こんばんは、ご無沙汰してます
>>14です。
常駐はしてますが最近多忙で投下できませんでした。申し訳ありません。
何か軽いモノを書こうと思ったのですが、
予想外に長くなってしまったので前後編になります。
前半にエロはありません、ごめんなさい。
ここは街中、住宅街の隙間にひっそりと存在する小さなドラッグストア。
狭い店内で装飾性の欠片もないパイプ椅子に腰を下ろし、歯の根が合わぬ女が言った。
「う〜、やっぱ今日も寒いわねえ……」
そのまま長机にもたれかかり、暖房から送られてくる暖かな空気を堪能する。
今日は比較的穏やかな気候ではあったが、それでも年の瀬が近いこの季節は寒風が吹きすさび、
道行く者に分厚いコートを強制してくる。空一面を覆う灰色の雲も実にうらめしかった。
空と同じグレーのカーディガンを羽織って身を縮めるその女はまだ若く、
身にまとっている冬物の制服から察するにおそらく高校生かと思われる。
ややきつめだが美人と言っていい顔立ちと、ボブカットに近いミディアムの茶髪、
そして長身で肉づきのいい肢体と、いかにも男受けが良さそうな女だった。
その彼女の前に、湯気の立った白いコーヒーカップが音もなく差し出される。
中身はたっぷりと砂糖の入ったミルクティーで、ほのかな紅茶の香りが鼻をくすぐった。
女は礼も言わずそのカップを受け取り、口元で傾けて顔をほころばせる。
心地よい熱と砂糖の甘みが冷え切った体と心をほぐしていく。
「はあ、あったまるぅ……」
「あははは、君は寒がりだねえ」
彼女に笑いかけたのは、同じくらいの年頃の少年だった。
こちらは長袖のワイシャツに黒のスラックスと、やはり制服姿の高校生のように見える。
しかし校章など所属を示す物が何一つ見当たらず、ひょっとしたら私服なのかもしれない。
そしてその平凡な装いとは違って、彼の顔は明らかに際立っていた。
美の女神に寵愛されているかのような端正な表情が、ありふれた空間の中でひときわ異彩を放つ。
不自然なまでに整った目鼻立ちは、あたかも神話や伝説に登場する英雄が現代に蘇ったかのようだ。
そんな絶世の美少年がにこにこ微笑み、長机の向こうから女をじっと見下ろしていた。
ただ見ているだけで心を奪われてしまいそうな美貌を前に、女は頬をかすかに朱に染めながらも
いつも通りの平常心を保っていた。一旦カップを机の上に置いて少年に言い返す。
「何よ、寒いものは寒いし、暑いときは暑いって言うのが当たり前じゃない。
あたし達はあんたと違って普通の人間なんだからね。デリケートなのよ」
「まあ、正直なのはいいことだと思うよ」
半ば八つ当たりの混じった、彼女の不機嫌な声にも彼は肩をすくめるだけ。
そんな仕草からは、どこかこの女との会話を楽しんでいるような様子が感じられた。
彼女の名前は加藤真理奈。地元の学校に通う十七歳の女子高生である。
気が強く好奇心旺盛、誰が相手でも物怖じしない性格で、交際相手を頻繁に換えているが
さばさばした明るい性格のため、不思議とあまり恨みを買うことがない。
また、最近は同居している小学生の従弟に手を出しているらしく、
以前のように浮いた話ばかり聞こえてくるということは無くなった。
そんな彼女の近頃の趣味はと言えば、放課後や休日にこのドラッグストアに入り浸り
いつも店番をしているこの少年の相手をしてやることだった。
彼の職業、その他経歴の一切、名前すら真理奈は知らない。聞いても教えてくれないのだ。
唯一わかっているのは、この端正な顔の少年が普通の人間ではないということだけである。
怪しげな薬をくれたり、常識外れの行動力で教師や通行人に痛快な悪戯を仕掛けたり。
今までの日常生活からは想像もつかない不思議な、そして刺激的な体験。
彼はそんな魅惑の世界を真理奈や友人たちにこっそりと垣間見せてくれるのだ。
その不可解な能力によって悲惨な目に遭わされたこともあるが、
それでもこうしてここに来てしまう辺り、彼女も相当な物好きと言える。
真理奈はもう一口紅茶をすすり、座ったまま後ろを振り返った。
そこには彼女と同じ高校の制服を着た、長い黒髪をツインテールにまとめた少女が立っていた。
「瑞希もここ座ったら? あたしだけ座るのもなんだし」
「……あ、うん」
「ほら、この子にもお茶」
「はいはい」
彼は苦笑してうなずき、真理奈の隣に座った彼女にも同じく紅茶を出してやった。
この少女は森田瑞希。真理奈の親友で、普段からよく彼女と行動を共にしている。
真理奈と違って童顔で小柄な体格だが、幼さの残る表情が彼女には無い愛らしさをかもし出していた。
着ている物は真理奈と同じ紺色のセーラー服とスカート、グレーのスクールカーディガン。
いずれも一番小さなサイズだろう。中学生どころか小学生と言っても通るかもしれない。
強気そのもので言いたいことは何でもずけずけ言う真理奈に対し、
瑞希は引っ込み思案であまりはっきり自分を主張しないところがあった。
そのためいつも真理奈が瑞希をリードする立場にあるが、真理奈は真理奈でそれを嫌がりもせず、
柔和で臆病なこの少女を妹のように可愛がっていた。
「……ありがとうございます、いただきます」
「はっはっは、礼儀正しくて可愛いね。真理奈さんとは大違いだ」
「ふん、勝手に言ってなさい」
客はおらず、狭いが清潔な店内にいるのは真理奈と少年、そして瑞希の三人のみ。
この店に客が来ているのを真理奈は見たことがない。
彼の言によると“暇になったら客が来る”らしいが、今のところ誰かがやってくる気配すらなかった。
もちろん商売として成り立っているはずはないが、特にそれで彼が困る訳でもないようだ。
何のためにここにいるのか、何がしたいのか色々と謎が多い少年であるが、考えても答えは出ない。
真理奈はガラス戸の向こうの寒々とした景色を眺めて軽くため息をつき、
他の二人を相手に世間話に興じることにした。
やはりもっぱら喋るのは真理奈で、他の二人は自然と聞き役になる。
「なーんかこう、最近つまんないのよね。うちの直人も毎日遅くまで塾に缶詰だしさぁ」
「でも受験だから仕方ないよ。それでも家じゃ一緒にいるんでしょ?」
「うーん……そうなんだけど、ちょっと無理してあたしに気を遣ってくるのがいじらしいのよね。
まだ子供なんだから、もっと甘えてベタベタしたっていいと思うのよ」
「直人君って背伸びしたがるとこあるからね。でもそんなとこ、すごく真面目でいいんじゃないかな」
「あ、なんかその言い方ムカツク。そりゃあんたは、いつも愛しの祐ちゃんに
可愛がってもらってるからいいだろうけどさ?」
渋面の真理奈が口にした言葉に、瑞希が耳まで赤くしてうつむいた。
真理奈も瑞希も健全な女子高生。外見や性格の違いはあれど、どちらにも親しい異性がいる。
自然と会話の内容はその交際相手との日常や不満、願望の話になっていった。
真理奈は自分を慕ってくる、幼くて可愛い従弟のことを。
瑞希は少し前から正式につき合いだした、近所に住む幼馴染の同級生のことを。
少年は時おり相槌をうちながら、にこにこした笑顔で二人の話に耳を傾けていた。
どうやら真理奈は現状があまり面白くない――というか退屈らしい――ようで、
生来の我がままな性格もあり、発言に含まれる愚痴と文句の割合が比較的高い。
「刺激、そう刺激よ。いつもとはちょっと違う、こうピリリとした何かが欲しいわね」
「ピリリって、それじゃよくわかんないよ……」
「ふむ、刺激ねえ……刺激か……」
真理奈が何気なく口にした言葉に、少年が尖ったおとがいに手を当てて考え込む。
ルネサンスの彫刻のような威容が二人の少女の瞳を貫き、数度のまばたきを強いた。
「――じゃあ、ちょっと面白いことしてみる?」
長机に手を置き、少年が二人に微笑みかける。その眼差しには子供っぽい好奇心と
わずかな悪意が混入しており、まるで悪戯を計画する悪童を思わせた。
思わせぶりな彼の態度に、真理奈が顔を上げて問いかける。
「え、なになに? また面白い薬でもくれるの? こないだの入れ替わるやつとか」
「薬か……そうだね、それでもいいけれど、あれもまだいろいろと試行錯誤してる最中でね。
とりあえず今日は簡単に味わえる驚き、サプライズを君たちにプレゼントしようかな」
少年はそう言ってその場を離れ、カウンターの横を通ってその向こう、
真理奈たちが座っている場所までやってきた。
椅子に座った二人は身をよじって後ろを向いたが、彼は気にせず真理奈の真後ろに立つ。
得体の知れない相手に背後に回られる不安はないでもなかったが、彼女は特に逃げもせず
首を横に向けたまま、パイプ椅子に悠然と腰を下ろしていた。
「で、何するの?」
「ちょっとの間でいいからじっとしててね。じゃあいくよ」
真理奈の後ろに立った少年がしなやかな腕を伸ばす。細い指がうなじにかかり、
敏感な箇所に触れられた彼女は軽く身を震わせた。
彼はそのまま両手の指で少女の首を挟み、そっと持ち上げていく。
もちろんそんな動作で人間の首がどうにかなるはずがないが、
そのとき真理奈も瑞希も目を疑うことが起きた。
ビール瓶の栓を開ける、もしくはシャンパンのコルクを抜くのを連想させる心地よい音。
それが狭いドラッグストアの中に響くと同時に、真理奈の頭がその胴体から離れ、
白魚のような少年の手の中に納まってしまったのだ。
「ええ――な、何よこれっ !?」
唯一動かせる口でもって騒ぐが、それも無駄な抵抗でしかない。
宙に浮いた首、そして残された胴体からは一滴の血も流れることなく生きたままの状態を保っていた。
どんな仕組みになっているのか、首だけになった真理奈は
呼吸も発言も可能なようで、相変わらずの勢いでまくしたてる。
少年は真理奈の生首を慎重な手つきで長机の上に乗せ、胴体と向かい合わせた。
「単に外しただけさ。死にはしないから安心して。ほら、自分の体を観察してみてよ」
「観察って……ど、どーなってんの……」
なめらかな赤い切断面は気持ち悪いが、こうして自分の身体を見つめるのは不思議な気分だった。
灰色のカーディガンに包まれた冬物の制服はいかにも公立学校らしく
野暮ったいデザインだったが、椅子に座った身体の胸元で揺れる大きな肉の塊、
机の上に投げ出された手を飾る長い爪は、派手好みの彼女にふさわしい魅力を感じさせた。
いつの間にか自分の身体に見とれていたことに気づき
慌てて首を振ろうとするが、今の真理奈にはそんな自由すらない。
(あ〜、油断してたわ。こいつこんなこともできるのよね……さすが化け物)
せめて抗議の声をあげようと、彼女が眼球だけ動かして斜め横を見ると
そこには真理奈と同様、胴体から引き抜かれた瑞希の首が置かれていた。
ふたつにまとめられた黒髪がだらしなく机の上に広がって、かなり間抜けな光景だ。
「あ、瑞希あんたも……?」
「こ、これ何なの……? 私、どうなっちゃったんですか……?」
半泣き状態の親友の姿を見せられ、さすがに少しは真剣な表情になった真理奈だが、
少年はどこ吹く風といった様子で二つの生首を見下ろし、朗らかに微笑んでいた。
いつもの明るいにこにこ顔で残酷なほど無邪気な笑みを浮かべている。
長机の上で身動きがとれずに少年を見上げる二人の首は、
さながら戦で敗れて討ち取られた戦国武将のようであった。
「どうだい? 首から下の感覚が一切ないなんて、かなり新鮮な体験じゃない?」
「……いくら新鮮でも、こういうのはちょっと遠慮しとくわ。早く戻してよ」
このように異様な状況下でも、真理奈はきっぱりと言い放つ。
その反応が気に入ったのか、彼はうんうんうなずいて真理奈の首を手に取った。
「はいはい、わかったよ。じゃあつけ直してあげるね」
そう言って再び真理奈を持ち上げ、動かない胴体のもとにゆっくりと近づけていく。
視線を動かせない彼女からは自分の身体を確認することはできなかったが、
大まかな位置関係から、彼が素直に首だけの自分を胴体の方に運んでいることは推測できた。
(それにしても、やっぱこれ気持ち悪いわね……。そりゃ新鮮な体験かもしれないけど……)
心の中でぶつぶつ言っている間に、真理奈の首は身体にくっつけられていた。
今度は音もなく頭部と胴体が接合し、正常な手足の感覚が脳に送り込まれてくる。
そして全身の違和感がなくなったことを彼女が自覚したとき、少年の優しい声が聞こえてきた。
「はい、つけてあげたよ。気分はどう?」
「ん、えーと大丈夫……かな? あれ?」
真理奈は椅子に座ったまま、自分の身体を見下ろした。
ほっそりした手足、ブラジャーが不必要なほど平坦な胸、そして小学生と見間違うほど小さな体。
どこからどう見ても元の自分とは似つかわしくない、親友の肉体がそこにあった。
「ちょ、ちょっとこれ…… !?」
「はい瑞希さん、君も戻してあげるからね。よいしょっと」
あくまでマイペースに話を進める少年に、真理奈が大声を投げつけた。
「違う違う、これ瑞希の身体でしょーが! あんた何やってんの !? わざと !?」
「あれ、そうだっけ? 間違えちゃったかなぁ、あははは」
「ま、真理奈ちゃん……」
「瑞希っ !? うわあぁ、すごい――ていうかひどい……」
パイプ椅子を蹴倒して立ち上がった彼女が見たものは、
すぐ隣で不安そうな顔を浮かべて椅子に座っている瑞希の姿だった。
当然のようにその首から下はスタイル抜群の真理奈の肉体になっている。
制服の上からでもわかる豊かな乳房とグラマーな体つきが瑞希の童顔に全くふさわしくなかったが、
これはこれで別の層の需要が発生しているかもしれない。
やがて少年に促され、ツインテールの少女もおずおずと立ち上がった。
真理奈と向かい合った今の瑞希は驚くほど長身で、彼女に比べて十数センチは高いだろうか。
最近はあまり運動をしていないので、以前は引き締まっていた手足にもむっちり肉がついているが、
決して見苦しい訳ではなく、より女性らしい丸みを帯びた印象を受ける。
普段は人並みに体重を気にしていた真理奈だったが、こうして自分の身体を客観的に見ると
そう心配する必要はないように思われた。
華奢な右手を伸ばし、眼前の瑞希の胸に触れてみる。
もはや自分のものではなくなった巨大な乳房は、不思議な興奮と感触とを真理奈にもたらした。
「ひゃっ…… !? ま、真理奈ちゃん、やめて……!」
「ん、ちょっと待った……もうちょい触らせて」
両手で瑞希の巨乳を揉みしだこうとした真理奈だったが、彼女が慌てて身を引いたため
大人しく引き下がらざるをえなかった。入れ替わる前は体格のいい真理奈の方が力もあり、
嫌がる瑞希を押さえつけることも容易だったが、今はそれも不可能だろう。
自分の身体を見下ろすと、冬物のセーラー服から膝にかかった濃紺のスカートまで、隠れることなく
つぶさに観察できる。胸が無いだけで視覚がこんなにも変わるのかと、彼女はしきりに驚いていた。
(でも、見れば見るほど子供っぽい体よねえ……これじゃあ自信も無くすわ……)
瑞希が気弱で大人しいのは、貧弱な体格にコンプレックスがあるからだろう。
真理奈は勝手にそう結論づけ、心の中で親友の生い立ちに同情を寄せた。
「はははは、どう? こういうのも新鮮でいいでしょう」
「お生憎様、あたしと瑞希は前にも体を交換したことがあるの。こんなの初めてじゃないわ」
横で余裕を見せて笑う少年に腕組みをして言い返す。
だがその口調とは裏腹に、真理奈の表情には先ほどは見られなかった笑みが見え隠れしていた。
自分の手足を確かめるように動かし、そして目の前にいる巨乳童顔の親友の姿をねめつける。
しかし当の瑞希には友人の意図がわからず、真理奈の体のまま困惑するばかりだった。
やがて何を思いついたのか、小柄な真理奈がはっきりした声で宣言した。
「よし、やっぱりこれでいいわ! 瑞希、今日はこのままだから」
「え? ま、真理奈ちゃん?」
「一応確認しとくけど、ちゃんと元に戻せるのよね? これ」
強気に目をつり上げて聞いてくる彼女に、美貌の少年はうなずき返した。
「うん、大丈夫さ。君たちは顔見知りだし、後できちんと戻してあげるよ。
もちろん君たちがこのままでいいって言うんだったら、僕はそれでも構わないけどね」
「……さすがにそれは遠慮しとくわ。
あたしは自分の体に愛着があるから、今日一日だけってことでよろしく」
「ま、真理奈ちゃん……どうするの?」
不安げに胸の前で手を合わせる瑞希。いつも誇らしげにきびきび動く真理奈の肢体だが、
今は童顔のツインテールの下で頼りなさそうになよなよしている。
自分より長身になった友達を見上げ、真理奈は不敵に笑ってみせた。
「だって、考えたらこれも面白そうじゃない。いつもの薬で上から下まで入れ替わっちゃったら
あたしは瑞希の家で生活しないといけないでしょ? これだとそれしなくていいから楽ってもんよ」
「え !? もしかして、今日はこのままで過ごすの……?」
「さっきからそう言ってるでしょ? あたしの身体をまた貸してもらえるんだから感謝しなさいよね。
学校一のアイドル、加藤真理奈様の体よ? 愛しの祐ちゃんもきっと喜ぶって!」
青くなった瑞希に向かって事も無げに言い放つ。
狭いドラッグストアの中、一番の親友の顔がついた自分の体を見下ろしながら、
瑞希は困惑と不安で豊満な胸を一杯にしていた。
「じゃあまた明日来るから、ちゃんと元に戻してよ。それじゃ瑞希、帰るわよ!」
「こ、こんなのやめようよ……真理奈ちゃ〜ん!」
「ありがとうございました〜、またお越し下さいませ――なんてね♪ あっはっは……」
こうして首から下の入れ替わった二人の少女は、誰も客のいないドラッグストアを後にした。
以上となります。後編はまた後日。
それではこれにて失礼します。
後編をwktkしながら待ってるぜGJ
gj!まってました!
瑞希死亡フラグw
という訳で後編の投下となります。
ややアンバランスな分割で、申し訳ありませんでした。
それではどうぞ。
冬の日暮れは早く、彼が窓の外に目を向けるともう暗くなっていた。
冬至までどんどん昼が短くなっていく。仕方のないことではあるが、
それでも日没と雲のせいで真っ暗な空ばかり見上げていては愉快なはずもない。
彼は平凡な一戸建ての二階にある自室でカーペットの上にあぐらをかき、
気乗りのしない様子で携帯電話を操作していた。
「やっと返信がきたか。瑞希のやつ、また加藤と一緒だったみたいだな……」
あいつと一緒にいると悪影響を受けそうなんだが、と誰にともなくつぶやいて顔を上げる。
やや鋭い目つきが特徴ではあったが、それ以外はごくごく平凡な少年だった。
短く切られた髪は黒く、体格も中肉中背。顔の作りは悪くないが、人の記憶に残るほどでもない。
中川という苗字は巷に多すぎるほど見受けられるし、名前の祐介も万単位で転がっているだろう。
そんな彼、中川祐介はトレーナーとよれよれのジーンズというやはり平凡な格好で、
殺風景な部屋の真ん中に座り込んでいた。
彼が今メールをしている相手は近所に住んでいる同級生の少女、森田瑞希だった。
幼い頃から幼稚園や小学校で共に過ごし、今では安直かつごく自然に男女の仲になっている。
今日は学校の委員会の関係で少し帰りが遅くなってしまった彼だが、とりあえず
先に家に帰っているはずの彼女に連絡し、一緒に宿題でもしようかと考えていたところだ。
瑞希は内気で大人しいから、できるだけ自分がそばにいてやらないと。
最近は友達の加藤真理奈も面倒を見てくれているようだが、やはり幼馴染として、
そして一人の男としてあの少女のことが心配である。
普段は冷静で無口な態度を装ってはいても、祐介は誰よりも瑞希のことを想っていた。
「なんだ、あいつまだ帰ってなかったのか? 加藤のやつ、またあいつに寄り道させやがって……」
ケータイの画面を見つめ、軽く頭をかいてぼやいてみせる。
瑞希からのメールによると、彼女はつい先ほど家に帰ってきたところらしい。
あの気弱な少女のこと、友人の真理奈に半ば無理やりつき合わされていたことは容易に想像できた。
瑞希に大事な友達がいるというのは彼にとっても歓迎すべきことではあるのだが、
その友人は彼女とはまるで違って明るく積極的、そして男によくもてる女だった。
破天荒な行動を好む真理奈の存在は、時として彼を不安にさせる。
純情な瑞希を彼女の近くに置くことで悪影響を受けないか、とつい心配してしまうのだった。
そのとき玄関のチャイムが鳴ったので、祐介は自室を出て下におりていった。
瑞希からのメールの末尾に彼女がすぐここに来ると書いてあったため、確認もせずドアを開ける。
果たしてそこには予想通り、制服姿の幼馴染の少女がいた。
……だが、しかし。
「ゆ、祐ちゃん……あははは……」
「瑞希っ !? お、お前――どうしたんだ !?」
彼女を出迎えた祐介は驚愕して立ち尽くした。
彼の前にいるのは、まぎれもなく森田瑞希その人である。少なくとも顔と髪型はそうだ。
だが今の瑞希は、ついさっき学校で別れたときとは随分と違った姿になっていた。
百五十あるか疑わしかった背丈は二十センチ近く伸び、彼とあまり変わらなくなっている。
小さくか細かった体や手足も見違えるほどボリュームを増し、
年頃の女性らしく全体的に丸みを帯びてバランスの良いシルエットを形作っている。
AカップだかBカップだか彼も知らない――というより聞くのをはばかられる――ささやかな胸も、
今ははちきれんばかりの巨乳となって制服の胸元で窮屈そうに弾むばかり。
腰の位置は祐介よりも高いところにありそうで、冬だというのに丈の短いスカートからは
むっちり適度に肉がついた太ももが顔をのぞかせていた。
プロポーションが完璧にとれた女の肉体。それが今ここにある。
そして、その首から上だけはいつもの瑞希の童顔と黒髪のツインテール。
アンバランス極まりない幼馴染の姿に、祐介はただ黙って硬直するしかなかった。
そうしてドアを開けたまま、玄関先でたたずむこと数十秒。
「――くしゅん!」
瑞希の大きなくしゃみにようやく我に返り、彼は少女を家の中に迎え入れた。
はっきり言って何が何だかさっぱりで、夢でも見ているのかと思ってしまったが
グラマーな瑞希は確かに現実のものとして祐介の前に存在している。
寒そうに震える瑞希にとりあえず熱い茶を飲ませ、二人で彼の部屋に向かうことにした。
幸いにも今日は両親の帰りが遅く、彼女の異様な姿を見られずに済む。
狭い部屋の中、瑞希と向かい合って腰を下ろした祐介は、
おどおどしている彼女から断片的ながらも事情を聞き出すことができた。
「……てことは加藤の友達ってヤツに、そんなカッコにされちまったのか」
「う、うん。明日には元に戻してもらえるそうなんだけど……」
「いいから今すぐ戻してもらってこい。問答無用で」
「そ、それはできないんだって……だから明日までこ、このまま……」
「うわ、マジかよ? しかし見れば見るほどすごい違和感だな、お前……」
幼児体型の幼馴染が、驚くほど肉感溢れる女体になって自分の前に座っている。
普通の男なら興奮して襲いかかっているところだが、祐介にとって今の瑞希の姿は不自然そのもの、
喜びより戸惑いの方が強く、手を出す気になどなれなかった。
いったい彼女の両親は急成長した娘を見てどんな反応を示すのだろうか。
むしろそちらの方が気になるくらいである。
(まるで加藤みたいな体になっちまって……。何がどうなってんのかわからんが、
もう瑞希をあいつに近づけない方がいいかもしれんなあ……)
祐介がカーペットの上でぼんやり考え込んでいると、不意に瑞希が彼を見つめて声をかけてきた。
「あ、あのね祐ちゃん……」
「ん? なんだ」
正座をして彼の方に身を乗り出す瑞希。
紺色のセーラー服の胸元は気持ち良く揺れ、スカートの裾からは二本の太ももがはみ出している。
その光景に思わず唾を飲み込んでしまい、祐介は慌てて首を横に振った。
(いかんいかん、瑞希もこんな体になって困ってるじゃないか。そんなときに俺ってやつは……)
にわかに首を振り出した彼氏を不思議そうな瞳で見つめ、彼女が言葉を続ける。
「あのね、今の私の体なんだけど……祐ちゃんはどう思う?」
「どう思うって、どういうことだ?」
「だからいつもの私と比べて、いいか悪いかって話……。こ、こっちの方がいいかな?」
妙に真面目な表情で問いかけてくる幼馴染を見返し、質問の意図を把握しようとする。
瑞希の顔はそこそこのレベルだが、首から下は残念ながら完璧な幼児体型と言わざるをえない。
本人も祐介も普段はそのことに一切触れないが、こうして女らしい体になった今の姿を見せられると
やはりどちらも心の隅で、いつもの彼女と比較してしまう。
――ひょっとして瑞希は自分に、今の姿の方がいいと言ってほしいのだろうか。
ふと祐介の頭の中でその疑問が持ち上がり、どう答えたらいいか判断を迷わせた。
「んー、そうだな……」
たっぷり十秒は思案に暮れてから、慎重に言葉を選び出す。
「瑞希がどんな見た目でも、俺はお前が好きだ。クサいセリフで悪いけどな」
「祐ちゃん……」
「そりゃ、お前はペチャパイでガキっぽいちんちくりんだけどさ。
でも俺は、そんなお前とずっと一緒だったんだぞ? 今さらそんなの気にしないって」
「…………」
そこで彼女はじっとして祐介と見つめ合う。
何も言わず何もせずに時を止め、いい加減彼が不安になってきた頃、身を引き小さくつぶやいた。
「そ、そうだよね……変なこと聞いてごめん……」
どこか決まりが悪そうに、そしてほっとした表情で息を吐き、その場に再び座り込む。
理屈ではわかっていても、心の底で劣等感を抱いていた自分の体。
その全てを祐介に肯定してもらい、彼女は涙さえ浮かべてへたり込んでいた。
「おい、どうしたんだよ? ベソなんかかきやがって」
「ご、ごめんね……でも、なんか嬉しくて……グスッ……」
こんなとき、真に必要なのは言葉ではなく行動だ。
彼はやれやれといった表情で彼女の体を引き寄せ、そっと腕を回して抱きしめてやった。
互いの体で二つの巨乳を押し潰し、背中を優しくさすって慰める。
すすり泣く幼馴染を抱きながら、祐介は変わり果てた彼女の体をじっと見下ろしていた。
「瑞希……泣くな、泣くなって……」
「う……うぅ、祐――ちゃん……!」
泣きはらした目を真っ赤にし、しゃくりあげる少女。
祐介の体がほんの少しだけ離れ、今度は顔と顔とが向かい合う。
二人はそのまま目を閉ざし、軽く開いた唇を触れ合わせた。
「…………」
「ん……んむっ……」
先に舌を入れたのは瑞希の方だ。待ちかねたように旺盛な食欲を示し、
祐介の肉と唾液とを味わおうと必死で暴れまわる。
彼は口内で激しく動く瑞希の舌を黙って受け止め、そのまま自然に自分の舌を絡めた。
ぴったり塞ぎ合った唇と、その中で淫靡に蠢く一対の触手。
女が男を慕い、男が女を想う両者の接吻は息が苦しくなるまで続けられた。
やがて大きな息を吐き、わずかな距離を挟んで二人は再び顔を見合わせる。
そして瑞希はふっと微笑み、着ている服を一枚ずつ脱いでいった。
衣擦れの音が響き、レースの入った桃色のブラに包まれた乳房がぶるんと揺れる。
祐介の両手でもふんだんに余るほどの肉の塊が瑞希の胸元で弾んでいた。
後ろから手を差し入れブラの上からわしづかみにすると、少女は軽く声をあげて息を吐いた。
「あんっ――はぁっ……!」
「しかしデカいな……それとも、いつものお前の胸が小さすぎるだけか?」
「やぁ、言っちゃ駄目ぇ……!」
普段真理奈から“貧乳どころか平乳”と面白半分で揶揄される瑞希である。
その親友の豊満な乳房を我がものにして心ゆくまで重力を満喫し、
さらにそれを自分の彼氏に揉みしだかれるさまは彼女を高ぶらせずにはいられなかった。
祐介の手が背中を這い回りホックが外されると、瑞希は逆らうことなく腕を回して
そのまま彼に下着を剥ぎ取らせた。
肉を包む胸当てがなくとも瑞希の乳房は形良く張り出し、空気に触れて寒そうに肌を震わせた。
肩がこりそうなほどの脂肪の重み。綺麗な円を描く乳輪と、その先端の小さなつぼみ。
日頃から何気なく見てきた、そして密かに羨望を抱いていた親友の乳が自分の体についている。
不思議な感動を覚えた瑞希だったが、その感慨はすぐに中断させられることとなった。
「あっ !? ゆ、祐ちゃ……いきなり吸わないでよ……」
「何だよ、いつもこうしてやってるだろ? 今日は食べ応えがありすぎだけど」
「ん、んんっ……んあ、あふぅっ!」
いつの間にか正面に回りこんだ祐介が彼女の胸を持ち上げ、赤子のようにかぶりついている。
普段は味わえない感覚に少女は身をよじり、何度も何度も彼の名を口にした。
一方、祐介も瑞希の巨乳に夢中になってむしゃぶりつき、つぶらな乳首を舌先で転がした。
さっきはああ言ったものの、やはりこうして味わうなら胸は大きい方が良い。
今まで特に大きさなど気にしていなかった彼だが、このままこの肉饅に食いついていると
思わず宗旨替えをしてしまいそうな危機感を自覚させられる。
照れ隠しも手伝って、祐介は手を下に回して瑞希のスカート、そしてやはり派手なピンク色の
レースのパンツをゆっくり、そしてじっくりと脱がせていった。
もはや瑞希の身を覆っているのは黒の厚手のハイソックスのみ。
電灯の下で露になった彼女の淡い褐色の肌と色白の頭部との境界が、
首筋に一本の真っ直ぐな線を描いていた。
「どうしたの? 祐ちゃん」
「ん? いや、お前の首に線が入ってるから、何だろうと思ってな」
「あ、それは……繋げてもらったから……」
「繋げてもらった……?」
よくわからなかったが、瑞希の首から下は誰か別人の体なのかもしれない。
もしそうなら、このまま肌を重ねることに抵抗がないでもなかった。
――素直に教えてもらえないかもしれないが、一応聞くだけ聞いておこう。
祐介はそう思い、静かに彼女に問いかけた。
「なあ瑞希、このお前の体……首から下なんだが、誰か他のヤツの身体か?」
「うん……実はこれ、真理奈ちゃんの体なの……」
「加藤の…… !?」
あまり当たってほしくない予想が的中し、瑞希は先ほど言い残した説明を全て語ってくれた。
真理奈が退屈だと駄々をこねたこと。そのせいで瑞希と真理奈の首がすげ替えられたこと。
入れ替わった真理奈が事態を面白がり、瑞希の体のまま帰ってしまったこと。
途中から呆れ果ててしまったが、何とか事情を聞き終え、彼は大きなため息をついた。
「はあああ……何だよ、結局あいつのせいじゃねえか。
あの馬鹿野郎め、瑞希の身体を持ち逃げしやがって……」
「ゆ、祐ちゃん、怒らないで……」
「……お前に怒ってもしょうがないだろ」
短く吐き捨て、もう一度瑞希の体を乱暴に引き寄せる。
小さく悲鳴を上げた少女を無視し、祐介は彼女をカーペットの上に仰向けに押し倒した。
「きゃっ――ゆ、祐ちゃん……?」
「決めた。今日はその加藤の体とヤリまくる」
「え?」
「ムカついたからあいつへの仕返しに、今日は生で犯しまくってやる。
まったく、お前も嫌なときは嫌だってはっきり言わないといけないんだぞ?」
「ちょ、ちょっと祐ちゃ……あぁんっ !?」
祐介の左手が乳房を、右手が秘所を這い回る。
瑞希のものになった真理奈の性器は、先ほどの乳房への愛撫で感じていたのか
それとも単に情事に慣れているだけか、軽く触れただけで湿り気を帯び始めた。
何人もの男を侍らせた真理奈の秘所である。当然、男性経験は瑞希と比べ物にならないはずだが
祐介にも瑞希にも、その数の見当さえつけることができなかった。
「ふん、もう濡れてやがる……さすがあいつの股だな。エロすぎだ」
「ま、待って祐ちゃん……ちゃんとゴム、つけて……」
「別にいいさ。加藤の体なんだから、お前が心配することないって」
陰唇を開かせ、入り口を指の腹でこすり上げる。乳首をつねり上げたことも加わって
瑞希の口から悲鳴とも嬌声ともつかぬ叫び声があがった。
(まったく……加藤のやつ、瑞希の身体を勝手にもてあそびやがって……)
体を奪われた本人ではなく、なぜか自分の方に静かな怒気が湧いてくる。
考えてみれば昔からそうだった気がする。
内気で人との争いをあまり好まない瑞希は少し相手に凄まれただけで怯え、
しなくてもいい仕事を押しつけられたり、ノートや筆記具を持っていかれたりするのである。
挙句の果てに今回は、大事な身体を他人のものとそっくり交換してしまうなど――。
おそらくあの勝気な女が、瑞希の身体を無理やり奪っていったのだろう。まったく非常識極まりない。
祐介は少女の股間と乳房を撫で回しながら、ひとり真理奈への怒りをかきたてていった。
「はぁっ、ふああっ! あぁんっ !!」
蜜の漏れ出した陰部に、今度は人差し指を突き入れる。
大柄な瑞希の性器は苦もなくその指をくわえ込み、関節に雫を塗りたくった。
中で軽く曲げ伸ばしして“の”の字を描くようにこねくり回す。
喘ぐ少女を押さえつけ、次は中指も加えた二本の指で肥肉を貫く。
やはりこの膣は瑞希本来のものより広く、彼の激しい愛撫にも苦しげな様子を見せなかった。
むしろ刺激すればするほど汁を垂らして音をたて、五感を駆使して彼の理性を蝕んでくる。
熟れた肉壷をかき回し、豆の包皮をこすり立て、張った乳房にかぶりつく。
いつしか彼は真理奈への怒りを忘れ、ただ本能と欲望だけで瑞希を責めたてていた。
「ひああぁっ――はあ、あぁぁあっ !! やあぁっ!」
「もうグショグショだな……入れちまうか」
洪水になった秘所から指を引き抜くと、ジーンズの中から勃起した肉棒を取り出す。
寝転がった瑞希はあられもない痴態を晒していた。
唾でベトベトになった胸の先端では二つの乳首がぴんと立ち、
やや毛深い股間はよだれを垂らして祐介が突き入れるのを待ちわびている。
カエルのように曲げられた肉づきのいい美脚も、だらしなく伸ばされた柔らかい腕も
彼が望めばいくらでももてあそぶことができる。
そしてそんな身体の上、首の部分には馴染みの少女の頭部がくっついていた。
苦しそうな呼気と細められてうるんだ瞳が彼に向けられる。
顔立ちこそ幼いが、その首から下は目を見張るほどの肉感を誇る今の瑞希。
祐介はそんな彼女の腰を押さえ、のしかかる形で自分を突き込んでいった。
「ああ……駄目ぇ、駄目だよ……祐ちゃあん……」
「む、意外と締まるな……しかも絡みついて……やべ、気持ちいい……!」
「お願い祐ちゃん……ゴム、ゴムつけてぇ……生は駄目ぇ……」
正上位のまま激しく腰を揺さぶる祐介に、彼女の声は届かない。
これは自分のではなく、大事な親友の身体を借りているだけなのに。
ちゃんと避妊をしてくれないと、後で真理奈に申し訳が立たなくなる。
涙をぼろぼろこぼして懇願する瑞希だったが、彼は心地よさげに腰を振るばかり。
この体と祐介との相性は決して悪くなかった。それどころかいつも自分の体でする以上の快感が
彼女の理性を焼き尽くし、何も考えられなくなるほどだ。
「はあぁんっ! んっ、んぐぅっ、ああぁぁっ !!」
避妊具もつけない彼の陰茎が瑞希の中をほじくり返し、敏感な襞を摩擦する。
激しい性交の快感によがり狂う真理奈の肉体に引きずられ、彼女は次第に意思を喪失していった。
犯す側の祐介もまた、予想以上の高ぶりに自分を抑えることができないでいた。
瑞希の腰を結合部ごと持ち上げると、音が鳴るほど強く肉を叩きつける。
ねっとり絡みついてくる肉と高熱のスープ、そして自分を根元まで飲み込める奥行きの広さ。
いずれをとっても普段の瑞希とは段違いの感度を誇り、悔しいがこの体の良さを認めざるをえない。
(くっそ、たまらねえ……!)
祐介の女性経験は瑞希一人だけ。比較対象としては少なすぎたが、
それでもこの真理奈の膣が人並み以上の名器だということは確かな実感として理解できた。
これは真理奈への仕返しなのだという正当な怒りもどこかへ消えうせ、
気がつけば彼はただ快楽のためだけに腰を振り、彼女の中をかき回していた。
男を受け入れて狂喜し、襞と汁とでもって彼を責めたてる膣内。
胸元では豊かな肉の塊が前後に揺れ、あり余る弾力を見せつける。
そしてその持ち主はどう見ても中学生、下手をすれば小学生にも思える童顔の幼馴染。
自分を取り巻く奇異な状況と肉欲の高ぶりとに、彼はとうとう限界を迎えた。
「うっ……で、出る――瑞希、出すぞっ!」
「うあ、あぁぁあっ !! 駄目、駄目なのぉっ !!!」
無意識のうちに瑞希の肉に爪をたて、奥の奥まで肉棒を突き入れる。
瑞希の思いとは無関係に、蜜に満ちた真理奈の膣は思い切り収縮して彼に射精を要求した。
そして濃厚な子種が前立腺から尿道を経て、女性器へと勢い良く注ぎ込まれる。
「うぅっ! う、はあぁ……出ちまった……」
「ああぁ……駄目、駄目って言ったのにぃ……祐ちゃんのバカァ……」
祐介の精子が真理奈の卵子を目指し、一直線に彼女の中を泳いでいく。
時機であれば両者は無事受精を果たし、愛し合ってもいない二人の遺伝子が混じり合うかもしれない。
たっぷりと精を放出した彼はしばらく膝立ちの姿勢で身を震わせていたが、
やがて力なく息を吐き、抱きかかえた相手の顔を見下ろした。
気を失ってはいないようだが、瑞希は頬を濡らしてしゃくり上げていた。
「う、うぅ……グス、ひっく……」
「ほら、泣くなよ瑞希」
「だ、だって……これ真理奈ちゃんの体なのに、思い切り中に出しちゃって……ううぅ……!」
涙ながらの懇願にも関わらず避妊を無視され、たっぷりと射精された瑞希。
これが自分のならまだしも、大切な友人の体なのだから泣きじゃくるのも無理はなかった。
せめて避妊具をつけていればまだ良かったのだが、もし妊娠してしまったらどうするのか。
最悪、責任を取って祐介と真理奈が結ばれてしまう可能性すらあるのだ。
心配性の瑞希の不安はどんどん、果てしなく膨らんでいく。
「ほら瑞希、落ち着けって……」
そうして彼女がすすり泣いていると、不意に彼が腰を持ち上げ、膣の奥を軽く小突いた。
「はぁんっ…… !? や、やめて……祐ちゃん抜いてぇ……!」
「だってお前も気持ち良かっただろ? 加藤の体でするセックス」
「そ、そうだけどぉ……でも、ちゃんと避妊しないと……」
「お前、自分のことは無頓着な癖にあいつのことは気にするんだな。
たまにはお前も他人に気を遣わないで、やりたいようにやってみろよ?」
どうせ加藤だしな、何があっても大丈夫だって。そう言って祐介が空いた手を彼女の乳房に伸ばす。
緩やかに腰を動かしつつ張りつめた胸を撫で、揉みしだく。
「やぁ、祐ちゃ、ゴム……お願いぃっ……!」
「くっ、締ま……また出るっ――くうぅっ…… !!」
なし崩しに再び交わり始めた二人の性器は、いつまでも歓喜の声をあげて繋がり続けた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その晩、加藤直人はただひたすらに困惑していた。
「なーおとっ、ほらおいで♪」
上機嫌の彼女に呼ばれ、つい条件反射でその手をとってしまったが、
この不可解すぎる事態に、彼の頭の中では先ほどから疑問符が点滅を繰り返していた。
直人は同年代の男の子と比べても小柄で、繊細な雰囲気を持った少年だった。
整ってはいるが線の細い顔立ち、短いながらもさらさらした美しい黒髪から
小六になった今でも少女に間違えられることがあり、本人もそれを気にしている。
性格も優しく気弱で、ほんの少し前までは級友たちに毎日泣かされる始末だった。
その彼が一番好きな相手が、ここにいる従姉の真理奈である。
彼女は昔から面倒見が良く、あれこれと彼の世話を焼いてくれていた。
明るくて美人の従姉は幼い彼にとっては憧れの存在であり、初恋の相手でもあったのだ。
また真理奈の方も、小さいながらも賢くて可愛らしい直人のことを憎からず思っているようで、
いつかこの従弟が自分にふさわしい立派な男に成長する日を楽しみに待っている。
もっとも真理奈がただ待つだけの女であるはずがなく、既に直人に手を出してしまっていたが。
気に入った相手となれば、小学生にも平然と性行為を強要するのが加藤真理奈という女だ。
直人の両親が海外出張のため自分の家で預かっているのをいいことに、
小心な彼をリードして自分好みの男に育て上げるつもりらしい。
そんな訳で今夜も直人は従姉と褥を共にし、性の手ほどきを受けることになっていたのだが――。
「お……お姉ちゃん、どうしちゃったの?」
真理奈は女性にしては長身で、小学生の標準よりも背が低い彼はいつも見上げなくてはならなかった。
頭一つ分にもなる身長差。これが自分と従姉の歳の差なのだと日々思い知らされてきたのである。
ところが今はどうしたことか、真理奈の目線は自分とほとんど変わらなかった。
顔はいつも通りの真理奈でありながら、手足は華奢で背も低く、まるで小学生かと思ってしまう。
大きく魅力的だった尻も胸も真っ平ら、かなりずん胴の幼児体型だ。
普段は彼女の膝上辺りまでを覆う桃色のワンピースのナイトウェアも
今は足首にまで届きそうなほどで、まさにぶかぶかの状態だった。
いったい従姉はどうしてしまったのか。まさか幼児化したとでも言うのだろうか。
学習塾で疲労を溜めた直人はろくに頭が回らず、戸惑うことしかできなかった。
「うふふ、大丈夫よ。あんたは気にしなくていいから」
目を丸くする少年に明るく笑いかけ、真理奈がその正面に立つ。こうして向かい合うと、
自分とこの従弟が同い年になったような気がして苦笑してしまう。
大きすぎるナイトウェアを脱ぎ捨ててパンツだけの姿になった。ブラジャーは当然のごとく
手持ちのものではサイズが大きすぎたし、そもそも必要がないようにさえ思える。
自分のものになった瑞希の体を見下ろしながら、真理奈はにやにや笑っていた。
「じゃあ直人、今日もあたしとエッチしようね」
「う、うん……」
真理奈と共にベッドに上がり込み、パジャマ姿のまま抱きしめられる直人。
日頃こうしていると真理奈の豊かな胸や力強い腕がよく実感できるのだが、
今はまるで同級生の少女と抱き合っているような錯覚を覚える。
本当にこの女は憧れの真理奈なのだろうか。思わず疑ってしまう直人だったが、
すぐ目の前にある彼女の顔は、相変わらずの大人の表情で彼に微笑みかけている。
(まりなお姉ちゃん……ほ、本物だよね……?)
真理奈の小さな手が直人の寝巻きにかかり、下をゆっくり脱がせていった。
白いブリーフをずらされ、まだ小ぶりな男性器が恥ずかしげに顔を出す。
彼女はその肉棒をもてあそぶように指で挟み、軽くしごき始めた。
「う……ん、あぁ……お、姉ちゃ……!」
「ふふ、どう? いつものあたしとどっちが気持ちいい?」
「え? そ、そんなこと聞かれても……」
好奇心をむき出しにした真理奈に問われたが、答えられるはずもない。
声が漏れる口を右手で押さえ、直人は無言で首を横に振った。
「ん〜、残念……。しっかし手だけってのも面白くないわね。
でもこの胸じゃ挟めないし、フェラじゃいつもと変わんないし、どうしよっかな〜?」
「はぁ、ああぁっ……あぁっ!」
袋と竿の根元を左手でつかみ、もう一方の手で幹と先端をしごき続ける。
手馴れた真理奈の動きに、まだ経験の浅い直人は喘がされるばかりだった。
すぐに肉棒はぴんと立って上を向き、未熟ながらも一人前に勃起してみせる。
真理奈はその様子を目を細めて眺めていたが、やがて両手の動きを止めた。
楽しそうに笑いながら直人を見つめる従姉。
「はぁ、はぁ……まりなお姉ちゃん……?」
「ふふふ……今度はあたしのを舐めてちょうだい」
唯一残されたピンクの下着も脱ぎ捨て、一糸まとわぬ姿になる。
蛍光灯の明かりに照らされた真理奈の肉体は、普段の官能的な肉欲ではなく
まだ幼い少女の愛らしさを直人の網膜、そして脳裏に焼きつけた。
直人は仰向けになって寝転がった真理奈の両脚に手をかけ、ゆっくりと開いていく。
「あ……」
日夜こうして性の知識を教え込まれているので、今さら女性器を見てもそううろたえはしない。
だが今の彼女のその部分は日頃と比べ物にならないほど毛が薄く、入口も随分と狭そうだった。
普段と全く異なる真理奈の割れ目の姿は、彼に新鮮な驚きを強要してやまない。
「こ、ここも小さくなってる……」
「そうよ。あんたにはこっちの方が、大きさ的にちょうどいいかもしれないわね」
直人は内心の興奮を抑えつつ、だんだん近づいていく。
そして真理奈の股間に完全に顔をうずめると、目を閉じて性器を舐め始めた。
まだ湿っていない陰唇に唾を塗りたくり、舌で慎重に撫で上げていく。
物慣れない少年の動きはたどたどしくもあったが、真理奈は半ば意識して声を漏らしていった。
――やはり感度がいまいち、見た目もそそらないだろうから雰囲気を出してやらないと。
そう思って声と息とを吐き散らし、少年の名を連呼する。
従姉の太ももを持ち上げた姿勢で、直人は犬のようにその秘所を貪り尽くした。
「あ――直人……ん、上手よ……」
「んっ、んん……」
割れ目の左右を充分に舐め上げ、そして上へゆっくり移動していく。
包皮に包まれた陰核はまだ露出していなかったが、彼は両の唇で真理奈の上半分をくわえ込むと
舌先で優しく、だが執拗にクリトリスをつつき回した。
「あぁっ、いい……はあぁっ…… !!」
普通の小学生にはとてもできない行動だが、これも彼女の教育の成果である。
直人は賢くて物覚えが良く、しかも真理奈に絶対服従。
彼女の方もこの年下の従弟をたいへんに可愛がっており、
こうして毎日のように早すぎる性教育を施しているのだった。
そろそろ男女の違いを意識し始める年頃の少年にとって、この従姉と過ごす日々は刺激が強すぎたが
どちらもやめようとする意思はなく、まさにやりたい放題といった状況だ。
「んむっ……ん、ちゅ、ぷはぁっ……」
「んっ、んああぁっ……あああぁんっ !!」
ブルブル身を震わせ、真理奈が背筋を反らして唾を吐く。
いつもの彼女と比べて絶頂に至るまでの時間がやや短かった気がしたが、
それもこの身体の異常のせいだろうか。
直人は従姉から一旦離れ、勃起した自分の陰茎を押さえて彼女を見守った。
細められた目はとろんとして焦点が合わず、熱い息の漏れる唇からは一筋の唾液が垂れ下がっている。
ベッドの上で仰向けのまま絶頂の余韻にひたる幼い少女。今の真理奈はそんな存在だった。
(それにしてもお姉ちゃん……ちっちゃくなって、なんか瑞希さんみたい……)
以前この家に遊びに来た真理奈の親友、森田瑞希の姿が頭をよぎる。
彼女も直人と同じく内気で気弱、その上小柄でかなりの幼児体型。
あまり真理奈と共通点があるようには見えなかったが、不思議と仲はいいらしい。
今の彼女を見ていると、まるで頭部以外がその瑞希のものになってしまったような錯覚に囚われる。
その考えは事実を正確に捉えていたのだが、事情を知らない彼にそれ以上の推測は不可能だった。
「はぁ、はぁ……直人……」
「まりなお姉ちゃん……?」
ようやくこちらに声をかけてきた真理奈。その表情だけは平生の加藤真理奈だ。
彼女は軽く身を起こし、両手を広げて直人を誘ってきた。
「ごめんね、あたしだけ気持ち良くなっちゃって。
あんたもそろそろしたいでしょ? ほら、こっち来て……」
「う、うん……わかった……」
腰から下が素っ裸の少年と、一糸まとわぬ全裸の少女。
顔以外はあまり変わらない年頃に見える二人の男女が近づき、静かに身体を絡め合った。
仰向けの真理奈にのしかかり、直人がパンパンに膨張した自分のものをぐっとあてがう。
真理奈も従弟の体に腕を回し、抱き合ったままゆっくり彼を受け入れていった。
彼女の首から下、瑞希の性器が真理奈の意思で直人のものと結合して一つになる。
「う……あ、お姉ちゃ……!」
「んんっ――ふ、太いぃ……っ !!」
小学生の未成熟な肉棒でも今の真理奈の膣を満たすには充分だった。
日頃は物足りないサイズで不満の残る性交も、今は激しい快感となって彼女の脳を侵す。
直人も直人で、自分の肉棒を締めつける狭い膣の感触にこれまでにない刺激を感じ、
我を忘れて腰を動かし、結合部を力の限りかき回した。
「あぁっ……! いい、直人いいよぉっ !! あんた最高っ !!」
「うあ、あつ――こ、これなに…… !?」
普段は年頃の男のものを苦労してくわえ込んでいる肉壷だ。
小学生の大きさがちょうどいいというのは情けない話で、持ち主が聞けば怒るかもしれなかったが、
今の二人はこの性器の組み合わせに存分に喘ぎ、あられもない痴態を晒して乱れ狂った。
真理奈と祐介、瑞希と直人。たとえ愛はなくとも体の相性は極めて良好らしい。
直人が真理奈を押さえつけ、浅い部分を円運動で責めたてる。
心地よい快感に彼女が背筋を震わせていると、突然奥まで一気に突き入れられた。
「ふあっ !? ああ――あぁ……!」
「おねえちゃ、おねえ……まりなお姉ちゃあん……」
愛しげに自分の名前を呼んで腰を振り続ける従弟。
女を喜ばせるテクニックを順調に習得しているのは好ましいことではあったが、
今の真理奈にはそれを褒めてやる余裕もない。
力いっぱい彼を抱きかかえ、両脚を直人に絡めて抜けないよう身を引き絞る。
おかげで根元まで突き刺さった肉棒が、そのまま真理奈の奥の奥まで突き進んできた。
深い部分をえぐられる刺激に呼吸が止まり、代わりに苦悶のうめきが口をついて出る。
直人も半ば無意識のうちに動いているようで、真理奈の苦しげな姿を省みず、必死に腰を前後させた。
まるで小学生同士の幼い交わりにしか見えなかったが、
少なくとも女の方はもう子供とは言えない容姿の娘である。
「す、すご――これ、すごいいぃっ!」
年上の余裕をすっかり無くし、小学生の男子に喘がされる真理奈。
いつもはありえない混乱と困惑が胸中に湧き上がったが、決して不快なものではなかった。
恵まれた体格、プロポーションのとれた肉体を誇りに思ってきた彼女にとって、
こんな幼児体型の肉体でもこれほどの快感を得られるというのは、実に意外な発見だった。
ずっとこのままでもいいとさえ一瞬ながら思ってしまったほどだ。
(まあ、さすがにそれはやめとくけどね。でも気持ちいいなあ、瑞希の体も……)
瑞希の身体になった真理奈と、真理奈の身体になった瑞希。
やはり彼女は自分の体で祐介を誘惑したのだろうか。彼に抱かれて鳴き叫んだのだろうか。
従弟の少年と交わりながら、真理奈は親友の少女に思いを馳せた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日。相変わらず客のいないドラッグストアの中で、真理奈と瑞希は元の姿に戻っていた。
二人とも返ってきた自分の肢体を見下ろし、本来の身体の感触を確かめる。
「よしOK。やっぱあたしの体のが動きやすいわね」
「ああ、私の体だ……おかえりなさい」
腰をひねって軽い運動を始めた真理奈と、腕を回して自分の体を抱きかかえる瑞希。
そんな二人の少女を見つめ、美貌の少年は爽やかに笑ってみせた。
「で、どうだった? 二人とも、昨日は満足したかい?」
「ええ、あたしは充分。瑞希、ありがとね」
「ま、真理奈ちゃん……ごめんね」
顔を赤らめた瑞希がうつむく。その仕草だけで彼女が昨日何をしたか容易に想像できたが、
そんなことはお互い様だ。瑞希の懸念をよそに、真理奈はどこまでも上機嫌だった。
二人の胎内にはそれぞれ恋人でもない男の精子がたっぷりと注がれ、今も卵子を求めて泳ぎ回っている。
真理奈はくるりと一回転し、カウンターの向こうに立つ少年に言った。
「いや〜、なかなか楽しかったわよ。あんたにも感謝したげるわ」
「そう? 喜んでもらえたなら何よりだよ。どういたしまして」
「それでさ、ちょっと聞きたいんだけど、
これ他のやつが相手でも首を取ったりつけたりできるのよね?」
「もちろんさ。老若男女、誰でも構わないよ」
そこでカウンターに肘をついてもたれかかり、彼女はにやりと笑った。
外の寒さも忘れてしまったのか、媚びるように少年にすがりつこうとする。
「じゃあさ、今度中川を連れてくるから、あいつの首をあたしのと交換してよ」
「えっ、祐ちゃんと !?」
自分とつき合っている幼馴染の名前をにわかに出され、瑞希が目を剥いた。
だが彼女は親友の困惑などお構いなく、自分の願望と欲望をずらずら並べ立てる。
「あいつなら体格も悪くないし、男の感じが味わえそうじゃない?
自分の体をあたしが襲っちゃう分には別に問題ないしさ。ねっ、お願い!」
「へぇ、それはなかなか面白そうだね。やってみようか」
「だ、駄目っ !! 駄目駄目駄目駄目、そんなの駄目ぇっ !!!
祐ちゃんにそんなことしないでっ !!」
「え〜、別にいいじゃない。きっと面白くなるって♪
どうしても嫌なら瑞希とあいつを入れ替えて、あたしがそこに加わってもいいわよ。
いっそ直人も入れてシッチャカメッチャカにするのも良さそうねえ」
「よしそうだね、じゃあ早速段取りを――」
「だから、祐ちゃんを巻き込まないでってばぁっ !!」
心底楽しそうな顔で喋り続ける真理奈と、必死でそれを止めようとする瑞希。
そしてその二人のやり取りを聞いて面白がる少年。
狭い店内には冬とは思えないほどの熱と活気が満ち満ちていた。
以上となります。
色々あって、最近なかなか投下できませんでした。
またぼちぼち書いていこうと思ってますので、どうかおつき合い下さい。
ご覧下さってどうもありがとうございました。
最後に個人保管庫を置いておきます。
このスレには立派な保管庫がありますが、こちらは私個人の倉庫なので
他スレに投げたスピンオフSSもしまいこんでいます。興味がある方はぜひどうぞ。
宣伝になってしまって、大変申し訳ありません。
ttp://www.s-ht.com/~senatika/ それではこれにて失礼します。どうもありがとうございました。
一番槍GJ
これもスワッピングの一種なのか?w
久々の投下GJでした!
484 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/04(金) 19:10:32 ID:waEwV6Gn
GJ!
少年のキャラが良すぎる。
友達にほしいわ。
GJ!
私が、そのマジックショーに足を運ぶきっかけは、今考えてみれば、それ自体が不思議としかいいようのないことからでした。
土曜日の午後、休日だったその日、買い物から帰ってきた私は、テーブルの上に積まれたDMの山の中から、そのチケットを見つけだしました。
ミレニアム・イリュージョン・マジックショー
かなり、月並みなネーミングが、そのチケットには書かれていました。
問題は、そのチケットの有効日が、それを見つけた当日だったことです。
幸いにも、開場は、夜8時からでしたし、今夜は、なんの予定もありませんでしたから、、時間的には、問題はありません。
もし、つまらなければ、そこで帰ってきてもいいのです。
会社での話題くらいにはなるだろうと想い、私は、会場に脚を運ぶことにしました。
会場の正確な位置を私は知らなかったので、駅前から、タクシーを利用しました。
流石に、プロのドライバーとなれば、その辺は、任せてかまわないところです。
10分ほどで、私は、その会場へとたどり着きました。
タクシーから降りた私は、想わず息を呑みました。
いつのまにできたのでしょう。
まるで、ラスベガスのホテルを彷彿とさせる(といっても私自身、ベガスに行ったことはありません。あくまでも、テレビなどでみた映像から、そう判断しただけです。)絢爛豪華な建物がそこにありました。
この辺りには、少なからず、来たことがあるはずなのに、こんな立派な建物があったとは、気づきませんでした。
とにかく、ここが、マジックショーの会場であることは間違い在りません。
建物の豪華さに気圧されながらも、私は、会場へと足を踏みれました。
受付で、チケットを提示すると、私は、丁寧にも席へと案内されました。
私の席の番号は、783番でした。
位置的には、やや前側のほぼ中央です。
なかなかステージが見えやすい位置といえるでしょう。
私が席に座った時には、6割程度の入りだった会場が、少しすると、急に観客も増えてきました。
幕開けの時間が迫ってきたのです。
観客席は、ほぼ満員になっていました。
まもなくステージが始まることを知らせるアナウンスが流れました。
場内を照らしていたライトが、ゆっくりとその照度を落としていきます。
不意に、BGMが流れ始めました。
ステージを隠していた幕が、ゆっくりと上がっていきます。
いくつものスポットライトが、ステージの上をてらしだし、肌も露わな格好の女性を従えたタキシード姿の男性が、姿を現します。
マジックの内容は素晴らしいものでした。
イリュージョンマジックだけに、いずれもおおがかりなものばかりですが、どれも、スケールが半端ではないのです。
5人の女性が、階段でも上るかのように宙に浮いたと想えば、彼女たちは、そのまま空中でダンスを踊り始めました。
アニマルプリント柄のドレスの女性が、檻の中に入れられました。
布地が、一瞬、その檻を覆い隠し、そして外されたその後、檻に中には、女性ではなく虎の姿があります。
途中で帰るなんてとんでもない!
私は、このマジックショーにすっかり魅入られていました。
ショーが始まってもうすぐ1時間と言うところでしょうか。
エプロンドレス姿の、7,8才くらいの愛らしい女のコがステージに姿を見せました。
ステージの中央まで、小走りに駆け寄ってくると、女のコは、ぺこりとお辞儀をしました。
その愛らしさに、会場に、小さなどよめきが生まれます。
私も、想わず、口元を緩めていました。
女のコが現れた反対側のステージの裾から、今度は、黄色く塗られた箱が1つ姿を見せました。
高さは130センチほど・・・この女のコより、やや高めと言うところでしょうか。
箱の途中には、それぞれ、上下から40センチ強ほどのところで、横に線が描かれており、3つの立方体が縦に重ねられたかのようなイメージがありました。
その線に合わせるようにして、箱の3つの蓋が開きました。
アシスタントの女性が、手を取って、女のコをその箱の中に、誘います。
女のコが、箱に入ると同時に、パタンと蓋が閉じられました。
これが、確かに箱であることを証明しようと言うように、アシスタントの女性が、ゆっくりと箱を回転させていきます。
箱が一回転し、その正面が、ステージに向いたところで、顔と足下の蓋が開けられました。
そこには、紛れもなく、女のコの顔と脚が見えます。
再度蓋が閉じられました。
マジシャンの男性が、箱の一番上・・・女のコの頭が入っているところに、両手をかけました。
いくら男性とはいえ、女のコの入ったこの箱を持ち上げられるとは想えません。
そう私が思ったとき、一番上の箱が、持ち上げられました。
そう、女のコの入った箱は、1つではなく、40センチほどの箱が3つ積み重ねられて造られていたのです。
残った2段分の箱は、もう1メートルほどの高ささえありません。
いくら小さな女のコとはいえ、こんな狭い箱の中では息苦しいのではないのでしょうか。
そう想ったとき、続いて、2つ目の箱が持ち上げられました。
残った箱は、45センチ四方ほどの小さな箱にすぎません。
いくら女のコとはいえ、この小さな箱の中に、入れるとは想えません。
分割された3つの箱が、それぞれ、テーブルの上に横に並べられました。
一体、女のコはどうなってしまったのでしょうか?
マジシャンの手が、今度は、バラバラになった箱の蓋にかけられました。
彼が手を伸ばしたのは、脚の入った箱のはずです。
なんの遠慮もなしに、マジシャンは、蓋を開きました。
もしこれがマジックでなければ、残酷な場面に他ならない光景が、そこにあるはずでした。
しかし、その想像は裏切られました。
確かに、そこには、箱と一緒に3分割された女のコの脚がありました。
スカートの裾に、フリルのついた白いソックス、光沢のある赤い靴。
しかし、箱の中は血塗れではありません。
それどころか、その小さな足がステップさえ踏んでいるではありませんか。
胴体から切り離されているにも関わらず、脚が動いているのです。
続いてマジシャンは、胴体の入った箱の蓋を開けます。
そこには、やはり分割された胴体がありました。
もちろん、白いエプロンには、赤い染み1つありません。
女のコの手が、落ち着かない素振りで、ドレスのフリルを触っています。
そして、遂に、マジシャンの手が、最後の箱の蓋にかかりました。
果たして、そこには、女のコの頭が入っているのでしょうか。
知らず知らずのうちに、私は、息を呑み、両手をぎゅっと握りしめていました。
マジシャンの手が、勿体ぶった動きで、蓋の留め金を外します。
指先がゆっくりと蓋にかかり、次の瞬間、まるで、バネが弾けるように、ぱっと蓋が開けられました。
観客席から、どよめきが起こりました。
半ば、予想し期待していたこととはいえ、それを現実に目の辺りにした時の驚きが0になるわけではありませんでした。
いや、むしろ、想像していただけに、驚きがそのまま興奮へと繋がったのでしょうか。
箱の中には、紛れもなく、女のコの首が入っていました。
無論、血など一滴も流れてはいません。
自分を照らし出すスポットライトがまぶしいとでもいうように、その目が、瞬きました。
女のコの頭は、まるで、自分がバラバラになったことを喜んでいるかのように笑顔を振りまき、両手は振られ、両脚は、楽しそうに箱の中でステップを踏んでいます。
バラバラになっているにも関わらず、この女のコは、確かに生きているのです。
いくらタネも仕掛けもある手品とはいえ、どうやったらこんなことができるのでしょう。
観客の拍手は鳴りやむことを知りません。
そして、それは私も同じことでした。
女のコの箱が、再び、縦に重ねられました。
マジシャンの手にはいつのまに(多分、これもマジックなのでしょう。)マイクが握られていました。
「ここで、ちょっと観客の皆様に、お手伝いをお願いしたいと想います。それでは・・・783番の方。」
783・・・それは私の番号のはずです。
いつのまにか、私のすぐそばに、アシスタントの女性が2名、やってきていました。
彼女たちが、手のさしのべてきては、もはや拒絶するわけにもいきません。
それに、私自身、どのようなことになるのか、興味はありました。
ステージの上にあがることに恥ずかしさはありましたが、それ以上に、この後、何が起こるのか・・・それも自分の身に・・・そのことへの好奇心が勝りました。
私が、ステージにあがると同時に、観客席から、一斉に、拍手が起こりました。
恥ずかしさは、相変わらずあったものの、注目とスポットライトを浴びる、それもステージの上でとなれば、それは決して不快なものではありません。
もっとも、そうと分かっていれば、もっとおしゃれをしてくるんだったと想いましたが。
そんな私の想いを読みとったのでしょうか。
私の目の前で、大きな布が、波打つように振られました。
一瞬、視界が布で覆われます。
不意に、私は、感触の変化を感じました。
布が、床へと落ち、視界が元に戻った瞬間、観客席から、一斉に拍手が起こりました。
一体、何が起こったというのでしょう。
私は、不意に、肩のあたりに、風が吹き抜けるのを感じました。
そして、肘の辺りから、指先へ、何かに軽く締めつけられるような感触も。
先ほどまで、私が着ていたはずのブラウスとフレアスカートは、どこにもありません。
一瞬のうちに、私の服装は、ダークパープルのカクテルドレスと、肘までの手袋、そして、シルバーのピンヒールへと変わっていました。
衣装の早変わりは、テレビのマジックショーで、何度か見たことはあります。
しかし、アシスタントの女性が相手なら、予め重ね着するなど、仕掛けを施すこともできるでしょうが、観客席からあがってきたばかりの私が相手では、一体、いつタネと仕掛けを用意できるというのでしょう。
それとも、これこそマジックとでもいうのでしょうか。
先ほどの女のコの入った箱より、箱1個分、つまり、45センチほど高くなった箱が、ステージに姿を現しました。
私のすぐそばまでやってきたその箱の蓋が、開かれました。
マジシャンの男性が、私に、その箱に入るようにと、仕草と視線で、指示してきました。
私の身体も、あの少女のように、バラバラにされてしまうのでしょうか?
自分がバラバラにされると言うことへ、一瞬恐怖を覚えた私でしたが、やはり、どういう仕掛けなのか気になりましたし、それに、これは、あくまでも、マジックにすぎないという事実を想い出しました。
バラバラになった少女の手と足は、精巧なダミー、あるいは他の人間が、箱の裏側や下から、その部分だけを突き出しているのでしょう。
無論、いくら、目を凝らしても、そういった仕掛けは、どこにあるのか、皆目見当もつきませんでしたが、そもそも、そう簡単に分かってしまっては、マジックとはいえません。
どういう仕掛けなのかは、断言できませんが、身をもって体験すれば、それも分かるに違い在りません。
意を決して、私は、箱に中に入りました。
私が箱に入ると同時にその蓋が閉められます。
想っていたより、その箱は、密閉性が高かったようです。
蓋が閉められた途端、その中には、一筋の光も射し込まなくなり、完全に暗闇となってしまいました。
あまりに暗さに、私は、自分の身体さえ、見ることがかなわなくなってしまいます。
しかも、この箱は、大人である私には、余りにも狭すぎ、手も足も、ろくに動かすことができなくなっていました。
不意に目の前の蓋が開き、と同時に、足下からも光が射し込んできました。
どうやら、私が、確かに、この箱の中にいることを、観客に確認して貰うため、蓋を開けたようです。
しばらくして、再度蓋が閉められました。
私は、またもや暗闇の中に、閉じこめられたことになります。
不意に、頭の両脇の板から、軽い振動が伝わってきました。
何かが、箱・・・その両脇から触っているかのような感触です。
次の瞬間、私は軽い浮揚感・・・エレベーターで、上の階へと向かうときにも似た感触を覚えました。
持ち上げられている?
そう想った時、新たな異変に私は気づきました。
身体の感触は、突如消え失せていたのです。
まず、手そして指の感触がなくなっていることに気づきました。
そして、箱の底を踏みつけているはずの両足の感触も。
狭い箱の中で、ろくに動かすことができないとはいえ、身体の感触までなくなるとは、一体、どういうことなのでしょうか。
首から下の感触がなくなってしまったことに、私は、悲鳴を上げそうになりました。
後数秒時間が在れば、間違いなくそうしていたでしょう。
混乱した私は、そこで、ことんという小さな音と振動の感触に気づきました。
いつのまにか、浮揚感が消え去り、途端に身体の感触が戻ってきました。
床を踏み立っている脚の感触、そして、間違いなく、指を閉じたり開いたりもできる手の感覚。
私が、暗闇の中で、ほっと安堵のため息をはいたその時、いきなり、箱の蓋が開けられました。
それほど長い時間ではなかったとはいえ、暗い箱の中に閉じこめられていた私には、照明の光が、突き刺すように感じられます。
観客席から、われるようなどよめきと拍手がおこりました。
一体、なにがあったというのでしょうか。
先ほどまで、暗闇の中に閉じこめられていた私には、分かるはずもありません。
アシスタントの女性の手招きに応じて、箱から、脚を踏み出した私は、そこで、違和感を覚えました。
どう言ったらよいのでしょう。
十数秒後、私は、その理由に気づきました。
目線の位置が低くなっているのです。
ステージ上のマジシャンやアシスタントの顔が、私の遙か頭上にありました。
まるで、両膝を地面についている体勢のような高さです。
無論、膝をついているはずがありません。
両足からは、確かに、その両足で立っているという感触が伝わってきます。
一体、私はどうなってしまったのでしょうか?
私は、足下に視線を向けました。
もしかして、自分が立っているその場所が、一段沈んでいるのではないか、そう想ったからです。
しかし、その考えは、呆気なく裏切られました。
私が立っていたのは、アシスタントの女性達と全く同じ高さの床の上でした。
しかし、別の事実が私を、驚愕の底へと、突き落としました。
またもや、私の服装が変わっていたのです。
箱に入る前のカクテルドレスではありません。
といっても、その前の、ブラウスにスカートという格好でもありません。
今の私の服装は、あの女のコと同じエプロンドレスになっていたのです。
無論、それだけなら、私は、それほどまでに驚きはしなかったでしょう。
私を驚愕させたのは、そのエプロンドレスに包まれた私の体型でした。
見下ろしているとはいえ、自分の体型の変化は一目瞭然でした。
そもそもこの視界の低さ自体、今の私の変化を明確に物語っています。
私の身体は小さくなっていました。
そう、先ほどの女のコのように!
私が見下ろしている私の身体は、まるで、7,8歳の少女のようになっていたのです。
私は、恐る恐る自分の手を、顔の高さまで持ち上げました。
エプロンドレスに包まれた小さな腕が、ゆっくりと持ち上がってきます。
自分でも、細くて綺麗だと自信のあったその指が、そこにはありませんでした。
以前とは、半分ほどにまで小さくなったその手・・・そしてその指は、ふっくらとした可愛い指でした。
不意に、私のそばに、鏡が移動してきました。
大人でも、ほぼ全身が映しだせるような大きな姿見です。
反射的に、私は、鏡の方へと振り向いていました。
今の自分の姿を確かめずにはいられなかったからです。
一目見ただけで、私は、絶句せざるを得ませんでした。
まさかという想いは、鏡を見る前から、頭の中に浮かんでいました。
そこに映し出されていたのは、紛れもなく、子供の身体・・・エプロンドレス姿の・・・先ほどの女のコの身体でした。
その上に大人である私の頭が載せられた・・・
そう、私は、首から下だけ、子供になってしまったのです。
ただ、単に、箱の中の身体がバラバラになるのなら、トリックだと考えることもできます。
しかし、首と身体をすげ替えるなんて、これは本当にマジックでできることなのでしょうか?
はっと、振り向くと、そこには、黄色の2段重ねの箱の上に、赤い箱が1つ置かれていました。
その箱の蓋は開けられていました。
私は、そこから、出てきたのでしょうか?
そしてそのすぐ脇には3段重ねの赤い箱の上に、黄色い箱が1つ置かれていました。
まさか・・・
私がそう想った瞬間、箱の蓋が開きました。
私の予想は違いませんでした。
あの女のコの首がついた私の身体が、箱の中から、姿を見せたのです。
際どい位置まで伸びたスリットから、惜しげもなく、脚を晒し、その女のコは、ゆっくりと箱の中から、外へと出てきました。
観客席から、再び拍手が鳴り響きます。
これは、本当にマジックなのでしょうか。
首と首をすげ替えるなど、もはや、これは、タネや仕掛けというレベルではない本当の魔術としか想えません。
私の身体を得た女のコは、すっと私のそばに立ち並びました。
40センチ以上、背が小さくなってしまった私は、必然的にその姿を見上げることになってしまいます。
首をすげ替えられた、それとも身体を入れ換えられた。
もっとも、結果は同じことです。
私の頭は、女のコの身体に、女のコの頭は、私の大人の身体に。
観客席から、どっと割れるような拍手が鳴り響きました。
観客にしてみれば、これも全てマジックと想っているのでしょう。
しかし、当事者となってしまい、こんな不思議な姿となってしまった私には、これが、とてもマジックとは想えませんでした。
まるで、悪い夢でも見ているかのようです。
いや、夢の中でさえ、こんなことがあり得るとすら想えないほどでした。
「え〜ん、あたしの身体、かえしてえ!かえしてえ!・・・!?」
そう叫んだ私は、そこで言葉を継ぐことができなくなってしまいました。
私の発した声は、大人のそれではなく、どう聞いても、幼い女のコの声です。
いえそれどころか意識してそうしたわけでもないのに、口調や言葉遣いまで、女のコそのものになってしまっています。
まるで、いじめっ子に、オモチャをとられてしまった女のコのような声と口調です。
私は、本当に、自分が、小さな女のコになってしまったような気がして、不安に陥りました。
私は、どうなってしまうのでしょう。
不安と恐怖の余り、私は、泣きそうになっている自分に気づきました。
そう、小さな子供の様に。
私の不安に気づいたのか、女のコの首がついた私の身体が腰をかがめたと想うと、腕を伸ばし、私の頭をやさしくなで始めました。
自分の髪を梳いていく指の感触に、私は、なぜか、心が落ち着いていく自分に気づきました。
私の身体を得た女のコが、私に、もう一度、箱の中へはいるようにと誘います。
まるで、素直な子供が、母親に言われるままに、布団に入るかのように、私は、箱の中に入りました。
私が箱に入ると同時に、再び蓋が閉じられました。
先ほど同様の軽い浮遊感とと同時に、身体の感覚の消失。
私は、ようやく、元の身体に戻れると思い、安堵しました。
しかし、それが甘い考えだったと、私は、思いしることになるのです。
ややあって、ようやく、身体の感覚が戻ってきました。
ああ、やっと、元に戻れた。
無意識のうちに、私は、安堵の息を吐いていました。
しかし、その安堵も、数秒足らずのことでした。
確かに、身体の感覚は戻ってきました。
にも関わらず、身体の違和感は消え去りません。
それはまず足下が、どうにもおぼつかないという感触で現れました。
まるで、酔いが回ったか、あるいは、不安定な足場に立っているかのような、そんな感じが全身に付きまとっています。
箱の蓋が開きました。
私は、飛び出すように、箱から外へ出ました。
なにより、自分の身体を、確かに見て触って確かめたかったからです。
にも、関わらず、私の身体は、なかなか外に出てくれません。
確かに、脚は動いているはずなのに、身体が前へと進んでくれないのです。
焦れったさを感じつつも、ようやく箱から出た私は、急いで、自分の身体を見下ろしました。
期待・・・願望ともいえるそれは見事に裏切られました。
私の目線と床までの距離は、40センチほどしかありませんでした。
今度はまるで、腰を床におろしてしまったかのような視線の低さです。
もちろん、腰をおろしているはずはありません。
かなり頼りない感じですが、今の自分が、脚で立っているという感触は伝わってきます。
最初に見えたのは、本来の私の握り拳ほどもない小さな足でした。
ピンク色の可愛らしい小さな靴下と、小さなスニーカーを履いたその足は、先ほどの少女のモノより、更に小さなモノです。
続いて、目に入ったのは、私の身体を包むオレンジ色のベビードレスでした。
慌てて、両手を目の前にかざそうとしても、その指先は、私の目の高さまで届きません。
辛うじて視界に入ったその指は、まるで、ゼリービーンズのような、短くてふっくらとした小さな指でした。
再び、姿見が、私の前にすえられました。
ここまで見たものによって、今の自分がどのような姿になっているか、ある程度想像できていたとはいえ、やはり、鏡に映った自分の姿は、衝撃的でした。
頭は、確かに私のモノでした。
しかし、そこから下は、全く違います。
ふっくらとした腕と、立っていられるのが不思議なくらい小さな足。
オレンジ色のベビードレスの裾は、服の意味がないほどに短く、そこから、紙おむつが、姿を見せていました。
私は、赤ん坊のような小さな身体に首をすげ替えられてしまったのです。
もはや、これは悪夢としか言いようがありません。
「あ、あたち、あかたんになったったの?」
想わずそう叫んだ私の声は、舌足らずな・・・そう赤ん坊そのものな口調と声に変わっていました。
元々安定性の悪い幼児の体型に、大人である私の頭が加わったためでしょうか。
立っているだけでも、少なからず精神と筋肉の緊張を必要としています。
ふと、脇を見上げれば、本来の私の身体についた少女の顔が、どこか、母性を感じさせる笑みを浮かべながら、私のことを見つめていました。
無意識のうちに、私は後ろ図去っていました。
が、これが失敗でした。
バランスの悪い私の身体は、後ろへ体重をかけた途端、辛うじて保っていたそのバランスを失ってしまったのです。
一度、均衡を失ってしまうと、もはや、それを取り戻すことは、至難の業でした。
数秒の無意味な格闘の末、私は、両足が床から離れた感触に気づきました。
ずっこーん!という、重みに欠ける騒々しい音と同時に、後頭部に、痛みが走ります。
耐えられないほどの痛みではなかったはずなのに、一度、痛みを感じると、湧き出すように涙が、溢れ出てきました。
それと同時に、声を抑えることもできなくなってしまいます。
「うえ〜ん!うわーん!ふえ〜ん!」
私は、まるで赤ん坊そのもののように泣き出していました。
痛みそのものよりも、身体をすげ替えられたという、あまりにも理不尽な自分に降りかかってきた状況への不安と恐怖と苛立ちが、一挙に溢れでたための涙だったかも知れません。
不意に、私の両脇に、手が伸びてきました。
あっと想う間もなく、私の小さな身体は、持ち上げられていました。
持ち上げられた弾みで、危うくバランスを失い、ひっくり返りそうになった私は、慌てて、マジシャンの身体にしがみつきました。
これでは、父親に甘えている赤ん坊そのものです。
不意に、マジシャンは、私を抱きかかえていた腕をまっすぐに伸ばしました。
そう、私の身体を、観客席の方へと突き出すように。
観客席から、再びどよめきがおこります。
無理もありません。
赤ん坊の小さな身体の上についているのは、大人の女性の頭なのです。
観客席のどよめきとは裏腹に、私は、こんな不思議な身体となってしまった自分が、見せ物・・・さらしものにされているかのようで、耐え難いモノがありました。
「いやん、やだやだあ・・・」
私は、必死にあがいて、マジシャンの手から逃れようとしますが、今の私の小さな手足では、どうすることもできません。
むしろ、あがいているうちに、身体がずり下がってしまったためか、もともと、短かった裾から、紙おむつが姿を見せてしまいました。
「や、やだ・・・はじゅかちい・・・」
私は、必死に、裾を引き下ろして、紙おむつを隠そうとしましたが、小さく短な腕では、ろくに、裾をさげることすらできません。
大人の女性の顔に、おむつをした身体というアンバランスさのためでしょうか。
会場から、失笑がまきおこりました。
「あ〜ん、やめちぇやめちぇ・・・」
恥ずかしさと悔しさのあまり、私は、再び泣き出しそうになっていました。
それを察したのか、私の身体は、マジシャンから、他の手に渡されました。
私を受け取ったのは、私の身体を得たあの少女でした。
彼女は、まるで自分が、私という赤ん坊の母親であるかのように私の身体を抱きかかえました。
やはり、園からだが女性であるためでしょうか。
男性であるマジシャンの腕の中に比べ、どこか、落ち着くような感じがありました。
ちょっと落ち着きを取り戻した私の目の前に、突き出されたものがあります。
それは、プラスチックの容器に、黄色の吸い口のついた哺乳瓶でした。
もちろん、中には、白色の液体・・・ミルクが入っています。
いくらなんでも、哺乳瓶とは・・・
子供、いや赤ん坊のような扱いに、屈辱を覚えずにはいられません。
そんな想いにも関わらず、私の口は、私の意識に逆らうようにして、哺乳瓶をくわえていました。
吸い口のゴムの味が、口の中に広がり、次の瞬間、生ぬるい・・・人肌のミルクが口の中に、広がります。
美味しいというほどではありませんが、想ったよりは、まずくはありませんでした。
人肌の温度であることと、哺乳瓶のせいでしょうか。
どこか、懐かしい味がしました。
私の喉が、こくんこくんと音をたてながら、ミルクを飲み込んでいきます。
一口飲むことに、自分のお腹が満たされていくことが分かりました。
哺乳瓶の半分も飲まないうちに、私は、満腹感を覚えていました。
ベビードレスのお腹のあたりが、ぽっこりと盛り上がっていることが、自分でも分かります。
お腹だけではなく、心まで満たされてしまったのでしょうか。
いつのまにか、私は、吸い込まれるような眠気を覚えていました。
少女の頭のついた私の身体が、まるで私をあやすようにして、私の身体を、小さくゆっくりと揺らし始めました。
ゆっくりとした心地よいリズムに、私は眠気を覚えました。
もはや、睡魔に抗う気力もありません。
私の意識は、そのまま、闇の中へと落ち込んでいきました。
気がつくと、私は、自分の部屋のベッドの上にいました。
と同時に、昨夜の悪夢の様な体験が蘇ってきました。
慌てて、私は、自分の身体へと視線を向けました。
パジャマ越しに見えるその身体は、確かに大人のものと想えました。
着ていたパジャマも下着も脱ぎ捨て、私は、改めて、自分の身体を見つめ直します。
全裸となったその身体もまた、確かに、見慣れた自分の・・・大人の女性の身体でした。
あのマジックショーの痕跡は、微塵も捉えることができません。
一体、あのマジックショーは、なんだったのでしょうか。
その後、私は、あの晩の会場へと脚を運ぼうとしました。
もはや、マジックショーなどやっているはずもなかったのですが、やはり気になりました。
しかし、遂に、私の、あの会場へとたどり着くことはできませんでした。
タクシーに乗っていたとはいえ、途中の風景や道順は、それとなく覚えていたはずなのに、その会場の建物が見つかりません。
電話帳で調べても、タクシーの運転手に聞いても、あの夜の会場を見つけることはできませんでした。
あの夜の出来事は、本当に夢にすぎなかったとでも言うのでしょうか。
しかし、あの夜以来、私の心の中に、それまで存在しなかった想いが、確かに根付いていました。
なぜなのか、自分でも分かるはずもありません。
ですが、あれ以来、街の公園や、駅のホームで、赤ん坊が哺乳瓶に口を付けているところを見かける度に、その吸い口にしゃぶりつき、ミルクを飲み干したいという渇きにも似た衝動を覚えずにはいられないのです。
GJ! 素晴らしい。
う〜ん、読ませるな。職人芸。
GJ
赤ちゃんのまま犯したい。
エロはないけどGJ!
やっぱりすげかえはいいね
あとそろそろ次スレの季節
エロクは無いけど、文章に魅力があるね。
文才を感じるよ!
500 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 20:19:52 ID:YoZANziF
GJ!
幼女になった時にエッチなことしてほしかったかも
次スレか
結構続くなこのスレ
「それじゃ、朋美、お留守番お願いね。戸締まりと火の元だけには、注意して。」
「分かってるから、安心してよ。ママ。」
幾度、念を押されたことだろう。
少々どころか、かなりうんざりしながら、朋美は、母親に返事を返す。
「朋美ちゃん。千紗のこと、お願いね。」
「大丈夫。まかせておいて。おばさん。」
叔母に、自信満々に応える朋美。
「千紗も、ちゃんと朋美お姉ちゃんのいうこと聞くのよ。」
「うん」
朋美のそばで、10歳くらいの、髪を三つ編みにしたジャンパースカート姿の女の子が頷く。
事の起こりは、朋美の両親の曾祖母が亡くなったことから始まる。
当然、朋美の両親は、葬儀に出席することになり、一人っ子である朋美は、留守番ということになった。
ここで、1つの問題が浮上した。
朋美の自宅に近所に、朋美の両親の弟夫婦・・・つまり、叔父と叔母が住んでおり、近所と言うことで、なにかと深いつき合いになっているのだが、当然、彼らも、葬儀に出席する必要があった。
問題は、この夫妻の子供・・・今年で10歳になる千紗のことだった。
曾祖母の住居は、かなり遠方だったため、飛行機を使っても、片道だけで、ほぼ1日近くかかる。
葬儀が終わった後も、すぐに帰るわけにはいかないから、下手をすると3、4日は帰ってこれないことになる。
幸いにも、ちょうど3連休と重なったため、有給などの休みは、問題ないにしろ、高校生16歳の朋美ならいざしらず、小学生の千紗を1人にしておくわけにもいかない。
とはいえ、一緒に連れて行くにしても、問題がある。
「じゃあ、あたしが面倒見ようか。ちょうど、お休みなんだし。」
両親のつき合いが深い以上、朋美と千紗もまた、会う機会が多く、千紗の子守をしたことも一度や二度ではない。
実際、一人っ子の朋美にとって、千紗は妹同然の存在だった。
両親と叔父夫婦の相談の結果、この際、朋美に任せてみようと言うことになったのだ。
千紗にとっても、知らぬ家ではないし、ホームシックになることもないだろう。
「それじゃ、後のことお願いね。」
どこか、不安げな母親の視線を受けながら、朋美と千紗は、両親の出発を見送った。
「それじゃ、千紗ちゃん。宿題、すませちゃおうか。」
「え〜」
折角のお休み、両親の目が離れた隙に、お姉ちゃんと遊んで貰おうと想っていただけに、千紗は、落胆の混じった声をあげる。
「ぼやかないぼやかない。先に宿題すませちゃえば、残りの2日間、遊んでいられるでしょ。分からないところは教えてあげるから。」
それから、1時間ほど、朋美は、千紗の宿題につき合うことにした。
大好きなお姉ちゃんに教えて貰えるだけに、千紗は、素直に、宿題に取り組んだ。
ぼーん・・・ぼーん・・・
柱時計の音が、10時を告げる。
「あ、それじゃ、10時のおやつにしようか。ホットケーキ、焼くから。」
「わ−い!」
宿題から解放されることも手伝って、千紗は歓喜の声をあげる。
メイプルシロップとバターのたっぷりと載ったホットケーキは、千紗の大好物だ。
フライパンを、一旦、火にかけ暖めている間に、ホットケーキミックスを、ボウルに移し、かき回し始める朋美。
「お姉ちゃん、あたしも、なにかお手伝いしようか。」
「えーと、それじゃ、お皿出してくれる。」
まだ10歳の千紗にとって、お皿の入った戸棚は少々高かった。
台所の隅から、踏み台をもってくると、そこに登って、お皿を取り出そうとする。
一方、フライパンの具合を見ていた朋美は、その踏み台が、ぐらついていたことに気が付かない。
取り出したお皿を落とさないようにと、意識がそちらにいってしまっている千紗は、いつのまにか、体制が崩れていた。
「あ、あれ?」
ひっくり返りそうになっている自分の千紗が気づいたときには、もう遅かった。
「きゃあ!」
お皿を宙へと放り投げながら、踏み台から転げ落ちそうになる千紗。
その悲鳴に、朋美は、ようや異変に気づいた。
「千紗ちゃん!」
ボウルを放り出し、千紗の身体を支え・・・それが適わぬなら、受け止めようと試みる朋美。
だが、彼女の運動神経は、決して誉められるモノではなかった。
足下が滑り、彼女は、そのまま、千紗の落下地点へとヘッドスライディングをかけることになってしまった。
ごん
固いものどうし・・・たとえば、頭と頭・・・がぶつかりあう鈍い音が台所に響く。
後頭部に、激痛を覚えながら、朋美の意識沈む様に消えていって
・
・
・
どれくらい気を失っていたのだろう。
朋美が、意識を取り戻したきっかけは、ずきずきと疼き響くような頭の痛みだった。
(な、なんで、頭がこんなに痛いのよ・・・)
無意識のうちに、痛む部分をさすろうと、朋美の手は、頭へと伸びていた。
その指先が、なにか編み込みのようなものに触れる。
(?)
ショートヘアの朋美の髪型では、編み込みなどできようはずもないのに。
(な、なに?)
両手で、頭をさすり直す。
左右の両手が、それぞれ、左右に1本づつ編み込まれたそれを感じ取る。
と同時に、自分の髪に、手が触れているという感触も。
(え、なな、なんで、これって、あたしの髪?!)
「う、うう・・・ううぅんんん・・・」
不意に、すぐそばで、どこかしらアンニュイな声が聞こえた。
(だ、だれ・・・そうだ!千紗ちゃん!)
ようやく、台所での一件が蘇ってくる。
踏み台から、落ちそうになった千紗を受け止めようとして・・・
声のした方へと視線を向ける朋美。
(千紗ちゃん!・・・?!)
しかし、そこには千紗の姿はなかった。
変わりにそこに横たわっていたのは、16歳くらいにみえる少女の姿だった。
しかし、それだけなら、朋美も、それほどまでには驚かなかっただろう。
朋美が、そこまで、驚いた理由。
それは、彼女の目の前に横たわっている少女・・・その姿が、朋美そのものだったからだ。
朋美は、テレビか何かで臨死体験をした人の話を聞いたことを思い出した。
いや、もしかしたら幽体離脱だったかもしれない。
ともかく寝ている自分の姿を自分で眺めているという今のシチュエーションは、正にそれである。
「ってことは、もしかして あたし死んじゃったの!?」
これはエラいことである。何が悲しくて二十歳に満たない若さで仏様にならなければならないのだろう。ともかく早いとこ生き返らなければいけない。
朋美は横たわってる自分の頬をべちべち叩いてみた。
「ちょっと起きなさいよ!あたし!!」
自分に向かって話しかけるというのも、なんだかおかしな気分。
「・・・うぅん」
とりあえずまだ息があるようだ。しかし、それっきり意識が戻る気配はない。
「頼むから起きて!起きてよ!あたし!」
自分に頼む自分というのも、これまたおかしな気分である。
しかし自分の身体は起きる気配はなかった。
これはヤバい。
朋美は保健体育の授業をまじめに受けなかったことを思いっきり後悔しつつ、乏しい知識を総動員した。
「・・・そうだ、人工呼吸!」
息をしてる相手に人工呼吸してもムダなような気もするが、それしか思いつかなかったのである。
朋美は寝ている自分に馬乗りになって胸に手を当てた。
ややこしいが、寝ている自分の胸に手を当てたのである。
ムニュニュ
「え?」
なんだか大きいような気がする。手のひらサイズだと思っていたのに、いつのまにか成長していたようだ。今は手を大きくはみだしている。
一瞬うれしくなる朋美であったが、今はそれどころではない。その豊満な胸をせっせと押した。自分で自分の胸を押すというのもこれまたヘンな気分である。
「いいかげん起きなさいよ私っ!」
が、自分は起きなかった。となれば後はマウスツーマウスしかない。朋美は寝ている自分の鼻をつまんで唇を近づけた。
「・・・」
自分で自分にキスするのはとんでもなくヘンな気分である。なんというか、すごく照れる。
朋美は一瞬ためらったが、しかし命にはかえられない。
意を決してガバと覆いかぶさったその時
「ほ、ほえ・・・?」
寝ていた自分が目を開けた。10センチをきる至近距離で見詰め合う自分と自分であった。
これはもう思いっきりおかしな気分だ。
うつろだった目に焦点が戻り、寝ていた自分ははっとしたように言った。
「あたし…?」
「そうよ!あたしよ!良かった気がついて…」
自分の手をとり心から喜ぶ朋美であったのだが、心の底から安堵しつつも朋美の心の中には違和感が芽生えていた。
意識が戻ったのはめでたいけれど、それを喜んでいる自分はいったい誰? というか、握っている自分の手が今の自分の手よりも大きいのは気のせいかしら…。
そのとき寝ていた朋美が叫んだ。
「なんで千紗が2人いるの!?」
そう言いながら朋美の前の朋美はガバっと起きあがった。腹の上に馬乗りになっていた朋美はそのままひっくり返って床に落ちる。
「いたた・・・あたしったらなんて乱暴なのよ もお…」
と言いかけて、寝ていた自分が言ったセリフを思い直した。彼女は自分のことを千紗と言ったような気がする。
「も、もしかしてあなた、千紗ちゃん!?」
「ほえ・・・?じゃあ、あなたは誰?」
「誰もなにも朋美に決まってるじゃない!」
「・・・え?」
二人は3秒ほど顔を見合わせてから、はっと気がつき、自分の体を見下ろした。
今の朋美が着ていたのは、ジャンパースカート・・・先ほどまで千紗が着ていたはずのものだ。
「なんで私、千紗ちゃんの格好してるのよ〜」
「きゃあ、朋美姉ちゃんの服・・・」
「・・・」
またまた二人は2秒半ほど顔を見合わせてから、同時に立ち上がって居間にダッシュした。そこには大きな鏡が置いてあるのだ。
鏡に映ったのはいつもと変らない二人の姿だった。けっこうキレイな朋美と可愛らしい千紗。
「ふぅ…」
ほっとしかけた二人だったが、次の瞬間に猛烈な違和感に襲われた。鏡に向かっている二人と鏡に映っている二人の左右が逆なのだ。
「これって…」
「もしかして…」
二人は互いにそう言いかけて、同時に口を押さえた。自分の言葉に合わせて鏡の中で口を動かしたのが相手だと気づいたからである。
「きゃああああ〜」
閑静な住宅街に、二人の女の子の声が響き渡った。