専用スレに投下できないSS

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1名無しさん@ピンキー
質問スレや誤爆スレなどを見て需要がありそうだったので立てました。

専用スレはあるけれど
・荒れていたり雑談や議論で盛り上がっていてSS投下の雰囲気ではない。
・グロ、陵辱、801、2次でオリ要素が強い、等、
 火種になりそうな要素を孕んでいてスレへの投下を躊躇してしまう。

そんなSSをとりあえず上げてしまいましょう。

関連スレ
【うpろだ】専用スレのないSS その2【代わり】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1240477403/
スレから追い出されたSSを投下するスレPart2
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1208076450/
【お焚き上げ】投げSS供養スレ【墓場】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1221031954/
練習用殴り書きスレッド5
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1239541595/
2名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 00:32:35 ID:EYz15KH8
   _,,....,,_  _人人人人人人人人人人人人人人人_
-''":::::::::::::`''>   ゆっくりしね!!!         <
ヽ::::::::::::::::::::: ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
 |::::::;ノ´ ̄\:::::::::::\_,. -‐ァ     __   _____   ______
 |::::ノ   ヽ、ヽr-r'"´  (.__    ,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、
_,.!イ_  _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7   'r ´          ヽ、ン、
::::::rー''7コ-‐'"´    ;  ', `ヽ/`7 ,'==─-      -─==', i
r-'ァ'"´/  /! ハ  ハ  !  iヾ_ノ i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i |
!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ  ,' ,ゝ レリイi (ヒ_]     ヒ_ン ).| .|、i .||
`!  !/レi' (ヒ_]     ヒ_ン レ'i ノ   !Y!""  ,___,   "" 「 !ノ i |
,'  ノ   !'"    ,___,  "' i .レ'    L.',.   ヽ _ン    L」 ノ| .|
 (  ,ハ    ヽ _ン   人!      | ||ヽ、       ,イ| ||イ| /
,.ヘ,)、  )>,、 _____, ,.イ  ハ    レ ル` ー--─ ´ルレ レ´
3名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 02:00:26 ID:h74WvcaH
>>1

で、お前さんが関連スレとして挙げてるスレのとの違いは?

要らんだろ。
41:2009/05/14(木) 06:35:49 ID:H3/vrWmp
【うpろだ】専用スレのないSS その2【代わり】
スレを立てても持ちそうにないマイナージャンルのためのスレ。

スレから追い出されたSSを投下するスレPart2
常駐スレでアンチに叩かれて、居場所をなくしたSS職人さんの避難場所。

【お焚き上げ】投げSS供養スレ【墓場】
途中放棄し、完結させることが出来なかったSSを投げて供養する墓場。

練習用殴り書きスレッド5
職人未満の初心者さんがSSの練習、テスト、殴り書き等に使う板。

重複する要素は無い。
5名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 09:10:42 ID:4XrvGgCO
>>4下二つはともかく上二つとここは纏まれるだろ
6名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 11:05:57 ID:W0CstEIK
@【うpろだ】専用スレのないSS その2【代わり】
>超マイナー作品、新連載始まったばかり、古典すぎて即死しそう、
>シチュエーションが特殊、ネタバレ含みで本スレには投下できない等々、
>専用スレが無かったり投下先が無いSSを投下したい時、うpろだ代わりに使いましょう。

@スレから追い出されたSSを投下するスレPart2
>微妙にスレの空気からずれたSS。
>投下したら叩かれそうだなあと思うSS。
>どこに投下すればいいのか迷ってしまうSS。
>そんなSSをとりあえず投下するための専用スレ。
>うpロダ代わりにご利用ください。

重複じゃないと言い張る為にわざとやってるんだろうけど、上二つのスレ趣旨で全て賄えてる。
7名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 21:09:47 ID:SSi5KYz6
そうやって書き込む自体がこのスレを生かしてしまうのだから、おかしいと思ったら放置が一番なのです>all
8名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 21:19:34 ID:UFfeLKEG
>>7
そのとおりだな。
9名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 21:24:21 ID:pFcfB9NK
いや全く。
10名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 22:30:10 ID:ykEdasI8
>>7氏の仰せの通り!!!!!
11名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 01:34:34 ID:fyUB8lJd
 妻と甥の薫(かおる)を関係させてみたいという願望は、ここ数年来私の心に取りついていた。

 薫は鎌倉の実家に居る私の兄の一人息子で、今は私大の二年生だけど、
中学の頃から素行が悪く、兄夫婦は持て余していた。
 大学に進んだ薫をを寄寓させて監督するよう兄が頼んできた時、私の願望は、
ひとつの明確な形を取り始めたのだった。
 薫は、不貞腐れ身を持ち崩した不良のわりに、涼やかな眼をした美青年。
 一方の妻は私より十四も下の二十八歳で、まだ子供も持たず、
会社勤めを辞めて専業主婦の座に落ち着いた今でも、外を歩けば道行く人が振り返るほどの、
美貌の持ち主だった。

 生ぬるい風の吹く、五月の夜のことだった。
 私の経営する会社でちょっとした宴会があり、軽い酔い心地で帰宅したものの酔いが足りず、
畳敷きの閨房に据えた茶卓にウイスキーとソーダ水、それにささやかなつまみを用意させ、
寝間の浴衣をまとった妻のお酌でちびりちびりとやっていると、
これもまた夜遊びからの戻りらしい薫が、慎みなく玄関を開けて廊下を渡り、
二階の下宿部屋に帰っていく足音が近付いた。

「ちょっと薫君」
 私は、部屋の前を通り過ぎようとする薫を呼び止めた。
「構わないからそこの襖を開けて入ってきたまえ。私も今しがた帰ってきたところだ」
 酔って陽気になった私は、夜遅く帰還したことを照れている様子の薫を、
無理やり閨房に引き込んだ。
 薫の分のグラスも妻に用意させ、傍らに敷きっ放しになっている夫婦の寝床や、
しどけない寝間着姿の妻の姿を彼に見せつけ、秘密めいた空気と、酒の酔いに理性を混濁させ、
妻を聞き手に露骨な猥談などもして、次第に淫蕩な興奮の中へとその場を誘引して行った。

「そうだ薫君、ちょっと面白いものを見せてやろう。取引先の専務が海外土産に持ってきたものだ」
 そう言って妻に言いつけ、箪笥の引き出しの奥に仕舞った仏蘭西の猥写真を持ってこさせ、
茶卓の上に広げて見せた。
「やあ、こりゃあ素敵だ」
 薫は酩酊した顔を赤くてからせ、若い義理の叔母を前に青年らしくはにかみつつも、
それを克服しようとしているようなぶっきらぼうな態度で、一枚一枚手に取って凝視した。

「そんなもの見ない方がいいわよ」
 空いたグラスに酒を注ぎながら、照れ隠しのように妻が口を挟む。
「毒ですよ、若い方には」
「ほう……毒というのはお前、こういうものを見て発散させないから毒になるのだ。
 お前がそれほどまでに薫君を思いやっているのなら、ひとつ発散させてやることだ。
 どうだね薫君」
12名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 01:35:22 ID:fyUB8lJd
「馬鹿をおっしゃらないで」
 そう言って身をくねらせる妻の姿には、淫蕩な媚態が見え隠れしていた。
 私は、酔眼で薫を見据えて言った。
「さあ、どうだね薫君。興奮したなら内のを貸してやるぜ」
「……」
「よし、じゃあ俺が指導してやるから一つ彼女とやってみろ。
 さあ、いつまでも堅っ苦しい格好してないで裸になれ裸に」
 尻込みして押し黙る薫に、先導する口調で私は言った。
「なんだ意気地のない。まさか二十歳にもなって女を知らねえ訳でもなかろうに」

 挑発を受けた薫は、己の羞恥心に反発するようなふてぶてしさを表し、
シャツを、ズボンを脱ぎ捨て、下穿きも取り去って、すべすべと白いなめらかな肌を、
細身ながらも筋肉の逞しい若い体を、ぼんやりとした閨房の明かりの下に晒した。
 下腹部の黒い剛毛の中から、凄まじく勃起した陰茎が、初々しい桃色をした尖端の丸みを
てらてら輝かせ、茸状ににょっきりと突き上がっているのが見えた。

「見事じゃないか」
 褒める私に、薫は昂然たる横顔を見せ、
「別に、大したものではないですよ」
 と、平静を装って返した。

「さあ、お前も早くその浴衣を脱いで」
「いやよ」
 私の言いつけに、妻は眉をひそめてかぶりを振った。
「何が嫌なものか。日頃大いに薫君の若さと逞しさを礼賛しているくせに。
 薫君、構わないからやってしまえ」
「……本当にいいんですか?」
「亭主の俺がやれと言っているのだ。そら、手伝ってやるから」
 私は妻を布団の上に押し倒し、その上に薫の体を投げるように重ねて乗せた。
 そして、儚い抵抗を試みる妻を腕力で押さえつけ、薫と二人で寝間着の紐帯を解き、
前をはだけて大きな乳房を丸出しにしてやった。
 薫の手にその乳房を引き渡した後、堅く閉ざしている妻の脚を左右に広げる手伝いまでする。

 薫は、慣れない仕草で仰向けの妻の肢体に下腹部を密着させた。
 しかしまだ、陰部の結合が出来ていない。
 私はもじもじとまごついている薫の陰茎を手に取り、密着した二人の股の間でそれを動かしつつ、
空いた手で妻の陰部を探った。
13名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 01:36:02 ID:fyUB8lJd
 驚いたことに、この時妻の陰部の膣口からは、すでに夥しい量の粘液が溢れ、
周囲の粘膜をぐっしょりと濡らしていた。

「おい薫君、少し腰を上げてくれ――よしここだ。ここに嵌めるんだ。
 いきなり挿れないで、少しずつ抜き差しして淫水で濡らしながら、奥の方まで挿れるんだ」
 私の指示に従い、薫は無骨に腰を上下させ、どうにか妻の膣に陰茎を嵌めて行った。
 浮いていた腰が沈み、再び下腹部が密着して二人の性器が見えなくなった所で、
私は薫に声をかけた。

「すっかり嵌まったか?」
「ええ」
「具合はどうだ?」
「いいです」
 興奮に上ずった声で、薫は答える。
 私はぴったりと合わさった二人の体の間に手を差し入れ、結合部分を探ってみた。
 眼で確認は出来ないものの、妻の陰部の肉襞の中へ、薫君の逞しく強張りきった陰茎が
根元まで這入り、溢れ返った粘液がそこいらを濡らしているのが、はっきりと指先に感じられた。
 その粘液は妻が漏らしたものに相違なく、彼女の性欲興奮の度合いを充分に物語っている。

 私が手を引き抜くと、薫は叔父であり、女の亭主でもある私の前で悪びれもせず、
彼女の体を強く抱き締め、熱烈な接吻を仕掛けていた。
 腰の方はほとんど本能的な仕草で上下動し、膣口と陰茎の擦れ合う珍妙な音を辺りに響かせた。
 一方の妻の方は、浴衣の袂で顔を隠し、上に乗っかった薫の動作に揉まれるまま、
ひたすら受身を決め込み、自ら動くことはしなかった。
 それでも薫は、それを不服を感じる様子もなく、一定のリズムで、
時おり、不随意的で不規則な動作を織り交ぜつつ軽快に腰を使い、それに没頭して行った。

 そんな彼らの性交を傍観しながら、私は不可思議な興奮を覚えていた。
 私の妻が、夫である私の眼の前で不貞を働いている。
 若い男の陰茎を膣にくわえ込み、欲情して淫水を漏らしている。
 その事実を自覚する毎に被虐の快感が身を苛み、それと交錯した残酷なまでの嫉妬の炎が、
私の脳管を焼き、熱いのか痛いのかわからぬ感覚が陰部に伝わって、
永らく完全に硬直することを忘れた私の柔らかい、半勃起状態の陰茎の先から、
とろとろとした粘液となって漏れ出すのが感じられた。
 苦痛に満ちた快感に、後頭部の辺りがじんと痺れる。

 陶酔で朦朧となった体を動かし、妻の傍にいざり寄った私は、薫の体重に押し潰され、
平たくなった白い太ももを、ぴしゃりと叩いた。
14名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 01:36:48 ID:fyUB8lJd
「おい、薫君にばかり働かせてどういうつもりだ? お前も少しは腰を使え。
 亭主の手前遠慮しているというわけでもあるまい」
 妻は、袂の下から媚と恥じらいを含んだ眼で私を見上げた。
 快楽にぼんやり霞んでいるその眼は――確かに笑っていた。

「あなた、明かりを消して下さらない?」
「なんだい、恥ずかしいのか」
「恥ずかしいわ……きまりが悪い。ねえお願いよ」
 薫の動きにつれて、揺れる声が言う。
 薫の体に押し開かれたむき出しの脚も、同時に小刻みに跳ね上がり、なんともエロチックな
風情だった。
「ふん、明るいと気分が出ないってことか」
 私は乱雑な仕草で妻の顔から袂を引き剥がし、赤く火照って汗ばみ、羞恥のためか快楽のためか、
瞼を堅く閉ざしている彼女の顔に、憎悪を孕んだ暗い眼差しを送ってから、天井の明かりを消した。
 間もなく閨房は闇に満たされ、開いた襖の向こう、廊下を隔てた茶の間の明かりが、
硝子戸越しに朧に漏れてくるのだけの、仄かな明るさになった。

 そしてその暗い中、二つの肉体は一塊となり、布団の上で妖しく蠢いていた。
 癇症なまでに規則的な震動が、周囲の畳までも小刻みに震わしている。
 手を這わせ、二人の様子を探ってみる。
 妻はさっきまで左右に広げられて投げ出したきりだった両脚を、心持ち立て膝にし、
その間に薫の腰を挟み込んで、明らかに自発的に、下から腰をくいくいと動かせていた。

 それを知った私の心臓はますます激しく高鳴り、息苦しいほど鼓動を早めて、
ある種の戦慄が腹の底から込み上げ、陰茎の先から冷たい粘液となって垂れ落ちた。

 陰気な快楽を享受している私をよそに、不貞を働く妻達の交合は熱狂のさなかにあった。
 ぢゅうっ、と音を立てて両方の口が激しく吸いあい、体と体を隙間なく絡みつけたまま、
力いっぱい抱き締めあって、息もつけぬほどに苦しく相互にもがき狂う、
といった愛撫をしあっているのが、気配で感じられた。
 次いで僅かに姿態が変化し、もう一たび強い接吻の音が鳴り響くと、上下の体の動きが
狂おしい呼吸と律動を合わせて精巧な機械のような円滑さとなり、ずしんと重たい地響きを立てて、
 周囲の様々なものをみしみしと共鳴させた。

 こうなると最早、露骨な情景をじかに眼で見るよりも、闇の中で気配を感じている方が、
遥かに猥褻で魅惑的であった。
 下になった妻の体が、ぐっと反り返って薫の体を持ち上げる。
15名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 01:37:25 ID:fyUB8lJd
 上の薫は妻を押さえ込み、平たく潰して思うように腰を使おうとする。
 二人の営みは、悲壮な格闘の様相を呈してきた。
 暗い中で乱れる呼吸のほかはどちらも無言であるだけに、それは異様な迫力を感じさせる。
 私のきつく握り締めた手の中では、激しく指で揉まれている陰茎が、太く硬く勃起しては、
不意に柔らかく萎びてびくびくと芯の索条を引き攣らせ、粘液の糸を引きつつ、
蛇のようにのた打ちまわってもがいていた。

 やがて、妻の方にアクメの気配が起こっていた。
 こんなことは私との閨房生活において、まるで例のないことであった。
 何しろ感覚が鈍く、アクメまでに長い長い時間刺激の必要な女である。
 碌な前戯もなく、陰茎一つで妻に立ち向かう力など、今の私にはなかった。
 陰核や膣に与える熟練した手淫をじっくりと仕掛け、充分に潤し性欲亢進させた後で
ようやく本格的な性交にかかることで、初めてクライマックスの陶酔境へと彼女をいざない、
嗚咽と快楽痙攣の世界へ落ち込ませることができるのだ。
 これは精力体力の減退した私に取って、一大事業である。
 それが薫との交合においてはなんと容易く、軽々と達成できたことだろう!

 また言い換えれば、十年近い性経験を重ねてきた熟練の年増女が、
二十歳そこそこの若造との立ち合いで、他愛もなく敗れ去り、屈服せられた感じでもあろう。
 これは無論、妻自身の性的興奮の度合いが並々ならぬものだったからに他ならない。
 つまりその点においてもこれは妻の、ひいては夫である私の敗北を示しているのであった。

 しかし、と私は心の内で己を慰めるのである。
 おそらくは未経験であろう薫が案外長く持つのは、酒の力もあるのに相違ないのだ――。

 手脚をぴんと伸ばし、弓のように体を反らして苦悶の呻きを上げる妻に圧し掛かり、
いっそう熾烈に腰を振りたてている薫に、私は声をかけた。
「薫君、精液が出そうかい?」
「はい出ます……でもまだ、もう少し」
 だが薫はもう少し、と言ったきり、その後一時間あまりもの格闘を続けることになった。
 やはり酒のせいなのであろう。
 クライマックスは妻の方にばかり繰り返し訪れ、しかもそれは回を追う毎に鋭く、
強烈なものとなり、それを受け入れる彼女は肉体の負担も度外視し、
全てを忘れてより強い陰部の快感を追い求めてもがき、息も絶え絶えになったその姿は、
凄惨の一言に尽きるのだった。
16名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 01:38:02 ID:fyUB8lJd
 そしてついに、二人の交合に決着のつく時が訪れたのである。
 ぴたりと付着し揉み合わされた二人の肉の間から、くぽっくぽっと抜き差しの音が大きく漏れて、
妻の豊満なお尻が積極的な意思を持って下から突き上がり、相対する薫の腰も制御を失って
ただがむしゃらな、めちゃくちゃな躍動と化してしまい、やがて、
「あ、あ……で、出ますよ」
 と、喘ぎ混じりの薫の声。
 妻の方はと見れば、これもまた夢幻の陶酔境に赤い顔を物凄く歪め、
今まさに、アクメを迎えようとしている所であった。

「よくなったら、二人とも存分に声を上げてお泣き。
 その方が、いい気持ちなんだから。ここには他に誰も居ないのだから、遠慮はいらんよ」
 二人を煽りたてながら、私は己の興奮で気が遠くなりそうだった。
 陰茎は粘液に塗れたまま手の中で揉みくちゃになり、自然と射精を兆していた。
「あああっ、叔母様、出ます、出ます!」
「あはあ、いいわあ……出して、出してえ」
 一塊になった震動体が何か奇妙な変調子になり、上下左右にうねり出したと思ったら、
まず薫が押しひしがれたような声で「うううう」と呻き始め、
それとほとんど同時に、ぐっと状態をそらせて白く腫れ上がった乳房を露出した妻が、
「うあああーあーあーあーあー!」
と、見栄も外聞もなく喚きたてた。

 完全に一致したアクメであった。

 二十八歳の人妻と、二十歳の童貞青年との最初の性交が、全く理想的な状態で完結したのだ。
 私でさえ、妻との長年の性生活において、こうも見事に、完璧にアクメを一致させた経験は、
殆ど無い。
 男の陰茎は射精の瞬間に一番太く硬く膨張するのだし、
女の膣は気がいく瞬間に一番窮屈に収縮するのだから、アクメを一致させた交接の快感の素晴しさは、
至上のものであるはずだ。
 それを二人は、初回の営みで経験した訳である。
 これは二度と忘られぬ経験となって、二人の肉体に刻み込まれたのに違いない。

 そう考えた瞬間、痛烈な嫉妬に心を噛まれた私の下半身は異様な痙攣を起こし、
近年覚えがないほどの――尿道が突き刺されるような、苦痛に等しい快感と一緒に、射精した。

 アクメの波が収束した後、妻と薫君は闇の中で折り重なったまま、ただ息遣いだけ荒くして、
じっと静止していた。
 私は猿股の中で精液に塗れた自分の陰茎を手拭いで始末し、妻と薫を見やった。
 強烈な興奮が醒めてしまうと、そうして睦まじく抱擁している二人を見ることに耐えられず、
立ち上がって明かりをつけ、妻に声をかけた。
「さあお二人さん。いい加減、起きて濡れた所を拭いたらどうだね」
17名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 01:38:39 ID:fyUB8lJd
 私の声に、薫は正気に返ったように身動きを始め、名残惜しそうに口を吸ってから体を離すと、
妻の上から退いた。
 妻の方はまだアクメの余韻から醒めぬ様子で、明るくなっても乳房と陰部を晒したまま、
あられもない浅ましい格好で手脚を伸ばし、死んだようになって仰臥していた。
 性交の時の姿勢そのままに膝を立てて股を広げているので、
陰部のくさむらが、恥丘や周辺の皮膚にへばりついてきらきら光っているのが丸見えだ。
 充血して広がりきった陰唇の中、真紅に染まった膣の穴も、洞穴のようにぽっこりと開き、
いかにも、今しがた太いものを抜き取った跡そのものの空虚さを表している。
 そして、その黒く開いた膣の穴からは、薫の出した精液がたらたら流れ、
彼女の尻の下に、薄ら濁った染みを広げていた。

 妻の膣に薫の精液が注入され、今も中に留まっているという事実を目の当たりにして、
私は病的な興奮を覚える。
 妻が私以外の男の精液を受け入れたということは、最早決定的な彼女の不貞に他ならない。
 今夜のことはもう絶対に取り返しがつかず、貞節を主張できなくなった妻は、
今後不貞と不倫の泥沼の中へ、とことんまで堕落して行くしかないのだ。
 そう、私は自分に言い聞かせる。
 そして、たとえ私の煽動によるものとはいえ、易々とそれに乗って義理の甥に身を任せたことは、
取りも直さず妻自身の責任でなければならぬと、身勝手な理屈をつけ、心で妻を責め立てるのであった。
18名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 01:41:03 ID:fyUB8lJd
以上。
該当スレとは多分趣旨がずれてる上、出来もいまいちだったので、
後腐れの無さそうなこのスレに捨てとく。

後悔はしていない。
19名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 14:37:01 ID:IAfkF9oM
この命知らず!
20名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 23:37:21 ID:bR9otD33
なんという昭和…
21名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 14:56:27 ID:MB5JaDHX
いやいやいや、ご謙遜なさるな。>>11君。なかなかGJではないかハッハッハ。
22名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 15:06:00 ID:bbIbBFqh
美味しく頂きました
23名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 10:37:02 ID:I9tBve2E
古風な感じがたまらん
24名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 06:31:44 ID:nGkeH1r1

  ジャンル:三角関係・修羅場物
 プレイ内容:処女喪失・フェラ・足コキ等
       男、若干M寄り?
NG指定ワード:亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました
全13レス。
25亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました:2009/05/21(木) 06:32:51 ID:nGkeH1r1
「亜美ちゃん。本当に……いいのかい?」

 深夜。そろそろ日付も変わろうかという時刻。
 大学のサークルに新しく入ってきた一年生、菊嶋亜美ちゃんのアパートで。
 僕は突っ立ったまま、おずおずと彼女を抱き締め、緊張にかすれた声で囁いていた。
 亜美ちゃんの、少し明るめに色を入れたショートヘアの前髪が、僕の顎をくすぐっている。
 その前髪から――頭のてっぺんから漂って来る、蠱惑的な香り。
 それは彼女のかぼそい体の感触とも相まり、僕の官能を刺激してやまない。

「いいよ。松田さんだったら私……だって」
 亜美ちゃんのちっちゃな声。頼りない腕が、僕の背中に回る。
「だって私……松田さんのこと……ずっとずっと好きだったから。
 松田さんにだったら……バージンあげちゃっても、きっと後悔しないし……」
「あ、亜美ちゃん!」
 もう我慢の限界だった。
 僕は傍らのベッドに亜美ちゃんを押し倒し、花びらのように瑞々しい唇に吸い付いた。
 亜美ちゃんは、甘い唾液にまみれた舌を突き出して応える。
 僕達は、激しく情熱的なキスを交し合った。

「あ、はあっ、はあ、はあ……松田さん、すごいキス上手……
 なんだかずいぶん慣れてるみたい」
 口の周りがぬらつくほどのキスを終えた後、うっとりと上気した亜美ちゃんが、
軽く微笑んで僕に言う。
「そんなことないさ」
 慣れている、と言われた瞬間、頭の片隅に亜悠美の悲しげな顔が過ぎったが、慌てて僕は、
それを振り払った。

 今、僕が愛しむべき存在は、亜美ちゃんだ。
 他の女に気を取られている時ではない。
 亜悠美の幻影から逃れるように、僕は亜美ちゃんの肢体をまさぐり始める。
 ピンクのカットソーの裾から手を差し入れ、小振りな乳房の膨らみを、
ブラジャーの上からなぞる。
 もう一方の手は短いキュロットスカートのホックを外し、亜美ちゃんの、
まだ男に触れられたことのない、神秘の領域に分け入ろうとしていた。

「ああっ、やだぁ……恥ずかしいよお」
 性急な愛撫を受けた亜美ちゃんは、くねくねと腰をよじり、真っ赤な顔を両手で覆っている。
 未経験の女の子らしい、恥じらいの仕草。
 一気に欲情を煽られた僕は、亜美ちゃんの衣服を素早く剥ぎ取り、
自分の着ているTシャツやジーンズも、引きちぎるように脱いでしまう。
 下着のみの姿になった僕と亜美ちゃんは、互いの姿を、酔ったような眼で見つめあった。
「あ、亜美ちゃん……綺麗だよ」

 カットソーよりも薄いピンク色のブラジャーとパンツに包まれた、亜美ちゃんの肢体。
 着衣の時にはほっそりと肉付きが少なく見えて、幼い少年のような印象を与える彼女だったが、
こうして裸になると思いのほか肉感的な、エロチックな体つきをしていたことが分かる。
 巨乳というには程遠いが、しっかりとした輪郭を持ち、形良く突き出た丸い乳房。
 細くくびれたウエストから連なる、豊かな腰のライン。
 小さなパンツに隠された下腹部の膨らみは、誘うように息づいて――。

「亜美ちゃん、これも取るよ?」
 僕は亜美ちゃんの大事な所を覆ったパンツに手を添え、最終確認の意味を込めて囁いた。
 翳した手の甲で顔を隠した亜美ちゃんは、言葉もなくただ頷く。
 手の震えがばれやしないかと気に掛けながら、僕は亜美ちゃんのパンツを、静かに下げた。
26亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました:2009/05/21(木) 06:33:37 ID:nGkeH1r1
 下げたとたん、白い肌の中心から浮き上がる黒い茂みが、僕の眼を射る。
 慎ましやかに陰裂を覆う、柔らかそうな繊毛。
 その下から覗く、微かに唇をはみ出させた桃色の陰部に、僕の視線は釘付けになる。
「そ、そんなに見ないで……」
 亜美ちゃんは片方の膝を折り、可愛らしい小さな割れ目を僕の眼から隠そうとする。
「駄目だよ亜美ちゃん。もっと、ちゃんと見せて……」
 僕は細身ながらも豊かに張りつめた太ももを掴み、半ば強引にそれを広げた。

 白磁のような内ももの間から、ぽってりと赤らんだ女の部分が曝け出される。
 ちんまり閉ざされた小陰唇。けれどそこは、僕を拒絶している訳ではなさそうだ。
「亜美ちゃん、もう濡れてる」
 肉の薄い小陰唇の隙間から、透明な雫が滴っているのが見えていた。
 そおっとそこに指を近付け、両側にぱっくりと広げてみる。
 南国の果実にも似た、生々しい香気が立ち昇る。
 胸を締め付けるようなその香り。陰唇を広げた指先が、とろりと蜜に浸された。

 僕はぐっと生唾を飲み、自ら広げたその部分に、優しい愛撫を開始した。
 くにゅくにゅとした陰唇を掻き分け、果汁をまとい付かせた粘膜をくすぐるように撫でる。
 まだ小さく、その所在さえもはっきりとしない膣の穴から、
それよりなおも小さい尿道の穴をたどり、ぽつんと硬く膨らみかけたクリトリスを、
くりくりと転がして、小刻みに押し潰す。
「ああんっ! ああ、あああ……」
 亜美ちゃんはびくんと脚を硬直させ、会陰をわなわな震わせた。
 お尻の山の影に隠れた肛門の皺も、その動作に合わせてもごもごと収縮している。

「亜美ちゃん、気持ちいい?」
 膨らみを増して包皮から顔を出したクリトリスを嬲りながら、ぼくは亜美ちゃんに問い掛けた。
 亜美ちゃんはまともな返事をしない。
 子猫のような喘ぎ声を絶え間なく漏らすばかりで、
僕の言葉さえも、その耳に届いているのか判然としない状態だ。
(処女なのに、感じやすい体をしてるんだな……)

 膣口から、泡立って白濁した愛液を指ですくってクリトリスに塗りつけてやると、
亜美ちゃんの肌は桜色に染まって汗に輝き、いっそう甲高い声をあげて反応する。
 荒い呼吸に弾む乳房――僕はもどかしい思いでブラジャーを取り去り、露わになった赤味の
強い乳首を口に含んで、強く吸い上げた。
「くうっ……」
 亜美ちゃんが喉の奥底で呻くと同時に、ふにゃふにゃと柔らかだった肉の突起が、硬く尖った。
 茱萸のような弾力を持ったそれを舌先で弾く。
 乳房の膨らみをわしづかみ、右、左、右、左と交互に吸いつく。
 ぬめりを増した性器の入口には人さし指をめり込ませ、ぐちゅぐちゅと音が鳴るくらい、
素早く掻き混ぜた。

「うああ……松田、さん……松田さあん!」
 亜美ちゃんが、呂律の回らない口調で僕の名を呼んでいる。
 張りつめた乳房は激しい鼓動に波打ち、
未開の膣口は僕の指先の第二関節までくわえ込んでしまい、
濡れながら、痺れるくらいにきつく締め上げていた。
 亜美ちゃんの体の、いやらしい反応に煽られた僕の興奮はこの上も無く、
トランクスの前を押し上げ、どくどく脈打つ勃起したペニスは、
限界を超えるほどに亀頭を開き、疼く割れ目からは、先走りの汁がしとどに溢れ出していた。

 これ以上、我慢は出来ない。
 僕はトランクスを下ろし、脱ぎ捨てたジーンズのポケットからコンドームを出して装着する。
 かちこちになって血管を浮き立たせた熱いペニスを、
ねちゃねちゃぬめった亜美ちゃんの膣の穴に押し当て、愛液を亀頭によおく塗した。
27亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました:2009/05/21(木) 06:34:25 ID:nGkeH1r1
 僕の一連の動作に、これから為されることを察知した亜美ちゃんは、ぎゅっと瞼を閉ざし、
少し立てた膝を大きく開いたまま、僕の侵入を待っている。

「行くよ亜美ちゃん」
 後はもう腰を落すだけという状態の所で、僕はもう一度、亜美ちゃんに囁きかけた。
「……来て」
 耳元に、吐息交じりの囁き声。聞こえるか聞こえないかという大きさの。
 凄まじい熱情が、ぼくの全身を駆け巡る。
 亜美ちゃんを――この可愛らしい女の子を、僕のものにする。
 僕は、亜美ちゃんの体を押さえ込むように覆い被さり、最後の一線を、越えようとした――。

 ベッドの背後から、ガラスの割れる鋭い音が響いた。
 はっと身を起こして振り返る。
 ベランダへと続く窓。しっかり閉ざした、パステルカラーのカーテンが揺れている。
「何なの……?」
 遅れて違和感に気づいた亜美ちゃんが、のろのろと起き上がって僕にすがりつく。
 嫌な予感がした。
 カーテンに隠された窓の中心。サッシ戸の鍵のある辺りで、何かがごそごそ動いている。
 それは窓ガラスの割れた部分から中に潜り込み、サッシの鍵を開けようとしている、
手の動きをしていた。

 次の瞬間、がらりと開く窓の音と共に、ひんやりとした夜風が室内に吹き込んだ。
 カーテンが舞い上がり――その向こうから、髪の長い女がぬうっと姿を現す。
 僕と亜美ちゃんは、引き攣れるような悲鳴を漏らした。

 長い黒髪に、モデル並みのプロポーション。
 目鼻立ちのはっきりした美形だが、どこか神経質そうな雰囲気を漂わせた女。
「亜悠美……」
 土足のまま部屋に踏み込んできた亜悠美を、僕は呆然と見つめた。
 不吉な感じのする、黒いワンピース姿。
 手には大振りの金槌を持ち、
背中に、彼女の風体とは不似合いなリュックを背負っているのが何とも薄気味悪い。
「やっぱりここに居たのね……康平」
 ぞっとするような笑みを浮かべて亜悠美は言う。
 僕にしがみついた亜美ちゃんが、「亜悠美さん」と、小さく呟いた。

 亜悠美とは、幼稚園の頃からの付き合いだった。
 家が近所で、小学校、中学校、高校まで同じ。いわゆる、幼馴染というやつだ。
 お互いを異性として意識し始めたのは中学の時からで、それ以来、セフレ以上恋人未満、
といった関係を、永いこと続けてきた。
 気心の知れた同士なので、セックスに関しても何ら遠慮はいらず、
それぞれにやりたいことを、やりたいように試しあえる。

 もともと二人とも、あまり恋愛に積極的な性分ではない。
 とりあえず性欲を満たしあえる相手が居れば充分だから、彼氏彼女をつくるより、
幼馴染とぬるま湯のような安易な関係を続けていた方が気楽で便利――な、はずだった。

 二人が同じ大学に入り、そこで亜美ちゃんに出会うまでは。

 僕と亜美ちゃんの前に立ち尽くしている亜悠美に対し、僕は何も言うことができなかった。
 訊きたいというか、疑問に思っていることは、山ほどあった。
 なぜ亜悠美は、僕が亜美ちゃんのアパートに来ることを嗅ぎつけたのか?
 そもそも亜悠美は、亜美ちゃんのアパートの所在を知っていたのか?
 二階にあるこの部屋まで、どうやってたどり着いたのか?
 そして――亜悠美はここに来て、僕と亜美ちゃんに、何をするつもりでいるのか?
28亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました:2009/05/21(木) 06:34:59 ID:nGkeH1r1
 僕の目線は、亜悠美の手元に吸い寄せられていた。
 その手の先にある武骨な金槌。おそらくこれで窓ガラスを破壊し、鍵を開けたのだろう。
 しかしそれだけだろうか?
 亜悠美はこの金槌を、他の目的にも使ったりはしないだろうか……?

「どうして、ここに」
 ぼくは、やっとの思いで喉から言葉を搾り出す。
 すると亜悠美は、白い喉を晒して笑った。
 それから突然金槌を振り上げ、黒い金属部分で、亜美ちゃんの頭を殴りつけようとした。
「きゃあっ」
「わっ、ばっ、やめっ!」
 とっさに僕は、亜美ちゃんの体をつき飛ばした。亜美ちゃんの頭を狙った金槌は狙いを外し、
僕の肩を思いっきり強打する。

「ぐうっ!」
 鋭い痛みに、視界が反転する。
 一瞬肩が発火したみたいに熱くなり、次いで、激痛さえも越えてしまった凄まじい感覚が、
じわじわ滲んで骨身に伝わる。まるで、肩が割れてしまったかのように。
 いや実際のところ、本当に肩の骨が割れてしまったのかもしれない。

 けれど、今の僕には苦痛に悶絶している暇はなかった。
 亜悠美の第二打が、ベッドに這いつくばった亜美ちゃんのお尻を狙っているのだ。
「や、やめろ亜悠美! 落ち着け! 落ち着くんだ!」
「うるさい! 康平は黙ってなさいよ!」
 亜悠美に取りすがった僕の鼻面に、金槌の柄の先端が炸裂する。
 眼から火花。押さえた手の平に、生ぬるい液体がこぼれ落ちる。多分、鼻血が出たんだろう。

「亜悠美さん、やめて下さい! あ、危ないですよぉ」
 起き上がり、ベッドの上に横座りになった亜美ちゃんが、泣きそうな顔で亜悠美に訴え掛ける。
 亜悠美は、ぎろりと亜美ちゃんを睨みつけた。
「私に指図するつもり? ふざけないでよ。私の大切なものを奪っておきながら……
あんたのことは、絶対に許さないからね」

 亜悠美は背中のリュックを下ろし、それを開いて中の荷物を取り出す。
 それは、フックつきのロープだった。
(亜悠美の奴、あれを使って部屋まで登って来たのか)
 呆れるのと同時に、薄ら寒い恐怖が背筋に走って身震いがする。
 まさか亜悠美が、ここまでするなんて。これではまるで……。

「さあ康平。大人しくしていて頂戴ね……」
 顔面と肩の痛みでまともに動けない僕の体に、亜悠美はロープを巻きつけた。
 丁寧に――寧ろ、慈しみ深いほどの優しい仕草で、僕の体を、手足を縛り上げる。
「ふふっ、ねえ康平、覚えてる?
昔、私のパパのSM本を二人で見つけて、試したことがあったわよね……」

 それは覚えている。
 確か高二の頃だったか。亜悠美の親父さんの部屋にあったその手の専門雑誌に、
亀甲縛りのやり方が載っていたので実践したのだ。
 もっとも、あの時使用したのは柔らかい紐で、
こんなに硬くごわごわしたロープなんかじゃなかったし、
そもそも縛られたのは亜悠美の方だった。
 縛り方だってもっとソフトで、こんな、どう力を入れても抜け出せない、
まるで忍者がするような縛り方ではなかったはずだ。

 僕を完全に拘束して床に転がした後、
亜悠美は、恐怖のあまり蹲ったまま動けないでいる亜美ちゃんに背を向け、
仁王立ちして僕を指さした。
29亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました:2009/05/21(木) 06:35:39 ID:nGkeH1r1
「康平……わかってるわね? あんたは私を裏切ったんだ。
私達の間には、長年の友情を礎とした確固たる契約があったはず。
あんたはそれを一方的に破棄し、私の尊厳を打ち砕いて、蔑ろにしたのよ。
これは、絶対に許されざる罪だわ……」
「な、何を言ってるんだ亜悠美! 僕は君に、ちゃんと話しをしたじゃないか!」

 そうだ。亜美ちゃんに惹かれ、亜美ちゃんと付き合うことを決意した僕は、
そのことを真っ先に亜悠美に打ち明けたのだ。
 まだ正式に互いの気持ちを伝え合った訳ではないが、おそらく僕と亜美ちゃんは、
付き合うことになるはずだと。
 この時僕は、亜悠美も一緒に喜んでくれるものとばかり考えていた。
 亜悠美は男性的なさっぱりとした気性の女だったし、
僕に対し、惰性で体の関係を続けている幼馴染、という以上の感情を持っているようにも、
見えなかったからだ。

 それなのに……。

「あんな陳腐な台詞一つで、私を切り捨ててしまえると思っていたの?」
 怒気をはらんで輝いていた亜悠美の瞳が、哀しげに揺らぐ。
「小さい頃から……ずっとずっと一緒だったあんたに、こんな風に裏切られるなんて。
それもこれも……全部お前が悪いんだ!」
 亜悠美は、亜美ちゃんを振り返った。
 そして、全裸のまま震えていた亜美ちゃんに掴みかかり、ベッドに押さえつけて、
激しい平手打ちを喰らわせた。

「この淫売! この、この!」
「や、やめろおっ!」
 亜悠美と僕の叫び声。
 それに、亜美ちゃんの頬が打たれる音と、漏れ出す悲鳴が交錯する。
 何とかしなければ。
 そうは思うが、腕も足も自由が利かず、立ち上がることさえままならないぼくには、
どうすることもできない。
 やがて、ひときわ強くぶたれた亜美ちゃんの体が、ぼくの隣に転がり落ちた。
「あ、亜美ちゃん……」

 可愛かった亜美ちゃんの顔は、殴打のため真っ赤に腫れ上がり、
涙に濡れて見るも無残な有様と化していた。
「亜美。あんた、私の眼を盗んで康平と寝るつもりだったのね?」
 床にくずおれた亜美ちゃんを見下ろし、亜悠美は言う。
「可愛い振りして……やってくれるわよねえ。私もすっかり騙されたわ。
ねえ、どうやって康平をたらし込んだわけ? 教えなさいよ。
この体を使って、康平にどう媚を売ったのか!?」

 亜悠美は、亜美ちゃんのおっぱいを爪先で蹴飛ばした。
 つんと上向きの柔らかなおっぱいが、プリンのように揺れる。亜美ちゃんは小さく呻いた。
「あ、亜悠美! もうこれ以上亜美ちゃんに乱暴な真似はするな!」
 僕は縛られた体をにじらせ、亜美ちゃんを庇うべく前に出る。
 そんな僕を嘲笑混じりに見下ろし、亜悠美は、ふん、と鼻を鳴らした。
「おやおや、ご立派なことで。
私のことは一度だってそんな風に守ってくれたこと、ないじゃない」
「それは、お前の方が俺より強かったからだ!」

 情けない話だが、それは事実だった。
 僕と違って運動神経が良く、小学生の頃から合気道を嗜んできた亜悠美に、
僕は喧嘩で勝てたためしがない。
 成人になった今、男である僕の方が体力的には勝っているはずなのに、
それでもどうにもならないのだ。
 もしかすると、幼少期からの一種の刷り込みで、精神的に屈服してしまうのかもしれない。
 実際今だって、こうして亜悠美に敗北しているわけだから。
30亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました:2009/05/21(木) 06:36:19 ID:nGkeH1r1
「亜悠美さん……こんなこと、もうやめて下さい。松田さんを縛ったりして……可哀想です」
 僕の背中に寄り添う亜美ちゃんが、眼を潤ませて亜悠美に訴え掛ける。
 亜悠美は怖ろしい眼でまた亜美ちゃんに手を上げかけたが、その手をふと下ろし、
一転、優しげな口調で言った。
「亜美、あんたそんなに康平のこと好きなの?」
 亜美ちゃんは、少しの間僕の顔を見てから亜悠美を見上げ、決然と頷いた。
「はい。私は松田さんのことが……好きです。多分、亜悠美さんなんかより、ずっと」
「ふうん」
 亜悠美は妖しく笑う。

「だけど亜美。あなたは私以上に康平を愛して、満足させて上げられるのかしら?
私と康平は、ほんの子供の時分から愛し合ってきた仲なのよ?」
 亜悠美は僕らの前に膝をつくと、
すっかり萎えてコンドームをぶら下げた僕のペニスをつまみ上げた。
「亜美はまだ、これをまともに触ったこともないんでしょう? ねえ、これの愛撫の仕方とか、
ちゃんと知ってるの? これを摩ったり揉んだり……口に含んで舐め舐めして上げるとか、
あなたに出来るのかしら?」

「……出来ます」
 亜美ちゃんは子供っぽくむきになった声音で答えると、
亜悠美の手から僕のペニスをむしり取り、きゅっと掴んで見つめる。
 緊張含みの真剣な眼差し。
 次いでペニスのコンドームを剥ぎ、亀頭の尖端を、舌の先でちょんと突付いた。
「あ……」
 ぬめっと柔らかい舌の感触に、僕は小さく声を出す。
 亜美ちゃんは上目遣いに僕を見ながら、飴でも舐めるみたいに、ちろちろ舌を動かし始めた。

「あ、亜美ちゃん……」
 僕の前に跪き、体を折り曲げた亜美ちゃんが、ペニスの茎を汗ばんだ両手で掴み、
亀頭の丸みを一所懸命になって舐め回している。
(亜美ちゃんが、僕のものを……)
 こんな場面だというのに、ぼくの胸は感動と愛しさでいっぱいになる。
「あら、一応大きくなってるじゃない。そんなやり方でも」
 僕の股間を覗き込んで亜悠美が言う。
 彼女の言うとおり、ぼくのペニスは亜美ちゃんのぎこちない奉仕に反応し、
どくどくと脈打ちながら、亜悠美が闖入する直前の硬度を取り戻そうとしていた。

「でもやっぱり下手糞ねえ。そんなんじゃあ、射精まで持って行けないでしょ」
 亜悠美は亜美ちゃんを突き飛ばした。
 髪をかき上げ、奪い返した僕のペニスを嫋やかな手で支え持つと、赤い唇を亀頭に被せた。
 喉の奥まで一気に含み、根元から強く吸い上げる。
 長い舌が、蛇のように茎に絡んで這い昇り、張りつめた裏筋から、亀頭の窪みから、
隈なく執拗に刺激される。
「うおっ、おおっ」
 思わず僕は、堅く眼を閉ざして呻き声を漏らしてしまった。
 さすがに、凄い。
 亜悠美の黒い頭が上下する度、唾液に塗れた唇はずぽずぽと音を鳴らし、熱い口の中、
頬の粘膜やら、歯茎の裏側の少し硬い部分やらが、ペニスを嬲って翻弄している。

「くうっ、や、やめろおっ」
 瞬く間に快感の頂点間際まで追い上げられてしまった僕は、
閉じて縛られた足をぴんと伸ばし、体を固くして射精の予兆に耐える。
「ま、松田さん駄目! 亜悠美さんのお口になんて出さないで!」
 弾けそうになる快感のかたまりを押し留める亜美ちゃんの声。
 その声に応え、ぼくは必死になって亜悠美の口の攻撃に抗おうとする。
 でも、それは叶わぬことだった。
31亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました:2009/05/21(木) 06:37:00 ID:nGkeH1r1
 腰の奥から唐突にせり上がった衝動が、微かな疼痛を交えた快感と共にぐっと射出される。
 おぞ気立つほど心地好い開放感と、眼の前が暗くなるような敗北感……。
 僕は、亜悠美の口腔内いっぱいに、自分の欲望を溢れ出させてしまった。
「ふふふ。康平のを飲むのもずいぶん久しぶりね」
 喉を鳴らして精液を飲み干した亜悠美は、勝ち誇った顔で口元を拭う。
「あっという間じゃない。私のフェラチオが、それだけ気持ちよかったってことよね?」

「違います!」
 ぐったりと横たわった僕の体に身を寄せた亜美ちゃんが、思いがけない大声で叫んだ。
「松田さんは、さっきまで私としてたから……そのせいで早く終わっちゃっただけです!
亜悠美さんがよかったからじゃないです!」
「ふん、負け惜しみを。あんたのテクじゃあ、勃起させるのも一苦労だったってえのに」

「く、口で……とか、そういうのは亜悠美さんに敵わないかもだけど」
 そう言うと亜美ちゃんは、突然僕の上に跨った。
 射精直後の、硬さを残したペニスをむんずと掴み、片手でぱくりと広げた自分の膣の中に、
無理やり押し込めようとしている。
「わ、お、おい亜美ちゃん!」
「はっははは……ヴァギナだったら負けないって言いたいの?」
「そうです。だって私まだバージンだから。亜悠美さんみたいに、がばがばじゃないし」

「誰ががばがばだって?」
 亜悠美の眼元が、ぴくりと痙攣する。
「お、落ち着け亜悠美! お前はがばがばじゃない! む、寧ろ名器の部類だと思うぞ!?」
「松田さんひどい! やっぱり私より、亜悠美さんの方がいいんですかぁ?」
「いやそういう訳じゃなくて! ここは、亜悠美をなだめておいた方が……」

 涙目の亜美ちゃんも同時になだめなくてはならなくなった僕のペニスは、
亜美ちゃんの膣口にぐいぐい押し付けられている。
 押し付けられてはいるものの、どうもそれ以上は進まない。
 処女の亜美ちゃんが自ら騎乗位で挿入するのは、やはり無理があるのだ。

「ふふん。どうしたのさ? 早く繋がってごらんなさいよ」
 華奢な裸体を、汗びっしょりにしてペニスと格闘している亜美ちゃんの尻をぴしゃりと叩き、
亜悠美はにやついた。
「と言っても、まあ無理だよねえ。
康平は出したばかりだし、亜美だって、あそこすっかり乾いちゃってるもの」

 亜悠美は持って来たリュックを引き寄せると、中からまた何かを取り出した。
 ピンク色をした卵型の物体。
 下の方に、紐で繋がったリモコンがついているそれは――
いわゆる、ピンクローターというやつだ。

「しょうがないから、手伝ってあげるわよ。そうら」
 亜悠美は僕と亜美ちゃんの密着した下腹部の隙間にローターを差し入れると、
亜美ちゃんのクリトリスがあると思しき辺りに宛がった。
 そして、手元のリモコンスイッチを入れる。
「あんっ! うぁあああっ」
 亜美ちゃんの腰が、ぴくんと跳ねる。
 僕のペニスを宛がった膣口も、震える刺激にひくついて、もごもご蠢いた。

 くぐもったモーター音を響かせるピンクローターの振動は、
当然、体を合わせた僕の股間も同時に刺激している。
 根元に伝わる微妙な振動――。
 しかもその一方では亜悠美の冷たい指先が、ペニスの下の睾丸をやわやわと揉みながら、
崩れかけていた勃起をぶり返させるように、じわじわと愛撫を加えていた。
32亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました:2009/05/21(木) 06:59:01 ID:nGkeH1r1
「どお亜美? 気持ちいい?」
「あ、あぅ……ああん、だめぇ」
 聞くまでもないことだった。
 ピンクローターでクリトリスを震わされた亜美ちゃんは、
頬を染め、うっとりと瞼を落としてその感覚に酔い痴れている。
 腰はくねり、僕の腹についた腕も頼りなく震え、曖昧にペニスの先端を宛がった膣口も、
熱と潤みを取り戻し始めていた。

「そろそろいいみたいね」
 亜悠美は僕らの局部に触れてその具合を確かめた後、
またもやリュックを探り、何やら怪しげな丸いピルケースを取り出す。
 蓋を開け、中に入ったクリーム状の膏薬らしきものを指に取って、
僕の、そして亜美ちゃんの粘膜に、丁寧に塗り込めた。

「やあん、な、何ですかこれぇ……」
「うふふ。いーい薬よ」
 意味深な笑みを漏らす亜悠美。
 僕のペニス全体と、亜美ちゃんの膣の内部にまで一通り薬を塗った彼女は、
亜美ちゃんの粘膜にめり込みかけた僕のペニスを、指で固定した。
「さあ亜美、挿れるのよ。しっかり腰を落として」
「うっ、ううんっ」
 亜美ちゃんは僕を受け入れるべく腰をひねるが、膣の浅い部分がきつく閉ざされており、
どうしても先に進むことが出来ずにいる。

 もう少しのところで――ほんの先っぽに、焦れるような膣口のぬめりを感じているうちに、
僕は奇妙に興奮してきた。
 心臓は早鐘を打ち、呼吸も速くなっている。
 ペニスが、熱い。
 さっき塗られた薬のせいなのか?
 かっと燃え盛るような激しい熱が、ペニスの芯にまで沁みて、
異様な感覚をそこから沸き立たせていた。

「あら、効いてきたみたいね」
 酒に酔ったかのごとく息を荒げ、額に汗している僕の様子を横目に見た亜悠美が、
満足そうに頷いた。
 そして、僕の足を縛っていたロープを解く。
「やっぱり騎乗位じゃあ無理っぽいから……康平が上に乗って、おやりなさいよ」
 亜悠美は僕の体を抱き起こし、押し倒した亜美ちゃんの体の上に重ね合わせた。
 僕の体重を受け止める亜美ちゃんの熱。匂い。柔らかな肌の感触。

 もう、一刻の猶予もならない。
 腕を縛られた不自由な状態のまま、僕は床に膝をつき、
亜美ちゃんのひときわ柔らかな部分に埋没しかけた熱いペニスを、力ずくで圧し入れた。

「いぎっ!? ぎ、いぃいいいっ!」

 亜美ちゃんの絶叫。
 灼熱の棒杭のような僕のペニスが、同じく火山の噴火口のように熱し、
粘度の強い愛液をどろどろと垂れ流した膣の中に割り込み、ずぶずぶと潜って行く。
 きつい肉の入口が物凄い力でペニスを絞り、温かく濡れた中の肉襞が、
ぐにゃぐにゃ動いて亀頭のくびれ目に絡んだ。
「ああっ、あ、亜美ちゃん!」
 それから僕は、亜美ちゃんの体を上半身で押さえつけ、
ぐいぐいと腰を振って膣への抽送を開始する。
33亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました:2009/05/21(木) 07:03:20 ID:nGkeH1r1
 処女膜を破られたばかりの亜美ちゃんに取って、それが負担になることは分かっていた。
 実際亜美ちゃんは僕の下、苦しそうにひいひいと息を漏らしながら身を堅くしているだけで、
僕の行為に応えようとはしない。
 それなのに、僕は全くゆとりのない動きで、
亜美ちゃんの傷口を掘り起こすようなセックスを続けている。
 打撃を受け、腫れ上がった肩の痛みにも構わずに。
 もっと優しくしようにもペニスが疼き、腰が勝手に動いてしまうのだ。

「康平ったら。そんなに激しくしたら、亜美は痛いだけでしょうに」
 亜悠美の言うことも尤もだが、本当にどうしようもない。
 もっと、もっと、もっと、もっと!
 おびただしく濡れた僕らの陰部はびちゃびちゃと濡れているものの、
果たしてこれは、愛液なのか血液なのか……。

「ううっ……ま、松田……さん……痛い、痛ぁい」
 ぼくの胸板に乳房を押し潰された亜美ちゃんが弱々しく身悶え、
絶え入るような声を漏らした。
「亜美ちゃん、ごめん……ごめん、ごめん!」
 忙しない呼吸とともに、僕は亜美ちゃんに謝り続ける。
 謝りながらも、僕は凄まじい快感のるつぼに身を投じていた。
 苦痛のためか、亜美ちゃんの膣は強張って僕を押し返そうとしていたが、
それさえもが気持ちいい。
 腹の下に感じる、亜美ちゃんの痙攣も。
 ああもう、堪らない――。
 ごりごりと、身を削られるような狂暴な快感の中で僕は、今夜二度目の絶頂の刻を迎えた。

「はあ、はあ」
 体を結びつけたまま、狂おしい呼吸を混じり合わせ、僕と亜美ちゃんは、
ぐったりと床に身を投げ出す。
 そんな僕らを傍らに座って眺めていた亜悠美は、すっと立ち上がると、僕の肩を蹴飛ばした。
「ぐはあっ!?」
「いつまでも繋がってんじゃあないわよ。みっともない」
 不機嫌そうな声で言い、仰向けに転がった僕を蔑みの眼で見る。
 ……自分でやらせた癖に。

 僕を退かせた亜悠美は亜美ちゃんの、ハの字に開いて投げ出した脚の間を覗き込んでいた。
「あはっ、すっごおい。処女膜破けちゃって、もうめちゃくちゃ。
血だらけで、穴もぽっかり開いちゃって……。
そこから、血に混じった康平の精液がだらだら溢れて泡立ってる。きったないのー。
いい気味だわぁ。ふふふふふ……」

 そして今度は僕の方を振り返る。
 靴を脱ぎ、なぜかまだそそり勃ったまま治まらないでいるペニスを、
ペディキュアを施した足の指で挟んだ。
「くっ……」
「これも血塗れねぇ。処女に中出しぶちかまして……。
しかも、あれだけ大量にどぴゅどぴゅやったってえのに、まだカチンコチンのまんまじゃない」
 言いながら、精液と愛液と血でぬめり汚れた僕のペニスを、
二本の足の指で器用に擦り上げる。

「ううう、も、もう、やめてくれ……」
 何しろ、立て続けに二度も射精した直後なのだ。
 さすがにきついのだが、どうしたことか、僕のペニスは元気なままだ。
 これはひょっとすると……さっき塗られた薬のせいなのだろうか?
「ふっふふ、こうするのはどう? これは?
そういえば『足コキ』っていうのは、まだ試したことなかったんだよねえ」
34亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました:2009/05/21(木) 07:04:18 ID:nGkeH1r1
 爪先が尿道口を嬲る。かかとが根元をぐりぐりいびる。
 喉を反らせて僕は喘いだ。
 全裸で縛られた屈辱的な姿でペニスを足蹴にされる僕は、
女王様のような亜悠美にいたぶられることに、倒錯した興奮を覚え始めていた。
 もう、このまま亜悠美の奴隷になってもいい。
 薬や傷の痛みで朦朧となった僕は、溶け崩れそうな快感の中で、そんなことを考える――。

「だめえっ!」
 その時。亜悠美の背後に寝転がっていた亜美ちゃんが、
突然起き上がって亜悠美の足を引っ張った。
 亜悠美は派手にひっくり返る。
 痛みが残っているからか、体を引きずるようにして這い寄ってきた亜美ちゃんは、
僕のペニスを手で掴んで口にくわえた。
「ぎゃっ!?」
 思い切り歯を立てられてしまい、僕は飛び上がって悲鳴を上げる。

「亜美、何すんのよ!」
 すぐさま起き上がった亜悠美が、亜美ちゃんを押し退けようとする。
 だが亜美ちゃんは意外とがんばり、掴んだ僕のペニスを放しはしなかった。
「駄目です! これは私の物!」
 亜悠美をキッと睨みすえ、亜美ちゃんは断言した。
「あんなに痛い思いをして挿れた物なんだから、これは私のです!
亜悠美さんにはあげません!」
「なあに馬鹿なこと言ってんのよ! これは元々私の物よ! 寄越しなさい!」
「嫌です!」

 二人の女が、僕のペニスの奪い合いを始めた。
「なめんじゃないわよ! 私が何年これ挿れて来たと思ってんの!?」
「うるさいばばあ! 何年もやってたら飽きられるに決まってんじゃん!
いい加減諦めろ!」
「何ですってえ!? もう一度言ってみろこの発育不良の貧乳女!」
「ちょ、ちょっと二人とも……やめ」

 凄まじい罵りあいを繰り広げる二人の間を、僕のペニスが行き来している。
 握られたり抓られたり齧られたりしつつ、
メトロノームのようにぶるんぶるんと左右に揺れる、可哀想な僕のペニス。
(い、いかん! このままでは……)
 ペニスがもげるか、最悪の場合殺されてしまう。
 身の危険に慄いた僕は、この場を逃げ出す決意をした。
 しかし、こんな風に縛られた状態ではどうしようも――。

 それでもなんとかして活路を見出そうと周囲を見回したぼくの手の先に、硬い物が触れた。
 それは、小さな果物ナイフだった。
 この一連の騒ぎでテーブルから落ちたものだろう。
 ――何たる僥倖。
 このチャンスを逃す手はない。
 今なら亜悠美も亜美ちゃんも、言い争いとペニス争奪戦に夢中で、少々のことには気づくまい。
 ぼくはそおっとナイフを握り、刃の角度を調節して、慎重にロープを切断し始めた。

「すぐ人の物を欲しがるんだから……
あんたみたいな女が居るから、世間で痴情のもつれによる刃傷沙汰の事件が絶えないのよ!」
「違いますー! それは亜悠美さんみたいな粘着質なしつっこい嫉妬女のせいですー!」
「何さ! 大学生にもなって繁華街で補導されてるガキが!」
「何よ! ナンパしてきただけの男を引っぱたいて鞭打ち症で病院送りにした暴力女が!」
35亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました:2009/05/21(木) 07:05:10 ID:nGkeH1r1

「うるさい! とにかくあんたなんかに康平の相手は無理だってのよ!」
「そんなことありません! さっきだって松田さんのこれ、ちゃあんと中に挿れて、
あっという間にいかせちゃったんだから!」
「それは私の塗った媚薬のせいよ! 私の鍛え上げた膣を味わってきた康平が、
あんたみたいな小娘で満足出来る訳ないんだから!
そうよ、今から私が康平とやって見せてあげる。
私の中でなら、康平は三度目だってあっという間よ! 見てなさい!」

 亜悠美は素早くパンツを下ろすと僕に跨り、亜美ちゃん手から強奪したペニスを、
自分の股座に突っ込んでいた。
 まずい。
 まだロープも切れていないというのに。
 マウントポジションなんて取られては、逃亡が難しくなってしまう!

 そんな僕の焦りも知らず、亜悠美は慣れた手つきで僕のペニスを膣に納め、
うねるような動きで腰を使い始めてしまった。
「あーっ! 亜悠美さんずるぅい!」
「何がずるいのよ! いいからあんたはそこで見てなさい!
今から本当の大人のセックスを、教えて上げるから……」

 亜悠美が上で動いたせいで、ナイフの位置がずれてしまった。
 ロープはまだ半分しか切れていないというのに……。
 というか、こうなってしまってはそれどころじゃない訳だが。
 亜悠美は本当にセックスの上手な女なのだ。
 まったく、偉そうに言うだけのことはある。
 時に素早く、時にゆったりと、緩急つけたメリハリのある腰使い。
 その動作によって、膣に埋め込まれたペニスは、内部粘膜の無数の襞に心地好くしごかれ、
ぬめぬめずるずると、容赦のない快楽地獄の世界に引きずり込まれてしまうのだ。

「あふう……ん。ど、どぉお、康平? 私の方が、亜美よりいいでしょお……ん」
 シャープな美貌を淫猥に歪め、亜悠美は僕に囁きかける。
 中を、きゅうっと甘く締め付けながらそんなことを言われると、僕の方としても、
「はい」
 と素直に肯定せざるを得ない。

「私よりいいなんて! ひどぉい! 松田さんの馬鹿ーっ!」
 僕の返答を聞きとがめた亜美ちゃんは、僕の胸元をぽかぽか叩いてなじる。
「亜美ちゃんっ、か、肩に響くから……」
「はあっ、あぁん、ああいい……振動が奥に響くわぁん。亜美、もっと叩きなさぁい」

 亜悠美の内部は摩擦でカアッと熱を帯び、愛液に塗れて、
ひときわ熾烈な収縮運動を行い出す。
 膣のどん詰まりに位置する子宮頚管の入口も、亀頭の丸みに迫って、
こつこつと先端をノックしていた。

 もうすぐ、亜悠美はいく。
 僕をエクスタシーの縁に追い詰めながら、自分自身も僕に絡みつき、
一緒に悦楽の沼底へと落ち込もうと企む亜悠美の揺さぶりに引きずられる一方で、
僕は、ロープで縛られた手元に力を込めていた。
 半分切れたロープが、あとちょっとで引き裂けそうな感じなのだ。
「うむむ……」

 力を込めるついでに、せめてもの抵抗とばかりに思い切り腰を突き上げ、
亜悠美の深淵を強く打ちつけてやる。
「あああっ!? 康平……す、すごい、すごいぃい!」
 亜悠美は堪らなくなった様子で顔を仰向け、長い黒髪を振り立てながら、
黒ワンピースの胸元を押し広げて、まろび出た乳房を自ら揉んでいじくり回した。
36亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました:2009/05/21(木) 07:05:52 ID:nGkeH1r1
 じゅっぽんじゅっぽん鳴り響く繋がりの部分では、
ナメクジのようにぬめった陰唇がペニスにまとい付き、亜悠美の性情には似つかわしくない、
しっとりとなめらかな快楽を添える――。

「ああぁん、康平いぃ……いひぃ、いぐ、いぐううぅ……」
 乳を揉み、乳首をこねくり回しながら尻を振りたて、
ペニスによる膣の摩擦運動に耽っていた亜悠美が、
絶頂時にだけ見せる途轍もなく珍妙な恍惚の表情を作り、
理性の欠片もない淫声でもって喚き散らしている。
 間もなく、膣の穴がぎゅっと窄まり出し――そして、ひくひくと蠕動した。

 ぎりぎりと緊縛しつつも、蕩けるように波打って甘噛みをする膣の中で、
僕の快感も限界を突破する。
 盛大に弾けたペニスの先から熱いたぎりを迸らせ、亜悠美の子宮にぶちまけながら、
僕は咆哮した。
 手首の上では、ぶつりとロープの切れる感覚。
 やった。ついに僕は、身の束縛から解放されたのだ。

「自由だー!」
 ロープを振り解き、倒れ掛かった亜悠美の体も押し退けて立ち上がる。
 ベッドの下に散らばった自分の衣服を小脇に抱え、開いた窓に向かうと、
ベランダの柵を乗り越えてジャンプした。
「松田さん!」
「康平!」

 二人の女の叫び声を背に、僕の体は、アパート庭の茂みに向かって落下する。
 途中、建物に向かって突き出した木々の梢を巻き込んだお陰で、
落下のスピードが緩和され、思いの外衝撃は少なかったのだが、
その代わり、折れた枝葉に体中を傷付けられてしまった。
 何とか起き上がってはみたものの、どうも腰のどこかを打ったか捻ったかしたらしく、
まともに立つのも難しい状態だ。
 それでも僕は持って来た衣服を苦労して身に着け、痛む体を引きずりながら、
急いでアパートを後にする。

「もう……女はこりごりだ!」
 心と体に受けた傷の痛みに涙しながら、僕は、暗い夜道をよろよろと歩いて行った――。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「亜悠美さん……ひどいです」

 松田康平が逃げ去った後の部屋。
 亜美は、亜悠美の乳房に頭を乗せて呟いていた。

「あんたが悪いのよ亜美。あんたが私の許可もなしに、勝手に康平を誘惑しようとするから」
 ベッドの上。
 仰向けに寝そべった全裸の亜悠美は、亜美の裸の肩を抱き、労わるように撫で摩りながら言う。
「だあって。亜悠美さんってば、私よりも松田さんを大事にしてるみたいなんだもの」
「何馬鹿なことを……康平はただのおもちゃよ。
幼馴染で、何でも思い通りになる便利な男だけど、ただそれだけ。
それ以上の思い入れなんてないわ」
「でもぉ」
 亜美は、拗ねて口を尖らせる。

「いーい、亜美?」
 亜美の唇を指先で触れて、亜悠美は言う。
37亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました:2009/05/21(木) 07:06:36 ID:nGkeH1r1
「前にも言ったでしょう。私は今まで、本気で他人を好きになったことなんてなかった。
私の心は、私だけのものだったのよ。そんな私を変えたのは、亜美。あなたなの。
あなたに出会ったせいで私は……本当に、恋をするという感情を知った……」
「亜悠美さん……」
「亜美は私の大切な心を奪った上に、私の所有物である康平まで盗み取ろうとしたんだから。
お仕置きを受けるのは仕方ないでしょう?」
 亜美の瞳と、亜悠美の瞳が見つめ合う。二人の女は、そっと唇を重ね合わせた。

 睦まじく体を寄せ合う女達の周囲には、先ほどまでの行為に使用していた、
ピンクローターやら、バイブレーター、アナルビーズなどの玩具が散らばっている。
 松田康平のペニスによって処女地を開墾された亜美は、
その後、亜悠美の手練手管によって、天にも昇るほどの悦楽の世界に身を委ねていたのである。
「それでどうなの? 亜美はこれで、男とのセックスも経験した訳だけど。
私とどっちが良かった?」

「そんなの……亜悠美さんに決まってるじゃないですかぁ」
 甘えた声で言い、亜美は亜悠美にしなだれかかる。
「松田さんのセックスは、痛くて苦しいばっかりで。
それに比べて亜悠美さんは……優しくて……とっても、気持ちよくて」
 亜美の言葉を聞き、亜悠美はほくそえんだ。

 ゼミの新入生である亜美と付き合いだした亜悠美は、
亜美と同じサークルに所属していた松田康平も、亜美に想いを寄せていることを知った。
 亜美を康平に、康平を亜美に取られてしまうことを懸念した亜悠美は、
一策講じることを決意したのだ。
 即ち、亜美を奪おうとした康平に制裁を加えて排除しつつ、
亜美に対しては、康平よりも自分の方が快楽を与えられるのだということを、
徹底的にその身に叩き込む作戦だ。

 結果はみごと、亜悠美の目論見どおり。
(まあ、康平とセックスまでしちゃったのは予定外だったけどね)
 あれはつい、流れでしてしまったことだった。
 けれど、あれはあれで構わなかったとも亜悠美は思う。
(亜美を貰っちゃうことに対する、お詫びみたいなもんだよね)

 とにかく。これで康平も当分の間、亜美や自分に近付いては来ないはずなのである。
 思い通りに事を運んだ亜悠美は、満たされた気持ちで亜美を抱き締める。
「愛してるわ。亜美」
「私もです。亜悠美さん」
 亜美もまた、亜悠美の腰にか細い腕を回す。
 美しい肉体をぴたりと寄せ合った二人の女は、安らかな表情で瞼を閉ざし、
心地良い眠りに落ちて行った――。

(終)
38亜美ちゃんは大切なものを盗んでいきました:2009/05/21(木) 07:08:54 ID:nGkeH1r1
投下終了です。
呼んでくださった方、あ(・∀・)り(・∀・)が(・∀・)と(・∀・)う!
39名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 08:12:36 ID:oDzFKXSz
あなたの心です
40名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 17:01:33 ID:DzKwgFq/
>>11
>>38
GJ!
どこぞの荒れているスレにいる馬鹿共にもみせてやりたいな。
次回作にも期待してます。
41名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 22:50:38 ID:jfHqXdDT
GJ!
オチが凄い!全然展開読めなかった
42名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 21:54:48 ID:jL0MiNkU
スレから追い出されたSSを投下するスレPart2(http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1208076450/
と言う若干感じ悪い名前のスレに、「専用スレに投下しずらいもの」が今まで投下されていました
そのスレが完走しそうなのでスレタイトルを相談していたところ、アンチが突然このスレを立ててしまいました。
ナンバリングされた正規スレは下記になりますので、どうぞご移動戴ければ幸いです。
このスレは削除依頼が出されています。

スレに投下し辛い/迷うSS【元・追い出され3】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242308022/
43名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 08:26:32 ID:pe+mCkW2
似たものスレ乱立はどうかと思うが書き手さんに取捨選択の余地があるのは結構だろうに
44名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 10:57:47 ID:iETe8NNM
似たものスレ乱立肯定意見出る時点でダメなスレだと思うけど
45名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 11:04:00 ID:QWBHT0b4
>>44
>>7
こんな荒らしの立てた糞スレは放置が一番ということ。
どうせ>>1が必死なだけだからすぐ落ちるよw
46名無しさん@ピンキー:2009/05/27(水) 14:24:53 ID:i/gz1QU4
>>11-18は本当に素人が描いたのか?
昭和文学テイストの文体といい、とてもふつうの職人の作とは思えない。
どこかのコピペか?
オリジナルだとしたら凄いとしかいいようがない。

47名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 17:50:03 ID:q+kvPfQo
そんな事言われてもなあ
48名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 00:18:57 ID:zqIWOnMe
>>46
>>11の作者じゃあないが、似たような文書くオサーンとして言わせて貰えば、
逆に昭和じゃない小説を書くほうが難しい。
多分読んできた小説のせい。
たまにはラノベみたいな軽いノリで書いてみたい……。
49名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 02:33:17 ID:R7imU1O0
保守
50名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 16:07:48 ID:uNeLCGBM
ド変態すぎて本スレに投下出来ないやつとか……読んでみたい
51名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 01:20:54 ID:ygVWHdLR
スレから追い出されたSSを投下するスレPart2(http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1208076450/
と言う若干感じ悪い名前のスレに、「専用スレに投下しずらいもの」が今まで投下されていました
そのスレが完走しそうなのでスレタイトルを相談していたところ、アンチが突然このスレを立ててしまいました。
ナンバリングされた正規スレは下記になりますので、どうぞご移動戴ければ幸いです。
このスレは削除依頼が出されています。

スレに投下し辛い/迷うSS【元・追い出され3】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242308022/
52名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 21:05:56 ID:XvetBoc0
そんな事言われてもなあ
53名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 09:18:35 ID:4Ca+MG7k
どうせ落ちるんだから記念に書いておくか。
涼宮ハルヒの憂鬱で。

 部室に入ると、ハルヒがつまらなそうに、ひじを団長専用机について座っている。
 ハルヒは、俺の顔を確認すると、ねめつけるように見上げて口を開いた。
「ねえ。キョン。なんか刺激的なことはないかしら。例えば宇宙船が今すぐ校庭に降りてくるとか」
 宇宙人ならもう傍にいるだろう、という言葉を飲み込む。
 ハルヒは相変わらず突飛なことを言っているが、要するに、平凡な日常とやらが我慢できないのだろう。
「ま、刺激的なことは無い訳ではないが…… な 」
 俺は咳ばらいをしながら、ハルヒの顔と身体を眺める。
 どんなに性格がエキセントリックだろうが、ハルヒは超がつくほどの美人で、かつ、抜群のプロポーションを誇っている。
 4月にトップ人気だった朝倉の消滅後は、クラスの過半数の男子は、ハルヒの裸やコスプレ姿を妄想しつつ夜な夜な
自慰に耽っているに違いない。かくいう俺も、何度か空想上のハルヒには『お世話』になったことがある。

「何か面白いことあるの? 」
 瞳を輝かして身を乗り出すハルヒに、やれやれという気持ちと、微笑ましさを覚えつつも俺は無言でハルヒに向かって歩く。
「な、何? 」
 予想外の行動に、戸惑っているハルヒに構わずに、俺はいきなり後ろから抱きついた。

「キャッ」
 普段はあげることのない女の子らしい悲鳴が、狭い部室に響き渡った。
「な、な、何するのよ。この…… 」
 長い付き合いだ。ハルヒの次の行動くらいは簡単に予想できる。
 俺にビンタを喰らわそうと、憤然として腕を振り上げようとするハルヒの首回りを素早く抑え、唇を重ねてしまう。

「んっ!! 」
 彼氏をとっかえひっかえした割には、こういうことをされた経験がないのだろう。
 ハルヒは短い悲鳴をあげたきり、瞼を大きく見開きながら、身体を硬直させることしかできていない。

 俺は、ハルヒの動揺につけこんで、唇の隙間から舌をねじこんでしまう。
「ん、んんっ…… 」
 くぐもった悲鳴が耳朶に届く。俺は深いキスを続けながら、ゆっくりと手を胸に回す。
「んく、んくう」
 制服の上から触っただけなのに、ハルヒは大きく背中を逸らして呻く。

 張りの良いだけでなく、感度も抜群だ。
 じたばたもがくハルヒの口腔内を犯しながら、セーラー服の中に手をもぐりこませる。
「ん…… んあっ、くうん」
 滑らかな素肌と、ブラの感触を楽しみながら、ハルヒの上半身を撫でまわしまくる。
 絶え間なく襲うくすぐったさと、性的な快感から逃れようと、必死に身体をよじるけれど、
そこは男と女の体力差で、逃すようなへまはしない。

 とはいっても、暴れる牝馬をずっと抑え続けるのも大変だ。
 俺は、抵抗するハルヒの制服からリボンを抜き取り、素早く手をまわしてハルヒの両手首を掴み、後ろ手に拘束してしまう。
「ぷはっ」
 難しい作業に専念せざるを得なかった為、一旦にしろ重ねていた唇が離れる。
 喋る自由を回復したハルヒは怒鳴った。
「なんてことするのよ! この変態! 」

 まったく心外なことである。日々繰り返される退屈な日常に変化を与えてやっているのに、この言い方はないだろうに。
 俺は、髪を振り乱して無駄な抵抗を続けるSOS団の団長を悠然とながめながら、ゆっくりと床に押し倒した。
54名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 09:28:56 ID:11T1f4C0
スレから追い出されたSSを投下するスレPart2((p)http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1208076450/
と言う若干感じ悪い名前のスレに、「専用スレに投下しずらいもの」が今まで投下されていました
そのスレが完走しそうなのでスレタイトルを相談していたところ、アンチが突然このスレを立ててしまいました。
ナンバリングされた正規スレは下記になりますので、どうぞご移動戴ければ幸いです。
このスレは削除依頼が出されています。


スレに投下し辛い/迷うSS【元・追い出され3】
(p)http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242308022/
55名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 10:13:42 ID:4Ca+MG7k
>>54
通りすがりなので前スレの議論はしらんけど、5月14日(木)に削除依頼は出されているけれど、
その後、削除人は消してはいないようだが(もっとも、消されたら書き込めないし)
56名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 10:34:34 ID:E+OW/tDa
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242308022/の方も
削除依頼出てるけど、削除されてないよね
ただ重複スレなのは確かだから、削除議論あたりでどっちを残すか
議論して、その上で改めて削除依頼を出した方がいいと思う
57名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 10:35:05 ID:j8c2JkG9
嵐が保守したり書き込みがあるときは消されない場合がある。

じゃあ一つ聞きたいのだけど
なんでたった2レス上にここは嵐が自己中に立てた迷惑スレだと言う明記と証拠があるのに
嵐の荷担をするような投下をする?
どうせ落ちるならって迷惑行為で同類だよ
せっかくまともな文章書いてる職人なのにもったいない
58名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 10:35:06 ID:DD3/Sft/
>>55
それより早く続きを書く作業に戻るんだ
59名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 12:03:10 ID:VM8WPjWo
>>57
前スレが「読めない」から判断する材料がない。あと誘導先スレを読んだが、罵倒の応酬でいまのところ書く気がしない。
>>58
「生もの」だから投下の保証は出来かねるが、とりあえず取りかかるよ。
60名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 13:56:23 ID:VM8WPjWo
>>53の続き

 背中を床に押し付けられたハルヒに、覆い被さるようにして身体を密着させると、女子高生特有の甘酸っぱい、
柑橘系の匂いがダイレクトに脳に伝わってきて、頭がくらくらする。
「ハルヒって良い匂いがするな」
 思ったまんま、正直な感想を呈示してやると、ハルヒは頬を真っ赤にして
「アンタ、ほんとに変態ね」
と、軽蔑しきった口調をあげながら、気弱な生き物なら射殺すことができるような目つきで睨みつけてきた。

「光栄だね」
 俺はニヤニヤしながら言ってから、早速とばかり、両手を縛られて抵抗力が著しく減殺されたハルヒの、
セーラー服を脱がしにかかる。
「やめなさい! このエロキョン! 」
 しきりに罵声を放ちながら、ハルヒは瑞々しい肢体を揺らして暴れる。
 しかし、身体を左右に捩る内に、ただでさえ短いスカートの裾がめくりあがり、思わずむしゃぶりつきたくなる程に、
白くて滑らかな太腿が露わになり、俺の息子をいたく刺激してしまうことに、この麗しくも愚かしい団長殿は、全く気づいていない。

 セーラー服を胸の上までずりあげてから、形の良い乳房を護っているブラの上を、両手を使ってゆっくりと、丹念に揉みしだいていく。
「馬鹿…… やめなさい! んんっ」
 どんなに拒絶の態度を示しても、己を犯そうとする、いやらしい手を止めることが叶わないハルヒは、焦りの表情を浮かべながら
必死の形相で叫ぶが、敏感な場所を執拗に責め立てられる内に、少しずつ口調に色っぽさが増していく。

「ん…… やだ…… んああっ」
 時々、漏れだす甘い吐息の割合が、俺に向けて放つ罵声より多くなった頃。

「そろそろ、ブラを脱がすぞ」
 俺はわざわざ宣言してから、ハルヒの背中に手をまわした。
「嫌よ! やめなさいよ! 」
 漁師に釣られて陸にあげられつつも、まだまだ元気を保っている鮮魚のように、身体を左右に激しく振って抵抗を試みるが、
俺は至極あっさりと、ブラのホックを外してしまう。
 緊張感を失ったブラをめくってやると、おわん型をした二つの膨らみが眼前にあらわれる。

「ハルヒ、本当に良いおっぱいだな」
「キョンの馬鹿! 変態! 死んでまえ! 」
 ハルヒの整った口から放たれる罵声を心地よく受け止めながら、ミロのヴィーナスもかくやという素晴らしい乳房を鑑賞する。
 朝比奈さん程ではないが豊かな双丘の頂上に乗っている突起は、冷たい外気と不躾極まりない野郎の視線に晒されて
ほんのりと桜色に染まっている。

 俺は、天井の神々による造形美の結果としか言い様のない、乳房をじっくりと眺めてから、ゆっくりと両手で揉み始める。
「触るなあ!…… んああっ」
 非常に敏感な部分を無遠慮にまさぐられ、ハルヒは形の良い眉を歪めて、悲鳴をまじりの嬌声をあげた。

「お前、もう、固くなっているぞ」
 俺は敢えて軽蔑した口調をつくってから、愛撫によって、固く大きくふくらんだ乳首を軽く捩じってやる。
 指先に伝わるこりこりとした感触はたまらず、俺のリピドーはいたく刺激される。

「痛っ…… いやっ、いやあっ」
 黄色いカチューシャで結んだ黒い髪を振り乱して、涙目になって叫んでいる半裸の少女を見ると、
やはり通常の性的嗜好を持つ、健全な男子高校生としては、興奮してしまうのもやむを得ないことだろう。

「ハルヒ…… 残念だが、俺はもう限界だ」
 部室でいきなり、付き合いのそれなりに長い同級生を襲うというのは、確かに非日常の極みではある。
 社会的に見ても犯罪行為という糾弾を免れがたく、もし公になれば自分がどうなるかなんて、少し冷静になれば分かるはずだが、
ハルヒの裸体という強烈な刺激によって生み出された、性的な煩悩によって大脳新皮質が半ば麻痺している俺は、
今の時点では、些細なことに過ぎなかった。
61名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 18:16:48 ID:11T1f4C0
何だ荒しかじゃあ仕方ない
むしろこない方がいい
62名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 18:22:01 ID:u12BxmTl
こう言う日本語が分からない無駄にマメな馬鹿がいるから必要だけど保守がまばらな貴重スレがおちる
63名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 18:48:03 ID:VM8WPjWo
投下されたSSに感想レスもろくにつけないのに、ここまで出っ張って良く言うわ。
64名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 18:56:01 ID:DD3/Sft/
>>60
ようやくおっぱいまでこぎつけたか……全裸待機を継続する。

まあマイペースで頑張ってくれ。
65名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 19:07:14 ID:VM8WPjWo
>>64
了解。
66名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 21:32:45 ID:EumwZThR
続きに期待
つか、こっちのスレタイの方が明らかに簡潔で単純明快かつ嫌味がなく投下しやすいな
向こうのスレの人が先にこのスレタイを思いついてくれなかった事が悔やまれる
67名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 00:25:14 ID:LLaPkbaO
>>60の続き

「な、何するの? キョン」
 俺の表情の変化を悟ったハルヒが、強気を装うことすらできず、怯えた声をあげる。
「ごめんな。ハルヒ。俺…… もう我慢できない」
「え、何それ。どういうことよ」
 ハルヒは普段は、宇宙人だの未来人だの、超能力者だの、異世界人だの、通常人には理解しがたい
アッチ方面の電波を飛ばしまくっている。
 しかし、バニーガール姿になることを好むという、自己顕示欲はあるけれど、性的な嗜好はごく単純であり、
どちらかと言えば純朴で、奥手であると俺は思っている。
 恋愛に興味は無いと強がっているのも、裏を返せば性的な接触に対する恐れであると言えよう。

「ま、口で言うのは野暮ったいからな」
 今から、お前を犯しますなんて流石に言えたもんじゃない。
 戸惑うハルヒを横目にしつつ、スカートをめくりあげて、最後に残された防具である下着に手をかける。
「や、やめなさいよ! 」
 脱がされまいと、すらりと伸びた綺麗な足をじたばたと振って抵抗する。
 全く、あきらめが悪いな。

 暴れる両足を抱え込むようにして抑えつけて、白く、どちらかといえば地味な下着をずりおろしていく。
「嫌、やめて、おねがいだから」
 黒曜石のような瞳から流れる涙で頬を濡らしながら、ハルヒは哀願する。

「なんで、こうも嫌がるかね…… 」
 ハルヒとは、恋愛関係はないにしても、SOS団という名のもとで一緒に行動し始めてからずいぶんと長くなる。
 夏の海、冬のスキーと旅行も一緒に行っているし、義理とはいえ、バレンタインにはチョコレートすらくれたことがあるのだ。
 それなのに、何故、こうも嫌がるのだろうか。
 結局のところ、俺は、便利な小間使いという程度にしか意識をされていないのか?

 理不尽な怒りがわき出して、感情を制御できない。
 嫌々と首を振るハルヒを冷然とみつめて、俺は足首までおろした下着を抜き取って、乱暴に床に捨てる。
「ハルヒ…… 丸見えだな」
 健康そうな黒々とした茂みの奥にある、秘められた場所は、外部からの侵入に怯えるように固く殻を閉じている。

「お願いだから、やめて…… 」
 なおも哀願を続けるハルヒを無視して、強引に太腿をこじあけ、顔を近づける。
 秘められた部分に舌端を伸ばして触れて、そのまま押し潰すようにして愛撫する。
68名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 00:25:48 ID:LLaPkbaO
「ひゃああっ」
 ハルヒの裏返った声が、部室に響く。
「や、やあああっ」
 しかし、俺は悲鳴に構わずに、黒い茂みに隠れた突起を何度も舌でつつくことを繰り返す。
「んあ、ひゃう…… んはあああっ」
 敏感な場所をダイレクトに刺激され、よがり声をあげるハルヒを見ながら、
俺は太腿をしっかりと抑え込んで、ぷくりと膨らんだクリを刺激していく。

「ちょっと、匂いがキツイな」
「やだ、そんな汚いところ嗅がないで! 」
 おそらく顔をゆでたこのように赤くしているハルヒが叫ぶ。
 傍から見れば丹念なクンニだろう。
 しかし、女の子にとって好きでもない奴に、自分のアソコを舐められるなんて屈辱でしかない。

 ん…… 好きでもない?

「あのな…… ハルヒ」
「な、なによ! 」
 瞼の端に大粒の涙を浮かべたハルヒとまともに目が合う。
 俺は半ば無意識に言葉を紡いでいた。

「そんなに…… 俺のことが嫌いか? 」

 一瞬、気まずい空気が流れた直後、ハルヒは大声でまくしたてた。

「嫌いよ、嫌い! あんたを好きになるなんて金輪際ありえないんだから! 」
 双眸に涙をためているハルヒの声は、悲痛そのものだ。

「そうだよな…… 俺の勘違いだったよな」
「な、何をいってるのよ」
「お前がいくらテンパった性格だろうが、お前の強引な勧誘で入ったSOS団で、変な任務ばかりをさせられても、
お前のいろいろな尻拭いをしていても、それでもな。俺はSOS団をやめるなんて言わなかったよ。
ハルヒ、お前にその理由が分かるか? いや、分からないだろう」
 突如として興奮し、まくしたてる俺を、ハルヒは呆然として眺めている。
 俺は勢いのまま、一世一代の勇気を絞って吐き出す。

「俺はな、涼宮ハルヒのことが、生意気で我儘でとんでもなく強引なお前のことがな、つまりは好きなんだよ」

 しかし、ハルヒの反応は何もない。ただ、俺を見つめたまま立っているだけだ。

 馬鹿だ。俺は本当に馬鹿な男だ。俺は何をやっているんだ。
 好きな相手を陵辱してどうするんだ!

 俺はハルヒから離れて、ふらふらと立ち上がる。
 自嘲の笑みを浮かべることしかできない。ハルヒに合わせる顔は何処にもない。
 もはや、アイツの前から消え去るしかない。

 全ての望みを喪い、幽霊のような足取りで部室を去ろうとする時、後ろから声がかかった。
69名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 00:26:22 ID:LLaPkbaO
「この、莫迦キョン」
 振り返るとハルヒが立っている。乱れた制服を纏い、後ろ手に縛られたままの姿で俺を睨みつけている。
「あんたも本当に鈍いわね。人の言葉の裏を少しは読みなさいよ! 」

「それってどういう…… 」
 俺は混乱から立ち直っていない。

「まったく、もう、少しは考えなさい。気に食わない奴と一年も一緒に過ごすことなんて、私は絶対できないわ。
そんな事はお猿さんでもわかるわよ」

「あ…… 」
「キョン。女の子の気持ちが分からないようじゃ、一生彼女なんて出来やしないわよ」
「ハ、ハルヒ? 」
 嫌い嫌いも好きのうち。
 陳腐なフレーズが脳裏に浮かぶ。
 俺はこいつが筋金入りのツンデレだということを、完全に失念していた。

「ハルヒ…… その、スマン」
 穴があったら入りたい。しかし、次に発したハルヒの声は意外なものだった。

「こらっ、キョン」
「な、なんだよ」
「これを何とかしなさいよ」
 両手に結ばれたリボンを見せる。
「スマン…… 今外すから」
 慌ててリボンを外そうとするが、ハルヒは更に妙なことを言った。
「馬鹿、違うわよ」
「え!? 」
 何を言われているのか分からない。

「馬鹿キョン。人の気持ちも知らないようなセックスは嫌だったけれど、私だって強引なのは嫌いじゃないんだから」
 縛られまままのハルヒは、顔を赤く染めながら言ったまま、ぷいっと横に向ける。

 しばらく、唖然としてハルヒの顔をみていたが、ようやくこの女の心情を理解して――
70名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 00:26:59 ID:LLaPkbaO
「ははっ、あはははっ」

 天井を仰ぎ見ながら俺は笑った。
 全くもう、こいつは――
 ツンデレとMがくっつくと、こうなるらしい。
 全く、本当に分かりにくいったらありはしない。

「どうしたのキョン。ついにおかしくなった? 」

 俺は、心配そうな表情をみせるハルヒの肩を強引につかむと、もう一度、今度は優しく口づけをした。
「んっ」
 唇を塞がれてくぐもった声をあげるハルヒに密着すると、既に脱がしてしまった下腹部に手を伸ばす。

「んん!」
 ハルヒが驚いて太腿をきゅっと閉じるが、茂みの奥にあるクリを探し当てて、ゆっくりと揉んでいく。
「んああっ、ふあああっ」
 一番敏感な部分なのだろう。塞いだ唇の端からハルヒの嬌声が漏れる。
「んっ…… んくう」
 クリとその周辺を丁寧に揉みほぐすようにして愛撫すると、大量の愛液が噴き出して、指に絡みつく。

「んく、んふぅ」
 ハルヒの唇から離れる。既に恍惚とした表情に変わっている。
「お願い、キョン。来て」
 縛られたハルヒのリボンを解いてやると、ハルヒがしがみ付いてくる。
「い、いれるぞ」
「うん」
 どもる俺を責めるなかれ。
 偉そうなことを言っている俺は、今日が初めてである。それはハルヒも同じはずだ。

 緊張しながらも、ハルヒを床に仰向けになる形で寝そべらし、上から少しずつ腰をしずめていく。

「痛っ…… 」
 今まで一度も侵入を許したこともない膣口に異物の侵入を許した少女の、綺麗な顔がひどく歪む。
「ハルヒ? 」
「だ、大丈夫…… だから 」
 ハルヒは痛みを堪えて、気丈に笑ってみせる。
 これ以上、気を遣わせてはいけない。俺は躊躇いを捨てて一気に押し入れる。

「んあああ、やああああああああ! 」
 激痛に襲われた少女が鋭い悲鳴をあげる。

「う、動かしていいから」
 かなり痛いはずなのに、無理やり笑顔を浮かべるハルヒに、心を痛めつつも、膣中に埋めた一物を動かし始める。
「ん、んああ、くぅ、はあああ」
 濡れた愛液が肉棒によって掻き回され、ぐちゃぐちゃと擦れる音が耳朶を叩く。
71名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 00:27:37 ID:LLaPkbaO
「んっ…… くっ」
 汗みずくになりながら、必死になって腰を動かす。
「ひゃう、だめ、くっ、くううう」
 膣が侵入者によって荒らされる度に、ハルヒの綺麗な顔が苦痛にゆがむ。
 それでも、ハルヒは俺の拙い行為を受け入れてくれる。

「んん、んああ、はう、くぅ」
 少しずつ、動きを早くしていく。ハルヒは額に濡れた汗をくっつけながら、悩ましい嬌声をあげる。
 性的な興奮を受け続けた俺の一物は、我慢の限界に近づいてくる。

「キョン。私、もう、いく、いくっ」
 ハルヒが短い呼吸を繰り返しながら喘ぐ。瑞々しい身体が急激に小刻みに震えだす。ハルヒも絶頂が近いようだ。

「んあ、はあっ、キョン、くぅ、あ、あああっ、キョン、キョン」
 俺のあだ名を何度も叫びながら、髪を振り乱して、口を大きく開けてよがりまくる。
「だめ、もう、私、いく、いくの、ふああ、ああああ」
 荒い息をつきながら、急激に絶頂の階段を昇っていくけれど、柔らかい膣の刺激を与え続けられた
俺の息子も限界に達している。

「キョン、だめ、もう、だめ、ひゃああ、ああああっ」
 ハルヒが全身を硬直させて絶叫する。
 俺は、一物を膣中に放出する寸前で引き抜いて、喘ぎまくるハルヒの上半身に振り向ける。

 その直後、激しく脈打つ肉棒から白濁液が勢いよく飛び出し、脱ぎかけのセーラー服や、豊かな胸や、
綺麗な顔を汚していく。
「はあっ、はあっ」
 俺は激しく息を荒げながら、なおも放出を続ける。
「キョン、キョン」
 ハルヒは連呼しながら、勢い良く飛び出してくる白い液体を厭わずに受け止める。

 異常な程に、大量に放出された精液もやがて勢いを弱め、ついに打ち止めになった。
 放出を終えた俺と、顔や制服を精液まみれにしたハルヒは、折り重なるように部室のど真ん中の床に倒れ伏した。

「ねえ。キョン」
「なんだ。ハルヒ」
 しばらくして落ち着いた後、手をつなぎながら、仰向けに横たわったお互いの顔を見ながら笑う。

「アンタ、責任取りなさいよ」
 笑いながら抱きついてくるハルヒの頭を、優しく撫でてやる。
「もともと、そういう運命だからな」
 最後にはこういう関係になる、という予感めいたものは、皆無だった訳でもない。

 部室の窓から差し込んでくる、日没間近の柔らかい日差しを浴びながら、俺とハルヒは
同じ場所から、同じ空をずっと見つめていた。
72名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 00:28:17 ID:LLaPkbaO
「1時間30分前に、過去最大の閉鎖空間が発生しましてね」
「そうか」
 ハルヒと別れて、自宅に向かっていると、案の定、自称超能力者が眼前にあらわれて、
普段と相変わらない笑顔を向け、これまた普段と同じように一方的に話し始めた。

「発生した閉鎖空間は、過去に例を見ない程、急速に世界を覆い尽くしました。
地球上にいる組織全体で必死に対策を練り、反撃を試みましたが、全く効果はありませんでした。
私達は、真の意味での世界滅亡を覚悟しましたが…… 」

「ふうん」
 動揺を抑えながら、俺は素知らぬ顔をする。
 いくら閉鎖空間が発生して、拡大しようと、ハルヒとの情事を明かすつもりは一切無い。

「ほとんど諦めていた頃、閉鎖空間はいきなり消えてしまいました。もちろん神人も一緒です」
「それはよかったな」

「全くです」
 古泉は、苦笑未満の表情を浮かべながら、両肩をすくめてみせる。
「我々は、長門さんや朝比奈さんも含めますが、涼宮ハルヒが主演の劇では脇役なのですよ。
もちろん、短いエピソードでは主役の相手を務める程度の存在感はありますがね」
「どういうことだ? 」
「つまり…… この世界の命運は、貴方と、涼宮さんの二人に委ねられているのですよ。
我々は気を揉みながら、ただ見守ることしかできないのです」

 いくらか自嘲めいた言い方だが、おそらく古泉本人の正直な感想であり、今の俺はそれを否定することはできない。
「まあ、最後は、Love and Peaceなのでしょうがね」
 伝えたい事を言い終えると、古泉は軽く片手をあげて、姿を見せる時と同じように唐突に去っていった。

 一人残された俺は、街灯に照らされた道を歩きながら、黄昏から夜の領域へと移りつつある西の空を見上げる。
 宵の明星と呼ばれる惑星が、ひときわ明るい輝きを周囲に放っていた。


 (終)
73名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 00:29:35 ID:LLaPkbaO
以上です。

読んでくれた人、ありがとうございました。
陵辱のつもりが何故か、純愛になってしまったw
74名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 01:06:39 ID:k297nqqy
>>73

ふう……。


さてと。いい加減パンツを穿くか。
75名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 18:58:52 ID:/F3C03qf
GJ

>>60
リピドーじゃなくてリビドー(LIBIDO)だ
76名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 23:19:15 ID:42EDSmmV
ナイスツンM。
つか執筆早ええな。
即興に近い状態で、このクオリティーのものを上げられるスピードが羨ましい。
77名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 21:48:42 ID:J++SM4he
スレから追い出されたSSを投下するスレPart2((p)http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1208076450/
と言う若干感じ悪い名前のスレに、「専用スレに投下しずらいもの」が今まで投下されていました
そのスレが完走しそうなのでスレタイトルを相談していたところ、アンチが突然このスレを立ててしまいました。
ナンバリングされた正規スレは下記になりますので、どうぞご移動戴ければ幸いです。
このスレは削除依頼が出されています。


スレに投下し辛い/迷うSS【元・追い出され3】
(p)http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242308022/
78名無しさん@ピンキー:2009/06/05(金) 11:18:15 ID:SmiV+LMt
けいおん! 小ネタ

1.梓

「あずにゃーん」
 今日も、いつもと同じように唯先輩が抱きついてくる。
「先輩! いい加減にしてください! 」
 過剰すぎるスキンシップをしてくる先輩に怒鳴りながら、強引に引き離す。
「あずにゃんは、どうして私に冷たいの〜 」
 しゅんとして両肩を落とし、涙目になる唯先輩に冷ややかな視線を向けながら窘める。

「全く、私に抱きついてくる暇があったら、もう少し練習してください。今だにコードを忘れるなんてありえませんよ」
「うう、あずにゃんがいじめるー」
 瞼に両手をあてて、あどけない顔を伏せるけれど、もうだまされないんだから。

「嘘泣きをしないでください! 」
 腰に手をあてて、下手な泣きマネをする困った先輩を、きっと睨みつける。
「ご、ごめんよー あずにゃん」
 しゅんとした、唯先輩があたまをさげるけれど、困ったことに、それがまた腹立たしく思えてきてしまうのだ。
「年上なのに、あっさり謝らないでください! 」
「だって、あずにゃんが怒るから」
「あ、あのですねえ」
 あまりにも子供っぽい振る舞いに、先程までの怒りはどこかに消えてしまい、いたたまれない気分にさせられる。

「わ、分かりましたから、もういいですから! 」
「あずにゃん、大好き! 」
 一転して満面の笑顔を見せ、ぎゅーっと強く抱きしめてくる。

「ひゃあ」
 先輩のさらさらな髪がまともに顔にかかり、私の声は裏返る。
 懲りずにくっついてきた先輩の身体を、もう一度引き剥がそうとするけれど、柔らかくて、温かくて、
ちょっといい香りがして…… 頭がくらくらしてしまう。

「あずにゃんは、とってもいい子だね」
 結局抵抗ができずに、このセクハラ親父的な先輩に抱きつかれてしまい、頭をなでられてしまう。
 私の、受難はまだまだ続きそうである。
79名無しさん@ピンキー:2009/06/05(金) 11:19:23 ID:SmiV+LMt
2.憂

「それでね。あずにゃんがね」
 お姉ちゃんは家で最近、梓ちゃんのことをよく話す。
 梓ちゃんは、私と同じ学年の親友で、お姉ちゃんが所属している軽音部に入部している。
「お姉ちゃん…… 」
 軽音部に入って、お姉ちゃんの表情は、凄く生き生きとするようになった。
 そんなお姉ちゃんを微笑ましく眺めていたけれど、最近はちょっと心配だ。
 どうしてかと言うと、友達の梓ちゃんの話題が、どんどん増えていくから。

「あずにゃんってね。とっても可愛いんだよ」
「そ、そうなの」
 話題が出る度に、喉が酷く渇いてしまう。心臓の音がやけに大きく聞こえる。
「あ、あのね。お姉ちゃん…… 」
「なあに、憂」
 動揺を懸命に抑えながら、お姉ちゃんに尋ねる。
「お姉ちゃんって、梓ちゃんのこと…… 好きなの? 」
「うん。大好きだよ。だって可愛いし」
「ち、違うの…… あの、あのね。likeじゃなくてloveの意味で好きなのかな…… なんて」
 うわあ、聞いちゃった。
 私の顔は、たぶん真っ赤に火照っているはずだ。
 
 しばらく、瞼をぱちくりしていたお姉ちゃんが、ゆっくりと立ち上がり、いきなり私に抱きついた。

「えっ、あっ、お姉ちゃん? 」
 お姉ちゃんの、とっても柔らかい胸が背中にまともあたり、鼓動がどんどん速くなってしまう。
「もしかして、嫉妬した? 」
 にんまりと笑うお姉ちゃんの笑顔は、とっても魅力的で…… ちょっと悔しい。
「だ、だって、お姉ちゃんが可愛すぎるから…… 」

 しどろもどろになる私の手をぎゅっと握って、お姉ちゃんは耳元で囁いた。
「ありがと。憂」
「お、お姉ちゃん」
「私は、憂のこと大好きだよ」

「あ、あの、梓ちゃんより? 」
 私は、凄く我儘なのだろう…… お姉ちゃんの愛情を誰よりも受けたいと思うのだから。
「あずにゃんも、和ちゃんも、澪ちゃんも、ムギちゃんも、りっちゃんもとっても大好きだけど、
憂が一番大好きだよ」
「お、お姉ちゃん! 」
「憂は、私の大切なただひとりの妹だんだから…… ね 」
 涙が零れるほどに嬉しくて、幸せだった。
 お姉ちゃんの愛情を、一番受けているのは私だということが分かったから。

 でも――
「あーずにゃん」
 廊下ですれ違う時に、梓ちゃんにいきなり抱きついてしまうお姉ちゃんを見ると、またまた不安になってしまう。
「この浮気者! 」
 と、はっきり言えればいいのだけど。

(おしまい)
80名無しさん@ピンキー:2009/06/05(金) 12:09:50 ID:Pe1mAKX2
乙でし。

けいおん! は女子しか出ないからどうしても百合展開になるわな
81名無しさん@ピンキー:2009/06/05(金) 13:08:42 ID:SmiV+LMt
>>80
2巻までで、楽器店の店員と、さわちゃんの高校時代からの先生しかいないしなあ。
82名無しさん@ピンキー:2009/06/05(金) 22:40:05 ID:o8m62zv/
GJ!
特に物議かもすような内容とも思えないが、何でけいおんスレに投下してくんないの? 
83名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 08:32:53 ID:TmSTBrRw
文章の癖、等々が前作ハルヒと同じだから同じ人なんだろう
このスレを継続させようと投下をがんばってるんじゃないか?イミフだが…
84名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 09:02:16 ID:gFNizEKV
専用スレに投下出来ないと考えるのは書き手の都合だから仕方ないんじゃないのか?
専用スレがあるんだからそっちに行けと言うのならこのスレ自体の存在意義が失われる
85名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 09:49:29 ID:z+TRgeOc
こんなスレが必要ない位、どこのスレでも許容範囲が広いのが理想なんだろうけどねえ。
最近はライトな百合ネタでも叩きの対象になる場合があるからね。
86名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 11:28:38 ID:JgOI7eRx
いや、このスレ自体が重複且つ、問題スレとして提起されていて
>>77でも移動を言われて居るんだが、何だかカチンと来てがんばっちゃってる人みたいだよ
とりあえずこのスレは>>77で言われてるように
嵐が立てた二つのスレの重複スレとなってるので余り投下しない方が良いみたいだけれどね…
詳細は>>6
87名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 14:06:35 ID:F4tw0+TC
>>77もいい加減ウザいけどな。
保守目的かもしれないけど。
今となってはどっちのスレが残ったところでさして問題でもないと思うよ。
88名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 14:10:35 ID:F4tw0+TC
とと。どうでもいい事言って大事な事言い忘れてた。

>>78
GJ。可愛いなぁ。
普段1次にいて2次は読んだ事ないんだけど、
元ネタ知らなくてもサクっと読めて楽しかった。
89名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 14:33:37 ID:fP9SqFPa
GJ(´∀`)
90名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 21:36:49 ID:gFNizEKV
>>85
何があっても「知らんがなw」って言いつつ投下を続ければ専用スレだけあればいい
こういったスレの存在は各スレの許容範囲に問題があるんじゃなくてあくまでも書き手の心の問題だよ
「あのスレに書きたくない事情」ってのは他人には分からない場合だってあるだろうし
>>82みたいな物言いはしない方がいいと思う
つーか
「専用スレに追い返すのは禁止」とハッキリ決めた方がいいかも知れない
91名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 17:36:34 ID:LlqWKCJG
けいおん! 和音×唯 


「和ちゃーん! 」
 放課後、下駄箱に上履きをしまっている時に、少し間延びした明るい声が聞こえてきた。
「あっ、唯」
 声をあげて振り向くと、唯が大きな瞳を輝きながら飛び込んできて、私の腕によりかかる。
「和ちゃん、一緒にかえろっ」
 柔らかい上腕の感触と、無防備な笑顔にドキリとしてから、私は靴を履いた。

「最近、部活の方はどう? 」
 校門に向かって歩きながら尋ねると、唯はとても嬉しそうな顔つきになっている。
「うん。新入部員の梓ちゃんも入ったし。とっても順調だよ」
「そっか」
 今年の春、唯の所属する軽音部は、活動実績が少ないという理由で、存廃の危機に陥っていた。
 結局、新入生が一人入部することによって、活動実績ありと判定されたことにより、何とか廃部は免れたのだけど。

「和ちゃん。本当にありがとう」
「ゆ、唯? 」
 私は、裏返った声をあげてしまった。
 門の傍で突然立ち止った彼女が、私の両手をぎゅっと握って、お礼をいってきたのだ。

「そ、そんな、大したことしていないわよ」
 私は、人目につく場所での大胆な振る舞いに動揺しながらも、首を横に振る。

「ううん。和ちゃんと一緒のクラスの子から、和ちゃんが軽音部を存続させるように、
他の役員の人たちを説得してくれたって聞いたの。
新歓ライブの実施と、梓ちゃんの入部で、軽音部の活動実績があると認めてほしいって、
和ちゃんが生徒会の皆に頼んだこと、私、知っているんだ」

 唯は、命の恩人に対して向けるような眼差しを私に向けている。

「で、でも、私がしたことなんてほんの口添え程度に過ぎないわ。部が存続したのは、
唯達、軽音楽部の全員が頑張ったからよ」 
 これは、掛け値なしの本音だ。
 いくら生徒会の役員といえども、部の存廃を、私個人で決定できる程の発言力はない。
92名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 17:37:13 ID:LlqWKCJG
「ううん。やっぱり和ちゃんが助けてくれたことが大きいよ。それに、廃部の危機を知らせてくれたのも
和ちゃんだし…… あっ」
 話をしている途中で、唯は口を開いたまま固まってしまった。

「ごめんなさい。和ちゃん! 」
 いきなり謝られて、私は、再び唖然とする。
 たぶん、まわりで私達のやり取りを見ている生徒も驚いているはずだ。

「ど、どうしたのよ、唯」
 しかし、唯は私の視線に怯えるように、一歩退いて俯いてしまう。
「あ、あの、本当にごめんなさい。私、和ちゃんに八つ当たりしてた」
 瞼からは小さな雫が生まれて、地面にいくつかの染みをつくる。

「唯…… 」
「私、和ちゃんのせいなんかじゃないのに、鬼とか、軽音部を潰そうとしてるとか、滅茶苦茶なこと言ってしまって…… 」
 懺悔の言葉を吐き出し、唯は肩を震わせながらしゃくりあげる。

「唯の、莫迦」
 私は、涙を零し続けている少女の背中をそっと抱いた。
「和ちゃん? 」
 頭一つ分だけ低い唯が、私を見上げる。
「気にしないでよ。部活が無くなるかもしれない時期だったから、ちょっと動揺しただけでしょ。
それに怒るほど、器が小さくないわ」
 できるだけ優しく言ってから、震える背中をなでる。

「だから、唯。お願いだから、そんな顔をしないで…… 」
 私は、言い終えてから、少女のふっくらとした頬に両手をあてる。
 唯に泣き顔なんて似合わない。
 いつも太陽のように明るく、笑っていてほしい。
93名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 17:39:06 ID:LlqWKCJG
「う、うん。分かったよ」
 私の言葉を真摯に受け止めてくれたのだろう。
 若干こわばりながらも、笑顔をみせてくれる。

「あの、あのね。私、和ちゃんにお礼がしたいの」
「お礼? 」
 小さく首を傾げながら尋ねると、唯は言葉を続ける。
「私ができる範囲で、和ちゃんの望むことをしたいの」
「本当に? 」
「うん。本当だよ。でも百万円くださいとか、できない事はダメだよ」
と、とても魅力的なウインクを一つ投げてくる。

 私は少し躊躇った後、普段から望んでいたことを口に出した。
「じゃあ。唯…… キスして」
「えっ!? 」
 唯の顔が瞬く間に紅潮する。私の顔もたぶん同じだ。

「あ、あは、ごめん、じょうだん…… 」
 気まずい沈黙に耐え切れず、頭に手をあてながら前言を翻そうとした時――

「いいよ」
 唯の返答に、私は瞼を大きく見開いた。

「和ちゃんが望むなら、キスして…… いいよ」
「唯…… 」
 まさか応じて貰えるとは思わなかったので、息をのんで、可愛らしい顔を見つめることしかできない。
 唯は、動揺を隠せない私に向けて僅かに微笑むと、瞼を瞑り、小さな唇を上向かせる。

「本当に? 」
 擦れた声で尋ねると、唯は微かに頷く。
「わ、分かった。いくよ」
 こうなったからには、覚悟を決めるしかない。
 私は唾を呑み込むと、両手を華奢な両肩においてからゆっくりと近づき、柔らかい唇を塞いだ。


「律! 後生だからお願い! 消してっ! 」
「えー 和ちゃん、消しちゃうの? こんなに綺麗に写っているのに」
「さあて、どうしよっかなあ」
 恥ずかしすぎる瞬間をしっかりと写メで取られてしまい、翌日、律に散々からかわれることになるとは、
今の私には知る由も無い。

(了)
94名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 17:41:59 ID:LlqWKCJG
以上です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

>>82
レズ・百合萌え板のスレに投下して、と言われそうだったので。
95名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 17:44:17 ID:LlqWKCJG
>>91 カプ名表示が…… 

和音(誤)→和(正) orz
96名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 22:15:47 ID:OiyYRYnK
GJ
律黒いよ律
97いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/06/13(土) 08:07:50 ID:w1WYqgjO

 椚麻衣(くぬぎ まい)のことを語るには、まず彼女の父親について説明せねばなるまい。

 麻衣の父は文学座出身の俳優で、舞台の他にもテレビ、映画等で人気を博していたが、
近年は自らメガホンを取り、映画を監督してそれが海外の映画祭でも大きな評判を呼ぶという、
名実共に成功を収めた日本芸能界の重鎮である。
 彼が有名女優である妻との間に儲けた三人の子供達も、
それぞれに舞台演出家、テレビタレント、アイドル女優となって華々しい活躍を遂げていたが、
それは麻衣とは全く無縁の世界であった。
 なぜならそれは麻衣が本妻の子ではない、脇腹の生まれだったからである。

 元々は田舎のキャバレーホステスだった麻衣の母は、
彼の人の三男に当たる暢(とおる)と、長女である麻衣を産んだことで、
一躍妾の身分に成り上がり、
口止め料含みの莫大な手当てでもって、山の手の優雅な暮らしを満喫することと相成った。
 やがて、金を元手に自分の店を持った母は家庭を顧みなくなり、
まず孤独に耐えかねた暢がぐれ出して家を離れ、
次いで、十六になった妹の麻衣も、せっかく入った有名私立女子高を不登校となったあげく、
とうとう兄の住むマンションへと移ってしまった。

 どうせ、陽の当たる場所には出られぬ運命の子供達なのである。
 世間からも、また実の親からさえも顧みられない兄妹に取って、信じるに値する存在は、
お互いの他にはありえないのだ。

 身一つで兄の元へと転がり込んだ麻衣は、兄の身の廻りの世話を甲斐甲斐しく焼いた。
 五つ上の兄は大学へ通う一方、
音楽好きが高じて、クラブDJのバイトもするようになっていた。
 よって、帰宅時間はまちまちだし、何も言わぬまま二、三日帰らぬことすらざらだったが、
それでも麻衣は、大人しく兄を待ち続けた。

 ある、夏の夕方のことだった。
 中学時代の友達と久しぶりに街へ遊びに行った麻衣は、街中で兄とばったり出くわした。
 兄は、二人の青年と連れ立って歩いていた。
「お兄ちゃん、今日は帰らないの?」
「これから友達と飲みに行くんだ。帰りは夜中か明け方だと思うから、飯はいいよ」

 そんな会話をしていると、兄の連れの一人が割り込んできた。
「この子暢の妹かよ。まじ可愛いじゃん」
 兄に言いながら、麻衣の顔を覗き込む。麻衣は、はにかみ笑いをして頭を下げた。
「麻衣です。お兄ちゃんがお世話になってます」
「俺、爽也(そうや)。よろしくね」
 兄より二つ三つ年上に見える彼は、浅黒い顔をほころばせて笑い、
シルバーリングを二つの指に嵌めた右手を差し出した。
 おずおずとその手を握ると、骨ばった大きな手が、力強く麻衣の手を包んだ。

「なんか、ちょっとワルそうな人達だったね……かっこよかったけど」
 彼らと別れた後、一緒に居た友達が麻衣に言った。
「そうだね」
 麻衣もそう答えた。

 その数日後。
 兄はマンションに爽也を連れてきた。
 ビールでも飲むのだろうと麻衣は冷蔵庫を開けたが、彼らは洋酒の瓶を用意していた。
 麻衣は兄達の邪魔にならぬよう寝室に篭っているつもりだったが、爽也はそれを引き留めた。
 それで、三人でガラステーブルを囲んでの、ささやかな飲み会となった。
 爽也は、色々な冗談を言って麻衣を笑わせた。
 強面な外見に似合わず気さくで明るい爽也に対し、麻衣は明確な好感を覚えた。
 暫く振りの楽しいひと時に麻衣ははしゃぎ、慣れない酒で強かに酔っ払って、
いつの間にやら眠り込んでしまった。
98いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/06/13(土) 08:08:38 ID:w1WYqgjO

 その夜、麻衣は金縛りに遭った。

 重苦しい塊に圧し掛かられ、どう悶掻こうとも抜け出せない。
 耐え難くなって眼を開けると、身体の上に男が居た。
 蛍光灯の消えた部屋の中、いつの間にやら全裸に剥かれていた麻衣は、
これを兄と思って脚を絡ませた。
 広い背中に腕を廻し、尻をくねらせているうちに、いつもと感じが違うことに気がついた。
 抱き慣れた兄のものより頑丈な体躯。それは、爽也の身体だった。
「爽也……さん?」
「そうだよ」

 麻衣は息を飲み、彼を押し退けようとして手足をばたつかせた。
 いくら好意を持った相手でも、いきなり眠っているところを襲われるなんて、耐えられない。
「や、やめて下さい! お兄ちゃんに、言いますよ……」
「まあ落ち着けって。その兄ちゃんがいいって言ったんだったば」
「えっ」と声を上げた麻衣は、頭を巡らし兄の姿を捜した。
 兄は、部屋の片隅で煙草をくゆらせていた。

「麻衣。爽也はさ、こないだ彼女に振られたばっかなんだよ。慰めてやってくれ。
 まあ損はしないと思うよ。爽也、セックス上手いらしいから」
「何それ!? 信じらんない!」
「いいじゃんか……暢とは、もうやってんだろ?」
 爽也に耳元で囁かれ、麻衣ははっと動くのをやめる。
 その期を逃さず、爽也は麻衣の唇を吸った。

 アルコールと煙草の匂いに塗れた唇は、麻衣の唇をこじ開けて舌に絡んだ。
 呆然とされるがまま身を任せていると、彼の唇は乳房に降りた。
 そして、麻衣の硬い乳房を巧みに玩ぶ。
 舌で乳首を転がし、ねっとりと舌を押し付けたあと、少し強めに噛みもした。
 兄とは違った愛撫の仕方に身体が痺れた麻衣は、
あられもなく呻くと爽也の背中を抱き締めながら、腰を上へと突き出して行った。

 急いでペニスを挿し入れた爽也は、巧妙に腰を使って麻衣を翻弄した。
 身体の関節がばらばらになるほどに。
 つきつめた感覚に襲われ、麻衣は繰り返し歓喜の叫びを上げ続けた。

 彼がようやく精をやって身体を離れると、今度は兄が代わりに乗りかかってきた。
 爽也の精液に濡れそぼった膣口に、ペニスを突き立て猛然と腰を振るう。
 兄は、爽也の半分ほどの時間で果てた。

 二人の男から解放された麻衣は、深いため息をついて性器の汚れの始末にかかった。
 何枚も引き出されたティッシュは、瞬く間に青臭い精液に塗れた塊と化した。
「早っえーなあ。それじゃあ麻衣ちゃんは百パー満足してねえよ」
 咥え煙草で爽也は笑う。
「いつもはこんなんじゃねえよ。今夜は……お前が麻衣とやるのを見てたからさ。
 ちょっと興奮し過ぎた」

 爽也は立ち上がって部屋の電気を点けた。
「おい暢も立てよ。麻衣ちゃん、俺のちんこと暢のちんこ、見比べてみない?」
 そう言うと、仁王立ちして股間で隆起したものを誇示して見せた。
 兄は苦笑しながらも、爽也の横に並んで妹の前に立つ。

 麻衣は、二人の青年の天井に向かってそそり勃ったペニスを間近で見た。
 兄のペニスは爽也のより長かったが、その太さにおいては遥かに劣って見えた。
 爽也のペニスは太くて亀頭の張り出し方が物凄く、見るからに百戦錬磨の使い込んだ代物、
といった感じ。
 蔦のように絡んだ血管が浮き上がっているのはどちらも同じだが、兄のピンク色に比べて、
爽也のはどす黒く光っていて怖いようだ。
99いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/06/13(土) 08:09:31 ID:w1WYqgjO

 麻衣の目からは獰猛な印象の爽也のペニスより、スマートで小奇麗な兄のペニスの方が、
好ましい気がした。
 兄に対しては、やはり贔屓目が働くのだろうか?
 もっとも、そのペニスを用いた行為自体の技巧に関しては、
なんと言っても爽也の方に軍配を上げざるを得なかったが。

 そうして麻衣が二本のペニスを交互に見入っていると、兄の亀頭の先端から、
透明な体液がじわっと湧き出すのが見えた。
 兄の顔を見上げる。
 兄は瞳を輝かせ、麻衣の裸体に視線を送っている。
 再び自分の身体を欲しがっているのだ――。
 そう気づいた麻衣は、ゆっくりと床に仰臥しようとした。

 ところが、麻衣のこの動きに反応したのは、爽也の方だった。
 麻衣は背中を弓のように反らせた形で、彼に覆い掛かられ、唇を吸われた。
 乳房の下に勃起したペニスが当たり、微妙に刺激される。
 麻衣は爽也の引き締まった硬い腿を尻の下で抱え込み、自身の身体を支えながら、
激しいキスをされる。

 爽也は唇を離した後、麻衣の瞼や頬、喉、首筋、とキスの雨を降らせ、
尚且つ舌で舐め廻した。
 そうされていると、麻衣は幾許かのくすぐったさと、
それを遥かに凌駕する疼くような快感に苛まれ、思わず知らず、
「ああぁ」
と、嘆声を上げて身を振るわせてしまった。

 すると突然、爽也は麻衣の身体を解放し、背後に廻って白い桃尻をすくい上げ、高く持ち上げた。
「暢、見ろよこれ……」
 尻の肉を割り、指で割れ目を押し広げつつ、弾んだ声で爽也は言った。
 催情した麻衣のそこは、愛液が溢れて濡れそぼっていた。
 小陰唇は鮮紅色にてらてらと光り、
薄桃色の中の肉は、誘うようにひくつきながら息づいている。

 兄は堪りかねたように喘ぎ、猛り狂ったペニスを掴んで麻衣ににじり寄る――。
 しかしその時。
「まあ待て、先にやらせてくれよ」
 兄より敏捷な爽也は、一足先に麻衣の尻を抱え込むと、
ぬめり蕩けたヴァギナに、ペニスをずぶっと挿し込んでいた。

「おぉい、ふざけんなよ。俺にもやらせろ!」
「まあまあいいじゃん。今夜は俺がメインのはずだろ?
 お前はいつでも、何度でもこいつと出来るんだからさあ」
 爽也に言われると、兄は押し黙って立ちすくんでしまう。
(お兄ちゃん……爽也さんに、何か弱みでも握られてんのかな?)
 麻衣はふと思った。
 こんな風に自分の身体を爽也に差し出すのには、何か理由があるはずだ、と。

 けれど、そんな思いも一瞬のちには吹き飛んでしまう。
 爽也の逞しいペニスで膣を攪拌される快味は、瞬く間に麻衣を支配し、
彼女はただ、突き出した尻を抉ってはあはあと喘ぐのみ。
 快感のあまり麻衣は切なささえ覚え、何でもいいから縋りつきたい気持ちになって、
「お兄ちゃん、お兄ちゃん来て!」
 と声を震わせ叫びたてた。
100いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/06/13(土) 08:10:14 ID:w1WYqgjO

 寄って来た兄を捕まえるとその身体を胸に抱き締め、唇に貪りつく。
 兄もまた、妹の乳を揉みしだきつつ口を吸い返した。
 麻衣は子宮がきゅーっと収縮運動を起こすような感覚に囚われ、
獣のような唸り声を上げながら小刻みに身を戦慄かせて兄の身体を締め付けた。

 ところがその時、ヴァギナの圧迫感が唐突に途絶えたので、はっと背後を振り返ると、
爽也が粘液でぬらぬらしたペニスを抜き出し、麻衣の眼の前に晒していた。
「そんなぁ……途中で抜くなんて、酷い」
 逆上せきった麻衣は、非難を交えた声音で爽也を責める。
 爽也は歪んだ笑みを浮かべ、面白そうに麻衣を眺めるだけだった。
「何だよ、最初は嫌って言った癖に。本当はやりたかったのかよ」
「ああぁ……」
「もう一回嵌めて欲しけりゃちゃんとお願いしろよ。そうだなあ……
 『麻衣の淫乱なおまんこを、爽也君の極太おちんぽ様でお仕置きして下さいませ』
 とでも言って貰うか」

「何それ? ばっかみてえ」
 麻衣の下敷きになった兄が、ぷっと吹き出して失笑している。
 しかし麻衣はそれどころの騒ぎではなかった。
 中途で快楽を絶たれたヴァギナが燃えて、居ても立ってもいられない。
「お、お願いします、爽也さん」
 麻衣は兄の身体に置いていた手を尻に廻し、そのまま両手で尻たぶを左右に押し広げて、
充血した陰門をさらに大きく寛げた。
 ぱっくり開いた膣の穴が、ひくひくと疼いた中の縁肉さえもはみ出させながら、
白濁した体液を涎のように垂れ流す。
 その上部では、皺の少ないアヌスが恥ずかしそうに火照り、
ぷくっとした膨らみを細かく震わせているのが見えていた。


「お願いします……爽也さん……
 麻衣の、麻衣の淫乱なおまんこ、爽也さんのおちんぽで、いっぱい突いてえ……」

「はい駄目ー。台詞変わってっからNGな」
 麻衣の必死の懇願にも関わらず、爽也はそれをあっさりかわした。
「ま、そんなにやりたきゃそっちの兄貴とでもつるんでろよ。
 ちんこびんびんだぜ? そいつ」
 麻衣は、はたと気づいて兄を見下ろした。
 そうだった。何もペニスは、爽也一人が持っている訳ではない。

 飛び起きて躍り掛かろうとする兄を押さえつけた麻衣は、上から兄のものを握り締め、
引っ掴んでずぶりとヴァギナにねじ挿れた。
「おー、すっげえなおい。逆レイプじゃん」
 爽也の揶揄を尻目に、麻衣は騎乗位で激しく腰を揺さぶり、尻を弾ませながら、
上半身では兄にしがみつき、ぐるぐるねちねちと茶臼のようにヴァギナでペニスを絡みつけた。

「お兄ちゃん! お兄ちゃん気持ちいい! 麻衣、おまんこ気持ちいいよお……」
「うう……ま、麻衣!」
 淫らな肉人形と化した麻衣を受け入れながら、兄は下から腰を突き上げ、
我を忘れて妹のヴァギナを抉り廻す運動に没頭した。
 爽也は兄妹の行為を傍観する傍ら、
二人の繋がりの隙間に手を差し入れて交接の具合いを確かめたり、
上下動の度に見え隠れしている麻衣のアヌスを、指で突付いて遊んだりしている。
101いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/06/13(土) 08:13:40 ID:w1WYqgjO

 そして、ついに麻衣と兄の快感が、頂点に達する時が来た。
「あっ……あぁああーっ」
 熾烈なピストン運動を唐突に止めた麻衣が、まず叫んだ。
 両肩が引き攣れるように痙攣し、首は折れそうなほど激しくがくんがくんと前後に揺れる。
 それに加えて下から貫く兄の無茶苦茶な、無軌道な腰使いが麻衣の全身を揺さぶり、
嵐の中の小船のようにか細い肉体を翻弄する。
 陰部の快感を伴った収縮とも相まって、どうにもならなくなった二人はただお互いを抱き合い、
爽也の眼を気にすることも無く、あられもない呻き声を合わせるのであった。

【つづく】


連絡事項:暫く休載致します。再開は一ヵ月後になります。
      という訳なので、続きは気長にお待ち下さい。ではまた。
102名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 20:51:48 ID:mX3uf7m+
>>101
休載w
気長に待ちます
103名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 23:06:41 ID:MVIoOcvo
スレから追い出されたSSを投下するスレPart2((p)http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1208076450/
と言う若干感じ悪い名前のスレに、「専用スレに投下しずらいもの」が今まで投下されていました
そのスレが完走しそうなのでスレタイトルを相談していたところ、アンチが突然このスレを立ててしまいました。
ナンバリングされた正規スレは下記になりますので、どうぞご移動戴ければ幸いです。
このスレは削除依頼が出されています。


スレに投下し辛い/迷うSS【元・追い出され3】
(p)http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242308022/
104名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 23:14:16 ID:vB6Yt19p
>>11と同じ人だな。
なんでそんなに必死なんだ。
105名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 15:18:48 ID:gj23ESCV
他人を追い出すのが趣味なんじゃないの?
106名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 22:53:31 ID:Sdh5t3Vp
>>101
ぐっじょぶ。
フランス書院を彷彿とさせる、濃厚でねっちっこいエロシーンがよかったですよ。
続き、期待して待ってます。
107名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 22:18:13 ID:XWTiCcPY
GJ
108名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 11:37:06 ID:076z9QBz
賛成
109名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 21:45:18 ID:T8Yh+dAh
保守
110いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/07/11(土) 05:41:15 ID:NQQwkzti

 麻衣が初めて兄と関係を持ったのは、実家を飛び出す一年半ほど前のことであった。
 その頃は兄もまだ一応実家に住んではいたものの、
すでに友人の処を点々と渡り歩いているような状態で、まともに帰宅することは稀になっていた。
 夜の仕事をしている母とは顔をあわせることも無く、
通いの家政婦が帰ってしまえば、広い家屋敷には麻衣ただ独りが取り残される。

 ある晩、いつものように独りぼっちの夕食を済ませた後、麻衣は兄の部屋に入った。
 退屈しのぎに、兄の所蔵している映画のDVDを拝借しようと思い立ったからだ。
 兄は些かマニアックな趣味をしていて、麻衣にはよく分からないマイナーな映画のソフトを、
山ほど持っていた。

 それでDVDを仕舞ったラックを物色していた麻衣は、ラベルの無いケースを手に取った。
「これ……何だろう?」
 ケースには無論のこと、ディスクそのものにも何も書かれていない。
 なんとなく好奇心に駆られた麻衣は、そのDVDソフトを再生してみることにした。
 さしてじっくり観る気はない、中身を確認するだけのつもりなので、自室には持ち帰らずに、
兄の部屋のプレイヤーで再生する。

 そこで麻衣が見たのは――
裸の女が、複数の男を相手にセックスに耽っている淫らな光景だった。
「なんだ、AVだったんだ」
 麻衣は、白け顔でため息をつく。
「ばっかみたい」

 そう思うのなら再生を止めてしまえばよさそうなものだが、彼女はそうしなかった。
 麻衣の心の中には、こんなDVDを隠し持っている兄に対する軽い失望の気持ちもあったが、
それとて一人前の男として当然のことと認識できる知識もあり、
また麻衣自身にも、こういった性的なものに対する好奇心がない訳ではなかったので、
非常に複雑な思いをしつつも、テレビの画面に眼を吸い寄せられてしまうのであった。

 画面は女が一人の男と濃厚に舌を絡めるキスをしながら、別の男に乳を弄らせ、
さらにもう一人の男が女のパンティーを脱がそうとしている場面だった。
 麻衣はあくまでそれを冷静に、醒めた目線で見学してやろうと、立ったまま腕組みをして観ていたが、
剥き出しにされた女の性器を、男がこれ見よがしに舐りだした辺りで、どうにも難しくなってきた。

 顔が火照るのは元より、身体中を廻る血が熱くなり、心臓がどきどきと早鐘を打つ。
 舐められる女の性器が、真っ赤になってぬるみを帯びるのを目の当たりにし、
大きな乳房を揉まれたり吸われたりする度ごとに、女が嬌声を上げるのを聞いているうちに、
いつしか麻衣は床に座り込み、腿と腿をきつく交叉させて力を込めていた。
 片手はスカートの中に入り、パンティーの上から陰部をぎゅっと押さえる。
 じいんと染み渡る快感が身体の芯に伝わり、
綿の布越しに、熱を持った柔らかな肉が綻びてぬかるんでくるのを感じた。

 堪えきれなくなった麻衣は、
荒々しく息を弾ませながら、パンティーを引き下ろして片方の足首に引っ掛けると、
大股を開き、開放された部分に指を滑らせて本格的な自慰行為を始めた。
 画面の中、大勢の男に肌をまさぐられて喘ぎ、性器を濡らしている女を、
妄想の中で自分に置き換えながら指を使う。
 興奮のあまり、麻衣の性器はしとどに濡れ、
ぬめる陰唇の頂点で膨らみ、強張りきったクリトリスは異様な敏感さで、そこに触れると、
たちどころに痺れ渡るような恍惚の中に引きずり込まれてしまう。
 麻衣はここが兄の部屋だということも忘れ、
捲り上げたTシャツの中から乳房を露出させて、くりくりと弄くることさえし始めた。

「ああん……はあ、はあ、気持ちいい……もっと、おまんこ、めちゃくちゃにしてぇ」
 気がつくと麻衣は、画面の中の女とそっくりな声で喘ぎ、いやらしい世迷言を呟いていた。
111いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/07/11(土) 05:42:20 ID:NQQwkzti

 こういった行為に耽るのはこれが初めてではなかったが、こんなに気持ちがいいのは初めてだった。
 そのうち、自慰に没頭しきった麻衣は画面を観ることもやめてしまい、
眼を閉じて床に仰向けになり、隆起した乳首と、尖って弾けそうになっているクリトリスを、
一心不乱になって擦り上げ、濃く白濁した淫液をヴァギナから溢れさせて、
尻の下の絨毯までびしょびしょに濡らして染みにした。

 床に寝転んで自慰に耽る麻衣の意識は、性器の快感のみに集中していた。
 だから気づかなかったのだ。
 この部屋の主である兄が、いつになく早くに帰宅していたことを。
 そして――ドアの向こうから、麻衣の秘密の行為をじっと覗いていたことを。

 兄は、麻衣が自分の秘蔵していたDVDを観ながら自慰に耽っているのを見つけてから、
どうすることも出来ずに部屋の外に佇んでいたのだった。
 何も見なかったことにして、その場を立ち去るのが正しいあり方だと自覚はしていたが、
妹のなまめかしい姿――曝け出した乳房の淡い膨らみや、
捲くれ上がったスカートの下から露出した、白い下半身の中心部を、
懸命に刺激している淫靡な指先の動きを見るにつけ、
妖しい興奮に胸を噛まれ、激しいペニスの勃起に苛まれるのであった。

 それでも、ぱんぱんに張り切ってズボンの前を押し上げるペニスを手で押さえながら、
辛抱強く見守っていると――。
「うぁあ……ああん、はぁあん……」
 妹は全身をびくっ、びくっと痙攣させ、固く閉ざした眼の縁に涙を滲ませ、
喉の奥底から搾り出すような嗚咽を漏らし出した。
 両手で己の陰部をしっかと押さえ、
ぐっと仰け反らせた身体を、強張った乳房をわなわなと震わせて、両の脚をぴんと伸ばす。
 兄の居る位置からは、妹の性器がどんな状態であるのか判然とはしないものの、
その裸足の指先がひくひく蠢いている様を見れば、
彼女の感じている陶酔の深さも窺い知れようというものだ。

 堪りかねた兄はとうとう部屋のドアを開け、オルガスムスの余韻に浸る妹の前に姿を現した。
「あ……」
 ぼんやりとした意識の中、兄の帰還に気づいた麻衣は、裸の胸元を掻き合わせ、
濡れきったまま丸出しになった陰部の膨らみを隠そうと起き上がりかけたが、兄はそれを押し留めた。

「やだ……やめて、やめてお兄ちゃん!」
「お、大人しく……しろ」
 兄は妹の乳房を手で掴み、ぐっと押さえつけた上でスカートの下、
頼りない陰毛に縁取られた女の部分を凝視した。
 たった今、快楽の絶頂に達したばかりの麻衣の性器は、真っ赤に膨れ上がったまま、
とろとろの淫液にまみれて光を放っていた。
 濡れて大陰唇にへばり付いたまばらな陰毛や、
気を遣ってなお蠢動を続けている膣口の秘肉が、幼い少女のものとは思われぬほどに、卑猥で生々しい。

 もはや理性の箍も吹き飛んで抑えの利かなくなった兄は、妹に乗り掛かって自由を奪い、
欲情に燃える息吹きを赤らんだ頬や首筋に吹きかけながら、ベルトを外して己の下腹部を露出させ、
無骨な動作で、傘の開き切った疼く亀頭を、
びちゃびちゃにぬめって沼のようになったヴァギナの入口に宛がい、
無理やり押し進めようと腰を揺するのだった。


「あっ、い、痛い!」
 股間に鈍痛を覚えた麻衣は、兄の下敷きになっている腰をよじり、身悶えをして声を上げる。
 兄は一瞬突入をやめたが、すぐに新たな力を込め、一気にペニスを突き挿れた。
 焼けるような痛みが、膣口を貫いて背骨にまで響くのを感じた麻衣は、全身を硬直させ、
さっきまでとは正反対の、激痛がもたらす苦い涙を流して耳の穴まで濡らすのだった。
112いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/07/11(土) 05:43:04 ID:NQQwkzti

 一方の兄は、妹の狭窄で温かなヴァギナに、根元までぎっちり納めた満足感に深いため息をつき、
眼下で眉を顰めて涙し、唇を歪めて処女を破られた苦痛に耐える妹を、しみじみと見やった。
 そして、小ぶりながらも肉が詰まって量感に満ちた乳房を両手に掴みながら、
腰を上下に振りたてて、妹のヴァギナの中で出し挿れを始める。
 そこが引き裂かれるような痛みに襲われた麻衣は、兄の動きに揺す振られるままに、
呻くような声を上げ、兄の重みと乱雑な振動を、ひたすら耐え忍ぶほかにない。

 間もなく低い唸り声と共に精を放った兄は、麻衣の身体を折れんばかりに抱きすくめてから、
苦しい息を吐く麻衣の唇に吸い付き、荒々しいキスをした。
 ぬめる舌で唇を割り、口の中を犯して軟体動物のように蠢き廻る。
 そうかと思えば、今度は逆に麻衣の舌が兄に吸われ、煙草の味がする口の中で揉みくちゃに嬲られる。
 それはかつて、麻衣が遊び半分で体験した男友達との軽いキスとは、全くの別物に思われた。

(もう、私とお兄ちゃんは普通じゃなくなったんだ)
 身体の中で、兄のペニスが段々に硬さを失って圧迫した感じが緩むのを意識しながら、
麻衣はそんなことを考えていた。


 こうやって初めてセックスをした晩以来、兄は夜毎麻衣の身体を求めるようになった。
 どうせ、夜になれば誰も居なくなる家の中での出来事であるので、邪魔するものもない。
 兄は肉欲の赴くままに、思う存分妹の肉体を楽しむことが出来た。
 麻衣は、始めのうちこそ兄との禁断の営みに戸惑い、
兄の誘いを退けようと試みてもいたのだが、所詮、脆弱な少女の心と身体なのである。
 行為を重ねる毎にまず物理的な苦痛が薄くなり、
次いでそれが、じわじわと沸き立つような快感へと変じていく。

 麻衣の心からためらいが失せていくのに、そう長い時間はかからなかった。
 どうせ兄には逆らえないのだし、それに関係ができて以来、
兄はそれまでより早く帰ってくるようになり、麻衣のそばに長く居てくれるようになっていた。
 麻衣にとってそれは、少々のわだかまりなど打ち消してしまうほどに嬉しい、
幸せな変化だったのである。

 心の変化は、身体にも変化をもたらす。
 やがて麻衣の身体は、ペニスに満たされる感覚を自ら求めるように変わってしまった。
 兄が酔って役に立たぬ夜などは、叱咤しながら項垂れたペニスを引っ張り出していびり廻し、
無理にも勃たせてヴァギナの中に納めようとさえした。
 もう、汚らわしい近親相姦に身を堕としているのだ、
などという後悔に思いを馳せることもなくなり、高級住宅街にあるこの邸宅は、
孤独な兄と妹の、爛れた淫欲の場所と化してしまった。


 そんなある日、麻衣の家に、友人である斎藤愛華(さいとう あいか)が遊びに来た。
 大手商社の重役の一人娘である愛華は、中学に入って以来の麻衣の大親友で、
学校に居る時はいつも一緒に行動していた。
 裕福な家庭の子だけれど、親に顧みられず寂しい思いをして過ごしている、
という共通点があることも手伝って非常に馬が合い、他の人には話せないような秘密の悩み事も、
気兼ねなく打ち明け合える仲だった。

 この頃にはもう、学校にも行ったり行かなかったりという状態になっていた麻衣と愛華は、
暫しの間、麻衣のベッドに並んでごろごろと寝転びながら、
互いの近況や好きなテレビ番組の話などに花を咲かせていたが、
一瞬会話が途絶えてしまったのを見計らい、愛華が麻衣の腰に手を触れた。
「麻衣さあ……ちょっと体形変わったよね?」
「太った?」
「ううん、そんなんじゃないよ。何ていうか……女っぽくなった感じ」

 麻衣は、返す言葉が出なかった。
113いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/07/11(土) 05:43:50 ID:NQQwkzti

 あの夜以降、連日連夜兄とセックスをし続けていた身体である。
 行為に慣れたヴァギナが、大人の女同然にペニスを求めるよう変わってしまったのと合わせ、
体つきも変わったとて不思議はない。
「もしかして、彼とか出来た?」
「出来る訳ないじゃん」
 脇腹をくすぐってからかう愛華の手を押さえ、きゃあきゃあ笑いながら麻衣は答えた。

「なんだよぉ、別に隠さないでいいじゃん。普通のことなんだから」
「やだ、本当に違うんだってば……
 そういう愛華はどうなんだよ? 新しい彼、作らないの?」
 愛華には、数ヶ月前まで付き合っていた男があったのだ。
 一学年上の先輩だったが、彼の卒業と同時に交際は自然消滅していたはずだ。
 麻衣は、思い切って尋ねてみた。
「愛華はさ、前彼とのえっちって、どうだったの?」
「どうって?」
「いや……やっぱ、最初は痛かったのかなあって」

「……小島先輩とは、数えるほどしかえっちしてないんだよね」
 麻衣の肩に頭をもたせ、遠い眼をして愛華は言った。
「でもその代わり、他の人とは沢山えっちしたけどね。
 今だって、ちゃんとセフレはいるよ。パパの会社の、二十六歳のサラリーマンの人。
 その人ねえ……うちのママとも出来てたんだ」
「まじで?」
 麻衣はびっくりして声を上げた。

「ママがさ、その彼と時々逢ってたのは知ってたんだ。
 パパの眼を盗んで、携帯でデートの打ち合わせとかしてんの。
 笑っちゃうよね。四十過ぎのばばあの癖してさ。だから寝取ってやろうと思って」
「はあ……信じらんない」
「こないだママの携帯こっそりチェックしてさ、彼の携帯の番号とメアド調べて連絡したの。
 『母のことでお話があります』
 ってメール送ったら、真っ青な顔して待ち合わせ場所に出てきたよ」
「それでどうしたの?」

「パパにママとのことをばらすって脅したら、
 『それだけは勘弁して下さい』
 なんて言って、土下座とかするからさあ……『じゃあ私の言うこと何でも聞く?』って。
 『はい』
 って言うからそのままホテルに連れ込んでやったさ。
 まず、お風呂にお湯を張らせて、私の身体を綺麗に洗わせたの。
 ほら、麻衣もそうだけど、私もナイスバディーっつうか、ぴちぴちじゃん?
 ママみたいなばばあと違うし。お肌の張りが違うでしょ。
 背中から始めて、胸もお尻も、足の指まで洗わせてたら、彼もすっかり興奮しちゃってさあ。
 ぎんぎんにちんこおっ勃てて、
 『お嬢さん、僕はもう!』
 なんつって抱きつこうとするから、『まだ駄目っ!』て顔引っぱたいてやった。
 そんで、しょんぼりしてる彼を湯船の縁に座らせてさあ……。
 『代わりに私がやって上げる』って言って、手コキして上げたんだ。
 すんごい勢いで精子飛ばすから、私げらげら笑っちゃったよ」

 そんな告白をしながら、愛華の手は麻衣のくびれのはっきりしだした腰の線をたどり、
お尻の上をゆっくりと滑った。
114いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/07/11(土) 05:44:34 ID:NQQwkzti

「それでね、今度はベッドに行って、私の全身を舐めさせてあげたんだ。
 もちろんクンニとかもさせたし。たっぷり一時間は舐めさせてやったよ。
 そんでいよいよ本番に入るんだけど、そのホテル、SMの道具とかもある処でさ。
 せっかくだから、彼の手足に枷とか嵌めて動けないようにした上に、
 ちんこの根元を髪のゴムで縛って、勝手に射精出来ないようにしたの。
 面白かったよー。私が上からがんがん責めてやっても、絶対出せない訳じゃん?
 終いにはひいひい泣き出して、
 『愛華様お許し下さい!』
 って、射精をおねだりすんの。
 まあ、酷い顔してね。そこそこイケメンだったのが、全然面影なくなって。
 あんまり酷かったから、思わず写メっちゃった」

 そう言うと愛華は、携帯の画像を麻衣に見せた。
 彼女の言うとおり、液晶画面には涙で顔をぐしゃぐしゃにした青年が写っている。
 その他にも、全裸で局部を丸出しにした彼が、自らの精液に塗れてベッドに横たわっている姿や、
眼の前に突き出された愛華のものと思われる足の裏を、舐めさせられている横顔などもあった。

「あんたは凄いわ」
 愛華の話を聞き終えた麻衣は、呆れ半分、驚き半分でそう呟いた。
「その後にもね、そいつとは時々逢ってあげてんだ。
 元々Mっ気あったらしくてさあ、そういうプレイを、色々とね。
 メール調教とかもしてるんだよー。ここ一週間は、女物の下着穿かせてるの」
 それから愛華は身を起こし、麻衣の身体に馬乗りになった。
「さあ。私は自分のことちゃんと喋ったよ? 麻衣も白状しなよ。
 麻衣は、誰とえっちしてこんなやらしい身体になったんだっ?」

 愛華は、麻衣のTシャツをばっと捲り上げた。
 あっという間もなくブラジャーのホックも外され、最近殊に膨らみを増した乳房が、
揺れながら露わになる。
「ちょっと愛華、やめろよ変態」
 飛び出した両の乳首を摘ままれた麻衣は、疼くような快感に性器を熱くしながらも、
それを押し隠して愛華の手を振り解こうとする。
 しかし愛華は思いの他強い力でそれに抗い、麻衣の乳房をこの上なく丹念に刺激し続けた。

「あ、愛華……駄目、やめて……まじで」
「麻衣、感じてきたんでしょ?」
 愛華は自分の指先をしゃぶって濡らすと、唾液でなめらかになったその指で、
麻衣の乳首をくるくると弄り廻した。
 ぞくぞくするような快感が乳房の芯に沁みて、麻衣は思わず、目を細めて喘ぎ声を漏らしてしまった。

「ほらあ、もう乳首がぴんこ勃ちしてんじゃん。こっちはどう?」
 愛華は麻衣の穿いていたハーフパンツの裾から手を挿れ、
パンティー越しに陰部の合わせ目をなぞった。
 蕩けるような甘い感覚がそこに生じ、麻衣は自分から股を広げてそれを受け入れてしまう。
 そうなるともう、二人とも歯止めが利かない。
 麻衣は、Tシャツを、ハーフパンツを脱がそうとする愛華に為されるがままとなり、
自らそれを手伝いさえした。
 すでに催情し、じっとり濡れていた麻衣の陰部を眺めながら、
愛華もミニスカートとキャミソール、派手なピンクの下着などを脱ぎ捨ててしまう。
115いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/07/11(土) 05:45:28 ID:NQQwkzti

 愛華の乳房が麻衣の乳房に重なり、小麦色の小さく締まった愛華の腰が、
麻衣の柔らかな白い下腹部にぴったりと合わさる。
 愛華は微妙に身体を揺すり、尻をくねらせて全身で麻衣を愛撫した。
 麻衣は、尖った乳首やねっとりぬめった陰唇同士が、
くっついて擦れ合う奇妙な快感に息を弾ませ、肌を熱くさせた。
「あぁん、麻衣……もっと腰動かして、クリ擦ってよお……おっぱいもぉ、ほら、乳首舐めて」
「うあぁ、あ、愛華……そんなにされたら、私、いっちゃうからぁ」

 麻衣と愛華はぬちゃぬちゃと音を鳴らして互いの性器を擦り付け合い、
愛液を絡み合わせて淫らな遊戯に耽溺するのであった。
 すでに陽は翳り、部屋には宵闇の気配が迫っていたが、
倒錯した性の快楽を享受する少女達は、それに気づくことさえなかった。

【つづく】
116名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 12:54:37 ID:411AzWib
続き期待age
117名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 13:14:59 ID:2fbaOcy7
良作
期待
118名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 16:43:55 ID:TDAFixzv
GJ!続き期待してる!
119名無しさん@ピンキー:2009/07/21(火) 20:08:28 ID:v1HDdLy4
GJ
120名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 13:12:35 ID:Az8Zxq/z
もういい加減にしなよ
上手いんだからさぁ…もっとプラスな方向に向けなよ

※このスレは重複スレです※
121名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 13:16:24 ID:ouY1lLbs
保守d
122名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 21:03:14 ID:K8tlAEHl
GJ!
滅茶苦茶上手いな。
流れるような文章と、濃密なエロシーンが素晴らしすぎる。
123名無しさん@ピンキー:2009/08/03(月) 16:38:16 ID:zmTtXvQx
保守
124いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/08/20(木) 17:24:00 ID:ieH6cVal

 爽也と兄との夜から一週間ばかり経ったその日、麻衣は愛華とプールへ泳ぎに出掛けていた。

「どうせまたマンションに篭って、暢さんとセックスばっかしてんでしょ?
 不健康だよ。たまには外出ないと」
 そう言う愛華に、半ば無理やり連れ出されてしまったのだ。

 麻衣は泳ぐことが苦手で、プールなんかはそれほど好きではなかったのだが、
実際、他にすることもなく兄とセックスにばかり耽っていたのは事実だったし、
なにしろ愛華の言うことには逆らえない。
 元から気の強い愛華にリードされる立場だった麻衣は、
かつて快楽責めに合い、兄とのことを洗いざらい白状させられた経験をしてからというもの、
いっそう彼女に頭が上がらなくなっていた。

 それでもまあ、眩い陽射しを全身に浴びて水の中で遊ぶのは、それなりに愉快だったし、
確かに気晴らしにはなった。
「楽しかったね! やっぱ来て良かったでしょー?」
「うん、そうだね」
 愛華の言葉にも、心の底から頷けた。

 大きな公園が擁するそのプールを出た後、夕暮れの園内を二人はのんびり散歩する。
「おなか空いたねえ。ファミレスでも行って何か食べる?」
「あ、麻衣あれ」
 愛華の指さす方を見ると、アイスクリーム売りの幟が見えた。
 二人はアイスを買い求め、近くの木陰の芝生に座って舐め始める。

「そういえばさ、愛華はまだ彼氏作んないの?」
 舞はふと思い立って愛華に訊いた。
 愛華には母親の愛人であったマゾヒストの会社員の他にも、身体だけの関係の男が何人か居たが、
いずれも正式な恋人ではなかったはずだ。
「うーん……なんか、今はあんまし彼氏とか作る気になれないっていうか」
 アイスのコーンを齧りながら、愛華は答える。
「なんか面倒くさいんだよね。結局彼氏と付き合うのって、束縛したりされたりじゃん?
 私、もっと気楽にやってきたいんだよ。
 つまんないこととやかく言われたり、相手のためにやりたいこと我慢したりとか、したくない」

 愛華らしい言い分といえばそれまでだったが、何だか勿体無いような気もした。
「愛華――あんまり娘盛りを無駄にするなよ」
「何それ。どこの演歌? っていうか麻衣に言われたくないし」
 二人は、肩をくっ付け合ってけらけら笑った。

「とにかく。今はこうして気楽にやってんのが楽しいからいいの。
 だって彼氏とか作っちゃったら、麻衣とこんなことも出来なくなっちゃうかもよ?」
 愛華は、麻衣の乳房をまさぐり出した。
 兄との行為同様、すっかり肌に馴染んだ愛華の愛撫。
 水遊び後の心地好い倦怠感に包まれた身体は、それを安易に受け入れる。

 他愛のないじゃれ合いが、本格的な行為に発展するのに、そう長い時間は掛からなかった。
 木や茂みに隠れた芝生の上で、麻衣と愛華は互いの服の中に手を忍ばせ合い、
互いの粘膜を刺激しあった。
「麻衣……指も挿れてよ」
 愛華は上ずった声を押し殺しながらパンティーを脱ぎ捨て、
大股を広げて麻衣の前に充血した性器を晒す。
 麻衣は、二本まとめた指を愛華のヴァギナに押し込みながら、
日焼けした周りの肌から白く浮き上がって見える乳房を揉みしだき、
そうしながら自分は、愛華の指でクリトリスを撫で廻される快感に酔っていた。
125いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/08/20(木) 17:25:03 ID:ieH6cVal
「ああ、愛華ぁ……おっぱいも一緒に弄ってぇ」
「あ、待って、私もうすぐいきそうなの! ああぁ……もっと、もっと奥をぐりぐりしてえ」

 その時、突如としてそばの茂みが大きく揺らぎ、二つの人影が現れた。
 驚いた二人が顔を上げると、見知らぬ若い男達が飛び掛って彼女らを抱きすくめた。
「何こんなとこでレズってんのぉ? 俺達も仲間に入れてよぉ」
「やだやめて!」
「ちょっ、ふざけんな! 放せよおっ!」
 麻衣も愛華も必死になって抵抗するが、男達は簡単に少女の身体を押し倒し、
すでにパンティーを取って剥き出しのままである、性器の割れ目に触れていた。

「ああっ、いや! 乱暴にしないで!」
「大人しくやらせるか?」
 芝生の上、麻衣と愛華は顔を見合わせた。
 人通りの少ない夕方の公園。通りかかる人とてなく、どう足掻こうが助けも来ないし、
逃げようもない。
 こうなってしまっては、観念する他ないだろう。
 二人は眼で頷き合い、男達に身を任せてしまうことを覚悟した。

「へへ、ラッキー。見ろよこいつら。
 たった今まで弄くりあってたから、すでにまんこぐちょ濡れだし。
ソッコー嵌めれるなあこれだったら」
「ほんーと、まさかこんな処で生まんゲット出来るなんてな。ようし、すぐにやっちまおう」
 男達の言い草を聞いて、麻衣はぐっと唇を噛み締める。
 こんなちんぴら風情に犯されてしまうのは本当に嫌で、出来るものなら逃げ出したかった。
 しかし男の力に敵うはずもないし、万一、仮に自分一人は逃げ切れたとしても、
残された愛華がどうなるか分からない。

(誰か――誰か助けて!)
 絶望の淵に立たされた麻衣は一縷の望みを託し、心の中で叫んだ。

 すると、その祈りが天に通じたのだろうか?
 茂みの向こうから足音が近付き、麻衣達の居る場所に踏み込んできたのだ。
「何だお前ら。こんなとこで何やってんだ?」
「あっ、兄貴……」
 暴漢達に兄貴と呼ばれた男の顔を見ると、なんとそれは爽也であった。
「そ、爽也さん?」
 麻衣が呼び掛けると、爽也は驚いた顔で麻衣を見返した。

「いやあ、こいつらがこんな処でレズり合ってんのを見つけたもので、
ちょっくら嵌めてやろうと思いまして」
「何だよそれ、てめえらふざけんなよ。誰がそんなことやっていいって言った?」
 低い声で爽也が凄むと、男達は気の毒なくらいに震え上がって肩を竦めた。
 こうして見ると二人共、まだ麻衣達と変わらないくらいの少年のようである。

「もういいから、てめえらはさっさとこの場所から消えちまえ。早くしろ!」
 爽也は男達を犬の子のように追っ払い、麻衣と愛華を見下ろした。
「あ、ありがとう爽也さん……助かりました」
 麻衣は爽也に深々と頭を下げた。愛華は、そんな麻衣と爽也を代わる代わる見比べる。
「麻衣、この人と知り合いなの?」
「この人……爽也さんはね、お兄ちゃんのお友達なんだよ」
「どうも」
 麻衣の紹介を受け、爽也は白い歯を見せて笑う。

「それで麻衣ちゃん、こっちの彼女は何て言うの?」
「あ、愛華です。私の、中学の時からの親友で」
「ふうん、親友、ね。それで時々、こういう場所でいけないことしちゃったりもする訳だ」
126いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/08/20(木) 17:25:34 ID:ieH6cVal
「そ、爽也さん……」
 舞が頬を赤らめると、爽也は屈託なく声を上げて笑った。
「いやいや。仲が良くてよろしい。それにしても――愛華ちゃん、か」
 爽也は愛華に眼線を移す。

「麻衣ちゃんも可愛いけど、愛華ちゃんもかなりいけてるよねえ……。
 ねえ愛華ちゃんってさ、モデルかなんかやってんの?」
「えー、そんなのしてないですけどぉ……」
「まじで? でもスカウトとかはされるっしょ?」
「はあ……まあ、たまに」
 見え見えの世辞を口にする爽也に対し、それでも気をよくした愛華は、
だらしの無い顔でにやにや笑っている。

「ようし。じゃあこれから、みんなで飲み行こう。俺いい場所知ってっから」
 爽也が呼び掛けると、麻衣も愛華も二つ返事で承諾した。
 それで立ち上がったのだが――。

「ん? どうした二人とも」
 芝生の上をきょろきょろ見廻し、困り顔を浮かべている二人に爽也が言う。
 麻衣と愛華は、二人で愉しんでいたさなかに脱ぎ捨ててしまったパンティーを、
探していたのであった。
「ええと、ちょっと……」
 そう答えて見える範囲を探したが、どこにも見当たらない。
 仕方がないので、二人はパンティーを諦めることにした。
「何探してたの?」
「あ、いえ、いいんですもう。大丈夫……」

 それから、麻衣と愛華は爽也を間に挟み、三人仲良く歩いて公園の出口に向かった。
 特に愛華は、常になく楽しそうな様子で自分のことを爽也に話していた。
 意外に人見知りな性格の愛華が、初対面の人とこんなに打ち解けるのは珍しい。
 それを見た麻衣は、愛華が爽也をかなり気に入っていることを知ると同時に、
爽也の女あしらいの上手さをも実感した。

 道中、爽也の携帯に電話が入り、彼は背中を向けて何かを喋った。
 麻衣は、聞くともなしにそれを聞いていたのだが、彼の話す言葉の中には、
「シノギ」だの、「シマ」などといった、堅気の人間があまり使わないような単語が、幾つかあった。

 この人はヤクザなんだ。
 麻衣はこの時、それを確信した。
 けれど、そんなことはもう、どうでもいいとも思っていた。

 爽也は、空腹だと言う麻衣と愛華をとりあえず近くの居酒屋へ連れて行き、
たらふく飲み食いさせた後でまた携帯を使って、どこかへ掛けた。
 そして、すっかり華やかな夜の装いに変わった繁華街を抜けて裏道に入り、
細い路地に隠れるようにして佇んでいるみすぼらしいスナックに、二人の少女を連れて行く。
 民家を少し改築しただけのそのスナックには、〈あんず〉という看板が出されていた。
「いらっしゃい爽ちゃん」
 爽也が店のドアを開けると、四十年配のやけに婀娜っぽいママが挨拶してきた。
 しかし爽也はそれを軽く受け流し、さっさと二階の階段を上がった。

 少女二人がおずおずとついて上がると、上は畳敷きの六畳間になっていた。
 小さな卓袱台のようなテーブルと茶箪笥、隅に布団が畳んで置いてある以外に、
家具らしいものは殆ど見当たらないが、案外清潔な様子だったので、
彼女らは取りあえずほっと胸を撫で下ろす。

 爽也は薄暗い部屋に電気をつけ、畳の上にどっかりと腰を下ろすと、着ていたシャツを脱ぎ、
引き締まってよく日に焼けた上半身を露わにした。
127いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/08/20(木) 17:26:07 ID:ieH6cVal
「麻衣ちゃんも愛華ちゃんも暑いでしょ? それ脱いじゃえば? 今さら隠す仲でもないじゃん」
 麻衣と愛華は、もじもじと顔を見合わせた。
 一度爽也と関係を持っている麻衣はともかくとして、愛華は彼と初対面な訳である。
 さすがに、いきなり裸になるのは少々ためらわれた。
 しかも今は二人とも、パンティーを穿いていない状態なのである。

「爽ちゃんったら。お嬢さん方が驚いてるじゃないの」
 部屋の入口から、さっきのママが声を掛けてきた。
 ウイスキーにウーロン茶、ミネラルウォーターなどの瓶やペットボトルとつまみの皿、
それから氷の入った容器を載せた盆を、両手に抱えている。
 麻衣と愛華に向かい、「ねえ」と言って笑いかけた後、困った人ね、とでも言うように、
優しく爽也を睨みつけた。

「でもさあママ、この子達、こんな可愛い見た目の割りに、結構凄いんだよ。
 何しろまだ日のある時間から、公園で青姦やってたんだから。女の子同士でだぜ」
「もう爽也さんったら。それはもういいじゃないですかあ」
 愛華が、笑いながら爽也の二の腕をはたく。
 ママは眼を大きくして、
「あらまあ、ほんとなのぉ?」
 と、麻衣と愛華を見比べた。

「進んでるのねえ、最近の若い子達は。でもそういうのって昔からあったわ。
 あたしだって高校の頃、部活の女の先輩とキスしたことあるもの」
「でもママは男の方が好きなんだよな。
 高校ん時なんつったら、もうアナルもOKになってた頃でしょ?」
「そんなの、未だにしたことありません!」
 テーブルにグラスを並べながら、冗談めかしてママは答える。
「ええと、お三人とも水割りでいいのかしら?」
「ああ、後は俺ら自分でやるから。ママはとっととあっち行ってよ。おばはんは邪魔」
「ご挨拶ねえ。じゃあ後は、若い方同士でごゆっくり」
 ママはあでやかに微笑むと、ぱたぱたと階段を下りて行った。

「じゃ、取りあえず乾杯しよっか」
 爽也は、ウイスキーをグラスに注ぎ、慣れた手つきで水割りを作る。
 それから三人でテーブルを囲み、グラスを合わせて「乾杯」と言った。
 麻衣は、爽也の作った少し濃い目の水割りを、ぐっと喉に流し込む。
 良く冷えた液体を飲み下すと、胃の底がふわりと熱くなり、全身が浮遊感に満ちた。

「ああ、おいしい!」
 驚いたことに、愛華はもうグラスを空けてしまっている。
「おー凄え! いい飲みっぷりじゃんか、よし、もう一杯作ってやるよ」
 嬉しそうに爽也は言い、愛華のグラスに酒を注ぐ。
「もう少し強くした方がいいかな?」
「うん、お願い」
 愛華はにこにこ笑って頷いている。

 それからも愛華は爽也に進められるまま、どんどんグラスを空けて行った。
「ちょっと愛華、ペース速くない?」
 さすがに心配になって麻衣は尋ねたが、愛華は耳まで真っ赤になりながら、
「大丈夫、大丈夫」
 と繰り返すばかりだ。

 やがて、愛華はふらりと立ち上がると、着ているキャミソールのボタンを外し始めた。
「ちょっと愛華!」
「うぅ……暑いんだもぉん、脱ぎたい」
 爽也は大笑いをし、「脱ーげ、脱ーげ」と、コールする。
 調子に乗った愛華は上を脱いだ後、下のスカートまで脱ぎ捨ててしまった。
128いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/08/20(木) 17:26:39 ID:ieH6cVal

「おおっ? 愛華ちゃん、ノーパンかよ!」
 ショッキングピンクのブラジャーのみの姿になった愛華を見ると、爽也は飛び上がって手を叩いた。
「だあってぇ……公園でえっちしてたらパンツ落っことしっちゃったんだよぅ、ねえ麻衣ぃ」
 愛華は、しなしなと座り込んで麻衣にしなだれかかる。
「まじっすか? じゃあ今、麻衣ちゃんもノーパンなのか」
 麻衣は、恥ずかしくなって顔を伏せてしまった。

「よし、愛華ちゃん、麻衣ちゃんを二人で解剖してやろうぜ。ちょっと押さえてて」
 爽也に言われると、愛華は「はーい」と返事をし、麻衣の身体を押さえつけた。
「やだっ、愛華ちょっとやめてよぉ。爽也さんも、変なこと言わないで」
「何言ってんの。パンツも穿かないで、まんこ丸出しで普通にしてる人のがよっぽど変だぜ。
 ほらっ、大人しく変態まんこを見せるんだ!」

 麻衣は、酔った二人にあれよあれよという間に脱がされてしまい、
愛華と同じく、ブラジャーのみの姿をその場で公開する破目となった。
「へっへー、すっげえなおい。ちょっと二人とも立って。そこで並んでみてよ」
 爽也に促され、麻衣と愛華は部屋の電灯の下に並んで立った。
 そういえば――最初と爽也とセックスした時にも、似たような状況があったことを思い出した。
 あの時には確か、兄と爽也のペニスを麻衣が見比べたんだった。

 ――お兄ちゃん……今頃どうしてんのかなあ。

 麻衣はなぜだか兄が懐かしくなり、きゅんと胸が切なくなった。
 なぜ今、この場に兄はいないのだろう?
 こんなに楽しい時間なのに、大好きな人達が自分を取り囲んでいるというのに、兄だけが居ない。
 それはとても理不尽な、味気ない事実に思われた。

 ――帰りたいな……。

 だが、麻衣の気持ちが沈んでいることなど知らず、爽也は美しくも淫らな少女達の姿を見て、
上機嫌で笑っていた。
「うーん、こうやって見ると、やっぱ麻衣ちゃんは結構巨乳だよな。
 愛華ちゃんは腰の位置高くって外人っぽい。やっぱモデル体形だよ。二人とも廻って後ろ向いてみて。
 ケツも見たい」
 麻衣と愛華は、言われたとおりに後ろを向いた。
 その途端、爽也は二人の腰を両腕に抱いて、ぐっと引き寄せた。
 バランスを崩した彼女らは、大きな音を立てて畳にひっくり返る。

 三人揉みくちゃになりながら倒れてしまうと、麻衣は、なんだかおかしくなった。
 今しがたまでの暗く沈んだ気持ちが嘘のように消え去った彼女は、甲高い声で笑い始めた。
「ねえ爽也さあん――えっちしよ?」
 笑いながら麻衣は爽也に抱きつき、唇に吸い付いた。

 「えっちすんだったらあ……お布団がないと駄目なんですよぉ」
 粘っこいキスを交わす爽也と麻衣の横で、酔っ払った愛華は頭の方にあった布団を、
ずるずると引っ張り寄せた。
 敷いたとも言い難いぐちゃぐちゃの布団の上で、爽也は麻衣にキスをしながら、
 露出しっぱなしの性器に、指を這わせた。

「あーずるうい! 私にも私にも!」
 愛華は爽也の背中に寄り添って寝転ぶと、空いた方の手を取り、自分の股間に引っ張り込む。
 爽也は麻衣からすぱっと唇を外し、反対側を向いて今度は愛華とキスをし始めた。
 その間、二人の少女の真ん中に横たわった彼は、それぞれの少女の陰部を、両手で刺激し続ける。
 酒に酔った上、公園で性器の快楽を中途半端に中断していた身体である。
 たちどころに火照って催情した少女達は、二人揃って子猫のように喘ぎ始めた。
129いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/08/20(木) 17:27:11 ID:ieH6cVal
「ああん……爽也さあん」
 麻衣は膝を立てて足を広げ、最後まで残っていたブラジャーも取ってしまい、
自分で乳房を弄くり出した。
 愛華は愛華で爽也に口を吸われ、クリトリスから膣口にかけてを巧みに愛撫されると、
もう堪らなくなり、小さな丸い尻をくりくりくねらせ始めている。
「ねえ爽也さん……指いいから、もうやって……やってよぉう」
 とうとう根を上げた愛華は、爽也から唇を離すと自分のラビアを指でぱっくり開き、
 濡れきってぴくぴく震えている膣の穴を曝け出した。
「愛華……駄目ぇ……爽也さんとは、私がえっちすんだからぁ」

「まあまあ待てよ二人とも。いっぺんに二人はできねえから。じゃんけんしろよじゃんけん」
 じゃんけんの結果、麻衣が先にやって貰えることになった。
 麻衣は急いで布団の上に仰向けになり、大股を開く。
 爽也はズボンを脱ぎ捨て、麻衣の股の間に入り込むと、節くれだったペニスを掴み、
ずぶっとヴァギナに突き挿した。
「ああぁ」
 膣壁を荒々しく押し分けられる感触に、麻衣はぞくりと身震いする。

 二人がねちねち腰を使い始めると、愛華はそばに来て、結合した性器の様子を、
まじまじと観察しだした。
「うわぁ、超すごい……。私初めてだよ、他人がやってんのこんなに近くで見んの。
 てか、爽也さんのちんちんでかっ! 麻衣の穴にこんなの入ってるなんて、まじ信じらんない!」
 愛華の嬌声を聞きながら、爽也は麻衣のヴァギナをずんずんとペニスで抉る。
 暫しの間、内部のこりこりしこった肉を亀頭の膨らみで捏ね廻し、
熱くぬらついた襞を執拗に掻き廻していたが、不意にそれを引き抜いて、愛華の身体を押しこかした。

「よし、そろそろ愛華ちゃんにも嵌めてやるよ。ほら早くまんこ広げな」
「ああん……爽也さぁん」
 愛華は喜んで甘い声を漏らし、言われた通り大きく脚を広げると、二本の指でラビアを押し開いた。
 勢い良く貫いた爽也のペニスは愛華の子宮口近くを刺激し、
その強烈さに、愛華は白目をむいて尻の肉をひくつかせてしまう。

「へへっ、きゅんきゅん締まってきやがる。濡れ方も凄いし……相当な淫乱だな、お前」
「あはあんっ! そ、そうですぅ……あはぁ、あ、愛華は、愛華は……
 ちんぽでおまんこずこずこされるのが大好きな、淫乱なのおっ!
 ああーっ、いいっ! おまんこいっちゃう!
 極太ちんぽで、愛華のおまんこ、ひくひくいっちゃうのおおっ……!」
 愛華はがに股の浅ましい姿で激しく腰を上下させながら、瞬く間に絶頂に達してしまった。
 床から大きく浮かせた尻をぴくぴく震わせ、二つの山の谷間からは、白濁した愛液を垂れ流した。

 オーガズムの痙攣を起こす愛華のヴァギナにペニスを波状に絞られながら、
爽也は顔を上げて麻衣の姿を見据えた。
 二人のセックスにすっかりあてられた麻衣は、なりふり構わずM字に股を開いて、
二本のステンレス製マドラーをヴァギナに突っ込み、交互に動かして自分を慰めていた。

「麻衣、ケツをこっちによこしな」
 爽也は麻衣の自慰姿を鋭い瞳で見据えたまま、愛華の中からペニスを取り出して言った。
 水飴のような愛液が糸を引くそれは、ほかほかと湯気が立っている錯覚を起こすほどに、
熱っぽくて生々しい。
 麻衣は、催眠術にかかったみたいに虚ろな眼をして背後を向く。
 そして、二本のマドラーを突き挿したヴァギナを誇示するように、高く高く尻を持ち上げた。

 爽也はヴァギナから抜け落ちたマドラーを拾い上げ、それを使って麻衣の膣口を、
両端から広げて見る。
 煮え立ったその部分は血の気が差して真っ赤に染まり、
どろどろに爛れているような見た目になっていた。
 無理に開いた穴の内側では膨れ上がった縁肉が、内蔵めいた濡れた疣々を曝け出していて凄まじい。
130いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/08/20(木) 17:27:47 ID:ieH6cVal

 くわっと血の逆流する思いで、爽也はその欲しがっている穴に自らの勃起を深く沈めた。
 麻衣は「ああ」と歓喜の叫びをあげ、尻をくねらせ爽也のペニスをヴァギナで揉む。
 快楽に餓えて蕩けきっていた肉襞は、堪らない剛直に突かれて滅茶苦茶に蠢き、
貪欲なまでに絡みついた。
 麻衣も、また爽也も差し迫った快楽に我を失い、本能的な腰の動きで、
それぞれの頂点を目指している。
「おおっ……麻衣ちゃん、俺もう出そうだ……このまま、出すぞ」
「うああ、爽也さん、爽也さぁん……私も、私も……あぁあああっ!」

 麻衣が搾り出すように声を上げて腰をひねった瞬間、
爽也の下腹部は麻衣の尻に激しく打ちつけられ、ヴァギナの奥深い場所に、
大きく膨れた亀頭から射出された精液が、どくどくっと溢れて流し込まれた。
 麻衣は布団にしがみつき、全身をわなわなと痙攣させて呻き、
子宮に精液を浴びせかけられる快楽に耐える。

 熱い液体に満たされた収縮のさなか、微かな喘ぎ声に麻衣がかすんだ眼を開くと、
いつの間にか起き上がって二人の行為を見つめていた愛華が、
先ほどまでの麻衣と全く同じポーズで自慰に耽り、あえなく気をやっている姿が、
ぼんやりと見えていた――。

 永い永いエクスタシーの余波から開放された三人は、川の字に並んで身体の火照りを冷ましていた。
 咥え煙草の爽也は、濡れた性器を晒したまま両脇に寝転んだ少女達を交互に見やると、
口を開いた。
「そういやあさ。麻衣ちゃんも愛華ちゃんも、公園であいつらにどこまでやられてた訳?」
「まだ何も……されてませんでしたよ。ねえ愛華?」
「ちょっとおっぱいやあそこ触られたぐらいだよね。あの時は、もう完全に覚悟決めてたんだけど」
「そうだったんだ。じゃあ、俺が邪魔してかえって迷惑だったとか?」
「うーん、そうかも」

 おどけた口調でそう言うと、愛華は爽也に身体をぶつけ、甘えた淫靡な声でくっくと笑った。
「4Pなんてしたことなかったし、刺激的でいいかもって思ってたのにさあ……ねえ麻衣?」
「そんな……私は怖くて死にそうだったよ」
「ほんとかあ? そんなこと言いつつ、いざ事が始まると一番ノリノリになるからなあ、麻衣ちゃんは」
「そうそう。さっきだって、爽也さんに中出しされて超感じてたじゃん」
「……もう、二人とも意地悪い」
 自らの淫らさに恥じ入る思いで、麻衣は布団に顔を埋める。爽也と愛華は朗らかに笑った。

「私も煙草欲しいな。ねえ爽也さん、貰っていい?」
 ひとしきり笑った後、愛華は身体を起こし、脱ぎ捨てられた爽也のズボンに手を伸ばした。
 ポケットを探っていたがその表情がふと曇る。
「ん? 何これ」
 愛華は爽也のズボンのポケットから何かを引っ張り出した。
 派手な色をした小さな布の塊。それは、愛華のパンティーだった。
 まさかと思ってもう一方のポケットも探る。そっちには麻衣のパンティーが入っている。

「爽也さん!?」
 麻衣と愛華は、同時に叫んだ。
「いや……なんか落ちてたし、折角だからと思って」
 爽也はきょとんと無邪気な顔でそう答える。
 三人は言葉もなく見つめあい――次いで、大爆笑してしまった。

【つづく】
 
 
131名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 01:55:48 ID:qudelsBL
つづきktkr
GJ!

女の子達の暴走ぶりがよい
132名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 10:27:07 ID:ZJvSFyur
なんだこの糞ビッチどもは















いいぞもっとやれ。
133名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 15:32:23 ID:YGDL2FmC
良かった
134名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 03:45:38 ID:mVtRJbX/
お世話になるかも
135名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 16:46:59 ID:Fg3qbEJJ
どこまで堕ちるんだ
136名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 02:06:53 ID:DNdE4wTm
良スレ
137名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 23:24:51 ID:n5AjaHEV
保守しておこう
138名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 23:42:57 ID:wfoEYMrR
馬鹿な!
139いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/09/20(日) 01:39:53 ID:gsvbwPhc
「遅かったな。どこ行ってたんだ?」
 真夜中二時過ぎ。麻衣がマンションに帰宅すると、起きて待っていた兄は低い声で訊いた。
「うん……友達と、飲んでた」
 麻衣は兄から眼をそらして短く答える。

 スナック〈あんず〉で爽也と愛華と、三人で愉しんだ夜から、もう随分と日が経った。
 すでに季節は移り変わり、夜になると外はすっかり肌寒い。

 あの夜以来、麻衣は時おり独りで〈あんず〉へ出かけるようになっていた。
 爽也と逢うために、だ。
「麻衣ちゃんも愛華ちゃんも、メアド教えてよ」
 あの後、麻衣達は別れ際にメールアドレスと携帯の番号を交換したのだが、
その夜のうちに爽也から麻衣の元へとメールが送られていた。
 その内容は、時々〈あんず〉へ来て店を手伝って欲しい、というものだった。
 店を手伝うといっても、別に給仕をしたり客の相手をする必要はなく、
ただ店に来て、カウンターに座っていればいいとのことだったので、
麻衣は軽い気持ちで出かけて行った。

 店ではあの婀娜っぽいママが微笑んで出迎えた。
「麻衣ちゃん――でいいのよね? あたし杏子(きょうこ)。よろしくね」
 杏子ママへは、爽也から話が通じているようだった。
 麻衣はカウンターの手前、店から入って一番目立つ場所に座っているよう命じられた。
 まだ店が始まったばかりの浅い時間には、店のドアの前に立たされたりもした。

 ――要するに、客引きさせられてるんだろうな。
 それは麻衣にも簡単に分かることだった。
 店には他に何人かのホステスが居たが、いずれも麻衣より十は年上の冴えない女ばかりだった。
 何もできなくとも、若くて可愛らしい女を、客寄せパンダの代わりに置いておこう、
ということなのだろう。

 始めの頃は愛華も一緒に呼ばれていたのだが、彼女はどうにも杏子ママとそりが合わず、
そのうち来なくなってしまった。
 でもその穴埋めのように麻衣は店に馴染み、ただの客寄せパンダのみならず、
普通にホステスの仕事もこなしていくようになっていった。

 麻衣がそんな仕事に打ち込んだ一番の要因には、なんといっても爽也の存在があった。
 麻衣が出勤する日、店が終わる頃になると必ず爽也は現れた。
 彼はカウンターの隅で軽く飲んでから、麻衣を二階へ連れて行く。
「お疲れさん。今日のご褒美だよ」
 そう言ってキスをし、麻衣を抱いてくれるのだ。

 店の二階にある六畳間で、爽也は麻衣の身体を丹念に愛撫し、幾度も絶頂の叫びを上げさせた。
 爽也のセックスは繊細かつ大胆に激しく、若い麻衣を夢中にさせるには、充分過ぎるものだった。
 麻衣は爽也に溺れた。
 それまで兄しか知らなかった麻衣の身体は、爽也によって急速に開発され、性的に熟して行った。
 本当の恋を知った。そう思い、麻衣は密やかな幸福を感じていたのだ。


「お前さあ、最近爽也と逢ってるだろう」
 尖った兄の声が、麻衣を現実に引き戻す。
 兄は今日、どこへも出かけず独りで酒を呷っていたようで、
部屋のいたる処にビールの空き缶が転がっていた。
「俺は――俺はちゃんと知ってるんだからな。お前あいつに騙されてんだ。
 あいつ本当は、普通じゃねえんだぞ……」
「お兄ちゃん飲み過ぎだよ。今日はもう寝よ?」
 空き缶を片付けながら麻衣は言う。
140いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/09/20(日) 01:41:21 ID:gsvbwPhc

 兄は、その彼女の足首を掴んで後ろから引っ張った。
「きゃっ?」
 床に引き倒された麻衣の身体に、兄の身体が圧し掛かる。
 アルコール臭い口が麻衣の唇を吸い、ワンピースの胸元がきつく鷲掴みにされた。
「お兄ちゃんっ、ちょ……やだもう、やめてぇ!」
 酔いに任せた乱暴な所作に耐えかね、麻衣は身をよじって叫んだ。

 その抵抗に興奮を煽られたのか、兄はより激しい動作で麻衣の肉体を玩弄し出す。
 ワンピースを、引きちぎらん勢いで身体から剥ぎ取り、ブラジャーをずり下げて、
まろび出た乳房をむにゅむにゅと揉みしだく。
 その一方で、空いた方の手は白くなめらかな腹部をたどり、瀟洒なパンティを掴んで、
陰部からぺろりと剥いた。
 その途端、現れた器官からは麻衣自身の芳香と混じり、鼻をつく精液の臭いがむっと溢れ出した。

「お前……やっぱりか!」
 兄は剥き出しの股座に鼻先を押し付け、赤く血走った眼を麻衣の顔に向けた。
 麻衣はその眼に怯えつつ、小さな後悔を胸に覚える。
 麻衣はいつも、〈あんず〉で爽也に抱かれた後、二階の六畳間脇に備え付けられた小さな浴室で、
シャワーを使い、身体を洗ってから帰宅していた。
 しかし今夜はそれをしなかった。
 いつもよりも時間が遅くなってしまったから、というのもあったし、
また、こんなことにもすっかり慣れてしまい、緊張感を失っていたことも理由のひとつであった。

 兄は、下着を中途半端に剥かれた状態で怯えた顔をしている麻衣を、暫しじっと睨んでいたが、
突然、犬のような唸り声を上げたかと思うと、剥き出しの腹を殴りつけた。
 激痛と共に息がつまり、麻衣は咳き込む。
 それを見るなり、兄は堰切ったように麻衣の身体を殴り続けた。
 顔も。
 兄の拳が、平手が翻る度に、愛らしい麻衣の顔が、白い身体が傷ついて、
見る見るうちに腫れ上がって、痣だらけになる。
 麻衣は全く逆らうこともできず、ただひたすらに、兄の為されるがままになって耐えた。

 痛みと恐ろしさで涙を流す麻衣の身体に、ぬるい液体が降りかかってくる。
 兄の涙であった。
 兄は、泣きながら麻衣をぶっていた。

「爽也が……そんなにいいのか」
 いつしか兄は、麻衣をぶつことをやめ、麻衣の上にもたれかかっていた。
 激しい打擲で熱を持った麻衣の身体に体重を乗せ、
真っ赤に腫れ上がって人相までも変わってしまった顔に、自らの頬をすりつけている。
「だって……お兄ちゃんが……そうさせたんじゃない……」
 幾らか落ち着きを取り戻した様子の兄に向かい、麻衣はしゃがれた声で言った。
「お兄ちゃんが……爽也さんに私を抱かせたから……そうじゃなきゃ、私だって……
こんな風には」
「あれはしょうがねえんだよ! ああしなかったら俺は……殺されてたかも知れねえんだぞ」
「殺されるって、どういうことなの?」
 兄の台詞に、麻衣は驚いた声を出す。

 兄は、麻衣の問いかけに答えはしなかった。
 その代わり――麻衣の唇に吸いつくと、さっきまでとは一転した、情愛に満ちた優しいキスをした。
 そうしながら、平手で叩かれ、指の痕が痛々しく張りついたままの乳房を、ゆっくりと撫で摩る。
 腫れてぴりぴりする肌を刺激され、麻衣は少し顔を歪める。
 それに構わず、兄は麻衣の身体をまさぐり続けた。
 さっきまでの狼藉ぶりを忘れてしまったかのようにやわやわと、
それこそ、腫れ物に触れるかの如き繊細さでもって、乳房や脇腹を撫ぜ、乳首をちろちろと舐め上げ、
麻衣の敏感な部分を愛撫する。
141いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/09/20(日) 01:42:16 ID:gsvbwPhc

 麻衣は、始めのうちこそ傷ついた皮膚の刺激に痛みを覚えて苦しんでいたが、
やがて、その痛みの中からむず痒いような快感が湧いてきて、それがだんだんと不可思議な、
堪らない陶酔を生み出すのに惹き込まれてしまい、いつも以上に甘い、蕩けるようなよがり声を上げて、
兄の身体に絡みついてしまうのだった。
「ああ、お兄ちゃん……ここも、ここも弄ってぇ」
 麻衣は、腿の途中にへばりついていたパンティーを自ら引きちぎるように脱ぎ捨て、
大きく股を開いてアケビ形をした桃色の粘膜を晒した。
 すでに膣液でぬかるみきった淫靡なその場所からは、前の性交の名残りである精液の残り香も、
微かに匂っていた。

「麻衣、お前……爽也にいつも生でやらせてんのか」
 淫液を垂れ流してひくひく蠢いている麻衣の性器を両手の指でぱっくりと押し開き、
低い声で兄は訊いた。
 麻衣の答えを待たずに窪んだ膣口へ二本指を突き挿し、その先を折り曲げて、
ずぼずぼと出し挿れをする。
 熾烈な手淫を受けた膣は一瞬強張り緊張したが、
その摩擦からすぐさま快楽を呼び覚まされて震え出し、やがて、奥の方から、
溜まっていた淫水の塊をぐぼっと溢れさせて、兄の手を汚した。

 はあはあと喘ぐばかりの麻衣の眼に、兄はその手をちらつかせる。
 そして何を思ったか、淫水にふやけた指を、麻衣の口の中へと押し込んだ。
「む……ぐうっ」
 頬を赤くぱんぱんに腫らせた麻衣が、口に指を突っ込まれて苦しんでいる顔を見下ろしながら、
兄はゆっくり自分のズボンを引き下ろした。
 麻衣の口から指を抜くと、すでに硬く勃起して脈打っているペニスを掴み、
発情してぱくついているヴァギナの穴を、ぶすりと貫通してしまう。
 麻衣の膝が広がり、相対して、膣の入口はぐっと窄まった。

 兄は、麻衣のとろとろと絡みつく肉襞に、性急に陰茎を擦りつけた。
 それはヴァギナの粘膜を味わう性交というよりは、まだ麻衣の内部に残っているのであろう、
爽也の子種を掻き出さんとする行為のようだった。
 素早く乱暴な抽送を受けて、麻衣の身体はがくがく揺れる。

 だが、煙が立ちそうなほどに激しいセックスは、呆気ない兄の絶頂と共に、瞬く間に終わりを告げた。
 ずんとひときわ深く挿し込まれた兄のペニスは、ヴァギナの奥でのたうちながら、
熱い精液を麻衣の子宮に打ちつける。それから、
「おおー」
 と一声呻いた後、麻衣の乳房にばったり倒れて、それっきり全ての力を使い果たしたかのように、
眠りに落ちてしまった。

 独り取り残された麻衣は、兄の下敷きになったまま、暫しぼんやりと天井を見上げていた。
 身体中が熱を持って疼いていた。
 頭も顔も熱く、乾いた涙の跡は、塩辛くてむず痒い感じだ。
 兄のペニスが嵌まりっぱなしになっているヴァギナも――曖昧な熱と快楽の名残りに脈動し、
じんじんと火照って、疼き続けていた。

 麻衣は、力なく床に置いていた右腕を、そろそろと自分の股間へ持っていった。
 兄の身体に押し潰されたその場所を窮屈に探り、性器の割れ目の頂点にある、
クリトリスを摘まみ上げる。
 こりこりと。剥き出しの肉芽を揉んで、裏側からぞろりと擦り上げた。
「うう……ん」
 クリトリスの芯から痺れ渡るように湧いた快感は、ペニスの埋まったヴァギナに伝わって、
奥の方を堪らなく気持ちよくさせた。
 ぐりぐりと強く押し込め続けると、あっという間に快感が来て、中のペニスを締め上げる。
 麻衣の中で、大人しく萎みかけていたペニスが、
麻衣のヴァギナの蠢動に合わせてむらむらと回復していた。
142いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/09/20(日) 01:43:37 ID:gsvbwPhc

 兄のペニスは、麻衣のヴァギナに吸いつかれる快楽を享受して硬く膨らんでいたが、
兄本人の意識は、酒の酔いがもたらす深い眠りに引き込まれて、覚めることは無かった。
 麻衣は、クリトリスを自ら弄くりながら、埋め込まれた兄のペニスの質量でもって、
短時間のあいだに幾度もオルガスムスを繰り返した。
 酒臭い兄の鼾と重い身体の下、汗まみれの麻衣の膣からは、兄のものと自分のもの、そして、
爽也のも加えた三人分の淫液が、たらたらと流れ出してフローリングの床に、
濁った水溜りを広げて行った――。


 その夜から数日間、麻衣は〈あんず〉を休まなければならなくなった。
 顔が腫れて人前に出られなくなったからだ。
 身体の痣も、服で隠れる処はいいが、首筋などの眼につく場所にも多数あったため、
やはり誤魔化すのは難しかった。
 そうして自宅マンションに引き篭もっていた麻衣の携帯に、爽也からの電話が入ったのは、
ようやく顔の痣が目立たないものになった、四日目の午後のことだった。
「どうしてる? よかったら出ておいでよ。どっか遊びに行こう」
 店に出ないことに関しては何も言わず、ただそう言って誘いをかける爽也の態度に、
麻衣は優しさを感じて嬉しくなった。

 普段よりも厚く化粧を凝らし、サングラスをかけてマンションから出ると、
爽也の黒いBMWカブリオレが待ち構えていた。
「なんか久しぶりな気がするな」
 白いハイネックのタンクトップに、黒のぴったりとしたタイトスカートを身に着けた麻衣を、
上から下まで眺め廻して爽也は微笑む。

 爽也の車は真っ直ぐに都心へ向かった。
 着いた先は、街中の真新しいシティーホテルだ。
 緩やかな坂を下って地下駐車場に入り、そのままエレベーターで最上階まで直行する。
 エレベーターを出ると、のっぺりとした顔をした若いボーイが無言で出迎え、
二人を部屋へと案内した。
「わあ、凄い部屋」
 スィートと思しきその部屋に入ったとたん、麻衣は小さくため息をついた。
「親父の持ち物なんだ」
 気のない口調の爽也を尻目に、麻衣は部屋のあちこちに感嘆の眼を向ける。
 麻衣が暮らしているマンションよりも広大な造りのスィートルームは、
家具も調度も素晴しいものばかりだった。
 一通り見た後、一面の窓から眼下の景色を眺める。
 見渡す限り広がっている灰色のビル群。入り組んだ血管のような道路に、
車が蟻のように這い廻り、無数に行き交っている。
 新宿御苑の緑だけが、こんもりと浮き上がって瑞々しかった。

「ここでやりたい?」
 爽也の手が、後ろから麻衣の乳房を掴んだ。
 もう一方の手は、すでにタイトスカートの裾から中に潜り込んでいる。
「やだあ」
 ガラス窓に身体を押し付けられた麻衣は、媚を含んだ声で笑って振り返り、
悪戯をする爽也の手をぴしゃりと叩いた。
 爽也は身悶える麻衣の身体を抱き寄せると、彼女の顔からサングラスを外して床に放り投げた。
 そして、何も言わずにキスをする。

 数日ぶりの爽也のキスは、麻衣の身体を芯まで蕩かした。
 力が抜け、まともに立っていられなくなった麻衣を、爽也は力強く抱きとめる。
 唇を、舌を吸いながら、彼の手は巧みに麻衣の衣服を脱がし、ついでに己も裸になった。
「爽也さん……本当にここで、するの?」
 爽也の腕の中、すっかりのぼせ上がった麻衣は、その声までもが潤んでいる。
「ああするよ。だって麻衣、して欲しいんだろ? ここがそう言ってる」
 爽也は、麻衣の股座に手を差し込んだ。柔らかな恥毛の中で、ぬるりと割れた陰唇の感触。
 ぬめぬめとまさぐる指先がクリトリスを探り当てると、そのままじんわりと撫で摩った。
143いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/09/20(日) 01:46:51 ID:gsvbwPhc

「ああ……」
 小刻みな震動とともにクリトリスを摩られ、押し潰された麻衣は、内腿をくっと強張らせて爪先立ち、
ふくらはぎの筋肉をわななかせながら、快楽に酔った息を漏らした。
 爽也は麻衣の悦楽の表情を満足げに見やり、彼女をさらに夢中にさせるべく、
開き気味の片膝をすくい上げて、大きく股を広げさせた。
「欲しがって、ぽっかり開いてやがる」
 麻衣の股の前にしゃがんで、爽也は呟く。
 彼の言うとおり、麻衣のヴァギナの入口は黒い穴を開け放し、ひくひくと蠢きながら、
濁った淫液を垂れ流していた。

 爽也は、麻衣の欲しがっている穴に中指を突き立て、ずずっと奥まで挿し入れた。
 中のでこぼこした粘膜をぐちゃぐちゃと掻き廻しつつ、クリトリスを舌先でぞろりと舐め上げる。
 麻衣の尻が跳ね上がり、丸い乳房がぷるんと揺れた。
「ああ、爽也さん、いい……気持ちいい」
 麻衣は、後ろのガラスに両腕をついてもたれかかり、思い切り腰を反らせて爽也の愛撫に身を委ねる。

 しかし爽也は、すぐにそれをやめてしまった。
「後ろを向け、麻衣。ガラスに手をついて、ケツをこっちに向けるんだ」
 麻衣は淫らがましく息を乱しつつ、爽也の言うがままになる。
 ヴァギナから吹き零れた汁で、ひたひたにぬかるんだ尻の割れ目を爽也に差し出し、
腰をくねらせて喘いだ。
 爽也は麻衣の尻を両手で捕まえて、割れ目の奥にある濡れ穴にペニスの先を宛がった。
 二度三度、震える入口を亀頭で擦り立てた後、腰を突き上げ勢いよく挿し貫く。
 太く、重みのある肉の槍で貫かれた麻衣は、ガラス窓に双の乳房を押しつけて、
甲高い叫び声を上げた。
「あああっ、そう、爽也、さあん」

 餓えきったように切迫した反応を見せる麻衣に対し、爽也は非常に落ち着き払った態度で、
むしろ何気ないほどに淡々と抽送を開始する。
 始めはくいくいと小気味よく、途中からゆっくりと、
ペニスが抜け落ちそうになるほどに腰を引いたかと思えば、急にずうんと深く挿し込むといった、
長いストロークでの抜き挿しをしたり、はたまた、腰をぐりんぐりんと回転させて、
ヴァギナの奥深い箇所を捏ね廻すように刺激するなど、千変万化の技術でもって、
麻衣の肉体を翻弄した。

 爽也の巧みな腰使いによって、瞬く間に性器の快感を昂ぶらせた麻衣は、
ぴんと伸ばした背筋を痙攣させて、絶え間なくよがってむせび泣く。
 窓に押しつけた乳房は、ぐにゃぐにゃ蠢と形を歪めながらガラスに淫らな軌跡を残し、
殊に頂点で強張りきった乳首は、麻衣の身体の動きに伴ってあちらこちらの方向を指しつつ、
暗紅色に色づいて快楽の自己主張を行っていた。

「へへ……こんな窓際でやってたらよ、外から丸見えだぜ?
 こんなに高い位置だってさ……向こうのビルの窓なんかから、望遠鏡で見ればばっちりだろうしな。
 なあ、想像してみろよ。今のお前の姿が、あそこから大勢の奴に覗かれててるんだ……ってさ」
 爽也は麻衣のヴァギナをペニスで責めながら、遥か遠方に見えている高層ビルを指して、
麻衣の心も同時に責めた。
 セックスに酔い痴れている自分の姿が、知らない人々の眼に晒されている――。
 そんな妄想は、麻衣の羞恥を煽ると共に、どうしようもないほどの劣情の念をも沸き立たせ、
興奮させて、性器の快感を増幅せしめた。

「ああっ、はあん……いくっ、おまんこいっちゃうぅ」
「おっ、もういきそうか。ようし、だったらこうしてやる」
 爽也は身を屈め、辛抱堪らず尻を振って喚き出した麻衣の両膝を背後から抱え上げた。
 麻衣の身体は正面の窓の方に向けられ、ペニスが深々と嵌まり、真っ赤に充血しつつ、
淫水でびちゃびちゃになった発情性器を丸出しの状態にされる。
144いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/09/20(日) 01:47:39 ID:gsvbwPhc

「ほらよ、麻衣。これで、お前のまんこは外の奴らにはっきり見られたぜ。
 ついでにいく処も見せてやんな。
 お前のまんこを想像しながらせんずり扱いてる連中に向かって、
 ちんぽで擦られて最高に気持ちよくなってるまんこを見せつけてやるんだ」
「ああ……」

 爽也の言葉は、麻衣のクリトリスの真芯にまで響いた。
 ヴァギナの奥底が堪らなくなった麻衣は――全身がむず痒いような焦燥感の中で、
子宮を、膣口を激しく震わせ、熾烈なオルガスムスの発作を起こした。
「ああー……麻衣のまんこ……えっちなまんこがいってるうぅ……。
 みんなあ、見てえ……麻衣のまんこ、爽也さんのおちんちんで気持ちよくなっていってるのお……。
 あああ、見て、まんこ見て、みんな、麻衣のすけべまんこでオナニーしてえ……」
 情痴に狂った麻衣は、息も絶え絶えになりながら、知性のかけらさえも失った恥知らずな声音で、
この上も無く卑猥な世迷言を叫び散らしたあげく、痙攣するヴァギナの上の尿道口から、
ぬるい液体を男の射精のようにぴゅっぴゅと射出し、透明な窓ガラスに段だら模様の跡を幾つも作った。


 とりあえずの情欲を治めた麻衣と爽也は、ジェット付きバスで汗を流した後、
瓶一本のミネラルウォーターを二人で分けて飲んでから、キングサイズの天蓋ベッドに横たわった。
 身体がどこまでも沈んで行くように柔らかなベッドの上で、
大好きな爽也の腕に抱かれているという幸せが、麻衣を夢心地にさせる。
 麻衣は、〈あんず〉二階の六畳間の、質素でありながらどこか懐かしい佇まいも嫌いではなかったが、
やはりうら若き乙女として、こういった豪奢なロマンチックな部屋で愛される方が嬉しかったし、
悦びも深かった。

「爽也さん……私、ずっとこうしていたい」
「可愛いこと言うんだな。俺もだよ。麻衣の可愛い身体を、ずっと抱いていたい」
 爽也は、麻衣のなめらかな膚に手を滑らせ、
ふんわりと盛り上がった淡雪のような乳房の感触を味わった。
 麻衣は、爽也の優しい言葉と、頼もしい手の平の愛撫に全てを委ねたい気持ちになったが、
それを堪える。
 今日、こうやって爽也と逢うことにしたのは、抱かれたかったからだけではない。
 彼に訊きたいことがあったからなのだ。

「ねえ、爽也さん」
「何?」
「爽也さんは……お兄ちゃんを殺そうとしていたの?」
 爽也は、片方の眉を上げて麻衣を眺める。麻衣の表情は、真剣そのものだった。
「暢が何か言った?」
「私が訊いたの。あの時――最初の時、お兄ちゃんが私を爽也さんに抱かせたのは、
どういう理由なの?
 って。そしたら」
 爽也は、ふっと鼻で笑うと、身体を起こし、サイドボードに手を伸ばして煙草を取った。
 一服点け、天蓋に向かって煙を吐き出してから、麻衣を見下ろす。

「なるほどねえ……それで、暢の奴にぼこられちまったっていうことなんだな」
 麻衣の、首筋や鳩尾に未だ残っている黒ずんだ痣に目線を落として、爽也は言った。
「これは……そうじゃないの。そのこととは関係ない。それより……ねえ、ちゃんと答えて?
 爽也さんがお兄ちゃんを殺そうとしてたって、どういうことなの?」
「お前の知ったこっちゃねえよ」
「そんな! どうして? 私はお兄ちゃんの妹だし、爽也さんとだって」
「いちいちうるせえなあ。お前、俺からもぼこられたいのかよ?」

 灰皿に煙草を押しつけながら、何気ない口調でそんなことを言う爽也を前に、麻衣は凍りついた。
 麻衣の怯える顔を見て、爽也は眼を細める。
「そんなびびんなって。冗談だよ、冗談。俺は可愛い麻衣ちゃんを殴ったりしないさ。
 そんなことしなくたって……お前を泣かすのなんて、簡単だもんな。こうすればさ……」
145いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/09/20(日) 01:49:31 ID:gsvbwPhc

 爽也の腕が、麻衣の足首を掴み上げる。
 大きく開かせた股の間に顔を埋め、クリトリスを強く吸い上げた。
「あ……は」
 舌先でちろちろと嬲ってから、熱を持った割れ目を、立て筋に沿って満遍なく舐め上げる。
 麻衣の吐息は、すぐさま湿り気を帯びて甘くなった。

 麻衣がうっとりと瞼を落とし、脱力して口を利く気もなくしてしまったのを見計らった処で、
爽也は巨大な枕の下に手を入れて、何かを取り出した。
 そして今度は、上向きにとんがった乳首を舌先で弾きつつ、陰裂を指でつつうとなぞる。
 麻衣は、閉ざしていた眼を見開いた。
 今の爽也の指先は、明らかに、麻衣の性器に何かを塗ったのだ。

「覚醒剤だよ」
 不安げに見上げた麻衣に向かい、笑い混じりに爽也は告げた。
「これつけてやるとさあ、すっげえいいらしいんだよ。いっぺん試してみたいと思っててさ」
「そんな……勝手にそんなことするなんて、ひどい!」
 麻衣は、性器に塗られたべとつくそれを、指で拭い取ろうとした。
 その気配を察した爽也は、すかさず麻衣の両腕を押さえつける。
「爽也さん放して……いやっ、いやあっ!」
 麻衣は爽也の胸の下で必死になって暴れるが、爽也はびくともしない。

 やがて、抵抗することに疲れた麻衣は、身体を動かすことをやめて、
ぐったりと荒い呼吸を繰り返すのみとなる。
 全身を汗でぬめらせ、火照った股座の奥、やけにぬるぬるとしたクリトリスは、
切り裂かれたかのようなきつい刺激に襲われていた。
「いやだよ爽也さん……こんなの変……苦しい」
「最初だけだよ。すぐによくなるから」
 爽也は、なだめるように麻衣の額にキスをして、押さえつける手を外して、
くびれた腰の線をやわやわと撫で廻した。
 そうしているうちに、麻衣の性器に沁みていたものが、違う感覚へと変化を遂げていた。
 鋭さが和らいだ代わりに、酷く疼いて燃え立つような狂おしさを生じ出したのだ。

「効いてきたかな」
 絶え間なく呻き、切ない身悶えを始めた麻衣を見て、爽也は小さくほくそ笑むと、
ちょっとだけ身体を離して、半開きの内腿をくすぐるように撫ぜた。
 曖昧な悪戯を受けた麻衣は、悔しそうに唇を噛みながらも眦に涙を浮かべ、
内腿をぴくぴく蠢かせて爽也の指先に反応する。
 そして、すがるような眼で彼を見上げると、かすれた声で言う。
「もうだめ……なんとかして。これ、なんとかして……」
「なんとかって?」
「挿れて……欲しいのぉ」
 麻衣は、ぐにゃぐにゃと身体を折り曲げたあげくに自ら股を大きく広げ、
両手の指でぬかるんだ陰唇をぱっくりと広げた。

「ああ、熱い……まんこが熱いよお……お願い、もう、おかしくなっちゃうぅ」
「勝手になれば?」
 爽也は麻衣から完全に離れてしまうと、仰向けに寝そべった。
 上向きに反り返った股間のペニスを誇示しつつ、にやけた顔で悶える麻衣を傍観している。
 麻衣は、ひとしきり身悶えて股間を痙攣させた後、涙に濡れて血走った眼で爽也のペニスを見据えた。
 ごろんと寝返りを打ち、剛い毛の中からにょっきり生えた逞しいペニスに手を伸ばす。
「お願い……お願い爽也さん……これ、頂戴……おまんこに、おちんぽ頂戴」
 爽也のペニスを握り締めた麻衣の指先は、貪欲な動きで幹を這いずり、その感触に浸っているようだ。

 爽也は麻衣に握られた途端、素早く身体を起こすと、胡坐をかいて麻衣を膝に乗せた。
 白いゴム毬のような尻が、爽也の膝の上で跳ね返る。
 麻衣は、爽也の肩にしがみついてもたれ、片方の手でペニスを探り当てると、
自らの膣口にその先を宛がい、思い切り深く腰を沈めた。
 爽也のペニスは、灼熱のヴァギナの肉を衝き分けて、根元まで這入り込んだ。
146いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/09/20(日) 01:51:17 ID:gsvbwPhc

「あああ」
 麻衣はうわずった声を上げて、爽也の硬い胸板に乳房を密着させた。
 爽也もまた、息を震わせ麻衣の背中を抱きすくめる。
 ペニスに吸いつく粘膜は伸縮が凄まじく、爽也の官能を一気に押し上げたのだ。

 麻衣は、じゅくじゅくと熱いヴァギナを締めたり緩めたりして、
嵌まったペニスの感触を確かめてから、爽也の肩に両手を置き、折り曲げた脚を支えに力を込めて、
尻を上下に反復させた。
「おお……麻衣」
 爽也は、麻衣の腰に腕を廻して彼女の運動を手伝う。硬く眼を閉ざし、
半開きの口元から桃色の舌を覗かせて、しきりに喘ぐ声を漏らす麻衣の顔を見つめながら、
丸い尻をペニスで突き上げた。
 その度に繋がりあった部分から噴き出る淫水は、股の間のシーツはおろか、爽也の膝の上にまで飛び散ったので、
ベッドの上には濃い淫臭が立ちこめて、むせ返らんばかりになっていた。

「うあああ……すごいい……爽也さんのおちんぽ……まんこの中ですごいのお……」
「麻衣のまんこだって、超すげえよ……俺のちんぽに絡みついて、ずるずるに絞ってきやがる……」
 それに加え、塗りつけた薬剤で熱を帯びて膿んだように蕩けている。
 性器同士を擦り合わせる二人にはもう、粘りついた互いの粘膜の境界すらも判らない。
 そして――。
「ああ、ああああぁ……おああああ……」
 まずは麻衣から。汗の雫を飛び散らせてぱっと背中を反らし、次いで、膣肉をぐぐぐと痙攣させ、
爽也の肩に爪を立てつつ動きを止める。
 亀頭を吸いつかれる感覚に耐え切れなくなった爽也は、麻衣の乳房を鷲掴みながら、
ヴァギナの一番深い場所に向かって、堪えていた迸りを放出した。

 そのまま二人は力を失い、抱き合ったままベッドの上にもつれて倒れ込む。
 横向きにきつく抱きあう二人の胸の鼓動はぴたりと合わさり、
吐く息吸う息も絡まりあって一つになっている。
「ああ、爽也さん……」
 麻衣は、薄く眼を開いて爽也を見つめた。爽也は、麻衣の頬に手を伸ばして、引き寄せる。
 二人の唇が合わさった時、結び合った性器の繋ぎ目から精液が溢れ、腿を伝ってシーツに流れ落ちた。


「爽也さん、ひど過ぎ」
 全てが終わり、さっさと身仕舞いを始めている爽也に向かい、
これはまだ裸でベッドに臥したままの麻衣が、恨みがましい口調で言った。
「ひど過ぎって、何がさ」
「勝手に覚醒剤なんか塗るなんて、ひど過ぎだって言ってるの!」
 麻衣は、上半身だけを起こして爽也に言い募る。
 爽也は一瞬、何を言われているのか判らない、といった顔できょとんとしていたが、
すぐに気づいて肩をすくめた。
「覚醒剤なんて塗ってねえよ」
「えっ? じゃああれはいったい……」
 爽也は上着のポケットから小さな丸い容器を取り出し、麻衣に放って寄越した。
 缶でできたその容器には見覚えがある。麻衣は言った。
「これ……メンタムじゃない」
「そうだよ」
「じゃあ、さっき爽也さんが私のあそこに塗ったのって……」
「メンタムだよ。……覚醒剤なんか塗る訳ないだろう? っつーか、匂いで判んなかった?」
 裸の麻衣は、緑色の容器を無言で見つめた。
 蓋を開けると、立ち上ったメントールの匂いが、麻衣の股間から漂うそれと混じり合って、
胸をすうっと熱くさせるのだった。
147いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/09/20(日) 01:52:10 ID:gsvbwPhc

 ホテルのレストランで食事をしてからマンションに帰宅したのは、夜の八時頃だった。
 兄はまだ帰っていなかったが、携帯にメールが入っていた。
『バイト先で飲み会があるから今夜は戻らない』とだけ書いてある。
 麻衣は、ため息一つ落として携帯をガラステーブルに置いた。
 独り、リビングのソファーに寝そべって、テレビをつける。
(こんなことなら……やっぱ爽也さんにドライブ連れてって貰えばよかったなあ……)
 食事の後、麻衣は爽也に誘われていたのだった。
 それを断って帰宅したのは、先に戻って独りぼっちで待っているはずの、兄のことを考えたからだ。


「暢の奴、俺の親父に借金があるんだよ」
 レストランの、街を一望出来る窓際の席で爽也は言った。

 麻衣は全く知らなかったのだが――兄は以前、ポーカー賭博に嵌まっていたことがあったのだそうだ。
 元々は、爽也が自分の父親の経営している店に連れて行って遊ばせたのが発端だったらしいが、
すっかり入れあげた兄は、爽也も知らない間に店に入り浸るようになってしまい、
いつしか負けが込んで、大変な額の金を店に払わねばならない破目に陥ったのだそうだ。
 大変な額、とは言っても、麻衣達兄妹からすれば、親に頭を下げさえすれば、
何とかならないこともない程度のものであったのだが、兄は、どうしてもそれをしたくなかったのだ。

「それで、俺が親父に話をつけて何とかしようってことになってさ。友達のよしみでな。
 結局、金は分割で払わせることになった。普通は駄目なんだけどな、そんなの。
 まあ、それで片はついたんだけどさあ。あいつにも一応判らせてやらなきゃいけねえだろう?
 それでちょっと脅かしたんだよ。
 俺が間に入らなかったらお前、店の連中に消されてたかも知れねえんだぞ、ってな。
 あいつ超びびってたっけなあ。
 面白かったから、暫くそのネタであいつをからかってたんだ。
 そんな時だったんだよ。麻衣と街中で出くわしたのは。
 あの子とやらせてくれないと、分割の話は無しにするぞ! とか言って。
 ……半分冗談だったんだけど、あいつが真に受けちゃったんだよね」

「何それ。半分冗談で私はお兄ちゃんに売られたの?
 ていうか、爽也さんも爽也さんだよ。そんないい加減な……」
「まあそう言うなって。お前が訊きたいって言うから説明してやったんじゃん。
 とにかくさ、そういうことなんだよ。
 いいだろ別に。きっかけはともかく、今は俺達、上手くやってんだからさ」
「うん……そう、だよね」
 暮れなずみ、夜の装飾で煌めき出した街を見下ろし、麻衣は小さく頷いた。
 それから、眼の前の、浅黒い膚をした逞しい青年をそっと見つめる。
 麻衣には何となく判っていた。きっと爽也には、他に何人もの女が居るに違いない。
 こうやって外で逢うことはしても、自宅には決して呼ぼうとしないのがその証拠だ。
 自分は、彼の遊び相手の一人に過ぎないのだろう。
 それでも麻衣は、爽也のことが好きだった。
 彼の言うように、きっかけはどうあれ、今や爽也のいない生活など、考えられないほどだった。
 このまま、ずっと爽也のそばに居たいと願う。

(――だけど)
 その一方で、麻衣は思うのだ。
 もし万が一、爽也と自分が今よりもっと深く付き合うようになったとして。
 そのことを、兄はどう思うのだろうか――と。
 親友に妹を奪われ、独りぼっちで取り残されてしまったら、兄はどうなってしまうんだろう?

(だけどさ、そんなの、みんなお兄ちゃんが悪いんじゃん。勝手に私を爽也さんに売って。
 そうだよ。私の気も知らないで、いつでも勝手なことばかり)
 マンションのリビングで、麻衣は孤独に物思いに耽る。
 自分で妹を親友に売り渡しておきながら、親友との仲が深くなったことを責めて手を上げる兄。
148いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/09/20(日) 01:53:08 ID:gsvbwPhc

 それでいて、いつも一緒に居てくれる訳でもない。
 爽也のように、高級なホテルやドライブに連れて行ってくれることもない。
 考えてみれば、これまで一緒に出かけたことすらほとんどなかったのではないか。

 あんな兄なんかと一緒に居ても、未来はないのではないか――。

 ソファーで膝を抱え、ぼんやり考えていた麻衣の瞳に、携帯の点滅する光が入る。
 メールが入ったようだ。また兄からだ。
 今夜予定されていたバイト先の飲み会が中止になって時間が空いたので、
映画にでも行こうと思ったのだが、映画館のマイレージカードを忘れたので持って来い、
という内容だった。
「はあ……しょうがないなあ」
 麻衣は、兄の部屋へ入って机の上からカードを見つけ出し、兄の指定した映画館へと向かうべく、
バッグと携帯を手に取った。
「全く。お兄ちゃんが私を外に連れ出すのなんて、こんなことばっかりなんだから」
 しかも、その映画というのに麻衣を付き合わせるつもりもないことは判りきっている。
 映画通を気取る兄は、麻衣ごときに自分の趣味は理解できぬと、はなから馬鹿にしきっているからだ。

 麻衣は、ふと思い立って兄のメールに返信を書いた。
『カード持ってってあげるけど、その映画私も一緒に観させて』
 それだけ書いて、送信ボタンを押す。
 麻衣は、心の中で小さな決意をしていた。
 このメールに対する、兄の返事に賭けてみよう。
 制限時間は、五分。五分以内に返事が来て、なおかつそれが、自分の願いを受け入れる内容であれば、
それでよし。
 だが万が一、五分以内に返事が来なかったり、願いを拒絶する内容であった時は……。
 その時には……。

 玄関先で携帯を見つめて立ち尽くしていると、いきなり電話が入った。
 鳴り響くアメイジング・グレイス。麻衣の肩が跳ね上がる。
 電話は、なんと爽也からのものだった。
『あ、今大丈夫?』
 外からと思しき電話の声の後ろから、街の雑踏の気配が伺える。
「大丈夫だけど……爽也さん、どうしたの?」
『麻衣さ、よかったらこれから俺ん家来ないか?』
「え……」
『知り合いに貰ったDVDがあるんだよ。なんか、ディズニーのやつ。確かお前好きだったよな?
 だから、どうせならって思ってさ』
 爽也の言葉に、麻衣の鼓動は割れんばかりに高鳴った。
 爽也が、自分を部屋に呼んでいる。
 それはつまり、彼の中でも自分が特別な存在になっていることの証だと、麻衣は確信していた。

 もう、何も迷うことはない。
 この誘いを受けて爽也のマンションへ行ったが最後、自分はもう、
ここに戻って来ることはないだろう。
 ずるずると爽也の部屋に居続け――いつの間にか、爽也の同棲相手となってしまうのだ。
 かねてよりの望みどおり、爽也のそばで、ずっと一緒に――。
「爽也さん、私――」
 麻衣の口は、勝手に喋り出している。
「ごめんなさい。私……今から、お兄ちゃんに届け物をしなくちゃいけないの。だから、行けない」
 爽也が絶句する。携帯の向こうからは、行き交う車のエンジン音だけが響いていた。

『そっか……』
 暫しの間を置き、少し残念がる口調で爽也は言った。
『判ったよ。じゃあまた今度。暢によろしくな』
 短い挨拶と共に、電話は切れた。麻衣は、携帯を耳に当てたままじっと動かずにいた。
 溢れ出した感情が、涙となって頬を伝う。
149いもうと懺悔 ◆ZanGeV85yI :2009/09/20(日) 01:54:32 ID:gsvbwPhc

(私は馬鹿だ)
 涙のしずくをぱたぱたと床に落とし、麻衣は心に呟いた。
 自分の言ったことが、自分で理解出来ない。
 爽也と深い繋がりを築く機会を、自ら棒に振ってしまうなんて。
 おそらく爽也は、もう二度と自分を部屋には呼ばないだろう。
 ひょっとすると、抱いてすらもらえなくなるかも知れない。
 何をためらったのだろう? 爽也を好きなはずなのに。
 兄の用事など……愛する爽也の優しい誘いに比べれば、全く取るに足らない、
愚にもつかない代物ではないか。
 なのになぜ……。

 手の甲で涙を拭い、麻衣はもう一度携帯を見つめる。
 兄からメールが届いていた。麻衣は、もどかしい思いでそれを開いた。

『多分お前が観てもつまんないと思うけど、別にいいよ。
 あと、来る時ついでに居酒屋のクーポン持って来てよ。映画が終わったら外で一緒に飯食おう。
 何かお前の好きなもの』

 メールは随分と改行されており、下のほうにまだ続いているようだ。
 スクロールして行くと、短い文章があった。

『P.S.こないだはごめん。直だと言いづらいからここで』

 メールの着信時刻は、麻衣の取り決めた五分の猶予からは、十秒ばかり遅れていた。
 けれど麻衣にとって、そんなことはもうどうでもよかった。
「お兄ちゃん……」
 麻衣は携帯に頬擦りをした。
 全てのわだかまりが消え去っていた。
 爽也の誘いを断ってしまった悔恨も。数日前に殴られた時の痛みの記憶すらも。
 麻衣は部屋に戻り、クーポン雑誌を取ってバッグに入れてから、マンションを出た。
 明るい表情を浮かべている麻衣の頬は薔薇色で、瑞々しく、幸福そうにつやつやと輝いていた。


【つづく】
150名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 22:55:10 ID:OkMV02Vh
>>149
GJ!えろい
151名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 00:42:17 ID:tN09BsfH
一人だけが回してる一人のためのスレは禁止だろうが
頑張るなぁ
152名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 12:06:48 ID:QvATIGaO
柵を立てて囲い込んでいるのでなければ、禁止ってことはないと思う。
153名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 01:53:57 ID:emAurMe4
>>151
ずっと監視してるの?
追いスレのお婆ちゃんw
154名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 02:18:04 ID:rxIxUmIb
なんという執念
155名無しさん@ピンキー:2009/09/26(土) 23:57:23 ID:YZUv3Plb
>>151
頑張るが口癖の人が来たw
156名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 21:56:28 ID:wpgYn+oj
マリア様がみてる 祐巳×乃梨子

「庶民派な彼女」

――――――――――

「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
 私立リリアン女学園は、創立してから元号が三度変わった平成の御代にも、純粋培養されたお嬢様を毎年送り出す
世にも貴重な学園である。

「ごきげんよう。祐巳さま」
「ごきげんよう。乃梨子ちゃん」
 どんよりとした雲が空を覆っている放課後、いつものように薔薇の館に足を運ぶと、紅薔薇さまこと福沢祐巳さまが
ティーカップに唇をつけていた。
「乃梨子ちゃんも飲む? 」
 乃梨子の姿を認めると、ポットを胸のあたりまでかざした。
 祐巳さまは、今日の天気とは異なり、春の日差しを浴びたたんぽぽのような、穏やかな微笑みを浮かべている。

「ありがとうございます」
「それじゃあ、座って待っていてね」
 乃梨子に席につくように促してから、祐巳さまは軽やかに身を翻して、薄く白い湯気と香ばしい匂いがたちこめている
ティーカップを運んできてくれた。
「ちょっと時間が経っちゃったけどね」
「いえ、いただきます」
 差し出された琥珀色の液体をゆっくりと口に含んでいくと、心地よく乾いた喉を潤してくれた。

 ひとごこちがついた乃梨子は、紅茶を飲んでいる祐巳さまに向き直って尋ねた。
「祐巳さま以外は、誰もいないようですね」
「うん。由乃さん、奈々ちゃん、それに瞳子は部活だね…… 志摩子さんは?」
「今日は環境整備委員会で遅くなるそうです」
 乃梨子の返事に、祐巳さまは小さく頷いてから薄く笑った。
「そうすると、今、薔薇の館には乃梨子ちゃんと私しかいないんだ」
「ええ。現在、この部屋には祐巳さまと私のふたりきりです」
 敢えて重ねるように言ってから、乃梨子はごくんと喉を鳴らした。

「ねえ。乃梨子ちゃん」
「はい。祐巳さま」
 祐巳さまの口から出てくる次の言葉を予期して、乃梨子は立ち上がる。
乃梨子の動作にあわせるように、祐巳さまはゆっくり近付き…… 包み込むように優しく抱きしめる。
「今日は、いいよね」
 祐巳さまの体温を感じながら、乃梨子は少しだけ震えた声を出した。
「はい…… 紅薔薇さま」

 乃梨子が祐巳さまと、身体を触れ合わせるような関係になってから1か月が経つ。
 梅雨の前触れなのか、雨音が古くなった屋根を叩き続けていた5月下旬のある日、今日と同じように薔薇の館で
ふたりきりになっていた時の記憶が鮮明に蘇っていく。

157名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 21:57:01 ID:wpgYn+oj
「な、なにをするんですか!」
 いきなり祐巳さまに抱きしめられた1か月前の乃梨子は、当然ながら驚きと怒りの混じった声で抗議をした。
 冷静だけれど勝気な乃梨子は、上級生のセクハラ行為にひるむことなんてないのだ。

 しかし、祐巳さまは激しく反発する乃梨子の鋭鋒を巧みに受け流してしまうと、穏やかに微笑みながら口を開いた。
「志摩子さんは、してくれないでしょう」
「う……」
 思わぬ方向から放たれた言葉の矢に、乃梨子は絶句する。
「志摩子さん。そういう方面には疎そうだもんね」
「そ、それは」
 志摩子さんは、乃梨子にとっては御仏のような神聖な存在だ。
 しかし、それゆえに、志摩子さんと一線を越えるどころか、姉妹となって1年以上が経っても、キスをすることすらできなかった。
「でも、乃梨子ちゃん。興味はあるよね」
 悔しいけれど、祐巳さまの言葉は否定できなかった。乃梨子だって、志摩子さんのような聖女などとはほど遠い、
ごく平均的な女子高生であり、性的な煩悩だって人並みにもっているのだ。

「だから庶民派の私が、乃梨子ちゃんのフラストレーションを解消してあげようと思ってね」
「それ、本気でいっているんですか?」
 乃梨子は、ふたつのお下げを結んだ先輩をねめつける。

 祐巳さまは1年生の秋口までは、薔薇の館とは無縁な平均的なリリアンだったそうだが、今は違う。
 リリアン学園の生徒会長の一人である、紅薔薇さまとしての優雅で堂々とした振る舞いは、前の紅薔薇さまである
小笠原祥子さまに決してひけをとることはなく、リリアンのほとんどの女生徒から絶大な支持と敬愛を集めている存在なのだ。
 紅薔薇さまの威厳に加え、親しみやすさを備えた祐巳さまの人気は、悔しいことに絶世と言っても過言でない美少女である
志摩子さんをすら凌駕する。

「優等生な紅薔薇さまというのは、やっぱり仮面でね」
 祐巳さまはのんびりと言いながら手を伸ばして、乃梨子をゆるりと絡め取っていく。
「瞳子はどうするんですか?」
 ようやく反撃の糸口を見つけて祐巳さまを睨みつけると、何故か悲しそうな表情に変わってしまった。

「私にとっての瞳子はね。乃梨子ちゃんにとっての志摩子さんと似たような存在なんだ」
「どういうことですか?」
「もちろん。妹としては大好きだし愛しているよ。私はね。瞳子にもっと触れたいという欲求もあるんだ。でもね。
そんなことをしたら瞳子、すぐに壊れちゃうから」
「確かに、そうかもしれません」
 つっけんとんな態度を取ることが多い瞳子だが、本当はとても危うくて繊細で、精緻なガラス細工のように壊れやすい。
瞳子の親友である乃梨子としては悔しいけれど、祐巳さまは瞳子のことをとても良く分かっているのだ。
 しかし、それでも――

「私は瞳子の代役ですか? 」
 少々拗ねたような物言いになるがやむを得ない。
「ううん。たぶん、人それぞれに役割があると思うの。私が瞳子に求めているのは妹としての役割。
そして、乃梨子ちゃんに求めているのは」
「分かりました」
 乃梨子は、祐巳さまに最後まで言わせずに、自分から唇に触れた。
「の、乃梨子ちゃん?」
 瞼をぱちくりと瞬かせる祐巳さまに向かって、乃梨子はにやりと笑った。
「祐巳さま。常に先手を取れると思ったら大間違いですよ」
「さすが、私が惚れた女の子だね」
「光栄です」
 いつの間にか、乃梨子は外の激しいはずの雨音は気にならなくなっていた。
158名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 21:57:51 ID:wpgYn+oj
「最初は乃梨子ちゃんからキスしてくれたんだよね」
 祐巳さまのからかうような物言いに、乃梨子はムキになって言った。
「だって、祐巳さまが悪いんですよ。子狸みたいな顔で私をたぶらかすから」
「ひどいね。乃梨子ちゃんは」
 祐巳さまが笑いながら更に近付いて、優しく唇にふれてくる。
「ん……」
 やわらかくてつるつるした感触が心地よくて、すぐに頭がぼうっとなってしまう。
「ん、んんっ」
 くぐもった声をあげながら、祐巳さまはゆっくりと唇をずらしていく。

 祐巳さまのキスは甘い。

 性格と同じように甘い。ケーキのような甘さではなくて、温州蜜柑を頬張った時に伝わるような
ほんのりとした甘さが伝わってくる。
「ん……」
 乃梨子は軽く身体を捩りながら、祐巳様の背中に手を伸ばして、セーラーの上をひっかく。
「くうん」
 祐巳さまがトレードマークのテールを揺らしながら、喉を鳴らした。
「ん…… んんっ」
 舌を積極的に絡めて、深いキスに溺れる一方で、乃梨子は冷静に頭を働かせている。
 今、祐巳さまとキスをしているけれど、もし関係がばれたらどうなるんだろうな。
 志摩子さん、やっぱり泣くのかな。もしかして、微笑みながら認めてくれるかもしれないな。
都合のいいことを思い浮かべかけて、ふいに我に返る。

「の、乃梨子ちゃん? どうしたの」
「あ、いえ、なんでも…… ありません」
 妄想から引き戻されて赤くなった乃梨子の顔を、祐巳さまが見上げるように覗いてくる。
「もしかして…… 志摩子さんの事、考えていた?」
 図星だ。意外と勘が鋭い。

「やっぱり、正解なんだ」
 無言を肯定と受け取った祐巳さまは、小さくため息をついてから両肩を竦めた。
「す、すみません」
 キスの最中に、他のひとの事を考えるのは流石に最低な行為なので、ひたすら謝るしかない。
159名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 21:58:26 ID:wpgYn+oj
「ふふ。いいんだよ。乃梨子ちゃん」
「えっ」
 しかし祐巳さまは、乃梨子が拍子抜けするほどあっさりと許してくれる。
「私はね。乃梨子ちゃんの生真面目なところや、器用そうでいて実は不器用なところはもちろんのこと、
志摩子さんを思うところも大好きなんだよ」

「あ、あの」
「大丈夫。志摩子さんはとっても素敵な人だけど、でもね。私も意外と魅力はあるんだよ」
「はう」
 私はため息未満の音をもらしながら思わざるを得ない。
 祐巳さまの底抜けにお人好しで寛大で、器が底抜けに大きいところには驚かざるを得ない。
「でもね。乃梨子ちゃん」
 祐巳さまは、唐突に身体を離した。

「浮気者の乃梨子ちゃんにはちょっとした罰ゲームになるのかな」
「どういう事ですか?」
 意外と根に持っていたのだろうか。
「タイムオーバーだね」
 祐巳さまがにやりと笑って視線を扉の方に向けると、老朽化した階段を上がるギシギシとした音が聞こえてくる。
「残念です」
「続きはまた今度ね」
 祐巳さまが小さく舌を出した直後、扉が軽やかに開く。

「お疲れ様です。お姉さま」
「御苦労さま。乃梨子」
 祐巳さまの妹である瞳子と、乃梨子の姉である志摩子さんが笑顔を浮かべながら、同時に部屋に入ってきた。

(おしまい)
160名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 23:07:48 ID:wsH5zM2c
背徳感があってエロチックだ。GJ
161名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 00:46:31 ID:+JC7v8Vt
マリみてとか懐かしいな
162名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 22:17:05 ID:PmrVQncs
懐かしいw
GJ!
163名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 23:22:44 ID:jOe61Rze
>>159の続き

2.

 志摩子は、緑色の葉が覆い茂った銀杏並木の下を歩いている。
「ふう……」
 しかし、十数歩を進む度に深いため息をついてしまう。
 時々すれ違う女生徒達が、「白薔薇さま、ごきげんよう」と、会釈をしながら通り過ぎるが、
きちんと挨拶を返せたかどうかすら思い出せない。

「どうしたのかしら、白薔薇さま」
「何か考え事をされているかのような」
「きっと、山百合会の運営についてお悩みになられているのよ」

 彼女達の勝手な推量に、志摩子は赤面しながらも心の中で首を横に振る。
 山百合会の運営ではなくて、山百合会にいる人達のことで悩んでいるのだ。
もちろん、薔薇さま達を崇拝している生徒達には話すことはできないが。

「ごきげんよう。志摩子さん」
「ごきげんよう。由乃さん」
 しばらく並木道を歩いていると、由乃さんと顔を合わせた。
 黄薔薇さまである由乃さんは、三人の薔薇さまの中では最も活発なメンバーで、やや華奢な身体ながらも、
無尽蔵に溢れる行動力で山百合会を機関車のように牽引している。
「あー 今日も雨かなあ。」
 挨拶を終えてすぐ、由乃さんが鉛色の空に向かって大きく伸びをしてみせる。
「雨は嫌いかしら」
「うーん。こうも毎日、続くと気が滅入っちゃう」
 今にも水滴が落ちそうなどんよりとした鉛色の空を見上げて、彼女は盛大なため息をついた。
「でも、一番嫌いなのは祐巳さんかもしれないわね」
「祐巳さん…… 」

「何せ、祐巳さんと祥子さまが擦れ違ったのはこの季節だし」
 由乃さんは言い終えると、唐突に話をやめる。
「どうしたの? 」
「祐巳さんだ」
 銀杏並木が途切れた少し先に祐巳さんの後ろ姿がみえる。
 声をかけようとして、更に近付いた時――

「タイが曲がっているよ」
 祐巳さんは、一年生と思われる生徒に声をかけていた。
164名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 23:23:28 ID:jOe61Rze
「べ、紅薔薇さまっ」
 下級生にとっては雲の上の存在となっている紅薔薇さまに直接、話しかけられ、文字通り硬直してしまっている。
「ちょっと待っていてね」
 しかし、祐巳さんは優しく微笑んでから、酷く動揺している下級生の胸元に手を伸ばすと、タイの結び目を一旦ほどき、
丁寧に結びなおしてゆく。
「どうしたの? 今日は元気なさそうだね」
「あっ、そ、その、ちょっと試合に勝てなくて」
「大丈夫。ずっと頑張っているんだから、きっと上手くいくよ」
「あ、ありがとうございます。紅薔薇さま!」
「うん。頑張ってね」
 タイを結わえ終わった祐巳さんは、乱れていたタイを結び終えると、下級生をぎゅっと抱きしめる。
「べ、紅薔薇さま!?」
「じゃあ、またね」
 そして、驚愕から立ち直れないでいる少女からゆっくりと離れると、身を翻して去っていった。

「ふうん」
 由乃さんは、腕を組んで唸ってから口を開いた。
「人気がある理由を、祐巳さん自身がまざまざと見せつけてくれたね」
「ええ…… 」
 小さくなる祐巳さんの後ろ姿を睨みつけながら、言葉を続ける。
「優しい励ましの言葉と、情熱的なハグでまたひとり信者を増やしたわね」
「信者って……」
 由乃さんは、きついことを平然と言う。

「ちょっと言葉は悪かったかもしれないけれど。嫉妬ばかりでもない」
「どういう、ことかしら?」
「先程の祐巳さんの言葉をよく思い出して」
「えっ?」
 戸惑いながら祐巳さんの言葉を反芻するが、由乃さんの求める回答には辿り着けない。

「まあ、いい。もう言うわ。祐巳さんはね。名前も知らない下級生の様子まできちんと把握しているってことよ」
「あっ……」
 脳天を殴られたような無形の衝撃に襲われ、志摩子の身体はふらつく。

「ようやく気付いたみたいね。志摩子さん。リリアンには1年生と2年生だけで400名はいるのよ。多くの生徒の様子を一々把握するなんて、
今までの薔薇さまの誰もがやっていなかったの。それを平気でやってのける祐巳さんに誰もがかなうわけない。
私は、絶対に真似しようなんて思わないけれどね!」
 まくしたてるように話した由乃さんの見解は正しい。
 一体、祐巳さんがどれほどの努力を紅薔薇さまになって重ねているのか、想像するだけで目まいがする。

「志摩子さんが悩んでいるのは祐巳さんのことでしょ」
「え、ええ」
「図星か。志摩子さんが望めば相談に乗るけど?」
「そ、そうね。それがいいのかもしれない」
 喉に小骨が引っかかっているような、もやもやがとれない状態で一人で悩んでいるよりも、山百合会の同僚で、
大切な友人である由乃さんに相談した方が良いだろう。
「志摩子さん。食堂でいいかしら」
「ええ」
 志摩子は、ともすれば駆け出しそうになる由乃さんの後を追った。
165名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 23:24:33 ID:jOe61Rze
「えええええっ!」
「しっ」
 慌てて手を伸ばして、大声をあげてしまった由乃さんの口を塞ぐ。
 閑散としているとはいえ、数名の生徒たちが軽食をとったり、談笑していたりする。
 彼女達には決して聞かれてはいけない内容だ。
「志摩子さん。それ、本当なの?」
 可憐と言うには少しばかり気の強そうな顔が急に迫り、志摩子をどきりとさせる。
「私の勝手な妄想かもしれないわ。でも…… 最近変なの」
「どちらが?」
「乃梨子。祐巳さんは変わらないけれど」
「ふーん」
 由乃さんは自販機で買ったコーヒー牛乳に口をつけてから尋ねる。
「どんなふうに様子が変なの?」
 一瞬、志摩子は言葉に詰まったが、やはり話さなければならない。
「何かとてもぎこちないの。話をしても上の空だし、すぐに視線を逸らしてしまうし」
「いつから?」
「ここ1カ月ほど。最初は何か悩んでいるかと思ったわ。でも、乃梨子はしっかりしているから相談したくなったらするかと思って」
 乃梨子は、危なっかしい志摩子と比べ物にならない程しっかりしている。だから乃梨子が言いだそうとしない事ならば、
話をするまで待ってやればいいと思っていたのだが。

「さすが、放任主義の白薔薇さまの家系ね」
 由乃さんの何気ない言葉が胸に酷く突き刺さる。
「でも、乃梨子ちゃんの様子がおかしいというだけで、どうして祐巳さんに繋がるの?」
 由乃さんは首を少し傾けている。
「少し言いにくいのだけれど…… 先週、乃梨子と祐巳さんが手を繋いでいるところをみてしまったの」
 マリア像のすぐそばで手を繋いでいる乃梨子と祐巳さんは、恋人同士のような親密さを醸し出しており、
思わず見とれてしまったが、次の瞬間に愕然となる。

「どう…… して?」
 しかし、ふたりは、呆然とする志摩子には気が付かなかったようで、やがて手を離して校舎の方向に去ってゆく。
「待って……」
 慌てて追いかけようとしたけれども、志摩子の足は彫像のようになっており、動かすことはできなかった。

「手、ねえ。ちょっと微妙ね」
「そうかしら」
「だって、親しくない下級生に抱きつく程、過剰なスキンシップ大好きな祐巳さんが、山百合会のメンバーたる
乃梨子ちゃんの手を繋いでもね。それも単なるスキンシップの一環じゃないの?」
「でも」
 女の勘といっては根拠が薄いのだろうか。
 あの時のふたりの雰囲気は、単なる触れ合いという軽いものではないように思えてならない。
「そんなに気になるのなら、確かめてみるのが一番ね」
「どうやって?」
 急に生き生きとした表情になった由乃さんは、瞳を輝かせながら断言した。
「決まっているじゃない。祐巳さんと乃梨子ちゃんを尾行するのよ!」

(つづく)
166名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 09:46:52 ID:Tm3t9u6y
期待
167名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 23:01:48 ID:W5FWk5T+
ho
168名無しさん@ピンキー:2009/10/27(火) 18:22:19 ID:60cJHWxX
>>60
GJ
169名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 01:05:36 ID:PNmOpQTm
>>165
GJ!
マリみて懐かしいなww原作に忠実で文章上手いし。
続き期待する。
170名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 22:01:49 ID:1oYNRhKG
ほしゅ
171名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 19:09:41 ID:jxo5OWSR
マリみての続きマダ〜?
172名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 21:35:59 ID:DrhXA9o8
>>171
規制中
173名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 19:20:19 ID:Hs5d3Xha
保守
174名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 11:02:37 ID:41M1ScZg
巡回スレが増えた
175名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 22:32:35 ID:hv5nqcaJ
>>165の続き

3.

 翌日――
 山百合会の仕事のうち、自分の担当分を終えた乃梨子は、薔薇さま達の許可を得て、一足早く薔薇の館を出た。
 祐巳さまはまだ仕事中だったが、学校の近くにある書店で、時間差をつけて下校する祐巳さまと落ち合うことになっている。

 乃梨子は校門を出る前に、キリスト教の聖母として有名であるマリアの像で立ち止まり、頭を下げて両手を合わせた。
 日本では、郷に入っては郷に従え、欧州では、ローマにいる時はローマ人がするようにせよ、ということわざの通り、
仏像マニアであっても、カトリック校の生徒であるからには、周囲と無用な軋轢を産まないために、敬虔な信者である他のリリアン生と
同じように手を合わせるのが正しいやり方だろう。

 形だけではあったが、マリア像に向けての祈りを終えて振り返ると、背の高い女性が乃梨子を眺めていた。
「ごきげんよう、聖さま」
 志摩子さんの姉である、佐藤聖さまだ。
 聖さまは、白を基調としたパンツルックをラフに着こなしており、彫りの深い端正な顔立ちと相まって、宝塚の男役に近い
雰囲気を醸し出している。
「ごきげんよう、乃梨子ちゃん」
 聖さまはやや低めの声を出して挨拶を返すと、大きい歩幅で乃梨子の至近距離まで近寄ってくる。
「な、なんです?」
 またセクハラもどきのことをするのかと身体を固くして構えるが、今度は耳を触ってきたりはしない。代わりに――
 
「乃梨子ちゃんには失望したよ」
 見下すような表情を浮かべて、吐き捨てるように言っただけだった。

「どういうことですか?」
 乃梨子は憤然として、とんでもなく不穏当な言葉を吐き出した聖さまを睨みつける。
 例え3つ年上の大学生だろうが、志摩子さんのお姉さまだろうが、侮蔑されっぱなしで済ます訳にはいかない。
「本当に分からないの? 乃梨子ちゃんはとっても勉強ができる癖に、意外と頭が良くないんだねえ」
「なっ!」
 あまりに酷い言い方に激昂する乃梨子のやや長めのおかっぱ頭を見下ろしながら、聖さまは綺麗な顔を歪めて、
「自分の胸に聞いてみてよ」
と言い捨てると、あっさりと背を向けてしまう。
「言いっぱなしで、何も説明をしないのですか!」
 背中に向けて言葉を叩きつけると、聖さまは前を向いたまま軽く肩をすくめて呟いた。

「可哀想な志摩子」

「あ……」
 唐突に突きだされた鋭い言葉の槍にまともに貫かれた乃梨子は、胸を抑えてしゃがみ込む。
 胸が痛くて、息が酷く苦しい。
 西に傾きつつある秋の日差しを浴びながらゆっくりと遠ざかっていく聖さまの後ろ姿を追うことは到底できそうになかった。
176名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 22:33:19 ID:hv5nqcaJ
 不安な気持ちを外に出さないように耐えながら書店で待っていると、祐巳さまが店内に入ってきた。
 祐巳さまは乃梨子の顔をみるなり、首を傾げながら尋ねてくる。
「乃梨子ちゃん。どうしたの?」
「な、なんでもありません」
「嘘」
 祐巳さまに、あっさりと否定されてしまった。
「どうして嘘だと断言するのですか?」
「だって、辛そうな顔してたから」
「……」
 祐巳さまはかなり鋭い。下手な隠し事なんかできないと今更ながら教えられる。
「乃梨子ちゃん。隣の喫茶店にいこう。そこで悩みを話して欲しい」
「リリアンの校則って、通学中の寄り道は禁止では?」
 乃梨子は周囲の客の視線を気にしながら言った。生徒会である山百合会のメンバーが校則違反をしてはまずいのではないだろうか?
「ううん。物事には優先順位があるからね。校則より可愛い後輩の悩みを解消する方が先だよ」
「はあ……」
 祐巳さまはリリアンの校則を絶対視するようなところがあったから、これは意外な言葉だった。

 祐巳さまの意向に従い、書店を出てすぐ隣に建っているやや古ぼけた喫茶店のドアを開けると、中に客は誰もおらず、
マスターとおぼしき中年男性と、おそらくバイトであろう、手持ち無沙汰の若いウエイトレスがいるだけだった。
 席に座ってすぐに注文を取りに来たウエイトレスに、乃梨子はブレンドコーヒー、祐巳さまはウインナーコーヒーを頼む。
「かしこまりました」
 一礼して女性店員が去った後、祐巳さまは氷が入った水で唇を湿らせてから早速とばかり口を開く。
「乃梨子ちゃんは、何を悩んでいたの?」
「実は……」
 結局、乃梨子はマリア像の前での聖さまとのやりとりの一部始終を話すことになった。
177名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 22:34:32 ID:hv5nqcaJ
「そっか、さすが聖さまといったところかな」
「やっぱり、気づいているのでしょうか?」
 乃梨子は不安げな口調になってしまう。

 しばらく無言でいた祐巳さまは、コップから唇を離してから、ようやく口を開いた。
「聖さまは、志摩子さんをとても大切にしていたから、直感で分かっちゃうんだろうね。でもね。
それは乃梨子ちゃんには本質的には関係ないから」
「そうでしょうか」
「自分が直に接すると志摩子さんを傷つけてしまうと思い込んでいるんだ」
「はあ」
「聖さまは、志摩子さんとは片手で触れ合う距離までしか近付けない」
 乃梨子は聖さまとそれほど深い関係を築いていないから、よく分からないのだけれど、祐巳さまは聖さまの内面を
かなり深いところまで観察しているようだ。

「聖さまは、志摩子さんの妹である乃梨子ちゃんに、志摩子さんを守ってくれるように頼んだ、と私は思っているの」
「それは…… 分かります」
「でもね。志摩子さんは、繊細というか、どこか危なっかしいところがあるから」
 確か、志摩子さんは去年の梅雨時に当時の紅薔薇さまである祥子さまと、乃梨子の板挟みにあった時に酷く動揺していた。
その時は、乃梨子が志摩子さんの妹になることで一応の解決をみたのだけれど。

「でもね。それは聖さまの都合なんだよ。聖さまの一方的な思いだから、乃梨子ちゃんがそれに従う必要はないんだ」
「そう…… でしょうか」
 乃梨子は曖昧な表情を浮かべて呟く。
「でも、志摩子さんを裏切っていることは事実ですし」
 聖さまの「失望した」という言葉が重く胸にのしかかる。乃梨子が祐巳さまに想いを寄せることで、姉である志摩子さんを
傷つけているという事実はどう言い繕うとも変えることはできない。
178名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 22:35:16 ID:hv5nqcaJ
「前にも言ったけれどね。乃梨子ちゃんの真面目なところは大好きだよ」
 顔をあげると、祐巳さまが天使のように微笑んでいた。
「は、恥ずかしいですよ」
 顔がかっと熱を帯びたのが見えなくても分かる。祐巳さまの無防備な笑顔は乃梨子にとって眩しすぎる。

「結局はね。自分の生きたいようにしか、生きることはできないと思うんだ」
 ウエイトレスが運んできたウインナーコーヒーにのっているクリームをくるくるとスプーンで掻き回しながら、
祐巳さまは言った。
「私もね、瞳子を裏切っていることは分かっている。瞳子には本当に申し訳ないと思う。でもね。
私は、乃梨子ちゃんのことが恋愛感情という意味で好きなんだ。この前は茶化していったけれど、身体を触れ合わせるって、
本当に好きじゃないとできないと思う」
「それは…… 私もです」
 生粋のリリアン育ちである祐巳さまと、中学までは共学に通っていた乃梨子と、恋愛に対する見方は違うとは思うけれど、
今、この瞬間は思いを共有していると信じたい。
「乃梨子ちゃん。私はとてもわがままなんだよ。姉妹としての瞳子も失いくないし、恋人としての乃梨子ちゃんも失いたくない」

「それも分かります。私だって同じ思いです。でも…… いつまで続くのでしょうか」
 聖さまは他の誰かに言わないと思うけれど、祐巳さまと逢瀬を重ねていけば、必然的に周囲に気づかれてしまうのではないだろうか。
「そうだね。乃梨子ちゃんの言うとおりだね」
 祐巳さまは哀しそうな口調で言うと、窓の外に視線を移す。
「ゆ、ゆみさま?」
 祐巳さまの瞳が小さく光るのが見えて、乃梨子は慌ててポケットからハンカチを取り出した。
「あ、ありがと、乃梨子ちゃん」
 泣き笑いのような表情を浮かべて、乃梨子が差し出したハンカチを受け取り目元にあてる。
 少し恥ずかしそうに涙を拭く祐巳さまを、乃梨子は綺麗だと思った。

 喫茶店を出た後、建物の影に沈みつつある柔らかい夕陽を浴びながら、乃梨子と祐巳さまは街路樹の下を並んで歩く。
時折、セーラーを揺らす緩い風が心地よい。
 店では涙ぐんでいた祐巳さまは普段の明るさが戻って、いや、むしろ普段以上にはしゃいでいるようにみえる。
何気ない話題でも、まるでツボに嵌ったようにころころと笑ってたり、ふざけて乃梨子の背中を軽くたたいたりと、
少し落ち着きのない子どものようだ。
 あまりのはしゃぎように流石に違和感を覚えて、どうしたのですかと、尋ねた直後――
 祐巳さまは乃梨子の身体を引き寄せ、恐ろしい程真剣な表情を閃かせながら囁いた。

「私達、つけられているよ」


(つづく)
179名無しさん@ピンキー:2009/11/09(月) 01:53:22 ID:/TVC5Ymm
続きが気になルーン
180名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 13:01:10 ID:jtF93hnv
つづきマダー
181名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 18:57:03 ID:kvIQe+Pj
>>180
投下したばかりなので、暫し待って。
182名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 03:01:38 ID:ecyUsSKk
今読んだ。
文章も構成も洗練されていて上手いな。
GJ
続きもこの水準で頼む。
183名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 22:51:39 ID:yzt5ULmK
素敵だ…
184面影を求めて:2009/11/20(金) 02:36:06 ID:u4c61Vxk
>>181氏の神SSがなかなか来ないので、真理満てSS書いてみたwwwww



「ねえ、祐麒って彼女とかいないの?」
「……はあ?」
 突然といえばあまりに突然の姉の問いかけに、
祐麒は素っ頓狂な声を上げたのだった。
 ――ある、暑い夏の日のことである。

「何だよ、いきなり変なこといいだして」
 二人は今対面してベッドの上に座っている。
呆れ顔でいう祐麒に、祐巳はちょっと俯く。
「ん……祐麒って、ほら、あれでも花寺の男の子だし。
今までそういう話とか聞かないからさ。お姉ちゃんとして心配で……」
 ……まったくこの姉はいきなり何を言い出すのだが。
祐麒は心の中で一人ごちた。
自分の方こそ我が身を心配したらどうなんだろう?
祥子さま祥子さまばかり言って。
 例の柏木のせいで変な誤解を持たれてはいるが、
自分だってもう、年頃の男なんだ。愛しく思う子の一人ぐらいいる。
 ……そうさ、一人くらい――
「ねえ、祐麒ってば」
「わッ」
 思わず変な声を出してしまった。すぐ目の前に祐巳の顔があったから。
いつの間にかすぐ間近に迫った祐巳が、弟の顔をきょとんと覗き込んでいた。
「あんた、何ボ−ッとしてんのよ」
「うるさいなッ、放っとけよ」
「何よそれ! ここは私の部屋でしょ」
 結局、クーラーの利いたその部屋から、祐麒は追い出されたのだった。

 ――夜。

 夏の暑気は月が闇に差し込んで、まだ、冷まされない。
湿り気を含んだぬるい風がひたすら肌にまとわりつく。
あまりの寝苦しさに耐え切れず、祐麒はベッドの上で寝返りを打った。
185面影を求めて:2009/11/20(金) 02:36:30 ID:u4c61Vxk
「んっ……」
 これでも自分が思春期の男だからだろうか。
こんな夜は無性に恋しくなる。――誰かを。求めて。
眠ろう、眠れない、それでも眠ろう、意識を沈静に集中すればするほど
いや増しに、取りとめも無い、卑しい妄想が頭の中を駆け巡っていくのだ。

(――祐巳……)

 きゅっと、枕を掴んだ。

 初めは頼りないだけの姉だった。
でもいつからか、自分の中でかけがえのない大きな存在になっていた。
ずっと心に決めていたんだ。
祐巳は、祐巳は俺が守るんだって。
ずっとそう誓って。
でも身体はどんどん大きくなっていく。
祐巳も、自分も。
大人になっていく。
ただ守るだけの存在ではなくなった。
じゃあ、俺はどうすれば?

「祐巳……」
 暗闇の中、一人呟いてみせる。
心に秘めた思いは解き放てば放つほど、切ない。
「祐巳ッ……俺、祐巳のこと……」

 抱き枕を抱きしめて苦しげに呟く。
そうして、祐巳を抱いているような気になっていた。
――祐麒は寝巻きの下衣に手を差し伸ばした。

 そしてそこ――彼の心を苦しめる、”男”としての部分に手を触れたのである。
186面影を求めて:2009/11/20(金) 02:36:59 ID:u4c61Vxk
「あっ……」
 そこはもう存分に固くなっていた。祐巳を想うだけでこうなってしまったのだった。
祐巳を、祐巳のすべてを欲しいと、肉の体が姉の全てを望んでいるのだった。

「んっ」

姉の顔を思い浮かべながら、軽く指で筋をなぞって見る。
それだけで痺れるような感覚が頭を突き抜ける。そのまま握った。

「は……ああ……」

 自身を上下に運動させる。屹立した勃起の出っ張りが、その度に圧迫を受ける。
祐麒の自身は鮮やかなはピンク色で、清潔で艶があり、若々しく存分固かった。
その硬さが握力を手に押し返してくる。その度に脳に電撃が走る。狂いそうになる。

「うう、祐巳っ……」

(祐麒、ねえ、祐麒)

(私、祐麒のこと好きだよ)

(お姉さまよりも誰よりも)

(私を守ってくれる……祐麒が好きだよ)

「祐巳ぃぃっ!! っあああっ!!」

 祐巳が微笑みかけた。瞬間、弾けた。

「ああっ!! あん、ああああっ!!」

 陰茎からビクビクゥとザーメンの迸りが先走る。
濁液は中高く飛び上がると、そのまま垂直に近い放物線を描いて落下した。
べちゃっと、横たわる、裸の胸に落ちかかる。胸板を、そっと撫でた。

「はあ、はあ……ゅみっ」
 ちらっと姉に聞かれなかったかだけ心配して、彼はそのまま気を失った。
187面影を求めて:2009/11/20(金) 02:37:23 ID:u4c61Vxk
 ――翌朝。

「なあ、何で俺が付き合わなければならないんだよ」
「なによ、いいじゃない、それくらい」

 ――K駅である。雑踏の中である。
 今その中、祐麒はちょっと間抜けなさまで、荷物を山として抱えていたのだった。
つまり「お買い物中」というわけであって、お姉さまと初デートしたあのK駅前○×アーケードで、
今、祐巳は祐麒と買い物中なのであった。言うまでも無く、祐麒は荷物もちである。

「何で俺がせっかくの休みに祐巳の相手なんかしなきゃならないんだよ」
 祐麒はさも嫌味げに文句を言ってやる。表情を故意に作って。
「まあ、ごめんね、祐麒。後でチョコレートパフェでもおごるから」
「だったら勘弁してやるよ」

瞬間、その背後から声が掛かった。

「祐巳さまっ?」
「あれ、あなたは……」

 祐麒が振り向いた先、縦ロールの気の強そうな少女が立っていた。
フリルの服を着て、手には手提げを下げている。

「瞳子ちゃんじゃないの! わあっ、どうしたの、こんなとこで」
「べ、別にK駅前で祐巳さまとお会いしても、おかしくなんかないでしょう!」
 縦ロールの少女は一瞬に顔に朱をさして、そして口先を尖らして見せた。
手提げには何やら詰まっているのである。
「演劇部で必要なお裁縫の買出しに来ていたんです! 」
一気に台詞をまくし立てるように喋った。
「私だって、山百合会で祐巳さまのお手伝いばかりして居るわけにはいかないんですからね」
それだけ言うと、ぷいっと横を向く。祐巳と会いたくてこの辺りをうろついたという訳では、
決してないという訳だ。が、そこで、ふと目の前の少年に気づいた。

「……この前の」
「あ、失礼しました。この前はどうも。松平瞳子です」

 お互いに目が会う。そして一礼する。すると、再び目があった。
二人はしばし見詰め合っていた。

「柏木先輩の――福沢……福沢祐麒です」
188面影を求めて:2009/11/20(金) 02:37:49 ID:u4c61Vxk
――暗転、某所某家

 それから、二人は良く逢うようになった。祐麒と瞳子、
本来はつながりなど無いはずの二人であったが、
実際には二人を強力に結びつける紐帯があったのである。
「祐麒さん、こんなのはどうでしょうか?」
「うーん、まあいいんじゃない」
 瞳子が見せ付ける、白いポンチョ。裏側には中々こった仕掛けが施されているのである。
 二人はとある住居の一室で、二人で身を寄せ合って向かい合っていた。
「だけど、大分派手だね」
「派手なのは嫌いですか?」
 途端、眉を憂いに歪める瞳子に、祐麒はちょっと笑って、
「いいんじゃない、祐巳はあまり派手なのは好きでないけど、そういうの喜ぶと思うよ」
「…………」
 瞳子は少し黙った見せる。祐麒は苦笑いした。
「俺の好みが祐巳の好みに近いと思ってるんでしょう?」
 ずばりと核心を突かれて、瞳子は反って落ち着いたようにいった。
「祐巳さまのポンチョ、見てられないんですよ。ずっとお古で、テルテル坊主みたいです」
「それでみっともない姉のために用意してくれるんだ。親切なんだね、君は」
「……親切、ですか」
 瞳子はちょっと笑って、
「あの方があなたくらい鈍くなければ、どんなに楽かって、憎くなる事もありますよ」
「瞳子ちゃん、一ついい?」
 祐麒は、瞳子をじっと見据えて、言った。
「俺は祐巳の代替品だよな」
 しばしの沈黙。
「ごめんなさい……」
 瞳子は少しだけ俯いて、声を搾った。
「私だって分かってるんです。あんな意地悪をやった私を、今更――」
 そっと肩を掴んだ。なぜなら、少し震え始めていたから。
「いいんだよ、それで」
 まっすぐな瞳が上を見上げる。
「今は俺だけを見てくれればいい」
 瞳子が見上げる。二人はしばし目と目で見詰め合った。
 ずっとそうして。それから、二人は口付けを交わした。深い、深い口付けを。
「ん……んんっ……」
 甘い吐息が漏れる。ぴちゃぴちゃ二人の唇はお互いを湿らせて、濡れた音を響かせる。
粘膜と粘膜が擦れ合い、舌と舌とが絡み合う。恋人同士のような、濃厚な口付け。
「あっ」
 そのまま肩を掴むと、祐麒は瞳子を押し倒した。
189面影を求めて:2009/11/20(金) 02:38:10 ID:u4c61Vxk
「怖い?」
「少しだけ」
 瞳子ははにかむように笑って見せる。ちょっとの不安を裡に含んで。
「んっ、あっ……はあっ!」
 途端、瞳子の身体がビクンと震えた。祐麒の手が動き始めたのである。
祐麒の手は瞳子の全身をまさぐっていく。優しく身体の稜線を撫ぜて、指は突起から臍へと導かれる。
そして、その下にも。
「ああ、そ、そこっ……!」
 瞳子が切羽詰った声をあげた。祐麒の手はフリルのスカートの下から、
その部分を圧迫している。
「瞳子ちゃん、いいんだね」

 耳元で囁いてやる。途端耳朶が朱に染まるのが分かる。誰かの声を連想して。
「祐麒さ……っ!」
「いいよ、もっと声を出して」
 驚くほど敏感に祐麒の指使い一つ一つに瞳子の体は悦びをあらわすのである。
 確実に高みへと昇りつめていく、その様子を祐麒は少しだけ冷めた様子で眺めていた。
今自分の下で息絶え絶え喘いでいる少女。彼女は実は自分の思い人に抱かれている。
そう思って、自分も、その人と一体化したような気になっていた。
そして、そのたびに、心のどこかが軋んだ。
「瞳子ちゃん、かわいいよ。すごくかわいい。もっと声出して」
「ふう……っ!」
 祐麒の手指は乳房の膨らみを指で弾いたり、摩ったりしている。
もう一方の手は、ショーツの上を這いずり回っている。
「祐巳さ……祐麒さん、わたくし……っ」
「駄目だよ。それだけは、ケジメをつけなくちゃ」
 そう言うと、祐麒は指の動きを加速させる。力も強める。
それだけで、瞳子の性感は満たされていく。
「ああっ、もう駄目、もう駄目ぇ!」
「イッていいよ、ううん、イカせてあげる。瞳子ちゃん、誰よりも――私の好きな」
 その瞬間、瞳子の中であの人の面影が走った。そして同時に快楽の極限に達した。
「ふっ、ああああっ!」
 瞳子の身体が仰け反って、何度も上下する。そのさまを、祐麒はぼんやりと眺めていた。
「瞳子ちゃん、瞳子……」

 ――後日、リリアン女学園文化祭の打ち合わせで、二人は再び会うことになる。
190面影を求めて:2009/11/20(金) 02:39:15 ID:u4c61Vxk
「祐麒、ちょっと来なさい」
 いつもより、遥かに険しい姉の顔だった。
夏も明けたさる日の午後、本来は男子絶対禁制であるはずの乙女の園。
そこに似つかわしくない少年は、中庭のはずれの寂れた温室に、
今こうして呼びつけられていた。二人は向かい合って立っていた。
「何だよ、祐巳」
 祐麒は少しうんざりしたように呟いた。
会議が一段落して、その途端、祐巳はついてくるよう祐麒に申し渡したのだ。
「何だ、じゃないでしょ」
 祐巳は、祐麒をつよく睨んだ。
「祐麒、あんた瞳子ちゃんとどういう関係なの?」
「――――」
 まず馬鹿な、と思った。それから頭が真っ白になった。
だが、百面相は多少遺伝子を共有しているらしかった。
「――瞳子ちゃんから聞いたのよ。それに、鈍い私でも少しくらい気づいてた」
「…………」
「祐麒、どうしてっ!」
 祐巳は祐麒の肩を掴んだ。それから、思いっきり強く揺さぶった。
「どうしてなのよっ!? 瞳子ちゃんのこと、あんた無邪気でかわいいって言ってた。けど、だからって、
何で汚すようなことしたの!? 祐麒も瞳子ちゃんも、まだそんなことするには早すぎるんだよ!!」
「…………」
「黙ってないで、答えて! 祐麒」
「まだ最後までしてないよ。ペッティングだけさ」
 瞬間、祐麒の手が動いた。祐麒は祐巳の手を掴んだ。
「んっ……!」
 祐巳の目は見開かれていく。唇から苦しげな――というより、驚愕しきった、
そんな吐息が漏れた。祐麒を平手で打とうとした祐巳は、手首を掴まれて、
そしてそのまま抱き寄せられて、そして唇と唇を触れ合わせていた。
「……うっ!」
 どん、と暴れる祐巳は祐麒を突き飛ばす。祐麒の方でももう力を抜いていたから、
非力な祐巳でもその縛めから逃れる事が出来た。
「……っ!」
 祐巳の目が潤んでいく。百面相は「どうして!?」と錯乱している。
そんな祐巳を祐麒は悲しげに見つめていた。祐巳は、背を向けて走った。
「――これで良かったんですよね」
背後から声がかかる。
「これで……これで良かったんですよね」
「ああ」
 湿った声は振り返らずとも泣いていると分かった。
祐麒は背中を向けたまま、一言頷いて見せた。


(終わり)
191名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 19:34:46 ID:xK2dG1zI
マイナーなギャルゲーSS祭り!変更事項!

1. SS祭り規定
自分の個人サイトに未発表の初恋ばれんたいん スペシャル、エーベルージュ、センチメンタルグラフティ2、canvas 百合奈・瑠璃子シナリオ
のSSを掲載して下さい。(それぞれの作品 一話完結型の短編 10本)

EX)
初恋ばれんたいん スペシャル 一話完結型の短編 10本
エーベルージュ 一話完結型の短編 10本
センチメンタルグラフティ2 一話完結型の短編 10本
canvas 百合奈・瑠璃子 一話完結型の短編 10本

BL、GL、ダーク、18禁、バトル、クロスオーバー、オリキャラ禁止
一話完結型の短編 1本 プレーンテキストで15KB以下禁止
大文字、太字、台本形式禁止

2. 日程
SS祭り期間 2009/11/07〜2011/11/07
SS祭り結果・賞金発表 2011/12/07
192名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 19:35:26 ID:xK2dG1zI
3. 賞金
私が個人的に最高と思う最優秀TOP3SSサイト管理人に賞金を授与します。

1位 10万円
2位 5万円
3位 3万円

(1) 初恋ばれんたいん スペシャル
初恋ばれんたいん スペシャル PS版は あまりのテンポの悪さ,ロードは遅い(パラメーターが上がる度に、
いちいち読み込みに行くらしい・・・)のせいで、悪評が集中しました。ですが 初恋ばれんたいん スペシャル PC版は
テンポ,ロード問題が改善して 快適です。(初恋ばれんたいん スペシャル PC版 プレイをお勧めします!)
初恋ばれんたいん スペシャルは ゲームシステム的にはどうしようもない欠陥品だけど。
初恋ばれんたいん スペシャル のキャラ設定とか、イベント、ストーリーに素晴らしいだけにとても惜しいと思います。

(2) エーベルージュ
科学と魔法が共存する異世界を舞台にしたトリフェルズ魔法学園の初等部に入学するところからスタートする。
前半は初等部で2年間、後半は高等部で3年間の学園生活を送り卒業するまでとなる。
(音声、イベントが追加された PS,SS版 プレイをおすすめします。)

(3) センチメンタルグラフティ2
前作『センチメンタルグラフティ1』の主人公が交通事故で死亡したという設定で
センチメンタルグラフティ2の主人公と前作 センチメンタルグラフティ1の12人のヒロインたちとの感動的な話です
前作(センチメンタルグラフティ1)がなければ センチメンタルグラフティ2は『ONE〜輝く季節へ〜』の茜シナリオを
を軽くしのぐ名作なのではないかと思っております。 (システムはクソ、シナリオ回想モードプレイをおすすめします。)

(4) canvas 百合奈・瑠璃子シナリオ
個人的には 「呪い」 と「花言葉」 を組み合わせた百合奈 シナリオは canvas 最高と思います。
193名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 19:55:19 ID:YT49UZK8
>>188
瞳子、とうこおおお汚汚汚汚汚汚汚汚汚汚汚汚汚汚汚汚汚汚っ!!!
ぐっじょ!! はぁ……むくわれねーなー
194名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 22:21:22 ID:uUY5tUoE
>>190
たまらんGJ!
195破綻:2009/11/23(月) 15:03:04 ID:Z/JEH2Am
もう一作、マリみて聖さま凌辱、閲覧注意。

大学に入学して一年目の冬、聖の父の事業は倒産した。
長引く不況、そして何より、さる取引で不渡り手形を渡されたことが原因だった。
聖の実家は破産して、一家は忽ち一文無しとなった。

昨日までロサ・ギガンティアと慕って来ていたお嬢さまたちは、
手の平を返したように冷たくあしらう。
父は消息を絶った。母は正気を失った。
そして聖は、大学を中退し――絶望の中日々を送る。

「クスクス、あれが元白薔薇さまですって――」
「汚らしい――」

今日も聖はK駅の南口で、ぼんやりとしゃがみこんでいた。
元の家は借金のために差し押さえられた。
あばら家では母が一人でブツブツと呟くばかりで、聖に居場所などなかった。
ゴミ溜めの中、呆然とする聖はリリアン生徒の良い笑い話の種だった。

「――聖さま?」

ふと面を上げる。雨の中、一人の淡い髪の少女が傘差して佇んでいた。
「祐巳……ちゃん……」
煤けた顔を向ける――その顔はあまりにも、無残だった。
身体中にゴミ溜めの塵芥を浴び、かってロサ・ギガンティアと呼ばれた輝きは無かった。
そして、それを見る祐巳の顔は――

(いやだ……)

(こんな姿、祐巳ちゃんにだけは……)

(この子にまで拒絶されたら、私は――)

だが――運命は残酷だった。祐巳はきびすを返して走り去ったのである。
二度と振り返らないで。
196破綻:2009/11/23(月) 15:03:28 ID:Z/JEH2Am
「あ、あああ」
聖はふらふらと雨の中に歩み出る。そして、膝を折った。
雨はますます激しくなる、雨音が絶望を飲み込んでいく。

――どれだけそうしていただろう。かすかな日は完全に闇に変わっていた。

どしゃ降りの中、死んだように虚ろな聖の瞳に人影が映った。

「濡れますよ」
「…………」
祐麒は水色の傘を差し出すと、かがみこんで聖の顔を覗きこむ。
瞬間、聖は祐麒に抱きついていた。
「聖さん?」
「う、うわアァァァ――――ン!!」
そのまま祐麒の胸の中で子供のように泣きじゃくる。
「聖さん……」
そんな聖を、祐麒はきゅっと抱きしめてやった。

雨の中、二人はいつまでもそうあるかのごとく抱き合っていた。

「大丈夫です、祐巳はそんな奴じゃありません」
どしゃぶりの中、とりあえず逃げ込んだ花寺の生徒会室。
祐麒はとりあえず、タオルケットをかけてやって、熱い飲み物をふるまう。
「もし祐巳が本気でそんなことをしたのなら、俺がただじゃおきませんから」
だから、安心してくださいと。
「――……」
ちびちびとココアを啜っていた聖が、ゆっくりと面を上げた。
「祐麒は優しい子だね……」
そのまま、涙でぬれたまなこをぬぐう。

「あんな風に泣いたの、久しぶりだよ」
「聖さん……」
そういうと、聖が立ち上がった。
「せ、聖さん!?」
突然のことに慌てる祐麒。だけど、はねのけようとする、その腕がピタリと止まる。
「お願い、今だけ、何もかも忘れさせてよ――」
聖の肩が胸の中で細かく震えているのに気づいたから。

――そうして、二人は一夜をともにした。
197破綻:2009/11/23(月) 15:03:53 ID:Z/JEH2Am
愛を交わした後、祐麒は強く聖を想うようになる。
裸の聖を抱きながら、紅潮した顔で、真面目に愛を誓うのだった。

「安心してください、聖さんのお金、俺がなんとかします――」

(祐麒――)

何でも、自分が必死にバイトしてお金を稼ぐだとか、
花寺生徒会の連中にも援助させて、募金も行うだとか。
道路工事でも何でもして、絶対にお金をつくるからと。
生徒会長の責務を負いながら、そんなこと、到底不可能なのに――

(やっぱり、祐巳ちゃんの弟なんだね――)

だからこそ、迷惑はかけられない。
そのまま、疲れて眠る祐麒の頬を撫でて、聖は一人雨の中消えていった。

そして――

「よく来たねぇ〜」
どんより空が空を覆う中、聖は都内某所にある雑居ビルの中にいた。
ビデオプロダクションといえば聞こえはいいが――要するにアダルトビデオの製作会社だった。
「じゃ、これにサインして」
何やらやたら細かい文字が詰め込まれた契約書に判を押させられていく。
マネージャーの男はあのリリアン女学園の卒業生と知り、興奮を隠せない。

(マリアさまは、許してくれるはずないよね――)

自嘲気味に笑った。窓の外。街並でなくて浮かぶのは、あの子の面影。
これから穢れてしまう自分には、もう一生と彼女と会う資格はなくなるだろう。
でも、それでいい。とっくの昔に決めたことだから。それでいいんだ――

「へへっ、リリアンの薔薇さまとおま×こできるのか、たまらないぜぇ〜」

撮影の時になる。聖は男どもに囲まれた。
金のため、敢えてハードなプレイを希望した聖は、複数の男優どもに嬲るように犯されるのだった。
「あぐぅ……ぐぶっ!!」
聖は男の真っ黒な男根を口中深くまで押し込まれる。
そのまま口内発射され、生まれて初めて、男のザーメンを飲み込まされる。
198破綻:2009/11/23(月) 15:04:15 ID:Z/JEH2Am
「ううっ、ごほごほ……げほっ」
「ほら、今度はこっちをくわえろよ」
「あはぁ……」
休む間など与えられず、すぐに次の肉棒が聖の口を塞いだ。
やがて、男たちは聖を組み敷く。――聖の柔肉を蹂躙するのである。
「なんだこれ、処女みたいなおま×こだな」
男がラビアの襞を指で押し広げた。目にも鮮やかなピンクのクレヴァスが露わにされる。
そうして、震えてじっとしている聖の其処に肉棒の先を宛がうと、男は一気に腰を落とした。
「――っ!!」
聖の身体が身なりに反った。破瓜の激痛に涙が滲む。
とうとう、聖の処女は破られたのだ。そして、秘所にペニスが潜り込んで行く。
「ああっ、うあああッ……!!」
絶望しきった顔で泣きながら、聖はそのまま横たわっていた。
その上に何人もの男が乗っかっていく。
(祐麒――、祐麒――)
そのとき、

「ハハハ、いいざまじゃないか、佐藤聖――」

意外な人物の声が響きわたった。

「! お前は、柏木――」
「フフ」
柏木――柏木、優。

「な、何でお前がこんなところに――」
「ここはウチの系列なんだよ。一見、分からないように装っているがな」
そう云うと、ひょいとビデオカメラを覗き込む。
「このAVは駄目だな。没にしよう」
「――!!」
聖の瞳が驚愕に濡れていく。
199破綻:2009/11/23(月) 15:04:41 ID:Z/JEH2Am
「そ、そんな……ふざけるな!!」
「ふざけてなどいないさ」
肩をすくめる柏木。
「これをよく見てみろ」
「……!」
契約書には非常に細かい字で、隅の方に都合のいいことが書いてある。
死ぬ思いまでして、それで金はビタ一銭もでない。
(嵌められた――)

「そんな、そんな……」
「どうだ、悔しいか? 君は喉から手が出るほどお金を欲しいはずだよな」

美貌に白い歯を浮かべて柏木がいう。
「ぜぇ〜んぶ、パーになってしまいましたぁ!」
そのまま「ひゃははは」と笑う。
「今月中にン百万、アシ詰めないとまずいんだろ?」
笑いながら暴いていった。聖の惨めきわまりない身の上を。
「ヤミ金融の追い込みって怖いよな。このままじゃ、
どのみち君はソープに沈められるか、内臓売りさばくより他ないよね」
「…………」
ところでさ、と柏木が話題を転じる。
「僕は今新しい玩具をさがしてるところなんだ」
「…………」
そのまま黙りこくる聖の上に、その言葉を投げかけた。
「君が僕の玩具になるなら、借金を肩代わりしてやるよ?」

「なっ……?」
わなわなと聖の肩が震え出す。
「聞こえなかったか? 君のその身体を玩具にしたいと言ったんだ」
「ふ、ふざけるなっ!!」
怒鳴り散らす聖。目には涙とともに怒りの炎が赤赤と燃えている。
「お前にそんなことをされるくらいなら、死んだほうがマシだ!」
「フーン、あっそう」
そういうと、柏木はひょいとビデオカメラを手に取ってみせた。
「ところでこれ、ビデオ自体は別に没にするわけじゃないんだよね」
「……!」

ニタァと柏木が笑った。
「お前の関係者のところにばら撒くぞ? コラ?」
「貴様……っ」
200破綻:2009/11/23(月) 15:05:34 ID:Z/JEH2Am
聖がぎりっと奥歯を噛む。そこへ柏木が言葉を継ぐ。
「久保栞――っていうんだっけ?」
瞬間、聖の顔がぴたりと凍りついた。
「ウチの財力で彼女の現住所調べることなんて、簡単なんだよね」
そのまま笑みを浮かべる。匂うような美貌に。悪魔の笑みを。
「このビデオを送っりつけてやってもいいんだぞ」
「!! ――やめて! お願い、それだけはやめてぇぇ――――っ!!」
途端、狂ったように金切り声をあげる聖。
気高い少女が自分の前にひざまずいたことを知ると、柏木は「フフ」と口の端を歪めた。
「それが嫌なら――」
そして、笑いながらこう宣言した。
「何もかも、僕の言う通りになるんだな――」

――こうして、聖は柏木の奴隷となった。


ある日、祐麒は柏木邸に呼び出された。

「なんだってんだ、あいつ――」
本当は来たくなかったが、祐麒としては絶対に無視する事はできなかった。
『佐藤聖の居場所を教えてやるよ――』

こう、言われたのだから。

(聖さん、聖さん――)
必死の形相で聖を探してきた祐麒は、もう疲れきっていた。
そして、ふすまを開けると――

「!!」
「よく来たな、ユキチ――」

そこに見たものは――

「せ、聖さん……」

「――……」
聖は淫らなラバースーツを着せられ、柏木の肉棒を頬張っていた。
柏木がにやつきながらその頭をなでる、その下で、顔を上下してフェラチオを続ける。
「な、何やってんだ……っ!!」
祐麒が柏木に詰め寄って襟首を掴み上げた。
「やめろぉ! 聖さんを離せえええっ!」
「離す、だって――?」
柏木はフンと鼻で笑う。
「ユキチ、誤解しないでくれよ。この女は自分から喜んでやってるんだぜ?」
「デタラメを言うな!!」
絶叫する祐麒。だが。
目を向ける、聖は祐麒から顔を背け、無言でうつむく。
「――!!」
祐麒の瞳が驚愕に開かれていく。
祐麒は聖の肩を掴んだ。
「聖さん、嘘ですよね、こんなの嘘ですよね――」
「…………」
201破綻:2009/11/23(月) 15:09:56 ID:Z/JEH2Am
「俺、あれから頑張ったんですよ。一生懸命バイトして、
うちの仲間にも頼んで、リリアンにもお願いに行ったんですよ?
祐巳ももう一度聖さまにお会いしたいって、そして聖さまに謝りたいって、そう言って――」
「――あんた、勘違いしないでよ」
聖が沈黙を破って言葉を発した。

「たった一回ヤラせてあげたからって、彼氏気取ってんの? バカじゃない?」
わなわなと震える祐麒を前にして、聖は冷たい声で言葉を紡いでいった。
「柏木の方があんたなんかよりよっぽどいい男だよ? とっとと消えて!!」
「――っ!!」
祐麒は弾けたように立ち上がると、そのまま駆け出していった。
振り返りもせで。

「フフフ、よく言えたじゃないか――」
柏木がからからと笑う。その中で、聖は絶望の底にいた。

(祐麒、祐麒――)

(私、何てことを――)

取り残された聖は一人、犯されたままの裸体をさらして泣きじゃくっていた。

(私、なんて、なんて醜いことを……)


「ごめん、祐麒ごめん……」
そのままうつ伏せ、泣き続け、そして隠していた道具を手に取った。
――カミソリを。

「もう耐えられないよ、ごめん、栞、祐麒――」

そして聖は手首を掻っ切った。









そして――

「なんだ、あの女、死にやがったか――」

柏木はさしたる感慨も無くつぶやく。

「折角、手に入れた玩具だったんだけどな。
折角――あの女の実家が破産するよう、仕組んでやったんだがな」

笑い、呟くと、立ち上がった。涙の亡骸を背にして。


(終わり)
202破綻:2009/11/23(月) 15:10:48 ID:Z/JEH2Am
以上。あんまりエロくなくてごめん。>>181氏の神SS期待してる。
203名無しさん@ピンキー:2009/11/23(月) 18:32:26 ID:UfE/+Mdf
鬱おっきが止まらない。
ぐっじょ!
204名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 00:41:15 ID:VKJqsHo9
すげえ…
超GJ&乙です
205名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 20:16:16 ID:ft+ffU+s
>>178の続き

4.

 私は今、何をしているのだろう。
 寄り添うようにして前を歩く、祐巳さんと乃梨子のセーラーを追いながら、志摩子は自問自答を繰り返している。
 由乃さんに誘われるがままに、まるで浮気調査に勤しむ興信所の人間のように、二人の尾行を続けているけれど、
やはり良心の呵責に、苛まされずにはいられない。
 妹の乃梨子も、山百合会の同僚で親友の祐巳さんも、志摩子にとってかけがえのない大切な存在なのに、
彼女達を疑い後をつけることは、どう言い繕っても正しい行為と強弁することはできそうになかった。
 それでも、二人の尾行をやめないのは、昨日、由乃さんが志摩子に突き刺すように言った言葉が脳裏から離れないからだ。

『志摩子さんは偽善者だね』

 由乃さんは、強烈な批判にあっけにとられている志摩子に近寄ると、一転して悪魔のように甘く囁いてくる。
『ねえ。志摩子さん。祐巳さんと乃梨子ちゃんとの間に、何も無いことを確認すれば安心するんじゃない?』
『そう…… かしら』
『そうよ。あの人が良い祐巳さんがね。志摩子さんの大切な妹を横取りすることなんてありえない。それを確認するだけよ』

 乃梨子が祐巳さんと付き合うなんてありえない。
 真面目な乃梨子が浮気をするなんてありえないし、いつも優しい祐巳さんが志摩子を傷つけるなんてありえない。
 あの一年前の雨の日、ロザリオを貸して欲しいと言うことで、乃梨子は志摩子の妹になったけれど、今では
ロザリオによって繋いだ絆は、どの姉妹よりも固いものであるはずだった。
 それでも、ほんの少し心配だから、乃梨子と祐巳さんには申し訳ないけれど、ちょっと確かめることによって、
懸念を解消したいだけ。それで疑うことはなくなるはずだ。
206名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 20:19:03 ID:ft+ffU+s
 しかし、志摩子の都合の良すぎる願望は、仕事を済ませて先に帰宅したはずの乃梨子が、学校の傍にある書店で
祐巳さんと落ち合った瞬間にあっさり崩れ去った。
「嘘……」
 影から二人の姿を認めた志摩子は、ショックで崩れ落ちそうになる身体を、本棚に寄りかかって懸命に堪えることしかできない。

『乃梨子ちゃん。どうしたの?』
 一方、不安げな表情を浮かべている乃梨子の顔を覗き込みながら、祐巳さんは尋ねている。
 乃梨子と祐巳さんは二つ、三つと言葉を交わしたようだが、周囲の喧騒もあってよく聞き取れない。それでも、最後に祐巳さんが、
『乃梨子ちゃん。隣の喫茶店にいこう。そこで悩みを話して欲しい』
と、促すように加えた言葉は、何とか聞きとることができた。

「これで疑惑は確定ね。志摩子さん」
 祐巳さん達が、隣の喫茶店に入ったことを確認してすぐに、由乃さんが腕組みをしながら絶望的な宣告をした。
「偶然…… そう、偶然、会っただけかもしれないわ」
 この目ではっきりと密会の現場を見ても、志摩子は受け入れることができないでいる。
「何、お花畑みたいなことを言っているの?」
 事実から目を逸らそうとする志摩子を見て、由乃さんはあきれたように肩をすくめた。
「先に用事があると言って帰った乃梨子ちゃんが、偶然、祐巳さんと学校前の本屋でばったり出会ったなんてありえない。
志摩子さんだって本当は分かっているでしょ?」
「でも……」
「まあ、信じたくない気持は分かるけれどね。でも今は、きちんと現実を見るべきだと思うわ」
 由乃さんは、微かに志摩子に同情するような視線を一瞬だけ向けてから、改めて断言する。

「祐巳さんと乃梨子ちゃんは浮気をしている」

「浮気……」
「そう、浮気よ。薔薇さまと色の違うつぼみの浮気なんて、山百合会を揺るがす大スキャンダルだわ」
 由乃さんは呟くように言ってから、喫茶店の外壁に背中を押しつけるようにもたれかかった。

207名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 20:19:54 ID:ft+ffU+s
 一体、何がいけなかったのだろうか?

 今まで乃梨子は、志摩子に対して不満らしいことを何も言わなかった。
 乃梨子とはケンカはおろか、軽い言い合いをしたことすら稀だった。もしかして、それが悪かったのか?
 乃梨子は志摩子の知らないところで、ストレスや不満を抱いていたのだろうか?

 西の空に傾いている夕陽から長く伸びる影法師を眺めながら考えていると、由乃さんが再び口を開いた。
「あーあ、私と祐巳さんの友情はどこにいったのかなあ」
 夕陽を浴びた由乃さんの、山吹色に染まった横顔はとても寂しそうだ。
「一言、私に相談してくれてもいいのに」
「相談してもどうにもならないと思ったのかしら」
「まあね」
 由乃さんは、足元をみながら深いため息をついた。

 以前…… 先々代の紅薔薇さまである蓉子さまが、志摩子と由乃さん、そして祐巳さんの三人が薔薇さまになったところを
見れないのが残念だと話されたことを、お姉さまの口から聞いたことがある。
 蓉子さま達が卒業されてから一年が経ち、三人は薔薇さまになった。
 祐巳さんは蓉子さまの期待どおり、見事に大輪の花を咲かせ、由乃さんはますます活動的になっている。
 志摩子も大過なく薔薇さまとしての役割を果たしていけると、今までは思っていた。しかし――

「どこで間違ってしまったのかしら」
 志摩子は先程思ったことを、今度ははっきりと口に出した。
「何もかもよ」
 志摩子の呟きに答えた由乃さんは、右足を振り上げて小石を蹴飛ばした。
 黒っぽい石はアスファルトの路面を転がるようにして駆け抜け、側溝に消えていった。
208名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 20:20:28 ID:ft+ffU+s
 しばらく待っていると、再び入口の扉が開いて祐巳さん達が出てきた。
 沈みゆく秋の、柔らかすぎる日差しを浴びながら前を歩いている祐巳さんはやけに上機嫌で、からからと笑って、乃梨子のセーラーを
ぽんぽんと叩いている。
「祐巳さん。喫茶店でお酒でも飲んだの?」
 あまりにも陽気な様子に、由乃さんは不審そうに眉をひそめた。
「流石にそれはないと思うけれど」
 志摩子も首を捻ったけれど、祐巳さんのはしゃぎっぷりは変わらない。

 尚も尾行は続くが、その後は特筆すべき変化はなく、どうやらM駅まで到着してしまいそうだ。
 ここでバス通学である祐巳さんは、乃梨子と別れることになる。

「M駅までは、何もなかったわね」
「でも……」
 志摩子はわき上がる嫌な予感を抑えることができない。
「私、乃梨子の後を追うわ」
「志摩子さん。あまり乗り気じゃなかったのに」
 由乃さんは、やや不審そうな顔つきで尋ねてくる。

「とても嫌な予感がするのよ」
 志摩子は身体を震わせながら言った。どうにも嫌としか言いようがない予感が身体にまとわりついて離れない。
「そう」
 一方、由乃さんは暫く考えた後、小さく首を横に振った。
「私はやっぱりやめとく」
「どうしてって、聞いても良いかしら?」
 尾行の提案者にしては、あきらめが良すぎるような気がする。
「私も嫌な予感がするから…… やめる」
「それなのに、追うことをしないの?」
 志摩子の問いに、由乃さんは更に、二度首を振ってから答えた。
「うん。家に帰って令ちゃん特製のバウンドケーキでも食べて、出したばかりのこたつに潜り込んでテレビを見ることにするわ」
「そう……」
 結局、これ以上の追跡を断念した由乃さんとは、M駅で別れることになった。
209名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 20:22:59 ID:ft+ffU+s
 祐巳さんと乃梨子も、M駅の改札口の近くで離れ離れになった。
 多くの通勤客や通学客が忙しなく構内を行き交う中、祐巳さんはバス乗り場へ、乃梨子は電車のホームへと歩きはじめる。
「どうしよう?」
 志摩子は一瞬迷ったが、妹である乃梨子の後を追うことに決める。
 乃梨子は改札口を定期をかざして通り抜けると、ホームに入り、電車を待つために列の最後尾に並んだ。
 少し離れたところから様子を伺うと、乃梨子はどうにも落ち着かない様子で、身体をゆすったり足を踏みならしている。

 5分程経つと、アナウンスと共に電車が滑り込むように入ってきた。
 車両の自動扉が空気が漏れるような音とともに開き、乃梨子は他の乗客に混ざって中に入っていく。
 志摩子も同じ車両の別の扉から入るが、乃梨子からは視線を外さない。
 一年間の姉妹生活を通して、乃梨子の用心深さと頭の良さは十分に把握しているつもりだ。
「たぶん…… 乃梨子なら」
 志摩子は小さく呟いた。緊張のためか喉がカラカラに乾いている。

 乗客のほとんどが乗り終えると、発車を知らせるベルがけたたましく鳴り響く。
 そして、ベルが鳴り終わる瞬間――

 乃梨子は急に身体を翻し、一度は乗った車両から降りてしまう。

「乃梨子!」
 最後まで乃梨子から注意を逸らさなかったことが幸いした。
 志摩子は態勢を崩しながらも、扉が閉まる寸前に下車することに成功したのだった。

(つづく)
210名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 20:27:06 ID:ft+ffU+s
>>202
GJ!
あまりにも救われない結末と、スピーディな展開に驚いた。
マリみてを書いてくれるひとがいるのは嬉しいですね。
211名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 23:03:33 ID:ZUj+Abvl
>>209
うわ、気になる展開……
続きが読みたい。GJ
212名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 08:51:36 ID:wJFOlSqU
続きが気になる木
213名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 17:40:39 ID:Jkbagpkx
マリみてのSSマダ〜?
じらしプレイ?
214名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 23:46:47 ID:5g8WgKwU
期待保守
215トライアングル、交錯:2009/12/05(土) 00:16:04 ID:rZ6Ray0m
>>181さんがまだ書いてくれない。
仕方ないから、またマリみて書くか――
相変わらず鬼畜注意です、ごめんなさい;;


日曜日。バレンタイン=デイ、その直後。K駅周辺、公園の一角。
令はベンチに腰掛けていた。隣には同い年くらいの少女が一人。
フリルのスカートを履き、ホットカーラーで入念に髪型を練りこんでいる。
気合の入った出で立ちではある。一年生、田沼ちさと。

「あ、あの……よかったらこれ」
ちさとがお弁当をおずおず手渡す。令は「ありがと」と微笑んで受け取ると、
自分の手作り弁当を広げてちさとに勧めた。味はかなり良い。

ボーイッシュな出で立ちはちさとに対照的である。
だから、傍から見るものは男女のカップルに見ることが多かった。
実際、仲良くお弁当を突っついている、
年上の美少年と少女のアベックにしか見えないのである。

令は、新聞部主催のバレンタインイベントの賞品として、
半日デートの最中なのであった。

(由乃、怒ってるだろうな――)

不謹慎だとは思うけど、常に頭に浮かぶのは由乃ことだった。由乃。
妹は見かけは猫を被っているが、中身はずっと強烈だ。
今日のことでも随分と荒れていたものだ。機嫌を直してくれるだろうか。

「令さま……?」
気づけば、ちさとが怪訝そうな表情で、自分を見上げている。
はっと、令は我に返った。いけない。
「一体、どうされたんですか? 令さま、なんだか、ずっと――」
「なんでもないよ」
笑顔してみせ、箸を動かす。今、私はこの子とデートをしているんだ。だけど、
「なんでもないよ、"由乃"――」
頭から離れない、妹のことが。……令は、まったく気づいていなかった。
過ちを重ねる毎にちさとの瞳の奥底のきらめきが、
次第次第、暗く、そして冷たいものへと変わってきていることに――

「オイ、お前!」
そのとき、不意に声が掛かった。令はあたりを見回す。
すると公園の入り口の方から、三人ずれの男が歩んできていた。
「てめえだよ、コラ」
男はいずれも、いわゆるチーマーという類の男であった。
見るからに頭の悪そうな顔である。男は、はっきりと令を指差して、
ドスの利いた声を発した。
「ガキの分際でイチャついてんじゃねえぞ、コラ。うっぜえんだよ。あぁ?」
男はガムをぺっと吐き捨てると、まっすぐに令を睨みつけた。
ガンを付けているつもりなのである。
男の目には令たちは、美少年と女子高生のカップルに見えているらしい。
216トライアングル、交錯:2009/12/05(土) 00:16:50 ID:rZ6Ray0m
「……行こう、ちさとちゃん」
令は視線をそらし、男を無視すると、ちさとを促して立ち上がった。
一方、男の方はというと、
いけ好かないハンサム野郎が自分にビビって逃げたのだと、おおはしゃぎである。
「おいおい、逃げんのか、コラ? 負け犬か、てめえは」
「ヒャハハ! ダセ〜! 女の前だってのによ」
「金玉ついてんのか、コラ!」
「令さま」と、ちさとがぎゅっと腕を抱いてきた。
「気にしちゃ駄目だ。放っておこう」
構わず、とっとと歩み去ろうとした、そのとき――
男の下劣な声音が轟いた。

「その女とこれからおマ○コすんのか? この色男」

ピタッと、背筋をまっすぐにしたまま、令の背中が凍りつく。
男たちは二の矢、三の矢と次いで行く。
「てっめえのフニャ○ン、そのメス豚のマ○コにぶっこむかって聞いてるんだよ、コラァ!」
「ヤリまくりやがって。盛りがついたブタか、てめえら」
「姉ちゃん、そんな野郎より、俺とマ○コしようぜ! マ○コ!」

ブルブルと、ちさとの手が震えるのが分かる。
令はその手をぎゅっと握り返すと、後ろを振り向いた。
「――今の言葉、取り消せ」
ピタリと、今度は男たちの動作が固まる。
無抵抗だとタカをくくっていた相手が、突然刃向かったのである。
「今の下品きわまりない言葉を取り消して、この子に謝るんだ」
そこまでいいきると、男の顔に怒気が昇ってきていた。
「野郎……調子こきやがって」
臆病野郎が、ちいっと女にもてやがるからつけ上がりやがって。
見下した相手に逆らわれた怒りが、男の中で爆発すると、一気に令に掴みかかった。
「オラァ! 死ねやコラァッ!」
男は令の胸元を掴む。
が、令はその手を捻り上げると、股間に膝を蹴り上げていた。
「ぎっ……!」
男が声にならない声でうめいた。
崩れ落ちる体を支えると、令は平手で力いっぱい男の頬を引っぱたいた。
「ぶべらっ!」と、情けない声を上げて男がぶっ倒れる。
あざやかな手さばきに、残りの二人は身動きもできない。
「今度そんなことを言ったら、許さない」
令は吐き捨てると、今度こそ、ちさとを連れて歩み去っていった。

男は令の姿が見えなくなっても、まだ股間を押さえてうずくまっている。
地面を舐めている顔からは涙と鼻水が垂れ流しである。
さすがに、仲間も「ダセー」などと思っていた。

(女か……?)
男は土を味わいながら、思った。
(あいつ、女か――!)
217トライアングル、交錯:2009/12/05(土) 00:17:40 ID:rZ6Ray0m
胸倉を掴んだときに気づいた。長身で、しなやかな肉体は細身の男性のように思えるが、
その胸には確かに、たわわに実ったふくらみを湛えていた。
運動神経は並外れているが、間違いなく、女である。

女である。女にやられたのである。

「許さねえ。絶対ぶちコロス……」

あの女ひっ捕まえて死ぬほど犯しまくった後、
顔を滅茶苦茶に殴り潰すまで、絶対に許すことはできぬ。

男はがりっと砂を噛んだ。

「おい、大丈夫かよ」と、仲間が近寄ってくる。
「兵隊集めろ。今すぐだぁっ!!」

―― 一時間後。例の公園にはちょっとした人だかりが出来ていた。
ボンクラの集団である。男は男のチームに所属する仲間を、凡そ二十名ばかり集めていた。

「その女、探したら、見つけ次第さらえっ!!」
男が大音声で怒鳴り散らす。
「ガラさらった後、ガサに連れ込んでよってたかって輪姦しちまうんだ!!」

その言葉に、いっせいに黄色い歓声が挙がる。

「行くぜっ!!」
まだ、陽は沈みきっていない。何より、人ごみの中でも目立つ組み合わせである。
駅前を押さえていれば、逃がすはずもない。男たちが四方に散らばった。

「私、何やってるんだろうな」
そっと吐いた溜息は、夕日の差す影に沈み込んでいった。由乃は面を上げた。
――由乃は、令とちさとのデートを気にして、こっそり一人で、
ここK駅周辺に来ていたのだ。というより、さっきから一人でさまよっていた。
(あーあ、疲れたな)
何度か顔見知りとも、そうして当の令とも出くわしたのだ。
だが、結局どうするということもできない。なのに、じっとしてはいられない。
終いには自分のやっていることが馬鹿馬鹿しくて、なにもかも嫌になって来る。
今はK駅の南口から、少しばかり離れた辺り。
離れたといっても、人通りはしげく、瀟洒な店なども多い。そのとき。
――その中に、異質な集団を見出したのである。
「あれ――? 何」
視界の端に映る。その中を走る浮いた集団、という程でもないが、
チーマーといった種類の男たちが、人ごみにまぎれて活発に動いている。
「まさか、令ちゃんじゃないよね」
はは、と苦笑いしてみる。あの田沼ちさとあたりが絡まれて、トラブルが起きてたりして。
令ちゃんって、けっこうボケてる割には向こう見ずだから。……まさかとは思うけど。

このままこの辺りを歩いていれば、祐巳さんたちと会えるような気がした。
だけど、気になって。由乃はその場から、離れることにした。
……後でこのことを死ぬほど悔やむのだ。
218トライアングル、交錯:2009/12/05(土) 00:17:59 ID:rZ6Ray0m
「さて、そろそろ送るよ」
令たちは駐輪場に来ていた。K駅から少し距離を置いたあたり。
令は、新聞部のデート予算の都合から、一人自転車でK駅まで出張っていたが、
K駅辺りは駐輪スペースがいっぱいだった。
「そんな、令さま。悪いですよ」
ちさとが、おずおずと、令を見上げる。
遠慮がちに小首を引いてみせるちさとに、令は笑って答えた。
「いや、私もちょっと買いたいものがあるから」
「そんな……でも、うれしいです」
潤んだ目で、令を見上げて見る。
同性が見れば、かまととぶっているなどと言われて詰られそうな仕草。
実際、自信もあった。だけど、令はそんなことを気にするような方でもなかった。
「それに、こんなことがあったから心配だから、”由乃”――」
「…………」
ちさとの肩がわずかに震え出した、そのときである。

「探したぜ」
さっと令は面を上げた。ビルの地下に設けられた駐輪場。入り口と、非常口と。
コンクリートの部屋は十メートル四方くらい。その出入口を塞いで、
二十人近い男たちが立ちはだかっていた。手には金属バッドや角材などを提げている。

「さっきはよくもやってくれたな……姐ちゃん」
「お前たち、さっきの――」
ちさとがびくっと震えて令にしがみ付く。
「とりあえず、血ぃ吐くまでボコって、俺らのガサへ連行だ。後は、たっぷりナキ入れさせた後、輪姦してやっからよ」
ニタァとリーダー格の男が下卑た笑みを浮かべる。
令は危難に胸を逸らせながらも、ちさとを庇うように立つ。
「お前たち、正気か? そんな事をして、ただで済むと思っているのか?」
「全然かまやしねえよ。俺ら年少やカンベを筋トレジム代わりに出入りして来ていまさらだし、
ハメ撮りすりゃ、デコ助にも泣きつけねえだろ?」
チーマー集団は皆顔に喜色と悪びれもない腐った性根を現わしている。
「それに本職の知り合いもいるんだ。てめえらメスガキなんか、どうだって始末できるぜ」
「れ、れいさま……」
ちさとはあまりの恐怖に涙をながしながら、うめいた。
「いいか、ここから動かないで。じっとしてるんだ」
令は、ちさとに言いかけ、高まる鼓動を務めて静めるよう、冷静に辺りを見回す。
そして、自転車に掛けられている一本のビニール傘を手に取った。
「なんだこいつ? そんなもんでやろうってか?」
男たちがせせら笑う。令は傘を両手で綺麗に中段に構えている。
これを竹刀に見立てているらしい。
「よしやれ」
「死ねやああああああああああああああああっ!!」
男たちが一斉に襲い掛かった。だが――
219トライアングル、交錯:2009/12/05(土) 00:18:29 ID:rZ6Ray0m
「ぐぶ!」
一人が令の間合いに入り込んだ途端、喉笛を突かれて崩折れる。
「げえ」と痰を吐き、そのまま白目を剥いて失神する。
「てめええええええええっ!!」
後ろから三人同時に襲い掛かるが。
「ぎ」
令は初太刀で小手を叩いて男たちの動きを封じると、一人ずつ串刺しにするように喉を突いていった。
「こいつ……」
ようやく男たちがこの少女の技量を思い知る。
令は、極力男たちの獲物と刃合わせする事を避け、剣道の熟達者ならしろうとを殺す事もできる「突き」を
急所に見舞い、一本のもろい傘で二十名もの男たちと渡り合っていたのだ。
「糞が……」
男たちはじりじり令を囲むが、その間合いに入れないでいる。
「出口は向こうだ」
令は小声でちさとに非常口を示す。
「私が隙を作るからその裡に逃げて、”由乃”――」
三度目に名前を間違えられて、それまで泣いているだけのちさとの顔が醜く歪んだ。そのとき。
「令ちゃん、令ちゃんなの?」
地上へと続く階段で由乃がきょとんとしていた。

「由乃!!」
令の胸に動揺が走る。豪気なのか呑気なのか、由乃はよく状況が飲み込めていない。
「ちさとさん連れて、こんなところでなにしてんのよ?」
「馬鹿! 早く逃げ……」
皆まで言うところまでもなく、由乃は男たちに引きずり込まれる。
「ちょっと、なにすんのよ!!」
「暴れるんじゃねえよ!!」
男が由乃のおさげを荒々しく引っ張る。
「痛っ!!」
「どうやら、てめえの知り合いらしいなぁ……」
男がにやり笑う。
「由乃ぉ――っ!!」
令は由乃に向かって突っ込んだ。が――
「ちさとさん!?」
その時、田沼ちさとは、男たちの列に割れ目が生じた隙に非常口に向かってまっしぐらに駆けていた。
そのまま、令を顧みもせずに、「助けてぇ」と階段を上る。
「どうして……」
油断した令に男がバットで殴りかかって来た。
「うっ」
「おやおや、浮気現場見られて見捨てられたらしいな。それともこっちが”本妻”かぁ?」
リーダー格の男が余裕を取り戻し、歯列を剥く。
「その傘を捨てろや。さもねえと、こうだ」
「!」
シャキン、と男はバタフライナイフを展開させた。
それを押さえつけられた由乃の顔に宛がう。
「やめろ……やめてくれ」
令は大人しく傘を捨てた。途端、男たちが令を棒きれで殴りつける。
「ぐあああああああああああああっ!!」
「令ちゃん!!」
頭から血を流し、地面に蹲る令を見下ろし、「ザマァねえな」とうそぶくと、男は仲間に指示を出した。
「あの女がポリ呼ぶかもしれねえ。すぐに表に停めてる車に連れ込むぞ。後はK円寺まで直行だ」
「うっす」
「い、いやああああああああああああっ!!」
由乃の悲鳴が空しくこだました。

(続く)
220名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 10:45:40 ID:m9IhhmSM
こりゃまた凄そうな物件が!
正座待機します
221名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 15:21:06 ID:l6yMkG4Z
wktkwktk
222名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 16:36:55 ID:6vW5yTFh
何と言う鬼畜!
続きに期待するしか。
223名無しさん@ピンキー:2009/12/09(水) 00:06:33 ID:F/hpmvXk
のりこ不倫SSの続きマダ〜?
224名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 21:02:20 ID:T9QLROBV
マリみてマダ〜
225名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 00:41:22 ID:KQEQpY7r
そう言えば、マリ見てスレっていつの間にか無くなってたな
226名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 12:04:52 ID:xW2EgJ2Y
保守
227名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 05:59:45 ID:72SBnX2y
保守
228名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 10:58:51 ID:cHIv7fZE
>>209の続き

5.

 志摩子さんを撒くために大きく回り道をした乃梨子が、祐巳さまの家に着いたのは、秋の短い太陽が完全に沈んだ後だった。
「お疲れ様。乃梨子ちゃん」
 既に帰宅していた祐巳さまが扉を開いて出迎えてくれる。祐巳さまの混じり気のない笑顔をみると、膨らむ一方だった
不安が多少なりとも和らぐ。
「とにかく上がってよ。お茶をだすから」
「ありがとうございます」

 祐巳さまの部屋は、ぬいぐるみや、可愛らしい絵柄のクッションが置かれている女の子らしい部屋だ。
「乃梨子ちゃんの部屋は違うの?」
「そうですね。衣服以外では、PCと仏像関係の本くらいしかないような感じです」
 乃梨子はやや自嘲気味に言った。薫子さんの家に下宿していることもあって私物自体が少ないのはやむを得ないのだけれど、
もう少し、女の子らしいモノを置いた方が良いのかもしれない。
「ふうん。そうなんだ。乃梨子ちゃんはこんなに可愛いのに」
 紅茶を注いだカップを乃梨子の傍に置きながら、祐巳さまは微笑んだ。

 まったく、この先輩は。
 何気ない会話の中に、乃梨子をひどくうろたえさせる台詞を、平気で混ぜてくるから油断がならない。
 面と向かって、可愛いなんて言われたら、どうやって言葉を返したら良いか分からなくなってしまうではないか。

「ところで…… 上手くいった?」
 乃梨子がひとごこちついてから、祐巳さまが何気ない様子で尋ねてきた。
「たぶん、大丈夫だと思います。志摩子さんは駅のホームで振り切りましたから」

 一緒にM駅に向かう途中で、志摩子さんと由乃さまの尾行に気が付いたのは、乃梨子でなくて祐巳さまだった。
「恥ずかしい話ですが、志摩子さん達の尾行に全く気が付きませんでしたよ」
 熱い紅茶に息を吹きかけてさましながら乃梨子は感嘆したが、祐巳さまは自嘲気味の表情を浮かべて言った。
「私にはそういう経験があったから」
「細川可南子さん、ですね?」
「正解……」
 今はすっかり温和になったけれど、祐巳さまを神格化していた以前の可南子さんは、一時期、祐巳さまを
背後霊のように付き纏っていた。
 それにしても、可南子さんとは目的が異なるとはいえ、行為としては同じことを、志摩子さんがしてしまうとは…… 
「正直、ショックが大きいです」
「そうだね。私もびっくりしたよ」
 祐巳さまは、悲しそうな表情をみせて深く頷いている。

 祐巳さまにとっても、薔薇さまという同僚という間柄だけではなく、とても大切な親友である。
そのリリアンで最も信頼できるはずの人間が、祐巳さまの言動を疑い、後をつけてきたという衝撃は非常に大きい。

「由乃さん達、どこまで気づいているかな?」
 祐巳さまはティーカップに口をつけてから、乃梨子の顔をみる。
「そうですね…… 私達を尾行するくらいですから。」
 途中で見失ったとはいえ、今まで抱いていた疑惑は限りなく確信へと変わったに違いない。
「そっか」
 祐巳さまは、まだ湯気がたっているティーカップを机に置きながら頷くと、大きく伸びをしてから尋ねた。
229名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 10:59:22 ID:cHIv7fZE
「乃梨子ちゃんは、これからどうするの?」
「どういうことでしょうか?」
 普段は温厚な祐巳さまの表情は、今は少し怖いものに変わっている。
「私達って、リリアンでは許されない存在だよね」
「それは、そうですが……」
「大事にならないうちにお互いが離れるって選択肢もあるよ」
 祐巳さまの淡々とした言葉は、鋭い針となって、乃梨子の心に深く突き刺さる。

 しばらく気詰まりな沈黙が続いた後、乃梨子は絞り出すように言った。
「私は、祐巳さまと離れたくはありません」
「それは、私もだけど」
 祐巳さまは頷いてから、乃梨子の瞳を見据えながら付け加える。
「決定的な証拠を握られなていない今なら、しらばっくれることができるよ。今日、乃梨子ちゃんと会っていたことだって
偶然ということにすれば、それ以上の追及はできないし」
「祐巳さま……」
「リリアンはね。姉妹だったらかなりのことをしても許されるんだけれど、浮気や不倫にはとても厳しいんだ。
聖さま達の話はもう知っているでしょう」
「およそのことだけは」
 志摩子さんの姉である佐藤聖さまと、ひとつ年下の久保栞さまの話は、高校からの転入組である乃梨子ですら耳をしたことがある。
リリアンの姉妹制度がもたらした、あまりにも有名な悲劇だ。
 周囲の温かい励ましによって完全に立ち直り、白薔薇さまとしての役目を果たして卒業された聖さまはともかく、
栞さまは、聖さま以外の全てから拒絶されて、リリアンから追放されてしまった。

「ま、そしらぬ顔をして私は瞳子と、乃梨子ちゃんは志摩子さんと姉妹関係を続けることもできるんだけどね」
 祐巳さまは偽悪的な笑みをつくって囁いたが、乃梨子は首を横に振った。
「私はそんな軽い気持で祐巳さまの恋人になったり、キスをしたりしているんじゃありません」
「ごめんね」
 祐巳さまはすぐに非を認めた。己の間違いをすぐに認めて謝る素直さは、祐巳さまの隠れた凄いところだ。

「いえ、こちらこそ生意気なことを言ってすみません」
 乃梨子は言葉を返してから、紅茶に口をつけながら思案を巡らせる。
 祐巳さまは幼稚舎からリリアンに通っているだけあって、リリアンの内情には乃梨子と比べ物にならない程に詳しい。
 乃梨子と背徳的な関係を続けることが、どういう結果を招くかということについては、おそらく
祐巳さまの言うとおりだろう。
 学園の秩序を乱す異分子として、全ての生徒や先生から非難や罵倒をされた後、二人は乙女の楽園から排除されるのだ。

 しかし、それでも祐巳さまは乃梨子との関係を続けることを望んでくれているし、乃梨子も同じである。
「私は、祐巳さまと離れるつもりはありません」
 空になったカップを置いた乃梨子は、祐巳さまをしっかりと見据えて言い切った。 
230名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 10:59:58 ID:cHIv7fZE
「乃梨子ちゃん」
 無言で乃梨子を見つめていた祐巳さまは、小さく呟いてから立ち上がってから、ゆっくりと近づく。
 そして、乃梨子のすぐ横に座り、肩に手をのせた。
「ゆ、祐巳さま?」
「私、覚悟を決めるから」
「えっ」
 乃梨子が驚く間もなく、ごくあっさりと唇が重ねられる。

「ん……」
 乃梨子は、微かに喘ぎ声を漏らしながら祐巳さまの両肩に手を伸ばした。
 祐巳さまと乃梨子の、バストやウエスト等の、身体的な数値はほとんど同じはずなのだけど、いくぶんか
祐巳さまの体つきの方がふくよかな感じをうける。
「んん!?」
 考え事をしている間に、祐巳さまは舌を伸ばして、唇の隙間から中に入ってきた。
「ん…… んくぅ」
 乃梨子は顔を紅潮させながらも、侵入してきた舌先に自らの舌を絡ませる。
 祐巳さまの舌端が動くたびに、くちゃ、くちゃっととんでもなく卑猥な音が鼓膜に届く。
「くぅ……くうん」
 自分でも信じられない程、甘ったるい声を漏らしてしまう。
「んっ、んふっ」
 舌だけにとどまらず、歯の裏側や頬の内側も舐めとっていく祐巳さまの愛撫は、とても丹念で気持ちが良い。

「ぷはっ」
 かなりの長い口づけをようやく終えて、乃梨子は大きく息を吐いた。
「祐巳さま…… もう、我慢できません」
 なんてはしたない女なのだろう、と思わないでもないけれど、ここまで来て欲求を抑えるなんて土台無理なことである。
「ふふっ、乃梨子ちゃん。それは私もだよ」
 祐巳さまは少し大人びた笑いを浮かべながら、制服に手をかけて脱ぎ始める。
 乃梨子も祐巳さまと同じく、黒に近い色の制服を脱いでいく。
「リリアンの制服って、こういう時に不便ですよね」
 他校とは異なりワンピースだから、下から上まで一気に脱いでしまわなくてはいけない。
「そうだね。スカートとセーラーが別々なら乃梨子ちゃんを脱がす楽しみを味わえたのに」
 祐巳さまの少し際どい軽口に苦笑しながらも、乃梨子は同意するしかなかった。
231名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 11:00:26 ID:cHIv7fZE
 制服を脱いだ祐巳さまは、肩から二の腕にかけてのラインが露わになっている。
 身体の曲線は、女性らしく緩やかでぷにぷにとしている。
「それって太っているってこと?」
 祐巳さまはふくれっ面をしてから、乃梨子をベッドの上に座るように促した。
「いえいえ。そんなことありませんよ」
「乃梨子ちゃんだって、おかっぱの下のうなじがすべすべで美味しそうだよ」
「その発言は、かなり危険ですよ」
 茶目っけたっぷりに舌を出した祐巳さまは、うんしょ、とちょっとおばさんっぽい声を出してから、
のしかかるようにして乃梨子を押し倒した。

 共学の中学校を卒業するまでは、乃梨子は同性の人と性行為をするなんて夢にも思っていなかった。
 やっぱり女子高に通うと、性的な趣向は変化するものだろうか。それとも祐巳さまだから身体を許す気になるのだろうか。
 乃梨子がぼんやりと考え事をしているうちに、祐巳さまは自らのキャミを脱いでから、乃梨子のそれもあっさりと脱がしてしまう。
そして、ブラとショーツだけになった身体をくっつけてくる。

「乃梨子ちゃん。あったかいね」
 肌のいろんな部分から、祐巳さまの体温がダイレクトに伝わってくる。
「祐巳さま……」
 乃梨子は恥ずかしくて身体を捩って逃れようとするけれど、今日の祐巳さまはとても積極的で、健康的な太腿を乃梨子の股の間に
すっぽりと絡めてしまう、
 柔らかくて美味しそうなふとももが密着して、乃梨子の豊富であったはずの理性は、いとも簡単に吹き飛ばされた。

「もう、駄目です」
 我慢なんてできません。という言葉すらもどかしく、乃梨子は祐巳さまの胸に手を伸ばす。
「んっ」
 本能の赴くままにブラ越しに乳首を摘むと、祐巳さまの唇から可愛らしい声があがった。
「の、のりこちゃん、くすぐったいよお」
「ブラ越しだと感じてくれませんか?」
「ば、ばかっ」
 祐巳さまの抗議を聞き流すと、背中の後ろに手をまわして、ホックを外す。
「ひゃん」
 祐巳さまの可愛らしい悲鳴があがると同時に、彼女の乳房を守っていたブラが緩んで外れる。
 乃梨子の眼前に、女子高生としては平均的なふくらみと、桜色をした突起があらわれてきた。

「とても綺麗ですよ」
「そ、そんなにじっくりとみないでよ」
 祐巳さまが恥ずかしそうな声を聞きてしまうと、余計に興奮してしまう。
「優しくしますから」
 乃梨子は言ってから、包み込むように乳房に触れると、ゆっくりと揉み始めた。
「ひゃう…… んんっ」
 乃梨子の手が動くたびに、祐巳さまの嬌声があがって、みずみずしい身体が揺れる。
「祐巳さま。とても敏感ですね」
「く、くすぐったいだけだもん」
 ちょっと子供っぽい言い方が何ともほほえましい。
232名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 11:00:56 ID:cHIv7fZE
「乃梨子ちゃんばっかりずるいっ」
 祐巳さまの言葉にやついてしまった乃梨子に隙が生まれたようで、今まで責められていた祐巳さまの手が伸びて、
乃梨子のブラのホックも外される。
 そのまま、祐巳さまがぎゅっと抱きしめてきたものだから、上になっていた乃梨子が崩れてしまう。
「わわっ」
「むぎゅう」
 祐巳さまを押しつぶした格好になってしまい、下からくぐもった悲鳴がもれた。
「す、すみません。祐巳さま」
 慌てて身体を起こそうとした時、胸の先端が痺れた。
「ひゃあ」
 同時に、祐巳さまの裏返った声があがる。
 何事かとと胸のあたりを覗き込んだ瞬間、乃梨子は固まった。
 乃梨子の胸の膨らみの突起と、祐巳さまの同じくらいの大きさの乳房の先端だけが、いやらしく触れ合っている。
「の、のりこちゃん……」
「ゆ、祐巳さま」
 首筋まで真っ赤になりながら祐巳さまは言った。
「あのね。とてもくすぐったいけれど、気持ちがいいから」
「私もです」
 祐巳さまに同意すると、乃梨子は距離を保ったままゆっくりと上半身を動かし始める。
「ん、んあ…… んんっ」
「くぅ…… んっ」
 乃梨子と祐巳様の喘ぎ声が重なる。乳首同士が擦れる度にじんわりとした快感が生まれて、やめられない、とまらない。
 乳首を擦れ合わせる変則的なプレイにすっかりと興奮した乃梨子は、祐巳さまに囁いた。
「んあっ……、ゆ、祐巳さま。これは凄くえっちな格好ですよ」

 一方、祐巳さまも、せり上がってくる快楽を存分に堪能しているようで。
「乃梨子ちゃん、すごく…… キモチいい」
 小刻みに身体を震わせながら、うっとりとした声をあげている。
「んんっ、乃梨子ちゃん、駄目、だめだよう」
 更に、つぶらな瞳を潤ませながら、トレードマークである二つのテールを振り乱して、荒い息を繰り返す。

「わ、わたしもです。もう、がまんできません」
 むず痒い刺激に耐えられなくて、乃梨子は祐巳様の隣に寝そべった。それから下腹部に手を伸ばして祐巳さまの
秘められた場所に触れる。
「祐巳さまのアソコ。もうぐしょぐしょですよ」
「乃梨子ちゃんだってびっしょりなのに」
 ほっぺたを膨らませた祐巳さまの指も、乃梨子の大切な場所に伸びてくる。
「こんなに愛液を垂らすなんて、よっぽど気持ちよかったんだね。乃梨子ちゃん」
 祐巳さまは悪戯っぽい表情を浮かべて囁いてから、すぐに指を動かしてくる。

「うあっ」
 不覚にも先手を取るつもりが取られてしまった。
 祐巳さまの指が乃梨子の秘められた部分を刺激して、強い電流のような快感が迸る。
「ひゃ、ひゃあ」
 悲鳴をあげた乃梨子は、ふとももを擦り合わせながら黒髪を振り乱す。
「ん、くぅ」
 それでも何とか反撃しようと、祐巳さまのぷっくりと膨らんだ場所を摘む。
「ひゃん」
 今度は、祐巳さまの口から甲高い悲鳴があがった。
233名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 11:01:21 ID:cHIv7fZE
「祐巳さまのお豆、とっても大きくなっていますよ」
 クリといわれる部分を、親指と人さし指の腹を使ってねじりあげる。
「ひゃうっ、そこは駄目っ」
 祐巳様の口から大きな悲鳴があがり、美味しそうな身体が海老のように跳ねる。
「祐巳さま。いやらしいクリさんですね」
 乃梨子は意地の悪い笑みを浮かべると、本能のままにふくらんだ部分を更にぐりぐりと揉みしだいていく。
「んひゃ、ほんとに、駄目、そこはだめえっ」
 口の端から唾液を漏らしながら、涙目になって嬌声をあげている先輩の姿に、ひどく興奮してしまう。

「祐巳さま、とっても可愛らしいですよ」
 指で擦るたびに、祐巳様のアソコからは大量の愛液が湧き出てきて、乃梨子の指を根元まで
ぐしょぐしょにしただけではあきたらず、白いシーツに大きな染みをつくりだす。
「あっ、ふあっ、のりこちゃんばっかり、ずるいよっ」
 おそるべき執念というべきだろう。祐巳さまは次々と襲いかかる快楽に耐えながら、乃梨子の膣壁にあてていた指を動かし始めた。
「くっ、祐巳さまっ、がんばりますねっ」
 思わぬ反撃を受けた乃梨子は、新たな快感に打ち震えながら懸命に歯を食いしばる。
「の、乃梨子ちゃんこそっ」
 祐巳さまも必死だ。悦楽によがりながらも、乃梨子のアソコを揉んでいる手は決して離そうとしない。
「んんっ、気持ちいい、キモチいいです。祐巳さま」
 流石、紅薔薇さまというべきか。祐巳さまの手つきはとてもイヤらしくて、乃梨子のアソコからも大量の液体が溢れだしてくる。
「ゆ、ゆみさま。そこは駄目、だめですっ」
 乃梨子は、溢れる愛液を太腿で擦りつけながら、嬌声をあげる。
「あん、はあっ、だめっ、だめだよ。のりこちゃん」
 祐巳さまも陶然とした表情になっている。次々に襲ってくる快楽の波に弄ばれながら、テールを振り乱してよがり狂う。

「祐巳さま。もっと、もっと強くお願いします」
「乃梨子ちゃんも、もっと激しく、してっ」
 祐巳様と乃梨子はお互いの顔を見つめ合いながら、ひたすら、女の子の大切な部分への愛撫を続ける。
「あ、はあっ、駄目、くうん」
「んんっ、くはっ、はああっ、はあ」
 汗みずくになった身体をくねらせながら、何度もよがり声をあげる。
「の、のりこ、ちゃん、もう、駄目、駄目、いっちゃう、いっちゃうよう」
 次々に襲ってくる快楽の波がどんどん高くなり、祐巳さまは火照った裸体を大きく捩らせながら乃梨子にしがみついた。
「わたしも、だめです。もう我慢っ、できませんからっ」
 抱きついてきた祐巳さまを、空いた方の手で引き寄せて叫ぶ。
「い、いっしょ、一緒にイキましょう」
「はう、わ、わかった、わかったよっ」
 裏返った声をあげながら、乃梨子と祐巳さまは、更に激しく指を動かす。
「んん…… だめ、だめえええええええっ」
「んあああ、んああああああっ」
 乃梨子と祐巳さまは身体を震わせながら絶叫し、快楽の頂きをほぼ同時に越えていった。
234名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 11:02:10 ID:cHIv7fZE
「はあっ、はあっ」
 乃梨子は荒い息をつきながら、隣にいる祐巳さまの顔をみつめる。
「ふう…… くうっ」
 祐巳さまも汗で濡れた額に髪をはりつかせながら、短い呼吸を繰り返している。
「ゆ、ゆみさま、いっちゃいましたね」
「乃梨子ちゃんも…… ね」
 お互いに上気した顔を眺めていると、緊張が一気に緩んだ為なのか、笑いがこみあげてしまう。
「あはっ、あはははっ」
「ふふっ、ふふふっ」
 ひとしきり笑い合った後、落ち着きを取り戻した祐巳さまが口を開いた。

「ねえ。乃梨子ちゃん」
「はい。祐巳さま」
「私達の関係を皆に知られてしまったら、リリアンから追われてしまうけれど、それは仕方がないことだって思っていたんだ」
「聖さまや栞さまみたいに…… ですね」

「でもね」
 祐巳さまは乃梨子の手をぎゅっと握りしめて、言葉を続ける。
「乃梨子ちゃんが同意してくれるなら、戦いたいと思う」
「戦う?」
「そう。戦うの。もちろん、私が非難される存在だってことは分かっているよ。薔薇さまという大役を受けながらみんなを
裏切っているのだから。でもね。私はただ耐えるのは嫌なの。たとえ結果がどうであろうと、抗ってみたい」
「すごく…… 無謀ですね」
 乃梨子は圧倒されながらも呟いた。不倫という大罪を犯したカップルが、百年近くにわたって続いてきた姉妹制度という
因習とどうやってどう戦うのだろうか、と冷静な部分で思う。しかし――
「でも、不利な戦い程面白いかもしれません」
 小説にあった、戦国時代の快男児の台詞を思い出しながら、乃梨子は言った。
 乃梨子と祐巳さまの二人だけで、巨大で歴史のあるリリアンと真正面から渡り合う。
 もしかしたらとっても面白くてわくわくすることではないだろうか?
「祐巳さま、やってみましょうか」
 乃梨子は、祐巳さまに向けてにやりと笑ってみせる。
「ありがとう。乃梨子ちゃん」
 祐巳さまは嬉しそうな声を出して言うと、真夏の向日葵のような満面の笑みをみせてくれた。

(つづく)
 
235名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 11:05:03 ID:cHIv7fZE
すごくお待たせしてごめんなさい。
えっちしーんが凄く難しかった。それでは良いお年を。
236名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 12:23:39 ID:fpPL0Hcx
ふいーっ……ぐっじょ!
早めのお年玉ありがとう!
続きが気になる木
237名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 17:23:40 ID:+F/JdmRC
待っててよかったGJ
238名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 02:54:30 ID:U0rlwkAk
エロい!
GJ
239名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 16:26:19 ID:q0fnLT0N
>>234の続き

6.

「はあ」
 志摩子は大きなため息をついた。昨日の事を思い出すと、やはり気持ちが沈んでしまう。
 昨日、志摩子は電車に乗るフリをして発車直前に降りた乃梨子を更に追跡して、祐巳さんの家に入るまでを見届けた。
「やっぱり、乃梨子は祐巳さんと」
 どんなに否定したいと思っていても、二人が逢引していたという厳然たる事実が重くのしかかる。
「どうすればいいの?」
 内なる心に何度も問いかけても答えは返ってこない。
 重い気持ちを引きずりながら三年松組の教室に入る。クラスメイトでもある祐巳さんと由乃さんはまだ登校していない。
 かわりに、山口真美さんが志摩子の机の傍に立っていた。

「ごきげんよう。志摩子さん」
「ごきげんよう。真美さん」
 真美さんは挨拶を終えると、すぐに用件を切り出す。
「ちょっとお話をしたいことがあるの。お昼休みは空いているかしら」
「え、ええ」
 真美さんの顔つきは真剣そのものだ。志摩子は戸惑いながらも頷いた。
「それともう一つお願いがあるの」
「お願い?」
 急に小声になった真美さんは、志摩子の耳元で囁く。
「後で由乃さんも誘うけれど、祐巳さんには黙っていて欲しいの」

「どうし……」
 疑問を呈しかけるがすぐに意図に気付き、志摩子は言い直した。
「ええ。分かったわ」
「話が早くて助かるわ。志摩子さん」
 真美さんはすぐに自席へと戻っていった。

 志摩子は落ち着かない気持ちのまま、午前の授業を終えて廊下に出ると、由乃さんと真美さんが待っていてくれた。
「どこに行けば良いのかしら?」
「とりあえず中庭へ行くわ。そこで蔦子さんも待っているから」
「蔦子さんも?」
「ええ」
 不安が高まるのを自覚していたが、とりあえずは中庭にいくしかなかった。

 玄関で靴に履き替えてから更に歩いて、中庭にでる。
 日差しはあるものの、弱い北風が吹いており少しばかり肌寒い。
 中庭で昼食をとる生徒の数は一時期に比べて少なくなっていて、もう少し季節が進み、
銀杏並木が黄金色に輝く頃には姿は見えなくなると思われた。

「ここにしましょう」
 花壇の傍で立ち止まると、真美さんは周囲に人がいないことを確認してから腰を下ろす。
 続けて志摩子と由乃さんも座った直後、蔦子さんが半ば駈けるようにやってきた。



240名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 16:28:59 ID:q0fnLT0N
「そろそろ良いかしら」
 食事が半ばほど進んでから、真美さんは、蔦子さんの顔を見てから話を切りだす。
「今日、黄薔薇さまと白薔薇さまをこんなところにわざわざお呼びしたのは、もうひとりの薔薇さまと
色の違うつぼみのことなの」
「ひどく回りくどい言い方をするのね」
 由乃さんは口をとがらせる。
「それは失礼」
 蔦子さんが、後を引き継ぐように言った。
「気づいていると思うけれど、祐巳さんと二条乃梨子ちゃんのことよ」
「知っているわ」
 由乃さんは仏頂面のままだ。
「一部の生徒では噂になっているけれど、祐巳さんと乃梨子ちゃんが親密そうな触れ合いをしているところを、
すでに何人かの生徒が見ている」
「蔦子さんもそのひとりなのでしょ」
 つっけんとんに言った由乃さんには答えず、蔦子さんは制服のポケットから取りだした一枚の写真をみせる。

「これは!?」
 乃梨子と祐巳さんが、姉妹か恋人のようにお互いの瞳を見つめ合っている。
 二人の間は、互いの吐息が顔にかかる程の、とても親しい間柄でないと許されない距離しか離れていない。 

「ちなみにこの写真は隠し撮りで、祐巳さんにも乃梨子ちゃんにも承諾も得ていないわ」
 蔦子さんは自分のポリシーを全否定するようなことを付け加えた。

「実はね。新聞部の中で山百合会の特集を出そうという動きがあるの」
 今度は真美さんが、苦々しげな表情をみせながら口を開いた。
「薔薇さまのスキャンダルを記事にしようとする一部の部員に、みんなが引きずられている」
「真美さんの権限で抑え込めないの?」
 由乃さんは、卵焼きを頬張りながら尋ねる。しかし。
「残念ながら、今の編集長はもう日出美よ。今のところは姉としての命令で差し止めさせてはいるけれど…… 限界があるわ」
 真美さんの妹である高知日出美さんは、新聞部の編集長とはいえまだ2年生だから、部全体で記事にする機運が更に高まれば、
抑え続けることは難しい。

「このままだと、2、3日後には記事が出てしまう。そこで、志摩子さんと由乃さんに相談にきたわけなの」
 真美さんは言い終わると、物憂げな表情でため息をついた。

「私達も手をこまねいている訳ではないわ」
 由乃さんは、真美さんを半ば睨みつけるようにして言った。
「昨日ね。乃梨子ちゃんは用事があるからと言って帰ったけれど、私と志摩子さんは後をつけたわ」
「それで、どうなったの?」
 興味を抱いた蔦子さんは眼鏡のフレームを触りながら先を促した。由乃さんは、水筒に入ったお茶に口をつけてから答える。
「早退した乃梨子ちゃんは、本屋で祐巳さんと会っていた」
「そ、そう」
 真美さんは由乃さんからの新情報に驚いたようで、メモを取り出しかけたが、自重して引っ込める。
「祐巳さん達は喫茶店に寄り道した後、駅まで歩いてそこで別れたわ」
「その後は?」
 蔦子さんの質問に、由乃さんは首を横に振った。
「私は駅までしか追わなかったから分からない。志摩子さん、どうだったの?」
241名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 16:30:20 ID:q0fnLT0N
 3人の視線が志摩子に集中する。
「乃梨子の後を更に追ったわ。でも乃梨子は電車に乗ろうとして、扉が閉まる直前に急に降りてしまったの」
「志摩子さんの尾行に気付いていたの?」
「ええ……」
 志摩子は苦しげな表情を浮かべて頷いた。
 乃梨子が志摩子の追跡を警戒し、振り切ろうとしたという事実だけで、とても暗い気分にさせられる。
「それでも扉が閉まる直前に、私もなんとか電車を降りることができたわ」
「それから?」
「乃梨子はバスに乗って、最後は祐巳さんの家に入っていったの」

「うそ!?」
「本当よ」
 言った後で真美さんと蔦子さんを見ると、彼女達の表情は明らかに青ざめていた。 

「だからね。薔薇の館で、祐巳さんと乃梨子ちゃんと話すつもり」
 由乃さんは、蔦子さん達を眺めながら告げる。
「きちんと話して、姉妹関係を壊すような真似はやめてほしいと言う」
 由乃さんには、『黄薔薇革命』をおこしてしまった、自身の苦い経験を繰り返したくないという思いがあるのだろう。

「そうね。私も今回の祐巳さんの行動は間違っていると思う」
 蔦子さんは、志摩子と由乃さんを見据えながら、思いのほか厳しい口調で祐巳さんへの非難をはじめた。
「由乃さんは、支倉令さまのことを思って一度ロザリオを返したけれど、今回の祐巳さんの行動は純然たる不倫だわ。
リリアンでは許されることではない」
 一方、真美さんは不安げな顔つきのまま、やんわりと反論する。
「私はね。穏やかにことを済ませたいと思っているの。お姉さまが突っ走って痛い目にあったこともあるし」
 今年卒業された、真美さんのお姉さまである築山三奈子さまは、不確かな情報だけで山百合会のスキャンダル記事を
記載してしまった結果、訂正および謝罪記事を出さなくてはいけないことが幾度かあったのだ。

「志摩子さんはどう思っているの?」
 真美さんの質問に、志摩子は再びため息をついてから口を開いた。
「由乃さんと同じよ。二人に話をしてみるしかないと思うわ。祐巳さんも由乃さんも間違いに気づいてくれるはずよ」
 乃梨子とは1年半、祐巳さんとはもっと長い付き合いである。
 ふたりとも、真面目で誠実で、優しくて思いやりのある人間だ。
 時々不安定になる志摩子を励まし、支えてくれる大切な存在でもある。
 今は、気の迷いでこんなことになっているけれど、情理を尽くして話せばきっと分かってくれるはずだ。
「分かったわ…… 元の鞘に収まってくれればいいのだけれど」
 しかし、半ば独り言のような口調で呟いた真美さんの表情が晴れることは、最後までなかった。
242名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 16:32:14 ID:q0fnLT0N
 放課後―― 
 薔薇の館で、文化祭の打ち合わせや雑務をこなした後、由乃さんは妹である有馬奈々ちゃんに告げた。
「奈々。今日はもういいわ」
「お姉さまは?」
「私は、もう少しだけ仕事があるから、先に終わって貰えるかしら?」
「分かりました。お先に失礼させていただきます」
 皆に向かってぺこりと頭を下げた後、奈々ちゃんは退室する。
 その後すぐに声を出したのは、祐巳さんだ。
「瞳子も終わっていいわ」
「はい」
 瞳子ちゃんは少しだけ首を傾げたが、すぐに頷いた。
「それでは皆様方。お先に失礼いたします」
 奈々ちゃんと同じ様に皆に一礼してから、部屋をあとにする。

 残されたのは、志摩子と由乃さん、それに祐巳さんと乃梨子の4人だ。
「さてと、祐巳さんと乃梨子ちゃんには少し残ってもらっても良いかしら?」
 まず、口火を切ったのは由乃さんだ。
「ええ。別に構わないけれど」
 祐巳さんが頷いたのを確認してから、乃梨子ちゃんに視線を移して尋ねる。
「乃梨子ちゃんも良いかな?」
「何の用事なのでしょうか?」
 乃梨子は明らかに警戒している。

「用事じゃなくて、聞きたいことがあるの」
 由乃さんは、表面上は穏やかなまま答えた。
「そうですか…… 分かりました」
 乃梨子は意外とあっさりと頷くと、席に座りなおした。

「ところで乃梨子ちゃん。昨日は用事で家に帰ったと言っていたわね?」
 最初に口火を切ったのは由乃さんだ。
「ええ、そうですが、それが何か?」
 乃梨子の表情は能面のようになっていることに気づき、志摩子の胸はぎゅっと締めつけられる。
「どうして、本屋さんで祐巳さんと会っているの?」
「ああ。それですか。大伯母に本を買うように頼まれておりまして、書店に立ち寄ったんです。
そこで、祐巳さまに偶然お会いしたんですよ」
 乃梨子は、さりげなく『偶然』を強調した。

243名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 16:33:08 ID:q0fnLT0N
「そう。でも、その後に喫茶店に寄ったわね。寄り道は禁止という校則を知らなかったの?」
「ごめんね。由乃さん」
 ここで口を挟んできたのは祐巳さんだった。祐巳さんは予め仕込まれた台本を話すような口調で続けた。
「乃梨子ちゃんの顔色が悪かったから、気分でも悪いのか、悩み事があるかと思って、隣の喫茶店で休むことにしたの。
校則を破ったことは申し訳ないと思うけれど、やむを得なかったと思うよ」
「そう」
 由乃さんはそっけなく頷くが、内心は荒れ狂っているのではないだろうか。
 一方の志摩子は、話に割り込むタイミングがつかめないでいる。
「それで、どうして乃梨子ちゃんは、そのままお家に帰らなかったの?」
 今まで、そつなく答えていた祐巳さんの顔つきが変わる。

「ねえ。どうして、乃梨子ちゃんは祐巳さまの家まで行ったの?」
 由乃さんが追い詰めにかかる。一方、乃梨子は明らかに青ざめている。
「乃梨子、答えて」
 志摩子も、乃梨子の瞳を凝視しながら追求する。

「ああ、それはね……」
 窮地にたった乃梨子に助け舟を出したのは、やはり祐巳さんだった。
「乃梨子ちゃんの悩み事は喫茶店で聞いたのだけれど、由乃さんに言われたようにあまり長居をするのは、
良くない思ったから、詳しいことについては私の家で話を聞くことにしたんだ。誰かさんに聞かれても困るしね」
 祐巳さんは、皮肉のスパイスをふりかけて答えた。

「悩みがあるなら、私に言えばよかったのに」
「残念ながら、志摩子さんでは相談には乗れないんだよ」
「どうして…… どうして言えないの?」
 志摩子は語気を強めた。

「乃梨子ちゃんの悩みは志摩子さんとの関係だからね」
「私との?」
「そう。最近、志摩子さんとすれ違いが多かったから、志摩子さんの同僚である私に相談したんじゃないかな」

 祐巳さんはよどみなく説明をしているけれど、志摩子は祐巳さんの言葉が嘘だと分かってから、
辛い気持ちで聞くしかなかった。
 目の前にいる人は、志摩子が知っている祐巳さんじゃない。祐巳さんの格好をした見ず知らずの別人だ。
 祐巳さんは人を嘲るような嘘をつかない。人を裏切って平気な顔をするような人間じゃない。
 志摩子は、そんな妄想すら抱くようになっていたが、表情を変えずに不毛な言い訳をしている祐巳さんに
耐えられなくなって激発したのは、由乃さんだった。
244名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 16:34:40 ID:q0fnLT0N
「いい加減にしてよ!」
 由乃さんは、薔薇の館中に響き渡るような声で吼えた。
 両手でテーブルを叩きつけながら立ち上がって、祐巳さんを弾劾する。
「どこまで嘘をつけばいいの! もう分かっているのよ。祐巳さんと乃梨子ちゃんが恋仲になっているってね」
 地団駄を踏みながら、親友に裏切られた悔しさを一気に爆発させる。
「ねえ。祐巳さん。どういうことか分かっているの! 紅薔薇さまが白薔薇のつぼみに手を出したら山百合会が
どうなってしまうか何で分からないのよ!祐巳さんだって、乃梨子ちゃんだって、こんなことをしでかしたら、
山百合会どころか、リリアンから追い出されてしまうわよ」

 黙っている祐巳さんを叩きつけるように非難を続ける。
「どうして黙っているの! もう新聞部がかぎつけてるのよ。ここ数日中に記事もでるって、真美さんが言っていたわ! 
そうなったらもう遅いのよ!」
 由乃さんは立ち上がって、身体を震わせながら絶叫する。

 しかし、祐巳さんの顔に浮かんだのは、もっとも縁遠いものと思われていた冷笑だった。
「勝手に乃梨子ちゃんと私をくっつけないで欲しいな」
「なっ」
「由乃さん。どういう証拠があってそんなことを言うの? 乃梨子ちゃんと会ったから恋人同士なの? 
それだったらリリアンには恋人が腐る程いることになるよ」
 この期におよんで祐巳さんは、乃梨子との関係を認めようとしない。あくまでしらを切るつもりだ。
「言わないでおこうと思ったけれど、どうして私達が喫茶店で会ったことや、乃梨子ちゃんが私の家に来たことまで
知っているのかな。ストーカー行為をしているって自覚ある?」

「祐巳さん!」
 もう耐えることなんてできなかった、志摩子は祐巳さんに駆け寄り、生まれて初めて人の頬を叩いた。
245名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 16:35:42 ID:q0fnLT0N
 ぱん――

 思いのほか軽い音がした。祐巳さんは頬を抑えながら、信じられないというものを見たような表情を浮かべて、
瞬きを繰り返している。
「お願い。祐巳さん。本当のことを言って。私、それで祐巳さんを嫌いになったりしないから……」
 情けなくて悔しくて涙がとめどもなくあふれてくる。それでも志摩子は祐巳さんを失いたくなかった。
もちろん乃梨子だって失いたくない。『志摩子さんは欲張りなんだね』という乃梨子の言葉が脳裏に蘇る。
 志摩子はどちらも失いたくなんかないのだ。

「ねえ。祐巳さん。お願い、教えて…… お願いだから」
 志摩子はこぼれる涙を拭くこともせずに、祐巳さんにすがりついてお願いを繰り返す。

 重く静まった空気を破ったのは、乃梨子だった。
「祐巳さま、ごめんなさい…… これ以上は、無理です」
「そうだね」
 祐巳さんは頷いた。先程までの冷たさは消えて、さばさばとした表情に変わっている。
「私と乃梨子ちゃんは、言われるとおり恋人同士だよ」
「そう…… なの」
 既に覚悟はしていたけれど、改めて本人の口から告げられると、やはり衝撃は大きい。
 乃梨子と祐巳さんは付き合っている。乃梨子にとって志摩子は一番大切な存在ではないことはとても悲しくて辛い。
 由乃さんも頬を涙で濡らしながら、祐巳さんに尋ねた。
「どうして、そんな関係になってしまったの?」

「私と乃梨子ちゃんは、瞳子や志摩子さんでは得られない部分が欲しくて、惹かれあっただけだよ」
 祐巳さんは、自分自身ですら突き放したような口調で言った。
「得られない部分?」
「そうです」
 乃梨子が祐巳さんの代わりに答えてから、ふらつきながら近付く。

「乃梨子?」
 志摩子の傍まで近寄ると、乃梨子は両手をひろげて抱きついた。
「きゃっ」
 短い悲鳴をあげ、バランスを崩して床に尻餅をついた志摩子に覆い被さる。
 そのままキスをしようと、乃梨子は何かに憑かれたような表情のまま、唇を近付ける。
「いやっ!」
 志摩子は悲痛な声で叫び、半ば無意識に妹の身体を押し返した。
246名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 16:37:49 ID:q0fnLT0N
「志摩子さんが、自分で証明してくれたね」
 祐巳さんは、微かに笑みを浮かべながら言った。
「乃梨子ちゃん。もう分かったよね。いくら望んでも志摩子さんは、そういうことは絶対にしてくれないでしょ」
「はい。祐巳さまのおっしゃる通りです」
 明らかに落胆した表情をみせて、乃梨子は頷いた。

「そ、そんな……」
 乃梨子が本当に望んでいたものがようやく分かり、愕然とする。
 志摩子にとってキスやそれ以上のものは、極力話題にするのも避けたい、とても怖いものだった。
 乃梨子は賢い子だったから、志摩子が『それ』を決して与えてくれないことに気がついていたのだ。
 だから乃梨子は、望むものを与えてくれる祐巳さんに引き寄せられてしまった。

 愕然とする志摩子に、乃梨子さんは涙をぽろぽろと流しながら何度も謝っている。
「ごめんなさい。志摩子さん。ごめんなさい」
 頬をつたった涙が落ちて、床に背中をつけている志摩子の頬を弾く。
 乃梨子の双眸からあふれ続ける涙は、とても温かくて冷たかった。

「祐巳さんは、一体、どこに行ってしまうの?」
 唖然としながら、3人をみつめていた由乃さんが、半ば独り言のように呟く。
「ごめんね、由乃さん。私と乃梨子ちゃんは、もう後戻りはできない関係なんだ…… それでも由乃さんには
友達でいて欲しい。とても勝手な願いだとは思うけれど」
「本当に勝手ね」
 由乃さんは口を尖らして言い捨てる。
 それでも、由乃さんはいくら不倫という罪を犯したとはいえ、彼女にとって一番の親友である祐巳さんを、
切り捨てることができるはずがない。
 由乃さんに、山百合会と祐巳さんのどちらかを選べと言われたら、たぶん祐巳さんを選んでしまうだろう。

 薔薇の館を出ると外はすっかり暗くなっている。
 志摩子は久しぶりに乃梨子と一緒に帰り道を歩いている。
 東の空に顔を覗かせた月が輝きだす中、乃梨子は志摩子の顔を見て告げる。

「志摩子さん。本当にごめんなさい。このロザリオは…… お返しします」
 しかし、志摩子は首を横に振って、乃梨子の申し出を拒絶した。
 確かに乃梨子は罪を犯したけれど、志摩子も妹にするほど大切な存在である乃梨子の想いを汲みとることが
できなかった罪を償わなければならない。
 だから、乃梨子には敢えて祐巳さんとの関係を続けさせようと思っている。
 乃梨子に罪を更に重ねさせることによって、更に追い詰められるという懸念はあった。
 しかし、迷える子羊である現在の志摩子では、乃梨子を救うことなど到底不可能であることは、今日、
嫌という程思い知らされていた。
 乃梨子を救う可能性があるのは、残念ながら祐巳さんだけなのだ。

「ごめんなさい…… ごめんなさい。志摩子さん」
 幾度も謝りながら、とぼとぼと歩く乃梨子の手を繋ぎながら、志摩子は崩れそうな足を動かして、
暗闇をひたすら歩くことしかできなかった。
 
(つづく)
247名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 16:41:31 ID:q0fnLT0N
新年、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
年末から規制の為、外からの書き込みとなります。(早く解除されて欲しいものです)
書いていて先行きが怖くなってしまいましたが、楽しんで頂ければ幸いです。

248名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 18:30:21 ID:eieZd9gy
キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!


あけおめGJ!!
249名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 19:54:52 ID:wQYmIPp7
GJGJ!
原作よりもドラマティックだな。
つづき期待します!
250名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 09:21:33 ID:wszWXsS7
あけおめ〜

GJ
251名無しさん@ピンキー:2010/01/05(火) 08:39:18 ID:hSWEC3df
続き木になりまする
252名無しさん@ピンキー:2010/01/06(水) 19:24:59 ID:NWIm345K
楽しみですな
253名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 00:29:56 ID:xColhbIi
規制解除記念GJ
エロい上に話も面白い
先行きに期待大です
254名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 19:14:03 ID:lbvCiWX3
>>246のつづき

7―1.

「ただいま」
 志摩子さんと別れた後、家に帰ったのだが、生憎と薫子さんは不在だった。
『リコへ。友達と歌舞伎を見てくるからちょいと遅くなるよ♪』
 留守電に残されたメッセージを聞いた後、小さくため息をつく。
 薫子さんは社交的な大叔母だから、演劇だの歌舞伎だので不在になることが多い。
 料理をはじめとして、大抵の家事は自分でできるから困ることはないけれど、賑やかな薫子さんがいないと、
ちょっと、いやかなり寂しい。 
 今日みたいにひどく落ち込んでいる日は特に。

 それでも、お腹は減っているので、流し台の下に残っていたレトルトカレーを鍋に放り込み、
冷蔵庫からキャベツをトマトを取り出して即席のサラダを作ってお腹を満たす。その後、
料理と並行してわかしておいた風呂に入ることにする。
 制服と下着を脱ぎ、平均値付近と思われる肢体をお湯にうずめると、幾分か気分は落ち着いてくる。
「今日は、いろいろ大変だったな」
 乃梨子は、シャワーの蛇口をひねりながらひとりごちた。

 今にして改めて思うけれど、リリアンは想像を絶するもの凄い学校である。
 乃梨子は、いつの間にか、リリアンという檻の中で、今まで経験したことのない愛憎劇の渦中に放り込まれていた。
 リリアン特有の姉妹という関係は、恋愛よりずっと夫婦に近く、祐巳さまとの関係は、
なんと『不倫』扱いになってしまうのだ。
 そして、とても優しくて壊れやすい志摩子さんをあそこまで追い詰めてしまったことは痛恨の極みである。
 志摩子さんと本音でぶつかり合ったことは無かったから、ある意味では避けては通れない道だったのかもしれないが。

 もし、高校受験の時の、乃梨子に話しかける機会があれば、高校浪人でもいいからリリアンだけは止めとけと、
大いに警告したい気分だ。
 もちろん、新幹線を使って京都まで玉虫観音を見に行った結果、第一志望の高校を受験できなかったことについては、
全く悔んではいないのだが。
255名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 19:15:20 ID:lbvCiWX3
「これから、どうなるんだろう」
 湯船につかり、女子高生の平均値付近と思われる肢体を漂わせながら、湯気で白く霞んだ天井を見上げると、
憂いに満ちた絶世と表現しても過言でない程の美少女の姿が脳裏に浮かび上がってくる。

「志摩子さん……」
 姉の名を呟くと、空想上の志摩子さんは哀しそうな顔で首を横に振った。
『ごめんね。乃梨子』
 志摩子さんは、祐巳さまと不義を犯した乃梨子との姉妹関係を解消しないと言った。
 一方的に悪いのは乃梨子なのに、志摩子さんは何故、自分自身を責めるのだろう。

「志摩子さん。分からないよ」
 人差し指でお湯を弾き飛ばしながら、乃梨子は誰もいない空間に向かって呟いた。
 薔薇の館での尋問によって、乃梨子と祐巳さまの関係は明かされてしまったけれど、
状況はほとんど変わっていない。
 志摩子さんとの姉妹関係が解消された訳でもないし、祐巳さまとの恋愛関係も続いている。

 一方、祐巳さまはこれからどうするつもりなのだろう。
 乃梨子は、今度は、昨日身体を重ねたばかりの可愛らしい恋人の姿を思い浮かべる。

 祐巳さまは、未だ事情を打ち明けていない瞳子に説明しなくてはいけない。
 しかし、精巧なガラスのように壊れやすい瞳子が、冷酷な事実を受け止めることができるのだろうか。
 もっとも、瞳子のことについては、祐巳さまにお任せするしかないのだけれど。

「ちょっと、のぼせたかな」
 じっくりと考え込んだおかげで、長くなってしまった風呂からあがりながら、乃梨子は呟いた。
 洗濯カゴから取り出した白い下着とブラを着け、水玉模様のパジャマを身につけていく。
 手早く着替えを終えて、自分の部屋に戻った時、携帯が鳴った。
 ディスプレイを覗くと祐巳さまの番号だ。
256名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 19:16:23 ID:lbvCiWX3
「もしもし、乃梨子ですが」
『祐巳です。ごきげんよう』
 祐巳さまの声を聞くと、不安になっていた気持ちが不思議と落ち着いてくる。

『ごめんね。今日は』
「祐巳さま……」
『私と付き合っているばっかりに、乃梨子ちゃんに辛い思いをさせて本当にごめん』
 祐巳さまは、とても辛そうな口調で謝っている。
「いえ。それはお互い様ですから、気になさらないでください」

『でも……』
「祐巳さま。私だって祐巳さまが好きなんですから、自分ばっかり悪いなんて
おっしゃらないでください」
 片想いでない恋愛一人ではできない。だから、祐巳さまだけの責任ではないのだ。
『でも、私は乃梨子ちゃんの先輩だから、乃梨子ちゃんを導いていかないと』
 真面目で誠実な祐巳さまは大好きだ。しかし――

「祐巳さま。私達はひとつしか違わないんですよ」
『高校生のひとつは大きいんだよ』
 結構、祐巳さまは強情だ。
「分かりました。でも、私だって祐巳さまを支えたいと思っているんです。
祐巳さまだけが責めを追うなんて、私の甲斐性がなさすぎる話です」

『ごめんね。先輩ぶっちゃって。やっぱり乃梨子ちゃんは大人だね』
 祐巳さまの賛辞はストレートだから妙に照れくさくなってしまう。
『分かったよ。乃梨子ちゃんの言うとおり、責任は半々ってことにするね』
「ええ。お願いします」
 
『それにしても、志摩子さんのことは、『志摩子さん』と呼ぶのに、私はずっと『祐巳さま』なんだね』
 乃梨子の言葉を聞いて安心したのか、祐巳さまの声は明るいものになっている。 
「姉妹でない先輩でしたから、そう呼ぶしかないように思いますが、もしお気に召されないようでしたら、
今後から『祐巳さん』とお呼びしましょうか?」
『うーん。凄く違和感があるなあ。やっぱり、今のままでお願い。ところで乃梨子ちゃん』
「何ですか?」

『今日ね。志摩子さんを押し倒したでしょう。あれって本気?』
257名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 19:17:52 ID:lbvCiWX3
「え、えっと」
 完全に不意を突かれて、乃梨子は口ごもる。
『ちょっと妬けちゃったなあ、乃梨子ちゃんの強引さにね』
「からかわないでくださいよ」
『えへへ。ごめんね』
 祐巳さまは、少し舌足らずな声で謝った後、何気ない口調で付け加える。

『志摩子さん。美味しそうだもんね』

「祐巳さま!」
 乃梨子は羞恥で身体が熱くなるのを感じながら叫んだ。
 祐巳さまは、唐突に際どすぎる冗談を飛ばすから本当に油断がならない。

『ふふ…… やっぱり可愛いね。乃梨子ちゃんは』
「祐巳さまはいじわるです」
 乃梨子のふくれた声にからから笑ってから、祐巳さまは告げた。

『乃梨子ちゃん。お母さんが呼んでいるから、申し訳ないけれど電話を切るね』
「あ、はい。今日はありがとうございました」
『こちらこそありがとう。それじゃあ、また明日ね』
「はい」

 乃梨子が電話を置いて時計を見上げると、既に午後8時を回っている。
 ドライヤーで濡れた髪を乾かしていると、今度は家の電話が鳴り響いた。
 独りなのに意外と忙しい。
「もしもし。二条ですが」
 キッチン兼居間まで戻って、受話器をとりあげると、親しい人の声が聞こえてきた。
『もしもし。リコかい?』
 薫子さんだ。
「うん。どうしたの?」
『ちょいと盛り上がっちゃってさ。今日は友達のとこに泊ることにしたわ』
 どうも、薫子さんの口調から推測すると、お酒が入っているみたいだ。遠くから音楽とともに
見知らぬ誰かの歌い声が混ざっているから、カラオケ店にでもいるのだろう。
「分かった。でも薫子さん。あんまり無茶しないでね」
 友情に免じて年なんだから、とは言わない。
『りょうかーい。リコも早く寝るんだよ。じゃ、おやすみ』
「おやすみなさい」

 電話を切りながら、乃梨子は苦笑した。
 とても元気なことは良いことだけれど、はっちゃけ過ぎても若返りませんよなんて、
意地悪なことを考えたことも、薫子さんには内緒だ。
258名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 19:18:40 ID:lbvCiWX3
 受話器を置いてある居間から、乃梨子は自室に戻った。
「さてと、宿題でもしておくか」
 勉強机の前にある椅子に座り、問題集を広げて、筆箱からシャーペンを出す。
 しかし、文字を書こうとすると、短くなった芯が紙の上に落ちてしまった。
「ありゃ」
 芯が入っているはずの、小さなプラスチックケースを取り出すが、既に空になっている。

 仕方がない。近くのコンビニにでも行って買いにいくか。
 ついでに残り数頁となったノートと、インクの残りが少なくなったボールペンも補充して、
あとは、夜食となるようなおやつも買っておこう。
 
 パジャマを脱いで私服に着替えてから、乃梨子は玄関のドアの鍵をかけてから夜道に出る。
 街灯から漏れる明かりを頼りに、最寄りのコンビニに向かって歩いている時、
後ろからエンジン音が近付いてきた。
 反射的に道の端に寄るが、車は乃梨子の3メートル程前で停まり、車内から女の人がでてくる。

「誰?」
 人影に問いかけるが返答は無く、すぐに背後に回られる。
「乃梨子ちゃん」
 驚いて振り返ると、見覚えのある彫りの深い顔が見えた。
「聖さ、もがっ」
 背後から抱きつかれたと思う間もなく、ハンカチのような布で口を塞がれる。
「む…… むうぅ」
 布には薬品を染み込ませているようで、強烈な刺激臭が鼻につく。
「むぐ!」
 混乱したまま、身体をバタつかして暴れるけれど、強い力で抱え込まれており、
逃れることができない。
「ん…… んんっ」
 異臭を何度も嗅いでいるうちに、頭がぐるぐると回り出す。
 どうして、この人がこんなことを、と考えようとするけれど、全く脳みそが働かない。
 視界が歪みながらぐるぐると回り、急激に暗くなる。
「ん、ううん……」
 目の前が真っ暗になると同時に、身体中の力が吸いだされるように抜けてしまい――

 乃梨子は意識を失った。
259名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 19:20:46 ID:lbvCiWX3
かなり長くなりそうなので、乃梨子視点の7話は2分割しました。

書いていくうちに、どんどん乃梨子が可愛く思えてきますね。
260名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 22:41:49 ID:zokthII7
つづ、きを、くだ、さい・・
261名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 11:13:18 ID:ApNoqro4
>>258の続き

7−2.

「ごきげんよう。乃梨子ちゃん。」
 暗闇に沈んでいた意識が、再び浮上する。
 瞼を開くと、強烈な光がさしこみ、乃梨子は瞼を何度もしばたかせた。
「な、なに?」
 朦朧としている意識をはっきりさせてから、身体を引き起こそうとするが両手が動かない。
「ど、どうなっているの?」
 首を捩じって背中を見ると、後ろに回された両手首が紐で縛られている。
 異常な事態に動揺しながら顔をあげると、彫りの深い顔立ちをした女性がニヤニヤと笑っている。
「聖…… さま?」
「正解。ようやく気がついたみたいだね」
 あたりを見渡すが、見たこともない部屋だ。
「一体、何を?」
 疑問を口にしながら、部屋の中央に立っている若い女性を凝視する。
 目の前で笑っているのは、確かに志摩子さんのお姉さまである佐藤聖さまだ。その聖さまがなんでこんなことを?
「頭の良い乃梨子ちゃんなら大体分かるんじゃない」
 乃梨子を眠らせた挙句、車で拉致して見知らぬ場所に連れ込んだ犯人は愉しそうな口調で言った。

「何故、そんなことをするんですか?」
 彫りの深い顔を見つめながら問いただすが、おおよそのところは分かっている。
 志摩子さんの敵討ちのつもりなのだろう。

「そこまで分かっているなら話が早いけれど」
 聖さまは、少しだけむっとした顔つきで言った。
「乃梨子ちゃんには、志摩子を裏切った報いを受けて貰わないとね」
「聖さまにそんな権利があるんですか?」
 乃梨子は敢えて侮蔑の意をこめて睨みつけると、聖さまは少しだけ自嘲めいた顔つきに変わる。
「そんなものは無いけれどね」
「無かったらどうして」
「うーん。これは私の単なる我儘かな」

 聖さまは、一転して怖いくらい低い声で付け加える。
「志摩子の泣き顔を見ては、ほっておけないからね」
「あの後、志摩子さんは、聖さまの家に行ったのですね」
 乃梨子が確認すると、聖さまは不肖の後輩を睨みつけながら言った。

「そう。志摩子は乃梨子ちゃんの裏切りに酷く傷ついていたよ」

 聖さまが突きだした言葉の槍に刺されて、乃梨子はずきりと胸が痛んだ。
262名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 11:15:04 ID:ApNoqro4
「志摩子は、鏡に映った私なんだ。つまりね。志摩子を裏切ったということは、私を裏切ったと同じ意味を持つんだよ」
 聖さまは近寄りながら言った。
「少なくとも…… 私にとってはね」
「勝手な理屈ですよ」
 志摩子さんに対しての責任は大いにあるけれど、聖さまの心境なんか知ったことではない。それに――

「祐巳さまには、何もされないんですか?」
 確かに志摩子さんを裏切った責任は妹である乃梨子の方が重いかもしれないけれど、乃梨子の相手は祐巳さまなのだから、
聖さまの怒りは祐巳さまに向かってもおかしくないはずだ。

「祐巳ちゃんはね」
 しかし、聖さまは悲しそうな顔になったまま黙り込んだ。
「何か、祐巳さまに負い目でもあるのですか?」
「負い目…… というか、祐巳ちゃんは恩人だから」
「恩人?」
 意外すぎる言葉に驚く。
「祐巳ちゃんは、迷える私を救って大学に行かせてくれたからね。強くは出れないんだ」
「はあ……」
 祐巳さまの影響力の凄さにあらためて驚かされる。前の白薔薇さまにまで愛されているなんて。
「ま、そういう訳だよ。乃梨子ちゃん」
「ずいぶんと理不尽ですね」
「世の中、理不尽じゃないことの方が少ないからねえ」
 半ば自分自身に向けるような口調で言ってから、聖さまは唇を近付けてくる。

「ん……」
 聖さまは軽く触れるだけのキスをするが、すぐに離れてしまう。
「どうして?」
「舌をいれたら、噛みつかれそうだからね」
「別に猛犬とかじゃないですから」
 憮然とする乃梨子をニヤニヤと眺めながら、背後に回りこんで縛られたままの乃梨子を抱きしめる。

「何をするつもりですか?」
「いいことだよ」
 首元に息を吹きかけてくる。ぞわりとした感触が上半身を降りかかる。
「やめてください」
「だーめ」
 調子に乗った聖さまは、整った顔を肩口に近付けながら、くんくんと鼻を鳴らした。
263名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 11:15:45 ID:ApNoqro4
「乃梨子ちゃん。良い匂いがするね」
「お風呂に入ったばかりですから」
「ふふふ感心感心、ちゃんと準備してくれたんだ」
 物凄く都合の良い解釈をする聖さまに、乃梨子は心底あきれたような口調で返した。
「聖さまに拉致されなければ、もう寝ていました」

 全く、なんでこんなことになってしまったんだろう。
「あれっ、乃梨子ちゃん。怒っていないの?」
「怒りを通り越して呆れましたよ」
 乃梨子はため息をつきながら、後ろから抱きすくめている聖さまを見上げて尋ねる。
「それに聖さまだって、それほど私を憎んでいないようですが」
「ま、乃梨子ちゃんも可愛くないわけではないからね。ん―― この分じゃ必要ないかな」
 聖さまは乃梨子を拘束していた紐を外した。

「どうして外したんですか?」
「抵抗しないと思うから」
 あっさりと言ってから、聖さまは、乃梨子の私服の隙間に手を潜り込まして、ブラの上からゆっくりと撫で始める。
「くぅ、どうして、そんなこと断言…… できるんです?」
「どうしてかなあ」
 聖さまの指先が、乃梨子のふくらみのてっぺんを摘んで、ゆっくりと擦っていく。
「ん、くぅ…… はぐらかさないで、ください」
 先端に電流のようなものが奔る。ひどくむずがゆくて、くすぐったい。
「ふふん。乃梨子ちゃんの乳首は敏感だねえ。もう固くなっているよん」
 ほとんどセクハラおやじと化した、前白薔薇さまのご乱行に呆れながら質問を重ねる。

「ん…… なんでそんな事、するんですか?」
 愛撫を受けていくうちに、乃梨子の下腹部が熱を帯びて、じわっという感触がする。
 まずいことに、大事なところが既に濡れ始めているようだ。

「うーん、内緒。ふふ。乃梨子ちゃん、意外と胸あるんだねえ」
「し、失礼です!」
「ん―― 何が? 胸が無いと思われていたことが?」
 聖さまは、ニマニマと笑いながら、乃梨子の胸を丹念に揉みしだいていく。
「くっ…… どうせ聖さまよりはないですよっ」
「ひとに揉んで貰うと大きくなるらしいよ」
 悪戯そうに言う聖さまの手つきはより大胆になっていく。
264名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 11:16:31 ID:ApNoqro4
「んんっ、いいかげんなこと、言わないで、ください…… んくぅ」
「ふふっ、可愛いねえ。祐巳ちゃんとどっちが大きいかな」
「く、比べないでくださいっ。ふあっ」
 とろり…… 聖さまの執拗な胸への愛撫のために、乃梨子の大切なところから熱いものが漏れだして、
健康的な太腿に垂れていく。反射的に脚を閉じるが、恥ずかしさは隠せない。

「おっと、だいぶ感じてきたみたいだね」
 安っぽい官能小説みたいなことを言って、聖さまの指が胸から下へと這い進んでいく。
 そして、乃梨子の紺色のスカートをめくりあげながら、下着の上をいやらしくなぞり始める。

「ひゃん」
 強烈な刺激が奔り、思わず裏返った声をあげてしまった。
 聖さまの指先は、乃梨子の反応を愉しむように絶えず変化を加えて動いていくから、その度に身体が反応してしまう。
「ん、駄目、そこは駄目ですっ」
 乃梨子は悲鳴をあげながら、太腿を擦りあわせながらよじって逃れようとするけれど、聖さまの指はふとももの間に
しっかりと挟み込まれており、乃梨子が頑張って足を閉じようとすればする程、強く押し付けるような形になってしまっている。

「ふふ。もっと強くしてほしいんだね」
「ち、違いまっ、ひゃあっ」
 聖さまは乃梨子のうなじを舐めながら微笑んでから、下着の隙間から長い指を差し入れた。
「な、や、やめてくだっ、くうっ」
 懸命に抗議をしようと身体を捩じろうとするけれど、痺れるような快感が渦巻いていてろくに動けない。
 もだえる乃梨子の反応を愉しみながら、もう一方の手で胸を揉んでいる聖さまが耳元で囁く。
「乃梨子ちゃんって、凄く感じやすいんだ」
「ば、馬鹿にしないでっ…… んあっ」
 襲いかかる快楽の波に耐えられず、みっともない嬌声をあげてしまう。
「乃梨子ちゃんのお豆さん、とっても大きくなっているよ」
 愉悦の表情を浮かべながら、聖さまは乃梨子のクリを親指と人差し指を使って摘み、ぐりぐりと揉み始めた。

「だ、だめです。そんな、くぅ…… んんっ」
 自分でも信じられない程にイヤらしい声をあげながら、聖さまの愛撫にひたすら耐え続けている。
 しかも、姿勢はずっと立ったままなので、次々と襲いかかる快感を逃す場所がみつからず、
聖さまの掌の上で踊らざるを得ない。
 更に服を全て着たまま、後ろから弄ばれているという、倒錯的な状況に興奮してしまったのか、
乃梨子の秘められた部分からは、粘性のある蜜が絶えず零れ続けており、両足をつたって、
床にいやらしい染みをつくっている。

「乃梨子ちゃんのアソコ、ぐしょぐしょだねえ」
「全部、せいさま、のせい…… です」
 荒い息をつきながら、それでも全ての元凶をにらみつける。
265名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 11:17:16 ID:ApNoqro4
「ふふ。違いないね」
 聖さまは、そろそろ頃合い良しとみたのか、シャープな顔を近づけてくる。
「もうそろそろ、いいよね」
「ふつう…… くぅ、順番が、逆なんじゃ、ないですか…… あくぅ」
「細かいところは気にしない」
 軽い口調で言ってから乃梨子の唇を塞ぐ。今度は舌を深くいれるディープキスだ。
「くっ…… んはっ」
 聖さまの舌がねっとりと絡みつき、乃梨子の舌の表と裏を丹念になめとっていく。

「んむ…… んあっ、んむっ、んんっ」
 ぴちゃ、ぴちゃと、物凄く卑猥な音が弾ける。
 聖さまは、乃梨子の舌を貪っている間でも、乃梨子の乳房と下腹部への愛撫を続けているから、
身体全体がとろとろに溶けてしまいそうだ。
「んくぅ、ふあっ、くぅん…… あふっ、んぐぅ」
 短い喘ぎ声を繰り返す乃梨子の口内を吸いつくしながら、聖さまの指は乃梨子の恥毛をかぎ分けて、
膣の中へと潜り込む。
「んんっ…… んんんっ――」
 強烈すぎる刺激に悲鳴をあげようとするけれど、大きな手で口を塞がれてしまい、くぐもった声にしかならない。
「んぐっ…… むぅ、はぁ、くあっ、ふうん」
 すっかり調子に乗った聖さまは、乃梨子の膣にうずめた指の第一関節をいきなり曲げた。
「んんんんっ!」
 膣壁に強烈な刺激を受けた乃梨子は、悲鳴をあげながら崩れ落ちそうになる。
 しかし、聖さまはがっちりと乃梨子の身体を支えており、床に倒れこむことはできない。

「ん、んあっ、んああああっ」
 聖さまに散々に翻弄された後、ようやく唇が離される。
 乃梨子は嬌声をあげると同時に、新鮮な空気を求めてあえいだ。そして――
「乃梨子ちゃん、そろそろいこっか」
 荒い呼吸を繰り返す乃梨子の耳元で囁いた後、指の動きを更に速めた。

 くちゃっ、くちゃん――

「や、やだ。やだあっ」
 乃梨子の愛液を弾く卑猥な音が、連続して耳朶に届く。
 聖さまの指が動くたびに、乃梨子は海老のように身体を跳ねさせながらよがり声をあげる。
「だめ、だめです。せ、せい……さまっ、わたし、わたしっ」
 涙を零しながら喘ぎ、聖さまの首筋にしがみつく。
「もう、イッちゃっていいよ」
 聖さまの声がやけに遠く聞こえる。
「んあっ、くぅ…… んあああっ、はあああっ」
 指が膣を刺激する度に視界が歪む。とても気持ち良いけれど、身体が熱くて蕩けそうになる。
「だめ、いくぅ…… いっちゃうっ」
 信じられない程に艶めかしい嬌声をあげ、瑞々しい肢体をよがらせながら、長めのおかっぱにした黒髪を振り乱す。
「くぅ…… んああああっ、ああああ、くああああっ」
 懸命に聖さまにしがみつきながら、身体をがくがく震えさせて、快楽の頂きを急速に昇っていく。そして――
「だめ、ひゃああああ、いやあああっ、んんんっ、んあああああああっ!」
 全身から汗を滴らせている二条乃梨子は、絶叫しながら一気に頂上を越えていった。
266名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 11:18:07 ID:ApNoqro4
「いやあ。最初と予定が違っちゃったな……」
 昇り終えた乃梨子の後始末をした後、聖さまは天を仰いだ。
「はあぁ、はあっ…… せ、聖さま…… ホント、やり過ぎですよ……」
 荒い息をしながら、欲望の赴くままに乃梨子を陵辱した犯人を睨みつける。
「だいたいですね。ここ…… どこなんですか?」

「ここ? 私の家だよ」
「ど、どどどどどどっ」
「道路工事?」
「違います!」
 乃梨子は大声で叫んでから、聖さまに喉元にびしっと指を突き刺してから叫ぶ。
「聖さま。あなた、一体何を考えているんですか?」
「え?」
「あのですねえ。クロロホルムか何か知りませんが、怪しい薬品をかがして、後輩の女子高生を拉致して、
陵辱する場所がどうして自分の家なんですか! 親御さんに見つかったらどう言い訳するんですか!」

「今日は両方とも帰らないから」
 事も無げにいう聖さまが無性に憎ったらしい。
「まったくもう。聖さまってほんと常識外な人間ですね」

「くくっ、ふははははっ」
 しかし、まるで珍獣を見るような視線で乃梨子を眺めていた聖さまは、急にお腹を抱えて笑いだした。
「なんで笑うんですか!」
「だって、おかしいから…… ふは、ふはははははっ」
 乃梨子が怒っても全く効果が無い。床に転がりながら、身体をくの字に折って悶えている。
 人に笑われるのは腹が立つけれど、ここまでヒーヒー言いながら抱腹絶倒されると、あきれてモノも言えない。

「ふはは。乃梨子ちゃんも面白いねえ。祐巳ちゃんもなかなかのものだったけれど」
「もう、知りませんっ」
 乃梨子はふくれっ面をして横を向いた。なんなんだ一体。この人は。全く、もう。

「まあ、最初の計画が狂いまくっちゃったのは事実だよん」
 ようやく笑い終わった聖さまが楽しげに言った。
「どういう計画だったのです?」
 
「ん…… 乃梨子ちゃんを拉致して、陵辱して、二度と祐巳ちゃんには近付くなって言うつもりだったんだけれど」
「拉致して陵辱の最初までは合っていましたけれど、途中から変わりましたね」
「うん。あっ、そうだ。お茶でも飲む?」
「いただきます」
 聖さまは立ち上がって、台所まで降りて行った。
 まったく何て夜なんだろう。祐巳さまとえっちした次の日なのに、あの佐藤聖さまと『して』しまうなんて。
 それにしても聖さまも聖さまだ。志摩子さんに泣きつかれて義憤に燃えたまでは分かるけれど、どうして
こうなっちゃうんだ?
 それに、乃梨子とえっちしたことが志摩子さんに知れてしまったらどう言い訳するつもりだったんだろう。
267名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 11:19:10 ID:ApNoqro4
「物凄く行き当たりばったりなひとだな……」
「何が行き当たりばったりだって?」
 振り向くと、お茶とお菓子を載せたお盆を持った聖さまが、部屋に戻っていた。
「聖さまのことですよ」
「私の?」
 素で聞き返すところが、聖さまの聖さまたる所以なのだろうが。
「いいですか。聖さま」
 私は、聖さまのやっぱり秀麗としか言えない、彫りの深い顔を見据えて言った。
「人をこういう手段で連れ去ることは、正真正銘の犯罪行為なんですよ」
「ごめんね」
「あっさりと謝らないでくださいっ」
「いや…… 流石にまずいと思ったから」
 聖さまの返答に激しい頭痛を覚えながら、乃梨子は文句を言い続ける。

「まったくもう。聖さまが最後まで悪に徹してくれればよかったんですよ。私を酷く陵辱して、
恥ずかしい写真を撮って、これをリリアンにばら撒かれてほしくなければ、祐巳さまと別れろとか、
そうやって脅してくれれば、自己憐憫と自己陶酔の池に溺れることができたのに」
「乃梨子ちゃんも、かなりぶっとんでるような気がするよ」
 聖さまが両肩を竦めて呟くが、ここは無視する。

「それなのに。聖さまの性技が妙に巧いもんだから、いけないと思うのに感じちゃって、あまつさえイッてしまうなんて。
もう―― 聖さまなんて知りませんから」
 乃梨子はぷいっと顔をそむけた。

「ごめんね。乃梨子ちゃん」
 今度は、さっきの『ごめん』よりもおどけた様子がない。
 聖さまは今度は、ゆっくりと乃梨子を抱きしめながら言葉を続けた。
「乃梨子ちゃん達には、私達の過ちを繰り返してほしくないんだ」
「栞さま…… とのことですか?」
 乃梨子の返事に、聖さまはとても哀しそうな表情を醸し出しながら頷く。
「私と栞はね。いや、私はね。周囲のことが何も見えていなかった。周りの冷たい目も、白薔薇のつぼみとしての
役割も全て無視して、栞しか見ていなかった。だから私のせいで、栞はリリアンから追い出されてしまった」

「聖さま……」
 乃梨子は、過去を思いだしながら悔いる聖さまの背中をそっとなでる。
「ごめん。取り乱して……」
「いえ。いいんです」
「乃梨子ちゃんと祐巳ちゃんには素晴らしい未来がある。だから、私と同じ過ちを繰り返して欲しくないんだ」
 2年前に、未遂に終わったけれど、実際に駆け落ちを試みた聖さまが言うから、他の誰よりも言葉に重みがあった。
「聖さまのおっしゃることはよく分かります…… しかし」
 乃梨子はため息をつきながら言った。
 理屈では分かる。
 リリアンに2年近くいれば、リリアン独特の姉妹制度も、山百合会のことも十分と言って良いほど分かっている。
 しかし、それでも――
268名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 11:20:19 ID:ApNoqro4
「うん。恋愛って理屈ではないね。だから何を言っても無駄なことかもしれない」
 聖さまは静かに言った。現在の表情は慈愛に満ちたと言っても過言でない程、優しい。
「いえ…… ご助言、ありがとうございます」
 神妙な口調で言うと、聖さまは少しだけ苦笑めいた笑みを浮かべて、乃梨子のおかっぱ頭を
まるで小さい子供に向けてするように撫でた。

「聖さま…… ひとつ伺って良いですか?」
 頭一つ分だけ背が高い聖さまを見上げながら、乃梨子は尋ねる。
「なあに?」
「志摩子さんを抱いたことはないのですか?」
 聖さまは何もいわず、ただ首を横に振った。

「どうして…… ですか?」
「志摩子は特別だから」
 聖さまは、ここにはいない志摩子さんを愛おしそうに見つめながら呟いた。
「それなのに、特別でない私は抱いてしまうのですね」
「そういうことになるね」
 聖さまは矛盾の塊だ。
 遥か遠くに去ってしまった栞さまを除いて、一番大切な存在である志摩子さんには触れることすら躊躇うのに、
どうでもいいとまでは言わないけれど、志摩子さんの妹に過ぎない乃梨子をあっさりと抱いてしまう。
 聖さまの性格は、おぼろげながら理解しつつあるけれども、傍から見ればとても分かりにくい対応だ。

「聖さまの基準は、難しすぎですよ」
「私もそう思う」
 聖さまは乃梨子の言葉に頷いたけれど、表情は寂しそうだった。

 お茶とお菓子を頂いた後、聖さまは、乗用車で薫子さんの家まで送ってくれた。
「乃梨子ちゃん。ここで良かったんだよね」
 聖さまは、家のすぐ近くの道路の端に車を停めながら言った。
「はい。ありがとうございました…… というべきなのでしょうか」
 乃梨子の言葉に苦笑した聖さまを見てから、ドアをあけて外にでる。
「それでは、おやすみなさい聖さま」
「おやすみ。乃梨子ちゃん。あと……」
 ドアを閉める直前に、聖さまは付け加える。

「志摩子をよろしく」

 驚いた乃梨子が返事をする前に、聖さまはアクセルを深く踏みこみ、夜の街へと消えていった。


(つづく) 
269名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 11:24:38 ID:ApNoqro4
読んでくれたひとありがと〜

乃梨子がつんでれモードになってしまいました。
270名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 16:37:59 ID:QWZpaOzB
いいよいいよー!!
271名無しさん@ピンキー:2010/01/11(月) 23:12:51 ID:lZgzEhSl
GJ
272名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 13:30:44 ID:DGICLOUq
保守
273名無しさん@ピンキー:2010/01/13(水) 00:51:33 ID:NUW3fNnn
神きてた……!
急転してダークな展開にいくのかと思ったら、やっぱりマリみてらしい流れ……。
文体も中身も最盛期の緒雪みたいだ。
274名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 19:45:39 ID:xP1+fSmE
マリみてまだかしら?
275仕方ないからネタ投下:2010/01/18(月) 20:18:34 ID:xP1+fSmE
祐巳「お姉さま、ロザリオをお返しします」
祥子「オドリャ、逆縁切るつもりかコラァッ!」
祐巳「私は聖さまの盃をもらいます」
祥子「上等じゃワレ、イワしたるど! このコッパハゲが、絶対にイワしたるけえのぉ!」

「ワレ、バッジがまがっとるでえ」

ごくごく平凡なチンピラ、福沢祐巳はある日、ほんのちょっとしたきっかけで
山百合会の大幹部、小笠原祥子の盃を下ろされることになる。

祥子「ワレ、花寺のボンクラ イワしててこいや」

だがしかし、花寺連合の柏木優は本家の兄弟筋にあたり、祥子ともかつて五分の盃を交わした仲だった。
優に散々にマメ玉をぶち込んだ祐巳は、責任を感じてエンコを飛ばそうとするが、祥子に止められ、
なんだかんだの末に祥子の盃を受けるのだった。

次回

黄薔薇連合・支倉組の若頭・島津由乃が盃を返したことにより、
渡世人の間で逆縁を切ることが大流行する。そのとき祐巳は?
276仕方ないからネタ投下:2010/01/18(月) 20:19:26 ID:xP1+fSmE
マメ泥棒の常習犯・佐藤聖

白薔薇様「ワシゃあ、オマ○コの汁でメシ喰うちょるんじゃけえのぉ!」
祐巳「ひい〜〜」
祥子「姉貴、人の舎妹(スール)イジリまわすんは止めてくださいや」
白薔薇様「ワレ、堅いこと抜かすなや。サービスじゃ、サービス」
祥子「サービスやと、こんボケがぁ!」
277名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 23:32:41 ID:VXW7yDIp
フイタw
278名無しさん@ピンキー:2010/01/19(火) 02:27:57 ID:zcV/qgLF
これはw
279名無しさん@ピンキー:2010/01/23(土) 22:52:41 ID:TjyQFySR
マメ泥棒ってエロい響きだよね
280名無しさん@ピンキー:2010/02/01(月) 11:36:21 ID:oAEWgAWA
マリみてつづきまだかな。
規制にまきこまれてるんだろうけど、楽しみにしてるよ。
281シンケンジャー 源太と太夫:2010/02/11(木) 06:25:27 ID:Z3pVxY5K
大晦日の夜。さすがにこの寒空の下、年越しに屋台で寿司を食おうとするような
酔狂な客は皆無である。
「ぁんだよ。昨日までは忘年会帰りの客で賑わったってのに、今日はもうダメかぁ?」
近くのベンチにゴロリと横になり、ボリボリと頭を掻く源太。
明日は屋敷で皆と新年のお祝いだ。もう今夜はとっとと屋台を閉めようか、などと
考えているうちに、源太はついその場でウトウトと眠り込んでしまった。

数時間後。夢うつつに、何やら股間にぬらりぬらりとした快感を覚える源太。
「ほひぇ〜、こいつぁ気持ちいいやぁ・・・」
寝ぼけた頭でぼんやりと目を開けると、自分の股の間から薄皮太夫の巨大な頭が
こちらをじっと見つめていることに気づいて仰天した。

「うがっ!なっなっなっ?なっ???」
「ひゅん、おきひゃか。ぶようひんにもほろがあるろヒンケンホールロ」
見れば何と言うことか。薄皮太夫が源太の股間の一物にしゃぶりつき、むぐむぐと
咥え込んでいる。まだ目が完全に覚めていない源太は何が起きているのかまったく
理解できない。
「わっ!ななな!?」
「相変らず想像しい男だな」ちゅぽん、と音を立ててそれから唇を離した太夫が呟く。
「不用心にも程がある、と言ったのだ。こんな道端で寝る奴がいるか馬鹿者」
太夫は源太のそれを掴んで上下にしごきつつ、呆れ返ったような口調でまた呟いた。

慌てて飛びのこうとした源太だったが、何故か体が痺れたように麻痺して動かない。
「てめえっ!何をしやがったぁ!」
「ちょいと術をかけたのさ、貴様ともう一匹の騒々しい奴にな」
太夫の視線の先を追いかけると、転がって大きなイビキをかいているダイゴヨウ。
「そっちのは朝までは目が覚めないだろうね」
「ダ、ダイゴヨウ!・・・てめぇ、いったい何を?俺をどうするつもりだ?」
「まぁ落ち着け。今日は戦いに来たんじゃない。見れば判るだろう?」
相変らず半分面白がったような表情で源太の股間をいじくりまわしている太夫。
「話をしに来たんだよ。端的に聞くが、貴様はいったい何の為にわちきらと戦っている?」
興味津々、といった様子で太夫が源太の顔を覗き込む。
この異様な状況と突如投げかけられた問い。源太はさらに混乱し「ぐ」と言葉に詰まる。

な、何のためって。そりゃおめえ。俺は侍だ。あやかしを退治すんのが俺の仕事じゃ
ねぇか。そりゃ俺は丈ちゃんや流ノ介と違って本物の侍じゃないが、志は同じだぜ。
・・・って、俺ぁ何でチンコいじられながらこんなこと真面目に考えてんだ。バカか!
282シンケンジャー 源太と太夫:2010/02/11(木) 06:26:05 ID:Z3pVxY5K
「んなこたどうでもいいだろうが!だいたいおまえ、話するのに何でこんなことを!」
「わちきは今どうしても知りたいのだ。この戦いの意味、理由。そしてわちきの・・・」
太夫はどこか遠くを眺め、何か別のことを考えている様子で呟く。
頭を振って源太に注意を戻した太夫は少々萎えてきた源太のそれを再び撫でる。
「力づくで聞き出そうとしたところで貴様等は喋るまい。時間の無駄だ。人間ってのは
快楽の絶頂に達した時が最も心が無防備になるからな。だから、こうする」
言いながら太夫は源太のそれを爪の先で「ぴん」と弾く。
「貴様自身すら気づいていない心の奥深くまでわちきにさらけ出してもらいたいんだよ。
貴様が達した後、それが露になるだろう」
ククッと笑った太夫の唇から、異様に長くぬめぬめと湿った舌がぬるり、と飛び出した。
「では続けようか。貴様はなかなか面白そうだな」

太夫は源太の着ている服を爪でビリビリと引き裂き、無造作に源太の股を押し広げた。
源太の股間に顔を埋める太夫。舌先で源太の根元から先端へとべろりと舐め上げる。
「ふふん」
太夫の舌はそのまま源太の股ぐらを這い回り、舌の根元で源太の玉を交互に転がし、
さらに奥へと向かう。
舌先が源太の尻の穴に到達し、探るようにツンツン、とつつき、ねっとりと舐め回す。
「やめ、ろ・・・」
顔を歪めた源太の言葉など意に介さず、太夫はしばらくそこを舐め続けたが、突如
舌先をすぼめ、源太の尻の穴にずぶりと差し込んだ。
「ひゃぁっ!ほほほほほっほっほっほ!」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった源太。その間にも太夫の舌はさらに奥へと
進み、源太の中でぐにゅぐにゅと蠢いている。
これまでに経験したことのない己の内側から感じる凄まじい快感に、源太はどうする
こともできずただ「やめて、くれ・・・」と呟くのみ。
「おや、やめてほしいのかい?そうは見えないけどねぇ」
言いながら今にも暴発しそうに硬くそり返った源太の物を、またゆっくりと掴みながら
淫らに囁く太夫。
「早く楽になれ。我慢することはない」
そう言うと太夫は口を開き、今度は源太の物を根元まですっぽりと飲み込んだ。
283シンケンジャー 源太と太夫:2010/02/11(木) 06:26:44 ID:Z3pVxY5K
「うわっっち・・・くひょう」
太夫のすぼめられた唇が源太の根元を「きゅ」っと締めつけ、やわらかな舌が
ぬるぬると絡みつく。その舌の動きは不気味なほどに優しく、こんな状況でもなければ
愛しげに愛撫されているかのように思えるほどだ。
あまりの快感に為す術もなく「うう」と唸ることしか出来ない源太を見てニヤリと笑い、
「そろそろだね」と呟いた太夫は咥えたまま顔を前後に激しく動かし始める。
「うわっ、もうっダメだぁぁ!」
唇を大きく開き、舌を突き出しながら待ち受ける太夫の口内に、源太は思い切り放った。
「ああが・・・うぅぅっ」
どくん、どくん、と脈打つたびに信じられないほどの量がほとばしり、太夫の口の中に
流れ込んでいく。太夫は再び源太の物を口に含むと、まだ放出している最中の源太の
物を頬をすぼめて強く吸い始めた。
そこから内臓から脳までが吸い取られていくような極限の快楽。源太は白目を剥いて
言葉を発することもできずただガクガクと体を震わせる。
太夫は放たれる全てを一滴も余さず舌ですくい上げ、舐め取り、喉を鳴らしてゴクリと
美味そうに飲み込んだ。

くはぁ、と満足げに息を吐き出した太夫は、唇をぺろりと舐めながら源太を見て笑う。
「ふん、悪くない。ただ少々塩気がきついな。貴様は塩分の摂り過ぎだ」
ニヤリと笑い軽口を叩く太夫。
「さて、では話してもらおうか。貴様にはもう抵抗する余力は無かろう」
肩で息をしていた源太。遠ざかりかけた意識を何とか取り戻し、くわっと目を見開く。
「うる・・・せぇ。俺は、寿司屋だ・・・食いモンには醤油つけてナンボだ・・・」
息も絶え絶えに呟く源太に、太夫は「おや?」という顔をする。
「わちきが一滴残らず搾り取ったと言うのに。まだそんな減らず口が叩けるとはな」
「・・・へっ、たかが一発くれぇで、へばる俺じゃねぇや」
しばらく呆然としていた太夫だったが、頭を振りながら源太を睨みつけた。
「ならばこれならどうだ?」
そう言うなり、太夫の姿がいきなり変化した。

突如源太の前に現れたのは一人の人間の女性。髪を日本髪に結い上げ、薄桃色の
襦袢を淫らにはだけさせている。その軟体動物を思わせる血色のない肌は青白く、
人間離れした艶かしさだ。
女はその細い肢体には不釣合いなほど豊かな乳房を己の手で揉みしだきながら、
源太に見せつけるように乳首をつまみ、妖艶に微笑んだ。
284シンケンジャー 源太と太夫:2010/02/11(木) 06:27:20 ID:Z3pVxY5K
「だ、誰だあんたは?」
骨が無いのではないかと見えるほど柔らかな体を蛇のようにくねらせ、するすると
這い寄って来た女は源太の上に覆いかぶさる。
そして源太の顔に乳房を押しつけ、乳首で頬や唇を撫でつつきながらククッと笑う。
「貴様にはそう見えてるだけで、わちきは変わっちゃいないんだよ」
源太に跨っていた太夫は体の向きをくるりと変えると、源太にその尻を向けた。
「さぁ、その空元気がどこまで続くかな」
言いながら太夫は後ろ向きのまま源太の股間の物を掴むと、自分の股ぐらの間で
ヒクヒクと息づいている場所へあてがい、そのまま一気にずぶずぶと腰を沈めた。
「うおお!・・・」やわらかに締めつけられる感触に思わず吠える源太。
「ほ、ほぅ。これはなかなか・・・」うっすらと頬を上気させ笑みを浮かべる太夫。

闇の中で上下する太夫の白い尻。咥え込まれた源太の物が、その動きに合わせて
見え隠れしている。
太夫の尻が上がり、抜け切る寸前まで引かれる。だがすぐに濡れた肉の襞が源太の
それを離すまいとするかのようにじわじわと先端にまとわりつき締めつけ、また根元
までずぶりと咥え込む。
目の前で妖しくうねる太夫の裸身。時折腰をひねり、回転させたりもしながら
源太の股間に続けざまに太夫の尻が打ちつけられる。
じゅぶ、じゅぶと繰り返し聞こえる水気たっぷりの猥雑な音。包み込まれる肉の快感。
源太の五感の全てが太夫との結合部分に集約する。
「くぁっ!ち、きしょう・・・ダメだぁぁっ!」
二度目にも関わらず既に忍耐力の限界まで達し絶叫する源太。それにとどめを
刺すかのように、太夫の切なげな喘ぎが耳に飛び込んできた。
「わ、わちきも・・・もう・・・あぁっ!」
太夫のその甘い嬌声を耳にした瞬間、源太は二度目の快楽の頂点に達した。
太夫の体内でびゅくん、と膨れ上がった源太の先端から、再び大量にそれが迸る。
「おお、おおお!熱い・・・!」
源太に注ぎ込まれつつ自身も達した太夫。絶叫する太夫の尻の肉がびくん、と
何度となく痙攣し、ぶるぶると波打つ。

源太は朦朧とした頭で、心の中から途切れ途切れの意識が浮かび上がっては
流れ出ていくのをぼんやりと自覚する。

俺は・・・侍になりたかった・・・寿司・・・丈ちゃん・・・約束・・・店・・・仲間・・・
浮かび出た言葉が虚空に消える。それと共に源太の意識も遠ざかる。
これまでか・・・

・・・いや、まだだ!
目を見開いた源太。「うおおおっ!」と自身に気合を入れる。その気合と共に股間の
一物が再び勃ち始め、ゆっくりと、だが着実にまた猛々しい姿を取り戻す。
荒く息をつき、源太の股間の物を見た太夫が顔を顰め、思わず呻く。
「貴様・・・それでも人間か・・・?」
「おまえが言うなってんだよこのやろう!俺は何度だって勃ち上がってやるからな!」
ギリ、と唇を噛んだ太夫が怒りに震えながら源太にのしかかってきた。
「いいだろう。ならばどちらかが倒れる真の極みまで続けるのみ」
「へっ、結局戦いじゃねぇか。かかってきやがれってんだこんちきしょうっ!」
太夫は「応!」と叫び再び源太の上に跨り、さらに凄まじい勢いで腰を振り始めた。
285シンケンジャー 源太と太夫:2010/02/11(木) 06:27:53 ID:Z3pVxY5K
「うぅ・・・」
源太は瞼に淡く眩い光を感じて目を覚ました。
しまった!俺は気を失ったのか!?
ガバッと跳ね起きる源太。「おお!体が動くじゃねぇかっ!」
慌てて周囲を見回すと、少し離れた場所で元の姿に戻った薄皮太夫が倒れこんでいる。
おそるおそる太夫に近づく源太。覗き込むと太夫は「あ・・・はん」などと何やら満足げな
笑みを口許に浮かべ、時折ヒクヒクと震えている。
なんだぁ?何がどうなったんだ?4回目あたりまでは記憶があるが、その後は・・・?

源太の存在に気づいたのか、太夫が横たわったまま呟く。
「まったく・・・呆れた男だな、貴様は」
どこか甘ったるい口調でそう言うと、ゆっくりと太夫は体を起こした。
「夜が明けたね・・・仕方ない。今日は相討ちってことにしとくよ」
「?」
「まったく、貴様の後で他の連中にも同じ手で本音を探り出してやろうと思ってたが、
とんだ計算違いになった」
「な!てめぇ!丈ちゃんや、まさかことはちゃんにもこんなことする気じゃ?」
「やめとくさ」
ふらり、と立ち上がった太夫は、しばらく源太を見つめて「ふん」と鼻を鳴らした。
「次に会う時・・・我らが交えるのは剣か、それとも・・・」
言いかけた言葉の最後を飲み込み、何やら意味ありげに含み笑いをした太夫は
少々ふらつきながら、何故かどこか浮き立った足取りで朝靄の中に消えた。

訳が判らずその姿を見送りながら、源太は一人考え込んだ。
とにかく、俺は負けなかった。それは確かだ。たぶん、仲間も守れたんだろう。
何でこんなことになったのか正直よく判んねぇけど、とにかく助かったぜ・・・。
源太がそう考えていると、後ろからひよひよと飛んでくるダイゴヨウの声がした。
「親分!おーやぶーん!」
「おう!ダイゴヨウ!目が覚めたか」
「お、親分?何で裸なんですかいっ?この寒いのに」
見れば太夫に剥かれたまま源太は全裸だった。だが火照りの残る体に冬の朝の
冷たい空気が妙に心地よい。源太は清々しい気分で笑って答えた。
「気にすんなダイゴヨウ!俺ぁ今、すっげぇ晴々とした気分だぜ!」
昇る朝陽が源太の体を照らす。「見ろ!ダイゴヨウ!初日の出だぜ。美しいねぇ」

朝陽を見つめながら源太は思う。いつかあいつとはケリをつけなきゃなんねぇ。必ず。
来るべき太夫との真の決着の日を思い、源太の体がぶる、と震えた。
そんな源太を見ながらダイゴヨウがぼそりと呟いた。
「親分・・・勃ってます・・・」

286名無しさん@ピンキー:2010/02/11(木) 12:35:43 ID:zEBMSUHj
>>281
本スレ民太夫派の俺大歓喜!!!!
薄雪さんまで…超GJ!
287名無しさん@ピンキー:2010/02/11(木) 18:08:23 ID:kMJXdkNU
ねっとり年越しフェラチオ超GJ!
こいつは春から縁起がいいぜ!
288名無しさん@ピンキー:2010/02/14(日) 23:54:56 ID:zJki1GpJ
遅ればせながらGJ

太夫えろいよ太夫(*´Д`)
289名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 06:28:44 ID:4njZCx/h
勃ってます
290How to snuff the yellow rosy maidens of sisters of Maria:2010/02/25(木) 06:35:26 ID:Y4NWTrJB
マリみて神がなかなか来ないので仕方ないですが、投下します。
ここに投下してもそれでも反吐が出る方いそうなので注意してください。。
(これ読んで気分壊して祐乃神が来なくなるのが恐怖ですが)


その日、由乃は一人で夜遅く、家路へと急いでいたのでした。
「令ちゃん、心配してるかな……」
まだ病みあがりの由乃を、いつも心配して気遣っている令でありましたが、今日はどうしても外せない部活の練習があって、今こうして由乃が一人きりで暗い道を家へと急いでいたのです。そんなときのこと――

突然、後ろから起こったエンジン音に、由乃は振り返りました。見れば暗がりの中、夕闇の陰に溶け込むかのように真っ黒な一台のワゴンが、後ろから、ゆっくりと走り寄って来ます。
今は人気も絶えてない寂れた界隈。その走り様はまるで由乃を標的に据えたかのように、狙いを定めてゆっくりと、道の端のブロック塀と車体との間に由乃を挟むようにして、停車しました。
中から一人の男が出てきました。

「――すいません。ちょっと道をお尋ねしたいんですけど」

由乃は、ほっと胸を撫で下ろしました。
「ええ、結構ですよ」と由乃が答える間もなく、男はものも言わずに歩み寄ってきます。
そうして、目の前に近づいてくると、男は、いきなり由乃の手を取るや、力任せに引っ張ったのです。
「あっ!?」
短く、悲鳴が漏れる隙に、由乃の体はぐいぐいと前へと引っ張られます。男は由乃の腕を取ってワゴンの入り口まで引きずると、無理やり車中に押し込みました。
車の中にはやはり何人かの男たちが控えていて、素早く由乃の体を押さえつけると、口や手足の自由を奪いました。抵抗する暇もありませんでした。

(令ちゃん! 令ちゃん、助けて――!!)

こうして、由乃は拉致魔の集団に囚われの身となったのです。

「あっ!!」

男たちは由乃の手足を拘束すると、乱暴に地面に転がしました。
美しい栗色のお下げが薄汚れた床の埃に塗れて、台無しになってしまいます。由乃は例の如く、廃屋らしい建物に連れてこまれ、無理やり、地面に横にさせられていました。

男たちは全部で四五人、頭を派手な色に染め上げ、ピアスをしたり、鼻輪をしたり、見るからに頭の悪そうな容姿をしています。
男たちは拉致魔と呼ばれる婦女暴行の常習犯たちでした。そして、今夜の不幸な犠牲者が島津由乃、その人だったという訳です――
291How to snuff the yellow rosy maidens of sisters of Maria:2010/02/25(木) 06:37:29 ID:Y4NWTrJB
「いやあっ!! 離してっ!!」
由乃が絶叫します。
その大人しそうな外見からは想像が付かないほど、激しくかぶりを振って、自分の体をまさぐる男たちを跳ね除けようとします。
「馬鹿! 馬鹿! 私に触らないでえっ!!」
「うっせんだよ、クソアマが!」
男の一人が由乃を殴りつけました。
「あうっ! ぐぎゃあ! ぎゃあっ!!」
男たちは相手が女の子、それも線の細い、見るからにかよわげな少女だからと云って手加減と云うものを知らないようでした。
メリケンサックを嵌めた拳でこもごもと殴りつけます。すぐに血飛沫が上がって、由乃の体はビクビクッと痙攣し始めました。
「大人しくしろよ。まだ、死にたくねえだろ?」
「……ハァ……ハァ……」
男の一人が冷たい切っ先を由乃の首筋に押し当てました。
それは由乃の細い喉など容易く噛み切ることができる、凶悪な切れ味を秘めた本物のナイフでした。
そうして、死というものが改めて身近に感じられて、初めて由乃は絶望したのです。

「よし、犯るぜ」
男たちの手が汚い床の上で乱暴に深い色の制服を破き、切り裂き、剥ぎ取っていきます。
「ううっ……」
「おい、見ろよ。白だぜ!」
男たちが「ヒュー」と口笛を吹かせて囃し立てます。
目の前には見るも鮮やかな純白のブラとパンティが現れていました。
少女らしい、清潔で可愛らしい下着も、男たちに掛かれば下劣な欲望を喚起する起爆剤でしかない、という訳です。
「はうっ……!」
由乃の体がビクンと仰け反りました。胸の谷間、わずかな膨らみの間に冷たい刃先が押し入れられました。
男はナイフの刃を滑り込ませると、ブラのホックを切り裂き。ぱさりと真っ白なブラが開いて床に落ちました。
「へヘヘッ」と下卑た歓声に沸き立って、別の男が胸にむしゃぶりつくように顔を埋めます。
そうしてそのまま、淡い桃色の蕾を口に含み、唾液でべとべとに汚していくのです。
「クククッ」
ナイフを持った男は「こっちは俺が頂くぜ」と、パンティの端に刃先を滑らします。
音もなく布地が裂けました。一番大事な秘所を覆う護りまでも、いとも簡単に奪われてしまったのです。

「ほぉ〜ら、見てみろよ。女子高生の生マ○コだぜ」
「い、いやぁぁっ!!」
薄汚い蛍光灯の下、無理やり股を広げられた由乃は、男たちの劣情に輝いた眼にくっきりと、一番大切な女の秘所を曝け出してしまったのです。
「うおおっ! すげえっ! リリアンの生マ○コだ!」
「ピンクだぜ、ピンク! こんなマ○コ久しぶりにみたぜ」
由乃は叫びました。
「殺して! もう殺してよ! とっとと殺してよおっ!!」
だが、男は狂ったように泣き叫ぶ由乃を見下ろすと、「クククッ」と喜悦を漏らすのみです。
その上、さらに追い討ちをかけて由乃という少女を徹底的に壊そうというのです。
「しっかり押さえてろよ」
男は、ナイフの代わりに鞄からデジタルカメラを取り出すと、由乃の体に照準を合わせました。
「顔も押さえてろ。顔とマ○コと、いっぺんに撮るからな」
由乃がぴたりと凍りつきました。目を見開いて、凍ったように固まります。
それから、頭の中にその言葉の意味が衝き抜けていきました。
「いやぁぁっ!! やだぁぁっ! もうやだよ、やだあああっ!!」
「うるせえんだよ、オラオラオラ!!」
狂ったように、一際泣き叫ぶ由乃を、男が拳を連打して押さえつけます。
いくら暴れたところで、悲しいかな、高一の少女のか細い力では、複数人の男の力に抗しえるはずもありません。
「ぶぐっ、うぶっ」と顔を殴られた由乃が鼻血を噴き出して、呻いたその隙に、男たちは押さえつけます。そうして、シャッターが切られました。
292How to snuff the yellow rosy maidens of sisters of Maria:2010/02/25(木) 06:39:07 ID:Y4NWTrJB
「はあっ……ああっ……」
由乃が横を向き、切なげなため息を吐きました。
下劣な男たちの前で全てを曝け出し、写真にまで撮られてしまったのです。
涙は止め処もなく溢れています。

「写真ばら撒かれたくなかったら、俺達の言う通りにするんだな」
「クククッ」と、男が下卑た笑い声をあげました。「クククッ、クククッ」と、他の男たちも唱和します。

「クククッ、クククッ、クークククッ!」

やがて、男の一人が由乃の肩を押さえて圧し掛かると、体重を沈めこみ始めました。
「ひ、ひいっ!」
その意を察して、由乃の口から怯えた悲鳴が漏れます。
男の汚物の切っ先は、由乃のピンク色にぴっちりと閉じた女の園に、嬲るようにじわじわと侵略をしています。
そして、一気に腰を落としました。
「ぎひいっ! 痛い! 痛いーっ!」
由乃が口から泡を吹き出し、白目を剥いて絶叫しました。男の男根は処女を破って挿入されたのです。
まだ稚けなさも残る由乃の女性は、男根を受け入れるにはあまりにも弱弱しい。その上、優しい愛撫でじっくり解きほぐされた訳でもなかったのです。
それは、むしろ拷問にも等しい行為だったでしょう。

「ぐおおおっ! うぐおおおおっ!! 痛いぃぃっ! 痛いよおおおっ! 抜いてええっ!!」
「うおおおおっ!! 締まる、締まるぞおおっ!!」

苦痛にのた打ち回る由乃とは対照に、男は処女の膣圧を悦んでぺこぺこと腰を動かします。
その度に、其処にささくれだった棘が刺さるような激痛が、由乃の小さな体を突きぬけました。
由乃はビクンビクンと断続的に痙攣し始めました。直ったばかりの心臓はもう今にでも壊れておかしくありませんでした。

「俺にも入れさせろ」
「ぶぐうっ!!」

別の男が由乃の唇に、恥垢だらけの陰茎を押し込みました。
由乃の顔にまたがると、そのまま押し込んで、無理やりに突き入れています。

「イクぞ! イクイクぅ!!」
「うぶっ!!」
五分もせずに、二人の男は果てました。それぞれ、由乃の口と膣内に精を放ちました。
「ううっ……は……あっ……」
由乃の陰裂からとろりと白濁が漏れ出ました。ほんの少し前まで処女だった少女が、処女膜を突き破って犯され、ザーメンをたっぷりと中出しされたのです。
また、その美しい顔はザーメンをぶっ掛けられ、たんぱく質塗れにされていました。あまりにも、無残な光景でした。

「よっしゃ! 次は俺の番だ」
次の男たちがすかさずむらがります。そのとき――

ピロリ、ピロリと携帯電話の着信音が鳴り響きました。
293How to snuff the yellow rosy maidens of sisters of Maria:2010/02/25(木) 06:41:25 ID:Y4NWTrJB
「おい!」
男の一人、ナイフを握った男がさっと目配せをしました。仲間が手早く由乃の口を塞ぐと、携帯を手に取ります。
男たちが息を潜める中、若い女の張りのある声が廃屋に響き通りました。
「――由乃、由乃なの? 今どこにいるの?」
(――……令ちゃん……)
果たして、電話を掛けてきたのは由乃の従姉妹であり、スールでもある支倉令だったのでした。
令は、遅くなっても帰らない由乃を案じて、こうして電話を掛けて来ていたのです。
よっぽど心配しているのでしょう、声の端々からも不安がありありと伝わってきます。
「こいつはお前の知り合いか? ひょっとして、スールとかいう奴か?」
「…………」
喉元を刃の側で叩きながら、男が問い糾します。由乃がそんな事を喋る筈もありませんが、
拳を振るうまでもなく、顔色から男には容易く分かってしまうのです。「ククッ」と陰険な瞳が暗く揺らめきました。
「よし、こいつをおびき出せ。言う事を聞かねえと、お前の顔を二目と見れねえよう滅茶苦茶にしてやる!」
「――……!!」
由乃の鼻先に突きつけられたナイフが、ぎらりと鈍く鋼色を照り返しました。
肉厚で大振りな凶器は、由乃の繊細な顔を滅多切りに切り裂くに、十分過ぎるくらいのものでした。
「わ、わかったわ……お願い、やめて……」
「ククッ……オラ!」
か細く震える喉笛をみて、男は満足したのか受話器を放り投げました。由乃が受話器を手に取ります。
「れ…令ちゃん……?」
「――由乃!? いったいどうしたの? 何で連絡ぐらい入れないの?」
すぐに受話器の向こうから、令の半ば安堵し半ば焦慮した、早口の言葉がつむがれます。
「あ、あたし……」
男がすかさず受話器を由乃の手から引っ手繰りました。
「あー、もしもし? この子のお友達ですか?」
「……あなた、どちらさま?」
途端、電話の声色に疑念と警戒が生じます、が。
「私は通りすがりの者なのですが、実は由乃ちゃんが道すがら急に具合が悪くなっちゃいましてね。
今、介抱しているから、すぐこちらまで迎えに来て欲しいんですけど――」
「えっ、本当ですか!? 由乃は、由乃は無事なんですかっ」
電話の向こうの令は、声を震わせ、途端に血相を変えました。
男たちが知る由もありませんが、このとき由乃はちょうど心臓の手術を終えたばかりの時期でした。
令が一方ならず心配するのも無理なからぬことです。必死に由乃の安否を尋ねて、今行くから場所を教えて欲しいとしきりに嘆願します。
「はい、はい。今言いますから――」
男は仲間にVサインを見せながら、得意げに場所を指定していきました。
無論この廃屋を、です。男たちはナイフ、金属バッド、鉄パイプ、ブラックジャック、スタンガンなどで武装しています。
これらをしておびき出した令を不意打ちに打ち据え、散々に痛めつけて、抵抗を奪ってから、陵辱の餌食にしようというのです。
「ククッ、ちょろいぜ……オラ、余計なこと喋るんじゃねーぞ」と、小声で威嚇しながら男が受話器を由乃に押し付けました。
ナイフを由乃の顔先に掠らせるのも忘れません。由乃は震える喉から声を絞って出しました。
「も、もしもし――」
「――! 由乃、本当なの? 具合は大丈夫なの!? 私、今行くから待っててよ」
「令ちゃん、あたし、あたし――」
由乃は力いっぱい叫びました。
「私、レイプ魔に捕まってるの!! 令ちゃん、来ちゃだめ! 駄目なのっ!! 令ちゃんは逃げてえっ……」
294How to snuff the yellow rosy maidens of sisters of Maria:2010/02/25(木) 06:42:48 ID:Y4NWTrJB
皆まで言い終えるまでもなく、携帯電話が叩き落されました。
床を転がった携帯は野太い腕が手早く取ります。
……果たして、男たちは仁王立ちして、凄まじい形相で由乃を見下ろしていたのです。
「この……ざけやがって、糞アマがっ!!」
「ぎゃあっ!!」
激昂した男が由乃の腹と顔を蹴り上げました。何度も、何度も、狂ったように。それに他の男たちが続きます。
「オラァ!! 死ねや! 死ねやあっ!!」
「ぐぼおっ!! げぼおっ!! ぐっ、うげえっ!!」
男たちは集団で、サッカーボールでも蹴るように由乃を蹴り上げています。
まだ病み上がり体を、容赦なく、痛めつけています。男たちの爪先が、踵が、由乃の肉体を破壊していきます。
「おい、てめえポリ公に密告ったらこのガキ殺すぞ!!」
受話器の向こうに一息にそう吐き捨てると、ナイフの男は携帯を力いっぱい投げ捨てました。
そうして、由乃に向かって行きました。サッカーボールに参加するのです。
「ぎゃあああっ! ぐぼっ! うぐおおっ!!」
「オラァ!! 死ね! 死ね死ねっ!!」
「げぼおおっ!! おぐぅおおおっ!! うぐおおおおっ!!」
由乃は、胃液をぶち撒け、苦痛にみにくく顔を歪めながら、のたうちまわり、痙攣しました。
……そしてぐったりと動かなくなりました。もはや二、三十分は続いたでしょうか。
由乃が蹴り殺されて死ぬ寸前で、白目を剥いて痙攣する彼女の髪を、男は荒々しく引き上げ、高々と禍々しくナイフを振りかざしたのです。
「望みどおりてめえの顔を滅茶苦茶にしてやるよ。ブタそっくりに変えてやるぜ! 死ねや!」
由乃はごぼっと口から血を吐いて、それからこう思いました。
(令…ちゃん、……顔が滅茶苦茶になっても、私だって分かってくれるよね……?)

そのとき、戸口で激しい物音が鳴り響きました。薄汚い廃屋、その腐った木戸を蹴飛ばして一人の凛々しい若者が立っていました。
その顔は中性的で、唇はたくましく引き締まり、すらっとした長身は美しく、手に提げた木刀も相まって、見るものに若武者を思い起こさせるものだったでしょう。
ただ、深い色に包んだ制服のブリーツスカートから、その者が少女であると知らしめているのです。
「! 由乃っ ――お前ら、よくも由乃を……!」
(令ちゃ…ん――――)
そう、彼女は由乃のスールであり、従姉妹である、支倉令その人でした。
295How to snuff the yellow rosy maidens of sisters of Maria:2010/02/25(木) 06:45:02 ID:Y4NWTrJB
「うおおおおおおおおおっ!!」
令が突進しました。
「ちっ、お、オイ! そいつをやっちまえ!」
猛然と突っ込む令にナイフの男はやはり個性の欠片もない台詞を口走るのですが、突然の襲撃者にうろたえて初動の遅れた男たちはいくらかの隙を曝します。
木刀の間合いを持つ令にその隙はあまりに十分なものでした。
「えいっ!! やああっ!!」
「ぎゃっ!!」
「ぐげええっ!!」
男が或いは倒れ、或いは折れた腕を抱えて絶叫しました。上段から振りかぶって男どもの脳天と右の二の腕に一撃ずつ。
腕をへし折った方はともかく、頭の方は下手をすると殺してもおかしくありませんでしたが、今の令にそんな事を考える余裕などありませんでした。
由乃を救うことでいっぱいなのです。
「ちっ、ざけやがってっ!! 目ん玉抉り出してくれるわ!」
男が二人同時に突っ込みます。手には金属バッドとスタンガン、まともに食らえばいくら令でもそれでお終いです。が。
令は素早くサイドにステップすると、男二人のちょうど直線上に並びました。バッドをもった方がスタンガンに加勢しようとしますが、男の体が邪魔をして長柄を活かせません。
そうこうしている裡に、木刀がぶんぶと風を切りました。
「ぐべっ!!」
「ごぼっ!!」
スタンガンを持った男が令の間合いに入ることもできずに、頭を叩き割られました。もう一人も、返す刀で喉笛を叩き潰します。
「オラアァァァッ!! 死ねやああああっ!!」
そのときナイフを持った男が横合いから突っ込んできました。男は本気で殺すつもりなのか、それとも頭が完全に切れているのか、
腰だめでナイフを構えて体ごとぶつかって来ます。バタフライナイフの刃渡りは20センチ近くあり、刺されば深々と脇腹を貫いて、内臓に致命的な損傷を与えるでしょう。
が、令は普通なら避けきれるはずのないその刺突を、軽く体軸をずらして正面を向き直ると、鋭い小手を打ち込んで粉砕したのです。
「ぎっ!」
骨の鈍い音がして、男の手からナイフが叩き落とされます。そこへ、令は上段に振りかぶりました。
「はああああっ!!」
「ぶべらっ!!」
べきょっという音がして、目玉を飛び出すような顔をしながら、男が倒れ伏しました。
そのまま、動かなくなります。こうして、一分も経たない内に、五人は地に伏しました。

「はあっ……はあっ……」
「令……ちゃ…ん……」
荒い息を吐く令にか細い、今にも消え入りそうな声が届きました。
床に転がった由乃は、無論酷い有様ではありましたが、まだ息があったのです。
「由乃っ!!」
令がダッシュで駆け寄り、由乃を抱き起こします。
「由乃! 由乃!」
「令ちゃん……助けに来てくれるって、信じてたよ……」
令はたまたま自らが探し歩いていた場所と、男たちが指定して来た場所が近所であったのでした。
奇跡だったでしょう。リリアンを犯すため無い智恵を絞った男たちの行いは裏目に出たのです。
「良かった。由乃が無事で。本当に良かった……」
令は由乃をしかと抱き締め、涙を流しました。
「さあ、直ぐに救急車を呼ぶからね。大丈夫、今すぐ病院へいけば――」

そのとき。

「オーオー、随分派手にやってくれたじゃないの」
「!?」
296How to snuff the yellow rosy maidens of sisters of Maria:2010/02/25(木) 06:46:34 ID:Y4NWTrJB
素早く令が振り向いたその先、さっき蹴破った戸口に誰かが立っていました。
……見れば、果たして、二人ばかりの男たちが、悠然と立っていました。
「誰だ、お前たち!?」
「誰って、そりゃこっちのセリフだぜ。ここは俺らの溜まり場だぜ」
厳しい声で詰問する令に、しかし、男は軽く肩を竦めるだけです。
一人は細身で顔つきも痩せた、やけに目つきの悪い男、もう一人は逆にスキンヘッドの大男でした。
二人とも、その身なりと雰囲気から、そしてなにより、そのどぶ川が腐ったような目の輝きから、その素性が知れるような男たちだったのです。
「せ……先輩……」
倒れ伏している男たちの一人が不意に声を上げます。
「あー、大体事情は分かるよ」
男は軽く手を振って見せました。
「こいつらは俺らが『壊す』から。まかせとけって」
「……怪我をしたく無ければ、そこをどけ」
令が足元のふらつく由乃を庇うかのように、木刀を構えて立ちはだかります。
細身の男は細面をぐしゃりと歪めて笑いました。
「どかしたかったら、腕ずくでどかせてみな」
「うわああああっ!!」
令が木刀を振りかざして、突っ込みました。裂帛の気合の篭った前進。男を剣先の間合いに捉えるまであと4,5メートル。
その目の前で。男は懐からすっと黒い筒状のものを取り出しました。旧ソ連製短拳銃・マカロフです。
「――!!」
パン、パンとやけに軽い音が廃屋に響きました。それが合図となったかのように、令の足はかくっと折れて、体が前のめりに倒れました。
「うぐうっ、ぐあああああああああああああっ!!」
令が足を抱えて絶叫します。その太股にはぼつぼつと二つ赤黒い染みが浮かんでいます。
鉛の弾丸は令の右の太股を貫通して、骨や筋肉を切断していました。
「残念だったな、腕自慢の姉ちゃん」
硝煙をふっと口で噴くと、細身の男は激痛に泣き叫んでのたうちまわる令を、冷たく一瞥しました。
それが合図となって、スキンヘッドの男がずいっと前に進み出ます。そうして、床に転がる令の体を力任せに蹴り飛ばしました。
「ぐぼおっ!!」
「このアマ……さっきはよくもやりやがったな……!」
やがて、先ほど令に一刀のもと倒された男たちが何人か身を起こします。
皆、言うまでも無く、凶悪な面を憎悪と流血に醜く歪ませているのです。
「死ねやあああっ!!」
「あぐうっ!! ぐああああ!! ぎゃああああああっ!!」
男たちが金属バットや角材で令を滅多打ちにし始めます。たちまち鮮血が飛び散りました。
297How to snuff the yellow rosy maidens of sisters of Maria:2010/02/25(木) 06:48:37 ID:Y4NWTrJB
「やめてえっ!! 令ちゃんに非道いことしないでえっ!!」
自分の体の打撲も忘れて、由乃が気も狂わんばかり悲痛な叫びを挙げました。
由乃はもう、立つ力もなく、這いつくばっています。その声に細身が「ククッ」と、興味深げに由乃を見下ろしました。
「なんだお前、あの女を助けて欲しいのか? そのためになら何でもするか?」
「するわ! するから、令ちゃんを助けて……!」
「ククッ」と顎に手を当て一寸思案するような顔をつくると、細身は血飛沫を上げてリンチを続けている男たちの方に向き直りました。
「おい、てめえら止せ」
「ええっ、そんな!?」
「マジかよ そんなのねえよ」
男たちが手を止めて、口々に不満の声を上げます。その目を細身がすっと眇めて見据えました。
「ほう……お前ら、俺の言うことが聞けねえってのか?」
「あっ……いや、そんな……」
口ごもる男たちに「心配すんな」と、男が諭します。
「お楽しみはこれからだ。てめえらにも存分に味わわせてやる」

そう言うと、細身は「おい」とスキンヘッドに向き直りました。
スキンヘッドは「へへっ」と下卑た含み笑いを浮かべると、何を思ったかいきなり着衣を脱ぎはじめました。
小汚い作業服が下にがさりと落ちて、男の下半身を曝け出します。
そうすると、スキンヘッドはその場にゴミと一緒に転がっていた、小汚い一枚の皿の上にしゃがみ込みました。

「まさか……」
ナイフの男が目を見張ります。スキンヘッドはその上でぶりぶりと糞を垂れたのです。すぐに皿は一杯になり、黒々としたう○こがほかほかと湯気をたてはじめました。
「クククッ」
細身が薄ら笑いを浮かべます。呆然とする男たちを尻目に、スキンヘッドは皿一杯もられた糞を掲げると、その皿を、倒れ伏す由乃の鼻先に投げて落としました。
「これを喰え」
「――――!!」

あまりの事態に由乃だけでなく、傍観する男たちまで硬直します。ただ、二人の男だけがにやにやと由乃を見つめているのです。
「どうした、お前? なんでも言うことを聞くんじゃねぇのか?」
細身が腕を組んで、わなわなと震える由乃を見下ろします。そこへスキンヘッドが「オラ」と皿を由乃の顔に蹴りました。
黒々とした排泄物が由乃の顔に、殆ど触れそうになります。
「ぐううっ!!」
凄まじい臭気に顔を歪めて、由乃が顔を背けました。
「てめえっ、喰えと言ったら喰いやがれええっ!!」
激発して突っかかろうとするスキンヘッドを、細身は手で制すと、男たちの方を向きました。
趣向を理解したナイフの男が「なるほど」と笑みを浮かべます。
298How to snuff the yellow rosy maidens of sisters of Maria:2010/02/25(木) 06:50:17 ID:Y4NWTrJB
「オラアッ!!」
「ううっ……」
男がぐったり倒れた令の髪を掴んで起こすと、顔を上向かせます。
令はさっきの気迫もどこへ行ったのやら、真っ青に血の気の抜けて、ぶるぶると細かく震えはじめていました。
顔や体をめった打ちにされた打撲に加え、銃で撃たれたショック症状です。本来ならすぐに止血をし、毛布などで包んでやらねばなりません。
が、言うまでも無く、男たちがそんな親切な人間であるはずはありません。「ケケ」と男は喜悦を漏らすと、令の顔にナイフを突きつけました。
「オイ、てめえ……この女の目玉を抉るど!!」
「…………!!」
その、あまりに残虐な言葉に、由乃の目が大きく見開かれました。令は……アンパンマンのように膨れ上がった顔から涙を流して、由乃をじっと見つめています。
歯を折られた口からは、言葉は紡がれません。その腫れ上がり、潰れ掛けた目の中に、ナイフの刃先が差し込まれました。
「ぶぐぅぅううううううううっ!!」
「オラァッ!! このガラス玉みてーな目玉、両方とも抉るぞっ!!」
「あーあ、こいつ二度と剣道ができなくなるねえ」
その言葉に、由乃がびくんと震えました。

(令……ちゃ……ん……)

令ちゃんが、私のせいで目玉を抉られてしまう。大好きな編みものや御菓子作りも、二度とできなくなる。
いつも楽しんでいた少女小説も二度と読めなくなる。一生懸命うちこんで来た剣道も、二度と、二度とできなくなる。
……嫌だ。そんなの、絶対嫌だ。 私のせいで、そんなの絶対……

――その場の誰もが、しんと息を潜めました。
由乃は皿に盛られた糞に口を近づけました。そして、這いつくばったまま……糞の山に顔を埋めたのです。

……ぴちゃぴちゃという音だけが響き渡ります。

由乃は涙を流して、その汚物を口に含んでいました。本当に食べていました。本当に糞を食べていました。
それは一体どんなことでしょうか。言うなれば、口一杯に凄まじい口触りと臭気とがいっぱいになるのです。いっぱい充満するのです。
そして、う○この生々しい感触を喉に伝えながら、胃の底へと収めていくのです。
……正気の沙汰ではありませんでした。どんな人間でも狂ってしまう味わいでした。
「うぶっ、ぐっ!」
三口目に由乃が口に含んだとき、消化し切れていない野菜の歯ごたえが、スキンヘッドの糞の中に雑じっていました。
それが舌や喉を舐めて胃に落ちたとき、それまで死ぬ気で押さえ込んでいた吐き気が爆発しました。

「げぼおおおっ!! うげええええっ!! げえええっ!!」
ビクンビクンッと痙攣して由乃は胃の中身を吐き出します。一回では収まらず、二回、三回と上半身を激しく震わせて、嘔吐します。
うつ伏せに倒れた由乃は、すぐに顔が汚物でいっぱいに塗れました。もっとも、その顔には已に先程顔を埋めたスキンヘッドの糞が、顔中一杯に塗れていたのですが。
その目玉が飛び出さんばかりの顔が契機となって、男たちは一斉に大、大爆笑です。
299How to snuff the yellow rosy maidens of sisters of Maria:2010/02/25(木) 06:51:25 ID:Y4NWTrJB
「ギャハハ! こ、こいつマジでう○こ喰ってやがるぜ! キモ――ッ!! 」
「凄えっ!! リリアンが、リリアンの薔薇のスールがう○こ喰ってやがるっ!! マジ、凄え――――っ!!」
「うおおおおおおおっ!!写真撮るぜ!! 写真、撮るぜええ――――っ!!」

男たちの知性と良心の欠片もないあざけりが降り注いで、由乃はぶるぶると震えました。そこに、細身のさらに容赦ない言葉が降り掛かりました。

「コラ、何吐き戻してやがる。吐いた分も残さず喰えや」
「ううっ……」
男はちらりと令の方を顎で示します。
「あの女の目ん中が空っぽになってもいいなら話は別だがな」

……そうして由乃は、さっき吐き戻した黒いう○こを、再びふっくらした唇の奥へと咥え込んでいきました。そのう○こは吐瀉したものに塗れた上、吐いた拍子に砕けて、汁かけ団子のようなう○こでした。
その凄まじい味わいのために、由乃は食べるたび何度も吐くのですが、その度にまた、必死で腹の底へと押し戻して、平らげていくのです。

「ケケケ、見ろや。てめえの妹がう○こ喰ってやがるぜ」
男が喉元にナイフを押し当てながら、髪を掴んで令の面を上げて。顎をしゃくり上げたその向こうで、由乃が何度も「ゲエッ」とのたうちながら、汚物を胃の中に収めていきます。
「の……しの……いい…から……」
令が、パンパンに膨らんだ顔から涙を流しながら、血反吐をがふっと吐きました。
「もう……いいから……よしのぉ……やめてよぉ……」
掠れた虫の息を、男たちはわずかに音声と聞き分けて、再び、大爆笑の渦が巻き起こったのでした。

「さて、そろそろメインディッシュの時間だな」
と、そのとき、そう云って一人で満足げに頷く細身の前に、例のナイフの男が進み出ます。
「俺らも遊ばせてくださいよ」などと、揉み手を擦ってお願いします。
「フン。まあ、いいだろう」
細身はちょっと鼻から笑って、それからぐっと拳をつくりました。
「これだ」

「成る程」と思った男はうつ伏せになってヒクヒク震える由乃を、仲間と共に抱き起こします。手足を改めて拘束します。
これからすることの結果、由乃が暴れ狂うことが分かりきっていたからです。
「なんなの……? もう……やめてよぉ……」
顔中う○こでいっぱいになった由乃は、事情が分からず、うめいて目を開けました。その拍子にう○この欠片が目に入ります。
男は、由乃の股を目いっぱい開かせると、数人がかりで押さえこんで、女性器を押し広げました。
「嫌……嫌……」
ようやく、男の意図が分かって、由乃はカタカタ震え始めました。心の中をかつてない絶望が埋め尽くして生きます。
由乃は目から血の涙を流していました。
「本当ならよ、フィストファックには潤滑油が必要なんだけどよ。今はねえんだ。そこで……」
男がニイッと嗤いました。

「このまま突っ込んでやるよ」
300How to snuff the yellow rosy maidens of sisters of Maria:2010/02/25(木) 06:53:19 ID:Y4NWTrJB
男の拳が由乃の其処に沈みこんでいきました。
「ぎゃあああああっ!! 痛いっ!! 痛いいいいっ!!」
由乃は死にかけの体のどこにそんな余力が残っていたのかというくらい、凄まじい限りで叫びます。
まだ、処女だったばかりなのだから当然でしょう。さすがに、拳のままだと入りづらくて、男は指先を束ねて由乃の其処に挿入します。

「痛いいいっ! 痛いよおおおおおおっ!!」
由乃は「痛いよお、痛いよお」と、泣きはじめます。
男の指先は四本まとめて挿入され、指の根元まで来ると、手の平を押し込みはじめました。
何かおぞましい音が絶叫に混じります。

「凄えっ! 手首まで入ってるぜ」
「ちょっと子宮口触ってみろよ」
「ぐおおおおおっ!! やめろおおおおっ!!! うおおおおおおっ!!」

べきょべきょ、と奇怪な、そしてどこか滑稽な音が響きました。
その瞬間、由乃の断末魔は喉の底で硬直し、男の嬌声も止んで、ただ血飛沫がぶしゅうと噴きあがって、辺りを鮮血に染めました。

由乃は目玉をひっくり返して二、三回痙攣すると、そのまま、動かなくなりました。永遠に。

「あ……ぁ……」
その光景は、令の潰れかけた目にもはっきりと映りました。

「由乃おおおおおおおおっ!! うわああああああああああっ!! 由乃おおおおおおおおおおおおおっ!!」
「うるせえよ」
瞬間、狂ったように悶え、絶叫する令の両目を、ナイフの刃が真一文字に裂きました。
「ぐぎえええっ!!」
「オラ、死ねやっ!! 死ね死ねっ!」

男たちが一斉に兇器を振りかざします。令はめった打ちにされ、今度こそ致命傷を負いました。
鼻は金属バットで砕かれて潰され、目玉は殴られた拍子に飛び出ます。終いに男は下半身を剥くと、令の秘所に角材を突っ込みました。
ささくれだった角材の棘が立って、令の膣内はぐちゃぐちゃに裂けてしまいました。


やがて、男たちがドラム缶にコンクリートを用意していきます。少女二人の死体は仲良く抱き合って、東京湾深くに沈むことになるのです。





「私、令ちゃんと手をつないで歩きたかったの。だから手術することにした」

「ロザリオを返したの、令ちゃんが嫌いになったからじゃない」

「丈夫な身体を手に入れて、令ちゃんと肩を並べて歩きたい」

「世界で一番、令ちゃんが好きよ」






「ひゅ……ひゅ……」

由乃が死んでからもう五分ほど、令の命の灯火はまだ、消えずにありました。
その間、思い描いていたのは、ただ、元気な由乃の笑顔だけでした。


(終わり)
301名無しさん@ピンキー:2010/02/25(木) 11:24:22 ID:75/0Y87z
容赦の無い徹底的な暴力描写のラッシュに圧倒された
由乃食糞とフィストファックのくだりでは危うく貧血起こしかけた

GJ
302名無しさん@ピンキー:2010/02/25(木) 18:32:56 ID:zcYxv70q
夢オチ来ると思ったら来なかったw
ぐっじょぶ!!
303名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 23:57:29 ID:dfmHNZ+6
すげえ…最初から最後までガチの陵辱、GJでした。
304名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 03:09:14 ID:JZyIz3vD
GJ
ただどういう属性なのか明確な注意書きがほしかった
読まないと分からないのでは意味ないし
305名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 17:53:38 ID:/zF8QFqS
乙。投下に気付いて良かった。
306名無しさん@ピンキー:2010/02/28(日) 20:43:06 ID:jv1WOXpg
レベル高す
307名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 15:18:08 ID:jNA/A9SJ
祐巳×乃梨子の不倫SSまだかな・・・?
あれ続き読みたくてしょうがない。(勿論このままレベルは落とさずに)
はっきしいって緒雪の原作よりおもしれーんだわ。これ。
完結させるまで何年でも裸でまつよ、漏れは?
こういうと作者さんには心外かもしれないけど、エロ描写もいいけど、その背後にある人物同士の葛藤や心理などの人間ドラマがたまんねーんだわ。
作者さん何カ月も規制巻き込まれてるんだろうけど、この際2chをサイバー攻撃した某国、
あの国なら成田から二万くらいで渡航できるので、海外から投下してくれwwwwwwww
308名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 20:05:54 ID:YJy/c+2v
なんというか、凄かったです。
純粋なまでに鬼畜で、卵の欠片ほどの救われる部分がありませんでしたが、ある意味では清々しさすら感じました。
もっとも、黄薔薇姉妹をこよなく愛している人が読めば、負の感情を抱かざるを得ない内容で、
本スレが現存しても、投下できないようなお話ではありました。

いわゆる二次創作SSでは、作品の評価に原作らしさという点をどうしても考慮にいれてしまいますが、
その部分を最初から放棄したことは、(失礼な言い方ですが)潔く、かつ、正解でした。

また文章の運びも流れるように綺麗で、洗練されており、かなりの筆力がある方なのでしょう。
他のマリみて話も読んでみたいと思いました。

309黄薔薇破壊:2010/03/03(水) 20:45:13 ID:xJknIXgU
作者です。みなさん感想レスありがとうございます。
正直、いくら隔離的スレとはいえ、内容が内容だけにこれじゃあ・・・と、ガクガクブルブルしてたのですが。
(スカの注意書き入れなかったのは失敗でしたね。失礼しました)
特に>>308さん、そういって下さると嬉しいです。
本スレ云々ですが、実は……(荒れるといけないので以下は黙します)

過去の書きためではかなりマリみてSSはあるのですが、人気もあるようなので、もし御希望次第なら投下するかもしれません。
昔、一度、お前はどうも随分原作を読みこんでいるようだが、それなのになぜにこうまでマリみてキャラを壊せるのだ?
一体お前はどういう腹だ??
などと、問い詰められた事があるのですが、なんというか、歪んだ愛情……或いは狂執とでもいいますか、

マリみては可南子問題解決くらいまでしか読んでないのですが、かなりハマりそれで二次を始めました。
マリみての純粋で優しさと愛に満ちた世界観に読んでいて心を洗われるような気分になり、特に「いばらの森」などはこれは十分文学作品と言ってもよいのではないかと思うくらい美しい感性を味わいました。
よーするにわたしゃ原作好きなんですネ。

しかし、一方で、こうも思うんです。

現実に厳として存在するこの世界のどうしようもない不条理不合理理不尽不仁非人間性矛盾対立紛争抗争紛争闘争憎悪怨嗟怨望敵意殺意狂気悪意絶望苦痛無明老病死苦の絶対的な「救いの無さ」に、
あのマリみての乙女たちならどう対処するのだろうか、やはり彼女たちも圧倒的な世界の悪意に踏み潰されてしまうのだろうか、
そこに一切の「救い」はないのだろうか?、と。

と思い敢えてマリみての優しくも繊細でそして生きる事に率直な可憐な少女たちを、現実の圧倒的暴力と凌辱で汚してみて、文字通り「殺して」、
それで作者自身なにかの答えや或いは「救い」を求めていたのかもしれません。

なんか書いてて自分でも思うのですが、思いっきりチラ裏で済みません。。。
ただ、マリみてSS書いてて自分ではマリみて二次を利用した一種の自分の「文学」のつもりでした。(稚拙極まりなくまた僭越至極ですが)

このスレはなんといっても、祐巳×乃梨子神の神SSが楽しみで、たぶん作者さんが規制に巻き込まれてて投下できないようなので、つなぎで何本かここにマリみてネタ落としたのですが、
あの作者がそれで嫌悪を抱いたりしらけたりして投下を止めたり、或いは投下をしづらくなったり、荒れて投下できなくなる事だけは避けたいです。
なにより彼(女?のような気がするけど)にもご迷惑だし、実際、私自身あの神作の続きがとっても読みたいので。

そういうわけで、誘い受けで申し訳ありませんが、今後投下するかどうかは未定ですが、様子を見て、可と踏めばたまに落とします。
元来隔離スレとはいえ、核兵器並みの読み物を荒らさずに通過させて下さったここの住人の方がたの、良識と大人ぶりは感謝・感謝します。

以上駄文長文失礼しました。

マリみてに限らず色々専用スレでは落とせない、しかし価値あるSSがここに雲集することをねがっております。はい。
310名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 19:46:52 ID:UB9ymKzO
ゆっくりでいいさ
311名無しさん@ピンキー:2010/03/06(土) 04:08:08 ID:pTs1OEe+
情熱を感じました
312名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 15:14:39 ID:oF/EdkpS
gj
313名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 22:44:06 ID:eXBwcaGy
>>268の続き

8.

 日付は変わり、いつものように朝がやってきた。
 志摩子は、暗澹とした気分から抜け出せないまま、バスを降りてリリアンの正門へと歩いている。
「ふう……」
 最近はため息をつくことが多くなっているが、今日は特に酷くて、朝の段階で既に十回をこえている。
 
 いくら考えまいとしていても、フラッシュバックのように昨日の記憶の断片が、脳裏から離れない。
 昨日、由乃さんと一緒に追求した挙句に、乃梨子と祐巳さんは恋人同士であることをついに認めた。
 以前から疑っていたとはいえ、あの真面目な乃梨子が、よりによって親友の祐巳さんと付き合っているという、
衝撃はやはり大きい。
 脆弱な心が粉々に砕け散ってしまいそうになるくらい、辛くて苦しい事実に、到底一人で耐えることはできず、
最後の希望ともいうべきお姉さまに電話をして、救いを求めた。

 お姉さまはやはり、とても優しかった。
 志摩子のSOSを聞くと、すぐに車を飛ばして姿を見せてくれた。
 そして、子どものように泣いている志摩子の身体をを強く抱きしめて、涙がとまるまで頭や背中を撫でてくれた。
 とても優しいお姉さまのお陰で、崩壊寸前の心は辛うじて修復されて、翌日の朝にはなんとか登校できる状態にまで
回復することができたのだが――

 しかし、志摩子を取り巻く暗澹とした状況は何も変わっていない。
 祐巳さんと乃梨子の関係は続いているのにも関わらず、乃梨子と姉妹の縁を切る事もできないでいる。
 嫌なことの先延ばしでは、何一つ事態を改善することなんてできない、と分かっているのに、何かを決断することも
行動することもできない。

 時々、沈んだ気持ちを振り払おうと空を見上げてみる。しかし、雨粒は落ちていないものの、
鉛色の雲に隠されて太陽は姿をあらわさない。

 6月下旬は梅雨の時期だ。
 風はほとんど吹かず、湿度は高くて蒸し暑い。
 夏服といえども、通気性のあまり芳しくないリリアンの制服は、滲んだ汗によって肌にはりついており、
お世辞にも快適とはいえなかった。
314名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 22:46:45 ID:eXBwcaGy
 校門が見えるところまで近付くと、生徒の姿が加速度的に増えてくる。
 校門の脇に立っている守衛さんにお辞儀をしてから学園の敷地に入ると、幾人かの新聞部員が
リリアンかわら版を配っていた。

「ごきげんよう」
 志摩子がそのうちの一人に声をかけると、一年生と思われる部員の顔色が瞬く間に蒼白に変わる。
「あ、あの、これは」
 新聞紙を差し出した手を急に引っ込め、セーラーの後ろに隠して後ずさるが、志摩子は逃がすつもりは無かった。

「かわら版を配っているのね」
 自分でも驚くほど怖い声を出して、持っているかわら版を渡すように促す。

「あ、あの…… 白薔薇さま」
 志摩子に睨みつけられた一年生部員は、助けを求めるように周囲に視線を彷徨わせるが、
最高権力者である薔薇さまの権威に逆らう部員は、少なくともこの場には存在しない。
 怯える下級生を冷然と見下ろしながら、白薔薇さまとしての権威を振りかざして命令する。

「それを見せなさい」

「も、申し訳ありませんっ!」
 涙目になりながら謝る部員を一瞥してから、渡された新聞紙を拡げると、
祐巳さんと乃梨子が仲睦まじ気に向かい合っているピントがややずれた写真と、『紅白薔薇姉妹、破局!』という
醜悪な見出しが視界に飛び込んできた。

 こみ上げる怒りを何とか抑えながら、紙面を読んでいく。
 紅薔薇さまと白薔薇のつぼみ―― つまり、祐巳さんと乃梨子が不倫関係にあることが
まず断定されている。それに『関係者』の証言が続き、最後に姉妹関係の解消も時間の問題であろうという
根拠のない憶測で結ばれていた。

 記事を全て読み終えてから顔をあげると、涙目になっていた哀れな下級生は「も、申し訳ありませんでいた」と
深く頭を下げてから、プリーツを翻して逃げ出した。
 彼女の他にも数名の部員達が号外記事を生徒達に配っていたはずだが、志摩子の形相に慄いたのか、
かわら版を配る作業を中断して姿を消している。
 今となっては、マリア像の傍に立っている幾人かの生徒が、遠巻きに志摩子を見つめているだけだ。

「失礼…… するわ」
 誰に向けるというわけでない呟きを漏らした後、そして、足早に校舎に向かって歩き出した。
 志摩子は、学園に足を踏み入れてから初めて、マリア像への祈りを捧げなかった。
315名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 22:47:24 ID:eXBwcaGy
 廊下を渡り、3年松組の教室に入ると、山口真美さんが沈痛そうな顔をみせながら謝ってきた。
「ごめん。志摩子さん」
「真美さん…… 」
「やっぱり、抑え切れなかったわ」
 予想通りというべきか、部員達の突き上げが激しくて、真美さん一人ではどうにもならなかったそうだ。

「でも、どうして突然、スキャンダル記事なんか書くつもりになったのかしら?」
 志摩子は、この前から抱いていた疑問を口に出した。
 真美さんが部長になって以来、1年くらいはスキャンダラスな記事は誌面に載ることはなかったのに、
いかにも唐突との印象は拭えない。
「実はね…… 」
 しばらく躊躇ってから、真美さんは答えてくれる。
「私が部長だった時に、山百合会関連のゴシップ記事を結果的に掲載しなかったことに、部員達は相当、
不満が溜まっていたのよ」
「そう…… なの」
「ええ。去年も私、由乃さんと祐巳さんと同じクラスだったでしょ。特に祐巳さんとは取引めいた
ことをしたこともあったから。それが、山百合会と馴れ合っていると受け止められていたみたい」

 真美さんと祐巳さんの仲はかなり良好だったから、ゴシップ記事は書きにくかったかもしれないが
芸能人のおっかけみたいな事をすることが、本来の新聞部の役割ではないはずだ。

「もっともらしく、三奈子さまの時のような、自由な報道をすべきだといっているけれどね。
つまるところ、お姉さまの悪いところだけを真似ているだけだわ」
 真美さんは苦虫を千匹程度、噛んだような表情で身内への弾劾を始める。
「お姉さまのような取材力も文章力もない癖に、ネタだけあげればいいってもんじゃない」

 三奈子さまは、当時の山百合会にとっては、いわゆる「困ったさん」であって、何度かお騒がせ記事を書いている。
 しかし一方では、お姉さまが「築山三奈子は小説家になるといい」と評したほどに、読者を惹き付ける、
魅力的な文章を書く人でもあった。
「こんな中学生以下の幼稚な記事、お姉さまだったら絶対に書かないわよ」
 真美さんは腹立ち紛れに廊下の壁を蹴り付けた時、由乃さんが教室に入ってきた。 

「ごきげんよう」
「ごきげんようって、何のんびりしているのよ」
 由乃さんの機嫌は、予想通り明らかに悪い。
 怒りを隠そうともせずに、くしゃくしゃに丸めたかわら版を志摩子に突き付ける。
「のんびりってことはないわ」
 志摩子が戸惑いながらも反論すると、由乃さんは「フン」と息巻いてから、皺だらけになったかわら版を左右に広げて
まっぷたつに引き裂いた。
「よ、由乃さん!」
 志摩子は慌てて止めに入る。何といっても、目の前にいる真美さんは、新聞部の部員で、前の部長なのだ。
 しかし、新聞部員にとっては命の次に大切なはずのかわら版を無残に破かれても、真美さんは無反応だった。

「よくもまあ、こんなインチキ記事を書けたもんだわ。絶対に許さない!」
「由乃さん、お願いだから落ち着いて」
 新聞部に対して良い感情を持たない気持ちは同じでも、志摩子は抑え役にまわざるを得ない。
 瞬間湯沸かし器のような由乃さんが、薔薇さまという権威を振りかざして部室に押しかけたら、言論弾圧という
口実をみすみす新聞部に与えてしまうからだ。
「でも、悔しいわよ。人のスキャンダルを暴いておもしろ可笑しく書きたてるなんてどういう神経しているの!」
 地団駄踏んで悔しがる由乃さんを再び宥めにかかった時、教室の入口の扉が開いた。
316名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 22:48:07 ID:eXBwcaGy
「祐巳さん!」

 号外記事の一方の主役の登場に、教室にいた全員の視線が集中する。
 しかし、祐巳さんの表情は普段とあまり変わらない。
 むしろ、にこやかな笑顔を浮かべながらクラスメイトに向かって、「ごきげんよう」と言うと、
挨拶を返すことすらできずに立ちつくしている、志摩子達の傍に近付いてきた。

「ごきげんよう。由乃さん。志摩子さん。真美さん」
「あ、あの、祐巳さん?」
 いつもと全く変わらない、人を魅了する愛くるしい笑顔だ。
 しかし、大々的に不倫関係を報道されている現在では、逆に不自然としか思えない。
 まさかとは思うが…… かわら版の号外記事を未だに知らないだろうか?
 しかし、祐巳さんはあっさりと首を振った。

「ううん。知ってるよ」
「それなら、どうしてそんなに落ち着いているのよ」
 由乃さんの詰問に対して、祐巳さんはのんびりとした口調で答える。
「リリアンかわら版だからね。まともに相手をすることはないと思うんだ」
 一瞬、祐巳さんの瞳に軽蔑の色が垣間見えたのは、気のせいではないはずだ。

「ごめんなさい。祐巳さん。うちの部員の暴走をとめられなくて」
 真美さんが意を決して、祐巳さんの前に出て深く頭を下げる。
「ううん。気にしないで。私、真美さんのことが好きだから」
 祐巳さんはあっけらかんと言うと、真美さんの華奢な身体をぎゅっと抱きしめる。

「ゆ、祐巳さん!?」
 いきなり衆人環視の中で抱擁され、真美さんの顔はゆでたこのように赤くなる。
「私、真美さんのことは信じているから」
 祐巳さんが真美さんの耳元で紡いだ言葉は呟きというには大き過ぎ、志摩子や由乃さんのみならず、
他のクラスメイトにもはっきりと聞こえている。

「ごめんなさい。私…… 」
 真美さんは、張りつめていた気持ちが緩んだのか、涙をぽろぽろと流している。
 そして、祐巳さんの話に耳を澄ましていた、クラスメイト達も駆け寄ってきて、
「祐巳さん。私も祐巳さんのことを応援するわ」
「嘘記事を書く新聞部なんて信じないから」
と、祐巳さんを応援すると同時に、かわら版を出した新聞部の非難を始めた。
317名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 22:48:47 ID:eXBwcaGy
 ここで祐巳さんが「みなさん、ありがとう」といって涙でもみせて終われば、偽善に満ちたシーンとはいえ、
まだ救いのようなものが残ったのかもしれない。
 しかし、祐巳さんは、笑顔をみせながらも首を横に振った。
「今回のけじめはね。きちんと取らないといけないと思っているの」
 周りにいた全員が黙るのを待って、祐巳さんはいともあっさりと告げた。

「だから、瞳子ちゃんにロザリオを返したんだ」

 今、『瞳子ちゃん』って言った――

「それにね。紅薔薇さまも辞退しようと思う。違う色のつぼみに恋をしたなんて、薔薇さまとして失格だから」
「そ、そんな!」
 教室に複数の悲鳴があがる。

「待って、祐巳さん! いきなり紅薔薇さまをやめるってどういうことよ!」
 狼狽した由乃さんが祐巳さんの元に駆け寄り、制服を思いっきり掴んで噛みつくような形相で叫ぶ。
「どうって…… そのままだよ。私は薔薇さまを辞任するから」
「そんな」
 由乃さんは、何か言おうとして口を何度も開閉させているけれど、明瞭な言葉にならない。
 一方、祐巳さんはいつもよりも、更に柔らかい表情を浮かべながら、由乃さんに向けて話し続ける。

「あのね。由乃さん。よく考えたんだけれど。やっぱり不倫という大罪を犯した私が、紅薔薇さまという
全校生徒の規範となる役職に就いている訳にはいかないと思うんだ」

「いいえ。祐巳さんは紅薔薇としての職務を立派に果たしているわ」
 真っ先に反論したのは、祐巳さんとは仲が良い桂さんだった。
「そうよ。祐巳さんはいつも下級生に声をかけているし、薔薇さまにふさわしくないなんてことない」
「祐巳さんがいない山百合会なんて、絶対に嫌よ」
「悪いのは、こんなゴシップ記事を載せた新聞部だわ。祐巳さんは絶対に悪くない」
 周囲を囲んでいたクラスメイト達の口からは、先程と同じ様に、無条件で祐巳さんを擁護する声が続く。
318名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 22:49:40 ID:eXBwcaGy
「でも…… 私は罪を背負っているから」
 祐巳さんは、少しだけ悲しそうな顔で言った。

「大丈夫。祐巳さんは私達が守るから」
「祐巳さんの悪口は絶対にいわせないわ。だから紅薔薇さまをやめるなんて言わないで」
「祐巳さんに文句を言うひとは許さないから、安心して」
「祐巳さんを傷つけるひとなんて消えてしまえばいいのよ」

 これは…… 何?
 志摩子は、祐巳さんを励ましている生徒達を呆然と眺めた。
 胸の奥に何かがつかえているようで苦しく、喉がカラカラに乾いてヒリヒリする。

 確か…… そうだ。
 この状況は、乃梨子を初めて薔薇の館につれてきた時とよく似ている。
 ある目的地へ向かう為に敷かれた路線から外れないように、皆が協力して会話を重ねていくという、
定められた儀式のような、不気味で恐ろしい流れだ。
 その中で、志摩子だけはあの時と同じように、周囲に同調することはできず、かといって、
反発して押しとどめることもできずに、異常な喉の渇きを覚えながら、渦巻く不安に苛まれることしかできないのだ。

「どうして?」
 志摩子は、見えない恐怖に怯えながらひとりごちる。
 どうして、誰も祐巳さんを責めないの?
 祐巳さん。本当に瞳子ちゃんにロザリオを返してしまったの?

 祐巳さんが、薔薇さまとして歩むべき王道から外れて、奈落の底へと続く道に突き進んでいることは、
明らかになっているのに、ほとんどの生徒が彼女を責めない。
 むしろ、祐巳さんのすることだから、全て正しいと思い込んでいる。
 この状況を異常と思っているのは、志摩子と由乃さんの他に誰かいるのだろうか?

「本当に、みなさんありがとう」
 志摩子が呆然としている間に、おそらく祐巳さんが脚本を書いたと思われる舞台劇は予定通りに進み、
輪の中心にいる祐巳さんは、本当か嘘か分からない涙を流しながら、クラスメイトの温かい励ましに応えている。

 志摩子は―― これ以上祐巳さんを見ていることに耐えられずに、ひとり、背を向けて廊下に逃げ出した。
319名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 22:50:11 ID:eXBwcaGy
「茶番劇を見るのが辛くなった?」
 よろめくようにして廊下に出ると、壁にもたれていた蔦子さんに呼び止められた。

「ごきげんよう。蔦子さん」
「ごきげんよう。白薔薇さま」
 蔦子さんの表情は非常に険しく、廊下と教室を遮る窓越しに、祐巳さんと彼女を囲む集団を睨みつけている。
「お願い。そんな呼び方しないで」
「ごめんなさい。志摩子さん。あなたに八つ当たりしてしまった」
「いえ…… あれっ?」
 志摩子は違和感を覚えた。
 状況が許す限り、肌身離さずもっているはずのカメラがない。

「今の祐巳さんの写真は取りたくないわ。むしろ、あれが祐巳さんとは信じたくない」
 蔦子さんの返答に驚いて尋ねる。
「どうして祐巳さんではない、なんて言うの?」

「志摩子さん。しっかりと眼を開いて見てよ。私が知っている祐巳さんはね。
特別頭が良かったり、スポーツができたりするわけじゃないけれど、いつも正しくて、真っ直ぐな女の子だった。
そりゃあ器用なひとではないからミスはあるけれど、大切なことでは絶対に間違ったことなんてしなかった。
それなのに…… 今の『祐巳さん』はどう考えたって、祐巳さんの皮を被った別人としか思えない!」

 蔦子さんは大きく息を吸ってから、吐き捨てるように言った。
「いい? 志摩子さん。あの祐巳さんはね。貴方の妹の二条乃梨子さんを食べて」
 容赦のない表現に圧倒されて志摩子は動けない。
「そればかりか、あれ程苦労して妹にした松平瞳子さんにロザリオを返したなんて言うのよっ」
 蔦子さんの弾劾は、最後には叫び声に変わっていた。

「私は罪を背負っているの。蔦子さん」
 声が届いたのだろう。入口の扉が開いて、廊下に出てきた祐巳さんが謡うように告げる。
「あなたは…… 一体誰なの?」
 しかし、蔦子さんは、まるで親の敵をみるような視線で祐巳さんを睨みつけて叫んで、指を突き付ける。
「ふくざわゆみ、だよ。蔦子さん」
「そんなはずはないわ。あなたは福沢祐巳なんかじゃない。顔が同じだけの全くの別人よ」
 志摩子に向けて放った言葉をもう一度、本人に向けて繰り返す。

「ふうん」
 しかし、祐巳さんは首を傾げると、淡々とした口調で反論する。
「蔦子さんこそ、私に幻想を抱いているんじゃないかな?」
「なんですって!?」
 怒りの声をあげる蔦子さんに向けて、祐巳さんは表情を変えずに言い放つ。
「私がいつも正しいことをするなんて、それこそ嘘だよ」
「祐巳さん、あなたは…… 絶対に間違っている」
 しかし、祐巳さんは、怒りに震える蔦子さんを憐みの混じった表情を浮かべて眺めながら、
どこか他人事のような口調で呟いた。

「人はね。なかなか思い通りには生きられないんだよ」

 何もかもを突き離したような言葉に、蔦子さんは衝撃を受けて黙り込む。
「そろそろ、授業が始まるからね。みなさん、席につこうよ」
 祐巳さんが重苦しい沈黙を破って皆に着席を促した直後、始業を告げるベルが学園中に鳴り響いた。
320名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 23:00:54 ID:9O2MwVaI
支援
321名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 23:02:33 ID:eXBwcaGy
続きます。
私事で中々時間がとれず、投下できずに心苦しく思いますが、
読んでくれた方、感想を頂けた方に感謝しています。

>>309
いつも楽しみに拝読しております。
私のことは気にせず投下していただければ、と思います。


322名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 23:21:36 ID:9O2MwVaI
ぐっじょぐっじょぐっじょ!!
323名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 23:41:03 ID:KJpbuTGl
キタワァ.*:.。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。.:*!!☆ 超GJ!
これからもご自身のペースで続けてって下さい。>>309氏の容赦ない力作にも期待しております。
324名無しさん@ピンキー:2010/03/13(土) 20:36:22 ID:bxRFqDNB
二か月待った甲斐がありました。

正直この人の小説にはお金を払って可と思っています。
(もしこのままの水準が続くなら)適当な口座を指定して頂ければ、一か月分のネット代金くらい振り込みます。(マジで)せめてGJさせて頂きますので、励みになさってください。

キャラクターの心理劇がいよいよどろどろしたものになって来ました。
もう「いばらの森」以上ですね。
かなりの長編になりそうですが、wktkしてこのスレ巡回します。

正直早く続きが読みたくて隔靴掻痒なのですが、作者さんのリアルでの生活に支障がないようがんばって下さい。
325名無しさん@ピンキー:2010/03/13(土) 23:20:13 ID:2ki6PyAN
原作を読んでいないのに大変失礼かもしれませんが、魅せられました
神作とはこのようなSSを言うのですね…続きが気になってなりません
GJくらいしか出来ませんが、楽しみに待っています

では
GJ!!!!
326名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 18:12:33 ID:Di526tsv
>>319の続き 

9―1.

「はあ」
 教室の机に座っていた乃梨子は、ため息をついた。
 新聞部が、乃梨子と祐巳さまの関係についての号外記事を読んだ時、乃梨子の脳裏に浮かんだのは、
怒りでも悲しみでもなく、諦観だった。
 二人の関係が暴露されるのは時間の問題でしかなかったのだから、仕方の無いことだとしか思えない。
 妙に気遣って強張った笑顔で違う話題を振ってくるクラスメイト達に対しても、
生温かい目で鑑賞する余裕すらあった。
 しかし、三つばかり後ろに座っている瞳子の顔だけはまともに見ることはできなかった。

 瞳子―― 福沢祐巳さまの妹は、呆然とした様子で机に座っている。うつむき下限な顔は
彼女の特徴的な縦ロールに半ば隠されて表情は判別しがたかった。

「何を今更」
 乃梨子は自嘲気味に呟く。
 すべてが手遅れであり、弁解や謝罪をすることすらできない。
 瞳子の親友のような顔をして振る舞った挙句、誰よりも深く傷つけたのだ。
 クラスを替えることはできないのだから顔を合わせるのは仕方ないとしても、残りの月日は
事務的な会話だけにとどめて、瞳子にとって空気のような存在となることが、唯一の償いになるのだろう。

 一方、志摩子さんと祐巳さま、そして瞳子以外の人間に対しては、乃梨子は興味を抱くことはできなかった。
 乃梨子は、精神的な意味で強く、図太い、あるいは鈍い人間に分類される。
 関係の無い第三者が不倫だの、裏切りだのと騒いでも、ほとんど気にすることはない。
 いや、鈍いのではなくて異常なのだ。普通の女子生徒で、乃梨子と同じ立場に立たされたのなら、
怒り狂うか、泣き喚いて許しを乞うか、あるいは今の瞳子のように全てを拒絶するかのいずれかなのだけれど、
乃梨子は、前に座っているクラスメイトに、あまり上手とはいえない冗談だって言えたりするのだ。
 もしかしたら乃梨子の心は自分でも気付かないうちに、既に回復不可能なほどに――
壊れてしまっているのかもしれない。

 しかし、いくら衝撃的な山百合会に対するスキャンダル記事が生徒達を騒がしたとしても、授業日程とは全く
関係のないものであり、定められたカラキュラムは淡々と消化されていく。


327名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 18:13:11 ID:Di526tsv
 4時間目に入ってから暫くすると、鉛色の重く垂れこめた雲から雨粒が落ちてきた。
 教室のガラスを叩き始めた雨粒が、乃梨子の耳朶をくすぐる。
 窓越しに中庭を見下ろすと、無数の水滴を浴びている紫陽花が、微かに靄がかった中で控え目に
己の存在感を主張している。

 乃梨子はガラスに小さく息を吐きかけると、ひんやりとしたガラスの表面は微妙な湿度と温度の変化を
受けて薄く白く曇る。
 人差し指を伸ばして腹をガラスにあて、小さく祐巳さまと志摩子さんの名前を書く。
 暫く二人の先輩の名前を眺めてから、他の誰かに気づかれないうちに、小指の外側を使って消してしまう。

 どうして、1年生の春に最初に出会ったのが志摩子で、祐巳さまではなかったのだろうか。
 もちろん、志摩子さんと出会ったことを後悔するわけではない。あの日、桜の樹の下での出会いの記憶は
今でも鮮明に残っている。
 桜の花びらが踊るように舞い散る中、佇んでいた志摩子さんは神々しいまでに美しく、まるで御仏の
生まれ変わりのような輝きを放っていた。
 一方、もう少し後、薔薇の館で手伝いを始めてから知りあった祐巳さまは、お姉さまである
祥子さまと仲違いをしていて、沈みがちであったから、どことなく印象が薄かった。
 祐巳さまが輝きだしたのは、祥子さまとのすれ違いが解消されて以後、夏休みに入った頃からだと思う。
 ある意味では、乃梨子は祥子さまを嫉妬すべきだったのかもしれない。祐巳さまをあんなに落ち込ませる
ことができるのは、お姉さまである小笠原祥子様だけなのだから。

 しかし、祥子さまはもういない。
 もちろん、実在しないという訳ではない。
 祥子さまはリリアン女子大学に通っているから、距離としても離れてはおらず、会って話をすること自体は
さほど困難な事ではない。
 しかし、祥子さまは高等部のエリアに足を踏み入れようとはせず、もちろん、OGとして薔薇の館に
姿にみせることもない。
 祐巳さまとは何度か会っているのだろうが、3月の卒業式以来、乃梨子と顔を合わせることはなかった。

 ぼんやりと考え事をしているうちに、4限の終了を告げるベルが鳴った。
 今日は土曜日なので、決められた区画を掃除してHRを終えれば、部活動や委員会活動がない者は帰宅できる。
「どうしよっかな」
 乃梨子は中庭に面した、長い渡り廊下を竹製の大きな箒で掃きながら思案に耽る。
 もちろん、山百合会としての仕事があれば薔薇の館に足を運ばなければいけないのだか、
流石に今日は行きにくい。
 由乃さまの怒声を聞くのもしんどいし、志摩子さんの涙をみるのも辛いものがある。
 雨音を聞きながら廊下を掃いていくと、廊下の端から一人の上級生が歩いてきた。
328名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 18:13:45 ID:Di526tsv
「志摩子さん」

 乃梨子は名前を呼んだものの、何を言えば良いのか分からず固まってしまう。
「乃梨子……」
 憂いを浮かべた志摩子さんは、展覧会に出されたとっておきの芸術作品のような、あらゆる意味で反則とも
いえる美しさを醸し出している。
 今の志摩子さんの存在が神仏の実在の証明である、と布教をする者に説かれるならば、おみそれしましたと
頷くしかないほど、完璧な美というものを体現している。
 志摩子さんは3歩の距離まで近づいて立ちどまり、僅かな躊躇いをみせた後、乃梨子の顔を見据えながら口を開いた。

「放課後、薔薇の館に来てほしいの」

「山百合会の仕事があればサボるわけにはいかないよ」
 乃梨子の優等生的な仮面を被った返事に、志摩子さんは首を横に振った。
「いいえ。山百合会としての仕事は今日はないわ」
「そうなんだ」
 山百合会の仕事の中で一番、暇な時期は、新入生歓迎会が終わってから、夏休みに入るまでの梅雨と
呼ばれるこの季節だろう。
 それでも普段は土曜日の午後は、たまった書類の整理等、細々とした仕事を片づけるために集まるのだけれど。
「乃梨子と二人だけで話したいことがあるの」

「二人だけ?」
 乃梨子はまじまじと見つめながら、念を押すように尋ねる。
「ええ」
 志摩子さんは辛そうな表情を見せながら頷いた。
「分かった」
 噂の渦中となっている二人の会話に、興味を示す生徒が聞き耳を立て始めたこともあり、乃梨子はすぐに頷いた。
 志摩子さんは返事を聞くと、「待っているから」と言ったきり、すぐに背中を向けてしまう。
 長く伸ばした巻き毛を揺らしながら遠ざかっていくお姉さまの後ろ姿を、乃梨子は
箒をもったまま無言で眺めていた。
329名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 18:14:16 ID:Di526tsv
 ごく短いHRを終えて、三々五々と生徒達が散る中、乃梨子も立ち上がった。
 あまり気は進まないが、一度約束をしたからには薔薇の館に行かなければならない。
 鞄を持って立ち上がってから教室を出て、薔薇の館に向かうため廊下を歩き始めてからまもなく、
乃梨子は声をかけられた。

「ごきげんよう。乃梨子さん」
「ごきげんよう。笙子さん」
 目の前に、大きめのカメラを持った内藤笙子さんが柔らかく微笑んでいる。

「今から部活?」
「ええ」
 笙子さんはにこやかに言ってから、乃梨子の隣に並んで歩き始める。
「もうすぐ展覧会だから、頑張らないとね」
 笙子さんは愛用の一眼レフを少しだけ持ち上げて見せた。

 乃梨子とは違うクラスではあるが、笙子さんが、昨年山百合会が主催した茶話会に出席していたという
縁もあって、何度か顔を合わせているうちに、少しばかり親しくなった。
 何かにつけ四角四面ときっちりとしている乃梨子とは違って、どちらかというとふわふわとしていて、
柔らかい印象を受ける。
 顔立ちはやや幼さは残すものの、子供時代はモデルとして活動していた経歴もあり、志摩子さんは
別格としても十二分に美人の部類に入る。
 それにしても、お嬢様学園であるリリアンにはやたらに美少女が多いのはまぎれもない事実であり、
乃梨子は入学から一年余を経た現在に至っても、自分自身が場違いな存在だと思うことがある。

「乃梨子さん。今日は大変ね」
「そうでもないよ」
 唐突に話題を出されてやや面食らうが、乃梨子のクラスでは半日にわたって、まるで腫れ物に触るような
扱いを受けていたので、笙子さんの素直な感想は決して不快なものではなかった。

「乃梨子さんって凄いのね。私だったらめそめそと泣いちゃっていると思う」
「そうかな」
「うん。そういうしっかりしたところ、憧れちゃうな」
 笙子さんは乃梨子の動じなさを褒めながら、とても魅力的な笑顔をみせた。

「そういう笙子さんは、お姉さまも妹もつくらないの?」
「そうね」
 笙子さんは一時期、ずいぶんと武嶋蔦子さまの後を追いかけていたから、蔦子さまの妹になるかと
思っていたのだけれど。
「そりゃ、蔦子さまは素晴らしい先輩だけれども、妹になりたいかというと少し違うの」
「ふうん」
「私は、姉妹という関係を結ばなくても、高校生活を楽しむことができると思うから」
 笙子さんの言葉は、おそらく本心から出ているのだろう。
 乃梨子だってリリアンに入った当初は、姉妹という関係を誰かと結ぶようになるなんてことは、
想像もできなかったのだから。

「だから、乃梨子さんもあまり枠に囚われることはないと思うわ」
 別れ際、昇降口の前で笙子さんが言った言葉は、とても印象に残るものだった。
330名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 18:15:06 ID:Di526tsv
 薔薇の館についてから雨粒で濡れた傘を折りたたむ。
 二階に上がり、人の気配を覚えて扉をノックすると、予定通り志摩子さんが姿をあらわした。
「乃梨子…… 来てくれたのね」
「志摩子さん」
 明らかにほっとした表情を浮かべる志摩子さんに、ここ数日のうちに二人の間に広がってしまった
距離を感じさせられて、胸が痛くなる。
「ちょっと座っていて。今、紅茶を淹れるから」
「ありがとう。志摩子さん」
 志摩子さんが流し場に向かう。
 乃梨子は落ち着かない気持ちのまま、お湯を沸かしている志摩子さんの後ろ姿をぼんやりと眺めている。
 暫くすると志摩子さんは戻ってきて、ティーカップに熱い紅茶を注いでくれた。

「いただきます」
 唇をカップに近付けて、白い湯気をたてている紅い液体を口に含み、乾いた喉を湿らせる。
 やや弛緩した空気が二人の中に流れたことを感じ取ったのか、志摩子さんがおもむろに口を開いた。

「あのね…… 乃梨子」
「何? 志摩子さん」
「祐巳さんと瞳子ちゃんのこと、もう知っているかしら?」
「祐巳さまと瞳子? かわら版以外のことは知らないけれど」
 乃梨子は答えてから、首を左右に振る。
 瞳子はずっと教室で座っていたけれど、意識的に視線を合わさないようにしていたし、
一言も会話を交わしていない。
「知らなかったのね……」
「だから志摩子さん。何があったの?」
 志摩子さんが呆れたような表情になったような気がして、焦りを感じた乃梨子は催促する。

「祐巳さんが、瞳子ちゃんにあげたロザリオを返すように言ったの」
331名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 18:16:21 ID:Di526tsv
「えっ…… 」
 ティーカップを持ったまま、乃梨子は言葉を喪った。
 いくらなんでも、昨日の今日というか、早すぎる展開についていけない。
「どうして…… そんなこと」
「祐巳さんは、クラスメイトに向かって今回のけじめを取るために、瞳子ちゃんにロザリオを
返して貰ったと話していたわ。あと、紅薔薇さまをやめるなんてことも……」
 志摩子さんの瞳には、深い悲しみがたたえられている。
「紅薔薇さまも?」
「でもね。クラスの皆は、祐巳さまに紅薔薇さまを辞任してほしくないって、押しとどめたわ」
「そ、それで」
 息せききって尋ねる乃梨子に、志摩子は辛そうな表情のまま答える。
「薔薇さまを辞任するという件は、取り消したの」
 志摩子さんの言葉に胸をなでおろす。
 乃梨子のために、祐巳さまが薔薇さまを辞めてしまったら、どうやって償ったらよいか分からない。
「でもね…… 瞳子ちゃんとの関係は断たれたままなの」
 悲痛な表情のまま説明を終えた志摩子さんは、乃梨子の顔をまっすぐと見つめた。

「あ、あの。志摩子さん」
 正面からの視線が強すぎて、身体がこわばってしまう。
「それを話して、志摩子さんは私に何を求めているの?」
 お姉さまからの無言の圧力に怯みながらも、乃梨子は警戒を露わにした。
「私は、瞳子を裏切ったんだよ。そんな私に何ができるっていうの?」
 志摩子さんが次に何を言い出すのか、とても怖い。

「乃梨子!」
 動揺する妹を叱りつけたいのか、それとも志摩子さん自身が相当焦っているのか、
かなり強い口調で遮られる。

「は、は…… い」
 志摩子さんの整った唇が動く。
「乃梨子にお願いしたいことはね。祐巳さんにお願いして、祐巳さんのロザリオをもう一度、
瞳子ちゃんにかけさせてほしいの」

「志摩子さん」
 乃梨子は愕然とする。どうして……
「お願い。このまま瞳子ちゃんがいなくなると山百合会は崩壊してしまうの。だから乃梨子、
あなただけが頼りなの。お願い。祐巳さんを説得して」
332名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 18:17:14 ID:Di526tsv
「はあ」
 乃梨子は、大きな双眸から涙を流してお願いをする志摩子さんを眺めた後、大きなため息をついた。
 しかし、吐きだした空気の中から生まれたのは…… まぎれもない怒りの感情だ。

「志摩子さん。いえ、お姉さまはどれだけ残酷なことを言っているか、分かっている?」
 乃梨子はゆらりと立ち上がり、涙で頬を濡らした志摩子さんをにらみつける。
「の、乃梨子…… それは分かっているつもりよ。貴方にとってとても辛いことだと思う」

「嘘だ!」

 乃梨子は両手を使って、テーブルを強く叩いた。
「ねえ。志摩子さん。私と祐巳さんはね。志摩子さんと瞳子を酷く裏切って恋人同士になったんだよ。
高校から編入した無知な私だって、このリリアンじゃ、他人の姉妹に手を出すって御法度だってことは
分かっているよ。だからね。祐巳さまはきっちりとけじめをつけるために、瞳子にロザリオを
返してもらったんだっ」
「だから…… それは」
 志摩子さんの抗弁を遮り、更に叩きつけるように怒りの言葉を紡ぎ続ける。
「そりゃあね。私が完全に悪いから、どれだけ志摩子さんに蔑まれても、叩かれても当然だと思うよ。
でもね。どうして、そんな私に、瞳子と祐巳さまを復縁させるようなことを頼むのかな?
志摩子さんってどれだけ残酷なの? わからない? そう、分からないんだ。理解できないんだ。
だったら、鈍感な志摩子さんに分かるようにもっと易しく言おうか」

「の、乃梨子」
 堰を切ったように早口でまくしたてた不肖の妹に、明らかに怯えている志摩子さんを見ながら乃梨子は笑う。
もう、ここまで噛み合わなければ、乾ききったはずの涙を流しながら笑うしかないではないか。

「あのね。志摩子さん。とっても鈍い志摩子さんでも分かるように言うとね。不倫した当の相手に、
夫婦仲を復縁させてくれって頼んでいるんだよ。それがどれほど非常識で、無理なお願いだってことが
理解できるよね?」

 牙を剥いて襲いかかる妹の勢いに圧倒された志摩子さんは青い顔をして聞いていたが、やがて、椅子から
ゆっくりと立ち上がって、乃梨子の身体を抱きしめる。

「し、志摩子さん?」
 柔らかい身体の感触と体温を感じて、乃梨子は上ずった声をあげた。

「ごめんなさい。乃梨子…… 私は、もうこんなことしかできないの」
「こんなことって……」
「お願い。乃梨子、私を好きにして…… だからお願い」
 指呼の距離まで顔を近づけて、涙を流しながら哀願する志摩子さんを見ながら、乃梨子の心は急速に冷えていく。
333名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 18:18:16 ID:Di526tsv
「なんだ」
 そうか。そうだったのか。志摩子さんが一番大切にしているものは、決して乃梨子なんかじゃない。
「志摩子さんが一番大切なのは、山百合会なんだ」
 頭が真っ白になる。
 一年前、桜が舞う中で出会い語らったり、小萬寺で幽快の弥勒菩薩を見せて貰ったり、ふりしきる雨の中で
ロザリオの授受を行ったり、夏休みには京都まで一緒に仏像鑑賞に行ったりする等、さまざまな二人だけの想い出が
どんどんと霞んでいく。
 乃梨子は、ロザリオを「借りた」日からずっと、志摩子さんの一番は乃梨子でありたいと願っていた。
 だからこそ、志摩子のお姉さまである佐藤聖さまに嫉妬したりしたのだ。

 それがどうよ。
 乃梨子の心の内にある魔と呼べる存在が、含み笑いを浮かべながら耳元で囁きかける。

『ねえ。乃梨子…… 寂しがり屋の志摩子さんはね。乃梨子のことはあまり大切なんじゃないんだよ。
もちろん聖さまが一番でもない。志摩子さんはね。居心地の良い山百合会や、薔薇の館こそが
志摩子さんの危なっかしい心に平安をもたらしてくれる最も大切なものなんだよ。貴方は
人ですらない存在に負けたんだよ。ねえ。乃梨子、貴方は志摩子さんの心を捉えるなんてことに、
まだ無駄な労力を割こうとするの?』

「の、乃梨子?」
 妹の表情にはっきりとした異変を感じ取ったのだろうか? 志摩子さんは乃梨子の顔を不安げに見つめている。
「ねえ。志摩子さん。祐巳さまに瞳子を再び妹にするように頼むことを約束すれば、
本当に志摩子さんを自由にして良いのかな」
「え、ええ」

 冷ややかな顔つきで見下ろす乃梨子に気押されながら、それでも志摩子さんは気丈に俯いた。
 恋愛感情という意味では醒めきった現時点ですら、志摩子さんの絵画や彫刻レベルの美術品としての
美しさには惚れざるをえない。

「分かった。約束するよ。祐巳さまに、ロザリオを瞳子にもう一度渡すように頼んでみる。
結果については流石に保証できないけれどね」
「ありがとう。乃梨子のお願いならば、祐巳さんは断らないと思うわ」
 ほっとしたのか、明らかに身体を弛緩させる志摩子さんに向けて、軽蔑の眼差しを閃かした後、
乃梨子は志摩子さんの唇に軽く触れる。

「ん…… 」
 すぐに唇を離してから、志摩子さんに微笑みかける。
「お姉さまから報酬はしっかりと受け取るからね」
「乃梨……」
 乃梨子は、何かを喋りかけた志摩子さんの言葉を遮って、こんどはしっかりと唇を塞いだ。


(つづく)
334名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 18:29:47 ID:uWT9Fv4K
うわあああああああああああああ続き気になりすぎるううううう
GJGJGJ!
335名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 19:10:45 ID:lzwMZe6I
GJ
続き楽しみだなあ
336名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 22:30:51 ID:pHmzgeW5
今度は黒祐巳に続いて黒乃梨による志摩子レイープか。
レディコミみたいになって来たな。
337名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 23:07:50 ID:hD1f4JFu
超GJ
338名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 20:05:25 ID:f7GCG4aj
>>333の続き

9−2.

「ん…… んっ」
 乃梨子はゆっくりと唇をなぞっていく。
 弾力があって柔らかい志摩子さんの唇からは、時折小さな声が漏れて、乃梨子の劣情を激しく掻き立てていく。
「くっ…… ふん」
 擦れるような微かな音と、断続的に漏れる喘ぎ声を耳にしながら、乃梨子は暗い思考を巡らせる。

 志摩子さんを滅茶苦茶にしたらどうなるんだろう?
 自分の心の底から、下種としか言いようのない欲情がとめどもなく溢れてくるのを感じながら、
豊かな胸を荒々しくまさぐりだす。
「ん、くぅ」
 志摩子さんは可憐な小鳥のような悲鳴をあげながら、乃梨子の魔手から逃れようと身じろぎをするけれど、
それは許さない。
 乃梨子は、もう片方の手を使って、お姉さまの動きを封じてから耳元で囁く。

「逃げないでね。志摩子さん」
「乃梨子……」
 軽く牽制しておいてから、再び唇を塞いで、今度は隙間から舌をもぐりこませる。
「ん、ん――」
 ディープキスに驚いたのか、くぐもった悲鳴があがるが容赦するつもりはない。
 乃梨子は積極的に舌を動かして、志摩子さんの舌の表側にあるざらざらした部分を舐め取る。

「ん―― んぐ、んぐう」
 何度も漏れる悲鳴混じりの喘ぎ声に、大きな愉悦を感じながら、丹念に口腔内を汚していく。
 健康的な歯茎の裏を舐めとり、とめどなく溢れだす唾液をすくい取り、なめらかなエナメル質で覆われた
犬歯の感触を存分に堪能する。

「んんんっ! んぐっ!」
 あまりにも偏執的な愛撫から逃れようと、顔を真っ赤にしながら苦しそうに呻いている志摩子さんを
眺めながら、乃梨子は心の中で呟いた。
 
 そんなに嫌なんだね。志摩子さん。

 誰よりも美しい顔を酷く歪めて、嫌がる志摩子さんを目の当たりにする度に、乃梨子の心は
ぐちゃぐちゃに壊されていく。
 心の一隅に、微かに残された良心の欠片は、無残に破壊された上に粉々に潰されて、ねじ曲がった
闇の部分だけが、負の感情を栄養素として醜く成長してしまう。

 乃梨子との接触をここまで嫌がる志摩子さん。
 それなのに、山百合会の安寧の為に大切なはずの自分の身体を供え物のように差し出す志摩子さん。
 まったくどこまで優しく、残酷な菩薩さまなのだろうか?

 自分自身に課した使命のためにひたすら耐える志摩子さんの口内を舐めつくし、犯しつくしてから
ようやく唇を離す。
 再び顔を見つめると、敬虔な基督教徒である志摩子さんは、恐ろしい悪魔を眼前にしているような視線を、
妹であるはずの乃梨子に向けていた。
339名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 20:06:02 ID:f7GCG4aj
「そんな怖い表情も大好きだよ」

 すっかりと闇の領域に心を支配されてしまった乃梨子は含み笑いを浮かべながら、天使のような志摩子さんの
頬に流れた涙をゆっくりと掬い取ってぺろりと舐める。

 一体、どれだけ歪んでいるのだろうか。
 リリアンで一番尊く、あがめていた存在が、乃梨子を怯えた目でみつめている事実に悦びを感じているなんて。

 しかしながら、他人を嫌うという感情からは最も縁遠い人格者である志摩子さんが、普段は、
決して抱かないような負の感情を、現在は、この二条乃梨子は独占しているのだ。
 なんという愉悦、なんという極上の快楽なのだろう。

「乃梨子…… やめて」
 瞳にまぎれもない恐怖の色をたたえて、細かく震える己の身体を両腕で抱きしめながら、
志摩子さんは哀願する。
「ふうん。ロザリオの件はあきらめるんだ」
 その言葉を待ってましたとばかり、乃梨子は志摩子さんからあっさりと離れて、立ち去ろうとする。

「ち、違うの。これは」
 慌てて言った志摩子さんをみつめながら、乃梨子は嫌らしい笑みを浮かべる。
「別にね。私は無理して志摩子さんとエッチをしなくてもいいんだよ。志摩子さんが嫌ならもう止めるから」
「ちょ、ちょっと驚いただけなの、決して嫌じゃ…… ないわ」
 これほど本音とは違うことを堂々と言ってのける志摩子さんは、なんて酷い嘘つきなのだろう。 

「じゃあ、続けても良いんだね」
 綺麗な顔が小さく頷くのを確認してから、今度はスカートの裾に手を伸ばしてめくりあげる。
 乃梨子の視界に、健康的な太腿と、白いショーツが飛び込んでくる。
 手に入れたいと欲して決して叶わなかったものが、いま、無防備に晒されている。

「そ、そんなに見ないで」
 顔を両手で覆って志摩子さんは羞恥に悶える。
「ふふ。志摩子さんのショーツは、ヤフオクだったらどれくらいの高値がつくのかなあ」
 歪んだ乃梨子は、敢えて下卑な言い回しをすることによって、尊敬しているはずのお姉さまを
心理的に追い詰めにかかる。
「お願い、乃梨子。そんな酷いこと言わないでっ」
「ねえ、志摩子さん。聖さまにはもう見せたんでしょ」
 
 乃梨子が何気なく放った言葉に、志摩子さんは文字通り固まった。
340名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 20:06:39 ID:f7GCG4aj
「どうして、それを……」
 そっか、瓢箪から駒という例えが正しいかどうかは知らないけれど、本当に見せたんだ。
「志摩子さん。それって…… いつ?」
「は、半年くらい前よ」
「ふうん」
 乃梨子の蔑んだ呟きに焦った志摩子さんは、明らかに狼狽した表情をみせながら言った。

「ご、ごめんなさい。で、でも一度だけよ。それに最後まではないわ」
 早口で弁解を試みるけれど、滑稽としか言いようがない。

 あらあら。聖さまは乃梨子に嘘をついていたのだろうか…… でも、最後まででは無いという
志摩子さんの言葉を信じれば、未だに『抱いていない』という言葉自体は間違っていないから、
案外、聖さまは正直に話したのかもしれないな。

「それにしても、ますます道化だなあ、私って。志摩子さんと手を繋いでいるだけでも真っ赤に
なっていたのにね。ほんと、馬鹿みたいだね」
「ごめんなさい。乃梨子…… あの時は、とても寂しかったから」
「そうね。私なんかじゃ、志摩子さんの寂しさを癒すことすらできないんだから。仕方ないよね」

 口を開くたびに加速度的に開いていく溝を感じながら、乃梨子は荒れた感情をぶつけるように、
志摩子さんの柔らかな太腿を下から撫で始める。
「くっ、くう…… 」
 恥辱にまみれながら、それでも必死に掌を握って、妹の責めに耐え忍ぶお姉さまの反応をみていると
ますます邪な劣情が高まっていく。
 もっと辱めを与えてやりたいという、人として最低な感情に支配されている自分に対しても、
冷笑を浮かべながら、志摩子さんに告げる。

「ねえ。志摩子さん。このままだと制服が皺になっちゃうよ」
 乃梨子の言葉の意味を悟って、志摩子さんはびくりと華奢な肩を震わせる。

「自分で脱ぐ? それとも私に脱がされたい?」

 耳元で意地悪く囁くと、志摩子さんは明確な嫌悪の表情を浮かべて乃梨子をにらんだ。

 本当は、目の前にいる酷い下級生に向かって、この鬼畜、とでも罵倒したいに違いない。
 しかし、どこまでも清く正しい白薔薇さまは、とても可哀想なことに、自分自身に課した制約の為、
そういう汚い言葉は思っていても、決して口に出すことはできないのだ。

「ぬ、脱ぐわ」
 結局―― 散々に逡巡した後に、志摩子さんは固い表情で頷くことになった。

「志摩子さんのストリップショーを見られるなんて、なんて幸せなんだろうね」
 生傷に塩を擦り付けることを目的と化した乃梨子の言葉を無視した志摩子さんは、タイをほどいてから
ほんの一滴だけ緑を含めた黒のワンピースをするすると脱いでいく。
 衣が刷れる音がやけに大きく響いたあと、制服が床に落ちて、薄い白色の下着だけになり、
四肢を露わにした志摩子さんがあらわれた。
341名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 20:07:15 ID:f7GCG4aj
「とっても綺麗だよ。志摩子さん」
 なだらかな肩から伸びる細い二の腕も、張りと艶が極上な太腿も、大切な部分を懸命に守るこれまた白い
ブラとショーツも、神々しいまでに輝いており、何物も犯しがたい魅力をみせている。

「私も、脱がないとね」
 乃梨子も半裸になった志摩子さん合わせるように、リリアンの制服を脱いでいく。
 しかしながら、哀しいことに乃梨子は日本人形だ。寸胴というか、恐ろしい程にメリハリが利いていない。
 もっとも、数値的な意味では高校ニ年女子の平均値とほとんど変わらないのだから、
志摩子さんが特別なのだけれど。

「志摩子さんの身体、大好きだよ」
 お姉さまと同じく下着姿になった乃梨子は優しく呟いてから抱きしめ、流れた涙の跡を舐める。
「乃梨子…… 」
 志摩子さんは大きなため息をつきながら、妹の名前を呟いた。
 そして、切なそうな吐息を漏らして喘ぎ、瞳に深い悲しみの色を湛えながら、欲情にまみれた
哀れな妹を見つめている。

「ふうん。志摩子さんは、地獄行き確定となった私を憐れむことによって、精神的な優位に
立とうとしているんだね」
「そんなこと、ないわ」
 弱々しく否定する志摩子さんを見ながら、乃梨子はふくよかな胸を丹念に揉んでいく。
「ん…… ふあっ」
 妹の手の動きによって豊満な乳房が幾度も形を変え、その度に志摩子さんの唇から切ない喘ぎ声が漏れる。

「くっ…… くうん」
 乃梨子がゆっくりと乳房を揉み続けて暫くすると、志摩子さんの頬は上気して、桜色に染まる。
「ふふ。志摩子さんの乳首ってこりこりしているね」
「ん、やあ、くぅん」
 ブラ越しに固くなった乳首を摘んで捩じってあげると、上半身が海老のように跳ねる。
「ん…… んあっ、はあ」
 じんわりとした痛みと同時に生まれて快感に委ねているのか、志摩子さんは荒い呼吸を繰り返しながら
切なそうな吐息を漏らしながら、小さく喘いだ。
342名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 20:07:57 ID:f7GCG4aj
 そろそろ頃合いなのではないだろうか?
 乃梨子はひとしきり、豊かな胸を堪能した後、ゆっくりと指を下腹部に向かって降ろしていく。
「ねえ。志摩子さん」
「んくぅ」
 人差し指の先端を純白のショーツの上にあてると、布越しにもかかわらず湿り気を帯びている。
「こんなに嫌がっているのに、アソコは濡れているんだね」

 乃梨子は嘲りをこめた口調で囁くと、お姉さまの肩がびくっと跳ねる。
「お、お願い」
 志摩子さんの声は、何故か切羽詰まっていた。
「なあに? 志摩子さん」
 乃梨子は優しく問い返しながら、指先をショーツの端から潜り込ませる。
「お願いだから、これ以上は…… 」
 決して自分から『やめて』と言えない志摩子さんは、すがるような目つきだけで哀願するけれど、
情欲に溺れている乃梨子は、耳を貸すつもりはない。

「ど、どうして、そんな……」
 狼狽し、顔を歪めるお姉さまに興奮しながら、指先をショーツの奥深くまで侵入させて、
黒い茂みを発見する。

「志摩子さんって、こんなに生えているんだね」
「そ、そんなこと言わないで!」
 涙を流しながら悲痛な呻きを漏らすお姉さまを全て無視して、秘められた部分を守護する茂みをまさぐりだす。

「あっ…… ああっ…… ああああっ 」
 自分の一番大切にしてきた場所を、無遠慮に掻き回されて、志摩子さんは低い呻き声をあげた。

 乃梨子の胸に刹那、とても嫌な予感がよぎるけれど、秘所をまさぐりだした指の動きはとまらない。
 必死に太腿を閉じて耐えている志摩子さんの瞳は、だんだん虚ろになって、身体は細かく震えだす。
 同時に呼吸も急速に浅く、短いものになって……
 
 精神的なヒューズが切れた。
343名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 20:08:48 ID:f7GCG4aj
「や、嫌ああああああああっ」

 突如、けたたましい叫び声をあげながら、両腕を伸ばして乃梨子を突き飛ばす。

 密着した態勢から、いきなり後方へ突きだされた乃梨子は、受け身をとることすらできずに、
床に背中をしたたかに打ち付けた。

「痛っ」
 苦痛の呻き声をあげてから、なんとか上半身だけを起こすと、志摩子さんは壁際まで後ずさっている。
「し、志摩子さん……」
「嫌! 近寄らないで!」

 瞼から大粒の涙を流している志摩子さんに、明白な拒絶の言葉を叩きつけられる。
「ど、どうしちゃったの?」
 混乱した乃梨子が近寄ろうとすると、志摩子さんは首を大きく左右に振って叫ぶ。

「お願いだから触らないで!」
 金切り声を部屋中に響かせた後、自分の殻に閉じこもるように、体育座りをした膝に顔をうずめて、
泣きながら震え出す。

「あ……」
 ここにいたって、ようやく乃梨子は取り返しのつかない失敗をしでかしたことを悟った。
 罪の無い志摩子さんの弱みを突いて、欲望のままに苛めた報いがやって来たのだ。
「あは、あはは…… 」
 深い後悔とともに絶望が押し寄せ、乾ききった笑い声をあげる。
「そうだよね。こんな変態な妹、いないほうがいいよね」
 自嘲と諦めの言葉を紡ぎ、よろめきながら立ち上がる。

「ごめんね。志摩子さん」
 謝罪の言葉を口にしながら、床に置き捨てられた制服を手に取り、のろのろと身につける。

 そして、疲れた身体を無理やり動かし、いつもより長い時間をかけて制服を着終えた時――
おそらく不幸な事に、志摩子さんは正気を取り戻した。

「ま、待って! 乃梨子!」
 乃梨子を拒絶した数分間の記憶は残っているようで、狼狽した声をあげながら、
去りゆく乃梨子を止めようとする。

「本当にごめんね。志摩子さん」
 今になって、優しい気持ちに戻れるなんて、どれだけ神仏は残酷な存在なのだろうか。

「違うの。乃梨子を拒絶するつもりなんか全くないの。だからお願い、私の傍からいなくならないで!」
 下着姿のまま立ち上がって、懸命に乃梨子に向けて手を伸ばすけれど、もう全てが遅かった。

「今まで本当にありがとう。私、志摩子さんの妹にしてもらって幸せだったよ」
 差し出された美しい掌を避けるように後ずさり、プリーツを翻して背中を向ける。
「そんな悲しいこと、お願いだから、いわないで!」
「ごめんなさい…… 本当にごめんなさい」
 乃梨子は、謝罪をうわ言のように繰り返しながら駆け出し、扉を開けて部屋の外へと逃げる。

「さようなら。志摩子さん……」
 乃梨子は後ろを振り返ることはなく、古びた階段を駆け下り、転がるようにして薔薇の館の外に出る。
 暗灰色の雲から絶え間なく降り注ぐ無数の雨粒が、纏いつく様に夢中で走る乃梨子の身体を濡らし、
双眸から溢れ続ける涙を包み隠した。

(つづく)
344名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 20:12:41 ID:f7GCG4aj
続きます。(9話は長いので2分割しました)

感想を頂けた方ありがとうございます。とても励みになります。
それにしても…… 書いている自分自身が怖くなるほどに、歪んだ話になっています。
本スレがあっても絶対に投下できませんね…… これは。

では、また。
345名無しさん@ピンキー:2010/03/15(月) 22:55:12 ID:whEEFclM
つ、続きを……!
346名無しさん@ピンキー:2010/03/16(火) 00:34:22 ID:/OKbZ33z
ぐぐぐぐぐっじょ!!
347名無しさん@ピンキー:2010/03/16(火) 01:35:08 ID:kfNkaGGk
つ、つづき(ryryryryry
348名無しさん@ピンキー:2010/03/18(木) 06:47:42 ID:T8digxHe
保守
349名無しさん@ピンキー:2010/03/18(木) 13:43:31 ID:Q/W3PM7+
うわあああああ!!GJGJGJGJGJGJ!!
続きが気になって…
350名無しさん@ピンキー:2010/03/18(木) 17:22:07 ID:D4QY+o9o
GJ
応援してる!!
351156 ◆5xcwYYpqtk :2010/03/22(月) 14:30:09 ID:tBDSOYVH
>>343の続き

10.(最終話)

 激しさを増す雨音に包まれながら、薔薇の館にひとり残される形となった志摩子は、
乃梨子が駈け去っていった入口の扉を呆然とみつめながら呟いた。

「私…… 何をしているのかしら」
 祐巳さんから、瞳子ちゃんにロザリオをもう一度渡すように働きかけたことについては、
後悔はしていない。
 しかし、自分の身体を取引材料にすることで乃梨子の欲情を煽り、はしたない性行為に及んだ挙句、
途中で耐えられなくなり、拒絶したことは心底悔んでいる。

 何て酷く、罪深い女なのだろうか。

「姉なんて資格…… ないわ」
 波のように後悔が絶え間なく押し寄せて、志摩子の精神を苛んでいく。
「ごめんなさい…… ごめんなさい」
 志摩子は下着姿のまま、膝に額をくっつけてうずくまったまま、うわ言のように謝罪の言葉を呟きながら、
心に深く刻まれた生傷の痛みにひたすら耐え続けた。

 どれくらい時間が経過しただろうか。

 志摩子は、身体に微かな違和感を覚えて顔をあげる。
「えっ?」
 下腹部に生まれた小さなむず痒さが、少しずつ周りに拡がっていく。
 両方の太腿を捩って紛らわそうとするけれど、大切な部分から生まれた疼きは次第に大きくなっている。

 じゅん――

 熱くとろりとした液体が生まれて、一度は乾いた志摩子の下着を再び濡らしていく。
「くぅん」
 志摩子は鼻を鳴らしながら、次第に大きくなる快感に身体を震わす。
「ふ…… ふふ」
 誰もいない部屋で、志摩子は小さな笑い声をあげてしまった。

 全く、おかしいではないか。
 とても大切にしていた妹を、酷く傷つけた挙句に逃げ出されて、最悪な精神状態に落ち込んだはずなのに、
志摩子の身体はあさましくも、更なる快楽を求めているのだ。
 精神と身体は別物だとはいうけれど、これほどまでに淫乱なものだとは思わなかった。

「もう…… どうなってもいいわ」
 志摩子は、あきらめの表情を浮かべながら、全てを投げ出すように言った。
 どうせ、祐巳さんも乃梨子も、私がいないところで散々、『よろしくやっていた』のだ。
志摩子が薔薇の館ではしたないことをしていても、別に構わないではないか。


352名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 14:30:49 ID:tBDSOYVH
「ん…… 」
 志摩子は普段だったら決してしないような自己正当化を終えると、本能の赴くままに、
既に染みがついた下着のクロッチに手を伸ばして軽く触れる。
「くぅん」
 薄い下着の下から生まれた湿り気が指先に伝わり、小さな電流が弾ける。
 志摩子は、軽くのけぞりながら喘ぐようなため息を漏らした。
「…… んっ」
 指先を濡らしながらゆっくりと這わせていくと、クロッチの真ん中が凹んで溝が生まれる。
「はっ…… はうん」
 上下に出来た割れ目をなぞりながら、何度か熱いため息を漏らす。
「くっ…… ふっ……ふはっ」
 志摩子が喘ぐ度に、とろりと粘着性のある液体が、かつては白色だったはずのショーツを更に濡らし、
髪の毛と同じ色の恥毛が透けて浮きだす。

 なんて気持ちが良いのだろう。
 薔薇さまとはいえ、志摩子も一人の女子高生に過ぎない。
 切なさに耐えきれずに家で自分を慰めたことは幾度となくあったが、これほど大きな快感が
襲ってくるのは初めてだった。

「だ、だめっ、乃梨子!」
 志摩子は次第に指の動きを速めながら、泣きながら去った妹の名前を叫ぶと、
脳裏に漆黒の生き生きと輝く瞳をもった顔と、やや長めに伸ばしたおかっぱ頭が脳裏に浮かんでくる。
「乃梨子…… 脱がすわね」
 うわ言のように呟いて、空想上の妹の制服を一枚、一枚剥ぎとっていく。

『志摩子さんの変態!』

 すっかりと裸に剥かれた乃梨子は、蔑んだ目で見下ろしながら罵倒した。
「そんなこと……いわないで」
 志摩子は羞恥に悶えながらイヤイヤと左右に首を振るが、乃梨子による断罪は止まらない。

『志摩子さんって最低だね。私の裸を想像してオナニーするんだね』
「お願い…… はしたない私を、許して」
 冷たく見下ろしながら嘲る妹に許しを乞う一方で、はしたない欲情を抑えることはできない。
353名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 14:31:21 ID:tBDSOYVH
『ふうん。志摩子さんって、とっても淫乱なんだ』
「そ、そうよ…… もう、駄目なの、耐えられないの」 
 志摩子は媚びるような声をだして喘いだ。
 下着の上からの愛撫では到底物足りなくなってしまい、より大きな快感を得ようと、
ぐっしょりと濡れたショーツの中に指を潜り込ませて、直に触れた。

『どこまであさましいのかなあ。志摩子さんは』
「ごめんなさい。わたし、もう我慢できないの」
 謝罪の言葉を繰り返しながら、本能の赴くまま、黒い茂みに隠されたちいさな突起を探り当て、
中指を使って押しつぶすように揉み始める。

「あん」
 痺れるような快感が全身を貫き、大きく仰け反る。
 身体がバランスを崩れて背中から床に倒れこむ。

『志摩子さんのクリ、ぷっくり膨らんでいるよ』
 固い木の床に寝転がって、裸でオナニーを続ける志摩子を見下ろしながら、乃梨子は冷然と指摘する。
「乃梨子、お願い、私のココをもっといじって」
 志摩子は擦れた声を出しながら、刺激を受けて膨らんだ突起を、ひたすら擦っていく。
「あっ…… 駄目、くぅ…… だめぇ」
 妹を『おかず』にしながら自慰にふけることは、決してやってはいけないことだと頭では
分かっていても、どうしても、手を止めることができない。

「はぁ…… くうっ」
 熱い吐息を漏らしながら、刺激を受け続ける秘所に視線を移す。
 愛液と呼ばれる粘性を帯びた液体が、下着から染み出して白い太腿をつたい、薔薇の館の床の上に、
染みをつくり始めている。

「乃梨子…… 私、乃梨子が好きなの」
 アソコをいじることによって生まれる快楽に、身体をくねらせながら志摩子は言った。
354名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 14:31:56 ID:tBDSOYVH
『志摩子さん、私も大好きだよ』
 淫乱な姉を罵倒していた乃梨子だが、今度は一転して、優しい笑顔を浮かべて告白に応えてくれる。
 おそらくドーパミンと思われる、快楽をもたらす脳内物質によって生み出された想像上の乃梨子は、
とても優しくて、とても都合良く志摩子を愛してくれる。

『志摩子さんの大きな胸、みたいなあ』
 裸の乃梨子が、自分の小さな胸と見比べながらおねだりする。

「そんな…… 恥ずかしいわ、乃梨子」
 恍惚とした表情を浮かべたまま志摩子は羞恥に悶えるが、『乃梨子』の要求には素直に従い、
空いている方の手を背中にまわして、ブラのホックを外す。
 
 微かに金属が擦れる音が鳴った直後、胸を保護する下着が緊張感を喪ってだらしなくお腹の上に落ち、
同学年の生徒と比べると、豊かといって良いふくらみが眼前に晒される。
「ふっ…… くぅん」
 志摩子は小さな吐息を漏らしながら、掌を伸ばして、乳房の片方を包み込むようにして掴んだ。


 薔薇の館には、自慰にふける淫乱な女子高生の喘ぎ声の他には、降りしきる雨音だけしか聞こえない。
「あっ、くぅ、ふぅん」
 濡れたショーツと靴下以外には、全裸という破廉恥極まりない姿をした志摩子は、全身から汗を滴らせ、
柔らかく弾力のある胸を揉みながら、艶めかしい嬌声をあげ続けている。
「んふっ…… 恥ずかしい。とても…… 恥ずかしいわ」
 羞恥と同時に生まれる背徳的な悦びに身を委ねて、長い巻き毛を振り乱しながら、
アソコと乳房への愛撫を執拗に繰り返す。

『志摩子さんって、本当にドMの変態さんなんだね』
「そ…… そうよ乃梨子。だから、もっと私の恥ずかしいところを見て……」
 切なそうな声で喘ぎながら、より激しく乳房を揉んでいく。
『志摩子さんの乳首、固くなっているよ』
「くぅん…… だ、だって乃梨子がいじめるから……」
 こりこりと固くなった突起を摘んで捩じると、甘い痛みが奔り、志摩子は上半身を震わせる。
「ん…… 駄目、そこは……」
 志摩子は、固く膨らんだ乳首の感触を楽しみながらも、もう片方の手は休むことなく
秘められた場所への愛撫を続けた。
355名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 14:32:35 ID:tBDSOYVH
「くあっ…… はぅ、……くぅん、うくぅ」
 しかし、暫くすると膨らんだクリへの愛撫より、もっと激しい刺激を求めるようになってしまう。
「もっと、もっと…… 欲しいわ」
 我慢できなくなった志摩子は、ついに膣口に指先を挿し入れる。
「あっ、くうん」
 肌に貼り付いている濡れたショーツが膣への愛撫の邪魔になって、志摩子は小さく
丸めながらずり降ろした。
「ん…… ふうっ、くぅ」
 更に、膝まで下がったショーツを足から抜いて床に落とすと、靴下以外に身につけているものは皆無になる。

『志摩子さんは、薔薇の館で素っ裸になっちゃうんだ』
「いやっ、そんなに、じろじろ見ないで……」
 乃梨子の冷たい視線に晒された志摩子は、羞恥で首筋まで赤くしながら、それでも逆らい難い欲求に
耐えることはできずに、膣口に入れた指を、奥へ奥へと潜り込ませていく。

「ひゃん!」
 今までと比べ物ならない程、強い刺激が下半身を貫き、声が裏返った。
「あはっ…… くぅ…… 乃梨子、だめよっ」
 ぐちゃ、ぐちゃと卑猥な音を立て続けに響かせながらも、夢中で膣への愛撫を続ける。
「ん……あうっ…… そこは強いから……あんっ」
 ざらざらとした膣壁を指先で引っ掻きながら、志摩子は、薔薇の館の固い床の上で裸体をくねらせ、
いやらしくよがりまくる。

「あん、乃梨子、もう、駄目、駄目だわ……」
 期待した通り、膣壁への愛撫は更に強烈で、絶頂が急激に近付いてくる。
「あはっ…… 気持ち、キモチいいわ、乃梨子、もっと、もっと強くして!」
 大きく口を開けて浅い呼吸を繰り返しながら、何度も妹の名前を叫ぶ。

『志摩子さん、いっちゃえ!』
 妹の煽るような声を聞きながら、志摩子は膣への愛撫を更に強める。
「あん、んあっ、くあああああっ、ひゃあああああああ!」
 全身を細かく震わせながら、薔薇の館中に響き渡るような甲高い嬌声をあげ、頂きを目指して
まっしぐらに駆けのぼる。
「んああああああ!」
 ひときわ大きな声を放ちながら、襲いかかってくる最大の波を全身で受け止める。

 次の瞬間――
 強烈な快感が身体中を荒れ狂いながら駆け抜けて、志摩子はついに絶頂に達した。
356名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 14:33:08 ID:tBDSOYVH
「はっ、はあっ、ふはっ」
 激しい自慰によって頂きを越えた志摩子は、ひんやりとした床に背中をつけて、仰向けになりながら
荒い呼吸を繰り返す。
「あふっ…… はあっ…… んはっ」
 急速に退いていく快楽の残滓を味わいながら右手で額をぬぐうと、べったりと汗で濡れている。
「はあっ…… はあ…… 」
 少しずつ荒い呼吸が元に戻るとともに、全身をけだるさが覆い始める。

「薔薇の館で、自慰をしてしまった」
 落ち着きを取り戻すとともに、一時は遠くに置き捨てていた理性が戻ってくる。

「とにかく服を着ないと」
 疲れ切った身体を無理やり引き起こして、足元に置かれているショーツに触れると、
秘所から溢れた愛液と汗を吸って、ぐっしょりとなっている。

 新しいものに取り変えたいけれど、下着の替えなど持ってきているはずがないので、やむを得ず穿く。
 ブラはそれほど汚れていないのですぐに身につけ、それから、床に置き捨ててあった夏服を着込む。

「ふぅ」
 ようやくにして、リリアンの生徒として恥ずかしくない格好に戻った志摩子は大きくため息をついた。

 それにしても…… なんてはしたない事をしてしまったのだろうか。
 幸いなことに、志摩子が自慰をしていた間には、誰も薔薇の館に足を踏み入れなかった。
 しかし、山百合会のメンバーや、山百合会に用事があって訪れた一般の生徒達が、
自慰の最中にこの部屋に足を踏み入れてしまったら、たいへんな事になっていた。
 おそらく間違いなく、志摩子は破滅するはずだ。

 ささやかというには大きすぎる幸運に感謝してから、志摩子は机の上に置きっぱなしになっていた
ティーセットを台所まで運んで片づける。
「もう、いいわね」
 志摩子がひとりごちながら薔薇の館を後にしようとした時、入口の扉が開いた。
357名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 14:33:46 ID:tBDSOYVH
「ごきげんよう。志摩子さん」
「ご、ごきげんよう。祐巳さん。…… 乃梨子」
 祐巳さんの後ろから、逃げるように去ったはずの乃梨子が再びあらわれて、志摩子は口ごもった。

「ごきげんよう…… 白薔薇さま」
 志摩子さんともお姉さまとも言わずに白薔薇さまと言ったことに、改めて広がってしまった距離を感じる。
 髪と制服を雨で濡らした乃梨子は、哀しそうな顔を浮かべたまま佇んでいる。

「ねえ。志摩子さん、教えてくれる?」
 乃梨子の肩口にハンカチをあてながら祐巳さんは、志摩子をにらんだ。
「何を教えれば良いのかしら?」
「とぼけないでね」
 あの温厚な祐巳さんが怒気を露わにするなんて、極めて珍しい。

「乃梨子ちゃんはね。雨の中、泣きながら走ってきたんだよ。運よく掴まえることができたから
よかったけれど。一体、志摩子さんは乃梨子ちゃんに何をしたの?」

 志摩子を睨みながら追及する祐巳さんを見て…… 思わず失笑してしまった。
「ふふ。ふふふっ」
「何がおかしいの?」
 苛立ちを抑え込みながら、祐巳さんは言葉を返す。
 流石に、瞬間湯沸かし器のような由乃さんよりは、冷静さを保っているようだ。
「ごめんなさい。祐巳さん。ちょっとおかしかったから」
「とにかく説明してよ」
 祐巳さんは不機嫌そうに話を促した。

「乃梨子から話を聞かなかったのかしら? まあ良いわ。私の視点で説明するとね。
乃梨子に祐巳さんを説得してもらおうとしたのよ。瞳子ちゃんにロザリオをもう
一回渡してほしかったから」
「……」
 黙っている祐巳さんの顔を見ながら話を続ける。
「でも、私だって何の見返りも無しに乃梨子にそんなことを頼むつもりは無かったわ。だから、
私の身体を好きにしても良いから、祐巳さんにお願いをしてって頼んだの」
 不思議なことに、ほんの少し前までは、あれほど口に出すのが恥ずかしかったはずの性的な話題も、
今ではあっさりと言うことができる。
 薔薇の館で破廉恥な自慰をすることによって、妙な度胸がついたのだろうか。

「でもね。乃梨子が性行為の最中に酷く私を責めるから…… とても辛くなって途中で拒絶してしまったの」
 物凄く話が省略されていると自分でも思うけれど、一々細かいところまでも説明し直すのは非常に面倒だ。
「そう…… それで、乃梨子ちゃんは逃げ出したんだね」
 祐巳さんが乃梨子の方を振り返って言うと、乃梨子は青ざめた顔をしながらも、反論をすることなく、
「はい。だいたいその通りです」
と、頷いた。
358名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 14:34:00 ID:au7b77Ke
支援
359名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 14:34:39 ID:tBDSOYVH
「祐巳さん。私からも聞きたいわ」
「何かな。志摩子さん」
 志摩子は、憂鬱そうな顔つきをしている祐巳さんを見つめながら尋ねる。
「瞳子ちゃんにロザリオを今一度渡すつもりはあるかしら?」
 しかし、祐巳さんは首を左右に振った。

「仕方ないわね……」
 志摩子はため息を一つついてから、ゆっくりと身体を震わせている乃梨子の傍まで近寄ってから、
胸元に手を伸ばす。
「乃梨子…… ロザリオを返してくれるかしら」

「し、志摩子さん?」
 乃梨子は大きく瞼を開いて、大きく一歩後ずさる。
「やっぱり形だけの姉妹なんて上手くいくはずは無いのよ」
 淡々とした口調で話しながら、震える乃梨子を追い詰めるために、再び距離を縮める。

「そ、それは……」
 乃梨子が口ごもりながら視線を逸らした。
 どうやら乃梨子はロザリオを返したくないようだ。
 この期に及んで、姉妹の証であるロザリオに未練を残しているなんて、意外としか言いようがない。

「志摩子さん。山百合会のために、姉妹関係を維持するんじゃなかったの?」
 動揺する乃梨子を助けようとしたのだろう。祐巳さんが口を挟んできた。
「ええ。そのつもりだったわ。でもね。祐巳さんは、瞳子ちゃんにあげたロザリオを
返して貰ってしまったから」
 志摩子の言葉に、祐巳さんは顔をこわばらせて、呻くように呟いた。
「まさか…… 瞳子に」
「そうよ」
 志摩子は左手を口にあてて小さく咳払いをしてから、あっさりと告げた。

「瞳子ちゃんを妹にするわ」
360名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 14:35:22 ID:tBDSOYVH
 空気が重く固まる。真正面にいた乃梨子は、明らかに真っ青になっている。
「し、志摩子さん……」
「どうしたの。乃梨子。顔色が優れないわね」
 嫌味な言葉がごく自然に出せたことに自分で驚く。
「仕方ないでしょう。祐巳さんと乃梨子は恋人同士なんだから、ふたりが姉妹になるのが自然だわ。
でもそれだと、せっかく先輩達が営々と築き上げた山百合会の歴史に拭い難い汚点を残すことに
なってしまう。だから、私が瞳子ちゃんを妹にするしかないわ」

 長々と語った志摩子を、苦々しい顔つきで眺めていた祐巳さんは吐き捨てるように呟いた。
「まるでお姉さまみたいな考え方をするのね」
「そうかしら」
「祥子さまも、別に好きでもない志摩子さんに、妹になるよう申し込んだじゃない」
 二年前の記憶がよみがえる。お手伝いとして薔薇の館に通っていたはずの期間が長引いて、
宙ぶらりんな立場になっていた志摩子に、小笠原祥子さまが妹にと申し込んだのだ。
 もっとも、そのすぐ後にお姉さまの長い手が志摩子を包み込んだのだけれど。

「そうかもしれないわ。でも、瞳子ちゃんは山百合会の人材としては得難い人材だわ。
野に放つわけにはいかない」
 松平瞳子ちゃんは、自分の本心を中々外に出さないこともあって、誤解されやすい
性格ではあるけれど、働き者であるとともに、几帳面で、周囲への気配りもできない子ではないから、
次期薔薇さまとしての資質は十分にあるはずだ。

「そう…… 志摩子さんは、乃梨子ちゃんのことはもう好きではないんだね」
「あら。意外なことをいうのね」
 少しだけ肩を落としながら、寂しそうに言う祐巳さんに、志摩子は思わず笑ってしまう。

「乃梨子が好きなのは、祐巳さんでしょう。祐巳さんにとっては、私が乃梨子を拘束しない方が
良いのではないかしら?」
「それは…… そうだけど」
 祐巳さんの表情は納得していないけれど、それも当然だろう。
 確かに、今でも志摩子は乃梨子のことが好きだ。
 乃梨子を奪った祐巳さんに対しては憤っているし、嫉妬もしている。
 でも、いつまでも自分の元から去った子を追いかけていても仕方がないではないか。

「乃梨子もそう思うでしょう」
 俯きながら黙って話を聞いていた乃梨子の顔を覗き込みながら、志摩子は尋ねた。
 しかし――

「志摩子さん…… どうして、そんなにあっさり割り切れるの」
 乃梨子は辛そうに顔を歪めながら、胸にしまっていた思いを振り絞るようにして声を出した。
361名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 14:36:17 ID:tBDSOYVH
「志摩子さん。おかしいよ。だって、志摩子さんのこと、私、大好きなんだよ。志摩子さんと妹に
なってずっと幸せだったんだよ。それなのに…… どうして、どうして?」
 乃梨子は涙目になりながら叫んでいるけれど、やはり自分勝手な感情だと言わざるを得ない。

「でも、乃梨子は祐巳さんを選んだわ。だから代償は払わなければいけない」
 志摩子はきっぱりと言った。リリアンでは姉妹関係は絶対だ。
 姉妹という絆を破って恋愛に奔った者には、それ相応の罰を与えなければならない。
 例え、志摩子が罰を与えなくても、リリアンという小さな閉鎖社会の総意が、
乃梨子と祐巳さんを罰するだろう。
 いくら祐巳さんに人気があったとしても、最終的には罰を逃れることはできない。

「分かった…… 志摩子さんにロザリオを返す。でも……」
 流石に乃梨子は頭の良い子だ。素早く自分の非を悟ることができる。
 そして…… それだけで終わらないところが彼女の真に素晴らしいところなのだ。

 愛すべき少女は顔をあげて、恐ろしい程に研ぎ澄まされた、挑むような表情を見せながら口を開いた。
「志摩子さん。今夜家に来て。薫子さんは今日も留守だから」
 大きく息を吸い込んでから、全ての感情を吐き出すようにして言う。

「家に来たら私を抱いて。そして愛して。中途半端なんて絶対に許さない。
それがロザリオを返す条件だよ」

 懸命に紡いだ乃梨子の言葉に対してすら、笑いそうになってしまったが、ここは必死で堪える。
 志摩子は、つい先刻、誰もいない薔薇の館でほとんど素っ裸になって、目の前にいる乃梨子を
おかずにしながら自慰にふけっていたのだ。
 今や乃梨子を抱くことに対して抵抗は消え去っている。むしろ、こちらから願いたいくらいだ。

 だから、志摩子は晴れ晴れとした気持ちで答えた。
「いいわ、乃梨子。抱いてあげる。夜が明けるまで寝かさないわ」

 言い終えてから、もう一方の主役である祐巳さんを見る。
 視線を向けられたことに気付いた祐巳さんは、少し呆れたような表情を見せながら肩をすくめてみせた。

「いいなー 私も混ざりたいなあ」
 とぼけた事をいう祐巳さんに、苦笑を浮かべながら志摩子は言った。
「祐巳さんはいつでも乃梨子を抱けるじゃない」
「うーん。でも志摩子さんともエッチしたいんだよねえ」
 のんびりとした口調でいう紅薔薇さまに志摩子は肩をすくめながら答えた。
「それは、また別の機会にしましょう」
362名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 14:38:18 ID:tBDSOYVH
「そうね。今日はやめとくわ」
 冗談なのか本気なのか。祐巳さんは笑いながら言うとくるりと背を向けた。
「乃梨子ちゃん、そろそろ帰ろうか」
「あ、はい。でも」
「志摩子さんとは後で落ちあってよ。家に帰るまでは私とつきあって」

 乃梨子は困ったように志摩子の顔をみるが、志摩子も祐巳さんの意向に逆らうつもりは無い。
「祐巳さんの言うとおりにしてあげて。私は6時に薫子さまの家にうかがうわ」
「分かった。また後でね。志摩子さん」
「ええ。気をつけて帰ってね。乃梨子」
「ごきげんよう。志摩子さん」
「ごきげんよう。祐巳さん」
 挨拶を交わした後、祐巳さんと乃梨子は開いた扉をくぐり――

「あっ、そうそう」
 半身を扉の外に出したところで、祐巳さんは振り返りながら告げる。
「新聞部の処分のことだけど」
「ええ」
「3カ月の部活動の停止と、責任者の退部でどうかな」

 祐巳さんの表情は、外から差し込む淡い光に溶け込んで良くわからない。
「もちろん、責任者といっても真美さんでも、高知日出美ちゃんでもないよ。実質的にかわら版発行を
主導した生徒達になるね」
「そうね…… 生徒のプライバシーを不当に暴き、憶測に基づいたスキャンダル記事を出した新聞部と、
記事の作成に関わった部員は罰せられるべきだわ」

 リリアン女学園の生徒達の権威である薔薇さまの中傷記事を出したからには、それ相応の報いと
罰を与える必要は絶対にある。

「黄薔薇さまにも諮って、来週中にも部長会議を開催するね」

 部活動の停止等に関する権限は、最終的には学園長と始めとする学校側に属するものだけれど、
今回のような微妙な問題では、生徒による自治という名目のもと、山百合会を率いる三薔薇の意向が
反映されることが多い。

 志摩子が頷いたのを確認すると、祐巳さんは軽く手を振りながら改めて「ごきげんよう」と言って、
扉をゆっくりと閉めた。
 暫く閉まったドアを見つめていた志摩子は、やがて身体の向きを変えて窓際までゆっくりと歩き、
ガラスに掌をあてて空を見上げる。
 ずっと降り続くかと思われた雨はいつのまにかやんでおり、灰色の雲の切れ間からは
夏の到来を思わせる、眩しい陽光が降り注いでいた。


(おしまい)
363名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 14:50:38 ID:tBDSOYVH
以上です。

読んでくれた方、ありがとうございました。
時間がやたらとかかってしまいましたが、まずは、完結できたことにほっとしています。

マリみてSSは星の数ほどあるけれども、祐巳×乃梨子のCPはやはりマイナーで、
特にエロについては極めて少なく、読みたければ自分で書くしかないと思ったのが、最初の動機でした。

至らぬ点は多々あるかと思いますが、ご容赦願えれば…… と思います。
最後に、スレの今後の発展を祈願いたします。



364名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 15:35:56 ID:RQo1gdJB
ええ、もう終わりっ!?続き書いてよお!

せめて志摩子×乃梨子の最後のエッチまで読みたい!!
ここで終わりって中途半端すぐる!

あと、一つ気になったけど乃梨子の大伯母は×薫子じゃなく○菫子ね。
×例え→譬え、縦え、仮令、たとえ

文句ばっか言って申し訳ありませんが、この半年大袈裟ですけど、この連載のみが楽しみで生きて来たので(笑)、終わっちゃうのつら杉れすぅ。
ふっきれた志摩子に責められイカされまくって潮噴いちゃう乃梨子とかみたいし、祐巳と乃梨子の(めちゃ暗い)その後がどうなるか、志摩子のその後も気になります。
あと聖にもまた絡んで欲しい。
瞳子の心理描写もないし。

某グインの作者は2chでボロクソ言われながらも鬼籍に入るまで引き伸ばして、とうとう未完に終わったくらいだし、
作者さんも終了宣言せずに思い出したら続けて下さい。


なにはともあれGJでした。

しかし、D2の過剰分泌で乃梨子の幻覚(幻聴、幻視)みて自慰する志摩子ってもろ統○失○症やね(ワラ
もともとこの娘、分裂病気質で境界性人格障害の傾向あるし、この事件を機に糖質の急性期に陥ってリリアン休学→精神病院の隔離病棟行きなのかしらw
糖質の薬って生理干上がったりぼーっとしたり悲惨だよ?w

志摩子がドンドン壊れて逝く展開きぼんぬ
365名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 19:09:26 ID:sfc1w7AI
おもしろかったよぉっ!!

ぐぐぐぐぐっじじじじじょ!!!
366名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 21:55:52 ID:fsuW/P5/
>>363
長期間に渡る連載お疲れさまでした。
とても楽しく、続きを待ち望みながら読んだSSは久しぶりで、素晴らしい作品に出会わせてくださった作者様に心から感謝しています。
ご自身が終了とされたものですから、何を言う資格もないのですが敢えて。
もし、またいつか続きを書いてみたくなった時はまたお願いします。この作品と再会出来る日が何年後であっても、必ず見つけて駆けつける覚悟です。
本当に、本当にお疲れさまでした。GJ!
367名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 22:57:58 ID:RND7O25k
GJ
また書いて下さいね!
368名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 20:00:56 ID:wkEjsZmB
今回はおもっきり、言い訳というか自分語り的レスなので、そーゆーのが駄目な方は華麗にすっとばしてください。


―――――

>>364
なんというか…… ごめんとしか。
ぶったぎりだなーとは思ったけれど、長編を途中で投げっぱなしにする悪い癖が自分にはあるので
最近の長編は、10話程度で強制的に終了させています。
また、延々とスレを占領するのもアレだし、だいぶ話に嵌りこんでいたので私生活に悪影響が出そうだったし、
他の話も書いてみたいし…… 等々の理由もあります。
なので、気が向いたら続きを書くこともあろうかと思います。

そして、あらためて…… レス頂けた方々、ありがとうございます。とても嬉しいですし、感謝しています。


369名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 23:47:23 ID:8TWEE5+K
お疲れ様。次回作にも期待!
370名無しさん@ピンキー:2010/03/25(木) 14:40:43 ID:rLpvZX9x
GJ 原作知りませんが志摩子さんに惚れそうです。現実が大変そうですが、いつかまた機会があれば何か読みたいです。お疲れさまでした
371名無しさん@ピンキー:2010/03/25(木) 22:02:32 ID:1OQmrLbD
以下、もれもチラ裏。スルーよろ。





>>368
ええ、駄目ですよぉ私生活に影響だしちゃ。
gjってシャブみたいなものだから、ハマるとヤバいですよ。

自分も私生活よりこっちにハマって、大学も行かず「ネトゲ廃人」ならぬ「職人廃人」になった黒歴史があるんで、よく分かります。
乃梨祐巳作者さんはそこまで深刻に中毒じゃないと思いますが、、

ここって建前「職人はネタ、読み手は質に見合ったgjの等価交換」ですが、
実態はすこし気に食わなかったり粘着がわいたりすると、厨がよってたかって作者に好きなこと書き放題のアングラ闇市場です。
原稿料もらってるプロならともかく、社会生活を大事にして下さい。

正直続き読みたかったのですが、去るも自由、また戻って来るも自由です。
乙かれさまでした。


最後にたぶん個人サイト持ってる方だろうから、捨てアドさらしときます。
よければ他の作品も読ませて下さい。(別に粘着しませんw)

お元気で。


[email protected]
372名無しさん@ピンキー:2010/03/25(木) 22:12:26 ID:1OQmrLbD
あ、つづり間違えた。orz
×s
○c

です。SPAM対策になるしこれでいいか。
前の部分は英語で「強化」です。


他の職人さんもドンドン投下きぼん(^^)
373名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 04:20:09 ID:ArvG2nvI
こっちの世話になるかもなあ
374名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 00:42:27 ID:GN6lZz17
投下したいけど、ずっと規制orz
もう2ch自体だめぽ
375名無しさん@ピンキー:2010/03/31(水) 23:13:35 ID:QWkQN2T4
携帯とかで投下したらどうだ?
まあ面倒だろうけど
376名無しさん@ピンキー:2010/04/01(木) 06:15:34 ID:gDy0a7SH
たしかエロパロ板の避難所にレス代行スレがあった気がする
377名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 07:38:49 ID:NN+Hy37R
保守
378名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 23:47:12 ID:f5ibeaG1
ほしゅ
379名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 20:12:01 ID:5/XVe3G/
まだ規制されてるよ、正直うんざり。
380名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 21:18:45 ID:THFxl3D6
381 ◆X2Xu2CQeCk :2010/05/09(日) 21:30:41 ID:5/XVe3G/
thx。仕方ないから、保管庫のろだにうpした。

ttp://u3.getuploader.com/eroparo/download/25/%E3%83%AD%E3%82%B6%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%82%92%E3%80%81%E7%89%87%E6%89%8B%E3%81%AB%E5%B7%BB%E3%81%84%E3%81%A6%E2%80%95%E2%80%95.txt
PW;志摩子キルビルw

誰か規制されてない方ここに転載してくださっても構いません。
内容はマリみてグロ鬼畜ものです。
あんま残虐描写ないですが、原作のイメージを大切にされてる方は注意してください。
382失敗:2010/05/09(日) 21:41:05 ID:5/XVe3G/
383名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 23:16:58 ID:THFxl3D6
>>382
超乙、ロザリオぱねえっすwww
384名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 21:42:13 ID:Jl4fTEUi
>>381
乙です。
相変わらず、清々しい程に救いが全くないないね。
385 ◆5xcwYYpqtk :2010/05/11(火) 23:20:32 ID:Jl4fTEUi
規制解除記念

祐巳×乃梨子 「幕間狂言」

――――

 薔薇の館の扉をあけると、福沢祐巳さま―― 現紅薔薇さまが椅子に座って、
ティーカップに口をつけていた。

「ごきげんよう。祐巳さま」
「ごきげんよう。乃梨子ちゃん」
 祐巳さまは、乃梨子の姿をみとめると笑顔をみせながら尋ねてくる。
「乃梨子ちゃんは紅茶、飲む? ちょっと冷めちゃったけれどね」
「あっ、すみません」
「いいからいいから」
 手伝おうとした乃梨子を手で制してから、祐巳さまは台所からカップを持ってきてお湯を注いだ。
 水が陶磁器を弾く心地よい音とともに、琥珀色をした液体の表面から、湯気が一筋、
ゆるゆると立ち昇ってくる。

「いただきます」
 お礼を言ってから唇をカップにつける。
 しかし――

 甘い。いや、甘すぎる。

「…… 祐巳さま」
「なにかな? 乃梨子ちゃん」
 テーブルの真正面で両肘をつきながら、愉しそうな顔つきをした上級生をねめつける。
「これ、凄く甘いですよ」
「そうお?」
 しかし、祐巳さまは含み笑いを浮かべながら、わざとらしく肩をすくめるだけだ。

「あのですね…… どれだけたくさん砂糖、入れたのですか?」
 底に溶けきれなかった粒子が、かなりの量、沈殿している。

「角砂糖4つ分だね」
 いくらなんでも入れ過ぎだ。
 ペロリと舌を小さく出す祐巳さまは、年上とは思えない可愛さでどきりとするけれど、
それとこれとは話が別である。
386名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 23:21:02 ID:Jl4fTEUi
「どうしてこんなに甘くしちゃったんです?」

 祐巳さまがいくら甘党だからって、こんな甘いものを日頃から摂取していたらまずいだろう。
カロリーとか、糖尿病とか、それはもういろいろと。
「ごめんごめん。でもいくらなんでも、普段はそんなに入れないよ」
「本当ですか?」
 乃梨子は、のほほんとした表情で話す紅薔薇さまに疑わしそうな視線を投げかける。

「本当だよ。今日は特別だからね。うん」
「はあ」
 ひとりで何かを納得した祐巳さまは立ち上がり、乃梨子の脇に回りこんだ。

「のーりこちゃん」
 甘えたような声を出してから、乃梨子の肩にゆっくりと手をのせる。
「キス…… していいよね」
 疑問じゃなくて、やっぱり確認だ。
 駄目といったらどんな顔をするのだろうか? なんて考えが浮かぶけれど、すぐに消去する。
 祐巳さまと、薔薇の館で二人きりになった時は、必ずキスをするようになっているのだ。

 乃梨子が首を縦に振るとすぐに、前かがみの姿勢になった祐巳さまの顔が迫って、
拍子抜けするほどあっさりと唇が触れた。
387名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 23:21:51 ID:Jl4fTEUi
「んっ」
 二つの唇が擦れて、小さな吐息が漏れる。

「んっ…… んくっ」
 暫くしてから唇の間を割って舌が挿しこまれる。
「ん…… くぅ」
 祐巳様の舌端が絡みつき、唇の隙間から小さな喘ぎ声が再び漏れる。
「くぅ、んんっ、ん」
 祐巳さまは、ゆっくりと乃梨子の舌の感触を堪能しながら、首の後ろに手をまわしてくる。
「あ…… んんっ、ふうん」
 乃梨子もより深いキスができるように、腰を少しだけ浮かして、セーラーの下あたりに手を回す。
「ん、んんっ」
 小さな嬌声を何度も漏らしながら、年上の少女の身体をぎゅっと抱きしめると、仄かなぬくもりと、
ぬいぐるみのような柔らかい感触が伝わってくる。

「ん…… んんっ」
 祐巳さまは、くぐもった声をあげて、更に奥へと舌を挿し入れてきた。
「んくっ、んむぅ」
「ふっ、あむっ、んんっ」
 えづく度に透明な唾液がわき出て、唇の端から漏れる。
 怜悧なはずの脳みそがとろけ、何も考えられなくなってしまう。

「ぷっ、ぷはあっ」
 時計の秒針が5回程駈け回った後、祐巳さまはようやく身体を離してくれた。
「く、くるしいですよ」
 荒い呼吸を繰り返す乃梨子を見つめながら、紅薔薇さまは小春日和のような
微笑みを浮かべて尋ねた。
388名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 23:23:29 ID:Jl4fTEUi
「どうだった?」
「どうって、何がですか?」

「だからね。キス、甘かった?」
 ようやく言葉の意味が分かって、反射的に口元を掌で拭う。
「砂糖の味なんて、全部吹っ飛んじゃいましたよ」
 乃梨子はため息をつくと同時に、両肩をすくめてみせた。

「あらら、残念…… でもね。昔の貴婦人は、殿方との口づけの前に飴玉を仕込んでいたんだって」
「そうですか」
 舌の先でほっぺたの内側を舐めると、ほんの少しだけ甘いような気がしないでもない。
 しかし――

「祐巳さまのキスは甘いと言うよりも、激しいですね」
 温厚で人畜無害そうな外見からは、とても想像できない程に情熱的だ。

「ふふ。今日は眠れないね。乃梨子ちゃん」
「うっ」
 乃梨子は顔を赤らめ、あからさまにうろたえた。
 祐巳さまとキスをした日の夜は、気持ちが昂り、どうしても我慢できなくて、
布団の中で一人エッチをしてしまうのだ。

 悔しいけれど、おそらく今夜も……

「祐巳さまのせいですよ」
 憤然として、満足そうな顔つきをしている紅薔薇さまを睨みつける。
「えっと、何が?」
「祐巳さまのせいで、私は、その」
 流石に、言葉に出すのはとんでもなく恥ずかしい。
「いや、なんでもない…… です」
 乃梨子は押し黙った。

 しかし、祐巳さまは全校生徒を統べる紅薔薇さまだ。
 そう簡単には見逃してくれるわけがない。

「ふーん。何を隠しているのかなあ」
 ゆらりと近付き、ワキワキと両手を伸ばしてくる。
「言いません、や、やめてくだ…… ははっ、ふははっ」
 両脇をくすぐられて、身体をよじりながらもがく。
「おねがいしま…… ふはははっ、ゆみ……さ、あははっ」
 涙目になりながら逃れようとするけれど、意外に力が強くて離れることができない。
「駄目っ、んふふっ、駄目ですっ、ふははっ」
389名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 23:24:10 ID:Jl4fTEUi
 散々にくすぐってから手の動きをとめた祐巳さまは、至近距離から命令する。

「言いなさい」

「わ、分かりましたぁ」
 乃梨子が情けない声を出して頷くと、祐巳さまはようやく手をひっこめてから微笑む。
「うんうん。やっぱり乃梨子ちゃんは素直で頭が良いね」
「褒められても、全く嬉しくありません」
 毒づきながらも、白状するしかない。
「祐巳さまのせいで、私は…… 」
「私は?」

「一人エッチを、家でする羽目になるんです」

 言ってしまった。
 あまりにも恥ずかしすぎて祐巳さまの顔をまともに見ることができない。
 マリアナ海溝の底にでもうずくまって、『の』の字を書きたい気分だ。

「ごめんね。乃梨子ちゃん」
 しかし、一転して、祐巳さまは乃梨子を優しく抱きしめた。
「ゆ、ゆみさま…… 」
「私、乃梨子ちゃんの気持ちに全然応えていなかった」
 いつの間にか、真剣な顔つきと口調に変わっている。

「い、いえ」
「乃梨子ちゃん。今日、家に来て」
「ゆ、祐巳さま」
 呆然とする乃梨子の掌を両手で包み込むように握ってから、耳元で囁く。

「一人でするよりふたりの方が良いよね」

 まったく、祐巳さまは。
 ほんとに、もう、このひとは――

 どうしてこんなに大事なことをあっさりと言ってしまえるのだろう。


(おしまい)
390名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 23:26:49 ID:Jl4fTEUi
以上です。
このところずっと、一旦解除されても、すぐに規制されてしまいますね。
391名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 05:52:01 ID:0zjAF3K4
GJ
めげずに頑張ってください!
392名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 16:17:56 ID:1FpoEe5a
>>381
規制の中わざわざ乙
ぱっと見やくざの抗争の話かと思った

>>390
キスだけでこれだけ雰囲気だせるのはさすが!

お二方共GJでした
393名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 04:27:22 ID:YmZxHiYv
うわ、来てるー!!
祐巳さま(*´д`*)ハァハァ
>>381もグッジョ!!

ほんと最近規制が酷いけどお二人ともめげずに頑張って!!
394名無しさん@ピンキー:2010/05/15(土) 08:33:26 ID:6tISw5dG
>>381
携帯からじゃファイル未対応で読めない……orz
>>390
当然続くんだよねっ?ねっ!!
395 ◆5xcwYYpqtk :2010/05/24(月) 00:21:11 ID:FFS9uDQi
祐巳×乃梨子+全般

「Another Parasol」

――――

「今日も雨か…… 」
 乃梨子はひとりごちながら、薔薇の館に向かうために校舎を出て、黒い傘を開いた。
 既に五番目の小さな季節と呼ばれる梅雨に入っているので仕方がないことではあるのだが、
やはりいくぶんかは憂鬱になる。
 朝からずっと降り注いている雨粒に包まれながらも、己の存在を主張している紫陽花を
ぼんやりとながめながら、校門へと続く道を歩いていると、下校を急いだり部活動に向かう
生徒が開いている色とりどりの傘が視界に入ってくる。
 もっとも乃梨子自身も、傘をさして歩いているので、後ろの生徒から見れば、梅雨の季節にありふれた
景色の一部分になっているのだろう。

 志摩子さんは、もう着いているかな。

 薔薇の館に向かって歩みを進めながら、正式の姉妹の契りを結んだばかりの、お姉さまの顔を思い浮かべる。
 乃梨子は今年の春、第一志望校の受験に不戦敗という大失敗をやらかして、やむなくリリアンの
門をくぐったのだが、入学後間もなく姉妹制度のことを知らされた時は、誰かの妹になるなんて
想像することもできなかった。

 ところが、3か月もしないうちに、しっかりと染め上げられているというか、あろうことに
生徒会長の『妹』になっているのだから、本当に慣れというものは恐ろしいものである。

 まあ、志摩子さんだから仕方ないよね。

 乃梨子のお姉さまである志摩子さんは、超がつく程の美少女なのだけれど、ふわふわとしたどこか
危うげな部分があって、一学年上にも関わらず保護欲をそそるような存在だ。
 乃梨子と志摩子さんとの関係は、新入生歓迎会でのゴタゴタなどがあって、経過は決して順調とは
いかなかったのだけれど、この度、めでたくロザリオの授受という姉妹の契りを結ぶことができたので、
個人的には幸せと言って良いだろう。

 しかしながら、リリアンの生徒会こと山百合会については、乃梨子が薔薇の館で仕事をするように
なってからずっと、暗雲が低くたこめている状態だ。
 紅薔薇さまである小笠原祥子さまと、妹の福沢祐巳さまの関係が急激にこじれているのだ。

 そのせいなのかは分からないが、紅薔薇さまは休むことが多く、妹の福沢祐巳さまも昨日は
姿を見せていない。
 祐巳さまは、美人揃いの山百合会の中にあっては平凡な顔立ちであり、当初からあまり目立たない
ひとだったが、ここ最近は特に沈んだ表情をみせることが多く、同僚かつ親友である志摩子さんは、
祐巳さまのことをかなり心配している。
 一方、乃梨子は新参者でもあるし、上級生である紅薔薇姉妹の仲違いにまで口を挟む資格もないので、
事態の推移を眺めることしかできなかったのだが……
396名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 00:22:26 ID:FFS9uDQi
 鉛色の空から落ちる雨粒をさしている傘で弾きながら、乃梨子は校門近くまで歩き、
薔薇の館へと続く細い道に折れようとした時、背後から人が迫る音が急激に迫ってきた。

 誰?

 不審に思って振り返った途端、その人は大きな水たまりに足をとられて、地面に
前から突っ込むようにして派手に転んでしまう。

「祐巳さま!?」
 水たまりにもろにダイブする形になってしまった生徒が見知った人であったこともあり、
乃梨子はすぐに駈けより、抱え込むようにして助け起こす。

 ずぶぬれになった祐巳さまを立ち上がらせてから、乃梨子は全身をすばやく眺め、
どうやら怪我はなさそうで、少し安堵する。
 しかし、祐巳さまは濡れた制服と目の前にいる下級生の顔を交互に眺めると、瞬く間に涙を溢れさせて、
乃梨子の胸に飛び込んできた。

「うわああああああ」

 乃梨子は、すがりつくように抱きついて、大声で泣きじゃくる上級生に驚きながらも、
なんとか持ち前の冷静さを保って尋ねる。
「一体、何があったのです?」
 乃梨子は片手で傘を持ちながら、ほとんど同じ身長をした生徒に抱きつかれているという、
窮屈な姿勢のまま返事を待つが、祐巳さまは小鳥のように両肩を震わせながら涙を流すばかりだ。

 それにしても女子高というところでは、こんなドラマチックなシーンに日常茶飯事に
遭遇するのだろうか。
 改めて乃梨子は、リリアンという浮世離れした場所に対して、畏怖と空恐ろしさを感じながら、
いささか現実逃避気味の思考を巡らせ始めた時、黒髪を長くのばした上級生が近付いて、
声をかけてきた。
397名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 00:23:15 ID:FFS9uDQi
「祐巳…… 」
 紅薔薇さまこと小笠原祥子さまだ。
 どことなくおっとりとした志摩子さんとは全く違うタイプだが、こちらもずば抜けた美少女であり、
かつ、小笠原グループ会長の孫娘という正真正銘のお嬢さまである。

「あの、祐巳さま。紅薔薇さまが……」
 乃梨子は困惑した顔のまま、嗚咽を漏らしている祐巳さまに声をかける。
 しかし、祐巳さまは乃梨子の胸元に顔をうずめたまま、イヤイヤと二つのテールを左右に振るばかりで
背後で佇む紅薔薇さまの顔を決して見ようとしない。

 しばらく祐巳さまを見つめていた紅薔薇さまは、小さくため息をつくと鞄を乃梨子に差し出した。
「ごめんなさい、乃梨子ちゃん。祐巳をお願いね」
「紅薔薇さま?」
 戸惑いながらも、反射的に手を伸ばして祐巳さまの鞄を受け取るが、紅薔薇さまは心ここにあらずと
いった様子で、あっさりと背中を向けて歩み去ってしまう。

 紅薔薇さまの姿が見えなくなってからも、乃梨子の胸の中で泣き続けて祐巳さまだったが、
自動車のエンジン音が聞こえた途端、急に乃梨子から離れて、よろめくように校門の外に向かって駈けだした。

「お姉さま!」

 祐巳さまはちょうど校門から出るあたりで立ちどまり、校門を横切る道路を通り過ぎる
高級車と思われる黒塗りの車に向かって、掌を握り締めながら大声で叫んだ。
 遠ざかり始めた車に向けて目をこらすと、紅薔薇さまの後ろ姿と、特徴的な縦ロールの髪型をした
少女の姿を認めることができる。

「お姉さま!」
 祐巳さまは再び叫ぶ。
 しかし、紅薔薇さまを乗せた車は、祐巳さまの悲痛そのものの声に気づくことはなく、
水しぶきをあげながら、無情にも遠ざかっていく。
「おねえ…… さま」
 水煙の向こうに車が完全に消え去った時、祐巳さまは双眸に絶望の色を浮かべ、膝から崩れるようにして
濡れた地面にむかって再び倒れこんだ。

 いよいよ強く降り続ける雨に生まれた無数の水たまりは、街灯の光を反射してどこか
幻想的な煌きを放っている。
 衝撃的なシーンの連続で半ば思考停止状態となった乃梨子は、雨に濡れた地面に両手をついてうなだれている
少女の背中を、ただ見つめることしかできなかった。
398名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 00:25:19 ID:FFS9uDQi
続きます。

レイニーIFものは前から書きたかったので。
更新はかなり遅めになりますが、のんびりと待って頂ければと思います。
399名無しさん@ピンキー:2010/05/24(月) 00:42:13 ID:4tBsf8ZW
うひゃーktkrktkr!ヽ(^▽^)ノ
続きを楽しみに待ってます!
400名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 01:03:56 ID:WjC+poeX
これは期待です。
レイニーか、なつかしいな…

やはり乃梨子が傷心の祐巳たんを…なのかな
祐乃名手のストーリーテリングに期待。
401 ◆7VwruS0Rhg :2010/05/25(火) 21:37:13 ID:WjC+poeX
おいらも負けちゃられない。
相変わらず規制なのでうpろだに上げときます。

PW:rozoblanka

http://u3.getuploader.com/eroparo/download/31/La+mortant+rozo+blanka+kion+la+belaj+knabinaj+fratinoj+amis++tre+antauxe..txt

相変わらず白薔薇凌辱鬼畜ものなのでご注意。
今回はあまりハードな描写はありませんが。

402名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 13:25:55 ID:arscrE9S
>401
描写は確かに抑え目だけど、ある意味これまでで一番胸に突き刺さったよ、GJ。
403名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 20:29:55 ID:zJFf+agP
>>401
GJ!
相変わらずの救われない展開と結末だったけれど、描写は作者さんのおっしゃる通り、
かなり抑えられていたと思う。
あと、ちょっと展開を急ぎすぎて面食らった部分もあったけれど、
最後の悲劇的なシーンはとても美しかった。
次回作も楽しみに待っています。
404名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 20:22:34 ID:C5rnM7xd
ギガンティアがキネンシスに(;ω;)
405名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 00:06:41 ID:oz6OrTJL
そろそろ完走するけど、次スレは立てずに移動でいいよね
スレの立った経緯を見ると(>>1-6,>>54-57)荒らしが立てたそうだし
重複してるのを完走させたわけだから

住み分け云々言う人がいるかもだけど、そうすると今投下の主体になってる
マリみてはここじゃなく「専用スレのないSS」スレにすべきなんだろうし、
つかこんだけ供給があるならマリみてで単独スレを立ててもいいような気がすんだけど、
立てたらまずいんか?議論するんであれば「エロパロ板自治スレッド11」へ
(この残量で議論し始めたら終わらないかもしれないので念のため貼っておく)
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1238791725/l50

次スレ
スレに投下し辛い/迷うSS【元・追い出され3】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242308022/

【うpろだ】専用スレのないSS その2【代わり】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1240477403/l50
406名無しさん@ピンキー:2010/05/28(金) 07:39:27 ID:Y0m3Ot8a
>>405
新スレを立てるかどうかはお任せだが、追い出されで書く気はないよん。
407名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 01:03:03 ID:Yjp1ZeV2
どこでも良いが、祐巳乃梨神さんが、投下しやすい場所を用意すべきだ。
408名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 05:21:08 ID:z7qc1Fsy
だね。レイニーの連載始まったばかりだし。
祐乃神のみならず、鬼畜陵辱神さんにとっても執筆しやすい形の新スレを用意したいところだけど――
PCの方がまた規制という……orz
409名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 05:55:09 ID:z7qc1Fsy
携帯では立たないと思っていたのに、案外あっさりと立ってしまってビビった。
いちおう貼っとく。

専用スレに投下できないSS 2
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1275079758/
410名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 20:38:39 ID:La+i37KK
レス数がまだ400ちょっとで、残り40KBか。
さて、どうやって埋めようかね。
411名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 21:14:30 ID:idGU6tS2
>>382>>401あたりをスレに書き写しさせて頂けば、ちょうどいい感じで埋まるのではないだろうか?

時間ができたらやろうと思う。
412名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 22:24:00 ID:La+i37KK
>>411
かなりハードものなんで、御本人さんの意向を確認してからの方が良いかも。
413名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 22:57:28 ID:C2m7faFu
おいおい、作者の判断でロダに上げたものを書き写すとか
マジでやめてくれ。
414名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 23:08:37 ID:idGU6tS2
そ、そうか、すまん。
一応>>381のレスを踏まえての判断だったのだが……。
とりあえず、作者様のお返事を待つことにするお。
415名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 22:32:17 ID:0IsYHIwh
ID:DQ3氏の埋め立てネタまだー?(AA略

思えば、後紅薔薇ネタ書く職人さんがくれば三薔薇備わるな。
つーわけで、キネンシスネタ頼むわw
416埋め立てネタ:2010/06/04(金) 00:21:28 ID:gKGQjZWh
紅薔薇どころかマリみてですらないけれど、今用意できるのがこれぐらいしかないもので――。

まあ埋め立て目的ということで、仕方ないね、という容認の心で諦めてください。

 光溢れる昼下がり。
 アパートの窓から吹き込む風は、郁子と二人きりで過ごす休日にふさわしいあでやかさを孕み、裸の肌をくすぐるように撫ぜて通り過ぎる。
 何かが起こるような期待でそわそわと落ち着かないような春はすでに終わりかけ、
梅雨に入るまでの短い間、ぼく達はこの、輝かしい初夏の空気に包まれて愛し合うことが可能となる訳だ。

 午睡を誘うような微睡みの風を肩に受けながら、ぼくはベッドに肘枕で寝転がり、
全裸のままで立ち働く郁子の、薄く骨の浮いた背中や、豊穣な曲線を描き出す豊かな
ヒップに眼をくれていた。
 起きぬけの戯れに興じた後、散らかりっ放しのぼくの部屋が気になった郁子は、
ベッドから降りて片づけを始めていたのだった。
 雑多な書籍や雑誌類を大まかに分類してまとめてから、クローゼットを開いて、中にこしらえてある整理棚に押し込めてしまおうとしている。

「全く……こんなしょーもない本なんか全部捨てちゃえば、もっと片付くのに。
ここの、ダンボールに入れてるやつなんかもう二度と読まないんじゃないの?
――って、あら?」

 奥の段ボール箱を開けて覗いた郁子は何かを見つけたらしく、こっちを振り向いて
ぼくを呼んだ。
「守、守ちょっと、こっちに来て!」
 フルチンもなんなので、とりあえずはバスローブを着込み、眼鏡もかけてから、
のろのろ起きあがってクローゼットの方に行くと、郁子は、奥からと発見したと思しき段ボール箱を開けて、ぼくに見せた。
「ちょっと守――これはいったい何なのよ?」

 段ボール箱に入っていたのは、へら鞭、蝋燭、麻縄など――いわゆる、SMのプレ
イ用グッズの数々であった。
「ああ、これか。懐かしいな」
 これは数年前、高校時代の友人達と一緒に自主制作映画を撮った際、その小道具として用意したものだった。
 映画の撮影が終わった後、いったんぼくが預かって、そのまま時の過ぎ行くままに
忘れ去っていたものだ。
 懐かしい青春の一頁に想いを馳せ、頬をほころばせているぼくの隣で、郁子は微かに蒼ざめていた。

「懐かしいって……そんな、当たり前のことみたいに。
あんたって、そういう趣味の人だったの?
私と付き合う前の彼女とかと、その手のプレイを……?」
「いいや。今までそんなことはしたことないよ」
「嘘! したことないなら、どうしてこんなもんがここにあるのよ!?」
 すでに郁子は、ぼくがSM愛好者であると思い込んでしまったようだった。
 彼女がそう思い込んでしまったのなら、その誤解を解くのは容易ではない。
 ぼくは――彼女の誤解を解くことを、あえて諦めることにした。
 何しろ貴重な休日なのだ。
 そんな無益な虚しいことに労力を割くくらいなら、むしろこの状況を利用して、
もっと有意義かつ、愉しいことをした方が、ずっといい。

「OK。お前がそう思うんだったら、それでもいいよ。おれはSMが好きな男だ。
昔の彼女ともそんなプレイをたくさんしてきた。どう? こう言ったら満足?」
「満足なんて……あ、呆れるよ!
あんたって、本好きな大人しい、無害な男の子だとばっかり思ってたのに。
そんな趣味を隠してたなんてさ。私とは、普通にしかしてなかったし……」
「だって、お前に言ったってやらせてくれないだろ? そんな変態チックなこと」
「そんなの! 何で確かめもせずに決めつけるのよ!」
「だったら、やらせてくれるのか?」
417埋め立てネタ:2010/06/04(金) 00:23:43 ID:gKGQjZWh
 じっと眼を見つめて問うと、郁子の瞳は、困惑の色を湛えて揺らいだ。
 「だって、でも」とか、「いきなりそんなの」とか、口の中でもごもごと呟いている。

「ほらね。やっぱり駄目なんじゃん」
 ぼくは、大仰に肩をすくめて見せた。
「いいよいいよ、無理しないでもさ。お前って健全そのものの女の子だから、そういったマイノリティーな性癖を理解できないんだってこと、最初から判ってたんだ。
いいんだ。おれ、おれの中にある衝動は、他の手段で昇華させるから」
「他の手段って……何なのよ?」
 その問いには答えず、ぼくはダンボールの蓋をゆっくりと閉め、箱を、クローゼットの奥へと押しやる振りをした。
 消沈した気持ちを、背中に滲ませながら……。

「わ……判ったわよ! もう、ほんっとしょうがないったら……!
やらせてあげる! やらせてあげるから!」

 郁子の陥落は、呆気ないものだった。
 そもそもが短絡思考の彼女は、物事を深く悩むということができず、だいたいいつでもこんな調子で、ぼくの要求する数々の無理難題をあっさりと飲んでしまうのが常だった。
 全く、駆け引きもへったくれもない。
 別に、SMなどという得体の知れない行為に関心があるじゃなし、避けたい気持ち
でいっぱいだろうに、ぼくが他の女で、その得体の知れない衝動を「昇華」させやしないかとの気掛かり一心で、身を苛まれる恐怖心さえ押し殺してしまうのだから、恐れ入る。

 すっかり観念しきった様子の郁子は、不貞腐れたような仏頂面でベッドに身を投げ出すと、何も言わずにぼくの顔を見た。
 初めての夜の時のように、かちこちに強張っている郁子を見やり、ぼくは苦笑いをした。

「心配しないで大丈夫だよ、郁子。お前に、痛いことや汚いことをさせたりしないから」
「だけど、SMでしょお?」
 全裸の郁子は、ぶすっと頬を膨らませて反発する。
「鞭でぶっ叩いたり、浣腸してウンチさせたりするもんなんじゃないの? SMって。どうあがいても、痛いかばっちいかになるじゃない」
「いやいや、そんなことはないよ」
 ぼくにはすでに、いいアイデアが浮かんでいた。

「郁子、こっちに来て」
 ぼくは、段ボール箱の片隅からある物を取りあげ、郁子を呼んだ。
 郁子は、ぼくの手にした物を見て、顔をしかめる。
「守、それって……」
 ぼくが持っていたのは、赤い麻縄だった。
 ソフトな手触りのしなやかなそれは、まるでファッション小物の類のようにも見える。
 女の柔肌に絡みつければ、さぞかし映えることだろう。

 縄などによる緊縛プレイというのは、SMの基本として、鞭打ちなんかと同様に、
ポピュラーなものの一つに挙げられると思う。
 荒縄できつく締めあげたりするんでなければ、パートナーの躰にもさほど負担をかけないし、ぼくらのようなSM初心者にも入りやすい、ということも、大きな利点だ。
 苦痛や危険が少なくて、しかも視覚効果は抜群。これをやらない手はないのだ。

「はあ……そんなので縛るだけでいいの?
ま、いいけど。でもさ、腕とか足とかには、痕がつかないようにしてよね。
そろそろ薄着の季節なんだから」
「任せとけって」
 諦め顔で注文をつける郁子に対し、自信満々でぼくは答える。

「それじゃ、とりあえずは亀甲縛りでいくか」
418埋め立てネタ:2010/06/04(金) 00:26:37 ID:gKGQjZWh
 束ねてあった麻縄を伸ばし、ぼくは直立する郁子の姿を眺めた。
 こうして、ただすっと立っている郁子の裸体をまじまじと見るのは、これが初めてかも知れない。
 短めの髪がよく似合う、中肉中背の健康的な肢体。
 首筋から、肩にかけての華奢なラインと、すんなり伸びた手脚。
 お椀を伏せたように真ん丸な乳房は、大き過ぎず小さ過ぎず、ちょうど手の平に納まりのいい大きさ。
 そして――乳房を乗せた細身の胴体、腰のくびれから下に目線を落とせば、郁子の最も大きな特徴の一つであり、
その魅力の最たるものであるともいえる、豊穣な腰周りへと行き着くのであった。

「何じろじろ見てんのよぉ」
 ぼくの目線が下半身に留まっていることに気づき、郁子は恥毛を手で隠す。
「いや……綺麗だなって、見とれてたんだよ」
「ふん、どうだか」
 郁子は、ぷいっとそっぽを向く。その郁子の首に、ぼくは縄をかけた。
 首にさげた二股の縄を前で合わせ、結び目を作ってゆく。
 まずは乳房の谷間に。
 次いでみぞおち、下腹の辺り、さらには、性器に当たる場所にも――
長さを測り、クリトリスに当たるよう調整しながらだったので、これにはかなり苦労した。
「こんな風に結んで、何になるの?」
「今に判る」

 不思議そうに尋ねる郁子に曖昧な返事をしつつ、縄を股にくぐらせ、お尻の穴の上、そして、お尻にある二つの窪みの、ちょっと上辺りにも結び目を作った処で、
縄の両端を左右に分けて、腰に廻す。そのまま正面に持ってきて、みぞおちと下腹の結び目によって出来た輪にそれぞれ通した。
 通した縄を背中で交叉させてから、今度はさっきの輪の一つ上の輪に通し、それをまた後ろに廻す、というのを繰り返していく内に、
郁子の肢体は縄化粧によってどんどん彩られ、なんとも妖しげな雰囲気を醸すようになる。

「郁子、どう? きつい場所はある?」
「いや、ないけど……それより守? あんた……何でこんなやり方知ってるの……?」
「雑誌で見て覚えた」
 どんな雑誌だったか、ということには言及せずに、縄で乳房を上下から挟み込み、
最後に、後ろの縄を肩から廻して持ってきて、乳房の上の縄に引っかけ、また背面に戻し、背中で交叉した縄の下に入れ込んで、腰の辺りで縛って留めた。
「さあ、完成したぞ」

 我ながら、なかなか上手いこと縛れたものだと思う。
 ぴっちりと縄に縛められ、きゅっと絞られたように突き出ている乳房を眺め、ぼくは満足して頷いた。
 郁子はといえば、ぽかんとした顔で、縄の張り巡らされた己の躰を見おろしている。
 縄を指で引っ張ったり、結び目のごろごろした部分を弄くったりと、落ち着きがない。

「どんな感じだ? 郁子」
「うーん……」
 神妙な顔つきで、郁子は考え込む。
「ちょっと、窮屈な感じ……かな? でも別に、それだけっていうか」
「そうか」
「うん。どうってことないよ。見た目は物凄いことになってるけどね。
縛られてはいるけど、躰は自由に動かせるし」
 郁子は、ぼくの前で両手を軽くあげてみせる。そして、腰をくいっと捻った。
 すると――。

「あ……?」
「どうしたんだ、郁子?」
419埋め立てネタ:2010/06/04(金) 00:28:14 ID:gKGQjZWh
 何かに驚いた声を出す郁子に、ぼくは尋ねた。郁子は、困り顔でぼくを見る。
「結び目が、変なとこに当たる」

 腰を動かしたことで、クリトリスか肛門か、あるいは両方か――
とにかく、そこいらに食い込んだ結び目に、刺激されたらしかった。
 当然のことだ。そういう風に縛ったんだから。
「別に、痛くはないんだろ?」
「うん、でも……」
「まあ、つっ立ってるのもなんだからさ、ひとまずあっちに行こうぜ」
 ぼくは郁子をベッドに促す。
 歩き出すと、郁子は今度こそ、あからさまに縄目に反応を示した。
足を交互に動かすという、たったそれだけの他愛のない動作で、股間の縄目は強く食い込み、擦れ、郁子を卑猥に責め立てているのだろう。
 ベッドにあがろうと足をあげた時には、とうとう自ら股間を押さえ、呻き声まで出していた。

「ああ、なんか、変な感じ……」
 ベッドにうつ伏せになり、郁子はぼんやりと呟く。
 ぼくは郁子の傍らで、高く盛りあがったお尻の谷間に手を挿し込み、食い込んだ部分がどうなっているかを確かめた。
 思った通り、そこはすっかり熱を持ち、淫らな液に濡れ始めていた。
「感度いいな、お前」
「だって……守が、変な縛り方するんだもん……」
 尻を撫で、縄を引っ張って割れ目をいたぶれば、郁子のそこは堰を切ったように体液を湧き立たせ、赤い縄をぬめぬめと湿らせる。
 これは――なかなか悪くない。

 ぼくは、うつ伏せの郁子の脚を、左右に大きく割り広げた。
 濡れた部分を、まともに見るためだ。
 躰が柔らかい郁子の脚を、横一文字に近いほどにまで開かせれば、白いお尻の中心
で、赤黒く見える陰部から肛門にかけての粘膜が生々しく、さらにその粘膜部分を、
真っ直ぐ縦に通った赤い縄が、いいアクセントになっていた。
「いい姿だぞ、郁子」

 けれど、見事なヒップの谷間に赤い縄をくぐらせた郁子の姿態は、確かに素晴しい
ものだったが、こうしてうつ伏せになっていると、腹側の綺麗な亀甲模様が見えない
ので、
ちょっともったいない。
 それに、なんとなく見た目が物寂しい感も否めなかった。
 何かが足りない。そう思わせずにはいられない違和感がある。

 違和感の原因には、すぐ思い当たった。
 緊縛プレイをするのに、今の状態では足りないもの。
 それは――そのものずばり、緊縛だ。
 躰に縄を這わせてはいても、郁子の両手は放りっぱなしで、自由なままなのだ。
 これじゃあいけない。片手落ちというものだ。

「守? 何やってんの?」
 ぼくは郁子をベッドに残し、サイドテーブルの方に戻っていた。
 そこにある、別の麻縄の束を手に掴む。そしてベッドに帰って来ると、郁子の腕を後ろ手に、背中の処で重ね合わせ、ぐるぐると縛り始めた。
「ちょっ……う、腕は嫌だって、言ったでしょう!?」
「大丈夫大丈夫。この縄柔らかいからさ。そんな、痕なんてつきゃあしないって」
 適当になだめながら、郁子の腕を赤い縄でがっちりと拘束してしまう。
 これでいい。
 両手を縛られ、躰中に赤い縄目を受けて、肩越しに視線をくれる郁子のことを、ぼくは、今度こそ得心して眺めた。
420埋め立てネタ:2010/06/04(金) 00:29:47 ID:gKGQjZWh
 しかし、満足を覚えるぼくとは対照的に、郁子の方は、普段の元気を失っている。
「ああ……なんかやだ」
 弱々しい声で言い、微かに身をよじる。縛られた腕を動かし、拘束から逃れようと
しているみたいだ。
「なんだ、痛むのか?」
「そうじゃないんだけど……こうして縛られてるだけで、なんだか息苦しくて」
 実際郁子は、苦しげな表情をしていた。なんだか顔色まで青ざめているようだ。
 おかしなことだと思った。
 さっきまでの郁子は、縄目を受けているにも関わらず、割合平気そうにしていた。
 それが、腕をちょっと縛っただけで、こんなにも弱ってしまうだなんて……。

「苦しいっていうか……怖いのかも知れないわ」
「怖い?」
「うん。人間ってさ、躰の自由を奪われると、怖くて不安になるように出来てるんだ
よ、きっと」
 なるほど……。
 ぼくは生まれてこの方、縛られたことなんか一度もないので判らないが、そういう
心理は、理解出来なくもない。
 それはきっと、本能的なものなのだろう。
 腕が使えなければ、身を守ることも出来なくなる。
 心の奥底で、そんな心理が働いて、不安に駆られてしまうのだ。

「悪かったな……じゃあこれは、外してやるよ」
 ぼくは、郁子の腕から縄を解くことにした。
「あ、ありがと……ごめんね」
「いや、いいんだ。もっといいやり方を思いついたから」
「いいやり方って?」

 ぼくは、うつ伏せの郁子をひっくり返し、仰向けにさせた。
 そして、両腕を掴んで真っ直ぐ上にあげさせたのち、両の手首を一つにまとめ、縄を巻きつけた。
「えっ……ちょ、ちょっと?」
「大丈夫大丈夫。すぐに済むから」
 手首に巻いた縄の端を、ヘッドボードの方まで伸ばす。
 ヘッドボードは板ではなく、ステンレスの棒が柵状に連なった形をしているので、
縄を引っかけるのにちょうどいい具合だった。

「守! 縄を解いてくれるんじゃなかったの!?」
 郁子は、顔を真っ赤にしてぼくに怒鳴る。
 青くなったり赤くなったり、まるで信号機みたいな女の子だ。
「腕からは外すと言ったけど、縛ること自体をやめるとは、言ってないぜ」
 両手首をまとめあげて拘束された郁子を見おろし、ぼくはにやっと笑う。
「このぉ……!」

 それからの郁子は、ぼくに対する威嚇の言葉をこれでもかと浴びせてきたが、ぼくには応えなかった。
 縛られて動きを封じられた女の子に威されたって、ちっとも怖くない。
 郁子にした処で、さっきまでのように、肘も動かせないほどにがっちりと拘束されているのではなく、
それなりに身動きは出来るという気安さからか、不安を感じている様子もほとんどなくなっていた。

 ――これだったら、大丈夫だろう。
「ちょっとは我慢しろよ。これ、SMなんだから。多少の苦痛が伴うのは、致し方な
い」
 郁子の両脚を高く持ちあげ、ぼくは言った。
 まだ自由の残されている脚。
 蹴りでも入れてくるかと思ったが、郁子は大人しくされるがままになっている。
 その理由は簡単だった。なめらかな素足を撫であげ、内腿に唇を這わせてみて判った。
421埋め立てネタ:2010/06/04(金) 00:32:07 ID:gKGQjZWh
 ぼくに罵声を浴びせながらも、郁子は、郁子の躰は、欲情して敏感になっていたのだ。
 その証拠に――ぼくの愛撫を受けた郁子は、内腿の肉をびくんと震わせ、口を閉ざしてしまった。

 目線を落として、股間の割れ目を覗く。
 脚を高くあげられたせいで、赤い縄は深く食い込んでいた。
 前の方なんかは特に、大陰唇の中にまでめり込んで、中の繊細な場所を、隈なく締めあげているようだ。
「こんなとこまで、入っちゃってるな」
 手を伸ばして、大陰唇を開く。
 ひたひたと蜜に埋もれた赤い縄は、ぬめり光って色も濃く変わっていた。
「食い込んじゃうの……なんとかして」
 ため息混じりに、郁子は言った。

 なんとかすべく、ぼくは郁子の脚をおろして、食い込んでいる二本の縄を両脇に開いた。
 縄に押され、鬱血していた粘膜の穴が、ほっとしたように小さく開く。
 一瞬見えた黒い火口は扇情的で、ぼくは、一気に熱情を呼び起こされてしまった。
 ぬらぬらと紅い、肉汁まみれの淫靡な洞穴。
 一刻も早く突っ込んで、掻き廻して、中にどくどく注ぎ込みたい。
 そんな衝動に心がはやるが、それをぐっと堪えて、耐える。
 だってこれは、SMなんだから。もっと色々やって、郁子を責めてやらないと
――。

 股間の縄目を開いたまま考え込んだぼくは、ふと郁子と眼が合った。それで閃く。
 そうだ。目隠しをしてやろう。
 ぼくはバスローブを脱ぎ捨て、その帯を郁子の眼に宛がった。
「あっ、何? 見えないよ……」
 帯で眼元をぐるぐる巻きにされて、視界を奪われた郁子が、慌てた声で訴えるが、
当然ぼくは耳を貸さない。
「見えない方が、色々想像出来て面白いかもよ」

 対するぼくは、郁子の眼を塞いだことで、今まで以上に遠慮なく、郁子の姿を仔細に渡って観察出来るようになった。
 躰を亀甲縛りにされ、手も縛られ、目隠しまでされてしまった郁子。
 不安げに身をよじり、喘ぐように口を半開きにしつつも、性器だけはしっかり濡らしている処がいやらしく、貪欲な感じに見える。
 それに、こうすることによって、よりSMっぽさが高まった感じがして、ぼくはなんだかぞくぞくした。

「ま、守、ねえ? 居るの? こんなことして、ほんとにどうするつもりなのよ……」
 郁子は本当に視界が利かなくなっているらしく、やたらに頭を動かしながら、ぼくの気配を探ろうとしているようだ。
 ぼくは、そっとベッドをおりて段ボール箱の方へ向かう。
 そこから鞭と、赤い蝋燭を突き立てた燭台に、マッチも取って、ベッドに戻った。
 燭台はベッド真横のチェストの上に置き、まずは鞭を手に取る。
 黒くて小柄な、べらべらと細い帯状に先が分かれた、ハタキのような形状の鞭の、
その先端のべらべら部分で、郁子の脇の下を、つうっと撫ぜた。
「ひっ? やっ、何? やだ!」

 全開の脇の下から腰のくびれ、脇腹の辺りまでを撫でおろし、撫であげ、乳房の膨らみをさわさわとくすぐる。
郁子の尻が、跳ねあがった。
「やはあっ? ひ、ひひ……や、やめて、くすぐったい……」
 そう言って、自由の残されている脚をばたつかせるが、そんな動きをすると、またぞろ股間の縄に締めつけられて、悩ましく喘いでしまう。
422埋め立てネタ:2010/06/04(金) 00:34:08 ID:gKGQjZWh
 これは楽なプレイだった。
 鞭の先端を使い、脇腹やら首筋やら、鼠蹊部の辺りやらをくすぐってやる度に、郁子は腰をくねらせてこそばゆさに耐えるのだが、
その動作は結局、股に食い込む縄の、クリトリスや肛門に当たる結び目の刺激を強めてしまうのだ。
 そのため、郁子の躰は、労せずとも勝手に昂ぶり、独りでに充血しながら、濁りきって淫臭を放つ発情液を、だらだらと垂れ流す結果となった。
「ああ……ああ……ああう」

「郁子、どう? こういうのってさ……結構、悪くはないんじゃないか?」
 喘ぐ郁子の耳元に近づき、息を吹きかけながら囁いた。
 郁子は、二の腕の皮膚を派手に粟立て、乳首をつんと尖らせながら、首をすくめる。
 かなり激しい反応だ。見えないせいで、肌の感覚が鋭敏になっているためか。

 けれど、こんなのも暫く続けていれば、郁子だって慣れてくるし、ぼくにも飽きがきてしまう。
 そこで今度は、燭台に手を伸ばした。
 ロココ調の華美な細工が施された、手持ちサイズの金色の燭台。それには、細身の
蝋燭が三本立てられている。
 暫し考えた後、ぼくはマッチを擦って、中央に立った長めの蝋燭に火を点けた。
「ちょっと? あんたそれ、何やってんの?」
 マッチを擦る音と臭いに感づいた郁子が、震えた声で問うてくる。それを無視し、
ぼくは蝋燭の炎を見つめる――。

 蝋が融けてくると、薔薇の濃厚な甘い香りが、ふわっと漂った。
 この赤い色といい、これには多分、薔薇の成分が溶かし込んであったのだろう。
 紅薔薇の、アロマキャンドルという訳だ。
「あ、この匂い……」
 鼻孔を僅かに膨らませ、郁子は呟いた。そして、悩ましげにため息をつく。
 薔薇の香りに酔い痴れたが如く。
 酔い痴れているのは、ぼくも同様だった。
 薔薇の香りに抱かれながら、赤い蝋燭の先に点った炎を見ていると、なんだか恍惚とした気分になる。
 頭の中に赤い霞がかかり、躰が、心地好い浮遊感に包まれて、どこまでも浮かびあがってゆくような――。

 炎の熱に融けた蝋が、とろりと蝋燭を伝い落ちようとしている。
 ぼんやりとした意識のまま、ぼくは燭台を傾けて、自分の腕にそれを垂らした。
 染み入るような熱さ。
 それは微かな痛みを伴い、赤い蝋と共に肌にへばりつく。
 しかしこれは、耐えられないほどの刺激ではない。
 もっと高い位置から垂らせば、郁子だって平気なはずだ……多分。

「守? 嫌、何?」
 ベッドを軋ませ、ぼくは郁子の真横にひざまずいた。まずは――太ももの上に。
「うっ?」
 郁子の太ももが、きゅっと内側を向いた。
「やだ……何これ? ねえ、何なの!?」
 ぼくは答えず、さらに蝋を垂らす。
 ぽたぽたと垂れる蝋は、郁子の腿に赤いまだら模様を作る。
 血を思わせる赤い染み――それは、猟奇的でありながらも、胸を疼かせるような美しさをも発していた。
「郁子……」

 気づけば赤い蝋は、郁子の腿から恥骨、腹部、さらには乳房の膨らみにまで垂れ落ち、瑞々しい白い肌を赤く侵蝕している。
なぜそんなことになったかといえば、それは、ぼくがそうしたからに他ならない。
「あああ……守、嫌……いやあ」
 赤い縄の食い込む乳房の谷間に蝋が落ちると、郁子の躰は大きくうねった。
 目隠しで半分隠された顔は、のぼせたように紅潮している。
423埋め立てネタ:2010/06/04(金) 00:35:49 ID:gKGQjZWh
 だがそれでいて、蝋に穢された乳房の皮膚は、寒さに震えるみたいに粟立ち、
小さな乳首も、かちこちに尖って勃起しているのだ。

「いや……守……お願い」
 縛られた郁子はしきりに首を振りたて、乳房を、そして腹部を派手に上下させて、
激しく息を乱している。
 平らなお腹がぺこぺこと動く度、入り組んだ縄目も微妙に蠢いて見える。
 それは、珍妙で卑猥な蠢きだった。
「――何を、お願いしてるの、郁子?」
 かすれた声が、喉に絡まる。
 客観的に見て、ぼくも相当興奮しているようだ。
 激しい動悸に燭台を持つ手も揺らぎ、自分でも予想だにしない場所――
脇の下とか、顎の先だとか、そんな処にまで蝋を垂らしてしまう始末だ。

「あっ、やだ、熱いよ」
 顎にまで蝋を垂らされるとは思っていなかったのだろう。
 郁子は驚き、怯えた声をあげる。
 とにかく、蝋から身を守ろうと思ったのか、両膝を内股気味に立てて躰を縮込めるが、
そのせいで、腿の間で充血し、縄を食い込ませてぬるぬるになっている陰部が、
かえって丸出しになってしまった。

 白く柔らかな内腿の肉に挟まれて、熟れきったアケビのような姿を晒す
郁子の女性器――。
 こんなものを見せられては、堪らない。
 興奮に煽られたぼくは、郁子のその、赤紫にぷくっと膨らんで見える大陰唇めがけ、融けたばかりの熱い蝋を垂らした。
「ひっ? ひいっ、あっ、熱っ……」
 淡い恥毛が縁取る部分に真っ赤な蝋が張りつくと、郁子の腰は大きく反り返った。
 よほど熱かったと見えて、今までとは悶え方が格段に違う。

「おい、そんなに暴れんなよ。クリトリスとかにも蝋がかかっちまうぜ」
 軽い脅しの言葉とともに、僅かに顔を覗かせているクリトリスの先っちょを、ちょん、と突付いてやる。
 びっくりした郁子は、口を大きく開けて、悲鳴にならぬ悲鳴をあげた。
「や……は……あ」
 一瞬、本当に蝋を垂らされたと錯覚したのだろうか?
 郁子はぼくの面前で、尋常ではない反応を示した。
 すなわち、淫らな蜜にまみれた女陰の中から、ほんの少量ではあるものの、淡い檸檬色をしたおしっこを漏らし出したのだ。

「あっ、ああぁ……」
 郁子は、なんとも情けない声とともに腿を閉ざすが、今さらごまかしは利かない。
 しょろっと音を立てて割れ目からこぼれ落ち、シーツに染み込んだそれを、
ぼくは間違いなく見てしまったのだから。

「お前なあ……。いい歳して、お漏らしすることないだろう」
 片手で足首を掴んで、ぐっと上に持ちあげる。
 股を開くと、尻の下のシーツの染みから、おしっこのアンモニア臭が漂い、むっと鼻をついた。
「うぅー……だって、だってぇ……」
「だって、じゃないよ。いけない子だ。
お前みたいな奴には、お仕置きをしてやらないと」
 ぼくは燭台をチェストに置き、火の点いていない蝋燭を二本引き抜いた。
 そして、赤い蝋でどろどろになった郁子の前に向き直る。

 しかしあれだ。こうして改めて見直すと、郁子は実に無残な姿になっている。
 全身を蝋に苛まれ、縄で亀甲縛りにされて手首は拘束。
 目隠しをされた上に、おしっこまで漏らしているんだから。
424埋め立てネタ:2010/06/04(金) 00:38:08 ID:gKGQjZWh
 ほんの数ヶ月前――ぼくとの交際を始める前までは、キスの経験すらない完全なる処女だったというのに、
今のこの姿からは、そんな清らかさの片鱗すらも感じられない。
 惨めな――あまりに惨めなこの姿。
 もしぼくが、普段の、素の状態でこれを見たら、ショックで暫く立ち直れないかも知れないほどだ。
 自分でやっといて、なんだけども……。

 けれど現在、すっかり欲情して正気を失い、素の状態とは程遠い領域にいるぼくは、こんな郁子の有様にもへこむことはなく、
むしろ、よりいっそう興奮を高めるだ
けだった。
 憐れな肉奴隷と化した郁子を支配する者として――郁子の肉体を思う存分玩弄すべく、
手に持った蝋燭を、縄に苛まれる陰裂の隙間へと宛がった。
「う……」
 膣口に刺激を感じた郁子は、尻を揺らして微かに呻く。
 ぼくは、蝋燭の尖端で二本の縄を両脇に押し退け、膣の中へと一気に突き挿れた。

「うっ、あっ、ああぁ……」
 蕩けるように、郁子は喘ぐ。
 細く長い蝋燭は、郁子の内部にすんなりと飲み込まれてしまった。
 這入る限界まで真っ赤なそれを押し込めると、膣口がぎゅっと強張り、わなわなと震えた。
「感じるか郁子。じゃあ、こうしたらどうだ?」
 膣に挿入した蝋燭で襞を掻き廻す一方で、ぼくは残りの蝋燭を使い、膣の真下の会陰から尻の谷間を、縄の脇から静かにたどった。

「あああ……だめ、だめ、あ、あ……あ」
 切迫した声をあげた郁子は、ぼくの手を振り払う勢いで脚を広げ、足先を、
天井に向かってぴんと伸ばした。
 どうやら、軽くオルガスムスに達してしまったらしい。
 呆気ないものだ。
 赤黒く鬱血した陰部は自ら呼吸をするが如くもごもごと蠢き、蝋燭で攪拌され、
白く泡立った体液が、膣口から際限なく吹きこぼれる。

 その淫らな光景を眼に焼きつけつつ、尻をたどる蝋燭の先を、今度は肛門の辺りへと突きつける。
 肛門の皺襞に埋没している縄の、赤い結び目をほじくり返し、蝋燭尖端の芯で、窄まりの中心をくすぐってみた。
「あっ、ひい」
 淫液やらおしっこやらで濡れそぼって光る肛門は、突き立てた蝋燭の先を、数センチばかり飲み込んでしまう。
 これは――いける。
 そう踏んだぼくは、柔軟性のある縄の結び目を下から上に押しあげ、肛門の粘膜を、
蝋燭でぶすりと貫いた。

「やっ? はあん……あぅああうっ!」
 肛門内部を襲う異物感に、郁子は躰の動きを止める。
 油気の多いなめらかな蝋燭は、不慣れなアナルにもたやすく潜り込んでしまい、
あっという間に、半分くらいまで没してしまった。
「二輪挿しだな」
 膣と肛門それぞれから赤い棒を突き出させた郁子を見て、ぼくは呟く。
 郁子はM字に脚を開いたままで、喘ぎ混じりの呼吸を繰り返し、その身に突き刺さった二本の蝋燭を、そよぐように上下に揺らした。

 ぼくは蝋燭の根元を掴み、二本交互に、膣と肛門の間の肉を扱くような感じで、
ごしごしと出し挿れをし始めた。
 郁子は首を反らして白い喉を晒し、うーうー唸りながら内腿をひくつかせる。
 暴れて抗いたくとも、躰の中核を成す二つの穴を穿たれていては、そうそう身動きが
取れるものでもないのだろう。
425埋め立てネタ:2010/06/04(金) 00:40:21 ID:gKGQjZWh
 そして、そのように郁子が大人しくしていてくれるおかげで、ぼくの方は、心ゆくまで郁子の内臓を扱く行為に没頭できるという訳だ。
 そう。まさにこれは、郁子の内臓を扱いていることに他ならない。
 陰門と肛門の間の、意外に薄い感じのする隔たりを、二本の蝋燭挟み、押し潰しながら摩擦する。
 これが、どんな感覚を郁子に及ぼしているものか……
男であるぼくには、到底想像し得るものではなかった。

 そこでぼくは、郁子に尋ねる。
「なあ郁子、どんな感じなの?」
 郁子の返事はない。
 言葉を成さぬ呻き声を漏らすばかりの彼女の耳には、ぼくの声が届いているのかさえ不明だ。
「なあ、なんとか言えよ」
 ぼくは、肛門に挿した蝋燭を、大腸にまで届かせる勢いで奥まで押し込めた。
「あえ……えぁああ」
 郁子は変な声を出し、腹を上下動させて、尻を窄めた。
 肛門の、膣穴の深い部分がきつく締まった手応えを、蝋燭越しに感じ取る。
 折れそうなほどに喰い締めている郁子の感触。
 よがり汁とともに、甘い匂いを振り撒きながら……。

「うあ……ま、守ぅ」
 穴の力をふっと緩め、荒い息を交えて郁子は言葉を発した。
「やめて守、もうやめてぇ……こんなのぉ、変だよぉ……」
 言いながら、上の方の肉襞がぎりぎりと蝋燭を絞っている。
 吸い込むような蠢き。
 その言葉とは裏腹に、躰の方は、もっともっと欲しいと言っているような。

 肉襞の蠢きに逆らうように、ぼくは、郁子の膣から蝋燭を引っこ抜いた。
 甘酸っぱい匂いのする温かい粘液に包まれ、どろどろの糸を引くそれを後ろに放り投げ、シーツに両腕をついて、郁子の腹に圧しかかる。
そして、極限まで硬直しきって涎を垂らしているぼくのものを、空いた膣口に持ってゆく。
「ああっ、待って守。お、お尻のも、抜いてから……」
 郁子が何か言っているが、もう一刻の猶予もならない。
 邪魔な縄を左右に退かせるのももどかしく、ぼくは性急に、郁子と躰を繋いだ。

 縄に押さえつけられて大きくは広がらない小陰唇を割り、腰を捻りながら、
ほとんど無理やり押し入れる。
 ぐずぐずと濡れそぼった粘膜の襞はぼくを締めあげ、亀頭冠にしこしこと絡みつく。
 ぼくは喘いだ。
 さっきまで蝋燭で扱いていたためか、腫れぼったく膨れて狭くなった郁子の内部は、
凄まじい熱さえ帯びていて、とてつもなく気持ちがよかったからだ。

「おお、郁子、持たない、持たないよこれ……」
 堪らなくなり、夢中で腰を振りまくってしまう。
 そんなぼくの腰を押さえるように太ももで挟み、郁子は叫んだ。
「いあ、あ、そんな、そんなに……お尻、響くぅ」
 その声と同時に、郁子の尻の穴から蝋燭の突き出る気配がして、膣の狭窄感が減った。
 ぼくが押さえるのをやめたから、肛門から蝋燭が抜け出てしまったのだろう。
 ぼくは脇から手を廻し、肛門に蝋燭を挿れ直す。
 蝋燭が中に潜ってくる時、裏側から尿道に物凄い圧迫感を受け、ぼくはぞくりとした。
 これはいい。
 ぎこちなく腕を動かし、ぼくは何度も肛門の蝋燭を出し挿れする。

「ま、守……ねえ、守」
 今にも射精が来そうになるのを、この快楽を一刻でも長く味わいたい一心で引き伸ばし、
休み休み肛門や膣の出し挿れに耽っているぼくに、郁子が弱々しく声をかけてきた。
426埋め立てネタ:2010/06/04(金) 00:42:37 ID:gKGQjZWh
「お願い守。私の……手首の縄、ほどいて」
 ぼんやりと、夢の中にでも居るような声。唾液が糸引く郁子の唇を見つめる。
「ね、お願い。お願いだから、ほどいて……」

 郁子の口調に、何かしら切実なものを感じたぼくは、望み通り腕の自由を戻してやることにした。
 繋がっている郁子の躰ごとヘッドボードの傍に寄り、ステンレスの棒杭から縄を外し、次いで、手首からも解いてしまう。
 手が自由になったら、何をするつもりなのだろう?
 そう考えて見おろすぼくに向かい、郁子の腕が伸ばされる。
 それはぼくの背中に廻り――ぼくの躰は、郁子に強く抱き寄せられた。
「ずっと……こうしたかったの」
 ぼくの胸板に乳房の膨らみを押しつけ、郁子は、自ら、くねくねと腰を使い始めた。
「ああ……いい。守、好き、好きぃ」
 ぼくの局部を、温かく包んで扱きながら、耳元で囁きを繰り返す。甘ったるい鼻声
と、吐息の熱と――。

 眼球の奥底で、赤い閃光が炸裂した。
 自分でもどうしようもないほどの激情が、煮えたぎった精液を強制的に尿道管から押し出し、重苦しいほどの快感を伴う絶頂へと叩き込んだ。
 めくるめく射精の快感の中、ぼくは郁子の首筋に向かって吼え、幾度も躰を律動させる。

「うあああ、出てる……入る、入るうぅ」
 郁子はぼくにしがみつき、同じようにわななきながら声をあげ、膣の最奥のこりっとした突起で吸いつき、肉襞を蠢かせて、
ぼくの精液を吸いあげようとしていた。
 ああ、なんて素晴しい――。
 意識が遠のきそうになるほどの陶酔に躰の芯を痺れさせつつ、ぼくは最後のひと搾りを郁子の中に放つ。
 自らのたうつ、ぼくの分身の迸りを受けて、郁子の入口が、ぴくりぴくりとエロチックな痙攣をした――。


 僅かな時間、眠っていたようだ。
 躰は繋がり合ったまま――郁子が、ぼくを放してくれなかったからだ。


「お願い……もう少しだけ、このままでいて……」
 縄に縛められた腹部を波打たせ、しっとり汗ばむ腕に力を入れて、郁子はねだった。
 ぼくにつられるように絶頂を極めた郁子の肉には、その快感の余韻が引くことなく留まり続け、蕩けるような感覚で、
いつまでもいつまでも苛み続けているようだった。
「ああ……いいぃ……もう、どうなっても……死んでもいい」
 世迷言を呟く郁子の目隠しを取ると、それは温かく湿っていた。
 目隠しの中で、郁子は涙さえも流していたのだ。

「泣くほどよかったのかよ」
 照れ隠しに笑ってからかったが、郁子は、いつもみたいに言い返したりはしなかった。
「うん……よかった」
 素直に頷き、ぼくを見返す。とろんと半開きの、潤んだ瞳。
 二人分の体液を溢れさせる膣口が、きゅっと窄んでぼくの根元を甘噛みした。
 なんだか、ぼくの胸まできゅんとしてしまう。
 いい加減脂ぎった眼鏡を脇に放り、郁子の唇に口づけた。心からの愛情を込めて。
 郁子は、しおらしいほど従順に唇を窄め、ぼくのキスを受け入れた。何度も何度も。 
 強く、甘く、吸ったり吸われたり、舌をくるくると絡め合って、ぬるい唾液を交換したり。

 そうこうしている内に、郁子の胎内で、ぼくのペニスはどくどくと膨らんで、復活してしまう。
427埋め立てネタ:2010/06/04(金) 00:44:45 ID:gKGQjZWh
 充溢するのを感じ取ったのか、郁子はうっとりとため息をついて、腰をもじもじくねらせ出した。
「ああん、ああ……また……また、よくなっちゃうぅ」
 ぼくの下で悶える郁子を好きにさせようと腰を軽く浮かせると、それを追うように郁子は腰を突きあげ、
本格的な上下動をさせながら、己の陰阜を手で押さえた。
 おそらく、クリトリスを縄目で刺激しているのだと思う。

「はあん、ま、守、おっぱい……おっぱいも、弄ってぇ」
 がに股でぼくの下半身を支え、腰をひょこひょこ動かしている郁子のおっぱいを、
リクエスト通りに弄くってやる。
 縄で絞られ、突き出た膨らみを揉みしだき、舌や指先で、ちっちゃな乳首を玩ぶ
――。
「ああ、それ、いい、いい、ひいぃ」
 郁子は入口をこれ以上ないくらいきつく喰い締め、全身をがくがく揺さぶった。
 ペニスが肉襞で激しく扱かれる訳だが、前ほどきつくないなあ、などと考えるに、
その理由が明白になる。
 それは、さっき一発姦った際、尻穴に挿した蝋燭が抜け落ちてしまっていたからだ。
 身をよじって股の下を探ると、果たしてそこには、細い棒状のブツの感触がある。
手探りでそれを拾い、持ちあげて、郁子の肛門に戻してやった。

「やはあんっ、いやあん、お尻ぃ、もう、いやあぁ」
 郁子は足をばたつかせるが、許してやらない。
 小粒のグミみたいな乳首を舌で転がし、膣の奥底を亀頭で捏ね廻し、肛門の内部を蝋燭で摩擦する。
 やがて、喰いちぎられそうな勢いで膣口を締め、奥から熱した液体をどっと迸らせながら、郁子は果てた。

 普段より三オクターブは高い郁子のすすり泣きを聞かされ、ぼくのペニスの快感も高まったが、今回ぼくは、いかなかった。
 いこうと思えばいけないこともない感じではあったのだが、ぼくにはまだ、したいことが残っていた。
 唇の端を持ちあげ、微かな笑みを浮かべる。
 何しろこれはSMだ。パートナーに多少の苦痛や恐怖心を与えなければ、意味がない。

 快楽を与えただけでは、駄目なのだ。

「まだまだ、休んでる場合じゃないんだぜ、郁子」
 快楽の余韻にぐったりしている郁子をうつ伏せに引っくり返し、さっきと同じように、
後ろ手に縛りあげた。
 それでも未だ、縄の束は残っている。
 突然の乱行に驚き、腰をにじらせ逃げようとする郁子の分厚い尻にまたがり、
ぼくは足の拘束作業にかかった。
「えーっと、どういう風にやるんだったかな……」

 とりあえず片方の脚を持ち、腿とふくらはぎをくっつけるように折り曲げ、ぐるぐる巻きにした後、
腿とふくらはぎの間に、垂直に縄を通して固定する。
余った縄を、先に縛って拘束済みの腕と背中の隙間に通し、腕に引っかけ手前に戻して、
反対側の脚も同じように巻いてから、しっかり結んで仕上げをする。

 これで完成だ。
 今や郁子は、胴体を亀甲縛りにされただけではなく、腕は背中の後ろに拘束され、
脚も、股を広げた状態で二つ折りに縛られているという、完全に身動きの取れない、
芋虫のような姿にされてしまった訳だ。
「これでますます本格的になったな。どうだ郁子、ご感想は?」
「うぅ……こんなのって、あんまりだよぉ」
 シーツに顔を伏した郁子は、情けない声で不平を漏らす。
 まあ確かに、SM初体験の躰だというのに、いきなり全身拘束までされては、あんまりだと思うのも当然だ。
428埋め立てネタ:2010/06/04(金) 00:47:24 ID:gKGQjZWh
 ちょっぴり可哀想な気もしたが、ここまでやって今さら後には引けない。
「泣き言をいうのはまだ早いぞ。まだ準備が終わっただけなんだからな。
本番は、これからだ」
 心を鬼にして、郁子のお尻をぺちんと叩いた。

 本番に入るべく、ぼくは段ボール箱からありったけの道具を持ってきて、
ベッドに並べた。
「何よ! 店でも開こうってえの!?」
 不自由な躰でごろんと寝返りを打った郁子は、雑多な責め道具の数々を眼にして、
怖がるより先に呆れてしまったようだった。
「なんだ、勝手に動くなよ。お仕置きすんぞ」
 ぼくは、手近にあった黒い鞭を手にして言う。
 蝿たたきとか、お好み焼きをひっくり返すへらのような形をしたこの鞭は、いわゆる、スパンキングプレイをするのに使われるものだ。
 西洋の貴族が小娘のメイドを躾ける時にしたように、お尻をまくって引っぱたいたりするのだ。
 なんというか――郁子にぴったりのプレイじゃないか。

 ぼくは郁子をうつ伏せに直すと、膝に郁子を抱きかかえ、豊満なお尻の肉に、尖端の平らな部分を、軽く叩きつけた。
「きゃあっ?」
 思った以上の派手な大きな音に、郁子の甲高い悲鳴が被さる。
 叩いた場所の皮膚を見たが、これといった変化はない。
 なら、もう少し強く叩いてみようか。

「やっ、まもっ……ちょっ!」
 調子に乗ってぱんぱん叩くと、郁子は素っ頓狂な声をあげ、鶏のように頭をあげたりさげたりする。
痛がっているというより、驚き戸惑っている様子。
 これならまあ、大丈夫だろう。ぼくは遠慮なく続けることにした。

 プレイ専用に、強過ぎるダメージは与えないよう工夫して作られたヘラ鞭ではあっても、繰り返し叩き続ければ、それなりの結果は現れる。
 ぼくが満遍なく叩き続けた郁子の尻は、今やすっかり赤味を帯び、全体的に腫れあがった感じで、
いつもより一周りくらい膨らんでいるようにすら見えた。
 凄く――綺麗だ。肉を打つ小気味いい音色と、弾力の手応えもいい。
赤くまだらに染まってゆく郁子の尻を、ぼくは陶然となって叩き続ける。

「うっ、うっ、もっ、もうっ! いい加減に……してよおっ」
 お尻を真っ赤に腫らした郁子は、耳たぶまでも赤くして叫ぶと、いきなり身を捩らせて、ぼくの膝からおりた。
 肩や背中をぎくぎくと動かし、縛られた躰を尺取虫のように蠢かせ、ぼくの打擲から逃れようとしているのか?
「馬鹿。そんなことしたら、余計きつくなるぞ」
 腿を、腹側に引きあげようとしているのを見てぼくは言ったが、彼女は聞かない。
 案の定、無理に躰を折り曲げた郁子は、腕に引っかけた脚の拘束用の縄にきつく締めあげられ、
完全に身動きが取れなくなってしまう。

「随分といい格好だなあ、郁子?」
 尻を高く持ちあげた格好で、丸くうずくまったまま静止した郁子を見て、ぼくは笑う。
 だってこれじゃあまるで、もっともっとお尻を叩いて下さいと言って、自ら突き出しているようなものだから。
 しかも、股は開いたままなので、お尻の谷間からはちっちゃなアナルやら、
その下でぷっくり膨らんでいる陰部までが、あからさまに見えてしまうのだ。

「そんなとこ丸出しにしちゃって。こっちにも、何かして欲しいってこと?」
 縦にしたへらで、縄の通ったお尻の谷間をいびる。へらの先で、硬く窄まる肛門皺襞に、縄の結び目を埋め込むように。
429埋め立てネタ
「やっ、やだ……ねえ、もう、本当に……」
 懇願の言葉には耳を貸さず、ぼくは尻の下、紫色に膨れて割れた、陰部の膨らみを手で触れる。
 そこには、さっきぼくがしこたま流した精液が逆流して溢れ、生臭いにおいを発しながらべとべとに汚れていた。

「凄いことになってんぞ……欲しがって、涎を垂らしているみたいだ」
 股間の縄目を指先で引っ張り、責める言葉を投げかければ、郁子は呻いて肩を揺らす。
 広がった陰唇の狭間で、粘膜に没した赤い縄が、巨大ミミズのように、ぬめり光ってのたくった。

「もう……いやあっ! もう許して……ひどいこと、しないでよおっ!」
「ぎゃあぎゃあうるさいな……これでも咥えてろ」
 いい加減、郁子の喚き声が疎ましくなったぼくは、数ある責め道具の中から、無数の穴の開いた、赤いゴルフボール大の玉を選び取って、口にねじ込んだ。
 玉の両端にくっついている革のベルトを、後ろ頭に廻して留める。
 これは、ボールギャグと呼ばれる猿轡の一種で、やはりSMプレイにおいて、
ポピュラーな道具の一つだ。

「お、おご……」
 中が空洞になっているプラスチックの玉によって言葉を封じられた郁子は、
もう呻くことしかできずにいる。
 顔をシーツに伏せ――尻の谷間をくぐった二本の縄を両脇に押し広げ、さっきの蝋燭の尖端を肛門の口にめり込ませてみても、目立った反応は示さない。
 もう、観念したってことなのか。

「そうそう。そうやっていい子にしていれば、悪いようにはしないからな」
 ぼくは、肛門に押しつけた蝋燭をいったん外し、その下にある、ぬめった陰裂に擦りつけた。
 すりすりと、蝋燭全体に満遍なく淫液をまぶした処で、ほどけてひくついている膣穴へ、ぶっすりと突き挿れる。
「ぼ……おぉ、お」
 くぐもった唸り声と共に、膣の穴が蝋燭を飲み込む。
 自らの力で。
 ずっと、餓えていたかのように。

「欲しかったんだな。じゃあ、もっとやるよ」
 埋没してゆく蝋燭を、ぼくはさらに押し込めてやる。
「まだ入る。ほら、まだまだ入る……」
 細く長い蝋燭は、半分くらいまで郁子の中に入った。
 もうこれ以上は入らない、という処まで到達させた後、今度はそれを、ずるずると引きずり出した。
 そして、また中に戻してゆく。
 始めはゆっくりと。
 段々と動きを速くし、最終的には、ぐちゅぐちゅと音を鳴らしての、素早い出し挿れに発展させる。

 膣の内壁を激しく擦り立てられた郁子は、言葉では形容し難い呻き声を断続的に
発しながら、狂おしく身悶える。
 くねくねと。
 ピストン運動をする蝋燭が、膣内の、特に弱くて敏感などこかを擦る度に、なまめかしく誘うような動きで、尻を振った。
 やがて、扱かれる膣内の温度が伝染したように、陰部から会陰、肛門の辺りまでに血の気が差し、膣口から、
堰を切ったように白濁した体液が噴出し始める。
 それは引き出した蝋燭全体に、とろろ汁のように絡みついていた。

「どろどろじゃないか……これだったら、アナルに挿れても平気かな?」