1 :
名無しさん@ピンキー:
おにゃのこ改造のアダルト版をみんなで盛り上げて
いきませんか?
改造シーンだけでなく、その後のいろんな妄想で萌えまくりたい
あなたに送る、数々の物語。
エロ。グロ。ふた。逆、触手、寄生など何でもアリアリで、雑談しながら
まったりとやっていきましょう。
SS投下大歓迎!
嵐、中傷などは、ご勘弁下さい。
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◆読み手さんへ
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前スレの続き
廃工場にはいっていく真魚の背を追いながら、まず最初に思いついた言葉が「援交」だった。
少女ポルノを規制する法案が出来たとて、ロリコンが絶滅する訳ではない。なかには、そういう大人とHする事で、御こずかいを稼いでいる娘も居ると噂では聴いていた。
”真魚さんが、そんな事をする筈がないわ・・・・。”
かすみは、慌てて否定した。学校でも真面目で、他の娘の模範になる娘だったからだ。
かすみは、ゴミ捨て場の陰に隠れ、真魚の様子を伺う。
ふいに、真魚は立止まり、その場で制服であるブレザーと真白のシャツを脱ぎ始めた。
そしてスカートも脱ぎ、ブラとパンティだけの姿になった。
何をするつもりか?
かすみは、息を呑みその光景を眺めた。
次にパンティと、ブラも取り全裸になる。
ふいに、複数の人影が見えた。
話し声だと若者らしい。
やはり、援交だろうか?
<続く>
男達が、何事か喚きながら廃工場に入っていくのを、かすみは見ていた。
酔っているのと、遠いのとで何を言っているのか判らないが、切れ切れに「外国」、「売り渡す」、「性奴隷」という言葉が聞こえた。
やはり、真魚は援交をしているのか?見てはいけない物を見てしまったのかもしれない。
後悔しながら、かすみはさがろうとした。だが、ふいに、何かにぶつかった。振り返り、それが人影であると判り、恐怖のあまり悲鳴を上げそうになった。
だが、ふいに口を手で塞がれた。
「落ち着いて、かすみちゃん。それは藤本亜季であった。かすみのクラスメートである。
驚いた。何故、ここに亜季が居るのか?
「な、なんで!?」
「いまから、大掃除があるの。」
大掃除!?何の事だ?この廃工場の大掃除を、こんな夜更けに女の子(小学生の)が2人でするというのか?
亜季の後にも数人いる。鈴木美貴、高遠紀子、藤山加奈・美奈の双子もいる。5年生、4年生の生徒だ。
「大掃除って?」
男達に気づかれないように、声を殺し尋ねる。
<続く>
夜に慣れ始めたかすみの眼は、亜季たちが全裸だという事に気づいた。
全裸、大掃除。頭の中がこんがらがってきた。
「貴方は、教頭先生から、まだ<儀式>をしてもらっていないのね?そう、じゃあ大掃除を見せてあげる。」
意味深めに亜季が告げた。大掃除、全裸、教頭先生、儀式?何を言っているんだ。
「いい!!わ、私、帰るから・・・・・。」
頭がおかしくなりそうだった。かすみは亜季の手を振り解き、立ち上がろうとした。
だが、ふいに耳に「プッ」という音がした。同時に膝がガクッと崩れた。
貧血!?最初、そう思った。だが、そうでは無い。意識がハッキリしているからだ。
「ふふっ、駄目、逃げちゃ。」
そういうと、亜季たちは力の抜けたかすみを抱えた。
逃げようともがいた。
だが、カラダが脳の命令を無視して動かなかった。
どうなるのか?
「女の子は、これで20人。注文通りだ・・・・・。」
男のリーダー各が言った。
彼等の商売、それは拉致屋であった。依頼で女の子を拉致して、ここに監禁している。
元々は東西会、南北会、坂東組の関東御三家から破門された<やさぐれ>だった。
裏サイトで集められ、女の子を拉致する。時々、騒ぎは始めた親を始末し<行方不明>にする。
監禁された女の子達が、何処に行き何をされるかさえ知らない。雇い主さえ知らない。
ただ、金さえ手にはいれば良いのだ。
<続く>
* 大阪ドームさんのクラゲ女の御話と繋がってます。
ツダと名乗っていたが、おそらく偽名であろう。こうゆう稼業に身を置いている物は、偽名が多い。
「娘達は?」
見張りの男に尋ねた。20の、この餓鬼は未成年の時、女子中学生をグループで拉致して輪姦した挙句、リンチで殺しバラバラにして埋めて捕まった。
凶悪な少年Aでワイド。ショーを賑わした奴だ。
「元気です。でも、今夜は冷えるんで、何度も小便にいきたがって・・・・。」
下卑た笑みを浮かべて答える男。リーダーは、思わずその顔面にパンチをいれたくなった。
こういう莫迦は、どう足掻いてもプロにはなれない。逆に足を引っ張る。
「いいか?商品に手ぇだすなよ・・・・。」
「判ってます・・・・。」
「それより、気になるのはマンションの組だ。どゆう訳だか連絡がつかねぇ・・・・・。」
サブ・リーダーのスキン・ヘッドが、間を空けるようにいう。
他にも監禁場所がある。スキンヘッドの言ったマンションもそうだ。
「いいさ、ここには20人居る。人手は足りる・・・・・。」
そういった瞬間、外に気配を感じた。
警察!?そうではない。全裸の娘達だ。
<続く>
東京ドームさん、乙です。
前スレの最後で、BeeFさんの事で盛り上がっていますが、
本当にBeeFさんの未発表作品が名立たる方々の競作で仕上がるなら、
たいへんうれしい事だと思います。
私がBeeFさんの設定に興味を示したのは、
ずっと前の事ですが嵐の化身忍者が改造だと気づき、
それをネタにSSを考えていたのですが、
文才に乏しい私では妄想がまとまりませんでした。
そのような時、BeeFさんの未発表作品の事を知り、
改めて発想の素晴らしさに敬服したのです。
ぜひこの企画を成功させたいです。
それがおにゃのこ改造の功労者の一人、
BeeFさんへの恩返しではないでしょうか。
勝手なことを申してすみません。
もし気に障った方がいらっしゃいましたら、スルーしてください。
かすみは他の娘達に抱えられ、室内に入った。
強面の大人たちが、何が起きたのか判らない表情を浮かべ見ている。
何がはじまるのか?かすみは、恐かった。
「な、なんだ!?」
男が尋ねた。
「大掃除だよ♪」
亜季が言った。この状況で平然としている。かすみは驚いた。他の娘達もそうだ。
「おおそうじ!?」
「そう、アンタ達、人間の皮を被ったゴミの大掃除だよ♪変身・・・・・」
ふいに、かすみには亜季や他の娘達の体が青く発光したように思えた。
正確には通常遺伝子が特殊遺伝子の発動により、熱を帯びているせいだが、小学生のかすみには判る筈がない。
少女サッカーティムのFWをしている亜季の健康的な小麦色の皮膚が青く染まり、金色の羽根が生えた。
他の娘達もだ。その姿は蜂に似ている。
「ヒェェェェェッ!!」
悲鳴を上げる男達。ふいに「プッ」という音がして、男達が次々とその場に倒れていく。
先程、身体が麻痺した時、、聴いた音だ。
「真魚さん、どうする?」
「真魚が、いつの間にか居た。やhり蜂の姿だ。
20人も居るわね。ひとり4人づつね♪」
「は〜い!!」
元気良く答えると、倒れている男達に近づき、片膝をついて、ジッパーを降ろす。
何をするつもりか?
<続く>
>>7 石ノ森章太郎氏の原作版「変身忍者嵐」には、こんなセリフが出てくるよ。
「血車の化身忍者にくノ一を多く取ったのは、おなごの方が何ゆえか化身の術によく耐えられる
からだった!男の何倍も速やかに、しかも確かに、見事に別物に身を変えられる…!
…だが男は、修業の間に二名中一名が抜け落ちてしまうのだ!…何ゆえこうなるのか、わしには
わけがわからぬが、…おそらく女の方が身体も、心も、それに合うようできているのだろう」
だから原作版嵐には、女の化身忍者が多く登場するよ。鍋島藩の化け猫の化身忍者ねね、
九尾の狐の化身忍者葛の葉、実はハヤテの実の母親であったらしい蜜蜂の化身忍者まい、
白象の化身忍者うねめとその娘白妙、蛇の化身忍者蛇尼と雄孔雀の化身忍者孔雀妙尼など。
「希望の友」に連載されていた新変身忍者嵐にも、虫を愛する故に血車党に騙されて
鈴虫の化身忍者に改造されてしまった虫愛ずる姫君の鈴姫や、ハヤテの仲間の伊賀のくノ一
カスミが改造されたらしい化身狼女(瓜二つの別人かも知れないが、死んで正体を現わした
時にカスミの顔のままだったのと、以後の物語中にカスミが登場しなくなるので本人認定)
などが登場する。
おにゃのこ改造マニアにとっては、実に妄想のしがいがある設定とストーリーだと思う。
というわけで大阪ドームさん。ぜひ同様の世界観で、時代劇改造SSを書いて下さい。
10 :
レオンテール:2009/10/26(月) 19:19:06 ID:Sp0Y1FOx
どうも、いつぞやヒロイン物書きたいとか言ってたものです。
出来上がったので投下します。
一応注意書き
ふたなり、男も結構居る
11 :
レオンテール:2009/10/26(月) 19:21:38 ID:Sp0Y1FOx
『秘密結社レオンテールVS性戦士ビューティーマリー』
帰宅する学生や会社員のひしめく黄昏時の満員電車、安らぎの我が家を求める人々を運ぶ
そこに恐るべき魔の手が迫っていた。
制服が可愛いと世間でも評判の女子校から、程よい距離にある駅で乗り込んできたのは
一人の冴えないサラリーマン風の男だ。女性ばかりが固まっている車両にわざわざ足を
踏み入れてくるあたり、なかなかに肝が据わっている。
電車が動き出した途端、男は下卑た笑みを浮かべるとおもむろにズボンのファスナーを下ろし、
醜悪にいきり立った逸物を露出させる。女子高生たちの悲鳴が響き渡るかと思いきや、
彼女らの視線はぼんやりと宙をさまようばかりで、頬を上気させる以外に満足な反応を示さない。
男が両腕をクロスしながらうずくまると、奇怪にも身体が倍以上に膨れ上がり、
ひれ状の手と長い牙を持ち、肥満体の肉体を短い毛で覆った獣人に姿を変えた。
これぞ秘密結社レオンテールの擁する怪人、セイウチ男である。
正体を現したセイウチ男に対し、乗客の中でただ一人意識を保ち平然としていた
スーツ姿の美女が嫣然と笑みを浮かべ声をかける。
「さあ稼ぎ時よセイウチ男、私たちでクイーンに活きのイイ兵隊を捧げなくては」
女の姿も変わる。メリハリの利いたしなやかで美しい肢体を、長毛種の猫を思わせる
柔らかな毛で覆った怪人、ジャコウネコ女だ。その股間からは無色無臭だが極めて高い催眠・
催淫作用のあるフェロモンガスが絶えず分泌されている。これを少しでも吸い込めば、
子供も大人も関係なしに、たちまち人間ダッチワイフとなってしまうのだ。
乗客たちの自由を奪ったのは彼女の仕業だった。肉人形と化した獲物たちを前に
舌なめずりをするセイウチ男は、その中で一番美人だった座席で爆睡中の女子高生に狙いを定めた。
文学少女なのだろうか、長い黒髪に地味な黒縁のメガネを掛け、手元にはカバーの掛かった
文庫本を携えている。それにしても眼鏡っこ=巨乳というのは世界の公式なのか、
胸なんてメロンのようで、制服のサイズが合わないのではないかと思えるほどに膨らんでいるし、
尻も、フトモモも、ムチムチとして旨そうだ。
両脚を持ち上げてマンぐり返しの状態にすると、プリーツスカートに隠されていた
スケスケのいやらしいパンティが目に飛び込んでくる。ニヤつくセイウチ男はそれを
もったいぶるように散々弄びながらずらし、何もしていないのに程よく濡れそぼった
無毛の秘所へ自慢の巨根をあてがうと、一思いに貫いた。
「あううううん!」
喘ぎを漏らしながら少女の身体が痙攣する。どうやら挿入されただけでイったようだ。
大人しそうな外見とは裏腹に、散々男を咥え込んでいそうないやらしい体つきの非処女な上、
若く新鮮な肉壷は素晴らしく具合がよろしい。
いきなりこんな上玉を引くとはこいつは幸先がいいやと、でっぷりとした腹を揺らしながら
ズンズン腰を振るセイウチ男。内側から押し上げる爆乳と下半身を持ち上げられた姿勢のおかげで
へそ出し状態になっているセーラー服に包まれた少女の胸も、腰に合わせてゆさゆさと揺れる。
うーむ、この娘はかなりの名器だぞ。狭いだけでなく男のものを離すまいと吸い付き、
盛んに搾り取ろうとしてくるようだ。スグにイクのはもったいないと堪えようとしたそんなとき、
無粋なアナウンスが水を差す。
12 :
レオンテール:2009/10/26(月) 19:23:24 ID:Sp0Y1FOx
もう次の駅か。名器の感触を愉しんでいたいのはやまやまだったが、任務の時間は
限られているし、仲間にしてしまえば暇なときは何時だってヤレるので、とりあえず
射精しておくことにした。もちろん、子宮口に自身を密着させて一滴残らず注ぎ込むのは忘れない。
存分に男のエキスを受け入れて二度目の絶頂を迎え、糸の切れた人形のように力を失った彼女を
元の姿勢に戻すと、一時的に変身を解いたセイウチ男たちは息を潜めて様子を探る。
とりあえずこの駅に新しい乗客は居ないようだ。早速再変身して、発車するのも待たずに
次の獲物に取り掛かった。
女共はアイツに任せておけば充分だ。痴態を見せ付けられていい加減収まりがつかなくなっていた
ジャコウネコ女も、尻尾をふりふりフェロモンガスを撒き散らしながら車内を練り歩く。
号令一つでぞろぞろと男たちが立ち上がり、命じられるまま大小さまざまな息子たちを
見せ付けてゆく。
「ウフフ……よりどりみどり。いただきまあす」
たちまち車内に充満したむせ返るような雄の臭気に頬を染め、舌なめずりをして
肉棒にむしゃぶりつくジャコウネコ女。
口だけでなく、使い込まれて程よくほぐれた菊門や蜜を垂らす熟れきった女陰、
果ては尿道や性器のように拡張された乳首にまで男根を咥え込み、しなやかな全身の
バネを駆使したテクニックで群がる男共の精を瞬く間に搾り取ってゆく。
そして射精を果たし空になった瞬間の尿道へ、全ての肉穴から分泌される改造液を注ぎ込み、
次々に支配下においてゆくのだ。
「くふううううううん! 全穴中出しサイコオオオオオオオオ!
みんなワタシの肉体の虜になっちゃいなさあい!」
そんなことを何度も繰り返し、新たに乗り込んできたものも含めて終点に着く頃には
すっかり全ての客が征服されていた。
存分に中出しを決められ、満足げに腹を撫でるジャコウネコ女と、三桁に届こうかという
女性の相手をしてきたにもかかわらず平然としているセイウチ男。流石は絶倫怪人だ。
もちろん運転手も最初からグルである。でなければこれだけ派手にやって気付かれないはずがない。
促されるまま、操り人形のような足取りで無人駅のホームへと降り立つ乗客たち。
これから彼女らを怪しまれないように送り届けなければならない。
駅前のバス停にはあらかじめ手配してあった偽装バスが何台も停まっている。
一両分の客が全員座れるくらい余裕のある座席へと乗客を詰め込むと、バスは音も無く走り出す。
ナノマシンとDNAに影響を与える化学薬品を多分に含んだ精液によって体組織が変化し、
獣化の始まった人間を人目に晒すわけには行かないからだ。
持ち物から調べ上げた家の近所に着くまでは、束の間の第二ラウンドだ。
猫耳やウサ耳など、アニメチックに半獣化した女たちに再び改造精液を注ぎ込み、
怪人化を促進せねばならない。
男連中はアレだけでも大丈夫だが、女のほうはそう簡単には行かない。
全ての穴を使って雌の喜びを徹底的に教え込み、チンポの威力で子宮を屈服させねば
良い怪人には仕上がらないのだ。
セイウチ男に加勢するべく、ジャコウネコ女の股座にも男根が生じる。
フェロモン臭を撒き散らすイボが散りばめられた、芳しい長チンポだ。
13 :
レオンテール:2009/10/26(月) 19:24:32 ID:Sp0Y1FOx
今度は私が出す番、と自分好みな猫耳美少女を見繕い、その初々しいアナルに
猛々しい牙を突き立てる。長い黒髪を三つ編みにしたスレンダーな体型の猫耳美少女は、
媚液を滲ませながらの高速ピストンを受けて、初めてのアナルアクメを迎えた。
どの女性も、中出しアクメを迎えるたびにじわじわと獣の割合が増えてゆく。
任務が終わったら、新人みんなを集めて乱交パーティーを開くのも悪くないかもしれない。
ジャコウネコ女は、第二次性徴も迎えていないような幼女にイラマチオさせながらほくそ笑んだ。
それにしても最初に頂いた美少女が見当たらない。羊の角を生やした若いOLを
対面座位で攻めながら、セイウチ男は少々不満を抱いた。変化が進み、淫獣化した性器は
並みの人間以上の名器に変わるのだが、無改造でも素晴らしいアレを味わってしまうと、
流石にそこらの女程度ではどこか物足りなさを感じてしまう。
「こんなことなら彼女が何号車に乗せられたのかきちんと確認しておけばよかった……ウッ!」
愚痴を漏らしながらも職務には忠実に、淡々とノルマを達成してゆくセイウチ男。
幸い相手がたとえ腹のたるんだ中年やしわくちゃの老婆だったとしても、
ひとたび改造精液を受ければたちまち若々しく美しい怪人体に変身するので犯りがいはある。
時折二人は受け持つ車両を交代していたが、不思議なことに目当てだった文学少女の姿は
ジャコウネコ女の居た車両にも、どのバスにも有りはしなかった……
────とあるオフィスビルの地下深く。そこに世界の三分の一を手中に収める組織、
レオンテールのアジトがあった。
様々な姿の怪人たちがひしめく大ホールの壇上に、ファンファーレの音色とともに
その姿が闇夜でも鮮明に焼きつくであろう黄金の獣が現れる。
百獣の王ライオンの力を宿したレオンテールの大首領、クイーン・ルネだ。
その鬣は金糸を植えたかのような輝きを放ち、圧倒的な胸の大きさ、
むしゃぶりつきたくなるような肉付きといった雌としての魅力と、女王としての威厳、
力強さといった迫力を絶妙なバランスで保っている。
「「ハイル・ユア・マジェスティ!」」
配下の者どもが一斉に敬礼をささげる。クイーン・ルネは、黄金の鬣に包まれた
彫刻めいた美貌に笑みを浮かべると、西瓜のようなボリュームを持った胸を揺らしながら
玉座に着いた。
「計画のほうはどうなっている? シルバーテール」
「はっ、公共交通機関を利用しての兵員増強計画は順調でございます。
怪人化の成った者どもが電車だけでなくバス、タクシーなどを利用して順次感染を拡げれば、
来週までにはこの街の支配を磐石なものに出来ましょう」
銀色の毛並みの美しい雌狼、大幹部シルバーテールがきびきびと報告する。
その報せにクイーン・ルネは満足げにうなずくと、実行チームのリーダーである怪人二人を呼び寄せた。
「「セイウチ男、ジャコウネコ女、お呼びにあずかり参上いたしました」」
「うむ、そちらの働きまことに結構。よってささやかながら褒美を取らす、近うよれ」
かしこまって玉座へと歩み寄った二人は、堂々と男女のシンボルを見せ付けるクイーンに
圧倒された。量感たっぷりの乳房は紅色の先端を硬く尖らせ、股間から伸びた逸物は
三本の幹が黒々と螺旋を描く巨木の如き威容でもって天を突いている。
14 :
レオンテール:2009/10/26(月) 19:25:59 ID:Sp0Y1FOx
二人ともその迫力と性的な魅力に始終圧倒され、股を濡らし息子を滾らせながら
視線を釘付けにされていた。
「交わることこそ叶わぬが、気の済むまでしゃぶるが良い。
それにな、この計画が無事成功した暁には妾との交わりも許してやらんでもないぞ?」
腕を組み一際強調された胸の谷間でセルフパイズリしつつ、しとどに濡れる膣肉を
さらけ出し蕩けるような声色で囁かれた極上の餌に、獣二人は喜んで飛びついた。
乳肉全てを飲み込もうとするような勢いで乳首にむしゃぶりつき、濃厚なミルクを
ごくごく飲み下すセイウチ男と、芳しい性臭をむんむん放つトリプルチンポを
かわるがわるディープスロートで味わい続けるジャコウネコ女。
幾百人集った同胞からの嫉妬と羨望の視線に晒されながら、双方の逸物は普段以上に
いきり立ち、おびただしい先走りを垂らしながらビクビクと痙攣するさまは、
触れもせずに達してしまいそうであった。
「そろそろ精汁をくれてやろう、存分に飲み干すがよい」
程なくして、ジャコウネコ女が咥え込んでいた逸物が膨れ上がり、喉元を蹂躙しながら
胃の腑へ黄ばんだ精液を吐き出した。三本分を一本のペニスに凝縮し、まとめて吐き出すので、
ヨーグルトのように濃厚かつ大量だ。
敬愛する女王からの贈り物を一滴も無駄にはすまいと、彼女は限界までディープスロートを敢行し、
半ば膣肉と化した食道を歓喜に震えさせる。それは極上の母乳に咥内を蹂躙されていた
セイウチ男も同様だった。
喉奥に注がれたザーメンと母乳の味だけで絶頂を迎えた二人は恍惚の表情で
盛大に精汁を撒き散らし、玉座の周りに力なく倒れ伏す。
しかし女王直々にもたらされた体液の効果は素晴らしく、二人は再起動の掛かった
パソコンのように復活するや身体にみるみる活力がみなぎり、セイウチ男はよりがっしりした体躯と
自慢の精力をさらに上乗せする巨大な睾丸を手に入れ、ジャコウネコ女も女陰のような
陥没乳首を備えより豊満になったバストと、逞しさを増し二本に増えたイボ付きペニスを授かった。
「双方、これを励みに精進するが良い。往け! レオンテールの戦士たちよ!!」
シルバーテールの命を受け、新たな力を授かった怪人たちは闘志を燃やして任務へ臨む。
女王の祝福を受けた我々は無敵だ! おこぼれに預かろうと参加した同胞たちも新たに加え、
まさに野獣の如く目をぎらつかせた怪人軍団は計画を進めるために夜のしじまの暗闇へ、
ビルの谷間へと散ってゆく。
「まったく、せっかくアンタに任せたのに寝てちゃ意味無いじゃない!」
「う〜〜〜〜、ごめんなさい……」
某市の駅で、セーラー服に身を包む黒髪の女子高生が同じ装いの友人を怒鳴っている。
どちらも雑誌に載ってもおかしくないような美少女だったが、割かしスレンダー気味な
黒髪の娘に対して、栗色の髪をツインテールに結わえたほうは、胸も尻もすごいボリュームだ。
ミニスカートとの間に絶対領域を形成するニーソックスも、ムチムチした柔らかい太ももに
しっかりと食い込んでいる。
15 :
レオンテール:2009/10/26(月) 19:27:10 ID:Sp0Y1FOx
「こんな大層なモンぶら下げといて、ぐーすか寝こけてた挙句ズコバコ犯られてただけなんて
思いっきり犯られ損じゃない! 犯人突き止めるくらいやんなさいよくぬっ、くぬ……!!」
「ああ〜〜〜ん、ダメだよぉハルちゃぁん。みんなに見られちゃってるよ〜〜〜〜」
人目もはばからず乳繰り合う彼女たちは、巷でも有名な女子高生探偵だった。
黒髪のほうがリーダーの秋冬春夏(あきとう・はるか)。爆乳ツインテールが相棒の卯月マリーである。
彼女らは噂される「通報されない痴漢電車」の調査にやってきたのだ。
品行方正なクラスメートが、大分遅れて帰宅したのがそもそもの発端だった。
理由は電車に乗り遅れたと両親に告げていたらしいのだが、その日彼女は春夏と時間通りに
駅で別れているのを確認している。
調べてみると、他にも同様の不審な乗り遅れ、乗り過ごし発言をした人物が出てくる出てくる。
さらに疑惑を決定付けたのが、ネットに投稿された電車内での乱交写真であった。
付近の列車マニアがたまたま撮影に成功したらしいのだが、市内を走る路線で堂々と
このような行為がなされているとは信じがたい、と事件の臭いをかぎつけた春夏は、
変装させたマリーを囮として送り込み、真相を突き止めようとしたのだ。
────しかし、肝心のマリーは見事に犯人を釣り上げたものの爆睡していたせいで
あっさり取り逃がし、挙句寝ぼけて途中で電車を降りてしまうという大失態をやらかして、
捜査を失敗に終わらせてしまったのだった。
「アンタなら大丈夫だと思ったから任せたのに、何・で・寝・る・の・よ!?」
「でもでもぉ、あんなスゴイオチンポ人間じゃないよ。わたしがひとハメでイカされちゃったんだもん!」
「寝言いってんじゃない!」「あひぃいいいいいいいいいん!」
春夏のフィンガーテクニックでボインを徹底的に責め抜かれ、衆人環視の中絶頂を迎え
アヘ顔を晒すマリーの必死の言い訳も、今の彼女には通じない。
観客もマリーを助けるどころか路上レズプレイに股間を熱く滾らせて、
一斉に携帯カメラのシャッターを切る始末。この世に神は居ないのだ。
愛液でぐしょぐしょになった下着を持て余しつつ、今度は二人で同じ列車に乗り込む。
「まったく……痴漢に触られるなんてまっぴらだけど、見つけたらマリーの分も
徹底的にぶちのめしてやるわ!」
ベルが鳴り、電車が動き出す。そしてすぐさま春夏の尻に魔の手が伸びてきた。
(早速掛かったわね……アレ!?)
しかし、痴漢の手を捻り上げようとすることは空手、合気道あわせて十段の彼女をもってしても
叶わなかった。なぜなら、意思とは裏腹に身体が言うことを聞かなくなっていたからだ。
「あう……あ……」(そんな……身体が動かない、声も満足に出せないなんて!?)
人間とは思えない毛むくじゃらの指が下着をずり下ろし、春夏の秘部をまさぐる。
感触からして既に濡れてしまっているようだ。調子に乗った痴漢は愛液にまみれた指を
菊門へ押し込み、両手で前後の穴をぬぽぬぽと弄り回してゆく。
春夏は心中の嫌悪感に反して硬く尖ってゆく乳首と共に、見ず知らずの痴漢に対して
たやすく感じてしまっている肉体の浅ましさに歯噛みした。
(ああっ、マリー!)
16 :
レオンテール:2009/10/26(月) 19:28:33 ID:Sp0Y1FOx
必死に目だけで相棒の姿を探し当てると既に彼女は他の乗客共々、痴漢に背後から
犯されている真っ最中だった。しかもその犯人は人間の女とキツツキを混ぜ合わせたような怪物。
体勢からしてペニスもそなえているのだろう────あのときのマリーの戯言は真実だったのかと、
彼女はハッとした。
「ホラホラ爆乳ちゃん? ワタシのマッハピストンのお味はいかが?」
キツツキ女の腰が残像を伴って見えるような高速でマリーに打ち付けられる。
くちばしのように硬く、尖ったペニスがドリルのようなカリ首で膣肉を削り取りながら
子宮口の中心をガンガン責め苛む。
「おおん、硬いチンポがぁ……子宮の入り口にズンズン刺さるぅ」
「オホホホホホ、突かれてるだけで子宮が媚びちゃうでしょう?
この極上マンコにたっぷり中出しして、ワタシたちの仲間にしてあげるわ!」
そのセックスアピールに極めて優れた容姿と紙のように薄い貞操観念のおかげか、
マリーは性的な責めに対してひときわ弱かった。激しい抽送とともに煮えたぎるザーメンを
ジェット水流のような勢いで叩きつけられ、子宮はたちまちアクメを迎える。
「ああん、熱い精子がいっぱい出されて……イクイクゥ!」
(マリー……)
「ウフフフフ……お友達が心配かしら? 大丈夫よ、スグに同じようにイキ狂わせてア・ゲ・ル」
そんな蠱惑的な声と共に、背後から猫と入り混じったような外見の、美しい女性が顔を出す。
さっきから自分を弄んでいたのは女だったのかと春夏は驚きを隠せない。
さらに彼女は太股に触れたものを目にして、二度目の衝撃を受けた。
股の間から顔を出しているそれは、イボのような突起にびっしりと覆われた二本の
長大なペニスだった。これから起こることをはっきりと予想してしまった彼女だったが、
ジャコウネコ女はソレを先読みしたかのように耳元で囁く。
「前も後ろも、処女を両方味わえるなんてツイてるわ……でも安心してね、
私のフェロモンザーメン、初めてでもイっちゃうくらい凄いのよ?」
催眠ガスのせいで傀儡と化し、命じられるまま尻を突き出した春夏のスカートを
捲り上げると、ジャコウネコ女は芳しい先走りを垂らす二本の剛直を入り口へ押し当て、
ゆっくりと腰を進める。
(ああ……嫌、イヤ、いやっ! 初めてがこんな化け物に奪われるなんて!)
内心の抵抗もむなしく、春夏は身体を裂かれるような感覚と共に初めての雄を迎え入れた。
だが痛みは分泌されるフェロモン液によってたちまち退いてゆき、ジャコウネコ女の
二本の逸物が巧みに収縮してリズミカルに子宮を責めてゆく。
「あん、おおん、そんなあ……初めてなのに、チンポなんかで感じちゃう……」
アナルから腸壁越しに子宮が攻められれば膣内のペニスは退いてGスポットを抉り、
後ろのが直腸を攻めれば即座に子宮口へストレートパンチが突き刺さる。
最後まで抵抗しようとする脳内にはしだいに桃色のもやが掛かり、
凶悪なイボマラに蹂躙される乙女の穢れなき肉壷はまさに陥落寸前であった。
そのとき、絶頂の余韻に浸っていたマリーの瞳に親友の危機が映りこむ。
エッチなことが大好きな自分が犯されるのはいい、むしろ大歓迎だが、
されるのをいやがる人たちがそんな目に遭うのだけは絶対に許せない。
17 :
レオンテール:2009/10/26(月) 19:29:53 ID:Sp0Y1FOx
親友への想いが桃色の頭脳を覚醒させる。戦いの時は今、戦いの時は来た!
「なっ、お前、まさかこのガスの中で動けるというの!?」
自らの意思で立ち上がったマリーの姿に、フェロモンを撒き散らしていた
張本人のみならず、その場に居た怪人たち全てが驚愕の声を上げた。
『……あるときは眼鏡の文学少女、またあるときはミニスカ女子高生────
しかしてその実体は!!』
人が変わったように朗々と響く声の中、マリーは首のハート型チョーカーに指を当て、高らかに叫んだ。
『マリー・フラーッシュ!!』
刹那、まばゆい閃光に包まれ、彼女の姿が変わった。ツインテールの髪は燃えるような
紅色に染まり、引き締まった腕は肘までのグローブに包まれる。分解されたセーラー服は
中心部をハート型に切り抜かれた白のチューブトップと、エナメル質の赤い半袖ジャケットへ再構成される。
むっちりした下半身は前面が大きく開いた白いホットパンツと、
同じく白のブーツという装いだ。
そう、卯月マリーは人間ではない。今は亡き天才科学者卯月博士によって生み出された
電子情報を実体化する脅威の大発明、電脳具現化装置を組み込まれたアンドロイドなのだ。
悪に立ち向かう戦士としての名は────
「性戦士、ビューティーマリーさ!」
「ふん、何かと思えばキューティーハニーもどきのコスプレ女ではないか。
者どもやっておしまい!」
曲者目掛けて次々飛び掛ってゆく怪人たち、しかし人間を遥かに上回る膂力から繰り出される
キックが、パンチがパワーでは引け劣らない怪人を返り討ちにしてゆく。
しかし勝負は腕力だけで決まるものではない。距離を置いていた孔雀男が
その煌びやかな翼を広げ、仲間たちの相手に気を取られているマリー目掛けて必殺の閃光を放った。
「喰らえ、発情オーロラフラッシュ!」「ああ〜〜〜〜〜〜〜っ!?」
特殊な波長の光を使って視覚から性欲を操作するというこの攻撃に、アンドロイドとはいえ
生体部品を多用し、限りなく人間に近い構造に造られていたマリーは怯まざるを得なかった。
そこへお返しとばかりに怪人たちが群がり、彼女の四肢を押さえ込む。
「他愛もない、象男!」「はいな」
すかさず掛けられるジャコウネコ女の号令に、大柄な象男が隣の車両から顔を出す。
レオンテールの怪人にとって基本中の基本であるテレパシーで指示を受け、象男は迷わず
腰に下げた容器から吸い込んだ液体を鼻からマリーの手足へ噴きつけた。
たちまち彼女はつり革と床に固定され、磔にされてしまう。
「そんな! 動けない!!」「はははは、強力瞬間接着剤ですわ、象が百頭ぶら下がっても剥がれまへん」
関西地方出身らしい彼は、接着剤で鼻が詰まらないように洗浄液でゆすいでいる。
言ったとおりよほど強力なのだろう。マリーの怪力でもびくともしない。
そんなまな板の上の鯉となった彼女へ、まさに飢えた野獣が牙を剥いた。
「えへへー、おっぱいだー! ……ではコアラ女、突貫しまーす!!」
チューブトップが捲り上げられてたわわな美爆乳が晒され、赤子のようにしがみついてきたコアラ女が、
淫らにいきり立つ桜色の乳首に吸い付く。そして幼く小柄な彼女には似つかわしくない大きさの、
焼けた鉄棒の如き逸物がホットパンツごと女陰を子宮まで貫いた。
「ひぐうううううううううう!?」「おっと、休んでる暇なんてないぜ? そりゃ!」
続いて馬男が自慢の巨根を振りかざしてアナルを襲う。これまた強烈な二本挿し攻撃に、
流石のマリーも悲鳴を上げざるを得なかった。そして嬲られていた春夏も────
18 :
レオンテール:2009/10/26(月) 19:31:06 ID:Sp0Y1FOx
「まったく……脅かしてくれるじゃない、こんな悪い子にはオシオキが必要ね。
アナタもお友達だって言うんなら覚悟しなさい」
ジャコウネコ女のペニスが震え、春夏の腸内に改造精液が吐き出される。
そして強烈な雄のエキスが染み渡る快楽によってもたらされた、初めてのアナルアクメを
満足に感じる間も無く、彼女の身体は最初の変容を密やかに遂げた。
硬く閉ざされているはずの子宮口が使い込まれたアナルのように緩み、よだれを垂らしながら
くぱくぱと開閉する。ジャコウネコ女はソレを悟ると、その入り口へ触手のように伸ばした
イボを引っ掛けて無理やりに押し開き、えらの張った亀頭を一思いに突っ込んだ。
「おほぉっ!?」
まともな人間なら一生体験することは無いであろう子宮姦を受けて、
白目を剥く春夏の腹部は一瞬ペニスの形に膨らんだ。無論それだけで終わるはずも無く、
ジャコウネコ女のイボペニスは子宮口と子宮内膜をぬぽぬぽ蹂躙し、
先走りとフェロモン液を塗りたくりながら子供を育む神聖な器官を淫らな性感帯に
改造していった。
「さあお待ちかねのミルクのお時間よ、ベイビー。
レオンテールの僕として生まれ変わりなさい────フン!」
「んああっ、こんなにいっぱい……子宮がはれちゅしちゃいそうなのに、
中出しされてキュンキュンしちゃうのぉおおおお! イク、イク、イクううううううううううう!!」
どびゅるるるるるるる! そんな音を立てるようにして、直腸へ注がれたのとは
比べ物にならない量の白濁が子宮へ殺到する。じっくりねっとり肉壷として調教されていた子袋は
常人のものなら破裂してしまいそうなそれをしっかりと受け止めて、妊娠時の如く
体積を著しく増加し、心身を蝕む媚毒はかつて無い絶頂をもたらすのだった。
そんなものに人の身で抗えるはずも無く、最後までかろうじて保たせていた理性を
完全に打ち砕かれ、人間秋冬春夏は死んだ。
魅惑的な肉体をひっきりなしに弄ばれ、怪人たちが入れ替わり立ち替わり両穴にザーメンを
注いでゆく中、いつしか穴を開けられたパンツは破り捨てられ、マリーの下半身は
ブーツを残して丸裸にされていた。だが無機物さえ侵食する改造精液でさえ、
データ上のスペックを完璧に維持し続ける電脳具現化装置の前では
性交による快楽に沈める以外に彼女を害することは出来ない。
躍起になって犯し続けられたせいで、ピンクのアナルもヴァギナもぽっかりと口を開け
だらしなく淫蜜を滴らせている。腹が膨らむほど注ぎ込まれたにもかかわらず精液を
一滴も漏らしていないのは流石人ならざる名器だといえた。
視線を釘付けにして止まないほど始終たゆんたゆん揺れていた豊満なバストは、
谷間どころか乳首の中まで散々犯しつくされて、いまやすっかり発情した立派な乳マンコと化している。
つい先日組織に参加した新人が、黄ばんだ白濁液がこびりついたソレの感触をもう一度味わおうかと
にじり寄ったとき、隣の車両からもう一人のリーダーが顔を出した。
「お前らばかりこんな上玉を輪姦してるなんてずるいじゃないか!
向こうの車両なんて、ババアとガキんちょばっかりだったんだぞ!」
「ごめんなさぁい、この子の具合がとってもよろしくって、つい夢中になっちゃったのよ」
19 :
レオンテール:2009/10/26(月) 19:32:57 ID:Sp0Y1FOx
セイウチ男は自分たちだけでご馳走を独占していた仲間たちに怒り心頭だったが、
磔にされている美少女の顔を見て目の色を変えた。
「ややっ? この顔は……髪形が変わっているが間違いない! あの時の眼鏡っこだ!!」
「ああ、夕べ話してたのってこの子だったの? ウフフ……コイツは我が組織に盾突く
変身ヒロインだったのよ。まあファックしまくってごらんの有様だけど」
「そうかそうか、敵だというんなら遠慮は要らないな。クイーンから頂いたコイツで存分に
犯しぬいてやるぜ」
「でもこの子、かなりしぶといわよ。生体アンドロイドらしいんだけど、
ここに居る全員で輪姦しまくってもぴくりとも変化しないのよ……
どんな細胞で出来てるのかしら」
「任せろよ、セガレが入る穴さえありゃあ機械だって孕ませて見せらあ」
自信満々に腕ほどもある逸物を滾らせるセイウチ男。その睾丸は待ち焦がれた
極上の獲物を前にして、しわも見えないほどパンパンに膨らんでいる。
「ああ……おちんぽは……おちんぽはダメェ……」
もはや満足に抵抗することも出来ず、マリーは力無く首を振ることしか出来ない。
そんなか弱い乙女に、非情にもひときわ凶悪な獣が迫り、柔らかな肉へとその牙を突き立てる。
「あおおおおおおおおおおおおん! 子宮とアナルザーメンぐちゅぐちゅしちゃらめええええええ!」
圧倒的な雄によって淫乱な雌子宮の奥まで貫かれ、今まで注がれてきた子種をかき混ぜられる感触に
マリーはけだもののような叫びを上げてよがり狂う。攻撃はそれだけに留まらず、
引き抜かれた男根は後ろの窄まりにも襲い掛かり精液にまみれた腸壁越しに子宮をノックした。
キツツキ女以上の威力を持ったパワフルピストンが、前後両面から彼女の持つ
正義感や使命感といったものを突き崩し蕩けさせてゆく。何度目かも判らぬ絶頂を迎えたとき、
初めてその身体に変化が訪れた。膨らんだ下腹部にハート型の痣が浮かびあがったのだ。
レオンテールの怪人に犯された被害者に現れるという淫紋だ。これを刻まれた女は
どんなに貞淑であってもたちまちどんな男にでも股を開き中出しをせがむ淫売となってしまう。
これこそが怪人たちを組織に縛る強力な鎖であった。抵抗は無意味だ。
淫紋を刻まれ、中出しされるたびにだらしないアヘ顔を晒して何度も気をやる
マリーのさまは到底正義のヒロインと呼べるものではなく、男の精を貪るだけの
発情した雌も同然だった。
あれだけ悪の精子に抵抗し続けた強靭なプロテクトも、自身が解いてしまえば
どうというほどのものでもなく、子種の群れは実にあっけなく全身を征服する。
これでもう抵抗は不可能と、ようやく拘束を解かれた彼女は生まれ変わったような表情で
舌を這わせ、自らの愛液に汚れたセイウチ男自身に奉仕し続けた。
正義のヒロインは死に、ここに性戯のヒロインが新たに生まれた。
マリーの腸はザーメンソーセージ、子宮はスペルマ水風船。内臓全てを雄に満たされた彼女は
臨月の妊婦の如くその腹を膨らませ、愛おしげに淫紋をさすりながらまどろんでいた。
「────それでは皆様に我が組織の新たな仲間をご紹介しまーーーーす!」
アジトの大ホールにセクシーなバニーガールの声がこだまする。
点されたスポットライトに照らされて、床面に開いた穴から勢い良く噴出すスモークとともに
二人の女子高生が現れた。露骨に丈の短いセーラー服に身を包む彼女たちはどちらも美しく、
新鮮な若さに溢れた美味しそうな肉体をしている。
20 :
レオンテール:2009/10/26(月) 19:35:11 ID:Sp0Y1FOx
衆人環視のなか、黒髪の少女がためらい無く制服を脱ぎ捨てた。均整の取れた
一糸纏わぬ裸体が好色な視線に晒される。
「タイプ:コウモリ怪人、秋冬春夏――――!」
高らかに名前が読み上げられるのと同時に、春夏の身体が変化した。
手足の色がストッキングでも穿いたように変色すると、肩甲骨の辺りから差し渡し
2メートル以上はあろうかという膜状の翼が広がり、耳も翼状に変わる。
目元には悪を表しているのだろう黒い隈取のようなメイクが施され、茶色だった瞳は
血のような紅へ染まり、口元からは鋭い犬歯が伸びた。仕上げに尾てい骨のあたりから
悪魔のようなスペード形の長い尻尾が黒々と伸び、春夏の────否、コウモリ怪人・
ブラックテールの変身は完了した。
翼を器用に羽ばたかせ、ポールダンスのように空中で色気たっぷりに回転する
パフォーマンスを披露して観客を沸かせるなど、愛嬌もたっぷりなようだ。
「どうもー、不肖ながら真名までいただいちゃったこのブラックテール、
若輩ながら精一杯お手伝いさせていただきまーす!」
「続いての卯月マリーは……なんとびっくり! 精巧なアンドロイド戦士だそうです!
どうぞ────!」
ステージ中央に歩み出たマリーは喉元のチョーカーに指を当て、お馴染みの言葉を叫んだ。
『マリー・フラーッシュ!』
桃色の閃光に包まれてセーラー服が弾け飛び、思わずむしゃぶりつきたくなるような
豊満な女体が露になった。粒子状に分解された生地は装置の命ずるままに再び彼女の身体へ纏わりつき、
瞬時に戦装束を形成する。しかしその姿は今までの衣装とは似ても似つかず、
黒や紫を基調としたものだった。
燃えるような紅い髪は落ち着いた紫に染まり、同じく赤かったジャケットは闇のように深い漆黒に、
セクシーさを演出していたチューブトップは衣装というのも憚られるパープルハートの
ニップレスに成り下がっている。下半身を包んでいたホットパンツも、黒鉄色のサイドアーマーと
ショーツに見えないことも無い紫と黒のボディペイントに成り果てていた。
唯一まばゆいパーツである黒真珠のあしらわれた白銀のティアラを、照明に輝かせながら
淫蕩な笑みを浮かべるマリーは、左手で秘部を丸出しにしながらのY字バランスという
破廉恥極まるキメポーズで高らかに名乗りを上げる。
『鋼の子宮を持つ売女、肉便姫ナスティマリーさ!』
「いやあどちらもエロエロですねぇ、わたしもこんなになっちゃいました。
皆さんももう辛抱タマランという方ばかりでしょうし、ここらでぱーっとお二人を
目いっぱい歓迎してさし上げましょう! イエーイ!!」
「「「「イエ────────イ!!」」」」
左手でマイクを握り、右手で勃起した逸物をガンガン扱くバニーの声に、
ホールを埋め尽くす怪人軍団からの割れるような歓声が応えた。
獣たちは新たな仲間のあらゆる場所に欲望の白濁を注ぎ込み、淫らに染め上げる。
彼女らも体中のありとあらゆる穴でたくましい雄を味わい、疼く子宮を快楽に震わせながら
溢れんばかりの子種を存分に飲み下した。群がるメンバーが一周し新人が子供を孕むまで儀式は続く。
これがレオンテール恒例の新人歓迎会だった。ちなみに新人が男だった場合、
女性メンバー全員を相手取っての種付けハーレムプレイが実施されるそうな。
21 :
レオンテール:2009/10/26(月) 19:36:47 ID:Sp0Y1FOx
「ふっ、実に他愛も無い。所詮われらに歯向かうものなど路傍の石も同然といったところか」
「市内の全交通機関はすでに掌握を完了し、増員も十二分……
あとの事は時間の問題となっております」
「今宵はめでたき日じゃ、そなたも存分に愉しむがよい……フン!」
「おほおおおおおおおおお!」
ビチビチッ! と三本の男根から迸る膨大な量のザーメンが子宮と腸壁に叩きつけられ、
作戦成功の褒美を授かったボテ腹のジャコウネコ女がアヘ顔を晒して絶頂する。
クイーン・ルネの下で人間椅子となり、逸物に跨った女王の素晴らしき雌肉を味わっている
セイウチ男も蕩けるような表情だ。
「ではお言葉に甘えて────失礼します」
傘が何段にも重なったような男根を胸まで屹立させ、喜びに頬を染めたシルバーテールは一礼すると、
セイウチ男の腹の上で揺れる見事な尻、物欲しそうにヒクつく手付かずの菊門へと狙いを定め、
クールな仮面が剥がれ落ちるのもいとわずに、敬愛する女王の蠢く肉襞を思うさま貪った。
レオンテールは人知れず、されど確実に、伝染病のように日本を、世界を掌握してゆくだろう。
もしモテない男の子が、あこがれの美少女から告白されるなんていう
ありえないイベントに遭遇したら、彼女は既にレオンテールの怪人になっているのかもしれない────
END
22 :
レオンテール:2009/10/26(月) 19:39:48 ID:Sp0Y1FOx
投下終了です。
俺の好みをこれでもかと詰め込ませていただきました。
凄い新人さんが現れたね。
ふたなりと鬼畜度もこのスレ向きなんじゃないか。
ただ登場人物が多く、ストーリーもいっきに展開してるので、なんか勿体無い気もした。
数作品がごちゃ混ぜになった感じだ。
でもクイーン・ルネ最高!
>>22 長編、乙でした。
正直なところヒロイン物を書きたいとあったので、あまり期待していなかったけど
(前例が前例なので・・・)
完成作品は悪堕ちで楽しめました。
レオンテールだけでも充分ストーリーが創れると思います。
次作も期待です。
>>22レオンテール(の作者)様
乙でした。
元気で陽気でやりたい放題の悪の組織、とても楽しめました。
変身ヒロインもやられキャラ…というか犯られキャラに徹していて、
なんというか安心して楽しめました。
作者自身のこういう↓あっけらかんとしたところも素敵ですw
>ふん、何かと思えばキューティーハニーもどきのコスプレ女ではないか。
次回作も期待です!
> レオンテール様、こんにちわ!!読ませていただきました。なかなかの良作、新鮮な気分です!!是非、続編を!!
>>8 亜季たちは、何のためらいもなく恥かしくもなく、股間に潜り込ませた手で、勃起した男根を掴み出した。
思わず、顔を赤らめるかすみ。幼い時、父親とお風呂に入った体験があるから当然、男根を見るのは初めてではない。とはいえ、人間の遺伝子には親兄弟の異性には
性的な感情を抱かぬよう精神的なリミッターがついている(例外も有るが)ので然程、何も感じなかった物だ。
だから慌てた。とはいえ、麻痺薬で動けないので、両手で顔を覆って隠すことも、瞼を閉じる事も儘ならない。
4年生の加奈と美奈の姉妹が男根を掴むと、跨った。
ズプププッ、ブッビヒップッ
腰を降ろすと同時に白い液体が結合部から噴出す。
「ウウッ」
「ふふっ、気持ち良いの?でも。これからだよ♪」
そういうと、ほぼ同時に脚を立て、膝小僧を覆うように掴むと上下に腰を降り始めた。
<続く>
同じように腰を振る亜季達。かすみは、どうしたら良いのか判らなかった。
これは、何なのか!?
小学5年生だが、セックスという意味や、行為について(多少、偏った知識だが)ある。とはいえ、それを眼の前で見る事になるとは!!
ズプッズクッグチャッ
「ふふっ、かすみちゃん、恥かしいの?」
「亜季ちゃん、こ、これは!?」
「これは、何?」
腰を振りながら、笑みを浮かべた。この行為と純粋に恥かしい表情をうかべるかすみに興奮しているのだ。
「何だと思う?」
「い、いけないわ・・・亜季ちゃん。これは、小学校の娘が・・・・。」
「恥かしがらなくて良いの・・・・。これがお掃除なの。」
「お掃除?」
お掃除、大掃除!?これが?
「私達は、社会のゴミのお掃除をしてるの。教室を掃除するでしょ?あれと同じだよ。」
どういう意味だ!?全然、意味が判らない。
<続く>
経過報告。…といってもまだ一行も書けていなくて構想(妄想)中なんですが、
> 【エデンの門番】人間の手がいまだ触れないUMAの楽園。
> この世界を暴かんとする探検隊隊長の父に同行した少女は、
> 奇怪な生物に捕らえられ蜂女に改造されてしまう。
ずっと以前にBeeF様のサイトで↑このアイデアを見て以降、自分なりのイメージを
色々膨らませてもいたものの、改めてちゃんと読み返してみると、
ごく簡潔な記述なのに構想の大筋が暗示されていて、さすがBeeF様、と思いました。
つまり「門番」「楽園」「この世界を暴かんと…」という記述からして、
多分ヒロインを蜂女化する存在は楽園の守護者であり、楽園への侵入者である
主人公の父親一行を排除するためにヒロインを改造…といった物語だったと推測されます。
あまり好き勝手変えるのも、これらのキイワードに忠実過ぎるあまり自分のイメージを
損なうのも、どちらも自分の本意からそれるので、うまくその中間にしたいと思います。
>>28 競作なんだからそれぞれ独自路線を追求してくれた方がいいよ
といっても舞方氏はマイペースで自分の世界に仕上げるだろうし
アンヌ改造氏(だよな?)は異色作でゆくと明言してるから
maledict氏はBeeF氏に倣った正統派を追求してもいいのかも知れない
あと大阪ドーム氏にも「蜜と閃刃」でぜひ参戦してもらいたいな
舞の字の付くSS書き氏は
「エデンの門番」に目処ついたところで
大規模規制に巻き込まれたとのこと……
伝えておきました>舞の字氏
舞方さんは目処がついたけど規制に巻き込まれて書き込めないそうです。
なんてタイミングで規制しやがるんだ。
プロフェッサー氏も巻き込まれたのかな?
mの字のつく者ですが、ただいまメーラを開いたところ、
規制中の舞方様より下記メッセージの伝言を依頼されました。
大変ですねえ…
--------------
東京ドーム様、大阪ドーム様、いつもお疲れ様です。
レオンテールの作者様、大変楽しい作品を拝見させていただき、ありがとうございました。
ところで前スレで話題になりました、Beef様未執筆作品の「エデンの門番」ですが、
その舞の字版とも言うべきものに目処がつきました。
ですが、多少長くなってしまいましたことと、現在当方のPCが2chへの書き込み規制に巻き込まれてしまっているようでこちらへ書き込むことができません。
そこで自ブログに二日ほどに分けて掲載し、そのつどこちらにリンクを張らせていただこうと思います。
ご面倒かと存じますが、なにとぞブログまで足をお運びのうえ、楽しんでいただければと思います。
ご了承くださいませ。
舞の字の付くSS書きさん了解です。
両ドーム氏とプロフェッサー氏も規制されてたら、緊急措置として
まとめサイトに直接投下していただくのはどうでしょうか?
プロバによっては12月まで規制されるのもあるそうなので。
テスト 規制解けた?
>>37 行ってきたよ。
短い時間で、これだけの作品によく纏まったと思う。
乙です。
ただ欲を言えば張型より、女王に改造してもらいたかったな。
その方がエロいかも。
それと第1弾なので、このスレに投下してほしかったね。
あとの職人さんのためにもね。
>>37 乙でした。思っていたよりもBeeF氏の世界に近い仕上がりで興味深かった
細部はまぎれもない舞の字さんだったけど
>>38 どれだけの職人さんが続いてくれるかなあ
この板の御三家をはじめ多くの参加者があると嬉しいんだけど
個人的にはもしもちゃんぷるう氏(というか前蜂女スレの長編の人)が見てるなら
ぜひBeeF氏祭りにエントリーしてもらいたい
結局蜂女って無個性化、集団の一員になるしかないのか。ミツバチみたいな集団じゃなくて
ジガバチ、アシナガバチぐらいの個体行動可能な怪人化の方が個人的には好み。
SS書く暇ねぇから忘れてくだせぇ
>>40 BeeF氏の蜂女はそういう「全体主義的な恐怖」を体現した怪人だと思うんだが。
個体行動可能な怪人だったら、別に蜂である必然性がなくなるし。
エデンの門番、設定やクライマックスのイメージは固まってきたのですが、
導入部とおとし方に迷っていて、もう少しかかりそうです。
(「門番」というキイワードがイマイチ使いにくいとか、娘と父の関係とか)
書き始めたら早いと思う(思いたい)ので今しばらくお待ち下さい。
>>41様
BeeF様作品に「全体主義的恐怖」を強調した話が多いのはご指摘通りだと思うんですが、
氏の「蜂女である必然性」は第一にショッカー蜂女のエロさだと思います。
もちろんそのエロい怪人のモチーフが蜂で、
しかもショッカーという全体主義的組織に属していたので、
全体主義的恐怖というのも分かちがたくあったのかなとは思いますが。
>>42 でもショッカーに限らず、蜂や蟻のような社会性昆虫をモチーフにした怪人で
全体主義的な恐怖を体現したやつって他に思い当たらないんだよな
BeeF氏の作風は赤狩り時代のアメリカのSFなんかとテイストが似ているような気もするし
現在アラフォーのクリエーター(庵野とか)によくある、破滅指向・ディストピア指向の
ひとつのあらわれとして、全体主義的な恐怖を持ってきているように思えるんだが
蜂女のエロさについても、BeeF氏はよく、蜂女は性器を露出していても平然としているといった
表現をしているが、これなんかはエロじゃなく、羞恥心を持たない=個が無い、ということを
あらわしているんじゃないかと思っていた。エロは二次的なものじゃないかと自分は感じたわけ
実はBeeF氏の作品に影響を受けた職人さんたちの中で、そういったBeeF氏のテイストを
いちばんよく反映してるのは、maledict氏じゃないかという気がしている
maledict氏は一人称視点多用なのでまったく同じにはならないが、作品の裏のテーマである
じわじわと侵略される恐怖と快感みたいなもので共通する要素を強く感じる
一方で、舞方氏はそういう恐怖に対する感性がもともと健全というか、人間側の視点から敵対的に
捉える視点を崩さずに描いている、さらに作者が作中人物よりも高い視点で突き放したように描いていて
じわじわと来る恐怖はあっても徹頭徹尾安心していられる。これは蟻蜂フリーク氏も同様だと思う
ちゃんぷるう氏は一見BeeF氏と作風が似ているが、もっぱら女体改造のみに関心が向けられていて
世界の破滅とか画一化の恐怖といったテーマには至っていないところで本質的にやはり別物だと思う
maledict氏の作品はそういうところが持ち味だと評価しているので、「エデンの門番」でもぜひ
そのあたりの真骨頂を見せてもらいたいと思うのだが。勝手な意見で申し訳ない
>>43様
ひゃあ(汗汗。ご希望に添えるかどうか自信が全くありませんががんばります
一点、
>じわじわと侵略される恐怖と快感みたいなもので
ここの「快感」の部分に共感して下さっているのは心強いです。
「門番」の意味も、父娘関係のイメージも固まってきたのですが、「秘境」に不安が。
グーグルマップでアマゾン川流域を見ているのですが、こんなことができてしまう時代に、
現代の(地球の)ジャングルを舞台にした秘境もの、という構想はやっぱり無理があるかなあ
でも近未来の日本・富士の樹海の奥地にマタンゴの楽園があって…
という、吉村達也『マタンゴ 最後の逆襲』みたいな話がありなんだから、
まして南米やアフリカあたりなら、まだ未踏の地もあるだろうか。
…最終的には何かSF的小細工を弄するのが無難でしょうが、
現代どのくらい調査が進んでいるのか、簡単にわかる資料とかあるかなあ
そういえば
>>43様のあげた作家諸氏のうち、、舞方様は
BeeF様デビュー時にはもうSS書きをされていたように記憶します
>>45 もはや地球上には純粋な「秘境」と呼べる地はもはやどこにもないって、
「映画ドラえもん のび太の大魔境」で言ってましたよ。しかもこれは1982年のこと。
場所を特定せずに書く必要はないと思うんだけど、もしやるなら、
・秘境がまだ残っているパラレルワールドでの話
・地球空洞説か何かで地下の秘境へ
・タイムスリップで紀元前の世界へ
・逆に現代の大都会の中央に突然ジャングルが出現
・異星の秘境探検 ←アンヌ氏はこれで書くと言ってた
・ミクロ化して粘菌の森を探検
・空想の世界が現実とフュージョンして秘境が出現
とかいったSF設定にするのが無難じゃないですか?
それか、アマゾンとかアフリカとかじゃなく、旧ソ連領中央アジアとかチベットとか、
国家体制のせいで西側諸国からの調査が進んでなくて、しかもソ連や中国が軍事的な
理由で秘境の存在をひた隠しにしていた、といった設定にしておけばどうですか?
秘境といってもジャングルじゃなくて、3X3 EYESの聖地みたいになりそうだけど。
あと、からめ手だけどストルガツキー兄弟の「路傍のピクニック」みたいに、
異星人が地球に来訪して、生物実験場としての《ゾーン》を作り上げた、という設定でもいいかも。
侵入者を改造して《ゾーン》の警備兵にしているとか。
でもこれじゃあ「エデンの門番」の本来のイメージ「人間の手がいまだ触れない」とはずれてきそうかな。
>>46(-
>>47)様ありがとうございます。ドラえもんがそう言ってるなら無理そうですね。
ご提示アイデアを参考にしながら、なるべくBeeF様原案に近くなるような設定をこねてみます。
……考えあぐねたあげく、「説明一切なし」になってたら笑って許して下さい。
>>46 それでも犬の王国があったって、展開じゃなかったけ?
そこは一年中曇っていて、衛星写真にも写らないとかじゃなかったかな
気がつくと東京ドーム様1週間以上投下なしですね。
麻痺したまま怯えているかすみちゃんが気になるのですが…
>>48 門番たちがエデンの園が衛星写真などに写らないよう影で操作しているんだったら
今の我々が知っている世界にまだエデンの園が残っていても問題ないんじゃね?
>>50 BeeF氏祭りで投下しにくいんじゃね?
でもさ、実際のところ、何人参加するんだろね。
>>52 maledict氏は確実として、前スレ397氏がアンヌ改造計画氏なら
律義な人みたいだし、投下はあるんじゃね?
かなり具体的なイメージを持っておられたみたいだし
あとは大阪ドーム氏が「蜜と閃刃」に挑戦してくれるかどうかと
ちゃんぷるう氏がここを見ているかどうか、といったとこだと思う
いずれにせよ祭りはそんなに長く続かないと思うので
東京ドーム氏には気にせずに投下を続けてもらいたいものだ
そそ、作家さんの書きたいものを書いてくれれば良いよ。
それにまだ規制解除されてないホストもあるんだし、座して待とう。
>>45 先週TVでやってた、ピーター・ジャクソン版のキング・コングだけど、
コングの島スカル・アイランド(スマトラ島の西にある)の設定は実によくできていたよ。
ちょうど複数の大陸プレートがぶつかる地点にできた島なので磁場異常が恒常的に発生する上、
地殻変動に伴う地表の褶曲が複雑な地形を形成していて、船乗りが近づけなかったらしい。
リンドバーグの大西洋横断からまだそれほど経っていない1930年代という時点だと、
飛行機による探査は困難なので、こうした条件なら秘境が残っていてもなんら不思議はない。
その上、登場する生物は実在の古生物が進化したという設定(コング自体、実在の巨大類人猿
ギガントピテクスの末裔という設定)なので、不自然さが極力感じられないようになっていた。
>>55様、なるほど。さすがというか、いい感じですね
自分は秘境の設定も含め大枠は固まりましたが、いつになくモヤモヤ要素が多く、
後は書きながら細かいつじつまを合わせる以外なさそうです。もうちょっとお待ち下さい。
ときに、BeeF様の影響を出発点にSS創作を始めた作家といえば東京ドーム様だと思います。
かすみちゃんのその後も気になりつつ(申し訳ないことに肝心のうんこがツボの外なのですが、
それ以外はもろに好みのシチュです)、祭りに参加してくれないかなあと思っています。
いつも通りの感じで全然構わないので。どうでしょうか?
東京ドームさん、カモーン!
御三家の姿が見えなくなった。
大阪ドーム氏はBeeF祭りに賛同しているけど、参加は表明してない。
気になるね。
もしも御三家の活動に支障が出るようなら
BeeF氏祭りは特撮板に移動して開いた方がよくね?
あっちは過疎っているし
薬物関連の規制に巻き込まれてたらやっかいだな。
かくゆう俺だが。
神奈川壊滅なんでしょ今orz
テスト
ようやく書き込めました。
よかったー。
皆様「エデンの門番:舞の字版」をお読みくださりましてありがとうございました。
今回私もmaledict様と同じように秘境をどうしようかと思ったのですが、
早々に私の中ではクトゥルフネタと絡めたいと言うのがスッと浮かびましたので、
1924年に設定することで南米の密林を秘境にすることができました。
maledict様も設定が決まったようですので、楽しみにしております。
>>38 女王がというのは実はまったく考えておりませんでした。
ご指摘いただいて、そういう手もあったなぁと思ったぐらいでして・・・(汗
女王によってと言うのでも良かったですね。
投下に関しては長くなってしまったことと規制がかかってしまったということでご了承くださいませ。
>>39 書いている本人はBeeF様よりもmaledict様っぽいかなとか考えておりましたが、
BeeF様の世界に近いと言っていただけたのはすごくうれしいです。
ありがとうございました。
>>43 自分の作品を客観的に感じたことはなかったので、私に関するお言葉とても新鮮に思いました。
ありがとうございました。
>>59 お三方はもしかしたらまだ規制中なのではないでしょうか?
私もようやく書き込めましたので。
>>59 特撮板は別の方向に走ってるから無理じゃね?
それに大阪ドーム氏の参戦を頭から潰すことになるぞ
そうだ! 大阪ドームたんは乙女のように繊細なんだぞ!
66 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 18:03:51 ID:gEM+Aq/Y
乙女だったのかー!
自サイトの掲示板に東京ドーム様が書き込まれてました。
規制に巻き込まれて書けない状態なのだそうです。転載しておきます。
-------------------
152 名前:名無しIN東京ドーム 投稿日: 2009/11/08(日) 07:56:32
皆様、東京ドームでございます。
現在、規制テロに巻き込まれ(2度目でございます)、身動きがとれない有り様。
まことに悲しい事です。皆様にご迷惑をおかけしております。(謝意)
東京ドーム
かすみちゃん、まだぁ?
* 規制テロ解除
>>29 淫液の音、悲鳴、泣き叫ぶ男たちの声。かすみは震えながら、その地獄絵図を只只見ているしかなかった。
”夢だ!!そう、これはわるい夢・・・・・。”
そう思いたかった。だが、これが夢で無い事は判る。これは間違いなく現実なのだ。
嗚咽が弱くなり、跨がれた男の身体が干からびていく。
そうすると、亜季達蜂女は男根を引き抜き、泣き叫ぶ別の男達に跨った。
それが、20分余り続いた・・・・・・。
「これが、お掃除よ・・・・・。」
真魚が近づき、優しい口調で言った。
あまりの<非現実的>な光景に声が震え、答えられぬかすみ。
そうしている間に、他の娘達がミイラになった男達を薪のように積み上げていく。
「この連中は、私達と同じ歳の娘達を浚い、売り飛ばしていたの。」
そう、言うと真魚は背を向け、積み上げた男達の前に相対した。
<続く>
>> malediigt様
規制テロ際、変わって通知していただいた事、大変に嬉しく思います。ありがとうございます。
読んでいただいて有難く思います。これからもエロ道に精進いたします。
>> 舞の付くSS書き様
お久し振りです。お元気でしたか?私はワンパターンですが(進歩が無いという声も)、<神の結社>物が好きで、
これからも書き続ける心算です。これからも、宜しく御願いします。
> 大阪ドームさんも規制でしょうか?心配です。
東京ドーム(謝意)
また大規模規制きたようですね。
maledictさんの掲示板をSS投下避難所にできないでしょうか?
大阪ドームさんとプロフェッサーさんもずっと巻き込まれてるのかもしれないですし。
移動中で、携帯から。
>>71様
滅多に人の来ない掲示板で、おにゃ改SSの投下はむしろ歓迎です。
ただ、まだ作家諸氏の規制の状況も今後の見通しもわかっておらず、
またSSの投下先があちこちにばらけるのは、
後でまとめる際の不都合につながる可能性もあるかと思います。
まずは、いきなり投下場所としてではなく、連絡用の避難所として使うのはどうでしょうか。
今夜一時過ぎくらいでよければ、一つスレを立てます。
スレを立てるのは誰でもできるので、別の方が立てるのでも構いません。
立てたらここにリンクを貼ればいいと思います。
なお念の為ですが、上記掲示板は2ちゃんでもBBSpinkでもなく、
IP情報も含めmaledict個人が管理する掲示板ですので、その点はご留意下さい。
* malidict様
ありがとうございます。
>>69 そうすると、他の娘達もやはり薪を積み上げたようなミイラの山を囲むように相対した。
何をするつもり?かすみは訝った。
シャァァァァァァッ
元気な放射線を描き、尿がミイラに降りかかった。
激しく飛び降りかかる尿、その度に酸っぱい匂いがかすみの鼻腔を擽る。
<何、この匂い・・・・!?>
そうしながら、それに気づいた。匂いの素は尿を掛けられている男達で、尿を掛ける度にドロドロのヘドロのようになって人体の形が崩れてくるのだ。
何処からか「カタカタ」と硬い物が不規則に当る音が聞こえた。
恐怖で歯が鳴るかすみ自身の音であった。
<続く>
>>56 >申し訳ないことに肝心のうんこがツボの外なのですが、
遅レスでスマソが、malidict氏。
前にホヤスズメバチのスカネタ、書いてなかったっけ?
スカ好きだと思っていたよ。
>>75様
あ、うんこ話はそれはそれで大好きなのです。
ただ、萌えとはちょっと違って、どちらかというと怖いもの見たさ的な嗜好で、
そっちとこっちは別にしておきたい感じです。
スカトロホヤ女の続編も構想はあって、
彼女相手に童貞喪失&改造されてしまうという可哀想な所員の話です。
うんこ話が読みたい
>>74 完全に解けて尿の海になった。
それを見ながら、恐怖でかすみの顔が引き攣っていた。自分は見てはいけない物を見てしまったのだ。
おそらく、自分も殺されるだろう。
膀胱のが空になったのか、雫が垂れた。お尻を2・3回上下に振り雫を払う。
「これが、お掃除よ・・・・。」
そう言いながら近づく真魚。恐ろしい行為を働いたにも関わらず、その表情は優しげだ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁッ」
泣き叫ぶかすみ。真魚は驚いた。
「心配する必要はないの。貴方にはなにもしないから・・・・。」
そう言うが無駄である。
「どうする?」
亜季が尋ねた。
「とにかく、教頭先生の処に連れて行こう。」
他の娘達は、浚われた娘達を救出していく。
<続く>
>>77いつまで、と言いにくいながら、いずれ書きたいと思います
>>78東京ドーム様 クライマックスですねハァハァ
エデンの門番、一応完成したんですが、
調子に乗ってあれこれ書いていたら40,000字(単純換算で原稿用紙100枚)近い
膨大なものになってしまいました。
●はもっているので、投下するなら一挙にと思っているのですが
(以前さるさんをよく喰らっていたのは、どうもサインインできてなかったためらしい)、
改造シーンやエロ描写も、自分なりには(特にエロは下手なので)凝ったつもりながら、
世界観の説明やらなにやら、それ以外の部分の分量もかなりあって、
「長いのはイヤ」という声もある以上、ちょっとためらいもあります。
念のため事前に確認したいと思います。
内容ですが、書き終えるまで舞の字様版を敢えて見ずに通したのですが
(但し、このスレでの感想は見ました)、執筆後舞の字様版を読んだところ、
重なり合う要素がかなり多いものになってしまっていました。
読み合わせた上で改稿、という器用なこともできそうにないのでこのまま投下しますが、
似た筋で、舞の字様よりももたもたした展開、という点が心苦しいところです。
なお、原稿を普通の原稿用紙の書式(段落ごと改行のスタイル)で書いて、
投下用に改行をいじらないといけないので、投下までもう少し時間かかります。
なお、予定では視点を変えた後日譚的な「エピローグ」が付くはずだったのですが、
すでに十分長いのと、そちらの執筆終了を待つと投下がさらに伸びるので、
そちらは「続編」扱いにしたいと思います。
>>79 ここでmaledict氏が投下されなかったら、何のためのBeeF祭りだったのか意味がなくなる
長いのはかなわん、という声があるのはわかるが、思いきって投下して欲しいと思う
BeeF氏の作品も、後期のものは長いのが普通だったんだし、仕方ないんじゃないかな
舞方氏とのカブリは、スタート地点が同じなんだからある程度は当然
改稿などと気をつかわずに、そのまま投下される方が新鮮なままのSSが味わえて嬉しい
エピローグはmaledict氏次第だが、続編扱いにせずに本編投下の翌日くらいに後日譚として
投下される方がすっきりしていいと思う
というわけで、あまり気をつかわれずにどんどん投下して下さい
* 大阪ドームさんが音信普通になって長いですね。私は心配です・・・・・。
>>78 黒い車に乗せられ桜花学園小等部についたのは、それから30分後の事であった。
救出された娘達は別の車に乗り、別の場所に向かった。それがかすみの恐怖をさらに駆り立てた。
あの、娘達はどうなるのだろう?殺されてしまうのかしら?それとも実験台?
自分も、おそらく殺されるだろう。見てはならない物を見てしまったのだから・・・・。
親戚のお兄さんが見ていた仮○ライダーの世界と頭がごっちゃになり、妄想を膨らませ恐怖した。
廊下を通り、1年生のトイレの前に行く。その奥のトイレの前で真魚は立止まった。
便器の蓋を開け前に立つと、パンティを降ろし脚を開き、大きな水飛沫を上げて放尿を始める。
何だろうか?かすみが思った時、便器を背にした壁が開き、空洞が現れた。
これはアジトに入る為、<神の結社>の人別システムである。尿が便器に溜まった特殊な液体に触れて人物特定を行なうのだ。
やがて、膀胱が空になる。あれ程、元気良く出ていた尿も雫が垂れるだけだ。
真魚はお尻を2・3回上下に振り尿きりすると、パンティを上げてニッコリと笑った。
唖然とするかすみ。
<続く>
>>maidict様
かすみのモデルは「蜂女の館」の扉絵の女の子 仲根かすみさんです。
この規制下で誰でも自由に書き込めるわけじゃないから
投下できる作家さんはどんどん投下していいと思う
しかし運営板賑やかだなぁ〜
>>80>>83様
ありがとうございます。
どうも50レス超になりそうで、我ながら怖いですが、
そもそも創作投稿を想定した板であることですし、
準備が整い次第、投下いくことにします
続編は投下後あまり遅くならないうちにいきます。
>>81東京ドーム様
まさかそのかすみだったとは!ハァハァハァ
タイムリーですね!
…では、まだ
>>85番で容量も十分なので、「正編」の投下をさせて頂きます。
タイトルはシンプルに「エデンの門番maledict版」です。
とりあえず56スレ消費する予定ですが、
1レス内の字数が見積もりよりオーバーした場合、途中で予定消費スレ数が
予告なく増える場合があります。あらかじめご了承下さい。
なお、キャラクターの名前をなんとなく今回のBeeF祭り関連にちなんだような名で
統一しましたが、例によってネーミングに苦しんだあげくのことで、深い意味はありません。
〈第1章 出発〉
調査隊を乗せたヘリが離陸した。隊長を務めるわたしの父は、いつになく
高揚した顔つきだ。
隊長の娘であるわたし自身も調査隊の一員である。とはいえ、父が
少ない予算をやりくりして呼び集めた5人の調査隊員の内、3人は初めて
見る人物だ。他のメンバーも互いにほぼ初対面らしく、あまり広いとは
言えないヘリの中は、どこかぎこちなさが漂っている。
そんな空気を察したのだろう。全員と面識があるらしいアンナさんが、
改めて、という感じで全員の紹介を買って出る。アンナさんは父の教え子
だった昆虫学者で、20代後半のきれいな女性だ。
「ええと、まず、こちらが隊長の美府 陸先生。進化生態学の第一人者……
これは大丈夫よね?」
父がこの世界の第一人者であることは国内外のライバル学者たちですら
認めるところであるが、通常、父のその肩書きの前には「孤高の」とか
「不遇の」とか、そんな但し書きがつく。父はそういうポジションを
あえて引き受ける代償に、自由で大胆な研究をいくつも打ち出して、
生臭い学界を生き抜いてきたのだ。
アンナさんの紹介は続く。
「それから、そのお隣は美府先生の娘さんの朝花さん。わずか17歳にして
言語学博士と進化心理学修士をもつ才媛。語学の達人で、数十の言語を
自在に操る彼女は、お父上のフィールドワークにいつも同伴して、
現地ガイドとの交渉はじめ、秘書役兼通訳という大事な役目を務めているわ」
次にアンナさんは、無表情に外を眺めている30代半ばの男性を指して言う。
「そのお隣は古生物学者のディック・マレーさん。古哺乳類学が専門で、
今回遭遇する可能性のある遺存種、つまり『生きた化石』の研究を任されて
います」
アンナさんは続いて、アンナさんよりもやや若い、眼鏡をかけたおとなし
そうな女性を紹介する。
「そのお隣は、10代前半で数学博士と物理学博士を取得後、大学を去り、
その後の10年で完成させた異端の時空理論をつい最近世に問うた天才、
サトミ・イマカタ博士。今回向かう区域に生じているという奇怪な現象の
解明は、現在の物理学界の中でも彼女にしかできないという話よ」
10代のわたしが言うのもなんだが、見たところわたしと大差ないほどの
若さ……というより、未成熟さを感じさせる女性だった。
アンナさんは最後に自己紹介をする。
「そしてわたしが刀根アンナ。専門は昆虫学。例のギガンタピスの実物を
研究した数少ない研究者の1人です。残念ながら、せっかく書いた論文は
お蔵入り状態ですが、今回の調査でなんとか日の目を見させてやりたいと
思っています。以上!」
皆の紹介が終わったのを見た父は、到着までの時間で、今回の調査の概要を
改めておさらいした。
「今回の調査の発端は、現在向かっている密林の中の、神殿らしき遺跡で
発見された、体長20センチを越す巨大蜂、ギガンタピスの遺骸です。
ギガンタピスは存在自体が疑われ、また存在したとしてもはるか古代に
絶滅したはずとされていました。ところが驚くべきことに、神殿に祀られて
いたこの標本の年代は、せいぜい数百年前という大変新しいものだったのです。
神殿の中からは他にも、数十万から数千万年前に絶滅したはずの動植物の、
やはり同じくらい新しい標本が採取されました。
ギガンタピスの発見はスキャンダルと疑惑に埋もれてきました。19世紀、
樹液に封じ込められたギガンタピスの翅の化石を科学者に持ち込んだのは
稀代のペテン師でした。当然のようにその標本はまがい物扱いされ、まともな
教科書からは除外されてきたのです。そして現代、世紀の発見といっても
おかしくないあの標本を学界に持ち込んだのは、あろうことか、化石捏造疑惑で
騒がれたブローカーでした。しかもその標本は、他の絶滅種の標本と共に、
どこか疑わしい点の多い火災によってすべて灰になってしまったのです。
私やアンナ君のようにその実物を目にした少数の研究者は、それがたしかに
本物であったことを疑っていません。とはいえ、遅くとも中生代末には滅んで
いたはずの昆虫が、どうやって現代のアマゾンに遺骸を残すことができた
のか?この疑問に答えられない限り、学界の主流派に十分な反論を提供
することはしにくい。
私がイマカタ博士の研究を偶然知ったのはそんなときです。イマカタ博士は
まさに中生代後期、あの標本が見つかった近辺に大質量の隕石が落下し、
そしてその結果、その落下地点に非常に特異な物理現象が生じている、
という予測を自分のサイトに公表していました。主要な学会誌に投稿した
ものの、証拠が不十分なのと、あまりに突飛な結論であったのとで却下されて
しまったそうなのです。しかし博士の予測が正しければ、それはあの
ギガンタピスの新しい遺骸の説明を提供してくれるのです。
それゆえ今回の調査は、ギガンタピスやその他の古代生物の実在を裏付ける
ためのものであると共に、イマカタ君の説を裏付けるためのものでもある
と言えましょう」
父の話が終わる頃、ヘリが目的地に着いた。
〈第2章 楽園の門〉
わたしたちとキャンプの装備一式を降ろし、ヘリが帰っていった。とりあえず
2週間後、ここにまたわたしたちを迎えに来てくれる予定である。不慮の事態が
生じた場合には、緊急連絡によって駆けつけてくれる手はずも整っていた。
わたしたちが降り立ったのは例の神殿の近辺だった。神殿の再調査も
興味があったが、それは帰還前ということになっていた。まずは問題の
地点の調査が先決である。
問題の地点までの案内はイマカタ博士に任せるしかない。博士は
「目的地」を相当正確に予測しているようで、GPSを見ながら迷いなく歩を
進めている。密林の中の道なき道をを、一行はイマカタ博士に導かれて
のろのろと進んでいく。
やがてイマカタ博士は一本の木の前に立ち止まり、言う。
「植物に詳しい先生はいますか? この木は現存する種とはちょっと違う
可能性があるんですが」
父とマレー博士がそれを聞き、幹や葉をしばらく調べてから口々に言う。
「たしかに、新生代初期に絶滅した被子植物に似ているようだが?」
「そもそも、これは温帯地方に生える種類で、こんな赤道直下にあるのは
不自然だ……」
イマカタ博士はうなずいて言う。
「なるほど。思った通りです。では、早速この木を伐採します」
おとなしそうな博士の乱暴な言葉に皆は唖然とするが、博士は気にとめる
様子もなく電磁チェーンソウを取り出し、電源を入れた。マイクロウェーブに
よって幹を焼きながら切断する最新の伐採装置だ。小柄な女性である博士が
それを抱え、直径数10センチの大きな木の、地面から1メートル程度の幹に
それを当て、苦労して切断を進める。そして他の隊員たちを遠ざけると
切り口に爆薬を仕掛け、炸裂させた。
奇妙な現象がそれに続いた。木はゆっくりと倒れ始めたと思うと、まるで
何かに飲み込まれるように消え失せてしまったのである。幹のあった部分の
空間は、まるで壊れたテレビのように、ぼうっと白く濁った光を放っていた。
「『門』が開いたわ。多分この奥に、ギガンタピスの楽園があるはずです。
ここから先は多分蜂対策が必要でしょうね」
そう言ってイマカタ博士は、昔に比べればかなりスマートになった蜂用
防護服とマスクを取り出し、身につけ始めた。
イマカタ博士に言われるまま、同じ装備を身につけ始めたわたしたちの
前に、巨大な蜂が飛んできた。あの白い空間から飛び出してきたのだ。
一同は驚き、アンナさんなどは捕虫網を取り出しかけたが、蜂はそのまま
ものすごい勢いで遠くへ飛んでいってしまった。多分働き蜂なので、
子孫を残すこともなくどこかで朽ち果てることになるだろう。
唖然としているわたしたちに、博士は説明を続ける。
「美府先生以外の皆さんに、あまり詳しい説明をしてこなかったのはお詫び
します。実際、わたしの論文自体、直感的に何が書かれているのかわざと
分かりにくく抽象的に書いておいたのです。一知半解の好事家が勝手なことを
言い出さないための予防策でした。とはいえ百聞は一見にしかずと言います。
こうやって現物を見せれば、わたしの理論が何を意味するかははっきりする
はずです。装備ができたら、早速入っていきましょう。後についてきて下さい」
イマカタ博士は、装備を整えたわたしたちを確認すると、切り株の上に
ぽんと飛び乗った。その瞬間、イマカタ博士の姿が白い空間の中に飲み
込まれて消えた。父が躊躇なくそれに続いた。次いでアンナさんが恐る恐る
後を追った。その次はわたしだった。
切り株に飛び乗ったとたん、わたしの周りには直前までとはまったく違う
森が広がった。先ほど倒れた幹が目の前に現れ、植生は一変し、遠くに
小さな山が現れた。来た方角を見ると、遠くの光景は元のままだったが、
近くにある石ころや木の枝が異様な高倍率で拡大されて見え、わたしは
ぎょっとせざるを得なかった。わたしの後に続いたマレー博士も、
急転した光景に目をきょろきょろさせている。
イマカタ博士が説明する。
「この空間は直径10キロほどあります。中生代後期に隕石によってえぐり
取られた土地がそのまま、あの切り株と重なり合う数10センチの領域に
圧縮されているのです。つまり外から見ると直径数10センチしかないはずの
土地が、この空間の中に入れば元通り直径10キロのこんな光景として広がるのです。
このからくりの根本的な原因は、隕石の正体であったはずの極小ブラックホール
です。ブラックホール自体は蒸発してしまっていますが、変容した空間的地形は
そのまま保存され、一種の生態学的タイムカプセルとして現在に至っている
のです。少なくともわたしの理論によればそうなるし、今わたしの目の前には
理論が予測した通りの光景が広がっています。
この空間から元の空間への唯一の出入り口はわたしたちが今入ってきた
この『門』のみです。もしあの木を根こそぎ引き抜けば、空間の自己修復力に
押されて、近傍の木が根ごとずらされ、門に『フタ』をするはずです。
外から見れば、絶滅種の木が一本、忽然と現れたように見えるでしょう。
そしてもちろん、出入り口は閉ざされます。他の場所から出ようとしても
やはり空間の力によって押し戻されてしまうでしょう。しかし、そんな空間の
自己修復作用をあの切り株が妨げ、切り株の上部に、いわば門を『こじ開けた』
状態を維持してくれているのです。
中生代に空間が閉じてから、偶然『門』が開いたことは何度かあったはず
です。その際、動植物の流出入はごくわずかにあったでしょうが、恐らく
数百年前、あの神殿を築いた部族が『開門』を行うまで、大規模な開門は
なかったはずです。木を切り倒す技術がなければ、安定した開門はなされ
ないのです。あの部族が何らかの事情で姿を消して以降は、今日我々が
新たに開門を行うまで、門は閉じたままだったと思います」
イマカタ博士は次に、天を指さして言った。
「もうじき正午ですね。これからちょっとしたイベントが起きます。よく
ご覧下さい」
皆が空を見上げると、太陽が突然大きく、淡くなり、ものすごい勢いで
西へと移動を始めた。数分間の異常な移動が終わると、太陽は午後1時か
2時ほどの地点に収まり、元の大きさに戻った。時刻はまだ正午少し過ぎである。
「わたしたちのいる、直径数十センチの空間の真上を太陽が通過したのです。
この事情により、この空間は同じ地域の別の地点よりも日照時間で損を
しています。ここだけが温帯地方のような気候なのもこれが原因でしょう」
あんぐりと口を開けて空を見るわたしたちの横で、イマカタ博士は最後に
重要な事項を付け加えた。
「注意せねばならないのは、この空間内では、外部への無線連絡も、また
GPSの使用などもできなくなる、ということです。外部との連絡はこの門を
出てから行わねばなりません。これは肝に銘じておいて下さい」
〈第3章 ある論争〉
マレー博士とアンナさんが、採取された標本をはさんで言い争いをしている。
一言で言えば、ネズミのようにも巨大な蜂のようにも見える生物を、
「ネズミバチ」と呼ぶべきか、「ハチネズミ」と呼ぶべきかという論争である。
わたしたちがあの門をくぐり抜けてから2日が経過していた。わたしたちの
目的地は中心部にある山だったが、直線距離にしてたかだか5キロしかない
はずの探索行は予想以上の難路で、ようやく半分を過ぎたかどうかという
ところだ。起伏の多い土地を、歩きやすい場所を選んでくねくねと蛇行する
能率の悪い行程だった。
途中、最も多く出くわした動物は例のギガンタピスであり、次に多かったのが
この蜂のようなネズミのような生物である。それ以外にも奇怪な生物が数多く
存在する、生物学者にとっては夢のような、あるいは悪夢のような空間だった。
途中、貴重な光学顕微鏡と簡易遺伝子解析キットをだめにしてしまったのが
1つの大きな痛手である。これがないため、観察はすべて肉眼に頼るしかなく
なったのだ。今現在進行中の論争も、持ち帰った標本を遺伝子解析にかければ
早々と決着がつく可能性がある。だが2人は、半分は意地で、そして半分は
気晴らしのために、肉眼解剖学の範囲内で自説を論証しようとしているのである。
マレー博士によれば、この生物はハチネズミと呼ぶのがふさわしい。
なぜなら、博士の説では、これは蜂に擬態したネズミなのだからである。
このハチネズミを始め、この空間内にいる多様な動物は、どれもこれも蜂、
さらに言えばギガンタピスを思わせる外見をしている。つまり青い腹部、
黄色と黒の縞模様、それに太い触角、といった特徴だ。ハチネズミについて
言えば、ネズミの顔に蜂の複眼、触角、大顎をつけ、腹部に青い皮膚を、
背中に黄色と黒の装甲を背負わせ、蜂の翅を生やしたような外見である。
他にも(マレー博士流の命名によれば)、ハチイタチ、ハチインコ、
ハチトカゲ、ハチヘビなどが観察または採集されている。
マレー説によればこれらの生物は「拡張されたベイツ型擬態」を行っている
とされる。20センチの巨大蜂は、生態系の多くの動物にとって重大な脅威である。
それゆえ、種のいかんを問わず、ギガンタピスに擬態する戦略は外敵の攻撃を
かわす有効な手段であるはずだという。
対するアンナさんは、これらの生物は、ギガンタピスが進化した姿であり、
昆虫類に分類されるべきだと主張している。それゆえ目の前の標本も
「ネズミバチ」と呼ばなければならないのだ。
アンナさんが強調する事実は、蜂や蟻のような社会性昆虫に見いだされる
顕著な「多型」現象である。つまり、高度に発達した社会性昆虫においては、
同じ親から似ても似つかない異なる子供たちが産み出される。そしてわたしたちの
出会ったギガンタピス風の怪生物はすべて、ネズミ、イタチ、インコ、ヘビ
などへの擬態あるいは収斂進化を行った、同一種の進化型ギガンタピスに属する
個体だというのである。
すべて昆虫だというだけではなく、すべて同一種だとまで主張する根拠は、
彼らが身にまとっている文様があまりに均質だという点にある。そしてこの
極度に多様な多型現象を裏付けるメカニズムとしてアンナさんが主張するのは、
アンナさん独自の「情報爆発」の理論である。
例えば固定した異物しか排除できない生体防御系から、ある臨界点を境に、
膨大な数の抗原を識別し記憶する免疫系が生じる。あるいは、固定した
本能モジュールの集合体だった脳が、汎用知能ツールとしての人間の脳に
移行する。これらが「情報爆発」の例だ。そしてアンナさん独自の数学的な
分析によれば、ある種の社会性昆虫の多型現象はまさにこの「情報爆発」の
臨界点間近に達しており、この生態系の中でギガンタピスがその臨界を突破し
「汎用擬態システム」を構築した可能性は十分にあるというのだ。
入り組んだ説を滔々と述べるアンナさんに対し、マレー博士がたまりかねた
ように言う。
「いいかい? 見たまえ。これは脊髄、これは頭蓋骨だ。いったい、脊髄やら
完全な内骨格を備えた昆虫なんてものが存在すると思うかね?」
アンナさんが切り返す。
「それをおっしゃるなら、ちゃんと腹神経節だって観察できますわ。それに
複眼と触角を備えた哺乳類なんていますか? さらにこれをご覧なさい。
気門ですよ気門!」
双方とも、自分の立場の不利な点を十二分に自覚し、単なる意地の張り合いに
なりかけていることに気付いている。見かねたわたしがおずおずと口をはさむ。
「結局、ありうる可能性は一つしかないのでは?これら一群の動物は、昆虫でも、
脊椎動物でもない、まったく未知の門に属する別系統の動物なのでは……」
「もちろん一つの合理的な説明だ。だが、説明放棄に等しい説明だ!!」
「そうよ。それを言ったら話はおしまいよ。だから違う可能性を
考えてるんじゃないの!!」
両博士から同時に反論されたわたしは黙り込むしかない。そしてそのまま
黙り込んでしまった二人と共に、わたしもまたパラドックスのかたまりである
標本をじっと見つめるしかなくなる。
――ダーウィン進化の大原則は「分岐進化」にある。一度枝分かれした種が
再び合流することはない。この原則があるからリンネ式分類というものが
可能になる。これは自然選択説と同じくらい重要なダーウィンの発見だ。
もちろん、擬態や収斂進化などによって、異なった枝の生物が類似することは
しばしばある。しかしそれはあくまで外見上の類似に過ぎず、解剖学的に
見れば、それが全く異なる枝に属することが判明するものなのだ。
そしてこの原則に従う限り、目の前のこの生物は、マレー博士の言う
「蜂に似たネズミ」か、アンナさんの言う「ネズミに似た蜂」か、わたしの言う
「蜂でもネズミでもない未知の類」か、そのいずれかでなければならない。
「蜂でありかつネズミである」などという解釈は、ダーウィン進化に対する
重大な違反以外の何ものでもないのだ。
停滞した会話を切り替えようとしたのだろう、マレー博士が別の話題を
振ってきた。
「朝花さんはもともと比較言語学者のはずなのに、どうして生物学者に鞍替え
したのかな? これまでのキャリアをあまり活かせない気がするし、言語学界
としても、君のような才媛を手放すのは大きな損失だったのではないかな?」
誉めるつもりだったのだろうが、わたしにとって微妙な問題に入ってしまった
ことにアンナさんは気づいたようで、はらはらした表情を浮かべている。
とはいえ、わたしにとっては何度も自問した問題で、もはや迷いも後悔もない。
わたしはにっこりと笑みを浮かべてマレー博士に答える。
「進化心理学に乗り換えたのは、言語というものをもっと根本的に、生物レベル、
動物のコミュニケーション一般のレベルで明らかにしたかったからです。
もちろんこれまでのキャリアをそのままは活かせないし、学界への貢献度も
減るでしょう。でも、わたしには時間がないんです。その限られた時間を
有効に使いたい。学問のためにわたしがいるのではなくて、わたしのために
学問を利用したいんです。
マレー先生、わたしの肺には時限爆弾が眠っているんですよ。そして20代前半の
どこかでそれが目覚める。APVウィルスをご存じでしょう? わたしはその
キャリアなんです。子供時代の不運としか言えない事故が原因です。潜伏期間が
過ぎると、劇症の肺炎を発症し、両肺がほぼ一瞬で機能を失い、死に至る。
未だ根治はおろか、症状を緩和する手段すら暗中模索という難病です」
わたしの告白に、マレー博士も、その後ろで観測データを整理していた
イマカタ博士も愕然としている。わたしは言葉を続ける。
「気にしないで下さい。もう十分向き合い、悩み、自分なりに解決できている
問題のつもりです。誰だって人生の時間は有限。それがちょっと短いという
だけのことです」
沈黙したままのマレー博士とイマカタ博士の視線は、いつしか、植物の標本を
せっせと整理しているわたしの父に注がれる。わたしは、ああ、やはり誰でもそう
思うのだな、と、自分の密かな推測が裏付けられたのを感じ、暗い気持ちになる。
父はこの異空間に入って以降、何かに取り憑かれたように植物の標本をただ
収集し整理する作業に専念していた。父の関心からすると、もっとずっと
興味深い事例がいくらでも見つかってきたにもかかわらず、そちらはなおざり
だった。マレーvsアンナ論争にも、介入するそぶりすら見せなかった。
そんな父の様子は、父の今回の計画の真意が、純粋な学問的調査というよりも、
この未知の生態系の遺伝子資源の把握にあることを示唆していた。スポンサーを
引き受けてくれた製薬会社との密約でもあったのかもしれない。だが、
だとしてもその情熱の源は恐らく、わたしの病を治す新薬となるべき物質が
見つかるのではないか、という想いにつながっているのだ。
実のところわたしは、父の才能や知性をそんなことのために費やして欲しくは
なかった。闇雲な植物採集などではなく、巨視的な視点からのこの生態系全体の
分析に、それを振り向けて欲しかったのだ。だが、それを正面から指摘する
勇気はわたしにはなかった。それに動機はどうあれ、スポンサーとの
契約不履行で父が莫大な借金を抱え込む可能性もあるのだ。
〈第4章 刀根アンナ博士の失踪〉
1週間が経過した。中央部の山を目指すという当初の予定はどうやら断念
せざるを得ない見通しだった。大きな関門は山を取り囲むように広がる
うっそうとした森、あるいは「樹海」である。幾たびかの危険な経験から、
この樹海が奥に行けばいくほど、獰猛な大型哺乳類や大型爬虫類、あるいは
それらを模した、毒針を持つ蜂類が跋扈する、飛び抜けて危険な区域らしい
ということが分かっていた。それで、探検隊の進路は山を目指すのではなく、
樹海の周囲をめぐる探索に切り替えられていた。
マレー博士とアンナさんは恒例の言い合いが誘発剤になったか、男女として
急接近したようだった。いつのまにか同じテントで寝るようになっていた2人に
文句を言う野暮な輩はいなかった。2人とも独身で、恋人もいないとのことで、
冷やかし以上の邪魔をする理由はないのだった。
ある朝、アンナさんと調査に出かけたマレー博士が血相を変えて
ベースキャンプに駆け戻ってきた。
「大変だ! アンナがハチワニに襲われた! 一応ハチワニはスタンガンで
追い払ったが、アンナは大けがをしている! 救急セットと、あとは銃を!」
慌ててテントから出てきたわたしたちを制してマレー博士は言った。
「失礼ながらお嬢さんがた2人と美府先生は僕の足には追いつけないでしょう。
後から担架をもって来て下さい。場所はC12ポイントの池のほとりです。
ハチワニの方は銃があれば大丈夫です。じゃ、急ぐんで、これで!」
それだけ言うとマレー博士は自分自身が弾丸になったような勢いで
飛び出していった。わたしと父は担架を用意し、イマカタ博士には留守番を
お願いして、後を追った。
事件の現場には、茫然と立ちすくむマレー博士がいた。アンナさんは
どこにもいなかった。ただならぬ雰囲気に、わたしたちはしばし沈黙
せざるを得なかった。それからようやく父が問いかけた。
「何があったのかね? まさか……アンナ君がハチワニに?」
マレー博士は首を振り、うなだれて言った。
「ハチワニはアンナがスタンガンで撃退できていたようです。しかし、
私が駆けつけたとき、ちょうどアンナがあいつらに連れ去られるところでした。
スタンガンは取り上げられ、手足を拘束されて、アンナは連れて行かれて
しまいました。……私の射撃の腕で、アンナに当てずにあいつらを撃つのは
無理でした。威嚇射撃は行ったものの、まるで気にとめる気配もなく、
わたしにしびれ薬のような針を発射した。しびれはすぐにとれましたが、
そのときにはもうあいつらもアンナもどこかに行ってしまっていた……」
父が尋ねる。
「『あいつら』とは?」
マレー博士は答える。
「ハチザル……いや、ハチ人間だろうか?……いやそんなはずはない。
やはりハチザルです。ハチに擬態した大型猿類か、あるいは、アンナ説に
よるなら、猿か人間に擬態した進化型ギガンタピスということになる。
青い無毛の皮膚に、蜂の胴体のような模様のついた乳房、蜂そのものの顔。
この生態系ではお馴染みのデザインの生物ですが、完全な二足歩行で、
体型も人間によく似ていた……」
マレー博士の言葉はすぐに裏付けられた。アンナさんが連れ去られたという
地点の地面はぬかるんでおり、そこにアンナさんの靴痕とは別の、大型猿類か
人間の足跡のようなものが大量についていたのだ。足跡はあの危険な樹海の
方角へまっすぐ向かっていた。わたしたちはショックで未だにがくがくと
震えているマレー博士を慰めながら、まずはキャンプに戻るしかなかった。
わたしもまた体が震え始めたのを感じた。そして、それが単にマレー博士の
恐怖が伝染したためではないことに、すぐに気付かされることになった。
〈第5章 美府陸博士の選択〉
キャンプに戻ったわたしたちは、今後の方針について相談を始めた。
選択肢はほぼ2つだった。今すぐありあわせの装備をまとめ、アンナさん
救出にあの山へ向かうか、1度キャンプを畳み、新たに十分な装備を整えた
救出団を組織した上で、アンナさん救出に向かうか、である。
実のところ、アンナさんを救出する手段としては、どちらの選択肢も決して
現実味のあるものではなかった。まず、現在の装備のまま、毒針を備えた
猛獣たちの巣に分け入るというのはあまりに危険すぎて実行が躊躇される
選択肢である。だがまた、ここを出て新たな救出団を組織するための予算的な
当てはなく、少なくとも短時間で可能な計画ではない。そうこうしている
うちにアンナさんの生存はほぼ絶望的なものになってしまうに違いないのだ。
意外なことに、今すぐここを脱出する、という案を強硬に主張したのは
マレー博士だった。アンナさんを見捨てるような選択をこうも強く主張するのは
どこか奇異だったが、どうもあの「ハチ人間」に対する得体の知れない恐怖心が
この学者を支配してしまったようだった。他方、即時救出を主張したのは
イマカタ博士だった。だがこの提案がいささか軽薄な動機に基づくものなのは、
イマカタ博士以外の者には明らかだった。イマカタ博士はあまりフィールドに
出ておらず、この異空間に巣くう動物たちの危険性に一番触れていない
人物であり、だからこそまた常々、あの山に赴いて重力異常を詳しく
観測したい、とだだをこねるように主張していた。それを今回も繰り返して
いるだけなのである。
議論は膠着状態になり、時刻は夕刻近くなっていた。結局、隊長である
父が決断を下すことになった。
「……あくまでアンナ君救出隊の再組織を大前提とした、一時的な撤収を
行おうことにしよう。あの山の危険性はもとより、朝花の病状を考えると
それが最善の選択肢だと思う」
実は、この会議の大部分を、わたしは寝袋の中、高熱に浮かされながら
ぼんやりと聞くしかない状態にあった。午前中に感じた悪寒はすぐに高熱へと
移行し、わたしは立っていられなくなったのだ。マラリヤに似た悪質な
感染症だと思われた。
感染症自体はこのような調査行にはよくあることで、各種ワクチンの備えも
十分だった。しかしながら、この空間は先史時代の失われた生物、独自に
進化を遂げた生物の宝庫であった。わたしの高熱は未知の病原体を原因と
しているらしく、手持ちのワクチンがまるで効かなかったのだ。
そしてわたしの場合、一般の人に比べて危険度ははるかに高いと言えた。
このまま衰弱が進むと、APVウィルスが活性化して一挙に死への坂道を
転げ落ちるしかない、という危険な状態にあったのだ。
会議が終わり、陰鬱な夕食を終えた頃には、わたしのそんな病状は
誰の目にも明らかになっていた。このままでは明日いっぱいわたしの命が
保つかどうかあやしい、というのが冷酷な現実であった。
わたしの手を握り、励ます父に笑顔を向けながら、わたしは言葉に出さずに
こんなことを考えていた。
――せめて博士論文はまとめたかったな。でもまあ、ずっと覚悟していた
ことだ。思ったより、ちょっと早く来ちゃっただけ。誰も見たことがない
こんな世界に来られたんだから、それで十分だ。あんなに張り切っていた
お父さんを悲しませるのだけが、心残りだな――
そのあたりでわたしの意識は途絶えた。
次に目を覚ましたとき、わたしは毛布にくるまれた状態で父の背中にいた。
父におぶわれるなど何年ぶりか分からなかったが、背中の感触と匂いは
紛れもなく父のものだった。
はじめは、探検隊がキャンプを撤収し、引き上げる途中なのかと思った。
だが周りを見るとまだ早朝というも早い時刻で、しかも他のメンバーの姿も
なかった。そしてこの道は出口への道ではなく、例のC12地点へ向かう道の
ようだった。
「……ここは?」
未だ熱の下がらないぼうっとした頭のまま、わたしは父に問いかける。
父は重々しい声でゆっくりと答える。
「目が覚めたのだね。聞いて欲しい。おまえの命は、今のままではあと1日
保つかどうかだ。色々考えたのだが、おまえが生きながらえる唯一の可能性は
これしかないんだ。この方法ならば、多分、かなりの確率でおまえは助かる。
ついでに言えば、アンナ君もまた、命を落としてはいないはずだ」
同じく生死不明とはいえ、まるで状況の異なるはずのアンナさんの名が
飛び出したことにわたしは戸惑う。だがそんな当惑をよそに、父はさらに
関係のなさそうな話を続ける。
「マレーvsアンナ論争、あるいはおまえの説も加えた、マレーvsアンナvs
朝花論争だがね、植物の整理が忙しくて参加できなかったものの、私には
私なりの説があるんだ。多分一番正しい説がね。思うに、ダーウィンの
分岐進化の原則はとても重大な発見だが、だからといってそれを盲目的に
信奉すべきではないんだよ。
衰弱したおまえに、今ここでこれ以上詳しい説明はできない。だから、
いくつかのヒントだけ与えておく。覚えておいて、体調が戻ったらゆっくり
考えなさい。いいかい。ヒントは4つ。おまえの元々の専攻、地衣類、
サムライアリ、寄生蜂だ。覚えたかい?」
「……比較言語学、地衣類、サムライアリ、寄生蜂……」
うわごとのように復唱したわたしに父のうなずいた気配があった。父は
言った。
「いいだろう。今は覚えるだけにして、また眠りなさい。お父さんにすべて
任せて……」
催眠術のような父の言葉に、わたしの意識は遠のきかけた。だが、薄れゆく
意識の中、池のほとりにたどり着いた父が、わたしを地面に降ろしたのを
感じたとき、わたしの心に当然の疑問が浮かんできた――そもそも父は、
何をしたくてわたしをここに連れてきたのか?
わたしは、睡魔に抵抗し、ことの成り行きに注意を払った。父は例の
ハチワニをスタンガンや威嚇射撃で追い払いながら、何かを待ちかまえている
様子だった。しばらくそうしているうち、どこからともなく10人ほどの人影が
現れ、わたしたちに近づいてきた。徐々に明るくなる朝の光に照らされた
女性らしき人影は、青い皮膚、黄色と黒の警戒色を彩った乳房、人間に
似た顔に蜂そのものの複眼と触角を付け加えた異様な姿――マレー博士の
言うところの「ハチザル」あるいは「ハチ人間」……あるいはむしろ
「蜂女」だった。
父はそれを確認すると、信じられない行動をとった。わたしの顔を複雑な
表情でじっと見つめてから、わたしを置き去りにしたまま、きびすを返し、
キャンプのある方角へと足早に戻り始めたのだ。まるでわたしを蜂女たちへの
貢ぎ物にでもするようにだ。
わたしは父の正気を疑わざるを得なかった。考えてみれば先ほどから
父の話は支離滅裂ではなかったか!?
わたしは立ち上がり、父を追おうとした。だがそのとき、わたしは自分の
両足と上腕が毛布ごと縛られているのに気付いた。
蜂女たちはやがて、身動きのとれないわたしを取り囲み、大勢でわたしを
抱え上げると、あの山の方へ歩き始めた。動揺と混乱はすぐに深い疲労に
わたしをいざない、わたしは昏睡に近い状態へと転げ落ちていった。
〈第6章 ギガンタピスの進化〉
次に目覚めたとき、わたしがいたのは段ボールのような感触の、奇妙な
床の上だった。朦朧とした意識のまま自分の体を見ると、
何一つ身につけていない全裸の状態であることがわかった。
わたしはうつぶせの状態で肩と腰を2体の蜂女に押さえられていた。ふと
正面を見るとアンナさんがやはり全裸の姿で、心配そうな表情を浮かべて
こちらを見ている。
すると下半身を押さえていた蜂女がわたしの腰を持ち上げ、両足を開かせて、
ひざを地面につけた。わたしは両肩を地面につけ、お尻を高く突き出すという
みっともない姿勢にされた。背後を見ると、蜂女が一見人間に似た口を開け、
中から何か緑色のどろどろしたものを、やはり人間そっくりの手の上に
吐き出し、それをもう一方の指先でつまんでいた。ふと見えた口の中に
歯は見あたらず、昆虫の複雑な口器のようなものが中でカチカチと鳴った。
やがて蜂女は手にした緑色のかたまりをわたしの肛門に押し当てると、
ぐいぐいと押し込み始めた。
「ひっ! や……やだ……やめて!!」
わたしは消耗しきったのどを震わせ、つぶやくように抵抗の言葉を
発したが、無論何の効果もなく、作業は続けられた。
まるで機械のような作業が終わると、2体の蜂女たちは巨大な翅を
羽ばたかせ、天井の穴から外へ出て行った。見たところ、それが唯一の
出入り口のようだった。
奇妙なことが起きたのは、そんな屈辱としか思えない行為が終わった
数分後だった。もはや限界に達しかけていた身体の衰弱が止み、熱が引いて
きたような気がしたのだ。わたしはあおむけになり、何度か深呼吸をした。
呼吸をするたびに体に活力が戻ってくる感覚があった。
朦朧としていたわたしの目に急速に生気が戻ってきたのは、はたから
見てもはっきりしていたのだろう。わたしを見ていたアンナさんの心配げな顔が、
ほっとした顔つきに変わり、近づいてわたしの額に手を当てながら言った。
「すごいわ。抗生物質と、解熱剤と、栄養剤をいっぺんに処方したような
ものかしら? でもまだ無理はよくないわ。まずはちょっと眠っておくといい。
話は起きてからにしましょう。時間はいっぱいあるみたいだし……」
アンナさんの言葉を待つまでもなく、これまでの命を削るような
意識混濁とは全く違う、健全な眠気が襲ってきて、わたしは眠りについた。
目覚めたのはアンナさんのひざの上だった。目を開けると優しい、
しかしどこか暗い陰影を含んだ表情のアンナさんがわたしを見ていた。
「目が覚めた? ほんの数時間だけど、とてもいい顔で眠っていたわ。
気分はどう?」
わたしはあのマラリヤまがいの熱病がすっかり直っているのを自覚した。
「もうすっかりよくなったみたいです。とても快調!」
そう言いながらわたしは部屋を見回す。10畳ぐらいの丸い部屋。壁も床も
パルプのような素材でできていて、床の一方の隅には直径20センチほどの
穴が空いており、反対の隅には果物と魚の干物のようなものが置かれている。
アンナさんがそれを順に指さし、解説するように言う。
「トイレと水分と食料、ということらしいわ」
アンナさんは続ける。
「わたしの説から言えば、あれはサルバチ、いえ、ヒトバチ、つまり人間に
擬態したギガンタピスということになる。この仮説で、あなたに『処方』
された『坐薬』も、わたしの足のこれも、十分に説明がつくわ」
そう言ってアンナさんは、ハチワニ、いや、アンナ説によればワニバチに
噛まれたらしい、右足の傷を指さした。傷口は痛々しかったが、しかし
きれいにふさがり、肉が盛り上がり始めていた。
「普通なら化膿や、さらには壊死や重篤な感染症を発症してもおかしくないほど
深い傷だった。だけどあの生物はみごとな外科的、内科的な処置を施して、
あっという間にここまでの状態にもっていってくれたわ。
だけどね、わたしに言わせれば、これは本当の意味での『医学』なんて
いうものではないし『文化』でもない。むしろ本能。キノコを栽培する蟻が
いるでしょ? あれと同じ。多分、わたしやあなたは、あの生物によって
仲間だと誤認されたの。そして仲間の体を修復するプログラムが働いて、
ここに運び込まれ、本能の命ずる処理が施された。そういう説明が可能だし、
わたしに言わせれば一番自然な説明だわ。
あなたも見たでしょ? あの何の感情もこもらない機械的な動作。あれは
『彼女たち』の本質が社会性昆虫に過ぎないことをはっきり示唆しているわ。
あいつらが哺乳類の仲間だなんて、低脳の頭にしか浮かばない仮説だわ!」
自説を得々と語り、対抗仮説を罵倒するアンナさんは、キャンプで
マレー博士と言い争っていたときとは様子が違っていた。余裕というものが
全く感じられず、険悪な敵意がむき出しになっていた。
わたしの怪訝そうな顔に気付いたのか、アンナさんはマレー博士の話を始めた。
「わたしはあの男に見殺しにされかけたのよ! あなた方にどう説明したのかは
知らないけど、あいつは蜂女に連れ去られるわたしを、銃を下ろして、
にやにやしたような、ほっとしたような顔で、じっと見ているだけだったの。
美府博士の教育的配慮なんでしょうけど、あいつが独身だというのは嘘よ。
ちゃんと奥さんと子供がいるわ。結局、あいつとしては遊び以上のものでは
なかったんでしょうね。そして急に後ろめたくなって、わたしを邪魔に
感じ始めたに違いないわ!!」
ヒステリックに叫び立てるアンナさんに、わたしは困惑していた。
アンナさんの言い分は正しいような気もする。特に、マレー博士が
キャンプ撤収案を強硬に主張したあたりが、その疑惑を強める。
しかしまた、アンナさんが事実誤認をしている可能性もある。マレー博士は
蜂女の毒針で痺れて動けなくなったと証言していた。その麻痺し弛緩した
表情を、アンナさんは自分をあざ笑い、見殺しにしようとする顔だと
思いこんだだけではないのか??
だが、今のアンナさんにそれを言っても、頭から否定されて終わりだろう。
そもそも、わたしの説も、アンナ説と同じぐらい憶測的なのだ。
そうして返答に困っている内、わたしは父の謎めいた「ヒント」と
その後の不可解な行動を思い出し、話題を切り替えることにした。
「マレーさんへのお怒りは分かりました。おっしゃる通りなら、ひどい人だと
思います。でも、今度はこちらの話をしてもいいでしょうか? 父の話です。
そもそも、わたしがなんでここにこうしているかわかりますか?」
首を振りながら、アンナさんは基本的な事実を聞いていなかったことに
気付き、我に返った様子でわたしの話を聞き始めた。
「わたしをここに運んだのは父なのです。正確に言うと父は、風土病を発症し、
PAVを併発しかねない危険な状態のわたしを、例の池のほとりまで運び、
蜂女たちに委ねたのです。結果、わたしは今こうして治癒している。では、
父は、蜂女がわたしに坐薬を打ってくれることを予測してその行為を
行ったのか? どう思いますか?」
首を傾げながらアンナさんが言う。
「そうねえ。仮に美府博士がわたしと同じ仮説に立っていたとしても、
その行為は無謀すぎると言うしかないわ。不確定要素があまりに多すぎる」
「そうですよね。父が得ていた情報だけから、蜂女がわたしを仲間だと思いこみ、
治療してくれるなんて考えるのは、無謀すぎる賭です。しかも、父はアンナ説を
はっきり否定していたのです。正確に言うと、アンナ説でも、マレー説でも、
それから朝花説でもない、一番有力な説を自分はもっている、と言っていました。
分岐進化の原則に囚われすぎてはいけないとも。思うに、父の真意は、
この父の仮説から導かれるものに違いないのです……」
わたしは急速に回転を始めた頭で、父のヒントをつなぎ合わせ、喋りながら
思考を整理し始めた。
1つ目のヒントは「わたしのかつての専攻」だ。
「わたしが専攻していた比較言語学では、『分岐進化』だけではなく
『融合進化』も同じぐらい重要です。例えば現代日本語の語彙は、大和言葉、
漢語、西洋語という異なる起源の言語が混じり合うことで成立しています。
言うまでもなく、てんぷらもボーイズラブも立派な現代日本語の一部です」
アンナさんは首を傾げる。
「それは認めるけど、言語や文化の進化と生物進化は違うわ。前者には
分岐も融合もありだとしても、後者には分岐しかない。この原則は絶対よ」
わたしは父の2番目のヒントを思い浮かべて言う。
「すべての生命現象は分岐進化という枠に当てはまる、という意味では
その通りです。しかし、融合だと見る方が便利な現象は存在します。葉緑体や
ミトコンドリアの共生進化は有名な例です。他に地衣類という例もあります。
地衣類というのは藻類と菌類という異質な系統の共生体で、それぞれ別々の
分類群に分類されている。しかし現実的には、その2種類の生物が生活環の
すべてで運命を共にし、単独では生存できない、という意味では、
2つの系統がここで融合してしまった、と言ってしまった方がわかりやすい」
ここまで話したわたしは、3つ目のヒントに自然に話がつながるのに気付く。
「ひとたび地衣類を融合進化の事例だと認めてしまうと、融合進化の実例は
一挙に増える。高等な動物で探せば、サムライアリなんかどうでしょう?
サムライアリは他の種の働き蟻を誘拐し、自分たちの奴隷として使役する。
さらに言うと、奴隷に仕事をさせなければ飢え死にしてしまうほど、奴隷に
依存している。ここまでくると、サムライアリと奴隷蟻は一体となって1つの
生物体をなしていると言ってもいい。これも融合進化の一種だと言おうと
すれば言えます」
アンナさんは何かに気づきかけたような、どこか不安な顔を浮かべる。
わたしも、父の仮説が何であるのかの予感が強まるごとに、不安もまた大きく
なってくるのを感じる。それでもわたしは、4つ目のヒントに話を進めるのを
止められない。
「ここで話を、膜翅類の別の有名な進化戦略に移してみます。寄生蜂という
種類がありますね。寄生蜂への進化は膜翅類の中で何度か独立に進化した。
そして、その進化は一定の段階を踏んでいる。専門家のアンナさんには
言うまでもないことですね」
アンナさんは青ざめながら話を受ける。
「そう。進化の初期の段階では寄生相手の死体に卵を産み付け、幼虫は
腐りやすい死肉を食べて育つ。やがて進化が進むと、幼虫へのケアが手厚く
なり、親バチは寄生相手をすぐに殺さないようになる。つまり神経系や
その他生命維持にかかわる部分を破壊せず、麻痺だけさせて、生きたままの
宿主の新鮮な肉を幼虫がいつも食べられるように仕組む」
わたしは徐々にはっきりしてくる不安を見据えながら、アンナさんに質問する。
「では、この進化戦略がもっと先に進んだらどうなると思いますか?」
アンナさんはごくりと唾を飲み込んで言う。
「宿主を生かしたまま操るタイプの寄生形態に移行する可能性が大きいわ。
さらに言えば、幼虫が宿主の肉体の都合のいい器官をそのまま流用しながら
自分の肉体を成長させるような進化も……可能でしょうね」
わたしは確認する。
「それは、サムライアリが奴隷アリを操るように?」
うなずいたアンナさんが言う。
「そう。それを、もっとずっと進化させたようなものになるでしょうね」
わたしは決定的な質問をアンナさんに向ける。
「その可能性、机上の空論だと思いますか?」
アンナさんはしばしの沈黙の後、意を決したように言う。
「いいえ。少なくともわたしたちは、そんな風な進化の産物だと考えても
よさそうな実例をはっきり目にしているわ。神経系と内骨格は脊椎動物。
なのに複眼と触角と大顎、さらには気門まで備え、昆虫類としての腹神経節も
発達させているような奇妙な生物……わたしの説も真相の一端は捉えていた
けど、すべての臓器が昆虫由来のものだという点で誤っていた。
臓器の半分は、宿主からの借り物だったのね。
……多分、この異空間の中で、情報爆発の助けを借りたギガンタピスは、
膜翅類の中で何度か生じた進化傾向を行き着くところまで発展させたの。
宿主の肉体をただ食い荒らすだけではなく、主要な生命維持器官を残しつつ、
幼体自体が宿主と細胞レベルで融合しながら成長を続け、その神経系を
丸ごと女王への奉仕のために使役させる。そんな進化が生じた」
わたしは敢えて確認する。
「その生物とは、ネズミバチのことですか?」
「ネズミバチだけじゃないわ。この空間内の独特の動物はみな、ギガンタピスに
寄生され、女王蜂に奉仕すべくその肉体を改造された動物たちでしょう。
イタチバチ、ワニバチ、インコバチ……みんな、進化型ギガンタピスの
宿主となったイタチであり、ワニであり、インコなんでしょう。……そして
もちろん、わたしたちをここに連れてきた、人間バチ、つまり蜂女も!」
わたしたちは、恐怖を紛らわせるために喋り続けるしかなくなっていた。
その会話がさらなる恐怖を招くとしても、口をつぐめない状態になっていた。
「つまり、『彼女たち』の体の半分は人間だということですよね?」
「そう。多分その部分の『材料』とされたのは、あの神殿を造った部族の
女たちの子孫のもの。そして多分……」
絶句してしまったアンナさんの言葉の先をわたしが続ける。
「……もう少し後の、わたしたち自身の肉体の運命。……そうですね?」
青ざめたわたしも、もはや何も言えなくなり、アンナさんに歩み寄り、
しがみついた。恐怖で涙がぽろぽろと出てきた。アンナさんもわたしを
ぎゅっと抱きしめ、わたしの頭に涙をぽたぽたと落とした。二人とも
がたがたと震えていた。やがて、天井の穴から数匹の蜂女が降り立ち、
怯えきった二人をがっしりと抱えて宙に舞い上がった。
わたしは、わたしを抱え込むひんやりとした皮膚にこの上ない恐怖を
覚えながらも、心の別の部分では、父の真意を理解するに至っていた――仮に
肺の全切除と同時に呼吸器系の総入れ替えをする、というような手術が
可能ならば、PAVの根治は可能だろう。父は、その奇跡とも言える手術を
実現する術を、ついに発見したのだ。その結果、わたしはマラリアの治癒
どころか、一般人に近い寿命を手に入れることになるだろう。アンナさんたちの
所見ではギガンタピスの成虫は数十年という異例の寿命をもつことが
分かっている。だから多分、わたしの余命は、少なくとも今現在の
十数倍にはなるはずなのだ……
〈第7章 刀根アンナ改造〉
わたしたちは大広間のような部屋に運ばれてきた。やはり高い天井の穴
以外に出口のない空間で、仮に蜂女の拘束を振りほどいて逃げ出せたとしても、
外に出られる見込みはなかった。
声の限り泣きわめき抵抗を試みたわたしたちは、エネルギーを放出しきり、
鈍い恐怖と絶望に彩られた放心状態のまま、ぼんやりとあたりを見回した。
広間の中では、多数の蜂女やその他のハチ型生物が動き回っていた。
「彼女たち」の足下には、様々な大きさの保育器のような構造物がたくさん
並んでいた。中には、進化型ギガンタピスの宿主となるべき様々な動物種の
幼体が収められている様子だった。その内のいくつかは、たしかに幼い人間
のように見えた。
また、部屋のあちこちに、大小様々の奇怪な構造物が配置されていた。
アーチ型で、ギガンタピスと似た文様が刻まれている単純な作りの構造物だ。
何のための構造物なのか、そもそも生物の一種なのか、ギガンタピスが
作り上げた家具のようなものかすら、定かでなかった。
そして、部屋の中央に女王蜂らしき存在が鎮座していた。蜂としては
ギガンタピスよりもさらに巨大な蜂と言うしかないが、蜂女よりも一回り
大きい程度のサイズだ。原種のギガンタピスをそのまま巨大化させたような
姿で、地上から1.5メートル程度の高さに、蜂そのものの顔が位置し、
首の周囲を紫の体毛が取り巻く。その下にはギガンタピス特有の青い
きゃしゃな胴体、その胴体からは、細く繊細な前脚と、巨体を支える頑丈な
中脚、後脚が生える。その下の、黒と黄色の鮮やかな警戒色を刻んだ、
ひときわ巨大な腹部は、前方へと折り曲げられ、太い脚の間から腹部の
先端が突き出している。腹部を伸ばした全長は2.5メートル程度だろう。
体重は同じサイズの哺乳類よりも軽そうだ。
異様な空間の中、わたしたちが茫然と周囲を眺めていた時間はどれほど
だったのだろう。短かったのか、長かったのか。しかし停止していた時は
再び流れ出した。アンナさんを拘束していた蜂女たちがアンナさんを
女王の前へと連れ出したのだ。いよいよ始まってしまうのだ!
アンナさんは悲痛な声を張り上げる。
「やだ! 昆虫学者のわたしが、昆虫に支配されるなんて!!
昆虫になるなんて!!!」
日本語を解するはずもない蜂女たちは、機械のように無駄のない動作で、
アンナさんを大の字の姿勢にして女王の頭の下に横たえる。
女王はカチカチと大顎を鳴らしながら、やはり機械のような動きで、
中脚でアンナさんの両腕を、後脚の爪でアンナさんの太ももを固定する。
そしてアンナさんの首をひと噛みしてほんの少し動きを止めてから、
中脚の間に頭を潜り込ませ、細長く華奢な前脚を、まるで精密機械のような
動きでアンナさんの……女性として大事な部位のあるはずの場所に運ぶ。
ここからでは、何が起きているのかこれ以上詳しくは分からない。だが、
はじめ大声で悲鳴を上げ、全力でもがき、抵抗を試みていたアンナさんの
様子が徐々に変化し始めたのは分かった。
「ああ……やめて……やめてよ!! ああ、ああ……」
アンナさんの言葉は、蜂人間に改造されることへの抵抗とは微妙に異なる
ニュアンスを含んでいるように感じられた。悲鳴は少しずつ切ないあえぎ声に、
抵抗の動作は、ただならぬ感覚に身をよじる動作に変わっていった。
恐らく、女王蜂がアンナさんに快楽、多分性的快楽を強要しているので
あろうことが、その種の経験に乏しいわたしにも明らかになってきた。
働き蜂として使役するための妨げになるであろう人間の理性を麻痺させる
ための策略ではないか、と想像された。
「うううん……あああ、いやぁ……いやよぉぉぉ………はっ……はっ……
あっ……あっ……」
切ないあえぎはやがて嬌声に変じる。もちろん、アンナさんの心の半分は、
蜂女への改造に対する恐怖と抵抗が依然として支配しているはずだ。その
感情もまた、その声から伝わってくる。だがいつしか、異形のものに変じる
ことへの恐怖の叫びと、さらなる快楽への期待と陶酔の叫びの境界線は、
まるで複雑なフラクタル図形のように錯綜し、やがて渾然一体としたものに
変わっていく。
「あっっ!! だめ!! それはだめ!! いやだ!!!
いやだぁぁ!!!!」
不意に、アンナさんは恐怖と陶酔の入り交じった叫びをひときわ大きな、
切迫した調子で発した。それは、何か決定的なことがアンナさんの内部で
行われたことを告げていた。……恐らくは、とうとう産卵がなされたのだ!
続く光景は我が目を疑うものだった。コマ落としの映像を見るかの如くに、
急激にアンナさんの肉体の変貌が進み始めた、つまりは産卵された卵が孵化し、
生物学的な常識を越えた速さで成長を始めたのだ。
下腹部を中心に、幼虫の皮膚を思わせる青い皮膚が広がり、全身を覆って
いく。乳房にぼんやりと黄色と黒の警戒色の同心円が浮かび、それが見る間に
鮮やかに濃くなっていく。先端の乳首だけは鮮やかで毒々しい赤になる。
頭髪が瞬時に抜け落ち、頭部にあの警戒色の装甲が形成され、紫の剛毛と
触角が伸びる。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ」
もはや恐怖とも快楽ともつかない叫びは頂点に達し、アンナさんだったはずの
生き物は体を硬直させ、痙攣したようにびくんびくんと震える。その顔からは
急速に読み取りうる感情が消え失せていく。下顎の骨が溶けて吸収された
らしく、一瞬だらんと垂れ下がる。だがすぐに、あの異様な口器が内部で
形成されたのだろう、顎の形は元に戻る。ほぼ同時にアンナさんはまだ
かすかに発していたか細い声を発しなくなり、代わりに蜂女固有のカチカチ
というクリック音を発し始める。その後しばし続いたひゅーひゅーという
のどの音がかすれていったかと思うと、腹部の気門がシューッと開き、
動作を開始する。呼吸器系の急激な置換。恐らく、この想像を絶する
「改造」の速さつまり幼体の成長速度は、宿主の命を保持しながら複雑な
体制の改変を行うための適応なのだろう。そんな、理解したからといって
どうなるものでもない思考がわたしの頭にふと浮かんだ。
最後に目の周囲の組織が吸収され、複眼が形成されてしまうと、そこに
いるのはもはや一体の蜂女だった。
しばらく無表情な顔で上を見つめていたアンナさんはやがてむくりと
起きあがり、わたしの方に体を向けた。立ち上がったアンナさんの皮膚からは、
他の蜂女同様、頭部の紫の剛毛以外のすべての体毛が抜け落ちていた。
気門からガス交換が行われるたびに乳房はかすかに膨張し、女性器の部分が
ひくひくと蠕動していた。背中からは巨大な翅が伸び、一度完全に展開して
から、他の蜂女のようにきれいに畳まれた。
そうして完全な蜂女の姿に変貌してしまったアンナさんは、ゆっくりと
わたしの方に近づき始めた。次はわたしの番だ、ということをいやでも
思い出さざるを得なくなったわたしの心を、再び強い恐怖がわし掴みにした。
湧き上がる恐ろしさにせき立てられながら、わたしは今できることは何か
ないかと自分の記憶を猛烈な勢いで検索した。やがて、解剖されたネズミバチの
神経系の映像がふと浮かんだ。それを啓示としてわたしは声を限りに叫んだ。
「アンナさん! わたしよ! 朝花よ! 思い出して! 自分が何者かを!
あなたは人間よ! 優秀な昆虫学者よ! 蜂女なんかじゃないわ!!」
記憶の中のネズミバチの脳には、昆虫そのものの脳神経節からの何本もの
神経が食い込んでいたが、それでもきちんと哺乳類の脳が温存されていた。
アンナさんの人間として記憶も、もしかすると自己意識も、未だ残されて
いる可能性がある。それに呼びかければ、あるいは……
「思い出して!! あなたは蜂女じゃない!! 人間なのよ!!!」
だが、わたしの心に突きつけられたのは絶望だった。アンナさんは歩みを
止める様子もないまま、明らかにわたしの言葉に反応し、にっこりと機械的な
笑みを浮かべながら、カチカチというクリック音と共に、首を横に振った。
つまりは、わたしの言葉をはっきり理解した上で、自分が人間であることを
否定したのだった。それはまた、もうじきわたし自身の心もそんな風に
変えられてしまうだろう、という暗示でもあった。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
様々な思いが一挙にこみ上げ、わたしは絶叫した。
やがて人形のような笑みを浮かべたまま、アンナさんはわたしのすぐ横に
迫り、ひんやりとした手でわたしの腕をつかんだ。そしてわたしを拘束している
他の蜂女たちと共に、絶叫し必死に拘束を振りほどこうともがくわたしを、
容赦なく女王の前へ運んでいった。
〈第8章 美府朝花改造〉
床に寝かされたわたしの、真横に伸ばされた両腕を女王の中脚が固定し、
大きく開かれた大腿を女王の後脚の爪ががっちりと押さえ込んだ。次に
女王が始めたのは、その大顎でわたしの体のあちこちを噛むことだった。
鋭い大顎が、甘噛みというにも弱すぎるほどの力で首筋、脇腹、唇、
乳首、それに太ももの内側などに、ランダムとしか思えない順序で当てられた。
大顎の内側からは粘液をまとった細くて固い舌のようなものが伸び、
噛まれた部分に押しつけられた。
大顎と舌が、いわゆる性感帯と呼ばれる部位を狙っていること、そして
大顎から微量の催淫剤が注入されているらしいことに、わたしは気づき始めた。
しかも、当初まったくランダムとしか思えなかった刺激は、明らかにわたしの
反応を学びながら、より巧妙さを増してきていた。わたしの脳裏に、あの
恐怖と陶酔の入り混じったアンナさんの叫びが蘇り、わたしはわななきを
覚えた。このままわたしもあんな風になってしまったら、わたしもまた
心まで蜂女にされてしまうに違いないのだ。
だが、わたしはこの種の経験に乏しすぎ、それゆえ、何をどうすれば
快楽の波に抗することができるのか、見当もつかなかった。実のところ
わたしは、自分を襲っているこの刺激の行き着く先がどのような感覚なのか
すら、未だはっきり知ってはいないのだ。わたしはただ体を固くし、時折
不意に訪れる、感じたこともなかった独特の感覚に身構えようとすること
しかできなかった。そして、わたしのそんな心構えはあまりにも容易に
打ち砕かれ、わたしは未知の快楽に襲われ、一瞬心を置き去りにしかけて
はあわてて我に返る、という敗北を繰り返すしかなかった。要するに、
わたしは完全に女王のなすがままの状態だった。
ふと見ると女王は前脚も動かし始めていた。一方の前脚が脇腹に、
もう一方が乳首に、それぞれ独特の刺激を加え、そのかたわら、大顎が
乳房をつかみ、その先端を棒状の舌がはい回った。わたしはいつの間にか、
全身の性感帯らしき部位がまるでネットワークでつながれたように反応
し合っていることに気付いた。そしてそれらのネットワークはハイウェイとなり
下腹部の一点に集中し始めていた。やがてわたしはお尻の下側の
ひんやりとした感触を覚え始めた。まったく自覚しないうちに、大量の
バルトリン氏腺液を大量に分泌していたらしかった。
女王がわたしの肉体のそんな反応に気付き、次の動作に移行したらしい
ことをわたしは感じた。顔を中脚の間に潜り込ませ、前脚をわたしの局部に
移動させたのだ。わたしは、アンナさんが女王の生け贄に供されてすぐに
達した状態に、自分が今ようやく置かれたということに気付いた。恐らく、
経験を積み、性反応への回路が、どう表現すればいいか分からないが、
いわば「開発」されていたアンナさんは、催淫剤の注入のみで容易に
この段階にまで運ばれたのだろうと思えた。同時にわたしは、この段階から
アンナさんがいかに速やかに自分を失っていったかを想起し、戦慄を覚えた。
そしてあってはならないことだが、その戦慄の中に、これから自分に施される
はずの処理への渇望、憧憬のような感情が混じる込むことを、わたしは
拒みきれなかった。
女王は棒状の舌を、わたしの秘部の割れ目の部分をなぞるように上から下に
滑らせた。粘液が大量に染み出てきたのが分かった。それから女王は精密
マニュピレータのような前脚でわたしの外陰部を押し広げた。そうして
女性器を露わにすると、大陰唇に例の大顎のひと噛みを加えてから、粘つく舌で
小陰唇の粘膜をなぞるように刺激し始めた。これまでにない強い性的
刺激に全身の性感帯が同時に反応し、わたしは気を失いかけた。そして
女王の舌がぬめぬめと動くたび、性器の奥から波状的に粘液が染み出て
くるのを自覚した。
このままではいけない! このまま快楽の波に飲みこまれてしまえば、
わたしはこの無機質な女王の奴隷にされてしまう!! わたしの理性は
そんな思いに発する焦燥感を体に言い聞かせようと苦闘した。だが、
わたしの肉体はそうやって掻き立てられた焦燥感をも快楽の火種に変え、
オルガスムスの山を登り続ける燃料にしていった。
唐突に、棒状の舌が、性感の中枢部である小さな突起にぐいと押し当て
られた。全身に電撃が走り、一瞬頭が空白になった。
「はうっ!!」
わたしは堪えきれずに、とうとう大きなあえぎ声をあげてしまった。
自分の姿があのときのアンナさんと重なり合うのがわかった。
棒状の舌の先端はそのままわたしの膣口に滑り込むように入っていった。
舌の側面が引き続き、ぬるぬるとクリトリスを刺激し続けた。
「あああああああああああああああ」
女王は膣内を舌でかきまわし、さらには前後運動による摩擦を始めた。
わたしはもう何が何だか分からなくなり、全身をでたらめにくねらせながら
快楽の嵐に翻弄された。それがしばらく続いたあと、まるで凪が訪れたように
刺激が止まった。
ほんの一瞬、「物足りなさ」を感じかけたわたしはすぐ、この次に何が
待ちかまえているのかを思い出し、恐怖の悲鳴をあげながら、女王の腹部に
目をやった。腹部の先端からは、いつの間にか、先ほどの舌の3倍ほどの
直径の、赤黒いぬらぬらした肉質の突起物が長く伸びていた。
産卵管であった。
女王はその先端をわたしの膣口に押し当て、一気に挿入した。正気を
取り戻すきっかけになるのではないか、とどこかで期待していた破瓜の痛みは
生じなかった。あの舌によって麻酔薬のようなものを注射されていたらしく、
歯医者の麻酔治療の後のような鈍い痛がゆさしか生じなかったのだ。
そしてそれは、襲い来る快楽をさらに掻き立てる薬味の働きしかしなかった。
深く挿入された産卵管は、まるでピストンのようにわたしの膣の中で猛烈な
前後運動を始めていた。桃色の電流が脳内を駆けめぐり、わたしはあのとき
アンナさんがあげていたのと寸分違わぬ声を張り上げている自分に気がついた。
そしてもう、すぐそこまで来ているはずの「そのとき」を待望しかけている
自分自身に恐れを抱いた。
そしてまもなく、「そのとき」が訪れた。
産卵管がひときわ長く伸び、子宮口の内側に入り込むのをわたしは感じた。
同時に、産卵管の根もとから丸いかたまりが押し出され、膣口から入って
膣内を進み、子宮口へとゆっくりと向かっていく生々しい異物感がわたしを
襲った。
「いやああああああ! やめて!! やめてよ!! いやだ!!
蜂女に!! 蜂女になっちゃう!!! 蜂女になっちゃうう!!!!」
わたしの絶叫と同時に、産卵管の先端から子宮の中に、ぽこん何がが
産み落とされた。そしてその何かがわたしの胎内で、わたしの肉体を糧に
成長を始めたのがはっきりと分かった。
再び開始された、壊れたジェットコースターのような際限のないピストン運動に
さらされながら、わたしはアンナさんに起きていた肉体の変化を目の前で
目撃させられた。腹部を中心に青い皮膚が広がり、陰毛が抜け落ち、乳房に
警戒色が刻まれた。皮膚の青化が首の上にまで達すると頭髪が抜け落ち、
紫の剛毛と、警戒色に彩られているはずの頭部の装甲板が形成されたのが
わかった。そして顎の骨が溶け落ちたのと同時に、わたしの心に見知らぬ
何かが入り込み始めたのを感じた。
――頭部神経節の接続が始まったんだ!
わたしの恐怖は絶頂に達した。もう、まもなく、次の瞬間にも、わたしの
神経系は昆虫の脳に支配され、わたしはあの女王の生存を維持するためだけ
の外部器官に変えられてしまうのだ。
わたしは何度目かの絶望の叫びを上げようとした。だが、舌も声帯も
溶けて吸収されてしまったわたしののどからは、しゅうしゅうという
頼りない息しか漏れ出てこなかった。
やがて一瞬、わたしは息が詰まり、まるで陸地で溺れてしまったように口を
ぱくぱくさせた。だがそれはまた、わたしの呪われた肺がウィルスごと
低分子に分解され、幼虫に吸収されていった証でもあった。そしてその後、
今まで感じたこともない爽快な風が自分の体内を吹き抜けた。気門が一斉に
開き、新しく構築された呼吸器系に新鮮な酸素を供給し始めたのだ。
そして、その新しい風と共に、わたしの心に、やはりこれまで感じたことの
なかった、温かく、心地よい何かが流れ込んできた。
膣内で勢いをさらに増した産卵管の運動は、今や乱暴な陵辱ではなく、
わたしの中に新しい何かを迎え入れる清めのリズムを刻んでいると分かった。
淫靡で後ろ暗い快楽に溺れかけている古い自分を、下らない理性ごと
吹き飛ばしてしまえばどんなにか爽快だろう! そんな新鮮な気持ちが
湧き上がり、わたしは変質した顎から、最後の快楽のあえぎ声をカチカチと
クリックさせた。
眼球の組織が新しいわたし自身に吸収され、直後に形成された複眼による、
これまでと全く違った光景が広がった瞬間、わたしは、わたしの上で、
わたしに新しい命を吹き込んでくれたのが誰なのか、ようやく気付いた。
それは子供の頃から欲しくて欲しくてたまらなかった存在。一度でいいから
呼びかけてみたかった名前。それをわたしは手に入れたのだ。
――おかあさん!!!!
その瞬間、古いわたしは最上の幸福感に包まれ、この世から姿を消した。
〈第9章 泡の中〉
わたしはこの巣の中で姉さんたちと同じように生まれ落ち、姉さんたちと
同じように、あっという間に成長を遂げた。そして、姉さんたちと同じように、
自分が何者で、何をするためにここにいるのか、誰からも教わらずに知っている。
ただ、わたしとすぐ上の姉は、他の姉にはないものをいくつか備えている。
いずれも、わたしとその姉の宿主が、外の世界で生まれ、かなり長い期間
自由生活を行ってきたことに由来している。
わたしたちの特別な点は、第一に高度な専門知識だ。他の姉さんたちが
本能としてしか身につけていない情報を、わたしたちは論理と科学の言葉で
表現することができる。
そして第二に、そもそも、こんな風に分節言語を駆使して自分の思考を
まとめられること自体、お母さんにも、他の姉さんたちにもない能力だ。
物言わぬ獣類や爬虫類を宿主とする姉たちはもちろんだが、ヒトを宿主と
する姉たちもまた、数百年の地理的隔離と特異な生活環の中で、分節言語の
能力を失っているらしい。それは多分、不要となり退化したということなのだ。
わたしたちにはテレパシーのような能力があり、技能や地理的情報などを
共有できるのだから。
共有情報の中には、姉たちの祖先である、あの神殿を築いた部族から
受け継がれた記憶も含まれている。この世界へ人身御供として放逐された
少女たちと、その後戦士として成長した少女たちによる集落の襲撃という、
悲しく、美しく、また勇ましい記憶だ。だがその記憶はもはや物語としての
分節構造を保持しておらず、漠然とした気分と断片的な映像的記憶から
構成されている。
特別な能力があるとしても、わたしがお母さんの娘であるという事実は
変わりようがない。多分わたしは、お母さんのため、種族のために、
この特別な能力を役立てるべきなのだ。
今のわたしたちの種族はとても脆弱だ。外の世界からの侵入者、とりわけ
高度の技術文明を発達させ、外の世界をめちゃくちゃに荒らし回ったホモ・
サピエンス原種の侵入は、今のわたしたちにとっては存亡の危機をもたらす
脅威となりうる。すぐ上の姉を除けば、姉たちの誰も、そこまでの脅威が
迫っていることに気付いていない。わたしと、かつてアンナと呼ばれた姉とで
何とかしなければならないのだ。わたしの使命は……そう、「門番」だ。
危険な外敵を監視し、この世界、ギガンタピスのエデンを守護する門番。
わたしの知識と能力を、その使命のために役立てねば……。
誕生の心地よいまどろみの、さして長くもない時間。こんな思考を
めぐらせていたわたしは、「外敵」という概念を思い浮かべた瞬間、
重要な事実を想起した。大変だ! 外敵ならば今現在侵入中ではないか!
そして早くしなけば外の世界に引き上げてしまう!!
わたしは姉たちに緊急警報を発すると、生えたての翅を広げ、宙に舞い
上がった。そして天井の出入り口から巣の外へと飛び出した。わたしの後を
追い、他の蜂女たちも一斉に飛び発った。
足下の森を見下ろしながら、わたしは間に合うかどうか計算してみた。
共有情報によれば、わたしの人間部分が巣に運ばれてから現在8時間程度
経過している。とっくにキャンプは撤収され、調査隊は帰路についている
はずだ。
調査隊は樹海をほぼ1周し、2日目にたどり着いた地点のすぐそばに戻っている。
では、その地点から門までの帰路にも、2日を要すると見てもいいだろうか?
……いや、それは甘すぎる見積もりだ。調査隊は探索の中で移動の容易な
ルートを見つけ出している。それに、2日という日数の中には調査や観測の
時間が含まれている。つまり最短ルートで脇目もふらずに「門」を目指して
いるであろう調査隊は、もっとずっと早く移動できているのに違いないのだ。
8時間というのは、ぎりぎり間に合うか手遅れかの、瀬戸際の時間だ。
激しい不安に駆られながらわたしは地上に注意をこらしつつ「門」を
目指して飛んだ。結局彼らは「門」を通って外に出るしかない。先回りし、
待ち伏せすればいいのだ。もちろんそれは、イマカタ博士が門を再び
塞ぐ前にであるが……
姉妹たちとわたしは異空間の縁に到着した。「門」はまだ開いていた。
そして、調査隊の3人もその前に立っていた。とはいえどこか妙な様子だった。
門のある切り株を守るように美府博士とマレー博士が立っている。
マレー博士は銃を構え、美府博士スタンガンを腰に差し、長いコードの
ついた火薬の発火スイッチを片手に持っている。火薬は何本かの木に取り付け
られているようだ。その横では、イマカタ博士が座り、モバイルコンピュータを
覗き込んでいる。傍らには非常用燃料電池を2個も接続した、空間の
歪曲率を検知するという博士自作の測定装置に、見慣れないアンテナの
ようなものが取り付けられていた。
わたしは一緒に来た大勢の姉妹たちに、銃とスタンガンへの警戒を強く
発信してから、広く展開し、3人の人間を取り囲むのが最善だという情報を
共有した。警戒を怠らなければ、これだけの数で一気に襲いかかって、
取り逃がすはずはないと思われた。
それからわたしは、群れから一歩前に出て「門」の前にいる2人の方へ
近づいた。わたしに銃を発射することを美府博士は許さないであろう、
という見込みの上で、姉妹たちへの盾の役割を買って出たということだ。
アンナと呼ばれていた姉が当初この役を果たそうとしたのだが、マレー博士が
不倫相手を始末するために発砲する危険があったので、わたしが引き受けたのだ。
マレー博士は銃身を降ろしている。わたしはその動きに注意しながら、
姉妹たちに合図を出すタイミングを見計らい、少しずつ近づく。そのとき、
不意に美府博士がイマカタ博士に声をかけた。
「今だ! やってくれ」
イマカタ博士が端末を操作したとたん、一瞬ぐらりと平衡感覚が狂った。
次の瞬間、わたしは3人の人間と共に、丸い奇妙な空間に囲い込まれたことに
気付いた。目の前には3人の人間と何本かの木があり、切り株の上の「門」も
依然としてある。木の間からは、レンズ効果で歪んだ外の世界も見えている。
だが、幅10メートルほどの楕円形の領域の外はすべて、横も、後ろも、
奥行きも定かでない、白くぼうっとした空間に変わってしまっている。
共有情報の接続は切れておらず、姉妹たちの驚きの感情にはアクセス
できたが、しかしこの空間に入り込むことはできずにいるようだった。
イマカタ博士が得意げに説明を始めた。
「すごいでしょ? 辺縁部は空間が不安定だから、ちょっとした操作で
こういう『泡』のスペースをつくることができるの。それとね……」
「後にしなさい!」
美府博士が場違いなおしゃべりを制した。ふと見ると横にいるマレー博士は
わたしに銃口を向けている。美府博士はそれをちらと見たものの、
構わずにわたしに向き直り、声をかけた。
「まずは聞きたい。朝花、わたしの言葉が分かるか? それから、わたしが
誰だか分かるか? 両方イエスなら2回首を縦にふりなさい」
わたしは言われたとおり首を縦に2度振った。博士はほんの少し
ほっとした顔を浮かべ、それから話し始めた。
「手荒な真似をせずに済むのが一番だから、単刀直入に聞く。今から、
私と一緒に帰る気はあるか?」
わたしはゆっくりと、首を横に振った。美府博士は幾分うなだれたが、
気を取り直したように話を続けた。
「おまえがそういう態度をとるだろうことは半ば予想していたよ。強引に
連れて行くしかないのかもしれないが、その前にもう少しおまえに話を
したい。つまりは説得だが、聞いてくれるつもりはあるかね?」
わたしは首を縦に振った。この空間を出て、懐かしいお母さんと姉さん
たちの元に帰るためには、何か情報を得る必要があった。それを引き出せる
かもしれない。
「まずは詫びなければならない。とっくに察しているだろうが、私は、
おまえがその姿になることをはっきり予想していた。いや、おまえを
その体にするためにこそ、蜂女たちに委ねたんだ。おまえの命を救うための
最も可能性の高い手段だと思ったからだ。それを許して欲しい」
わたしはうなずく。正直なところ、この人間のその選択に関しては、
感謝の念しか浮かばない。
美府博士の話は続く。
「おまえが精神的にも巨大蜂に操られてしまうかもしれない、という可能性も
承知していた。その危惧は的中したようだ。今現在のおまえに何を言っても
届かないかもしれない。だが人間としての常識的な判断をあえて伝えて
おこう。おまえは今、三流カルトに洗脳された信者みたいな状態にいるだけ
なんだ。知性のない蜂に操られているとなれば、それ以下かもしれない。
強引にでも連れ帰って、人間らしい環境で適切なケアを施せば、すぐに
目が覚めるはずだ。
おまえだけじゃない。もちろんアンナ君も、それから、多分あの神殿の
部族の末裔である蜂女たちも、準備ができ次第、即刻ここから連れ出し、
社会復帰させてあげなければならない。心のケアを行い、最新の人工皮膚や
整形の技術で、ある程度までにしても、もとの姿に近づける努力を行おう。
少なくともPAVの治療ほど困難ではなかろう。
おまえも、他の犠牲者たちも、多少姿は変わっていても、ホモ・サピエンス
として生まれ、ホモ・サピエンスの本質である脳を温存したれっきとした
人間だ。人間には人権というものがある。人間として生きる権利がある。
人間が、こんなところで、昆虫の奴隷となって生きるなんてことは
あってはならないんだ」
わたしは苛立ちを強めていた。必要な情報が一向に得られないせいも
あったが、それ以上に、この優秀であるはずの科学者の、あまりに硬直した、
下らない偏見に凝り固まった物言いに、どうにも我慢がならなくなって
きたのだ。
ボディランゲージ以外に意志を伝える手段はあるだろうか? 声帯は
とっくに吸収されている。使うとしたら気門だが、そんな風に使えるもの
だろうか? わたしは早速気門周囲の筋肉に注意を集中させ、音が出せるか、
どのように調整できるかを試し始めた。
気門から様々な音を出し始めたわたしが、どうやら何かを「言おう」と
しているのを察したらしく、3人の博士は黙ってこちらを見守っている。
少なくともこれまで、気門をこんな用途に使った姉はいない。わたしは
自分の手でその使用法を見つけ出さねばならない。だが幸い、わたしの
受けた言語学者の訓練は、日本語の音素を音波のパターンとして理解する
ことを可能にしていた。そしてどうやら気門は、うまく使えば声帯以上に
多様な音を合成できる音響機械であることが分かってきた。わたしは日本語の
音韻を構成する音声の様々なパラメータを頭の中でグラフ化し、それを
音声化しようと試みた。
「ホ…………ン、ジ、ツ……ハ……晴天……ナリ!」
たどたどしく気門から日本語を発したわたしに3人は目を丸くした。姉たちも
驚いたようだった。そしてわたし自身も予想以上にうまい発話に驚いて
いた。それから早速、わたしの、人間部分の父親にあたる人間への反論を
始めた。
「下ラナイ! 人権? 人間トシテノ幸福? ワタシたチヲ見テ、チょット
外見が変わッタほも・さぴエんすダトシカ思わなイなんテ! ソれこそ、
分岐進化説にどっぷり浸かっタ偏見じゃナいの!! これが、この生態系
でのギガンタぴスの進化の秘密ヲ見抜いた、あの科学者のせリふなのかしラ!!」
話す内、わたしの「発話」は急速に滑らかになってきた。どうやら
姉たちが、言葉の意味は分からないながら、新しい技能に興味をもち、
同時多発的に練習を行ってはその情報を共有し合った結果らしい。
「それにオ父さんは、自分が、わたしニ素敵な贈り物をくれたんダという
自覚がないワ。自覚がないまま、それヲわたしから取り上げようトしている。
なかったものをわざわざ与えておいテ、それをすぐに奪い取る。これが
どんなに残酷なことかわかる??」
美府博士は怪訝な顔をする。
「私が、何を与えたと?」
あきれきってわたしは答える。
「お母さんよ! それも血を分けた本物のオ母さん! 分岐進化の観点
かラはともかく、融合進化の観点から言エば、正真正銘そういわざるを
得ない存在よ!」
美府博士は衝撃をあらわにし、やがて苦悩に満ちた顔で頭を抱え、
しばらくの間無言でうつむいていた。それから首を振り、顔を上げて言った。
「……もういい。やっぱり力ずくでもおまえを連れていく。アンナ君には
申し訳ないが、おまえを連れてここを出たら、門はいったん閉鎖しよう。
おまえという実例と、採取した大量の標本があれば、世論の注目と資金を
集めるのは簡単だ。すぐに出直して、残りの犠牲者を連れ戻す。
……マレー君、頼む」
指示を受けたマレー博士が銃を構えて言う。
「さあ、抵抗はあきらめてこっちに来なさい」
状況はかあなり不利と言えた。しかも結局大した情報は聞き出せなかった。
わたしは考えをめぐらせながら、とりあえず時間稼ぎを兼ねた探りを
入れることにした。
「言っておくけど、門を閉鎖したっテ無駄よ。アンナさんはちゃんと門の
開け方を知っている。木を一本切り倒すくらイ、姉たちで力を合わせれば
簡単。知ってル? 宿主がビーバーの姉だっているのよ! ヘリを呼び寄せて
いる間ニ姉たちが飛び出して、わたしを取り返しニ来てくれるわ!」
美府博士は黙っていたが、先ほどから話したくてうずうずしていたらしい
イマカタ博士が誘いに乗ってくれた。
「おあいにくだけど、そのくらいは予想済み。だからわたしは門に『鍵』を
かけることにしたの。さっき、空間歪曲率をもとにはじき出した位置に
ある4本の木を切って火薬を仕込んだわ。これを破裂させれば、不安定な
空間の隙間と隙間がうまくかみ合って、木を1本切り倒したくらいでは
びくともしない頑丈な『鍵』がかかるわ。相当量の爆薬でもないと突破
できない、頑丈な鍵よ。だけどね、木を切った位置と火薬の量を再現
できればまた簡単に門は開く。つまりは、パスワードつきの鍵ということね」
天才らしいとんでもない仕掛けを、やはり天才らしい無邪気さで自慢げに
話すイマカタ博士を、もういいだろという顔でにらみつけ、マレー博士が言う。
「そういうことだから、君は安心してこっちに来ればいいんだ。言って
おくが、抵抗したら僕は本当に撃つよ。僕は今の君が人間だとは思って
いないし、君の死体でも証拠には十分過ぎると思っている。もちろん、
抵抗さえしなければ撃ったりしない。さあ、手を上げてこちらへ」
なるほど。発砲の可能性のない銃に脅しの効果はない。美府博士が銃を
構えていたらこのセリフは言えなかっただろう。多分美府博士の計画なのだ。
わたしは老獪な科学者の知恵に素直に敬服しながら、両手を上げ、
マレー博士に近寄った。それを見た美府博士が慌てたような顔で言った。
「マレー君! 毒針を撃ってくるかもしれん! 注意したまえ!!」
それを聞いたマレー博士が、幾分気まずそうな顔を浮かべて言う。
「いえ、その心配はないでしょう。……ここだけの話、毒針で麻痺した
という話、あれは僕の作り話で……ぐっ……」
人間の心は、嘘から出たまことを信じられるようにはできていないの
だろう。わたしの乳房から発射された毒針を受け、麻痺に陥ったマレー博士
が崩れ落ちた。すかさずわたしは美府博士にも毒針を打ち込む。これで
2人とも15分は起きあがれないはずである。それからわたしは、マレー博士が
落とした銃を拾ってイマカタ博士に突きつけ、言った。
「さて、あとはあなた1人なんダけど、実は一番厄介なのよね。こうやって
脅して、この泡を消しなさいと命令シても、もっと面倒な何かをして
こないとも限らない。だから、一方的な脅しではナく、取引をしたいの。
ねえ、もしもこの泡を消してくれたら、あなただけは無事に外の世界に
帰ってイいわ。但し、ここでの調査結果と標本はすべて置いていくコと、
例のサイトは抹消し、ここでのことを誰にも口外しないコと。そういう
約束をわたしと交わしてちょうだい。わたしたちはひっそりと生きタい
だけなの。分かって。
ひとつ大事なことを教えておクわ。蜂女は『嘘』というものが言えなイの。
『約束を破る』こともできない。そういう生き物なノよ。だからあなたが
約束にうんと言ってしまエば、わたしはもうあなたを逃がすしかなくなるし、
あなたを信じる以外になくなルの。……言っておくけど、うんと言わなければ、
悪いけどあなたを撃ち殺してそのパソコンを自分で調べる。とはイえ、
物理学者でもないわたシがこの泡をうまく消せるのかどうか自信がないし、
それに蜂女だって、無駄な殺生はいやナものよ。だから、どうしても
あなたにはうんと言って欲しい」
イマカタ博士は怯えながらも、わたしの言葉をもとにあれこれと計算を
めぐらし始めたようだった。それからしばらくして口を開いた。
「……約束してもいいんだけど、約束の中身を、もっとはっきりさせて
もらえるかしら? 知り合いの知り合いに、わざと曖昧な約束をしては
女の子を泣かせているスケベな教授がいるの。特に『無事に外の世界に
帰る』ってどういうこと? 例えば五体満足の蜂女になって外に帰る
なんて、わたしはいやよ!」
わたしは苦々しい顔で言う。
「……さすがに天才博士ね。いいわ。もっとちゃんと言いましょう。
無改造の人間のままのあナたを、今すぐに外の世界に帰してあげる。
出るときに『鍵』をかけていってクれてもいいわ」
用心深くイマカタ博士が問いただす。
「『今すぐ』ってどのくらい?」
わたしは観念したように言う。
「5分以内よ。十分でしょ?」
しばらく黙り込んでからイマカタ博士が答える。
「いいわ。この泡を解除すれば、わたしを今すぐ逃がしてくれるのね。
約束よ!」
「約束する。泡を解除してくれたら、あなたを今すぐ逃がしてあげる」
イマカタ博士は端末を操作した。さっと白い霧が晴れ、元の光景が戻って
きた。わたしは、一か八かの賭けにどうやら勝てたらしいことにひそかに
安堵した。
〈第10章 蜂女たちの饗宴と美府陸博士の決断〉
霧が晴れるとただちに姉たちが殺到し、3人の人間を取り囲み、拘束した。
中でも、マレー博士の周りには大勢の蜂女が群がり、しかも殺気立った
不穏な空気を漂わせている。イマカタ博士も、美府博士も、その異様さに
目を奪われている。
やがて、蜂女たちの先頭に立った、かつてアンナと呼ばれた蜂女が、
ぞっとする笑みを浮かべて足下に横たわるマレー博士に話しかけた。
「聞いていタわ。麻痺の話、やっぱり嘘だっタのね。おかげでこうして
蜂女ニなれたけど、感謝なんてしなイわよ。あなた、わたしを見殺しニ
しようとしたわよね? 邪魔な不倫相手ヲ始末しようとしたのよね??」
情報共有のおかげだろう。アンナ姉さんの気門発話はすでにかなり
流暢だった。
「外部からのヒトY染色体は貴重な資源ではあルんだけど、だとしても
あなたをこのまマ生かしておくことはできナい。仮にわたしが許しテも、
姉さんたちが許さないわ。姉さんたちの中には、その昔、部族の男たチの
欲望と私利のためだケの儀式で生け贄にされ、放逐された、悲しい祖先たちの
記憶が受け継がれているの。集落を全滅させても収まらなかった強い
怒りガね」
「ひゃめろ……ひゃめてくれ……」
ろれつの回らない舌で命乞いをする男に、アンナ姉さんはほんの少し
同情のこもった目を向け、言った。
「わたしの人間部分はあナたを心から愛していた。だから、せめてもの
たむケに、最初はわたしがしてあゲるわ」
そう言うとアンナ姉さんはマレーの衣類をすべて引きちぎり、その首筋に
噛みついた。そして催淫剤の効果で固くそそり立った陰茎を自分の膣に
挿入させた。びくん、と震え射精したのを確認したアンナ姉さんは陰茎を
引き抜き、別の姉と交代した。そうして10数人の蜂女による貯蔵精液の
採取が終わり、これ以上の採取が困難そうだということが確認されると、
姉たちはアンナ姉さんを筆頭に、今度はその口器を人間の肉に当て、
引きちぎり、貪りい尽くし、骨だけにしてしまった。全部で10分もかからない、
あっという間の饗宴だった。
饗宴に加わりそびれたのを残念に思いつつ、わたしは吐き気をこらえて
いるらしい様子のイマカタ博士に話しかける。
「今の話でも分かっタと思うけど、わたしたちのテレパシー、あの空間の
壁を超えられるみたいなの。どウいう仕組みなのかしらね?」
イマカタ博士は吐き気を噛み殺しながら、投げやりな声で答える。
「さあ。考えられるのは重力波通信かしら。この空間で進化した生物ならば、
ありうるわ。……でも、そんなことより朝花さん! どうなってるの?
5分なんてとっくに過ぎてるわ。約束したわよね。わたしは外に戻れるんだよね?
その便利なテレパシーでこちらの『お姉さん』たちに説明してくれない?」
イマカタ博士はそう言って自分を拘束し続けている蜂女たちをあごで
指した。そんな博士に、わたしは人間ならそうするであろう微笑みを
つくりながら、答えた。
「イマカタ博士。言っておクと、さっきのは嘘です。あなたを外に帰す
ツもりなんて、はじめからありまセんでした」
真っ青になったイマカタ博士が言う。
「なんで!? あなた、蜂女は嘘がつけないって…………あ!!」
わたしは、笑いながら言う。
「わかりました? それが嘘ナんです。イマカタ博士、SFか論理パズルの
読み過ギです。だけど、その優秀な頭脳は、やっぱり貴重。活用して
もらわないトもったいないわ。
聞いて、イマカタ博士。わたしにはこの楽園を、お母様のエデンを、
外敵から守る大事な使命があルの。でも今のわたしたちはあまりにも無防備。
イマカタ博士の論文がウェブ上に出回ってしまった以上、それをこの世から
抹消するのはほとんど不可能。サイトを消しても、個人のコンピュータに
分散したデータを消し去るのはできないニ等しい。第2第3の物好きが
ここを暴きにくるのは多分避けらレない。『鍵』をどんなに厳重にしても、
防ぎキれない。
だから、そのときに備えて、わたしたちは力をつけなければイけない。
すべき課題は山積みだわ。まずはこの空間を堅固な要塞に作りカえる。
それに兵力と労働力の充実も必要。他の哺乳類も様々な用途に使えるけど、
やはりヒト、それも文明世界の知識を身につケた外部のヒトだわ。
迷い込んできたヒトは逃がさずに着実に改造していカないといけない。
ゆくゆくは外の世界に積極的に乗り出して、宿主になる女性を捕獲して
改造すル供給体制も構築するわ」
イマカタ博士は青ざめた。
「そ、それじゃ、ほとんど、蜂女による人類の侵略……」
わたしは天啓を得た思いでイマカタ博士の手を握る。
「そうね! 攻撃は最大の防御ともいウわね。さすが天才! 是非とも
その能力をお母様のために役立てて欲しい。防御にも、攻撃にも。さあ、
早く行きましょ! あんなにあの山に行きたがっていタじゃないですか?
きっと、中心部まで行けば、すゴい発見がありますよ!」
震え始めたイマカタ博士は、やがて何か意を決した表情になり、いきなり
自分のあごを端末の一部にぐいと押し当てた。同時に背後でぼん、という
鈍い音がした。
あわてて振り向いたわたしたちが見たのは、美府博士の周囲で倒れて
いる蜂女たちだった。美府博士の手には変わらず起爆装置が握られており、
共有情報によれば、どうもそれが周囲の空間を一瞬歪ませ、拘束していた
蜂女たちを吹き飛ばしたようだった。
イマカタ博士が美府博士に向かって声を張り上げる。
「美府博士! 試作段階だった『切り札』を発動させました。どうやら
うまくいったようです。数分程度、博士の周りには誰も近づけないはずです。
麻痺が戻っていたら、いますぐ外に出て、装置を起爆させて下さい。そして
すぐにヘリを呼んで帰還して下さい! パスワードは起爆装置の中にあります。
娘さんのことはあきらめて下さい! わたしもどうなってもいい! 一人で
逃げようとした自分が恥ずかしい。人類の危機なんです! 今すぐこれを
世間に知らせないと、やがて人類全体が大変なことになる!!」
美府博士の麻痺はとっくに抜けているはずだったが、「人類の使命」
とやらに目覚めたらしき必死の叫びを聞きながらも、歩き出す様子は
なかった。それから、確認するようにイマカタ博士に言った。
「この起爆装置を君に手渡すことはできないんだね?」
イマカタ博士は必死の形相で答える。
「できません! わたしも跳ね飛ばされるだけです。でも、言ったでしょう?
わたしはどうだっていいんです! 早く門に! 効果が切れてしまう!」
美府博士は低い声でイマカタ博士に言う。
「……ならば、私だけ逃げ出してもあまり意味はない。君はどうせ
パスワードを変えてしまうだろうし、多分もっと堅牢な防御を構築して
しまうだろう。トップクラスの物理学者が束になってかかっても太刀打ち
できない代物をね」
イマカタ博士は驚いたように言う。
「何を!? わたし、そんなことしません! したくありません!!」
美府博士が諭すような声で答える。
「今はそうだろうね。でもすぐにそうじゃなくなる。君はもうじき蜂女に
なる。そしてそうなれば君の心も、女王への奉仕に最上の喜びを感じる
ように変えられてしまうだろう」
冷厳な運命を突きつけられたイマカタ博士は、恐怖で張り裂けそうな
声を上げる。
「いや! 蜂女なんかになりたくありません!! あんな風に人間を
食べたり、あんないやらしい体を得意げにさらす生き物になんて!!」
美府博士は、どこかすまなそう顔でそれを見ながら、話を続ける。
「朝花やアンナ君を見て思ったが、そういう心の変化は多分防ぎようが
ないし、決して元には戻せないようだよ。あきらめるしかない。それに、
蜂女になった彼女たちは以前よりもずっと理知的で生き生きしているように
見える。……ひょっとすると我々は、この惑星の優占種が交代する瞬間を
目にしているのかもしれない。そんな気がする。そして、もしそうなら
私は、科学者として、たとえ使い捨ての生殖機械にされてしまうとしても、
こちら側にとどまり、できる限りその姿を見届けたいと思う。
それに、何より私は、朝花のいない外の世界に帰るつもりはまったく
ないんだ。あやうく朝花に残酷な仕打ちをしかけたことを、今は後悔して
いる。わたしも親だ。娘と引き離されるのはいやだ。
……だから私は、『こちら側』を選ぶことにするよ」
そう言って美府博士は起爆装置のボタンを押した。轟音と共に「門」が
閉ざされた。
〈第11章 美府陸およびサトミ・イマカタ改造〉
巣に到着したわたしたちは、錯乱し泣きわめいているイマカタ博士が
落ち着く……というより消耗しておとなしくなるのを待ち、とりあえず
従順な美府博士への産卵を先にすることにした。
アンナ姉さんが世紀の頭脳に敬意を表したい、というので、わたしは
改造前の美府博士へのひと通りの解説を引き受けた。すっかり使い慣れた
気門を駆使して、わたしは解説を始めた。
「お父さん。承知の上みたいだけど、わたしたちの種族にとってオスは
エサか生殖機械かの価値しかないわ。寄主である蜂のオスはもちろん、
宿主のオスもそうなの。
おさらいしておけば、進化型ギガンタピスの女王以外の個体には、父親と
母親が2体ずついる。蜂部分の母様つまり女王と、蜂部分の父親である、
女王に精子を提供するためだけに存在するオス蜂。それとは別に、
働き蜂として活動している宿主部分、わたしたちで言えばヒト部分も
両親をもつわけだけど、わたしたちのような外来者を除けば、その親は
働き蜂のメスの宿主部分、蜂女で言えば、蜂女の子宮なの。そしてその父親は
というと、女王蜂に精子を提供するオス蜂部分が寄生したオス宿主、という
仕組みになっている。
お父さんにもこれからオス蜂を寄生させて、オス蜂として女王蜂に
蜂の精子を提供するかたわら、働き蜂である蜂女たちの人間部分の子宮に、
ヒト精子を提供する、という勤めを果たしてもらう。ややこしいけど、
お父さんはわたしの人間部分の父親であると共に、女王であるお母さんの夫、
つまりわたしの蜂部分の義父でもあることになる。
生物学的な可能性として、オス蜂の卵をメス個体に、メス蜂の卵をオス蜂に
産み付ける、という選択もありえたのでしょう。でも、ギガンタピスの
寄生様式はオス個体にはオスの卵、メス個体にはメスの卵しか根付かない
ように進化しちゃっていて、逆ではうまくいかないの。ひとつには、
特に哺乳類のメスの子宮が、複雑な構造をもつ働き蜂の発達を保護する
最適の器官だということがある。それから、精子の数と卵子の数の不均衡も
ある。宿主のオスが一匹いれば精子はほぼ無尽蔵に得られるけど、卵子と
子宮はそれに比べると絶対数が少ない。つまり、宿主のオスもたくさんは
要らないのよ。事実、産み落とされた大抵のオスはエサに回されるわ。
最後に、姉さんたちの忌まわしい記憶がある。男性一般への強い憎悪と
軽蔑はヒト寄生型ギガンタピスの第二の本能みたいなもので、これを
簡単に消すことはできないの。
オス蜂にはテレパシーによる情報共有もないし、寄主の神経系の保護も
十分ではない。お父さんがこれから改造されるのは、自分では動くことも
できず、意思の疎通もできない、精子の供給のみを目的とする生き物。
……ただ、言っておくと、オス蜂の宿主がどういう精神生活を送っているかは、
今のところ誰も知らないの。お父さんが自力でこの気門発話を身につけ
られたら、ひょっとするとそれが明らかになるかもしれない。言語学の
訓練を受けていないお父さんにはかなり大変だろうけど、生物学者として
興味はあるわ。
……アンナ姉さん、解説、こんなところでいい?」
テレパシーでOKのサインを受け取ったわたしは、全裸で神妙な顔をしている
美府博士をお母さんのところへ連れて行った。
お母さんは宿主のへそのあたりを前脚で切開し、開口部に産卵管を
差し込んだ。メス個体に比べると無造作きわまりない改造手術と言えた。
生み付けられた卵は直ちに成長を始め、切開部の傷口を塞ぎ、それから
青い皮膚を全身に広げていった。あおむけにされた宿主の肉体はいわゆる
ブリッジの姿勢を強要され、やがて胴体部分が完全に弓なりとなり、手足は
その胴体を支えるただの支柱に変わった。さらに首の下から蜂用のペニスが
伸び、美府博士と呼ばれていた個体は最終的に、かまぼこ型のアーチから
2本のペニスが伸び、一方のペニスの下に蜂人間の顔がついているオブジェ
のようなものに変わった。
わたしとアンナ姉さんで、成熟したオス蜂の精液を早速お母さんに
吸い取ってもらおうということになり、お母さんにテレパシーで合図を
送った。お母さんはゆっくりと動きだし、新しいオス蜂のペニスを
受け入れ、貯精嚢にため込み始めた。
そのときわたしたちは、オス蜂の人間部分のペニスが激しく怒張し、
今にも射精しそうになっているのに気付いた。少なくともこの巣で生まれた
オス宿主にこんなことが起きたことはなかったので、わたしたちは慌て、
テレパシーで共有情報を参照し合った。
――ねえどうしよう! 貴重な外来Y染色体が!!
――誰か、貯精嚢が空いている個体はいないの?
だが、あいにく、わたしを含め、都合のいい個体はいなかった。
困り果てたアンナさんとわたしの目は、ついさっき捕獲した未改造の
ヒト宿主に注がれた。
――この個体でもいいんじゃない? すぐに改造するんだし。
――ヒトの子宮でも、精子は数日は生きるんだよね。なら十分過ぎる
くらいよ。
「ひいいいっ!!」
一向に狂乱が収まらない全裸の天才物理学者を、わたしたちはオス蜂の
人間部分に運び、膣を舌から出る粘液でひととおり湿潤させてから、両足を
広げて今にも射精しそうなペニスを挿入した。間一髪だったらしく、直後に
オス蜂の全身に痙攣が走り、どくんどくんというリズムと共に、挿入部分
から余剰の精液と、処女膜損傷による血液が流れ出した。
イマカタ・サトミと呼ばれていた個体の改造はそのすぐ後になされた。
ショックでぐったりとしていた博士の脳は思ったよりも簡単にお母さんの
愛撫を受け入れ、改造は短時間で終了した。
だが、いわば「とっさの機転」だったとはいえ、ヒトの通常の性行動
からすれば異常すぎる経験は、イマカタ博士の人間部分の脳に、いわゆる
トラウマを残してしまったらしい。その高度の知性は衰えず、むしろ
以前にも増して活発に、お母さんのための発明やら発見やらを生み出して
くれるのだが、しかし、この新しい妹は、進化型ギガンタピスの働き蜂
としては異例なほどの過剰性欲をもてあます個体に成熟してしまったので
ある――たしかに、お母様が進化の果てに身につけたあの繊細で巧妙な
愛撫の技に比べると、でたらめな処女喪失だったというしかない。これが
自然進化といわゆる「人間の知恵」の超えることのできないギャップ
なのかもしれない。
この少し困った妹の性欲のはけ口は、結局わたしの人間部分の父だった
個体が主に引き受けることになった。わたしは冗談半分にイマカタ博士
だった妹を「人間部分のお義母さん」と呼んでからかうようになった。
美府博士を宿主とするオス蜂がその役割を担うようになったのは、
その個体もまた、蜂部分、ヒト部分共に、性行為のみを存在意義とする
オス蜂の中ですら、過剰性欲気味の個体に成熟したからである。わたしたちが
半ばあきれ、半ば驚嘆したのは、この個体がとうとう気門話法を習得したとき、
発する語彙がすべて猥語で占められていたことだった。
「おま、おまんこー、ちんこまんこちんこまんこ。どびゅどびゅ出したい
よう。れろれろなめなめ……」
さらに、ある時期、言語学者としてのわたしが発見したのは、同じ
「おまんこ」やら「本気汁」やらの単語の発音のバリエーションに、
単なるランダムなばらつき以上の規則性があるらしい、という事実であった。
美府博士はどうも、性的欲求にどっぷりと浸されているのは間違いない
その脳内で、それでも何か複雑な理論的思考を働かせているのではないか、
というのが現在わたしが検討中の仮説である。もしも有意味な成果が
得られれば、これはオス蜂の精神生活に関して重要な光を投げかける
ことになるだろう。
〈第12章 分封、そして未来へ〉
それから1ヶ月。わたしたちの作業は着々と進み、一つの転機となる
イベントを向かえることになった。
「分封」である。
サトミお義母さんの調査研究とその成果の実用化は驚異的に進み、今では
「門」の自由な出入りが可能になっている。外部に対する隠蔽は幾分
不十分さが残るが、侵入者の監視・捕獲の体制がほぼ完璧になったので
大した問題はなくなっている。
だが、例えば軍隊の大規模な攻撃といった事態に十分対応できるほどの
整備は整っていない。その段階にまで進むには、どうしても人員の拡充が
必要となるし、いざというときの女王の代替要員の確保も必要である。
そのためには早い段階での「分封」が必要だろう、と、言語能力をもつ
3体からなる「幹部会」は決断を下し、社会経験が一番豊富なアンナ姉さんが
引き受けることになった。ローヤルゼリーを与えて育てられた新しい女王を
外の世界に運び、そこで新たな巣を作る。分封が首尾よく成功すれば、
女王から別の女王を産み出し、新しい巣を作ることもできる。人口密度の
少ない地域に一定数の巣を作ってしまえば、種族が根絶されてしまうリスクは
相当程度分散するだろう。
言うまでもないが、女王の娘たちの宿主は現地調達である。すぐれた
人材を選び、巣で改造する。しかも、新しい女王には、アンナ姉さんに
よる、初歩的な「遺伝子操作」が施されている。回収された光学顕微鏡を
頼りにした染色体の研究、蜂女としての生得的な情報、および新しい
妹たちに対する様々な実験の成果である。生理学的にはごく簡単な処理で
済むものだったのであるが、新しい女王が産み出す幼体は、複眼と
頭部装甲の発達が抑制された上、触角をうまく隠蔽できるような構造を
備えているのである。この新しい「姪」たちは、簡単なメーキャップ
だけで容易に人間社会に潜入することができるようになるだろう。
さなぎの入った繭を抱え、アンナ姉さんが数人の姉と共に飛び発っていく。
アンナ姉さんのおしゃれ心で、全員が木から採取したゴムでできた白い
手袋とブーツをはめ、腰にはサッシュを巻く、という衣装で統一しており、
颯爽とした頼もしい印象を与えてくれる。
重力波のテレパシーが空間の壁を越えて有効なのは実証済みである。
別の姉に委ねた機械を設置すれば、無線通信を重力波通信に変換して
「エデン」に送信することができるようになる。サトミ義母さんは
重力波通信による異星人との交流だとか、エデン全体の重力推進による
飛行要塞化だとか、夢のようなプランを持ちかけてくるが、それは
検討するとしても次の次の段階だ。
巣に戻れば、近隣の村落から捕獲してきた少女の改造が始まるところ
だった。
「いやだ! おうちに帰して! 蜂女なんていや!」
泣き叫ぶ少女にわたしは現地語で励ましの言葉をかけてあげる。
「少しの辛抱よ。いえ、辛抱だってしなくていい。これから始まる、
とても気持ちのいい儀式が済めば、ここがあなたのおうちになるわ。
そして蜂女に、お母様の娘になれたことに、心から感謝するようになる」
ここまで言い聞かせているのに、なおも抵抗を続ける少女の気持ちは、
わたしもたしかそうだったものだとはいえ、今ではもう、どんなもの
だったか思い出せなくなっている。この少女だってすぐにそれを忘れて
しまうだろう。分封が成功すれば捕獲対象の範囲は格段に広がる。
いずれ、この惑星上のすべての女性がそういう風に変わっていく。
――多分、それが進化ということなのだろう。
<了>
……以上、お粗末でした。
むやみに長いので、読むのに時間がかかると思いますが、
読んで下さった方はいくら遅レスでもご感想等頂ければ幸いです。
「膜翅類ネタ」に凝りました、と言えばBeeF様オマージュになりそうな気もしますが、
基本的には自分の趣味が出ています。
改めて、素晴らしいインスピレーションを下さったBeeF様に感謝致します。
いつか、どこかでまたお会いできる日を楽しみにしています。
ちなみに、
>>86-138、投下内容の抜けや重複はないと思いますが、
>>93以降予定レス数が減ったり、
>>112の番号27/53を26/53と誤記したり、
>>128の番号43/53を42/53と誤記したり、
など、誤りがありました。念のため付記しておきます。
読み返してみると、もともとエピローグに改造シーンを盛り込むつもりで書いていたのが、
そこを落としてしまっているので、ヒロイン改造後、中だるみ風設定話からラストまでが
尻すぼみな感じになってしまっていることに改めて気付きました。
なるべく早くエピローグ付け足したいですが、
今週かなり忙しいので来週になるかもしれないのはご容赦下さい。
>>86-138 乙でした。科学考証にずいぶん力を費やした力作、興味深く拝読しました。
隕石による異空間というアイデアは秀逸でしたね。
女でいっぱいの探検隊という展開がちょっとアリエナイけどニヤリ。
ただ科学考証にこだわる余り、特に前半の展開がなんだか理屈っぽ過ぎたかも。
それに異世界ならではの不気味さとワクワク感があまり感じられなかったのも、
考証にこだわり過ぎているせいじゃないかな?と思いました。
BeeFさんも確かにそういう部分があったような気もするけど。
あと、蜂が実質エデンの支配者というか、独裁者のようだったのがちょっと意外。
蜂視点では確かに楽園に違いないんだけど、その排他性が気になりました。
まあこれは、これまでのmaledictさんの世界観の延長と考えれば納得なんですが。
エピローグは欲しいですね。おっしゃられる通りちょっと尻すぼみの感があります。
急がれなくてもいいですから、お暇な時にでも投下お願いします。期待しています。
テスト
>>144様
早速の丁寧なご感想ありがとうございました。
科学考証(むしろ「SF考証」かも)に凝りすぎ、理屈っぽい、異世界の不気味さが半減
……というのは、ああ、やっぱり、という感じです。もちろん、そこにこだわってみよう
という意図はあったのでやむを得ない反面、バランスは大事だという反省点でもあります。
たしかにBeeF様も考証好きながら(「移植人間+サイボーグ=改造人間」など、伝説的ですね)、
あくまで物語にそれを従属させる自制心があり、さらにはそれを萌えを盛り上げる道具に
できていたように思えて、見習いたいと思います。
蜂の位置ですが、どういうイメージをもたれていたのでしょう?BeeF様原案との比較で言うと、
例えば、UMAが平和に共存する楽園の、あくまでも「門番」役が蜂(蜂女)、という感じ?
……自分は楽園の中での蜂のポジション、ということを深くは考えていなかったものの、
一応、蜂(女王)は独裁者ではなくあくまで「母」であり、また宿主と蜂の関係は
生物的にも共存共栄の共生関係、とは言えると思います。
そもそも、探検隊侵入以前の「楽園」は(一応人類も取り込んではいたものの)、
人間的な意味でのエゴに基づく支配や権力関係のない、無垢なる世界というイメージです。
蜂による寄生は自己意識とは無関係な自然現象なのです。
楽園とその崩壊、というモチーフはむしろ、そんなただの自然現象に過ぎなかった
蜂女生態系が、文明の申し子であるヒロインたちの参入によって、計画的な「保護」の
対象とされ、また自覚的に人間社会に敵対する「悪の組織」になっていく、という変化で
描こうとしました……ってこれはエピローグの方まで書かないとはっきりしないかも。
来週中には投下したいと思います。
あと、イマカタ博士の改造シーンも、その前がすごかったからまあいいか、と思って
省いてしまいましたが、やっぱりちゃんと書いておくべきでした。それもいずれ補遺として。
>>146 maledictさんはここにSSを投下する際に「ちょっと長すぎたかも」と断っておられたけど、
逆に2ちゃん(PINKちゃん)に投下するために短くしなければ、という意識が、
SSを窮屈なものにしている、という面はないのだろうかと思う。
理屈っぽくなり過ぎるというのも、結局はSSの尺が足りないからという気がする。
もっと雄大なストーリーの流れに乗せれば、考証がどうこう、というのは気にならなくなるのでは?
いっそ長いとか短いとか気にせず、書きたいものを制限を設けずに書かれた方がいいと思う。
>>maledict氏
これまでの作品のSS投下用に短縮してないフルバージョンをご自身のHPに掲載されてはいかがでしょう?
ぜひ読ませていただきたいです。
>>148 やっぱり端折っていたのかね? 読んでて窮屈な感じがしてたけど
うーん・・・
どうだろうか。
長くすればいいというものでも無い希ガス。
かえって冗長になってしまって、本来の見せ場がかすむんじゃないかなという希ガス。
色々とコメントありがとうございます。
一応、長いバージョンが別にあって、それを短縮したわけではないです。
ただ、
>>147様のご指摘通り、書きながらの意識の問題はあったかもしれません。
たぶん
>>149様、
>>150様共にもっともで、
枝葉を削る作業も、肝心の部分を膨らませる作業も、共にまだ不十分なのかもしれません。
いずれHP掲載時に多少のブラッシュアップは試みるので
>>148様の寛大なリクエストにはそこで答えたいと思います。
どこまでよくなるかは別としても。
イマカタ博士がイカマタ博士に見えて仕方がないw
俺も「イカマタ」と読んでいたよ・・・orz
,ヘ
_,. -―rヘ 〈 \ ))
/\ ,.ィ'/ 「 ̄L`ヘ. '
(( L、 〈 〈/¬‐-ニ _/ └ヘ 丶ハ. ', わかったゲソ
\ \,イj/j人人ノVノh、_,」\ \} } これはきっと改造イカ女のSSが
/\丶`'イ! _` ´ _ | | h 「 ̄L \i いずれ投下されるというお告げではなイカ?
\ 〈 \リ⌒ ⌒│ |)| └ヘ V /
ヽ. `ー个 ._ ̄} .ィ| い、_ノ ∧ V
┌‐ヘ.―/´^)▽ 「 `)、 `二二 ノ ノ
└ヘ V(ト-イ) (ト-イ)^ト-----イ
前スレ397で、BeeFさん祭りへの参加を表明したへっぽこなSS書きです。
自分流の「エデンの門番」、難産の末にようやく書き終えたのですが、途中いろいろあって、無駄に
長いものになってしまいました。さらに書き終えた後で、自分が特撮板とエロパロ板を間違えていた
らしいことに気付き、当初はぜんぜんエロが無かった前半に無理やりエロ描写をねじ込んだために
さらに長いものになってしまいました。ラスト近くのエロシーンも本来は不要なものです。
容量にしてなんと約176KB。ちなみにmaledictさんの「エデンの門番」は約96KBだったりします。
(なおBeeFさんの「真・蜂女物語」は全部で約88KB)
投下しようかどうか迷ったのですが、幸いこのところのカキコでは、皆さん長編SSには寛容なよう
なので、思いきって投下することにしました。
はっきり言ってオリジナリティはほとんどありません。予告してました通り、全体の設定は星野之宣
の「緑の星のオデッセイ」と森山塔の「デマコーヴァ」ほかからの借用だし(諸星大二郎の「生物都市」
とかも入ってますが)、エロ描写は他のSS職人さんのパクリだったりします。
ただせっかくのBeeFさん祭りということで、自分なりにBeeFさんのSSの雰囲気を混ぜてみたつもりです、
特に人名や固有名詞で遊ぶのがBeeFさん流かと思っているので、頑張って凝ってみました。
それでは、長いのがダメな人はスルーして下さい。そうでない人は、流し読みで結構ですから目を
通していただければ幸いです。
【1】
眼下には、一面の緑で覆われた未開の惑星が拡がっていた。
ここは地球から10.5光年離れた、エリダヌス座イプシロン星の第2惑星ビメイラ。自転・公転周期が地球と
ほぼ同じこの惑星の、表面から400km上空の衛星軌道上に、大型の有人調査船がぽつんと浮かんでいる。
この調査船むがけて、いま、一隻の古びた小型輸送船が接近しつつあった。
輸送船のコクピットでは8人の男女が、モニターに大映しになった探査船の姿を、かたずを飲んで見守っていた。
「パパ・・・とうとう、ここまで来たのよ」
腰まである長いプラチナブロンドの髪の、若い娘がつぶやいた。16歳くらいの、お譲様然とした美少女だ。
首からつま先までくまなく覆う純白の“サイバータイツ”に包まれた、華奢でスレンダーな肢体と、それとは
不釣り合いなほどにたわわな胸が眩しい。
少女の隣で神経質そうに見守っているのは、赤いフードを被った、長身でメイクの濃いオカマっぽい男。隣に
座っている図体の大きな黒人に、しきりに何かを話しかけている。
寡黙な黒人はひとしきり相づちを打つだけで、腕を組んだまま身じろぎひとつしない。
「あれを見ろ。下部の降下船が切り離されたままだ。どうやらクルーのほとんどはまだ惑星上にいるらしい」
鋼色の瞳に鋭い光を宿した、20代半ばの男が、パネルを指さしながら答えた。どうやらこの船のリーダーらしい。
なかなかの美形だが、年齢の割りに落ち着いた物腰が、この男が重ねてきた幾多の経験を物語っている。
男が言う通り、確かに調査船の下部は着陸モジュールが切り離され、大きくえぐられたように窪んでいた。
「ドグ、ブラウヴァルIIIとの回線はまだ繋がらないの? 状況が判明し次第、接舷の許可を求めて」
輸送船の操縦席に座る、セミロングの栗色の髪の女が後ろを振り向いて、部下らしき小太りの男に呼びかけた。
はちきれんばかりの豊満なボディを真っ赤なサイバータイツにピッチリと包んだ、20歳過ぎの絶世の美女だ。
気丈そうなその顔にはまだ少女のあどけなさが残っていたが、落ち着いた態度はベテラン航宙士のそれであった。
「いま繋がりましたよ、姐さん。・・・調査船ブラウヴァルIII、こちらは民間輸送船ステルナ・パラディシア。
乗員は8名。うち3名は科学者。貴船とのコンタクトを希望する。現在の貴船の状況を当方に伝えよ、以上」
小太りの男はコンピュータ関連のエキスパートらしく、目にも止まらぬ早さでキーボードを処理する。
「・・・妙ですね、姐さん。コンピュータが『ブラウヴァルIIIには現在乗員が一人もいない』と返答してきましたよ」
それを聞いて、8人の中で最年長らしい初老の男が驚いた様子で叫んだ。
「それは妙だ。軌道周回中の調査船本船には規則で、最低1名は乗員を残しておかなければならないはずだ」
「いや間違いないです、ミスター・ジョージ。あの船はいま、完全自律モードで動いています」
「とにかくあの船に乗り移って状況を確認したい。レイラ、船を接舷させてくれ」
「了解。ドグ、向こうにドッキング許可を求めて。ホイ、急いで接舷の準備を」
「アラホラサー!」
小惑星輸送船団で流行りの了解の掛け声を上げ、部下の凸凹コンビが直ちに行動を開始した。ホイと呼ばれた
背のヒョロ長い痩せた男がコンソールに向かい、輸送船のバーニアを操って探査船のドッキングベイに近づける。
その時!
モニターを見つめていた鋼色の目の男が大声で叫んだ。
「レイラ! 急いで船を引き離せ! ・・・攻撃される! 早く!!」
「えっ!?」
栗色の髪の美女が反射的に操縦桿を引いた、その瞬間。
強烈な光が輸送船を包み込み、爆発音とともに船体が激しく揺れた。
「きゃああッ!」
探査船から、隕石などの障害物を破壊する、電磁砲の強烈な一撃が放たれたのだ。
幸い直撃は免れたらしいが、強烈な電磁波で電気系統にダメージを受けたのか、輸送船は衛星軌道を離れ、眼下の
惑星めがけてゆっくりと自由落下をはじめた。
【・・・非常事態発生! 非常事態発生! 航行不能。気道離脱。・・・大気圏ヘノ突入、避ケラレヌ見込ミ。・・・乗員ハ
タダチニ、惑星びめいらヘノ不時着ニ備エテ下サイ】
コンピュータの無機的な音声がけたたましい警報に混じって、叫びと怒声が乱れ飛ぶ船内にこだました。
【2】
23世紀初頭。人類はついに、太陽系外宇宙への進出を果していた。
重力子の流れを一点に集束させるバブーシュカ・コイルの発明と、それを応用した時空掘削炉「マイナトロン」
の開発が、人類に新しい世界の扉を開いたのだ。
マイナトロン駆動炉を搭載した最初の実験船が、地球と月の間の超空間ジャンプに成功してから既に7年。
人類は既に、太陽系から10光年前後の範囲に探査船を送り、惑星に基地を建設するまでに至っていた。
「地球外生命」の発見。
それが、太陽系外の惑星探査が人類にもたらした成果のうち、最も有意義なものであった。
地球に最も近い恒星、アルファ・ケンタウリAに送られた探査船が、その第4惑星の海で類シアノバクテリアの
コロニーを発見したのが4年前。ついで、しし座ウォルフ359の第1惑星、くじら座リュイテンの第2惑星など
に相次いで生命の痕跡が発見された。もはや生命の存在は、この宇宙において地球のみに起こった偶発的な現象
ではなく、地球型惑星において普遍的に起こり得る、ありふれた現象なのだと考えられるようになっていた。
驚いたことにどの惑星の生命も、蛋白質と核酸の協働により生命活動を維持するという、地球生命と同様の
システムの元に成り立っていた。違いは、核酸を構成する塩基の種類のわずかな相違程度にしか過ぎなかった。
こうした地球外生命の発見は、地球人に対し、新たな期待と危機感を煽るきっかけとなった。
知的生命が築いた“地球外文明”との遭遇の可能性が、にわかに現実性を帯びてきたからである。
2年前に、来たるべきファースト・コンタクトに備え、国連が主導となって各国合同で統一宇宙軍が組織された。
地球外の知的生命が必ずしも友好的とは限らない以上、個々の宇宙船が不用意に地球外文明との接触を起こすこと
を避けるためである。
だが、地球上で唯一の超大国であるユメリア共和国だけは、外宇宙開発に関して独立路線を貫くことを表明。
統一宇宙軍への参加を拒むばかりか、手近な惑星に手当たり次第にペナント(占有旗章)を打ち込んでは領有権を
主張し、あちこちで宇宙軍との間にトラブルを引き起こしていた。
こうして国際的な緊張感が高まる中、エリダヌス座イプシロン星に送られた無人探査船が、地球に驚くべき
情報をもたらした。
第2惑星に、星全体を覆う発達した森林と、地球の昆虫に似た巨大動物群の存在を確認したのだ。
知的生命発見の可能性を秘めたこの星に向かって、今から2ヶ月前、統一宇宙軍の主導で30名規模の研究者を
乗せた調査船「ブラウヴァルIII」が派遣された。“巨鯨”の名を冠する通り、宇宙軍が誇る大型の最新鋭艦である。
調査隊の隊長はアンドレア大の宇宙文明論の権威、ピエール・シャンブロワ教授。それに統一宇宙軍のアギーレ・
フィツカラルド少佐以下、7名の軍人が護衛として随行していた。
だがこの調査隊が、3週間前、謎の通信を最後に突如消息を絶った。
運の悪いことにこの直後に、ユメリア共和国が突然、この星の領有権主張を始めた。人命優先による特例の救助を
訴える統一軍の要請にも耳を貸さず、ユメリア軍はこの方向の星域に至る超空間回廊を封鎖。救援船の派遣は
宙に浮いたまま、ストップするかたちになってしまった。
シャンブロワ教授の親友であった極東大学宇宙考古学の教授、印出壌二が、宇宙軍のビッツ大佐の紹介で腕利きの
ハンター、アラン・カルテマンの元を訪れたのは、それから4日後のことであった。国際紛争に巻き込まれて
宇宙軍が動けない今、頼れるのは民間のハンターだけだったのだ。
アランは無愛想な男だったが、人情のわからぬ人物ではなかった。遠征隊を何としても救出したいという印出教授、
の熱意にほだされて、船の手配を約束した。
そしてその2日後、月の裏側にある、小惑星輸送船団専用の寂れたノルン宇宙港から、7名の乗員を乗せた輸送船
ステルナ・パラディシアが、ユメリア宇宙軍の目を避けながらイプシロン星の第2惑星ビメイラを目指して
ひっそりと飛び立った。
【3】
真っ赤に染まったイプシロン星が、どこまでも続く森の彼方の地平線めがけて、ゆっくりと沈んでゆく。
夕闇が迫り来る小高い丘の上、地表に長いわだちのような強行着陸の跡を残して、ステルナ・パラディシアは
船体を傾けたまま停止していた。そこは一面の森の中にそこだけひときわ高く盛り上がった、膝丈ほどの草原に
覆われた丘だった。
あちこちから、キチキチキチキチ・・・というカンに障る、正体不明の声が響いてくる。
この船は外見こそ古ぼけたポンコツの太陽圏内輸送船だが、民間船としては異例なことに、宇宙軍払い下げの
マイナトロン駆動炉を備えた、れっきとした恒星間輸送船である。地球上で最も長い距離を移動する渡り鳥、
ステルナ・パラディシア(キョクアジサシ)の名は伊達ではなかった。
だがブラウヴァルIIIの電磁砲を浴び、着陸モジュールだけでなく船体ごと不時着してしまった今となっては、
この船自慢のエンジンもまったくのお手上げであった。
船長のレイラ・アシュクロフトが、部下のエンジニア、ノッポのホイ・チェンマイと共に、船体とエンジンの
損害をチェックしている。もう一人の部下の小太りのオペレーター、ドグ・ドイカムは、コンピュータの起動
チェックに忙しい。
レイラは、小惑星帯の運び屋グループのボスであったトビアス・アシュクロフトが、60の坂を越えてから設けた
最愛の一人娘だった。まだ22歳だが、父親譲りの大胆さと几帳面さ、そして義理堅い性格で周囲からの人望も篤い。
父親の代から仕えている二人の部下、ドグとホイも、ともに彼女の人間的な魅力に心酔している同士であった。
もっとも、彼女の魅力は内面的なものだけではなかった。トレードマークでもある真っ赤なサイバータイツに
包み込まれた、はちきれんばかりの92センチの巨乳、そして野生の猫類を思わせるしなやかで引き締まったボディ。
その蠱惑的な肉体の前には、ドグとホイならずとも、男なら誰でも虜にならずにはいられなかったろう。
船の修復に懸命な彼らの様子を見守っているのは、鋼色の瞳に精悍な光を宿した25歳の男、アラン・カルテマン。
元はレイラの父親が仕切る輸送船団の一員だったが、今はフリーのハンター稼業だ。ハンターとは、深宇宙への
旅行者がおもに傭う、民間の護衛兼、案内者の通称である。
アランは心なしか苛だっていた。彼は船から離れると、膝まである草原の中に陣取って惑星の環境を調べている
科学者たちの様子を確かめに行った。この科学者たちも印出教授同様、遭難した遠征隊とは深い繋がりがあ
る学者たちらしいのだが、アランの苛立ちの原因のいくぶんかは、彼らにあった。
《・・・ふん。やっこさんたち、まだ何か隠しているな。どうやらこの仕事、高くつきそうだ・・・》
船の周囲は野生動物の襲撃を警戒して、簡易の力場フィールドが張り巡らされていた。科学者たちはノーマル
スーツ(船内宇宙服)に、空気濾過装置付きの簡易ヘルメットを着け、めいめいの作業に忙しい。
キチキチキチキチ・・・・
あの耳ざわりな音が、またも高く鳴り響いた。
ビメイラの大気は、雨あがりの草むらのような、ムッとする濃密な草いきれで満ちていた。風はなく、空気は
乾燥していたが、試しにヘルメットを外してみたアランは、換気の行き届かない温室の中のような不快感に
襲われて、あわててロックを締め直した。
「ダメよ、アランちゃん。まだヘルメット外しちゃ。どんな病原体がいるか、まだわからないんだから」
メイクの濃い、痩せたオカマ風の男が叫んだ。マントのように裾の長い真っ赤なフードを被り、白と黒の縞模様の
悪趣味なサイバータイツをピッチリ身につけ、黒髪をオールバックに撫で付けるという奇抜なスタイルであったが、
これでもマスメディアでも有名な、宇宙生物学の権威であった。ウルフガンス・フランケンフンガー教授である。
アランは初対面の時の、彼の馴れ馴れしい態度を思い出した。
「よろしくザマス♪ アタシのことはウルフ、って呼んでちょうだいね、アランちゃん♪」
赤ずきんを被ったオオカミかよ、と思ったが、むろんアランは口に出したりはしなかった。
「ウルフ。一体何だこの匂いは」
「大気中に微小浮遊分子のかたちで、植物が発するアルカロイドが多量に含まれてるのね。要するに“クスリ”よ。
アタシたちに対してどんな生理活性作用があるのか、実験しないとわからないのが怖いわね」
「それを今調べているんですよね、ウルフさんは」
ウルフの仕事を興味深げに眺めているのは、純白のサイバータイツをまとった16歳くらいの美少女である。
彼女はアンヌ・シャンブロワ。遠征隊隊長のピエール・シャンブロワ教授の一人娘で、なんと、船の密航者だった。
ステルナ・パラディシアがノルン宇宙港を飛び立って2時間ほど経った頃、貨物室でホイに保護されたのだ。
「・・・お願いです皆さん、わたしもビメイラに連れて行って下さい。どうして娘のわたしが、パパを探しに行っちゃ
いけないんですか!」
密航者は宇宙空間に放り出すのが輸送船団の掟だという、ホイの冗談を真に受けながらも、アンヌは必死に
アランたちに食い下がり、とうとう同行を了承させてしまった。もっとも、それにはレイラの尽力も大きかった。
レイラの父、老トビアスがカイパーベルト小惑星帯での事故で消息を絶った時、まだ17歳だったレイラは
仲間が諌めるのも聞かず、付近の小惑星を泣きながら延々としらみ潰しに調べ、父親の姿を探し続けたのだった。
父親が行方不明になった時、娘がいったいどんな気持ちでいるのか、彼女には痛いほどわかっていたのだ。
こうして同行を許されて以来、アンヌはレイラを実の姉のように慕い、とても懐いている。
アンヌは身長160センチ足らず。スレンダーな身体つきで、すらりとした二本の脚が眩しい。腰のあたりまである
細いプラチナブロンドの髪は量が多めで、後頭部に付けた黒いリボンがよく似合っている。大きな目は湖のように
青く澄み、意思の強さをあらわすようにややつり目がちである。
実際、アンヌは強い娘であった。父親の船、ブラウヴァルIIIから攻撃を受けたというショックからも、早くも
立ち直り始め、生物学者で医師でもあるというウルフの仕事をせっせと手伝っている。
ウルフが大気成分の分析結果を読み上げた。
「酸素56%、窒素32%、アルゴン8%、二酸化炭素2%・・・いい、アンタたち。この星ではゼッタイに火を
使っちゃあダメよ。地球の3倍も酸素が濃いから、爆発的に燃え上がるわよ」
「どうしてそんなに酸素が濃いんだ? 植物が多いせいか?」
「理由はまだわかんないわ。あと、さっきのアルカロイドを抜きにしても、この星の大気は直接吸わないにこした
ことはないわよ。血中酸素濃度に影響を与えるほどじゃないけど、酸化作用が激しいせいで、細胞の老化が
地球より数倍早く進んじゃうのよ」
アンヌがえッ、と叫んで思わずヘルメットを押さえた。サイバータイツをまとったアンヌたちのヘルメットは
アランたちのものとは異なり、首元のチョーカーに接続した前掛け状の金具に取り付ける、金魚鉢形の小振りの
仕様である。
「美容に悪いというだけじゃない。この星の生き物たちの寿命は、地球の生き物よりもずっと短いはずよ」
アランは足下を這っていたトカゲのような生き物を素早く捕まえ、シッポを持ってつまみ上げた。6本の足を
持つ、昆虫にも似た、角質のウロコで覆われた小動物だった。アランはフン、と鼻を鳴らして生き物を草むらに
放り投げた。
キチキチキチキチ・・・という耳障りな音が、またも森の方から高く響いてきた。
「あれは何の声だ? 鳥か?」
「たぶん鳥じゃないわ。この星に降りてから、鳥の姿はまだ見てないもの。おそらく、虫が出す音ね」
「虫? あんなに大きな音を出す虫だって?」
その隣では、依頼人の宇宙考古学者、ジョージこと印出壌二が、知的で誠実そうな黒人の大男とともに、重力と
磁場の測定を行っていた。大男は宇宙地誌学者のベンドバンブゥ・マゴンセブ教授。通称はバンボだ。
バンボがアランたちに向かって、首を振りながら言った。
「これほど緑が多いのにこんなに湿度が低いなんて、地球では考えられないことです。どの植物も葉が小さく、
硬い。乾燥に適応した形態をしているのです。おそらく、惑星のどこにも海や湖がないせいでしょう」
そう言われて、アランは輸送船のモニターごしに見たこの惑星の、緑一色の表面を思い出していた。
「でも、海なしで生命が発生するなんて、ふつう、ありえませんよね?」
アンヌの素朴な疑問に、バンボが頷いた。
「それなんです。それがこの惑星の最大の謎ですね。海なしで一体どうやって、生命圏が維持できているのか」
「アランさん、ちょっといいですか?」
その時、ドグが意味深な笑いを浮かべながら近づいてきた。
「このデータを見て下さい。墜落の直前に船のコンピュータがハッキングを受けてるんでさあ」
「ハッキング? 誰が? まさか、ブラウヴァルIIIが?」
「それ以外には考えられませんね。やっこさん、どうやら船の墜落ルートに修正を加えて、わざわざこの船の
不時着地点を指定したようです」
アランたちは思わず息を呑んだ。
「すると、ここに不時着することは、あらかじめ仕組まれていたことだと言うのか?」
ドグは無言で頷いた。
「・・・じゃあ、じゃあパパたちが、わたしたちをここに招いたっていうの?」
「ジョージ。一体どういうことだ。あんた、この星について、まだ俺たちに何か隠しているだろう」
「わからない。わたしにもまだ、何が何やらわからないんだ」
初老の男は、ブルブルと首を横に振るばかりだった。
「ならジョージ、遠征隊が最後にあんたたちに送ってきた通信とは何だったのか、教えてくれ。宇宙軍に伝えた
情報、あれはまったくの嘘っぱちだろう。」
ジョージは仕方なしに頷いた。
「隠したわけではない。まだ確信が持てなかったんだ。最後の通信は“ワレラ、ツイニ異星文明ト接触ス”だ」
アランは思わず息を飲んだ。ドグがヒューッ、と口笛を吹いた。
この星のどこかに、まだ見ぬ異星文明がある。そして遠征隊の遭難は、それと関わりがあるらしい。なのに自分
たちはいま、船を墜落させられてまったく身動きが取れない状態なのだ。
アランは、背中が冷汗でじっとりと湿るのを感じていた。
そのとき、船体のチェックを終えたレイラが、途方に暮れた様子で一同に近づいてきた。
「レイラ、具合はどうだった?」
「お手上げよ、アラン。船体はほぼ無事で超空間航行にも影響はないけど、燃料電池のユニットがおしゃかなの。
バブーシュカコイルで重力制御を行うのに充分な電力が確保できないと、この星からの離脱ができないのよ」
「大気圏外に出られない、ということか」
「ええ。もともとこの船は、スペースコロニーと小惑星帯の往復用で、地球へ降りる時は着陸モジュールだけを
切り離すようにできているから、燃料電池はもともとたいして積んでいなかったの。それが全滅に近いというわけ」
「船載の小型飛行艇にも積んであったろう」
「それもアウト。まるで狙い撃ちしたみたいに、燃料電池のユニットだけが残らずはじけ飛んでいるのよ」
アランは首をひねった。
「電力さえ確保できればいいのか」
「ええ。外部からの供給でいいから、電力さえ何とかなれば、無事にこの星から離れられるわ」
「バンボ。この星の環境で電気を起こすとすれば、どういう手段が考えられる?」
「風が弱く、地表に目立った水も火山活動もなく、火を使うにはリスクが高過ぎる・・・まったくお手上げですね」
しばらく熟考した後、アランはレイラに向かって尋ねた。
「レイラ、超空間通信で救援は呼べるのか?」
「ええ可能よ。1週間もあれば近くの星域から宇宙軍の救援が来ると思うわ」
ジョージがあわてて口をはさんだ。
「・・・待ってくれアラン。我々は着いたばかりで、まだ遠征隊の痕跡すら発見していない。宇宙軍の救援を呼べば
ユメリアが動く公算が高い。そうなれば、二度とこの星に救援を差し向けられない可能性もあるんだぞ」
「今はそんなことを言ってる場合じゃない。二次遭難の危険に瀕しているんだ」
「雇い主はわたしだぞ!」
「俺は、あんたの命令を聞くために雇われたんじゃない。あんたたちの、生命を守るために雇われたんだ。電力を
確保できる目処が立たない限り、遠征隊の救援や、異星文明との接触どころの話じゃない」
二人は険悪なムードで睨み合った。
「あのう・・・」その時、アンヌがそろりと間に割って入った。
「要するに、電気が手に入ればいいんですよね? ・・・ほら、あれって、電気の光じゃないですか?」
アンヌが指さしたのは、森のはるか東にある森の中だった。うっそうとした木々の中にぽっかりと穴が開き、
そこから青白色の強烈な光が漏れている。その色は次第に紫へ、赤へと刻々と変化してゆく。イプシロン星の
位置が高いうちは目立たなかったが、夕暮れが近づいたせいで、今はこの高台からも光がはっきりと確認できる。
「あれは何だ? 自然の光ではなさそうだが」
「まさか、あれが“異星文明”でしょうか?」
バンボが手を目の上にかざしながらそう呟いた。
「ホイ、あそこまでの距離を計って」
ホイが測定器を目に当てながら計算する。
科学者たちは光の正体について喧々と議論を交わした。だがアランが議論を遮り、リーダーとして決断を下した。
「俺たちは、何者かの意思によってこの高台に招かれた。そして狙いすましたように、あの光る穴の出現だ。
電力うんぬんは別にして、俺たちはあそこに行かなきゃならない。俺はそう確信する。行方不明の遠征隊の
手掛かりも、きっとあそこで得られるに違いない。・・・よし!」
アランは全員の顔を見渡しながら言った。
「明日の朝、ここを発ってあの光る裂け目に向かおう。到達まではおよそ5日。荷物や必要な食料は今夜中に
俺が用意しておく。7日経っても到達できなければ船に戻って救援を呼ぶ。異存はないか?」
誰も意義のあるはずはなかった。アランは最後にアンヌの方を振り返った。
「アンヌ」
アンヌはキュン、と首をすくめて険しい顔で身構えた。
「君はこの船でお留守番だ、・・・などと言っても、素直に聞いてくれそうにはないかな、このお嬢様は」
アランはアンヌの肩をポン、と叩いた。
「一緒について来い。目の届くところにいてもらった方が安全だ」
アンヌの顔がパッ、と明るくなった。
「はいっ!」
「ベッドで眠るのも今日でしばらくお預けだ。十分に睡眠を取っておけ」
アランはアンヌの耳元でそう伝えると、船に戻っていった。
見渡す限り黒々とした森が延々と続くビメイラの地平線に、真っ赤なイプシロン星がゆっくりと沈んでゆく。
キチキチキチキチ・・・という耳障りな音が、森の中にまたも高く鳴り響いた。
【4】
「ねえレイラさん、アランさんって・・・」
輸送船のレイラの私室で、洗った髪を乾かしながらアンヌが話しかけた。
「怖いだけの人かと思ってましたけど、優しいところもあるんですね」
レイラはプッ、と吹き出し、笑いながらこう答えた。
「そうね。あいつは照れ屋で、素直じゃないけど、根は純粋で、自分より人のことを最初に考えるヤツよ」
「レイラさんはアランさんと、どういう関係なんですか?」
「ずいぶん長い腐れ縁、ってやつかな。あいつは宇宙客船の遭難事故で10歳の時に孤児になってね、うちの親父が
引き取って育てたのよ」
「じゃあ、兄妹みたいなものですね」
「兄妹、ねえ・・・。確かに、どんなに離れてても引き寄せ合っちゃうという意味では、兄妹みたいなものかもね」
レイラはしばし遠い目をした。その様子を、アンヌはブラッシングの手を止めて神妙な視線で見つめた。
「ところでアンヌ、そのサイバータイツにはもう慣れた?」
「はい。はじめはすごく恥ずかしかったけど、でももう慣れました」
「そう、よかったわ。あんな地上服では、この星を探検するなんて無理だもんね」
アンヌの肢体は、素肌に密着する純白の人工皮膚で全身ピッチリと覆われ、ボディラインが露わになっている。
ネコミミのような形の黒いアンテナが2つついた制御用カチューシャが、彼女の淡い金髪によく似合っていた。
彼女たちがまとっているサイバータイツは、正式にはサイバーヴァイズド・スキンタイトスーツ(電脳管理皮膚
密着スーツ)と言い、鋼鉄の5倍の強度を持つというクモの糸を再現した高分子蛋白質繊維を、セラミック繊維で
コーティングして作られた宇宙用のスーツである。
アランたちが着用しているノーマルスーツとは異なり、空気の層を作らずに皮膚に密着し、首から下の全身を
袋状にくまなく包み込む形状をしている。足元がハイヒールの靴になっている以外は、皮膚と同じ形状である。
厚さ1ミリ足らずのスーツの内部には、体温調整のための生理液が毛細血管のように通い、全身の状態をチェック
する電極網が首元の制御チョーカーによって管理されている。そのため全身の熱交換と皮膚表面の老廃物処理を
効率良く行うことができ、宇宙空間の強烈な放射線や、800度までの熱からも身体を守ることができる。着脱や
温湿度等の制御は額にはめた、小さな三角形のアンテナが付いたカチューシャによって、装着者の脳波で行われる。
それはまさに理想的な「第二の皮膚」であり、ヘルメットさえ着ければ簡易宇宙服として、宇宙空間における
長時間の船外活動すら可能であった。
だが全身を緊く締め付け皮膚に密着するその性質上、サイバータイツを男性が装着することには問題があった。
男性器の形が外からすっかり露わになる上に、股間の締め付けが装着者に強い苦痛を与えるのだ。
このため、サイバータイツを装着するのは今のところ少数の例外を除き、女性のみであった。
ウルフのように、あえて股間にファウルカップを装備した上から装着する、物好きな者もいるにはいるが、
その場合、空気の層が皮膚との間に発生するため、宇宙服の代用となるなどのサイバータイツの恩恵を十分に
受けることはできなかった。サイバータイツはあくまで、女性専用の宇宙用スーツだったのだ。
一着あたり数千万ゴルドはするというこの高価なスーツ、軍以外で装着しているものはごく少数であった。
アンヌがいま身にまとっている純白のサイバータイツは、レイラが予備として船に用意していたものである。
アンヌは密航が発覚した時、純白のブラウスに青地に白のビスチェ、横に拡がったフリルスカートに黒タイツ
という、油臭い宇宙輸送船には場違いの地上服を着ていた。見かねたレイラがアンヌに、着脱カプセルに入って
サイバータイツを装着するように勧めたのだ。
色は装着時に自由に設定できるため、レイラがアンヌの清楚なイメージに合わせて白に設定した。
初めての装着直後、アンヌは恥ずかしさのあまり、他の乗員の前に姿を見せることができなかった。何しろ
サイバータイツは皮膚を垂直方向に強く締め付ける。そのためボディラインが裸同然に露わになるのだ。
しかも全身をくまなく締め付けているため、重力で乳房が垂れるのを防止するブラジャーのような補正下着は
必要なくなり、乳房は自然に、胸部の前方に向かってふわりと浮き上がるかたちとなる。そして身をよじるごとに
乳房も、尻も、ゆさゆさと大きく揺れるのだった。
アンヌはスレンダーな体形だったが、華奢なボディに似合わず豊満なバストの持ち主だった。ロケットのように
前方に突き出した双つの柔らかいふくらみ。触れると折れそうなほどに細くくびれた腰。引き締まった肉付きの
よいお尻。それら、神の業にも似た絶妙のバランスで造形された美しいアンヌの肢体が、サイバータイツによって
すっかり浮き彫りになっていた。
そればかりではない。厚みが1ミリに満たないサイバータイツは、まるで全裸であるかのように、乳首のかたちも、
股間の性器の溝も、スーツの表面にくっきりと浮き上がらせていた。男性の視線に慣れていない16歳の処女に
とって、それは全裸以上に恥ずかしい恰好であるに違いなかった。
「恥ずかしいのは最初だけ。すぐに慣れるわよ」
レイラはそう言って笑いながら胸を張った。彼女の豊満な胸にも、乳首のかたちがはっきり浮き上がり、股間には
恥丘を縦に貫くスリットが見事に浮き上がっている。
「初めて身に着ける時、痛かったでしょう? でも一度装着したら、脱ぐ必要なんてめったにないのよ」
アンヌは顔を赤らめて、股間をそっと手で押さえた。
アンヌの肛門と膣にはいま、排泄時に使用するノズルプラグが奥深くまで埋め込まれている。
サイバータイツは皮膚に密着する性質上、下着を着けず、全裸の上に直接装着しなければならない。体毛も邪魔
になるため、装着者は放射線照射によって頭部以外の全身を永久脱毛した後で、排泄孔にノズルプラグという
特殊な栓を奥深く埋め込んでから、着脱カプセルという専用の機械を用いて装着を行う。
これは排泄行為の効率化のためである。サイバータイツの着脱は、装着者自身が設定した音声パスワードを、
カチューシャを通して脳波入力することで行える。だが再装着には時間がかかるため、排泄行為のたびにいちいち
サイバータイツを脱ぐことは現実的ではなかった。そのため、排泄は股間に埋め込んだノズルプラグに、トイレに
備え付けの専用のチューブを接続し、機械で吸引することで行うようになっていた。
そのため、一度装着すればサイバータイツを脱ぐ必要はほとんどなかった。体表面の温度調整も完璧であるため
シャワーを浴びる必要もなく、脱ぐ必要があるのは事実上、セックスを行う時だけであった。
逆に言えば、第三者がサイバータイツを勝手に脱がせることは、着脱カプセルに入れない限り不可能であり、
また鋼のような強度を持つサイバータイツを破くことも至難の技であったため、これは装着者を不慮のレイプ
事件などから守る上でも効果的であった。そのため、長期に渡って男女混成で遠征を行いがちな統一宇宙軍の
女性軍人や職員の間で、サイバータイツは広く愛用されていた。
「そうそうアンヌ。明日から船のサイバータイツ用トイレが使えなくなるから、携帯トイレの使い方を教えたげる。
こっちにいらっしゃい」
そう言ってレイラは、10センチ四方程度の立方体の機械を取り出した。
「使い方はさっき教えた船のトイレと同じよ。こうやって、ノズルチューブを引き出して・・・」
カーペットの上に膝立ちになったレイラは、自分の股間を片手でまさぐり、スーツにはっきりと浮き上がった
陰唇を押し拡げてノズルプラグの位置を確かめた。
サイバータイツを装着した女性の股間には、大陰唇に沿って灰青色の栓が一直線に埋め込まれている。これが
ノズルプラグである。大陰唇を指でこじ開けると、クリトリスから膣孔にかけて、膣前庭を覆うようにノズル
プラグが覆っており、尿道孔と膣孔、そして肛門の位置に、チューブを差し込むための孔が3つ開いている。
レイラは自分の陰唇を拡げると、そこに先が三股になったチューブを次々と差し込んだ。
「うッ! 」
レイラは顔を赤くしながら、チューブを接続した股間をアンヌに示した。
「・・・ふうッ、はいこれで準備完了。小用のみの時は、チューブはいちばん前の一本だけでいいのよ。大の時は
前と後ろね。真ん中のノズルプラグは生理の時だけで、ふだんは使う必要はないの。でも、これを使うとね」
レイラはアンヌの耳元で、悪戯っぽく囁いた。
「…こっそり女のコの悦びを楽しむことができるのよ。ちょっと試してみるわね」
そう言ってレイラはクスリと笑い、立方体の白いスイッチを押した。
機械がブンブンと音を立て、ズブズブという音とともに吸引が始まった。
「・・・うっ・・・あ・・・あ・・・ああ・・・あっ・・・あっ・・・」
レイラは恍惚とした表情で股間を押さえ、豊満な胸をゆさゆさと揺らしながら、激しくあえいだ。
3本のチューブに対応したノズルプラグのうち、膣孔に埋め込まれた中央のものは本来、新陳代謝ではがれ落ちる
膣粘膜組織や、生理時の出血を吸着するためのものだったが、女性たちにはむしろ自慰目的で愛用されていた。
いや女性たちの要望によって、そういう機能が特別につけ加えられていたのだ。
サイバータイツの最初の装着時に、装着者は膣の奥深くに、ノズルプラグの本体を埋め込まれる。と言っても
本体はゼラチン状のぷるぷるした物体に過ぎないから、アンヌのような処女であっても、大切な処女膜を傷つける
ようなことはなかった。生理タンポンのように気軽に挿入するだけでよかったのだ。
だがこのプラグにノズルチューブを深く差し込んで、吸引機を作動させると、ノズルプラグ本体はとたんに固く
巨大にふくれ上がり、表面が激しく蠕動して膣壁を刺激するようになるのだった。同時にこのノズルプラグは
クリトリスにはめ込まれた電極とも連動していて、装着者に快感をもたらすよう、絶妙の調整が施されていた。
レイラが股間を押さえたまま、ひっきりなしにあえぐ様子を、アンヌは顔を真っ赤にして見守った。
自慰すらまだ覚えていないアンヌにとって、それは、書物で知っているだけの未知の世界だったのだ。
「・・・はあっ・・・はあっ・・・これで・・・終了よ。あとは、この赤いスイッチを入れて、吸引したものを焼却するの」
レイラが身をかがめ、大きく肩で息をしながら、立方体のスイッチを押した。キィーン、という音とともに
排泄物の焼却が完了し、青いランプが点灯した。レイラは立ち上がると、股間のプラグからからノズルチューブを
ゆっくりと引き抜き、先端を立方体の中央にある溝にかざして殺菌してから、アンヌに向かって差し出した。
「・・・さあアンヌ。あなたも使ってごらんなさい。真ん中のノズルプラグ、使うのは初めてよね? 怖がらずに
試してごらんなさい。あなたが女のコに生まれた悦びを、心ゆくまで満喫できるから」
「えっ?・・・でも」
「大丈夫! 大事な処女膜が破れるようなことはないから安心して」
「は・・・はい!」
アンヌは好奇心の強い娘だった。おっかなびっくりでチューブを受け取ると、レイラのように床に膝立ちになり、
純白のサイバータイツに包まれた股間に指を伸ばした。ふくらんだ恥丘を縦に走るスリットをそっと押し拡げて
挿入位置を手探りで確かめてから、ノズルチューブの先端をプラグの中心めがけて、おそるおそる差し込んだ。
「・・・うっ!」
アンヌの膣の中に挿入された、ノズルプラグ本体がじわじわとふくらみ始めたのだ。快感とも不快感ともつかない
不思議な感覚に、アンヌの背筋は思わずこわばった。下腹部に生じた異物感が、どんどん大きくなってゆく。
アンヌはこわごわと立方体のスイッチを入れた。とたんにアンヌの股間に、ずしんと電気のような快感が走った。
「…ひゃあっ!」
アンヌは思わず、大声で叫んだ。
生まれて初めて味わうその感覚は、快感とも不快感ともつかない、激しい衝撃であった。アンヌはガクガクと
腰を痙攣させ、耐えきれずに四つん這いになった。そして腕で身体を支えることもできなくなり、腰を持ち
上げたままうつ伏せになった姿勢で、チューブが接続された腰をただガクガクと振り続けた。
「・・・ん・・・ん・・・んんッ・・・あッ・・・あッ・・・あッ・・・あああッ!」
股間の衝撃が、徐々に、えも言えぬ快感へと変わってきた。膣壁の中いっぱいに拡がったノズルプラグが表面を
激しく蠕動させ、電極に包まれたクリトリスがビリビリと震える。自慰すらまだ知らなかったアンヌにとって、
それは生まれて初めて味わう性の快感、目眩く官能の世界であった。
アンヌは顔を真っ赤に染め、股間を両手で押さえたまま、ひっきりなしにうめいた。股間が耐えられないほどに
熱くほてり、全身を火花が駆け巡る。
「・・・んッ・・・んッ・・・んんッ・・・あ・・・あ・・・ああッ・・・あンッ・・・あンッ・・・あうッ・・・あうッ・・・ああうッ!」
うつ伏せになったアンヌの指が知らず知らずのうちに、股間に固く盛り上がった小さな肉の豆に伸びてゆく。
何しろそこがいちばん、気持ちがいいのだ。アンヌの指は電極に包まれた自らのクリトリスを探り当てると、
細い指先でそれを玩び始めた。指が豆をはじくたびに、さらに激しくじんじんと、快楽の嵐が押し寄せる。
アンヌは髪を振り乱しながら上体を起こし、身体をのけぞらせて部屋中に響き渡る高い声であえいだ。
他人の目もはばからず、理性をかなぐり捨て、ただ快感に身を任せてよがり狂った。
「・・・ああッ・・・ああッ・・・あうッ・・・あうッ・・・あううッ・・・あううッ・・・あうううンッ!」
「あーらまあ。思ったとおり快楽に飲まれちゃったか。処女が初めてこれを使うと刺激が大き過ぎるから、
時々、快楽の虜になっちゃうのよね。・・・でも、素敵よアンヌ。今のあなたって、とっても女らしいわ」
レイラはそう呟くと、自分も真っ赤なサイバータイツの股間へと手を伸ばした。やがて切ないため息が、レイラの
口から断続的に漏れ始めた。
アンヌは半狂乱になってあえぎ続けた。嬌声が部屋中に響くのも気にせず、ひたすら快楽を求めて指を動かした。
真っ白な人工皮膚で覆われた、ロケットのように前に突き出た美しい双つの乳房が、アンヌが悶えるたびに
ぶるんぶるんと激しく揺れ動いた。
【5】
翌朝、アランたち一行は船を離れ、めいめいの荷物を背負って丘を下り始めた。
「さあ、楽しいピクニックの始まりだ」
燃料電池が全滅したため、飛行艇も、二人乗りバイク型のフロートライナーも使うことができない。
あの光る裂け目までは、徒歩で行くしかないのだった。
後続者のために慎重に踏み跡を地面に付けながら、先頭を歩くのはアラン。そのすぐ後ろにアンヌ。さらに
ウルフ、ジョージ、バンボ、レイラと続き、いちばん重い荷を背負ったドグとホイが最後尾を勤めた。
歩きやすい草原が終わり、いよいよ目の前に暗くうっそうとした森が迫ってきた。キチキチキチキチ・・・という
不穏な音がさらに大きく迫り、一行の不安をかき立てた。
森の中は下草がまばらで、地面は乾燥していた。森はどうやら複雑な地表の褶曲の上に生えているらしく
大きな起伏が何度も続く上に、たびたび巨大な根が前方に立ちふさがり、それを乗り越えるのに時間が取られる。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・キャッ!」
アンヌがまたも前のめりにつまづき、地面に手をついた。
女性たちがまとっているサイバータイツにはポケットが付いていないため、アンヌやレイラは軍用のベスト
ジャケットをはおり、ハイヒール状になった脚には、その上から行軍用のニーハイブーツを重ね履きしていた。
だが悪路を歩くことに慣れていないアンヌにとっては、歩きながら足を置く場所を選ぶような余裕などなく、
いくら高性能な靴を履いていても意味が無かった。
「平気です。これでも長年バレエで鍛えていますから・・・キャッ!」
アランはやれやれと肩をすくめた。体力のないアンヌだけではなく、その後ろのウルフも遅れて隊列を乱す。
「ちょいと、アランちゃん、待ちなさいよってば。んもっ、この根っこ。歩きにくいったらありゃしない!」
「ウルフさん、いったい何やってるんですか。さっきから無駄な動きが多いんですよ」
レイラがイライラして後方から叫んだ。確かにウルフは歩きながら、あちこち寄り道ばかりしている。
「うっさいわね。未知の植物がこんなにいっぱい周囲にあるのに、平静でいられるわけがないじゃないの!」
なるほどウルフは生物学者らしく、遭遇した未知の生物すべての特徴をコンピュータに記録し続けていたのだ。
だがビデオカメラを構えるたびになぜ、ビシッ!といちいち妙なポージングを付けなければならないのか、他の
者にはまったく理解不能であった。
「アタシは由緒あるフランケンフンガー(フランク人の空腹)家の末裔。知的な貪欲さでは誰にも負けないのよッ」
ウルフの足が遅いせいで、その後ろのバンボたちは何度も足止めを喰らっていた。バンボはかがみ込み、草を
払うと足元の地面をそっと調べ始めた。
「見て下さいジョージ、これは・・・コンクリートだ!」
「何?」
ジョージもかがみ込んで地面を確かめた。多孔質の岩に見えた地面は、長時間にわたる侵食で表面がカスカスに
腐食していたが、地球産のものと同じ、紛れもないコンクリートだった。
「知的生命が造ったものだろうか?」
「形成方法はわかりませんが、自然産の可能性もあります。なにしろこの量ですからね。でもこれで、この
惑星にむかし海があったという証明にはなるかも知れません。なにしろコンクリートの原料となる石灰岩は、
海中のサンゴが海水から炭酸カルシウムを取り出すことで生み出されるんですから」
「驚いたな・・・コンクリートの上にこれほどの規模の森が生えているのか」
「ええ、コンクリートは土壌としては極めて劣悪ですからね。これもこの星の謎のひとつでしょうか」
アンヌが疲労困ぱいの様子なので、ちょうど森の中の開けた場所に出たのを幸い、アランは休息を命じた。
「今のうちに昼食を摂っておこう」
力場フィールドを張ると、一行は思い思いの場所に腰掛け、簡易ヘルメットを外して固形ブロック状の昼食を
摂った。医師でもあるウルフから、短時間ならヘルメットを外しても構わないとのお墨付きがでたおかげだ。
ヘルメットを外したとたん、ムッとする強烈な草いきれと、キチキチキチキチ・・・という耳障りな音が、
ひときわ強く襲ってきた。
食事を拡げる前に、アンヌが言いにくそうに、アランにもじもじと小声で囁きかけた。
「・・・あのう、アランさん。わたし、そのへんで用を足してきたいんですけど・・・」
「わかった。できるだけこの近くから離れるな」
顔を赤らめたアンヌが立方体の携帯トイレを持って、薮の中に姿を消した。やがて薮の中から、切なげな甘い
あえぎ声が小さく断続的に聞えてきた。
「・・・んッ・・・んッ・・・んんッ・・・んんッ・・・あんっ・・・あン・・・あン・・・ああン・・・ああン・・・!」
昨夜の初使用以来、アンヌは小用のたびに、ふだん必要のない膣孔ノズルプラグを使うことを止められなく
なっていた。既に10回以上は使用しただろうか。男性経験はおろか、自慰すら知らなかったアンヌは、生まれて
初めて体験した女としての快楽に、麻薬中毒のように耽溺していたのだ。
慣れたもので、アランたちは平然とその声を聞き流しながら食事を続けた。若い娘にはよくあることなのだ。
その時、キチキチキチキチ・・・という音がひときわ高く森の中に響き渡った。
不穏な気配を感じ、アランは短針銃を手に立ち上がり、身構えた。
その時だ。
「きゃああああッッ!!」
アンヌの鋭い叫び声が響いた。アランはいち早く薮の中に飛び込み、アンヌの姿を探した。
「アンヌっ!」
薮の中の開けた場所に、アンヌが怯えた様子で股間にチューブを差し込んだまま立ちつくしていた。
彼女の視線の先には、真っ黒で巨大な奇怪な生物がいた。
アランに発見されたことに気付いたその生物は、ウォルルルグォォォッ、と低くうなると、アンヌ目がけて
勢いよく襲いかかった。
「チイッ!」
すかさずアランは短針銃の引き金をひいた。
グォッ、グォ、グルルルゥ! 無数の針が怪物の頭部に命中したが、怪物はそのままアンヌの首筋に噛みついた。
「キャアアッ!」
アンヌが倒れると、怪物は頭を起こしてぶんぶんと振り、頭部に命中した金属製の針を払い落とした。
「畜生ッ!」
アランの第2撃も怪物には効果がなかった。怪物はアランの方を振り返り睨むと、今度はアラン目がけて
素早い動きで飛びかかってきた。
とっさにアランは頭部を銃でかばった。アランの下腹に怪物の足が食い込み、鋭い爪がめり込む。思わず
後ずさるアランの銃に、怪物は鈍い音を立ててガリガリと噛みつく。金属の粉がバラバラと落ちる。アランは
渾身の力で怪物をふるい飛ばし、連続で銃を放った。
「どうしたッ、アンヌ!?」
ガサガサと薮の中からジョージたちが現れた。新たな加勢の気配に怪物は勢い良く飛び退くと、目にも止まらぬ
早さで木によじ登り、太い枝の上から一同を威嚇した。
この時、一同は初めて怪物の姿をはっきりと確認した。それは1メートル半ほどの体長で、6本の足と3つの
複眼を持った、まるで地球の黒豹とハンミョウが合体したかのような奇怪な生物であった。全身が固い外骨格で
覆われている。アランの短針銃が効かなかったのもこのためだろう。
一行はめいめい銃を構え、一斉に怪物を狙った。
その時だった。キチキチキチキチ・・・という例の奇妙な音が、突然高く、大きく、周囲にこだました。
その音は彼らの周囲から、まるで四方八方取り巻くように聞えてきた。
それを聞くと、枝の上の黒い怪物は急に身体をすくませ、まるで何かに怯えているかのように逃げ腰になった。
突然、木々がざわざわと揺れた。
高い空からパラシュートのようなものが、幾つも、ふわり、ふわりと舞い降りてきた。それに気付いた怪物は
グワッ、と叫ぶと弾かれたように逃げ出した。
だがパラシュートのようなものは、意外な早さで吸い寄せられるように怪物に追いつき、傘を拡げて怪物の上に
次々と舞い降りた。傘は怪物に触れたとたんキュッと締まり、傘に包まれた怪物はギュルルルルゥ、と叫んで
倒れ、苦しそうにのたうち始めた。
パラシュートは幾つも、幾つも怪物の上に降りつもる。暴れ回る怪物の姿は、やがて傘の被膜に覆われて
すっかり見えなくなった。
数分の後、半透明の被膜にすっぽりと覆われた怪物は、その動きを完全に止めた。
「何だ、一体何だこのパラシュートは!?」
ジョージが思わず叫んだ。ウルフは手近にあった長い枝を拾い上げ、おそるおそる被膜に包まれた塊を小突いた。
被膜の塊はカチカチに固まっており、まったく動く気配を見せなかった。
ウルフは危険がないことを確かめると、そっと近づいて被膜の塊を確かめた。
「これは・・・植物よ。おそらく植物の種」
「種? 種がこいつを襲ったというのか?」
「ええ。この種はおそらく高い運動能力と知覚を有していて、獲物の上に被さり、窒息させて殺してから、その
養分を使って発芽するんだわ」
「なるほど、栄養分が少ないコンクリートのような土壌に、適応した発芽方法ですね」
「・・・何てことだ。動物を襲う植物だなんて!」
「でもなぜ、この子だけを狙ったのかしら? なんでアタシたちには襲いかからなかったのかしら?」
アランが我に返ってアンヌの元に急いだ。
「アンヌっ、アンヌは無事か!?」
レイラとドグ、ホイの3人が、気を失ったアンヌを介抱していた。
「大丈夫よアラン。気を失っているだけ。首筋を咬まれたけど、ヘルメット装着リングのおかげで無傷よ」
アランは安堵した様子で、気絶したアンヌの目に被さりかけている汗ばんだ髪を、指でそっと撫で払った。
「・・・ん・・・」
アンヌが目覚めた。覗き込んでいるレイラたちの顔を怯えた目で見つめ、それからレイラの胸に顔を埋めて泣き
じゃくり始めた。
「・・・怖い!・・・怖い!・・・」
「大丈夫よアンヌ。もう怪物はやっつけたから」
レイラがアンヌに肩を貸し、ゆっくりと立ち上がらせた。アンヌはぴったりとレイラに寄り添い、離れようとは
しなかった。
昼食場所に戻ってきたアランは、怒りに満ちた声で叫んだ。
「…畜生ッ! ヘルメットが壊されてるぞ! 全部だ、全部!」
一行があわてて駆け戻ってきた。昼食を摂るために外したヘルメットがなんと一つ残らず、強化ガラスフードに
穴を開けられていた。穴からは四方にヒビが走り、もはや役には立ちそうにない。
アランは自分のヘルメットを拾い上げ、傷を確かめた。
「これだ。この銀色の針が、ガラスを貫いたんだ」
ウルフとジョージが近寄って、アランから手渡された針を確かめた。長さ3センチほど、太さは1ミリ足らずの
小さな針だった。
「断言はできないけれど、昆虫、特に蜂の針に似ているわね」
「ハチ? 生物が放ったものだと言うのか? 特殊強化ガラスを貫いているんだぞ!?」
宇宙服のヘルメットフードに使われている特殊ガラスは、宇宙船外壁のチタン合金と変わらない強度がある。
それをやすやすと貫ける針を撃ち出せる生物が、この星にいる。その事実が、一行の背筋を寒くした。
「だが一体、何のためにヘルメットだけを? 昼食にはまるで手がつけられていないんだぞ?」
「そんなことより、俺たちはヘルメット無しでこれ以上進めるのか?」
「アタシは賛成しないわ。この星の大気、長時間吸い過ぎると危険よ」
「レイラ、船に戻れば予備はあるか?」
「全然足りない。全部で10個しか積んでこなかったの」
アランとジョージ、それにウルフは論争を始めた。長い議論の末、ヘルメット無しで行軍を続けることになった。
「いいことアンタたち。もしも誰かに少しでも異常が現れたら、すぐに船に引き返してもらうわよ」
その日はそれから何事もなく、行軍を続けることができた。船からおよそ30kmは進んだかと思われるところに、
丁度よい開けた場所を見つけた一行は、そこにテントを張ることにした。
テントといっても布製ではなく、力場テントを3台稼働させ、3つに分かれて就寝することにしたのだ。
男が3名ずつ2つに分かれ、残るひとつがレイラとアンヌのテントだった。
力場テントとは、2メートル角の立方体の形をした、不可侵の力場を作り出す装置のことである。力場は音声
パスワードを唱えない限り、内部へのあらゆる物体の侵入をシャットアウトし、空気の緩慢な流通のみを許可する。
雨や風に対する防護はおろか、遮光機能もあるので、内部の人間は安心して眠りに就くことができる。
昼の事件以来、アンヌは常に怯えていた。ガタガタと震えながら身体を縮こめて、しきりに不安を口にした。
「・・・怖い・・・怖いのよ・・・レイラさん」
レイラはアンヌの隣に横たわり、背中からそっとアンヌの身体を抱き締めた。熱を通さないサイバータイツごしに
感じられる肉体は、ひやりとして、なめらかで、人間の素肌とはまるで違っていた。
「大丈夫。あなたは一人じゃない。みんながついてる。何も心配はいらないのよ。安心してお休みなさい」
アンヌは身を翻してアンヌの胸に顔を埋め、えっ、えっ、とかすれるような声で泣いた。レイラはそんなアンヌ
を姉のように優しく抱き締め、サイバータイツに包まれた華奢な肢体を愛おしげに愛撫した。
アンヌも泣きじゃくりながら、レイラの乳房に頬をすり寄せた。頬にレイラの乳首が当たったのを感じたアンヌは、
幼児返りしたかのように舌をチロリと這わせ、乳首を口に含んで赤ん坊のようにしゃぶり始めた。
真っ赤なサイバータイツに包まれていても、敏感な箇所への刺激はレイラを熱くさせるのに十分だった。レイラは
紅潮した顔で、両手でアンヌの頬をはさみ、ゆっくりと自分の顔を近づけると、彼女の唇に自分のそれを重ねた。
「・・・ふんっ・・・むふぅ・・・んんっ・・・」
レイラの細い指が、自然にアンヌの股間へと伸びる。まさぐり当てたアンヌのクリトリスを、レイラは人差し指で
絶え間なく刺激しながら、薬指で膣孔の周囲を円を描くように愛撫する。
「・・・ああっ・・・あん・・・あんっ・・・レイラさん・・・だめッ・・・あうっ・・・あうっ・・・アンッ・・・アンッ・・・」
女性の性感帯を知り尽くしたレイラの指が、そして舌が、性に目覚めきっていないアンヌの全身を這い回り、休む
ことなく刺激を与える。華奢な首筋を、脇腹を、背中を、太ももの内側を、そしてツンと立った乳首の先端を。
「・・・アンヌ・・・可愛いコ・・・可愛いコ・・・」
「・・・ああッ・・・レイラさん・・・レイラさん・・・あうッ・・・あうッ・・・あンッ・・・あンッ・・・」
しなやかなサイバータイツの肌どうしがこすれ合う感触が、ゾクゾクと二人の興奮を高めてゆく。
サイバータイツに包まれた皮膚の感覚は、カチューシャからの脳波指令で自由に感度を変えることができた。
昼間森の中を歩いている間は、厚着でいる時と大差ない感度に下げていたが、今は全裸でいる時と変わらない、
いや全裸以上の感度にまで高められていた。性感帯にわずかに触れられただけで、凄まじい快感の嵐が走る。
それは、サイバータイツを身にまとった者だけが味わえる、陶酔と官能の世界であった。
男を知らないアンヌは、この目眩く快楽の嵐にたちまち溺れ、理性をかなぐり捨ててただひたすらに快感を求めた。
ふとレイラはアンヌから身を放し、携帯トイレを取り出すと、自分とアンヌの膣孔に埋め込まれたノズルプラグに
チューブを差し込んで作動させた。それも目盛りを「最強」にして。
「・・・ああッ・・・ああッ・・・レイラさん・・・あうッ・・・あううッ・・・あうううンッ!」
アンヌとレイラは股間から長いチューブを伸ばしたまま、お互いのボディを堅く抱き締め合った。
狭い力場テントの中。赤と白の人工皮膚に包まれた二体の美しい妖精が、激しく肉体をからまり合わせ、お互いを
求め合っている。二人は身も心もひとつに溶け合わせたまま、狂おしい愛撫に身を委ね、ただひたすらに快楽の園
に遊び、女に生まれた悦びをむさぼり合った。
そして二人はいつしか、うとうととまどろみ、堅く抱き合ったまま夢の中へと落ちていった。
【6】
ヴィン! ヴィン! ヴィン!
そんな至福のまどろみを破ったのは、アランが鳴らした突然の警報だった。
レイラはテントの力場を解除すると、寝ぼけ眼のアンヌの腕を引いて男たちの野営場所へと急いだ。
アランの目の前に、ロープで縛られた、黄色い奇怪な生物がいた。
「テントの回りをしきりに窺っていたのを捕えたんだ」
それは4本の腕と3つの複眼を持つ、昆虫のような人間大の生き物だった。背中に大きな翅を持ち、全身が黄色と
黒の縞模様で彩られているところは、地球の“蜂”を連想させる。
生物の全身は、固い外骨格で覆われている。関節部や指先の爪を見ても、地球の昆虫に近い生き物であることは
間違いない。
だがその生き物の顔面は昆虫というより、人間に似通っていた。人間よりも、人を象った能面と言う方が近いかも
知れない。二つの複眼の下に鼻のような突起があり、その下に薄い唇のついた口がある。顔だけではない。
完全直立した姿勢、道具も自由に扱えるだろう発達した指、そして反応の端々に感じられる高い知性。それらは
この生き物が地球人と同じ、まぎれもない“知的生物”であることを示していた。
蜂のような姿のその知的生物は、口を大きく開くと、その中にある昆虫のような大顎を激しく打ち鳴らして、
キチキチキチキチ・・・という耳障りな音を鳴らした。
アランたちは驚いて思わず身体をそむけた。
どうやら森の中に絶えず響き渡る、カンに障る音の主はこの生物らしい。
ウルフがおそるおそる蜂人間に近づき、その身体を観察した。
「地球の昆虫に酷似してるわね。見なさい。身体の側面に沿って孔がいくつも開いてるでしょう。この気門で
呼吸をしているのよ。でも・・・妙ね・・・」
ウルフは急によどんだ言い回しになった。
「この子の外骨格、最初からこんな形に進化したのだとは思えないわ。身体つきが地球人にそっくり。まるで
元々は内骨格の地球人に似た生き物だったのを、無理やり外骨格に造り変えたみたい・・・よし!」
ウルフは蜂人間の顔を正面から覗き込んで、意地悪っぽく言った。
「アナタ、夜が明けたら解剖して調べてあげるわよ」
その言葉が理解できたかのように、蜂人間は急に頭を上げた。そしてキチキチキチキチ・・・という音をさらに強く
鳴らした。複雑なリズムで打ち鳴らされるその音は、まるで異教の呪文か何かの暗号のようであった。
突然、不穏な気配を感じて一行はギョッ、と周囲を見渡した。
いつの間にか彼らの周囲の森いたることころから、応えるかのようなキチキチキチ・・・という音が幾つも、幾つも
鳴り響き始めたのだ。
「・・・囲まれてる!」
めいめい武器を手にとり、手に汗をにじませて警戒するアランたちの目の前に、森のあちらこちらから人間大の
影がいくつも姿を現れた。それは目の前に捕らわれになっている生物と同じ、蜂人間の群れであった。
あらゆる方向から鳴り響くキチキチキチ・・・という音が、耳を聾するばかりに高まった。アランたち一行を
包囲する蜂人間たちの数はどんどん増えてゆき、やがて数えきれないほどの大群に膨れ上がった。
アンヌは必死に耳をふさいでレイラに固く寄り添った。銃を構える一同の背中に冷たい汗が流れる。
その時だ。蜂人間の群れの中から、聞き慣れた地球標準語が響いてきたのは。
「その者を離しなさい。そうすれば、お前たちに危害を加えることはしない」
その声は、若い女のものだった。驚く一行の目の前に、蜂人間たちの間からひとつの影が現れた。
その顔を見たジョージは、思わず驚きの叫びをあげた。
「きみは・・・チアキ! チアキ・ダイドウジくん!」
名前を呼ばれたその相手は、長い真っすぐな黒髪を額で一直線に切り揃えた、神秘的な美貌の東洋人の娘であった。
「知り合いか、ジョージ!?」
「ああ、シャンブロワ教授に随行した、ウォーレン・キンバリー教授の研究室にいた大学院生だ。教授のお供で
遠征隊に志願したと聞いたが、まさか、まさか、そんな・・・!」
ジョージの驚きはもっともだった。なぜなら、大道寺千明と呼ばれた娘の身体は、明らかに人間のものでは
なかったのだ。
はじめは、彼女は青いサイバータイツを装着しているのだと誰もが思った。だが彼女の首元には、状態制御用の
チョーカーが見当たらない。そもそも遠征隊の随行学生ごときが、高価なサイバータイツを所有しているはずがない。
そう、彼女の全身を美しく彩る濃い青色の肌は、サイバータイツではなく、紛れもなく彼女自身の皮膚であった。
真っ青なボディの中で、小振りだが形の良い乳房だけが、真っ赤な乳首を中心とした黄色と黒の同心円状の模様で
くっきりと彩られており、呼吸とともにゆっくりと蛇腹状の膨張を繰り返していた。それは、まさに地球産の蜂の
腹部、そのものだった。
チアキの両手両脚は、真っ白なエナメルのような質感の、手袋とブーツ状の組織で覆われていた。背中には
巨大な4枚の翅がキラキラと輝き、額からは真っ赤な長い触角が伸びて、ピクピクとせわしなく動いていた。
そして彼女の股間には、女性のしるしである恥丘を縦に貫くスリットが、くっきり刻まれていた。恥ずかしげも
なく露出したその割れ目は、絶えずヒクヒクと、まるでナメクジのように蠕動を繰り返し、呼吸に合わせて
淫らな開閉を繰り返していた。真っ青なスリットが開くたびに、その奥に赤い肉がチラリと見える。
整った美貌の顔面と、長いつややかな髪だけが、地球人の女性そのままの姿を保っている。だがそのボディは、
周囲の蜂人間たちとは別の意味で、昆虫を連想させるものだった。そう、彼女の肉体は既に地球人のものではなく、
昆虫と女体が見事に融合した“蜂女”とでも呼ぶべきものに変貌していたのだ。
「・・・ア、アンタ、一体なんなのよッ、その身体は!?」
ガタガタ震えながら放ったウルフの問いに、チアキはただ沈黙を返すのみだった。
彼女のボディは乳房を除けば青が基調であり、全身が黄色と黒の縞で覆われた周囲の蜂人間どもとはまるで別種
であったが、見る者には両者が同質の存在であることが、理屈ではなく、直感的に感じられた。まるで、蜂人間
どもが働き蜂であるとしたら、彼女がその女王蜂であるかのように。
驚きで呆然となった一同の頭の中で、さまざまな推測や疑念が乱れ飛んだ。
本当にあれは地球人のチアキ本人なのか? 本人ではなく蜂人間の巧妙な擬態かも知れない。ではなぜさっき地球
標準語を話したのだ? チアキ本人の記憶を奪い、昆虫人間のメスに移し替えたものかも知れない。だったらなぜ、
一匹だけがこんな姿を? そもそも他の遠征隊のメンバーはどうなったのだ?
「教えてくれ。きみは地球人のチアキ・ダイドウジ君、本人なのか!?」
チアキはジョージの方を無言で見つめると、ゆっくりと頷いた。
「きみは、きみは何者かによってその姿に、蜂女に改造されてしまったのか!?」
チアキは妖しく意味ありげに微笑むと、もう一度ゆっくりと、しかもはっきりと頷いた。
やはり、本人だったのか。予想はしていたものの、明白に事実を告げられたことで、一行は強いショックを受けた。
「きみはいったいなぜ、この蜂人間たちと一緒にいるんだ。きみたちの目的は一体何なんだ!?」
チアキは澄んだよく通る声で答えた。
「その者をこちらに帰しなさい。そうすれば、我々はここから すぐに立ち去る。さもないと・・・!」
チアキの合図で、最前列にいた蜂人間の数体が、両腕を上げてアランたちの方に向けた。シュシュッ!という
鋭い音と共に何かが手首から放たれた。
アランたちの背後にあった立ち木の幹に、縦一列に何かが突き刺さった。
振り向いたアランたちは、それが自分たちのヘルメットを破壊した、あの超硬の針であることに気付き、思わず
ゾッとなった。
アランとジョージは、顔を見合わせて頷き合った。やむを得ない。アランがロープをほどくと、介抱された
蜂人間は翅を震わせて、仲間のほうを目がけて素早く飛び去った。
仲間が開放されると同時に、アランたちを取り囲んでいた蜂人間たちの姿が、徐々に消えていった。
キチキチキチ・・・という耳障りな音も、次第に遠ざかってゆく。
「待って!」
叫んだのはアンヌだった。
「パパは、ピエール・シャンブロワは、一体どこにいるんですか!?]
アンヌは蒼い顔で震えながら、思い詰めたような声でそう蜂人間たちに尋ねた。
だが蜂人間たちは言葉が通じないのか、どんどんその場から姿を消してゆく。最後にその場に残ったのは、蜂女に
改造された地球人女性チアキと、そしてもう一人の、地球人の顔を持った蜂女だった。
「き・・・きみは、デボラ・アーネルセンくん! ・・・エリック・デニケン教授の研究室にいた!」
それはゆるやかにウェーブした長い亜麻色の髪と、緑の瞳を持った、北欧系の美しい娘だった。
デボラと呼ばれた小柄なその娘の全身もまた、青いなめらかな皮膚でくまなく覆われ、ロケットのように前に
大きく張り出した豊満な乳房には、黄色と黒の同心円模様がくっきりと浮かび上がっていた。
彼女たちの脇の下から太ももにかけて、体側に沿って小さな孔が幾つも開いていた。それは呼吸とともに開閉を
繰り返す、蜂人間たちと同じ、昆虫の「気門」であった。
チアキ同様、昆虫人間として改造されたらしいデボラは、エナメルの手袋を着けたかのような細い腕を伸ばすと、
アンヌの方を指さしてこう告げた。
「そのまま道を進みなさい。その先に、あなたが望む答えがある」
デボラはクスッ、と妖しく笑うと、翅を大きく拡げ、真っ黒な夜空めがけて飛び去った。それに続いてチアキも
妖しく微笑みながら一同をゆっくりと眺め渡し、そして翅を拡げてふわりと浮き上がり、デボラの後を追った。
キチキチキチキチ・・・という蜂人間たちの合図が次第に消えてゆく。
呆然と後に残された地球人たちの周囲を、ただ、夜の沈黙が冷ややかに包み込んだ。
【7】
その夜は誰もが興奮して眠れなかった。翌朝、一同は無言で朝食を摂ると、そそくさと荷物をまとめ、ただ前を
目指して歩き出した。
不安はあったが、もはや船に引き返すことなど誰も考えていなかった。仮にそうしても、何の意味もないことが
わかっていたからだ。蜂女になったデボラが告げたごとく、もはや前進するしか、彼らに道はないのだ。
ジョージは歩きながら、昨夜コンピュータで確認した、蜂女たちの素性を思い出していた。いずれも遠征隊に
随行した、2名きりの女性隊員だ。
大道寺千明、24歳。アンドレア大学宇宙文明学研究室、博士課程所属。162センチ、48キロ。
デボラ・アーネルセン、23歳。同大学宇宙考古学研究室、博士課程所属。156センチ、45キロ。
どちらも普通の学生だ。特筆すべきことは、どちらもモデルにスカウトされたこともある、大学きっての美女と
いうことぐらいか。その彼女たちが一体なぜあんな姿に? そもそも人間をあんなふうに改造することが、例えば
現代の地球人類の科学で可能なのだろうか?
ゆうべ、ジョージにそう尋ねられたウルフはこう答えた。
「・・・ぜんぜん無理ね。あれはおそらく遺伝子改造。人間の細胞ひとつひとつのDNAを組み換えて再発現させた
うえ、組織そのものを根底から造り変える必要があるのよ。確かにナノマシンを大量に投与すれば遺伝子組み換え
そのものは可能だけど、改造組織をあそこまで定着・安定させるのには培養カプセルに入れても数か月はかかるわ。
要するにあのコたちの身体は、現代の地球の科学以上のもので造られているってこと」
ではこの星でいったい何者が、そんな科学力を持っているのだ? ジョージは彼女たちの周囲にいた、蜂人間たちの
姿を思い出していた。いやそんなはずはない。確かにあの蜂人間たちは高い知能を持ってはいるようだが、文明の
担い手であるとはとうてい思えない。むしろ野生動物に近い気配を放っていた。ならば他に、いったい誰が?
ジョージにはかいもく見当もつかなかった。
アランもまた、無言で歩きながら考えていた。ヘルメットを破壊したのが、あの蜂人間たちの仕業だということは
わかった。だが何のために? そして連中が、自分たちをどこかへ導こうとしているらしいことも。だがそこに
何があると言うのだ? いくら考えても、答が出るはずもなかった。
アランは腹を決めた。ならば進んでやろう。奴らが何を企んでいるにせよ、それをこの目で確かめてやろう。
ジョージやアラン以上に、不安を胸に抱えながら歩いていたのはアンヌだった。
行方不明の遠征隊のうち、少なくとも2名が発見された。だが彼女たちは地球人ではない、異形の蜂女へと改造
されていた。では、残りのメンバーはいったいどこにいるのか? 今ごろ、どんな目に遭っているのか?
「パパは・・・パパはいったい、どうなったの?」
アンヌの傍に寄り添ったレイラが、彼女の肩を無言でギュッと抱き締めた。バンボが慰めるように言った。
「アンヌさん。私の国のことわざにあります。目を閉じて逃げた者は野獣の餌となるが、目を開けて逃げた者は
家族に迎えられる、と。考えるのはおよしなさい。しっかり目を開けて、ひたすら前だけを向いて進むのですよ」
アンヌはうるんだ目を上げ、キッと涙をぬぐうと、小さな声で皆にありがとうと呟いた。
やがて一行は、森の中に草原が大きく開けた場所に出た。衛星軌道上からの観測で、深緑色の森の中でそこだけ
鮮やかな緑色をしていることからグリーンスポットと名付けられた、地表に点在する円形の草原のひとつであった。
いざ草原に足を踏み入れてみると、最初に目をひいたのはあちこちに散在している、さまざまな動物の干からびた
外骨格の群れであった。
草原の中心らしき場所には、大きな太い幹の木が一本生えていた。特に注意を引かれるのは、地面の上に放射状に
伸びる、幅1メートルほどの細い溝である。どうやら溝は中央の巨大な木から、草原全体に伸びているらしい。
一行が草原に辿り着いてしばらくすると、驚くべきことが起こった。
周囲の森の中から、ソロソロと無数の動物たちが姿を現したのだ。ゾウのような巨大な生き物がいる。シカの
ように敏捷な生き物も、ウサギのように小さな生き物もいる。空を飛ぶ小さな虫らしきものもいる。どの生き物も
共通して6本の足と3つの複眼を持ち、固い外骨格で覆われている。今まで森の中でほとんど動物に遭遇しなかった
だけに、意外に思えるほどの数だった。
「いったい、何が始まろうって言うんだ?」
その理由はすぐにわかった。ゴボ、ゴボ、ゴボ、という音とともに、中央の巨大な木の幹に幾つもある洞から
澄んだ水が湧き出し、放射状の溝に沿ってゆっくりと流れてきたのだ。
動物たちは頭部を溝の中に屈め、夢中で水を飲み始めた。大きな獣も小さな獣も、夢中で渇きを癒し続ける。
そして溝を流れる残りの水は、周囲の森の中に消えて地面に染み込んでゆく。
バンボが感嘆の声を上げた。
「驚きました。これは一種の灌漑システムですよ。あの木が水を供給し、付近の生き物たちを養っているんです」
ドグが溝を流れる水をすくい上げ、唇をつけた。
「姐さん、この水、ほんのり甘いですよ!」
その言葉に他の者も腰をかがめ、水をすくっておそるおそる口に運んだ。確かに、うっすらとした甘みが舌に残る。
「はあーん。たぶん樹液が含まれているのね。きっとミネラル分が豊富よ、この水」
ウルフが簡易試験機を使い、水に毒性が無いことを確認した。
道中で水を補給できる見込みが低かったため、彼らは飲料を節約しながら歩み続けていた。喉が乾いていた一行は
遠慮なしに水辺に屈み込み、澄んだ水をゴクゴクと飲み続けた。
「美味しい!」アンヌが今日初めての笑みを浮かべた。
「こりゃ美味ぇや」ドグは溝を流れる水流に直接口をつけ、ガバガバと音を立てて飲んでいる。
だが突然。
ウッ!とうなったかと思うと、ドグの様子がおかしくなった。両手で喉を押さえたまま仰向けになって激しく
暴れ出した。息ができないのか、声無き悲鳴を上げながら、顔面蒼白になって身体を痙攣させている。
「いけない! 喉に何かが詰まったらしい!」
アランとウルフ、レイラが駆けつけた。アランが暴れるドグの顔を押さえつけて顎を開かせ、ウルフが喉に指を
突っ込んで吐かせようとする。レイラは必死でドグの背中をマッサージする。
「おえっ!・・・ぐほっ・・・ゴホッ・・・ゴホッ・・・」
ドグの口から、透明なアメーバのようなものがドロッ、と流れ出した。
ようやく息ができるようになったのか、ドグはむせて激しく咳き込んだ。ドグの口から飛び出したゲル状のものは、
地面をツ、ツ、ツと這って溝の中に必死で戻ろうとする。
「ちッ! こいつめ!」
ホイがブラスター(熱線銃)を構え、アメーバ目がけて撃った。
「はわわッ! 火はダメだって言ってるでしょッ!」
ウルフの警告は間に合わなかった。アメーバはたちまち黒焦げになったが、勢い余って草原に火が点き、人の
背丈よりも高い炎がその場に勢い良く吹き上がった。
アランとジョージはすかさず水路に飛び降り、脱いだジャケットに水を汲むと、勢い良く火にぶち撒けた。
しばらくの奮闘の後、ようやく火は鎮まった。
「・・・な、何だったんだ、この生き物は?」
「水の中に住むゲル状の生命体ね、きっと。水と一緒に動物に飲まれると食道を塞いで窒息させ、あとから
死体をゆっくり消化するのよ」
「そうか・・・あちこちに死体が転がっているのは、こいつの仕業だったのか」
「・・・おちおち水も飲んでいられないってことね、この星では」
レイラが咳き込み続けるドグの背中を、何度もマッサージしながらそう呟いた。
【8】
水の補給ができたため、一行の足取りは少し軽くなった。草原を横断し、彼らは再び森の中に足を踏み入れた。
誰ももはや口を開こうとはしない。重苦しい沈黙が一行を支配していた。
森に入るとともに、蜂人間たちが対話しているらしい、キチキチキチキチ・・・という音が再び響いてきた。
その音を聞くと、誰もが暗鬱とした思いに囚われた。昨夜の蜂女たちのことを思い出さずにはいられないからだ。
とうとうホイが沈黙に耐えられなくなって、出し抜けに軽口を飛ばし始めた。
「そう言えば姐さん、こないだシリウスに旅立った調査船の話が聞きましたか? 太陽よりもずっと表面温度が
高いのに、ふつうの耐熱防御しかしていないってんで問題になったやつですよ。で、そのことを追求された
技術者の奴、何て言ったと思います? 『だったら夜間に飛べば問題ないじゃないか』って」
アンヌがプッ、と吹き出した。ホイは調子に乗って、次々とくだらないジョークを飛ばし始めた。
「アンヌ、こないだ月のモイライ宇宙港であった話なんだけど、火星のマーズポート行き231便が出港時刻から
1時間経っても動き出さなくてさ、乗客がイライラし始めた頃に船長からのアナウンスがあったんだ。この船は
イオンエンジンの故障が発見され、爆発の可能性があるので急遽出港を中止します。次の便に乗り換えて下さい
って。それを聞いた乗客が怒り出したのさ。何しろ1週間に1便しかないからね。あまり乗客が騒ぐものだから、
根負けした船長が言ったのさ。じゃあ出港しますって。そうしたら船内はさらにパニックになったってさ」
「や・・・やだぁ、ホイさんったら」
アンヌは顔を両手で必死に押さえ、クックックッ、と必死になって笑いを堪えている。
アンヌだけではない。普段ならクスリともしないようなジョークを聞いて、一行の顔はなぜかゆるみ始めた。
突然、ウルフがアランに向かって、タウ・ケチで自分が発見したネコクラゲについての自慢話を始めた。
ドグが意外な美声でオペラを歌い始めた。寡黙なバンボが饒舌になって、この惑星の海の行方についての仮説を
延々とジョージに語り始めた。アンヌももはや開いた口を隠そうともせず、涙を流しつつコロコロと笑っている。
どういうわけか全員、異常なハイテンションになってしまったのだ。
アランが偶然、内部が洞になった枯れ枝を踏み抜き、その音で我に返った。
「おいみんな! 急いでここから離れろ!」
アランの叫ぶような声を聞いても、一行は合点がいかないのか、まだポカンとしていた。
彼らが佇んでいるのは、周囲の森よりも一段低くなった椀状の窪地だった。何かの微細粒子だろうか、うっすらと
霧のようなものが立ちこめている。
「空気中に麻薬成分が含まれてるらしい! ここは危険だ!」
その時、キチキチキチキチ・・・という蜂人間たちの暗号が、突然テンポを変えた。まるで歌うような抑揚に富んだ
リズムへと変わった。
「早く、早く高台に登るんだ!」
アランがアンヌの手を掴んで走り出そうとした。その時だった。
周囲に生えている木の幹にいくつも開いた、洞のような穴から、白く太い触手のようなものが無数に現れた。
触手はピュピュッ!と勢いよく伸び、アンヌとレイラの二人を目がけて、四方八方から襲いかかった。
「チッ!」
アランは反射的にアンヌをかばって地面に押し倒した。襲い来る触手を手にした電磁ナイフでなぎ払う。触手は
見かけによらず固く、切り刻まれるとバラバラと地面に落下した。一方のレイラは・・・。
「きゃああああッ!」
「姐さん!!」
レイラは四肢を触手にからみ取られ、一行の頭上へと引きずり上げられた。そして四方向から両手両脚を大の字に
引っ張られたまま、地上5メートルほどの高さにうつ伏せ状態で吊り下げられた。
そして太い触手を伝って、別種の細い触手が何本もうねうねと伸び、レイラの身体に迫って来た。
「いやああッ! やめて!」
細い触手の群れはレイラに触れると、まるで全身を確かめるかのように、サイバータイツの上をうねうねと這い
回り、脇を、尻を、太ももをわさわさと撫で回した。豊満な乳房にグルグルとからみつき、乳首をもぞもぞと
舐めるように刺激した。大きく拡げられた股間をスリットに沿ってチロチロと何度も往復し、探り当てた肉の豆を
触手の先端でぐりぐりとこねくり回すように玩んだ。
「いやッ! いやあああッ!」
そしてひときわ太い触手がレイラの目の前に迫ると、抵抗するレイラの唇をこじ開けて、勢いよく口の中に
ズブズブと潜り込んできた。
「んぐッ!・・・ん・・・ん・・・むぐう・・・」
太い触手はレイラの口腔の中をしきりにまさぐり、喉の奥に向かってもぞもぞと潜ってゆく。触手の表面から
分泌された刺激性の粘液がレイラの喉の奥に流れ込み、カッと煮え滾るような衝撃が彼女の脳天を貫く。
「・・・ん!・・・ん!・・・んんっ!・・・」
全身の性感帯をじんじん刺激する、無数の触手の淫靡な動きに、レイラの正気がだんだんと遠くなってゆく。
「姐さんッ! 今たすけるぞっ!」
ドグとホイが木によじ昇り、触手のような枝を掴もうと必死に腕を伸ばす。だが体重を支える枝は細く、触手の
位置が高すぎるので、あとちょっとのところで届かない。アランも触手に向かって短針銃を放つが、効果がない。
「畜生ッ! 姐さんっ!」
触手に全身を嬲られるレイラに向かって、さらに大小無数の触手がうねうねと集まってきた。レイラの拡げられた
両脚の間、大きくこじ開けられたスリットの中に、縦に並んだ灰青色のノズルプラグがはっきりと見えている。
触手の群れは彼女の股間めがけて殺到し、まるで侵入できる穴を探しているかのように、ノズルプラグの上を
しきりになまめかしくまさぐり続ける。
「・・・んんッ!・・・んんッ!・・・むんッ!・・・んんんッ!!」
レイラの頭は真っ白であった。股間を責める触手の動きが、彼女の理性を奪い、熱い衝動を喚び覚ます。彼女は
触手に陵辱されながら、明らかに感じていた。いつしか彼女は顔を紅潮させ、触手からもっと快感を得ようと
無意識の裡に腰をひねり、ゆっくりと揺すり始めた。腰を揺すると、快感は爆発的に増大した。レイラは夢中に
なって腰を揺さぶった。引き締まったかたちのよいお尻を、ぶん、ぶん、と嬉しそうに揺さぶった。
「・・・んっ・・・んんっ・・・あうん・・・あうん・・・あうっ・・・あうっ・・・」
「姐さん! 辛抱だ!」
ホイが木から飛び降りると、自分のバックパックの中から船体壁切断用のエンジンカッターを取り出した。
「ウドの大木め! 見てやがれ!」
ホイはカッターの動力を入れると、レイラを捕えている触手の一本が延びている木めがけて、鬼のような形相で
切りかかった。
ブバババ!バリバリバリッ!
耳をつんざく凄まじい音とともに、切り裂かれた幹から、血のような真っ赤な液体がブシューッ、と飛び散った。
「きゃあッ!」
その凄惨な光景に思わずアンヌが叫ぶ。
ボイは真っ赤な樹液まみれになりながらも、そのまま渾身の力を込めて木の一本を切り倒した。
支えが一本失われたことでバランスを失った空中のレイラは、ぐらりとドグが掴まっている木の方へ移動した。
すかさずドグが、触手のような枝をナイフで断ち切った。レイラの身体は地上に向かってずるりとすべり落ち、
駆け寄ったアランが落下する彼女の身体を見事に受け止めた。
ドグが急いで木から飛び降り、気を失ったレイラの頬を平手でぺちぺちと打って正気づかせようとする。
その時。キチキチキチキチ・・・という音が耳を聾するようにカン高く響き渡った。その音に驚いた一同が周囲を
見回したその隙に。
「ぎゃああああァァーーーッッ!!」
木を切り倒したホイめがけて、怒りに狂ったかのように無数の触手が襲いかかった。ホイの身体は触手によって
凄まじい力で空中に吊り上げられ、そして凄まじい断末魔の悲鳴とともに、血と肉塊の混ざったものがボトボトと
地上に降り注いだ。
「・・・いやああああッッッ!」
アンヌが絶叫した。その悲鳴で意識を取り戻したレイラは、顔面蒼白になったドグの顔を見つめ、それから地上に
ぶち撒けられた血と肉塊に視線を移し、ようやく何が起こったのかを理解した。
「ホ、ホイィッッ!!」
レイラは跪いたアランの腕からガバッと飛び起きると、ドグの腰に下げられたブラスターを素早く奪い取り、
触手の生えた木めがけて狂ったように熱線を放った。
「よせっ、レイラ!」
「 よくも!!・・・よくもホイをッッツ!!」
耳をつんざくような爆発音とともに、たちまち木は燃え上がり、周囲は凄まじい猛火に包まれた。
「みんな早く、早く高台に逃げるんだ!」
バンボがとっさにアンヌを腕に抱え上げると、斜面を駆け上がった。ウルフも、ジョージも、脱兎のごとく窪地
から高台目がけて一目散に駆け出した。
アランとドグは半狂乱になったレイラの両腕を掴み、引きずってでも業火の中から抜け出そうとした。だが
火の手はまたたく間に彼らの周囲を炎の壁に変え、逃げ場を完全に塞いでしまった。強烈な熱気が逃げ遅れた
3人に容赦なく襲いかかる。
「ちぃっ! これまでか!」
その時だ。
キチキチキチキチ・・・という音が遠くにかすかに響くのが聞えたかと思うと、炎の下からシュウシュウという音と
ともに、白い煙のようなものが吹き上がった。煙を浴びたとたん、火の手が急激に収まってゆく。
「いかん! 炭酸ガスだ!」
アランが直感的に叫んだ。
「息を止めろ!そのまま、全力で走るんだ!」
3人は息を止めたまま、周囲に立ちこめる真っ白な煙の中を必死で抜け、高台に駆け上がった。
息を切らしてゼイゼイとあえぐアランたちの隣で、ウルフが茫然とした声で言った。
「植物が・・・植物が火を消したんだわ。炭酸ガスを放って」
「・・・そんな・・・まさか・・・植物が」
もうもうと白い煙に包まれた窪地を見下ろしながら、バンボが呆然と呟いた。
レイラは地面にうつ伏せに倒れたまま、手で顔を覆ってウッ、ウッ、ウッ、と咽び続けている。
その傍らにうずくまったドグは、姐さん、泣かないで、姐さん、と呟きながら、自分もボロボロと滝のように
涙をこぼし続けていた。
【9】
ホイを失ったレイラの落胆は、それは気の毒なほどであった。
今度はアンヌがずっとレイラに寄り添い、フラフラと足取りもおぼつかない彼女を支えながら歩いた。
無理もない。ホイ・チェンマイとドグ・ドイカムの2人は、レイラの父トビアスが健在だった頃に拾われて以来、
ずっとレイラとトリオで宇宙の海を渡り歩いて来た、家族同然の存在だったのだ。
その夜、力場テントの中でも、レイラはアンヌに背を向けたまま、真っ赤に泣きはらした目でしきりに何かを
つぶやいていた。ごめんね、ごめんねという切れ切れの言葉だけが聞き取れた。
アンヌも涙ぐんだまま何も言えず、背中からレイラに寄りそうと、ただギュッと抱き締めた。ふくよかな胸に
触れた手のひらの、体温を通さないサイバータイツ越しに、トクントクンという心臓の鼓動だけが伝わってきた。
その鼓動に秘められた悲しみの音を感じて、アンヌはレイラの背中に顔を埋め、もらい泣きを始めた。
翌日、一行は切り立った屏風状の崖の前に辿り着いた。高さは30メートルほど、無数不定形の穴が表面に開いた
黒灰色の壁が延々と連なり、一行の行く手を阻んでいる。
「見ろ! これは・・・この壁は、コンクリートだ!」
ジョージが壁の表面に触れながら叫んだ。
「間違いない。これは・・・人工のものだ。自然にできたものじゃない!」
予想していたとはいえ、異星文明のはっきりとした痕跡との遭遇にジョージは興奮し、あちこちの穴を覗き込んだ。
穴の中から奇怪な羽虫がバタバタバタ・・・と数匹飛び出してきて、一行を驚かせた。
「確かに、これは異星人の建築群のようですね。でも使われている気配はない。どれも今は、下等な生物の巣穴に
なっているようですよ」
「生活の痕跡はないのか!? どこかに、これを建設した連中のことがわかるようなものは残されてないのか!?」
「放棄されてずいぶん経つようです。すべて風化して、何も残ってはいないのでしょう」
「じゃあ住人は、住人は一体どこに消えたんだ!? せっかくこんな文明を築きながら、絶滅してしまったのか!?」
「例の蜂人間じゃあないの? アタシたちが森で遭遇した」
「いや、連中は空を飛べる。だが見ろ、この建物は、陸上生活をする生き物が作ったものだ」
興奮して議論を繰り返す科学者たちに向かって、アランが、青い顔をしたレイラと彼女に寄り添うアンヌの方を
横目で見ながら言った。
「ジョージ。バンボ。気持ちはわかるが、本格的な調査が必要なら帰りにでもしてくれ。今は、先に進むことだけ
を考えるべきだ」
「・・・ああ、そうだったな。すまん」
ジョージは名残惜しげにうなずくと、バンボと共にアランたちの後を追った。
進路を求めて遺跡群の迂回を続ける一行の前に、やがて、崖壁面の巨大な亀裂が現れた。亀裂の奥からなにやら
うっすらと青い光が放たれている。
「どうやら、この中に入ってゆくしかないようだな。バンボ、入っても崩れないだろうか?」
「風化の具合からして、かなり古い洞窟ですね。崩落の危険は当面ないでしょう」
「何が襲ってくるかわからん。全員ひとかたまりになって離れないようにしろ」
洞窟の幅は広く、天井は高かった。およそ20メートルはあっただろう。薄暗いとはいえ、洞窟の中から漏れる
青い光は途絶えず、一行は足元に煩わされることもなく、まっすぐに延びた道を順調に歩んでゆくことができた。
そう、それは明らかに道であった。何者かがここを歩むことを想定しているかのような、平坦な道が延びていた。
誰が、いったい何のためにこの道を作ったのか? この星の消えた文明の担い手と、あの蜂人間たちとに関係は
あるのか? 謎はいっそう深まるばかりだった。
だが、洞窟内をほのかに照らしている不思議な青い光の正体は、すぐに判明した。
「・・・信じられないわね。アンタたち、これをごらんなさい」
壁の窪みの中で光を放つ青い球体を、ウルフが針でつついて見せた。パン! という音とともに球体がはじけ、
中からフィラメントのようなものが現れた。
「これは・・・グロー放電球? ・・・中の気体は炭酸ガスか?」
「そう。低圧の炭酸ガスの中で放電を行い、白色光を出すシステムよ。光が青く見えるのは、球体を作っている
植物の組織のせいね」
「・・・植物! ・・・植物が、蛍光灯のような機能に進化しているのか!?」
「どうやら、この蔦が電気を送電しているようですね。植物繊維が金属結晶を大量に取り込んだ、いわゆる電導
ヅタなのでしょう」
「待ってくれ。植物がなぜ発光する必要がある? こんな洞窟に灯りをともす必要がどこにあるんだ!?」
「ここを通る誰かさんたちのために。親切な電気屋さんがわざわざ配線してくれたのよ」
喧々諤々と議論を沸騰させる科学者たちを、アランが再び制した。
「その親切な奴が誰であろうと、ただひとつ確かなことは、この先に電力の供給源があるということだ。そして
俺たちが用のあるのもその場所だ。・・・さあ! 先に進もう」
洞窟内で夜を明かし、一行が船を離れてから5日目の朝を迎えた。
一行の耳に、遠くからドドドドド、という水の響きが聞えてきた。歩みとともに水音は次第に高く、大きくなって
ゆき、やがて一行が進む洞窟の中の細い道は、地底を流れるとうとうとした河に並んだ。
アランたちが進む道よりも50メートルほど下の亀裂を、真っ黒な水が猛々しい怒濤とともに流れてゆく。
久しぶりに嗅ぐ、爽やかな水の匂いが、疲れた一行の心を癒した。
「やはり予想通り、地下に大量の水があったんだな」
「ねえ、見なさいよあのパイプ!」
ウルフの指さす先にあったのは、地底の河に水をちょろちょろと放流する無数のパイプであった。
「あれは・・・根よ。植物の根が変形したものよ!」
「根? 根が水をここに供給しているのか?」
「そう。きっとあの根は地下に張り巡らされていて、わずかな雨水を地表から集めて、この河に注いでいるのよ」
「そしてその水を、例の木が効率的に動物たちに配給している・・・と」
科学者たちは顔を見合わせた。
「驚いたな。本当に海の代わりを行うシステムが、地中にあったとは・・・!」
さらに半日ほど進むと、前方にまばゆい光がきらめく空間が現れ、一行を驚かせた。
そこは、直径数百メートルはありそうな円形の空間。洞窟の中の開けた広場だった。そして、そこが洞窟の終点、
行き止まりだった。
「・・・うわぁ、きれい・・・!」
そこは、夢の中のような幻想の世界であった。
広場の床は、丘のように盛り上がった草原だった。大小さまざまなゆるやかな隆起が、波打つように続いている。
丘の表面には地球人の腰くらいの高さの、タンポポの綿毛のような形をした真っ青な草が、無数に生えていた。
その綿毛は、洞窟の壁に生えた無数の放電植物が発するまばゆい光に映えてキラキラと輝き、まるで光の絨毯の
ように絶え間なくそよいでいた。
放電管植物が放つ光は、青から紫、赤から黄色へと、刻一刻とその色を変え、この世ならざる不思議な光景を作り
出している。
アンヌが嬉々とした表情で丘を駆け上がり、綿毛の真ん中で軽やかにクルクルッ、と回った。
「・・・ステキ! まるで光の中を歩いているみたい!」
アンヌは子どものようにはしゃぎながら、足を揃えてバレエのステップを踏んだ。光の絨毯の中で軽やかに舞う
その姿は、まるで純白の花の妖精であった。
レイラも力ない笑顔を浮かべながら、ぽつんと呟いた。
「ほんと・・・綺麗ね」
その様子を、ドグが横目で心配そうに窺う。
時おり、綿毛がふわり、と舞い上がり、洞窟の上めがけて上昇してゆく。よく見るとはるか数十メートル上の
天井にはぽっかりと穴が開いており、夕暮れの空を雲が渡ってゆくのがアランたちからも見える。
上空に舞う綿毛を、黒い影のようなものが素早く近づいては抱きかかえ、フイッと穴の外へ消えてゆく。
「・・・そうか、船から見えたあの裂け目の光は、ここだったんだ」
ウルフとバンボが綿毛をよく調べ、ひとつの仮説を立てた。
「ここはね、おそらく森の苗木がある程度成長するまで育てる“苗床”みたいな場所なのよ」
「外は水が不足しています。水の豊富なこの洞窟で苗木を育ててから、あちこちに植樹をしているのでしょう」
「植樹って、いったい誰が?」
「そりゃあアンタ、森の管理人でしょ?」
「・・・管理人・・・!?」
ゴクリと唾を飲み込んだまま、誰もが次の言葉を発することを躊躇した。
だが彼らにはもう、おぼろげながら真実がわかっていた。
これまでの旅で、森の状況が変わるたびになぜ、キチキチキチキチ・・・というカン高い音が鳴っていたのか。
なぜ音に反応するかのように、都合よくパラシュート植物や、二酸化炭素を吹き出す植物が現れたのか。
そう、森にはそれを見守り、事故が起こるたびに植物たちに適切な指示を下す者がついているのだ。
そしてアランたち侵入者の行動は、四六時中、管理人たちによって見張られているのだ。
嫌な雰囲気を払い退けるように、ジョージが咳払いをしながら言った。
「とにかく、外はもう日暮れ時のようだ。調査の必要もあるだろうし、今晩はここで野営しよう」
【10】
夕食が済み、学者たちは綿毛の採取と分析に忙しく動き回っていた。可哀そうに、ドグは荷物を右から左に運ぶ
のにホイの分まで奔走させられている。
力場テントを設営した場所からポツンと離れた丘の上で、レイラは膝をかかえて座り、風にそよぐ綿毛の色が
少しずつ変わってゆくのを無言で眺めていた。
いつの間に来たのか、アランが彼女の隣にそっと腰を降ろした。
「綺麗だな」
「・・・ええ」
アランはレイラの寂しそうな横顔をじっと見つめた。
「レイラ、自分一人を責めるな。あれは事故だ、輸送船団員には付き物の事故だ。ホイもきっとそう思ってる」
「違うの。そんなことじゃないの」レイラはかぶりを振った。
「わたし・・・自信がなくなったの。父さんがいなくなってから、今までわたし、男たちに負けるまいと必死に
やってきたわ。わたしの力でこの輸送船を支えているんだという自負を持って踏ん張ってきたわ。でも、いざ
ホイがいなくなってみたら、これからわたし自身の力でいったい何ができるのか、ぜんぜん自信を持てなく
なってしまったの」
「レイラ、それは・・・」
「考えてみたらわたし、今までずっと誰かの腕に守られてきたのね。父さん、アラン、ドグにホイ。あーあ、
わたしの力って、いったい何だったんだろう」
レイラは思い詰めたような目でアランの方を見つめた。
「・・・ねえ、アラン。もう一度、やり直せないのかな?」
アランは眉をひそめた。
「何を言う」
「あなたに戻って来て欲しいのよ」
「よせレイラ。俺たちの仲はビジネスオンリーだ。そう二人で決めたじゃないか」
「いいえ。今だから言える。わたしにはあなたが、もう一度必要なのよ」
「よしてくれ! 俺はもう輸送船団には戻れない。今さら、誰も受け入れてくれるはずがない」
「あれは事故よ。あなたが全部、罪をかぶることなんてなかったじゃない!」
「済んだことだ。もう3年も前にな。俺たちの仲と一緒に」
「アラン・・・」
レイラは立ち上がった。
「我侭だってわかってる。でもわたしには、あなたがもう一度必要なの。ねえ、もう一度愛して! 過去のことは
何もかも忘れて、もう一度、わたしを愛して!」
レイラは目を閉じて、小さな声で呪文のような言葉を唱えた。カチューシャのアンテナが輝き、レイラの全身を
ピッチリと包んでいた真っ赤なサイバータイツが、腰までスルリと脱げ落ちた。真っ白な豊満な胸が露わになり、
ぷるん、と大きく揺れた。
「レイラ、お前・・・」
レイラは屈み込むと股間に手を伸ばして、秘所の奥深く挿入されたノズルプラグをゆっくりと引き抜いた。
膣の内部をいっぱいに満たしていた、長さ10cm余り、太さ3cmほどのぶよぶよした灰青色の物体がずるり、
と引き抜かれ、粘液の糸を引きながらレイラの股間に垂れ下がった。
その重みで、サイバータイツがレイラの足元にバサリと落ちた。
22歳の娘の、ふくよかで引き締まった美しい裸身がすっかりあらわになった。12歳の時に父親に初めてサイバー
タイツを着せられて以来、放射線で永久脱毛処理を施し、完全な無毛になったその肌は、大理石の彫刻のように
白く透き通り、なめらかで美しかった。
そしてあらわになったレイラの陰唇は、色素の沈着もほとんどなく、処女のようにきれいなピンク色だった。
驚いて立ち上がったアランの前に、レイラは自分のすべてをさらけ出し、うるんだ瞳でこう言った。
「ねえ見て、このカラダ。綺麗でしょう? ・・・あなたがいなくなってから、わたし、どんな男にも身体を許して
いないのよ。あの時のままなのよ。・・・お願いよアラン。わたしを抱いて。もう一度、もう一度わたしを愛して!
あなたの存在をこのカラダに感じさせて! わたし・・・もう、一人ぽっちには耐えられない!」
「よせ、レイラ。よすんだ・・・服を、早く服を着てくれ」
レイラはかぶりを振ると、倒れるようにアランの胸に身を投げ出した。
アランのたくましい胸板に顔を埋め、豊満な乳房をアランの身体にギュッと押し付けながら、レイラは彼の
身体を緊く抱き締めた。彼の背中に回した細い腕が、ブルブルと震えている。
「別れてからのこの3年間、あたしは、ずっとあなたのことが忘れられなかった。あなたにもう一度抱かれること
だけを夢見てきたの。お願いよアラン。抱いて。わたしを愛して! あなたが欲しい! あなたに抱かれたい!
あなたが、あなたが必要なの!」
レイラは右手でアランの左の手を握り、自分のふくよかな乳房の上ににそっと導いた。そして彼の手を掴んだまま、
円を描くように自分の乳房を揉みしだかせた。その速度は徐々に早くなり、レイラの吐息が次第に荒くなってゆく。
「やめろ、やめてくれレイラ・・・」
アランは必死に顔をそむけ、悲しい声でつぶやく。
「俺にはもう、お前を抱ける資格なんかない。何もかも、あの日を最後に失ったんだ」
「嫌よ! そんなの嫌! ・・・もう一度、あの頃に戻りたい! ねえアラン、あなたは覚えてる? わたしたちが初めて
結ばれたあの夜を。わたしは、わたしははっきり覚えてる。17歳のわたしが女になったあの日を!」
レイラは自らの乳房に置いたアランの手を、ギュッと握りしめた。
「わたしは、わたしは、決して忘れないわ! あなたに、処女を捧げて、いっぱい注がれて、女にしてもらった
あの熱い夜のことを! わたしは、決して忘れない! わたしの中に、あなたが初めて入ってきた時の、あの、
痛みと、悦びとを、わたしは決して忘れない!アラン! あなたは、わたしにとって初めての男(ひと)。そして
今もただ一人の男(ひと)!」
避妊剤が発達したこの時代、膣内射精は当たり前の行為であり、女性たちにとっては自分の中に愛する男の
精液を注いでもらうことが、最大の幸福の証であった。
レイラは、自分の腰をアランの太ももにぴたりと密着させたまま、挑発するように艶めかしく尻を動かした。
彼の手を掴んで自分の尻に導き、腰のくびれからヒップにかけての曲線を撫でるように触れさせた。まるで、
そうすることによって自らの肉体の感触を、アランに思い出させようとするかのように。
「そしてあの星の浜辺! あなたと何度かカラダを重ねて、女の悦びに目覚めて、砂の上を裸になって一晩中
愛し合ったあの夜! あなたに何度も何度も貫かれて、注がれて、気絶して、また愛し合って、また注がれて。
狂ったようにお互いのカラダを求め、貪り合った、あの狂おしい夜のことを、わたしは一生忘れないわ!」
レイラはそう言いながら、アランの両手首を掴んだまま、ゆっくりと後ろにのけぞるように地面の上に腰を
落とした。そして引き締まった長い両脚をM字型に開くと、ギラギラと目を輝かせながら、アランの腕を手前に
ぐいと引き寄せた。アランの身体を、拡げた両脚の間で受け止めるかのように。そう、レイラは欲望が抑えられ
なくなった時、いつもこうやって、アランを自らの股間に花開く快楽の園へと誘ったのだ。
レイラの鼓動は早鐘のように打ち、息は荒く乱れ、目はらんらんと輝いていた。股間の肉の割れ目がすっかり
あらわになり、蜜に濡れそぼった真っ赤な肉が割れ目の中にヒクヒクと動いているのがアランにもはっきり見えた。
「わたしの魂は、あれからずっと、あなたの元に繋がれているの。わたしのカラダには、二度と消えないあなたの
烙印が刻まれているのよ。わたしのカラダの、細胞のひとつひとつが、いまもあなたの愛撫を覚えているの!
わたしの魂も、カラダも、ぜんぶあなただけのものなのよ! だから、だから今すぐ抱いて! わたしを抱いて!
早く! 無茶苦茶にして! お願い!!」
「やめろ、やめろォっ!!」
アランは緊く握ったレイラの手をふりほどくと、彼女に背中を向けた。
「やめてくれ・・・レイラ・・・」
「どうして!? どうしてなのアラン!?」
レイラの声は悲しみに張り裂けそうであった。
「わたしは、心まで愛してなんて贅沢は言わない! わたしのカラダを使って、楽しんでくれればそれでいいの!
あなたとひとつに繋がることさえできれば、わたしはそれで幸せなのよ! ・・・欲しいの。あなたが欲しいの!
わたしを激しく抱いて! 毀れるくらいに強く抱きしめて!」
レイラは立ち上がって、アランの背中に堅くしがみついた。
アランは振り返ると彼女の肩を掴み、乱暴に引き離した。そして、涙をはらんだ瞳で彼女の顔を正面から見つめ、
悲しげにこう告げた。
「もう、すべては終わったんだ。やり直しなど無意味だ。お前も過去のことは忘れろ。新しい恋に生きてくれ」
レイラは無言の叫びをあげ、絶望と悲しみで顔をくしゃくしゃにすると、その場にくずれ落ちた。
地面に小さくうずくまり、膝を抱えて、ウッ、ウッと押し殺した声で泣き始めた。
「先に帰る。早く服を着て、お前もテントに戻れ」
アランの姿が見えなくなり、夕暮れ時の肌寒い風がレイラの裸身を冷やしても、彼女の嗚咽は止まらなかった。
「アラン・・・どうして・・・どうして駄目なの・・・!」
レイラはフラフラと立ち上がり、全裸のまま、よろめく足取りで丘をとぼとぼと下り始めた。その時だった。
「むぐッ!」
いきなりレイラは、背後から何者かによって口を塞がれた。
右手を強い力で掴まれ、左手を巻き込むかたちで背中に後ろ手を回されている。自由を奪われたレイラは必死に
首を曲げ、背後にいる曲者の顔を覗き見ようとした。長い黒髪がサラリ、とそよいだのが目に入った。
「やっと、あれを脱いでくれた」
その声は、蜂女の姿に改造されたあの地球人女性、チアキのものだった。
動揺したレイラの顔を、チアキは背後から悪戯っぽく覗き込んだ。そして妖しく微笑むと、蠕動する黄色と黒の
蜂模様の乳房を、レイラの背中にしっかりと密着させた。
プスリ。
「・・・!!」
チアキの乳首から鋭い針が飛び出し、レイラの裸身を貫いた。何かの液体が勢いよく注射され、レイラの意識は
クラクラと遠のいていった。
チアキはぐったりとなったレイラの裸体を両腕で抱えると、もう一人の蜂女に触角を震わせて合図を送った。
亜麻色の髪の蜂女、デボラが陰からあらわれた。デボラは草原の上に脱ぎ捨ててあった、レイラのサイバータイツ
を抱えると、大きな半透明の翅を拡げて音もなく、レイラを抱えたチアキとともにどこかへ飛び去った。
【11】
レイラが意識を取り戻したのは、不思議な光に包まれた広い空間の中だった。
《・・・うぅん・・・・・・ハッ!・・・ここはどこなの!?》
周囲の壁は柔らかく、まるで生きた生物の組織のよう。あちこちに幻想的に輝いている灯りは、例の放電管植物
が放つものだろうか。
レイラは、自分が蜂女たちに拉致されたことを思いだし、青くなって自分の置かれた状況を確かめた。
彼女は全裸のまま、ベッドのように柔らかい巨大な花弁の中央に横たわっていた。両手両足首を蔦のようなもので
大の字に堅く縛ってあるらしく、いくらもがいても身動きを取ることができない。
《・・・どうしよう・・・どうしても外せないわ・・・》
チアキとデボラ、二体の美しい蜂女が、ウフフフフ・・・と妖しく笑いながらレイラの顔を窺っている。
背中の翅をゆっくりと開閉させながら、無邪気で妖艶な笑いをふりまいている。
その姿はまるで、清楚で妖艶な、双子の妖精であった。黒髪の東洋人と亜麻色の髪の白人、顔立ちこそまったく
違えども、二体の蜂女は同じ種類の生理的違和感、人間とは異質の空気を放っていた。
前髪の中から伸びる、絶えずヒクヒクと動く赤い触角を除けば、彼女たちの頭部は一見、地球人女性と変わらない
ように見える。だがよく見ると顔の皮膚は青いボディと同様、うぶ毛すら生えておらず、まるで人形のようだ。
そして何よりも、黄色と黒の同心円模様で彩られた乳房の存在が、彼女たちを人間離れした存在にしていた。
それは蜂の腹部のように絶えず蠢き、呼吸とともにゆっくりと膨張を繰り返していた。そして泪滴形をした
真っ赤な乳首の先からは、銀色の小さな針の先が絶えずゆっくりと、出入運動を繰り返していた。
その動きは人間には不可能なものであったが、とほうもなく淫靡で、エロチックで、妖しげな官能の香りを
漂わせていた。女のレイラですら、思わず自分が赤面するのを感じるほどに。
人間離れしているのは乳房だけではなかった。彼女たちの脇腹から太ももにかけて一直線に、昆虫の気門に似た
小さな孔が幾つも並んでおり、呼吸に合わせて一斉に開閉運動を繰り返していた。
そう、彼女たちの姿は人体に昆虫の組織が見事に融合した、まさに昆虫人間と呼ぶべきものであった。
《・・・信じられない。人間がこんな姿にされるだなんて。でも一体、誰がこの人たちを改造したのかしら・・・》
その時レイラは、この蜂女たちが例の蜂人間たちの仲間であり、森の管理者であるということを思い出した。
そして管理者の合図で、木が自分たち一行に襲いかかり、ホイが無残な肉塊にされてしまった時の記憶が蘇った。
レイラはカッとなり、いま自分が置かれている状況を忘れて大声で叫んだ。
「あ、あなたたちッ! ・・・よくも、よくもホイをッ! この人殺し! 人殺し! ・・・ぜったい許さないッ!」
突然のレイラの剣幕に、蜂女たちはあっけにとられた様子だったが、突然真顔になるとそっけなく答えた。
「殺すつもりはなかったの。あれは事故。怒った木の暴走を止められなかったの」
「あなたと、もう一人の女の子のスーツを調べることが目的だったの。あんなスーツ、わたしたちは知らない」
「いったいどうすれば、脱がせることができるのか」
「脱がさないと、あなたたちを蜂女にできないから」
そのさりげない一言に、レイラの心臓は凍りついた。
「・・・わたしを、わたしをどうするですって!?」
蜂女たちは再び、クスクスと妖しい笑いを浮かべた。
「あなたはこれから、わたしたちと同じ、蜂女に生まれ変わるの」
レイラの顔面蒼白となった。まさかと恐れていた予感が現実のものとなり、背筋に冷たい戦慄が走った。
嫌だ。自分があんな身体にされるなんて、嫌だ。絶対に嫌だ。
「いやッ! やめて! 離して! ここから、ここから離して! 蜂女なんてイヤよ、いやッ! いやだァーッ!」
レイラは半狂乱になり、手足の束縛を何とかして外そうと大の字になったまま必死になってもがいた。
蜂女たちはクスクスクス、と笑い、レイラの左右に分かれて腰をかがめ、悪戯っぽくレイラの耳元に囁いた」
「大丈夫。すぐに終わるから」
「身体を切ったりなんかないわ。わたしたちの身体の中で作った同化液を、あなたの身体に注ぎ込むだけ。
そうすればあなたはすぐに、わたしたちと同じ身体に生まれ変わる」
そう言って蜂女たちは、自分の乳房を両手で掴んでレイラの前に突きだした。乳首の先端から小さな針が覗き、
その先から何かの紫色の粘液がピュピュッ、と吹き出すのが見えた。あれが「同化液」だろうか?
「なんで! なんでこんなことをするの!? 誰かに命令でもされているの?」
蜂女たちは怪訝な表情で答えた。
「なんでって? じゃああなたは、なんでセックスをするの? 」
「え?」
あまりにも素朴で無邪気な問い掛けに、レイラは面食らった。
「さっきあなたは、男とセックスをとてもしたがってたわ。何のためにセックスしたかったの? 」
「気持ちがいいからでしょ? セックスをすると、気持ちよくなれるからでしょ? それから、あの男の精子を
もらって、あの男の子どもを孕みたいからでしょ? そしてそれは、あなたの本能がそう命じているんでしょ?
・・・わたしたちも同じなの」
「わたしたちはこうやって蜂女に生まれ変わったけど、まだたった2人きり。わたしたちの船には、2人しか
女の子がいなかったから。だから、もっと仲間を増やさなければならないの」
「だからずっとあなたたちを狙っていたの。あなたと、あの金髪の女の子を。わたしたちの仲間にするために」
レイラは首をがむしゃらに振って絶叫した。
「いやああああーーッッ!」
「さあ、始めるわ」
デボラが妖しく微笑みながら、腰をかがめてレイラの顔に近づいた。指先を拡げた両手で、必死に抵抗するレイラの
頬を軽くはさんだ。そっとはさまれただけなのに抵抗できない。人間の女性では考えられないほどの怪力だった。
蜂女は微笑むと、うっすらと開いた小振りな唇を、レイラのそれに重ねた。
「・・・むぐッ! ・・・んんッ!」
レイラは何物かが、唇を割って自分の口腔内に侵入してくるのを感じた。
それはデボラの舌ではなかった。もっと太く、長く、粘液にまみれ、そして激しく蠢き蠕動する何物かが、必死に
口を閉じて抵抗するレイラの口腔内に無理やり潜り込み、うねうねと暴れ回った。
レイラはそれが、彼女が木に捕えられた時に口の中に潜り込んできた、あの白い触手と同質のものだと気付いた。
触手の先端に分泌腺でもあるのか、刺激性の粘液が続々と口腔の中に溢れ、喉の奥にドクドクとこぼれ落ちてゆく。
レイラはむせかえり、耳元がカーッと熱くほてるのを感じた。
「・・・んんッ!・・・んんッ!・・・むうん!」
触手は口の中をひとしきり暴れ終わると、そのままレイラの喉の奥深くに侵入してゆき、粘液を断続的に
勢いよく吹き出した。ピュッ! ドピュッ! ドピュッ! 粘液はレイラの身体の奥に向かって続々と注がれてゆき、
彼女の身体を芯から熱く燃えるように滾らせた。
《・・・やめて! ・・・やめてお願い! ・・・熱い・・・ああ熱い・・・ああ・・・》
やがてデボラが満足したのか、ゆっくりと唇を放した。デボラの喉の奥から伸びていたのは、なんと黄色と黒の
縞模様で彩られた、男根状の触手であった。レイラの喉から引き抜かれた触手は、先端から紫色の液体を
にじませながら、蜂女の唇の奥にズルッと引き込まれるようにして消えた。
顔を真っ赤に火照らせ、肩で激しく息をするレイラの姿を見つめながら、蜂女は嬉しそうに舌なめずりをした。
次にデボラは、両手で自分の乳房を掴んで、ゆっくりと揉み始めた。
デボラは小柄だったが、肉付きのいい娘だった。90cmを越えるだろう、黄色と黒の縞模様をした豊満な乳房、
その中央には、泪滴形をした真っ赤な乳輪があり、先端には干しぶどう大の乳頭が頭をもたげている。デボラが
乳房の愛撫を繰り返すと、乳頭の先端が星形に割れ、その中から小さな銀色の針がニュッ、と顔を出した。
「さあ、この針をあなたの乳首に刺してあげる」
デボラはゆっくりとした動作で花弁のベッドの上に登り、大の字に横たわるレイラの上に馬乗りになった。
「・・・いやあ! 来ないで! やめて! やめて!」
レイラの身体に触れた蜂女の青い皮膚には、体毛も皺もなく、まるで合成繊維のタイツをまとっているかのように
なめらかであった。だが人間のような体温はなく、まるで爬虫類の皮膚のようにヒヤリと冷たかった。
「・・・やめてぇぇーーッ!」
デボラは上体を倒して、レイラの上に押し被さった。妖しく蠕動する同心円模様の乳房が、レイラの豊満な
乳房と重なり合った。デボラはレイラの乳首の位置を確かめると、自分の両乳首の針をその中央に押し当てた。
・・・ブスッ!
「きゃあッツ!」
鋭い痛みとともに銀色の針がレイラの両の乳首に突き刺さり、レイラは鋭い悲鳴を上げた。突き刺された針は
そのままズブズブと伸び、レイラの豊満な乳房の奥深くへ向かって侵入してゆく。
「・・・痛い! ・・・痛い! いやあッ!」
蜂女は青く染まった自分の肉体を、レイラの身体にぴたりと密着させた。蜂女の乳房は見かけとは異なり、
人間のそれよりもずっと堅く、シリコンラバーのような張りがあった。単なる脂肪の塊ではない証拠だ。
重なり合った乳房の重みで、レイラの柔らかい双丘が、むにっと平たく押し潰される。
「さあ、注いであげる」
デボラは自分の乳房を蠕動させながら、針の先からレイラの乳房の奥めがけて、液体を勢いよく注ぎ込んだ。
ジューッ! プシューッ!
「・・・ああッ! ・・・あああッ!」
乳房の奥に、強烈な違和感と焼けつくような刺激を感じて、レイラは激しく身をよじった。刺激は乳房の内部
いっぱいにもわもわと拡がり、痛みとも痒みともつかない猛烈な不快感が彼女を襲った。
「さあ、蜂のおっぱいになるのよ」
蜂女は妖しく微笑みながら、レイラの抵抗にかまわず、彼女の乳房の中に断続的にジューッ、ジューッと、
粘性の液体を注ぎ込んでゆく。
レイラの胸に液体を注ぐたびに、デボラの乳房の同心円模様が蛇腹状に蠕動する。そして彼女の背中から伸びる
半透明の美しい翅が、ゆっくりと上下する。
粘液を注ぎながら、デボラは愛おしそうにレイラの頬を、髪を愛撫した。小さな舌を伸ばしてレイラの唇の上を
舐めた。首筋に舌を這わせ、耳たぶに優しく噛みついた。
「・・・あッ! ・・・あッ! ・・・あッ!・・・」
液体が断続的に注がれるたびに、レイラは声を震わせてうめいた。最初に感じた苦痛は、既に消えていた。
代わりにレイラを襲っているのは、まるで性感帯をじわじわと責め立てられる時のような、不快感と隣り合わせの
奇妙な快感であった。そしてその快感は、爆発的に増大していった。
《・・・な、何? ・・・何なの、この感じ・・・ああっ・・・ダメッ・・・感じる・・・感じちゃう・・・気持ちいいッ!・・・》
レイラの抵抗が止まった。自分が何をされているかも忘れて、レイラはアランに抱かれた時のあのとろけるような
官能を思い出していた。次第に身体の力が抜け、彼女は恍惚に身を任せてかぼそい声であえぎ始めていた。
「・・・あン・・・あン・・・ああン・・・」
《・・・ああっ・・・気持ちいいッ! ・・・これが・・・これが、アランだったら!・・・》
そのまま10分も経ったろうか。レイラの透けるように白い柔らかな乳房に、徐々に変化が現れた。なめらかで
張りのある肌の上に、乳首を中心にした黒い同心円状の縞模様が、うっすらと浮かび上がってきたのだ。
乳房の表面にふと違和感を感じて、目を開けて自分の胸を見たレイラは、愕然となった。
そ、そんな!・・・わたしの乳房が、蜂女のような縞模様になっている!
「いやァァーーッ!!」
レイラは絶叫し、身体を激しくよじって抵抗した。身体の上に押し被さる蜂女をふりほどこうとした。
だがのしかかっている蜂女は人間離れした力でレイラの上体を押さえ込み、びくともしない。
「暴れても無駄よ。あなたのおっぱいはもうすぐ蜂女になるの。ほうら、もうこんなになってる」
「イヤぁーッ! やめて! お願い! 蜂女なんて、蜂女なんて、絶対イヤだ! 助けて! 助けてアラン!!」
レイラは死に物狂いで激しくもがいた。だが抵抗も虚しく、レイラの乳房の縞模様はますます濃く、鮮やかになる。
「そろそろ、いいかな」
30分後、デボラが上体を起こすと、乳首の針が縮んでヒュッ、と中に引っ込んだ。
レイラは息を荒げ、涙をポロポロと流しながら、大の字に縛られたままぐったりとなっていた。針を引き抜かれた
レイラの乳房は、既に蜂女たちとまったく変わらぬ、黄色と黒の見事な同心円模様でくっきりと彩られていた。
「どぅお? 蜂のおっぱいになった感想は? 素敵でしょう。もう二度と、元には戻れないのよ」
やがて重力に押し潰されていたレイラの乳房が、ゆっくりと持ち上がり、前に張り出した綺麗なお椀型に形を
整えた。そしてまるで別の生き物が巣くっているかのように、ゆっくりと蛇腹状の蠕動を開始した。
自分の胸部の、その不可思議な感触に、レイラは絶望の底に叩き落とされた。
《・・・ああ・・・とうとう、とうとうわたしの乳房、蜂女になっちゃったんだ・・・》
乳房の絶え間ない動きが、自分の乳房がもはや人間のものではなくなってしまったことを非情も告げていた。
恐怖と、絶望と、悲しみが嵐のように押し寄せ、レイラの頭の中で錯綜していた。どうして、どうしてわたしが
こんな目に遭わなきゃいけないの? ああ、アラン、助けて!
ガタガタ肩を震わせ、ヒック、ヒックと嗚咽を繰り返した後、レイラはとうとう大声を上げて泣き始めた。
そんなレイラの心中の混乱とは無関係に、泪滴状に変形した彼女の乳首が、ムクムクと膨らみ始めた。そして
中から銀色の小さな針がゆっくりと頭をもたげ、乳首の中から出たり、入ったりの往復運動を開始した。
「・・・あッ・・・ああッ・・・!」
針の出し入れは、レイラにゾクゾクするような激しい快感をもたらした。レイラは堪らなくなって、全神経を
乳首に集中させた。なんと針の出し入れは、レイラ自身の意思でも行えるではないか。
乳首から針を出し、入れる。ただそれだけの行為が、なんと官能的で心地良いのか。
レイラは夢中になって、針の出し入れを繰り返した。ああ気持ちいい! なんて気持ちがいいの!
「・・・あぅ・・・あぅ・・・ああぅ・・・ああぅぅ・・・あぅ・・・あふぅ・・・」
全裸で大の字に縛られたレイラは、同心円状の乳房をゆっくり蠕動させながら針の出し入れを繰り返し、身体を
大きくくねらせ、悩ましげな吐息を漏らしながらひたすらあえぎ続けた。大きく拡げられた両脚の間では、
既にピンク色の花びらが大きく開花し、ヒクヒク蠢きながらじわじわと甘い蜜をこぼし始めていた。
《ああ・・・わたし、なんてあさましいことを・・・もう。アランに顔向けできないわ・・・! 悲しい・・・でも、とっても
気持ちがいい! 気持ちいい! 気持ちいいの!!》
官能の嵐に飲まれて、ひたすらよがるレイラの様子を、2体の蜂女は妖しく微笑みながら見守っていた。
やがて2体は顔を見合わせて頷き合うと、今度は長い黒髪をしたスレンダーなボディのチアキという蜂女が、
ウフフフフ・・・と笑いながらレイラの前に立った。
「さあ、今度はわたしがあなたに、これをあげる」
チアキはそう言うと白魚のような指を、ナメクジのように絶えずヒクヒクと蠕動する、自らの股間へと伸ばした。
そして真っ青にに染まった恥丘の中央を縦に割って走る肉のスリットを、指でそっと開いてみせた。
紫色の粘液が糸を引いて、軟体動物のように淫らに蠕動する赤い肉が顔を覗かせた。蜂女たちの女性器は人間と
ほとんど同じ形状をしている。だが陰核包皮や会陰を含む小陰唇の外側までが他の皮膚と同じ鮮やかな青色で、
小陰唇の内側にある膣前庭の粘膜部分は、毒々しい赤い色をしていた。その真っ赤な肉の襞が蠢くその奥から、
巨大な何物かがズルリと姿を現し、蛇のようにぐいとかま首をもたげた。
それは、黄色と黒の鮮やかな縞模様で彩られた、男根状の巨大な触手であった。
太さ5cm,長さ20cmはあるだろうか。デボラの喉の奥から現れた触手よりも2まわりは大きい。触手の先端には
小さな穴があり、そこから紫色の粘液がじわじわと吹きこぼれていた。
男根に酷似した巨大なそのイチモツは、レイラを激しく恐怖させた。これから何が始まろうとしているのか、
男性経験のある彼女にははっきりとわかったからだ。
「・・・いや、やめて! やめてお願い!!」
「これを使ってあなたの中に、わたしの同化液を注いであげる。そうすればあなたは、完全な蜂女になれるの」
チアキは妖しく笑いながら、大の字に縛られたレイラの上に押し被さり、先端がうねうね動き回る股間の触手を
片手で握りしめ、すっかり潤んだレイラの秘所にゆっくりとあてがった。
「ひぃっ!」
ひんやりしたその奇妙な感触に、レイラは思わず腰を引いた。だが蜂女は構わずに、レイラの秘裂に沿って
触手を動かし、愛液で濡れそぼった秘孔の位置をまさぐり当てた。
「さあ、入れてあげる」
蜂女は肘で身体を支えながら両手でレイラの肩をしっかり押さえると、彼女の大きく拡がった両脚の間に、
ぐい、と腰を突き入れた。
「いやあああァァァ・・・ッッ!!」
不気味に蠢く、太くたくましい肉のかたまりが、勢いよくレイラの中へと侵入してきた。既に処女を失っている
肉の門をぐいぐいとこじ開け、押し拡げて、黄色と黒の縞模様の肉茎が、奥へ奥へとズブズブ潜り込んでゆく。
「・・・ああッッ! ・・・ああッッ!」
侵入しながら、奇怪な肉の触手は先端の穴から紫色の粘液を吹き出し、レイラの膣壁に塗りこめていった。
たちまち、熱く強烈な刺激がずぅぅうん!と股間から脳天に向かってレイラを貫いた。むず痒いような奇妙な
快感が股間に拡がり、彼女は本能的に半狂乱になって抵抗した。
「やめて! やめて! ・・・ああッ! ・・・あうッ!」
「・・・ふうん。あんまり使っていないんだ。もったいない」
チアキに平然と図星を突かれて、レイラは赤くなった。確かに初めての男であるアランと別れてから、レイラは
2年以上も男と交わっていなかった。毎晩、サイバータイツをまとったまま激しいオナニーに耽溺していたが、
こんなふうに他人のものを受け入れるのは、ほんとうに久しぶりだったのだ。
チアキは玩ぶようにゆっくりと腰を突きいれ、やがて肉の触手はレイラの膣のいちばん最奥部に達した。レイラと
蜂女は恥部をしっかり密着させたまま、ひとつに繋がり合った。
チアキは蜂の腹部のような自分の乳房を巧みに動かして、荒げた呼吸に合わせてゆっくりと膨張を繰り返す、
既に蜂女化したレイラの乳房に、その中心部を重ね合った。乳首と乳首が接した瞬間、じんじんとくる快感が
レイラを襲った。
「・・・あッ!」
その快感が合図となり、重なり合った乳首がピクピクと動くと、中から針が現れた。やがて乳首の針はひとつに
融合し、チアキが自分の針を引っ込めるとともに互いの乳首がひとつに繋がり合った。チアキが乳房を断続的に
震わせると、その動きに合わせて凄まじい快感がレイラの乳房いっぱいに伝わり、拡がってゆく。
「・・・あ・・・あ・・・あぅ! ・・・あぅ! ・・・あぅン! ・・・あぅン!」
「さあ、いっぱい注いであげる」
「・・・やめて・・・お願い・・・やめて! ・・・ああッ! ・・・ああッ!」
蜂女は股間をレイラとしっかり密着させたまま、膣の奥深く挿入した肉の触手の表面を、うねうねと蠕動させた。
まるで肉茎を膣の中で激しく抜き差ししているかのような快感が走り、ぶちゅっ、ぶちゅるるる、という卑猥な
音とともに、密着させた股間から紫色の粘液が吹き出し花弁の上にこぼれ、とろとろと流れていった。
そして蜂女は、レイラの胎内に挿入した触手の先端から、ジューッ! ジューッ!と粘液をリズミカルに注ぎ始めた。
レイラの子宮目がけて、大量の刺激性の粘液が、これでもかといわんばかりに続々と注ぎ込まれていった。
《・・・何なの? この快感! ・・・こんなの、今まで感じたことがない! ・・・ああ、気持ちいい! 気持ちがいいの!》
身体を芯からとろかすような快感が、レイラの下腹部いっぱいにじんじんと走った。
それは、女の悦びを既に知っているレイラにとってもまったく未知の、喜悦と官能の交響楽であった。
レイラは人一倍、性欲の強い娘だった。17歳の時、父親の死で自暴自棄になっていたレイラは義理の兄のアランを
誘惑し、捨てるように処女を捧げたのだ。トビアスじいさんを失い同じく心の拠り所を失っていた22歳のアランは、
それに応えるかのように妹の誘惑に応えた。こうして肉体関係を持った二人は、救いを求めるかのようにお互いの
肉体を求め合い、むさぼり合い、毎日のように激しく交わった。二人ともまだ、精神的に未熟であった。
だがレイラがこれまでにアランと体験したどんなセックスよりも、いま蜂女が彼女に与えている快楽の方が、
はるかに強烈で、目眩く官能に満ちたものだった。
「・・・あふぅ・・・ん! ・・・あふぅ・・・ん! ・・・はぅぅ・・・ん! ・・・あぅぅ・・・ッ! ・・・あぅぅッ! ・・・あぅぅッ!」
《・・・だめぇ・・・わたし・・・人間じゃなくなっちゃう! ・・・蜂女になっちゃう! ・・・助けて! アラン!!》
チアキに組み敷かれたまま、レイラが切なくあえぎ始めたのを見てとると、もう一体の蜂女であるデボラは巨大な
花弁に近づき、手をかざして呪文のようなものを唱えた。とたんにレイラの両手両脚の拘束が解かれた。
レイラの腕は自然に、自分に押し被さっているチアキの華奢な背中へと回った。チアキの身体を愛おしげに
抱き締め、手のひらはチアキの翅の付け根を愛撫すると今度は腰に向かって移動し、チアキの引き締まった
尻たぶを撫でさすり、揉むようにリズミカルに動かし始めた。
レイラとチアキの両脚はひとつにからまり合い、太ももを擦り合わせたまま、なめらかな触感を満喫し合った。
もはやレイラのかぼそい理性では、快楽を求める自らの身体の動きを止めることができなくなっていた。
《・・・ああッ・・・気持ちイイっ! ・・・これが、これがアランだったら!》
レイラの子宮に注がれた同化液は、子宮内膜を通ってレイラの血流内に侵入し、そのまま彼女の全身に運ばれて
いった。股間に始まった凄まじい快感が、ゆっくりと全身に拡がり、彼女を蝕んでゆく。
「・・・あぅ! ・・・あぅ! ・・・はぅ・・・ぅん! ・・・はぅ・・・ぅん! ・・・あぅん! ・・・あぅぅん! ・・・あぅぅッ!」
「・・・ウフフ。ほぉら、あなたは蜂女になってゆく。人間の身体を失い、蜂女に生まれ変わるのよ。」
チアキの言うとおり、レイラの白く輝くような皮膚が、次第に青く染まり始めた。
レイラの全身のうぶ毛は抜け落ち、柔らかな肌が、しだいになめし皮のようにしなやかな蜂女の皮膚へと
変わっていった。手首と足首だけが白く染まり、やがてエナメルのような質感の長手袋とブーツ状に変わっていった。
手の指からは爪が消失し、脚の指はひとつに融合し、かかとがハイヒール状に変形していった。
おぼろげな意識の中で、レイラは自分の肉体が徐々に蜂女へと変わってゆくのを、うっすらと感じていた。
《・・・ああ・・・わたし・・・蜂女に・・・なってしまう・・・人間じゃ・・・なくなっちゃう・・・ごめんなさい・・・アラン・・・》
もはやレイラの身体は、人間のものではなくなっていた。もはやどこから見ても、その姿は蜂女であった。
チアキはレイラの秘部に密着させた腰をゆっくりと左右に揺さぶり、レイラの肩を掴んだまま、レイラの耳たぶや
首すじにゆっくりと舌を這わせた。レイラもそれに応えるかのように狂おしく蜂女の身体に身をからませ、
蜂女の青くひんやりとしたなめらかな皮膚を愛撫した。
「・・・ああ・・・ん! ・・・あああ・・・ん! ・・・もっと! ・・・もっと! ・・・お願い! ・・・あああ・・・ンンッ!」
全身を狂おしく襲う快楽の波に身を任せ、レイラはより一層の快感を求めて、蜂女の触手を奥深くまで飲み込んだ
腰をキュッ、キュッとリズミカルに振った。そのたびに、快感は爆発的に高まった。
レイラは狂ったように腰を振った。一匹の牝となって、ひたすらにあえぎよがった。自分がいま、犯されながら
蜂女に改造されていることも忘れて、絶え間なく湧き出る快楽を、無我夢中でむさぼった。
《・・・ああ・・・わたし・・・もう・・・駄目・・・・・・アラン・・・許して・・・》
変化したのは、レイラの外観だけではなかった。蜂女がレイラの胎内に注ぎ込んだ同化液は、彼女の全身の細胞の
ひとつひとつに働きかけ、組織を組み換えて人間ではないものに変化させていたのだ。
レイラの筋肉が、骨が、内臓が、血管や神経が、いったんグズグズに溶かされ、新たな姿に組み上げられてゆく。
人間の骨格が消失し、皮膚のすぐ裏側に強靭さとしなやかさを備えた外骨格が形成される。脊髄の代わりに
腹髄と梯子型神経系が形成され、乳房の奥と尻の内部に巨大な神経節、すなわち第二・第三の脳組織が作られる。
気管支や肺といった人間の呼吸器官が消滅し、代わりに全身をくまなく巡る気管系が誕生する。
そしてついに、レイラの体側、脇腹から太ももにかけて一直線に、12対の小さな孔が口を開いた。24個の呼吸用の
小さな孔は、レイラの呼吸に合わせて、ゆっくりと開閉運動を開始した。気門周辺に作られた強力な空気ポンプが
全身に空気をくまなく供給するため、人間には不可能な激しい運動も酸欠になることなく可能となるのだ。
「・・・ああーッ! ・・・あーッ! ・・・あーッ! あッ! あッ! あッ! ・・・はぁッ! ・・・はぁッ! ・・・あン! あン!」
頂点に達したレイラの断末魔の悲鳴とともに、彼女の額からニョキニョキと、真っ赤な触角が生えてきた。
それが最後の仕上げであった。チアキも力尽きたように、レイラの上にがっくりと身体を預けた。
今や、巨大な花弁の上でぐったりとなって身体をからまり合わせている生き物は、長い黒髪と栗色のセミロングの、
まったく同じ姿のボディを持った2体の蜂女であった。
二体の蜂女は、密着したまましばらく動かなかった。やがて、チアキがレイラの身体からゆっくりと離れて
上体を起こした。レイラは目を半開きにしたまま、真っ青に染まったボディをぐったりと横たえて、はぁはぁと
息をしていた。ただしその息は口ではなく、体側にずらりと並んで激しく開閉を繰り返す気門から漏れていた。
チアキが腰をレイラの両脚の間からゆっくりと持ち上げ、密着した股間を離すと、黄色と黒の縞模様の触手が
ずるっ! という音とともにレイラの膣孔から引き抜かれた。触手は紫色の粘液の糸を引きながら、チアキの
股間に開いた孔の中にズルズルと引き込まれ消えていった。
ぐったりと力なく横たわる、蜂女レイラ。そのしどけなく開かれた股間には、真っ青に染まった恥丘の中央を
縦に走る、真っ赤な肉の裂け目があった。その下部に開いた小さな肉の孔から、紫色のとろりとした液体が
とろとろ流れ出し、小さな水たまりを作った。
「これであなたはもう、わたしたちと同じ蜂女よ。さあ、起きなさい」
レイラの混濁した意識が、次第にはっきりと醒めてゆく。彼女は横たわったまま、自らの変わり果てた姿に
力なく目をやり、自分がすっかり蜂女に変わってしまったことを悟った。
蜂女レイラは顔を手で押さえて横向きに身体を縮こめ、えっ、えっ、と嗚咽を始めた。だが、涙腺を失った
彼女の目からは、一滴の涙もこぼれてこなかった。
《・・・わたし・・・とうとう、蜂女になってしまった。・・・こんな身体、もう、アランには見せられない・・・》
しきりにかぶりを振りながら丸くなって嗚咽を続ける蜂女レイラに、2体の蜂女が優しげな笑みを浮かべながら
近づいた。そして触角をピリピリと震わせて、嗚咽を続けるレイラの触角につんつん、と触れた。
「・・・あッ!」
とたんに、何かの信号がレイラの脳に伝わった。蜂女レイラは反射的に自分の触角を震わせて、それに応えた。
「・・・あ! ・・・あ! ・・・あ!」
3体の蜂女は触角をからませ合って、対話を続けた。次第に、レイラの表情から人間的な悲しみの影が消え、
無表情な機械じみたものに変わっていった。
レイラの改造された脳組織に、2体の蜂女から凄まじい量の情報が一度に送り込まれたのだ。そしてレイラは
知った。この惑星と蜂人間たちの秘密を、自分がなぜ改造されたのかを、そして蜂女となった自分の使命を。
蜂女レイラは、ゆっくりと身を起こして、花弁の上に立ち上がった。自分の身体をうっとりした表情でしげしげと
眺め、そして絶えず淫らな蠕動を続ける、改造された双つの乳房を両手で掴んでゆっくりと揉み始めた。
《・・・ああ・・・わたし、どうして悲しんでいたんだろう。こんなに、素敵なカラダなのに! ・・・そう、わたしは
生まれ変わったの。蜂女に改造されたの! わたしは蜂女! そうよ、わたしは蜂女! もう二度と人間には戻れない!
・・・ああ、なんて素敵なの!》
レイラは喋り方を忘れたかのように、パクパクと口を開いた。肺と気管支を失ったレイラは、もはや以前のようには
喋れないのだった。だが、翅を動かす筋肉が収められた胸郭を収縮させ、その空気をうまく口から出すことで
発話する方法を、レイラは急速に習得していった。
「・・・ワ・・・ワタ・・・ワタシ・・・ハ・・・わたし・・・は・・・はちおんな。わたしは、はちおんな! わたしは蜂女!」
身も心も完全な蜂女となったレイラは、腰をなまめかしく振りながら、自分の改造されたボディを両手で愛おしげに
撫で回し、妖しく舌なめずりをした。背中から、半透明の美しい翅が4枚、ゆっくりと生えてきた。
レイラは自分の股間のスリットを指で開いた。改造された膣孔の中から、黄色と黒の縞模様の触手がゆっくりと
現れ、蛇のようにかま首を上げた。触手は改造された子宮の奥から伸びていた。触手が改造された膣壁の中を
往復するたびに、レイラの股間に凄まじい快感が走った。レイラは夢中になって、膣孔から触手を出し入れした。
「・・・ううッ・・・あうッ・・・あうッ・・・ああッ・・・」
蜂女デボラが蜂女レイラに、彼女がまだ人間だった時に身につけていたサイバータイツを手渡した。レイラは
妖しく微笑んで真っ赤なサイバータイツを受け取ると、装着の準備を始めた。彼女には、これから自分がしなけ
ればならないことが、はっきりとわかっていた。人間のふりをして、再び地球人たちの一行にまぎれ込むのだ。
蜂女レイラは、自らの真っ赤な膣孔を指で拡げ、その中にゆっくりとノズルプラグを挿入した。カチューシャを
額に装着して触角を栗色の頭髪の中に隠し、真っ青に染まったボディを赤いサイバータイツですっかり包み込んだ。
そして彼女が呪文のような暗号を唱えると、サイバータイツはキュッと絞られたかのように、皮膚に密着を始めた。
だが次の瞬間、レイラはウッ!とうなって苦しそうにその場に膝をついた。あわててキーワードを唱え、彼女は
サイバータイツを脱ぎ捨てた。
既に鼻と口での呼吸を行っていない蜂女レイラにとって、全身をくまなく包み込むサイバータイツは、体側に
並んだ呼吸用の気門を塞ぎ窒息させる、やっかいな衣装となっていたのだ。
レイラはちょっと困った表情でタイツを抱え込んでいたが、やがて自分の体側の気門の位置を確かめると、
サイバータイツを拡げて位置を確認しながら、自分の乳房に押し当てた。乳首から鋭い針がシュッと飛び出し、
鋼鉄の5倍の強度を持つサイバータイツの生地に穴を開けた。
【12】
その頃、光る草原のふもとに野営している地球人たち一行は、夕食の時間が過ぎてもレイラが戻って来ないので
全員血相を変えて彼女の行方を探していた。
最後まで一緒にいたアランは強い責任を感じ、草原の中に彼女が倒れていないかと隅々までくまなく、何度も、
何度も探し回った。ドグはひょっとしたら姐さんは地底の川に飛び込んだのかもと危惧して、アンヌが止めるのも
聞かずに、50メートル下の亀裂に向かってロープ一本を頼りに降りていった。
だが必死の捜索にも関わらず、彼女の行方は杳としてつかめなかった。
焦燥の色濃く彼らが力場テントにとぼとぼと戻ってくると、なんと、そこにレイラが平然といるではないか。
「レイラさん!」
「レイラ! 今までいったいどこにいた!?」
「姐さん、よかった。本当によかった・・・」
口々に叫びながら詰め寄る一行を制すると、レイラは無表情な声で答えた。
「ごめんなさいみんな。草原が気持ちいいからずっと散歩していたの。みんなとは行き違いになったみたいね」
その態度に一同は奇妙な違和感を感じたが、とにかく無事にレイラが戻ってきたことで安心し、めいめいのテント
に戻ることにした。アンヌが、疲れちゃった。先に休んでるね、と言って駆け出した。
レイラがその後を追おうとすると、後ろから呼び止めた者がいた。
「ちょっと待ちなさい、レイラちゃん」
ウルフがいつになく怖い表情で立っていた。眉をひそめたレイラの全身をしげしげと見つめ、ウルフは言った。
「話があるの。ちょっとこっちに来なさい」
力場テントから離れた丘の陰で、ウルフはレイラに強い調子で詰め寄った。
「ねえレイラちゃん。あなた、本当に今まで散歩していたの?」
「どうして、そんなことを聞くの?」
「そして、どうしてそのサイバータイツ、脇に穴がいっぱい開いているのかしら?」
「・・・これは、うっかり引っ掛けて破れたのよ」
「うそおっしゃい。アタシだってサイバータイツを着てるのよ。エンジンカッターを使っても穴を開けられない
ことぐらい、知らないと思って? そして、アナタのその鼻と喉の動き・・・!」
ウルフは隠し持っていた短針銃を取り出し、レイラに銃口を向けた。
「医者でもあるアタシを騙せると思ったの? アナタは、口や鼻で呼吸をしていないわ! それに、皮膚ごしに
透けて見えるはずの顔面の静脈が見当たらない。そう、アナタは人間じゃない。本物のレイラちゃんじゃない!
さあ白状しなさい。本物のレイラちゃんはいったいどこにいるのッ!!」
レイラは突然、アハハハと高い声で嗤った。
「本物!? わたしが本物のレイラよ。ただし・・・!」
レイラは素早く呪文のようなパスワードを唱えた。サイバータイツがバサリと地に脱げ落ちた。
「・・・もう、人間じゃないけどね」
ウルフの銃口の前にいたのは、真っ青なボディと蜂の腹部のような乳房を持った、異形の蜂女だった。
「!! ・・・アナタ、改造されたの!?」
「そうよ。少し前にさらわれて、蜂女に生まれ変わったの。もう、二度と人間には戻れないわ」
「何のために!? ・・・アナタたちの目的はいったい何なの!?]
「もうすぐわかるわ。あなたたち全員が、わたしたちの手に落ちればね」
レイラは妖しく微笑み、ペロリと舌なめずりをした。
ウルフは躊躇せずに銃爪を引いた。一瞬の迷いが命取りになると、本能的に悟っていたからだ。だが蜂女の姿を
晒したレイラは平然と立ったままだった。蠕動を続ける同心円模様の乳房の表面から、ウルフが撃った小さな針の
群れがポロポロと落ちた。
ウルフは驚き、きびすを返して一目散に逃げ始めた。レイラはクスクスと嗤うと、乳房をゆっくりと動かして
乳首から顔を覗かせている銀色の針の照準を、逃げてゆくウルフの背中に合わせた。
「無駄よ。逃げられないわ」
ぷるん、と蜂の乳房が大きくふるえた。シュッ! 風を切る音とともにレイラの乳首から銀色の針が射出され、
数十メートル離れたウルフはウッ、と叫んでその場に崩れ落ちた。
蜂女レイラは、自分の乳房の状態を確かめるように揉みしだきながら、草原の中に倒れたウルフの方に近づいた。
そして屈みこんでウルフの背中に銀色の針が刺さっているのを確かめ、そのままウルフを仰向けに転がした。
ウルフの身体はは驚愕の表情を浮かべたまま、硬直していた。
レイラはフフッ、と笑うと、もうウルフには目もくれず、アンヌが待つテントの方へとゆっくり歩いていった。
もはや真っ赤なサイバータイツをまとおうともせず、蜂女に改造された姿を誇らしげに晒しながら。
アンヌはよほど疲れたのか、力場テントの隅に横たわり、クークー寝息を立てていた。
蜂女レイラは妖しく微笑むと、四つん這いになってアンヌの上に屈みこんだ。そしてゆっくりと、アンヌの純白の
サイバータイツに、自分の改造された真っ青なボディを重ねた。
「・・・うう・・・ん・・・」
アンヌが寝返りをうった。蜂女は蠕動する蜂の乳房をアンヌのふくよかな乳房に重ね、乳首と乳首を擦り合わせた。
アンヌの両脚の間に自らの腰を割り込ませ、股間と股間を密着させた。そして、額にかかったプラチナブロンドの
髪を愛おしそうに撫で払いながら、耳元で優しく囁いた。
「・・・アンヌ。さあ、サイバータイツを脱ぎなさい。・・・パスワードを唱えて。さあ!」
アンヌはぼんやりと目を開けた。自分の上にのしかかっているのがレイラだとわかると、寝ぼけまなこで微笑んだ。
「・・・いやだぁ、レイラさん・・・苦しいよ・・・」
「アンヌ。これは大事なことなの。・・・さあ、パスワードは?」
蜂女はアンヌの身体をゆっくりと愛撫し始めた。蠕動する乳房でアンヌの乳首をコリコリと刺激し、密着させた
股間のスリットから顔を出した縞模様の触手が、アンヌの固く閉じた割れ目をこじ開け、ノズルプラグの上を
もぞもぞとまさぐった。
「・・・いやだ・・・レイラさん・・・くすぐったいよ・・・やめて・・・レイラさん・・・あぅっ・・・あぅっ・・・」
蜂女の執拗な愛撫に、次第にアンヌの息が荒くなってきた。蜂女は女性だけが知るオンナの敏感な箇所を
執拗に責め、アンヌの身体を開いていった。
「アンヌ。さあ、こんなサイバータイツなんて、早く脱いでしまいましょう。さあ、早く!」
アンヌは混乱していた。身体をひっきりなしに襲う陶酔の波の中で、わずかに残った理性が疑問符を放っていた。
なんで、なんでレイラさんがそんなことを言うの? なんで、サイバータイツを脱がせようとするの?
アンヌはとろんとした目を上げて、レイラの顔を見つめた。額に、ピクピク動く真っ赤な触角が生えていた。
「・・・!」
アンヌは驚いて我に返った。自分の上に押し被さっているレイラの姿をよく見ると、なんと、全身が青く染まり
乳房には蜂の腹部のような縞模様が刻まれているではないか。アンヌは直感的に、何が起こっているのか悟った。
「・・・レイラさ・・・むぐッ! ・・・ん! ・・・ん!」
叫ぼうとしたアンヌの口めがけて、レイラの口から黄色と黒の縞模様の触手が飛び出し、勢いよく潜り込んだ。
「・・・んん! ・・・んんッ! ・・・んんッ!」
パスワードを聞き出すのは無理と悟ったレイラが、アンヌに叫ばれる前に強行手段に出たのだ、
顔をそむけて必死に抵抗するアンヌの唇を割って、奇怪な触手はずぶずぶとアンヌの口腔に潜り込み、先端から
紫色の同化液を噴出し、口や喉の粘膜に塗りこめてゆく。そして触手はそのままアンヌの喉の奥深くに侵入し、
大量の同化液をピュッ! ピュッ!と分泌しては、アンヌの身体を奥深くから蝕んでゆく。
《・・・どうして!? やめて! レイラさん! ・・・やめて! お願いッ!》
アンヌの瞳から涙が溢れ、ポロポロとこぼれ落ちた。レイラさんが、いつの間にか蜂女にされていた。そして今、
わたしを蜂女の仲間に変えようと襲っているんだ。嫌だ。嫌だ。蜂女なんて嫌だ。蜂女になんてなりたくない!
だがそんなアンヌの抵抗も虚しく、同化液は粘膜を通してアンヌの血液中に侵入し、全身に拡がっていった。
そして同化液に触れたアンヌの体組織は、凄まじい勢いで変質を遂げ、人間ではないものへと変化していった。
それは、あの花弁の上でレイラが改造されていった時と比べて、余りにも性急な変化だった。気道をふさぐように
ふくれ上がった触手のせいでむせかえり、息が詰まったアンヌの苦痛は、耐えられないほどであった。
混乱し薄れゆく意識の中で、アンヌは、アランに教えられていたあることを思い出した。
アンヌは渾身の力で、自分の左手首に付けられたブレスレットを床に打ちつけた。
ヴィン! ヴィン! ヴィン!
とたんに凄まじい警報が轟き、アンヌたちのいる力場テントの侵入者避けフィールドが消失した。
《いけない!》
レイラは驚いて身を起こした。アンヌの口腔深く侵入していた縞模様の触手がズルッと引き出され、レイラの
唇の中に消えていった。彼女たちは今、フィールドが消失した何もない草原の真ん中に横たわっていた。
近くにある男たちの力場テントが騒がしくなるのが聞えた。フィールドが次々に消え、武器を手にした男たちの
姿が現れた。彼らは周囲を油断なく見渡し、そしてぐったりとなったアンヌの足元に膝立ちしている、異形の
存在となったレイラの姿を認めた。
「・・・レイラ! その身体は!!」
「・・・ね、姐さん! な、なんてこった!!」
レイラは落ち着き払って髪を直しながら、ゆっくりその場に立ち上がった。そして蠕動を続ける同心円模様の
乳房を誇らしげに、男たちの前に誇示した。股間には恥ずかしげもなく女性器のスリットを露出している。
青いボディに透明な翅。体側にずらり並んだ呼吸用の気門。その身体はどう見ても、人間のものではなかった。
「レイラ、きみは・・・蜂女に改造されてしまったのか!?」
ジョージの問い掛けに、レイラはフフン、と笑って答えず、背中の翅を拡げると、そのまま垂直に飛び立った。
「レイラ! 待て! どこに行くんだ!?」
アランとドグがレイラの後を追った。レイラは草原のある広場を出ると、地底の河が流れる裂け目の方に
すーい、と降りていった。
バンボとジョージが、ぐったりとなったアンヌを介抱した。痙攣を続けるアンヌの上体を起こし、口に指を
突っ込んで胃の中のものを吐かせた。大量の紫色の粘液がドロドロと、アンヌの口から流れ落ちた。
背中をドンドンとはたき、マッサージを繰り返すと、アンヌの顔にようやく赤みが戻った。
「・・・アンヌ、具合はどうだ?」
アンヌは何度か咳き込んだ後、しばらく呆然となっていたが、やがてワッと泣きじゃくり始めた。
無理もない。心細い異境の旅の中で姉のように慕い頼っていた女性が、異形の姿に改造されて自分を襲ったのだ。
そしてアンヌは、自分の身体がもう既に、蜂女の同化液で侵されてしまっていることをはっきり自覚していた。
感じるのだ。自分の中で、肉体組織が少しずつ、得体の知れないものに変化しつつあるのを。
「・・・怖い! ・・・怖いの!」
「おおい! ジョージ! バンボ! こっちに来てくれ!」
アランの叫び声を聞いて、二人は顔を見合わせて頷き合った。バンボがアンヌのそばに残り、ジョージはアランの
元へと急いだ。
「これを見てくれ。ウルフだ」
アランが抱きかかえていたのは、驚愕の表情を浮かべたまま石のように硬直しているウルフの身体だった。
「・・・レイラの仕業か?」
「そうらしい。これが背中に刺さっていた針だ。サイバータイツを貫いていた。俺たちのヘルメットを壊した奴と
よく似ている」
「死んでいるのか?」
「わからない。呼吸は止まっている。仮に仮死状態だとしても、治す方法が俺たちにはわからない」
「なんてことだ!」
しばらくして、バンボに抱きかかえられたアンヌがゆっくりと歩いて来た。
「これは・・・ウルフさん!?」
アンヌはウルフのそばに屈みこむと、顔を覆ってシクシクと泣き出した。
「ジョージ。これからどうするつもりだ?」
「皆の安全を考えれば、船に戻るのがベストな選択だが・・・」
「・・・だが、それでは何も解決しない。レイラの身体を元に戻すことも、ウルフを助けることもできず、この星を
離れることすらかなわない」
「わかっている。我々には、先に進むしか道はないんだ・・・」
その時、レイラを追っていったドグが手を振りながら戻ってきた。
「河に降りる崖の途中に、抜け穴があるぞ! 姐さんはそこに入っていったんだ!」
【13】
硬直状態のウルフを光る草原の部屋の入り口にそっと横たえると、アランたちはドグの案内で、急峻な崖を
地底の河めがけて降りていった。幸い崖の表面は凹凸が多く、足場には不自由しない。一行は互いにロープで
身体を結び合い、一歩一歩注意しながら、高度を下げてゆく。
最初、アランたちはアンヌを草原に置いてゆくつもりだった。バンボも護衛に残るつもりであった。だが肝心の
アンヌが、頑強に同行を主張した。
「パパのこともあります。わたしは、行かなくちゃいけないんです。レイラさんの身体だって、元に戻せるのなら
そうしてあげたい! 連れて行って下さい。足手まといにはならないよう、頑張りますから!」
思いのほかに頑固なアンヌの意志を、結局、誰も曲げることはできず、アランが彼女に寄り添い見守るかたちで
同行を許すことになった。アンヌも皆に迷惑をかけるまいと、慣れない岩場歩きに必死にチャレンジする。
足元に神経を集中し、慎重に一歩一歩崖を降りてゆく。
「キャ!」
カラン、カラン、カラン、と、アンヌが踏み外した足元の岩が、眼下の河めがけて落ちていった。顔面蒼白の
アンヌに、アランが冷静に忠告する。
「体重を岩にかける前に、つま先でまず岩の状態をよく確かめろ」
「は、はい!」
岸壁との半時間余りの格闘の末、ようやく一行は抜け穴の入り口に辿り着いた。ホッと一息つけた後、抜け穴の
中をさらに進軍は続く。
抜け穴は高さが2メートルほど。中は例の放電管植物が張り巡らされているのか、ほの明るい光が漂っている。
「・・・どうやらこの洞窟、あの光の草原の真下を通って先に延びているらしいな」
そのまま半時間ほど進んだろうか。狭い通路が途絶えた先に拡がっていたのは、地中の巨大な断層だった。
幅20メートルほどの裂け目が横方向にはるか延々と続き、裂け目の両側は垂直に切り立った崖になっている。
崖の表面には、直径2メートルほどの穴が無数に開いていた。アランたちが抜けてきた抜け穴も、その穴の
ひとつに過ぎなかった。
「見ろ! 蜂人間たちだ!」
ジョージが指さすまでもなかった。断層をはさんだ対岸の崖の無数の穴から、蜂人間たちがゾロゾロと這い出す
のが見える。
蜂人間たちは穴を飛び出して宙に舞うと、断崖の上方にある、雛壇のようなテラスに次々と降り立った。
黄色と黒の巨大な生き物たちが、テラスにびっしりと群がり蠢いているさまは、見ていてあまり気持ちのいい
ものではなかった。
「見て! レイラさんよ!」
アンヌが指さした先は、他の蜂人間よりもひときわ高い位置にある、独立したテラスだった。そこに、蜂女に
なったレイラと、黒髪と亜麻色の髪のもう2体の蜂女がいた。地球人女性の美しいプロポーションをした蜂女
たちは、アランたち一行の存在に気付くと拡げた手を伸ばして、来るな! といった身振りをした。
「姐さんッ!」
ドグが叫ぶと、アランたちの制止を振り切って、断崖に取りついて壁を下り始めた。断層を越えてレイラがいる
テラスまで進むつもりなのだ。
「姐さんッ! 今行くからな! 待っててくれ!」
「やめろ! ドク! 危険だ!」
とたんに、蜂人間たちの群れがザワザワと騒ぎ始めた。何体かの蜂人間がテラスから飛び立ち、キチキチキチ・・・
と威嚇音を立てながらドグの周囲をしきりに旋回した。ドグのすぐ近くまで近寄って警告する者もいた。
だがドクは蜂人間たちには目もくれず、一心不乱に垂直の壁を下り続ける。
「アラン、下をよく見ろ!」
「・・・!!」
ジョージが指さした断層の底は、一面うじゃうじゃと何者かが蠢いていた。数十メートルは下になるだろう
断層の底は、無数の六角形の小部屋がぎっしりと並んでおり、その中から奇妙な小さな生き物が顔を手を出して、
餌を求める雛鳥のように空に向かってしきりに訴えている。
小さくぶかっこうな両手を上げて、ピキ、ピキ、ピキ、と鳴く、白くてぶにぶにとしたその生き物たちは、まるで
人間の胎児と蛆虫が合わさったかのような奇怪でおぞましい姿をしていた。
「・・・蜂人間たちの・・・幼虫なのか!?」
あまりのおぞましさに吐き気を堪えながら、ジョージが言った。
「どうやらそうらしい。ここは、蜂人間たちの巣なんだ。だから近寄るなと警告しているんだ」
さすがのアランも、この光景には目をそむけたくなった。
だがアンヌは、幼虫たちの姿を見たとたん、胸に奇妙なうずきを感じて思わずうずくまってしまった。
「アッ!」
「大丈夫かアンヌ。下を見るんじゃない」
苦しいわけではない。突然自分の乳房が、ぶるぶると震え、勝手に蠕動を始めるのを感じたのだ。驚いてサイバー
タイツに包まれた自分の胸を確かめたアンヌは、乳房がゆっくりと、まるで別の生き物であるかのように蛇腹状に
膨張を繰り返し始めたのに気付き、あわてて他のメンバーから胸を隠した。
《・・・カラダが・・・蜂女に変わり始めているんだわ・・・》
アンヌは愕然となった。テントで寝ている間にレイラに襲われ、口の中に注ぎ込まれた同化液が、彼女の肉体を
少しずつ蝕んで蜂女に変えつつあるのだ。注がれた同化液は1リットルにも満たない少量だったが、それでも
消化器の粘膜からアンヌの血流中に侵入し、彼女の全身を駆け巡っては細胞を少しずつ、人間ではないものへと
変化させつつあったのだ。
《・・・そ、そんな・・・・・・やだ・・・いやだァ!・・・》
変化しつつあるのは、アンヌの肉体だけではなかった。同化液は彼女の脳細胞をも、着実に侵し始めていた。
断層の底に蠢く蜂人間たちの幼虫を見ても、アンヌにはおぞましいという感情は微塵も浮かんでこなかった。
むしろ、愛おしくて仕方がなかった。あの子たちに、わたしの乳房をふくませてあげたい! わたしのおっぱいを、
いっぱい飲ませてあげたい! そんな母性本能にも似た感情がふつふつと沸き起こり、アンヌの頭を混乱させていた。
乳房を覆う奇妙な感覚は、特に乳首の先に集中していた。そしてアンヌは、ツンと勃った乳首の先端がムクムクと
動いたかと思うと、サイバータイツの強靭な生地をブスリ、と貫いて小さな銀色の針が表面に現れたのを見た。
彼女は驚くとともにいたたまれなくなり、あわてて針をしまおうとした。するとどうだろう、アンヌの意思に
応じて、針は乳首に自由に収納できるではないか。
針の出し入れは、アンヌに強烈な快感をもたらした。乳首から小さな針が、出る、入る、出る、入る、ただ
それだけの繰り返しが、気が遠くなるほど気持ちよく、自分を熱くさせるのだ。
「・・・あッ! ・・・ああッ! ・・・ああッ!」
アンヌは乳首から針を出し入れしたくなる欲望と必死に闘った。いけない! こんなことをしていたら、本当に
全身が蜂女になっちゃう! 嫌だ。嫌だ。蜂女になるなんて嫌だ。でも、でも止められない! 誰か、誰か助けて!
アンヌは胸を緊く抑えたままうずくまり、ガクガク震えながら快楽を求める自分の本能と闘った。
その頃、ドグは蜂人間たちの巣に続く断崖を、もう半分は下っていた。
蜂人間たちの警告はさらに激しくなり、とうとう、テラスの上に陣取っていた3体の蜂女たちが翅を拡げて
ドグの近くに音もなく飛来した。レイラが近づいたのに気付いたドグは、思わず彼女の方に手を伸ばした。
「姐さん! こんなところから早く離れるんだ! そして身体を治してもらおう! 地球に戻れば、きっと治せる
はずだよ!」
「・・・ドグ。早く一人でここから立ち去りなさい。わたしはもう、人間じゃないの。二度と人間には戻れないの」
「・・・そんな、嘘だろ姐さん! 嘘だと言ってくれ! 姐さん!!」
「わたしは蜂女。もう人間じゃない。わたしは蜂女。わたしは、蜂女!」
「いやだ! いやだァ! 畜生! 畜生ッ!」
ドグはブルブルと首を振ると、狂ったように断崖を下り始めた。現実を認めたくない一心で、しゃにむに崖を
下り続けた。蜂女たちの制止の声も、もはや彼には届かなかった。
レイラは仕方がない、とばかり悲しげに首を振ると、乳房をぷるぷると震わせて、乳首の照準をドグに向けた。
ぷるん、と乳房が震え、乳首から小さな針が勢いよく発射された。
ブスッ!
「ね、姐さんッ!」
背中に針の直撃を受け、ドグは振り返ってレイラの方に、震える手を伸ばした。だがすぐに力尽き、ドグの身体は
崖からはがれ落ちるようにフラリと落下した。とたんに蜂人間が落下するドグに群がり、黄色い球のようになった。
「ドグゥーーッツ!!」
叫ぶアランたちの前に、チアキとデボラ、2体の美しい蜂女が音もなく飛来した。蜂女たちはクスクスと笑うと、
乳房をぷるぷる震わせて、乳首の照準を抜け穴の中のアランたちの方に向けた。
「まずい! 逃げろ!」
アランがうずくまったアンヌを抱え上げ、やって来た方に向かって駆け出した。ジョージとバンボもあわてて
その後に続いた。
シュッ! シュッ!
蜂女たちの乳房がぷるん、と揺れ、乳首から針が次々と発射された。
「うわッ!」
バンボが倒れた。ジョージがとっさに抱え起こし、肩を貸して必死に歩かせようとするが、バンボの足はふらつく
ばかりで前に進まない。
「ジョージ、アンヌを頼む」
引き返してきたアランがアンヌをジョージに託し、代わりにバンボの巨体を背負った。そのまま必死で逃げる。
針の強襲は最初の一撃だけだった。連続しての発射はできないのだろう。そして巣から離れゆくアランたちを、
蜂女たちは追ってこようとはしなかった。
アランたちは抜け穴を通り抜け、必死に崖を這い登って、ふたたび光る草原へと帰還した。全員疲労困ぱいの極
だったが、休息よりもバンボの手当ての方が先だった。
「バンボ、具合はどうだ?」
尋ねなくてもわかっていた。彼の身体は既にほとんど硬直しており、喋るのがやっとだった。
「・・・ジョージ。わたしはどうやら、ここまでのようです。もう、痛みも何も感じない」
「しっかりしろバンボ! 諦めるんじゃない!」
「バンボさん!! 死なないで!!」
「いえアンヌ。わたしはどうやら、死ぬわけじゃないようです。ほら」
バンボが目でうながした先には、横たえられたウルフの身体があった。驚くべきことに硬直した彼の身体からは
タンポポの綿毛のような無数の芽が伸びていた。
「蜂女たちがわたしに撃ったのは、どうやら植物の種子のようですね。わかるんです。わたしの中で、何かが
目覚めふくらんでいこうとするのが。わたしやウルフの身体を養分にして、これから木が育ってゆくのでしょう」
「そんな! ・・・人に寄生する植物だなんて・・・なぜ蜂女が・・・!?」
「寄生? とんでもない。自然に帰るだけのことです。気がついていましたかジョージ、わたしたちのこれまでの
道程を。一面の森、泉、そして洞窟、それはまるで、女性器の奥へ向かっての旅のようでした。生命の揺り籠で
あるここはさしずめ、子宮といったところでしょうか。・・・わたしはこの旅の間じゅう、ずっと感じていたんです。
母のふところに帰ってゆくような、懐かしさを。・・・それが、いま、叶った。・・・わたしたちは、自然に、帰って、
ゆくのです。・・・死ぬわけでは、ない。・・・帰るの、です・・・」
「・・・バンボ!」
「・・・もう・・・喋るのも・・・つらく・・・なってきた・・・お別れです、ジョージ・・・また・・・会いましょう・・・」
「バンボ!!」
バンボは目を開かなかった。
【14】
アランたちはバンボの身体をウルフの隣に静かに横たえ、黙祷した。
「・・・これで4人。レイラを入れれば5人が犠牲になった。アラン、これからどうするつもりだ?」
「どうもこうも、俺たちは真実を求めて来たはずなのに、まだ何も知っちゃいない」
「そうですジョージさん。わたしたち、パパたちの行方を探しに来たんでしょう? 先へ進みましょう! それに・・・」
アンヌは自分の胸を手で押さえた。
「わたし、わかるようになったんです。パパが呼んでいるのが」
純白のサイバータイツに包まれたアンヌのふくよかな乳房は、もはや外から誰が見てもわかるくらいはっきりと、
蜂女たちのそれと同じような奇妙な蛇腹運動を繰り返していた。乳首の位置に開いた小さな穴からは、泪滴状に
変形した真っ赤な乳輪が覗き、その先端からは銀色の小さな針がしきりに出入を繰り返していた。
「あ、アンヌ・・・その胸は・・・!?」
「はい。蜂女になったレイラさんに襲われてから、わたしの身体も少しずつ、蜂女に変わりつつあるんです」
「そんな・・・じゃ、きみもレイラのように!?」
「いいえ、たぶん大丈夫です。わたしの意識はまだ人間のままです。でもこうなったおかげで、はっきりと
わかるようになったんです。パパはまだ生きている。そしてわたしたちを呼んでいるって。だから、行かなきゃ
いけない。前に進まなきゃいけないんです!」
3人は互いに見つめ合い、無言で頷いた。
「だが、先に進むといってもどこへ? この洞窟はここで行き止まりのはずだが・・・?」
「ジョージ、電導ヅタはどこから延びてきてる? その方向に発電場所があるはずだ」
3人は光る草原の広場を隅々まで調べて回った。だが電導ヅタは壁の裏側の地中から生えてきているようで、
電源の方向を探ることはできなかった。
「・・・うッ・・・!」
アンヌが急に下腹部を押さえた。苦しいのではない。奇妙なうずきが膣の中で起こったのだ。じわじわと快感が
背筋を這い上ってくる。それとともに、乳首の針の絶え間ない出入りによる快感も、耐えられないほどに
高まってきた。アンヌはその場に蹲り、必死に快感に堪えた。
《いけない! こんなことで負けちゃあ!》
アンヌは額に、むず痒いものを感じた。あわてて手を額に当てると、頭蓋骨から何かがムズムズと盛り上がって
くるのがわかった。
《・・・触角だわ。とうとう触角が生えてきたんだわ》
アンヌのプラチナブロンドの美しい髪を貫いて、額に真っ赤な触角が現れた。そしてそれとともに、アンヌの知覚
に大きな変化が現れた。目に見える光景、耳に聞える音が一変し、紫外線や超音波など、今まで感じられなかった
ものがはっきりと捉えられるようになったのだ。
「・・・何、これ? ・・・どうして、こんなふうに見えるの!?」
アンヌはパニックになって、知覚を元の人間と同じものに戻そうと神経を額に集中させた。まだ成長しきってない
短い触角がピクピクと動き、それとともに周囲の光景がどんどん変化してゆく。どうやら意識の集中によって、
触角が捉える電磁波や音波、気圧、温湿度などの範囲は自由に変えられるらしい。そのことに気付いたアンヌは
少し落ち着くと、そのまましばらく、触角の使い方を模索した。やがて彼女の触角は、洞窟の壁の中に隠された
通路の存在を探し当てた。
「ジョージさん! アランさん! 来て下さい! ここ!!」
急いで駆け寄ったアランたちは、アンヌの額に生えたピクピク動く触角を見て驚いた。
「アンヌ!? ・・・その触角!・・・平気なのか?」
「はい、たぶん。でもこれのおかげで、ここに通路があるのがわかったんです。ほら!」
そう言ってアンヌは、下腹部を押さえたまま立ち上がった。膣の中のうずきが、次第に堪え難いほど高まって
きたからだ。
アンヌはともすれば快感に負けそうになる心を必死で叱咤し、ふらふらとよろめきながら洞窟の壁の一点に
向かって立ち止まらずに歩いた。蠕動を繰り返すふくよかな胸が、歩を進めるたびにゆさゆさと大きく揺れ、
アンヌの脳に官能のパルスを送る。乳首の針の出入りがさらに激しくなる。
「・・・あッ・・・あッ・・・あうッ・・・」
アンヌは顔をしかめ、必死で快感に耐えながら歩いた。壁に激突しそうになるのも恐れずに直進を続けると、
アンヌの姿は不意に壁の中へと消えた。
「!」
驚くアランとジョージに、アンヌが壁の向こうから呼びかけた。
「ここが隠し通路です。迷わずにまっすぐ進めばすり抜けられます。皆さんも来て下さい」
半信半疑で思いきって駆け抜けたアランたちは、隠し通路を抜けたところに倒れているアンヌを発見した。
「アンヌっ!」
アランが駆けよってアンヌを抱き起こした。アンヌの身体は絶え間なく痙攣を繰り返し、顔を真っ赤にして
甘くくぐもった嬌声をしきりに上げている。額の触角がさっきよりもずいぶん長く成長しているのがわかる。
「・・・ああッ・・・あッ・・・あうッ・・・あうッ・・・」
「アンヌ。もういい。静かにしていろ。あとは俺が背負ってゆく」
アンヌは驚いて、自分の乳房を手で押さえた。
「駄目です。背負ったりなんかされたら、わたし、きっと・・・」
乳首の針でアランをうっかり刺してしまうことを恐れているのだ。アランは、ならば、とアンヌをお姫様抱っこ
にして立ち上がった。
「・・・キャ!」
「これなら大丈夫だろう。さあ行こう!」
「・・・あン・・・あン・・・ああン・・・あうン・・・あン・・・あン・・・」
ぐったりとなって切なくあえぎ続けるアンヌを抱いたまま、アランたちは暗い隠し通路の中を進んだ。
やがて彼らは、まばゆい光に包まれたドーム状の巨大な空間に出た。
ドームの中央には木の幹とも機械ともつかない、太さ数十メートルはある巨大な円柱が陣取っていた。この円柱
に向かってドームの壁面四方八方から無数の枝と蔦が延び、アランたちの頭上に蜘蛛の巣のように複雑にからみ
合ったネットワークを作り出していた。
天井は白い光に包まれていてよく見えない。床は磨き上げたようにつるつるに輝いていて、塵ひとつなかった。
「ジョージ、あそこを」
アランが目線を投げた先にいたのは、いつか泉でドグの喉を詰まらせたのと同じ、透明のゲル状生物だった。
このアメーバのような生き物が何匹も、まるでモップのように床の上をあちこち這い回り、落ちている塵を
捕食して床をピカピカに磨き上げていた。
「そうか・・・あいつは本来、こういう用途のために作られた生き物だったんだな。それがたまたま逃げたか何かで
野生に帰ったのが、あの泉にいた奴だったんだ」
「ところでジョージ、ここは何のための部屋なんだ? この幹みたいなのはいったい何だ?」
「おそらく、エネルギープラントだろう。地上の植物が集めてきた光エネルギーを、電気エネルギーに変換して
この星のいたるところに送電しているんだと思う。まさに、エネルギープラント(植物)だな」
「なるほど、ここが星の心臓部というわけか。ならば、ここを破壊すれば」
「だめッ! アラン!」
お姫様抱っこに抱えられたアンヌが、大声でアランを制した。彼女の額の触角は、既に他の蜂女たちに近い大きさ
にまで成長していた。
「ここは・・・この星がようやく作り上げた、再生のための最後の希望なんです。壊すなんて、とんでもないわ!」
「アンヌ!? いったい、何を言ってるんだ?」
アンヌはアランに、立たせてくれるように頼んだ。フラフラとした脚で立ったアンヌは、エネルギープラントを
ひととおり眺め渡してから、毅然とした表情でアランとジョージに向かって言った。
「わたし、この触角のおかげでわかるようになったんです。森たちの話す声、いえ、森の考えが」
「森の声? どういうことだ? 森が意識を持っているとでも言うのか?」
「はい。この星はいま、森の意思によって管理されているんです。あの蜂人間たちや、わたしたち蜂女は、森の
意思を実現するための道具にしか過ぎません」
アンヌが蜂女のことを『わたしたち蜂女』と呼んだのを、アランは苦々しい思いで聞いた。
「・・・森の意思だって? その森の意思は、いったいどこにあるんだ!?」
「はいジョージさん。森の意思は、いえパパは、このすぐ下にいます」
「何!?」
アンヌがそう言ったとたん、ツルツルの床が突然ぐにゃり、と変形し、無数の触手となってジョージとアンヌの
2人をからめ取った。
「ジョージ!」
アランが手を伸ばす暇もなく、触手に包まれた2人は床に飲み込まれるようにして消えた。
「・・・くそッ!」
床を拳でガンガンと何度も殴打するアラン。だが強化ファイバープラスチックのような質感の床は、虚しい
反響音を残すだけでびくともしない。
ふとアランは、自分の後ろに人影が立つのを感じて振り返った。
「・・・レイ・・・ラ・・・!?」
そこに立っていたのは、身も心も蜂女に改造されてしまったかつての恋人、レイラ・アシュクロフトだった。
【15】
「・・・ここ・・・は・・・?」
触手の群れがほどけて、ジョージとアンヌが周囲を見回すと、目の前にあったのは巨大な壁、いや樹の幹であった。
とほうもなく巨大な樹が、果てしない暗い空間の奥底から生え、はるか天上めがけて伸びていた。背後は完全な
暗黒、上空は小さな光点が見えるだけで、他には何もない。
ジョージたちが転送されてきたのは、その巨大な樹の周囲に幾つも漂う、巨大な葉のような物体の上だった。
彼らの正面、鈍い光を放ちながらそびえ立つ、数万年の時を経たかとも思えるほど巨大なその幹は、なんと表面に
触手のような柔らかい皺が無数に刻まれ、それらはうねうねと絶え間なく蠕動を続けていた。
その皺が突然、ぐねぐねと意味ありげに動いたかと思うと、たちまち巨大な人面のかたちを取った。
【やあジョージ。遅かったじゃないか。もっと早くここまで来るかと思っていたよ】
「パパ!」アンヌが嬉しそうな声で叫んだ。
「・・・ピエール!? その声はピエールか? なぜそんな姿に!? 他のメンバーはどうしたんだ!?」
【そう急くな。みんなここにいる。ほら、ウォーレンくんも、エリックくんも】
幹に浮かんだピエール・シャンブロワ教授の顔の隣に、別の巨大な人面が幾つも現れた。シャンブロワ教授に
同行した調査隊のメンバーであった、ウォーレン・キンバリー教授や、エリック・デニケン教授の顔がそこに
あった。
【やあ、ジョージくん、久しぶりだね】
【君ならきっとやって来ると思っていたよ】
「・・・何てことだ・・・苦しくないのか、そんな姿で!?」
【・・・苦しい? 何を言っているのかね。・・・しごく快適なものだよ、この姿は】
【きみにもすぐにわかるだろう。ほら、きみの仲間もここにいるよ】
続いて現れた人面を見て、ジョージは驚きのあまり息を呑んだ。
【あーらジョージ、やっと来てくれたのね】
【だから言ったでしょう、ジョージ。また会えると】
それは蜂女が乳首から撃った種子によって植物に寄生されたはずの、ウルフガンス・フランケンフンガーと、
ベンドバンブゥ・マゴンセブの顔であった。
「いったいどういうことだ。2人とも死んだんじゃなかったのか!?」
【死んだのではありません。森に帰ったのです】
【そう。アタシたちが生まれてきたその場所に、再び帰ってきたのよ】
「どういうことだ!? 教えてくれ、ピエール! この星では、いったい何が起こっているんだ!?」
【あわてることはない。きみにもすぐにわかることだ。きみももうすぐ、われわれの一部となるのだから】
「今すぐ知りたい! いったい何があった!?」
【・・・わかった。ならば説明しよう】
幹に浮かんだ人面の群れが、ピエール・シャンブロワの顔ひとつを残して消えた。
【はじめに言っておくがジョージ。きみと話をしているのは、きみの友人、ピエール・シャンブロワではない。
ピエールは確かにわれわれが取り込んだ地球人だが、既に個人という人格を失い、既にわれわれの一部と
なっている。きみと話をしているのはピエールであり、かつわれわれが取り込んだ地球人たち全員であり、かつ
この森の全体意識でもあるのだ】
「全体意識だって? どうして森が、植物が、意識を持っているんだ?」
【この星もかつては、地球と同じように大半が海で覆われた星だった。海にも陸にも、もの言わぬ植物が繁茂し、
動物たちはさまざまな環境に適応進化して、互いに争いつつも共存繁栄していた。だがこの星にも数百万年前に、
地球人と同じような知性体が誕生した】
「あの、コンクリートの街を築いた生物か?」
【そうだ。彼らは現在の地球人同様の科学文明を築き上げ、さらに水の中から水素を取り出すことで、莫大な
エネルギーを手に入れることに成功した】
「水中の水素から? ひょっとして、常温核融合か?」
【その一種だ。だが彼らは巨大な研究室ではなく、懐中電灯ほどの大きさの機械でそれを可能にしたのだ。
スポイト一滴分の水から、とほうもないエネルギーが取り出せた。彼らはさらなるエネルギーを求めて、水を
浪費した。消費された水素はヘリウムとなって、宇宙空間に飛散した。後には大量の酸素だけが残った。
彼らはエネルギー源としての水をひたすら求め、ついにはこの惑星の“母なる海”にまで手をつけて、それを
干上がらせてしまったのだ】
ジョージはようやく飲み込めた。この星に海が無い理由、なのに生命が存在している理由、そして大気中に
異常に酸素が多いその理由を。
【海を失ったことでこの星の生態系は崩れ、多くの生き物が絶滅への道を辿りつつあった。そこでわれわれは
決断した。この災厄をもたらした生き物たちを滅ぼし、星を救おうと】
「われわれとは“森”のことか!? “森”はどうやって自意識を持つに至ったんだ!?」
【われわれにも、自分たちがどうやって生まれたのか見当がつかない、知性体の行った実験のせいかも知れず、
あるいはこの星の自衛本能が、われわれを誕生させたのかも知れない。いずれにせよ、気がつくとわれわれは
そこにいた。われわれは知性体のうち何体かを取り込み、われわれの一部とすることで、その知識を得た。そして
この星の現状を知り、何をするべきかをはっきり悟った。われわれはこの星のすべての植物に呼びかけ、それら
すべてにこの星の知性体に対抗できる力を与えた】
「対抗できる力、だと!?」
【われわれは生物の遺伝子を自由に組み換え、操作することができるのだ。われわれが施した改造によって、
植物たちは自由に動き回り、無限に増殖し、圧倒的な力で知性体を捕え消化する力を得た。失明光線を放つ植物が
いちばん役に立った。そして植物たちはたちまちのうちに知性体を制圧し、この星の覇権を奪い去ったのだ。
われわれは次いで、海を失ったこの星の生物を、水の少ない環境でも暮らせるように改造した。そして徹底した
リサイクルによって、残り少ないこの星の水を管理することにした】
「では、あの蜂人間たちはいったい何者なんだ? そしてあの・・・」
ジョージはアンヌの方をチラリと見た。
「・・・蜂女たちは!?」
アンヌは話を聞いているのかいないのか、超然とした態度で佇んでいた。彼女の額の触角は、既に蜂女たちと
変わらない大きさに成長し、絶えずピクピクと動いている。そしてサイバータイツごしのふくよかな乳房は、
別の生き物が胸に巣くっているかのように絶えず蠕動し、エロチックな蛇腹運動を繰り返している。
巨大な樹の幹に現れたピエール・シャンブロワの顔が、ふと笑ったように感じられた。
【われわれは知性体の文明を滅ぼしはしたが、生命を無駄に奪うことはしたくなかった。だから、彼らを別の
生き物に造り変えたのだ。互いに争うことをせず、この星の資源を浪費しないような生き物にね。この星の、
地球の蜂によく似た真社会性昆虫が、よいモデルを提供してくれた。われわれは捕えた知性体の体内に触手を
伸ばし、遺伝子を組み換える特殊な同化液を使って、彼らを蜂人間に改造していった。同化液とは、地球でも
いま研究されている微小機械ナノマシン、それを有機体ベースでゼロから作り上げたようなものだ。改造が
済んだ蜂人間たちには、他の知性体を襲って同化液を体内に注ぎ、仲間を増やす力を与えた。この蜂人間たちを
地上に放つことで、わずか半年でこの星のすべての知性体は、残らず蜂人間として生まれ変わったよ。そして
蜂人間たちはいま、この星で森を管理する大切な役目を担っている。こうしてこの星には平和が戻ったのだ。
全ての生命が、自然の摂理の名のもとに幸せに暮らしてゆける、ユートピアが戻ったのだ】
平然とした口調で語られたその凄惨な話に、ジョージは背筋に冷たいものを感じた。
「では、地球人たちはどうなった!? そして蜂女たちは?」
【地球人、この者たちか。2か月前、この者たちは空から突然現れた。そして、生き物を次々と捕まえて様々な
生体実験を始めた。我々はこの者たちの1体を捕え、取り込んだ。そしてこの者たちが、われわれがかつて
滅ぼした知性体と同じ、危険な種族だということを知った。われわれにはなすべきことがわかっていた。この者
たちを捕え、改造し、森にとって無害な存在に変えねばならないことを】
「・・・それで、調査隊を全滅させたのか」
【むろん彼らの中にも、武器を持って抵抗する者たちがいた。だがこの星の上にいる限り、われわれの手のひら
の上で踊っているのと同じことだった。半日で制圧は完了したよ。そしてわれわれは捕えたこの者たちのうち、
非好戦的な科学者たちを次々とわれわれの一部として取り込んだ。そして残りの者を蜂人間に改造しようとした。
だがそれは困難だった。体内構造も、遺伝子の構成も、この星の知性体とはあまりにも違い過ぎたからだ。
試行錯誤の末、この者たちが母星から持参した遺伝子アーカイヴの中の、地球の蜂の遺伝子を使って、女性隊員
2名だけをようやく改造することに成功した。そう、地球人は女性だけしか蜂人間には改造できないのだ。
そのかわり・・・】
樹の幹に浮かんだピエール・シャンブロワの顔が、妖しい笑みを浮かべた。
【地球人の女性を改造した“蜂女”は、この星の知性体を改造した蜂人間たちを大きく凌駕する、素晴らしい能力
を持つことになったよ。数千度の熱にも、絶対零度にも、恒星からの強烈な放射線にも耐えられる。寿命も、この
星の蜂人間たちが十数年なのに対し、おそらく数千年は生きられるだろう。地球母星の環境でなら、数万年から、
ひょっとしたら半永久的な寿命を見せてくれるかも知れない。そして蜂人間同様、地球の蜂に似た“真社会性”を
持っている。個体が全体を裏切ることも、全体が個体を見殺しにすることもあり得ない。まさに完璧な生物なのだ】
「・・・なるほど。ではなぜ、きみは我々をここに呼び寄せたんだ? ピエール、きみは、いやきみたち“森”は、
地球人をいったいどうするつもりなんだ!?」
【われわれの望みは、“森”の一部を地球にも広めることだよ。いまこの星は、地表のすべてが“森”の管理下
にあって、これ以上増殖の余地がない。どんな生物にもある増殖への本能が、新天地を求めているのだ。この者
たちが教えてくれた、地球という星の存在。われわれはそこに憧れる。地球をこの星と同じように、一面“森”で
埋め尽くしたい。だがそれには、それを行うにふさわしい“駒”が必要なのだ。だから、地球からきみたちを
わざわざ呼び寄せたのだ】
ピエール・シャンブロワの顔は、アンヌに向かって呼びかけた。
【・・・アンヌ】
「はい、パパ」
【わかっているね?】
アンヌは頷き、呪文のようなパスワードを唱えた。とたんにサイバータイツがするり、と脱げ落ち、陶器のように
白いアンヌの柔らかな素肌が現れた。そしてスレンダーなボディに似合わぬほどふくよかな乳房が、ぷるん、と
あらわになった。だがその乳房には、蜂の腹部を思わせる黄色と黒の同心円模様が既にはっきり浮き上がっており、
淫らな蛇腹運動を続けていた。真っ赤な泪滴状をした乳首の先からは小さな銀色の針が、しきりに出入運動を
繰り返している。その変わり果てた姿を見て、ジョージは悲痛な思いに駆られた。
そしてアンヌは、自分の股間に手を延ばしてノズルプラグをずるっ、と引き抜いた。ぷしゅっ!という音とともに
紫色の粘液が飛び散り、アンヌの膣を満たしていた、長さ10cm余り、太さ3cmほどのぶよぶよした灰青色の
物体が粘液とともに落下した。ノズルプラグを吐き出した赤い少陰唇が、まるでナメクジのようにヒクヒク蠢いた。
膣の中にずいぶん溜まっていたのだろう。アンヌの膣孔からは紫色をした粘性の液体がとめどなくトロトロと
流れ落ち、アンヌのすらりとした脚を伝って足元に大きな水たまりを作った。
ハイヒール状になったタイツから脚をすっかり引き抜き、すっかり全裸になったアンヌは、恥じらう様子もなく、
かつて父親だったものの前にその美しい肢体を晒した。
【アンヌ。蜂女に託した同化液によって、お前の身体は20パーセントほどが、既に蜂女になっている。これから
われわれが、お前を直々に改造してやろう。われわれが持つ全ての技術を投入して、お前を究極の蜂女に生まれ
変わらせてやろう】
「はい、パパ!」
アンヌの声は、大好きな父の期待に応えられるという期待と歓びに満ちたものだった。
【さあアンヌ、ここに入るがいい。お前を蜂女に改造してやろう】
ピエール・シャンブロワの顔が浮かび上がった幹のやや下に、女性器のような形の大きな穴が開いた。ピンク色の
肉のような襞が絶え間なく蠢く、奇怪でエロチックな穴であった。
「はいパパ。アンヌはこれから、改造されて蜂女に生まれ変わります」
ジョージとアンヌを乗せた、浮かぶ葉が、女性器のような穴にぴたりと密着した。全裸になったアンヌは堂々と
した足取りで、その中に向かって歩いていった。
「やめろ、やめろアンヌ! やめるんだ!!」
ジョージはアンヌを止めようとしたが、その場から動くことができなかった。いつの間にか彼の足元は、無数の
蔦によってからめ取られ、固定されていたからだ。
「畜生! こいつめ! 動け、動け!!」
ジョージの足には、感覚が無くなっていた。からみついた蔦の群れはノーマルスーツを破り、ジョージの身体と
融合を始めていたからだ。周囲からうようよと集まってくる蔦や触手の群れが、ジョージの足を覆い隠し、木の
根元のように変えてゆく。
「ピエール、助けてくれ! ピエール!!」
【何を恐れているのかね、ジョージ。きみも、われわれの一部になれるのだ。これは素晴らしいことなのだよ。
さあ、抵抗をやめて、われわれの手に身体を委ねるがいい。じきに、楽になれる。至福の境地に運ばれるのだ】
ジョージは抵抗をやめ、ガックリと肩を落とした。無数の蔦や触手がジョージの姿をすっかり覆い隠すのに、
それほど時間はかからなかった。
やがて、地球人・印出壌二の意識はとだえた。代わりに、巨大な幹の表面に新たな顔が現れた。
アンヌを飲み込んだ穴が、ゆっくりと閉じていった。そして、再び沈黙が訪れた。
【16】
「レイラ、邪魔をするな。あの2人をいったいどこにやった!?」
短針銃をかまえるアランに向かって、蜂女レイラはウフフフフ・・・と妖しく笑いながらゆっくりと近づいてくる。
「レイラ、答えろ!」
アランの手が小刻みに震えているのに対し、レイラはまったく動ずる気配がない。それもそのはず、蜂女の躰に
短針銃がまったく効き目のないことは実証済みであった。
レイラはアランを挑発するように、両手を自分のボディラインに沿ってなまめかしく這わせ、同心円模様の豊満な
乳房をゆっくりと揉みしだいた。そして白いエナメルの手袋をはめたような細い指を真っ赤な唇の上で遊ばせ、
そっと指先をしゃぶって見せる。ゆっくりと体側に沿って並ぶ気門の群れが、いやらしく開閉を繰り返している。
レイラの股間にナメクジのように蠢く肉のスリットから、ピンク色の蒸気がスーッ、と噴き出し、立ち昇る。
彼女が人間だった時の尿道孔は、改造されて強力な性フェロモンの蒸気を分泌する器官と化していたのだ。
その蒸気は、アランにも影響を与えていた。胸の動悸が高まったまま抑えられなくなっていたのだ。
畜生! 落ち着け! 落ち着くんだ! 何をしている、アラン!
必死に自分に言い聞かせるアランに向かって、蜂女レイラは拡げた腕を真っすぐに差し伸べ、優しく呼びかける。
「アラン、どうして抵抗するの? 今ごろはもう、アンヌもわたしたちの仲間入りをしている頃よ」
「お前たちはいったい何が目的なんだ? なぜ俺たちを襲う?」
「だって、それがわたしたち蜂女の、本能なんだもの!」
レイラは子どものように無邪気に笑った。
「人間の女が子どもを欲しがるように、わたしたち蜂女も仲間を増やしたいの。蜂女は、あの蜂人間のように
卵を産むことができないから、だから人間の女の子を襲って、無理やり仲間にするしかないのよ」
「本人の意思に反してでもか!?]
「本人の意思? 関係ないわ。だってこの世に、蜂女に生まれ変わる以上の幸せなんてあるはずがないもの!」
レイラはそう言って笑うと、自分の乳房を揉みしだいた。乳首から小さな針がゆっくりと出入を繰り返す。
アランは覚悟を決めた。レイラはもはや魔性の者。人間にとっては災いを招く存在でしかない。ならば、俺の
この手で殺すしかない。たとえ差し違えることになろうとも。それが俺の、レイラへの愛の決着のつけ方だ。
「でもね、アラン」
レイラは急に甘えた声になって、アランに呼びかけた。
「蜂女にも、人間だった時の記憶と意識は、しっかり残っているの。わたし、蜂女に改造された今でも、あなたの
ことが大好きよ。だって、初めての男(ひと)なんだもの。蜂女になった今でも、忘れられるはずがない」
「・・・レイラ、お前・・・」
「ねえアラン、抱いて。蜂女になったわたしを、抱いて。わたしが人間だった時よりも、数千倍、いえ数万倍は
激しい快楽を与えてあげられるわ。だから、わたしを抱いて。もう一度、わたしを愛して」
「・・・やめろ、やめろレイラ!」
短針銃を握るアランの手が汗でにじむ。人間だった時のレイラそのままの甘い囁きが、彼の決意を鈍らせる。
「わたしたち蜂女は、みんな男が欲しいの。あの蜂人間たちとも交わってみたけど、でもあんな短いペニスじゃ
ぜんぜん物足りない。人間の男がいいの。いいえ、あなたが欲しいの。抱いて。今すぐわたしを抱いて」
レイラは手を延ばし、らんらんと目を輝かせてアランに迫ってくる。乳房の淫靡な蠕動がさらに激しくなる。
「・・・!」
ジュッ! アランは短針銃の銃爪を引いた。だが針は蜂女の皮膚を貫通することはできず、床にそのままパラパラと
こぼれ落ちた。レイラは左手を延ばして、短針銃を持つアランの右腕を握り、ぐいと後ろ手にひねった。
「無駄よアラン。抵抗は止めて、わたしとひとつになりましょう。ねえ、アラン」
「・・・やめろ、やめるんだレイラ!」
レイラの濡れたまなざしがアランの目前に迫った。半開きになった真っ赤な唇がアランの口元に近づく。
その瞬間。
ブシュッ。
「・・・ア・・・ラン・・・?」
左手に隠し持った電磁ナイフを、アランが渾身の力で蜂女の首筋に突き立てたのだ。
「許してくれ・・・レイラ・・・」
高周波振動によってチタン合金製の宇宙船外壁をも豆腐のように切断できる、彼の最後の切り札であった。
切り裂かれた首から真っ青な、人間のものではない体液を噴き出しながら、蜂女が崩れ落ちる。
「・・・ああ・・・アラン・・・」
レイラは柔和に微笑みながら、アランの方に手を差し伸べ、そのまま改造されたその身を床にバサリと横たえた。
アランはナイフを投げ捨て、レイラの身体を抱えおこして激しく慟哭した。
「・・・レイラァーッ!」
アランは力尽きたレイラの身体を緊く抱き締め、改造される前とまったく変わらない、彼女の美しい顔の上に
ポロポロと熱い涙をこぼした。
「許してくれ・・・レイラ・・・お前を一人で死なせはしないぞ・・・奴らを全滅させたら、俺も、すぐに逝く・・・」
その時。
ブスッ!
「!?]
レイラを固く抱き締めた胸に、鋭い痛みを感じて、アランは思わず身を放した。動かなくなったはずのレイラの
乳房がぷるるん、と震え、針を失った乳首に新たな針が装填され、出入運動を始めるのが見えた。
レイラは目を閉じたままクスクスと笑うと、アランに抱かれた身をゆっくりと起こした。
「・・・レイラ・・・ま、まさか・・・!?」
蜂女はナイフで大きく切り裂かれた、青い体液をドクンドクンと垂らし続ける首筋の傷に手をかざした。とたんに
体液の流出が止まり、傷がみるみるうちにふさがってゆくではないか。
「・・・アランのおバカさん。蜂女は、こんな傷では殺せないのよ」
アランの胸に、銀色の小さな針が突き立っていた。意識が休息に混濁し、目の前が見えなくなってゆく。
「・・・レイラ・・・そんな・・・お前・・・・・・」
アランの目が、光を失った。唇をガクガクと震わせ、言葉にならないセリフをぶつぶつと唱えるばかりとなった。
レイラは悪戯っぽい顔でそんなアランの様子を確かめると、妖しく微笑み、両の手のひらでアランの頬をはさんで
熱く、長い口づけを行った。
レイラが唇を放しても、アランは放心したままだ。
「アラン。これであなたはもう、わたしのもの。さあ、そんな服なんか脱いでしまいなさい」
アランはカクカクと頷き、ノーマルスーツを脱ぎ始めた。下着を投げ捨て、すっかり全裸になる。
レイラはアランの前に屈み込み、彼の男根を舌で転がすように刺激した。蜂女の刺激性の唾液を粘膜に塗り込め
られて、たちまちアランの男根には張りが戻り、ギンギンに膨らんで天に向かってそそり立った。
その間も、アランの顔は呆然としたままで何の表情も表さない。
レイラはそのまま口をすぼめて、アランの男根を美味しそうに頬張った。ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅぱ、と音を立てて
舌を巧みに使いながら愛しい男の男性自身を喉の奥深くまで飲み込み、心ゆくまでむさぼった。
アランの男根の怒張は、既に頂点に達していた。先端の穴からじわじわと透明な液体が漏れ出ている。
蜂女はアランから身を引くと、脚をM字型に拡げて座った。レイラの拡げた両脚の間に、既に紫色の愛液を
噴きこぼしながら軟体動物のように淫らな蠕動を繰り返している、真っ赤な肉の亀裂が拡がっている。
人間離れした真っ青なボディに、絶えず蠕動を続ける黄色と黒の蜂の乳房、そして股間に花開いた真っ赤な肉孔。
それは明らかに人間の女性のものではなかったが、喩えようもなくエロチックで、淫靡な美しさに満ちていた。
「・・・さあ、アラン。わたしを抱いて! 抱きなさい! 蜂女に生まれ変わったわたしの身体を、思う存分貫いて!
人間の女が相手では決して味わえない、ふたりだけの至高の快楽の園に、連れていってあげるわ」
レイラが、アランに行為を促した。
「さあ!」
アランはうぉおおおお!と吼え、横たわるレイラ目がけて襲いかかった。蠕動を続ける蜂の乳房を鷲掴みにし、
自分のそそり立った男根を、前戯も無しにレイラの拡げた股間めがけて突き入れる。
「・・・あああッ!!」
ビンビンにいきり立ったアランの肉茎が、既に処女を喪失した部分を目がけて、ぐぐい、と侵入する。
「・・・ああ・・・アラン! 好きよ! 好きよ! 好き! ・・・あウッ! ・・・あウッ! ・・・はぁッ! ・・・はぁッ!」
蜂女に改造されたレイラも、渾身の力でアランの陰茎を締め付け、一匹の牝となって狂ったようによがった。
人間の男と蜂女。一人と一体のまぐわいは次第に激しさを増し、周囲の空間はレイラの放つ性フェロモンの
甘い香りと、ぶちゅっ、ちゅぱっ、ぶちゅっ、という卑猥な音、それに絶え間ない蜂女の嬌声で満たされた。
「・・・あウウッ! ・・・あウッ! ・・・はぁッ! ・・・はぁッ! ・・・あぁンッ! ・・・あぁンッ! ・・・あああンッ!」
【17】
その頃、16歳の絶世の美少女アンヌ・シャンブロワは、“森”の中心部にある巨大樹の中で“森”の意思に
よって改造され、完全な蜂女として生まれ変わろうとしていた。
そこは、レイラがかつて蜂女に改造されていったベッド状の花弁よりも、さらに一回り大きく豪華な印象の、
植物体で作られたベッドだった。アンヌは自分の触角に呼びかける父親の声に応えるように、平然と自分から
ベッドの上に横たわり、両手両脚を大の字に伸ばして運命の時を待った。
スルスルと蔓のようなものが四方から伸び、アンヌの両手両足首を縛るように固定した。
まだ男を知らない16歳の処女の、ピチピチで柔らかな白い肌が眩しい。同化液の洗礼を受けて、既に身体の
2割ほどが蜂女化しているはずだったが、絶え間なく蠕動する蜂の乳房以外は、普通の人間と変わりがなかった。
しどけなく拡げられた両脚の間、永久脱毛されたこんもりしたふくらみを縦に割って走る亀裂の中には、美しい
ピンク色の肉の襞が花開き、紫色の粘液をトロトロと分泌しながら絶え間なくヒクヒクと蠢いている。
《ああ・・・わたし、もうすぐ改造されちゃうんだ。やっとこの身体ともお別れなんだ・・・》
この時アンヌはまだ、人間としての意識を保っていた。自分がこれからどのような目に遭おうとしているのかも、
冷静に把握していた。ただ触角からの洗脳によって、蜂女になることに対しての嫌悪感と恐怖心は消されており、
逆に改造に対する強い期待と憧れの感情が植え付けられていたのだ。
《まだ始まらないのかな? ・・・早く、早く改造して欲しい! 早く完全な蜂女になりたい! ・・・早く! 早く!!》
アンヌの脳裏に、蜂女に改造されたレイラの美しい姿が、そしてチアキやデボラの姿が浮かんだ。ああ。わたしも
早くあの姿になりたい。こんなぶよぶよした人間の肌は早く捨てて、あの美しい青い皮膚で全身を包まれたい!
突然四方八方から、無数の蔦か触手のようなものがわさわさと延びてきて、アンヌの全身に襲いかかった。
来た・・・! と思ったアンヌは思わず全身を固くした。
触手の群れはアンヌの全身をまさぐり、舐めまわし、敏感な箇所をいたぶるように執拗に責め立てた。
「・・・あッ・・・ああッ・・・あうッ・・・あうッ・・・はぁッ・・・はぁッ・・・あうッ・・・あうッ・・・ああううッ・・・」
性感帯をそんなふうに一度に責められた経験が無いアンヌは、たちまち官能のとりことなり、身体をくねらせて
切なくあえぎ始めた。顔は真っ赤に紅潮し、同心円模様が刻まれた乳房の蠕動はますます激しくなった。股間の
肉の孔からは、蜂女特有の紫色の愛液がとめどなくほとばしり出て股の間を濡らしてゆく。
かつて“森”が地球人を初めて捕え、蜂人間に改造しようとした際、障害となったのが精神的な拒絶反応だった。
地球人は精神の状態が全身の細胞の活性に影響を及ぼす種族であるらしく、苦痛や屈辱、恐怖や拒否感情に
支配された状態ではじゅうぶんな改造を行うことはできなかった。そこで“森”は、改造する対象を性的な
エクスタシーの状態に導き、全身の細胞を活性化し脳内麻薬の分泌をピークにした上で改造する手段を編み出した。
それでも、男性を蜂人間に改造することは不可能であった。男性の性的エクスタシーは非持続的で限定的であり、
数時間はかかる改造の間じゅう持続させることは困難だったからだ。だが地球人の女性は、エクスタシー状態を
長時間保つことができた。体内に子宮という、体組織改造を行う基地として最適の器官を持っていることも有利
に働いた。こうして“森”は、捕えた地球人女性をセックスを模した方法によって、エクスタシーを与えつつ
蜂人間に改造する方法を編み出したのだ。
いま、アンヌが受けている全身の性感帯への責めは、そのための第一歩であった。
触手のうち何本かが、アンヌの身体に開いた穴の中に侵入を開始した。口腔にひときわ太い改造触手が潜り込み、
狂ったように暴れ回った。改造触手の先端の孔からは紫色の同化液がプシュー!プシュー!と噴き出し、アンヌの
喉の奥にトロトロと流れ込んでゆく。むせかえるような強烈な刺激がアンヌを襲い、恍惚とさせる。さらに
口腔から飛び出した改造触手はアンヌの顔面に向かって、同化液をビュッ、ブシュッ!と吹き掛け、彼女の
紅潮した愛らしい顔を紫色の粘液まみれにした。同化液は皮膚の表面からも体内に侵入できるため、アンヌの
顔面は少しずつ、人間ではないものに変わってゆく。うぶ毛がすべて抜け落ち、毛穴や汗腺が消失してゆく。
「・・・あッ! ・・・あッ! ・・・いやッ! ・・・あうッ! ・・・あうッ!・・・」
アンヌの肛門には細目の改造触手が3本同時に潜り込み、互いにすり合わせながら直腸の中を何度も往復した。
そして紫色の粘液をとめどなく噴きこぼす膣孔の周辺を、数本の改造触手が同時にまさぐった。侵入はしないまま
じわじわと肉襞の上を這いずり回り、同化液を粘膜に塗りこめていった。膣孔の襞が改造触手の侵入を求めるかの
ように、ヒクヒクと切なく蠢いた。また別の改造触手はアンヌの陰核にまとわりつき、ぐりぐりと触手の先端で
際限なく小さな愛らしい肉の豆を責め立てた。
「・・・ああッ・・・だめぇ・・・だめよ・・・ああン・・・だめぇ・・・ああン・・・ああン・・・あふぅ・・・あふぅん・・・」
首筋を、脇腹を、太ももの内側を、全身のありとあらゆる性感帯を触手の群れが刺激し、官能の波を高めていった。
既に、アンヌの受け入れ体制はじゅうぶんに整っていた。彼女の股間に艶やかに咲いた肉の孔は、粘液にまみれた
口をパクリと拡げ、侵入の瞬間を今か今かと待ちかまえていた。
そしてついに、ひときわ太くて長い、先端に小さな穴の開いた触手が現れた。太さ5センチはあろうかと思われる
その改造触手の先端は、男性の陰茎のようにひときわ太い蛇のかま首状となっており、先端の表皮はずるりと
めくれ上がって赤い粘膜が露出していた。
その姿を認めたアンヌは、思わず顔を赤らめた。医学書の挿絵で見たことがある男性性器のかたちに、あまりにも
酷似していたからだ。
《いよいよだわ・・・いよいよ、改造が始まるんだ。・・・わたし、蜂女に改造されちゃうんだ》
不安と期待で、アンヌの胸の鼓動は早鐘のように激しく高まった。
かま首をもたげた改造触手はゆっくりと侵入箇所を見定めるように動いて狙いを定め、紫色の愛液で濡れそぼった
アンヌの秘孔目がけて、勢いよく飛び込んだ。
「・・・キャアアッ!」
アンヌの膣孔に潜り込んだ改造触手は、そのままぐいぐいと力任せに中に押し入ってゆく。ピンク色の処女膜が
押し広げられ、プチッと千切れて鮮血がほとばしった。
「・・・痛い! ・・・痛い! ・・・やめて!やめて! ・・・イヤあッ!」
アンヌはこれまでも自らの膣に、ノズルプラグを奥深く挿入していた。だがぶよぶよの柔らかいノズルプラグは
生理用のタンポンのように、彼女の処女膜を傷つけるようなことはしなかった。だが今、アンヌの秘所目がけて
侵入しつつある巨大な改造触手は、まるで木製のバットのように固く、また彼女の未成熟の膣が受け入れるには
あまりにも太く大き過ぎた。
破瓜の苦痛にアンヌは思わず泣き出した。だが改造触手はそれには構わずにズブズブと奥に侵入し、ついには
先端から20センチほどがアンヌの胎内深くに飲み込まれた。
予期しなかった処女喪失の苦痛に、涙をポロポロこぼしながらえっえっ・・・と泣きじゃくるアンヌ。
だが股間に集まった改造触手の群れは、彼女を泣かせたままにはしておかなかった。
膣への挿入が始まったとたん、クリトリスを刺激する触手、肛門をまさぐる触手の動きがいっそう激しくなり、
彼女をさらなる激しい快楽の園へと連れ戻したのだ。
「・・・あ! ・・・あ! ・・・ああ! ・・・あッ! ・・・あッ! ・・・あうッ! ・・・あうッ!」
膣の奥深くに挿入されたひときわ太い改造触手が、表面の襞をうねうねと激しく蠕動させながら、蛇のように
のたうち回り始めた。それと同時に触手の先端の穴から、大量の紫色の粘液、すなわち同化液がズブズブと
大量に分泌され、アンヌの子宮めがけてドクドクととめどなく注ぎ込まれていった。
「・・・ダメぇ・・・いやぁ・・・やめて・・・やめて・・・ああッ・・・あうン・・・あうぅん・・・はうっ・・・はうっ・・・」
破瓜の苦痛に代わって、強烈な快感の波がアンヌを呑み込んだ。ノズルプラグの刺激で得ていたものとは桁違いの
凄まじい快楽の嵐が、アンヌの股間から脳天に突き抜け、彼女の理性を官能の渦の中に投げ込み翻弄した。
それは、処女のアンヌが初めて味わう、凄まじい性の饗宴であった。
「・・・あうン・・・はぁうン・・・はぁッ・・・はぁッ・・・はぅうン・・・はぅうン・・・あうン・・・あうン・・・ああッ・・・」
子宮内に達した同化液は、子宮壁粘膜を通ってアンヌの血液中に侵入し、そのまま血流に乗って全身を駆け巡った。
そしてアンヌの全身の細胞を侵食し、遺伝子情報を書き換えて、彼女の肉体を地球人の女性から蜂女へと変化させ
てゆく。
「・・・あうン! ・・・ああぅン! ・・・はうぅン! ・・・はぁッ! ・・・はぁッ! ・・・はうッ! ・・・はうッ!・・・」
全身を貫く狂おしい快感に身を委ね、アンヌは歓喜の涙を流しながらあえぎ続けた。触手の愛撫に合わせて身体を
妖しくくねらせ、悶え、ひたすらあえぎよがった。快楽のあまり泣きじゃくり、何度も絶叫し、気を失い、
また息を吹き返して悦びのあまり激しくむせび泣いた。
気持ちがいい! 気持ちがいい! 死んでしまいそうなくらい気持ちがいい! この快楽をもっともっと味わいたい。
もっとよ! もっと! 我慢できない! もっとわたしを快感で狂わせて欲しい!
とめどない快楽に身を委ねて、アンヌは自分から腰を持ち上げ、夢中になって前後に揺すった。かたちのよい
引き締まった尻を、クイッ、クイッとリズミカルに揺さぶった。腰を動かすことで、官能の波はさらに高まった。
アンヌは狂ったように腰を振った。果てしなく湧き出る快感を無我夢中でむさぼった。悦びのあまり泣きじゃくり
ながら、アンヌは激しくよがり、あえぎ、のたうった。それはもはや16歳の清楚な処女ではなく、性欲に飢えて
悶え狂う一匹の牝であった。
そして、アンヌの白く輝く裸身が、少しずつ変化を始めた。
全身の皮膚が、鮮やかな青い色に染まり始めた。全身のうぶ毛が抜け落ち、毛穴や汗腺が消失し、皺が消えた。
みるみるうちにアンヌの全身の皮膚は、なめし皮のようにしなやかで真っ青な、蜂女の皮膚へと変化していった。
手首と足首だけが白く染まり、長手袋とロングブーツを履いているかのようなエナメル質に変化していった。
手の指からは爪が消失し、脚の指はひとつに融合し、かかとはハイヒール状に変形した。
既に黄色と黒の同心円模様がはっきり浮かび上がっていた彼女の乳房にも、変化が現れた。それまで人間の乳房と
同じように重力に押しつぶされていた乳房がゆっくりと持ち上がり、前に張り出したロケット型のかたちを綺麗に
整えた。そして今までにも増して激しく、蛇腹状の蠕動蠕動を始めた。真っ赤な泪滴状をした乳首の先では、
銀色の小さな針が狂ったように激しい出入運動を行い、アンヌの脳に強烈な快感のパルスを伝えていった。
蜂女の同心円模様の乳房は、さまざまな化学物質を合成できる工場であった。およそ生物が体内で作り出せる
高分子化合物であればどんなものでも、乳房の内部で即座に合成可能であった。そして、“森”から託された
植物の種をしまっておく空間でもあった。種やカプセルに入れられた化学物質は必要に応じて針に装填され、
乳房を彩る同心円状の筋肉の運動によって勢いよく射出される。その射程距離はおよそ20メートル。勢いを
つければ厚さ5センチの鋼鉄板を貫通することも可能であった。
アンヌの乳房以外の全身の器官も、どんどん人間ではないものへと造り変えられていった。
表皮を残して筋肉が、骨が、内臓が、いったんグズグズに溶かされた後、蜂女のものに組み上げられていった。
既にアンヌの体内には、人間の骨格は存在していなかった。皮膚のすぐ内側を覆う外骨格にとって変わられたのだ。
脊柱は痕跡だけのものとなり、脊髄の代わりに腹髄が形作られた。それまでの脳に加えて、乳房の奥に第2の脳が、
お尻の中に第3の脳が、左右対称に形作られた。胸部の脳は乳房の活動をコントロールするための、臀部の脳は
全身の運動と性行動を司るためのものであり、3つの脳が同時に破壊されない限り、蜂女は活動可能であった。
アンヌの人格は、3つの脳に同時に存在していた。たとえ頭部を失っても、再生すればそれで良かった。もっとも
集団でひとつの意識を共有する蜂女たちにとっては、個人の我の存在など、たいした意味を持つものではなかった。
そしてアンヌの体側に沿って、12対の気門が脇腹から太ももにかけて一直線に口を開いた。もはやアンヌの身体
には、人間の肺や気管支といった呼吸器官は存在していなかった。全身に張り巡らされた気管系が、気門のすぐ
内側にある、全身に空気をくまなく供給する強力な空気ポンプが、その代用を果していた。
「・・・はうッ! ・・・はうッ! ・・・あうッ! ・・・あうッ! ・・・ああッ! ・・・あああッ! ・・・あうン! ・・・あうン!」
アンヌの激しいあえぎ声に合わせて、24個の気門はパクパクと開閉を繰り返した。
《・・・ああ・・・わたし・・・蜂女に・・・なってゆくのね・・・幸せ・・・アンヌはとても・・・幸せよ・・・パパ・・・》
恍惚と忘我の境地で官能に身を任せながら、アンヌはぼんやりとした意識の中で、蜂女に変わってゆく自分の
肉体の感覚を、強烈な喜びとともに感じていた。
改造触手の侵入から、既に数時間が経過していた。巨大な花弁のベッドの上で大の字に両手両脚を縛られ、
股間に太い触手を呑み込んだまま快楽にあえいでいるのは、もはや地球人の美少女ではなかった。
それは青いしなやかなボディと同心円状の乳房を持った、地球人女性のシルエットを持った巨大なメスの蜂、
『蜂女アンヌ』であった。
【18】
無数の襞が蠢く巨大樹の幹に、再び女性器のような形の穴が開いた。その中から、完全な蜂女に生まれ変わった
アンヌ・シャンブロワが、改造されたばかりの身体を誇らしげに晒しながらゆっくりと現れた。
ロケットのように前に貼り出した、同心円模様の豊満な乳房。蜂のように細くくびれた腰。長くスラリと伸びた
両脚。それは、人間女性と蜂が見事に融合した、神の造形物とも言うべき美しい姿であった。
アンヌは両手を胸に当てて祈るようなポーズをとった。すると彼女の背中から、半透明の美しい4枚の翅が
花が開くようにふわりと伸び、光の粒子を振りまいてキラキラと輝いた。
【無事に改造は終了したようだね。アンヌ、気分はどうだい?】
幹に現れたピエール・シャンブロワ教授の顔に向かって、蜂女になったアンヌは晴れやかな笑顔で答えた。
「素敵よ、パパ! 改造してくれてありがとう!」
蜂女アンヌはそう言うと、クルクルとその場でバレエのステップを踏んだ。輝く翅を拡げて華麗に舞うその姿は
まさに可憐な妖精そのものであった。
【アンヌ。お前の身体はわれわれの手によって、完全な蜂女に生まれ変わった。若く美しいそのままの姿で、
あと数万年は生きることができるだろう。だがお前の身体は、まだ完璧に目覚めているとは言えない。それは
お前がまだ、男を知らないからだ。男を知らないということは、自分の肉体の使い方をまだ知らないということだ。
男に抱かれる悦びを知って初めて、お前は完璧な蜂女として覚醒することができる】
アンヌはこっくりと頷いた。
「じゃあ、どうすればいいの? パパ」
【お前のために、初めての男を用意した。さあ、生まれて初めての性の交わり、たっぷりと楽しんでくるがいい】
「はい、パパ!」
アンヌは無邪気に笑った。無数の触手が床から渦を巻くように出現し、アンヌの身体をからめ取ると、床の中に
呑み込まれるように消えた。
そこは、かつてレイラが改造された、巨大な花弁ベッドのある無数の光で照らされた部屋だった。
その中央に突然、触手の群れに包まれてアンヌが出現した。彼女は不思議そうに周囲を見渡すと、ベッドの
両脇に佇む黒髪と亜麻色の髪の蜂女を認めて、無言のまま触角を震わせて挨拶をした。
蜂女はお互いに、無意識的なテレパシーによって常にひとつの意識を共有していた。一体の蜂女が見たこと、
知ったことを、瞬時に全員に伝えることができた。だがそれでも蜂女たちには、人間だった時の人格と記憶が
はっきりと残っている。だからある物事に対して、蜂女どうしで意見が二つ以上に分かれることもあり得た。
そんな時、蜂女たちは争うことなく、触角を使って静かに対話と議論を交わすのだった。意識内のすべてを
さらけ出すため、蜂女どうしの間では嘘や裏切りは存在し得なかった。あるのは互いの存在を尊重し合う、
強い愛情にも似た連帯感だけであった。
アンヌは花弁ベッドの上に這い登り、身体を大の字に拡げてきたるべき時を待った。
しどけなく拡げられたアンヌの両脚の間には、真っ青な恥丘を縦に割って走るスリットがあり、その中央には
真っ赤な肉の襞が、ナメクジのようにヒクヒクと蠕動を繰り返していた。スリットの下端からは、紫色の粘液が
会陰伝いにトローリと流れ落ち、花弁の上に小さな水たまりを作っている。
やがて部屋の壁に穴が開き、蜂女レイラが一人の地球人の男を連れて現れた。光を失った目でぼんやりと佇む
全裸のその男は、かつての腕利きハンター、アラン・カルテマンであった。
レイラが乳首から放った洗脳催淫剤入りの針を受けたせいで、アランはもはや、思考能力をもたない抜け殻と
化していた。その代わり彼の性欲はそれまでの数十倍に高められており、今も彼の股間にはいきり立った肉茎が
天を指してギンギンに張り詰めていた。先端の孔からは既に透明な液がにじみ出ている。
アランは既に、蜂女となったレイラの胎内に、5回射精していた。そして男を求める蜂女チアキと蜂女デボラ
とも2回ずつ交わり、射精を済ませていた。蜂女にはおよそ我欲や独占欲が存在しないため、レイラは喜んで
アランと2体の先輩蜂女たちとのセックスを手助けした。
チアキたち2体の蜂女は、改造される前はおカタい大学の院生であったせいか、人間だった時の性経験が極めて
少なかった。特にデボラには、男性経験がたったの一度しかなかった。それも14歳の時、飛び級で進学した
ハイスクールの教員にレイプされたという悲惨な体験であった。
蜂女に改造されてからの彼女たちは、性の悦びに覚醒し、お互いの改造触手を使って愛し合うのを常としていた。
日に何度かは、蜂人間たちとのセックスも楽しんでいた。だがペニスの長さが10センチほどしかない蜂人間たち
とのセックスは、女の悦びに覚醒した彼女たちにとっては決して満足のゆくものではなかった。
そんな彼女たちだから、アランの大振りなペニスには狂喜してむしゃぶりつき、改造されたその肉体を駆使して
性の悦びを心ゆくまで満喫した。
蜂女たちはアランの射精が終わると、即座に乳房の中で精力剤と媚薬を調合して彼に針で注射した。すると再び、
しなびたはずの彼の陰茎は欲望に張りつめて次の性交に備えることができるのだった。絶え間なく注射される
化学物質はアランの脳髄を深く蝕み、アランは今や、再現なく蜂女たちとのセックスを強要される哀れな性の
奴隷と化していた。
そしてアンヌの改造が終了したことを知った蜂女たちは、アンヌの生まれて初めてのセックスの相手をさせるため、
可能な限りの媚薬と精力剤、栄養剤をアランに打ち込み、この部屋に連れてきたのだ。
アンヌは自分の初めての男となるのがアランだと知り、内心とても嬉しかった。なにしろ彼女がまだ人間だった時、
彼女は美形のアランにこっそり憧れていたのだ。
アンヌは仰向けのまま上体を起こし、膝を立ててM字型に脚を開いた。真っ青な股間に花開いた真っ赤な肉の襞が
ヒクヒクと蠢いてアランを誘っている。
「・・・きて、アラン!」
アンヌの顔は期待で紅潮し、目はらんらんと輝いていた。
「さあ、アラン。その娘(こ)を抱いておあげなさい」
レイラの合図で、アランはうおおおおおッ!と叫び、アンヌの肢体に飛びついた。両手でアンヌの蜂の乳房を
荒々しく揉みしだき、彼女の愛らしい小さな唇にむしゃぶりついては口腔の中の舌を自らの舌で玩んだ。
そして何度か腰を浅く突き入れて孔の位置を確認すると、ギンギンにいきり立った肉茎を、蜂女アンヌのまだ
穢れを知らない神聖な場所に、ぐいッと乱暴に突き入れた。まだ男を受け入れたことのない、ピンク色の肉の
孔が押し広げられ、アランの太く固い怒張が、その中にぐいぐいと押し込まれてゆく。
「・・・ああッ! ・・・痛ッ!」
いくら改造触手によって処女膜を破られた後だとはいっても、それはまだ数時間前のことだ。アンヌの膣はまだ
挿入に慣れているとは言えなかった。アランの乱暴で性急な挿入に、アンヌは思わず苦痛の表情を浮かべた。
処女の本能が働き、あわてて腰を引こうとする。
《アンヌ! 我慢しなさい! それを越えると気持ちよくなるから!》
《そうよ、もっと腰を前に出して、密着させて! そう、その調子、その調子!》
3体の蜂女が花弁ベッドの傍に跪き、触角を震わせてアンヌを応援する。アンヌはガクガクと頷き、自らの膣
いっぱいに受け入れたアランの陰茎を、渾身の力で締め上げようとする。
「・・・ああッ! ・・・ああッ!」
アランが抽送を開始した。アンヌの華奢な上半身をしっかりと抱き締めたまま、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「・・・あうッ! ・・・あうッ!」
アンヌの改造された膣の中を、巨大な肉の塊がぐいぐいと往復する。ちゅぱッ、ちゅぱッ!と卑猥な音とともに
一人と一体が結合した部分からは紫色の愛液がほとばしり出て、股間を濡らしてゆく。
《そうよ、アンヌ。もっと、もっと、腰を振って!》
《腰を持ち上げるの。そうそう、そして、もっともっと締め付けるのよ!》
《脚をからめなさい。そうすればもっと密着できるから! そう、その調子!》
3体の蜂女たちのアドバイスにガクガクと頷き、アンヌは必死で腰を使った。腰を動かすとともに凄まじい官能
の波が生まれて、アンヌの意識を遠くさせる。
「・・・あぅん・・・あぅん・・・はぅッ・・・はぅッ・・・あぅ・・・あぅ・・・はうぅん・・・はぅん・・・はぅッ・・・はぅッ・・・」
アンヌは既に、痛みも苦痛も感じていなかった。ただ性の交わりの悦びだけが、彼女の感覚を満たしていた。
生まれて初めての性交であるにも関わらず、アンヌはもう、女としての悦びに完全に目覚めていた。
蜂女としての本能に火が灯り、アンヌは改造された肉体を、アランの逞しい身体と夢中で打ち付け合った。
改造された蜂の乳房をなまめかしく蠕動させながら、アランの筋肉質の胸にエロチックに擦り寄せた。
改造された膣でアランの分身を飲み込み、渾身の力で締め付け、切ないあえぎ声を上げてよがり狂った。
その姿は、まさに一匹の性欲に飢えた牝の蜂であった。
「・・・あうぅッ! ・・・ああぅッ! ・・・あぅン! ・・・あぁン! ・・・はぅン! ・・・はぁぅン! ・・・あぅン! ・・・あぅン!」
アンヌは、蜂のように細くくびれた腰をくねらせ、かたちのよい引き締まった尻をリズミカルにクイッ、クイッと
動かした。改造されて涙腺を失った目を歓喜でうるませむせび泣き、甘く激しい嬌声をひっきりなしに上げながら
ひたすら悶えのたうった。蜂女に改造された者だけが味わえる至高の性の快楽を、狂ったようにむさぼり味わった。
アンヌの体側に沿って並んだ12対の気門が、アンヌのあえぎ声に合わせて、激しい開閉を繰り返す。
「・・・はうぅッ! ・・・はうぅッ! ・・・あうッ! ・・・あうッ! ・・・あうッ! あうッ! あうッ! アッ!アッ!アッ!」
やがてアンヌとアランは、同時に絶頂に昇りつめた。
「・・・ああぅぅッ! ・・・あぅッ! ・・・ああッ! ああッ! ああああぅーーーッッ!!!」
アンヌは髪を振り乱して大きく絶叫した。アランはオウ、オウ、オウ、と吼え、アンヌの胎内に白濁した男の
エキスを、煮え滾った欲望の粘液を、どぴゅっ、ぶしゅっ、じゅぱッと勢いよくぶち撒けた。
アンヌの改造された膣内に白濁した粘液が迸り出ると、彼女は本能的に膣壁をキュイーンとすぼめた。
注ぎ込まれた雄のエキスを、一滴たりとも逃がすまいとするかのように。
「・・・はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・」
アランは力尽きた自分の身体を、アンヌの改造された蜂の乳房の上に横たえた。同心円模様が刻まれた乳房は
アンヌの荒い息に合わせて蛇腹状に激しく蠕動し、アンヌの体側に並んだ気門の群れも、激しい開閉を繰り返した。
激しい性交を終えた一人の人間と一体の蜂女は、ぐったりとなってお互いの身体を重ねながら、セックスの余韻を
名残惜しむかのようにお互いの身体を愛撫した。アンヌはアランの頬を両手ではさんで自分の口元に引きつけ、
熱い口づけを交わした。
《さあ、アンヌ。仕上げよ》
レイラの触角による合図に、アンヌはコクンと頷いた。アンヌはアランの胸に組み敷かれた、自分の同心円模様の
乳房をぷるるん、と震わせた。ニョキッと勃った乳首の先に銀色の針が覗いたかと思うと、アランがウッ、と
叫んで気を失った。
アンヌは構わずに、アランの胸に突き刺した針を通して、アランの体内に何物かを続々と埋め込んでいった。
そのたびに、黄色と黒の同心円模様が妖しく蛇腹運動を繰り返す。
「アランさん、起きなさい。起きて下さい」
アンヌが優しく微笑んで呼びかけた。アランは首を振るとゆっくりと身を起こし、アンヌと繋がっていた股間
から自分のしなびきった陰茎を引き抜いた。アンヌの肉孔からは紫色の粘液がジュクジュクと溢れ出て、花弁
ベッドの上をしとどに濡らした。
アランはふらふらとした足取りで立ち上がると、次の命令を乞うかのようにレイラの方を見た。
アンヌもゆっくりと上体を起こし、大きく伸びをした。そして自分の股間にまだ残る、アランの陰茎の余韻を
確かめるかのように下腹部に手を当てながら、花弁の上にゆっくりと立ち上がった。
《おめでとう、アンヌ。あなたはついに男を知ったわ。これであなたももう、一人前の女よ。蜂女よ》
アンヌは嬉しそうに微笑むと、自分の身体を確かめるように眺め、両手で自分の乳房を、腰を、尻を、ゆっくりと
愛撫した。そしてクスッと妖しく微笑むと、腰をなまめかしく振りながら両手を横に大きく伸ばし、背中の翅を
拡げた。光を浴びてキラキラと輝く美しい翅と、妖艶なボディのコントラストは、魔界の天使のようであった。
アンヌは生まれ変わった自分に言い聞かせるように、高らかな声で宣言した。
「・・・フフッ・・・わたしは蜂女!・・・改造されて生まれ変わった、わたしは蜂女! わたしは、蜂女!」
【おめでとうアンヌ。これでお前は、ついに完璧な蜂女となった】
「・・・パパ!」
ピエール・シャンブロワ教授、いや“森”の声がいずこからか聞えてきた。
【アンヌ。人間だったお前をこの星に呼び寄せたのは、お前に大切な使命を託すためだ。それは、お前たちが
人間だった頃に住んでいた星、地球を、“森”で満たし、知的文明の災禍から星を救うことだ】
蜂女アンヌは神妙に頷いた。
【お前は今から、アラン君とともに元の輸送船に乗り、こっそりと地球に帰るのだ。輸送船の燃料電池は、蜂人間
たちに修復させてある。地球に着いたらお前は、周囲にいる若い女性たちをよく吟味し、隙を見て蜂女に改造して
ゆくのだ。お前たち蜂女は子孫を残すことはできないが、人間の女性を襲ってねずみ算式に蜂女に改造できる力を
持っている。男たちに気付かれないよう、こっそりと、仲間を増やしてゆくのだ】
「はい、パパ。これを使えばいいのね?」
アンヌは自分の股間に指を伸ばし、割れ目を押し広げて見せた。真っ赤な肉の孔から、黄色と黒の縞模様の触手が
ずいっ、と現れ、かま首をあげて先端の孔から紫色の同化液をピュッ、と噴き出した。
【そうだ。それでいい。一方、アラン君の体内にはさっきお前が埋め込んだ、この星の植物たちの種子が詰まって
いる。彼には地球の適当な場所で、木になってもらおう。地球における“森”の最初の一本になってもらうのだ。
そしてお前たち蜂女は、“森”を守り、育てるのだ。“森”が地球の人間たちを制圧するのに充分な力をつける、
その日のために】
アンヌは頷き、アランもゆっくりと頷いた。
【デボラ、チアキ、レイラ。きみたちは万が一、アンヌたちが失敗した時のために、この星で待機してもらう。
アラン君をアンヌに託すかわりに、きみたちには代わりの男を用意した。みるがいい】
驚くレイラたちの前に、壁に開いた穴から一人の全裸の男が現れた。アラン同様、洗脳催淫剤で抜け殻のように
されているその男は、蜂人間たちの巣に落下したはずのドグ・ドイカムだった。
3体の蜂女たちは狂喜して、ドグの陰茎目がけて群がった。
【さあ、ゆくのだアンヌ、アラン君。きみたちが、地球における新しい、アダムとイヴになるのだ!】
蜂女に改造された美少女アンヌと、“森”の種を宿した地球人アランは、頷き合うと互いに手を取り、光溢れる
空間の中へとゆっくり歩み出していった。
(おわり)
以上です。お目汚し失礼いたしました。
実はこのSS,最初はもっと長くて、アンヌの密航が発覚したシーンをはじめ、アンヌとウルフの
意外な関係(アンヌには意に沿わない婚約者がいてウルフがその後見人。実はアンヌの容姿は
「怪物くん」の怪子ちゃんのイメージ)だとか、アギーレ・フィツカラルドという危ない名前の
軍人が“森”とドンパチやらかすシーンだとか、本筋に関係ないような部分を全部カットして
おります。それでもなお、この体たらく。
反省いたしております。
自分は以後ROMに戻りますが、今回のせっかくのBeeFさん祭りに水を差したんじゃないかと
心配です。どうか皆さま、このSSのことは気にせずにBeeFさん祭りをもっと盛り上げて下さい。
それでは失礼いたします。
おおっ、これはすごい大作。
ゆっくり読ませてもらいましょう。
>>156-252 前スレ397様(アンヌ改造しまくり様?)
大作乙です!レスが一気に100増えていたのを見たときには何かの間違いかと思いました
投下だけでも非常に気疲れする作業だったのではないかと思います。
週末外せない用があるのですが、片づいたらゆっくり読ませて頂きます。大変楽しみです。
そういえば、アンヌ改造しまくり様(この呼び名自体ハンドルネームではない気もしますが…)
だとすると、実は蜂女ネタは2つ目なんですよね(ゴーロン星人のやつが、たしか)
あ、今回の場合は「「蜂女アンヌは俺の嫁!」様」でいいですね。
レス無駄遣いすみません
私は「アン改さん」と呼んでいます。どうでもいいですが…
投下お疲れ様でした。
私もゆっくりと読ませていただきます。
読んだ。ごちそうさま
固有名詞に凝ってるというのはわかったけど、元ネタがぜんぶわからん
とりあえずインディジョーンズとララクロフトと栗山千明と怪物くんネタはわかった
アランとかアンヌはよくわからん
あとmaledict氏も「BeeF祭り関連にちなんだような名で統一」と言ってたけど
正直、美府(BeeF)先生以外まったくわからん
誰か教えちくり
>>259 maledict氏の方はわかりやすいかな。
美府 陸=BeeF氏
ディック・マレー=maledict氏
サトミ・イマカタ=舞方雅人氏
刀根アンナ=アンヌ改造氏
朝花はわからん。
ヒロインだからどなたとも関係ない名前にしたのかも。
それよりも152-153のおかげで、舞方氏のことをイカマタ氏と呼んでしまいそうで怖い。(笑)
>>260様
え?
あさか≒あふさか≒おおさか
で、婦女子疑惑濃厚で、今回の祭り関連のコテハン様にちなんだんです
おおー、そうだったんですか〜。
>>259 アラン・カルテマン:
H.R. ハガードの冒険小説「ソロモン王の洞窟」の主人公アラン・クォーターメイン
(Allan Quartermain)の(たぶん)フランス語読みだろう
ベンドバンブゥ・マゴンセブ:
小栗虫太郎の秘境小説「人外魔境」の主人公、折竹孫七から取った名前かと
折(bend)竹(bamboo)孫(マゴ)七(セブン)
アギーレ・フィツカラルド:
ドイツ映画「アギーレ 神の怒り」と「フィツカラルド」を足したものだろう
どちらも密林に挑もうとする狂気の男の話だし
アンヌ親娘はよくわからない
あとチアキ・ダイドウジの「大道寺」は、たぶん栗山千明が演じた横溝正史の
「女王蜂」のヒロイン。大道寺智子から取ったものだと思う
大道寺知世とか大道寺きらではないと思う、たぶん
>>maledict氏
こうなったら本当に「イカマタ」さんも作って出しちゃってください。
,.―― 、
// \\
. / ./ \\
/ ′ ,. -―――- 、 \
\ :! /: :/l ∧: : :∧: ヘ\/
. \|/: :?「 廴__,\/、__ノ:?「 い、イカ臭い股なんてイカンでゲソ
/ |:r|: | r=ミ r=ミl:| っ
. _/: : :{.|: | """ ' "" リ
.. __,/: :_:./:/:ハ:ゝ /⌒i ノ| っ
.. |: : : : :/_/:/:/: \`ヘー一メー"Y:\
>> maiedict様
御苦労様です。次の作品も期待しております!!
>> 蜂女アンヌの作者様
素晴らしいです!!自分も、こういうの書いてみたいですが無理です・・・・(自嘲)。
>> 大阪ドーム様
最近、遊びにこれておられないので心配です。是非、元気な声を聴きたいです。
<前の続き>
その部屋は真白な壁であった。牢屋のようなイメージを持っていたかすみは、意外に思う。
「さぁ、教頭先生がお待ちよ・・・・。」
促す真魚に無言で頷き、通路を歩く。逆らい、いまにでも逃げ出したい気分であった。だが、それは出来ない。
逃げれば、あの男達のようにミイラにされ溶かされてしまうだろう。
通路には幾つか部屋が有る。ガラスが張られた部屋せ、そこには真魚のような蜂女が刺青をした男に跨り腰を振っていたり、薄緑の少女
が中腰で放尿している。他にも茶色い肌や羊のような丸い角をつけた娘もいる。
どういう事か?真魚や亜季達は、あの行為を<お掃除>と呼んでいた。蜂以外にも同類が居るのだろうか?
やがて、奥の部屋にいく。その部屋に教頭が居た。
<続く>
読み始めました。まだ最初ですが、登場人物が多いのでキャラのリストを作ってみました
アンヌ親子の「シャンブロワ」はC.L.ムーア『シャンブロウ』(の仏語読み)かな?
調査船ブラウヴァルIII乗員
ピエール・シャンブロワ: 調査隊隊長、アンドレア大の宇宙文明論の権威
アギーレ・フィツカラルド少佐: 統一宇宙軍軍人
他軍人6名
民間輸送船ステルナ・パラディシア乗員
アンヌ・シャンブロワ: 密航者、16歳、シャンブロワ教授の娘、プラチナブロンド長髪、
お嬢様然とした美少女、スレンダー、乳大きい
印出壌二: 宇宙考古学者、シャンブロワ教授の親友、輸送船最年長、通称ドク
ウルフガンス・フランケンフンガー: 宇宙生物学の権威、男性、長身、オカマっぽい
ベンドバンブゥ・マゴンセブ: 宇宙地誌学者、巨体の黒人、通称バンボ
アラン・カルテマン: ハンター、輸送船リーダー、20代半ば、鋼色の瞳に鋭い光を宿したベテラン、
レイラ・アシュクロフト: 船長、栗色の髪でセミロングで豊満なボディ、20歳過ぎにしてベテラン航宙士、
通称姐さん、小惑星帯運び屋グループボスのトビアス・アシュクロフトの娘
ドグ・ドイカム: オペレーター、小太りの男、コンピュータのエキスパート
ホイ・チェンマイ: エンジニア、背のひょろ長い痩せ男。ドグとは凸凹コンビ
>>268 アン改ですw 長文なので読破にお時間を取らせてしまいまして申し訳ありません。
ROMに戻って以後レスは行わないつもりだったのですが、なんかネーミングの話になっているので、
ヒロインであるアンヌの名前についての注釈だけはしておいた方がいいかと思い、レスさせていただきます。
今回は友里アンヌ隊員を出すのは無理があったため、悩んだ末同名の別人ということで割り切りました。
で名前に関しては、物語が“森”にまつわるだけに、ヒロインの苗字だけは花とか森とか自然にちなんだもの
にしようと最初から決めておりました。
そこで最初、(アンヌが元々フランス系の名前なので)フランス語の「野原 champ」と「森 bois」を足して、
シャンボワ Champbois と名付けたのです。けれども何だかシャラポワみたいな絞まりがない響きで不満
だったので、たまたまフランスきっての名城ブロワ城 Ch液eau royal de Blois のことが頭をよぎったため、
意味のない“L”を足して最終的に Champblois シャンブロワ と名付けたというわけです。
C.L.ムーアのシャンブロウと字面が似ているというのは後から気付き、どうしようかなと迷いました。
当初はそういうネタを入れてもいいかなと思ったため、シャンブロウというか、怪物くんの怪子ちゃんの
イメージを重ねてキャラクターの外見を決めました。そこから色々連想が拡がって、ウルフことウルフガンス・
フランケンフンガーの登場が決まったというのが構想の順序です。しかし結局、ストーリーを短く刈り込んで
怪物くん(というか俗物くん)が登場しないことになってしまったため、結果的にアンヌの外見とウルフの
存在だけが残ってしまったというのが真相です。
ちなみにウルフの外見イメージは自分の中では、ワンピースのMr.2 ボン・クレーです。
>>264 すごい。全部当たりですw
とにもかくにも、これで「エデンの門番」は出揃ったかな?
あとは大阪ドーム氏が、BeeF祭りのトリを飾ってくれれば嬉しいが
大阪ドーム氏の姿がみえないのは、BeeF祭りのプレッシャーじゃねぇか?
過去レスみたら祭りは楽しみだとあったが、参加するとは書いてねぇし
ナンか気の弱そうな人だから、期待されて困ってんじゃねぇの?
>>271 ならば一言そう書いてくれればいい
期待を引きずったままいつまでもズルズルというのが一番まずい
仮に大阪ドーム氏が不参加でも、maledict氏のエピローグやらが
まだあるから、祭りは続けられるはずだ
今回のBeeF祭り、大規模規制とかち合ってしまったこともあって
イカマタ氏のSSが自ブログでの発表となるなど、いま一つこのスレの祭りには
なりきらなかったのが痛いな
別にSSをどこで発表してもらってもそれは構わないのだが、読む方としては
ひとつところで読めないというのは地味に痛い
イカマタ氏に意向もあるとは思うが、このスレが無理なら「蜂娘祭」や「海マツリ」
みたいに、maledict氏か誰かに特設サイトを作ってもらってそこに関係する全SSを
転載してもらったりする方が、今後のためにもありがたいという気がするのだが
276 :
イカマタです:2009/11/23(月) 21:25:10 ID:1MEslFQg
再度という形になりますが、ここに投下いたしますね。
ばいばいさるさんが出てくるかもしれないので、投下が止まったらさるさんが出たと思ってくださいませ。
277 :
イカマタです:2009/11/23(月) 21:25:54 ID:1MEslFQg
エデンの門番:舞の字版
「パパ、ちゃんと靴下は入れた? シェービングクリームも出しっぱなしにしてあったわよ」
私は思わず苦笑する。
一人暮らしの男性なんてこんなものかしら。
母が生きていたときなら、もう少し整理されていたんでしょうけどね。
「スーツケースの中身、もう一度確認してくれないか? お前に任せるよ」
明日は出発だというのに、父は机に向かって資料の確認。
本当に大丈夫なの?
我が父のことながら心配になる。
「コーニッグ博士、おはようございます。お迎えにあがりました」
玄関にミス・コーネリア・マクモリスが現れた。
スーツをきちんと着こなし、短めのブロンドの髪にメガネをかけた知的な人。
自動車の免許も持っているなんてすごいよね。
「今行く」
書斎から父の声がする。
おそらく資料に見入っているはず。
ああなると今が十分後ぐらいになりかねない。
私は仕方ないのでミス・マクモリスに声をかける。
「おはようございます、マクモリスさん。朝食はお済みですか? トーストぐらいなら用意できますけど」
「おはようございます、マリアンさん。朝は食べてきましたのでお構いなく」
にっこりと微笑み、私の招きに応じてテーブルについてくれるミス・マクモリス。
私はとりあえずコーヒーをお出しして、少し待ってもらうよう告げる。
「いつものことですからご心配なく。それよりもマリアンさんのほうの支度はできているのですか?」
コーヒーを一口飲んでミス・マクモリスはそう言う。
私のほうの支度はほぼ問題ないはず。
スーツケース二つにまとめていつでも持ち出せるようになっている。
「私の方は大丈夫です。いつでも出発できます」
私の返事にミス・マクモリスがうなずいた。
「今回の探検行は一ヶ月以上の長丁場になるはずです。本当に行かれるおつもりなんですか?」
「もちろんです。今回の探検は父同様私にも楽しみなことなんです」
これは本当のこと。
父に倣って自然科学を学ぶ私にとっては、南米の密林地帯の実態を調査するまたとない機会なのだ。
「途中で帰りたいと思っても帰れませんですよ」
「大丈夫です」
幼い頃から父を見て育ってきた私は、学者って実は体力だということを知っているつもり。
研究対象に密着するには、どうしても現地調査は欠かせない。
そのときにモノを言うのは体力なの。
一般の人は博士というと研究室に閉じこもってというイメージがあるかもしれないけど、それは一部の博士に過ぎない。
特に父のような自然科学を相手にする人は、あちこち出歩くのだから体力は必須。
私もそのあたりは訓練してきたつもりよ。
「クスッ・・・コーニッグ博士がご自慢しつつ肩をすくめるのもわかりますわ。よろしくお願いしますね、マリアンさん」
ミス・マクモリスが小さく笑う。
うふふ・・・父には女だてらに森歩き山歩きなんてといつも言われたからね。
「いやぁ、すまんすまん。待たせたね」
書斎から父が出てくる。
「いいえ、コーニッグ博士、お気になさらず」
スッと立ち上がるミス・マクモリス。
すぐに手袋をはめ、車の用意をしに向かう。
「マリアンはどうする? 後から来るかね?」
「はい。私はここの後片付けをしてから向かいます」
私は父にそういい、スーツケースを玄関に運び出す。
出発は明日だが、荷物はもう大学に運んでおかねばならないのだ。
外では車のエンジンがかかる音が聞こえ、ミス・マクモリスが戻ってくる。
「博士、お荷物は?」
「あ、そこの三つです」
私はスーツケースを指し示し、そのうち一つを持って外に出る。
父は残りの二つを持ち、玄関先に留めてあるミス・マクモリスの車に積み込んだ。
「それじゃ父をお願いします。私は後から行きますので」
「わかりました。それでは博士、どうぞ」
ミス・マクモリスに促され、車に乗り込む父。
私は二人を見送ったあと父の家に戻り、後片付けをしてから大学へと向かうのだった。
あわただしい一日を終えて私は家に戻る。
もうすっかり日も暮れ、私は夕食も簡単に済ませると明日に備えて早めに寝ることにする。
今日はほんとに忙しかった。
大学のホールでは出発式が行なわれ、探検隊の面々が一人一人紹介されたけど、壇上にいた自分はあがってしまって名前を呼ばれたのもわからなかったし、カメラマンのフラッシュがまぶしくて眼を開けてられなかったし・・・
市長や学長が何か言ってたけどよくわからなかったし・・・
でも、明日の夜はもう船の中なんだなぁ。
なんだかワクワクする。
南米ってどんなところなのかしら。
まだ白人が行った事のない場所がいっぱいあるというわ。
そこにはどんな植物や動物がいて、どんな人たちがいるのだろう。
楽しみだわ。
私はそんなことを思いながら眠れない夜を過ごしたのだった。
******
今日は朝からいい天気。
出発にはふさわしい天気だわ。
目の前には朝九時のボストン行き普通列車。
アーカムからはまずこの列車でボストンへ行き、そこから船で南米へ向かう。
今回の探検行は、ミスカトニック大学が全面的にバックアップしてくれており、人員も大学関係者がほとんどだ。
私も今回父のコネもあったけど、大学の学生として参加を許可されたのだ。
未知の世界へ赴く探検隊は総勢十二人。
それぞれが荷物を手に列車に乗り込んでいく。
今日は鉄道会社も配慮してくれているようで、荷物車を一両増設してくれており、学生たちが探検隊の荷物を積んでくれている。
私もスーツケース二つを手に列車に乗り込んだ。
列車は程なくボストンに到着し、ボストンからは海路となる。
荷物は船倉に追いやられ、スーツケースだけを持って船室へと案内された。
父は今回の南米密林探検隊の隊長を務めており、船室も一人であてがわれている。
ほかには、植物学のオクストン・ハンレー博士、動物学のダンカン・ラフェイ博士、考古学のブリジット・オバノン博士のそれぞれが一人の船室をあてがわれ、ほかの八人は二人部屋というわけ。
私は、女性ということもあってミス・マクモリスといっしょの部屋。
今回の探検行には彼女も同行しているの。
彼女は父の助手を務めているので、きっと父がお願いしてきてもらったのかもしれない。
残りの六人のうち四人は大学の学生。
いろいろな作業の助手を務めるのが役目。
もちろん私もその一人。
残り二人は元軍人さん。
ロバート・ハリガン元少佐とアンドルー・フット元軍曹。
ハリガン元少佐は穏やかな表情を常に浮かべた中年男性で、なんだか英国貴族のような雰囲気を持っている。
今回は探検隊のガードを引き受けてくれたというわけ。
六年前の欧州の大戦争ではあまり活躍できなかったそうだけど、ライフルの射撃の腕は抜群らしい。
戦後の軍縮で退役したけど、アーカム在郷軍人会ではそこそこ顔が利くとのこと。
フット元軍曹はハリガン元少佐の片腕だった人。
まるで元少佐の従卒のようにしたがっている。
筋肉隆々の肉体で常に短剣をぶら下げ、油断のない目で辺りをうかがっている。
現地ではこういう人が頼りになるのかもしれない。
こうして私たち総勢十二人はボストンから南米のカラカスへと向かった。
そこからは小型の貨物船でシグナヤへ渡り、そこからまた河船でアヤドラ河をさかのぼる。
現地に行くだけでも十日もかかってしまうのだ。
道のりは遠いわ。
船旅はそれなりに快適だった。
豪華客船での旅とは行かないまでも、カラカス行きの貨客船はそこそこの設備を整えていたし、食事も悪くなかった。
夕食を終えたあとには、たいてい四人の博士の誰かしらが興味深い話をしてくれたし、勉強になった。
初老の紳士という感じのハンレー博士は、メガネの奥の神経質そうな目をきょろきょろさせながら、ジャングルの毒性植物の危険性について教えてくれたし、まだ若いラフェイ博士は、引き締まった肉体で身振りを交えて南米の動物のことを教えてくれた。
また、大学内でも美人教授の誉れ高いオバノン博士も、にこやかに南米考古学の講義をしてくれ、船内はさながらゼミナールの様相を呈していたのだった。
ミス・マクモリスとの同室も楽しかった。
今までちょっと固い人かなと思っていたけど、全然そんなことがない。
むしろ優しいお姉さんという感じで、いろいろと世話を焼いてくれたのがうれしかった。
きっとあの身の回りの気を使わない父をサポートしてくれてたのだろう。
お互いのことも名前で呼び合おうということになり、私も彼女のことをコーネリアさんと呼ぶことにした。
私はこの船旅をとても楽しむことができたのだった。
一週間後、私たちはカラカスに到着した。
もう、ここは南米ベネズエラ。
ここからは荷物を小型の貨物船に移し、大陸沿いに南下してシグナヤへ。
肌の浅黒い南米の原住民たちが、私たちの荷物を移してくれる。
さびが浮いて魚の腐ったようなにおいのする貨物船だが、ここから先はこれに乗るしか仕方がない。
私もズボンとシャツに着替えて髪を後ろにまとめ暑さ対策をする。
ここからはさらに赤道に近づくのだ。
二日ほどしてシグナヤに着く。
小さな港町だが、結構な賑わいだわ。
ここはアヤドラ河の河口にあたり、川沿いの産物の集散地となっている。
今回私たちはここを拠点にして、アヤドラ河を河船でさかのぼり、上流の密林地帯に分け入ることになっていた。
父はミス・マクモリスをつれて現地のミスカトニック大学の代理人と会い、河船やその他の手配の確認をしている。
私は早くもこの不快をもよおす湿気の多さと暑さに額に汗を浮かべていた。
ぎらぎらと照りつける太陽。
町の周囲に広がる密林と蒸し暑い風。
ここは赤道直下に近い場所。
防暑帽が無ければ日射病で倒れてしまうわね。
アヤドラ河をさかのぼる船は二艘。
それぞれに六人ずつが分乗し、ゆっくりと河をさかのぼっていく。
アヤドラ河はアマゾン河ほどではないにせよ大きな河。
広い河幅で流れはゆったり。
河面を吹く風は涼しく、私たちは少しだけ暑さをしのぐことができた。
先頭の船には父と私とミス・マクモリスが乗り、それにライフルを持ったハリガン元少佐とフット元軍曹が危険に備えて乗り込んだ。
防暑帽にシャツとズボンという野暮ったい服装でも人目を引くオバノン博士も、女性一人で別な船に乗りたくはないとのことで、私たちの船に乗り込んでいた。
そうなると残りの船にはハンレー博士にラフェイ博士、それと四人の男子学生が乗り、荷物を二艘に振り分けての出発だった。
******
河のぼりを始めた当初、私たちは楽しく過ごしていた。
ここでは見るもの全てが目新しく、私にとっては驚きの連続だったのだ。
日中の日差しは耐え難いほどのものではあったし、蒸し暑さも相当なものだったけど、それ以上に河の両岸に広がる景色は私の目を楽しませてくれた。
色とりどりの羽根を持つ奇妙な鳥が飛び、尻尾の長い猿が樹木の間を動き回る。
とても太くて長いヘビが枝から鎌首をもたげている。
大きな魚が水面を飛び跳ねる。
獰猛なワニが興味なさそうに私たちの船を眺めている。
そんな光景が一日中続いていた。
夜になっても陸に上がることは無い。
陸上は何が起こるかわからないのだ。
進める所までは船で進み、いよいよとなったら陸に上がる。
このあたりはまだ現地の人も暮らしているので、ときどき小船が行き交ったりする。
網で魚を取ったりしているのだ。
どんな魚が取れるのだろう。
どうもグロテスクな魚しか想像が付かないわ。
二日目の夕方、私たちは河辺の村に行きついた。
ここで一泊させてもらい、さらに河をさかのぼる。
ここから先は未知の世界と言ってもいいらしい。
何があるのか楽しみでもあり、少しだけ恐ろしくもあった。
父が何か村長らしき人と話している。
言い合いをしているようであまりいい感じの様子じゃない。
何かあったのかしら?
「どうかしたんですか?」
私は父のそばにいたミス・マクモリスに尋ねてみた。
「よくわからないわ。でも、最近空から来たモノたちが飛び回っているから森の奥には入らないほうがいいって言っているみたい」
「空から来たモノたち?」
何のことだろう?
「ええ、よくわからないんだけど、空から来たモノに見つかると、青い女が生まれるとか・・・」
「青い女?」
なんだかさっぱりわからないわ。
私とミス・マクモリスがひそひそ話をしていると、父がいらだたしげに話を打ち切った様子が見える。
きっとこの辺りの人たちは迷信深いんでしょうね。
大きな鳥かなんかをきっと神様の使いのようにあがめていたりするんだわ。
私たちはその晩をその村で過ごし、翌朝には船で出発した。
村人には持ってきたガラス玉やこまごましたものを渡して食料をいくらか分けてもらった。
大して価値のないものだけど、未開の彼らには物珍しいだろう。
二十世紀になってもう二十年以上経つというのに、いまだに彼らは紀元前を生きているみたいだわ。
私たちはどんどん密林の奥へと進んでいく。
河幅もじょじょに狭くなり、両側の木々の枝が河の上にまで広がってくる。
相変わらず鳥や獣の鳴き声がうるさいぐらいで、奇妙な虫もぶんぶんと飛びまわっている。
毒虫じゃないらしいけど、あまり気分のいいものじゃない。
ミス・マクモリスもオバノン博士も昆虫類は気味が悪いようだった。
「あれは何だ?」
突然空を指差すハリガン元少佐。
思わず私たちもその指差す方向に眼をやる。
すると、樹木の間から覗く空に何かが飛んでいるのが見えた。
それはなんとも奇妙なもの。
本来空を飛ぶとは思えないもの。
全身が真っ青で、四肢の先だけが真っ白に色分けされている。
紫色の頭部を持ち、背中の黄色い翅が激しく上下して宙に浮かんでいた。
「女? 女なのか? あれは?」
隣の船から双眼鏡を構えたラフェイ博士の声がする。
そう・・・
あれはどう見ても人間の女性。
青い女性が空を飛んでいるのだった。
「あんなのは見たことが無い。なんなんだ、あれは?」
「新種かも知れん。船をそっちへ」
二艘の船は青い女性に向かって進路を変える。
とはいえ、河に沿ってなので、樹木の間から見え隠れする青い女性を見失わないようにするのが精いっぱい。
「いっそのこと撃ち落しましょうか?」
ハリガン元少佐がライフルを手に、父のほうをうかがった。
「うむ。見失うよりはいいかも知れん。少佐、お願いする」
「了解した」
父のうなずきにハリガン元少佐はライフルを構えなおす。
耳をつんざく銃声がとどろき、青い女性が空中でバランスを失うのが目に入る。
さすが射撃には自信があるという元軍人さんだわ。
だが、ふらついて一度は墜落しかけた青い女性は、すぐに態勢を立て直した。
そして私たちの方を見て、私たちの存在に気が付いたらしい。
「なにっ? なんともないのか?」
「バカなっ! 手ごたえはあった!」
父もハリガン元少佐も驚いている。
ライフルの一撃を食らえば、猛獣だってただではすまない。
それなのに、あの青い女性は傷を負ったような感じが無い。
顔には大きな複眼のようなものがあり、胸はまるで蜂のお尻のように黒と黄色の縞模様になっている。
あの女性はいったい何なのだろう・・・
「くそっ」
ハリガン元少佐がボルトを操作してライフルを再装填する。
もう一度あの青い女性を撃つらしい。
だが、青い女性はピクッと頭を動かすと、何かに呼ばれでもしたかのように飛び去っていく。
ハリガン元少佐が二三発撃ちこんだものの、その姿は密林の樹木の間に消えて行ってしまった。
「いったいあれはなんだったのだ・・・」
父が小さくつぶやく。
青い女性が消え、しばらく私たちは放心状態となっていた。
あのような奇妙な生き物の存在は想像も付かなかった。
しかも、あんなに人間の女性に似た容姿をしているなんて・・・
「カメラは? 写真は撮ったのか?」
「二三枚撮りましたが、うまく写っているかどうか・・・」
「あれは人か? それとも鳥なのか?」
「私が見た感じではむしろ昆虫のような気がしましたな」
「どちらにしても大発見だ。もう少し奥へ進めばまたいるかも知れん」
父のつぶやきがきっかけになったかのように、皆がいっせいにしゃべりだす。
実際のところ私も少し興奮していた。
あれはどう見ても新種の生き物。
私たちは早くも大発見を行なうことができたのだ。
「待て! 何か聞こえないか?」
ハリガン元少佐がみなのおしゃべりを手で制する。
一瞬にして静まり返る二艘の船。
だが、何も聞こえない。
「私には何も聞こえないけど・・・」
オバノン博士が怪訝そうな顔をする。
でも、確かに変だ。
何も聞こえなさ過ぎる。
鳥や獣の鳴き声が聞こえなくなっているわ。
私がそのことを言おうとしたときだった。
ワーンという虫の羽音とも飛行機のエンジン音とも付かないような音がして、突然密林のあちこちから奇妙なものが空に飛び立ったのだ。
それは今までみたこともないほどの奇妙なもので、一番似ているものを上げろと言われれば、巨大なトンボに似ていたかもしれない。
でも、トンボとはまるっきり違うものであり、生き物かどうかすらわからなかった。
全体がピンク色がかっており、頭と思われるところにはうねうねと小さな触手のようなものが固まり生えている。
胴にあたる部分は甲殻類のような外骨格らしきものが覆い、そこからまた小さなはさみを持つ脚が五六本生えていた。
背中と思われるあたりからはコウモリの翼のような皮膜が広がっていて、ゆっくりと上下しながらそのものたちの躰を宙に浮かせている。
胴から連なる尾のようなものは、先がくるっと丸まって先になにやらトゲのようなものが付いていた。
そして、その奇妙な空飛ぶものたちは、いっせいに私たちへと向かってきたのだった。
「ば、化け物め!」
ハリガン元少佐のライフル銃が火を吹く。
隣ではフット元軍曹がギャング御用達のマシンガンを撃っている。
銃声が当たりに響き渡り、私たちの悲鳴がさらに輪をかけた。
「うわぁーっ!」
突然隣の船から一人の学生の叫び声がする。
何匹もいる奇妙なものたちの一体が、フット元軍曹の射撃も意に介さずに学生を掴みあげたのだ。
「た、助けて、助けてぇー!」
宙に吊り上げられ手足をばたばたさせる学生。
彼の名前はなんていったかしらなんて私が妙なことを考えているうちに、彼はその奇妙なものたちに取り囲まれていた。
そして、数体の奇妙なものに囲まれたまま急速に上空高く連れて行かれ、そこから密林の中へと放り投げられる。
「うわぁーーー」
だんだんと小さくなっていく彼の悲鳴に、私は背筋が凍りついた。
「いや、いやぁっ! 来ないでぇっ!」
「来るなっ!化け物め!」
悲鳴と銃声が交錯するなか、次に宙に持ち上げられたのはフット元軍曹だった。
マシンガンの弾が彼らの胴体を貫くが、彼らは痛みすら感じないらしい。
ドロッとした体液を流しつつも、フット元軍曹を吊り上げ、これまた高いところから放り出す。
フット元軍曹の断末魔の悲鳴がとどろいた。
「早く、早く船を出せ!」
父がエンジンのそばにいるハリガン元少佐に声をかける。
だが、ハリガン元少佐も彼らに応戦するので手一杯だ。
すぐにミス・マクモリスがエンジンに取り付こうとしたが、次の瞬間、彼女の躰は宙に浮いていた。
「いやぁっ!」
「コーネリアさん!」
「マクモリス君!」
私と父の声とミス・マクモリスの悲鳴が重なり合う。
ミス・マクモリスの躰は急速に空高くへと持ち上げられ、手を伸ばしてもどうしようもない。
彼女と他の二人が違ったのは、空中から彼女は放り出されることはなかった。
その代わり、彼らのうちの何体かとともに、彼女はどこかへ連れ去られて行ってしまったのだ。
もっとも、私にはそれを見ている余裕など無かった。
奇妙なものたちは私も空へと持ち上げたのだ。
背中を掴まれ、先の丸まった尾のようなものが胴に巻きつき、そのまま空へと吊り上げられる。
「ヒーッ! いやぁっ! 助けてぇっ!」
必死に手足をじたばたさせて叫び声を上げるが、どうすることもできない。
「マリアン! マリアーン!」
父が手を伸ばして叫んでいるが、その姿も急速に遠ざかる。
私の躰は密林の上空高くに持ち上げられてしまったのだ。
「た、助けて! 助けてくれ!」
私の隣では、私と同じように持ち上げられたハンレー博士がじたばたしている。
私の周囲と、ハンレー博士の周囲には奇妙なものたちが集まって、頭の部分の触手を震わせながら耳障りなワーンという音を出していた。
「うわぁーーーー」
やがてハンレー博士の躰が密林へと放り投げられる。
密林へ向かってだんだん小さくなっていくハンレー博士の姿を見て、私はふっと意識が遠くなるのを感じていた。
******
「マリアンさん・・・マリアンさん」
耳元で声がする。
「マリアンさん・・・しっかりして、マリアンさん」
意識がだんだんはっきりしてくる。
ここはどこ?
私はいったい?
「はっ」
私は気が付いて目を開けた。
「よかった、気が付いたわね」
目の前にミス・マクモリスの顔がある。
私が気が付いたのでホッとしたような表情を浮かべていた。
「コーネリアさん・・・無事だったんですね?」
私は上半身を起こして体勢を整える。
何か草のようなものが敷かれた動物の寝床のような感じだ。
「ええ、今のところは・・・あなたも大丈夫?」
「はい。どうやら大丈夫のようです」
私は自分の躰を確かめた。
服は多少乱れているが、痛いところや怪我したところは無いみたい。
「よかった。私たちはどうやら拉致されてしまったようだわ」
「拉致ですか?」
私はとりあえず周りを見る。
どうやら岩をくり抜いたような部屋になっているようで、入り口らしいところは薄い黄色の膜が張ったようになっていた。
「オバノン博士」
私は部屋の隅にうずくまっているもう一人の女性に気付く。
「博士も無事だったんですね? 父は、父はどうなりましたか?」
私は思わず私の後からさらわれたであろうオバノン博士に詰め寄った。
「・・・古代マヤ文明は四世紀ごろにはそのきざしが見えはじめ、五世紀に至って・・・」
ひざを抱えうつむいたままでぶつぶつとつぶやいているオバノン博士。
目もうつろでどこか焦点があってない。
「オバノン博士・・・」
「だめよ・・・現実逃避をしてしまっているわ。ミスカトニック大学で講義でも行なっているつもりなんでしょう・・・」
ミス・マクモリスが首を振る。
私はそっとオバノン博士から距離をとった。
「どうやら連れて来られたのは私たち女性だけかもしれないわね。男性は別の場所にいることも考えられるけど・・・」
歯切れが悪くなるミス・マクモリス。
私とオバノン博士だけがここにいて、空中から放り出されたハンレー博士やフット元軍曹の姿を見ていれば、男性が他の場所にいる可能性は低いことがわかっているはず。
父は・・・父は無事なのだろうか・・・
それに、私たちはこれからどうなるのだろう・・・
「ねえ、コーネリアさん。あそこの入り口から抜け出せないでしょうか? なんか黄色い膜のようなもので覆っているだけみたいだから、破けそうなんですけど」
私はミス・マクモリスに入り口の黄色い膜を指差した。
だが、ミス・マクモリスは首を振る。
「だめよ。私も最初そう思ったので破こうとしてみたんだけど、触れたとたんにビリッと電気が走ったみたいで、とても破ることはできないわ」
「そうですか・・・」
私はため息をついた。
どうにかしてここを抜け出したいけど、いったいどうすればいいのだろう・・・
「それよりもあれをみて」
ミス・マクモリスが明り取りの隙間を指差す。
そこは細いスリットが縦に何本か走っており、外からの明かりと外気が入ってくるところだった。
私はミス・マクモリスに言われたとおりにそこへ行って外を見る。
そして思わず息を飲んだ。
そこにはあの青い女性たちがいたのだ。
以前は遠くから見ただけだったけど、今は隙間から見える向かい側の壁のようなものに何人もの青い女性がへばりついているのだ。
彼女たちは背中の黄色い翅を震わせ、壁から染み出ている何かを舐めている。
そして時折左右を見渡し、どこかへと飛んでいく。
それを入れ代わり立ち代り繰り返しているようだった。
「青い女性たち・・・」
私はなんだか恐ろしくなってあと退る。
そして壁に背中を付け座り込んだ。
「見たことも無い生き物たちだわ。姿は人間に似ているけど、いったいどういう生き物なのかしら」
ミス・マクモリスもあまり見たくないのか、隙間が目に入らない位置に腰を下ろしている。
「なんだか、蜂の巣に群れる蜂みたい・・・」
私はなんとなく感じたことをつぶやいた。
あの青い女性たちの目が大きな複眼のようになっていることや、胸のふくらみが黄色と黒の同心円状になっていて、蜂のお尻のようにも見えたからかもしれない。
「ああ、なんだかわかるような気がするわね。さしずめ蜂女ってところかしら」
ミス・マクモリスがチラッと隙間から外を見る。
きっと壁にへばりつく蜂女たちを見たのだろう。
「これからどうしましょう。助けを待つしかないのかな・・・」
ひざを抱えてうずくまる。
視界の端では相変わらずオバノン教授が何かつぶやいていた。
「それしかないかもしれないけど・・・でも難しいかもしれないわ。ここはアヤドラ河からはかなり離れているようだし、まわりは険しい岩山みたいだから、見つけてもらえないかもしれないもの」
ミス・マクモリスがきびしい表情をする。
でも、彼女がいてくれてよかった。
私だけならきっとパニックになっていたに違いない。
「とにかくいつでも逃げ出せるように体力は温存しておいたほうがいいわ。食べられるものがあればいいんだけど・・・」
「“ハーシーのチョコバー”ならありますよ。暑さで溶けかけですけど」
私はシャツの胸ポケットからチョコバーを取り出す。
だいぶ柔らかくなって甘い香りがぷんぷんするけど、何かあったときのためにと胸ポケットに入れておいたのだ。
「いいわね。食べておきましょう」
ミス・マクモリスが手を伸ばす。
「オバノン博士には?」
私がそう言うと、彼女は黙って首を振った。
「オバノン博士はもうだめだと思う・・・正気を失っているわ・・・」
私は苦い思いを感じながらも、それを認めざるを得なかった。
それでも私とミス・マクモリスがチョコバーを分け合って食べた後、溶けてべとべとになったチョコバーの包み紙に残ったチョコをオバノン博士にも舐めさせてあげた。
偽善かもしれないけど、彼女にもできるだけチャンスがあるほうがいい。
みんなが助かって、病院に入ることができれば、オバノン博士だって正気に戻るかもしれないのだから。
でもその願いはかなわなかった。
それからすぐに黄色の膜が消え、あの奇妙な連中が入ってきたのだ。
やつらは頭部らしきところの群れ成す短い触手を蠢かせ、ワーンという耳障りな音を立てている。
皮膜は折りたたまれ、胴体の下についているはさみの付いた脚でしゃかしゃかと動いてくる。
私たちが恐怖に動けないでいると、入ってきたやつらはうずくまっていたオバノン博士を掴み、外へと引きずり出していく。
「いやぁーっ! いやよぉーっ! 私何もしてないのにー!」
恐ろしさに正気に返ったのか、泣き叫び悲鳴を上げるオバノン博士。
私は彼女を助けたかったけど、どうしても躰が言うことを聞いてくれなかった。
奇妙な連中が出て行くと同時に黄色い膜が元通りになり、オバノン博士の悲鳴も小さくなっていく。
私はただ恐ろしくて、ミス・マクモリスと抱き合って泣くことしかできなかった。
「えっ?」
私は聞こえてきた音に驚いた。
「オバノン博士の悲鳴?」
ミス・マクモリスも気が付いたようだ。
私は急いで外が見える隙間に行く。
そしてそこから外を眺めてみた。
「あれは・・・」
「オバノン博士?」
私とミス・マクモリスが同時に声を上げる。
隙間から見えた向かい側の壁には、相変わらず青い女性たちがへばりついて何かを舐めている。
その壁の一部に、あの奇妙な連中がオバノン博士を貼り付けにしているのだ。
しかも、オバノン博士は何も身にまとわぬ裸にされている。
やつらはこれからいったい何をするつもりなの?
「いやよぉ・・・助けてぇ・・・お願いよぉ・・・」
両手両脚を壁に固定されたオバノン博士が首を振る。
泣き叫び疲れたのか、その声は弱弱しい。
私の中では、なにかがここから先は見てはいけないと必死に訴えかけている。
でも、私は目をそらすことができなかった。
やがて奇妙な連中が飛び去ると、蜂女たちがオバノン博士に近寄っていく。
そして貼り付けにされた彼女を眺めたり、額の触覚のようなもので触れたりしているようだった。
すると、蜂女の一人がおもむろにオバノン博士に口付けをする。
それをきっかけに、次々と蜂女たちはオバノン博士の躰を舐め始めた。
やがて、何かを手にした一人の蜂女がやってきて、オバノン博士の腰の辺りの空中で静止する。
そしてその手にした太目の棒のようなものを・・・オバノン博士の女性器に差し込んだ。
「いやぁっ!」
その叫びが誰のものだったかわからない。
オバノン博士だったかもしれないし、私だったかもしれない。
もしかしたら、ミス・マクモリスだったかも。
まさか・・・蜂女にレイプされてしまうだなんて・・・
「あ・・・ああ・・・ん・・・はぁん・・・」
でも、すぐに様子が変わってきた。
オバノン博士の声が艶めいてきたのだ。
まさか・・・
あんなことされて感じているの?
ニュプニュプと出し入れを繰り返される太い棒。
その棒を手にした蜂女は上下動を繰り返している。
その回りでは、オバノン博士の躰をほかの蜂女たちが舐め回す。
まるで何かの不気味で妖しい儀式のようだ。
「ああっ・・・ああーーん」
躰を震わせ、つま先を丸めて絶頂に達してしまうオバノン博士。
すると彼女の躰に変化が起こり始める。
肌が青く染まり始めたのだ。
「ええっ?」
「あれは?」
私もミス・マクモリスも一瞬にして何が行なわれたのかを理解した。
あれはやはり儀式だったのだ。
それも恐ろしい儀式だ。
オバノン博士はあの蜂女にされようとしていたのだ。
オバノン博士の躰はみるみるうちに変化していった。
肌は真っ青になり、両手と両足は白い手袋や白いブーツを履いたように変わっていく。
つま先は指が無くなり、かかとが尖ってまるでハイヒールでも履いているかのようになる。
男性教授陣のあこがれの的であったであろう大きな胸は、黒と黄色の同心円状に染まり、蜂のお尻のように先端が尖っていく。
ブロンドの綺麗な髪は紫色に染まり、目は巨大化して複眼を形成する。
額からは触角が伸び、頭頂部にかけて蜂の胴のようなものが形作られる。
壁に密着した背中からは黄色い翅が伸び、棒を引き抜かれた股間は青く染まり、つるんとしてひくひくといやらしく蠢いていた。
わずか数分で、オバノン博士はあの蜂女の仲間になってしまったのだ。
蜂女たちが両手両脚の枷をはずす。
すぐに新たな蜂女となったオバノン博士は翅を広げて飛び立つと、壁にへばりついて何かを舐め始めた。
そして、ほかの蜂女たちに混じってしまい、いつの間にか見分けがつかなくなっていた。
「あれが・・・私たちの未来というわけね・・・」
ミス・マクモリスがストンと床に腰を落とす。
私も何を言っていいのか言葉がでなかった。
「ふふ・・・うふふ・・・」
「コーネリアさん・・・」
「なにやってるんだろう私・・・こんなところへ来て化け物にされてしまうなんて・・・」
うつむき顔を覆ってしまうミス・マクモリス。
「まだ決まったわけじゃないですよ。あきらめないで・・・」
「無理よ。私もあなたもあの蜂女にされてしまうんだわ・・・」
「そんなこと・・・」
無いと言えるはずが無い。
ああ・・・
誰か・・・
誰か助けて・・・
******
それから何時間かが経ち、ミス・マクモリスが連れ出されて行った。
必死に抵抗していた彼女だったけど、彼らには無意味だった。
最後の時には死んで抵抗すると言っていた彼女だったけど、死ぬことすらできなかった。
なぜなら、私も死んでしまいたいと思っているのに、どうしても死ぬことができないのだ。
おそらく自殺を思いとどまらせるような何か仕掛けがあるのかもしれない。
ミス・マクモリスがどうなったのか私は知らない。
おそらくオバノン博士と同じように蜂女にされてしまったのではないだろうか。
外から聞こえてきた悲鳴は、いつしか快感によがる女の声になっていたのだから。
次は私の番。
お願い・・・
誰か私を殺して・・・
黄色い膜が消える。
ワーンという耳障りな音を立てながら奇妙なやつらが現れる。
あの音は彼らの会話のようなものなのかもしれない。
短い触手をうねうねとうねらせる様は、見ているだけで気色悪い。
抵抗は無意味だ。
どうせ私の力ではかなわない。
だったらおとなしくしていたほうがいい。
やつらはおとなしくしている私に戸惑っている。
前の二人は必死に暴れたから、無理やり連れて行かなくてはならなかった。
でも、私は騒がない。
だからどうしていいのかわからないのかもしれない。
私は押し出されるようにして部屋を出る。
自らの足で部屋を出たのは私だけかもしれない。
これからおそらくあの壁に貼り付けにされるのだろう。
奇妙なやつらは相変わらず耳障りな音を出しながら、私の後をついてくる。
通路は部屋と同じように岩壁。
やつらが通りやすいようにか、両側が結構幅広い。
先は薄暗く、どこへ通じているのかわからない。
やつらと少し距離が開く。
人間の歩行速度と、やつらのはさみの付いた脚とでは、速度がやや違うのだ。
思ったとおりだわ。
私はここで走り出す。
この狭い通路ならやつらは飛べないはず。
外へ出れば飛べる奴らのほうが有利だけど、とにかくできるだけ逃げるのよ。
私は通路を走り、明かりの方へと突き進む。
後ろから追ってくる気配は無い。
やつらはこの狭い通路では人間が走る速度に追いつけないんだ。
早くここを抜け出して・・・
私は目の前に広がる明かりの中に駆け出して行った。
「嘘・・・」
私の足は止まってしまう。
すぐそこは確かに外。
でも、足元には地面が無いのだ。
断崖の切り立った崖の中腹に開いた横穴。
私がいるのはまさにそういう場所だった。
切り立った崖の下は岩だらけの谷。
そこらへんにはあの奇妙なものたちが皮膜を広げて飛んでいる。
そしてもちろん蜂女も。
ここは飛べるものの世界。
やつらが私を追わなかったのは追う必要が無かったから。
ここから抜け出すことができない場所だったからなんだわ。
私の正面にやってくる奇妙なものたち。
背後からも耳障りな音が聞こえてくる。
私の足は動かない。
一歩踏み出せば死ねるはずなのに、一歩を踏み出すことすらできないのだ。
私はただ泣くしかなかった。
私は服を脱がされる。
というよりも、妙な光を当てられ、服がチリのように粉々になってしまう。
裸になった私は、抵抗もむなしくやつらによって吊るされ、あの壁に連れて行かれてしまった。
両手両脚を冷たい金属のようなもので固定され、大の字にさせられる。
私を固定したあと、ワーンという耳障りな音を残し、やつらは私を置いて立ち去ってしまった。
足元は谷底。
風が私の躰を撫でていく。
裸でこんなところに貼り付けられ、先ほどから涙が止まらない。
やがて何体かの蜂女がやってくる。
みな一様にその大きな複眼で私を眺め、じょじょに私に近づいてくる。
青いなめし皮のような皮膚。
ブーツを履いたような足。
蜂のお尻のような黒と黄色の二つの胸。
ここにいる蜂女全てが元は人間だったのだろうか・・・
「ひゃ」
思わず声がでてしまう。
一体の蜂女が、私の胸に触角を当ててきたのだ。
微細な毛が敏感になっていた私の肌を刺激したため、思わず声をあげてしまったのだった。
それをきっかけにしたかのように、周囲の蜂女たちがいっせいに私の回りに群がってくる。
そして私の躰をところかまわず舐め始めた。
腕も、指先も、太ももも、つま先も、胸も、股間もすべて。
与えられる舌の感触に、私は気味悪さとくすぐったさ、それにいやなことにかすかな気持ちよさを感じてしまう。
私の正面に現れる一体の蜂女。
手にはあのオバノン博士に差し込んだ太くて短い棒を持っている。
ただの棒ではない。
それは男性の性器そっくりだった。
あれを私に入れようというのか?
私だって処女ではない。
セックスの経験だって一度や二度じゃないわ。
でも・・・
あんなのを入れられるなんていや。
いやよぉ・・・
男性器を模した棒を持って近づいてくる蜂女。
私はその顔を見て愕然とする。
大きな複眼をしているが、笑みを浮かべたその顔はミス・マクモリスのものだったのだ。
ああ・・・
そんな・・・
こんなことって・・・
「キチキチキチ・・・」
カチカチと歯を打ち鳴らしながら私に近づく蜂女。
「いやっ! やめてぇっ!」
私は必死で身をよじる。
いやだいやだいやだ。
こんなのっていやよぉ!
ずるっと蜂女の持つ棒が私の内膣に入り込む。
蜂女たちに舐められほぐされていた私の躰は、苦も無くそれを受け入れてしまう。
「はあうっ」
突き上げられる衝撃に私の躰が跳ね上がる。
そして激しいピストン運動が私の内膣で始まった。
「あぐっ、はぐっ」
上下する棒が私の中をかき混ぜる。
お腹を突き上げる衝撃がだんだん気持ちよくなってくる。
私の中の女が喜んでいるのがわかる。
こんなの初めて。
今までのどのセックスよりも激しく私の躰を燃え上がらせる。
「ああん・・・ああ・・・ん・・・」
いつしか私はよがり声を上げていた。
でもかまわない。
気持ちいい。
とても気持ちいい。
もっと・・・
もっと突き上げてほしい・・・
もっと激しく私をめちゃくちゃにしてほしい。
「ああ・・・あああ・・・ああ・・・」
もう何を言っているのかわからない。
ただただ気持ちいい。
躰が浮く。
頭の中が白くなる。
意識が飛んでしまいそう。
イく・・・
イく・・・
イッちゃう・・・
私の躰がはじけると同時に、内膣に何かが注がれる。
それは一瞬にして私の躰を駆け巡り、私を中から変えていく。
ああ・・・
なんて幸せ。
これこそが最高の喜び。
私は生まれ変わるんだわ・・・
******
「キチキチキチ・・・」
私は歯を打ち鳴らして了解の合図をする。
女王様の命令が私の中に伝わったのだ。
“侵入者を確認せよ”
私はこの命令に従い、手近な仲間と壁を飛び立つ。
美味しい蜜はまたあとで。
女王様に従って私は私に与えられた仕事をこなす。
この“エデン”を邪魔するものを私は赦さない。
ここは女王様のテリトリー。
女王様と空から来た者たちの世界。
邪魔するものは私たちが排除する。
私は門番。
エデンの門番なの。
私は侵入者を確認するため、密林の中へと向かって行った。
END
294 :
イカマタです:2009/11/23(月) 21:43:14 ID:1MEslFQg
再掲載みたいな形になりましたが、楽しんでいただければうれしいです。
自分もようやく参加したような気になれました。
ありがとうございました。m(__)m
>>276-294 乙です。再掲載、たいへんありがたいです。
イカマタさんなんて言ってごめんなさいm(__)m
296 :
イカマタです:2009/11/23(月) 21:57:36 ID:1MEslFQg
>>295 いえいえ、お気になさらず。
実は結構気に入っていたりします。>イカマタ(笑)
戸佐又海馬(とさまた かいま)とならんで使えそうなネーミングですよー。
烏賊股 父様 誕生の瞬間であった
>>277-293 再掲載、乙です。
でもリクエストの女王による改造の改訂版なら、もっとよかったかも…
言うのは自由だし、舞方氏が以後の作品の糧にしてくれればいいんでね。
消費するしか能がないのに、貴重な職人さんに注文が過ぎる、と言いたいのでは?
再掲載、乙です。と挨拶した上で、個人的な希望を述べているだけ
批判してるわけじゃなし、何か問題があるのかね
あくまで私見ですが、
舞方様、ブログによれば女王の具体的イメージを固めていないらしい、というのはさておき
(これも、神秘性が高まるのでうかつにイメージを絞らない方がいいという見方もできます)、
女王改造にすると、「崖の中腹に縛り付けられた少女を、飛んできた蜂女が群がって改造する」、
という、現在のぞくぞくするイメージ自体をいじらなければならない可能性があって、
もしそうせざるをえないなら、自分は今の方がいいかなという気がします
(両立の可能性はないわけではないとは思いますが)。
あともちろん、現在の形態は多分「改造ノズル」へのオマージュで、
女王改造にするとそこが幾分曖昧になる可能性もあるかも。
アン改様の作品、少しずつ読んでいて、現在佳境に差しかかりつつあります。
その前にプロフェッサー様の新作『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ』
ようやく拝読しました。脇役かと思ったお父さんが後半主役になるとは。
チンポ系はストレートに感情移入(??)できていいですね。堪能致しました。
あの家族だけでも、今後まだまだあれやこれやあるわけですね。
で、やっぱり当スレに転載した方がいいでしょうか?
これからちょっとやっちゃいましょう。
現在412KBですが、足らなくなることはないでしょう。
にしても今スレ、多分最速ですね。
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-1』
プルルル・・・・プルルル・・・・・
小気味良い軽やかなベルの音がなる。
誰?今頃?
千里は、ベッドの中から気だるい身体を起こし、のろのろと電話のある廊下へと出る。
汗やら愛液や精液の混じった、ムッとする匂いでくらくらしそうだ。
昨日の夕刻から娘の里穂と一緒に、高校生と中学生の息子2人に、そして夫が
帰宅してからは、壮絶な5Pでヤリまくっていたのだ。
さすがに、男3人は精魂尽き果てた感じで泡を噴いて失神しているが、里穂だけは
千里の夫のペニスを口に含み、中学生の息子のペニスをしっかりと股間の穴に捕らえたまま
クイクイッと腰を軽く上下に動かし続けている。
「はい、翔山でございます」
千里は、いかにもダルそうな声音で無愛想に答えるが、相手の声を聞いた途端に
「は、、、はい。すぐに、伺わせていただきます。は、はい。夫と息子が2人おりますが、、、
いっしょに、、はい、、かしこまりました」
受話器を置いた千里は、バタバタと寝室へと戻り、まず最初に、娘の里穂に耳打ちして
電話の主からの話を伝える。
「ふぁ〜い、、華恋先生からぁ〜、、じゃあぁ、、また、、先生の、、チンポ、、マンコに
入れてもらえるんだぁ、、ふわぁぁ〜〜〜〜」
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-2』
里穂は、自分の処女を捧げた人間と違うペニスの快楽を思い出し、それだけでオマンコが逝く。
入り口から、奥に向かって、柔らかな突起が緩やかに膨らみ、硬い剛直を圧迫していく。
筋張った陰茎のでこぼこした形や、浮き出して蚯蚓腫れのようになった青筋の形状までが
目に浮かぶくらいに、はっきりと里穂には想像できる。
「ァ、、ぁがが、、ぁぁぁ・・・・・・」
里穂のオマンコにチンポを咥えられている中学生の兄、啓太は声をあげることすら出来は、
出す物がないまま、里穂の中でいきり勃ったチンポをビクビクと振るわせる。
里穂は、尻をキュッと内側に寄せて丸い尻にエクボを浮かばせながら、オマンコの中のモノが
チンポを扱くように入り口から奥に向かって圧迫と弛緩を巧みに繰り返し、チンポを撫でる
感覚に酔い痴れ、まだ若く張りのある亀頭部を、女体の神秘ですっぽりと咥える。
疼く子宮は、異性の性器を迎え入れた途端に、ヌチュリ、、ヌチュリ、、と前後に動き、
張り出した亀頭冠を裏側から捲るように擦り、キュゥ〜・・キュゥ〜・・と吸い込む。
啓太のチンポが、トロォ〜っと僅かに残っていたしずくを搾り出される。
女になりきっていない身体の里穂の肉体で、オマンコと口腔だけは、成熟した女性でも
普通の人間では到底及ばないほど、淫らに成長を遂げていたのだ。
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-3』
男の出す欲望が、胎内に流れ込むと里穂は、ニィ〜と唇を吊り上げて千里の夫、啓介の
チンポを頬張り、小さな舌をいっぱいに伸ばして、茎に巻きつかせる。
ジュルゥ〜・・ジュルゥ〜と卑猥な音をさせ、巻きつかせた舌をチンポに沿って動かしながら
萎びた嚢までをも呑み込み、里穂はチュウチュウと吸う。
啓介が濁った瞳で、自身を咥える里穂の方を見ると、里穂はトロォ〜ンとした目で見つめ返し
目尻を下げて、艶然と微笑む。
どろり・・どろり・・・
勢いもなく、出来たばかりの精子が、里穂の喉奥に注がれる。
啓太も、啓介もそして大学生の息子、啓一までもこうして、里穂と千里の性戯でとことんまで
吸われ、射精を幾度となく繰り返すうちにすっかり、2人に従順な下僕へと成り下がっていたのだ。
「里穂ちゃん、それくらいにしておきなさい。さあ、先生がお待ちよ。こんなつまらないチンポじゃなくて
華恋先生のアレを入れて頂くんだから。それに先生も男も連れてらっしゃいと言われてたから、
こいつ等も連れて行かなきゃ。ほら、立ちなさい。車を用意して、、、ほら、、早く」
千里は、里穂と絡んでいない啓一のチンポを掴むと、引っ張りあげるようにして立たせ、きつい口調で命じる。
「ほらほら、裸でなんか行けないでしょう!何でもいいから服を着て、さっさとしなさい!」
どうみても、母が息子に行うとは思えない乱暴さだ。
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-4』
ぬちゅ・・・・くちゅ・・
里穂も、口腔と胎内に咥えていたペニスを吐きだし、父親の頬をペチペチと叩き
「パパぁ、、また、帰ってからしようね。さあ、パパも服を着て、、準備してね」
男3人、ふらつきながら黙々と適当な衣類を身につけていく。
里穂と、千里は、姿身の前に立ち、自分の肢体をジーッと凝視する。
幼児体系だった里穂の肢体は、一晩でめまぐるしい成長を遂げ、背丈はそのままで
女性を感じさせる部位だけが、こんもりと盛り上がり、小柄ながらメリハリのある
セクシーボディに育っている。
身体を、クニャリとくねらすと、皮膚の上を覆う銀色のレオタードがざわっと蠢き、
裸身が透けて見えそうな薄さに変わり、逆にそれまで、皺の谷間すらくっきりと浮かばせていた
股間部を最低限の面積で隠すように集まっていく。
クニャクニャと妖しく身体をくねらせる里穂。
片手では、掴めそうにない乳房が揺れ、プリンとした尻がぷるぷると震える。
「はぁ〜ん、、里穂のオマンコ・・・オマンコの中で・・なんかグニュグニュ動いてるのぉ〜
先生のチンポ突っ込んでもらって、、はぅぅ〜・・・はう!」
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-5』
里穂が吸い取った精子が、女だけが持つ嚢に集まり、その中で活発に蠢いている。
華恋に犯された事で、里穂の身体は男の出す生殖細胞を蓄えるのに最適な肉体になっているのだ。
それは、性交時にはそれほどとは感じなかったのだが、華恋に犯されることを意識し
蓄えたものが一滴たりとも漏れないように、華恋の愛液の染み入ったレオタードがぴったりと
秘唇の入り口を覆うと、オマンコに、、そして口に放たれた精子が里穂の胎内で、細胞が持つ
目的を呼び起こすように里穂の子宮内に生命力を増長させる体液が満ちるのだ。
幾度も幾度も放出された大量の精子が、里穂の子宮内で盛んに蠢き、暴れている。
もう、たまらない・・・・そんな里穂の横で、千里も熟れた豊満な肢体をくねらせている。
全身を覆っていた黒いストッキングは千里の皮膚に染みこむようにして、薄っすらとした
黒褐色に変わっているが、千里のくねる肢体の動きを感知しながら、ゆっくりと千里の
秘部を隠すように濃厚に色づき始め、代わりに肌は、ほてった薄桃色に色づきだす。
「あはぁぁぁ〜・・・華恋先生・・早く私の中に溜まった精子を掻き出してくださいまし。
あの、ド太いチンポで、、オマンコを、、千里のオマンコ・・・メチャクチャに・・・・」
ヒクッ・・・ヒクッ・・と引き攣ったように身体をヒクつかせる千里と里穂が眉間に深い皺を
浮き立たせ、きつく目を閉じる。
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-6』
のろのろと動いていた男たちは、言われたとおりに簡単な着衣を済ませ、それまでに
散々自分たちを嫐っていた母娘の、満足げな表情に、そして男を見ただけで悩殺して
しまいそうな妖しい肢体を食い入るように見つめている。
ギラリ・・・
里穂は、閉じていた目を開けると、血走る妖艶なまでの目つきで姿身に映る自分の姿を
眺めると、唇の両端を吊り上げて、卑猥に笑う。
股間の前が、ぷくっと小高く盛り上がり一筋の深い谷間が浮き出ているが、そこを太目の
銀色の紐が谷間を隠すようにして食い込み、後ろに回ったそれは、背筋に沿って伸びており
里穂の首元で二股に分かれて、丸い乳房に何重にも巻きついて、乳房の丸みを強調するように
幾重もの同心円ですっぽりと覆っているのだ。
千里も恍惚とした表情の中に、欲情に染まった血走る眼で、自身の姿を見て、艶然と笑みを浮かべる。
ヌメリとした粘膜質のゴムにも見える真っ黒なものが、千里の大きな秘唇、ビラビラした大陰唇に
ピッタリと貼りつき、ほんの数ミリのおうとつでさえ鮮明に浮き立たせたまま、左右に大きく開いている。
そして、その中央は、広がった千里の膣孔の形をくっきりと刻んだままで漆黒に染まった黒光りする
皮膜が、千里の膣襞の一枚一枚を極薄の黒っぽく色づかせて奥の方まで入り込み、その最奥は、
ぬらぬらした真円を描く丸い玉型が、ピッタリと塞いでいるのだ。
やや垂れ気味だが、歳相応の熟した果実を思わせる乳房の先から、ニュルゥ〜っと黒い液が染み出し
乳首と焦茶色をした乳暈を覆う。
異性をより知っている分だけ、千里の身に着けるものの方は、表皮には現れずに、体内を蝕みながら
その役割を果たす最小限の大きさで発現したのだ。
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-7』
「なにを見とれてるの?なぁ〜に?またシタいの?ふん!あんたたちのチンポなんか目じゃない
くらい立派なチンポで犯されるのに、相手なんかしてられないわ」
「そうだよぉ〜、、お兄ちゃんとパパのを合わせたのより、もっと凄いんだから・・ね、、ママ」
「さあ、理穂ちゃん、素敵だけど、さすがにこのまま表には出られないわ。適当に上着を羽織りなさい」
「はぁ〜い・・・・」
千里は、薄手のワンピースを上からすっぽりと被り、理穂は着慣れている長めのパーカーを羽織り
前のファスナーを閉じる。
「場所は私が言うわ。車で行きましょう!」
千里と里穂が前に立ち、男たちはそれに付き従う。
プリン・・ぷるん・・プリン・・ぷるるん・・・
男の目は、前を歩く女たちの丸い肉の膨らみに誘われるように、黙ってふらふらした足取りでついて歩いていた。
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-8』
(あらあら、ちょっと、、出来すぎじゃない?)
(そうね、計画より早すぎるわ。予備段階で、ここまで人間を変えちゃうなんて・・)
(メダマノドクガがヤッただけでこれでしょう〜・・・昨日、純正のドルゲ細胞を注入してるのに
このままじゃ、淫造人間の限界を超えちゃいそう・・)
(思ったよりも、彼女、超ド淫乱だったようね。いいじゃない、このまま、あの親子を使って
一気に仕上げてあげたら・・)
(そうね、都合よく5人揃ってるし、幸い♂が3人、♀が2人。ピッタリじゃない・・)
(面白そうね、絶対、、ビックリするよ。ふふふ、楽しみぃ〜〜)
(そうと決まれば、ドルゲ時空へ、引きずり込んじゃいましょう・・・)
妖女が5人、いや人の姿とはかけ離れた、不気味な存在が5体、身の毛がよだつような雰囲気を
醸し出しながら走る車を、空から見下ろしている。
朝日の差し始めた秋晴れの爽やかな空に、どんよりとした闇雲が立ちこめ、それは千里たちの乗った
車の上に集まり、快調に走る1台の車だけを覆い隠していった。
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-9』
「どうなってるのよ!」
千里がヒステリックに叫ぶが、運転している啓一は、パニックに陥っているだけに、なにも耳に入らない。
アクセルもブレーキも、それどころかハンドルを動かしてもまったく負荷がないのだ。
車が走っているかどうかすら、運転している実感がわかないのだ。
「わ、、、わかんない、、どうなったんだ、、、」
じっとりと手のひらから、嫌な汗が滲む。
突然、真っ暗になり、ライトをつけたものの、先はまったく見えない。
ライトが照らす先さえ、何もない空間なのだ。
ガタガタと震えながら、それでも啓一は普通ではない場所を必死で走っているのだ。
一瞬、ライトの先に小高い土の小山が出現する。
それも、ブレーキの間に合わないタイミング。
まさに、目の前に突如として土山が出現したのだ。
キイイイイイイ〜〜〜!
ブレーキパッドが悲鳴を上げるが、車はその山に突っ込む。
啓一は、顔を伏せる。
それは、助手席の千里も同じことだ。
もうだめだ。
だが、なんの衝撃もなかった。
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-10』
ふう、、大きなため息をつき、啓一は、この異様な空間から逃げ出そうと狂ったようにアクセルを踏み込む。
後ろの席の真ん中に座っていた里穂も、体を前に倒し、顔を伏せていたが、何事もなかったことを
知ると、そのとき、妙な違和感を感じる。
「あれ、、パパが、、いなくなっちゃった?」
里穂が、気の抜けたように言った声で、運転している大学生の兄、啓一と助手席の千里が振り返るが
「前、前を見ろよ!危ない!」
里穂の横に座っていた中学生の啓太が大声で叫ぶ。
周りはのどかな田園の風景、その真ん中の一本道を暴走する乗用車の先には、あろうことか?
道の真正面には、肥溜めが大きく口をあけて待っているのだ。
車が宙に舞い、その中へドップーンと飛び込む。
「キャアーーー!」
千里が甲高い声で悲鳴をあげたが、何事もなかったように車は再び闇の中へ・・・
「やだ・・・いやだ・・・やだよぉ〜・・お兄ちゃんもいなくなっちゃった・・」
里穂は、後部座席でうずくまりガタガタと震えている。
性欲が強くなったとはいえ、想像外の出来事に千里や里穂ですら気が狂いそうなくらいの
恐怖を覚えているのだ。
啓一は、何度も何度もブレーキを踏んでいるのだが、スーッと車は闇の中を疾走していく。
フロントガラス越しに、鬱蒼とした木々が見えてくる。
闇よりは明るさがあるものの、見るからにジメジメした鬱陶しい感じのする森の中だ。
「ヒーッ!」
千里が横を向くと、運転していた啓一の姿も無くなっている。
それでも、車は何事もなく走っていき、やがて断崖絶壁が見え、車はそのまま海中に飛び込んだ。
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-11』
千里の夫、啓介は突然、車内から放り出されるようにして降ろされた。
頭を振りながら、啓介は周りを不安げに見回す。
何もない。
まさに虚無の空間。
がっちりした肉体を縮こまらせて、ぽつんと一人でその場にへたり込んだ。
「お〜じさん・・」
「わぁ〜!」
「キャッ!そんな大きな声出したら、ビックリするじゃない。もう・・・」
啓介の肩越しに、可愛い感じの声がし、その声の主が啓介の肩をポンとたたいたのだ。
ゆっくりと啓介は振り返り、その声の主を呆然と見る。
頬をプーッと膨らませている愛らしい感じの、まさに少女としか言いようのない、それも
そこそこに可愛い少女が、目元を細めて、ニコニコしながら啓介の後ろに立っている。
「き、、君は・・・?」
「わたしはネ、、えへへへ、エロダークの淫造人間、、チンポコミミズの杏奈。よろしくね」
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-12』
その少女は、これ以上はないと思えるくらい、愛らしい天使の笑みを浮かべて啓介の正面に回る。
「へ、、なんだって?エロダークだの、、淫造人間だの、、それにちんぽこみみずってなんだい?」
最後のほうは、啓介でさえ恥ずかしいような気がするせいで、、声が小さくなったが、とても
目の前の少女の口から出るような言葉とは思えなかったのだ。
「いいから、いいから、杏奈に任せて、おじさんの身体をちょっと借りたいだけなの。と〜っても
気持ちイイことして、、あ・げ・る。わたしに任せちゃってネ。お〜じさん・・・」
小首を傾げながら、ニコニコと微笑む少女の仕種に、すっかり啓介は気を許し、呆け気味の目に
好色さが入り混じっていく。
紫の生地に、赤と青の入り組んだ複雑なラインが走る野暮ったいデザインのスクール水着を着ている
杏奈が、両腕をぴったりと胴にくっつけて、上半身をくにゃり・・くにゃり・・と左右に揺らし始める。
ニコニコとした笑みを湛えたまま、杏奈は
「お〜じさん、、立って、、そして私をよ〜く見て、、見て、、ほうら、、おじさんは、
もう、わたしのもの、さあ、、着ているものなんか脱いじゃって、、おじさんのチンポ、、杏奈に
見せて、、杏奈が入っちゃうチンポ、、放り出して・・・お〜じさん・・・」
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-13』
げへへへへ、、、、
啓介は締まりのなくなった顔つきで立ち上がると、適当にまとっただけのポロシャツと、パンツすら
つけずに履いたズボンをあわてて脱ぎ去る。
さすがに、一晩中酷使された啓介のペニスは、ぐんにゃりとしたままうな垂れているが、杏奈は
それをジロジロと凝視し、弛んだ皺が被った醜いペニスを見ると
「元気ないねぇ〜、、でも、、大丈夫だよ。杏奈がすぐに元気にしてあげちゃうね」
身体を前にカックンと折り、両腕をだらんとさせたままで杏奈が上半身をぶらんぶらんと大きく左右に振り始める。
黒い艶やかなストレートヘアーが床を撫でるように、左右に大きく上体を左右に揺らす杏奈。
啓介は、杏奈の背中を見つめているが、なだらかな背中に不気味な横皺が1本、また1本と入り
肌よりもやや濃い感じの色合いに染まりだしていく。
背中に走る縦横無尽の赤と青の模様が、盛り上がりなだらかな背におうとつをつけていく。
床を撫でる黒髪が、赤黒い感じに変色していき、くるくるっと裾から付け根へとカールしていく。
ぶ〜らん、、ぶ〜らん、、ぶ〜らん・・・・・
左右に揺れるたびに、杏奈の上半身は、その本性を現し始めてきている。
すっかり赤黒く染まった長い髪は、マッシュルームのような髪型に変わり、ゆるゆると弛んだ感じの
背中の包皮が、その赤黒い頭をずっぽりと覆う。
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-14』
啓介は、いつしか杏奈の背を見ていると思い込んでいたが、もう少し視線を下げると、自分の
モノも、杏奈と同じように左右に、ぶ〜らん、ぶ〜らん、、ぶ〜らん・・と大きく左右に揺れているのだ。
「えへへ、、おじさんのチンポ、、結構、、かたち良いヨ。カリ太だし、それに、感度も良さそう。
と〜っても相性が合いそうだわ。うふふふ・・・・この空間は、杏奈の思うがまま、杏奈の能力が
最大限に発揮できちゃうの。だから、こんな感じで、おじさんのチンポを、杏奈がコピーすることくらい
チョー簡単なんだよ。お〜じさん・・・」
杏奈は、揺らしていた上体をピタリと止めると、倒していた身体を起こし始める。
ムクッ、、、ムクッ、、、
啓介の下半身、、いや、股間の一点に怒涛の勢いで血液が流れ込んでいく。
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-16(15?)』
「へへへ、お〜じさん、、」
目の前の異様な形に変形したものからではなく、愛くるしい少女の声が自分の足元の方からする。
もはや、正気を保てなくなっていた啓介は、ただ声のする方を向くだけだ。
「ここだよぉ〜、、ほら、、おじさん、自分のチンポを見て・・」
ズル剥けになった亀頭、その真ん中の割れ目の縁が左右不恰好に膨らんでいるが、それは紛れも無く
あの少女の唇そのものだったのだ。
「気がついた?今からね、チンポコ、ずこずこしちゃうの。そう、おじさんの大きいチンポコ。杏奈の
身体を使って、センズリ扱いちゃうの。シコシコ、ズコズコ、そうしたらドバ〜ッて、い〜っぱい
い〜ッぱい気持ちイイ、ザーメンが出ちゃうでしょう。それを・・・ネ、このチンポコのお口で、
ジュルゥゥ〜って啜るとチンポコミミズがおじさんのチンポコと同化しちゃうのよ。素敵でしょう?」
「ひひひ・・・そうだ。チンポコミミズ様が、俺に、、入って下さるのだ・ヒヒヒヒ・・・」
啓介は上ずった声で笑い、よだれを垂らしながら澱んだ目で目の前のチンポと、自分のチンポを
交互に見つめている。
「そうそう、よくわかってるじゃない。ふふ、それじゃ、おじさんも気持ちよくなってね。チンポコミミズの
センズリの快感は、半端じゃないんだから・・うふふふ」
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-17[16?]』
胴体がペニスに変わっている杏奈の本体、その股間部からニョロニョロと茶褐色の体節を持った
巨大ミミズが胴茎に巻き付いていく。
啓介が、両手を頭にやってかき回す。
オマンコに入れた時の、何百倍もの快感が一気に襲い掛かってきたようだ。
それも、先からではなく根元のほうからジンワリとした柔肉が絡みついてくるような快感。
「やだぁ〜、まだ1本よ。こんなのが、一万本は出てきて、チンポコを扱きまくるのにぃ〜
そうそう、センズリじゃなくって、マンズリね。うふ、、ほうら、、どんどん出てきて、、
あはぁ〜ん、チンポコが感じると、、、杏奈も、、、感じちゃうのぉ、、、はううぅぅ〜〜・・」
正に柔肉となんら遜色の無いミミズは、次々と陰茎と化した杏奈の股間部から這い出してきて、
ニュルニュル、ニョロニョロと陰茎を扱くように絶妙のリズムで下から上に、上から下にと
めまぐるしく動き、それもミミズの個体は、まとまって動くことは無く、それぞれが別々に
絡みついた巨大ペニスを扱くようにして、自由自在に暴れまくるのだ。
「アヒィィ〜〜、、逝かせて!チンポ、、逝かせてくれぇ〜!アヒィィ〜〜!」
啓介も、自身のペニスを掴み、ズコズコ、と皮が剥けて血が滲むくらいに激しく手淫に励みだす。
「はぅぅ〜〜、、そうそう、、それでいいのよ。チンポコから先走りが出て、一層、ぬるぬるしてきて
もっと、もっと気持ちよくなっちゃうのよ。おじさんのチンポコが、ほらぁ〜、、こんな風に
トロトロしたお汁を吐き出して、もっとぬるぬるになって、ハフゥゥ〜〜、、トロトロだぁ〜」
啓介のペニスの先に着いた少女の唇が、透明な涎を吐き出す。
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-18[17?]』
それと同じタイミングで、巨大なペニスもどろ〜っとしたイヤらしい先走りを垂らし始める。
「アヒ!アギヒギギィ〜〜!ぐわぁ〜〜!!」
自分のチンポに滴る先走りは、まだ自分のもの。
そう、人間の出す体液に過ぎないが、いま啓介が感じているのは、チンポコミミズが変形した
チンポコミミズ本体から伝わる快感なのだ。
外観は、啓介のチンポとしても、その内から溢れる淫液は、チンポコミミズの体液なのだ。
それが、チンポの外側に伝わり、塗りこめるように柔肉ミミズの群れが蠢く。
啓介は、ついに発狂した。
いや、理性や何もかもが吹き飛び、脳が壊れ、血液が沸騰し、身体の中から人間が消えていくのだ。
「ハウ!い、、逝っちゃいそう・・逝くのね・・逝きましょう・・おじさんのチンポコが
チンポコミミズが、、逝くの、、逝っちゃうのよ!ハゥゥ〜〜〜!」
杏奈、いやチンポコミミズが、身体を前に倒していく。
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-19[18?]』
そして、啓介のペニスも前にグイグイと折れていき、大きさこそ異なるものの全く同じ形をした
チンポ同士が1本の管のようになっていく。
啓介の亀頭についた唇が、ミチミチと音をさせて引き裂けていき、亀頭全部がまるで唇になったようになり、それを全開に開いていく。
ブチュ〜ッとチンポコミミズの本体にそれは吸い付き、巻きついていたミミズの群れを後ろに押しやる。
ジュルゥゥ〜〜・・ズズズゥ〜〜・・ジュズズ・・ズズゥ〜〜・・・
懇親の力で、啓介のチンポがチンポコミミズのチンポを吸い始める。
ドロォ〜、、ネバァァ〜〜、、ベチャァ〜、、ブジュゥゥ〜〜・・・・・・
凄まじい勢いで、チンポコミミズの本体が大量のザーメンを噴出させる。
発狂したはずの啓介の脳内には、閃光が点ったまま、射精の絶頂が桁外れに増大した極悦が襲い、
それだけでも人間では耐え切れないのに、それ以上に今の自分についているチンポを精液が逆流する
未知の虐楽が啓介を、肉欲の化身、犯楽の淫造人間チンポコミミズの宿主に変えていくのだ。
チンポコミミズが変貌した啓介のチンポ。
当然、射出する精子もドルゲの遺伝子を含み、いやそれ自体が淫らな悪虐の意識を持つ極淫の
生殖細胞なのだが、それが啓介の身にチンポを通じて充填されていく。
”逝く”極悦と”逝かされる”虐楽。
その二つを同時に感じながら、チンポコミミズが嬉々として怒涛の射精を行い、最後の一滴までを
余すことなく啓介のチンポが啜りこむ。
ジュルゥゥ〜〜・・・ジュルッ・・・
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-20[19?]』
「ふぅぅ〜〜・・・・おじさんのザーメン全部出ちゃったね。うふふ、これで、ようやく【わたし】が入れるわ。
うふふふ・・・・さあ、おじさん、杏奈に入れちゃいなさい。ニョロニョロミミズがい〜っぱい詰まったあの
割れ目に、、チンポコをぶち込んで・・・そして、このチンポコと合体するの・・うふふふふ・・・」
チンポに浮き出た唇が妖しい声で囁く。
水平に折れていたチンポコミミズの上体が、グンと一回立ち上がるとそのまま仰向けに倒れる。
胴茎に巻きついていた、大量のミミズは、シュルシュルとその胴茎の付け根にある薄い秘唇にもぐりこみ
その合わせ目をいっぱいに広げて、茶色い柔肉が混沌とした坩堝のように渦巻く妖しい秘口の中を
啓介の視線の先に向けて、これ以上はない卑猥な内部を存分に見せ付けるのだ。
「があああ〜〜〜〜!」
獣の咆哮をあげて啓介は、チンポの胴茎を左右からがっちりした手で挟みこみ、乱暴を通り越して
凶暴さすら感じさせる勢いで、チンポコミミズの薄い秘唇にチンポを突きこむ。
チンポの付け根が燃えるように痺れる。
自分のチンポを、自分で犯している。
その劇悦は、幾度も啓介とチンポコミミズの脳裏を循環して悪魔のフィードバックを起こしているのだ。
啓介の射精中枢は、すっかり麻痺し輸精管は限界まで広がり、たっぷりと充填されたはずの淫精が
迸るはずだった。
だが、その状態でも啓介に射精は許されない。
ジュル・・・ジュル・・チュルン・・ジュルル・・・
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-21[20?]』
開ききった鈴口が、麺でも啜るように、チンポコミミズのオマンコに満ち溢れているミミズを、吸い取っていくのだ。
チンポコミミズの床に着いていた足が浮き上がり、剥けきっていた亀頭が包皮の方に縮んでいく。
代わりに、チンポコミミズを犯している啓介のチンポが、内部から異様な形をした禍々しい極巨チンポに
変貌勃起していき、やがて包皮代わりの杏奈が身につけていた紫地のスクール水着がぴっちりと啓介のチンポを覆う。
べチン
入れていたチンポコミミズの本体と完全に同化を終えた啓介のチンポが、啓介の顔面をはたくようにして反り勃つ。
自分の顔とほぼ同じ大きさの亀頭は、いくつもの瘤で出来上がったように、いや、そのいびつな半球状に
盛り上がるどれもが、色や形こそ違うものの、紛れもなく、チンポの先に着いた亀頭なのだ。
啓介は、反り返った超巨大なチンポを抱くようにして両腕を回す。
人の指よりも太い血管がぶくぶくと浮き上がり、その胴茎のいたる所から生えるチンポは、それ1本でも
人間の女であれば、泣いて喜ぶような逞しさと、醜怪な様相を呈している。
ぐりん、、、ぐるん、、ぐりん、、、
『本改造・・その前に・・おじさんのチンポはわたしのモノ-22[21?]』
亀頭部の盛り上がる亀頭のうち、3つほどが反転し、かつて杏奈と名乗っていた少女の顔のパーツが浮き上がる。
「さあ、これで、おじさんに完璧に同化できたわ。でも、さすがにこのままじゃ行けないわねぇ。ちょっと
小さくなっちゃわないと・・・・そうか!おじさんのお口で吸ってもらって、上から入っちゃいましょう!
さあ、おじさん、キッスしましょ。そうやっておじさんのお口から入って、胴体にしまっちゃわないとね」
チンポに浮き出た可憐な唇が、キュッと窄まり啓介にキスをせがむ。
啓介は、臆することなくその唇に唇をあわせ激しいディープなキスを交し合う。
チンポに口づけするなど、正気の沙汰ではないのだが、いまやその意思は完全にチンポコミミズに
乗っ取られているのだ。
舌代わりの、ヌメッとしたものが、口腔から食道に延々と入り込んでくる。
がっちりした啓介の肉体は、一回りは優にふくらみ、全身の血管が不気味にこんもりと膨れ上がっている。
やや、ごつごつした感があるものの、ようやく臍上あたりまでチンポが縮んだと同時に、チンポから伸びていた唇が
チュパッと開き、シュルルル〜っとチンポの中に伸ばしていた管を吸い取っていく。
ぶっくらと膨らんでいたチンポの唇が薄くなり、鈴口をピタリと閉じ合わせる。
「華恋さん、楽しみにしててくれよな。たっぷりとチンポの良さを感じさせてやるからな・・・」
啓介は、口元を乱暴なしぐさでぬぐい、脱ぎ捨てていたポロシャツとズボンを履いていく。
ふらふらとしながらも、その足取りはずんずんと足音でも響かせそうな逞しさで、まっすぐに歩き出した。
以上です。
貼り始めて気付いたのですが、
>>319と
>>320の間で通し番号が1つとんでいて、
その間1レス貼り忘れの可能性もあります。
場面的につながっているので、番号の振り違いだろうと思いましたが、
ひょっとすると杏奈ちゃんの変形過程にもう一段階ある可能性も?
いずれにしても、確認せずに進めてしまい、申し訳ありません。
「蜂女アンヌは俺の嫁!」先ほど読了しました。
雄大なスケール・大胆かつ緻密なSF考証・もちろんエロ満載という、
娯楽作品として申し分ない作品でした。読み終わるのが惜しいくらいで、
端折った部分も含めた完全版も見てみたいとも思いました
細かいところながら、蜂女デザインはBeeF様デフォルトを踏襲しつつ、
>乳頭の先端が星形に割れ
↑このあたりエロ度が増してる気がします。ベムスターみたいでぞくぞくします。
BeeF氏デフォルトならやはり乳首から針を発射する際に、乳房がぷるんと揺れる描写は外せないな
(揺れたら照準が狂うのでは?という野暮なツッコミは無視)
今回アン改氏がそこまで再現されてたのは好印象
蜂女のデザインはBeeF氏デフォルトでは「頭部は人間のままで触角がある」なんだが
今回は舞の字氏、maledict氏ともに、それでは異形度が足りなくて不満と感じられたのか
ショッカー蜂女に準じた、顔の下半分しか素顔が残らないタイプのものになっている
どちらがいいかは人ぞれぞれだと思うが、BeeF氏の蜂女がわざわざ素顔を晒しているのは
「明らかに○○さんなんだけど、でも中身は既に別の存在」的な怖さを出したかったからと
思えるので、アン改氏がそれを栗山蜂女襲来のあたりで踏襲されていたのは良かったと思う
舞の字氏の「すぐに他の蜂女に紛れて見分けがつかなくなる」も別の怖さがあるけどね
ところで疑問なんだが、maledict氏の蜂女は素顔はわからないはずなのに、なんで美府博士たちは
帰還を阻止しようと近づいた蜂女を即座に朝花と認めたし、朝花もそれを前提として行動できたんだろう?
あのシチュエーションなら調査隊に近づいたのはアンナさんである可能性もあったわけだよね
>>305様
蜂女のデザインでのBeeF様オマージュについては悩んだところで、
↓舞方様のブログのコメ欄にもちょっと書きました。
ttp://masatomaikata.blog55.fc2.com/blog-entry-1754.html#comment 顔の識別ですが、大きいサングラスをかけている程度の変形なので、
個人の同定はできるだろう、というような認識でいました。
(当初の構想通り下顎まで変形させるとこれはきつかったから
何か手を考えなければならなかったかもしれませんが)
加えて、美府博士たちは朝花の蜂女化も、蜂女化した朝花たちに導かれて
探検隊の脱出を阻止しに来るかもしれないことも予想済みだったので、
意識的に朝花やアンナはいないか、と探しただろうと思います。
>>291で舞の字様も、近くでよく見たらマクモリスさんだった、という
描写をしていて、同じような認識なのかと思いました。
但し自分の場合、あまりに苦もなく見分けているのはやはり少々変だったかもしれません。
(例えば岩本氏が知り合いの家にあの格好で訪ねていったとして、一目で分かるかどうか)
デザインの件追記すると、上記コメ欄にも書いたとおり、BeeF様(アン改様もですが)の
手にかかると顔出しでも異形度を十分維持できていると思えるのですが、
いざ自分が書こうとすると、おっしゃるとおりどうも異形度が弱く、
筆が鈍りそうだったという感じです。
ショッカー蜂女デザイン(ブーツ・グローブ除く)ならばBeeF様の原点なので
ぎりぎりセーフかなと思ったのですがどうでしょう。
なお、グローブとブーツを含めたBeeF様オマージュは
>>137で行ったつもりです。
(後日譚になるエピローグでは実物が登場するはずです)
遅ればせながらBeeF祭りの「エデンの門番」3作、ようやく全部読むことができた。大変乙でした。
せっかくの祭りでもあるので職人でも無いのに僭越ながら、個人的な読後の感想を書かせていただきたい。
失礼な表現などもあると思うが、ひらに御勘弁を。
>舞の字氏版
・SSを書き慣れているせいか描写が必要最低限にして的確。短いプロローグが効果的。
・語り口が散文詩のように軽快でぐいぐい読ませる。
・ストーリー展開はBeeF氏のシノプシスにあくまで忠実。余分なひねりを入れていないのは◎。特に
蜂女たちが「門番」に徹し、人間世界を侵略しようとしていない点はBeeF氏の意図に忠実だと思う。
・登場人物が多いように見えて実は主要なのは3名と、割り切った構成は○。
・20世紀初頭という舞台設定、クトゥルー神話を下敷きにした展開は、それらに馴染み深い読者の
予備知識を利用できるため、実際の描写以上に読者の想像力をかき立てることに役立っていると思う。
・反面、割り切った構成は秘境のおどろおどろしさや、蜂女の異様さの描写を切り捨てている感がある。
秘境に入っていきなり蜂女の登場というのも芸が無い。もっと波乱万丈の展開を期待したいのだが。
・主人公のマリアンの語り口が淡々としているが、性格が鷹揚なのか子供っぽいのかいまいち掴めない。
>maledict氏版
・現代を舞台にした唯一の作品。緻密な科学考証とSF設定の魅力ではこれが一番。
・寄生による改造という展開は新機軸(ちゃんぷるう氏のギリーラ等の先例はあるが)で◎。
・父娘の心理的関係、特に父から娘への感情が描写されていたのが新鮮。娘の母への思慕も同様。
・登場人物のネーミングに見え隠れしている、このスレへの愛情が好印象。
・理屈っぽい科学考証に手間取っている部分はマイナス要因。もっとSSの尺があれば、言葉ではなく
エピソードやシークエンスで説明されたであろうと思うと残念。
・一人称での描写は評価が分かれるところかも。人間→蜂女の意識上での変化があまり感じられない。
蜂女化してからの語り口に本人は意識しないような微妙な変化が現れていればまた違ったかも。
・個人的には蜂たちの使う「母」「姉」といった表現が人間っぽ過ぎてちょっと不満。
>アン改氏版
・とにかく大長編。続きを読ませるパワーはあるが、いざ読み始めるまでの敷居が高い。
・登場人物が8人と多いため、覚えやすいニックネームを付けたり口調に特徴を持たせるなどの
工夫をしてはいるが、その役割と関係を把握するのが読む者には大変。
・異星探検という設定にしたことで異境の存在に無理がなくなり、スケール感も増しているのは○。
3作の中でいちばん「秘境探検」らしさが感じられる。
・エロが過剰なのはこのスレがエロパロ板であることを意識し過ぎたものか、特に後から無理矢理
付け足したという前半のエロは(賛否両論あろうが)個人的には不要だったと思う。
・蜂女のデザイン、改造方法(手術台に大の字で改造ノズル)などがBeeF氏にいちばん忠実なのは○。
・ヒロインが徐々に蜂女化してゆくという展開は新機軸で○。処女と明言されていたのも○。
・栗山蜂女の予期せぬ登場は個人的に◎。
いちばん「残念だった」と思うのはmaledict氏版。豊富な材料を短い尺に詰め込もうと無理している
のがわかる。
もっと長編であれば、理屈っぽい部分をエピソードでさらりと描写できたろうにと思う。
例えば寄生バチやサムライアリの話などは、BeeF氏だったらプロローグ部分でアンナがその現物を
観察しているという描写で説明したのではないだろうか。
またプロローグ部分でいきなり、門の外に迷い出たハチネズミが捕獲されて一般の知るところとなり、
遺伝子キメラである存在が学会にも大きな波紋をもたらしている等の(読者にとって)ショッキングな
導入部を作ったんじゃないかとも思う。また、偶然に門を開いた人間の存在が蜂たちにもテレパシーで
知れ、危機感をもたらしていたとの前提が朝花たちの到来以前からあれば、エピローグでの蜂たちに
よる人間界への先制攻撃にも説得力を与えることができたのではないかと思う。
もっとふんだんに尺を使って余裕のある書き方で書いて欲しいと痛切に思った。
アン改氏は逆に説明過剰気味なので、もっとコンパクトにまとめた方がいいと思う。
登場人物はまだ減らせると思うし、実際に書かれることがない思わせぶりな描写(アランとレイラの
過去に何があって別れたのか、とか)は不要だと思う。エロ描写のねちっこさは長所だと思うが、
あまり頻繁に続くと辟易する読み手が出るのも確かだと思う。
舞の字氏は良くも悪くもコンパクトにして薄口。これが持ち味だと思うから直す必要はないと思うが
秘境の描写にもっと尺を取っておられたらと残念に感じるのも事実。あと、ヒロインをもっと魅力的に。
どれも個人的な見解です。あれこれと勝手な言い分でごめんなさい。>職人さん諸兄
334 :
舞の字です:2009/11/25(水) 21:00:10 ID:3/F6/nWZ
>>332-333様
作品についてのご批評ありがとうございます。
こうして自作についてのご意見をいただけるのは、
実はあるようでいてあまり無いことですので、とてもありがたいです。
最後の締めで書かれておられますように、私は人間を書くのがどうもまだまだ未熟なようで、
ヒロインを魅力的にというお言葉は痛切に身に沁みます。
展開の唐突さもおっしゃるとおりで、もう少しじっくり焦らずに書いていった方がいいのでしょうね。
とても参考になりました。
一朝一夕で変わるものではないかもしれませんが、自分なりに意識していきたいと思います。
ありがとうございました。
>333氏
感想はとにかく大長編。読み始めるまでの敷居が高い。もっとリラックスして読まれたほうがよろしい気がします。
職人さんたちは文章がちょっと上手いだけの素人なので、好きに書いていただけばそれで構いません。
本当に勝手な言い分だと思いました。もう一行ほどフォローされていれば良かった気がします。
個人的な見解です。ごめんちゃいw
>>332-333様
バランスのとれた(と思える)丁寧なコメントありがとうございました。
今回の祭り全体の(少なくとも既出分の)すぐれたガイドになりうる貴重な批評文だと思います。
>職人でも無いのに僭越ながら
↑こういうのは無しでいきましょう…
ご指摘の説明羅列の部分は、ただの尺の問題というよりは当方の書き手としての
資質の問題かもしれず、ちょっと深刻かもしれません。ほぼ前後してSF新人賞スレの
SS祭りに下記の「分身捕獲機」というSSを投下したんですが(改造ネタではないです)、
ttp://wikiwiki.jp/sfrookie/?%C2%E8%C6%F3%B2%F3%A3%D3%A3%D3%BA%D7%A4%EA%B2%F1%BE%EC こちらははっきり字数制限あってのこととはいえ、説明の羅列が不自然&説明が分かりにくい
という指摘がされてきてます。エデンの門番に関しても、「改造シーン以外に無駄な字数を
割いてはいかんだろう」という自制心が出たのが一つで、これが結局ご指摘の窮屈さの
原因になったのかと思います。もう一つには、淡々と説明を重ねる中でヒロインたちが
自分の運命を自覚する、という恐怖と恍惚の演出を行いたかったのですが、これは
思ったほど功を奏さなかったのかもしれません。
長くすればいいというものでもない、と思っているのですが、加筆改稿の機会も
あるかもしれないので、見直してみます。
>>334,336
職人さんたちガンガレー!
maledictさん、説明は誰かに語らせるのではなく、3人称視点でSSを書いた上で
地の文で書いた方が、同じ内容でも不自然にならずに読ませることができますよ
会話文の中での煩雑な説明は気になるけど、地の文だとさほど気にならないからです
>>333様へ追記
ご指摘の改善点に関わる部分と、ヒロインたちの位置付けについてちょっとだけ補足します。
改稿の機会もあるかということで、屋上屋覚悟で、
以前も書きましたが、BeeF様の設定を見て書いてみたいと思ったのは
「意志をもたない自然現象による改造」という構図でした。その場合第一に、
「門番」という目的意識ある存在を設定しにくい。考えた解決策は、技術文明の
知恵を身につけた蜂女が明確な目的意識と共に門番の役割を自覚的に引き受ける、
という構図です。朝花やアンナは野生動物としての蜂と文明の知恵を併せ持った、
蜂でもヒトでもない、新しく生まれたモンスター、という位置づけです。
なので、先制攻撃しよう、といった予見や知恵は緩慢な自然進化の産物である
もともとの進化型ギガンタピス(従来型蜂女は自然の本能に完全に
取り込まれている、という位置づけにしました)には生じず、蜂の本能と文明の知恵を
共に身につけたモンスターとしてのヒロインたちが、初めて思いつく、という構図です。
改造後の一人称は冒険で、やっぱり人間寄りになってしまったかもしれませんが、
意図としてはそういう合成生物的モンスターを表現したかったのでした。
(自分も改造後にだいぶ饒舌な独白をさせてしまいましたが、例えば舞の字様版、
改造後いきなり三人称になってヒロインの外面的行動しか描かれなくなったりしたら、
ぞくっとするラストになったかもしれないなどと思いました。舞方様の普段の作風からは
外れてしまいそうな気もしますが)
第二に、BeeF様が自覚的にこだわり、自分も大いに萌えるポイントである
「引導を渡す」シーンに工夫が必要になる。つまり意志ある存在が引導を渡すのではなく、
論理やデータの必然性が、改造という運命を突きつけてくる、という構図にしたかった。
この役を第三者である美府博士がイマカタ博士にむかってやるシーンも入れましたが、
メインになるのはヒロイン二人が対話していく内に恐ろしい現実を明らかにしてしまう、
という例のシーンのつもりでした。そのためには主人公たちに進化型ギガンタピスの生理に
関するあまり詳しい知識があってはいけない。なので進化型ギガンタピスとの遭遇はあくまで
秘境侵入後、かつ、専門機材は事故でなくなってしまった、という設定にした次第です。
>>337様
リロード時に初めて拝読しました。
>>333様は長いと言っても本編に比べればずっと短くて、
上記の通りまとめ・ガイドとしての意味があると思うのですが
少なくとも作者の長編のおしゃべりは本当に不必要かもしれません。
なるべく控えますので今回だけご容赦を。
>>337様
ご助言ありがとうございます。色々試してみます。
そういやBeeF氏のSSに1人称のものってほとんど無いけど
maledict氏は逆に、3人称で書かれることがほとんど無いよね
>>maledict氏
好き放題しゃべってください。面白いので。
>>イカマタこと舞方氏
好き放題しゃべってください。面白いので。
>>アン改氏
気が向いたら、もっとしゃべってみてください。おそらく面白いので。
>>大阪ドームたん
生存報告してください。
>>333様
アン改様作品についての下記コメント、
>・ヒロインが徐々に蜂女化してゆくという展開は新機軸で○。
自分も新しい試みだと思い刺激されましたが、考えてみると、
「叫喚の弾倉」のヒロイン、榊由季刑事の蜂女化のオマージュ&発展形
かもしれない、と思いました。同作では、肉体面精神面共にあっさり目ながら、
薬剤を打たれ徐々に蜂女化が進む、という展開が出てきます。
>>340様
たしかに少ないです。でも、全然ないわけでもなくて、
自サイトの作品集を見直したところ、下記作品は三人称でした(と言いつつ宣伝)。
<短めのモノ>
「アンチショッカー同盟仙台基地壊滅!」の前・中・後編と外伝1、
「血吸蝙蝠女《蛇の足編》」とその続編、
「カメカメ団」、「燐光の蜜月」(『怪奇大作戦』ネタ)、「大ショッカー脳内補完」
<長めのモノ>
「『ディソルバー・サキ』第X話「砕かれた思い出」」(パピオマリオンの話)、
「『チタンの幽霊人』外伝・ミリカ」(瀬川昌男作ジュブナイルSFの二次創作)、
「猿神退治異聞」シリーズ3作(これの3つ目は「エデンの門番」を除けば最長)、
「静かなる暗殺機械」(「獣人vsレジスタンスscene2」改題)
(*最後の2つは異形化スレ投下作品ですが、改造ネタでもあります)
他にサイト未収録ですが下記の「魔筒ラーメン・裏」(正統派拉致改造ネタです)も三人称でした。
ttp://wikiwiki.jp/sfrookie/?%A5%B9%A5%EC%BD%BB%BF%CD%A3%D3%A3%D3%BA%D7%A4%EA%B2%F1%BE%EC 深く考えず何となく「今回は三人称で書こう」と決めたものが多いのですが、
視点の変化や場面転換が多い、話の都合上主人公の内面を伏せたまま進む必要がある、
など、消極的な理由でそうなったものが多いような気がしなくもないです。
>>342 >ヒロインが徐々に蜂女化してゆくという展開
自分はあれは「真・蜂女物語」とかにもあった2段改造(仮改造→本改造)へのオマージュかと思ったが
>>343様
なるほど。
そう見ると、榊由季さんも「針による体表面&精神蜂女化」→「改造ノズルによる本改造」
という二段階改造だったから、そっちのカテゴリーに入るとも言えますね
アン改様版は精神が段階的に変わっていく過程が詳しいのと、
変貌途中ではその能力を仲間の人間のために使う(と思わせて
実はそれこそ森の思うつぼだったり)、というあたりが新鮮だった気がします
今回のBeeF祭り、同じお題で複数のSS職人さんが競作するという試みは非常に面白かった
以前特撮板であったヘルマリオン祭りとは違って、SSのシノプシスが共通しているだけに
同じ服を着た方が個性が際立つのと同じで、それぞれの職人さんの特徴がよく現れていたと思う
そろそろこのスレも終わりだし、祭りの終焉も近いと思うが
こういう試みをこれっきりにしてしまうのはもったいない
BeeF氏の未発表作でも別の何かでもいいから、またこういう試みをやってもらえません?
>SS職人さんたち
346 :
舞の字です:2009/11/26(木) 23:56:08 ID:WxvF2sOZ
>>345 そうですね。
今回のお祭りは私にとってもおもしろかったですので、機会があれば参加することにやぶさかではありません。
またこのような機会があればいいですね。
>>345様
自分もまた似た機会があれば参加したいです。
参加人数がもっと増えるといいですね。
(もちろん今回の祭りも終わったと決める必要もなく、
この後の参入も普通にありだと思いますが)
にしても、考えてみるとヘルマリオンもBeeF様作
「悪魔のドールファクトリー」が発端なんですよね。偉大だ。
いつか本人再臨があるといいな。
どれかのレスが実は本人なんじゃないかなどと妄想したりもしますが。
maledictさんはほんとにBeeF氏が好きだねw
でも次回の祭りは別に、BeeF氏がらみでやる必要は無いと思う
maledictさん自らお題を出してみるのもアリじゃないかな
たぶんそれでも職人さんたちはついてくるよ
アン改さんのSSに「エリック・デニケン」という教授が名前だけ出てくるけど、
あれは「未来の記憶」を書いた宇宙考古学者w のエーリッヒ・フォン・デニケンのパロに違いない。
探せば他のキャラにも元ネタがある? 気付いた人いない?
>>職人さん
次回の祭りがあるとしたら、特定のキャラ(女性)がもしも改造されたら?
という設定だけ共有して競い合うのはどうですか?
要するに、前蜂女スレで「栗山改造蜂女」がいっぱい出てきたみたいなやつですが
maledct様、舞の字様、ダイレン様(代筆)、御久し振りです。私は、まだ元気です。
精神的に参っていましやが、これからも頑張ります。宜しく御願いいたします。
(前までの続き)
椅子に座って足を組む教頭。その姿にかすみは同性ながら、胸がドキドキした。
「こんばんわ・・・かすみさん・・・・。」
普通の口調だ。全裸であった。その肢体は四十代と言うのに綺麗だ。
「こ、こんばんわ・・・・教頭先生。」
緊張していた。頭のなかにミイラにされ溶かされた男達の姿が頭を過ぎった。自分も、あの運命を辿るのだろうか?
「貴方は真魚さん達の大掃除を見てしまったのね・・・・・。」
「は、はい!!」
「恐がる必要は無いわ。私は何もしないわ。貴方もお掃除に参加して欲しいの・・・・。」
<お掃除>!?私が!?蜂女に変身した真魚の恥かしい行為を思い出し、頬が赤くなった。
「世の中はゴミのような人間が蔓延り、弱い人を食い物にしているの。新聞で物騒な事件が多いでしょ?」
<ゴミ>というのは、真魚や亜季達にミイラにされた男達のような人の事だろうと想像出来た。
「変身するというのは、身体を弄くるんですよね?」
従兄弟のお兄さんが見ていた仮○ライダーのDVDを思い出した。
<続く>
>東京ドーム氏
アン改氏は糞ダイベンとちがうぞ?
本当に精神的に参ってたんだな。
次は「悪魔のドールファクトリー」祭り?
でも香具師がくるかも
>>353 やめれ。そんなふうに書くことが召喚呪文になるんだ
ヘルマリオンはもういいから、今度は「叫喚の弾倉」ネタで
『メルダンフェルが○○○を襲撃したら』というお題を決めて
○○○の中身は職人さんが自由に決めて書いてもらってはどうだろう?
『メルダンフェルが女子高を襲撃したら』というのは既にあるから
『メルダンフェルがコミケを襲撃したら』とか
『メルダンフェルがAKB48を襲撃したら』とか
>>354 >『メルダンフェルがコミケを襲撃したら』とか
腐女子の大群に蹴散らされる蜂女か…
九条氏の作品も未完に終わってるから、そっちも祭りとかは可能かな?
九条氏祭りならプロフェッサー氏や大阪ドーム氏も参加できるんじゃないかな
思ったんだが、
>>354が作家デビューという選択肢はないの?
いっそBeeF氏作品など特定の個人に限らずに、今までに特撮板、PINK板に投下された
全SSを対象にして「いちばん魅力的な設定はどれか」の人気投票(SSの出来の投票に非ず)
を行って、上位になった作品の設定を引き継いで職人さんにSSを書いてもらうってのはどう?
* 間違えました(謝意)!!申し訳御座いません、プロフェッサーさん!!
>>351 「ふふっ、恐がる事は無いわ、痛くなくってよ・・・・・。」
ふいに身体から恐怖が抜けたように思えた。
「さぁ、服を御脱ぎなさい・・・・・。」
抵抗しようとした。だが、心の何処かに抵抗する事を拒否る<物>があった。
かすみは気づかなかったが、この部屋に流れる感覚では聞き取れない催眠音波のせいであった。
着ていた服を脱ぎ、スカートも脱ぎ、ジュニア・ブラとパンティも脱いだ。
白い肌が映え、妖精を思わせる美しい肢体だ。
顔を赤らめるかすみ。ふいに立ち上がった教頭は、近づくなり唇を這わせた。
「○×△☆!!」
唇を通じて喉に、何かが流れ込んでくる。
<続く>
人気投票とかは揉める原因にもなりかねないのでやめたほうがいいかと
職人各人が過去作に何か惹かれる作品があればそれでスピンオフを書いてくれればいいよ
>>361 各職人さんがバラバラに作品を選んだら祭りにならないのでは?
>>361 人気投票はともかく、このSSのこのシチュで、とリクを出すことは構わないのでは?
つか俺たちにできることって、それくらいしかないし
>>362 無理に○○祭りや○○縛りにする必要も無いのでは?
縛るのは好きです。ハァハァ
ダイレン血祭りきぼん
ダイベンの改造シーンゼロの駄作を職人さんたちが作り直すとか?<ダイベン祭り
御三家の許可さえあれば、
ぼくの考えた淫造人間
ぼくの考えた改造少女
なんてものあり?
ありだが、考えた者は責任もってSSを仕上げるように。以上!
特撮板を本拠にしているショッカー代理人さんにも、活躍の機会を与えてあげて下ちい
話の展開上省略された場面を他の職人が補足するのもいいかもなぁ
SKY STORY PAGEの心霊研究部みたいな形で
あそこまで大規模にはならないだろうけどさ
ショッカー代理人さん最近お見かけしないね。
年末近くて忙しいのかな。
ショカ代氏は妄想がたまらなければSSを執筆してくれない
だから、氏の妄想をかき立てるような設定を我々が提案しなけりゃ駄目
うまくツボにはまってくれたら、ゴキブリ女みたいに書いてくれる
それより大阪ドームたんはどうしたの?
ちゃんぷるう氏に蜂女とタックルの、拉致改造から因縁の決戦までの大河ストーリーを書いてもらいたい
祭りも終わったなぁ
maledict氏のエピローグ(外伝)があるから、まだ祭りは終わらないにゃ
>>377様
7-8割書けました。
なんとかこのスレ内で投下したいですが、
週末に間に合わず大阪ドーム様登場されたらそちらを優先して欲しいです。
両ドーム氏は祭りが終わるのを待ってんじゃねェ?
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| /\ | /|/|/|
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| / / |文|/ // / ∧∧
|/ /. _.| ̄|/|/|/ /⌒ヽ)
/|\/ / / |/ / [ 祭 _] ∧∧
/| / / /ヽ 三____|∪ /⌒ヽ)
| | ̄| | |ヽ/l (/~ ∪ [ 祭 _]
| | |/| |__|/ 三三 三___|∪
| |/| |/ 三三 (/~∪
| | |/ 三三 三三
| |/ 三三
| / 三三
|/ 三三
両ドームの時代は終わった。両ドームからmaledict・舞方・アン改の三氏への主役交代を期待する。
そのお三方はどっちかというと特撮版改造スレのほうのお方じゃないかい?
そもそも特撮板にソフトなものでもエロSSを投下すること自体どうかと思うが…
まぁ俺はプロフェッサー氏の作品が読めればそれでいい
このスレは両ドーム氏のために存在しているようなものだからな
他の職人さんを立てるんなら、スレを「スカあり」「スカなし」で
分割してもいいくらいだ
「エピローグ」改め「続編」投下します。
結構長くなり残りバイト数が微妙です。
タイトルはまんま「続・エデンの門番maledict板」です
「ねえ沙矢、例の『幻のウィルス』事件、ひょっとすると尻尾を
つかめるかもしれない!」
大学以来の悪友であり、現在は仕事上のパートナーでもあるレンが、
興奮気味にまくしたてる。彼女はフリーのライター、わたしは編集者で、
今日はいわばレンの営業活動をかねた昼食会ということだ。
この娘がここまで興奮するというのは滅多にあることではなく、
わたしは興味をそそられた。
「『幻のウィルス』事件は以前ちょっと話したわよね。ほとんど都市伝説
レベルの話なんだけど、ある強力かつ巧妙なウィルスにほとんど全世界の
コンピュータが感染していて、何らかのデータ改竄を受けたらしい。
といっても、一体何のデータにどんな改竄を加えられているのか誰も
知らない。そんないかにも怪しい話。
ほとんど眉唾だなと思いつつも、わたしはあちこちに、何か説明の
付かないデータ改竄の心当たりはない? と聞いて回っていた。
そしたら、一昨日なんだけど、大学時代の先輩十条さん……そうそう、
覧子先輩から、ひょっとしたら、というメールを受け取ったの。
覧子先輩は大学に残って物理学研究室で科学者をやってるんだけど、
以前手に入れてプリントアウトしていたある論文が、どうもその後
改竄されているのではないか、というの。
論文というのは、サトミ・イマカタ博士という若い学者が書いた
マイナーな物理学論文。先輩がふと、プリントアウトした論文とパソコンの
中にあるデータを付き合わせてみたら、一見ささいだけど重要な違いが
あったというの。専門的なことは分からないけど、先輩いわく、非常識だけど、
実証されたらとんでもない大発見になる数式が、多分事実だけど、
だからといってどうということのない、平凡なものに変わっているって。
それに、地理的データにも説明の付かない変更があるみたいだって。
ウェブ上に残っているキャッシュを見ると、パソコンの中身と同じに
なっている。つまり、先輩がプリントアウトした後、大規模なウィルス攻撃で
ウェブ上のデータも、パソコン内のデータも、全部改竄されてしまった、
としか考えられないって」
わたしは首を傾げた。
「……それは、もっとありきたりの説明が可能じゃない? つまり、
先輩が論文を手に入れた後、サイト主がデータを差し替えたのよ。多分、
その数式のトンデモない間違いに気が付いて。パソコン内のデータも、
気付かない内に新しい方を上書きしていたと考えられない?」
レンは興奮して首をふった。
「それがほとんどありえないのよ。だって、先輩が論文をダウンロード
したとき、その作者はもうこの世にいなかった見込みが大きいの。
正確に言うと行方不明なんだけど、生存は絶望的と言われている。
南米に向かったイマカタ博士を含む調査隊が、調査を無事終えて帰還する途中、
ヘリコプターがジャングルに墜落したの。数日後機体の残骸が見つかった
ものの、遺体は見つからず、野獣に食べ尽くされた見込みが大きいとして、
捜索は打ち切られたということよ。
結局、一番確実なのはイマカタ博士のご遺族に取材することだと思って、
わたしは昨日取材を申し込んだ。そしたら同居していたお姉様という方が
出て、博士のパソコンの中身や研究資料を含む色々な遺品を見てもいい
というの! わたしは覧子先輩がデタラメを言う人だとは思えない。
だから、取材すれば『幻のウィルス』がらみではないとしても、
何かが出てくる可能性は大きい」
憶測の多い怪しげな話だが、覧子先輩が誠実で、また軽率な思い違いを
する人物ではない、というところは認めざるを得ない。それに、レンが
見せてくれた写真を見ると、事故にあったのは、それぞれタイプの違う
3人の美人を含む華やかな探検隊だったらしい。最悪「密林に消えた
悲劇の美女たち」といったドキュメンタリー記事にはなるだろう。
俗っぽい計算をめぐらせつつ、わたしはレンに確認する。
「それで、取材にはいつ行くの?」
レンは熱のこもった声で答える。
「今日、これから早速の予定! 日系の外国籍の博士なんだけど、
ここ数年はずっと日本の、しかもすぐ隣の県に住んでいたらしいのね」
レンから、不安をかき立てるようなメールが来たのは夕方近くだった。
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わたしにもしも何かがあったら、わたしの部屋の机の一番上の
引き出しの書類を見て。あなたに話さなかった部分も含めて、
調査結果とわたしなりの考察がまとめてある。引き出しの鍵はぽ
-----------------------
中途送信のそんなメールの後、かなり長い時間レンとの連絡はつかなかった。
単なる電池切れかもしれないとはいえ、まさかレンの身に何か……という
懸念は残り続けた。
レンとの連絡が再開したのは深夜になってからだ。わたしの不安を
ぬぐい去ろうとするような、明るい声が受話器から響いてきた。
「変なメール送ってしまってごめんなさい。なんだか不必要に思い詰めて
しまったみたい。で、結果を言えばすごい収穫があったわ。是非とも
明日にでも会って話したいんだけど、空いてる?」
翌日の午後には重要な会議があり、予定が空いているとは言いにくかった。
しかしわたしはレンの誘いを受けた。レンの態度全体に、何か異質なものを
感じたからだ。どことなく今日の昼までの彼女とは違う。そんな違和感が
あった。どうしても一度、じかに会って無事を確かめたい。そんな思いに
駆られ、わたしは翌日の約束にOKを出した。
翌日の午前中、待ち合わせの駅前に現れたレンは、大きなトートバッグを
下げ、長袖にスカーフ、帽子、手袋、真っ白なロングブーツという、
どこかちぐはぐで、今の時期には厚着に過ぎる格好で現れた。
「沙矢、実はちょっとだけ取材に付き合って欲しいんだ。
イマカタ博士関連。沙矢にも直接立ち会って欲しいの。お願い」
レンへの違和感がなお募ってきたわたしは、かえってその誘いを
断り切れず、そのまま電車に乗り、取材先に同行することになった。
私鉄の終点手前の駅が目的地である。
1時間近い電車の中、わたしはレンの妙な部分をいくつも見つけ、
しかし何となくそれを言い出せずにいた。
まずは例の厚着。それに化粧がいつになく濃い。また車内はかなり
温度が高く、こんな格好をしていたら汗だくになってもおかしくないはず
なのに、いっこうに汗をかく様子がない。さらに、いつになく無口なレンが
時折口を開くとき、なんとなく声と口がちぐはぐなような感じがする。
気のせいに違いないのだが、口から声が出ていないような気さえするのだ!
やがて、もうじき山の中と言っていい、何もない寂しい駅に到着した。
駅前に黒塗りの高級車が停まっている。驚いたことにレンは無造作に
その後部扉を開け、わたしの手を引きながらそれに乗り込もうとした。
わたしは漠然とした不安を感じ、レンの手を拒んで、言った。
「ここまで来て何なんだけど、実は今日の午後から大事な会議があるんだ。
もしもすごく遅くなるなら、やっぱり取材に付き合うのは別の機会に……」
レンは困った顔を浮かべる。
「なんだ。先に言ってよ。何時からなの?」
「3時からなんだだけど……」
「3時か。なら大丈夫。十分間に合うよ」
レンはそう言ってまたわたしの手を引く。そう言われてしまっては断る
理由もなく、わたしは車に乗り込みつつも、首を傾げざるをえない。
3時に間に合うとなると、取材先には大した時間いられないはずだ。一体、
そんな短時間の取材にわたしを付き合わせる理由は何なのだろうか?
自動車に乗り込んだわたしは、さらに驚くことになった。後部座席の奥に、
あの覧子先輩が座っていたからだ。どういう事情か、座席にもたれて
ぐっすりと寝入っている。
わたしが驚きながらも席に座ると、いつの間に降りていた運転席の女性が
外からドアを閉めた。メイド服に大きなサングラスという変ないでたちの女性だ。
ドアが閉まるとすぐにロックがかかり、わたしはまた不安な思いに駆られた。
走り出した車の中で覧子先輩のことを尋ねると、レンは微笑んで答える。
「例の論文の件、覧子先輩も興味があるんだって。この沿線に住んで
いるから、先に拾ってきてもらったの」
仮にこの言葉がまったくの出まかせでも、今のわたしにはどうしようも
ないのだ、という心細い思いが不意に湧き上がった。
20分ほど車に揺られ、わたしたちは人里離れたところにある大きな邸宅に
たどり着いた。車は大きなガレージに入り、入ると同時にガレージの
シャッターが閉まった。
「さあ着いたわ。降りて」
レンにそう促されてわたしは車を降り、手を引かれてガレージの奥にある
扉に向かった。
「あれ? 覧子先輩は?」
わたしが訪ねると、レンは言った。
「運転手の人が連れてきてくれるから、心配ないわ」
その答えになんだか妙なものを感じつつも、わたしはレンに導かれるまま
扉をくぐるしかなかった。
扉はそのまま邸の地下室らしい空間につながっていた。レンはまるで
自分の家のように扉をくぐり、ブーツのままずかずかと入り込んだ。
わたしもそれにならって靴のまま入り、レンに手を引かれて、廊下の奥の扉へ
向かって進む。わたしたちと入れ違いに、やはりメイド服にサングラスの
女性が、廊下からガレージへ出て行った。
手袋をはめたレンの手は奇妙にごつごつして、冷たかった。どこか空疎な
笑顔を浮かべながらも、その握る力はとても強く、簡単に振りほどくことは
できなそうだった。
そんなレンに引かれるまま、わたしたちは奥の部屋の扉をくぐった。
「きゃあああああ!」
部屋の中が目に入ったとたんわたしは絶叫した。中の光景があまりに
異様だったからだ。
部屋の中央には、巨大な青いハチが鎮座していた。その周囲に、
そのハチと同じ色で、人間の女性の形をした生き物が何体か立っていた
――頭には黄色と黒の甲殻と触角、目の部分には大きな複眼。顔の下半分は
人間と同じ形だが、その色は青と紫の混じり合った模様に覆われている。
背中からは昆虫の翅以外の何ものでもない薄い膜が伸びており、全身は
ほぼ青一色で、乳房だけには黄色と黒の同心円模様。乳房先端の真っ赤な
乳首と、毛一つない下腹部の裂け目から露わに覗く赤い肉が示すのは、
その青いなめし革のような体表が、この生物の素肌だろう、ということで
ある。着衣と呼べそうなものは白いロンググローブとロングブーツ、それに
腰に巻かれたサッシュのみだ。乳房と性器は呼吸に合わせて淫らとしか
形容しようのない蠕動運動をしており、目の前の生き物の怪物性をいや増して
いる。ハチと人間の女性の合成生物、「蜂女」と言いたくなる奇怪な生物だった。
悲鳴を上げるわたしの両腕を、前にいた2体の蜂女が拘束した。
レンはというと、そんなわたしを横目で見ながら、巨大バチの正面に立つ、
どこかで見覚えのある蜂女の前に進み、トートバッグから書類の束と
パソコンの記憶ディスクを取り出し、蜂女に渡した。蜂女はそれらを
ざっと確認すると、脇にいた別の蜂女にそれを渡した。受け取った蜂女は
奥の壁に開いた、トンネルのような空間へそれを持ち去っていった。
「用事」が済んだ様子のレンはこちらへ振り向くと、カーディガンを
脱ぎ、ブラウスのボタンを外し始める、という意味不明の行動に移った。
そのとき、背後から覧子先輩の金切り声が聞こえてきた。
「放して!! 放してよ!! この化け物!! 本物の土井さんを
返しなさい!!」
やがて扉が開き、2人のメイドに羽交い締めにされた覧子先輩が
引きずられるように部屋に入ってきた。
覧子先輩は同じく拘束されているわたしに気付くと、必死の形相で
わたしに話しかけた。
「広笛さん!? あなたもさらわれたの? それともだまされて連れて
こられた? いい! そこにいるのは本物の土井さんじゃないわ。
土井さんに化けた蜂女よ。化け物なのよ!!」
レンを見つめながら発されたその言葉が、わたしの違和感を説明した
――レンの偽物。レンに化けた怪物。それが今朝、いや多分、昨晩以降
わたしが会話していた相手の正体だったのだ。きっと本物のレンは
蜂女たちに捕まっているか、最悪の場合、もうこの世にいないのだろう。
覧子先輩の言葉とわたしのそんな確信を、レンを名乗る女の不可解な
行動が裏付けているように思えた。
女は謎めいた笑みを浮かべてブラウスを脱ぎ捨て、長いスカートを
下ろした。その下に現れた素肌は、蜂女たちと同じ真っ青ななめし革の
ような皮膚だった。さらに女は上下の下着を脱ぎ捨てた。むき出しに
なったのは、同心円上の模様の入った乳房、それに、毛一筋なく、
ひくひくと蠢く不気味な陰部だ。続いて女は顔を覆っていたらしい薄い
樹脂のようなものを引きはがした。下から現れたのは青と紫が混じり合った、
やはりなめし革のような皮膚。さらに口から人間の歯を模したマウスピースを
吐き出すと、口の中には昆虫の複雑な口器のようなものが覗いた。
髪の毛の間からは、にょっきりと太い触角が立ち上がった。背中からは
翅がさっと伸びた。傍らの蜂女から受け取ったサッシュを巻いた姿は、
複眼と頭部の甲殻がなく、それゆえ顔だけはレンを装い続けている以外、
他の蜂女と変わらない異形の化け物だった。
レンに化けた怪人は、例の空疎な微笑みを浮かべながら、
レンそっくりの声で先輩に話しかけた。
「先輩? 何か勘違いされてるんですね? いいわ。まずは先輩に
わたしたちの真実を教えてあげます」
目の前の怪人が人間でないのはもはや明確だった。喋っている間、
口がぴくりとも動いていないのだ。
怪人は、恐らくは蜂女の仲間である2人のメイドに拘束されている
覧子先輩に歩み寄ると、3人……いや3体で協力しながら、その衣服を
脱がせ始めた。背中のチャックを下ろし、ワンピースを脱がせ、その下の
ブラジャーを外し、パンティストッキングとショーツを順に下ろす。
必死に抵抗しているはずの先輩を難なく押さえ込みながら、器用に、
そして丁寧に、衣類を破くことなく脱衣を施していく。
やがて全裸に剥かれてしまった先輩が、巨大なハチの前に連れ出される。
蜂女によって、大の字の姿勢であおむけに寝かされた先輩の両腕両足を、
巨大な青いハチが2対目と3対目の脚でがっちりと押さえつける。それから
ハチは先輩の首筋に大顎を運び、そこに噛みつく。恐怖と抵抗心に満ちて
いた先輩の顔がたちまち緩み、目を潤ませた、どこかうつろで弱々しい
表情に変化する。
巨大バチは顔を2対目の脚の間に潜り込ませ、細い精密機械のような
1対目の脚をやはり2対目の脚の後ろに運ぶ。ピンセットのような爪と、
大顎の中から出てきた舌のようなものが、先輩の両足の中央部で何かを
始める。その作業が進むにつれ、先輩が性的興奮状態に引きずり込まれて
いくのがありありと分かる。先ほどと同様、恐怖と抵抗の叫びを上げ
ながらも、今やその声には切ない快楽のニュアンスが混じり始めている。
舌によるそんな「愛撫」と呼ぶしかなさそうな操作をしばし加えた後、
巨大バチは手前に伸ばされた巨大な腹部の先端から太い突起物を伸ばす。
赤黒い突起物は先輩の両足の中央部に当てられ、そのままずぶずぶと、
先輩の女性器とおぼしき部位に挿入され始める――つまりは、先輩は
巨大バチにレイプされてしまったのだ。
「いやああああああ」
悲鳴を上げようとしているはずの先輩の声は、しかし快楽のあえぎに
近づき始めている。ハチが赤黒い突起物を、人間の男性がするように
前後させ始めるにつれ、そのトーンは明らかに後者に傾いていく。
そうして、我を忘れ、恐怖と快楽に翻弄されていた先輩の表情がふと
固まり、慄然とした表情に変わる。
「いや! だめ!! それはだめ!!! だめええええっっっ!!!!」
ただならぬことが先輩の胎内で生じたらしい、と察せられた。ハチの
腹部の前後運動は急激に激しさを増し、先輩の顔は、恐怖か、注ぎ込まれた
快楽か、あるいは多分その両方が限界を踏み越えたのだろう、目を見開き
口をぱくぱくと動かすだけで、何の感情も読み取れない顔つきに変わって
いる。あえて言えばそれは、狂人の目つきだ。
そして、恐ろしいことが生じ始めた。
先輩の腹部のあたりが急激に青みを帯び始めたのだ。まるで絵の具を
塗りつけたような鮮やかな青。つまりは蜂女の皮膚の色だ。その青みが
見る見る先輩の皮膚全体に広がり始め、乳房には例の同心円模様がぼんやりと
浮かび、見る間にその輪郭が明瞭になっていく。そうして、あっという間に、
先輩の肉体はレンと同じような蜂女に変わってしまった。
急速に進む肉体の変化に先輩は気付いたらしい。何かがはじけ飛んだ
うつろな視線がその肉体を捉えたとき、先輩の口から狂おしい笑いが
発せられた。
「あは、あは、あはははははははははは……」
笑い声は途中からぜえぜえというかすれた息に変わり、ついには先輩の
口からは何の音声も漏れなくなった。ところが、まるで無声映画のように、
先輩の顔は、ますます狂おしい哄笑の動作を続けていた。自分の肉体の
変化を見ながら、声なき笑いを発し続ける先輩が、恐怖のあまり狂って
しまったのか、心まで蜂女に変わってしまったのか、わたしにはわからない。
多分、その両方なのだろう――いずれにしても、人間としての先輩の心は
どこかへ消し飛んでしまったに違いない。
レンと同じ姿に変化し終えた先輩はゆっくりと立ち上がり、まわりの
蜂女たちに向かってうなずいて見せた。何か言葉以外の手段で互いに
意思の疎通を行っているようだった。それからわたしの方に向き直ると、
レンと同じ、あの空疎な笑み浮かべた。
すでに、昨日レンに何が起きたのかの真相は明らかだった。わたしと
一緒に電車に乗っていたレンは決して偽物ではなかった。それは本物の
レンが、しかし以前のレンとは違う生き物に、いわば「改造」されて
しまった姿だったのだ。今目の前で先輩がそうされたように。
そして次は……
「さあ、あなたの番よ」
普段とまるで変わらない声と口調で、その言葉を発した先輩の口は、
固く結ばれたままだ。そんな異形の怪物になってしまった先輩が、
ゆっくりと近づいてくる。気が付くとレンがわたしの背後に立っている。
やがて人間の面を貼り付けた2体の蜂女がわたしの服を脱がせ始める。
わたしを蜂女の仲間に改造するために。
「やめて先輩! やめてレン! 蜂女なんていや! 蜂女なんていや!!」
全裸のまま床に寝かされたわたしの首筋を、巨大なハチが柔らかく噛む。
瞬間、全身に電撃が走り、わたしの脳には薄桃色のもやがかかる。秘部からは
愛液がとろりとこぼれ落ちるのを感じる。ピンセットのような前脚がわたしの
陰唇を押し開き、内部で巨大バチの舌による緩やかな刺激が開始される。
「だめ! いやだ! いやだああ」
自分のあげる恐怖の悲鳴が、まるで愛しい男性へ向けられた恥じらいの
言葉のように錯覚される。わたしの心はすでにおかしくなり始めているの
だろう。これから施されるはずの「改造」への恐怖が、
この上ない快楽への期待と区別が付かなくなりかけているのだ。
「はうっ」
「挿入」がなされ、男性がするような前後運動が始められる。性行為
そのものの快楽が、わたしの抵抗心をじわじわと浸食する。これから
自分の身に起こる恐ろしい出来事が頭をよぎり、わたしはこの上ない恐怖
にうち震えかける。だが次の瞬間、暴力的に注入される快楽がその恐怖に
混入し、これから起こる出来事を妖しい魅力の色彩で染め上げる。そんな
恐怖と快楽の振幅が何度か続く内、わたしは自分が何を望み、
何を恐れているのか、わけがわからなくなっていく。
「……やだあ、入らないで……入らないでええ……」
巨大バチが、挿入された突起の中に何か丸い異物を送り出し、子宮の
中へ産み落とそうとし始めたのをわたしは感じる。……そうだ。この管は
産卵管なのだろう。わたしの胎内にはハチの卵が産み落とされ、そのハチが
わたしの体を取り込みながら成長するのだ――半ば本能的にそんな真相を
わたしは直観する。
卵が産み落とされたとき、ハチはこれまでにない激しい前後運動を
始めた。快楽でばらばらにちぎれたわたしの意識が、それでもくっきりと
自分の肉体の変化を捉えた。
「……あああ、蜂女になっちゃう! 蜂女になっちゃうううう!!」
おぞましく忌まわしい瞬間が遂に訪れたのを知ったわたしの声は、
それにもかかわらず喜びと期待に満ちていた。今のわたしにとって、
その瞬間は戦慄と嫌悪が増せば増すほど恍惚と陶酔の度を深める、
そんな甘美な予感に満たされた何かに変わってしまっていたのだ。
青い皮膚が広がり、乳房に黄色と黒の同心円が刻まれ、顎が一瞬融解し
再形成され、呼吸器系が肺から気管系に切り替わる。背中の翅と額の触角が
伸びていく。そんな取り返しのつかない変化を自覚するたび、そこに
生まれる恐怖と嫌悪と喪失感のすべてが、快楽を高揚させる燃料となって
消費されていく。
やがて巨大バチの前後運動は最大の激しさに達し、わたしの意識は、
その激しい運動が作り出す快楽をすべて受けとめ、あり得ないほどの高みと、
感じたことのない至福に包まれながら、真っ白に溶解していく。
…わたしの人間部分の記憶はそこで終わっている。わたしはそんな、
愚かで、滑稽でさえある顛末が記されたデータベース受け継いでこの世に
生まれてきた。
ついさっきまでのわたしは、宿主が「異物」として認識していた原形質の
固まりだった。その姿から急激に成長を遂げたわたしは、初めて自分の目で
知覚する世界を、本能の記憶と、「姉たち」が構築した共有情報と、
宿主が残した記憶に照らし合わせて解釈する、という作業を早くも始めた。
目の前にはかつて土井レンと呼ばれた姉がいる。尻を地面に着け、両足を
開き、かつて刀根アンナと呼ばれた伯母の手で、局部にノズルのような
ものを挿入されている。
その横にはかつて十条覧子と呼ばれた姉が立っている。姉の横には
伯母の1人が立ち、姉の体にスプレーのようなものを噴き付けている。
レン姉様は歓喜の声で局部のノズルを受け入れている。その目は急激に
伯母たちと同じ複眼に置換され、頭部には警戒色の甲殻が形成されつつ
ある。アンナ伯母様の薬品で停止させられた発生の最終段階を、
別の薬品によって再開させているのである。
他方の覧子姉様の表情は、決して明るいものではない。その肉体の外見は、
たった今覧子姉様が成熟するために消費され尽くしたはずの肉体に刻一刻と
似たものになっていく。吹き付けられたスプレーは、スペクトル分析で
得られたデータをもとに調整された、人間十条覧子の皮膚を再現する
人工皮膚となってその体表を覆う。全身がみすぼらしい肌色に覆われると、
付け爪やマウスピースのような、他の擬態様小道具が装着される。
レン姉様の宿主は天涯孤独の自由人だった。人間部分の両親はすでに
この世になく、人間社会でのしがらみは皆無に等しかった。そんな
レン姉様だからこそ、今日のこの「勤め」を最後に人間社会から永久に
姿を消し、地下の巣での活動に参入することは容易なのだ。まめな性格の
レン姉様はそれでも下宿に、残り日数分の家賃と家財道具を処分するための
手間賃、大家宛の書き置きを残していくのを忘れなかった。言うまでもなく
それは、人間たちに不審の念を抱かせないようにという、姉妹たちへの
配慮であった。
他方の覧子姉様の宿主は、簡単には人間社会から姿を消せないような
地位を得ている個体だった。それゆえ覧子姉様は当面、こうして人間に
擬態し、宿主の生活圏に入り込み、そこで宿主の活動自体を擬態せねば
ならない。そして同時に、人間社会の中で、「エデンの門番」としての
任務を果たし続けることになるのだ――すなわち、あのサトミ伯母様の
論文やその他の、エデンの存在やその所在につながるすべてのデータを
抹殺し、あるいは偽情報の中に埋め込んで攪乱し、あるいはそのデータを
知った人間に対し、しかるべき対応を行う――例えば、ついさっき、
レン姉様が十条覧子や広笛沙矢に行ったように。
……では、わたしはどちら側か? 伯母様、姉様たちの結論は出ていた。
わたしは人間部分の上司だった、人間部分の口癖によれば「セクハラ俗物
独裁者」の編集長の下に戻り、そこで情報の収集と攪乱の任務を果たす
のである。ここに着いてまだ1時間も経っていないから、3時からの会議にも
十分に間に合うだろう。
巣のため、姉たちのためと思えば死すら厭わない、というのが
わたしたち蜂女の本性である。だが、食い散らかした養分に過ぎない
人間部分の原型を擬似的に再現して、人間社会に潜入する、というこの
任務は、蜂女のあらゆる本能に反する不快で不自然な活動ではある。
処理が終わり、みすぼらしい人間そっくりの姿に変えられてしまった
覧子姉様の手に、わたしの人間部分の体色に調整されたスプレーが手渡される。
スプレーを手にした覧子姉様は、まるで怪物にされてしまった人間が同類を
増やすときに浮かべるような残忍な笑顔をシミュレートしながら、あえて
テレパシーを使わず、わざわざ気門からの声でメッセージを伝える。
「さあ、あなたの番よ」
* * * *
――数ヶ月後。
南米のとある密林地帯をヘリコプターが飛んでいる。搭乗しているのは
自称「在野の天才」堂間福夫が私財をなげうって結成した5人の探検隊だ。
福夫は隊員の1人でもある天才少女・登希代が、そのハッキング能力と
自力での理論構築によって復元したイマカタ論文に導かれ、一攫千金を
夢見てこの地へやってきたのだ。
世間的に天才を名乗っている福夫の発明や発見のすべては、実は登希代の
手になるものだ。福夫の才はむしろいくばくかの経営能力と大胆な計画を
実行に移す胆力にあった。そんな福夫が、乱れ飛ぶ怪情報の中から登希代が
すくい上げた怪生物・ネズミバチのデータに目をつけた。そして、
ネズミバチが暮らす楽園であろうと登希代が断言する異空間に赴き、
この幻の動物を捕獲しよう、という計画を立てたのであった。
探検隊がヘリコプターを見送った直後、彼らの目の前に早速生きた
ネズミバチが飛来した。追いつけそうで追いつけない、微妙な速度で
飛翔する怪生物を夢中で追いかけた探検隊一行は、自分たちがごく薄い
ベール状の空間を一瞬くぐり抜けたことに気付かなかった。
ネズミバチを結局取り逃がしてようやく、彼らは周囲の様子が一変して
いることに気が付いた。植生が変化し、遠くには小山ほどの巨大な城、
あるいは要塞と呼べそうな近代的建築物がそびえ立っている。
「あ! あれは何だ!?」
一変した光景を十分観察する間もなく、隊員の1人がそう叫ぶ。「城」の
方角から、先ほどのネズミバチよりずっと大きな生物の群れが飛来したのだ。
すぐに、接近する飛来物の輪郭が見え始めた。ネズミバチ同様、
青い肉体の一部に黒と黄色の警戒色を刻んだ、人間の形をした怪生物だ。
「きゃあ!」
異形の群れがあっという間に探検隊を取り囲み、その中の数体が、
「紅一点」である登希代の手足を掴み、空へ引き上げた。他の怪物たちは
空から他の隊員たちを地面へ押し倒し、そのズボンを下ろし始めた。
「登希代! ときよーーーーーっ!!!」
下半身を丸裸にされた福夫が、連れ去られる愛娘を見て悲痛な叫びを上げる。
あの「城」、つまり朝花たちが異空間中心部の山を改造して築き上げた
要塞の中。登希代は全裸に剥かれ、円形の台の上に大の字の姿勢で拘束
されていた。
連れ去られている間中、死にものぐるいで恐怖の叫びをあげ続けたせい
なのだろう、登希代は軽い虚脱状態に陥っており、それがかえってこの
異常な状況の中、奇妙に冷静な思考を可能にしていた。
登希代は、怪生物たちの正体も、そして自分のこれからの運命についても、
ほぼ正確な理解に達していた。不必要なまでに錯綜した怪情報――つまりは
アンナや沙矢の手でばらまかれた偽情報――の中から、ネズミバチに
関する正しい解剖学的、生化学的データを抽出し、その生態や進化史に
関して、おおむね妥当な推測を行っていた登希代は、この怪生物たちが、
ネズミバチが巨大バチとネズミの共生体であるのと同様、巨大バチと人間の
共生体なのだろう、と察しており、そこからまた、その目的の推測も
ある程度可能だったのである。
登希代の脳裏にはまた、ネズミバチの脳神経の構造が浮かんでいた。
登希代はそこから、蜂女がいかなる生物であるかを推理していた。
――整然と統率され、一糸乱れぬ振る舞いを見せる一方で、人類の
テクノロジーの産物としか思えない機器を扱う「蜂女」たちは、ハチの
本能に支配され、人間の知性を使用する存在に違いない。
ネズミバチの大脳は宿主であるネズミに由来する。他方、ネズミバチは
腹部にハチ由来のはしご状神経につながった脳も有している。そしてその
脳は、気管系を初めとする重要な生命維持機能を担うだけでなく、ネズミの
脳に深い部分で融合し、その行動に絶対的な決定力をもつ「命令」を
送り込む機能ももっているに違いない。融合の部位からしても、
進化戦略の観点からも、それはほぼ間違いない。
哺乳類の柔軟な学習能力をもつ脳とは異なり、昆虫の脳は「固定配線」の
命令しか送り出すことがない。哺乳類の脳が産み出す感情や獲得された
経験などが、フィードバックして昆虫の脳に組み込まれた指令を
書き換えることは神経学的にあり得ない。だから一度蜂女にされてしまった
人間は、どんな感情に動かされようと、どんな教えを受けようと、昆虫の
脳が送り出す絶対命令から自由になることだけはできなくなるだろう。
脳の昆虫部分は栄養的には宿主の脳に依存している。だから昆虫部分は
人間部分から外科的に切り離されると直ちに死んでしまうだろう。そして
脳の昆虫部分が死ねば、気管系その他の生命維持活動が停止し、人間部分も
直ちに死を迎える。哺乳類独自の生命維持器官の多くは昆虫部分に
「食べ」尽くされ、失われてしまっているのである。
それゆえ、蜂女にされてしまった人間は、死によってしか解放されない
隷従のくびきに囚われ続けるしかなくなる。人間がつくる、どんな軍隊にも、
どんなカルト集団にもまねのできない、絶対服従の集団がつくり出される。
……そして多分、もうすぐ自分も、その一員にされてしまう……――
登希代が虚脱状態のまま、そんな恐ろしい推理を進めている内、小柄で、
複眼の表面に眼鏡のようなレンズを装着した蜂女が近づいてきて、
登希代に話しかけた。どこかで見覚えのある顔だ、と登希代は思った。
「あなたには新しいタイプの蜂女第1号になってもらうわ。人工卵嚢を
母とし、ナノマシンによる細胞強化によって戦闘能力を高めた改造型蜂女。
催淫剤も産卵管から注入するオールインワン・タイプで、開発者の名を
とって『エイミー1号』と呼ばれているわ」
饒舌な蜂女が気門から発したその言葉により、登希代は予測していた
運命を改めて確認する。今まさに登希代の肉体は、青いなめし革のような
皮膚と警戒色模様の乳房を備えた、異形のものに変わろうとしている。
そしてその脳には、死ぬまで決して解除されない本能の絶対命令が
植え付けられようとしている。
そんなおぞましい運命を自覚しながらも、登希代の心は妙に冷静なまま
だった。それは依然癒えない虚脱状態のせいばかりではなく、登希代の中に
生じた深い諦念がもたらしたものだった。
――山1つ人工物に作りかえるほどの大規模なテクノロジーは、その資材
ひとつとっても、この異空間内だけから調達したわけではなかろう。多分、
蜂女たちは外の世界に密かに進出し、人力や財力、そして軍事力を蓄積
しつつある。その規模はすでにはかり知れないほど大きなものになっている。
何のための力か? 繁殖のための力だ。つまり、本能に衝き動かされ、
地球上に住まう莫大な数の人類を――正確に言えば、何らかの理由により、
その中の女性のみを――自分たちの同類に変えていくための力だ――
BeeF祭りはまだまだ続くのよ♪
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;;;;;;;'lllll!所ll,゙゙i,,:'!ll,'!li,::'!lli, ″:::::;;;;;
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