ。そんな手にはもう引っ掛からないよ」
 「その弟を犯したのは誰だ」
 感情的になっている自分。落ち着け。
 春子はベッドの上に腰をかけた。スカートをたくし上げ、胸を強調するように突き出し上目使いに僕に濡れた視線を向ける。
 「ねえ幸一君。お姉ちゃんとシよ」
 「断る」
 僕は即答した。
 「ちぇっ。まあいいや。お姉ちゃんはいつでもいいからね」
 春子は立ち上がりスカートを払った。
 「幸一君もどろ。お昼休みが終わるよ」
 教室まで戻る途中、僕たちは無言だった。僕はますます春子の事が分からなくなった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 午後の授業で再びノートの切れ端が回ってきた。
 『放課後屋上に。私が先に行くから少し経ってから来て 春子』
 春子を見ると目が合った。僕はうなずいた。
 一体春子は何を考えているのか。春子は僕を好きだったのだろうか。
 確かに昔からずっとからかわれていた。僕の世話を焼こうとする春子と僕はよく夫婦とからかわれた。春子は姉弟とのんびり訂正していたが。
 でも春子が僕を好きなら、何で夏美ちゃんを応援するような事をする?
277三つの鎖 8 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/05(土) 01:09:32 ID:tRtYc6li
 あの日に夏美ちゃんを連れてきたのは春子だ。夏美ちゃんの様子を見ればどんな鈍い僕でも好意に気づく。春子も分かるはず。訳が分からない。
 そして梓。
 何を考えているのか。梓がキスをしてきた時は本当に驚いた。小さい時は何度もキスしてきたが、子供同士のじゃれあいの範囲だ。
 梓に他の誰かとキスしたのかと聞かれた時、見られていたのかと思った。しかし、二階の階段から僕と夏美ちゃんがキスした玄関は見えない。どうやってキスしたことを知ったのか。
 梓は僕にキスをして、その後に僕が他にキスしたのかと尋ねた。小さい時に何度もキスをしたから、僕以外のキスの味が分かったとでも言うのか。まさか。そんな事はありえない。
 ならば何で僕にキスしてきたのか。梓が何を考えているのか全く分からない。
 ふと春子の言葉が脳裏に蘇る。
 (分かっているでしょ?今の幸一君は梓ちゃんのものだよ)
 思いついた考えに戦慄する。
 まさか梓は僕を独占したいと思っているのか。だから僕が誰とキスしたか知ろうとしたのか。
 自分でも何でそんな考えを思いついたのか分からない。僕と梓は血のつながった兄妹なのに。意味の分からないおぞましい発想。
 でもそれ以外の理由は思い浮かばなかった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 放課後。春子はすぐに教室を出た。
 耕平が話しかけてくる。
 「お昼に村田と何を話したん?」
 「…家庭の事だよ」
 間違いではない。耕平は信頼できる男だが、とても話せる内容ではない。
 「耕平」
 「何や?」
 「春子が僕の事を好きというのはあり得ると思う?」
 耕平は少し考えた。
 「正直可能性は低いんちゃう。可愛がってるのはよく分かるけど、あいつ昔お前の告白を断ったやろ」
 耕平は大体の事情を知っている。
 「まああの時の幸一は嫌な奴やったから仕方ないかもしれへんけど」
 僕は怒らない。耕平の言っている事は正しい。
 「それにや、高校に上がってから何度かお前に女の子紹介したやろ?」
 何度か女の子から春子に頼んだ事があったらしい。結局、友達以上の関係になることはなかった。
 「もしホンマに好きやったらそんな事はせえへんやろ」
 それもそうだ。
 「ただ女はホンマに何を考えているか分からん奴やから、もしかしたらはありえるで。二人を見てると何があっても驚かへん」
 この前の事を知れば耕平でも驚くだろう。
 「ありがとう耕平」
 「いや。なんか結局答えにならんかったし。んじゃ俺帰るわ」
 耕平は余計な事を聞かない。でも気にはしているだろう。解決したら、耕平に話そう。
 僕は春子を追って屋上に向かった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 屋上には意外な人物がいた。夏美ちゃんだ。
 「あれれ?お兄さんじゃないですか」
 目を丸くする夏美ちゃん。
 「あの時はお世話になりました」
 ペコリと頭を下げる夏美ちゃんの髪が揺れる。髪をすいた感触が脳裏に浮かぶ。
 「こんな場所でどうしたの?」
 夏美ちゃんは頭に手を当ててえへへと笑った。
 「実はハル先輩に話があるって言われたのですよ」
 「僕もだ」
 「え?そうなのですか?」
 「僕たちに何か話したいことがあるのかな」
 「何でしょうね」
 にっこり笑う夏美ちゃん。その唇に思わず目が行く。僕の目線に気がついたのか夏美ちゃんの顔が赤くなる。
 「…ごめん」
 「いえいえいえいえ!めっそうもないです!むしろ意識してくれて嬉しいです!」
 顔を勢いよく振る夏美ちゃん。ちょっと可愛いかも。
 気まずい沈黙。
 「お兄さん。その言わなくちゃいけない事が」
 「どうしたの」
278三つの鎖 8 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/05(土) 01:12:45 ID:tRtYc6li
 夏美ちゃんは顔を真っ赤にしている。大丈夫かな。
 「私がこ、こ、こ」
 「夏美ちゃん」
 「こけこっこー!」
 ごめん夏美ちゃん。突っ込めない。
 「いえ、そのですね、あの」
 「夏美ちゃん落ち着いて」
 「はい、はいっす」
 深呼吸。
 「今日の朝ですね、私が先輩にラヴな気持ちを伝えたのが梓にばれました」
 その言い方告白より恥ずかしいよ。
 「そう。仕方ないよ。気にしなくていいよ」
 「随分あっさりっすね!」
 突っ込む夏美ちゃん。
 「隠せることでもないよ」
 顔をさらに赤くする夏美ちゃん。夏美ちゃんは僕の胸に額を当てた。夏美ちゃんの髪からふわりと良い香りがする。
 「お兄さん男らしすぎですよ」
 僕の頬に血が昇る。
 「そんな事はっきり言われると」
 「言われると?」
 夏美ちゃんが顔を上げる。視線が絡み合う。
 「照れる」
 吹き出す夏美ちゃん。そんなにおかしかったかな。
 「本当だよ」
 「笑ってごめんっす」
 夏美ちゃんは頭を下げた。
 「…告白の事だけど」
 「こ、こここここ」
 「あ、ごめん。ラヴな気持ちの返事だけど」
 この言い方、恥ずかしいというよりも色々な意味で痛い。
 「は、はいっす」
 夏美ちゃんは緊張しているようだ。
 「まだ返事はできない。本当にごめん」
 ほっと溜息をつく夏美ちゃん。安心したような残念そうな表情。
 「いいですよ。私も突然でしたし」
 「本当にごめん」
 待たせるのは失礼にあたるのに、僕はまだ決断できずにいた。昔同じような事があった時はその場で断れたのに。
 「じゃあ一つだけお願いしていいですか」
 夏美ちゃんが僕を見上げる。
 「私にキ、キキ、えと、唇を奪ってくれたら許しちゃいます」
 顔を真っ赤にして言う夏美ちゃん。僕は夏美ちゃんのあごに手を添えた。
 「え?え?え?」
 「それでいいの?」
 「そそそそそその、えとあの」
 「僕はまだ夏美ちゃんを愛してるか分からない。それでも夏美ちゃんが望むならキスする」
 自分でも言ったことに驚いた。付き合ってもいない女の子にキスをしてもいいと自分が言うなんて。いいのか。いや、駄目だろ。
 でも夏美ちゃんを見ていると、僕もキスしたいと思ってしまう。
 夏美ちゃんは顔を真っ赤にして目をつむった。僕は夏美ちゃんの唇に軽くキスしすぐに離す。
 「あっ」
 夏美ちゃんが目を開ける。少し残念そうに見えるのは気のせいだろうか。
 「あの、お兄さん」
 僕の頬を夏美ちゃんの両手が包む。白くて小さい手だが、頬にふれるそれは熱い。
 「あの時みたいに、激しくしてほしいです」
 「いいの?」
 「はい」
 熱っぽく僕を見上げる夏美ちゃん。
 もう一度キス。
 目を閉じて受け入れる夏美ちゃん。唇を何度もついばむ。
 「ひゃんっ、ちゅ、はんっ、ちゅっ、ちゅっ」
 夏美ちゃんの唇に舌を入れる。
279三つの鎖 8 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/05(土) 01:14:27 ID:tRtYc6li
 「ん!?んんんん!!」
 僕は夏美ちゃんの歯を割り口腔をなぶる。
 「ん、んん、じゅっ、ちゅっ、ちゅっ、んっ」
 柔らかくて熱い。
 「ちゅ、んっ、じゅっ、ちゅ、んんんんっ、はむっ」
 されるがままの夏美ちゃん。
 夏美ちゃんの背中に手をまわし抱きしめる。
 「んっ!?ちゅっ、じゅっ、ちゅる、ちゅっ、んんんんんん!」
 夏美ちゃんの舌を舐めまわす。僕の腕の中で震える夏美ちゃんが愛おしい。
 「あむっ、ちゅっ、じゅるるっ」
 びくっと震える夏美ちゃんを抱きしめる。
 「ちゅっ、ちゅっ、じゅる、はっ、ちゅっ、んんんんんんんんんんんんんんんんんんん」
 何度も痙攣するかのように震える夏美ちゃん。
 僕はゆっくり唇を離した。切なそうに僕を見上げる夏美ちゃん。唇から涎が落ちる。
 「夏美ちゃん。涎」
 僕はそれを指で拭った。
 「はむ」
 夏美ちゃんの口の端までぬぐった瞬間、夏美ちゃんは躊躇なく僕の指を口にした。夏美ちゃんの口の中の熱い感触に心臓が跳ね上がる。
 「ちゅっ、ぺろっ、ぴちゃっ、ちゅっ」
 陶然とした表情で一心に僕の指をなめる。
 「ちゅぱっ、ちゅっ、はんっ、んんっ、んふ」
 夏美ちゃんはびくっと震えると、へなへなと腰を落とした。顔を真っ赤にして息も荒く肩で呼吸する。
 「夏美ちゃん大丈夫?」
 「はー、はー、ひゃい、だいひょうふでふ」
 返事をできる状況じゃなさそうだ。僕は夏美ちゃんの背中に手を当てた。震える夏美ちゃん。そのままゆっくりとなでる。
 「はんっ、ひゃっ、おにい、さんっ、くすぐったい、ひゃ!」
 「ごめん」
 手を離す。安心したような名残惜しそうな顔をする夏美ちゃん。
 「落ち着いた?」
 「あ、はい」
 夏美ちゃんに手を差し出す。手をつかんで引き上げた。足元が揺れる夏美ちゃんを支える。
 「ご、ごめんなさい」
 顔を赤くしたまま僕にもたれかかる夏美ちゃん。夏美ちゃんの体温が伝わる。温かい。
 寄り添う僕と夏美ちゃん。気恥ずかしいけど心地よい。落ち着く。
 そうしていると、携帯が振動した。メールだ。開くと春子から。
 『急用で行けなくなっちゃった。ごめんね。夏美ちゃんによろしく』
 「春子からだ。急用で行けなくなったって」
 夏美ちゃんが不思議そうに僕を見る。
 「結局何だったんでしょう」
 もしかしたら僕と夏美ちゃんを合わせるのが目的だったのかもしれない。
 僕と夏美ちゃんに普段の接点はない。たまに昼食お弁当を食べるぐらいだ。
 しかし、もしそうとすると春子の行動がますます分からない。
 「あのっ!お兄さん!」
 夏美ちゃんが僕の手を勢いよくつかむ。小さくて柔らかい手。
 「メアド交換しませんか!」
 「はい」
 勢いに押されて頷いてしまった。
 「やったー。メアドゲットだぜー!」
 飛び跳ねる夏美ちゃん。スカートから白い太ももが見える。僕は視線をそらした。
 「おにーさん。途中まで一緒に帰りませんか?」
 僕は状況に流されるのはあまり好きじゃない。いつも自分を律したいと思う。
 でも。
 「うん。僕でよければ」
 今は流されてもいいと思ってしまう。
 「行きましょう」
 夏美ちゃんの笑顔がまぶしい。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
280三つの鎖 8 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/05(土) 01:16:35 ID:tRtYc6li
 「でね、幸一君にすごく怒られちゃった」
 春子はしょんぼりと肩を落とした。
 私は怒りを必死で抑えつけた。
 「変態シスコンにしては紳士的ね」
 私は感情を抑えて吐き捨てた。
 「それで約束したんだ。もうべたべたしないって」
 春子は寂しそうに言った。
 私は放課後に春子に呼び出された。私も春子に聞きたいことがあったから好都合だった。
 そこで春子はあの日に何があったかを教えてくれた。私には不愉快極まる内容だった。
 シャワーを浴びていた兄さんの背中を流そうと風呂に入って、春子の裸を見た兄さんが鼻血を出したと。それで風呂を洗い、兄さんに怒られたらしい。
 「梓ちゃん。お姉ちゃんちょっと寂しいかも」
 「もういい年なんだし自重したら」
 「幸一君と同じこと言うね」
 春子は寂しそうに笑った。
 「幸一君がすごく真剣に言うんだよ。もう高校生なのだしこんな事をしてたらダメだって」
 私には好都合だ。春子が兄さんにべたべたするのは私の精神衛生上良くない。
 「春子は」
 私は春子を見た。物心ついたときから私の傍にいた人。いちばん身近な家族以外の人間。
 「兄さんの事が好きなの?」
 私は常に思う疑問をぶつけた。
 高二にもなって幼馴染とはいえ異性にべたべたするのは気があると思われても仕方がない。もしそうなら私にとって不都合だ。
 春子はうーんと首をかしげた。
 「ええとね、確かに好きだよ。でも恋人になりたいとか、そういう好きじゃない」
 「なんで?」
 「幸一君は私にとって弟みたいな存在だから。恋愛の対象じゃないのかな」
 胸が痛い。私は兄さんを恋愛の対象に見ている。
 「春子は何で夏美に協力するの」
 春子はまじまじと私を見た。何を考えているのか分からない微笑みに苛々する。
 「夏美はいい子よ。あんな変態シスコンには似合わない」
 私は感情がこもらないように必死に我慢した。
 春子がほほ笑んだ。寂しそうな笑顔。
 「私はそうは思わないよ」
 私の頭をなでる春子。温かくて柔らかいのが不快だ。
 「夏美ちゃんはね、まっすぐなの」
 そうは思わない。夏美はいい子だが単純なだけだと思う。
 「飾らない等身大の自分を見せる事ができる子だよ。お姉ちゃんには真似できないよ」
 私にもできない。兄さんにありのままの私を見せると、兄さんを不幸にするだけだ。
 そうだ。夏美は私から兄さんを奪おうとしている。私にとって誰よりも大切な兄さんを。兄さんの事を一番好きなのは私なのに。血がつながっていないだけの女が兄さんにすり寄っている。ゆるせない。
 夏美。私から兄さんを奪うなら。
 殺してやる。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 「おいしーですねお兄さん」
 ソフトクリームをおいしそうに舐める夏美ちゃん。僕たちのいる公園は静かで誰もいない。
 二人でベンチに並んで座ってのんびりソフトクリームを食べていた。
 僕と夏美ちゃんは寄り道していた。何となく別れがたいものを感じた。
 「おにーさん?」
 夏美ちゃんが僕を見上げる。
 「夏美ちゃんは」
 こんな事を聞くのは卑怯だと思う。
 「何で僕が好きなの」
 僕はまだ保留しているのに。
 「何ででしょうね。私にもわかりません」
 人を好きになる理由なんてそんなものなのか。僕は恋をした事が無いから分からない。
 「何で僕を信じられるの」
 何も知らないのに何でそんな事を言えるのだろう。僕自身も梓にゆるされる日が来るとは信じられないのに。
 夏美ちゃんが僕を見上げた。
 「お兄さんは信じるに値する人だからです」
 まっすぐな瞳。
281三つの鎖 8 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/05(土) 01:22:27 ID:tRtYc6li
 「何でそんな事を言えるの」
 僕は夏美ちゃんを見つめる。夏美ちゃんは僕の視線を受け止めた。
 「僕でも信じられないのに」
 「お兄さんはお兄さん自身の事をあまり分かってないのだと思います。梓の事も分かってないです」
 「そんな事はないよ」
 いや、そうかもしれない。僕は梓が生まれた時から一緒にいるけど、いまだに理解できない。
 でも、血を分けた兄妹でも分からない事を、夏美ちゃんに何が分かるのか。
 「梓はいつか必ずお兄さんをゆるします」
 僕もそれを望んでいる。でもそんな日が本当に来るかを信じられないでいる。
 「私が信じているのはお兄さんだけじゃなくて、梓もです」
 ほほ笑む夏美ちゃん。僕は意表を突かれた。そして納得した。夏美ちゃんは僕だけでなく梓も信じてくれる。
 「梓は必ずお兄さんをゆるします」
 そう言って夏美ちゃんはのんびりソフトクリームのコーンをかじった。
 変な子だと思う。ノリがいいように見えて恥ずかしがり屋だったり、変わったことを言ったりする。僕を好きと言ってくれる夏美ちゃん。
 僕はこの子を一人の女性として愛していない。
 それでも思う。
 「夏美ちゃん」
 不思議な感情。
 「今、僕は夏美ちゃんを一人の女性として愛してはいない」
 「そうですか」
 夏美ちゃんは残念そうに肩を落とした。
 「でも夏美ちゃんを好きになりたいと思う」
 びっくりする夏美ちゃん。
 「僕でもよく分からない。好きになりたいのはどっちなのか。好きと言ってくれる夏美ちゃんなのか、信じるといってくれる夏美ちゃんなのか。あるいはそんな事は関係なく好きになりたいのかもしれない」
 夏美ちゃんが自分の口を両手で押さえ震える。目尻に涙が浮かぶ。
 「僕が好きだと確信できるまで、そばにいたい」
 涙をぽろぽろ落とす夏美ちゃん。
 「僕と付き合ってください」
 夏美ちゃんは僕の胸に額を当てた。
 「恥ずかしくて顔を見れないですから、このまま答えさせてください」
 僕に背中に夏美ちゃんの手が回される。小さな温かい手。
 「私でよければ喜んで」
 夏美ちゃんは顔をあげた。涙でぐちゃぐちゃの笑顔。
 そのまま僕たちはキスした。唇に柔らかくて温かい感触。
 目を開ける。
 恥ずかしそうに笑う夏美ちゃん。
 夏美ちゃんの奥。
 視界の端。
 公園の入り口。
 梓がいる。
 僕たちを見つめている。
 遠くて表情は見えないのに、感情は伝わってくる。
 ゆるさないと。
282三つの鎖 8 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/05(土) 01:33:22 ID:tRtYc6li
投下終わりです。
呼んでくださった方達に感謝申し上げます。
続きは次の週末にでも投下します。
283名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 01:38:14 ID:LmcclhlL
リアルタイムにGJ!
ついにキモウトのターンがはじまるのか・・・春子がどうでるのかも気になるところ
来週を楽しみにしてます
284名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 01:38:54 ID:47nNWe7H
GJ
某綾のせいか春子と梓の相打ちを予想してしまう
梓には幸せになってほしいぜ
285名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 01:46:57 ID:Ibg7QUnU
リアルタイムGJ!
このスレの住人としては間違ってるのかもしれんが夏美がかわいいw
次もwktkしながら待ってます
286名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 01:59:05 ID:cs4maed0
最後のシーンが頭の中で鮮明に映像化されて、なんか鳥肌たった
GJ
287名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 02:04:56 ID:32oKSRhn
GJ!!
まぁ、これほどのSSを書くお人なんだから、
このまま春子一人勝ちなんてことはしないだろうさ。
しないだろうさ。
288名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 02:12:49 ID:DTfAicKG
GJ
梓よりなにより何考えてるかわからない春子が怖いですw
しかし梓にはがんばってほしい
289名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 02:13:47 ID:d1ZfjEm8
GJ!春子が一番怖いw
290名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 06:30:57 ID:BEGyiXA7
GJ!!!!
夏美可愛いよ夏美
291名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 07:50:42 ID:Qnqdq6oT
GJ
夏美がいつ梓の地雷を踏むのか考えると
二人の会話にビクビクする
292名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 07:52:27 ID:GLTnHw+I
夏美とか春子とか違うスレのSSともろかぶり
293名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 08:50:50 ID:FkdN8Yuh
>>282
ん〜〜、でもなんか春子に幸せになって欲しい気もするなあ
スレ的にちょっと異端な意見だろうけど
294名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 10:04:07 ID:xMwEWZfi
と・・・とらとらシスター
295名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 15:14:26 ID:m20WxxgL
>>294
なつかしいな
296名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 16:37:06 ID:JM7tXkWd
GJ! 夏美と梓をまとめて潰そうとする春子さんパネェw
297名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 16:54:06 ID:l3jZbFtC
どうみても春子さんは梓に夏美をぶつけてつぶし合わせる気です、本当にありがとうございました。
GJ
298名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 18:56:58 ID:8+K//25B
キモウト検定3級問題

【1】次の文章を読んで、あなたならどうするかを下のa〜dより選択せよ。


 (1) あっ、お兄ちゃんが見知らぬ女と楽しそうにお喋りをしているよ。

a.すぐにその場に躍り出て女を消す
b.毒物を用意しバレないように女を消す
c.まずは女の素性を調べる
d.喋るくらいならまあいいか

              (5点)
299名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 20:48:12 ID:HR9TiA5N
e.お兄ちゃんの唇を奪う
300名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 21:08:48 ID:32oKSRhn
f.その場でお兄ちゃんを犯す
301名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 21:26:10 ID:SIM3gOpb
g.「馬鹿兄貴のことなんてどうだって良いわよ。」とか言いながら本当は裏で爪を噛みながら、くやしいのぅwwwくやしいのぅwwwな思いをする
302名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 22:39:55 ID:enA6yu7x
h.兄?どうでもいいや。それより家に帰ったら愛しの弟くんにどんなエッチないたずらしようかなー


↑『キモウト』検定不合格の模範回答。
303名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 23:51:48 ID:xMPoxNpy
304名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 00:51:29 ID:ju/uxX5x
>>299-302
おまいら選択肢から選んでないからゼロ点だ
でも俺的には満点
305暴走:2009/12/06(日) 03:01:43 ID:LjLq1lP/
うちの家族は週末は朝10時を過ぎなければ誰も起きてこないことが多かった。
当時小学生だった僕は昔っから休みの日は寝坊できない性格で、7時頃に目を覚ましても
布団の中で時間をもてあますことが多かった。
だがいてもたってもいれなくなってたまに僕は姉の部屋に構ってほしくて侵入することがある。
そして僕は今日も姉の寝るベッドへこっそりと忍び込んだ。
布団から頭を出す。姉は体を僕とは反対側に向けてスースーと心地良さそうな寝息を立てて眠っていた。
姉のベッドはいつも暖かい。僕は姉の背中に体をぴったり密着させて体温を分けてもらった。
「ううん・・・うーん」
姉は目を覚まし、体はそのままに頭だけこちらに向けた。薄目をあけて僕を確認した。
「ちょっと離れてよ」
姉は頭を元に戻し、体を揺すって僕を振り払おうとした。だが負けじとしがみつく。
「ち・・・ちょっと・・・」
気がつけば僕のそれは朝勃ちで限界までいきり立ち姉の尻の肉をギュウギュウと突いていた。
姉は体をこちらに向けた。姉の顔が僕の顔の上にある。当時身長が低い方だったぼくは姉よりも
頭一つ分くらい背が低かった。僕は姉の顔を見上げた。
「おはよう、お姉ちゃん」僕は笑顔で姉に挨拶をした。
「んー!かわいい!!!!!」突然姉は僕をギュウッと抱きしめた。それも力ずくで僕の体を潰してしまうかのような勢いで。
僕の顔は中学三年生のまだ未熟な胸に埋もれた。しかし僕は逆らえない。
まだ当時は姉の方が腕力が勝っていた。ベッドの上は完全に姉の一方的支配下にあるのだ。もしも逆らえば
即蹴飛ばされベッドから追い出されるのだった。
だが僕にとってそれはそんなに苦痛じゃなかった。
姉は一旦僕を解放した。僕は頭を上げ、姉の顔を見上げた。並以上に整った顔が笑みを浮かべていた。心臓がドクンと跳ねた。
306暴走:2009/12/06(日) 03:02:34 ID:LjLq1lP/
僕は小学5年生。性的な欲求を感じ始める年頃だった。
だが当時、異性とどこかで泊まり一晩・・・なんていうことは中学生やそこらの年齢では有得ない時代だった。
しかし性欲は日に日に増大する。僕の周りでもエロ本を持っていない奴なんていなかったくらいだ。
エロ本は無いと思うが少なくともそれは姉にもあてはまることだった。
となると一番身近にいる異性。それが姉であり弟であった。
特に仲が良かった僕達姉弟がお互いの体の変化に興味を抱きはじめ、いきすぎた行為に発展するまではそう時間がかからなかった。
姉は僕が布団に潜ると自分の性器を触らせてくれることがよくあった。僕は興味津々に姉の性器を弄くった。
背徳的行為だということはお互い薄々気付いていた。だが育ち始めた性欲は留まる所を知らなかった。
307暴走:2009/12/06(日) 03:04:01 ID:LjLq1lP/
姉の右手が僕の左手を掴んだ。「触りたい?」姉は優しくそう尋ねた。僕はうんと頷いた。と同時にとっさに頭を下に向けた。
なんだかとても恥ずかしかった。という理由もあるが、その「行為」をしている時は何故か姉の顔を見てはいけない気がした。
姉はゆっくりと、しかし確実に僕の手を自分の股の方向へと誘導していく。
僕達の「行為」は暗黙の了解で成り立っていた。
僕が積極的にならない。姉が僕の手を誘導し、姉が僕に「触らせる」。
自発性を実際に禁止された訳ではない。昔から徐々に徐々に行為を重ね、深めていくなかで
自然に生成されたものなのだ。
僕の左手は姉のパジャマを潜った。姉の右手という通行証が無いと潜れない関門だ。
そこを超えると姉の下腹部に触れた。そこは凄く熱を持っていた。
僕の左手はさらに深部へと誘導された。すぐに下着の上部に達した。
姉の右手は躊躇することなくその情けない程弱々しい下着のゴムを潜り抜けた。
そして最深部の秘部へと辿り着いた。姉の右手は役目を終えると早々に下腹部から退いた。
僕はそっと手の平を、割れ目を覆い隠すように恥丘に置いた。
恥丘の曲線と手の力を抜いた時に出来る平の曲線と形が一致した。
僕は中指で割れ目をそっとなぞった。男性には絶対に存在しない柔らかさと弾力。そして湿り気。
僕の心臓は激しく鼓動した。
姉は上着のボタンを上から順に数個外した。小さな、しかし確実に男性よりも発達した乳房がそこにあった。
僕はそれをそっと口に含んだ。がっつくと引っ叩かれるので軽く舌で愛撫した。その姿はまるで赤ん坊だ。
だが悪い気分ではなかった。自分の全てを姉が包み込んでくれるような、そんな気がした。
そうしているうちに割れ目は随分と水気を帯びてきた。
僕は夢中で中指と人差し指を使って割れ目の表層を撫でた。
中指で割れ目をポンと軽く弾くとちいさくクチャッっと音が出た。
いつもならこれを姉が満足するまで続けるだけだった。
今回は違った。暴走を始めた性欲はこの程度では満足しなくなっていた。
308暴走:2009/12/06(日) 03:04:58 ID:LjLq1lP/
姉の右手が僕の左手を強引に掴んだ。そして僕の中指と人差し指を割れ目の内部へと突っ込んだ。
(とは言っても第一関節と第二関節の間くらいの深さ)
「クチュッ」と鳴る。既に僕の手は水浸しだった。
僕は驚き、指を割れ目から引っこ抜いてしまった。だが姉はまた突っ込み、そして耳元でこう囁いた。
「もっといいよ」
僕は思わず姉の顔を見上げた。一瞬しまったと思ったが姉はクスリと笑った。
僕は赤面し、すぐに俯いた。
姉は僕の手を掴み強引に割れ目を掻き回させようとしていた。こんなに柔らかくて敏感な部分を
こうも荒々しく触ってもよいものなのだろうか。姉はさらに催促した。
「やって」
僕は思い切って指を割れ目に突っ込んだ。そしてこれでもかこれでもかと弄くりまわした。
掻くように、撫でるように、弾くように、広げるように。二本の指で可能な限りのことをした。
「っん・・・」姉が軽く息を詰まらせたような声を鼻から漏らした。
同時に乳首を口で吸ってみた。チュっと鳴った。姉はこれまでに無いほど激しく僕を求めた。
姉の右手がモゾモゾと動き出した。今度はなんだ。
だが向かう方向が違う。突然姉の右手は僕の下腹部に触れた。
「うっ」突然の感触に僕は驚き声を上げてしまった。一体何をする気だ。
姉は僕の腰を強引に引き寄せた。そして無理やり僕のパジャマとパンツをずらした。
ポロリと下着の隙間からいきり立った逸物が飛び出した。僕は仰天した。
「おっ・・・お姉ちゃん・・・?」
「触らせて」姉の生ぬるい息がぼくの首筋に当たった。
たぶん姉が僕のを触るのははじめてだ。僕は下を向いたまま姉の声には答えずじっと次の動きを待った。
姉の冷たい右手は恐る恐るぼくのそれの頭に触れた。ビクっと反応してしまった。
最初は触ったり撫でたりしていた。しかしそれも次第に動きが激しくなり握ったり擦ったりしてきた。猛烈な動悸が僕を襲った。
「ひっ・・・」繰り返される愛撫に耐え切れず声が漏れた。
負けじと姉の割れ目を触る。もう割れ目の洪水は下着にシミを作りそうなくらいになっていた。
309暴走:2009/12/06(日) 03:05:45 ID:LjLq1lP/
しばらくして、いや実際はものの数分も経っていないのかもしれないが、何かが僕の下腹内部からせりあがってきた。
それは今までに経験したことの無い感覚。もっと激しく姉が欲しい。とにかく何か分からないこの津波のような
気持ちを姉に叩き付けたい。そしてこの抑え切れない衝動を包み込んで欲しい。
激しい情欲に駆られ僕は一瞬全ての理性を振り切った。僕は姉の下着を掴んでずらし、姉の股と割れ目の間に小さな逸物をつきたてた。
僕の左手を姉の背中にまわしとにかく股間をギュウギュウと押し付けた。全てを受け止めて欲しいというその一心で。
逸物が割れ目の入り口を探り当て頭だけだがその口に包まれた。直後にスパークが散った。
僕は必死に姉の体にしがみついた。
ビュービュー。逸物から液体が噴出し割れ目を打ち付ける感覚と同時に体験した事の無いほどの快感と幸福感に包まれた。
しかし直後にとりかえしのつかないことをしてしまったのではないかという後悔がジワジワと押し寄せてきた。
しばらくして股間は血が引き縮んでいた。僕は息を切らしながらもまだ姉にしがみついていた。
どうやら姉も僕の体を抱いていたらしい。腕が背中にまわっていた。
僕は恐る恐る姉の顔を見上げた。
「拭いて」姉は腕を解くと無表情でそう言い、ベッドに備え付けてあるティッシュを大量にとって
僕に渡した。怒っているのだろうか。僕はとてもいけないことをやってしまったのだろう。
こんなにも姉を汚してしまった。僕は目を背け俯いた。
股間のまわりがヌルリとなんとも心地の悪い感触がした。一物を抜く。ヌルヌルとした液体にまみれている。
酷い頭痛がしている。とりあえずその濡れたいちもつを軽くティッシュで拭き取り服の中へしまった。
どうやらパンツまで濡れているようだった。これはもう後で替えるしかない。
姉の股間を触る。まるでオネショでもしたのかと思うほどに液体にまみれていた。
姉はさらにベッドのティッシュを大量にとり無言で僕に渡した。僕はそれを受け取り割れ目やその周辺を丹念に拭いた。
体の位置は始める前と変わらないのでその秘部が今どういう状態なのか目視確認はできない。体位は替えることが出来ない。
しようと思えばできるが、同じ腹から生まれた小学6年生の大量の精液と中学3年生の大量の
愛液が混ざり合ったそこを、僕は見てはいけない気がした。
結局ゴミ箱が丸めたティッシュで一杯になるまで拭いた。
一通り終わると姉は無言でベッドから出、僕と一度も顔を合わせる事もなく下着を着替え、部屋着を着た。
僕はその様子をベッドから無言で眺めた。
姉はまるで僕の存在を忘れたのかと思うほど手際よく串で軽く髪を整えると、トントントンと一階へ降りていった。
僕は呆然としていた。しばらくしてから僕も服と下着を着替え下に降りた。
そしてそのまま洗面台に行き、汚いパジャマとパンツを洗濯機に放り込んだ。
姉の下着とパジャマもそこに入れてあった。
全ての汚れを落すために手は石鹸で丹念に洗い、顔もついでに洗った。
洗面台の鏡を見る。いつもと変わらぬ僕の顔がそこにあった。
リビングに行くと今起きたという感じの母が朝食を作っていた。
姉はその横で冷蔵庫を漁っていた。そして僕が大切に隠しておいた牛乳プリンを見つけ出すと
僕の目の前で啜るように目にもとまらぬ早さで平らてしまった。
はっと我に返る。「アッー!それ僕が昨日残しておいたのに!」僕は叫んだ。
「はぁ?名前書いとけよ」姉は無茶を言ってるのを自覚しているのかニヤニヤしながら言った。
「せっか残しといたのにー!」
「こら!」母が姉に怒った。
朝食が完成し、姉と僕は揃って椅子に座りベーコンをほおばった。
いつもとなんら変わらぬ聞きなれた朝のニュースのテーマがテレビから流れていた。
隣にはいつもの姉がいた。
310名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 03:20:37 ID:KoMECMtV
>>309
「投下予告くらいしろよ」ニヤニヤ
311名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 04:34:15 ID:45jIPnkG
312名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 09:42:57 ID:hm6oFYRy
キモ姉なのか?
313名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 09:44:58 ID:joJ/ejV2
>>305-309
エロいし、なんだか背徳っぽい……んだけど……
キモ姉の要素が、欠片も見当たらない気がするのは、何故だろう?
314名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 10:35:40 ID:nTGYUvI9
>>305ー309

これは序章で、暴走するのはこれからなんですね
わかります
315名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 11:29:27 ID:CTqJlgTi
っふぅ
このスレで抜けるとは思わなんだ
316名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 11:59:30 ID:LjLq1lP/
>>313
ここに書いてもいいのか凄く迷いましたが・・・近親相姦系の小説スレが
探しても他になかったので・・・
317名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 12:52:18 ID:qOX8Wxa8
あるよ〜

お姉さん大好き PART7
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1252823881/l50
318名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 12:59:11 ID:M22FTla4
キャラ萌えはないけどリアルな背徳感があって面白かった。
たまにはこういうのもいいと思う。
個人的にはキモ姉というよりキモ弟SSだと思った。
319名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 13:24:19 ID:ju/uxX5x
>>318
キモ弟SSってリアルストーカーじゃねぇか
だけどそれもありかも
キモ兄&キモ弟SSってあったら…いや凌辱系になってしまいそう
320名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 15:08:22 ID:kI2JkxvW
>>316
SS自体はとてもいいものだったぜ
だが残念ながらここキモ姉、キモウト専用だけどな・・・

なので次回からは>>317のところのスレで投下して欲しい
あっちのスレでも投下まってるよ!
321幸せな家族:2009/12/06(日) 15:16:35 ID:Qa27HYNY
初投下です、未熟な部分には目を瞑ってくれると嬉しいです

人差し指を小さな手が握った
ふくふくとした頬を空いている手で撫ぜると寝苦しそうに顔をしかめて、なんとも愛らしい
くすりと笑みが漏れる
己が子の僅かな挙動すら愛らしく感じるのだから、私は相当親バカなのかもしれない
そう思っていると私のもうひとつの宝物がやってきた
今揺りかごで眠っている子の兄、我が家の長男
「この子はオレが見てるから、おとーさんに会ってきなよ」
そう言うと彼は自分の妹の頬をにこにこしながら触る
その幼い兄妹の姿がいつかの風景に重なり、私は嬉しくなって頭を撫でた
「ありがとう、いい子ですね」
「いいからはやく行けって!!」
少しあの人の面影があるその子は少し照れくさそうだった

がちゃりと、ある部屋のドアを開ける
しばらくは次女の世話に追われて訪れていなかったので随分ご無沙汰だ
最初に埃っぽい空気が流れて行った後、私は懐かしい匂いに包まれた
「ああ・・・・」
私は自然と瞳から涙が溢れるのを感じた、そこに居る人の幸せそうな姿を見ると私の心の中にまで幸せが広がってくる
「お久しぶりです兄さん・・・・」
愛おしさで、声が震えた
手錠と足枷が嵌められた手足、虚ろで、濁った瞳
見る人間が見ればそれは痛々しい光景でしかないのだろう
だが私は、私たちの場合は違う
私という伴侶と、子供達に囲まれた暮らし
それが兄さんの幸せに他ならない
『あの女』に監禁されていた兄さんを救い出してここに連れてきたとき、兄さんは錯乱しているのか酷く暴れていたけれど、今ではこんなに静かだ
きっと兄さんも私と同じように今、溢れんばかりの幸福を感じているに違いない
「もう、六年も経ったんですね」
私は壁に寄り掛っている兄さんの頭を膝に乗せて、六年前に思いを馳せる
「ここにお引越ししてきたときは大変でしたね」
兄さんが『あの女』の口車に乗せられて結婚すると言った時は本当に驚いて、喧嘩したことのない兄妹だったのに初めて大喧嘩をしてしまいましたね
でも兄さんの為だったんですよ
あの女に騙されている兄さんを見ていられなかったから
兄さんを監禁して不幸せにするあの女が許せなかったから
でもそんなことはもうどうでもいい
今が幸せだから
言いたい事が、伝えたい事が沢山あるのに、私の口は上手く動かない
愛しすぎて、幸福すぎて、私の求めた全てがここにある
そう思ったとき、私の瞳から大粒の涙が溢れた
「どうしたんでしょう・・・・ね・・・・なんだか・・・・」
呂律が回らない、自分が何を言いたいのかもわからない
ふと膝に温かく湿った感触がして、兄さんを見ると硝子玉のような瞳が涙を流していた
それは例えようもない幸福に咽ぶ涙に違いない
「兄さん・・・・兄さんも幸せなんですね・・・・?」
ああ、なんて私は素晴らしい家庭を築けたのだろう
妹思いの長男に、これからどう育っていくのか楽しみな次女、兄さんというこれ以上ないくらいの旦那さま
兄さんの頬を伝う涙を丁寧に舐め取りながら、今日も私は願う
どうかこの幸せが、永遠に続くようにと


終わりです、コンセプトは『エピローグ』でした
機会があればお兄ちゃんサイドもやってみたいです
322名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 15:52:23 ID:cY8QbfjM
>>321
GJ
わが子に丁寧語使うお母さん萌え
うるさいこと言うとたぶん「長女」が正しいと思う
これから、たくさんおもしろい作品書いてくれるの期待するよー
323名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 17:18:14 ID:Qa27HYNY
>>322
ありがとうございます
今回の反省点を次回に活かしてがんばりたいと思います
324名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 17:51:34 ID:LjLq1lP/
>>317
どうもです!
どうりで「姉 小説」で検索しても引っかからなかったわけだ・・・
そっちに再投下したらマルチになりますかね
325名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 18:40:54 ID:EuXnzL5l
間違えたと向こうにこっちのアドレスとレス番号を提示して続きは向こうって形にすれば?
326名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 20:40:43 ID:LjLq1lP/
そうしてみます
続き、暇があれば書いてみますんでよろしくです
>>318
リアルさにだけは自信がありますw
実はこれの「僕」は何を隠そう8年前の自分ですw
327名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 20:51:05 ID:NtaVwDZH
何気に爆弾発言w
328名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 20:56:26 ID:mO99AXpX
げえっ! と横山三国志風に驚いた
329名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 22:01:27 ID:CTqJlgTi
な…んだと…
330名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 22:19:53 ID:6xY9yVGq
大した奴だ……
331名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 23:05:11 ID:Gor4XeUa
まったく、紳士たるもの実体験は秘めておくものだぞ?

羞恥で発狂した嫁さんに俺らが消されてしまうではないか
332名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 23:09:33 ID:TMoQ31Qe
これが……若さか。
333名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 00:19:39 ID:/rPt03wJ
よほどきれいだったんですね。
334名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 00:30:41 ID:Ywi7IwJf
>>321のせいで、年上女性の敬語萌えになった。
謝罪とSSを要求する。
335名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 02:18:51 ID:uOLIkZAX
>>334は「永遠のしろ」の甘粕先輩とか好きそうだNE!
336名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 09:30:13 ID:kXmwFduD
>298
i.「お兄ちゃ〜ん」と声をかけ、女に「ねえっ、かっのじょ〜?」と訊く。
337名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 09:55:46 ID:gvG9qQu7
>>298
j.「お待たせ♪ ダーリン☆」とお兄ちゃんに突撃して腕を絡ませつつ胸も密着、頬ずりしながら兄の死角から女を威嚇。
 「待たせちゃってごめんね、行こ行こっ☆」とそのまま主導権を握って強引に兄を拉致る。
338血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:13:33 ID:lGcbvWxO
ラッシュが収まったようなので投下します。
ここからいつものパターン。
339血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:14:43 ID:lGcbvWxO
兄様。
兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様徹兄様。
愛しています。
鋭い目も、固い髪も、結ばれた唇も、大きな体も、太い腕も、厚い胸板も、引き締まったお腹も、広い背中も、強靭な足も、ごつごつした指も、頑丈な首も、朝起きたときのちくちくする無精ひげも
見下ろす優しさも、剣術に対する熱意も、道場に対する愛着も、御爺様に対する尊敬も、母様に対する思いやりも、女性に対する奥手も、苦手な食べ物への子供っぽさも、理不尽に対する怒りも、喪われたものに対する悲しみも、自分の非力に対する絶望も、夜への愛も、憎しみも
全て
全て愛しています。
夜は世界に感謝します。




血啜青眼

後篇




母を喪う前のことはよく覚えていません。兄様に会う以前のことなど、夜にとっては重要ではないからでしょう。
夜は父無し子でした。母と二人、慎ましやかに暮らしていました。それなりに不自由はありましたが、それなりに生きていました。母と同年代の男性が時折訪ねてきていました。あの人が父だったのかもしれません。
そうしてある日、母が死にました。事故だったと聞いています。
多分泣いたと思いますが、記憶はあやふやです。そのときどんな気持ちだったのかも、うまく思い出せません。
よく覚えていないのです。兄様と会う以前の夜が、いったいどうやって動いていたのか。お前は昔息をしないで生きていたのだと、言われたとしても他人としか思えません。
実の母について夜が思うことは三つの感謝だけです。
産んでくれてありがとう。
育ててくれてありがとう。
死んでくれてありがとう。
それだけです。


浅賀家に引き取られてからのことを語ろうとするのなら、逆に万の言葉を費やしても足りません。兄様と交わした一言一句を、夜はこの身に刻み込んできました。
いいえ、逆です。御爺様が趣味とする木彫仏像のように、兄様の一言一句によって夜の心は今の形に彫りだされたのです。だから夜は兄様のものなのです。
兄様が理想とする形に一秒でも早く近づくことが、夜の人生に課せられた全てです。
夜は御爺様のことを尊敬しています。兄様が尊敬しているからです。
夜は母様のことを敬慕しています。兄様が敬慕しているからです。
それ以上の理由など要りません。
夜が自ら抱くものがあるとしたら、それは感謝だけです。兄様を産んでくれたことに対する感謝。兄様を育ててくれたことに対する感謝。夜を引き取ってくれたことに対する感謝。
それ以外は全て、夜の五体と心は兄様の理想であればいいのです。それ以上の理由など要りません。
どうして兄様だったのか、興味はありません。
どうして夜がこのような人間なのか、興味はありません。
今、兄様と夜は共にいる。それ以上に大事なことなど、一体この世界のどこにあるというのでしょうか。
夜は感謝します。兄様と夜を、出逢わせてくれた世界の全てに。
340血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:15:33 ID:lGcbvWxO
だからこそ
兄様と離れ離れになったときは、本当に辛かった。
御爺様が夜を、道場の礎にするために引き取ったのだとしても、そんなことは心底どうでもよかったのです。なんとなれば、兄様と二人で逃げればいい。どんな生活でも、兄様のものであるなら夜は幸福なのですから。
だけど兄様は、思い煩ってしまいました。その理由もわかります。つまり兄様にとっては、家族も道場も、けして蔑ろにしてはならないものだからです。
夜と違って、兄様には大切なものが幾つもあり、それに順列をつけることはできないのです。
それを愚かと言う人も言うのでしょう。けれど夜は、兄様のその愚直さも愛しているのですから、何を言えるはずもありませんでした。そんな兄様を愛したのですから。
祖父の言葉を機に兄様と疎遠になって行ったのも、兄様が夜を避けていたからです。兄様が夜を避けるなら、夜はそうする他にありません。
だけれども、その時間は辛かった。辛かったのです。夜は兄様の愛を呼吸して生きていたのですから。
息をしないで生きることを強要されたとき、それが一体どれだけ辛いのか、夜は思い知りました。どうして世の方々は平気な顔をしてこんな苦痛に耐えていられるのでしょう。
それでも、兄様が夜を迎えにきてくれるまで、夜はそれに耐えなければいけなかったのです。
ああ、兄様、兄様、兄様。
それまで兄様と夜は、限りなく噛み合っていました。夜は兄様の理想を追い、兄様は夜を愛してくれる。その螺旋の果てにあるのは無上の幸福だと、夜は信じて疑っていませんでした。
何故ならば、兄様と夜は兄妹でありながら夫婦になれるのだから。それこそが世界に祝福された証であり、螺旋の先にあるものなのだと。
けれど螺旋は壊れてしまいました。
夜はそのとき初めて、憎悪というものを抱きました。兄様と夜が添い遂げることを阻むあらゆる事象に対する憎悪です。
夜が抱いた、全てに対する感謝がそのまま憎悪になりました。御爺様が、母様が、世界が、とてつもなく憎かったのです。今、兄様と夜が一緒にいない。それ以上に憎むべきことが、一体この世のどこにあるというのでしょう。
夜はその憎悪で、四年間を生き延びました。兄様の愛の代わりに、そんなもので息を継がねばならなかったのです。
憎悪を呼吸し、夜の体は見る間に変わっていきました。心は歪み、五体は汚れ、兄様の理想とはかけ離れた姿です。いいえ、いいえ、既に夜には兄様の理想すらわからないのです。それだけの間、兄様と夜は離れ離れになっていたのです。

最早限界と悟りました。
夜は、初めて兄様に背きました。刀を携え、実家に戻ったのです。久方ぶりに会う兄様は、夜の姿にひどく驚いていました。お許しください兄様。夜は穢れてしまいました。
夜は兄様に斬って頂くつもりでした。夜がこれ以上存在していても、兄様の理想とはますますかけ離れていくだけです。それが、嫌なのです。夜は兄様以外のものになどなりたくないのです。
なれば、夜は兄様の中で永遠になるしかない。幸福の螺旋が壊れた以上、それしかない、と。
哀れな夜をお許しください。夜には忍耐が足りませんでした。兄様が迎えに来てくれる、その日をもうこれ以上待つことができなかったのです。
だけれども、そんな夜に、その日は、訪れました。

「夜よ――――愛している。必ず幸せにするから、俺の妻になってくれ」

……ああ。
ああ、ああ、ああ、ああ、ああ。
とおるにいさま。
その瞬間に、世界は再び裏返りました。溢れていた憎悪は全て感謝に反転し。そして何より、兄様の愛が再びこの体に満ちたのです。
ああ、ああ、兄様。こんな夜でいいのですか。こんな夜の中にも、まだ兄様の理想は残っていたのですか。
わかりました兄様。夜は今度こそ、兄様の理想になります。
この五体と心と感謝の全てを以って、幸福の螺旋を上り
「夜は……兄様の妻になりますね……」
341血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:16:33 ID:lGcbvWxO

夜は兄様の妻になります。
それが兄様の理想であり、夜の理想です。夜は兄様の妻として相応しい人間にならねばなりません。
浅賀夜の人生に於ける目的はここに定まりました。夜はそのために生まれてきたのです。
けれど兄様の大切なものは夜だけではありません。
道場を継ぐ。
家族に孝行する。
剣術を磨く。
夜を妻として娶る。
兄様にとっては、それら全てが叶えるべき目標なのです。
それを悔しいとは思いません。全て揃えているからこそ兄様なのですし、そういう愚直な人を夜は愛したのですから。
夜の役目は兄様の妻として、最大限に兄様を手助けすることです。
名古屋に帰ってから一ヵ月後。夜は再び実家に戻りました。ただし今度は兄様には内緒で、御爺様と母様に会うために。
兄様の妻になることをその二人に予め伝えておけば、兄様が道場を継ぐ時に物事が上手く進むと判断したのです。
今思えば、そうしようと思ったのは天佑でした。

身なりを整え、兄様から以前頂いた着物を仕立て直し、道場に参りました。見慣れた我が家がひどく新鮮に見え、嫁入りの心地でした。
刀を持参したのは、剣術一門に嫁ぐにあたり、嫁入り道具と心得たからです。誓って他の意図はありませんでした。
夜が道場で御爺様と母様を迎えると、二人はずいぶん驚いたようで、何事かと訊かれました。
だから夜は、あの日もこうして道場の床に座して向かい合い、深々と頭を下げたのです。
「御爺様、母様。夜をここまで育てていただき、ありがとうございました」
その感謝は本物でした。
御爺様にも母様にも、夜は心底感謝しています。兄様と引き離されたことも、今ならばあれは必要なことだったと思えるのです。
「夜は、徹兄様と幸せになります」





そこまで語った後、夜は一息ついた。瞳を閉じ、ゆるゆると息を吐く。
お互いの構図は変わらない。夜は道場の床に直接正座し、俺はそんな夜に木刀を構えたまま見下ろしている。
道場には霜が降りたような静けさが戻った。ここにも、母屋にも、他に人はいない。浅賀家に残されたのは俺たち二人だけだ。
それを為したのは俺の妹だ。祖父と母を斬ったのは、夜なのだ。
それを、何故、と問うて
彼女の語ったことに、ここまでは問題はなかった。
俺への愛、別離の絶望、想いが通じた日の歓喜。程度の差はあれど、それは俺も味わったものだ。あの時、未来が一気に開けたと思えたのは錯覚ではあるまい。
それを夜が、真っ先に祖父と母に伝えたいと思っても、おかしな話ではない。既に実の親子に等しい間柄なのだ。
それがどうして、二人を斬ることになるのか。話はここからが本題と言えた。
そんな俺の意図を読み取ったのか、夜は一息ついて
「兄様。一つ伺いたいことがあります」
「……なんだ」
「兄様が知りたいのは、夜が二人を斬った理由ですか? それとも、御爺様を斬った術理ですか?」
「――――っ!」
342血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:17:08 ID:lGcbvWxO
瞬時、言葉に詰まった。
それが一面では図星だったからだ。
俺は果たして、家族としてその死の理由を知りたいのか、剣士として祖父を破った術理を知りたいのか。
祖父と夜の間には明白な技量差があった。剣術の勝敗など不確かなものだが、それでも100度打ち合ったならに99度は祖父が勝つだろう。
ならば夜は如何なる術理によって、その一度を手繰り寄せたのか。
先ほど仕合をしてみても、俺は問題なく勝ちを取ることができた。妹の技量が急激に増したわけではない。得意手が下段ということも変わっていない。
ならば、それは一体どのような剣だったのか。
興味がないといえば嘘になる。いや、もしかしたら俺は家族の死よりも、そのことを気にしているのかもしれなかった。
だが……それは、不孝だ。祖父と母を、斬った人間を匿っていることも、合わせて。とてつもない不孝ではないか……!
「ぐっ……」
「ああ、兄様。申し訳ありません、少し意地悪してしまいました。兄様にとっては、家族も剣も、同じように大事なものなのですよね」
歯を食いしばり表情を歪めた俺を見て、夜が少しだけ頭を下げて謝った。からかう様な調子ではなく、何もかもわかっているという風だった。
座しているのは妹で、構えているのは俺だというのに、互いの立場はまるで逆のようだった。いや、この立ち位置の差があるからこそ、何とか対等でいられるのか。
思えば、夜と俺のどちらが優位にいるのかなど、考えたこともなかった。夜は時々不可解なこともあったが、いつも俺の言うことに従っていたし、それでお互いが満足ならば、それがあるべき形なのだと。
妹が顔を上げ、じっと俺の目を見つめる。艶やかな髪、切れ長の瞳、女性としては長身、整った顔立ち、ぴんと伸びた背筋、しなやかな体躯。
俺にとって最愛の存在。
「お話します、兄様。そして」

「それでも徹兄様は、夜を愛してくださると、信じています」

343血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:17:36 ID:lGcbvWxO




浅賀行正という男は根っからの武辺者であった。
若い頃に学んだ剣術を手に東京府に出向いたのも、ただ単にその剣を振るいたかったからである。
結局彼は十年その街で暮らしたが、そこで結婚した妻の要望で故郷に戻ることになる。世辞にも東京は暮らしやすい街ではない。
故郷に戻った行正は実戦で培った工夫と勇名でもって一流を起こし、それなりの盛況を得た。一介の剣士としては理想的な道程とも言える。
とはいえ彼の心はいつでも東京にあった。
十年間、東京で用心棒のようなことをして生きていた行正だが、生き延びたのは単に幸運が味方しただけだと心得ている。彼は熟達の剣士ではあったが、同格以上に何時会っても不思議ではなかった。
あの都市は蠱毒のような場所であり、悪態を付いたことは数知れないが、離れてみれば奇妙に懐かしさを呼び起こすところがあった。
とはいえ、家族を持ち、道場を手にした身である。そうそう無茶は出来ない。精々、道場破りや故意の正当防衛で剣を振るう程度である。
浅賀行正の行動原理はシンプルである。強い方が勝つという、それだけだ。その理屈は自らが強いから恃むのではなく、元から彼がそういう生き物だったから強さを求めたのだろう。
概ね、好き勝手に生きてきた行正であったが、幾つかは心残りもあった。その一つが鉄火場への郷愁であり、一つが娘のことだった。
妻が早世したこともあり、行正は一人娘の春江をよく可愛がった。武辺者であったから蝶よ花よとは言わないが、稽古事に行かせることは惜しまず、叱ることもほとんどなかった。
結果、浅賀春江は少々我の強い乙女として育つことになる。父親を反面教師としたせいか、幼少期を東京で過ごしたせいか、暴力の類を極端に嫌うのは剣術道場の娘としては困り者であったが。
それでも充分、彼女は美しい華であった。そのうち門下生の中から、腕が立ち歳の合う男を選んで道場を継がせるか、とそれでも行正は気楽に考えていた、が。
彼女はどこからか馬の骨を連れてきて、婿にするときっぱりと言ったのだ。
これが腕の立つ剣士であれば問題もなかったのだが、娘の趣味らしくなよなよとした青年であった。名を陽一という。最初行正は怒鳴りつけたが春江は頑として聞かなかった。
他にも幾つか問題はあったのだが、結局春江の我儘と行正の娘に対する甘さによって、その男は浅賀家の婿となった。
行正にとって陽一は、全く気に入らない男だった。まず娘がベタ惚れなのが気に食わないし、剣術を学ぼうとしないのも気に食わない。更に気に食わない点は、陽一が人柄はともかく夫としては褒められたことではなかった点だ。
婿が事故で死んだとき、流石に快哉は上げなかったが、心のどこかでホッとしていたことは否めない。もっとも、そんなものは娘の落ち込みようですぐに吹き飛んでしまったが。
返す返すも、あの時娘には自分が選んだ相手を宛がうべきだったと行正は思っていた。それが彼が心残りとする一つである。
とはいえ、二人の間にできた孫である浅賀徹は、かなり見所のある男児だと言えた。行正は娘の失敗を踏まえて厳しく当たったが、剣術にも強い興味を示す孫には内心大いに期待していた。
なんとなれば、彼は道場の経営が面倒で仕方なかったのである。食う手段として選んだ道ではあるが、元より彼の本質は一介の武辺者であり、教師ではない。
適当な身内の弟子に継がせたなら、自分は隠居して再び東京に出向こうと、性懲りもなくそんなことを考えていたのである。最早六十を越える行正だが、畳の上で死ぬなど真っ平御免であった。
幸い、ここ数年で孫が驚異的な伸びを見せている。行正に匹敵する腕前となるのも遠くはあるまい。そろそろ道場を譲るかと、そう思い始めた頃だった。
もう一人の孫娘に、娘共々道場へ呼び出されたのは。


「御爺様、母様。夜をここまで育てていただき、ありがとうございました」

「夜は、徹兄様と幸せになります」
344血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:18:43 ID:lGcbvWxO
全く、人生とは中々上手くいかぬものだと浅賀行正は嘆息する。二十年も前の心残りが、今更になって芽を出すとは。
正面に座し、床に両手をついて深々と頭を下げるのは、桜小紋に身を包んだ浅賀夜。
余所から引き取ったとはいえ、行正は孫娘にも徹と区別することなく目を掛けていた。娘とは違って剣術にも親しみ、我もそれほど強くないことだし(別に娘をどうこう言うつもりはないが)。
反省も踏まえて、その内弟子から腕が立つのを見繕ってやろうかと考えたこともあったが、道場の存続に関わらないならそこまで神経質になることもない。
徹が頭角を現し始めた時点で、嫁ぎ先は自由に決めさせてやるかと思い直していた。それがまさかこのようなことになるとは。
隣で春江が血相を変えて「いけません!」と叫んだ。意外な展開に、夜が顔を上げて目を丸くする。両者の反応は当然と言えた。
「何故ですか、母様。夜と兄様は、お互いに想い合っているのです」
「だって貴女達は…………兄妹じゃない!」
「血は繋がっておりません!」
「夜」
言い争いを、手を上げて遮る。自分で出した声が思ったよりずっと老け込んでいたことに行正は驚いた。
なるほど、言われてみれば確かに二人は少々、仲の良すぎる兄妹だったかもしれない。
だが、それが男女の域にまで達しているなど、行正には想像もつかなかった。元来そういう方面に興味はないし、決定的な先入観があったからであろう。
これから、そのことを伝えて孫娘を納得させねばならない。考えるだに気が重かった。老いが出ようものだ。
全て斬り合いで決着がつくのなら楽だろうに、気付けば不得手なことばかり強いられている気がする。ああ、東京に行きたい。

「聞け、夜。お前達はな、血が繋がっておる」
「――――え」
「……」
浅賀夜の表情が凍り、浅賀春江が苦虫を噛み潰したような表情になった。
「お前と徹は、父親が同じなのだ。腹違いの兄妹なのだよ」
345血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:19:17 ID:lGcbvWxO
……元凶は浅賀春江である。
彼女は元々情の深い人間だった。それこそ、思い込んだら命がけであり、加えて我も強かった。つまりどういうことかというと――――略奪愛だった。
春江が陽一を見初めた当時、既に彼には恋人がいたのだ。しかし春江は一切ひるまず、あらゆる手管を駆使して二人を別れさせ、彼を手に入れた。
具体的に何をしたのかなど行正は知りたくもない。とにかくそのことに関すると、春江の態度は常軌を逸した。見て見ぬ振りをしたいのが人情である。
そこまでなら行正もどうこうは言わなかった。所詮強いほうが勝つだけの話である。
気に入らないのは、春江のほうがベタ惚れだというのに、婿のほうはそれに応えている様子があまりなかった点である。彼は良い父親ではあったが、良い夫とは言えなかった。結婚して何年経過してでも、である。
確かに経緯には男として同情しないでもないが、春江も充分以上器量良しなのだから、潔く腹を決めたらどうか、と行正は憤った。結局彼は親バカである。
それがどういうことなのか、判明したのは陽一が事故死してからだった。
「あの男は昔の女と切れていなかったのだ。生活費を送り、あまつさえ子供さえ儲けていた。それが……お前だ、夜」
「…………」
「不倫というよりは内縁の妻のようなものだったらしいな。事故に遭った日も、逢瀬を重ねていたようだ」
その事実を知ってから、夫を喪ったことも相まって、春江は抜け殻のようになってしまった。かつての我の強さなど見る影もない。
結局、彼女は夫のことを心底愛していたのだ。それだけは間違いがない。
夜を引き取ったのは、そんな彼女のたっての希望だからだった。行正としても、身寄りを失った幼子に一抹の責任を感じたこともある。
春江が膝立ちとなって数歩前に進み、目を見開いたままの義娘の頬を両手で包み込んだ。涙ぐんでいる。
「ああ、夜、今まで黙っていてごめんなさい。私が弱いせいで、どうしても言い出せなかったの。お母さんを許して」
「……」
「でもね、夜。貴女は確かに陽一さんの娘なの。本当にそっくりなのよ。だから私はどうしても、貴女を憎めなかったの。今はもう……実の娘だと思っているわ」
そう、確かに、見目の麗しい青年だった。特に、夜の艶やかな黒髪はまさしく彼から継いだものである。徹がすぐに打ち解けたのも、その相似があったからかもしれない。
娘に接する春江の心境は複雑だったろうが、それでもその存在は心労を和らげる一因となったことは違いない。行正にしても、婿に対する心象と孫娘への態度は既に切り離してある。
なにより浅賀夜は良い娘だった。母を慕い、祖父を敬った。親の因果を帳消しにするには充分だ。
とはいえ今更血縁を明かすこともあるまい、と行正は考えていた。そんなことを明かさずとも立派に家族としてやっていけると。
だが、それがこんな事態を引き起こすとは。重々しく、いたわるように、孫娘に声をかける。
「お前達には悪いことをしたな。もっと早くに明かしておくべきだった」
想い合っている、と夜は言った。つまり徹のほうも同様なのだろう。実の兄妹だということを知らずに愛し合っているということになる。
孫が猛烈に剣術に励みだした理由が、まさにこれなのだと行正は思い当たった。やれやれ、と頭を叩きたい気分だった。
どちらにしろ、出稽古に出ている徹も交えて話し合わなければならないだろう。孫の愕然とした表情を思い浮かべると心が痛む。
もちろん行正には、二人の交際など認めるつもりはなかった。戸籍上は問題がなくとも、二人が実の兄妹である事実は変わらない。根本的な倫理観が許さないし、血の問題もある。
しばらくはお互いに辛いだろうが、我慢してもらうほかにない。
それにしても色恋というのは本当に鬼門だと行正はため息をついた。ああ、東京に行きたい。
ふと、夜が俯いた。表情が髪に隠れる。

「ああ……哀れな徹兄様」
「ごめんなさい、気持ちはわかるけど……けど、どうしようもないの。ごめんなさい」
「いいえ、いいえ。母様。謝る必要はありません。夜は本当に、御二人には感謝しています」
言って、浅賀夜は義母を斬り捨てた。
346血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:21:35 ID:lGcbvWxO

さしもの行正とて反応が遅れた。
浅賀夜が脇の太刀を左手で掴み、膝を立て、鯉口を切り、右手で柄元を握り、抜刀するまで、行正にできたのは膝を立てて口を半開きにするまで。一秒あったかどうか。見事な居合だった。
刃を押し付けるようにして、春江が腹を斬られ、ぐるりと回って横倒しになる。悲鳴はなかった。何が起こったのか理解していない表情だった。
遅れて、行正の怒号が響く。
「よ、夜っ!? 貴様っ!」
「感謝します。このことを真っ先に夜に話してくれて。御蔭様で、兄様を余分に思い煩わせずに済みそうです」
孫娘の突然の凶行と愛娘が斬られたという事実に混乱しながら、とっさに行正は後ろに下がり、神棚の奉納刀を手に取った。
立ち上がった浅賀夜が、無造作に下げる刀にこびりついた血潮が、そうさせた。ぽたりと、剣先から血雫が垂れる。
浅賀行正は刀を抜き、鞘を投げ捨てながら、驚愕覚めやらぬままに剣士として状況を分析した。
孫娘が抜き身の刀を右手でだらりと下げて、道場の中心近くに立っている。左手には鞘。着物の裾は大胆に割られ、白い足が露出している。動きに支障はなさそうだ。
彼我の距離は7m。一足一刀の間合いには十歩ほど踏み込まねばならない。間合自体はこちらのほうが二回りは上だろう。
その足元には、仰向けに倒れ伏した娘。腹を帯ごと、ほぼ真一文字に斬られている。息は――ある。
腹部に巻いた帯が見る間に血に染まっていく。傷は思ったよりは浅いようだが、早急に手当てが必要だ。
だが、それには邪魔者がいる。
「夜! 貴様、気でも違ったか!」
「御爺様、母様。夜は兄様の妻になります」
そうして彼女は鞘を捨て
両手で握った刀を、ずぶりと義母の腹に突き刺した。
「――あっ、ぎっ!?」
ずぶり、ぐるり、と刃先が傷口から入り込み、腸をかき混ぜる。
春江の体が魚のように跳ねたが、突き刺さった刀が姿勢を変えることを許さない。
あまりの苦痛に、悲鳴すらも、押し殺される。浅賀春江の表情は人のものとは思えない程に歪み、口の端に泡が沸いた。
一方で、浅賀夜は、義母の腸をかき混ぜながらも、全く平静な顔をしていた。俎板の魚を捌くときと、全く変わらぬ手つきだった。
「夜は御二人には本当に感謝しています。夜を憎悪に落とせるのは、兄様以外におりません。ですが夫の懊悩を除くのは、妻の勤めと心得ておりますから」
「きいいさああまああああ!!」


何十年かぶりに、あらゆる思考が怒りに塗り潰される。
浅賀行正は最早意味の通じぬ問答をしなかった。あれは敵手である。であれば、速やかに斬るべし。
上段、肩に構えて浅賀夜に突進する。その気迫は正に鬼神。気の弱いものならばそれだけで腰を抜かしただろう。
対して浅賀夜は微動だにしない。義母の体に剣先を刺したまま、静かな表情で怒涛を待っている。
必然、両者の距離は瞬く間に縮まっていく。一足一刀の間合いまで四、三、二――――
あと数歩、という距離で行正は一気に跳躍した。直進するよりも数瞬早く、敵手を間合いに捉える。
「墳ッ!」
着地と同時、右足から腰にかけての捻りに載せて、孫娘の首筋目掛けて横薙ぎに斬りつけた。
――――浅賀流、飛猿(ヒエン)
突進の最後の数歩を跳躍して先の先をとる、間合い外しの術理である。刺突に対しては相討ちとなり易い欠点があるが、この期に及んでそれを恐れる行正ではない。
並の使い手ならば意表をつかれて為す術もなく首を刎ねられただろう――が。
「――――」
一刀が断ち斬ったのは艶やかな黒髪のみだった。
浅賀夜はその場でお辞儀をするように上体を倒して、その一撃をかわしたのだ。体捌きに遅れた後ろ髪だけが、首のあった場所でまとめて両断された。
曲がりなりにも、浅賀行正の放つ先の先である。そう容易くかわせるはずもなく、その太刀筋を予期していたとしか思えない――――否、予期していたのだ。
刃を抱えるような姿勢となった夜の背中が、一歩踏み込むと同時に急激に跳ね上がった!
だが
(――――だろうな!)
そうなることを行正は既に予想している。
何故ならば、仰向けに倒れる自分の娘に、両手で剣先を突き刺したあの姿は、構えだったからだ。
浅賀夜の最も得意とする術理――――地摺青眼の!
347血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:22:50 ID:lGcbvWxO
あの術理の肝要は二つ。
一つ、心理的に敵手より優位に立っていること。
二つ、術理の詳しい内容を敵手が知らぬこと。
一つ目は――――認めよう。溺愛している実の娘を斬られ嬲られ、平静でいられるわけがない。
だが、二つ目は該当しない。浅賀行正はこの技のことをよく知っている。誰あろう、これを孫娘に教えた本人なのだから。
敵手から繰り出されるは刺突。狙いは鳩尾か喉!
激昂に駆られながらも、浅賀行正はひとかどの剣士である。最低限の術理を忘れてはいない。むしろそれは体に染みついたものなのだ。
横薙ぎを放った勢いのまま、右足を中心に身体を反時計回りに半回転させる。刺突の狙いはいずれも正中線。それをずらせば刃は空を斬る。
(突きは捨身技。かわしたのなら、敵手の横に抜けつつ返す刀で胴を斬る!)
全ては一瞬である。夜の体が刺突と共に跳ね上がるまで半秒もない。行正の脳裏に走ったのも、思考というよりも電流に近い。既に動きは決定されている。
だから、彼が顔面にちりちりとしたものを感じても、首を僅かにすくめる程度しかできなかった。
(――――顔?)
それは浅賀行正が幾度となく実戦経験を重ねる中で身についた感覚だった。言うなれば、殺気の向きを感じると言うべきか。
敵手の狙う急所の位置が、ちりちりとした痒みのようなもので感じられるのだ。騙し合いを旨とする剣術にあっては至極便利なもので、行正自身この感覚に救われたことは何度かある。
とはいえそれは東京で斬り合いを日常としていた頃の話だ。この数十年、命のやり取りから遠ざかってからはめっきり鈍った感覚だった。
それが今、目覚めたのは――――命を賭した斬り合いの中にいるからであろう。だが、敵手の狙いがなぜ喉ではなく顔なのか。
全ては一瞬である。首を僅かにすくめる程度しかできず
彼が、目の前を通り過ぎる白刃を幻視した直後

「――い、ぎいいいいぐるぎががががががああああああっ――――!」

この世のものとは思えない、愛娘の断末魔。
ブチブチと何かが千切れる音。
そして、身を捻り刺突をかわした行正の顔面に、雑巾のようなものが叩きつけられ彼の視力を奪い取った。

「っ!!!?」

――――この時
彼の失策を上げるのなら、予定を中断することなく抜き胴にて孫娘を斬るべきだった。さすれば、刺突直後の浅賀夜は為す術なく斬られていただろう。
だが
愛する人間の悲鳴と、視界を突然に奪われたこと、そして背筋を貫く悪寒が。咄嗟、顔に叩きつけられたものを左手でまさぐるという行動を取らせた。
しかし、無理もない。浅賀行正は彼女の使った術理を知らなかったのだから。そんな行動を取ったとしても責められはしない。
そして、行正が手で感じたのは、ぶよぶよとした気色悪い感触。かつて幾度も嗅いだ、腐敗臭にも似た生臭さ。
人の、腸(はらわた)
そんなものが何処から――――いや、決まっている、『出処』は一つしかない!
だが、一体誰が予想しようか。
『顔面を狙った刺突に、人間の内臓を引っ掛けて目潰しに使用する』などと!
春江が上げたこの世のものとは思えない絶叫は、生きながらにして腸を抜かれた痛苦である。ぶちぶちという布の千切れるような音は、限界まで引き延ばされた小腸が途中で千切れる音だ。
失血よりも早く、衝撃で彼女は絶命していた。愛した男に袖にされ、半生を抜け殻として生きた彼女の末路はひどく惨(むご)いものだった。
「よおおおおるうううう! きさまあああああ!」
一瞬遅れて事態を理解した行正が、怒号と共に右手一本で孫娘のいた場所に刀を振るう。だが刃は空を斬るのみ。
視覚を奪われ動揺した彼には知る由もないが、彼女は刺突の直後、既に義母の骸を避けて後退し間合いから逃れている。
老人は同時に左手で顔に張り付いている内蔵の欠片を払いのけ、眼を擦って視覚を取り戻そうとする。だが無駄。腸液と血液の入り混じった混合液は、入念な洗浄をしなければ眼球からは除けない。
その時浅賀夜は後退しざま、太刀を大上段に振り上げていた。剣先に引っかけていた千切れた腸が、惰性で中空に放り出される。付着していた血液が撒き散らされ――――血の雨が降った。
地獄の光景である。
そして、この地獄を現出した術理の名は

「浅賀流剣術崩し――――血啜青眼」

それだけを餞別に呉れ
浅賀夜は大きく踏み込み、大上段から唐竹割に渾身の一撃を放つ。まず、見事な一撃。
刀を振り切り、視界を奪われ、平静を失った浅賀行正に、これを防ぐ術はなかった。
血飛沫。
348血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:23:26 ID:lGcbvWxO
最後の瞬間、浅賀行正の胸中を占めたのは、娘を殺された怒りでも、孫娘に殺される無念でもなく、剣士としての感嘆であった。
浅賀夜が為したのは、まさに悪鬼外道の技である。
だがそれは、その残虐さとは裏腹に、れっきとした術理だ。人質を取ることをシステムに組み込んだ、合理的な術理なのだ!
元となったのは浅賀流、地滑である。
この技には、自分が前進する関係で後の先が取りにくい、という問題がある。それを発想の転換で克服している。即ち、自分が動くのではなく相手を動かせばよい、と。
そのための方法として用意されたのが人質である。これに死なない程度に剣先を刺すことで、相手の動揺を誘うと同時に行動を限定する。
更に、足元に存在する人質のせいで、相手の太刀筋は極めて限定される。上段からの斬りおろしや下段からの斬り上げは人質諸共斬りかねない。必然、敵手が選ぶのは薙払か刺突となる。
動揺した相手の放つ、太刀筋の限定された攻撃……これ程、機を取りやすい環境はないだろう。
それでも尚、相手が冷静を保っていたのならばどうするか。相手の平静を突き崩すにはどうするか。
答えは単純である。人質を殺すことだ。
それが大切な存在であればある程、敵手は平静を失うであろう。隙が生ずるであろう。極限まで常態を崩してしまえば、最期の最後。人質の臓器を使用しての眼潰しは最早防げず、まともな対応もできない。
怒り狂って攻撃してこようが、そんなものは理合いの外だ。その上で、こちらの理合いは生かす。その環境を作り出すのが術理の意義である。
この術理の最大の特徴は、同様の術理をもつ流派がまず存在しない点にある。
当然である。これは外道の所業であり、武道というものの精神性に明確に相反する。有ったとしても、まずまともな存続は出来まい。
人質を取るだけなら誰でもできようが、それは初めて経験する素人の動きにならざるを得ない。人質を効率的に使用する流派などあるとは思わない――――だからこそ有効なのだ。
術理の詳しい内容を敵手が知らぬことは、相手の動揺を助長し、必殺性を高める。
一つ、心理的に敵手より優位に立っていること。
二つ、術理の詳しい内容を敵手が知らぬこと。
この術理は、元となった技が成立するための条件を、満たすことだけをただひたすらに追及しただけの結果なのだ!
なんという。
浅賀夜という人間が、どうしてこのような剣を持っているのか。
そんなことは決まっている。道場から離れていた、あの四年間の間に築き上げたのだ。
なんのために?
それも決まっている。この、浅賀行正を斬るためである。
剣術の技とは状況を想定して使用するもの。そしてこれは――――正にこの状況を想定して、その上で打ち勝つために
祖父を殺すためだけに、浅賀夜は外道の工夫に手をつけたのだ。
更に言うならば、その工夫を画餅ではなく実用化するために、一体何人を犠牲にしたのか。
動けない程度に腹を斬る、死なない程度に腸を撹拌する、剣先を腸に引っ掛けて引きずり出す……これらの加減は、実地でなければ絶対に身に着かない。全く新しい工夫ならば、尚更。
浅賀夜は下宿先にも愛刀を持ちこんでいる。で、あるなら。大都市名古屋のいずこかで、腸を撒き散らされた死体が、いくつか発生したはずなのだ!
憎悪で磨いた外道の剣――――血啜青眼。
一体何が、浅賀夜と言う人間をそこまでさせたのか。
結局、それは行正には未来永劫わからないことであった。一介の武辺者でしかない彼には想像もつかないであろう。
浅賀夜の、兄に対する自己を捨てた愛情など。兄との関係に関連付けることでしか価値を見出さない、感謝と憎悪の世界など。
だが、外道の術理を修めた、孫娘に対する剣士としての感嘆だけは本物だった。
(見事だ――――浅賀夜よ!)
最期。懐かしい、東京の臭いを嗅いだ気がした。


そうして
浅賀流剣術師範浅賀行正は、眼を拭う左手の指ごと、浅賀夜に頭を叩き斬られて散り果てた。
決着である。
349血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:24:27 ID:lGcbvWxO

夜が深まり、朝が訪れ、夜が深まり、また朝が訪れた。

休日の昼過ぎ、道場では10人強の門下生が稽古に励んでいた。裸足で床を蹴る音、打ち込みの掛け声が響いている。
道場のスペースを二つに分け、奥側では6人が型稽古を、入り口側では4人が基礎修練の素振りを行っている。
俺は茂野殿と型稽古の手本を見せていた。俺が仕太刀で茂野殿が打太刀である。
脇構えから龍尾の型をなぞっていく。相手の上段を下からの斬り上げで弾き飛ばし、返す刀で袈裟斬りに。
「先生!」
入り口の方で、基礎修練の監督をしていた門下生が俺を呼んだ。一歩後退して振り向く。来客だ。
「各自組となって今の型を十度ずつ! ……茂野殿、しばらくよろしいでしょうか」
「わかりました、先生」
その場を任せて入り口に向かう。途中、俺を呼んだ門下生に礼を言っておく。先生、と呼ばれるのはまだこそばゆかった。
入り口で、懐かしそうに道場の様子を眺めていた来客に一礼。
「お待たせしました、北沢さん」
「ああ。いや悪いね、仕事中に。ちょっと時間が取れたもんで寄らせて貰ったよ」
「いえ、大丈夫です」
北沢刑事はいつもの通りよれよれの着流しだったが、今日は真っ白な紙袋を一つ下げていた。デパートで貰うようなものだ。
母屋の居間に案内し、茶を入れてから一通りの挨拶を交わす。北沢刑事が袖をまさぐったので、どうぞ、と灰皿を置いた。悪いな、と会釈をされる。
うまそうに一服してから、彼は持参した袋を机の上に置いた。
「今度結婚するんだってな。式には出れないかもしれねえから、つまらんものだが先に貰っておいてくれや」
「これは、わざわざありがとうございます」
ありがたく受け取る。大きさと手応えからして、饅頭か何かの菓子らしい。道場の皆で分けさせてもらおう。
「それにしても、もう結婚かよ。23と21だろ? まだ少し早かねえか?」
「俺も少しは思いましたが、夜のたっての希望でして」
「おいおい、もう尻に敷かれてんじゃねえか。男だったら今の内に女遊びの一つでもしとくもんだぜ?」
「そのようなことをしたら夜が泣きます。台所の隅辺りでひっそりと」
「あー、まあそんな感じだな。けど嫉妬してもらえる内が華だぜ。ウチの女房なんかよ……」
しばらく、他愛のない話を続ける。結婚生活における秘訣やら、女房に見つからないよう飲みに行く方法など。
半年前の事件に関しては、何言か挨拶のように交わすに留まった。相変わらず進展はないらしい。
「そういや道場の方、結構流行ってるみてえじゃないか」
「休日ですから大体は来ていますね。入り口で素振りをしていた何人かは新規入門者です」
「聞いたぜ。定期的に他流試合みたいなのしてるんだって?」
「……お恥ずかしい限りです」
「いいんじゃねえか? 俺もこの道場は愛着があるからな。残ってくれて何よりだよ」
俺は出稽古先に出向いていた伝手で、他の道場で他流試合を月に一度開いていた。
祖父は流派の手の内を晒すことを嫌っていたのでそういうことはしなかったが。俺には、周囲に自分の力を認めさせ、流派を見くびらせないためにも必要なことだった。
全く、こういう売名行為ばかりしてては祖父のことを笑えない。だが、そのおかげで浅賀流が廃絶を免れたなら是非もない。
この道場に対する愛着については、俺とて北沢刑事に劣るつもりはなかった。
……ふと、会話が途切れる。
道場の方から聞こえる掛け声と床を蹴る音が遠く響く。北沢刑事が紫煙を長々と吐いて、ぽつりと呟いた。
「なあ、坊主……今、幸せか?」
「――――はい」
僅かの間を置いて、俺は頷いた。
北沢刑事が灰皿でタバコをもみ消す。そうか、と呟いた。
続けて、どっこいしょと立ち上がりながら、脇に置いた刀を取って帯に挟む。くしゃくしゃのタバコ箱とライターは瞬く間に袖の中に消えた。
「邪魔したな。嬢ちゃんが帰ってきたら、よろしく言っておいてくれ」
「はい。お体を大事にしてください、北沢さん」
そうして、北沢刑事は職務に戻っていった。その背中は、ひどくくたびれて見えた。
母屋の玄関まで客を見送った後、道場に戻ろうとして、ふと空を見上げた。
350血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:25:29 ID:lGcbvWxO
確かに俺は浅賀流剣術道場を継ぎ、師範となった。その力量も、ある程度は周囲に認めさせてもいる。
そのために多少の無茶なこともした。祖父の勇名を使って人を集めることはもうできないが、ある程度は挽回できたはずだ。
後は俺の手腕次第だろう。それは望むところとも言えた。
最盛期よりも道場の規模を大きくしたならば、祖父に勝ったということになるだろうか。
否。
違うだろう。それは経営者としての勝利ではあるかもしれないが、それだけだ。祖父の本質は剣士だった。剣で勝らねば、勝ったとは言えまい。
生前から、祖父に対してある程度の対抗意識はあった。彼は俺の師であり、挑むべき巨大な壁だった。
俺の力量を知らしめるために、いざとなれば一仕合、と思っていたのは確かだ。結局それは果たされることなく終わったが。
そのことが、今更になって思い浮かぶのは。もう祖父と決着を付ける機会が二度と無いからだろう。
俺がこの先道場主として、剣士として、どれだけ歩もうが。剣士としての祖父を追い越すことは不可能なのだ。
それは、俺の剣士としての本能なのだろう。血筋というものかもしれなかった。同じ立場に立った時、どちらが上か決着を付けずにはいられない。
間接的にでも、剣士としての祖父を越える方法があるのだとしたら、それは――――

「徹兄様」

俺を呼ぶ声がした。
現実に、引き戻される。すぐ前に、人影が立っていた。
背中まで届く黒く艶やかな髪、切れ長の瞳、すらりとした背丈、紅葉散らしの着物、紺色の帯に指した一刀。
浅賀夜。俺の最愛の女性にして、妹。
……なんだろう。彼女は、俺が考え事をしている時に近づいてくる習性でも持っているのだろうか。
そもそも、名古屋の下宿にいるはずの夜が何故ここに?
「ただ今戻りました、兄様」
「ああ。お帰り、夜。どうした、何かあったのか?」
「はい。兄様の御顔がどうしても見たくなったので」
「……それだけか?」
「充分です」
そのためだけに半日電車に揺られて日本縦断してきたというのだろうか。しかも今日は連休でもなんでもないただの土曜日だから、明日の午後には発たねばならない。
毎日電話はしているのだが、離れ離れになっていた時期を取り戻すように、夜は俺を求めていた。本当は大学中退を希望していたが、それはなんとか思い留まらせたのだ。
婚約し、式の日取りを決めることで少しはそれも収まっていたのだが。ちなみに式は冬休みを利用し、あと2カ月後に行う段取りとなっている。既に花嫁衣装の合わせも済んでいた。
とはいえ、別に結婚したからといって何が変わるわけでもない。名字はそのままだし、式が終われば大学にも通う。帰る家も変わらぬし、俺への呼び名すら兄のままであろう。
――――いや、やはり、大きな変化か。
「そういえば先程、北沢様と会いました」
「ああ、ついさっきまで母屋で話をしていてな。ちょうど入れ違いだった。お前によろしくと言っていたぞ」
「はい、伺いました。他にも幾つか」
「うん」
「北沢様は、夜を疑っておられるのでしょうか」
「――――」
「それでしたら、北沢様には確か妻子がおられたはずですから」
「夜」
「はい」

…………
かつて、俺は自分の未来が開けていると信じられた。
道場を継ぐこと。
剣術を磨くこと。
家族へ孝行すること。
愛する女性を娶ること。
それら全ては一直線に繋がっており、直向きな努力で全てを果たせられると、そう信じていた。
だが
俺は家族への孝行を、捨てた。
愛する女性が、家族を惨殺して尚、その女性が実の妹であることを知って尚、彼女を娶ろうとしている。
それでも、それでも夜を愛しているのだ。
それは、今は亡き家族への裏切りだ。孝行をすべきなら、今すぐ夜を警察に突き出し、罪を償うのを兄として待つべきなのだ。
だが、俺は夜への愛のために、家族への孝行を捨てた。捨てることができた。
それならば『他』とて
351血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:26:46 ID:lGcbvWxO

「……もしもそうなれば、どこか遠い所に行こうか」
「兄様?」
「そうだな、東京がいいだろう。あそこは脛に傷持つ人間が自然に集まるらしいからな。そんな所なら、男女二人紛れることもできよう」
「……ああ」
そっと夜が俺に歩み寄り、顔に手を添えた。ひんやりと冷たい指先が頬を撫でる。
愛しむようであり、憐れむようであり、悲しむようであり、懐かしむようであり
いずれも、狂おしいまでに
「哀れな、徹兄様。夜のような女に、魅入られたばかりに、揚々たる前途を踏み外して」
「……」
「夜が御爺様と母様を斬らねば、兄様が斬ったでしょう。兄様は、それでも夜を愛していたのですから。夜は兄様に、そんな苦難を背負わせたくはありませんでした」
「……」
「それでも兄様には、夜のために道場を捨てさせてしまうのですね。至らぬ妻をお許しください、徹兄様」
「いい、いいんだ。全て俺が決めたこと。お前の……せいなどではない」
俺もまた、そっと手を伸ばして夜の頬に触れる。人肌の温もりは、何故だか俺から温度を奪うようだった
まるで日が暮れた後の風に吹かれたように。
夜が、そっと囁いた。

「……ねえ、兄様」

「もしも兄様が、夜に飽きたのなら、どうか御捨てになってください……その時は、その時こそ」

「夜は徹兄様の、剣士としての本懐を満たしてあげられると思います」

浅賀徹に、浅賀行正を越える方法は、最早ない。死人は斬れず、斬る以外に剣士に勝る術はない。
ただ一つ例外があるとするのなら。浅賀行正を斃した術理を破った時のみ。
浅賀夜の持つ――――血啜青眼を。

「夜の全ては、最初から最後まで、徹兄様のものです。ですから、どうか兄様」

「いきましょう――――供に」



かつて未来は大きく開けていると信じていた。
けれど今、この身の行く先は……夜だけが待っている。
それでも俺は――――彼女と供に、朝の訪れを信じよう。
352血啜青眼 後篇:2009/12/07(月) 10:34:17 ID:lGcbvWxO
以上です。
サクッと終わりましたし、未来のあなたへの執筆に戻ります。

今回のネタは以前スレで出た『義理だと思ってたのが実は実妹で、両親××して兄に告白』を拾わせてもらいました。
んでもって刃鳴散らすをネタにした話を前々から書きたかったので悪魔合体。満足です。
ネタ元には感謝を。
353名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 11:19:34 ID:5+XQ8CQJ
超GJです!!!!!!!!!

面白かった。登場人物のキャラもいいし、引き込まれました。
夜の凄絶な剣術が彼女のキャラとマッチしててすごく良かった。
グロいはずなのに陰惨さよりも突き抜けた潔さのようなモノを感じます。

そして冒頭の夜のモノローグが泣けて仕方がなかった。
354名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 11:35:16 ID:eIoHe45r
未来の人だったのかw
何にせよGJ
355名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 11:38:39 ID:SZimJCAp
恐怖の必殺技に戦慄いたしました。
356名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 12:27:58 ID:R1Iit/43
キャラクターのネーミングセンスがそれっぽいなー、と思ったが本当に『未来のあなたへ』の人だったか!

楽しく読ませていただきました。偉大なる職人様と、元ネタ様に心よりのGJを。
357名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 12:50:54 ID:4OTMf+gB
スゲーかっこいい…
キモウトスレなのにここまで緻密に
戦闘シーン描写してるの見たことねーよ
刃鳴散らすってのが元ネタなの?
ちょっくらググってくる

>>352激しく乙です!
358名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 14:36:43 ID:7VSLJ/Tr
GJ!!
すごい完成度…
最後の夜が悪女ぶるところがかなり萌えましたw
ギャグも面白いんですけど、やっぱり未来の人はシリアス展開が最高です。
未来のあなたに楽しみにしてます!
359名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 15:26:04 ID:JAta5JdV
GJ!

とりあえず作者さんはニトロファンで、村正もプレイしたことはわかった。
360名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 15:54:32 ID:TJHAICPq
>>352
お疲れ様
剣術物として読んだのは小説宮本武蔵やバカボンドくらいだけど、あれに似た緊迫したシーンが目に浮かんだよ
未来のほうも楽しみに待ってます
361名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 17:55:12 ID:olx8FBrd
キモウト云々以前に小説そのものとして楽しめた
362名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 18:32:13 ID:yeCuRAip
>>352
超GJ&乙!


ところでエロパロ板だけじゃなくて個人サイトの作品でもいいから、こういう剣術物の小説ないかな?
スレ違いっぽくて悪いんだが、未来のあなたへの人の小説見てスゲー興味が湧いて来た。
363名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 18:37:03 ID:8D4iM9Ll
>>352
面白かった!GJ!
新人でよくここまで書けるなーと思ってた。
まさか未来のあなたへの人だったとは。
未来の続き待ってるよー
364名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 18:57:26 ID:LE+IYSug
未来人がいるときいてきました
365転生恋生 ◆.mKflUwGZk :2009/12/07(月) 22:42:30 ID:lWiw80ed
投下します。4レス消費予定。
366転生恋生 第十七幕(1/4) ◆.mKflUwGZk :2009/12/07(月) 22:43:25 ID:lWiw80ed
 目が覚めた。朝だ。
 ひょっとして姉貴がまた俺のベッドに潜りこんでいやしないかと跳ね起きたが、姉貴はいなかった。
 ほっとしたが、一気に目が覚めてしまったので、手早く着替えて部屋を出る。……いや、出ようとしたのだがドアが開かない。
 何か重石でもあるみたいだ。力を入れて一気に外へ向けてドアを押し開けた。何かが転がる音がした。何だ?
 おっかなびっくり廊下へ顔を出してみると、ドアの手前に全裸の姉貴が転がっている。
 ……どうやら、俺の部屋に来ようと這いずり出てきて、ドアの前で力尽きたということらしい。
 ということは、何時頃からかは知らないが、全裸で廊下に転がっていたということになる。額に手を当ててみると、案の定熱が上がっている。体が冷えたのだからあたりまえだ。
「こんなしょうもないことでぶり返してるんじゃねぇよ」
 もう、呆れるしかない。そうはいっても放置するわけにもいかないので、姉貴を抱えて姉貴のベッドに戻してやった。布団を多めにかけて、氷枕を当ててやる。
 親父とふたりでトーストの朝食を済ませると、親父はお袋を迎えに病院へ向かった。今日はお袋の退院する日だ。俺は残って姉貴の看病をすることになった。
 姉貴はぶり返したせいで相当具合が悪いらしく、息苦しそうに唸っている。眠っているが、これでこじらせて肺炎にでもなったら、マジに入院だな。
 熱が高いせいで氷枕はすぐにぬるくなってしまう。午前中だけで3回も取り替えなければならなかったが、姉貴が目を覚ます気配はない。
 そうこうするうちに両親が揃って帰ってきた。お袋はすっかり元気になっていたが、不意に俺は今日が司の出場する競技会の日だったことを思い出した。
 ……お袋も戻ってきたことだし、ちょっと応援しに行くか。せっかくのGWが病気尽くしじゃもったいないしな。
 俺は両親に事情を説明して、電車で駅3つ離れた市営競技場へ出発した。

 市営競技場へ来る機会はほとんどないが、地元では有名な施設なので特に迷うことはなかった。
 受付でチケットを買うと、案内に従ってスタンドへ出た。観客はまばらだが、やはり高校生の競技会となるとこんなものだろう。国体なら話は違うだろうが。
 トラックに近いところには幟を持った制服姿の集団がある程度固まって声援を送っている。同級生の応援だろうが、うちの学校の制服は見えない。
 参加校数も少なそうだ。市内レベルの競技会かな。
 さて、どのあたりで観戦しようか。そう考えながらうろうろしていると、俺の名を呼ぶ声がした。
「たろくん! こっちや!」
 声の方を見ると、雉野先輩がいた。やたらフリルのついたお嬢様っぽいワンピースに身を包み、トートバッグとランチボックスを脇の座席に置いている。
「雉野先輩も来てたんですか」
 俺が近づいていくと、先輩は俺を手招きして右隣に座るよう促した。座ってみると、フィールド全体が見渡せる位置だ。近くに他の観客はいない。
「ワンちゃん……やのうて、司ちゃんに誘われたんや」
「はぁ……」
 そういや、このふたりは知り合いだったっけ。あだなで呼ぶなんて、かなり親しいんだな。
 それにしてもワンちゃんとは言いえて妙だ。あいつはワンコそのものだからなぁ。
「たろくん、お昼ご飯は済んだん?」
 言われて初めて、まだ昼食を摂っていないことに気づいた。みるみるうちに空腹感が襲ってくる。
「よかったら、これでもつまんでぇな」
 先輩がランチボックスを開けた。中には色とりどりのサンドイッチが並んでいる。こいつはうまそうだ。
「いただきます」
 まさか先輩の手料理が食べられるなんて、ついているな。
「うちのメイドが作ったんやけどね」
 そうですか。セレブですね。
 まあ、専門職が作っただけあって、確かにうまかった。スモークチキンのサンドイッチなんて、めったに食えないだろう。
367転生恋生 第十七幕(2/4) ◆.mKflUwGZk :2009/12/07(月) 22:44:15 ID:lWiw80ed
 腹ごなしが済んだところで、フィールドがざわつき始めた。午後の部の競技が始まるようで、選手たちが集まっている。
「司ちゃんが出るで」
 プログラムを確認すると、女子200メートル走だ。先輩がオペラグラスを貸してくれたので、それで司を確認することができた。
「ちょっと足元が冷えるさかい、膝掛けかけような」
 先輩が大きめの膝掛けを自分と俺の膝の上にかけた。俺としてはべつに必要なかったが、せっかくのご厚意なので断らなかった。
 この機会に、気になっていたことを訊いてみる。
「先輩は司とは昔馴染みなんですか?」
「司ちゃんからは聞いてないん?」
 ちょっとカマをかけてみよう。
「なんでも千年前からの知り合いだとか」
「そんな突拍子もない話を信じるん?」
 引っかからないな。しかたなく、俺は「あいつちょっとおかしいんで」とごまかした。
「でもかわいいやろ?」
「……ええ、まあ」
 あの人懐っこさは憎めない。最初はわけもわからずつきまとわれてうっとうしくも思ったが、一緒に弁当を食う習慣にすっかりなじんでしまった。
「悪い子やないさかい、邪険にせんといてや」
 先輩は俺と司をくっつける気なのか? 俺にちょっかい出していたのは、やっぱりからかっていただけか?
「で、司とは付き合い長いんですか?」
「気になる?」
「なんか妙な組み合わせなような気がして」
「対照的な組み合わせの方がうまくいくんやで」
 そういうもんですか。
 うまく追及できそうにないので、競技の方を見ることにした。砂場では走り幅跳び、フィールドでは砲丸投げや走り高跳びをやっている。
 トラックは女子200メートル走が始まった。司の出る組はもう少し後だ。
 ……股間にぞくりとする感覚が走った。ズボンの上から撫で回されていることに気づく。痴漢? いや痴女か?
 って、こんなことするのは現時点でひとりしかいない。
「先輩! 何するんですか!」
 雉野先輩が膝掛けの下で俺の股間に手を伸ばしている。今まで、自分の胸に無理矢理触らせることはあっても、俺の体に直接猥褻行為をしてきたことはなかった。
 姉貴じゃあるまいし、先輩がこんなことをするなんて思わなかったから、俺はどうしていいかわからずに固まってしまった。
「声を立てると、注目されるで」
 先輩はトラックの方に顔を向けたまま、手だけは動かし続ける。
「やめてくださいよ」
 俺は辺りを気にしつつ、小声で懇願した。が、先輩の手は止まらない。下から上へと撫でさすり続ける。
「気持ちええやろ?」
 ……気持ちいい。姉貴にやられても何とも思わないが、先輩の手だというだけで気持ちいい。
 でもまずい。体は子供じゃないんだから、こんなことを続けているとやばいことになる。しかもここは公衆が集まっている場所だ。
「嫌なら、払いのければええんや」
 そう言って、先輩が俺のサオをぎゅっと握り締めた。
「……っ!」
368転生恋生 第十七幕(3/4) ◆.mKflUwGZk :2009/12/07(月) 22:45:49 ID:lWiw80ed
 握られて、いつの間にか硬くなっていたことに気づく。先輩は手の動きを変え、撫でるのではなくズボンの上から握って、揉み始めた。
「やばいですから……」
 小声とはいえ、声が上ずってしまう。
「何がやばいん?」
 先輩は相変わらず俺のほうに顔を向けない。
「出ちゃいます……っ!」
「何が?」
 知ってるくせに! 言わせる気かよっ!
「あ! 司ちゃんの走る番や」
 つられてトラックの方へ目をやると、司が8人中一番外側のコースでクラウチングスタートの用意をしているのが見えた。肉眼だと顔はわからないが、体格でわかる。
 先日見せてもらった司のユニフォーム姿がフラッシュバックした。幼児体型のくせして、尻から太腿にかけて肉付きがよかった。
 ……まずい。想像してしまったせいで、ますます股間に血液が集中していく。見てはいないが、血管が浮き上がっているのがわかった。
 トラックでピストルが鳴り、選手が一斉に走り出した。それと同時に、俺のペニスがひんやりした柔らかい感触に包まれた。
 いつの間にか、雉野先輩がファスナーを下ろして俺のペニスを外へ取り出して、直接握ったんだ。
 いや、握るというより、しごいている。膝掛けの上からでも、勃起しているのがはっきりとわかる。俺は自然と前屈みになった。これは本当にやばい。しゃれにならない。
「やめてください……っ! 本当に……出るっ!」
 下腹に力を入れて懸命にこらえるが、先輩の手が動くのが早すぎる。どんどん先端が熱くなって、何かがせり上がってくる。
「司ちゃん、速いなぁ」
 トラックで司がぐんぐんスピードをあげて先頭に出て行くのが見える。だが、それどころじゃない。
「声を出すと周りに気づかれるで」
 思わず俺は両手で口を押さえた。そうではなくて、両手で先輩の手を払いのけるべきだと一瞬後に悟ったが、もう遅かった。
「……ぅっっ!!」
 俺のペニスが爆ぜた。腰が二度三度と縦揺れを起こす。たちまち膝掛けにしみが広がっていく。異臭が漂ってくる。
 トラックでは司がぶっちぎりの1位でゴールしていたが、もうどうでもよかった。
「かわいい声聴かせてもろたわ」
 先輩はごわごわした膝掛けで俺の射出口を拭い、そのまま膝掛けを丸めてバッグにしまった。
 俺はしぼんだペニスを慌ててズボンの中に押し込んで、ファスナーを上げた。
 誰かに見られなかったかと不安になったが、一番近いところにいる観客でも5メートルは離れているので、大丈夫みたいだった。
「……なんで、こんな、こと……」
 うまく声が出ない。息が乱れている。今までに経験したことのない、激しい射精だった。これに匹敵するのは夢精くらいのものだろう。
「たろくんに気持ちようなってもらいたかったんや」
 雉野先輩はやっと俺に顔を向けてくれた。笑っているが、何故か背筋が寒くなるような笑いだ。
「だからって、こんな場所で……」
「ほな、次はもっと落ち着ける場所にしよか?」
「そういう問題じゃ……」
「こういう匂いなんやね」
 先輩は左手の指先に鼻を寄せ、匂いをかいでから舐めた。俺のが付着していたんだと気づいて、顔が熱くなる。
「たろくんの味や……」
 俺は居たたまれなくなって、勢いよく立ち上がろうとしたが、腰が抜けて動けなかった。
369転生恋生 第十七幕(4/4) ◆.mKflUwGZk :2009/12/07(月) 22:46:25 ID:lWiw80ed
「お茶飲む?」
「いいです……」
「男の人は、1回出すたびに水分補給せなあかんのとちゃう?」
 いや、確かにそうだけど……。
 とにかくショックだった。先輩がこんなことをするなんて。いつもの過剰なスキンシップとは話が違う。
「痴漢行為じゃないですか」
「相手が気持ちよければええやろ?」
 そういう問題なのか?
「合意の上やったら、べつに悪いことやないで。人目にもついてへんから、公然猥褻にもならへんやん」
 俺は合意した覚えはない。
「ほな、今から合意してや」
 事後承認かよ。
「司はもう出番はないんですか?」
 なんとなく話を変えたくなった。でも不自然な話題の変え方だと我ながら思う。
「午前に100メートル走があったんやけど、たろくんは見てへんのやな。2種目だけやから、もう終わりやね」
「なら、帰ります」 
 俺は椅子の背もたれに手をついて体を支えながら立ち上がった。そのまま席を離れて出口の方へ向かう。
 もうこれ以上、先輩の傍にいられない。恥ずかしくて、頭の血管が焼き切れそうだ。
「また学校でな!」
 先輩は俺を引き止めようとはしなかった。俺はそのまま競技場を出て、まっすぐ帰宅した。
 帰りの電車の中では、俺は極力他の客と距離をとった。そうしないと、自分の体からあの匂いがするのを嗅ぎ取られそうで不安だった。

 帰宅すると、姉貴はまだ寝込んでいた。熱が下がらないらしい。
 夕食は久しぶりにお袋が作ってくれた。退院したばかりだから出前でもいいと親父は言ったのだが、お袋が自分で作りたがった。
 姉貴がいない3人だけの夕食の席で、俺は改めて姉貴の進路調査の話をした。お袋は呆れていたが、普段から姉貴の振る舞いを見ているせいか、親父よりも真面目に取り合ってくれた。
「普通、女の子は身内の男はうっとうしがるものだけどね」
 お袋も思春期の頃は父親や兄がうざくてしかたがなかったという。
「でも、太郎も幼稚園の頃は『おおきくなったら、おねえちゃんとけっこんする』って言ってたよ。覚えてない?」
 死ね、その頃の俺。十中八九姉貴に言わされたんだとは思うが。
「まあ、一般的に女と縁を切るためには、相手から嫌われるように仕向けるのが無難だって言うわね」
 嫌われるというのは俺も抵抗があるな。仮にも一つ屋根の下で暮らす家族なわけだし。
「じゃあ、手っ取り早いのは、太郎が彼女を作ることね。さすがに仁恵も諦めるでしょ」
 やはり、それしかないか。
「誰か、気になる女の子はいないの? これを機会に告白なさいな。自分から行動を起こさないと、何も変わらないよ」
 ほんの1ヶ月前までは、女の子なんて縁がなかった。だけど今は違う。さしあたり心当たりが3人ある。
 司は今一番親しい女の子だ。彼女というのはぴんとこないが、学校では毎日一緒に弁当を食ってる。明らかに俺になついている。誘えば簡単に付き合ってくれるだろう。
 雉野先輩は今日プチ童貞卒業させてくれた人だ。自分から胸を揉ませてくれるくらいだから、ヤるのは一番簡単かもしれない。ただ、ペースを握られっぱなしになるだろうし、お金持ちのお嬢様というところがちょっと怖い。
 猿島も、1回だけとはいえデートした相手だし、演技の練習という名目で遊んでくれそうだ。太腿を撫でさせてくれたこともある。でも、役者だからどこまでが本心なのか読めない。
 とにかく、俺には3人もの選択肢があるわけだ。まるでゲームの主人公だな。ゲームと違うのは、失敗した場合にやり直しが効かないってことだ。
 だけど、姉貴を真人間に戻すという大義名分もある。ここはひとつ、勇気を出して3人のうちの誰かに、俺の彼女になってもらおう。
 俺の表情から決意を読み取ったのか、親父が余計なことを言った。
「妊娠させるなよ」
 言われるまでもない。それは死亡フラグだ。
370転生恋生  ◆.mKflUwGZk :2009/12/07(月) 22:48:06 ID:lWiw80ed
投下終了です。
371名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 22:56:26 ID:8D4iM9Ll
>>370
GJ
372名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 23:38:03 ID:3eYiHNuH
GJ
雉野先輩はエロくてけしからん、もっとやれ
そろそろ修羅場も近そうな予感
373名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 23:42:11 ID:45v12U7K
>>370GJ!
374名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 23:53:55 ID:xhh0QOyO
>>370
続き待ってたらキテタ(・∀・)ー!
ついに雉さんが大胆な行動に出たなGJ
375名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 01:27:31 ID:rbKNAHHm
GJです。
相変わらずお姉ちゃん可哀想…
ちゃんと報われますように。
376名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 01:30:46 ID:wuhibXCp
親父の物分かりが、良すぎるな
377名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 01:36:01 ID:Hxv0bHox
GJ!
親父が良すぎる
378名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 02:24:26 ID:FWrSRX+7
GJ!先輩の声が植田で再生された
379名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 04:09:57 ID:4Cg+PWzw
だめだよそんなこと言っちゃ・・・
もう先輩のイメージが八神まめだぬき以外のツラで浮かばないじゃないか
380名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 09:15:26 ID:nYaGkM9Q
雉野先輩の痴女っぷりがいい
わんことのHシーンも来そうか!?
期待期待
381名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 09:50:07 ID:PczODCQN
猿の出番が少ないYO……

ハッ、まさか次回は猿回か!?
382名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 10:18:27 ID:IFZqQyU7
       / ̄ `ー-、
      /||| ||| ||| |||\
     /|||  /\|||  ||| \
.     |||| /   \||| ||| |
.    | /        \||| .|
    | /___,,;;ヽ,`` /;;,,,___ヽ|
   ヽ|{;;;;;;;;;;;;}/||ヽ-=・=-|
   (`|  /  ||||` \ `|´)
   ヽ、| ミ´  ノ、,,ゞヽ  |, ) キュラキュラ蛍火♪
    ヽ、   ._,==-,彡 /|,ノ キュラキュラきよらに♪
      |丶  .二二´ /;;;| キュラキュラキュラらめき♪
      | \___/;;;;;| キュラキュラ消えゆく♪
      |   ;;;;;;;;;;;;;/;;;;;|
     /     ;;;;;;;/;;;;;;;ヽ
383名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 18:25:32 ID:IFZqQyU7
>>352
上手いな・・・。
ひょっとして剣客バトロワで書いてる人?
384名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 18:35:48 ID:sA+h7XkQ
他板での活動については詮索しないほうがいいと思う。
385名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 19:41:44 ID:yIIoV3Rt
親父殿も何かひと悶着あった口か?理解有りすぎだろ。

GJ!!! エロゲの場合は結末へのシナリオ行くだけだから比較的楽だが…
ルート入っても力技で姉がねじ曲げそうな気がする。
386名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 22:56:06 ID:Hxv0bHox
職人さんが他に何をしているか気になる気持ちは分かる
題名やトリップでググった事がある
ほとんどwikiかスレしかヒットしなかったけどorz
387名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 23:25:57 ID:H2gHvVkV
血啜のひとは未来の人だったのか……まあそう都合よく、またもこのスレに大型新人が! なんて話はないですよねー。
それはともかく、すんごい面白かったです。こういう路線もあったのか。

転生のほうも着実に話を面白く重ねてきますね。
病床の姉がどこで仕掛けてくるのやら……
388名無しさん@ピンキー:2009/12/09(水) 01:29:32 ID:fuPcBHX/
GJ!
未来のあなたへも転生恋生も続きを楽しみにしてる

>>386
分かる。未完の作品とか検索してしまう
fc2ランキングでエロパロで検索したら三つの鎖の作者のHPがあってびっくりした
389名無しさん@ピンキー:2009/12/09(水) 13:49:26 ID:SLEbw+29
うだうだ言わずに好きにやりゃあいいよ
やめるだの何だのいちいち言わなくていいからね
390名無しさん@ピンキー:2009/12/09(水) 13:50:01 ID:SLEbw+29
誤爆orz
391名無しさん@ピンキー:2009/12/09(水) 19:39:00 ID:DRzr7orl
>>390
どこへの誤爆か一瞬でわかった俺には、生まれる前に戻り、イケメンに突然変異しつつ、双子のキモウトかキモ姉を得る権利がある!!そりゃあもう怖いぐらい俺にメロメロのな。
でも普段はそんなことおくびにも出さないのがミソ。裏で爪を噛んで嫉妬してるタイプ
392名無しさん@ピンキー:2009/12/09(水) 23:46:58 ID:K3WYMRAw
ttp://www.nicovideo.jp/watch/nm8778605

助けて……、妹がこの動画見てから「アラバマで結婚しよう」と迫ってくる……。
393名無しさん@ピンキー:2009/12/09(水) 23:53:20 ID:A8xwOu2j
三つの鎖の人ってサイト持ってるんですか!?
どなたかURLお願いします
394 ◆cW8I9jdrzY :2009/12/10(木) 00:40:24 ID:TCjwMw5F
一本投下します。長編というほどでもありませんが、一応連載です。
SSの属性は以下となります。

※一次・高校生・双子の兄妹・修羅場あまり無し・流血無し・エロ有り

基本は泥棒猫視点となります。
好みの分かれる内容になるかと思いますので、苦手な方は酉でNGお願いします。

それでは投下。
395水野兄妹観察日記・1(1/7) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/10(木) 00:42:13 ID:TCjwMw5F
きっかけは、実に些細なことだった。

ヒカルは普段から慌て者で、その上寝起きが悪く、よく友人たちにからかわれている。
そのため朝、遅刻しそうになったり、授業中居眠りをして教室移動に遅れたりすると、
ところ構わず全力疾走して、あちらこちらにぶつかって頻繁に生傷を作るはめになる。
意地の悪い友人に言わせると、「安全地帯から見てる分には面白いやつ」ということになるが、
当の彼女にしてみれば、横で傍観してないで
とっとと起こせと文句の一つも言いたくなるところだった。
その日もヒカルは、休み時間も終わり際になってから、次の授業が行われる
校舎の反対側の化学室へ向かおうと、急いで廊下を駆けていた。

何度も通行人とぶつかりそうになりながらも、階段に差しかかったときだった。
下りようとして、盛大に足を踏み外してしまった。
「わあっ !?」
ヒカルは悲鳴をあげて転落し、段差で全身を打撲しながら頭から床に突っ込んだ――はずだった。
しかし、ふと気がつけば、彼女の体は空中でしっかりと抱き止められていた。
たまたま下にいた男子生徒に助けてもらったとわかったのは、
その彼が受け止めたヒカルの顔をのぞき込み、「大丈夫?」と優しい声をかけてきてからだった。
「はい、大丈夫です」と答えようとしたヒカルだったが、
今まであまり男と接触したことのない自分が、初対面の男に抱かれて
至近距離で見つめ合っているというのは、
慌て者の彼女の平静を失わせるのに充分な事態だった。
ろくに礼も言えず、真っ赤になってじたばた暴れるヒカルの姿に気づいたのか、
男子生徒は「あ、ごめん」と言って彼女の体を放してくれた。

「す、すいません。ありがとうございます」
「大丈夫だった? ケガとかしてない?」
改めて向き合った男子生徒は、どうやら上級生のようだった。
いかにも真面目で人の良さそうな、落ち着いた雰囲気がよく似合う少年だ。
美男子と言っていい凛々しい顔立ちに見とれてしまい、ヒカルは思わず息を吐いた。
「……はあ」
「? どうかした?」
そのまま周囲の時を止めて少年に見入っていたヒカルだが、
不意に聞こえてきたチャイムにようやく我に返った。
「げっ、鳴っちゃった!」
慌てて散らばった教科書やノートを拾い集めると、ヒカルは少年に一礼して駆け出した。
「どうも、ありがとうございました!」
男子生徒はにっこり笑ってうなずき、ヒカルを見送ってくれた。

一目惚れだった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 
396水野兄妹観察日記・1(2/7) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/10(木) 00:42:59 ID:TCjwMw5F
「はあ? あんた正気?」
休み時間に夏樹は開口一番、そう言って眉をつり上げ、ヒカルの神経を逆撫でしてみせた。
夏樹は小学校時代からのヒカルの悪友で、歯に衣着せぬ言動を好む。
本人は正直者だからと主張するが、ヒカルにしてみれば、単に口が悪いだけである。
その夏樹の眼鏡に冷たい視線を浴びせ、ヒカルは不機嫌極まりない声で言った。
「いきなり何よ。あたしが男の人を好きになっちゃおかしいっての?」
「んー、一応あんたも女の端くれだし、別に片想いするなとは言わないけどさ……。
 でもさあヒカル、やっぱりそれ、諦めた方がいいよ」
「なんでよ」
その問いかけに、夏樹は若干の優越感を含んだ顔でヒカルを眺めやった。
何も知らないのだな、と彼女の無知をあざ笑うような表情だった。
「いい、あんた知ってる? 二年の水野先輩だよ。その辺の有象無象とはわけが違うって」
「なに、あの人そんなにモテんの?」
「もー、モテるなんてもんじゃないね」
当たるはずのない超大穴を狙う、無謀な人間を目にした者は
概してこういった顔をするものなのだろう。
ちっ、ちっと人差し指を振って得意げに話を続ける夏樹を
いつ張り倒したものかと、密かに思案をめぐらせる。

「二年B組、水野啓一さん。成績は五教科どころか音楽、美術に至るまで隙なしで、
 毎回学年トップクラス。しかも運動神経も抜群で、あの人がいるから
 うちの弱小サッカー部はまともに試合できてるようなもんよ。
 そんでもってあの通りカッコイイから、下級生の間じゃファンクラブなんてできてるし、
 隠し撮りしたあの人の写真が裏で高価で売買されてるとか、
 手作りのお菓子がドラッグみたいに闇取引されてるとか、いろいろ噂が絶えないわ」
「お菓子?」
「家で料理するんだって、あの人。それで人から何かもらったら、
 お返しに手作りのクッキーとかあげるらしいよ」
「いいなー、それあたしも欲しい……」
ついそんな言葉が口から漏れる。

「とにかくっ!」
夏樹は机の表を、両の手のひらでバンと叩いた。
「どこからどう見ても死角なしの優等生、文句なしの完璧超人ね。
 あそこまでいくと、何かズルしてんじゃないかって疑いたくなるわ」
「うーん、すごいなあ……」
「わかる? それくらいすごい人なの。誰にでも親切にしちゃうできた人だから、
 たまたま助けてもらったあんたが毛の生えた心臓をわしづかみにされるのも
 ある意味当然っちゃ当然だけど、そんなの明るい電灯に虫が吸い寄せられる
 みたいなもんだから、悪いこと言わないからやめときなさい。てかやめとけ」
「あたしはハエかいっ!」
ヒカルは上履きを脱ぎ、それで夏樹の頭をはたいた。
スパンと気持ちのいい音がして、夏樹がかけた眼鏡がずれる。
「痛っ! 何すんの !?」
「うるさいうるさーい! 黙って聞いてりゃ、
 あたしを身の程知らずのお馬鹿さんみたいに言いやがってー!」
「だって、事実その通りだし」

そう言って笑う夏樹を、またひっぱたいた。
ボブカットの頭を振り乱し、嫌がる夏樹の髪に上履きの埃を塗りたくっていく。
「こらっ、やめてよ! やめろってば、もう!」
「うっさい! 乙女の純情をなんて思ってるんだ、あんたは!」
ヒカルは普段から怒りやすく、一度こうと決めたらそのまま真っ直ぐ突っ走る女だった。
夏樹は「人間、もうちょっと思慮分別があった方がいい」などとしたり顔で言うのだが、
今のヒカルにとって、そんな友人の助言だか侮辱だかわからない物言いなど、どうでもいい。
397水野兄妹観察日記・1(3/7) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/10(木) 00:43:39 ID:TCjwMw5F
「とにかくあたし、水野センパイの彼女になりたいっ!」
「いや、無理無理。東大に現役合格する方がまだ簡単だから。諦めろってば」
「まだ言うか、あんたはっ!」
「ぎゃっ !? ちょ、ちょっとヒカル、やめ――」
ヒカルは夏樹の首を締め上げ、鋭い目でにらみつけた。
「だいたい夏樹、あんた仮にも友達だったら、あたしの初恋にちょっとくらい
 協力してくれてもいいでしょ !? なのに何よ、いちいちムカつくことばっかり
 言ってくれちゃってさ! もしかしてケンカ売ってんの !?」
「あれ、初恋だっけ? なんか似たようなこと、中学のときも言ってた気が――
 ぐえっ! し、締めるなっ !! 死ぬ、死んじゃうっ!」
「そうだね。あんた、いっぺん本気で死んでみる?
 後で校庭の隅っこにでも埋めといたげるから、遠慮しなくていいよ」
ぶんぶん首を振る夏樹から手を放し、もう一度椅子に座りなおす。

必死で呼吸を整える友人の姿を横目で見ながら、ヒカルは憮然として言った。
「まったく……。まあ、あのセンパイがモテモテなのはわかったけど、
 それだけで挑戦する前から諦めちゃってどうすんのよ。ひょっとしたら
 あたしみたいな元気で明るい美少女が、もろタイプのど真ん中かもしんないじゃん」
「百万歩譲ってもそんなことありえないから、心配しなくていいわ」
こいつ、いつか殺す。そう思いつつも、ヒカルは別のことを口にした。
「……んで一応聞いとくけど、あのセンパイ、今つき合ってる相手とかいるの?
 そんだけモテモテだったら、彼女なんて掃いて捨てるほどいそうだよね」
「いや、それがね……」
ヒカルが放った質問に、なぜか夏樹は言葉を濁した。

いつもはっきり物を言う夏樹に似合わない、不思議と困惑した様子だった。
夏樹は見た目こそ地味だが、ヒカルよりはるかに知恵が回り、特に物事の分析を得意とする。
新聞部に所属しており、一年生でありながら情報収集はお手の物だ。
その夏樹がこのような煮え切らない反応を見せるのは、かなり珍しいことだ。
思わせぶりな態度に、ヒカルも好奇心を露にする。
「どしたの。噂好きのあんたのことだから、どーせ知ってるんでしょ?
 水野センパイ、今誰とつき合ってるのか、教えなさいよ。気になるじゃない」
「んー、それがね……よくわかんないの」
夏樹の回答はもごもごとしていて、ちっともはかばかしくない。
いったいなぜだろうか。ヒカルは矢継ぎ早に質問を続けた。
「何でわかんないのよ。あのセンパイ、すごい有名人なんでしょ?
 だったら誰とつき合ってるかくらい、誰でも知ってんじゃないの?」
「それが、ホントにわかんないのよ。誰にどう聞いても、
 水野先輩の彼女なんて見たことないって言うんだよー」
「はあ? 何それ、ひょっとしてこそこそ隠してるってわけ?」
「うん……そうかもしんない。あんまり大っぴらにつき合ってると、
 ファンクラブの子たちが騒ぐとか、そういうの、やっぱりあるんじゃないかな?
 だから学校の中じゃ、隠してるのかもしれないよ。
 まあ相手がこの学校の生徒かどうかも、よくわかんないんだけどさ」
「うーん、そっか……。やっぱモテる人って、みんなには隠してんのかなー」
398水野兄妹観察日記・1(4/7) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/10(木) 00:44:03 ID:TCjwMw5F
腕組みしてどうしたものかと考え込むヒカルに、夏樹はためらいがちに言った。
「実は一応、一人だけいることはいるんだけどね。水野先輩とすごく仲が良くって、
 水野先輩と同じくらいに何でもできて、ぴったり釣り合いそうな超美人の女の人が……」
「え、誰それ? ひょっとしてそれがセンパイの彼女で、あたしのライバル?」
「あれ、ヒカル知らないの?
 もしあの人がそうだったら、あんたなんか百パーセント勝ち目ないよ。
 何しろ、相手は二年で一番人気のパーフェクトビューティーなんだから」
先ほどと同様、夏樹はヒカルを挑発するような目つきと口調で言ったが、
激昂した彼女がつかみかかる前に、自分で自分の言葉を否定した。
「でもまあ、それはありえないか。あの二人がつき合ってるわけないんだし」
眼鏡のフレームを持ち上げ、一人でうんうんうなずいてみせる。

夏樹は頭が切れる娘で、その点はヒカルも頼りにするところではあるが、
反面、自分の考えを他人にわかりやすく説明することはあまりせず、
そのおかげでヒカルはしばしば、自分が置いていかれているような気分になることがあった。
こういうときはちゃんと指摘して、夏樹が考えていることを聞き出さなくてはいけない。
「ちょいあんた、何一人で納得してんのよ。誰よその、ぱーふぇくとぶーちーって。
 なんでセンパイとその人がつき合ってないって、夏樹にわかんのよ」
「簡単よ。だってその人、先輩とそういう関係にはなれないもん」
「はあ?」
怪訝な顔をするヒカルに、夏樹は調子よく弁舌を振るった。
「いい? 今の二年には、何でも出来る完璧超人が二人いるの。
 その片方が、恐れ多くも今回あんたが好きになった、水野啓一さんね。
 それでもう一人が、いつも先輩と一緒にいる女の人、水野恵さんよ。
 この二人、この学校の名物にもなってる、超有名な双子の兄妹なのよね」
「双子の兄妹……?」
その言葉を耳にして、ヒカルは顔に疑問符を浮かべた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 
399水野兄妹観察日記・1(5/7) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/10(木) 00:44:45 ID:TCjwMw5F
翌日の昼休み。
ヒカルはひとり、啓一の教室を訪れていた。
昼食時のことであり、廊下は購買や食堂と教室を行き来する生徒で混雑していたが、
ヒカルはドアの隙間から中を覗き込み、食事中の啓一がいることを確認すると、
勇気を出して中に足を踏み入れ、彼に話しかけた。
「あのー。すいません、水野センパイ」
できるだけ親しみを込めたつもりだが、実際に口に出してみると、それほどでもなかった。
振り返った啓一がヒカルの姿を見て、少し驚いた声を返す。
「あれ、君は――」
「はい、昨日はありがとうございました」
忘れ去られているかとも思ったが、啓一はちゃんとヒカルのことを覚えていてくれた。
嬉しい気持ちを顔には出さず、ぺこりと頭を下げて、できるだけ自然に訊ねる。
「ここ、いいですか?」
「うん。多分いいんじゃないかな」

ヒカルはうなずいて啓一の隣の席に腰を下ろし、持っていた包みを机の上に広げた。
包みの中から取り出したのは、丸いプラスチックの弁当箱が二段と、
赤いセロハンテープが貼られた、菓子入りの小さな紙袋だった。
やや緊張した笑みを浮かべ、その袋を啓一に差し出す。
「これ、昨日のお礼です。どうもありがとうございました」
「いや、そんな大したことしてないよ。気を遣わなくていいのに」
「いーえ、センパイに受け止めてもらわなかったら、あたしケガしちゃうとこでした。
 正直、こんなんじゃ全然足りませんけど、よかったら食後にでも食べて下さい」
「じゃあもらっとこうかな。どうもありがとう」
啓一が、黒く深い瞳を細めた。
何でもない感謝の言葉も、彼が言うと幸福の賛歌となるから不思議なものだった。
憧れの少年、水野啓一の凛々しい顔をうっとりして眺め、ヒカルは遅ればせながらの挨拶を始めた。
「あたし、一年の渡辺っていいます。渡辺ヒカル」
「渡辺さんか、よろしくね」
「はい。でもできたら、ヒカルって呼んでくれたら嬉しいです」
「じゃあそうするよ。ヒカルちゃん」
初めて会った相手に対して、少し馴れ馴れしい会話だったかもしれないが、
やはり彼に名前で呼んでもらったことに、心の底で喜びを感じずにはいられなかった。
その後、啓一は真面目な彼らしく、改まってヒカルに自己紹介をして、
わざわざ自分のところに来てくれたことに対する謝意を表した。
そしてそのついでだろう。啓一は先ほどからずっと自分のそばに座っていた女を指して言った。
「こいつは俺の妹、恵っていうんだ。妹だけど、双子だから同い年」
400水野兄妹観察日記・1(6/7) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/10(木) 00:45:21 ID:TCjwMw5F
そこで初めて、ヒカルは啓一の妹、水野恵と顔を合わせた。
「よろしくね、ヒカルちゃん」恵が柔らかい表情で、優雅に微笑みかける。
「あ、どーも。ヒカルです」
ヒカルは会釈を返しながら、油断のない目つきで恵を観察した。
啓一の妹、水野恵は噂に違わぬ清楚な娘だった。
清流のように揺れる艶やかな黒髪を、肩から背中にかけて自然に流し、
啓一と同じく、温厚で柔和な雰囲気を漂わせている。
兄妹らしく、整った顔の部品、穏やかな印象がとてもよく似通っていた。
初対面の者であっても、この二人を見れば、血の繋がりがあることは容易に想像できるだろう。
「よろしくです、恵センパイ」
ヒカルの言い方は、せいぜい丁寧と冷淡の中間といったところだった。
普段は初対面の相手とでも積極的に打ち解けようとするヒカルだったが、
今はそれよりも、恵はどんな人間なのだろうと身構える気持ちの方が強かった。
もちろん気になる相手の大事な妹となれば、仲良くするに越したことはない。
もし啓一の妹である水野恵をうまく味方にできれば、
これからヒカルが彼とつき合う上で、いろいろと都合がいいからだ。
だからまずは、恵がどんな人間か見定めて、可能ならば友好関係を構築するつもりだった。
まさに小姑の前で縮こまる嫁の気分で、ヒカルは水野兄妹と一緒に昼食をとることにした。

啓一の弁当箱をのぞき込み、感心した様子で言う。
「センパイのお弁当、自分で作ってるんですか? なんか美味しそうですねー」
「うん。うちの親は昔っからあんまり親らしいこと、子供にしてくれなくてさ。
 おかげで自炊にも慣れちゃったし、弁当にすると食費が浮くから、毎朝恵と二人でね。
 でも、そんなに手の込んだものを作ってるわけじゃないよ。けっこう手を抜いてる」
「ふふっ、おかずは大抵、残り物よね。朝、あんまり時間ないから」
「へー、二人で一緒に料理してるんですか。仲いいんですね」
「もう半分習慣になっちゃってるかな。でもたまに俺が寝坊すると、
 恵が全部一人でやっちゃったりして、そういうときは後が怖いよ。こいつ結構根に持つから」
そう言って啓一は、綺麗に巻かれた卵焼きを口の中に放り込み、恵をちらりと見て、笑った。
「もう啓一、ヒカルちゃんにあんまり変なこと吹き込まないでよ」
「え、だってホントのことだろ。別にいいじゃん」
恵は啓一を見て楽しそうに笑うと、囁くようにヒカルに言った。
「ヒカルちゃん、聞いて。啓一ってばね、とっても朝が弱いの。
 今でも毎朝、私が起こしてあげてるのよ。恥ずかしいでしょ」
「あっ、こら恵っ! バラすんじゃないっ!」
「え、だってホントのことでしょ。別にいいじゃない」
「へえ。それはなかなか――ってか、ホントに仲いいんですね。二人とも……」
思わず口からこぼれた言葉は、ヒカルの本音だった。

横で会話を聞くうちに、ヒカルにも、この二人のことが少しずつわかってきた。
そして夏樹が教えてくれた、この啓一と恵に関する噂の意味も。
「啓一先輩も恵先輩も、誰か特定の相手とつき合ってる様子がまったくないらしいのよね。
 よっぽど皆に隠したいのか、それとも誰ともつき合う気がないのか……。
 あれほどモテてるってのに、よくわかんない話だよねー」
啓一もそうだが、恵も彼に劣らず、いや彼以上に人望があるようで、
夏樹に聞いた話では、一部の下級生にとって水野恵は、
「素敵なお姉さま」として半ば神格化されているのだという。
ヒカルにはそういった趣味はなかったが、本人の可憐な顔と淑やかな振る舞いを
目の当たりにすると、まあそういう憧れや願望を抱く生徒もいるのだなと納得できた。
しかし、その恵にしても、啓一にしても、今まで誰かと恋愛関係にあったという話はないらしい。
「それって、どういうこと?」
「さあ、私にもわかんない。中にはあの二人が『そういう仲』なんじゃないかって
 真面目に疑ってる人もいるくらいよ。兄妹でそんなこと、あるわけないのにね」
兄妹でそんなこと、あるわけない。その話を聞いたとき、ヒカルもそう思っていた。
まともな人間なら決して取り合わないような、ゴシップの類に属する噂だ。
401水野兄妹観察日記・1(7/7) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/10(木) 00:45:55 ID:TCjwMw5F
だが実際に啓一と恵の姿をこの目で見て、ヒカルが抱いた感想は、その疑惑を肯定するものだった。
二人が自らそう漏らしたわけではないし、何か具体的な証拠を見つけたわけでもない。
だが――ヒカルは勘の鋭い方ではないが、二人を見て漠然と思っていた。
(なんかこの二人、ずっと一緒に暮らしてきた夫婦みたい……)
恵が喋り、啓一が返す。啓一の言葉に恵が突っ込む。
生まれた子供たちが全員一人立ちして、
古びた家に残された老夫婦のような、ぴったり息の合った会話。
「あれ」「これ」だけでも意思疎通が成立しそうな、
そもそも言葉さえ必要ないほどに、啓一と恵のやり取りは滑らかで自然なものだった。
いくら実の兄妹とはいえ、ずっと一緒に過ごしてきた双子とはいえ、
二人の雰囲気がこれほど調和しているのは、奇妙なことのようにヒカルには思われた。
まるで自分が、この二人の間に割り込んだ異物であるかのような錯覚さえ覚えるほどだ。

会話の中で啓一が時おり見せる屈託のない笑顔に、ヒカルの胸は温かくなり、そして冷えた。
啓一の笑顔を間近で見ることができたから。
そして、その笑顔が自分に向けられてはいなかったから。
啓一の言葉も笑顔も関心も、その全てが実の妹である恵を対象にしていた。
また恵も同様、自分の世界の中心に兄である啓一を配置しているようなところがあった。
周囲には優しく、礼儀正しく振る舞ってはいるが、
この兄妹は、自分たちとその他大勢との間に、太い一線を引いている。
自分たちとその他大勢とを、明確な何かで区別している。
この二人を前にしていると、それを嫌でも思い知らされることとなった。
おそらくこの二人が異性とつき合わないのも、これが理由なのだろう。
夏樹が口にした「あんたじゃ無理」という言葉が、ヒカルの脳裏に浮かび上がった。

しかしヒカルは一途な性格で、そのうえ諦めが悪かった。
たかが妹が、いったい何だというのだ。
いくら仲が良くとも、実の兄妹では恋愛も結婚もできない。
啓一の伴侶になる資格は、赤の他人である自分にこそあるはずだ。
自分が好意を抱いた相手、水野啓一との距離を少しでも縮めたい。
そのためには、とにかく啓一に関する情報を少しでも多く収集し、
啓一と共にいる時間を少しでも多く確保しなければならなかった。
昼食を終えてからもしばらく談笑し、啓一を質問攻めにした後、帰り際にヒカルは言った。
「じゃ、あたし帰ります。どうもありがとうございました」
「ううん。こっちこそお菓子、ありがとうね。ヒカルちゃん」
「あの、センパイ……またちょくちょく、ここにご飯食べに来ていいですか?」
その言葉を発するのには多少の勇気が必要だったが、啓一は気さくにうなずいてくれた。
「いいよ、いつでも来てよ。ヒカルちゃん」
「やった、ありがとうございますっ!」
恵も優しい笑顔を浮かべ、啓一の後ろから穏やかな視線を送ってきている。
いつか自分もこの女のように、啓一の隣にいられる日がくるのだろうか。
ヒカルは啓一と恵を交互に見比べ、慌しく教室を後にした。
402 ◆cW8I9jdrzY :2009/12/10(木) 00:46:56 ID:TCjwMw5F
以上となります。
続きはまた後日投下しますので、よろしくお願いします。
それでは、失礼致しました。
403名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 01:13:00 ID:2E/1JhmA
GJ
そうかアイツらの話か〜
これは期待せざるを得ない
404名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 01:13:16 ID:iplWnJA6
一番槍GJ!

このスレに投下したということは……恵さんかキモウトと化すのだろうか
続編、楽しみに待ってます
405名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 01:14:41 ID:NU06zqFA
あぁ、めくるめく惨劇の予感がひしひしと…GJ!
406名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 18:21:49 ID:J4DYImcj
まさか水野兄妹が来るとは…。
GJです。
407名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 19:08:57 ID:yJA4Ihf5
面白そう
GJです
408名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 19:57:01 ID:CK0ccZjK
>>404
まっさか〜〜〜
そんなわけないだろ。理解力0だなお前。

>>402
GJ!!
409広小路淳 ◆3AtYOpAcmY :2009/12/10(木) 20:03:22 ID:yRfBuTbg
私の母が受験した国家試験の結果が今日分かりました。
やはり落ちたようです。がっくり。

あと今日はノーベル賞の授賞式があったそうですね。
日本人の方は今回一人もいらっしゃらなかったそうで。がっくり。

腹いせといっては何ですが小ネタを一編。
410原子の蜘蛛 ◆3AtYOpAcmY :2009/12/10(木) 20:04:42 ID:yRfBuTbg
「それで、いくら払うことに?」
 男は30半ば、縁無しの丸眼鏡が気弱そうな印象を与えている。
「ですから、私は最初っから提示された額で構わないと申し上げております」
 対して女はこれまた30半ば、だがウエーブのかかった黒髪のロングヘアに、しゃなりとした着こなしの着物の凛々しさ、そして意思を持った眼差しが、強い人となりを表している。
「そもそも私は、生活していけるだけのお金を支給していただければ一向に構わないのです」
「じゃあ……?」
 首を傾げる男に対し、女は彼女が愛した―――そして今でも冷めずに愛している―――男を見つめ直し、続くべき言葉を継いだ。

「はい、今日はその条件を申し上げに参りました」


 昼前に成田を発ったボーイング777の旅客機日本航空405便は、ユーラシア大陸を着実に西に進んでいた。
 このままいけば明日、シャルル・ド・ゴール国際空港に寄航した後、エールフランス5311便に乗り換え、今日の夜遅くに(日本ではもう日付が変わっているが)ストックホルム・アーランダ国際空港に到着する。
 そこから先は、あちらで手配してくれるだろう。
 あまり注目を浴びる機会のない科学者がその業績の報いを受けるせっかくの機会だ。少しぐらいスカンディナヴィア人も彼女に尽くすところがあっていい。
 なら、俺もこの自慢の姉貴に何かしてやるかな。
 そう思い、サロン(日航が機内サービスとして提供しているシャンパン)を彼女の分まで持ってきた。
「姉貴、要るか?」
 専門の原子物理に関する書籍だろうか―――何せ俺は私大の文系学生だから姉貴の専門分野なんてチンプンカンプンだ―――、なにやら分厚い本を読んでいた姉貴は、少し考える様子を見せていたが、その本を閉じるとにこやかに応じた。
「ええ、ありがとう」
「では……、
 姉貴の受賞を祝って」
「私たちのこれからの幸せを祈って」
「「乾杯」」
 この時、俺には姉貴の言葉が少し引っかかったが、気に留めないことにした。とは言っても、このすぐ後で明かされる意味を俺が推察し得ていたとしても、もはや手遅れであったことは否めないが。
411原子の蜘蛛 ◆3AtYOpAcmY :2009/12/10(木) 20:06:14 ID:yRfBuTbg
 俺の姉、浅見豊奈(あざみ とよな)は、日本人の原子核物理学者としては初めてノーベル賞を受賞した才媛である。24での受賞も最年少記録だ。もちろん、エスニシティや年齢のレコードとは関係なく、ノーベル化学賞を受賞するということは科学者として無上の栄誉である。
 そんな彼女の弟である俺、浅見葵(あざみ まもる)は、天才的な能力を持っているわけでもない二流大学の普通の一学生である。
 幼い頃から天才少女として持て囃されていた姉貴とは、隔たりを感じるようになった、というよりもそれが物心ついたときから当たり前で、まったく別の人生を送るものだと信じて疑わなかった。
 そんな姉貴が、10月の受賞決定後、俺に問いかけてきた。
「葵、ストックホルムの授賞式には一緒に来てくれる?」
 俺は悩むまでもなく承諾した。大学の講義ならある程度都合はつくし、それになにより一生に一度あるかどうかという貴重な体験である。益川教授ではないが、「どんなかな」といった純粋なインタレストも、大きな動機となった。

 11時前に空港に降りた俺たちは、そのままアーランダ市内のホテルに泊まった。財団が前もって予約していたから助かった。
 スーツケースを床に放り出し、安堵と疲労の混じった溜め息をつく。
「疲れたな、姉貴」
「ええ、でも明日は早いからね」
「明日……? 何かあるのか?」
 何も聞かされていない。この日は空白だったから、時差ボケと旅の疲労を抜くために一日休むものかと思っていた。
「市内観光にでも?」
「最高の思い出を作りにね」
「そういうことなら任せとけよ」
 実は、姉貴が繰り出すときのために付け焼き刃でストックホルム市内の観光スポットについて予習しておいた。こんなに早く役に立つ機会があるとは。
412原子の蜘蛛 ◆3AtYOpAcmY :2009/12/10(木) 20:08:32 ID:yRfBuTbg
 翌朝、ホテルでスクランブルエッグ、ベーコン、サラダ、オニオンスープといった朝食を摂ってから、ホテルをチェックアウトし出発した。
 ほどなく、姉貴が手配したハイヤーが車寄せに着いた。本来俺が世話をするべきなのだろうが、姉貴は自分でするといって聞かなかった。どこに行くかも最初は教えてくれないそうだ。何のつもりなのだろう。
 揺られること数十分、着いた先は……
「おい、なんだここ、ストックホルム市庁舎じゃないか」
「ええ、そうよ」
 わけがわからない。授賞式の日には晩餐会やパーティーが行われる場所なのだから、何も今来なくてもいい気がする。
「おい、この市庁舎は受賞記念晩餐会が開かれるホールだぞ、今来なくたっていいだろ」「バカね、授賞式の日は忙しくてゆっくり見て回れるわけないじゃない、だから今来たのよ」
「それもそうだな、じゃあ入ろうか」
「ええ」

 なぜか、姉貴は窓口に向かった。
「……これが政府の許可証明書で……」
「はい、全部そろっていますね」
「おいおい何やってんだ?」
「あ、葵。入国審査の書類。ここにサインしないところがあるから」
 いまさら入国審査? わけがわからなかった。防疫関係か何かか。だが、署名せずに済む雰囲気ではなさそうだったから、この場はおとなしく従うことにした。
「はいはい。Mamoru……、Azami……、っと。いっちょ上がり」
 姉貴愛用のパーカーをコトリと机の上に置く。
「ありがとう、これでもう大丈夫よ、あなた」
 刹那。
「…………え?」
 激しい後悔を招く行いをしたことに気づいた。
「これで、姉弟じゃなくて夫婦だね」
「な、な、な、何を言ってるんだよ姉貴。
 俺たちは姉弟で……」
 嫌な汗が、額に、掌に、たぱたぱと止め処なく流れているのが自分でわかる。
「姉弟? そうね葵、私たちは姉弟よ。でもね、この国では姉弟でも結婚できるのよ。
 父親か母親、どちらかが違っていれば、ね」
 スウェーデン婚姻法は異母もしくは異父の兄弟姉妹の結婚を認めている、と知ったときには、もはや後の祭りだった。
413原子の蜘蛛 ◆3AtYOpAcmY :2009/12/10(木) 20:09:36 ID:yRfBuTbg
 そう、姉貴と俺は、姉弟は姉弟でも腹違いである。
 俺の親父は、俺のお袋と不倫し、妊娠させた。姉貴のお袋は、俺の親父が姉貴を引き取ることを主張したこともあって最初は離婚にかなり抵抗したらしいが、ついには以下の一点を親父が呑むことと引き換えに離婚を承諾した。
 曰く、「豊奈の恋愛、結婚に際してその自由意志を認め、決して口を差し挟まない」こと。
 遊び人の父親ほど自分の娘は可愛く感じるものらしい。親父がそうだとすれば、姉貴のお袋はつまらない男を姉貴にあてがうことで親父に復讐するつもりだったのか。

 そうすると、今回のことも三者間でコンセンサスを踏んでいる可能性が高い。
 つまり、結果的に見れば、俺は再婚するために親父とお袋に売られたことになる。
 ……親父も親父だし、お袋もお袋だが、その姉貴のお袋も大概ひどい女性(ひと)だ。

「この事、親父は? 俺や姉貴のお袋は?」
「もちろん知ってるよ〜。結婚式には来てくれるって」
「結婚式『には』って、じゃあ、授賞式には?」
「ああ、あんまり長い間仕事を休めないからどっちかしか参加できないって言うから」
「バカな!」
 あまりのことに叫んでしまった。
 だってそうだろう、ノーベル賞という学者として最高の栄誉と、結婚という、誰もが迎える小さなイベント、人によって重さはよりけりだが、どちらが重要かは論を待たないところだろう。それをだ。
「だって、スウェーデンは18歳にならなきゃ結婚できないから、今まで受賞を遅らせて葵が18になるのを待っていたんだよ。どっちが大事かなんて言うまでもないんじゃないかな?」
「受賞を? わざわざ?」
「だって、そんなことのために葵との結婚プランを台無しにされたくなかったんだもん。
 ノーベル委員会だって少しぐらいわがまま聞いてくれたっていいよねぇ?
 ねっ、それじゃあ……」
 まともじゃない。姉貴は価値観が狂っている。
「これからもよろしくね、『あなた』」
 だが、おれは……。
「ああ、一緒に生きていこう、あn、いや、……『豊奈』」
 この狂気の女に身を委ねる以外の術を知らなかった。


「ねえ、あなた」
 実の娘の晴れ姿を見ながら、二重に満足した面持ちの浅見有希子は、自分の(元)夫・操に声をかけた。
「私は、いつでもいいですからね」
「え?」
「私のマンションにお越しになりたいときはいつでもお待ちしておりますし、復縁なさりたいときにはいつでも応じますから」
 有希子は操の今の妻、清奈(きよな)を一瞥した。
 敵ではない。
 それは、彼女の一貫した認識であり、妻の座を奪われた今でも変わらない確信であった。

「愛しています、操さん。ずっと、永遠に」
414広小路淳 ◆3AtYOpAcmY :2009/12/10(木) 20:10:15 ID:yRfBuTbg
以上です。
手続き上おかしなところは見逃してください。
スウェーデンで近親婚が認められていると聞き及んでやってみたかったネタなんです。
415名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 20:22:00 ID:oDQTa4Hr
おお、その手がありましたか。拍手です。
ちなみにスウェーデン婚姻法全文の日本語訳を発見したので参考までに。
ttp://www.senshu-u.ac.jp/School/horitu/researchcluster/hishiki/hishiki_db/thj0090/swedishfamilylaw.marrige.index.htm

細かいことを言えば、定められた執行者の下で結婚式を挙げた時点で結婚が有効になるそうですが、そんなものは
挙式が終わるまで黙っていれば無問題
416名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 06:38:22 ID:hTeFHPce
スウェーデンさんパネぇっすGJ!!
417名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 08:56:40 ID:Wp0rTp13
このスレを覗いたキモ姉&妹がパスポートの手配を始めました
418名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 09:07:01 ID:32P4CYHj
ユルユルな小ネタを投下させていただきます。




今日は親友とゆう名の鬼畜共について物申したいと思う。
平々凡々なオレが、こんなイケメン王子とデブオタクの鬼畜共と親友なのはオレ自身でも謎である。
まぁ、ある一点を除けば二人ともイイ奴だからなんだろうな。
しかしその一点が問題で…


ホームルームが終わり、3人で宿題の範囲を確認して居るときに悪魔が現れた。

「ヤッホー!お姉ちゃんが迎えに来たよ〜!」

オレの姉である。高校生にもなってオレにベッタリで世話を焼いてくるお節介な奴だ。
お陰で彼女はおろか、女友達すら出来やしない。
今日こそはエスケープだ!
オレは姉が居るのとは逆のドアに向けて走りだした。

「捕まえて!」

姉が我が親友に指示を出す。
遅い遅い!今日のオレは逃走の為に二人よりドアに近い位置に立ち、更に二人との間には椅子で間合いを確保していた。
一瞬しか時間は稼げないが、一瞬で十分だ。

「なっ!?」

背後からオレが置いた椅子が滑ってきて脚にぶつかる。
大した勢いは無かったが、一瞬よろめく。
そして一瞬とはやはり十分な時間だった。
次の瞬間、オレは鬼畜デブオタクに取り押さえられていた。
デブオタクの癖に柔剣道二段、夏は水泳、冬はホッケーの選手で力もスピードもオレとは比べものにならないのだ。
イケメン王子も見た目や柔らかな物腰とは裏腹に親友に椅子をぶつけるような奴だしな。

「二人ともアリガトー。さぁ恥ずかしがらないでお姉ちゃんと帰ろうね〜」

腕を組むな。そして胸を当てるな!
そんな事を言えるわけもなく、すごすごとついて行く自分が情けないな…

「おーい。部活前の餌持ってきてやったわよ。」
「生徒会の会議を忘れてないでしょうね。」

デブオタクとイケメン王子にもお迎えが来たようだ。

「いつもありがとうございます。姉様」
「姉さん、ちゃんと覚えてるよ。いや、今は会長だね。」

そう。「シスコン」これが我が親友たちの唯一最大の問題点にして、鬼畜共の本質なのだ。
お前ら!自分達がシスコンだからと言って、オレにもシスコンを押しつけるな!
まぁまぁ美人だが、こんな奴ゴメンなんだよ!
押しつけるなら、お前らの料理上手で巨乳な姉とかスレンダーで知的な姉を押しつけてくれ。
代わりにオレの姉をやろう。
たのむよ、親友だろ・・・


「ねぇねぇ、みんな弟とお風呂はいってるんだって!今夜は私達も一瞬にお風呂入ろうね〜」
419名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 09:07:32 ID:32P4CYHj
オマケ
〜デブオタクの姉〜
今日も部活前に差し入れを持って行った。
餌なんていって渡してるけど、弟への愛情タップリの手作り。
もちろん愛情以外にも色々入ってるけどねwww
弟はそれを理解して食べてくれるし、私は幸せ者だ。
害虫共は私の愛情で肥えた弟には手を出さないし、食べている時の弟の幸せそうな表情を見れるなんて一石二鳥よね。
そういえば、反抗期でやせ細った時は害虫駆除が大変だったわね。
隙を見せるとすぐに湧いてくるから気をつけなくちゃ。
晩御飯は何にしようかしら?
その前に夕方のアニメを録画しなきゃ。
そうだ。晩御飯はあのアニメの主人公が好きなラーメンにしよう!
もちろん私でタップリだしを取ったやつ!



〜イケメンの姉〜
今日も私の弟は素敵ね。
最近は汚物がへばりついてくる事も少なくなってきたから、ますます魅力的だわ。
一時期は【カノジョ】などと戯言を言って、沢山の汚物がへばり付いて来たお陰で掃除には苦労したものね。
その点、生徒会は私以外は男子だけだから一安心だし、いつも一緒に居られるから一石二鳥よね。
でも安心できないわ。一緒に廊下を歩くだけで汚物共の視線を感じるもの…
しょうがない事だけど、用心しなくては…。
汚物のいない家に帰ったら、帰ったら弟のピアノでも聴きながらゆっくりしたいわ。
でもそれじゃ、くっついてイチャイチャ出来ないのよね…
ピアノかイチャイチャか…悩むわね〜
420名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 09:35:02 ID:7MdyNSqg
なんという素晴らしい姉たち。
421名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 14:59:43 ID:HUlS1eim
キモ姉が三人も同時に…!!
くそっ!なんて時代だッ!!
422キモ姉数え歌:2009/12/11(金) 17:16:57 ID:W9VnAWly

『一つ、人より知れた仲』
『二つ、触れると溢れ出す』
『三つ、見つめたその先に』
『四つ、喜ぶ顔がある』
『五つ、いつでも見ているわ』
『六つ、無邪気な幼児期に』
『七つ、並んで語らいだ』
『八つ、約束覚える?』
『九つ、この身が大人になれば』
『十で、嫁ぐわ貴方のもとへ』
423名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 18:03:18 ID:EvSztB51
面白いと思ってるの?
424名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 19:29:32 ID:esGO5aue
>>423
何も案ださないで批判だけしてる
お前よりかは数100倍面白い
425名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 19:55:48 ID:Lv6Ymgbz
なぜ反応したし
426名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 20:05:26 ID:Y8kI3AkU
主に
427 ◆cW8I9jdrzY :2009/12/11(金) 20:27:36 ID:9lwRwHRb
>>395-401の続きを投下します。
SSの属性は以下となります。

※一次・高校生・双子の兄妹・修羅場あまり無し・流血無し・エロ有り

好みの分かれる内容になるかと思いますので、苦手な方は酉でNGお願いします。

それでは投下。
428水野兄妹観察日記・2(1/6) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/11(金) 20:28:39 ID:9lwRwHRb
夜の自室で、啓一はパジャマ姿でベッドに腰をおろしていた。
学校の授業に部活、夕食、風呂に勉強と、忙しくも充実した一日が終わり、
あとは寝床について安らかな眠りを享受するだけ。
ベッドに座る啓一の表情は、波紋一つない湖面のようだった。
確かに端正な顔立ちではあるが、それが彼が異性に好かれる、決定的な理由ではない。
啓一が普段から身に着けている、包容力に満ちた優しい物腰。
男に対しても女に対しても気取ることなく、自然と相手を尊重できる感性。
啓一のそういった部分に、周囲の人間は魅力を感じるのである。
そしてそれは、彼、水野啓一以外の男が決して持つことはできない要素だった。

「んっ……はぁ、んんっ……」
ベッドの傍らには、やはり冬物のパジャマを着た恵がひざまずき、
啓一の下半身に顔を寄せ、何かの行為に熱中していた。
その行為は二人にとってはごく自然なものらしく、
じっと恵を見下ろす啓一の顔には、安らぎに満ちた微笑みが浮かんでいた。
啓一の手が伸びて、妹の細い黒髪をそっと撫でる。
彼のそれと同じ色で、そして彼よりも長く繊細な、日本人形を思わせる艶やかなストレートヘア。
力強い啓一の手と指が、そんな恵の黒髪を優しくとかしていく。

「恵……」
啓一が呼ぶと、恵は上目遣いに彼を見上げた。
兄によく似た、整った顔立ち。啓一と同じ色の髪と瞳。
生まれたときから啓一のそばにいる双子の妹、そして彼の半身の少女。
恵は啓一の体から口を離し、ふわりと笑って言った。
「ふふっ……ねえ、私もいい?」
「ああ、上がってこいよ」
その言葉に恵は嬉しそうに微笑み、ベッドの上、兄の隣に腰を下ろした。
そして横にいる啓一に見せつけるようにゆっくり、じっくりとパジャマを脱いでいく。
扇情的な光景ではあったが、不思議と下品な印象はまるでなく、
寝巻きの下から現れた下着も、優美な笑顔も、どこまでも清らかだった。

ブラジャーもとろうと手をかけた恵の体を、不意に啓一が抱き寄せた。
「あっ……」
軽く声をあげた恵の白い首筋に、舌を這わせる啓一。
熱い唾液を塗りたくられるひんやりした感触に、彼女は身を震わせた。
「ん、んんっ、啓一――跡、残さないでね?」
「わかってる」
胸元と首、そして頬から耳へと、妹の体を丁寧に味わっていく。
啓一の体液が皮膚の表面から、恵の内部へとじわじわ染み込み、
強力な媚薬となって彼女の身を火照らせていった。
顔を赤くして自分の愛撫を受け入れる恵を、啓一は満足げな表情で眺めていた。
「ほら、こっち向いて」
「ん……んっ、んううっ」
細い顎をつかみ、軽く上を向かせた唇にそっと自分のを重ねる。
合わさった口の中で入り混じった呼気が熱を帯び、二人の体を温めた。
吸って、吐いて、吸って、吐いて。
足りない酸素は鼻から取り入れるしかないが、その呼吸でさえいとおしい。
429水野兄妹観察日記・2(2/6) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/11(金) 20:29:12 ID:9lwRwHRb
恵は、兄の呼気を体内にたっぷり取り込むと、一度、彼から口を離した。
「もう……いきなり何するのよ。私、今まで啓一の舐めてたんだから、汚いじゃない」
「ちゃんと風呂には入ったじゃん。それに俺もお前も、汚いなんて思ってない……だろ?」
啓一は悪戯っぽく笑うと、再び恵の唇を奪った。
今度は彼女の中に舌を差し入れ、緩慢な動きで口内を犯していく。
恵の方もそれを嫌がりもせず、とろんとした目を細め、啓一の舌に自分のそれを絡めた。
繋がった兄妹の口の中で、唾液に濡れた一対の舌が、円を描いて淫らに踊る。
「ん……んんっ、んふっ、んっ」
兄との接吻にふける恵の表情は、至上の幸福に満ち満ちていた。
啓一と体を繋げ、互いの呼気を、互いの唾液を混じり合わせる。
心も体も満たされる、最高の行為。
二人は夜の静寂の中、時を忘れてお互いを貪り合った。

「んあっ、はあ……はっ、はあっ……」
やっとのことで長い口づけを終えると、恵は啓一と抱き合い、彼を見上げた。
自分とよく似た双子の兄が、穏やかな眼差しで彼女を見つめ返している。
しかし恵は、啓一のことが兄だから、双子だから愛しいのではなかった。
実の兄妹であることも、こうした肉体関係も、二人の精神的な結合に比べたら些細なことだ。
単なる血縁ではなく、同一の心を共有した相手だからこそ愛しいと思い、
日々こうしてお互いの心の繋がりを、体を使って確かめ合うのである。

結局のところ、自分はただのナルシストなのかもしれない、と恵は思う。
啓一という鏡に自分を映して、満足しているだけの卑怯者なのかもしれない。
他人を愛すること、恋愛という当たり前の行為に没頭できる普通の人々に比べ、
自分はなんと臆病で、なんと醜い存在なのだろうか。
たとえば今日、啓一を訪ねてきた少女、渡辺ヒカル。
ヒカルは今まで啓一とろくに面識もなかったが、ヒカルが啓一に対して
思慕や憧れに近い感情を抱いていたのは、誰の目から見ても明らかだった。
好意を自覚するとすぐさま行動に移す、年頃の少女に特有の無鉄砲な勇気。
それは、とても恵には真似のできない行為だった。
あの真っ直ぐな少女と比べると、恵は自分の矮小さ、心の歪みを自覚せざるをえない。

「啓一、私……」
恵は啓一のことを愛していた。兄としてではない。ただの男としてでもない。
家族としてではなく、他人としてでもなく、だが確かに、恵は啓一のことを愛していた。
誰よりも好きで、誰よりも愛していて、そしてそれは何よりも異常なことで。
知らない人間が見たら嫌悪し、知る者が見れば怖気が走る、狂気に満ちた二人の関係。
そこにあるのは誰が見てもはっきりわかる、激しく燃え盛るような狂気ではなく、
逆に、黒く深い愛情に静かに耽溺するような狂気でもなかった。
だからこそ、自分は他の誰よりも、何よりも狂っているのだと、恵は静かに涙した。
生まれたときからねじれて歪み、存在そのものが常軌を逸していた、恵と啓一。
そんな狂った兄妹が、今、二人っきりで自分たちの身と心を慰めている。

不安と劣等感に苛まれ、抱きしめた啓一の背中を思わず強く締めつけてしまった恵だったが、
彼は彼女の全てを理解したかのような、慈愛に満ちた微笑みを浮かべて、言った。
「わかってる。わかってるよ……恵」
「啓一……」
「お前は臆病者でも、卑怯者でもない。そんなに自分を貶めるな。
 お前はひとりじゃないんだ。俺がそばにいる。ずっとそばにいてやるから……。
 だからそんな顔、するんじゃない」
恵の肩に腕を回し、優しく頭を撫でる。
それだけで恵は、半分に欠けた自分の心が、温かいもので満たされていくのを感じた。
「啓一、私……」
兄の胸に顔をうずめ、彼の体温と鼓動を直接感じ取る。
430水野兄妹観察日記・2(3/6) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/11(金) 20:29:48 ID:9lwRwHRb
薄暗い部屋の中、恵は自分の下着を脱ぎ捨て、一糸まとわぬ裸体を露にした。
雪のような白い肌を火照らせる、桃色の春の息吹。
啓一は片方の乳房を手のひらでそっと撫でると、もう一方の塊に唇を寄せた。
白い脂肪の表面を唇で軽くこすり、焦らしながら慎重に恵を責める。
「んっ……」
恵は目を閉じ、心の底から信頼しきった表情で兄に身を委ねた。
自分の意に沿わないことを啓一は絶対にしないという確信が、彼女にはあるようだった。
そして事実、啓一は妹の乳房を丁重な仕草で食み、緩慢な快感を恵に与えてくる。
啓一の唾液が冷ややかな感覚となって、恵の肌をかすかに震わせた。

「寒いか? 上、もっかい着た方が……」
「大丈夫」
下半身だけを外気に晒した啓一と違い、恵は素裸であったが、寒さを気にすることもなく、
硬くそそり立った彼の性器に指を這わせ、うっとりした声で言った。
「啓一があったかくしてくれたら、それでいいよ」
「わかった」
啓一はうなずくと、愛撫のペースを少し速めた。
恵の胸を揉みながら乳首を吸い上げ、優しくも激しい動きで彼女を高ぶらせていく。
「んっ、んん――あ、ああっ、んっ」
軽く、生まれたての赤子を扱うように丁重に、乳房の先端を甘く噛む。
どこを責めればいいか、どこを触ればいいか、どこに刺激を欲しがっているか。
啓一は恵の全てを理解していた。体だけではなく、その心の隅々まで。

つんと上を向いた乳房から口を離し、唾液の線を虚空に引いたまま、啓一が言った。
「下も……いくよ」
「うん」
恵の秘所に触れてきた啓一の指は、興奮ゆえか、少し温かかった。
人よりやや薄めの茂みと、その下で待ち構える肉の唇を、筆ではくようにさわと撫でる。
啓一は恵の反応を楽しむように微笑むと、彼女の下腹部に右の手を押し当て、
人差し指と中指の腹を女陰にこすりつけ始めた。
既にうっすら濡れ始めている恵の陰部が、兄の手によってだんだんほぐされていく。
起きている間は部屋を照らしていた蛍光灯は、とうの昔に光を失い、
代わりに傘の真ん中の小さな灯りが、夜の室内にぼんやりした陰影を漂わせていた。
白い肌が白く見えず、体の火照りも確認しにくいこの空間で、
彼ら双子の兄妹は心細い視覚に加え、柔らかな手触りと吐息混じりの音声と、
そして他人には決して理解できない、奇妙な感覚で相手と繋がっていた。

「あ、あっ、んっ、啓一……」
兄の指で大事なところをかき回され、恵が熱い声をあげた。
普段、学校の皆が決して聞くことのない、かん高くて可愛らしい喘ぎ声。
口を開いた陰唇の中、恵の内部に指を侵入させながら、啓一は彼女をベッドに押し倒した。
とさっ――恵の軽い体が寝床の上に転がって、弱々しい音を響かせた。
長い髪が黒い川となって白い大地の上を蛇行し、扇状に広がっていく。
啓一はベッドの上に寝転がった恵の秘所をいじりながら、
彼女の体にゆっくりと覆いかぶさると、またもその唇に自己のそれを重ねた。
「ん――んっ、んん……」
乱暴にではなく、激しくもなく、ただ唇をそっと重ね合わせるだけ。
貪るような情熱に溢れたキスも、唾液を混ぜ合う接吻も嫌いではないが、
本当に相手を必要だと感じ、お互いを切なく求め合うとき、
このような、ただ静かに触れ合うだけの繋がりを、二人は気に入っていた。
恵も啓一も、安らぎと心地よさに自分自身と相手を委ね、
無邪気な子供のような微笑ましさで、自分たちの影を一つに重ねた。
431水野兄妹観察日記・2(4/6) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/11(金) 20:30:19 ID:9lwRwHRb
それから啓一は、恵の唇といい陰唇といい、乳房から首筋にかけてまで、
彼女が求める部分をくまなく愛撫して回った。
彼の指と舌は喘ぐ恵を優しく、だが執拗に責めたて、
普段は慎ましやかな妹を存分に、淫らに鳴かせてやった。
そして時おり攻守を入れ替え、恵が啓一に奉仕する。
慣れた手つきで彼の陰茎をしごき上げ、袋を揉みながら亀頭に口づける。
小さな口を精一杯開けて啓一の太いものをくわえ込み、舌で彼を苛んでいく。
性器だけでなく、啓一の寝巻きを剥ぎ、
厚い胸板や腹筋を丹念になめ、彼を高ぶらせていく。

やがて二人は官能に陶酔しきった表情で見つめ合うと、音もなく体を交わらせていった。
「啓一……」
恵が物欲しげな声で兄の名を呼び、そのたくましい首に両腕を回した。
啓一の上に座り込む姿勢で、彼の上にゆっくりと腰を下ろす。
「恵……」
啓一の方も劣情を含んだ眼差しで恵を見つめ、その両脚を抱え上げた。
恵の体を自分の上に、屹立した自分の肉棒の上に、注意深く下ろしていく。
そしてよだれを垂らした恵の陰部が、兄の男性器を受け入れた。
軽いとはいえ人間一人分の重力が、一気に結合部にかかり、深く深く恵を貫く。
急な角度での挿入に、必死に閉じた恵の唇をこじ開け、甘いうめきが漏れていった。
「ん――ん、んんっ、んううっ」
完全に彼の上にのしかかり、苦しげだが満足げな吐息をつく。
豊かな乳を啓一の体に押し当てて潰し、その形を扁平に歪ませる。
啓一にぐっと抱きついた恵は、自分の中が兄のもので満たされているのが嬉しいのか、
彼の肩に自分の顎を乗せるとにっこり笑ってみせた。

結合を果たした二人は、影を重ね合わせたまま、しばらく動かなかった。
お互いの温もりに抱かれながら、きつい抱擁を交わして呼吸を同期させる。
「ん、はあ、はあっ、啓一ぃ……」
「中――キュウキュウって、熱いな……」
「うん、だって啓一の……一番奥まで入っちゃってるもん」
恵の体の欠けた部分を、啓一の突起が満たす。
女としての本能以上に、愛しい者を受け入れる喜びの方が強かった。
啓一の体にしがみついて荒い息を吐く恵の姿は、狂おしいほど淫靡でありながら、
日ごろの清楚なイメージはいささかも損なわれていなかった。
むしろ今の笑顔の方が、慈愛溢れる聖母のような温かみさえ感じさせる。

やがて待ちかねたのか、兄と一つになっていた恵が徐々に動き出した。
啓一と抱き合いながら、腰をすりつけて中をかき混ぜる。
「は、はあっ……んっ、あ、ああっ」
「恵……気持ちいい」
「んっ、わ、私もっ、あんっ」
啓一の上でゆさゆさ体を揺さぶって、深い快感を全身で感じ取る。
同じ親から同じ日に生まれた男を自分の中に受け入れて、恵が可愛らしい喘ぎ声をあげると、
啓一も安らかな笑みを浮かべて恵を抱きしめ、彼女の中をこねくり回す。
二人が動くたびに長い黒髪が揺れて、薄闇の中に細い線を踊らせた。
双子の兄妹は至福の表情で性交にふけり、快感と幸福とに酔いしれた。
性器を繋げたまま、またも口唇を合わせて互いの唾液と吐息を混ぜ合わせる。
「んっ、んむぅっ、んっ、んんんっ!」
恵は啓一の猛々しい肉棒の上に座り込み、優しくも力強く、自らの中をかき回した。
ひたすら腰を前後に動かし、兄の体に自分の身をこすりつけて
自分が一番感じる、一番気持ちのいい部分を丹念に刺激する。
「んっ、んあっ! んんっ、んんんんっ !!」
喜びのあまり恵の目から涙がこぼれ、両の頬に細い筋を形作った。
432水野兄妹観察日記・2(5/6) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/11(金) 20:30:50 ID:9lwRwHRb
もちろん啓一の方も、ただ座ったままじっとしているわけではなかった。
体の重心を緩やかに上下させ、愛する女の中を何度も何度も、丁寧に突き上げる。
生まれてからずっと啓一のそばにいた、彼の分身と言える少女、恵。
優しくて繊細な彼女が、自分と体を重ねて恍惚の声をあげるさまは、
啓一がこの世で最も魅せられる光景だった。
恵の頭を自分の肩に押しつけ、その柔らかな耳たぶをそっと噛むと、
彼の妹は背筋をぶるぶる震わせて、甘い嬌声をあげた。
「ひあっ! はあぁ、啓一ぃ……」
二人の結合部は卑しい体液にまみれ、熱い蜜が溢れていた。
その中を硬い肉の槍が往復し、音を立てて恵の膣内をえぐっていく。
「恵、いい……気持ちよすぎて、ヤバい……」
「わっ、私もっ、わたしもぉっ! はあ――い、いいっ!」
恵は涙を流して唾を吐き、啓一と共によがり狂った。

恵は啓一のことを愛していた。啓一のことを誰よりも好きで、誰よりも愛していて、
そしてそれは何よりも異常であることを、恵自身が自覚していた。
だが、これも確かな愛情なのだ。愛しい、いとおしいと思う心なのだ。
啓一が好きだ。誰よりもお互いを理解している間柄だ、今さら離れられるはずもない。
そしてそれは啓一もまた同じ。二人は表裏一体、一つの存在なのだから。
生まれたときからねじれて歪み、存在そのものが常軌を逸していた、恵と啓一。
そんな狂った兄妹が、今、二人っきりで自分たちの身と心を慰めていた。

やがて、隅々まで妹の中を蹂躙した啓一が、かすかに震える声で言った。
「恵……そろそろ、いくぞ……?」
それに答える恵の返答も、歓喜に満ちていた。
啓一の体にひしと抱きつき、全身を弓のように引き絞って哀願する。
「うん、啓一――私の中、きて……」
若い牡をくわえ込んだ女性器が収縮し、射精を要求してやまない。
自分を求める双子の妹の望みに、啓一はふっと柔らかい笑みを浮かべると、
恵の中に自分の濃厚な子種をたっぷりとぶちまけた。
「ああっ、あっ、んあぁ――あ、ああっ、あっ」
乾いた旅人がオアシスの泉に飛び込んだとき、きっとこういう顔になるのだろう。
恵は最愛の相手に抱かれたまま、狂おしいほどの笑顔で弾けとんだ。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 
433水野兄妹観察日記・2(6/6) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/11(金) 20:31:20 ID:9lwRwHRb
愛の営みを終えた二人は、甘くとろけた呼吸を部屋に響かせながら
互いにベッドの上で寄り添いあい、幸せなひとときを過ごした。
恵は行為の後、いつも以上に啓一に甘えたがる癖があった。
今もべとべとの体を啓一にくっつけて、悪戯っぽい表情で笑っている。
「ふふっ、啓一……大好き♪」
「その顔でそんなこと言わないでくれ。またしたくなるだろ?」
「いいよ。啓一がしたいなら、何回でも」
「毎日毎日、そう何発もできないって。ただでさえ睡眠時間削ってるのに」
「えー、そんな意地悪言わないでよ。ほら、もっかいしよ?」
「だからもうできませんって。ほら、後始末してそろそろ寝るぞ。
 まったく、さっきまであんなにメソメソしてたってのに、もうこれだからな」
啓一は体と心で繋がった妹の顔を見つめ、呆れた口調で言った。

一方の恵は啓一の頬を優しく撫で、明るく、だがわずかに憂いを帯びた声で言い返した。
「啓一――私ね。今、すごく幸せ。ずっと啓一とこうしていたい。
 ホントはダメだって、やっちゃいけないことだって、わかってるのにね」
「恵?」
「私の心も体も、全部啓一のものだよ。生まれてからずっと、これからもずっと。
 だって私はあなたの半分で、あなたは私の半分だから」
安らかで、幸せそうで、そして少しだけ悲しげな声だった。
なめらかな黒髪が白い肌の表面をつたい、音を立てずにふわりと揺れる。
「みんなが私たちのこと、勘違いしてる。何でもよくできる兄妹だって。
 仲のいい双子の兄妹だって、お母さんもお父さんも、そう思ってる。ホントは全然違うのに」
「…………」
「幸せだけどちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、寂しい。
 ねえ啓一、もっとあなたをちょうだい。また一つに戻ろうよ」
「そしたらもっと寂しくなるだろうな。お前もわかってるんだろ?
 だってお前は、俺の半分なんだから」
「啓一、私……」
啓一は黙って、妹の裸体をかき抱いた。
恵の白い頬に手を這わせ、そっと唇を合わせると、その目から一筋の雫がこぼれ落ちた。
兄と妹。二人の夜はいつもこうして更けてゆく。
火照った体を交え、実のない言葉を交わし、そして互いの心と体を慰め合う。
これが日々繰り返される、啓一と恵の予定調和だった。
434 ◆cW8I9jdrzY :2009/12/11(金) 20:31:47 ID:9lwRwHRb
以上となります。
続きはまた後日投下しますので、よろしくお願いします。
それでは、失礼致しました。
435名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 20:43:43 ID:UuhiKyvN
満たされていて安らぎきれないもどかしい感じがなんともGJです
436名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 20:43:45 ID:EvSztB51
>>424
荒らし死ね
437名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 21:23:20 ID:Bk+2jkzA
BMSAやSSでもそうなんだけどさ、批判厨って上手い人に対しての新作クレクレはよくやるけど、
まずは自分で1から作ってみようって気にはならないんだよね。
その癖して発展途上な人の作品に罵声を浴びせる事には一生懸命。

ホント最悪。
438名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 21:33:35 ID:eFpH2Sef
>>434
GJ!
最初から狂気を共有している兄と妹というのは意外とここでは珍しいパターンかも
続きに期待しております
439三つの鎖 8 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/12(土) 01:48:59 ID:94LLUvnk
上の方申し訳ありません
続きを投下します

※以下注意
性的表現あり
血のつながらない自称姉あり
440三つの鎖 8 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/12(土) 01:53:33 ID:94LLUvnk
 「梓」
 僕は自分でも気がつかないうちに梓の名前を口にした。
 夏美ちゃんも僕の見ているほうを向いて目を見開いた。
 梓はゆっくり近づいてくる。
 「梓ちゃん!だめだよ!」
 春子もいる。梓の肩をつかむ春子。
 梓は春子の手をつかみ関節を極めた。声にならない悲鳴を上げ春子は手首を抑えて膝をついた。梓は春子に一瞥もくれずに近づいてくる。
 僕は立ち上がった。つられるように夏美ちゃんも立ち上がる。
 夏美ちゃんは震えていた。
 梓は僕と夏美ちゃんに手の届く距離で立ち止まった。
 怒りと憎しみに歪んだ表情で僕たちを睨む梓。その視線に悪寒が走る。
 「ねえ夏美」
 梓はゆっくりと夏美ちゃんに呼びかけた。夏美ちゃんは真っ青になって震えている。梓の声は静かで抑制が効いているのに、聞くだけで鳥肌がたつほどの激情を否応に感じさせる。
 「私の兄さんに何をしたの」
 怒りに震える梓の声。夏美ちゃんは脅えるように一歩下がりベンチに引っ掛かってその上に座りこむようにこけた。震える夏美ちゃんに梓は詰め寄る。
 「何か言ったらどうなの!?」
 「梓!」
 激昂して夏美ちゃんにつかみかかる梓を僕は後ろから羽交い絞めした。梓の肘が僕の首を打つ。姿勢を崩した僕は梓に足を払われ無様にこけた。
 「言えって言ってるのが分からないの!?」
 梓の叫び。かろうじて受け身をとり起き上った僕の視界に、夏美ちゃんに向かって腕を振り上げる梓の姿が映る。
 「梓!」
 僕は梓の腕をつかんで止めた。梓は僕をきっと睨んだ。
 「何でなの!?何でこんな女を庇うの!?」
 夏美ちゃんはびくっと震えた。脅えるように梓を見上げる。梓は憎しみのこもった視線を震える夏美ちゃんに向けた。
 「私の兄さんになにをしたのよ!?兄さんは私に逆らわなかったのに!!傍にいてくれたのに!!私を見てくれたのに!!私のものだったのに!!」
 「梓!やめろ!」
 梓は僕を睨んだ。荒んだ視線に背筋が寒くなる。足がすくむ。
 「うるさい!」
 地面の感覚がなくなり視界が反転する。梓に腰を払われ僕は地面に叩きつけられた。受け身をとるも硬い地面に投げられた衝撃に息が詰まる。
 「ねえ兄さん。この女のどこが良かったの」
 梓は膝で僕の指に容赦なく体重をかける。骨の軋む音と感触。動けない。はねのけようとする僕の首筋に梓の手が伸びる。頸動脈を押さえられ意識が遠くなる。
 「そんなにこの女のキスがよかったの」
 薄れゆく意識を必死で保つ中、唇に何かがふれる感触。歯を割り何かが口腔に侵入してくる。熱い何かが口の中をはいずりまわる。
 「やめてっ!!」
 夏美ちゃんの悲鳴が鼓膜を貫く。僕は首筋を押さえる梓の腕を払った。意識が鮮明になる。
 「んっ、ちゅっ、じゅるっ、んっ、はむっ、ふちゅっ、んんっ」
 目に入ったのは僕の唇をむさぼる梓の姿。口腔を舐めまわす梓の熱い舌の感覚に鳥肌が立つ。
 僕は梓を突き飛ばそうとしたが、意識が落ちかけた直後のせいか力が入らない。僕の腕はのしかかる梓を引きはがせずにいた。
 その間も梓は僕の唇をむさぼる。唇をついばみ、舌に絡みつき、口腔を舐めつくす。おぞましい感触に体がすくむ。
 「やだっ!やめてよっ!」
 夏美ちゃんの悲鳴。梓はゆっくりと唇を離した。唾液が僕と梓の口の間に糸を引いた。
 「ふっ、ふふっ。何よ。簡単じゃない」
 梓は嬉しそうに僕を見下ろした。
 「ははっ、何よ、変態シスコン、妹にキスされて拒まないんだ」
 はっきりとしているがどこか虚ろな声で僕を罵倒する梓。恐怖に鳥肌が立つ。僕はもつれる足で立ち上がり梓と距離をとった。
 「あはっ、ははっ、あははっ、変な兄さん」
 ひきつった笑みを浮かべる梓に底知れない恐怖を感じる。脅える心を必死に奮い立たせて僕は梓を睨んだ。
 「あははっ、変な顔、ははっ。まあいいわ。帰るわよ兄さん」
 そう言って梓は僕に背を向けた。梓の視線の先に膝をついてうずくまったままの春子がびくっと震えた。
 「今日はまだ兄さんに髪をといてもらってないもの。行くわよ」
 僕は動けなかった。今の梓と一緒にいる勇気など無かった。ただ恐怖に震えていた。
 「ねえ兄さん。聞いてるの?帰るわよ。帰ってシャワーを浴びてから髪をといてもらうわ。兄さんの手料理も食べたい」
 そんな僕を苛立たしく見つめる梓。その視線に押されるように僕は後ずさった。
 「あはははっ、何を脅えているの?そんなに兄さんは私が怖いの?」
 おかしそうに梓は僕に近づく。逃げようとしても足が言う事を聞かなかった。
 そこに夏美ちゃんが割って入った。庇うように両手を広げ僕と梓の間に立ちはだかる。
441三つの鎖 8 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/12(土) 01:57:00 ID:94LLUvnk
 「何なの。邪魔よ」
 「あずさぁ。もうやめてあげてよぉ」
 夏美ちゃんの小さな背中が震えている。
 「お願いだよぉ。お兄さんをこれ以上苦しめないで」
 涙ぐんだ夏美ちゃんの声。
 梓は何も言わずに夏美ちゃんを突き飛ばした。
 倒れる夏美ちゃんを僕は抱きしめるように受け止めた。梓の顔色が変わる。
 「兄さん。何をしているの」
 僕の腕の中の夏美ちゃんは泣いていた。涙がぽろぽろこぼれて僕の腕をぬらす。
 「兄さん。帰るわよ」
 僕は首を横に振った。梓は唇をかみしめて僕を睨んだ。
 「なんなのよ。いい加減にしてよ」
 梓の声は震えていた。怒りか、憎しみか、悲しみか、ほかの感情なのかは分からない。
 涙が梓の頬を伝う。そのまま滴となって梓の足元に落ちた。
 「また兄さんは私を一人にするんだ」
 震える梓の声が僕の胸に突き刺さる。
 違うと言おうとして言えなかった。
 「ゆるさない」
 梓の声に心が軋む。
 夏美ちゃんが脅えたように梓を見上げた。
 「死んでしまえ」
 梓の言葉が胸に突き刺さる。
 死んでしまえ。
 視界が歪む。頭が真っ白になる。脳裏に浮かぶのは梓の言葉だけ。
 死んでしまえ。
 「梓ちゃん!待って!」
 気がつけば梓は走って公園を出て行くところだった。春子は立ち上がり、痛そうに手首を押さえた。
 「夏美ちゃん!幸一君をお願い!」
 そう言って春子は梓の後を追い公園を出て行った。
 夏美ちゃんが僕に何か言っているが、脳裏に響くのは梓の言葉。
 死んでしまえ。
 その言葉が何度も脳裏に響いた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 気がつけば僕は横になっていた。
 ベッドの上で布団に包まれている。女の子の匂い。僕は起き上がって周りを確認した。
 見覚えのない薄暗い部屋には机に大きい本棚。可愛いぬいぐるみがいくつか置いてある。
 頭が痛い。梓の言葉が蘇る。
 死んでしまえ。
 思わず頭を押さえようとして、初めて手の感触に気がついた。
 柔らかくて温かい。夏美ちゃんが僕の手を握っていた。
 制服のままベッドに突っ伏して寝ている。夏美ちゃんの顔には涙の跡があった。
 僕は頭痛を我慢して深呼吸した。ここは夏美ちゃんの部屋か。
 頭痛をこらえて思い出す。
 公園で夏美ちゃんといて、告白を受けた。
 そこに梓がいた。梓は泣いていて。ゆるさないと。死んでしまえと。
 僕は深呼吸した。梓に会わないと。会って話さないと。
 夏美ちゃんを起こさないようにゆっくりベッドを出た。素足が床につく。僕は梓ちゃんに毛布をかけた。
 荷物を確認する。時間を見ようと携帯を見るとメールが。春子からだ。
 『梓ちゃんとは私が話しています。今は少し落ち着いています。私は梓ちゃんの家に泊まって様子を見ます。今は顔を合わせない方がいいです。耕平君の家にでも泊まってください。おじさんとおばさんには伝えておきます』
 文面を何度も読む。
 僕には春子が何を考えているのか理解できない。
 物心ついた時から春子と一緒にいた。僕と梓の世話を焼き何度も助けてくれた。梓が荒れていた時も大けがをしたのに、原因を誰にも話していない。優しく強い僕のお姉さん。
 それなのに僕を犯した。
 そして今、また僕と梓を助けようとしてくれている。春子の事が分からない。それでも、今は信じていいと思ってしまった。
 後ろで人が動く気配。
 「あれ?あれ?」
 慌てて起き上がる夏美ちゃん。毛布が肩から落ちる。
 「ここにいるよ」
442三つの鎖 8 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/12(土) 02:00:18 ID:94LLUvnk
 夏美ちゃんは僕の方に振り返った。
 「お兄さん大丈夫ですか?」
 心配そうに僕の顔を覗き込む夏美ちゃん。
 「心配をかけてごめん。公園であの後僕はどうなったの?」
 「覚えてないのですか?」
 夏美ちゃんは部屋の電気をつけた。
 「お兄さん呆然として何度呼んでも返事してくれなくて」
 部屋が明るくなる。夏美ちゃんの心配そうな表情がはっきり見える。
 「ほっとくわけにもいけませんからお兄さんを私の家まで引っ張ってきたんです」
 全く覚えていない。それほどショックだったのか。
 「ベッドに倒れたと思ったら寝ちゃっていてびっくりしました」
 「迷惑かけてごめんね」
 「そこはありがとうでいいです」
 「ありがとう」
 夏美ちゃんは笑った。明るい笑顔がまぶしく感じる。
 公園での夏美ちゃんの姿が脳裏に浮かぶ。震える小さな背中で僕を庇ってくれた夏美ちゃん。その姿を思い出すだけで涙が出るほど胸が温かくなる。
 「…ありがとう」
 「え?」
 夏美ちゃんは僕を不思議そうに見た。僕は笑ってごまかした。
 「僕の靴下脱がしてくれたんだ」
 「はい。お兄さん寝ていましたから」
 「どこにあるかな」
 夏美ちゃんが心配そうな顔をする。
 「どこに行くのですか」
 「家に戻るよ。梓と話す」
 「いけません」
 夏美ちゃんは真剣な顔で僕を見上げた。
 「今のお兄さんは冷静さを欠いています。酷なようですが、今梓に会っても何もなりません」
 「心配してくれてありがとう。今はもう大丈夫だよ」
 「気がついてないのですか?」
 夏美ちゃんは僕の手をつかんだ。
 「見てください」
 僕の目の前に夏美ちゃんはつかんだ僕の手を掲げた。
 「大丈夫?」
 夏美ちゃんの手は震えていた。
 「違います」
 頭を左右に振り夏美ちゃんはゆっくり手を離した。
 震えたままの僕の手。震えているのは夏美ちゃんの手ではなくて僕の手である事に初めて気がついた。
 死んでしまえ。脳裏に梓の言葉が蘇る。
 「今のお兄さんを梓に会わせることはできません」
 僕は手を握りしめた。それでも震えが止まらない。
 「私のそばじゃなくてもいいです。どこにいてもいいです。それでも今だけは梓の元に行かせるわけにはいきません」
 梓の姿が脳裏に浮かぶ。冷めた表情で僕を睨む梓の表情。死んでしまえという梓の言葉。
 「お兄さんは疲れているのです。どんな人でも嫌われ続けるのは大きな負担です。特にお兄さんは梓に、身近な家族に嫌われ続けていたのですから」
 今までずっと梓に嫌われ続けても耐えられたのに、この瞬間は耐えられる気がしない。
 梓に会う事を考えるだけで足がすくむ。恐怖に冷たい汗が流れる。
 「とりあえず座ってください」
 夏美ちゃんが僕の手を引いてベッドに座らせた。とても小さな力なのに、僕は逆らえなかった。
 背を向ける夏美ちゃん。
 「飲み物を持ってきますね」
 夏美ちゃんは振り向いて僕を見た。
 気がつかないうちに僕は夏美ちゃんの袖を握っていた。
 僕は何をしているのか。頭が混乱する。それでも夏美ちゃんがいなくなると思っただけで耐えがたい心細さを感じた。
 夏美ちゃんはベッドに座った僕を抱きしめた。
 「大丈夫です。私はどこにもいきません」
 優しい囁き。泣きたくなるほどの温かさ。自然と袖を握る力が抜ける。
 「大丈夫です」
 僕は夏美ちゃんの袖を離した。
 「待っていてくださいね」
 夏美ちゃんは微笑んだ。優しくて温かい笑顔。
443三つの鎖 8 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/12(土) 02:02:25 ID:94LLUvnk
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 夏美ちゃんは湯気の昇るカレーとお茶を持ってきた。
 「お腹すいていませんか?」
 匂いを嗅いだ瞬間、現金な胃袋が食べ物を求める。カレーはおいしかった。
 食事が終って夏美ちゃんが入れてくれたお茶を飲んだ。
 「お兄さん。今日はどうします」
 夏美ちゃんが質問した。どうするか。家には帰れない。耕平にでも連絡して泊めてもらおう。
 「よかったら泊まっていきませんか?」
 僕は驚いて夏美ちゃんを見た。夏美ちゃんは顔を赤くしてあたふたする。
 「いえ、その、そう言う訳じゃなくてです、その」
 大きく深呼吸する夏美ちゃん。すーはーすーはーと聞こえるぐらいに息をする。
 「もう夜も遅いですし」
 「でも家の人がいるでしょ」
 夏美ちゃんが首を横に振った。
 「お父さんもお母さんも今は単身赴任してるんです」
 寂しそうにつぶやく。
 「だから私この広いマンションに一人きりなんです。さみしいですよね」
 ごまかすようにえへへと笑う。
 「だから問題ナッシングです!」
 「あのね夏美ちゃん」
 僕は頬をかく。
 「男を軽々と家に泊めるものじゃないよ」
 何で僕はこんな事を言わなくちゃいけないのだろう。
 「お兄さんなら大丈夫です」
 「男は基本的に狼って聞いたことない」
 「お兄さんもですか。私を食べちゃうんですか?」
 にやにやする夏美ちゃん。僕の胸を指先でつんつんつつく。
 「僕も男だよ」
 硬直する夏美ちゃん。
 「あんまり男をからかわない方がいい」
 顔を赤くする夏美ちゃん。僕も恥ずかしい。
 「僕だって夏美ちゃんを傷つけるような事はしたくないしするつもりもない。でも、間違いはどこでも起こるよ」
 あの時の春子と僕のように。
 顔を真っ赤にしてあわあわ言う夏美ちゃん。頭から湯気が出そうだ。
 「今日はありがとう。帰るよ」
 僕は鞄を見つけた。中には僕の靴下がきれいに折りたたまれて入っていた。
 靴下をはきハンガーに掛けられている学生服を着た。
 「今日は本当にありがとう。じゃあね。また明日」
 僕は夏美ちゃんに背を向けてドアのノブを握る。
 その時、背中に温かくて柔らかい感触。
 腰にまわされる白くて細い腕。
 「お兄さんとなら」
 まわされる腕に力が入る。
 「間違いが起きてもいいです」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 夏美ちゃんの腕は細かった。簡単に振りほどけるだろう。それなのに僕は振りほどけなかった。
 熱を持った細い腕が万力のようにしっかりと、羽のように優しく締め付ける。
 「夏美ちゃん。冗談はやめて」
 何を言っている。僕のすべきことは何も言わずに去ることだ。
 「お兄さん」
 それなのに動けない。
 「好きです」
 夏美ちゃんの囁きが熱い。
 「好きです」
 僕は馬鹿みたいにドアノブを握ったまま動けない。
 夏美ちゃんの白くて小さい手がドアノブを握る僕の手をつかみ、僕の指をドアノブから引き離していく。
 触れる指が熱い。
444三つの鎖 8 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/12(土) 02:04:41 ID:94LLUvnk
 「お兄さん。こっちを見てください」
 見れば一線を越えてしまう。
 腰にまわされた夏美ちゃんの腕がかすかに震えている。
 「やっぱりダメですか」
 震える夏美ちゃんの声。
 「私だと魅力ないですか」
 違う。僕は振り向いた。顔を真っ赤にした夏美ちゃん。目尻に浮かぶ涙。
 小さなあごに指をかけ上を向かせる。桜色の小さな唇。
 僕はキスした。
 柔らかくて温かい感触。
 「ちゅっ、ちゅっ、れろっ、はむっ」
 夏美ちゃんは拙い動きで一生懸命僕にキスしてくる。夏美ちゃんの舌が僕の口腔に入ってくる。
 「んっ、じゅるっ、ちゅっ、んんんっ」
 拙い動きで一生懸命舌を絡めてくる夏美ちゃん。
 「んんんんっ!?」
 僕は夏美ちゃんの唇をむさぼった。
 「んっ、んんっ、んんんっ!」
 唇をゆっくり離す。夏美ちゃんの唇から涎が落ちる。
 僕は夏美ちゃんをベッドに押し倒した。
 小さくて軽い体。
 「魅力があり過ぎて困る」
 夏美ちゃんの耳に囁く。夏美ちゃんが泣きそうな顔をする。
 「いいんだね」
 夏美ちゃんは赤い顔で何度も首を縦に振った。
 「最後は外に出すよ」
 突然の事なのでコンドームなんて気の利いたものはない。夏美ちゃんは首を横にふった。
 「私、今日は大丈夫な日です。気にしないでください」
 そう言って夏美ちゃんは僕の頬にキスした。
 「お兄さん。一つだけお願いしていいですか」
 白くて小さい手が僕の頬に触れる。温かくて柔らかい感触。
 「私、初めてですからきっと痛がると思うんです」
 その手はかすかに震えている。
 「だから、私が何を言っても痛がっても無視してください」
 恥ずかしそうにもぞもぞする。
 「私を滅茶苦茶にしてください」
 僕は無言でうなずいた。
 夏美ちゃんのワイシャツのボタンを外していく。白いブラジャーと微かに桜色に染まった肌が見える。
 「恥ずかしいです」
 顔を真っ赤にする夏美ちゃん。震える小さい肩。
 僕はブラジャーを外した。程よい大きさの胸が露わになる。白い滑らかな肌。僕は上から包み込みように撫でた。
 「ひゃんっ」
 夏美ちゃんが小さな悲鳴を上げる。柔らかくて滑らかな肌。僕はそのままゆっくり愛撫した。
 「きゃっ……やんっ……ああっ……お兄さん……んあっ」
 僕の下で顔を真っ赤にして身をよじる夏美ちゃん。その姿に僕の興奮も高まる。さらに激しく胸を揉む。
 「ああっ……お兄さん……きゃっ……ああっ……んっ……うううっ……あっ……やあっ」
 白くて滑らかな肌が汗に濡れしっとりする。
 「やっ……んっ……くすぐったいです……あんっ……あっ」
 夏美ちゃんの唇から喘ぎが漏れる。
 僕はその唇にキスした。
 「んっ!」
 そのまま舌を入れ夏美ちゃんの口腔を舐めまわす。
 「んんっ!じゅるっ!んっ!ちゅっ」
 さらにそのまま胸をはげしく揉む。夏美ちゃんの体が震える。
 「んんんんっ!ちゅっ、じゅる、ちゅ、ちゅっ、んんんっ!」
 乳首をつまむ。
 「んーっ!んんんんんんんっ!んっ!」
 唇を離す。
 「ああっ、あ、あんっ、やあっ、はぁっ、やあっ」
 首筋にキスする。強く吸う。
 「ひうっ!!」
445三つの鎖 8 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/12(土) 02:07:07 ID:94LLUvnk
 耳を甘噛みする。夏美ちゃんは小さな悲鳴をあげて震えた。
 さらに胸を揉む。大きく揉み、乳首をいじる。全身に口づけする。夏美ちゃんは激しく身をよじった。
 「あんっ、きゃっ、んあっ、ああああっ」
 夏美ちゃんが僕の頭を抱きしめる。
 「お兄さんっ、だめっ、恥ずかしいですっ、ああっ、やあっ」
 僕は細い腕を引きはがしベッドに押さえつけた。
 荒い息をつく夏美ちゃん。そのたびに胸が揺れる。
 赤い顔は羞恥と快感に染まっている。
 僕はスカートに手をかけた。脱がしやすいように夏美ちゃんは腰を浮かしてくれた。
 スカートを脱がすと、白い可愛らしい下着はすでにぐしょぐしょに濡れていた。
 その下着に手を添える。
 「あっ」
 恥ずかしそうに眼を逸らす夏美ちゃん。しばらくして観念したように腰を浮かした。
 僕はゆっくりと下着を脱がす。
 「やっ、ああっ!」
 悲鳴を上げる夏美ちゃん。張り付いた下着が離れる。糸を引く。
 一糸まとわぬ夏美ちゃんがそこにいる。
 恥ずかしそうに足を閉じる。僕は夏美ちゃんの膝をつかみ足を開いた。
 「きゃっ!?」
 僕は夏美ちゃんの股間をじっくり見た。夏美ちゃんは顔を真っ赤にする。
 「やあっ!お兄さん!そんなに見ないでください!」
 恥ずかしそうにもがく夏美ちゃん。僕はそれをしっかり押さえてじっくり観察した。薄い桜色の膣の入り口は濡れてひくひく動く。
 夏美ちゃんは観念したようにもがくのをやめた。
 「お兄さん、意地悪ですよ」
 よわよわしい夏美ちゃんを見ているとさらにいじめたくなる。
 僕は夏美ちゃんの股間に顔を寄せた。
 「きゃっ!おにーさん!?」
 僕の頭を押し返そうとする夏美ちゃんの手。無論僕はびくともしない。
 夏美ちゃんの膣の入り口をぺろっと舐める。
 「ひゃっ!」
 夏美ちゃんの体がびくっとはねる。可愛い反応。
 僕はだんだん激しく舌を這わせる。
 「ひゃんっ、だめですっ、そんなとこ舐めないでください、あああっ」
 激しく身をよじる夏美ちゃん。非力な力で僕の頭を引きはがそうとする。
 「あんっ、やっ、だめっ、ああっ、ふっ、んんっ、んあっ、ああっ、だめですっ、んんっ」
 喘ぎ声には隠しきれない快感がにじむ。
 「だめっ、もうだめですっ、あんっ、きゃっ」
 クリトリスを舌でつつく。
 「ひゃああ!?」
 夏美ちゃんの体が跳ねる。
 「お兄さん!そこはだめっ」
 さらにクリトリスをつつく。
 「あああっ!だめっ!やあっ!」
 性器全体を舐めまわしさらにクリトリスを時々つつく。
 「んあっ、おにいひゃ、ああっ、んっ、ひゃんっ、らめっ、らめでしゅっ、ああああああっ」
 舌が回らない夏美ちゃんが可愛い。
 「おにいひゃんっ、もうらめっ、らめですっ、ああっ、んあっ、ああああっ、あああああああああああっ!!」
 背を反らして嬌声を上げる夏美ちゃん。ひときわ大きい嬌声をあげて夏美ちゃんはぐったりと力なく横たわる。
 僕は顔を離した。
 一糸まとわぬ姿で足を開き荒い息をつく夏美ちゃんは壮絶な色気を放っていた。
 「ごめん」
 愛おしさを感じて僕は夏美ちゃんの頬に優しくキスした。
 「おにいひゃん、らめれすっ」
 ぐったりして舌が回らない夏美ちゃん。僕は夏美ちゃんの呼吸が整うのを待ってから服を脱いだ。
 「ひゃっ」
 僕の股間を見て驚く夏美ちゃん。僕の剛直はすでにがちがちになっていた。
 「夏美ちゃん。もう一度聞くけどいいんだね」
 夏美ちゃんは恥ずかしそうに太ももをすり合わせる。
 息を荒くして僕を見つめる。
 夏美ちゃんは深呼吸しておずおずと足を開いた。
446三つの鎖 8 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/12(土) 02:10:18 ID:94LLUvnk
 「お兄さん。お願いします。私を、女にしてください」
 小さい声だがはっきりと言った。
 僕は夏美ちゃんに覆いかぶさった。夏美ちゃんの細い腕が僕の背中に回される。その腕は震えていた。
 剛直の先を夏美ちゃんの膣の入り口に添えた。
 「ひうっ!」
 夏美ちゃんは震えた。目をギュッと閉じて顔を逸らす。
 僕はゆっくり腰を押し出した。
 「ひあっ……やっ……うっ……んっ……んあっ……んんっ」
 夏美ちゃんは苦しそうに身をよじった。夏美ちゃんの膣は濡れているが痛いぐらいきつい。
 「ひっ、おにい、さんっ、止めないでっ、ああっ、つっ、んあっ」
 何かを突き破る感触。
 「あああああああああっ!」
 夏美ちゃんが悲鳴を上げる。僕にしがみつく腕に力がこもる。
 「夏美ちゃんっ」
 「うっ……あうっ」
 言葉少なく痛みをこらえる夏美ちゃん。僕を見つめながら荒い息をつく。
 「おにい……さん……おねがいっ……いっきにっ」
 僕は夏美ちゃんの眼もとの涙をぬぐいキスして一気に腰を押し出した。
 「ひうっ!」
 短い悲鳴。剛直の先端が膣の奥にぶつかる。
 「夏美ちゃん。全部入ったよ」
 夏美ちゃんが歯を食いしばりながら何度もうなずく。
 僕は夏美ちゃんの胸を揉みながら夏美ちゃんにキスした。
 「ひゃっ……ああっ……んんっ……ちゅっ」
 夏美ちゃんの歯を割り舌を入れる。胸もゆっくり大きく揉む。
 「んっ……ちゅ……んんっ……ちゅっ……じゅるっ……はむっ……ちゅっ」
 唇を離す。涎が垂れる。夏美ちゃんは痛そうだが、嬉しそうな顔をしている。
 「んっ……お兄さん……大きいですよ……はぁ」
 夏美ちゃんの頭をなでると、くすぐったそうな顔をする。夏美ちゃんの膣は動かさなくても剛直に絡みついて気持いい。
 「あうっ……お兄さん……いいですよ……んっ……動いてください」
 気丈に微笑む夏美ちゃん。僕はうなずくとゆっくりと腰を引いた。
 「つっ……ああっ……ひゃうっ……いっ……やあっ……ああああっ……んあっ……ううっ」
 顔をゆがめ身をよじる夏美ちゃん。僕の下で白い体がくねる。
 剛直の先っぽが膣から出そうなところで再び挿れる。
 「ひあっ……うっ……ああっ……やあっ……んあっ……あうっ……ひっ」
 僕の下で激しく身をよじる夏美ちゃん。再び子宮の入り口を剛直の先端が叩く。
 それを何度も繰り返す。剛直に絡みつく膣が気持いい。
 「あっ……きゃうっ……いっ……つうっ……ああっ……はあっ……はっ……やんっ……あああっ……んっ……あんっ……うあっ……ああああっ」
 夏美ちゃんの声に艶がにじむ。僕はいったん腰を止めた。
 「あっ……おにいさん……何でやめちゃうんですかぁ」
 顔を赤くして切なそうな顔を僕に向ける。
 「私はへいきですよ…もっと…はげしくてもへいきです…その…めちゃくちゃに…して…ください」
 あまり痛くはなさそうだ。僕は腰の動きを速めた。
 「ひうっ、ああっ、んんっ、あんっ、いいですっ、ひゃふっ、あっ、ああっ、んっ、おにいさんっ、もっとっ、ああっ、ひうっ、あうっ」
 剛直と膣がこすれるのがすごい快感だ。夏美ちゃんも僕の下であられもなく喘ぐ。僕はさらに腰をふる。こすれあう性器がぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てる。
 腰を止めずに夏美ちゃんの胸、首筋、唇、頬などありとあらゆるところにキスすし、しゃぶりつく。胸を強く揉みほぐす。そのたびに膣が剛直をキュッと締め付ける。
 組み伏せられ快感に身をよじり喘ぐ夏美ちゃん。
 「ひいっ、んんっ、ちゅっ、ぷはっ、んあっ、あんっ、はっ、うっ、ああっ」
 ぐちゅぐちゅと卑猥な音が部屋に響く。膣がこすれる感覚が堪らなく気持いい。
 「ひいっ、ああっ、あんっ、うっ、ひゃうっ、あっ、ああっ、あああああーーーー!!」
 ひときわ大きく喘ぐ夏美ちゃん。膣の締め付けが一気に強くなる。
 僕は腰を止めた。夏美ちゃんはとろんとした目で荒く息をつく。ゆっくりと膣から硬いままの剛直を引き抜く。愛液に微かに血が混じっていた。
 「ひうっ……あっ……はあっ……はあっ……んっ」
 身をよじる夏美ちゃん。小さい方が大きく動く。ほんのり染まった肌には汗が玉のように浮かんでいる。僕は肌をなめた。
 「ひゃうっ!」
 びくりと体を震わす夏美ちゃん。
 「夏美ちゃん、まだ大丈夫?」
 夏美ちゃんは硬いままの僕剛直を見ると、ぼんやりとうなずく。
 「おにいさん、まだいってないんですね」
 夏美ちゃんは四つん這いになってお尻を向けた。夏美ちゃんの白い指が性器の入り口を開く。愛液でぐしょぐしょの膣の入り口が目に入る。
447三つの鎖 8 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/12(土) 02:12:23 ID:94LLUvnk
 「おにいさん、なつみできもちよくなってください。なつみのアソコをおにいさんのおチンチンでたくさん突いてください」
 あられもない夏美ちゃんの痴態。頭がおかしくなりそうな興奮。僕は夏美ちゃんの腰をつかみ、一気に挿入した。
 「ひゃうっ!?」
 びくりとのけぞる夏美ちゃん。夏美ちゃんの膣は熱く気持いい。僕は少し速めに腰をふった。
 「ひうっ、ひゃあっ、あんっ、あうっ、んあっ、おにいさっ、ひうっ」
 ぱんっ、ぱんっ、と柏手を打つような音が響く。結合している場所からはぐちゅぐちゅと卑猥な音がする。
 「ああっ、んあっ、ひうっ、ひぐっ、あんっ、あああ!」
 剛直が膣をえぐる快感に僕は熱い息を吐いた。責められる夏美ちゃんは体を震わし喘ぐ。白い背中に玉のような汗が浮かぶ。
 「おにいひゃっ、あうっ、らめっ、ひいっ、らめですぅ、あんっ、ああ、ひぎぃっ、ひゃうっ、らめっ、ひあっ、しゅごい、ああっ」
 何度も腰をつく。じわじわと射精感が高まる。
 「らめっ、おにいひゃん、なひゅみ、もうらめですっ、あん、へあっ、ああっ、んんっ、あっ、あっ、あっ、ああっ、ああああああああああっー!!!」
 膣が強烈に締め付ける。射精する前に抜こうとして僕は失敗した。
 膣の奥、子宮の入り口に射精する。頭が真っ白になるような快感。
 「あつっ……ひっ……ひゃうっ……ひうっ」
 夏美ちゃんが体をよじり喘ぐ。そのたびに僕は射精した。長い射精が終わり僕は剛直を抜いた。
 ベッドに突っ伏したまま荒い息をつく夏美ちゃん。性器から白い精液がこぼれおちる。
 僕は夏美ちゃんを抱きしめた。頬にキスする。夏美ちゃんは泣きそうな顔を僕に向けた。
 「夏美ちゃん。すごく良かった」
 夏美ちゃんは嬉しそうな泣きそうな顔をする。そのまま夏美ちゃんは僕の頬にキスした。
 「私も、です、すごく、気持ち、良かったです」
 息も絶え絶えに恥ずかしそうに僕に囁く夏美ちゃん。
 夏美ちゃんは僕に体をすりよせ、疲れたように目を閉じた。すぐに寝息が聞こえる。よっぽど疲れたのだろう。何か悪い事をした気がした。僕は夏美ちゃんにシーツをかぶせた。
 僕たちは抱き合いながら眠りについた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 次の日、僕と夏美ちゃんは二人で学校に行った。
 梓と春子は学校に来なかった。
448三つの鎖 8 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/12(土) 02:26:15 ID:94LLUvnk
投下終わりです。
読んでくださった方に感謝申し上げます。
ありがとうございました。
次の週末にでも続きを投下します

HPが見つかってびっくりしています。
ただ、ご覧になった方は分かると思いますが、大したものは無いです。投下した作品を置いた保管庫でしかありません。
HPにも記していますが、最新の作品はスレにしか置いていません。
HP限定とかで作品を発表する予定は今も今後もありません。
今までの作品をまとめてDLできますので、欲しい方はご利用ください。
現在登場人物の人気投票を行っています。
これは今後の執筆の参考にしたいと考えています。
よろしければご協力お願いします。
ttp://threechain.x.fc2.com/index.html
449名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 03:22:21 ID:NlVnuGFX
>>448
2chでアドレスだしたら荒らされそうなもんだけど……大丈夫か? 

gj
450名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 04:14:46 ID:xo6Q4Ah9
>>448
ぐっじょー
でも、お兄ちゃんが梓の告白とキスを普通にスルーして
夏美ちゃんとやっちゃうのが少し哀しいな

451名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 04:36:37 ID:P+P+KG2f
おはよう&GJ!
ヤリチン主人公いいねぇ
後は梓と京子さんだな枠
後ゴムないなら買いにいけやw
452名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 05:01:31 ID:GIisAXJc
GJ
やだ…夏美ちゃんすごくかわいい…

>>450
さすがにあれを告白と受け取るにはよほど訓練されていないと無理だw
453名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 07:34:45 ID:ynv4pbju
ウッ・・・ふぅ・・・GJ
だが、いくら夏美さんがエロ可愛かろうと私は極度のシスコンなので梓たんにしか反応しません。残念でしたね。
454名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 07:50:46 ID:iHGanNLc
GJ
自分こそブラコン(以上)なのにシスコンシスコンって煽ってくる妹いいよね
455名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 10:41:19 ID:1XI8nVRa
GJ!この間に春子が何してるか怖いよー
456名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 13:01:19 ID:k/27xMYk
作者さんGJ!
今からHPいってきます!!

>>455
春子が何してるかって?
梓とナニしてるに決まってrアッ-!!
457名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 16:08:14 ID:t9rHu2hu
GJ! 梓と春子なにしてんだろ?w
>>454
俺はその度に「お前が仕込んだんだろうがこのブラコン」とツッコミ入れてるw
458名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 17:04:14 ID:btY26ZFk
GJ
夏美ちゃん可愛いのう
しかし後の展開が楽しみでもあり恐ろしくもあるw
459名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 17:09:17 ID:NzIiprvl
GJ!!!!
夏美ちゃん可愛すぎ…しかしかなりヤバい位置にいるわけで…死にそうなオーラがバシバシする。

梓のブチ切れ狂乱を告白ととるとはかなりの強者と見た。      
460名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 17:24:23 ID:zmqbV5xM
こういう娘の「今日は大丈夫」ほど信じられないものはないw
GJ!
461名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 19:46:10 ID:mc+6ICJE
とりあえず春子の存命&五体満足を切に願う
462名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 21:21:07 ID:Lo5hN9AV
>>460
妊娠しても大丈夫という意味だしな
俺も言われてみたいわ
463名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 22:31:52 ID:fcKimS9O
そうは問屋が卸さない
464名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 23:42:59 ID:8eyPikey
女性の「今日は大丈夫」は
「今日は(膣内に出されちゃったら妊娠しちゃうけど責任とってもらうから)大丈夫」
465名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 00:24:08 ID:5qrVWH1y
キモ姉妹スレだと理解はしているけれど、夏美エンドを望んでいる俺がいる
466名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 00:28:12 ID:/2HFthEO
こうまでラストが想像できないSSは珍しい
467名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 03:56:37 ID:/mrcypQA
キモウトとキモ姉って最後は報われないのが多いから梓にはがんばって欲しいけど、兄がどう見ても梓を女として見てないみたいだから(キスされても普通に気持ち悪がるし)やっぱり厳しいんだろうなぁ
梓がんばれ超がんばれ
468名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 05:45:26 ID:OcoxsC27
普通だったら、手を繋ぐのも、嫌がるんじゃないかな…
469名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 07:57:41 ID:fPl3LQYw
普通じゃないからキモ姉妹って言うんだろ
470名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 10:08:59 ID:sqTJsNR/
>>448
GJ!!!!夏美可愛いよ夏美。
でもこの反動が来るのかと思うと怖い・・・w
471名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 11:28:51 ID:HcZz5doZ
三つの鎖読んでると、この一週間が如何にはやかったかを感じるのは俺だけか。
472名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 12:47:51 ID:2L39kJ1d
まあ次はキモウトサイドの話になるからな

一連の行為を見ていたら……
473名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 17:06:26 ID:6AHBWUjd
そういえばそろそろクリスマスだね
474名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 17:43:26 ID:xYfY95PC
お姉ちゃんへのクリスマスプレゼントは弟クンの精子でいいから!
寝てる間に中に射精しておいてくれれば良いから!
お姉ちゃん靴下だけ付けて待ってるから!
475名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 18:15:36 ID:YUJ+3V1y
>>474
黄ばんだホワイトクリスマスだな
476名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 20:26:05 ID:FydoOMww
ちょっと訊きたいんだが、他人の目があるところではすげえまともなのに
兄と二人っきりになった途端キモくなる妹の話ってなんてタイトルだったっけ?
たしか短編だったと思うんだが保管庫見てみたけど見つからんかった。
477名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 20:32:18 ID:RmXR6XIE
      /||| ||| ||| |||\
     /|||  /\|||  ||| \
.     |||| /   \||| ||| |
.    | /        \||| .|
    | /___,,;;ヽ,`` /;;,,,___ヽ|
   ヽ|{;;;;;;;;;;;;}/||ヽ-=・=-|
   (`|  /  ||||` \ `|´)
   ヽ、| ミ´  ノ、,,ゞヽ  |, ) キュラキュラ蛍火♪
    ヽ、   ._,==-,彡 /|,ノ キュラキュラきよらに♪
      |丶  .二二´ /;;;| キュラキュラキュラらめき♪
      | \___/;;;;;| キュラキュラ消えゆく♪
      |   ;;;;;;;;;;;;;/;;;;;|
     /     ;;;;;;;/;;;;;;;ヽ
478名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 20:55:13 ID:LfwuYsHt
>>476
長編の方の『なんとなく』かなあ…。
違ったらスマンね。
479名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 20:58:10 ID:FydoOMww
ありがとう、これだった。短編だと勘違いしてたわ。
480名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 22:44:28 ID:w5eY9dqi
あー、投下方法に難癖つけられて未完で終わった奴か
481口うるさい妹:2009/12/14(月) 01:49:47 ID:de8FbBC7
「お兄さん!ちゃんと制服はハンガーに掛けてよ!しわになるから。」
「お兄さん!テレビのリモコンをソファーに置かないで!ちゃんとテーブルの上に置いて!」
「お兄さん!布団ちゃんと着て!風邪引くよ!」
「お兄さん!靴下をその辺りに脱ぎ散らかさないでよ!片方だけじゃ使えなくなるから!」
「お兄さん!外食する時は先に連絡してよ!二人分作っちゃったじゃない!」
「お兄さん!彼女つれてくるなら先に言ってよ、準備してないわよ!」
「だらしないお兄さんが結婚なんて土台無理な話よね。やっぱり私が付いてないとダメね。」
「お兄さん。私に黙ってどこに行こうとしてるの。答えてよ!」
「お兄さん!おむつ換えておいて!」
482名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 02:06:06 ID:QK8ZBcOS
wiki更新誰か頼む
483名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 02:19:23 ID:z/qNkgU4
>>482
さ、言いだしっぺの法則に基づいて自分でしようか
484名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 14:04:07 ID:QK8ZBcOS
更新したいのは山々だけどPC壊れてて使えないんだわ・・・申し訳ない
485名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 16:36:32 ID:SCA1N3ZE
IDがOSなのにPCが壊れてるのか皮肉かも
486名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 23:17:02 ID:f09+Xyyc
キモ姉やキモウトに狙われている兄or弟って
1.姉or妹が自分に劣情を抱いている事を知っている
2.ただのブラコンだと思っている
3.普通の姉or妹だと思っている
4.嫌われていると思っている
どれが一番BADENDを回避しやすいだろうか
487名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 23:29:25 ID:9AlTKwfb
何がBADなのかにもよる。
姉/妹に捕まってしまうことなら等しく危険であるし、
殺害される事であれば早めに投降する事で避けられるし…
周辺女性の変死などであればやはり打つ手がない。  

反対に捕まってもGOOD ENDかもしれない。

GOOD END .2 幸せな家庭 とかそんな感じで。
488名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 23:39:32 ID:Nk3QdhaC
対策が打てるという点だけで言うなら1.かな
でもまあ>>487の言う通りでもある
489名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 23:47:20 ID:jNZmOMVT
兄or弟が妹or姉を受け入れて狂ってしまえばOKだよ。

TRUE END 「天国って地獄の底にあるんだね」  みたいな感じで。
490名無しさん@ピンキー:2009/12/15(火) 00:33:18 ID:5rdIu2zD
>>489
鎖か
491名無しさん@ピンキー:2009/12/15(火) 00:45:23 ID:bHcAoyVS
>>486
1かな
23はそう思って他の女に手を出してキモ姉妹覚醒の確率が高い
4は嫌われてる奴にどう対応するかという兄弟の性格次第でルート変わりそうだがどっちに転んでもBADになる恐れあり
負い目みたいに感じて好かれるように接するか、諦めて全力で避けるか
492名無しさん@ピンキー:2009/12/15(火) 01:00:47 ID:n6h9/Zqa
>>491
三つの鎖の幸一だと最初は4で今は1か
生存フラグかも

>>486
やっぱり1だな
他は何の対策を立ててないけど、1なら対策を考える
転生恋生の太郎も対策を考えているし
493名無しさん@ピンキー:2009/12/15(火) 01:07:19 ID:MRmJ3LSW
1:転生恋生
2:籠の中
3:綾シリーズ
4:__(仮)、三つの鎖

とりあえず有名どこを集めてみた。
連載中の作品ものせちゃって申し訳ないが、上の作品がBAD ENDだったか否かでわかる気がする。

しかしBAD ENDとGOOD ENDがはっきりしないジャンルだな、キモ姉妹は……
494 ◆cW8I9jdrzY :2009/12/15(火) 01:12:49 ID:c3t3dVhy
>>395-401>>428-433の続きを投下します。
SSの属性は以下となります。

※一次・高校生・双子の兄妹・修羅場あまり無し・流血無し・エロ有り

好みの分かれる内容になるかと思いますので、苦手な方は酉でNGお願いします。

それでは投下。
495水野兄妹観察日記・3(1/6) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/15(火) 01:13:52 ID:c3t3dVhy
互いの距離は十メートルと少し。まず外すはずのない、極めて近い距離。
実際、彼は今日、先ほどから四回連続で成功している。
彼の、啓一の脚力とコントロールをもってすれば、五度目も決めて当然のはずだった。
目の前にいる少年と向かい合い、小さくうなずいてから、思い切り駆け出した。
充分な助走、安定した軸足、そして全身のバネ。全てが完璧だった。
たくましい右足から放たれたそれは凄まじいほどの球速で、
一直線にゴールの左隅に向かって突っ込んでいく。
蹴り飛ばした啓一も、伸ばした手が届かずに途中で諦めたキーパーの少年も、
風を裂いて疾走するボールを、どこか他人事のような目で眺めていた。
二人の視線が歪んだ球へと注がれて、低空で交差する。
そして、次の瞬間。

――ガンッッ !!

「……あちゃー、外れちゃいましたね。今の、絶対入ると思ったんですけど」
ヒカルはゴールポストに弾き飛ばされたボールに目をやって眉を曲げ、
まるで自分が失敗したかのように残念がった。
ボブカットの髪と健康的な肢体を持つ、明るく元気な美少女を自認するヒカルである。
そのヒカルが憧れの先輩、水野啓一が部活に励む光景を見て、楽しくないわけがない。
先ほどから手に汗握って、啓一の勝負を観戦していたのだ。
啓一と出会ってまだ一週間ほどでしかないが、思いついたら即行動を信条とするヒカルは、
しょっちゅう啓一の教室にやってきては昼食を共にしたり、
放課後、彼が所属するサッカー部の練習を見学しに来るようになっていた。
幸いなことに、今のところ追い払われることもなく、思う存分、啓一を観察していられる。

そのヒカルの隣では、背中まで垂れたストレートの黒い髪が、風に吹かれて揺れていた。
「これで四対四、引き分けね。啓一と中川君」
ヒカルの隣に立つ啓一の妹、水野恵は彼女らしい上品な笑みを浮かべて、そう言った。
男子に比べると小柄だが、女子の中では平均的な体格で、手足はやや細い。
現在着ている、この学校独特のシンプルなセーラー服とあいまって、
ひと昔前の正統派美少女とでも呼ぶにふさわしい雰囲気をかもし出している。
恵自身は特定のクラブには入っていないが、
たまにこうして兄の部活動を見学しに来ることがあった。

放課後のグラウンドには人けが少ない。
寒い冬の日とはいえ、普通の高校ならば、トラックを何周も回る陸上部員や、
次の大会目指して守備練習に励む野球部員などの姿が見受けられるはずである。
だが、何事においてもやる気がなく、どこの運動部も地区最弱と名高いこの高校において、
今にも雪が降りそうなこの寒空の下で、わざわざ練習をおこなう奇特な部は少数派だった。
というより、部員総出で活動しているところが一つたりともない。
ごくわずか、合わせて二桁にも届かない人数が、閉じ込められたような曇天の下で
自主的なトレーニングに取り組み、広々としたグラウンドを占領しているのだった。
何事も無理せず、毎日を自堕落に生きること。それがここの校訓である。
三年間の高校生活は大会のため必死で汗を流すものと考えている熱血教師や、
部員のモチベーションを保とうと日々腐心する主将やマネージャーでは
とても務まらない、異常な環境と言えた。
496水野兄妹観察日記・3(2/6) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/15(火) 01:14:28 ID:c3t3dVhy
現に今、サッカー部で練習をしているのも、啓一ともう一人の中川祐介という少年の二人だけだった。
さらに、その祐介も本来は正式なサッカー部員ではなく、
たまに試合や練習に助っ人としてやってくるだけの部外者だという。
自然と練習内容はPK戦や一対一の取り合いなど、特定のものに限定される。
真面目な啓一としては寂しさを感じずにはいられない状況だったが、
入部した頃からずっとこうだったため、さすがに慣れてしまったらしい。
そんな話を恵から聞き出したヒカルは、練習を終えた啓一が
休憩をとりに自分の方へやってくるのを、温かい目で見つめていた。
ヒカルたちのいるグラウンドの隅には、啓一が目当てなのか、
何人かの女生徒がギャラリーとなってかしましく騒いでいる。

恵と共に啓一を見守るヒカルの耳にも、そんなギャラリーのかん高い声が聞こえてきた。
「ああっ、もう! 何してんのよ、中川のやつ! 結局同点じゃないの、つまんねー!」
その言葉に横を見ると、明るい茶髪を短めに整えた、長身の女の姿が目に入った。
負けん気の強そうな派手な顔立ちだが、充分に美人と言ってよく、
そのうえ細くくびれた腰、制服の胸元で揺れる豊かな胸、
肉づきがよく美しい曲線を描く肢体と、男を引きつける様々な要素をあわせ持っていた。
その隣では対照的に、小学生と見間違えてしまいそうなほど小柄な、黒いツインテールの
少女がじっと立っていて、興奮した様子で二人の男子生徒に熱い視線を送っていた。
「引き分けかあ。祐ちゃんと啓一君、いい勝負だったね」
「何言ってんの、決着が着くまでまだまだ延長戦よ。
 中川だったら啓一を叩きのめしてくれるはず! 信じてるわよ祐ちゃんっ!」
「え、でも二人とも、こっちに帰ってきてるよ?」
「なにぃ !? 何してんのよ、あいつらはっ!」
会話の内容から察するに、この二人は啓一たちと親しい関係にあるようだった。
ひょっとして彼らの友人だろうか。ヒカルが抱いた疑問には、恵が答えてくれた。
「残念でした、加藤さん。勝負は引き分けね」
普段の清楚な彼女らしくなく、舌をぺろりと出して笑う。
どうやら、この茶髪の女と水野恵の関係は、かなり気安いものらしい。
「ちっ、まあいいわ。この決着は次回に持ち越しね。
 見てなさい。次こそあんたたち兄妹に吠え面かかせてやるんだから」
「いや、別に私たち、中川君と勝ち負けを競ってるわけじゃ……」
「あーあ、あんたはいつもそうね。余裕しゃくしゃくの優等生でさ。
 その澄ました顔も、ひと皮剥いたら何が出てくるか、わかったもんじゃないってのに」
「加藤さん……」
対抗心をむき出しにする女を前に、恵は困った顔でため息をついた。

そこへ啓一と祐介がやってきた。
ギャラリーの一人、ツインテールの小柄な少女が駆け出し、
祐介に飛びついて無邪気なはしゃぎ声をあげた。
「祐ちゃーんっ!」
「瑞希、どうだった? 啓一には勝てなかったけど、結構いいとこいっただろ」
「うん、すごかったよ!」
祐介と少女は互いに並々ならぬ好意を持っているようで、
彼が汗ばんだ体で少女を抱きかかえ、照れて笑うさまは、実に周りに微笑ましく映った。
ヒカルがその様子を指し示し、恵に問う。
「誰です? あの二人」
「中川祐介君と森田瑞希ちゃん。私たちの大事な友達よ」
「そうですか。えーと、それであと……こっちのいかにも態度がでかそうな人は?」
「加藤真理奈さん。一応、私たちの友達……かも」
頬に一筋の汗を浮かべて、恵がぎこちない笑みを浮かべる。
その女のことが苦手なのか、淑やかな恵にしては珍しい、やや硬い表情だった。
497水野兄妹観察日記・3(3/6) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/15(火) 01:15:12 ID:c3t3dVhy
真理奈と呼ばれた茶髪の女は、ヒカルと恵の会話を聞き逃さなかった。
キッとこちらを振り返ると、強気な口調で怒鳴りつけてくる。
「ちょっとそこ、こそこそ人の陰口を叩くんじゃなーいっ! 特に水野恵っ!
 何が一応よ、何が友達かもよ。この腹黒女めっ!」
「あ、あっはっは……。まあ、そんなに怒らないで……」
ヒカルが真理奈をなだめようとすると、
彼女はそこで初めてヒカルの存在を認識したらしく、怪訝な顔で訊ねてきた。
「誰、あんた? 初めて見る顔ね」
「は、はい。あたし、一年の渡辺ヒカルっていいます。よろしくです」
「ふーん、一年か。あたしは加藤真理奈。覚えといて」
真理奈は簡潔にそう言ったが、この女に関しては、
記憶の中から消し去ってしまうことの方が難しいのではないかと、ヒカルには思われた。
充分に美人の範疇には入るが、どこかけばけばしく、男子とそう変わらないくらいの
長身とスタイルの良さも相まって、あまり高校生には見えない。
加えて相当の高飛車な態度と、周囲によく響く大声。
今までヒカルの周囲にはあまりいなかった人種である。
真理奈はそれ以上ヒカルには関心を示さず、早々に彼女から視線を外すと、
先ほどまで練習に励んでいた二人の少年、啓一と祐介にちょっかいを出し始めた。
やれ男だったら勝ち負けははっきりさせないとダメだとか、
寒い中せっかく自分が見学に来てやったのにやる気が足りないとか、
横で聞いていてもあまり愉快になれない勝手な言葉を並べ立てる。
だがどちらの少年も、こんな真理奈の言い方には慣れているらしく、
祐介は辟易した様子で、啓一は苦笑して彼女の言葉を聞き流していた。
ヒカルはそんな真理奈の横柄な振る舞いを驚きの目で見守っていたが、
自分はじめ多くの女生徒の憧れの的である水野啓一を前にして少しも硬くならず、
ざっくばらんに彼に話しかける真理奈に、興味を持ち始めていた。

「あのー、恵センパイ。あの加藤真理奈って人、いつもあんな感じなんですか?」
その質問に恵は先ほどど同様の、困り顔を浮かべた。
「そうね、ちょっと元気すぎるくらい。でも加藤さん、ああ見えて根はいい人よ?」
「へえ。それであの人、啓一センパイとつき合ってたりとかしませんよね?」
「それはあり得ないわ」
恵は困った顔のまま、妙にきっぱりと言ってのけた。
確かにヒカルの目から見ても、真理奈は美人で魅力的な女性ではあったが、
あの奔放な女が、真面目な優等生の啓一の彼女とはどうにも考えにくい。
やや馴れ馴れしいが明るいムードメーカーの、異性の友人。そんなところだろう。
恵の言葉も、ヒカルの推測も、同じ答えを示していた。
「んー、やっぱそうですか。まあ、そりゃそうですよね。
 あの二人、なんか見るからに相性悪そうですもん」
「ふふ、そうね。それに加藤さんはすごくモテるから、
 わざわざ啓一がそんなことしなくても、つき合う相手には不自由しないのよ」
恵は苦笑した。先刻の啓一と全く同じ表情だった。

ヒカルは恵にうなずき返すと、啓一に絡んでいた真理奈に話しかけた。
「センパイ、センパイ。加藤センパイ」
「ん? さっきの一年じゃない。何よ」
さっき自己紹介したはずだが、ヒカルの名前など既に忘却してしまっているらしい。
記憶力はあまり良くないみたい、などと失礼なことを考えながら、
ヒカルは自分より十センチは背が高い真理奈を見上げた。
「センパイ。ちょっと今、いいですか?」
「何よ、いったい」
「実はあたし、加藤センパイに聞きたいことがあるんですけど……。
 センパイ、このあと予定空いてたりしません?」
真理奈は軽くまばたきをして、ヒカルの顔を見返した。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 
498水野兄妹観察日記・3(4/6) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/15(火) 01:15:48 ID:c3t3dVhy
加藤真理奈は、派手な見た目がよく似合う、明るくて気さくな女だった。
今日会ったばかりのヒカルと二人っきりになっても、身構えず色々喋ってくれたし、
「話を聞きたい」という突然の彼女の申し出にも快くうなずいて、自宅に招待してくれた。
水野恵にも劣らない美少女を目の前にして、はじめヒカルは緊張していたが、
物静かな優等生の恵とは違う、あけすけな真理奈との会話は意外なほど弾み、
啓一や恵たちと別れて彼女のマンションに着いた頃には、
この女に対する親愛の念がヒカルの胸に芽生えていた。

自宅のドアを開けて、真理奈がずかずか中に入っていく後を、ヒカルはそうっとついていく。
「たっだいまー」
「おかえり。まりなお姉ちゃん」
小柄で線の細い、小学生くらいの少年が出てきて、二人を出迎えてくれた。
真理奈の弟だろうか。真理奈はヒカルを指して、さばさばした口調で少年に言った。
「これ、あたしの一個下の後輩、渡辺ヒカルちゃん。ほら直人、挨拶して」
「あ……こ、こんにちは。ボク、加藤直人です。まりなお姉ちゃんがいつもお世話になってます」
人見知りする性格なのだろう。
直人と名乗った少年は、おどおどした様子でヒカルにぺこりと頭を下げた。
確かに顔の造作は真理奈に似ていなくもないが、性格はまるで違うようである。
ヒカルは少しだけ背を曲げて、少年に笑いかけた。
「直人君、こんにちは。君、何年生?」
「え、えっと……小六です」
頬を赤く染めてぼそぼそ答える様子が、実に可愛らしい。
一緒になった帰り道、真理奈は自分がいかに不特定多数の異性に愛されているかを力説していたが、
それは彼女に限らず、この一族に共通した特徴であるようだった。

「ヒカル、遠慮しないでそこ座って。あ、コーヒーいける?」
「はい、お構いなく」
「直人は部屋に戻ってお勉強してなさい。あたしはちょっとこの子と話があるから」
「うん、わかった」
恥ずかしいのか、ヒカルとは目を合わさずにリビングから出て行く直人。
真理奈はインスタントのコーヒーを淹れながら、楽しそうに言った。
「どう、可愛いでしょ? あの子」
「守ってあげたくなる子ですねー。なんか母性本能をくすぐられるっていうか……」
「あら、イジメがいもあるわよ? 特に泣き顔なんてたまんないわ」
「センパイ、普段直人君に何してるんですか……?」
それには答えず、真理奈はテーブルの上に湯気の立つカップを二つ、置いた。
砂糖とミルクをたっぷり入れてかき混ぜ、白と黒の渦巻きを表面に形作る。

「それで? あんた、あたしに聞きたいことがあるんだっけ」
カップを口元で傾けて、真理奈が問いかけた。
「はい。実はその……啓一さんと恵さんの、二人の水野センパイのことで。
 真理奈センパイは、あの二人のこと、よく知ってるんですよね?」
「まあ、つき合い自体はあんま長くないけどね。
 しかもむかつくことに、あいつら、なんかあたしを避けてるし」
口を尖らせる真理奈を見て、ヒカルは納得した。
あの真面目で大人しい兄妹と、このアグレッシブな女では、あまり相性が良いとは思えない。
どういうきっかけで交友が始まったのかはわからないが、
真理奈と啓一、恵との間には、一定の距離があるようだった。
だが、この女が二人について、ヒカルより多くのことを知っているのは疑う余地がない。
499水野兄妹観察日記・3(5/6) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/15(火) 01:16:20 ID:c3t3dVhy
ヒカルはソファに座ったまま頭を下げ、真理奈に頼み込んだ。
「お願いします。あたしに啓一センパイのこと、教えて下さい。
 あたし、あの人のこと、ほとんど知らないんです。
 啓一センパイの普段の様子とか、いつも仲良くしてる友達とか、
 あと、今つき合ってる相手がいるのかとか……」
「ふーん。ヒカル、ひょっとしてあいつに惚れてんの?」
「はい。だからぜひ、お願いします」
ヒカルの真剣な顔を見て、真理奈は呆れた様子でため息をついた。
「はあ……。あんたも変なのに惚れちゃったわねえ。
 悪いこと言わないから、やめときなさい。別の探した方がいいわ」
「なんでですか。なんでそんなこと言うんです」
真理奈の呆れ顔が悪友の夏樹のものと重なって見え、ヒカルの声が大きくなった。
そんなヒカルの勢いを受け流して、真理奈が訊ねる。
「だってねえ……。絶対に無理なの、わかってるもん。時間の無駄よ」
「無理って、なんでですか。そりゃあ確かに、啓一センパイはモテモテで、
 しかもあんな美人の妹さんが身近にいれば、女の子には贅沢にはなるでしょうけど……。
 でもあたしだって、頑張って、何とかセンパイに振り向いてほしいんです」
「うん無理。絶対無理。だから諦めなさい」
「だからなんでなんですかっ !? 理由を教えて下さいっ!
 実は啓一センパイがホモだとか言わないでしょうね !?」
「それはないわねー。たとえばあいつと中川がそんな仲だったら、
 意外と面白いかもしんないけどさ」

真理奈はテーブルの上にあった金属製の四角い箱からクッキーを取り出し、
それを二つに割って自分の口に入れた。
箱をこちらにも示して「どう?」と目線で聞いてくる。
それを受け取り、中の一枚を乱暴に噛み砕くと、憤りが少しだけ和らいだ気がした。
「じゃあ、なんでなんですか。あたしじゃ絶対無理っていうのは」
「無理はもんは無理よ。ついでに言うとヒカルだけじゃなくて、誰だってそうだから。
 実はあたしも前に、あいつに興味持ったことがあんのよね」
「……真理奈センパイが、啓一さんにですか」
「ほら、啓一って見た目いいし、しかも優等生じゃない。
 彼氏にしてもいいかなって思ってさ。勢いで迫ってみたの」
大胆なことを、さらりと言ってのける真理奈。
動機はヒカルとはまるで違うが、彼女も以前、ヒカルと似たような立場にあったらしい。
ヒカルはごくりと唾を飲み込み、続きを促した。
「それで……どうなったんですか」
「ふられちゃったわ。どんな男だってものにできると思ってた、このあたしが」
500水野兄妹観察日記・3(6/6) ◆cW8I9jdrzY :2009/12/15(火) 01:16:48 ID:c3t3dVhy
部屋の中には、安っぽいコーヒーとクッキーの甘い匂いが充満している。
水野恵が清らかな花のような娘だとしたら、きっと真理奈はクッキーのような女なのだろう。
そんな他愛のないことを、ヒカルはふと思い浮かべた。
「誰がどう迫っても、水野啓一の心は射止められない。そういうことよ。
 あいつを縛れるのはこの世でたったひとり、妹の水野恵だけね」
「恵センパイ……。噂には聞いてましたけど、あの二人、そういう関係なんですか?」
「そうね。あんたの想像通り、そういう仲よ」
「そんな――実の兄妹なんですよ !? しかも双子! おかしいじゃないですか!」
「まあ、双子の兄妹で男女の仲ってだけなら、ブラコンとかシスコンとかそういう、
 ちょっとおかしなただの変態で済むんだけどね。
 タチが悪いのは、あいつらがもっと頭のぶっ飛んだ連中だってことよ」
真理奈は思わせぶりな言葉を口にした。
身を乗り出すヒカルの反応が面白いのか、にやりと笑みを浮かべてみせる。
「ぶっ飛んだ……? それってどういうことですか」
「んー、そうね。どう説明すればいいかしら……」
ヒカルは、困った顔で悩む真理奈を真っ直ぐにらみつけたが、彼女は気にもしなかった。
「まあ、知りたきゃあんたが自分で確かめるのが一番ね。
 あたしじゃ、わかりやすいようにうまく説明できないもん」
「そんなこと言わないで、教えて下さい。すっごく気になります。
 啓一センパイと恵センパイに、何があったんですか?」
「これ以上は言えないわ。あたしも協力したげるから、後はあんたが自分で調べなさい」
「センパイ……」
それ以上真理奈は何も語らず、ヒカルとしては大人しく引き下がるしかなかった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

ヒカルが帰った後、真理奈はテーブルの上を片づけると、小さく息を吐いた。
「やーれやれ……。あの子もすっごく無駄なことしてるわねえ。
 早く別の男を見つくろった方がいいってのに、不毛だわ」
そう独り言をつぶやき、リビングを離れる。
向かった部屋には、学習机で勉強に励む小柄な少年の姿があった。
真理奈は後ろから少年に抱きつき、嬉しそうに笑った。
「なーおとっ♪ どう、お勉強頑張ってる?」
「あ、お姉ちゃん……あの人、帰ったの?」
「うん。だから直人……今からあたしとお勉強、しよっか」
「あっ……!」
耳に息を吹きかけると、声変わりも終えていない少年は、かん高い悲鳴をあげた。
椅子を回してこちらを向かせ、あどけない顔をぐっとつかんで口づける。
「んん――ん、んっ……ふふっ、直人……」
「んふぅ……んっ、おねえ、ちゃ……」
とても小学生を相手にしているとは思えない、舌を絡ませる淫らな接吻。
真理奈の指が少年の下半身に這わされ、ズボンの中に侵入して幼い性器を下着越しに撫で回す。
小さいながらも少年の肉棒は、彼女の愛撫を受けて硬くそそり立っていた。
真理奈は羞恥に顔を赤らめる彼の顔を見つめ、艶然と微笑んだ。
「直人、可愛いわ……ふふふふ……」
「ま、まりなお姉、ちゃ……」
彼と同様に真理奈の体も疼き、直人を求めて熱く火照っていた。
501 ◆cW8I9jdrzY :2009/12/15(火) 01:17:22 ID:c3t3dVhy
以上となります。
続きはまた後日投下しますので、よろしくお願いします。
それでは、失礼致しました。
502名無しさん@ピンキー:2009/12/15(火) 04:20:37 ID:hOoZwvLC
なんてこった
キモ姉までカバーしているとは
みなぎってきた
503名無しさん@ピンキー:2009/12/15(火) 09:12:17 ID:K2G5jAmM
直人きゅんかわええなあ。ショタに目覚めそう…
続きも楽しみです。頑張ってください。
504名無しさん@ピンキー:2009/12/15(火) 19:51:08 ID:HhQVSLtW
なんという

み な ぎ っ て き た
505名無しさん@ピンキー:2009/12/15(火) 21:19:58 ID:5crbaCRs
どこかで見たことがあると思ったらお姉さんとショタのスレの人だったのか
506名無しさん@ピンキー:2009/12/16(水) 18:10:13 ID:oUPYvH0D
wiki更新ありがとうございます
507名無しさん@ピンキー:2009/12/16(水) 23:22:17 ID:XneIJSv6
>>501
GJ! 直人きゅんイイ!

>>486
個人的な印象だけど3って少ない気がするな
ちなみに個人的には2が好き
508ウイリアム・テル ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/17(木) 00:13:46 ID:Gz+WkGPt
初投下です。
誤字脱字など読みにくい点は、未熟者ということで大目に見てください
キモ度が低いかもですが、許してください
以下より本編


「ただいまーっと」
 今日も鬼師範の厳しい扱きで肉体的というか精神的に疲れ果て、やけに重い腕でドアを開けた。
 パタパタといつものように、足音。
「おかえりー、お兄ちゃん」
 明るく弾む声に、何だか疲れを癒されているような気持ちになりながら、顔をあげた。
 俺の正面に立った声の主の姿を見て、瞬間、ピシリと空気が凍った。
「……」
「えへへー」
 どっと、癒された倍の分の疲れが体にのしかかってくるのが分かった。
 目の前にいるのは、俺の3つ下の妹で名は林檎。
 明るくてそばにいるだけで、元気を分けてくれるような気分になれると、中学校でも人気があると友人に聞いたことがある。
 身内びいきを差し引いても、確かに容姿は良いと思う。
 くりくりとした大きな目や、小さい鼻と口は綺麗ではなく、可愛いという言葉にピッタリで、ほんのり焼けた肌も健康的で好ましい。
 妹はコンプレックスを持っているらしいが、ふわふわとした癖っ毛も彼女の良いところだと俺は思う。
 また、彼女の一番の特徴である耐えることのないえくぼが何ともチャーミングな、底抜けの笑顔を守るために中学校にはファンクラブなるものが存在しているとかいないとか。
 ……もし本当にファンクラブなんてものが中学校に存在するなら、彼らはろくな大人にならないんじゃないか、と俺は未来の日本を憂わずにはいられない。
 はぁ、とため息をひとつ。
 非常に、非常に面倒くさいことではあるが、何らかの反応をしなければ飯にもありつけないんだろう。
 林檎は体を屈めて、にこにこと俺を期待するような眼で見上げて構ってオーラを投げつけてくる。
 もう一度、深くため息をついて林檎の姿を上から下、そしてまた上と眺める。
 料理の途中だったのだろう、いつものようにベタすぎて、寧ろどこで買ったのそれ?と聞きたくなるようなフリフリの白いエプロンを着ている妹。
 ――いや、そうじゃない。
 林檎は何を血迷ったか、エプロンのみしか、着ていなかった。
「一応聞くが、何だそれ?」
「えへ、裸エプロンー」
 語尾に音符を飛ばしながら林檎は即答。
 ああ、そう、裸エプロンね、と疲れの上に痛み出した頭を抑えながら、呟く。
 いうなれば、頭痛が痛い、という状況。
 ちらちらと、ピンク色の何かが見えているが、不思議と何の感情も湧いてこない。
 低い背、凹凸に乏しい体でぶかぶかのエプロンというのは、想像以上に不格好だった。
 ただ果てしない疲れに、このまま朝までぐっすりと眠りたいと強く思った。
 何というか、容姿だけならば春の妖精もかくやともいうべき姿をしているのに、悲しいかな、妹はおつむほうまで春だった。
 
 色々言いたいことはあるが、取りあえず。
「10年後に出直してこいや」
「延髄切りっ?!」
 情け容赦なく一発で妹を沈めた。
 ったく、と吐き捨てて二階にある自分の部屋へと向かう。
「俺が着替えてくるまでには、お前もちゃんと服を着とけよ」
「えー、せっかく準備万端だったのに、食べないの?」
 つまみ食いでもいいんだゾとか、両目をぱちぱちとしてくる。
 ……え、それもしかしてウインク?ウインクなのか?
 ウインクすらまともにできないとは、母さん貴女の娘はどうやら頭のネジをどこかで落としたようです。
 天国の母を思い、嘆きながら未だ廊下に寝そべり、大仰な瞬きをする妹にストンピングを敢行する。
「あうっ」
 2〜3発蹴ったところで、妹の声に何故か嬉しそうな色混じっているのに気づき足を止めた。
 汚物を見る目で見下ろす。
「お前……」 
「あは、もっと見てー」
「……さっさと、着替えろ、いいな?」
「あーい、へへ、もう照れ屋さんなんだからー」
 凄んで言うと、案外素直に肯いた。
 はあ、またため息がこぼれた。
 小一時間のうちに3個もため息が漏れるなんて、いつか胃に穴が開くんじゃないだろうか、ストレスで。
509ウイリアム・テル ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/17(木) 00:16:29 ID:Gz+WkGPt
*****
 学力と運動神経どちらも残念な妹ではあるが、容姿以外にも料理の上手さは誇ってもいいと思う。
 あのあと、素直にまともな服に着替えた林檎とテーブルに向かい合って座り、妹手製のハンバーグを眺める。
「あれ、美味しくなかったー?」
「いや、まあまあだな」
 おいしいと褒めると、直ぐに調子にのるから言わない。
 だというのに、林檎はへへーとやっぱりバカっぽい笑み。
「全く、お兄ちゃんはツンデレさんだなー」
「……」
「そういう、素直じゃないところも……好・き」
 きゃー、いっちゃったーと身もだえする妹。
 こみ上げてくるイライラを、肉と一緒に咀嚼した。
「そう言えば、お前、大丈夫なのか?」
「え、心配してくれてるの?もー心配するくらいなら蹴ったりしなきゃいいのに。でも大丈夫だよ、りんごは丈夫だしちょっと過激な行動もお兄ちゃんの熱い愛情表現だって知ってるから」
「ああ、こいつ、ハンバーグを喉に詰まらせてポックリいかないかなぁ」
「せめて、もっとまともな方法で死なせて!」
「は?おつむが一年中春のお前にはピッタリな最後だと思うんだが」
「何か、すっごく馬鹿にされてる気がする……」
「そりゃあ、馬鹿にしてるからな」
「りんごはそんな素直なお兄ちゃんはあんまり好きじゃないな!」
「ああ、そりゃ良かった。すっごく清々するわ」
「うそうそ、りんごは何があっても、一生お兄ちゃん大好きっ子だから、見捨てないでお兄ちゃん!」
 がばっと、林檎は勢いよくテーブルに手をついて立ち上がり、身を乗り出した。
 テーブルが揺れて、野菜スープが少しこぼれた。
 ……ああ、もう。
 箸を置き、林檎の頭に手を置いて、ぽんぽんと軽く撫でるように叩く。
「分かったから、落ち着け。飯を食べるときくらいは落ち着いてくれ」
「えへ、わかったー」
 もともと余り本気にしていなかったのか、頬をだらしなく緩めた。
 りんごの頭から手を離すと、あ……と名残惜しげな顔をしていたが、やがておとなしく椅子に座った。
 その様子を、台拭きでこぼれたスープを吹きつつ確かめて、
510ウイリアム・テル ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/17(木) 00:17:35 ID:Gz+WkGPt
「お前の中学校そろそろ中間テストだろ?勉強は大丈夫なのかって聞いてるんだ」
 既に捩じれに捩じれた話の筋を元に戻す。
 林檎の通う中学は俺の高校と大体同じ時期にテストが行われる。
 俺のところも後2週間弱といったところだから、コイツのところもそろそろだろう。
 ご多分にもれず、林檎は頭が悪く、赤点の数を数えるより赤点じゃない科目の数を数えるほうが早いくらいだ。
 元々頭が悪い上に、全く勉強しようとしないから余計タチが悪かった。
 おかげでテストの後は、中学に上がって間もないのに追試や補講の常連だった。
 そして、過去を学ぶことをせず次のテストでも同じ轍を踏んでいるのだから、もはや呆れるしかない。
 林檎はきょとんと、大きな目を更に大きくさせて、かくんと頭をかしげた。
「へ、勉強?んーどうだろうなー」
 林檎は箸を口の中に入れたまま、中空を眺めて考えだした。
 行儀悪いだろ、とぺしりと妹の右手を軽く叩く。
 俺は躾には厳しいたちなのだ。
 ……凄く今更って気はするがな。
「珍しいな、お前のことだから大丈夫じゃないよと即答するかと思ったんだが。今回は勉強してるのか?」
「うん、いっつもお兄ちゃんに勉強しろーって言われてるからね」
「おお、成長したな!」
 母さん、俺の苦労がやっとひとつ報われたようです。
「100点取ってお兄ちゃんをぎゃふんといわせてあげるからね!」
「はは、そうだな、期待して待ってるよ」
 いくら勉強したといっても、所詮は林檎の頭だ、高が知れてる。
 結果よりも林檎が、勉強しようと思ったことを何よりも評価してやりたかった。
 赤点が減ったら、何かほしいものでも買ってやろうと思う。
「へへ、一杯勉強したんだよ。特に算数が一番自信あるんだ」
「はは、ベタな間違い方するな。算数じゃなくて数学だろ。お前も中学に上がって結構経つんだ、その間違いはもう賞味期限切れだぞ」
「ふぇ?……あ、あれ?」
「……」
「あは、は……そうだよね、りんごももう中学生だもんね。算数じゃないよね。生活科じゃなくて社会だもんねー」
「おい、お前まさか」
 食卓に一気に不穏な空気が流れだす。
 いや、いくらコイツが可哀相な頭をしていても、もう中学に入学して結構立つんだ、その間違いはありえないだろう。
 毎日学校には行ってるし、今どこまで授業が進んでて、どの辺がテストに出るのかくらいは確かめているはずだし、うん、大丈夫。
 ……大丈夫、だよ、な?
 俺の視線を一身に浴びて、林檎は、ははーとぎこちなく笑った。
「そのまさかみたい。小学校の時の教科書で勉強してた」
 
 ぎゃふん
511名無しさん@ピンキー:2009/12/17(木) 00:19:00 ID:w84U+M7a
リアル投下ktkr支援
512 ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/17(木) 00:20:20 ID:Gz+WkGPt
以上です。
お目汚し失礼しました。
513名無しさん@ピンキー:2009/12/17(木) 00:24:26 ID:w84U+M7a
なかなかいい妹だと思うぞ。
おつむの弱いところが。
投下GJでした。


脱字発見したので指摘しとく

>>悲しいかな、妹はおつむほうまで春だった。

>>妹の声に何故か嬉しそうな色混じっているのに
514名無しさん@ピンキー:2009/12/17(木) 00:27:49 ID:dUc4ixMq
低スペック?な妹が可愛すぎる
GJ!
515名無しさん@ピンキー:2009/12/17(木) 16:07:05 ID:lSpF1zAc
三国武将・紀蒙惇
516名無しさん@ピンキー:2009/12/17(木) 18:12:35 ID:V8/gAQmX
冬休みの宿題と夏休みの宿題間違えたりしそうだな…
青い冊子(夏)かオレンジの冊子(冬)どっちだ?的な。
517名無しさん@ピンキー:2009/12/17(木) 19:18:02 ID:BYNJVQ4q
うちの出身高校、夏も冬も青色だったぞ
518名無しさん@ピンキー:2009/12/17(木) 19:30:36 ID:eD0xJDe8
うちはプリントの束をホチキスで留めただけの物だった
519名無しさん@ピンキー:2009/12/17(木) 21:47:41 ID:LKmcUafb
>>493にある
__(仮)という作品を一気読みしたんだが話の構成が秀逸でエロなしでも大満足だった

当時どんな評価がなされていたか気になってpart10スレの感想覗いてみたらGJと言いつつも
なんで椿死なせたんだとかエロなしかよっていう短絡的な批判が続いててナイタ、うん

要するに__(仮)の作者GJ
あとチラ裏スマソ
520月の石:2009/12/17(木) 23:12:24 ID:1Oh+Llpn
一気に読むと死んでも何も思わないけど
連載してた時は次回まで焦らされるんだよねw
で、モヤモヤした感じでbadendだと萎える。
要するに読み手は我侭なんだよw
どうしようもないけどねw
521名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 01:12:49 ID:O3wR3vxv
他人を短絡的と批判するレスなのに
自分の感想にはまるで内容がないってのもどうかと思うわけだが
522名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 02:20:58 ID:gzx8OZRk
>>519
俺も読んできたが、・・・名作だろこの作品。
すごく感動した。俺もこういう作品を書きたいと思った。
今更だけど、作者さんGJ!
523名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 04:22:46 ID:H4ygKa1+
でもまあ
普通に姉や妹とヤリまくってる作品ってあんま無いよな
524名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 07:36:30 ID:xlm4KW+G
普通にやりまくっちゃってたら
お姉さん大好きスレか
いもうと大好きスレ向きの話になっちゃうからなあ
525名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 07:40:29 ID:gzx8OZRk
だからこそここに投下される作品は基本的にスキルが求められると
526名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 08:37:40 ID:Z6z3zk5N
やるやらないより先に「キモイ女性」の表現が難しい
キモイ男と優秀な姉妹ならいくらでも書けるのに
527名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 08:42:44 ID:K6xqucmG
まぁ、ヤンデレ姉妹みたいなスレだしな
528名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 13:28:05 ID:sN9aVKja
今更だけど水野姉妹って入れ替わりスレにちっとだけでてるね。
529ウイリアム・テル2 ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/18(金) 15:18:56 ID:lCpf83ny
投下します。
まだまだ修行不足ではありますが生温かい目で見てください
以下本編

「ただいまーっと」
 テスト前で部活が休みということで、いつもより元気な声でドアを開けた。
 授業もテスト勉強のためにと学校側のいきな計らいで少なく、普段と比べると幾分早い時間だ。
 部活は好きだし、別に学校も嫌いじゃないが、やはり早く帰れるとなると嬉しくなってしまう。
 鼻歌でも吹きたい気分で玄関口に座り、のんびり靴を脱いでいると、背後からぱたぱたと足音が聞こえた。
「おかえりー」
「おー、ただいまー」
 聞きなれた妹に答える声も明るく振り返ると、
「へへー」
「……」
 視線を妹の体へ上下に滑らせる。
 どこかで見たことがあるような服装。
 白いシャツ、紺のブレザーに、水色リボン。
 スカートは、灰色。
 手には何故か、ギター。
 シンプルな女子用の制服だが、本物の制服ではないだろう。
 林檎が通う中学の制服はセーラーだし、何というか生地や造りが安っぽい気がする。
 つまりは、妹の最近できた趣味であるコスプレだ。
 何でも、中学生になって初めて出来た友達がオタクで、妹の容姿に目を付けたその女子に流されてコスプレという世界に足を踏み入れた。
 ……この年で、コスプレが趣味なんて、と林檎の将来を嘆いた回数を数えればきりがない。
「えーと、なんだっけ、それ?」
 喉のあたりまで出かかっているんだが、どうしても思い出せない。
 早々に諦め妹に尋ねると、ぷう、と頬を膨らませて、
「もう、何でわかんないのー。けい○んだよ、け○おん!この楽器でわかるでしょ!」
「あー……ああ、確かそんなアニメがあったな」
 そう言われると、何時だったか林檎に付き合わされてDVD観賞をした気がした。
 うすぼんやりとしか思い出せないが、そのアニメの主人公にの格好に似てると言えば似ていた。
「えーと、名前は何だったかなあ……」
「みおちゃんだよー」
「あれ、それって確か主人公の友人じゃなかったか?」
「もう、お兄ちゃん何言ってるの、ちゃんとこれ見て!ギターじゃなくてベースでしょ!」
 ぐいっと、楽器を見せつけるように押し出してきた。
 良く見れば、成程、確かに弦は4本しかない。
 頭にみおちゃんとやらを何とか記憶の中から引っ張り出して、妹と見比べてみた。
 確か黒髪のストレートで、背が高くて、スタイルは良いという設定だった、はず。
 ……あ、何か、イラッとした。
「えへへ、髪型はちょっと違うけど、他は中々いい線いってると思うんだー」
「……」
「あれ、お兄ちゃん、どうしたの急にだまっちゃって。あーもしかしてりんごに見とれちゃったー?」
 へへぇと体をうねうねさせている妹の背後に回る。
 無言のまま、林檎の両脇の下に腕を滑らせ、がっちり固定。
「きゃっ、今日のお兄ちゃんは大胆だよー。もうこんな早くからやるの?そうだねーこの時間帯からなら夜通しで8回戦くらいは――」
「髪型とかそれ以前にちんちくりん過ぎて……あーもう!あと、中学生がそんな下ネタ使うんじゃありません!」
「ドラゴンスープレックスっ!?」
 8回もしたら死ぬわ!
530ウイリアム・テル2 ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/18(金) 15:19:39 ID:lCpf83ny
*****

「ねー、お兄ちゃん」
「何だ、喋ってないで集中しろ」
「だってまだ首痛いー。ていうかよく愛しい妹にあんなことできるね。お兄ちゃんちょっと愛情表現がきついよ」
「俺はあれ食らっといて、首痛いだけで済むお前が怖いよ。あと愛情表現じゃねぇからな」
「ぶー、それがお兄ちゃんの全身全霊の愛を受け止めた妹にかける言葉かな!りんごはツンなお兄ちゃんも気が違うくらい大好きだけど、たまにはデレもくれないと寂しいんだよ!」
「でも、それが快感になるんだよな」
「いつの間にかキャラ設定がMになってる!お兄ちゃんがSならバッチコイだけど!」
「……」
「すっごい、蔑みの目で見られてる!……ああ、でもそれが快!感!」
 何をトチ狂ったか、林檎はぶるぶると体を震わせた。
 途端、何だか甘いような酸っぱいような女の香りが漂った。
 ……え?林檎さん、まさか?
 あんたまだ○2歳でしょ。
 その年でそこまで堕ちたんスか!
 混乱する頭。
 唖然としていると、林檎とばっちり目が合う。
 今のテーブルの前に並んで座り、勉強を教えていた俺と林檎の距離は50cmもない。
 林檎の目が、妙に、熱を持っていて。
 黒目がちな眼が黒曜石のように、怪しく光り、俺を捉えた。
 俺は、その瞳に、吸い込まれるように、顔を妹に近付けて――
 
「ふんっ」
「あにゃ!」 
 ありったけの力で頭突きをかました。
「いたいー」
 おでこを抑え恨みがましい視線を送ってくる林檎から何とか眼をそらし、立ち上がった。
 ふん、と鼻で笑うふりをしてひとつ、息を吐く。
 近くにある窓のところまで行き、開け放つ。
 涼やかな風が、熱を帯び始めていた体を冷やした。
「ふう」
 思わず漏れた吐息は、予想以上に安堵の色が濃かった。
 ――危なかった、と思う。
 正直、理性が勝った自分を褒めて遣わしたい。
 林檎の眼。
 あれは正しく牝の眼だった。
 中学1年生がしていいような眼ではない。
 しかも、あの眼を見るのはこれで初めてではなかった。
 
 そう、あれは――
 
 ……ああ、母さん俺はどこで育て方を間違ったのでしょうか。
 過去をリフレインしかけた無理やり思考を切り換えて、
「さ、続きをするぞ。只でさえお前は小学生の分野を勉強してたんだからな」
「えへぇ、照れちゃう」
「褒めてねぇよ!」
 林檎は特に変わった様子もなく、またノートとにらめっこし始めた。
 こういう時、林檎の鳥頭は便利だと思う。
 何も考えていないようで、本当に何も考えていない林檎の馬鹿さ加減には悩まされも、助けられもする。
 まあ、比率は9:1くらいだが。
 林檎の隣に、腰を下ろす。
 換気のおかげか、既に甘酸っぱい芳香はなく、林檎のいつものシャンプー混じりの甘い体臭のみだった。
531ウイリアム・テル2 ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/18(金) 15:20:53 ID:lCpf83ny
「むー」
「ん、どうした、どこか分からない所でもあるのか?」
「えとねー、これと、これと、これと、これと、これと……」
 林檎は数式の書かれた教科書を次々と指さしていく。
「おい、ほとんど全部じゃないか。ていうか最初のほうは昨日教えただろ!」
「えーだって、一日経つと普通忘れちゃうよ、誰だって」
「お前の普通の基準は鶏か何かか……」
「大体ね、社会に出たら方程式とか役に立たないんだから、勉強する意味なんてあんまりないんだよ!」
「その言い訳を社会のしの字も知らないお前が言っても、なんも説得力もないからな」
「えへぇ、照れちゃう」
「だから、褒めてねぇよ!」
 軽く林檎の頭を叩くと同時に、グゥと腹の鳴る音がした。
 窓の外はいつの間にか暗く、開けた窓から入る風も冷たさを増していた。
 お腹をさすりながら立ち上がり、窓を閉めた。
「あ、お兄ちゃんお腹空いてるの?夕飯の支度しようか」
「ん、ああ、そう言えば結構時間経ってるな。じゃ、頼めるか?」
 あーい、と気の抜けたコーラのような返事をして林檎は、立ち上がり。
 一歩キッチンへと歩き出したところで立ち止まり、ふむ、と考え込みだした。
「どうした?」
「えとね、この前は裸エプロンでもお兄ちゃんは落とせなかったから、今日は裸割烹着で攻めようか、それともメイド服で攻めようか迷っちゃって」
「今日は、久しぶりに外食にするか」
「うそうそ、ちゃんと真面目にやるから許してお兄ちゃん!お兄ちゃんに他の誰かが作った料理を食べさせるわけにはいかないよ!」
「そう言うのはちょっと重いんで、勘弁してください」
「素で嫌がられた!」
 りんごの料理の半分は愛情でできているのに、と妹がその場に崩れ落ちる。
 どこからかハンカチを取り出し目頭にあて、よよ、と古臭い泣きまね。
「そういうベタなボケはいいから、早くご飯作ってくれ」
「もーお兄ちゃんノリが悪いよ。ここはりんごをそっと抱き締めて、くんずほぐれつする場面でしょ!」
「お前に何から何まで付き合ってたら、体がいくつあってももたんわ。というか、今日はちょっと下ネタが多すぎるぞ」
「えー、そっちの方が萌えじゃないの?」
「萌えって何だ、萌えって。あのな、お前はまだガキなんだからもうちょっと節度を持ってだな――」
 ぴと、と俺の唇にいつの間にか目の前にいた林檎の指がおかれた。
 妖艶な眼が、じっと俺を見上げる。
 その眼は、しかし何処か澱んでいて。
 視線に捕えられた俺の背筋は凍り、心臓も何かに鷲掴みされたような感覚。
「りんごは、もう子供じゃないよ」
 抑揚のない、平坦な声。
 妙に赤く、てらてらと輝く唇が弧を描き、頬を裂いた。
「それは、お兄ちゃんが、よぉく知ってるよね」
 ね、おにいちゃん?
 林檎の首が俺を見据えたままかくんと傾いだ。
 俺は何も答えることができず、目を反らすこともできない。
 ふふ、と嗤い声。
 林檎は俺の唇にあてていた自分の指を口に含み、くるりと振り返った。
「じゃあ、ご飯つくるねー。あんまり時間もないから簡単なものでもいいよね」
 弾む足取りで、キッチンへと歩いて行く林檎。
 その声は、既にいつもの舌足らずなものに戻っていた。
 林檎の視線から解放された俺は、力なくその場に座り込んだ。
 俺はあの眼をよく知っている。
 知っているはずだったのに。
 穏やかな日常の中ですっかり忘れてしまっていた。
 いや、そうじゃない、忘れたんじゃなくて目を反らしていただけ。
 アイツも姉さんと同じ血が流れていることを、俺は見ないようにしていただけなのだ。
「林檎、やっぱりお前は……」
 声は小さく、林檎まで届かない。
 林檎と俺の間は精々10m弱。
 けれど今は、その距離が、限りなく、遠い。
 林檎、それでも俺は。
「お前と、どこにでもいるような普通の兄妹としてこれからも過ごしていきたい、と。身勝手だけど、傲慢だけどそう思っているんだよ」
532ウイリアム・テル2 ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/18(金) 15:21:51 ID:lCpf83ny
以上です。
お目汚し失礼しました。
533名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 15:38:22 ID:CevFyVu6
GJ
こう、ふわふわの真綿で首締めるような感じのキモウト最高だな
534名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 16:45:17 ID:X56YBkZl
林檎かわいいな。お姉さんも出てくるのかな。楽しみです。
535名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 19:49:23 ID:Y0vOpXnn
>>519
真相を知った上で椿を受け入れ、互いの手を取って逃避行する如月兄妹が見たかったよ
今でも分岐ルートが書かれないか待っているし、何度も分岐ルートを想像してしまう
それ程までに名作だった。けど、ずっと幸せで幸せで幸せの絶頂期に居る椿が見たかったよ

>>532
GJ! 何も考えてなさそうで色々と張り巡らせているキモウトはカワイイです
536名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 20:02:01 ID:4hFrlWNZ
>>535幸せで幸せで幸せで幸せの絶頂の時に...
エレナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!かと思った
>>532GJ!こんな妹欲しかった
537名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 21:18:05 ID:sN9aVKja
>>532
GJ
538名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 22:40:26 ID:wcXnwNgN
>>532
GJ、てかギャグ中心だと思ってたら終盤ちょっぴり重くなってきて…
539名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 00:10:40 ID:2H2djxzV
珍しく三つの鎖が来ないな
540三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/19(土) 01:51:20 ID:XOuT2u+2
三つの鎖 9 前編です

※以下注意
性的表現あり
本番なし
血のつながらない自称姉あり

投下します
541三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/19(土) 01:53:19 ID:XOuT2u+2
三つの鎖 9

 あの日。兄さんと夏美がキスしたのを見た日。
 兄さんは私を追ってこなかった。
 
 あの後、私は部屋に引きこもっていた。兄さんが来るのをずっと待っていた。
 春子がいろいろ話しかけてきたが、無視した。うるさいだけだった。
 父さんと母さんは春子が説明したようだ。何も話してこなかった。なんて説明したのかは知らないし知りたいとも思わない。家の家事も春子がやってくれたようだ。
 頭に浮かぶのは悪夢のような光景。兄さんと夏美のキス。恥ずかしそうに幸せそうに寄り添う二人。私が追い求めてやまない光景。そして絶対に手に入らない光景。
 私が背を向ければ兄さんは追いかけてくれた。なのに。何で来てくれないの。私が背を向けるとすぐに追いかけてきてくれたのに。
 夏美といる方が兄さんにとって大切なの。
 全身が熱い。私はすでに汗だくだった。考えにふけっていると、ドアが控えめにノックされる。
 「梓ちゃん?」
 春子の声。
 「入るよ」
 お盆を持って春子が入ってきた。
 「朝ご飯食べよ」
 もう既に朝なのか。カーテンの奥はすでに明るくなっていた。春子の持つお盆にはサンドイッチと飲み物が乗っていた。
 「兄さんは?」
 春子は困ったような顔をした。兄さんは来てくれなかったんだ。どうして。
 お盆の飲み物を見ると喉がからからなのを今さらになって自覚した。コップを手に口にすると冷たくて微かな苦みが喉を通る。アイスティー。私の好きな飲み物。兄さんはいつも冷蔵庫にアイスティーを入れてくれている。
 次にサンドイッチを食べた。鳥の照り焼きが入っている。兄さんの料理と似た味。
 「鳥の照り焼きを教えたのは春子だったんだ」
 「そうだよ」
 私の独り言に春子は答えた。兄さんの得意な料理の一つ。私の好きな兄さんの料理。
 何で?何で兄さんは来てくれないの?
 私に負い目を感じている兄さんはいつも私を追いかけてくれた。私が冷たくすれば必ずそばに来た。
 何で今は来てくれないの?
 「梓ちゃん。ちょっといいかな」
 春子が話しかけてくる。憂いを含んだ悲しそうな顔で私を見つめてくる。いつもののんびりとした表情は無い。
 「幸一君を縛るのはもうやめてあげようよ」
 心臓がきしむ。
 「何を言ってるの?縛るって何のこと?」
 「幸一君の罪悪感に付け込んでいるでしょ?」
 「私は何もしていない。兄さんが勝手に引け目を感じているだけよ」
 春子が私を見る。表情に浮かぶ悲しみ。不快だ。
 「かわいそうな梓ちゃん」
 私は春子を睨みつけた。私は数ある選択肢から一番ましな方法を選んだ。その結果に同情などされたくない。
 他にどんな方法があるというのか。兄さんも私も幸せになる選択なんて無い。兄さんを不幸にせず、私も不幸にならないぎりぎりの妥協。それが私の選んだ選択。
 春子はそんな私を悲しそうに見つめた。春子は腕を伸ばし私の頬に触れる。温かい感触。それが余計に私をいらつかせる。
 「幸一君を追っても追い切れないから、幸一君の罪悪感に付け込んで従わせた」
 うるさい。
 「梓ちゃんを追いかける過程で幸一君は本当に成長したよ。昔のお調子者で思慮の浅い手のかかる男の子は、今の幸一君になった」
 梓が私の頬をなでる。その手にはテーピング。昨日私が痛めた手。
 「全部梓ちゃんのためだよ」
 「私は一度も頼んでない」
 私は吐き捨てた。
 「春子は関係ないでしょ。私と兄さんの兄妹の関係に口出ししないで」
 「関係あるよ」
 春子は悲しげに微笑んだ。
 「私は幸一君と梓ちゃんのお姉ちゃんだよ」
 「血のつながった私の兄弟は兄さんだけよ」
 「梓ちゃんも気が付いているでしょ。幸一君は罪悪感で縛るのはもう無理だって」
 春子の頬を涙が伝う。
 「幸一君も薄々気が付いているよ。梓ちゃんは本当は嫌っても憎んでもいないって。幸一君を縛る罪悪感は幻だって」
 「うるさい。黙って」
 「かわいそうな梓ちゃん。幸一君が欲しくて、でも手に入らないならせめて傍に置くために幻の罪悪感という鎖で縛りつけて」
 私の頬に当てられた春子の手が震える。
 「でもね、幸一君は鎖に縛られたままで必死にもがいて、必死に努力したんだよ。梓ちゃんのために。本当に残酷だよ」
 春子の涙はとめどなく流れる。涙が床に落ちる。
542三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/19(土) 01:55:40 ID:XOuT2u+2
 「幸一君を束縛しても、幸一君の心は手に入らないんだよ」
 「春子に私の気持ちの何が分かるの」
 私の声はどうしようもなく震えていた。私は最善の方法を選んだはずなのに。
 「分かるよ」
 春子はまっすぐに私を見た。涙でぬれた瞳。そこに同情も憐憫も無い。あるのは悲しみだけ。
 「お姉ちゃんにもよく分かるよ」
 私の怒りは急速にしぼんだ。春子の言葉に同情や憐憫があれば私は爆発したに違いない。しかし、春子は同情も憐憫もしてない。悲しみだけがある。
 分からない。春子がそこまで悲しむ理由が分からない。
 春子は悲しげに私を見た。
 「梓ちゃん。昨日幸一君は来るはずだったんだよ」
 私は春子の言っていることが分からなかった。
 来るはずだった?
 「どういう事?」
 「私が止めたの」
 一瞬で私の頭は沸騰した。
 春子の胸倉をつかみ足を払う。倒れた春子に馬乗りになり胸倉をつかみいつでも首を締め上げれるようにする。
 「私が幸一君にメールしたの。私が話すって。今は顔を合わせない方がいいって」
 春子は淡々と言った。微塵の恐怖も感じさせない落ち着いた声。それが何よりも私をいらつかせた。
 「ふざけないで!何でそんな事をしたの?」
 春子の胸倉をつかむ手に力がこもる。
 「幸一君は梓ちゃんに誠実に話すと思う。そうなったら梓ちゃんは今私にした事と同じことしたでしょ」
 私の手を春子の手が包む。テーピングの巻かれた手。私が痛みつけた手。
 「弟と妹が傷つけあうのをもう見たくないの」
 私は唇をかみしめた。
 ふと脳裏に浮かんだ疑問。昨日、兄さんは家に戻ってこなかった。兄さんは昨日の晩どこにいたのだろう。
 まさか。
 「兄さんは昨日どこにいたの」
 春子の顔色がわずかに変わった。
 私が最後に見たとき、兄さんは夏美といた。
 「夏美なのね」
 春子は唇をかみしめた。
 兄さんが夏美の家に泊まった。女の家に。
 私は部屋を飛び出した。
 「梓ちゃん待って!」
 春子の声を振り切り、私は家を出た。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
 私は夏美のマンションに向かった。何度か遊びに行った事があるから道は分かっている。マンションのカギはかかっていた。
 外から回り込む。夏美の部屋は二階だ。私は周囲を見て誰もいないのを確認すると、排水官をつかみ手早く上った。ベランダに侵入する。
 カギがかかっているのを、ガラスをたたき割り鍵を開け侵入した。
 リビングから夏美の部屋に入る。ベッドはきれいに整理されていた。
 ベッドの匂いを嗅ぐ。洗ったシーツの匂いに加え微かに兄さんの匂いがする。
 私は風呂場の洗濯機を開けた。女ものの服や下着に加え、シーツが入っていた。
 シーツをつかみ匂いを嗅ぐ。女の匂いと兄さんの匂い。シーツを広げる。白い粘り気のある液体がこびりついている。男の匂い。微かに固まった血が混じっている。
 私は唇をかみしめた。
 夏美。殺してやる。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 お昼休みになった。耕平が食事に誘ってくれたが僕は断った。一人でいたい気分だった。
 春子と梓は学校に来ていない。
 梓の事が気になる。やはり昨日話に家に戻るべきだったのではと思うけど、すぐにうち消す。今は春子を信じるしかない。
 夏美ちゃんの家から直接来たので今日はお弁当は無いし食欲も無い。食事にする気にはなれない。教室はクラスメイトが多い。一人でいたかった。
 屋上に行こう。僕はクラスを出た。
 廊下を歩いていると、夏美ちゃんがこっちに歩いているのに気がついた。向こうも気がついて控え目に手を振るってパタパタと走ってきた。
 「あの、お兄さん。お昼どうしますか?」
 夏美ちゃんは恥ずかしそうにもじもじする。可愛いかも。
 「お弁当が無いから屋上でのんびりしようと思っている」
 覚えのある匂いが鼻孔をくすぐる。断じて言うが、女の子の匂いでは無い。嫌な予感がする。
543三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/19(土) 01:58:36 ID:XOuT2u+2
 「あの、ありあわせですけど、その、お弁当を作ったんです」
 恥ずかしそうに下を向く夏美ちゃん。うなじまで赤い。
 「よかったら、一緒に食べませんか?」
 正直に言う。僕は今すぐにでも背を向けて「グッバイ夏美ちゃん!」と言って走り去りたかった。無論、そんな失礼なことはできない。
 「僕でよければ喜んで」
 断腸の思いで言葉を吐きだした。夏美ちゃんの顔が喜びに輝く。
 「あざーっす!さ、屋上に行きましょう」
 夏美ちゃんは僕の手を握り走り出した。もう片方の手にはお弁当が揺れる。
 僕の手を握る夏美ちゃんの手が温かくて柔らかい。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 屋上のベンチで並んで座る。夏美ちゃんは僕にお弁当を渡した。にこにこと嬉しそうに笑う。僕は礼を言って受け取り、蓋に手をかける。躊躇を押し殺してお弁当の蓋を開けた。
 独特の香りが鼻につく。
 「ありあわせですけど、どうぞ召し上がってください」
 恥ずかしそうに、そして嬉しそうに夏美ちゃんが笑う。なんでそんなに嬉しそうなの。
 「ありがとう。いただくね」
 僕は微笑んだ。笑顔がひきつってないか心配だ。
 スプーンを握る。そう。スプーンを。
 僕はお弁当から一口分すくい口にした。
 「どうですか?」
 不安をにじませ話しかけてくる夏美ちゃん。
 「おいしいよ」
 嘘ではない。ただ、同じ会話をこれで三回した。昨日の夜と、今日の朝。そして今。
 「よかったです」
 そう言って夏美ちゃんもお弁当を開きスプーンを握った。
 「私、カレーは大好きなのです」
 そう。夏美ちゃんのお弁当はカレーだった。ちなみに言うと、今日の朝御飯もカレー、昨日の晩御飯もカレー。
 正直つらい。僕自身料理はこるし、教えてくれた人も料理がうまいから舌はそこそこ肥えている。三食同じカレーは味覚的にも栄養的にも拷問に近い。
 おいしそうに、実においしそうにカレーを食べる夏美ちゃん。
 カレー自体はおいしい。でも朝昼晩カレーはもういい。
 それでも僕はカレーを残さず食べた。せっかく用意してくれたのを残すわけにはいかない。
 夏美ちゃんは水筒からお茶を入れてくれた。僕は礼を言って受け取った。
 そのまま無言。気まずいのではなく、心地よい沈黙。
 正直、こんな事をしている場合ではないと思う。梓の事が脳裏に浮かぶ。
 「お兄さん」
 夏美ちゃんは僕を見た。心配そうな表情。
 「梓の事、ですよね」
 僕は戸惑った。正直に今の気持ちを告げてもいいのだろうかと思ってしまう。
 何か他の話題を。
 「あの、夏美ちゃん」
 夏美ちゃんは僕を見た。
 「その、体は大丈夫?」
 顔を赤くする夏美ちゃん。僕は馬鹿か。他の話題があるはずなのに。よりによってなんて話題を。
 「えっと、その、心配してくれてありがとうございます」
 太ももをもじもじする夏美ちゃん。その動きはやめて欲しい。
 「まだ奥に残っている感触がありますけど、痛みはもう無いです」
 「良かった」
 本当のところは分からない。女の子の最初はすごく痛いって聞く。夏美ちゃんは単に気を使って言ってくれただけかもしれない。
 そのまま黙る僕と夏美ちゃん。さっきとは違う気恥しい沈黙。
 夏美ちゃんの様子がおかしい。顔を真っ赤にして太ももをこすり合わせる。恥ずかしそうに、切なそうにため息をつく。
 「大丈夫?」
 問いかけに僕を見る梓ちゃん。切なそうに僕を見上げる。
 「わ、わたし、お兄さんとの、その、せ、せ、せ」
 夏美ちゃんの声が羞恥に震える。
 「いえ、犯されたのが」
 食べたカレーを噴き出しそうになった。
 「その、すごく、気持ち良かったです」
 うつむく夏美ちゃん。太ももをこすり合わせる。スカートからのぞく白く細いが足が艶めかしい。
 「お兄さんに犯されるのが、本当に気持ち良くて、私、今日の授業も、全然頭に入らなくて」
544三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/19(土) 02:01:23 ID:XOuT2u+2
 夏美ちゃんは胸の前に両手をあて震える。恥ずかしそうにうつむく。
 「私、だめなんです。そんな事考えている場合じゃないと思っても、何度も思い出しちゃって」
 太ももをこすり合わせる夏美ちゃん。
 「私を犯す、その、お兄さんのお、お、おちんちんの感触が、ずっと残っているんです」
 顔を上げる夏美ちゃん。僕を見つめる視線に艶を感じる。
 「私の膣をこする感覚が、犯される感覚が、頭を離れないんです」
 夏美ちゃんは僕ににじり寄る。思わず僕はのけぞってしまい、結果的に夏美ちゃんが僕を覆いかぶさる形になった。
 顔が近い。夏美ちゃんの呼吸を感じるほどに。
 「後ろから犯されるのが、すごかったです」
 夏美ちゃんの手が僕の頬にふれる。息も荒く震える声で卑猥な言葉を紡ぐ夏美ちゃん。
 「腰をがっちりつかむお兄さんの手が、私を逃がしてくれなくて、何度も何度も犯すんです。膣をこすられる度にわたし、わたし」
 太ももをすり合わせる夏美ちゃん。
 「お兄さんが、私の中に出した時も、すごく熱くて、焼けるようで」
 夏美ちゃんの顔が近い。僕は夏美ちゃんの肩を押さえた。
 「夏美ちゃん。落ち着いて」
 こんな場所でセックスするわけにはいかない。時間もあまりない。
 そんなとき、夏美ちゃんの足が僕の股間にふれた。
 「あっ」
 夏美ちゃんがまじまじと見る。僕の股間は盛り上がっていた。
 「嬉しいです。私で興奮してくれるんですね」
 熱い吐息が顔にかかる。女の匂い。
 「今楽にしてあげますね」
 夏美ちゃんは僕のズボンのジッパーを下ろし手を入れた。ってちょっと!
 「夏美ちゃん!ちょっと!」
 僕の言葉と聞かず夏美ちゃんは僕の剛直を取り出した。白い指が剛直に絡みつく。
 「はむ」
 夏美ちゃんは僕の剛直を口にした。思わず腰が浮く。夏美ちゃんの口の中は膣とは違う熱さ。
 「はむっ、れろっ」
 ザラザラした夏美ちゃんの舌が僕の剛直の先端を舐める。膣をこする感覚と違う快感。
 いけない。流されている。
 「はむっ、ちゅるっ、ちゅっ、れろっ」
 「ちょっと夏美ちゃん、うわっ」
 夏美ちゃんの舌が剛直の裏筋を舐める。快感に思わず腰が引く。
 「ちゅっ、おにいひゃん、はむっ、ほうへふは、ちゅっ」
 上目づかいに僕を見つめる夏美ちゃんの視線は濡れていた。
 夏美ちゃんの手が動きだした。僕の剛直をこする。
 「ちゅっ、ちゅっ、ぺろっ、はむっ」
 決して手慣れてはいない。たどたどしく動く夏美ちゃんの舌と手。それがかえって心地いい。
 「はむっ、ちゅっ、んっ、おにいひゃん、なにはへへひまひた、ちゅるっ」
 先走り液が出てくる。夏美ちゃんは嬉しそうに目を細めた。
 ふいに脳裏に浮かぶ。僕の股間をまさぐりながらうっとりする春子。
 思わず夏美ちゃんを引きはがした。剛直が空気に触れる。
 「あっ」
 尻もちをつく夏美ちゃん。
 「あ、あの、お兄さん、その、わ、わたし」
 震える夏美ちゃん。
 「ご、ごめんなさい、わたし、お兄さんが、そ、そんなに嫌がってるって分からなくて、そ、その」
 目に涙を浮かべ必死に言葉を紡ぐ夏美ちゃん。痛々しい姿。
 僕は愚かだ。夏美ちゃんは悪くないのに。
 夏美ちゃんに手を伸ばす。びくっと震える夏美ちゃん。そのまま頭にふれる。
 「ごめんね。ちょっとびっくりしちゃって」
 そのまま夏美ちゃんの頭をなでる。
 「続きをしてくれる?」
 僕はベンチに座りなおす。夏美ちゃんは安堵の息をはき、床に四つん這いになって僕の股間に顔をうずめた。
 「あの、いきますね」
 夏美ちゃんは硬いままの僕の剛直をつかみ、口にくわえた。再び熱い感触。
 「はむっ、れろっ、ちゅっ、ちゅむっ」
 舌のざらざらした感触が気持いい。
 「気持いいよ」
 僕は夏美ちゃんの頭をゆっくりなでた。
545三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/19(土) 02:03:55 ID:XOuT2u+2
 「手も使って」
 夏美ちゃんは嬉しそうにうなずく。手で僕の剛直をこする。たどたどしく動く小さい手。
 「ちゅっ、じゅるっ、はむっ、じゅるっ、ちゅるっ、れろっ」
 夏美ちゃんの唾液と先走り液で滑りがよくなった僕の剛直をこする感覚がすごく気持いい。
 僕が夏美ちゃんの髪の毛をゆっくりとく。サラサラで柔らかい。夏美ちゃんが気持ちよさそうに目を細める。
 「じゅるっ、ちゅっ、ちゅっ、んっ、じゅっ、はむっ、んっ、ちゅっ」
 一生懸命たどたどしい動きの夏美ちゃん。すごい光景だ。ベンチに座った僕に四つん這いになって僕の股間に顔を埋める夏美ちゃんの頭。スカートから白い足がのぞく。太ももが悩ましげにすりあわされ、小ぶりなお尻が揺れる。
 「んっ、ちゅっ、じゅる、れろっ、じゅるっ、んっ、はむ、ちゅっ」
 たどたどしく動く舌と手に射精感が高まる。
 「夏美ちゃん、でるっ」
 剛直を口にしたまま上目ずづかいに僕を見上げる夏美ちゃん。興奮に濡れた視線。
 「んっ、ちゅっ、いいでふ、じゅるっ、だひへふだはい、ちゅっ」
 夏美ちゃんが動きをはげしくする。
 もうだめだ。出る。
 僕は思わず夏美ちゃんの頭を押さえた。そのまま射精する。
 「んっ!?んんんんん!?」
 苦しそうにむせぶ夏美ちゃん。射精の快感に腰が砕けそうになる。何度も精液が飛び出る感覚。
 「んっ、んんんんっ、じゅっ、こくっ、んっ、ごくっ、こくっ」
 喉を鳴らす夏美ちゃん。射精が終わって僕は夏美ちゃんの頭を押さえていることに気がつく。
 「ご、ごめん夏美ちゃん」
 手を離すが、夏美ちゃんは剛直の先端を口にしたまま離さない。
 「んっ、こくっ、ごくっ」
 一生懸命喉を鳴らす夏美ちゃん。
 「いいよ夏美ちゃん、飲まなくても」
 夏美ちゃんはかすかに首を横に振る。結局最後の一口まで飲み込んだ。夏美ちゃんはゆっくりと口を離した。
 「夏美ちゃんありがとう。その、すごく気持ち良かったよ」
 夏美ちゃんが嬉しそうに僕を見上げる。僕は夏美ちゃんの髪をすいた。くすぐったそうに笑う夏美ちゃん。
 予鈴が鳴る。
 僕たちは顔を見合わせた。夏美ちゃんは寂しそうに笑った。僕も寂しかった。
 キスをして僕たちは屋上を後にした。
 
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 次は体育だ。
 夏美ちゃんと別れた僕はダッシュで着替え体育館に向かう。走りながら夏美ちゃんの事を考えてしまう。
 僕は間違いなく夏美ちゃんにおぼれている。そしておぼれてもいいと思ってしまった。いつの間に僕はこんなに自制のきかない昔の自分に戻ってしまったのだろう。いや、自制がきいていないと自覚している分、昔よりもたちが悪い。
 梓の事が脳裏に浮かぶ。大丈夫だろうか。
 体育館で貴重品袋の口を開けた。この高校は授業中以外なら携帯を使用してもよい。財布を入れ携帯も入れようとしたとき、メールに気がつく。
 メールを開く。春子からだ。
 『梓ちゃんが家を飛び出しました。今探しています。学校で見たら連絡してください』
 不吉な予感。梓は大丈夫だろうか。
 僕と夏美ちゃんが一緒にいるのを見て走り去った梓。頭を離れない梓の言葉。
 兄さんは結局私を一人にするんだ。ゆるさない。死んでしまえ。
 梓。信じて欲しい。僕は二度と梓を一人にしない。
 僕は自嘲した。今の僕は夏美ちゃんに夢中になっている。説得力が全く無い。
 「危ない」
 顔をあげた瞬間、バスケットボールが目の前にあった。
 反射的に顔をひねり避ける。頬をボールがこする感覚。
 「大丈夫かいな」
 耕平が寄ってくる。いけない。授業中にぼんやりしている。
 「大丈夫だ。すまない」
 他のクラスメイトも寄ってくる。
 「大丈夫か?血が出てるぞ」
 体育の教師が言う。
 頬を何かが伝わる感触。手の甲で拭うと、微かに血が付いていた。避けきれなかったのか。
 「大した傷じゃないが一応保健室に行ってこい」
 僕は大人しく頷いた。今の僕だと迷惑をかけるだけだ。
 保健室に向かいながら深呼吸する。心の雑音を消す作業。自制をきかせる。
 ノックをして保健室に入る。誰もいない。席を外しているようだ。僕は治療道具を勝手に拝借することにした。薬品の入っている棚に近づく。棚を調べていると、ドアが開く音がした。保健室の先生が帰ってきたのだろう。
 「兄さん」
546三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/19(土) 02:06:25 ID:XOuT2u+2
 僕を呼ぶ声に素早く振り向いた。聞き覚えのある声。僕を兄さんと呼ぶのは一人だけ。
 梓。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 梓は幽鬼のように立ち尽くしていた。保健室のドアを閉め鍵を閉める。鍵の閉まる小さな音が耳を穿つ。
 立ち尽くす梓の髪はぼさぼさだった。そういえば今日も髪をといていない。
 僕は体の力を抜き重心を落とす。
 梓が踏み込んでくる。僕の胸倉に伸びてくる手を払う。霞んで見える速さ。
 僕は一歩下がって間合いを取る。
 梓は本気だ。
 無言で間合いを詰める梓。
 制服をつかめば破れるかもしれない。のばしてきた手をつかんで倒すしかない。
 僕は梓の手をつかんだ。はずだった。
 つかんだと思った瞬間、僕の手は空を切った。次の瞬間、梓は僕の胸倉を掴んでいた。
 視界が反転する。背中から叩きつけられた衝撃に息が詰まる。かろうじて受け身をとった僕に梓が馬乗りになる。
 梓の膝が僕の腕を抑える。はねのけようとした瞬間、梓の肘が僕の喉を突く。体重の乗った一撃。
 息が詰まる。むせる僕の腕をつかむ梓。何かを僕の腕に巻きつける。
 「暴れないで兄さん」
 僕の肘を容赦なくねじる梓。はねのけようとすると腕に何かが引っかかる。ロープが僕の両腕を背中で巻き付けられている。
 既視感。春子。
 「兄さん、ほっぺた大丈夫?」
 梓が僕の顔を覗き込む。梓の顔には何の感情も浮かんでいない。ただ双眸が暗い光を放つ。白い指が僕の頬の傷をなぞる。微かな痛み。
 「痛そうね」
 梓の指が傷口に爪を立てる。傷口を広げる白い指。
 「痛い?」
 そう言いながらも梓はさらに傷を抉る。頬に文字通り抉られる痛みが走る。執拗に僕の傷口を抉る白い指。あまりの痛みに額に汗が浮かぶ。
 梓は無表情に僕を見下ろしていた。
 「ねえ。どうなの?痛いの?」
 さらに傷口を梓の指が抉る。神経を直接削られるような痛み。
 僕は痛みをこらえて梓を見上げた。
 「兄さんすごいわね。微動だにしないなんて」
 梓は飽きたように傷口から手を離す。梓の手は僕の血にまみれていた。血に濡れた白い指をなめる梓。その仕草が妙に艶めかしい。
 顔を近づけてくる梓。僕は顔をそむけた。梓は犬の様に僕の傷を舐めた。
 「ぺろっ、ちゅっ、んっ」
 傷口に梓の舌が這う。熱い。さらに顔をそむけようとすると、梓の両手が僕の頭をつかむ。熱い両手。
 「ちゅっ、兄さん、動かないで、んっ、ぺろっ」
 熱心に僕の傷を舐める梓。その姿がお昼休みの夏美ちゃんにかぶる。
 「んっ、兄さん、ちゅっ、いま、ちゅっ、夏美の事、れろっ、考えたでしょ」
 梓が囁く。背筋に悪寒が走る。
 顔をあげ僕を見下ろす梓。強い感情を放つ瞳。
 「夏美と寝たんでしょ」
 梓の顔がゆがむ。
 「私を追わないで」
 僕は梓を下から見上げる。まっすぐに睨む梓の視線を受け止めた。
 「そうだ。僕は夏美ちゃんといた」
 梓が青ざめる。
 「そう。本当なんだ」
 「梓。何であんな事を」
 梓の唇を見る。僕を押し倒しキスした唇。
 「あの女が私の兄さんに手を出すからよ」
 頬に痛みが走る。梓が僕の頬を力いっぱい叩いた。
 「兄さんは私のものなのに」
 僕は首を横にふった。
 見下ろす梓の顔色が変わる。
 「僕は誰のものでもない」
 「兄さんは私のものよ。誰にも渡さない」
 梓の指が僕の唇にふれる。そのまま僕の唇をなぞる梓の指先。ふれる白い指が熱い。
 「兄さんはまた私を一人にするんだ」
 「梓を一人にしない」
547三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/19(土) 02:08:18 ID:XOuT2u+2
 「嘘」
 梓は僕の唇から指を離す。その指をかみしめる。
 「兄さんは夏美に夢中になって私を一人にする。だってそうでしょ?兄さんは夏美が好きなんだもの」
 梓の目尻に涙がたまる。
 「どうなの。夏美が好きなんでしょう」
 涙が梓の頬を伝う。
 「そうしたら私なんてどうでもいいんでしょ」
 梓の涙が僕の顔に落ちる。傷口にしみる。
 「確かに僕は夏美ちゃんに惹かれている。夢中になっているといってもいい」
 僕の正直な気持ち。
 「でも、それと梓を大切に思う事は全く別の事だ」
 梓を見上げる。涙でぐちゃぐちゃになった表情は読み取れない。
 「僕の妹は梓だけだ」
 僕の本心。梓は涙でぐちゃぐちゃの顔を近づける。
 そのままお互いの唇が触れる。
 子供の時を思い出す。梓はよくキスをねだった。
 梓は顔をあげた。何を考えているのか分からない無表情。悲しいのか、怒っているのか。僕には分からない。
 「思い知らせてあげる」
 立ち上がり梓は背を向けて走り出した。保健室のカギを開け出て行った。
 僕はその背中に声をかけなかった。かける言葉が無かった。
 何でこんな事をするのだろう。また家事を押し付けられるとでも思っているのだろうか。それとも、僕が梓に構う事が無くなるのを恐れているのだろうか。
 昨日思いついた考えが脳裏に浮かぶ。梓は僕を独占したいと思っているのだろうか。
 考えるだけでもおぞましい発想。妹が兄に懸想しているなど。
 夏美ちゃんは大切な恋人で、梓は大切な妹。
 梓はそれを分かってくれない。
 「ロープぐらい外して欲しいな」
 僕は立ち上がり、刃物を探し始めた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 私は分かってしまった。兄さんは私のものでなくなった。
 兄さんは私の鎖を抜けたのだ。
 ついこの前まで私を追いかけてくれたのに。私のそばにいてくれたのに。
 元凶の女の顔が脳裏に浮かぶ。
 思い知らせてやる。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 帰りのホームルーム。
 私はぼんやりとお兄さんの事を考えていた。
 お昼休みの事を思い出す。顔が熱くなる。私は何て事をしてしまたんだ。
 お兄さんのを…。
 唇にふれる。この口でお兄さんに…。
 最後は全部飲みこんで。
 あまりの事に頭が爆発しそうになる。
 私はため息をついた。私ってこんなにスケベだっけ。ていうかあれだ。お兄さんと寝たときのがすご過ぎたんだ。
 あの夜、お兄さんは私を抱いた。思い出すだけで体が熱くなる。
 お兄さんの逞しい腕に組み伏せられ、犯される感覚。
 お兄さんの腰の動きが、痛いのに快感に変わる。
 お兄さんが私の中に放ち、染められる感触。
 私、初めてなのに、何度もイって。イかされて。
 ちょっと乱暴にされるのが良くて。
 いけない。私は頭を振る。今の私はどう考えても変態です。本当にありがとうと言ってしまいたい。
 「なつみー」
 クラスメイトの声にびくりと体が震える。いつの間にかホームルームは終わっていた。
 「梓のおにーさんが呼んでるよー」
 私は飛び上るように立ち上がった。教室の入り口でお兄さんが控えめに手を挙げた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
548三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/19(土) 02:11:54 ID:XOuT2u+2
 お兄さんが迎えに来てくれたという青春ヒャッホーというシチュエーションとは裏腹に、話は重かった。
 帰り道を歩きながらいろいろ話をした。
 梓がお兄さんに襲いかかった事、ハル先輩と話しあいの結果、私を家まで送る事にしたなどと、お兄さんは淡々と語った。
 なぜ、お兄さんが私を送る理由は口にしなかったが、聞かなくても分かった。
 梓が私を襲う可能性があるからだ。
 信じられないという気持ちと、やっぱりという気持ちが半々だった。
 「お兄さんはこの後どうするんですか?」
 「梓を探す」
 お兄さんは静かに答えた。お昼までは無かった頬の白いガーゼが痛々しい。
 「あの、私もついていっていいですか」
 私は無駄だと分かっていても尋ねずにいられなかった。
 「ありがとう。でも僕と春子だけで大丈夫だよ」
 お兄さんは微笑んだ。この笑顔を見ると何でもいいから力になりたいと思ってしまう。
 「あの、もし梓が私に襲いかかっても、別にいいです。守って欲しいなんて言いません。足手まといなら見捨ててもらってもいいです」
 私は頼みこんだ。せめて傍にいたい。
 「夏美ちゃん」
 お兄さんが私の頭にポンっと手を置いた。大きくて温かい手。
 「夏美ちゃんに怪我をしてほしくないし、梓が夏美ちゃんを怪我させるのも望まないよ」
 私は顔を赤くした。恥ずかしい。私はお兄さんの事どころか自分の事しか考えていないのに、お兄さんは私と梓の事も考えている。
 恥ずかしいという気持ちと、醜い感情が私の心を渦巻く。
 梓はお兄さんの妹で、私はお兄さんの恋人なのに。比べる意味なんて無いのに嫉妬してしまう。
 私の頭を優しくなでるお兄さんの手。梓はずっとこの手を一人占めしてきたんだ。
 お兄さんは梓の事をどう思っているのかな。梓はお兄さんの事をどう思っているのかな。
 梓はお兄さんの事を嫌っていると思っていた。でも今回の事を見る限り、実はお兄さんの事を大好きなのではないだろうか。というかそれ以外考えられない。
 それにそう考えるとつじつまが合う事がたくさんある。
 梓はお兄さんの事をシスコンといつも罵倒していた。それなのにいつもお昼にお弁当を持ってこさせていた。そんな姿を見ているから、私たちはお兄さんの事をシスコンと思っていた。お兄さんも強く否定することはなかった。ただ苦笑するだけだ。
 だからお兄さんはあまりもてない。背は高いし、細身に見えて引き締まっているし、料理もできて優しい。顔もけっこう格好いい。
 それでもシスコンという評判は大きなマイナスだ。
 梓はわざとそういう評判が立つように仕向けていたのではないか。お兄さんを独占するために。
 私はその仮定に背筋が寒くなった。今回の梓の行動を見るに、仮定ではすまない気がする。
 もしかしたら、梓はお兄さんを兄として好きなのではなくて、お兄さんの事を一人の男性として愛しているのではないだろうか。
 特に昨日の梓の行動はブラコンの域をはるかに超えている。そう考えると梓に恋人がいないのも納得する。
 梓はもてる。美人で、抱きしめると折れそうな細い体。何というか、見た目だけは征服欲を喚起させるような女の子だ。本人にそんな気は一切ないらしいが。
 私は単にお兄さんを見て男に幻滅しているのかと思っていた。でも、もし梓がお兄さんを愛しているなら、恋人など作るはずが無い。
 そして私は恐ろしい考えに行きついた。お兄さんは、梓の気持ちに気が付いているのだろうか?
 今回の梓の行動は、高校からの付き合いの私でもこんな推測をしてしまうぐらいわかりやすい行動だ。ずっと一緒にいたお兄さんが気がつかないはずが無い。
 「あの、お兄さん」
 聞いてはいけない。
 「質問したいことが、あるんです」
 足を止める私たち。まだ間に合う。別の質問を。
 でも、そんな事は無理だ。
 「お兄さんは、梓がお兄さんの事をどう思っていると思いますか」
 お兄さんは無言。
 「その、梓ってもしかしたら、お兄さんの事」
 一人の男性として愛しているんじゃ。
 私がその言葉を紡ぐ前にお兄さんは口を開いた。
 「梓は昔から寂しがり屋だった」
 お兄さんの言葉が独白のよう。
 「だから今回も僕がそばにいなくなると思っているんだと思う」
 私を見るお兄さん。強い視線。
 「僕は梓の兄で、梓は僕の大切な妹だ」
 やっぱり聞くんじゃなかった。
 お兄さんの言葉は、自分に言い聞かせるように聞こえた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 「ここで大丈夫です」
 私たちはマンションの入り口で足を止めた。
 「送ってくれてありがとうございます」
549三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/19(土) 02:13:51 ID:XOuT2u+2
 私はお兄さんに微笑んだ。笑顔がひきつってないか心配だ。
 「夏美ちゃん」
 お兄さんが私を見る。誠実な瞳。
 「今回は迷惑をかけて本当にごめん」
 私は目をそらしたくなった。
 「夏美ちゃんが知りたい事もたくさんあると思う。申し訳ないけど、もう少しだけ時間が欲しい。僕のわがままで本当にごめん」
 お兄さんは全部分かっていた。
 私はバカだ。誰だって隠したいことの一つや二つある。それなのに、私のわがままで聞いても仕方が無い事を聞いて。
 今、一番お兄さんを信じないといけないのは私なのに。
 「お兄さん」
 私はうつむきながら言った。お兄さんの顔を見られない。
 「わがまま言ってすいません。私、お兄さんの事を信じています」
 お兄さんは今どんな表情をしているのかな。
 「ありがとう」
 私は顔をあげた。お兄さんは微笑んでいた。嬉しそうでちょっと恥ずかしそうな笑顔。
 見ているだけで顔が熱くなる。
 「そ、それじゃさよならです!」
 私は背を向けてマンションに入った。私のばか。
 一気に階段を駆け上り、ドアの鍵を開ける。家に入り鍵をかけた。そのままドアを見つめる。もちろんお兄さんは見えずに、ドアが見えるだけ。
 会いたいな。別れたばかりなのにそう思ってしまう。
 「お兄さん。会いたいです」
 ため息をついて振り向いた。
 そこに梓がいた。冷めた表情で、瞳だけは激情を湛えて私を見ていた。
550三つの鎖 9 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2009/12/19(土) 02:19:53 ID:XOuT2u+2
投下終わりです。
読んでくださった方に感謝申し上げます。
ありがとうございました。
規制がなければ続きは近日中に投下します。
ただ、もしかしたらスレッドの容量をオーバーする可能性があるので、その時はスレッドを立ててから投下させていただきます。

>>448にHPのアドレスがありますので、よろしければ人気キャラ投票にご協力お願いします。
また、発表済み作品をDLできますので、必要な方はご利用ください。
最新作はスレにしかありません。ご了承ください。
551名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 03:21:26 ID:wDpz5GsA
ちょwwwww
この終わり方は…

GJ
552名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 03:24:38 ID:Oe4tBYmT
GJ!!! 夏美ちゃん、マジで死ぬぞオイ…逃げてー!
兄貴は…残り一人に襲われるかもしれないしな…
独力脱出に失敗→死 なんちゅー恐ろしい状況。
553名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 03:31:30 ID:arnQV4Ry
こええええええ
梓こえええええええ
でも春子はもっとこえええええええ
554名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 07:16:31 ID:dC5OKfdt
乙、なるべく早く続き投下してくれないと雪も積もってきたので風邪をひいてしまう
555名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 08:20:28 ID:A3/M4CW+
週1は十分早いぞ、そのくらい待てw
あ、でも雪降ってる。東海なのにw
>>550GJ! 春子きぼん
556名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 08:49:45 ID:Qokngwcu
春子の漁夫の利作戦有効です。
それに気付いて説得できるか、夏美
557名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 09:45:55 ID:2H2djxzV
いつの間に投下が……
寝落ちしてた
GJ
558名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 11:22:06 ID:VHhwew2u
梓が突き抜け過ぎてGJ!
こりゃあ死人が出るぞ…
559名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 11:49:25 ID:ONKH4s8t
この状況で一番得をしてるのって春子だよね
自分の手は一切汚さない春子かわいいよ春子
560名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 12:09:36 ID:2QdIwDAN
春子は確実にあるSSの妹と同じ感じの思考じゃないか
561名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 13:24:18 ID:8AGcrc71
ここまで危機感のあるキモウトはなかなかいない
やべぇ、死人出るw
GJ!
562名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 14:51:11 ID:+HRqv88k
GJ
お兄さんと夏美ちゃん、二人の幸せの先に確実に恐怖が待っているとわかっているから
ちょっとびくびくしながら読み進めていったら最後ついにヤバいことにw
次回はついに流血ありになってしまうのか…?
563名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 15:03:27 ID:CU3/gn3B
GJ!
あえて予測や想像は避けます
どうなるかドキドキしながら続編待ってます
564名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 15:54:51 ID:cVSVcsjF
GJ
梓すごっ!!
565名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 17:42:48 ID:63eF28Dk
GJ
カレー食べた口でフェラとかヒリヒリしそうだね
566ウイリアム・テル3 ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/19(土) 17:50:24 ID:XEFB863y
投下します。
努力はしておりますが誤字脱字、他見苦しいところがあるかもしれません。
以下、本編
567ウイリアム・テル3 ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/19(土) 17:51:28 ID:XEFB863y
 ドアに伸ばしかけた手を、ふと止めた。
「天野君?」
 怪訝そうな声が後ろから聞こえた。
 振り返り、軽く笑みを浮かべて、
「ちょっと、ここで待っててくれるか?部屋散らかってるから片付けておきたいんだ」
「別に気にしないよ〜そんなの。勉強ができるスペースがあれば」
「あ〜、そのスペースもないかも」
「え〜、本当?たまには掃除もしないと」
「はは、そうなんだけどね。そういうことだから、ちょっとだけ!もう5分くらいでちゃっちゃとやっちゃうから」
「わかった〜出来るだけ早くお願いね」
 うん、と頷いて見せて、一人玄関をくぐる。
 ぱたぱた、と足音。
 靴を脱いで、待ち構えて、
「おかえりー、お兄ちゃ――」
「まずは眠れっ!」
「エメラルドフロウジョン?!」
 今日も今日とてコスプレ姿で出迎えた妹を、問答無用で沈めた。
「きゅー」
「……」
 足元で伸びて目をまわす妹の両足をつかみ、無言でずりずりと引きずっていく。
 途中でごんごんと何度か林檎の頭と床がぶつかりあうが、この際気にしない。
 そのままリビングに放り、よし、と息をつく。
 まるで人を殺して、死体を隠そうとする犯人だなと苦笑して、妹の姿を眺めた。
 林檎は残念でならないプロポーションを、それで体守れてんの?と思わずにはいられないような鎧で覆っていた。
 某有名RPGの女戦士の格好だと、思う。
「だから、コスプレするんなら自分の姿をまず鑑みてやれと……」
「それがいきなり、大技決めてきた人の言うことなのかな、お兄ちゃん!せっかくのコスプレの兜がパッカリ割れちゃったよ!」
「……チッ、生きてたのか」
「舌打ち!舌打ちしたよ、今、この人!」
「結構本気でやったんだが、元気だな、お前……。まあそれはどうでもいい」
 どうでもいいって何さー!と頬をふくらます林檎の肩に手を置き、精一杯目つきを鋭くして、
「いいか、今日はお兄ちゃんの勝負の日なんだ。大人しくしていろよ」
「いたた、肩、痛いんだけど、それもイイっていうか……唐突な話の展開についていけないよ!」
「林檎、お兄ちゃんの彼女いない歴を答えてみろ」
「え、今も彼女持――」
「お前は彼女じゃないからな、ちなみに15年だ」
 林檎の言葉をさえぎって、自分で答えた。
 もう、お兄ちゃんのイケズ、と体をくねらせる林檎は無視。
「いいか、今からお兄ちゃんはちょっと気になる女の子と一緒にお勉強タイムだ。だからお前に構ってる暇はない、お前は大人しくしていろ。いいな?」
「……えー、りんご馬鹿だから、よく分かんな――」
「そう言うと思ったよ!」
「オレンジクラッシュ?!」
 今日二発目となる大技を惜しげもなく、敢行。
 ……これで少なくとも2〜3時間は目を覚まさないだろう。
 保険として、ロープで体と足をぐるぐる縛っておいた。
568ウイリアム・テル3 ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/19(土) 17:52:03 ID:XEFB863y
「ふう、むなしい戦いだった」
 やり遂げた思いで、息をつき、玄関へと向かう。
 ドアを開けると、きょろきょろしていた女の子が気付き、ほほ笑んだ。
「あ、終わった?」
「うん、掃除完了。ごめんね、待たせて。どうぞ、あがってあがって」
「おじゃましまーす」
 彼女が靴を脱ぐのを待って、2階にある自分の部屋へと案内する。
 後ろをついてくる彼女は、興味深げに周囲を見渡している。
 あまり褒められた行動ではないが、それが不思議と嫌味に感じないところが彼女の美徳だと思う。
「林檎ちゃんは?いないの?」
「あー、まだ帰ってないみたいだわ」
「でも、確か中学もテスト前じゃ……」
「だよね!全く、アイツは馬鹿なくせにどこで油売ってるんだか。大峰さんですらこうしてまじめに勉強しようとしてるのに」
「ちょ、それってどういう意味かなー。私は確かに馬鹿だけどー」
 ちょっと失礼だぞ、と怒った風で言う大峰さん。
 はは、ごめん、と謝りながら、ほっと安堵。
 彼女、大峰真琴は高校のクラスメイトでクラス委員長をしている少女だ。
 中学からの知り合いだし、今年俺が副委員長に選ばれたこともあって、他の女子よりも比較的良く話す女子だった。
 頭でものを考えるよりも、行動する方が得意で、明るい性格のおかげか人望もある。
 あるのだが、率先して人を纏めるというより、その場の勢いで後ろも見ずに突っ走るという感じだった。
 一言で言うと、猪突猛進、それが、大峰真琴に対する俺の印象だった。
 特に彼女が好きだというわけではない。
 でも、林檎と少し距離を置くための一歩としてちょうどいいと思った。
 最悪だ、と思う。
 結局彼女を利用して、自分の心地よい日常を守ろうとしてるだけ。 

「はー、思ったより片付いてるじゃん。私の部屋よりきれいだよ。何片付けてた――あーそうか、そうだよね」
 俺の部屋に入って大峰さんは、急に。
 男の子にはいろいろあるもんねー、とか言って視線はベッドの下。
 いや、さすがにそんなベタなところに隠してないし、紙媒体は残念ながら存在しない。
「何考えてるのか、ありありと分かるけど、そうじゃないから。それよりほら、早く教科書出して、今回赤点だとやばいんでしょ?」
「そうなんだよ。うちの部活の顧問が、数学のジョリーでさ。次数学で赤点取ったら出さないぞって釘刺されたんだよねー」
 いや、参ったよ、とあっけらかんと笑う。
 どうでもいいが、何で俺の周りにはこう、バカっぽい女の子ばっかりなんだろうか。
 俺は、知性的な人が好みだというのに。
 ――「彼方」
 瞬間、頭の隅をよぎる優しい、静かな声。
 ずきん、と胸に走るのは鈍い痛み。
「わぉ、天野君可愛いー」
 ふと、聞こえてきた声に意識を引っ張られた。
 は、と声の方を見ると、大峰さんが俺のベッドに寝そべっていた。
「……何してんだ、アンタ」
「え、アルバム見てるの。こういうの男友達の部屋に上がったらやってみたいって憧れてたんだよねー」
「一応聞くけど、勉強は?」
「あとでー」
 大峰さんは、アルバムをペラペラとめくっている。
 あれは確か中学の卒業アルバムだったか。
「ていうか、大峰さん俺と同じ中学だったろ?同じ奴持ってるはずじゃ……」 
「そうだけど、こう、シチュエーションが大事なの。わかるでしょ?」
「いや、全っ然分かんないっス」 
 はあ、とため息。
 ため息をつくと幸せが逃げるというのは有名な寓話だが、真偽はどうなんだろうか。
 真実ならば、俺にはもう、ささやかな幸せすら残されていない。
 大峰さんは鼻歌を歌いながら、アルバムをめくる。
 膝から曲げた足が、ぱたぱたと動くたび少し短めのスカートが浮くがパンツは見えそうで見えず、しかしそれでも十分艶めかしい。
 じっと、食い入るように見ていた自分に気付き、意識を飛ばすように勢い良く首を横に振った。
 何やってるんだろう、俺。
 また逃げそうになった幸せを何とかこらえ、俺は一人鞄から道具を取り出して、テスト勉強を始めた。
 ……どうでもいいんスけど、鼻歌、ビリージーンって結構渋いっスね、いや、まあ俺も好きですけど。
569ウイリアム・テル3 ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/19(土) 17:52:37 ID:XEFB863y
「ねー、天野君」
 数十分くらい経っただろうか。
 だんだん集中できて、問題を解くスピードも上がってきたというところを、能天気な声にシャットダウンされた。
 ちょっとだけイラッとしたが、我慢する。
 まさか彼女に対して、いつも林檎にやっているようなことをするわけにもいかない。
「なに?」
「この子だれ?」
 アルバムを指さして見せた。
 彼女の手にあるアルバムは中学の卒業アルバムではなく、市販のアルバムノートに変わっていた。
 それを見て、しまったな、と心中で舌打ち。
 家族写真は本棚の隅の方に隠していたはずだが、何故か大峰さんは探し出していた。
 隠していたといっても、ちょっと見つかりにくいというだけでそこまで本格的に隠していたわけではなかったことがまずかったのだろう。
 大体、自分の部屋に林檎以外の人間を入れるのは、凄く久しぶりだったから油断していた。
「この可愛い子は、多分林檎ちゃんだと思うんだけど……こっちの綺麗な女の子はだれ?」
 彼女の指す写真には、今より少し幼い俺と、余り今と変わらない林檎、そして白いベッドの上で優しくほほ笑む女の子。
 その顔は林檎に似ていたが、浮かべた笑顔の質や、髪型の違い等から林檎よりも幾分大人っぽい印象を受ける。
 大峰さんの言うとおり、可愛いというか、綺麗という表現が合う女の子だった。
「……姉さんだよ、俺の双子の姉」
「え!天野君ってお姉ちゃんいるんだ?それも双子!」
「まぁね、いたよ」
「……?いた?あれ、でも私この人見たことないよ。同じ中学じゃなかったの?」
「うん、姉さんは余り体が強くなかったから、ね」
「え、と、そう、なんだ」
 さすがに何かを悟ったのか、大峰さんの顔が曇る。
 戸惑うように、視線がさまよっていた。
「元々長くは生きられないって言われてたんだけど、4年前に、ね。死んじゃったんだ。それでも医者が言うには頑張った方なんだって」
「そ、そう……なんというか、ごめんなさい」
 しゅん、と大峰さんはうなだれた。
 突然大人しくなった彼女を見て、まるで借りてきた猫みたいだ、と思った。
「気にすることないよ。もうある程度吹っ切れたし、ね」
「でも……」
「それより、ほら、早く勉強始めよう。赤点取りたくないんでしょ?」
 暗い空気を払拭するように、努めて明るい声を出した。
 うん、と素直に大峰さんは頷いて、テーブルをはさんで二人向かい合った。
「ご教授、よろしくお願いします!」
「うん、ビシバシいくから、覚悟してね」
「はは、お手柔らかにお願い」
 まだ少し泣きそうな目で、大峰さんが笑った。
 今すぐに元気いっぱいとは言えないだろうけれど、やがていつもどおりに戻ってくれるだろう。
 そこが、大峰さんの良いところの一つだと思うから。
 ふと、件の写真に視線を向けた。
 病院での一枚。
 姉さんにどうしても、とせがまれて撮った写真だった。
 このころは、家族4人皆揃って、ささやかでとても幸せな毎日だった。
 狂いはじめたのは、きっと、そう。
 姉さんが、最後に仮退院した、あの夏の日。
 照りつける太陽、蝉しぐれ、そして、畳の上に転がった二人の汗のにおい。
570ウイリアム・テル3 ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/19(土) 17:56:17 ID:XEFB863y
 1時間くらいして大峰さんも元気を取り戻したころ、ふいに部屋のドアがノックされた。
「あれ、林檎ちゃんかな?」
「え、まさか、あの拘束をこんなに速く――」
「お兄ちゃん、りんご、緊縛プレイは嫌いじゃないけど放置プレイはお兄ちゃん相手でもごめんなさいなんだよ!」
 林檎がドアを勢いよく開けて、叫んだ。
 返事待たないんなら、ノックの意味ないだろ!
「え、緊縛?放置プレイ?」
 大峰さんは頭の上にはてなマークを飛ばしていた。
 あー、やっちまった、と俺は心の中で頭を抱えた。
「というかお前、どうやって……」
「もちろん、りんごは縄抜けの術も習得済みだよっ」
「お前は、どこの忍者だよ!」
 林檎……恐ろしい子っ!!
 ふと、林檎が付いていけずポカンとしている大峰さんをじっと見た。
 その目は少し鋭さを持っていて、大峰さんは訳も分からず気圧された。
 で、と林檎は口を開いた。
 その声はついさっきまでとガラリと変わり、冷たく鋭い。
「で、この人だれ?」
「え、えと私は大峰真琴、林檎ちゃんとは何度か逢ったことあるんだけど、覚えて、ない、かな?」
「知らない」
571ウイリアム・テル3 ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/19(土) 17:57:23 ID:XEFB863y
「そ、そう」
 大峰さんが困ったようにこっちを見た。
 はあ、とため息。
「林檎、俺たち勉強中だから、邪魔しないでくれ」
「お兄ちゃんの方が邪魔。ちょっと黙ってて」
「……はい、すいませんっした」
 林檎にギンッと睨まれ、速攻で、すごすごと引き下がった。
 大峰さんが、恨めしげな眼で見てくるが、さっと視線を反らした。
 だって、怖いんだもん。
「ねえ、あなた、お兄ちゃんの何?」
「へ、な、何って言われても、友達、かな」
「ふーん、友達、ねえ……」
 じろじろ、品定めの視線。
 胸のところで、はんと馬鹿にした笑み。
「や、さすがに、お前が鼻で笑える部分じゃないだろ、確実に」
「黙ってて、って、言ったよね?」
「サー!すんませんっした、サー!」
 気をつけの姿勢で、びしっと敬礼。
 土下座しようかとも思ったが、ギリギリのところで兄の威厳は守った。
 ……守れていないだろうか?
 林檎の詰問は続く。
「お兄ちゃんのこと好きなの?」
「へ、す、好き、って私が?」
 瞬間、大峰さんの顔がボンっと燃え上がり、みるみる赤くなっていく。
 へぇ、そう、と林檎の声はますます剣呑に。
「惹かれ始めているけど、気付いていないってところかな」
 意外と初心なんだね、と林檎はくすくす嗤った。
 ……さっきから、お前何様なんだよ、一体。
「でも、残念。お兄ちゃんは私のモノなの」
「へ、モノって……。それに二人は兄妹……」
「証拠もあるんだよー。ほら、こ・れ」
 語尾に音符を飛ばしながら、林檎が手に持っていた写真を大峰さんに渡した。
 その写真を覗き込み、瞬間、ひっと大峰さんの悲鳴に似た声。
 そして、俺を気持ち悪いものを見るような目で見てきた。
 え、俺?ていうか、その目、何でしょうか、すっごい嫌な予感しかしないんですけど。
 大峰さんは、妙にあたふたと、慌てたように、
「え、えと、私こういうの経験ないし、良く分からないけど、二人が愛し合ってて幸せなら、応援する、よ。う、うん」
 と、捲し立てるように言った。
「わぁ、本当ですかー。ありがとうございます大峰先輩」
 唐突に林檎の声がいつもの調子に戻った。
 それに、いつの間にか、敬語も使っていた。
 林檎、敬語は使えるんだな、と現実逃避ぎみな感想。
「あー、ええっと、その写真見せてもらっても、いいかな?」
 さすがに、ずっと現実逃避するわけにもいかない。
 何とか空気を立て直す取っ掛かりを掴もうと、大峰さんの手にある写真にゆっくり手を伸ばした。
 その途端、ひっと、大峰さんは後ずさり、
 二人の間になんとも言えない空気が流れた。
「あ、ご、ごめん天野君!」
 数拍の間をおいて、大峰さんは、しゅばばと凄い速さで机に広げられた勉強道具を慌てたように鞄に詰め込み。
 だっと、逃げるように部屋のドアへ。
 途中で立ち止まり、手に持った写真を俺へ押しつけて、
「お、お邪魔しました!天野君また明日!」
 疾風のように駆けていく。
 残されたのは、俺と林檎、そして一枚の写真。
「……」
 何かもう、このまま燃やしてしまいたかったけれど、そういうわけにもいかず、恐る恐る写真を見て。
572ウイリアム・テル3 ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/19(土) 17:59:49 ID:XEFB863y
「ぎゃーー!」

 思わず、叫んだ。
 その写真は俺と、林檎が写っていて、二人とも何故か全裸で睦み合っていた。
「え、お前これもしかして、あの時の」
 妙な笑みでこちらを見ている林檎に問おうとして、ふと、気付いた。
 この写真に写る二人が、今とほとんど変わらないことに。
 あの時はもっと二人とも幼かった、そう、あのアルバムに写っている時の方が近い。
 それに何よりも。
「林檎、お前こんなに胸あったか?それに、俺この年で駅弁とかまだ無理……」
 落ち着いて見れば、成程この写真は違和感バリバリだった。
「なぁ、林檎これ」
「えへへ、気付いちゃった?凄いよね最近の画像加工技術って。本当の写真と遜色ないもん」
「あ、アイコラっ!?」
「へへぇ、りんごが作ったんだ。凄い?ね、凄い?」
 や、確かにこれを林檎が作ったというなら凄いとは思うが……。
「お前、自分の年齢分かってる?っていうか、まさかこれ独学じゃないよな?誰から習ったんだよ……」
「えへ、蓮ちゃん教えてもらったー」
「蓮ちゃん?それってお前をコスプレの世界に引きずり込んだやつか?」
「ううん、それは里香ちゃん。蓮ちゃんは二次元専門だから」
 何で林檎の友人は、何というか、こう、どうしようもないんだろう。
 類友か?類友なのか?
「……お前、もうちょっと友人は選ぼうな?それに何で、お前はくだらない才能にばかり長けてるんだよ」
「それはもちろんお兄ちゃんへの愛ゆえにであります!」
 あー頭痛が痛い、痛いよ母さん。
「お前、これ、大峰さん絶対誤解してるぞ……」
「ふぇ、何を?」
 林檎はきょとんとして。
「誤解じゃないよね、別に」
「――っ」
 言葉に詰まった。
 何というか、自分からむざむざ地雷原に足を突っ込んだような、そんな気持ち。
 敗北感になんとも言えなくなった俺を、ふふと嗤った林檎は部屋を見回し、ベッドの上のアルバムに目を止めた。
 ベッドにポスンと座り、アルバムを暫くじっと眺めて、細い指で、写真に写った姉さんをそっと撫でた。
 その眼に宿るのは、果してどんな感情なのか。
「りんごね、遥ねぇから頼まれたんだ」
 唐突に姉さんの名前が出て、ぎょっとした。
 そう言えば、林檎は姉さんを遥ねぇと呼んでいた、というか姉さんがそう呼ばせていた。
 理由を聞いたことがあるけど、その方が萌えじゃない?とか言っていた。
 ……今思うと姉さんもちょっと変な人だった。
「姉さんから、何を頼まれたんだ?」
「彼方を、お兄ちゃんのことよろしくねって頼まれたの、そのための準備は私がしておいたからって」
「準備?」
 林檎は俺を見上げ、しかし、俺の疑問には答えない。
 そして、にこり、と笑み。
 それは、林檎のいつもの元気を人に与える天使の笑みとは少し性質が違った。
 それは、穏やかで、慈愛に満ちた、女神の笑み。
 そう、まるで、姉さんの笑みに、似た。
 その時、林檎の中に、姉さんの呪いを見た。
573ウイリアム・テル3 ◆TIr/ZhnrYI :2009/12/19(土) 18:00:39 ID:XEFB863y
以上です
お目汚し失礼しました
574名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 18:23:33 ID:LNx90kSp
GJ!
短期間の精力的な投下乙です
575名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 19:11:44 ID:mnOE9GuI
GJです!
576名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 20:05:45 ID:7P5RakX2
いつの間にか埋まりそうだったから建てた

キモ姉&キモウト小説を書こう!part26
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1261220649/
577名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 21:07:17 ID:2H2djxzV
>>576
スレ立て乙

さあソウカンジャー、出てこいっ!
578名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 22:22:21 ID:YBpAaPL5
「なぁ。時にをとうとよ。」

「・・・なんだい姉さん」

「つい最近気付いたことがあるんだ。」

「うん」

「恥ずかしい時、穴があったら入りたいと言うだろう?」

「うん」

「この場合、穴に入るとは穴を埋めることと同義だ」

「う、うん?」

「そこでだ。『穴』と『姉』ってなんだか似てないか?」

「・・・???」

「と、とにかくっ、何か恥ずかしいことをしなさい!今すぐ!」
579名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 02:57:35 ID:ceVziK6z
>>573
GJ! なんという投下ペース……

>>578
そして私の穴に挿入しなさいってこと?

>>562
流血なら既にあったじゃないか。ベッドの上で
580名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 17:26:37 ID:gE+BoUaj
ウィリアムテルってじわじわとひきこまれるな。
妹との会話がいい味だしてる。(性的な意味で
581名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 17:58:52 ID:gWPZwTMA
生き埋め
582名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 18:08:42 ID:WELWZgIM
蓮て名前見ると、仕分け人を思い出す
583名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 18:49:00 ID:T9tpqeWQ
埋め用1レスネタ

もうすぐクリスマスという今日、姉ちゃんが僕の部屋に忍び込んできた。
また人が寝ている時に。でも実は僕の目が覚めていないことには気がついていないようだ。
どうせ、また布団に潜り込もうとしているんだろう。
入ってきたら大声で脅かしてやろうと考えていたが、いっこうにその気配はない。
「これでよし」
僕の頭にはヘッドホンが装着されたようだ。

不思議な音楽と一緒に姉ちゃんの声がヘッドホンから鳴り響く。

クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。
クリクリクリクリクリスマス。クリクリクリクリクリ○○ス。姉姉姉姉クリスマス。


その後に何か卑猥な言葉をたくさん聞いたような気がするけど気を失ってよく覚えていない。
でも何故か僕はクリスマスの予定をすべてキャンセルし、何故か姉ちゃんと一緒にいる。
そして何故か僕は意図しない行動を次々と取ってしまっている。

姉ちゃんを押し倒し、次々と服を剥ぎ取っていく僕。何も抵抗しない姉ちゃん。
「もうやだ弟君。いくらクリスマスだからって大胆すぎよぉ。お姉ちゃんを裸にさせちゃうなんてぇぇぇ。」
全裸でベッドに横たわる姉ちゃんは、不気味な笑みを浮かべながら股を大きく開いて見せた。
「夜はまだ長いのに、私をどうするつもりなのぉ?」
そんなこと僕は知らない。

おわり
584名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 20:02:40 ID:z+d0mDYv
埋め
585名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 20:13:37 ID:v1+9GTge
埋まれ!
586名無しさん@ピンキー
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