ビッチな娘が一途になったら第2章

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1名無しさん@ピンキー
男を取っ替え引っ替えしてる女の子、モテまくりで男を下にみてる女の子
そんな娘が一人の男にマジ惚れしてしまう、そんな話はどうだろう?

自分の男性遍歴を知られて嫌われるのを心配したり。
奉仕させる側だったのに一生懸命奉仕したり。
「○○はモテるもんな」なんて意中の男に言われて
好きなのはあなただけよアピールしちゃったり。

前スレ
ビッチな娘が一途になったら
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1215117459/l50
2名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 08:37:49 ID:eDD/Qm6K
前スレが500kb越えとなっていたようなので、新しくたてました。
職人さん、住民さんの合流が速やかであることを祈ります。
3名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 09:29:05 ID:0r6xPjwp
>>1
乙!まさか2章まで続くとは誰が予想したろう(笑)
4名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 12:21:28 ID:eDD/Qm6K
通し番号とかテンプレとか、できれば話し合いで決めたかったんですけどね。
5名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 14:42:20 ID:029zj89s
これで十分でしょ
イチモツ
6名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 16:18:31 ID:LxULRWEQ
>>1
スレ立て乙です。
7名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 17:03:23 ID:gYgfJuAG
>>1
2スレ目おめでとう
8名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 23:18:46 ID:f8VOBblM
1乙です。
規制解除で書き込みしたら容量オーバーって出て
検索したら立ってたぜ
9名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 10:19:53 ID:RGKAt7rh
職人のみなさんは次スレがたったことをご存知なのだろうか?
10名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 10:58:04 ID:vld9HLoG
とりあえず、即死回避で雑談でもしましょうか?
無理にとは言いませんが。

お題候補
・商業作品でオススメのビッチ→一途キャラ
・たとえばこんなビッチキャラいるとしてが、どうやったら一途になるのか?
・許せるビッチのボーダーライン、あるいは、これをやられたら修復不可能なドン引きビッチ行為。

職人さんにも、「ネタ潰しされた」と思わず、市場調査ぐらいの気持ちで参加してもらえればいいんじゃないでしょうか。
11ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/03/29(日) 00:48:58 ID:HqxVed2u
ごめんなさい。
<国見クンの初恋>が長くなりそうなので、
すぐにデレが来そうな熟女ビッチを。
今回投下分ではこれもデレまで行かないので、
国見クンみたいなビッチ描写が続くのが苦手な方は「ゲーパロ」で弾いてください。
12ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/03/29(日) 00:49:29 ID:HqxVed2u
<白蟻の女王>・上

「――ぼ、僕と、結婚してください」
勇気を振り絞った、一言だった。
それは、一年の喪も明けない女(ひと)にとって、
あまりにも失礼なことばであることは、僕だって分かっていた。
でも、その時、そう言わなければ、どうしようもないくらいに、
僕の胸は、硬くて熱い、やるせない塊によってふさがっていて、
そうしなければ、きっと心臓が張り裂けてしまっていただろう。
結宇歌(ゆうか)さんは、何も言わずに僕を眺めていた。
見詰めていた、わけではない。
まるで、飼っている犬がことばをしゃべった、
とでも言うような視線で僕を眺めたのだ。
その冷たい視線に、僕は、彼女が怒り出すのか、と身を縮みこませた。
(失礼な事を言った)
ものすごく、失礼な、彼女の誇りと名誉を傷つけるようなことを言ってしまった。
僕は、そう思って、馬鹿な自分の頭を金槌かなにかで打ち割ってしまいたくなった。
だけど、彼女の感じた「失礼」とは、僕がその時思った「失礼」とはちがった意味を持っていたようだった。
「お受けしますわ、節夫(せつお)さん」
「……ほ、本当ですか!」
「ええ」
結宇歌さんは、こくりと頷いて、それからため息をついた。
そうして、天にも登る気持ちでいる僕に、頭から冷や水をかける。
テーブルの上のコップからではなく、
睫(まつげ)の長い綺麗な瞳から見据える視線と、
紅も差していないのに赤い唇から漏れることばで。
「――今の私の身体の価値など、せいぜい貴方が買える程度のものなのでしょうから」
13ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/03/29(日) 00:50:00 ID:HqxVed2u
結宇歌さんは、僕の兄貴、幸雄(ゆきお)の女だった。
正式な結婚は、していない。
遊び人で知られた兄貴が、奥さんを亡くしてすぐに連れてきた女(ひと)だ。
先妻の存命中から、男女の関係だったらしい。
地元の大きな神社の跡取り息子として育った兄貴は、
東京に出て冴えない勤め人で一生を終わる予定だった僕なんかとは違い、
色んな世事に長けていて、まあ、女性のこともお盛んだった。
だから、「鄙には稀な、臈たけた」という形容がぴったりの結宇歌さんを連れてやってきたときは、
嫂(あによめ)の一周忌が済んで、実家でぼぉっと帰りの汽車の時間を待っていた僕たちをたいそう驚かせた。

歳は、僕より五つか、六つか上だっただろうか。
三つになる娘さん──春菜(はるな)ちゃんの手を引いて神社の鳥居をくぐってきた結宇歌さんを見たとき、
僕は、心臓がとてもドキドキとして困ったことを覚えている。
あれから、十年。
連れ子が居たことがネックになって親戚中から結婚を反対された兄貴は、
表向きは結宇歌さんを神社の巫女さんとして雇い、囲った。
それは、情婦とか愛人とか、世間では言うのだろう。
「嫁として正式に籍を入れるのは、二人の間に子供が生まれてから」
親戚筋には、そんなひと昔前の農家のような約束で納得してもらった兄貴は、
結局、結宇歌さんとの間に子供が出来なかった。
──結宇歌さんを囲ってすぐに、別の新しい愛人を作ったことも、それは多分関係しているのだろう。
そうして、住み込みの巫女として神社に働き始めた結宇歌さんの生活が始まり、
そして、僕の帰郷の回数が増えた。
僕は、兄貴が囲った愛人に、恋をしたのだ。
十年も続いた、ひっそりとした、実らないはずの恋を。
──そして、それは、実ってしまった。
冷たい、冷たい、苦い果実を。
14ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/03/29(日) 00:50:31 ID:HqxVed2u
「ふう」
慣れない文字を見詰めていると、目が痛くなる。
水でも飲もう、と思って席を立ち、思い直して外に出る。
「うーん」
午前中の柔らかな日差しのもとで伸びをすると、身体中の骨がぽきぽきと鳴った。
東京での務め暮らしで、書類の整理などはお手の物のはずだけど、
ここで使うものは、難しい漢字が多くて難儀する。
神社の息子として、一応、大学で資格は取ってはいたけど、
跡取りは兄貴と決まっていたから、僕はそれほど身を入れて学んでいなかった。
まあ、兄貴もそんなに勉強したとは思えない。
だけど、卒業後も仕事としてずっと神事に関わり、
親父の死と同時に神職を継いだ兄貴と、
正真正銘、10年もそうしたことから離れていた僕では、雲泥の差があるだろう。
(それでもなれてしまうのが、田舎なんだな)
自分で苦笑してしまう。
由緒正しい神社では、神主職の代替わりなどは大変なもので、
この間も前職の子供に継がせようとしたら、年齢が足りないと本庁が別人を任命して、
地元の氏子ともめた話まである。
だが、うちの神社などは、大きくてもそれほど権威があるものでもないらしく、
僕の継承は、すんなりと通った。
生まれ育った僕は気付かなかったけど、
──ここはよっぽどの田舎だ。
僕が、不意にそれを認識したのは、
向こうで玉砂利の庭を掃く、結宇歌さんの後姿を見たからだ。
長い黒髪と、緋袴が陽光に映え、もうすぐ三十の僕よりも年上なのに、
きびきびしたその姿は、まるで少女(むすめ)のようだ。
鄙には稀な、佳人。
こんな田舎にいるべきでない、女(おんな)。
(……結宇歌さんは、ここで不便を感じているのかも知れない)
15ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/03/29(日) 00:51:02 ID:HqxVed2u
告白と、その受け入れ。
無味乾燥な、やり取り。
昨日のことだ。
その一分にも満たない会話の後、僕は結宇歌さんと話をしていなかった。
神社の中は、祭りでもない限り、神主の僕と、巫女の結宇歌さんしかいない。
なんとなく顔を合わせづらくて、朝の挨拶を済ませた後、
僕は作務所の奥に引きこもって書類とにらめっこし、
結宇歌さんはいつものように掃除を始めた。
そのことを忘れて外に出てしまったのだから、僕は間抜けだ。
しかたないから、結宇歌さんのいない裏のほうに廻る。
そして、僕は、立ち止まった。
「……ああ、枯れてたんだ」
社の裏手にある、松の木が枯れているのを見て、僕はそんな独り言をした。
神社のご神木は、表にある柏の木だけど、同じくらいの大きさのこの松は、
裏手にあることといい、枝が低く張り出していたことといい、
何より、ご神木とちがって、登っても大人に怒られないから、
子供の時分、ずいぶんと木登りしたものだ。
近所の子供たちにとって、親しみ、という点ではこちらの松の木のほうがよっぽど強い。
こちらに戻って三ヶ月にもなるけど、
今日、やっとそれに気がついたのだから、僕の鈍さも相当のものだ。
「……寿命とは思えないけどな」
柏も松も、子供の頃は天まで届くような大木に思えていたけど、
戦災で一度焼けて植え直したはずだから、まだ若いはずだ。
「病気でもしたかな──」
近寄って、木がスカスカと、虫食いだらけになっているのに気付く。
「これは……」
「――白蟻、ですわ」
不意に後ろから声をかけられて、びっくりして振り向くと、
そこには、箒を持った巫女服姿の結宇歌さんがいた。
16ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/03/29(日) 00:51:32 ID:HqxVed2u
「……白蟻?」
「ええ。何度か薬を撒いてもらったのですが」
結宇歌さんは、白くなっている松の根元を指差して言った。
「本当だ。随分喰われている」
手で触れると、松の皮はボロボロと崩れた。
この分では、表皮の残っている部分と中の硬い芯を除けば、木は空洞状態だろう。
「切らなきゃならないかな、これは」
倒れたりしたら、危ない。
「いい木だったのにな」
小学校の何年生だったか、てっぺんまで巧く昇れた日に見下ろした街の風景を
ふと思い出して、僕は柄にもなく感傷的なことばを言った。
「――関わるからです」
結宇歌さんが、不意に、そう言った。
「え?」
思わず聞き返す。
「――白蟻と、関わるからです」
結宇歌さんはそう言って、僕をまっすぐに見た。
「白蟻って……」
言われた単語は分かる。
意味も、まあ分かる。
だけど、関わる、とはどういうことだろう。
まるで松が、人でもあるかのような結宇歌さんのその言い方に、
僕は不思議さと、そして暗さを感じた。
「……なんでもありません。ところで──」
結宇歌さんは頭(かぶり)を振って、その話題を打ち切り、
そして、昨日のように僕をまた眺めた。それから、
「……今晩から,しますか?」
そう、僕に聞いた。
「え……な、何を……」
「セックスを、です」
17ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/03/29(日) 00:52:03 ID:HqxVed2u
思わず聞き返した僕に、結宇歌さんは無表情で答える。
「そんな……」
セックスなんて言葉、下世話な週刊誌か何かでしか見たことがない。
学生の頃、遊んでいる連中が好んで口にするのを聞いたことはあるが、
女性がそんなことを平気で言うのを聞くのは、
怪しげなカフェに出入りしている奴ら以外、初めてだった。
もとより、参拝客もいない午前中とは言え、神社の境内で神主と巫女がするような会話ではない。
だけども、結宇歌さんはその話題から僕が逃げる事を許さなかった。
「どうせ、いつかはすることです。
節夫さんも、――それが目的で私に求婚したのでしょう?」
「そんな……」
「いいんです」
結宇歌さんは、強い光の宿った目で僕を見ながら言った。
だけど、その光は、恋とか、愛とか、そういうものの甘味のある強さではない。
見られる僕が、身をすくませて、返す言葉もなくしてしまうような、光。
やがて、いつまでも黙っている僕に、結宇歌さんは、ふっとため息を漏らした。
それは、張り詰めた緊張を和らげるものではない、
嘲笑のような、自嘲のような、吐息だけの笑い。
「親娘二人の面倒を見てもらうんですもの、
私の身体くらいは、自由にさせてあげます。
──春菜の父親と、幸雄さんにさんざん遊ばれた、
使い古しでよろしければ、の話ですけども」
「……」
舌が乾いて、強張る。
何も言えない。言い返せない。
そんな僕を、結宇歌さんはじっと眺め続け、やがてもう一回ため息をついた。
「よろしいようですね――では、今晩から、セックスをしましょう」
それだけ言い捨てて、結宇歌さんは表のほうに歩み去り、
後に取り残された僕は、午(ひる)前の陽の光の中で、
まるで身体が凍ったように動けなかった。
18ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/03/29(日) 00:52:34 ID:HqxVed2u
「はじめに、言っておきます。――これは、売春です」
「……」
「節夫さんが、私と春菜を養ってくれることへの、お礼です」
「……」
「見ず知らずのコブ付女を食べさせてくれることが、
どれだけ大変かくらいは、私にも分かります」
「……」
「ですから、私は、節夫さんにセックスをさせてあげます。
セックスで、私ができることは、なんでも。
それで十分な謝礼になっているかどうかは──節夫さんが判断してください」

……この女(ひと)は、何を言っているのだろう。

夕飯のときにビールを飲みすぎたのが悪かったのか。
頭がしびれたようにぼうっとしている。
午後に散歩をした折に、酒屋で買い求めて、大瓶三本も飲んでしまった。
普段は日本酒も飲まない僕が、急にそんなものを買ったものだから、
酒屋の爺さんはびっくりしていたっけ。
ああ、何の話をしていたのだろう。
僕は、ぼんやりと、敷いたばかりの布団の上に正座して、
僕のほうを眺めながら、きちんきちんとした言葉を投げかけてくる結宇歌さんを見詰めた。
頭がよく働かない。
だから、彼女が言ったことばの半分も、僕は理解できていなかった。
ただ──、
「――幸雄さんも、それでいいと、私を抱きました」
結宇歌さんがそう言って、それまで無表情だった美貌に、
ちょっと妖しい微笑みを浮かべたときに、
急に世界が反転したように、どっと僕の中に強い感情が沸き立ったことだけは覚えている。
19ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/03/29(日) 00:53:05 ID:HqxVed2u
どくん、と心臓と性器が跳ね上がるように脈動する感覚。
豆灯の灯りで照らされる薄暗がりが、急に鮮明になり、
同時に視界狭窄にでもなったように、目の前の女(おんな)しか見えなくなる。
不意に、その彼女が笑った。
僕に聞こえるくらいに、声をあげて。
「節夫さんは──童貞ですか?」
「……!」
それは事実だった。
三十間近のこの年齢になるまで、僕は結婚したことがなかったし、
学生時代に恋人もいなかった。
東京で勤め人になるようになっても、どうしても吉原当りに繰り出す勇気もなく、
そのままずるずるとここまで来てしまったのだけど──。
「なら、せいぜい楽しませてあげますわ。
こんな年増女でも、節夫さんを男にしてあげるくらいのことはできますから」
そう言って、結宇歌さんは夜着の裾をまくった。
下着を着けていないそこは、僕がはじめて見る女性の部分で──。
僕は、何も考えられなくなって、結宇歌さんに抱きついた。

目に前に差し出された生々しい牝の肉。
それは、好かれてもない相手だというやるせなさも、
兄貴や、その他の、別の男たちに対する嫉妬心も、
何より、急に手に入った地位と金で女の身体を買う、
という行為の罪悪感さえも僕の中から忘れさせて、
その代わりに、自分でも怖くなるくらいに強い獣欲だけを与えた。
そして、僕は、その衝動に耐えられず、何度もその女体の上に乗り、
したたかに精を放ち続けた。
20ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/03/29(日) 00:53:38 ID:HqxVed2u
ぼんやりと覚えている。
「そう。そこ――あせらないで」
「あっ……そこ……」
「動いて……」
「そう。そのまま……出してください」
「……まだ、するのですか」
「そう……じゃ、このままもう一回……」
オレンジ色の闇の中で、僕はいったい何をしたのだろうか。
植えた野犬か、狼のように襲い掛かったのに、
僕の下の甘い肉の塊は、当たり前のようにそれを受け止め、
息をするか、水を飲むかのように、淡々とそれを進ませて行く。
吉原などで春をひさぐ女たちというのは、
あるいは、こういう風に男を捌いて行くのだろうか。
売春。
食べさせる、生活の面倒を見るということを代価と考えれば、
夫婦の間柄でさえ、それは、こういうものなのかもしれない。
しびれた頭で認識できるのは、何事も混沌とした泥のようなものだけで、
僕は、ただただ、その泥の中に、
同じくらいにどろどろとしたものを放ち続けることしかできなかった。
21ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/03/29(日) 00:54:08 ID:HqxVed2u
朝。
畳の匂い。
差し込む白い光。
小鳥のさえずる声。
――自分の姿を認識して罪悪感に打ちのめされる時間。
僕は、自分が最悪な下種であることを認識する。
生活、いや、金銭(かね)で――好きな女を自由にする。
女を、買う。
憧れていた女性を、娼婦に、売春婦にする行動。
そして、自分からそれを受け入れる女(ひと)。
罪の意識は、混乱と失望感にまみれていた。
「……おはようございます」
僕が目覚めたのに気がつき、兄の愛した女性は、髪を結い上げながらそう挨拶をした。
鏡台に向かって手早く支度をしながら、まるで、昨晩のことがなかったように、振舞う。
「……」
僕は、何も言えず、視線をそらす。
「これから毎晩――させてあげます」
後ろを向いた結宇歌さんが、そう言った。
そういうことをしても、まったく傷つかない女(おんな)の声で。
「……僕は……」
なぜか、その時、黙っていられなかった。
「僕は、貴女のことが好きです……」
なぜか、そう言った。
十年もずっと言えずにいたことばなのに。
「――そういうことを、言わないでください」
結宇歌さんは鏡台のほうに向いたまま、静かに答える。
「ごめん。でも――」
「それに、ことばが間違っています。
好きです、ではなく、好きでした、――でしょう?」
「……」
22ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/03/29(日) 00:54:39 ID:HqxVed2u
「私は、節夫さんが心の中で勝手に考えていたような女ではありません」
「……」
「私は――そうね。白蟻ですわ」
「え……?」
「覚えてらっしゃいますか、昨日の松の木」
「……ええ」
「私は、あれにたかっていた白蟻のような女です。
うかうかしていると、貴方もあの松のように喰い尽くされますわ」
「それは、どういう――」
「……ふ、ふふ」
小さく笑って、結宇歌さんは立ち上がった。
僕のほうを見もしないで、寝室から出て行く。
「……では、また今夜」
そう言って。
「……」
一人取り残された僕は、なぜか、結宇歌さんのその後姿が、
振り返ってくれるような気がして、ずっとそれを目で追った。
廊下の角を曲がるとき、結宇歌さんは一瞬立ち止まり、
だけど、そのまま足をすすめて、僕の視界から消えた。
「白蟻……」
僕は、阿呆のようにつぶやいて、今度こそ部屋に一人で取り残された。


                 ここまで
23名無しさん@ピンキー:2009/03/29(日) 01:13:32 ID:JhC6AX2Y
おつですー

ここからどうやって一途にさせるのか楽しみなり。
24名無しさん@ピンキー:2009/03/29(日) 02:39:15 ID:TshawGuH
GJすぎる
熟女ビッチ派だったから読めてよかった
25名無しさん@ピンキー:2009/03/29(日) 15:06:29 ID:JPNrt2Cx
エロい感じで良い
26名無しさん@ピンキー:2009/03/31(火) 11:31:02 ID:r9RpxB0a
しかし前スレ最後のは面白くもないし意味がわからん
つーか文才を言い訳にして自分を卑下する奴って虫ずが走る
「そんなことないよ面白かった」とでも言ってほしいんだろうな
誰が言うかクズ
27名無しさん@ピンキー:2009/03/31(火) 17:46:23 ID:AK3BGcdM
淑女ビッチいいね〜
こっちのが好みかも。
28名無しさん@ピンキー:2009/03/31(火) 17:47:38 ID:AK3BGcdM
まちがえた。熟女です。
淑女ビッチてどんなや
29名無しさん@ピンキー:2009/03/31(火) 23:07:41 ID:EDJ2TQEu
>>26
新スレが立つ前に埋めることで誘導スレを貼れなくして、新スレ移行を妨げるパターン。
30名無しさん@ピンキー:2009/03/31(火) 23:36:49 ID:+xvbTYZZ
>>28
表面的に礼儀正しい?慇懃無礼?
31名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 04:45:42 ID:vfTt2vTM
>>26
突っこんで欲しいのか?それとも同意してほしいのか?
32腹黒ビッチ 2章(中):2009/04/01(水) 05:31:23 ID:C4LeQOqO
お久しぶりです
ゲーパロさんをぶった切ってしまうのが嫌だったんですが、
そろそろ書き溜まってきたので投下します
長くなったので中編と後編に切るね

女子高生・女子大生好きの俺は、美園ちゃんに悶えている
処女ビッチいいよね!
33腹黒ビッチ 2章(中):2009/04/01(水) 05:35:29 ID:C4LeQOqO
 責任の押し付け合いと言うのは、いつもお決まりの過程を経るものだ。誰がゼミ長やる?
という議題に、最初は口をつぐむ。しんとした空間のぎこちなさに、全員が限界まで我慢す
る。そのうち痺れを切らした誰かが、自分がいかにゼミ長になれないかを切り出す。そこか
ら始まるのは、醜いなすりつけあいと相場は決まっている。
「俺はサークルの代表もやってるし」
「バイトで忙しいんだよ」
 そうして泥沼化した話し合いが三十分を超えたくらいで、誰かが言った。じゃあ、くじびきで。
即席でくじを作り、引いて行くことになる。誰もが「最初からこうすれば良かった」なんて不毛
なことを思いながら。自分のくじは、幸い真っ白だった。はーやれやれとため息をついたその
時、有華が立ち上がった。
「……斎藤さん?」
「決まったみたいだから」
「え、っと、じゃあ斎藤さんがゼミ長……」
「じゃない。この通り白」
 ひらひらと、全員に見えるようにくじを揺らす。
「バイトなの。もう遅刻寸前だから行くね」
「ちょ、ちょっと待って。これから新歓コンパなんだけど……」
「先輩達にはもう言ってあるから。それじゃ」
 あっけにとられている他のメンバーを一瞥して、有華はさっさとバッグを取り、出て行ってし
まった。

「なんつーか、斎藤さんってあんなだから和田教授と気が合うんかね……」
 栄治がいささかがっくりした様子でちびちびと焼酎をすすっている。斎藤さんのメルアド聞き
たいなーwktk!なんて意気揚々だったからこそ、その落ち込み具合は大きいようだ。
「元気だしてよ、葉山君。まだ始まったばっかりなんだし、話す機会は嫌ってくらいあるわよ」
「まあ、うちのゼミ自体法曹目指す奴だけだから、そういうピリピリしてるのも少なくないんだけ
どね」
 四年の先輩がそう言って、別所さんのグラスにビールを注いだ。六人掛けのテーブルには、
俺・栄治・神田・別所さんと、四年生が二人。先輩はさっきから別所さんのグラスにハイペース
に酒を勧めている。お持ち帰りする魂胆なんだろうが、酒をあおる別所さんの様子に酔いは全
く見られない。むしろ先輩の方がべろべろになり始め、さっきから口が軽いのだ。
「斎藤さんはこのままストレートに問題なく行きそうだよなあ。あれだけ勉強してるんだから、も
しかして東大の院でも目指してるんじゃないか?案外、受かるのも俺達より早いかもな」
 神田は比較的冷静に話し始めた。
「でも、今から焦りすぎる必要はないと思う。院の試験はあるけど、本当の勝負は四年後だし
ね」
「だな。トップ合格でも目指してるってんなら別だけど」
「案外、本当に狙ってるんじゃないか?和田教授も斎藤さんのことは買ってるみたいだ。まあ、
確かにね。彼女なら院行きはこのまま確実でしょ。噂では、三年卒業制の適用第一号になるか
もってのも聞いてる」
「なんでそんなに生き急いでるんだかね。あの子みてると『鬼気迫る』ってのがそのまま当ては
まるな」
 先輩の言葉を耳に流しながら、思い出すのは寒い日もぴんと背筋を伸ばした有華の姿。俺達
にはただその背中しか見えないが、先輩達から言わせてみるとそれは余裕がないように見える
らしい。ぐずぐずと、言葉にできない感情が胸に滞留する。
 押し流すように冷酒を胃に入れた。
「そういえば、克哉は高校一緒なんだろ?」
 栄治は赤い顔をして、へらへらと俺の顔をのぞきこんだ。
「……ああ、うん」
「斎藤さんって昔っからああ?」
 昔から。たったその一言でよぎる、有華の笑顔。偶然今朝、有華の夢を見ていたせいで、それ
はあまりにも鮮烈によみがえった。
「―――覚えてない」
「えー、あんな美人をー?」
 嘘をつくのは、もう何度目になるかも覚えていない。噂になるほどの美人は飲み会の度に話題
には出るが、その度に俺はしらを切った。だけど、吐き出すようにつぶやいたその言葉は、存外
俺自身を苛んだ。有華、有華、有華。どれだけ俺に纏わりつく。どうしても離れない。
34腹黒ビッチ 2章(中) 2:2009/04/01(水) 05:44:11 ID:C4LeQOqO
 眉間に皺が寄り出したその時、つんとジャケットを引っ張られた。
「ねえ、高校の時ってどうだったの、一宮君って」
 つやつやと照明を照り返すピンク色の唇が、にこりと綺麗な形を作る。有華の厳格が遠ざかる。
少しだけぼんやりと別所さんの顔を見て、ようやく、自分の脳が回転を始めた。
「高校生の時は、ずっと本読んでた」
「フランス……」
「黙れ栄治。―――クラスに一人はいるだろ。教室の隅で、本読んでるような奴。その中の一人
だった」
 何を読めばいいかも分からなかった。そのくせ人の視線ばかり気になって、初めは芥川賞作ば
かりを読んでいた。家ではライトノベル専門のくせに。
「クラスメイトみたいにマンガ読む勇気もなくて、授業はついていけなくて、一人でぼんやりしてた」
「へえ、意外だね」
「そうかな、今もあんまり変わらないよ。……高三の時に格好とか気にしだして、それで友達が出
来たくらいで」
「ああ、あるよね。オシャレに気を遣いだす時って。私は中二だったなぁ。それまで、ひざ下のスカー
トににくるぶし丈のソックス履いてたの。ダサいよねー」
「俺は逆。高三までスラックスの下にふくらはぎまである靴下履いてたよ」
「アハハハハ!すごい、ダサい!」
「ほんと酷かったと思うね。四十代のおっさんメガネに、猫背で、カバンはリュック。ダメ押しのように、
伸びた髪結んだりして。体育の時はみんなが俺を見ないようにしてた。シャツをズボンにインだぞ。
昔の俺を殴りたくなるな」
「ひ、酷い……でもいるいるそんな人……!」
「でも別所さんみたいに、中二だったらマシだろ。俺はもう手遅れ寸前だったし。自己改造目指して
とりあえず買ったメンズノンノは、あの頃の俺には輝いて見えたね」
 今にして思えば、あの頃の自分は本当に目も当てられない状態だった。でもそんな俺に、有華は
何も言わなかった。デートですら恥ずかしいはずなのに、何も言わずにニコニコ笑っているだけだっ
た。だけど、何も言われないからこそ俺は自分の醜態を気にしたのかもしれない。口出しされてい
たら、きっと俺はすぐに嫌気がさして、有華を遠ざけていただろうから。
「そっか……だからかぁ」
 別所さんは、一人納得したように頷いている。
「私が話しかけても、いつも引き気味だったでしょ?地味ーに傷ついてたんだよ」
「……ごめん」
「あはは、いいよ。一宮君って結構かっこいいのに鼻にかけてる風でもないし、むしろ目立たないよう
にしてるなーって思ってたの。私と話してる時も、「なんで俺が?」って目がキョドってるんだもん。
でも、なんとなく理由分かった」
 向かいに座る別所さんは、真っ直ぐに俺を見つめてきた。俺はと言えば、否定することが何もない、
だけど気まずい。視線を外すように、舟盛りにされた刺身を取った。
「ねえ、一宮君」
「ん?」
 一応ブリを咀嚼しているので、口を開けないようにして答える。ふと頭を上げると、別所さんの目は
熱を持っている。
「ゆっくりでいいから、私、一宮君と仲良くなりたい」
 フラッシュバック。もしくはデジャヴ。
「……一宮君、どうしたの?」
 別所さんは、不安な表情で俺の返事を待っている。そして俺の様子がおかしいのを不審に思ってい
るようだった。
「いや、……いいよ」
「ほんとに?嬉しい」
 とろけるような頬笑み。女の子特有の、砂糖菓子のように可愛い笑顔。
『うれしぃよぅ』
 なのに目の前に現れるのは、同じように笑んだ有華。
 明らかに俺に好意を持っている別所さんと話をしながら、それでも思い出すのは有華のことばかり
だった。
35腹黒ビッチ 2章(中) 3:2009/04/01(水) 05:45:34 ID:C4LeQOqO
 みんな酔っぱらっているのに、俺だけが酔いの冷めた顔をして、二次会に向かう集団から一歩遅れ
て歩いていた。別所さんは、四年の女の先輩と一緒にいる。ぼんやりと彼女を見つつ、横でぐだぐだ
文句を言っている栄治と神田と連れ立っていた。神田はべろべろに酔っぱらっている。そのふらふらな
足取りを気にしながら、俺は別所さんのことを考えた。
 別所さんがこれから俺に告白してくるようなことがあったら。だけど今の俺には、それに舞い上がるほ
どの情熱は無かった。むしろそのことを考えただけで寒気がするほどだ。世の中の女子には、もしかし
て告白のマニュアルでも出回っているんだろうか。それほど、有華と別所さんのアプローチの仕方はパ
ターン化しているように思えた。そのパターンに乗るほど、俺はパターン化されているんだろうか。そうし
て、引っかかってしまう馬鹿な男なんだろうか。
 これ以上仲良くならないといいんだけど。そんな予防線を張っていると、栄治が突然声を張り上げた。
「あ、あれって斎藤さんだあ!」
 指をさす先は、でかい交差点。
「……いないぞ。幻覚だろ、栄治」
「よく見ろよカンダ!ほら、あのビル側の、アレ!」
「はあー?」
 神田と栄治が二人して有華を探している。俺はどうせ酔っぱらいの見間違いだろうし、有華だとしても
探してまで見たくないと思い、青にならない信号を待ち続ける。が、神田まで声を上げた。
「……本当だ、斎藤さんだ」
「だろー!?俺、すげー!」
「なんで斎藤さんがここに……っていうか」
「あの男誰だー!?」
 ばっと俺も、栄治が指をさす方を見る。交差点を挟んで、対向車線の信号に、確かに有華はいた。
が、それは、俺の知る有華ではなかった。
 遠くから見ても目立つ、派手な髪形と派手な衣装……それはもういっそドレスと言っていい。春とはいえ
まだ長袖の羽織物は外せない時期に、不似合いなくらいの露出の高い服。腕はむき出しだった。そして
夜の薄暗い街灯の下でもすらりと白いその腕は、スーツを着た男に回されていた。恋人、と一瞬考えたが、
そんな訳がない。男はどう見ても五十代だった。そして、ネオンが輝くビルに消えていく。それが意味する
のは、ただ一つだった。
「お水で働いてるって本当だったんだな……」
 栄治ががっかり気味に呟く。どう見ても夜の世界で働いているような、服と化粧、そして媚びた笑み。
 目の前が、真っ暗になった。
36腹黒ビッチ 2章(中) 4:2009/04/01(水) 05:47:46 ID:C4LeQOqO

「おい、どうしたんだよ克哉」
 二次会のカラオケに来てからずっと隅の席で酒を飲んでばかりいる俺に、心配したのか神田が声をか
ける。
「飲みすぎだろ、どう見ても」
「……そうか」
「なんかあったか?っていっても、さっきの居酒屋は別に何もなかったよな」
 BGMは、栄治が歌う聖飢魔II。本家に負けず劣らずの叫びっぷりだ。
「何も、ないさ。何も無かったんだよ。うん」
「訳が分からないぞ」
「俺の夢だったのかもしれない。だったらもう忘れたい」
 俺のひとりごとに、神田は完全にクエスチョンマークを散らしている状態。そこに、みんながどん引きする
くらいの閣下っぷりを発揮してきた栄治が帰ってきた。
「フハハハハ、吾輩のミサに酔いしれろ!」
 この能天気な性格には助けられることも多いが、今ははっきり言って邪魔だ。が、俺のどん底の落ち込みっ
ぷりに、栄治もふと我に返ったようだった。
「あれ、どうした克哉」
「……さっきから飲んでるんだけど、様子がおかしいんだよ」
「うわっ、これ全部お前が飲んだの?ひーふー……ってかさっきチューハイピッチャーで頼んでたバカってお
前!?」
「俺は止めたんだけどね」
「何してんだよ克哉ぁ。なんかあったのか?俺でいいなら聞くぞー」
 栄治は生粋のお調子者だが、その分、他人を思いやれるいい奴でもある。どすんとさっきより近くに座った栄
治が、俺の言葉を待っている。アルコールに浮かされたように、俺の言葉はふわふわと宙を漂い始めた。
「有華が……」
「アリカ?」
「在り処……財布でも忘れたのか、克哉」
「有華が知らない男と歩いてて……」
「ありか……」
「アリカ……ありか……あ!斎藤有華!?」
「有華が、男と歩いてて……媚びてて……やっぱりあいつは俺と付き合ったのも、金目当てだったんだって思っ
て……」
「俺と」
「付き合った?」
「うん、高校の時、一年付き合った」
「斎藤有華と?」
「うん」
 そこで、ジョッキになみなみ注がれたビールを一気に飲み干した。ふうーと一息ついて、ふと黙り込んだ栄治を
見る。栄治はぽかんと口を開けて俺を見ていた。
「何それ、マジで?」
「マジで。でも、あいつ金目当てだった。俺んち、親が弁護士やってるだろ?俺は二男だからあんま関係ないんだ
けど、でも親父が最近俺にうるさいんだよ、俺も院行けって、だから」
「んなこと前から聞いとるわ!え、何お前、斎藤さんと付き合ってたの」
「うん。俺の金狙ってたんだけどさ。あいつのためにプラチナの指輪も買ったし、夏休み沖縄行ったし、デート代も
出してやったけど、俺全然気づいてなくて」
「……それ、マジで?」
「うんーで、ある日問い詰めたら、そうだって言ってさー。俺ショックでさー。有華のために俺、かっこよくなったの
になー。有華のために勉強もして、同じクラスにもなったのに。全部無駄だったんだよなー」
 ぐらぐらと頭が揺れるまま、思いつくまま、色んなことを喋った。何を話しているのか分からないまま。その間も酒
をせがみ、ひたすら飲んでいた。ますます何をしていたのか分からなくなっていった。栄治と神田は、ただうんうん
頷いて聞いてくれていたと思う。
 アルコールに火照る熱が、脳まで浸食していく。ゆらゆらと、世界の何もかもが揺れているようだった。波に漂うよ
うなそれは、とても気持ちが良かった。ざあざあとカラオケの音は砂嵐のように不鮮明な雑音に変わって行き、ざあ
ざあがざんざんに、そうしていつの間にか寄せては遠ざかるリズムになった。目の前までが揺れて、いつしか色を
持ち、遠くに雲を持つ海になった。
37腹黒ビッチ 2章(中) 5:2009/04/01(水) 05:48:51 ID:C4LeQOqO

 有華はあれから、一つも俺に何か話しかけてきたことはない。
 有華は確かに、金目当てで俺と付き合うなんて人として最低のことはしたけれど、だからといってそれを責めること
が俺にできるか?
 有華は、俺にそんな素振りを見せたことは一切なかった。それこそ、有華は非の打ちどころない恋人であり続けて
いた。その裏を知らずにいた間抜けな俺は確かに可哀想だが、有華は、少なくとも一人の人間を最大限尊重して接
してくれていた。こんな風に、俺が人前に出せるような風貌と対人能力をつけるに至ったのは、間違いなく有華のお
かげだ。マナー講座にでも行ったと思えば、確かに金を出してもおかしくない。
 あの頃俺は、返しても返しきれないほどのものを有華にもらったと思っていた。もちろん愛情は一番だったが、それ
以外にもたくさんのものを有華はくれた。有華のしたことは、有華が俺にくれた様々のものを無にするほど、汚いもの
だっただろうか?
 そうか。俺はずっと、有華を待っていたのだ。
 言い訳でいいから、言葉が欲しかった。一言でいいから、何か、俺に執着する言葉をくれたら、それだけで俺は許し
てしまうつもりだった。それだけ俺が有華にべた惚れだったことを、有華自身が知っているはずだ。俺を愛していると
言ってくれたら。そんなものでなくてもいい。あの時金を置いていってくれたら、それだけもう、俺は有華を追いかけて
しまっただろう。
『好きだよ』
 その言葉を、嘘でも言えてしまうなんて、信じたくなかった。信じたくない一心で大学まで追いかけて、ゼミまで必死
に探って、気難しい和田教授に頭下げて。

 もう俺に一切関心なんてないと、有華から突き付けられた。それは、酷い絶望感だった。



 それからしばらく、俺は無気力に過ごした。必要最低限のことはもちろんやる。大学にだってきちんと行った。だけど
それ以上のことには、体が動こうとしなかった。
 そんな俺に、事情を知る友人たちは慰めたり放って置いたりと優しく接してくれる。あんな女忘れろ、と言われたこと
もある。だが、何をしたって有華のことが忘れられないのに変わりはなかった。今までだって、三年経っても忘れられ
なかったのだ。それに、有華はいつもと同じ顔でゼミの教室にいるのだから。むしろあの夜の方が夢のようだった。
 一ヶ月、二か月と日々は過ぎて行った。その間に、別所さんに声をかけられたことは何度もある。今までは流される
ままにその話に乗っていたが、あれ以来俺は別所さんを避けるようになった。別所さんは最初怪訝な顔をし、それは
だんだん悲しそうになり、最近では納得いかないという風に見えた。
 だけど事態は、俺ではなく、周りが勝手に動いていた。
38腹黒ビッチ 2章(中) 6:2009/04/01(水) 05:50:29 ID:C4LeQOqO



 それから数か月が経ったある日、ゼミの終わってから駅を目指す道中、俺は忘れものに気付いて引き返すことに
なった。来週発表の資料を、机の下に置いたままだった。一年の頃に同じようなことをやらかして、翌日になってか
ら取りに行ったら新品のルーズリーフが無くなっていたことがあった。面倒ではあるが一応回収に行かなければ。
「あなた、常識がないのね!」
 演習室のドアを開けようとしたその時、誰もいないと思っていた教室から誰かの怒り声が響いた。
「自分が最低だとか思ったことないわけ!?」
 何やら修羅場のようだ。この声は別所さんだ。終わるまで入りにくいなと内心ため息をつき、ドアの前で待とうかと思っ
た。
「何も知らない一宮君をもてあそんで、罪悪感のかけらもなかったの?」
 唐突に、俺の名前が呼ばれる。心臓が跳ねた。
「一宮君に、謝りなさいよ。誠意こめて」
 ドアにつけられたガラスから、そっと中をのぞきこむ。十五人のゼミ員のうち、十人くらいがそこに残っている。全員が
気まずそうな顔をしながら、一人の女を見ていた。槍玉に挙げられているのは有華だ。有華はまだ席に座ったままで、
別所さんはその前に立ち、有華を睨みつけている。有華はただ冷静に見つめるだけだ。
「……私のやってることが褒められたことじゃないことくらい、分かってるわよ」
「あ……ったりまえじゃない……っ!!」
「でも、あなたにそんなことを言われる筋合いも無い」
 言い終わって有華は目を細め、別所さんを冷たく見上げた。
「これは私と、一宮君の問題でしょう」
 有華の言い草に、別所さんの顔がますます紅潮する。
「関係あるわよ」
「……へえ」
「私は、一宮君のことが好きなの。だから、関係ある」
 別所さんは堂々と言い放つ。俺を好きだと認める言葉に、全員がおお、と驚いたように別所さんを見た。が、ただ
一人、有華だけはその言葉に冷笑する。
「あはは!すごいね、別所さんにとっては、好きだったら他人事にも踏み込んでいいんだ?」
「……っ、何がおかしいの」
「そっちこそ常識ないんじゃない?ストーカーの言い分よ、それ」
 別所さんを馬鹿にしたような言い方に、栄治が眉をひそめているのが見える。そして、俺を背にしている神田が言っ
た。
「問題がすり変わってるよ。別所さんも落ち着いて」
「だって、この人おかしいわよ!なんでこんな状況でこんなに落ち着いてるの?悪いことを悪いって指摘されて、なん
でこんなに冷静なのよ。金が第一だって、はっきり言ったわよこの人!頭おかしいんじゃないの!?」
「―――斎藤さんは、きっとそれが悪いことだなんて自分では思ってないんだろうよ」
 栄治は、らしくない声色で呟く。有華は、その言葉に反応した。
「うるさい」
 その時、有華の声が、聞いたこともないほど低いものに変化した。
「親に甘えてぬくぬく生きてる奴らが、何を偉そうに」
 その場にいる全員が、黙り込んだ。ドア一枚挟んだ廊下にいる俺でさえも固まるような、負の感情を押し込めた
有華の顔は、その場にいるものすべてを凍りつかせる冷たい凄みがあった。
39腹黒ビッチ 2章(中) 7:2009/04/01(水) 05:51:56 ID:C4LeQOqO

「そうよ、あなた達の言うとおり、ホステスしてるけどそれが何か?母の友人の店だからね、高校の時だって「手伝い」
なんていってしこたま働いたわよ。でもそれがどうしたの。お金を稼ぐ方法なんて、新聞配達から援交までいくらでも
あるじゃない。私のバイトが何だって、別にいいじゃない。お金を稼げるんだったら何だっていいわよ。時給一万円プラ
スナンバー手当なんて、破格でしょ?」
 だからってそんなバイト、と戸惑いつつ口をはさむ男がいた。今度は、有華はその男を見た。
「あんた達が思ってる通り、私はいつだって欲にまみれてるわよ。おいしいもの食べたい、綺麗な服着たい、化粧品に
だって金かけた、大学だって行きたかった。あんた達だってそれくらいの欲はあるでしょ?そのために小遣い使って、
バイトもしてるでしょ?私だってそのために自分の利用できるもの利用してるのよ。女を武器にして、客取ってきてやる
わよ。ダサい男とだって真剣に恋愛してやるわ」
「そ、その為に一宮君の気持ちを利用して、一宮君を傷つけて、それでいいっていうの!?」
「あのね、別所さんが何決めつけてるか知らないけど、私は金品をせがんだことなんて一回もないわよ。それに、飽き
たら捨てるなんてことも、考えたことなかったもの。一生一緒にいる覚悟だってあった。むしろこれも真剣交際じゃな
い。私は、一宮君のこと、大事にしてたわ」
「それらしい言葉で飾ったって、結局あんたは金目当てじゃない。金金金って、そんなに金が大事なの?だったら金と
結婚すれば!?」

 ダンッ!!

 教室内の時間を止めてしまうような、とても大きな音だった。机を殴りつけた有華は、別所さんをまっすぐに見ていた。
「そうよ、だから金持ちそうな弁護士になるのよ。だけどあんた達みたいに悠長に大学院になんて行く余裕もないから、
あんた達の何倍も必死に勉強してるんじゃない」
 有華の言葉に、思い当たるのはあまりにも突飛なことだった。まさか、そんな馬鹿らしいこと。確かに有華は誰よりも
勉強していた。その姿は誰もが認めるものだったし、和田教授がことさら有華を認めているのも頷けるほどの猛勉強ぶ
りだった。だが有華の言い草だと、それは俺達とは全く目指すものが違うということ。今になってそんなことをやろうとす
る奴、初めて見た。
 この場にいる全員が有華に呆れ、そして同時に怖れた。そのことは間違いないだろう。あくまで金を中心に回っている
価値観。それに従って動く誰よりも強い行動力。なんて極端な。
「あんた達の話聞いてると腹が立つ。あんた達は正義振りかざして、いい気になってればいいわ。弁護士だって職業よ。
悪人だって弁護してやって、金もらうのよ。金を稼ぐ手段なんて、結局は一緒じゃない。馬鹿にされたっていい、そんな
の、私は辛くも何ともない」
 そう言い捨てて、有華は机の上のものを、乱暴にカバンに入れていった。気迫に圧倒された奴らを最後に睨みつけ、
席を立つ。そして勢いよくドアを開けた。
「……っ!」
「あ……」
 有華の顔が、驚きに染まる。一瞬動きを止め、俺を見上げ、完全に無防備だ。有華をしばらく見降ろしていると、彼女
は顔をゆがめ俺を睨みつけたが、すぐに我に帰ると踵を返す。廊下にヒールの音を甲高く上げ始めた。
「ちょ、有華、待てよ」
 思わず声をかけるが、有華は反応しない。
「有華」
 有華の歩みはだんだんと早足になって、小走りになる。
「有華!」
 俺が叫ぶと同時に、有華は走り出す。ヒールとストラップじゃ走りにくいだろうに、器用に足を操っている。だけどスニー
カーの俺に勝てるはずもなく、有華の腕は簡単に俺にとらえられた。
「離して!」
「逃げないなら離す」
 誰もいない廊下で助かった。一つ間違えれば変人だ。揉み合いになりながらも呑気にそんなことを考えられるのは、
有華と俺の力の差が歴然としているからだ。有華は何度も腕を振り、逃げようとする。それを封じ込めるように体全体を
からめ取り、なんとか有華が動きにくい体制をとった。最初は有華は猛然と抵抗していたが、そのうち諦めたのかだん
だんとトーンダウンしていく。有華がとりあえず逃げないのを確認し、近くの空き教室に入った。
「有華」
 俺は有華を呼び、必死に見つめる。だけど有華自身は決して俺の顔を見ようとせず、視線を下にそらして唇を噛んで
いた。
 連れ込んだはいい。だが、何を話せばいいのか分からない。
 俯いていた有華が、やがて言った。
40腹黒ビッチ 2章(中) 8:2009/04/01(水) 05:59:24 ID:C4LeQOqO
「謝れって?土下座しろって?ああ、いくらでもしてあげるわよ。それであんたの気が済むならね」
 ぞっとするような気迫。
「お、俺は、そんなわけじゃ」
 俺の言葉に、有華は笑った。じっと、有華が俺を見る。まっすぐに俺の眼を射ぬく瞳は、明らかに俺を蔑んでいた。
41後書き:2009/04/01(水) 06:01:00 ID:C4LeQOqO
以上、今回の投下終了
配分間違って最後ぶつぎりになりました

つまんないと言う人、ほんとにすまんね
お手数ですが禁止ワード登録して読み飛ばしてください
俺も続き書こうか迷ったんだけど、とりあえず二章目だけでも終わらせることにした

有華のバイト先はただの高校生のバイトとして流してもらうつもりだったが、
気にしてる人が多かったんでネタにさせてもらいました
司法試験のことは、俺も法学部にいるけどよくわかんね
ちなみに投下する時、まったくエロパロと関係ないスレに誤爆してしまってめちゃくちゃ焦った
今度から確認します……
42名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 09:34:53 ID:Ig1eT/Mw
GJ
43名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 20:29:39 ID:vdHHMMWS
GJ
ここは余所だとアンチが生まれやすくなる要素を、むしろ前面に出していけるのが良いな
44名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 01:02:39 ID:Y3czPm0b
誤爆怖いなw
GJ
45名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 01:56:54 ID:U2xC924Z
GJ!今後の展開に期待!
46名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 02:41:49 ID:+1k54TDz
GJ
投稿を禁止する権利なんて
管理人にしかないんだ
気にせず、三章・四章と続けてください。
47名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 21:52:39 ID:mDK9EoNe
期待通り修羅場があってニヤニヤが止まらないw
ここからどうなんだろうなあ
48名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 22:45:49 ID:1T6Rkcg9
GJ
49名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 00:09:05 ID:tuWtX82e
なんかデレがくるまで長そうだね
50名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 00:55:23 ID:PNgqeNgG
GJ
これはよいビッチ
51名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 01:07:13 ID:/6tmh1lr
>>30
つまり>>28は何も間違っていないわけだ
52名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 03:20:06 ID:yoxXS78E
熟女に淑女は合う。つまり、パパとアンナみたいなもんだな!
53名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 18:21:03 ID:05CAN2ly
>>41
GJ
続き、普通にきになる
54名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 02:08:18 ID:pRWKyNEE
前スレ最後ってお前じゃないでしょ?
55名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 02:09:44 ID:pRWKyNEE
おっと安価忘れてた
>>41
56名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 03:09:06 ID:GXuX3kWx
>>54
腹黒ビッチ書いてる人です

うん、あれは俺じゃないね
あんなにテンポ良く書けないです
俺は平易な描写文を無駄に重ねてしまう癖があるんでね
他スレの投下作も、俺だってわかりやすいと思うよ
57名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 16:23:17 ID:BnJY9g3H
ストイコビッチ
58名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 19:52:44 ID:dMa2PQQN
>>57
妖精さんは今名古屋の監督で忙しいんです><
59名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 04:11:56 ID:BVaIvBOY
しかし前スレのいじめてた女に逆転されたうえ
好きな男とられた話の人中断で消えちゃったな…
60名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 14:11:09 ID:mp02uVJW
>>59
あれも面白かったよな
61名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 19:09:54 ID:BVaIvBOY
面白かった。気が向いたら再開希望
62名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 19:44:41 ID:FqssgTPp
いいところで止まってたな、確か。
続きが思いつかなかったんじゃないかな?まぁしょうがない、そいうことあるよな。
…でも、再開希望
63名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 17:16:21 ID:GRw1h+5n
次スレの存在を知らなかったりしてな
64名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 17:20:36 ID:WYgbLjMA
保管庫マダー?
65名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 18:32:06 ID:Wk8RD6dU
初代スレで最初に書いて下さった方々が偉大すぎたな…と最近感じる
66名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 19:04:03 ID:ITDJwGNZ
この新スレから見だした俺は、面白い作品はあるものの
現段階でスレには、デレに一つも至っておらず悶えた
67名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 21:20:27 ID:o8Lm8NkJ
このデレを待ちわびる感じはツンデレに近い物があるのかな?ビッチデレ?
68ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:11:21 ID:j5ZpYlFF
白蟻の女王、下です。
白蟻の描写があります。
蟲が苦手な人はNGしてください。
69ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:11:52 ID:j5ZpYlFF
<白蟻の女王>・下

「――節夫さんは、フェラチオというのはご存知ですか?」
オレンジ色をした幻想の世界で、結宇歌さんがささやいた。
「……こ、ことばだけなら……」
「……そうですか」
布団に横たわった僕に添い寝する年上の女(ひと)は、
僕の性器を握って弄びながらささやき続ける。
「……もとは、赤線や青線の女郎のすることだったそうです」
「は、はい……」
「それも、普通はしないことだそうです」
「そ、そうなんですか」
「ええ。商売女でも、そんなことをする人は二種類だけ」
「……」
「一つは、馴染みの上客だけにする最高のサーヴィス」
「……」
「もう一つは、もう客がつかなくなったお茶挽きの年増女郎が、
客を寄せるために使う生計(たつき)の技」
「……」
「私のは、どちらでしょうね」
「それは――」
「ふふ、私にとって、節夫さんは最高の上客です。
ですけど、やっぱり、私はお茶挽き女郎ですわね。――します」
いつの間にか、仰臥する僕の下半身のほうに移動していた
僕の物が、含まれる。
女の人の唇に。
結宇歌さんの口に。
ぬめり、とした柔らかいものが触れる。
「うわっ……!」
未知の快感に、僕は布団の上で、陸に上げられた魚のように跳ねた。
70ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:12:22 ID:j5ZpYlFF
「ふふ――」
結宇歌さんが冷たく笑う。
格下の男を嘲笑(わら)う、軽蔑の笑み。
軽蔑しながら施しを与えるように、サーヴィスをする女(ひと)。
僕は、酷薄な女神に使える氏子のように、それを求め、
結宇歌さんは、それを受け入れる。
僕の先端に舌がそっと這う。
溝を掘りおこし、一番張り出した縁のカーブを沿い、
浮き出た血管をなぞりあげる。
そのたびに、僕は、阿呆のようにうめいて身じろぎした。
「……感じますか?」
「はい……、すごく……」
「敏感なのですね」
その声に、僕は赤面した。
女をあまり知らない――つい先日、この女性で知ったばかりだ――ことが、
なんとも恥ずかしく、情けなく思える。
こんなとき、何を言えばいいのだろうか。
「……気持ちいいです、とても。こんなのは、はじめてです」
それだけを、僕の下半身に身をうずめる影に答えた。
「……」
はっとしたように、結宇歌さんの動きが止まる。
僕を軽蔑したような含み笑いの気配さえ、消えていた。
「……?」
「……私、そんなにこれが上手くないそうです。
あま気持ちよくない、と言われてました」
ぽつりと、結宇歌さんがつぶやく。
「そんなこと――」
女性の口で愛撫してもらう。
しかも、こんな美人で、ずっと好きだった女性に。
71ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:13:02 ID:j5ZpYlFF
「これが、気持ちいいことでなかったら、
いったい、何が気持ちいいことなのでしょう」
僕は、少々ムキになって言った。
馬鹿らしいことだけど、その時、僕は、
大事に思っている物をけなされた気分になっていたからだ。
「知りません。――幸雄さんは、私はへたくそだと言っていました」
結宇歌さんはそう言い、言ってから、はっとしたように僕を見た。
正確には、豆球の灯りの下で結宇歌さんが本当にこちらを見ているのか
わからなかったけど、僕は、そう感じていた。
「……ごめんなさい」
「いえ……」
結宇歌さんの口から兄貴の名を聞き、僕は、複雑な思いに駆られた。
「あの――」
「はい」
「兄貴のこと、好きだったのですか?」
馬鹿な問いだ。
それを聞いて、どうしようと言うのだ。
「いいえ。本当の事を言えば、それほどは――」
ほら、予想外の答えを聞かされて動揺してしまうではないか。
はい、と答えられても、僕の心はざわめいただろうに。
「――私は、ずっと昔に、好きな人がいました」
「……」
「今でも好きです。私の心は、ずっとその人のもの」
「……」
「でも、その人とは結ばれませんでしたし、
心がここになくても、身体は生きることを要求します」
「……
「だから、私は、こうして身体を売って生きています。
さすがに女郎さんにはなれませんが、それと同じようにして」
「……」
72ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:13:33 ID:j5ZpYlFF
闇の中、僕の下半身の上に、僕の考えもつかない生き物がうずくまる。
そして僕に、僕の知らない生き方を告白する。
「……その人は、春菜ちゃんの――」
「いいえ、私のあの人は、春菜の父親ですらありません。
私は、春菜の父親にもひどい事をして逃げたのです」
「そうですか――」
「ね、私、ひどい女でしょう?」
「そんなことは――」
「だから、私は、幸雄さんや貴方に、
こうしたサーヴィスをして生きている身になったのです」
「……そんなことを言わないでください」
「まあ、――なぜ?」
結宇歌さんの声音が変わった。
それは、明らかに、僕のそのことばを待っていた声だ。
準備して、待ち構えていたから、すぐにそう言えたのだ。
「――私に、こうさせるのを期待していたのは貴方のほうですよ?」
話している間も愛撫を続けて猛々しくなっている性器を前にしては、反論もできない。
結宇歌さんは、それを十分承知して、そんな話に流れを持って言ったのだ。
長い間欲しくてやっと手に入れた――買うことができるようになったおもちゃを、
手に入ったからは散々遊び倒さなくてはいられない、助平で浅ましい心を知った上で。
セックス。
女性と交わることができる、という快楽は、一度手に入ると捨てがたい。
彼女の身の上を知った上で、
でも、僕はこの女性の肉体を好きに出来るという快感に
手を着けずにはいられない、卑怯で意思の弱い男だ。
そうして、結宇歌さんはそれさえも知り尽くしていて――。
何も言えずにいる僕に、結宇歌さんはまた軽蔑したように微笑み、僕の物をそっと咥えた。
今度は、すぐに僕は爆発して、年上の女の人の口の中に精液を噴き出す。
結宇歌さんは、僕の漏らした精を、こくり、と音を立てて嚥下した。
――その時、何かが、僕の中ではじけた。
73ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:14:04 ID:j5ZpYlFF
「――結宇歌さん!!」
「何を――!」
驚いたような結宇歌さんの声。
大人しいと思っていた生き物が、突然肉食獣に変わったような驚愕を、
僕は感じ取り、そして丸ごと飲み込んだ。
力任せに、結宇歌さんの裾を割る。
「や、やめてくださ――」
慌てたような声を挙げる女(ひと)。
そこに恐怖よりも、戸惑いと羞恥を強く感じ取ったから、
僕は、それをやめなかった。
広げた太ももの奥に、顔を突っ込む。
獲物にかぶりつく野犬のように。
「何を――、やめっ──」
そんな悲鳴さえ、甘やかに感じる。
馥郁(ふくいく)とした匂い。
成熟した女性の、湿った性器の匂い。
僕は興奮し、その場所にむしゃぶりついた。

――舐める。
舐めあげる。
女の人の性器を。
好きだと思った女性の性器を。
10年前に心を奪われた女性の生殖器を。
「あっ……!」
太ももを閉じようとする結宇歌さんの抵抗は、
しかし、決定的なものには感じられなかった。
必死に見える。
全力に思える。
本気に思える。
だけど、それは、僕のその行為を止めるだけの力はなかった。
74ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:14:34 ID:j5ZpYlFF
どこかで聞いたことがある。
(女が本気で抵抗すれば、男の力でも決して股は開けないものだ。
嫌よ、嫌よと言っていても開かせられたんなら、
まあ、向こうもその気ってこったなあ)
それは、兄貴が酔っ払って言ったことだったか、
勤め人時代の上司が宴席で上機嫌で話した猥談だったか、それは忘れた。
だけど、その話の中身だけはなぜか頭の片隅に焼け付いて離れなかった。
こうして――。
こうして、僕が唇と舌を這わせていて、本気で抗わないということは、
結宇歌さんは、――そういうことなのだろうか。
わからない。
わからないけど、僕は、それを頭の片隅に押しやって夢中で舐めた。
「駄目です、そんなところを――汚いです」
「汚くなんかありません。結宇歌さんのここは――素敵です」
実際、そう思う。
性器は、排出器官を兼ねる。
僕の舐めているこの粘膜の洞(うろ)のすぐ傍に、
結宇歌さんが小水をする孔(あな)がある。
でも、欲情した牡にとって、それは、嫌悪感を抱かせるものではない。
むしろ、今、抱え込んでいる牝の一番恥ずかしい部分を覗き込んでいるその実感は、
欲情を煽るだけの効果をもたらした。
「女の人のここの部分は、よくわからないです。
だから、もっと見せてください」
熱病に浮かれたような声は、僕の口から漏れたものだろうか。
僕は、前にも倍する熱い視線と、口付けを結宇歌さんのその部分に注いだ。
「ひっ」
結宇歌さんは、慌てたような声を上げる。
その声の必死さは、抵抗よりも、むしろ未知の体験への畏れを感じさせた。
未知……?
違和感のようなものを抱きかけた瞬間、結宇歌さんが仰け反った。
75ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:15:05 ID:j5ZpYlFF
「ああっ、だ、だめえっ――」
それは、初めて聞く結宇歌さんの甘い悲鳴。
今まで、諦めと投げやりさが半分混じった職業的な熱心さで
僕に奉仕するだけだった女(ひと)が、初めて見せた反応。
結宇歌さんは、布団の上でびくん、びくんと跳ねた。
それが、女性が達するときの動きだというのに気がついたのは、
まるで馬鹿のように呆然とそれを眺め続け、
結宇歌さんの身体が動きを止めた頃だった。
「結宇歌さん――?」
返事がない。
荒い、甘やかな呼吸音だけが聞こえる。
良かった。
一瞬、彼女が死んでしまったのではないだろうか、とさえ、このときの僕は思った。
はぁはぁ、と言う息の音。
やがて――。
「ひどいです……」
か細い声が聞こえた。
「すみません、はじめてのことなので――」
「私も、初めてです。あんなことをされるのは」
「えっ」
「あっ……な、なんでもありません」
結宇歌さんは、慌てたように手を振った。
「ここを舐められるのは、初めてですか?」
僕は、思わず聞き返してしまっていた。
「そんなことはありません。でも――」
結宇歌さんは口ごもる。
そんな態度も、十年目ではじめて見る。
だから僕は自然に問いを重ね、結宇歌さんはそれにも返答した。
「でも?」
「こんなに丁寧にされたのは、はじめて、です」
76ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:15:36 ID:j5ZpYlFF
クンニリングス。
言葉とか、何をするのかは知識としてあった。
男性がそういうことにはあまり熱心な時代ではない。
金銭(なね)や力で女性を簡単に手に入れられる男ならなおさらだろう。
でも、僕は、はじめて接する女(あいて)の性に、
自分でもびっくりするくらいに執拗な関心と愛しさを感じていた。
突然手に入った女神の、恥部。
それを愛撫するのに、手ではなく、食事を取る口や舌ですることに、
その時、僕はいささかの躊躇も覚えなかったし、
それが、結宇歌さんが、自分を殺して売り物にするサーヴィスと思っていた
フェラチオと対を成す性戯だということにも気がつかなかった。
ただただ、僕は、それをしたかった。
ただただ、僕は、それに反応する結宇歌さんが愛しかった。
「……」
「……結宇歌さん?」
沈黙が長く続いていたことに気がつき、僕は同衾する女(ひと)の名を呼んだ。
「すみません、まだ身体が動かなくて――すぐにします」
結宇歌さんが言っていることが、
僕の射精のための性行為を指していることを悟って、僕は首を振った。
「いいえ。僕は、今日はもういいです。
結宇歌さんも、今日はこのままもう寝てしまってください」
「でも――」
「いいんです」
その時、なぜか僕は、深く満足していた。
いつものように、射精をしたわけではない。
こちらの肉体的な快感は満たされたわけではないけど、
僕は、このまま二人で眠りに落ちることが、
とても素敵なことのように思えていた。
そして僕は、自分と結宇歌さんに布団をかけ、横になった。
77ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:16:07 ID:j5ZpYlFF
――うつらうつら、というのはとても良い言葉だ。
そういう時の空気を、とてもよく表現している。
この単語を思いついた奴は、
きっと、僕が今感じている感覚をその時に抱いていたに違いない。
そう確信できる。
夢見心地。
どこかで、結宇歌さんの声がする。
僕が答える声も。
「――なぜ、あんなことをしたのですか?」
「――わかりません。ただ、そうしたかった」
「男の人が、あんなことをするべきではありません」
「そうでしょうか」
「そうです」
「結宇歌さんも、僕にしてくれたじゃないですか」
「あれは……節夫さんへのサーヴィス……です」
「じゃあ、僕のも、貴女へのサーヴィスです」
「そんな──なぜ?」
「なぜ? 理由が必要ですか?」
「必要です。私は、貴方に養われています。でも、節夫さんは――」
「――貴女に好かれたいと思っています」
「……!」
息を飲む様子が、しかし、映画のスクリーンの向こうのもののようにおぼろげに感じる。
僕は何を言っているのだろうか。
でも、心の中のことを、僕は正直に話していると確信していた。
僕も。
結宇歌さんも。
だから、僕はなんのてらいもなく、そう言い、
そして結宇歌さんは沈黙した。
だけど、僕は、その沈黙が永遠でない事をすでに知っていて、
だから、オレンジ色の薄暗がりの中で穏やかにそれを待ち続けた。
78ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:16:43 ID:j5ZpYlFF
「私は、――そんな価値がない女です」
「僕はそうは思いません」
「ないんです」
「あります」
「私は、貴方にセックスを提供することだけしかできない人間ですよ」
「僕にとっては、大事な女(ひと)です」
「そんな価値がないと、私が自分で言っているのですから、まちがいはありません」
「たとえ、その「大事な物」を作った当の本人が否定したとしても、
それに価値があるかどうかは、貰った側が決めることではないでしょうか」
「ああ。――どうすれば、貴方を言い負かせるのでしょうか」
「言い負かす必要はないんじゃないですか」
「……私は、貴方を喰い尽くす白蟻ですよ?」
「また、それが出てきましたね。――誰かに言われたんですか」
「……はい。春菜の父親の家族に。その人が死んで、私が家を去るときに投げかけられました」
「そうですか」
「自分でも、そう思います。
私は、あの人を食いつくし、羽を生やして飛び去りました。
一番好きな人の元に行こうとして」
「……」
「でも、私の羽は短くて、その人の元には届きませんでした。
そして、私は、手近な松にたどり着いて、またその木を食いつくしたのです」
「兄貴のことですね」
「はい。私は、そう言う、度し難い女です。
だから、せめて――好きにならないでください」
「嫌です。世の中には、白蟻に食われたがる松もいるんです」
「――」
「ひとつだけ、最後に一つだけいいですか?」
「はい」
「――貴女の好きな人は、どんな男だったのでしょう?
僕は、できれば、その男に近づきたい。少しでも、少しでも」
79ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:19:14 ID:j5ZpYlFF
「――」
絶句。
明らかに、今までの沈黙とは違う、静寂。
夢うつつの中でなければ、僕はきっとそれに耐えられなかっただろう。
でも、半分、忘我の世界に身を浸していた僕は、
そんなことさえもを畏れずにそのことばを吐いた。
十年間、ずっと思っていたことだったからかもしれない。
(結宇歌さんに好かれる男はどんな男(ひと)だろうか。
できうるなら、そんな男になりたい)
弱くて才能もない僕は、それを口にすることも実行することもできなかった。
でも、そんな思いは彼女に一目ぼれしてからずっと僕の心の中にあって、
それは、今、そのままの形で僕の唇からこぼれた。
「――わかりません」
不意に、結宇歌さんが答えた。
意外な答え。
「もう、わからなくなってしまいました。
あの人がどんな男(ひと)だったのか……」
「……」
「多分、もうずっとそうだったのでしょうね。
私は、もう、あの男(ひと)が、
どんな顔で、どんな声をしていて、どんな男だったか、思い出せないんです」
「……」
「そうですか。そうじゃないかなって、思ってました」
「……ひどい人です、貴方は」
「そうですか」
「そうです」
「……」
「ひとつだけ、あの人のこと、思い出しました。
あの人は、貴方と同じくらいひどい人で、私の心を私よりずっと知っていました。
知っていて、ずっと黙っている、そんなところがありました」
80ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:19:44 ID:j5ZpYlFF
「……」
「そして、私は――そのひどいところに心惹かれてしまったのです」
「……そうですか」
「はい」
夢。
現。
僕は、結宇歌さんと何を語らっていたのだろうか。
頭が冴えているようで、眠っているような状態の僕は、
まるで僕ではないようで、そしてどこまでも僕だった。
現実感のない、だけどこの上なく現実的な薄暗がりの中で、
僕は、すべての会話を覚えていた。
結宇歌さんも。
だから最後の言葉――その約束もはっきり覚えている。
「結宇歌さん。明日、あの松を切りましょう。手伝ってください」
「……はい」
そうして、僕らは穏やかな眠りに着いた。
81ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:20:16 ID:j5ZpYlFF
――翌日。
僕と結宇歌さんは、裏の松を切り倒していた。
二人とも、会話もなく、ただ黙々と自分の仕事をする。
朝早く、近所の農家から借りてきた斧で
すかすかになった幹を切りつけ、何もない方へ倒す。
敷地だけは広いことと、自壊寸前まで喰われていたことで、
素人でも簡単に切り倒すことができた。
考えてみたら、業者を雇うか、あるいは近所の人手を借りるような大仕事だ。
だけど、その時、僕は、それを他の人にまかせるなんて考えもしなかった。
結宇歌さんも。
それは、僕の手で切り倒し、枝を払い、細かく切り、
そして結宇歌さんが箒で掃いて始末するべきものだったからだ。
午後までかかって、腐れた根を苦労して掘りおこす。
ぽっかりと開いた穴の奥に、何度も撒いた薬で死んでいたたくさんの蟲を見つけたとき、
僕たちは、なぜこんな作業を二人だけでやったのか、
――ようやく自分でわかった。
「――白蟻」
「ええ、そうです」
「松の木は、こんなにすかすかに食われています」
「そうですね。でも――倒れなかった」
「……白蟻は、みな死んでいますね」
「逃げ遅れたのでしょうか」
「――いいえ」
結宇歌さんは、掻きだしたそれと木屑を、そっと竹箒で掃き集める。
「私、ずっと勘違いをしていました」
「勘違い?」
「白蟻の女王は――飛びません」
「飛ばない?」
「はい。白蟻が飛ぶのは、女王になる前の羽根蟻のときだけ。
木を選んでそこに巣食ったら――羽を落としてずっとそこに棲み続けます」
82ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/09(木) 03:24:05 ID:j5ZpYlFF
「……」
「次の木に飛ぶのは、女王になる前の娘だけ。
女王は、ずっとその巣の――その木のもとで過ごします」
「木が枯れたら? 木が喰いつくされたら?」
「女王は、そこで死にます。――そこが彼女のいる場所ですから。
その木を選ぶということは、そういうことなのです」
木屑の塊の中には、この巣を、この松を支配した女王の死骸があるのだろう。
塵取をうまく使って、麻袋の中にそっと入れながら、そう言った。
「そうですか」
「そうです――松にとっては迷惑な話でしょうが」
「いえ」
僕は、鍬で根を掘り起こす手を止めて、結宇歌さんを見た。
「たまに、そうやって選ばれたことに喜びを感じる松もあるんじゃないですかね。
――白蟻の女王が、死ぬまで居てくれるのなら」
「……おかしな松ですね」
「そういう松は、結構しぶといと思います。
――多分、その女王が死ぬまでくらいは、保(も)ちますよ。
この松と女王のように、同じ日に死ぬんです」
「……」
結宇歌さんは、箒を掃く手を止めて僕を見詰めた。
眺めるのではなく、見詰めた。
「ひどい松です。――そんなことをされたら、
白蟻はますます逃げられないじゃないですか。
その松しか食べられなくなるじゃないですか。
その松しか好きになれなくなるじゃないですか」
「逃げなければ、いいんじゃないですか
――好きになれば、いいんじゃないですか」
僕は、そう答え、
「ひどい人。――本当にひどい人」
そう言って、結宇歌さんは、ぷい、と横を向き、はじめてその頬を染めた。

     fin
83名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 04:14:13 ID:oMStISrQ
ゲーパロさんGJ!!
84名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 08:20:25 ID:NI0uvsdQ
gj
ゲーパロ氏最高すぎる
85名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 16:51:51 ID:H/cf2e2b
ゲーパロさんひどい人。――本当にひどい人
86名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 18:41:45 ID:ZaYopOk4
短編で終わらせるのが勿体無いクオリティでした、ご馳走様です
87名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 00:11:14 ID:1Y47ho+m
ゲーパロに物申す!!
大体ねぇ先に書いてたの途中で投げ出して、新しいの書いてね。おもしろいってふざけてるよ!
88名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 00:33:02 ID:NPNJUwFU
>>87
作家なんてそんなもんだぞ
プロの小説家でも興味が失せて書きあげず世に出ないまま放置された未完の作品なんぞ山ほどある
89名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 02:08:16 ID:bzHbYR7y
ゲーパロ氏っていまんとこ全部完結させてるんじゃね

記憶に無いんだが、投げたしたSSとかあったか?
90名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 03:53:07 ID:cgsPVRni
>>87は誉め言葉なんだろ
91名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 16:16:13 ID:g/e6le7K
ゲーパロさん素敵
92名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 17:01:31 ID:5q3NqJBN
>>82
素晴らしい作品でした!

>>87
文才のない奴が独自の褒め方なんてものを作ろうとするんじゃない
嫌味を言っているようにしか読めないぞ
身の程をわきまえたまえ
・・・いや、本当に嫌味を言っているだけなのかも知れないけど
93名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 18:58:33 ID:ufW/AIsy
>>89
ゲーパロ専用氏が投げ出したかどうかはともかく、
未完のまま2〜3年放置されてる作品ならある。

孕ませ神殿シリーズの「巫女長ウルスラ」とか、単発物の「ロベリア」とか。
どっちもHRスレ保管庫で読めるよ。

ttp://hokan.s8.x-beat.com/HR/index2.htm
94名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 22:11:10 ID:cgsPVRni
>>92
過剰反応じゃね?わざわざ力説するほどのコメじゃないと思うが
95名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 00:13:49 ID:9t8lcAEx
最初怒ってるのに最後は褒めるのは、よくある感想だと思うんだが
96名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 02:34:00 ID:VV/aaWYW
ゲーパロとかどうでもいいだろ。
97名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 03:21:50 ID:pvvL+/At
アンチが一人→アンチはなんかの作者、と結び付けてしまう俺は考えが安易ですかそうですか
98名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 03:58:24 ID:j9jS54yH
投下キター!と思ってスレ開いた俺のワクワクを返してくれ
とりあえず色々勘違いでしたってことで好きなビッチのタイプでも話そうぜ


俺は外見は潔白そうな可愛い子なんだけど、中身はちょいS入った騎乗位の似合う小悪魔な感じの子とか好きだな
自分のこと可愛いって分かってるとなお良い
99名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 04:40:05 ID:ZK89t277
白蛾GJ
セックスの快楽を追い求めたり、遊ぶ金目当てだったりするビッチは欲望優先で貞操観念の緩いヒロインが多いけど、
本作の彼女は、貞操の意識を持ちつつ諦念の意識からアバズれる、ある意味、キモチ的には身持ちの固いヒロイン。

こういうビッチもアリなのがこのスレの懐の深さよ。
国見くん本編も楽しみにしてます。

>>97
そんなレスは職人さん(ゲーパロ氏含む)に失礼&迷惑。


>>98
男の外面に対する憧れだけを恋と勘違いしている女の子が、内面に頑張ってる男に「初恋」する王道話が好きな俺。
ギャルっぽい女の子が定番だけど、あえて大人しそうなお嬢様系もいいかなとおもう。
一見清純、だけど股は緩い、みたいなギャップにエロを感じる。
100名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 09:18:56 ID:+xlPCyEf
まぁまぁ。
ビッチの股のようにうちらもゆる〜く行こうぜ。

>好きなビッチのタイプ
ビッチのタイプつかみてみたい話になっちゃうけど。
過去に悪い男に裏切られたとかひどい目にあわされたとかで
男全体への復讐みたいな感じで色んな男を弄びまくってるマンヘイト型なビッチが
自分のこと真剣に考えてくれる男に会って改心、デレ化みたいなやつ。
101名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 00:29:34 ID:UqiI+hL/
保守
102名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 01:17:58 ID:+R1+JGa3
実際彼女がビッチだったら胃潰瘍になるけどね
103名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 18:08:55 ID:A/UzV8Ew
他のビッチと遊べばいい、そして好きになっちゃう。
104名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 22:09:08 ID:N9gysf0d
>>103
おいおい、その展開のSSが投下されると期待していいんだな?
105名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 02:32:28 ID:uo2Z5zGz
香辛料みたいなの希望
106名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 10:48:52 ID:BNA6JpaM
>>105
豊饒の神様と商いの話か?
107名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 18:39:51 ID:Ye74JTaA
>>106
前スレの初期にそんな名前の作品があったんだ
そういえば豊穣の女神のイシュタルはビッチじゃなかったっけ?
たあ神様はビッチとかそういうレベルじゃないがw
108名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 22:45:36 ID:e70njyG0
>>106
お前このスレは初め(ry
109名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 01:41:47 ID:g6TZHdPu
>>106
前スレを見てこいよッ!
110名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 13:01:01 ID:wUneGsRd
保守すっか

こういう一般的には批判を浴びやすいジャンルには頑張って欲しい
111ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/19(日) 22:04:33 ID:wBdTo16J
<国見クンの初恋>・5

「――あはっ、やっぱり主任、一週間オナニーしてこなかったんだ」

あれ、なんだろう?

「――ほら、主任、こんなにおち×ちんビンビン!」

どこかで覚えがある記憶。

「――主任、今日、童貞捨てられるって、期待してきたんでしょ? わっかりやすいなあ!」

でも、……どこか覚えているのとは違う。

「あ……はい。……じゃ、お願いします」
こくりと頷く、男の人。
見覚えのあるその姿は、だけど、影になってはっきりとは見えない。
なにより、聞き覚えのあるその声で言われた言葉は、
――私が言われたことがないもの。
その人は、ここから先を、拒否した。
それは、はっきりしている。
あれ?
だったら、これって――。

「まかせてください! 国見主任のドーテー、私がしっかり筆下ろしさせてあげちゃいます!」

そうだ。
夢。
そうか……。
……だったら、――楽しんじゃえ!
112ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/19(日) 22:05:09 ID:wBdTo16J
ちゅぷ、ちゃぷ。
あはっ、主任のおち×ちん、おいしー。
こんなにビクンビクンして、
こんなに先っぽから先走りのおツユ流して、
そんなに、セックスしたかったんですかー?
そうですよねー。
主任、ドーテー君でしたもんねー。
うっわー、見事な仮性ホーケー!
今時、小学生でもズルムケなのに、恥ずかしくないんですかー?
あ、恥ずかしかったから、今までドーテーだったんですよねっ!
でも、大丈夫です。
私が、ちゃんと筆下ろししてあげますから!
ほら、こうしてお皮をムいて……。
こうしてシゴいて……。
まだですよー。
まだ出しちゃダメですよー。
出すときはー、この中ですからねっ?
え?
コンドーム?
使いますかー?
うふふ、ナマでしたい……でしょ?
いいですよー。
筆下ろしのときくらい、記念にナマでしてみてください。
ガマンできなかったら、中に出しちゃってもいいですよ?
私、今日、大丈夫な日ですから。
ほら、じゃあ、行きますよ。
それっ!
あはっ、気持ちいいですか、主任?
まったく、「本当」でも、こうしてれば良かったのに。
そうすれば、主任も、私もとっても気持ちよかったのに──。
113ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/19(日) 22:05:40 ID:wBdTo16J
「――ダメだよ」

突然、声がした。
あれ。
あれれ。
主任が、いなくなる。
どうして。

あ、そっか。
これは夢だったんだもんね。
本当の主任は、なぜかあの後、逃げちゃった。
だから、私は、あの人とセックスしていない。
つまんないな。
だって、私、あの人のこと気に入ってたんだもん。
けっこう気に入ってたから──。

「ダメだよ、あの人と──しちゃ」

声。
また聞こえる。
あれは──。
私は、金縛りにあったように硬直した。

「なんでダメなの?」

私の声が聞く。

「だって、アッ君は、私のだもん」

幼いけど、冷静な、そして残酷な声が答えた。
114ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/19(日) 22:06:12 ID:wBdTo16J
おかっぱ頭の少女が、私をじっと見詰めている。
勝ち誇るまでもない、と言わんばかりのその表情は、
その年齢の少女の顔に浮かぶためには、
圧倒的な勝利の実感の裏付けが必要のはずだ。

「なんで? 私もアッ君のこと好きだよ!」

言い返す私の声は、幼い。
おかっぱ頭のその子と同じくらいに。
でも、私の声は、表情と同じく、年相応に感情的で、弱々しかった。

「だって、スズカは、テラダ君のこと好きだったじゃない」

突きつけられる、過去の現実。

「だって、だって、――あの時は、アッ君のこと知らなかったんだもん!」

そう、その時の私は、その人のことを知らなかった。
あんなにかっこよくて、魅力的な男の子のことを。

「でも、スズカはテラダ君とキスしたよね?」

だけど、その子の横にずっといた女の子は、
それがとても大きな罪である、と私に言う。

「――だって、そのときはテラダ君のことが一番好きだったんだもん!」

私は、必死に反論する。
115ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/19(日) 22:06:43 ID:wBdTo16J
「アッ君のこと、知らなかったんだもん!
出会ってもいなかったんだもん!
だから、あのキスはなしだもん!
テラダ君が一番好きってことも、なしだもん!
今から、今からがホントなんだもん!!」

私の弁明を、彼女は、涼しげに受け流した。
そうして、言う。

「私は――京介君としかセックスしたことないよ?」

──え?
なんで? どうして?
キスの話じゃなかったの?
なんでセックスの話に──。
おかっぱ頭の少女は、いつの間にか、ポニーテールの娘になっていた。

「私、クッシーと違って、京介君のことしか好きになったことないよ?
京介君としかキスしたことないし、デートしたこともない。
──他の男の子とキスしたり、デートしたり、セックスしてるクッシーと、私。
どっちが京介君にふさわしいかな?」

厳しい目で私をみつめるその娘に、私は、また反論した。

「だって、私、京介君とは昨日知り合ったばかりなんだよ!
今まで、京介君のこと知らなかったんだよ!」

返事は、やっぱり勝ち誇った声。
「――私は、宮原としかセックスしたことないわ」
116ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/19(日) 22:07:30 ID:wBdTo16J
気がつけば、ポニーテールの娘はもうそこにはおらず、
代わりにセミロングの落ち着いた感じの女の人がいた。

「宮原に処女をあげて、結婚して、子供を産んで──。
宮原がこうして貴女と火遊びをしても、
結局、あの人は私のもとに戻ってくるしかないの」

一言一言を、静かに、確かめるように言う女の人は、
色々なものを与え続け、そしてそれによって縛り上げたものの強さを確信していた。

「それは、……なぜです?」

思わず、質問してしまう。
答えは知っていて、聞きたくもないのに。
セミロングの女の人は、待ち構えたように勝利の言葉を口ずさむ。

「だって、私は、あの人のことしか好きにならなかったもの」

(私だって、同じ。あの人にあってからは、あの人だけを──)

そう言おうとしたけど、女の人は、もうそこにいなかった。
同じ場所にいる、おかっぱ頭の少女が、先回りして蔑んだように言う。

「嘘。スズカは、アッ君以外の人とキスしたでしょう?」

ポニーテールの少女が見下しながら、同じ事を言う。

「クッシーは、京介君以外の男の子とセックスしてるじゃん」
いつの間にか、セミロングの女の人も戻ってきて、言う。

「櫛田さんは、宮原以外にも恋人がたくさんいらっしゃるのでしょう?」

たくさんの少女。
たくさんの娘。
たくさんの女の人。
いつの間にか、私は、囲まれていた。
117ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/19(日) 22:08:10 ID:wBdTo16J
男はね、弱いのよ。
うん、知ってるよ
男の子は、女の子より、ずっと弱いの。
そうね、そこが可愛いんだけど。
あと、ずるいよね。
ええ、とってもずるいわ。
それに図々しいの。
だって、自分以外の男を好きにならないでいてくれ、なんて言うんですもの。
でも、それがホンネよねえ。
そうですね。
男の子は、自分のことが好きな女の子のことが好きだよ!
自分のことだけが好きな女の子は、もっと大好きだよ?
僕だけを愛して欲しいなんて、とっても卑怯で弱いわ。
だけど、それができる女はもっと卑怯で、強いの。
私、アッ君だけとキスする!
じゃあ、私は京介君だけとセックスするわ。
ふふ、では私は宮原だけをずっと愛してあげましょう。
そうすれば、
男の子は弱いから、
男はずるいから
男の人は可愛いから、

──最後は必ず、私を選ぶ。
他の男とキスしたり、デートしたり、セックスしたりした女よりも。

今、この瞬間、貴女が自分を一番好きだということが真実だとしても、
「私の宮原はそれを信じないわ」
「だって、アッ君よりかっこいい子が来たら、スズカはそっちに行くんでしょう?」
「ホントはね、京介君だってわかってるの」
……貴女は、「一番大事にしてはいけない女」なの──。
118ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/19(日) 22:08:41 ID:wBdTo16J
「やめて──!!」

悲鳴を上げて、飛び起きる。
汗ばんだ身体は、震えてさえいた。
月曜日の朝。
最悪の目覚めだ。
いつも見る夢。
一人で眠ると、隣に男の人が寝ていないと、いつも見てしまう悪夢。
ベッドの上で自分の身体を抱きしめる。
強く、強く。
震えが収まったら、火傷がしそうなくらいに熱いお湯と、
心臓が止まりそうなくらい冷たい水とを交互にシャワーで浴びる。
顔を洗い、髪を洗い、お化粧をして──鏡を見る。
うん。
今日も、私だ。
みんなに笑顔で接し、笑顔を返してもらう私。
真面目ないい娘に思われて、すごくエッチで積極的だから、
セックスする相手には困ったことがない女の子。
櫛田寿々歌。
「大丈夫、今日も大丈夫」
私は、清楚とコケティッシュの二つの笑顔を
バスルームの鏡の中に交互に浮かべながら、そうつぶやいた。
満足の行く笑顔を作れて、ほっとしながら鏡から離れようとして、
太ももの合わせ目から、汗とは違う生ぬるい粘液が流れ出していることに気がつき、
私は凍りついたように動きを止めた。
その生々しい、女が性を受け入れるときに分泌する汁を、
乱暴にシャワーで洗い流して、
私はもう一回ずつ熱湯と冷水を浴び直した。
119ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/19(日) 22:09:12 ID:wBdTo16J
「――珍しいな。櫛田が俺を夕飯を誘うなんて」
「そうですかあ? 渡会さん、おいしいお店をいっぱい知ってるから、
結構、教えてもらいにご一緒してると思うんですけど?」
「ま、総務から離れて随分になるからな」
「あー。送別会のときはトテモトテモオ世話ニナリマシタ……」
「なんだ、今でも根に持ってるのか。あれはウチの伝統だぞ」
「送別会のご馳走がザリガニなんてひどすぎますぅ!」
「出て行く奴にロブスターなどもったいない。養殖ザリガニで十分だ」
「ううう、3年経った今でも、水っぽい食感と山椒で無理やりごまかした味を思い出せますよぉ……」
「日本であれを食える店はそう多くないんだ、感謝しろ」
「何でわざわざそーゆー店を探してくるんですかぁ!」
渡来先輩は、私が総務にいた頃に教育係で、
当時の私の「恋人」(の一人)と揉めかけた時に、色々お世話になった人だ。
私が性的なものを全然感じなくて済む、貴重な相手。
あれ以来、会社の中では少し気をつけるようになった。
あの時はその場の勢いで、あの人に、
今の部の男の人とも全員寝てるようなことを言っちゃったけど、
それだけはけっこう本当に気をつけている。
──そう正直に言ってたら、あの時、主任は帰らなかっただろうか。
でも、会社の中でセックスしたことがある相手がいることは確かだし、
私は──。
あれ。
なんで今、私、国見主任のことなんか考えているんだろう──。
「で、国見の連絡先でも知りたいのか?」
「は、はいっ……!」
ぼうっとしているところに、不意の質問。
考える間もない、即答。
言ってしまってから、私はきょとんとした。
120ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2009/04/19(日) 22:11:51 ID:wBdTo16J
渡来先輩は、苦い顔をしている。
それは私の返事のせいなのか、それとも、今食べたゴーヤのフリッターのせいなのか。
「え、あ。その……」
「電話でもメールでもなく、直接会いたい、か。――重症だな」
「い、いや、そーゆーわけじゃ……」
「……ここだ」
渡来先輩は、手帳からメモページを切り取って何かを書き写した。
それが、住所と電話番号だということに、私はまた驚いた。
「いやいやいや、これって……!」
「国見の実家だ。個人情報保護法は、俺に限っては遵守する必要がないから安心しろ」
「いやいやいや、私、そんなつもりじゃ」
清々しい顔で犯罪宣言をする総務部職員に、慌てて手を振った。
「そんなつもりも、どんなつもりも、どうでもいい。俺は──」
そう言って、渡来先輩はジンジャーエールの大ジョッキを飲み干した。
「お前さんが国見を連れ帰ってくる事を期待してるよ」
「え……」
「野郎、休職扱いから退職になったもんで、
どさくさにまぎれて送別会から逃げやがった。
──奴にザリガニを食わせるまでは、俺は悔しくて夕飯も喉を通らん」
「……それは、夕飯じゃないんですか?」
4人掛けのテーブルの隅から隅まで並んだ料理の皿を見ながら私は抗議した。
でも──。
「先に失礼するぞ」
メモと半分くらい手付かずの料理をテーブルに置いたまま、渡来先輩は立ち上がった。
有無を言わさず伝票をかっさらって出て行く。
声を掛けるタイミングさえ失って、私はテーブルの上の紙切れを凝視した。
手を伸ばしたのは、なぜだか分からない。
あの人をどうしたいの?
あの人とどうなりたいの?
わからないけど、私は、結局、そのメモをそっとバッグにしまった。
──M県M市。
遠いけど、遠くない。
少なくとも、あの人と、私の心の距離に比べれば。

                      ここまで
121名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 22:29:34 ID:rd7AFWQY
一番槍GJ
なんだろう、続きに対する期待でドキドキするよ!
122名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 00:14:56 ID:DCJ5sVpx
GJ!

きたよ、きたよ(wktk wktk
123名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 00:47:50 ID:c6rt/j5g
GJ!
クッシーはビッチじゃない気がしてきた・・・
124名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 01:12:20 ID:K68jSm6X
やっぱビッチはこういう葛藤がええのう
125名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 01:28:18 ID:BOuhKmX+
GJ!
126名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 01:40:09 ID:VNUIiTzq
GJ
もうそろそろ、まとめサイトとかが欲しいな
127名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 09:13:17 ID:ptO4lKN5
128名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 18:57:11 ID:9A1OVemQ
クッシーは屈斜路湖に棲息するUMAだお!
129名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 16:13:41 ID:eoD9d0bg
いや改めてゲーパロさんのも腹黒ビッチも面白い!
130名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 05:33:32 ID:5EJFMGrw
メチャモテ委員長は、絶対ビッチになるとおもう。
131名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 16:21:00 ID:sdKRT9im
結論から言うと、ビッチなんか片手間で十分
深入りしても時間と金の無駄
132名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 19:14:44 ID:5EJFMGrw
片手間でビッチと付き合っても、ビッチはビッチのままだよ。
損得でビッチと接しても、彼女は一途にはならない。
133名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 19:15:30 ID:gf6jYnxF
と考えてる主人公がビッチに一途になる。
ビッチもそんな主人公に一途になる。

というのも悪くない

134名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 19:20:20 ID:5EJFMGrw
>>133
ケコーンしよう。
135名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 11:09:26 ID:opPCmh6A
>>126
まとめサイト、どうしようか。

エロパロ板保管庫に依頼してみる?
136名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 19:24:12 ID:bXRVjUpv
保守age
137名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 10:20:58 ID:p+Qp1i/q
>>135
前スレのログと合わせて依頼すればやってもらえるとは思うけど。
138名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 21:59:55 ID:AxIFwxCX
139名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 23:08:42 ID:vRNFtjd3
140名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 02:39:46 ID:7J64m+9K






141名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 11:24:45 ID:4UmPfiQr
>>138-140
イった時に小便漏らせば一途になるのか
142名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 13:43:26 ID:VJqzHrmb
ご主人様が変わるんだな
143名無しさん@ピンキー:2009/05/01(金) 23:08:45 ID:Cp3EIY9L
保守
144名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 00:39:02 ID:Sl+OqvDr
>>141
星の王子様ってそんな話だったのか。
明日本屋で買ってくる。
145名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 23:43:49 ID:hF55ysJG
見える、見えるぞ!
騙されて涙目になってる>>144の姿が!!
146名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 09:45:38 ID:nzwec2JV
>>144-145
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリに土下座して謝れお前らwwww
147名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 18:40:21 ID:OT9OMdop
ショタ話なのにねぇw
148名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 22:42:46 ID:Vh3+Zlz+
本当に大切なものは目に見えないんだよ
149名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 19:43:11 ID:zA4S5zfP
過疎

保守
150名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 21:58:07 ID:YoI32Ya8
今更であれなんだが、>>141が言っているのはひょっとして月野定規?
151名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 23:21:55 ID:tbOe7j0H
>>150
yes
152名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 03:15:22 ID:XsJVB0/j
古いけど「キスしたら靴が脱げちゃうのよ」みたいなのか
153名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 16:43:29 ID:nt0bqj9I
このままじゃやばくね?

保守
154名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 10:16:05 ID:YeP4Vc8h
浮上捕手
155名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 10:38:35 ID:edpsOPbn
ビッチはくそみそにフラれるのがお似合い
156名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 18:39:22 ID:xJQPCBWL
保守
157名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 23:52:28 ID:N+m14uNp
保守age
158名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 01:04:33 ID:Rdk/BKxf
159名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 22:51:24 ID:JdbpglB/ BE:716467182-2BP(0)
ここまで、クール系(※not割り切り・計算高い系)はまだ出てないな。
自分で書いてみようかとも思ったけど、迷う……
160名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 03:10:03 ID:thClKjzL
>>159
応援するよ。
161名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 08:53:28 ID:jCmBs9AH
応援します
162名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 23:04:11 ID:VZ6AAcTk
>>159
応援します。

159を待ってる間に投下。
163山下と川上 1:2009/05/16(土) 23:05:15 ID:VZ6AAcTk
 山下は犬の散歩が趣味だ。
 彼の趣味はインドアに偏っているから、犬の散歩は唯一のアウトドア系趣味と言えた。
 犬はタロと言う。安易な名だが呼びやすい。秋田犬と何かの雑種であるこのタロは
ばかみたいに大きく、愛想はいいのにご近所でかなり怖がられている。

 ――タロと散歩していてよかった。
 山下は走りながらそんなことを思う。ゼイゼイと耳元で自分の荒い息がうるさく響く。
ゼイゼイの間にドクンドクンとこれまた荒い心音が聞こえた。全力疾走しているわけではないのに、
緊張と恐怖で心肺停止でもしてしまいそうだ。

「なななななにみゃってるんだよ」

 第一声は思い切り噛んだ。
 叫んだつもりだが、蚊の鳴くように細く頼りない声だ。それでも一応聞こえたらしく、
男が振り返る。
「あ? 何だァお前」
 酔っているのか危ない薬でもしているのか、男の目は据わっていた。喋るたびにチャラチャラと
耳元のピアスが揺れている。
「……山下?」
 その据わった目の男に手首を掴まれている茶髪の少女が、訝しげに眉を寄せた。
「か、かか、川上さんから離れろ」
「はあ? 何だよ、サオリの知り合いかァ?」
 男は山下の体を値踏みするように視線を上下させ(くやしいことに男は山下より顔もガタイも
いいのだっだ)、ハッと鼻で笑った。
「引っ込んでろよ山下クン。アキバにでも行ってな」
 秋葉原はオタクの聖地というイメージが強いがそれは最近の話であって以前は家電の街として……
と、そんなことはどうでもいい。
 確かに山下の見た目は一般的に言うオタクに近いということは認めよう。今日のシャツはユニクロで
買った一張羅(一応)なのだが、一般的に言えばダサい部類だろう。認めよう。ああ認めてやるさ。

 しかし、タロを連れた山下を侮ってはいけない。
164山下と川上 2:2009/05/16(土) 23:06:59 ID:VZ6AAcTk
「タロ、行け!」
 力強く叫ぶと、タロはまっすぐ男に向かって突進していった。グルルル、と唸りを上げる巨大な犬が
猛然と走りよってきたら誰だって怖い。男も例外ではないようで、「ヒッ」と短く悲鳴を上げた。
同時に掴んでいた川上の手を離した。
 山下はその瞬間、大慌てで林の手を引いて男から距離を取った。
「タロ、行け!」もう一度声を張り上げる。
 タロはますます勢いづいて男に覆いかぶさり、男は情けない悲鳴を上げて手足をばたつかせた。
 まあ、実際は顔を嘗め回しているだけなのだが。
「ひぎゃああ! や、やめっやめろぉ!」


◇◇◇


 悲鳴も聞こえなくなった頃、タロの首輪をぐいと掴んで止めさせる。タロ、と強く声をかけると、
タロもおとなしくなった。
 男は恐怖のせいで立ち上がることもできないようだ。うつろな目で山下を見上げている。気絶こそ
しなかったものの、意識を半分どこかへやってしまっていた。

 これなら反撃もできないだろう。ほっと山下は息をつき、振り返った。
「……大丈夫、か?」
 山下が来る前にすでに一発お見舞いされていたのだろう、川上の左頬は赤く腫れ上がっている。
それを手で隠すようにして、川上はうつむいたまま小さく頷いた。
「えーと……その、警察とか」
 警察、という言葉を聞いた瞬間、川上の顔が歪む。
「……冗談でしょ。面倒なことしないで」
 助けてもらった奴にその態度はなんだ、と思いつつ、怖いので山下は何も言わなかった。

 川上は、普段なら山下が絶対近づかないようなギャルだ。
 思いっきりギャルだ。
 地味なクラスメイトをいかにも鼻で笑っていそうな、華やかな川上たちのグループが、山下は苦手だった。
 今回は思わず――タロという心強い仲間がいたこともあり――助けてしまったが、本当ならこんな
いけすかない女、放っておいてもいいのである。

「ちょっと遊んでやったらいい気になりやがって、コイツ」
 未だぼうっと虚空を見つめる男を睨み、川上は片眉をつり上げた。
 おいおい、ちょっと自分が優勢になったらコレかよ。山下は思わず呆れ、小さく呟いた。
「いや、お前にも問題あるだろ」と。
165山下と川上 3:2009/05/16(土) 23:09:08 ID:VZ6AAcTk
 途端、川上がギロリと視線を向けてくる。その鷹のように鋭い視線だけで十分びびっていたのだが、
何を血迷ったか山下は、続けて言ってしまったのだ。

「そんな下着みたいな服で夜に男と出歩くなんて、誘ってるのと同じだろ。少しは考えた方がいい」

「……はっ?」
 川上がうっすらと唇をつりあげて、鼻から抜けるような声を出す。あきらかに馬鹿にされている。
 けれど、川上の服装はけしからん。本当にけしからんのだ。
 肩にひもが引っ掛かっただけのぴらぴらしたワンピース(丈はもちろん膝小僧よりだいぶ上だ)に、
薄っぺらいカーディガンを羽織っただけ。
 肉感的な太ももも、スッと一本の線のように走る華奢な鎖骨も丸見えだ。
 きっと少し体勢を変えるだけで、細い割にたぷんと柔らかそうな胸の谷間もはっきりしっかり
見えるのだろう。
 これは誘ってるんちゃうんかと小一時間問い詰められそうな格好だ。
「山下ァ、アンタ何言ってんの?」
 しかし川上は薄笑いを浮かべたまま、山下を挑戦的に見つめてくる。
 オタクはこれだから、とでも言いたげなその表情に、山下のどこかがプチ、と切れた。

「……少しは出かけるときの服装を考えろって言ってるんだよ」
 低い声で言うと、川上の眉がぴくりと跳ねた。
「アンタに関係あんの?」
「……お、俺が助けなかったらあのまま危ない目に遭ってたかもしれない」
「偉そうなこと言ってんじゃねーよ! こっちはこういうの慣れてんの!」
「じっ事実を言ったまでだ」
「ってか誰も助けてとか言ってないし! キモイんだよ!」
「クラスメートなんだから心配くらいするだろうが!」
「ッ!」
166山下と川上 4:2009/05/16(土) 23:11:56 ID:VZ6AAcTk
 川上がハッと目を見開いた。黒々とハケで塗りたくったように重そうな睫毛が、
ぱちぱちと二度まばたきをする。
 てらてらと天ぷらを食った後のように輝く唇はぽかんと開かれ、しばらくすると閉じ、
結局また開かれた。
「……ば、バッカじゃないの?」
 この野郎、と思いつつ川上を睨みつける。が、すぐに山下は視線をそらした。川上の睨みに
負けたのだ。ギャルは強い。ギャルは怖い。

 視線を戻したとき、すでに川上は山下に背中を向けて歩きだしていた。
 礼もナシか、あのクソビッチ。山下は心の中で毒づき、褒めてくれと言わんばかりに
ぱたぱたと尻尾を振る愛犬の頭を撫でた。男はまだ伸びている。どうしたものかと
一瞬悩んだが、捨て置いても問題はないだろう。
 どこか釈然としないイライラを腹の底に覚えつつ、山下はその場を後にしたのだった。


◇◇◇


「サオ〜、昨日大変だったんだってぇ?」
 甘ったるい声が呼んだ「サオ」に、無意識に山下は本から顔を上げた。
 振り返った先、教室の一番隅で、金に近い茶髪のギャルが鏡を片手に甲高い声を出している。
 その隣には、だるそうに片肘をつく川上の姿があった。
「マジやばかった。アイツ何か薬やってるっぽかったし。ほら見てよ、まだ腫れてんだよ?」
「やだー、いたそー。ねえ、そういえばカナがN高の男集めるから来ないかってぇ」
「えーどうしよっかな。いつ?」
「今週の金曜! 行こうよぉ! N高の彼氏できたらやばくない?!」
 鏡を振りまわしながら金茶ギャルが大げさに笑う。化粧が終わったらしいその顔からは、
素顔がどんな風なのか想像もつかない。

 それに何か言葉を返している川上をチラと見やり、山下は僅かに顔をしかめた。
 昨日あんな目に遭ったというのに、川上はちっとも反省していないように見える。見捨てて
しまえばよかった、少しは痛い目に遭った方がよかったんじゃないか。そんな意地悪な
考えも頭をかすめた。

 まあ、どちらにせよ、山下にはもう関係のないことだ。
 川上と自分はあまりにも違いすぎる。山下が心配したって怒ったって、それは川上の心には
決して響かないのだ。こんな考えを持つこと自体、時間のむだだ。
 山下は首を振り、本に視線を戻した。
 耳にはまだ川上たちの甲高い笑い声が響いていたが、山下がそちらに顔を向けることはもうなかった。


◇◇◇

167山下と川上 5:2009/05/16(土) 23:14:40 ID:VZ6AAcTk
 川上との一悶着も頭から消えた頃、山下は玄関先でスニーカーの靴ひもを結びなおしていた。
「タロ、散歩行くぞ」
 山下が呼びかけると、タロは尻尾をめちゃくちゃに振って喜んだ。よしよしと首元を撫で、
リードをつなぐ。ふと思い立ち、今日は少し散歩コースを変えることにした。
 少し歩いたところに公園がある。普段は幼児がたくさん遊んでいるので、一見すると猛犬のタロを
連れていくわけにもいかない。
 しかし、すでに時刻は夜の九時を回ったところだ。
「よし、公園に行くか」
 山下はリードを引き、走り出した。

 街灯が青白い光をぼんやりと落とす夜の公園は薄気味悪かった。緑も多く、敷地も広いここが
タロを遊ばせるに絶好の場所であるのは確かだが。
 やっぱりもう少し早い時間に来ればよかったかもしれない。自分とタロの足音と息遣いが
妙に大きく響くので、どうにも心臓がざわざわする。
 走りたそうにうずうずと足踏みするタロに気づきながらも、山下はタロを抱きしめる腕を
離すことができなかった。何を隠そう、山下はチキンなのだ。

 おまけに、どこかでボソボソと人の話し声が聞こえたのだからたまらない。
 ひえっ、と情けない声が出て、山下は思わずその場にへたりこんでしまった。
 声はその間も止まらない。低い声と、高い、怒鳴るような声。へたりこんだままそれを聞き続け、
「ああ痴話喧嘩かな」と冷静に想像できるほどには落ち着いてきた。
 考えてみれば、夜の公園なんて金のない恋人たちにとっては格好のデートスポットだ。
 このリア充どもが。呟くと、タロの耳がぴくぴくと揺れた。
 発情した恋人たちが、いつ仲直りの一発を始めるとも限らない。タロの教育にもよろしくないので
ここは早々に立ち去ろう。
 しかし「タロ、行くぞ」と言いかけた口は、続く怒鳴り声で慌てて閉じられてしまった。

「ちょっ、マジやめてよ! キモイ!」
168山下と川上 6:2009/05/16(土) 23:16:11 ID:VZ6AAcTk
 その遠慮のない「キモイ」には、聞き覚えがあった。
 ――まさか。いや、まさかな。
「サオリちゃん、静かにして。ね?」
「ね、じゃねーよ! 何こんなとこで盛ってんの!? 死ね!」
「なっ……テメーそのつもりでついてきたんだろっ!」
「あたしが帰るって言ったらアンタが勝手についてきたんじゃん! 勘違いすんな!」
 ずけずけとした物言いにも、口汚い罵り方にも、たいそう聞き覚えがあった。

 ――女の子がそんな言い方すんなよ。
 山下は知らずため息をついていた。そういえば今日は「今週の金曜日」か。遠い目で記憶を
手繰り寄せる。
 今日こそは知らぬ存ぜぬで通そう。一度痛い目に遭った方が本人のためだ。助けたところで礼を
言われるわけでもないし、助ける義理もない。「タロ、行くぞ」と今度こそ言いかけ、
「きゃあっ! やだ、やめてっ」
「いい加減にしろよ! 男の力にかなうと思ってんのか!」
 固まった。

 いや、少しはそういう目に遭って懲りた方がいいんだ。そうに決まってる。
「もう、ほんとやめてよぉ……」
「誰がやめるかよ」

 そうに決まって……。
「や……ふぇ……」
「今更泣いたって遅いんだよ、バカ女」

 ――ああもう! 仕方ないなこのクソビッチ!
「タロ! 行くぞ!」
169山下と川上 7:2009/05/16(土) 23:18:03 ID:VZ6AAcTk
 まるでこの間の再現をしているようだった。
「タロ! 行け!」
 タロは主人に忠実に、男の背中にしがみついた。
 本人(本犬か?)としては遊んでもらいたい一心なのだ。構ってーというセリフが
聞こえてきそうな突撃に、学ランを着た男は文字通り、飛び跳ねた。
「わっ! わ、わ、何だぁ!?」
 ベンチに馬乗りになっていたところにタロが覆いかぶさったので、驚いた拍子に転げ落ちる。
そこにタロが乗っかる。顔中をベロベロと得体の知れない巨大な何かに舐められ、男は
あえなく意識をお空の彼方へ持って行った。

「……大丈夫、か?」
 奇しくも、問いかけたセリフまで同じだった。
 ただこの前と違うのは、川上の服が乱れていること、川上が何も言えないまま山下を
見つめていること。
 川上の頬に涙がつたっていること。
「……やま、した?」
「だからそんなそんな下着みたいな服で夜に男と出歩くなって言っただろ」
「……」
「……えーと、無事でよかったな」
 川上がゆっくりと立ち上がる。が、膝が笑ってその場から動けない。

 へなへなと崩れ落ちるその体を、とっさに山下は支えた。
「……山下ぁ……」
 瞬間、ふわりと甘い匂いがした。香水なのかシャンプーなのか、山下にはよくわからない。
川上がギュッと山下のTシャツを握りしめている。首筋をサラサラと髪がすべるのでくすぐったい。
 ギクリと体が固まって、山下もまた動けなくなってしまった。
「こ、怖かった……」
170山下と川上 8:2009/05/16(土) 23:22:05 ID:VZ6AAcTk
 ガクガクと震えの止まらない川上を、どうにか公園から連れ出す。駅までは送るから、という
言葉に、川上は黙って頷いた。
 道中、会話らしい会話はなかった。山下は何があったか聞かなかった(=聞けなかった)し、川上は
会話をできる状態ではなかった。
 駅に着いたときは、山下の方が心底ホッとした。

「ここからは一人で大丈夫か?」
「……うん」
 川上がしおらしく頷く。ようやく震えも止まったらしく、しゃがみこんでタロを撫でていた。
「……山下」
「ん? あ、まだ動けないなら無理に立たなくていいけど」
「そうじゃなくて」
「どうした」
「……あの……ありがと」
 この声に驚いて、本当に驚いて、まじまじと川上を見つめた。
「今、なんて?」
 つい聞き返してしまう。
 川上はうつむいてタロを撫でていた。髪に隠れて顔が見えない。聞こえなかったのかな、と思った
そのとき、小さな声が「ありがとうって言ったんだよ、バカ」と告げた。
 髪からわずかにのぞく耳が、真っ赤に染まっている。

 一応、礼は言えるように育てられていたのか、と失礼なことを考えつつ、山下は軽く頷いた。
 どう返せばいいかよくわからなかったのだ。
171名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 23:23:58 ID:VZ6AAcTk
ちょっといったん切ります。
他の書き手さんは気にせず投下してください。
172名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 23:31:14 ID:rJGTjGK+
>>171
GJ!
正統派ビッチですごく楽しみだ!
続き期待
173名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 23:52:06 ID:rryN2a+i
>>171
GJGJ!すごくいいな
続き楽しみにしてます
174名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 00:53:47 ID:1C6Wd2JF
>>171
いいよいいよー
この調子で頼む
175名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 01:05:50 ID:MZByLkOc
gjです
176名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 02:26:40 ID:l6Gjnj2z
>>171
確かに正統派なビッチ娘ですな。
GJですっ!
177名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 09:41:14 ID:RKUf7dQT
昨日の>>163-170の続きです。
あと164で一カ所川上の名前間違えてます。訂正。
178山下と川上 9:2009/05/17(日) 09:42:52 ID:RKUf7dQT
 「サオー、昨日ユウキ君とどうだったぁ?」
 甘ったるい声が呼んだ「サオ」に、無意識に山下は本から顔を上げた。
 前にもこんなことがあったような、と思いながら振り返った先、教室の一番隅で、金に近い
茶髪のギャルが鏡を片手に甲高い声を出している。
 その隣には、だるそうに片肘をつく川上の姿があった(やっぱり前にもこんな光景を見たような)。
「どうってか、普通に一人で帰ったし」
「えーっ! 意味わかんない! ユウキ君サオが帰ったあと追いかけてったんだよ!?」
「知らなーい。てかさ、あたし男と関わるのしばらく控えるかも」
「ええーっ! じゃあ今度の大学生との合コンは!?」
「行かなーい」
「マジで言ってんのォ!?」
 金茶のギャルが大声を出す。目の周りが真っ黒のその顔は、パンダというよりもはや化け物である。
 まさに化粧。化けやがった。心の中で呟いていると、ふいに川上がこちらを見た。

 ばちっと、音がしたかと思った。
 視線が絡んだ瞬間、お互いにびく、と体が震えた。川上はすぐに視線を外し、化け物に相づちを
打つ。
 山下も慌てて本に視線を戻した。心臓がバクバクと激しく脈打っている。
 連続で助けたとはいえ、川上にとっては弱みを握られたも同じだ。地味なオタク、と普段から馬鹿に
している男に助けられたなんて、川上にとっては屈辱かもしれない。

 生意気だと校舎裏に呼び出されてリンチ……なんてことになるのでは、と、少し不安ではあった。
 なにしろ、ギャルとかヤンキーとかいう人種は普通の人間たちと考えにズレがあるのだから。
 何かムカつく、というそれだけで、いつ呼び出しをくらうとも限らない。
179山下と川上 10:2009/05/17(日) 09:44:05 ID:RKUf7dQT
 しかし、朝から今まで、川上は山下に話しかけるどころか近づいてもこない。目が合った今も、
川上は何事もなかったかのように化け物としゃべっている。
 よかった。本当によかった。川上は心の広いギャルなのかもしれない。
 山下はようやく人心地がついて、ゆっくりと息を吐き出した。

「……ねえ」
 さて、本を読もうか。今まで、実は文字を追いかけていても頭にはまったく入っていなかった。
本格ミステリと銘打っているだけあって、前半部分はなかなか伏線がきいていた。後半をどう
持ってくるか楽しみだ。
「ねえ、ちょっと」
 それに、この被害者の娘がまた可愛いんだ。中学生だし。中学一年生だし。いや、ロリコンって
わけじゃないんだけどね。二次元なら幼い子の方が可愛いな、というだけで。ハアハア。

「山下!」

 ふひ、と、変な声が出た。
 痙攣のように肩が震え、思わず本を落としてしまう。床にバサリと不格好な形で落ちたそれを
誰かが拾い上げた。
 いや、「誰か」じゃない。知っている。山下はこれが誰かを知っている。
「……ちょっと来てくんない」
 茶髪のギャルが――川上が、立っていた。
180山下と川上 11:2009/05/17(日) 09:45:39 ID:RKUf7dQT
「……川上さん、あの、何ですか?」
 山下はすっかり縮こまっていた。
 昨日最悪な状況を思い浮かべたそのままの光景に泣きたくなる。校舎裏。壁に背を向けた
形の自分。目の前にはこちらを睨みつけてくる川上。
 リンチか。リンチなのか。
 冷や汗がだらだらと脇の下を流れていく。ごくりと喉を鳴らそうとしたが、口の中は
からからに乾いていた。
「何で敬語?」
 川上が眉を寄せる。
「いや、特に理由はないけど……」
 テメーが怖いからだよクソギャル、とは言えない。
 ふうん、と興味なさげに川上は呟き、それっきり黙ってしまった。気まずい沈黙が続き、山下は
気が気じゃない。いつ文句を言われるのか、いつ殴られるのかと、胃がキリキリしてきた。
 たっぷり数十秒の後、川上がもごもごと言葉を発した。

「昨日のことだけどー。てか、その前のこともだけど」
「は、はい」
 川上は視線をあちこちに彷徨わせ、時々、困ったように髪をかきあげた。
 怒っているわけでもリンチ目的でもなさそうなその態度に、山下は不審そうに目を細める。
 何が目的だ? 疑問がむくむくと膨らんでくる。
「やっぱ、ちゃんとお礼したいし」
「え」
 なんと!
 山下は驚愕した。
 そんなに義理がたい女だとは思ってもみなかったのだ。
 いやいや待て、お礼に……とか言いつつ、これで山下をからかって報復するつもりかもしれない。
気を抜いてはいけない。心の中で強く頷き、山下はつとめて何でもない声を出す。
「いや、いいよ。むしろ俺、川上さんに失礼なことも言っちゃって――」
「そんなことないし! 心配してくれて嬉しかったよ!」
 川上が、ぱっと顔を急に上げた。力強い調子に尻込みしてしまう。ああ、どうも、とボソボソ
礼を言うが、川上はすぐにうつむいてしまった。

 ――何がしたいんだ? コイツ。
181山下と川上 12:2009/05/17(日) 09:47:40 ID:RKUf7dQT
 川上の目的がさっぱり掴めない。腹の底から沸き上がった疑問は今や喉の奥にまでせり上がり、
「お前何がしたいんだよハッキリしろよ」と言いたがっている。
 一方の川上は、「怒ってまで心配してくれるような奴いなかったし」とか「助けてくれたとき
ほんとはホッとしたんだ」とか、一連の出来事を振り返っている。思い出に浸る前に目的を話せ。
 いい加減うんざりし始めた時、

「だから……えっと、今日の夜ひま? 奢るからさ、ご飯でも食べようよ」

 何……だと……?
 山下はぎょっとして川上を見た。川上が「バーカ、何マジになってんの?」と冷笑するのを
待った。しかし川上はいつになく真剣な顔でこちらを見上げてくるばかりだ。
 正直なところ、悪くない容姿なので上目遣いをされると怖いギャルとはいえドキドキする。
「……ダメ、かな?」
 しおらしく聞いてくるものだから、慌てて山下は首を振った。
「や、ややや、いっ、行くよ!」
 騙されているのかもしれない。ちらとそんな不安が胸をよぎったが、川上がほっとしたように
笑うので、そんな考えは舞い上がった思考の果てに消えてしまった。
182名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 09:50:13 ID:RKUf7dQT
続きます。思ったより長くなりそう。ごめんね。
183名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 10:03:07 ID:Wg31+usC
オーケー、待つよ、wktkさ。
俺は心の広い住民だからね。
184名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 10:17:25 ID:xTa/KZGq
これは楽しみだ。長さは気にしないでいいんじゃない?
このジャンル(?)は、
ビッチぷりと落差の描写が入るから長くなりやすいしねw
185名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 11:39:49 ID:2ac8hUE3
>>182
川上可愛いよ川上
続き楽しみにしてる
長いのは全然構わないんだぜ!
186名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 12:24:27 ID:MZByLkOc
すごくいい
応援します
187名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 22:22:21 ID:QxLkZNle
乙乙乙
新作が読めるなんてスバラシイ。
188名無しさん@ピンキー:2009/05/18(月) 01:37:17 ID:53WcfkSU
新作、乙にしてGJでした。



そういや保管庫の件はどうなったの?

前スレの作品とかを時々無性に読み返したくなるんだが。
189名無しさん@ピンキー:2009/05/18(月) 03:28:26 ID:irjerqcs
>>182
GJ
上手いなー
190名無しさん@ピンキー:2009/05/18(月) 15:58:20 ID:HH5yDFla
全裸待機上等
続きにワクテカ
191名無しさん@ピンキー:2009/05/18(月) 22:26:36 ID:mqx2kb9Y
wktk
192名無しさん@ピンキー:2009/05/18(月) 23:00:00 ID:J3KM8MFO
wktk
193名無しさん@ピンキー:2009/05/18(月) 23:14:24 ID:As2KUzrN
>>178-181の続きです。
194山下と川上 13:2009/05/18(月) 23:15:56 ID:As2KUzrN
 その日は結局、川上のよく行くという喫茶店(最近の若者はカフェと言うらしい)のようなところで
夕食をとった。コーヒーはうまいが、料理の量が少ない。少ない割に高い。
 女の子に払わせるのが申し訳なくなったが、川上がどうしてもと譲らないので割り勘にもできなかった。

「そんなに言うなら今度また割り勘でどっか行けばいいじゃん?」
 川上を駅まで送っていた帰り道、いつまでもおごらせたことを気にする山下に、川上がぶっきらぼうに言う。
 今度? 今度もあるのか。まだ山下と二人で会う気らしい川上に、山下は素直に驚いた。
 あのカフェの中でだって、落ち着きなくきょろきょろと辺りをうかがうばかりの山下は、明らかに
浮いていたのに。

 ――もしかして、そうやって恥をかかせるつもりか?
 被害妄想が進んでしまうのは、女性と話すことが極端に少ないがゆえの悲しい習性だ。
 今まで気持ち悪がられるか、うざがられるか、からかわれるか、の三択しかなかった山下には、
川上の態度はいっそ奇異に映る。

 絡まれているところを助けたくらいで(しかも実際に助けたのはタロだ)、こんなに優しく
接してもらえる理由になるのだろうか?
「……イヤ?」
 割り勘でまたどこかに行こう、という川上の誘いにいつまでも頷けないでいると、川上が
不安げに山下を見つめてくる。
 嫌なんかじゃ、と曖昧に返すことしかできない山下に、川上は薄い唇をつりあげた。
 どこか自嘲的な微笑みに、山下の心臓がずき、と痛む。
195山下と川上 14:2009/05/18(月) 23:18:12 ID:As2KUzrN
「イヤってゆーか、怖い? ……そりゃそうだよね。あたし、今まで山下に偉そうな態度しか
取ったことなかったし」
 それは悲しいが、事実だ。

 明るい性格でも面白いキャラクターでもなく、いつも休み時間には教室の隅で本を読んで
いるような山下を、川上やその友人たちは明らかに軽んじていた。
 彼女たちに掃除当番を押しつけられたり、教師からの雑用を丸投げされたり、友人と本の話で
盛り上がっているところを「キモーイ」とからかわれたことは、一度や二度ではない。

「あたし、山下のことバカにしてたんだ。根暗で一人じゃ何にもできない奴って思ってた」
「……はあ」
 バカにされていたのには腹も立つが、根暗で一人じゃ何もできないというのは当たっている。
 山下は何とも言えない顔をして、間の抜けた相づちを打った。
 そんな山下をどう思ったのだろう、川上がちらりと視線を上げる。こちらをうかがう視線には、
からかいや嘲りの感情は見えない。
 でもね、と、言葉を探しているかのようにゆっくりと川上が言った。

「でもね、この前も昨日も、助けてくれたでしょ。この前のときなんかさ、山下が来る前に
何人か通りかかったんだよ。でも誰も助けてくんないの。ま、当然だよね。自分が危ないもん。
……でも、山下は助けてくれた」

 山下さぁ、かっこよかったよ。

 ぽつりと呟き、川上は俯きがちに微笑んだ。照れているのだろうか、辺りは薄暗いが、それでも
川上の頬が真っ赤になっているのはわかる。
 山下はやっぱり軽く頷いてみせることしかできなかった。
 どう返せばいいかよくわからなかったのだ。
196山下と川上 15:2009/05/18(月) 23:20:28 ID:As2KUzrN
 次の日から、川上は時折山下に声をかけるようになった。

 あるときは、
「アンタいっつも本読んでない? それ面白いの?」
「この作者の本は読みやすい」 
「ふうん。……えーと、あたしもそういうの興味あるんだ」
「本当?」
「マジだって。だから貸して」
 と言って本を借りていく。
 見た目からして読書にいそしむタイプではないだろうに、そしてそんな活字に慣れていない人間が
急に読み始めてもつまらないだろうに、川上は何日もかけてゆっくりと山下の本を読んだ。
 読み終わったら感想をくれた。たいていは「意味わかんないんですけど」だったが。

 またあるときは、
「山下ぁ、この髪の色どうよ」
「……茶色い」
「茶色じゃなくてー、カシスブラウンっていうの」
「よくわからん」
「……変?」
「変っていうか、俺は黒髪の方が好きだから。それだけ」
「……へえ、そうなんだ」
 という会話をした一週間後、髪を黒く染めた川上が登校してきた。
 何か意図があるのかと思ったが、別に川上が「どうよ」と言ってくることもなかったので、山下も
特にいいとも悪いとも言わなかった。

 川上が山下を構うそのたびに、川上のグループからは「どうしたのサオ、山下で遊んでんの?」と
からかうような声が上がる。川上はただ笑って受け流している。
 川上の友人が言うように、自分は遊ばれているだけだ。そのうち川上もこんなつまらない男には飽きて
離れていく。そう山下は思っていたが、川上は飽きることなく思いだしたように時々山下に構うのだった。
197山下と川上 16:2009/05/18(月) 23:21:52 ID:As2KUzrN
「……川上、さん。あんまり俺と話さない方がいいんじゃない」
 ちりとりを持ってしゃがみこみながら、山下は呟いた。
 放課後といっても外はまだ明るい。初夏の色を帯びた明るい陽光が窓から燦々と降り注ぎ、
教室は暑いくらいだ。
 いつもなら一人で押しつけられていた掃除当番も、最近は川上と二人でこなしている。
食事をして以来、川上は掃除当番をほとんどさぼらなくなっていた。

「……どういう意味?」
 川上の声が固い。
 うん、と呟いて、山下は顔を上げた。
「川上さんの友達も変に思ってるんじゃないか? 俺たちが釣り合ってないから」
「つりあうって何」
「……俺みたいな地味な奴と話してたら、川上さんまでオタクだって思われる」
 川上の顔が奇妙に歪んだ。開けっぱなしの窓から風が吹き、川上の長い髪を撫でていく。
 いかにも気分を害したらしい川上の表情を見て、山下は小さく謝った。

 ガタン、と、鋭い音に山下がびくりと震えた。
 見れば、川上の持っていたホウキが山下のすぐ隣に転がっている。投げつけられたのだ、と
気づくまでにしばらくかかった。
「……危ない」
「山下が悪いんじゃん」
 川上の低い声に、平然とした顔を取り繕いながらも内心はびびっている。
 どうしよう、と山下はそればかり考えていた。
198山下と川上 17:2009/05/18(月) 23:23:51 ID:As2KUzrN
 川上としては地味な山下を構って"あげている"つもりだろうし、こんなことを言われては
不本意だろう。せっかく親切にしてやってるのに失礼なやつだ、と思っているのかもしれない。
 しかし、川上が山下に話しかけてくれるたび、笑顔を向けてくれるたびに、山下は
複雑な気分になるのだ。

 川上と釣り合っていない自分がむなしい。
 川上の友人たちが山下をクスクス笑っているのが恥ずかしい。
 いつかその嘲笑が川上にまで向くんじゃないかと怖い。
 その一方で、気まぐれで山下を構っている川上が、また気まぐれに山下に構わなくなった時を
思うと――淋しい。

 こんなうじうじした考えにとらわれるくらいなら、川上と話さない方がマシだ、とも思う。
「……そうだな。俺みたいな奴が川上さんのしてることに口を挟むべきじゃない。ごめん」
「山下ッ」
「でも友達は選ぶべきだと思う。俺みたいな奴にあんまり構ってたら――」
 言いかけたセリフは、声にならなかった。

 パタパタと零れ落ちた"それ"は、床に染みを作る。
 "それ"の動きをゆっくりと逆に追いかけると、川上の顎がある。頬がある。目がある。
「……か、川上」
「っ、やま、した、の……ばかぁー……」
 ぼろぼろと大粒の涙をこぼす、川上がそこにいた。
199名無しさん@ピンキー:2009/05/18(月) 23:28:16 ID:As2KUzrN
変なところで申し訳ないですが、ここまで。続きます。
200名無しさん@ピンキー:2009/05/18(月) 23:42:12 ID:oxoTTP36
>>199
なっwww
俺を全裸にしておいて、あんまりだぜwww
201名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 00:54:11 ID:FmagzZPX
GJ!
作者の焦らしプレイが始まった(泣
202名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 02:15:51 ID:fxgmLxLQ
>>199
wktk
203名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 12:39:51 ID:w9vqyil1
>>199
GJすぎる
待ってます
204名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 12:40:10 ID:w9vqyil1
ageちまった
すまん
205名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 13:07:04 ID:Vyrr9u9i
もうこの時点で90点は固い。
待たせるなよ!
206名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 15:56:55 ID:MRbm77QQ
川上可愛いよ川上
しかし川上と山下とか聞いたら元中日の大リーガーと元横浜の監督が浮かぶww
207名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 19:22:17 ID:+LA+sdJM
>>206
普通は浮かばん
208名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 23:48:02 ID:3PFCk8h1
>>194-198の続きです。
209山下と川上 18:2009/05/19(火) 23:48:41 ID:3PFCk8h1
 ごっごめん川上! 言い方キツかったか!? 怖かったか!? わあああゴメンッ!

 ……と、心の中で叫びつつ実際は何も言えないくらい、山下は慌てた。
 ちりとりを握りしめたまま、ぽかんと間抜けな顔で川上を見上げることしかできない。
「な、何でそんなこと言うのぉ……?」
 しゃくりあげながら川上が山下を睨みつける。普段は怒れば殺し屋のように鋭く睨むくせに、
今はまったく怖くない。眉じりも目もとも頼りなく下がり、顔をくしゃくしゃにして泣くさまは
子どものようだ。
「あ、あ、あたしの、こと、きら、い、なんだっ……」

「ち、違う」
 ようやく声が出た。体も動いた。山下は慌てて立ち上がった。瞬間、川上が山下の胸元に
拳を叩きこむ。
 一昔前の漫画やドラマによくあるシーンのそれのようだが、本気で叩いてくるので
思わず「ウッ」と唸ってしまうほど痛い。咳き込みそうになるのを気力で耐える。
 叩き込んできたその拳を、山下は手にとった。てのひらで包みこむと、あんなに強烈な一打を
放った拳の小ささに驚く。
 ああ女の子なんだなあ、と、場にそぐわない感想が頭の端にふっと浮かんだ。

 ううー、とくやしそうな声を上げながら、川上が顔を歪める。ぎゅうぎゅうと力一杯つむった
目の端から涙はぼろぼろと零れていく。
「川上、泣くな。ごめん、俺が悪かった」
 心底弱って言うと、パッと手を振り払われた。

 と、川上の顔が視界から消えた。
 もっと言えば、視界には川上の顔ではなく黒い頭が見えた。
 さらに情報を加えるならば、川上が山下の胸に突進してきたので川上が山下に
もたれかかるような体勢になっている。だから山下からは川上の黒い頭しか見えない。
 ちなみに川上の腕は山下の首にがっちりと回されている。

 簡単に言えば、抱きしめられている。
 山下は再び、頭の中で絶叫しつつ実際は何も言えないくらい、慌てた。
210山下と川上 19:2009/05/19(火) 23:49:53 ID:3PFCk8h1
「あ、あたしから、離れて、いこう、と、して、る」
「そんなことは……」
「じゃあ何でっ、そんな、こと、言うのっ……」
 山下の首にかじりつくようにして川上がごねる。涙が薄いシャツにじわじわと染みこみ、そこに
湿った息を吹きかけられる。
 免疫のない地味男にそんなことをしないでくれ。山下も泣きたくなった。

 しかし泣きたくなる一方で、胸が熱くなる。
 嬉しいのだ。
 川上が山下と距離を置くことを泣くほど嫌がっている。
 こんな地味なオタクっぽい奴に嫌われたって川上には何のダメージもないはずなのに、泣くほどそれを
悲しんでくれている。
 嬉しい。

「山下、やだ、つりあうとか知らないもん。あたしが山下と一緒にいたいんだもん」
「うん」
「変なこと言うな死ねばかぁー」
「うん、ごめん。俺も川上と一緒にいたいよ。悪かった」
 川上の涙で掠れた声が耳朶をくすぐる。そろそろ腕を離してくれないだろうかと思うのだが、
山下の首に絡みついた腕はその力を緩めようとしない。
「なあ、そのー、いつまでこうやっている気だ?」
 気恥かしさから、声はボソボソと早口になる。
 川上がそろそろと腕の力を緩めたので、思わずほっと息をついた。

 が、しかし。
「川上……?」
 川上の顔が、ひどく近い。
211山下と川上 20:2009/05/19(火) 23:50:55 ID:3PFCk8h1
 山下が顔を下げると、額と額とか鼻と鼻とか、色々と触れ合ってしまいそうに近い。川上が
背伸びなんてした日には、柔らかそうな唇が山下の顔のどこかに触れてしまうだろう。
「ど、ど、どど、どうした、川上」
 視線だけをちらちらと川上に向けつつ、山下は慌てて言った。せめて顔だけでも引こうとするのだが、
川上の腕がまたしてもぐいぐいと首に絡みつくのでそれも難しい。 
 いつのまにか、川上はずいぶん化粧も薄くなった。
 自然な長さと密度になった睫毛がふわふわと瞬きにあわせて揺れている。
 まっすぐ山下を見つめる瞳はまだ水分を過剰に含み、窓から降り注ぐ光に透けてきらきらと輝いていた。

「川上って、呼んだでしょ」
「え」
「いつもは川上"さん"だけど、川上って呼んだ」
「……ああ、そういえば」
「うれしい」
「え」
「何か、山下が気許してくれてるって感じ。うれしい」
「……ああ、そう」
 じゃあそろそろ、と川上の腕をやんわり離そうとするのだが、川上はぎゅっと首に巻きつけた腕に
力を込めた。

 ねえ、と川上が言う。
 すがるような、困ったような、緊張しているような、何とも言えない顔だ。
 不安と期待が入り混じったよう、と言えばいいのだろうか。

「"俺も一緒にいたい"って……どういう意味?」

 すごく小さな声だったので、危うく聞き逃すところだった。
212山下と川上 21:2009/05/19(火) 23:54:38 ID:3PFCk8h1
「どういう意味、と言われても……」
 山下は眉を下げた。
 そのままの意味だ。川上が山下と一緒にいたいと言ってくれたのが嬉しくて、自分も同じ
気持ちだったので、素直にそれを口にした。それだけだ。
 川上だって同じことを言ったくせに、なぜ山下の言葉を気にしているのだろう。

「えと、つまりさぁ……き、期待していいの……?」
 期待? 何を? 誰が?
 山下はきょとんと目を見開いた。先ほどから、川上が何を言いたいのかさっぱりわからない。
 何の話だ、と言いかけ、気づく。

 なぜ自分の前髪と川上の前髪がさらさらと触れ合っているのか。
 なぜピントがずれたように川上の顔がぼやけるのか。
 なぜ、川上の顔がこんなにも近いのか。

「山下……」
 川上の吐息が山下の唇をくすぐった。途端、ゾクゾクと悪寒のようなものが背中を駆けあがる。
 首に触れている川上の腕がしっとりと汗ばんでいる。うっすらと立ち上る、以前にも嗅いだことの
ある匂い。香水かシャンプーかわからないその甘い匂いに、山下は眩暈がした。
 鼻と鼻が触れた。
 はっ、と短く川上が息をつく。それが山下の唇をまたも撫でる。ゾクゾクする。

 ちょっと待て、これは、これはつまり。
「山下、あのね……私……」
213山下と川上 22:2009/05/19(火) 23:56:05 ID:3PFCk8h1
「サオー! どこー!? まだ掃除やってんのぉー?」

 履きつぶしたローファーの、ペタペタと甲高い靴音が廊下に響く。
 靴音に負けないくらいの大きな遠慮のない声に、山下も川上も体を強張らせた。我に返ったのは
どちらからだったのか、同時にぱっと体を離す。
 妙に距離を取った不自然な格好のまま、互いに見つめあう。
 川上は泣きそうな顔をしていた。半開きになった唇に自然と目が向いてしまい、山下は慌てて
視線をそらす。

 教室の扉がガラガラと音をたてて開いた。
「やだぁーまだやってんの? もういいじゃん、帰ろー」
「……あ、うん」
 川上とよく一緒にいるあの化け物がいつものごとく甘ったるい声を出す。
 もはや元の目の形さえよくわからない、真っ黒に塗りたくられた目がふいに山下を見た。厚みの
ある唇がゆっくりと弧を描く。
 山下はその表情に見覚えがあった。
 かつて川上も、こんな顔で山下を見たことがあったから。

「今ねぇ、下に隆志とかヒロ君が待ってるから。ヒロ君の車で遊び行くって」
「えー……」
「ノリ悪いよぉー。……山下と話しててもさぁ、ノリ違うじゃん? こっちのが楽しいって!」
 意地の悪い笑みを山下に浮かべたまま化け物が言う。
 川上がハッとしたように化け物を見た。
「山下ぁ、そういうわけだから後の片付けよろしくね?」
「ユリッ」
「ほら、行くよサオ」

 化け物は川上の腕を半ばむりやり引っ張って、教室の外まで連れていく。押し出すように川上を
教室の外に出してしまうと、一度カバンを抱えなおした。
 刹那、鋭い視線が山下に向く。
「山下ぁ、あんま勘違いとかしない方がいいよー?」
 ピシャン、と扉が閉まった。
 山下は何も言えなかった。しばらく動けもしなかった。
 のろのろとホウキを拾い上げる。川上の笑顔が頭に浮かんだが、それはすぐに化け物の冷たい声に
かき消されてしまう。山下は黙って唇を噛みしめた。


◇◇◇

214名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 23:59:15 ID:3PFCk8h1
続きます。
それと、私用の関係でしばらく投下できないと思います。
他の書き手さんは気にせず投下してください。
215名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 00:18:22 ID:k79zhtlk
GJ!
次回に期待!続き楽しみにしています
216名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 00:19:01 ID:fROiuXnD
gjgjgj
217名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 00:31:51 ID:CwZXdOGn
>>214
おk。全裸で待ってる
218名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 02:02:03 ID:qM4u3E7L
この抑えられない気持ちをどうにかしてくれ
219名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 03:40:48 ID:Rw5oQEhI
素晴らしい!
ここで終わらせなかったあたりがニクいね。
220名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 03:44:02 ID:bj3MiS4e
さっきまで微笑ましいな、と思ってたのに…
221名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 17:04:11 ID:NJX9Go7i
ビッチは周りの奴らもビッチとDQNだから大変だな。
222名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 00:54:56 ID:rvhX1m6v
このスレ抜けるね
223名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 01:24:45 ID:adQsfgbV
>>222
そう言わずにもう少しここにいろよ。
224名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 02:10:33 ID:Z4Tde9Ym
前スレって保存している人いる?
ログなくしてしまった…
225名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 07:38:51 ID:v+Gzln8+
>>223
イヤイヤwww
「抜ける」=「抜くことが出来る」って意味でわwww
226名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 17:03:53 ID:hnfcT5ux
日本語って難しいね(´・ω・`)
227名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 21:12:57 ID:Yij28X26
228224:2009/05/21(木) 22:05:25 ID:Z4Tde9Ym
>>227
ありがとう。
待っている間に前のものを読みたくなったので、助かった
229名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 02:15:20 ID:4ddN6vg7
保守
230名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 22:57:59 ID:878IPYN+
保守
231名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 01:51:51 ID:Mi6Z+ajr
お久しぶりです。
>>209-213の続きです。
232山下と川上 23:2009/05/24(日) 01:53:49 ID:Mi6Z+ajr
 一週間は何事もなかった。
 山下は寝てばかりいる。川上とは一言も話していない。
 いや、話せなかった。
 学校を休んでいたのだ。

 掃除の次の日は何となく学校を休み、その次の日には熱を出した。ラッキーと思っているうちに
熱は上がり続け、インフルエンザも疑われたがとりあえずは風邪と診断された。
 掃除当番から一週間たった今、すっかり微熱にはなったが、山下はだらだらと家で過ごしている。
 学校に行かなくても――川上に会わなくてもいい理由ができるなら、山下は何だってよかった。

 会うのが怖い。

 会って何を言われるのか。どんな視線を向けられるのか。
『あんま勘違いとかしない方がいいよー?』
 化け物の冷たい声が、一週間経った今も山下の心臓をヒヤリとさせる。
 あの女に馬鹿にされたことがショックだったんじゃない。
 言われたことがまったくの図星だったから、それがどうしようもなく恥ずかしかった。
 化け物の言う通りだ。
 山下は期待なんかしないと自分に言い聞かせながら、ちゃっかり期待していた。川上は
もしかして俺のことを、なんて、甘い甘い夢を描いていたのだ。

 化け物とはいえ川上の友人の言葉に、山下は頭を殴られたかのような衝撃を受けた。
 川上があんまり普通に接してくれるものだから忘れていた。川上と自分は違う。
 異性と何のためらいもなく話せるし、遊び慣れしている。男に抱きつくくらい、川上にとっては
普通のことなのかもしれない。あんなに顔を寄せてきたのも、山下をからかっていただけかもしれない。

 ――そんなことにも頭が回らないほど、浮かれていたのか。
 自意識過剰すぎやしないか。なんて恥ずかしい男なんだ。
 
 そうやって自己嫌悪にごろごろとベッドをのたうち回っているうちに一日が終わる。
 このまま学校に行かないままでもいいかもしれない、と山下は半ば本気で思っていた。
233山下と川上 24:2009/05/24(日) 01:56:18 ID:Mi6Z+ajr
 インターフォンが鳴っても、山下はすぐにはベッドから降りようとしなかった。
 しばらくするともう一度、ピンポーンとのびやかな音が響く。
 タロが吠えないのを確認してのろのろと起きあがる。宅配便の兄ちゃんや郵便局員の顔を
タロはちゃっかり覚えているので、そういった人たちのときには吠えない。
 ちなみに、宗教勧誘も宅配便や郵便と同じくらいよく来るが、それには異常に吠える。賢い犬だ。

 とりあえず宗教ではないという安心感から、インターフォン越しではなく直接玄関に向かう。
 扉を開けながら面倒くさそうな声を出す。
「はいはい、どちら様」
 言いながら顔を上げ、思わず一歩、後ずさった。
「うっ」
「何かー態度わるーい」
「な、何でここに」
「担任にプリント持ってけって頼まれた。あたしン家とけっこー近いんだねー」
 ああタロよ、なぜ吠えなかった。この女好きめ。

 化け物が、立っていた。

 カバンからごそごそとプリントを出し、山下に手渡す。山下はもごもごと礼を言いながら
ちらりと視線を上げた。
「何、入れてくんないわけぇ?」
 化け物が大げさに目を見開く。真っ黒に塗った目の周りにヒビが入りそうで、山下は
こっそり顔をしかめた。

 あつかましいにも程がある。
 一週間前に散々人を馬鹿にするようなことを言っていたくせに、その相手の家に上がりこんで
どうする気だ。茶なんて出してやらんぞ。

 ……と、言いたいのはやまやまだが、山下は前にも言ったようにチキンである。
「あ、え、すみません」
 ついヘコヘコとおじきなんてしつつ、慌てて玄関を扉を大きく開いた。
234山下と川上 25:2009/05/24(日) 01:58:35 ID:Mi6Z+ajr
 あたし炭酸系が飲みたいんですけどーとか何とか言いながら勝手に廊下を歩いて行く化け物の
後ろ姿にバカ女、と悪態をついてやる。もちろん心の中で、だ。
 バカ女、鉄面皮、厚化粧、クソギャル、妖怪性悪女、と思いつくさま悪口を重ねていると、ふいに
化け物がこちらを見た。
「この前のことだけどぉー。サオに色々聞いた」
 いきなり核心に触れてくるので、山下は思わず立ち止った。

「あたし知らなかった。山下さぁ、今までサオのこと色々助けてくれたんだってぇ?」
「……俺は別に」
「サオに怒られちゃったぁ。山下のことバカにしないでって言われちゃったもん」
「え……」
「ごめんねぇ」
 山下は口を開きかけ、結局何も言えずに閉じた。何を言ったらいいかわからなかった。
 化け物が意外にも素直なやつだったことに驚けばいいのか、川上が自分のことで怒ってくれた
ことに喜べばいいのか。
 それとも、やっぱりぐらぐらと胸の底に揺れる自分の期待感に嫌悪すればいいのか。

 頭が真っ白になったまま、頷く。すると、化け物が小さく笑った。
「それ、クセだってサオが言ってたぁ」
「え?」
「山下のクセ。照れたりどうしていいかわかんなかったりしたらとりあえず頷くんだってぇ」
「……気づかなかった」
「サオがーあたしだけが知ってるとか言って自慢してたしー」

 そんな嬉しいことを言われて、舞い上がらない男がどこにいる。山下も例外ではなく、
真っ赤になってうつむいた。ふふん、と化け物が笑う。
「山下ってわかりやすーい」
 やっぱり、黙って頷くことしかできなかった。
235山下と川上 26:2009/05/24(日) 01:59:57 ID:Mi6Z+ajr
「家どのへんだ? 途中まで送るけど……」
 玄関の扉を開けながら山下は言った。
「そんなことさせたらサオに怒られちゃうしー」
 タロの頭をぼふぼふと撫でながら化け物が笑う。話してみると思った以上にいい奴だ。
 川上との出会いや今までのことを話しているうちに、あたりはすっかり薄暗くなっていた。
「山下って意外におもしろいからー、けっこー楽しかったぁ」
「意外にとは何だ」
「だって部屋に絶対フィギュアとか変なポスターとかあるって思ってたしぃ!」
「あったら悪いか!」
「きもいー!」
 ゲラゲラと化け物が笑う。山下も吹き出し、一緒になって声を上げて笑った。

「……何やってんの?」

 あ、と化け物が声を上げる。山下もゆっくりと顔を声の方へ向けた。聞き慣れた声だ。
一週間前までは、頻繁に聞いていた声だ。
 まさか、という思いと一緒に、ドクドクと心臓が騒ぎだす。
「川上……」
 地図だろうか、白いメモ用紙のようなものを片手に、川上がぼんやりと家の前に佇んでいた。

 久しぶりに会った川上に、山下はどう声をかけていいかわからない。
 黒い髪が風になびく。川上の白い指がそれをおさえた。山下、と唇が音もなく形を作る。その
唇に一週間前の出来事が思いだされ、山下は落ち着かない。

 ちらちらと視線を向けた先、川上がなぜか、ひどく傷ついた顔をしている。山下は眉根を寄せた。
 どうしたんだろう、と疑問が沸き上がる。山下と化け物をゆっくりと見比べながら、川上の顔は
どんどん泣きそうになっていくのだ。
「サオー、あたしさぁ今日――」
「聞きたくないッ!」
 化け物が驚いて口を閉じる。川上は一瞬ばつの悪そうな顔をした。が、すぐにその顔が歪む。
「……二人、けっこーいい感じじゃん……」
236山下と川上 27:2009/05/24(日) 02:01:33 ID:Mi6Z+ajr
 ハア? と、いかにも不満そうな声が出た。化け物と山下の両方から。
 互いがそんな声を上げたことに気づき、やはり互いに「テメェ……」という顔で睨みあう。
 それさえも川上には仲がよさそうに見えるのか、ため息まじりに髪をかきあげた。
「……この一週間の間に? それとも前から? ……あたし、全然知らなかったよ」
「ちょ、ちょっと待ってサオ」
「そうだ川上、誤解だ」
「だって! そんな楽しそうにっ……」

 川上が顔を真っ赤にして叫ぶ。その言葉に導かれるようにして見てみれば、化け物がタロを
撫でている近くにしゃがみこんで楽しそうに笑っていた自分。
 なるほど、仲は悪くなさそうに見えるだろう。
 でもそれは川上を通して友情が生まれただけで、と言いかけ、山下はふと口を噤んだ。

 誤解を完全に解くには、「実は川上があんなことを言ってくれてこんなことをしてくれたって
ことを化け物にお話ししているうちに打ち解けたんですよ」と言わなければならない。
 川上は恥ずかしがるに違いないし、もっと悪ければ怒るかもしれない。

 うまく説明するにはどうしたものか。化け物も山下もグッと詰まった瞬間、川上が叫んだ。
「……ッ、もう、いい! あたしだけ知らなかったとか……バカじゃん!」
 くるりと踵を返す。黒髪がふわりと舞う。一瞬見えた白い首に見とれる暇もなく、川上は
走り去ってしまった。

「……ってかあたし、メンクイなんですけど」
「オイ」
「だってほんとだし! サオってば山下のこと好きになってから視野狭すぎ!」
「え」
「え、じゃねーよ! 気づいてないわけ!? ってかさっさと追いかけて!」
「は」
「は、じゃないっつーの! あたしもケータイにかけてみるから、アンタは走って追いかけな!」
 背中を思いきり蹴り飛ばされ、よろめきながらも走り出す。
 川上はどっちに向かっていったっけ、と必死に記憶を掘り返しながら、地面を蹴った。
237山下と川上 28:2009/05/24(日) 02:02:52 ID:Mi6Z+ajr
 視界の端に、小さな影が見えた。ような気がした。
 山下は走る。必死に走る。耳の底、胸の奥、色んなところからドクドクと脈打つ音がする。
心臓までも血液に乗って流れていってしまったみたいだ。喉がカラカラになり、足が痛む。
 それでも山下は走った。

 やっぱり川上だ。
 河原沿いの道をとぼとぼと歩く小さな後ろ姿を見つけ、山下はスピードを上げる。
 川上、と声をかけたかったが、もはや声は出そうにもなかった。
 ドカドカとアスファルトを蹴りあげる音に川上が振りむく。山下が走ってくるのを見て
一瞬目を大きく見開き、慌てて駆けだそうとする。が、遅かった。

「かっ、わ……ハッ、かわ、かみ」
「……」
 山下が川上の肩を、しっかりと掴んだ。
「離してよぉ……」
 川上が体をひねる。そんなに強い力でもないはずだが、山下は体力がそうある方でもない。
おまけに先程まで全力疾走していた。限界を超えて走り続けていたせいか、眩暈がする。

 パシ、と手を払いのけられた拍子に、目の前が一瞬真っ白になった。
「やっ、山下!?」
 気づけば、山下は地面にだらりと倒れ込んでいた。山下の背中を支えながら川上が
必死に顔をのぞきこんでいる。チカチカと明滅する視界の中心で、川上がぼろぼろと泣いている。
「かわか、み」
「山下ぁ! 平気? やだよぉ山下っ、ねえ、死なないでー!」
「……し、死ぬか、ばか……」
「だって急に倒れるからっ!」
「……かっこわる、い、な……俺」
「そんなわけないじゃんっ! 山下は、い、いつも、かっこ、いいもんっ……!」

 だから死んじゃやだーと川上が大泣きするせいで、山下は危うく通行人に救急車を呼ばれる
ところだった。
238名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 02:07:25 ID:Mi6Z+ajr
続きます。
ごめん、まだ出張先なので続きは戻ってからになりそうです。
239名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 02:17:53 ID:m9Ymyd07
待ってた甲斐があった!
GJ!
240名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 03:07:53 ID:MRQMFd8X
最後にこのスレのぞいてよかった
241名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 03:41:27 ID:VMyTwrnT
GJすぎる
続き、期待してます
242名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 04:15:01 ID:f6VuMs+t
朝一から化け物がかわいく見える…
243名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 04:42:10 ID:LNZa8GD8
久しぶりにすげー良作読んだ
GJ
244名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 06:14:54 ID:WDq5rGK0
>>242
ああいう奴はメイクとったら地味に可愛かったりするんだぜw
245名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 11:03:00 ID:207y4nxC
246名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 11:04:19 ID:207y4nxC
>>238
化け物がいいこで安心した。
GJ!
相変わらず川上可愛いよ川上
247名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 12:58:38 ID:1Y/Bgy4L
あとは川上が、どれくらい性的にビッチだったかが気になるな。
実はバージンだという可能性もあるが。
248名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 14:21:03 ID:/y8spY1Z
お互いが付き合いはじめて、山下はチェリーであることに、川上はビッチであったことにコンプレックス持ってたらいいね。
249名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 15:02:40 ID:R2zxJRz5
一応謝ったんだからそろそろ名前で呼んでやれよw>化け物
250名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 15:45:00 ID:TMtf+IFD
よかった、性格の悪い化け物はいなかったんだね(´・ω・`)
251名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 19:33:33 ID:5h0HUQSZ
川上に萌えまつwwwww
続き楽しみにしてますねww
252名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 19:55:06 ID:72RsKjWj
・・・何故だ、化け物が山下にコナかけて川上と修羅場というルートを予想した、とかKYなカキコするのはオレだけか?
253名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 00:54:01 ID:leaHliTm
保守
254名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 08:06:46 ID:eaVicm8n
維持でも全裸待機は崩さねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
255名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 16:06:42 ID:F8fFCiDl
なんだこの良スレはw
256名無しさん@ピンキー:2009/05/27(水) 00:54:54 ID:48eYu9D9
>>254

体調も崩すなよ
257名無しさん@ピンキー:2009/05/27(水) 03:28:43 ID:6bocvYF9
有華たんも待ってるんだぜ
258名無しさん@ピンキー:2009/05/27(水) 20:29:02 ID:aVCvywOY
>>257
同じくです!
腹黒ビッチも、待ってますからっ!
259名無しさん@ピンキー:2009/05/27(水) 22:11:24 ID:81J2WGAy
なぁ前スレって816で終了?
>>258
有華が腹黒のヒロインじゃなかったか?
260名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 02:34:18 ID:yqK/uw4N
寒いよぉ
261名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 06:48:41 ID:JBOISTnI
ふぅ
262名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 07:36:40 ID:OEAbHk8C
>>261
朝から賢者モードっすかw
263名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 20:58:43 ID:uAfhngs3
>>259
ども、紛らわしい書き方してすまんです。
有華(ありか)がヒロインで正解です!
(他の作品も勿論待っていますが257同様有華がヒロインの)腹黒ビッチも、待ってますからっ!
という意味でございます。
前スレは、・・・実は私、どこでどうなったか判らなかったんですよ。
264名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 23:36:07 ID:A+BqdGda
>>263
そうだったのか。わざわざ答えてくれてありがとう
265名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 21:00:11 ID:8ooQFBV9
今日は寒くて全裸正座待機がこたえるぜ
だがやめない
266名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 00:45:00 ID:Tj8qPOqz
>>232-237の続きです。
267山下と川上 29:2009/05/30(土) 00:45:51 ID:Tj8qPOqz
「ごめんね、山下」
 とりあえず休んでいれば平気だから、と山下が言い張り、河原に寝そべって数十分。
 山下は川上に買ってきてもらったお茶をちびちびと飲みつつ呼吸を整えている。その隣で、
川上が未だに真っ赤な目を何度もしばたかせた。

 散々泣きまくったせいか、すっかり薄くなっていた化粧はきれいに流れてしまっている。
 不自然なほどの曲線を描いていた睫毛はすとんとまっすぐ伸び、頬にうすく影を落とした。
「あたし……ほんとは、応援してあげなきゃって、わかってる」
「え?」
 呟かれた言葉の意味がわからず、山下は聞き返した。
「だから……ユリと山下がうまくいくように、応援しなきゃって、ちゃんとわ、わかってる」
「川上、あの――」
「でも!」
 川上がぱっと顔を上げる。

「でも、そんな急には自分の気持ち、変えらんないから! だからっ……」
「川上」
「だ、から……す、好きで、いて、も……いい?」
 こらえきれなくなった涙が、ぶわ、と川上の目から溢れた。
「川上……」
 山下は途方に暮れて呟く。しゃくりあげる川上の頭にそっとてのひらをのせる。びくんと震えた
川上に、優しく問いかけた。

「……その、ユリって……誰だ?」
 へ? と、川上が間の抜けた声を上げた。
268山下と川上 30:2009/05/30(土) 00:46:47 ID:Tj8qPOqz
 申し訳なさそうに頭を掻きながら、山下はもう一度尋ねた。ユリなんて名前の知り合い、
山下にはいないのだから。
 川上はもはや自分の意志では止められないのか、ぽろぽろと涙を流したまま混乱したように言う。
「だってっ……さ、さっきまで話してたじゃん!」
 さっき?
「二人して、な、仲よさそうに、犬、撫でてっ」
 犬?
「家、来るくらい、仲いいんでしょっ……!?」
 家……。ようやくピンときた山下は、思いきり顔をしかめた。
「ユリって……里中さんか……」

 里中さん。
 またの名を、化け物。
 そういえば川上が何度か呼びかけているのを聞いたような気もするが……。それにしても、化け物が
そんな美しい名前を持っていたとは。完全な名前負けじゃないか、あの女。
 思わず脱力する。
 化け物が山下を相手にするはずがないことも、山下が化け物を好きになるはずがないことも、冷静に
考えたらわかりそうなものだが。
 ため息まじりに川上を見やった山下の頭に、ふいに二人の声が蘇った。

『サオってば山下のこと好きになってから視野狭すぎ!』
『好きで、いて、も……いい?』

 二人の声がくるくると頭の中を回る。心臓がキュウキュウと疼き、顔がかゆくなった。
 かゆくなって、にやけてしまう。
「な、何わらってんのっ!?」
「いや……ええと、誤解だから、それ」
「えっ?」
「里中さんは、担任に頼まれて休んでた間のプリントを届けてくれただけ」
「で、でも」
「それで……怒らないでほしいんだが、川上の話で盛り上がって……」
「あたし……?」
「川上がかわいいことを言うとか、笑顔がいいとか、優しいとか、そういう話をしてたら
仲良くなってた。だから、里中さんと俺はただの友達。むしろ知り合いレベルだ」

 何それ、と呆けたように川上が言う。
 ようやく止まりかけていた涙が、またもや川上の目から溢れだす。山下は慌ててポケットを
ひっくり返した。くしゃくしゃのハンカチを渡そうと差しだした手を、川上が握りしめた。
269山下と川上 31:2009/05/30(土) 00:48:09 ID:Tj8qPOqz
 川上は顔から火が出そうなほど真っ赤だ。
 どうした、と声をかけても、ぶるぶると首を振るばかり。やがてその目がゆっくりと山下を
見た。恥ずかしい。一言、そう呟いて。
「恥ずかしい?」
 山下はきょとんと川上を見つめる。川上は落ち着かない様子でうろうろと視線をあちこちに
彷徨わせた。

 あーとかうーとか言葉にならない声を発したあと、小さな声で、
「だってさぁ……勘違いしたまま変なこといっぱい言っちゃったし……」
「変なことって?」
「それはー……」
「俺のこと好きっていうのは、変か?」
 川上が弾かれたように山下を見る。
 山下は川上の顔を見ていられなかった。ドッ、ドッ、と心臓が騒ぐ。小さな爆発を繰り返して
いるみたいだ。川上に握りしめられたてのひらが細かく震えた。

「俺が……お、俺が、川上を好きなのは……変、ですか」

 声は裏返るわ震えるわ、正直なところ、散々な告白だった。
 沈黙が痛い。心臓を押しつぶすような静けさに呼吸まで忘れてしまいそうだ。いつの間にか
詰めていた息をそろそろと吐き出したとき、隣でフッと小さな笑い声が聞こえた。
「……何で敬語?」
「いや、特に理由はないけど……」
「前もこの会話したね」
「ああ、うん」
「変じゃないよ」
「……」
「変じゃないよ。うれしい。すごい、うれしい」
 噛みしめるように川上が言う。声は次第に震え、掠れ、涙声になる。川上は意外に泣き虫だ。
 山下のてのひらが震える。いや、違う。山下のてのひらを握りしめる、川上の手が震えている。
「……山下」
「うん」
「山下、やま、した」
「うん」
「すき。大好き。い、いちば……ん……好きっ……」
 うん、と言いながらギュッと手を握る。
 しばらくは何も言わなかった。川上の泣き声だけが、静かに空気を揺らしていた。
270山下と川上 32:2009/05/30(土) 00:49:31 ID:Tj8qPOqz
 川上を連れて家に戻ると、待ち構えていた化け物に開口一番、叱られた。
「何でアンタたちは二人とも連絡してこないわけぇ!? 心配したんですけど!」
 繋ぎあったてのひらを見ると、さらに叱られた。
「何であたしのいないとこでくっつくのぉ!? つまんないじゃん!」

 明日きっちり事情聴取すると宣言し、化け物は慌ただしく帰って行った。
 川上も一緒に帰るものだと思って手を離すと、
「山下ぁ! テメーちょっとは空気読めオタク!」
 最後にもう一度叱られた。

「……もうちょっと一緒にいたい」
 遠ざかる化け物の後ろ姿を見送りながら、川上が囁くように小さな声で言う。途端に山下の
顔がポン、と赤くなった。
 思わず叫びたいような、そのへんをぐるぐると走り回りたいような、どうにもむず痒い気持ちに
戸惑う。こんな風に、誰かを思って心臓が痒くなるのなんて初めてだ。
 うん、と小さく返事をして手を繋ぎなおす。
 汗をかいてべたついたてのひらは、きっと不快感を与えるだろうに。川上は山下が手を離すと
ムッとして唇をとがらせるから、つまり、アレだ、可愛い。
 階段を上った先にある自室に案内する間も、舞い上がってステップでも踏み出しそうな足を、
山下は必死に抑えていた。

 山下は意外ときれい好きだ。
 戸棚の上にいくつかアニメキャラクターのフィギュアが置かれている以外は、清潔感のある
いたって普通の男の部屋だ。
 座布団やソファもない簡素な部屋だから、適当に座ってもらうしかない。
 その通りに言うと、川上はすとんとベッドに腰を下ろした。
 数少ない友人だって一人暮らしを始めた兄だって親だって、部屋に入ってきたらそこに座る。
 それなのに、山下は妙に緊張した。
271山下と川上 33:2009/05/30(土) 00:50:47 ID:Tj8qPOqz
「えっと……飲み物いるか? お茶とファンタくらいだったらあるけど」
「ううん」
「そ、そうか。あー、読みたい本があったら適当に取っていいから」
「うん、ありがと」
「……」
「山下、座らないの?」
 ぼうっと川上の前に立ちすくむ山下の手を、川上が引く。引かれるままに川上の隣に座ると、
するりと腕が絡んだ。

 うお、と思わず声を上げた山下の耳に、いたずらっぽい笑い声が届いた。
「……か、からかうなよ」
 経験値の差は明確だ。こういう風にされると、山下はどうしても弱い。
「からかってないよー」
 川上が瞳をやんわりとほどく。大泣きした川上の目は少し腫れていた。
 ぽってりと熱を持ったそこに、ふいに触れたくなる。困った。山下はそっと視線を外す。
「山下……」
 甘えるような声音に、山下の背筋がゾクゾクと震えた。

 声に誘われるように顔を向ける。川上の顔がすぐそこにある。
 顎を心持ち上げて、瞬きもせずに、じっと山下を見上げている。
 引力を持っているのかと思った。気づいたら山下の額に川上の前髪が触れている。さらさらと
額を撫でるそれがくすぐったい。
 あ、と思ったときには、唇が触れていた。

 ぷちゅ、と音がしたから驚いた。慌てて顔を離す。川上の頬が上気している。可愛いと思う。
体の奥からズンズンと熱が集まり、こもり、山下はどうしていいかわからなくなる。
 山下、と川上が焦れたような声を出した。ズン、とまた熱が溜まる。
 押し当ててきた唇が、やわらかく山下の下唇を食んだ。
 う、と声が出そうになってこらえる。それでも抑え損ねた息がハッと川上の唇を撫でた。
 川上の体がピク、と震える。
 川上の唇がやわらかい。触れた先から溶けていきそうなそれが山下の唇をはさんだまま、
やわやわと動く。山下の唇に、何かが触れた。
 湿って熱い――ひどく熱いそれが山下の唇をそっと撫でたとき、山下はたまらず川上の
体を引き離した。
272山下と川上 34:2009/05/30(土) 00:52:41 ID:Tj8qPOqz
 川上が濡れた瞳で山下を見つめている。とろんとしたその目に見つめられると、山下の
頭もぼうっとしてしまう。
 ぶるぶると犬のように頭を振って、山下はダメだ、と呟いた。
「ダメ?」
 川上が聞き返す。
「急にこんなことするのは、やっぱり、えーと、心の準備がだな」
「何それ」
「だから、物事には段階があって、いや、つまり」
「今はキスもダメってこと?」
「いや、だって俺達、その、今日付き合ったばかりだから」

「そういうの、関係ないよ」
 まだ熱っぽい瞳のまま、川上が囁くように言った。
「付き合って、そういうフンイキになっちゃったらシちゃうのは当然じゃん? 時間とか
関係ないよ。あたしは山下が好きだから、全然シちゃってもいいって思う」
 川上が身を乗り出す。山下、と甘ったるい声が耳朶をくすぐる。
 山下は川上の肩を掴んだ。

 そしてやんわりと引き離し、首を振った。
「……ダメだ、川上」
 川上が大きく目を見開く。何か言いたげに開いたその唇から声が出る前に、山下は続けた。
「俺は、そうやって流されるみたいに付き合うのはいやだ」
「え……?」
「川上のこと、好きだよ。……でも」
 こういうのは、少し、違う。
 もどかしい気持ちがうまく言葉にならず、山下はぎゅっと眉根を寄せた。
 もちろん、したくないわけじゃない。経験は皆無だからうまくできるわけがないし、それゆえに
とてつもなく不安だけれど、怖いけれど、したくないわけじゃない。したい。
 でも、そうやって欲のままに川上を求めることが、山下の目的ではない。

 たとえば、手をつなぐだけでは好意を伝えきれなくなったら。
 「好き」という言葉だけでは自分の気持ちすべてを表しきれなくなったら。
 抱きしめるだけでは心臓の痛みが治まらなくなったら。
 そのときは、川上に触れたい。

 しかし今がそのときかと言われると、山下は首を縦に振ることができないのだった。
273山下と川上 35:2009/05/30(土) 00:53:39 ID:Tj8qPOqz
 川上は黙っていた。
 だんだんとその瞳から熱が薄れていくのを、山下は少し残念に思う。
 上気した頬がいつもの白さを取り戻した頃、川上は気まずげに視線をそらした。
「あたしには……よく、わかんない」
 伏せた睫毛が震える。一瞬泣きだすのかと思った。違った。川上は心底困ったような
顔で、小さく呟いた。

「あたしはそういう風に、自分と誰かを大事にしてこなかったから」
 何度か見たことのある自嘲的な笑み。それがゆっくりと川上の顔に広がり、
「……今日は、帰るね」
 川上が山下の方を見ることはなかった。

「川上」
 玄関で靴を履く川上に、山下は声をかけた。
 川上は何も言わない。無言で玄関のドアノブに手をかけたその後ろ姿に、山下は声を少し
張り上げた。
「子どもっぽくてごめん」
 川上の肩が強張る。
「慣れてないから……正直、びびってる。俺なんかが川上をどうこうしちゃいけないとか
思ったりも、する。でも俺は俺なりに川上を大事にしたくて……悪い。こんなやり方しかできない」

 ドアノブを固く握りしめたまま動かない後ろ姿に、もう一度、呼びかけてみる。川上、と
呼びかけて小さく、好きだ、と言ってみる。
「……うん」
 その「うん」が何を指すのか(山下が子どもっぽいということか、山下なりに川上を大事に
しようとしていることか、好きだということか)は分からなかったが、川上はそれきり何も
言わなかった。


◇◇◇


 次の日は、特に会話らしい会話はなかった。「おはよう」と言い合ったきり寄りつこうと
しない二人に、化け物が黙って顔をしかめていた。
 その次の日は、何だか昨日を引きずって話せなかった。川上が暗い表情を浮かべ、ぼんやり
していたのが気になる。

 そして三日目、放課後までじりじりと話す機会をうかがってはいたが、勇気が出ない。
 意を決して話しかけようとした山下は、イスから立ち上がった瞬間、さっそく出鼻をくじかれた。
「山下くん、ちょっといいかな?」
 クラスの女子に話しかけられたのだ。
274名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 00:54:52 ID:Tj8qPOqz
いったん投下終了。もうちょっと続きます。
275名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 00:56:20 ID:BfwapcvH
恐らく一番に読んだオレは勝ち組!!

>>274さんGJ!!!
待ちます、ずっと
276名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 01:09:32 ID:jYnKLN+K
やったぜ!!GJ
277名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 01:19:05 ID:kKImyh17
>>274
GJ!
…ヘタレめ。
知り合って三か月以内にヤらないと、結局友達で終わっちまうぜ。
特にヘタレは。
半年くらいしてようやく決心がつく。
だがその頃には女の方は友達としか思ってない。だから嫌がる。
ようやく決心したのに嫌がられて、ヘタレはテンパる。
テンパって一人で失敗して落ち込むならまだしも、
気が弱い男がテンパると…
拳を振り上げてしまったりすれば、もはやレイプ

だから早く抱けえっ!!抱けえっ!!抱けっ!!抱けーっ!!抱けーっ!!
とやきもきするのが楽しかった。
278名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 02:42:21 ID:rrNW0vkg
続き期待
ぜひハッピーエンドをみて悶え苦しみたい
279名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 03:11:55 ID:VxEiWD1N
>>274
何という生殺し…。だがそれがいい。
可愛いよ川上可愛いよ
280名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 08:22:00 ID:Vi0OYYpD
ふぅ
281名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 22:28:32 ID:movHaaJj
此処は純愛スレですか?
282名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 23:15:53 ID:VxEiWD1N
>>281
いいえ、ビッチが一途になるスレです
283名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 21:15:16 ID:/HXUliRX
>>267-273の続きです。
284山下と川上 36:2009/05/31(日) 21:18:17 ID:/HXUliRX
 珍しい事態に「ああ」とか「うん」とかもごもご言っていると、女子はさっさと山下の前の
席に腰かけた。
 「突然ごめんね」
 小首を傾げて微笑んだ彼女の、肩のあたりで切りそろえられた真っ直ぐな黒髪がさらりと流れる。
一度も染めたことがないのか、それは蛍光灯の光に照らされ艶々と輝いた。
 目鼻立ちはおとなしいが、整った顔だ。全体的に儚げな風情がある。
 髪と同じ真っ黒な瞳に、山下の困り顔が映っていた。

 目立ちはしないが男子からの人気は割と高いこの女子の、名前を思い出せない。
「……ええと、何かな」
 この人の名字は何だっけ。記憶の引き出しをひっくり返しながら山下は尋ねた。
「山下くん、数学のノートとってる? とってたらコピーさせてもらえないかな」
 もうすぐ中間試験だから、と微笑む女子の名字をようやく思いだし、山下は机の下から
ノートを引っぱり出した。
「どうぞ。字が汚くて読みにくいけど。返すのは海野さんの都合のいいときでいいから」
「ごめんね、ありがとう」
 女子――海野はにっこりした。

 真面目だけが取り柄のような山下は、テスト期間中だけは重宝される。
 海野に頼まれたのは初めてだが、クラスの何人かにはこういったノートの貸し出しを頼まれたり、
わからなかった分野を聞かれたりするのだった。
「全然汚くないよ、すごくきれい。ねえ、テスト勉強してる?」
「いや、あんまり」
「うそー! 山下くん、数学はいっつも点数いいでしょ!」
「でも数学だけだから」
 
 ほっそりとした指がページをぱらぱらとめくるのを見るともなしに眺めていると、ふいに視線を
感じた。
 教室をくるりと見回す。特に誰もこちらを見ていない。気のせいか。それとも、海野に気のある
男子が嫉妬に燃えた目を向けていたのだろうか。

「数学が得意なんて羨ましいなあ」
 海野がきらきらと瞳を輝かせて感嘆したように呟くのに笑みを返しながら、山下はため息を飲み込んだ。
 いかにもおとなしそうなのに、意外と人懐っこい人だ。しばらくは離してもらえないかもしれない。
 ――残念だけど、川上に話しかけるのは明日にするべきか。
285山下と川上 37:2009/05/31(日) 21:19:38 ID:/HXUliRX
 視線を向けた先では、川上が携帯を持ってだるそうに化け物と話をしている。
 ストラップのじゃらじゃらついた白い携帯を眺め、おそろいのストラップなんて買ったら
迷惑か、と考えてみる。
 川上はどういうデザインが好きなのだろう。やっぱりキティちゃんだろうか。

「前からね、山下くんと話してみたかったんだあ」
 海野が何か言ったようだったが、山下は聞いていなかった。「みたかったんだあ」だけが
どうにか耳に届き、慌てて顔を海野に向ける。
 聞き返すのも失礼だろうか。
 曖昧に笑ってみせると、海野は目を伏せたまま「えへへ」と笑った。
 三次元の「えへへ」にはあまりグッとこない。やっぱり曖昧に笑うしかない山下に、
「いっつも本読んでるし、勉強できるし、おとなっぽいよね。山下くんて」
「……いや、そんなことは」
 据え膳を食わなかった自分がおとなっぽいと言われるのは、今の心境的には正直微妙だ。

「女の子とあんまり話さないからね、今まであんまり話しかけられなかったんだけど」
「あー、うん」
「でも川上さんと話してるの見て。私も話してみたいなって」
「あー、うん」
「これからもちょくちょく話しかけていいかなあ?」
 いいかなあ、と言われても。
 何で急にそんな話になったのだろう。山下は眉をひそめた。話に脈絡がなさすぎて意味がよく
わからない。
 しかしそんな山下のことなどお構いなしに、海野は「嫌かな?」と聞いてくる。嫌です。なんて
言われるとはかけらも思っていないように見えるのは……穿ちすぎだろうか。
「ね、テスト勉強も二人でしちゃえば効率いいんじゃない?」
 海野がにっこりと首を傾げてみせたのとほぼ同時、机にふっと影が差した。

 見上げる。
 しばらく何も言えなかった。
 目を丸くする山下に、海野も視線を上げる。
「川上さん?」
 すぐそばに立って山下を見下ろす川上に、海野がふしぎそうな声を上げた。
286山下と川上 38:2009/05/31(日) 21:21:20 ID:/HXUliRX
「山下、一緒に帰ろ」
 不機嫌な顔でぼそっと呟く川上に、山下は口元を緩めた。苦笑によって。
 話しかけてくれたのは嬉しいが、どう見ても怒っている。何かあったのだろうか。 
「ほら、立ってよ」
「川上さん、今ちょっと話してるんだぁ。もうちょっと待ってもらってもいい?」
 海野が申し訳なさそうに眉を下げてみせる。川上はそれをちらっと見やり、
「悪いけど、山下はあたしとテスト勉強するから」
 すげなく言い放つと、山下の腕をぐいぐいと引っ張った。

「二人、ほんとに仲いいねえ」
 海野がにこにこと山下を見る。山下は川上に引っ張られながら何とも言えない笑みを浮かべる
しかない。
 腕を引かれるままに席を立つ。そのまま教室の外まで連れて行かれそうな勢いなので、慌てて
カバンを引っ掴む。海野がひらひらと手を振るのを見て手を振り返す。

 瞬間、川上がグイと腕を引いた。山下の腕に川上の腕が絡まる。
「あたしたち、付き合ってるから」
 強い口調にぎょっと川上を見つめたのは、山下だけではない。海野が大きく目を見開く。その
口が開く前に、川上はさっさと山下を連れて教室を出ていた。

「……川上、どうした」
 教室を出たきり一言も口をきかない川上に、山下は困っていた。
 話しかけるな、というオーラを前面に出した川上に声をかけることもできず、腕を引かれて
ただ歩く。駅を抜け、電車に乗り、気づけば我が家に着いていた。

 仕方なく自室に通し、山下はようやく疑問を口にしたのだった。
「何かあったのか? 教室にいたときから様子がおかしかっただろ」
「……別に」
 ベッドに腰かけ、行儀悪く足をぶらぶらさせている川上は、つんとすましたままだ。
 仲良くなる前のような態度に、思わずため息が出た。
「海野さんにも変な態度だったし……何かあったんじゃないのか」
 海野、という山下の言葉に、川上はキッと鋭い視線を向けた。久々の一睨みに、山下はビクンと
姿勢を正す。
 最近はかわいらしい態度ばかりを見ていて忘れていたが、川上の視線は怖いのだ。

「……あたしとはしゃべってくれないくせに」
287山下と川上 39:2009/05/31(日) 21:22:51 ID:/HXUliRX
 山下を睨みつけたまま、低く山下が呟く。が、小さくてよく聞こえない。
 聞き返すが、川上はそれには答えず、
「海野ってさぁ、山下のこと狙ってるっぽいよ」
 意地悪そうに唇を歪めた。

 いつかの、山下を小馬鹿にしていたときの笑みを彷彿とさせるそれ。山下は眉をひそめる。
川上はそんな山下を挑発するかのように、フンと鼻で笑ってみせた。
「真面目そうでおとなしそうで、からかったら面白いんじゃん? だってさ」
「……本当か」
「マジだって。女子トイレで聞いちゃった。なのにさぁ、山下ってば話しかけられて嬉しそうに
ニヤニヤしてんだもん。アレはないなって感じ」
「ニヤニヤしたりは――」
「してたし!」
 鋭い声に驚く間もなく、山下の体はベッドに押さえつけられていた。

 とっさのことに声も出ない。ぱくぱくと口を開閉する山下に、川上がうっすらと唇の端を
つりあげる。
「やっぱり山下もああいうタイプがいいわけ?」
 返事ができなかった。
 唇が塞がれ、一瞬、息も忘れた。
 飲み込みそこねた唸りのような声が川上の喉の奥に消える。
 引き結んだ唇を、川上の舌がツツ、と撫でた。熱い。どろりと柔らかなそれが唇を這う感触に
背筋が震える。幾度も往復させられると、もうたまらない。山下は唇をひらいた。

「それとも、相手してくれる女なら誰でもいいの?」
 唇をくっつけたまま、川上が笑う。
 甘ったるい、媚びるような声に山下の下腹部にズンと熱が溜まる。気をそらそうと他に意識を
向けてみても、制服ごしに胸や太ももの柔らかさを感じてしまい逆効果だ。
 どうしたらいいのかもわからずうろうろと彷徨う舌を、川上の舌が絡め取った。
 それと同時に、ズボンのチャックのあたり、つまり膨らみ始めてジクジクと熱を持ったそこに、
川上の指が触れた。
288山下と川上 40:2009/05/31(日) 21:24:33 ID:/HXUliRX
 う、と声が漏れる。人差し指が裏筋をスー、とたどる。根元を柔らかく握り、またスー、と
先端まで一息になぞる。緩慢なその動作がじれったいような快感を生み、山下を困らせる。
「か、かわかみ、やめろ」
「何でぇ? あたし上手いでしょ?」
 フッと耳に息を吹きかけられ、山下はうめいた。
「おっきくなってきた」
 耳元で笑われ、カッと顔が熱くなる。たまらず肩を押し返そうとするのだが、やわらかく握り
こまれると力が抜けてしまう。やめろ、という声も弱々しい。
 カチャカチャとベルトを外す音がしても、必死に抵抗しようという気にはなれなかった。

 強引に脱がされ、ずれたトランクスから先端が顔を出す。ぎゅうっとてのひらで包まれると、
つい気持ちよさそうなため息をついてしまう。ハア、と吐き出した息ごと川上の舌に絡め取られ、
山下は夢中で舌を擦り合わせた。
 川上の空いた手が山下の右手を掴み、自らの胸に押し当てる。
 膨らみに手が触れた瞬間、欲望でカッと目の前が赤くなったようだった。

 我を忘れ、つい手に力が入る。薄いシャツを通して熱と鼓動が伝わってきた。もどかしく川上の
シャツのボタンを外す。山下のかさついた指が川上の肌を撫でると、川上が熱い息をつく。耳をくすぐる
それをもっと聞きたくて、乱暴にシャツを左右に開いた。
「あんっ」
 ブラジャーの外し方もわからず、ずらしただけだ。まろびでた乳房の中心をキュ、と摘む。力を
入れすぎただろうか、と、そんな気づかいも忘れていた。
 川上のてのひらは、いつの間にか上下に陰茎をしごいている。先端からにじみでた先走りが
川上のてのひらを濡らし、ヌチヌチといやらしい水音が響く。

 頭の中は真っ白だ。何も考えられない。
 山下はうわごとのように呼んだ。川上、川上、と、何度も熱にうかれた声で呼んだ。
「山下、あっ、ね、あたしのがっ……山下のことぉ、気持ちよく、で、き、るっああん!」
 首筋を舐めると、川上の体がびくんと跳ねた。
 汗と川上の匂いがするなめらかな肌を一心不乱に舐める。唾液でべたべたになった川上の肌はにぶく
輝き、それがぞっとするほど色っぽい。
「だから……」
 ハアハアと荒い息を吐きながら、川上がゆっくり起きあがった。
289山下と川上 41:2009/05/31(日) 21:26:08 ID:/HXUliRX
「だからあたしだけ見てて……お願い」
 熱が引いた。
 いや、正確に言うと違う。熱はまだギンギンだ。息子は固く張りつめ、まさに怒張と呼ぶにふさわしい。
 血管が浮きまくったそこの熱が引いたのではなく……目が、覚めた。

 川上の頭が少しずつ下がっていく。山下の膝に手を置いたとき、ようやく何をされるか予想がついた。
 もう一度、川上の手がぎちぎちに張りつめて涎を垂らすそこを上下に撫でる。それだけでもう、
意識が吹っ飛びそうに気持ちがいい。眉根をぎゅっと寄せた山下の顔を見て、川上がにやりと笑う。その
表情が色っぽくて困る。
 川上の髪が、山下の太ももに触れた。
「山下……大好き」
 川上の吐息が先端をくすぐり、また先走りがジュワ、と溢れる。

 やわらかな舌が陰茎を撫でるその前に、山下は起きあがった。
 川上の頭をそっと撫で、やんわりと行為をとめる。
 弾かれたように顔を上げた川上に、首を振ってみせた。
「いいんだ、川上。そんなことしなくていい」
「……何で?」
「俺は……」
「気持ちよくないの?」
「違う、俺は――」
「あたし、初めてじゃない」
 川上がピシャリと言い放つ。
「触るのも舐めるのも慣れてる。山下みたいに大切にしようとか考えたことなかった。海野みたいに
清純キャラとかでもないし。……あたし、汚いよ」
「川上……」

「だから……あたしが山下に好かれるためには、こうするしかないじゃん。カラダ利用するしか
ないじゃんっ……。あたし、こんなやり方しか知らないよっ!」
 大声で叫んでいるわけではない。
 けれど、悲鳴のようだった。
 大きな瞳が潤んでいる。唇を切れそうなほどきつく噛みしめ、川上は耐えている。それでも、潤み、
限界まで張りつめた瞳からは、瞬きひとつで涙がこぼれた。
 山下は思わず手を伸ばした。
290山下と川上 42:2009/05/31(日) 21:26:47 ID:/HXUliRX
 きつく抱きしめると、首に川上の腕が回る。川上が顔を埋めた首筋に涙がつたった。
「汚くない」
 山下はそれだけ言うのがやっとだった。
 頭は未だに真っ白だ。うまい言い回しも、川上を感動させられるような告白も、とてもじゃないが
思い浮かばない。
「川上はきれいだ。俺は好きだ。川上が好きだ。本当に好きだ」
 馬鹿の一つ覚えだ。冷静な頭の一部分がそう嘲るが、山下は口を止められなかった。

 川上に自分を卑下しないでほしかった。
 泣きながら必死に想いを伝えてくれたあの教室での出来事や、何度も山下の名前を呼んでくれた
河原でのことを、後悔しないでほしかった。
 川上は川上だ。
 山下が好きになった川上は、今の川上だ。
「きれいだ。ほんとに。俺は……俺は川上しか見てない」

「……も、いっかい、言って」
 川上がそっと腕の力を緩めた。
 涙でぐしゃぐしゃになった顔が山下を見つめる。涙で貼りついた髪を払ってやりながら、山下は
ゆっくりと繰り返した。好きだきれいだ川上だけだ、と、呆れるほど何度も繰り返した。

 いつの間にか、川上の顔がすぐ目の前にあった。
 何度目かの「好きだ」を言ったとき、唇に川上の吐息がかかった。山下は目を閉じる。ふにゃ、と
唇がたわんだ。
 ちゅ、ちゅ、と触れるだけのキスを何度もした。
 唇をくっつけあうだけでどうしてこんなに気持ちがとろけそうになるんだろう。山下はふしぎに
思う。どうして好きすぎると泣きそうになるんだろう、とも。

 相手の下唇を自分の唇でそっと挟んでやると、柔らかくて気持ちいいことを知った。
 軽く吸いつくと、ぴた、と唇同士がくっついて気持ちいいことを知った。
 何度も試してみる。川上の唇が、どちらかの唾液で光っている。きっと山下の唇も。濡れた唇に
むしゃぶりつく。気持ちいい。何度も甘噛みし、擦り合わせ、やさしく食む。
「……やま、し……あ、あ」
 川上の腕がぎゅうと山下を抱き寄せる。隙間なく体をくっつけあうと、川上がふと顔を離した。

 照れたように小さく笑うと、右手をゆっくり下ろす。
 元気に存在を主張する山下のそれを、指の腹で優しく撫でた。
「……あたし、流されてないよ。もう好きって言うだけじゃ足りない。……いい?」
291名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 21:28:57 ID:/HXUliRX
中途半端ですが、ここまで。続きます。
292名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 21:51:02 ID:nOqzQ2//
キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n`∀´)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!
293名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 21:52:55 ID:IBD3Vflj
>>291
GJ!
294名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 21:52:57 ID:Uyr1PaAE
ビッチならではの魅力がある川上可愛い!一途で健気で萌えました。
続きも楽しみにしてます!
295名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 23:31:03 ID:eY/pAk1q
ふう…
296名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 23:33:01 ID:PUDBaFDx
規制中なので、ケータイですまそ。
ありがとう!海野も一途っぽいビッチで面白いけど、川上かわいいよ川上!
いよいよクライマックスかな?
謹んでお待ちしておりますm(_ _)m
297名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 00:06:27 ID:nPcoSkt0
>>291
ぐっじょぶ!
298名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 11:44:48 ID:0FIvw6wR
川上可愛いよ川上
続きwktk
299名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 13:56:10 ID:VY7lLIlv
ビッチならではの葛藤がいいなw
GJ
300名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 21:00:29 ID:Xea9BGGA
ケンシン可愛すぎ
301名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 23:16:17 ID:8bM5y2xM
川上と言うと、どうしても某氏を…。
302名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 23:41:19 ID:LN3FxAuH
けんしんとだいすけ
303名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 00:21:57 ID:cmGz1Knh
一時期は過疎っていたこのスレももう一安心やね
304名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 02:55:07 ID:Gjcxcbms
亀レスだけど
>>107
ビッチの豊穣の神様か、ありだな
ただ世界の神話でスレの方が良いかも
305名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 15:49:48 ID:YVpXE7l1
306名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 20:23:11 ID:gVdijEkQ
だっーもうチンコが勃ったところで切られるんだ
続き待ってますね
307名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 20:46:04 ID:9d8LeHh+
>>304
豊穣の神は大抵ビッチか寛容だぜ〜
308名無しさん@ピンキー:2009/06/03(水) 00:07:06 ID:rQue3stH
そういや腹黒ビッチはどうなったんだ
309名無しさん@ピンキー:2009/06/03(水) 01:54:30 ID:0yIp3fa6
ゲーパロさんも来ないな
310名無しさん@ピンキー:2009/06/03(水) 08:07:39 ID:ln0B54Rt
保守がてらあげ
311名無しさん@ピンキー:2009/06/03(水) 23:43:27 ID:zsKcLdoh
あげ
312名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 23:49:38 ID:C4k1SSyY
あげ
313名無しさん@ピンキー:2009/06/05(金) 00:16:34 ID:oMqb2F+Q
川上もいいけど山下もGJ!!
あいつはいい男だよ
314名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 09:34:24 ID:5Yv96ZZL
まず訂正
×山下を睨みつけたまま、低く山下が呟く。
○山下を睨みつけたまま、低く川上が呟く。

それでは>>284-290の続きです。
315山下と川上 43:2009/06/06(土) 09:35:20 ID:5Yv96ZZL
 山下は思わず笑った。
 よくよく見れば、二人ともひどい格好だ。下半身だけ丸出しの男と、上半身のすっかり乱れた女。
 こんな格好で好きだの何だの言って泣きそうになっている(片一方はすでに泣いている)。
 しかも、言いたい台詞は先に言われてしまった。

 何も言えず、ただ頷く。
 川上にそっと顔を寄せる。目を閉じた川上の瞼にキスをした。
「……脱がせてもいい?」
 川上が目を閉じたまま言う。また台詞を先取りされたな、と苦笑しながら、山下も川上のシャツに
手を伸ばした。途中まで外して中途半端に肩のあたりに絡まっているシャツを脱がせ、川上に
誘導されながらブラジャーを外す。
 気づけば、山下もシャツを脱がされていた。

 裸の胸をくっつけあう。山下の胸板に潰されて、むにゅ、と川上の乳房が形を変える。
 指が埋まりそうに柔らかなそれからドッ、ドッ、と心臓の音がした。
 いや、この音は山下自身から聞こえるのだろうか。この心音が自分のものか相手のものか、
もうわからない。距離が近すぎる。
 舌先をなぞりあい、だんだん口の奥まで侵していく。川上は山下の下唇に吸いつきながら、うなじの
あたりを指先でツツ、と撫で上げた。不覚にも体が跳ねる。ふふ、と唇だけで川上が笑った。
 くやしいから反撃する。髪をかきわけ、耳の裏を指先で撫でる。
「っ、は」
 耐えきれない、というように甘い息をつくので、山下の方が参ってしまった。

 頭の芯をじっくり溶かしていくようなキスを何度も繰り返した。
 たわむれに舌先を浅く行き来させると、飲み込みそこねた唾液が糸を引く。川上の唇の端から垂れて、
顎の先までつたった。
 それを拭うことも思いつかないのか、川上は荒い息を吐いている。力の抜けた体はしっとりと汗ばんで、
山下の体に吸いつくようだ。
「あっ、あ、はぁっ」
 舌を絡ませるたびに、下半身に響くような声を出す。心臓にも息子にも悪い声だ。ぎゅうぎゅうと
押しつけてくる胸に存在感がありすぎる。
 触りたい。揉みしだいて、舐めて、吸って、川上をとろとろのぐちゃぐちゃにしたい。
316山下と川上 44:2009/06/06(土) 09:36:26 ID:5Yv96ZZL
 背中や首の裏や耳たぶをじりじりといじっていた手を、少し、下げてみる。
 肩を撫で、鎖骨に触れてみる。
 鼻にかかったような泣き声を川上が上げた。山下の首に回していた腕の力を少し緩め、体と体に
わずかな隙間をあける。
「はあっ、はっ……山下ぁ……」

 ねだられている。
 そう思うと、心臓がギュウ、と悲鳴を上げた。可愛い好きだ可愛い可愛い、と感情の波が山下を襲う。
 力いっぱい抱きすくめてしまいたい衝動をどうにかこらえ、すくいあげるように乳房に触れた。
「ひゃあんっ!」
 触れるときに指先が先端を掠めた。
 キスだけでつんと尖ったそこはひどく敏感になっているらしい。川上の体が強張る。白い皮膚と
赤く色づきつつあるそこの境目をなぞると、短い嬌声を上げながら体がびくびくと震えた。
 どうしよう、何だかすごく、
「……舐めたいんだが」

 川上がとろんとした目で山下を見上げた。ふにゃふにゃの骨抜きになった体は山下にしなだれかかり、
浅く荒い呼吸のせいで肩が上下している。
 ぎこちなく押し倒すと、素直に倒れてくれた。
 震える手で川上の手首を掴むと、素直に左右に開いてくれた。
 重力に逆らい、ぷるんと存在を主張する乳房が、川上の呼吸のたびに揺れる。
 山下に従って手は左右に広げているものの、隠さないのは恥ずかしいのだろう。川上は目を伏せている。
真っ赤になった目じりと、照れのためか拗ねたように尖った唇がかわいい。その唇を遠慮がちに開き、
川上は小さく小さく、蚊の鳴くような声で囁いた。
「舐めて」と。

 舐めた。
 むしゃぶりついたと言った方が正しい。
「ンッ、はぁんっ!」
 一も二もなく赤く充血する先端に吸いついたせいで、川上が悲鳴のような声を上げる。とっさに身を
捩るが、山下が覆いかぶさっているせいでどれだけも動くことはできない。舌で丹念にねぶられて、
なす術もなく体を震わせた。
317山下と川上 45:2009/06/06(土) 09:38:04 ID:5Yv96ZZL
 乳房自体はマシュマロか大福のように柔らかなのに、その先端だけは固い。
 舌先で転がすと、山下の口の中でこりこりと動く。夢中で舐めた。唾液でべたべたになった皮膚に
やわく噛みつき、川上の口からひっきりなしに零れる甲高い悲鳴を耳の底に溶かしこんだ。悲鳴は
泣きだしそうにか細く、しかしどうしようもなく色を含んだ声で山下の下半身を攻め立てる。

 どこもかしこも舐めたかった。
 だから耳に舌を突っ込んでかき回し、首にねっとりと舌を這わせ、鎖骨を食み、また胸を舐め、
二の腕をやさしく噛み、へそまで舐めた。
 山下は何も考えられなかった。理性はとっくの昔にどこかに置いてきてしまったし、頭の
芯はとっくの昔に溶けて傾いていた。
 川上がいつの間にか、悲鳴さえも上げなくなっている。
 ハッ、ハッ、と荒い息で苦しそうに山下を見つめている。潤んだ瞳に張った水の膜は決壊し、
こめかみを濡らしていた。

 動物のように舐めつくし、味わい尽くし、山下はようやく少し我に返った。
「わ、悪い川上。舐めすぎた」
 際限も加減も知らない童貞の、しつこさだけは一級品だ。川上がぐったりしたまま
じろりとねめつけてきても、その艶っぽい視線にまたも欲望が疼く始末なのだから。
「し……しつこいよぉ……」
「悪い」
「も、ダメ……あたし、きつい」
「そ、そうか。悪い」
 ゼエゼエと肩で息をする川上に無理はさせられない。正直なところ、もう限界を超えた山下の
下半身は涎を垂らしてぎちぎちに張りつめているわけだが、川上がダメだと言うならダメだ。
 奥歯を噛みしめてこみ上げる疼きに耐える。
 と、川上が山下の手を掴んだ。

 掴んだ手は下りていく。
 乳房を通り、腹をかすめ、下りていく。
 押しつけられたそこに触れると、指先が熱くぬめった。ぐっしょりと濡れ、下着はもはや用を
なさない。柔らかなそこは、ひくひくと痙攣している。
「こ、こっち、も……触って」
 真っ赤な顔で川上が言った。
318山下と川上 46:2009/06/06(土) 09:39:23 ID:5Yv96ZZL
 いつの間にか、川上の足首を掴んでいた。
 いつの間にか、それを高くかかげていた。
「きゃあっ!」
 足を抱え上げられ、川上がのけぞる。まだ脱いでいなかったスカートがめくれ、むっちりした
太ももや濡れた下着、そこからうっすらと透ける茂みまでよく見えた。
 あれ、俺、何してるんだろう。山下は思いながら、体を傾けた。
「や、山下ぁっ」
 川上が叫んだところでようやく自分のしていることに意識が向いたが、もはや止められなかった。

 山下は川上の足の間に体をもぐりこませていた。
 頭は太ももの間にある。
 白い太ももから視線を上げれば、足の付け根までしっとりと汗だか何だかよくわからない液体に
濡れている。酸っぱいような甘いような匂いが鼻をくすぐった。どうにも腹の底に熱を滾らせる匂いだ。
 その匂いに誘われるかのように、山下の舌は下着の上から、薄い茂みやそこから続く割れ目を
丹念に舐めているのだった。

「ひっ! あ、あっ、ああっ! だめ、だめぇ山下っ」
 川上が必死に声を張るが、山下の耳には届いていない。
 下着ごしに割れ目を舌でつつき、鼻づらをこすりつける。次第にたまらなくなって下着を乱暴に
ずらす。舌を差し入れようとした山下は、透明のとろりとした液体が下着からツツ、と糸を引いて
いるのを見た。
 とっさに一瞬上を向く。鼻血が出るかと思った。
「川上、直接舐めたい」
 呟く山下のふうふうと荒い鼻息がかかるのか、川上の足が時々ピクピクと動く。それに合わせて赤く
色づいた割れ目も細かく震え、濡れそぼったそこがまた潤む。
 山下はくらくらした。こんなものを目にして、きちんとお伺いをたてられる自分はすごい、とも思う。

 しかし山下の堪忍袋ならぬ欲望袋が今にもちぎれそうなことなど知らない川上は、なかなか返事を
してくれない。でもとかそんなとか、返事にならない曖昧なことばをごにょごにょと呟いている。
 ついには、荒い息を吐き出しながら小さく「汚いよ」と呟いた。
 それどころか、手を伸ばして下着ごと隠そうとする。

 山下はもちろんその手を掴んだ。
 川上が不安そうに山下の名前を呼ぶ。それには答えずに、山下は舌を突き出した。
319山下と川上 47:2009/06/06(土) 09:40:38 ID:5Yv96ZZL
「ひゃんっ!」
 川上の体が跳ねた。
 舌先にぬるぬると液体がからまる。口のまわりはたちまちベタベタになった。
 割れ目の襞を舌でめくり、奥も丁寧に舐める。川上がすすり泣くような声を上げた。山下の耳には
川上の嬌声は入ってくるが聞いていない。聞く余裕がない。今はただひたすらに、目の前のあまりに
官能的で扇情的で、つまりやらしい存在を攻め立てるのに夢中だった。

 ぬちゃぬちゃと舌でかき回していると、ふと、割れ目の上の方に何かがあることに気づいた。
 指先でかきわける。ぷくんと尖った、小さな突起があった。
 たわむれに食む。途端、川上が爪先をびくびくと震わせた。
「やああんっ!」
 反応がおもしろくて、もう一度、やさしく舌でつついてみる。
「だめぇっ! やあっ!」
 なるほど、ここはイイらしい。

 そうとわかれば話は早い。山下はぱくりとその部分をくわえた。吸いつくと、川上の体が大げさに
跳ねる。手が必死に山下の髪を引っ掴もうとするのだが、力がうまく入らないのか指先が山下の
髪を撫でるばかりだ。
 山下は調子づいてべろべろと舌でその突起を舐めまわした。吸い上げ、舌先でつつき、最後に
やさしく、噛んだ。
「っ! あ、あ、ああーっ!」
 瞬間、川上の体が痙攣した。背が弓なりにしなり、ぴんと体に緊張が走る。
 その後ぐったりと力の抜けた川上に、山下はさすがに心配になった。気絶でもしたのかと
慌てて体を起こし、顔をのぞきこむ。

 果たして、川上の意識はあった。
 とろんとした目で山下をうらめしそうに見つめ、唇をとがらせている。たいへん可愛らしい仕草に
山下の胸がキュンと鳴った。誘われるように唇に吸いつくと、「ンッ」なんて色っぽい声を出す。
 もう射精してもいい。山下は幸せだった。
320山下と川上 48:2009/06/06(土) 09:41:36 ID:5Yv96ZZL
 が、一人満足感に浸る山下とは別に、川上は不機嫌そうな表情のままだ。
「どうした川上、嫌だったか? その……勝手に舐めて悪かった」
 素直に謝ってみるが、表情は変わらない。山下が眉を頼りなく下げたそのとき、
「……イカされた……」
「え?」
 小さな声に思わず聞き返す。
 ふらふらと川上が起きあがった。起きあがるのもきついのか、手をついて肩で息をしている。
 支えようと伸べた山下の手をしっかりと掴み、川上はじろりと視線を強めた。
「あ、あたしがイカせるはずだったのに……」

 そのまま、掴んだ手をぐいと押される。
 バランスが崩れた。背中にかすかな衝撃があり、体がベッドに沈んでいることを知る。
 腹につくほど反り返っていた山下の陰茎も、元気に天を指して伸びあがった。
「川上、何を――」
 目の前で、パサ、とかすかな音がした。
 視界の端で何か黒いものがすべり落ちる。何だろう、と上半身を少し起こす。

 山下はそこに楽園を見た。
 ……と言うと大げさかもしれない。しかし、一糸まとわぬ川上の姿はそれほど衝撃的だった。
 白い肌は上気し、大きく呼吸するたびにさんざん舐め回した胸がふるふると揺れる。垂れた液体が
太ももまで濡らし、いやらしく光っていた。
「あたしじゃなきゃダメって感じにしてやりたかったのにー……」
 いやいや、もう川上無しじゃだめだろう。と、心の内で冷静に思うのだが、驚きすぎて声が出ない。
 川上が山下に覆いかぶさった。だらだらと溢れる先走りが川上の腹を濡らし、その感触に
川上がにやりとする。

「あたし、山下に全部あげる」
 ちゅ、と触れるだけのキスをして、川上が言った。
「処女はあげられなかったけど……でも体も気持ちも全部あげる。あたしで山下をいっぱいにしたい」
「川上……」
「だから山下の初めて、ちょうだい?」
 川上が陰茎を掴む。張り詰めたそれの先端がぬるぬると熱い何かに導かれる。
 ぬるぬるして柔らかくて熱いそこに押しつけられ、山下は呻いた。突きたい。本能のような衝動が
むくむくと山下を責める。突きたい。ここに思いきり突きたい。突きたい。
「うっ、わあっ」
 次の瞬間、山下は情けなく叫んでいた。
 川上が腰を落とし、吐息を漏らす。小さく震えながら山下を見やり、微笑んだ。
 川上の中に山下がすっぽりと収まっていた。
321山下と川上 49:2009/06/06(土) 09:42:31 ID:5Yv96ZZL
 そこから先は夢中だった。
 記憶も定かじゃない。
 川上が腰を押しつけてくるたびに呻き、がくがくと体を揺らされると刺激に戦慄いた。
「ああっ、あんっ、ハッ……山下ぁ、やました、やました……」
 うわごとのように山下を何度も呼ぶ川上の声が掠れている。
 いつの間にかしっかりと手を繋いでいた。いつの間にか山下も川上の名を呼んでいた。何度も。
「すきっ、すきぃ、すきなのっ山下ぁ……」
 きゅうきゅうと川上の中が締まる。襞がまとわりついて、奥へ奥へと促してくるような感触に、
山下は奥歯を噛みしめてこらえた。
 いくらなんでも、ここで出してしまっては早すぎる。
 川上がぬちゃ、と音をたてながら腰を少し持ち上げた。眉根を寄せ、半開きの口から荒い息を
吐くその顔が、また下半身を熱くさせる。
 山下、と川上が呼んだ。
 甘えるような、泣きだす寸前のような、どうにも色っぽい声にやられ、山下は腰を突きたてた。
「やあぁっ!」
 川上の体がぶるぶると震える。奥がぎゅう、と収縮し、山下を締め上げる。

 限界だった。
「あっ……」
 声を出したのはどちらだったのか。山下はびゅくびゅくと止まらない射精感に身を震わせ、
川上は中に溢れる感覚に声を漏らす。
 二人ともぐったりと脱力した。

 川上が山下にぺたりとのしかかる。顔を寄せてきたので、山下は目を閉じた。
 唇を触れ合わせると、ジンと心臓が疼く。唾液を絡ませながら舌を吸い、下唇を押しつけ合う。
 ゆっくりと顔を離すと、川上がいたずらっぽく笑った。
「イカせちゃった」
「……そうだな」
「あたし無しじゃいられない体になった?」
「……そうだな」
 むくむくと立ち直りつつある息子に苦笑しながら言う。中で膨らむものを感じたのか、川上が
小さく声を上げた。信じられない、という顔で山下を見る川上に、
「川上、もう一回したい」


 確かに川上無しじゃ、もういられない。
 今度は自分が馬乗りになってめちゃくちゃに川上を突きながら、山下はぼんやりと思うのだった。


◇◇◇

322山下と川上 50:2009/06/06(土) 09:43:08 ID:5Yv96ZZL
 夏特有の、薄っぺらな水色の空にうっすらと雲が溶けている。
 ぎらつく太陽に首筋も頬も腕も、体中を睨みつけられ、山下はふう、とため息をついた。
 暑くなりそうな天気だ。今日も昼になれば最高気温を記録するのだろう。

 左手にむずむずするような感覚を覚えつつ、山下はもう一度、ため息をつく。すると、横から
元気に叱り飛ばされた。
「ため息つきすぎ! あたしと登校するのイヤなわけ?」
「そうじゃなくて……やっぱり、その、俺みたいな地味な奴と川上が……」
「まだ言ってんのぉ? しつこい! 黙って歩いて!」
 ぴしゃりと跳ねのけられ、山下はとぼとぼと歩みを進める。
 ふいに、ぎゅ、と左手に熱がこもった。繋いでいる手をかたく握りしめ、川上が赤い顔を
うつむかせる。
「……あたしが山下のこと好きなんだから、周りは関係ないでしょ」
 胸が暖かくなると同時に、下半身までもが熱くなってしまったのは内緒だ。

「サオー山下ー! おはよ!」
 後ろから化け物が廊下を駆けてきた。
 手を繋いだ二人を見て、塗りたくった目の周りが崩れるほどニヤニヤ笑った。
「何ぃ? クラスの奴らに見せびらかしちゃうのぉ?」
「まあね」
「キスとかしちゃってよ。んでぇ、川上は俺のだーとか言っちゃうのぉ」
「化け物黙れ」
「山下ぁ! 調子乗んなよテメー!」
 そうこうしている間に教室の前だ。
 ひどく緊張している自分に気づき、山下は思わず足を止める。
 ぎゅ、と、再び左手に熱がこもった。
「山下があたしのだって、見せびらかしたいんだ」
 川上が小さく呟く。
「……俺も」
 山下も、真っ赤になりながら呟いた。
 横から見ていた化け物が、大げさに肩をすくめる。
「ってか早く教室入れっつーの」
 川上が照れたように笑った。

 二人のことを、邪推する人間はきっといるだろう。嫌な噂を立てられるかもしれない。傷つく
ことを言われるかもしれない。川上を泣かせることも、あるかもしれない。
 それでも、山下は川上と一緒にいたい。
 これからもずっと一緒にいたいから、こそこそと隠れるようにするのは嫌だった。
「……山下」
 川上が微笑む。山下も頷いた。
 見上げる視線に応え、ゆっくりと扉に手をかけた。



(終わり)
323名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 09:44:27 ID:5Yv96ZZL
読んでくれた方、感想をくれた方、今までありがとうございました。
324名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 10:20:58 ID:FhNAIlU9
乙!
山下と川上が羨ましいぜ!w
化け物もいい味だしてたし、GJでした!
325名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 12:29:37 ID:KSPUvkvP
ひどいリア充スレだ
乙でした!
326名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 12:44:47 ID:ZutgrEvo
化け物、いい化け物だな…。
山下も川上もかわいかった!GJ!
327名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 14:24:31 ID:gtBfGu5F
GJとしかいいようがない
アンタ最高だぜ
328名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 14:48:21 ID:vTlTfhZS


すげえ萌えた〜〜! 川上カワエエ〜。


ビッチでツンデレ最高!
329名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 16:10:43 ID:0H9knhyp
GodJob!!
乙でした!!
スレ的に分かっちゃいるんだけど読ませるSSでした!!

でも、山下はカノジョのダチの名前(里中)くらい覚えろw
330名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 16:18:12 ID:6sLkoqVR
かわいすぎだろ川上
GJ以外のナニモノでもない。最高でした!


化け物の呼び名は変わらないのかw
331名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 16:39:13 ID:idFY4J17
GJ!


















なのか?
332名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 16:42:09 ID:uHBCnUYA
GJ!

さあ、次は里中こと化け物が一途になる話が来るまで待機するか
333名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 18:06:02 ID:xFd4jSzr
gj!
もう最後デレすぎでこっちは鬱になりそうだったぜ!

ついでに
里中で番外編はありますか?
334名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 20:43:17 ID:OY9j8lO1
GJ!!

携帯からですまないけど、エロパロ板にはもったいない程の良い出来でした

DeepLoveとか恋空なんかよりも全然良かったので、もっと内容濃くして書籍化希望

335名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 21:17:41 ID:z+YkxGTv
>>334
夏厨乙
336名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 23:06:07 ID:Sq62G89q
>>323
GOD JOB!!
川上が可愛くて山下も可愛くて、化け物もいいこですごく面白かった!!

337名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 00:05:15 ID:VLc8aUTi
川上と山下に愛着がわく素晴らしい作品をありがとう!
川上のビッチ仲間で実はいいやつの里中さん、清楚に見えてビッチな海野さん等脇キャラも素敵なスパイスでした!
とにかくグッジョブ!
338名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 02:18:07 ID:L9PxRW1y
次は化け物が一途になる番かな?
339名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 15:55:06 ID:xitLGVx2
ゲーパロさんどうしたん?
340名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 00:09:05 ID:iI9yvvNb
いや、こんな作品に出会えるからエロパロスレは.......な。

なかなかのもんだ。
341名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 04:14:28 ID:kLR6UiTV
ふひ
342名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 08:08:57 ID:VNn2UuDx
甘えん坊スレに一途になった元ビッチの話があるな
こっちで一途になる過程が見たいぜ
343名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 03:23:42 ID:JUo49bb0
ビッチは非処女だからこそ燃えると思うのだが
おおまかなあらすじを考えると
隠れ処女になってしまう…不思議!
344名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 14:29:02 ID:BtjrVM9X
>>343
耳年魔で強がっているとかもありっちゃありだw
345名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 01:11:11 ID:41v9A6R5
>>343
素人童貞ならぬ恋愛処女ですね、わかります

個人的には寝取り趣味のビッチがターゲットにマジ惚れするけど振られる話とか
ビッチが高ステータスの男に近づくために男の親友の冴えない君と交流を持つうちに冴えない君に惚れる話とか
悪女として他人に避けられているビッチが同じような境遇のいじめられっこと仲良くなる話とか読みたいぜ
346腹黒の人:2009/06/10(水) 02:56:11 ID:3SjW/MDm
久々に来たら、すごいの投下されてて思わず全裸
山下と川上の人GJ!

>>308
展開に詰まったのと、仕事忙しかったんだスマン
先週なんとか乗り越えたから、多分その内続き書きに来ます
待っててくれてる人には本当にすんません
347名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 03:11:44 ID:2EYEvkzm
>>346
よしきた待ってる!
楽しみにしてます
348名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 16:05:36 ID:GohF9x/5
>>343
前スレにそうゆうのあったぜ
349名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 20:13:49 ID:cKcE/erP
>>346
うぉ!お帰りなさいませ。
楽しみに待ってます!
350名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 21:26:18 ID:+pH6iB+K
プリキュア
351名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 21:27:49 ID:+pH6iB+K
はビッチ
352名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 22:37:32 ID:/asvcdG7
>>351
1人でなにやってんだwwww
353名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 17:24:43 ID:LdjQN4wz
悪の女スレ保管庫で見つけた
ttp://marrymeakujo.blog74.fc2.com/blog-entry-11.html
354名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 20:07:52 ID:eGPf1ogJ
>>353
これってビッチじゃないだろ?
ただの悪の組織の女幹部の話じゃないか。
355名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 20:41:11 ID:P5+h2r3v
>>354
外伝もあるよ。
他のやつともやりまくってる。
356名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 21:17:42 ID:Yol8jHf+
おんぷちゃんはビッチ
357名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 21:29:25 ID:Yol8jHf+
ポニョもビッチ
358名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 09:20:50 ID:6E72aXw9
このスレでいいのか微妙ですが…投下します
359チサと隆:2009/06/12(金) 09:23:46 ID:6E72aXw9
佐野隆は今居留守の最中だった。

ピンポーンピンポーン…
ピポピポピポピンポーン
ドンドンドン!
ドンドンドン!ガン!!

あ…最後ドア蹴ったな…

『たーかーしー!!いるのは知ってんだよー!開ーけーろー!』
今は夕方だし、流石にこれは近所迷惑過ぎる…

今開けると何されるか分からないので少しドアを開けチェーンロック越しに話かける。
『チサ…ちゃん…?何…?』
相手は高森千佐、保育園からの幼なじみだ。
チサは怖い。
がり勉、オタクな隆に比べ色白、容姿端麗で勉強が出来て運動もでき、何よりモテる。
ふわふわの薄茶色の髪にクリクリとした大きな目
見た目は女神だ。
しかし…隆に向けてはとてつもなく凶暴な性格だった。

『あーんたねぇ…一人暮らしするなんてあたし聞いてないんだけど!!』

勿論だ。言わなかったんだ。
大学生になってやっと手に入れた楽しい一人暮らしライフ、邪魔されたくない。
まぁ…もう無理だけど…
360チサと隆:2009/06/12(金) 09:25:27 ID:6E72aXw9
『あ…母さんから聞いたの…?』

『それ以外何があんの?』
チサは拗ねたようにツン、と口を尖らせる。
『…大体…何コレ?』
チェーンロックを指差し、綺麗に整えられた眉がヒクヒクッと動く
『や…誰かと思ったから…』
ノブを握ったままの隆の手が汗ばむ。
『開 け て ?』
恐ろしい程の笑顔で言う。

ガチャン。
覚悟を決めチェーンロックを外す。
『はいお邪魔しまーす!』
隆は溜め息しか出てこない。
まだ一人暮らしを初めて3日目、綺麗に整理整頓していた殺風景な部屋がチサの手によってどんどんと散らかっていく。

『お!こんな所に!』
チサが何かを見つけ楽しそうな声を上げる。
『素人物のAVじゃん!』

『!?!?!ちょ…と…返して!返してよ!』
隆が必死に取り上げようとすると、
ひゃははははとチサが笑いながら立ち上がりDVDを持った手を上にかかげる。
361チサと隆:2009/06/12(金) 09:27:47 ID:6E72aXw9
『あんた秀才君でしょ?一人暮らしになったからっていつもこんなの見てるわけ?』
隆は顔が熱くなるのが分かった。

『…男…だし…』
変な言い訳しか浮かんでこない
『男ねぇ…目に涙浮かべて言ったってねぇ…ぷぷ…』
とチサは隆を見下ろしながら笑う

何故かカァ…と恥ずかしさと怒りが込み上げる
チサの笑い声とさっきから降り出した強い雨の音が隆の耳の中で響いた。

すると突然パチっと部屋の電気が消え
ドドドオオーーーーーン…ゴロゴロゴロゴロ…
と地響きがした。
いつもなら、あ、停電した。とだけ思うのだが、今日は違った。

隆の胸の中でフルフルとうずくまるチサがいる。
『た…たかしぃ…で…電気…』
さっきまで悪魔の様に人を見下ろしていた奴はどこへいったのか…
そういえばチサは小さい頃から雷だけは苦手だった。

『…俺に頼らずに自分でなんとかすれば?男と思ってないんでしょ…』
先程の怒りと暗闇でいつもより強気になる
『…』
チサは鳴り続ける雷にフルフルと震えながら隆の胸をパシパシと叩いた
362チサと隆:2009/06/12(金) 09:29:43 ID:6E72aXw9
そうは言ったものの、隆は震えるチサがなんだか可哀相になってきて
少しは目も慣れてきたし
母に非常用にと玄関に置かれた懐中電灯を思いだし、取りに行く事にした

『チサちゃん…よって?』
『……』
『懐中電灯取りに行くから…』
『……』
(無視ですか…)

無理矢理立ち上がろうとする隆の服をクイッと掴み
『…や…ぁ…一人にしないで…ぇ…』
鳴り響く雷にチサはさっきよりも激しく隆に抱き着いた

隆は下半身がぞくっとするような不思議な感覚に襲われた
女の子に免疫のない男にはキツすぎる密着感。

あぁ…考えるな…だめだめだめだめ…

隆は周りを見回すとガッと勢いよく布団を取り、ボフッとチサに被せた。
『こ…これで大丈夫でしょ…?』
隆の物は少しづつ反応していたため、離れられた事にホッとした

『…と…なり…きて…』
チサの涙声が聞こえた。
(…嘘だろ…)
363チサと隆:2009/06/12(金) 09:31:19 ID:6E72aXw9
『チ…チサちゃん…それはちょっと…』
『…昔は…布団の中一緒にいてくれた…』
『それは…まだ小さかったし…』
反応していた物もやっと鎮まりかけたばかり。

ゴロゴロゴロ…ドドーーーンンン…!

隆は音に少しビックリする。
『きゃああああああ』
隣では布団に包まったままチサが叫ぶ。
その声に隆はまたビクッとなる。

『…う゛ぅー…』
チサの今にも泣きそうな声が聞こえる。

ガシガシッと頭をかいて
『入るよ…?』
隆は隣にいる膨らんだ布団に問いかけた。
コクリ…と布団の固まりが動く。

…昔と同じ…昔と同じ…

隆は自分に言い聞かせた。
364チサと隆:2009/06/12(金) 09:33:34 ID:6E72aXw9
パサ。
布団をめくり中に包まるが流石に二人は狭い。
隆は顔だけ外に出した。
外ではまだ雷がゴロゴロと鳴り響いている。

チサは隆の腕に引っ付いているが、柔らかい膨らみが呼吸によって引っ付いたり離れたりを繰り返す。

(ーーーッ…)
どうしても触れている部分の感覚が鋭くなってしまう。
『たかし…昔みたいに後ろからギューッてして頭なでて…』

チサは昔を思い出して懐かしんでいるみたいだが
女慣れもしてない上に、あれからずいぶん成長した今の隆にそのおねだりはきつかった。
隠すように体育座りをする。
『む…無理だよ…』
『…なんで?こっち向いてよ…』
片方の足を引っ張られる

(ま…まずい…今は本当にまずいんだよ…)

チサはスッと足の間に体を入れ、背中を隆の胸に引っ付ける。
(ああ…終わった…)

『…隆…なんか固いの当たってるけど…』
『ジ…ジーンズのチャックの所って固いから…』
『隆今ジャージじゃん…』
365チサと隆:2009/06/12(金) 09:35:37 ID:6E72aXw9
沈黙が続く。
『ご…めん…』
言葉を先に口にしたのは隆だった。
するとチサが急に体ごと振り返り

『…何が?』
と言うと大きくなった隆の物を人差し指でツツ…と下から上に撫であげた。

隆の体がビクッと跳ね上がる。
『あぁ!…ちょ…と…何して…』
『んー?分かんない?』
不意にぐっっと握られ、隆は眉を寄せる。
『………ッ』
『ちょっと意地悪言いすぎたし…気持ちくしたげる』
チサは隆の耳元でぼそりと囁くと頬を染めてニヤッと口角をあげた。

『ひゃっ…う…』
耳をツゥ…と舌が伝う
『ん、感度いいねー』

隆はハッとしたように手の平で耳を覆う
『ここここんなのダメだよ!ちゃんと好きな人としなよ!』

『…?おっきくしてる癖に何がダメなの?』
『………ッ』
くりくりの大きな目で見つめられると何も言えなくなる。
366チサと隆:2009/06/12(金) 09:37:44 ID:6E72aXw9
いつの間にか雷は鳴りやんでいて、部屋には雨の音と隆の熱い呼吸音が響く。

ドッドッドッと早鐘を打つ、心臓がはちきれそうだ。
首筋をツツツ…と舌が這ってゆく。
たまに唇ではむっと噛むようにされると、背筋がざわつく。
シャツの中にチサの左手が滑り込んできて、胸の先端に指が触れる。
背中を引こうにも後ろは壁で逃げ場がない事に隆は今更気付いた。

『隆ぃ。もう乳首たってるけど?』
ニヤニヤと馬鹿にするように報告され、隆は恥ずかしくて俯くしか出来ない。

シャツをめくり上げられたかと思えば、チサが頭を下げ胸の先端がピチュ…と濡れた物に触れた。
『あぁっ…!』

触れただけかと思えばくちゅくちゅと先端の周りだけを舌でなぞり
立ち上がった先端を甘噛みしつつ吸い上げる
『う…っ…く…』

チサの右手でゆるゆると上下される物は限界を迎えそうにビクビクと脈を打ち始めた。

『も……イ…ク…』

隆が苦しそうにそう呟くと同時に、チサは上下していた手をピタッと止めた。

なんで止めたの!?と言わんばかりにバッと顔を上げチサを見ると
ニヤニヤと隆を見つめる天使のように綺麗な顔をした悪魔がいた。
367チサと隆:2009/06/12(金) 09:40:04 ID:6E72aXw9
『手が疲れちゃったー』
ニヤニヤしながら手首をプラプラと振りチサが言う。
『……ッッ』
隆は限界まで沸き上がっていた射精感を堪えるため、唇を噛み締めた。

『何?どしたの?』
『…や…何もない…よ』
『でもさ、すごい苦しそうだよ?』

分かっている癖に…

上目使いでわざとらしく聞いてくるチサに、隆は悔しくなった。

『物足りないんだ?仕方ないなぁ…』
チサはニヤッと口角を上げると少し乾燥したのか唇を舐め、隆のジャージに手をかけた。

『ちょっ!ダメだって!』
『何?』
ギロ…と睨まれると体が固まる。
そのままガッと下着ごと下ろされる。
先端をテラテラと濡らし大きくなった物が姿を見せる。

(もうイヤだ…)
隆は羞恥心から顔を背けるしかできない。
368チサと隆:2009/06/12(金) 09:42:44 ID:6E72aXw9
『ふ…ん…一応剥けてるんだ…』
チサはジロジロとなめ回すように見たかと思うと
ツツ…と下から上に筋を舐め上げた。

『っ…んっ…く…』

初めての快感に噛み締めた唇から声が漏れ出てしまう。
最後のプライドなのか隆は声の漏れる口を両手で押さえた。

ちゅく…ちゅぱ…

舌でジグザグに舐め上げたり途中で吸い上げたりされ
先端に先走る雫が溢れると隆はもどかしさに腰が浮いてしまう。
その瞬間、濡れそぼった先端が柔らかく暖かいものに包まれた
『んんんっはっ…ぁ…っ』

くちゅくちゅと先端を舐め回したかと思うと
舐め上げながら吸われ
グチュッグチュッと音を立てながらチサの頭が上下した。

『あっ…あっあっんぅっあっ…』
チサの動きに合わせ、両手で押さえた口から声が漏れる。
隆は気持ち良さで悶えながらもビクビクと波打つ自身に限界が近づくのが分かった。

『ぁっあっ…イッ…ク…イ…ク……』
そう言った瞬間、隆は苦しそうに眉を寄せながらチサの口に全てを吐き出した。
369チサと隆:2009/06/12(金) 09:46:27 ID:6E72aXw9
『んっ…く…ちゅぱ…』
『はぁ…っはぁ…っチ…チサちゃん!?ののの飲んだの?!』
『ん?うん』

その瞬間隆は我に返ったように今自分がされていた行為を思いだした
恥ずかしさのあまり体育座りをして膝で顔を隠す。

『……』
『じゃあ…雨止んだし帰るわ…』
少しの沈黙の後、声を出したのはチサだった。
『え?暗いし送るよ!』
『いいって…』
『でも…危ないし…』
『いいってば!じゃあね!』
チサは一度も隆の顔を見ることなくスタスタと玄関に向かう。
足音の後、ガチャンと重いドアが閉まる音がした。

『…どうしよう…怒らせちゃった…』

隆は一気に天国から地獄へ落ちた気持ちになってまた膝を抱えた。

ガチャン!
チサは隆の家の玄関を閉めると、早歩きでエレベーターへと向かった。
不意にエレベーターの前で壁にもたれて座り込むと、真っ赤になった顔を両手で覆った。
『なんで…?これくらい…慣れてるはずでしょ…?』

チサは自分に言い聞かせると、雨上がりの涼しい風で熱くほてった顔を冷やした。
370名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 09:48:48 ID:6E72aXw9
短いですが、とりあえずここまでです。
見て頂いた方、ありがとうございました。
371名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 10:17:55 ID:mU1BOi33
評価はさておき、ここまでだとこの辺が妥当じゃないかなー

【友達≦】幼馴染み萌えスレ18章【<恋人】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242741528/

気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第9章
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1206353662/
372名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 17:03:41 ID:JZYgguPd
最後のチサの台詞から見るに経験豊富なんだよな。
幼馴染みスレに投下するのは黒っぽい灰色というのが個人的感覚。
気の強い〜かこっちで考えると性的経験値が高い分こっち寄り。
よってここでOKじゃないかと。
と、いうことで続き待ってます。
373名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 19:29:29 ID:Zc7X8bgA
ビッチは、一般人にとっては劇薬属性であることが多いので、
あまあまラブコメが歓迎される幼なじみスレなんかに投下したらえらいことだよ。

このスレで続き待ってるよ。
374名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 21:29:54 ID:fd5MP6Pq
妹だろうが幼なじみだろうがビッチならいいかなあ
難しいけどw
375名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 23:58:03 ID:hbQzcjtk
ビッチな妹…何かどっかで見た記憶が…
376名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 00:10:37 ID:3ER0LgU4
昔、妹スレでビッチな妹が投下されていたな。
実は兄が好きなんだけど、決して結ばれないことがわかっているから、兄に見せつけるように不特定多数の男と遊びまくっている妹の話。
377名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 01:23:56 ID:xo71vWcu
URL教えて
378名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 01:30:59 ID:OPg1Hl8j
>>373
経験が多いのとビッチはちがうだろ
まあこっちでいいと思うが
379名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 03:24:09 ID:ATRA2IjC
>>378
問題はスレとの親和性だからな。
380名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 05:59:56 ID:OLYeLIzR
何で遊んでる女の子をビッチって言うのか知らないけど
なぜら的確な言葉に聞こえる不思議
381名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 10:40:17 ID:3ER0LgU4
382名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 15:34:11 ID:Ms8qTdOU
>>381
懐かしい。これすごく好きだった
こういう実りのない切ないビッチもいいね
383名無しさん@ぬるぽ:2009/06/13(土) 17:11:29 ID:o3KgnJ0t
いいよ〜いいよ〜wktk
384名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 18:23:36 ID:2pxPh2Ue
ふと思ったんだが娼婦みたいなリアルビッチが一途になるのも有りなんかね?
中世の高級娼婦が身分の低い男に惚れちゃって葛藤するとか、
オーソドックスに風俗嬢が常連さんに惚れるとか見てみたいんだが。
385名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 19:28:32 ID:ATRA2IjC
ありというかど真ん中だよ。
386名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 19:33:03 ID:z403nBMg
そうか?
風俗嬢はあんまりビッチっぽい感じがしないな
キャバ嬢の方がビッチって感じがする

つか、ビッチって職業よりも気質だろう?
387名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 20:46:58 ID:5keM3eJy
いや有りだと思うな
つーか純粋に読んでみたい
388名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 21:21:17 ID:njs15QC+
>>386
そういう部分はあるね、風俗嬢にしたって人買いとかヤの付く人に売られたけど
性倫理的には普通とかお堅いだとビッチとはいえないと思うし(個人的にはそういう話も大好物だが)
389名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 21:22:55 ID:iZ1qXCpq
>>370
乙です。ビッチかどうか微妙はでしたが妄想を駆り立てられました
女慣れしてない好きな幼なじみのために自分が男慣れして幼なじみ男をリードしようと
評判のイケメンと付き合ったがレイプされ自分は汚れたと幼なじみのことを諦めてビッチに走ったとかエロいこといっぱい考えちゃった!
短編でも色々妄想できるからビッチスレはやめられねえぜ!
390377:2009/06/14(日) 00:10:36 ID:h0cl25dW
>>381
ありがとう
いい作品だった
391名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 02:57:11 ID:akzDJPfX
少しぐらいは寛容で行こうぜ
392名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 03:14:58 ID:2pTjWLuU
スレを盛り上げるには寛容にならないといかんよう…なんつって!
393名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 03:34:03 ID:sm+CSWRC
>>386
てか元々ビッチは娼婦みたいな商売女のことをいうんじゃなかったか?
394名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 08:49:59 ID:em+j++sg
旧ユーゴ、ビッチ多すぎるな
395名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 08:55:41 ID:POfRVoYG
ズラタンはいいビッチ
396名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 09:05:42 ID:LRJzBW8W
>>393
wikipediaとか調べてみよう!!
397名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 14:51:25 ID:akzDJPfX
イブラヒモビッチ
398名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 17:46:33 ID:+JGpq9cC
ピタゴラスビッチ
399名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 22:15:54 ID:POfRVoYG
イースたんは
400名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 22:20:05 ID:POfRVoYG
ビッチかわいい
401名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 22:22:30 ID:POfRVoYG
ビッチビチやぞ
402名無しさん@ぬるぽ:2009/06/15(月) 00:14:12 ID:nUHwRFRr
>>383
ガッ!
403名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 00:24:16 ID:vfcEJe9N
ビッチビッチ ジャップジャップ ランランラン♪
404名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 01:06:52 ID:PiiF7LsT
ビーチ ビッチビッチ ビッチカメラ♪
405名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 01:41:14 ID:fZ8VWKJ7
404でスレが止まるのは縁起が悪いとか言ってみる保守
406名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 12:45:02 ID:27N9ED70
素直クールスレに投下してあった、幾夜餅はこのスレ向きでもあるのかな?
407名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 22:16:15 ID:H1ifT429
素直クールビッチ! そういうものもあるのか
408名無しさん@ピンキー:2009/06/18(木) 04:06:35 ID:Tyl558zT
清楚ビッチとかいないの?
409名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 17:18:13 ID:KqovhZ1Y
保守
410名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 17:29:34 ID:bALOhgCo
>>408
どういうの?
一見清楚だけどビッチってこと?
411名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 19:31:14 ID:LHPdLUJN
>>410
世間知らずのお嬢様で告白されたら誰とでも付き合って、
セクロスも求められたら拒まずすぐにやっちゃうみたいな感じじゃね?
412名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 20:04:28 ID:57bHLsEf
>>411
お前凄いな
俺の中では清楚なんだけどいつも男がいてペッティングぐらいならすぐやる女のこと
セクースは初めてが辛かったからそれからやってない感じ
413名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 20:25:42 ID:bALOhgCo
>>411
それビッチか・・・?
ちょっと可哀想な子・・・?
まぐわいに打算がなくてビッチかな・・・
414名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 20:32:56 ID:QWXDRpbu
天然でビッチみたいな感じか?
415名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 22:09:33 ID:FwIuORRj
繊細でいじらしいんだけど常人には分かりづらい思考で時間かけてでも理解しようとしてくれるのが
その子を狙ってる男しかおらず同性に嫌われその状態にオヒレがついて毎回違う男と
一緒にいるからビッチ呼ばわりされてるお嬢しか想像できなかった
416名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 00:46:01 ID:G1MQT6Ex
俺も見た目清楚なビッチかと思った
普段は清楚で理想的な女の子なんだけど、実は影では沢山のおじさまと関係を持ってる感じの
417名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 04:38:29 ID:pfm9nuld
天然だけど、周囲の同性からは「キャラ作ってる」と思われて嫌われ
チャラ男たちから「癒される」とマスコット的な意味で愛され、常にスタバとかファミレスで男とサシで喋っている
端から見るとビッチっぽい・・・か?
で、見た目清楚?
418名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 18:33:52 ID:qgWxp8Zm
419411:2009/06/20(土) 20:41:38 ID:WV7EA3Nc
>>413
俺の中では天然ビッチって位置付けだな
浮気がばれても全然悪びれないで
「ちょうど良いですし、三人でやりませんか?」
とか言っちゃう感じw
420名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 23:32:04 ID:OSNNOvRe
ところで腹黒ビッチはどうなったんだ?
421名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 04:24:51 ID:qGLpkuq2
>>420
コンフェデ杯が終わったらくるよ
422名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 11:18:16 ID:6mmB1dCa
つーか腹黒スレが別にあるんだね。
423名無しさん@秋穂マンセー:2009/06/21(日) 12:56:37 ID:QEpxDypg
>>418
強いてこのスレ向きな所を探すなら、美希の○○○っぷり位かな?
どうもこのスレで言うビッチってのは、ヤリマンの事を指していて悪女ではない気がする
424名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 17:36:18 ID:Bk9kyeOR
マイ定義だけど

ビッチ=打算で男と付き合うけど浅はかな感じ?
悪女=計算ずくで男を手玉にとるし感じ?

なので、>>419のいうのは「奔放」とか「大らか」「放縦」って感じ
まあ、悪魔でマイ定義だけど
425名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 18:51:19 ID:+MrUHH1M
>>424が悪魔っ娘であることをカミングアウトしました
426名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 20:03:35 ID:rjopK3E/
淫魔でビッチな>>424。精を搾り取り、殺そうとして近づいた僧侶に一目惚れしてしまい…。
427腹黒の人:2009/06/21(日) 22:44:21 ID:qZyleF3f
>>421
勝手に決めてんじゃねえwww
野球派の俺は、楽天が優勝したら本気出すって決めてるんだ…
428名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 23:13:48 ID:b00YXtld
ビッチ=男との性交渉に背徳感を持たないだろJK
清楚ビッチ=不貞の概念を持たないから誰でも受け入れるお嬢様と思う
429名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 23:40:00 ID:S+wUWq6Q
>>427
じゃあ俺は横浜が優勝したら本気出す
430名無しさん@ピンキー:2009/06/22(月) 02:05:56 ID:89d72+L+
>>429
横浜ファンだけどそれは無理だと思う
431名無しさん@ピンキー:2009/06/22(月) 02:27:02 ID:BDY6GgUr
横浜FCが昇格したら
432名無しさん@ピンキー:2009/06/22(月) 03:20:19 ID:GmAGcSdY
>>431
それも・・・w
433名無しさん@ピンキー:2009/06/22(月) 08:59:56 ID:OMr+WQZr
じゃあソフバンが松中に引導を渡したら本気出す
434名無しさん@ピンキー:2009/06/22(月) 18:40:59 ID:gTC1TdeB
保守がてらに
つ http://www.shomei.tv/project-1025.html
435名無しさん@ピンキー:2009/06/23(火) 00:36:49 ID:+8MaQ37v
すこし気分転換の間に描いてみようかな、時間かかるだろうけど
436名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 13:32:47 ID:CaKUhYPQ
一途な気持ちさえ忘れてないなら女の子はビッチ位で丁度良いよねw
437名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 22:29:29 ID:/4mCfvKH
>>436

一人の男に一途になってからもビッチで、本命以外に他の男とやりまくる、ってのは微妙に感じる人もいるかな。
ソープ嬢みたいに、惚れた相手に貢ぐために客を取る、とかどうなんだろ。
438名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 00:57:41 ID:ND9B7b7I
男も知ってて貢ぐ為に風俗ってシチュは中々良いかも
しかしどう考えても駄目な男w
まぁ、一途なビッチ娘に萌えるスレだし
相手の男がカス野郎でも問題は無いんだが
439名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 20:03:35 ID:FTO3mnVj
でもあんまりカス野郎すぎると読むほうがイライラしないか?
440名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 20:25:31 ID:ExKl1zdW
スペイン負けた
441名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 20:26:35 ID:ExKl1zdW
俺のコンフェデ杯は終わった
442名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 21:40:03 ID:b6NzfcIO
>>440-441
よう、俺w
443名無しさん@ピンキー:2009/06/26(金) 19:05:29 ID:ElPCCH15
男が貧乏なバンドマンでそれを助ける為に風俗とかならありじゃね?
男の方は普通のバイトだと思っていて悪いと思いながらも女を頼ってて
女は気持ち良くて金も稼げて男を助けられるとか一石三鳥じゃねwwとか思っているみたいな感じ
もちろん女の本命は男なんで仕事のセクロスと男とのセクロスは別物だと思っている
444名無しさん@ピンキー:2009/06/26(金) 19:17:02 ID:8wP1eS9d
えーと、で?
445名無しさん@ピンキー:2009/06/26(金) 19:36:03 ID:yC+XWIIe
ビッチが一途の肝は心>>>体の実感だから
結ばれる前の売春はありだけど結ばれたあとの売春はきつくね?
というか恋人とは幸せになってほしい
遊女ものみたいのならともかく
446名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 01:44:34 ID:TbDDr/HO
>>443
仕事を楽しんでるのは微妙かな
あくまでも嫌々って姿勢が良い
447名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 08:43:34 ID:y2BoqaEL
アゲ
448名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 09:48:44 ID:lZIv1MKg
仕事楽しんでたらどこまでいってもビッチだろ
前は楽しんでやってたが好きな男ができて仕事嫌になって
でも借金いっぱいで仕事変えられず、男も貧乏だから養うために…ってのはありかもしれない

ただものすごく寝取られフラグ満点だが
449名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 10:27:42 ID:aaiR9by7
嫌々とか全然ビッチじゃねえだろ
よそのスレ行けよ
450名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 10:48:11 ID:eXP+0UvL
香辛料
麻雀のやつ
合コンからのやつ
山下
あたりが良かったね

ということで、投稿よろしく!
451名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 11:33:21 ID:lZIv1MKg
だから「ビッチが一途になったら」だろ?
ビッチと一途って反意語だと思うんだが
それともビッチで一途がありえるのか?w
452名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 15:37:48 ID:W0+sSL8p
>>451
スレの幅を狭くするようなこと書くなよ


個人的には一途になってからも他の男と寝るようなビッチも好きだ
付き合ってないことが前提になるけど、
好きな男が彼女持ちで付き合えないから寂しさを埋めるために、とか
本気の恋なんて初めてだから昂る気持ちに苛立ち、それをまぎらわそうとして男遊びを繰り返す、
とかだったら本気で萌える
453名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 16:17:36 ID:afR4NB3y
>>452
それは一途じゃないからNG
一途ってのは本人の心のありようであって、相手に受け入れられるかどうかは問題じゃない。
報われないからといって他で自らの欲望を充足させるような女は単なるビッチ
454名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 16:18:37 ID:tXzYI4XT
出来るだけ幅を取った方が投下もしやすいだろうな。
455名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 16:35:22 ID:gCKFR+8r
「心のありよう」と「言動」が齟齬を来すからこそ、人生は面白いんだぜ。
456名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 16:38:45 ID:VrV2nkjc
話の軸が「ビッチ」に重きを置いているのか「一途」においているのかによっても
作品から感じるものは変わってくると思う。
「山下と川上」は一途な方に比重を置いてるよね。
457名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 16:44:22 ID:afR4NB3y
>>455
人生の問題じゃなくて
一途かどうかの話なんで…

一途じゃない人生なんて一杯有るし、それが悪いともつまらないとも言わないが、
とりあえずそれは一途と呼べないのは確かなことだ。
458名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 17:00:14 ID:cyeM/Abj
そういうのを言い出すと処女なのにビッチ?とか揉める部分が噴出しそうなのでやめようぜ
個人的にはセックスまですると寝取られっぽいので嫌だけど自棄になってデートするぐらいならありじゃね?と思う
459名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 17:01:06 ID:9JfhQgHC
お前ら一途だな。
460名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 21:51:32 ID:CK7KPItN
このスレが「ビッチな娘のエロパロ」みたいなタイトルだったらビッチがビッチのままビッチな行動をしても何にも気にならないけど、一途がついてるんだからそこはしっかりと押さえておくべきだとおもう。
>>452の例えは一途になれなかったビッチな娘でしかなくて、ビッチな娘が一途になったらではないよ。
461名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 22:42:47 ID:gCKFR+8r
>>457
文脈で読んでくれると助かるのだが。

「心のありよう」は一途でも「言動」がビッチを脱却できない、そんな女の子の苦悩とかジレンマを絡めて、それでも好きな人と一つになりたい。
そんなストーリーは駄目なのかい?むしろオレとしては大いにウェルカムだぜ。
462名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 22:57:59 ID:KJtT4zCY
元から貞操が緩い女の子が、一途になって彼の気を引くために他の男とデート、
場合によっては寝てしまったとかなら、
それはビッチだと思うけど、一途として表現する人だっているだろう。
だから作品として、そのビッチが一途なのに、と思っているのに
男が、それは一途じゃない、という齟齬を生じる作品というのはなるほど、
と思う。
それにビッチの定義も、男を貢がせる対象としている思考をビッチとするものや、
合コンに参加する程度、男と寝てしまうビッチまで幅があると思う。
これは浮気ってどこから浮気?っていうの同じで人によって違うものじゃないか?
ID変わっているから複数人が一途というのはこうだと思っているのかもしれないけど、
読者の型をあまりに呈示しすぎると投下しづらいスレになっちゃうよ
燃料やら、釣りじゃないことを祈ってマジレス
463名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 23:23:45 ID:CK7KPItN
>>462
先程の意見が燃料や釣りに見えたのならすみません。
誓ってもスレの雰囲気を崩すために投下したわけじゃありません。

ビッチ側の感情をまったく考えていませんでした。
あらゆる状態に対して付けることができる定義なんて、個人のなかにしかないのに、馬鹿な書き込みをしてしまいました。
すみません......。
464名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 23:24:15 ID:afR4NB3y
>>461
むしろスレの流れを読んで欲しいです。
>>461程度の事例であればまあ許容範囲だと思うけど、
>>452のように他のオトコと寝る云々というケースについて、
>>453で自分がさびしいのを他で紛らわすならそれは一途とは言わない、
という主旨で発言したものにたいして
>>455で心情と言動の不一致はある、というから457の返しがあるのであって
気持ちが素直になれないのと実際に他の男と寝てしまうのでは天と地ほどの開きがあると思う。
申し訳ないけれどそこの違いを文脈で読めといわれてもそれは無理です。


>>462
一応、単一IDで書いてますので私=453=457です。
他は別人です。

それで、基本的には、寝ちゃうところまで行ったら、やっぱり一途とは呼べないんじゃないかと思います。
もちろん寝ちゃった上でなお一途さを表現できるような凄腕のSS職人さんがいればそれはそれで大歓迎だけれど。

このスレで過去に投下された作品だって、ヒロインが自分の面子とかプライドとか、あるいはそれまでの価値観とか、
そういうの全部取っ払って主人公のことだけ考えるようになるってのが共通点だと思うし、
他の男と一線を超えちゃってなお一途、ってのは非常に難しいんじゃないかと思いますね。

と、マジレスしてみた。
465名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 06:45:16 ID:nThr3ubP
>>464
結局、ソレは単に「心のありようと言動の不一致に許容限界線を引いた」だけの話。
「他の男と寝たら一途じゃない」ってのは君の中での定義であって、オレはその定義には同意できない。


まあ、セックスを漁るだけがビッチじゃないし、ビッチなのにツンデレ一途な2丁拳銃とか、面白いキャラメイキングは色々と可能だわな。
466464:2009/06/28(日) 07:22:36 ID:Dr8TpVVL
んじゃ、一途って何?
どういうのがビッチ?

好きなだけならいっぺんに何人でも好きになれるし、
貞操観念がユルイだけがビッチって訳でもないだろう。

そういう定義には幅があって当然ではあるけれど、
やっぱりある程度のところで線引きしないといかんのだと思う。
どこまでも間口を広げちゃうならそもそもジャンル訳自体成立しないからね。

もちろん、それが私の考えるものと同じかどうか定かではないのは承知してますよ。
これは私個人の意見なので、同意するかどうかは各自の自由です。
一応、どういう考え方で不同意なのかぐらいは教えてくれたら嬉しいけどね。

P.S.
念の為に確認しておくけど、私が言ってる「他の男と寝ない」というのは
その子のスタンスとしてであって、不可抗力とかそういうのは別だからね。
主人公を好きになる前は誰と寝てても構わないし、
好きになった後でもレイプされたりはしょうがないよ。
だからその辺のところで何か理由を作ってやむを得ず…
というアプローチはあるかもしれないけれど、
やっぱり何らかの理由なしに自らの欲望を慰撫するためってのなら一途とはいえないと思う。
只好きなだけでなく、有る程度の自己犠牲というか献身が伴うからこそ一途といえるんじゃないかな。
467名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 08:23:55 ID:G/kghx1P
最高に投下しにくいふい(ry

別にオレがするわけじゃないけど
468名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 09:29:35 ID:Dr8TpVVL
ごめんね、ふいんき(なぜかry)悪くしちゃって…
色々ゴチャゴチャ言ってるけど出されたものは何でもおいしく頂く奴なので
投下する職人さんはあまり気にしないで下さいね。
469名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 11:02:51 ID:nThr3ubP
ビッチも一途も、定義付けは作者様の一存で宜しかろ?


一途さによる自己犠牲ねぇ。カレシのボディガードを買って出て足をチキンスライスにされかけたりする感じ?
470名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 11:32:57 ID:xWQBKiNL
間口を狭めるの反対

ただでさえ過疎化してるのに投下が減るのは困る。
471名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 15:56:07 ID:Y2QP7gU9
過疎るのはビッチ→一途で展開まで決まってるから仕方がない気がする
あと、定義付けは作品を投下して作品で語ってくれるとありがたい
本当に見えない敵と戦ってるようにしか見えないしw
472名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 17:04:41 ID:F4kMqOz+
定義とか好みとかスレで語るとハーレムスレみたいになるから勘弁して
473名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 17:11:24 ID:g9UgZD3J
こうじゃなきゃ嫌だとか言ってる奴マジでいい加減にして
474名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 20:27:36 ID:SbgGSyPo
面白けりゃそれでいい
475名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 20:28:40 ID:3UVKu1ya
             /)         ,..-──-
           ///)      /. : : : : : : : : : \
          /,.=゙''"/      /.: : : : : : : : : : : : : : ヽ
   /     i f ,.r='"-‐'つ    ,!::: : : :,-…-…-ミ: : : : :'i
  /      /   _,.-‐'゙~     {:: : : : :i '⌒'  '⌒' i: : : : :}  こまけぇこたぁいいんだよ!!
    /   ,i    ,二ニー;     {:: : : : | ェェ  ェェ |: : : : :}
   /    ノ    il゙ ̄ ̄      { : : : :|   >   |:: : : :;!   
      ,イ「ト、  ,!,!         ヾ: :: :i r‐-ニ-┐.| : : :ノ
     / iトヾヽ_/ィ"___.       ゞイ!. ヽ 二゙ノ イゞ
    r;  !\ヽi._jl/゙_ブ,フヽヾーtー:、__ ,r|、` '' ー--‐f´
476名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 20:54:29 ID:Fe56mZ2b
なんか盛り上がってんなww
477名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 21:17:39 ID:C+mMLGpE
よっしゃ、そんなことよりビチズに萌えようぜ!
478名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 10:44:22 ID:faVJnuwT
がんばれ!レッドビッチーズ
479名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 12:07:06 ID:aMtpqHqY
なんだかんだ言って、お前ら一途な娘が好きなだけなんだよな
480名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 13:20:38 ID:GhhYxkjo
空気読まずすまん。

ネタができたのだが、ネタだけの投下もいいだろうか?
481名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 14:31:11 ID:aMtpqHqY
>>480
構わん、やってしまえ
482名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 16:28:11 ID:GhhYxkjo
すまない本当にネタだけなんだ。


例えば、援交やってるビッチがなんども深夜徘徊とかで、補導されて、その度に厳しくも優しく諭してくれる刑事ににベタ惚れするとか。

あとはビッチを毛嫌いしている男が同僚に強引にキャバクラに連れて行かれたら、キャバ嬢がベタ惚れして、男の同僚とヤルらせてやる事を条件に、同僚にその男を店に連れてこさせたり。
んで、健気なビッチに次第に男も・・・みたいな。


どうだろうか?
みんなの意見を聞かせてくれ。
483名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 16:38:34 ID:KdHZyVWf
>>482
上はありかもしれないが下は微妙だな
せいぜいやらせてくれる女を紹介するくらいじゃないと一途とはいえず
ただ物珍しさにちょっかいだしてるようにしかみえない
484名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 16:43:10 ID:JypBeJv5
ビッチェズ・ブリュー
485名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 17:37:31 ID:d2SMawwB
>>482
下のネタがすごい好みだ
寝取られ?そんなの関係ねぇ!
486名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 19:19:07 ID:I6jw6j4h
>>485
待て待て、寝取られは専用スレがあるだろうw
487名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 19:21:32 ID:D9wAfg91
>>482
どっちもすごく好みだ
上はビッチだからこそのシチュや相手が警官ってところもすごく良いと思うし、
下のは体を使ってと言うところにビッチっぽい頭の軽さと必死さがあって萌える
そのことで価値観の違いとかで一悶着あっても面白そう
488名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 20:37:42 ID:aq3pIAlH
>>482
上が良いなー
男は30代ぐらいのおっちゃんならなお良いな
489名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 22:47:44 ID:VGJD8k3y
>>488
んで実はバツイチで、嫁さんに浮気されて離婚。
心に傷持ってるのをビッチが癒やしていくと
490名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 23:23:56 ID:oSK38Mh/
>>482
俺も上のほーがいいな。
おっさんで30〜45くらいのノンキャリアで現場主義なオールドタイプ
の刑事さん。
離婚歴はあってもなくてもいいし仕事やら私生活が忙しくて女作る機会
に恵まれずなんとなく独身通してきたってのでもいい。

491名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 00:32:18 ID:y1w3bjBK
上がいいなー。
なんかしたは寝とられっぽいから苦手だw個人的な理由ですまんが
492名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 00:57:57 ID:DJdFS1kv
ぶたぎりでスマソ、質問なんだがこのスレ的は本当にかなりビッチでもいいのか?
493名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 01:01:23 ID:of8yDmIy
ギャップ萌えってやつ?
494名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 01:12:44 ID:MWHkvDDG
豚切りか・・・なかなか美味そうだな
495名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 01:17:19 ID:hnEJOjdD
修羅場と寝とられはキツイな。
496名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 01:18:49 ID:EnsVMGKB
いや、このスレを試す意味でも渾身のビッチでどうぞ
497名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 02:38:16 ID:k1Y7vQq+
すんごいビッチが一途になるのが良いんだよ
498名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 02:52:07 ID:iVMgeW6i
>>492
個人的にはかなりすごいビッチが好きだけど、最近スレ見てると「ビッチ<<一途」な人のが多そう
499名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 02:57:55 ID:Vmw38NNG
「ビッチ<<一途」がいいのではなく
ビッチ→一途になるのがいいのであって
ビッチで一途とかいうわけ分からん状態にされてgdgdするのが嫌だ
500名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 03:15:04 ID:kPqjYBjV
みんな、ありがとう。

だか、すまない、あくまでネタなんだ。
僕にできるのはここまでなんだ。

もしどなたかの書き手さん、もしくは書き手さんであるない関わらず、気に入っていただけたら、今まで出てきた意見もとりいれて、好きにこのネタで作品を書いてもらって結構です。

こういうのはマズいだろうか?
501名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 13:34:12 ID:A/l4E1LW
このスレ保管庫ってないの?
502名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 16:35:56 ID:2qiR3xDf
保管庫はまだ無いと思うけど、前スレの内容は>>227にあるリンク先から読める。
503名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 23:18:21 ID:lE/h+wVN
「淫乱な女の子で〜」スレに一話を投下したんだけど、内容的にこっち向けかもしれないのですが、
こっちに二話以降投下しようかと思ってます。
一話目もうpした方がいいでしょうか……?
504名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 23:30:47 ID:QsvTvviU
>>503
ください!!
505名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 23:32:35 ID:txqRY4Oq
セーフティフレンドかな?
バッチコイだぜ。
506<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:23:01 ID:O5l1iaLj
《第1話》

その日、僕は掃除当番だった。
たまたま教室掃除、たまたま同じ当番のクラスメイトが欠席とサボリでいなかった。
僕はやれやれと思いながら、その日の夕暮れに一人掃除をしていた。
委員長という立場上、みんないないからと自分までサボるわけにもいかない。
真面目で成績優秀な委員長。それが僕のクラスでの立ち位置だ。

(人が嫌がることを進んでやりましょう、か……)

損な役回りだけど、まあいっか。
内心自嘲しながら一通り終えてしまう。
だが当然、本来三人でやることを一人でやったのだから、いつもより時間がかかった。
図書館で勉強して帰ろうと思っていたが、今日はもう止めておこう。
そう考えながら帰り支度をしていた時だった。

「あっれー? 君一人なの?」

もう自分以外誰もいない教室に、少女の声が響いた。
入り口を見ると、見覚えのない少女が立っている。
背は男にしては小柄な僕と同じくらいだから、少し高め。
ブレザーのワッペンの色を見るに、一個上の学年生だ。
ショートカットの髪はよく手入れされており、髪留めも色合いはカラフル、悪く言えばケバめな印象を受けるもの。
顔立ちはよく見ればかなり整っている。
しかし、校則ギリギリ、いや、おそらく違反しているであろう口紅やアイメイクの濃さが目についた。
着崩した制服の彼女は、無遠慮に教室内へ足を踏み入れると、僕を値踏みするようにつま先から頭のてっぺんまで見上げていく。
一瞬、息を飲んだ。
こんな風に女の子にじろじろと見つめられるのは初めてのことだった。
特に、彼女の猫を思わせる円らさの中にも一種の鋭さを持った瞳は、化粧のせいもあってか、どこか大人びて見える。
一個上とはいえ、とても十代の少女の色香ではないように思えた。
平静を装っていたが、慌てた僕は口早に答えた。

「あ、はい、僕一人ですけど……」
「ふうん、伊藤くんと小川くんは辞退しちゃったの?」

伊藤? 小川?
二人はうちのクラスのムードメーカーといっていいタイプの、サッカー部所属のスポーツマンだ。
成績はふるわないものの背が高くて明るい二人は、女子にも人気があった。
彼らに用事があるのだろうか。しかし今頃は部活にいそしんでいるはずだった。
507<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:23:35 ID:O5l1iaLj
「二人とも今は部活だと思いますけど」
「ふぅーん。もう他にはいないわけ? 全部で五人だって書いてたけど」

書いてたって、何の話だ?
僕は目の前の上級生が口にしていることがまるで分からなかった。

「あ、あのー……いったいさっきから何の話を」
「じゃあ君でいいや」

にっこりと彼女が笑う。
華が咲いたように綺麗な笑顔だった。

「背も高くないし、それほどイケメンってわけじゃなさそーだけど」

彼女が腰に手をあててまじまじと僕の周りを観察しながら歩く。
何が何だか分からない僕を意に介さず、彼女は突然背後から両手で肩を掴んだ。

「わっ!?」
「カワイイ眼鏡で合格点あげちゃう」

耳元に吹きかけられる彼女の吐息に、思わず僕は飛び上がっていた。

「んふふ……じゃあ、ついてきて」

彼女はクスクスと意味深な笑みをたたえながら、踵を返して教室の外へと歩いていく。
まったく筋の見えない状況に、本来の僕なら異を唱えていただろう。
しかし、その時僕はなぜかふらふらと彼女の背中を追いかけていたのだった。

彼女は階段へ向かい、四階まで上がる。
僕は鞄をもじもじと抱えたまま無言でその後を追った。
彼女は『視聴覚準備室』とプレートのあるドアを開けた。

「さ、入って」
「は、はい」

彼女は僕が室内へ入るのを確認すると、ドアを締めてカギをかけた。
その行為に一抹の不安を覚えたものの、僕は鞄を適当な場所に置くと、彼女の次の言葉を待った。
視聴覚準備室は包装機材が並んでいるものの、そこそこの広さがある。
彼女は自分のバッグを部屋の中で不釣り合いに目立つ大きなソファの横に置いた。
くるりと振り向くと、悪戯っぽく笑って僕に言った。
508<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:24:17 ID:O5l1iaLj
「じゃあ、今から試験開始ね」
「試験?」
「そ。ま、採点基準はアタシ基準だから気まぐれだけどね」

試験、とますます意味のわからない単語が出てきたが、それを疑問に思う余裕は次の瞬間吹き飛んでいた。
彼女が突然スカートを脱ぎ始めたのだ。

「わっ!? ちょ、ちょっと何してんですかっ!?」
「え? 何って、服脱がなきゃセックスできないじゃん」
「せ、セックスっ!?」

何がなんだか分からない。
とにかく、彼女は今からここでセックス……英語で『SEX』……日本語で『性交渉』を始めようとしているらしい。
誰と?
僕と!?

目を白黒させている僕を見て、彼女は不意に何かに気づいた様子でジト目をこちらに向けた。

「あ! ……もー、マニアックだなぁ、キミ、制服のままが良いってタイプ?」
「う、い、いえそういうわけでは……ないんですけど……」
「そう? じゃあ、君も脱いで」
「……は、はぁ」

不承不承、僕はワイシャツを脱ぎ、続いて下のシャツも脱いでしまう。
上半身裸になったところで、ちらりと横の彼女を見ると、ブラジャーに手をかけているところだった。
ふわぁ……おっぱいおっきいし、綺麗だなぁ……
彼女はいわゆる着やせするタイプと言うのだろうか。制服を着ていたときよりも身体は締まった印象を受けた。
その締まった身体の中で、綺麗に整った形を崩さない二つの膨らみが視線を奪ってしまう。

「よっと……」

ぷるん、と音が聞こえそうな動きで乳房がまろび出た。
本物の女性の裸を、それもこんな美乳を生で見るのなんて初めてのことだった。
いつの間にか、僕の股間は熱く膨らんでいる。
509<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:24:50 ID:O5l1iaLj
「バキバキになっちゃう前に脱がないと脱ぎにくいんじゃない?」

そんな僕の状態を見透かすように彼女がこちらに視線も向けずに言った。
慌てて僕はズボンのベルトを外してパンツまで下げる。

「うう……」

全裸になったものの、恥ずかしくて手で自分のものを隠してしまう。
異性の前で裸になるなんてこと自体初めてだし、しかもここは学校内だ。
しかし、彼女はそんなことまるで気にしていないのか、堂々と腰に手を当ててこちらを見ている。

「ほーら、ダメじゃない、前隠してちゃ」

僕はおずおずと前から手を放した。

「へえ、思ったよりも立派だね」

彼女は素直に感心したらしく僕の勃起しきったペニスをそう評した。
一方僕は恥ずかしさで耳まで真っ赤になっていた。
こういうのは、友達から借りたゲームとか漫画では女の子のほうがするリアクションじゃないんだろうか?
彼女はソファに腰を降ろすと、ちょいちょいとこちらへ来るようジャスチャーした。

「じゃあ手始めに……舐めてもらおっかな」

彼女は心なしか上気しか顔で、とろけるような口調で言った。
中指を自身の股間へ指さし、僕に無言の圧力をかけてくる。
僕は意を決してソファの前に跪き、彼女の股間に顔を近づけた。
女性器をこんな間近で見るのは初めてだ。
しかし、幸い幻滅はしなかった。
彼女の股間はよく手入れされているのか、アンダーヘアは逆三角に綺麗に揃えられており、臭いも特にない。
僕は自分がおかしいことをしているという自覚を抱きつつも、彼女のヒクつく花弁へと舌を伸ばした。

「ん……」

彼女がそっと目を閉じて押し殺した声を発した。
舌先が彼女の膣の温もりを感じている。
より深くまで差し込むと、ヒクヒクと律動する彼女の膣内の味と熱さを感じることができた。
510<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:25:23 ID:O5l1iaLj
「ん……あ……ああ……あん……」

僕は次第にその行為に没頭するようになった。
より深く、より激しく彼女の膣内を蹂躙していく。

「あっ……あっ……いい……もっと……」

彼女は内股をきゅっと閉じて僕の顔を包み込む。
すべすべの肌が頬を撫で、香水とは違った、女性特有の甘い香りが鼻孔をくすぐる。
同時に、膣奥からはしっとりと何かぬめった液体が分泌され始めていた。

「あん……クリも舐めて……」

僕は言われた通り、いったん膣内から舌を抜く。
そして、綺麗に揃えられたアンダーヘアの中を探すように這わせた。
探し当てた突起を、舌先で転がすように刺激すると、面白いように彼女の身体が反応した。

「あっ! そう、そこ! んぁあ! 感じちゃう!」

僕の唾液ではない粘液が彼女の股間を伝っていた。
それは愛液だということに気づくのにそう時間はかからない。
すると、彼女が自分の股間に顔をうずめている僕の頭をぐいと引き離した。

「あん、もういいよ……もう我慢できない」

彼女はとろんとした目で僕の股間の勃起したペニスを見つめる。

「……入れて」

ここまでくるとある程度予想できていたが、流石に心臓が高鳴った。
……僕、実はというか、童貞。

「い、いいんですか?」

生唾を飲み込んで尋ねる。
511<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:25:56 ID:O5l1iaLj
「ん、いーよ……ちょうだい」

彼女はそう呟いて頷く。
僕のペニスは今にも精液を吹き出しそうなほどに勃起し、先端からは先走りの汁が滲み出ている。

「あ……」

僕はそこでふと理性が咎めた。

「どうしたの? 早くぅ……」

彼女が不満の声を漏らすので焦るが、とにかく今のままでは彼女の中へと入れられない。

「あ、あの、コンドーム着けないと」

もしかしたら空気の読めない言葉なのかもしれなかった。
しかし、こういった先走り液の中にも精子は含まれているので、彼女がピルでも飲んでなければ妊娠の危険がある。
AVやエロゲーと現実は違うのだと博識ぶって色々ネットで調べたことがある。
日本の若者の間違った性事情がどうとか、そんなサイトで知識だけは豊富な自分……

「えー? 要らないよそんなの、生の方が気持ちいいじゃん」

案の定、彼女は表情を曇らせる。
でも、ここまできたらちゃんとしておいた方がいいような気がした。
彼女は気にしていなくとも、僕の最後の理性が許さない。

「だ、ダメだよ……せ、先輩のこと妊娠させちゃったら悪いし……」

ああ、僕はこういうところで真面目ぶってしまうから女の子にモテないのかも。
言ってしまってから後悔するが、仕方がない。
512<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:26:46 ID:O5l1iaLj
「ふ〜ん……」

彼女は僕の言葉を聞いてしばし無表情になった。
お、怒らせちゃったかな……?

「じっとしてて」
「え?」

彼女は身を起こすとソファの隣に置いていた自分のバッグをまさぐった。
ごそごそと何かを漁る音。
一体どうしたんだろうと、言われるがままにじっとしていると、彼女が振り返り、さっと素早い動作で僕の股間に顔を寄せた。

「わっ!?」
「ひっとひへてって」

じっとしててって、と言おうとしたのだろうか。
彼女は僕のペニスを口にくわえてしまった。

「うああ!?」

生暖かい口内の感触に、僕はビクンと大きく背中を反らしてしまう。
彼女はもごもごと何度かフェラのピストンのような動作を行い、思ったよりもあっさりと口からペニスを開放した。

「な、何なんです……? あっ!」

いつの間にか、ペニスには薄水色のコンドームが被さっていた。
口で着けちゃったのか!
なんて器用な……、と思っていると、彼女が挑発的に笑った。

「ほら、お望み通り準備万端なんだから早く入れてよ」
「あ、は、はい!」

M字に股を開いた彼女の間に身体を収めると、すぐそこに彼女の顔があった。
間近で見ると、やはりカワイイ。この学校でもトップクラスまでいかずとも、上の中には確実にランクインできそうな印象だ。
思わずまじまじと見つめてしまう。
513<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:27:21 ID:O5l1iaLj
「ふふ、どーしたの?」
「い、いや……先輩、カワイイなって」
「あら、ありがと」

にっこりと笑うと、そっと彼女が口を差し出してくる。

「ん……」

あまりに唐突なファーストキスだった。
僕がカチコチに硬直していると、彼女の柔らかな舌がそっとこちらの唇を開いて侵入してくる。

「んちゅ……ん……ちゅ……」

まるで粘着性の食虫植物に絡め取られる哀れな虫のように、僕は次第に彼女の身体の方へと埋没していく。
彼女のむっちりと、それでいてすらりと長い脚が僕の腰に絡みついた。
長い口づけを終えると、僕は意識がぼうっとしてくるのが分かった。
まるで、彼女の唾液には催眠作用があるんじゃないのかと思えるような、巧みなキスだった。

「ね、キミってさ」
「はい……」
「初めてでしょ?」
「う……」
「アタシでいい?」

僕は大きく頷く。
既に彼女の手は僕のペニスに添えられていた。
その先端を、自身の入り口を向けている。

「じゃ、きて……」
「あ……」

彼女がきゅっと絡めた脚をせばめた。
互いの距離がより密着していく、そのまま、先端が彼女の膣内へ入っていく。
クチュチュ、と卑猥な音を立て、彼女の中へと全てが入りきる。
514<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:28:16 ID:O5l1iaLj
「うぁぁ……」

僕は思わず彼女の身体を抱きしめていた。
柔らかく、温かな女の子の身体。
たまらない密着感。
僕の薄い胸板には、彼女の豊かな乳房が押しつぶされ、互いの心臓の音まで聞こえそうなほどだ。

「どう……ドーテー喪失の感想は?」
「あったかくって、柔らかいです……」
「あは、じゃあ、動いていいよ」

彼女がここまでリードしてくれたのだから、今度は自分の番だ。
僕はぎこちないものの腰を上下に振り始めた。

「最初はゆっくり、んっ! そう、その調子で、あんっ! 突いて!」
「はぁっ! はぁっ! こうですか!?」
「ああんっ! そうよ、慣れたらもっと小刻みにしてみて」

ギシギシとソファのスプリングが軋む音が部屋に響く。
ここを彼女が選んだ理由が、視聴覚室は防音がしっかりしているからだと気づく。
彼女の中を突く度に、溢れ出た愛液と粘膜が僕のペニスを覆い、締め上げていく。
ゆさゆさと弾力を持って揺れる美乳を、僕は本能的に揉みし抱いていた。

「やぁん! 乳首もいじってぇ!」

薄桃色の乳首をつまむと、ツンと固くしこっていた。
それを指先で転がすと、キュッキュッと膣内が締まる。

「うぁあああ! 先輩、ぼ、僕もう射精しちゃいそうです!」

ここまで保ったのが奇跡なのだ。童貞の僕はあっという間に登り詰めてしまった。
もしかして僕の方を愛撫しなかったのは、
入れてからあっという間に果ててしまわないようにしたかったからなのかもしれない。
515<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:29:35 ID:O5l1iaLj
「んぁあっ! まだダメぇ、もうちょっとでイケそうなんだからがんばって!」
「は、はいぃ!」

僕はもう何も考えられずに壊れたように腰を振った。
彼女と僕の腰が打ち付け合わされる音がパンパンと耳を刺激する。
僕はもう我慢を通り越してこみ上げてくる精液を下半身に感じながら、腕の中の彼女を目に焼き付けた。
少し派手だけど、こんなにカワイイ女性が初めての相手であることに感動すら覚える。

「あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁーっ!!」

彼女がビクンと上半身を仰け反らせ、痙攣のように身を震わせた。
ツンと立った乳首が、彼女の性的な高まりを教えてくれる。
僕は、同時に激しい律動を起こした彼女の膣内で、堰を切ったように射精を開始した。

ビュクッ! ビュクッ!

「うああぁっ!」

僕は悲鳴のような声を上げていた。
今までの人生で一番凄まじいフィニッシュだったのだ。
ストックしてある精子は全て吐き出そうとするかのような、濁流じみた精液が撃ち出されていく。
彼女をぎゅっと抱きしめ、膣奥に向かって本能のままに射精を続ける。
果たしてどれくらいの時間そうしていただろうか。
少量の精液をピュクピュクと出すようになるまで、一分近くかかったような気がする。

「はぁー……はぁー……」

二人とも脱力して動けない。
余韻を楽しむのも兼ねて、僕らはそのまま折り重なったまましばらくの時間を過ごした。
516<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:30:07 ID:O5l1iaLj
ややあって、先に僕が退かないことには彼女が動けないので、身を起こすことにする。

「抜きますね……」
「あっ! 待って」

萎えたペニスを抜こうとすると、彼女がはっとして僕を制した。

「ど、どうしたんですか?」
「抜く時は気をつけて」
「え?」
「萎えた後に腰引くとさ、ゴム、中で外れやすいんだから」

そこまで気が回らなかった。
でも、最初は生でいいとか言ってた割には細かいんだな……?

「だから、根本をしっかり固定して、ゆっくり引き抜いて……」
「は、はい」

僕は指示通りにゆっくりと彼女の中から男性器を引き抜いた。
確かに、先端に精液の溜まったゴムは膣内で抵抗を受けて、そのまま腰を引いたら外れる危険がありそうだった。

にゅろん

たっぷりと黄ばんだ精液が溜まったコンドームが彼女の膣内から出てくる。

「あんっ」

最後に微かに彼女が喘ぐ。
その声が可愛いと思い、できればキスの一つでもしてみたかったが、
今自分のものにぶら下がっているものを早く処理しなければ無様なことこの上ない。
慌てて彼女に背を向け、愛液にぬめったコンドームをはずしにかかる。
……うまく外れない。AV男優とかあっという間に外してるのに。

「うわぁ〜マジそんな出したの?」

彼女は僕が恥ずかしくてこそこそと処理しようとしていたゴムを奪うとケラケラと笑った。
517<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:30:43 ID:O5l1iaLj
「どんだけ溜めてたのよぉ〜?」
「め、面目ないです……」
「あはは、ま、いいけどさ」
「あ、あの!」
「ん、なあに?」
「さっきの試験って……」

彼女はキュッとゴムの口を慣れた手つきで縛ってティッシュでくるみながら、思い出したように言った。

「ああ、アレね。結果、知りたい?」

彼女は宙を睨んで『ん〜どうしよっかなぁ〜』と裸のまま思案顔になった。
いや、そうじゃなくて、いったい何の試験で、何でセックスなんてしたんだろうか、ということが聞きたかったのだけど。
でも、今更それを聞くのはどこか無粋な気がしてしまった。

「まあ、いいわ、じゃあ……合格!」
「合格、なんですか?」

えらいカンタンに合格してしまった。
どうして、という感情は表情に出ていたのだろう、彼女はふふーんと笑って説明した。

「キミさ、ゴムしようって言ってくれたじゃん」
「ええ、まあそうですけど……」
「あれ、結構ポイント高かったよ。だって、アタシが今回セフレ募集したのだってそれが原因なんだし」
「せ、ふれ?」

セフレってあれですか、セックスフレンドの略称ですか?
それを募集って……

「なんでかなぁ〜イケメンって大抵アタシみたいな女相手だと生で入れたがるのよねぇ」

彼女はしみじみとそう言った。

「前の彼氏だって危ない日なのに生で入れたがるし……
だから今回はテクとか顔とかじゃなくてさ、とにかく安全≠ネセフレが欲しかったんだー」

僕を見てにっこりと笑う。
安全な、セフレ、ね……
『セーフティ・フレンド』、か。
518<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:31:22 ID:O5l1iaLj
「じゃあ、最初に生でしようって言ったのって……」
「ふふーん、引っかけ問題!
あそこで大喜びで生入れする男なんて怖くってしょうがないから、キミがそうだったなら叩き出してたわね」
「あ、はは……」

引きつった笑いしか出てこない。
しかし、ここまできて大体の全容が見えてきた。
つまり、彼女はセフレの募集をして今日がその試験日だったのだ。そして、その待ち合わせ場所が人気のない放課後のうちの教室だった。
でも、結局何かの理由で伊藤や小川たちは現れず、たまたま僕がその教室に残っていたから、彼女は僕がセフレ希望者だと勘違いして……

童貞まで捨てさせてもらっといて何だけど、この人むちゃくちゃだ……

彼女は鼻歌交じりに下着を身につけ始めていた。
すると、ふと思い出したようにバッグの中から携帯を取り出す。

「ま、そんなこんなでお互い同意ってことで、メルアド交換しよっか」
「え、い、いいんですか?」
「キミだってわざわざ童貞なのにセフレ試験受けにきたんでしょ? そのチャレンジャー精神に乾杯!ってとこ?」
「なんですかそれ」
「あははっ! ホント、なんなんだろね。あ、キミのケータイ、赤外線通信できる?」
「は、はい」
「アタシから送るから、受け取って」

僕は慌てて自分の携帯を脱ぎ去った制服のポケットから取り出す。
519<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:31:57 ID:O5l1iaLj
「そーしん、っと」

小気味良い電子音が鳴り、彼女のメルアドや電話番号が僕の携帯にやってくる。

「あ……」
「どうしたの? 受信失敗しちゃった?」
「いえ、先輩の名前、知らなかったなって……」

童貞をもらってくれた彼女の名前が、今になってようやく知ることができた。

「そういえば、アタシも君の名前、知らないね」
「じゃあ、どうぞ」
「ん、ちょうだい……」

僕はにっこりと笑うと、自分のパーソナルデータを彼女の携帯に送ったのだった。

<続く>
520名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 00:32:30 ID:O5l1iaLj
続いて更新分の二話です
521<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:33:04 ID:O5l1iaLj
僕、冬間 来人(とうま くると)はごく普通のクラス委員長。
成績は優秀な部類に入っていると思うし、素行も良好だろう。
飾り気のない眼鏡に、そう高くもない身長。顔も童顔なのをのぞけば至って特徴もない整い方をしている。
女の子からみれば至って魅力のない、クラスの置物のような存在なんじゃないだろうか。
でも、最近僕には一つの秘密ができていた。

放課後、僕は図書室で一時間ほど時間を潰すと、四階にある視聴覚準備室へと向かう。
ノックすると、中から小さく「どーぞー」と女の子の声が聞こえた。

「ど、どうも夏山先輩……」
「あ、来てくれたんだ」

準備室内は放送機材の奥に大きなソファが備えられている。
そこに、ショートカットの少女が座っていた。
彼女の名前は夏山 奈月(なつやま なつき)。
ブレザーのワッペンの色は僕の一個上の学年を表すので、上級生にあたる。
身長は小柄な男の僕と同じくらいだから、女の子としては少し高め。
顔立ちはよくみればはっとするほど整っているが、少し濃いめの化粧が人によっては気になる印象を受ける。
胸は大きいといって差し支えなく、適度な形を維持した美乳タイプだ。
スカートはかなりのミニで、校則には明らかにひっかかっているだろう。
服装検査の時だけ注意するしー、と、この間メールで話したっけ……

「ね、ね。お菓子あるよー、どれ食べるぅ?」

ソファの前の小さなテーブルには、近所のコンビニの袋と、結構な量のスナック菓子が散乱していた。
彼女はにっと歯をみせて手元のポテトチップスをつまむ。
僕は苦笑いして彼女の所で歩いていく。

「さっきまで誰かいたんですか?」
「え? なんで分かるの?」
「いや、一人で食べたにしては多いかなって」
「あーそだね。その通り、さっきまで友達とダベってたんだ」

彼女の隣に腰を降ろすと、ポッキーを一袋もらうことにした。
522<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:33:47 ID:O5l1iaLj
「同級生の人なんですか?」
「うん、部活があるからそんな長くいられないからね、さっき帰ったよ」

僕はふうん、と相づちをうつ。
と、準備室の防音仕様の壁にあるものを発見する。

「ここ、飲食禁止って書いてますけど?」
「そ、だから冬間君も共犯ね」
「なんですかそりゃ!?」
「にゃはは、固いこと言わない固いこと言わない」

ケラケラと笑う彼女の顔は、間近で見るとやっぱり可愛い。
こういう派手な、悪く言えばケバいタイプの人となんか、今まで話したことなかったのにな。
僕は彼女と知り合うきっかけとなった、ほんの数日前に起きた出来事を思い出した。
……い、いかん、要はひょんな成り行きで童貞を捨てさせてもらったわけなんだけど、
本人を隣にしてそれを思い出すと劣情を抱いてしまいそうだ。

「冬間君は委員長やってんだっけ?」
「そうですよ」
「偉いな〜、アタシあんな堅苦しいこと絶体無理」

彼女はそうため息をつくと、わしゃわしゃと食べ終わったポテトチップスの袋を丸めてコンビニの袋へ入れてしまう。
そして、ペロペロと指についたポテトチップスのカスを舐め取る。
僕はその口紅の塗られた唇と、そこから伸びる赤い舌先にドキっとしてしまう。

「……なぁーに?」
「あ、いえ……」
「やらしー視線がビビっと来たわよ」

ペロリと、猫のように彼女は舌なめずりする。
523<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:34:19 ID:O5l1iaLj
「したくなっちゃった?」
「い、いやそういうわけでは……」
「なぁんだ、したくないんだ」

不機嫌そうな声でそう言うと、彼女がぷいっとそっぽを向く。
お、怒らせちゃったかな?

「あ、あの、すいません、やっぱしたいですっ!」

慌てて僕は訂正していた。

「したい、って、何を?」
「え?」
「何をしたいのかなー? 言ってくんないとわかんないよ」
「う、そ、その……」

僕は言葉に詰まった。
彼女はニヤニヤと笑いながら三白眼でこちらをうかがっている。

「……ックス」
「んー? 聞こえないなぁ」
「せ、セックスしたいです!」
「だーれと?」
「夏樹先輩とっ!」
「ふふーん、よく言えましたー」

そうなんです、僕と先輩はいわゆる『セックスフレンド』というやつなんです。
きっと、僕のことを知る人には想像できないだろう。
まあ、でもその真面目さゆえにこうした関係になれたのもまた事実だ。

「じゃーしょーがないなー、友達だもんねー、断るわけにはいかないかー」

彼女は胸を張ると、靴を脱いでソファの上に横になった。
そして、その美脚を曲げてこちらへ見せつける。
ミニのスカートはあっというまに彼女の絶体領域を守りきれなくなり、そのセクシーな紫の下着を露わにしてしまう。
524<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:34:52 ID:O5l1iaLj
「……じゃあ、して」

僕は誘蛾灯に誘われる虫のようにふらふらと彼女の上に覆い被さった。

「ん……ちゅ……んふ……」

彼女は僕のキスに応じてくれる。それだけでなく、舌を積極的に絡めて快楽を貪ってくる。
僕は先輩のぬめった舌の感触だけで既にズボンを押し上げるほどに勃起してしまっていた。
しかし、できるだけがっつかないように彼女を愛撫していくことを心がける。
彼女の胸に手を伸ばし、ゆっくりとこねるように優しく揉む。

「あん……」

彼女が軽い喘ぎ声を漏らす。
僕は片手で胸を愛撫しつつ、もう片方の手を彼女の大事な所へと這わせた。

「んぁっ! あぁ……あ……いい……」

まずは下着の上から彼女の秘部をまさぐる。

「あはぁっ! そうよ、うまいじゃない」
「先輩のレクチャーの賜物ですよ」
「んふ……ね、下着汚しちゃまずいから脱がせて」

シュル、と僕は先輩のセクシーランジェリーを取り去る。
先輩も腰を浮かせて脱がせるのを助けてくれた。
脱がせ終わると、しっとりと蜜を分泌し始めた先輩の花弁に、そっと口付けする。

「ひゃあんっ!」

先輩は僕の舌が自分の大事な部分に侵入してきた感覚に身体を仰け反らせた。
525<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:35:23 ID:O5l1iaLj
「ちゅる……ちゅるる……」

今までの傾向からして、先輩はクンニが好きだ。
僕は先輩の膣内を確かめるように舌先で刺激していく。

「あ……ああ……あぅん……ん……」

先輩はきゅっと内股になって僕の頭をもどかしげに撫でる。
十分に彼女の中が湿ったのを見計らって、僕は一度顔を上げた。

「……入れていいですか?」
「ん……」

先輩は上気した顔で頷く。
それを確認すると、僕はカチャカチャとズボンのベルトを外して下半身を露出する。
もう十分な固さを持った僕の男性器を横目に、彼女はソファの隣に置いてある自分のバッグに手を入れる。

「はい、着けて」
「わかりました」

彼女はバッグから取り出したコンドームを僕に手渡した。
そう、僕のような冴えない男が先輩のセックスフレンドになれたのは、実はこの避妊具のおかげなのだ。
『生はダメ。絶対にコンドームを着ける』
この約束の上に、僕は先輩とセックスする権利を得たのだ。
妊娠や性病の心配のないセーフティ・フレンド≠ニして。

「ねぇ……早くきて」

僕がコンドームを装着し終わると、先輩がこちらに尻を突き出して誘っていた。

「今日はバックからですか?」
「うん、いっぱい突いてね」

発情した雌犬のような格好。
僕は、ペニスの先端をその膣口にあてがった。
526<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:35:55 ID:O5l1iaLj
「了解です……!」

腰を入れ、濡れた膣内を、一気に貫く。

「ああぁっ!」

先輩が大きく身体を波打たせた。
先輩の膣内は、驚くほどすんなりと僕のペニスを受け入れてくれる。
それでいて、けして緩いというわけではなく、むしろ、深くまで受け入れたものを逃すまいと締め付けてくる。
僕は体力勝負とばかりに腰を振る。

「あっ! あっ! あぃっ! んぁあっ! あぅぅっ!」

まるで理性が消し飛んでいるかのように、先輩は快楽に対して遠慮なく声を上げている。
今の僕と先輩は、互いに下半身だけを露出して交わる、世間一般の常識から逸脱した存在だった。
そして、この後背位からのセックスは、僕に強烈に今の行為が交尾≠ナあることを意識させた。
妊娠の心配のない僕という存在は、交尾の快楽部分だけを彼女にもたらしているのかもしれない。
厳密には、きっとこれは疑似交尾≠ノ違いない。
食欲や睡眠欲同様に、性欲を純粋に満たすだけの行為だ。
実に理にかなっている。愛情や恋愛感情すらない、純粋な行為に違いないのだから。

「あひぃ! いい、いいよぉ! イっちゃいそぉ!」

彼女が絶頂を訴える頃、僕も限界を超えようとしていた。

「はぁっ! はぁっ! 僕もです!」

先輩は僕に突き上げられながら、快楽に歪んだ笑みを背後に向けた。
恥じらいや、常識を捨てた女性の笑みが、なぜかたまらなく美しいもののように感じられた。

「んぁあーーーっ! 来て、きてぇーーーーっ!」

僕は彼女の腰をがっしりと抱え込んで最後の一突きを打ち込んだ。
527<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:36:39 ID:O5l1iaLj
「うぐっ!!」
「あっ……」

二人の動きが一瞬で止まり、同時に彼女の奥深くで射精が開始された。

ドクッ! ドクッ!

僕は腰が抜けそうな感覚に歯をくしばって必死に耐え、最後の一滴まで彼女の中に注ぎ込もうとする。

「は、はぅぅ……」

先輩は絶頂後の弛緩した身体で、それを受け止め続けた。



「ふー、もう暗くなり始めちゃってるねー」
「そうですね」

先輩は身なりを整えると、先ほどまでの痴態が嘘のようにあっけらかんとした言葉を漏らした。
僕はまださっきの射精の脱力感が抜けきらず、後始末のティッシュの散乱するソファにいた。

「さ、て、と」

先輩は肩をオヤジ臭くコキコキと鳴らすと、放送機材の前に立った。

「ほ〜た〜るの〜ひぃ〜かぁ〜りっと」

鼻歌混じりに機材を操作すると、レコードの音が鳴り始める。
誰もが馴染みのあるあの曲、蛍の光だ。
先輩は次いでマイクの前に立ち、すっと真面目な表情になる。

「下校の時刻になりました。まだ学校に残っている生徒は、戸締まり、忘れ物に注意して速やかに下校してください」

うちの学校では、放送設備が職員室と音楽室、そしてここ視聴覚室にある。
今まで聞いてたあの声、先輩の声だったのか……
僕は意外な事実に気づいた。
528<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:37:26 ID:O5l1iaLj
入学してから図書室で自習することが多かった僕には聞き慣れた何気ない日常の声。
……僕が自習で残っていたときも、こんな風に誰かとセックスしてから放送してたのかな?
僕はなぜか複雑な気持ちになる。

「さ、今日はもうおしまい。ここも閉めるから、早くズボンはきなよ」
「は、はい」

僕はのろのろと身支度をする。
先輩は戸締まりやゴミがないかを確認している。
ふと気づいたように僕を振り返る。

「あ、それから、今日は使用済みコンドームは君が持って帰って処分してね」
「わ、分かりました」
「掃除当番といっしょ、何事も分担作業ってことで」

先輩はにっと白い歯を見せた僕にティッシュにくるまれた使用済みコンドームを渡す。

「学校内に捨てたりしないでね。一回前のセフレが職員室近くのゴミ箱に捨てたもんで見つかったことあるんだから」
「そりゃ怖い」
「でしょー、あははは」

そんな会話をしながら、僕らは一緒に部屋を出た。
529<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:37:58 ID:O5l1iaLj
先輩がカギをかけ、階段を下る。

「じゃ、アタシはカギを職員室に返してから帰るから、ここでサヨナラ」
「はい」
「……ね」
「はい?」

ちゅっ、と唇に柔らかな感触。

「今日は気持ち良かったよ。また今度ね!」

そう言い残し、先輩はさっさと廊下を走っていってしまった。
ぽつんと薄暗い廊下に残れた僕は、しばしの間呆然としてしまう。

「……参ったな」

セックスにはだいぶ慣れたけど、先輩に対するこの説明のつかない複雑な感情には、まだ慣れなかった。

<続く>
530名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 00:39:00 ID:O5l1iaLj
長くなりましたが以上です。
531名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 01:03:56 ID:cHp+5K/E
一途になるとこが想像できねえええぇぇぇぇ
GJです!!
532名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 02:31:21 ID:q6/p1LkB
これで一途になったらギャップで氏ねるwww
533名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 04:02:47 ID:jG97tApI
昨夜帰ってご飯食べてすぐ寝たら、こんな時間に起きてしまった。
というわけで朝一GJ!
新たなエースの予感
534名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 05:46:23 ID:ubwkLK/k
>>530
GJ。
やべえ、すごく今の時点から燃える。
どう変わっていくのか楽しみです。
535名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 08:11:25 ID:uWvf0+ix
>>496
時間が空いたら書き手スレで自演の指摘お願いしますね
536名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 16:46:37 ID:CUXZ4iRp
>>530

GJ 続きもwktkして待ってます。
537名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 23:11:16 ID:1aP1cLLE
神だ…やっと神と…
538名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 00:52:51 ID:/ZYElrsj
保守
539<セーフティ・フレンド>:2009/07/03(金) 01:18:12 ID:A6OSZB8p
《第3話 前編》

僕は今の学校に通うために一人暮らしをしている。
自炊で生活費を節約することで、それなりに不自由なく暮らしているのだ。
この立地条件でこのレベルの部屋だと、かなり安いだろう。
部屋探しの段階で、二人泊まっても狭く感じない程度の部屋を、と考えて探したのを覚えている。
田舎の中学を出て都会に暮らすことに、青少年らしい期待を抱いていたのだ。
実家の教育が厳しかったせいもあり、いつでも女の子を通しても良いほどに清潔に保たれてもいる。
いつか、恥ずかしがる可愛い女の子をこの部屋へ上げることが、そこはかとない夢だった。
しかし……

「うっわぁーっ! 冬間くん家めっちゃ綺麗じゃーんっ!?」

念願が叶ったが、現実はうまくいかないもので、
神様はどうやら恥ずかしがる♂ツ愛い女の子の&舶ェを読み飛ばしていたようだ。
そう、今僕の部屋には先輩がいる。

「あはは……家が厳しかったもんで整理整頓が癖なんですよ」
「すっご、こんな片付いた男の子の部屋初めてみるし」

褒められてるのか珍獣扱いされてるのか判断に苦しむ。
今日は土曜日。学校は休みだ。
なのに、なぜか夏山先輩が僕の部屋にいる。
まだ朝八時というのに、予想外に早起きなんだな。
昨日の夜にメールで明日遊びに行っていい?≠ニ尋ねられて度肝を抜かれたもんだ。
しかも、何が入っているのか分からない大きなバッグを抱えてやってきたのだからまた驚いた。
何もかもが僕の理解を超えた行動を取る先輩に、朝から若干げっそりとした気分になる。

「どこに腰降ろせばいい?」
「ベッドでもどこでも適当にどうぞ」
「あー、駅前の満喫から直行してきたからつっかれたー」

彼女は旅行用バッグを肩から降ろし、文字通り肩の荷が下りたといった様子でベッドに腰掛けた。
無防備に片足を上げてくつろぐ先輩。
今の先輩は当然ながら私服だ。
身体のラインを浮き立たせ、それでいて露出も多めなミニスカートとホルターネックキャミソール姿だ。
僕の好みの対極にあるはずの服装なのだが、現実にこうして部屋に二人きりになるとどうしても意識してしまう。
とてもではないが自分の一個上程度には見えないプロポーションの成せる技だろうか、匂い立つような色香を自然と振りまいている。
この部屋に可愛い女の子≠上げる、という少しばかり妥協した夢ならば、十二分に達成できたと言えるだろう。
ただし、この先輩は彼女ではなくセックスフレンドで、しかも恥じらい感覚はゼロを振り切ってそうな性格をしているが。

「昨日満喫に泊まったんですか?」

僕は片足を上げたせいで丸見えのパンティから気分を紛らわすために、なんとなしの会話を始める。

「んーそうだよ」
「なんでまた?」
「え? ……あ、えーと、あ、ほら、読みたい漫画結構あったんだ」
「そうなんですか?」
「う、うん、そーなんだ」

そんな話をしていると、彼女のお腹が『ぐう』と鳴った。
540<セーフティ・フレンド>:2009/07/03(金) 01:18:50 ID:A6OSZB8p
「あ、あはは、朝ご飯食べてないもんだから」
「何か用意しましょうか?」
「い、いいの?」
「ええ、僕も朝飯はこれからですし」
「ごめんねー、マジ助かる」
「テレビでも見ててください」

僕は台所へ行って朝食の準備をすることにした。
味噌汁を作っていると、彼女はどうやらテレビを見ているようだった。
朝のニュースが耳に入る。ラジオ代わりに朝聞いている番組だ。

『……今日の特集は、増加傾向にある悪質なストーカー被害についての……』

よし、ウインナーも焼けた。
僕は二人分のご飯をよそい、お盆にのせて運ぶ。

「できましたよ」
「えっ!? あ、うん」

彼女はなぜか神妙な表情でテレビを見ていた。
へえ、ニュース番組とか興味あるんだな。
朝の占いとかトレンド情報やってる時間帯でもないのに。

「わっ! 何これ凄いじゃん!? 全部冬間君が作ったの?」
「これくらい自炊してりゃできるようになりますよ」

僕は苦笑いして箸を渡した。
メニューは味噌汁と白米、大根の漬け物とベーコンエッグとウインナー、そしてサラダ。
いつもならベーコンやウインナーをケチるところだが、見栄をはって少し豪華なのは内緒だ。

「いっただっきまーす!」
「どうぞどうぞ」

僕らは小さいテーブルを挟んで朝食を食べ始める。

「んーおいしー!」
「そりゃ良かったです」

先輩は満面の笑みで飯をほおばっている。
ここまで素直に褒めてもらえると作った甲斐もあるというものだ。
541<セーフティ・フレンド>:2009/07/03(金) 01:19:25 ID:A6OSZB8p
「ぼりぼり……」

本当に空腹だったのか、先輩はしばらく無言になって飯をかき込んでいた。
漬け物は実家から送ってきたものなのだが、それもおいしそうに食べてくれている。
それにしても、だ……

「あ、ごめんお茶おかわりある?」
「はいどうぞ」
「センキュー」

先輩とは出会ってまだ一週間というのに、平然と部屋へやってくるとは急展開だ。
こういうことに関して、女の子はもっと慎重なんじゃないかと思っていた。
いや、先輩本人はそんな感覚でいないということなのだろう。
僕は彼氏ではない。セックスフレンドだ。きっと僕なんかに対して特別な感情は先輩にはない。
男の部屋へ上がるのも一度や二度目ではないのだろう。
漫画やアニメに登場するような、清楚で恥じらいのある女の子ではないのだ。
しかも、セックスでさえ遊び感覚。
僕のことなど、良くて体の良い男友達、悪ければただのオナニーの道具くらいにしか思っていないのではないか。
彼女の破天荒な行動の数々は、僕にそんな不安感を募らせる。

でも……

「ぷはー、食べた食べた、ごちそーさま」

笑顔は本当にカワイイんだから反則だよな。

「冬間君? どしたの? アタシの顔じっと見ちゃって、どっかごはんつぶついてる?」
「あ、いえ、ただちょっと朝だから眠くって……」

慌てて目をそらす。
ちょっと頬が赤くなったような気がする。

「隠さなくてもいいんだよー?」
「え?」
「だーじょぶだって、学校いるときと違って時間はあるんだし、がっつかないがっつかない」

苦笑いしながらそう言うと、彼女はお盆に食器を片付け、台所へ向かった。

「ねぇこれ、シンクに入れとけばいいのかな?」
「……あ、はい」

そうだよ、な。
僕と彼女との間にはセックス以外に接点はないんだ。
そう思うのも仕方ないか。
でも、どこか納得できなかった。それがなぜなのか、よく分からない。
僕は分別はついているつもりでいる。
だから、セックスフレンド以上の関係を彼女に強要したり期待するのは筋違いなのも分かっている。
分かっている、つもりなのに……
542<セーフティ・フレンド>:2009/07/03(金) 01:19:57 ID:A6OSZB8p
「ねぇ……」
「わっ!?」

考え込んでいると突然背後から抱きつかれた。
先輩の柔らかな感触、特に胸の膨らみが、僕の背中に密着してくる。

「ど、どうしたんですか?」
「頼みがあるの……」
「な、何でしょう?」
「土日、ここに泊まっていっていい?」
「え? 二泊ですか?」
「うん……」

耳元で甘えるように囁かれたが、意外な問いに僕は一瞬素に戻った。

「別にいいですけど、どうして僕の家なんです?」

僕は思案するまでもなく答えていた。
むしろ、彼女のことだから一泊くらいはしていくだろうと漠然と予想していたくらいだ。
僕自身、下心から一晩かけて先輩と過ごすことに期待もしている。
しかし、土日ともとは意外だった。
そこまでしてセックスしたいかと短絡的に考える以外の理由がありそうな気が直感的にした。

「んー……今週、女の友達は全部予定入っちゃっててさぁ、暇なのよぉ」

とってつけたような理由に聞こえた。
しかし、先輩の声には、微かだが不安げな感情が潜んでいるような気がした。
気のせいにしてもいいくらいの微妙な違いだが、
先輩のような快活で喜怒哀楽の表現のはっきりした人には珍しい感情の起伏なので、特に気になった。
相手の心を読むことで勝負が決する、とは実家で道場をやっているじいちゃんの教えの一つだったっけ。
……そんなじいちゃんのシゴキが嫌で都会の学校に進学したんだけどね。
それはさておき、先輩にも何かしらの事情があるように察せられるということだ。
どうしよう、トラブルはごめんだ。
しかし、先輩の頼みだ。僕は、たった一週間の関係とはいえ、先輩が悪い人ではないだろうと思っている。
ええいもう、あとは先輩が実は悪人だったなんてことがないことを祈るのみだ。
ここまでコンマ数秒で考えをまとめると、僕は口を開いた。

「そういうことなら、どうぞ、ここは別に誰か来る予定もありませんし」
「本当!? ありがとー!」

先輩の明るい声が耳元で聞こえる。
首筋にあたる吐息がくすぐったかった。
先輩は僕から離れると、意気揚々といった感じで僕の前に立った。
543<セーフティ・フレンド>:2009/07/03(金) 01:20:38 ID:A6OSZB8p
「よーし! そうと決まったら買い出しにいかなきゃね」
「買い出し?」

何か足りないでもあっただろうか。
食料品なら近所のスーパーが24時間営業だからそれほど困らない。
僕が腑に落ちない顔でいると、先輩が説明した。

「こないだのでゴム全部使い切っちゃったの」
「ああ、なるほど……」
「今週はゴム強化週間ってことで。それと、今後のためにも余分に買っとこう!」

先輩が白い歯を見せる。

「なんですかゴム強化週間って」

僕が苦笑いすると、先輩がふと真面目な顔になった。

「ああ、そうそう、アタシ昨日からデンジャラスゾーン入っちゃったから」
「デンジャラス・ゾーン?」
「もー鈍いなぁ。危険日よ、き・け・ん・び」
「あ……」

僕はやっと先輩が言う所の意味を理解した。
そ、そうだよな、先輩だった健康な女の子で、当然そういう日もあるわけで……。
思いがけず、僕は目の前の先輩が一人の異性≠ナあることを意識してしまう。

「冬間くんのオタマジャクシとアタシの卵ちゃんが出会うとシャレになんないことなっちゃうの、ドゥユーアンダスターン?」
「……い、イエス、アイドゥ」
「よろしー、じゃ、支度して」
「はい」

僕は慌ててを腰を上げたのだった。

<続く>
544名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 01:24:45 ID:A6OSZB8p
一話にまとめると長くなりそうだったので分割しました
545名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 02:38:26 ID:7Ey5FHaq
GJ!
さ、先が気になる・・・
546名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 08:17:09 ID:VXEQoHNn
面白い!
主人公がある程度俗っぽくてちょっと新鮮
547名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 12:03:51 ID:RtuFYI82
GJ 期待大!
548名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 21:33:57 ID:dK5bOm01
テンポ良く文章が読めるな。
とてもGJな雰囲気を漂わせてて期待感が上昇中。
549<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:10:07 ID:AFASXfd0
《第3話 後編》

「アレって薬局とかで売ってるんじゃないですか?」
「んー、でもさあ、せっかく休みの日に外出したんだし、遊んでいこーよ」

僕は先輩と並んで歩きながらそんな会話をしていた。
このあたりはほとんど住宅街なので、生活に必要な店はあっても確かに遊ぶ場所はない。
先輩の言うことも一理ある。こんな良い天気の日にわざわざゴムを買うためだけに外出というのも不健康だ。

「じゃあ電車で市街に?」
「そーしよそーしよ」

でもこれって……

「いいんですか?」
「へ、何が?」
「そ、その、僕と一緒に歩いてるの、誰かに見られたりしたら」
「大丈夫よぉ、アタシ今フリーだから、彼氏と修羅場とかはないから。安心して」
「は、はぁ……」

恋人同士にみられたりしないかな、とは恥ずかしくてどうにも切り出せなかった。
今時の女の子はそういうのを気にせずに男友達と遊ぶのかもしれない、と自分を無理矢理納得させておく。
と同時に、やはり自分は先輩にとって、そういった恋愛感情などとは切り離された存在なのだと実感してしまう。
先輩にどうこう言えた筋合いではない。でも、なぜか悔しかった。
チラチラと先輩の横顔を気にしながら駅までの道を歩く。
先輩はそれこそ飄々としたもので、良い天気だぁ、となんとなしなことを言いながら楽しんでいる。
駅に着いて改札を通った辺りで、人気が随分と増えてきた。
今日は土曜日ということもあって周辺の住宅街からは多くの人がこの時間帯に市街へ向かう電車を利用する。
もう少し時間をずらした方が良かったかな、と思いながら、僕らは満員状態の電車に乗った。

「わっぷ……混んでるねえ」

先輩は人混みに流されまいと必死に踏ん張っている。
僕は離れないように咄嗟に先輩の手を握っていた。

「先輩、こっち」
「え?」

僕は壁際に先輩を移動させ、壁に手をついて人壁になった。
こうすれば、先輩は走行中の揺れや人の乗降の波に揉まれたりしないだろう。
ちょっとした気配りだ。
先輩はしばらくその意味が理解できなかったのか、きょとんと僕の顔を見つめている。
電車が走り出し、カーブの多い区間になると、僕は何度も踏ん張って先輩が押しつぶされないように注意する。
途中、更に乗車率の上がった車内で、先輩のスペースを確保するのは思いの他大変だった。
550<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:10:40 ID:AFASXfd0
「……あ、ありがとう」

ややあって、僕のしていることに気づいたのか、先輩は申し訳なさげにそう呟いてくれた。

「いえいえ」

僕は女の子相手ならこれくらい純粋な好意の内だと思っている。
感謝されるほどのことではない。
それに、満員電車の辛さは僕が都会へ出てきて最も苦労したことの一つなので、
先輩にそんな思いをさせるのは男としてどうかとも思っていた。
それに、だ。
僕はすし詰め状態の車内を見渡して思う。
こうしていれば先輩のフェロモンを嗅ぎつけた痴漢に遭う心配もないしね……。

「大変でしょ、もうちょっとこっちに寄ろうよ」
「う、うん」

市街に近づいて、混雑がピークになった頃、先輩が心配そうにそう言った。
僕は最低限先輩に負担がかからない程度に身を寄せた。
互いに向かい合う形。端から見れば抱き合っているようにも見える。

あ……

先輩の顔がすぐそこにある。
セックスの時などと違い、電車内で見る先輩の顔は、走行中不規則に差し込んでくる日差しの明暗に揺れて新鮮な印象を受ける。
目が合うと、先輩がくすっと微笑む。
思いがけずドキリとしてしまった。
密着し合った胸同士で、彼女にそれが聞こえていないかと一瞬心配してしまう。
恥ずかしくなって視線を降ろすと、先輩の胸の谷間が視界に飛び込んでくる。
先輩はそれに気づき、暑がるフリをしてただでさえ露出の激しい服の胸元を大胆に開いた。
僕は生唾を飲み込むが、慌てて先輩に耳打ちした。

「だ、ダメですって……!」
「だってぇ〜暑いんだも〜ん」

この人はもう!
と思うが、先輩の無邪気な笑みを見るとなぜか笑みがこみ上げてきてしまう。
とにかく、電車を降りる時に前屈みになっていないように気をつけないと。
市街に到着する車内アナウンスを聞きながら、僕は内心冷や汗をかいたのだった。
551<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:11:26 ID:AFASXfd0
「すっけべー」
「仕方ないじゃないですか……」

駅前を歩きながら、先輩は悪戯っぽくそう言った。
僕は手をひらひらと振って降参するよりない。
先輩は楽しげに笑うと、僕に尋ねた。

「んふふー、まあいいや、で、これからどうしよっか?」
「そうですね、先輩は映画とか興味あります?」
「今なんか面白そうなのやってんの?」
「ファンタジーもので、よさげなのが。ほら、あの最近CMやってる」
「ああ、あれね。じゃあまずそれ観よっか」

先輩は特に異を唱えるでもなく提案を受け入れてくれた。
僕は結構映画好きで、週末は映画館を利用していたので、おおよその時間割なども把握している。
今ならゆっくり歩いて行ってちょうど良い頃合いのはずだ。
映画館に着くと、チケットを買ってポップコーンと飲み物を持って劇場内に座る。
公開二週目だから、休日とはいえ席指定できないほどではない。
先輩と僕は中ほどの席に座った。

「先輩ってこの主演ってどうなんです?」
「ん? どうって?」
「いや、好みなのかなって」
「そりゃあ好みよー、だってハリウッド俳優なんだし」

パンフレットを見ながらそんな他愛もない話をする。
ふと周囲を見渡すと、やはりデートコースの定番として、カップルがかなりの数いた。

セックスフレンドで来てる人って、他にいるのかな……

僕はそんなことを考える。
映画の上映開始のベルが、僕の沈みそうな気持ちをかき消すように鳴り響いた。
552<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:11:58 ID:AFASXfd0
上映終了後、外へ出ると、暗闇に慣れた目に日光が眩しかった。
映画の非現実の世界から、現実の世界に戻ってくる感覚だ。

「んーアタシ映画館で映画観たの久しぶりだったよ」

先輩は座席に二時間座っていた身体を伸ばすように大きく伸びをする。

「で、どうでした?」
「ぶっちゃけまぁまぁだった」
「ですよね」

面白くなくはない内容の映画だった。
シナリオや演出はいまいちだが、金をかけてそうなCGや派手なアクションは見物という、最近のハリウッドにありがちな代物である。
時間が正午を回った頃だったので、僕らは場所をイタリア料理店に移してその話をした。
料理店に関しては先輩の方が詳しく、普段一人ではなかなか入れない雰囲気の店を選んでくれた。
店内は白く明るい色合いが清潔感のある、いかにもデートの人気スポットになっていそうな内装だ。
僕は慣れないせいか少し緊張したが、目の前の先輩は店の空気と合わさって一段と綺麗に見える。
例え先輩がただのセックスフレンドだったとしても、女の子とこういった店に入ることができた、
それだけでもここへ来た価値があったような気がした。

「でもさ」
「なんです?」

先輩は出てきたスパゲティをフォークでいじりながら呟いた。

「ああいうさ、何百年前からの運命で出会った、ってネタ、結構好きだな」
「そうなんですか?」
「だってさ、やっぱあそこまで必死になって守ってもらったり愛してるって言われるのって現実じゃありえないじゃん」
「まあ、そうなんでしょうかね……」
「いいなぁ、運命の人かぁ」

先輩は窓の外の雑踏を見つめた。
大勢の人が行き来している。
そんな光景を見ていると、これだけ大勢の人の中にたった一人だけ運命の人がいることなど、どうにも胡散臭く感じてしまう。
先輩もそれは同じだったのか、苦笑いしてスパゲティを口に運んだ。

「あはは、ま、いるワケないか、アタシみたいなんじゃ……」

ふと漏らした先輩の言葉が、なぜか僕には寂しげに聞こえた。
その後デザートまで僕らは食べるとようやく店を出た。
553<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:12:32 ID:AFASXfd0
「んじゃあ、そろそろアレ買いにいこっか」
「そ、そうですね」

先輩は先に立って歩き出した。
しかし、途中、かなり大きなドラッグストアなどがあるが、全て素通りしてしまう。

「せ、先輩?」

やっぱりコンドームを堂々と買うのには抵抗があるのだろうか。
僕は何なら自分が一人で買ってきてもいいと思って声をかけていた。
先輩が突然立ち止まる。

「あ、ここか」
「え?」

不意を突かれて僕も立ち止まる。
先輩の視線の先には、少し淫靡なネオンで彩られたショップがあった。
僕はその店がなんなのか一瞬分からず、先輩に尋ねる。

「なんですか? ここ」
「コンドーム専門店」

ぎょっとして再び店を凝視する。
よく見ると、店の棚に並んでいる品物は全てコンドームやローションなどの性交に関係する商品だった。

「アタシも入るのは初めてなんだけどね」

先輩は店の中に躊躇いもなく入っていった。
僕はさっきまでの勇気はどこへやら、恥ずかしさが先に立って挙動不審になりながら後を追うしかない。
どうやら先輩は最初からここへ来るつもりだったらしい。
554<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:13:06 ID:AFASXfd0
「うっへぇ〜なんか凄い世界だねぇ」
「そ、そうっすね」

僕らは店内見渡す限りコンドームという普段お目にかかることはまずない光景に圧倒された。
……わ、店員さん女性じゃないか。
買いにくいんじゃないかな、と思ったが、店内にいる客はほとんど女性か、彼氏連れだった。
メインの客層は実は女性らしい。なるほど、むしろ女性にとっては薬局よりも買いやすいのかもしれない。

「うわ、冬間君、これ見てよ、キャンディーかと思ったらちゃんとゴムなんだって」
「……冗談みたいなデザインの結構ありますね」
「何個か買っとく?」
「あ、いや実用にそぐわないのは遠慮しときます」
「あらら、現実的だネ」

先輩は持ち前のオープンさでそれなりにここを楽しんでいるようだ。
しかし僕はどうにも恥ずかしさが抜けきれず、とにかく早めに必要なものを見つけようと思った。
ただ、先輩とわざわざ二人でやってきたのだし、相談して決めようとも考える。
何事も経験だ。それに、二人に直接関わることでもある。
僕は目を皿にして注意深くゴムを吟味していく。
ふと、あるものが目にとまった。
注意書きを読んでみる。

「先輩、これとかいいんじゃないですか?」
「ほえ? 普通のゴムっぽいけど」
「その…精子殺す薬入りの奴だから……」

僕は周囲を軽く見渡し、近くに人がいないのを確認し、小さな声で言った。

「な、中で外れたり破れたりしても大丈夫らしいです」
「あっ! そっか」

先輩ははっとした様子だった。
今が危険日である以上、うっかりでは済まされない。確実に避妊できることが重要だと思い至ったのだろう。
555<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:13:38 ID:AFASXfd0
「じゃあ、それ、多めで……」
「了解……」

僕はカゴの中にひょいひょいと箱を放り込んだ。
他にも、先輩は必要そうだからとローションなど諸々の商品をカゴに入れていく。
大方必要そうなものを揃えると、レジに向かう。

「あとでレシートみせてね、割り勘するから」
「いえ、いいですよ、これくらい」

僕らは店を出た。

「ホントにいいの? 結構かかったんじゃない?」
「今まで先輩にばっかり用意させてましたし、これくらいでちょうどですよ」
「そぉ? ありがとうね」

時刻はもう三時を過ぎようとしていた。
そろそろ帰路につくことにする。
幸い、帰りの下り電車はかなり空いていた。
席に座り、どこか心地よい疲労感に包まれる。
先輩と過ごした時間は、少なくとも僕にとってはとても楽しいものだった。
先輩がうつらうつらとまどろみながら、僕の肩に頭を預けてきた。
しばらくの間、僕らは無言で電車に揺られたのだった。

僕のアパートへ帰る途中、スーパーで夕飯の食材も買うことにした。
先輩の希望も聞き入れて、今日は肉じゃがを作ることにする。
夕日に照らされ、先輩の肌が褐色に染められる中、僕らは家に帰り着いた。
556<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:14:19 ID:AFASXfd0
「冬間くんマジ凄いよね〜 肉じゃがとかお袋の味作れちゃうんだもん」
「自炊してればこれくらい……」
「無理無理! 絶対無理だから」

夕飯が完成した頃、ちょうど六時半を回っていた。
先輩は相変わらず僕の料理をベタ褒めしてくれる。
純粋にそれは嬉しかったし、おいしそうに食べてくれるのは満足感が満たされる。
二人で向かい合うテーブルが、こんなにも楽しいのは久しぶりだ。
食後、ちょうどゴールデンタイムということもあって、テレビではバラエティ番組をやっていた。
僕は朝と夜の分の食器洗いを終え、先輩と一緒になんとなしにテレビを見ながらティーンらしい芸能の話をする。
それが終わると、先輩がおもむろに立ち上がった。

「ね、シャワー先に入っていいかな?」
「ど、どうぞ」
「サンキュ」

先輩は特にそれ以上思わせぶりなことも言わず、風呂場に入っていった。
そろそろ、夜が更けようとしていた。

<続く>
557名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 00:16:03 ID:AFASXfd0
初デート編終了。
明るい娘とのデートって楽しいと思うんだ、妄想だけど。
558名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 00:19:49 ID:ABcf4OUZ
gjです!
先輩も女の子なんだなあと感じてこれから一途になるのが楽しみです
559名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 00:25:09 ID:D8iX/ukS
GJ!
いやホント面白いわ。主人公に好感持てるし、先輩はかわいいし
次回も楽しみです
560名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 01:21:27 ID:ESRalidz
一途になるまでもう少しかかりそうかな
楽しみすぐる
561名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 13:47:22 ID:ipYFLRtm
小出しな伏線期待GJ!!
562名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 13:48:59 ID:KE9mhbcH
>>557
うん、楽しいものだよ
オレもよく脳内彼女とデートしてる
563名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 17:19:47 ID:WuzQkaqc
>>557
GJ!!
一途になるのが楽しみな展開だね
先輩は何か秘密を抱えてそうだし…
次回も楽しみです

それと腹黒女すれの>>190〜を読んでみて
こいつをどう思う…?
564名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 22:15:49 ID:A0otQ5vY
溜めて溜めてどっかーんと行くのが楽しみすぎる。
565名無しさん@ピンキー:2009/07/07(火) 00:28:51 ID:WXh2jagB
こんなビッチが主人公にめろめろになるかと思うと…ちょっと脱いでくるわ
566名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 01:33:44 ID:xq2sOdRz
保守
567名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 11:40:33 ID:qSQh9SLJ
ほしゅ
568名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 19:29:49 ID:7KctgAGa
腹黒さん街
569名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 21:39:19 ID:lOEh1GLb
腹黒さんまち
570名無しさん@ピンキー:2009/07/13(月) 00:40:12 ID:ZjV1CaKq
保守
571名無しさん@ピンキー:2009/07/13(月) 23:21:45 ID:4ThPcLVb
ほし
572名無しさん@ピンキー:2009/07/14(火) 23:59:06 ID:dDaslIpR
待ちほしゅ
573<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:50:17 ID:9kgYFqF0
《第4話》

=前編=

しばらくすると、先輩はバスタオル一枚を身体に巻いただけの姿で僕の前に現れた。
僕が目を丸くしてしまうのに悪戯ぽく小さく笑い、ベッドに腰掛ける。
ふわりと清潔な風呂上がりの香りに混じって、先輩のフェロモンが僕の煩悩を刺激した。

「ふー、さっぱりしたぁ。今日あっちこっち歩いたもんねー」
「そ、そうですね」
「次、冬間くん入ってきなよ」
「は、はい」

僕は風呂場へ逃げるようにその場を去った。
これから何が起こるのか……おそらく予想通りなことに違いない。
当然といえば当然だ。先輩と僕の関係はそのためだけにある。
膨らむ期待感。
でも、心のどこかで僕は少し落胆のようなものを感じてもいた。
それが何なのか、熱いシャワーを身体に浴びせながら考えてみる。
ああ、そうだ。
僕らには恋人同士にあるような、甘い語らいや、裸を見ることへの恥じらいなどのプロセスが完全に欠落している。
最初から身体を求め、そうすることが当然となっている不自然さに、僕は不満を抱いているのだ。

(そうなんだよな……)

僕はその不満の意味を自分に対してもう隠せないと痛感した。
僕は先輩にセックスフレンド以上の感情を抱いているのだ。
セックスフレンドでは手に入らない、身体の快楽以外の特別な感情を求めている。
いつそうなったのかはハッキリとはしない。

初めて先輩とセックスしたとき?
校内放送の後についばむようにキスされたとき?
今日映画の話をごく普通の女の子のような表情でするのを見たとき?
帰りの電車の中、無防備に僕の肩に頭を預けてきたとき?

分からない。
漫画やドラマのように劇的なイベントがあって、ということではない。
いわゆる岡惚れというやつだ。
それに、セックスさせてくれるから好き、という感情もないわけではない。
むしろ、出発点はそこだったくらいだ。

……常識的に考えてかなり最低な恋の仕方だよな。
574<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:51:24 ID:9kgYFqF0
「はぁ……」

でも、だからといって僕にはどうしようもない。
先輩にとって僕はセックスフレンド以上の存在ではないからだ。
しかも、その関係でさえ先輩は僕に対して安全≠ナあることを条件にしている。
八方塞がりなのだ。
それが、もどかしくてたまらない。
でも、今は考えていても始まらない、か……。
シャワーを止めると、なんとか下着の盛り上がりが気にならない程度まで自分の昂ぶりを抑えてから彼女の待つ部屋へと向かう。


「あれ……?」

僕は部屋が薄暗いことに気づいた。
一瞬先輩はもう疲れて寝てしまったのかと思ったが、そうではない。
ほのかなベッドランプの明かりに照らされた人影があった。

「んふ……」

すっと静かに組んでいた足を解き、立ち上がる人影。
それが先輩であることを僕はしばし理解できなかった。

「どーう? こういうオトナっぽいの」

僕が風呂にいる間に身につけたのだろう、先輩は高級そうな黒いセクシーランジェリーとガーターベルト姿になっていた。
紅いルージュが引いてあることから、化粧もやり直したらしい。
抜群のプロポーションを引き立てるその姿は、十代の持てる色気ではない。
照明を抑えめにしているのも、彼女なりの一種の演出なのだろう。
色気の出し方を知り尽くした、先輩ならではの余裕に圧倒される。
フェロモンが漂ってきそうな光景に、僕は目のやり場に困る。

「んー……キライ? こういうの」
「あっ!? いえ、その、びっくりしちゃって……」

僕は慌ててそう言い、ややあって少し躊躇いがちに答えることにした。

「凄く、綺麗です。先輩」
「んふふ……ありがと」

妖艶に紅い唇に笑みを宿す先輩。
昼に見た日差しに映える先輩がヒマワリなら、今の先輩は花瓶に妖しく咲く薔薇のようだ。
女の子はこうしたいくつもの表情を使い分けることができることに、僕はまず驚く。

「せっかく二人きりなんだし、学校じゃできない趣向を……ってね」

先輩が棒立ちになっている僕にそっと身を寄せてくる。
甘い香りと、先輩の温もりが身体を包むように伝わってくる。
特に、密着した先輩の豊かな胸の感触は感動的でさえある。
575<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:52:07 ID:9kgYFqF0
「ん……」

どちらからでもなく、唇を重ねた。
先輩の舌が僕の口内へ侵入してくるのを、僕は必死で自分の舌で絡め取るように受け入れる。

「ちゅ……ちゅく……くちゃ……」

貪るような、快楽を高めるためのキスだ。
男なんて勝手なもので、さっきまでの陰鬱な気分など消し飛んでしまう。
今はただ、先輩が求めてくれているのが嬉しい。
僕は力強く先輩を抱きしめ、今度はこちらの舌を先輩の口へと滑り込ませる。

「んはぁ……」

先輩はキスに集中しながら僕の股間に両手を這わせていた。
その白魚のような指先が、僕の硬くなった男根を下着の上からそっと包み込む。
そのままゆっくりとしごかれると、まるで快楽が蓄積していくかのように僕のものは硬度を増していく。

「ぷは……」

キスに疲れ、唇を放すと、銀色の唾液の橋が二人の間にかかった。
先輩は挑戦的に微笑むと、僕をベッドに誘った。
僕はもう恥ずかしさなど気にならず、シャツとパンツを脱ぎ去って先輩との一戦に備える。
そして、ベッドに横になると、先輩は突然僕の上に跨り、そっと耳打ちしてきた。

「ね……シックスナインって知ってる?」
「知識程度には……」
「じゃあだいじょぶだね」

先輩は身体の方向を変え、僕の股間に顔をうずめる。

「ちゅっ」
「あうっ!?」

先輩が僕の先端にキスした瞬間、電流が流れるように身体が脈打った。

「あれれー、ダメだよ、フェラだけでイっちゃうなんて」
「だ、だいじょうぶです!」

僕は精一杯虚勢を張った。

「ね、私にも、して……」

先輩は腰を落として自分への愛撫を求めた。
僕はランジェリーの上から先輩の秘裂をなぞるように愛撫を始める。

「んっ……んっ……んっ……」

先輩は口にペニスを含み、本格的にフェラチオを始める。
576<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:52:42 ID:9kgYFqF0
「あ……くぅ……」

僕は初めての生フェラの感触に、思わず達してしまいそうになる。
しかし、なんとか歯を食いしばってそれに耐え、こちらからも反撃とばかりに先輩の割れ目に鼻先を埋めた。
ランジェリーが唾液と愛液でぐっしょりとなるまで、僕は息もつかさずにクンニを続けた。

「ああんっ!」

先輩も感じてきたのか、フェラのストロークが弱まった。
僕は先輩のランジェリーが紐パンであることに気づき、素早くほどいてしまうことにする。

「先輩、こんな濡れてる」
「やぁ……」
「それに、形もカワイイし」

間近で見る先輩の秘所は、薄すぎず濃すぎず丁寧に手入れされたアンダーヘアと、綺麗な桃色の粘膜をしている。
確かアソコの色は経験人数との因果関係はないらしいので、けして不自然というわけではない。
それでもこの綺麗さには思わず処女のようだと思ってしまう。
……処女のアソコなんて見たことないのはこの際置いておく。

「ちょ、ちょっともう、おだてても何も出ないよー?」

アソコのことを綺麗と表現するものなのかは分からないが、褒められるのに先輩はどうやらまんざらでもないようだ。
純粋な感想を述べたまでだったけど、考えてみればこうしてアンダーヘアとか整えてるのは見られた時に備えているわけだから、
日頃の努力を評価されて嬉しいのかもしれない。
そんな先輩のことが、ちょっぴりいじらしく感じる。

「……ちゅっ」
「んぁあ!」

僕は先輩のアソコにそっと口を付ける。
先輩は僕の舌先が自分の大事な場所に侵入してくるのを感じたのか、身体を敏感に反応させる。
先輩はクンニというか、舌先で愛撫されるのが基本的に好きなようだ。
前にそのことについてだからセックスフレンドに重要なのは顔とかテクより清潔感!≠ニか言ってたっけ。
先輩が僕の愛撫を受け入れてくれているということは、どうやら最低限その要項を満たしてはいるらしい。
577<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:53:16 ID:9kgYFqF0
「んぅ……あぁ……い、いい……」

先輩の甘い声を聞いていると、僕はより入念に、より奥まで舌を侵入させていく。
ヒクヒクと律動する先輩の膣壁と、溢れてくる愛液。

「ねえ……アタシもう……」

先輩が腰を浮かせシックスナインの姿勢から普通に向き合う形に戻る。
潤んだ瞳が僕を捉えた。

「ねえ……ちょうだい……」

童貞の頃の僕なら、それだけで射精していたかもしれない妖艶な表情だった。
これが昼間に無邪気に笑っていた先輩と同一人物なのかと疑いたくなるような光景。
先輩はうっとりとした顔でクスっと笑った。
僕はどんな顔をしていたのだろう。
きっと、目を丸くして先輩を凝視していたに違いない。
先輩はそっと目を伏せ、乳房を覆っていたランジェリーのホックを外す。
重力だけでなく、二つの膨らみが持っていた弾力も加わってブラがベッドに落ちていく。
先輩はガーターベルトのみの姿になっていた。
薄暗い照明の中、先輩の白い肌が艶めかしく汗に光っている。

「……綺麗だ」

僕は自分に跨る一人の女性に、率直にそう口にしていた。

「え?」

先輩は一瞬素に戻り、きょとんとした表情を浮かべる。
その顔だけは、昼間に見せていた無垢な少女の顔そのものだ。

「先輩の裸、芸術品みたいだよ」
「ちょ、ちょっと、もー……」

先輩は顔をぽっと赤くした。
そして、照れ隠しのように僕に抱きついてくる。
目と鼻の先ほどの距離に先輩の顔がくる。

「冬間君っていきなりそういうこと言うんだもん、ズルいよー」
「そ、そうかな?」

ちゅ、と柔らかな感触が頬に触れる。

「……でも、ありがと、嬉しいよ」
「先輩……」

今度は僕の方が頬が赤くなってしまう。
これでおあいこだね、とでも言いたげに先輩は笑うと、僕の股間に手を添えた。
578<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:54:26 ID:9kgYFqF0
「あ、あの……」
「ん?」
「ご、ゴム着けなきゃ」
「あはは」

先輩は自分の膣口にあてがったペニスを数度しごいてみせた。

「あっ」

僕はそこにきてようやく、ペニスにコンドームが被さっていることに気づいた。
い、いつの間に……
ちょっと考えると、すぐに答えは分かった。
僕がクンニに必死になっている時だろう。
まだまだ、先輩にはその辺りかなわないな……
先輩はしてやったり≠ニいった顔で僕を見下ろしている。
やっぱり、先輩は先輩なのだと、その顔を見てどこか安心してしまう。

「あ……ん……」

先輩は騎乗位の状態で腰を降ろしていく。
熱い膣の感触が、ゴム越しにも伝わってくる。
やがて、先輩の中に僕の男根は全て包まれてしまった。
しばらく先輩も僕も、交わりの余韻に浸る。
十分に愛撫しあった甲斐あって、インサートの快感は痺れるように身体全体に伝わっていく。

「動くね……」
「は、はい」

先輩が上になるのはそういえば初めてだ。
セクシーランジェリーといい、今日の先輩は妙にサービス精神旺盛だと思った。
579<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:55:08 ID:9kgYFqF0
「んふふ……今日はいっぱい世話になっちゃったから、アタシがサービスしちゃう」

なるほどね……と僕は納得する。
先輩なりに泊めてもらっているのに気を遣っているのか。
しかし、それはつまり貸し借りなしの関係であると宣言されているように感じてしまうのは僕のひねくれた所なのだろうか。

「あっ あっ あっ はっ あっ……」

先輩が腰を振り始めた。
ベッドが小刻みに軋む音を立て、先輩の美巨乳がゆさゆさと上下に揺れる。
僕はその押し寄せてくる快楽の波に流されまいと必死になって踏ん張り、同時に先輩の胸元へ手を伸ばす。

「あぁんっ!?」

その乳首を指先でいじりながら、一緒になって快楽を与え合う。

「んんっ! あはっ!」

先輩の腰遣いが激しさを増し、結合部からは愛液の粘着質な音が断続的に聞こえてくる。
生々しい男女の交わり。
でも、珠のような汗をかきながら僕の上で弾む先輩の姿は、どこか優美でさえある。

「あ……せ、先輩」
「あんっ! イクの? イクんだ?」

膣内で僕のものが限界まで膨張しているのに気づいたのか、先輩が自分の乳房を揉みながら叫ぶ。

「あ、あぅ……も、もうダメです」
「いいよ……アタシももういけそうだから……」

先輩はそう言って僕に軽く唇を重ねた。
そして、それを合図に最後のスパートをかけ始める。

「はっ! はっ! ああっ! いいっ! んぁっ!」

女性上位のこの体位だと、まるでこちらが犯されているかのような激しい行為だ。
ベッドが悲鳴を上げるようにけたたましい軋み音を立てている。
僕は搾り取られるような先輩の膣内の締め付けと、繰り返されるシゴキに、
溜まりに溜まった一日の欲望の発射態勢に入ってしまう。
先輩が達するまではと歯を食いしばり、シーツを握りしめて最後の時まで耐える。
刹那、先輩が大きく身体を仰け反らせ、膣が僕のものをくわえ込むように収縮した。
580<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:55:49 ID:9kgYFqF0
「いっくぅーーーーっ!!」
「うあぁあっ!!」

暴発するように僕は先輩の膣内に精を放っていた。
まな板の上の魚のようにビクビクと身体を波打たせ、子宮口めがけて精液を叩きつける。
先輩は精液が膣奥で爆ぜる度に身体を震わせる。
僕は無意識にそのツンと堅くなった淡い色合いの乳首を指先で転がしていた。
先輩も絶頂の中で与えられる刺激に、歓喜の声を上げる。
思考は鈍り、頭の中が真っ白になる。
そして、ただただ、満足感だけが支配する。
こんな純粋な快楽は、きっと他にないのではないかとさえ思える一瞬だった。

「あ……あぁ……」

先輩はしばらくそのまま硬直したかのようにそれを受け入れ、やがて脱力して僕の上に倒れこんできた。

「はぁ……はぁ……」
「先輩」
「ん?」

先輩の頬に軽く唇を触れる。
先輩はあはは≠ニくすぐったそうに笑って僕の胸元に頭を預ける。
しばらく荒い息をつきながら、僕らは余韻を楽しんだのだった。


581<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:56:22 ID:9kgYFqF0
スズメのさえずる音がベランダから聞こえてくる。
朝が来たようだ。
僕は普段の生活習慣からか、きっちりと朝六時に目が覚めていた。
今日も良い天気だ。
カーテンを開けることにしよう、と思ったが、ふと手を止める。
ああそうだ、と僕はベッドを振り返った。

「すぅ……すぅ……」

先輩が無防備な寝顔で寝息を立てている。
いきなり日光を入れて起こしてはいけないな。
僕はそっと毛布を先輩にかけ直してやる。
毛布の下には、一糸纏わぬ先輩の裸身があるのを思うと、またムクムクと欲望が渦巻いてきてしまいそうだ。
僕は邪念を振り払い、とりあえず朝することを一通り済ませておこうかと準備を始めることにした。

「ふっ! ふっ!」

僕は近所のトリムコースもある公園へ1キロほどの距離を走り、背負っていた竹刀入れから木刀を取り出して素振りをする。
こういう自主トレは朝靄の中にするのが一番良い。
空気が澄んでいるし、人気もないから集中しやすい。
僕は祖父の道場で中学まで剣道・柔道・空手エトセトラとシゴキ倒されていた。
それが嫌で都会の学校に進学したわけだけど、不思議なものでライフワークとしては優れているので今でも続けている。
ちなみに今の学校では普通に帰宅部だ。
僕が専門にしているのは結局、居合いと合気道なのだが、それを扱う部活はさすがになかった。
まあ、僕は進学希望なので、あったところで入部していたかは微妙だけれど。

「やあ、今日も精が出るね」
「あ、おはようございます」

顔見知りになってしまった非番の警察の人がジョギングがてらに挨拶してくれる。
じいちゃんは元日本陸軍の将校だったし、父さんは自衛官という軍人の家系に育ったせいか、
好んでいるわけでもないのに警察・軍関係の人に好かれてしまうのが悩みの種だ。
ただまあ、父さんに関しては自衛隊に入っても仕事は会計事務をやっている上に、
性格も温厚そのものなので、どちらかといえば僕に近い人だけど。
はぁ、父さん元気にしてるかな……
僕が都会に出たいと相談したとき、真っ先に応援してくれたのは父さんだった。

「はっ! ふっ! くっ……いかん、昨日の疲れが」

ノルマを越えたあたりで切り上げることにする。
情けないことだけど、腰が痛かった……

<続く>
582名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 20:58:49 ID:9kgYFqF0
やっとこさデレ突入前まで持ってきました……

>>563
ひー
導入部が丸被り……
いや、偶然なんです信じてくださいー
583名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 21:19:16 ID:ZI9Pgd4d
ムホッ、ほぼリアル投下に居合わせられた!
GJ!
584名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 23:40:05 ID:Re2SLaYw
GJ!不意を突かれて赤くなる先輩がかわいい
585名無しさん@ピンキー:2009/07/16(木) 13:39:20 ID:WouI1QRs
保守
586名無しさん@ピンキー:2009/07/17(金) 22:32:22 ID:nBnV0v6T
続き楽しみに待ってます!
587名無しさん@ピンキー:2009/07/17(金) 22:59:27 ID:0G1lwbf/
588名無しさん@ピンキー:2009/07/17(金) 23:06:22 ID:pU8h6du5
>>587
GJ!ありがとう。堪能させてもらう。
589名無しさん@ピンキー:2009/07/17(金) 23:29:44 ID:eUn1zMNp
>>587
ありがてえ・・・
マジGJ!
590名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 00:08:13 ID:wAxGz9N7
>>587
これはうれしいgjです!
591名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 07:33:59 ID:GMl4vKzG
>>587
あなたが神か!
ありがとうございます。お疲れ様です。
592名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 12:44:29 ID:lT+5O3kb
>>587
ありがてぇ…ありがてぇ…
593名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 12:51:50 ID:tc55h8Cy
ありがとうございます。
なんかこうやって残ると思うと書いてみたくなるな
594名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 19:19:26 ID:J8kPnqph
>>587
↓も混ぜてビッチ系総合にでもして欲しかった。

【痴女】淫乱な女の子でエロパロ・3【絶倫】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1236449416/
595名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 19:22:42 ID:A5OCfeyc
一つのスレの保管庫を作るだけでも結構面倒なのに・・・それはお前の我儘だろ
人間欲を出しすぎると身を滅ぼすぞ
596名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 19:35:20 ID:st0i360/
まとめ最高です
597名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 19:36:18 ID:J8kPnqph
>>595
いや、こういうのがあったからどうかなと思っただけ
http://wiki.livedoor.jp/tknt7188/
598名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 19:53:08 ID:wt0nQh8p
スレを横断して似たネタを総合的まとめた保管庫の存在を知っていた
ビッチ系も同様にすればいいのにと思ってた

で?
何でやらなかったの?
何で自分でやりもしないくせに人に文句を言うの?
599名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 19:58:44 ID:J8kPnqph
>>598
思ってただけで何かしなきゃいけないの?
誰が文句言ったの?馬鹿なの?
600名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 20:00:39 ID:wt0nQh8p
何もしなくてよかったんだよ
ここに書き込む事も含めて
601名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 23:00:20 ID:8zmzy0wP
思っても自分がやらないなら書くなってことですね
602名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 23:06:40 ID:8kKdwhkv
>>594
ここの保管庫作った人が、向こうのスレの住民かどうかわからないのに、
ついでだから、似てる属性だからって一緒に管理してくれってのは、さすがにあつかましいだろ。

それを踏まえたうえで>>594を読み返してみな。
603名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 23:31:26 ID:1uIpa88m
思ってても口にしちゃいけない瞬間ってのはいくらでもあるんだよ
良い勉強になったね
604名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 23:35:24 ID:D0cNYgZx
保管庫作成者への感謝、それだけで十分だった。
さ、次の投下を待とうぜ。
605名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 03:28:40 ID:XQLCoJU+
とんだバーローだwwwwwwww
606名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 04:27:24 ID:iWPInDaL
俺は携帯から保管庫 を見たんだが、途中で途切れてしまうんだが、どうすればいい?

文字の大きさは一番小さくしたんだが・・・。


もしくは、大変な作業なのは分かるが、幾つかに分割できないだろうか?
607名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 07:11:50 ID:/9rIoJb6
脳内で>>594を女の子にすれば萌えられたぜ
しかも、普段は強気だけれど実は打たれ弱いという設定。
最高だぜ!
608名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 07:25:11 ID:qPFTiR0b
>>607
スレの特色ってものを考えようよ。
594はどんなひとにでも股を開いちゃう娘だったわけだ。
「わたしのこと好きならまとめてえっちでもいいよね?」くらいの。
「え? あんたがまとめ作るんでしょ? あたりまえじゃない」とか。

つまり、これからの展開に期待だ。
609名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 07:32:50 ID:qLlKxUOs
>>606
ぽけブラとかで見たら、分割されて見れるよ。
見やすいとは言いにくいけど、それはまあ、贅沢だろ。
610名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 08:15:42 ID:hc8TZmLs
>>606
携帯の専ブラ導入してみれば?
試しに俺の携帯で見てみたけど普通に見られる
ちなみにブラウザはW2ch
611名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 13:25:13 ID:iWPInDaL
すまない。色々試してみたんだが、イマイチやりかたが分からない。
専ブラのURLを入力して、その後にhttp://を省いた保管庫のURLを入力するというやり方であってるのだろうか

詳しい教えてくれm(_ _)m
612名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 16:35:34 ID:Esbd/d93
スレチどころか板違いじゃないかね?
613名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 20:20:23 ID:hc8TZmLs
>>611
俺の挙げたのはアプリなんでそのやり方じゃ無理だ
あとドコモでもないと厳しい
あとはスレチなんで自分で調べてくれ
614名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 20:47:14 ID:iWPInDaL
分かった。ありがとう。

もっと自分で調べてみる。
615名無しさん@ピンキー:2009/07/19(日) 20:47:47 ID:iWPInDaL
すまない、スレチだったな。

分かった。ありがとう。
もっと自分で調べてみる。
616名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 01:50:45 ID:kMJin/PZ
↑悪い。ミスった。
617名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 20:53:15 ID:AgGl7RLL
tes
618 ◆/zbBBLZ1gg :2009/07/20(月) 20:58:30 ID:AgGl7RLL
規制解除ヤッホーイ!

というわけで、1スレで過去に投下していたものなのですが、規制で投下できなくなってしまったものを投下しようと思います。
1スレではタイトル未定となっていたのですが、まとめの方が「香田咲妃」とタイトルを付けてくれたのでそれで行こうと思います。
前スレを見ていなかった人はまとめを参照でお願いします。
619香田咲妃:2009/07/20(月) 20:59:35 ID:AgGl7RLL
 結局昨日はあのまま学校をサボった。あんな真っ赤な顔じゃとてもじゃないけど授業なんか出られないし、ましてや岸本なんかに顔合わせられないよぅ……。
 その原因になったハンカチも自分の涙を拭ったままカバンに入れっぱなしで、「はい」って素直に渡せるような状態じゃなかった。幸いにしてバイト先の隣にコインランドリーがあったので、バイト終わりに自分の洗濯物と一緒にいれておいた。
 そして今日。私はあることを胸に学校へやってきた。それは誤魔化した親友二人に対する言い訳でも、もちろんサボりの理由を教師に言い訳することでもない。
 あいつを、ゴハンに誘おう。助けてもらったあいつに、何かお礼がしたい。
 もちろんそれはデートとかそう言う物じゃなくて、単なる純粋な恩返しなだけであって、もちろんそこに下心とかそう言うものが含まれてる訳じゃなくて、それはただ単に私が助けてもらって何もしないのでは気が済まないからだけなんだ。
 ぐるぐるとよく分からない感情が私の脳内を翻弄させながら昇降口への階段を上る。いつもは眠いのとタルいのでコケる私だが、今日は何故か緊張するその心臓のイタズラによって足がもたつき、派手にすっ転んだ。
 痛い。膝、擦りむいてないだろうか。手を着いて立ち上がろうとしたその時、私の目の前に誰かの手のひらが。これに掴まれと言うことだろうか。
 いい加減衆目の視線を一心に浴びていることだし、早くこの状況から脱出したい。そう思って何の気なしにその手を握り帰す。
 この時に緊張のせいか、はたまた緊張で前日眠れなかった眠気のせいか。その右手の持ち主の顔を良く確認しなかったのが間違いだった。

「ありがとうござ…………っっっ!!!」
「大丈夫……って、香田か。昨日は休んだみたいだったが、大丈夫だったか?」

 あろうことか、その岸本本人だったのだ。私は顔から日が出るかと思うほどに真っ赤になり、思わず手を引っ込めた。
 その反応に岸本の顔が戸惑いの顔に変わる。何か話さなくては。そう思えば思うほど、私の口からはまごついた言葉しか出てこない。

「あ、その……」
「ん? ああ、あのことは大事にはしてないから大丈夫だ。これからも口を外すことはないさ」
「いや、そのことじゃなくて、ね……?」
「え?」
「その、これ、ありがとう、ね」

 私はハンカチを差し出しながら精一杯の作り笑顔を浮かべる,
 ようやっと言えた。そして、肝心なのはその先だ。
620香田咲妃:2009/07/20(月) 21:00:07 ID:AgGl7RLL
「あ、ああ。そんなことか。それなら気にするな。ハンカチくらいどうってことない」
「それで……」
「ん?」
「お、お礼に食事でもどうかなぁ? ……なんて」

 俯き加減に岸本の方を見ると、腕組みをしてうーん、と唸っている。
 さっきの反応からして、岸本には危ないことをしていたことがバレてしまっている。やっぱり、こんな女とじゃダメなのかな……。

「お構いなく、と言いたいところだが、食事か。最近美味いもの食ってないし、いいな。今度の土曜で良いか?」
「え、あ……う、うん、大丈夫」
「分かった。んじゃ、楽しみにしてる」

 何が起きたのか分からずにぽかん、とする私。でも、やった。やったんだ。ほんのちょっぴり勇気を出せば、何とかなるんだ。
 緊張で押しつぶされそうだった私の心が、その呪縛から解放されて伸びやかに歓声を上げる。ありがとう、もう一度お礼言わなきゃ。
 そう思って彼の方を見直すと、他の女子と岸本が何やら話をしていた。

「―――なのよー」
「それは災難だな」
「まあ、そういうことでよろしくねー」
「俺も勘定に入ってるのか……。まあいい、分かった。これから準備する」
「ん。頼むねー」

 断片だけを聞いただけに過ぎないが、話の内容からしてただの事務連絡に過ぎないはずだ。なのに、私の心が少し、ほんの少しだけだけどチクリと痛む。
 何だろう、この感触。空いている左手を胸に当ててみてもそこからは何の返事もくれない。こんな痛みなんて、知らない。私は道の間隔に文字通り戸惑っていた。
621香田咲妃:2009/07/20(月) 21:00:42 ID:AgGl7RLL
「じゃあ、野暮用出来たから教室までは行けないわ。土曜日楽しみにしてる」
「う、うん……」

 最高学年へと進級した今、彼も地味ながら何かを任せられる立場にあるのだと、去っていく背中を尻目に改めて実感させられる。
 対して自分はどうだろう。中途半端なまま進級して、中途半端に勉強して、中途半端にバイトして。挙げ句の果てに体まで売りに出す始末。

「……どうしたんだろ、私」

 自分自身のセンチメンタルな気分にまるで説明が付かない。しまいには目尻に涙まで浮かんできた。
 私はそれを誤魔化すため今日は早歩きで教室まで急ぐ。いつもなら、これからの授業のことを考えてダラダラと教室に向かうはずなのに。
 何かの感情に支配され始める私。自分が自分でなくなるような気がして、怖かった。



 始業時間ギリギリに戻ってきた岸本は席に着くなり、急いで数学の教科書をカバンから出そうとしていたが、同じ大きさの英語の教科書を間違えて出していたのがちょっと面白かった。
 岸本の席は最後列奥から二番目の私から見て、ちょうど隣の列の二つ前であり、この角度からだと普段は冷静な彼のあわあわとした様子が手に取るように分かる。そんな姿がちょっと可愛いと思った。
 次の授業である化学は、教室が幼稚園よろしくお昼寝タイムとなる教科だ。テストが一夜漬けでどうにかなるというのもあるが、教師がそう言うことに無頓着ということが一番の要因だ。
 ご多分に漏れず岸本も机に突っ伏して寝ている。少し目線を下げてみると垂らされた前髪の隙間から普段は鋭い彼の目が柔らかく閉じられているのを見て、素直に可愛いと思った。
622香田咲妃:2009/07/20(月) 21:01:53 ID:AgGl7RLL
 休み時間。次の授業の準備をしようとしていた私にふと、柔らかい声が掛けられた。その声の主は岸本で、話の内容は「土曜のゴハンはどこ行くの?」とのこと。
 そんなことまだ決めてもいなかった私はとりあえず彼の好き嫌いを聞いてみた。すると、「基本的にはなんでも食べられるんだが、極端に辛い物が苦手でな」、とのこと。
 要するに、サビ入りの寿司は食べられるがキムチ入りの牛丼は食べられない、ということらしい。
 私は可愛らしい彼の一面を垣間見て、思わず優しい笑みがこぼれる。そんな私の表情に戸惑いつつ頭を掻いて照れる彼がまた、可愛かった。そして、そんなひとときがこの上なく幸せに感じた。

 時は流れて昼休み。相変わらず三人で食べている私。ふと、岸本の方を見やると、彼は購買で買ったと思しきパンを一人でかじっていた。一緒に食べよう、と言いたいところだが、さすがに女子三人とっていうのはキツいと思ったのでやめた。
 ふと、岸本が携帯を取り出す。どうやらメールが来たらしく、画面を一度見やるとすぐさま何かを打ち始める。その後程なくして、今日の朝に昇降口で彼に話しかけていた女の子が開けっ放しのドアから顔を出した。
 岸本は必要以上には喋らない。幼なじみである私が言うのだから間違いない、はずなのだが、どうも彼女と話すときは口数が多い気がする。ここからでは何を言っているのかは分からないが、事務連絡にしては明らかに喋りすぎだ。
 そして、パンを強引に口に詰め込んで、そのまま教室を出て行ってしまう。あの女生徒と一緒に、だ。去り際に見えた彼女の顔は笑顔。岸本の顔もまた、笑顔。
 そこでまた、私は朝に覚えたような胸の痛みを朝と同じ場所に感じた。それも今回は、朝よりも痛い。
 まるで胸が紐か何かで締め付けられるような感覚。私の心は激しく胸を打っているのに、それを押さえつけようと過剰な力が働いているような、言葉にするのが難しい、この変な気持ち。
 初めて味わうこの痛みの名前。それを私は知らない。しかし、それは本や雑誌から得た知識に限って言えば、知っていると言うことになる。本当はそんなものを患ってはいないのか、それとも、私はそれを認めたくないのか。
 そうだ。名前だけなら聞いたことがある。面倒だし、大変だし、煩わしいし、もどかしいし、けれど、素晴らしい。そんな感情の名前、それは―――

「――ーい、どーしたのさー?!」
「ひゃあっ!」
「うわっ! ど、どうしたの? そんなに驚いて」
「い、いや、ちょっと考え事をねー。あ、あはははは」
「何その乾いた笑い方」

 我ながら、誤魔化すのが本当にヘタだと改めて思った。

「なんかアヤシイ……教えなさいよー」
「こ、これはちょっとダメかなー」
「んじゃあ、実力主義に出るしかないか」
623香田咲妃:2009/07/20(月) 21:02:27 ID:AgGl7RLL
 エリがおもむろに立ち上がり、すぅ、と深呼吸をするかのように深く息を吸い込んだ。
 何がこれから起こるのか、私には察することが出来ないが、何となく嫌な予感がする。いや、何となくではなく確実に、だ。
 こういう時の私の勘は驚くほど当たる。占いの店を開いても良いくらいにだ。もっとも、不幸のみを扱った占い屋など売れるはずもないだろうが。

「今日のぉー!! サキのぉー!! パンツの色はぁぶッ!」
「な、何言ってるのアンタは!!」

 私は静かな声で怒鳴り散らすというどうにも器用なことをしていた。それでも既に遅かったらしく、クラスにいたほぼ全員の視線がこちらへと注がれる。
 女子は若干引き気味の目で。男子は喜色と羞恥をいり混ぜたような視線で、私たちの方に注目している。
 こいつは一体何を言ってくれているんだ。私はエリの耳元に口を近づける。俗に言う内緒話というやつだ。

「ちなみに聞くけど、何色?」
「白と水色のしましま」
「う……。な、なんでそれを……?」
「あんたさ、ただでさえ朝弱いんだから足下ちゃんと見て歩きなよ」

 あの時か……!

「で、何も話してくれないんだったら……分かってるよね?」
「う、うぅ……」

 エリがずいっと私に顔を近づけニマニマとした笑みを私の瞳がこれでもかというほど大きく、喜々とした彼女の顔を映し出す。
 これは脅しだ。私はあまり嘘が得意でないし、何よりこんな状況で嘘など吐ける自信がない。それに、嘘を言っても変に鋭いエリのことだ。多分バレる。
 ここは表現を濁しつつ、なおかつ本当のことを織り交ぜながら、何とか誤魔化す。それしかないだろう。

「た、例えば、例えばの話でさ」
「うんうん」
「……その、一人の男の子の方を自然と見続けちゃってたりー、その男の子が話しかけてきてくれたらすごく嬉しくなったりー、その男の子が他の女の子と喋ってたら胸が痛くなったりー……」
「あんた……」
「咲妃……」
「た、例えばの話だって。例えばの、話。あ、あははははは…………はぁ……」
624香田咲妃:2009/07/20(月) 21:03:07 ID:AgGl7RLL
 喋っているうちに何か変な方向へと話が流れていく。これじゃあ岸本のこと、そ、その、私が意識してるみたいじゃないか。
 そんな事実は一切無くて、ただ、ピンチの所を助けてもらって、ちょっとキュンとなって、日々を過ごしているうちに何か足らなくなって、そして彼の可愛らしい一面を見ると、途端に沸騰したお湯のように胸がかっかと騒ぎ出す。
 ……た、ただそれだけの話だ。
 自分でも認めたくない。認めてしまったら、今までそういうことなしに男と向き合えた自分があっけなく崩れ去ってしまう。一種のプライドとでも言うのだろう。私の男という存在そのものに対する価値観がまるで違ってしまう。
 しかし、私は今頭に浮かんでいる言葉以外のことでこの現状を打破するだけの論理的かつ正確な説明ができない。むしろ、それ以外の原因なんて無いんじゃないだろうか。そう思えてもきた。
 でも、やっぱりそれだけは認めたくない。実害とかそういうことじゃない。ただ単に精神的な問題だ。
 私が押し問答を繰り返していると、あれだけ近かったエリの顔が更に近づいてきた。

「さっきから顔赤くしてなーに考えてるのかなー?」
「……」
「もしかしてー、アレ、とか?」

 アレ、と伏せられてはいるが、エリの意地の悪い笑みからもその伏字がどんな単語なのかは、残念なことに私にも分かってしまう。
 というか、その伏字が私の認めたくない答えそのものなのであって、これでまた一歩確信に近づいてしまったと言うことだ。
 最後に、最後にもう一度。目の前の親友達に確認を取ってみる。これでダメなら、もう立ち直れない。

「えっと、もしかしてアレ、なのかな?」
「もしかしなくてもアレだね」
「うん、アレだ」
「……うぅ」

 もはや呻き声しか出すことが出来ない。
 これで私の今の心理状態が本当に、本当に不本意だけれど、親友二人のお墨付きまで貰ってしまったとあらば、認めざるを得ない。
 うきうきして、どきどきして、切なくって、悲しくもなる、この気持ちの名前。
 今までは知識としてしか知らなかったけれど、ここまでくればもう断言してもいいだろう。本当は、自分で自覚なんてしたくなかったのだけれど。

 この気持ちの名前。それは、”恋”って名前だ。
625 ◆/zbBBLZ1gg :2009/07/20(月) 21:04:04 ID:AgGl7RLL
今日はここまでです。
久々の投下なのでなんか新鮮な気分になりました。
626名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 21:18:06 ID:7tqi0EQv
gj
627名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 22:06:43 ID:ww0RRqIm
続きが上がっている…だと…

GJ!今後も楽しみにしています!
628名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 22:20:30 ID:KNA380aV
規制に引っ掛かってたのか…
GJです。素直になれないところがかわいいです
629名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 23:41:59 ID:auPnseWs
GJです。規制だったとは、お疲れ様です。
お戻り下さりありがとうございます。
にしても、岸本くんの傍に女の子。
明らかな振り…もとい、不利?な状況ですなぁ。
実はどっちを応援しようか迷うんですが、ダメですか?
630名無しさん@ピンキー:2009/07/21(火) 00:20:16 ID:GBUxEnA3
おお、続きがきてたー!!
今日まとめサイトで見かえした所だったからタイムリーだ

さて、後は腹黒ビッチ氏だな
コンフェデもだいぶ前に終わったことだしそろそろ降臨を期待しとこう
別スレで2年も我慢した俺なら大丈夫なはず・・・いや、多分・・・
631名無しさん@ピンキー:2009/07/21(火) 00:59:40 ID:eeJ8XEA8
>>630
純愛スレですか?
632630:2009/07/21(火) 03:00:17 ID:GBUxEnA3
>>631
ビンゴ
スレチだから程々にしとくけど、あのスレの某話が大好きで今も半年くらい待ちぼうけ中。
633名無しさん@ピンキー:2009/07/21(火) 21:17:00 ID:dbvXbsFD
>>630
残念ながら昨日の青木とシャオリンの試合が近年稀に見る糞試合だったため、まだ先になります
634名無しさん@ピンキー:2009/07/21(火) 21:39:28 ID:eeJ8XEA8
>>633
ちょww
その代わりパウロvsマヌーフが盛り上がっただろw

まあ菊野vsジダが一番面白かったけど
635名無しさん@ピンキー:2009/07/21(火) 22:01:52 ID:dbvXbsFD
>>634
ファンの期待を裏切りすぎ
多分ガッシアが今回のADCCで優勝したら一気に来るよ

それまでスイープの練習でもして待ってろ
636名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 00:02:12 ID:+xap02u2
保守
637名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 02:52:55 ID:DGnpVRCg
腹黒ビッチwktk
638名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 17:34:43 ID:+N0uzPQO
職人さんが投下しやすいように裸で待ってるね
639名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 23:40:50 ID:AFXxfCc3
俺はネクタイはつけとくよ。
他は全裸だけど。
640名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 01:15:31 ID:4y4/4EqO
>>639
紳士の鑑だな。素晴らしい。
では私は靴下だけは脱がないでおこう。他は全裸だけど。
641名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 03:00:33 ID:E4+Oh9+M
じゃあ俺は帽子だけは被っておくよ
他は全裸だけど
642名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 05:47:03 ID:x1+lSuk2
>>641
いや、その帽子はかわ・・・

なんでもない、忘れてくれ
643名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 14:42:49 ID:2xKBKioE
じゃあ俺は暖房つけとくよ。夏だけど。
644名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 20:44:21 ID:rUTKd8by
全裸の先輩がデレに移行するのが楽しみで待ってたら種が出なくなってきた
マムシドリンクでも飲んで待つか
645名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 00:28:51 ID:8gw9/4Al
腹黒ビッチ氏が降臨していない間に、別所さんは俺がもらっていきますね
646名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 06:53:39 ID:g4YRS3qa
では、俺は黒髪に戻した川上を貰って逝きますね
647名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 17:19:19 ID:E6r1vhcf
投下がないんで話題作りに
おまえらは正統派金髪ギャル系ビッチと黒髪清楚の隠れビッチどっちがいい?
648名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 17:31:18 ID:ouY1lLbs
どうでもいい
649名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 20:35:57 ID:lGeNU6jw
一途になった時の変化度なら金髪
眉毛が生えて剃るから手入れになった以降の萌えっぷりに期待大
隠れビッチの乱れっぷりも捨て難い

とマジレスする保守
650名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 23:45:38 ID:6uo82pRe
素行であって貞操までもがビッチであって欲しくない俺は素人
651名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 00:11:43 ID:vmRDCCOm
>>650
同志よ!!
まあ俺の場合何だかんだでセーフティ・フレンドの先輩も好きではあるが
652名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 01:18:42 ID:Xj6eIbfM
>>650
逆に素行は優等生、貞操はビッチが好きだ
653名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 04:17:00 ID:bxbXN2TJ
適度に遊びを知っていて、頻繁に恋人が変わっても自分に絶対の自信があるからという理由で、決して慌てたりはしてこなかった二十代後半の女が、一回り近く年下の男の子に夢中になってしまう

そんなSSが読みたい
654名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 10:20:16 ID:PVHdHM6K
腹黒ビッチさん早くこないかな
655名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 16:03:17 ID:Oc5VGbBY
オールスター終わったしそろそろ来るんじゃね?
野球好きそうなこと言ってたし
656名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 17:14:20 ID:Fmlya+Wd
スポーツイベントの度に腹黒ビッチ関連の話になっててワロタw
こんなに待望論が出るのはまとめサイトが完成した影響かな?
気になるところで終わってるので俺も投下に期待
657名無しさん@ピンキー:2009/07/28(火) 13:14:48 ID:o3Rixoq9
ルノーのピットミスがあったからな〜
ブチ切れてんだろうな、アロンソ
658名無しさん@ピンキー:2009/07/28(火) 18:37:33 ID:8oCuqipn
腹黒ビッチも気になるけど美咲の続きも気になるなー
ビッチ度高くてたまらん
659名無しさん@ピンキー:2009/07/28(火) 18:38:06 ID:gBdLcBxv
ビッチな娘がスポーツに一途になるスレですね
わかります
660名無しさん@ピンキー:2009/07/28(火) 19:33:03 ID:W/AlzxDz
>>659
スポーツで鍛えぬいた身体で男をちぎっては投げちぎっては投げですね、わかります
661名無しさん@ピンキー:2009/07/28(火) 20:46:12 ID:o3Rixoq9
>>660
セックスはスポー(ry
662名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 15:01:39 ID:WTEv5Q9J
セックスはスポーン
663名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 17:16:10 ID:Ypuv/+jV
>>662
タイロン・スポーンしか思い付かない
664名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 20:58:18 ID:wKxRHDhz
新ジャンル「罰ゲーム」みたいなビッチがツボだ
665名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 21:12:27 ID:wHb1eKSq
遊戯「罰ゲーム!」
666名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 23:24:02 ID:ZwFvz408
保守
667名無しさん@ピンキー:2009/08/04(火) 23:17:35 ID:57s6G9+S
668名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 02:08:01 ID:gkZPmNgb
>>661
海とゆったら
669名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 00:21:24 ID:3wAY4fin
トランスフォーマーリベンジを見てきた。
ヒロインは一作目、登場の仕方がビッチらしかったのが、リベンジではツンデレっぽくなってメチャ可愛かった。
670名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 11:05:46 ID:v0tNffOJ
ビッチな水着
671名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 13:36:45 ID:VxB5gr70
672名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 22:49:52 ID:5gbfUoJ2
673名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 09:28:59 ID:ULiWl5e3
674名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 13:39:20 ID:Bg8oGvB8
675名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 19:45:39 ID:nbL5lbxx
676名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 00:56:02 ID:7Fw8rDV3
>>669
このスレでそれを言うとは…

ツンデレに浮気か!?
お前こそがビッチだ!!wwww
677名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 18:49:19 ID:6jEOIE8J
>>676
解釈にもよるがツンデレのツンの部分をビッチ的な行動
デレの部分を一途にすればツンデレと言えないこともない気がする
678名無しさん@ピンキー:2009/08/10(月) 18:45:00 ID:io4w/uAB
一作目でビッチっぽいのが二作目でツンデレ気味になったならビッチ→一途のコースは外れてないでしょう
679名無しさん@ピンキー:2009/08/10(月) 20:26:43 ID:a1xwrB/K
まぁ問題は主人公の顔だけどな。
680名無しさん@ピンキー:2009/08/11(火) 03:41:03 ID:fU3pxxqV
保守
681名無しさん@ピンキー:2009/08/13(木) 09:39:18 ID:SGw+JQsn
hoshu
682名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 22:56:27 ID:SHy3JWj5
保守
683名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 18:43:58 ID:yI1+rwBi
投下が無いなあ
684名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 20:43:59 ID:bWBmDhG6
セーフティ・フレンドの続き、待ってます
685名無しさん@ピンキー:2009/08/16(日) 16:38:24 ID:hVeDzcJ1
全力で保守
686名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 00:15:06 ID:IPWw8IPp
いまテレビでやってるバラエティ、ビッチばっかりや。
687名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 06:20:35 ID:4uVBEDg9
>>686
テレビ業界でやってくためにビッチなキャラクターを前面に押し出して仕事する一方、
プライベートの彼氏とのエッチでは180度変わり、デロデロ甘々、田舎から出てきた当時の純粋素朴な性格に立ち返ることで、
バランスを取ってるタレントとか。

そういうことですか?
688名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 08:52:44 ID:Ls7hv/4q
>>687
昔なんかの戦隊もので露出の多い服装の悪の女幹部をやってた人がラジオで
「結婚するとき夫にそのことを話すと妙に興奮してくれちゃって……」とか言ってたw
なんでも普段は全然ビッチでもなんでもない服装と性格だったらしい。
「女幹部って子供心にドキドキする初めての異性だったりしますからねえ」とコメントされてたw
689名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 17:47:14 ID:xn/98yKC
高畑淳子か?熟女幹部!
690名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 19:48:11 ID:rfJsLBWK
そういや昔どっかで戦隊物の女幹部のssを読んだな
今思えばここのスレに近いものだったのかな
691名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 21:16:56 ID:8vQaJVXh
692名無しさん@ピンキー:2009/08/20(木) 22:58:03 ID:GL8YIXPv
保守
693<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:09:44 ID:hGQB/8oG
第4話
=後編=

その日は先輩と一日部屋にいて過ごした。

「やりぃ! みてみてーっ! 新記録!」

先輩は意外とゲームとかやるほうらしく、女の子でも楽しめそうなのを中心に僕と競争したり、
自分ルールでやってみたりとそれなりにエンジョイしているようだった。
時折近所のコンビニへお菓子やジュースを買いに行ったり、ゲームショップで先輩とやれそうなゲームを探しに行ったりする。
インドアな休日だが、前の日同様にやはり先輩と一緒にいると楽しい。

「うわぁ!? キングボンビーがっ」
「きゃはははっ! 物件売られまくりじゃん」

なんというか、ゲームって男女でやれるものなんだな……
いつも一人でやってるんじゃ分からない感覚だ。
楽しい時間は過ぎていくのが早く感じるというけど、まさにその通りで、気がつけば夕食後だった。

「ふー、なんか冬間くんの所にいると健康的な食生活が送れそうだよねー」

ざる蕎麦に冷や奴くらいでそんな評価をもらえるのは個人的には意外だが、先輩は大真面目なようだった。

「先輩相手だと作り甲斐がありますよ」
「あはは、普段どんだけ悪いもん食ってるんだって感じで?」
「そこまで言ってませんよ」

先輩と話していると時間を忘れてしまう。
でも、先輩もあと少しすれば自分の家に帰ってしまうだろう。
純粋に、寂しかった。また明日、学校で会うことができるはずなのにだ。

「そういえばさー」
「はい?」
「今日昼間一回もエッチしなかったね」
「ま、まあ、そうでしたね」
「……ごめんね」
「え? どうして謝るんです?」
「アタシが危険日だからって口煩く言ったから遠慮させちゃったかな、って」
「そんなことないですよ」
「そう?」
「ただちょっとゲーム盛り上がり過ぎちゃいましたね」
「あはは、だって人生ゲームの期間長くしすぎだもん」
「先輩だって惑星クラスの塊作るとか言って聞かなかったじゃないですか」
「まーまー、細かいことは言いっこなしで……」

先輩も残り少ない時間を気にしだしたのか、部屋の掛け時計をチラ見した。
僕は今にも席を立ってしまいそうな雰囲気を引き留めたい一心で、平静を装いながら先輩に麦茶をついで出した。
先輩はありがと≠ニそのコップを手にする。
先輩のネイルの手入れされた指先が微かに触れる。
わけもなくそのまま握ってしまいたい欲求を振り払い、僕は手を引っ込めた。
694<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:10:26 ID:hGQB/8oG
「冬間くん、優しいよね」
「どうしたんですか麦茶くらいで」

先輩は頬杖をついて僕をじっと見つめる。

「ううん、そうじゃなくて、アタシにエッチばっかり求めないなー、って」
「ま、まあ、エッチだけが楽しくて先輩といるわけじゃないですしね」
「普通はさ……エッチだけが楽しいからアタシといるって感じなんだけどな」

最後の言葉は自分のコップに麦茶をついでいて聞こえなかったフリをした。
過去の男の話を聞きたくないのと同時に、先輩の過去を知りたい心が相反していたからだった。
僕は強引に話を変えた。

「でも先輩」
「んー?」
「ああいう店が初めてって、今までゴムはどこで買ってたんです?」

苦し紛れで、しかも少し下世話な内容を尋ねてしまったことに軽く後悔するが、もう遅い。
だが、先輩はオープンな性格からか、不快な表情を浮かべることもなく応じてくれる。

「えーと、薬局とか人気のないとこにある自販機とかだよ。ああいう店って一人じゃ入る意味もないしね」
「でも彼氏とか僕みたいな友達いたんじゃ?」

ああ、でも結局聞いてしまった。
僕は嫉妬しているのかもしれない。先輩の身体を自分以外の男が堪能していた事実に。

「彼氏は生でするのが愛だ!≠チて奴だったし、セフレはビッチ相手にゴム着ける必要なんてないって奴ばっかだったから……」
「ひ、ひどいですねそれ……」

そう絞り出したものの、僕は内心煮えくりかえる思いだった。
そして、自分に許されることのない行為をそんな連中が当たり前のようにしていたことに、たまらない不公平感を抱いてしまう。
だが、そんなことを考える時点で自分もその下劣な連中の仲間なのだと気づき、先輩から思わず目を反らしてしまった。

「あはは、まー仕方ないかー、ビッチなのは当たってるしねぇ」

先輩は自嘲の笑みを浮かべて麦茶を飲み干した。
どこか先輩自身触れられたくない様子だった。
僕はそれ以上何も言えず、先輩の次の言葉を待った。
695<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:11:10 ID:hGQB/8oG
「……週末はありがと、じゃあ、アタシこの辺で帰るね」
「あ、はい」

先輩はあらかじめまとめられていたあの大荷物をよっこらしょ≠ニ重そうに手にした。
僕は反射的にその荷物を抱えていた。

「わ、どうしたの?」

先輩が目を丸くする。
僕は先輩の荷物をひったくるような形になったが、大荷物を抱えて慌てて答える。

「これ、重いですよね? 家、遠いんなら送りますよ」
「え、でも……」

言ってから気づいたが、いくら相手が先輩とはいえ、女の子を家まで送るということはその住所を知られるということだ。
人によっては嫌がるかもしれない。
先輩は僕と同じで一人暮らしだと言っていたから、男と一緒に帰ってきたと家族にバレる心配はないだろうけど……
先輩は案の定、少し困った様子でしばし考えている。

「あ、その……すいません、ちょっと差し出がましいことだったかも……」

僕は拒絶されるのが怖くなり、荷物をそっと先輩に返そうとした。
しかし、先輩はその荷物を受け取らず、苦笑いを浮かべた。

「あはは、じゃあ……ご厚意に甘えて頼もうかな?」
「え?」

先輩は遠慮がちにだが、そう答えてくれた。



「先輩の家ってここから遠いんですか?」

僕と先輩は時間的にはそろそろ最後になりそうなバスを、近所のバス停で待っていた。

「そうだなぁ、バスで二十分ってトコかな。そこからまた十分くらい歩くから」
「そうですか」

となればそこまで荷物持ちをする意味はないような気がしてきた。
僕はちらりとベンチに座って誰かとメールしている先輩を見る。
少なからず、僕と一緒にいたいと思ってくれているのだろうか。
そんな楽観的な感情を抱いてしまう。

「ん? どしたの?」
「あ、いえ……」
「メールの相手は女の子の友達だよ。嫉妬しない嫉妬しない」
「そ、そういうわけじゃあ……」

そんな会話をしていると、バスが滑り込んでくる音がした。
僕と先輩はバスに乗ると、一番後ろの席に腰を降ろす。
この時間となるとバスも人影はまばらだ。
先輩は降りる場所を僕に教えてくれた。
地元出身ではないから、そこまでこの周辺の地理に詳しいわけではないが、
先輩が住んでいるのは典型的な住宅街の一角のようだった。
流れていく街灯を眺めていると、二十分ほどで確かにその場所に到着した。
696<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:11:59 ID:hGQB/8oG
「どっちの方角なんです?」
「こっちこっち」

先輩は僕の先に立って歩き出した。
周囲は街灯が整備されているのでそこまで暗いわけではないが、人気がない公園やコンビニ以外に照明のない通りといった感じで、
住宅街特有の不安さのある道のりだった。
先輩はこれが怖かったから僕を連れてきたのかもしれない。
それでも、必要とされているのは悪い気はしなかった。

「ここなんだけど」

しばらく歩いていると、先輩は古くもなく新しくもない六階建てのビルの前で立ち止まった。

「ここの六階……なんだけどさ」

先輩はキョロキョロと所在なさげに周囲を見渡しながらそう告げる。
この辺りは近くに24時間営業の店もないようで、見通しはかなり悪い。
先輩、暗い場所って苦手なのかな?
僕はそんなことを考えながら先輩を見つめた。

「荷物持って上がりましょうか?」

僕は意地悪い表情で言った。
先輩は一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐにいつもの調子で返してきた。

「あはは……送り狼?」
「バレました?」
「ウッソばっか! 冬間くんそこまでがっついてないよ」

それくらいさすがにお見通しらしい。
しかし、先輩はその時微かに不安げな表情をよぎらせた。

「ごめんね、夜じゃなかったらよかったんだけど……」

その言葉の意味を聞き返す間もなく、先輩はビルの中へと入っていく。
荷物を持った僕が後を追うと、先輩はエレベーターの中で待っていた。
先輩はほっと一息をつく。
二日を僕の家で過ごした疲労からくるため息というより、
それはどこか不安から解放されたような、どこか負の感情からきた安堵のように聞こえたのが気にかかる。

「冬間くん、週末はありがとね」
「いえいえ、こんくらいどうってことないですよ」
「えへへ、ま、明日からはいつもの準備室にいるから、暇だったら寄っていいよ」

先輩がそんなことを話していると、エレベーターが六階に着いた。
エレベーターからは最低限の蛍光灯の灯りに照らされた廊下の奥が見える。
僕らはエレベーターを降り、突き当たりにある先輩の部屋へ向かう。
その時、僕は背後に何か気配を感じた。
何気なくひょいと後ろを見やる。
他の住人だろうか。エレベーターの昇降口のすぐ隣の階段から黒い影がぬっと現れたような感覚。
階段を上がってきた気配はない。つまり、その影の人物は最初からそこにいたのだ。
この夜中に、非常灯くらいしか灯りのない階段の影で?
僕はその思考に薄ら寒い疑問を抱くと、今度ははっとしてその人物の方へ振り向いた。
697<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:12:36 ID:hGQB/8oG
「ハァー……ハァー……」

耳障りな荒い息の音。
そこにいたのは黒いコートを着た長身の男だった。
耳や唇には悪趣味なピアスを無数に着け、暗く落ちくぼんだ眼孔の奥には瞳の光が見えない。
ブーツの音がドコドコとコンクリの床を不気味に鳴らしながら、男はこちらへ歩んでくる。
そのただならぬ気配に、先輩も振り向く。
同時に、先輩が今まで聞いたことのない声にならない悲鳴を上げた。

「ひっ!?」

チャリンと取り出していたカギを落とす音が響く。
先輩はいつもの明るい顔を絶やさないその端正な顔が青ざめ、歯をカチカチと鳴らしている。
とりあえず先輩の友人という線はなさそうだ。

「あなた誰ですか? ちょっと止まってください」

僕は咄嗟にそう口にする。
男は三メートルほどの間合いで立ち止まるが、意味不明な呟きをしきりに繰り返して返事らしいものは返ってこない。

「……俺のオンナのくせにまた違う男に股開いてやがるのか……俺のオンナのくせに……」

僕は思わず眉を顰めた。相手が正気ではない存在なのだと直感する。
酔っている様子はない。それにしては顔が紅潮していないし足取りがおぼつかないというわけでもない。
こういう人間の話をどこかで聞いた、そう、朝の自主トレのときに一緒にすることもある警察の人の話だ……

「あっ、アタシがいつアンタの彼女になんかなったのよ! 昔無理矢理犯そうとしただけじゃないっ!?」

僕が思考を巡らせていると、先輩が虚勢を張るように叫んでいた。
その言葉の内容に衝撃を受けるが、今は僕が冷静でいなければならないと持ち直す。
698<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:13:58 ID:hGQB/8oG
「……俺の思い通りにならなかったオンナはいねえ……奈月を調教できれば俺は完璧な男になれる……」

男はそれを意に介した様子もなく、ひたすらに意味不明な言葉を呟いている。
とにかくこれはただ事じゃあないぞ。
僕は震える先輩にそっと耳打ちする。

「先輩、カギを拾って部屋に入って中から施錠してください。それから警察を呼んで」
「え、で、でもそれじゃ冬間くんが……」
「いいから早く」

目の前の男は推測だがおそらく麻薬中毒者だ。
さっきの警察の人の話を思い出す。
この男の言動から察するに、おそらくLSDやメタンフェタミン系の幻覚作用の強いタイプの常習者だ。
アメリカなんかだと凶悪犯罪の大半がこの手の中毒者なのだと警察の人は言っていた。
常人には予測できない行動に出るから恐ろしいとも。

「ゆっくり、あいつを刺激しないように下がってください」

僕は先輩にそう指示する。
正直、僕も怖い。そんな気が強い方じゃない。
でも、先輩に危害が及ぶのだけは避けなければならない。
先輩は……僕にとって今一番大切な女性だから。

「ごめん、ごめんね……」

先輩は目尻に涙を浮かべてカギを拾い、僕から離れた。

「……また逃げるのか……従順じゃねえ奴隷だ……」

男がポケットに突っ込んでいた手を無造作に出した。
そこには一見するとワインのコルク抜きのようなものが握られている。
僕はその瞬間に全身の毛が総毛立つ。
じいちゃんから世界の近接武器について長々と講釈をされたときに教わったものの中にそっくりなものがあったからだ。
プッシュダガーと呼ばれる刺突ナイフだ。暗いとはいえ刃が光りを反射していないから、おそらく軍用のものだろう。
こいつ何でこの日本でこんなもの持ってるんだ!?
699<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:14:35 ID:hGQB/8oG
「……少し躾る必要があるなぁ……」

ゆらり、と陽炎のように男が揺らめいた。
それが刺突姿勢に入ったのだと気づくのにそう時間はかからない。
しかし、それよりも重大なのはその切っ先が自分に向いていないことだ。

「先輩っ!」

僕は叫んぶと同時に先輩へ向かう道を即座に阻止した。
肩に提げていた先輩の大荷物を入れたバッグを男に押し当てる。
ブツリ、とナイフがバッグを深く突き刺す鈍い音が聞こえる。
男が妨害されたことに激昂し、正気ではない怒号を上げた。

「ウオオオォォォ!」

それほど筋肉質には見えないにも関わらず、男は凄まじい力で僕をはね飛ばした。
重度のジャンキーは銃で撃たれても痛みを感じないという。
それと同時に筋肉のリミッターが外れるので骨折するほどの力も出してくる。

「嫌ぁーっ!? 冬間くんっ!」

先輩が泣き叫んでいる。
僕は頭からぬめった液体が流れ出てくるのを感じていた。
それが血だと気づくが、頭の怪我は傷が小さくとも大量に出血するから怪我そのものはこの際問題ではない。
じいちゃんなんて戦時中に弾丸がかすめたことがあるくらいだ。
僕はまだ届く位置にあった男の足を思い切り掴んだ。
男は先輩に集中していたせいか、思ったよりも簡単に体勢を崩す。
しかし、すぐさま片足で僕の顔を思い切り蹴りこんでくる。
今度は鼻血が吹き出るが、絶対に足は放さない。
700<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:15:10 ID:hGQB/8oG
「先輩早くっ!」

先輩はしきりに僕に謝りながら、ドアのカギを開ける音が聞こえる。
やがてドアの閉まる音と、内カギとチェーンロックをかける音も確認できた。

「奈月ぃぃぃ!!」

僕の手に鈍痛が走った。
ナイフで払われたようだ。思わず手を放してしまう。

「開けろぉーっ!」

男は僕には構わずドアへと向かう。
これは僕にとっては幸いだった。
視界内には非常用≠ニ書かれた消火器が置いてある。ビルには必須の備品だ。
僕よろめきながらも立ち上がり、それを手にする。
プッシュダガーは刺すためのナイフだからか、払われた傷はそう深くはない。

「奈月、奈月ぃーーーーっ!!」
「やっかましい!」

僕は血だらけのまま男に向かって消火器を叩きつけていた。





<続く>
701名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 12:16:33 ID:hGQB/8oG
更新滞ってました……
しかも今回はエロなしでごめんね
702名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 12:58:14 ID:GGHoqaRt
うおおおおっ、待ってましたGJ!
冬間くんかっこよすぎだろ……
ここからどう展開するか次回が待ち遠しいです
703名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 12:58:16 ID:gIMzy4wl
gjです!
書いてくださるならいくらでも待つ所存でありますよ
704名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 16:03:57 ID:XSqmWTF0
なんか2人がいい雰囲気ですな〜
堪能しました
続き期待してます
705名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 18:29:08 ID:kQxv0d0/
待ちくたびれたよ GJ!
706名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 21:07:07 ID:W+TyUP2i
サスペンス展開燃えたw


先輩かわいいなぁ…
707名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 22:24:01 ID:84MSPigh
こんな先輩がいるなら高校時代は楽しかったはずなんだ
708名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 22:26:49 ID:l0KPV/fk
なんという急展開www
709名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 22:28:23 ID:0jwW/2uI
おぉ、続きが投下されている…
久しぶりのSS…染み渡るわぁ
710名無しさん@ピンキー:2009/08/24(月) 23:01:51 ID:lVB9ywHc
711名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 15:21:01 ID:0ysTXqYp
「スイーツと香辛料」や「雨の下で」の後日談で

「ママとパパってどっちが惚れたの?」
「どっちだと思う?」
「パパに決まってるじゃん。あのダサいパパに、選り取り見取りなママが惚れるなんて有り得ないよ」
「実は有り得るんだなあ、これが」
「ウソ! 絶対ウソだよ!」
「ううん。私はパパにベタボレだったのよ?」
「えー、本当?」
「そんなに言うんならパパ帰してよ。パパったら最近あなたに構ってばかりで、私寂しいんだからねっ」

みたいな会話を妄想して悶えてる俺は非常に終わってると思う。
712名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 16:33:51 ID:9baztUpz
じゃあ俺も終わってる事になるな。
713名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 17:16:24 ID:VgE4hSGx
スレタイを言葉通りに読めば、むしろ一途になってからが本番なのではなかろうか?


つまり>>711は何も間違っていない!……かも。
714名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 20:17:30 ID:x/5IAc6h
>>711
さぁ、今すぐ作者に続編三次創作承諾依頼を出してプロットを練るんだ
715名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 00:03:46 ID:FHT59TN1
保守
716名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 01:56:11 ID:fDEHMhox
こ、甲子園が終わったのに腹黒ビッチ氏が降臨していない・・・だと・・・?
717名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 02:50:57 ID:IWRe4wXO
⊃ペナント
718名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 17:36:42 ID:uZd4ZUy4
ヨーロッパサッカーも始まったしな
719名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 04:28:46 ID:QOObkgLK
サッカーも入れたら一年中これねえw
720名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 08:40:37 ID:YGDL2FmC
選挙だな
721名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 14:08:17 ID:foqGDr0h
うん
722名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 14:40:32 ID:5iiaDdb5
ビッチの
ビッチによる
ビッチのための政治

……まさはるって誰よ? マミちゃんの元カレにそんなんいなかったっけ?
え、せいじって読むの? マジ意味わかんねwww どこの大学のテストかって感じwww
723名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 14:42:47 ID:dZgagBKy
マミってみると、柳原可奈子を思い出してしまう
724名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 15:39:31 ID:97LhsiZm
もっと、もっとたくさん来てよぉ(投票所に)
そして穴にいっぱいねじ込んで!(投票用紙を)

的なまさはる(政治)ですか?
725名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 20:09:31 ID:oLr+k2nD
>>711
続きマダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
726名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 20:11:21 ID:oLr+k2nD
すまんageたor2
727名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 22:55:50 ID:JD6+onPl
>>726を見て尻から何かが生えているように見えた…
俺は疲れているようだ
仕事じゃなくてビッチ相手に疲れたいぜ
728名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 10:39:13 ID:b6b6f3RP
可愛いお尻だね
729名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 10:55:34 ID:qRRLNRG+
いやん
730名無しさん@ピンキー:2009/09/04(金) 23:30:41 ID:mfklfovJ
保守がてらに、このスレ的に良さげなもの貼り。

ttp://www.pandora.nu/tsl/story/izumi/a_de_m_01.html
731名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 02:46:47 ID:iKNz0xTv
なんだべ?
732名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 10:12:53 ID:fUxsohJ+
飛んでごらん
733名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 10:48:18 ID:t4bGwNIn
屋上から?
734名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 12:12:56 ID:TI8Kh7Uw
ウチは平屋だから。
735名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 15:05:23 ID:pZ2LG0J4
屋根から
736名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 23:33:05 ID:2U+s2Kc8
>>730
403で読めない。残念だ
737名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 02:25:46 ID:Z8lcOgXo
>>736
こっちからだと普通に見れたぞ
738名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 20:37:06 ID:LKpVQysP
PCでも携帯でも見れたお
739名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 21:29:34 ID:3+3M2DwQ
長くてつまんねー話だから読まなくていいと思う。
740名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 02:22:29 ID:vvfeNple
>>730
最初の方読んだけど、何か登場人物がうけつけなかった
741名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 02:50:26 ID:MwgldYpt
>>739
作者乙、って煽られるの覚悟でいうが、そういう書き方されると寂しいわ。
万人の受けるものなんて書けるわけはないし、俺も好みじゃなかったけど。
742名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 22:02:23 ID:thzWvBDH
つまんねーかどうかは分からなかったけど
キモくて読みにくい文章だったから速攻閉じた
743名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 22:18:37 ID:6FyfH1kv
まぁ、しょうもなかったな。
744名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 13:43:39 ID:omjTbB7k
745名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 22:41:11 ID:5A2xVodz
746名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 00:08:19 ID:vxNM91/M
747名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 08:56:45 ID:ndefQt3M
748名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 09:12:46 ID:fa5qeK4V
749名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 15:23:25 ID:d43NiMJo
750名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 19:17:07 ID:geCnY//X
751名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 23:35:37 ID:B2BztK6u
752名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 15:14:21 ID:m+daI2Wu
腹黒さんマダー?
753名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 00:38:52 ID:zngx8CLa
ほしの
754名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 23:22:08 ID:nP6t4pkf
腹黒さn・・・
755名無しさん@ピンキー:2009/09/18(金) 16:30:29 ID:0wiSV8LY
セーフティ・フレンドマダー
756名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 00:51:49 ID:jPY8pkbi
いかん…ビッチ分が不足している…
757<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 16:58:24 ID:YPy/NSR5
第5話

「委員長、怪我大丈夫か?」
「ドジだなぁ、勉強ばっかしてるからだよ」

あれから三日ほどが過ぎていた。
僕はようやく学校に復帰できることになり、頭と手に包帯を巻いた状態で席についている。
周囲にはアパートで階段から転んで、しかも踊り場に運悪く割れたビンがあったんで手を切ってしまったと説明している。
当然、実際はあの警察沙汰だったので取り調べはあった。
先輩はできるだけ穏便に済ませたいようだったので、その旨を伝えると保護者の責任だと言われ、僕のおじいちゃんを出すと、
じいちゃんはおなごを守ったのなら武士の本分、語るに及ばん≠ニか言って一切を取り仕切ってくれた。
常日頃から勝ったのなら問題なし、が口癖だっただけはある。
ただあの様子では過保護なところのあるお父さんへは連絡がいかないだろうなと思うと少し心苦しい。
何はともあれ、じいちゃんのお陰もあって久しぶりの学校は、事件のことなど何も感じさせないほどにすんなりと僕を受け入れてくれた。

(放課後先輩に会いに行こう……)

僕は休み時間にそんなことを考えながら友達のノートを写していた。
先輩とは取り調べの時に少し会ったきりだ。
しきりに僕に謝っていた。怪我をさせてしまったと思っているんだろう。
僕は好きでやったことだし、何より先輩が無事で良かったという思いだけど、結局ちゃんと二人で話す機会もなかった。
今日の放課後あたりちょうどいいだろう。
と、携帯の振動を感じて僕は画面を開いた。
先輩からのメールだった。

(弁当持ってきてるかだって?)

思わぬ内容に少し驚きながらも、僕は購買で何か買うつもりだと返信する。

(買わないで昼休みに屋上に来て?)

今までにないパターンの先輩の行動に面食らいながらも、僕は断る理由もなくそうすることにした。
昼休み、僕は屋上へと向かう。
ちなみに学園漫画のようにこの学校の屋上は生徒に開放なんてされていないため、少しだけ人目を忍ぶ必要があった。
カギそのものは内側から開くので、僕は音に気をつけて屋上へのドアを開けた。
初めて出る学校の屋上は、なかなかの見晴らしだった。
丘の上に立っているので、周囲にここより高い建物はない。

「冬間くん?」

不意に頭上から先輩の声が降ってきた。
見上げると、貯水槽のある屋根に先輩がいた。

「せ、先輩」

一瞬、快晴の天気に目が慣れなかったが、この位置からだと先輩の下着が丸見えだった。
……今日の下着は白、だけどセクシーな紐パンか。
758<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 16:59:00 ID:YPy/NSR5

「エッチ!」
「……面目ない」

ハシゴを登ると、先輩は別段怒った様子もなく僕を叱った。
同時に良かったと思った。
いつもの調子に戻っているようだ。
と、僕が近づくと不安そうに表情を曇らせた。

「怪我、だいじょぶ?」

僕の包帯姿はどうしても気になるのだろう。
僕は努めて平静を装う。

「大丈夫ですよ。周りだって転んだ怪我だって疑ってないくらいですし」
「ホント?」

実際は頭も手も数針縫うくらいの怪我だったけれど、これ以上先輩を不安にさせたくはなかった。
すかさず話題を切り替える。

「で、どうしたんですかわざわざ屋上まで」
「ん、それなんだけど……」

先輩はちらりと自分の鞄が置かれている方を見やった。
そこには鞄の隣になんだか大きな袋が置かれている。

「色々迷惑かけちゃったお礼っていうか……」

先輩は僕を座るように促すと、自分も僕の隣に座って袋を取り上げた。
中から取りだしたのは重箱。
学校には不釣り合いな代物だった。

「ほれ、この通り……」
「な、何ですかこりゃあ?」

僕は思わず素っ頓狂な声を上げていた。
学校に不釣り合いも不釣り合い、重箱の中身は鰻重だったのだ。
どっからこんなものを持ってきたんだろう?
759<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 16:59:32 ID:YPy/NSR5

「ああ、これ? 学校の裏口に配達して欲しいって注文したから」
「そ、そうなんすか……」

どこからツッこめばいいのだろう。
頭を抱える僕に、先輩は不安げに尋ねた。

「……ひょっとして、ウナギ嫌い?」
「そんなことはないですけど……」
「良かった!」

ぱっと先輩が手を合わせて笑う。
その指にはなぜかバンドエイドがいくつも巻かれていた。

(手料理、失敗したんだな……)

先輩の自炊能力の低さは知っている。
先輩は先輩なりに、僕へのお詫びを考えてくれたのだ。
きっと、出前は最終手段だったのだろう。
そう思うと、先輩が何ともいじらしく思えてくるのだから不思議だ。

「……学校の昼飯で鰻重なんて前代未聞ですね」
「まーねー」

何ともシュールな光景だったが、僕らはかなり豪勢な昼食をとることにした。

「あ、これって商店街の老舗のやつじゃないですか?」
「そーそー、さすがだね冬間くん」
「……割り箸に店の名前書いてますよ」

しばらく二人とも他愛もない会話を交わして過ごす。

「ごちそうさまでした」

僕は箸を置いて深々と頭を下げる。
先輩はそれに笑って重箱を片付けた。

「先輩」
「んー?」
「元気そうで良かったです」
「……そう、だね」

先輩が少し複雑そうな顔をした。

「聞かないの?」
「え? 何をです」
「あの男が誰だったのかとか……」
「昨日の今日でそんなこと聞きませんよ」

先輩が苦笑いする。
760<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 17:00:07 ID:YPy/NSR5

「冬間くん」
「はい?」
「ありがと」

柔らかな唇の感触。
唐突に頬に先輩がキスした。

「でもそんな優しすぎると、トラブルに巻き込まれまくるよー。アタシみたいな奴とかから……」
「好きでやってるんですから、迷惑だとは思ってませんよ」
「……意外と男らしいよね、キミ」
「そんなことないですよ……下心あってのことですし」
「へえ、正直だねー」

先輩がひょいと僕の顔をのぞき込んだ。

「でも嫌いじゃないよ、そういうの」

さわ、と先輩の手が僕の股間を撫でる。
それだけで、あの日から一度も使っていない僕のものは大きく反応していた。
先輩と僕に関しては、それ以上の言葉は必要なかった。
僕は先輩の制服の上からその大きな乳房をまさぐった。

「ひゃぁん!?」
「先輩のここだって、もう立っちゃってますよ?」

服の上からでも、微かに先輩の乳首が隆起しているのが分かる。
それを意地悪にコリコリとつまみ、先輩の反応を楽しむ。

「んぁぁ……んもう……そういうとこよく見てるんだから」

互いに上気した顔で、どちらからともなく唇を重ね、舌を絡め合う。
ここが学校の屋上であることなどお構いなしだった。
むしろ、青空の下での性行為に興奮してさえいた。
先輩とだったら、きっとどこで繋がっても気持ちいいのではないかとさえ思えてくる。

「ああ……先輩」

互いに絡み合うように愛撫し合うと、先輩が僕の怒張したものをズボンから取り出した。
先輩はぺろりと舌なめずりをして、その淫らな肉厚のある唇を湿らせる。
761<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 17:00:48 ID:YPy/NSR5

「あむ……」

そして躊躇いなくペニスをくわえると、僕の脳髄にとろけるような快楽の波が襲ってきた。
熱くぬめった先輩の舌が、亀頭から裏筋まで丹念に刺激していく。

「ねふぇ……ひもひいい?」
「う、うん、最高ですよ」
「んふふ……ちゅぱ……」

丁寧に僕の前に跪いて奉仕してくれる先輩の髪を、そっと撫でてやる。
射精感がこみ上げてくると、やんわりと先輩の口からペニスを開放してやった。

「ぷぁ……」

先輩がじゅるりと唾液をすする。
よく見ると先輩はフェラをしている時から自分で自分を愛撫していたようだ。
スカートの奥でクチュクチュと卑猥な音が微かに聞こえる。
僕はもう我慢ができず、ポケットからこの間先輩と買った避妊具を取り出した。

「ふふっ」

先輩はそれを見て心得た様子でスカートに両手を突っ込んだ。
そして、紐を解いた下着を取り出す。
下着は既にぐっしょりと愛液を滲ませていた。
僕はコンドームを被せながら、先輩が自分との行為を望んでくれているのを確信し、無性に嬉しくなった。
口で言葉を交わす不確かなものと違い、そこには少なくとも自分への性欲を抱いてくれているという確証があるからだ。
愛情は測れないが、今の僕にはそれで十分だった。

「先輩、いくよ……?」

互いに服も脱がす、生殖器だけを露出させて繋がろうとする。
僕は先輩に覆い被さるようにしてペニスを膣口にあてがった。
762<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 17:01:24 ID:YPy/NSR5

「うん……ねえ、冬間くん」
「はい?」

先輩はふっと笑う。

「奈月≠チて呼んで」

ドキ、と心臓が高鳴った。
挿入前のこの体勢は、目と鼻の先ほどの距離に先輩の顔がある。
それで面と向かって言われたからだ。
そういえば、いままで僕は先輩の名前を呼んだことがない。
遠慮していたからだ。
しかし、先輩自身がそれを望んでいるというのなら、断る理由もない。
僕は意を決して先輩の耳元で囁いた。

「な、奈月先輩……」
「ふふっ、なんか余計なのも後ろについてるけど、まあ合格」

先輩が腕を僕の首に回してキスしてくる。

「じゃあ、入れて……」

許しが出た瞬間、僕は一気に濡れそぼった先輩の中へと侵入していった。

「あひぃっ!?」

その強い刺激に先輩がはしたなく声を上げる。
それは僕も同様で、理性が麻痺してしまいそうな先輩の膣内の感触に、壊れたように腰を振り始める。

「あっ あぁっ あひっ すっすごいっ 冬間くんのたくましいっ!」
「うあああ奈月先輩!」

脱ぎきっていないズボンのベルトがカチャカチャと音を立てている。
突き上げる度に、先輩の制服の中で、その巨乳が主張するかのようにゆさゆさと暴れる。
僕は先輩の制服をたくしあげ、その乳房を開放してやる。

「ひぁっ!?」

遠慮なく乳首を吸うと、先輩が仰け反って悲鳴を上げる。
両方の乳首をじっくりと舌先で転がし、指でいじって堪能していく。
心なしか、膣内で溢れるラブジュースの量も増えた気がする。
763<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 17:01:59 ID:YPy/NSR5

「先輩、声カワイイ」

僕は久々の先輩との行為に熱中するあまり、ついつい開放的に先輩の耳元で囁く。
先輩は恥ずかしげにそれを聞き、

「あんっもう! そんな意地悪するんだったら……」

と身をよじった。

「えいっ!」
「うわっ!?」

その瞬間、膣が一気に僕のペニスを締め上げた。
突然の反撃に、僕は射精感を堪えることができない。

ビュッ! ビュッ! ビュルッ!

「あんっ! 出てるぅっ!」
「うく……」

僕は先輩にぐっと身体を押し当て、腰を固定して先輩の膣内へと放つ。
不意打ちとはいえ、その快楽は気を失いそうな奔流となって僕を支配した。
水揚げされた魚のように、ビクビクと腰を小刻みに震わせながら、最後の一滴まで射精し終える。

「はぁ……はぁ……」
「ふふ……アタシの勝ちだね」
「参りました……」


・・
・・・

放課後がやってきた。
玄関を出て校門を出る、いつも通りの道を通り、帰路へとつく。
しかし、その日はいつも通りではないことが一つだけあった。
764<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 17:02:32 ID:YPy/NSR5
「や」
「先輩」
「こら、エッチ以外でも名前で呼ぶ!」
「……奈月先輩、どうしたんです? 家は反対じゃあ」
「バス停まではこっからしばらく一緒でしょ」
「それは、まあ……」

先輩は遠慮なく僕の隣に立った。
夕日に照らされている先輩の横顔がそこにある。

「だから、一緒に帰ろうよ……」

懇願するような表情で言われた。
その表情はひどく儚げで、思わず目をそらしてしまう。

「ま、まあ先輩がそう言うなら」
「ホント?」

先輩が今度は僕の腕に自分の腕を絡める。
それには僕も度肝を抜かれ、慌てて声を上げた。

「ちょ、ちょっと先輩!?」
「こらー! なんで一分前のこと忘れるー!?」
「そ、そうじゃなくて……」

変わらないようで、僕らの関係は、少しずつ変わっている。
先輩のことをまだ何も知らない僕でも、その変化は肌で理解できた。

<続く>
765名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 17:04:13 ID:YPy/NSR5
夏が終わってしまいました……
この二人をどっか海に旅行させてやろうと思ってましたが、
どうやらこの調子だとスキー行かせた方が時期的にあってるかもw
766名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 17:34:21 ID:dEvbWPkr
GJ!!!
767名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 17:45:37 ID:hZckt+/0
待ちかねたよ、GJ!
768名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 18:52:22 ID:rrBwa6jM
>>765
投下乙。これから読みます。
769名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 19:28:03 ID:6CBiX6rC
>>765
超待ってた!GJ!
先輩がだいぶデレ始めてきてニヤニヤww
770名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 19:57:47 ID:c3mkbhzC
ウェアを脱がすのは大変だぜ…
その前にシルバーウィークを利用して旅行に放り込んだ方が早いw
もちろん冬編に突入してスノボの後の温泉でパコパコも乙なもんだが
って事でGJ!
771名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 21:33:34 ID:vZ8LUdZU
>>765
いい感じで進展してきましたね
引き続き楽しみにしてます
772名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 23:03:37 ID:AGLxXa+G
先輩可愛いな。じいちゃん何者ww
773名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 12:41:04 ID:1bft9TBZ
文化祭でメイドコスプレ先輩編とかがまだだろーが!
774名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 17:04:01 ID:mE7pATXx
>>765
GJ
読みやすい文章ですね
続き待ってます
775名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 18:12:05 ID:y1i9BPXs
>>765
やっぱり淫乱な年上女との屋外エッチっていいよね!
海編とスキー場編、どっちも書いてほしい
776名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 19:46:15 ID:F64s0p/L
>>773
その発想は無かった!
問題は文化祭中の学校のどこでアヘアヘするかだなっ
777名無しさん@ピンキー:2009/09/21(月) 22:07:06 ID:HUa9+G46
>>776
個人的にはトイレで声を潜めながらがいい
778名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 06:00:43 ID:ynpncIPl
キマシタワー
779名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 10:07:56 ID:8sSV6NzM
>>765
GJ!
続き待ってましたよ。
先輩がデレるのはいいがもっと冬間にハマって子作りを懇願する
くらいにまで陥ちて欲しいかな、あくまで私の希望でしかないが。

>>776
いや、文化祭なら体育倉庫なんかは誰も使ってないだろう?
そういうとこですればいいじゃないか。
780名無しさん@ピンキー:2009/09/24(木) 01:05:46 ID:fvV1+OJY
楽しみにしています
781名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 00:34:26 ID:QMOwGSUA
保守
782名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 08:57:31 ID:AN/PEkop
保守
783名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 21:58:34 ID:KoAtQPNB
だめかもしれない
だめじゃないかもしれない
784名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 07:37:26 ID:fuyTaL9h
及川さん乙です
785名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 11:43:35 ID:PE6ELXFc
小学生の頃にエロい大人に唆されてセックスしまくった朝美は、高校生になった今、『セックスは友達どうしのコミュニケーション手段』と認識するに至った。
朝美は小柄で童顔でもあるため、ともすれば中学生だと間違われることもあるが、その幼い風貌はずいぶんとチャーミングで人気がある。
彼女は新しい友人が出来たとき、ある程度仲良くなると必ずベッドにその人物を誘う。
男女問わず。

朝美は、そうして出来上がったコミュニティのカリスマ的キャラクターだった。
乱交クラブと後ろ指さすものも多いが、普段の素行自体は非常に健全で、ボランティアの清掃活動に参加したりもする。
(朝美の思いつきによる。)


そんな朝美が出会った少年が、夜之介である。
彼も高校生、朝美と同学年であるが、学校が異なるため今まですれ違うこともなかった。
二人が初めて出会ったのは街の図書館。
朝美が『みにくいアヒルの子〜ルサンチマンからの脱出』を読んで涙していると、ポケットティッシュを差し出してくれたのが彼だった。
夜之介もまた、『わらしべ長者に学ぶ底辺からのサクセスストーリー』を読んで感動の涙を流していたところだったのだ。

それから二人は図書館付近の喫茶店で、読書の話題で盛り上がった。
本の好みも重なって、すっかり意気投合、二人はそのあとも度々あっては楽しい時間を過ごした。

こうなると、夜之介ともっと仲良くなりたい朝美は、彼とセックスしたいと思うようになった。
さっそくそれを持ち掛けると、夜之介はきっぱりと断った。


夜之介はかなりルックスもよく、女の子に人気があった。
しかし、交際を始めても長続きしない。
その原因は、彼の抱えるトラウマにある。
小学生の頃にエロい大人に唆されてセックスしまくった過去を持つ彼は、『セックスするとそれに溺れてしまい、相手と真剣な恋愛が出来なくなってしまう』というトラウマを抱えてしまったのだ。

中略




そして数年後、二人は皆に祝福されながら結婚し、ハネムーンに旅立った。



だめかもしれない
だめじゃないかもしれない
786名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 20:44:50 ID:tJSfR3C3
骨格は見事に出来上がっている!
後は肉と臓器と間接を付け(ry
787名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 00:54:05 ID:r0ks3SIu
>>785
朝美すごいタイプだ
普段の健全さと相まってえろい
788名無しさん@ピンキー:2009/10/09(金) 22:52:42 ID:lCJkku1F
hosyu
789名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 21:48:00 ID:c1FZKyp8
あげ
790名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 21:42:33 ID:7usfyqh4
そろそろビッチ分がたりない あげ
791名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 21:43:51 ID:2jons44Y
げぼぉ
792名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 22:49:01 ID:/W/Zduwu
セフレまだー
793<セーフティ・フレンド>:2009/10/15(木) 03:08:21 ID:+EP9DHyh
第6話

ソファのスプリングが軋む音が断続的に響いていた。
脱ぎ散らかされた服が部屋に散乱する中、二人の男女が互いに快楽を貪りあっている。
押さえ込むかのように荒々しく男根を打ち込む男と、十代の若さの中にも成熟の大人の色香を伴った少女が、絡み合い、与え合っている。
妖しく跳ね、豊かな乳房が挑発的に揺れるのを揉みし抱き、その刺激に喘ぐ少女の唇を塞ぐ。
二人の行為にはもう初々しさはなく、互いの身体を理解していることが見て取れた。
少年の息遣いが早くなる。
少女が妖艶に微笑んだ。
言葉を交わすことさえなく、二人は絶頂を迎えた。

「くっ!?」
「んぁはっ!」

……僕はそうして奈月先輩の膣内で精を放っていた。
先輩が絶え間なく続く僕の射精を受け止めながら、首に腕を絡めて僕の唇を求めてくる。

「ふっ……ふっ……」

ビュッ、ビュッ、と密着した腰を波打たせて精を放ちながら、とろけるような先輩の舌を楽しむ。
ツンと足先まで硬直させ、先輩も達しているのだ。
うねる先輩の膣内が僕のペニスを締め上げ、射精の快楽を増幅してくれる。
そんな生々しい女性の本能さえ愛しく思え、僕はより深くまで腰を入れ、先輩の奥に残りの精を放った。



「中学の頃ね」
「はい?」

先輩は脱いでいたショーツを身に着けながら、ふと口を開いた。

「まあ、若かったから遊びまくってたわけ」
「あ」

僕が外した使用済みのコンドームをひょいとつまむ。

「……今も十分若いじゃないですか」
「女の子の一年二年って大きいよ?」

たっぷりと溜まった精液を見つめながらそんなことを言う。

「そんでまあ、当然アタシがビッチだって噂が立つわけ」

ブラを着けていないショーツだけの姿で、先輩は片方の胸をいやらしく揉んで見せた。
先輩が自分のことを話すのは考えてみれば珍しいことなので、行為後の気怠さの中でも、
僕は内心真剣に耳を傾ける。
794<セーフティ・フレンド>:2009/10/15(木) 03:10:36 ID:+EP9DHyh
「まあ、そんな噂が立って良いことなんて何もなくてさ。しまいにはあの男がアタシに目をつけるようになったんだ」

あの男≠ェ誰なのか、僕にはすぐに察しがついた。
もう包帯もとれて、過去の話になりつつあるあのジャンキー野郎のことだ。

「それである日ね……」

キュッとコンドームの口をしばり、ティッシュにくるみながら何と無しに先輩は話す。

「集団でこられちゃって、ひとたまりもなかったんだ」
「そ、それって……!?」

考えたくもないことが脳裏を過ぎった。
先輩は僕を見ると首を横に振った。

「……予兆はあったからさ、ほら、あの護身用のスプレーみたいなやつ? あれを喰らわせて隙を見て逃げたんだけど」

膝小僧を抱え、先輩は不安げな表情を浮かべる。

「その後しばらくしてあいつが警察に覚醒剤だかで捕まったって聞いて安心してたんだけど……」
「出所したんですね、僕の部屋に来る前あたりに」

先輩はこくりと頷いた。

「なるほどな……」

僕は先輩の過去に絶句するしかなかった。
先輩は先輩なりに、タイミングを見て話すつもりでいたんだろう。
でも、それでもやはり表情には躊躇いがあった。

「アタシ、酷いよね」
「え? 何がです?」

先輩がこちらを窺うように所在なさげな視線を向ける。

「女友達じゃ危ないからって、冬間くんのこと何も説明しないで頼ってさ」
「……気にしてませんよ」
「本当?」
「ええ、そんな話、簡単に口にできないことくらいは分かりますよ」

先輩の言うとおり、少々理不尽な話ではある。
でも惚れた弱み、先輩のことを苦しめるようなことは言いたくなかった。
先輩は珍しく納得できないような表情でいる。

「でも、それじゃなんか申し訳ないよ」
「悪いのはあの男じゃないですか、先輩は悪くないんですから、先輩を責めるのはお門違いですよ」
795<セーフティ・フレンド>:2009/10/15(木) 03:12:01 ID:+EP9DHyh
先輩がなぜセックスフレンドに安全性を求めるのか少し合点がいった。
誰彼構わず相手していたせいで面倒事に巻き込まれたのを反省しているのだろう。
そのお陰で、今の関係があるのだから、喜んで良いのかは複雑なところだ。

「んー……」

先輩はふと自分の身体を見下ろした。
ショーツしか身につけていない先輩の裸体ははっとするほど美しい。
と、先輩は何か妙案を思いついたかのようにぱっと明るい顔になった。

「じゃあさぁ」
「は、はい」
「ランクアップってことでどうかな?」
「ランクアップ、って?」

意味不明な言葉を聞かされ、僕は思わず聞き返す。
先輩は意気込んで答える。

「そ、だからさ、セックスフレンドをランクアップした関係になっちゃおうよ?」
「は、はぁ?」
「今日からアタシたち、セックス親友≠チてワケ!」

唖然、という他ないリアクションだった。

「むー、なんか腑に落ちない様子だね」
「あ、いや、光栄なんですけど」

僕は先輩独特のテンションに少し置いて行かれていた。

「それって今の関係と何が違うんですか?」
「そーだなー……」

先輩は少し思案した。

「冬間くんも男の子なら、ムラムラっときたらすぐしたくなっちゃうよね?」
「え? ま、まあ多少は」
「そんなとき、いつでも呼んでいいよ。休み時間でも、いつでも、どこでも」
「ど、どこでも?」
「よほどのことがなければ求められたら拒まない。いつでもさせてあげる。あと、アブノーマルなプレイも、できる限り協力する」

ごくり、と思わず僕は生唾を飲み込んだ。
いつもは先輩の都合に合わせてセックスしていたけど、それの自由度とプレイの幅ができる、ということらしい。
796<セーフティ・フレンド>:2009/10/15(木) 03:13:17 ID:+EP9DHyh
「どかな?イヤかな?」
「と、とんでもない!」

僕は慌てて首を横に振る。
先輩が満足げに笑った。

「じゃあ、決まりだね。これからもよろしく」

ぺろっと舌を出して拝むようなポーズをする。
その姿が予想外に可愛かったので、僕は思わずまた劣情がせり上がってくるのを感じた。
いつもなら自重するところだけど……

「奈月先輩、さっそくなんだけど……」
「うん?」

僕は少し遠慮がちに、特権を使用させてもらうことにした。

「フェラ、頼めます?」

僕の半立ちになっている男根に気づいた先輩が、妖艶に微笑んだ。

「ふふ、いいよ……」

猫のようにすっと身をかがめて僕の股間に身を寄せると、
その白魚のような指先で僕のものをそっと握った。

「気持ちよくしてあげる」

ぱくん、と先輩の熱い舌先が僕の亀頭を包み込んだ。

<続く>
797名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 03:14:07 ID:+EP9DHyh
ワンクッションおく話でした。
次回あたり文化祭やら夏休みやら書いていきたいですw
798名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 07:40:42 ID:eKItyiWb
GJ!!
799名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 16:00:49 ID:J/c3f/8n
GJ!
でも期待させといてセックス親友≠ヘねーよww
800名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 20:12:22 ID:dsxh+8g+
ここでもう恋人になってしまったら、学祭とかのイベントを作者が書けなくなっちゃうじゃないかw
きっと素直に一途になるのは恥ずかしいんだよ、と脳内補完
GJ!
801名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 19:15:44 ID:U9A+lst7
ここでもまだ親友
ということは、もう一回おっきなイベントが控えてるわけだな
これはwktk
802名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 13:09:43 ID:OgPImo17
ずっとおあずけをくらっていてひとかけらだけドッグフードを
貰う様な気分だw
803名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 20:34:10 ID:KXe25zFX
映画版カイジを見てきたんだが、近日公開の「天使の恋」がこのスレ向きだと思った。
ケータイ小説(笑)だけど。
804名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 21:35:33 ID:cOJ8VdeS
>>803
ケータイ小説(笑)の間に読まされたが、確かに間違いではないな
805名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 22:48:06 ID:aJiclpwA
保守
806名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 01:26:26 ID:aGv6mPkj
保守
807名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 22:57:42 ID:W5FWk5T+
腹黒さんマダー
808名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 15:20:37 ID:txo2rlX0
腹黒さん最後の投下からずっと我慢してるけどそろそろやばい出そう
809名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 22:03:19 ID:YRs2i5aA
さっさと出しなさいよ
そして、また溜めなさいよ



もちが長くなるそうだから
810名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 11:06:23 ID:2NKtF9rC
本当に腹黒かっただけだろ。
811<セーフティ・フレンド>:2009/11/01(日) 01:02:46 ID:INhWl5L8
第7話

=前編=

「んっ……んっ……」

人気のないトイレの一室に、くぐもった声が響いていた。
仁王立ちになった少年の前に腰をかがめ、一人の少女が頭を上下させている。
少女の校則ギリギリであろうグロスを引いた唇が、まるで別の生き物のように少年の肉棒をくわえ込み、
うっとりと潤んだ上目遣いに少年を見る瞳は年齢不相応なまでに淫らだった。

「あう……!?」

迫り来る快楽に、少年が腰を震わせた。

「んはっ……もうイキそ?」
「は、はい」

シュコシュコと手で勃起を維持させながら、少女は挑発的に笑った。

「本番いっとく?」
「あ、いや時間ないからこのまま……」
「オッケ! いっぱい出していーよ。えーと……フェラ用ゴム持ってきてたカナ」
「な、奈月先輩」
「ん? どしたの」
「で、できればでいいんですけど、生のまま出しちゃダメですか?」
「え、生で?」

少女がやや困った表情を浮かべる。
が、そう間をおかずに了承した。

「……いいよ、冬間くんがそれのが気持ちいいんなら」
「すいません……」
「いいっていいって! あむ……」

少女は躊躇いなく少年のものを再び口にくわえ込む。
フィニッシュのためのラストスパートで、激しく彼を責め立てていく。
彼女は口の中でビクビクと膨張する亀頭を感じ、最後の瞬間が近いことを知る。
口内に精を放たれるのは初めてではないから、いつがその時なのかは彼女にはおおよそ分かった。

「うあぁっ!」

少年が一際大きく腰を反らせ、同時に亀頭が最大の硬度になった。
彼女がねっとりと舌先を這わせると、それが限界を突破させたのか、濃厚な精が先端から迸る。
812<セーフティ・フレンド>:2009/11/01(日) 01:03:32 ID:INhWl5L8
「んぅっ!?」

ビュク、と舌に粘り着く液体が放たれる。
その感触にはさすがに慣れないのか、彼女は思わず眉を顰めた。

「あっ、ああ……」

少年はあまりの快楽に一時我を忘れているのか、どうすることもできずに彼女の口内へ大量の精を射精し続ける。
彼女はただそれを受け止めるだけでなく、必死になって舌で彼のものを愛撫し、少しでも快楽を感じてもらえるように努力していた。

「えふ……」

ペニスが口から離れた瞬間、彼女の口元から白濁した粘液が溢れ出る。
少量の精液が、彼女の折った膝元に垂れ、卑猥な音を立ててその白い肌に粘り着いた。




文化祭が迫りつつある時期だった。
その日、彼女・飯島佐貴子はゲンナリとしていた。
厳密にはその日だけというわけではない、ここのところずっとだ。
理由は簡単、今目の前で心底楽しそうに自分のセフレについて語っている親友が原因だった。

「でさ、彼ったら口の中に出せたのが気持ち良すぎたらしくってまた興奮しちゃってさ、結局休み時間過ぎてるのに本番までしちゃった」
「……ああ、そう」

ファストフード店らしい、けたたましい店内BGMの中、
佐貴子は適当に相槌を打ってトレーのコーヒーをすすり、ポテトを一筋口へ入れた。
佐貴子は目の前の奈月同様、今時の遊んでる少女といった風貌だった。
奈月と違うのは、佐貴子はいわゆる黒ギャル系の褐色肌に金髪という出で立ちであることだろう。
属性は同じだが、見た目は対照的な二人といえた。
ただ、奈月との付き合いは古く、けして表面上だけの友達というわけではない。
最近起きたゴタゴタでも、なぜ自分に相談しなかったのかとケンカになるほどの間柄である。
そして、その時に親友を身をていして守ったという奇妙なセックスフレンドについても聞き及んでいる。
813<セーフティ・フレンド>:2009/11/01(日) 01:04:47 ID:INhWl5L8
「んで、その愛しのセフレくんとは今日は遊ばないワケ?」
「だって彼今忙しいしー……」

途端に寂しそうな顔をした奈月に、佐貴子は苦笑いする。

「何でよ? 別に部活やってないんでしょ?」
「部活はやってないけどクラスの委員長だから放課後文化祭準備してんの」
「しっかしつくづく意外ねぇ。何でそんな真面目クンとアンタが付き合ってんのよ?」
「つ、付き合ってはないよ」
「ありえないし。アンタ彼氏相手でも口の中にザーメン出すなんてさせなかったじゃん」
「元彼は自分勝手だからさせなかったの! 冬間くんは違うし!」
「へーへー……」

基準のよく分からない友達の理論に振り回されながらも、彼女は根気強く話してやることにする。

「でもさ、アンタ自身はどうなのよ」
「何がー?」
「彼と付き合いたいとかないの?」
「そ、それは……」
「ほら、あんでしょ、やっぱ」

そもそも男女関係にここまで煮え切らない奈月など初めてだった。
今までなんて気が合うから付き合う、告られたから付き合う、身体の相性いいから付き合う、
と理由としては何でも良い感じだったはずだ。
セフレから彼氏に、となるのが不自然だとは佐貴子には思えなかった。
だからこそ、これが異常事態だとも思う。

「うーん、でも……」
「今更、気軽なセフレから深い付き合いになりたくない?」

そう尋ねると、今まで見せたことのない複雑そうな表情を奈月は浮かべる。

「彼は、アタシとのエッチが好きなんだし、今から付き合うとか考えてないんじゃないかなー、とか……」

佐貴子は開いた口が塞がらなかった。
奈月はいつからそんなことを気にかける可憐な少女になったというのか。
814<セーフティ・フレンド>:2009/11/01(日) 01:05:29 ID:INhWl5L8

「あのね、奈月」
「うん」
「エッチが好きなだけのヤリ捨て目的の女を普通ストーカーから守ったりしないよ?」
「だってだって! 冬間くん、正義感強いし、武道とかも実はやってるっぽいし、なんかアタシみたいな女でも助けるのが当然っぽいし」
「あーもう! そんな奴ならぜってー適当な感覚でアンタとセックスしてないわよ!」
「……そう思う?」
「そう思う!」

不味いコーヒーを飲み干し、佐貴子はそう断言した。

「でもこの間ね……」

奈月は先日の『セックス親友』に格上げ、と苦し紛れに言ってしまったことを説明した。
佐貴子は目眩を覚え、思わずトレーが浮くほどテーブルを叩いた。

「どーしてアンタはそう事態をややこしくすんのよっ!?」
「で、でもでも! 冬間くんにもっと気にしてほしかったし、それならやっぱエッチしやすくした方が……」
「頭弱いヤリマンビッチだと思われてるわよそれ」

辛辣な佐貴子の言葉に、奈月はこの世の終わりのような顔をした。
しかし佐貴子はこれぐらい言わなければ二人の関係が進展しないことも分かっていたので、あえてフォローはしないでおく。
が、どよん、と暗い影が見えそうな奈月の顔を見てさすがに罪悪感を覚える。

「アンタこのままじゃ、都合の良いセフレ扱いされてその内冬間くんとやらが彼女作ったら関係そこまでで終わる。間違いない」
「ど、どうしよう……」
「今からでも遅くないからアプローチかけな」
「でも彼最近忙しいし」
「何で忙しいの? 近々文化祭やっからでしょ。ちょうど良いじゃない。勇気だしな」

奈月は焦っているのか、佐貴子の言葉に何やら考えこんでいる様子だった。
815<セーフティ・フレンド>:2009/11/01(日) 01:06:14 ID:INhWl5L8
「あ、そういえば」
「今度は何?」
「あたしらのクラスって文化祭何やるの?」
「……クラス会議で寝てたアンタは知らないのは無理ないか」

佐貴子はやれやれと頭を抱え、親友に教えてやる。

「確か女子は『メイド喫茶』とか言ってたよ」


<続く>
816名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 01:08:24 ID:INhWl5L8
そういえば褐色肌なギャルを最近見かけませんね。
個人的に凄く好きなので寂しいです。
817名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 01:15:09 ID:F4Hk6Q6x
もう完全に落ちとるがなw
GJでした!
818名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 02:35:07 ID:nTpNnH/Z
これはGJ!
確かに事態をややこしくしてるw
これはもう文化祭に賭けるしかないな
819名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 07:04:46 ID:NMNSedzY
そして、佐貴子も溺れてしまい奈月後任3P親友に…
いやいやw
ってか、既に堕ちてしまっていたのは良い意味で裏切られたw
GJ!
820名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 09:18:38 ID:F82EkMCF
迷走恋心の奈月が可愛すぎて死ねる
821名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 09:26:07 ID:eGepQ0/5
中古だろうがヤリマンだろうが、
本当に人を好きになったなら良いんだよね
 
俺もこんな嫁さんがホスィ
822名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 09:26:25 ID:yrpsU01N
メイドなんてビッチの欠片もないプレイの予感
823名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 09:30:48 ID:tErQiL/X
>>822
ビッチの対極であり、裏面がメイドで、二つは一つで、要するに「依存」しちゃうところが共通点?
824名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 09:37:54 ID:eGepQ0/5
ビッチを全面に押し出すのは佐貴子かもしれないじゃないか

あ、BGMはジュディマリのジーザスで
825名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 12:30:26 ID:CL5lo4nL
GJ なんだが毎回待ちくたびれて疲れきってしまうよ・・・
826名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 20:03:43 ID:sNaCh2hF
GJ!既に堕ちていたとはな・・・。
あとはニヤニヤしながら眺めるだけだww

>>825
お前さんここは初めてか?力抜けよ
827名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 05:10:03 ID:3KcRw/jC
>>826
力は抜けきってるだろ
828名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 17:20:24 ID:C3Pxt8kx
色黒ギャルがしっかりクラス会議に参加してるのがカワイイな
議題が文化祭、しかもメイド喫茶とかなのにw
829名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 20:42:43 ID:wxCxKr9m
犬に助けられた過去があるんだよ、きっと
と、無理矢理二作品を妄想で繋げてみた
830名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 12:04:32 ID:FSqdQ6cC
普段そんな雰囲気は全く無い彼女がメイド服着て落としにかかられたら
堕ちるよふつーに。
831名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 08:04:37 ID:2IsmBVd1
>>830
彼女が メイド服着て落としにかかられたら なのか
彼女がメイド服着て 落としにかかられたら なのかで
色々と違ってくる文面だな

今ビッチものの作品書こうとしてるんだけど、ビッチっぽい口調が
いまいち書きにくい。なんか参考になる作品はないだろうか。
設定的に高校あたりなんで、このスレの過去作品達以外に
ビッチっぽいキャラが登場する作品を探してはいるんだけど……
832名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 12:55:43 ID:PlwYY7cs
>>831
ちと古いが昔ジャンプでやってた梅澤春人「BOY」とかは作風上ビッチ率高し。
あとエロ漫画雑誌のチョベコミとかはビッチオンリーのギャル漫画しか載せてないので参考になるかもしれない。
大暮維人の漫画も不良もの多いしそれに伴いビッチ率高い。
ISUTOSHIも同様かな。今やってる愛気もいいし、エロ漫画時代の方がビッチビッチしてる。
833名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 20:35:00 ID:BguyPjKO
通しで腹黒ビッチを読んだんだが、
怒られるかもしれんが、これって主人公の男が馬鹿なだけなんじゃねえか?

自分の女よりも告白してきた女のウソか本当かわからない話をすぐに信じて、
すべて崩壊させて、けどまだ女に未練があってグダグダってどうしようもねえ男じゃん。

これをどうハッピーエンドに持っていくのか知らないが、
(つかここまで放置だと完結の可能性は極めて低いと思うが)
現実的に考えたらかなり困難だな。

女を信じられなくなったというんらそれはそれでいいんだが、
その展開があまりにも急すぎて不自然さを感じたし、
女よりも男の馬鹿さ加減、その後の未練たらしさにいらつくばかりだった。

好きな人ごめんね。











































と、長々と書いたけど要は何が言いたいかというと、
早く幸せな結末を見せてくださいってだけなんです。すんません。
834名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 00:53:46 ID:j5g9oM/y
きつい言葉で喧嘩売ってるような批評まがいのオナニーレスをつけたあとで
バカスカ改行挟んでみみっちい言い訳つけるくらいなら
まず前半の言い方に配慮しろよすんません
835名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 14:49:52 ID:GPXYhmyI
だが腹黒ビッチの主人公が馬鹿で未練たらしいと思うのは同意だ
836名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 16:32:22 ID:Lc71GlAK
腹黒とビッチが重なったらダメだろ。
837名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 18:31:23 ID:HlK8AHwS
保守
セーフティフレンド楽しみにしてる
838名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 08:44:09 ID:VWhPC6xR
>>836
確かに駄目な組み合わせだな
839腹黒の人:2009/11/17(火) 21:35:38 ID:+BgogZ6+
俺もそう思う。

規制解除きたら投下します
840名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 22:33:24 ID:kRmOauXf
>>839
いやいや、貴方がそう言っちゃおしま…ぃ?
っっって!?
お帰りなさいまし!!
お待ちしておりましたっ!投下、期待しております!
841名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 00:12:40 ID:qvoCydUg
>>839
あらゆるスポーツイベントが過ぎてようやく降臨なさるのねw
投下楽しみにしてます。
842腹黒ビッチ 2章(後):2009/11/18(水) 17:26:15 ID:34xp4FbN
予告した次の日に解除キターw今回の規制は長かったよ…
NGワードは腹黒でお願いします
843腹黒ビッチ 2章(後) 1:2009/11/18(水) 17:26:45 ID:34xp4FbN
 起きたら十時だった。一コマ目に遅刻するのはもう五回目で、単位は諦めた。昼飯
目的に大学に向かい、学食で本日の定食350円を手に席を探していたら、変な顔した
神田が手招きした。俺の分の席が空いている。
「克哉……コートにサンダルはさすがにねーよ……」
 ちなみにコートの下はTシャツにGパンだ。今何月だっけ。その答えを見つけるのに
も時間がかかった。
「それで電車乗ってきたん?」
「んー」
「つーかカバンは?」
「あー、忘れた」
「授業受ける気ないだろ……」
「んー」
「ゼミのレジュメなら俺が持ってるけど。ちょうど借りといてよかったよ」
 神田に差し出されたファイルは、確かに俺のものだった。ぼんやりしてる隙に栄治
に勝手に半分くらい食われたけど、反応する気も起きない。見かねた神田が、栄治を
叱りつつ栄治のとんかつを二個、より分けてくれた。
「あ、別所さんだ」
 栄治の声に視線を上げると、すっと俺たちの横を通り過ぎようとする別所さんがい
た。俺たちの方は見ようともしない。相変わらず群を抜いた可愛さだ。
「隣、誰?」
「桐谷ゼミの院生」
「……女って怖いよなー。俺らまで巻き込んで克哉落としにかかってたくせに、脈な
いと思った途端に乗り換えるとか」
「ま、別にいいんじゃない?別所さんももういないんだし」
「CA志望だって?今からで受かるんかねー」
 別所さんから神田と栄治が就活の話に話題を移すのを横目に、俺は一人ぼんやりと
今年の夏のことを思い出す。

 有華はあの日から、学校に来なくなった。みんなはあんなことがあって気まずいか
らだと思っている。だけど本当のことは分からない。とにかく有華はいなくなり、俺
は腑抜けた。
 最初は気のせいだと思った。だけど一日経ち、一週間経ち、一か月経って。そこま
できてようやく、自分の日常から有華が消えてしまったと悟った。すると、日々を送
る気力がさっぱり抜け落ちてしまった。何にも興味が持てなくなった。毎日が、漂う
ように彷徨っているような気がした。何もかもが平坦で、無色で、無味乾燥だった。
 有華がいなくなってから、別所さんはあからさまに俺に誘いをかけるようになった。
毎日のように付きまとい、色々な手段で俺の気を引こうとしていた。が、俺の方はど
うしても興味がわかない。それどころか、有華のことを思い出してしまう。

『私の何がダメなの!?』

 夏のゼミ合宿で、別所さんがキレた。俺の部屋に来たが、何時間経っても全く手を
出そうとしない俺に痺れを切らしたのだろう。同じベッドに入りこまれて、抱きつか
れて、泣かれた。それでも俺は、何もできなかった。
『ごめん』
 なんとかなだめようとするが、別所さんは神経を逆なでられたようだった。俺を見
下ろして、睨みつけて、怒りに震えていた。
『別所さんがダメなわけじゃないんだ』
『ダメでもいい。私は、一宮君と一緒にいられればそれでいいのよ』
『違う、そういう意味じゃなくて』
 身を寄せてくる別所さんの甘い匂いをぼんやりと感じながら、それでも、考えるの
は有華のことばかりだった。
『俺は、有華じゃなきゃ、ダメなんだ』
844腹黒ビッチ 2章(後) 2:2009/11/18(水) 17:27:43 ID:34xp4FbN
 あの日、有華は言った。
『噂だって悪口だっていくらでも流せばいい。謝ってほしいならいくらでも謝る。ど
んな目で見られたっていい』
『ゼミ辞める。大学辞めてもいい。目の前から消えて欲しいなら、いくらでもする』
『なんだってする』
『だから』

『……忘れて』

 最後は、小さな、小さな、声だった。俺を睨む目は変わらなかったが、口の端が震
えていた。言い終わると、有華は無理矢理俺の手をほどき、走って行ってしまった。
 どうしたら忘れられるんだろう。ずっと考えてきた。なのに忘れてと有華に言われ
て、忘れられるわけないじゃないかと叫びそうになった。それが自分の本心だと気づ
いても、遅かった。

「それにしても女が一人しかいないとか、ほんと泣けるわ。残ったのは色気なしのガ
リ勉池田だし……」
 栄治がぼやいている。有華がいなくなり、合宿後に別所さんもゼミを抜け、ただで
さえ男が多いゼミには、女子が一人しかいない。
「じゃあ栄治もやめれば」
「親父に殴られるからがんばる。てか俺より問題は克哉だろ」
 話を振られても、何も反応できない。栄治が口を開いたその時、
「お、久しぶりじゃんおまえらー!」
 聞き覚えある声が、辛気臭い場をぶち破った。
「うわ、上野じゃん、何リクスー着てんの」
「フッフーン、●テレの面接行ってきた」
「もう就活かよー、はやくね?」
「マスコミは今の時期から始まるんだよ」
「上野って、金融志望じゃなかったっけ」
「いや別にー、ひやかしだよ。あわよくば未来の女子アナとお近づきになろうかなと」
「メアド頂いてきたんですかー!?」
「何この人キモーイの視線なら頂いてきたぜ……」
 上野はふっと一瞬遠い目をした。相変わらずノリのいい奴だ。大学に入った当初か
ら籍を置いているフットサルサークルのメンバーの一人で、同じ法学部だからと二年
までよく授業も一緒で仲が良かった。三年からはコースも違うし、俺と神田と栄治は
ゼミがきついからとサークルにも顔を出さなくなって久しい。そういや栄治と特に仲
良かったなと思いながら三人が話しているのをぼんやり見ていると、上野が突然、ぐ
わしと俺の頭をつかんだ。
「ところで何この置物」
「あー、演習の発表に行き詰っちゃってるんだよ」
 ナイスフォロー神田。それらしい言葉でやりすごしてくれたが、
「んなこと言って、実は振られたかなんかじゃねーのー?」
 ぐっさり。そうだ。上野はいらないくらい鋭い。
「やめてっ、この子に触らないであげてっ」
「おうおう可哀想になあ、ヤケ酒なら付き合うぜ」
「いやもう三ヶ月くらいコレだから……」
「三ヶ月?引きずりすぎじゃね?」
「てか正確に言うと三年」
「三年!?克哉、ガラスハートすぎだろ!」
 ほっとけ。声にするのも面倒くさい。そしたら勝手に栄治が今までの有華の顛末を
話している。やめろ。これ以上思い出させるな。でも栄治を止めるのもめんどくさい。
神田にすがろうと視線を送ったけれど、無視された。ひでえ。
845腹黒ビッチ 2章(後) 3:2009/11/18(水) 17:28:14 ID:34xp4FbN
「んー、それって彼女が言う通り、忘れればいいんじゃないか?」
「忘れられないから、こうなってんだよ」
「俺たちも散々言ったよ」
 俺もじとりと視線だけ送る。もう三年忘れられないんだから、まだまだ長期戦は間
違いない。下手すると一生ものだ。ふーん、とさして深刻そうじゃなく上野はうなず
く。
「じゃあ、許してやれよ」
 上野は、当たり前のことのように軽く言った。
「忘れられないし、新しい女にも走れないし、その子のことしか考えられないんなら、
もう許すしかないだろ。男なら、好きな女のしたことくらい許してやれよ」
 言い終わると、上野はにっと爽やかに笑う。十一月になっても黒い肌に、白い歯が
よく似合う。
「お、男らしい……」
「細かいこと考えない上野らしい……」
「ハハハ、惚れるなよ」
「惚れねえよ」
「ま、なんでもいいけど克哉早く元気出せよ。あとお前ら冬合宿は出んだろ、また麻
雀しようぜー」
 んじゃーなー。勝手に開催したお悩み相談室は、解答一分であっさり終わった。脱
いだスーツを乱暴に振りながら、上野は颯爽と去って行く。
「相変わらずだなーあいつ」
「麻雀って、またどうせ上野の一人勝ちだよ……」
「追い出しコンパ酷かったよなー、全然追い出そうとしてないあの勝ち方とか」
「そういや夏は田中先輩が一晩で六万負けたってさ」
「むごい……」
 そのまま冬の合宿どうするか、二人は話し始める。俺は一人、上野の言葉を反芻す
る。
 ゆるす、そのたった三文字。思いつきもしなかった俺は、最低な男だった。そんな
ことに気づいて、またひっそりと落ち込む。
 でも金目当てなんて酷いだろ。最低だろ。そう思うけど。
 だけど、そうやって目を閉じて思考を止めるその最後に、有華に会いたいと思う。
干からびる世界の中で、それだけが鮮明になる。
 俺は、有華を許せるだろうか。
846腹黒ビッチ 2章(後) 4:2009/11/18(水) 17:28:47 ID:34xp4FbN
 それから、さらに数日後。
 締め切り三十分前の課題を出そうと、教授の部屋への廊下をたらたら歩いていた。
働かない頭で土曜の図書館にこもりなんとか完成させたものの、飯も忘れて座りっぱ
なしだった体はガチガチに硬くなっている。この後は予定もないし、どこか定食屋に
でも寄って帰るか。そんなことを思いながら教授のドアを見ると、珍しくまだ在室中
の札がかかっている。仕方ないから直接渡すかと、ノックして、教授の声を確認して
ドアを開けた。
「はいりたまえ」
 話中の教授が、ちらりとこちらを見る。向かい側のソファに座った女子も振り返る。
―――有華だった。
 ぼんやりしていた頭が一瞬にしてさえた。殴られるような衝撃。
「一宮君?何をしている」
 不審に思った教授が声をかけ、俺はぎくしゃくと課題の入ったファイルを手渡す。
「よろしく、お願いします」
「ああ、分かった。見ておく」
 教授に頭を下げつつ、ちらりと有華を見る。有華はもう俺を見ておらず、どこか沈
鬱な表情でうつむいていた。
「そう落ち込まないでおきなさい。また来年もあるのだから」
 そう言って、教授は有華の肩をたたく。いつだって厳しい教授が珍しく、優しげだ。
かっと血が上る。それ、セクハラじゃないですか!?叫びかけた。が、完全に部外者
の俺にはそんな権利はない。用がすんだら、ただ静かに部屋を出ていくしかない。名
残惜しい気持ちを抑えて、とりあえず扉を閉めた。
 が、去ることができず、そのまましゃがみこんだ。
 有華だ。有華がここにいる。数ヶ月ぶりの有華だ。なぜここにいるのかまったく見
当がつかないが、とにかく、もう二度と現れないかもしれないとすら思った有華がい
る。
 今まで休んでいた頭は、いきなり回転させてもうまく動いてくれない。足はもっと
動かない。
 がちゃりと扉が開いた。
「有華」
 目だけで驚いて、有華は俺を見下ろした。反応される前に急いで立ち上がる。
「送るよ」
「……いい」
「話がしたいんだ」
 返事はなかった。ただ視線をそらして、拒否も受諾もしない。俺が歩き始めると、
有華もゆっくりとついてきた。

 覇気のない有華に、何を話していいか分からずただ歩みを進める。下手なことを
言ったら、逃げられそうだ。色々と悩んだ挙句、当たり障りないことから始めてみた。
「今日、バイトは?」
「辞めた」
「辞めた?」
「お金貯まったから」
「そう、なんだ」
 バイトと言えば、お水だろう。もうずいぶん前に見かけた時のことを思い出す。が、
あの時ほどもう鬱ではない。目の前にいる有華があの時のような派手な服装と化粧じ
ゃないから、なおさらそう思う。
 細くなったな。肩の薄さに気がつく。俺も人のことは言えないけど、でも、心配に
なる。
847腹黒ビッチ 2章(後) 5:2009/11/18(水) 17:29:20 ID:34xp4FbN
「もう、学校来れるのか?」
「……さあ、どうかな」
「どこか、悪いのか」
「違う、病気じゃない。……でも、来てほしくないでしょ」
「そんなことない」
 即座に否定する。
「俺は、本当に辞めてほしいなんて思ってないんだ。だから、休んでたのが俺のせい
だったら、ゴメン」
「違うわよ。一宮君のせいじゃない」
「でも」
「試験受けてたの。だけど落ちたからもう休む必要ない、それだけのことだから」
 目の前から走ってきた車のライトに、一瞬、有華の無表情が照らされる。
「でも、一宮君は、これ以上会いたくないでしょう?」
 有華は俺を見ない。
「私のこと、嫌いでしょう?」
 まるで言い聞かせるような、静かな声だ。刺々しさが無いように感じられるのは気
のせいじゃない。
 今しかない。有華は、きっと今しか聞いてくれないだろう。
 優柔不断な俺の、ありったけの勇気を奮い立たせる。
「嫌いになろうとしたんだ」
 最初の声は震えた。ごくりと唾をのむ。
「だけど、嫌いになれなかったんだ。結局、忘れられないんだ。有華のこと。有華と
付き合ってた頃のこと。こんなになってからやっと気付くとか、本当に、バカみたい
だけど」
「……忘れてよ」
「ごめん」
 有華は、ぴたりと立ち止まる。一歩先から振り返ると、有華は、顔をゆがませて俺
を見た。
「やめてよ、なんで、今そんなこと言うのよ。私は最低だって、一番知ってるでしょ」
 精いっぱいの虚勢が、透けて見えた。こんな時につけ込むような言葉を言うの俺の
方が酷いのかもしれない。
「その通りだよ。酷いし、俺も傷ついた。……だけど、無理なんだ。思い知った。有
華がいなくなると、俺は駄目なんだ」
 一生懸命に俺を見上げる有華の頭ごと、抱え込むように抱きしめる。
 何年ぶりかの、ゼロ距離。
「好きだ、有華」

 有華の反応は、遅かった。途方に暮れるような長い空白の後で、手がゆっくりと背
中に添えられる。おずおずと、ためらうような指先。それだけで十分だった。
 有華をかき抱く。万感の思いを、俺の腕に込める。真っ暗なはずの晩秋の夜道が、
匂やかに色めいた。
848腹黒ビッチ 2章(後) 6:2009/11/18(水) 17:29:52 ID:34xp4FbN
 どうしようかと問いかけても、ぎゅーっと抱き締められるばかりで何も反応がない
ので、とりあえず俺の家に直行する。有華を乱暴した部屋に連れ込むのは少し気が咎
めたけど、有華が嫌がらないし、何より財布を忘れたからラブホにすら行けない。
 筋肉の消えた体では正直有華を引きずるのはキツかったが、有華がくっついて離れ
ないのは可愛くてしょうがなかったのでがんばった。さすがに階段でぜえぜえ言って
たら、有華が気にして体重がかからないようにしてくれた。けど、やっぱりぴったり
と有華は俺に抱きついているのに変わりはなかった。
 電気をつけて、照らし出された散らかり具合に、うわあと自分でも引く。
「有華、ちょっと掃除するから離れて」
 返事する代わりに、やっぱり抱きつく力が増すばかりだ。
「そうはいっても座れなさそうだから……」
 今だってプリントの層を踏んでいるのだ。さすがになあと思って見渡し、ソファは
服だけっぽいので、足でスペースを広げる。……明らかに服じゃない物がむにゅっと
した。
「有華ー座るぞー」
 一応声をかけて、ゆっくりと慎重に腰掛ける。抱き上げるように、ソファの上に有
華を上げる。二人用のスペースはあるのに、有華は隣に移動しようとしなかった。思
わず苦笑する。
 背もたれが傾いてるわけでもないから、キツい体勢だろうに。てっぺんしか見えな
い頭を撫でる。こっち見ろーと念力送りながら。
「有華、どうしたんだよ」
「……だって」
「うん?」
「夢じゃないかって」
 頼りなげな、か細い声。
「顔あげて、克哉君じゃなかったら、どうしようって」
 そう言って俺の胸に顔をうずめるその様に、胸を打たれる。
「夢じゃないと思うけど」
「だって」
「嘘じゃないよ」
 もう一度、言い聞かせる。俺は俺だよ、と。
「嘘じゃない」
 それでも顔を上げない有華を、なだめるように撫でる。ずっと。有華が信じてくれ
るまで待つつもりで。何分、何十分経ったか分からない。結構な時間、有華の体温を
楽しんでいた。寝ちゃったかな、と思い始めた頃に、有華が恐る恐るといった風で顔
を胸から離した。
 声をかけると、有華はまたためらいそうだった。ゆっくりと、有華が顔を上げる。
昔と変わらない、意志の強い目が俺を映す。
「……あの、ね」
 おずおずと、有華が口を開く。
「ごめん、なさい」
 かすれた声で、それだけ言って、有華がくしゃりと顔をゆがませる。もっと言いた
いことがあるみたいで、喉をひくひくと震わせる。だけど、もう声にならなかった。
「ふ……ぅえ……うえー」
 あの日みたいにぼろぼろと涙がこぼれる。
 俺を見上げる不安げな顔に、しみじみと、俺って本当に馬鹿だなと思った。なんで
こんなに弱い子を放っておけたんだろう。深く傷ついて、怯えて、本当に信じていい
のか疑っている。
849腹黒ビッチ 2章(後) 7:2009/11/18(水) 17:30:26 ID:34xp4FbN
 信じてほしい、と頭を撫でて、笑いかけた。俺の方も泣きそうな顔だったと思う。
目の奥が熱いし、喉もひりついている。
「もういいよ、許すって言っただろ」
「……ぇっ、うえー……っ」
「分かってるから。有華がすごく後悔してるって、もう分かってる」
 あの日だって、本当はたくさん言い訳したかったんだろう。でも言葉が浮かんでこ
なくて、謝罪の言葉しか言えなかったんだろう。そしてそうさせたのは俺だった。
「俺も、本当にゴメン」
 ふるふると首が振られるが、ひくつく体を押しとどめる。なだめるように頭を抱え
て、てっぺんにキスをする。徐々に顔に移動して、おでこ、目、鼻、頬、そして唇に。
「……しょっぱいな」
 笑いかけると、有華は首に抱きついて、自分からキスを返してきた。
「ん、……っん」
 ひっく、と泣きすぎてしゃっくりが止まらないらしい。息苦しいだろうに、それで
も離れようとしない。しゃっくりが収まるようにと背中をさすると、またぺたりと体
を密着させてきた。
「はっ、…っ」
 ちゅう、という音と一緒に、唇が離れる。至近距離で見つめあって、お互いをきつ
く抱き締める。
「おっきくなってる」
「……ごめん」
 思いっきり当たってるモノのことを言ってるんだと思う。てか、最初からクライ
マックスでバッキバキだ。何しろ自己処理のことすら忘れて腑抜けてたのだ。何日オ
ナニーしてないのかも覚えてない。結局下半身のことしか考えてないと思われたら嫌
だ。
 でも、有華はそっと抱きついた。それがイエスの合図だとはすぐに分かった。現金
な俺は、そろそろと有華の胸に手を伸ばす。
「相変わらず、小さいな」
「やっぱり、大きい方がいい?」
 眉を下げる様子に、ぷっと吹き出してしまう。
「有華さえいれば満足だよ」
 笑いかけると、有華もくすぐったそうに笑う。またぺたりと抱きつかれて、動きに
くいけど体をまさぐる。
「我慢できない」
「でも、すぐは痛いだろ」
「いい。すぐ欲しい」
 催促するように、有華は腰を浮かす。そりゃ、俺は嬉しいけどさ。さすがにいきな
りすぎないか、と下着を下ろせずに腰を撫でまわす。
「……だってもう、準備できてると思うの」
 恥ずかしそうに、俺の首元に顔をうずめてささやく。え、っと。その部分に、恐る
恐る指を這わす。と、ぬるっと布地が滑った。
「んっ」
「うわ、すげ……」
 しばらく割れ目と思われる場所を往復すると、下着がどんどん湿り気を帯びていく。
「ふぁ……ん」
 確かにこれだと馴らさなくてもいいかもしれない。有華の無言の助けを借りて、下
着を取り去る。スカートに隠されてしまったそこを揉むように、指を入れる。
「やん・ぅ……ん、ん、」
850腹黒ビッチ 2章(後) 8:2009/11/18(水) 17:30:52 ID:34xp4FbN
 くちゅくちゅとしばらく夢中で弄んでいたが、ふと、顔を上げる。じっと、必死な
瞳が俺に訴える。悲しそうな、切なそうな。
「おねがい」
 心臓をわしづかみにされた。ベルトを緩め、ジーンズを半分ずりおろす。
「挿れるぞ」
「うんっ……」
 入れると言っても体面座位の態勢で、有華がその気にならなければ入らない。亀頭
を膣に合わせただけで、有華が腰を下ろしていく。愛液が俺のペニスを伝った。
「あ・はぁ……ん」
 根元にまで達し、思わず、俺はため息をついた。有華もはぁはぁと息を荒くしてい
る。こつんと奥に当たり、背筋に震えが走る。ぎゅう、と互いを抱きしめ合い、体温
を確かめ合う。視線が絡み合い、どちらともなく唇が近寄る。くちゅりと唾液の音を
鳴らして、先ほどよりも深いキスを交わす。
 ―――くちゅ、ちゅ……ぴちゃ
 有華の髪の毛をかき乱し、頭を支えてまで深く、深く。奪い尽くし、与え尽くす。
この瞬間を、ずっと求めていた。
 体の芯が疼いていた。すでにいつ達してもおかしくない。動きたい。そう思うが、
これだけぴたりと体を合わせていると、突き込むことができない。
「ん……んふ、あふ……」
「……ん、ぅ」
 名残惜しいながらも、なんとか口を離す。なんで?と言わんばかりに切なく眉を寄
せる有華に、酷いことをしていると胸が痛む。
「有華、あの」
「ぅん……?」
「そろそろ動いていいか?」
 しばらく有華は視線をそらした。あれ?嫌なのか?
「あの、ね」
「?どうした」
「動いたら、気持ちいいんだけど、ね」
「うん、気持ちよくなろう」
「……でも動くと、離れちゃう」
 背中にまわされた手が、俺のシャツをきゅうと握りしめる。
「くっついてたいの」
 そう言って、すりすりと胸に頬をこすりつけた。

「……――――〜〜〜〜〜っっつ!!!」

 可愛すぎる!!何これ!!何この可愛い生き物!!いい、正直きついけど、ずっと
抱き締めてる。ずーっとぴっとりくっついていようじゃないか!
「ごめんね、わがままで」
「いいよ、ずっとこうしてよう」
 そう言って背中を撫でる。
 有華が、幸せそうに、花が開いたように、満足そうに、笑った。

 ずっと欲しかった。この笑顔が。大好きだった。有華のこの笑顔に、俺は恋をした
のだ。
851腹黒ビッチ 2章(後) 9:2009/11/18(水) 17:31:26 ID:34xp4FbN
 それからなんとかもぞもぞと服を脱いで、駅弁状態でベッドに移動して、挿れたま
まずーっといちゃいちゃして。何もしてないけど、有華は途中で達していた。中にあ
るって感覚が凄い、と言っていた。そして結局溜まっていた俺も途中で射精せねばな
らず、嫌がる有華に謝りながらなんとか外に出した。生だってことを忘れるくらい、
長い間挿れっぱなしだった。
 繋がりが解けても、俺たちは溶けたように抱きあったままだった。感慨深くて言葉
が出ず、会話はぽつぽつといったところだったけれど、空白を埋めるには十分だった。
 有華の体温があまりにも心地よく、うとうとと瞼の重さに耐えきれなくなってきた
頃、ぽつりと有華が聞いてきた。
「別所さんとは、した?」
「……してない、ってか、何もなかったよ」
「そっか」
 有華は笑う。
「私ね、克哉君が私のこと忘れて、幸せになればいいなって思ってたの」
「そんな……」
「克哉君が笑ってくれるなら、それでよかったんだ。相手が私なんて、もうありえな
いって、思ってたから」
「俺は有華じゃなきゃダメだったよ」
 有華は無言だった。俺は背中を撫でながら、恐る恐る聞く。
「有華は、他の奴としたか?」
「……ごめん」
「そっ、か」
「苦しくて、もう何もかも嫌になって、一回だけ、したんだ。でも、した後の方が苦し
くて」
「……うん」
「ほんと汚いって思ったよ。何もかも嫌とか、それも飛び越して、何も考えられなく
なった。楽になりたいなーとか、私何したいのかなーとか、そんなことしてたら何も手
がつかなくなって、試験も落ちちゃって、さらに落ち込んで」
 派手な格好の有華を見た時はあれだけショックだったのに、今はあまりにも穏やかだ。
うん、うん、と頷きながら話を聞く。
「ほんとはね、私、……全部終わっちゃおうかなって、思ってたの」
「……うん」
「苦しくて、辛くて、解放されたくて、……海に、沈んじゃいたいな、って」
 重い言葉だった。あの痛々しさはやっぱり気のせいではなく、そこまで思いつめてい
たのかと俺まで苦しくなる。
「そしたら、偶然、克哉君が来て」
「うん」
「好きって言ってくれて」
「うん」
「今だって、夢みたいで」
 声が段々と涙交じりになる。
「今度は、幸せ、すぎて、死んじゃい、そう」
 ぽろぽろと泣く。衝動的に、有華を閉じ込めるように抱きしめた。
「夢じゃない」
 何度だって言い聞かせる。今度こそ、俺が有華を守るから。
「愛してる」
「うん」
「愛してる」
「私も、あいしてる……っ」
 約束する。
 愛してる。
 ずっと、一緒にいよう。
852腹黒の人:2009/11/18(水) 17:32:26 ID:34xp4FbN
以上、投下終了
続き待っててくれた人ありがとうございました
規制中に三章(有華編)がかなり進んだから、次はそんなにかからないと思う
もう少しお付き合いお願いします

あと言っておくが、オフシーズンだから筆が進むんじゃないんだぜ!
CSで楽天負けてから明らかにスピード増したけど、気のせいだ!
853名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 17:44:14 ID:s/gi1Oro
年 印綬 却財
月 印綬 却財
日 偏財
時 偏印 正官

我ながらひどい偏りっぷりだと思う
854名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 17:45:39 ID:s/gi1Oro
誤爆しました!
腹黒さんGJ
こんなんが一番槍ですんません
855名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 17:50:08 ID:FDAYE3uw
>>852
待ってました
とりあえずもう言葉もございません
ありがとうございます
ただただありがとうございます
856名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 18:28:46 ID:GbQLzfNV
GGGGGJ!!!
あーもう長期間全裸待機していたせいか満足感も格段です

ま、まだ三章があるのか……!
満足している場合じゃねえ、速やかに全裸待機に戻らなくては
857名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 19:12:27 ID:sY1A/RHX
規制とか勘弁だよなー
とにかくGJ
続きも待ってる
858名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 21:09:58 ID:l+w+CsRt
っ!?…ふぅ・・・
久々に全身に血液が回り始めた気がする
859名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 21:30:51 ID:oa2AxBaA
>>852
読んでるこっちまで万感の思いというか
互いに一途過ぎて最高だろ。GJだ!

3章ってもしかして2章の有華視点?
860名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 01:16:25 ID:clul3WT1
アゲ
861名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 12:51:12 ID:hmhBYEu0
面白かった
862<セーフティ・フレンド>:2009/11/21(土) 13:28:00 ID:gbfv2JyC
第7話

=中編=

放課後のクラスでは、ローテーションを組んだ人間が文化祭に向けて準備を進めていた。
部活などで都合がつかない人間や、各自の負担の他、教室で効率的に作業できる限界人数を考え、
おおよそクラスの三分の一ほどの人間が残っている。
文化祭までフルでいるのは僕を含めて数人のみだ。

「委員長、博物館から借りてきた模型はどこ置いとくんだ?」

僕は図書館で借りてきた資料から、展示しやすいように文章を要約する作業をしている。
と、制服をだらしなく着こなした一人の男子が僕のところへやってきた。
肩まで伸びた髪と、浅黒い日焼け、制服の上からでも分かる締まった体つきのスポーツ少年。
僕の友達の加藤一(かとう はじめ)だ。

「ああ、それなら入り口のパネル展示の先がいいから、そうだな、教室の中央にスペース広めにとろう」
「オッケー」

力仕事ならお手の物な上、体育会系の中では唯一フルで作業を手伝ってくれる存在でもあるので、
クラス委員長の僕にとっては頼りになる存在だ。
色々苦労はあったけど、思ったより順調に文化祭の準備は進んでいた。
来週にはきっと、素晴らしいクラス展示が可能になるだろう。

「じゃあ今日は終わりにしよう」

日が落ちてきて残る人もまばらになった頃、僕は今日の作業の終了を皆に伝えた。
皆、後片付けを済ませるとゾロゾロと帰り始める。
と、そんな中、よく見ると一が女子と話していた。

「ねえ、加藤君」
「あん?」

女子はこのクラスで一番の美少女と評判の子だった。
863<セーフティ・フレンド>:2009/11/21(土) 13:28:43 ID:gbfv2JyC
名前は白石 絵里名(しらいし えりな)
美少女も美少女、腰まであるさらさらの黒髪に白磁のように白い肌、
母親は茶道の先生だかの、まさに清楚系といった感じの女の子だ。
このクラスのみならず、他学年にまでファンがいるという漫画のヒロインみたいな高嶺の華。
話しかけられている一も、中学時代は陸上部短距離部の主将で、200メートル県大会記録保持者だ。
背も高く、顔立ちもいかにもスポーツマンといった感じで、白石さんに比べれば見劣りするかもしれないが、
けしてひけをとらないモテるタイプの男だった。

「きょ、今日この後さ……」
「あー……悪ぃ、今日ちょっと用事あんだわ」
「そ、そう、ごめんなさい」
「マジごめん。じゃあな」

白石さんが教室を去るのを見送ると、一は僕のところへやってきた。

「なあ、悪いんだけどよ……」
「分かってる分かってる、英語の勉強だろ?」
「スマン、今日も頼むわ!」

一月ほど前からだろうか、一が僕に勉強を教えて欲しいと度々やってくるようになったのは。
理由を尋ねても「家で成績が落ちたのを怒られた」の一点張りなのだが、
大抵そういう理由というのは申し訳が立つ程度に成績を出せばいいだけなので、ここまで真剣にはならないように思える。
しかし、一はいつもこうして時間を惜しんでやってくる。

「白石さんの誘い断るってのはかなりの覚悟だろうしね」
「う……それを言うなよ。まるで俺が悪者みてえじゃねえの」
「彼女のファンの前でそれ言ったら殺されるよ?」

僕はそう意地悪に笑う。
一は居心地悪そうに苦笑いした。
と、その時だった。
864<セーフティ・フレンド>:2009/11/21(土) 13:29:28 ID:gbfv2JyC
「あなた達、まだ残っていたの」

鋭い女性の声だった。
澄んでいるものの、怒っているわけでもないのに思わずすくみ上がりそうな、そんなトゲのある声だ。

「き、如月先生……」

一が呟く。
カツン、とヒールの音を響かせ、やってきたのは英語教師の如月南(きさらぎ みなみ)だった。
スラリとした長身に、アップにまとめた髪、引き込まれそうな深い瞳には怜悧さを強調するノンフレームのメガネがかけられている。
意図しているのか、単にそうなっているだけなのか、身体のラインが浮き出るようなぴったりとしたスーツを着こなしている。
男女問わず美人だと評判だが、その近寄りがたい雰囲気のせいであまり周囲に人がいるのを見たことがない人である。
そう、例えるなら、奈月先輩がヒマワリだとすれば、先生はバラといった印象だ。
同じ美人でもタイプが違う。

「すいません、もう帰りますんで」

僕は触らぬ神に祟りなしとばかりに先生にそう言った。

「そう、早くなさい。そろそろ施錠の時間よ」

先生は何を考えているのか分からないポーカーフェイスで僕に一瞥をくれると、そう言い残して踵を返す。

「せ、先生、あの……」

一が突然先生の後を追おうとするが、キッと先生が睨むように振り返ると、そのまま無言で見送った。

「どうしたんだ? 一」
「い、いや……」

一はどこか悔しそうな表情でいるが、曖昧な言葉を呟くだけだった。
865<セーフティ・フレンド>:2009/11/21(土) 13:30:19 ID:gbfv2JyC


文化祭の当日がやってきた。
今までの準備が報われ時だ。
僕のクラスは飛行機の歴史や模型の展示、そして教室の半分を使っての子供たちへの模型飛行機教室だ。
簡単だけどよく飛ぶグライダー式の模型飛行機を子供たちが作り、グラウンドへと笑いながら飛ばしに行っている。
盛況だ。
色々と苦労はあったけれど、子供たちの笑顔を見れば疲れも吹き飛びそうな気がした。

「委員長、今まで大変だったんだから後は任せろよ」

一が二回目の模型教室を終えた辺りで僕にそう言ってきた。

「そうよ、後は私たちでも大丈夫だから」
「出店でも回ってこいって」
「そーそー」

僕が断ろうとすると、次々とクラスメイトがそう口にする。
参ったな、文化祭を楽しもうとは全く考えていなかった。

「じゃあ、お言葉に甘えて」
「おう、行ってこい」

一に背中を叩かれ、僕は自分の教室を後にすることになった。

「でもどうしようかな……」

ガヤガヤと一般の人まで大勢いる人混みの廊下を、特にあてもなく歩く。
とりあえず、興味をそそられたものを見ていこう。

「ホットドックいかがですぁー 三階では喫茶店を開いてまぁーす!」

と、威勢のいい売り子の声が耳に入ってきた。
文化祭といえば、こういった売り歩きの食べ物だろう。
僕は小腹も空いていたので、おいしそうなら買ってみようかと声の方へと歩いていく。

「わ……」

売り子はちょうど階段を上るところだったようだ。
そして、その姿に僕は思わず息を飲む。
866<セーフティ・フレンド>:2009/11/21(土) 13:31:11 ID:gbfv2JyC
(メイドさんだ!)

悲しいかな、僕はそういった格好がかなり好きなタイプの男だった。
目を皿にして食い入るように凝視してしまう。
彼女の姿は、黒のフレンチメイドスタイル。ミニスカートが特徴的な少し露出の多いメイド服だ。
頭には純白のカチューシャ、腰にはサロンエプロンを身につけている。
更にその下、すらりと長い脚を黒のガーターストッキングでコーティングし、大人の色気を感じさせている。
その格好で肩からホットドックを入れた箱を提げている状態である。

(わ、わ、ここからだとパンツ見えちゃいそう……)

階段を上るその後ろ姿があまりにも扇情的で、僕は思わず生唾を飲んでしまいそうだった。
ガーターベルトを完璧に着こなし、ミニスカートとの絶対領域から見える白い肌は犯罪的にエロい。
と、突然そのメイドさんはカツンとハイヒールの踵を鳴らしてこちらを振り返った。

「お客さまァー、スマイルはゼロ円ですがそちらは有料となっておりまぁーす」
「うわっ!?」

その顔に僕は度肝を抜かれた。

「な、奈月先輩!?」
「ふふーん、冬間くんだろうと思った」

メイドにしてはエロ過ぎる化粧のその顔は、紛うことなく奈月先輩その人だった。

「な、何してるんですか!?」
「何って、アタシのクラスは喫茶店が出し物だしさ」

な、なるほど……
自分のクラスが忙しすぎて先輩のクラスの出し物なんてまるで確認していなかった。
867<セーフティ・フレンド>:2009/11/21(土) 13:31:56 ID:gbfv2JyC
「にしても、真面目な冬間くんにもムッツリスケベな面があったとはねぇー」
「な、何ですか人聞きの悪い!」
「えー、アタシのパンツ見ようとしなかったぁ?」
「……それは、ちょっとはまあ」

先輩はニッと笑うと僕の耳元へ顔を寄せ、囁いた。

「こういうコスチューム好き?」

とろけるような声に、僕は背筋が震えるような感覚を覚えた。
そういえば、この一週間、先輩とセックスしていない。
声だけでなく、ほのかな先輩の香りも手伝い、僕の股間に血液が集中してしまいそうだった。

「だ、ダメですよ……文化祭中ですし」
「なぁんだ、アタシの今日のパンティ見たくないんだ」

先輩は悪戯ぽく半目で僕を見つめ、片手でミニスカートの裾をつまみ、そっとすり上げた。
ガーターベルトの緻密な刺繍が目に入る。
先輩の本来のスタイルの良さが加わって、たまらなく美しく感じられた。

「ごくっ……そ、それは」
「ふふ、ホットドック買わないならもう行っちゃうよ?」

僕が逡巡していると、先輩はぱっと手をスカートから放してその場を立ち去ろうとする。

「ま、待った! ホットドック買います!」

思わず僕は間抜けな行動に出てしまっていた。
咄嗟に財布から小銭を出すと、先輩を引き留める。

「あらぁ、毎度あり」

ちゃりん、と先輩は小銭を受け取る。
引き留められたのが嬉しかったのか、先輩は心なしか楽しそうだった。
868<セーフティ・フレンド>:2009/11/21(土) 13:32:45 ID:gbfv2JyC
「……じゃあ、買ってくれたお礼に、ご主人様にご奉仕しなくちゃ」

先輩はおもむろに箱からホットドックを一本取り上げると、
ぺろりとその紅い舌で舐め上げた。
あまりの出来事に僕が呆然としていると、先輩はなおもそのホットドックへの疑似愛撫を続ける。

「んっ……ちゅぶ……」

まるで僕のものをしゃぶっているときのように淫らな表情で太いホットドックをくわえるその光景に、
僕の股間はすっかり硬さを持ってしまっていた。

「ちゅぽっ……はい、どうぞ」
「あ、う、うん」

僕は思わず差し出されたホットドックを受け取る。
すると、先輩が素早く僕の唇についばむようなキスをしてくれた。

「あと何本かでノルマ達成だから、昼頃メールするね。この続き、それまでおあずけね、ご主人様!」

先輩は人が来る気配を感じたのか、それだけ言うとその場を足早に立ち去っていく。

「ホットドックいかがですかぁー、三階では喫茶店もやってまぁーす!」

先輩の威勢の良い声が、徐々に遠ざかっていった。


<続く>
869名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 13:34:53 ID:gbfv2JyC
長くなりそうだったので中編に分けてみました
そういえば最近では学校行事でメイドさんをみることが珍しくなくなってきましたね
870名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 14:07:20 ID:g0WUIfoF
GJ!一が英語頑張ってる理由はやっぱりそういうことなんだろうな
後編楽しみにしてます
871名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 15:17:21 ID:rDFfcnip
GJ
後編も楽しみだ
くっつくのかなぁ、お付き合いしてもいいと思うんだけどなぁ
微妙にサブキャラにも魅力を感じ始めたけど、まずは本筋が上手くいってほしいものだ
872名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 18:53:55 ID:MbJ6/kTv
祭りだ!GJだ!
873名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 20:07:33 ID:GiMs2150
祭りだゴッホ、GJ!
さて、これは本編終了後の番外編「一君編」に期待だな
ワショーイ
874名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 22:59:54 ID:2M/TVN3K
続きwktk
>>873
中山専用機乙w
875名無しさん@ピンキー:2009/11/23(月) 18:50:27 ID:B9PBhH3Q
うお!しばらくぶりに来たら腹黒ビッチ続きキテル――(゚∀゚)――!!
セーフティフレンドとまとめてで悪いが続きwktk
876:腹黒ビッチ 3章(前):2009/11/24(火) 18:05:12 ID:c+rdRhZe
レスくださってありがとうございました
今回エロ無しなんで、全裸待機の人は服を着てくれ
禁止ワードは「腹黒ビッチ」でお願いします
877:腹黒ビッチ 3章(前) 1:2009/11/24(火) 18:06:08 ID:c+rdRhZe
 パチン。
 随分温まってしまった携帯を、片手で閉じて握りしめる。机に向かうにも、予習は
終わってるし、世界史の記述も採点を済ませたところだ。英作文は寝る前にやる習慣
を変えたくない。手持無沙汰に、なおさら携帯が気になってしまう。もう一度だけ、
と携帯を開こうとした。
「りかー、ここ教えてー」
 向かいで勉強していた佳奈子がぐでっと机に突っ伏す間際の態勢で、私に助けを求
める。
「わーがーんーなーいー」
「わかったから、さっさと見せなさいよ」
「ベクトルなんて死んじまえばいいんだー」
「ベクトルね。はいはい」
 学校で配られたセンター対策のだな。ベクトルならそんなに難しくない。
「ああ、途中まで解けてるよ。こないだ教えた方法使えてるし」
「空間は無理ー」
「考え方は同じだから。ほら、これとこれ使えば出てくるじゃない」
「うんうん」
「で、(1)の使ってみて。これのベクトル出てくるから。あとは自分で考えて」
 佳奈子にテキストを返し、ノートに数式を書きだすのを見て、また携帯を見る。着
信ゼロ。分かっているけど、もう一度開いてみる。いつも通り、待ち受け画面のプリ
クラが光っているだけだ。
 はぁ。ため息をついて、またパチンと携帯を閉じる。だけど気持ちがおさまらなく
て、また携帯を開き、メールを打つ。
「りかー、まだ一宮に連絡つかんの?」
「うん」
「どうしたんだろね」
「……うん」
「ま、だいじょぶじゃね?どうせいつも通りなんだから」
「……そうだね」
 そう、いつも通り。昼ご飯は克哉君と一緒に食べて、普通に授業受けて、放課後は
こうして佳奈子の家庭教師。それからバイトに行って、帰りは克哉君が駅まで迎えに
来てくれる。
 いつも通り。だけど、克哉君からの先に帰るよっていう連絡がない。それだけと言
えばそれだけだけど、でも胸騒ぎがする。
「それにしても、りかって変わったよねー」
 はい、と解き終わったノートを採点してくれと差し出して、佳奈子がしみじみ言う。
「私の処女は高く売れるのよ!とか言ってた頃が懐かしいよ」
「今だって変わんないわ。一晩二十万は堅い」
「ぎゃははは、じゃあ、一宮は二十万の男?」
「さーね」
「ほら、やっぱ変わったじゃん。男は奢らせてナンボって言ってたくせにぃ。男ころ
ころ変えて、しょっちゅう遊びに行って、そのくせエッチはさせなかったりかが、あ
の一宮に落ちるなんてありえないよねー」
878:腹黒ビッチ 3章(前) 2:2009/11/24(火) 18:06:36 ID:c+rdRhZe
 中学からの付き合いってこれだから嫌だ。
「別に落ちてないわよ」
「ふーん?別にどーでもいいけどさー」
 毎日のように渋谷に繰り出したり、夜中に集まってバカやってた仲間で、同じ高校
に来たのは佳奈子だけだ。おかげで、昔からの言動や蛮行はすべて知られている。他
は全員バカ高を選んだのに、佳奈子だけは『りかと一緒だとおもしろいからー』なん
て言っていた。おかげで、佳奈子の親には絶大な信頼を受けている。大学受験を控え
た今も、放課後二時間見てあげるだけで一日五千円もらっているのだ。さすが金持ち。
「吉中さんとか、まだりかに未練あるらしいよ。あれだけ散々振られたのにねー」
「あー、直人のこと?車しか取り柄ないじゃん。あれ以上はつきあっても無駄」
「ひっでーの!K大お坊ちゃま君捕まえてそりゃないわー」
「それくらいゴロゴロいるわよ。あれでヤらせろなんて、分をわきまえろって」
「麻美が聞いたらキレるよ……」
「直人のセフレやってんのは麻美の勝手でしょ。私は知ーらなーい」
 はっと鼻で笑って、紙パックのジュースをすする。
「てか、麻美はこれからどうすんの?」
「『マミ、しゅーしょくなんてめんどくさぁいしー、頭わるいしー』って」
「直人って、大卒以上は人間じゃねえとか言ってるバカ男なのに……」
「バカ同士でお似合いなんじゃない?」
 じゅるじゅる、とストローが嫌な音を奏でたところで、採点終わり。ほとんどマル。
このままなら、佳奈子の方は志望校に受かるだろう。
「さて、今日はこんなもんかな」
「終わったぁーつっかれたーかえろー」
 机をガタガタ元に戻して、カバンを取る。教室の時計は六時半を示している。連絡
ないな、とため息をつきかけたその時、手のひらで携帯が振動した。
「もしもしっ、克哉君?」
「有華ー?克哉君じゃなくてママだけど、もうこっち向かってる?」
「……あ、ママ」
 ママ、と言っても本当の母親じゃない。バイト先であるクラブのママだ。
「今からそっち行くとこです」
「そう?ごめん、氷切らしちゃって、途中で買って来てくれない?あとポッキーも無
いから。いつものとこでお願いねー」
「分かりましたぁ。三十分くらいで着きますねー」
 用件だけで、すぐに切られる。もしかしたら早めにピークが来ているのかもしれな
い。買うものリストを頭で作りつつ、教室を出る。
「絢さんから?」
「うん」
「りかも大変だねー、受験生なのにバイトして」
「でも国立に変えたし、なんとかなりそう」
「はー。私立一本だと気楽でいいわー」
 佳奈子とは校門で別れた。じゃあねー、絢さんによろしくー!という佳奈子に手を
振るだけで返す。卒業したら絢さんの店で働くって、本気なんだろうか。
 店は新宿にあって、電車で一本だ。駅までの道すがら、何度も携帯を見るけれど、
やっぱり連絡がない。克哉君は私と同じ大学に入りたいからとかなり必死に勉強して
るから、最近は絶対部屋にこもってるはずなんだけど。
879:腹黒ビッチ 3章(前) 3:2009/11/24(火) 18:07:13 ID:c+rdRhZe
 克哉君と付き合うようになって、確かに私は変わったかもしれない。佳奈子のから
かうような口調を思い出す。
 中学に入ってから、男は一か月以上切れたことがない。初めは流されたように同級
生と付き合っては、三か月未満で別れていた。周りもみんなそんな感じで、付き合うっ
てことが大事で、キスしたり手をつないだりそんな段階で別れていた。
 そんなある日に、三歳年上の彼氏ができた。相手は高校生で、バイトしててお金が
あった。色んなものを奢ってもらって、買ってもらった。母子家庭で裕福じゃない家
庭に生まれた私には、新鮮な経験ばかりだった。カラオケに行ったり、ゲーセンに行っ
たり、ビリヤードしてみたり、クラブにも行った。そうして一か月くらいですっかり
遊びを覚えた頃に、彼氏と二人でカラオケに行った。
 押し倒された。
 はじめて、おちんちんというものを見た。
 舐めてと言われ、あまりのグロテスクさに叫んで、彼氏の股を蹴り上げて、逃げた。
 逃げた道中の混乱を、今でも覚えている。なにあれなにあれなにあれキモいキモい
キモい。あんなの舐めるとかありえない。自分で舐めてろ!キッモ!キッショ!!
 家に帰って、冷静になっても、大体考えることは同じだった。だけど男と付き合う
と、奢ってもらっていっぱい遊びに連れてってもらえるというのは捨てがたかった。
だけどその引き換えにペニス舐めろと言われても、絶対嫌だ。
 しばらくうんうん悩んでる内に、彼氏に呼び出された。当たり前だが怒っていて、
今にも物陰に連れて行かれて強引にされそうだった。何も反応しない私の腕を引いて、
抱き締めようとする男を前に、ふと思いついた。
『いやっ』
『有華?』
『ごめんなさい、私、怖いの……っ』
『何言ってんだよ、お前』
『だって、私、お母さんに、結婚するまでエッチしちゃダメよって……』
『……ハァ?』
『ケンジのこと、好きだけど、でも、そんなことしたら、結婚できなくなっちゃうの』
 名づけて、結婚するまでピュアなの大作戦(そのまま)。うるうるの目で見上げて、
怯えたウサギのように体を震わせるのだ。この時ほど、自分が清純派で可憐系の顔で
よかったと思ったことはない。
 彼氏は憤慨しかけたけど、私があまりにも怯えるので、諦めた。
『ケンジと結婚したら、私の処女、あげるねっ』
と言って落とした。誰がお前なんかと結婚するかバーカ、というのは心の声だけど。
 その場をどうにか切り抜けるためのはずの嘘は、後々、意外な効果を生んだ。ます
ます彼氏が私に入れ込んだのだ。可愛くて一途な女の子は、この子を大事にしなきゃ
という気を起させるし、本命にしたくなっちゃうらしいのだ。
 遊びに行くたびにお金出してもらって、ご飯食べさせてもらいながら、私は悟った。
これは使える、と。
 そして三ヶ月くらい付き合った後、彼氏とはあっさり別れた。結局彼も高校生、ヤ
りたいお年頃。その頃にわざと軽そうな友達を紹介したら、面白いくらいさっさと手
を出した。そこで、もう信じられない!とでも言って平手でも打ってサヨナラした。
 あとはそれ繰り返し。彼氏は切れないけど、それは恋愛体質だからじゃない。いか
に奢ってもらって美味しい思いするかの勝負なのだ。ただ、セックスは結婚する相手
に取っておく、というのも本当だ。いつか玉の輿に乗った暁には、お礼の意味も込め
て処女を捧げるつもりだ。
880:腹黒ビッチ 3章(前) 4:2009/11/24(火) 18:07:57 ID:c+rdRhZe
 いい男は、いい環境にこそ存在する。中学の時点で私は知っていた。ナンパで捕ま
る男なんて、たかが知れている。中学までに付き合った男は中の下レベルの高校か大
学で、決まってそんなに金も持っていなかった。
 だから中三あたりで遊ぶのには一旦見切りをつけて、猛勉強を始めた。友達はみん
なバカじゃないのー遊んでた方が楽しいじゃんと鼻で笑ってたけど、そんな奴らを私
こそが鼻で笑っていた。そのレベルの男で満足してればいいんじゃない?私はもっと
ハイレベルの男掴まえるけどね。
 結構なレベルの進学校に入って、それは確信になった。制服だけで、寄ってくる男
が違う。それに可愛い女の子の顔が乗っていたら、効果は抜群だ。反面、高校に入る
と体の関係を迫ってくる男も増えた。結婚するまでピュアなの大作戦は、限界に近づ
いてくる。本当に結婚しようと迫ってくる男が出てきやがったのだ。
 あーめんどくさい。どこかにそんな女慣れしてなくて、性欲も薄そうな男いないか
な。草食系バンザイ。
 そんな頃に会話に出てきたのが、一宮克哉、だった。

「あら早かったわね、有華」
「おはようございます、これ、頼まれてたものです」
 業務用スーパーの袋を台に置く。それからブレザーを脱いで、ネクタイを店用の黒
に付け替えて、エプロンをつける。
「あ、有華ちゃん来たんだー」
「おはようございますー、瑠奈さん」
「こんな時間から団体さんはいって、今大変なのお」
「そうだろうなーと思って、早めに来ました」
「さすが有華ちゃんだね。いい子いい子」
 香水の匂いをぷんぷんさせる瑠奈さんに、にっこり笑いながらオーダーを確認する。
ママもがんばっていたみたいだけど、大分たまっている。
「今日、私フリーっぽいから、時々私も厨房入るね」
「大丈夫ですよー。それに瑠奈さん人気だし、すぐ指名入りますってば」
「お世辞はいいわよ」
 うふふ、と上品に笑う瑠奈さんは、こんなに気さくで偉ぶらないのにナンバー3だ。
大体、ナンバー入りの人が厨房に入ることなんてまずないのに。
「もうすぐ卒業でしょ?そしたら有華ちゃん、私のヘルプ入ってね。楽しみにしてる
から」
「あははは、どうなんでしょうねー」
 手を振って、瑠奈さんはまたホールに戻って行った。さて、とオーダーの一番上の
アイスクリーム盛り合わせにかかる。ディッシャーは、普通の店のよりかなり小さい。
大粒のブドウくらいの大きさで、これを何個も積むと可愛いんだけど、店内用はたっ
たの四つに、ウエハース二枚。これが800円に化けるんだから恐ろしい。私なんか裏で
めちゃくちゃ食べてるのに。
「大変お待たせしました、アイスクリーム盛り合わせです」
 話に盛り上がってるのを邪魔しないように、静かに置いて、さっさと厨房に戻る。
それが私の仕事だ。飲み物は氷とお酒の準備だけ。あとは女の子がやってくれるから
楽だ。これで時給が1800円。簡単な仕事だけど高いのは、一応ここが夜のお店だから。
ホステスよりは当然安い。それでもコンビニのレジでひーひー言うよりはよっぽど割
にいいから、もう二年も働いている。
「有華、次ピザやってくれる?」
「はーい」
 忙しいのかこちらを見ないママに、返事だけしてオーダーを確認。マルガリータ。
後で私も食べよっと。
881:腹黒ビッチ 3章(前) 5:2009/11/24(火) 18:08:28 ID:c+rdRhZe
 ピークを過ぎるのが十時頃で、その前後で私も上がりになる。三時間程度しか働か
ないで済むんだけど、やっぱりちょっとは申し訳なくて、残業することも多い。まあ
ママが残業代を弾んでくれるからなんだけど。上がっていいよーとママに言われて、
すぐにカバンの携帯を確認する。けど、何の連絡もない。
 さすがに、おかしい。迎えに行くよという連絡がないのは、これが初めてだった。
「有華ー、なんか食べてくー?」
「いえ、帰ります」
「また克哉君?」
「はい」
「いいわねえ、ほほえましくて。じゃあね、また明日」
「はい、お先失礼します」
 ママはそう言うと、ホールに帰って行った。エプロンを外して、ブレザーを着る。
水仕事で荒れやすいから、ハンドクリームを塗る。だけど指先は冷たい。このまま待
とうか迷ったけど、待つよりは駅に向かう方がいいと思って外に出た。
 繁華街のある駅から最寄駅までは十五分ほど。六本木で働いていた母が通勤に楽な
ようにと選んだアパートに、もう十年も住んでいる。克哉君の家とは駅と反対になる
けど、徒歩二十分と近い。だから朝はランニングするって言う克哉君に付き合って、
一緒に学校に行くことだってできるのだ。
 いつも、克哉君は最寄り駅で私を待っていてくれる。夜道は危ないからと言って。
だけど克哉君の姿は、今日はそこに無かった。
 胸騒ぎが、どんどん酷くなる。なんでだろう。どうして、連絡くれないんだろう。
 もやもやする胸を晴らすために、私は自分のアパートでなく、克哉君の家の方へ向
かった。誰もいないようだったけど、私はもうほぼ顔パスだったから、おじゃましま
すとだけ告げて中に入る。二階の克哉君の部屋を、ノックする。返事はない。
 その先は、真っ暗な闇の中だった。
882:腹黒ビッチ 3章(前) 6:2009/11/24(火) 18:08:49 ID:c+rdRhZe
 一宮克哉という人間は、きちんと認識していた。クラスにいる、暗い奴。それくら
いに思っていた。他人に関わろうとしない。本当に空気だった。誰かに視線を送るで
もなく、不気味に独り言を言うでもなく、ただぼんやりと彼はそこにいた。
 最初は好奇心だった。金があるのになんであんなにダサくなれるのか分からない。
女の子と付き合ったこともなさそうだし、完全に自分が優位になれそうだと思った。
性欲も薄そうだし。今まで付き合ったことのないタイプだったから、試しに付き合っ
てみようかな。将来結婚する時に、こういう無害そうなタイプだったら、手綱をとれ
ていいかもね。その実験台として。三ヶ月ほど付き合って、慣れたら捨てよっと。そ
れくらいに思っていた。
 そうして三ヶ月経ったけど、別れる気が不思議と起こらなかった。その時は、他に
いい男が今はいないからだと思った。
 冬が来ても、私はいつも克哉君の傍にいた。一途に私のことを思ってくれて、努力
してくれる姿に、情がわいたのかなと思った。
 春が来て、いつの間にか処女がなくなってた。必死でそういう空気に持っていこう
としている様子を見てたら、まあいいかな、と思ってしまったのだ。
 そうして、一年が経って。結婚するまでなら一緒にいてもいいかな、と思った。レ
ベル低めの大学に入って特待生になろうと思ってたのを、同じ大学に行きたいからと
志望校を変えた。
 自分が変わったなんて、意識したこと無かった。むしろ虚勢や嘘をつかなくていい
分、そのままの私でいるつもりだった。日々が穏やかだった。それを楽しむだけで、
十分だった。
 今以上を望まなくてもいい、等身大の毎日。そして誰かが想ってくれることに、
笑って応えることが、どれだけ幸せなのか。
 私は気付いてなかった。

 ボロボロの身なりで、どうやって帰ってきたのか覚えていない。手切れ金だと言わ
んばかりに投げられた万札は、途中のどこかで捨ててしまった。体の芯まで冷え切っ
ていた。いつもの慣れた動作で鍵を開けて、扉を開ける。
 バタン。静まりきった空間に、冷たく響き渡る。靴を脱いで、服を脱いで、シャワー
を浴びる。冷たい水が頭にかかるけど、我慢する気も逃れる気も起きないままぼんや
りとしている内に、冷たさが和らいできた。頬を伝う温水は、塩辛くもなんともない。
涙はあの部屋に置いてきてしまった。
 くぷ、と膣から漏れ出した精液が、太ももを伝う。避妊されなかったんだな、でき
たらどうしようかな、と思った。
 ルーチンワークとしての入浴はできても、それ以外のことはできない。いつもどお
りに体を洗って、外に出るしかできなかった。部屋着に着替えて、そのまあベッドに
倒れ込む。英作文は、もう寝る時間だから、出来ない。
 目を閉じたら、そのまま眠れる。眠くてたまらない。はやく眠ってしまいたい。こ
んなこと忘れてしまいたい。
 赤ちゃんできてたら、どうしようかな。眠りに落ちる寸前で、ぼんやりと考えた。
 まあ、できてないんだろうな。明日から生理だったことを思い出したからだ。
 できてたら、よかったのに。なんでそんな馬鹿なことを思ったのか、分からない。

 生理痛で一日休んで、そのまま週末を迎えて、学校に行くと空気が明らかに違った。
克哉君とのことは、クラス中に知れ渡っているらしい。鼻で笑ってやろうか、前の私
ならそうしただろうけど、そんな気力が湧いてこない。克哉君を、視界に入れないよ
うに気を付けた。きっと今は、耐えられないだろうから。
 白い目で見られるのには慣れていた。小学校時代はずっとそうだった。母がお水だ
からって、友達には馬鹿にされたし、先生にも目をかけてもらえなかった。中学に
入って小学校時代の友人関係がリセットされて、立て続けに先輩やら同級生に告白さ
れてからようやく、自分がどうやら人より可愛いことを知った。
 その頃を思い出せば、やっていける。そう、自分に言い聞かせる。この間まで仲が
良かったクラスメイトが、遠巻きに私を見て、冷たい目で噂する。誰にも気づかれな
いように、ため息をついた。これからは、ギリギリで学校に来ないと。
883:腹黒ビッチ 3章(前) 7:2009/11/24(火) 18:10:41 ID:c+rdRhZe
 昼休みのチャイムが鳴り、コンビニで買ったパンを手に立ち上がった。廊下に出る
と、佳奈子が一人でそこにいた。
「よっ、りか」

 屋上は秋風が吹きすさび、はっきりいって寒い。寒いけどここしか場所は思いつか
ない。その内、特別教室でも探さなければ。
「犯人、うちのクラスの田辺だって」
「ふーん」
「なに、シメないの?」
「どうでもいい」
「どうでもよくないっしょ」
「どーでもいーの」
「どーでもよくない!」
 珍しく、佳奈子の大声。顔を上げると、想像したよりもずっと、佳奈子は怒ってい
た。
「りかがせっかく、まともに恋愛してんのに!ぶち壊すなんて、許せない!」
「まとも?」
「そーだよ!恋愛不信のりかが、やーっと本気で恋したのに、田辺の奴……!」
「私、恋愛不信なんだ」
「自分で気付いてなかったの?」
 はは、と生笑いで返す。言われてみればそうかもしれないなーくらいの実感しかな
い。
「りかはさ、男なんて信用してないでしょ。小学校ん時、男の先生に相手にしても
らってなかったし。しかも通信簿に酷いことばっか書かれて」
「よく知ってるねー」
「あと、中一ん時に付き合った奴ら。みーんなりかのことつまんないって言ってさっ
さと別れちゃって」
「あー、でもそれ否定できないなー」
「そんで、年上の彼氏全部!エッチしたいエッチしたいってお前ら猿か!!」
「まぁ、男ってそんなもんじゃない?」
「しかもりかんちのおばさん、男追いかけて北海道行っちゃうし」
「子ども生まれて幸せならいいじゃん。見る?こないだの、晋くん二歳の写メ」
「ほら、りか、達観しちゃってるでしょ。これが恋愛不信だっていうのよ」
 言われてみれば、そうかもしれない。風でさらに固くなったメロンパンにかじりつ
く。どこにメロン果汁が入ってるのかさっぱり分かんないのがメロンパンのいいとこ。
「しょうがないよ。金目当てだって、本当のことだったんだし」
「最初はそうだったんだろうけど、違うでしょ」
 うん、違う。違うんだよ。克哉君。
「私、気付いてなかったけど、克哉君のこと好きだったんだね」
「それも気づいてなかったのかよ……」
 あはははは。乾いた笑いが、風にさらわれる。
「好き、だったんだ」
 やっぱり涙はあの日流し切って、もう泣き方すらも思い出せない。
 恋の仕方も知らないくせに、知ろうともしなかった。克哉君はいつだって私を大事
にしてくれてたのに、私はただをそれを甘受していただけ。そもそも前提が最悪なの
だ。ばれなきゃいいなんて、そんなの、ばれて当たり前だ。
 そうして全部なくなってから、やっと分かった。これが、恋だったんだと。
「りかのバカ」
「うん、私、バカだね」
「バ―――――カ!」
「もー、佳奈子が泣かないでよ」
「バアアアアアアアカ!一宮のバアアアアアアカ!!」
 うわああああん、なんて豪快に泣いてマスカラ取れてる佳奈子に、化粧ポーチを膝
に乗せてやる。友情に免じて、綿棒一本貸したげよう。
「これから私といると、佳奈子も悪口言われるよ」
「知るか。私はりかがいないと大学受からないんだもん」
「だったらうちおいでよ。どうせ誰もいないし」
「むしろうち引っ越してこいよ!うちのママ、りかのこと気に入ってるし」
 断る私をよそに、佳奈子は勝手に「これからは二人で飯食うぞ!」と意気込んでい
る。やめときなよと言ったけど、本当は嬉しかった。
884腹黒の人:2009/11/24(火) 18:16:38 ID:c+rdRhZe
以上、投下終了

長くなったので、前中後と分けます
ほぼできてるし、そんなに間は置かないと思う
他スレで全裸待機してたらかかった風邪が治り次第、投下します
885名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 18:18:35 ID:Vrrp2qQq
続き楽しみにしてる

セーフティフレンドもすごく楽しみにしてる
886腹黒の人:2009/11/24(火) 18:27:16 ID:c+rdRhZe
あ、誤字発見。
2の「大卒以上は」は「大卒以下は」に脳内変換しといてくれ
自分で書いといてなんだけど、酷いセリフだな
887腹黒の人:2009/11/24(火) 18:37:01 ID:c+rdRhZe
何度も何度もすいません、「未満」でした
……うん、もう寝る
888名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 20:10:27 ID:XhQozWUn
携帯からでスマンがGJ
後編では現代に戻るのかな?
いずれにせよ楽しみだ
889名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 20:20:37 ID:D00W/ISn
>>887
GJでございます。
なるほど。他の元彼氏を呼ぶときは呼び捨てなのに、
克哉は克哉“君”、なんですね。
そこに、彼女なりの彼への愛情を見た気がします。
有華の涙は、克哉の部屋に置いてきたからこそ、
2章のあのシーン。あの部屋で、
克哉君の胸の中で泣くことが出来たのかと思うと、
グッと来ます。
続きを心からお待ちしております。
全裸待機は紳士のたしなみ、ですが、
どうかお身体ご自愛を。
890名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 17:53:51 ID:v9CP/nEG
>>888
なぜ携帯って事で謝るのか意味が分からん。
891名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 08:45:04 ID:NR1k6I89
……ビッチの定義についてなんだけどさ
娘の彼氏や家庭教師をとっかえひっかえ食いまくってる若妻が
ある日やってきた一見無垢っぽい家庭教師に本気になっちゃう
っていうプロットなんだけれど、これビッチか?
892名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 09:23:21 ID:uPGOURMV
>>891
超ビッチ。
893名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 18:13:45 ID:I6mHnznl
糞ビッチだな
894名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 20:16:47 ID:cU/k9Hbq
一途になったら超糞ビッチw
895名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 23:56:03 ID:WX9+8bie
一途になった場合旦那の存在が難しそうな設定だが良質なビッチだな
896名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 02:32:20 ID:TrHuJe5L
旦那が初めてで色々仕込まれてセクロスに目覚めちゃったけど
旦那が事故であぼーん
若い身体を持て余している内にビッチ化とかでいいんじゃね?
897名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 21:08:45 ID:yXf8kT24
もっと簡単に離婚とかでいいんじゃね
898名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 21:33:31 ID:REi9JXCh
素行が悪いけど、貞操観念はキチンとしてるビッチが一番好きだ
このスレ向けではなさそうだが
899名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 22:04:04 ID:XIXULPSX
貞操観念かしっかりしてるビッチって最早矛盾してないか
900名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 22:21:00 ID:R4ZCC3d2
反対に貞操観念はめちゃくちゃだけど素行はしっかりなビッチが好きだな
頭の良い優等生系でS入ってるとなお良い
901名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 02:02:26 ID:TBphqJd9
>>899
イメージ的にはビッチってよりスイーツ脳ってやつかもね
902名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 22:19:45 ID:MpWTxCVb
貞操観念しっかりしてるビッチ

つまり不良
903名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 20:44:14 ID:G1w+FImC
ビッチビッチジャップジャップランランラン。
904名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 21:24:09 ID:bea2NUPx
いろんな男と付き合ってきたけどフェラまでしか許さない
逆に言えばフェラならさくっとヤっちゃう

そんな不良娘はビッチか否か
905名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 21:39:53 ID:G4NnpodU
ビッチキャラに処女性求める意味がわからん
906名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 00:18:36 ID:fCe+IiT7
職人さんには自分が思うビッチを書いてもらえばいいよ
ビッチ論なんてやってたら某属性スレみたく荒れるから
907名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 02:10:23 ID:3sq3JIfB
そんなことよりセーフティフレンドマダー
908<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:49:16 ID:63DKavEW
第7話

=後編=

「先輩、どこだろう……?」

昼になり、僕が先輩から呼び出されたのは意外な場所だった。
僕の学校は丘の上に建っているけど、滅多に使われない学校の裏門を出ると、その先には展望台や神社へ続く道がある。
先輩の送ってきたメールは、単純に目印になる物が書かれているだけだった。
それを手がかりにほとんど森の中といった状態の小道を行く。
着いた場所は……

「郷土資料館?」

そこは一見すると古い洋館だった。
そういえば、学校の正門前には周辺地図の看板が立っていた。
確か、元々は今の位置に新設した際に取り壊すはずだった旧校舎を、
歴史的な価値があることと卒業生の要望などによって一部そのままの状態にしてあるというのを読んだ覚えがある。
大正時代だったか昭和初期だったかの建物なので、校舎というより洋館に見えるのも無理はない。
ただそのままにしておくわけにはいかないので、普段は無人の郷土資料館として、古いこの街の写真や資料などを展示している。
日に二度、町内会だか公民館だかの管理担当者が解錠と施錠に来る以外はほとんど人気はないのだろう、
その深閑とした雰囲気は拭いようがないものだった。

「せんぱーい……?」

僕は恐る恐る、扉を開いた。
ギイ、と年季を感じさせる重々しい音を立てて扉が開いた。

「お帰りなさいませ御主人様ー!」
「うわっ!?」

いきなりの元気な声に、僕は思わず驚きのあまり尻餅をついてしまった。

「キャハハ、何驚いてんですかぁ? 御主人様」
「せ、先輩」

そこには相変わらずのエロメイド姿の先輩がいた。
909<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:50:00 ID:63DKavEW
「おそーい、食後のコーヒー冷めちゃうよー?」
「ご、ごめんごめん」

どうやら昼飯後の一杯まで用意してくれていたようだ。
先輩が促すように資料館の中へと歩き出したので、僕もその後に続く。
資料館としての高級感を出すためか、本来はなかったのであろう赤い絨毯がしかれた廊下や階段は、
内装まで大正時代の館のようだった。
廊下には所々、聞いたこともない郷土出身の芸術家の絵や壺などが飾られている。
先輩は二階へと続く階段を上っていく。
その後ろを歩く僕には、学校の階段同様にそのミニスカートからセクシーな下着が丸見えだ。
先輩はそれを分かっているのか、軽く振り返ってチロリと紅い唇を舐めて微笑んだ。

「そういえば奈月先輩、この風景と先輩の格好、凄いマッチしますね」
「偶然なんだけどね、ここなら文化祭中でも人気ないから」

そんなことを話しながら、先輩は二階の奥にあるドアを開けた。
中を見ると、執務室とベッドルームを足して二で割ったような内装の部屋があった。
ベッドはダブルベッドほどもあり、しかも天蓋付きの本格的なものだ。

「あれ、なんでこんな場所にベッドが……」
「むかーしの商人さん家に置かれてた外国のベッドなんだって」

先輩は興味もなさげに部屋中央の瀟洒なテーブルに置かれたコーヒーを手に取ろうとする。
タイムスリップしたような洋風の内装に不釣り合いな安っぽい紙カップのコーヒーだった。
僕はふと背後のドアにちゃんと内カギがついているのに気付いた。
すかさずそれに手を伸ばし、カギをかける。

「え?」

カチャリという音に先輩も気付いたのが、カップを手に取る前に立ち止まる。
僕はきょとんとしている先輩におもむろに歩み寄ると、そのまま両手を拡げ、彼女を抱き寄せた。
910<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:50:43 ID:63DKavEW
「んっ……!?」

先輩の柔らかで淫らな唇を奪う。
舌を入れると、そこはさすがに先輩だけあってすんなりと受け入れて絡め取ってくれる。

「あむ……んふ……ちゅっ……くちゅっ……」

今日メイド姿の先輩を見たときから、一週間忙しさの中で忘れられ、押さえられていた欲望が渦を巻いていた。
それを増幅するかのような先輩の誘惑に、僕はもう我慢ができなくなっている。
あんなコーヒーなんかより、今は先輩が欲しくてたまらないのだ。

「ぁう……」

長いキスを終え、先輩が上気した顔で僕を見る。
その顔は一目見るだけで彼女が発情していることが理解できるほどに扇情的なものだった。
更に、心地よさとこそばゆい快感が股間からわき上がってくる。
先輩が痛いほどに勃起した僕のものを服の上からさすっているのだ。
シルク生地なのだろうか、繊細な刺繍の入った手袋越しに股間をさすられ、握られるのは焦らされるような快楽だった。

「ふふ……御主人様、ご奉仕するね」

彼女は僕の突然の行為に異を唱えることもなく、むしろそれを歓迎しているかのように笑って跪く。
僕の制服のベルトを外し、下半身を露出させる。
そして、屹立する男性器にうっとりとした視線を浴びせた。

「奈月先輩……」
「あん、メイド相手に先輩はないでしょ御主人様?」
「な、奈月……」
「はい、御主人様」

先輩は挑発的に媚びた表情を浮かべる。
僕は先輩が望んでいるであろうことを口走る。

「ご奉仕、して」
「はい……」

メイド服姿で男のペニスを前に跪き、その性的奉仕を行う先輩は、今までで一番非現実的で、そして淫らだった。
先輩も一週間という時間で性的欲求が溜まっているのだろうか。
そんなことを考えていると、彼女が紅い舌先を裏筋へと這わせた。

「くぉ……!?」
「ぇろん……ちゅっ……ちゅるる……」

彼女は念入りに裏筋から亀頭、そして再び根本、更には玉袋まで舌で愛撫していく。
その舌技は、人間の舌というより、まるで軟体生物に犯されているかのようでさえある。

「んっ……んっ……じゅる……御主人様、気持ちいいですか?」

いちもの先輩と違い、メイドという役を演じているのか、あるいはコスチュームとシチエーションで乗っているのか、
彼女の口調は性格と反対の丁寧なものだった。
そのギャップがよりそそる。男のツボの押さえ方を知り尽くしているのではないかと思うほどだった。

「ああ……気持ち良すぎて、もう出ちゃいそうだ」
「あはぁ……ありがとうございます……」
「こっちにおいで」

僕は彼女をベッドへと誘った。
隣の注意書きを書いた看板に『腰掛けるのは構いませんが横にならないでください』と書いてあるのを見つけたが、
そんなものは無視する。
自分が不道徳な行いをしているのは分かるが、ほとんど利用されないベッドなのだからそう気にはならない。
911<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:51:25 ID:63DKavEW
「ぁん……」

彼女がその火照った身体を横にする。
その姿に、むしろ、この淫らなメイドにはこの天蓋付きのベッドはお似合いだとさえ思う。

「奈月……綺麗だ」

僕は率直にそう彼女に覆い被さりながら耳元で囁く。
嘘でも世辞でもなかった。本当に綺麗だと思ったからだ。
このメイドを独占しているのは、今自分一人であることも興奮の原因だった。
メイド喫茶ではメイドを独占し、こうして行為に及ぶことなどできるはずもないのだから。

「冬間く……いえ、御主人様……嬉しいです」
「ちゅっ」

僕は再び先輩に口づけすると、彼女の秘部にそっと手を伸ばした。

「あっ……」

スカートの奥へ手を入れ、優しくパンティの上からなぞってやる。
ピクンと彼女の身体が跳ね、ベッドが軽く軋む。
自分の欲望も高まっていたが、今はとにかく彼女のことが愛しかった。

「あ……あん……ぁはぁ……」
「奈月……カワイイよ」
「御主人様ぁ……」

先輩は愛撫されている間、何度も僕にキスを求めてきた。
そのキスが性的な興奮だけではないものだと、今は思いたかった。
少しでも、僕は彼女にとって特別な存在でいたかった。
こんな姿を見せるのは自分一人だと。

「はぁっはぁっ、奈月……」
「やぁ……ダメぇ……」

十分に濡れてきたのを見計らい、下着を汚さないように一気に脱がしていく。
すると、股間から一筋の銀色の糸が伝った。
それが彼女の愛液が糸を引いたものであるのはすぐに理解できる。
彼女の身体はもう挿入準備を終え、僕のペニスを望んでいた。
そう自惚れても間違いではないように思える乱れ方だった。
912<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:52:09 ID:63DKavEW
「こんなエッチなメイドにはお仕置きが必要だね」
「は、はい……御主人様に、もっとお仕置きして欲しいですぅ……」

被虐的な快感を抱いているのか、彼女は潤んだ瞳で僕に哀願する。
その瞳さえ、僕には魅力的に見えた。
そっとキスをして、耳元で囁く。

「……じゃあ、いつものアレを」
「え?」

先輩が一瞬はっと息を飲んだ。
素に戻り、僕は先輩と顔を見合わせる。

「どうしたの?」
「……冬間くん、ひょっとしてゴム持ってきてない?」
「う、うん。文化祭でまさかするとは思ってなかったし……」
「あ、アタシもメイド服のまま抜けて来たから持ってないよ」
「え!?」

盛り上がるだけ盛り上がった所で、いきなり頭から冷や水を浴びせかけられた気分だった。
こんなギンギンにそそり立ち、先走りを滴らせている状態で、セックスに必須のものがないときた。
ぐるぐると頭の中で今この状況を打開し、先輩と本番まで漕ぎ着ける選択肢を必死になって考える。
男の悲しい性だった。

「……ここの最寄りコンビニってどこでしたっけ?」

僕は自分の不手際で先輩までも待たせてしまうことに焦り、そんなナンセンスな言葉をつい口にしてしまう。

「んー……あのさ」
「うん?」

先輩は僕の頬をそっと両手で撫でた。
口元には微笑が浮かんでいる。
913<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:52:52 ID:63DKavEW
「せっかく盛り上がってるんだし、ナマでしちゃおっか?」
「えぇっ!?」

僕は飛び上がりそうになった。
先輩が絶対に口にしないであろう言葉だったからだ。
初めて出会ってから今まで、かなりの回数を先輩と経験してきたが、
その最後の一線だけは越えないできていた。
先輩が最初に言った、セックスフレンドとしての節度だったからだ。
今日の先輩は一体どうしてしまったのだろう?

「だ、ダメですよそんなっ」
「どうして? アタシがいいって言ってるんだよ?」
「そ、そういう問題じゃ……」
「ビョーキが心配?」
「そんなことはないですけど、その……先輩の方が」
「一回くらい平気よぉ、それに……」

先輩はきゅっと僕のペニスを握り、その硬さを確かめるように軽く上下にしごいた。

「あぅっ!?」
「アタシも欲しいの、御主人様のを、ナ・マ・で!」
「や、やっぱりダメですよ……こ、恋人同士でもないのに」

僕が苦し紛れにそう言うと、先輩が目をはっと見開いた。
一瞬のことだったが、それが酷く悲しそうな顔に見えたのは気のせいだろうか。

「冬間くん、恋人同士ならナマでバンバンやっちゃうんだ?」
「そ、そういうわけじゃないですけど」
「じゃあさ、アタシが今だけ恋人になったげるから、ナマでちょうだい」
「は、はぁ!?」

先輩はどこかヤケになっているように頬を膨らませて僕に迫った。
まるで聞き分けのない子供のようだ。

「だってさ、セフレより彼女の方が安全度低いっておかしくなーい?」
「そ、それは言葉の綾というもので……ぼ、僕は奈月先輩のことを心配してるんですよ」

と、先輩が僕の腰にその美脚を絡め、首に腕を回して抱きついてきた。
914<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:55:08 ID:63DKavEW
「……普通、セフレにそこまで心配なんかしないよ」
「わ、ちょっと奈月先輩……」
「そんなアタシのこと心配してくれる人なんて今までいなかったもん」
「……先輩?」

今日の先輩は少し様子が変だ。その思いが確信へと変わる。

「一週間もほっといてこんなのないよ……アタシ、寂しかったんだから」
「奈月先輩……」
「街歩いててナンパされたりもしたんだよ?
でもアタシ、冬間くんとしかしたくなかったから全部断っちゃった。
ナマだって、元彼でも許したことなかったけど、冬間くんならいいやって思うし……」

先輩の耳元で聞こえる声は、心なしか震えていた。
僕はきゅっと控えめに抱きついてくる彼女をそっとこちらからも抱きしめる。

「アタシ、きっと冬間くんとだけ本気でエッチできるんだ。だから、対等で安全な友達ダメ……それじゃ気持ちよくない」

先輩が強引にキスしてくる。
僕は先輩の独白に頭がまともに機能せず、ただその行為を受け入れるしかない。

「冬間くん……好きだよ」

先輩は甘えるようにキスしてきた。

「……本当に、いいですか?」

僕は考えるのを諦め、それだけをなんとか口から絞り出す。
先輩はクスっと笑うと、目を伏せるように肯定した。

「うん……、ちょうだい」

今できること、今したいことだけを考えることにしよう。
僕はそう決め、先輩の膣口に自分のペニスをあてがった。
コンドームを着けるのが習慣化していたので、先輩のピンク色の膣肉に先端が触れるだけでも感触が違うのに気付く。
915<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:55:59 ID:63DKavEW
「ん……」

先輩は挿入の感覚に顔をそらし、恍惚とした表情で息を殺す。
僕はゆっくりと、そのまま熱く、そして無防備な彼女の膣内へとインサートしていく。
愛液と先走りの液が十分に円滑油の役割を果たし、なんの抵抗感もなく、彼女の中へと収まっていく。

「あ……あぁ……」
「緊張してる?」
「う、うん……だって、冬間くんとナマでするの、初めてだし」
「僕もだよ」

快楽だけでなく、自分を受け入れてくれている腕の中の一人の異性として、愛しさをもって唇を重ねる。
まるで童貞と処女の初体験のように、今の僕らの行為は初々しく思えた。

「凄い……奈月の中、ヌルヌルしてて、熱いよ」
「冬間くんのも、すごく固いよ」

僕はゆっくりと腰を動かし始めた。
互いに何も介さない、直に触れあう感覚を十分に味わうためだ。

「あ……あ……あ……」

先輩は淑女のように控えめな喘ぎ声を漏らす。
メイド服姿のままだから、その光景はとても可愛らしかった。
僕らはいつも裸で重なりあっていたが、今ははだけていながらも服を着た状態だ。
しかし、最も敏感な結合部には、何も身につけていない。
突き上げる度に、彼女の膣壁は男を逃がすまいと絡みついてくる。
その快楽を前に、一週間分の欲望が今か今かとその時を待ちかまえ始める。

「あ……あっ……ひぅ! あっ! あっ! アアッ!」

彼女の上着をたくし上げ、その豊かな乳房を揉みし抱き、乳首を舌先を転がす。
その間にも、徐々に腰の動きは早まっていく。
最初から暴発寸前の状態で耐えてきたのだから、ここまで保ったのが奇跡のようなものだ。
乱暴に腰を打ち付ける乾いた音が部屋に響く。
916<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:56:42 ID:63DKavEW
「おっ……おぉっ! もう出そうだ!」
「あひぃっ! 出ひてぇっ! どこでもいいからぁっ!」

彼女が乳房を自身で揉みながら、快感に素直に溺れてそう叫ぶ。
僕もそんな彼女の熱情に流されるように、最高潮へと達していく中で彼女に告げる。

「出すよ奈月、このまま中に出すからね!」
「んぁあ!? ナカ?! ナマで中に出すのぉ!? 御主人様ぁ!」
「そうだよ! エッチなメイドさんにはお仕置きが必要だからね!」
「んひぃぃ! お仕置きしてくださいぃぃ! エッチな奈月にお仕置き中出ししてくださいぃぃーっ!」
「くぉおっ! 奈月ぃー!」

最後の一突きを彼女の最奥へと打ち込み、僕はそのまま硬直した。

「あ……」

彼女が一瞬の静寂に舌を出しながら喘いだ次の瞬間

ドビュビュッ!!

「あはぁあああイックぅーーーーっ!?」

無防備な彼女の子宮口へ向けて、僕は一週間分の濃精が発射される。
目の前が真っ白になるような絶頂感と、今自分がしていることの背徳性に、
僕はまるで彼女を犯しているかのように覆い被さり、彼女の腰を固定して射精を続ける。

「あっああっ……出てるぅ……一週間分のせぇしぃ……」
「全部注ぎ込むからね」

ガクガクと腰を震わせながら、僕は今までの人生で一番長い射精を続けた。
今自分の遺伝子を異性が受け止めるという、僕にとって禁忌の行いをしているという感覚が、なぜかたまらなく興奮を誘う。
どれくらいの時間射精を続けていたか分からなくなるほど、僕は先輩の膣内へと注ぎ込んでいた。

<続く>
917名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 17:58:36 ID:63DKavEW
次回最終回の予定
ちなみに郷土資料館エッチの元ネタは自分の友達だったりします
文化祭ではなくホテルに行く金がなかったんだとか……
918名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 18:12:16 ID:c1N9a2i4
>>917
いつもいつも本当にGJです

次で最終回か・・・全裸待機だな
919名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 18:18:34 ID:GljmMt+t
うおおおおお、GJすぎる!
最終回楽しみにしてます!

ニヤニヤ出来る展開を期待
920名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 20:09:34 ID:vHAeFeYB
ご主人様に親子丼という16年後のオチが見えた俺は溜まっているんだろう…
921名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 15:31:00 ID:fsuiv6t8
かわええなあ
922名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 01:12:37 ID:lgyiBwAu
ええいっ続きはまだか!
923名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 08:26:12 ID:VG559zSP
みんなはビッチ→一途な女の子をSSとして読む場合、ビッチ時代の描写(エロシーン)ってどのくらい欲しい?
例えば、全部で5話あったとして、
ビッチ→ビッチ→ビッチ→葛藤→一途
とか、
(ビッチ設定のみで描写無し)葛藤→葛藤→葛藤→一途→一途(超甘の後日談)みたいな。
参考程度に教えてよ。
924名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 09:06:53 ID:7mc+3fgR
俺は
ビッチ→ビッチ→ビッチ→ビッチ→葛藤+一途
とか
ビッチ→葛藤→一途〜 とかみたいに
ビッチ成分が一滴でも入っていたら美味しくいただけるぜ
925名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 14:35:47 ID:adXzK7gs
なんでも美味しくいただきます

というわけで腹黒さんの健康回復を祈る(-人-)
926名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 20:28:00 ID:SjgIEJLZ
やっぱビッチが一途になるっていうギャップに萌えるわけだから
ビッチの描写が多い方が後のデレが映える
しかしあまりにビッチ描写が過ぎると引いてしまうから
ビッチ7、一途3ぐらいが丁度いいんじゃね
927腹黒の人:2009/12/10(木) 16:23:52 ID:jHuB5AQ7
お久しぶりです
風邪治らないと思ってたら、肺炎でした
一人暮らしって怖いですね

7レスほどお借りします
928腹黒ビッチ 3章(中) 1:2009/12/10(木) 16:27:44 ID:jHuB5AQ7
「ありがとうございましたぁー、またお待ちしてますねー」
 本日三人目の指名をこなし、お見送りまでしっかりにっこり。長い時間粘ってくれ
たもので、この客で今日は店じまいだ。というわけで、もう笑顔は作らなくていい。
 ひくっと笑顔が崩れ、脱力感そのままに控室に向かう。
「あ、おっつかれぇ、レイちゃあん」
「おつかれさまですーミリちゃーん」
 わざとらしく呼び合う佳奈子と私。レイが私でミリが佳奈子。にっこにっこして二
人で見つめあって、お互いはぁっとため息をつく。
「あー尾道さんうざかったぁー」
「湯浅社長、相変わらずのヘビースメル……」
「ちょーお尻触られたよあのエロ親父ー」
「尾道様いいじゃない。ちょっと手がおイタするだけで」
「そんなこと言ったら湯浅さんいいじゃん!紳士じゃん!」
「はいはいだらけてるところ悪いけどねー、他の嬢が待ってるからやめろよー」
 ぼわん。せっかく盛った髪を、上から叩かれる。見上げると、ヒゲ面の野崎チー
フ。
「ちょっ、チーフ!なにするんですか!」
「もう終わったからいいだろ。オラ、はよ着替えろ」
「はいはいー」
 疲れた体とさすがにぽわぽわと酔った脳みそをなんとか動かし、ロッカーに向か
う。佳奈子はしゃきしゃきと着替えを終わらせ、ばたばたと無駄に手を動かして私
を待っている。まったく、ザルは得だ。そんな佳奈子を見て、瑠奈さんがくすくすと
笑う。
「レイ、ミリ、今日ご飯行く?」
「どーする、りか」
「帰る」
「りかはいっつもそればっかだねぇ。たまには私と親交を深めようとは思わんのか」
「今更佳奈子と何を深めろと……」
「これ以上深めたらレズだね」
 そう言いつつ、私が帰る時はつまんないからと一緒に帰ってしまう。佳奈子こそ
他の嬢との親交を深めなくていいのか。
「レイ、来ない?たまに来てくれないと私も寂しいなぁ」
 癒し系の瑠奈さんにそう言われると、私でもついはい〜と言ってしまいそうにな
る。これで男を落としてきたのか!と問い詰めたくなるくらいの、強烈な癒しオーラ。
今や店のナンバー1だ。
「すいません、明日の予習するんで」
「大学生って大変ねー」
「大学生が全部りかみたいなのだと思われると、私の立場がないんだけど」
 瑠奈さんは、ものすごく残念そうにほほ笑む。申し訳ないとは思うんだけど、勉
強時間をこれ以上削るのは明日の負担になる。
「それじゃ、二人とも今度のお休み前は行こうね。約束」
「あ、はい」
「じゃあ、おやすみー」
 二人で手を振って瑠奈さんを見送る。ほわーんと振ってる手に、はっと我に返る。
「し、しまった!つい約束しちゃった!!」
「やられたねー、りか。さすが瑠奈さんパワー」
「だって瑠奈さん、ウサギのような目でお願いしてくるんだもん」
「そりゃ仕方ないよ、だって瑠奈さんさぁ……」
「おーいお前らー、さっさと帰るぞー」
 扉の向こうの野崎チーフの声に、佳奈子と二人で揃って声を返す。
「はーい!」
 カバンを持ち、立ち上がる。そして佳奈子と二人で視線を交わす。
「瑠奈さんに申し訳ないよねぇ」
「瑠奈さんのラブラブ光線は、あからさまだからねぇ」
 はぁっとため息をつきつつ、控室を出た。野崎チーフは私達の方面の送迎担当で、
瑠奈さんとは真反対なのだ。私達が食事に行くと大抵チーフも一緒に来るので、瑠
奈さんが私達を誘うのも仕方ない。野崎チーフに想いを寄せる瑠奈さんには悪いん
だけど、こっちも事情があるのでそう毎回食事に行くわけにはいかない。
929腹黒ビッチ 3章(中) 2:2009/12/10(木) 16:29:03 ID:jHuB5AQ7
 最初の方は五人ほど乗ってるけど、最終的には私と佳奈子と池内チーフの三人に
なるのが常。だけど、
「んじゃねー、ありがとございましたー」
「おう、またな」
「じゃあね、佳奈子」
 それも佳奈子を先に降ろすから、最後は私とチーフだけ。
「有華ー、どっか飯でも行くかー」
「やです」
「まあ、そう言うな」
「こっちは忙しいんです。明日遅刻しちゃう」
「ん、責任取って送ってってやる」
「い・ら・な・い。さっさと帰って。ママに言いつけますよ」
 信号待ちを見計らって、野崎チーフはミラー越しにこちらを見つめる。その視線の、
熱っぽさ。
「この時間までやってるカレーうどん屋が美味しいんだってよ」
「や、だ。てかマジで早くアパート送って」
「泊まらせてくれるんならいいぞ」
「だったら今すぐおります。ありがとうございました。じゃあまた明日」
「おいおいおいおい、信号青だから!待て、ちゃんと送る」
 これ見よがしにため息をついてやる。
「はー、有華は難攻不落だな」
 このうさんくさい軽い男の、一体どこがいいんだ。佳奈子は渋くてカッコイイよね
と言ってるけど、私にはこうアグレッシブで濃い人はもうお腹いっぱいだ。
「有華、大丈夫か」
「何がですか」
「体調とか」
「オカゲサマデ元気デス」
「これは真面目な話。心配してるんだよ」
「大丈夫です。もうすぐテスト終わりますから」
「そうか」
 ほっとするチーフに、居心地が悪い。大体、他の嬢には源氏名で呼ぶくせに、なん
で本名で呼ぶのか。チーフは「ミリのが移った」っていうけど、佳奈子が呼ぶのは
昔っから「りか」だ。中学の入学式で、私の名前と顔見て「あんたリカちゃん人形み
たいだね」と言ったのが由来で。
「本当に無理すんなよ。辛かったら俺頼ればいいんだからな」
「はいはい」
 ムートンコートを着ていても外は寒い。特に首筋。ワゴン車の扉を勢いよく閉める。
視界の端にひらひらと、チーフが手を振るのが見えるけど答えずにアパートの階段
を昇った。車のエンジン音は消えない。急いで鍵を開けて、部屋に逃げ込む。薄い扉
から、やっと車が遠ざかる音が聞こえた。
 受け入れるつもりなんてないから、冷たくしてるつもりだ。なのに、なんでこの人
は諦めないのか。もう一年半もこんな調子で、いい加減疲れてきてる。でもママは
私が心配なのと、野崎チーフを気に入ってるのとで、絶対に送迎のローテーション
を変えてくれない。
 さっさと瑠奈さんがチーフ落としてくれないかな。そしたらローテーションも変わる
し、一石二鳥なんだけどなー。
930腹黒ビッチ 3章(中) 3:2009/12/10(木) 16:30:20 ID:jHuB5AQ7
 テキトーに大学に行って合コンで男引っ掛けようなんて思ってたのに、今や司法試
験を受けようとしてるなんて。自分でも信じられない。
 動機は不純だ。何も関わりが無いより、ほんの少しでも克哉君との糸を繋げていた
いから。ただそれだけの理由。それをきっかけに、キャリアウーマン目指そうかなと
か、弁護士ってお金儲けてそうだしなとか、企業弁護士にでもなってやろうかなとか
色々考えたりもする。だけどそんなの全部、後付けの理由だ。
 諦めはついている。嫌われているし、復縁なんてありえない。
 でも、少しでも接点が欲しかった。遠くから少しだけでも見るだけで、胸がときめ
く。盗み見る自分にあきれるけど。
 苦しくて辛いのはどこに行っても変わらない。だったら離れるより何倍も苦しくて
も、近くでこっそり好きでいようと腹をくくった。
 幸い、勉強に打ち込んでいれば、何も考えずに済む。その時間だけが癒しだった。
二時に寝て、七時に起きる。一時間で支度して、大学へ。一コマ目の民法総則の授
業後、教室を出ていこうとすると、和田教授に呼び止められた。
「今日、所属ゼミ発表だろう。空いてる時にまた面接するから、伝達しといてくれ。
空いてる時間ならいつでも構わん」
 感情表現の乏しい和田教授が、いつものように淡々とした口調で言う。はあ、と言っ
ても、自分以外のメンバーは誰も知らない。
「じゃあ先生、私はいつにしますか」
「君の面接なんて今更やっても意味無いだろう」
「それもそうですね」
 用件だけ終わると、雑談をするような人でもないので、和田教授は講義室をさっさ
と出て行った。

 掲示板近くには、学生が溢れかえっている。そこをかき分けて入って行くのが嫌で、
しばらく人の波が消えるのを待つ。だけど午後の授業前で混み合う廊下は、人が減
るどころか増えるばかりだ。遠巻きにぼんやりと、すれ違う人たちを見ていると、見覚
えのある集団が外からやってきた。
 克哉君、だ。
 彼は私に気づいていないらしく、友達とわいわい言いながら掲示板を見ていた。
克哉君はどのゼミなんだろうな。一緒だったらいいのにな。まともに喋れることなん
て無いんだろうし、そんな資格ないけど。
 意を決して、掲示板に向かった。克哉君の近くに行くと思うと、胸がドキドキする。
でも隣に立つ勇気はないから、ちょっと後ろから掲示板を見ようとした。男ばかりで
壁になっていて、何も見えない。でもそんなことどうでもいい。ドキドキしながら、
克哉君の背中を見ていた。……我ながら気持ち悪い。
 そんなことしてたら、集団の一人がこちらに気づいて振り返った。細目の男とばっ
ちり視線が合った。
「あ、斎藤さん」
 あんたなんで私の名前知ってるのー!克哉君が気付いちゃうじゃないバカー!!
「掲示板、見てもいい?」
 ごめんなさい!今どきます!と、細目男はざざざっと大げさに場所をどいた。い
や、私こそ本当にごめんなさい。愛想なくてごめんなさい。がっちがちに緊張しなが
ら、掲示板を見る。えっと、何だっけ。そうそう、ゼミをちゃんと覚えとかなきゃい
けないんだった。だけど文字がきちんと頭に入らない。神田?村瀬?葉山?誰それ。
一宮。ああ、それは分かる。一宮。一宮。
 お な じ ゼ ミ !
 うわーどうしよー!!やったー!同じゼミだー!同じ大学受かったって分かった
時くらい嬉しいー!
 でも克哉君は、嫌なんだろうな。少しだけ克哉君を見ると、視線をそらして、苦り
切った顔をしていた。
 ああ、やっぱりな。ぎゅっとカバンを持つ手に力がこもる。分かってる。私が嫌わ
れてるってこと。私が近くにいるだけで迷惑だってこと。
 少しでも近寄りたいって思うのと同じくらい、これ以上嫌われるのは辛い。踵を返
して、掲示板から離れた。
931腹黒ビッチ 3章(中) 4:2009/12/10(木) 16:32:12 ID:jHuB5AQ7
 思っていた通り、というか思っていた以上に、新学期は辛いものになった。体力的
な意味じゃない。
 勘弁してよと思うのは、ゼミの時間。最近ではゼミ以外は図書館にしか行っていな
いのに、それでも大学に行くのが憂鬱になるくらい参っている。
 ゼミに行くと、必ずコの字型の席につかされる。おかげで、克哉君の姿が絶対に視
界に入ってしまう。それだけならむしろ嬉しい。だけど、克哉君の隣には、いつも同
じ人がいた。
 別所愛美。バラ色の頬と唇、栗色に染めた髪をくるくると遊ばせて、にっこりと砂
糖菓子のように笑う、フランス人形みたいな女の子。屈託がなくて、素直で、明るく
て。私みたいにガリガリ図書室で勉強してるようなのにも、物怖じせずに話しかけて
くるような、とっても「いい子」。しかも巨乳。
 別所さんが克哉君は、誰が見てもお似合いだった。背が高くて、顔もクセがなく
さっぱりしてて、嫌味が無く話題も豊富で、優しげな雰囲気を醸し出している克哉君
に、別所さんのような甘くてふわふわした空気はよく溶け込んだ。ゼミの誰もが、い
つくっつくのか、むしろなぜくっつかないのか、いつも注目しているようだった。
 ゼミに行く度に、悔しくてたまらない。このまま、いつか克哉君と別所さんは付き
合うだろう。だって克哉君、惚れっぽいし。女に免疫なかった分、話しかけられるだ
けで意識しちゃう人なのだ。それを利用した私が言ってるんだから間違いない。
 悔しいと思うと同時に、それが克哉君の為だとも思う。別所さんみたいな可愛い上
に、私と違って性格もいい子と付き合うのが、幸せに決まってる。
 克哉君は、私を見る度に眉を寄せる。私を嫌いだと言うように睨みつける。そして
、苦しい、と訴えかける。
 私のせいで克哉君についた傷を目の当たりにするたびに、謝りたくなる。だけど私
が謝っても、克哉君はあのことを思い出すだけだ。
 克哉君には、私のことを忘れてほしい。忘れて、幸せになってほしい。克哉君の辛
そうな顔を見るくらいなら、どれだけ私が辛くてもいい。
 その為なら、克哉君と別所さんが付き合ったっていい。私のことを忘れてくれるな
ら、なんでもいい。私が傷つけられてもいい。なんだってする。
 別所さんでも誰でもいいから、克哉君を幸せにしてほしい。
 私は遠くで見てるだけでいい。我慢するのは、昔から慣れてるから。

 拷問のような葛藤の時間を終え、去ろうとする私を、教授が呼びとめた。
「斎藤さん、ちょっと」
「あ、はい」
「君、今日発表だろう。どうだったんだ」
「……あ!」
 正直ゼミのことで精いっぱいで、忘れていた。大事な大事な、司法試験の短答式の
合格発表を。
「今から、確認してきます」
「どうせなら研究室のパソコンを使いなさい」
「あ、はい」
 正直、受かっている気がしない。数問さっぱり分からなかった所もあるし。今年は練
習とはいえ、自分の番号が載っていないのをわざわざ確認するのは憂鬱だ。教授の
後をついていこうとすると、ちょうど教室を出ていく克哉君と別所さんが目に入る。仲
よさげに、この後どこでデートしようかなんて言っている。
 これでいいんだ。そう自分に言い聞かせたけど、やっぱり辛い。
932腹黒ビッチ 3章(中) 5:2009/12/10(木) 16:33:01 ID:jHuB5AQ7
 正直このままパソコンの前で倒れこんでしまいたい位の気持ちだったけど、教授に
ちゃんと結果を言わなきゃいけない。のろのろと指を動かして、法務省のホームペー
ジへ。旧司法試験 短答式合格発表の表示を、暗い気持ちでクリックする。
 どうせ無いんだろうなー。いいんだよ、別に来年受かれば。ふんだ。いじけながら、
自分の番号のあたりを見る。
「―――あった」
 あんなに手ごたえ無いテストなんて、生まれて初めてだったのに。ゼミの上級生が
「何があったのー?」とか言いながら勝手にパソコンをのぞき込んでくる。
「あった、って、まさか短答式受かったの?」
「受かりました」
「うわーっ、おめでとー!すごいじゃん!」
「ありがとうございます」
 肩つかまれて揺さぶられてるけど、心ここにあらず。睡眠時間三時間に削ってがん
ばった甲斐があった。バイトを週一に減らした勇気は報われた。ハイリスク・ハイリ
ターンというのはまさにこのことだ。
 私より名前も知らない先輩の方が騒いでいて、その場にいた人たちがみんな騒ぎ
を聞きつけてパソコンの周りに集まり出した。
「三年で受かるなんて、何年振りだろうね」
「もうみんな院進前提だからなぁ。でも去年も和田ゼミから旧試の現役合格出たらし
いよ」
「いやー、でもさすが斎藤さん。やっぱ出来が違うわー」
 受験番号を見直しても、やっぱり自分の番号だ。ほっと密かに息をつく。和田教授
に報告しなきゃ。
「教授のとこ、行ってきます」
 人だかりを抜けて、向かいの和田教授の部屋をノックする。
「失礼します」
「斎藤さんか、待ってたよ」
 何か書きものをしている教授が、ちらりとこちらに視線を移す。
「受かってました」
「そうか」
 頷いて、一旦ペンを置く。まだ少し夢心地だった私は、和田教授の視線にぴしりと
背筋を正す。
「論文試験は一か月後だろう」
「はい」
「これから毎日、過去問を一問ずつ解いて私に見せなさい。メールでもいい」
「はい」
「それじゃあ、行っていい」
「はい、失礼します」
933腹黒ビッチ 3章(中) 6:2009/12/10(木) 16:34:03 ID:jHuB5AQ7
 数日後、ちょうど佳奈子と出勤が重なった。二人目の指名を終えて控室に戻ると、
佳奈子はメール営業に精を出している。いつものように隣に座って私も携帯を取り出
すと、佳奈子が思い出したように声をかけてきた。
「りかー、試験どうだったん?」
「は?なにが?」
「名前覚えてないんだけど、なんかベンゴシなるやつー」
「司法試験ね」
「受かったん?」
「受かったけど、短答式だけ。まだまだあるの」
「よくわかんないけど、とりあえずおめでとー」
「ありがと」
「今まで見たこと無いくらい勉強してたし、すっげームズいんでしょ?」
「うん、受かると思ってなかった」
「りかがそう言うくらいだから、超ムズいんだね。んじゃ、ちょーおめでとー」
 そう、超おめでたいはずなのだ。なのに、あまり現実味が無い。
「なんでりか嬉しそうじゃないの」
「はは、克哉君に彼女できたからかな」
 ぽつりと克哉君の名前を言うと、携帯の画面から顔を上げなくても佳奈子が顔を
歪めているのが想像できた。
「へー。それマジで?」
「うん、多分そうだと思う」
「……りかさ、一宮のことなんて忘れちゃえよ」
「無理、かな」
「努力してみろっつの」
「克哉君ほどの人いないよ」
 ははっと、自嘲の笑みがこぼれる。
「なんか、私ダメなまんまだね」
「……りかは、ダメじゃないよ」
 真面目に、諭すように佳奈子が語りかける。
「りかがそう思ってるだけだよ。一宮のことさえ忘れたら、楽になるんだよ」
「忘れられないよ」
「いい加減に目ぇ覚ましなよ、りかは何も悪いことしてないじゃん!」
 びりびりと、部屋全体が震えるくらいの大声だった。びっくりして顔を上げる。他
の嬢も何事かとこちらを見ていた。
「浮気した?金せびった?プレゼントねだった?そんなの一つもしてないじゃん!手
作りのマフラーまであげるんだよ。そんなマメなこと、私一つも彼氏にしてあげたこ
とないよ」
「でも、きっかけが最悪でしょ」
「それだって、りかは何も言わなかったのに!何にも言わないりかより、あいつは、
知らない女の一言を信じるんだよ。言い訳一つも聞かないなんて、サイテーだ!」
 佳奈子は延々と克哉君の非を連ねていく。克哉君にも、悪いとこはあったかもしれ
ない。だけど私が圧倒的に卑怯だということに変わりはない。
 結局、誰が私を許したって、克哉君が私を許してくれなければ意味がない。克哉君
の傷の深さを見れば、そんなの不可能なんだっていつも思い知らされる。
「ありがと、佳奈子」
「感謝するより、早く元気になれ」
「うん、佳奈子の声聞いてたら元気になってきた」
 それは決して嘘じゃない。笑ってみせると、佳奈子は顔を歪めつつ、はぁっとため
息をついた。
「今日もうピーク過ぎたし、りかんち行く?話聞くよ」
「んーん。課題たまってるから。勉強しなきゃ」
「無理すんなよ」
「分かってる」
「目の下のクマ、隠しきれてないっつーの」
 心配顔の佳奈子を、軽く笑ってごまかす。何度も同じことをループしてるのに、佳
奈子は毎回真剣に私の相談にもならないただの愚痴に乗ってくれる。その時、タイミ
ング良くノック音が部屋に響いた。すぐに扉が開いて、チーフが顔を出す。
934腹黒ビッチ 3章(中) 7:2009/12/10(木) 16:34:53 ID:jHuB5AQ7
「レイ、2番テーブル指名」
「はいはい」
 腰を上げると、少し立ちくらみがした。誰にも悟られないように机で体を支える。
佳奈子は幸い気がつかなかったようだ。が、チーフが渋い顔をした。
「……大丈夫か」
 ぼそりと、耳元に低い声。
「大丈夫です」
「これ終わったら帰れよ。送ってく」
「いりません。普通に帰ります」
 無表情はここまで。ホールに一歩入ってからは、男を喜ばせることだけ考える。そ
の為の笑顔が、磨き抜かれた柱に映る。少しやつれた顎のラインを、見ないふりした。





「りかー、起きなーりかー」
 揺すられて、はっと目を覚ます。ここがどこか分からない上に、周りは真っ暗で混
乱しかける。
「……ここ、どこ」
「私んちの前だっつの。もう起きとけよー」
 生ぬるい空気が首の周りにまとわりついて、佳奈子が苦笑しているのが見えた。あ
あ、送迎の車の中か。
「んじゃ、まったねー」
 佳奈子が手を振って、ワゴン車のドアを勢いよく閉めた。エアコンの空気が再度廻
り始める。車が走り出すのと一緒にまた眠りかけるけど、ずっと枕にしてた佳奈子の
肩が無いとどうにも安定が悪い。
「……車乗ってから記憶が無い」
「ずっと寝てた」
「やっぱそうですか」
「このまま寝てたら、俺のマンションに直行しようと思ってた」
「ふざけんな」
 軽口をたたく野崎チーフに、絶対零度の視線で返す。チーフはこっち見てないから
意味無いけど。
「疲れてるみたいだな」
「そーですね」
「でも試験終わったんだろ?」
「終わって無いです。まだ三個目あります」
「まだあんのかよ」
「二個目も受かったらね」
 そう、まだあるのだ。つい四日前に二つ目の論文式を終え、燃え尽きている暇はな
い。

「―――有華」
 妙に神妙な声で、名前を呼ばれる。
「今日ママに聞いたけど、お前辞めるんだって?」
「うん」
 つい二日前、ママに店を辞めたいと告げた。残念ね、とは言われたけど引きとめら
れなかったのは、私が切羽詰まっているとママが知っているから。ここ最近は週に一
回も店に出ていなかったから、なんとなく予想はしていたみたいだ。

「試験いつおわんの」
「二個目が受かってたら、十月の終わり」
「まだまだ、先だな」
 呟くように言って、チーフはそのまま黙りこむ。私は眠気と格闘しつつ、カバンの持
ち手をいじる。早く着かないかな。
「今言ったら、お前迷惑か?」
「はい?何が」
「だから、告白」
935腹黒ビッチ 3章(中) 7:2009/12/10(木) 16:38:12 ID:jHuB5AQ7
 告白するような口調じゃなく、さらりと言われた。
「迷惑なら、試験終わってからでいいけど」
 それってほとんど告白してんのと一緒じゃん。
「今で良いですよ。さっさと終わらせた方が楽」
「少しは考えろっての」
「考える必要もない。彼氏なんていらないし」
「忙しいからってわけじゃ無く?」
「いらない」
 アパートじゃないところに車が止められる。しまった。眠気に揺れる頭が、徐々に
危険を悟って覚醒していく。
「俺の何が足りない?収入か?年か?顔?それとも、こんな職だから?」
 はっきり言って、そんなのどうでもいい。本音を口にしたら付け入られるから言わ
ないけど。
「……忙しいんです。男の相手なんかしてられない」
 一番の理由じゃ無いにしても、これも真実だ。
「傍にいられるだけで良いよ。邪魔はしない。連絡が来なくても文句言わねーって、
……なんか情けないけど」
「そんなの付き合ってる意味無いですよねー」
「俺は、有華を支える人間になりたい」
 フロントガラスから入り込む街灯の光が、野崎チーフの輪郭を浮き上がらせる。闇
に慣れた目が、彼の真剣なまなざしをとらえる。ヤバい。後ずさろうにも、背もたれ
が邪魔をする。
「やめて」
 腕を掴まれて、声が震えた。
「有華が、安心して笑ってる顔が見たい」
「やめて」
「俺を好きじゃなくていい。利用してくれていい。他の男が好きでも」
 エアコンのよく効いた室内で、チーフの体温がとても熱い。掴まれた部分に、徐々
に血が通っていくのが分かる。頭が痛い。喉が引きつる。
「いやっ」
「お前は、もっと甘えていい」
「そんなの、いらない」
「いいんだよ。俺が許す」
「いらない!!」
 振り払おうとしても、チーフの手が離れようとしない。熱が体中に伝わっていく。
鳥肌が経つほどの嫌悪感。体の中のマイナスの感情の全てをこめて、睨みつけた。
「あんたの許しなんて必要じゃない」
「一人で我慢するな。俺が、半分引き受けるから」
 感動的なセリフ。渾身の口説き文句。だけど私の体が、心が、全てが拒否する。
「勘違いしないで。そんな権利、あんたには無い」

 男に真剣に愛を告げられて、改めて分かる。私を理解されてたまるものか。私の一
部分でも、他人に与えるものか。勝手に解釈して、干渉して、浸蝕して、私に受け入
れさせようとする。訳知り顔で私の範囲に入りこんで、優しい振りをして私を変えよ
うとする。思い通りにならないと、今度は屈服させようとする。私の世界を、土足で
踏みにじっていく。
 男なんてみんな同じだった。タカシも、ユウイチも、ケンジも、マモルも、ヤスハル
も、ナオトも。
 克哉君だけだ。支配されてもいいと思ったのは。克哉君だけが、私から奪うだけ
じゃなく、自分を差し出してくれた。
 私が許したのは克哉君だけだった。
 だから、私を許す権利があるのは克哉君だけ。
 でも、許されるはずがない。私は、狡猾で、打算的で、虚栄心の塊だから。それが
醜悪なものだと分かっていても、私は私を変えられない。
 だからもう、解放されたいなんて思わない。苦しくてもいい。このままでいい。克哉
君のことを好きでいたい。
 それ以上のことは望まない。私じゃ不釣り合いだから。でも、せめて、好きでいさ
せてほしい。

 別所さんに呼び出されたのは、その次の日だった。
936腹黒の人:2009/12/10(木) 16:42:28 ID:jHuB5AQ7
以上、投下終了

一週間以上見なおしてないから、変なところあるかも
さっそくだけど、よく見たら7が2個あった
8レスでしたすいません

次で完結予定だけど、投下は次スレ立ててからの方がいいかな
セーフティ・フレンドさんも終わりみたいだし
937名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 21:05:51 ID:ctKkcILZ
>>936
うぉぉ!GJ!
有香が一途すぎて泣ける。
…でも、一人にだけ許しちゃったんだよなぁ。
克哉の不甲斐なさが原因ならば仕方がないのか。
それにしても有香が追い詰められて…だから、切なくなってきた。

というか、腹黒さん…肺炎って。(汗)
マジにお大事なさって下さい。
こちらも肺炎にならない範囲で、全裸待機に戻りますから。
938名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 22:21:46 ID:N0dK3n+S
GJGJGJGJGJGJGJGJGJGJ!!!!!!
939名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 07:19:46 ID:ZPGG+yUs
>>936
なんつーか、痛々しい。
分かっちゃいるけど有華に幸せを!
そしてお体には慈愛を!
940名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 20:21:33 ID:knAn0VzA
次スレの季節
941名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 23:15:20 ID:OEwCM7Qe
このチーフに抱かれるのかな?
まぁとにかく次スレだな
942名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 23:16:25 ID:qDeg84Eg
建てようか?
943名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 02:54:24 ID:2uWPRfx5
立ててください。
944名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 13:08:01 ID:1UtXm6Qu
ビッチな娘が一途になったら第3章
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1260763640/l50
945名無しさん@ピンキー:2009/12/15(火) 18:22:28 ID:OX/tX3zu
>>944
946名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 00:23:17 ID:TMtf+IFD
ビッチ分補給プリーズ
947名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 20:45:02 ID:AyOR4GU4
果たして年内に腹黒さんとセーフティーさんの投下はあるのか…
948名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 10:23:03 ID:7n5aXBbb
ないんじゃないかな
949名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 19:35:40 ID:NOE3fA5g
今、2章3章と二つあるからなぁ。
950名無しさん@ピンキー:2009/12/25(金) 02:06:34 ID:8RmAAS0Z
950で落ちるんだっけ?
951名無しさん@ピンキー:2009/12/25(金) 09:38:54 ID:SiJSKdpZ
落ちてはないです…書いてあった?

埋めを兼ねて投下しようと思います。
途中までですが…
スレ的には大丈夫?容量とか。
952first love song:2009/12/25(金) 09:52:50 ID:SiJSKdpZ
今日はいつも一緒にいる江梨も優奈も休み。
つまんないな、私も休めばよかった。
クラスの中心とか自分で思ってそうな神田里菜が「一緒にご飯食べよ」とか言ってたけど、笑顔でやんわりと断った。
あの子本気で自分は可愛いとか思ってそうだし、ちょっとイタいんだよね。
もとの顔自体カバみたいで、メイクも下手だし…

ヒマを持て余した昼休み、誰も居ないところに行きたいって思って屋上へ行った。
梅雨に入る前の青空、遊びに行くのも夜ばっかりだし、久しぶりにお日さまを浴びた気がする。
もう三年生になったけど、屋上にのぼったのは初めて。
意外といい場所だと思う。誰もいないし、これからはたまに来ようかな。

『あ?ああ、ハヤトか。
どうしたん?』
…声が聞こえる。入り口の反対側かな?どこかで聞いたことのあるような声だけど誰だろう?
少し興味を持って覗いてみる。
ちょうど背中を向けているから後ろ姿しか見えないけど、背はそれなりに高くてスマート、軽くウェーブのかかった髪。
後ろ姿はかなりいい感じかな。
『ああ、わかった。
今週中に書いてメールするわ、つーか急だな、トシさんの無茶ぶりは勘弁してほしいよ。
じゃあまた後で。』
電話が終わったみたい。何の話だったんだろう?
「ふぅ、参ったなー。
まぁ、なんとかすっか。」
ん?煙?ああ、煙草吸ってるんだ。
「あっ!」
彼が振り向いたところで目が合った。
「えっと、同じクラスの…
宮…本さんだっけ?
ごめん、クラスの奴の名前あんま覚えてなくてさ。
君も吸いにきたの?」
「えっ…?」
「ああ、違うんだ。
ここは職員室からも用務員室からも死角の絶好の喫煙スポットだからさ。」
煙草を吸ってることも全く悪びれずに彼は話す。

同じクラスの佐野豊くん。
クラスの誰かと仲良くしてるところなんて見たことなくて、クラスから一歩引いた輪に入らない感じの男子だ。
それがクールとか大人っぽくてかっこいいって言ってた子もいたし、かっこつけって言ってる子もいたっけ。
「そうなんだ。
でも私は違うよ、江梨も優奈も休みでヒマだったから来ただけ。」
「ふーん。
そういえば宮本さんと松岡さんと三田村さんはいつも一緒だもんね。
やっぱり仲いい奴と一緒じゃないと学校はつまんないもんな。」
「佐野君はクラスのみんなと仲良くしたりしないもんね。
やっぱり楽しくないの?」
953first love song:2009/12/25(金) 09:53:43 ID:SiJSKdpZ
「学校は全く楽しいって思わないな。
クラスの奴らの話題もガキみたいなことばっかだし。
女子だって宮本さん達みたいな一部除いてイケてない子ばっかじゃん?
神田のメイクとかさ、あれはないよね。落書きみたいだもんな。
そんな中で付き合ったとか別れたとか、興味もわかないよ。」
ちょっと意外、私と同じようなことを思っている。
「俺、なんかまずいこと言ったかな?」
「ううん。クラスでの印象と違ってしゃべる人なんだって思っただけだよ。」
「別に無口なわけじゃないんだ。ただ話す相手がいないってか仲良くなりたい奴がいないだけだからさ。」
クラスでは女子は神田里菜達が、男子では望月正昭達のグループがうちのクラスの中心だけど、
私も江梨も優奈もクラスのみんなにはあんまり興味はないし、望月君達を見てもかっこいいとも思わない。
私達はそれでもみんなに合わせるけれど、佐野君はそれをしないからクラスで浮いてるんだと思った。
合わせる私達と自分を貫く佐野君、どっちが楽なのだろう?

少し長めのウェーブがかかった髪が風になびき、左耳のピアスが見える。
横から見る彼の顔は絵になる。
こんなに端正な顔をしていたんだと思い、少し見とれていた。

二人ともなにも喋らないけど、落ち着いた時間が流れる。まるで恋の始まりのように。
たまには同級生と付き合うのも悪くないかなって思った。
私は今まで自分からいって失敗したことはない。
相手が錯覚するようなタイミングや迫り方を心得ているから。
「ねえ、佐野君…」
「ん?」
「もしよかったら…」
…最悪、こんなタイミングで携帯が鳴るなんて。
せっかくのいいムードで彼を口説けたのに。
…しかも誠から、ホントに空気の読めない男。
「電話出なくていいの?
俺のことは気にしなくていいよ。」
「ごめんね。じゃあ少し電話するから。」
少し彼から離れる。
「はい、何の用?」
『あ、アキ?てか出るの遅くね?』
「今学校で友達と話してたの。
用がないならさっさと切るわよ。」
『そんな言い方なくね?
せっかく今週末遊びに誘ってやろうと思ったのによー。』
「誘ってやろう?
なに勘違いしてるの?あんたみたいなバカ男もう会わないって言ったでしょ?
ウザイし、電話ももうかけてくんな。」
『な、アキ、お前マジで言ってんの?』
「私そういう冗談は好きじゃないの。
じゃあね、もう二度と関わらないで。」
954first love song:2009/12/25(金) 09:54:35 ID:SiJSKdpZ
せっかくのいいムードが台無し。
あの男は優奈が開いた合コンで知り合った大学生だけど、あんなバカは初めて。
そのとき以来一回も会ってないけど、番号を教えたことすら後悔したのはあのバカしかいない。

「ごめんね、話の途中で。」
佐野君に向けて笑顔を見せる。
笑顔を作るのは得意だ。男を落とす最高の武器だと自信を持って言える。
「電話、男の人からでしょ?
しかも宮本さんはあまり好いてない人。」
「え?」
なんでわかるの…
聞こえないくらいには離れたし、表情も彼には見えないようにしたのに。
「なんでわかるのかって顔してるね。
宮本さんからそんなオーラが出てたんだ。
特に女性ってとことん嫌いな相手と喋るときにはそういうオーラが出るときがあるんだよ。」
確かに嫌いなヤツと話すときにはイヤだって気持ちが強くなるときはある、でもそれを悟られるほど私はウブじゃない。
「なんてね。
俺の彼女がそういう態度とったことあったから言ってみただけ。
やっぱいやな表情に一瞬なるもんだよね。
画面を見た瞬間に顔が引きつったからさ。」
か…の…じょ?
あぁ、いるんだ。そうだよね、これだけかっこいいんだからいても不思議じゃないもんね。
「まあ、最近の俺に対しての態度だから、もう彼女とは言えないかもしれないけど。
バンドとバイトばっかしてたら不満だらけになっちゃって、もう無理だと思うんだ。
俺も今はバンドの方が大事だし、彼女に時間も金も使えないから。
ひどい男だよね。俺って。」
「そんなことないよ。
理解できない彼女が悪いと思う。
私だったらきっと応援するよ、だって何かに打ち込む男の人ってかっこいいもん。」
自分で言いながら、なに子供みたいなことを言ってるのかと思う。
確かに何かに打ち込む人はかっこいい、でもその熱さを私は理解できない。
付き合うなら自分を第一にする男というのは最低条件なのだから。
私達三人で遊びに言った時にはよくナンパもされるけど、最近は相手にもしない。
自分の商品価値がわかってきたから安売りする必要はない。
彼氏は基本的に年上で車とお金を持っているのは必須。
一瞬勢いで彼に告りそうになったけど、言わなくてよかった。
彼は私の条件に当てはまらない。
今までに付き合ってきた男と比べても確かに彼の顔のつくりはかなりいいほうだけど、それだけだ。
955first love song:2009/12/25(金) 09:55:27 ID:SiJSKdpZ
私はそれだけで選ぶほど子供じゃない。
「そう言ってもらえると嬉しいよ。
でも同年代の女の子だとやっぱり自分だけを見てほしいと思うのが当たり前だよね。
正直今は彼女を作ることすら面倒くさいよ。
なんか若さ感じないけどね。」
彼はそう言って二本目の煙草に火をつけた。
クラスの中とは違う彼の姿は私に少し錯覚をさせるほどにいい雰囲気を持っている。
「一緒にいて変な噂が立つのもイヤだし先に行くね。」
「確かにそうだね。
じゃあまた教室で。」
そう言って彼は笑顔を見せる。
佐野君の笑顔…
同級生相手にこんな気持ちになるなんて、今日は変な日だと、どうかしていたんだと自分に言い聞かせて私は教室へ向かった。
956first love song:2009/12/25(金) 09:56:12 ID:SiJSKdpZ
土曜日。

江梨に今日は空けておくように言われて、優奈と二人昼過ぎに出かける。
「ねぇ、亜希。」
「なに?」
「江梨からなんも聞いてないの?」
「うん、場所だけ。
優奈も聞いてない?」
「うちも聞いてない。
彼氏を紹介するって、それだけ。」

江梨と優奈がサボった日の夜、部屋でボケーッとしながら昼間の佐野君との会話を思い出していたときに江梨からメールが来た。
『土曜日に彼氏を紹介するから空けといて』
それ以上は学校で聞いてもニコニコ笑っているだけで答えてくれない。

駅に着いて江梨に電話をかける。
『あ、亜希?着いた?』
「うん、どこ行けばいいの?」
『待ってて、迎えにいくから。』
「う、うん、わかった。」
横で優奈が聞き耳をたてている。
「亜希、どこ行けばいいの?」
「江梨が迎えにくるって。」
「そうなんだ、てことはこの近くなんだよね?
でも何も無くない?」
優奈と話をしていたら、黒いワンボックスカーが目の前に止まった。
「亜希、優奈、お待たせ〜。」
「江梨?」
「なに〜?江梨?彼氏の車でお迎え?やるね〜。」
「こんにちは、江梨からいつも話は聞いてるよ。
江梨の彼氏の紘成です。」
「はじめまして〜優奈です。」
「亜希です。」
「あいさつがすんだことだし、ほら、乗って。」
さすが面食いの江梨だけある。
今までの彼氏とはちょっと違うタイプだけど、さわやかで少し甘いタイプの俳優みたいなかっこいい人だ。
「今日はありがとうね。
わざわざ手伝いにきてくれて。」
「え?」
「手伝いってなんのことですか?」
「うそ、江梨から聞いてないの?」
「はい、江梨からは彼氏を紹介するとしか聞いてないです。」
「え〜り〜?」
優奈と二人で江梨を見る。
「あれ〜?言ってなかったっけ〜?」
シレッとした態度で江梨は言う。
これをするときの江梨はまず間違いなく確信犯だ。
「今日はヒロくんのバンドのライブなの。で、私達がライブの受付をするってこと。
ライブが始まったらちゃんと見れるから心配しないで。」
「え〜そんなの聞いてないし、ねっ?亜希。」
江梨との付き合いは中学の頃からで、この強引さというか断れない状態にするやり方には免疫がある。
江梨の特技と言いたくなるくらいだ。
「私は構わないわ。
ライブも見れるって言ってるんだし。」
だから私に負担がかかること以外は受け入れるようにしている。
957first love song:2009/12/25(金) 09:57:04 ID:SiJSKdpZ
「え〜、亜希って物わかりよすぎじゃない?」
「だって別にそんなイヤなことじゃないし。
優奈は何が不満なの?」
「えっと、特にはないけど…」
「じゃあいいね!
二人ともありがと〜!やっぱ持つべきものは親友だね。」
それは江梨の台詞じゃないだろと心の中でつっこんだけれど、江梨にはかなわないなとも思う。
でもそれが江梨らしさで、それを私は嫌いじゃない。
物事をはっきり言う江梨のそんな性格がいつの間にか私にもうつったのかなと思う。

そして優奈も江梨に影響を受けた一人だ。
優奈は顔は幼い感じで胸が大きい。
だけどよく言えば天然。
悪く言えばちょっとおバカなとこがあって男にヤリ捨てをよくされていた。
二年のときに一緒のクラスになってすぐ、男に捨てられて泣いている優奈を見かねて江梨は話しかけた。
それから優奈は私達と一緒にいるようになって、少しずつ自分の価値をわかっていった。
今でも見ててあぶなかっしいところはあるけど、私たち二人で優奈を守っているという自負もある。



連れてこられたのは小さなライブハウス。
受付で何をするか、当日券、取り置きなんかの説明を受ける。
そこにボウズ頭にヒゲを生やした人が来た。
「おう、ヒロ。
この子達が受付してくれるのか。
三人ともかわいいなー、お前の彼女は?」
「おう、トシ。
この子が俺の彼女の江梨だよ。
江梨、こいつがうちのベーシストで、リーダーのトシ。
坊主にヒゲってガラは悪そうだけど、いい奴だよ。」
「ガラが悪そうってのは心外だな。
まあよろしく頼むよ、エリちゃん。
ヒロは顔だけはいいけど、結構世間知らずなとこがあったりするから大変かもしれないけど見捨てないでやってくれよ。」
「おい、トシ!」
「はい。
今日はお願いします。」
「あとエリちゃんの友達二人もよろしく。
今日出る他のバンドの奴らも置き券持ってくるから。」
「「他のバンド?」」
優奈と私の二人がほぼ一緒に声を出す。
「俺達じゃまだワンマンなんてなかなかできないから、何組か一緒でライブするんだ。
俺達の弟分みたいな奴らも今日は出るんだけど、
あっ、噂をすれば…
おーい!ユタカ、こっちだー!」
「ヒロさん、遅いですよ。
仕込みも場当たりも終わったんであとヒロさんの合わせだけですよ。」
聞き覚えのある声…ユタカ…?もしかして…
「あっ!佐野クン?」
優奈が驚いて声を出す。
958first love song
「三田村さんに松岡さん?宮本さんも…
なんでここにいるの?」
「どうしたユタカ?
何で江梨のこと知ってるんだ?」
「だって、一緒のクラスですから。」
確かに屋上で話したとき佐野君はバンドをしていると話していた。
だけどまさかそのすぐ後に彼のライブを見ることになるなんて。
「てか、ヒロさんの彼女が松岡さんだったことのほうが驚きですよ。
えっと、これが俺たちのチケット。
こっちに取り置きのリストがあるから、名前聞いたらチェックをしてくれれば。」



もうすぐ開演時間。
お客さんもだいぶ入ったし、私達ももうそろそろ中に入ろうと思う。
「でも驚いたね、まさかクラスメートがヒロ君たちのかわいがってるバンドメンバーなんて。」
「しかも佐野クンってクラスではみんなと関わらないし、そんなイメージなかったのに。
ねっ?亜希?」
「え?うん、そうだね。」
取り置きのリストの人はみんなチェックしたけど、佐野君のリストの一人だけきていない。
岡本瞳さん…
佐野君のリストで一人だけの女の人。
彼女なのかな?もう別れそうだと言っていたけど。
「ありがとう、三人とも。
もう一人で大丈夫だから見てきていいわよ。」
トシさんの彼女で受付のリーダーの美奈さんが声をかけてくれた。
「ありがとうございます。
これからもヒロ君のライブでお手伝いしますから、よろしくお願いします。」
「こちらこそ。
よろしくね、江梨ちゃん。」
江梨は美奈さんに笑顔を見せて中に入った。
江梨がヒロさんと本気で付き合っているんだと見てわかって、私も少し嬉しくなった。