☆☆狩野すみれ兄貴の質問コーナー☆☆☆
Q投下したSSは基本的に保管庫に転載されるの?
A「基本的にはそうだな。無論、自己申告があれば転載はしない手筈になってるな」
Q次スレのタイミングは?
A「470KBを越えたあたりで一度聞け。投下中なら切りのいいところまでとりあえず投下して、続きは次スレだ」
Q新刊ネタはいつから書いていい?
A「最低でも公式発売日の24時まで待て。私はネタばれが蛇とタマのちいせぇ男の次に嫌いなんだ」
Q1レスあたりに投稿できる容量の最大と目安は?
A「容量は4096Bytes、一行字数は全角で最大120字くらい、最大60行だそうだ。心して書き込みやがれ」
Q見たいキャラのSSが無いんだけど…
A「あぁん? てめぇは自分から書くって事は考えねぇのか?」
Q続き希望orリクエストしていい?
A「節度をもってな。節度の意味が分からん馬鹿は義務教育からやり直して来い」
QこのQ&A普通すぎません?
A「うるせぇ! だいたい北村、テメェ人にこんな役押し付けといて、その言い草は何だ?」
Qいやぁ、こんな役会長にしか任せられません
A「オチもねぇじゃねぇか、てめぇ後で覚えてやがれ・・・」
4 :
98VM:2009/05/18(月) 00:21:01 ID:iIEzo+75
こんばんは、こんにちは。 98VMです。
一昨日やっと、あーみん90%ED見れました。
ゲームは発売日に買ったんですが…
で、あーみんの可愛さに悶えながら、突貫工事で書きましたw
前提: とらドラ!P 亜美ルート90%エンド
題名: ローマの祝日
エロ: 若干。
登場人物: 竜児、亜美、北村
ジャンル: ありがちなストーリー。
分量: 8レス
夏ももうすぐ終わりとはいえ、今日は随分暑かった。
だが、東京と違って、こっちは湿度が低いせいか、夜になると過ごしやすい。
俺のアパートがあるトラステベレ界隈は若者が多く、過ごしやすい夜の恩恵を、彼らは大いに受けている。
少々騒がしくもあるが、どこか下町っぽい雰囲気が、俺はとても気に入っていた。
厳しくも楽しい仕事を終えた俺は、足早にティベリーナ島に向かう。 まだ日は沈みきっていないが、この街の治安はお世辞
にも良いとはいえない。
暗くなる前に待ち合わせ場所である、ポンテ・ロットが見える島の南端に着くことが出来たのは、日本から知り合いが来ている
と知って、早めに仕事を切り上げてくれた親方のお陰だ。
そうだ。 小心者の俺じゃなくたって、あいつを一人で待たせてたら、心配になるに決まってる。
なにしろ俺の待ち合わせの相手ってのは、それはもう、飛びきりの美人なんだからな…。
俺がどうしてこの街にいるのかって言うと…。
俺は高校を卒業した後、本格的に料理の道を目指すことにした。
最初は都内のレストランで修行を始めたが、運のいい事に、そこのシェフに目をかけられて、本格的に修行してみないか、
と誘われたのは、もう2年前になる。
その『本格的な』修行場所が、偶々ローマだったって、まぁ、それだけの話だ。
そして、つい2日前。
偶然、そう、本当に偶然、トレヴィの泉辺りを散歩していた俺はあいつに会ったんだ。
今から5年前。 高校二年の冬に別れてから、一日だって、その少女の事を思い出さない日は無かった。
それが、当時の俺が、俺自身とした約束だったからだ。
『一度忘れるくらいなら、もう思い出さなくていい』 …そうかよ。 なら、俺は一度だって、お前の事は忘れてやらねぇ。
その誓いは確かに守られた。 ああ、今この瞬間だって…
黒くシルエットになった石造りの堰堤と川沿いの木々。 まだ太陽が沈んだばかりの空を映すテベレ川は金色に輝いている。
しかし、その輝きすら霞んでしまうような、息をのむほど美しい女を、忘れる筈がない。 忘れられる筈がない。
いつも、俺の心の中にはあいつが、
――― 川嶋亜美が ――― 居たんだ。
ローマの祝日
「おっそーい、高須くん! 亜美ちゃん帰っちゃおうかと思っちゃった。」
そんな台詞を吐きながら、顔は全然怒ってねぇ。
「すまねぇ、待たせちまって。」
「ふふふ。 じゃぁ、亜美ちゃんを待たせた罰でぇ……」
2日前にこの街で再会してから、毎日俺達は逢っていた。
最初の日は、俺の働いてるレストランに行ったが、その後、どうしても俺の腕前が見たいって話になって、わざわざ俺の
アパートに移動して手料理を振舞うことになった。
昨日は昨日で、急に夜に呼びだされて川嶋が泊まっているホテル・エデンに行った。
『昨日のお返しだよ。』なんて軽く言って、ホテル・エデンのレストラン、ラ・テラッツァで食事をご馳走になっちまった。
言ってみれば俺の目標の一つでもある、有名レストランだ。
けれど、川嶋は俺の料理のほうが美味しかったなんて抜かしやがった。
こいつはお世辞なんか言わねぇ奴だから、本当に俺の料理の方が口にあったのかも知れない。
だが、俺にとっては、俺の料理なんか、まだまだ修行が足りないと思わせるに充分な完成度の料理だった。
それもしても、あんな豪華なホテルのスイートに普通に泊まってる川嶋は、社会一般じゃ、やっぱり特別な人間なんだろう。
実際、俺がこっちに来る前でも、女優として成功しつつあった。
俺の中では、それは嬉しくもあり、一方でどこか寂しい気がしてたってのも事実だったんだ。
そして今日はきちんと約束していた。
夏になると、このティベリーナ島と、その周辺のテベレ河畔は綺麗にライトアップされて、露天レストランや、ピッツェリア、
ワインバーから、果ては映画館まで並ぶ。
今夜は二人でこの川沿いを中心に散策しようと決めていた。
川沿いの堰堤は青い蛍光灯が並び、徐々に光を失う空に代わって辺りを照らす。
2000年以上前から川の往来を助けた石橋もライトアップされて、古都の夜に浮かびあがり始める。
それは素晴らしくロマンチックな光景で、夏のローマの風物詩の一つだ。
だが、川のすぐ傍は若干匂いがするので、俺のお勧めはこのティベリーナ島の最南端のワインバーだった。
「日本じゃ、イタリアワインというと、すぐにトスカーナの赤ワインを思い浮かべちまうが、白もいいワインが多い。 特にこの
ビアンカ・ディ・ヴァルグァルネーラは香りもいいし、しっかりした味わいで食事にも合う。 酸味も強すぎず、ブドウそのも…」
「もう、高須くんって、相変わらず、薀蓄好きなんだから。」
「お、おぅ。 すまねぇ、つい…」
「うん。 でも、本当だ。 美味しいね、このワイン。 色も琥珀色がかってて綺麗だし。 こうして光当てると…ほら、見てよ。」
「お、おう! だな。」
「なーにぃ? なーんか適当っぽい返事なんですけどぉ。」
馬鹿いってんじゃねぇ。 綺麗なのはお前の方だって。
「……………」
「な、なんだよ…。」
悪戯っぽい瞳でじっと見つめられて、つい視線を逸らしてしまう。
「ううん。 なんでも。 ……ねぇ、高須くん。 みんなは、…元気?」
みんな… 川嶋の言うみんなってのは誰の事なんだろう…。
「いや、俺もこっちに来ちまったから、殆ど合ってねぇし…… 櫛枝は、お前の方がわかるよな。」
「うん、実乃梨ちゃんは実業団で頑張ってるみたいだね。 この間も新聞に出てたよ。」
「おぅ。 そっか。 ああ、そういえば北村が近いうちにローマに来るって手紙を寄越したんだった。」
「祐作はどうでもいい。」
「お、おぅ。 そうか…。」
「タイガーは… 元気?」
「あ、ああ。 大河は相変わらずだ。 この間、ローマに来てな、無理やり『ローマの休日』めぐりの案内させられたよ…。」
「へぇ。 あいつ一人でイタリアまで来たの?」
「いや、大学の友達が一緒だったよ。 あいつも、大学でいくらか新しい友人が出来たみたいだ。 まぁ、相変わらずの
依存体質だったけどな。 いまでもしょっちゅう泰子のところに行ってるらしいしな。」
「ふふふ。 そうなんだ。 なんか意外と変わってないんだね。」
「だなぁ。 いまだに春田や能登にも手紙を出したりしてるし、みんな本質的には変わらねぇのかもしれねぇな。」
「あたしは… 変わっちゃったよ…」
「え?」
「ううん、なんでもない。」
「いま、お前…」
「あーーーー! そこにあったチーズは?」
「へっ? あ、ああ、今俺が食った。」
「信じらんなーい! それ亜美ちゃんが食べようと思って楽しみに取っておいたのにーー! 弁償してっ。」
「な! んな事、今更言われたってなぁ。 それになんでお前のって決まってんだよ、名前でも書いてたのか?」
「書いてた。」
「即答かよ……。」
いつものように俺をからかう姿は5年前と変わっちゃいない。 だが、さっき一瞬見せた無防備な顔も…
やっぱり5年前と、あの展望台で見せた顔と、……変わっていなかった。
「あーー 楽しかったぁ。」
「ああ。 俺もローマに来て、こんなに夜歩きしたのは初めてだ。」
結局俺達は川沿いをサンタンジェロ城まで歩き、帰りはナボーナ広場のカフェで寛いだ後、古い町並みを通って、最初の
ティベリーナ島まで帰って来ていた。
「あ、もうこんな時間だね。 高須くん、明日も仕事でしょ? そろそろ帰らなくて大丈夫?」
「お前こそ、大丈夫かよ? 無理はすんなよ?」
「あたしは大丈夫。 明日は午後の飛行機でロスに戻るだけだから。」
「え? ロス? 明日戻る?」
「うん。 そっか、高須くんは芸能とか興味ないもんね。 知らないんだ、あたしの次の出演作。」
「あ、ああ。 わりぃ…。」
「いいよ。 なんか、いかにも高須くんらしいし。」
「今度の映画ね、あたしのハリウッドデビューになるんだ。 もちろん、サブヒロインって程度だけど、でも、凄くいい役なの。
ママも、上手く演じられたら、確実にメインヒロインを喰える役どころだって。」
「そうなのか…」
「あたしもね、今回の役は気に入ってるんだ。 ちょっとあたしに似てる気がしてさ…。」
「なんだ、そんなに腹黒いサブヒロインなのか?」 すこし元気が無い気がしたから、挑発してみた。
「はぁ? こーんなに可愛い亜美ちゃんつかまえて、なーに、その言い草。 マジありえねぇっつの。」
「ははは。 わりぃ。 確かに今の川嶋は腹黒いって感じじゃねーな。」
「ふ、ふん。 ま、解ってんならいいけどさ。」
「それより、ロスに戻るって、どういうことなんだ?」
「もう撮影始まってるのよ。 スタジオ撮りは殆どロスなんだ。 それでね、もう3ヶ月も缶詰だったの。 だから、この三日間は
凄く気晴らしになった。 撮影の下見なんて口実で、実際は出演者の慰安旅行みたいなもんなんだよ、今回は。」
「そうか……明日、居なくなっちまうのか…。」
落胆。 いや、解ってた。 川嶋がいつまでもここに居るわけじゃないってのは。
「うん。 でも、またすぐ来るけどね。 今度は本当に撮影で。」
「そ、そうか。 …そうか。 ……そっ、そしたら、そん時にまた、逢えるか?」
「……」
「川嶋?」
「ねぇ、高須くん。 あたし… あたし、もう一度、高須くんの部屋に行きたいな。」
今から? 俺の部屋にって… それって、まさか、そういう事なのか?
いやいや、まさかそんな訳ねぇ。 なに考えてるんだ、俺。
「高須くん?」
「お、おぅ。 わかった。 んじゃ、行くか。」
「…うん。」
部屋に着いて暫くの間は、当たり障りの無い雑談だった。
川嶋は、一昨日も此処に来ている。
だから、特段珍しいものがあるわけじゃない俺の部屋で、振るべき話題が無くなるまでそう長くはかからなかった。
川嶋は俺の部屋に着いてから、少しだけ口数が減っている。
そして、そんな態度が俺の鼓動を容赦なく急かす。
やがて訪れた沈黙。
なにか言わなくてはと思って、慌てて口を開こうとした俺に、囁くような川嶋の声が届いた。
「高須くんは、あたしの事、ずっと考えていてくれたんだよね? 忘れないでいてくれたんだよね?」
「おう。」 再会した日にそれは言った。 そしてそれは紛れもない事実だ。
「ねぇ、もし、高須くんが嫌じゃなかったら…」
「嫌じゃなかったら?」
「…嫌じゃなかったら、あたしの事、抱いて…。」
「!」
心のどこかで予想してはいた。 いや、願望だったのかもしれない。
断れる筈が無い。
憎からず思っている、これほどまでに美しい女性に抱いてと言われて断る男は、最早、雄ではい。
俺の無言を是と取ったのか、川嶋はゆっくりと俺に体を寄せてくる。
薄着の胸元は微かに下着のシルエットを浮かばせて、そのふくらみが俺の腕に触れた。
「シャワー、浴びてくるね。」
川嶋がその薄い壁の向こうに消えて、水音が止むまでの時間、俺は少しも落ち着けなかった。
俺は多分、いや間違いなく、この気紛れな堕天使に惚れている。
そして、彼女も多分、俺の事を好きでいてくれたんだ。
だから、その川嶋とのセックスは望み通りな筈だ。 けれど、何故か釈然としない気持ちが残っている。
それがなんなのか解らず、ただ気持ちの昂ぶりとごちゃ混ぜになって、俺を困惑させていた。
「お待たせ。」
突如、古臭い安アパートに、ヴィーナスが現れる。
バスタオルを体に巻きつけ、濡れた髪をタオルで覆う姿は、邪魔物を身に纏っていてもなお、美の結晶と言えた。
ゆっくりと彼女は歩み寄ってきて、俺の首に腕を回す。
間近で見る双丘は高校の時に思っていた印象より、いくらか小さく見える。 しかし、それでも充分に豊かで、そして
何より美しい形をしている。
我慢できずに、バスタオルを解こうとしたら、頭を胸に抱かれた…。
突然、顔に押し付けられた柔肉に文字通り息が止まる。
顔を上げて、川嶋の目を見る。 それは、優しい色を湛えながらも、底なしの湖のようで。
「本当に、いいのか?」 「頼んだのは、あたしの方だよ?」
その瞬間、理性が頭を引っ込めた。
川嶋の胸元に食らいつくようにキスしながら、バスタオルを剥ぎ取って、ベッドにその華奢なのに豊満な体を放り込んだ。
夢中で覆いかぶさる。
激しく求める俺に、川嶋は怯えもせずに、優しく体を開いてくれた。
「うふふふ。 高須くん、そんなに慌てなくても、あたしは逃げないよ…。」
答える余裕は無かった。
仰向けに寝てもあまり形の崩れない、しかし、手にすれば水のように逃げていく胸はいったいどんな奇跡なのか?
その先端を彩るやや褐色がかったピンクの乳首は早くも硬くなっている。
川嶋も感じてくれている。 そう思うと嬉しくて仕方が無い。
「川嶋… 川嶋…」 無意識に呟く声に、鈴の鳴るような透き通った、それでいて甘美な声が重なる。
「亜美って呼んで…。 今だけで、いいから…。」
その美しい唇を塞いでやろうと、顔を上げる。 しかし、待ち構えていたかのような白い指に頬をとらわれ、川嶋の顔が
近づいてきて… 額にキスされた。
「高須くん、なんだか必死。 もしかして、初めてなの?」
図星を突かれて、多分、俺は顔が真っ赤になった。
「……悪かったな、どうせ俺は奥手な童貞君だよ…。」
「ううん。 すごく高須くんらしいよ。 きっと高須くんは、本当に大切な人とじゃないと、こういう事、しないんだよね?
だからあたし、今、凄く幸せだよ?」
「川嶋は…」「亜美。」
「亜美って呼んで。」
「じゃ、あ、亜美は、どうなんだよ。 慣れっこなのか、こういう事。」
前半は恥ずかしさ、後半は胸が痛い。 そのせいで少し声に棘が生えてしまった。
「………慣れっこじゃないけど、初めてじゃないよ。」
幻想だって解ってた。 俺が始めての男だったらいいなって、そんな思いは幻想だって。 でも苦しい。 こんなにも、痛い。
表情に出てしまったのか、亜美の表情も少し曇る。
「ごめんね。 白状すると、あたし、高須くんの事、忘れようとしてたんだ……。」
喋りながらも、亜美の白い指は俺の背中や胸をするすると這って行く。 時折、唇が俺の胸に、腕に、頬に、首に、触れる。
「忘れるって… お前、それ」
「だって、辛かったんだ…。 あたし、そんなに強い子じゃなかった。 自分が思ってるほど…」
「知ってる。」 「…!」
そうだ。 俺は知っている。 今は、知っている。 こいつは、何時も何時も嘘ばっかりついて、自分の心を見せてくれない。
けれど、いつだって、……いつだって本当は、助けて欲しいって、寂しいって、叫んでたんだ。
「亜美。 俺は知ってるぞ。 例え世界中の誰もが気がつかなくても、俺だけは、知ってる。 解る。 そう…信じてる。」
「高須くんは…凄いよね… いつもあたしの鎧をさ、簡単に貫いちゃう。 そして…そのまま、心臓まで貫いちゃうんだもん。」
「おいおい、そんな物騒な例えは勘弁してくれ。 俺のこの面じゃ、しゃれになんねぇ。」
滑らかな体に唇を這わせ、震える亜美の体を確かめながら、言葉を交し合う。
そんな言葉に乗った感情が、込められた想いが胸に染み込んでいく。
体を覆う快感と、胸に届く想いが一体となって、俺達二人を結び付けていく。
俺の指が亜美の股間の膨らみに届いた時、初めて亜美は微かに甘い声を漏らした。
指に粘りつく亜美の体液。 舌で乳首を転がしながら、秘部を愛撫する。
次第に考えが意味を成さなくなってくる。 腕の中でのけぞる亜美もまた、そのようだ。 ついに言葉が途絶えた。
口から出るのは、愛しい女の名前だけ。
「亜美… 亜美… 」 それは出会ってから今日までで、始めて呼んだかもしれない呼び方で。
「たかすくん… きもち …いい …よ たか、す…」 亜美も最早、言葉は途切れ途切れ。
トロトロになったソコに自分自身を突き挿す。 初めての体験は、驚くほどに自然に、しかし衝撃的な快感を伴って為された。
深く、ゆっくりと挿していく。 それだけで、我慢できなくなりそうに、亜美は攻め立ててくる。
根元まで届くと、亜美のこんもりと盛り上がった丘がふわふわのクッションのようだ。
そのまま、亜美の中の感触を味わう。 いや、正確に言うと、動けなかった。 下手に動いたら、たちどころに達してしまい
そうなほど、亜美のソコは熱く、気持ちよかったから。
その俺の眼前で、亜美は身を震わせている。 さっきから、あまり嬌声は上げないが、本来はそういうものなんだろう。
ちゃんと、亜美が感じてくれているのはわかった。 そして、それが何より嬉しくて、何より俺を興奮させるのだ。
そして、ゆっくりと動き出す。
動きに合わせて、嬌声が漏れ出す。 可愛らしい声に更に興奮が高まる。
その汗に濡れた姿は、信じ難い程、美しく、可愛らしい。
ああ、俺は、この性悪な女神に捕らえられてしまった、もう逃げ出す事なんか、とても無理だ。
現実感の無い、ふわふわした高揚感の中、俺の意識は真っ白になり、ただ、亜美との行為に没頭していく。
亜美の体は俺の腕の中で何度も跳ね、透明な液体が飛び散り、激しく痙攣する。
そして俺は、亜美への想いの全てを、亜美の中に吐き出した……。
ベッドで抱き合ったまま、俺達は余韻に浸っていた。
亜美の綺麗な黒髪を指に絡んで弄ぶ。 そんな俺を、亜美は微笑ましく見守ってくれている。
こんな安らいだ気持ちは、生まれて初めてだった。
「高須くん。 セックスって、こんなに気持ちいいものなんだね。 あたし、知らなかった。」
不意に亜美がこんな事を言った。
「お前、初めてじゃないって…」 言いかけて後悔した。 バカだ俺は。 なんてデリカシーの無い…。
「うん。 初めてじゃないよ。」 そう言いながら、上半身を起こし、亜美は膝を抱えた。
「でもね、そいつはあんたみたいに料理は上手じゃないし、掃除も出来ないし、洗濯も、裁縫もできないし、大して優しくも
ないし…… それに、そんなに凶悪な面してなかったし。」
そう言うと、性悪笑顔で俺を見返す。
やがて亜美は服を着ながら、こう続けた。
「さっき高須くんの事、忘れようとしてたって、言ったよね?」
「…おう。」
「あたしね、その人に逃げようとしてたんだと思う。 そして、半ばヤケクソ気味に体預けちゃったんだ…。」
「…………」 自嘲的な表情は、時々亜美がする、俺の嫌いな表情の一つだった。
「何度か抱かれて、それであとはそれっきり。 そこはね、あたしの逃げ場所じゃなかった。 自販機の隙間にすら、その
人はなれなかったの。 それに、その人とのセックスも、こんなに気持ちよく無かった。」
「そう、か。」
「それでね、それがスキャンダルに成りそうになって、あたし、女優として大事な時期だったから、事務所がその人ごと揉み
消しちゃったの。」
「その人ごと揉み消したって…」
「どうなったのか、わかんない。 大金掴ませたのか、脅したのか…。 とにかく、その人はいきなりあたしに別れを告げて
どこかにいっちゃった。」
「でもね、あたし、悲しくなかったの。 全然、涙もなんにも出なかった。 高須くんの事も忘れられなかった…。」
「……」
「だけど、今度は大丈夫。 高須くんが、あたしの事、優しく抱いてくれたから。 大丈夫。」
また、あの顔だ。 無防備で、どうしようもなく悲しくて、寂しげな、笑顔。
ここに来た時と同じ姿に戻った亜美は、まるで俺との事など無かったかのような佇まいで…。
「これで、あたし、高須くんの事、忘れられる…。」
「なっ! お、お前、何言ってんだよ。 意味わかんねーよ!」
「凄く考えたんだ。 あたし、高須くんみたいに頭よくないけど、この3日間、考えて、考えて、考えて、それで出した結論。」
「今のあたし、大事な時期なんだ。 だから、高須くんもさ、さっき話した人みたいになっちゃうかもしれない。 それに高須くん
には立派な料理人になるって夢があるんでしょ? あたしも、高須くんに夢を叶えて欲しいって思ってる。」
「そんなの、関係ねーだろ、なんでそれでお前がっ」
「いいんだよ。 こういっちゃなんだけど、あたしは一生働かなくてもいいくらいのお金もあるし、見た目だって、社会的な地位
にしたって、恵まれ過ぎな位恵まれてる。
だから、今日、高須くんに抱いてもらったから、もう、一生分の幸せ貰ったから…… いいんだ。
けど、高須くんはあたしと一緒にいたら、押しつぶされちゃう。 例えあたしが今女優辞めたとしても、あたしの引退のきっかけ
作ったってだけで、一時的にでも書き立てられる。」
「何言ってんだよ、そんなの、…そんなの俺は気にしねぇ。」
「高須くんは、この業界の事、解ってない。 マスコミの力って、本当に怖いんだ。 興味本位で、儲かるなら嘘だって書く。
それで、誰かが不幸になっても、しったこっちゃない。 そういう世界なんだよ。」
「…これは本当の事なの。 あたしと居たら、高須くんは必ず不幸になる…。」
ショックのあまり、俺は不覚にも動けなかった。 まるで、真空に投げ出されたかのように、喉が空気を吐けない。
「だからね、高須くん。 これはあたしからの最後のお願い。」
「あたしの事は、……忘れて。」
そう言い残して、川嶋亜美はローマの街を後にした。
それから3週間が過ぎた。
親方は俺を怒鳴り散らしながらも、気遣ってくれている。
申し訳ないと思った。 だが、どうしようもない。 もう、俺は抜け殻のようになってしまっていたから。
どうして、俺はあの時動けなかったのか…。 何故、あいつを引き止めなかったのか。
あいつの言ってる事は無茶苦茶だ。
確かに、俺はそんな業界の事なんか知らない。
けど、二人で力を合わせたら、大概の事は切り抜けられる。 生きていく方法は一つじゃないんだから。
けれど、俺にとって、川嶋亜美はたった一人の、人生でたった一人の女だったのに。
だが、もう終わってしまった。
あの時、呼び止められなかった俺は、自分でその手を手放してしまったのだから。
そして、今日は北村がローマに着く日だった。
3年ぶりの親友は、全く代わり映えのしない出で立ちで、トラステベレ駅に降り立った。
「やあー 高須、若干遅れてしまった。 すまなかったな。」
「お前、2日を若干ってなぁ。 どこまでずれてんだよ…。」
「ん、そうか、そうだったな。 メキシコじゃ、その位は普通だからな、ちょっと勘が狂ったかもしれない。 はっはっはっはっは。」
「相変わらずだな…。」
「だが、間に合ってよかったぞ。」
「間に合って? 何のことだ?」
「なんだ、高須、忘れたのか? 亜美が撮影で今ローマに来てるだろ? たしか、今日で撮影は終わりのはずだが。」
な、なんだって? そんなの、知らなかった…。
「聞いてねぇ…。」
「なに? お前とローマで会ったと聞いたから、当然知らせてると思ったんだが…。」
北村の声が遠い。
「……どうした高須?」
亜美が、ローマに来ている…。 ああ、そうだ、確かにまたすぐに撮影で来ると言っていたっけ。
「おい、高須!」
今なら、会える。 もう一度会って…
「高須、亜美と何かあったのか? 今のお前の様子、尋常じゃないぞ…。」
だが、今更、俺は一体なんて言ったらいいんだ… 俺は何を伝えたい…
「高須、俺にも話せない事なのか? 亜美が関わりあるんだな? …………言ってみろ!高須!」
北村の激しい声で我に返った。
「先日、お前に会う予定だという事を告げた時、亜美の様子も少しおかしかった。 ……俺では力になれない事なのか?」
「北村… 俺は、俺は亜美に惚れてる…。」
そして、俺は北村にこれまでの事を話していった…。 そうすることで、少しでも頭が整理出来るなら、と。
「……………」
「高須… 何をしている?」
「えっ?」
「これまでの話を総合すれば、お前は一番肝心な事をやっていないぞ!」
「一番肝心な事?」 「そうだ! お前は未だ自分の気持ちをちゃんと亜美に伝えていない! つまり……、告白だ!」
そう言うなり、道路に飛び出す北村。
急停車して怒る運転手に怒涛の勢いで何事か語りかけて…
「こい! 高須!」 「お、おぅ」
勢いに飲まれて、オンボロの青いフィアットに乗り込む。 運転席の赤ら顔の親父は、何故かノリノリだ。
「お前、イタリア語話せたのか?」 「いや、英語が通じた。 さすが法皇のおわす場所だ、ついているぞ。」
「はぁ? って、一体何を言ったんだ、どうして車に乗せてもらえる? ってか、どこに行くつもりだ?」
「さすがイタリア、情熱的な愛は歓迎されるらしい。 今を逃せば二度と会えない女に愛を告げるといったら、二つ返事だった。」
「な、」「あながち嘘でもないだろう?」
「はぁ…それで、どこに行くつもりなんだ、撮影場所知ってるのか?」 「知らん。」 「はぁっ?」
「だが、ローマでクライマックスを迎える場所といったら、あそこしかあるまい。」 「あそこって… はっ!」
「「スペイン広場!」」
「見ろ! 高須! ビンゴだ。 失恋大明神の二つ名は伊達ではない! いくぞ!」 「おぅ!」
スペイン広場には人垣が出来ていた。 僅かな隙間から、撮影機材も見える。
車から飛び降りる頃、俺の心は決まっていた。 何を言うか、だって? そんなの考える必要なんかねぇ。 あいつを見れば、
そんなの勝手に出てくるに決まってる!
俺の凶顔はイタリアでも通じるらしい。 決死の形相の俺に、北村、運転していた親父まで加わって人垣を切り裂いた。
広場の北側から、噴水の辺りを見れば…… 見間違える筈がない。 確かに川嶋亜美が其処に居た!
「ぅおおおおおおおお!」
無謀にも走り込む。 咄嗟にガードマンが俺を挟み込んだが、此処なら声は届く!
「―――かわしまぁぁぁぁ!」
驚いた表情で、あいつは俺の方を見た。
「俺は、お前を忘れるなんてできねぇ! 必ず、不幸になるだと? そんなの誰が決めたぁーーー!」
周囲が騒然としているのが解る。
ヤバイかもしれねぇ、そう思いながら、しかし、止める訳にはいかない。
「俺の夢だとぉ! 俺の夢は、俺の夢はなぁ! お前に―――」
「―――お前に、あんな悲しい顔は二度とさせねぇ! あんな寂しい笑顔は二度と! それがっ、それが俺の夢だぁ!」
「俺は、川嶋亜美を ――― 愛してる!!」
警備員に引き摺られながらの絶叫。 言葉が通じないはずのスペイン広場に静寂が訪れた。
亜美が、歩き出す。 俺を捕まえていた警備員が、ゆっくりと下がる。
俯いた顔は表情が見えない。
引きとめようとしたスタッフの肩を、共演者の超有名ハリウッドスターが、がっちりと掴んだのが見えた。
永遠とも思える僅かな時間。
川嶋亜美は俺の目の前で立ち止まり、顔を上げる。
その大きな瞳には、今にも溢れ出そうな涙が、地中海の夏の太陽よりも明るく、輝いている。
「あんた、馬鹿だよ。 言ったじゃん、あたしと居たら、不幸になるって…。」
「そんな心配はいらねえよ。 この先何があっても、お前を失う以上の不幸なんてねぇ。」
「…ほんと、あんたって……だいっ嫌い……こんな時だけ、口が上手いんだから……。」
「そう言うお前も、いつも言ってることと考えてることがアベコベで解りずれぇな。」
「でも、わかっちゃうんだ…。」
「言ったろ。 世界中の誰もが気がつかなくたって、俺だけは解る、そう信じてるって。」
「…馬鹿」
俺の首にかかる細くて白い腕。
「背、伸びたんだね。」
「ああ。 少しな。」
そして、初めて、俺達の唇が重なり合った。
沸きあがる歓声、拍手と口笛とカメラのフラッシュ、そして歌。
凄まじい祝福の嵐がスペイン階段を吹き上がっていく。
抱きしめた温もりと、甘く漂う髪の香り。
それは……長い長いキス。
やがてゆっくりと、亜美の唇が離れ、囁きを紡ぎ出す。
すぐ近くで祝福を叫んでいる赤ら顔の親父の声さえ届かないような喧騒の中。
その言葉は、俺には届く。
世界でたった一人だけ、俺にだけは聴く事が出来る。 そういうふうに出来ている。
「竜児。 ―――愛してる―――。」
おわり。
13 :
98VM:2009/05/18(月) 00:28:06 ID:iIEzo+75
お粗末さまでした。
では100%、いってくるぜーーーー!!
荒らしのようなGJを、貴方に。
亜美ちゃんの処女は100%ENDのSSでいただくんですね、分かります。
16 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/18(月) 00:45:00 ID:MGVo12tM
GJなんだが……
あーみん好きの俺には精神的BADENDだなぁ。
これだと亜美の犬ENDのほうがまだ……
なにはともあれGJです。
17 :
16:2009/05/18(月) 00:46:36 ID:MGVo12tM
すまん、ショックのあまりsage忘れたorz
>>13 GJです!
続けて投下。次レスから行きます
連夜を許して。
高須竜児の日記より抜粋。
2月16日。
今日、ようやく退院出来た。しかし俺は乗り越えたよ櫛枝さん。
だが、ありがとうとは言えなかった。匿名で俺にくれた以上彼女も俺からのお礼の言葉は照れくさいだろう。
いいさ。待っててくれよ櫛枝さん。ホワイトデーには取って置きのサプライズをお届けだぜ!
2月19日。
最近、香椎さんの様子がおかしい。どこかいつもうわの空だと思う。
確かに香椎さんの料理の腕前は疑うまでも無いとは思うのだが、そう毎日毎日ホットケーキを買うのは何故だろう?
何か凄いレパートリーを持っているに違いない。さすが香椎さんだ。
でもなんか良いな、こう云うのは。やっぱり誰かと一緒に買い物をしてると新しいメニューへの可能性とか、個人個人のスーパーの情報などが手に入る。俺には他にそんな人は居ないからな。
香椎さんとは共に家計を預かる同志だからな。出来れば早く元気になって貰いたいものだ。ま、俺がソレを言ったところで、彼女が元気になった訳でもない。使えないな、俺は。
う〜ん。それにしても今日はまた大量に買ってたな、ホットケーキ。今度レシピを聞いてみよう。
川嶋安奈の日記より抜粋。
2月20日。
どうも思ったより根性の無いストーカーの様ね。満足に亜美の居場所も特定出来てない。これじゃあちょっと熱心なファン程度じゃない。
亜美程度にまかれる様では役に立たない。
仕方ないわね。少し手助けしてあげましょ。明日には亜美の細かいスケジュールやルートが届くから、何気に彼に流してあげましょう。
亜美。コレは貴女の為なのよ?決して私が楽しいからじゃ無いわよ。
多分ね?
香椎奈々子の日記より抜粋。
2月22日。
はぁ。このままでは駄目よね。うん。
やっぱり私はどこか逃げてるんだと思う。高須君は変わらない。きっと前から、変わってない。
麻耶が居て、北村君が居て、高須君が居て、私が居る。
もう、ごまかしてはいられない…「香椎さんと供に家庭を…」彼の想いに、私はもう真剣に答えを出す時期に来てるんだと思う。
2人への気持ちに揺れる麻耶。自分の気持ちに揺れる私。
やっぱり貴女は親友ね、麻耶。どこか似てる。二人共どこかはっきりしない……うん!でも良い!
それでも想ってくれる人が居るなら、私は私らしく行こう。
きっと彼は、人よりゆっくりな私を微笑って待っててくれると思うから。
そうよね?高須君。
恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
2月24日。
あれから街を徘徊して、とうとうパンチを見つけた。
スナック毘沙門天国の黒服だった。たしか藤原さん?ま、どうでも良いのよ!そんな事は!!
もちろんこの前のお礼もしたかったしさ、もうやっと見つけたからテンションも上がっちゃったわよ。
だけどどうしよう。とんでもない事になった。折角手掛かりを見つけたのに、彼の居場所を聞いた30秒後に世界は終わった。
「こないだの??…あぁ!竜ちゃんか。?今何処に居るかって?さぁ、流石にこの時間に何処に居るかは知らないけどね」
そりゃ私だってそんな簡単に見つかるなんて思って無いわよぉ。彼だって逃亡者な訳だし。でもまさか
「まぁ魅羅乃ちゃんに聞けば分かるんじゃないかな?聞いてこよか?……??いや、そりゃだって一緒に住んでるんだから居場所くらいは…あれ?ねぇお嬢さんどうし」
藤原さんが何か言ってたけどもう聞く必要は無いわね。
竜……貴方がフタマタ掛けてたなんて。
そりゃあ私だって良い年の女ですもの。今まで色々有りましたよ?フタマタの2度や3度は掛けられた事も有りますとも!
だけど今度こそは、と信じていたのに!!
でも待って!ソレはつまり私の方が後って事よね?という事は………奪う?
いやいやいや。所詮フタマタ掛けるような男なんてその程度でしか…でも魅羅乃〜なんて如何にもお色気ムンムンちゃんです〜なんてお頭の悪そうな女に騙されてるだけかも。
そんなお色気真っ向勝負な20そこそこの小娘相手に三十路手前の私なんかが張り合ったってにっちもさっちも行かないのかも知れないけどさ〜。
大体大人しく引き下がって大和撫子の私待〜つ〜わ、なんて言ったって、その頃日本は少子高齢化社会で有望株なんてじゃかじゃか刈り取られちゃって、残ってるのは光合成中の爺さんしか居ないじゃない?
てか頼子だってクリスマスは一緒に過ごしたのにバレンタインは急に用事が〜なんてどんな用事よ!法事?掃除?袋小路?それ私。
あれ!見えたかもぉ……ひょっとして、失楽園いくべき?
香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
3月2日。
ふっ、ようやくホットケーキ祭りを抜けた。
何故どこぞのコンビニ並みの在庫の量になってしまったのかは分からないが、私は勝ったぞ!
奈々子よ。せめて半年間はホットケーキを封印してくれると父は嬉しい。
逢坂大河の日記より抜粋。
3月5日。
私はそれ程無理難題を吹っかけたのだろうか?掃除業者はもうウチには来ない事になった。
別に掃除くらい私にだって出来るし、キャンキャン煩いバカなら来ない方がいいわ。
一人で出来るもん。
恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
3月7日。
敵を知り己を知らば百戦危うべからず!
まずは敵を知る事が必勝の秘訣!昔の人は偉いわ。
とりあえずは魅羅乃とか言う小娘をこの前こっそり見た。
確かにスタイルは良さそうだし、なんかほっとけない空気を持ってる子よね?
でも大丈夫よ!私にも勝ち目があると思う!うん。イケルわ。
だがまあソレだけでは彼女の事を理解は出来ないだろう。ふっ。私に抜かりは無いわ。
明日から隣町のスナックでアルバイトよ!教師のバイトはご法度だけど言ってられますかいってのよ!
見てなさいよ魅羅乃!貴女の客はこの、スナック独美神の魅姫が貰うわ!!
さぁて、お水の花道を観とかなきゃ。
高須竜児の日記より抜粋。
3月10日。
完璧だ。高須竜児特製のホワイトデースペシャルクッキー。その名も『ザ!Cookie』
今日まで散々思考錯誤を重ねた甲斐があった。試食したがかなりの出来だ。俺の過去ランキングも含めて1・2を争うだろう。
後は13日に作り、14日コレを櫛枝さんに渡せば。
だがココで問題だ。どうやって渡す?無論直接渡せればそれに越した事は無いのだが、ソレは不可能だ。
何度か「おはよう」と声を掛けてみようと思ったが、金縛りにあうかの様に体が動かなくなる。
やっと言えた言葉は「おまぁにょぉ」だ。以降数時間の記憶が無い。
今の俺に櫛枝さんに面と向かって渡す事は自殺行為に等しい。きっと櫛枝さんもそうだったに違いない。だから差出人不明で下駄箱に。
だが俺は男だ。ココはやはり、不甲斐ないまでも根性位は見せねばなるまい。
そうか!下駄箱に入れておいても俺からだと分かるようにクッキーにメッセージカードを書いておこう!うん。それでいい!
よし!今度はその練習だ!最高のメッセージを書いてやろう。
逢坂大河の日記より抜粋。
3月11日。
そういえばホワイトデーよね。でもチョコに私の名前とか無かったし、きっと北村君も誰のか知らないもんね。
別にお返しが欲しくてあげた訳じゃないから良いんだけど。ちょっと寂しいかな。
でもいいか。来年は頑張ろう!せめてもう少し、仲良くなりたい。今はソレだけで良い。
木原麻耶の日記より抜粋。
3月12日。
今日奈々子と春休みの話で盛り上がった。休み中にどっか遠出しようって話。
もちろん賛成よ!で、奈々子が言うのは、高須君とかまるおとかもどうかな?だって。
幾らなんでも話が突飛過ぎるじゃない!まるおはともかく高須君はクラスも違うし、でも、だって、ねぇ?
でも、まるおも男子一人ってやだろうし、他の男子なんて有り得ないし。なんか最近クラスの男子、目がやらしいのよね。特に奈々子の胸とか。
奈々子も結構ムカついてるみたいだしさ、やっぱガキは嫌よね、ガキは。
高須君は……大きい方が良いのかな?まるおは??
武井とやらの日記より抜粋。
3月13日。
ふっ。いよいよホワイトデーだぜ!バレンタインはまさに血の惨劇だったが、今度はこっちが攻める番!
男子から告白出来る問答無用の免罪符だ。明日の為に買っておいた4つ星レストランの特製クッキーを…
母さん?貴方は何をタベテルノデスカ??
香椎奈々子の日記より抜粋。
3月14日。
今日は男子がソワソワしてて面白かった。でも最近男子の視線が纏わり付く。
やっぱり最近、胸が大きくなってきた。恥ずかしい訳じゃないけど、酷く不快よね。
気持ちも理解出来なくは無いけど、やっぱり私はそんな外見じゃなく、ちゃんと私を見てくれる人を好きになりたい。
高須君は……多分いやらしい目で見てないと思うけど、分かんないか、そんなの。
でもだとしたら私はどうするんだろう。許せない?それとも……許すのだろうか。
今夜は彼の事を考えるのは止そう。なにか、イケナイことを思ってしまいそうだから
逢坂大河の日記より抜粋。
3月14日。
信じられない!!私の下駄箱にクッキーが入ってた!
どうせどっかの馬鹿からの貢物だと思ってたら………バレンタインのお返しに。だって!信じられない!!
北村君、どうしてあのチョコが私って分かったの?でもでもコレって夢じゃないよね?……!痛い!夢じゃない!!
食べてみたらもうすっっっっっごく美味しいの!!目っっっっっ茶苦茶美味しいの!!
なんか思い切り手作りで、そんで綺麗にラッピングしてあって。大事に大事に作られてて……涙がでた。嬉しかった。
ケーキにはさ、メッセージカードが入っててさ
「今はまだコレが精一杯。でもまだまだ俺達はこれからだ!だから、これからもヨロシク!2年になって、一緒のクラスになれると良いな」だって。
私もだよ北村君。北村君と一緒のクラスになりたい。裏にもなんか書いてあった。
「困った事が有ったらいつでも電話しろ。高須竜児 ○○○-○○○○-○○○○」
なんでだろう??どうせなら北村君の番号が良いのに……!そうか!たしかコイツって私んちの隣に住んでる目付きの悪い奴でしょ?それで確か北村君の友達。結構一緒に居るの見かけるし。
分かったわ北村君!まずは友達から始めようって事ね!そうよね、よくテレビや雑誌でも聞くし!ッて事はこれは前進!輝かしい一歩なのね!
でも、良かった。勇気を出してバレンタインチョコ作って…本当に良かった。
川嶋亜美の日記より抜粋。
3月15日。
なによこのクッキー。有り得ない。なんでアイツが私の家知ってんの?有り得ないから!
この時の服装は止めた方が良いって、なによコレ!
なんか最近コイツ凄く無い?行くトコ行くトコ現れて、何で私の行動とか把握してんのよ。
盗聴器?盗撮?嘘でしょ?なんなのよコイツ!
北村祐作の日記より抜粋。
3月14日。
やれやれな出費だったな。まぁ大した額ではないが、それでもまぁ喜んで貰えれば何よりだ。
木原にもあげたし、女子ソフトにもお返ししたしな。
あとは…結局手元に残ったのはこいつだけか。
会長には、渡せなかったな…まぁいいさ。まだ2年ある!
今日はこのクッキーの味を噛み締めて、来年への糧とする事にした。
木原麻耶の日記より抜粋。
3月14日。
どうしよう…今夜はもう眠れそうにない。
高須君に…キス……しちゃったんだよね?私。
あぁ!もう!明日からどんな顔して会えば良いのよ!!私の馬鹿馬鹿!!
でもさ?やっぱりこんなに素敵な手編みのマフラーなんて貰ったんだしさ、そう!軽いお礼よ!お礼。
その、ファーストキス、だけど……ほんのおれい、で、良いと思う。
チョッと夜に買い物に出掛けたら凄い息切らせた彼が居てさ、ビックリしたけどなんか会えて嬉しかった。
なんかお母さんのトコに行く途中だって。
そしたら手にマフラー持ってるじゃない?どうしたの?って聞いたら寒いから持ってきたけど、ホントは自分の為の物じゃないからって。
「ホントはもっと前にって思ってたんだけどな、中々編むのに時間掛かっちまって、もう来年にって思ってたんだ」って。
なんかもの凄く長いから驚いたけど「なんか喜んでくれるかな?って考えてたらついこの長さになっちまってさ。やっぱ変だよな?すぐに直し」
変な事なんて無いよ?高須君。だってあんなに温かかったし、部屋にこうして飾ってみてもコレを編んでくれた時の高須君が目に浮かぶもん。
M・K……かぁ。
ねぇ高須君。あなたは木原麻耶をどうしたいの?どう……したいのかな
櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
3月14日。
いやぁ今日は大量だったぜぃ。
チロル祭りの収穫祭だねぇ。結構結構。
でもみんな良い奴だよね。キチンとお返ししてくれるしさ。まぁくれなかった人も多いけど所詮チロルだしね。
てか、くれた人がビックリだよ。
香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
3月14日。
………奈々子。父さんの机の上に温泉旅行のパンフレットが置いてあるが、なんで4名料金に印が付いてるんだ?
「3倍返しだから」とあるが、きのこの山の値段を父さんは知りたい。コアラのマーチとどっちが高いんだ?
富士の樹海も気持ち良さそうだな、奈々子よ。
恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
3月14日。
ふぅ。今日も大変だったわね〜。ったくあのエロ親父す〜ぐアフターアフターって、寝言はピンドン入れてから言ってよね!
あぁもう。明日は折角オフだったのに雅ちゃん同伴だっていうしさ、ま、仕方ないか。
工藤さん来てくれないかなぁ?あと指名2本位あると来週楽なんだけどな〜。
あっ、メール来た。おし!週末来る君は偉いぞ川崎君!魅姫ちゃん超嬉しい〜〜〜。
狩野すみれの日記より抜粋。
3月14日。
まったく、やってくれるじゃないか?高須。
まさかココまでとはな。自分の部屋でマフラーを付けているとは、いよいよ私もヤキが回ったか。でも何故だろうな?悪くない気分だ。
今日、店でアイツを見かけたらどうしても受け取って欲しいものが有ると言う。まぁ察しは付くが、どうにもアイツには周囲の目を気にする風が無い。
店内でそれは無いだろう。だから店が終わった頃に出直して来いと言ってやった。ま、そうしたら会ってやるとな。
よくもまぁ律儀に来たもんだ。
まぁいきなり本題に入るのも何だからな。
一応、その、私達は友人とか知り合いとかと言うのからは、一歩とか少なくとも半歩位は進んだ仲な訳だし。少しは話をしたさ。最近どうだ?とか、まぁ世間話程度だ。
まだ割りと肌寒いしな、くしゃみをしたのが切欠なのか。くそ、みすみす機会を与えてやるとは私も甘いな。
アイツは自分が巻いてたマフラーを私に巻きだしたが……近いんだよアイツは!
私はそんなに弱くは無いんだ、でも「弱いも強いも無いですよ。こうした方が良いに決まってます。それだけです」
暖かかったな。聞けば手編みと言う。
まったくアイツは、もう少し器用に生きれないのかな。不器用に過ぎる。そんなんでは生き難いだろうに。お前みたいな奴は。
ただ受け取って欲しい。それだけの事が言えない。ほんと呆れるしかないな。だから受け取ってやっただけだ。
ま、私も貰うばかりではなんだからな……その……やはりあれは、うん。お礼だな。うん。
一応言っとくが、ファーストキスだからな?コレは。
まぁ奴も「偶然ですね。俺もですよ」と言ってたな。ふふ。ホント、偶然だな、高須。
マフラーのお礼だと言ったのは照れ隠しでも有るけど、今日のところはそうしておいてくれ。
コレでも17才の乙女なんだぞ?高須。お前がそれで納得してくれないと、色々と困った事になるのさ。お互いにな?
ほんと……やってくれるじゃないか……ねぇ?竜児
高須泰子の日記より抜粋。
3月14日。
え〜〜ん。竜ちゃんがやっちゃんの事見捨てるの〜。
今日はお客さんからた〜くさんお菓子貰っちゃって〜。やっちゃん一人で持って帰れないから竜ちゃんも手伝ってってメールしたの。そしてら竜ちゃん「分かった。すぐ行く」
でも来ない〜〜〜〜。竜ちゃ〜〜〜ん。
やっちゃんがタクシーで一生懸命帰ってきたら、竜ちゃんってばお部屋でボ〜って停まってた。
どうしたの?竜ちゃん
高須竜児の日記より抜粋。
3月14日。
何故?WHY?俺は一体何をどう間違ったんだ?
あぁ。駄目だ、落ち着こう。そうだ素数を数えよう。2・3・5・7・8・11…?8??いや、こんな馬鹿をやってる場合じゃない。
そもそも何故俺は狩野先輩と木原とキスしたのだ!いや、厳密にはされたのだ!これは名誉の為に言う!信じてくれ櫛枝さん!!
第一、俺はバレンタインのお返しに高須特製の『ザ!Cookie』を櫛枝さんの下駄箱に入れたじゃないか。
明日には、いや、もしかしたら今夜にでも俺の携帯が彼女からの着信を告げるかも知れんのだ。徹夜で待つ準備は既に出来て居る。
しかしソレも協力してくれた彼のおかげか。たしか…春田って言ったっけ?確かに俺も馬鹿だったな。よく考えたら俺は櫛枝さんの下駄箱を知らなかった。
あの時、櫛枝さんと同じクラスの春田君に会わなければ今頃自分で自分のクッキーを自画自賛しているところだ。
「あ〜。櫛枝の下駄箱ならココだよ〜〜」って教えてくれた場所に入れておいた。ありがとう春田君。君には感謝の言葉も無い。
しかし櫛枝さんは意外に足が小さいんだな。あぁ、なんて可愛い。
いや、それは良い。櫛枝さんが可愛いのは天地開闢以来決まっている事だ。
分からんのは狩野先輩だ。たまたまスーパーに行ったら先輩が居たからな。もういい加減受け取って貰おうと思った。100円。
だがなんと店が終わったらで良ければと言うではないか!完全に駄目元だったのに。これもやはり櫛枝パワーか?善行は積むに限ると言う事だ。
夜に会いに行ったら何となく世間話を始めるからな。まぁ俺も特に急ぎでも無いが、先輩の格好はどう見ても寒そうだ。まだ3月。夜は冷えるというのに。言わんこっちゃ無い。早々にくしゃみをした。
俺はジャンパーもあるから、先輩にマフラーを巻いてあげた。要らないとか言いそうだからな。渡しても無理だろうから俺が巻いた。
「温かいな」って言ってくれたからな。手編みだし。一応高い毛糸を使ってみたんだよな。だいたいさ。
「ホントは正月があけたら直ぐに受け取って欲しかったんですけどね。まったく、頑固ですよね、先輩は」
たった100円なのにな。そう思ったらなんか可笑しかったな。
でもおかしいだろ!そこでなんで「だったらコレは……礼だ」っていきなりキスしてくるんだよ!無いだろ?欧米かよ!って古い!!
ファーストキス…もう頭の中真っ白で帰ったね。
そしたら泰子が店まで来いって言いやがるし。行くのは良いんだが、結局俺のマフラー持ってかれちまったし、残ってるって言ったら……去年に櫛枝さんにプレゼントしようと編んだマフラーしかない。
なんか長くなり過ぎちまったし、櫛枝さんのイニシャルなんか入れたから使うに使えなかったんだけどさ、まぁ寒さには変えられない。
いよいよになったら使おうと持っていったら、木原に会った。
俺もちょっと走りすぎて疲れてたし、木原と話してたらマフラーの話になって。ちょっと馬鹿にされるかと思ったけどアイツは馬鹿になんかしなかった。
嬉しかったよ、木原。そうだよな、お前は人の失敗を笑う奴じゃないよな。そしたらアイツが「見て」って、マフラーを取り上げて自分に巻いた。
でもやっぱり、すごく余っちまうじゃねぇか。って言ったら「丁度良いよ。こう、出来るから」って、俺の首にも巻きだした。
不味い。1本のマフラーに2人でって、恥ずかしいだろって言っても「ううん。恥ずかしくなんか無い。ただ、嬉しい……だからコレは……お礼」
なんでだ?マフラーで俺を引き寄せキスをして、木原は俺からマフラーを奪って走り去っていった……やるって言ったか?俺。
駄目だ。もう俺の脳では理解不能だ。今日はもう…おわりだ。
3月15日。
朝、櫛枝さんにばったり会った。おお!やはりこうゆうイベントもあったのか神様。グッジョブだ!と思ったんだが
「おひゃひょう」……いや、俺にしてはかなりの出来だったぞ?だが櫛枝さんは普通に「おはよう」って言って歩いていった。
いや、あれ?なんかリアクションが…だがその前の記憶を思い起こして俺は愕然としたね。
ついでに書くと、その時丁度、春田君が俺の前を通りかかったんでちょっと伺ってみたのさ
「おい。櫛枝実乃梨の下駄箱は何処だ?」
「ん〜?櫛枝の下駄箱は確かココだよ〜」
OKOK。この後教師に連行されようが公的機関に通報されようが、コイツはココで処理するべきだろう。
春田君とやらが指差したのは櫛枝さんの下駄箱じゃねぇ。あまつさえ、昨日の場所でもねぇ。
現在11:15。
先生に帰れと言われた。せめて1発位は殴らせろーーー!!
とりあえずココまでです。
なんか連日すいませんでした。
HAwRUwTAw
つうか独身やり過ぎだろw
>>26 連日の投下をやたら気にして謝り倒してるけど
細切れ投下や連投しまくりってわけでもないんだから
あまり卑屈になる事はないと思う
面白いなー携帯からgj!
GJすぎるぜ…
みのりんと麻耶のイニシャルが同じだったことに今気づいたよ。
毎度ながら、日記の並べ方が上手いですね。
この記述の真実はなんだろう、とワクワクしてしまう。
GJ!
何気に初登場のあーみんがストーカー話かw
あとフラグ立ちすぎwww
副会長は辛い。地味だとか、多忙だとか、不満は色々とあるが、
常に、会長の隣に居なければならないというのが、気にくわない。
不精者の癖に凝り性で、ヤバイ位にバカ。粗暴な外見に似合わぬ博愛精神が如何とも言い難い。
嬉しそうに犬など抱いている姿には目眩を覚えた程だ。
第一、女を見る目が無い。頭が良くて、運動神経抜群、見目もそこそこ。
そんな女の好意に気付かない馬鹿者。
ちくしょう。北海道なんて行きやがって…うう…バカ野郎。
GJ……だがあまりに竜児が可哀想なのだが……
>>26 気にしないで連日投稿して下さい土下寝してお願いしますm(__)m
今回は「家計」と「家庭」でしたかw
ゆりちゃんの行く末が心配でならない。
んで、あーみんついに登場
このお話、オチどう収拾つけるのかね。想像もできんw
そしてM.K・・・気づかなかった。
>>13 あ、98VM氏のもGJでした。
悶えましたw
98氏に日記氏のコンボで明日からまた一週間が
始まるというのに眠れませんww
この勘違いと誤解の連鎖で徐々に外堀から埋まっていくわけか…
何かスクランの播磨を思い出した。
アレも最後はすごいgdgdだったな…
奈々子パパが病みすぎだ、死なない・・よね?
>>13 GJです
賛否両論ありそうな亜美の貞操問題ですが、不満がある人もいるようですが、
個人的には良かったと思います。
あのクラスの女性が20歳を越えても未経験って方が不自然ですし、
90%は100%エンドと違い、再会の意思のない別離でしたしね。
それでは両名とも、次の作品も楽しみにお待ちしております。
きのこの山の三倍返しが4人分の旅費
下駄箱の位置
2つのマフラーの行方とイニシャル
……小道具の扱い方の上手さが異常だw
ああ、魅姫ちゃんwwwおっと違うゆりちゃんwwwwwwww
>>41 神ktkr
会長とゆりちゃん先生と泰子と大河ルートもお願いしますorz
>>13 書くの早いなー
同じく亜美の90点ENDを昨日終えてアフターをちょこちょこ考えてるけど全然まとまらないぜ…
>>26 竜児が無自覚な誠ENDに行きそうで怖くなってきたw
>>13 ローマ再会ネタGJです
あーみん90%好きなんでよかったです
100%頑張ってください!
>>26 大河同様竜児までw
みんな面白いくらいに勘違いがおきてるw
M・K気付かなかった
GJです
>>22 >「困った事が有ったらいつでも電話しろ。高須竜児 ○○○-○○○○-○○○○」
なるほど!それでアニメ1話で大河が竜児のケータイに電話できたのか!
五日連ちゃんで投下というのが凄すぎッス
47 :
98VM:2009/05/19(火) 00:46:16 ID:GUBmG726
こんばんは、こんにちは。 98VMです。
あーみん100%、ピンクのディスクがみつからなーい♪
しくしくしくしく。
そんなわけで、およそ八つ当たり的に書いた。
3レス 投下。
突然、親方にケツを叩かれる。 振り返ってみれば、親方はアゴで狭い玄関を指し示す。
怒鳴り声以外の声はたまにしか聞かせてくれない短気な親方は、愚図が大嫌いだ。
俺は大慌てで手についた粉を拭って、厨房を飛び出した。
イタリアじゃ、女をエスコートしない男は最低だ。
ましてやそれが、あれだけ世間を騒がせたカップルとあっては、許される筈もない。
いつもはどんな客相手でも、ぶすっとした顔しか見せない給仕のおばちゃんも、何故かあいつだけには満面の笑顔を見せる。
ぶっ壊れた壁をそのまま窓にしたっていう、日本じゃ絶対ありえないような一角が、このトラットリアの特等席。
そして同時に、そこはあいつの指定席でもあった。
その席にあいつが座っていたらアウトだ。 そしたら俺はまた皆にどやされる。
だが、今日は間に合った。
肉襦袢のような厚着、小顔にでかいサングラスと毛糸の帽子、ふわふわのマフラーで完全武装した不審者は、まだ玄関先で
上着を脱いでいる。
マフラーをほどき、サングラスを外したときに目が合った。
「よっ!」
「おぅ。」
おちゃらけた様に手をかざす、絶世の美女こそ、川嶋亜美。
俺の何よりも大切な……恋人だ。
ローマの祝日明け ―― ローマの祝日 エピローグ? ――
「ちょっと、ありえなくない? なんでこんなに寒いわけ?」
「そりゃ、お前、冬だからな。」
「だって、ここローマでしょ? 地中海よ、地中海。 地中海っていったら、暖かいもんでしょうが。」
「お前なぁ…無茶言うなよ…。 ぅおっ!」
給仕のおばちゃんが俺を突き飛ばすようにして、亜美の脱いだ服を預かる。 他の客なら注文すら取りにいかねぇってのに…。
「グラーツィエミッレェ〜」 「ディニエンテ」
亜美のお礼の言葉に、愛想笑いつきで返しやがった…なんなんだ、この差別は…。
ああ、そうか、今日は席までこいつを案内できないからか。
給仕のおばちゃんに睨まれながら、亜美を指定席に案内する。
「あ〜、マジ寒かったぁ〜。 竜児、ストレートティー頂戴。」
「お前には、郷に入っては郷に従うって言葉はないのかよ…」「うん。無い。」「……はいはい。 お姫様。」
こいつが来るようになってから、うちの店にはフォートナム・アンド・メイソンのブレンドが何種か常備されるようになっていた。
あの告白劇から半年ちょっと。
撮影が終わると、亜美は休みの度にローマに来て俺の部屋に泊まっていくようになった。
いくら俺が飛行機代がMOTTAINAIと言っても聞き分ける女じゃない。
正直俺だって出来ることならずっと一緒に居たいんだから、俺が言い負かされるのは当然だ。
それに、多分亜美は不安だったんだろうと思う。
実際、亜美が言っていたようなことが起こらないとも限らなかった。
そして、密かに息を潜めて構えていた俺達を襲ったのは、遥かに想像を超えた攻撃だった。
「おう。 待たせたな。」
「ありがと、竜児。 うーん、いい香り〜。 いきかえるぅ〜。」
「じゃぁ、俺は仕事に戻る。 あとでな。」
「うん。 がんばってね。」 「おぅ。」
今でこそ、こんなふうにのんびりしているが、あれが世に出た時は目の前が真っ暗になったもんだ。
実はあの日、広場ではテストカメラが回っていた。
お茶目なイケメンハリウッドスターは俺達の姿をカメラで追わせた上に、最後に『God bless you! Ami!』の台詞と自分の
ウィンクで締めくくった。
現場で撮られた写真は、すでにネット上に流出して、日本ではかなりの話題になっていたらしい。
しかし、このフィルムには決定的に写真とは異なる破壊力が秘められている。 それは………『音声』。
そう。 そこにはあの日俺が叫んだ、こっぱずかしい絶叫が鮮明に記録されていやがった。
それが、映画のプロモーションの一環として『流出』した。
世間的には流出だが、亜美が言うには意図的なリークだったらしい。
アメリカの大手ネットワークが流した映像は瞬く間に世界を駆け巡った。
幸い、俺の顔が判別できるものは無かったが、絶叫はばっちり入っていて、動画サイトでは親切な日本人が英訳を入れてる
始末。 俺達二人は息を潜めて世間の審判を待った。
亜美の奴はパニック気味に『あたしが竜児を守るから…』なんて言って泣き出すし、亜美が泣いているのを見かけた親方に
は鉄拳制裁をうけるわで、とんでもない数日が過ぎて、世間の趨勢が見えてきた。
結論から言えば、イケメンハリウッドスター恐るべし。
彼の最後の一言が、すなわち、俺達に対する評価になっていた。
〜様が祝福するんだから、俺達、私達も祝福しよう、みたいな?
そして、それからの俺達は、大手を振って恋人同士でいられる様になり、亜美のハリウッドデビュー作は正月にアメリカで公開
され、大ヒットとなった。
専門誌の評価もほとんどが絶賛で、特に亜美の演じたサブヒロインは高く評価され、まだ公開されていない日本でも、相当な
話題になっているらしい。
お陰様で今の俺達は、まぁ、自分で言うのもなんだが、激甘の恋人生活、まさにバカップル状態なのだ。
亜美の指定席は、崩れた壁から蔦や季節の花々が顔をだし、特に午後は差し込む光で絶妙な美しさを醸し出す。
たしかに雰囲気もよく、特等席には違いなかったが、亜美がその席に拘るのには、実は別な理由があるのを俺は知っている。
その席からは厨房の中が一番良く見えるのだ。 それはとりもなおさず、厨房からも一番よく見えることを意味する。
そこに座って、俺の仕事が終わるのを本を読みながら待つ亜美の姿は、俺の一番好きな光景になりつつあった。
トラステベレのトラットリアは深夜まで営業するのが売りだ。 遅番になると帰りは日付が変わる。
親方はいつも、亜美が来る日は早番にしてくれる。 もちろん、ずっと待っている亜美を気遣ってだ。
それでも、今日も亜美は7時間待った。
そして、この後は当然のように「お姫様タイム」の始まりだ。 俺は休む暇がない。
けれど、このお姫様に振り回されるのは今に始まった事じゃないし、好きになった時から覚悟の上だ。
「ねぇ、竜児。 亜美ちゃん、ジェラート食べたくなっちゃった。」
「はぁぁ? お前、今冬だぞ。 それに来た時、寒い寒いって文句いってたじゃねーか。」
「でも、食べたいなぁ〜。 ねぇ、竜児、ダメ?」
「いや、まぁ、通年でやってるバールもあるにはあるけどよ…。 遠いぞ?」
「いいよ。 歩こ。」
いつもこの調子だ。 何を言い出すか見当もつかねぇ。
今日もまた散々あちこち引き摺りまわされるんだろう……。 まぁ、嫌じゃねーけどな。
1時近い時間になって、やっとアパートに戻ってきた。 俺はもうヘトヘトだ。
「そういや、今回はいつまで休みなんだ?」
「うん。 明後日の午後の飛行機でロンドン。」
「ロンドンかよ…。 今度はなんなんだ?」
「そんなのプレミアにきまってんじゃん。 今週ヨーロッパ公開だから。」
「お、おぅ。 そうか。」
「まーた、忘れてるし。 ま、いいけどさ。 シャワー先借りるね。」
「おう。」
もう何度も抱いたが、どうしてもこの部屋で二人っきりになると緊張する。
ひょいとシャワールームから顔を出す亜美。 乳房が片方見えているのは絶対にわざとだ。
「竜児〜。 一緒に入るぅ?」
「狭くて入れねぇって。」「あはははは。 そうだね。でもぴったり抱き合えば入れるかもよ?」「それじゃ洗えねぇだろ…。」
「…………」
「………ん、んん…」
「おはよ、竜児」
「…あ、ああ。 亜美か。 おはよう… って おおぅ!」
「もう、朝だよ。」
「……俺、寝ちまったのか…わりぃ。」
「あははは。 なに誤ってんのさ。 確かにぃ、亜美ちゃん、体うずいちゃってぇ、仕方なーく、自分で慰めちゃったけどぉ〜。」
「…な」
「嘘。」
「竜児ってば、可愛いー。 そんな申し訳なさそうな顔すんなっつーの。」
「お前なぁ…」
「ちょっと亜美ちゃん、調子に乗って竜児の事疲れさせちゃったみたい。 ごめんね。」
ん? なんだ? この匂い。 これって…
起き上がってテーブルを見て愕然とした。
「こ、これ、お前…… そういう事か。 亜美、やっぱりお前は腹黒天使だよ…。」
「ひっどーい。 ただの天使、でしょ?」
そこには朝食が用意されていた。 それはごく簡単なものだったが、亜美が相当苦労して作ったってのは想像に難くない。
「ああ。」
「びっくりした?」
「ああ。 すげー驚いた。」
「ま、竜児に比べたら食いモンっていえねーような物だけど、食べてみてよ。」
「…結構いけるじゃねーか。」
驚いた。 たしかに美味くはないが、想像よりずっとまともだった。
「よかった。 こっそり練習してたんだ。 やっと食べれるレベルになったからさ、もういてもたってもいられなくって。」
本当に、こいつは…ビックリ箱みたいな奴だ。 なにを仕掛けてくるか、全然読めねぇ…。
もうこりゃ、全面降伏だな。
「亜美。」
「ん?」
「やっぱ、お前、最高だよ。」
ぷしゅ〜って音が聞こえて来そうな位、たちどころに真っ赤になる亜美。 あれ? もしかして俺やっつけたか?
「な、な、な、なに、い、いってんのさ…。」
それは……最高に幸せな、そんなローマの点描。
おわり。
51 :
98VM:2009/05/19(火) 00:55:52 ID:GUBmG726
お粗末さまです。
あーみんの貞操問題ですが、確かにちょっと配慮が足りませんでした。
申し訳ない。
恋に落ちた男はいつも一番目の男に憧れ、
恋に落ちた女はいつも最後の女になろうとする。
自分を忘れてといった亜美は、意図せず知られてしまった自分の恋心を
無かった事にしようとします。
しかし無かったことにする以上は、自分自身も竜児の前から消えようとしている。
その思いは尊いと感じました。
そんなわけであんな感じにしてみました。
>ぷしゅ〜って音が〜
亜美助カワイイなぁ
>あーみん100%、ピンクのディスクがみつからなーい♪
頑張って下さい。100%も見ものです。
>>51 GJです。
お茶目なイケメンハリウッドスターのセリフはあの方の引用でしょうか?w
老婆心ながら、ピンクのDVDはとりあえず何はともあれ始めからやる事が最重要っすよ〜
グッジョ〜
次は100点エンドに期待。
ちなみに、物真似は二周目で取れるよ
二周目のらく〜じゃでの2ショット会話で新たな選択肢が追加されてるから、それを選べばオケ
>>51 GJ!
あーみん90%エンドは僕もお気に入りです!
こんな良いアフター読めて幸せです!
>あーみん100%、ピンクのディスクがみつからなーい♪
1度90%を見たら選択肢が増えます。
それを地道に探してください!ガンバレ!!
>>26 さすがに6日連続の投下はむりなのか…?
今日はもう諦めるべきかな?
あ〜みんの処女を奪っていったかつての恋人は、どのように彼女を堪能したのか、
どんなに彼女の身体をいじくりまわし、舌を這わせ、口付けし、彼女の中心部に向かって
貫き通し、精を放っていったのか…
それを考えるとオラすごくワクワクしてきたぞ
こんばんわ。
今夜も投下、よろしくです!
次レスから
投下行かせていただきます。
川嶋亜美の日記より抜粋。
3月18日。
もう最近異常だ。アイツはどうして私の行く場所がわかるのよ?
もう少しで学校も春休み。そうなったら家と仕事場の毎日だし、アイツは何処まで来るんだろう。
でも、ママやパパには言えない。迷惑かけたく無い。
あぁ、腹立つ。ムカつくのよアイツ!!
木原麻耶の日記より抜粋。
3月20日。
あれ以来、高須君とは話をしていない。よくよく考えても私もどうかしてた。
あの時は私のイニシャルの入ったマフラーが嬉しくて、つい。
でも彼の気持ちに、私はまだ正面から向かい合えない。だってまだ、まるおの事も好きだし。
自分が都合の良い事言ってる事は分かってる。それでも……まだ、答えは出せないよ。高須君。
3月22日。
奈々子から旅行に行かないかと連絡が入った。もちろんOKしたけど…泊まりって本気?奈々子。
奈々子と私、そして…北村君と高須君。
2人にはもうOKを貰ったみたい。でも、いいの?高須君。私まだ返事して無いんだよ?
それに、やっぱり男子と泊りがけで旅行って……28日かぁ。
なんか、一番慌しくてゆっくり出来ない春休みが、とんでもない事になっちゃったな。
今夜は眠れそうに無い。
北村祐作の日記より抜粋。
3月22日。
28日に木原と香椎と高須の4人で温泉に行く事になった。香椎は聞いてたが木原はいつの間に高須と仲良くなったんだ?
前に高須は木原に怖がられてると気にしていたが、まぁいい。何にせよ仲良き事は美しきかなだ。
それにしても温泉とは良いな。日ごろの疲れを癒す良い機会だ。
なにしろ裸の付き合いと言うのが良い!
やはり人間関係はこうして良好に構築されていくべきだからな!
高須よ!朝まで語り会おう!男同士、裸の付き合いで!わははははは。
香椎奈々子の日記より抜粋。
3月22日。
お父さんの常識を疑ったわ。どうして泊まりで手配しちゃうの?
そりゃ確かにホワイトデーにパンフを数枚用意したし4人料金に○付けたけど、泊まりは無いでしょ!泊まりは!!
日帰り旅費込み位のプランで良かったのに。ホントにしょうも無いお父さん。
誰と行くのかって聞くから麻耶達と、って言ったらニコニコしてた。
あんまり常識無い様だと、ホントに一度懲らしめるべきね。でも良かった。北村君と高須君が了解してくれて。
4人部屋なのは言って無いけど良いわよね?麻耶にも言って無いし。
責めるならお父さんを責めてよね。こう見えて私だって困ってるんだからさ。
高須竜児の日記より抜粋。
3月22日。
いや、無いだろ泊まりは。香椎さんには言えないが、どうにも今の俺には、冷静な状態で木原さんと狩野先輩と、あといろんな意味で春田と会う自信が無いぞ?
確かに日ごろの疲れをとるのに温泉は良い。俺も香椎さんも学校に家事に忙しいからな。
だが香椎さんと木原さんは良いのか?俺や北村は問題ない…て事も無いが、女子程は無いだろう。
でも香椎さんにそうメールしたら「信用してるから平気よ」と来た。
ふっ。見たか聞いたかインコちゃん!高須竜児16歳。教師やPTA、万引きGメンに警備員に警官・刑事!挙句に公安にまで尋問された(長野秘話)この俺が、ついに女子高校生から信用された瞬間だよインコちゃん!
良いだろう香椎さん。その言葉確かに受け取った!
たとえどんな無頼漢が現れようと、君達2人は俺が守る!
精々君達2人に失礼の無い様、そうだな、あの合コン用の勝負服でお供するぜ!!
香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
3月22日。
……確かに温泉旅行をプレゼントしてやったがな?奈々子。
良いのか?なんかお前が高校に合格した時よりぶ厚いステーキが私の夕食に出されてたが……
噛んで消える霜降り牛など新婚旅行以来だよ奈々子!
私の給料で買えたのか?あんな肉が…いや、喜んでくれたのは良いんだがな?確認しとくが、本当に女の子同士で行くんだよな?
そうか。お前が、もちろん!と言った言葉を信じよう。うん。
しかし、あの幻の大吟醸『関東の華』、よく手に入ったな。
恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
3月24日
ちょっと!高菜社長が指名代えってどう言う事よ!
やっぱり可憐の奴、枕営業してるってホントなのね!ちょっと、お水に世界にだって仁義てもんが有るでしょうに!
コレだから最近の若いホスはなってないのよ!
あぁ、もうどうしようかなぁ。やっぱ片瀬さんの同伴ずらして佐野部長と同伴しようかしら。見たらチャンスボトルなのよね〜。
………最近、何か忘れてる様な気がするんだけど………何かしら?
狩野すみれの日記より抜粋。
3月26日。
我ながら抜けていたな。考えたら私は高須の携帯電話もメアドも知らない事に気が付いた。
この春休み中に会えれば良いんだがな。学校では、その……シメシがつかんだろう!うん。
問題は休み中に会えるかどうか。アイツの姿を見ると、何故か色々と用事を思い出して部屋に戻ってしまって、あれ以来話してないしな。
困った奴だ。
櫛枝美乃梨の日記より抜粋。
3月27日。
今日で部活は最終日。次は新学期、そして新学年での活動。
私の1年は終始ソフト部の活動とバイトで埋まってたけど、充実した1年だと思う。
明日からはまたバイトだ。私の前世は回遊魚なのかな?止まったら死んじゃいそう。
じゃあ大河は?ピラニアかな。なんて言ったら怒るよね?北村君はマンボウでいいや。
でも、だったらアノ人は鮫なのかな?高須竜児君。
今日もたまたま部活の帰りに北村君達と歩いてたら商店街で見かけた。
北村君は声を掛けたけど、「殺すぞ?」って感じで睨まれた。
でもなんか違う気がするんだけど……よく分かんないな。流石に私も気軽には声を掛けないしね。
北村君は「アイツは良い奴だ」って言ってるし、なんか大河の携帯に、「高須竜児」の名前が登録されてた。理由は聞かなかったけど。
でも全く接点が無かった訳でもないのよね。まぁ、ニアミスって感じかな?
何度か北村君の横に彼が居た時に私が行った事も有るし、たしか挨拶も何度かした事あるはず。
先月はなんか、うひゃひゃ〜とかあひゃひゃ〜とか言ってたような気がするし。あぁ!でもずっと前に「お前よぉ」って睨まれた事あったかな。
やっぱ怖い人なのかな〜。よく分かんないや。
香椎奈々子の日記より抜粋。
3月28日。
この旅に来た事は、私にとっては良かったのだろうか?今はまだ分からない。
麻耶は泣き疲れて眠ってしまった。
明日には麻耶にも笑顔が戻ってくれると良い。それは無理な話だろうか。
温泉に着いて早々に北村君はお風呂に入りに行った。喜んでくれてよかった。でも高須君の格好にはほんの少し参った。
合コンの時に私のあのアドバイスを100%聞いたと言っていたのを覚えていれば、今日の服装も明言しておいたのに。
なるほど。あの時のアドバイスを忠実になぞればこうなるのか。不思議ね、着替えしか入ってない筈のボストンバックに『WARNING』なマークが見えた気がするわ。
3代目就任を間近に控えた若頭な高須君のおかけで、私達はVIP並の待遇なのか、レアな感染患者の隔離扱い並なのか、別館の2部屋をあてがわれ、飲み放題食べ放題のプランをサービスされた。
一部屋しか取ってないと言われて驚いた高須君に更に驚いた支配人さんが、うっかり二部屋取ってたのを忘れてたんだって。ほんと……ごめんなさい。
いつもと違う場所。いつもと違う空気。ホント、楽しかった。
心配はしてたけど麻耶もいつもの元気を取り戻したみたいだし、意外に4人で過ごす時間は穏やかなものだったわ。なんかイメージと違ってた。
真面目な北村君は結構はちゃめちゃ。タオル1枚でウロウロするのは止めた方が良いわね。麻耶が真っ赤になってたもの。
高須君はどっちかと言うとイメージ通りだったかな。世話焼きで苦労性。私達の保護者みたいね。
流石にお酒は呑まなかったけど、随分と豪勢な料理が出た。ごめんねお父さん。多分ウチはもうココ予約は出来ないと思う。
夜もお風呂に入って、少し皆でおしゃべりしたりして、楽しかったんだけどな…麻耶が一人で出てってから少しして帰ってきた。
でもどうしてこんな事になるのよ……北村君が、恋ヶ窪先生の事を…
私にはもう、麻耶の寝顔にある涙を、拭ってあげる事しか出来ない…たすけてよ。高須君。
逢坂大河の日記より抜粋。
3月28日。
今日、あの男からまた電話が来た。
2年に進級したら少し生活費の仕送りを増やすそうだ。
たったそれだけの用事しか無いあの男を軽蔑する。あんな男の金が無ければ生きてゆけない自分を軽蔑する。
ムカつく。この世の中の全ての事がムカつくよ、北村君。
誰かに何かをぶつければ、この苛立ちは無くなるの?誰に何をぶつければ、この苛立ちを消してくれるの?
こんな夜は独りが怖い。こんな夜は、怖いよ。北村君。
高須竜児の日記より抜粋。
3月28日。
今日俺は人生の岐路に立った。いや、今現在立ってるな。
愛と友情。そのどちらも尊く掛け替えの無いモノなのに、俺はそのどちらか一つを選ばねばならないのか。
今日の温泉宿は中々豪勢で、手配してくれた香椎さんには感謝の念に耐えない。かなり高かったんじゃないか?
まぁ一瞬、一部屋の予約で、なんて聞かされたからな。一部屋って、マジですか!って聞いたら「一部屋って言いました?!あぁ二部屋でした!間違えちゃったぁ」と笑ってくれた。
従業員も良い人達だ。ぜひまた来よう。
いや!ソレは良い。そんな楽しい温泉ライフはもはやどうでもいいんだ!問題はさっきの北村だ!
男同士で語り合おうなんて言うから足湯でのんびりしていたら、好きな奴がどうとか言い出した。酒でも呑んだのかと思ったぞ、北村。
聞けばアイツには好きな女の子が居て、前にフラれたらしい。おいおいホントの恋バナかよと思ったね。俺には無縁と思っていたからな。北村、お前は良い奴だ!
そりゃあ気になるからな。聞くさ。
ウチの学校か?「無論だ」と言う事だ。
同い年か?「まぁな」らしい。
何組とか聞いて良いか?「もう終わった話しだしな。A組だ」………まて北村よ。A組にはとんでもなく輝く綺羅星が一つ有るんだがな?貴様まさか…帰ったら競馬新聞を買おう。今の俺は予想屋を超える。
どんな……女だ?の問いに、奴が答えた。「ん〜?…まぁそうだな、変わってる人だ」
なるほど神よ。アンタには余程俺の顔が宿敵悪魔に見えるんだな?
A組在住の変わった女など櫛田実乃梨をおいて他には居まい!居る訳が無い!!
言っておくが櫛枝さんの奇行は彼女の可愛さの裏返しでもあるのだ!さすが北村、皆が見落としたその魅力に気付いたのか!
しかし俺は自らの恋敵と友好を結んでいたのか。俺は北村と櫛枝さんはただの部活仲間と思っていたが、誤解とは恐ろしいものだ。
だが待て、奴は終わったと言っていた。ならば…俺は櫛枝さんからチョコを貰った。
俺の……所為か?
確かに俺は櫛枝さんが好きだ。今は少しのすれ違いで櫛枝さんとは距離がある。だが、その距離が無くなったら?俺達の姿を見て、北村はどう思う。
お前はまだ、好きなのか?…その、A組の…俺が名前を躊躇う中でもアイツは微笑っていたな。
「わからん。…まぁ精々憧れてるってところかな、今は……」
そうか、そんなに眩しいのか、お前にとっては。分かるぞ北村。俺も同じだからな。でも奴は切り替えている様だ。
最後には「また違う恋でも見つけるさ。実はそれとなくもう居るしな。凄い人だし高嶺の花だ。俺の甲斐性じゃまだ、な」お前は強いな、北村。
だが俺は決心が付かないでいる。櫛枝さんの隣で笑う俺になりたい。だが、それはそのまま北村との溝を生むのではないか?
コイツはそんな器の小さい男じゃない。だが男女の恋愛に人の器なんて些細な事なんじゃないのか?
いっそこの湯に全ての悩みが溶けてしまえば良い。俺はそう思って、北村の去ったこの場所でコレを記す。
川嶋亜美の日記より抜粋。
3月29日。
もう限界!有り得ない!!今日の撮影現場にアイツが居た。
もう殺してやりたい。でも私に何が出来る訳でもない。だって見られるのが仕事でしょ?でもだからってなんで我慢しなきゃなんないのよ!
いらいらで身体の維持が難しい。それもムカつきに拍車を掛ける。
もう逃げたい。でもあんな奴に負けたくない。もう、どうして良いか分からない。
きっと明日もアイツは居る。どっかに居るんだ。明後日だって、そのつ
木原麻耶の日記より抜粋。
3月29日。
疲れた2日間だった。どちらかと言うと精神的に。
最初は楽しかった筈なのに、夜に出歩かなければ良かった。
「まだ好きなのか?A組の…」高須君の声だった。なんかもう普通に話せる私達が嬉しかったから、私も一緒にって思っちゃって。そんな単純な私だから、聞いちゃうんだ。
「まぁ、先生に憧れてるってところだが、今に……」て…高須君も「そうか」ってなんか思いに耽ってた。
A組の先生って、恋ヶ窪先生だよね?そりゃ確かにあの先生も独身だし、その、スタイルとか顔だって悪くないけど。でも教師と生徒じゃない!絶対変だよ。
のろのろと部屋に帰ったのを覚えてる。
でも私泣いてた。こうなって分かるんだね。まるおの気持ちが自分に向いてないって分かった事が、私は悲しかったんだ。
奈々子にはきっと色々言ったんじゃないかと思う。どうして!って、変だ!って。
今朝起きたら酷い顔だった。
でも奈々子は何も言わないでメイクしてくれて、丁寧に髪にブラシを通してくれた。なんか温かかった。
でも不思議だよね。ばっちりメイクしてくれたのにさ「なんだぁ?な〜にまた泣いてたんだよ?木原さんはさ」って、高須君が頭を撫でてくれてた。
奈々子もビックリしてたかな。まるおは「なにか心配事か?木原。相談にはいつでも」って言って、奈々子に足を踏まれてた。災難だね、まるお。
でもまいったなぁ。気持ちが向いてないまるおの事、思いっきり意識しちゃうし、どこか高須君に甘えてる自分も居る。
私はどんどん宙ぶらりんになっていく。どうしたら良いか分からなく…なって行くなぁ。
香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
3月29日。
どういう事だ?奈々子が深く深く悩んでいるようだ。
なにも手に付かないといった風だ。一体温泉旅館でなにが有ったんだ奈々子!
夕食はお粥みたいなご飯だし、魚は生焼けだし、コーヒーは蜂蜜の如く甘いぞ?
さっきなどお風呂から上がって下着姿でリビングに来て、私を見るなり椅子で殴って変態扱いされてしまった。
それしても立派に成長したな奈々子。父さんは嬉しいやら心配やらで大変だぞ。
しかし頭部の出血が止まらんな。これはやはり病院にいかねばならんか。リビングの血の海も何とかしたい。
どうでも良いが奈々子よ。砂嵐のテレビをぼ〜っと見続けるのは止めなさい。目に悪いから。
さて、取り敢えず病院に行こう。明日からリビングでは座布団を使おう。
高須泰子の日記より抜粋。
3月29日。
今日は竜ちゃんが旅行から帰ってきたの。竜ちゃんが居なくてやっちゃん寂しかったな〜。
折角だから、今日は一緒に外で食べようって事にしたの。竜ちゃんも帰ってきたばっかりで疲れてるでしょ?
でさ〜。お仕事終わるまで竜ちゃん待っててくれたんだけど、終わってお店の外に出たら、なんか竜ちゃん真っ白になってて〜、今もおウチで白いまんま。
竜〜ちゃ〜ん。やっちゃんは心配でやんすよ〜。早く元の竜ちゃんに戻って欲しいでがんす。
香椎奈々子の日記より抜粋。
3月29日。
……もうどうしたら良いのか分からない。
お父さんはどこかに出掛けたみたい。夜も遅いのに変なお父さん。
でもきっと私も今日は変だと思う。
麻耶の事があって、北村君の思いとかあって、私は結構疲れてたんだと思う。
気が付いたら私の荷物を高須君が持ってて、一緒に私の家のほうに歩いてた。なんかずっとうわの空だったみたい。流石に心配するわよね。ごめん。
「良いけどよ」彼はそれしか言わない。いつも、良いとしか言わない。
私には分からなくなった。
麻耶は自分の想いが分からない。北村君の先には恋ヶ窪先生が居る。
高須君は私がいいと言ってくれるけど、私はそれに応えては居ない。今もこうして何も言わず寄り添ってくれてる彼に、何も。
麻耶の頭を撫でる彼を見たくなかった。
目を細める麻耶に微笑ましい気持ちになった。
そんな空気を柔らかいものに変える事の出来る北村君を不思議に思った。
どこか、私の居場所が無い様に、思えた。
でも聞きたかった。
昨日と今日、楽しかったかどうか。呆れたように息を付いた高須君は、麻耶の時みたく私を撫でた。
「なんかよく分かんねぇけど、楽しかったに決まってんじゃねぇか。木原に何あったか知んねぇけど、お前少し考え過ぎだ」って笑ってた。
なんか、嬉しかった。独りで考え込んでたけど、独りじゃ無いって思った。この人が、こうして最後に汲み取ってくれるから。
私はきっと、高須君が好きだ。だからじゃあねって……キスをして別れた。
物足りないかな?高須君。でもゴメンね、今の私はコレで精一杯。
いいよね?ゆっくりでも。ね?高須君。
高須竜児の日記より抜粋。
3月29日。
俺は一体何をどうすればいいんだ?
今日、別れ際に香椎さんにキスされた。香椎さん、意味わかんねぇよ?てか、一体なにがどうなってんだ??
北村が櫛枝さんを好きだった事で、もう俺の脳内会議は審議延長の憂き目に有ってると言うのに、この上更に議題を増やすのか?
譲る気は無い。無いが、百や千や1億歩譲って、狩野先輩と木原の例のアレは正に礼のアレだったと受け止めよう。
本人達も礼だと言っていたし、該当する理由が他に見当たらない。だが香椎さん。君のコレは礼では有るまい。
待て待て待て。なんかもの凄く都合の良い発想が頭をもたげているぞ?
コレはそのつまり……好き?なのか?香椎さんが?俺を?
まさか!だって理由が思い当たらない。そう思い当たらないんだ。
泰子との飯も俺はよく覚えていない。何をどうなったか……そして今気が付いた。遅いな、俺は。
答えは既に有った!!
思い当たらないという事はソレが無いと言う事。では他の線は?有るじゃないか、有ったじゃねぇか!
確かに北村は言ったんだ、もう違う恋の相手がそれとなく居ると。凄くて高嶺の花だし俺の香椎じゃまだ無いが、と。
だがコレは参ったな。確かに全ての謎は解けた。解けたが、コレはどう動けば良いんだ?
北村の言葉には未練は無い、が、未だに櫛枝さんに憧れていると言う。相手は櫛枝さんだ無理も無い。だとすれば当然香椎さんは面白く無い。分かるぞ、乙女心だ。
そこで隣に居た、北村の親友の男に……アテ逃げか!!いや、アテツケか。
おいおいおい。なんだよ、俺には無縁の恋愛模様って奴がとうとう来たのかおい!
落ち着け炊かす粒耳……高須竜児。コレは下手に動けば二人の友人を傷付ける事になる重要なポストだ。考えろ、俺は一体、どうすれば良いんだ?
恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
3月29日
とんでもない事を思い出した…ってかなんで忘れるの私!
今日アフターも無くて帰ろうとしてたら彼を見た…竜よ竜!
私は馬鹿?頭悪い子ちゃんなの?
指名争ってボトル飲み干して同伴しながらメール打ってる場合じゃないのよ!!
危なく当初の目的を逸脱するトコだったわ。ちょっとしてたけどぉぉってソレは良いのよ!
竜ったらあの魅羅乃と一緒に歩いてたのよ!でもその顔はもう死んだも同然。あの女だけが楽しそうに笑ってるだけ。
ふっふっふ。やっぱり私のにらんだ通りね。
今、竜の中に居るのは私なのよ!ふっ。もうココまでね。
明日お店を飛ぼう。
そして……貴方を探すわ、竜。
待たせてゴメンね?
川嶋安奈の日記より抜粋。
3月30日。
ようやく折れたわね。ま、予想通りね。
亜美が大事な話が有ると言って来た時は思わず笑みがこぼれたわね。
話はあした聞く事にしたから良しとして、そうね。向こうに行っても彼には少し働いて貰いましょう。刺激は必要だものね?
ふふふ。待たせたわね高須竜児君。
貴方の事だから精々面白い事してるんでしょうけどね?駄目よ、独り占めは。
これからもっと楽しくなるわよ?ふふふ。
あ〜あ。どうせなら私も通えないかしらね?大橋高校に。
いいわ、今はコレで、楽しむ事にしましょう。ね?高須君。
ココまでです。
そろそろ2年になって来ました〜。
では。
ローマの祝日後日談や日記徒然が来てたので嬉しい。
>>亜美ちゃん様の貞操問題
まったく気にしませんでした。失恋の痛みを癒すのは違う男でおk(まあ力不足だったわけですが。
そして4月か
>>67 徒然日記乙。
誰か!この絡まった毛糸玉のごとく複雑な人間関係何とかして!
またしても勘違い
お前らもうちょっとはっきり喋ろうぜ!w
>16歳。教師やPTA、万引きGメンに警備員に警官・刑事!挙句に公安にまで尋問された
>3代目就任を間近に控えた若頭
若い身空で切なすぎるw
しかし凄いなー
アニメ終わって久しいのにこの勢いw
ローマも日記も相変わらずのGJ
とらドラビフォーも今日までか。
いよいよ次回からは1巻の時間軸に突入する訳ですな。
それにしてもみんなかつぜつ良くしゃべろうぜ。
でもって耳の穴良くかっぽじって話聞こうぜw
川嶋母は女子高生やる気なのか…?
いや流石にそれはないよな。ないのか?
>>4-13 GJ
別に処女房じゃないんで経験ありは気にならなかった。
それにしてもポータブル、PSP持ってないからスルーしてたが、
やりたくなってきたじゃないか・・・
77 :
98VM:2009/05/19(火) 06:29:29 ID:GUBmG726
>>75 あみママ!でそれ書いたら笑えそう。
自分の高校生時代の制服を出してきて…
「ふっ。 どうよ。 完璧じゃない、私。」
そして大橋高校にフェラーリで乗り付けるww
驚きのあまり、見ない振りをする生徒達。
「自分で言うのもなんだけど、さすが大女優。 誰も気がつかないわね…。」
いや、流石に書きませんがw
徒然はどうなるのだ……
誰かと結ばれるのか?このままだとこの勢いで普通に卒業しそうだなww
今回の(聞き)間違い探しコーナーの時間ですよ
「まぁ精々憧れてるってところだな、今は……」
↓
「まぁ、先生に憧れてるってところだが、今に……」
「俺の甲斐性じゃまだ、な」
↓
「俺の香椎じゃまだ無いが」
みんなで探そう!
みんな好きだが、木原が女の子女の子していてかわいいな。
木原エンドをひそかに希望
ローマと日記おつです!
日記のゆくえが気になるw
2年もやるのかwkwk
見知らぬ外国の地で出会った日本人の男が、現地語がそこそこ話せて
いろいろ観光案内なんかしてくれちゃった日にゃあ、女の子は大概参っちゃうんだろうけど、
それがあの高須くんだっつーんだから、あ〜みんにしたらもうたまんね〜だろうな。
つうか、偶然出会って、目が合った時点で瞬殺
>>67 うまいなぁ、GJ
「お前よぉ」w
報われない竜児www
流れ的に次回新年度は会長のターンと見た
まだだ……亜美ちゃんのターンがまだ来ていない
ここで先走って結末を求めても仕方がないじゃないか
徒然に。作者様GJ!!!
徒然氏には今日も期待
皆さんこんばんは。
[伝えたい言葉]
の続きが出来たので投下させて貰いに来ました。
前回の感想を下さった方々ありがとうございます。
では次レスから投下します。
[伝えたい言葉(9)]
「んっう…。ふっ!は…ぅん…、は…あ」
俺は川嶋の下腹部に顔を埋める。
酔ってしまいそうな濃ゆい彼女の匂い、汗ばんだ身体のしっとりと吸い付く感覚。
焦らす様に秘部を下から上に舌を這わせる、ゆっくりゆっくり…。
「っはぁ、あっ…。ん…んあぅっ!」
舌先に纏わりつく愛液、汗とは明らかに違う『味』
そのまま舌を這わせて、敏感な部分を舐めてみる。
「あっ…。ふっ、…ふあ。あ…う」
優しく、それでいて加減はせずに…舌の表面で。
川嶋が啼く。甘えた艶声で。
微かに震える腰を捩って…。
「はっ!あっ!っ…ふっ!あっ!あっ!」
唇で敏感な部分の皮を剥いて、小刻みに舐め回す。
その愛撫に合わせて彼女が躍る。
ヒクンヒクン…。
そう形容したら良いだろう。
拘束した太股が跳ね、快感から腰が引けている。
「ひあっ!!あっ!ら…めぇ!っんん!!あひぃ…っ!!」
逃がさねぇ…。
腕に力を掛けて、彼女の腰を更に浮かせる。
そして吸い付く。強く吸引しながら小刻みに舐め回す。
彼女が口で愛撫してくれる時の様に容赦無く、だが愛情はしっかり込めて。
「あっ!!あっ!やぁあっっ!!あっ!!」
腕を押し返そうとする強い力、強い快感が堪らないのだろう。
乱れて、跳ねる身体を押さえ付けて夢中でねぶる。
舌先で感じる小さな突起、熱を帯びてヒクヒクと痙攣しているんだ。
彼女が悦びの声をあげて啼く姿が嬉しくて、奉仕にも熱が入る。
「あっっ!!!はっ!はっ…あ…、は……。ああっ!!」
強く吸ってから口を離して、秘部を舌の表面でねっとり舐めあげる。
そして再び吸い上げる。舌で弾きながら…。
彼女の両手が俺の頭を押さえる。
萎縮する様に身体を縮こませ、でも腰は俺の顔に押し付ける。
目一杯に力強く舌先で弾く。数え切れないくらいに…。
「ひあうぅっっ!!ひあっ!!あっっ!!あっ!!あんっっっ!!」
唾液を絡ませ、吸って、擦って…。
彼女はとうに蕩けていて、もう充分だろう。
でも、俺はそうとは思っていない…。
まだ『彼女』に満足はさせていないだろうから。
そうだ…。
『ココ』も…舌で愛撫したら…啼くのかな?
「んあ…ちょ、高須…くん。やだ…ぁ」
両手で秘部を拡げる。
それは、ちょっとした好奇心…。
こうしないと『出来ない事』だから…、そう、だからしちまうぞ?
より濃密な雌の匂い、トロントロンにほぐれて、刺激を求めてヒクヒクしている赤味の強い…ピンク色の『川嶋』
「んうっ!っんん…あっ、ひあっ!」
舌先に力を入れて、膣内に挿入する…。
熱く蕩けた柔肉を掻き分けて拡げていく、締まった膣肉の弾力に押し返されそうになる。
「っ…は、あふ、…ら…め」
川嶋が俺の髪を掴む、頭部に加わる微かな痛み。
「あ…あ…、は…いってきてる…ぅ…、あ、ひ…」
彼女がうわ言の様に洩らす甘い声。
それを聞きながら、俺は挿入る限界まで呑ませる。
舌の筋肉が吊ってしまいそうな程に目一杯、力を入れて突出した舌。
僅かに蠢かしてみると、彼女がビクッと震える。
「ひあっ!…ひっ…う!……っふ!」
そして同時に膣が舌をキュウキュウに締め付けてくる。
つまり…気持ち良いんだろうな。
俺は彼女の膣内で舌を蠢かす。
先程より少しだけ速く、強く…。
「んんっ!あんっ…ん!っ…はぁ!」
膣壁を小刻みに擦り、昨夜見つけた『弱い場所』を抉る。
腰が引けてしまっている彼女を強く引き寄せて、執拗なまでに弄ぶ。
「んあぁ…ああっ!!…んくっ!はうぅっ!!」
偶然を装って敏感な部分を鼻先で転がし、緩慢な動きで舌を抽出する。
川嶋の熱い愛液が漏れ、俺の顔を濡らす。
奥へ奥へ…そして舌を突き上げながら一気に引く。
「ああぁっ!!!たかすく、ぅん!ら、らめらってぇ!!…あうっ!!!」
すると彼女がより大きな声で啼きながら懇願する。
『駄目』
と…。
その願いを俺は強めに吸って却下する。
弱い場所をグイグイ押しながら、陰唇を唇で甘噛みして。
「あっ!!あっ!!……蕩けちゃうぅ…よぅう…」
彼女が抑えた声で呟く。
俺は息子がビクッと跳ねてしまう。
高揚感に包まれて背中がゾクゾクするんだ…。
川嶋を蕩けさせて甘く啼かせている自分、その状況に興奮していた。
…他でもない俺が彼女を濡らしている。
啼かせて、泣かして…『高須竜児』を覚えさせている。
発情した川嶋が腰を振って身悶えし、貪欲に貪っている様を見たら…
『もっと教えてみたい』
そう思うのは自然な流れだった。
「あ…ふぅ。は…っ、はっ…。あ…あっ」
舌を引き抜いて、再びねっとり秘部をねぶる。
唾液を絡ませた舌で、ヒクヒクとおねだりする秘部を愛撫する。
端から端まで、下から上へ。
一回、二回…。同じ軌跡を等速で辿っていく。
「くふぅ…、ん。ふ…、ふあ…っ」
ずっと同じ動作で愛撫を続ける。
それは俺のちょっとした悪戯。
『教えたい』から彼女が『望む』まで…止めない。
抑えられて燻った欲求に身を焦がされ、不満そうに…でも俺にされるがままの川嶋の姿はそそられる。
いや…彼女のどんな仕草にだって俺はドキドキしてしまうだろう。
からかいの言葉に混じる本音、甘える姿、そして折れそうな時に抱き締めて…包んでくれる優しさ。
川嶋との触れ合いは、まだ片手で数えれる程だけど…それでもこれだけ想えるんだ。
「くっあ…たか、すくん、ん…も、もっと……強く、っふ。
亜美ちゃん切ないよ…ぅうんっ」
そう想いながら、ひたすら単調な愛撫に徹して、五分も経った頃だろうか。とうとう川嶋がおねだりし始める。
そう。腰を捩らせ、泣きそうな声色で言うんだ。
「切ねぇ…んだ?例えばこことか?」
俺は舌先で膣口をつつく。
先みたいに挿入はしない…が、川嶋は期待していた様で腰をビクッと跳ねさせた。
「何処が切ないのか分かんないから……おぅ、そうだ。教えてみろよ」
俺はわざとらしく彼女を焦らす、先程は聞けなかった『恥かしい言葉』を聞きたいという欲求が首を擡げてきたから…。
「あっ…わかって、る…んっ…くせに……。ふっ!」
不満気にそう洩らす彼女の内太股に舌を這わせる。
舌が触れるか触れないか…そんなもどかしさを覚えさせる様な具合に。
「いや、分からねぇんだよ。なあ…川嶋、教えてくれないと出来ないぞ」
「んんっ!…だからぁ、高須君の"目の前"の所…だよ。…っひう!」
かたくなに明言は避けようとする彼女をいたぶり続ける。
秘部周辺に舌を這わせて、太股を撫で、舐め回して…。
そして、遂に川嶋の方が折れる。
「ふっ!ふっ!あ…、い、言う…言うからぁ意地悪しな、いでよ……、んっ」
仕方無し…という風な言い方に僅かに混じった涙声。
それは甘さと熱さも含んでいて…俺の理性を揺さぶる。
「お…まん………こが、切ない…の」
プライドの高い川嶋が恥かしそうに小さな声で呟いた『やらしい言葉』
それを聞いた瞬間、全身をゾクゾクとした興奮が駆巡る。
息子がこれ以上無い程に血が通い、痛いくらいに硬くなっている。
すぐにでも挿入てしまいたい…。
この熱く蕩け、柔らかくて狭い『川嶋』の中へ。
だが、あと少し…ほんの少し我慢だ。
彼女を多少でも満足させてから繋がりたい。
俺は性交で彼女を満足させている自信がないのだ。
だから愛撫で努力しよう。
という訳だ。
エロ本やらエロDVD…そこから得た知識と、川嶋と覚えた悦ばせる術。
それらを織り交ぜてみたら彼女を絶頂に導けるかもしれない。
「んふぅ…っ!っふ!あっうぅ…、ひあぁ!」
敏感な部分をねぶる。
舌先でチロチロと小刻みに弾き、強弱を付けて吸いつく。
同時に右手を膝から抜き、彼女への拘束を外して中指と薬指を膣内に挿入る。
「んんっ…うぅ!あっ!あ、はぁ…♪」
根元まで呑ませて膣内で指を弾き、
揉みほぐす様に指を蠢かして、敏感な部分を優しく舐め回す。
すると川嶋が太股を俺の頭に寄せて甘く啼く。
…熱くほてった膣肉が指に絡み、吸い付いてくるんだ。
美味しそうに『おしゃぶり』している。
「はうぅっ!!す、凄いぃっ…あんっ!…あふっ!!」
『口でされるのが好き』
先程そう言っていた川嶋が腰を振ってサカる…『指でするな』とは言われていない。
両方を用いて愛撫すれば問題無い。
「んあっ!!あっ!!あっ!!あくうぅ…っん!!」
膣内を掻き回し、纏わりつくザラザラとしたヒダを撫で、
強く吸い付くと同時に唇で甘噛みし、舌で抉る。
発情した雌の声で啼き、快感に身を躍らせた川嶋の姿。
愛撫に変化を加える度に彼女が跳ねる。
「やっ!やっ!あぁっ!!たかすくぅん…っ!たかすくぅん!!」
彼女が何度も俺の名を呼び、蕩ける。
もう腕を押し返そうともしない。
むしろ頭を手でグイグイ押し付けて腰をフリフリ…。
その仕草が堪らなくて夢中で貪る。
もう一方の拘束を解いて、親指で敏感な部分の皮を剥いて更に強くねぶり、
敏感な膣壁の奥を指で円を描く様にしながら圧迫する。
「うぅっんっ!!っはぁ…あっ!!ひゃうっ!!」
このコリコリした部分を愛撫すると川嶋は堪らないらしい。
昨夜、恥かしそうにカミングアウトしていた…。
その時は川嶋も『するんだ』と驚いた。
男なら、まあ…分かる。でも身近な異性が……自慰しているんだ。
そう知って興奮が高まったのを思い出す。
「ふっ!ふあっ!!あっ!!あんっ!!あっ!!」
ギュウギュウに締めてくる膣肉を掻き分けて指を曲げる。
圧迫する力はそのまま、小刻みに速く擦ると彼女が腰を僅かに浮かせる。
啼く声は甲高くなり、汗ばんだ太股が俺の後頭部をグイッと強く引き寄せる。
「ふあぁっ!!た、たかすくぅんっ!!んあっ!!イッちゃう!!あみちゃんっん!!イッちゃうようぅ!!!」
ヒクンヒクンと膣が痙攣し、川嶋が腰を振って甘える。
敏感な部分を唇で強く圧迫しながら舌先に力を入れて小刻みに舐め回し、
指を曲げたまま奥まで一気に叩き込む。
「ひああっっっ!!!!!」
痛い程に膣が締まり、川嶋が大きく跳ねて絶叫する。
熱い愛液の飛沫が僅かに顔に掛かる。
「ん…あ…。ん…く。はっあ…!はあ!……んんっ、あ」
川嶋が達したのだ。
それも多分、本気で…。
ヒクヒクと全身を震わせて浅く息をしている。
「お、おぅっ!?だ、大丈夫か?」
俺は身体を起こして彼女を抱き起こす。
予想より激しい絶頂を見せつけられ心配になったからだ。
「はあっ…はあ!んぅ…、っふ…」
彼女は頬を赤く染めてトロンと蕩けた瞳を俺に向ける。
「スケベ…」
彼女が一言そう発したのは、それから数分経ってからだった。
力が入らないのだろう。
俺の腕にしがみついて乱れた呼吸を整えた後、ポツリと呟いたのだ。
上目遣いに熱ぽく見詰めながら。
「おぅ…すまん。調子に乗ってやり過ぎた…」
「…別に謝んなくたっていいわよ、…………凄く気持ち良かったもん」
ギュッと俺に抱き付いて顔を伏せたまま彼女が紡ぐ。
そう言って貰えて俺は天にも昇りそうな気持ちになる。
「……高須君。次はさ」
満たされた気持ちを堪能していると、川嶋がそう言って顔を上げる
「……おぅ」
その表情に俺は胸が高鳴る。
去年の初夏の頃、あれほど怯えて逃げていたストーカーを川嶋自身が撃退した日…。
隣の居間で彼女が見せた、縋る様に瞳を潤わせたチワワの目。
それを思い出させる……庇護欲をそそる上目遣い。
作り物では無い甘えた表情、それ自体は触れ合う中で何度も見ていた。
だが、今回のそれは……そんなのより、もっと……可憐で、熱に浮かされていて…色香を漂わせている。
発情しきって蕩けた瞳で見詰め、甘える様に身体を擦り寄せているんだ。
一言で言うならノックアウトされた。
「……亜美ちゃんが…高須君を良くしてあげる」
「っ!?」
気付いた時には俺は川嶋に馬乗りにされていた。
時間にしたら一秒とか二秒とか…一瞬の事。
俺はすっかり魅入られていた。
だから川嶋が俺に伸し掛かって、ベッドに押し倒してきた時に我に返ったのだ。
「うわ…ガッチガチ…。お腹に引っ付く位、おっきくなってるんですけどぉ」
「うあ…」
彼女が悪戯っぽい目付きで意地悪そうに呟きながら、下着の中に手を差し入れ、息子の頭を逆手に握る。
スベスベした気持ち良い感触…柔らかくて暖くて…俺は惚けた声が出てしまう。
「ふふっ♪高須君はぁ…亜美ちゃんの大事な所を舐めて興奮しちゃってたんだぁ?へぇ〜クスクス」
手の平の中で優しく揉みながら、川嶋が楽しそうに紡ぐ。
でも、川嶋も興奮している…んだと思う。
素の言葉遣いに混じった、荒い呼吸…そして慈しむ様な言い様。
嬉しそうな顔で、刺激に飢えて敏感になっている息子を愛撫している。
「エッチぃお露…出てるし。ヌルヌル…。んんっ、我慢させちゃった」
親指の腹でクリクリと息子の先を転がし、先走って漏れた体液を纏わせながら申し訳無さそうに紡ぐ。
川嶋の指が下着の端を掴み、ゆっくり脱がされ……太股の辺りで止まる。
「…すぐに楽にしてあげる」
そして彼女が身体をずらして俺の膝の間に蹲る。
「うぅっ!っは…!」
川嶋の暖かい吐息が近付いた次の瞬間、息子が熱くて、柔らかく…ヌルヌルした場所に居た。
「んっ…ふ…。ん…」
それは彼女が口内へ息子を呑んだから…。
窄ませた唇が息子の頭から徐々に根元の方へ…。
擦り付けられるプルプルな唇、先から裏筋を撫でる様に這う舌。
髪を掻き上げて、悩ましげな声を洩らして川嶋が…愛撫してくれようとしている。
「っ…ふ!……く、ぅ」
「ちゅぷっ、ちゅっ!……んんっ」
息子を半分程呑んで、川嶋が甘く吸う。
唇でゆっくり扱きながら、舌先を蠢かせる。
ピリピリ痺れる微弱な電流…それが腰から背中に流れていく。
「ちゅくっ、ちゅぴ…。ちゅっ…ぷぶ…、ふ」
唇が息子の頭の下を甘噛みしながら、舌で強くねぶられる。強めに吸われてもいる。
その強い刺激に思わず彼女の頭を押えてしまう。
「…んぅ?はふ…、ちゅっ!ちゅぶっ!ちゅっ!ちゅうううっっ!!」
だが彼女は、その手を掴んで引き剥がし激しく吸引してくる。
「くあぁっっ!!か、川嶋ぁあ!!」
今度は俺が拘束された訳だ…。
先程の『仕返し』なのだろう。
卑猥な音を発てて川嶋がしゃぶり付く、ベロベロとねっとり舌を絡ませながら…。
小刻みに抽出され、そういう愛撫も駆使して蕩かされる。
腰の感覚が無くなっていく…。熱く融けて砕かれる。
「ちゅっぷ!ちゅっぷ!!ん…あ…、ちゅぶっ!ちゅっぷ!」
とてつもない気持ち良さ。ゾクゾクと身体が震え、力を込めた舌で弾かれた時なんて腰が跳ねてしまう。
何より視覚的に興奮する。
容姿端麗な彼女が瞳を閉じて頬を染め、俺の下腹部に顔を埋めている姿。
白い肢体が愛撫に合わせて揺れ、形の良い尻が突き上げられていて……何ていうんだ?
ああ…『雌豹』が獲物に飛び掛かる様なイメージ。
愛くるしいチワワを彷彿させる中に隠された…獣。
堪らない…。
「ふ…あ、たかひゅくんのおひんひん…またおっひくなっは…」
そう川嶋が嬉しそうに、そしてたどたどしく呟く…。
一言紡ぐ度に蠢く舌が丸まって、弾いて…巻いて…。ゾクッと強い快感に襲われて俺は身体を震わせる。
別に意識して言っている訳では無いだろう。
いくらあの川嶋だって…。
彼女が持つ『異性の庇護を求める方法』なら、もっとあからさまに言う筈…。
それ自体は知り合って間もない頃に経験した事。今、ここに居る川嶋は違う。
相手を悦ばせよう、気持ち良くなって欲しい、そんな気持ちがひしひしと伝わる。
この身体に沸き起こっている震えは、そんなむず痒い心情から来る歓喜。
……あと空気をぶち壊す様だけど、やっぱり気持ち良いのだ。
これは余計な言い回しなんかしなくても良い。事実なのだから。
「ちゅぶっ!!ちゅ、ちゅくっ!ちゅっぷ!ふ…、ちゅぶ!」
多量の唾液を絡ませ、強く吸引しながら、息子の先から竿の半分より少し上くらいまで、唇を引っ掛けて愛撫される。
舌が縦横無尽に這い、時折当たる犬歯がもたらす痛みすら快感に繋がる。
俺の腰は砕けてガクガクと暇無く震える。
やがて彼女の手は俺の腕から腰へ回され、愛撫が更に強く激しさを増していく。
唇と舌…口だけで川嶋は俺を登り詰めさせる。
「ふ…、どう…かな?気持ち良い?」
チュポンと口内から息子を離し、川嶋が手で優しく扱きながら問い掛けてくる。
「お、おうっ!凄く…気持ち良いぞ!」
うわずった声で俺は返す。
感情も本能もこれ以上無い程に高ぶっていた。
俺の心が全て川嶋で満たされて『余計な事』も『辛い事』も流されて…『綺麗』になっていく…。
「ん…あのね。じゃあ…もっと気持ち良い事しようよ」
そう言って川嶋が、迷いがちにベッドの下に放られた鞄をまさぐり始める。
「コレ……使う?」
身体をベッドに戻して相対した時、その手には茶色い紙袋が握られていた…。
続く
今回は以上です。
予定では、あと一回ないし二回で完結の予定ですので、もう暫くお付き合いください。
では
ノシ
待ってましたKARs様!
今回はエロさに一段と磨きが……
私、いま晩飯を食べながら賢者になりそうでもう大変でした
なんというエロさ
ま た 寸 止 め wwww
こんばんわです。
もう少しで今日の投下行けるかと!
今夜もよろしくです。
どもです。
皆さご存知の様に、今夜から時間軸が追い付きます。
ちなみに筆者はノベルではなくアニメでとらドラを知りまして、今は原作を読んでる最中。
この日記は、アニメを念頭に書き始めましたので、生粋のとらドラっ子には些か物足りなさも有るかと思いますが、許してくださいね。
今日はまださわりになるかと……
それでは次レスより投下行きます
高須竜児の日記より抜粋。
4月2日。
OKOK。まずは状況を総括しようぜ議長。
ココ2日間で俺の頭には名案は浮かんでこない。ココは一つ原点回帰だ!
まず北村は過去に櫛枝さんに告白しフラれた。これに関しては俺は心中で謝罪するしかない。しかし一頭の雌に一頭の雄。これは自然界の掟なのだろう。許せ北村。
そして現在北村は香椎さんとそれとなくイイ感じなのだが、依然、櫛枝さんに残る思いも有るらしい。
それに香椎さんは気付いてる様で?俺に、その、キスをしてきた。北村へのアテツケと思われる乙女の防衛本能なのだろう。
だがこれからが問題だ。今はまだ沈黙を保っているが、アレがアテツケである以上、やはり香椎さんは北村の耳に入れる積りだろう。
しかし北村にそれが伝わればそれなりの騒動は必死!そうすれば…やはり櫛枝さんの耳にも入ってしまう可能性は極めて高い。
確かに無実だ、潔白だ。それでも私はやってないという映画が有ったが、まさに俺だ。主人公には大いにエールを送りたい!
だが…香椎さんを責める事はない。いや、それはしてはならないと思う。彼女も辛い立場だ。この状況下で北村にキレ無いってだけでも、寧ろ素晴らしい自制心だと感服する。
北村にしたってそうだ。確かに憧れは残るのかも知れない。でもアイツの心はもう香椎さんに向かってる。それは間違い無い筈だ。ただ皆少しずつ、ずれているだけだ。これが青春か…苦いな。
今、俺は一歩引いて現状を把握する事が出来る。でも櫛枝さんの耳に入れば俺だって当事者だ。
そうなる前になんとかしたい。多分それが全員にとってベターなんじゃないかと思う。
誰か相談出来る相手でも居ればいいんだが、俺にはどうにも友人が少ない。その少ない友人の内の2人の悩みだ。正直、なんとかしたい。
しかしある意味もっとも頼りになる北村と香椎さんが居ないのは痛い。木原さんは?いや、彼女は明るく元気だがその実とても弱い子だ。いつも泣いている姿が印象的だ。彼女には些か酷な話になるだろう。無理だ。
能登は?論外だな。ゲームと芸能情報以外でアイツが適切なアドバイスをくれるとは思えん。
………おい。俺の友達は打ち止めかよ。いや、クラスの奴等だって話はするし、偶に…そうか。遊んだりはしてないか。
参った。俺はこれほど友達が少ない奴だったのか。これからはもっと友人を作ろう。
いや、今これを言っても仕方が無い。これは2年の新たな目標にするとして、現状はどうするか……!!そう、居るじゃねぇか!
客観的かつ冷静に、そしておそらく正しいであろう判断を下せる人物!狩野先輩だ!!
ちょっと会うには度胸が要るが、今は言っている状況ではない。ココは一つ、狩野先輩の力を借りようと思う。なんとか休みの間に会おう。
狩野すみれの日記より抜粋。
4月4日。
もうすぐ春休みも終わる。
結局私は高須と顔を合わせられずに居る。多分、アイツは私を探してる。
最近、毎日店に来るし、時には2回・3回と来る日もある。
私は自分の弱さのツケを高須に払わせているのか?あいつの真っ直ぐにな想いに、もう答えを出す時期なのかも知れない。
でも、なにを戸惑うんだろうな、私は……アイツの事をよく知らない。それもあるだろう。でもそれだけじゃ無い気がする。
それが分かるまで……会うのが怖いんだな、私は。
能登久光の日記より抜粋。
4月5日。
結局なんにも無かったな、春休み。
また高須でも誘って合コンしよう。あいつこの前来れなかったしな。
ま、お互いさもしい独り身だからな。ココは助け合いだな。うん。
香椎奈々子の日記より抜粋。
4月5日。
もう、ほんとにどうなっちゃうのよ!このままじゃ、新学期もオチオチ迎えられないじゃない!
ちょっと少し整理しましょう。このままじゃ不味いわ。
麻耶は高須君と北村君のどっちも好き。これは前から知ってる。
高須くんは……私を、選んで、待っててくれてる。これもいい。ごめんね高須君。
北村君は恋ヶ窪先生を好き。私には理解出来ない。でも年頃の男の子が大人の女性に惹かれるのは無理は無いのかも知れない。
私は高須君の事を、多分好きだと思う。
でも良いの?もし私が高須君の思いに向き合ったら、麻耶は全部失う。それを分かってて、それほどに高須君を好きかと言われれば即答は出来ない。
秤に掛けるべきではない人達が、秤に乗ってしまってる。今はそんな状況。
私が引けば、何かが収まるんだろうか…誰かが…引けば…そして
私がいっそもっと高須君を好きになれれば……みんな上手く行くのかなぁ
木原麻耶の日記より抜粋。
4月7日。
何度も奈々子からメールをもらってる。他愛も無いメール。でも心配してくれているのが分かる。
もう自分独りではどうする事も出来ない状況なのかも知れない。
まるおは恋ヶ窪先生の事を想ってる。
そんな彼の言葉で、私ははっきりと認識しちゃった。まるおの事をホントに好きなんだって。
でもそんな私に、高須君は想いをくれる。押し付けないで、入り込まないで、それでも優しく包んでくれる。このマフラーみたいに、温かく。
そんな高須君の事を、きっと奈々子は……
何も捨てられない、何も選べない。私はただの臆病者。でももう少し、もう少しだけ、こうして居たかった。居たかったのに……
櫛枝美乃梨の日記より抜粋。
4月8日。
今日ウチの店に大河が来た。なんか元気無い。
夕食を食べ終わってもだらだらと時間を潰してる。すごくつまらなさそう。
どうしたの?大河。
なんか少しだけ、大河が小さく見えた気がした。
私はあとどれ位、踏み込んで良いの?大河。
川嶋亜美の日記より抜粋。
4月10日。
上手くママを説得出来た。ヨッシャ!これであの変態ともお別れね!
行き先は伯父さんの家で、通う学校はママに一任になった。まぁこの際どこでも良いわ。ようはこの町から離れられればなんでもいい。
もしかしたら伯父さんちの近くに居た奴と同じ高校かもね。何てったっけ?たしか…佑作よね。ま、一応調べトコ。
あぁ、もう細かい手続きが面倒臭い!明日からでも行きたいのに、もう!!
でもなんか疲れるのよね。ま、どこ行ったって一緒か。私の周りなんて、何処も一緒…
高須竜児の日記より抜粋。
4月14日。
………俺は自分の不甲斐無さを今日ほど痛感した事は無い。いや、鈍さと言い換えても言い。これは既に犯罪の域だ。
今日ようやく俺は狩野先輩を捕まえた。スーパーで見つけて、用事があると言う狩野先輩に何時までも待つと言って時間を貰った。
少々強引だったが、それでも狩野先輩は夜に時間を取ってくれて、近くの公園で俺達は会う事が出来た。
気まずいからな。この前のマフラーや、その後のお礼の事は触れないようにした。これでも気を使った積りだ。
当り障りの無い会話だったが、どこか穏やかな時間だった。狩野先輩はやはり色々と話しやすいな、と思う。
だがやはり何時までもと言う訳には行かない。あの人にもそれは分かっていたんだろう。「それで?」と話を促そうとしてくれた。
こんな所まで、彼女に頼る俺が情けなかった。
俺は教えて貰いたい事が有ると言うと、狩野先輩にはそれも分かっていたようだ。「頃合か」と溜息を付いていた。やはり凄い。
同じ生徒会に顔を出す北村の事を心配してくれていたのか。皆がアニキと慕うのも頷ける。
だがココで気付く事が出来ない俺はもう死んだ方が良いのかも知れんな。
先輩は間を外すように自動販売機の前に立ち金を入れようとしてた。ココで動けた俺は自分で自分を誉めたい。
取り敢えず自分で金を入れようとしてる先輩を後ろから止め、すかさず俺は自分の500円を入れてコーヒーのボタンを押した。
いつも狩野先輩が飲んでいるコーヒーは把握済みだ。120円になって20円多いが、まぁこれは正月からの利息だ、受け取って貰おう。
4ヶ月以上……やっとココまで来たと言う思いがあった。狩野先輩も存外頑固で困ったものだ。
まあ、狩野先輩は中々コーヒーを取ろうとはしなかったが、それでももう買ってしまったからな。あとの祭りだ。今日は俺の勝ちですよ?狩野先輩。
確かに狩野先輩の言うように強引だったがな、それでも俺はこうしたかったのさ。男のケジメだ。100円とは言え、払わせたままにしておくのは忍びない。
ただゆっくりと下がる狩野先輩の右手だけは掴み止めさせてもらった。お釣は俺のモノだ、380円。
ただ其処からだな。俺が自分の鈍感さに有罪判決を下すのは。なんで俺は気が付かなかったんだ?
狩野先輩はそのまま俺に凭れ掛かって目を閉じていた。ただ「少し疲れた」と言って。
よく考えたら先輩はただ1つだけ年上の女の子ではないか。生徒会長としての狩野すみれ。頼りになる先輩としてのアニキ。家業を手伝う娘。
俺に胸元に伝わってくる狩野先輩は細くて軽くて……疲れ果てている女の子だった。そんな人に、俺はこの上俺の悩みまで持ち込むのか?
そんな事にココまで気が付かないなど俺はもう病院に行った方が良いのかも知れないな!馬鹿者が!!
「教えて欲しいか?」と狩野先輩は言う。そんな訳はないだろう?もう充分だ。
先輩はただ自分は「すみれ」だと言う。俺が「ヤンキー」と言われる様に、彼女もまた「会長」や「アニキ」と呼ばれ続けていたのだろう。
だったらせめて今だけは。先輩が望んでいる時だけは、俺はそう呼んでやりたかった。
もう学校が始まる。俺は自分の問題を他人に押し付ける事はしたくない。
あるがままを受け止めて行こう。これ以上、情けない自分を晒す訳には行かないからな。見ていて下さい!狩野先輩!
逢坂大河の日記より抜粋。
4月14日。
もうすぐ一学期だ。今度は北村君と一緒のクラスになりたい。
そうなればきっと楽しい場所になる。みのりんとは離れたくない。
クラス名簿を自由に操作出来たら良いのに。いっそ忍び込もうかしら?
でも北村君に迷惑かけたら?私は……上手く立ち回るなんて出来ない。みのりんみたいに笑えない。
ムカつく事は我慢できない…迷惑掛けて嫌われたら…私は。
狩野すみれの日記より抜粋。
4月15日。
明日からいよいよ新学期だな。私も3年か。アイツは…どうせまたクラスに溶け込むのに時間が掛かるんだろうな。
さっきメールしてみたが、どうやらそれが悩みの種らしい。なにやらイメージの変わる整髪料とやらを買ったらしいが、無理だと思うのだがな、お前は。
でもアイツとの些細なやり取りが楽しい。ほんと、やきが回ったな、私は。
昨日の夜、アイツが私を抱きとめた時、驚いたが、落ち着けた。私の気持ちを聞きに来ておいていきなり後ろから抱き付くのは反則だと思うのだがな?私は。
腰に回されたアイツの腕が温かかった。抑えられた右手が熱かった。
「やっとココまで…」それを聞いた時、どこか力が抜けたな。アイツの想いが、一気に流れ込んできた気がした。
意地を張って疲れたと言う私をアイツは受け入れてくれた。随分と広いじゃないか?お前の胸は。私が凭れ掛かっても微動だにしないな。
強引だな?と言ったら、「これ位で丁度良い」と言いやがった。
聞きたいか尋ねたら「もう充分だ」と言う。随分と分かった口を利くじゃないか?
重くないか聞いたら「羽根みたいです」だとさ。無論、重いなどと言ったら死刑だ。
私はすみれだと言ったら「俺は竜児です」か。
ただ「竜児」と呼べば、静かに「すみれ」と返して来る。自分の名前がこんなに綺麗に聞こえるなんて意外だったな。
呼んで、呼ばれて、呼んで、呼ばれて…我ながら馬鹿馬鹿しい時間の使い方だ。だけどなんだろうな。嬉しかったんだろうな、私は。
しばらくしてアイツは私を解放した。ま、私が足に力を入れただけか。てっきりあのまま……でも去ったな、アイツは。
結局私は何も言ってないしな。でも良いのか?と聞いた私に「もちろんですよ」と言ったあの顔は、いい顔だったな。うん。
良い顔だったぞ?竜児。
恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
4月16日。
どうしてよどうしてよ!
私のクラスは一体どういう基準で決まったの?
逢坂さんはまだ良いのよ。うん。それだけなら去年もそうだったし。でもね?なんで高須竜児君まで私のクラスなの!!
大橋高校の2大番長を一つクラスにまとめるなんて正気じゃないわよ!
どうしよう母さん。助けて!竜!!!
香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
奈々子よ。とうとう今日、父さんの携帯電話もパケ放題にしたぞ?
まさかお前が「私がもっと高須の好きにされれば、みんな上手くいくのかなぁ」なんて事になってるなんて…くっ!ダメだ、涙で日記が滲む。
お前が皆の為に人身御供になっているとは…畜生畜生畜生!!!待ってろよ奈々子!必ず復讐は果す!
教えてくれ奈々子!闇サイトとはどのコンテンツにあるんだ?イベントとか着メロか?パケ放題を舐めるなよ高須竜児!おや?フルブラウザってのにすれば見易いじゃないか。よし、今夜は徹夜だ。
北村佑作の日記より抜粋。
4月17日。
今日から新学期だ。
それにしても新しいクラスはなんとも楽しそうだ。
高須に櫛枝、逢坂も木原も香椎も居る。あ、能登も居たな。
なんとも愉快なクラスになりそうだ、うん!
それにしてもまさか初日に高須が逢坂の洗礼を受けるとは思わなかったな。ま、おかげで高須への誤解も早々に溶けそうで何よりだ。
その点は高須も喜んでいたしな。
それにしても逢坂と同じクラスとは、俺もまぁ……良い機会なんだろうな、うん。
新しく、向き合っていこう、逢坂と。
木原麻耶の日記より抜粋。
4月17日。
なんかとんでもないクラスになっちゃった。
高須君とまるおに、奈々子。担任がなんで恋ヶ窪先生なの!
もう関係者全員集合じゃない!
はぁ………どうなるんだろ、私。
香椎奈々子の日記より抜粋。
4月17日。
なんかとんでもないクラスね。わざとかしら?
私達みんなC組なんてあり得ないわ。よっぽど相性良いのかしら私達。
でも、大変だけど楽しそう。きっと楽しい。そう思う。
だから明日からまた学校が楽しみになった。いい事よね?本当に。
逢坂大河の日記より抜粋。
4月17日。
どうしようどうしよう。ききききき北村君と同じクララララスになったわ。
みのりんとも一緒だし、もう最高じゃない!!あぁ、でもウザイ事もあったわね。また何人かぶちのめしたし。
手乗り手乗りって五月蝿いのよ!てか、アイツも居たわね、高須…なんてったっけ?……あぁ竜児か。
ま、いつも通りお見舞いしてやったし、今後は近寄って来ないでしょ。みんな……そうだもん。
でも参ったわね。アイツって北村君と仲良いのよね。ホント、変な事言い触らされる前にトドメ差しといた方がいいかしら?
武井とやらの日記より抜粋。
4月17日。
おおお、A組のみんなヨロシク〜。
いや〜女子の目が冷たいかったのなんの。
……!そっか、告白した人結構居るんだよな俺って感じ。みんな久しぶ…ってトコで殴られた。
前途多難だな〜。
恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
4月17日。
……終わったわ。
流石ね、逢坂さん。まさか初日に高須君と殺り合うなんて。
高須君は手を出さなかったそうだけど、時間の問題よね……学び舎は戦場なの?防弾チョッキってどこで売ってるのかしら。
竜、助けて。でもダメよね。この上、竜まで来てしまったらホントの戦場になっちゃうもん。死体の山ね。
なんとか頑張るわ、私!
さぁて、今夜も竜を探しに行ってこよ〜〜っと。
高須竜児の日記より抜粋。
4月17日。
わはははははははは!!!正にこの日の日記を書く為に存在していたかの様に日記帳が神々しい光を放っているぞ!聖書なんてアウト・オブ・眼中だ!
終に汚れ白紙え打算と尾名じ蔵素に那れ多……落ち着け俺。
ついに俺は櫛枝さんと同じクラスになれた!!よく出来た俺!
しかもまともに会話も成立しちまったじゃねぇか。チョコのお礼も満足に届ける事の出来ない俺が!!
俺が櫛枝実乃梨の名前を忘れる訳が無いだろうに、ソレを聞いて熟れ死異…嬉しいと言ってくれたぞ!!参ったぜ俺のテンション。はっはーー!
しかし何故だ?櫛枝さんの横に有ったあの生き人形はどう言う怪奇現象なんだ?
手乗りタイガーなどと云う中々良い得て妙な人物から、俺はモーニングパンチをお見舞いされた。
手乗りサイズのタイガーなのか手乗りサイズな大河なのか、大河サイズのタイガーなのかは分からんが、一体アレは何なんだ。
だがまぁ、奴にも礼を言わねばならんな。おかげで俺は手乗りサイズの女の子に一撃でのされる位に普通な男子高校生で有る事がクラスの皆に分かって貰えた。おいおい、去年の相互理解最速記録をブッチギリで更新だぜ。
ココ迄なら今日は俺の人生で最高の日であり、俺と櫛枝さんの運命の始まりの日であるメモリアルデーだったのだが…何故だ櫛枝さん。俺には君が分からない。
櫛枝さんは俺のトコに来たかと思えば、あのお人形さんの事を俺に謝るではないか。別に櫛枝さんが謝る事じゃないだろうに。おまけに
「大河は私の親友なんだ。だから出来れば、高須君も大河と仲良くして欲しい。お願いだよ。プリーズ」ときた。
聞けば逢坂大河と名付けられたあの小さな同級生は、その凶暴性から1年の時もクラスで浮いた存在だったそうだ。2大番長の1人だとか。もう1人は聞きたくないから聞かなかった。
まいったな櫛枝さん。君は優しいんだな……君が俺と仲良くなってしまえばあの凶暴人形チャッキーもどきが孤独になってしまうと云う訳だ。
ならばコレは君が俺に与えた試練!この人喰い虎を見事飼いならせと言うんだな?君が安心して俺の隣に来れるように!
OKだ櫛枝さん!ノープロだ櫛枝さん!!安心して全て俺に任せれば良い!!いや〜。人生は薔薇色だ〜。わはははははは。
………一緒のクラスになれたね!と香椎さんからメールが来た………
忘れてたぜGOD………北村と香椎さんに早く仲直りしてもらわねぇとマジィじゃんってば俺!
狩野すみれの日記より抜粋。
4月20日。
まだまだ校内も落ち着かないようだが、まずまずの新学期だな。
まぁクラスも部活も委員会も、あと1・2週間もすれば機能するだろう。ソレまでは何かと生徒会で忙しくなるな。
「余り無理をするな」とお節介な奴からもメールが来てるしな。まぁ程々にしておくさ。
それにしても何だろうな、このデコレーションメールと言うモノは。
どっちにしても興味は無いがな……
木原麻耶の日記より抜粋。
4月22日。
今日、クラスで班決めをやった。
なんだろう。そうする事が自然みたいに、私はまるおと高須君に声を掛けてた。
二人も普通にOKって感じ。なんかずっと一緒にいた仲間みたい。すこし嬉しかった。
まるおに高須君に私に奈々子。後は男子が能登君と春田君に女子が櫛枝さんと逢坂さん。
能登君は高須君と1年の時一緒だったって言うし、例の合コンも彼なんだよね。
それで櫛枝さんはまるおと同じソフト部で春田君は櫛枝さんと逢坂さんとは同じA組だったって。
特に違和感が有る訳じゃ無いけど、やっぱりどこか逢坂さんは怖かった。
どこか不機嫌なオーラを出してるっていうか。
櫛枝さんのテンションもかなりビックリしたけどさ。でも面白いから良いかな。あまり深くは付き合えないかもだけど。
やっぱり私はどこか答えを出したくないんだと思う。このままが良いって思う。そんな事、出来る訳無いのにね。
香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
4月23日。
DOCOMOから凄まじい請求が来た。フルブラウザとは別料金なのか?
この金額は奈々子の怒りを買って、そのお釣りで奈々子の恨みを買える金額だ。
何とか気付かれる前に処理したい。へそくりを出さねばなるまい。
これも貴様の陰謀か!高須竜児!!
4月24日。
………夕食がお米とキュウリ1本だった……奈々子、ごめんなさい。
高須竜児の日記より抜粋。
4月25日。
今日の放課後、歩いてたら「はぁい!そこの推定有罪少年、手を挙げて止まりなさ〜い」と声を掛けられた。
悪夢な長野旅行の時にお世話になったお姉さんだった。よく分からんが何しに来たんだ?あの人。
それにしてもやたらカッコいい真っ赤なスポーツカーだったな。なんで車内に消火器が積んで有るのか謎でしかない。
ちょっと野暮用でこの街に来たらしい、俺を見かけたのは偶々だそうだ。そんなに目立つのか?俺は。
送ってくれると言うので車に乗せてもらったが、もう2度と乗るまい。まぁ機会も無いだろうが。
あの人は一度制限速度と云うモノを漢字の読み方からやり直した方が良いな。いろんな意味で。
しかし行き成り「で?合コンの娘とは上手くいったの?確か女子ソフトボールの娘だっけ?」と来た時は言葉を失ったな。よく覚えてんなこの人。
いってるわけが無かろうに。随分愉快な事を聞いてくる。
どうにも要領を得ない人だし、一枚や二枚どころか数えるのも馬鹿らしい位枚数も上にいる様な感じを受けるんだよな、この人。
俺は家に送ってもらい、お姉さんはまたスポーツカーでかっ飛んでいったな。ホントに何しに来たんだ?
あっ。また名前聞き忘れたな。ま、いいか。
それにしてもまた最後に変な事言ったよな、あの人。
「君は何とかしようと思ってるんでしょうけど、その手乗りの虎さん。結構手強いと思うわよ?なんとか出来るの?」だとさ。
つまんない事聞くなよな、お姉さん。櫛枝さんの為なんだぜ?
櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
4月25日。
今日、グランドに変な人が来たの。
もの凄く美人で、どっかで見たこと有るんだけど今一思い出せない。けどその人が急にバット持って打席に立って
「ねぇお嬢さん。一球勝負、お願い出来る?」って。
なんか断れない雰囲気だったし、何より…あの人の目が、私の全部を見透かしてるみたいで……負けたくなかった。
思いっきり投げて。思いっきり打たれた。
正直驚いた。でもあの人は楽しそうに私を眺めて「う〜ん…いい線行ってるんだけどな〜。うん、60点、かな」どこか楽しそうだった。
でもあの人の背中に、また今度勝負して貰えますか!って言ったら振り向いて「80点!」って微笑って真っ赤なスポーツカーに乗って消えた。
あの人が誰かは知らない。でもいつか……勝ちたい。それはソフトでは無いのかも知れないけど、あの人にいつか、100点と言わせて見たいと、私は思った。
川嶋安奈の日記より抜粋。
4月25日。
ふふふ。今日で手配も手続きも完了。亜美もGWが終わればあの学校ね。
そうそう。高校に挨拶に行った帰りに彼を見かけた。ほんと、久しぶりね、高須竜児君。
車に乗せて少しドライブしたけど、真っ青になってったわね。少し飛ばし過ぎたかしら?
なにやら温泉旅行に行ったり、新しいクラスには虎みたいな凶暴な女の子が居るとか。やっぱり楽しそうね、貴方の周りは。
彼を送った後で通りかかった球場で、大橋高校のソフト部の子達が部活動をしてた。
少し見てたけど直ぐに分かるわね。一人、変な子がいた。うん。色んな物を押し込めて仮面を被ってる。
ちょっとだけ遊んでもらったけど、良いわね、あの子も。
まだちょっと合格はあげられない。でも悪く無いわ。
彼が好きになるとしたら、きっとあの子ね。あんまり普通な子だと意識もしないでしょ?彼は。だからこの部で彼の目に止まるのはあの子だけ。
でもお嬢さん?ウチの亜美も結構変わってるのよ?彼の目に止まるくらいにはね?
それにその小さい虎さん。ホント、羨ましいわ亜美。貴女きっと最高の高校生活を送るわよ?彼の傍に居ればね。
手乗りの虎を何とか出来るのか?と聞いた時の彼の顔は良かったわね。
「上等ですよ。奴が虎なら俺は竜ですから」
ふふ。やっぱり貴方、合格よ。
今日はココまでです。
誰かが言いました。まさに会長のターン!
さすが読んでらしゃる。
楽しかったです。
どもでした。
今日もお疲れさん。
なんかもう色々錯綜し過ぎてたまらん面白過ぎるwww
亜美ママがコロコロ動いていて楽しいなあ。
香椎父www契約はちゃんと見ろwww
香椎父が俺と同じ過ちをw
俺は500円ぐらいで気づいたからよかったぜ
複雑に絡み合う誤解の中、会長が一歩リードだ!
誰かが前に言ってたが、スクランの誤解しまくり関係を思い出しますな
川嶋母がスーパーお母さん過ぎで少し吹いた
伝えたい言葉、及び日記GJ!
伝えたい言葉は俺の中であみドラがガチと思わせた作品だし
日記は…言わずもがなですなwww
つか香椎父は一体いつになったら娘に優しくしてもらえるのだろうか…
きっと来ないだろうがw
>>124 麻耶
↓
大河→北村→会長→竜児→みのりん
↑
奈々子
まさに片思いの連鎖w
しかし会長は人気だな…
127 :
98VM:2009/05/20(水) 01:53:33 ID:kYU/QYRy
こんばんは、こんにちは。 98VMです。
なんとなく予感はしていた。 題名を温存しておいて正解だった。
このシチュエーション、面白い。
というわけで、短編徒然連作。
竜児がローマの街の薀蓄を語り、うざくなった亜美が地獄突きをかます!
そして時々思い出したように、亜美が膝まで濡らして立ってられなくなるような、
そんな落ちもなんもない、日常。
前提: とらドラ!P 亜美ルート90%エンド、ローマの祝日
題名: ローマの平日
エロ: 基本、無しで。
登場人物: 竜児、亜美
ジャンル: ありがちなストーリー。
分量: 3レス
頬杖をついて、俺が朝飯を食うのをじっと見つめている白い顔。
昨夜シャワーを浴びてそのままなのか、ノーメイクだ。
いつも完璧を誇る美貌に、今朝は疲れを感じた。
考えてみれば当たり前だ…。
聞けば一昨日の20時にニューヨークでの仕事を終え、その足でJ・F・ケネディ空港に向かって、22時の便に飛び乗り、
8時間30分かかってフィウミチーノ空港、そして俺の働くトラットリアに来たという。
その上、昨日は7時間も俺の仕事が終わるのを待って、それから俺を連れまわして深夜まで歩き回り、俺が寝るのを
確認し、そして、今朝早起きして朝食を用意したのだ。
おそらく3時間ほどしか寝ていないだろう。
全く…。 俺にはもったいないくらい、いい女だよ、こいつは…。
時計はまだ朝の7時30分。
今日は亜美のことを出来る限り労わってやりたい。 よって、俺が今やるべきことは、親方への電話だ。
親方の答えは 『愛は最高の調味料だ』 これだけ…
これって、休んでいいってことだよな? …よくわからねぇが、そう解釈させてもらおう。
「今日は俺も休むことにした。」
「えっ! 大丈夫なの? また親方にどやされない?」
「おう。 ちゃんと許可は取った。」 …筈だ。
「亜美ちゃんは嬉しいけど…、でも、竜児はあたしのこと気にしなくていいんだよ?」
「いや、本当に大丈夫だ。 たまにしか会えないんだし、これくらいいいって。」
「そっか…。」
さっきは遠慮したけど、やっぱり嬉しそうだ。 でも、それ以上に疲れているのがわかる。
「お前、疲れてんだろ、すこし寝ていいぞ。」
やや疲れた表情が、たちどころに般若の面に変わった。 なまじ綺麗なだけに、怒った時の迫力は凄い。
「竜児…。 わざわざ休み取って、亜美ちゃん寝かしてどうすんだっつーの。 マジ馬鹿なわけ?」
「お、おぅ、悪かった…。」 それで思わず俺はそう答えちまってた…。
ローマの平日 uno
シャワーを浴びて着替え、亜美が居るってだけで、すこしだけ優雅に感じる朝を過ごした後、街に繰り出す。
もう時計の針は9時あたりを指していたが、朝方の張り詰めた冬の空気はまだ残っている。
ピンクやオレンジや黄色、暖色系の色でまとまったトラステベレの町並みですら、どこか寂しげだ。
しかし、そんな景色でさえも、こいつが纏えば、一枚の名画に早変わりしてしまう。
流石に元カリスマファッションモデルだけあって、着こなしのセンスは抜群。
なんでもないワンピースやコートが、ベルトやアクセサリーの使い方一つで化けてしまう。 とても俺には真似出来ない技だ。
昨日は着膨れした不審人物だったが、今日の亜美は見違えるようにカッコイイ。
本人も自覚しているのだろう、絵になる風景を見かけると、すぐにポーズをとる。
そして、悔しいことに、それがまた決まっているのだ。
「どーお? 竜児ぃ〜。 亜美ちゃん、可愛い? 綺麗?」
「どっちかってーと、綺麗、だな。」
「ぅぐ… なんか、最近可愛くない…。」
「ん? どーした?」
「何でもない…。 ねぇ、竜児、今日はどこに連れて行ってくれるの?」
「そうだな…。」
あまり遠くへいって、こいつを疲れさせたくない。 なんとか、近場でお茶を濁して、休ませてやりてぇ…。
「おぅ、そうだ、あそこに行くか。 たしか、まだ行ってなかった筈だ。 時間も…丁度だな。」
「どこ?」
「サンタ・マリア・イン・コスメディン教会だ。」
そこはトラステベレ地区からパラティーノ橋でテベレ川を越えるとすぐのところにある小さな教会だ。
パラティーノ橋の袂につくと、すでにその7階建ての鐘楼の先端が見えてくる。
「あ、竜児、あれ?」
「おぅ。 そうだ。」
「うっそ、超近くね?」 「どうした?」
「うん… 実はさ、ローマで初めて竜児と会った日ね、ここ探して見つけられなかったんだ…。」
「へぇ、そうだったのか。 じゃあ、もっと早く連れて来るんだったな。」
「ううん、別に、そんなに来たかったって訳じゃないしね。」
橋をわたりきると、教会はすぐ其処。
「あ。 あの茶色い所?」 「おう。」 「思ったより小さいんだね。」 「ああ、俺も最初見た時はそう思った。」
柵が張られたアーチ回廊には人影は無い。
「やっぱり丁度だったな。」
俺達が着いた時、まさに門が開いたところだった。 観光客はまだ来ていないようで、教会の前は閑散としている。
アーチ回廊の左の突き当たりに、仰々しく掲げられているのが、此処を有名にしている物体。
海神の息子が描かれた石の円盤―――真実の口。
「へぇ… これが…」
「偽りの心持つ者は、深淵の王にその手を引き摺りこまれる。 この顔は海神であるトリートーンを象ったと云われている。」
「ローマの休日でグレゴリー・ペックが手を噛まれたふりするやつでしょ。」
「おう。 あれで一躍有名になったが、そもそもこの話は教会の説教で使われていた話らしい。」
「ふ〜ん。 ねぇ、竜児、手入れてみてよ。 亜美ちゃんを愛する気持ちに偽りがないか。」
亜美にしちゃ、珍しいな、墓穴掘りやがった。 俺の心には一片の曇りもねぇ。
「おう。」
何の迷いもなく手を突っ込む。 5秒数えてから手をゆっくり抜いた。
「どうだ。 次は亜美の番だぞ。」
「あ、あたしはいいの。」
「そうか… 亜美が俺を愛してるって言ったのは嘘だったんだな……。」 たまには反撃しても罰はあたるまい。
「そ、そんなことない!」 「じゃ、どうぞ、お姫様。」
「くっ…」
なんか意外だ。 こういう迷信なんか無視して、自信たっぷりに手を入れるかと思ったんだが…
オードリー以上におっかなびっくりで、つい悪戯したくなっちまった。
そろそろと手を入れていき、指が半分入ったところで…
『ぱん』 手を叩いた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
びっくりした。 超びっくりした。 こいつのこんな反応なんて、初めて見た。 が、なんだ? なんか様子がおかしい。
「はぁ、は、はぁ」 亜美は妙に息が不規則に乱れていて、目尻に涙を溜めていた…
やべぇ…。 なんだか知らねぇが、地雷踏んじまったようだ。 しかも、飛び切り深刻な奴。
「り、竜児の馬鹿っ! き、嫌いよ……。」
「す、すまねぇ、そんなに驚くとは思ってなかったんだ。 この通り誤る。 ………許してくれ。」
とりあえずこの場を離れよう。 人がいない所がいいだろう。 どこか… そうだ。
「亜美、とりあえず、中に入ろう。」
亜美は一応、俺に従ってくれた。 しかし、間違いなく怒っている。
そして何より、息が乱れたままなのが心配だった。
細かいモザイクが施された教会の内部は滅多に人が入ってこない。
小さいながら、見事なフレスコ画に飾られた、ローマでも特に美しい教会の一つなのは意外に知られていない。
5分ほど休んでもなお、亜美の呼吸は乱れている。 やばい。 これは交感神経の過度緊張状態だ。
俺はなんて馬鹿なんだ、畜生……。 亜美はへとへとに疲れて、しかも睡眠不足だったってのに……。
とにかくリラックスさせるしかない。
「亜美、悪かった、大丈夫だ。 お前のことは信じてる。 大丈夫だ。 大丈夫。 ……。」
子供をあやすように肩を軽く叩きながら抱きしめる。 亜美の体は微かに震えていた。
10分ほど経つと、やっと亜美は落ち着いてきた。
「ごめん、竜児、もう大丈夫。」
「謝らねぇでくれ、俺が全面的に悪かった。」
「ううん。 ほら、あたし、嘘つきだからさ、ああいうのダメなんだ。 迷信だってわかってても……。」
実際、こいつは息をするみたいに嘘をつく。 だが、この怯えようはちょっと違うような感じがする。
なにか、亜美には気にしてる事があるような気がする。 そして、それは俺には言えない事なのだろうか?
そう思ったら、腹が立った。
隠し事をしている亜美にではない。 自分が手伝ってやれない事に対してだ。
だが、俺の力が必要なら、今の亜美はちゃんと俺を頼ってくれる。
だから今はもどかしくても、亜美を信じて待つしかないんだ。
「それにしても…」
「ん、なんだ?」
「すっごい綺麗だね、此処。」 「おう。 高須スペシャル、ローマの穴場その1だ。」
機嫌が直ったのか、亜美は教会内部を見物し始めた。
「あ、ガイコツ!」 「おう。 聖人の聖遺骨ってやつだな。」
「これ、マリア様だよね?」「ああ。キリストを抱いている、典型的な聖母子像だ。」
よかった。 もう大丈夫みたいだ。 無理してる様子もない。
教会内部は誰もいなくて、神秘的な雰囲気だ。
隅々までゆっくり見て周って、教会内部から出ると、いつの間にかアーチ回廊には観光客が大勢並んでいた。
「さっきはゴメンね、竜児。」 「頼むから、謝らねぇでくれ……。 さっきのはどう考えたって俺が悪い。」
「そうじゃないの。 あたしが、真実の口が怖い理由。 まだ、教える勇気ないんだ。 今は、もうちょっと…待って。
必ず、教えるから。」
やっぱりだ。 こいつ、また何かくだらねぇ事で、自分を責めてるのか…。
まったく、こういう所は、変わらねぇな…。
器用に世の中渡ってるように見えて、その実人一倍不器用な所もたまらなく愛おしくて、珍しく俺の方から肩を抱いた。
一瞬、亜美の肩に力が入って、…そして心地よさげにすこしだけ体重を預けてくる。
言葉は要らなかった。 ただ、お互いの信頼感が俺達を暖める。
そして、どこへ向かうともなく歩いているうちにチルコ・マッシモに辿り着く。
亜美はもう限界のようだ。
昨日とうって変わって、今日は日差しも温かく、風もない穏やかな日。
広々とした古代の競技場跡は人の気配が無い。
パランティーノの丘を眺めるベンチに腰掛け、露店で買ったカプチーノを二人で啜る。
俺の肩に頭を預け、両手でカプチーノを抱える亜美。
「なんだか、幸せだね。」
不意に舌足らずな口調で亜美が呟いた。
俺はゆっくりと傾いていく亜美の手から、飲みかけのカプチーノを優しく奪う。 こぼして服を汚さないように…。
それは……最高に幸せな、そんなローマの点描。
おわり。
131 :
98VM:2009/05/20(水) 01:56:53 ID:kYU/QYRy
お粗末さまでした。
選択肢が増えたので、喜び勇んで選んだら、
亜美たんにドン引きされた……。
俺にはピンクのディスクが遠すぎる、ぜ… ぐふっ
>>120 日記物、連日お疲れ様ですGJ
しかし、なんかここまでいくと微妙に会長あたりの真剣な人は可哀相なんだが…
これ今後どうすんの!奈々子様も会長も、竜児が自分を好きでいると思ってんでしょ
完全にネタ小説としていつの間にか竜児が気付くと
女の子同士公認で彼女が何人も出来てたとかならいいけど
原作みたいに急にシリアスにはならないでほしいなぁ
どうでもいいけどお前ら
前スレちゃんと埋めろよ
480超えたからいいだろ
>>131 差し出がましいようでつが
肝試しの前にスドバ前で亜美たんに逢いました?
>>120 乙なんだぜ
アニメしか知らなかったのか
の割には感じ出てたと思うな
それほど違和感はなかった
>一頭の雌に一頭の雄。これは自然界の掟なのだろう。
それは違うぞ竜さん
俺がハーレム厨なのを差っ引いてもそんなことはないんだぜ!
>>120 ア、アニキが陥落しよった!天狗の仕業じゃ!
138 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 12:33:31 ID:Xs5s045d
前スレを作品で埋めればいいのに…
いいだしっぺのry
おお、そういってたら作品投下されたw
>>136 待て待て
雌→雄とは言っているが逆は言って無い
今夜中につくった保管庫だします。
>>143 管理人さんですか? 御苦労様です。
僕はいち書き手ですが、より面白い作品を書くことが管理人さんへの礼儀と思って
ゆっくり時間をかけて推敲するようにしてます。
>>120 乙でした。
入学してきた筈の無防備な妹さんフラグも見てみたいですね。
>>131 GJ!
やっぱ98VMさんが書くあみドラは最高です!!
>選択肢が増えたので、喜び勇んで選んだら、
亜美たんにドン引きされた……。
タイミングよく会話の最後にその選択肢を選べばOKですよ!
ここまで来たらすみれ妹にもぜひフラグを広げて欲しいw
え?何?姉妹丼?
>>103 エロス全開でよかったです
雑音は気にせず、次回作もよろしくお願い致します
期待してます
そして俺は日記を待つ
夕べはこの時間くらいからお祭り状態だったけど
今夜はどうかな??
せかしたくないけど、ひそかに待ってたりする
寝る前に布団に入って携帯で日記を読むのがここ数日の習慣です
前スレが豪快に埋められたw
158 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 01:18:38 ID:Zd2xuKBs
酷い埋め方だったなwww
こんばんわ。
今夜もいかせていただきます。
それでは、次レスより、投下!です
香椎奈々子の日記より抜粋。
4月28日。
異変が有った。というか異変が起きた。
どう云う訳だろう?最近逢坂さんと高須君が一緒に居る事が多い様に見える。
一体二人の間に何があったのだろう?
噂によれば初日の恨みを晴らすべく高須君が逢坂さんに再戦を挑み、戦いの中で友情が芽生えたとか、2大番長が近隣一帯を支配下に置く為に手を結んだとか諸説入り乱れている。
だけど噂は噂だし、高須君はそんな人じゃない。で、スーパーで会った時に聞いてみたら
「?あぁ、逢坂か。アイツん家が俺ん家の隣でさ。そんで飯を喰いに来てる」
………ごめん高須君。どう考えても「そんで」の部分が分からない。なんでそんで?
櫛枝美乃利の日記より抜粋。
4月28日。
なんか知らないけど高須君と大河が最近一緒に居る事が多いと思う。
二人に何が有ったんだろう?
でも大河に私以外に友人が出来て凄く嬉しい。
まぁ大河の口振りとか振舞いも相変わらずなんだけど、それでも高須君は大河を遠ざけていない。
私はそれが嬉しかった。本当に、嬉しいな。
高須竜児の日記より抜粋。
4月29日。
はぁ。全く、この世はとかく不条理である。
どこかのドジッ子属性のおかげで、俺の平和な日常はそれはもう粉々に打ち砕かれている。
数日前に戻る事が出来たなら、過去の自分にカバンなどその子虎に差し出してしまえと忠告したいものだ。
北村宛のラブレター風ただの封筒をカバンに仕込まれた俺は、その深夜にクラスメイトから命を狙われると言う中々に得がたい経験をし、更には空腹で行き倒れる人間と云う物を始めて見る事になった。
暴れて喚いてモジモジした挙句、追い返す事に成功したのはAM4時。櫛枝さん。君はホントにコレの友人なのか?
その翌朝、何処の闇サイトで公開されているのか、俺の携帯電話に電話を掛けてきて来い!と喚く始末。
まったく。個人情報保護法にのっとって、俺の番号を逢坂に教えた奴を処刑したい心境だ。
オマケに逢坂の家ときたら、辺境一の勇者でも旅してそうな腐海の様に、異臭と悪臭、分別されてないゴミと、ゴミの中に混じっているゴミでは無い物。高須流家事術をもってしても久しぶりに敗北しそうな対戦相手だった。
以来、この呪われた生き人形は俺にとりつき、我が家の炊飯ジャーは全開運転を余儀なくされてる。
櫛枝さん。万が一このままコイツを手懐づける事に成功したとしよう。だがコイツは間違いなくその後も俺たち二人の周囲を攻撃衛星の如く纏わり付くに違いない。正直、ご遠慮願いたい未来予想図だ。
だがココに一つの道がある。
ようはこの怨霊じみた座敷童子には誰か他の人間にとりついて貰えば良いのだ。
コイツは北村の事が好きな様で、しかもコイツが上手く行かない事には、俺達二人の邪魔をする気らしい。既に邪魔をされてると云うのにだ。
しかし参ったな。北村とコイツをくっ付けるとなると香椎さんの幸せを壊す事になる。しかしそれでは逢坂大河が…北村よ。何故この俺がお前が無造作に立てたフラグに悩まされるのか。節操を持て、親友!
どうせ明日もまた良からぬ作戦を思い付く事だろう。ま、上手く行ってない事がいく分救いか。取り敢えず今は時間を稼ぎたい。
逢坂大河の日記より抜粋。
4月30日。
凄い凄い!今日はとんでもない一日よ!
なんと北村君と体躯の時間にパス練習したのよ!!
あぁ、もうどうして体育に時間は5時間ないのかしら。ず〜〜っと体育だったら良かったのに。
竜児も偶には役に立つのよね!
この分だと今夜は眠れそうに無い。ま、良いわ。朝は竜児が起してくれるし!
今日のお祝いにステーキ食べたいって言ったのにハンバーグしか出なかったけど、まぁ良いわ!美味しかったし。
あっ!ボタン取れてる。明日竜児に付けてもらおっと!
木原麻耶の日記より抜粋。
4月30日。
今日はなんかとんでもない一日だったな。
まさか学校で高須君とキスするなんて思っても見なかった。
ほんと、どうしよう。まるおと話して楽しかった。高須君と……嬉しかった。
もしあのまま高須君が迫ってきたら、私あのまま…シちゃったのかな?
ベットの上の私にキスしてきて、でも慌てて距離置いて「わっ!わりぃ!」って。ゴメンね。きっと私がまだ……だからソレ位は良かったのに。謝らなくても。
待たせて、酷い事してるのは私なんだし、さ。
でもテレビ見せた事、ゆりちゃん先生に怒られてなきゃいいけど。高須君がテレビ付けた事知ってたみたいだしさ。
香椎奈々子の日記より抜粋。
4月30日。
なんか今日は変な一日ね。
ゆりちゃん先生は見るからに顔に縦線入ってたし、逢坂さんはスキップしながら帰ったし。なんか高須君に肉がいい肉がいい!って騒いでたけど。
でも高須君がなんか必死だったわね。そんなに楽しみなのかしら?来月のレクリエーション。
そういえば去年も高須君の料理は美味しかったもね。
今年は二人で頑張ろうって、あんなに真剣に言われたら思わず照れちゃうじゃない。
でも今日のクッキーは美味しかったわね。流石高須君ね。
結構自信あったんだけどな〜。ま、美味しいって言ってくれたし、良しとしようっと。
北村祐作の日記より抜粋。
4月30日。
今日も良い一日だった。生徒会も滞り無いな。
会長は最近デコメに凝っているそうだ。まぁ会長も女の子と言う訳だ。いつか会長から華やかなメールでも貰ってみたいものだ。
それにしても高須も大変な役を自ら進んで出るとは。うん。アイツなりにクラスに溶け込もうとしてるんだな。
ココは親友として是非協力してやりたい。
それにしても会長も随分とクッキーが好きなんだな。さくらちゃんに一つ位あげれば良いものを。
でも……どっかで見た事あるクッキーだったんだが、気の所為か?
高須竜児の日記より抜粋。
4月30日。
なんて一日なんだ今日は。疲れたなんて生易しいもんじゃない。しかも問題は山積みだ!つかどうすんだよ!
大体、あのパス練習作戦からケチが付いた!まさか俺が逢坂と組んだおかげで木原さんが北村と組むとは予想外だった。
しかし俺はあんなに強く、しかも顔面にぶつける積もりは無かったのに、何故あの逢坂は絶妙なタイミングでクシャミをしてコースを変えるんだ?アイツはボールの友達なのか!
予定外にも予定通りに俺にボールをぶつけられた木原さんは脳震盪を起し、俺はすぐさま保健室へ担ぎ込んだ訳だが。逢坂め!お前には少し級友を心配すると言う事を教えてあげねばならんな。
まぁ北村と組めて天にも昇る一時を満喫したのだろう。今夜はご機嫌だったからな。人の苦悩も知らずに。
しかし……あれは、その。不味いだろう。
気が付いた木原さんが俺を見てすぐに起きようとするから危ないと思って支えようとしたのだが、案の定木原さんはバランスを崩して、その、俺を巻き込んでベットに倒れた拍子に……キスしちまった。
一応謝ったら「いいよ」って許してくれたけど。今日のは前にされたお礼とは違って、俺の所為だからな。あぁ!穴が有ったら埋まりたい!
気まずいから先に帰ったしな。なんか悪いからテレビを見れる位置に移動して、出たんだよな。
なんか「かえってごめんね」なんて言ってたけどな。ま、最初からソコに有ったって言えば良いし、俺が動かしたって言うなよって言ったら「分かってる」って言ってくれたしな。
怒っては無いみたいだけど、ホントにその内、罪は償わんとならんな。木原さんには。
言ってみれば償いには絶好の機会なのか、親睦レクは。
今日の調理実習まですっかり忘れたぜ。俺の班には櫛枝さんが居るんだった。
櫛枝さん手作りのクッキーを拒む春田と北村に一瞬殺意を覚えたが、一口で思い出したな。
櫛枝さん。君のあの味覚はその後、辛さへとシフトしたんだね……ご機嫌に舌が火傷しそうだったよ。
だが!アレは進歩だよ櫛枝さん!アレはまだ食べれる!!あの、時を駆けるチョコから比較すれば、それはもうヒヨコが鳳凰に為ったが如き進歩だ!
しかし口直しに「折角だからアンタに試食させてあげるわ」と言った逢坂のクッキー……櫛枝さん。まるで以前の君を見ている様だったよ。やっぱり親友なのか!!
逢坂大河作の『クッキー』なのか『苦っ鬼ぃ』なのかは定かでは無いあの決戦兵器。あのチョコに勝るとも劣らない出来栄えだった。喰った瞬間脳細胞が吹き飛んだかと思ったぜ。
取り敢えず、櫛枝さんと仲睦まじくパス練習をした能登には、「木原さんと香椎さんからお前にだ、喰ってやれ」と言って一気に喰わせ、残弾は全て処理した。
GW中は復活出来まい。悪は滅びた。
それにしても問題は班別の親睦レクだ。まさか殺人シェフが二人も居るとは。
猛毒地獄に火炎地獄…くっ!今度のレクは戦場だな。
取り敢えず香椎さんには今度のレクは俺達二人で作ろうと持ちかけといた。二人掛かりで誰も手を挟む余地が無いほど速攻で料理を完成させれば、皆の命も救える筈だ。
香椎さんとは近く相談しながら、下拵えなどは済ませた物を持っていこう。レクのルールなどこの際無視だ!命は地球より思いと知れ。
北村にもその旨は伝えたし、コレをもって木原さんには償いとしたい。
ま、俺のクッキーが皆に好評だったのが嬉しかったな。逢坂はどこかで喰った事のある味だと言ってたが、人の倍喰ってたしな。
放っておくと他の人の分まで喰いそうだったからな。今度また作ってやると言って抑えた。
メールの中で言ったら「私も食べたいな」と言うのでな。ま、お裾分けだ。
それにしても何時までこんな状態が続くんだ?
恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
5月1日。
もうどうしていいのか分からない…ウチの学校で。それも私の教え子が、不祥事を起した……
木原さん。どうして私に相談してくれないの?
あのテレビだって誤魔化す為に付けてたって分かってます。
テレビ面白い?って聞いたら「はい」って。でも、私の顔は見てくれなかったわね……やっぱり教師は向いてないのかなぁ私。
竜……もうわかんないわ。どうしたらいいの?
まさか高須君が「俺が犯した事言うなよ?」なんて!!
やっぱりもう、彼は教師の手には余るのかしら…それでも私は……
川嶋亜美の日記より抜粋。
5月3日。
あ〜あ。やっぱり祐作と同じ学校なのか。ま、い〜わ。祐作だって昔の事はそんなに覚えて無いだろうし、私はかわい〜亜美ちゃんで行けるわね。
ってか昼間会ったあのヤンキーとチビは何なのよ!!祐作の友達?有り得ないから!
普通叩く?初対面よ?どんだけ育ち悪いんだっつーの。
ホント、なんなのよ。あの二人。
櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
5月4日。
今日は酒屋でバイトだったけどなんか忙しかったな。
でも大河と高須君が手伝ってくれて助かったよ。GWって他のバイトとか休んじゃうんだよね〜。
でも高須君。あんな格好でバイト来るなんて動きにくいと思うんだけど。
まぁ、最後は夜街で配達して直帰って言ってたし、丁度良い格好だったのかもね。
でもホント、大河は高須君にべったりになったな。ちょっと妬けるぜぃ!みのりんは!!わははは
香椎奈々子の日記より抜粋。
5月4日。
あぁどうしよう。こんなに面白い電話は久しぶりね。
麻耶と遊んで帰ってきたら留守番電話が光ってた。
『魅姫で〜〜す!最近ちょっと嫌な事あって久しぶりに飲みに出てま〜す!携帯止まってるんだもん電話しちゃった。また一緒に飲みたいな〜〜。電話待ってま〜す』
楽しそうね?お父さん。
逢坂大河の日記より抜粋。
5月4日。
ったく駄犬の所為でまた働かされたじゃない。
第一あの馬鹿も、なんで一々スーツ着てくのかしら?みのりんも言ってあげれば良いのに。ただのゴロツキにしか見えないって。
誰に仕込まれたセンスなんだか分かんないけど、一度死ぬ必要があるわね、竜児は。
それにしても帰ってこないわね?ま、良いけど。今夜はみのりんと食べて来たし。
明日は焼肉するの忘れて無いでしょうね、アイツ。折角やっちゃんも休みなんだしさ!
楽しみだな〜。焼肉。早く寝ようっと!
高須竜児の日記より抜粋。
5月4日。
どうなってんだ?なんで俺はこんなクルクル回るベットの上に居るんだろう。
ヤケクソで殴り書いてるこの紙の下には「ホテル ニューオオハシ」と有りやがる!どんな場末だココは!
そもそもおかしいだろう!
バーに配達行って帰ろうとしたらお水の姉さんに捕まった。竜さんって、俺か?てかなんで竜さんなんだ?
一瞬泰子の店にでも居た人かと思ったら、違う店の魅姫だって言うし、泣くは喚くは大変で。
だけどだ!だけど何で行き成りホテルに連れ込まれてんだ?俺は!
状況が全く掴めん。
殆んど無理やり引っ張られ、断れば泣き出すし、宥めれば引っ張るし。どうしたいんだ一体、てか入りたいんだろなやっぱり。
だが待て!待て待て待て待て!待て〜い!!
確かに俺だって健全な男の子であるし、それこそその様な行為に興味のあるDOUTEI君だが!この人は不味いだろう!
部屋に入るなりシャワー浴びてくるわね?とか言って入るのは良い。俺にも心の準備期間が欲しい。息子と億単位の兄弟達は諸手を挙げて賛成票だ。
俺だってもう勢い付けようと飲み慣れないビールに口をつける有様だったが、出てきたこの人を見たら思い切り噴出したね。もうブーーーってなもんだ!
何が魅姫だ!どっからどう見ても恋ヶ窪ゆり29歳じゃねぇか!それもマッパ!!
結構イイ身体して……違う!!!
落ち着け俺!黙れ息子!!
そんな状況で、抱き付かれて大人のキスをされた日にはマジで意識が持ってかれそうだったぜ。てか少し持ってかれたな。
え〜い!ままよ!!っと俺が覆いかぶさってみりゃ………爆睡してやがる。
OK。インターバルだベイビー……うん。まだ寝てるな。
しかし参ったぜ。どうするよ。つかさっき言ってた教え子が女生徒をレイプしたってなんの話だ?
もう訳が分からん。とりあえず今日は無しだ!ノーカンだ!
痩せても枯れても高須竜児。寝てる女を、ましてや担任の女教師を襲うほど18禁してねぇぜ。
恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
5月5日。
今日………最後の弾を撃ち損じた。
ホテルで起きたらメモ書きが置いてあった。
『さようなら。 俺は貴女を抱いてません。信じてくれると嬉しい』
思い出もくれないで行ったのね、竜。
やっぱり私と貴方は住む世界が違う。そう言いたいの?
でもそうね。きっと、これで良かったのかも知れない。私はそう思いたい。だから
頑張るわ、私。見ててね、竜……
逢坂大河の日記より抜粋
5月7日。
なんであの女がウチのクラスに来るのよ!!
え〜〜〜い腹立たしい。
だけど北村君の幼馴染なのよねアイツ。仲良くしといた方が良いのかな…熱が出た。
無理ね。今度夜襲を掛けようか?
言ったら竜児に止められた。腰抜けの駄犬め!
恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋
5月7日。
高須君を呼び出して聞いてみた。
貴方は木原さんに乱暴したのかって。高須君は一瞬ビックリしてたけど、それでもどこか微笑って否定した。
ソレを信用して良いのかは分からない。でも
「先生が考えてる様な事はしてません。無理かも知れませんが、信じてくれると嬉しいです」
何故か信じる気になったわね。だから信じてみる…でも変ね。どうして?
どうして去ってく高須君に思わず抱きついちゃったのかしら?ってか不味いわよね!学校で教え子に後ろから抱きつくなんて!うそ?私欲求不満?いやーーー!!
川嶋亜美の日記より抜粋
5月7日
どうしてよ!なんで?
あの二人が居るクラスに転校なんて最悪!てか、あの男の方はどうせ私の言う事聞くと思うけど、あの小さいのは絶対無理ジャン!
でも、なんか無茶苦茶よね?あのチビ。言う事成す事。
なんでそれであの男は居なく為らないのかしら?特に彼女でも無いみたいなのに。
なんか変よ。このクラス。どっか変。
何でだろう…変に思う必要無いのに…変だよね?私。
5月12日。
今日、ストーカーをやっつけた…やっつけちゃった。
自分で自分が信じられなかった。
あんなに怖かったのに、あんなに逃げたかったのに…やっつけた。
私は何が怖かったんだろう?
アイツ?それとも、アイツに勝っちゃう私を見られる事?
怖かった。涙が出るほど怖かった。でも居てくれた。彼は居てくれたんだ。
外面なんか関係ないって。ホントの自分で良いんだって言ってくれて、大丈夫かって言ってくれて。
良くやったなって言ってくれて…
でも高須君。あれは無いと思うな。私達まだ会ったばかりなのに。
ホントの私を見せたら好きになる?って聞いた。不思議だけど、ただ聞いてみたかったんだよ。それ以上の意味は無い。でも
目を逸らした貴方から答えは聞けないと思った。でも言ってくれたね
「そうだな……俺が好きになるのは素顔を隠してる川嶋亜美じゃない……本当のお前だ」
変な人。高須竜児………かぁ。
櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
5月12日。
いやあ、今日は参ったね。
なんか生徒会のゴミ拾いに行ったら雨には降られるは大河は誰かを追いかけだすわ。
でも何だったんだろ?ま、行き成り写真撮るのもどうかと思うけどね。大河が相手じゃ可哀相だよね。
でも川嶋さんって凄い形相で走ってったし、知り合いだったんかね?
いやぁ、でも大河の家が近くにあって助かったよね〜。びしょびしょになったしさ。持つべきものは親友親友。
高須竜児の日記より抜粋。
5月12日。
ふっ。とうとう伝えたな。
そうさ。モデルがどうした。マッパがなんだ!ソコに愛が在る限り、全ては満たされるでは無いか!!
まぁ川嶋には甚だ同情を禁じえない。うん。よくぞストーカーに対峙したもんだ。
良くやったと頭を撫でてやった事を後悔はしていない。うん。
ま、冷えた身体に温かい蜂蜜金柑くらいはご馳走してやろう。
だが!すまん川嶋。俺にはお前の問いに応える事は出来んのだ。
確かにお前は美人だ。認めよう。偽りの仮面を脱ぎ捨て素のお前になったなら、離れていく人間も居るだろうがそれ以上に集まってくれる者が居ると信じてる。
だがそれでも俺がお前を好きになる事は無いだろう。
今思い返しても顔から火が出るな、俺は。
お前が金柑を飲んでる時、窓から見えたあの麗しき姿は正しく櫛枝さんだった。おそらく俺を探しに来たのだろう。あぁ、なんて優しい。
川嶋。お前の声の先には既に俺の耳には彼女がドアを開けた音が聞こえていたのだよ。勝手に入れといったのは大河だろう。うんうん。今日は好きなだけプリンを喰うと良い。
そうさ!俺が好きなのは素顔を隠してる川嶋亜美じゃない……本当はお前だ。お前なんだよ櫛枝。
俺の言葉を聞いてくれたか……姿も見せずに去るも良いさ。答えなんていつでも良い。
俺は大河を北村にとりつかせよう。香椎さんにはキチンと幸せになる道を模索する!コレは友への俺の責務だ。
川嶋。俺はお前に感謝の言葉も無い。
お前が別れ際に「ありがとう」なんて言う必要は無いんだ!むしろソレは俺の言葉だ!ありがとう!川嶋!!
北村祐作の日記より抜粋。
5月12日。
俺はもしかしたら、自分で思ってたよりも良い友達を持ったのかも知れない。
なにか騒ぎがあったというから生徒会を抜けて高須に家に言った。
俺がことわって中に入ったら亜美が居て驚いたな。
まさか亜美がお前にホントの自分を見せたらどうするか聞くなんてな。俺はそれは嬉しかったはずなんだ。
でも……本当の……自分、か。
「素顔を隠してるのは川嶋亜美じゃない。本当はお前だ!」か。
俺は……だけど怖いんだな、俺は。
逢坂にはふられた。会長には?……高須。俺は怖いんだよ。ただ、怖いんだ。
香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
5月12日。
奈々子………そろそろ魚肉ソーセージだけの夕食を止めてくれると、父さんは嬉しい……
もうお酒はやめるから。
今日はここまででした。
そろそろあーみんが猛威を振るいそうです。
それでは、どうもでした
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
>>167 亜美ちゃん様キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
しかし亜美よりもいままで鬱々が溜まっていただけに大河の日記の明るさがまぶしいな。
乙乙!!
しかし相変わらず会話すればするほど誤解が広まっていく奴らだなあw
基本イベントは原作準拠ながら、微妙にズラして来るのか……
にしても魚肉ソーセージwwお父さんカワイソスwww
今夜もGJ!
「俺が動かした」
「俺が犯した」
爆・笑ww
なんだかんだで大河とつるんでるのがしっくり来るのは何故だろう。
木原派なのにw
明日も投下があるならハルヒの新作そっちのけでこっちに来るぜぇ。
お父さん脚気になっちゃうよw
GJ!!
起きててよかった!!!!ホントによかった!!!
明日は大学休校になりそうだからいつまでも起きてられるぜ!!!!!
だれうま自重w
「節操を持て」…だと…!?
今回の顛末は最大級の喜劇だった
竜児の北村に対するツッコミに腹筋が崩壊したw
フラグを乱立しているのは自分だ!キスし過ぎだ!w
ゆりちゃんもやべぇマジパネェwwwしかも奈々子パパとも面識があるしwww
夜の顔の時に奈々子とバッタリとか期待しちゃうw
>>174 ・・・豚フルキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
181 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 03:10:43 ID:Zd2xuKBs
>>180 俺の嫁の父親だから、お義父さんで間違いないんじゃないのん?
ゆwりwちwゃwんwww
あーもう面白過ぎるぜ
>>143は釣り確定…か。
期待していたんだがなぁ。
サブキャラ勢の中で香椎さんだけが出遅れてる感があるな
これからどう巻き返すか期待したい
ともあれGJです
ここでも報われないのが能登
やっと規制解除きたぜ
職人GJ
さて・・今日も待機させてもらうか
ついに北村フラグまで立てたか…
GJ
もう少しで空爆出来そうなのに。
なんか規制中?
いけた。今日中に落としますんでよろです!
どもども^^
早くするんだ
俺が全裸でいられる内に!
連日連夜!祭りだわっしょいです!
なんかいつも使ってるEモバから落とせませんので、違うPCから投下になります。
それでは次レスより、投下です!
櫛枝美乃梨の日記より抜粋。
5月14日。
最近妙な噂を耳にする。大河と高須君が同棲してるとか付き合ってるって噂。
確かにいつも二人は一緒に居るし、お弁当や食事の世話を高須君がしてると思う。
最近、大河は私のバイト先で夕食を取る事が無くなったし、コンビニでボ〜っと時間を潰す事も無いようだ。
でも、付き合ってるかどうかと言われれば、私はそうではないような気がするんだよね。
確かに分からない。でも、きっと、大河の目は違う人を見てると思う。
ただ大河は嬉しいんだと思う。自分を見てくれる……家族みたいな人が出来た事が。
ありがとう。高須君
5月15日。
明後日にはレクリエーションだねぇ。
それにしても良いのかな?高須君は高須君と香椎さんの2人で料理するからって言ってたけどさ。
うん。やっぱり用意位はして置くべきだと思うんだよ!私は。
せめてコレくらいは…一味でしょぅ?七味とカラシと、わさびと…コチジャンもいいか。
そうそう。鷹の爪と唐辛子を忘れちゃ駄目だよね。
後はマスタードを2種類っと!
うん!コレくらい有れば味を整えるのに役立つよね?
やっぱこういう事は皆でヤラないとね!
狩野すみれの日記より抜粋。
5月15日。
どうも最近アイツが買い物に来る時、一緒に小さいのが来るな。たしか手乗りタイガーとか言ったか…どういう関係だ?高須。
確かに色々噂は耳にしている。だがアイツはそれを否定しているし、ただ飯を食わせて家事を手伝ってやってるとの事だ。
まぁ資料を見る限り、逢坂の家はどうも複雑な家庭の様だしな。そんな人間が隣に居れば、まぁアイツの事だ。手を差し伸べずには居られないのだろうが……面白くは無いぞ?高須。
川嶋亜美の日記より抜粋。
5月16日。
親睦、かぁ。
何時までココに居るのかもわかんなんだけどなぁ。でも高須君は任しとけって言ってたからチョット期待しちゃうかな。
知り合いが居た方が良いだろうって裕作の班になったけど、麻耶や奈々子も居るし楽しそう。
まぁチビトラが居るのは余計…でも無いのかな?アイツと騒ぐのは楽しいし。多分、素の私と一番合うのはタイガーなのかもね。
ねぇ高須君。私は少しづつ、素の自分に成れてるかな?高須君の目に、私はどう見えてるかな?
逢坂大河に比べてどれくらい、私は貴方に近づけたんだろう……今はそれが知りたい。
知りたいよ、高須君。
高須竜児の日記より抜粋。
5月16日。
いよいよ明日は決戦だ。どうやら天気は良い様だ。忌々しい事に。
俺がこっそり逆さ貼り付けにした9体のテルテル坊主は無駄に終わったようだ。それとも逢坂のテルテルもどきに負けたのか?重ね重ね忌々しい。
だがレクは万全だ。さっきまで香椎さんと二人で明日の料理の準備をしたからな。もはや死角は無い!逢坂も櫛枝さんも思う存分遊ぶと良い。いや、遊んでてくれ!
香椎さんは不安を抱えていたが大丈夫だ香椎さん。俺を信じてくれ!
バトミントンでも渡しておけば逢坂凧の糸は切ったも同然だし、春田は川嶋に求められればゴム無しバンジーでも強行出来るアホだ。そんな面白シュチュエーションを櫛枝さんが放っておく訳が無い!
あの2大巨匠さえ調理スペースに近付けさせなければ我々の命は保証される。後は逢坂が空腹を訴える前に料理を完成させれば良いだけだ。それも今夜で目途が付いた。無問題だぜ!
おい逢坂大河よ。嬉し楽しい親睦を深めるレクが、手に汗握る死亡確率を深めるレクに早変わりとは。お前は何処まで俺の人生のレールに居座る巨岩なんだ!友人は選ぼうぜ櫛枝さん。
泰子が折角だからと夕飯を一緒に付き合わせちまったが、香椎さんは迷惑じゃ無かったろうか?強引な母で申し訳ない。
まぁ、家に帰っても誰も居ないと言うしな。良かったのかも知れないが、お互い片親は大変だな。独りで大丈夫か?香椎さん。
それにしても逢坂よ。別に無理にとは言わないが、せめてクラスメイトが居る時位は余所行きモードとかお客様モードにならんか?
いつも通りの姿に香椎さんは驚いていたじゃないか。
第一な。お前達は気付いていないかも知れないが、お前達2人は恋敵なんだぞ?しかも櫛枝さんまで加味した複雑な人間模様だ。まったく、俺の身にもなってくれよ。
香椎さんが「どうして高須君が逢坂さんにココまでしてあげるの?」と聞いてくるのも分かる。だがまぁそれもやむを得ないだろう?
逢坂はドジだからな。もう独りにはしたくないっていう櫛枝さんの気持ちも分かる。いいさ櫛枝さん。安心してくれ。
この俺が近い内に必ずや、この和製ダミアンを北村の下に嫁がせてやる。俺の幸せの為だ、許せ親友。
だが俺が香椎さんではなく逢坂に肩入れした事については、それは素直に謝罪するしかあるまい。
だが香椎さんは分かってた。
「もしかしたら高須君は私じゃなくて……逢坂さんを」って。その通りだ。否定はしない。それはしては成らない、一人の男として。
櫛枝さんの為に、これは俺が背負うべき業なんだ。たとえそれで全てを失ったとしても、俺は逢坂をこのままにはして置けないんだ。
俺に抱きつきすすり泣く香椎さんに、俺は掛ける言葉が見つからない。だが大切な友人の恋を、俺は自らの幸せの為に奪ってしまった。
ごめんな、香椎さん。俺は駄目な奴だな。
ただ「ごめん」と言う香椎さんに、俺は良いんだとしか言えない。それで少しでも楽になるなら、俺の胸で泣くといい。
彼女を送って帰宅して、俺の布団ですやすや眠る逢坂を見ると、どうしても叩き起こしてやりたくなるのはどうしようもないな。
俺が我慢強くて助かったな?逢坂よ。
逢坂大河の日記より抜粋。
5月16日。
明日は晴れそうね!テルテル人形を飾って正解だったわ。なんかバビー人形が首吊ってるみたいで気持ち悪いけど晴れればなんでも良いわ。
最近は毎日が楽しい!毎日が嬉しい!今日も楽しかった、明日もきっと楽しい!
明日は竜児が香椎さんと昼にご馳走作るって言って、夜まで二人で台所に立ってた。つまみ食いしたら文句言ってきたけど、くれた唐揚げは美味しかった。
夕食には香椎さんも居て、なんか狭い部屋がもどかしい。私ん家で食べれば良いのに。
目が覚めたら真っ暗で、今は2時。何時もの自分のベットだ。また竜児が運んだのね?
あっ!明日着てくジャージにアイロン掛けてって言うの忘れてた……いっか。きっと掛けてくれてるもんね。
もう寝よう。明日はきっと、今日より楽しい日になるから……
北村裕作の日記より抜粋。
5月16日。
明日は親睦レクリエーションか。まぁ高須が張り切ってたしなんとかなるだろう。
櫛枝には悪いが、アイツの味覚は少々刺激が強すぎるからな。
それにしても会長も物好きだな。わざわざ俺達の班を見に来るなんて。
ま、逢坂と高須が居るからな。なにか騒動があるとしたら中心はソコだろうと踏んでるんだろう。
あながち間違いじゃないのが心苦しいがな。
でも、楽しみだ。なんだろうな俺は。会長と過ごせるってだけで、どこか嬉しい。
まったく……早く本当の俺を見せたいな。
なぁ?高須。
狩野すみれの日記より抜粋。
5月16日。
それにしてもアイツの家事万能ぶりもココに極まれりだな。
何をそんなに気合入れてるんだか。
まぁ、私も顔を出すかも知れないと言っておいたしな。お前の事だ。ちゃんと私の分も用意しておくんだろう?だったら行ってやるさ。折角の料理が勿体無いからな。
ふふふ。今年で3回目か。慣れてると思ったんだがな。晴れてくれと祈ってしまう自分が居るのが不思議だな。
精々お前も晴れを願ってくれ。こう見えても今から誉め言葉を考えてるんだからな?無駄にするのは勿体無いだろう?
木原麻耶の日記より抜粋。
5月16日。
さっき奈々子から電話が来ていた。
明日はレクリエーションだ。明日からまた私達は新たに親友として歩み出す事になるんだよね?奈々子。
さっきまで高須君の家で明日の準備をしていたって連絡が来たけど、その時に奈々子は色々な事を話してくれた。
高須君と逢坂さんの関係は私達が邪推する様なモノでは無い事。そして、奈々子の想い。
ようやく踏み出すんだね、奈々子。
奈々子は真剣に高須君と向き合うと私に宣言した。譲るとか譲らないとかそんなつまらない関係に、私達はなりたくない。
だから奈々子。真剣に、真っ直ぐ行こうよ!たった一度の青春だもん!
私はまだ二人の内のどちらもはっきり選べない。奈々子は歩みだした。だから、私も歩き出そう!
今すぐには決着は付かないかも知れないけど、いつかずっと先で皆で笑えるように、私も歩き出そう。そう、今日は思った。
恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
5月16日。
はあ〜〜あ。
明日は外か〜。そろそろ肌にキツイのよね〜外って。でも言ってられないわね!
最後の弾を撃ち損じたんだもの!もう私には仕事しかないのよ!!
ま〜、最近逢坂さんも忙しいし、高須君もなんか張り切って料理作るみたいだし。良かったら先生もどうですか〜なんて。言うわね〜彼も。
でもなんか緊張するのよね、彼………か、彼って言ったって彼氏とかそう言うんじゃなくて、男子生徒の彼よ!そう。そうよね。
第一、高須君から見たら私なんてず〜〜っと年上な分けだしさ、そんな意識あるわけ無いわよ。
ほんと、馬鹿みたい……有る訳無いのに………
香椎奈々子の日記より抜粋。
5月16日。
私は今日決めた。分かった。私は高須君が好きなんだ。誰にも負けない位。麻耶にも負けない位に、彼の事が好きなんだ!
もしかしたら今の私にはそんな資格はないのかも知れない。でも、そうありたいと思う。彼に想われるだけの価値ある人に、私はなりたい。
だって彼はそれくらい、優しくて大きい人だもの。
高須竜児と云う人物を、私は今日初めて見つけたのかも知れない。
明日の準備をしようと一緒に行動した私達の傍には、逢坂さんが居た。
いろんな噂が流れる中でも変わらずに居る逢坂さんが、私は少し鬱陶しいと思ってた。
スーパーで、勝手にカゴに入れようとしては高須君に駄目だと言われ、悪態を付いて戻しに行く繰り返し。逢坂さんに私は呆れた。
家は別々だった。同棲なんてやっぱり只の噂。でもすぐに逢坂さんは高須君の家にきた。合鍵。その事実は私には面白くなかった。
私達が台所に居ると、おやつだつまみ喰いだって騒がしい。高須君が偶に与えるモノで少し戻ってく。高須君に少し苛ついた。
泰子さんが夕飯を一緒にどうかって言ってくれたのが嬉しかった。客用のお椀と湯のみ。逢坂さんのは彼女のお椀と湯のみ。私は見たくなかった。
康子さんが仕事に出掛けて、私達が明日の段取り等を話してる時、逢坂さんは好き勝手に過ごしては思い出した様に高須君に我が侭を言う。拒絶しない高須君が気に入らなかった。
楽しい事と楽しくない事を秤に掛けて、私には今日は楽しくない事の方が多かった。
折角今日を楽しみにしていたのに。そんな迂闊な自分に腹が立った。
気が付いたら逢坂さんは床で丸まって眠っていた。それを見た高須君は「まったく」と言って逢坂さんを自分の部屋に敷いた布団に寝かせていた。
なんで?と聞いたら「?床で寝てたら起きてから体が痛いって五月蝿いからな。ま、後で帰ってきたら逢坂の家に運んでいくさ」と笑ってた。
私には分からなかった。私を想ってくれている筈の高須君がどうして逢坂さんにソコまでしなければならないのか。私は聞かずには居られなかった。でも…
「……逢坂は孤児だからな……もう独りにはさせたくない」
私には、微笑いながら語る高須君がとても遠くに感じたられた……
送ってくれた彼は私のこぼれる思いを受け止めてくれて、それでも逢坂さんをこのままにはして置けないって言った。私はまだ彼に相応しくないのかも知れない。でも、今はただ謝りたかった。
泣いて謝る私を、高須君はただ許してくれた。いや、多分怒っても責めても居なかったんだよね。
だから麻耶。私は高須竜児に相応しい人間になって、彼の想いに応える事の出来る女になって、彼と同じモノを見るって決めたの!
さっき麻耶に全てを話した。勝負はフェアに行きたい。だから勝負よ?麻耶。
一緒に、精一杯、いい女になろうね!
香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
5月16日。
奈々子……父さんには奈々子の質問の意味がわからないんだがな?
「ねぇ、お父さん。もし私が孤児になったらどうする?」
…………私は要らない父親なのか?奈々子ーーーーーー!
高須泰子の日記より抜粋。
5月16日。
え〜〜。明日は竜ちゃんみんなでピクニック行くんだって〜〜。
やっちゃんもいきた〜〜いって言ったら〜。今度大河ちゃんと3人でピクニックに行くことになったの。
楽しみだね〜〜。大河ちゃ〜〜ん。
高須竜児の日記より抜粋。
5月17日。
ふっ。今日は予定通り、いや、予定以上の成果を挙げた日だったぜ!!
コレで北村と逢坂の薔薇色の未来に3段飛ばしで5歩は近付いたな。
ああ。そんな顔しなくても分かるさ逢坂。俺達はもう相棒と同じだぜ右京さん!好きなだけ俺のプリンを食べるが良い。
全て今日はプラン通りさ!逢坂は与えられたバトミントンを片手に櫛枝さんを引き連れて遊びだした。その時点で1プリンだ逢坂!
それに呼応して木原さんや川嶋が北村に声を掛け、事のついでに能登と春田を引きずり込んだ。香椎さん済まないな。悪いが俺と裏方に回ってくれ、償いはいずれする。
料理は出来た。それはもう絶品料理だ。さすが香椎さんだ!君の協力を得たと言うだけでこの日の作戦は成功したも同然だった。
途中、櫛枝シェフがその腕をご披露しようと動いてはいたが、済まない櫛枝さん。俺はまだ修行中の身。君の味付けを生かす料理は俺には創れない。許してくれ。
狩野先輩や恋ヶ窪先生も来て俺たちの班はソレはもう、華々しいくも豪華絢爛!緊張して無くてもジャガイモにしか見えない野郎共が生唾飲んで羨む一角と相成った。無論!櫛枝さんの輝きが際立っていたのは記すまでも無い。
だがココからさ!俺達竜虎がその猛威を振るったのは!…?おう!逢坂。そのアイスも喰って良いぞ。喰え喰え。
ほんの食後の一時こそ俺達が狙った時間だったな。皆の気持ちが満腹感で緩んだ時、逢坂が良い動きを見せ、櫛枝さんをその場から引き離したのさ。
OKだ逢坂!まさに刹那に交わしたアイコンタクト!今日の俺達なら翼君と岬君だって軽くあしらえるさ。
作戦は至ってシンプルだった。ようは北村だ。北村に理想の女性像を刷り込ませれば良いのさ。それも逢坂に合致するようにな。
だが如何せん逢坂と櫛枝さんではタイプが違いすぎる。櫛枝さんの前で俺が作戦を実行してしまえば、あらぬ誤解を招かないとも限らない。そこでこのコンビプレイだ!誤解は避けたい。
逢坂が櫛枝さんを引き付けてる間に俺は目的を果たす。ココまでで第1段階はクリアしたのだが、この第2段階が難しかったな。どうやって話を持っていくかが難題だった。が、居たな。まさにスーパーサブが居やがった。
そのスーパーな男と来たら「ところででさ〜。みんなはどんな女子が好きよ〜?」……春田君。君はダイヤの原石だ。
そんな原石のナイスなパスを「急に言われてもな」とか「俺はとくに」等と出来損ないのストライカー共が駄目にしやがる。だが案ずるな春田君!君のパスは俺が打ったぞ!
「……あくまで一般的な意見を纏めるなら、それなりに答えは出てると思うが?」そう。一般的な話だよ櫛枝さん。
「え〜〜。じゃあ高っちゃんはどんなんが良いの?例えば〜…外見とか」春田君。君とは友達になれそうだな。
「無論外見なんか関係ないけどな。そうだな〜…強いて言えば髪は長い方が良いんじゃないか?あぁ、あくまで一般論だ。うん」
「へ〜〜。じゃあ性格が良いとか?」…春田。もはやホワイトデーの事は忘れよう。人は人を許せる生き物なんだな春田!お前は友達だ!
「まぁ性格も良い方が良いだろうがな。でも余りに普通と云うのも味気無くは無いか?明るいでも暗いでも激しいでも何でも良い。個々確立したものが欲しいな。あくまで一般論だ。うん」
「は〜〜。でも高っちゃんは料理も掃除も洗濯も上手いしさ〜。彼女になる人は大変じゃね〜?」……浩次。もはやお前を親友と呼ばずしてなんと呼ぼう!
「そうでもないだろ?別に女が男より家事が優れてなきゃいけないなんてどんな幻想だよ。そうだな、例えば料理なんか、少し男が教える位の余地が在っても良いじゃないか。あくまで一般論だが。うん」
皆が感心する中に逢坂と櫛枝さんは帰ってきた、ふっ。今日は全て上手く行った、人生最良の日だった。?ああ、レットカーペットでもなんでも見ると良いぞ、逢坂。
これで明日から北村の女性に関する意識は徐々にこちら側に傾いていく事だろう。しかも逢坂も俺の為に一計を案じてくれた様だ。
ふっ。不味いな。お前が可愛く見えてきたよ。ああ、良いぞ?好きなテープに録画すると良い。うん…?俺の携帯にメールが来てるって?
………今日の日記を締めくくるのは幸せな雄叫びでも書こうかと思ったのだが…なんだ?コレは?
川嶋。香椎さん。木原さんに狩野先輩…恋ヶ窪先生まで??何故俺に『嬉しかった(な・わ・よ・じゃないか・かな)』って言うだけのメールなんだ??
逢坂に言わせると「最近は美味しいもんをご馳走してくれたら嬉しかったってメールするんじゃない?ほら!やっちゃんも打ってたし!」流石小さくても乙女だな。だったら、そうだなぁ……『おう!』とでも返しておこう。
200 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 23:52:58 ID:xF7MVARK
それにしても…お前からは貰ってないな?逢坂。まぁ櫛枝さんからも来てないしな、2大巨匠にはお口に召さなかったのだろう。不思議と悔しくないが。
だとするならば北村以下3名の男子から『嬉しいかった』メールが来てないのは納得が出来んな。奴らには少しばかり作る方への感謝の念が不足しているようだ。
「時に、逢坂。北村がお前の手作りチョコレートをぜひ能登と春田の3人で喰いたいと俺に頼んで来たんだがな?俺の顔を立てて作ってやってくれないか?」
ふっ。仕方ないなぁと言って顔が垂れたな。北村・能登・春田。礼儀の大切さを病院のベットで味わうが良いさ。
逢坂大河の日記より抜粋。
5月17日。
今日は楽しかったな〜。みのりんとバトミントンして、北村君とバトミントンして。
バカチーも居て木原さんも居て香椎さんは料理を作ってたけど、こっそり手作りのプリンをくれた!!
ゆりちゃん先生は一緒に笑ってくれる!あの生徒会長は気に食わないけど、でも一緒にしたバトミントンは楽しかった!
今度の日曜はやっちゃんと竜児と3人でピクニックだ!北村君も誘って良いって!!バカチーも誘おうか?もちろんみのりんも!!
いろんな夢が叶ってく。いろんな願いが叶ってく!
楽しいねみのりん!世界はこんなに楽しいよ!みのりん。
だから今日は少しお礼。こんな世界をくれた竜児にお礼。
皆が遊んでるのを眺めてたら春田ってのが話しかけてきて「なぁなぁタイガー。所で高っちゃんの好きなのってどんなんなるわけ〜?」
所詮アホにはわかんないのね。だから分かりやすく教えてあげた。竜児の好きな人はM・Kよって。流石に名前を教えるのはプライベートの侵害じゃない?
でも所詮アホはアホね。
「う〜〜ん………真鍋かおり、みたいな?」こけたわね。どうしてイニシャルで苗字・名前に成るのよ!逆でしょ!!!
言っても理解出来なかったみたいだしもう良いわ。めんどくさいから地面に書いてあげた。
相合傘に、左にT。右にK。
流石に「Tってのは高っちゃんだよな〜」ま、全て苗字から始まらないと気が済まないアホにはコレが良いトコでしょ。
上手くみのりんに見せなさいよ?ソレ。普通の人は分かるから。
そんな事を話したら竜児は怖い顔で笑ってた。別に俺俺詐欺に成功した顔じゃない、単に嬉しい顔だ。
証拠に私の制服のスカートのアイロン掛けを始めたもん。
私は北村君と。竜児はみのりんと。全部上手く行ったらどんなに幸せだろうって思う。
「やるな大河」って竜児が言うんだもん。あったりまえよって言ってやったわ!こういうのを……そう!策士策に溺れるって言うのよ!!
違うって言われた。
竜児は「分かってないな逢坂。今は言うべきは……知らぬが仏さ!」だって!なんか違う気がするけど、今日は二人ともハイなテンションだし、まぁいっか!竜児!ゲームやろう!!
能登久光の日記より抜粋。
5月17日。
いやいや目の保養になった一日だったな。
それにしても高須の意中の相手ってのが気になるな。
どうにもソレを知るのはタイガー一人みたいだし、それはつまりタイガーの気がすすまない限り聞けないって事だ。
無理に問いただせば命に関わるしな。
だがどうやら春田は聞き出せたようだ。良いよなアホは。空気読めないで。
だが内容が…「なんか真鍋がどうしたとか言ってたんだけどな〜」と来た。マジ、友達辞めようかな。
そしてようやく「ああ!そういえば!」って思い出したのが逢坂が書いたらしい相合傘。
いや、これじゃ広すぎだろって!
流石に見た皆も固まってたな。無理も無い。
……女子の顔が赤いのが………なんかやだな。
北村祐作の日誌より抜粋。
5月17日。
今日は楽しかったな。うん。行幸行幸。
高須にピクニックに誘われたがどうしたものかな。ま、いければ良いんだけどな。
それにしても高須の好きな人か。逢坂にだけでなく俺にも相談してくれれば良いのにな。力になりたいものだ、親友としては。
う〜ん。Tは高須でいいとして、K…K…か……き……く……け……こ……。うんやはり分からんな!
まさかKITAMURAって事はあるまい!わはははははは!
本日はココまでです。
明日は多分プールかな〜っと。
別荘までは届かないかも。
では!
GJ!
久しぶりに来たが、まさか小説とかの形式じゃないのにこんな面白い作品書く職人が出てきていたとは……
203 :
98VM:2009/05/22(金) 00:07:02 ID:3zT9uuW6
こんばんは、こんにちは。 98VMです。
今夜もコンボ。
あー、なんか書きやすいw
なかには波長の合う読者もいるだろうと信じて。
前提: とらドラ!P 亜美ルート90%エンド、ローマの祝日
題名: ローマの平日2
エロ: 今回も無しで。スマン。
登場人物: 竜児、亜美
ジャンル: ありがちなストーリー。
分量: 3レス
亜美が出演した映画が、ここローマでも上映された。
普段はこういうタイプの映画は見ない俺だが、なるほど、全米No1という陳腐な宣伝文句も、この映画なら納得がいく。
最後の最後、主人公とヒロインが結ばれる瞬間のカタルシスは多くの男女を虜にするだろう。
亜美の役どころは、見た目は美しいけれど、主人公に横恋慕して、ヒロインを苦しめるいわゆる『性格ブス』ってやつだ。
とにかく全編通して嫌な奴なんだけど、ちょっと詰めが甘い。
登場人物側から見ると、完璧に嫌な奴だが、観客から見れば、あれ?こいつ実はいい奴なのか? と思わせる演出が
ちりばめられて、そして、最後の最後、主人公とヒロインが決別しそうになったその時、一発逆転の罠を仕掛けて、二人
を後押しするっていう、ある意味お約束。
しかし、映画の中の登場人物達には本心を見せずに、嫌われ者のまま独り去っていくという報われない女の子。
なんというか。
あまりに似合いすぎてて言葉がでねぇ…。
前にあいつは『ちょっと似てる』なんて言ってたが、こういうのは世間一般じゃ『ハマリ役』って言うんだぜ、亜美。
もっとも、世間一般じゃ、あいつの素顔なんて知らないだろうから解らんだろうが。
あいつと一緒に見にいかないで大正解だ。 おもわず、涙ぐんじまったぜ。
まぁ、いい映画だったが、実はただ一つだけ大いに不満がある。
それはここイタリアでは外国映画は全てイタリア語に吹き替えされちまう。 つまり、亜美の声じゃない。
亜美の肉声だったら、さぞかし破壊力満点だったろう。
二週間後の日本公開時の反響が、楽しみでもあり、怖くもあり。 またあいつの人気が上がっちまいそうで、少しだけ
面白くない。 でもまぁ、そんなのはファンから見たらとんでもねー話だよな…。
19時07分。 定刻より若干送れてボーイング777が降りてきた。
フィウミチーノ空港まで迎えに出たのは、恥ずかしい事にこれが始めてだった。
そんな些細な事が亜美には嬉しいらしい。
「竜児!」
俺を見つけると抱きついてきた。
本当に、ファンから見たらとんでもねー話だ。 なんせ俺は、休みの度にこうして亜美を独り占めしてるんだからよ…。
ローマの平日 due
その日の夜は、激しかった。
どっちがって聞かれれば、両方。
思えば、最近は必ずどちらか一方がヘトヘトに疲れていたりして、夜のお努めから遠ざかっていた。
亜美は、明日の午前中にオフィシャルの取材が入っていて、珍しくホテルにお泊りだ。
今回はホテル・ハスラーのサンピエトロと名付けられたスイートを確保していた亜美は、『たまにはいいでしょ』と言って
俺を連れ込んだ。
そこは…正しく楽園だった。
落ち着いた間接照明に照らされた、年代ものの見事な家具の数々。
そして、そのどれもがピッカピカに磨かれている。 興奮して家具を撫で回す俺に、亜美のケンカキックが振舞われた
のは言うまでもない。
だが、その後、薄着になった亜美の体を見て、健全な男性として当然の欲求が俺を支配した。
たぶん、付き合い始めてから、初めてのことだった。 俺の方からしようと誘ったのは。
よほど興奮したのか、亜美のやつはいつにも増して敏感で、たちまちのぼりつめてしまう。 その様子があまりにも
エロティックで、俺達二人はどんどんエスカレートして… 気が付いたら、すでに夜明け間近。
まったく、俺ってやつは…。 またしても亜美を寝不足のまま翌日の仕事に行かせる羽目になっちまった。
だが、亜美はそんな事は少しも不満に思ってないようだ。
別れ際、期待に目を輝かせて聞いてくる。
「ねぇ、午後からは亜美ちゃんのこと、どこに連れて行ってくれるの?」
やっぱり、今日も近場にしよう。 はしゃいじゃいるが、亜美は疲れている筈なんだ。 って俺が言えた義理じゃねーが…
「そうだなぁ…。 あそこにいってみるか…。」
「どこ?」
「パオラの泉とジャニコロの丘だ。」
亜美の仕事が終わるとちょうど昼時だった。
「じゃにころ? なーんか変な名前〜。」「ちょっと耳を澄ませてろ」「え? …う、うん。」
微かな大砲の音。
「あ。 12時の大砲?」「そうだ。 あの大砲を撃ってる場所がジャニコロの丘だ。」
「竜児ん家ではかなり大きな音だよね。」「ああ。 ジャニコロの丘は俺のアパートの近くだからな。」
「へぇ。 じゃ、ゆっくり歩いていこうよ。」 俺がホテルでタクシーを手配したのが不満らしい。
「いや、その前によるところがあるから、少し急ぐぞ。」
実は是非、亜美に見せてやりたいイベントがある。
目的地はサンタ・マリア・イン・トラステベレ教会。
俺達はタクシーを降りて、教会に向かう。
「あれ? この教会は何回か来たよね?」
「おう。 だがな、今日は特別なんだ。」
入り口で目配せする。 普通はこのタイミングでは入れないのだが、顔見知りの俺は特別扱いだ。
教会の中は着飾った人々が集まっている。
そして、俺の後について入ってきた亜美が息をのんだのがわかった。
「竜児、これって…… 結婚式!?」
「おぅ。 今日は、給仕のおばちゃんの従姉妹の娘さんの結婚式なんだ。 なんとかぎりぎり間に合った。」
やがて、司祭が教会の入り口へ進み、新郎新婦を伴って祭壇へと向かった。
参列者の最後尾で俺達も見守る。 聖歌、福音、朗々と流れる司祭の言葉。
そして、愛し合う二人の誓いと指輪の交換。
そして祝福する皆が聖歌を歌い、結婚が成ったことを司祭が高らかに告げる。
「すっげぇ… すっげぇ… なんか、超綺麗だよ。 凄いよ…。」
教会から出て、ライスシャワーを浴びる二人を潤んだ目で見つめながら、何度も亜美は呟いた。
ローマで最も古い教会で行われた、本物のカトリックの結婚式は、どうやら、かなり気に入ってもらえたようだ。
しばらく、とろんと溶けていた亜美だったが、復活するや、否や
「ねぇ〜、亜美ちゃんに、こーんな素敵な結婚式見せて、竜児は何考えてるのかなぁ〜。 あたし、期待しちゃうよ?
なんでかなぁ〜。 いいのかなぁ〜。」
すこしだけ、頬を紅潮させて、悪戯っぽい微笑みで俺の周りをちょこちょこと回りだす。
そんなに深い意味はなかったんだが、拙かったか、これは? うーむ。 ここは誤魔化そう。
「そ、そうだ、まだ飯食ってなかったよな。 亜美も腹減っただろ?」
「くすくすくすっ」 怒るかと思ったが、大丈夫だったようだ。 少しほっとする。
「解ってるよ。 どうせ竜児の事だもん、あたしに『本物の教会でやるカトリックの結婚式』を見せたかった、とかそういう
理由でしょ? 教会もドレスも凄く綺麗だし。 そうそう見れるもんじゃないしね。」
「おぅ…、まぁ、そんな所だな…。」 大正解だ…。
「あははは。 あんたって、やっぱ馬鹿…。」
「悪かったな…」
「ふふふ ……ねぇ、なにか美味しいのあるの〜? 竜児のお勧め。」
「お、おぅ。 そうだな… ピザサンドなんてどうだ? 野菜やハム、キノコなんかをピザで挟んだやつだ。」
「へぇ! 美味しそうじゃん、それ。 カロリーメチャクチャ高そうだけど。」
「確かに、カロリーは無茶苦茶高いな… 別なのにするか?」
「ううん。 いいよ、亜美ちゃん、おなかペコペコだしぃ…」
「よし、じゃぁ、そいつを買って、パオラの泉で食うとするか。」
教会の脇の道を上っていくと水飲み場に突き当たり、そこからさらに坂道をずんずん上っていくと、白亜の大理石でできた
パオラの泉に辿り着く。
「わぁー、おっきぃ…… なんかさ、泉がメインなのか、モニュメントがメインなのか、わかんないよね。」
「おう。 どっちかってぇと、モニュメントだろうな。 それに泉が付随してると言った方がいいだろう。」
「あー、でも水綺麗。」 「景色も綺麗だぞ。 こっち見てみろ。」 「え? おおーー! すっげぇ。 市街一望じゃん。」
「そこのベンチで食事にしよう。」 「うん。」 「ちょっと待て!」 「え?」
持参した予備のハンカチを石のベンチに敷く。 「よし、これでいい。」
「……ありがと。」
二人で並んで、ローマの街を眺めながらピザサンドを食う。
暦はまだ冬だが、ローマの街のあちこちには様々な花が咲き始め、春が近いことを感じさせる。
「これ、マジ美味しいんですけど… 食べすぎちゃいそう…。」
「そんな事言ってねぇで、MOTTAINAIから、全部食えよ。」
「うん。 そうだね。 今夜も竜児が亜美ちゃんの脂肪、燃焼させてくれるんでしょ?」
「お前なぁ……。 なんで、すぐそういう話にもっていくんだよ…。」
亜美は楽しそうに、俺をからかう。 何をするわけでもない。 ただ二人でいれば、いつだって楽しい時間を作れる。
こんな関係になれるなんて、高校で別れた時には夢にも思ってなかった。
「随分、長居しちまったな。 寒くねぇか? そろそろ日も傾いてくる。」
「ううん。 大丈夫。」
「そうか。 じゃぁ、いよいよジャニコロの丘だ。」
「遠いの?」 「いや、目の前。」 「へ?」 「この坂上った所がそうだ。」
プラタナスの並木と松に覆われた斜面の間の石畳を登っていくと、程なく広い空間に出る。
そこがジャニコロの丘だ。 ローマ市街を一望でき、夜景が有名だが、実は夕景の美しさこそ格別だ。
「竜児…… 時間調整してたのね?」
「……流石だよな、お前も。 やっぱセンスがいいんだろうなぁ、一発でばれちまう。」
「でも、すごく…綺麗。」
うっとりとローマの街を眺める横顔は、憂いを秘めて、どこか儚げに見えてしまう。
「…ねぇ、竜児。 今日のお嫁さんも、すっごい綺麗だったよね。」
「だな。」
「亜美ちゃんと、どっちが綺麗だった?」
意地悪な表情でこんな事を言い出すこいつは相変わらず何考えてるのか…。
「同じ条件だったら、やっぱり、お前の方が綺麗だと…思う。」
「それって、遠まわしにあたしの負けって言ってる? ふふふふ。 竜児ってさぁ、正直者だよねぇ。」
「…顔の作りとか、そういうんじゃねーところで、今日の花嫁は凄く綺麗だったと思う……。」
「あたしも、そう思うよ。」
「あたしもさ、あんな風に綺麗になりたいよ…。 いつか、必ず。 それまで、竜児に愛想つかされないよう頑張る…。」
急に真剣な表情で呟くように言う亜美。
こいつは時々こんな事がある。 そう、高校の時から。
今は、それがどんな時なのか解ったつもりだ。
だから、俺は何も言わない。
こいつの傷も、こいつの不安も、こいつの後悔も… 全部折り込み済みで愛したのだから。
ただ、全ての想いを込めて、その華奢な体を抱きしめる。
返す微笑みは温かく、そしてその夕日に色づいた唇は…
俺の唇と重なり合い、互いの信頼を交し合うのだろう。
それは……最高に幸せな、そんなローマの点描。
おわり。
207 :
98VM:2009/05/22(金) 00:11:41 ID:3zT9uuW6
お粗末さまでした。
べ、別にゲームの情報欲しくてSS書いてたわけじゃないんだからねっ!!
お陰様で昨日100%行けました! あーみん、報われてよかった!
ゲーセンでの台詞はいかにも亜美でしたし、あの顔はある意味実に亜美っぽいw
が、すっかり負い目のなくなったあーみん。
それ、ちょっとインビンシブル過ぎじゃね? 98VM的にはやっぱ90%かなぁ。
>>201 乙。
全員Kということに腹抱えたw
>>207 おめw
イタリアスキーでもあるからたまらないぜw
なんか今週充実してたなあ……w
頭文字K多すぎワロタ
とらドラ!全米公開ですね。
おれは90も100も好きだけどエンディングはプリーズ・プリーズの方が好きです
日記&ローマ
ふたついっぺんに読めて今夜はラッキーだ!
「ドジ」「孤児」は声出して笑った。
大河が無邪気でかわいいなw
98氏は何故にそんなイタリアに詳しいのか。
あーみんかわいすぎるw
しかしこの二大作品に割って入るつわものはおらんかのぅ。
ひそかに「ななこい」の続きを待ち望んでいたりしてる。
Kって…
皆はいってんじゃんか。
書き手さんスゴイッス
ホントに全員苗字が「か行」なんだよな…大河以外。
それにしても大河のハッピネスぶりが凄い。
時期が時期だからかまだヒロインじゃないけど…正直、可愛すぎです。
本当GJです!
キツイ1日を乗り越えられるのは本当にこの作品を布団のなかで読めるからです
これからもよろしくお願いします
Kawashima
Kushieda
Kanou
Kashii
Kimura
Koigakubo
Kitamura
なるほどKばっかじゃないか
ついDokushinって書こうとしてしまったけどな
木村…?
Kiharaじゃねぇか
そういえば北村って書こうとして書き直したような直さなかったような
ゆゆぽの作為的なものを感じるな>K
………kimura?
kjharaの間違いか
>>219 お前こそどうしたんだよ…
よくわからんがとっさにアジャ・コングを思い出したぞ
kooziも忘れないでくれよな〜高っちゃ〜ん
怨霊じみた座敷童wwwww和製ダミアンwwwwwwww
223 :
SL66:2009/05/22(金) 06:20:27 ID:eLoWQUTj
22時間後の明朝に、「我らが同志」の続編、
「いざよい」を全65レスで投下します。
エロありですので、お楽しみに。
Minori Kushieda
Ami Kawashima
Nanako Kashi-
Maya Kihara
Sumire Kanou
Yuri Koigakubo
Yu-saku Kitamura
K多すぎだろ常識的に考えて…。
225 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 07:07:39 ID:XohqXSCh
SL66キター! いまからwktkしてます
>>223 遅い、今からあげろ
俺は余命1時間なんだ頼むよ
227 :
1:2009/05/22(金) 07:10:56 ID:DfEHrQ23
遂に、あのクラウザーさんのエロが拝めるというのか…
「お楽しみに」なんてさらりと言われると
「あ、あたしたち読者ををどうする気?」と、逆に恐ろしいんですが
229 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 09:27:08 ID:EWTbS1zr
ホントこのスレ凄い。なにが凄いってもうヤバイ。
亜美ちゃんヤバイ。
奈々子さまヤバイ。
でも竜児はもっともっとヤヴァイ!
SL66氏くるならもう今日は徹夜で待ってるわ!
徒然日記、何か竜児の頭上に燦然と輝く死兆星が見える気がするのは漏れだけ?w
232 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 11:08:46 ID:Hho+17TH
>>230 GJ!
絵が可愛過ぎるだろwww
あなたには「GJ!」一年分を進呈させていただきます。
お気に入りに登録っと……
232氏からの指摘もあるとおり、atherじゃなくてotherね。
>>230 いち書き手ですが、可愛いイラストをどうもありがとう。
>>230 読んでると気が散るのでSSのページの背景の丸は要らないかも。
背景の色も白ではなく落ち着いた感じの色で目が疲れないようにしてくれると読みやすいかな。
ま、この辺りは好みになるので、あくまでも個人的な意見ということでw
なにはともあれ感謝!感謝!です。
>>199 ここで竜児がメール一括送信してたら死兆星だなw
>>230 その他SS集 14皿目の「LA 北村」の備考欄が
「苅野すみれ×北村」になってます。
>>230 乙!
確かに、背景の○は要らないかもしれませんね。
それにポインターを合わせてニヤニヤしてる俺って一体?
イラストかわええw
タブブラウザでみると、タブのところが「無題のドキュメント」になって
ちょっと味気ないので、html構文で
<head>
<title>竹宮ゆゆこ総合スレ SS補間庫</title>
と入れるようにしたらどうでしょうか
241 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 15:33:51 ID:ZAtlcysO
保管…?w
>>230 乙
キャラごとに作品を分けてくれたのはありがたい
243 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 18:22:18 ID:N5ihVO99
>>230 一つ聞きたいんだがもしかして携帯からじゃ見れない?
誰か携帯でも見れる方法知ってたら教えてくれ!!
>>230 センスいいね、GJです。
使わせてもらいますね^^
>>230 GJ!!
竜虎沐浴にポイントした時の大河のセリフ
河原で塗れた→河原で濡れた
頑張ってくれぃ!
247 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 19:28:51 ID:zk26He3p
ファイルシークは基本だね
248 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 19:29:41 ID:zk26He3p
俺のドコモの903だとサイトは普通に見れるが画像が壊れる
別に文章がちゃんと読めれば全然かまわんからOKだ
管理人さんありがとう
本日も待機の時間が始まりました
さすがに今日は降臨しないのだろうか・・
SL66様が控えてますからね。
徹夜待機組みに暇つぶしを投下しようかと思っていたのですが、
うかつにも寝てしまいましたww
@1時間もあれば書けそうですが、そうなるとすぐにSL66様が
降臨されそうですので、いかがなものかと…
>>254 三時があなたで四時がSL氏、それで良いではないか。
あ、んな事行ったら俺寝れない・・・
>>254 職人って一時間とかで出来るもんなのか・・やはり文才のある人は違うなぁ・・・
個人的には同士よりも日記の方を楽しみにしているので
投下できるものなら投下していただきたいです
じゃ暇つぶしに投下。 タイトル:悩み?
――――――――――――――――――――――――
なんてことだ!
くそっ!俺はどうすればいいんだ!?
こんなはずじゃなかった。
ただの余興だった。
初めは遊びのつもりだったんだ!
だが最近皆の視線がイタイ。
なんでそんな眼で俺を見る!?
どうしてこんなことに…。
みんなが喜んでくれるのを嬉しく思っていた。
みんなが盛り上がってくれるのが嬉しかっただけだというのに!
あの人も『男らしくて良いんじゃないか』と大声で笑っていた。
あれはもしかして呆れてたのか!?
そういえば誰かに漏らしていたのを聞いた気がする。
『なんであいつは裸になるんだ?』と。
俺の勘違いだったのか?
みんなは笑ってキチガイだと思っていたのか?
楽しんでくれていたのではなかったのか!?
俺はそのせいで癖になってしまったというのに…。
健全な男子高校生のはずがいつの間にか未成年露出狂だと!?
一応俺は生徒会長だぞ?
常識人で通っているはずだ!
なのになんで、なんで俺は今、裸なんだ!?
ここは学校なんだぞ!
俺はこれからどんな方向に進んで行くというんだ!
高校生をしながら夜はコートで徘徊か?
さすがにそれはないぞ。多分。
自信を持っていえないところが不思議だがな…。
まずは自己分析だ。
俺はなんでこんなことをし始めた?
理由を追求してその部分を正していこう。
初めはサンタだったか?
いやその前に何があった?
告白か?
会長に告白して、振られて、失恋大名神になって…。
その頃から脱ぎ出したんだ!
じゃあ原因はストレスか。
俺はストレスが溜まっているのだろうか。
そんなに溜まってない気がするんだが…。
いや違った。
最初に裸になったのは亜美の別荘だ。
…そうかあの時、知ってしってしまったんだ。
この開放感を!
やめたいのにやめられない!!
これが依存症というやつなのか!?
俺はこれからどうなってしまうというんだー!
誰か教えてくれーー!!
259 :
98VM:2009/05/23(土) 02:55:04 ID:rVbRoeFh
こんばんは、こんにちは。 98VMです。
SL66様のが待ち遠しい〜
って、流石に一時間では書けませんよ〜。
途中まで書いてて寝ちまったのですw
では露払い、投下。
前提: とらドラ!P 亜美ルート90%エンド、ローマの祝日
題名: ローマの平日3
エロ: つーか、この長さじゃはいら(ry
登場人物: 竜児、亜美
ジャンル: ありがちなストーリー。
分量: 3レス
「ねぇ、竜児〜。 そんなの亜美ちゃん、見たくない。」
「そう言うなよ。 お前は何度も見てるかもしれねぇが、俺は初めてなんだからな。」
まぁ、日本国内での大騒ぎが嫌で、こっちに避難してきた亜美の気持ちを考えると、この反応はわからないでもない。
トラステベレの古ぼけたアパートに、唯一と言っていい最新装備。
日本から持ってきた俺のノートパソコンに、『ばかち〜』と書かれたDVDを挿入する。
このDVDを俺に送ってくれたのは、逢坂大河だ。
って、そんな説明はDVDのタイトルを見た時点で必要ないか。
いまや日本を代表する人気女優である川嶋亜美を、『ばかち〜』などと斬って捨てるのは世界中で一人しか居ない。
その大河が、わざわざ俺に見せるために、日本国内で放送された、件の映画のジャパンプレミアの特集番組をDVDに入れ
て送ってくれたのだ。
なんだかんだ言っても、大河はお人好しで優しい奴だ。
大学では、様々な人間に出会い、大河自身もかなり成長できたと言っていたが、添えられた手紙を見る限り、そんな実感は
これっぽっちも湧かない。
曰く、『イタリアじゃ見れないだろうから、撮っておいてあげたわ。 飼い犬思いのご主人様に死ぬほど感謝するのね。 まぁ、
エロ犬同士、せいぜい盛ってなさい。』
なんていうか、ついにやけちまっても仕方ねぇだろ、これは。
映っている映像は、ジャパンプレミアのインタビューの様子と、観客へのインタビュー。 そして、例の絶叫告白シーンを交え
ての亜美へのインタビュー。 亜美はいつものように余所行きの顔を上手く作れずに四苦八苦しているのが、俺にはわかる。
なるほど、これは可愛い。 それで、俺に見せたくなかった訳か。
亜美は顔を赤くして、すねたようにそっぽを向いている。 眼福、眼福。
「…なによ。」
「いーや、なんでもねぇ。」
「おう、そういえば…」 思い出した。 DVDにはもう一枚、亜美宛で大河のメッセージが添えられていたんだった。
「?」 「これだ、これ。 大河からお前にらしい。」 「なにそれ?」 「まだ見てねぇからなんとも…」
亜美が一枚の写真が添えられた便箋をカサカサと開く。
中を見たとたん、亜美から怒りのオーラが立ち上ったが、それも一瞬。
「ぷっ… くっくっくっくっく… あははははははははは」
写真は雑誌に載ったらしい、俺と亜美のキスシーン。 そして、便箋にはバカでかくたった3文字。
―――― 『ステイ』
ローマの平日 tre
「しっかし、本当に、お前らって変だよなぁ。 仲が良いんだか、悪いんだか…。」
「ん〜〜 犬虎の仲?」
「なんだそりゃ。」
「ふふふふ。 どうなんだろうね? 実際、あれ以来一度も会ってないのに、手紙見ると昨日別れたみたいに思い出せる…。」
「お前が転校した後、暫くの間大河は機嫌が悪かったんだよな…。」
「…そうなんだ。」
俺の顔にモザイクがかかった写真を見ながら、すこし気乗りしない様子で応える亜美。
「手乗りタイガーか…。 みんな、どうしてるのかな…。」
「そうだな。 たまにはあの頃のみんなで集まってみたいもんだな…。」
「もうすぐ春だし、そうね、花見なんかいいかも。 たまには竜児も日本に帰れないの?」
「修行中の身だからな。 そういうのはきちっとしたい。 確かに会いたいとは思うんだが。」
「あはっ 竜児らしいよ、そういうこだわり。 ……それにしても、花見なんて最近ずっと行ってないや…。」
「それじゃ、明日は二人で花見でもしてみるか?」「え? まだ3月になったばっかだよ? いい所あるの?」
「任せとけ。」 花見って言ったら…。 よしっ。
「やはり、あそこしかないな…。 アーモンドやユダの木のほころび具合から見ても丁度だろう。」
「どこ?」
「EUR ―エウル― だ。」
ローマの地下鉄にはおおむね東西に走るA線と、南北を結ぶB線がある。
そして、今日の目的地、EURに行くにはB線を使う。
俺達のいるトラステベレからはピラミデ駅が一番近い。
「地下鉄B線って初めて乗るかも。」
「そうだな。 いつもは歩いちまうからな。 それに観光目的だと、A線の方が便利だしな。」
「降りる駅はなんて駅だっけ?」
「エウル・フェルミ駅だ。」 「らじゃ。」
亜美も最近はローマに慣れっこになってきた。 片言のイタリア語も覚えたし、こうして出歩く時には、バッグなどは持たず、
時計なんかも安物?を着けている。
まぁ、その安物ってのもヴェルサーチのVグラムだったりする所の感覚はオカシイがな…。
ピラミデ駅に行く前に量り売りのワインも購入した。 瓶詰めじゃなくても売ってくれるので、こういうピクニックの時などには
便利で、かつミネラルウォーターよりも安い。
「EURってのは『 ローマ万国博覧会』の略称で、本来は万博のために作られた計画都市だ。 当時イタリアはムッソリーニ
のファシスト党が牛耳って、独裁政治をやっていたから、コスト度外視で作られてる。 大理石の巨大な列柱などは、今では
とても作れないだろう。 幾らかかるかわからんからな。 特に労働省の建物は見ものだ。 まだ未完成だが、かなり前衛的
で、有名なコロッセオのアンチテーゼ的な面白さがある。 また住宅街は省庁が置かれた中心部とはうって変わって、伝統
的な石畳と、曲がりくねった道で構成され、緑もふんだんに使われていて…… 亜美?」
寝てやがる…… せっかく俺が解説してるってのに……。
そうこうするうち、エウル・フェルミ駅が近づいた。
「おい、もうすぐ着くぞ。」 軽くゆすると、お姫様はぱかっと目を開く。 さては、狸寝入りだったか…。
まぁ、確かに、女子には薀蓄は嫌われると雑誌に書いてあった気もする。 今度は自重することにしよう。
駅から降りると、すぐ傍にはエウル人造湖がある。
ここが今日の目的地だ。
ここにはイタリアで唯一、ヨーロッパでも数少ない『あるもの』が存在する。
「……うわ…… もう咲いてるんだ…。」
「おう。 今年は例年より10日以上早い。 ここ最近暖かだったからな。」
「これって、アーモンドじゃないよね? 桜?」
「おう。 ソメイヨシノだ。 今日はここでピクニックとしゃれ込もう。」
「うん、うん!」
亜美は水辺に向かって走り出す。 こういう所は亜美の数少ない子供っぽい所だ。
「この季節のローマは天気が変わりやすい。 一日晴れる日は少ないんだが… 今日はずっと晴れるようだな。」
「そーんなの、決まってるじゃん。 だってぇ、女神様がついてるんだよ?」
こういうナルシストな発言が出る時は、亜美の調子がいい証拠だ。
『日本の散歩道』と名付けられた並木は、決して長くは無いが、花は今が一番の見所のようだ。
「この時期はローマ在住の日本人が大勢くるんだが、今日は平日だからな。 ガラガラだ。」
「へー。 そうなんだ。 やっぱり、日本人にとって桜って、特別な花なんだね。」
「そりゃ、日本の国花みたいなもんだからなぁ…。」
湖沿いの散策路を歩き始めた俺の腕に、亜美が張り付く。
俺が人目を気にするせいで、こういう人目が少ない時は、それこそ乳首の突起がはっきり解るほど胸を摺り寄せてくるのには
すこしばかり難儀する。
さすがにここローマじゃ、桜の木下に茣蓙をすいて宴会ってわけにはいかないが、近くのベンチに腰掛けて、持参したワイン
で乾杯する。
「安物でも、こういう状況だと美味しく感じるよ。」
普通のカップルがどうなのかは知らないが、俺達はこうしてゆっくり時間が過ぎるのを楽しむのが好きだった。
俺をからかう時以外の亜美は、決して口数の多い女の子ではない。
モデルや、女優という職業柄、派手な印象を持たれがちだが、こっちの静かな姿が、本来の亜美なのかもしれない。
「さて、他にもアーモンドやユダの木が花を咲かせているし、湖沿いを散歩するか。」
そうして、小さなピクニックが始まった。
「あれ? これも桜みたい…」
はてな顔で聞いてくる亜美。
「それはセイヨウスモモ、いわゆるプルーンだ。」
「へぇ。 竜児って、こういう無駄な知識は豊富だよね。」
「そういうお前は、人を悪し様に言うのにかけては天才だな。」
「え〜、そんな事ないって。 正直な、だ、け。」
「へいへい。 まー、記憶喪失になった時は焦ったが、無駄な知識に限って無くならねぇもんらしい。」
「…………」
「ん?、どうした?」
「そういえばさ、あの後、どうなったの? 記憶。 全部戻ったの?」
そういえば、亜美は途中で転校しちまったんだった。 だから、事の顛末を知らないのか。
「いや、全部は無理だった。 っていうか、俺自身がこれ以上はいいかなって思っちまったって言うか…」
「そう、なんだ。」
「…そう、だよ、ね。 でなきゃ…あたしの事…。」
その時の亜美の声は小さくて聞き取れなかったが、その表情は悲しげで、あわてて俺は話をつなげる。
「なんでか、お前の事は思い出したぞ! いろいろと。 …なんだが…お前には正直、ちょっと言いにくかった。」
「どうして?」
「いや、俺は知らず知らずのうちに、お前のこと傷つけちまってたんだなって…。 けど、お前はいなくなっちまって…。」
「それって、同情?」
「いや、最初はそうかと思ったんだが…。 違ってた。 ま、まぁいいじゃねーか、そのうち話す! 今は勘弁してくれ。
恥ずかしすぎる。」
「ふふふふ。 そっか。 じゃ、亜美ちゃん、優しいから、許してあげる。」
「おう。 た、助かるぜ…。」
そんなやり取りをしながら、湖を一周する。 エウル・フェルミ駅の対岸から桜並木を眺める場所で昼食を取った。
「今日のメニューはピザサンド・高須スペシャルだ。」
「おー、早速盗んだのね?」 「人聞きの悪いことを言うな。 改良したんだよ。」
「お前でも食べやすいように、やや薄めかつ、小さく切ってみた。 チーズもやや控えめだ。 トマトソースにパルミジャン
チーズで香りをつけ、ハムの代わりにアーティチョークのワイン蒸しを挟んでみた。 どうだ?」
「うん。 わりとあっさりしてて、美味しい。 こういうの工夫できるって、やっぱ凄いよね…」
「まぁ、一応、これで食っていくつもりだからな。 イタリアまで来て腕を上げれなかったら、それこそ、しゃれにならん。」
「それが竜児の夢だもんね。」
「確かに夢の一つではある。 だが、あの時の言葉は撤回しないぞ。」
「嬉しいんだけどさぁ、あたしにも何か手伝わせてよ。 あたしだって、竜児の役に立ちたい。」
十分、役に立ってる。 お前の笑顔が見れるから、俺は何があっても頑張れる。 だが、亜美が言うのは違うんだろう。
おそらく、もっと形のある何か。
だが、俺にもそれは思いつかない。
けれど、別に急ぐ必要は無い。
「今は、特に思いつかないが、いつか必ず、お前にしか出来ないことが見つかると思うぞ。 その時まで、お前の助けは
取って置いてくれ。 ほら、芝居じゃ真打ってのは最後に登場するもんなんだろ?」
「…ばっかじゃね。 今時、そんな決まりなんてねーっつの。」
「ま、慌てなくてもいいだろ、どうせ俺達、ずっと一緒なんだからよ。」
つい、無意識に口走った言葉は…
硬直した亜美の頬を桜色に染め上げる。 ――― ここ、エウルの桜よりも更に美しく。
それは……最高に幸せな、そんなローマの点描。
おわり。
263 :
98VM:2009/05/23(土) 03:00:20 ID:rVbRoeFh
お粗末さまでした。
補間庫、素晴らしいですね!
カーソルもっていくと、へたれあーみんがコメントしてくれるのが
最高です。 ありがとうございます!!
>>258 北村ついに自覚しちゃったよヲイ!
露出シリーズ長編とか書けるんではないでしょうか?
短時間で書いたと思えぬ仕上がり乙です。
>>98VM氏
ローマシリーズはあーみんの可愛さを再認識できる上に
「世界の車○から」とか「都のか○り」とかと同じ匂いが
します。むしろ出来の良い北へ。みたいな。古いか。
さあそしてもうすぐか。今日は退屈しないなー。
>俺はこれからどうなってしまうというんだー!
>誰か教えてくれーー!!
裸になるか、服を脱ぐかだな。
真っ赤になったり桜色になったりチョーかわいいなぁ
>>230 GJっす!
申し訳ない!!
果てしなく遅れた。というより、AM4過ぎに仕事より帰還。
4レス程書き上げたが、眠い。
SL66様の降臨もあり、どうしたものかと。
今夜に纏めて落とした方がいいかな?
もしくは徹夜組おいでなら降臨待ちの間に投下しようか…
お願いします!
って言っても疲れてるだろうから無理は禁物っす
平気だよ〜。
では4レス程投下します。
プールまでは届かずです。
では次レスより落とします。
川嶋亜美の日記より抜粋。
5月19日。
Tと……K、かぁ。
やっぱり、彼の想いの先には私が居るのかなって思う。
髪は……うん。やっぱり長いよね、私。
性格は……素の私は善いとは言えない。でも高須君は好きになるのはホントの私だって言ってくれたよね。
家事は……正直自信無い。でもそれでも良いって言うんだよね。
私は自分の気持ちが分からない。確かに他の人とは違う。違う目で私を見てくれたし、私も違う目で彼を見てる。
だから……確かめたい。自分の気持ちも、彼の気持ちも。
木原麻耶の日記より抜粋。
5月19日。
T……K。だよね。
やっぱ高須君の想いは変わらないんだと実感した。
髪は……長いもんね、私。
性格は……皆には明るいって、でも高須君は弱くて泣き虫って思ってて。でもいつも微笑って撫でてくれる。
家事は……どう考えても高須君には敵わないや。でも許してくれるんだ。
私は、まるおが好き…でも高須君も、好きだ。どっちもなんて駄目に決まってるのにどっちをなんて決められない。
だから……二人じゃない、私自身の気持ちに、私はまず向き合おう。
狩野すみれの日記より抜粋。
5月19日。
Tに、Kか。
そろそろはっきりさせる必要があるのかな、私も。
髪は……ふむ。偶然にも長いな。
性格は……自分ではそれ程変わってないと思うぞ?ま、周りから見れば少しはな?
家事は……私もそれ位はこなせるさ。お前が出来過ぎなだけだ。
私だって考えない訳じゃない。でもお前は年下で、会長と云う立場だってある。でも、コレは逃げだな。
だから……私は確かめようと思う。お前と、私自身に、な。
恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
5月19日。
Tに、Kね。
でもそんな事って許されるの?
髪は……ま、まぁ短くは無いのよね、私。
性格は……ちょっと鬱々してる時だって有るけど、これはもう現代病よ、現代病。
家事は……こう見えても出来るんだから!チョットだけ高須君の料理には勝てないけど。
でも私と高須君は教師と教え子。そんな事許されるわけ無いじゃない。
だから……高須君は想いを言えないの?私は……どうしよう。
香椎奈々子の日記より抜粋。
5月19日。
TとK……
ずっと待たせて、嫉妬して。資格なんてあるの?私に。
髪は……長いよねぇ。ショートにはした事無い。
性格は……確かにちょっと黒いトコ有るかも知れないけど、気付いてたんだ。
家事は……私に料理を教えられる男子なんて高須君しか居ないよ。
麻耶と決めた。いつか貴方に相応しい人間になろうって。決めたばかり。
だから……私は貴方に相応しいのか、私は聞きたいよ、高須君。
逢坂大河の日記より抜粋。
5月20日。
今度の日曜に展望公園にピクニックに行くって決まった!
やっちゃんが家族でピクニックに行きたいって言って決まった。家族…だって。
レクレーションの頃から竜児は私の事、大河って呼ぶようになった。生意気よね!犬の癖に。でも特別に許す事にしてる。特別だけど。
みのりんもバイトで少し遅れるけど来れるって言ったら竜児は凄く喜んでた。早く来れるといいね、みのりん!
バカチーも誘って麻耶も奈々子も誘った。奈々子が串料理をたくさん持って来てくれるって言ってた。
今は皆、私の事「大河」って呼ぶんだ。だから私も。みのりんとバカチーは違う……なんか、違う風に呼びたいんだ。だからみのりんはみのりんで、バカチーはバカチー。
みのりんを誘ったから竜児は私の好きなおかずを沢山詰めてくれるって言ってた!肉ど〜ん!だ!
竜児は北村君を誘ってくれた。
この前の作戦が上手く行ってるといいな。でもいいんだ!私は少しづつ北村君に近付いていく。
竜児はなんとしても上手く行かせてやる!って張り切ってるけど、うん。ゆっくりで良いよ、竜児。
だって、今私はこんなに幸せだから。
高須竜児の日記より抜粋。
5月20日。
今度の日曜に展望公園にピクニックに行くと決まったらしい。
泰子が家族でピクニックに行きたいとダダをこねて決まった。無用なイベントは極力遠慮したいんだがな。
当初より大河の奴は俺の事を駄犬だの犬だのと呼んでいた。まぁ櫛枝の親友が望むなら犬とでも虫とでも呼ばせてやろう。せめて俺は大河と呼び捨ててやる。
櫛枝もバイトが終わり次第、参加すると言ってくれた。でかした大河!明日の朝食は目玉焼きをベーコンエッグにしてやろう。早く来い来い櫛枝!
他にも川嶋や木原、香椎も呼んだらしい。香椎は串料理を持ってきてくれるらしい。たすかるぞ、香椎。
親睦レクからこっち、何時までも仰々しいと言う事で「さん」付けは止めされられた。今では違和感も無くなったな。まぁ川嶋は初めから呼捨てだったが櫛枝さんを櫛枝と呼べるようになるとは…感激だ。
しかし櫛枝を誘った功績は素直に認めてやろう。当日にはお前の好きなモノを詰め込んでやろう。肉でも肉でも肉でも肉でも。
俺は北村を誘ってやった。
レクの作戦をココでも後押しして置かねばならない。鉄は熱い内に打て!
大河よ。なんとしてもお前達二人を上手くいかせてやろう。香椎すら犠牲にしたのだ。後は征くのみだ、櫛枝。
待っててくれ。もうすぐ俺達の幸せが来るから。
櫛枝美乃梨の日記より抜粋。
5月20日。
大河と高須君が今度の日曜に展望公園でピクニックをやるらしい。
泰子さんが家族でピクニックに行きたいって言い出して決まったみたい。良かったね、大河。それが家族だよ。
親睦レクリエーションから二人は、大河、竜児って呼び合う様になった。なんか二人の絆、深まったみたい。
私はバイトで頭からは無理だけど、終わったら行こうと思う。大河の嬉しそうな顔、見たいもんね。出来るだけ急ぐよ、大河。
他にも、あーみんとは木原さんや香椎さんも来るって。香椎さんもなんか作って来てくれるみたいだし、レクリエーションの再現だね!
皆が大河の事を「大河」って呼ぶ様になった。もうお客さんじゃないんだね、大河。あーみんとは何時もやり合ってるけど、凄く楽しそうだよ?本当に嬉しいんだ、私は。
高須君がなんでも好きなモノ入れてくれるって喜んでたな。どうせお肉ばっかりなんだろうけど。
あぁ、北村君もくるみたい。高須君も男子独りじゃ寂しいもんね。
こんなに早く大河が皆に溶け込めるとは思わなかった。これも高須君のおかげかな。
大河が笑って生きていける。それが私には幸せに思えるよ、大河。
高須泰子の日記より抜粋。
5月21日。
明日は待ちに待ったピクニックだね〜。大河ちゃん?
大河ちゃんは明日みんなにおにぎり作るんだって張り切ってた。今日竜ちゃんに教わったんだって。誰か食べさせたい人でも居るのかな〜?
明日は早いからって早くに寝たみたい。でもきっと起きれないんだよね。大丈夫だよ、竜ちゃんはちゃんと起してくれるから。
初めて会ったときから、大河ちゃんはどんどんどんどん可愛くなってくよ。明るくなってくよ。
やっちゃんはそれが一番嬉しいでがんす。
明日はきっと良い天気だよ。だから目一杯、楽しんで来ようね、大河ちゃん。
でも竜ちゃん……なんでこんなにお椀とか出てるのかやっちゃん分かんないんだけど??
逢坂大河の日記より抜粋。
5月21日。
明日はピクニックだ!わくわくして眠れそうにない。でも寝なきゃ!明日は北村君におにぎり食べて貰うんだから!
最初は玉子焼きとか野菜炒めとか作ろうとしてたんだけど……なんか上手く行かなかった。
竜児が帰ってきた時にはもうぐちゃぐちゃで、私はなんか泣いちゃったな。
そしたら竜児がおにぎりならって教えてくれた。
馬鹿にしないでよね!おにぎりくらい簡単よ!でも作り方を聞くだけは聞いてあげた。すごく簡単だ。
これなら私でも作れるね!
試しに1つ作って竜児に食べさせた。全部食べて「わかった。お前でも作れる様に朝セッティングしておくから、今日は早めに寝ろ」だって。
生意気よ、竜児の癖に。
でも楽しみ。美味しいって言ってくれるかな、北村君。みのりんにもやっちゃんにも食べさせたい。
バカチー達にも。みんなに食べてもらって、美味しいって言ってくれたら、私は凄く嬉しいんだろうなぁ。
ふふ。早く寝よう。起きれる自信は無いけど、平気よ。竜児は絶対起してくれるから。
おやすみ。竜児。
北村祐作の日記より抜粋。
5月21日。
ピクニックか。何年ぶりだろうな、そんなイベントは。
まぁ悪くないさ。だが逢坂も1年の時とは別人みたいだな。最近はよく笑ってるし面白い顔もするようになった。
逢坂と高須の出会いは運命の様だと思う。
俺にはどうする事も出来なかった逢坂を救えた高須を、俺は尊敬する。
アイツの親友で、俺は良かったな。
香椎も何か作ってくれるそうだし、無論高須も作ってくる。
親睦レクリエーションの再来だな。あの時の絶品料理を再び味わえるのは光栄だな。
さっきメールしたらどうやら逢坂も何か作るらしいな。
なんだか楽しみだな、明日は。
高須竜児の日記より抜粋。
5月21日。
まったく前日でこの有様では、明日の本番はどうなるんだ?俺は今から胃が痛い。
俺が帰宅してみると台所はとんでもない事になっていた。片付けるのに2時間掛かるとは、流石だな大河。
聞けば明日のピクニックに、逢坂も何か作って持って行きたいようだ。折角俺が北村との仲を何とかしようとしているのに、何故その様な危険行為に走ろうとするんだお前は。
その結果があの有様と言う訳だ。
どうすれば野菜炒めが液状化するのか、玉子焼きのどの工程で七味唐辛子を入れようとしたのか、不思議は一杯で聞けば飽きる事は無いのだろうが、如何せん聞きたくないものは聞かない主義なんでな。そっとしておいた。
ええい!その上いじけて泣き出されては俺が悪者ではないか。第一、俺が逢坂を泣かせたみたいで、こんな姿を櫛枝に見られた日には俺の好感度など外れた馬券の如く細切れに破られて捨てられる事だろう。
やむを得ず俺は大河を宥めすかし、アイツにでも出来るものを教える事にした。
おにぎり……米と塩と海苔と梅干。
たとえ5つ星レストランすら1日で潰す事も出来るだろう大河シェフであろうとも、流石にコレだけの食材とこれ程簡素な工程であるならば前人未到な味を生み出すことは叶うまい。香椎や俺の喰いもんとの相性も良いだろうしな。
「こんなもの簡単よ」などとおにぎりを握りだした大河をみてほっとしたな。
もちろん。御約束を避ける手立ては万全さ。梅干は1つしか出してないし、塩だってきっかり1つ分しか渡してない。海苔にしてもそうだ。
ココまですれば、異常にしょっぱいやら何でこんなに梅がやら海苔だらけじゃ無いか、なんて事態も起こりよう筈も無い。
いつまでもお前の思い通りになると思うなよ?大河。
…………甘かったな。あの時の俺は。
「できたわ!竜児!」と言って居間の俺を呼ぶ大河の元に言ってみると、その手には確かにおにぎりが1つ在った。
見た目は問題ない。うん、俺の予想通りだな。ここまでは。
「食べてみて!」と言われて渡されたおにぎりに俺は寒気を覚えたね。なんともズシリときやがる。
そこで俺は悪夢を見た……今思い出しても寒いな。アレは。
俺が見たのは空の炊飯ジャーだった……たしかまだ2合は有った筈なんだがな?
ソコに有った米はどうした?と聞けば「だからおにぎりにしたに決まってんじゃない」と来たな。了解だ大河さん。
櫛枝よ。この粗悪品はとっととお茶の水博士にでも返品しないか?ロボット3原則を喰う・寝る・遊ぶと誤認してる不良品だぞ。
確かに米だけは迂闊にも放置状態だったな。だがまさか2合の米でおにぎり1つを完成させるとはな。道理で重い訳だ。
俺は生まれて初めておにぎりを「食べる」ではなく「かじる」事になったな。既に米かどうかの判断が付かん。
口の中でガリガリと音を立てていた物が、超人ハルクの如き大河に押し潰された米なのか、はたまたその米に押し潰された梅干の種なのか、俺には分からん。
いつもは出される梅の種も、よもや白米の手によって圧壊・粉砕されようとは思わなかった事だろうな。いつか桃源郷に辿り着いたら真っ先に梅の精に謝罪しよう。
取り敢えず大河はとっとと寝かせ、俺はおにぎりの数分のおわんを用意して寝るとしよう。どうやら明日は戦争だ。
次は負けんぞ大河!!
取り敢えずココまでです。
今夜はピクニック編に突入で、ちょっと状況を変える予定です。
それでは、どもでした。
一番槍で言わせてもらうぜGJ!!!
>>274 相変わらずのGJです。
疲れているだろうにありがとう
無自覚の大河→竜児が原作に近い感じになってきましたね
状況が変わる!?
おおっ、次回も期待大ですね
楽しみにしてます
しまった途中送信だ…
>>274 原作から少しずつずれてるからかもしれないけど
前回までの「逢坂」と「櫛枝さん」には少なからず違和感があったんで、そろそろシフトしそうですね。
SL66様まだかな〜
次回への前フリ回なのは明らかで
特にすごく不自然な単語が気になりました。
それが、さん付けで呼ばなくなったことと関係していると
読んでいるのですが
予測するのも野暮なので素直に次回を楽しみにしてます。
>>270 ……分からねえ……どいつもこいつも何で自分の髪の長さを気にしてんだ。
>>200で春田の口から眞鍋かをりの名前が出たからかな?
日記良いね〜GJ
1読者として気になるのは、竜児が微妙に黒い、明らかに主人公なのに
原作の如く大河と通じ合えとは思わないが、大河がやたら可愛くなってる日記の日に
そのことを裏で竜児日記が櫛枝の為だからオンリーと思ってる、では少しへこむな
毒づきが多いのは良いが、仕方ねーなあいつは的ノリがもう少しあれば…
まぁあえて原作と違うように、そういう風にされてるんかもしれんけどね
282 :
SL66:2009/05/23(土) 07:22:00 ID:KJ6ccYa+
大変失礼致しました
40分後に投下開始です
SL66様キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
( ゚∀゚)o彡゜
日記の人GJ!!
さぁ、SL氏かもーーん!
補間庫さん、タブのところに作品タイトルが出るようになっていますね
感謝です
287 :
SL66:2009/05/23(土) 08:02:22 ID:KJ6ccYa+
次のレスから「いざよい」を投下開始です
エロあり、百合(?)ですので、その手のものが苦手な方はご注意ください
なお、当方から10分以上応答がない場合は、規制にひっかかったと
見做して、次の方が投下してもかまいません
土曜日の昼過ぎ、蒸し風呂のような教室から開放された竜児は、亜美との待ち合わせの場所であるJRお茶の水駅
へ、早足で急いでいた。
つい二週間ほど前までは、亜美が竜児の居る理学部旧館まで迎えに来ていたのだが、弁理士試験対策のサークル
を乗っ取った瀬川たち上級生に待ち伏せされ、あわや暴行を受ける寸前という事件があったため、今はこうして、学外
で落ち合うようにしている。
落ち合う場所も一定ではなく、毎回変更している。更には、何やら不穏な気配があるようなら、携帯電話で随時連絡
を取り合って、安全な場所に変更するという念の入れようだ。面倒ではあるが、尋常でないほど悪辣な上級生に竜児
も亜美も目を付けられているのだから、身の安全を第一に考えるのに越したことはない。
新入生が上級生から目の敵にされるというのは、実に剣呑ではあるのだが、竜児も亜美もさほどの恐怖感は感じて
いない。油断はできないが、慎重に行動していれば厄介ごとは避けられそうに思えるからだ。
例えば、学内では単独行動を避け、他の不特定多数の学生が周囲に居るような状況に常に身を置いているのであ
れば、いくら瀬川たちが悪辣で大胆であっても、不用意に手出しはできない。
又、瀬川たちに怪しい動きがあるようなら、携帯電話で連絡を取り合い、連中の裏をかくことだってできるのだ。小型
通信機は、スパイ映画でのマストアイテムだったが、今や万人がそれを所持し、使用している。まさに、テクノロジーの進
歩様々だ。
大学からJRお茶の水駅へは、普通なら地下鉄で行くべき所なのだろう。だが、地下鉄のお茶の水駅は、JRお茶の
水駅とは神田川を挟んだ対岸にあり、あまり利便性には優れない。地下鉄には付き物である階段の上り下りの労力を
考慮すると、距離は長くても、平らな道を行く方が賢明であるだろう。何より、ダイヤ通りにやって来ているとは思えない
ほど、時折、運転間隔が異常に間延びすることがある地下鉄は、待ち合わせ時間まで切羽詰まった状況では、あまりあ
り難くない。
医大の前を通り過ぎ、アーチが美しい聖橋を横目で見ながら、ちょっとドブ臭い神田川をお茶の水橋で渡ると、そこ
は、もうお茶の水駅前にある石畳の広場だ。
竜児は、きょろきょろと辺りを見回し、亜美の姿を求めた。竜児の面相を特徴づける三白眼で睨みを利かせるその様
は、獲物を求めて、周囲を見渡す狼のそれのようでもあっただろう。
しかし、幸いなことに、その三白眼は、以前、亜美から手渡された黒眼鏡で封印されていた。竜児の親友であり、亜
美の幼なじみでもある北村祐作には、「揃いも揃って、溶接工みたいな眼鏡かけやがって」と揶揄された、ちょっと流行
からは外れた丸眼鏡だが、多少は滑稽なように見えた方が、危険人物と見做されるよりも遥にましである。
天気は、梅雨の晴れ間というか、薄曇りだった。それでも、六月は一年中で一番紫外線の照射が厳しい季節である。
この曇り空であっても、紫外線は容赦なく降り注いでいることだろう。そうした点でも、紫外線を含む有害な光線をほぼ
完璧にカットしてくれるミラーグラスは重宝する。
「高須くぅ〜〜ん!」
黒に近いチャコールグレーの長袖ブラウスと黒いコットンパンツ、ダークブラウンのモカシンを履き、鍔の広い帽子を
かぶった亜美の方が先に竜児の姿を認めて、手を振ってきた。こちらも、目元は竜児とお揃いの黒眼鏡で覆い隠して
いる。それにしても、初夏らしく明るい配色の服装で闊歩している群集の中で、黒い服装は墨汁を垂らしたかのように
よく目立つ。
黒は紫外線対策に最適ということもあってか、亜美は黒っぽい落ち着いた雰囲気の服を好んで着用する。そうした
地味な配色の方が艶やかな長い髪との相性がいいし、膨張して見える明色よりも、引き締まって見える暗色の方が、
スレンダーな体型や美貌が強調されることは確かである。
それに今日の竜児の服装も、半袖の黒いポロにチャコールグレーのデニムなのだからお互い様なのだろう。精悍な
雰囲気の竜児にも、黒っぽい重厚な配色は、よく似合う。
竜児は腕時計で時刻を確認した。丁度、午後一時。待ち合わせの時間にはギリギリだがセーフだ。
「おう、川嶋、すまねぇ、講義が長引いちまって、ちょっと遅くなった。まぁ、勘弁してくれ」
スケジュール通りであったとしても、相方が先に来ていたら、相対的には遅刻だ。だから、こうした場合は、先に待って
いた亜美に形式的とはいえ謝罪をするのが、竜児なりの気遣いではあった。
「ううん、あたしもさっき来たばっか。だから気にしなくていいのよ」
『さっき来たばっか』だとは言うものの、本当のところは、かなり早くここに来ていたのかもしれない。だが、その真偽
を確かめる術は竜児にはない。確実に言えることは、黒眼鏡越しでもはっきりと分かる亜美の屈託のない明るさだ。
「嬉しそうだな、川嶋」
亜美は、口元を歪めて、にやりとした。サングラスで目元は分からないが、おそらくは、目を細めたお得意の性悪笑顔
を浮かべているに違いない。
「まあね、高須くんとのデートなんだから、本当はつまんなくっても高須くんのために一応は嬉しそうな顔をしておかな
くちゃ…。ね、これがあたしなりの気遣いなのよ」
「相変わらず、こういった減らず口は遠慮がねぇな…」
「うふふ、遠慮がないってのは、信頼しているってことの現れなんじゃない? あたしがこんなにずけずけものを言うの
は高須くんが相手だからなんだよ。祐作には決して言わないし、麻耶や奈々子にもこんなことは言わない。
あたしとは密接不可分な存在である高須くんだからこそ、敢えて言うんだからね」
「密接不可分か…」と、竜児は呟いた。弁理士試験がらみの判例に時折見受けられる表現で、一般には聞き慣れな
い文言ではある。しかし、二週間前に、実乃梨との確執に終止符が打たれ、竜児と亜美との絆が確定的になったこと
を思うと、これほど的確な表現は他に見あたらない。当の実乃梨には気の毒だが、亜美にとっては大きな懸念が払拭
されたのだから、機嫌が悪かろうはずがないのだ。
「ほんじゃ、密接不可分な我らが同志としては、どこへ行く?
俺としては、神田から日本橋を経て、久しぶりに銀座まで足を伸ばそうと思っているんだが…」
「銀座まで行くの?」
ちょっと驚いたような顔をしている。
「遠いかな? であれば日本橋辺りで撤退するけどな」
その竜児のコメントに、亜美は頭を左右に振った。
「ううん、遠いからじゃなくて、高須くんの方から銀座に行こうって言い出すのが珍しくって。
高須くんは、銀座みたいに気取った場所はあんまり好きじゃないみたいだから、ちょっと意外に思っただけ」
「まぁ、どっちかって言うと、セレブ向きの街だからな、あそこは…。そうした点では貧乏学生の俺には不似合いかも知
れねぇ。でも、日本橋から銀座にかけては、裏通りに業務用の食材を売っている店とか、輸入食料品店とかが点在して
いるらしい。そいつをちょっと確かめたくてな…」
亜美は、その生活臭丸出しの竜児のコメントに、にやりとした。
「なぁんだぁ、そうかぁ。あんたって、ほんと、おばさん臭い。まぁ、それがあんたの個性なんだから仕方ないわね」
そうして、あはは、と笑いながら、頷いた。
「おばさんくさい、には傷付くなぁ…。でも、その様子じゃ、銀座まで歩いて行っても大丈夫だな?」
「もち大丈夫! それぐらい歩かないとエクササイズにならないじゃない。
それに、あたしも久しぶりに銀座や日本橋を歩いてみたいしぃ」
「よっしゃ、ほんじゃ行くとするか」
「うん」
竜児は、亜美の二つ返事を聞きながら、改めて空を見上げた。薄曇りは相変わらずだ。バッグに入れた折り畳みの
傘は使わずに済むかも知れない。
「おっと、その前に、川嶋、昼飯はどうする? 何か軽く食べてから出掛けるか?」
その言葉で、亜美は空腹であることを思い出したのか、腹の辺りを押さえた。
「そうね…、食べるっていっても、時間を考えたらファストフードくらいしかないから…」
大学であれば竜児手製の弁当を広げることもできるのだが、町中ではそうもいくまい。だが、できれば竜児の手料理
を食べたいという気持ちが捨てきれないのだろう。
「まぁ、この近辺じゃ期待はできそうもねぇから、ホットドッグとかで小腹を満たしておく程度だな…」
「そうね…」
駅前には軽自動車を改造したホットドッグの屋台が止まっていたので、その屋台で竜児と亜美は、ホットドッグとアイ
スコーヒーを買うことにした。行儀は宜しくないが、食べながら歩いた方が、午後の時間を有意義に過ごせる。ファスト
フードであっても店に入り込んで座ってしまうと、ついついそれだけで時間が無為に過ぎてしまうからだ。
二人とも味わいにアクセントを付けるつもりで、ホットドッグのトッピングにはハラペーニョのピクルスを選択した。
ハラペーニョのピクルスとは、メキシコ料理でよく使われる青唐辛子の辛い酢漬けである。
ホットドッグの包みと、アイスコーヒーのカップを捧げ持ち、神田方面に向かって歩く。聖橋へつながる道路を横断す
るための信号が赤なのを見計らって、竜児と亜美はホットドッグにかぶりついた。信号待ちの暇を利用して、手早く腹
ごしらえというわけだ。
「うっへぇ〜、ちょっと辛かったかな?」
屋台の店主が二人にサービスするつもりだったのか、通常よりも多めにハラペーニョのピクルスを入れていたらし
い。辛味と酸味が絶妙に均衡した味わいは捨て難いが、それも過ぎたるは何とやらである。
「大丈夫か? 川嶋」
亜美はアイスコーヒーを口に含み、それで口中を洗い流すかのように頬を膨らませて二、三度循環させ、飲み下した。
「うっひゃ、きっつぅ〜。こんなに辛いのは、高二の夏休みに食べた高須くん特製のカレー以来だわ…」
そう言って、一口だけかじったホットドッグを、ちょっと惜しそうに、それでいて忌々しそうに睨みつけた。
「そんなに無理して食わなくたっていいんだぞ。やせ我慢てのは、あんまりよくねぇだろう。
何なら、ハラペーニョを抜き出して食べてもいいんだし…」
そのホットドッグは男の竜児にとっても相当に辛い代物だった。何とか一本食べ終えたが、ぴりりと舌を刺す辛みが
後を引く。
「ううん、せっかく屋台のおじさんがサービスしてくれたんだもの、全部食べなきゃバチが当たるわ。
それに、辛いけれども、おいしいのも事実。せっかくだから、全部食べちゃう」
亜美は残りのホットドッグに再びかぶりついた。
「うっひゃぁ! やっぱ辛いや。でも、おいしい。こんなにおいしいもの、捨てたりしたらMOTTAINAI!」
『おいしい』というその言葉には偽りはなかったのか、それとも単なる意地なのか、信号が青に変わっても、亜美は
夢中でホットドッグを食べ続けている。
束の間、青だった歩行者用信号が点滅し、再び赤に変わった頃、亜美は、「ひぇ〜、辛かったぁ!」と悲鳴のような声
を上げて、激辛のホットドッグを平らげた。発汗作用があるカプサイシンの効果か、亜美の額と鼻筋には、玉のような汗
が吹き出ている。
「お、おい、川嶋、結局、全部食っちまったのか…」
ちょっと呆気にとられているような竜児に、強がって見せたのか、亜美はにっこりと笑った。
「あたし、辛いものは結構好きだから、平気だよ」
しかし、そうは言っても、口の中がひりひりするのだろう。亜美は、アイスコーヒーを一気飲みして一息ついた。
それでも、口中には未だ火照るような辛さが残っているのか、ぺろん、と舌を出し、それを外気に触れさせて、火照り
を鎮めようとしている。
「よかったら、これでも飲んで落ち着いてくれ」
竜児が自分のアイスコーヒーのカップを亜美に差し出した。
亜美は、差し出されたカップをすぐには受け取らず、例の目を細めた性悪笑顔で竜児の双眸を覗き込んでいる。
「それって、間接だよね…」
その一言に、竜児は一瞬固まり、次いで呆れたように亜美を見た。
「何をバカなこと言ってんだ。間接どころかディープキスを飽きるほどやってるじゃねぇか。
それを今さら、間接だっていちいち騒ぐ方がどうかしてやがる」
「へぇ、その割には何だか手が震えているみたいなんですけどぉ〜。
ねぇ、高須くん、そう言えば、ここ数日、あたしたちキスしてないわよね。だから間接程度でうろたえるんだわ」
「べ、別にうろたえてなんかいねぇよ」
「あら、そうかしら? 高須くんって、嘘をついたり、誤魔化したりする時は、決まって顔を赤くして変な汗をかいているか
ら、亜美ちゃんお見通しなんですけどぉ〜。間接キスくらいで顔を赤くする高須くんって、おもしろ〜い」
竜児だって、間接キス程度では動じやしない。だが、問題はそうしたことをネタに、亜美が色仕掛けをかまして来る
ことだ。それも単にからかっているのではなく、隙あらば本気モードで迫ってくるのだからたまらない。
「だから何だよ。ほら、信号が変わったぞ。
ここの信号は待ち時間はえらく長いくせに、歩行者が横断できる時間はほんの短時間だからな。さっさと渡っちまおう」
信号が青に変わったのは、竜児にとって助け船である。その一方で、追及をはぐらかされた亜美は、忌々しそうに舌打ち
したが、すぐに目を細めた性悪笑顔を浮かべた。
「まぁ、いいわ…。今日のデートは始まったばっかなんだしぃ。お楽しみはこれからなので、よろしくぅ〜」
点滅していた青信号が赤に変わる刹那に車道を渡り終えた亜美は、竜児に対し何かを企んでいるかのような不可
解な笑みを向けてくる。竜児はそんな亜美を一瞥し、うんざりするように深く大きく嘆息した。
そして、結局は亜美が受け取らなかったカップから残りのコーヒーをすすり、本日は要注意だな…、と気を引き締めた。
実乃梨との問題が決着して、すっかり元の勢いを取り戻した亜美は、竜児の言質のみならず、その一挙手一投足を
あげつらい、それをネタに竜児を追及して関係を今以上に深める魂胆なのだろう。
性愛について竜児が保守的ということもあるが、亜美が不意に仕掛けてくる誘惑には、毎度のことながら翻弄させら
れる。
竜児も亜美のことを愛しているし、既に結婚を約束した間柄だ。本心ではその華奢な身体を抱きしめて、互いに一つ
になりたいとは思っている。しかし、未婚の母である実母の泰子を見ていると、衝動的に身体を重ねることには抵抗が
あった。
「ほらぁ、高須くん、何ボケッとしてるのさ、置いてっちゃうよぉ!」
亜美の甲高い声で竜児ははっとした。いつの間にか亜美が竜児の先を歩いている。亜美の口調は咎めるようなも
のだったが、それとは裏腹に、その整った面相には涼やかな笑みが浮かんでいる。その笑顔は掛け値なしに美しい。
「おっとすまねぇ、ちょっと、午前中の講義でバテていたんだろ。ぼんやりして済まなかった」
竜児は迂闊な自身を内心で叱罵しながら亜美の後を早足で追った。
神田方面から日本橋を経て銀座をぶらつくというのであれば、常識的には神田、日本橋、銀座の順に巡っていく
ものだろう。しかし、日本橋近辺では荷物になるであろう輸入食材の数々を購入するということを考えると、先に銀座
をぶらついた方がいいだろうということになった。これは、亜美の提案であったが、竜児にとっても異存はない。
「ノンストップで長距離を歩いた方がエクササイズとしても効果があるのよね」
そう言いながら、亜美は長いストライドで足早に闊歩する。現役モデルであった時にジムで鍛えていたというのは
伊達ではないようで、男の竜児にも引けを取らない早足で颯爽と歩く。
二人は神田から八重洲を経て、そこからは山手線の線路の下に設けてある近道を通って有楽町駅に向かった。
線路下に設けられた暗い通路は、古い煉瓦が所々むき出しになっており、大正期か昭和期か、とにかく戦前の代物
であることを示していた。
「東京の裏の顔というか、礎となる骨のようなものと言うべきか…、だな」
近代的なビルの陰に、今もこうして遺構のような痕跡が残っている。古い建造物は取り壊されて新しいビルが建つ
のが都市の新陳代謝だが、その基礎となるものは簡単には滅しないのだろう。
「ものすごく古い感じだけど、山手線が開通した時にしっかりと基礎を作っておいたから、今もこうして生き残っている
のね。何でもそうだけど、基礎や基本が大事ってことなのかしら」
「ああ、そうだな…。基礎がなければ、その後の発展もないってことなんだろうな」
トンネルを思わせる暗い通路は、有楽町駅前にまで通じていた。その駅前から道を左にとり、銀座一丁目へ向かう。
雑居ビルに挟まれた道路を通り抜けると、そこは老舗や一流ブランドの直営店が軒を連ねる銀座通りだ。
「せっかくだから、高須くんも何か買い物をしようよ」
亜美は一軒の店を指差した。その店は、老舗の帽子店だ。
「つぅたって、貧乏学生の俺に買えるようなものがあるのか? 銀座だろ、ここは…」
「大丈夫だって。銀座イコール高価っていうのは、短絡的すぎるわよ。同じ品で単に値段が高いだけだったら、とっくの
昔に顧客の信用をなくして、銀座全体が衰退していたでしょうね。でも、そうはなっていない…」
「だから、どういうことだよ?」
「銀座のお店にあるような高価な品は、他の地域のお店よりも高品質なものだということ…。単に高価なだけでなく、
その値段に見合った高品質な商品を供給してきたからこそ、銀座という存在が今も健在なんだわ」
「やっぱり高価な品しかなさそうじゃねぇか…」
「う〜ん、そうとも限らないんじゃないかしら。とにかくお店に入ってみなければ分からないわね」
それでも難色を示す竜児を、亜美は「まぁまぁ」となだめながら、その手を引いて、焦げ茶色のニス塗りが印象的な
店の入り口をくぐった。
「いらっしゃいませ…」
若いが、礼儀正しい店員が、お辞儀をして出迎えた。
店の内部は思ったよりも狭かったが、左右の壁にしつらえてある商品棚には、様々な帽子が整然と並べられていた。
「どのような、御帽子をお探しでしょうか?」
「ええ、実は、この人に似合いそうな帽子を探しているんです」
そう言って、亜美は竜児をその店員に引き合わせた。
「お、おい、川嶋、俺は別段帽子なんてかぶる趣味はねぇんだが…」
「いいから、あんたは黙ってなさい。保証するけど、帽子一つであんたの印象は、ガラッと変わるはずよ」
そんな竜児と亜美のやりとりを、若い店員は落ち着いた風情で静黙している。流石に銀座の老舗なのだろう。客の
プライバシーを目の当たりにするようなことがあっても、それに反応するような下世話なことはしないのだ。
「具体的にはどのような御帽子が宜しいでしょうか?」
竜児と亜美のコントのようなやりとりが一段落したと見たのか、店員が亜美により具体的な指示を求めてきた。
「えーとですね、ちょっと古風で、柔和な感じがするような帽子があればお願い致します。
あたしとしては、ハンチング、それも、八ピースの丸いハンチングなんかが似合いそうな気がするんですが」
亜美の申し出に店員は、軽く頷き、「かしこまりました」と言って、店の奥へと入っていった。
陳列してある商品以外のものを引き出してくるのだろう。
「お、おい、川嶋、商品棚にない奴を持ってくるみたいだぞ、とんでもなく高価なものだったらどうすんだよ」
落ち着きをなくしている竜児とは対照的に、いわゆる高級品を買い慣れている亜美は泰然としたものだ。
「大丈夫だって、たかが帽子よ。それも、今、あんたが着ているポロとかの普段着に合わせる帽子じゃない。
高くたって知れているわよ。それに、高須くんの所持金で足りなさそうなら、あたしが援助するけど、どう?」
「お、おう…」
肯定的な返事をしたつもりだったが、本心が顔に現れていたのだろう。泰然としていた亜美の表情が、一瞬、曇った。
亜美は、竜児が理由なく施しを受けるつもりがないことを、その表情の変化から鋭く見抜いていた。
「お待たせ致しました…」
そう言って、若い店員は、黒やグレーの丸っこいハンチングをいくつか手にして店内に戻ってきた。
どのハンチングも、街中でよく見かける前後に長い一枚はぎのものではなく、八枚の布地を縫い合わせた丸いシル
エットをしている。亜美が『八ピースの丸いハンチング』と言った意味はこれだったのか、と竜児も合点がいった。
丸い、ふっくらとしたシルエットには、ゆったりとしたカジュアルな雰囲気がある。八枚の布地が合わさる頂点という
か頭頂部に相当する部分に取り付けられている碁石のような形をしたポッチも、柔和な雰囲気を醸し出すことに一役
買っているようだ。
「昔は、好んでかぶられる方がいらっしゃったようですが、最近は、普通のハンチングばかりで、この種の帽子を
かぶられる方は少なくなりました…」
そう言いながら、若い店員は、手にした帽子をカウンターの上に丁寧に並べていった。竜児も、古い外国映画では
見たことがあるが、この手の丸いハンチングを実際にかぶっている者、特に若者を見たことがない。
「どう、高須くん、結構いい感じでしょ?」
亜美が竜児の肩越しにカウンターの上に並べられた帽子を指差した。確かに、街中でかぶっている人が少ないと
いうか皆無に近いのは気になるが、帽子の格好自体は悪くない。それどころか粋な感じがする。
「この辺りがお勧めです。当店が特別に作らせたものでございます」
店員は、黒い帽子を竜児に手渡した。ざっくりとしたいかにも通気性が良さそうな布地で出来ている。聞けば、リネン、
つまり麻だという。であれば、夏場でも大丈夫だろう。
「ねぇ、ねぇ、かぶってごらんよ!」
傍らでは亜美が我が事のようにはしゃいでいる。竜児は、手にした帽子が自分に似合うのかが不安だったが、おも
むろにかぶってみた。そうして、店員が竜児の方に向きを変えてくれたカウンターの上の鏡を覗き込んだ。
古い外国映画さながらのキャラクタがそこにあった。滑稽な感じは微塵もなく、竜児のいくぶんはワイルドにささくれ
ている頭髪をすっぽりと被うことで、全体の雰囲気が無帽の時よりも格段に柔和となっている。
「悪くないじゃない! 似合う、似合うよ!」
竜児と一緒に鏡を覗き込んでいた亜美が、感嘆するように声を上げた。ここまで嵌るとは、ファッションに聡い亜美に
とっても予想外だったのかも知れない。
実際、長身の竜児には、欧米人に専ら似合うようなアイテムが似つかわしいようだ。
「そうだな…、気に入ったよ。何よりも川嶋が似合うと言ってくれるんだ。そうであれば、どっから見たって恥ずかしくは
なさそうだし…」
問題は、値段だが、それも七千円ほどだった。帽子としては安くはないだろうが、日本国内で責任を持って縫製され
ていることを考えると、むしろリーズナブルと言ってよい。
「どう? 何なら、あたしが出資してやろうか?」
支援
亜美の好意は有難かったが、遠慮した。この程度であれば、竜児のポケットマネーでも十分に支払える。
「お包みしましょうか?」
その問いに竜児は頷きかけたが、かぶって帰ることにした。手荷物を増やしたくなかったし、気恥ずかしいところは
あるが、早々にかぶってみて着こなせるようにしておきたいという気持ちもあったからだ。
「ありがとうございます」
たかが七千円程度の買い物をした者にも深々とお辞儀をする店員に戸惑いながら、竜児は亜美に伴われて、
帽子店を後にした。
あくまでも客は客ということなのであろう。銀座における老舗のプロ意識、その一端を見せられたようだ。
店を出た竜児と亜美は、その帽子店に隣接する店のショーウィンドウに映った自分たちの姿を確認した。二人とも黒
を基調としたカジュアルながらもシックな雰囲気で、買ったばかりの竜児の帽子も悪くない。
「つがいの鴉だな…」
「鴉って、どういう意味よ!」
竜児の言葉尻を掴まえて亜美がむくれている。揃いも揃って黒っぽい服装なのだから、自嘲気味に『鴉』と言ったの
だが、それは亜美のお気には召さなかったようだ。
「まぁ、黒ずくめだから、ちょっと鴉みたいだなって思っただけさ。でもよ…」
サングラス越しにちょっと不機嫌そうな亜美の顔を凝視する。
「な、何よ…。い、いきなり顔を近づけてくるなんて、どういうことぉ?」
相手の顔を覗き込むように凝視し、顔を近づけるというのは、亜美が竜児に対して行う常套手段なのだが、
いざ逆の立場になると、亜美であっても狼狽するものらしい。
「鴉は鴉でも『つがい』なんだがな…、川嶋は、その辺のことはどう思う?」
そう言って、口元をにやりと歪めてみせた。
「べ、別に、そ、そんなこと、どうだっていいじゃない!」
『どうだっていいじゃない』という文言は、『つがい』と言われたことへ驚きと照れがあってのことだろうが、
状況からは、まったく別の意味に解されるだろう。
実際、亜美はそのことに思い至ったのか、「しまった…」と小さく呟き、唇を噛んだ。
逆に竜児にとっては、亜美を凹ます好機到来である。
「そうか、どうでもいいんなら、やっぱ、間接程度で十分だな。俺とペアであることを川嶋はさほど気にかけていないらしい」
「バカ! そんなことあるわけないじゃない。あたしたちは結婚するんでしょ? 弁理士になれたら…」
亜美が食ってかかるように竜児に詰め寄った。竜児は、そんな亜美の慌てぶりが可笑しくてたまらない。
「まぁ、約束しちまった以上、俺たちは結婚するだろうが、せいぜいが間接キス止まりのセックスレスな夫婦生活という
わけだ。まぁ、そういうのもプラトニックでおつなものかも知れねぇな」
そう言って、竜児は笑いをこらえながら、亜美の反応を窺った。
その亜美は、怒りからか、顔全体を紅潮させ、頬をぷるぷると引きつらせている。
「ひ、卑怯よ。あ、あたしの何気ない一言で、そ、そんな風に決めつけるなんてぇ…。汚い、汚いわ!」
「卑怯ったって、お前は、俺の言質をとって、俺を追い詰めるなんてのを、しょっちゅうやってるじゃねぇか。
お互い様ってもんだ」
「何がお互い様よ!」
サングラスの下は、鬼か般若のような形相になっているのだろう。
これで、白昼、銀座のど真ん中での痴話喧嘩になったら、赤っ恥もいいところだ。
「なぁ、川嶋、むくれていると美人が台無しだぞ。プラトニックでもいいじゃねぇか。俺は、今こうして川嶋と一緒に居られ
るだけで十分満足している。せっかくの銀座散策なんだ。機嫌直して、他の店を見て回ろうじゃねぇか」
なだめながらも、『プラトニック』で、ちょっと牽制。
対する亜美は、『美人が台無し』という文言にむっとしたのか、『プラトニック』という文言に不満なのか、頬をぷぅと
膨らませたが、無言だった。
そうして、しばらくはサングラス越しに竜児を睨み付けていたが、観念したように、「分かったわよ…」と、呟いた。
やさぐれている、というほどではないが、竜児の傍らに立つ亜美からは、どんよりとした負の感情が込められた
オーラが漂ってくる。軽い牽制のつもりが、却って亜美の不興を買っただけだったようだ。
「じゃぁ、後は適当にウィンドウショッピングをして、あんたが言う輸入食料品店とかに行きましょ…」
「お、おう…」
だが、気のせいだろうか? 不満げに頬を膨らませていた亜美が、ほんの一瞬だけ、にやりとしたように竜児には思
えた。
だとしたら、竜児に一杯食わされた亜美は、何らかの形で竜児に報復するつもりなのだろう。
亜美が悪意ありげに笑うのは、大体が、竜児に仕掛ける罠を思いついた時だ。そして、何より不気味なのは、亜美が
どのような形で竜児を罠に嵌めるのか、当の竜児には毎度皆目見当がつかないということである。
竜児にとってお目当ての輸入食料品店は、銀座から日本橋方面へほんの少し戻ったところにあった。
店自体は、どこにでもありそうな食料品店の構えだが、この種の店としては日本でも有数の歴史を誇り、創業は
明治時代に遡るらしい。そのせいか、思いがけない物が入手できそうな期待感が竜児にはあった。
石造りの古びたビルの一階にあるその店は、内部は思ったよりも広く、店の一番奥は壁一面が冷蔵の棚になってい
て、空輸されてきたトロピカルフルーツ等の生鮮食料品が並べられていた。
店の右奥ではワインや洋酒を扱っていて、近年のワインの人気を反映してか、フロアの五分の一ほどが、空調完備の
ワインセラーになっている。そのワインセラーの入り口付近はワイン以外の酒類が並べられており、シングルモルトウイ
スキーやブランデー、グラッパ、カルバドス等の蒸留酒、それに各種のリキュール類が充実してた品揃えを誇っていた。
「ねぇ、高須くん、何かお酒買っていこうよ」
下戸のくせに飲み助な亜美が竜児の袖を引いたが、これだけは却下だ。未成年が大っぴらに酒を飲んでいいという
文言は、少なくとも竜児の辞書にはない。それに…、
「酒はダイエットの大敵なんじゃねぇのか? 川嶋が少しばかり太っても、俺はいっこうに構わねぇが、それはモデル
だった自分の矜持にかかわるから、お前としてはまずいだろ?」
竜児のもっともな指摘を受けて、亜美は「ぐっ!」と、言葉を飲み込んだ。どうも、先ほどの『つがいの鴉』発言以来、
竜児には一方的にやられている。
「うっさいわねぇ…、本当におばさん臭いったらありゃしない」
それだけ言うと、亜美は、ぷいっ、とそっぽを向いた。そんな亜美を、竜児は横目で一瞥する。亜美のことだ、このまま
素直に引き下がっているはずがない。何か竜児を嵌める罠を、この瞬間にも考えているに相違ないのだ。
竜児の傍らに付き従っている亜美が何を思うのか気がかりではあったが、今はとにかく買い物である。竜児は意外
に広い店内をカゴを片手にまずはざっと巡ってみた。奥の生鮮食料品の冷蔵棚や酒類売場を除くと、商品の陳列棚は
四列あり、一列目はビスケットやチョコレート等の菓子類、二列目はピクルスなどの瓶詰や缶詰め、三列目はシリアル
や紅茶、コーヒー等、そして四列目は小麦粉や米、豆等の穀類や、各種の香辛料、それにドライトマトやポルチーニ茸
等の乾物だった。
「さっき食ったばっかだが、大橋では、かのう屋でも売ってないから、一瓶買ってくか…」
竜児はカゴにハラペーニョのピクルスの瓶を放り込んだ。くすんだ緑色で、所々が微かに赤くなっている輪切りの
ピクルスは、先刻、あまりの辛さに亜美が悲鳴を上げた代物だ。
「あー、やっぱ買うんだ…」
「おぅ、さっきのホットドッグは明らかにこいつを入れすぎていたが、適量なら結構うまいピクルスだからな。ホットドッグ
だけじゃなくて、サンドイッチにも使えそうだし、サラダやパスタのトッピングにしても面白いかもしれねぇ」
それから竜児は、ビターチョコレートを何種類かカゴに放り込み、更には、全粒粉で作られたビスケットも買うことに
した。
「あら、甘い物こそダイエットの大敵なんじゃなかったのぉ?」
「確かにな、砂糖は血糖値を急激に上げるから、その分だけ過剰にインスリンが分泌され、血中の糖分が中性脂肪に
転換されやすい。しかし、俺がカゴに放り込んだのは、砂糖をあまり使っていないビターチョコレートだし、ビスケットは
砂糖ではなく還元麦芽糖を使った奴だ。こいつなら、急激に血糖値は上がらないから、太りにくいはずだ」
「そ、そう…」
甘い物をならよくて、アルコールはダメという竜児を凹ますつもりが、逆に論破されたことが面白くないらしく、亜美
は、口をへの字に曲げて、仏頂面をしている。
そんな亜美を一瞥して、竜児は、ちょっと首をすくめた。亜美の不満がふつふつと増大しつつあることが、鈍い竜児に
も察せられた。何とか、だましだましガス抜き宜しく亜美の不満を減殺しなければなるまい。
ちょっと気まずい雰囲気のまま、二人は香辛料を扱う棚で立ち止まった。棚には粉末になった香辛料のみならず、
粉砕せずに粒のままの、いわゆる『ホール』と呼ばれる状態のものも販売されていた。
「クミンシードの粒のままの奴は…、あった、これだ。それとコリアンダーも粒のまま買っとこう」
香辛料と言えば、胡椒や唐辛子、山椒程度しか知らない調理初心者の亜美には、竜児がカゴに放り込んでいる
香辛料がどういったもので、どういった用途に適しているのか分からないらしく、褐色の瞳を物憂げに半開きにして、
ぼんやりと竜児の姿を追っている。食材を見ただけで色々と料理についてのインスピレーションが湧く竜児と違って、
何に使われるのか理解できない食材に囲まれていることに、そろそろ飽いてきたのだろう。
その亜美が、いかにもだるそうに宣った。
「ねぇ、どうして粒のままの奴を買うの? やっぱり、使う寸前に砕かないと香りが出ないからなの?」
「そうだな、それが第一の理由なんだが、理由は他にもあるのさ」
「他の理由って何なのよぅ…」
どうもこうも、さっきから竜児には会話の主導権を握られっぱなしだ。
大体が、食料品店である。竜児にとってはホームゲームだが、亜美にとってはアウェイもいいところだ。
「カレーなんかでさ、香辛料を油で炒めるレシピがあるんだが、粒のままのクミンシードを真っ先に炒めて、それから
カレー粉の成分に相当するターメリックやレッドペパーなんかを入れていくんだ。その正確な理由は不明だが、クミン
の香りを生かすというよりも、粒のままのクミンシードの食感を残すのが狙いかも知れねぇ」
亜美は、「ふーん」と興味なさげに呟くと、未だ香辛料をあれこれ物色している竜児には背を向けて、豆類を扱ってい
る棚に目を向けた。棚には、薄茶色や緑色、それに鮮やかなオレンジ色をした数々の豆類が袋詰めにされて並べられ
ている。
そのうちの一つ、緑がかった薄茶色の豆が詰まった袋を手に取ってみた。遠目には何てことのない普通の豆に見え
たが、よくよく見ると、豆自体が妙に薄べったい。袋には『レンズ豆』と記してあった。名前だけなら海外の料理番組で
聞いたことがあったが、実物を見るのは、亜美にとってはこれが初めてだったかもしれない。
「ねぇ〜、高須く〜ん、このレンズ豆って、何に使うのぉ?」
ハバネロ唐辛子の粉末が入った瓶をカゴに入れようとしていた竜児が、「うん?」と言った感じで亜美の方を向いた。
「おぅ、それか、それだったら、こないだの土曜日にインド料理屋のバイキングで川嶋も食べたはずだぞ」
「あたし、記憶にないけどぉ…」
「そうか? あの時に食べた何種類かのカレーの中で、薄べったい豆が入ったカレーがあっただろ。俺も川嶋も、他の
チキンカレーとかマトンのカレーとかよりも、その豆のカレーが気に入って、そればっか食べたじゃねぇか。
そのカレーの中身がそのレンズ豆さ」
「そうなんだ…」
「よく見ると、豆の形が凸レンズみたいだろ? それでレンズ豆っていうんだ。いや、レンズ豆に似た形のガラス玉を
レンズと呼ぶようになったというのが正解だな。この豆は『レンズ』という名称自体の語源なんだよ。
これは、嘘みたいな話だが本当だ」
竜児の説明に感じ入ったのか、亜美は目を丸くして改めて豆の袋を見た。
「そうね、言われみればレンズそっくりの形よね…。さすがにあんたは博識だわ」
臍を曲げていても、知的好奇心は失わず、竜児の博学ぶりには素直に感嘆する。こうしたところも亜美の美点の
一つだろう。
だが、次の瞬間、亜美は目を細め、口元をにやりと歪ませた。何かよからぬことを思いついたらしい。
「ど、どうした? 川嶋…」
亜美の様子がおかしいことに竜児も気付き、ちょっと身構えた。
「ねぇ、今晩のご飯は、このレンズ豆のカレーにしない? 亜美ちゃん、久しぶりに高須くん特製のカレーが食べたいなぁ〜」
「お、おう、別に構わねぇけど…。だけどよ、川嶋の伯父さんや伯母さんはどうなんだ?
こうも立て続けに俺の家で晩飯じゃ問題あるだろ?」
「その点ならご心配なく。伯父や伯母には麻耶や奈々子の家に遊びに行っていることにするから。
それに泰子さんだって、亜美ちゃんと晩ご飯食べるのを楽しみにしてるじゃない。ぜ〜んぜん問題ないわよ」
竜児は、呆れ返って大きなため息をついた。
「お前、それって、伯父さんや伯母さんに対してあからさまに嘘ついているってことじゃねぇか…。感心できねぇぞ」
「別にぃ〜、大した嘘じゃないわよ、この程度。だって、麻耶や奈々子と一緒に高須くんの家に泊まり込んでお弁当を作っ
たことがあったじゃない。あの時だってあたしは麻耶の家に泊まっているっていう嘘をついているんだしぃ、今さらどうこ
う言っても始まらないわよ」
亜美は鼻筋に小じわをたてて笑っている。目元はサングラスで隠されているが、その目が意地悪そうに半開きになっ
ているであろうことを、竜児は誰よりもよく知っている。
「お前って、何か、そういった企み事をする時、本当に生き生きとするなぁ…」
「あら、ご挨拶ねぇ。こんなの企み事のうちに入らないんですけどぉ」
「いや、正直者の俺にはできねぇ芸当だよ。感服するわ、マジで…」
その瞬間、亜美がチャンス到来とばかりにほくそ笑んだように見え、竜児は、はっと身構えた。
「あんたが正直者ぉ? 閻魔様に舌を抜かれるわよ。この前だって、卒業アルバムに実乃梨ちゃんからの手紙を隠し
持っていたんじゃない。叩けば埃が出るようなあんたのどこが正直者だっていうのぉ?」
「お前、あのことを未だ根に持っているのかよ…。もう、櫛枝との一件は落着。それを蒸し返すなよ」
「そうね、あの件は一応の決着がついたとしても、あんたは未だあたしに嘘をついているんじゃないかしら?」
「何じゃそりゃ? 根拠もなくいい加減なことは言わねぇでもらいたいな。櫛枝との一件が終わった今、俺は名実共に
清廉潔白だ。お前に詰られるようなことは何もねぇよ」
言いがかりにも等しい亜美の追及に、さすがの竜児もカチンときた。サングラス越しに、眉をひそめて亜美の顔を睨
み付ける。
しかし、亜美がひるむ様子はない。温厚な竜児が本気で怒ることはないと思い込んでいるのだろう。
「あら、そうかしら? 実乃梨ちゃんとの一件とは別に、高須くんはやましいことを抱えているんじゃなぁい? 例えば、
高須くんのパソコンの中にぃ、ネットサーフィンで手に入れたエロ動画が保存されているのはどういうことかしら?」
竜児は、ぎょっとして亜美を見た。確かに亜美の言うように、デスクトップのパソコンには秘密のディレクトリを設け、
そこに無修正のエロ動画を溜め込んでいる。しかし、そのパソコンのOSはFreeBSDで、ユーザ名とパスワードを入力
しないとログインすらできない代物だし、秘密のディレクトリもその名称の頭に「.」を付けて、通常の操作では見えない
ようにしてあった。それなのに…。
「エロ動画? な、何のことやら…」
なぜ、亜美が竜児のパソコンにアクセスできたのか不可解だが、そんなことをあれこれ考えるよりも、とにかく、しら
ばっくれるしかない。しかし、生理的に嘘がつけない体質なのだろうか、再三亜美に指摘されているように、嘘をつく時
の竜児は、顔色があからさまに変わり、脂汗が滲んでくるのが常である。そして、この時も例外ではなかった。
「ねぇ、高須くん、汗びっしょりだよ。どっか具合でも悪いのぉ?」
亜美が意地悪そうにニヤニヤしている。エロ画像を隠し持っていないということが、真っ赤な嘘であることがバレてし
まっているらしい。だとしたら、万事休すだ。しかし、むざむざ嘘だと認めるのも癪ではある。
「ああ、ちょっと空調の効きが悪いんじゃないかな? そ、それで、汗が吹き出てきちまったようだ…」
「ふぅ〜ん、このお店、冷房がかなりきつく効いてるよ。あたしなんか長袖のブラウスでも肌寒いくらいなんですけどぉ〜。
それを半袖の高須くんが暑がっているなんてのは、おかしいじゃない?」
「そ、そんなこたぁねぇよ…」
「言ってるそばから、汗が吹き出ているじゃない。もう、いい加減に白状なさい。
パソコンにエロ動画を溜め込んでいましたって、正直に認めなさいよ。本当に、往生際が悪いんだからぁ」
亜美がサングラスをデコに押しやって、裸眼で竜児の顔を凝視している。その瞳には、竜児が敗北を認める瞬間を
心待ちにしているのか、悪意のこもった輝きが浮かんでいる。
「うう…」
もう、亜美に負けを認めるべき潮時なのだろう。
それでも、決定的な敗北と、その後の亜美の追及を何とか回避す方法はないかと、竜児は思い巡らせた。
その竜児の顎を、亜美は掴んで揺さぶった。
「この期に及んで、白状しないのは正直者を自認するあんたらしくもないじゃない。
いいこと? もう、あんたがいかがわしい動画を後生大事に溜め込んでいるっていうのは、バレバレなの!
もう、どんなにしらを切っても、この亜美ちゃんの目は誤魔化せないからねっ!!」
そう言って、更に激しく竜児の顎を揺さぶった。
「い、いててて…、わ、分かった、川嶋。頼むから暴力はやめてくれ!」
「分かったって言うからには、パソコンの中にエロ動画を保存しているっていうのを認めるのね?」
顎を揺さぶるのはひとまずやめたものの、亜美は竜児の顎を掴んだまま、キス寸前の状態まで白磁のような面相を
竜児の眼前に近づけた。
その瞳には、怒りとも、嫌悪ともつかない、何とも言えない迫力がみなぎっている。もうダメだ。逃れようがない。
「お、おぅ…。か、川嶋の言う通りだ。ちょ、ちょっとばっかしエロい動画をコ、コレクションしてた…。す、すまねぇ…」
まるで風船が萎むように、かすれがちな語尾で、弱々しく白状した。
一方の亜美は、してやったり、とばかりに微笑する。
「なぁんだ、やっぱり隠し持っていたのねぇ。そうじゃないかと思ってカマをかけたら大当たりぃ。
あんたって本当に分かりやすいのよねぇ」
そう言うなり、あははは! と哄笑した。
哀れなのは竜児である。サングラスに隠されている三白眼をぱちくりさせ、一瞬呆気にとられたが、亜美にまんまと
一杯食わされたことに遅ればせながら気づき、歯噛みした。
「か、川嶋、き、きったねぇぞ! 騙しやがったなぁ!!」
一方の亜美は笑みさえ浮かべて、憤慨する竜児を眺めている。
「あらあら、大人げないこと。ここは、高級な食料品店でしょ? あんまり喚き散らすと格好悪いわよ」
「く、くそ…」
亜美のもっともな指摘に、竜児は言葉を詰まらせた。
「あんたが言いたいことは分かっているわ。このあたしが卑怯だとか、騙し討ちだとかって思っているんでしょうね。でも
お生憎様。口から出まかせを言っても、それが嘘から出たまことの場合は、違法性は問われないの。虚偽事実の流布
告知を不正競争と規定した不正競争防止法二条一項十四号なんかも、こういう場合は適用されないのよ。知ってた?」
確か、そんな話を弁理士試験がらみで聞いたことが竜児にもあった。何しろ不正競争防止法も弁理士試験の出題
範囲であるし…。
「しかし、感覚的にはフェアじゃねぇ…」
「そうね…。民事訴訟法上は、強迫によって違法に収集された証拠とみなされ、証拠力がないと判断される可能性も
あるから、高須くんが不快に思うのはもっともね。でも…」
「な、何なんだ、もったいをつけて…」
一瞬のタメの後、亜美は、双眸を、くわっ! とばかりに見開いて、竜児を睨み付けた。
「あたしだって不快なのよ、あんたがエロ動画を溜め込んでいたっていうのが…。このあたしという存在がありながら、
エロ動画を鑑賞していたってのはどういうこと? いつもいつも、エッチの時は尻込みするくせに、エロ動画って何なの?
あたしをコケにするにも程があるわ」
場所柄をわきまえて、亜美の声は低く押し殺したものだったが、それが却って亜美の怒りを端的に表現していた。
「だから、それは…」
衝動的なセックスで亜美が妊娠するようなことを避けたかったから、と続けるつもりだったが、亜美の一睨みで、
あえなく中断させられた。
「とにかく、この償いはしてもらうからね。今晩、あたしはあんたの家に泊まる。そして、あたしたちは一つになるの。
いいこと? もう尻込みは許さないから!」
「バカ言え、泰子が居るってのに、どうすんだよ」
亜美は、ふん、と鼻を鳴らし、冷笑するように口元を歪めた。
「泰子さんなら、非常勤でスナックに出勤することがあるじゃなぁい? で、今日がその非常勤の出勤日。そうでしょ?」
支援
「何で、そんなことを知ってるんだよ」
「先日、あんたが台所に立った隙に、泰子さんに聞いたのよ。簡単なことじゃないのぉ?」
亜美は、してやったり、のつもりなのか、冷笑しながら得意げに整った鼻先を上に向けた。
「お前なぁ…」
女同士というものは油断がならない。特に男抜きでひそひそ話をしている時は要注意であることを、竜児は改めて
思い知らされた。
「あたしって、泰子さんとも結構、気が合うからねぇ。
で、今後の非常勤のスケジュールも教えてもらったから、その日はいくらでも高須くんの家でエッチできるって寸法よ」
「エッチとかって、軽く言うなよ。第一、妊娠したらどうすんだ」
亜美は、企み事がありそうに、にやりとした。
「それだったら手は打ってあっから、気にすんなって!」
「ど、どんな手なんだ…」
亜美は、不安気な竜児に肩を組むように縋り付き、妖艶に微笑んだ。
「先々週から低用量ピル飲んでっからね。だから、安心して、どーんと中出し! 分かった?」
「ふは…」
竜児は、あまりの展開に思考がついていけず、現実感が喪失したかのように、茫然としている。
「ほらぁ、もうちょっと喜びなよ。液晶ディスプレイに映った、どこの誰だかわかんない女の二次元映像でオナニーする
よか、あたしという生身の女とのセックスの方が比較にならないくらい気持ちいいってことを教えたげるんだからさぁ」
「お、おう…」
「それに、身体は正直だねぇ、あんたのここ、もう、こんなに固くなっている…」
妖艶な笑みを浮かべながら、大胆にも竜児の股間を撫で回した。
「か、川嶋、い、いきなり何しやがる! 第一、人目があるだろうが、自重しろ!」
「ここをこんなにおっきくして、何偉そうに言ってんだか。それに人目が何だってえの。
今、この列には人はいないし、ぱっと見、あたしの身体が盾になって、何してるのか分かりゃしないわよ」
言い終わらないうちに、亀頭の辺りを強く握り、竜児に「うっ!」という呻き声を出させると、亜美は満足気に、にっこりと
微笑んでサングラスを掛け直した。
その妖しい笑みをたたえたまま、竜児を置き去りにして、レジの方へと去っていく。
竜児はというと、亜美の唐突な愛撫に驚悸し、魂を抜かれたかのように香辛料売り場の棚に力なく寄りかかった。
「か、川嶋、い、急ぎすぎだ…。ど、どうして、そんなにセックスにこだわるんだ…」
そのうわ言のような呟きとは裏腹に、竜児とて亜美と結ばれるのは本望だった。しかし、あまりに性急な結びつきは、
無理がある。竜児は童貞だし、亜美だって本人の言動から察するに処女のはずだ。童貞と処女の交わりが初回で上手
くいくとは思えなかった。
竜児は、傍らに亜美が立つ中、自宅の台所で夕餉の支度に取りかかっていた。
メニューは亜美の所望で、結局、レンズ豆のカレーである。それと、豆と御飯だけでは動物性タンパク質が足りない
ので、タンドリーチキンを初めて作ってみることにした。鶏腿肉をターメリック、クミン、コリアンダー、唐辛子等の香辛料
を加えたヨーグルトでマリネした後、オーブンで焼くのだが、何しろインターネットのレシピを参考に初めて作るのだか
ら、竜児にとっても不安は拭えない。
「タンドリーチキンは期待しないでくれ…。俺にとっても初体験だ。川嶋の期待通りにはいかねぇかも…」
「あんたの、その慎重なところは嫌いじゃないけど、馴染みのないレシピ程度でそのビビリようは何なのさ…。
あたしたちは、もっと大変なことを今夜は初体験するんだよ…。それも、一生に一度しか体験できない…。
それを思えば何だって平気じゃない」
『それを思うから、気が重いんだ』と、言いたいところを竜児はこらえた。食後、泰子が仕事でいなくなったら、竜児と
交わることしか念頭にないらしい今の亜美には、言ったところで逆効果にしかならないだろう。
その竜児の傍らに控えている亜美は、一見、竜児の台所仕事を見学し、手伝っているかのようだが、その実、臆病な
竜児が逃げ出さないように監視しているように見えなくもない。
「鶏肉の下ごしらえはこんなところだろうか…。次はカレーだな。味の決め手は十分に炒めた玉ねぎだから、この工程
は手が抜けねぇ」
そう呟いて、竜児は、中くらいのサイズの玉ねぎを二つ取り出し、芽が出る方の先端を切り落とした。そのまま茶色い
皮をめくるように剥き、根の部分だけで貼り付いている状態にした後、その皮ごと、根の部分の先端を薄く切り落とした。
更に、その玉ねぎを縦に二つ割りにし、半分になった玉ねぎに、芽が出る方の部分から五ミリ程度の間隔で縦に切
れ込みを入れた。切れ込みは根の部分までは届いていない。
「何んだか思わせぶりな切り方ね。玉ねぎはみじん切りにするんでしょ?
だったら、もっと手っ取り早く包丁で滅多切りにすればいいじゃない」
亜美が竜児の手元を見ながら物憂げに言った。たかが玉ねぎを切るのに何をもったいつけているのか、というところ
なのだろう。
一方の竜児は、退屈そうに目を半開きにしている亜美を一瞥すると、軽く嘆息した。
「何でもそうだが、闇雲ってのは大概がうまくねぇのさ。物事には理というものがある。
その理に従うのが賢明というものだろう?」
「何よ、その言い方は、まるで亜美ちゃんのことを思慮に欠けたバカ女って言ってるみたいじゃない! 感じ悪いわよぉ」
「そういうつもりじゃねぇんだけどな…」
『闇雲』という文言が、亜美が『とにかくエッチ』とテンパっていることへの当てこすりと聞こえたのかも知れない。
竜児は、「やれやれ…」と首をすくめた。亜美との交わりには正直興奮するが、不安材料もある。それを忘れるべく、
竜児は調理に専念することにした。手を動かしていれば、その間だけは、厄介なことを思い悩む余裕はなくなる。
「まぁ、見てろって。こうして根の部分まで切れ込みを入れない玉ねぎを小口切りにすると…」
言い終わらないうちに、竜児は包丁をリズミカルに動かした。玉ねぎが紙のように薄くスライスされ、スライスされた
次の瞬間には、その玉ねぎがみじん切りとなっていた。
「あ…」
手品でも見せられたかのように亜美が呆気にとられている。
「思わせぶりな切り方にも理があるのさ。もう、川嶋も気付いているだろうが、玉ねぎの幾何学的な特徴を利用したん
だ。玉ねぎは層状に組織が重なっている。であれば、その層状の組織に対して垂直に小口切りにすれば、それだけで
ポロポロと細かい線状に切ることができる。更に、もう一工夫して、事前に芽の部分から縦に切れ込みを入れておくと、
小口切りにしただけで、みじん切りができるというわけだ」
亜美は無言で竜児の説明に聞き入っているが、その表情は決して穏やかとは言い難い。どこまでも慎重で冷静な
竜児に苛立っている感じだ。今の亜美が竜児に求めているのは、彼女を無理矢理にでも犯すぐらいの勢いなのだろう。
竜児は、そんな亜美から放射される苛立ちを感じながらも、みじん切りにした玉ねぎをボウルに入れ、ラップで覆い、
電子レンジにセットした。そして出力『強』で七分間加熱する。
「炒めるんじゃなかったの?」
「本来はそうだが、この方が時間と手間を削減できる。玉ねぎを一から炒めると、焦げないように注意しながら
つきっきりでいなきゃならねぇが、電子レンジならほったらかしでいいからな。で、電子レンジでの加熱が終わったら、
最後にガスで炒めておけば十分だ」
玉ねぎを電子レンジで加熱している間に、竜児はレンズ豆の処置に取りかかった。まずは、よく洗う。海外で栽培され
たものだから、万事が日本の農産物と同様とはいかない。念には念を入れて洗うに越したことはない。
洗った豆は下茹でする。それも二回ほど茹でこぼした。豆のあくであるサポニンを含んだ微かに茶色を帯びた泡が
茹でているとぶくぶくと湧き出てくる。
豆の下ごしらえと並行して、電子レンジで加熱していた玉ねぎを、厚手のアルミ鍋に移して、オリーブオイルでじっく
りと炒める。既に電子レンジで完全に柔らかくなるまで加熱されているので、鍋で飴色になるまで炒めるのにもさほど
の時間はかからない。
その一方で、下茹でした豆を笊にあけ、一粒つまんで茹で具合を確認した。薄べったい豆なので、簡単に茹だるよう
だ。下手に長時間煮てしまうと、簡単に煮崩れてしまうだろう。
「豆はこれで下準備はオーケイだな。後は玉ねぎのみじん切りが飴色になるまで炒めれば、この豆と合わせて、トマトと
一緒に軽く煮て、ベースはでき上がりだ」
竜児は、鍋の中の玉ねぎを手早くかき混ぜた。玉ねぎは徐々にであるが、ベージュから飴色に変わりつつある。
こうなると、非常に焦げやすい。竜児は火を更に弱めて、慎重に炒めることにした。
「ねぇ、未だなのぉ?」
竜児の慎重な態度に業を煮やしたのか、亜美がうんざりしたように言った。
「もうちょっとだ。よし、こんなものか…」
頃合いを見て、竜児は炒めた玉ねぎに下茹でしてあくを抜いたレンズ豆を入れ、これに缶詰のトマトの水煮を一缶
分と固形スープの素を一つ加え、ひたひたになるまでお湯を入れて、弱火で煮始めた。
「これにカレー粉とかの香辛料を入れるの?」
亜美の質問に竜児は首を左右に振った。
「いや、これには入れねぇ。これに入れて長時間煮ると、香辛料の香りが飛んでしまう。
だから、ある方法で香辛料を扱うことにする」
「また、思わせぶりね…」
十分な説明をしてくれない竜児に不満なのか、亜美は鬱陶しそうに口をへの字に曲げた。
竜児は、亜美には何も言わずに、下ごしらえした鶏肉を天板に並べ、二百十℃に予熱しておいたオーブンに入れた。
「このまま三十分ほど焼く。うまくいったらおなぐさみだ…」
タンドリーチキンをオーブンで焼いている間に豆の煮え具合を確認し、亜美と一緒にそれを味見した。
「固形スープの素が入っているからかしら。微かな旨味が感じられるわね」
「実際には、ただのお湯で煮るんだろうけど、何らかの出汁を入れておいた方がいいかな、って思ってな。
であれば、ちゃんと鶏ガラからスープストックを作るべきなんだろうが、ちょと手抜きだな…」
竜児は、豆の入った鍋を火から下ろした。
煮え具合はもう十分だった。これ以上煮ると、マッシュポテトのようにドロドロになってしまうだろう。
竜児は、オーブンでのタンドリーチキンの焼け具合を横目で確認すると、酢とオリーブオイルと塩と胡椒を混ぜ合わ
せてドレッシングを作った。
「味は、こんなものかな? 何せ、カレーもタンドリーチキンも、香辛料たっぷりの個性的な味わいだから、サラダぐらい
はあっさりしたドレッシングで食べた方がよさそうだ」
肝心のサラダは、サニーレタスと、千切りキャベツと、オニオンスライスと、細切りのパプリカと、マッシュルームのスラ
イスで、これらを混ぜ合わせたものを、大きめのサラダボウルに移した。
「ねぇ、タンドリーチキンはそろそろでき上がりじゃないの?」
オーブンを覗き込んでいた亜美が竜児の袖を引っ張った。
「そうだな…、あと五分という感じかな? であれば、カレーの仕上げをしよう」
「未だ香辛料を全然入れてないじゃない。ちゃんとできるの?」
亜美が何やら疑わしげだ。エロ動画の一件は、生身の女である彼女の自尊心をいたく傷つけたらしい。少なくとも、
料理に関して竜児に疑いの目を向けたのは、これが初めてだ。
「まぁ、見ていてくれ…」
百聞は一見にしかず。言葉よりも実演である。
竜児は厚手のアルミ鍋にオリーブオイルを入れ、少し暖まったところで、今日買ってきたばかりの粒のままのクミン
シードを放り込み、焦げないように鍋を揺すって炒め始めた。台所にクミン独特の香りが漂ってくる。
「あら、インド料理店みたいな匂いがするわね…」
クミンシードから十分に香りが出たようなので、竜児はその鍋にカレー粉を大さじ二杯ほど入れ、焦げないように鍋
を火から下ろしてかき混ぜた。カレー粉がクミンの香り付けがされた油と馴染み、香辛料の香りが際立ってくる。
「これにさっきの煮豆を入れて、味を整えればいいだろう」
竜児は煮えた豆を香辛料を炒めていた鍋に加えた。豆は高温になっていた鍋に触れると、じゅっ…、という微かな音
をたてた。
竜児はそれを手早くかき混ぜて、香辛料と煮豆とを馴染ませると、薄口醤油を大さじ二杯加え、これに本日買ってき
たばかりのハバネロ唐辛子の粉末を一振りした。
「醤油を入れるの?」
「醤油よりも魚醤とかの方が面白い味になりそうだが、ちょっとあれはくせがありすぎるから醤油で代用することにした
んだ」
そう言いながら、竜児はカレーを小皿に取って最後の味見をした。
「食べる寸前に香辛料を入れるようにしたのは正解だったな。香りが生きている。
それに単なるチリパウダーじゃなくて、香りがいいハバネロ唐辛子にしたのもよかったようだ…」
亜美にも小皿を渡し、味見をしてもらう。
「そうね、さすがに高須くんだわ。思わせぶりで説明不十分なのは、正直面白くなかったけど、まぁ、結果よければ、
それでよし、かしらね…」
豆のカレーの出来栄えには満足しているようだが、それでも、亜美の態度には、竜児へのあからさまな不信感が滲
んでいる。目を細め、ちょっと口をへの字にしたその顔は、臆病な新兵を背後から監視し、敵前逃亡を図る輩は容赦な
く射殺する督戦隊といった雰囲気だ。
−−別に逃亡するようなつもりは、ねぇんだけどな…。
竜児だって、亜美とは結ばれたい。しかし、今回のような強迫でせがまれるのは、正直萎える。相思相愛だからこそ、
初めての体験は、両性の同意に基づくべきなのだ。
亜美が、竜児との性交に固執するのは、愛というよりも、独占欲の顕れという感じがしてならなかった。
「高須くん、何ぼんやりしてるのさ…」
亜美が督戦隊の将校よろしく竜児を睨んでいる。人の心を読むことに長けた亜美のことだ、竜児が今、何を思ってい
るかもお見通しなのだろう。
「おお、すまねぇ、ちょっと考え事をしてたようだ…」
「あんたの頭脳は亜美ちゃんのよりも優秀だけど、無駄なことを考えすぎるのよ。たまには思考よりも感情、理性よりも
本能を優先させた方がいいみたいね」
亜美の言うことにも一理あるのかもしれない。竜児は、母子家庭という自己の境遇と、ヤクザな父親から受け継いで
しまった三白眼を気にして、ことさら自分を律して生きてきた。それが傍目には煩わしく映るのだろう。
「そうかも知れねぇな…」
竜児は、亜美に対して曖昧な賛意を示すと、オーブンの扉を開けて、タンドリーチキンを天板ごと引き出した。先ほど
から漂っていたスパイシーな香りが、より濃密なまま台所に広がった。
竜児が何事にも禁欲的であるのは、会ったこともない自分の父親に対する反動でもあるのだろう。酒や暴力そして
色欲に溺れていたであろう忌むべきあの男と同列に堕することは、死ぬより辛い恥辱だった。
だから亜美には済まないが、内罰的に自己を律する生き方は、変えられない。
「よく焼けているじゃない。初めてのレシピだったけど、案ずるより産むが易しよね」
亜美がことさら『産む』の文言を強調した。それは竜児にとって、亜美が未婚の母になりかねないことを連想させ、
反射的にその眉をひそめさせた。
ピルを服用しているという亜美の言い分が正しければ、妊娠の危険性はかなり低くなる。にもかかわらず、『産む』と
言う亜美に対し、竜児は不安になった。
「ほらぁ、シケたツラしてないで、さっさと盛り合わせましょうよ。下らないことをあれこれ考えるよりも、手を動かす。
その方が生産的よ」
覇気のない竜児に業を煮やしたのか、亜美が戸棚からタンドリーチキンを盛り付けるための大皿を取り出してきた。
そして、皿の周辺部にサラダ菜を敷き詰め、皿の中央部に焼きたてのタンドリーチキンを並べた。
「チキンはこんな感じでいいかしら? それと、サラダはどうするの?」
「お、おう…、も、もうサラダボウルに入れてあるから、後は食べる直前にドレッシングを和えればいいだけだ」
そのサラダボウルを覗き込んだ亜美が、「う〜〜ん」と呟きながら、小首を傾げている。
「サラダがどうかしたのか?」
「ねぇ、これだと普通過ぎるから、あれ入れない? ハラペーニョのピクルス」
今日の昼、ホットドッグに入っていたあれだ。舌がしびれるほどの目に遭ったのだが、その強烈な味が病みつきになっ
たらしい。竜児は、「そうか…」とだけ呟くと、今日買ったばかりの瓶を開け、くすんだ緑色をした輪切りの唐辛子を五、
六片つまみ出すと、それをみじん切りにしてサラダの上にふりかけた。
「漬物だから彩りはぱっとしねぇが、味は強烈だからな。ちょっと細かく切ってみた」
いつもの説明口調に食傷気味だとばかりに、亜美は苦笑しながら嘆息し、ピクルスが散らされたサラダと、
ドレッシングの入ったボウルをちゃぶ台へと運んで行った。
竜児も亜美が盛り付けたタンドリーチキンをちゃぶ台へ運ぶ。残るは、カレーだ。
本来ならナンも用意すべきだったが、イーストで発酵させるナン等のパンに類するものを作るのは、竜児にとっても
未知の領域だ。従って、今回は、小豆や黒豆、アマランサス等の雑穀を一緒に炊き込んだ御飯でカレーを食べることに
した。
亜美には『思い切ってやってみればいいのに』と詰られたが、これは次回の課題ということで勘弁してもらう。
その亜美が、竜児が盛り付けたカレーを二皿運んで行った。竜児ももう一皿に御飯とカレーを盛ると、それを持って
ちゃぶ台に向かう。
竜児のお下がりのジャージを着た泰子が、ちゃぶ台を前にして、あぐらをかいていた。
「竜ちゃ〜ん、今日のカレーは何かいつものと感じが違うね〜。やっちゃん、こんなに香ばしいの初めてだよ〜」
出来上がる直前に香辛料を炒めて加えたことは、思った以上に効果的であったようだ。
「匂いだけじゃないんですよぉ、そのカレー。肉も人参もジャガイモも入っていない豆のカレーですけど、すごく美味しい
です。これは味見した亜美ちゃんが保証しますからぁ」
薄ぼんやりしていた竜児の機先を制するように、亜美が泰子に答えていた。
「そうなの? 亜美ちゃんも竜ちゃんと一緒にカレー作ってたんだ〜、うん、うん、いいねぇ、何だか、亜美ちゃん、
もう竜ちゃんのお嫁さんって感じなんだよね〜」
泰子のコメントに亜美はカワイコぶって頬を赤らめている。
「いやぁ、そう見えますかぁ? だとしたら、嬉しいですけど、ちょ、ちょっと、恥ずかしいです」
そこには、詰るような目つきで竜児の背後を監視していた督戦隊将校の趣きはない。竜児とは相思相愛で、
かわいらしい女子大生の亜美ちゃんがそこに居た。
竜児は瞑目して嘆息した。竜児以外の前では、あくまでも素の自分を封印しておくつもりなのだろう。
「ベタなこと言ってねぇで、さっさと食っちまおう」
実際、亜美がやったことと言えば、料理の盛り付けと料理を入れた器を運んだだけなのだが、場の雰囲気を悪くす
ると思い、それについては触れないことにした。竜児なりの気遣いというわけだが、その実は、長らく内罰的に自己を律
してきたことで、感情を素直に吐露することが苦手なだけなのかも知れない。
「竜ちゃぁ〜ん、どうしたの〜? 自分から食べようって言いながら、さっきからぼぅっとして…。御飯を全然食べてない
じゃない…。具合でも悪いの〜?」
泰子の指摘で竜児は我に返り、ようやく、自身が手がけたタンドリーチキンを食べてみた。香辛料の配合は的確なよ
うだ。クミンやコリアンダーの香りが鼻腔をくすぐり、赤唐辛子の辛味が食欲を刺激する。
「意外にうまくいったみたいだな…」
竜児のコメントに、亜美も頷いている。
「ヨーグルトでマリネするって聞いた時は、正直、あたしもびっくりしたけど、そのせいかしら。
結構固いはずの腿肉が柔らかくなってるし、鶏特有の臭みもなくなってる。初めてなのに、大成功じゃない」
「お、おぅ、あ、ありがとう…」
竜児は、亜美の言葉の最後が、『初めてなのに、大性交じゃない』と聞こえたように一瞬錯覚し、動揺した。
『意識しすぎだ』と、竜児は自己を叱罵する。
この後に控える亜美との初体験。本来なら、胸躍る一大イベントであるはずなのに、意識すればするほど、気が重く
なってくるのだ。
「あれれれれぇ〜、竜ちゃん、何だか、おかしいよぉ。さっきから全然元気ないし、それに亜美ちゃんの方を
あまり見ないし、どうしちゃったの〜。亜美ちゃんと喧嘩でもしたの〜?」
「あ、い、いやぁ、な、何でもねぇ。ちょっと、疲れている、それだけなんだ。そ、それに川嶋とも喧嘩なんかしてねぇよ…」
まさか、『あなたの息子さんは、目の前に居る川嶋亜美と将来を誓い合った仲であり、今夜、その川嶋亜美と大人の
階段を上ってしまうのです』なんて、言えるわけがない。
「ふぅ〜ん、そうなの〜? まぁ、やっちゃんは頭悪くて、よく分かんないから、竜ちゃんが何でもないって言うんなら、
大丈夫なんだよね〜」
そう言って、実年齢とはギャップがあり過ぎる、まるで幼児のように無邪気な笑顔を竜児に向けた。
しかし、多少、頭のネジは緩くても、女を長年、しかも水商売をやってきたのは伊達ではなかったようだ。
「そういえば、亜美ちゃんも様子がおかしいよ〜。
支援
一応は笑顔っぽいけど〜、何だか思い詰めたような感じがしちゃってさ〜。ねぇ、やっぱり竜ちゃんと何かあったの〜?」
今度は亜美が、泰子の一言に虚を突かれたのか、「うっ!」と声を詰まらせ、次いで、「ごほごほ…」と、思いっきりむせ
た。しかし、竜児よりも世間ずれしている亜美は、なかなかにしたたかだ。
「やっだぁ、泰子さんったらぁ〜。あたしと高須くんは喧嘩なんかしませんよぅ。ただ、今日は、大学から遠く離れた銀座
まで歩いて行ったから、あたしも高須くんも、ちょっと疲れているだけなんですよぅ」
そう言うなり、モデル時代にならした、とっておきの営業スマイルで、その場を取り繕った。これなら、泰子の追及も
振り切れるだろう。だが…。
「そうなの〜? それだったらいいけど〜。でも、竜ちゃんも、亜美ちゃんも、特に亜美ちゃんが
何だか焦っているみたいな気がして〜、やっちゃん、ちょっと心配なんだよね〜。
まぁ、竜ちゃんも、亜美ちゃんも、賢い子だから、多分、やっちゃんの若い時よりも、上手にやれると思うよ〜」
『『バレてる!!』』
竜児と亜美は思わず顔を見合わせた。非常勤とはいえ、さすがはホステス、多少はおつむのネジが緩くても、男女の
機微には人一倍敏感だ。
「…どうする? 止めといた方がよくないか?」
食後、台所で並んで洗い物をしながら、竜児は亜美に耳打ちした。
一方の亜美は、その一言にムッとして、竜児を睨み付けた。
「泰子さんにバレているからって、それを口実に、あたしとの初エッチから逃げようなんて許さないからね。結婚する
あたしたちがセックスして何がいけないのよ。もう、後には退けないの、あんたも男なら覚悟を決めなさい」
小声ながら、きっぱりと言い切ると、亜美は、視線を洗っている皿に戻し、洗剤を含ませたスポンジで、油で汚れた皿
を拭った。その瞬間、油と洗剤が干渉する、ぬるっ、という音がしたように竜児は感じ、それがいつぞや触れた亜美の陰
部のヌメリを連想させた。竜児の股間が思わず怒張する。
潮時なのかもしれない。高校時代から受験勉強仲間としてだらだらと継続してきた、ぬるま湯のような関係を正す
べき時が来たのだ。
そんなことを思いながら、竜児も又、カレーがこびりついた皿を、洗剤が付いたスポンジで拭った。
食器洗い等の後片付けが終わり、三人で食後のお茶を堪能した後、泰子は、メイクを整え、出勤の準備をする。
「じゃあね〜、亜美ちゃん。竜ちゃんは、“こういうこと”は気が利かないから大変だろうけど、亜美ちゃんが頑張って、
竜ちゃんとうまくいくようにしてあげてね〜」
手鏡片手に自身のメイクをチェックしながら、泰子は亜美に自分の息子をお願いするように言った。
「は、はい…」
これらか竜児と亜美のすることが、泰子に完全にバレているので、竜児はもちろん、亜美も冷汗三斗だが、そこは
元モデルの意地で、何とか笑顔を取り繕った。
「あたしが頑張るも何も、これからあたしたちがやるのは勉強ですから、あたしだけが頑張ってどうこうというものじゃ
ないんですけどぉ、泰子さんがそう言うなら、とにかく高須くんと一緒に頑張ります」
泰子は、そんな亜美に、幼女のような頑是なさと、男女の機微を知り尽くした年増女の妖艶さとが相半ばする笑み
を投げかけた。
「亜美ちゃん、もう、そんなに意地張って隠さなくたっていいんだよ〜。やっちゃん、亜美ちゃんと違って頭は悪いけど、
商売柄、こういうことはすぐ分かっちゃう。でも、安心して、やっちゃんは〜、いつだって亜美ちゃんと竜ちゃんの味方だか
らね〜」
「は、はい…」
「それとぉ…」
泰子は、無邪気とも妖艶とも判じがたい笑みを、ほんの少しだけ引き締めた。
「亜美ちゃんにとっても、竜ちゃんにとっても、初めての経験だろうから、最初っから何もかも上手くやろうと思わない方
がいいよ〜。今夜、上手くいかなくても、自分や相手を責めないこと。これだけは約束してちょうだいね〜」
「は、はい、や、約束します…」
「な、何だか分からねぇが、俺も、や、約束する…」
亜美と竜児は、口々にそう言って、思わず泰子に向かって頭を下げていた。
頭を垂れながら、亜美は泰子に感服していた。やはり、女としての大先輩は侮れない。
「うん、なら、やっちゃんも安心! 男と女はねぇ、互いに赦すってことが大事なんだよ〜。そして、自分のことも責めたり
しない。亜美ちゃんの辛いことや苦しいことは、竜ちゃんが癒してあげればいいし〜、竜ちゃんの悩みは亜美ちゃんが癒
してあげればいいんだよ〜。男と女ってのはそういうふうにできているのさ〜」
それだけ言うと、泰子は満足したような表情で、シャネルのバッグを片手にいそいそと出勤していった。
泰子が居なくなると、急に室内が静かになる。
竜児と亜美の二人きりだと、狭いはずの木造借家が妙に広く感じられ、二人の間に緊張した気まずさが漂ってきた。
「な、なぁ、夜は長いんだ。取り敢えず、いつも通りに弁理士試験の勉強を始めようぜ」
「そうね…」
いつもであれば楽しいはずの二人きりの時間が、こんなにも息苦しいのは、竜児にとっても、亜美にとっても初めて
だった。
その息苦しさから逃れたくて、二人はことさら勉学に集中しようとした。それも、一次試験とはいえ、本試験の問題を、
初めて実際に解いてみることにした。
ただし、条文集だけは随時参照する。一次試験は一小問が五つの枝からなっており、各枝の正誤を○×で示すもの
だから、条文の知識が不十分だと、いい加減な勘やゲーム感覚で○×を付けてしまいがちだ。これではいつまで経って
も実力は身に付かない。であれば、条文の知識があやふやな段階では、遠慮なく条文集を見て、その問題の意味を正
確に把握して解いた方が合理的である。
弁理士試験関連の受験雑誌やインターネットで公開されている合格体験記でも、多くの合格者が、『最初は見栄を
張らずに条文集を見ながら問題を解くべきだ』と主張している。なので、竜児も亜美も先達に倣えである。
もっとも、本試験のうち、一次試験で条文集を参照することは許されないが、それは本試験までに条文の知識を確
かなものにしておけばいい。多くの合格者も、実際にそのような手順を踏んで、最終合格を果たしている。
「しかし、それでもキツイぜ…」
弁理士試験の問題は、条文を参照しても、初学者である竜児には厳しかった。一次試験は条文の知識を問うのが
趣旨なので、理屈の上では、条文を参照すれば正解に至るはずである。だが、その条文が難解過ぎる。例えば、特許法
第二十九条の二は、以下のように難解な規定だ。
『特許出願に係る発明が当該特許出願の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であつて当該特許出願後に
第六十六条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した特許公報(以下「特許掲載公報」という。)の発行
若しくは出願公開又は実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第十四条第三項の規定により同項各号に掲
げる事項を掲載した実用新案公報(以下「実用新案掲載公報」という。)の発行がされたものの願書に最初に添付し
た明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出
願にあつては、同条第一項の外国語書面)に記載された発明又は考案(その発明又は考案をした者が当該特許出願
に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)と同一であるときは、その発明につ
いては、前条第一項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。ただし、当該特許出願の時にその出願人と
当該他の特許出願又は実用新案登録出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。』
条文がやたらと長いだけでなく、括弧で括られた『かっこ書』がやたらと挟まっており、頭から条文を読んでも、その
意味を素直に把握することが難しい。加えて、『ただし、』以下の『ただし書』と呼ばれる部分が、その解釈を余計に妨
げている。
「何を言ってるかさっぱりだ。条文集を見ても、これじゃあ…」
苦しみながらも十問ほど、それも十分な時間をかけて解いてみた。しかし、自己採点する前に、竜児にも結果は分かっ
ていた。必死に考えたものの、条文の意味するところを理解できず、それがために、正解は十問中三問だった。
弁理士試験の一次試験突破のボーダーラインは、年によって違うが、概ね六割正解だとされている。しかも、条文集
を参照しないで、三時間半という制限時間内に六十問もの小問全てに解答しなければならない。一次試験突破だけ
でも並大抵の努力ではなし得ないということを思い知らされる。
「なぁ、川嶋はどんな塩梅だった?」
法学部生の亜美ならば、自分よりも格段に高得点であろうと思い、竜児は彼女に他意なしに尋ねた。
だが、その亜美の表情も冴えない。
「あたしもまるでダメ…。四問しか正解しなかった…」
そう呟くように力なく言うと、自己採点をした答案を竜児の前に差し出した。
「特許法が難解すぎる、というか、可読性が悪すぎるのね。
本文にかっこ書がいくつも挟まっていて、読みにくいったらありゃしない」
「川嶋ほどの奴でも苦戦するのか?
法学部生なら、弁理士試験のマークシート方式の試験問題なんか楽勝かと思ったんだが…」
その竜児の一言を、亜美は皮肉や悪意と受け取ったのか、頬を膨らませて、むっとした。
「条文がすっきりしている民法や刑法、民事訴訟法に比べたら。複雑難解な特許法や実用新案法、意匠法、商標法は、
悪魔の条文だわ。こんな訳の分からない条文は、法学部生だってお手上げよ」
「か、川嶋、怒るなって…。弁理士試験の勉強では、俺は川嶋に全然敵わない。だから、さっきの発言は、そんな川嶋が
不出来だったっていうのが、俺自身納得がいかなかったからなんだよ。気を悪くしたんなら済まねぇ…」
亜美は、ちょっと動揺している竜児を一瞥した。
「確かに、あんたの発言にはカチンと来た…。でも、それ以上に、自分の不甲斐なさに腹が立ち、試験問題の難しさに
愕然としていたの。弁理士試験は、司法試験とは別次元の困難さがあるって、合格体験記に誰かが書いていたけど、
本当にそうかもしれない…」
「そうなのか…、済まなかった。『楽勝』と言ったのは、俺が軽率だった…。許してくれ」
亜美は、毎度、竜児が示す自責的な態度を、鬱陶しそうまぶたを半開きにして冷やかに見ていたが、大きくため息を
ついて、苦笑した。
「あんたのその内罰的な態度、少しは改めた方がいいよ。よくよく考えれば、さっきのあんたの発言に悪意なんかありゃ
しないんだし、試験問題の出来が悪かったのは、結局は、あたしの不甲斐なさが原因なんだし…」
「でもよ、川嶋が気分を害したのは事実じゃねぇか。さっき、お前も言ったように…」
亜美は、相変わらず自責的な竜児に苛立ったのか、再び、その表情を曇らせた。
「そんなこと、いちいち気にしない! 他者と対立した時、決まってあんたは引き下がるけど、それは時と場合によるの。
理性的に引き下がるよりも、欲望むき出しで積極的にならないといけない場合だってあるんじゃない? その辺をわき
まえて欲しいわね」
「ああ、で、出来るだけ心がけるよ…」
亜美の剣幕に晒されて、竜児は不承不承頷いた。
これからが、まさに亜美が言う『欲望むき出しで積極的にならないといけない場合』に他ならなかった。
しかし、先ほどの問題の出来があまりに悪かったためか、どうにも覇気が上がらない。
大学受験を主としたこれまでの勉強では、難解な概念や問題であっても、考えているうちに、理解の糸口が見えてき
たものだった。しかし、弁理士試験の受験勉強は、今までの勉強とは勝手が違った。
概念や問題というものは、細分化して理解把握するものだが、特許法をはじめとする弁理士試験で出題される法域
は、とにかく捉えどころがない。理解するには条文を読むのがその第一歩なのだが、亜美が『悪魔の条文』と表現した
ように、可読性が最悪なのだから始末が悪い。
「最初から上手くいくとは思っていなかったけどよ、さすがに、これはまずいよな…」
敗北感は亜美も同様だ。だから余計に意地になる。
「もう、気持ちを切り替えましょ。嫌なことを忘れるためにも、あたしたちは一つになるの。あたしはあんたに抱かれるこ
とで癒されるし、あんただって、たかが二次元の動画で抜くよりも、生身の女の方が、比較にならないくらい気持ちいいっ
てことを分からせてあげるんだから」
「そうだな…。今までのままごとみたいな温い関係にはピリオドだ…」
「そう…。今夜、あたしたちは本当に結ばれるんだわ」
亜美は畳の上に座っている竜児に、いざるように寄った。
「まずは、いつものようにキスよ…。今まで以上に、官能的で濃厚なやつをしましょ…」
言い終わるや否や、竜児の口唇に自身の口唇を重ね、舌先を竜児の口腔に滑り込ませる。
竜児も亜美に促されるまま、自身の舌を亜美のそれに絡ませた。
仄暗い竜児の部屋の中で、二人は抱き合い、貪るように互いの唇を求め合った。互いの舌が怪しく絡み、もつれ合っ
て、艶めかしく躍動する。
亜美の滑らかな舌が、竜児の歯茎や頬の内側をすべっこく撫で回し、竜児の気持ちを昂ぶらせる。それは竜児の舌
も同様であるらしい。竜児の舌が亜美の口蓋や頬の粘膜と干渉するたびに、竜児の背中に絡みつく亜美の両腕に力
がこもり、その爪が竜児の背中に立てられる。
「う、う〜ん…」
亜美が呻き声にも似た官能的な呟きを漏らした。
竜児は、最後の仕上げのつもりで亜美の口腔内を嘗め取るように自身の舌を這わせた後、口唇を引き離して亜美
との接吻を終えた。
亜美の口唇からは唾液が一筋、蜘蛛の糸のように白く輝きながら垂れ落ちた。その唾液を拭おうともせず、亜美は
とろんとした目つきで、所在なく竜児に目線を合わせている。その無垢な居住まいは、普段のちょっと性悪で、したたか
な姿とは別の、今の竜児だけが知る愛しき姿。
「川嶋、好きだ…」
「う、うん、あたしも高須くんが大好きぃ…」
竜児は、座ったままで亜美の上体を抱き留めた。ほっそりとした贅肉のない肢体は、そっと抱き締めてやりたくなる
ほどに、脆く繊細で儚なげだった。
竜児は、亜美の口唇に再び軽く接吻し、それから、亜美の頬から耳たぶ、首筋へと口唇を這わせ、舌先で、亜美の滑
らかな肌を愛撫する。
「た、高須くん、そ、そこ、き、気持ちいい…」
ブラウスの襟元から露わになった鎖骨の辺りを吸引し、舌先でなぞると、亜美がそう言って、歓喜からか身を
震わせた。
亜美が愛用している花のように香るトワレとは別の、甘酸っぱく切ない亜美の体臭が竜児の鼻腔を刺激する。
愛しき異性の汗の匂い。それは性愛に対して消極的な竜児をも虜にする妖しき芳しさ。
「川嶋…、川嶋の身体って、あったかくって、柔らかくって、いい匂いがする…」
亜美は竜児に抱かれ、しばし呆けたようになっていたが、『匂い』と言われた瞬間だけ、はっとしたように硬直した。
「ね、ねぇ、あたしの身体って汗臭いでしょ? 汚いでしょ? そう言えば、シャワー浴びないで始めちゃったね…」
竜児は、亜美の心配をよそに、ブラウス越しに亜美の胸の谷間に顔を埋め、その芳しい体臭を堪能した。
「いや、どんな高級な香水よりも、今の川嶋の匂いの方が芳しい。それに汚いだなんて…、惚れた女に汚いところなん
てあるわけがねぇよ」
「高須くん…」
竜児は本心からそう思う。シャワーを浴びていなくても、亜美ならば全身くまなく接吻してやることだってできるだろう。
だが…、
「逆に、俺はどうだ? 俺も、今日一日、歩き回って汗だくなんだ。そんな俺こそ臭いだろ?」
亜美はとろんとした表情のまま、首を左右に振った。
「ううん、高須くんが亜美ちゃんの匂いを愛おしく思うように、あたしも高須くんの匂いが愛おしいんだよ。
だから、シャワーなんか浴びなくたっていい…。このまま、あたしたちは一つになろうよ…」
「そうか…」
「思考や理性よりも、感情と本能の赴くままに、あたしは高須くんと一つになりたい。高須くんも、そうしてよ…」
「川嶋…」
竜児は、再び、亜美の胸の谷間に顔を埋めた。マシュマロのように柔らかく、それでいて何かの高分子素材まがいの
弾力を帯びた乳房がぶるぶると震え、その乳房越しに激しく脈打っている亜美の心臓がはっきりと感じ取れた。
「川嶋の鼓動が聞こえる…」
「う、うん…」
亜美の鼓動を聞きながら、竜児は懐かしいような、安らぐような気持ちになった。こうして、女の胸元に頬を擦り付け、
その心音を耳にしたのは、先日の亜美の乳房を啜った時が初めてのはずだった。
だが、その時とは別の、もっと以前に、こうしたことがあったことを思い出す。
「泰子…」
「え?」
陶然としていた亜美が、ちょっと驚いて竜児を見つめている。
「ど、どうしたのぉ、いきなり泰子さんの名前なんか呼んで…」
最愛の女性を抱いている最中に、他の女、それも母親の名前を呟いた迂闊さを竜児は悔いた。
「すまねぇ、ガキの頃を思い出したんだ。恥ずかしい話さ。離乳しても、俺は、今、川嶋にしてもらっているように、泰子の
胸に顔を埋めていた。その時を、つい思い出しちまった」
母親と比べられるのは、女としてはどんな気分なんだろうか、とは思ったが、嘘がつけない竜児は、思っている通りの
ことを亜美に伝えた。
「うふふ…」
亜美が、嬉しそうに微笑んでいる。
「川嶋…?」
「ありがとう、あたしにとっては誉め言葉だよ。女はねぇ、みんな母になるのが夢なのさ。
その母っていうのは、実際に好きな人の子供を産むっていうのもあるけれど、その好きな人のことも、
母親のようにやさしく包み込んであげたいってことなんだよ」
「お、おう…」
「だから、高須くんが、あたしを抱いて母親である泰子さんを思い出したっていうのは、女冥利に尽きるのさ。
あたし、本当に幸せだよ…」
言い終えた亜美の双眸に涙が光っていた。
竜児は、そんな健気な亜美がたまらなく愛おしく、そのまぶたに口づけし、亜美の涙を嘗め取った。
「高須くん…。そ、そうよ、あたしを好きにしていいの。あたしは高須くんの女、そして、高須くんの妻となり、母となる女…」
「か、川嶋、ブラウスを脱がすぞ…」
亜美は、その言葉に頬を赤らめて頷いた。
「う、うん、で、でも、恥ずかしいから、明かりは消して…」
「お、おぅ、そ、そうしよう…」
竜児は、ちょっと立ち上がって、部屋の蛍光灯から下がっている紐を三回程引いて消灯した。
畳の上に膝を崩して座っている亜美の姿が、窓から差し込む月明かり、それに街灯らしき青白い光で、うっすらと浮
かび上がっている。
「じゃあ、川嶋、ボタンを外すぞ…」
竜児は、亜美のブラウスの前立てに手を副え、一つ一つボタンを外していく。指先は微かに震えていたが、亜美の服
を脱がすのはこれで二度目なだけに、以前ほどの動揺はない。
ボタンが全て外され、ブラウスの前立て越しに亜美のブラジャーが覗いた。
「黒、黒いレースのブラなんか着けてたのか…」
亜美が、微笑んだ。
「いわゆる勝負下着よ。今宵、あたしは高須くんと何としても結ばれたかったの…。ちょうどピルの効き目が確かになる
最初の週末なんですもの。だから、エロ動画なんて卑怯な言いがかりを付けてでも、高須くんと一つになりたかった…」
「川嶋…」
「これって、本当に卑怯よね…。でも、あたしの思いに偽りはない。それだけは信じて…」
「ああ、信じているとも。だからこそ、川嶋のためなら、俺はピエロだって、何だって構わねぇさ」
竜児は、亜美のブラウスの前立てを左右に広げ、次いで、左右の袖を引くようにして、両袖から亜美の腕を抜き取り、
ブラウスを亜美の身体から完全に取り去った。
真珠のように艶やかな柔肌が、月光で青白く輝いている。
「川嶋だけが半裸なのは不公平だよな。俺も脱ぐよ」
竜児も、身に着けていた黒いポロシャツを脱ぎ捨てる。
その半裸の竜児に、亜美が抱き付いてきた。
「ああ、高須くんの身体、高須くんの匂いがする…」
勉学に家事に、万事に全力で取り組んでいるせいか、贅肉が全くなく、筋肉質な竜児の胸板に、亜美は頬を擦り付
ける。
そして、その乳首に、口づけし、赤子のように吸い付いた。
「か、川嶋、何しやがる! 男の乳なんか吸っても意味ねぇだろうが」
月光に照らされた亜美が悪戯っぽく笑っている。
「女にとって乳首は性感帯だけど、男の人はどうなのかなぁ、って思って…。ねぇ、どうなの? やっぱり吸われると気持
ちいいでしょ?」
竜児は首を左右に降った。
「いや、ぞくぞくとくすぐったくはあるけど、気持ちいいかどうかは微妙だな。ギリギリ、川嶋に吸ってもらってるから、何と
か耐えられる程度かも知れねぇ」
「そっか、それじゃぁ、このぐらいにしとく。まぁ、悪く思わないでね。これは、あたしが男の人って、乳首吸われたらどうな
るかってのに興味があったからだけど、この前、高須くんに亜美ちゃんのおっぱいを吸って貰ったことへのお礼でもある
んだからね」
それだけ言うと、亜美は再び竜児の胸板に頬ずりし、その匂いを確かめるように小さく鼻を鳴らして、竜児の身体か
ら離れた。
「ベタなこと言ってねぇで、続きをしようぜ。次は、コットンパンツだ」
「うん、でも、これはぴっちりしてて脱がしづらいから、自分で脱ぐよ…」
そう言うなり、亜美は立ち上がって、コットンパンツをずり下げた。白い下腹部が露になり、次いで黒いレースの勝負
パンツが見えてきた。亜美はそのままコットンパンツを膝下まで下ろし、右足、左足の順でコットンパンツを脚から抜き
取った。
竜児も自身が身に着けているデニムを脱ぐ。これで、竜児も亜美も、下着姿だ。
「高須くん…」
その姿のままで、二人は向かい合って立ち、互いに見つめ合った。深山の湖水のように静謐な亜美の瞳に、窓辺か
ら差し込む月光の青白い輝きが宿っている。華奢と呼べるほどにスリムな肢体に、意外な程の量感を誇る乳房、括れ
た腰、胸と同等の量感を備え、俗に言う安産型とも表現出来そうな腰部、そして竜児と並んでの早足も苦にしない走
力を備えた長い脚部が竜児の眼前にあった。
「川嶋…、綺麗だ…」
我ながら陳腐な台詞だ、と竜児は思ったが、実際にそうとしか表現できないのだから致し方ない。
高校時代に亜美のビキニ姿はしっかり見させてもらった竜児だが、改めて差しで向き合うと、その美しさ、妖艶さに
眩暈がするほどだ。亜美は変わった。明らかに以前よりも美しく魅力的になっている。
「う、うん…。ちょ、ちょっとだけだけど、おっぱいがおっきくなったから…」
そう言って、両手で捧げ持つようにして、自身の乳房を軽く揺すった。特殊な高分子素材さながらの弾力性を秘めた
乳房がぶるんと震え、黒い陰となっている胸の谷間がその形を妖しく変える。
美少女から美女へと、亜美は成長しつつあるのだ。
乳房が以前よりも大きくなったことに加えて、何よりも内面から匂う女の色香が悩ましい。
「妖艶っていうか…、色っぽくなったな、川嶋…」
その言葉が嬉しかったのか、亜美が、微笑んでいる。
まとめ補間庫に×××ドラ!を置いて貰えないかな
まとめ人お願いします。
「女はねぇ、人を愛することで変わっていくんだと思う…。高須くんを愛したからこそ、あたしは変わったんだ。
あたし、高須くんと出会えて、そして今こうして一緒に居られることが、すっごく幸せだよ…」
「俺もだ…。横浜で、川嶋に、俺が変わったって言われたが、それは俺も川嶋と出会い、川嶋を愛することで変わったん
だと思う…」
「う、うん…。高須くんにもそう思って貰えると嬉しいよ」
竜児は亜美を抱き寄せると、その口唇に接吻した。再び、互いの舌が妖しくもつれ合い、気持ちが昂ってくる。
「ブ、ブラ、外してちょうだい…」
ディープキスの余韻からか、呆けたようになっている亜美が、息も絶え絶えな状態で訴えた。
竜児は、亜美の背後に回していた両手の指先でブラジャーのホックをまさぐり、それを外した。亜美も竜児の背中に
回していた腕を解き、竜児がブラジャーを抜き取ることに協力する。
ブラジャーがなくても無様に垂れ下がらない、ティーンエイジャーらしい乳房が竜児の眼前に晒された。
むっちりと勃起した乳首に、充血して腫れ上がったように盛り上がっている乳輪が艶かしい。
「綺麗だ、本当に綺麗だよ…」
「う、うん…」
竜児は、吸い寄せられるように、亜美の乳房に顔を近づけた。乳首や乳輪の辺りから湧き出てくる甘く切ない匂いに
竜児は陶然とする。
『女はみんな母になるのが夢』だと亜美は言った。その匂いは媚薬のように妖しいが、同時に、母となり、子を慈しむ
ためのものでもあるのだろう。
「ねぇ、この前みたいに、あ、亜美ちゃんのおっぱい吸ってよぉ…」
竜児は、軽く頷いて、大きく膨れ上がっている左の乳首に吸い付き、右の乳首を左手の指先で摘み上げ、掌で乳房
全体を捏ねるように揉んだ。
「き、気持ちいいよぅ…」
亜美が背中を弓なりに反らせて、その身を震わせた。竜児は右腕を亜美の括れた腰に回して、その上体を支えてやる。
「ちょっと噛むぞ」
亜美が頬を紅潮させて頷いたのを上目遣いで確認して、竜児は、右の乳輪に前歯を当て、ちょっとじらすようにして
から、右の乳首を軽く噛み、そのまま軽く引っ張った。
亜美は、噛まれた瞬間、「うっ!」と呻いたが、すぐにうっとりとしたように、切なげな吐息を漏らした。
「あ、亜美ちゃん、高須くんにおっぱい吸われていると、すごく嬉しい。だって、き、気持ちいいんだもん。それに…」
快楽にあてられて、乱れた呼吸を整えるためなのか、亜美は、深呼吸するように大きく息を吸って、吐き出した。
「こうして高須くんにおっぱいあげていると、母親の気持ちになれる…。未だ男も知らないのにね…。
でも、高須くんを母親のように慈しんで包み込んでいるような気がするの。そ、それが…、たまらなく嬉しい…」
「川嶋…」
竜児は咥えていた乳首を、束の間、離した。
「あ、止めないで…、もうちょっと、もうちょっとだけ、亜美ちゃんのおっぱいを啜ってちょうだい…」
竜児は、陶然として切なげに呟く亜美に頷くと、今度は両の乳房の先端を、交互に嘗め、啜り、甘噛みした。
それも、さっきよりも強く。
「ああ、いい、いいよぉ! 吸って、吸って、もっと強く吸ってよぉ!!」
そう叫ぶと、快楽に耐えきれなくなったのか、亜美が足下をふらつかせた。
「川嶋、もう、立ち続けるのは無理だ。ちょっと座ろう」
竜児は、呆けている亜美を膝立ちにさせ、左腕でその上体を支えた。そして、再び、乳房に顔を埋め、固く尖った乳首
を啜った。
「う、ううう、あ、亜美ちゃん、おかしくなっちゃうよぉ〜」
亜美が今にも泣きそうな表情で、小指の爪を噛んでいる。快楽を求め、その快楽に必死に耐えている姿には、少女
のような愛くるしさと、成熟した女の色香が同居していた。
竜児は、なおも亜美の乳房を吸いながら、右手を亜美の鳩尾の部分から臍を経て、下腹部へとそろそろと伸ばして
いった。
「う、うう〜ん…」
竜児の指が亜美のショーツの縁に届いた刹那、亜美は身をよじらせながら、閉じていた脚部を心持ち広げた。
それは、竜児の愛撫を受け入れたいという亜美の無言のサインだ。
その下着の上から、竜児は亜美の陰部を人差し指でトレースした。陰裂の形がはっきり分かるほど貼り付いている
下着は、粗相をしたように、ぐっしょりと濡れている。
「川嶋、もう、びちゃびちゃだよ…」
亜美は、快楽で呆けたのか、もう、竜児の言葉にはまともに反応できず、ただただ、無垢と色香が共存した表情で、
竜児のなすがままに身を委ねている。
「川嶋、下着を脱がすぞ。もう、これじゃ穿いている意味がねぇ…」
亜美が、とろんとした表情で頷いたのを確かめて、竜児は、亜美の黒いショーツに手をかけた。そのまま右手だけで
その下着を左右交互に引っ張り、膝の上までずり下ろす。黒いショーツは、粘液の糸を引きながら、亜美の膝のすぐ上
で、所在無げに留まった。
そして、むっとするほどに芳しい亜美の陰部が竜児の目に飛び込んできた。エロ動画では飽きるほど見た女性器。
しかし、今、目にしているのは生身の女、それも生涯を賭けて愛していくと誓った女のそれだった。
竜児は、その陰裂を指先でなぞり、じくじくと滲み出てくる愛液を絡ませる。その愛液で潤った指先で、陰毛の叢から
大きく勃起したクリトリスを擦るようにして愛撫した。
「あ…」
亜美の背中が、電撃を受けたようにびくんと反り返る。更に、竜児は、クリトリスの包皮を手探りで剥き、そのむき出し
のクリトリスに愛液を擦り付けた。
「あ、あ、あ、いい、いい、気持ちいいよぉ〜〜!!」
亜美は、背中を弓なりに反らせたまま首を左右に激しく振った。目には涙が溢れ、バラ色の口唇からは涎が垂れ落
ちてくる。
「指、入れるぞ…」
「う、うん、い、入れていいよぉ」
涙と涎を垂れ流しながら、亜美は、竜児に頷いた。竜児は、人差し指をクリトリスから尿道口、膣口に這わせ、
その膣口へ慎重に人差し指を差し入れる。瞬間、亜美が、「うっ!」と呻いて眉をひそめた。
「だ、大丈夫か、川嶋? 痛くねぇか?」
亜美は、しかめた顔を、笑顔に戻すと首を左右に振った。
「大丈夫だよ、高須くんの指遣いがとっても上手だから気持ちよくって…。それで、思わず声が出ちゃっただけ…。
それに、あたしも自分の指を入れてオナニーしたことがあるから、大丈夫だよ…」
「お、おぅ…」
亜美が膣に自分の指を入れて自慰に耽っている姿を想像して、竜児は股間が更に怒張してくるように感じた。
それが、亜美にも分かるのだろう。
「おかずは、もち、高須くん…。高須くんに、今されていることや、これからされることを想像しながら、おっぱいを揉んで、
あそこをいじってばっかだった…」
その気持ちは竜児にも理解できる。
「俺もそうだよ…」
エロ動画を見ながらも、夢想するのは亜美の姿態だ。
竜児は、また、亜美の乳首を強く吸った。指ぐらいは平気、と本人が言うものの、竜児と亜美では指の太さがかなり
違う。痛みを覚える虞がなくはない。その痛みを紛らわせるつもりで、亜美の敏感な乳首を啜って、快楽を入力してやる。
「うひゃう、た、高須くん、おっぱい気持ちいいよぉ〜〜」
亜美が乳首から全身に走る快楽に酔い痴れているその時に、竜児は、人差し指を、膣の内部に差し込んだ。
結構な弾力のある粘膜というか、肉質の襞が指先に感じられた。亜美の純潔の証、処女膜だ。その処女膜の中央に
あるはずの開口部を指先で探る。
その開口部は、竜児の指よりも細いようだ。そのため、ちょっと引っかかるような感じがしたが、止めどなく滲み出て
くる愛液のおかげで、最後は、ずるん、という勢いで竜児の指は、亜美の膣内に収まった。
指が挿入された瞬間、亜美は、苦しげな呻き声とともに身を強張らせたが、その後、大きく一息つくと、落ち着いた。
「い、痛くなかったか?」
「うん、平気…。亜美ちゃんのお腹の中に高須くんの指が入っている…。これって、ちょっとすごいよね…」
亜美の膣内はうねうねと柔らかく、挿入された竜児の指を熱い粘液とともに包み込んでいる。
「今まで、何度となく妄想してきたけど、ここに俺のペニスを突っ込むのか…。あまりにリアル過ぎて、却って現実味が
ないな…」
亜美が、切なげな吐息を漏らしながら、微笑んでいる。
「あたしなんか、もっと、大変なんだから。高須くんのおちんちんが、突っ込まれるんだよ…」
「そうだよな、女にとっての初体験は一生に一度だから…。それも、処女膜の喪失という傷を負う…」
亜美が、頷いた。
「ほんと言うとね、ちょっと、こわいんだ。インターネットとかの体験談読むと、全然痛くなかったっていうのもあるけど、
結構痛いとか、出血がひどかったとか、って話があったから…」
その手の話は竜児も見聞きしたことがある。それらの多くは、前戯が不十分なまま挿入を試みた結果、潤滑不足で
膣内の粘膜を損傷して、女の子にかなり痛い思いをさせたというものだった。
「なぁ、川嶋…」
「な、なぁに? ど、どうでもいいけど、高須くん、指を入れただけじゃ、あんまり気持ちよくないよぉ。ゆ、指、う、動かして
いいから…」
膣内はクリトリスや尿道口、膣口付近に比べれば、感度は鈍いらしい、ということは竜児も何かで聞いたことがある。
だとしたら、指を膣に挿入しただけでは、亜美の陰部に十分な快感を与えることが難しい。
何よりも、ペニスの挿入に備え、亜美の膣を十分に広げておいてやりたいが、この体勢では、もう一本指を入れて、
亜美の膣を広げるのはちょっとやりづらい。
「川嶋を抱いたままじゃ、川嶋のあそこを十分に愛撫するのが難しいんだ…」
「う、うん…、そ、そうなの?」
「だから、川嶋をベッドに座らせる。そこで、改めて、川嶋のあそこを丁寧に愛撫してやりたい…」
その一言に亜美はちょっと驚いたように顔を強張らせたが、目をつぶって、微かに頷いた。
「う、うん…。やって、高須くん。亜美ちゃん、高須くんにいじられることばっか妄想してきた。だから、お願い…」
「ああ、喜んでそうさせてもらうよ」
竜児は、亜美の膣内に挿入していた指をゆっくりと抜き取ると、亜美の膝と背中を抱えて、ベッドに運んだ。
「こういうの、お姫様抱っこっていうんだよね」
「そうだな…。川嶋は、俺にとっての姫であり、妃となる女なんだ…」
「くっさい台詞…。だけど、嬉しい…」
竜児は抱えていた亜美をベッドの縁に座らせると、膝の辺りに絡まっていた黒いショーツを脚から取り去った。
「川嶋、そのまま仰向けに寝てくれ」
「う、うん、分かった…」
亜美はベッドを横切るようにして、その身を横たえた。狭いベッドだが、ベッドの縁から心持ち尻を突き出せば、胴長
ではない亜美は、頭を壁にぶつけることなく、横になることができた。
「じゃ、脚を広げるぞ…」
亜美は、羞恥からか、頬を赤らめ、身を震わせたが、頷いた。
「恥ずかしいけど、お願い。高須くんに、あたしのあそこ、あたしが女である部分を見て欲しい…」
竜児は、亜美に向かって頷くと、亜美の膝を左右に広げていった。愛液を滴らせた亜美の陰裂が見えてくる。
その陰裂からは、竜児を誘う匂いが漂ってくるのだ。
匂い自体は異臭と表現すべきものだが、それには雄である竜児を性的に興奮させる媚薬のような効き目があるらし
い。シャワーを浴びていないせいもあって、その匂いはきつかったが、竜児は、顔を陰裂に近づけた。
「あ、た、高須くん、顔近いよぉ!」
亜美の抗議にも似た訴えには構わず、竜児は、陰裂の頂点に突き出したクリトリスに接吻し、舌先で包皮を剥ぎ取
るようにして愛撫した。
「あぅっ! そ、そんなとこ、汚い!!」
「川嶋の身体に汚いところなんてあるもんか。それに、川嶋のここは、喜んでいるのか、さっきよりも濡れてきているぞ」
竜児は、亜美の大陰唇を指で広げた。露になった膣口からは、とろとろと粘液が垂れ流れている。
「川嶋、このまま指を入れるぞ」
そう言いながら、竜児は、むき出しになったクリトリスを啜った。刹那、亜美の身体が痙攣したように震える。
「あああ、らめぇ! 気持ちよしゅぐるよぅ!」
それに呼応するかのように、膣口からは、じくじくと愛液が滴り落ちてくる。その愛液を絡ませた人差し指を、膣に
差し込んだ。
今度は、処女膜と干渉することなく、竜児の指はすっぽりと亜美の胎内に飲み込まれた。その指をゆっくりと動かし
ながら、竜児は亜美のクリトリスを啜り、クリトリスから尿道口、膣にかけて、舌を這わせて愛撫した。
「あーっ! あーっ! あーっ!」
ベッドの上では、亜美が自ら乳房を揉みながら、意味不明なことを叫び、快楽に酔っていた。
あとちょっとで、クライマックスに達してしまうだろう。竜児は、最後の仕上げのつもりで、クリトリスを啜り、一旦、
挿入していた人差し指を引き抜いた。
「あ、ゆ、指、抜かないでぇ!」
亜美の切なげな訴えに応えるように、竜児は、今度は人差し指に中指を添えて、それを亜美の膣に挿入した。
「あ、ああ、指、は、入ってくるぅ」
さすがに指が二本だと処女膜の抵抗が大きかったが、十分に濡れていたことと、慎重に開口部を探って、
そこをやさしく広げるようにして挿入したため、出血はなかった。
「どうだ、川嶋、痛くねぇか? 今、指が二本入っているんだが…」
「う、うう、平気、ちょ、ちょっとじんじんするけど、それが気持ちいい…」
「そうか、じゃ、指を動かすぞ」
竜児は、挿入した二本の指を捻りながら亜美の膣内を往復させた。ねっとりと熱い肉の襞が、竜児の指を咥え込ん
で、艶かしく蠢いている。
「あうううう…。もう、らめぇ…」
亜美は息も絶え絶えの状態で、朦朧としている。自慰では経験したことがない強烈な快楽に酔い痴れているのだろ
う。あとちょっとでオルガスムスに達するに違いない。
竜児は、亜美をいかせるつもりで、クリトリスを甘噛みし、滴る愛液を啜りながら、二本の指を膣内で広げたり、その
先端を曲げてみた。
「あ、あああああああああぅー!」
ついに達したのか、亜美は大きく絶叫すると、涎を垂らしながら全身を痙攣させた。天井に向いて見開かれた双眸
からは涙が溢れ、瞳孔が大きく開いている。
「か、川嶋! 大丈夫か?」
激しそうな痙攣は束の間だった。その発作のような痙攣が治まると、亜美は、呼吸を整えてから、満足したように呟
いた。
「いっちゃった…。こんな感覚初めてぇ…。好きな人にいじってもらえるだけで、こんなに気持ちいいなんて…」
「そうか、痛くはなかったようで、何よりさ」
竜児は、亜美の膣から指を引き抜こうとしたが、それは亜美に止められた。
「川嶋?」
「女の快楽はねぇ、余韻のように長く尾を引くの…。この瞬間も、あたし、気持ちいい…。だから、もうちょっと、もうちょっ
とだけ、指を入れたままにしておいて…」
そう言いながら、未だ快楽の余韻に耽っていることを竜児に示すように、亜美は自身で乳首を摘み、指先で捏ね回し、
はぁ、はぁと切なげな吐息を漏らす。
やがて、快楽の余韻が引いたのか、亜美のクリトリスが萎んできた。その頃合いを見て、竜児は、指を引き抜いた。
抜く瞬間、亜美は顔をしかめたが、それは痛みというよりも、指が膣内を擦過する新たな刺激に身悶えたというべき
なのだろう。
その亜美は、精も魂も尽き果てたと言う感じで、ぐったりとしている。
「川嶋、ちょっと、休もう。夜は未だ長い。続きは川嶋が元気になってからにしよう…」
マグロのように横たわり、汗と涙と涎と愛液にまみれた亜美の身体をタオルで拭う。そうしている時も、亜美の身体
から漂う甘く切ない体臭が、媚薬のように竜児を翻弄し、股間を痛々しいほどに怒張させるのだ。
「ううん、平気…。それに、あたしばっか気持ちよくなって、高須くんは全然気持ちよくなってないじゃない。今度は、高須
くんが気持ちよくなる番だよ」
「それは、いいよ…」
亜美は、ちょっと不満げに眉をひそめた。
「よくないよぉ、そういうの。あたしたちは対等なのぉ。だったら、今度は、あたしが高須くんを気持ちよくしてあげなきゃ
いけない…」
「お、おう…」
竜児の返事を了解と受け取ったのか、亜美は悪戯っぽく笑った。
「それにぃ、あたしも高須くんのおちんちん、しゃぶりたいしぃ」
結局、竜児は部屋の中央に立ち、亜美がその竜児の前に膝立ちして、竜児のペニスをしゃぶることになった。
その体勢で、亜美は竜児の下着をずり下げた。カチカチに勃起したペニスが、亜美の目に飛び込んでくる。
「え、え〜と…」
以前、手探りで触れたことはあるけれど、見るのは初めての竜児のペニス。それは想像以上に太くて長い。
特に、ここまで太いとは予想外だ。自分の指の何本分の太さがあるんだろう、と亜美は不安になった。
「ど、どうしたんだ、川嶋?」
「う、ううん、な、何でもない。ただ、ものすごくおっきいなぁ、って見とれていただけ…」
「よせやい、普通サイズだと思うけど、他の奴らと比べたことがないから正直分かんねぇや」
これが普通サイズのはずがない、と亜美は思った。長さは十八センチ以上ありそうだし、亜美の小さな口で咥え込む
のが辛そうなくらい太い。そして、何よりも、こんなに太いものが、指二本を挿入できるのが精々の亜美の膣に突っ込ま
れるのだ。快楽への期待感よりも、流血必至の恐怖が湧き上がる。
「ううん、本とかで読んだのよりも、すっと大きいよ…。立派過ぎて、亜美ちゃんなんかにもったいないかも」
そっと、竜児のペニスに触れてみる。熱く弾力があるそれは、硬質な合成ゴムか何かで出来た、アグレッシブな固さ
を備えていた。高射砲のように仰角をもって屹立するそれは、亜美の純潔の証を突き破り、吹き出す精液で亜美を孕ま
せる攻撃的な器官なのだ。
亜美は、恐る恐る、竜児のペニスに指を絡ませ、しごいてみた。包皮に弛みはなく、包茎とは無縁であることがそれで
分かった。
「皮、剥けちゃってるんだぁ…」
「お、おぅ、中学校の時、保健体育で、包茎は不衛生って教わって、それから、風呂とかトイレで意識して皮を剥くように
していたら、こうなった。何もしていなかったら、皮かぶりだったかもしれねぇ」
亜美は、竜児がペニスの皮を剥いている姿を想像し、可笑しくなった。
「わ、笑うなよ…」
「だって、高須くんって、そうしたエッチなこととかにすごく疎いから、ちょっと意外すぎて…」
「エッチ、とかっていうよりも、包茎は不衛生だから、どうにかしたかったんだよ…。これなら意外でも何でもねぇだろ?」
亜美は、納得した。思春期の頃の性への興味もあるのだろうが、包茎は不衛生だということも理由とする竜児は、
どこまでも潔癖症なんだなと理解した。
亜美はそのまま、ドキドキしながら竜児の亀頭から棹の部分、そして陰嚢を撫でさすっていたが、意を決したように、
バラ色の口唇を竜児の亀頭に近づけた。
「高須くん、おちんちん、しゃぶるからね」
竜児の頷きを上目遣いで確認して、亜美は、亀頭に口づけした。その先端からは、透明な液が滲み出ている。
その液は、ちょっと苦い、むせ返るような雄の味と匂いがした。
その亀頭の先端をおちょぼ口で吸い、次いで、舌先をペニスの付け根まで、唾液の痕を残しながら、トレースした。
「川嶋、もうちょっと、強く吸ってくれると、う、嬉しいよ。そ、それに、軽くなら歯を当てても大丈夫だ…」
恐る恐る、壊れ物を扱うようにしていたが、そのひと言で、思い切って強く吸い、歯を立ててみることにした。
更には、亀頭全体を咥え込み、歯を軽く当てながら、ソフトクリームを嘗め回すようなつもりで、亀頭の周囲を舌先で探った。
「か、川嶋、すごい、すご過ぎる。どこで、こんなテク覚えたんだよ」
竜児が、亜美のフェラチオを心地よく感じているらしいことが、亜美には嬉しい。
竜児の亀頭は見た目相応に大きく、亜美は顎が痛くなりそうだった。でも、もっと、もっと、奉仕してあげようと思う。
さっき気持ちよくしてくれたそのお礼も込めて、竜児のペニスを慈しむように愛撫してやりたくなる。
「きもひ、ひい?」
竜児のペニスをしゃぶりながら、亜美は上目遣いで竜児を見た。その顔は、眉をひそめているが、頬の紅潮具合から
すると、竜児も又、先ほどの亜美と同様に、かつて経験したことのない快楽に打ち震えているのだろう。
「ああ、川嶋の舌が、おれのペニスにまとわりついて、最高だ、こんなに気持ちいいのは、初めてさ…」
「う、うれひぃよぅ」
内緒だが、亜美も竜児同様に、エロ動画をインターネットで鑑賞したことがある。いわゆる、『抜く』ためであるが、
女として為すべきことを学ぶためでもあった。
その動画では、フェラチオの時、ペニスを咥えた白人女性が男性の陰嚢を軽く掴んでマッサージしていた。亜美は、
それを真似てみることにした。はっきり言って、やらせの映像だから、本当に竜児が気持ちよくなるかどうかは怪しかっ
たが、試す価値はありそうだった。
竜児の陰嚢は、射精に備えてか、睾丸が、きゅっと縮こまり、それを包む陰嚢も又、固く締まったかのように硬直して
いる。その陰嚢を揉みほぐすつもりで、亜美はマッサージした。
「やばい、か、川嶋、やばすぎる!」
その台詞に危険なものを感じ、亜美は陰嚢への愛撫を中断した。
「い、いふぁかっふぁ?」
支援
だが、竜児は首を左右に振っている。
「いや、痛む寸前のギリギリの快感がやば過ぎる。そのくせ、何だか射精するのか妨げられるような感じがするんだ。そ
こをいじられながらペニスを吸われていると、永遠に川嶋にフェラされていくような気さえしてくる。こいつは、本当だ…」
「ふぇ〜、そふなんらぁ〜」
亜美は、竜児のペニスを自身の乳房で挟み込んで、亀頭を啜ることにした。いわゆる『パイズリ』である。美乳を誇る
亜美だが、それでも竜児の大きなペニスを包み込むのは少々苦しかった。それでもどうにか、エロ動画のパイズリらし
い体勢に持ち込むことができた。
「ど、どふぉ? きもひ、ひぃ?」
これなら、陰嚢もペニスの棹の部分もひっくるめて愛撫することができる。エロ動画も侮れないな、と亜美は思った。
「ああ、最高だ。ただ、お、俺も、限界が近い。我慢してるけど、ちょ、ちょっとやばそうだ。なぁ、川嶋、そろそろ離してくれ。
でないと、お前の口の中に出しちまう」
「いひよぉ、亜美ちゃんのぉ、おくひに、だひちゃってぇ」
亜美は竜児の射精を促すべく、陰嚢への圧迫を弱め、ペニスの棹の部分を中心に、乳房を擦り付けた。
同時に、舌先で、亀頭の粘膜を、隅々まで嘗め回し、口をすぼめて強く吸った。
「うわ! 川嶋、本当にやばいって」
竜児の亀頭がピクピクと震え、先端から滲み出るカウパー氏腺液の分泌が顕著になった。その苦味を今や堪能しな
がら、亜美は竜児の亀頭をしゃぶり続けた。
「ダメだ、で、出る!!」
そう叫んで、竜児は自身のペニスを亜美の口から引き抜こうと、亜美の頭部を両手で支えた。だが、亜美は、自身の
乳房を押さえていた手を素早く竜児の臀部に回し、それを阻止した。
「うっ!!」
その瞬間、竜児は苦悶にも似た表情で、射精していた。
竜児のペニスは、まるで別個の生き物のように、ドクドクと脈動しながら白い精液を亜美の口に吐き出した。
亜美は、噴射される精液の想像を超えた勢いに一瞬息を詰まらせたが、健気にもそれを受け止め、喉を鳴らして飲
み下した。更には、射精の済んだ竜児の亀頭を綺麗にするつもりで、舌全体を使って嘗め回す。
「川嶋、無茶しやがって…。そんなもん、美味くないだろ…」
竜児が、心配そうに亜美を見下ろしている。
亜美は、咥えていた竜児のペニスを、ゆっくりと離した。口元からは、咀嚼し損ねた竜児の精液が垂れてくる。それを
手の甲で拭って啜り、微笑した。
「あんただって、あたしの汚いあそこを嘗めて綺麗にしてくれたじゃない。あたしたちは対等なの。だから、あんたがやっ
てくれたことを、あたしもあんたにしてあげなきゃいけない。それに、高須くんの精液なら、平気…。高須くんの精液なら
美味しい…」
義務ではない。竜児の精液だから、何も気にせずに、その最後の一滴までも吸い、味わい尽くすことが出来るのだ。
竜児は、そんな健気な亜美の手を取った。
「ちょっと、休もう。川嶋は疲れているし、俺も、射精したばっかりだ。続きは、体力が回復してからだ…」
「そうね、だったら、ベッドに一緒に横になりましょうよ」
「そうだな…」
一人用の狭いベッドの上で、竜児と亜美は並んで横たわった。
「ねぇ、腕枕してくれる?」
亜美が、甘えた鼻声で訴える。その訴えに竜児は、「おぅ」と応えて、右腕を伸ばした。
「いよいよね…。あたしたちは本当に結ばれるんだわ」
「おぅ、いよいよだ…」
竜児の腕に頭を預けながら、出会いって本当に不思議、と亜美は思った。竜児に出会う前の亜美は、自分に言い
寄って来る者は男であろうと女であろうと、対等の存在とは見做していなかった。
特に男は、幼馴染の北村祐作を除けば、すべからく、彼女の美貌目当てであり、彼女の内面は一顧だにしない愚か
者ばかりだった。
だが、北村の親友である竜児だけは、亜美の内面を知り、最初はそれを嫌悪しながらも、亜美と向き合い、互いに理
解し合い、愛し合うようになった。亜美の本質を理解してくれる竜児と出会っていなかったら、亜美は今でも鼻持ちなら
ない嫌な女のままだったことだろう。
「なぁ、川嶋…」
「なぁに?」
「俺なんかで本当によかったのか? 川嶋にはもっとふさわしい相手がいるんじゃないかって、今でもちょっと思うんだ…」
亜美は、ふっ、と瞑目すると、微笑した。この男は、自分のポテンシャルのすごさが一番分かっていないらしい。
亜美は、傍らの竜児に、その淡い笑みを向けた。
「ウソのツラで他人を欺いて、相手を内心では見下していた性悪な亜美ちゃんを、まっとうな人間にしてくれたのは、
高須くん、あんたなんだよ。そして、人を真剣に愛することを教えてくれたのもあんたなんだ…。
だから、あたしは何があってもあんたについていく。そう決めたんだよ…」
亜美は、二人の身体を覆うタオルケットの下をまさぐって、竜児のペニスを撫で擦った。
「お、おい、川嶋…」
咎めにも似た竜児の声にもかかわらず、亜美は竜児の亀頭を摘み、その固さを確かめた。それは、戦車砲か高射砲
のような攻撃性を取り戻しつつあるようだった。
「出会いって、本当に不思議だし、あたしが高須くんと結ばれるのは、運命なんだと思う。あたしは、今から高須くんに
貫かれて、高須くんの女になるの。それは、もう止められない…。あたしたちに与えられた運命なんだわ…」
亜美の目に涙が浮かんだ。少女から女へ…、そう思うと、切なさは隠せない。
「川嶋、泣いているのか…」
亜美は、微笑みながら、涙を手の甲で拭った。
「う、うん、ちょっと感極まっちゃって…。正直言うと、ちょっと怖いんだ。さっき初めて見た高須くんのおちんちん…。
ものすごくおっきくて、正直、あたしのあそこが耐えられるか、ちょっと不安…」
竜児は、亜美のふくよかな胸に手を当てて、乳首を摘んだ。亜美が、小さく歓喜の声を上げる。
「不安だったら、今日はこれまでにして、本番は後日に回してもいいんじゃねぇか? 今日、俺たちは、ペッティングを
やって、互いの性器を嘗め合った。これだけでも、十分性行為と言える。俺たちが一つになるのは、今日みたいに、お互
いの身体を好きにいじくって、不安や抵抗感がなくなってからやってもいいような気がする…」
亜美は、竜児の愛撫を受けながら、亜美は、ちょっと頷きかけたが、それを否定するように首を左右に振った。
「でも、最初は不安が付き物なんだわ。その不安から消極的になっていては、いつまで経っても、あたしたちは一つにな
れない…。だから、無理を承知で、セックスしましょう」
「川嶋…」
「多分、高須くんに貫かれる時、あたしはものすごく痛いと思う。でも、高須くん、それでも止めないで。高須くんは自分
のおちんちんを亜美ちゃんのあそこに突っ込むことだけを考えてね。あたしは、どんな痛みに耐えてでも、高須くんの
おちんちんに貫かれたい…」
そう言うと、亜美はタオルケットを除けて、上体を起こした。
「高須くんも触って分かったように、亜美ちゃんのおっぱいは、高須くんに啜ってもらいたくて、張ってきている。
亜美ちゃんのあそこもそう…。高須くんに貫かれるために、涎を垂らしているわ」
亜美は、股間から垂れてくる粘液を手に取り、それを勃起したクリトリスに擦り付けた。そして、切なげな吐息を漏らす。
「川嶋…」
竜児は、亜美の傍らに寄り添い、その口唇に自らの口唇を重ねた。亜美の口唇は、先刻よりも生臭かった。それは、
竜児の口唇も同様であるはずだ。互いの陰部にむしゃぶりついた雄と雌、その時に啜った互いの体液の余韻。
その生々しさが、劣情をいやが上にも亢進させる。
「ねぇ、もう一回、おっぱいとあそこを啜ってよぉ…」
亜美も又、竜児との口づけで乳首や陰部をはじめとする全身の性感帯が火照るように疼いてくるのを感じた。
乳首を吸って、陰部を嘗めてもらいたい。それは理屈抜きの雌としての衝動だった。
「お、おぅ…」
竜児の唇が亜美の乳房に吸い付いた。左右の乳首が、先刻よりも荒々しく、大胆に吸引される。
亜美は、乳首から電撃のように全身に走る快感に身悶えし、髪を振り乱して仰け反った。
「ああ、気持ちいいようぅ!! た、高須くん、お、おっぱいだけじゃなくて、あ、あそこも、亜美ちゃんのお豆も…」
竜児は、亜美の願いに軽く頷くと、口唇を乳首から胸の谷間、鳩尾、臍を経て、陰毛の叢から屹立するクリトリスに
まで唾液の痕を残しながらトレースした。そのクリトリスを口唇で甘噛みする。
「ああああ、いいいよぉ!!!」
あまりの快感に亜美は絶叫し、自ら乳房を揉みしだき、固く尖った乳首を摘んで悶絶した。
膣口からは、竜児を惑わす媚薬のような愛液がじくじくと滲み出している。
その膣口を竜児の舌が這い、分泌された愛液が嘗め取られる。
「か、川嶋、美味しい、川嶋のここ、すごく美味しいよ…」
本当は愛液なんか美味しいわけがない。ちょっと酸っぱくて、小便臭くて生臭いだけの粘液だ。
だが、亜美を愛しく思ってくれる竜児だからこそ、そんなものでも美味しいと言って啜ってくれるのだろう。
「か、川嶋、そろそろ…」
竜児が極太のペニスを握りしめている。亜美はベッドに横たわり、頬を紅潮させて竜児に、軽く頷いた。
「いくよ…」
ベッドの上で亜美の両膝が押し広げられ、更に、竜児の指で大陰唇が広げられた。愛液でじくじくと潤んだ亜美の
陰部が晒される。
「き、来て、早く来て。高須くんの、その太いおちんちんで、亜美ちゃんを女にしてぇ!」
竜児の熱く固い亀頭で、クリトリスが突っつかれた。粘膜と粘膜の干渉という、未経験の刺激が亜美を悶えさせる。
その竜児の亀頭は、クリトリスから尿道口、膣口を撫で回している。
亜美の愛液で竜児の亀頭をコーティングするという、挿入へのプレリュード。
「あ、じ、焦らさないでよぅ!」
亜美は、思わず腰を振っておねだりする。それでも竜児は、亜美の陰裂を自身の亀頭で撫で続けた。十分に濡らして
おかないと、亜美に無用な痛みを与えてしまう。そのため、念には念を入れているのだろう。
そのおかげで、亜美は竜児の亀頭の大きさを小陰唇で、尿道口で、膣口で感じた。
−−大きい…。
固くて、熱くて、大きくて、それは、膣に打ち込まれ、亜美の純血の証を破壊する最終兵器さながらだ。
その猛々しさに、亜美は一瞬身震いした。
−−あ、あれ?
不意に、亜美は、陰部から鼠蹊部に麻痺するような違和感を憶えた。何だか分からないが、あれほど潤い、震えてい
た膣が、差し込みでも起こったように、きりきりと緊張して収縮している。
−−あ、あたし、どうしちゃったんだろう?
変化は陰部だけではなかった。挿入されることへの期待から上気し、火照っていた身体が、急速に冷えていくような
気がした。
寒い、ぞくぞくとした悪寒すら感じられる。
「ど、どうした? 川嶋…」
竜児も亜美の様子がおかしいことに気付き、心配そうに亜美の顔を覗き込んでいる。
「だ、大丈夫、ちょっと、こ、興奮しすぎて、呼吸が苦しくなっただけだわ…」
だが、竜児は納得のいかない表情で、亜美を見ている。
「そうか? どう見ても、今の川嶋は様子が普通じゃねぇよ。何だか、寒気がして震えているような感じもする。悪いこと
は言わねぇ。体調が思わしくないようなら、挿入するのは、後日にしよう…」
亜美は首を左右に振った。
「ここまで来て中断なんて出来ないわ。あたしは初めてなんだから、痛がったり、体調不良になっても、それは当然のこ
となのよ。高須くんは、あたしのことなんか気にせず、自分の欲望を満たすことを優先してちょうだい」
「お、おぅ…」
そして、なおも不審と不安が渾然となった表情を浮かべる竜児には構わず、自ら股を思い切り広げた。
「さぁ、その高須くんのおちんちんで、亜美ちゃんのあそこを貫いて! あたしが血塗れになって泣き叫んでも、突いて!
突いて! 突きまくってちょうだい!!」
「わ、分かった…」
再び、竜児の亀頭が亜美の陰裂を這い、亜美の愛液がその亀頭に塗りたくられる。
「い、入れるよ…」
「う、うん…。ちょ、ちょっと待って…」
亜美は、陰部に押し当てられている竜児のペニスを握り、それを自らの膣口へと誘った。
「こ、ここよ…」
膣口は、これまで分泌された愛液で一応は潤っていた。しかし、先ほど亜美が感じた緊張感は解消せず、むしろます
ますひどくなっているような気がした。
正直なところ、竜児のペニスを挿入するには無理がありそうだったが、もう後には引けなかった。
「そのまま、突いてぇ! 思いっきり、亜美ちゃんのお腹を突き刺してぇ!」
不安を払拭するためか、亜美は叫ぶように竜児に訴えた。竜児は、そんな亜美に軽く頷き、腰を前に突き出して、固く
勃起したペニスを亜美の陰部へと送り込んだ。
だが…、
「「!!」」
竜児も亜美も、挿入を阻む途方もない抵抗感に茫然とした。体重を掛けて突き出された竜児のペニスは、固い壁の
ようなものに阻まれて、膣口からちょっと入ったところ、処女膜に触れた辺りまでしか挿入できなかった。
処女膜が強靱というわけではなさそうだった。現に、竜児の亀頭の先端は、襞のように柔軟な処女膜の弾力を感じ
取っていた。問題は、処女膜から奥の膣内だ。
「か、川嶋、まるで歯が立たねぇ。俺の先っぽも結構痛い…。お前は大丈夫なのか? この分じゃ、お前だって相当に
痛いだろ?」
だが、亜美は、顔をしかめ、歯を食いしばりながらも気丈だった。
「さっきも言ったでしょ! あたしが痛がっても、高須くんは、あたしにかまわず突きまくれって。高須くん、も、もう一回、
今度は、もっと力を入れて、おちんちんを突っ込んでよぉ!」
「お、おぅ…」
再び、挿入が試みられた。それも、先ほどよりもいっそう力強く。しかし、亜美の膣は、処女膜から先が、まるで岩か何
かで閉ざされているかのように、びくともしない。
竜児のペニスが軟弱というわけじゃない。それどころか、竜児がペニスを突き出す度に、ハンマーで殴打されるよう
な痛みが亜美の陰部に走るのだ。
おかしい、こんなに痛いなんて、どうみても異常だ、そう思った次の瞬間、
「う、うううう…」
あまりの痛みに耐えられなくなって、亜美は泣いた。
「か、川嶋、だ、大丈夫か?!」
竜児は、挿入を中断して、亜美を抱き起こす。
亜美はその竜児に、先ほどの決意も何もかなぐり捨てて、泣きじゃくりながら訴えた。
「痛い、痛いよぉ!! 亜美ちゃんのあそこ、痛いよぉ!」
亜美は陰部を掌で押さえて、身をよじった。竜児がペニスを突き出したことによる痛みが引き金になったのか、陰部
のみならず下腹部全体がキリキリと痛んでくる。
「か、川嶋、ちょ、ちょっと、落ち着け! 血が出ているかどうか見てやる。だから、ちょっと、手をどけてくれ」
亜美は泣きながら頷き、陰部を竜児の前に晒した。
出血はない。しかし、竜児のペニスで突かれたせいなのか、膣口周辺が少し赤く腫れている。
「川嶋、あそこが赤くなってるぞ。痛いのはここか?」
亜美は首を振った。
「ううん、もっと奥の方。奥の方やお腹がじんじん痛いのぉ〜」
「か、川嶋、ちょ、ちょっと、触ってみるけどいいか?」
「う、うん…」
本当は痛くて嫌だったが、竜児を信じて、身を預けるtことにした。
竜児の指が膣口をなぞり、ゆっくりと侵入してくる。だが…。
「川嶋、ダメだ! 小指一本すら入らねぇ。中が完全に収縮しちまって、岩みてぇに固い。こりゃ、尋常じゃねぇぞ!」
「ええっ?!」
亜美も恐る恐る自分の陰部を指でなぞった。愛液を滴らせ、柔らかく竜児の指を受け入れたはずの膣は固く締まっ
ており、亜美の細い指一本ですら挿入を許しそうになかった。その膣を構成する筋肉が小刻みに痙攣し、亜美に経験
したことがない痛みと悪寒をもたらしているのだ。
「か、川嶋、きゅ、救急車を呼ぼう!!」
動揺しながらも、竜児は最善と思える措置を提案した。
だが、これには、亜美は必死になって首を左右に振った。
「そ、それは、絶対だめぇ! あ、あたしが高須くんとこんなことをしていたのが、伯父や伯母、そしてパパやママにバレ
ちゃう。そうなったら、あたしたち、お終いだわ!」
救急車で病院に運び込まれたら、亜美が同居している伯父や伯母へまず連絡が行くだろう。そして、亜美の異常が、
竜児との性交によるものだということも、その伯父や伯母は知ることになる。
当然に、そのことは、亜美の両親にも知らされて…。
「じゃ、どうすりゃいいんだよ? お前の今の容態じゃ、医者に行かないと危なそうな感じだぞ」
竜児は、自分に非があると思っているのだろう。
初体験で挿入を試みたら、相手である亜美が激痛を訴えて苦しんでいるのだ。自責的な竜児であれば無理もない。
「だ、大丈夫。何が起きたのか、正直、あたしにも分からないけど、少し休めば、い、痛みも治まるわ、きっと…」
亜美は、痛みに耐えながら、竜児のために笑ってみせた。しかし、溢れてくる大粒の涙は隠せない。
「治まらなかったらどうする?」
「そ、その時は、に、日曜日でも開業している産院にでも行けばいいのよ…」
「無茶だ、とにかく早く医者に行かないと、何だかヤバそうな感じだぞ」
亜美の身体は、おこりのようにぶるぶると震えてきた。竜児は、その亜美を、そっと抱き寄せて、背中をさすってやる。
そして、亜美のやせ我慢も限界だった。
「高須くん、何だか寒い…」
下腹部の痙攣に関係してか、悪寒がひどくなった。夏だというのに、身体がぞくそくと震えてくる。
「い、今、毛布を持ってきてやるから、ちょっとだけ我慢してくれ」
「う、うん…」
竜児は、畳の上に脱ぎ捨てていた下着とデニムとポロを手早く身に着けると、来客用の毛布を仕舞ってあるはずの
泰子の部屋へ向かった。
泰子の部屋の押入れから来客用の毛布を引き出して、自室に戻る途中、竜児は帰宅してきた泰子と出くわした。
「竜ちゃん…」
いつもなら、へべれけで帰宅するのが普通なのに、今日に限って、ほろ酔い程度。何よりも、明け方五時ぐらいの
帰宅が日常であるはずなのに、今は午前一時過ぎだ。
「随分と早いじゃねぇか…」
その泰子が、心配そうに表情を強張らせている。泰子は玄関の土間に目をやってから、竜児に向き直った。
土間には亜美の靴が履き揃えてあった。
「竜ちゃんたちが心配になって…。それで、お店は若い子達に任せて、早引けしてきたの。ねぇ、どうなったの〜?
亜美ちゃんは、どしたの〜?」
「どう、って言われてもよぉ…」
竜児は正直に状況を説明すべきか否か躊躇した。泰子は、今夜、竜児と亜美との間に何があったのかを勘づいてい
る。だが、それでも、実際に起こったことを打ち明けるには抵抗があった。
「亜美ちゃん…、具合が悪いんでしょ?」
竜児は、不承不承頷いた。
「血がいっぱい出ちゃったの?」
「いや…、それなら、未だ分かるけど、違うんだ…。あいつは、今、下腹部の痛みを訴えているけど、全然出血していない。
正直、何が起こっているのか、俺も川嶋もさっぱり分からない…」
「竜ちゃん…、落ち着いて。竜ちゃんと亜美ちゃんがやったことを、やっちゃんに話してちょうだいよ〜」
そこにあるのは、いつものだらしなく泥酔した泰子ではなく、息子とその彼女を気遣う母親のそれだった。
竜児は、一瞬驚き、泰子の顔を凝視したが、手短に話をまとめた。
「あいつの求めるままに俺は挿入しようとした。だが、あいつのあそこは岩みたいに固くって、おれのなんか全然受け付
けなかった。それでもあいつは、『入れてくれ』ってせがむんだ。俺は、俺は、その言葉通りにもう一回入れようとした。
その時は、全体重をかけてだ。だが、それでも全然ダメだった…」
「そうしたら、亜美ちゃんが、お腹痛い、って苦しみだしたのね…」
竜児は再び頷いた。
「そうなんだ…。そのうち、あいつは悪寒を訴え始めて…、それで、今は毛布を探し出してきたところなんだ。
本当なら救急車を呼びたいんだが、川嶋は両親にバレることを恐れているから、それはできねぇ…」
毛布を手にしたまま、竜児は手の甲で目頭を拭った。
「竜ちゃん…」
「も、もう、医者でもない俺にはどうしようもないんだ…。
今の俺には、寒気を訴えるあいつのために毛布を用意してやる、これぐらいしかできないんだよ…」
泰子は、そんな息子の肩と背を優しく撫でた。
「竜ちゃぁん、竜ちゃんが、そうやって亜美ちゃんのことを気遣ってあげているだけで亜美ちゃんは嬉しいはずだよ〜。
それに、亜美ちゃんが痛がっているのは〜、やっちゃんなら治してあげられる。だから、竜ちゃんは心配いらないよ〜」
「泰子…」
「だから、後はやっちゃんに任せて。亜美ちゃんの症状なら、やっちゃんにも心当たりがあるから…。
それに、こっから先は男の子は立入禁止。女の子にとって恥ずかしいことをしなくちゃいけないからね〜」
「お、おう…」
いつになく自信たっぷりな泰子に、竜児は気圧された。根拠のない自信なら、泰子には珍しくないが、今回だけは、
ちょっとばかり雰囲気が違う。
「じゃ、その毛布はやっちゃんが亜美ちゃんに掛けてあげるよ〜」
そう言って、竜児から毛布を受け取った。そして、代わりという訳ではないだろうが、財布から五千円札を取り出して、
竜児に手渡した。
「こ、これは?」
泰子は、例の無邪気とも妖艶とも判じがたい笑みを竜児に向けた。
「やっちゃん早めにお店を出て来ちゃったから、ちょっと飲み足りなくって〜。
竜ちゃんには悪いけど〜、お酒を買って来て欲しいの〜」
「で、でも、五千円って、ビールとかなら千円札一枚で十分だろ?」
泰子が、うふふ、と笑っている。
「ビールだなんて、そんなんじゃなくって〜、シャンパよ〜。
ただのスパークリングワインじゃなくって、ちゃんとした本物のシャンパン。それを買って来て欲しいのよ〜」
「そ、そんなもん、どこで売ってるんだよ。こんな真夜中に…」
あるとすればコンビニだが、この近所のコンビニには、酒類もあるにはあるが、シャンパンとは別の
カバと呼ばれるスペイン産のスパークリングワインが精々だ。
「竜ちゃん、大橋駅前で二十四時間営業している食料品店があるでしょ? 結構大きなお店が…。
あそこなら、売ってるよ〜」
その店は竜児も知っていた。ただ、かのう屋とかの通常のスーパーで買い物を済ませてしまう竜児は、未だ利用した
ことがない。
「本当に手に入るのか? 何せ、ここからは遠いから、買い物の時間も考えると、往復で三十分以上かかる。
その挙げ句に売っていなかったりしたら、かなり悲惨だぜ」
しかし、泰子は自信たっぷりだ。
「大丈夫〜、だって、やっちゃんのお店でも、高いお酒を切らしちゃった時、そのお店まで若い子にひとっ走りして貰って
買ったことがあるんだよ〜。で、シャンパンとかも買ったことがあるから、その点は確かだって〜」
「でもよ、シャンパンの銘柄はどうすんだ? 泰子は何が飲みたい?」
「それも、竜ちゃんが予算内で好きなものを買ってきていいんだよ〜。竜ちゃんが選んだのなら、何だってオッケイさ〜」
「お、おう?」
泰子は、五千円札を握り締めたまま、未だに事態を完全に飲み込めていない自分の息子の背中を押した。
「亜美ちゃんは、やっちゃんが、ちゃんと看てあげるから、竜ちゃんは安心して、慌てずに、ゆっくり、のんびり、お買い物を
して来ていいんだよ〜。というか、さっきも言ったように、こっから先は男子禁制。やっちゃんと、亜美ちゃんの用事が終
わるまで、竜ちゃんは戻ってきちゃいけないんだよ〜」
「お、おう。分かった…」
竜児は手にした五千円札をデニムの尻ポケットにねじ込むと、スニーカーを突っかけて外にでた。体よく追い出され
た訳だが、実際、男の竜児では対処の仕様がなさそうなのだから仕方がない。あの泰子に任せるのはいささか不安だ
が、泰子とて無駄に三十年以上生きてきた訳ではない。それに、言葉は悪いが、長年水商売をやって来ている。
色がらみのトラブルへの対処の仕方は、並の母親よりも長けているのは確かだろう。
「はぁ…」
竜児は、大きくため息をつき、突っかけていただけのスニーカーに踵を入れて正しく履き直すと、
大橋駅へ向かう夜道を歩き出した。
「亜美ちゃん、入るよ〜」
泰子の声に、亜美は悪寒で震える身体を強張らせた。襖越しに竜児と泰子の会話は聞こえたから、覚悟はしたが、
いざ、竜児の母親である泰子に自分の身を預けることには、ためらいがあった。
それに、今の亜美は、全裸のままだ。その状態で、タオルケットにくるまって、臆病なチワワのように震えている。
「とにかく、暖かくしなくちゃね〜、タオルケットの上に、この毛布を掛けるからね〜」
部屋に入ってきた泰子は、背中を丸めて震えている亜美に毛布を掛けた。そして、タオルケットの中に隠れている
亜美の顔を覗き込む。
「恥ずかしがらなくっていいんだよ〜。竜ちゃんのお嫁さんになってくれそうな人は、やっちゃんにとっても娘みたいな
もんなんだからさ〜」
いや、それは嫁と姑の関係だろ、と突っ込みを入れたくなったが、顔を近づけてきた泰子と目が合ってしまい、亜美は
頬を赤らめた。
「具合は、どぉう?」
タオルケットの中に泰子の手が差し伸べられ、亜美の額に当てられた。柔らかくひんやりとした感触が心地よい。
「あ、あの…」
痛む場所が場所だけに、恥ずかしい。それは泰子も承知の上なのだろう。
「うん、うん、女の子にとって大切なところが痛いんだから、やっぱり恥ずかしいよね。じゃぁ、やっちゃんが、亜美ちゃん
がどんな風に痛いのか、言うね」
「え? そ、そんなぁ…」
「血は出てないけど、あそこの奥の方からお腹全体が絞られるように痛いんでしょ?」
「は、はい…」
その言葉に泰子が軽く頷いた。
「亜美ちゃんの病気は、膣痙攣だね〜。亜美ちゃんの大事なところが、痙攣しちゃってる。それで、お腹も痛いし、寒気も
するんだよ〜」
「え、ち、膣痙攣って?」
名前だけなら亜美も知っている。ただし、知ったのは漫画でだ。
その漫画は、落城寸前の城で殿様とその奥方が末期のセックスをしたはいいが、奥方が膣痙攣を起こして、二人は
つながったままになり、そのまま敵方に捕まり、つながったままで処刑されたというバカバカしい話だった。
だから、漫画のネタにしかならない、ある種の都市伝説のようなものだと思い込んでいた。
「いやぁ、若い子にはたまにあるんだよ〜。やっちゃんが毎日スナックで働いていた時は〜、お店の若い子が早引けして
エッチした時とか、やっちゃんのところに携帯で、助けて〜、っていうのが何回かあったんだよ〜」
「え? そ、そうなんですか」
「うん、で、ホテルとかに行ってみると〜、たいがいは女の子だけが取り残されてしくしく泣いていて、相手は逃げちゃっ
てたりすんだよね〜」
「ひどい…」
「その子たちの症状も、今の亜美ちゃんと同じ。おちんちんを入れた入れないとか、場合場合で違うけど〜、
みんな女の子の大事な部分がひどく痙攣してるんだよ〜」
泰子が、亜美の背中を優しく撫でてきた。
「で、どうして女の子の大事な部分が痛むのかって言うと〜、大抵はぁ、大きなおちんちんを見て怖くなっちゃったから
なんだよね〜。いきなりおちんちんとか見ちゃうと、あれって、結構おっかない感じだから〜、それで、女の子の大事な
部分が、おちんちんが入ってこないように勝手に痙攣して縮こまっちゃうんだよ〜」
亜美は、はっとした。そう言えば、挿入される直前に、陰部に竜児のペニスが撫で付けられた時、
その大きさを思い出し、途端に膣が痙攣したのだ。
「亜美ちゃんは、エッチ寸前になって〜、竜ちゃんのおちんちんが怖くなっちゃったんだね〜。やっちゃんは頭は良くない
けど〜、こうした女の子の大切なところについては、亜美ちゃんよりもよく知ってるからね〜。
だから、気を楽にしてやっちゃんに亜美ちゃんの大切なところを見せて欲しいんだよ〜」
「……」
亜美は、羞恥で全身が火照り、先ほどまでの悪寒を忘れるほどだった。
結婚を約束した竜児の母親に痙攣している陰部を看てもらうとは、前代未聞のシュールさだ。
「膣痙攣は〜、このまま放っておいても治ることは治るけど、それまでに、い〜っぱい、いっぱい痛い思いをしなきゃいけ
ない。やっちゃんはぁ、亜美ちゃんにそんな思いをして欲しくないから、亜美ちゃんのあそこを看てあげたいんだよ〜。
だから、恥ずかしいだろうけど、我慢してね〜」
泰子が微笑んでいる。その笑顔は、見るものを優しく包み込むような暖かさがあった。その慈愛に満ちた表情を前に、
亜美は思わず呟いた。
「ママ…」
泰子がにっこりと頷いた。
「うん、うん、竜ちゃんのお母さんであるやっちゃんは、亜美ちゃんのお母さんでもあるんだよ〜。だから、安心してね〜」
「は、はい…」
亜美は羞恥で肌を赤く染めながらも、ほっとするような懐かしい気持ちになった。この気持ちは、幼稚園に上がる前、
熱を出した亜美を母親の川嶋安奈が付きっきりで看病してくれた時と同じだ。
『女はみんな母になるのが夢なのさ』、と亜美は竜児に告げた。母とは、相手を優しく包み込むものだとも亜美は言っ
た。慈愛に満ち、亜美を思いやってくれている今の泰子は、亜美にとっても『母』そのものだ。
「じゃ、やっちゃんが亜美ちゃんの大事なところを看るっていうので、いいかな〜? それだったら、悪いけど〜、ちょっと
だけ待ってね〜、消毒用のお薬を持って来るから〜」
「は、はい、よ、よろしく御願いします…」
一旦自室に引っ込んだ泰子は、救急箱を片手に戻ってきた。
泰子は、その救急箱を開けると、ガーゼと消毒用エタノールの瓶を取り出した。
「じゃぁ、亜美ちゃん、恥ずかしいだろうけど、放って置けないから〜、まずは、あそこを綺麗に消毒しようよ〜。
そのためには〜、亜美ちゃんが身体の向きを変えなきゃ。ベッドの縁にお尻を乗せるようにして、やっちゃんの方に足を
向けてね〜」
「は、はい…」
先刻、竜児に陰部を嘗めて貰った時と同じ姿勢だ。顔から火が出るほど恥ずかしかったが、消毒のためならば致し
方ない。
亜美は観念して身体の向きを変え、そろそろと股を開いた。未だに痙攣し、きりきりと痛む陰部が泰子の目に晒される。
「じゃぁ、ちょぉ〜っと、ひやっとするかも〜」
と言うや否や、消毒用エタノールを含ませたガーゼが陰部にあてがわれた。しみるような刺激はなく、エタノールの
揮発で患部の熱が下がり、ほんの少しだけ楽になったような気がする。
「じゃ、ちょっと、拭き拭きするね〜」
消毒用エタノールを含ませたガーゼで、亜美の大陰唇、小陰唇、クリトリス、尿道口それに膣口が、くまなく拭われる。
それは単なる消毒なのだが、優しく繊細に亜美の陰部を這う泰子の指は、痙攣している亜美の陰部にも快楽という
刺激を与えてくる。
「どう? 少しは落ち着いた〜?」
「は、はい…。き、気持ちいいです…」
その言葉には、『陰部が消毒されてさっぱりした』とは別の意味も含まれていた。
「で、どう? あそこの痙攣は治まりそう?」
亜美は首を左右に振った。
「いえ、さっぱりはしたけどぉ、あそこは、かちかちに縮こまっちゃったままです…」
泰子はそれに頷きながら、ふふん、とため息をついた。
「それじゃあ、亜美ちゃん、今から、やっちゃんが亜美ちゃんの大事なところに指を入れるから。
亜美ちゃんは、リラックスっていうのかな〜、身体の力を抜いて、らく〜にしていてね〜」
「ええっ?!」
覚悟はしていたが、泣きたい気分だった。何が悲しゅうて、惚れた男の母親に性器を弄られるというのだろう。
それも、処女だというのに、膣に指を突っ込まれるのだ。
だが、べそをかいている亜美に対して、泰子は大まじめだ。
「大事なところに指を入れられるのは女の子にとってものすごく辛いことだけど、こうしないと、亜美ちゃんの症状は
治まらないから〜。だから、やっちゃんを信じて我慢してね〜」
「は、はい…」
涙目ながらも亜美が頷いたのを確認して、泰子は、人差し指に潤滑用のワセリンを塗った。
「やっちゃん、お好み焼き屋さん始めてから、爪は切ってるけど、それでも痛かったらごめんね〜」
亜美は、その泰子の言葉に、涙を流しながら事務的に頷いた。もう、どうにでもなれ、といった捨て鉢な気分だった。
泰子は、そんな亜美の表情を一瞥し、ワセリンを塗った指を、そろそろと亜美の膣に差し込んでいく。
その泰子の指は、ほんの二、三センチ進んだだけで、岩のように固まった肉の壁に阻まれた。
その瞬間、亜美は継続している痛みとは別の刺激を陰部に感じ、呻き声を上げる。
「ごめぇん、痛かった〜?」
「は、はい、ほんの少しだけ…」
一方で、泰子は、ちょっと困ったように眉をひそめている。
「亜美ちゃん…、言いにくいんだけど〜、亜美ちゃんの症状は結構大変みたい…」
「た、大変って…、じゅ、重症なんですか?」
「う〜ん、もっと大変な症状の子も居たから、亜美ちゃんが特別ひどいって訳じゃないけど〜、亜美ちゃんを治すには、
そうした重症の子にもやったげたことをしないと、ダメみたい…」
亜美はいよいよ不安になった。相当の荒療治ということなのだろう。
「そ、それって、痛いんですか?」
「そんなに痛くはないけど〜、ちょっと、女の子にとっては恥ずかしいことをされるから、亜美ちゃんが嫌だったら、
無理にはできないわね〜」
泰子の思わせぶりな言い方が、気になって仕方がない。
「ど、どんなことを、されるんですか?」
「う〜んとねぇ、亜美ちゃんは、あそこが緊張して、痛いんだよね〜?」
「は、はい…」
「だから、その緊張をほぐすの〜。やっちゃんが〜、亜美ちゃんのあそこをマッサージしたり、嘗めたりして、亜美ちゃんの
あそこからお汁が出てくるようにして、それから、また、指を入れて、中を広げていくのよ〜。
どお? これなら割とすぐに亜美ちゃんの痛みが引くと思うんだけど〜」
亜美は絶句した。勘弁してよぉ、と叫びたい気分だった。
「これが嫌だとすると、症状が治まるまでじっとしているか、救急車を呼ぶしかないけど〜、どっちも嫌でしょ〜? それ
にお医者さんでも〜、嘗められはしないけど〜、亜美ちゃんの大事なところを弄られるんだよ〜。それも嫌だよね〜?」
亜美はぞっとした。確かに、医者が脂ぎった中年親爺だったりしたら最悪だ。
そんな奴に、生娘である自分の身体が弄ばれるなんて…。想像しただけで鳥肌が立ってくる。
「や、泰子さんにお願いします。マッサージでも何でもして下さい。必要なら、な、嘗めてもいいです。
と、とにかく、よ、宜しくお願いします!」
それだけ叫ぶように言うと、亜美は、羞恥で真っ赤になった顔を両手で覆った。
「じゃ、いくよ〜」
泰子の柔らかな指でクリトリスが摘まれた。膣が痙攣しているというのに、電気のように痺れる感じが全身に走る。
「弄っているのが竜ちゃんの指だと思って〜、身体の力を抜いて〜、ただ、気持ちよ〜くなっていくことだけ考えていて
ね〜」
「は、はい…」
その泰子は、亜美のクリトリスを転がすようにマッサージしながら、別の指で亜美の大陰唇を広げ、
露わになった陰裂の内側をトレースした。
「あ…」
下腹部の痛みは相変わらずだったが、亜美の陰部に、ほのかな暖かさのような快感が、一本の灯火のように浮かび
上がった。
「亜美ちゃん、気持ちよくなってきたら、構わないから、声を出していいのよ〜。それと、よかったら、自分でおっぱいを
揉んでね〜。そうした方が、早く気持ちよくなって、亜美ちゃんのあそこからもお汁がいっぱい出るようになるからね〜」
クリトリスの包皮が剥かれ、その敏感な部分にヌルッとしたものが塗られた。
「ちょっと痛くないようにワセリンを塗っといたからね〜」
その滑らかになったクリトリスが泰子の指で弄ばれる。
「あ、ああ…、き、気持ちいいです…」
そう訴えながら、亜美は自ら乳房を揉み、乳首を摘んでいた。萎んでいたはずの乳首は、ぷっくりと膨れて、こりこりと
した弾力を亜美の指先に伝えてくる。そして、何よりも、乳首の刺激が泰子のマッサージと相まって、亜美に痺れるよう
な快楽をもたらすのだ。
「亜美ちゃん、少しずつだけど、お汁が出てきたよ〜。ワセリンの代わりに、出てきたお汁で、亜美ちゃんのお豆さんを
撫で撫でしてあげるね〜」
泰子の指が、じっとりと湿ってきた亜美の膣口付近をまさぐり、滴る粘液を受け止めた。その粘液が、剥き出しになっ
たクリトリスと、尿道口と、小陰唇の内側に、丹念に塗り付けられる。
「あ、あう、いい、いいですぅ…」
下腹部の痛みが帳消しになるくらいの、陰部から突き上げるような快感が亜美の全身を駆け巡る。それに呼応して、
全てを拒絶するかのように固くしまっていた亜美の膣にも変化が現れた。
「亜美ちゃん、亜美ちゃんのお汁、さっきよりも出がよくなってきているよ〜。この調子で、頑張ってね〜」
頑張るも何もない。亜美は快感に身悶え、快楽に身を委ねているだけだった。全裸であるにもかかわらず、もう、寒気
は感じなかった。それどころか、全身の性感帯がざわめき、熱を帯びたようになっている。
「う〜ん、あと一息って感じなんだよね〜」
そう呟くと、泰子は、亜美の陰部に顔を近づけた。そして、勃起して膨れ上がったクリトリスに接吻した。
「あああ、や、泰子さぁ〜ん!!」
充血して敏感になっている突起が強く吸われ、甘噛みされた。その瞬間、途方もない快感が、亜美の股間から脳天
へと貫通するように走り抜けた。
「う〜ん、いい感じかも〜」
泰子はなおも亜美のクリトリスを啜る。舌先で突起を弄び、時には軽く噛むことで、亜美を快楽へと誘おうとしていた。
その亜美は、涙と涎を垂れ流しながら、全身を走る快感に身悶えていた。
「や、泰子さん…、き、気持ちよすぎます。あ、亜美ちゃん、どうにかなっちゃいそう…」
息も絶え絶えに呟くように訴えた。それにつれて、下腹部を襲っていた差し込むような痛みが和らいでくる。
「ああ、亜美ちゃんのあそこが、なんか動いたみたい〜」
その実感は亜美にもあった。巌のようにあらゆるものの挿入を拒絶していた亜美の膣が、先ほどから滴ってきた
愛液で潤い、きりきりとした緊張が随分と緩和されてきたようだ。
泰子も頃合いと思ったのだろう。
「亜美ちゃん、そろそろ、亜美ちゃんのあそこに、やっちゃんの指が入りそうだから入れるね。やっちゃん、気を付けて入れ
るけど〜、もし痛かったら、正直に言ってね〜」
「は、はい…」
いよいよだ、と亜美は思った。そう言えば、先ほどから泰子に対して、『はい』ばかりを繰り返している。もう、完全に
泰子に身を委ねているのだ。その泰子の指が、亜美の膣口に擦り付けられた。
「いくよぉ〜」
ぬるっ、という粘っこい抵抗とともに、泰子の細い指が亜美の膣に侵入してきた。
泰子の指は、処女膜の開口部を通過し、そのままズブズブと亜美の胎内へと飲み込まれて行った。
「入っちゃたぁ〜。どう、亜美ちゃん、痛くない?」
「は、はい大丈夫です。全然痛くありません」
むしろ、泰子の指が気持ちいい。
「そう、よかった〜。じゃぁ、ちょっと亜美ちゃんのお腹の中が大丈夫かどうか、指でぐるっと触ってみるね〜」
言うや否や、泰子は人差し指の腹で、膣の粘膜を丹念に探った。時には、挿入した指を軽く曲げて、筋肉が不自然に
緊張していないかをチェックする。その泰子の指が膣の内部をまさぐる度に、ぞくぞくするような快感が亜美を襲う。
「う〜ん、だいぶよくなってきたみたいね〜」
「そ、そうですかぁ…」
泰子の呟きに、亜美はちょっと安堵した。実際、今は下腹部の痛みよりも、泰子から与えられる快感が卓越している。
「でも〜、未だ、ちょっと、亜美ちゃんのあそこが緊張しているみたいだから、最後の仕上げが必要なんだよ〜」
「さ、最後の仕上げって?!」
泰子はそれには応えず、亜美のクリトリスを強く吸った。
「あああああ、や、泰子さぁん! い、いきなりは、ダ、ダメですぅ〜」
クリトリスが風船のように膨れて、破裂するんじゃないかと思うほどの快感が炸裂し、亜美は絶叫して身をよじった。
しかし、泰子は泰然としている。
「うん、うん、だいぶよくなってきた〜。でも、こっからが最後の仕上げの肝心なとこなんだよ〜。
亜美ちゃん、もう、完全に力を抜いちゃって、とくにあそこの部分には、なぁ〜んにも力を入れないでいてね〜」
「は、はひぃ…」
快楽で朦朧としてきた亜美には、泰子が何をしようとしているのか見当もつかなかった。
こうなると、酸欠状態で口をパクパクさせている俎板の鯉も同然だ。
「じゃ、いくよ〜」
また、亜美のクリトリスが泰子に吸われ、甘噛みされた。その快楽に打ち震えている最中に、泰子の指が亜美の膣に
挿入される。それも、右の人差し指と、左の人差し指の二本同時だ。
「あ、や、泰子さぁん、ゆ、ゆ、指、二ふぉんはヤ、ヤバイでふぅ!!」
「大丈夫だよ〜。亜美ちゃんくらいの歳の子の処女膜って、けっこう柔軟だから〜、ちょっとぐらいじゃ破けないから〜」
「あ、い、いぇ、そ、そふりゃなくってぇ、き、き、気持ちが、よ、よ、よふってぇ…」
先ほど竜児の指が二本入った時と同様の違和感は感じたが、痛む寸前の違和感が、ある種、途方もないほどの
快感に転換されていく。
亜美が痛がらずに、むしろ快楽を覚えていることを泰子はほっとしたのか、先ほどの慈愛に満ちた笑顔を亜美に
向けている。
「今から、亜美ちゃんのお腹の中に入っているやっちゃんの指を左右に広げて、強張った亜美ちゃんの
あそこをマッサージするけど、痛かったら、すぐに言ってね〜」
快楽に溺れ、虚ろな目をした亜美が、物憂げに頷いたのを見届けてから、泰子は、ゆっくりと膣を構成する筋肉を
揉みほぐすように二本の指を膣の内部で広げていった。
「あ、あああああ!!」
腓返りしたふくらはぎをマッサージした時のような、強張った筋肉がほぐれる時に特有の激しい痛みに、亜美は悶絶
した。しかし、その痛みは束の間で、クリトリスへの刺激とも膣口周辺の刺激とも違う、じわっとした、暖かさを伴った
快感が膣の内部から全身へと、じんわりと広がっていった。
「気持ちいいのね〜?」
「ふぁ、ふぁぃ…」
その持続性がある暖かな快感は、どんどんと昂ぶっていった。
その快感に突き動かされるように、亜美は、乳首を摘み、乳房を揉み続ける。更には…、
「や、泰子ひゃん、あ、亜美ちゅわんの、お、お豆、す、啜ってくだひゃい。
あ、亜美ちゅわん、もっと、もっときもひよくなりひゃいでひゅう…」
怪しい呂律で泰子に訴えた。泰子は、笑顔を浮かべて、亜美のクリトリスを嘗めてやる。
「いひ、いひよふぉ、あ、亜美ちゅわん、きもひいいよふぉ」
目がかすみ、泰子の声が、どこか遠くから聞こえるような気がしてくる。
思考や理性は完全に喪失し、快楽を貪る本能だけが健在だった。
そして、その瞬間は、不意に訪れた。
「亜美ちゃん? 亜美ちゃぁ〜ん!!」
泰子が自分を呼ぶ声を微かに聞きながら、亜美は、無上の快楽と幸福感に包まれたまま意識を失った。
大橋駅前にある二十四時間営業の食料品店でシャンパンを買った竜児は、ゆっくりと家路についていた。
泰子に『男子禁制』と念押しされたので、本来なら三十分ちょっとで往復できるところを、たっぷり一時間ほど掛けて
きた。時間を潰すのも訳はなかった。シャンパンを買った二十四時間営業の店には、チーズ等の様々な欧州産の食品
が並べられており、竜児にとっては飽きない場所だったからだ。
ぼこぼこと大きなガス孔が開いたスイスのエメンタールチーズもあったから、冬場には、チーズフォンデュを作って、
亜美や北村、麻耶や奈々子たちに振る舞ってやりたいと竜児は思った。
竜児が手にした袋には、その店で買ったシャンパンと、そのシャンパンを冷やす氷が詰まったビニール袋が入れられ
ていた。氷はレジの店員が気を利かして入れてくれた。真夜中に酒を買いに来るのだから、当然にすぐ飲むと思ったの
だろう。
買ったのは、『Moet & Chandon Brut Imperial』。ありきたりの銘柄だが、予算内で何とかなるのはこれしかなかっ
た。とにかく、一般のワインに比べてスパークリングワイン、それもシャンパンはべらぼうに高いのだ。
そのシャンパンが入った袋を片手に、自宅の階段を上って、玄関を開ける。
土間に亜美の靴が出掛ける前と変わらずに履き揃えられていることを認め、竜児は、スニーカーを脱いだ。
家の中は静まり返っていた。亜美の容態はどうなったのか、泰子は何をしているのか、と竜児は不安になる。
耳を澄ますと、泰子の部屋から聞き覚えのある寝息が聞こえてきた。泰子は、どうやら寝入ってしまったらしい。
「やれ、やれ…」
竜児は、大きくため息をついて苦笑した。『男子禁制』と言い出した張本人が寝てしまっている。
何とも無責任な話だ。
「それに、どうすんだ、これ…」
竜児は、結露したシャンパンのボトルを袋から取り出してみた。
元々冷えていたのと、保冷用の氷のおかげで、ちょうど飲み頃という塩梅が保たれている。
「しょうがねぇなぁ…」
泰子がさっさと寝てしまったのは業腹だが、それも亜美に適切な処置を施したので、安心して寝たのだ、と思うこと
にした。であれば、『男子禁制』の戒めも何もない。
竜児はシャンパンのボトルが入った袋を持ったまま自室の前に立った。
「川嶋、入るぞ…」
返事はなかった。亜美も寝入ってしまったらしい。それとも、泰子の部屋で寝ているのかも知れなかった。
竜児は襖を開けた。
「川嶋…。お、お前、起きていたのかよ…」
照明を消し、窓辺からの月光に照らされた部屋の中では、ジャージ姿の亜美がちゃぶ台に向かって座っていた。
そのちゃぶ台にはシャンパン用のフルートグラスが二つ並べられている。
「電気も点けねぇで…。それよりも具合はどうなんだ?」
そう言いながら、蛍光灯のスイッチに手を伸ばしかけた竜児に反応するように、シルエットになっている亜美の姿が
微かに揺れた。
「あ、明かりは点けないで…。暗い方が落ち着くし、それに今日は、月の光がとっても綺麗…」
そう言って、窓辺から射し込む月光の方を向く。その月光で、亜美の端正な横顔が浮かび上がった。
竜児は、「しょうがねぇなぁ…」とぼやきながら、その亜美と差し向かいで座った。
「川嶋がそう言うなら、いいけどよ…、肝心の具合はどうなんだ? 寝てなくて大丈夫なのか? それとそのジャージ、
泰子のだよな?」
間近で見た限り、亜美の居住まいは落ち着いている。それを認めて、竜児は、ちょっと安堵した。
しかし、万事がちゃらんぽらんな泰子が処置しただけに不安は拭えない。
一方の亜美は、静謐な瞳を竜児に向け、顎を軽く動かして頷いた。
「泰子さんの処置が的確だったから、もう大丈夫。痛くないわ…。だから、寝ないで高須くんを待っていた。
それとジャージは泰子さんが貸してくれたの。これって、高須くんが中学生の頃に着てた奴だよね…」
「ジャージは、確かに俺のお古だ。それと…、症状が治まったようで一安心だが、結局、あの症状は何だったんだ?
男の俺にはさっぱりだ。それに泰子が的確な処置って、想像もできねぇな…」
亜美は、優美な口元をほんの少しだけ歪めて微笑した。
「膣痙攣ですって、あたしの症状は…」
「膣痙攣? エッチな漫画のネタじゃねぇのか? それ」
露骨に『何じゃ、そりゃ?』という顔をしていたのだろう、亜美が一瞬、くすり、と笑った。
「冗談みたいだけど、本当に膣痙攣だったの…。泰子さんが言うには、精神的なものなんだって。
高須くんのおちんちんがとっても大きいから、それで貫かれることが本当は怖かったのね…。
それで、不随意的に膣が痙攣して、高須くんのおちんちんが挿入されるのを亜美ちゃんの身体が拒んだんだわ…」
「何だか、結局、俺が悪いような…。なぁ、俺のペニスってそんなに大きいのか?」
「う、うん…。フェラした時だって、顎が痛くなったもん。あたし、高須くん以外の人のを知らないけど、絶対におっきいよ」
「お、おう…」
その時の興奮を思い出したのか、亜美は微かに頬を朱に染めている。それは、竜児も同様だ。
「でも、高須くんは悪くないから…。悪いのは、膣痙攣を起こしかけていたのにエッチを強行したあたし…。
やっぱり、高須くんが言ったように、体調が悪い時は無理しちゃいけなかったんだわ」
「でもよ、泰子にも言われたよな? 自分や相手を責めないこと、って。男と女は、互いに赦すってことが大事なんだ、
とも言っていたな。だから、川嶋は悪くねぇ、そして、俺も免責される。これでいいじゃねぇか」
亜美が、ふっ、と嘆息した。
「そうね…。お互い自分が悪かったって、言い合っても不毛よね。あんたのことを内罰的だって言ったけど、
あたしも似たようなもんだわ…」
「俺たちは気が合うんだろ? だから、いろんなところが似ている。そういうことさ」
「うん…」
竜児の目が暗い部屋に慣れてきた。窓辺から差し込む青白い月光が美しい。竜児は、亜美が電灯も点けずに暗い
部屋で竜児を待っていた理由が分かるような気がした。
心待ちにしていた竜児との初体験、その無惨な失敗、そして膣痙攣による痛み。
我が身に起こったことを反芻し、気持ちに整理をつけるには、刺々しく輝く蛍光灯下ではそぐわない。竜児が亜美の
立場だったとしても、同じように月明かりの下で相手を待ったことだろう。
「泰子さんにも言われちゃった…。いきなり、おちんちんを入れないで、二人して互いの身体を十分に弄くって、
セックスに対する恐怖感がなくなってからにしなさいって」
「お、おい! いきなり何を言い出すんだ」
亜美は悪戯っぽく笑っている。竜児は、亜美の淫乱ぶりが再発したのかと思い、ちょっと身構えた。
「基礎や基本を、まずは習得しなさい、ってことじゃないかしら? 泰子さんが言いたかったことって…。受験勉強時代
にあんたが散々言っていたこととも符合する。だから、泰子さんの言うような練習をして、挿入ってことでどうかしら?」
「ど、同意を求められても、こ、困るけどよ…」
本当は、竜児だって亜美との抱擁は心が踊る。亜美の口唇のみならず乳房や陰部を愛撫し、啜ったことを思い出す
だけで、股間が熱く怒張してくるのだ。それを、ポーカーフェースを心がけて、押し殺した。
しかし、顔色の変化は誤魔化せない。
「あ〜っ! あんた顔真っ赤。本当は亜美ちゃんを抱きたいんでしょ? 根はスケベなんだからぁ!」
「バ、バカ言え! そ、そんなこたぁねぇよ…」
竜児は、半ば反射的に否定の言葉を口にしたことを後悔したが遅かった。
亜美の双眸が、すぅ〜っ、と細められた。お馴染みの性悪笑顔。竜児を『嘘つき』と追求するつもりなのかも知れない。
だが、亜美による攻めの一手は、斜め上を行っていた。
「ふ〜ん、そうなんだぁ〜。高須くんは、亜美ちゃんとのエッチなエチュードがつまんないのねぇ。
それならしょうがないなぁ〜」
「何がしょうがねぇんだよ」
「う〜んとねぇ、高須くんにやる気がないんなら、泰子さんにしてもらおっかなぁ〜ってね」
「な、何で、いきなり泰子の名前が出てくるんだよ!」
目の前で性悪そうにニヤニヤじている亜美の狙いが掴めず、竜児は狼狽した。ただ、確かなのは、間もなく亜美が、
とんでもないことを言い出すに違いない、ということだ。これは、彼女との密な付き合いで、竜児は嫌というほど思い知
らされている。
「そういえば、泰子さんがあたしに施した、『適切な処置』について説明していなかったわよねぇ」
「お、おぅ…」
鈍い竜児にも展開が何となく見えてきた。
「膣痙攣で苦しむあたしを、泰子さんは、献身的なマッサージで癒してくれてぇ…。その時のマッサージが本当に気持ち
よくてぇ…。もう、別段、高須くんに何かをしてもらわなくたっていい感じなのよねぇ」
「け、献身的なマッサージって、な、何なんだよ」
「高須くんて、バカ? 膣痙攣の患部ってどこ? そんだけ言えば分かるでしょ? 普通…」
亜美が頬杖を突き、目を輝かせて、竜児を見ている。
きわどい話で竜児を翻弄するというのも、彼女にとっては、心を躍らせる一時なのだろう。
「や、泰子に、お前は、あ、あそこを、マ、マッサージしてもらったんだな?」
亜美が、うふふ、と妖艶に笑いながら頷いた。
「そうよぉ〜、もう、泰子さんの指やお口が気持ちよくってぇ。もう、百合の道に走っちゃいそう…。特にぃ、お豆を啜って
貰いながら、あそこに指を入れられて、広げられた時は、亜美ちゃん昇天しちゃうかと思ったくらい。
これって、マジだからね」
ほんの一瞬だが、亜美の表情が、自分の話に嘘や誇張がないことを示すが如く、キリッと引き締まったような気が
した。実際に泰子は、亜美の陰部を愛撫して、その結果、亜美は快楽のあまり失神したのだ、と竜児は察した。
「お、おい! お前ら、女同士で何やってるんだよ!1」
竜児にもその光景が目に浮かぶ。何のことはない。先刻、竜児が亜美に対してやったことを、もうちょっと過激にした
だけなのだから。それにしても、治癒目的とはいえ、泰子もとんでもないことをする、と思わざるを得ない。
「泰子さんの行為が、もんの凄くエロくて、もんの凄く気持ちよくってさぁ〜。もう、男はいらねって感じぃ?
まぁ、高須くんが亜美ちゃんとのエッチなエチュードを忌避するようなら、あたしは泰子さんに開発して貰ってぇ、
高須くんとはプラトニックな関係でいくけどぉ?」
「シュール過ぎて、正直、俺にはついていけねぇよ…」
脂汗が吹き出ている竜児に亜美はにじり寄り、その耳元で囁いた。
「どう? 嫁と姑の禁断の愛と肉欲。萌えるでしょ?」
「萌えねーよ!」
「あ、それとも妬けた? 自分の嫁になるはずの女が、自分の母親と同衾する。これって、何て、みじめって」
「妬けねぇーよ! それに何だ、『同衾』ってのは、男女の間柄を表現する時しか使わない言葉だぞ」
亜美は、そんな竜児を、鬱陶しそうに半開きにした双眸で一瞥し、唾棄するかのように、舌打ちした。
「ほーんと、あんたって、衒学的で細かい男よねぇ。まぁ、それがあんたの魅力の一つでもあるんだろうけどさぁ」
そう言って、更に竜児との間合いを詰めていく。亜美の妖艶な笑みが竜児の目と鼻の先に迫る。
「な、何だよ、キスでもするつもりか? きゅ、急に、顔を近づけてきやがって」
竜児の注意が、キス寸前にまで迫った亜美のバラ色の口唇に逸らされている隙に、亜美の繊細な指先は、勃起した
竜児のペニス、その敏感な亀頭部分を布地越しに摘み上げていた。それも、結構な力を込めて。
その愛撫というよりも加虐と呼ぶべき蛮行に、竜児はたまらず苦悶の表情で呻いた。
「ほぉ〜ら、何だかんだ言っても、あんたも所詮は男なの。エロい話に興奮して、おちんちんをおっ立てる雄なんだからさぁ」
「今のは、マジで痛かったぞ…。役に立たなくなったら、ど、どうすんだ…」
「あたしとのセックスを嫌がるようじゃ、いっそ役に立たない方がいいわね…」
「お前なぁ…」
支援
亀頭は未だにズキズキと疼いている。今しがた亜美につねられたせいもあるが、膣痙攣を起こしている亜美の膣口
に体重を掛けて無理に挿入しようとしたのが、今も祟っているようだ。
こんな状態でエッチの予行演習なんか冗談じゃない。
しかし、亜美は、竜児に、いくぶん冷たさを湛えた妖艶な笑みを向けている。
「あたしたちは、『つがいの鴉』なんでしょ? 『つがい』ならそれにふさわしく、雄は雌を抱き、雌も雄に抱かれるものじゃ
ない。お分かり?」
「お、おう…」
「だから、あたしたちは、互いに時間さえ許せば、抱き合って、愛し合って、互いが潜在的に持っているセックスへの
ためらいを解消すべきなんだわ。キスして、ペッティングして、フェラして、あたしはクンニをしてもらって、それを十分に
やって、エッチの基本を習得してから、あたしたちは結ばれるの」
「キスはともかく、ペッティングとか、フェラとか、クンニとか、何げに凄いこと言ってるな…。
お前、そんな過激なことが、今すぐにでも、できるのか?」
竜児の指摘に、遅まきながら羞恥したのだろうか、亜美は、一瞬、目を伏せた。
だが、それも束の間、今度は逆に開き直ったのか、睨み付けるように双眸を大きく見開いた。
「でもぉ、実際にそうとしか言いようがないんだから、しょうがないでしょ!」
吐き捨てるように叫んだが、はしたない言動を悔いているのか、亜美は、唇を噛んで心持ちうつむいた。
それは、一見、少女らしい恥じらいのようだった。だが、頬にあるべき朱の色はなく、翳りのある心持ち青白い面相が、
何かに怯えるように小刻みに震えていた。
竜児は、なるほど…、と得心する。
「お前は、互いに時間さえ許せば、抱き合って、愛し合う、と言ったな? なら、今、ここでやるのか? どうなんだ?
ちなみに、俺だったら、望むところだ。何なら、遠慮なく、お前の膣にぶち込んで、たっぷりと精液を注いでやるぜ…」
竜児なりのブラフだった。実際は、巌のように堅固だった亜美の膣口に何度も突撃したことで、竜児の亀頭は腫れ
上がり、勃起しただけで疼くように痛む。
この状態で、亜美が性行為に応じたら、竜児としては、ちょっとまずい。
だが…、
「えっ…? ちょ、ちょっと、た、高須くん!」
亜美は、月光で青白く浮かび上がった面相を歪め、狼狽した。
褐色の瞳が色を失い、その眉が苦しげにひそめられている。
亜美は、竜児とは比較にならないほどのダメージを受けている。その身体が、たとえ予行演習であっても、性行為の
類に耐えられるはずがないと竜児は踏んだ。
「どうなんだ? 何なら、今すぐ、さっきの続きをするんだが…」
畳み掛ける竜児に、亜美は思わずうつむいた。その反動で、艶やかな髪が揺れ、窓辺からの月光で煌めいている。
時間にして、ほんの五、六秒。しかし、気詰まりな沈黙の後に、亜美は、ぶるぶると悪寒のように両肩を震わせた。
「う、うん…、た、高須くんが望むなら、い、いいよ。言い出しっぺは、あたしだから…」
うつむいていた亜美が、そう言って、ためらいがちに顔を上げた。
病み上がり特有の儚げな雰囲気が、いつにない妖しい色気を醸し出している。そんな風情も掛け値なしに美しい。
「川嶋…」
竜児は、その亜美の頬を両の掌で優しく包み込んだ。
「俺も、川嶋の気持ちがよく分かったよ…。川嶋の言う通りなんだ。本当のセックスをするまでに、いろいろと二人で
練習しなきゃいけねぇ。これは確かなんだ…」
「う、うん…」
「なぁに、俺はもう、逃げも隠れも尻込みもしねぇ。お前がエッチなことをしたい、って言うなら、その要求には応える
つもりだ。ただし、お前の体調が優れねぇ場合は別だ。そんな状態で、お前が無理したら、泰子が言ったような互いが
相手を癒すようなことにはならねぇ」
「で、でも…」
亜美が、安堵とも竜児への非難とも判じ難い趣きで、双眸を真ん丸に見開いた。
竜児は、そんな亜美をなだめるつもりで、その頬を優しく撫でてあげた。
「なぁに、俺みたいな鈍い奴でも、分かったのさ。お前は、性行為に乗り気でない俺を、その気にさせるために無理して
いたんだって…。お前も俺も、今日という日は本当にいろいろな経験をして疲れている。疲れた身体で、義務的に交わ
ることもねぇだろう。明日があるさ…。お前の言う練習は、明日でもいいじゃねぇか…」
「う、うん…。ありがとう、高須くん…」
亜美は再びうつむいて鼻を啜った。暗がりではっきりしなかったが、涙ぐんでいたのだろう。
竜児は、そんな亜美を抱き寄せ、その背中をさすってやる。
「もう、ゆっくり休もう。ベッドが狭いけど、二人並んで寝られるなら、俺は嬉しいよ」
「う、うん…。で、でも…」
亜美は、ちゃぶ台の上に並べられた二つのグラスを指さした。
「そういえば、シャンパン用のグラスじゃねぇか…。こんなもの家にはなかったはずだが…」
「泰子さんが、あたしたちのためにお店から持ってきたんだって」
「泰子が? なぜ? 何のために?」
亜美はうつむいたまま手の甲で目頭を拭うと、大きくため息をついた。
「あんたって、本当に察しが悪いのねぇ…。
これは泰子さんなりの気遣い。まだ完全じゃないけど、苦しみながらも結ばれた、あたしたちへの祝福なのよ」
「じゃ、こ、これもか?」
竜児は袋からシャンパンのボトルを取り出した。保冷用の氷はほとんど解けてしまっていたが、ボトルは触れた指が
かじかむほどに冷えていた。
「それ以外にないでしょ? 泰子さんが、あたしたちを祝って、奢ってくれたんだわ」
そう言って、ちょっと納得がいかずに、憮然としている竜児の手からボトルを取り、ちゃぶ台の上に置いた。
「Moetかぁ…。定番よね」
「予算内ではこれしか買えなかった。シャンパンって本当に高いよな…」
亜美は、物憂げにため息をつくと、分不相応の買い物を悔いている竜児の鼻先を突っついた。
「祝い酒だから、少々高いくらいの方が有難みがあるってものよ。それに、今は高いと感じるけど、弁理士になって、
それなりの評価を受ければ、違ってくるわ」
「そうだな…。だが、俺がそうなれるだろうか? 前途は多難だぜ…」
「大丈夫だってぇ! あんたは内罰的で、自己を過小評価しすぎ。あんたぐらいポテンシャルの高い男はそうはいないよ」
竜児は苦笑した。成果に比して正当な評価がされ難かった竜児だが、ここに一人、その竜児を信じ、評価してくれる
女性がいる。それが、何だかこそばゆかった。
「何よ、ニヤニヤして気味悪いわねぇ。それよか、せっかくの泰子さんの好意なんだから、有難く頂戴しましょう。
あ、未成年だからダメ、っていうような無粋な突っ込みはなしね。今回は保護者の公認なんですもの」
「いや、そうは言わねぇけどよ…。ただ、川嶋の体調を考えると、アルコールはまずくないか?」
亜美は、あくまでも慎重な竜児に、笑顔を向けながらも嘆息した。
「出血していたらアルコールはよくないけど、そうじゃないからねぇ。むしろ、酔った方がぐっすり眠れるってもんだわ」
「そういうもんかねぇ…」
「そういうもんなのぉ! グダグダ言わない」
理屈が合っているんだか、いないんだか、よく分からなかったが、ここで祝い酒に反対して、亜美の機嫌を損ねても
後味が悪い。
「なら、川嶋が開けてくれ。こうした華やかなもんは、お前の方がふさわしい」
だが、亜美は笑顔で首を左右に振り、ちゃぶ台の上にあるボトルを竜児に手渡した。
「あんたが抜きなよ。こういう儀式めいたものは、女房じゃなくて、亭主の専権事項なんだからさぁ」
「お、おう…、ってまだ、そう呼べるのは、先の話だぞ」
「もう、あたしたちの行く末は決まっているの。後は、それを実現するために努力する。それだけのことなんだわ…」
「そうだな…。俺は、川嶋にふさわしい男になるために、川嶋は、川嶋を局アナにしようとしているお袋さんの思惑を
粉砕するために、それぞれ弁理士になる。そういうことなんだ…」
竜児は、ボトルの先端を覆う金属箔を破り、コルクを固定している針金を指先で捻って外した。
「川嶋、ちょっとティッシュを二、三枚ほどくれ」
亜美は、手近にあったティッシュボックスからティッシュペーパーを引っ張り出すと、それを竜児に手渡した。
「ティシュなんか、どうすんのさ?」
「コルクがすっ飛ばないように覆うのさ。
コルクを景気よく飛ばすのは下品だし、何より、シャンパンの風味が落ちるからな」
そう言いながら、竜児は、そのティッシュペーパーでボトルの先端を覆った。
「酒は飲まないくせに、こうしたことは抜かりなく理解しているのね」
その亜美の賛辞とも皮肉とも受け取れそうな一言に、竜児は三白眼を細めて、にやりとしながら、ボトルの首の部分
を順手に持ち、親指で押し出すようにして、ティッシュペーパーで覆ったコルクに慎重に力を加えた。
コルクが少し動いたのを見計らい、今度は、そのコルクをもう一方の手で慎重に抜き取っていく。コルクは、ぽこん、
と軽やかな音を残して、ティッシュペーパーに包まれたまま抜き取られた。
その刹那、ボトルの内部に、きめ細やかな泡が、ぽつぽつと湧き上がる。
「綺麗ね…」
「ああ、無数の星のようだな…」
竜児はシャンパンを二つのグラスに注ぎ分けた。薄黄色の液体とグラスの界面が穏やかに泡立ち、虚空のように
静寂な室内で、その泡が弾ける音だけが微かに聞こえてくる。
「我らが同志に乾杯だ…」
グラスを軽く合わせた後、二人はグラスの中身に口をつけた。ぴりっ、とした炭酸の刺激と、強い酸味に相まって、
葡萄本来の新鮮な香りと、発酵で生じたエステルのような優美な香りが口腔と鼻腔をくすぐる。
「美味しいわ…。ちょっと不本意だったけど、あたしたちの門出、それを祝福する味わいなのね…」
竜児は頷きながら、ちゃぶ台の上にノートパソコンを置いた。
「どうしたの? パソコンなんか持ち出して…」
「唐突だけど、飲みながらでいいから、ちょっと見て欲しいものがあってな…」
スイッチを入れると、ハードディスクにアクセルする、カリカリという何かを引っ掻くような音がして、ユーザ名を入力
する画面が表示された。ユーザ名を入力すると、パスワードを入力する画面に変わる。
パスワードを入力してエンターキーを叩くと、Windowsとも、MacOSXとも異なる、OpenSolarisのGnomeデスク
トップが表示された。竜児は、その画面でブラウザを立ち上げ、特許庁のホームページにアクセスし、そこからリンクを
辿って、法令が公開されているサイトにアクセスした。
そのサイトから、特許法を選択する。
「条文集があるのに、そんなサイト見ても意味ないでしょ?」
訝るような亜美の反応を、「まぁ、見てろって」とあしらいながら、竜児は特許法第二十九条の二を表示し、その条文
をコピー。それを、別途立ち上げたOpenOffice.orgの新規ファイルに貼り付けた。
「多くの受験生を悩ませている『ニクのニ』じゃない…」
早くもほろ酔いになったのか、目を気だるそうにトロンとさせた亜美が、物憂げに宣った。
「そう、さっきも川嶋が、可読性が悪すぎる、って文句言ってたあれだよ。その可読性の悪さは、かっこ書がいくつも
挟まっているからなんだよな?」
「そうね、頭でっかちの構文自体もいただけないけど、一番どうしようもないのは、そのかっこ書の存在よね」
竜児は頷きながら、そのかっこ書の部分をドラッグし、フォントの色を黒から薄いグレーに変えた。
「こうすればどうだろう? 可読性を妨げていたかっこ書が目立たなくなって、読みやすくなる。そうなると、この条文が
意味するところは、結構単純だよな。要は、出願後に公報等で公開されてしまった発明と同じ発明は、『前条第1項の
規定にかかわらず』、つまり新規性を有していても、『特許は受けられない』ってことになる」
「本当だ…。すごく分かりやすくなる。これなら、条文の本文を読みやすいし憶えやすいよねぇ…。
それに、色を薄くした方が、かっこ書はかっこ書で、まとめて読めるようになる。あんた、やっぱりただ者じゃないよ!」
亜美は、肘で竜児の脇腹を軽く小突いて、微笑した。
「それとだ、こうやってフォントの色を変えた条文だが、これを条文毎にカードか何かにプリントしたらどうかと思うんだ」
「英単語みたいにカードにするの?」
竜児は軽く頷いて、OpenOffice.orgの用紙設定を葉書サイズに切り替えた。
「条文集を読んでいて思ったんだが、条文集はすぐ隣の条文が無意識に視野に入ってくるから、条文単位で憶えにく
い。どうしても隣の条文が見えちまうんだな。それも一つの条文を一つのカードにプリントしておけば、他の条文は気に
せずに、その条文だけをじっくり読んで理解することができるだろう」
「ほんとだ、こうして、かっこ書をグレーで薄く表示して、それをカードにすると、気軽に持ち運びもできるし…。あれ?
でも、葉書サイズって、ちょっと大きくない?」
「俺のプリンタで確実に印刷できる最小のサイズが葉書サイズなんだよ。これよりも小さいサイズのカードも使えるかも
知れねぇが、ちょっと、怪しいな…。それに特許法とかは一つの条文が長いから、小さなカードじゃ収まりきらない。
この二十九条の二だって、フォントを十ポイントにして何とか葉書サイズに収まる程度だ」
亜美は、ふぅ〜ん、と呟き、画面に見入っていたが、何かを思い出したように竜児に向き直った。
「ねぇ、明日っていうか、今日は高須くんは何か予定あるの?」
「いや、特にねぇけど…。強いて言えば、この条文のカード化をやろうか、とは思ってる」
「だったらさぁ、あたしも手伝うから、明日は手分けして、特許法、実用新案法、意匠法それに商標法の条文をカードに
しようよ。条文はものすごくたくさんあるから、一人よりも二人で作業した方がいいって」
「そうだな、パソコンは、このノートと、デスクトップがあるから、俺と川嶋が同時に作業できるし…」
亜美は、「え〜っ、あれぇ?」といって、笑いながらもちょっと眉をひそめた。
「このノートも、あのデスクトップもUNIXじゃん。亜美ちゃん、そんなヲタ向けのOS使えねぇし…。
だから、一旦自宅に戻って、自分のMacBook持って来るわよ」
竜児は、苦笑した。
「川嶋、お前のMacBookのOSだって、UNIX系OSだってのを忘れてるぞ。MacOSXは、俺のデスクトップパソコン
にインストールされているFreeBSDによく似たDarwinがベースなんだからな」
竜児のもっともな指摘に、亜美はむっとして頬を膨らませた。
「こういうことには聡いのね。そのくせ、女心の機微には疎い。ほ〜んと、どうしようもない…」
「まぁ、むくれるなって。どっちにしろ、仮眠をとったら、川嶋は一旦自宅に戻った方がいい。
その方が、伯父さんたちも安心するだろう。作業は、川嶋が自前のパソコンをここに持ってきてからだな」
「うん…」
二人は頷き合って、グラスの中身を飲み干した。
竜児が二杯目のシャンパンをそれぞれのグラスに注ぐ。窓辺からの月光でグラスに生じた泡が、白く輝いた。
「ねぇ、せっかくの月夜だから、ちょっとベランダに出てみない?」
「そうだな…。俺もちょっと夜風に当たりたくなった」
グラスを持って立ち上がった亜美を、竜児は、グラスとシャンパンのボトルを持って後を追う。
外に出てみると、満月よりも歪な月が、壁のように立ちはだかるマンションに遮られることなく、西寄りの虚空に煌々
と輝いていた。
「こんなことは珍しいな…。大概はこのマンションで遮られてしまうんだが」
「そうなんだ…。明け方近くになって、月の位置が西寄りになったのに加えて、このマンション、西側がちょっと低くなって
いるのかも知れないわね…」
「そうかも知れねぇな…」
二人は、西の彼方に見える月に向かってグラスを捧げ、二度目の乾杯をした。
「満月じゃなさそうなのが残念ね…」
「多分、いざよい、だろうな」
「いざよい、って?」
「十六夜って書いて、いざよいと読む。いざよいの元の意味は、『ためらい』なんだが、月の出が十五夜よりやや遅く
なるのを、月がためらっていると見立てて、十六夜に、いざよいの読みが当てられたそうだ」
「あんたって、本当にいろんなこと知ってるのね…」
説明する竜児の傍らで、亜美が笑っている。
「お、おぅ…。ちと、余計な一言だったか?」
亜美は首を左右に振って、微笑んだ。
「あんたのその理屈っぽいところ、あたしは嫌いじゃないよ。話していて飽きないし、何より、あたしも勉強しなくっちゃ、
て気にさせてくれるし…」
「そんな…、俺如き大したもんじゃねぇ…。でも、川嶋にそう言って貰えると、正直嬉しいよ」
ほろ酔いで、ほんのり桜色に染まった頬を竜児の肩に擦り付け、亜美は、うふふと笑った。
「それにしても、いざよいかぁ…」
「それがどうかしたのか?」
「うん…。何だか、あたしのことみたいで、ちょっとね…。
高須くんと結ばれたかったけど、いざとなると、ためらいがあった…。それで、あんなことになっちゃったんだわ…」
「だがよ、ためらいがあるから、立ち止まって考え直すこともできる。
ためらいがあるからこそ、それを振り切って決断する価値がある。そんな風にも考えられねぇか?」
竜児は、ボトルに残ったシャンパンを亜美のグラスと自分のグラスに注ぎ分け、
空になったボトルをベランダの床に置いた。
「そうね…。ためらいながらも、あたしたちは前に進む。そういうことなのね…」
竜児と亜美はグラスを合わせて、残りのシャンパンを飲み干した。
空を見れば、十六夜の月は地平近くに傾き、東の空が暁を迎えようとしていた。
「見ろよ、十六夜の月に代わって日が昇る。俺たちもそうさ。今は、いろいろと迷いながら進んでいるが、いつかは日の
目を見る。それを信じるしかねぇ…」
「高須くん…」
「明日があるんだ。俺はそれを信じて頑張るよ」
「う、うん…。頑張ろう…」
グラスを手にしたまま、竜児と亜美は抱き合い、瞑目して口唇を重ねた。
快楽に酔い、陶然となった亜美の手からグラスが滑り、床に当たって砕け散った。
それでも二人は、薄闇が茜色に染まりゆく中、忘我の境で互いを求め合うのだった。
(終わり)
日記はカオス過ぎるから原作竜児みたいにはいかない状況だろ
361 :
SL66:2009/05/23(土) 10:55:12 ID:KJ6ccYa+
以上です。
途中、支援してくださった諸兄に感謝致します。
本業が多忙で次回作がかなり怪しいですが、
一応は、あと、長編2作で完結です。
>>361 いざよい乙
相変わらず大量投下だ
やっぱ女の子は大変だなあ、としみじみ思ってしまう、生理とか出産とか色々。
それをしっかり気遣える竜ちゃんマジ男前。
GJ
日記はもうとらドラじゃなくていいんじゃね?って思う
使ってる設定の方が少ないよ
>>280 >>270 ……分からねえ……どいつもこいつも何で自分の髪の長さを気にしてんだ。
>>200で春田の口から眞鍋かをりの名前が出たからかな?
>>199 多分この竜児と春田のやり取りが振り?
SLさんお疲れっした!
やっちゃんの全てを受けとめる博愛っぷりが素敵だなぁ。
こんだけ投下されて満足なんだけど、あえて言いたい。
・・・ななドラの作者さん、新作マダデスカ・・・
SLさんGJです!
やはり格が違うというかなんというか。
久々に素晴らしい長編を楽しませていただきありがとうございました。
続編も楽しみにお待ちしております。
>>365 あー、なるほど。大河とみのりん以外がその場に居て、高須と春田のやりとりに聞き耳立ててたのか。
こんな簡単なネタを読み落とすとは、なんたる不覚……
補完庫に×××ドラ置いてくれ
一応13皿目なんだからまとめてくれてもいいだろ?
GJ!
ええなあ、なんかええなあ。
お忙しいでしょうが楽しみにしてますんでまた続きよろしくお願いしまっす!
起きたら2作品ともきていた、お二人ともGJであります
容量はもう400こえたのなw
弁理士受験生の俺ポカーンw
俺はお前の「のみ品」だからとか言ってみたい。
今16皿目読み終わった。arl職人GJ!!
そして補間庫GJ!!補間…w
ちょwもうスレの容量が400超えとるw
375 :
98VM:2009/05/23(土) 21:39:49 ID:rVbRoeFh
こんばんは、こんにちは。 98VMです。
SL66様、流石のGJです。
で、百合と失神で思い出した。
補間庫で確認したら…
やっぱ投下忘れてましたww
前提: みのりんルートアフター
題名: Carnation,Lily,Lily,Rose 3
エロ: 無し
登場人物: 亜美、大河、オリキャラモブ
ジャンル: 学生生活
分量: 11レス
大きくて、その大きさの割には妙に薄い画面の中に、艶のある繊細な黒髪がドアップで映っている。
ロングヘアーをたくし上げると、うなじが露になり、
「うぶ毛までクッキリみえる、ありのままにキレイに映る。」 ナレーションが入る。
そして、黒髪の持ち主の少女が歩き始め、その姿をカメラは真横やや上、いわゆる『恋人視点』で捉える。
少女は視線に気がついたように目線を合わせると、立ち止まり微笑みながら、ほんの少し前かがみになって、
―――襟元から、胸の谷間が僅かに覗く――― 「ありのままの私を、見てね。」
「へーー。 これが新CMなんですかー。 相変わらず、信じらんない位綺麗だなぁ…。」
いつもの喫茶室の一角、M男先輩のネットブックの小さな画面をみんなで覗き込んでいる。
あたしもコレはかなりキてると思う。 自分で言うのもなんだが、これでくらっと来ない男なんか、それこそ高須君
以外いないっしょ、って感じ。 さらさらとこぼれる髪はシャンプーの香りが漂ってきそう。 表情も凄く自然で虚飾
が無い。 伊達に20回以上撮り直してないわ、っていうのは秘密にしとこう。
「最近はネットで先に公開ってのも増えてきたな。で、姫、これはいつからTVでやるんだ?」
「来週の日曜からです。 夏モデルでは各社の最後発になるって聞いてます。」
「ふーん。 ばかちー、あんたなかなかやるじゃない。 うん、血統書つきって感じだわ。 これでこのTVが売れて
くれたら、まぁ、ブリーダーとしては鼻が高いわね。」
「いや、これは売れるだろう。 純粋に機械としても、技術的ブレイクスルーを果たしてるからな。 ところで、姫、
下世話な話だが、これでいくらもらえるんだ?」
「えっと、事務所に入るのはコレくらいですね。 あたし、安いんです。」 と言って指を3本立てる。
「総合家電トップメーカーにしては安くないか? それ。」
「3百万ですか!」 桐子ちゃんが驚いている。 彼女的には大金なんだろうけど、ゴメン、いくらなんでもあたし、
そこまで安くはないんだよね。
「桁が一つ違うぞ、桐子君。 姫の体がそんなに安かったら俺が買う、ぐほぁ。」「M男はキモイこと言うな。」
すっかりタイガーはM男呼ばわりしている。
お陰で、タイガーの凶暴性もサークル内では周知の事実になってきた。
「痛いじゃないか、タイガー。 だが、それがいい。」 …でも、この人にだけは通じないんだよね…。
一方、桐子ちゃんはやっと金額を咀嚼できたみたいで、あたしをオバケでも見るような目で見てた。
「桐子ちゃん、あたしがその金額貰えるわけじゃないよ? あたしの今年の年収はその半分くらいだと思う。」
「………」
それでもやっぱり、彼女にとってはモンスターに見えるみたいだった……。
「おっと、姫のCMに見とれて忘れるところだった。 会長から通達があったぞ。 夏休み恒例の温泉旅行、企画
運営は桐子君に白羽の矢が立った。」
「ほぇ?」 素っ頓狂な声を上げる桐子ちゃん。 いつも眠そうな目は、でもやっぱり眠そうだった。
「えーと、それだけ? 桐子君?」 いや、多分、今彼女の頭ん中は真っ白だと思うよ、M男先輩。
「………………」「桐子君?」
「ええええええええええ! ほんなの、わだしでぎねっ で、す…。」 真っ赤になっちゃったよ。 訛り可愛い〜。
「心配するな、逢坂、川嶋の両名が全面的に君を助けてくれるから。」
「「は?」」
Carnation,Lily,Lily,Rose Scene.3
「えっと、どうしよう…。」
「そんなの、私に聞かないでよ。 こんなことしたこと無いもん、わかんないわよ。」
で、二人して、なんであたしの方見るんだっつの。
丁度3人とも講義の無い時間が重なったので、屋上テラスで会議中なんだけど、残念ながら、揃いもそろって
そういう事には慣れてない。
あたしは自分一人ならいくらでもプラン作れるんだけど、団体行動ってのはちょっと苦手。
桐子ちゃんは面倒見がいいのは実証済みなんだけど、個人旅行の経験自体が無いらしい。 タイガーは、まぁ論外。
「温泉限定ってなるとね。 あたしも詳しくないよ。」
というか、庶民向けのは、っていう条件が付く。 セレブ御用達なら色々知ってるんだけど、流石にそんな事は言え
ないよなぁ…。
「どんな所がいいんだろうね?」「やっぱり、熱帯魚とか泳いでて、サンゴ礁とかがあるような所でしょうかぁ…。」
「その条件で実際に行けそうな温泉っつったら、串本しか無いって。 南国情緒とは程遠いよ?」
「ばかちー、詳しいね。」
「一応、撮影とかで観光地は結構行くからね。 でも、ローティーン向けだったから、温泉ってのは…。」
「それに、あんまり予算が掛かると駄目なんじゃないでしょうか。」
「そうだよね。 なるべくお金掛けないってのがモットーなんだよね、うちのサークル。」
「実際、それが一番難しいわ、うん。」「特にあんたがね。」「何言ってんだ、ばかちーこそ成金でしょうが。」
「そういう事言ってると考えてやんないよ?」
「うぐっ なんだか、最近生意気ね。 万年発情チワワの分際で。」
「ふーん、亜美ちゃん、帰ろうかな〜。 今日、もう講義ないんだよねー。」
「ぇー 川嶋さん、助けてくださいよぉ〜。」「タイガーは、なにか言う事ないの〜?」「……ぉねがぃします…。」
ふふ。 十分十分。 あんまり苛めると逆切れするからね。
「しかたないな〜。 それじゃ、亜美ちゃん、一緒に考えてあげる。」
つっても、いいアイディアなんか無いんだけどね…。
「とりあえずさ、移動手段考えない? 値段優先か、時間と値段のバランスか。 それでいける範囲も決まってくるしさ、
所要時間とかもきまるじゃん?」
「そうね、ばかちーにしてはいい事言うじゃない。」「去年は値段優先だったみたいですよ。」
「そっか。じゃやっぱり青春18切符かな。」「それって、18歳以下じゃなくても使えんの?」「80のじじいでも使えるよ。」
「ふーん。 名前に偽り有りね。 で、それだとどこまでいけるの?」
「普通列車しか使えないからね、あんまり遠くにはいけないね。 そういえばさ、桐子ちゃんって実家東北じゃない?」
「はい、そうですぅ。」「東北っていったらさ、温泉山ほどあるんじゃね? どこかいい所しらない?」
「えっと、いっぱいありますよ。 でも、大学生が行って楽しいのかなぁって…。」
「いや、桐子ちゃんは、見慣れてるからそう思うかもだけど、都内の人とかにとったら、すげー所いっぱいありそうじゃね?」
「そうね、それに最近秘湯ブームだし、そうよ、リゾートとか考えてたからいけなかったんだわ。 山奥の秘湯! その路線
で考えればよかったのよ。」
「そんな事言って、タイガーあんた大丈夫なの? 秘湯とかって、マジ不便だったりすんだけど。 あんたさ、結構お嬢育ち
じゃん。 ぼろっちいの平気なの?」
「ばかちーが大丈夫なら、私が大丈夫じゃない筈がないわ。」 なんだよ、それ。 突っ込むと話進まないからいいけど。
「じゃあさ、今日講義全部終わったら、桐子ちゃん家で会議ってどうかな?」
「お、いいわね。 さんせー。」「あぅ。 私の家、狭いですよ〜? 川嶋さんとかが来る場所じゃ…。」
「だーいじょうぶよ、桐子ちゃん。 このバカ犬はね、自販機の隙間とか、狭いところ大好きなのよ。」
「人ん家と、自販機の隙間比べんなっつーの、このバカトラ。 それで、桐子ちゃん家ってどこだっけ?」
どこだっけ、といいつつ、多分聞くのは初めてだ。
「高円寺ですー。 駅から遠いんですけど、ユニットバスじゃないし、ロフトもあるのに、安かったんです。」
実は昔、殺人事件があった部屋だったりして、なんて冗談は言わないでおこう。 桐子ちゃん、臆病そうだし。
「実は昔、殺人事件があった部屋なんじゃないの? 東京はけっこうそういうのあるのよ。」
って、バカトラーーー!
「あぅ〜。 サークルの人、みんなにそれ言われるんですよぉー。 でも、そういうのでは無いらしいですよぉ。」
………あたしってさ、もしかしてスゲー良い人なの? なんか人間観が変わってきたわ、最近。
それから、講義が終わって、3人で桐子ちゃんの家に向かった。
道すがら、桐子ちゃんは妙にそわそわしている。
「桐子ちゃん、どうしたの?」 タイガーが我慢できずに聞いた。
「あ、あの、変装とかって凄いなーって、な、なんか私も有名人になったみたいで、どきどきして… あうぅぅ。」
「変装って、もしかしてあたし?」
変装っていっても、帽子を深めにかぶって、大き目のサングラスをしているだけ。
やっぱ、彼女、癒し系だわ。 なんか素朴で、話してると、ついほのぼのしてしまう。
途中コンビ二でお菓子を買ったついでに、あたしが表紙の雑誌をわざわざ顔の脇に並べて桐子ちゃんに見せ付けてやった。
彼女は焦って周りを見回す。 もう、明らかに挙動不審で、かえって目立ってる。 ほんとに可愛い奴。
そんな感じで、ちょっとからかいながら着いた彼女のアパートはかなりくたびれていた。 多分築30年は経ってそうだ。
でも、中に入ると、そこは別世界。 なんか、ピカピカに掃除されている。 仄かに甘い香りはインセンスだろう。
「へー 外見が古臭いからちょっと不安だったけど、良い部屋じゃない。 狭いけど。」 タイガーがバカ正直に感想を述べる。
「えへへへ。 ですよねー。」 あれ?桐子ちゃん普通に嬉しそうだ。 あたしって考えすぎなのかな?
「じゃーん、でも、ロフトつきなんですよー。」 「おーほんとだ。 ばかちー、ロフトだって。」 …タイガー喜んでるな。
「上ってみてもいい?」 「どうぞ〜」 たしかに今の部屋も、高校の時タイガーがいたマンションにもロフトは無いけど…。
「おお〜 案外広いんだね、ロフト。」 「何に使ってるの?」 「本がいっぱいあるよ、ばかちー」 「趣味の部屋ですー。」
部屋なんだ…。 なんか、素朴すぎる。 ってか、可愛すぎだよ、あんたら…。
それからしばらく部屋の観察を楽しんだ後、お菓子を摘みながらのガールズトーク、じゃなかった、企画会議が始まった。
パソコンで旅行関係のサイトを見ながら、まず目的地を決める。
「時間的にこのあたりが限界か…。」「すごいよ……温泉いっぱいあるじゃない。」「はい〜。 このあたりの山奥の温泉は
掛け流しがデフォルトですよ。」「へー。 私、濁り湯っての入ってみたいわ。 乳白色のやつ。」
「硫黄泉なら、吾妻連峰とかにいっぱいありますぅ。」「硫黄泉ってさ、好き嫌い分かれない? 匂いとかきついし。」
「ばかちーは嫌いなの?」「いや、あたしはどっちかってーと好きだけど。 お肌すべすべになるし。」
そんな感じでなかなか決まらなかったけど、とりあえず2〜3箇所近いところをチョイスして、希望を取ろうという事にした。
それが決まるまででも随分時間かかったけど、さらに、其処までの電車の時間でも結構もめた。
「8時52分発かなぁ。 これでも着くのは午後5時位よね…。」「もうちょっと余裕あったほうがいいんじゃない? お昼とか
どうすんのよ。」「んなの、駅弁に決まってんじゃん。 あんたレストランにでも行くつもりだったの?」
「あ、でもでも、ずっと電車に乗りっぱなしだと疲れますよ? すこし乗り換え時間が有った方がいいと思いますぅ。」
「ほら、見なさい、バカ犬。」「はいはい。 じゃ、タイガー様、適当に決めちゃってよ。 あたし、もう疲れた。」
「なにあんた職務放棄してんの、バカ犬ならバカ犬なりにちゃんと考えなさいよ。」
「あ、あの、ちょっと休憩しましょう〜 私、ご飯作りますから、みんなで食べませんか?」
「え? そ、そんな悪いわよ。 どっか外にいきましょ?」
「いいえぇ。 全然悪くないですよー。 私、こういうの憧れてたんです。 一人暮らしして、お友達と一緒にご飯食べたり、
朝までお喋りしたり。 だから、今日は夢が叶っちゃって、感激ですぅ。」
…そんな事を言われたら、お言葉に甘えるしかない。
桐子ちゃんの料理の腕前は見るからにかなり高水準で、たちまちのうちに美味しそうな夕食が出来てきた。
「あり合わせですから、こんなのしか出来ませんでした〜。」
「こ、こんなのって事ないよ。 桐子ちゃん、凄いや。 料理上手なんだ…。」
あたしも同じ感想だ。 あり合わせって言う割りに、学食より遥かに美味しそうなパスタとサラダ。
「遠慮なく食べて下さいねー。 いただきまーす。」
「「い、いただきます。」」 タイガーとあたしは、思わず食べる前に手を合わせてしまった。
やっぱ料理が出来る女の子って凄く羨ましい。
「!」「お、おいし…。」 「桐子ちゃん、これ凄く美味しいよ!」
しかも、桐子ちゃんは料理がめちゃくちゃ上手だった。
「えへへへ。 ありがとうございます〜。 お料理くらいは川嶋さんに勝てるといいなーって。」
「いや、もう勝負になってないわ。 このバカ犬の料理なんて、最低よ。 もはや人の食べるもんじゃないわ。」
「あ、あんたねぇ! た、確かにあたしの料理は不味いけど、あんたは、完成すらしないじゃないの!」
「ふっ。 完成しなければ、味はわからないわ。 あんたの不味いってのは確定だけど、私の料理が不味いかどうかは
不明よ。 よって、私の勝ちね。」
どういう理屈だよ、それ。 無茶苦茶にも程があるだろ。
「えーと、食事はみんなで仲良く食べましょう〜」 「「…はい。」」
ご飯が終わったら、なんか急激にやる気が無くなった。
タイガーもそうらしい。 いつものように眠そうにあくびをしている。 相変わらず、本能に忠実なやつ。
が、桐子ちゃんはだんだん元気になってくる感じ。 この子、イメージと違って、夜型人間なんだろうか?
あたし達は、そんな桐子ちゃんに引っ張られるように打ち合わせを進め、やっと移動スケジュールを決定した時には
既に終電の時間を過ぎていた。
どうせ、帰りはタクシーで帰るつもりだったから、終電なんか関係ないんだけど、そうじゃない人がいた。
「あ〜 もうこんな時間ですー。 せっかくだから、泊まっていってください〜。」
なんか凄く嬉しそう。 彼女の思考回路にはタクシーなんて選択肢は無いんだろう。 彼女が奨学金を貰っているのは
聞いていた。
「そうね。 なんか、歩くの面倒だわ…。」
「え、逢坂さん、歩いて帰れる距離なんですかー?」 「そうじゃなくて、タクシー拾いに行くのも面倒ってこと。」
「えー タクシーなんてもったいないですよー。 私、迷惑じゃないですから、泊まっていってください。」
「ばかちー、どうする?」
桐子ちゃんの顔を見る。 …遠慮とかいう問題じゃなくて、断ったら可哀想というか、なんというか…。
でも、正直、家に帰りたいという気持ちもある。
「でも、もう決めることって残ってないよね?」
「これからじゃないですかー。 怖い話とか、恋話とか。 色々お話したいですぅ。」
やっぱそうなるわけね…。
まぁ、さっき『夢だった』とか言ってたしねぇ。 つきやってやるのが『友達』ってものかな…。
「…で、このまま眠ってしまったら、みんな凍え死んでしまうって話になったの。 そこで誰かが、朝まで動き続けようって
言い出して、丁度4人だったから、部屋の4隅にそれぞれ座って、まず一人が隣の角まで歩いていって、そこに座ってい
る人の肩を叩き、肩を叩かれた人はまた、その隣の角まで歩いていって、って、順番に角を移動していくことにして、これ
を朝まで続けることにしたんだって。 そうして、4人は部屋が薄明るくなってくるまで、ぐるぐる歩き回って、なんとか凍え
ずに救助されたんだって…。 どっとはらい。」
「おしまい?」
「そ、おしまい。」
「全然、怖くないじゃない。」 「え? そう? 亜美ちゃん、始めて聞いた時、この話けっこう怖かったんだけど…。」
「私、聞いたことありますー。 これって実話で、救出された後、警察の事情聴取受けるまで、当の4人も矛盾に気がつか
なかったって…。」
「え! マジ? あたし、良く出来た話だなって… 実話なの?」
「だから、この話のどこが怖いってのよ!」
「…タイガー、あんた頭いいくせに、なんか妙にニブイ時あるよね? っていうか、寝てたんじゃね?」
「む〜〜〜〜〜。 バカにすんなー!」
「ちょっ、かかってくんなって、チビト…あっ!」
こいつ! あたしの弱点、覚えてんの? っていうか、桐子ちゃんの前で何しやがんだ!
「こ、このっ」 「飼い主に楯突くバカ犬にはおしおきよ!」 「なにとち狂って、んぁっ あ。」
「はわぁ〜〜〜。 川嶋さん、エロイですぅ〜〜〜。」
「見てないで、助けてよ! あぁっ!」 「ほれほれ。」 「〜〜〜〜! んがぁぁぁっ!」
な、なんとか返した…けど、やばかった…。 …あの夜以来、あたし、タイガーに対して変に敏感になってる気がする。
「ちっ。」 「ちっ、じゃねぇよ、クソチビ!」
「さすが、川嶋さん、アダルトですぅ〜。 なんか、声とか表情とか、レディースコミックより、えっちぃでした…。」
「やめてよ、桐子ちゃんまで…。」 っていうか、レディースコミックなんて見るんだ…ちょっと意外。
「でも、羨ましいですよー。 きっと川嶋さん、大人の関係とか、百戦錬磨なんだろうなーって。 私なんて、好きな人の手に
触れたことすらないですよー。」
「そ、そんな事ないって…。」
「またまたー。 川嶋さんも、逢坂さんも、物凄く可愛いですし、もてもてですよねぇ。 いいなー。」
「だから、そんな事無い… タイガー?」
なんだろ。 神妙な顔して…
「…桐子ちゃん、このバカ犬はね、おもいっきり失恋したの。 もう一年以上前だけどね。」
「ち、ちょっと大河!」
「ばかちー。 いい機会だから、ちゃんと話しよう。 桐子ちゃんは信用できるよ。 土足で私らの心に踏み込んだりしない。
あんたはちゃんと話して、ちゃんと立ち直らなくちゃいけないんだ…。」
「な、何いってんのよ、あたしはちゃんと立ち直った! もう、平気だよ!」
「だったら、話してもいいでしょ?」 「え?」 「平気、なんでしょ?」
…何も言えない。 本当は平気じゃないから。 そして、そんな事、正直に言えないから。
「私とばかちーと、私の親友が、同じ人を好きになっちゃったんだ。 そして、その人はね、私の親友の事が好きだったの。」
桐子ちゃんの表情が硬くなった。 これだけでも十分、綺麗な話になりそうも無いのは予測がつく。
そうして、大河はあたし達の物語を少ない言葉で綴っていった。
「私はね、多分、恋人というより、家族みたいな感じで、その人が好きだったんだと思うの。 でも、ばかちーにとっては…。」
「ありのままのあたしを受け止めてくれた、初めての男だったんだ…。」
大丈夫、涙は出てこない。
「だからね、桐子ちゃん、あたしなんかただの負け犬。 しかも、笑っちゃう位、完璧な負けっぷりだったんだから。」
「ぐすっ、ぐすっ…。」
もらい泣きしてるし…。 なんつーか、純粋な子の見本みたいだわ。
「逢坂さんも、川嶋さんも可哀想ですぅ… うっうぅ…。」
「いや、桐子ちゃんに泣かれると、ちょっと我ながら惨めになるかも…。」
「あ、ご、ごめんなさいです。 あの、私も失恋ばっかりですから、そんな、川嶋さんが惨めなんて、とんでもないですぅー。」
そして、彼女はなんだか慌てたみたいに、自分の話を始めた。
「えっとですね、その人は、勉強も出来て、スポーツも出来て、すごくカッコイイ人でした。 だから、私、最初は全然なんと
も思ってなかったんです。 だって、そんな人に私が見てもらえる筈ないですから。
それに私、家がすごく山奥だったから、学校に通うだけで大変で、部活とかも出来なくて、友達もいなくって、全然接点が
なかったんですよねぇ。 だから、話をしたことも無かったんです。
それがある日、その人が、『白坂の髪の毛って、スゲー綺麗だよな』って言ってくれて…。 私、物凄く嬉しくて…。
だって、今まで、私の外見褒めてくれた人なんか居なかったんですよ。
それで好きになっちゃったんです。 馬鹿みたいですよねぇ…。
でも、その人は凄く女の子にもてて、とても私なんかが相手にしてもらえるとは思ってなくて。 告白する勇気なんか、全然
なくって。 ただ見てるだけだったんです。 そうしたら、失恋もしないじゃないですか。 恋を口にしなければ…。
でもですね、世の中、そんなに甘くなかったんですよぉ〜。
ある日偶然、私、その人が友達と、クラスの女の子の採点してるの盗み聞きしちゃったんです。
いけない、と思いながら、あの人はどんな女の子が好きなんだろうって、興味が抑えられなくて…。
そしたら、私の名前が出てきたんです。 すごくドキドキしました。 でも…。
『白坂は… 後ろから見るといいよな。 髪の毛に30点。 で、トータル30点。』って。
そして、みんな笑って…。」
なんだそれ。 最低にも程がある…。
「なによ、それ。 最っ低。 そんな奴、私が、モッ、モルグに叩き込んでやるわよ!」
バカトラがエキサイトしたけど、あたしもこればっかりは同じ意見だ。
「でも、女の子だって、男の子の採点したりするじゃないですかぁ。 だから、おあいこですー。」
でも、桐子ちゃんはいつものほわほわした笑顔でこんな事を言う。 だから、余計に腹が立つ、だから、余計に悲しい。
「そんな、桐子ちゃん、いっぱい良い所あるじゃない。 そんな事言う奴なんかっ…」
「でも、好きだったんですよね〜。」
初めて、彼女は悲しそうな顔をした。 だから、もうあたしもバカトラも、そいつの悪口を言えなくなった。
「そんな訳で私、この髪の毛だけは好きなんですよぉ〜。 一度は切っちゃおうと思ったんですけど、やっぱり切れなくて。
だってせっかく30点貰えたんですから、もったいないですよねぇ?」
あたしも大河も、何かを言う代わりに息をのむ。
「それでですね、私、卒業する時に、もうこれが最後って思ったら、どうしても自分の気持ち伝えたくなっちゃったんです。
でも、その人にはですね、凄く可愛い恋人がいたんですよぉ。 …もちろん、川嶋さんには足元にも及ばないですけど。
でもでも、私が敵う相手ではなくって、しかも私、30点ですし。 だから、ただ、私の事、覚えてて欲しくって…。
それで、思い切って告白したんです。 もしも、30点の女が、35点になれたら… それって素敵じゃないですかぁ。」
言葉が出ない。 外見に恵まれた、あたしや大河には多分、彼女の辛さは理解できない。
「そしたらですね、ちゃんと神様はご褒美をくれたんです。 告白したら、直ぐに断られて。 でも、予想通りだったから、私
なんかスッキリして、涙が出てるのに、笑っちゃったんですよ。 そしてさよならしたら、後ろから声掛けられたんです。
『白坂って、案外綺麗だったんだな。 今、すごくドキッとした。 東京でもがんばれよ。』 って。 なんだか、35点どころか
50点くらい貰えた気がして。 その言葉は、私の宝物になったんですよぉ〜。」
違うよ、桐子ちゃん…。
そいつの心の中じゃきっと、90点くらいになってたと思うよ。 …だって、アンタ、素敵過ぎるもん。
「ん〜。 なんだか上手く言えないんですけど、逢坂さんも、川嶋さんも、大丈夫ですよー。 私みたいなのでも、ぼんやり
やってるだけで、こうして、逢坂さんと川嶋さんみたいな素敵なお友達が出来たんですぅ。 だから、いつまでも悲しい事
ばかりじゃないと思います。 無理しないで、時間がかかっても、ゆっくりのんびり、傷を癒せばいいんじゃないかなー。
…ね、逢坂さん。」
「桐子、ちゃん……。」 大河は、そう呟くのがやっとだったようだ。
あたしも、大河も、ふっきれてないってのが、桐子ちゃんには解ったんだ…。
「んふふふ。 私達、失恋トリオですねぇ〜。 逢坂さんと、川嶋さんには悪いけど、お仲間ですぅ〜。」
それからは、年頃の娘が三人寄れば姦しい、とりとめの無い話。
「有馬君も、塚原君もさ、別に悪くはないんだけど、なんか頼り無い感じじゃね?」
「私もそう思うわ。 なんてーの、ヘタレっていうか、根性無しっていうか…。」
「タイガー、あんたの感想って、精神主義に偏ってない?」
「んふふふふ。 でも、確かに頼りない感じしますぅ〜。 というより、3年生の先輩とか見ちゃうとそう感じるんじゃないで
しょうかぁ?」
「3年生は…ちょっと濃いわね。」
「山口会長と、M男先輩、鈴木教授か…。 たしかに濃いよね、物凄く。」
「でも、三田村先輩だって、普段は凄く頼りになりますよー。」
「まぁね。 3人とも、黙ってればイケメンだし、判断力とか、行動力が凄いよね…。」
「そうね。確かに高校の時には居なかったタイプだわ。」
「つーかさ、男の子って、二十歳過ぎた頃から急に大人っぽくなるんじゃない? なんかさ、2年生の先輩と、3年生の
先輩って、差が大きいと思うんだよね。 ま、3年がちょっと変なの揃ってるせいもあるかもだけど。」
「あんた、春田とか、能登があんな風になれると思う?」
「いや、それは思わねーけど。」
「そう! つまりそれは、あの3人が変態だってだけで、一般論では無い可能性を示唆しているのよ!」
「逢坂さん、そのノリ、なんだか三田村先輩みたいですー。」
「なっ!」
「ぷっ、ぅあはははっ あはっ うはははははははははははははっ」
「笑いすぎだ、このバカ犬がぁぁぁぁぁぁ!」
「ちょ、沸点低すぎだろ。 あんた眠いの? いたっ やめなよ、このバカトラっ。」
「うわぁ〜 やっぱり、川嶋さん、エロイですぅ〜。」
「つーか、見てないで助けろってーーっ」
…………
そんなこんなで白んでいく東の空。
途中からは眠気も飛んで、すこしハイになってる自分に気がつく。
話題は尽きない。
それこそ、読書が趣味だという桐子ちゃんを始め、大河も、あたしも、びっくりするくらい色んな事を話していた。
いつもうっすらと考えてた、世の中のこと、家族のこと、人の心の不思議…。
時に笑いながら頷き合い、時に意見を戦わせる。
こんな話が、これほど面白いなんて、驚きだった。
今まで、女の子同士でしてきた、男子の話や、ファッションの話、流行の話、そういった話とは違う、興奮。
今まで知らなかった逢坂大河が、自分自身が、其処に居た。
こんな楽しい徹夜は初めてだった。
新聞配達のバイクの音が妙に耳につく頃、あたし達は僅かな仮眠に陥る。
4時間後には大学に行かないといけない。 けれど、ちっとも辛いとは思わなかった。
だって、失恋3人娘が揃って同じ場所へ向かうんだ。
友達を作るのが下手な3人の間に出来た、新たな絆。
それはまだまだ微かな物だけど、それって、ちょっと素敵な事じゃない?
そうして、先に眠りに落ちた二人の寝息を子守唄に、あたしもゆっくりと夢の世界へ落ちていった。
「へー、白坂さん、凄ぇじゃねーか。 こいつぁよく出来てるわ。」
「本当だ。 去年俺達がやった時より、よく整理されてるな。 細かい携帯品なんて、俺達は最初すっぽり抜けてた
もんなぁ、大したもんだよ、今年の一年の女子は。」
あたしたちが作った企画書を見て、感嘆の声を上げてくれたのは、2年の小沢さんと栗田さん。
べらんめぇ口調でちょっと怖そうな外見の小沢先輩は次期会長と目されている。
就職活動が厳しくなった頃から、会長は3年が勤めることになったらしい。
ちなみに副会長はその限りに非ずだそうだ。
なので、来年は小沢先輩が会長、井上成美、現副会長留任の体制になりそうだって話だった。
「あ、ありがとうございますぅ〜。 でもでも、殆ど川嶋さんが考えたんですよー。 なんか、私と逢坂さんがお手伝い
みたいになっちゃいましたぁ。 えへへへへ。」
「そんな事ないわ、桐子ちゃん。 この万年発情犬を付け上がらせると、そこらじゅうでハァハァするかも知れないから
下手におだてない方がいいの。」
「いつ、誰が、そこらじゅうでハァハァしたってんだ、このチ、ビ、ト、ラ!」
頭を押さえつけ、ぐりぐりしてやる。 リーチの差を生かしたアウトレンジ攻撃が、あたしの唯一のアドバンテージだ。
「いたたたっ! な、なにすんのよっ、こ、こっ、このっ、駄犬!」
「あー、またやってるー。 私もまぜてー、亜美ちゃん。」
KYクイーンこと、木下さんの登場。 当然脇には川上さんが連れ添っている。
「おー、今日は随分人が多いな。」数歩遅れて会長も現れた。
この3人がつるんでいる事が多いのは、会長と川上さんが付き合っているからだというのは最近知った。
「お、もうプランが上がったのか! 凄いぞ、白坂さん。 それと、逢坂さんと川嶋さんも手伝ってくれて、ありがとう。」
会長は、その場でスラスラと企画書に赤字で添削していく。
「うん。 おおむねこのままでよさそうだな。 指摘した部分を修正後早速企画を進めてくれ。」
「えっ、これでいいんですかー?」
「ああ。 だが、何からやっていけば効率がいいのか等、考えることは沢山ある。 宿の予約の都合もあるから、一ヶ月前
には計画を確定したいところだ。 よって時間もあまり無い。 よろしく頼むよ。」
「「「は、はい。」」」
な、なんか、こういうのって嬉しいかも…。 夜更かしが報われた気がする。
計画の概要はこうだ。
上野駅を8時ちょっと前の電車で東北方面へ出発、途中黒磯で2時間ほどの乗り換え時間を利用して近隣のお菓子
関連テーマパークで昼食、福島駅から、目的地の秘湯へ至るという、実に単純なもの。 秘湯は3択にしてあって、
直接福島駅から送迎車で向かうパターンもあれば、奥羽線で山奥の駅まで移動するパターンなども用意した。
たったこれだけの事、旅慣れた人なら恐らく30分で決められるんだろうけど、そんな事は指摘せずに、あたしたちの
成果物をちゃんと認めてくれたってのが、やっぱり嬉しい。
そうして、3人で次の段取りを考えている時だった。
あたしの仕事用の携帯が鳴る。
何気なく電話を取ったあたしは思いがけない事を告げられた。
「どうしたの、ばかちー。 いつにもまして顔が弛んでるわよ?」
桐子ちゃんの言う通りかもしれない。 全部が悪い方向に向かうなんて事は無い。
「うん。 いい知らせ。」
なにより、たぶん、大河にとって良い知らせ。
先日撮影を中止した写真家から、事務所宛でお叱りの電話を受けたらしい。
再撮影の日取りが決まらないなら、今日確保しているスタジオで撮るから、私を呼んで来い、と。
最初っから撮り直すつもりだったみたいだが、誰もそんな事言われちゃいない。 だから、プロデューサーなんか、真っ青な
顔して頭抱えてたってのに…。 変人ってのは本当だったみたい。
あたしは右肩を撫でながら言う。
「この前のヘマ、帳消しになったみたい。 直ぐにでも撮り直したいってさ。」
「そ、そう、なんだ…。 よ、よかったじゃない…。」 やっぱり気にしてたんだろう。 凄くほっとした顔をしてる。
「だから、ごめん、行ってくる。」
あ、そういえば、今日は寝不足でクマが出来てるかも、と思いついたが、すぐに気にならなくなった。
ありのままでいいや、たぶん、あの写真家なら大丈夫。 あたしはどういう訳か、いつのまにかそう確信していた。
「おかえり、ばかちー。 仕事、どうだった?」
「この亜美ちゃんが、仕事しくじる訳ないじゃなーい。 もう、カンペキ。 カメラマンの親父とか、もう〜メロメロって感じ?」
久々でナルシーな自分が全開になるような気分のいい仕事。
「ふーん。 そっか。 そりゃ、よかったわ。 うんうん…。」
そっけない言い方だが、心配してたのを隠してるだけだってのは見え見え。
「あんた… クマできてるじゃない… まさか、そのまま撮ったの?」
「そーだよー。 こんなクマ程度じゃ、亜美ちゃんの神々しいまでの美しさが損なわれる訳ないしぃ。 ちょっと影があったら
あったで、セクシーに見えちゃうなんて、亜美ちゃんの可愛さって、もう犯罪じゃね?」
実際、見せられた写真は陰影が今までに無いほどセクシーさを強調してて、自分を見てるようには思えない程。
やっぱり、あの写真家って、凄いんだ。
あたしが、メイクさんがクマを消そうとしたのを拒否ったのが、その写真家の琴線に触れたらしく、なんか、凄く気に入られて
しまった。 まさに怪我の功名。 お陰で入魂の写真となり、プロデューサーも大喜びだった。
「………完全復活したのはいいけど、それはそれでうざいわね、このバカ犬。」
そういうタイガーもようやく通常運転開始のようだ。
あたし達って、ほんと、難儀な女。
ちょっとした事でガタついて、元通りになるのにはその何十倍も何百倍も時間が掛かって…。
でも。 それでも、少しづつ、心が近づいていってる感じは……あたしに、言葉では言い表せない快感を与えるんだ…。
―――撮影はかなり体力を消耗する。
撮影後のお風呂の時間は憩いの一時。 ここの窓から見える東京湾の夜景は格別で、こんな時はバカ高い家賃にも納得
がいくというものだ。
お風呂上り、自室に戻ると、コンサバトリーにバスローブを纏った小さな人影があった。
「あんた、また人の部屋に勝手に侵入して…。」
「うん…。 綺麗だね。 ここの景色。」
「あんたの部屋だって、そんなに変わらない景色でしょうが。」
あたしの部屋からだと、レインボーブリッジの手前のループ橋が真下に見下ろせる。 この部屋を借りることにしたのは、
大河がこの景色を気に入ったからだ。
「ここからの景色が一番気に入ってるの。」
だから、この答えは予想通りだった。
「あの光の一つ一つに恋人同士とかの想いが乗っかってたりするのかな…。」
主塔の上部だけが白く照らされ、暗い海面に浮かび上がる。
確かに定番のデートコースではある。 こんな時間でも、赤と、白の光は途切れることなく行き交っていた。
「なーに、クサイ事言ってんのよ。 殆どが仕事帰りのよれよれの親父だって。」
「あんた、人がせっかくロマンチックなムードに浸ってるってのに、なんでそういう事言うのよ。」
「そう? ロマンチックじゃん。」
「どこが!」
「だってさ、そのよれよれの親父だって、家で奥さんとか子供が待ってて…。 その為に一生懸命働いたりしてるんだよ。
嫌なこと沢山あってもさ、20年も30年も…。 ずっとたった一人の女への愛を貫いてるんだ…。」
「ばかちー…。」
「もっとも、風俗行ったり、浮気とか不倫とかしてる奴も大勢居そうだけどね。」
「……感心して損した。」
「あははははは。 ま、そんなもんだって。 ………?」
大河は黙ってあたしの事を見ている。 妙に思いつめたような顔をしていて、心配になった。
「どう、したの?」
「あっ…、あっ…」 「あ? なにさ?」
「…亜美…」
は? なんだって?
「な、なに、アンタ、悪いものでも食べたの?」
「う〜〜〜。 あーーーー! なんでもない、なんでもないーっ!」
「な、なんだっての…。」
「アンタの事、いっつも馬鹿呼ばわりして…ちょっと失礼かなって、思ったのよ。 淑女として! そんだけよ、そんだけ!
あ〜 やっぱり、気の迷いだったわ! 今のは無しよ、無し。 さっさと忘れなさいよね!」
なんつーか、やっぱこいつバカなんじゃね? 別に気にしなくっていいのに。
「ふーん。 やっと、亜美ちゃんの偉大さが分かったんだね〜。」 ちょっとだけ意地悪してやろうっと。
「だから、気の迷いだって、言ってるでしょ!」
「でも、あたしは『ばかちー』って結構気に入ってるよ。 あんた以外に言われたら腹立つけどね。 あんた、あたしの事、
本気でバカにしてるわけじゃないでしょう? なんてったって、『ばかちーがいなくなったら、私は…』 ですもんねぇ。
あの後、なんて言おうとしたのかなぁ〜。 亜美ちゃん、わかんないから、聞きたいなぁ。」
さて、どんな反応するかな?
お、ちょっと意外。 真っ赤になって我慢してる。 切れると思ったんだけど…。
「………一人はもう、嫌なの。」
え? ちょ、ちょっとマジモード? ちょっと待ってよ、心の準備が…。
「ばかちーは… こんな私でも付き合ってくれる。 一緒にいてくれるから。」
「な、何言ってんのよ…。 ほ、ほら、あたし達、友達、でしょ?」
なんなの? 急にしおらしくなっちゃって…。
「友達?」
「そ、そう友達。 それにあたし、あんたには借りが有るし、ってか、いや、そんなの関係なしに、ね。」
ちゃんと答えてやらなくちゃ…。 寂しい思いはさせないって決めたんだから…。
「私、いっつもばかちーに頼ってばっかりで、迷惑かけても?」
「いいよ、そんなの。 それにあたし、迷惑な時はちゃんと怒ってるじゃん。」
「辛くなったら、ばかちーに甘えてもいいの?」
「だから…。 …いいよ。」
「寂しくなったら、一緒に寝てもいい?」
「うん。 …いいよ。」
「抱きついたりしても?」
「…いいよ。」
なんか、子供みたいで可愛い。
「一緒に、お風呂とか入っても?」
「…いいよ。」
「押し倒しても?」
「…いい…よ?」
へ? 今なんつった? 恐る恐るチビトラの方を見る。 そこには邪悪に微笑む、手乗りタイガーの姿があった。
「ちょ、今の無し! 無し!」
「私をからかおうなんて、百万年早いのよ、この万年発情チワワ!」
「きゃぁ いたっ! あ、あんたこそ、なにさかってんのよ! いたいっ! ちょっと、力ずくなんて卑怯だろが…ぁあっ!」
「ふん、ちゃんと同意の上でしょうが。」
「ど、同意、んあっ! なんて、うっ、してぇ あぁぁっ! や、やめて…よ… んああぁぁっ!」
「確かに、いいよって言ったわ。 しかもめちゃくちゃ敏感じゃない。 本当は期待してるんでしょ?」
「だから、それ、はぁぁぁぁ! ああっ! やめ、やめっ ひっ!」
「よがりまくりながら、拒否っても説得力ないわよ。 もう、最高ムカついたんだから。 今日はたっぷり苛めてあげるわ!」
……小鳥の鳴き声が聞こえる。
聞きなれた目覚ましの音だと理解するのに、あまり時間は掛からなかった。
そして、あたしの胸に小さな手が置かれていても、不思議には思わない。
まるで、母親に抱きつくように、チビトラが寝息を立てているのは予想の範囲内。
今朝は遠慮しない。 シーツを引っ剥がすなんてまどろっこしい事は不要だ。 直接蹴っ飛ばす!
手乗りタイガーはハデに転がって、キングサイズのベッドなんぞ、ものともせずに転落した。
なのに、起きない。 もぞもぞ動いている。
なんか、超悔しい。
ベッドに仁王立ちして、明るくなった部屋を見渡す。
脱ぎ散らされたバスローブが二着、コンサバトリーに落ちている。
寝具は目も当てられないほど、濡れている。 犯人はもちろん、あたし。
自分の体が、あんな変化を起こすなんて、悪夢のようだ。 あんなの、もし男の子が見たらどう思うんだろう。
昨夜の事を思い出す。
コンサバトリーで散々愛撫され、一度果てた。
勝ち誇るバカトラにムカついて、ベッドに場所を変えて、報復に挑み、見事一度はイかせてやったけど…
そのまま反撃を受けて…
数を数える。
2回、3回、4…
やべぇ… 3回目の後の記憶が無い…。
起きた直後の勢いが途絶えたら、急に体に力が入らなくなった。
へなへなとベッドに座り込む。
ちょっとショックだ。 同い年位のモデル仲間は大抵が経験者だ。 仕事上やむなくって娘もいた。
けれど、あたしは親の知名度もあって、仕事を取るのにも苦労しなかったから、親にも事務所にも守られてきた。
更に言えば、本気で惚れた男なんて、まだ一人しか居ない。 そして、そいつには全く相手にされなかった。
だから、あたしは男を知らない。 情事どころか、ちゃんとつきあった事すら無い。
あたし、こんなんで男の子をちゃんと満足させてあげることが出来るんだろうか?
とかくあたしは経験豊富に見られがちだから、つい見得を張って色々詳しいふりをしたりしてた。
そうすると、そういう話題の時には詳細は語られず、暗喩に終始する。 そのほうがボロは出にくかったが…
お陰で、実際のところはあまり詳しくない。 麻耶とか奈々子にはもうばれてるけど、だからといってあの子らに
聞くのはちょっと恥ずかしいし、他に詳しそうで、かつ、そんな話が出来そうな知り合いも居ない。
そうしていると、チビトラがもぞもぞとベッドにリターンしてきた。
まだ寝てんのか、こいつ。 ありえねぇ。
大体、なんでこいつはあたしを襲ってくるんだろう? 女に興味があるって訳では無さそうだ。
実際、あたしも、大河も、お互い以外の女性にはピクリとも反応しない。 性欲なんて全く湧かない。
これってなんなの? もー、亜美ちゃん、わかんねぇ。
その間も匍匐前進してきたチビトラは、あたしの太ももに辿り着くと、急にパカっと目を開いた。
「あ、ばかちー、生きてた…。」
なんだそりゃ。
「あんた、すっごい痙攣して、動かなくなっちゃったから、死んだかと思ったわ。」
意地悪にニヤつきながら、そんな事を言いやがった。
なんか、もう、情けなくて泣きたい気分だ。
「バカじゃね。 そんな訳ねーし。 ……シャワー浴びてくる。」
………
温かいお湯に包まれて、大河に対する正体不明の感情について考える。
「ばかちー、逃げんな。」
思索にふけっていたせいか、扉が開くまで気がつかなかった。
いつものように胸のあたりを頭でぐりぐりされながら、とりあえず、正体が判明している感情、
「痛いって、やめろ、このクソチビ!」
―友情―
せめてそれだけは貫こうと、改めて誓った夏の朝だった。
Scene.3 - Cut -
387 :
98VM:2009/05/23(土) 21:50:28 ID:rVbRoeFh
お粗末さまです。
現在4の執筆が停滞中。
ローマに嵌ったw
おお、新作きてる!
今から読むけど先にGJしとく!!
にしてももう450近いのかwww
389 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 22:09:04 ID:nvZr4170
GJ!
みなさん、神だけど一番ツボかもw
なんか、イタリアといい、東京湾といい、風景描写がきれい♪
これからも頑張ってください!
>>375-387 GJ!
このシリーズで女二人で暮らしてるあ〜みん&タイガー見てると、
なんとなく「スプートニクの恋人」のミュウ&すみれを連想します。
>>320 >>369 大変申し訳ないです 入力ミスしていました。
明日中に、入れときます。
他にコメントしてくださった方々有難うございます。
一つ一つ返信したいのですが、それで容量を使ってしまうのも難なので
なるべく更新してお応えできるようにしたいと思います。
職人の皆様も
素敵な作品を読ませてくださり有難うございます。
ちょw容量がwww
さて・・・本日も待たせていただくかな・・
今日は週末だしどどんと朝まで待てるぜ
なんか今日も来るであろう日記の人が書いたら次スレになりそうwww
まだ前スレ埋まって3日しかたってないのにすげえw
ここのところ毎晩投下祭りだったものな
いやはや善哉
そして3時までには落したい…
そういう風に世界は出来ている。
来てる!!
待たしてもらおう、そういうふうにry
>>398 なるほど。俺が寝つけないのはこれを待つためだったのか
眠れるわけなど。
──眠れるわけなど。
寝ないでーー。
もう4分まって^^
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
遅くなりました。
次レスより、投下、いきます
高須泰子の日記より抜粋。
5月22日。
今日は楽しかったね〜、大河ちゃん?
大河ちゃんも沢山遊んですっごく疲れたんだね。もうぐ〜っすり眠っちゃったね。
竜ちゃんのお布団でぐっすり寝てるから、後で竜ちゃんに運んでもらうね。
でもな〜……なんか竜ちゃんゴロゴロ悶えてるんだよね〜。何か悩みでもあるのかな〜。
やっちゃんは心配でがんす。
北村祐作の日記より抜粋。
5月22日。
うむ。今日はなかなか良い一日だったな。
高須と香椎の料理も美味しかったし、なにより逢坂のおにぎりは美味しかったな。
会長も来れれば良かったのにな。ま、そんな訳にはいかんか。
だが分からんな。
確かに昼食後に昼寝してしまったのは申し訳ないが、なんで高須は俺を殴るように起すんだ?
香椎奈々子の日記より抜粋。
5月22日。
今日は一つの記念になるのかな。
私達はみんなでピクニックに行って来た。
「香椎の料理はやっぱり美味いな」高須君の言葉が嬉しい。
最近、高須君は私達の事を呼び捨てで呼ぶ様になった。きっかけは親睦レクリエーション。
私と麻耶が、どうして私達には「さん」付けで大河や亜美ちゃんは呼び捨てのなのか聞いてみた時だ。
「特に理由は無いけどな。強いて言えば逢坂と川嶋は怖がらないから」だそうだ。?でも私達だって怖がってないんだけど。むしろ二人が羨ましいくらい。
高須君に言わせると、自分が呼び捨てで普通に話せば、それだけで周りに恐怖を与えるから、極力女子には「さん」付けで呼ぶし、口調も気を付けてるそうだ。でも大河と亜美ちゃんは別。
彼女達は最初から高須君の事を怖がってないし、呼び捨てにしたところで怖がりはしないから、普通に接してるって。
ちょっと寂しかったけど、確かに最初の頃は私も麻耶も高須君の事が怖かった。それは事実よね。だから仕方ない。
でも今は違うんだし、折角こうして皆で居るんだからって事で、今後は普通に接するように高須君に言っといた。今ではもうそれが普通。いいな、こういうの。
それにしても大河は楽しそうだった。ほんと、良かったね、大河。辛い過去はあるかも知れないけど、今は辛くないよね?大河が居て、高須君が居て泰子さんが居て。でもいつか私もソコに入れてよ。ね?大河。
遊んでる間に櫛枝さんが来て、皆でお昼食べて、またゆっくり時間を過ごした。ほんと、いい休日。
おにぎり。美味しかったよ?大河。
でも参ったなぁ。夕方になって「もう帰るぞー」って言う高須君に「まだぁ!!」って駄々をこねる大河を眺めてたら、亜美ちゃんが私と麻耶に言ってきた。
「ん〜〜。もしかしたら二人も?とか思ったから一応言っとくね。私、高須君の事、好きだから」なんか一瞬火花が散ったよね。でもなんか一歩リードしてる私は微妙かな。でも亜美ちゃんも麻耶も可愛いからウカウカしてられないよね。
私達は友達だし親友だ。たとえ同じ人を好きになったってそれは変わりたく無い。だからね、コレは協定。
手加減はしない。遠慮も無し。でも、ライバルを貶めるような卑怯はもっと無し。正々堂々勝負しよう!それが私達の約束。
でもなぁ。100か0か。それが真理だよね。でも私はそれなら33でも良いよ?って言ったら二人とも?って顔してた。
ホントは100が良い。でも帰り際に高須君は私に「今日は悪かったな。でさぁ、お礼ッてんじゃないけど明日の香椎の弁当。俺が作っとくから、お前ゆっくり寝てろ」って。気にしなくても良いのにね。
でもそんな彼を、0にはしたくない。100か0か…33?ちょっと、今日は問題を抱えたな。
でも取り敢えず行動!……今度の日曜は麻耶がどうしてもってデパートに付き合うんだって。なんで俺が?って嘆いてた。やるわね、麻耶。
櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
5月22日。
なんとかお昼には間に合ったぜぃ!でも大河がおにぎり作るなんてビックリした!美味しかったよ、大河。
フリスビーやってバトミントンやって、ボールとか遊具とか。大河はほんと楽しそうだった。
私や北村君にはいいトレーニングだったぜ!高須君はへとへとだったけどね。
でも先にお昼ねしちゃったのは大河だったね。きっと昨日はあんまり眠れなかったんでしょ?
こんな事、今までした事無いもんね。
もうソコが居場所なんだね。原っぱで座る高須君の膝枕で大河はスヤスヤ眠ってたな。気持ち良さそうだったよ?大河。
足痛くないの?「ま、まぁコイツは軽いしな。なんかもう慣れた。枕がないと寝れねぇんだと」高須君はやれやれって感じだけど、なんか照れてるっぽかったな。
よかっったねぇ、大河。大事な人に大事にされて。そんな事いったら「くくく櫛枝にはその…大事な人とかって、居ないのか?」ちょっとビックリ。
高須君が私にそんな事聞くなんてさ。でもね、?高須君。私には叶えたい夢がある。その為に今は全部、封印するんだ!「んが!!」?言ったら高須君が寝ちゃった?どしたの?
でも、良い絵だったよ、二人とも。寝っ転がる高須君の上に眠る大河。
ほんと、仲良しさんだね〜、二人共!
木原麻耶の日記より抜粋。
5月22日。
今日、亜美ちゃんと奈々子と協定を結んだ。いや、コレはもう互いの宣戦布告よね!
でもきっとそれでも私達は友達でいられると信じてるから、だから精一杯ぶつかっていこうと思う。
3人で何気に近付いていくと高須君と大河は青い空の下で熟睡していた。
大河はホントに気持ち良さそうに、高須君のおなかの上に大の字になってた。なんか、可愛かった。起きてたら怒られそう。
逢坂さんが孤児だったと言うのは奈々子から聞いていた。それでも今はこうして笑っていられる。
分かるよ、大河。私も高須君には救われたんだよ?私の事許してくれて、頭、撫でてくれたんだよ?
今その場所には大河が居るんだね?いいよ。大河なら。
抜け駆けも攻め手搦め手なんでもアリよね?でも……奈々子の言葉には少し驚いた。ちょっと……考ええたかな?でも、まだソレは先だよ。いまは出来る精一杯をしたいんだ!私はさ。
まだ高須君かまるおかも決めれない私だけどさ。その時ふと、まるおが気になった。私も結構いい加減。亜美ちゃんが「祐作ならほら!あそこで寝てるわよ。ウチの男共はホント、年寄りくさいよね〜」
思わず笑っちゃった。でもさぁ、ゆりちゃん先生も好きなんだよね、まるお……。言ったら亜美ちゃん驚いてたな。「嘘!マジ?」って。ま、無理ないか。
取り敢えず、今度の休みに高須君にデパートに付き合って貰う事にした。「なんで?」って言ってたけど、重い物を持ってくれる荷物持ちが欲しいからっていったら「だからってなんで俺なんだ?」って。
でも何でかな。いいからいいからって言ってたら、意外とあっさりOKしてくれた。惚れた弱みかな?高須君。でも、嬉しいよ、本当に。
川嶋亜美の日記より抜粋。
5月22日。
何してるか?って聞いたら「ん〜〜?別に。ぼ〜〜っとしてる」って。
なんでチビトラがソコで寝てんの?って言っても「あ〜〜。よく分からん。ま、い〜んじゃねぇか?遊び疲れたんだろ?」だって。
なんか論点がずれてるんだけど高須君は気付かないのよね?大丈夫かしら。
でもだからかな、私も、じゃあ亜美ちゃん背中借りる〜って背中合わせに腰を下ろして、高須君の背中に凭れてみた。なんか……良かったな。
「お前な〜」なんて言ってたけど避けないんだもん。嫌そうには見えないよ?ま、嫌でもどけないけどさ。でも突然なんで?行き成りだったよ?高須君
「どうかしたか?」って。言ってる意味分かんないし、どうもしないよ。って答えるだけ。
「……疲れたか?」…別に。
「しんどいか?」………
「……ま、良いけどよ」なんか、救われたな。
学校変わって、ストーカーに蹴りいれて、仕事再開して…ちょっと一杯一杯だった。ずるいよね。こんな時は言葉が入ってきちゃう。どこか暖まっちゃう。
高須君には見えてる?ホントのわた「ちゃんと見えてるよ」……そう。が精一杯。合わせた背中が伝えるかもね。でも勘違いしないでよ?悲しくてじゃない、嬉しくて、私は泣いてるんだよ。
麻耶ちゃんも奈々子ちゃんもきっと高須君を好きだと思う。でも私も引かないよ。きっとココは引きたくないんだね、私。
この広い背中を、私は私のモノにしたい。でも奈々子の言う……いや、ソレは無いっしょ!亜美ちゃん勝つし!さぁて、どうしようかな〜。
逢坂大河の日記より抜粋。
5月22日。
今日は楽しかった。楽しかった。
みんなおにぎり美味しいって言ってくれた。見たら竜児が親指立ててた!ぐっ!って。
嬉しかった。嬉しかった。
やっちゃんがまた食べたいって。明日作ろう!お弁当にも持っていこう!竜児がそれならオカカとかシャケとか用意するって言ってた。また皆に上げようっと!
楽しい時間はあっという間ってホントだ。もう今日が終わる。まだ夜9時位なのに、なんか凄く眠い。でも良いか、眠くなったら寝れば良いんだもん。
何処でも、ここでも。私は寝て良いの。それでも最後には、自分の部屋の自分のベットで目を覚ますから。
ねぇ、竜児……どうしてもっと早く…でもいいや。いまはもう良い。北村君が美味しいって言ってくれたよ、竜児。
き たむ ら く
高須竜児の日記より抜粋。
5月22日。
もはや俺がコレを冷静に書いているのかも疑わしい。明日読んだらビックリするのか?俺は。
それにつけても、何故こうも神様は俺に意地悪をするのだろう?不可解としか良い様がない。お供え物でも喰ったのか?俺は。
折角の天突き抜ける晴れやかな昼下がりだと言うのに、櫛枝は言ったとさ。叶えたい夢の為に大事な想いは封印する!と。
申し訳無い櫛枝。気を失った俺を許してくれ。
しかしまぁ、それでは大河が上手く行かない限り、俺への想いは封印するという事になるじゃないか!
俺にはもう比喩する表現が見つからない程にお上手にお見事に北村への思いを遂げる事が出来ない人物に、俺の運命はソコまで握られているという事か!
思い出しただけでも意識が飛びそうになる。
でも安心してくれ櫛枝。こちらにもエキスパートを用意した。
最近は川嶋・木原・香椎と結構話すんだ、俺。これだけの女性が居れば、大河に正確なアドバイスを大量に、一山幾らでくれる事だと折る。
うっすらと意識を取り戻した時あいつらの声も聞こえたしな。ヨロシク頼もうかと思ったんだが……すまん櫛枝。最悪の場合、もしよければ面会に来てくれると嬉しい。
どうやら我が親友北村祐作様は俺と香椎の涙の愛憎劇を物ともせずに、新たなフラグを打ち抜いたようだ。誰かダイトを俺にくれ、レストレーション01だ!
「ゆりちゃん先生も好きなんだよね、まるお……」……北村よ。死ね・死んでくれ・死んでしまえ。どれをお前に送る言葉にしようか真剣に悩むぞ俺は!
一体全体、何が楽しくてお前は次から次へと旗立てちまうんだよ!これがお子様ランチなら喰うトコ残らんぞ貴様。
しかもだ!確かにあの裸体と大人なチューの前に俺も冷静さを欠い……静まれジュニア!!
冷静さを欠いたが、まさか聞き間違い等と言う初歩的なミスを俺が犯すとはな。
確かに自称魅姫こと恋ヶ窪ゆり(29)は言ってたさ。「祐さん祐さん」と。
思わず「竜さん」に聞こえた俺の耳を思い切り掃除してやりたい!が!という事は北村貴様……既に大人の階段登ってやがるな!!あの先生の行動は常日頃のソレと見た!!
ああ。誰か俺をリュークにあわせてくれ。得体の知れないノートだろうが単語帳だろうが、全てを北村祐作の文字で埋め尽くすと宣言しよう。
しかし先生も、なにも教え子に手を出さなくても良いようなものだ。恋ヶ窪先生が打ち漏らした最後の弾に物申したいな。撃たれてやれよ偶にはよぉ。
取り敢えずは、大橋高校の誇るフラッグマスター北村祐作の眠りは我が拳で景気良く目覚めていただいた。
今、コレを記する後ろの俺の布団では、一際大きい北村フラグを立てた大河が眠っているが、おい大河よ。
どうせならもう少しハードルの低い相手を選んでくれない物かな?アイツは総選挙の当確印の如く旗を立てまくる文字通り旗迷惑な男だぞ?
無論、大河がソレを了承するわけは無く。俺はクラスの女子を退かせ泣かせた後に、担任教師までも絶望と号泣の淵に立たせる立場になってしまっている。
あぁ……気が重い。もういいや、大河、勝手にソコに寝てろ。俺も勝手に寝る。お休みだ…大河
香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
5月23日。
奈々子、今日はお弁当が無いのは分かる。それは時には仕方ないだろう。
だがお昼用に渡されたのが、マクドナルドのタダけんと言うのはコレ如何に?
嬉しいんだが奈々子よ……父さんの会社の近くにはマックは無いよ?
逢坂大河の日記より抜粋。
5月30日。
今日……世界が終わった。
明日はプール開き……死のうと考えた。
北村君に笑われる位なら、いっそ皆殺して「アホなこと言うな」と叩かれた。
仕方ないから水着を買いに行ったけど……所詮、哀れな乳に合う物なんて無いのよ!!
私が落ち込んでたら竜児がなんとかしてくれるって!なんかパットを作ってくれるって!
私は出来上がるまで待ってるつもりだったけど、目が覚めたら竜児の布団で寝てた。
付けてみてビックリした。竜児。お嫁に行くときは絶対もっていくからね。
高須竜児の日記より抜粋。
5月31日。
なんとも櫛枝もつまらない事で悩むもんだ。
乳のいいきなさんかどでも良かろうに。
まぁ仕方ないのパットを作ってやったさ。われながら良い出来だ。
にしても大河。水着に着替えて着てみるのは良いが、俺の目の前で着替えるのは止めなさい。
ホントに哀れで泣くトコだったぞ。
川嶋安奈の日記より抜粋。
6月4日。
どうやら亜美は高須君の事が好きになったようだ。
それにしても早々にストーカーを仕留めて亜美までとは。やっぱり楽しいわね。
これはサービスよ?
夏休みに海の別荘でも使ってゆっくりしなさいな。友達でもつれて。
単純な娘で助かる。ふふ。面白いわね、今年は。
恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
6月6日
最近、彼が私を見る目が違う。どこか力が入っている。
やはり夏は恋の季節。もう誤魔化すのも限界に近付いているのかもしれない。
教師と云う立場を優先するのか、それとも女で有り続けるのか。
その決断が、今の私にはまだ付かない。
ゴメンね高須君。女ってね、大人になるほど臆病になってくモノなのよ。
狩野すみれの日記より抜粋。
6月9日。
なにやら不快な噂も耳に入ってくる。
高須竜児が誰と何した、かれとどうした……所詮噂だ。気にする必要も無い。
が、どうも夏休みにはお前はクラスの女子の別荘に行くそうじゃないか?それも泊まりで。
確かに私はお前に答えは出してないしな、お前を縛る権限等は無い。だがな……メールでやり取りしていても始まらんか。
ま、コレくらいは覚えておけ。幾ら私だってな?偶にはいいたい。
だからどうだって事も無いんだがろうけどな、お前には……
逢坂大河の日記より抜粋。
6月10日。
なんか今日は凄い台風だな。
こんな夜はガタガタ風とか雨とか凄いから嫌いだ。でも最近はそうでもない。こういう日は行く所があるもん。
始めは「甘えるな!」って言われたけどさ、今ではもう普通なんだ。こんな夜は私は竜児の布団で寝るんだ。そうすれば怖くないしゆっくり眠れるから。
でも今日は変だったな?なんかメールを何回かしてた見たいだけど、急に出掛ける準備をしてさ「ちょっと出てくる」って。
こんな台風なのに?でも「すぐ戻るから、先に寝とけ」って行っちゃった。
狩野すみれの日記より抜粋。
6月10日。
どうしたものかな。今夜はもう眠れそうに無い。あぁ、別に隣の部屋でカタカタ震えてる妹に原因が有る訳じゃないさ。
大体高須の奴も行き成り過ぎるじゃないか?
なんか色々とメールして憂鬱になってたら、急に電話が来たからビックリしたぞ?まさか高須から電話なんて珍しい。それも……逢いにきやがった。この台風の中を。
「来ましたよ」ただそれだけの言葉が酷く聞きにくいな。一体どれ程の雨風なんだ……あぁ、携帯を放り出してちゃ聞こえないか。
何故だろうな。気が付いたら家を飛び出して台風の中、アイツにしがみ付いてた。
台風だぞ?って言ってるのに「みたいですね」なんて呑気な馬鹿が。
風邪引くぞっていってるのに「馬鹿だから大丈夫じゃないですか?」なんてホントの馬鹿だろ?お前。
なんで?って聞いたらビックリしてたな。でも「逢いに来ました」か。
そこから先は覚えていない。いや、覚えてはいるが、その、あれは私じゃないというか、だな。
色々ぼ〜というかカーっというかになってだ、思わずお前にキスをして、ちょっとだけ濃厚になってしまってだな、止まるに止まれなくなって…お前が胸なんて触ってくるから思わず腰が…抜けた所でどっかの馬鹿が「あ〜〜!」なんて声を掛けたんだった。
ソコはリアルに思い出せるな。
もう良いから帰れと言った私をお前は不思議そうに見たな。分かってる。
コレは普通じゃない。こんな流れで、私はお前とどうこうなりたくない…違うな。
ちょっと怖かったのさ。今日の私は、何もかもが許せそうだったからな。だから……一つ約束したな。忘れるなよ?
さて、今日の日記はココまでだな。
どうにも私は隣の部屋で何故かおびえる妹に用があるみたいだ。
別に心配するな妹よ。私はなにも怒っては居ないぞ?
たとえお前が声を掛けたが為に全ての事が振り出しに戻ったとしてもだ。
私が色々な意味で、アイツと分かれた後にシャワーを浴びて下着を着替えなければ気持ちが悪い様な状況になっていたにも関わらず、アイツを帰した事にお前が関与していようともだ。
別にお前に言いたい事などコレっっっぽっちも無いからな。このドアを3秒以内に開けた方が良いぞ?妹よ。
高須竜児の日記より抜粋。
6月10日。
深夜に帰宅した…意味が分からん。
狩野先輩からのメールに「幾ら私だってな?偶にはあいたい」とメールが来た。
外は台風だと言うのに冗談ではない。無いのだが、スーパーかのう屋は我が家の生命線であり、毎度毎度、可也のサービスをしてくれる先輩は我が家の守護神と言っても過言ではない。
ならば行くまで!と行ったはいいが………何故抱き付かれてキスをされねばならんのだ?先輩の舌は柔らかいというか温かいというか……だまれ息子!そんな事言ってんじゃない!!
正気に戻ったのは何分後なんだ?取り敢えずココは離れようを、なんか柔らかい場所を押してしまったようで、先輩が「っはぁ!」となってしまった。とたんに「あーー!!」と来た。
一瞬、俺をお迎えに来る公僕の方々が脳裏を過ぎったな。
取り敢えず俺はその場を解放され、帰宅する事を許されたようだが……俺は何故呼ばれたんだ?意味が分からん。
おまけに妙な約束をさせられたもんだ。
どうやら俺は今後、すみれ、と呼ばねばならん様だ。出なければかのう屋の会計が跳ね上がると言われた。なんなら、すみれ様と呼びましょう。
で、あちらさんは竜児と呼ぶそうだ。好きにしてくれ。今の俺の脳細胞は冷静な判断は出来ませんよ、おかげさまで。
びしょ濡れで帰って、大河に聞いてみたが、大河に教わるとは世も末だな。
「馬鹿ね〜。それは台風が怖いから来てって事じゃない。あの会長も偉そうな事言ってる割にだらしないわね」
でもキスするか?
「それはね、大人のキスをすれば大人に成って怖くなくなると思ったのよ」!!おいおい。それじゃあ。
「そ、もう怖くなくなったから開放してくれたんでしょ」ふむふむ……大河、お前は成長したんだな。韓流ドラマを見続けた成果なのか?それは。
ま、どんなもんよ!とご満悦な自称、酸いも甘いも乗り越えた良い女の逢坂大河が笑っているがな。もう夜も遅いし、俺も疲れた。
いいから早く布団に入れ。電気消すぞ、大河。って早!もう入ってやがる。
ま、いいけどよ。
どうでも良いけど寝ぼけて首絞めるなよな……したんだよ!前回…おう、おやすみ。
今回はココまでです。
どもでした
>>412 GJ
>なんとも櫛枝もつまらない事で悩むもんだ。
>乳のいいきなさんかどでも良かろうに。
ここがなんかおかしい、解説PLz
も
っ
て
か
れ
た
!
アニキメロメロすなぁ
女性陣の頭の上には最早、ぷかぷかと爆弾が浮いているに違いない
>>412 面目ない。
>なんとも大河もつまらない事で悩むもんだ。
>乳の大きさなんかどでも良かろうに。
の間違いでした。
すまんです
>>413 >乳のいいきなさんかどでも良かろうに。
乳のおおきさなんかどうでも良かろうに。だと思う。
キーボード見るとOの隣がIなので、押し間違えたかと。
なんか誤字というか打ち間違えがチラホラと
ゆっくりしようぜ
もう書かれてた。ってか職人さんか。ごめんなさい。
次からはf5で確認してからレスする
アニキが何故、下着を着替える必要があるのかkwsk
そりゃまぁ…濡れ濡れだからだろ。
濡れたんだろ色んな意味で
台風だから濡れるのはしょーがないよねー(棒読)
大河が頭打ちるかれるSSってどれだっけ?
狙撃
ううおおおお読み終わった!!
GJであります
スレ容量的には今日中に埋まりそうだなw
日記の人GJ!
香椎父が終了までに飢え死にしない事を祈ります。
あ、補間庫の方、14皿目のCarnation〜1がちわどらと
同じリンクになっちゃってますよー。
おお日記の人が来たか。
眼福眼福…GJ!
個人的にはばかちーが可愛過ぎるw
>大橋高校の誇るフラッグマスター
ここで笑った。
だれか突っ込んでやれww
本家保管庫も更新されましたね
最後ナチュラルに同衾してるじゃねぇかw
普通にされてますが?
ごめんF5押したらなってた
なんか超右寄りなのは俺だけ?
blockquoteが無限増殖しとるなw
俺のPCだと丁度真ん中ぐらいだな
モニタによるのか?
うちも右よりだ、お気に入りの部分消してもスクロールしないと備考欄が消える
火狐とプニル(IE8)では作品一覧のテーブルが右寄せ、それ以外はセンタリング、横線は左寄せに、
PSPブラウザだと、過去スレ一覧〜リンクのミラーまでが左寄せ、それ以外は右寄せっていうかテーブルが超右寄りになってるな
まぁ、閲覧するのに支障はないし、なにはともあれ管理人さん乙なのでありますよ
あれ?直った?
おぉ直ってる!!
まとめ人本当に乙です!
ぼちぼち次スレいってくる
>>443 乙
まだ前スレ落ちてないのに早いなホントw
445 :
1:2009/05/24(日) 16:25:00 ID:HIMJ8eJ9
_/⌒丶 ー:- 、
-く/__ : : `ヽ: : : : : :\
/:/´ ノ : : : : : : : : ヽ: : '.
// ∠: : : : : : : : : : : ': : :i
. _/ ノ , イ:.{ : : : /{.: : : : : : ! : |
. イ){ {_ -イ: /ト八: :V/ヽ.: : : :│: | 保管庫管理人
/::::::::::ヘY: {: :{:.リ─ \l──}: :/: :| :│ 乙であります
/:::::::::::::/ ∨|ヽト{ ' 厶: : :リ :│
ゝ、 ::::::: '´::`丶/_: l:个 、 ─ /: :./: : :八
`丶、 :::::::::::::::`ヘ: : : |>t‐≦7: : 厶、 : : : ヽ
丶:::::::::::Vヘ: : |_レ不 _/: :./:::::/ヽ: : : : \
/: `丶、_:∧: |《_小./ : /:::::/::::::}: : : : : : 丶
/ : : : : : :/::::l: |//∧!: /:::::Y::::::::|; : : : : : : : }
{: : : : : : :i ::::|∧{ { /|/:::::::::i:::::::::{: : j :
本家保管庫に行ったら表題の文字がめちゃデカくて吹いたw
本当にスレうまるの早いなw
すまん聞きたいんだが「いざよい」の前作ってどこにあるか教えて欲しい。。。
見落としたみたいなんだ。
凄い速度だ
なにかグッズとか発売されたっけ??
ゲームの影響もあるけど、ラノベSSの場合大抵完結してしばらくまでが一番盛んなんだよな
つまり、今がピーク
ゆゆぽの次回作はまだですか?
職人の皆様GJ!
毎日ニヤニヤが止まらないよ。
アニメを制覇したんで次は原作を読もうと思って本屋に行ったら4巻〜しか見当たらない。
一瞬血迷ってスピンオフにしようかと思ったけど、やっぱり1巻から読むべきだよね?
>>454 スピンオフは原作知ってる人向けだからな。
その前にさくらと幸太はアニメにほとんど出てないし。
>>455 出てないキャラがいるとは知らなんだ。
了解した、1巻を探す旅に出るとしよう。
あえてポチらない!それが俺の(ry
補間庫管理者は絵師だったのか
ムチャクチャ巧くて吹いた
>>451 おお、こんなサイトがあったの知らなかったよ。
それにしても補完庫とは洒落が利いてるな。
おまけにぴょこぴょこ出たり消えたりするイラストがかわいい。
埋まった?
,' : . : .〃 ハ:. : . : . : .jl __ __
{ : . {{ / ∧:. : . : ./:| '.:´::::::::::::::::::` 丶
', : . ∨ー ":.:.. ∧:. : ./ | /::::::::::::::::::::::::::::::: . :: :: .ヽ
゙、 : . ∨:.:.:.:.:.:.:.. ヘ/ |゙. : . :.:::::/ヘ:::::、::::ヽ::::::::'; :: :`、
\、 : .X:.:.:.:.:.:.;.、‐´ |.:::::::l::::/ ヽ':ヽ::::`、:::::i:::::::::ハ
`ヾ、ー-- '┴ '''''"´ : . : |ハ:::W! ` ,> ヾ::|::l:::::l:::l AA使って手っ取り早く埋めちまおうって話だ!!
\ : . : . : . : . : 「7>!、、 ヽイイび゙犲V::::::l:::|
ヽ . : . : . : . : ノ|ィ7てカ` ゞつン 小:!::|:::|
丶. : . : . : ./ ゞ゙‐'" 、 イ::l:::ト}:|
`、ー- --:‐'''~ ハ |:::|:::|;!:|
/ ̄ ̄_\ ヽ,..、. リ 「7 ̄ ヽ !:::!:::l:::l
〈 .、-''" `く { [∧ { `, ,|:::l::::|:::|
} _,、-¬-、\〉 ヽ公.、 ゝ _ _ン .ィ|:|:::|::::!:::! _____
{ _、‐ 、 'く| ノ::::\> 、 _ <.:{:!:|::::!:::i::::! _/`{ _,.、- ゝ、
ヽ ゙´ ,r-、ン| /⌒ヽ::::Y'" ̄二≧z{;;;」::::{;;:1::1 〈′ :| ,.-‐'' ハ
∨ イ:.:.:. |′ `、::ヽ、 イ [l |:::::{;;::l:::l {`ー入{ ,、-‐ ハ
V 丿:.:. | `,::ヽ >ゝヘ、_|__ {:::::l;;::|:::{ ヽ .::廴{_ z‐ 1
,、‐''f´∨{'⌒\ } i ゙;::::', ', `, ';:::::ドi|:::}_ ヽ :/゙ ̄`ヽ{
/ ゙, \、:.:.:.:.ソ | : jハ::i ', '、 ';::::i, ``ヽ、 丶、ヘ. |
, ' ゙、 `"''゙リ } .:. ノ ソ ', ゙、`、::', ヘ {´`ヾ、__ __.{、
_,、イ .: 丶、:;;_/.: .: ;ハ . .: .: .: .: :. . . 、 ゙、 ゙;:ハ 、、 ヽ ,'´\ ``ー' }
, '" :/ .: . . : .: .:.丿.: / .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: : ', . .゙, j;'リ. ヾ; ,〉-、 i ヽ、 _ _,リ,
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雑談はこちらでしろとな
奈々子系の作者の新作まだかなぁ・・
ななドラ、ななこい、腹黒・・神が多すぎる
作者みんな同じなんじゃね?
俺はどうでもいいよ。明らかな失敗作だし
>>463 どうやってまとめたらいいかわかんなくなってんだろ
見目のいい文体だけで文豪とか呼ばれてちやほやされた結果がこれ
文章に起こすのなんか全体のプロットができるまですべきではない
言いたいことは判るんですが、それって大概の書き手がアウトになりそうだ
仕事が終わって、ゆっくり酒でも呑みながら、盆栽でもいじるみたいに
妄想をつらつら好き勝手に書きつらってる人がほとんどだろうし
>文章に起こすのなんか全体のプロットができるまですべきではない
ここまで断定されるとちょっと引いてしまう。
あるにこしたことはないだろうけど、勢いで書いてばかりです orz
ネットの海で浮かぶ月みたいな文字の羅列にそこまで必要かどうか疑問。
ま、大筋の流れは書いてみる感じだけどこれをプロットと呼んでOK?
大河と竜児、朝、ごっちんこ。
入れ替わり。
ヤバイすごいなんだこれな展開劇。
竜児in大河⇒元が凄い怖い×ヤバイ=悪魔度神がかり的。
大河in竜児⇒元が可愛い(モデル並)+家庭的=女神降臨
ここらへんをぐだぐだ書く。アホの春田を主軸に。
「今日のタイガーってなんかすっげくない?」(制服のボタンを直して貰って)
「ば、馬鹿なことを言うな!」(大河 in 竜児が本気で恥ずかしそうに)
⇒男女問わず「ぐっ」とくる。
テキトウに流して、とりあえずエロパロスレだからセクロスに持ち込む。
XXX風味をパクル。生々しい描写は×。
ぐだぐだに終わって誤魔化す。
こんな感じです。いつも。
それは確か同人ソフトで
たかがエロパロスレでプロット云々とか作者だけが気にしてれば良いのに何言ってんだろ
そもそもネット上の小説なんて金払ってもらってるわけでもないし
作者に完結させたりクオリティを上げたりしなきゃいけないって責任はないからな
作者自身がいい物を作ってきちんと完結させたいと思うならその為に頑張ればいいだけで
タダ見してる外野にとやかく言われるような事でもない
まあだから作者さんたちは自分のペースで自分のやりたいように書いてねって事だ
テーマ:麻耶の気持ち
内容:
あ、奈々子。
あれは…高須くん…?
楽しそう。
あれ?
あたし、どうしたのかな…。
なんだろう。
なんか、ちょっと、さびしいな…。
こんな感じから始まってどんどん肉付け。
>>469 10割同意
職人の「書きたい」「読んでもらいたい」
俺たちの「読みたい」
これがちょうどいいバランスで働いてるのが好ましい
472 :
1:2009/05/26(火) 18:57:43 ID:ygMWZGJt
お前ら釣られすぎだろw
同意してやるからそれを「マダー?」言ってる連中にも言ってやって
「マダー?」と言われて内心嬉しくないと言えば嘘になるし、
別にいいんじゃない?
マダーとか続き待ってますと失敗作云々の非難めいた言いがかりは全然別だしな
職人は職人なりのペースがあるんだ。
読み手はワクテカして待つ以外にあるまいて
/: : : : : : : : : : : : : : : : :`: : .、
/ : : : : : : : : : /: : : : : : : : : : : : ヽ
,/ : : : : : : : : : : / : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
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,| : : : : l : : : : : : : :|,ィぅテ圷ミ `` L: : ソ: : /
|: : : : : | : : : : : : : |代z::ソ ィぅミ,ン: :ノ
|: : : : : | : : :|: : : : |ヽ 、、 ヒツ,!/:|´
| : : : : :| : : :| : : : |l, | `` , ,ri|
| : : : : :| : : :|: : : :|v 丶 ``| |
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: :, イ‐-:、 |: : : : : : : : ヽ|、 代 |、: : : |
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まあそう急いでうめなくともw
埋めついでに今まで聞けなかったことを。
自分アニメから参加した新参なんですが何で奈々子様って黒幕ポジにいるの?
そういうキャラ大好物なのでむしろうれしいのだけどアニメだけだとああいうキャラでてなかったよなと。
原作の小説でそういう話があるのかな?
多分このスレで付いてるイメージが主なんでないかな
原作でも能登が木原を好きな事に気付いてて話を振ってるような節があるし洞察力は高い方かもしれんけど
原作は空気の読めるいい子
ななドラで計算だかくなり
ななこいで策略家になり
腹黒様で文字通り腹黒くなり
そして日記へって流れだと思う
原作の修学旅行の班決めの時なんかは黒さが出てたと思うけど。
寝ぼけた春田を操って、北村と木原を一緒の班にした後、
すぐ「寝てていいわよ…永遠に…」みたいなこと言ってたはず。
>>476 豚もおだてりゃ木に登るで、私は「まだー」とか言われたことは一度も
ないですが、褒められれば書くペースは上がるかもしれない。
ちなみにいつもは、結びのシーンが思いついたら、そこに向けて直感で
書いてますww
空気を読まずに「ななどら、マダー」ってのが連発されるから奈々子ものを見直してみた
それと、過去スレも見直してみたが…
この作者、他にも色々書いているが、どれも中途半端で放棄しているな
どれか一つでもストーリーを完成させるようにした方が本人のためでもあるし、このスレのためでもあるな
もっとも、こうした忠告も誹謗と決めつけられるんだろうけどさ
身に覚えがあり過ぎて痛い
コテハン付けないのは、途中でバッくれても判りにくいってのもあるな
しかし文体だけで、そこまで特定できるもんなんかね?
書き手の意識としては
>>476は正しいと思う。
ケツは大事だよね。
まあ、このスレには過去に外野の声がでかくなりすぎて
職人が投下しづらくなった時期があったので、ちょっとした
意見にも「誹謗中傷だ!」「エロパロにそこまで求めるなよ」
などと敏感に反応しちゃう人がいる。
あまりにひどかったから仕方ないけどね。
職人の保護には反対はせんが、職人がそれに甘んじるのは
危険だよ、とは忠告しておく。キノの10巻の3話だよ。
まあ、外野がとやかく言うことではないと思うから、
職人自身の意識の向上に期待していますよ。
あらかじめプロットがしっかりしてないとか、どれもこれも尻切ればっかじゃねーかとか、
それって、ライトノベル全般に当てはまるハナシですよね
まぁ好きに書くのが一番だよ。
別に外野がゴチャゴチャ言っても始まらんし。
今更だしどうでもいいけど
北村竜児能登は1年の時同じクラスだぞ
そして多分おそらく麻耶も奈々子も同じクラス>>日記の人
この雑談は前スレでって良い考えだね
なんか荒れそうな話題なのに、荒れずにちゃんとした議論になってるし
もしもの時も現行スレ荒れる心配も無いしね
>>490 独辛は確か一年の時竜児の副担任だったはず。違ったっけ
>>485 どれとどれが同じ作者なのか挙げてみてくれない?
俺には全然分からない
細けぇ(ry
>>493 過去スレで作者本人が独白してるよ
これほど確かなものはない
>>490 >>492 >>494 あとは泰子が〜〜でがんすとかやんすとか言い始めたのって
時間軸としては本編始まってからだったような希ガス
あんまり記憶に自信ないけど
それくらいかなあ気になったのは
面白いし細かい事だし原作の方も読み始めたってあったんでそういうのは言わないでいた
初期設定を無視して日記が暴走し始めたな
>>497 泰子が変な口調になったのはクリスマスの時期じゃね
まあ原作読んでないのはいいんだけど
アニメでも北村は同じクラスだぜ
「高須君、あなた何人くらいの女の人と寝たの?」
と亜美がふと思いついたように小さな声で聞いた。
「童貞です」と僕は正直に答えた。
実乃梨さんが素振りの練習をやめてバットをはたと床に落とした。
「あなたもう十六歳でしょ?いったいどういう生活してんのよ、それ?」
亜美は何も言わずにその澄んだ目でじっと僕を見ていた
竜児が外出しようと家を出るとそこに一匹のタイガーがいた。
彼はすぐに失恋大名人に電話した。
「家の前にタイガーがいるんだが、どうしたらいい」
「動物園に連れてくのが一番良いな」
翌日、竜児はまた失恋大名人に電話した。
「もしもし、昨日のタイガーのことだが。
教えてもらった通り、昨日タイガーを動物園に連れてった。
動物園はいたく気に入ったようだ。
今日は映画にでも連れて行こうと思うんだが、どうだ?」
梅
504 :
5:2009/05/29(金) 23:38:26 ID:4YqLbs7f
埋め。「二代目」
後はまかせたぞ!
――えぇ!?ぼ、僕がですか!!?
あぁ、他に誰がいる?
――でも、僕には相手がいますから…。だから継ぐことは出来ませんよ。
将来のことを考えろ!
――別れろっていうんですか!?
それが自然だ。
――どこがですか!?先輩はそんなこと言う人じゃなかったのに。何かあったんですか?
いや、託せるのがおまえだけなんだ!もちろん、引き受けてくれるよな?
――だから無理ですって!
なんでだ?
――その肩書きは僕には重過ぎます。
お似合いだぞ。
――似合いませんよ!
ちゃんと目の前の事実を見るんだ!
――ただでさえ色んな不幸を背負ってるのに…。そこまで不幸になったら僕には救いがないみたいじゃないですか!?
それはそうだろ!
――ちょっと、それは酷すぎますって!
どこがだ?
――いや、全部が!
どうしてだ?
――どうしてって…。
認めた方が楽になるぞ?
――そんなこと認められませんよ。
なぜだ?
――なぜって…。僕にはさくらちゃんがいます!
いつまでだ?
――ずっとですよ!
そんなこと信じてるのか?
――し、信じてますよ。
まだまだだな。
――僕はこれからもずっとさくらちゃんと一緒にいるんです!
そう、なのか?
――そうです。
何があってもか?
――はい。
…そうか。おまえの意思がそこまで固いとは思わなかった。
――いや、意思の固さなんて関係ありませんけど…。
最後にもう一度聞く。失恋大明神を継いではくれないのか?
――は、はい。継ぐことはできません。
いつなら継げる?
――いつになっても継げませんよ!
なぜだ?
――さっきも言いましたけど、僕にはさくらちゃんがいますから。
別れないのか?
――別れませんよ!
そうか…。そこまでの決意があるとは…。
――さっきから何言ってるんですか?先輩らしくないですよ。
いや、ちょっとな…。
――ちょっとでさくらちゃんと別れろとか言わないでくださいよ!
ま、気にするな!
――よくわかりませんけど…。気にしないことにします。
物分りが良くて助かる。じゃ後はちゃんとおまえの想いをあいつに伝えてやれ!
――はぁ。
付き合っているとは言っても相手の気持ちが心配になる時はあるもんだ!だからちゃんとおまえの口から伝えてやるんだぞ!
――あ、はい。
できなければ失恋大明神を継ぐことになるから覚悟しておけ!
――はぁ。
物陰に隠れて二人のやり取りを見ていたさくらは胸を震わせ喜んでいた。
幸太とさくらが付き合い始めてから、しばらく経つ。
さくらはあまり気持ちを口にしてくれない幸太がわからなくなり、心配で北村に相談した結果がこれだった。
初めはハラハラして聞いていた。
別れろなんて言うとは思わなかった。
でも結果からいうと、自分を想ってくれる幸太の気持ちが確かめられた。
その上、今度はさくらに対してハッキリと今の想いを伝えてくれるという。
さくらは胸を高鳴らせ、少し緊張しながら北村にメールで礼を言い帰路に着いた。
北村が失恋大明神を継ぐものが現れることを祈るはずはない。
北村はさくらからのメールを見て、顔を綻ばせながら去って行った。
二代目ってタイトルから最初、竜児のことかと思ったw
面白かったGJです
>>508 そんな二代目誰も継ぎたくないなw
>>509 アレですね。道端で893な方々にスカウトされる話ですね。そんなss待ってます。
ここはわたしも便乗して埋めネタいきたいと思います。最近埋めネタ書くのに嵌ってます。
「これからお休みになる方もお目覚めの方も、時刻は4時になりました。あさにゅ〜の時間です」
まだ夜が明けきれていない朝4時。徹夜明けの人間、朝の早い人間がテレビを付ける。
そこに写っている彼女は4年ほど前にティーン雑誌の表紙を飾り、中高生が夢中になったカリスマモデル。
川嶋亜美が居た。モデルとしての頂点を登った彼女は、自身が大学受験のため、
誰もが羨望を持つであるだろう芸能界の最前線を離れる。彼女が最後を飾った雑誌の売り上げは、創刊してから今までの中で歴代一位である。
突然の休業、あるいは引退ともとれる宣言は、マスコミ、メディア、週刊誌などに良いように扱われ、ある事無い事書かれる。
一時は妊娠説まで出た程だ。そんな世間には全く揺らされずに彼女、川嶋亜美は某国立大学進学を決める。
その年の新入生は二重の意味で歓喜したという。そして現在、芸能界の世界では4年も経てば大体の事は忘れられてしまう。
さらに言ってしまえば、この業界は回転が早い。いくらティーン雑誌の表紙を何十冊飾ろうが、時が経てば代わりが出てくる。
そして代わりの人間もすぐ変わる。その業界で、すっかり過去の人物としてなってしまった川嶋亜美だが、
学生生活では普通の一般人の様に過ごす。そして何事もなく大学をストレートで卒業。
そして就職先は某球体テレビ局アナウンサーになった。モデル現役時代と同等、否、もしかしたらそれ以上の体型を維持し続けた彼女。
そして、またもや世間は煽る。
『元カリスマモデル。4年間の沈黙を破り、アナウンサーとして復活!!!』
電車の中吊り広告には、そんな見出しが並ぶ。
世間がまたもやある事無い事ゴシップ文句を垂れ流す。
入社してすぐに話題が集まり、先輩の目も厳しいそんな中、その年の夏、一日以上生放送する番組にて、毎年恒例の提供読みとして、
アナウンサーの初鳴きを終える。
その時のシーンが瞬間視聴率NO.1をたたき出したのは、良い事なのか悪かった事なのか。
この一件で注目が集まる彼女を球体テレビ局は使わない訳がない。
研修を終え、夕方のニュースの特集コーナーのリポートをいくつも勤め、時期『○○パン!』とも呼び声高い、新卒新人アナ注目度NO.1になった。
そして秋始め、彼女が手にしたチャンスは大きかった。
「おはようございまーす!」
時刻は夜2時。彼女が着いた部屋は球体テレビ局の一室。平日毎夜は『あさにゅ〜』でのスタッフルームに澄んだ声が響く。
「おはよう川嶋さん。今日は青色だね」
会議室は、長方形のパイプ机を縦に二つ、間に空間が出る様に二列、その端に横
の形に一つづつ、四角形を作る様にに並べてある。入口から入って直ぐに亜美の
席がある。元気よくあいさつをし、席に座りながら亜美は話を続ける。
「おはようございます田中さん。今日は黒っぽいじゃないですか」
たわいのない会話をしながら亜美は今日の原稿に目を通す。
「あ、そうだ亜美ちゃん。今度の『亜美と〇〇!』の取材先だけど、ヒルズに行くから。
オシャレなものでも見つけましょう!モデルのセンス見せてね!」
「えっ!?ホントですか!? やった!凄い嬉しい!!」
田中と呼ばれる短髪の黒いポロシャツを着たディレクターがグッと親指を立て、亜美にウィンクする。
『亜美と〇〇!』とはこの『あさにゅー』のメインMCが亜美になった事で出来た新コーナー。
都内近場のオシャレスポットを巡るロケだ。
入社してから研修、仕事と何かと忙しかった亜美はこのような場所には滅多に行
けなかった。さらにしばらく休めなかったのもあり、こうして、仕事だが比較的ゆっくりしながら散策する事が嬉しかったのだ。
亜美が空想にふけっていると、田中はまたも思い立ったかのように話す。
「それとそれと、亜美ちゃんこの秋からどんどん忙しくなるね。
この『あさにゅ〜』に来週の月曜の深夜から『アミパン!』でしょ?
チノパン、アヤパン、ショーパン、カトチャンときてアミパン。大出世だなぁ〜」
「そうなんですよ〜。夜のテッペンから働いて夕方のニュース終わりまで。
そこからアナウンス室の会議やら何やらで…」
「あちゃー…、そりゃ体調崩さないようにな。まさに猫の手も借りたいくらいだな」
「ホントですよね〜 …虎と竜なら居るけど」ボソッ
「んっ?なんか言った?」
「い、いえ!なんでもないですぅ〜。そ、それよりこの原稿なんですけど…」
なお、これから先は500キロバイトを超えるため省略されます。
続きが気になる方は是非、手を上げて
「前スレの埋めネタが途中で終わったので私が続きを書きます」
と新スレに書き込んでください。
いいですか?
512 :
1:2009/05/30(土) 07:10:07 ID:SkYDRhq5
いっそ、98VMさんに続きを書いてもらったほうが…
相馬 広香(わたしたちの田村くん)
_ _
_. -‐'"´ ゙ ー 、
/. __ ヽ
,/ .::/. /.:. ヽ:ヽ. 、 ヽ
/ il::.i: {ハ::. i:. }:. }:. トヽ ヽ
i /|::.{. 乂LV {::.. ノ-}‐ナノ_、ヽ ヽ
{l |::.{.ヽ|rぃヽン rテッ〉| }'ノ::. ヽ
|! lト、ミ.ゞ-’ ゙‐ 'ル{ヽ::: ヽ
ヽ ゙ゝ /∧、`- ./l lィ} \ \
// lイ、`._-‐" ィ | .|ノヽ、 \
/ ,/ l l / li=广/ | |゙ヽ: : ヽ \
/// l i ヽ{i: :li/゙ | | : :.>''"゙ヽ \
// / ノl i / li/ /゙l | /: : ゝ -┤ `ヽ、
// / / i .l.{ // / ヾ| ! ./ : : : : ! ヽ、
. // / /{ l .iソ/ /: : : .! .l′: : : ヽゝ、, \ヽ、.`、
,'/ //!l ヽ / / ハ:: : : | iヽ、: : . ヽ `ヽ 、 .ヽ ! !
!l ll ヽ、 / " / }!ヽ.. ll. ヽ: : : ', \ |/
!! ヽ、___/ .,/! }ヽ!ヽ: . `. ヽ: : . ヽ } ノ
ヽ / / ! ソ: .fヽ : : : : . ヽ: : : ヽ ! /
/ / !/: : :}: :`: : : : : . ',: : : \', / /
! l /丶 ノ : : : : : : : . ',: : : \ //
l l / : : :メヽ : : : : : : : : l: : : /イ{
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:;:;:;:;:;:;:::::: ,ノー、,,/! |
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ヽ二ニ-"