1 :
名無しさん@ピンキー:
2 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/17(金) 02:53:54 ID:KkzufAnK
ダークファンタジーのぬるぽスレ
ベルセルクみたいな感じ?
また立ったのか
俺が知ってるだけでも4度目
いつも落ちるよな
需要ないってことだな
書いてくれるなら需要なんていくらでも発生するんじゃないかって気もするが、
書き手さんが気楽にこんなとこでホイホイ書き捨てれるほどの題材じゃないような気がする
ダークファンタジースレとゆりしースレはほんっと懲りずに立つな
題材に興味ないわけじゃないが
オリジナルファンタジースレと被ってるんだよ、ここ
あっちですら過疎ってるのに分散したって…
10 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/17(金) 14:20:14 ID:PwdmsJ73
定期的に立つね
俺が無職になれば間違いなく盛り上がるんだが
いつも同じ奴が立ててるのか
ウルトラQしか思い浮かばん
>ダークファンタジー
いや、普通にベルセルク系
ふぅん
主人公視点というのがより展開を狭めている気がする
総合で普通に良かったけどな
ところで俺を無職にする方法を考えてくれ
つーか
>>1からして普通に立て逃げだろ
こんなスレ保守する必要あんの?
最近ムダに保守されてる新スレ多い気がする
二番目のスレぐらいここを長持ちさせてくれれば
俺は確実にここを栄えさせられると約束できる
立てた奴はせめてネタだけでもいいから書いてここを保守してくれ
期待してるよ
ダークファンタジーか
ヴィンランド・サガ
ダレン・シャン
皇国の守護者……とかそういうの?
いやいや普通にベルセルク
>>23 ダレン・シャンは未読だが、皇国の守護者やヴィンランド・サガといった雰囲気の世界なら
戦火娘スレの範囲なんじゃないのかな?
ユーベルブラットをもっと
エロくしたようなのが読みたい
・1が糞みたいなスレ立て
・「また立ったか」
・「書きたいけど時間がないんだよなぁ」
・「何ダークファンタジーって」
・「ベルセルクとかユーベルブラッドとかだろ」 ←今この辺
・「投下ないなぁ」
・「ダクファンってみな社会人だから書く時間ないのかなぁ」
・自然消滅
28 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/21(火) 23:58:54 ID:gO3w9acI
俺は何で定職についてるのか
疑問に感じることがある
またいつもの子か
ダークファンタジーって即興で書いてみたネタだけどこういうの?
「きゃあっ!」
鬱蒼とした森の中、一際高く聳える大木の根元に甲冑を纏った女が叩きつけられる。
均整の取れた肢体を覆うのは無骨な銀色の鎧、だが睨みつけるような視線を向けるその容貌は若く
可憐ともいっていい女のものだった。
「あなたたち、どういうこと!」
彼女の前には同じように甲冑を纏った騎士、盾と剣を持つ軽装の戦士、弓を手にした彼女と同じぐらいに若い
弓使いの姿がある。皆男で、純真な彼女が見たことも無いどす黒い笑みを浮かべていた。
「ここは魔物の巣の近くなんでしょっ! こんな悪ふざけっ――」
「悪ふざけじゃないんだよ、これは俺達の正当な仕事さ。」
「え、……えっ!?」
先日パーティーを組んだばかりだが、頼りになる印象を持っていた騎士の言葉に目を丸くする女。
彼女は"帝国"が滅亡してから魔王が率いる魔物によって狂乱の大地と化した"大陸"、その西方に浮かぶ島にある"王国"出身の騎士である。
若くして王国でも指折りの騎士といわれる実力を持った彼女。
だが彼女は戦火の火の粉すらない平穏な王国での日々に次第に飽き始め、自分の実力を魔の大陸で発揮しようと
親や恋人と別れて"大陸"に渡った。
大陸で魔物に苦しめられ、何とか抗っている人々。その助けとなり、魔物を討ち払う女騎士として生きようと決めたのだ。
もし実力がさらにつけ神の加護が得られれば、魔王軍による帝国滅亡の際に最後の皇帝が残したという予言。
『聖なる女が大地から暗黒をかき消し、再び安寧をもたらすであろう。』
その聖なる英雄になれるかもしれないという夢も心に抱いていた。
大陸の港町に着き、しばらく街を巡って何人かの大陸で生まれ育った冒険者に出会った。
その中の『帝国騎士の末裔』の騎士。『疾風』の異名を持つ戦士。そして童顔だが弓は『百発百中』の弓使い。
彼らとパーティーを組んで、腕試しに街近くの魔物の巣を目指したのが今日。
だが、彼女は突如戦士に背後から剣を奪い取られ、騎士に手荒に突き飛ばされてしまったのだ。
「お嬢ちゃん、『聖女の予言』につられてよく女戦士や女騎士が大陸に渡ってくるんだがな。
俺らからしてみればそんな予言、とんだ戯言よ。」
「何十年、何百年、爺のそのまた爺のときから魔物と命張ってきた俺らにとって予言なんて所詮おとぎ話だ。
それを信じて海を渡ってくる連中は頭が抜けていると思うぜ、わざわざ魔物もいない平和な土地から来るんだからよ。」
震える女に語る騎士。
「だからよ、生きるのに精一杯な俺達はそんな女どうしてもいいわけだよな。そいつらの方が遥かに幸せなのにそれを
わざわざ捨ててきた阿呆どもなんだからよ。。お嬢ちゃんにとっても幸せだろう、哀れな大陸の民の役に立って。」
女騎士は反論しようとしたが、剣先を首筋に突きつけて彼が遮る。
「それに、魔王軍は予言を信じているんわけじゃないだろうが"聖なる女"候補にいたくご執心でな。
捕らえて突き出せばいい恩賞が出るのさ。」
それを聞き震えを増す女騎士。そして彼女の耳に背後から藪を掻き分ける音が響く。
「おお、御出迎えだ。じゃあな、嬢ちゃん。」
そう騎士が言うと魔物が5体現れた。
女がはじめて見る魔物、豚のような醜悪な容貌、人より大きな身の丈、二足歩行し手に思い思いの武器を持ったそれはオークと
呼ばれるものだった。
魔物が怯える女の腕を掴む。
「これで本当に最後だ、嬢ちゃん。大陸での長いか短いかはわからない余生を楽しんでくれよ。『帝国騎士の末裔』、今は
『魔王軍西方人間旅団、第一工作団』に属する俺様からのはなむけの言葉だ。」
そう言い残して顔を蒼白にした女の前から男達は姿を消した。
女騎士がその後どうなったかは人間の中では誰も知るものはいない。
大きな夢・希望が
卑劣な雄野郎どもの本能ただ一つによって
簡単に打ち砕かれる様は見てて面白いよな
GJ!もっと他にも続けてくれ
面白かった
34 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 23:48:06 ID:pYh50N7H
ユーベルみたいなドロドロのやつ見たい
キングスフィールド
シャドウタワー
デモンズソウル
あたりが思い浮かぶスレだな
あとギリギリだけど有名どころだとゼルダとか
エルリック・サーガ(ストームブリンガー)とか?
ムアコックのファンタジーは概ねダークに分類して良いのかなぁ…
更に主人公視点で…となると、なかなか難易度高そう。
主人公視点はとりあえず外して開始してみない?
また立ってる
昔ベルセルクスレがあったな
てすと
41 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 04:21:26 ID:jwtIbhA9
ダークヒーローって、ダークサイドでもいいんだよね。
勿論そうだろ
ムアコックとユーベルじゃ随分違うだろう
とにかく言っておきますが、このスレはあくまで“一人称”というところが最大のポイントですからね
45 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 18:06:54 ID:jwtIbhA9
「捕らえた女を逃しただと!」
「はっ、新人兵士を監視につけたのですが。」
「もしや、スパイかもしれん、急いで探せ!」
「私の教育不足ですね。やはり。」
「気にすることはない、わしが見極めなかったことが悪いのだ。」
「隊長!・・・・・・・」
「早く探せ!敵国にでも帰還されては堪らんからま」
「はいっ!隊長!」
作者「きたねえマンコさらすな。」
>>43 ユーベルは萌え絵でダクファンをやってくれるところが
たまらんのよな
もうちょっと容赦ない描写が多くてもいいと思うが
あと乱暴で乱雑なセックスシーンとか
47 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/04(火) 10:27:26 ID:DlCwsFdM
保守
48 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 23:08:33 ID:nZmglXjX
早く無職になりたい
思い詰めてるな
あ、せっかく休みだったのに書こうと思ったらもう終わり…
次のチャンスは二週間後か
52 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 01:10:47 ID:2yMlPxMp
いつものパターンになりつつあるな
53 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/16(日) 16:20:37 ID:5i1z18U9
そろそろいくか
54 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/16(日) 17:48:42 ID:HqZPQUpD
好物が投下されそうなスレタイなんだけどなぁ…
「主人公視点」は別にいらんのだけどな
ダーク重視のファンタジーが見たい
ドロドロしたやつ
このままだと書き手が
無職になるなる詐欺のヤツしかおらんからな
そりゃなるって言ってても簡単に辞められはしないだろ
いくらいない歴=年齢で女友達0の童貞とはいえ社会人だからな
平日:俺って社会人で時間がないから書けないんだよな。時間さえありゃ凄いの書けるんだがな。
休日:せっかくの休みで書こうと思ってたのに別の事してて書けなかったぜ。もっと時間がありゃあな。(←今この辺?)
無職:かける時間はあるんだが、いいネタが思いつかない。いいネタがありゃ、超大作にしてやるんだがな。
書いてみた;超大作の第1章第1話だ。まだこれはほんのさわりだ。これからが本番なんだぜ。
それからしばらく:続きの構想練るのに時間かかってる間に、どうでもよくなった。思ってたより反応も少ないからもうどうでもいい。
と、予想してみる。
煽っておいてなんだが、予想を裏切ってくれた方がホントは嬉しい。
平日:こいつらマジ待ってんの?いつ釣りって気づくんだよ
休日:面白いから保守っと
無職:屁こいて寝よ
書いてみた:暇だから縦読みしこんでやった
こうだと予想
61 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 21:30:59 ID:0ykTBV4t
ダクファンまだ?
腰の痛みに毎日耐えてる
腰の振り方が下手なんだろう
21や予告の人が書いてくれるまでなんとしてもこのスレを保守するんだッ!
ほぼ無理だとちょっと思っているが、そこは信じる心が(ry
……保守。
今年中には確実に無職だから
それまで待て
しかして希望せよ!
はやまるな
不景気なのに
はやまるなよ
他のスレと被っている気がしないでもない
軍人スレとか戦火スレとか
オリジナルファンタジースレとか?
久しぶりに上げるね
>>65の人生がダークファンタジー
大きく主旨と外れてるが、これはこれで面白いw
73 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 00:25:11 ID:4Ixi/Do9
さぁ
どうなるのか
12月中に無職になると思うよ
早く無職になりたい
「無職」=「ファンタジー世界の冒険者」ですね
そしてダークファンタジーの世界の冒険者
=生きるためなら何でもやるんですね
(例:退治を依頼された盗賊団と結託して村を襲う)
「冒険者か…確かにそんなのを夢見て旅立ったこともあった気がするが、
人間夢だけじゃ腹いっぱいにならんのよ…」
って言うか…あれだけ冒険者がうじゃうじゃいて普通に生活できてる
クリーン系ファンタジー世界って凄いよな…
77 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 04:36:35 ID:ci9p+sNZ
ニートか大学生の人
何でもいいから書いてよ
またそれか
79 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 07:48:15 ID:vk0/To+n
がんばれダクファン
80 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 19:12:53 ID:EHrwI7VQ
おぉ
圧縮で落ちれば良かったのに
82 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 07:40:33 ID:ay82IWa/
無職の日近いぞ!
83 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 07:52:43 ID:QLxHYtqC
ダクダク
84 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 12:32:47 ID:TT786/GH
グダグタ
85 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 23:00:24 ID:2M+99iGH
言ってきた
今年中に辞められればいいけど
下手すると今年度いっぱいかな
何があったか知らんが、このスレの住人なら応援してくれるはず!
エロを
どうしたのいきなり
期待してるぞ
まさにダークファンタジー
なんか心配なんだが
どうなったんだ
今年中に辞めるの確定した
期待しててくれ
93 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 21:27:30 ID:HjCgFBmz
マジか!!!!!
期待期待
いやなんと言うか……
とにかく期待してるよ
95 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 08:37:00 ID:B7+Wx2EU
こりゃいけるな
ついに来るか!?
釣りなのか?
その結末が、今!
99 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 18:24:06 ID:Fppx6WGZ
ダクファン厳しすぎ
大国に国を滅ぼされた王子が復讐のために地上最強のドラゴンを服従させ、
仇の国をメチャクチャに蹂躙するお話とか、愛はありませんシスコンだから
れいーぷ対象
ドラゴン 気位が高く人間を見下しているが契約で逆らえない、雄はとうに
絶滅しているので処女
敵国の姫 花よ蝶よと育てられたこの世の悪意など知らぬ箱入り娘。父王の
前で滅茶苦茶に犯されます
姫騎士 姉を助けに騎士団を率いて戦いを挑むも、鼻っ柱へし折られて
滅茶苦茶に犯されます、主に部下たちに
101 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 09:24:46 ID:y8mC8FOt
どういうドラゴンだよw
カミーラ様ですね
さて。年末も残すところ今日を含めて2日なわけだが
話題の彼はどうなった
ほのぼのレイプの鬼畜ハーレムが読みたいなあ
ほのぼの アーン
ほのぼの レイプ
(古っ!!)
このスレの行く末こそがダークファンタジー
相変わらず過疎
108 :
名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 16:10:09 ID:HRkq8oGD
てす
109 :
名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 18:31:53 ID:STeQR9Pu
主人公視点
110 :
名無しさん@ピンキー:2010/02/13(土) 00:58:43 ID:Zxgxh1r6
以前は投下あったの?
何作か投下されていた記憶あるけど
112 :
名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 03:20:23 ID:XjUjLEfM
何度も立ってるしな
113 :
名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 23:52:08 ID:BMoBIg0Y
ダクファン
たくわんみたいだな
【鷹は陽に背きて】1
空は曇っていた。
あの厚い雲の上には太陽があるのだろう
だが今は一筋の光もない夜のような曇り空
そのうち雨になるはずだ
俺の最も好きな空である
ダリル街道を西に進む
すれ違うのは行商人と旅人ばかり
みんな俺を見ると道を譲る
そう辺鄙な格好はしていないはずだ
深く体を取り巻くマント、砂嵐のためのゴーグル
ずしりと重い麻のザック、そして鷹の装飾を施した杖・・
おそらくは咎人じみた雰囲気のためか
もっとも避けられる方が都合がよい
街道に沿い、澄んだ川が流れている
時々、水面にはねるのは川魚か
すこし先には大きな橋がかかっている
俺はそこを渡り、隣国に入るつもりだ
橋の向こうに荷車を引く一団がみえる
重そうな樽を荷台にくくりつけている
引いているのは馬ではない、人間だ
前に2人、後ろに1人、大男が汗をかきつつ進めている
俺は道を譲ろうと橋の端による
だが、次の瞬間、俺は杖を構えた
【鷹は陽に背きて】2
予想通リだった。
「うぉぉぉ!」
怒声とともに荷車の人夫達が切りかかってきたのだ
手には歯の厚い蛮刀を持っている
俺は頭上にて杖で受ける
蛮刀を振るう力は強い、だがそれだけだ
俺が体をさばくと、切りかかってきた男は転倒する
しばらく動けないようだ
すぐさま次の刃がくる
荷車を後ろで引いていた大男だ
その刹那、一筋の剣閃が走った
俺は杖の頭を払い、抜刀したのだ
俺の杖は仕込み刀になっている
杖は旅人としてのカモフラージュだ
血しぶきが派手にあがる
俺は間髪を要れず、次の刃に応じた
今度は刃を合わせるまでもない
横なぎに払われた蛮刀をかわし、首筋を切りつける
残りは一人、さきほど昏倒した男だ
蛮刀を川に放り投げ、俺は男の後頭部を蹴る
「ずいぶんな歓迎だな、おい
俺はこの国は初めてだぜ
誰に頼まれた?
人違いじゃあ、非常に困るんだが」
男は何事か言いたげに口を動かす
立ち上がるそぶりをみせた
【鷹は陽に背きて】3
そのときだった
シュッ
風を切る音とともに荷台の樽に矢がささる
まだいるのか
俺は低く体をうずめた
どうやら荷車が来た方向、
つまりは今から俺が進む方向からの射撃らしい
「あっ!」
俺は思わず叫んだ
2発目はなんと目の前の男の頭を貫通したのだ
男の頭からは血が噴出し、目の玉がこぼれる
正確な射撃であった
それを最後に射撃は止んだ
口封じのためか
俺は憮然として頭を振る
そしてともかく橋を渡った
【鷹は陽に背きて】4
「だんな、だんな」
ふと背後から声がする
俺は杖に指をかけ振り返る
「いや、先ほどの一戦拝見しました
すごい・・素晴らしい
こんな強い戦士様には、このマリス、
初めてお会いしました」
そこには少年が恭しくひざまついていた
完全に膝をつかず中腰である
貴族や騎士ではなく、無頼者・渡世人の儀礼だ
「あんた、あの喧嘩を見ていたのかい?」
「は、はい・・その」
少年は戸惑いがちに表をあげた
美しい顔である
色白で大きな瞳を潤ませている
眉は細く、唇は紅を差したかのように赤い
美しいブロンドを後ろで束ねている
並みの女子以上の器量だ
服装は旅人風のマントを羽織っている
擦り切れ具合から旅はしているのだろう
「悪いが正当防衛だ
お役人に会ったら証言してくれ
それで?用件は?」
【鷹は陽に背きて】5
「はいっ・・あの私・・修行者のマリスと申します
だんなのような強い戦士になりたくて
故郷を出て参りました
ぜひ・・ぜひお供させていただきたいと」
俺は溜息をついた
何が修行者だ
おそらく喧嘩もろくにしたことがあるまい
おまけに並みの女子以上の美貌だ
少なくはない男色家の垂涎の的であろう
俺が連れて行くべき男ではない
「諦めな 見てたなら分かっただろう?
俺はああいうのに巻き込まれる性質なんだ
しかも俺の素知らぬ理由でな
お前さんの面倒を見てる暇なんざねーよ
故郷にお帰り」
俺はマントを翻し、進むべき方向に歩みだす
【鷹は陽に背きて】6
「やっと消えたか」
街の喧騒のなか俺はつぶやく
マリスはその後もしつこくついてきた
だが逆効果だ
俺は取り合わず、サンタナ町に入った
こういう輩は無視するのがよい
下手に構うと面倒だ
サンタナ町はにぎやかだった
商人が、娼婦が次々と俺の袖を引っ張る
異国の華美な装束が通るかと思えば
路地裏には自分の嘔吐物のなかで倒れこむ浮浪者もいる
俺はとかく宿を探した
その時であった
「おい、待て、お前だ」
背後から声がする
野太い威厳のある声だ
下手に避けないほうがよい気がした
俺はゆっくり振り返る
勘は当たった
いかめしい兜をかぶった警護兵が
群集を割り俺に迫っているのだ
「貴様か?国境沿いの大橋で人足3名を殺傷したのは?」
俺は辺りを見回した
間の悪い野郎だ、マリスとかいう野郎は
今こそいて欲しいのに
【鷹は陽に背きて】7
ここは地下の取調室
窓はない、なにやら饐えた臭いがする
1本のろうそくを挟んで
警護兵がヒゲをなでている
「ふむふむ、それで、むこうから襲ってきたとな
それでだ、お前さんは何者だ?
大男3人をなぶり殺したんだ
気質では通らんぞ」
俺はいつもの口上を述べた
「はい、私の名前はファルネウス
ここよりはるか北のオークランドで生を授かりました
名前付け親はオーク教会のモルグル様です
職はフォエルバッハ王立研究所の研究補佐であります」
丁寧に述べつつ、胸元からその証を取り出す
金箔の貼られた石版である
古代ルーン文字で「知恵のある者」と彫られている、らしい
らしい、というのは俺も分からんからだ
なにせこれは賭博場で旅の僧侶から巻き上げたもの
先述の口上もそいつから習ったものだ
怪しいのは百も承知
だいたい名前からして出任せだ
しかしこれは意外に役に立つ
田舎町での待遇はまず良かった
国境の検問所もたいていはフリーパスだ
「それはそれは大層な御仁で
それで如何なる理由で我らの町へ?」
「はい、大変痛ましいことに国王フォエルバッハ様が
体調をお崩し遊ばされまして
いや、すでにご存知でしたらご容赦を
そのため我々研究員は、ご療養のための良薬を求め
諸国を渡り歩いている次第」
警護兵はまだひげをなでている
「なるほど・・・それはそれは
大変失礼いたしました
我らとしましても十分に協力いたそう
こら、お前ら、この御仁を案内せい」
【鷹は陽に背きて】8
ガシャリ
牢屋の錠前はとかく大きい
そして厳重に施錠されたようだ
俺はワラに寝そべりその様子を見ている
警護兵が案内してくれたのがここ
さらに地下にある牢獄である
「けっけっ・・・警護の兄ちゃんの話、聞こえてたぜ
おめぇもあの手をつかったんか?
フォエルバッハ王立研究所の研究補佐であります!ってやつをよ」
すぐ横の男が笑う
歯の欠けた貧相な中年である
どうやら俺の牢屋のルームメイトらしい
「俺もやったぜ 名前はエルドラゴンってな
はは、おめぇ、旅の理由は何にした?
俺は賢者の石の探求者だ
我ながら震えが来たぜ、はは」
ルームメイトを得て機嫌がいいのか
一人で話し続けている
俺は無視して宙をみた
こんなところで長居は無用
「おっちゃん、続きは酒でも飲みながらにしようぜ」
「あ?」男は口を半開きにする
「ちょっと、耳貸しな」
【鷹は陽に背きて】9
「この詐欺師野郎が、生意気にほえやがって!」
これは俺の声
「な、なんだと、おめぇこそ、3人殺したなどと
でまかせこきやがって!優男の分際で」
これはおっちゃんの声
俺達は取っ組みあった
大人気なく殴りあう
周囲の牢屋の住人も色めき立つ
複数の足音が迫ってくる
待望の警護兵の登場だ
「おいおい、何かと思えば囚人のじゃれあいか
ははは・・おろかものが
どうせ喧嘩すれば我々警護兵が鎮めるために
牢屋を開けると思ったのだろうよ
その隙に鍵を奪おうとな」
「はは・・とんだワンパターンだ
さすが使い古した王立研究所ネタを騙るだけはある」
得意げに笑う警護兵
だが次の瞬間、彼らの顔は凍りつくことになる
【鷹は陽に背きて】10
「おい・・警護兵のだんな・・オラやっちまったよ
この優男、息してねぇ・・殺しちまった・・」
おっちゃんの渾身の演技
俺は口の奥の歯を浮かせ、唾液を垂らす
こちらも渾身の演技
「な、何?ふざけるな、ほんとに殺したのか?」
「囚人の喧嘩で死亡事故など、我らの監督責任が問われる」
「嘘つくな、見せてみろ」
慌てた警護兵は牢の鍵を開け、
ズカズカ入ってくる
思った通リだ
俺はとっさに飛び起きると、警護兵の一人を殴りつける
ひるんだ隙に腰のサーベルを抜いた
そのまま顔を切りつける
「ぐあぁぁ」
叫びながら倒れる警護兵
残りの警護兵もあわててサーベルを抜こうとする
だが俺の剣筋の方が早かった。
またたくまに首筋を切られ、倒れこむ
他の牢からは拍手喝采が沸いた
「とんだワンパターンだな」
【鷹は陽に背きて】11
俺達は路地裏を走っていた
俺は背に仕込み杖を背負っている
脱出時にまず探したのがこれ
おっちゃんがどんなに焦ろうが
俺は施設内を駆け回った
見つけたのは裏口の茂みであった
ただの杖と思って放り投げたのだろう
幸いであった
無数の足音が夜の澄んだ空気の中で響く
彼方に見えるのは無数のたいまつ
このままでは分が悪い
しかしおっちゃんはヨタっていた
「ま、まっとれ、少し・・少し休まんか・・」
俺は手を引くと、無理矢理走らせる
やがて運河に出る
対岸までの距離は遠い
泳いで渡れる距離とはいいがたい
来た道を見ればだんだんと松明がせまってくる
残るは右側の道しかない
俺は走った
「うぎゃあ・・」
おっちゃんが転ぶ
俺は迷った
このまま放置すべきか
だが一時とはいえ義理がある
俺は助け起こそうと身をかがめる
「いたぞー」
近い。すぐそばまで追っ手は迫っている
俺は背から刃を抜き一文字に構える
運河沿いの道は狭い
相手が何人いようが
一対一にもちこめる
勝機はある
【鷹は陽に背きて】12
その時だった
「だんなー、だんなー」
聞き覚えのある声がする
しかし声の方向を見定めるのに苦労した
「お、お前はマリス・・だったっけ?
どうして?」
声の主は運河の上で船を浮かべていた
俺の声を聞くやいなや、マリスは笑顔を浮かべる
「あの・・お困りのようですけど」
「そうだぜ、言っただろう
俺はこういうことに巻き込まれ易い性質なんだ」
マリスの船は小船であった
なにやら荷物が結わかれている
毛布やランタンも見受けられる
おそらくはマリスの仮宿なのだろう
小船が運河に接岸されるやいなや
俺はまずおっちゃんを突き飛ばす
「奴ら逃げるぞ!船ー、船ー」
警護兵がいっせいに叫ぶ
「だんな、これを!」
マリスは腰の皮の小物入れから
丸い塊を取り出す
「これをあいつらに投げてください!」
迷っている暇はなかった
俺は追っ手めがけて固まりを投げる
「うががが!」
「目が!」
モウモウとして煙があがる
驚くほど規模がでかい
まるで火災のときのそれだ
「煙幕ってやつかい?」
おっちゃんは目を丸くしてつぶやく
「大層なもんだぜ。これ以上なにを修行するんだい、マリス」
俺も続いて船に飛び乗った
そのまませわしくオールを動かす
【鷹は陽に背きて】13
「まぁ世話になったな、お前さんとこの坊ちゃんには」
「坊ちゃんじゃない、マリス殿といえよ、おっちゃんよ」
「いえ・・そんな結構です」
マリスは焚き火に薪をくべた
頬の赤さは焚き火の熱さのためだけではないようだ
「へへ・・そうだ、マリス殿
助けていただいた上に果樹酒までゴチになって」
「いや・・たまたま買出しのとき頂いて・・ふだんは全然」
ここは川沿いの雑木林である
運河を遡ること1時間くらい
さすがに追っ手を振り切った俺達は休憩をとった
「ねぇ、だんな?聞いていいですか?
あの橋での戦いのとき、だんなはあいつらが襲う前に
杖を構えてましたよね?
どうして分かったんですか?」
マリスは目を潤ませ問いかけてきた
俺は一瞬、鋭い目線をマリスに向けた
だが、平然と答えることにする
「ああいう運び屋は右肩に始終、重量を負うもんなんだ
こんな感じで引くからな
だから右肩から腕にかけて常人より異様に盛り上がっている
やつらは図体はでかいが、それがなかった」
マリスは激しくうなずく
「もう一つは履物だよ
あんな重い荷物を国を越えて引っ張るんだ
それ相当に擦り切れるはずだ
ところが奴らは3人とも履物はキレイなままだった
顔や体は泥をぬりこんだんだろうが
下までは考えがおよばなかったんだろ」
「なんとまぁ名推理、さすがはだんなだぜ
なぁマリス殿」
すっかり酔いが回ったおっちゃん
調子よく手をたたく
俺はそのまま続けた
「こんなもんだ
ともかくだ、俺達は明日には分かれよう
俺とこのおっちゃんは逃走犯だ
一緒にいてもお互い危ういだけさ」
「はい・・でも・・そんな」
「今日のことは重々礼をいう
本当に恩にきるぜ、マリス
だが明日から俺もやるべきことがある」
俺は言い終えるとそのまま横になる
果樹酒には手を付けなかった
【鷹は陽に背きて】14
俺の眠りは浅い
夢は見ない
長年の放浪のおかげで
寝ているあいだも人の気配を
うっすら感じることができる
便利なのか、不便なのか
その晩も俺のこの感覚が働いた
誰かがじっと俺を見ている
寝首を掻くわけでもなく
ただ視線を俺に向けているのだ
どのくらいたったであろうか
まどろみの中での時間の認識はあてにならない
いつの間にかその視線は消えていた
それからしばらくして・・
「だんな、だんな」
何やら悲痛な声がする
マリスか
俺はうっすら目を開ける
「だんな・・来てください・・ちょっと」
俺の返答を待たずマリスは駆け出した
【鷹は陽に背きて】15
そこは川沿いの岩場であった
俺は足元に注意しながら進む
ひときわ大きな岩があった
「おっちゃん?」
俺は駆け寄った
おっちゃんは岩の影で倒れていた
頭が岩でかち割れている
たいまつを掲げれば、見えるのは黒い血の海
血の固まり具合から、殺されたのは少し前だろう
俺はたいまつで血まみれの顔をのぞきこんだ
俺は首を振る
次にマリスを照らす
マリスはおびえた顔をしていた
秀麗な顔をこわばらせている
唇が青い
まとっていた麻の服は裂かれていた
白い肌が露わになっている
俺はマリスに接近すると、
上着の裂け目に手を伸ばした
マリスの顔色が変わる
俺はそれ以上は何もせず、たいまつを地面に固定した
マリスの話は俺が予想した通リだった
「この方が、だんなが寝た後、俺のことを呼んだんです
こっちこいと、面白いものがあると
そうしたら・・・」
マリスはそこで言葉につまった
「そうか・・それ以上は言わないで良い・・」
俺は色々言いたいことがあった
だが俺が言ったのはただ一言
「どうせこのおっちゃんは詐欺師の逃走犯だ
死のうが生きようが、別に気にする事はない」
マリスはこくりと小さく首肯した
【鷹は陽に背きて】16
翌日、俺達は小船を降りた
そのまま近隣の町に入る
マリスは大人しくなっていた
先日のようなしつこさはない
ただ黙ってついてきた
しばらくしてマリスはぽつりという
「太陽の紋章だ。この町もラメイシャ教が多いですね」
店の軒先にも、商家の壁にも、朽ち果てそうな貧民窟のバラックにすら
それは掲げられていた
ギザギザと日輪を装飾したラメイシャ教のシンボルである
俺は何を言わなかった
ただそのシンボルをにらみつける
マリスは再び口を閉ざした
その夜のことだ
「だんな聞いてきました
誰も口をそろえていっていますよ
この国の権力者はラメイシャ教のゲルバリル神父だって」
マリスは勢いついて話す
はじめて与えれたお使いに喜んでいるようだ
「そうか、手間をかけたな」
俺はそれだけ言うと、マリスの杯に酒をついだ
「あ、ありがとうございます
どんどんお申し付けを
なんでもやりますよ、だんなのためなら」
マリスは恐縮して受ける
頬が赤く染まっていた
【鷹は陽に背きて】17
その日の宿は決まった
「だんな、いいですよ、俺のために部屋なんて
だんなの側で寝かせてもらいます
床に毛布でもひいて」
マリスは慌てていた
「お前のためじゃないさ
どうした?どんな不満がある?」
「はい・・いえ・・でも・・昨日あんなことがあって
その・・だんなの側でないと・・なんだか」
おびえながら言葉をつむぐマリスは
艶めかましさすらあった
しかし俺は冷たく笑う
「安心しな、今夜お前は一人では寝ないぞ」
【鷹は陽に背きて】18
「お前さん、いいのかい?
私みたいな年増で
お連れの坊やみたいに若い子もたーんといるのさね」
「はは・・女と袋は使い古しがいいというからな
しっかり頼むぜ」
しばらくして俺は娼婦を2人呼んだ
もう一人はマリスのためだ
目の前の女は40を越えてた
なにしろこの町で一番長い売春婦を
頼んだからである
むろん酔狂ではない
理由はある
年増女は俺にまたがると、舌を這わせた
黒い乳首を、脇を、へそを、そしてペニスを・・
両手でやわやわとペニスをしごきながら
裏筋に舐め上げる
そのまま上目使いにしゃぶりはじめた
マリスには鮮度の良い若い娘をあてがった
マリスの露骨に嫌悪を示した
しかし俺は取り合わなかった
【鷹は陽に背きて】19
安宿の壁は薄い
わずかであるが、しかし明瞭に隣の密事が聞こえる
甲高く陽気な娘の声がする
(「まぁ・・なんて可愛いお客様なの
肌なんて私よりキレイ」)
(「うん・・・」)
(「ふふ・・えーっ、灯りを消すの?
恥ずかしがり屋さんなのね
ふふ・・お姉さんに任せて」)
(「・・・・ちょっと・・もう?
だめよ・・んんんっ・・んん」)
(「さぁ・・これでいいよね?
もう帰ってくれないか
俺はもう寝たいんだ」)
(「そんな・・ねぇ今度はあなたが女の子役してみる?
私が上から攻めちゃうの
だって可愛いんだもの・・ねぇ・・きゃっ!」)
俺は一瞬目を開いた
(「ぶ、ぶったわね・・なんで?なんで?」)
(「ごめんよ、でももう帰ってくれ
ほら、これあげるから」)
(「えっ・・フォエルバッハ王朝の大金貨?
だめだよ・・こんなにもらえないよ
こんなの持ってたら姐さん達に取られちゃう」)
(「いいから帰って・・」)
【鷹は陽に背きて】19
俺はしばらく宙をにらんだ
「なんか・・騒がしいね・・お隣は
んんぐっ・・んん・・」
厚化粧の女はにたりと笑う
そして俺の指を口に含んだ
「そうだな・・ガキ同士だからな」
俺は何食わぬ顔で返す
女は四つんばいなった
熟れたしりを振っている
挿入を求めているのだ
色あせたねじれぎみの陰部が丸見えだ
俺は怒張したペニスを握った
そして・・・
「ちょっと・・お前さん・・そっちは・・ああん」
「どうした?まさかこっちの穴が初めてなんて可愛いことはいうまい」
「ううん・・ああ・・そこはだめ・・感じすぎて怖いの・・ああ」
俺は腰を動かした
「ひっ・・ああ・・ああん・・ああ」
次第に女の声がかすれてゆく
商売女の演技は消え去りつつある
ただ一匹の牝になっている
俺は女の耳たぶを舐める
そしてささやいた
「姐さんよ、教えて欲しいことがあるんだ
ゲルバリル神父ってのは・・あれは一体何者だい?」
女は快感に震えつつも、言葉を紡ぎだしていった
脳髄がアナル姦の刺激で蕩けているのだろう
女の証言に俺は目を見開いた・・・
【鷹は陽に背きて】20
翌日
マリスは朝から仏頂面だった
昨晩のことを怒っているのか
だが俺から進路について相談を持ちかけると
積極的に案内を志願した
このあたりには詳しいという
教えられたのは正式なルートではなかった
俗にいう裏道というやつだ
俺は何もいわず従った
歩き始めて1時間くらすぎたであろうか
俺はふと生い茂る木々の中に人の気配を感じた
次の瞬間、足元に矢が刺さる
「マリス、離れろ」
俺はマリスを突き飛ばす
その間を縫って矢が降り注ぐ
俺は仕込み杖でたたき落とした
「ああっ!」
マリスの叫び声が聞こえる
右肩を打ち抜かれたようだ
血がほとばしる
いつのまにか木の上の人影は消えた
俺はマリスを支えながら進んだ
来た道を戻るには時間がかかりすぎる
マリスの肩には簡易の止血を施した
幸い心臓には達していない
矢は抜かないでおいた
止血栓になるからだ
この矢には見覚えがあった
そう、最初の日、橋の上で大男を打ち抜いた矢と同じなのだ
俺はくちびるをかみしめた
【鷹は陽に背きて】21
「だんな、あそこ・・」
しばらくすると、マリスは木々の間を指差した
太いブナの群れの中に一軒の小屋が見える
煙突からは煙が一筋
よし、人がいる
出迎えたのは小柄な老人と、年若い娘であった
「いや・・これは大変ですな、どうぞ、どうぞ」
いずれも粗末な服装である
家は木々を荒く組んだもので狭かった
かまどには火があった
俺達は薄暗い部屋に案内された
薄い毛布が敷いてある
俺はそこにマリス寝かせた
麻のザックをマリスの肩の下に置く
傷口を心臓より高くするためだ
老人は村に医者を呼びにいくといい、消えた。
しばらくして娘が白湯を運んできた
マリスは美味しそうにそれを飲んだ
俺にも同じものが出される
そういえば喉がかわいて仕方がない
俺もつい口をつけてしまう
娘は頭をさげると部屋をあとにした
その時だった
突然、マリスが嘔吐したのだ
体がけいれんしている
「く・・くそ・・なんで俺の分にまで・・あああっ」
マリスは低い声を絞り出す
今まで聞いたことのない声だ
普段の穏やかではにかみがちなマリスではなかった
俺はとっさに器を捨てた
そして運んできた娘の方をみる
彼女は逃げ出した
その際、何かをかまどに放り込んだのだ
俺は全身の毛が逆立った
とっさにマリスをかつぎあげる
一刻も早くこの家を出なければ・・・
【鷹は陽に背きて】22
地に響き渡る轟音
それから間もなく小屋は爆発した
衝撃でブナの木が一本、めりめりと倒れる
鳥の群れが大急ぎで飛び立った
黒煙の中、俺は転げだした
顔を手もすすけている
間一髪だった
幸い煙は吸っていない
マントの中にはマリスを抱きかかえている
「あの女、火薬を投げ込みやがった・・」
俺は気絶しているマリスを抱える
そしてよろよろと歩き出した
彼の目が覚めたら聞くべきことは沢山ある
今はとにかく安全なところへ
「これはこれは・・まだ死んでなかったようじゃのう」
さきほどの老人の声がする
道はすでに敵に囲まれていた
老人は手に2振りの剣を構えている
さきほどの女もいた
長いスピアを構えている
それだけではない
ボウガンを構えた黒ずくめの射撃者が1人
醜く顔をゆがめたオーガが2匹
それぞれ戦斧を持っている
【鷹は陽に背きて】23
俺はとっさにマリスをひきずりだした
あたかも盾のように、俺の体の前に差し出す
そして俺は、マリスの首に仕込みの刃を当てた
相手はどうでるか?
「ふふ・・人質のつもりかい
殺して構わんよ、そいつはもういらん
お主をここまで連れてきからな」
「やっぱり・・そういうことか」
今までの断片的な場面がつながった
「なかなか、お前をたぶらかすことができず
苦心しとったが、まぁ終わりよければすべてよし」
「なるほど・・しかしなぜ?なぜ俺を狙う?
しかもここまで周到にな、この国は初めてだぜ」
老人は嘲り笑った
「死に行くものに何を言っても無駄よのお」
俺の手はマリスの腰のベルトに伸びていた
そこにあるのは皮の小物入れ
そして中には・・・
「そりゃ!」
俺は煙幕を取り出すと老人に投げつけた
反対側にも一つ
たちまちモウモウとした煙があがる
俺は防砂用のゴーグルをつけると
煙の中へ切り込んだ
「おのれ!」
老人は叫んだ
だが次の瞬間、その両手は剣を握ったまま地面に落ちる
老人は唖然とした表情のまま、喉への一撃で倒れこんだ
俺の脇腹へ女のスピアが伸びる
わずかに腰をやられた
だが女は次の挙動のためスピアを手元に戻す
その刹那、俺は一気に踏み込んだ
スピアの穂首を切り落とし、返す刃で首筋を切りつける
【鷹は陽に背きて】24
俺の左右から大きな影がせまってきた
斧をふりかざしたオーガどもだ
時折、風を切る音がする
この煙の最中、黒ずくめの射撃者は俺を狙っているのだ
しかしオーガは良い盾になる
なにしろ図体だけはでかい
俺は身を低くし、オーガの足を払う
子供の胴ほどもある毛むくじゃらの足だ
一体が崩れる
だがもう1体の戦斧が俺に迫っていた
受ける間もなかった
反射的に身をそらす
だが重心を崩し、俺は後ろ向きに倒れた
まずい
その時、幸運なことがおこった
「ぐぇ!」
奇怪な叫びをあげ、目の前のオーガが倒れたのだ
額に矢が直撃している
俺の転倒で標的が狂ったのだろう
ツイテやがる
俺は立ち上がり、オーガの首筋に刃を走らせた
オーガの巨躯が崩れ落ちる
間髪をいれず、俺は仕込み杖を構えなおす
すぐ横で、さきほど足をはらったオーガが立ち上がろうとしていた
俺は跳躍した
そのままオーガの頭上に刃を振り下ろす
俺の全身は返り血に染まっていた
すでにどす黒く変色している
不快な緑色のしみはオーガの血だろう
煙幕による煙も次第に薄れている
風に流され、視界が開けた
残る敵は1人
しかし、黒ずくめの射撃者はボウガンを背にかついだ
そのまま木の上に飛び上がり、戦場を離脱する
俺は追わなかった
あいつはこの顛末を依頼者に報告しにゆくであろう
次の相手の出方を待つほうがよい
今はやることが他にある
俺は血払いをすると、刃を納めた
【鷹は陽に背きて】25
さきほどの小競り合いから2時間がたっていた
あの後、俺はマリスをかつぎあげ
更に深く森に入った
マリスの意識はまだ戻っていない
口元に耳を接近させると、かすかな呼吸音は聞こえた
しばらくは道なき道を歩む
少しでも人の手によるものから逃れたかった
俺の疲労も限界であった
だが耐えた
もうすぐこの襲撃の真相が明らかになるのだ
それは俺の旅の目的にもつながっているように思えた
しばらくして落ち葉のなかに小さい水の流れを見つける
俺はそれに沿って進んだ
やがて視界が開ける
澄んだ川が流れていた
俺はそこで顔を洗い、布きれを水にひたした
それをマリスの口の端にあて、水分をおくった
マリスの喉がわずかに動く
俺はそこで他の荷物をおろした
火の準備だ
【鷹は陽に背きて】26
マリスの目が覚めたようだ
事態が飲み込めず、虚ろな目で俺をみる
「残念ながら、俺は生きてるぜ」
マリスは目を見開いた
しばらくうつむいたが
やおらに顔を上げる
「だんな、俺を殺さないの?」
目には鋭い光があった
「殺しても良いぜ
ただ、知っていることはすべて言ってもらう
それまでは勿体ない」
しばらく俺達は焚き火の火を見ていた
俺は大きく息を吸ったのち
話し始めた
「マリス、お前は最初の日、俺が人足たちと
橋の上でやりあった場面をずいぶんと詳しくみていたんだな
まだあいつらが襲う前から俺が構えたこともな
まるでその場でなにがおこるか知っていたかのようだぜ」
俺は続けた
「サンタナ町で警護兵どもに追われたときもそうだ
あの時、ちょうど俺達を待っていたかのように
タイミングよく船を出していたよな
まるで俺の行動を逐一知っていたかのように」
「その夜もそうだ
おっちゃんが死んだことだ
おっちゃんが酔ってお前を手篭めにしようとした・・
それで仕方なくお前は岩でおっちゃんを撲殺した・・
お前はそういう話にしたかったようだな
だがな・・」
【鷹は陽に背きて】27
俺は言葉を切って、マリスを見る
マリスは表情を変えず、火を見ていた
「俺はあの時血まみれのおっちゃんの死に顔を見た
おっちゃんの口元は嘔吐物で汚れていたんだ
死に顔も苦悶に満ちていてな
あれは不意に頭をかち割られて死んだんじゃない
毒物・・おそらくは果樹酒か・・で苦しみ息絶えたんだ
岩での一撃は死んでからのカモフラージュだろう」
「マリスの上着の裂け方、あれも不自然だった
裂け方がキレイすぎる
とても暴れながらできる裂き方じゃあない
自分の手でやったのだろう」
マリスはかすかに体を震わせている
「女を買ったときもそうだ
俺はお前があそこまで体を交わらせるのを
拒む理由は分からない
ただ、お前が娘に渡したフォエルバッハ王朝の大金貨、
あれはどう考えても不自然だぜ
若い修行者のはずのお前が持てる額ではない」
「そして今日だ
お前が教えてくれた道を進んだら襲撃を受け
まんまと敵の穴に連れ込まれたわけだ
そして(「なぜ俺の分にまで・・」)という言葉
本当は俺の白湯にだけ
しびれ薬が入っている手筈だったのだろう
これは察するに・・・」
その時である
マリスが立ち上がった
「いや・・・さすが、だんなだ
よーく見ていらっしゃる
分かりました
すべてを告白しましょう・・
そのあとはだんなのご自由に」
【鷹は陽に背きて】28
「だんなに見ていただきたいものがあります」
マリスは肩口からマントを脱ぎ落とす
そのまま纏っているものを脱ぎはじめた
焚き火の灯りが夕闇にマリスの裸体を映し出す
細く引き締まった体であった
傷が多い
とくに右の肋骨部分には深いきり傷があった
乳房は女性的な丸みを帯びている
蕾のような小さい乳首がつんと勃っていた
そして・・
「マリス・・」
俺は言葉を失った
俺は視線はマリスの下腹部にあった
年の割には未発達なペニスがある
だが同時に女性しか持たない陰部もみとめられた
「ご覧通りです・・・俺はこの罪深い体とともに生きてきました」
半陰陽・・俗にいうフタナリというやつだ
ひとつの肉体に男性器と女性器を備えているのだ
世界的にみられる生態現象である
だがその受け止め方は地域により大きく異なった
ある地域では神の子として崇拝された
他の地域では悪魔の化身として親もろともに迫害を受けた
【鷹は陽に背きて】29
マリスは前者であった
マリスが生を受けたのは、
ここよりはるか南の漁村である
貧しいが平和な村であった
異形の海神を信仰し、
ある地域では「障害」と呼ばれるものも
大切に扱われていた
マリスも男性性と女性性を有する神の子として
周囲からは崇拝の対象であった
もっとも幼きマリスにはどうでもよいことだった
ただ、他の兄弟と分け隔てなく愛情を注いでくれた
両親を心から愛していた
しかし、そうした黄金時代はやがて終焉を迎える。
それはマリスが9歳のときのこと
突如、数百の騎馬隊が村を襲撃したのだ
巨大な日輪の紋章を空に掲げた一団である
巨大な勢力を持つラメイシャ教団であった
彼らにとって信じるべきものは太陽とその化身たる法王であった
そして無知蒙昧なる異教徒は教育すべき存在であり
それが叶わぬときは滅失せしめることが
示すべき神の愛であった
村は焼き払われた
逃げ惑う村人に槍を突き刺し、火を放つ兵士の表情は
神の教えを全うすることへの恍惚感に溢れていた
もっともすべてのラメイシャ教徒が生真面目な信仰者ではなかった
現世の利益のために、商売道具として帰依するものも多かった
彼らにとって教団の布教活動はまさに「商売」であった
マリスとその妹は虐殺を免れた
そして「戦利品」として連れさらわれたのだ
【鷹は陽に背きて】30
その後の数年をマリスは見世物小屋で過ごした
完全に「動物」扱いであった
見世物の獣らと同じ部屋に寝た
たとえば物を渡されるときのこと。
渡す者はわざわざ一度地面に落とすのだ
それをマリスは拾って、恭しく頂く
「手渡し」というものが許されなかった
他方、マリスの体の発育は進んだ
ペニスの肥大化とともに月の病も起きた
偏頭痛に悩まされることが多くなる
見世物小屋の住人たちは、芸を仕込むと称して
その体を蹂躙した
むろん恋愛というものではない
なにしろ見世物たるマリスを犯すことは
「獣姦」なのだから
やがてそんな生活も終わりを迎えた
一人の身なりの良い紳士が見世物小屋にやってきたのだ
社会実験としてマリスを買い取り、教育を施したいというのだ
重い金貨の袋が5つ、
見世物小屋の主人の手に渡った
【鷹は陽に背きて】31
マリスの体は磨かれ、美しい衣装を与えらた
見た目は育ちのいい貴族の子弟にしかみえない
マリスを買い取った紳士はゾルタークと名乗った
ゾルタークの屋敷には他にも多くの子供がいた
ゾルタークが諸国を回り集めた子供であった
マリスは彼らと共に教育を受け、遊んだ
マリスは生まれた村に戻ったかのように
日々を楽しんだ
ゾルダークは常日ごろ、子供たちに説いていた
「お前達はいつの日かここを巣立つのです
そして広く社会に貢献するのです
すでにお前達には痛ましい過去はありません
あるのは満ち足りた現在と輝かしい未来なのです」
マリスはいつも目を潤ませ、聞き入った
マリスは誓った
自分がここを出たら、大きく社会のために働こうと
特に自分のような境遇のこどもを救おうと
【鷹は陽に背きて】32
2年ほどたったある日
マリスはゾルダークに呼ばれた
いつにも増して着飾ると馬車に乗せられた
「いよいよだ」
マリスは胸の高鳴りを抑え切れなかった
「さる郷士の方からお話があってな
お前を養子に迎えたいというのだ」
ゾルダークはマリスを見もせずに述べた
馬車はある屋敷の前で止まった
「こちらですか?ゾルダーク様?」
ゾルダークは答えなかった
そのまま使用人の案内で屋敷に入る
主人はいなかった
だがゾルダークは構わず、階段を下っていった
(何かおかしい)
マリスはさすがにいぶかしんだ
地下へ続く階段はらせんになっていた
やがて幾重もの人の声が木霊してくる
あたかも地下で舞踏会でも催されているかのようだ
やがて重厚な扉が見えた
マリスは全身に鳥肌がたった
震えを隠し切れない
使用人が2人がかりで鉄の扉を開ける
「ここだ・・」
ゾルダークはマリスの背を押した
【鷹は陽に背きて】33
「うああああっ!」
マリスは叫んだ
視界には地獄が広がっていた
地下の間は広かった
大理石の柱が無表情に並んでいる
そして真紅のじゅうたんの上では
何組もの人間が全裸でからみあっていた
男どうしのペアもあった
輪姦もあった
マリスは目を疑った
よく知った顔がたくさんあるのだ
みんな一足先にゾルダークのところを巣立った子供たちであった
彼らは一様に犯されていた
犯しているのはみな肥満の老人であった
高齢の女性もいる
彼女らも恥ずかしげもなくしなびた裸体をさらし
美しい少年に奉仕させていた
「ふふ・・喜べ・・ついにお前が役に立つ時がきたのだ
社会にその存在意義を還元するときがきたのだ」
ゾルダークは大きく笑った
いつのまにかマリスの後手は縛られていた
そのまま衆目の前に引きずリ出される
【鷹は陽に背きて】34
「みなさま、大変長らくお待たせしました
かねてから予告しておりました
あの両性具有の少年につきまして
ついに「熟成」が完了しました
どうぞご賞味のほどを」
ゾルダークは壇上で高らかに述べる
老人達はそれまでの相手を放り投げ、アリのようにむらがった
マリスは泣いていた
ズボンの前には大きな黒いしみをつくっている
ゾルダークはマリスを見た
そして耳元でささやく
「よくぞ頑張った。
お前のような人外が今まさに社会の役に立とうとしているのだ
ここのお方たちは、さる王国の元老院の方たちでな
非常に高尚なご趣味を持っていらっしゃる
お前は今日よりこの方々におつかえするのだぞ」
マリスは赤じゅうたんの上に投げ出された
せまりくる無数の手と性器
マリスは喉がちぎれるほどに叫んだ
【鷹は陽に背きて】35
その日もマリスは奉仕に出されていた
マリスは四つんばいになっていた
うしろから鶏ガラのような細い老婆がのしかかっている
その腰には宝石を埋め込んだベルトを巻かれていた
ペニスバントである
先端は双頭の張り子になっており、
片方はマリスの膣に
もう片方は自分の膣にめりこませているのだ
マリスはのけぞっている
声は出ない 喉がかれているのだ
老婆は氷のような表情で、マリスの美しい金髪をつかむ
そしてそれを舐め始めた
マリスの前方には肥満体の老人がいた
顔には大きな黒いシミができている
マリスの顔に向けてペニスをしごいている
「よいよい、人外の化け物よ
これよりもったいなくも値千金の黄金の水を賜ろう」
マリスの顔に黒ずんだ尿が放出された
マリスは口を開け、それを受けた
そのまま顔を床にこすりつけ
こぼれた尿をなめる
こうしなければ、折檻されるのだ
おぞましい乱交は夜通しおこなわれる
昼間はマリス達閨奴は地下牢につながれた
食事は日に2回
手つかみを強要された
奉仕の前には湯で体を清められた
マリスの目はすでに光を失っていた
死ぬまでこの醜い老人達に奉仕するのだ
気が狂い自殺するか、虐待で殺されるか
いずれにしても地獄だ
マリスは考えることをやめていた
ただ子供の頃に覚えた歌をほうけた表情で
繰り返していた
【鷹は陽に背きて】36
それは夜も更けた頃に起こった
激しい振動が屋敷を襲う
無数の足音が地下に向かっている
「ぎゃああ・・」
鉄の扉のむこうで叫び声がする
老人達は騒ぎ始めた
何者かが鉄の扉を押し叩いている
しばらくして鉄の扉は打ち砕かれた
鉄の扉を壊し、背徳の間に入ってきたのは
醜いオーガの巨躯であった
門番の頭を片手で砕くと、咆哮をあげる
次に入ってきたのは小柄な老人である
「はは・・どうやらお楽しみのようじゃったの
真にあいすまんが、こちらも仕事じゃて
ここにいる御仁はみな死んで頂こうかのお」
悠々と述べると 両手の剣を振り上げる
それを皮切りに次々と黒い装束のものども押し入ってきた
右往左往する背徳の間の住人に
刃をふりおろす
あとは阿鼻叫喚の地獄であった
「老師、子供たちはいかにしましょうぞ?」
「うむうむ、彼らは身寄りのない邪宗門
ここで天に召されることこそ神の慈悲であろうよ
・・・・殺せ」
老人は終始笑顔であった
のんびりと凄惨な虐殺の風景をながめている
ふとマリスに気がつき、動き出す
「おお・・これはこれは珍しい
半陰陽とはのぉ・・ほほ
神も時に戯れた造形をなさるものよ」
老人の右腕がわずかに動いた
マリスに小水を飲ませていた老人の首がゆっくりと落ちる
「どれ、お使いになるかな?」
老人はマリスに長剣を渡した
マリスの目に急激に光が戻る
マリスを犯していた老婆は震えたまま、後ずさった
股間にはマリスの愛液と血で濡れた擬似男根が
醜くそびえている
マリスは彼女に剣を振り下ろした・・何度も何度も
老人は手をたたいて喜んだ
【鷹は陽に背きて】37
老人の率いる一団は暗殺部隊であった
マリスはその場で入団した
それより他に道はなかった
マリスに与えられた役割は「仕込み」であった
事前に標的に接近しスキを作るのだ
あるときは商人の子息に
あるときはきまぐれな貴族の娘に
マリスはその美貌で次々に役割を演じた
貴種流離譚の王子を演じたこともある
標的は男女を問わず
マリスの美貌に魅了された
そこには必然的にセクシャルな手法がつきまとった
しかしマリスは両性具有であることを
悟られてはならなかった
そのため密事はいつも夜の闇のなかで行われた
性の交わりそのものには、
底知れぬ嫌悪をもっていた
連想するものは「虐待」や「調教」そして「隷属」
ただ「仕事」として淡々とこなした
先日の若い売春婦に対する露骨な嫌悪は
ここらに起因しているのだろう
組織の中での地位は低かった
だがいままでのような「虐待」はなかった
長である老人に見初められたからである
老人はバイセクシャリストであった
激しくマリスの膣を蹂躙することもあれば
みずからの肛門に挿入を求めることもあった
マリスは性玩具としてはこの上ない存在であった
他方、仕事においてはあくまで補助者にすぎない
依頼主の顔を見る事はなかった
ただ老人からの命令を忠実に実行することだけだった
【鷹は陽に背きて】38
「今回もそうです
老師から言われた通りに
あの橋の付近で待機していました
だんなのことを見張れと
橋での襲撃が失敗したあとは
とにかくだんなに追尾し隙を見出せと言われました
あとはご存知の通リです」
「おっちゃんを殺した理由を聞きたい」
「だんなを殺すことに邪魔な存在だったからです
仕込みのうちです」
俺は何も言わなかった
マリスの長い回想は終わったようだ
表情は晴れ晴れとしていた
「これが私のすべてです
あとは・・そう・・この場で殺していただくだけ
そうすれば私の人生は終わります
仲間にも見捨てられた今
どうせ次も地獄が待っているでしょう
今までと同じようにね・・
ならば生きている必要はありません
どうぞ・・殺して・・」
マリスの目から涙がこぼれた
俺は仕込み杖に手をかける
その刹那、一筋の剣閃が走った
【鷹は陽に背きて】39
「だんな・・・・」
マリスは唖然としていた
俺はマリスを斬らなかった
刃はマリスの顔に剣風を当てただけで
元の仕込みの鞘に戻っている
「殺す価値すらないぜ、今のお前は」
マリスは俺をじっと見ている
「お前の話を聞けば、絶望ばかりの人生だったそうだな
生きるだけ地獄が待っているような
ではなぜ今も生きてるんだ?
いくらでも死ぬ機会はあっただろう
自分で死ぬのは難しくない
自分が苦しめばよいだけだからな」
マリスは震えていた
危険な表情であった
「ひどい言い草に聞こえるかもな
でも考えたことがあるか?
なにがお前の中の何が生かさしめてきたかをな」
俺はマリスの顔をみた
マリスの表情が変わった
何事かを考えている顔だ
「俺が思うにそれは復讐心かもしれん
お前の故郷を滅ぼした教団や
むごい運命をもたらしたゾルダークとかいう輩へのな
この俺の生きている理由もそんなものさ」
【鷹は陽に背きて】40
マリスは大きく目を見開いた
俺はその瞳をのぞきこむ
「むろん生きる理由によしあしはない
ただ、最近俺は思うんだ
復讐のためだけでは不十分だとな
むろん、復讐を誓った相手を許すことは生涯ない
それはしなくていい
ただ復讐以上の生きる理由がないと
結局はそいつらに負けたことになるんだ
たとえ復讐を遂げてもな
なぜならそれしか人生を描けなくなってしまうからだ
人生はそもそも俺だけのものだ
そであるのに復讐の名の下、そのすべてを憎い相手に注ぎ込んでいるのだ
皮肉だろ?」
マリスは顔を覆い崩れ落ちた
声をあげ泣いている
俺はその体にマントをかける
「少し蛇足だったな
ともかくだ、マリスも考えてみな
考えぬいた上で殺して欲しければ
そのときはまた言え」
俺はマリスに背を向けると手枕のまま目を閉じた
マリスのすすりなく声が延々と聞こえた
【鷹は陽に背きて】40
ろうそくの火が揺れる
黒ずくめの射撃者はじっと
自らのボウガンを見ていた
片腕で扱える小型のものだ
これで何人の命を奪ってきたことか
彼の名はアラン
老師なきあとの暗殺団では
実質的なトップであった
ここは暗殺団のアジトである
建物は教会の地下を利用している
教会は治外法権だからだ
今、アランは危機に瀕していた
たった1人の放浪者を殺し損ねている
それどころか暗殺団のリーダーたる老人も
失っている
依頼主は業を煮やし
契約の解除を告げてきた
暗殺契約の解除というのは
大変意味が重い
この世界での信用を失う
そればかりではない
暗殺者は依頼主の黒い部分を知っているのだ
今度は自分達に暗殺の手がのびることになる
口封じのためだ
ふと、アランはボウガンを入り口に向けた
そこには一つの影があった
「マリス・・貴様生きていたのか
よくもおめおめと戻ってきたものだ!
死に損ないが!」
「はは・・アラン様
おあいにくさまでしたね
まぁ・・見ればずいぶんとお悩みのご様子」
アランはボウガンを放つ
矢はマリスの足元に刺さる
「黙れ!貴様のせいだ!」
だがマリスは笑みを浮かべたまま
アランに歩み寄る
ろうそくの灯りがマリスを照らした
アランは思わず、息をのんだ
マリスは白いドレスを着ていた
胸元が大きく開いている
束ねたブロンドの髪はおろしている
妖しい笑みを浮かべている
【鷹は陽に背きて】41
「ご安心くださいな
あの男は今、私の手の中におりますの」
「何?どういうことだ?」
アランは猛禽類のような顔を歪ませる
「ふふ・・あの男に連れさらわれた晩
彼は私の告白に同情したのか
私を殺さなかったのです
そればかりか私を抱いて・・
あくる日、私を自由にしてくれたのです
ふふ・・彼も所詮男」
マリスの言葉使いや表情は
たおやかな女性そのものであった
組織の中ではそのように強いられていた
「ふふ・・アラン様
やつはこの町に来ます
ここで私と再会する約束をしたのですから
必ず彼は来ますよ
これは良い知らせではありませんか?」
「ふん・・なるほど・・」
アランは鋭角的なあごを撫でる
それが本当ならば勝機だ
マリスはさらに身を寄せた
ボウガンにかけられたアランの手に
自らの手をそっと重ねる
アランは拒まなかった
「分かった・・今夜、再び依頼主にあうことになっている
お前も一緒に来い
今のことを説明申し上げて、契約を継続してもらおう」
「ありがたき幸せ
このマリス、全身全霊をつくしますわ」
マリスは艶やかな視線をアランに送った
冷静沈着なアランが息を飲んでいる
マリスはゆっくり肩口からドレスを脱ぎ落とした
細身の美しい裸体を露わにする
「アラン様、老師なきあとこの体はあなた様のもの
私はしょせん、両性具有の人外
強きものの庇護なしには生きてゆけません・・」
アランは立ち上がった
そのままマリスを押し倒す
マリスは艶やかな吐息で応じた・・
【鷹は陽に背きて】42
「なるほど・・ならば最後の機会を与えよう
貴様らの命をもってして暗殺を成し遂げる
この言に嘘りはないな?」
「はい!偽りはございません」
ひれ伏したアランとマリスは
鋭く返答する
目の前の大椅子には依頼主が鎮座していた
肥満体である
豪奢なシルクの寝巻きを着ている
顔には仮面をしていた
不気味に笑う太陽を象った仮面である
声はくぐもっていはいたが
低くよく響く声だ
「ご安心めされ、ゲルバリル神父様
ついにあの男への仕込みが終わりました
残るは我らが総力をあげて嬲るだけ
老師の仇でありますれば容赦はいたしません」
マリスは瞳を大きく開いた
軽い震えが体を襲う
マリスはこの場ではじめて依頼主を知ったのだ
今回の暗殺の依頼主はゲルバリル神父であると
それはあの男が知りたがってたこの国の
実質的な権力者の名である
そこにはどんな因果があるのか・・
「承知したぞ
・・おや・・今夜の宴の用意が整ったようだ
どれ、貴様らも参れ
暗殺成功の前祝いといたそう」
「はっ、恐悦至極にございます」
アランとマリスは再び、頭をさげる
【鷹は陽に背きて】43
マリスの震えが止まらない
今すぐにでもこの場を離れたい
だがそれは許されない行為である
隣のアランも似たようなものであった
まばたきもせず宴の様を見ている
招かれた大広間には料理はなかった
ただ一組の男女が全裸でつながれていた
男は中年であった
髪はボサボサに乱れ、やつれた表情をしていた
体つきは強健であった
女は少女であった
まだ固さの残る細身の体を晒している
必死に体を隠そうとしているが
手の拘束によりそれは叶わない
「うむ、これはなかなか
さぁ宴をはじめぃ!」
ゲルバリル神父の号令とともに
男女の拘束はとかれる
背後から罵声とともに警護兵が
両者をたたく
男女はおびえながらも、おずおずと抱き合う
そのまま互いを確かめるように
体を触り始めた
両者とも悲痛な表情を浮かべている
耐え切れず泣き出したのは中年男だった
「ほほほ・・あの男女は実の父娘でな
これからあやつらを絡ませるのだ
あの父親は先物で仕損じた商人だ
寛大なる我輩はあやつに
この饗宴を無事になしとげたら
借金を清算し、新天地での生活を保障することを
約束したのだ」
ゲルバリル神父は手をたたく
「私は何よりこの饗宴が好きでな
ふふ・・あの男を見ろ
顔は道義的に悲痛さを訴えているが
あんなに勃起をしているではないか
自分の実の娘のハダカに欲情しておるのだよ
ああ・・たまらん・・ああ」
事実、やがて中年男は娘のふとももを開くと
いきりたつペニスを挿入したのだ
娘は壮絶な叫び声をあげる
【鷹は陽に背きて】44
突然、ゲルバリル神父は立ち上がった
隣に控えた小姓が2人がかりで
その衣服を脱がせる
ゲルバリル神父はのしのしと
絡み合う父娘に迫った
警護兵は娘にのしかかる父親を引きずり離した
父親は勃起したペニスを晒したまま
何事かを叫んでいる
そのペニスには白濁の液体がからみつき
光沢を帯びていた
だが次の瞬間、怪鳥のごとき叫び声をあげる
警護兵がそのペニスに斧をふりおろしたのだ
それを見た娘も叫びそうになる
だが声が出ない
後ろからゲルバリル神父が首をしめているのだ
喉元を圧迫しているのだ
さらにゲルバリル神父は自らのペニスを
娘の膣にめりこませている
「不埒な畜生どもめ
貴様らにはかかる神の裁きを与えようぞ!」
やがて娘は目の光を失い口から血を吐く
「おお・・たまらん
死ぬ直前の最後の締め付けはまさに至高
おおおお・・おお」
ゲルバリル神父は犬のようにほえると
娘の首から手を離す
娘の首は力なく折れ、倒れる
父親は絶叫した
その股間からは恐ろしいほど血が滴り落ちている
それにも構わず娘の元に向かおうとする父親
だがそれは叶わなかった
警護兵が父親の首に斧を振り下ろしたのだ
【鷹は陽に背きて】45
「大いなる太陽神よ、この罪深き父娘を
その慈悲なる光で照らしたえ
エス・ラ・ヌーラ」
ゲルバリル神父は恍惚としながら天を仰ぐ
だがその表情はすぐに曇る
「ああ・・しかし足りぬ、満たされぬ
やはりかって見た美しき母子には及びもせぬ
ああ・・ああ・・ああ」
ゲルバリル神父は悲しげにつぶやく
そのまま精を放ったばかりのペニスをしごく
何事かを想起しているのだ
アランやマリスの存在も眼中ないらしい
やがてうめくと膨大な量の精液を放つ
一度射精したものとは思えぬ量だ
小姓は湯に浸した布で後始末をした
「アラン、マリス!」
「はい!」
突然呼ばれて返答をしたのはアランのみ
それも声を絞りだすのが精一杯であった
暗殺者の彼をしても衝撃的な光景であった
「あの男をただ殺すだけでは許さぬ
この場に連れてまいれ
顔を・・顔をみたい
あの時の子供の成長した顔をな」
【鷹は陽に背きて】46
「全くおろかな男だ、お前は
まんまとマリスの言に騙されおって
ふふ・・まぁ感謝しているぜ
これで俺の頭領就任は
華々しいものになるだろうよ」
アランは俺に罵声をあびせる
隣にはマリスが笑みを浮かべている
俺は後手でしばられている
鷹の装飾のある仕込み杖も奪われた
俺はあの夜の約束通り、マリスに会いにいったのだ
向かったのはラチュル町
このあたりでは一番大きい
マリスはそこに暗殺団のアジトがあるといった
そしてもう一度マリスはそこに紛れ込み
依頼主の情報を聞き出すといっていた
俺に協力してくれるわけだ
もちろん俺は賛同した
今回の襲撃の真相を知るよい手段だ
【鷹は陽に背きて】47
最もそれがなくてもマリスには会いたかった
俺はあの夜マリスを抱いたのだ
背を向けて眠り始めた俺に
マリスは静かに寄り添ってきた
そして抱きついたのだ
言葉はなかった
俺は拒まなかった
ふとマリスに愛おしさが沸いてきた
マリスの告白に対する同情以上の感情だった
久しく忘れていた感情である
そのまま俺たちは肌を重ねた
お互いの体を確かめるように
愛し合った
マリスの目からは涙がこぼれていた
男はダメなものだ
一度情を交わすと無碍にはできない
特にマリスとは魂すら通わせた間柄だ
俺たちは町の入り口で落ち合った
離れていたのは3日である
ずいぶん長い間に思えた
不思議とラチュル町への道中には
敵の襲撃はなかった
あの弓を操る黒ずくめの襲撃者は
まだ生きているはずなのに
マリスは俺を宿に案内した
重要な情報を得たとだけ述べた
部屋のドアを閉めるなり
マリスは抱きついてきた
柔らかい唇を俺の唇に近つけている
大きな瞳は潤んでいた
俺は何も言わずマリスをベッドに運んだ
しかし・・・
目が醒めればこのザマであった
俺は自分の甘さに怒りをおぼえた
だがどうしよもない
【鷹は陽に背きて】48
アランは俺の前に立ちはだかった
そして俺の顔を蹴り上げる
口の中で歯が折れ、俺は血を吐いた
「ざまあねぇな」
アランは腹の底から絞り出すような声をしている
俺は荒縄を振り切ろうと暴れた
しかし周囲の黒装束どもに押さえられる
アランは再び俺を蹴ろうとして・・・
「おやめくだい、アラン様
依頼主の元に連れてゆくのでしょ?
この男の顔を傷付けるわけにはゆきませんよ」
マリスはアランの肩に手を置いた
そのままアランに抱きつく
「ふむ・・そうだな
貴様にはこれから連れてゆく場所がある
そこで存分になぶってやるからな」
アランは俺に唾をはきかえると
マリスと唇を重ねた
そのまま舌をからませている
まるで俺へのあてつけのようだ
俺は目を閉じ、顔をそむけた
切れた唇からは一筋の血が流れている
【鷹は陽に背きて】49
「はははは・・ついに・・ついに来たか」
俺の目の前の大椅子にいる男は笑う
嬉しさのあまり体を震わせている
こいつが襲撃の依頼主か
俺の背後ではアランとマリスを先頭に
数名の配下が平伏している
「うむ・・その目だ・・・覚えておるぞ
あの時と変わらぬ目だ」
俺はじっと男を見た
何か俺の記憶の奥をかきみだすようなこの感覚
奴は何者だ?
やおら男は不気味に笑う太陽の仮面を取った
素顔が露わになる
男には眉毛がなかった
髪はなく、目は極端に小さかった
男は頬の脂肪を震わせて、笑う
「ご健育あそばれまして恐悦でございますな
アクトレーザス王子!」
「貴様・・・・・リチャルドス卿!」
俺は眼を見開き、叫んだ
【鷹は陽に背きて】50
「ほほほ・・ずいぶんと懐かしいお名前を
今の私の名前はゲルバリルでございますよ
現在は太陽神に使える敬虔なる神父
いやぁ・・なにもかもがお懐かしゅうございますな、王子」
「裏切り者が・・父上を母上を・・よくも」
以前、俺が年増の売春婦に
ゲルバリル神父のことを聞き出したのを
憶えているだろうか
あの時、売春婦は言っていた
古くからある噂によれば
ゲルバリル神父はもともとこの国の者ではないと
ある高地民族の国の大臣であったと
そして国を売り、信仰を捨て、太陽神に帰依することで
現在の地位を得たのだと
それは本当だったのだ
「最近、こんな風の便りを耳にしましてな
ダゴン卿とジャニエラ伯が相次いで惨殺されたと
しかもその周囲には必ず、
鷹の杖を携えた放浪者の影があったそうで」
ゲルバリル神父、いやリチャルドス卿は言葉を区切る
「さらにその放浪者がなんと我が領国にも
接近しているというではありませんか
私は背筋が凍りましたよ
まぁ、もっとも私の正体は割れていなかったようで
そこは胸を撫でおろしましたがな」
リチャルドス卿はそう言うと俺を見た
もはや笑ってはいなかった
「王子、あなたの復讐の旅は今宵で終わりです
さぁ国王夫妻の御許へ!」
【鷹は陽に背きて】51
アクトレーザス・フォン・ハイルランド
俺の本当の名前である
険しい山々に囲まれたハイルランドの王家に生を受けた
厳しい父と心優しく美しい母のもと
俺は将来の王として「鷹の教え」を
学んで育った
だが俺が12のときのことだ
日輪の旗をかかげた騎馬隊が
俺の国を襲撃したのだ
当時拡張をはじめたばかりのラメイシャ教であった
国王たる俺の父は改宗を拒否
全面的に対抗をした
父は「鷹の教え」を守る気高い戦士の長である
だが抵抗むなしく父は極刑に処された
王都は焼き払われ、日輪の旗がなびいた
逃げる俺と母を助けてくれたのは
一部の臣下であった
彼らは口をそろえていった
「ここは一旦降伏しましょう
今は生き延びることです
そしてそう遠くない未来に
再び王家を再興しましょう
アクトレーザス王子を王として
鷹の教えは不滅です」
【鷹は陽に背きて】52
国王たる父の元には「7賢」と呼ばれる
大臣がいた
そのうち4人は父とともに戦い、果てた
残ったのはダゴン卿、ジャニエラ伯
そして今対峙しているリチャルドス卿であった
彼らは武勇というよりは知略で
王家を支えてきた
偽りの降伏で王の血筋を守るという計略は
彼らならではのものであった
俺と母はダゴン卿の用意した館に匿われた
馬車の荷台に隠れ
夜の闇を縫って移動をした
あの当時の俺に恐れはなかった
必ず日輪の軍団を倒し
再び鷹の王国を復興させると誓っていた
心優しき母は存命である
それがなによりの希望であった
「ここが仮の王の間でございまする」
ダゴン卿は館の地下に俺たちを案内した
「ダゴン殿、これは一体?」
母は訝しげに問うた
そこには仮の玉座はなかった
あるのは鎖と桶、そして鉄の格子
「ここが仮の王の間にございます」
ダゴンは無表情で繰り返す
その瞬間、無数の兵士が地下におりてきた
そして槍を俺たちに向ける
俺に武器はなかった
だが母を守るために拳を握る
母はそれを制して
「ダゴン殿、其の方はまさか・・」
ダゴンは笑った
「ふふ・・王妃様、私めはダゴンではございません
今の名はクリフトロイヤ
敬虔なるラメイシャ教徒にございます」
【鷹は陽に背きて】53
「なんだと!?」俺は気色ばんだ
母は美しい顔をゆがめている
必死に何かに耐えていた
「国王は素晴らしきお人でしたな
ただ・・辺境の地に住み過ぎたせいか
時の流れに少々疎かった
ゆえに強大なるラメイシャ教団に
抵抗するなどという愚行をなさったのです
鷹の教えなどとのたまって・・ふふ
そして・・」
ダゴンは更に声を強くした
「配下を見る目も曇っていらした
みな鷹の教えの下に一致団結して
国を支えているなどという甘き幻想
我とジャニエラ伯、リチャルドス卿の3名が
ずいぶん前からラメイシャ教と通じていたことも
ご存知なかったようだ・・・ふふ」
「裏切り者!恥を知れ!」俺は叫んだ
「黙れ、小僧!
聞け、我々は王妃と時期国王たる王子の首を
ラメイシャ教に進呈することを命じられている
それもってラメイシャ教への忠誠とみなすとな
だが、安心しろ・・」
ダゴンはゆっくり俺と母を見た
「すでに首は進呈しておる
お前達に良く似た母子のものをな
顔を激しく焼いておいたのだ
教団の連中も怪しまなかった、ふふ」
ダゴンは手をあげる
槍を構えた兵士は俺たちを向かってくる
そして俺たちの腹や背を打つと縛り上げた
多勢に無勢
俺は抵抗できなかった
ダゴンは目を見開き、叫んだ
「貴様らを生かした理由・・ふふ
それは我ら3臣下の高尚なる趣味にある
求めるのは下克上の悦び
気高く美しき王家の母子を死の間際まで
陵辱するのだ」
王妃たる母の嗚咽が聞こえる
【鷹は陽に背きて】54
俺はうっすら目を開けた
その瞬間、激しい痛みがよみがえる
口、顎、胸、わき腹、下腹部、そして肛門
3人の逆臣は容赦なく俺の体を蹂躙した
俺は壁に体をこすりつける
地下の壁の冷い
こうでもしないかぎり、痛みで気が狂いそうだ
俺の前歯は折られていた
息をするたびに痛みを感じる
涙がにじむほどだ
これは俺が口淫を拒んだためだ
奴らは容赦なく鉄の棒を口にねじこんできた
向こう側に母が見える
その美しく透き通るような肌は
逆臣どもに汚されていた
薄く形の良いく唇には、リチャルドス卿のペニスがねじりこまれている
豊かで張りのある乳房もつぶれんばかりに握られていた
背後から腰をふっているのはジャニエラ伯である
犬のような顔は恍惚のあまり蕩けそうになっている
「これは皆様方、なかなかのご盛況ぶりで」
ダゴンは杯をあおりながら、その様を眺めている
「さすが、一国の国母たるお方
並みの女とは器量が違いますな
何度、放っても平常心を保っておられる
こちらも発奮のしがいがあります」
ふと、ダゴンは俺を見た
「これは、王子、おめざめで?
いや・・さきほどは失礼した
このダゴン、一番槍として王子の体を
頂戴しましたぞ、
なんたる名誉・・ふはは」
俺は何か叫ぼうと口を動かす
しかし空気が漏れて言葉にならない
床に再び、血がしたたり落ちる
「どれ、お二人とも、
そろそろ例の余興に参りましょうか
私はもう我慢できなくてね・・ふふ」
【鷹は陽に背きて】55
俺は背を蹴られた
そのまま仰向けに寝かされる
全身が痛い
寝返りすら打てない
これ以上何をするのか?
母の首筋には剣があてられていた
何事かを命じられ、目に涙を浮かべている
だが、ゆっくりと立ち上がった
「・・・・・・」
母は俺の前に立った
傷だらけの顔に笑みが宿っている
そして、ゆっくりと俺の体にまたがった
「アクトレーザス、愛おしきわが子よ」
母は俺の体をさする
そのまま乳房を口に当てた
俺は赤子のように吸い付く
母は微笑んでいた
3人の逆臣はまばたきもせずこちらを見ている
母はそのまま、俺の股間に顔をうずめた
優しくペニスをさすり、口に含む
そのままいとおしげにしゃぶった
母はそのままペニスに手を添えると
そこに腰をおろした
そのまま体を倒し、俺にしがみつく
「アクトレーザス、ああ、アクトレーザス
たくましくなったわね・・私は嬉しい・・」
母は涙を流していた
なにもかもが美しい
神々しささえあった
まるで母胎にかえるかのような安心感
俺の脳裏には幼きころの思い出が
走馬灯のように駆け巡った
だが・・・
「た、たまらんわ・・」
ダゴンは狂ったようにこちらに這い寄る
そのまま母を俺から引き倒した
残りの逆臣も群がる
俺はとめどなく涙を逃した
だが動けない
母の狂ったような悲鳴が聞こえた
俺の視界が闇に染まる
それが母との最後の触れ合いであった
その晩、母は警護兵のナイフを奪い
自害したのだ
【鷹は陽に背きて】56
「憶えておるぞ・・そう忘れるものか
我らが催せし気高き鷹の母子の相姦劇
あれほど美しきものをみたことはない
ああ・・ふふ」
目前のゲルバリル神父、いやリチャルドス卿は
うわ言のように笑う
「外道が・・貴様も他の逆臣のように
地獄におくってやる」
俺は低く言い放った
「ふん・・ほざけ
死ぬのは貴様だ、アクトレーザス
どれ、あれを持って参れ」
リチャルドス卿の指示とともに
アランは立ち上がった
手に長い何かを携え、恭しくリチャルドス卿に献上する
俺に一瞥を与えると、不敵な笑みを浮かべた
俺は唇をかみしめる
「これぞ、これ。
鷹の杖か・・ふふ・・未練がましい細工であるのぉ
しょせんは辺境の小国
私は己の判断に今でも感心しておるわい、はは」
リチャルドス卿は頬を震わせながら
俺の仕込み杖を眺めた
いつのまにか、俺の背後にマリスが立っている
俺の首筋に大振りのナイフを当てた
処刑の準備か
俺はうらめしげにマリスを見る
「さきほど、其処もとのアランに聞いたぞ
この杖は刃を仕込んであるそうだな
ふん・・気高き王子が聞いて呆れる暗器ではないか
まぁこれがなければお前は翼をもがれた鷹
どうすることもできまい」
リチャルドス卿はそこで笑みを止めた
「さて・・そろそろお別れですぞ、アクトレーザス王子
国王夫妻の御許へ参られよ
ふふ・・このリチャルドス、あなたさまにお仕えできて
光栄でありましたぞ・・ははははは
さぁ、殺せ!!」
【鷹は陽に背きて】57
「だんな・・今です!」
マリスは短く叫ぶと、俺の手足の結び目に
ナイフを下ろした
そういえばこの拘束もマリスがしたものだった
「恩にきるぜ、マリス!」
俺はその瞬間、跳躍した
リチャルドスもアランも状況を飲み込めていないようだ
俺はリチャルドスの腹を蹴り上げる
前のめりに倒れるリチャルドス
手からは鷹の杖がこぼれ落ちる
「父と母の仇、ハイルランドの仇!
死ね、リチャルドス卿!!」
俺は刃を抜いた
血しぶきをあげて、リチャルドスの首が床に落ちる
その顔は驚愕と恐怖に満ちたものだった
「マリス、貴様!」
アランはボウガンを構えた
他の配下数名も剣を抜く
マリスは逆手にナイフを構えた
「だんな、お見事でした・・」
「ああ・・ありがとな」
俺は刃をむき出したまま、マリスに駆け寄る
【鷹は陽に背きて】58
「なぁ・・アランとか言ったよな、お前は?
アラン、ここは手打ちにしないか
依頼主が死んだんだ
もはや俺たちが争う理由はないはず」
「黙れ・・黙れ・・貴様は殺す!」
アランは爬虫類のように残忍な目をした
怒気にいかつい肩が震えている
その時であった
無数の足跡がこの部屋にせまってきた
警護兵であった
いかつい甲冑を着込んでいる
「国王陛下からの直令である
ゲルバリル神父は病で急死あそばされたことにすると
・・・ゆえにここにいるものは皆死んでもらう」
先頭の兵士が低く述べる
「マリス・・またお願いできるか?」
「はい・・だんな」
マリスは少し笑顔を浮かべると、腰に手をやる
ベルトには小物入れがあり、中には・・・
【鷹は陽に背きて】59
「アラン、貴様もしつこいな・・
そんなにあのジジイの仇を取りたいか?」
俺はつぶやいた
マリスは不安げに俺の背中についている
「黙れ・・老師の仇などではないわ
マリスだ・・マリスの心が本当はお前にあるのが許せん」
アランはボウガンを構えた
俺も刃を抜く
ここは開けた草原である
ゲルバリスの館からは4キロほど離れている
マリスの投げた煙幕のなか
俺たちは館を飛び出した
背後ではアランの配下の暗殺団と警護兵達が
もみ合っていた
俺はその喧騒に参加する気はなかった
リチャルドス卿を殺したのだ
俺の復讐は終わった
それだけで満足であった
俺は恩のあるマリスとともに
夜の道を駆け抜けた
しかし背後から、矢の雨が襲ってくる
アランもまた喧騒を背に一人
俺たちを追ってきたのだ
「アラン様・・・」
マリスは気丈な声で叫ぶ
「もはや私の心はだんな・・いえアクトレーザス様にあります
アクトレーザス様は私を果てない無明から救って下さったのです
私は罪深き体を受け入れ、生きる目的を見出したのです
もはやあなたの元には戻りません
薄暗い闇の世界には」
「黙れ!両性具有の人外が!
生きる目的だと?大層なことを・・
アクトレーザスを葬った後に、よく教えてやろう
貴様は所詮、薄暗い世界を這いずり回る宿命にあることを!」
「おしゃべりが過ぎるぜ、アラン
もう始まってるんだよ」
【鷹は陽に背きて】60
一陣の風が草原を駆け抜けた
月が雲に隠れる
俺は極端な半身に構えた
仕込みの刃をアランに向け突き出す
これでアランのボウガンの標的は限られる
俺の顔か、もしくは肩だ
俺はそのままの構えで駆けた
アランは矢を放つ
シュッ
矢は俺の頬をそぐ
直撃は免れた
俺は構わず距離をつめる
しかしアランは俺に背を向け、距離を稼いだ
その間にに矢を再補填する
アランは振り返った
猛禽類のような顔は残虐な笑いが張り付いている
勝利を確信したのだ
ふいに俺は刃を納めた
アランの動きが一瞬とまる
意外な行動に驚愕したのだろう
それがチャンスであった
俺はそのまま跳躍し、距離をつめる
そして抜刀した
一筋の剣閃が駆け抜ける
そして・・・
【鷹は陽に背きて】61
再び一陣の風が草原を駆け抜けた
雲は流れ、再び明るい月が顔を出す
地に伏したのはアランだった
腰から右肩にかけ一文字に切り上げられている
血の海の中、驚愕の表情のまま倒れていた
俺は手を合わせる
俺は死者に対しては畏敬の念を持っている
たとえ憎むべき仇であってもだ
なぜならそれは明日の己かもしれないからだ
横にマリスがいた
「マリス、これで良かったか?」
「はい・・・これで」
マリスも手を合わせる
そして涼やかな笑みを浮かべた
月明かりのなか、2つの影が重なった
【鷹は陽に背きて】62
俺たちは走った
明るい月の下、どこまでも
はるか遠くに見えたラチュル町も
すでに見えなくなっている
それでも俺たちは走った
復讐と絶望に満ちた世界から逃れるように
そして疲れ果て
太いブナの木の袂に
倒れこんだ
どちらからともなく肌を重ねる
俺はマリスの胸に抱かれている
マリスは母親のように
優しく俺を抱きしめた
そして俺は目を閉じた
深い深い眠りの国に落ちてゆく
俺は夢を見た
俺は一匹の大鷹になっていた
風を操り、自由に大空を翔ける
俺はやがて見覚えのある場所についた
雪の積もった高い山々に囲まれた辺境の地
俺が生まれたハイルランドである
そこには誇り高き王国があった
素朴で気高い民もいた
民は新しき王を迎えていた
玉座は2つ
その一つにはマリスは座っていた
ハイルランド式の質素であるが美しいドレスを纏っている
そして俺はもう一つの玉座に舞い降りた
【鷹は陽に背きて】63
目が覚めた
そこにはマリスの顔があった
優しげに微笑んでいる
「寝ないのか?」
「ええ・・だんなの顔を見ているだけで嬉しくて」
俺たちを唇を重ねた
「マリス・・憶えているか?
初めて抱き合った夜のこと
あの夜が明けるとき、お前は教えてくれたよな
お前を生かしめているものを」
「はい・・私は心の底でずっと秘めていた思いがあったのです
私のような憐れな子供を少しでも救いたいと
そういう世界を作りたいと」
「素敵だぜ、マリス・・
俺のも聞いてくれるか?」
マリスは微笑んで首肯する
「はい、喜んで」
「ありがとうな。俺は、俺は祖国を復興したい
そしてどんなものでも受けいれる平和な国を作る
これが俺の生きる意味だ」
マリスは深く首肯する
「私もすべてを捧げてお仕えします
この命が果てるまで
だんな・・いえアクトレーザス王子」
【鷹は陽に背きて】最終章
東の空が白くなってきた
やがて燃えるような朝焼けとともに
世界は朝を迎えるだろう
太陽がすべてを照らし出すのだ
その大いなる輝きによって
だが俺とマリスはそれを背に向け
西に向かう
俺とマリスの視界に映るもの
それは沈み行く星星と
それに寄り添う半月の月であった
【以上です】
【ありがとうございました】
今更投下に気付いた
大長編乙過ぎるGJ
183 :
名無しさん@ピンキー:2010/03/19(金) 08:20:35 ID:XTJfWyRJ
GJ、雰囲気あるね
いいもの読ませて貰いました
面白いよー
過疎だから反響が少ないけど
ネタスレなのにマジで投下なんかするからこんな事に…
186 :
名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 20:30:39 ID:e023xN5I
いやでも素晴らしい投下だったぜ
というわけこのスレの繁栄を祝ってage
残ってたのか
188 :
名無しさん@ピンキー:2010/06/23(水) 22:58:48 ID:zBza0DoV
保守
189 :
名無しさん@ピンキー:2010/08/22(日) 01:02:59 ID:X0Vswd1t
投下待ち
まさかまたこのスレを目にすることがあるとは……
女は犯せー!
男も犯せー!!
あれ?
あ、主人公がアマゾネスだったらありか…
192 :
名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 00:59:34 ID:CG/3XzJu
わあい!
「高名なる姫騎士様が…戦場で討たれ、装備を剥ぎ取られ犯されていた…
さてこの場合国民達は奮起するだろうね。復讐の為に」
「……まさか貴方、」
「戦いが長引いてほしいと思ってる人は一杯居るってことさ…アンタの見てきた国民の中にもね」
こんなの?
194 :
名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 22:40:09 ID:jEe/6fJZ
素晴らしい作品サンクス
このスレを立てた一番最初のスレの
>>1だが
結局無職生活に飽きて就職活動の末、糞忙しい会社に入ってしまった…
8ヶ月無職期間あったけど、結局無職になってもダメな奴は動かないね