☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第85話☆

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1名無しさん@ピンキー
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレです。


『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をしたほうが無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」…「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶことが出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけてください。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントすることが多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

『注意情報・臨時』(暫定)
 書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
 特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
 投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。

リンクは>>2
2名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 23:00:10 ID:DMxM8X1q
【前スレ】
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第84話☆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1221058157/

【クロスものはこちらに】
 リリカルなのはクロスSS倉庫
 http://www38.atwiki.jp/nanohass/
 (ここからクロススレの現行スレッドに飛べます)

【書き手さん向け:マナー】
 読みやすいSSを書くために
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5301/1126975768/

【参考資料】
 ・Nanoha Wiki
  ttp://nanoha.julynet.jp/
  (用語集・人物・魔法・時系列考察などさまざまな情報有)
 ・R&R
  ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/data_strikers.html
  ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/date_SSX.html
  (キャラの一人称・他人への呼び方がまとめられてます)

☆魔法少女リリカルなのはエロ小説☆スレの保管庫
 ttp://red.ribbon.to/~lyrical/nanoha/index.html  (旧)
 ttp://wiki.livedoor.jp/raisingheartexcelion/   (wiki)
3名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 23:05:06 ID:Ht0GpWqE
>>1乙!
4名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 23:10:35 ID:3QT6S77H
  [`┏┓´] < >>1乙っぱあああああああい!!!!!
5名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 23:17:35 ID:PWCTE+dw
誰もいないかもですがフェイト×エリオで投下してみます
6目覚めた先に 1/4:2008/09/21(日) 23:23:13 ID:PWCTE+dw
フェイト×エリオ
エロあり

目覚めた先に

「ふんふんふ〜ん」
フェイトが今にもスキップをしそうな上機嫌で隊舎の廊下を歩いていく。
「エリオたちは部屋かな?今日は休暇のはずだし」
係争中の事件が解決したことで発生した突発休暇を家族のために使うつもりらしい。
「二人とも寂しい思いをさせてばかりだもんね。偶にはこういうのもいいよね」
自らに言い聞かせながら二人の部屋へと向かっていく。その顔は執務官としての
厳しさではなく、母親としての優しさに包まれていた。

「エリオ〜キャロ〜」
フェイトは部屋に入ると子どもたちを呼んでみるも返事は返ってこなかった。自分の声だけが空しく木霊する。
「また自主練でもしてるのかな?いいことだけどたまには休んでも…」
フェイトが残念に思いながらため息をつくと、微かではあるが言葉にならない
呼吸音が聞こえてきた。

フェイトは声の主を探そうと奥に進んでいくとそこにはエリオがいた。
ズボンと下着を下ろし、右手を自身のモノに添えて上下に動かしている。
目の前には女性の艶めかしい姿が写った本、所謂エロ本である。
エリオの顔は熱に浮かされたように苦しげで、今にも息とともに別のものも
吐き出されそうである。
言うまでも無くソロプレイに勤しんでいる最中だった。

「エリオ、何してるの?」
フェイトは無慈悲にもエリオに声をかける。
「ふぇ、フェイトさん!?」
エリオはそれに動転し、エロ本隠しとムスコの回収を同時に行おうとするが
当然上手くいくわけが無くベッドの上でズッコケル結果に終わった。

「それで、エリオはこの本を何処で手に入れたのかな?」
件のエロ本を片手で叩きながらフェイトが尋問する。その淡々とした様子は
本職の顔を伺わせていた。
フェイトにしても今更エロ本一冊で赤面するほど初心でもなければ
年頃の男子がこうなのも義兄を通して知っている。
問題はこの本の入手経路である。エリオの年齢を考えれば正規の手段で
手に入れるはずはない。
それを聞き出そうと構えていると、エリオが口を開いた。

「ヴァイスさんに・・・譲ってもらったんです…」
そこから出てきたのは同じ六課のヘリパイロットの名であった。
「そうなんだ…ヴァイスに・・・」
フェイトは本の入手先が普通であったことに安堵する。
エリオは続けて事の顛末を話し出す。
「実は……」

エリオが語った顛末はこうだ。エリオは先日の一件以来、
性欲がマグマのように沸き立ってしまったがどうしていいか分からず
ヴァイスに相談し、知識と共にあの本を貰ったという訳だ。
7目覚めた先に 2/4:2008/09/21(日) 23:24:40 ID:PWCTE+dw
「ごめんなさいフェイトさん…悪いことだというのは分かっていたんですけど…」
元来の真面目な性格故か、しょんぼりしながら陳述していくエリオ。
目尻に涙を溜めてフェイトを見上げる。
その姿にフェイトは雷に打たれたような衝撃を受ける。
「そんなことないよ、男の子なら誰でも通る普通のことなんだから。
だからエリオが気に病むことはないんだよ…」
フェイトはそう優しく語りかけながら服を脱いでいく。

扇情的な黒下着に覆われたフェイトの肢体がエリオの眼前に現れた。
それは均整の取れており美術品のような美しさを誇っていた。
「フェイトさん!?」
エリオは見てはいけないと思いながらも顔を赤くしながら凝視している。
その羞恥に染まった表情がフェイト中の劣情を燃え滾らせた。

「…だからフェイトママが出してあげるね…」
そしてエリオをベッドに組敷くと下着さえも脱ぎ捨てた。

「どう、エリオ。フェイトママのおっぱい気持ちいい?」
フェイトは自身の豊満な乳房でエリオのペニスを挟み込む。
マシュマロのように柔らかいフェイトの胸が自在に形を変えてエリオを
快楽に沈めていく。
はちきれんばかりに怒張したエリオのペニスはフェイトの胸に挟まれて尚、
雄雄しく反り返って己を主張している。
「く…ああ……」
エリオは何とか射精感を耐えようとするが、フェイトが
それに追い討ちをかけて絶頂に追い詰める。
フェイトは髪をかき上げ、飛び出したペニスの先端を舌で丹念に嘗め回す。

「はあ…エリオのおちんちん、凄い男の子の臭いがするよ。むせ返りそう…」
そのまま包み込むように舌を当て、袋を潰すように胸に力を加えていく。
エリオは与えられた快感が限界に達し射精した。
ビュッビュッ!!
エリオ自身から熱い精液がふとばしりフェイトの全身を白く染め上げていく。
8目覚めた先に 3/4:2008/09/21(日) 23:28:16 ID:PWCTE+dw
「エリオの精子、ドロドロで美味しいよ…それに凄く生臭い…」
フェイトは自分の手に付いた白濁液を蕩けそうな目で見つめ、
舌で舐め取った。
「うわあ…」
エリオはフェイトの見方を変えれば上品な猫に見えなくもないその仕草に、
胸の奥が熱くなるのを感じた。
それを示すようにエリオの下腹部は勢いを無くすことなく
堂々と自己主張をしていた。
「さっきは寸止めで終わっちゃったからまだまだ物足りないよね」
フェイトはエリオのペニスを愛おしそうに眺めながら言った。
その顔は保護者の優しさではなく性を求める一人の女の顔だった。
「ほらエリオ、こっちにおいでよ…」
フェイトが自らの秘所を指で押し広げエリオを誘う。
女として目覚めたフェイトのそこはテラテラと妖しく光り、魅力的であった。
しかし、エリオはそれを固辞する。

「駄目ですよ、フェイトさん!!僕たちはそんなこと…」
それだけはやってはならない。エリオは最後の理性を振り絞って
フェイトを止めようとするも、なんの効果も発揮されなかった。
「くすん、フェイトママ残念だな………じゃあこっちならいいよね?」
そういってフェイトは四つん這いになると後ろを向いた。
「ほら、エリオ。来て……」
フェイトは先ほどの精液を菊門にぬりたくり、
エリオを受け入れる準備を済ませる。
菊門に精液や愛液が混ざり合った様子はとてつもなく魅惑的で、エリオは
花の香りに吸い寄せられる蝶のように自然にフェイトのもとを向いていた。

「いきますよ、フェイトさん…」
エリオはそそり立つ剛直を手で支え、フェイトの菊門に宛がい、
そのまま中に押し込む。
初めて後ろの穴を貫かれた衝撃が強烈な痛みがフェイトに襲い掛かかった。
「はああ――!!」
その瞬間、フェイトは体中の酸素を吐き出すのではないかというくらい
長い声を上げた。
「フェイトさん、大丈夫ですか!?」
エリオは少しでも痛みを柔らげよう意識しながら行為を続ける。
差し込んだペニスを半分ほど抜き取って挿入するピストン運動を繰り返した。
その度に二人の結合部から精液が泡を立てると同時にジュブジュブと
卑猥な音が部屋に響き渡る。
9目覚めた先に 4/4:2008/09/21(日) 23:30:22 ID:PWCTE+dw
しかし、それでもフェイトは痛みから顔を歪めている。
エリオは方法を変えようと、胸の愛撫を試みるが二人の体格差から
それは叶わず、フェイトの豊かな乳房を鷲づかみする形となった。
フェイトの双丘はエリオの手から溢れんばかりのサイズを誇り、
事実エリオの掌から溢れて頂きを触れられずにいた。
しかも力加減が分からないため、掴む力も強くなってしまった。
そして痛みが何かを越えたのか、フェイトの表情が苦痛から快感の
それへと変わっていった。

「エリオ、いいよ〜もっと強く、もっと痛くして〜」
すると、途端にフェイトの菊門は引き締めが強くなり、
ギチギチとエリオから精を搾り取ろうとし始める。
「フェイトさん、駄目です…僕、もう…」
自身の限界が近いのを感じたのか、
エリオがフェイトの菊門からペニスを強引に引き抜く。
ペニスが結合部から離れるのと同時に分身が解き放たれる。
勢いよく飛び散ったそれは首、背中、臀部と
フェイトの全身を白濁に染め上げていった……

シャアアァァーー……
フェイトが一人シャワールームで身体を洗う。
先ほどの情事で付いた白いものや汗など諸々の情事の証が汚れとして
身体の火照りと共に洗い流されていく。
余りにもあっけなく流れ落ちるそれは夢や幻のようにも思えた。
「優しいエリオも悪くないけど、
今日みたいにムチャクチャに激しくされる方がやっぱりいいかな」
そんなことを言いながら両手で身体を抱きすくめる。
何処か赤いその顔は決して風邪などによるものではなく、
身体の奥底に眠る本能によるものだった。
今頃はベッドの中で夢を見ている少年に思いを馳せるフェイト。
その表情はいろんな意味で危険なものだった。

サイレントマジョリティを考慮に入れた結果、
フェイト×エリオになりました
ごめんなさい…フェイトさんに翻弄される
エリオを書こうとしたのに気づいたら誘い受けになってました
フェイトさんの受けオーラはエリオさえも陵駕するというのか…!?
次回はちゃんとキャロに攻められるエリオを書きます。
ちなみに俺の脳内での各キャラの強さはこんな感じ

なのは≧はやて>スバル>キャロ>ティアナ>シグナム>エリオ>>>>フェイト
10名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 23:34:05 ID:w+byeNz7
なんでその面子でヴィータがいないの?
そしてここでもフェイトは尻なのかよ!!
11名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 23:34:38 ID:ze0Pa0cq
……SS部分と作者コメントは分けようぜ………
12名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 23:36:48 ID:PWCTE+dw
>>11
すみません。
普通に見辛いですね。以後気をつけます
13名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 23:50:04 ID:w+byeNz7
なぁ、フェイトのM気質はまだわからなくもないんだが尻好きはどこからきたんだ?
14名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 23:54:16 ID:Ht0GpWqE
>>13
単純にこのスレでよくフェイトを書いてる職人さんのSSが尻を責める描写が多いってだけでしょう
15名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 23:58:33 ID:BP99R2L2
>>13 一時期、クロノが集中的に尻を掘るSSが投下されて。

クロノ=アナル好き=ハラオウンアナルファッカー

みたいな図式がwwww
16名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 00:18:07 ID:b2J2gkk0
あん時に投下されたSSのクロノは、男女問わず尻掘っていたな。
17名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 00:20:33 ID:lbDgee8F
保管庫で検索かけてみると

される側
フェイト>>>>>エリオ>はやて>ユーノ>なのは>>>>その他(ルー子、リンディ、すずか等)


な印象がある
18名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 00:27:51 ID:j39tceOD
エリオが二番手かよ
そいえばクロノがユーノに掘られてるの見た覚えがあるな。しかも強姦で
19名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 00:57:47 ID:cmfVu15O
>>17
お前実はほとんど保管庫見てないだろw
なのはさんはされる側も凄い多いぞ
20名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 01:02:38 ID:b2J2gkk0
なのはとはやてなら、なのはの方が多い気がするけどな。受け攻め以前にエロが(ry

【光の矢が降り注いで石になりました】
21名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 01:07:31 ID:lbDgee8F
>>19
じゃあ代わりに統計出して呉
予備知識ナシに検索したから精度が悪いのは認める
22名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 01:14:37 ID:uzS8gVgH
少なくともなのはさんのされる側がエリオやユーノより少ないってのはまずないと思うけど……
ってか統計なんて出すこと自体無意味
23名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 01:26:20 ID:T+oQlcwb
公式でフェイト似と言われてるエリオは、ここではやはりMなんだろうか…
24名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 01:36:21 ID:cmfVu15O
もうキャラのイメージの話は止めないか?
一人一人イメージなんざ違うんだし、このスレだとこのキャラはMとかSみたいな話はどうかと
25名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 02:10:53 ID:b2J2gkk0
例えばユーノやエリオやなのはは状況によってリバーシブルだ。
特に前2人は淫獣モード(エロオフォルム)にチェンジして攻めたかと思えば、
受けに回って乗られたり掘られたりすることもある。
何が言いたいって? 書き手次第で臨機応変ということさ。
26名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 12:52:56 ID:EYuFqoA0
>>9
GJ!
さすがはフェイトさんだぜ。Mっ毛じゃ誰にもまけねえ!
そしてエリオもフェイトさんを攻める様がよく似合う。
でもキャロには勝てない。
それがエロオ・揉んでやる!
キャロエリも楽しみにしています!
27名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 18:39:45 ID:OLgGQ0V3
>>9
GJ!

書き手次第でキャラが臨機応変というのであれば、誰でもいい……俺にドMな
クアットロを見せてくれないか……それだけは自分で脳内保管出来ないんだ……
28 ◆K17zrcUAbw :2008/09/22(月) 20:31:34 ID:qSMKBBbp
新作が完成しました。
本編見た事ないし、原作設定が曖昧なため不自然な表現になっているかも知れません。
内容はオリキャラ×チンクです。
エロはなしで行こうと思います。

タイトルは
チンクの奇妙な生活〜あなたがくれた少しの優しさ〜
です。
29 ◆K17zrcUAbw :2008/09/22(月) 20:32:51 ID:qSMKBBbp
JS事件解決から三年の月日が立った。
依然ナンバーズは海上更生施設において毎日更生プログラムをこなしている。
退屈だとか窮屈だと言うものはおらず、彼女達は彼女達なりに日々を楽しんでいた。
この日もプログラムを終えた姉妹達が次々に教室を出ていく。
『今日はもう終わりか…』
壁にかかった時計を見て一息つくチンク。
今日の分の講習を丁寧にノートに纏め上げていたせいでいつの間にか教室に誰もいない。
声を掛けられなかった事に少し寂しさを覚えながら教室を後にする。
ふと窓の外を見ると日が落ちかけているのが目に入った。
『……あれから一年か…』
夕日を見つめながら物思いにふける。
そう、一年前のあの日もちょうどこんな夕日を見ていた。だが、一人ではない。
姉妹達と見た訳でもない。
チンクは少し胸が痛むのを感じた。
(アイツは……今)
一緒に夕日を見た一人の男の顔が浮かんでくる。
ほんの少しだけ一緒に過ごしたあの時間。
それは彼女にとって忘れられない日々。
涙が静かに頬を伝う。
(できる事なら……もう一度…)
それは叶わぬ願い。
だが、それでも彼女は心から願う。
(もう一度…二人でこの夕日を見たい……)

さかのぼる事一年前。
海上更生施設に設置された屋外グラウンド。
綺麗に芝生が敷き詰められたこの広いグラウンドの隅っこにチンクはいた。
手すりに体を預けただ海を見つめている。
背後からは楽しそうに騒ぐ姉妹達の声が聞こえてくる。
チンクはたまに転がってくるボールを蹴り返すくらいで別段何かする訳でもなかった。
ただ、何となく海が見たかったのだ。
(……これが正しい事なのか…?)
ふと疑問を持つ。
スカリエッティについて破壊活動をしていた時よりも今の方が充実した生活を送れている。
チンク自身それに不満はなかった。
しかし、どうにも納得の出来ない部分もある。
彼女達は戦闘機人、人間ではない。
更生プログラムを終えたところで社会は自分達を受け入れてくれるのか?
確かに同じ機人であるスバルやギンガはうまく生活している。
しかしそれは小さい時からただの人として過ごしていたからだ。
だが自分達は違う。
始めから戦う事だけを目的に作り出された機人。
30 ◆K17zrcUAbw :2008/09/22(月) 20:34:13 ID:qSMKBBbp
果たしてそんな自分達に戦う以外の生きる道などあるのか。
チンクはいつもより荒く波打つ海面を見て溜め息をついた。
『今さら考えても仕方ないな……』
それが自分の選んだ道なのだ。
自分が変われるかは自分次第、あとはなすがままに生きていくだけ。
チンクは少し伸びをした。
(あまり考え込むものではないな…)
後を振り返り妹達を見る。
サッカーボールを蹴りながら楽しそうに遊んでいる。
本当に楽しそうに笑顔を見せながら。
(今はこうしているだけで幸せなんだ…あれこれ考える必要はない)
転がってきたボールを手に取り妹達の方を向く。
『チンク姉ー!!ボール!!』
『待て、姉も参加しよう』
ボールを地面に置いて、蹴る体勢を取る。
そして、勢いよくボールを蹴り上げた。
『あべっ!!チンク姉強すぎッス!!』
ボールは勢いよくウェンディに直撃し、宙を舞う。
鼻血を垂らしたウェンディを放っておきながらボールに食らい付くノーヴェ。
高く飛び上がりボールを蹴ろうとしたその時だった。
『もらった!!…わぁっ!!』
突如強烈な突風が姉妹達に吹き付けた。
勢いよく吹き付ける風にノーヴェは海へ叩き落とされる。
『ノーヴェ!?』
チンク達がノーヴェの落ちた地点を見下ろす。
ノーヴェは必死に足掻きながら何とか施設の外壁にしがみついている。
しかし荒々しく打ちつける波がノーヴェの体力を奪っていく。
リミッターをかけられて身体能力は並の人間程度より少し高いくらい、当然ISも使えない。
ついにノーヴェが波にさらわれる。
ゆっくり救助を待つ訳にもいかない。
チンクはすぐさま海へ飛び込んだ。
『ノーヴェ待ってろ、今行く!!』
波をかき分けノーヴェの元へ泳ぐチンク。
溺れかけていたノーヴェを引き上げ、投げられた浮輪にしがみつかせる。
『はぁ……はぁ……ありがと、チンク姉…』
『礼など後だ……引き上げて貰うぞ』
合図と共にゆっくりと引き上げる二人。
しかし、そこに再び突風が吹き荒れる。
『な……うわっ!!』
『チンク姉!?』
チンクが風に揺られた浮輪から手を放してしまう。
海に放り出され必死にもがくチンク。
しかし、ノーヴェを助けて体力が殆どない状態で泳げるわけもなくどんどん沖へ流されていく。
31 ◆K17zrcUAbw :2008/09/22(月) 20:35:33 ID:qSMKBBbp
『チンク姉!!』
『やめろ、お前達まで流されるぞ!!』
引き上げられたノーヴェが再び海へ飛び込もうとするのをゲンヤが引き止める。
ギンガが他の姉妹達を施設内へ戻す中、ノーヴェはゲンヤの腕の中でただチンクの消えた海に叫び続けた。
それから数時間、チンクは未だに発見されず遂に捜索は打ち切られた。
海の荒れ具合が酷い上、天候まで悪くなり捜索などとてもできる状態ではなかった。
管理局はチンクにMIAの仮処分をした。
『MIA……なんなんスか…それ』
『………事実上の死亡宣告よ』
ギンガに説明を受けた姉妹達が目を見開く。
死亡宣告…それが信じられなかった。
ゲンヤが付け加えて説明をする。
『まだ仮処分だ……どっかで生きてりゃ処分は取り消し……だが、一か月で見つからなければ…』
そこまで言って言葉を止める。
一か月、それがチンク捜索に与えられたタイムリミット。
『上に掛け合って明日からのプログラムをチンク捜索に切り換えてもらいました……今日はもう休みなさい』
『そんな……チンク姉…あたしだ……あたしのせいだ…』
事実を聞かされノーヴェが涙を流す。
『あたしが海に落ちなければチンク姉はっ…!!』
『ノーヴェ……』
大声で泣きながら自分を責めるノーヴェにかける言葉が見つからない。
ギンガがそっとノーヴェを抱き締めてやる。
『大丈夫…きっと生きているわ』
『うっ……ぅ…チンク姉…チンク姉ぇ……』
部屋にはただ、ノーヴェの泣く声が響き渡った。

(暗い…私は死ぬのか……?)
日も沈んだ暗い海の中を漂うチンク。
体力は既になく、指一本も動かせない。
既に自分が浮いているのか沈んでいるのかの感覚もない。
(ノーヴェは……助かったな…)
波間に消える寸前に見た光景。
引き上げられたノーヴェが何かを叫んでいたようだったがよくは聞こえなかった。
(きっと……私の名を呼んだのだろうな…)
大切な妹達の事を思い浮かべる。
戦闘機人として生み出され、破壊の限りを尽くしてきた。
しかし、今は更生プログラムを受けて普通の生活を送っている。
そしていつか施設を出て、普通に生活し、普通に働き、いつかは恋もするだろう。
そんな生活が訪れるのはいつになるかわからない。
32 ◆K17zrcUAbw :2008/09/22(月) 20:36:44 ID:qSMKBBbp
けど、大切な自慢の妹達はきっと生きていける。
チンクは静かに祈る。
どうか、大切な妹達に幸せを与えてやってくれ。
そして、チンクの意識は途切れた。

(暖かい……)
チンクは体を覆う温もりに気付いた。
しかし、力が入らず体は動かせない。
チンクは自分は死んだのだと思った。
(死ぬというのは暖かいものなのか…?)
しばらくその温もりを感じていると、不意に唇に柔らかい感触がした。
ゆっくり、息が吹き込まれてくる。
体を駆け巡る感覚、肺に到達した空気。
すると、何かが込み上げてくる。
『ぐ……ごぼっ……げほ…げほっ!…はぁ…はぁ…』
不快感に襲われて口から何かを吐き出す。
潮の味がする。
そして、自分が生きている事に気付いた。
まだ体に力は入らないが、意識はしっかりしている。
『お、生きてたか』
視界に飛び込んだ男の影。
チンクは咄嗟に飛び退こうとするが、うまく力が入らずによろめいてしまう。
倒れそうになったチンクを男が支える。
『まだ動くなよ。お前、この島に漂着したんだからな』
『漂着……だと?』
どうやらあのまま海を流されたチンクはこの島に打ち上げられていたようだ。
それをこの男が発見、救出したという。
『しっかし、人工呼吸もやってみるもんだな……ほんとに生き返るなんて』
『人工呼吸……?』
ああ、あの感触は人工呼吸の時の……そこまで考えてチンクの思考は停止した。
生まれて数年、キスなどしたことはない。
つまり目の前の男はチンクのファーストキスを奪っていたのだ。
しかし、それはチンクを助けるための行為。
それを踏まえると責める事は出来なかった。
(ま、まぁ…人工呼吸はカウントには入らんだろう…)
更生プログラムを受けるうちにギンガから保健の授業を受けるのが楽しみになっていたチンクはこういう行為がどういう意味なのかをよく理解している。
そして次第に貞操感も覚えていった。
『取り敢えず家に案内するよ』
男はそう言ってチンクを抱え上げる。
『……軽いな』
『小さくて悪かったな』
『いや…そういう意味じゃ…』
抱き抱えられたチンクが男を睨み付ける。
そんなチンクにお構いなしで男は自宅へと向かった。
33 ◆K17zrcUAbw :2008/09/22(月) 20:39:21 ID:qSMKBBbp
森をしばらく歩いていると、次第に集落のようなものが見えた。
広場では子供達が遊んでいた。
『あ、ラルフお兄ちゃん!!』
『その人だれー?』
子供達がラルフと呼ばれた男の元に集まってくる。
どうやらラルフはこの子供達の世話をしているようだ。
『おう。海で拾ってきたんだ』
『人を物のように扱うなっ!!』
『まぁまぁ…リリー!!』
チンクをなだめながら誰かの名を叫ぶ。
すると一件の家から一人の少女が顔を出した。
背格好はチンクと殆ど同じで、ブルーグレーに輝くショートヘアを揺らしている。
目には包帯がグルグル巻きにされている。
『どうしたの?』
『服貸してくれ、打ち上げられてた奴がいる』
『うん、わかった』
スッと中に引っ込むリリー。
ラルフはチンクを抱えたまま家に入る。
中ではゴソゴソと棚をあさるリリーの姿。
『これと……これ…』
どうやら目が見えないようで手探りで服を探している。
リリーがまだ服を探しているのを確認してチンクを降ろした。
『よし、脱げ』
『なっ、なんだと!?』
『んな海水でベトベトの服なんてすぐにあらわねぇといけないだろ…ついでにシャワー浴びろ』
そう言ってチンクの服に手をかけるラルフ。
力が入らず抵抗出来ないチンクはなすがまま下着まで脱がされてしまう。
『じゃ、リリー。後は頼むぜ』
『わかった』
服を抱えて外に出るラルフを見つめるチンク。
その目は恨めしい目であった。
『あの男…こんな辱めを……』
全裸で放置されたチンクにリリーが話しかけてくる。
『シャワー浴びなきゃベトベトだよ…あっちに浴室があるから、これタオルと着替え』
『あ……あぁ、すまない』
リリーから着替えを受け取りシャワーを浴びに向かうチンク。
ゆっくりと立ち上がり、浴室へと向かう。
するとリリーが何かに反応した。
『待って……』
『どうした?』
『あなた……人間?』
チンクは身構える。
目は見えていないはず、だがリリーはチンクの違和感に気付く。
しかしリリーはチンクのいるであろう方向に首を向ける。
『身構えなくていいよ…怖くなんてない』
『……どうしてわかった』
『私、目は見えないけど耳はいいの。あなたの体から機械の音がしたから』
人間は五感のどれかが欠けているとそれを補うように別の感覚が発達してくると言う。
34 ◆K17zrcUAbw :2008/09/22(月) 20:40:13 ID:qSMKBBbp
リリーは目が見えないかわりに聴覚が異常発達し、ほんの少しの音を拾う事ができるようになっていた。
チンクはふぅ、と息をつく。
『お前の言うとおり…私は人間ではない』
『そう……でもここじゃ誰もそんな事気にしないわ……みんな訳ありだから』
『訳あり…?』
リリーの意味ありげな発言に首をかしげる。
しかしリリーはチンクをせかす。
『早くシャワー浴びて。誰かが来ちゃうかも』
『む!そうだった』
自分が全裸であることを思い出したチンクは急いで浴室に入る。
その背中を見えぬ目で見つめるリリー。
この日からチンクの奇妙な生活が始まるのであった。
35 ◆K17zrcUAbw :2008/09/22(月) 20:42:37 ID:qSMKBBbp
投下終了です。

訳ありチンクが訳ありの人が住う島に漂着したことから物語が始ります。
これから姉妹サイドとチンクサイドで物語が進む予定です。

では、第二話書いて来ます。
36名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 21:07:40 ID:+KGFzYEf
GJ、訳あり人が集まる場所と聞いてラインアークが思い浮かぶ俺リンクス
37名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 21:13:03 ID:xDZSEX7z
まだ物語の序盤でなんとも言えませんが、ゼストと絡むしかなかったエロパロのチンクSSの新たな広がりに期待しております!
続きも頑張ってください〜。
38名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 21:24:57 ID:Tp8QrIfK
なあ、GJ言う前に「本編見てません」
発言についてはツッコミ入れないの?
39名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 21:26:33 ID:xDZSEX7z
>>38
……もう一度よく前書きを見てみた…………


なんていうか……いまからリリなの全話鑑賞しようか?
40 ◆K17zrcUAbw :2008/09/22(月) 21:31:03 ID:qSMKBBbp
>>38-39
なんというか、見れる環境ではないので……。
パソコンもありませんしDVD買うこともできませんし……。

wikiと睨めっこしながら書いてはいるんですが、やはりちゃんと原作見れるまで書くのを止めた方がいいですかね?
41名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 21:35:05 ID:+KGFzYEf
>>40
そういうことは黙っておくもんだぜ…見てなくともこれだけやれるのなら尚更だ
42名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 22:06:03 ID:RAvUKjiO
>>35
乙!
MIA……だと…?サッカーは戦争だと申したか?
43名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 22:16:42 ID:oTgaBxLh
サッカーは戦争>
ロックマンサッカーとくにおくんシリーズですね、わかりますw
ルールがカオスってレベルじゃねーぞw
ほんと、サッカーゲーは地獄だぜ!
44名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 22:27:17 ID:RVZXfs8V
>>9
フェイトママは息子にも攻められていっちゃうんですね。
全く何とけしからん…
エリオの将来がものすごく心配だ。

ちなみに俺は、なのは≧キャロ>スバル>エリオ>ティアナ>シグナム>>>>>>>>>>>>>>フェイト
ですな。
キャロの恋人兼ペットになるエリオを待ってるぞ!
45名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 22:31:03 ID:S5AaxtIy
>>43
キャプテン翼を忘れるとはいけませんねw

まぁ、くにおくんとかと比較すると地味だけど。
46名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 22:52:37 ID:51/HpS/Q
>>43>>45
一応東方サッカーも加えてやって良いんじゃないか?
47名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 22:55:29 ID:kML/X2fM
>>46
ひょっとしてそれはギャグで(ry
48名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 23:07:58 ID:xDZSEX7z
ここと関係ない話題は止めような?
49名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 23:28:14 ID:eiUjRRH6
ちくしょう。前スレのストームレイダーかわゆすぎるぜ・・・

巷じゃデバイス擬人化なんてよくあるけど”あの”ストームレイダー擬人化したらなんて電波が・・・
50名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 23:32:09 ID:b2J2gkk0
>>49
巷じゃ、バルディッシュはああいう性格なせいか、バーターっぽかったりするのが多いけど、
実年齢って二期までで精々2年、三期でも13年なんだよな。
擬人化したらショタになってしまった姿が思い浮かんだ。

まあ、ステエキ組は全員生まれたてなわけだが。
51名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 23:50:37 ID:QWdv1cdk
マッハキャリバー「あぶー」
ストラーダ「だぁだぁ」
クロスミラージュ「きゃっきゃっきゃっきゃっ」
ケリュケイオン「主様、形状其弐に移って御座る。翼撃ちが発射の準備、完了致しまして候。いざ、いざ、いざぁ!!」
52名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 00:04:24 ID:PAW9BicX
>>51
ケリュケイオンワロタwww
53名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 01:14:20 ID:+b0vlpUk
>>9
実にエロエロなフェイエリGJ!!
この義理親子のエチーはたまらないぜ!
54名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 06:57:32 ID:+61sfiC0
最近、陵辱とか調教ものが書きたくてならん…。
疲れてんのかね…。
55名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 07:17:24 ID:ie+THhUX
最近は陵辱を見た覚えがない
56名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 08:31:42 ID:Z8ZMJ09y
雑談は前スレでやって埋めに協力した方がいいぞ
57名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 08:34:28 ID:8AY2LZS8
>>51
四人のデバイスってレイジングハートとなのはも参加していたからむしろ教育でちゃんと成長させていて、二人の性格の一端とかがそれぞれに…というのもありえるかなと
58名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 10:52:57 ID:zGzSkyi6
>>57
駄目だ。どうやっても、フルメタのハートマン軍曹ななのはさんしか浮かばない……
59名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 11:39:46 ID:BukeXnMS
>>54
もし書くならシグナムかリンディさんを推したい。。。
60名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 14:26:53 ID:peW0CuKe
>>54
最近、陵辱とか調教ものほとんど来てないからな
書くなら応援するぜ!
個人的にはなのはさん希望
61名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 14:31:34 ID:P7wjdPKA
ヴィヴィオ(聖王Ver.)に陵辱されるクアットロですね。
わかります。


・昔の意趣返しといわんばかりにヴィヴィオから○作並みの調教を受けるクアットロ
   ↓
・隔離結界の中なので誰も気づかない
     &
ヴィ「皆に言ったらドゥーエお姉ちゃんの身体を、二度と蘇生できないようグチャグチャにしちゃうから♪」
   ↓
・屈辱と快楽の繰り返しで次第に目覚めていくクアットロ
62名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 14:53:48 ID:zGzSkyi6
>>61
さあ、ワープロソフトを起動するんだ。
63名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 19:41:05 ID:+61sfiC0
>>54だけど、一人が一人(例えば、なのはだけ)を調教するのと、一人が複数人を調教するのとならどちらがいいかな?
書こうと思うんだけど、好みもあるだろうから、一応聞いておきたい。
64名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 19:45:03 ID:NaXSqbKd
>>63の好みでいいよ
65名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 19:48:50 ID:wsAyZm5I
>>63
なのはさん一人の調教物が激しく読みたい気分だぜ……
最終的には職人さんが書きたい物を書きたいように書けばいいと思いますが
66名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 19:50:36 ID:0lhZS9D2
>>63
個人的には複数のが好みだがまあ自由に書けばいいと思うよ。
6763:2008/09/23(火) 20:30:22 ID:+61sfiC0
>>64-66
ありがとう。
遅くなるだろうけど、待っててくれ。
68野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/23(火) 21:16:10 ID:zGzSkyi6
 タイトル「大切な繋がり」

 スレ数3
 あえてジャンル書きません。
 ヒント:騙されちゃいけない
 あぼんはコテか鳥で
69野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/23(火) 21:16:49 ID:zGzSkyi6
        1
   

 ある非番の日、ゲンヤが自宅でのんびりしているとスバルが泣きながら帰ってきた。

「お父さんは、お父さんだよね」

 訳のわからないこと言って泣きじゃくるスバルに、ゲンヤは首を捻って考える。

「あ、ああ、当たり前だろ。どした、スバル。父さんは父さんだぞ」
「あたし、お父さんの本当の子じゃないから、いつか捨てられるって……」
「な……」

 その瞬間、ゲンヤは自分の中で血液が沸騰して逆流して、とにかくめちゃくちゃに暴れ回るのを確かに感じた。

「ど、どこの糞野郎だ、そんなデマ流しやがんのはっ!!」

 許さない、絶対に許さない、ゲンヤは誓った、誰に誓った、自分に誓った。
 こんな子供にそんな残酷な言葉を投げかける権利など、どこの誰にもない。そんな人間は最低の人間だ。決して許してはならない恥知らずのクズだ。

「ただいま」

 ギンガの声。動けないゲンヤはすぐにギンガを呼ぶと、泣いたままのスバルをしっかりと抱きしめる。

「いいか、スバル。俺はいつだって、いや、いつまででもスバルの父さんだ。スバルが嫌って言っても父さんなんだからな。心配するんじゃねえ」

 そして入ってきたギンガを見て…………

 ギンガも泣いていた。

「お父さんは、お父さんだよね」

 ゲンヤは何も言わず手を伸ばし、ギンガを引き寄せる。そして、スバルと一緒に抱きしめた。

「二人とも、誰がなんて言ったって俺の娘だ。俺は、おめえらの父さんだっ! 絶対に、絶対に何があったって父さんだ!!」

 ゲンヤは、自分の頬が濡れていることに気づいていた。
 泣いている。
 自分が涙を流すなんて何年ぶりだろう。
 妻の葬儀でも、自分は涙を流さなかったような気がする。二人の娘を残した彼女が心配しないように、涙は絶対に見せない。
あのとき、自分はそう心に決めたのだ。
70野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/23(火) 21:17:33 ID:zGzSkyi6
        2

 犯人探しは自己満足に過ぎない、とゲンヤは理解していた。
 仮に見つけたとして、言葉を封じたとして、それでどうなるというのか。
 心ない者はどこにでもいる。そのたびに言葉を封じなければならないのか。いや、それは違う。
 肝心なのは、その心ない言葉が確実に嘘であると知ることなのだ。そして、嘘を嘘だと笑い飛ばせる強さを持つことなのだ。
 
 だから、ゲンヤはギンガを叱った。

「次にスバルにそんなことを言う子がいたら、私が仕留めてやる!」と言ったギンガを。

 それは間違ってもシューティングアーツの使い手の言葉ではない。だから、ゲンヤはギンガを叱った。
 相手の言うことは紛れもない嘘なのだ。だから気にすることなどない。
 嘘つきのあからさまな嘘など、本気にする方がおかしいのだ。だから、スバルもギンガも気にすることはない。

「それとも、二人とも俺が信用できないのかい? おめえらの父さんは、平気でおめえらを捨てるような最低な人間だと思うのかい?」

 二人はまた、泣いた。泣きながら謝り、謝りながら泣いた。
 ゲンヤもまた、泣いていた。それほど自分を信用してくれる二人に礼を言いながら泣き、泣きながら礼を言った。
 三人で泣いて、泣いて、もうこれ以上泣くと干からびてしまうと思うくらい泣いて。
 たっぷり泣いてから、三人は涙を拭いた。

「確かに、俺たちにゃ血の繋がりなんてねえよ」

 ゲンヤは、誇らしげに自らの胸を示す。

「けれど、ここでしっかり繋がってるだろうよ」

 スバルがまじまじとその指先を見つめ、同じポーズを真似する。

「うん。ここで繋がってる!」

 まるで隠されていた宝物を見つけたかのように、スバルは力強く宣言した。

「お父さんと、ここで繋がってるんだ」
「ああ。俺とスバルとギンガと。そして、ここにはいないけど母さんもな」
「うんっ!」

 ギンガは何も言わない。だが、ゲンヤとスバルを見てうなずいていた。何度も、何度も。
71野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/23(火) 21:18:12 ID:zGzSkyi6
      3

 そんなこともあったな……。
 ゲンヤは、しみじみと当時を思い出していた。

「どうしたの? 父さん」
「ん? いや、ちょっとばかし、昔のことを思い出してな」
「……こんな時に?」

 不満そうなギンガの言葉に、慌ててゲンヤは取り繕う。

「いやいや、おめえを見ていると、つい昔を思い出してな」
「私のこと?」
「ああ、ほら、スバルとおめえが泣きながら帰ってきたときのこった」
「そんなこともあったかしら。結構、いろんな事言ってくる子供が少なくなかったから」
「俺たちゃ、血は繋がってねえが、心は繋がってるってな」
「思い出した。そうね、あったわね、そんなことも」

 ギンガは微笑むと、動きを早める。

「今だって、血は繋がってないけど、心は繋がってる」
「お、おい、激しすぎだっ……うっ」
「身体も繋がってるけどね」

 騎乗位でゲンヤのソレを搾り取りながら、ギンガは意地悪そうに笑った。
 
72野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/23(火) 21:18:55 ID:zGzSkyi6
以上、「最後の一レスで台無し」 お粗末様でした
73名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 21:30:49 ID:eJxnHrdz
>>72
最後から2番目の投下の「繋がってる」を強調してるとこでオチが予想できたぞw
ご馳走様!
74名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 21:33:34 ID:742FNd74
く…良いお話だと思ったのに……くやしいっ!!


でも乙
75名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 21:44:17 ID:1UjZcXHp
>>9
遅レス気味だがGJ!!
フェイトはもともとMが似合いすぎる
エリキャロフェイを見てると、将来的にフェイトがエリキャロの二人にいじめられる様子が想像できる
エリオに挿入されてキャロに激しく愛撫されて喘ぐフェイト…ハアハア
76名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 22:07:57 ID:IAsEeud9
>>72
俺のコーラを返せw
でもGJ
77名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 22:09:17 ID:P7wjdPKA
>>72
見事なお手前でござった!


……次は繋がっている場面を詳細に(ry
78名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 22:27:14 ID:jLGKKACK
>>72
GJ!!そして少し・・・じゃない限りなく頭を冷やそうか。
79タピオカ:2008/09/23(火) 23:20:54 ID:J6RMcrfP
大好きなジャムおばさんの誕生日に間に合ったので、ジャムなあいつがモデルな話でも

注意事項
・ギャグ
80Pantom Blazer:2008/09/23(火) 23:22:48 ID:J6RMcrfP
第一話「戦士、再び」



ジェイル・スカリエッティ事件という嵐が過ぎ去り、傷ついた地上本部の復興の方向性が定まった頃合いであった。
未だ指針が固まって間もない時分、当然この隙をつい悪党の跋扈するに易くなる。
いくらか治安の乱れも見受けられたのだが、それもそれほど時をかけず徐々に沈静させられる事になった。
いかな混乱のただなかであれ、レジアスの燃える想いを受け継いだものたちは少なくない。

己の成すべき事を、上司部下に関わらず陸士一同は理解して戦っているのだ。
だが、それでも未だにダメージが回復しない地上本部と言う組織には荷の重い相手もいた。
数が足りないのだ。ジェイル・スカリエッティ事件から復帰しきっていない隊員がかなりいる。
もともと、質の良い魔導師は本局に吸われている地上本部は数で勝負するしかない。
連携、指揮、士気を練磨していても、数がそろわない事には持ち味が生かせないのである。

そんな地上の警備隊の中、華はいた。
機動六課である。
本来の目的をスカリエッティ逮捕で終えているとはいえ、未だ試験運営中である。
穴が塞がりきっていない地上本部の指揮系統の末端に組み込まれていた。
「うみ」の戦力を取り入れるのと言う事で、随分と渋った地上本部だが、隊長陣を支持する陸士が多かったため、その現状を冷静に受けとめてちょろちょろ遊撃戦力として使われている。
特にヴィータ副隊長を熱狂的に支持する陸士が多かった。とてつもなく多かった。それはそれは多かった。

奇跡の部隊などと呼称されるほどの戦力である。
大多数から内心では頼れる戦力だと認められていたのだが、異変が起こった。
シグナムが強盗に襲われてレヴァンティンを奪われたのだ。今だに意識が戻っていない。
無論、あの強いシグナムである。明らかに異常性ある事件として捜査された。

現場は海に隣接する自由公園。
シグナムは戦闘に秀でた次元犯罪者を逮捕した帰りだったはずだ。
夜遅くに襲われた様子で、発見されたのは朝。
発見された時のシグナムは目を覆いたくなるほどに無残な姿で、なんと餡子にまみれて倒れていたのだ。

「ちょおストップ」

報告を聞く途中、はやてが「はぁ?」と言う顔でシャッハの報告を止めた。
聖王医療院での事だった。
倒れていた場所こそ遠いが、人間とはまた違うシグナムの事である。精密な検査のためにここ、ミッドチルダ北部まで運ばれていた。
そしてそんなシグナムの様子について話を聞きに、ボディガードのザフィーラと共にはやてが直々に赴いたわけだが、

「…餡子?」
「はい、餡子です。粒あんでした」
「いや、それはどうでもええ」
「それと現場には他にパンの欠片がいくらか落ちていて、犯行に関連するものとして」
「するかい!」

綺麗に突っ込みを決められて、さしものシスターさえビクッとなる。

「しかし餡子とパン。これは密接に関係して然るべきではないでしょうか?」
「真面目にやってくれへん?」
「真面目ですよ! あの騎士シグナムが昏倒させられ、しかもレヴァンティンまで奪われたとなれば由々しき事態です!?」
「せや…犯行の目的は、レヴァンティン狙いで間違いなさそうや」
「はい、そのレヴァンティンなのですが、実は調べてみると各地でレヴァンティンと銘打たれたデバイスがかなり消えているんです」
「…なんやて?」

レヴァンティンと呼ばれるデバイスは一つではない。いくらかある。
ロストロギア指定されて封印されていたり、レヴァンティンの名前を失っていたり、杖型だったりと種類があるのだ。
刀剣型の物が最も多く、シグナムの物もその一角。
そして、そんな数々のレヴァンティンが盗まれる、無くなるという事件がこの数年に密集している。
中には持ち主がそれをレヴァンティンであるという認識がないまま被害届が出ているケースさえあった。
81Pantom Blazer:2008/09/23(火) 23:23:40 ID:J6RMcrfP
「組織だってレヴァンティンを集めている者がいます。それも明らかに違法で」
「それでシグナムのレヴァンティンも目をつけられたわけや」
「はい、そもそも世に出ている物が少ないレヴァンティンです。騎士シグナムの物なんか、もしかすると一番所在が分かりやすい」
「そこまでは間違いないかな」
「…問題は犯人の目的ですね」
「せやね」

どう考えてもレヴァンティンは手段だろう。レヴァンティンを使って、何をするか。
そのヴィジョンは、無論現時点ではやてにもシャッハにも分かるはずがない。
自然、明るくない吐息が二人から洩れる。

「スカリエッティが捕まってすぐにこれですか」
「変な事が起こらへんかったら一番やねんけどなぁ…」

しかしそんなはやての淡い期待をよそに、今、緊急事態を告げるアラートがはやての携帯端末へと入る。



さて、機動六課だが隊員宿舎の方はいまだ立て直し途中のボロボロ。
なのでまだアースラを拠点として空をフヨフヨ。
フォワードメンバーはジェイル・スカリエッティ事件が終わった現状とて油断なくギラギラ。
ブリッジにいるロングアーチはみんなコンソールをカタカタ。

そんなのんびりしたブリッジに突如として緊急アラートの嵐が!
キャプテンシートの傍ら、冷静に眼鏡を押し上げてからグリフィスがシャリオに通信をつなげるよう指示。
前面のスクリーンに大きく陸士が映し出された。
アースラ各所にいるフォワード陣となのは、ヴィータにもこの通信が繋がるように処置、さらに遠方のはやてにも連絡が入るようになる。

『こちら203部隊…山岳地帯に所属不明、正体不明の傀儡兵が出現。ストーリーの都合上、我々の手に負えない! 至急、応援に来てくれ!』
『了解や。聞こえてるな、なのはちゃん、ヴィータ』
『おう』
『聞こえてるよ、はやてちゃん』
『スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、行けるな』
『『『『『はい!』』』』』
「ちょっと、フォワード部隊の返事一人多いですよ!? 恐ッ!? 誰ッ!?」
『有難い、我々203部隊からもより詳しい情報を…な、なんだアレは!? あの巨大な宙空を浮かぶ物体は一体何なん…うわーーーー!!』
「203部隊! 応答せよ! 応答せよ!」
「クッ、なんて自然で全然無理のない通信の途切れ方だ! フェイトさんも今から現場に直接向かうそうです!」
『あかん、ぐずぐずしてられへん。グリフィス君はブリッジで、なのはちゃんは現場で指揮。機動六課フォワード部隊出撃や! 』

まぁ、つまりそんな感じ。



稲妻が地から天へ昇る。
雲霞を突きぬけ、一層その速度を増したのはフェイトだ。緊急のコールを受け、向う先はミッドチルダ南部と東部の境付近。
その境界線を沿い、中央部へと歩を進める一団があるという。すでに現場では203部隊が壊滅的打撃を被ったが報告されている。
このままではいけない。もっと速度上げなければ!
そんなフェイトの責任感と正義感にバルディッシュ・アサルト感激。薄い装甲をさらに薄くしてくれてスピードが鰻登り。
誰もいないのを良い事に、全裸ギリギリでもう胸のポッチと秘所ぐらいしか隠れていない新・真・ソニックフォームの完成である。
お尻なんて丸出し。見ろよあの乳。太ももの付け根もたまらん。女性の場所は隠れてるけど茂みがはみ出てる。
適度に露出の快感を味わっていれば、鬼のようにスピードが出てあっという間に現場付近まで到着。流石は新・真・ソニックフォームだ。
火照る体をインパルスフォームで包み直しながら地表近くへと急降下。

「!?」

そこにフェイトは見た。
82Pantom Blazer:2008/09/23(火) 23:24:17 ID:J6RMcrfP
時の庭園。
いや、違う。時の庭園と同型の移動庭園かもしれないが細部にかなり違いがある。
そんな浮遊する空中庭園の下にはこんがり焼けたきつね色の集団が蠢いていた。
人型だ。しかし、人ではなく傀儡兵との報告である。千に届こうと言う傀儡兵の大群。
その一角、陸士が一人捕えられているのを認めた。
稲妻が疾る。
大地が近づくにつれ、鼻腔をくすぐる香ばしい匂い――パンの匂い。
バルディッシュ・アサルトのヘッドが持ちあがる。金色が閃けば大鎌を携えた女神(てんし)の姿。
陸士を掴む傀儡兵の腕を斬り飛ばす。傀儡兵の軍団に充満する、むせるほど小麦の匂いがさらに濃くなった。

「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」
「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」
「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「エッチピストルニモシモシ」「ボクノカオヲオタベ」
「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」「ボクノカオヲオタベ」

一糸乱れぬ動作で周囲の傀儡兵がフェイトへ焦点を合わせる。同じ顔、同じ焼け具合、同じ声、たぶん同じ味。
即座、助けた陸士を抱えて離脱。なのはたちと合流しようと後退した。追ってはこない。どうやら飛翔まではできないようだ。

「テスタロッサ」
「ヴィータ!」

やられた陸士たちを固めた地点。辿りつけば助けた陸士を地に下ろし、隊長陣で固まる。
陸士一同に外傷はない。ただ、はち切れそうなほど腹ん中にパンをパンパンに詰め込まれて動けないのだ。
なのはだけが「え、被害ってこんな程度なの?」という顔してたけど、他のみんなは「なんて酷い…」と神妙な顔してるので言い出せない。
キャロとか涙目でうつむいてる。

「呼びかけには?」
「全然応じねぇ。結構硬ぇ結界で防御してだんまりだ…ま、あん程度の結界、あたしの前じゃ意味ねーけどな」
「フェイトちゃん、空中のあれ…」
「うん、時の庭園と同じ物だ」
「知っているのか雷電(を操る心優しき魔導師)!?」
「昔住んでいたのに似てるんだ」
「あのレヴァンティンと同タイプのに住んでたのか…」
「「レヴァンティン!?」」
「そうだよ、あれもレヴァンティンだ」

なのはとフェイトが顔を合わせ、弾けるように空に浮かぶ移動要塞へと視線を巡らす。

「シグナムのレヴァンティンと同じ…?」
「レヴァンティンっつってもいろいろあるんだ。剣からあんな要塞みてーなのまで」
「でも私が住んでいた物にはそんな名前欠片も出てこなかったよ」
「元々ミッドチルダで開発されたあんな形式の移動庭園のいくつかに、ベルカの技師が炎熱練り上げる機能つけたんだよ。あれが三つ集まって熱線撃って星ひとつ滅ぼした記録もあるぞ」
「く、詳しいんだね、ヴィータちゃん」
「対闇の書用にミッドチルダとベルカが手を組んだ結晶だ。見たことあるんだよ」
「!?」
「だからやべーんだ。明らかに中央方面に向かってる。移動速度そんなに出てないけど、スカリエッティのアホ捕まえたばっかりでこんなもん市街地に出せねぇ、さっさと止めるぞ!」

ヴィータの気合一声、陸士の様子を診ていたフォワードメンバーが即座に応じようとする寸時を縫い、

『そのポップでキュート、へそ出しルックがバッチリクールなバリアジャケット…貴様らが噂に聞く機動六課か?』

声が降ってくる。見れば、移動要塞型レヴァンティンもパンのゴーレムもその進行を止めていた。
83Pantom Blazer:2008/09/23(火) 23:26:21 ID:J6RMcrfP
「誰だ!?」
『俺の名前はジ・ヤーム…パン屋だ!』
「やいこら! 一体何の目的があってこんな大行進だ! 理由を言え、理由を!」
『知れたこと! 地上本部が痛手を受けた現状、ミッドチルダ中央部をこの兵力で飲み下し、超巨大ベーカリーを築く!!』
「…はぁ?」

なのはが鳩が豆鉄砲食ったようになる。
他のミッドチルダやベルカ出身者は額に汗流してその身に熱が入る。正義に燃えているのだ。なのは以外。
スバルが胸にあてる拳は震えている。ティアナの双眸が強く、鋭く、凛々しくなっていく。

「なぜきちんと店を出す申請をしない!」
『した! するとどうだ、違法パン製造、違法パン工場建設と難癖をつけて俺を次元犯罪者扱いし、あまつさえ逮捕に乗りきる!!』
「どんなパン作ってんだてめー! …あ、こんなパンか?!」

移動要塞型レヴァンティンに従うが如きパンのゴーレム。
兵器として機動し、食品として敵対者に自らを食わせてお腹いっぱいにして無力化するという恐るべき傀儡兵である。
エリオがストラーダを強く握りしめて緊張する横で、なのはが白けてきてる。

『どうだ、俺自慢のブレッドゴーレムたちは! このまま首都へと進出し、武力を以て我がパンの素晴らしさを思い知らせてやるわ!』
「そんな事はさせない! 次元犯罪者ならば、その罪を償ってからパン屋を開くんだ! きっとそれからでも遅くない!」
『えぇい黙れ黙れ! もはや貴様らにはミッドチルダを小麦粉の海にされる未来しか残っていない! ジャムバタチーズアンアンアンを用意して腹を空かせて待っていろ! ふははははは、そして最後には地上本部を竃にし、この機動パン工場レヴァンティンでパンを焼いてやろう!
 貴様らにもとくと味わわせてやろうではないか! 史上最高最大最強のパンをな!』
「レヴァンティンでパンを焼くだと!? まさかシグナムのレヴァンティンを奪ったのも!」
『それも私だ。そうだ、俺はレヴァンティンを求めた! 数多のパンを焼くためにな! 今、数は揃った。見よ、30を超えるレヴァンティンで焼き上げたこんがりきつね色の軍勢を!』
「シグナムの魂が、人の命をつなぐ糧の助けになるのなら…きっとあいつも本望だろうさ」
「いや、たぶんシグナムさん泣くよ?」
「だがな! このゴーレムみてーに無理やり食わせてやるってのは、絶対に間違ってる! 食事ってのは、もっと楽しくてあったけーもんだ!!」
『食事にぬくもりなど要らぬ! 俺のパンを讃え、崇め、むしゃむしゃすればいいのだ! もはや語る舌を持たん! かかれA、C、S!!』

移動要塞型レヴァンティンから飛び出した三つの煌めき。
それがA、C、Sと呼ばれたそれぞれなのだろう事は明白だが、それよりも再び首都へと進行し始めたブレッドゴーレムの軍団が問題だ。
フォワード陣に首都へと進行するブレッドゴーレムの足止め、隊長陣で移動要塞型レヴァンティンを止める算段をつける。
特になのは、フェイトは時の庭園の知識がそのまま使えるようで、たどり着ければかなりのアドバテージになるはずだ。
ヴィータはヴィータで、AMFがかかっているというわけではないあの要塞だ、鉄槌が有効打になり得る。

さぁ、行こうか

そうなのはが号令を下そうとした瞬間の事である。

「うぐぅ!?」
「あぁ、なのはさん!?」
「グッ…静まれ…静まれわたしの右腕……グゥ…静まれ!」
「だ、大丈夫ですかなのはさん!」
「ダメ…ヴィヴィオ戦での無理が今になって…グゥ…い、いけない、とんでもない痛みだわ…具体的に言うと今から始まる戦闘に参加できずにただ傍観しているしかできないぐらいの痛みが…」
「なのは、無理しないで! 流石にその体で戦闘は無理だよ。あのレヴァンティンは私とヴィータで何とかするから」
「クソ、まるで味方の戦闘員が多いからできるだけ数を減らしてパワーバランスを均そうとしているかのようだが、その実ヴィヴィオ戦がたたって参戦できないとはなんて不自然さがなくて完全に整合性が取れた理由なんだ! 仕方ねぇ、やるぞテスタロッサ!」
「うん、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ…みんなも気をつけてね!」

地に満ちる小麦より出でし者たちへとフォワード陣が走った。
ウィングロードが伸びる、スフィアが舞う、白銀の竜が翼を広げる、騎士が手にした「道」を通す。

「さぁ、行こうか」

稲妻が地から天に昇った。
84タピオカ:2008/09/23(火) 23:26:52 ID:J6RMcrfP
以上です
85名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 23:31:38 ID:SFxekebN
ご都合主義次長www
86名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 23:34:43 ID:xU3e4w1U
厨ニ病自重しろwwww
87名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 23:34:59 ID:eJxnHrdz
>>84
  (  ゚д゚)・・・
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/    /

  ( ゚д゚ )
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/    /

  ( ゚д゚ ) ガタッ
  .r   ヾ
__|_| / ̄ ̄ ̄/_
  \/    /

 ⊂( ゚д゚ )
   ヽ ⊂ )
   (⌒)| ダッ

なのは、腕の痛みは絶対、仮病だろw
GJした!!
88名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 23:35:47 ID:t53TmMGz
もうどこからツッコめばいいのかwww
89名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 23:36:46 ID:PgvIS2xh
ぶっ飛びすぎだろwww  なんつうパンだwww
90名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 23:55:30 ID:6tyRHGvL
こっこれは・・・ 最低ブーム再びか!!!
91名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 23:59:59 ID:+gpQ5YgT
ヤバイ、これ面白い。
GJです笑わせてもらいました。
92名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 00:03:47 ID:D9j6CskL
なのはこの戦いに関わる気ゼロw
93名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 00:27:38 ID:vEvhKr3L
なんかうすた漫画を思い出すなwwwwwwwwGJです
94名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 00:40:39 ID:Mkzmuy10
くだらないのに癖になるw
GJ!
95詞ツツリ ◆265XGj4R92 :2008/09/24(水) 00:43:10 ID:nNqvKw+P
皆さんお久しぶりです。
一時ごろからちょっと息抜きで書いたヴァイシグSSの前編を投下させていただいてもよろしいでしょうか?
ハードボイルド注意。
ちなみにヴァイスとシグナムが付き合っている状態で、sts後という設定です。

NGワードは【煙草を付ける先】です。
96煙草を付ける先 ◆265XGj4R92 :2008/09/24(水) 01:00:42 ID:nNqvKw+P

 火が欲しい。
 そんなことを偶に思う。
 例えば吸えもしない煙草を見かけて、なんとなく憧れた時とか。
 例えばコーヒーを沸かすために薬缶に水を入れた時とか。
 例えば――死にたくなった時とか。
 めらめらと。
 ゆらゆらと。
 マッチを吸って、先端に揺らめく陽炎はどことなく蠱惑的で。
 燃やしたくなるのだろう。
 燃えてしまいたくなるのだろう。
 だから、惹かれたのかもしれないし。
 だから、俺は受け入れた。

 燃えるような紅を纏い、鮮烈な剣を振り翳す一人の女性に。

 男女の関係になった。



 ――煙草を付ける先



 酒を喉に流し込む。
 焼けるような刺激。臓腑で熱せられて、どこか火が灯るような感覚。
 これが堪らない。
 熱が僅かに上がる、ウイスキーの美酒に酔いしれる。

「一人で飲んでるのか?」

 月光の下――光が差し込む夜の下、光と闇のコントラスト。
 宿舎の外――解放的な気分、縛り付ける者はない、月光浴には最適。
 風が気持ちいい。
 存分に酔えそうだ、そんな至福の時。
 植木の横でウイスキーを入れた水筒を片手に飲んでいた男がびくりと肩を震わせた。

「姐さん」

 颯爽とした風が吹き抜けたような気がした。
 男が目を向ける。
 そこには息を呑むほど美しい――女性が立っていた。
 桃色の髪を一つにまとめた髪をなびかせ、しなやかな体躯の長身を毅然とした体勢で立たせた、一人の女性。
 シグナム。
 男の同僚にして、友人にして、元上司にして、一応――恋人。
97煙草を付ける先 ◆265XGj4R92 :2008/09/24(水) 01:02:02 ID:nNqvKw+P
 
「どうしたんですかい?」

「それはこっちの台詞だ、ヴァイス。主役が途中で抜け出てどうする」

 酒盛り現場から姿を消した男――ヴァイスを探して、シグナムはその豊満な胸を押し上げるように腕を組んだ。
 意識をしているわけではないだろう。
 隊舎でなし崩しに始まった酒盛り、普段はきっちりと身に付けている上着のないシグナムはYシャツ一つで、ぴっちりとした体の線とふくよかな乳房や体つきのお陰で皺が浮かび、それがどことなく邪心を持つ人間の情欲を誘う。
 一挙一動ごとに彼女の肉体がもつ動作が、その下の裸体の想像を掻きたたせ、その血肉の柔らかさと色香を掻き立てるには満足過ぎる。
 月の光を浴びたシグナムの姿は唾を飲むほどに美しく、酒が程よく回った脳と体に熱を通すには十二分で、ヴァイスはどこか興奮する己の肉体を自覚したが。

「いや、ちょっと涼みたい気分だったんで」

 シグナムから視線を外し、ウイスキーの水筒を口に運んだ。
 ちゃぽんと鼓膜に響く水の音、波の音のように心地よい音の中には琥珀色の美酒が詰まっている。
 それなりに高いウイスキー、頑張った己へのご褒美だ。
 一口口に含み、あー美味いと子供のように笑うヴァイスの顔。

「まったくしょうがない奴だな」

 シグナムは呆れたように微笑むと、すっとヴァイスの横に座った。

「へ?」

 植木の場所を軽く払うと、シグナムは腰を下ろす。
 スカートの皺を少しだけ直して、ヴァイスに顔を向けた。

「お疲れ様、だな。ヴァイス」

「いや、俺は大したことはしてないっすよ」

「本当にそうか?」

 三日間にも及ぶ立てこもり事件。
 それをシグナムたちは解決した。
 無作為に立てこもり、人質を取った犯人に辛抱強く交渉を続けた交渉班。
 犯人を刺激しないように建物の内部を調べ、突入ルートを構築した工作班。
 適切な指示を飛ばし続けた司令部。
 迅速に突入し、犯人達を鎮圧したシグナムを含めた人質救出部隊。
 そして、突入と同時に犯人を沈黙させたのは三日間にも及んでずっと待機し続けた狙撃班であり、ヴァイスの一撃だった。
 忌まわしき過去。
 同じように人質を盾にしようとした犯人の脳漿をぶちまけて、殺傷せしめた正確無比な一撃。
 誰からも見事だと告げるだろう一撃に――ヴァイスは何も感じていなかった。
 殺した。
 という感覚のみで、怒りも悲しみもなく。
 空しさも喜びも、行ったという行為に付き物の感情すらも湧き上がらず。
 ただ当然。
 当たり前という感覚。
 それしか彼の手にはない。

「……大したことじゃないすね」

 指を動かし、数センチにも満たない命を奪う指の動作を行いながら、ヴァイスは言葉を大気に拡散させる。
 顔を上げながら、月を見る。
 綺麗な三日月、トリガーのような形に見えて、いつ引き金を引き落とせばいいのだろうと考える職業病。
98煙草を付ける先 ◆265XGj4R92 :2008/09/24(水) 01:02:34 ID:nNqvKw+P
 
「月が綺麗、だな」

 透明な声が横から響く。
 甘い香り、鮮烈な剣士には似合わない、けれど魅力的な女性であるシグナムにはとても似合う甘い体臭が風に靡いて、ヴァイスの鼻に届く。
 柔らかな肉体が、ヴァイスの肩に圧し掛かっていた。

「姐さん?」

 蕩けそうな体温、ジンジンと筋肉が一瞬硬直して――すぐに弛緩する温かい感触。
 月光の下でシグナムの髪が光を反射し、輝きを帯びる、その下の剣士ではなく、女性の顔を浮かび上がらせる。
 静かに、優しいシグナムの微笑だ。

「私にも一杯くれないか?」

 虚空に無造作に伸ばした二本の指を揺らして、シグナムがねだる。
 ヴァイスは一瞬考えて、ちゃぽんと鳴らしたウイスキーの水音と重量に、別にいいかと判断を下す。

「どうぞ」

 すっとヴァイスが水筒を揺らしながら、シグナムの手の平に水筒をおいた。
 僅かに触れた指先に、シグナムが頬を僅かに染める。
 光源など月光しかない暗がり故に、彼は気付かなかった。

「すまない」

 ヴァイスの差し出した水筒を受け取り、シグナムが飲み口に触れた親指で蓋を押し上げた。
 その指先で自由自在にレヴァンテインの軌道を変える剣士の指先は、白くて細い指先とは裏腹に力強く、強靭。
 男のヴァイスでさえもそれなりに力をいれないと飛ばせない蓋を容易く飛ばす。その様は水面から飛び立つ飛び魚のようだった。
 魅力される、神秘的な光景。

「おっ」

 紐に括られた蓋が放物線を描いて、水筒に当たり、澄んだ金属音を響かせた。
 静寂に満ちた大気に金属音が染み渡る、美しい音。
 まるで斬光。
 彼女が剣を抜き放った時のような小気味いい響き。

「んっ」

 シグナムは水筒の口に唇を当てて、一口。
 白い喉を鳴らす。
 彼女はふぅと少しだけ上気した頬を浮かばせた。

「……旨いな」

「それなりに上等のウイスキーなんですよ、それ」

 と、どこか得意げに笑うヴァイスの顔はまるで子供のようだった。
 そのヴァイスの顔を少しだけシグナムは嬉しそうに見つめて、もう一口飲んでいいか? と尋ねる。

「構わないっすよ」

「そうか」

 言葉に甘えて、もう一口。
 “ヴァイスが口付けた水筒の口に唇を押し当てる”。
 ヴァイスは気づいているのだろうか?
 それが間接キスと呼ばれる行為だということに。
 先ほどからずっとアルコール以外の要因でシグナムが頬を染め続けているということに。
99煙草を付ける先 ◆265XGj4R92 :2008/09/24(水) 01:04:07 ID:nNqvKw+P
 
「ふぅ」

 少しだけ舌で唇を舐めて、シグナムが二口目のアルコールを飲み干す。
 その頬は上気していて、どこか息が荒かった。発汗作用が進み、月光に照らされた肌は艶めかしく輝く。
 熱いのか、ヴァイスにしなだれかかる肩が少しだけすり寄るように動いていた。
 シグナムは別に酒豪ではない。
 この場に来るまでにも隊員たちからの勧めで何本かのビールを飲んでいたし、多少は酔いが回っていた。
 その身は元は闇の書――否、夜天の書の守護騎士プログラムによって創造された人ならざるもの。
 しかし、プログラムの劣化と想定外の長期間の顕在化がその存在を書き換えていったのだ。
 いかなる奇跡か、それとも不自然な魔法での構成体ということを世界が嫌ったのか、彼女たちは人に近付きつつある。
 年を取ることも可能になるのかは分からない。
 ただ不死であり続けることは難しいと思えた。
 人を真似るように、人体を模すかのように変異し続ける体によってシグナムは酔いしれるという感覚を手に入れていた。
 それは至福だった。
 誰かと共に酒を飲み、共に酔えることが幸せだった。
 それも……好きな男となら最高といえるのではないだろうか?

「なあヴァイス」

 酒気に潤んだ瞳が、ヴァイスを見詰めた。
 どこか物欲しげな視線。

「なんすか?」

 それにヴァイスは静かに応える。
 息を吸い、いつもと変わらぬ、どこか楽しげな口元。
 そのヴァイスの顔を見て、シグナムはどこか言葉を考えると、すっと上を見上げて。

「月が……綺麗だな」

 と、言った。

「そうっすね」

 二人で月を見上げる。
 そして、水筒の中身が切れるまでずっと月を見上げていた。
 廻し回しウイスキーを口に含み、美酒に酔いしれた。
 ヴァイスは本当に嬉しそうに笑みをこぼし、ただその時間を楽しんでいた。
 シグナムもまたそのひと時を楽しそうに過ごした。
 恋人同士の酒盛りは静かに時を流れさせ、例えることの出来ない時間を与えていた――のはいいのだが。

 その翌日のシグナムの顔はとても沈んでいたことをヴァイスは知る由もなかった。


100煙草を付ける先 ◆265XGj4R92 :2008/09/24(水) 01:05:12 ID:nNqvKw+P
 そして、数日後。

「なあ、アルト……私は女性として魅力がないんだろうか?」

「は?」

 地上本部にある陸士の共同食堂、そこでカレーうどんを食べていたアルト・クラエッタは元上司からの唐突な告白に目を丸くしていた。
 事の発端はたまたま食堂で見かけたシグナムをアルトが食事に誘ったのが理由だった。
 陸士108部隊に所属を移し、首都航空隊からは外れてしまったアルトだったが、その交流は途絶えていない。
 昼食の一時を他愛無いお喋りをしながら過ごそうと考えていたところに、突然の告白で驚かないわけがなかった。

「えっと……喧嘩売ってます?」

 シグナムの上から下まで見ての結論がそれだった。
 女性としての魅力がない?
 そんならせめてそのバストの半分ぐらいよこせやー! というのがアルトの本音だった。
 大きく魅力的に膨らんだ乳房、しっかりと身の締まったヒップに、バランスの取れた細い腰、鍛え上げられながらも筋肉質じゃない手足に、麗しいと形容してもいい美貌。
 そして、香り立つような色香。
 どこからどうみてもモデル級の美人。
 それに女としての魅力がないなら、アルトはどうすればいいのかと叫びたかった。

「え、あ、いや、そういうわけではないんだが」

「なら、どういうわけですか!」

 きしゃーと警戒する仔猫のようなオーラを発しながら、アルトはシグナムを見上げる。
 長身のシグナムと比べると彼女はまるで子供のようだった。
 というか乳も尻も勝てる要素が見当たらない。
 思わず両手で自分の乳首を摘まんでみたが、ちょっと気持ちいいだけでまるで意味がなし。
 シグナムとアルトでは風船と饅頭、月とすっぽん程の戦力差があった。
 ええい、援軍を持ってこい。我に戦力なし、ヘルプヘルヘルプ!
 つまり、そういうわけだった。

「シグナムさんが女の魅力ないんだったら、私はどうすればいいんですか?」

 うーと人差し指を突き合わせながら、ちょっとだけ目を潤ませてアルトが告げる。

「……なんというか、すまん」

「分かってくれればいいです。で、一体どういうわけですか?」

 カレーうどんをちゅるちゅると啜りながら、アルトは尋ねた。
 発言内容に少し混乱していたが、何故そんなことを言い出したのか理由があるはずだ。

「ああ、実は……」

「ふむふむ」

 カレーうどんの肉美味しいなぁと内心思いつつ、アルトが相槌を打つ。
 シグナムは少しどう言えばいいのか悩んだように吐息を洩らすと、数秒の後に決意したかのように口元を結んだ。

「実は」

「じつは?」

「……ヴァイスがまったく手を出してくれないんだ」

「……」

 瞬間、アルトの手が止まり、ぽちゃんと握っていたレンゲがうどんのお椀の中に滑り落ちた。
101煙草を付ける先 ◆265XGj4R92 :2008/09/24(水) 01:06:12 ID:nNqvKw+P
 
「……はぁ?」

 アンタアホですか? とでもいいたげな表情を浮かべるアルトに、シグナムとはどこまでも真剣で深刻な表情を浮かべる。
 彼女は悩んでいるのだ。
 彼女なりにだが。

「いや、な。付き合い初めてもう数ヶ月ぐらい経ってるんだが、一回も奴から手を出そうとしてこないんだ」

「えー?」

 それはシグナムが威圧とかしているのでは?
 とアルトは思ったが、この様子と先ほどの発言からするとそんなに威圧しているわけでもなさそうだ。
 しかし。

「……ふつー、そんなこと私に相談します? 元恋敵ですよ、私?」

 ヴァイスが好きだった。
 彼に憧れていて、女性として好意を抱いていたアルト。
 けれど、シグナムと一緒にいて幸せそうなヴァイスを見て、彼女は諦めた。
 一度告白して、けれどもヴァイスは済まなそうに謝ってきて、むかついたからパンチ一発とラーメンを死ぬほど奢らせた。
 それで彼女は吹っ切れたのだ。
 ヴァイスのことで惚気るシグナムを許せるほどに、ヴァイスやシグナムにすっきりと単なる後輩で同僚で友人なぐらいに。
 だけど、この相談はちょっと塞がった傷を掻き毟るんじゃないかな? とアルトは思った。
 何の嫌がらせじゃい、とも思った。

「いや、私も確かに考え無しだったのは分かる。しかし、相談できる相手がいなかったんだ……」

「あー……確かにシグナムさんの周り全滅ですしね」

 美人なのに、恋のこの字も知らないじゃないんだろうか? という面子を思い出し、アルトははぁっと同情のため息を吐き出した。
 一番の堅物であったはずの彼女が恋愛に勤しんでいるというのに、周りの教導官とか、執務官とか、元部隊長とかはいつになったら恋に励むんだろうか?
 と、他人事ながらに心配になるアルトだった。

「んー、まあ相談乗りますよ。ほかならぬシグナムさんのためですしね」

「た、助かる!」

 ぱぁっと希望を見つけたような、或いは砂漠で限界を向かえて嗚呼、私はここでドライアップで死ぬのねと思った瞬間オアシスを見つけたような表情を浮かべるシグナム。
 そ、そんなに悩んでいたんだと内心引きつつも、アルトはカレーうどんの汁を蓮華で啜り、訊ねた。

「んじゃ、ちょっと確認しますけど――ぶっちゃけシグナムさん、ヴァイス先輩誘いました?」

 びしっと蓮華で指差し、アルトが訊ねる。

「……さ、誘ったというと?」

 シグナムはビクリと体を震わせて、恐る恐る訊ね返す。

「えー、ぶっちゃけいうと――や ら な い か。とか?」

 何故か頭の中で青いツナギのイイ男の顔が浮かんだが、生憎女の子なので単なる幻覚だろう。

「で、出来るわけないだろう……!」

 ばしんっと机を叩き、心なしかポニーテールを逆立てて真っ赤になったシグナムが叫ぶ。

「あ、危ないなぁ! 私のカレーうどんカレーうどん」

 がたんっとカレーうどんの器が揺れたので、咄嗟に持ち上げるアルト。
102煙草を付ける先 ◆265XGj4R92 :2008/09/24(水) 01:07:14 ID:nNqvKw+P

「ふむふむ、直接的な欲求はしてないわけですね?」

「そ、そんな恥ずかしいまねが出来るか! そもそも、お、女の方からねだるものではあるまい!」

 そんなシグナムの反論に、アルトはやれやれと内心肩を竦めた。
 いつの話をしているのか、時代は男女平等、或いは魔法社会においては女性のほうが強い権威を持ちやすいご時勢である。
 男から要求をするなど、そんな甘い時代ではないのだ。

「甘い、甘いですよ、シグナムさん」

「なに?」

「いいですか。男だろうが、女だろうが、体はまるで別の生物のように分かれていても同じ人間なんです。お腹も空くし、眠くもなるし、ちょっとそんな気分にもなるんです! あえていいましょう、そんな考えは――現代では通用しないと!」

 ビシッと人間の三大欲を主張しながら、蓮華をシグナムに突きつける。
 常時ならば失礼千万な行為だが、今の一言はシグナムの胸をどきゅーんと打ち抜いたようだ。

「バ、馬鹿な。私が不覚を取っていただと?」

 本陣を打ち取られた落ち武者のように肩を落とし、暗い影を背負うシグナム。

「まったく、シグナムさんってば女としての常識を弁えていませんね」

 やれやれと見せ付けるかのように肩を竦めると、アルトはちゅるりとカレーうどんを啜った。

「男女関係ってやつはですねー。一方的に与えて、奪われてじゃないんですよ。欲しいなら少しぐらい求めてもいいんですよ、言葉で言わないと分からないことも多いですよ?」

 人差し指を頬に当てて、アルトは片手で顎を支えながらかつての恋敵の目を見た。
 どこまでも不器用で、甘えるのが苦手な女性に同情し、少しだけの応援をした。
 ずきりと少しだけ心の古傷が痛んだけど、笑って隠し続ける。

「……深いな」

「人間関係は深いんですよ。多分一生かけても分かることなんてないと思いますよ」

「しかし、タメになった。感謝する、アルト」

「ははは、そういうのは上手くいってから言ってください」

 優しく微笑して感謝を告げるシグナムに、アルトは照れくさそうにカレーうどんの器に顔を隠した。
 一端の結論は出たとばかりに、互いにしばらく食事を続ける。
 そして、不意にアルトは思い出したように告げた。

「あ、そういえばシグナムさん。具体的にどうするかプラン立ててます?」

「……プラン?」

「具体的な計画ですよ〜。ほら、いきなり押しかけて、チョメチョメしようと! とか言うわけにはいかないじゃないですか」

「い、いやそれはそうだが」

 食堂のためか具体的な表現は避けているが、ストレート過ぎるアルトの言葉にシグナムは少しだけ顔を赤らめた。
103煙草を付ける先 ◆265XGj4R92 :2008/09/24(水) 01:08:44 ID:nNqvKw+P

「まあヴァイス先輩も昔はそれなりに遊んでいましたし、不能ってわけじゃないでしょうから、シグナムさんがこう言葉で求められばコロリと落ちそうですけどね」

「まあ確かにな……昔は奴もそれなりに夜遊びはしていたみたいだが、最近はしていないぞ?」

 狙撃ミスでの事件の前だろうか。
 あの頃のヴァイスは本当に明るかった。
 スナイパーなんて神経が削られる仕事に就いていながらも、そんな重みを感じさせない明るさで同僚とよく笑い、酒を飲み、元気にはしゃいでいた。
 見かねたシグナムや部隊長が窘めることはあったが、それで日々の鬱屈などが吹き飛ばされればいいと内心安心していた。
 スナイパーは心を病みやすい。
 たった一つの失敗が、それも肉親を撃ったという事実でノイローゼになり、自殺しかけるほどに。
 今でこそ明るい態度を取っているが、昔の彼と今の彼は絶対的なまでに違う。
 昔ほどはしゃぐこともなく、黙々とトレーニングに励み、一人で考える姿が見られるようになっていた。
 そんな彼と共にありたいとシグナムは考えていた。
 贖罪ではない、そんな同情するような気持ちは彼への侮辱だ。
 けれども、それを少しでも支え、癒し、励まし、共にいられるような存在になれればとシグナムは彼との交際を決めた時から抱いている。
 剣を捧げる相手ではない。
 主君は生涯はやて一人だと決めている。
 けれども、背中を預ける相手ぐらいはいいのではないか。
 共に戦場を駆け抜け、人生を寄り添える相手として彼女はヴァイスを選んでいた。

「まあシグナムさんと付き合ってますしねー、意外と根は真面目な人ですよ、ヴァイス先輩って人は」

 嬉しそうにアルトは笑う。
 そんな彼の背中に憧れて、恋した少女は微笑んでいた。

「まあ一緒に休暇でも取って、デートしたらいいんじゃないですかね?」

「そうだな。一度くらいゆっくりと楽しんでみるか」

 いい提案だ、とシグナムは微笑し、食べ終えた食器を片付け始めた。



104煙草を付ける先 ◆265XGj4R92 :2008/09/24(水) 01:09:52 ID:nNqvKw+P
 


 骨が軋む、肉が圧迫されて、皮膚が引き攣るような痛みを覚える。
 それでもこなす、繰り返す。
 重いダンベルを持ち上げ、胸の前まで降ろし、そして高々と伸ばす。
 それだけを繰り返す。
 苦しい、辛い、悲鳴を上げる肉体の痛みなど気にせず、遮断し、無視し、汗が吹き出し、手が動かなくなるまでダンベル上げを繰り返す。
 鍛え上げられた上半身が汗を吹き出しシャツを濡らし、編み上げられた鉄線のような肉体が軋む音を立てながら、ダンベルを元の器具に戻した。

「ふぅ」

 男は息を吐き出す。
 汗に触れた顔を横の器具に掛けたタオルで拭き、無造作にシャツの中にタオルを突っ込み汗を拭う。

「……鈍ったな」

 震えの走る腕を見つめ、男――ヴァイスは静かに呟いた。
 常人ならば不可能な回数を、鍛え上げた武装隊の人間でもこなすのは難しい重量のダンベルを、数百にも至る回数に渡って持ち上げながらも、ヴァイスは納得がいかないように首を振るう。
 少し前ならばあと数十回はこなせた。
 もっと前だったならこの程度で限界はこない。
 もっと若かったら、トレーニングは続けられた。
 なのに、今はこの程度で限界が来る。
 痛感する。

「嗚呼、畜生」

 ぼやくようにヴァイスは息を吐き出す。
 己の肉体の衰えに、もはや成長する余地のない自分に、失望する。
 ヴァイスの魔力適正は決して優れているとは言えない。
 ただひたすらに鍛え上げて、限界まで訓練してもせいぜい魔力ランクB+。
 かつて所属していた機動六課、そのフォワード陣ならば軽々と凌駕していった領域。
 そこでヴァイスは頭打ちだった。
 しかし、それに嫉妬するほど彼は愚かでもなく、嘆くほど諦めがよかったわけじゃない。
 魔力が足りないならば肉体を、精度が足りないならば修練を、能力が足りないのならば経験で補おう。
 そう信じ、そう考えて彼は努力してきた。
 一度は妹の誤射で打ちのめされ、諦めていた狙撃手としての道も和解とトラウマの乗り越えと共に再開し、鍛錬に励んだ。
 なのに、それなのに。

「……早すぎるだろ」

 もはや二十台の終わり、三十にもさしかかろうと年齢は肉体のピークを超えて、衰えを開始する。
 鍛え続けた肉体は日々弱り、思うように能力を伸ばすどころか保ち続けるのがやっと。
 今はまだいい。
 まだデバイスは握れる、まだ戦い続けられる。
 けれど、五年後、十年後はどうだ?
 魔力適正が低く、肉体も衰え続ける自分が戦い続けられるのか?
 分からない……
 未来なんて誰にも分からない。
 かつて機動六課の成立理由となった預言、それすらも大まかな予知のみで、全てが正確無比に分かるわけではない。
 未来なんて誰にも分からないのだ。

105煙草を付ける先 ◆265XGj4R92 :2008/09/24(水) 01:11:00 ID:nNqvKw+P
 
「……」

 ヴァイスは静かに目を瞑る。
 心に波立つ激流のような感情を撫で押さえ、平常心を取り戻していく。
 ゆっくりと、ゆっくりと息を吐き出し、心臓の鼓動と呼吸のリズムを合わせる。
 怒りに捕らわれてはいけない。
 焦りに呑まれてはいけない。
 冷静に判断しろ。
 冷酷に理解しろ。

 ――既に分かりきっていることなのだから。

「そうだな……そうだよな」

 ヴァイスは暗く、虚空に融けるように言葉を吐き出す。
 既に分かりきっていることなのだ。
 自分の限界など自分が知り尽くしている。
 だから、決意は変わらない。
 だから、彼の考えは変わらない。

 “悲壮な彼の思考は変化しない”。

「……よし、トレーニングを続けるか」

 パンッと頬を叩き、ヴァイスが筋力トレーニングを続けようとした時だった。
 彼の近く、見える位置に置いておいた待機状態のストームレイダーがコール音を鳴らした。

「ん?」

 メールの着信音か?
 そう考えて、ヴァイスがストームレイダーに手を伸ばし、着信メールの内容を確認する。

「ん? こりゃあ、はは、どういう風の吹き回しかね? ストームレイダー」

 シグナムからのメールだった。
 それもデートのお誘い、ヴァイスはいつものお調子者の顔を貼り付けて、口笛を吹く。

「こりゃあ受けるしかないよな。せっかくのお誘いなんだからよ」

 ヴァイスの軽口。
 しかし、ストームレイダーは答えない。
 彼は答えを求めていないのだと、彼の相棒は知っていた。

「やったね〜」

 カラカラと笑うヴァイス。
 しかし、その笑顔の下に隠された悲しみを。
 彼の絶望を知るものは、ストームレイダーしかいない。




 後編に続く

106詞ツツリ ◆265XGj4R92 :2008/09/24(水) 01:11:37 ID:nNqvKw+P
投下終了です。
ありがとうございました〜
107名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 01:22:06 ID:Yc+xgchB
ヴァイスの事を思う姐さんも可愛いけど、アルトも凄く可愛いwww
ここまで可愛いアルト初めて見たぜ!

しかしなんていうか、こんな二人の心を奪ったヴァイスが憎い筈なのに最期のくだりで分からなくなった。
武装局員として年齢に限界を感じる姿は哀愁に満ちていて凄く切ない。

GJでした、続きまってます!!
108名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 07:13:44 ID:z/3t7wGf
>>106
GJ!大人の恋ですねぇw
ツツリ氏みたいにヴァイスをカッコ良く描けるSSが俺にも書けないもんかな・・・
109名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 10:45:40 ID:Lcvpmjtb
>>106
GJ!
アダルトな入り方とヴァイスの孤高っぷりが何とも言えません。
ヴァイスの苦悩が癒される日は来るのだろうか?
110名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 15:41:37 ID:xyrfSsXR
>>106
何かしっとりした大人の話でGJ。ド助平なヴァイスも笑えて好きだが、何かしら影を持ったヴァイスもいいな
111名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 21:50:44 ID:B4XBu0cN
>>106
GJ! 後半が楽しみです。エロくないけどアダルティ。
112 ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:05:28 ID:nMOuMAIR
10分頃から投下します
113尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:11:49 ID:nMOuMAIR
・非エロ
・オリキャラ多数、というかメイン。
・自己解釈あり
・SSXは未だ入手してないので矛盾があるかもしれません
114尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:13:20 ID:nMOuMAIR
「あんな事を言ってたが、ヒドゥンは大丈夫って事でいいのか?」

 歩いている途中、外交官が唐突にそんな事を言ってきた。
 あんな事とは先程の助言の事だろう。
 預言に記された事件とヒドゥンでは、ヒドゥンの方が先に訪れるため、そんな事を聞いてきたのだろう。

「さあ。わたしの言葉はあてにならないからな」
「ふーん。別に教会とか俺には関係ないけどさ」
「けど、なんだ?」
「お前のやってる事が死ぬ前の身辺整理みたいでさ」

 一瞬、歩調が乱れるが、意識してただちに修正する。
 その様子を知ってか知らずか、外交官は割と真剣な声で、

「お前を養子にしたいな〜とか思ってたから心配してな」
「……ロリコン」
「…………お前みたいな精神年齢の高い餓鬼をロリっていうのは抵抗あるな」
「わたしは諦めろ。だが、わたしと同じ顔をした娘なら沢山いる。どうせなら彼女達を頼む」
「うーん。俺はお前が欲しいんだけどな」

 このまま地上本部に連れていけば逮捕してもらえるだろうか? 
 少女は結構本気でそんな事を考えた。

「悩みがあるなら聞くぞ。お前は笑ってた方が可愛いからな」

 話してもいいものか逡巡したが結局話す事にした。
 助言を貰えなくても誰かに聞いてもらうだけで気が楽になる事もある。

「最近、意識が混濁してきてな。自分が何者なのか分からなくなってくる」
「だろうな。ぶっちゃけると、お前が俺の記憶の中にいる聖王と同じ振る舞いをするたびに危ういものを感じていた」
「わたしがそう振る舞った原因の何割かはお前だがな。ゆりかごもずっとわたしを呼んでいるようだし」
「目的の為に肉体だけでなく記憶も再現する必要があったんだろうが、そのせいで植え付けられた記憶から生まれた自我と新しい経験から生まれた自我の間に齟齬が発生したのか」
「そんなとこだろうな」
「……悪い。的確なアドバイスが浮かばない。その手の状態は本人がどうにか折り合いをつけるしかないが……」

 外交官は申し訳なさそうにするが、それも仕方ないだろうと少女は思う。
 この感覚は他人には理解出来ない。
 自分も最高評議会の説明がなければ精神病の一種だと思っていたに違いない。
 まあ、あと少しだけで自我が持てばいい。
115尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:14:46 ID:nMOuMAIR
「それと、もう一つ。今更だが、死ぬのが怖くなってな」
「それで泣いてたのか」

 外交官は合点がいったようにこくこくと頷く。

「情けない話だろ。一回目はちゃんと出来たというのにな」
「……逃げたいなら逃げてもいいんだぞ」
「いや。もう死ぬ覚悟は出来てる」

 あの居酒屋での一時はなかなか有意義だった。
 外交官に言わせれば若い身空で死ぬ覚悟が出来るのは不幸な事かもしれないが。

「ただ、死んでも、父さんも母さんも自分を迎えてはくれないだろうと思うと、それが辛い」
「そんな事はないと思うが」
「あの二人の子供はあの女だ。それは変わらない」
「ネガティブだな。だから俺の養子になっとけって」
「お前は親という存在を舐めている。やはり妹達は任せられない」

 それから二人の間に沈黙が生まれ気まずい空気が流れる。


「……自分で振っておいてあれだが、この話はやめよう。気が滅入る」

 出来れば楽しい話に変えたかったが、生憎とすぐには思いつかなかった。
 仕様がないので仕事関係の話をする事にする。

「49管理外世界は管理局に入る気はないのか?」
「ないな。メリットがないどころか、管理外世界は管理外世界で連合があるから、管理局に入れば裏切り者扱いされる」
「その連合、規模はどれくらいだ?」
「前の戦争の後に一気にデカくなったからな。管理局とも比肩するんじゃないかと自負してる。
 49管理外世界はそれ以前からのメンバーで発言力もあるから、今更な……」
「とはいえ、ブリュメールの奴のせいで発言力は低下しているのではないか?」

 痛い所を突かれた、と外交官は渋い表情になる。
 自国の人間が管理局に対して大規模なテロを仕掛けたなら当然の帰結だ。
116尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:17:10 ID:nMOuMAIR
「しかし、今回の一件はブリュメールの独断という事で強硬派が動いた。実際はその辺か?」
「誰も口には出さないが、連合内ではそうなってると思う。
 ただ、個人的にはブリュメールの独断という事で強硬派が動いた、という事にしてあの阿呆が好き勝手やったんじゃないかと睨んでいるが」
「そっちの方が、らしいな」
「まあ、上手い具合にガス抜きが出来たから強硬派も否定はしないみたいだが」

 強硬派という存在についても外交官に尋ねてみた。
 次元航行部隊のように、管理外世界での任務もある所はこういう情報を知りたがるだろう。

「連合の実質的なリーダーは本来は穏健派なんだが、馬鹿を抑える為に仕方なく強硬派の中核みたいな事やってるんだよ」

 自分にはとても出来ないとその人物を褒め称え、同時にそのせいで平時でも強硬派の勢力が強い事を教えてくれた。

「連合内には前戦争時の生き残りも結構いて、管理局打倒を声高に叫んでるから、そいつらを納得させる為にポーズだけでも反管理局をやる必要があるんだ。
 今更管理局を倒しても苦労だけで得る物はないってのに」

 外交官は大きな溜息を吐き、馬鹿の相手は疲れると愚痴をこぼす。

「あいつら、本気で管理局を悪の組織だと思ってる節があってな。
 口汚く罵る度に「いや、俺達も大差ないから」と内心で突っ込んでる」
「問題がない組織などないのにな。規模が大きくなれば余計に」
「お前等、絶対又聞きで批判してるだろって時もあってな。たまに違う組織の事を話してないか? と不安に思う事もある」
「その手の輩は批判だけで建設的な意見がないのがな」
「管理局を侵略者よばわりしてるが、お前等のやろうとしている事も立派な侵略だっての」
「その内、ベルカが滅んだのも管理局やミッドチルダのせいになったりしてな。ん……」

 暫く進むと妙な違和を感じた。
 振り向くと倒れている筈の騎士の姿が見えない。
 結界の外に出たのだ。
 そして、目と鼻の先。
 向かって右側のビルの外壁に一人の男がもたれ掛かっていた。
117尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:18:28 ID:nMOuMAIR
「よお、執務官じゃないか」

 外交官が片手を上げて明るく話し掛けるが、執務官の表情は強張っていて二次会のお誘いとかそういう風には見えない。
 執務官は反動をつけて壁から離れると険しい視線を向ける。

「あなた方が知っている事を全て教えていただきたい」

 脈絡もなく、余りに唐突だった。
 少女は思考を停止させ、外交官も困ったように肩を竦める。

「全て、ねえ。前に言った事で大体全部なんだけどな」
「大規模な次元災害ヒドゥン、高エネルギーを発生させるロストロギア、エイドスクリスタル。
 だが、事件の発端になった肝心な事を隠してはいませんか?」

 その目は居酒屋にいた時からは想像出来ない程に鋭く、こちらの姿ではなく、その奥にあるものを睨み付けている。
 隠し通すのは無理だと、前に出ようとした少女を外交官が手で制し、それ以上進む事を阻む。
 その時になって気付いたが、外交官また目を鋭く光らせ、相手を射殺さんばかりに睨んでいる。

「聞いてどうする?」
「聞いてから決めます。少くとも、当然与えられるべき情報が与えられない現状は変えたいと考えてますが」
「このクソ広い世界じゃ手に入らない情報の方が多いだろう」
「それはそうでしょうが、こと、ミッドチルダを舞台にした事件なら見過ごせない。今度から皆で住む予定なんで」

 声こそ荒げていないものの、二人の表情は厳しく、互いに引くつもりはないようだ。

「お前も俺と管理外世界の人間なんだから手を煩わせてほしくないな」
「自分は自分です。あなた達と一括りにされる謂れはない」

 言葉の応酬は続く。
 二人ともヒートアップしているが、よくない傾向だ。
 この対立で事態が良い方向に運ぶ事はない。
118尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:19:34 ID:nMOuMAIR
「もう、いいだろう」

 見かねた少女は二人の間に割って入る。

「……けどな、お前」

 外交官は渋っているが、こうなってはもう遅い。
 黙秘を押し通そうとしても執務官は力ずくで来るだろう。

「彼等にだって知る権利はあるし、そもそも極秘に進めようとした我々の方が問題だろ」
「……何も知らず、何も出来なければ完全な被害者でいられる。俺やお前がどんな覚悟で罪を背負おうとしているか」
「そんな事にはならない。誰にも罪は背負わせない」
「……お前やブリュメールの案には賛成出来ないな。今からでも考え直せ」
「随分と残酷な男だ。わたしが人を見殺しに出来ると思うか?」
「……勝手にしろ」

 その物言いは卑怯だと、外交官は不機嫌そうに言い放ってその場に座り込む。 

「話はつきましたか?」
「ああ。教えてやろう。ある次元災害とそれを巡る愚か者どもの話だ」

 そして、少女はゆっくりと語り始めた。




119尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:20:52 ID:nMOuMAIR
「……教えてもらった事には感謝します。しかし」

 血の気が失せるほど強く拳を握り締め、絞り出すように言葉を吐き出す。

「どうしてそんな重要な事実を問い質すまで隠していたんですか!」

 知っている事をすべて教えると少女が予想していた通りに執務官は激昂した。
 赤い髪を乱しながら少女に詰め寄る。

「明かしていたらパニックが起きてただろ。それに、最近まで本当に来るのかあやふやだったしな」

 外交官は携帯用の酒瓶を取り出して、ごくごくと喉を鳴らしている。
 まだ飲み足りないのかと少女は一瞬思ったが、すぐに中身はアルコールでない事を思い出す。

「あー、くそったれ。イデアシードさえあれば、もっと穏便に済んだんだがな」
「外交官も、どの面下げて准尉やランスターやキンガと接してたんですか!」
「餓鬼だな、お前は。十歳で成長が止まってんじゃないのか?」

 苛立ちを隠そうともせず執務官を挑発し、執務官もそれに乗る。
 執務官は首から下げていた金属の柄を取り出し、外交官は酒瓶を地面に置き、両手を握り締めてゆっくり息を吐く。

「……二人とも、抑えろ」
「悪いが、執務官が連合に味方する気がないなら、ここで倒させてもらう」
「……」

 聞く耳持たず。
 両者とも、この場で一戦交えるつもりだ。
 二人の男に挟まれる形になった少女の鼓動は加速し、嫌な汗が滲み出る。
 止めに入っても負けはしないが、同時に勝てもしない。
 こんな事ならレリックを持ってくれば良かったと後悔するが既に後の祭り。

 とりあえず、リングバインドとストラグルバインドで動きを封じてからシュヴァルツェ・ヴィルクングを外交官に叩き込む。
 その後で執務官を説得する。

 脳内でシミュレーションをしてみるがどうも分が悪い。
 だが、少女の不安は杞憂に終わった。
120尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:22:19 ID:nMOuMAIR
 何か行動を起こすより速く、三人の意識は別々の方向に向けられる。
 外交官は驚いたように目を見開いたが、執務官は逆に気を引き締めるように目を細めた。
 外交官の後頭部には銃型デバイスの銃口が押し当てられ、執務官の後頭部には一般的なデザインのストレージデバイスの先端が触れている。
 そして少女は何者かに抱きかかえられて、彼等から数メートル離れた位置にいた。
 新しく現れた三人は全員が外套とフードを纏っていて教会騎士団に匹敵する怪しさを放つ。
 それぞれ、シルバーケープだの、シェルコートだの、何だのいう高性能な装備らしいので文句は言えないが。

 向かい合った状態で背中を取られた執務官と外交官には、互いの背後にいる人物の顔が見えたらしく、殆んど同時に、

「お前、カイメイにいた二人組の根暗な方か?」
「この局員殺しのテロリストが。よくランスターの近くをうろつけたな」

 周囲の空気が彼等の敵意で緊張し一触即発の状態になる。
 三人は少女の護衛なのだが、執務官と外交官が臨戦態勢に入った事に反応して出てきたようだ。
 このまま五人に戦われると、なかなか決着がつかず被害だけが拡大してしまう。
 前のように割って入ろうとしたが、自分を抱えていた者が庇うように立ち塞がり、進ませてくれない。

「三人共、手出しは無用だ。この場は引け」

 聞こえた筈だが三人は動かない。
 正確には外交官の背後にいる者は微かに銃を下げたのだが、他の二人が動かないのを見て慌てて元に戻した。
 難儀な事だ。

「お前達が手を出さなければ外交官と執務官が勝手に戦うだけだ。
 生半可な攻撃でわたしを傷付ける事は出来ないし、第一、こいつらにわたしを攻撃する事は出来ん。
 だから離れて見ていろ」

 誰も動かない。
 護衛としては優秀なのだろうが、融通がきかないのは考え物だ。

「知っているだろうが、黒髪の方は49管理外世界の人間だ。所属はどうあれ管理局の人間が危害を加える事を評議会は望まない。
 赤髪の方も同様。老人方も23管理外世界との面倒事は避けたいだろうよ。
 わたしはヒドゥンが来るというのに余計な火種は作りたくない。どうか頼む」

 この説得は効果があったらしく、執務官と外交官の背後の二人はそれぞれのデバイスを下ろし、少女に会釈。
 そのまま外套をはためかせながら飛び立つ。
 その際に起きた風を防ぐ為に顔を覆っていると、少女を庇っていた人影もいなくなっていた。
121尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:23:26 ID:nMOuMAIR
 それで事態が解決した訳ではない。
 状況は最初に戻っただけで予断を許さない。
 汗が頬を伝わりながら地面に落ち、重苦しい時間が流れる。

 暫くして、外交官が大きく肩を揺らし、

「……興が削がれたな。また、いつしゃしゃり出られるか分かんないし、今日はやめだ」
「……自分もその、冷静さをなくしていました。貴方達も被害者なのに、すみません」

 外交官は酒瓶を拾い上げながらそう言い、執務官も柄から伸びる鎖を首にかける。
 やっとの事で少女は胸を撫で下ろす。

「執務官は、これからどうする気だ?」
「最善を尽くします」

 それだけ言うと踵を返して去っていく。
 執務官が少女の視界から消えるのにそれほどの時間はかからなかった。



「正しいと思っての行動が良い結果を生むとは限らないよなぁ」

 二人だけになったとき、妙に悟ったような口調で外交官がそんな事を言い出した。
 口の上で酒瓶を逆さにしているが、残念ながら一滴も落ちてこない。

「その逆も有り得るな」
「ブリュメールの事か? あいつはただ人の嫌がる事を率先してやってるだけだろ」
「その言い方だと善人にも受け取れてしまうぞ」
「え? ああ、本当だ」

 感心しような声を上げながら外交官は立ち上がり、酒瓶を仕舞う。

「写真の現像、急いだ方がいいな」






122尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:24:21 ID:nMOuMAIR
 数十メートル先に見知った姿を見付けた執務官は苦笑を浮かべた。
 どうしようかと考えている間に、体は自然に歩みを速めて小走りになり横に並ぶ。

「居合わせると止めに入らなければならないから、結界の外で傍観してたが、余計なお世話だったか?」
「気遣いに感謝するよ。情けない奴だと思ったかい?」

 相手、ヴェロッサ・アコースは力ない笑みで肩を落とす。

「そんな事はないが、一つ確認しておく。さっきのは……」
「今回は完全に独断。姉さんは知らないよ」

 執務官の問い掛けを遮るようにヴェロッサは断言する。
 仮に理事官の命令でも認めはしなかっだろう。

「そうか」
「何処に敵が潜んでいるか分からないからね。信頼出来る人間で迅速に行う必要があった」

 いざとなれば失敗しても現場の独断という事に出来る。
 だが、

「焦りすぎじゃないか? 確かに、彼女は教会も管理局もその存在を把握していなかったようだが」
「姉さんの預言は最長で数年。明日にでも預言が実現してもおかしくない」

 だからこそ、僅かでも疑いがあれば少々強引でも行動しなければならなかったのだと、ヴェロッサは言う。

「預言が実現したら管理局も庇いだてしてくれるかどうか」
「ゲイズ中将やその周辺は教会嫌いで有名だから、真相が明るみに出れば格好の攻撃材料にされるな。地上本部が残っていればだが」

 被害の規模にもよるが、大規模になるなら管理局も市民からの非難をかわす為に事実を公表する可能性がある。
 また、管理局も一枚岩ではなく、本局内にも教会を嫌う勢力も存在する。
 彼等にとってみれば邪魔者を排除するまたとない機会だ。
123尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:25:25 ID:nMOuMAIR
「その事を考えると頭が痛い」

 直前に作戦が失敗した事も要因だろうが、普段は飄々としているヴェロッサが頭を押さえて項垂れているのだからよっぽどの事だ。
 自分達の崇拝対象のクローンが大勢いて、なおかつその内の一人が大事件を引き起こすかもしれないとなれば当然だが。
 オマケにそのクローンが作られる原因になったのが身内の不祥事という爆弾付き。

 そんな友人の力になりたいと思う執務官の脳裏に馬鹿っぽく笑う男の姿が浮かんだ。
 ちょっと不愉快だった。

「……知り合いなら「知らんぷりすれば良いんだよ」とか言いそうだな」

 ヴェロッサが怪訝な顔をしたので簡単に説明する。

「遺伝子を採取出来る聖遺物は教会に保管されている物が全てじゃない。なら、誤魔化す事も可能だ」
「……なるほど。もし敵が教会から奪ったと暴露しても、教会の権威を失墜させる為の出鱈目だと白を切ればいいか」

 出鱈目を言ってるのは教会だし、真相を知っている本局上層部にとってみればとんだ茶番だが、教会の立場を守るにはとにかく否定するしかない。

「最悪の場合はあれかな。
 「シスターを装ったスパイが聖遺物を強奪しようとし、司祭様は精一杯抵抗したが、残念ながら命を落とし聖遺物も奪われた」と先立って発表するしかない」
「まあ、司祭様も殉死なら名誉が守られるので文句はないだろう」

 即興で考えた割には結構いいシナリオなんじゃないかと執務官は思う。

「ふむ。ありがとう」
「礼には及ばない」

 こうやって話していると胸の中の不安が薄れる気がする。
 別れればすぐにぶり返してくるのだろうが。

「……何かあったかい?」

 ヴェロッサがこちらの顔を覗き込んでくる。
 流石は査察官。
 感情の機微を探るのは得意か。
124尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:26:26 ID:nMOuMAIR
「今度は僕が相談に乗るよ」

 執務官は素直に好意に甘える事にした。
 ヴェロッサも襲撃を黙認した件の対価を払いたいという意識があるだろうし。

「そっちの知り合いに補佐を欲しがってて暇そうな執務官はいないか?」
「……君じゃ駄目かい?」
「駄目だな」

 自分が生きている世界はままならない事ばかりだ。
 尤も、先程の話に比べれば取るに足らない事だが。

「まあいいや。そこまでお膳立てしても意味がない。過保護も考え物だ」
「そうかい。他には?」
「いや、特には。さっさとレリック事件を解決して知人の嫌疑を晴らしてほしいというのがあるが。……あ」

 ふと、ある事が思いつく。
 本当は上官である提督に頼もうと考えていた事柄があったが、ここでヴェロッサに会ったのも何かの縁だろう。

「ちょっとした保険みたいなものなんだが、頼まれてくれないか?」



125尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:27:16 ID:nMOuMAIR
 告げた内容にヴェロッサは意味が分からないとばかりに眉を寄せた。

「もう一度言おうか?」
「大丈夫。けど、簡潔な上に突拍子もない事で思考がちょっと混乱してる」
「考える必要はない。自分が駄目だった時の最後の仕上げだから機械的に実行してくれればいい」
「そうは言ってもね」

 なおもヴェロッサは不満そうな表情を崩さず小声で呟く。

「下手すると事前に知ってて止めなかったって事で共犯扱い。さっきの件における彼も同じだけど」

 無茶な頼みだったかな、と執務官が思い始めた所でヴェロッサは大きく嘆息する。

「良いよ、協力する。だけど一つだけ聞きたい」

 行動理由。
 それがヴェロッサの疑問だった。
 執務官は顎に軽く手を当て多少熟慮する。

「ただの自己満足だよ。こじつけで自分を正当化出来る理由が見付かったからハッスルしてるだけで」
「ハッスル……妙なテンションだという事だけは分かった。まあ、協力すると言ったからには変心はないけど」

 他人に指摘されるまでもなく、危うい精神状態だと執務官は自覚していた。
 若い衝動に身を任せて過ちを犯しそうなくらい。
 一ヶ月前の自分には想像も出来ないだろう。

 ヴェロッサはそんな曖昧な動機でも承諾してくれた。
 感謝してもし足りない。
126尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:28:12 ID:nMOuMAIR
「疲れたからさっさと帰って休むよ。僕は基本めんどくさがりだから」

 何時の間にか二人は交差点の前に来ていた。
 互いの宿泊施設に帰るにはここで別れる事になる。
 ヴェロッサは軽く深呼吸してから執務官に背を向ける。

「ロッサ!」

 遠ざかっていく背中に向け、珍しく腹の底から吐き出した大声を投げ掛ける。
 何となく、これが最後の会話になりそうな気がしたのだ。
 この交差点は道を違えるという暗示にも思えてくる。

「君は僕の良い友人でいてくれた。有り難う」

 ヴェロッサは背中を向けたまま振り返らないが、片手を上げ答えを返す。
127尊ぶべき愚者 十八話  ◆ghfcFjWOoc :2008/09/24(水) 23:30:19 ID:nMOuMAIR
以上です。

司書の方にお願いがあります。
今回の話は元々前スレ>>667とで1話の予定だったのですが、前スレ>>489の誤解を早く解こうとして分割して投下してしまいました。
お手数だと思いますが、保管する際は今回の話も十八話として保管してください。


前回のあれですが、犬にチョコレートが駄目だと知った上でやりました。
流石に彼女も出て来たのがロッサの猟犬じゃなくて普通の犬だったらあんな暴挙には出なかったと擁護しときます。

それと、誤解なきように言っておくと、途中出てきた三人はナンバーズではありません。
短編の「無銘黙示録」に出てきた三人です。
128名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 23:48:54 ID:4cZU7bmA
LivedoorWikiのモバイル版がサービス開始されました。
保管庫は下記URLになります。

http://wiki.m.livedoor.jp/raisingheartexcelion/wiki/
129名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 23:53:18 ID:SCCVn1X1
作者の別作品に「自分は十歳を超えてるから教会とも管理局とも関係ない(意訳)」って言ってる奴もいたし誤魔化すのも可能なのかなぁ
ってかバインドからシュヴァルツ・ヴィルクングって流れが一緒なのな
130名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 00:46:41 ID:1PtNlX1Z
>「あいつら、本気で管理局を悪の組織だと思ってる節があってな。
> 口汚く罵る度に「いや、俺達も大差ないから」と内心で突っ込んでる」
>「問題がない組織などないのにな。規模が大きくなれば余計に」
>「お前等、絶対又聞きで批判してるだろって時もあってな。たまに違う組織の事を話してないか? と不安に思う事もある」
>「その手の輩は批判だけで建設的な意見がないのがな」
>「管理局を侵略者よばわりしてるが、お前等のやろうとしている事も立派な侵略だっての」
>「その内、ベルカが滅んだのも管理局やミッドチルダのせいになったりしてな。ん……」
巷に溢れる管理局アンチの最低SSですね
分かります
131名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 01:52:42 ID:As7Db4aN
まあ武器が持てない、魔法は誰でも使えるわけじゃないってあたり、管理世界って
住みたい世界じゃないのは確かなんだが。なんかものすごい歪んだ世界になってそうだし。
前にそんなの書いてた人がいたように思うんだがどうなったのかなあ?

何はともあれGJでした。
132名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 02:29:41 ID:fI+diddm
>>127
GJです。管理外世界の話とか、自分で物語考える時によく題材にするんで結構納得できる設定だと思います。
あと彼女があまりにも救われなさ過ぎる・・・。あの女が元の?両親のところに行けるが、彼女達はきっと拒否される
という不安はやはり拭えないものだろうと思います。その点なのはに会えたヴィヴィオはきっと幸せなんだろうな。
まぁ、正直こういう話大好きなんですが。


歪んでないモノ(世界とか、組織とか、人物とか)なんてこの世界に無い訳で、歪みを別の歪みで矯正するか、覆い
隠してしまうかしかないわけで。本当に歪んでないモノを作るのであれば、それこそ(スレ違ですが)、それ☆すた
みたく破壊するしかない。まぁ、グラハムさんが言ったみたいにそれによって新たな歪みが生まれるんですが・・・・
133名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 03:35:08 ID:39dWT1AG
ヴァイス「俺は心を奪われた!この気持ちまさしく愛だ!!」
134名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 06:27:11 ID:JTo08fTf
>>127
GJです。リアリティのある重厚なSSで面白かったです。
最後に管理局も自ら管理外世界となっていった世界連合も聖王教会も

同じ利権や責任回避穴で生きているムジナだと思っていいんですかね?
135名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 10:28:48 ID:tAYdxpV6
>>131
武器が持てないって意味が分からんぞ。
136名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 13:05:41 ID:vNOZWi0Z
>>135
質量兵器禁止の事じゃないの?
137名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 13:06:31 ID:JEUnzCXk
>>135
管理局の方針である質量兵器の禁止を厳しめに民間人にも適用してると考えたんじゃね?

俺のイメージでは護身用の道具(日本でも手に入るレベル)は大丈夫なイメージはあるが。
魔力駆動で所有者の魔力関係なく使える、シールドやバインドが展開できるアクセサリとかさ。
138名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 16:27:21 ID:OGz0z7P7
>>136
何故質量兵器禁止=武器が持てないになる。
魔力兵器使えばいいだけじゃないか。
139名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 16:34:41 ID:jMxaZmyX
許可取れば拳銃ぐらいはいいみたいだけど
というか兵器≠武器な
140名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 17:23:26 ID:oL1ZKJgA
とてもエロパロの話題とは思えん・・・
141名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 17:26:54 ID:Ft0JYyWF
>>140
同じく。兵器の話はおいといて、エロイ話をしようぜ
142名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 17:34:37 ID:b6krLdYH
↓ではここから黒ストで覆われたシャマルの太股について。
143名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 17:37:48 ID:boy15fsb
黒ストはシャマルよりもフェイトのイメージが強いな。
144名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 17:46:55 ID:dGRsYLCk
なのはさんの教導官服のスカートの短さとスリットの深さは問題だと思う…
145名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 18:41:44 ID:uDYdBDnU
亀だが>>127の感想
リリちゃの話を踏まえて考えるとミッドチルダを犠牲にすればヒドゥンの被害をまのがれるが、少女は自分の命を賭けてもミッドチルダを守りたいって事かな。
少女=ハーヴェイとしてなのはちゃんの代わりは現れるのか。
146名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 19:11:32 ID:PvBZ2lCh
>>145
ニア 【3:現実は非情である】
147名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 21:06:57 ID:Ft0JYyWF
>>144
確かに。公式TOPページのは、もう少しで見えそうだしな。
本人の気付かないところで、パンチラもあったんじゃないかな。
それをたまたま見た男性局員がハァハァしてるとか、
こっそり盗撮してオカズにしてるとか・・・
148サイヒ:2008/09/25(木) 21:16:12 ID:boy15fsb
次世代話第四話いかせてもらいます。


以下注意書き。

・「8 years after」の続編となります。そちらを読んでいないとさっぱり分かりません。
・クロフェ、ユーなの、ゲンはやが結婚。それぞれに子供有り。
・アルフとザフィーラに養子の人狼がいます。
・ガリューが雌です。結婚してます。子持ちです。
・本編終了二十年後。原作キャラの年齢はキニシナイ!!
・オリキャラの登場率が余裕で原作キャラをオーバー。
・全十二話予定。全編通して非エロ。


合言葉は「一度魔法少女を名乗った以上、老けることなどあろうものか!!」
みんな三期のリンディさん並に不老なんです。


ではどうぞ。
149あの日見上げた空に:2008/09/25(木) 21:17:53 ID:boy15fsb
「ですから、教会騎士団を動かすのはよろしくないと言ったのです」

 涼しげな声が聖王教会の会議室を通っていく。数拍、会議に参加している全員が少女の発したあまりに
も見当外れな言葉を理解するのに時間がかかり、そして意味が通じた時には皆の怒号が一斉に上がった。

「何を言っているのだ君は!」
「現場の映像を見なかったのか! 一般人にも多大な被害が出ているのだぞ!」
「クーデター派は殺傷設定を解除し始めたという情報もある! 管理局側は完全に劣勢だ! 陸士部隊を
中心に続々とクーデター派に参加している部隊が……」
「まさにそこです。私の危惧していることは」

 再び少女は口を開く。大声でもないのに、彼女の言葉で全員が口を閉じた。

「先程の報告にありました陸士五八部隊の行動。陸士五八部隊はクーデター勃発後も特に行動は見せず、
他の陸士部隊と共同でクーデター派に対する防衛線を築いた途端、クーデター派であることを明らかにし
て内応。そのせいで、この防衛線はわずか五分で突破されました」
「何を報告されたばかりのことを……」
「私が言いたいのは」

 横槍など歯牙にもかけず、少女は次の一言で会議室の空気を凍らせた。

「これと同じことが教会でも起こるのではないかと危惧しているのです」

 全員をゆっくりと見回して少女、フレイヤ・グラシアは席に座った。
 だがその視線と動作は、百の言葉より雄弁に語って皆の心に疑いの種を植えつけた。
 教会にも、バラスに同調する者がいるのではないか、と。
 騎士団大隊長の一人が呻くように言った。

「…………ありえん。我々の中に裏切り者などいるはずが」
「しかしこれだけの規模の反乱者。管理局システムへのハッキングと、グラナガン市内への広範囲ジャミ
ング。入念に準備をしたことは明白です。我々教会が管理局を手助けすることも織り込み済みではないで
しょうか?」

 フレイヤの発言で、また場の空気は重苦しくなる。特にクーデターの首謀者であるバラス提督と親交の
あった者は、完全に俯くか落ち着きなく目を動かしているかのどちらかとなっている。
 発言する者がいなくなった会議を、シャッハは歯軋りしたい思いで睨んでいた。
 さっきまでこの場はクーデター派に対する怒りと、被害にあって逃げ惑う市民を助けようという想いを
共有していたはずだ。それがあっという間に、全員が全員に疑心暗鬼の目を向ける場と化した。
 そうした張本人は、もうどこ吹く風といった顔で悠々とコーヒーに口をつけている。

「シャッハ、お代わりをよろしく」

 コーヒーカップを差し出してくるこの少女を、シャッハは好きになれなかった。もっと直接的に言うな
ら、大嫌いだった。
 頭は切れるし体力も魔力もある。それらの能力をいかんなく発揮してきたからこそ、こうして十九歳と
いう年齢にもかかわらず重大な会議に出られるのだ。けっして養母の七光りだけでのし上がってきたわけ
ではない。若い者達の中には、フレイヤこそが次に教会を率いていく人だと信じて敬っている者も多い。
 だが世話係として長年傍にいたシャッハには、フレイヤの人としての欠落が見えていた。
 この少女には、真という概念が心に備わっていない。表情と言葉と行動と腹の中がめったに一致せず、
どんな言葉や態度でもその場その場で仮面を付け替えるように変えられる。そして仮面の付け方が上手いの
で、気づいている者は少ない。
 人の心の底を知るには神への仕え方を見ていれば分かる、とシャッハは信じている。
 フレイヤの聖王に対する態度は一見熱心な信徒のように見えるがその実、心が全くこもっていない。
 法話などさせれば見事に神の業績を語るが、シャッハには商人が自分が商う品物を褒めるかのように語っ
ているとしか思えなかった。だからフレイヤの話を聞いて感心した信者はいても、泣いた者はいない。きっ
と他の宗派の法話をさせても、全く同じ口調で語れるのだろう。
 カリムもフレイヤの本性については、気づいている節がある。なのになぜ養子になどしたのか。理由を
訊く度に、カリムは硬く目を閉じて何も語ろうとしない。
150あの日見上げた空に:2008/09/25(木) 21:19:13 ID:boy15fsb
「ではせめて、グラナガン内にある教会施設を守れるだけの戦力を派遣するのは。これなら少数ですみま
すので、もし教会内部で何かが起こっても」
「しかしその場合、負傷したクーデター派が教会に逃げ込もうとすればどうしましょう」
「…………追い返せば非道のそしりを受け、受け入れれば事後に管理局に難癖つけられかねませんね」
「それにもし派遣した部隊がクーデター派に加わったりすれば……」

 ようやく発言が出たと思えば、フレイヤの一言で細かい部分の議論になってしまう。
 クーデター派だろうが管理局員だろうが民間人だろうが、負傷者は負傷者だ。全員助ければ済むだけの
話ではないですかと怒鳴りつけたい。
 しかしシャッハにこの場での発言権は無い。あくまでフレイヤの秘書として臨席しているだけだ。何を
言っても場の混乱に拍車をかけるか、完全に無視されるだけだ。

(カリムがいてくれればこんなことには……)

 巡察任務に出ているカリムの身は、別に次元世界にある。クーデターが起きていることすら知らないか
もしれない。
 そういえばたまには教会の外に出るのもいいと、半ば無理やりに巡察へ送り出したのはフレイヤだった。
頭の片隅で、シャッハはそんなどうでもいいことを思い出していた。
 どうでもいいことにもう一つ気づいた。最近のフレイヤはコーヒーに凝っており、豆やら淹れ方やらに
こだわっており、インスタントは口にもつけたがらない。それがコーヒーを飲み干してお代わりしている。

(どうせまたコーヒーに「飽きた」というだけなのでしょうけど)

 執着心も醒めやすさも常人の数倍な少女である。
 論議はまだまだ紛糾している。騎士団が出動する気配は、全く見えない。




          ※




 いくら管理局の重要部署であるとはいえ、直接戦闘には関係のない情報集積所を制圧した所で戦局が有
利になるはずは無い。無限書庫が彼らにとって必要となるのは、クーデターが成功に終わった後からだろ
う。
 だから無限書庫にクーデター派の魔導師が乱入してくることはなく、ユーノ以下司書全員が無事に退避
することが出来た。
 避難場所とされた本局の一角は、非戦闘職員でいっぱいだった。全員が揃って不安をはっきりと顔に出
しており、中には足腰が立たないぐらい震えている者もいた。
 無理もない、とユーノは思う。
 局員全員が戦闘に対する心構えができているわけではない。ましてや本局内で大規模な戦闘が行われる
など、いったいこの中で何人が想像できただろう。ユーノ自身も、想定したことすらなかった。
 しかし恐怖心は無かった。むしろ何年も心を苛み続けていた想いが、どんどん広がっていく。
151あの日見上げた空に:2008/09/25(木) 21:20:24 ID:boy15fsb
「落ち着いてください。とにかくパニックにならないで。さらに非難することになる場合はあの扉からと
なりますが、決して走って真っ先に出ようとしないでください」

 ユーノ達をここまで誘導し、今も指示を出続けている武装隊隊長は、下手に不安を煽らないとの配慮か
らか、怒鳴るようなことはせずやや大きい程度の声で何度も同じ言葉を繰り返している。表情も落ち着い
ていた。
 彼ならもしここまで戦闘の火が及んだ場合は、少なくとも自分より有効な指示を出して司書達を誘導す
ることが出来るだろう。
 無限書庫司書長としてのユーノ・スクライアがやれることは、事件終結までたぶん何も無い。
 それを見定めたユーノは、まだ青ざめた顔をしている部下の一人に言った。

「すまない。僕は行かなきゃいけない所があるから、ここを離れる。たぶん戦闘が終わるまで戻ってこな
い」
「行くって…………こんな時に何しに行くんですか!?」

 ずっと、やりたかったことをやってくる。
 心の中でだけ口にして、ユーノは走り出した。部下の悲鳴のような呼び声が追ってくるが、立ち止まら
なかった。
 本局の中でもあまりユーノには縁のなかった場所だが、どちらに向かっているかぐらいは分かる。
 途中、何人もの局員とすれ違った。中には止めようとしてくる者もいたが、ユーノは自分の身分証明書
を突きつけた。

「無限書庫司書長ユーノ・スクライアだ。クロノ・ハラオウン少将に至急伝えたいことがある。場所は分
からないか?」

 四人目に訊いた相手が、どこかに連絡すると場所を教えてくれた。臨時の司令室で指揮をしているとい
う。
 礼を言って走り出しながら、本当にこれが正しいことなのかユーノは自分に問うた。自分がこれからや
ろうとしていることを伝えれば、間違いなくクロノは止めるだろう。それが常識的だ。
 答えは臨時司令室の前まで来ても出なかった。
 それでも、一つだけはっきり分かっていた。この騒乱がどんな形で決着をつけるにしろ、今ここで動か
なかったら死ぬまでの間、ユーノはずっと後悔し続けることになる。

「誰かのために無茶をやりたがるのは、なのはの専売特許じゃないんだ」

 息を整えながら呟いて、ユーノは司令室のドアを開けた。
 壁には大画面で、本局内の地図が映し出されている。並んだ机の一番奥にクロノはいた。他にも十数名、
指揮官らしき局員がいる。

「用件はなんなんだユーノ」

 すでに連絡が入っていたのか、クロノは驚いた顔もせずに訊ねてくる。
 傍まで歩み寄り、視線を合わせてユーノは言った。
152あの日見上げた空に:2008/09/25(木) 21:21:08 ID:boy15fsb
「僕も、戦闘に出してくれ」
「…………何だって」
「だから、僕も前線に加えてくれと言ってるんだ」
「いつのまに戦闘魔法が使えるようになったんだ」
「昔と一緒だ。全く使えない」
「馬鹿か君は!!」

 クロノの怒鳴り声は、思わず隣にいた局員が一歩引くぐらい大きかった。

「そんなので戦闘が出来るわけないだろう!!」
「バインドとシールドは、昔とほとんど変わらないぐらい使える。だから、いざとなったら敵の真ん前で
シールドを張って囮ができる」
「だからそんな危険なことを……」
『もう嫌なんだ』

 念話に切り替える。ユーノは何十年も心に抱いていた悩みをクロノ一人にぶちまけた。

『なのはもヴィヴィオもユーナもフェイトもはやても君も、戦闘に出て行っては傷ついて帰ってくる。な
のに僕は安全な所で帰りを待っているだけだ。これがどれだけ苦しいか、後方指揮官になった君なら分か
るだろう』

 はるか遠い所で戦闘が行われているというなら、我慢する。
 しかし走れば行き着くような場所で、自分が普段のんびりと散歩している場所で、家族が、友人が、命
がけで戦っている。
 ずっと溜め続けてきた想いが、心を破るには充分すぎる理由だった。

『最初で最後の一生のお願いだ。僕も、戦わせてくれ』

 クロノの返事はない。相変わらずきつい眼差しでいるだけだ。
 構わずユーノは続ける。

『なによりも僕はねクロノ、娘達になのはの方が偉いとか、百科事典より重い物を持ったことがない人と
思われようがかまわない。けど、友人が戦っているすぐ近くで黙って震えていた男と思われるのだけは、
親として死んでも嫌だ』

 なのはに同じことを言っても、きっと力ずくでも止められる。だがクロノなら、三十年越しの親友なら
きっとこの想いを理解してくれる。
 祈るような気持ちで、ユーノはクロノを見つめ続けた。視線を逸らすようにクロノは眼を閉じる。しか
し初めてクロノから念話が返ってきた。

『……君にもしものことがあったら、なのはやヴィヴィオ達がどれだけ悲しむと思ってるんだ』
『そんなのみんな同じじゃないか。死んで悲しむ相手がいない人なんて、いやしない』

 クロノが目を閉じ続けている。再び目が見開かれるまで、かなりの時間がかかった。

「…………分かった。君も前線に出てくれ」
「ハラオウン少将!?」

 隣の局員が焦った声を出すが、クロノは眼を向けるさえしなかった。
153あの日見上げた空に:2008/09/25(木) 21:22:11 ID:boy15fsb
「けど一つだけ約束しろ。君が戦闘で全く使えないと分かったら、その時は僕が退がれという。その時は
素直に戦線から離れてくれ」
「分かった。僕だって、本当の足手まといにはなりたくない」
「グリフィス一佐」

 名前を呼ばれて、眼鏡をかけている男が返事をした。どこかで見たような顔と名前だったが、ユーノに
は思い出せなかった。

「僕も前線に出る。全体の指揮は君が執ってくれ」

 グリフィスという男は束の間目を見開いて驚いたようだったが、すぐに硬い表情で頷いた。クロノも頷
き返して歩き出す。

「行くぞユーノ」
「……まさか僕が出ると言ったから」
「馬鹿言うな。敵との戦力は拮抗状態だから、一人でも前線に魔導師が必要なんだ。Sランクの僕が出な
くてどうする。……だから君も戦えると判断したら、できる限り踏ん張ってもらうぞ」
「ああ、遠慮せずに使ってくれたらいい」

 司令室を出て話しながら、ユーノは久しぶりにバリアジャケットを装着した。
 基本は子供の頃に着ていた物が長袖長ズボンになっただけで、何も変わっていない。

「三十年ぶりかな、模擬戦や訓練以外でこれを着るのは」
「闇の書事件以来か」

 魔法はともかく、あの時のように身体を動かせるのかどうかは、全く分からない。最近は少し激しく動
いただけで息切れがして、娘達には老化現象だなどとからかわれている。
 それでも絶対に戦えると、自分で自分を信じた。

「君も似たようなもんだろう。現場に立たなくなって何年になるんだ」
「僕はまだ十年も経ってない」
「この年になれば、十年も三十年も同じようなものだろ」

 長い三十年だった。
 一人でこっそりとシールド魔法の練習をしながら、本当にこんなことをする必要があるのか、戦闘に参
加する日など未来永劫来ないのではないかと何度も疑問に思った。
 だが、何も間違っていなかった。

「一つだけ残念なことがあるな。守る相手がなのはでも娘でもなくて、腐れ縁の君なんかなことだ」
「だったら僕以外を守ればいいだろう」

 ふん、と鼻を鳴らして、セットアップしたデュランダルを肩に担いだクロノが横目で睨んできた。

「君に守られなきゃいけないほど落ちぶれちゃいない」
「それは僕もだよ。自分は自分でなんとかする。撃墜されても、僕のことを心配してたからだなんて絶対
に言わないでくれよ」
「……絶対に無茶はするな。他人より自分の防御を優先しろ。敵を一人ひきつけているだけというのも、
立派な戦闘の仕方だ」

 出会ってからの三十年間、ずっとクロノとはこんなことばかり言い合ってきた。これ以外の友好関係を
作ることは出来なかったし、それでよいとも思っている。今もほんの少しだけ緊張が取れた。
 それ以上、二人とも無駄口は叩かなかった。
 戦闘の音は、もう間近まで近づいていた。
154あの日見上げた空に:2008/09/25(木) 21:23:39 ID:boy15fsb
          ※




 クロノとユーノが出て行くと、臨時司令室には二種類の空気が漂った。
 一つは、Sランク魔導師であるクロノが戦線に出ることで、きっと戦局が有利になるに違いないという
希望の空気。
 もう一つは、卓抜な指揮官としてのクロノがいなくなったことで、全体の指揮に間違いが出るのではな
いかという不安の空気。
 その空気を吹き飛ばすように、グリフィスは声を上げて指示を出した。

「先程ハラオウン少将が決めた通りの人員で防衛線を築きます。細かい指示は追って出しますので、早く
配置についてください!」

 数人の隊長格が、弾かれたように飛び出していった。
 こうして戦闘の指揮を執る時には、グリフィスが必ず思い出す光景がある。
 若かりし日に起きたJS事件。あれから二十年。その間に何度もグリフィスは、こう呼ばれた。

『元機動六課の人』

 ある時は羨望の眼差しと共に、ある時はやっかみを込めた言葉を聞く度に、グリフィスの胸に沸き起こ
るのは叫び出したい衝動が湧いた。
 自分は、あそこで何も出来なかったんだ、と。
 部隊長である八神はやての補佐官にあったグリフィスが機動六課で何をしたかを思い出せば、悲しくな
るほど何もしていなかった。誰でも出来る書類仕事をやって、どうでもいい細かい点について献策しただ
けだ。
 特に致命的な心の傷となったのは地上本部襲撃事件の際に、同時に機動六課隊舎が襲われた時のことだっ
た。襲撃したナンバーズ達によって隊舎は焼け落ち、多くの人が重傷を負った。
 こちらの戦力となったのはザフィーラ、シャマルにブランクの長いヴァイスだけで、戦力差が大きすぎ
たからしかたないというのは、何の慰めにもならない。指揮代行を任されていた以上、それならそれでや
れるだけのことを全力でしなければならなかった。
 なのにグリフィスは隊長もフォワード陣もいないということにただうろたえるだけで、ろくな指示も出
せなかった。非戦闘員の退避すら満足に出来なかったのだ。
 死人が出なかったのはただの奇跡だ。グリフィスの力はどこにも無い。

「……もうあんな無様はごめんだ」

 誰にも聞こえない小声で、グリフィスは呟く。
 艦長資格を取り、大規模な指揮を執るようになってからの数年。今までもあの日のような失敗は犯さな
いでやってこれた。今日も、絶対にやってみせる。この次も、やる。
 そうしていればいつか心の傷の痛みは薄れ、自分は機動六課の一員だったと胸を張って言える日が来る
だろう。

「ハラオウン少将が戦闘に入りました。敵数七!」

 オペレーターの声。モニター上でも、味方と敵を示す光点がぶつかりあっている。所属のされていない白
色はユーノか。
 自分が敵の立場ならどう攻めてくるか。グリフィスはまずそれから考えた。
 時間がかかれば、それだけクーデター派は不利になる。そのうち次元航行部隊が続々と駆けつけてくる
のだ。だから巧遅よりも拙速を選び、がむしゃらに防衛線を突破しようとするに違いない。
 ならば一点に厚い防衛線を作って正面からぶつかり合うのではなく、守りを数段構えにして次々に入れ
替えるようにし、いなす形で相手の疲労を待つ。
 敵の行動予測。防衛線を入れ替えるタイミング。数人だが手元に残してある予備戦力を投入する機会。
 何一つとして見落としはすまいと、グリフィスは画面に見入った。
155あの日見上げた空に:2008/09/25(木) 21:24:40 ID:boy15fsb
          ※




 グラナガン市内は、阿鼻叫喚が繰り広げられていた。
 突如として戦闘にさらされた市民は、家に籠って震えているか闇雲に逃げ出しているかのどちらか。逃
げる者達は満足な誘導もなされぬまま、裸足で逃げている者や、親の名を泣き叫びながら必至で走ってい
る子供もいる。
 しかし昨日まで自分達が守っていた民衆が傷つく様も、クーデター派の陸士隊隊長の目には映っていな
かった。
 過去のどんな任務よりも過酷な戦闘を体験している高揚。そして敵が目の前にいるという事実が、頭か
ら無名の民衆の悲痛な叫びを締め出していた。
 建物の間から、灰色の異形がちらりと姿を見せたかと思うと凄まじい速度で突っ込んでくる。射撃魔法
が集中するとまた隠れるが、確実に建物一つ分ずつ近づいてきていた。

「ルーテシア・アルビーノの召喚蟲だ! 気をつけろ、近くに本人もいる可能性が高い」

 隊長はルーテシアとは何度か任務で組んだことがあるから、かなりのことを知っている。ガリューとか
いう召喚蟲以外にもハクテンオーとジライオーがいるが、あの二匹は巨大すぎて出すだけで周囲に被害が
出る。市街地ではよっぽどのことがないと召喚しないだろう。
 ガリューさえ叩いたら、あとは本人との直接戦闘に入れる公算が高い。ルーテシアは直接戦闘は苦手だ。
Sランク魔導師であろうと、隊の全員でかかれば勝てる。

「相手に遠距離攻撃の手段はない。近づかれる前に倒すぞ」

 ありったけの魔力をチャージしていた時、後ろでがさりと大きな音がした。
 咄嗟に、隊長以下数名はデバイスの先を背後に向ける。
 音はしばらく鳴り続け、途絶えたかと思うと正体がひょっこり顔を出した。
 赤と白の犬。子供でも抱きかかえられるぐらいの大きさで、白い方は飼い犬なのか赤と青の首輪をつけ
ている。
 一瞬ほっとした空気が流れるが、隊員の叫びで破れた。攻撃が途絶えたほんの数秒で、ガリューが一気
に半分近く間合いを詰めていたのだ。

「弾幕を張れ! とにかく撃ち続けろ!」

 だが射撃魔法が発射されたのは、隊長のデバイスからだけだった。代わりに、部下の絶叫と獣の唸り声
が路地裏に響いた。
 慌てて振り向くと、二頭の犬が隊員に襲い掛かっていた。しかしサイズが子犬ではない。成人並の巨狗
と化して牙を剥いている。

「使い魔か!?」

 突き出したデバイスが、尖った歯で噛み止められた。そのまま跳躍した白い犬が、空中で女性に変身す
る。宙で逆しまに踊る白い髪と裸体。一瞬でバリアジャケットが装着される。
156あの日見上げた空に:2008/09/25(木) 21:27:13 ID:boy15fsb
『Haken claw』

 デバイスの機械音声。右手の鋼の篭手から、三本の湾曲した魔力刃が伸びた。
 地面すれすれから跳ね上がってくる刃が、隊長の最後の記憶だった。




「けっこう使えるね、この方法」

 人型に戻ったアルフが、倒れたクーデター派のデバイスを叩き壊しながら言った。ロウは片っ端からバ
インドで縛っていく。
 敵を倒しても捕虜にして後方に運んでいく余裕などないので、こうするしかなかった。

「ちょいと卑怯なのが気になるけど、この際文句は言ってられないか」

 守護騎士である父のようなことを言う、とロウは思った。性格が全く違うようだが、時々似たようなこ
とを言ったりするのは、やはり心の通じた夫婦だからだろう。
 子犬に化けて相手を油断させて近づき、挟み撃ちに持っていく。建物などに閉じ篭った犯罪者を捕まえ
る時などに、ロウは使っている方法である。子犬の姿になるのは、知り合いの執務官に教わった幻術であ
る。

『ガリュー隊長、次はどこに……』

 指示を仰ごうとした時、ロウの首でデバイスが鳴った。

『主、ジョワイユーズの位置が分かりました。南南西五百mにて敵と交戦中。ゲイルキャリバーの主も一
緒に戦っています』

 クロードを、ようやく見つけた。一時間前、二人の魔導師に追い回されながら飛んでいたというのを最
後に消息不明で、ずっと心にかけていたのだ。
 今すぐに駆けつけたくなるが、ロウは自省する。自分はクロードの部下でもなんでもない。直属の上司
はガリューであり、勝手に援護に行くのは重大な命令違反になる。それに苦戦している魔導師はクロード
以外にもいる。自分がこの場を離れれば、アルフとガリューがそうなるかもしれないのだ。個人的な想い
だけで動くわけにはいかない。

(それでも……私は……)

 下を向き、声の出ぬ口でロウは呟く。その肩が叩かれた。顔を上げると、アルフが笑っていた。

「クロードを守りたいんだろ。行ってきな」
『でも私は管理局員なんだから、勝手なことは……』
「ガリュー、あんたのところに何か上から命令来てるかい?」

 特殊部隊隊長にしてロウの上司である召喚蟲は首を振る。ジャミングがひどく、念話も通常通信も入ら
ない。クーデター勃発からここまで、ガリューとロウは完全にガリューの判断だけで動いていた。アルフ
に至っては、クロノとフェイトに頼まれての個人の行動である。
 ガリューはロウに視線を当ててから、遠くを指差した。クロードとトウヤがいるはずの方向。
157あの日見上げた空に:2008/09/25(木) 21:30:56 ID:boy15fsb
「ほら、上司も行けって言ってるんだ。どうせあの子もクロノとフェイトに似て、一番危ない所を引き受
けたがるんだ。一緒に戦ってりゃ、嫌でもクーデター防ぐことになるさ」
『でも…………おかーさん、私がいなくても一人で大丈夫?』
「なーに生意気言ってるんだい。昔はあんたの年齢より多く戦場に出てたんだよあたしは。PT事件や闇
の書の時に比べりゃ、こんなのましな方さ」

 頭をはたかれ、そのままくしゃくしゃと髪の毛がかき混ぜられる。子供の頃から、よくこうされた。本
人は撫でているつもりらしく、もう少し優しくしろとザフィーラに注意されていたが結局直らなかった。

「あたしはね、あんたが恋人見つけてうちに連れてきて、その世界一の果報者を一発ぶん殴って、それか
らあんたが花嫁衣裳着るの手伝ってあげて、お嫁に行った晩に思いっきり泣くまでは絶対死なないって決
めてるんだよ」

 頭が撫でられながら、アルフの残る片手が優しく背中を抱いてくれた。
 いつのまにか、成人型の母よりも背が高くなっている。そんなことに今更ロウは気づいた。

「だからあたしは大丈夫。……あんただってもう昔の泣き虫じゃないんだ。あたしやガリューがいなくたっ
て一人で大丈夫だろ?」

 無言のままロウは頷き、自分から母の腕をほどいた。

「よし、いい子だ。行ってきな」
『うん!』

 背中を強く叩く手に見送られ、ロウは走り出した。
 大通りに出たところで、ロウは狼の姿に戻る。短距離なら飛ぶよりもこっちが速い。
 アスファルトを蹴立てて一心に、ロウは心の中の主にして大切な家族の下へ走った。



 娘を見送ったアルフは、隣で腕を組んで立ったままのガリューに話しかけた。

「ガリュー、あんたもルーテシアのとこに行っちゃっていいんだよ」
『息子達がついている』

 壁を爪で引っかいて、ガリューは文字を書いた。

『それにあれは一人の手には余るだろう』

 人間よりはるかに鋭敏な狼と蟲の聴覚と嗅覚は、近づいてくる人の気配を感じ取っていた。
 小さく交わす会話に混じる敵や味方という単語。早足ながらも乱れない足音。かすかにする血の匂い。
民間人ではなく、十中八九敵だ。娘も新たな敵の存在に気づいていたから、行くのを躊躇したのだろう。

「まったく、親を年寄り扱いするのは勘弁してもらいたいね。五人や十人なんてどうってことないのに」
『見栄を張りすぎだ』
「はんっ、子持ちのくせに分かってないねガリュー。親が子供の前で見栄張らないで、どこで見栄張るっ
てんだい」

 自分の言葉に召喚蟲がどんな反応をしたのか、複眼の動かぬ表情からはアルフには読み取れなかった。
それでも、ガリューが痛快そうに笑ったようにアルフには感じられた。
 アルフもにやりと一度笑い返し、すぐさま笑顔を獰猛なものに変えて突撃してくる魔導師達に向ける。

「さあて、あたしもいい加減フェイトと合流したいし、あんた達はとっとと片づけさせてもらおうかい!」

 指をぼきりと鳴らし、アルフは地面を蹴った。ガリューも後に続く。
 飛来する魔力弾を紙一重でかわしながら、二匹は臆することなく数倍の敵へと突っ込んでいった。


          続く
158サイヒ:2008/09/25(木) 21:32:43 ID:boy15fsb
以上です。
一方その頃、ザフィーラとガリューの夫は宇宙空間で、超高速移動する金色の召喚蟲相手に苦戦。
しかし超高速移動の源である腰のハイパーデバイスを奪い取り、逆に装着することで一発逆転勝利をおさめたのだった。
しかしそれが語られることは、無い。


「『8years after』で出せなかったキャラをなるべく出そうか」
「だったらナンバーズもほぼ全員出したいな」
「たまには本格的にエリオ書いてもいいんじゃない」
などとプロット練り直してたら、予定話数が当初の倍になった(汗
関係ないエロを書きながらちまちま進めていきます。
159名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 22:52:31 ID:b93VM8RC
>>158
GJ!!
ガリューが雌なのにすごくかっこいいな。
そして、エリキャロの活躍もすごく見たいぞ。

いつしかルーちゃんがエリオを寝取る話の予定もあったような。
どっちも楽しみにしておりますぞ!
160名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 23:28:57 ID:39dWT1AG
>>158
ガリューの夫は7年前にタイムスリップするんですね。
161名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 23:57:36 ID:hJwB+iEY
>>158
やはりいつの時代も争いは避けられないのか…
ラブラブかつ平和な家族風景から一転しての大きな戦い。それもまた宿命
オリキャラの活躍も期待してるが、隊長とかになって皆を守る立場になった、エリオや数の子組の活躍に期待
162B・A:2008/09/26(金) 03:41:33 ID:3ypP8j8Q
推敲が済んだら投下します。
恐らく、4時前辺りに。
163B・A:2008/09/26(金) 03:58:12 ID:3ypP8j8Q
それではいきます。
今、僕の中で空前のスバルブームが起きている。


注意事項
・ゲンヤ×スバル
・時間軸はSSXと同じ3年後。
・エロです。
・食べ物を粗末に扱います
・特にアイスが好きな人はスルーした方が良いかも
・SSXは聞いたことありません
・タイトルは「寝苦しい夜に食べたアイス」
・スバルとゲンヤは恋人同士になっています。過程はキングクリムゾンしました
164寝苦しい夜に食べたアイス@:2008/09/26(金) 03:58:51 ID:3ypP8j8Q
深夜を幾ばくか回った頃、ゲンヤは寝苦しさから意識を覚醒させ、重たげに半身を起こした。

「あちい・・・・」

噴き出した汗がパジャマに張り付き、不快感を醸し出す。夏も過ぎ去ったというのに残暑は未だ厳しく、このところ寝苦しい夜が続いていた。
一応、ベッドに潜る前にタイマーをセットしたエアコンを作動させていたのだが、こちらが熟睡する前に止まってしまったようだ。
再びスイッチを入れると、人工的に作り出された冷ややかな風が室内を満たしていく。
吹きつける風に心地よさを覚えながら、ゲンヤは寝直そうと横になって瞼を閉じる。だが、中途半端に意識が覚醒してしまったせいか、一向に眠気が訪れる気配はなかった。

「何か飲むか」

こういう時は酒を飲むに限る。愛娘からは健康に良くないからと止められているが、構うことはない。部隊長が寝不足とあっては、隊全体の士気に関わる。
これはそれを回避するために必要な措置なのだ。
そうと決まればゲンヤの行動は早かった。彼は音を立てぬようにゆっくりと自室の扉を開け、娘達が起きていないか物音に耳を澄ませる。
そして、誰も起きていないと確信すると、今度は滑るように自室から廊下へと移動し、慎重に足音を偲ばせながら目当てのものがあるキッチンを目指した。
その一連の動作には一切の無駄がなく、彼が度々このように抜け出しては寝酒をしていることを物語っている。

「ん?」

キッチンの前の廊下へと辿り着いたところで、ゲンヤはキッチンから明かりが漏れていることに気づいた。

(誰か起きているのか?)

気配を殺しながら、ゲンヤはキッチンの扉を少しだけ開け、中の様子を伺った。
そして、開けっ放しの冷蔵庫の前でごそごそと蠢く蒼い髪の少女の姿を認め、ため息を吐きながらキッチンへと足を踏み入れた。

「何やってんだ、スバル?」

「と、父さん?」

ゲンヤの声に驚いたスバルの手から、何かが零れ落ちる。床の上に転がったそれは、ギンガが特売で買っておいたアイスキャンディだった。

「つまみ食いか? 程々にしておかないと後で辛い目にあうぞ」

「わっ! 娘とはいえ、未来の奥さんにそんなこと言う!?」

「なっ! ばっ!」

不意にスバルが口にした言葉に、ゲンヤは茹で蛸のように顔を真っ赤にして言葉にならない声を上げる。

「あれぇ? ひょっとして照れているの?」

動揺するゲンヤの姿を見て、スバルは小悪魔染みた笑みを浮かべながらアイスキャンディを一舐めする。

「お、大人をからかうもんじゃねぇぜ」

「えー、あたしはいつでもオーケーだよ」

からかいとも本気とも取れる言葉に、ゲンヤは益々顔を赤くしていく。
彼女が言っているように、2人はもうかなり前に親子という関係を捨て去り、恋人として付き合っていた。既にお互いの体は隅々まで知り尽くしているし、
プロポーズも済ませている。だが、たからと言って照れがなくなる訳ではない。ゲンヤ・ナカジマは、厳つい顔の割に純情なのだ。
165寝苦しい夜に食べたアイスA:2008/09/26(金) 03:59:27 ID:3ypP8j8Q
「本当、可愛いなぁ、父さんは」

「言っていろ」

憮然と言い放ち、にやつくスバルに背を向けて当初の目的である酒を探そうと戸棚を探る。確か、そこには秘蔵のブランデーが仕舞われていたはずだ。

「ん?」

あるべきはずの酒瓶が見つからず、ゲンヤは首を傾げる。本来ならば少ない小遣いをやりくりして買い集めた大小様々な酒瓶が並んでいるはずなのに、
戸棚の中にはソーダの瓶すら転がっていなかった。

「どうしたの?」

「ギンガの奴、酒をどっかに隠しちまったみたいだ」

言っても聞かないから、ギンガが実力行使に出たのであろう。毎晩の密かな楽しみであっただけに、その落胆は大きかった。

「父さん、アイス食べる?」

見かねたスバルが食べさしのアイスキャンディを差し出すが、ゲンヤはそれを丁寧に断った。何となく、何かを食べる気分にはならなかったのだ。

「美味しいのに・・・・・・・・・」

「そういう気分じゃないんだ」

「うぅん・・・・・だったら・・・・・・・」

不意に伸びた手がゲンヤの頬に触れ、唇に柔らかい感触が伝わる。驚きの余り目を見開くゲンヤの視界を埋め尽くしていたのは、
頬を赤く染めながら自分と唇を重ねるスバルの顔だった。

「あたしをさ、食べてよ」

有無を言わさず預けられた体重が、重くゲンヤの胸に圧し掛かる。先程までスバルが食べていたアイスの甘い味が口の中に広がり、
まるでそれに突き動かされるように、彼はスバルの体を押し倒していた。

「きゃ・・・・・」

テーブルの上に押し倒されたショックで、スバルはいつもなら絶対に出さないような弱々しい悲鳴を漏らす。

「スバル・・・・・」

腕の中で震える少女の体はあまりに小さい。重いデバイスを振り回し、災害現場を駆け回っていてもスバルがまだ18歳の女の子であることに変わりはない。
現場では毅然と振る舞っていても、自分の前にいる時は年相応の少女の姿を垣間見せてくれるのだ。

「キス・・・・どんな味がした?」

「甘かったな、すごく」

今度はこちらから唇を重ね、互いの熱い息を間近で感じながら唾液を含ませた舌を絡める。
潤んだ瞳は熱を帯びて蕩けていき、重ねた胸を通して鼓動の音がこちらにまで伝わってくる。

「やぁ・・・とぅ・・・さ・・」

「うん? されるの、好きだろ?」

捲り上げたシャツの下から、形の良い2つの小山が露になる。うっすらとピンク色に染まった乳房はプルプルと震えており、指が吸い込まれるような弾力を持っていた。
ゲンヤの肉棒がズボンの中でむくむくと頭を持ち上げてくる。一点に集中した血液の流れが激しく脳を揺さぶり、目の前にいる女を犯せと本能が訴えかけてくる。
166寝苦しい夜に食べたアイスB:2008/09/26(金) 03:59:59 ID:3ypP8j8Q
「やぁん・・・・父さんの手、何かエッチぃよ・・・・・・」

「その手に泣かされているのはどこのどいつだ?」

「あう・・・・あ、あたしです」

「よく言えたな。なら、ご褒美だ」

スバルが頬を染めて目を反らした瞬間を見計らい、ゲンヤはテーブルの上に置きっ放しにされていたアイスキャンディの箱に手を伸ばす。
そして、淀みのない手つきで取り出したアイスの包装を剥がすと、自身が丹念に愛撫している乳房の谷間にその先端を押し付けた。

「ひゃぁっ!!」

「おっと、あんまでかい声出すな」

慌ててもう片方の手でスバルの口を塞ぎ、ゲンヤは耳元で忠告する。そうしながらも、手にしたアイスは手放さずに2つの小山の間を行き交い、
興奮して昂ぶっていたスバルの体から体温を急速に奪っていく。突き刺さるような冷たい痛みに、口を塞いだ手の隙間からか細い悲鳴が漏れ聞こえていた。

「アイス好きだろ。ほら、もっとたくさん食べろ」

溶けたアイスをローションのように広げ、乳房全体に塗りたくっていく。溶けたアイス特有のネチャネチャという不快な音が耳にまで届き、
冷気とは違う寒気が背筋を駆け上がってスバルは体を震わせた。

「うう・・ああ・・・・ほうさ・・・・・んん・・・」

「嫌か? けど、こっちは満更でもないみたいだぞ」

暴れるスバルを無理やり押さえつけ、ゲンヤは強引にパジャマを下着ごとずり降ろして具合を確かめるように指を這わす。
ほんの少し擦っただけだというのに、その指先にはてらてらと輝くスバルの愛液が糸を引いていた。

「スバル、お前アイスで感じているのか?」

「ううぅ・・・うううんん・・・・・」

「そんなに好きなら、こっちでも食うか」

その言葉の意味を察した瞬間、スバルの濡れそぼった秘唇に冷たいアイスが侵入してきた。先程とは比べモノにならない冷たさに鳥肌が立ち、
驚いた拍子に膣が痛いくらいアイスキャンディを収縮した。そのまま出し入れをされると、冷気が脊髄を突き刺しているかのような痛みで全身が震えあがる。
熱いはずなのに体が急速に冷えてくる。
寒いはずなのに下腹部がジンと熱くなる。
寒気と興奮の2つの感覚がない交ぜになり、混乱したスバルは助けを求める様に自らを蹂躙するゲンヤへと両手を伸ばした。
ゲンヤがそっと塞いでいた口から手を放すと、切ない悲鳴を上げて訴えかけてくる。

「とうさ・・・・ん・・・やめぇ・・・・アイスは、やめ・・ちぇ・・・・・・」

「どの口が言うんだ? こんなに感じている癖に」

「ひやあぁぁぁっ・・・・・・ち、違うの・・・・父さんのが欲しいの。父さんのじゃなきゃ、やだぁぁ・・・・・・・」

甘えるように鳴きながらも、スバルは恋人の呵責なアイス責めに耐えながら腰をくねらせる。

「せ、切ないの・・・・・アイスじゃ駄目なの・・・・・・父さんので、あたしのエッチなところ、ぐちゃぐちゃにかき回して・・・・・・・」

劣情が昂ぶって思考が後退しているのか、スバルは舌っ足らずに訴えながらゲンヤの股間へと手を伸ばし、ズボン越しに熱い肉棒の手触りを感じ取った。
167寝苦しい夜に食べたアイスC:2008/09/26(金) 04:01:06 ID:3ypP8j8Q
「これでスバルのこと、いっぱい抉って・・・・・・・」

「そうか。なら手加減はしないぞ」

言うなり、ゲンヤは半ば半分まで溶けたアイスを引き抜いて、代わりに固く勃起した自身の肉棒を愛液とアイスで濡れたスバルの秘唇へとあてがった。
そして、戸惑うことなく一気に最奥まで捩じ込んでいく。

「ひゃぁっ・・・あああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

冷え切って収縮した膣が、いつもよりも鋭敏の肉棒の感触と熱さを感じ取る。まるで熱した鉄の棒で突き刺されたかのような感覚は、一時的にスバルを呼吸困難に陥らせた。

「スバル!?」

「はぁぁ・・・ああ・・・・お、おっきい・・・・・父さんの、いつもより大きくて、熱いよぉ・・・・・・・」

「ぐぅぅっ! いつもより、締まる・・・・・」

「だめぇ、今動かされたら、か、感じちゃ・・・・ああああぁぁっ!!」

スバルの制止を無視し、ゲンヤは腰を前後させる。アイスで冷やされた膣は痛いくらいに肉棒を締め付け、火で焙られたかのように熱くなっている。
だが、アイスが潤滑油代わりとなっているので出し入れはそれほど苦にはならなかった。それどころか、貪欲に悶えるスバルの痴態をまざまざと見せつけられたことで、
加速したゲンヤの血流が一気に肉棒を膨らませて狭いスバルの膣をぎちぎちと広げていく。

「はんっ・・・・・と、父さん・・・・激し・・・・もう少し、ゆっくり・・・・・・ふぅあぁぁあっ!」

「手加減しないって言っただろ。こんなエロい体、楽しまないと損だ」

「んぁ、あぁぁ・・・・・・あぁ、ん、ふぅんっ、んっ! はぁっ、んんっ、あふっ、んっ・・・・」

深夜のキッチンに雄と雌の匂いが充満し、あられもない嬌声と野太い男の呻きが反響し合う。
ゲンヤが腰を打ちつける度にスバルを寝かせているテーブルがガタガタと音を立てて震え、誰かに聞かれているかもしれないという恐怖が一層興奮を駆り立てていく。

「らめぇ・・・も、もうらめぇ、いくよぉ・・・・あたし、いっちゃ・・・・・いっちゃうううぅぅぅぅっ!!」

恥ずかしげもなく腰を振りながら、スバルは背を弓なりに反らして歓喜のよがり声を上げる。尖った乳首を捻られると痛みよりも先に快感が走り、
子宮口をノックされる度に悦びが心を満たしていく。持ち上げた手は自然とアイスで汚れた胸を撫で、指先で掬った甘い液体を舐め上げていた。

「あまぁ・・・あまい・・・とうさん、あまいのぉ!」

「くぅ・・・うう・・・・」

「と、とうさん・・・・・・射精るの? あちゅいの射精る?」

「あ、ああ・・・・・膣、出すぞ・・・・」

「う、うん。きてぇ・・・・あちゅくて白いの、いっぱい射精してぇっ!!」

直後、突き上げられた肉棒がガツンと骨盤を打ちつける感覚を、スバルは確かに感じ取った。それはゲンヤが自分の中で射精する時の前兆であり、
悦びの余り彼女は歓喜の声を上げてゲンヤの背中に爪を立てる。

「と、とうさんの、ふくれ・・膨れて・・・・あ、あああ・・・・きたぁっ・・・・あちゅいのきた、きたきたきたぁぁっ!!」

視界を桃色に染めながら、スバルは膣の中で暴れ回る射精の感覚に酔い痴れた。頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなる。
ただ、口の中に広がる甘い味と、下腹部を満たす熱さだけが、辛うじて彼女が感じ取れる全てであった。
168寝苦しい夜に食べたアイスD:2008/09/26(金) 04:05:11 ID:3ypP8j8Q
「あぁぁ・・・お腹・・・父さんので、いっぱい・・だ・・・・」





妹と共に夕食の買い物に来た昼下がり、唐突に買い物かごに放り込まれたものを見て、思わずギンガは眉を潜めた。

「スバル、これは何?」

「何って、アイスだけど」

「それは見ればわかるわ」

目立つ色合いの箱には、如何にも冷たくて甘そうな色取り取りのアイスキャンディの写真が飾られていた。
問題なのは、それが何故か3箱も買い物かごに放り込まれているということだ。

「アイスなら、この前買っておいたはずだけど」

「あれ、全部食べちゃった」

「1人で食べたの? もう、太っても知らないからね」

「父さんと一緒にだよ。あ、これも買おうっと」

意気揚揚と、スバルは別のアイスキャンディを買い物かごに投げ入れていく。どういう訳か、スバルが選ぶアイスは棒付きのアイスキャンディばかりだ。

「スバル、こっちの方が美味しいんじゃない?」

「ううん、棒付きの方が良いんだ。あ、ボール状っていうのも悪くないかも」

不思議そうに首を傾げるギンガを尻目に、スバルはあの夜の激しい交わりを思い出して胸を熱くしていた。
あれ以来、スバルはすっかりアイスを使ったプレイの虜になってしまったのだ。

(父さん、今夜はどんな風に責めてくれるのかな?)

今夜のことを考えると、思わず愛液で下着が湿ってくる。
そんなスバルの腕には、特売のアイスキャンディの箱が強く握りしめられていた。


                                おわり
169B・A:2008/09/26(金) 04:06:10 ID:3ypP8j8Q
以上です。
フッと思ったんだ。アイスキャンディって使えそうだなぁって。
アイス好きの皆さん、ごめんなさい。
170名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 09:26:29 ID:T8OWKg28
>>158
いやっほー、サイヒ氏の次世代新シリーズキター!

>>169
エロスバルGJす!w
171名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 10:16:40 ID:y293Ki1U
>>169
グッジョブ!ウェルダン!
誘い受けスバルいいよいいよ〜
172名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 16:54:20 ID:gVhbDYsS
スバルエロスGJ〜!!

エロパロにもっとナカジマ姉妹に光を!
173名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 20:56:01 ID:evNimmg1
ここ数日書き込みが減った気が。
やっぱり雑談も無いと寂しいな〜
174名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 21:06:11 ID:LonsUXil
>>173
まあ、あんまり雑談で伸びてもね……スレが伸びててwktkしながら開いたのに
全部雑談だった時のがっかり感は異常

>>169
アイス好きだがむしろGJ
175名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 21:08:35 ID:8vpnAu3r
>>158
GJ!
エリオとルーテシアの間にも子供ができてたら神!!!

>>169
過程キングクリムゾンフイタw
GJ!!
176名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 21:13:19 ID:5K5qE+E5
>>169
うわぁ、なんというアイスプレイ。蜂蜜プレイは知ってたけどこれはすごい。
GJでした。B・A氏ってこんな作風だったっけか?

>>173
投下がなくて過疎るのはさみしいけど、雑談が本分のスレじゃないからね。ここは。
177名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 21:57:27 ID:7U7V4MQS
>>173
そもそもここ数ヶ月の雑談の多さが異常だったんであって本来はこんなもんだよ
50レス雑談とかだともう余所でやってほしいレベルだしね
178名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 22:50:44 ID:evNimmg1
>>174 >>176 >>177
個人的には雑談からアイディアを頂くことが多いので、雑談も大好きなのですが、やっぱり投下あっての雑談ですね。
他に投下を予定されている方が居ないなら、投下させて頂きたいのですが、宜しいでしょうか?
179名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 22:54:26 ID:3ypP8j8Q
カモン
180アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/09/26(金) 23:00:50 ID:evNimmg1
お待たせしました、新連載です。

「伊達眼鏡と狙撃銃」

 注意事項
・ザ・シガー氏原案の短編連作『ソープ・ナンバーズ』シリーズからのスピンアウトです。
・長編一部エロ描写有り。シリアス気味。エロ描写は基本薄め。
・ネトラレ気味な描写とかも有るので、苦手な方はご注意を。
・NGワードはトリップでお願いします。
・原作『ソープ・ナンバーズ』からの設定改変、こじつけ解釈の部分も存在します。
・原作者のザ・シガー氏に最高の敬意を表して―――

*エロ描写は、このスレの普通のエロSSが普通のエロ漫画位だとすると、「ふたりエッチ」位だと考えて下さい。
181伊達眼鏡と狙撃銃1/7 ◆vyCuygcBYc :2008/09/26(金) 23:05:19 ID:evNimmg1
 ―――此処は『ソープ・ナンバーズ』ただ一晩の春を求めて男達が集う、ミッドチルダの不夜城―――


「ああ、いぃ……ひぃっ、ああ……もっと、もっといっぱい下さい、もっとぉ……」

 桃色の香りの立ちこめる寝室に、淫らな喘ぎ声が響き渡った。
 白い裸身が、ベッドのシーツの端を握り締め、快楽に身悶えしながら顔を歪ませる。
 四足で床を這い、汚らしく涎を垂らして白目を剥き、よがり狂いながら腰を振るその姿は理知あるヒトの姿には到底見えない。
 本能のままに欲望に身を委ねる、獣そのものの姿だった。

「もっと、―――お願いです、もっと、もっとワタクシめを踏んで下さいぃ……!!」

 その男は、獣の姿勢で哀願した。
 でっぷりとした肥満体型の中年の男だった。脂肪をたっぷりと蓄えた不健康な白い肌に荒縄を食い込ませ、ぷひぷひと鼻を鳴らして咽び鳴く。
 養豚場の狭い檻で一生を過ごす、安物の豚のようだと彼女は思った。

「踏んで下さい、早く、早くぅ……」

 ふん、と彼女は詰まらなさげに鼻を鳴らした。
 右手の鞭を一振り。甘ったるい香水の薫る部屋の空気を破る破裂音が響き、豚の背中に朱線が浮かび上がる。
 豚は苦痛と快楽の綯い交ぜになった表情で呻きを上げる。
 彼女は、汚物でも見るような視線で豚を見下ろす。氷のような冷たい表情の口許が、酷薄な笑みを形作った。
 
「『早くしてくれ』ですって? いつからそんな偉そうな口を叩けるようになったのかしら? 
 あなた、一体何様のつもり? ほら、言ってみなさい。自分が何物なのか―――その臭い口でね」

 ボンテージで要所を括っただけの卑猥な衣装は、彼女を飾り立てる最高のドレスだった。
 彼女は美しかった。女性の美しさにも多くの種と類があるが、彼女の美しさは妖精や天使に喩えられるような神秘的なものではない。
 もっと現実的な―――言ってしまえば、雄を誘わずには居られない、雌としての肉感的な美しさだった。
 アイシャドーに縁取られた嗜虐的な眼差しと共に、紅く濡れ光るルージュの唇が歪む。
 それは、二つ括りの髪と大きな眼鏡という、さもすれば子供っぽく見られそうな外見的特徴を補って余りある。
 内から滲み出る淫靡な雰囲気は、彼女を男を喰らう淫婦へと見事に変貌させていた。
 傲岸不遜な言動と尊大な態度。塵芥のように男を見下す冷たい瞳とサディスティクな微笑み。

 彼女は今、この小さな部屋の中で、全てを支配する女王だった。

 豚は、床に頭を擦りつけて己の蒙昧を恥じた。

「ワタクシは―――豚です! 汚らしい、屑以下の、塵芥以下の豚です!
 どうか―――この哀れな豚めにどうかお情けを、どうか、どうか―――」

 女王は、詰まらなさげに嘆息する。

「豚がいつまでヒト様の言葉を喋るつもり? 豚は豚らしく啼きなさい」

 そう言って、女王は手早く豚の口にピンク色のギャグボールを噛ませた。
 中に何か詰め物がしてあるのか、豚が何か喋ろうとする度にぴーぴーと音が鳴る。
 豚は、そんなみっとも無い己の姿に恍惚とし、うっとりと頬を紅潮させる。

「あははっ、そうよ、そう、そう、そう! それでこそ豚だわ!
 ほら、鏡で見てみなさい! その汚らしい顔! よく生きていて恥ずかしく無いわね!」 

 女王は手を叩いてけらけらと嗤った。
 荒縄で縛り上げられた男の下腹部で、小さな逸物が窮屈そうに頭を擡げる。
 女王は豚の尻をハイヒールでぐりぐりと踏みつけにした。
 白い肥満体に、黒いハイヒールがずぶずぶと埋まり込む。
 何度も何度も繰り返し踏みつけ、その度に四つん這いの豚の体にキスマークのような紅い痣が浮かび上がる。
 豚は喜悦の表情を浮かべて悶え狂い、矮小な逸物をいきり勃たせた。
182伊達眼鏡と狙撃銃2/7 ◆vyCuygcBYc :2008/09/26(金) 23:06:21 ID:evNimmg1
 一体誰が信じるだろう。
 この豚は、ミッドチルダ地上本部の高官で、つい数時間前までまでは階級章で襟を固め、強面で部下達を怒鳴り散らしていたのだ。
 家には妻子がいるものの、この数年会話らしい会話はしていない。
 彼は一時の安らぎを求め、給料袋の中身をこのソープ・ナンバーズの女王に捧げる毎日を過ごしている。
 
 尤も、彼が表の世界でどれだけの地位を築いていようとも、それは些事と呼ぶにも値しない問題だ。
 この部屋の中では、貴族も奴隷も、皆等しくこの女王の下僕に過ぎないのだから。

「随分の躾のなっていない豚のようね。―――これは、少しお仕置きが必要かしら?」

 女王の言葉に、豚は更に頬を紅潮させ、これから行われるであろう折檻を想像して身悶えした。
 電信柱の脇にぶち撒けられた反吐でも見下ろすような視線で、女王は豚を一瞥した。
 そのまま、慣れた手つきで豚の体を縛る縄の要所を纏め、リモコンのボタン一つで出現したフックに吊り下げた。
 フックはカタカタと歯車の軋む音を立てながら、豚の体を不安定な中空に誘う。

「ふっ、うっ、むぐうっ…………うぐっ……―――」

 メタボリックが過ぎるその肥満体を支えるには、その荒縄は余りに頼り無かった。
 中空でもがく豚の全身に荒縄が喰い込み、豚の自重によって更に情け容赦なく圧迫していく。

「きゃはははっ、見える? 今の自分の姿! 縄目の間から肉がはみ出して、見苦しいにも程があるわ!
 精肉場でバラされる前の豚と言った所かしら? これでボンレスハムの一丁上がりね!!」

 女王は、喜悦の声と共にバラ鞭を一振りした。
 部屋の甘く澱んだ空気を裂く破裂音と共に、油ぎった肥満体に鞭先が雨霰と降り注ぐ。
 豚はそれを恵みの雨でも授かるかの表情で受け入れた。
 女王は詰まらなさげに鼻を鳴らすと、装飾過剰な短刀で、豚を吊り下げている荒縄を一刀の下に切断した。
 当然の如く豚は地に落下し、無様な呻き声を上げる。その様は、豚と言うより潰れた蛙のようだった。
 そんな塵同然の扱いを受けて尚、豚は恍惚の表情を浮かべていた。
 己は豚―――この美しい女王に蔑まれ嗤われ被虐の対象となることこそ我が本懐。
 浮世の全ての苦衷を忘れ、ただこの瞬間の快楽に身を任せることが、この男の今の幸せだった。
 女王は豚の求めるがままに、豚を詰り、鞭打ち、踏みつけ、折檻した。
 
「あ―――はぁ」

 豚は快楽に身悶えし、白目を剥いて仰向けに転がった。
 口の端からは涎が垂れ、痣だらけの全身は絶頂を続けるかのように痙攣している。

「本当に、―――仕方の無い豚ね……」

 女王は嘆息して、未だ息を荒げている豚に馬乗りになった。
 否、馬乗りになると同時、豚の逸物を鷲掴みにして己の中に導き入れたのだ。
 豚は青褪めた。己のような下賤の者が女王の裡に導かれる栄誉を賜るなど、光栄を通り越して何かの間違いとしか思えない。
 だが、女王は豚の逸物を咥え込んだまま、荒馬にでも跨るかのような激しい抽送を開始した。
 緩急、強弱、角度―――全てが雄を果てさせるための最高の条件を備えていながら、女王はアクセルの最後を踏み込まない。
 嗜虐的な笑みを浮かべて、豚の無様を嘲っている。

「あはははっ、豚の短小包茎×××が入ってるわ! 私の小指ほども無い汚い×××が!!
 さあ、こんなのじゃあ私は全然感じないわよ!? どうやって私を楽しませてくれるのかしら?」

 女王はそう叫びながらも、頬を快楽に朱く染めながら腰を更に激しく揺さぶった。
 豚はそれに応えるように醜く咽び啼く。

 ―――此処は『ソープ・ナンバーズ』ただ一晩の春を求めて男達が集う、ミッドチルダの不夜城―――
 
 その4号室に巣食うのは、ナンバーズ屈指のテクニシャンにして、ナンバーズ最高のSMプレイの女王。
 ―――蠱惑の魔女、クアットロだ。
 
 
 『伊達眼鏡と狙撃銃』 第一話:ようこそ『ソープナンバーズ』へ
183伊達眼鏡と狙撃銃3・1/7 ◆vyCuygcBYc :2008/09/26(金) 23:08:25 ID:evNimmg1
 シャワーを終えるて控えに戻ると、何時もの如く数人の姉妹達が、勤めの間の休息を楽しんでいた。
 アイラインを隈取り唇を赤く染めていたメイクを洗い落とし、体を締め付けるボンテージを脱ぎ捨てるこの一時は、クアットロにとっても安らぎの時間だ。
 
「あ〜、クア姉、お疲れさまっス〜」

 すっかり弛緩しきった表情のウェンディが、肌着をだらしなく着崩したままひらひらと手を振った。
 いつも自然体で、プレイ時にも普段着の表情を崩さない彼女は、男に素人の女と遊んでいるような錯覚を与える。
 擦れた女が怖いソープの初心者から、玄人に飽きた遊び人まで、彼女は幅広い客層に人気をもつ。
 最近プレイの指定がSMに固定されつつあるクアットロには、それが羨ましい。
 だが、詮無き事だろう。彼女は、自分はウェンディやセインのように開けっ広げの笑顔を浮かべることなど出来ないと諦観している。

「クア姉、今日のお客さんは―――」

 どうだった? と尋ねようとしたノーヴェに、クアットロはあからさまに顔を顰めた。

「最低。いつもの豚よ。臭いし、汚いし。あーあ、またイソジンを使い切っちゃったわ」

 クアットロは大げさなジェスジャーで両手を広げる。居心地の悪い沈黙が、控え室を支配した。
 チンクが咎めるような視線でクアットロを見つめる。彼女は常々妹たちに、『みだりにお客さんの悪口を言ってはいけない』と言い含めてあるのだ。
 裏で客への不満や悪口の一つや二つは出てくるのが客商売の常だが、真面目なチンクはそれを良しとしないのだ。
 解ってるわよ、とジェスジャーと視線とチンクに応える。チンクは少しだけ寂しそうな顔をした。

「でも、叩き心地は最高だわ、あの豚。鞭打つ度に肉がタプタプ揺れるのよ。
 ヒィヒィ喚く声も惨めったらしくて、みんなにも見せて上げたい位だわ」

 クアットロはうっとりと頬を染めて、中空を見上げた。

「うう、クア姉のサド趣味にはついていけないっスよ……」
「うちのお店のSM指名、女王様はほぼ100%クア姉だからね〜」
「クアットロはもう上がりか?」
「ええ。今日はこれでお仕舞いなので、ゆっくり羽を伸ばしますわ」

 懈怠な表情で、トーレにひらひらと手を振ってクアットロは立ち上がった。
 この控え室の和気藹々とした雰囲気は、どうも苦手だ。
 自分も、この姉妹達のことを自分なりの方法で大切にしている筈だ。
 それでも、誰もが素顔の自分を晒してリラックスする為のこの控えに足を運ぶ度、気負ってしまう自分がいる。
 仕事が上がったにも関わらず薄化粧をし、髪と眉を整えなければ皆の前に自分を晒すことが出来ない。
 ……一人だけ姉妹達を裏切っているようで、自分を曝けることの出来ない自分が嫌いだ。
184伊達眼鏡と狙撃銃3・2/7 ◆vyCuygcBYc :2008/09/26(金) 23:09:36 ID:evNimmg1
「お疲れさま、今上がりです」

 そんな時、仕事を終えた11番のディエチが顔を出した。
 妹達の中でも、クアットロが特に良く面倒を見ている娘だ。
 勤め始めは固い部分も多かったが、ここ最近、随分表情が柔らかくなったように感じる。
 今日の彼女も幸せそうに微笑み、情交の熱も冷めやらぬとばかりに頬を染めている。目敏くセインが声をかけた。

「お! 今日も来たの!? ディエチの王子様!」
「うん、今日もグリフィス―――さんが来てくれたの」

 語る彼女は本当に嬉しそうに、少女のような笑みを浮かべる。
 だが、クアットロは眉を顰めた。
 グリフィス・ロウラン―――この界隈では余り良い噂を聞かない男だ。
 ウブな娘を手練手管で堕として自分好みに調教し、飽きれば芥屑のように捨てる悪趣味な遊び人。
 だが、そんな事実を伝えようとする度に、ディエチの幸せそうな笑顔に阻まれてしまう。
 妹の初恋を、残酷な真実を見せぬようにして美しく終わらせる方法は無いものか―――それが彼女の最近の懸案事項だ。
 普段はもっとオブラートに包んだ言い方をするのだが、今日の彼女は些か気疲れしていたようで、つい毒のある言葉が口をついて出てしまう。

「……余り客と個人的に遊ぶのは関心できないわよ、ディエチ。上手いだけの男に靡いても、すぐヤリ捨てられるだけなんだから」
「違うよ! グリフィスはそんな人じゃないよ! ……確かに凄くHが上手い人だけど、それだけじゃない!
 ちゃんと、あたしのこと大切にしてくれて―――愛してる、って言ってくれる人なの……」
「そうっス! いくらクア姉でも今のは言い過ぎっスよ!」

 クアットロの不用意な発言に、次々と姉妹達から非難の声が上がる。
 ―――ディエチがきっぱりと自分の気持ちを言い切ったことには、少しだけ驚きを感じた。
 ……その告白を聞くのがこんな形だったことが、少し悲しい。
 今の自分の発言はまるで意地悪な小姑のようで、和んでいたこの部屋の空気を乱しただけで―――

「あらあら。言い過ぎちゃったかしら? ごめんなさいねん♪」

 虚勢を張って、歯を食いしばって、クアットロは部屋を後にした。
185伊達眼鏡と狙撃銃4・1/7 ◆vyCuygcBYc :2008/09/26(金) 23:12:02 ID:evNimmg1
「いらっしゃい。待っていたわ、クアットロ」

 何時ものようにそう微笑んで、彼女はクアットロを部屋に導き入れた。
 高級店であるソープ・ナンバーズには、機人達一人ずつに専用のプレイルームが与えられている。
 クアットロのように専用の機器を仕込みSMルームに改造して用いるものや、ウェンディにように私室同然に扱うものまで、その用法は様々だ。
 大抵の機人達は仕事の合間には控え室に集うが、彼女が控え室に顔を見せることは稀だ。
 滅多に彼女を指名する者が現れないにも関わらず、だ。……彼女は自室にて全てが足る生活をしている。
 ―――ソープ・ナンバーズの存在するこのビルディングの最上階ワンフロア全てが、彼女の私室であり彼女専用のプレイルームだからだ。
 十二分に、それだけの価値が、彼女には、有る。
『ミッドチルダ性風俗裏歴史に燦然と輝く巨星』
『世界最高の淫婦』
『聖王すら勃起させる魔性の女』
 数々の異名を持つ、ソープ・ナンバーズ最高の娼婦。―――ナンバーズ2、ドゥーエ。
 あらゆる性技とプレイに精通した真のプロフェッショナルである彼女を抱くことは、一生に一度の贅沢とまで言われている。
 
 彼女こそ、クアットロが心からの信頼と尊敬を寄せる、クアットロにとっての『姉』だった。
 
「疲れているようね。座りなさい。素敵なお茶をご馳走するわ」

 案内されたアンティークな机の上には、高級そうなティーカップが二つ、琥珀色の液体を湛えて湯気を立てていた。
 迷う度、躓く度、クアットロはこの部屋を訪れてきた。
 その度に、ドゥーエは何も聞かずに全て見越したかのように優しく微笑んで迎えてくれる。―――二つのティーカップを用意して。
 アンティークな机で紅茶を口に運ぶドレス姿のドゥーエの姿は、宗教画のような美しい静謐さを湛えていた。
 クアットロは思う。―――何が女王だ。自分が女王なら、この姉は正しく女神そのものだ。
 SMプレイの女王程度の自分とは、次元の違う存在だ。
 創造主スカリエッティと同じ理知を湛えた静かな瞳。
 揺らぎ無い気品に満ちたその表情は、宝石に譬えるならサファイアのコーンフラワーブルー。
 ……―――いつものように呆として見蕩れてしまい、慌てて紅茶に口をつけた。

「……美味しい」

 上品な香りが鼻腔を擽り、多幸感で体を縛っていた緊張が解れていく。

「お菓子も用意してあるわ。貴女の好きなタルトがあるのよ」

 くすくすとドゥーエは可笑しげに微笑んだ。
 ―――姉は、何も尋ねない。彼女は、ただそこに居るだけでささくれ立った心を癒してくれる。
 不意に安堵で涙が零れそうになり、伊達眼鏡越しに、不器用な手つきでごしごしとそれを拭い取った。
186伊達眼鏡と狙撃銃4・2/7 ◆vyCuygcBYc :2008/09/26(金) 23:13:10 ID:evNimmg1
「……そうね、確かにディエチの件は私も心配している。彼女を下種男の食い物にさせる訳には行かないわ。
 でも、貴女が裏から解決しようとするのもお門違いな話よ。
 これはディエチの恋。ディエチは全てを知る権利があるし、決着をつけるのは彼女じゃなければならない。
 ―――それが、どんなに辛い結末であったとしてもね」

 何時しか、クアットロは己の悩みを訥々と語り、ドゥーエはそれに静かに答えていた。
 ドゥーエはクアットロの話に耳を傾けながらも、熱心に自身の爪先の彩色を行ってる。
 机上に並んでいるのは、大量のマニキュアやラメの類の小瓶だ。
 『美人は爪先から』とはドゥーエの言であり、彼女は指名の無い時には何時もこうしてネイルアートに没頭している。
 ドゥーエは精緻な細工が施された爪先を光に翳し、少しだけ不満げに首を傾げると、ファッション雑誌の表紙を飾れる程のそれを惜しげなく除光液で拭って次の彩色に取り掛かった。
 
「あの……ドゥーエ姉様」

 クアットロは静かにその疑問を口にした。
 ―――自分でも口にするのが馬鹿馬鹿しいと思うような、その質問を。

「ドゥーエ姉様も―――その、お客さんに本気になっちゃた事とか、あったりします……?」

 ドゥーエは猫のように口の端を吊り上げた。

「自分でも答の解っている質問をするのは感心しないわよ、クアットロ。
 ―――その質問には何の意味も無い。箱の中の猫と同じだわ。私はただ、お客を悦ばせ自分の職務を全うするだけ。
 私がその質問に答えることで、貴女の何かが変わるのかしら?」

 クアットロは静かに首を振る。確かに愚問だ。彼女こそミッドチルダ最高の娼婦。
 どんな男も掌の上で操ることの出来る彼女が返答を口にしたなら、その瞬間にそれは真実と化してしまう。
 ドゥーエはクアットロをこう叱ったのだ。『そんな曖昧なものを頼りにするな、答えは自分で探せ』と。
 ナンバーズの智謀の魔女と言われるクアットロも、ドゥーエの前では形無しである。
 クアットロは静かに礼を述べて、世界最高の娼婦の部屋を後にした。
187伊達眼鏡と狙撃銃5/7 ◆vyCuygcBYc :2008/09/26(金) 23:14:23 ID:evNimmg1
 どさり、とクアットロは自室のベットに倒れこんだ。
 随分と長い一日だった。ドゥーエのお陰で何とか持ち直したが、こんな精神の削られるような毎日は―――正直、辛い。
 伊達眼鏡を外し、髪を結っていたゴムを外す。本当の素の自分に戻れるのは、この瞬間だけだ。
 普段の伊達眼鏡と髪型は自分にとっての鎧も同然だ。こうして、軽薄で策略家のサディストというキャラクターを作らなければ、姉妹の前にすら己を晒すことが出来ない。
 セインにもらった「のろいうさぎ」の人形を枕代わりに、ぼんやりと天井を見上げる。
 彼女は、ナンバーズ随一のSMプレイの女王だ。
 誰もがその才能を認め、クアットロ望まれてそう振舞う内に、彼女はSM専門の嬢として扱われる程になっていた。
 ―――有る意味当然の話である。ナンバーズの4番、クアットロ。彼女は、天性のサディズムの持ち主なのだから。
 だから、誰もが思っている。これが適材適所だと。彼女も自身もサディズムを存分を開放できる場を持てて、喜んでいるだろうと。
 
 冗談では、無い。

 クアットロはSMプレイの女王という立場に何ら魅力を感じてはいない。
 彼女が最も好むのは、その精神の陵辱。
 暴力を振るうだけの陳腐なサディズムではなく、相手を苦しめ、精神を絶望の底に突き落として一切の希望を略奪する。
 その瞬間にこそ、彼女は歓喜する。
 ソープランドに於けるSMプレイとは、極論してしまえば―――暴力を与えることによって、マゾヒストを歓喜させる行為だ。
 そう、悦ばせる行為なのだ。彼女はSMプレイの女王に就くことによって、自身の嗜好を真逆の行為を強要される。
 義務的として、毎日、絶え間なくである。
 そんな乾いた日々を繰り返しながら、クアットロは自己の業務に不満一つ零さない。
 戯れとして客の悪口を口にすることはあっても、この仕事を降りる気など毛頭ない。
 SMプレイの女王こそ、このソープ・ナンバーズにあって自己を最も有効活用できる手段であり、父スカリエッティに与えられた聖なる職務であるからだ。
 ―――そう、全ては創造主スカリエッティの御為に。

 クアットロは、枷の外れた部屋の中で暫しの安息を楽しんだ。
 意味もなく足をパタパタと動かしてみたり、気に入らないが捨てられない「のろいうさぎ」の人形の顔を引っ張ったりして時間を潰していたが。
 不意に虚しくなって、ベッドの上に大の字になった。

「………………」

 ぼんやりと天井の染みを眺めていたが、緩慢な動きで右手を持ち上げ、静かにショーツの中に滑り込ませた。
 もぞり、とその細い指で自らの秘所を弄る。
 ごそごそと指を這わせ、今まで幾人もの男を食らってきた己の裡に呑み込んだ。
 指先が、粘膜の感触で微かに濡れる。
 
「…………んっ」

 下腹部に感じる異物感に、小さく鼻を鳴らした。
 ―――彼女は、時折こうして自慰をする。
 ボンテージ姿で男を玩んでいる時とは似ても似つかない不器用な手つきで、もぞもぞと指を抽送させ、己の核たる部分を弄う。
 彼女は、どこか白けたような表情で己を慰める。
 その表情には、何の喜悦の、快楽の欠片さえも浮かばない。 
 機械的な動きでありながらも、彼女は熱心に、何かを必死に探すかのようにその行為に没頭する。
 それでも、彼女に頬には赤み一つささない。

 当然である。 ―――彼女、ナンバーズ4番のクアットロは、生まれてから一度も性感を得たことが無いのだから。

 どんなプレイも平気でこなせるのも、また当然のことだ。
 快楽を得られない彼女にとって、それらは等しくノルマを消化するだけの行為。
 誰が相手だろうと、魚でも捌くようにただ効率良くこなすだけのこと。
 幸いにして、詐術には幾分の心得がある。サディストとして楽しんで見せることも、感じて見せることも容易なことだ。
 そこに好いた惚れたといった感情を挟む余地などは無い。
 ……ディエチやウェンディのように、客とプライベートな付き合いを行っている姉妹も幾人かいる。
 機人として本来持ち得なかった筈の恋愛感情を持っている彼女達が、少しだけ、羨ましい。
 尋ねたことなど無い。だが、性感も持たない機人など、姉妹の中ではきっと自分だけだろう。
 もぞりと、指を動かす。下腹部には、冷たい異物感があるのみだ。

 彼女は独り、虚しい自慰を続ける。―――私は、出来損ないなんかじゃない。
188伊達眼鏡と狙撃銃6/7 ◆vyCuygcBYc :2008/09/26(金) 23:15:37 ID:evNimmg1
 ―――その日も、彼女は淡々と業務を終えた。
 無論、プレイの最中には女王の風格を見せつけ、鞭を振るって哄笑し、男を咥え込んでよがり狂い、客の全てをきっちりと腰砕けにしたのだが。
 内心は事務的な作業をこなすだけの、いつもと同じ一日……として、終わりを告げる筈だった。
 
「あれ? クア姉、今日もう一人予約が入ってるよ。珍しいね、クア姉が間違えるなんて」
「あらら、失敗失敗。それじゃあ、ちょちょいともう一本済ませてくるわね」

 軽い調子でそう言って、ひらひらと手を振りながらプレイルームを戻る。
 ……臭い、残ってなければいいけど。そんなことを考えつつ疲れた足取りに喝を入れる。
 前の客はひたすらに尻穴責めを要求する、変態の見本のような汚らしい男だった。
 今日はもう疲れた。出来ることなら、簡単に済む相手がいい。
 ―――メイクを済ませ、ボンテージで身を鎧えば彼女はこの店の女王だ。唇を吊り上げ嗜虐的な笑みを形作り、扉を開けた。

「―――此処に来るのは初めてのようね。こんな所までこの私に踏まれに来るなんて、随分の変態ぶりだこと」
「…………」

 一目するだに、気に入らない男だった。
 彼女の元に訪れる男は……否、女を求めて夜の街を歩く男は、皆例外なく肉欲に瞳をぎらつかせているのが常だ。
 だが、男の瞳には情欲の炎は微塵も見られなかった。
 ただ、死んだ魚の眼のようなどんよりとした濁りが渦を巻いている。
 長身痩躯の若い男で、顔の作りも十分に美形の部類だ。洒脱に立ち振る舞ったなら、女に不自由することも無いだろう。
 だが、疲れ果てた老人のような表情と丸まった背中が全てを台無しにしている。
 ソープ・ナンバーズの4号室の扉を叩く男達は、大なり小なり異常な嗜好を持った者ばかりだが―――
 この男は、今までの客達とは何かが違う。
 気色の悪い男だ、とクアットロは感じた。

「さあ、どんな風に痛ぶって欲しいのかしら?」

 空気の爆ぜる音を立てて、乗馬鞭が鳴り響く。
 外見からして、あまりハードなプレイを好む男のようには思えない。
 求められるがままにソフトに痛めつけ、その後はいつもの通りに主導権を握り、望むままに射精させてやればいいだろう。
 男の嗜好は様々だが、射精させればそれでお仕舞い。所詮は単純な構造の生き物だ。
 いつもの自分を崩さずに、今日の最後の職務を全うしよう―――

「その鞭で、俺を打ってくれ……打って、詰ってくれ―――」

 男はぼそぼそとそう告げた。
 ほら、何の事は無い。いつもと同じ変態の一人だ。

「あははっ、打ってあげるわ。これで満足? 鞭で打たれて喜ぶなんで、牛や馬でも有り得ないわ!
 貴方は畜生以下の虫けらね! アレも牛や馬にも到底及ばないようだし―――
 ほらほら、打ってあげるわ! 鞭で打たれて喜ぶなんて、ママの躾がよっぽど悪かったのかしら?
 段々いい色に染まってきたじゃない。全身の皮が剥げ落ちれば、その景気の悪いツラも少しはマシになるかしら……?」

 SMプレイの素人を相手にするには些か強い勢いで、乗馬鞭が振り下ろされる。
 男の背中に幾筋もの朱線が浮かび上がる。
 ―――男は、クアットロに背を向け、暗い面持ちのまま唇を噛んでじっとその責め苦に耐えていた。
 その表情には、喜悦の色は微塵も見られない。
 数え切れない程の変態の相手をしてきたクアットロは、とうにそれに気づいていた。
 ―――この男は、嬲られて悦ぶマゾヒストでは、無いということに。

 男は、じっと痛みに耐えていた。
 目を瞑り、歯を食いしばり、床に座り込んだままで。
 その姿は、どこか、辛い修行に耐える僧のようにも見えた。
189伊達眼鏡と狙撃銃7/7 ◆vyCuygcBYc :2008/09/26(金) 23:16:55 ID:evNimmg1
 悦びを得る為に訪れるソープランドで、快楽を拒否する……その姿に、クアットロは不快感を覚えた。

「ギブアップ、するかしら? 止めたいなら何時でも止めていいわよ。
 打ってくれと言いながら、こんなに早く根を上げる早漏の根性無しなんて見たこと無いけどね」

 男は無言で首を振る。クアットロは、苛立ち紛れに鞭を振り下ろした。
 ……この男の態度は、不愉快だ。この職務に喜びなど微塵も感じないが、それでも矜持だけは持っている。
 自分の客はきちんと満足させ、このソープ・ナンバーズで己の存在意義を示すのだ、という矜持は。
 数発鞭を叩き込んで、尚も男が顔色を変えないのを見て、クアットロは口を歪めて男の耳元で囁いた。

「ねえ、貴方、もしかして最初から私に入れたくて堪らないのかしら?」

 声だけで鳥肌が立つような扇情的な囁き。
 クアットロは冷たい指先を男の首筋に絡ませると、耳を甘噛みしながら唇を頬に這わせ、男の唇に吸い付くとその口腔をまさぐった。
 魔女そのものの妖艶な姿、大抵の男ならそれだけで蕩けてしまう程のテクニックは、紛れもないプロフェッショナルの技だ。
 彼女はそのまま、男の手を取り、上目遣いで男を見上げながらその指をしゃぶった。
 ―――普段なら、このままサカリのついた男に押し倒されたてもおかしくは無い筈なのだが、男は動かない。
 不意に、クアットロの指先に固いタコが触れた。……職業柄、手指にタコを持つ男が客として訪れることは少なくない。
 彼女の優秀な記憶力は、以前も同じ部位にタコを持つ男が訪れた事があるのを記憶していた。
 その男は確か―――狙撃手だった筈だ。
 男がぼそりと唇を動かす。クアットロは、慌てて回想の世界から舞い戻った。
 
「済まない」

 続けて男が口にした言葉は、クアットロにとって理解の出来ないものだった。

「俺は、君を抱くことは出来ない。俺は―――不能者なんだ」

 クアットロは、きょとんとした表情で、男の言葉を反芻する。
 幾度か脳内でその言葉を繰り返し、理解した時……彼女の口の端が吊上がった。

「は、あはは、あははは! 貴方、変態かと思っていたら唯の馬鹿だったのね!
 女を抱けもしないのにソープに来るだなんて! 本当に、頭がおかしいとしか思えないわ!
 いいわ、打ってあげるわよ、このインポ野郎! この私の鞭を存分に浴びれば、その足りない頭も少しはマシになるかもしれないしね!!」

 クアットロは、情け容赦なく男を滅多打ちにした。
 ―――馬鹿にしてるとしか、思えない。屈辱で、腹の中が煮立つようだった。
 抱けもしないのに、満足する気なんて端から無いのに、己を求めるなんて、最大の侮辱だ。
 クアットロは初めて、職務を忘れ感情に任せて男に鞭を振るった。
 ……時間終了のアラームが鳴った瞬間、男の顔に僅かな安堵が浮かんだ。
 苦痛の時間から開放された喜びというより、微かな贖罪を終えた罪人のような安堵の表情だった。

 射精を終え、プレイルームを去る男達は、一概に憑き物が落ちたかのような表情をしているのが常だ。
 だが、この男はそれが当然であるかのように、どんよりとした汚濁を瞳に宿し、訪れた時と同じ影を背負って去って行った。

 クアットロは穢れを落とすようにシャワーを浴びると、倒れ込むようにベットに潜り込んだ。
 最低の気分だった。
 自分は、妹達のように、客との間にプライベートの恋愛感情など持とうとは思っていない。
 だが、あの男はこの部屋を訪れる為の最低条件である男と女の関係すら持とうとしなかった。
 これが、侮辱でなくて何だろう。

「あの、インポ野郎……」

 自分でも得体の知れない悔しさに襲われ、涙が零れた。
 子憎たらしい顔の「のろいうさぎ」の人形を幾度も殴りつける。
 さっさと忘れて眠りに就きたいのに、あの男のことが頭から離れない。
 クアットロの脳裏には、影を背負って去っていく男の寂れた後姿が焼きついていた。
190アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/09/26(金) 23:17:59 ID:evNimmg1
 何故かこのスレではクアットロは外道キャラ扱いなので、純情萌えクアを目指してみました。 

 是非、ソープ・ナンバーズのクア純愛ものが書きたい!
        ↓
 ソープで純愛って設定には無理があるような……
        ↓
 クアを不感症でヴァイスをインポにすれば全て解決じゃね!?

 ……という、かなり怪しい論理展開から始めた実験作です。
 前作が少年ジャンプのノリなら、今作はヤングジャンプのノリで、みたいなっ!


>>ザ・シガー氏

 この度は「ソープ・ナンバーズ」からのスピンアウトをご許可頂き、誠に有難う御座います。
 私としては出来る限り「ソープ・ナンバーズ」の原典からの設定を大切にしようと心がけておりますが、
 作品の性質上、各所にオリジナル設定が含まれてしまいます。
 もし拙作がお気に召されない場合は何時でもお申し付け下さい。すぐさま連載を停止致します。
 厚顔無恥なお願いとは存じておりますが、出来ることなら御目溢しを頂ければ幸いです。

>>司書様
 何度もお手数をお掛けしますが、「Little Lancer」のタグに「とらハ」の追加をお願い致します。 
191名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 23:38:11 ID:gGXufN2z
神だ……神が御降臨なされたぞ!!
192名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 23:49:53 ID:OUeztUFD
B・A氏GJ!
なんというエロエロなスバルなんだ
ルー子、セッテ、アリシアと続き、エリスバでも何か…と思ってみたが、どう考えてもスバルがヒロインって無理じゃねという結論に。カナシス

アルカディア氏GJ!
リトランの続編も気になってたが、これまたすごいストーリーだ…
不感症眼鏡とインポ陸曹とは。
どう展開していくのか楽しみだ
193ザ・シガー:2008/09/27(土) 00:07:46 ID:KjFjjEMq
気に召さないどころか、超お気に召しまくりでございますです!
相変わらず素晴らしい文章、漲ってきました!!

っていうかやべえよ、まさかいきなりクアが不感症でヴァイスがインポとかありえないwww
おまけに純情と来たら期待せずにはいられないぜベイビー!! HAHAHA!!!


でもあんちゃん、ディエチは10番だから……
>>184
194名無しさん@ピンキー:2008/09/27(土) 00:28:46 ID:guuqfz+o
>>192
まさかのクアメインが来た。
作中でヴァイスが不能になった理由は何となく察することができますが、それにしたって氏の描写は容赦がない。
一発で死んだ魚の目をしたヴァイスをイメージできた。2人がどんな結末を迎えるのか、今から楽しみにしています。

>*エロ描写は、このスレの普通のエロSSが普通のエロ漫画位だとすると、「ふたりエッチ」位だと考えて下さい。
何を仰るうさぎさん、立派にレディコミだった気がしますよ(エロ漫画ではないですが)。
195名無しさん@ピンキー:2008/09/27(土) 00:41:29 ID:zM9OsENa
そのレディコミとやらはチャンピオンREDいちごよりもエロいのかい?
196 ◆K17zrcUAbw :2008/09/27(土) 01:19:08 ID:IO1IctLo
チンクの話が書けないよorz
思い付きでこんなのを書いてしまった。
シャマルのキャラが若干崩壊してます。

シャマル×オリキャラ
『シャマル、恋のカウンセリング』
197 ◆K17zrcUAbw :2008/09/27(土) 01:20:12 ID:IO1IctLo
『シャマル先生〜!!』
お昼過ぎの昼食時、急に医務室へ駆込んできた一人の男性隊員。
慌ただしい様子にシャマルはサンドイッチを持った手の動きを止めた。
『ど、どうしたの?』
『うぅ〜……実は』
なんだかやけにモジモジしている。
見たところ外傷らしきものはない。
男性隊員はボソボソと何かを呟く。
『俺…人い……ど…も勇……せな…』
『え?』
うまく聞き取れなかった。
シャマルは再び聞き直す。
『ど、どうしたの?聞こえないわよ…』
『俺…実は好きな人いるんすけど……どうにも勇気が出せなくて……』
(あら、珍しいわね)
機動六課は女性隊員の割合が多い。
必然的に男性隊員の割合は少なくなる。
つまり機動六課は恋愛が起こりにくい部署なのだ。
彼はそんな機動六課で誰に相談したらいいのかわからずにシャマルの元へやってきたのだ。
ちなみにこの男性隊員は12歳。
エリオより年上だが、まだまだ少年。
思春期真っ盛りの男の子なのでこの手の悩みは絶えない。
ましてや女性に囲まれて仕事をしているなら尚更思春期の男の子には刺激が強いのであろう。
乳揉みの権化や露出魔もいるし。
『まぁ、君くらいの年になるとそういう悩みがあってもおかしくないわね』
取り敢えず彼をイスに座らせる。
まだ浮かない顔をしている。
『で、どうして勇気が出せないの?』
『あ、あの……俺ってここじゃ雑用ばっかやらされてますし…とても俺なんかに振り向いてもらえそうになくって……』
再び唸る。
確かに彼はお茶汲みやらごみ捨てやらの雑用ばかりやっているのが目に入る。
に加えて自分より年下のエリオが前線で命をかけてたらそれはそれはすごく目立たないものである。
『で、でも…そういう雑用も立派な仕事よ?君が頑張らなきゃ』
何とか自分に自信を持たせなければ。
シャマルは彼を励ます。
しかし、彼の口から意外な一言がでる。
『この前俺より先にエリオがごみ捨てやってたっす……しかもキャロも…』
(しまった!地雷踏んだっ!!)
励ますつもりの一言が逆に彼にダメージを与えてしまう。
もう泣く寸前である。
『お、俺…機動六課に来て雑用しかやってなかったけど……それでも楽しかったっす…けど、これじゃいなくても変わんないっすよね……』
198 ◆K17zrcUAbw :2008/09/27(土) 01:21:32 ID:IO1IctLo
どんどん悲観的になっていく。
シャマルは若干慌てて再び彼を励まそうとする。
『で、でも君がいることが重要……』
『俺の名前……知ってるっすか…?』
(わかんないーっ!!)
隊舎内で見掛けたことはあるが名前までは知らない。
というか聞いてすらいない。
彼はとうとう泣き出してしまった。
『うっ…やっぱり俺なんか……やめた方がいいっすよね…う…』
(泣きたいのはこっちよー!!)
このお年頃の子は何かと気難しい。
一度落ち込むと這い上がるのに時間がかかる。
下手をすれば自分の殻に閉じこもってしまうこともあるのだ。
慣れないカウンセリングで叫び出したい衝動を抑えつつ、とにかくなだめる。
『そんなこと言っちゃダメよ!この世界に必要じゃない人なんていないわ!!』
『無理っす……少なくともここじゃ誰も俺を必要としてないっす…』
ぷっちん。
キレた。
ついにシャマルがキレた。
湖の騎士、風の癒し手、あの温厚なシャマルがついにキレた。
『うじうじしてんじゃないわよーっ!!!』
『ひぃぃぃぃぃぃっ!!』
あまりの迫力に押されてしまう。
『さっきから聞いていれば下らないことばかりグチグチと…』
『あの…シャマル先生…?』
『だいたい君が自分をアピールしないのが悪いのよ!!もっと頼って欲しかったら自分から活躍しなさい!!』
『いや…どうやって…』
『それを考えるのが君の仕事!!恋だって悩むより当たって砕けろよ!!まだ若いんだから一度や二度フラれたくらいどうって事ないでしょっ!!』
はぁはぁと肩で息をしながら一通り言いたいことを言ってスッキリしたシャマル。
目の前ではぽかんと口をあけた彼。
あまりの迫力に言葉もでない。
シャマルは息を整えて再びイスに座る。
『とにかく、君はもっと自分を見せなきゃダメ。待ってても何も起きないのよ?』
『は…はい……』
そう言い聞かせ、サンドイッチを頬張る。
これ以上は何を言っても同じだからだ。
すると彼はおもむろに立ち上がる。
『シャマル先生のおかげで勇気が出たっす!!そうっすよね、自分からぶつからないとだめなんすよね!!』
『そう、自分から』
『今から告白するっす!!』
彼の意気込みを聞いてシャマルはほほ笑む。
199 ◆K17zrcUAbw :2008/09/27(土) 01:23:30 ID:IO1IctLo
『がんばってね!』
そう言って彼を見送る…はずだった。
しかし彼は動かない。
直立不動のままシャマルを見つめている。
(え…まさか…)
『お、俺っ!!シャマル先生の事が好きっす!!六課に入った時からずっと好きっだったっす!!!』
意を決した告白。
その相手はシャマルの予想の遥かに斜め上を行っていた。
今度はシャマルがぽかんと口をあける。
『不釣り合いなのはわかってます!!けど、俺はシャマル先生が大好きっす!!愛してるっす!!』
裏声になりつつ叫びつづける。
しかしシャマルには聞こえていない。
告白を一通り終えた彼とシャマルの間に沈黙が走る。
『あ…やっぱだめっすよね……すんません、驚かせて……それじゃ』
返事をしないシャマルを見て医務室を出ようとする。
しかし、その腕をシャマルが掴んだ。
『え……』
『待ちなさい…返事がまだでしょ?』
『で、でも……』
『誰がダメなんて言ったのよ?』
シャマルがそのまま彼を引き寄せる。
ぽふっ、とシャマルの胸に顔をうずめられ抱き締められる。
『し、シャマル先生?』
『君が勇気を出して告白したんだから私も応えなきゃね?』
彼の頭を撫でながらほほ笑む。
彼を叱咤し、告白にまで導いたのは他でもない自分なのだ。
シャマルはそんな彼を可愛く思っていた。
『君の悪い癖。なんでもっと自分をアピールしないの?押し倒すくらいはしなきゃね』
『お、押しっ!?』
やはり思春期の男の子。
こういう事にすぐ反応するから面白い。
シャマルはクスクスと笑った。
『そういえばまだ名前…聞いてなかったわね』
『あ…マイクっす…』
『じゃあマイク…今から私が自信をつけてあげる』
『え!?……わ!』
マイクを抱き締めたままベッドに倒れ込む。
プチプチと自分のシャツのボタンを外していく。
マイクが生唾を飲む音が聞こえた。
(ふふ…やっぱり可愛いわ…それに…)
自分の胸に釘付けになっているマイクを見てシャマルは妖しく笑う。
(彼くらいの年から躾ていけば……ふふふ…)
その日、医務室から媚声が漏れたのに気付いたものはいなかった。
200 ◆K17zrcUAbw :2008/09/27(土) 01:25:56 ID:IO1IctLo
投下終了っ!
なんというか、エロが書けないためいつも寸止めになってますがご愛嬌…。
『召喚少女リリカルキャロ』番外編でスカリエッティ×ウーノも書こうとしたら案の定エロでつまづいてお蔵入りに。

うまくエロを書けたらいいんですがね。
201名無しさん@ピンキー:2008/09/27(土) 01:26:58 ID:kkrAcBEI
逆光源氏!
202名無しさん@ピンキー:2008/09/27(土) 14:25:18 ID:kxdB7xgI
>>190
さいこうすぎました!
盛大にGJです
20344-256:2008/09/27(土) 20:44:42 ID:WR8Iwvn+
最近ヴァイス兄貴のネタが多いですが、投下してもよろしいでしょうか?
204名無しさん@ピンキー:2008/09/27(土) 20:49:51 ID:yOKDlYKq
嘉門
20544-256:2008/09/27(土) 20:56:50 ID:WR8Iwvn+
それでは投下します。

・非エロです。
・けっこうゆるいです。
・JS事件より8年前が舞台です。
・主演男優はヴァイス、助演女優は・・・まぁわかると思います。
・全5話くらいになりそうです。
206エンカウンターズ・ウィズ(1話 1/4):2008/09/27(土) 20:58:30 ID:WR8Iwvn+
JS事件から数ヵ月後のとある昼下がりのロング・アーチ。
テラスに新人4人と、アルト、ヴァイスがいた。

午前中の訓練を終えた新人たちは、はやてに呼びとめられ

『せっかくやから、海鳴でキャンプした時みたいに久しぶりに腕をふるおかな。みんなテラスで待っててな』
といわれ、はやての昼食を待っているところであった。

そんな青空にアルトの腹の虫が思い切りなる。
「遅いよ〜、八神部隊長」

「あの、部隊長の出身世界の故郷の料理作るっていってました。結構時間かかってるんでしょうか?」
「アルトさん。もし良かったら僕、様子見てきますか?」

「アルト、料理なんか逃げやしないぜ。スバルを見ろ。ちゃんと落ち着いて待ってるだろ」
ヴァイスは6課の武装局員や整備班の人間から賭けでせしめられそうな金の皮算用をしながらそう答える。

今回の賭けのテーマは「隊長陣で誰が一番ラブレターを局員からゲットしているか?」などという、シグナムに見つかったらレヴァン
ティンとアギトで即、地獄の業火に焼かれそうなしょうもない内容であった。

そしてスバルは先ほどから黙っていた。
「っは!!いけない腹がすきすぎて一瞬、記憶回路と身体回路がフリーズモードに入ってました!!何か言いました?」

「・・・何でもない。というか言う気が失せた。それより4人とも、今度AAランクの昇進試験受けるんだって?
掘り出し物をみつける八神部隊長たちの眼力もすごいが、お前らのどこまでも伸びていく実力も、とんでもないな」

「えへへ、それほどでも」
ヴァイスが感心した様にいうと、スバルは照れた。
「スバル。これも全部なのはさんや副隊長が私達の訓練につきあってくれたからでしょ!!」
相変わらずティアナは相方に厳しい指摘を加えるとヴァイスに質問した。

「そういえば、前から聞きたかったんですが、ヴァイス陸曹って私達みたいにスカウトされたんですか?」

「俺の場合は志願したんだよ。シグナム副隊長からの推薦もあったんだけどな」
「珍しいですね。6課は設立当時は無名の実験部隊だったのに」

ティアナの質問はもっともだった。いくら恩義を感じている上官といっても、かつてはやてが危惧していたように
設立当初は地上本部からその存在を疎まれていた部隊である。当然、そうなることをヴァイスが知らなかったはずは無い。

実力を認めてもらい推薦を受けたとはいえ、自分達新人と違って入局してウン年たつ自分のキャリアをかけてまで実験部隊に所属する
こともなかったはず。

「まぁ、そうだな。借りがあったんだよ。小さい嬢ちゃんに・・」
そうやってヴァイスは昔を思い出した。


(バカ・・野郎・・逃げ・・ろ・・・・!)
辺境の次元世界、荒野の廃墟、焼け付く太陽。砲撃魔法に飲み込まれようとしている無抵抗の少女をヴァイスは見た。
しかし自身も重症で身体が言う事をきかない。

あまりにも無力で何もできない絶望の中、爆風に舞い落ちる漆黒の羽を見た。
それは自分の絶望が生んだ幻影?死出に向かう自分を出迎えに来た悪魔のもの?それとも・・・


『魔法少女リリカルなのはStrikerS  pre story  〜エンカウンターズ・ウィズ〜』
207エンカウンターズ・ウィズ(1話 2/4):2008/09/27(土) 21:01:28 ID:WR8Iwvn+
(8年前、ヴァイス17歳)

「ワンズ・ベセル」
本局艦隊に所属するL級航行艦。1ヶ月の巡洋航海に出ており、あと2週間で本局に帰港する予定であった。

夕食の時間になったのか、航行隊の武装局員が食堂になだれ込んできた。
「お〜い、おやっさーん。みんな来たぜ〜!」

いつもなら厨房からはシェフの怒鳴り声が聞こえてくるかと思いきや。
「ちょっと待ってな〜」

そうして厨房の奥から来たシェフは、ごついオヤジではなく、まだ11,2くらいに見える幼い少女であった。
肩くらいの茶色がかった黒髪のセミロングで、左にワンポイントとしてバツ印の髪留めをつけている。しかもかなりの美少女である。
コック帽に調理服からして料理人だとは思うのだが・・・

一人が食堂を見渡して、疑問を口にした。
「あれ?いつものおやっさんは?」

少女は申し訳ない顔に言った。
「ああ、急に熱出してしもうて。さっき寄港した支局の補給基地でウチと交替したんです」

「あの頑健なシェフが病気・・・信じられない」「給料少ないから本局にストライキ起したんじゃ・・・」
武装局員達はざわつき、あることないことを話し始めたとき、少女はペコリと頭を下げた。

「あ、あの!!短い間ですが、よろしくお願いします」

少女は申し訳なさそうに頭を下げた。美少女に頭を下げられ百戦錬磨の武装局員達は恐縮する。
「おう!!こちらこそ、よろしくな」

「おおきに、それじゃあ夕食出しますね、ちょっと待っててください」
そうして少女は料理を運ぼうと、奥の厨房へ戻っていった。

「(こんなかわいい子が作る料理、更に今日のメニューはステーキ。さぞおいしいんだろうな〜)」
などという甘い幻想を武装局員は抱いた。

少女がそう言うと、奥から配膳係が料理を運んできた。銀髪に褐色の肌という外見に、武装局員より屈強で長身な男であった。
少女と並んで配膳の支度をする様は、何ともアンバランスなコンビであった。

そうしてでてきたのは黄色いケーキのようなものであった。生地の中にキャベツがまぜられ、上にはソースがたっぷりつけられている。

少女は申し訳なさそうに言った。
「急に艦に乗ることになって時間が無かったもんで、厨房の冷蔵庫にあった、ありあわせのクズ野菜と小麦粉だけでしか作られへん
かったんや。メニューにない料理だしてしまって、ほんまにごめんなさい!」

「クズ野菜と小麦粉だけ使った料理・・・」


その言葉に武装局員たちは落胆した。ワンズ・ベセルの食事は航行艦隊の中ではE−ランクのまずさである。
しかしそれでも今日のメニューはステーキと、武装局員にとってはまさに最高の夕食となる予定であったのだが・・・

突如として変わった幼い料理人、しかも予定外に貧相な料理。過去の食堂は期待と不安に包まれた。
208エンカウンターズ・ウィズ(1話 3/4):2008/09/27(土) 21:03:05 ID:WR8Iwvn+
「・・・」
そして配膳を行う大男は無言のまま、並んだままたちつくす局員達に皿を差し出した。そのかもし出す雰囲気は料理家というより武道家
や殺し屋のようなものを感じさせる。

「(あ、明らかにただの配膳係じゃねえ、というかむしろただの人間じゃねえ!?)」
『人外の者』と武装局員からレッテルをはられた男のその無言の威圧感におされ、次々と武装局員達は皿を手に取っていく。

しかし、皿からは香ばしい香りがただよってくる。小麦粉の生地の中にクズ野菜以外に何かを入れているのだろうか?
一人がおそるおそる食べてみた。

「う・・・うめぇ!!すんげーーうまいぞ!!!」
「何?」「本当か!?」

一人がそういうと武装局員は次々に口に運び始めた。数分後にはかなりの空の皿が、テーブルに積まれていた。

「ご馳走さま。おいしかったぜ。大変だったろう、大メシ食らいのヤツらばかりで」
食事を終えた食堂を出て行く中で、武装局員の一人が話しかけてきた。

「ほんまに嵐やったわ。みなさん虚数空間なみに何でも飲み込んでしまうんやね。せやけどあんなにおいしく食べてもらえば
嬉しいです。料理人としての本懐や」

「それよりさっきの料理は?」
「お好み焼きいいます。わたしの世界の郷土料理です。さっきみたいに野菜のみのもあれば色々なバリエーションがあるんや」

「そうか、俺はヴァイス、ヴァイス・グランセニックだ。よろしくな」
そういってヴァイスは長いコック帽を珍しがって軽くポンポンした。

『むぅ〜、ポンポンしないでほしいです〜』
「ん?(そんなに強くはたいたかな?)」
不意に少女のコック帽の中から声が聞こえた気がしてヴァイスはコック帽に眼をやる。彼女のコック帽がもぞもぞと動く。
ヴァイスの視線に少女は気づいたのか少女はあわてた。

「あっ・・・いや、あはは〜。この帽子気に入ってるんや、触らんといてな〜」
そうして少女は必死に帽子を抑える。

「そ、そうか、すまなかったな(まだもぞもぞ動いてる・・・)」
そう言いながらこの明らかに不審で、極上の料理を作る不思議な美少女の事を気にしつつもヴァイスは食堂を後にした。

「お兄さん、ヴァイスさん言うんやね、ん?もしかしてエースの・・・」
「エース?」

ヴァイスが少女の言葉を繰り返して言うと後ろから、武装局員の仲間がおぶさった。
「コックの嬢ちゃんよ、どこで仕入れた知識か知らねーけど、こいつがエースなわけないぜ」
「まだ魔導師ランクもCランクだしな」
「せ、先輩!!重いっス!」

もう一人の副隊長の記章をつけたの武装局員が言った。
「まあ、お前がこっちに来てから、訓練や戦闘らしい戦闘もしてないし。こいつの実力を全く見た事がないってのもあるけど」

そして先輩武装局員の手を振りほどいてヴァイスは言う。
「というかエースなんてそうざらにいるもんじゃない。俺だってエースと呼ばれる人は身近に一人しか見た事ないしな」

「そうなんや・・・私の聞き間違いかな?」
ヴァイス自身にそう言われたが、少女はどうにも納得しない顔をしてクビをかしげた。
209エンカウンターズ・ウィズ(1話 4/4):2008/09/27(土) 21:05:00 ID:WR8Iwvn+
「それよりヴァイス、艦長が呼んでたぜ全員ブリーフィング・ルームに集合だってよ」
「ありがとうございます、というわけでまたな」


そう言ってヴァイスは食堂をあとにした。

艦のブリーフィング・ルーム。そこには除き武装局員やクルーの主だったもの達が集合していた。
人のよさそうな艦長は用件に入る前に、ヴァイスの方を向いた。

「ヴァイス君、空からの出向ご苦労様、海の生活は慣れたかね?」
「はい多少は、しかし少ない人員での警戒や哨戒任務はあまりしたことがないので、やはり新鮮に感じます」

「艦長、グランセニック二等空士・・・よろしいですか?それでは作戦を伝える」
官制司令がそういうと奥に画像が現れた。
「これから本艦は第137準管理指定世界へ寄航する」

「(第137準管理指定世界・・・数年前まで長く内戦が続いていた辺境世界だ)」
数年前に空士学校で見たニュースをヴァイスは思い出していた。

「管理局航行艦隊の介入で、治安状態が落ち着いてきている。近年、無限書庫の調査でこの世界が、かつて古代ベルカ時代の戦場
である事がわかった」

官制司令の説明にあわせて、現地の急峻な砂漠や岩肌がむき出しの高原の風景からデバイスカードの画像に切り替わる。
しかし、不気味な形状や文様も、大きさも管理局技術部や他のデバイスや武器メーカーで採用されているのとかなり違う。

「先週、その無人区域から遺跡が発見されたと現地から通報があり、そこを調査したところ、古代ベルカ時代のデバイスが発見された。
現地の簡易鑑定ではD級ロストロギアに該当するレベルらしい」

D級ロストロギア。
一次元世界や大都市とはいかずとも、利用されれば、多くの事件や紛争に使用される殺傷能力の高いものに指定がされる。

「本来なら転送魔方陣で本局まで送りたいのだが、古戦場や近年までの内戦による魔力素の乱れで、遺跡付近では転送魔法を発動させる
事ができない。そこで今回は現地世界にヘリにて本艦までの護送を行ってもらう」

そして画像には遺跡から転送魔方陣、そして矢印で護送ルートが示される。

「なお、現地の状況だが。すでに無人地域と言うこと特段、治安レベルに問題はない。ただ砂漠と廃墟が広がる平和な場所だ」
「そうか。なら、ピクニックの料理を、あのかわいいコックの嬢ちゃんにつくってもらうか」
誰かの軽口にブリーフィング・ルームは艦長も含めてどっと沸いた。

「おほん、作戦開始は12時間後だ、当直の者も交代して休みをとること!以上、解散!!」
官制司令の号令でクルーはブリーフィング・ルームをあとにした。
21044-256:2008/09/27(土) 21:07:00 ID:WR8Iwvn+
以上になります。それでは失礼します。

詞ツツリ氏や他の職人さんみたいに良いヴァイスSSが書ければいいんですけどね。
211名無しさん@ピンキー:2008/09/27(土) 21:17:43 ID:yOKDlYKq
最近のヴァイス人気は異常w
212名無しさん@ピンキー:2008/09/27(土) 22:21:29 ID:qB4qFuJL
はやてローティーン期に過剰な期待。
213名無しさん@ピンキー:2008/09/27(土) 22:23:45 ID:guuqfz+o
何故、捜査官のはやてがコックをしているのか。
このお話のポイントはそこにある気がしてきた。
214名無しさん@ピンキー:2008/09/27(土) 22:40:40 ID:AfoiFyN/
トロンベ兄さんの人身掌握術が、得意の料理だよ。
215名無しさん@ピンキー:2008/09/27(土) 23:54:02 ID:6bNtrSJC
>138
次元世界の魔道兵器にはガジェットとか、戦車とかしょっぱい兵器しか無いだろ
ああ、ガジェットも質量兵器だっけか
216名無しさん@ピンキー:2008/09/27(土) 23:58:03 ID:6bNtrSJC
217名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 00:14:43 ID:b6/bXtTf
>>214
フェイト「敵の数が多い。はやて、リミッター解除の許可を!」
はやて「却下や。その役目、私が引き受ける!!」

〜BGM〜

はやて「リイン、今が駆け抜ける時や・・・・私に出会った不幸を呪え、フォトンランサー・ジェノサイドシフト! 突撃!」

〜撃破〜

はやて「私を阻むものなし」


こうですか?
218名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 01:44:40 ID:m0InoAaD
>>211
ヴァイスは動かしやすいのもあるんじゃない?
三期本編中の数少ない男でフラグが複数あって独身で出番もそこそこ、年齢的にもエリオよりもロリ面子を除けば女性陣と絡ませるのに問題はないし
あとは狙撃手ってのが人気の元かねえ・・・・・・狙撃手で思い出すのがシティハンターとファントムと名前知らんがアサルトライフルを肩で担いでスコープすら使わないどこかの誰かの三人
219名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 02:21:24 ID:6hlWUCkv
狙撃手といえば、ヘイヘかヴァシリしか思い浮かばない。
あと、フルメタで出てきた金髪。
220名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 02:26:26 ID:cASJF25E
だからここで関係ない話題すんなとあれほど……

↓からはいつも通りヴァイスでエロシチュを。
221名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 02:36:35 ID:klRtK7Rm
魔導師のリンカーコアの魔力を一時的に凍結させる新しい技術が開発された
しかし内服薬であるコレは粘膜から直に吸収させないと効果が無い

そこで技術部はこの実験に際してある者に協力を頼み込んだ…


高速で射出、違法魔導師の直腸に一撃を叩き込む
アナルスナイパー・ヴァイスの誕生である
222シロクジラ ◆bsNe6z3qW2 :2008/09/28(日) 02:48:15 ID:oR7t5bDJ
しかし、友人がおにゃのこだったと云う今時ラブコメでもやらないネタをば。
「司書長は女の子」の外伝的な何かを。
短い上に挿入無しと云う一応エロです。
続きは欲望のボルテージが上がったら、ですです。

・ユーノは女の子でした、というお話のIFルート。
・前座のみです、何故なら力尽きたから――短いです。
・クロノ君は鬼畜です。

収録の際は外伝扱いしていただけると幸いです。
223司書長は女の子 ◆bsNe6z3qW2 :2008/09/28(日) 02:50:19 ID:oR7t5bDJ
「司書長は女の子 外道ルートその1」

「前略 お袋様。
ユーノは女でした――どうしたらいいでしょう?」

FA「あら、堕とせばいいじゃない♪」


頬を伝うのは、涙だろうか。
それとも天井から降り注ぐ膨大な量の水滴か。
息をする度に、苦しいような、切ないような感覚が全身を駆け抜けた。
下腹部が燃えるように熱い。どれほど経てば、収まると云うのだろう、この感覚は。
それは云わば“彼女”の子宮があげる熱烈なラブコールであり、本人の意思とは無関係に蠢くもの。
ぞわり、と全身の毛が総毛立つ。

――嫌だ。

震えながらシャワーの水量を決めるノブに手を伸ばすと、やんわりとその手を押さえられた。
ゴツゴツした男の手。どんなに取り繕っても、女であることが隠せない自分の手とは異なるそれは、
黒髪の優しそうな顔立ち――クロノ・ハラオウンのものだと、わかっていた。
何時もなら、頬を赤らめるなり初々しい表情となるであろう“彼女”だったが。
しかし、彼に浮かんでいるのは紛れもない嗜虐的な笑みであった。
クロノは全裸でシャワーの水滴を浴びながら、彼女――ユーノ・スクライアの白い肌に身体を密着させた。
どくん、と心臓の鼓動が跳ね上がり、今度こそ頬が火照る。
いや、頬のみならず、その滑らかな白い肌全体が赤く染まっていた。
薄い金髪の覆った股間の茂みはぬるりとした熱い体液で濡れ、くちゅり、と音がたった。
音が立つ――?
クロノの太い指が、ユーノの秘所へ伸びて、大陰唇を撫ぜていた。

「ひっ――?! クロノ、やめ……」

ぎゅ、と身体の密着具合が増した。
女にしては背が高いユーノの薄い身体に圧し掛かるようにして、クロノはユーノを立たせたまま
無理矢理身体を前屈みにし、最近膨らんできつつある胸を左手で弄んだ。
薄く脂肪で盛り上がったそこはちょうどユーノの敏感なところで、左手で捻るようにして薄桃色の乳首を弄られると、
鼻がかかったような声が気管から吐き出された。

「んぁ……」

「やめる? 何をだい――こんなに濡れているのに」

くちゃり、という音がして指がズブズブと膣の内側に吸い込まれていく。
入れられているのは二本ほどで、それが動く度に目が眩むような刺激が脳裏を駆け抜けた。
あふぁ、と情けない声が洩れ、その様子にクロノは嗜虐的笑みを深くした。
ユーノの腰まで伸ばされた金髪に胸板を押し付け、その耳元で囁く。

「本当に淫乱だなユーノは。まだ薬も愛撫もしていないのに」

「それは……クロノが弄るからぁ……」

「僕のせいじゃないだろぅ?」
224司書長は女の子 ◆bsNe6z3qW2 :2008/09/28(日) 02:51:38 ID:oR7t5bDJ
熱く蠕動し、愛液でぐちゃぐちゃに濡れた――活発化し発情した子宮の作用――膣壁は、ぎゅっと窄まるときつく指に吸い付いてきた。
面白いように吸い付く膣壁を撫で回し、かき回していく。
それすらもユーノには精神的に苦痛であるらしく、呻き声が洩れる――しかし、それは何処か艶めいていた。

「うぅぅ……違ぁ……僕はぁ……」

「僕は君とスキンシップをしてるだけだよ――いやらしいのは君だけだ。
まったく、こんな淫乱が<無限書庫>で男装して仕事してるなんて――」

そう言うと、クロノは突き出す形で彼に密着しているユーノの丸い尻の柔らかな肉を押し潰すようにして力を込めた。
途端、ユーノは股間の茂みから男の指が引き抜かれるのを感じ、その感覚に甘やかな嬌声を上げた。

「ああぁん! もう、いいだろう――僕はこれで――」

「――そんなによがっておいて、“これ”が欲しくないとでも?」

――え?

熱。異質な肉の巨棒が陰核を叩く――目が眩む。
熱い粘液が滴る秘所に、ぴたり、と怒張が張り付くようにあてがわれていた。
知らず、震える声でユーノは呟く。がくがくと膝が笑い、震えは全身に広がった。

「や……やだぁぁぁ……」

しかし、怒張に触れている股間の割れ目から染み出す愛液はいっそう濁り、
浅ましい本能を剥き出しにして、秘所は男を咥えこもうとパクパクと蠢いている。
クロノはそれを皮膚感覚で感じると、肉棒を軽く前後に動かして彼女を刺激しながら喋った。

「ははは、もう処女ってわけでもないんだ、怖がることは無いだろう――五日前も美味そうに咥えてたじゃないか」

「やぁ……やめて……僕はもう、あんなこと――」

目尻に涙を浮かべてそう抗議するユーノは、所詮いやらしく安産型の尻を突き出した雌でしかなかった。
そうなるように、クロノが手ずから開発したのだから、当然だが。
嗜虐的笑みを和らげ、何時もの優しげな笑みを浮かべると、シャワールームの水流を弱めながらそっと囁いた。
225司書長は女の子 ◆bsNe6z3qW2 :2008/09/28(日) 02:52:16 ID:oR7t5bDJ
「いやならやめようか……?」

「え……」

「ユーノがいやなら、僕はやめるよ。ベッドの上でも構わないって約束する」

ユーノはおどおどとした表情で、どもりながら言った。

「え、そ、そ、そんな――僕――」

「――なんてね」

瞬間、クロノはそっと忍ばせていた指でユーノの陰核の皮を剥き、ふっくらと膨らんだそれを強く押し潰した。

「――んぁ! や、らぁぁぁ!」

電撃的快感がユーノの背筋を弓なりに反らせ、天井から降り注ぐシャワーの雨を浴びながら彼女は失禁していた。
黄金色の液体が尿道から溢れ、びしゃびしゃと二人の足元を水滴と一緒に濡らす。
同時に粘液質な愛液も潮を吹くように溢れ出し、クロノの息子をぬちゃぬちゃに濡らした。
腰が砕け、座り込みながら荒い息をつく少女を見下ろすと、青年は支配者の笑みで言う。

「さあて、続きはベッドでしようか――夜はまだ長いからね」

「……あぁぁ……」
226シロクジラ ◆bsNe6z3qW2 :2008/09/28(日) 02:55:16 ID:oR7t5bDJ
以上です。

本当は・・・本番も入れての短編でしたが、
なんというか書いている途中でそれどころではなくなってしまい、分割に。
中途半端といえばそれまでですが、楽しんでいただければ幸いです。

ではでは。
227名無し@ピンキー:2008/09/28(日) 13:37:34 ID:TAfO5m5B
>>217
つまりザンバーフェイトを跨がらせてょつんばいのはやてが走る合体技が?
228名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 13:50:07 ID:PG4TaYkI
>>226GJ!
本編の続きの方も期待している

以前ユーノが自分の精子をなのはの子宮に転送して妊娠させるネタがあったけど逆なのもありだよな
例えばルー子やキャロがエリオの精子を自分の子宮に召喚して妊娠するヤンデレ(?)モノとか
229名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 13:50:26 ID:cASJF25E
ちょwww寸止め酷いwwww

GJです、GJですが早く本番を!
230名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 14:51:16 ID:+bs7CiDG
>>226
GJ、続きも期待してます
231名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 17:50:44 ID:rNQSR7vK
>>226
GJ!!
エロノによって調教されつくすのも時間の問題か…

>>228
発想の転換が素晴らしすぎるw
仮にルーエリで恋人同士になってたとしても、エリオ君の子供が私のお腹の中にいるんだからと言えるわけか。
ルー→そんなわけないじゃない。産まれた後DNA鑑定⇒!?!?!?!?!?
232名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 18:00:05 ID:8WoPubsA
クローン技術の確立した世界でのDNA鑑定ってどうなんだろ。
その辺りも魔法で鑑定しそうな気がする
233名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 18:26:16 ID:+sZW6Ub0
>>232
シャーリーが全部記録しているから大丈夫
234246:2008/09/28(日) 18:39:31 ID:z0skZlCK
フェイトさんの利き手とか瞳の色がアリシアと違ったりする事から、クローン技術も完全では無いと思っていたり。
お待たせしたかもですが、長編の続き書き終わったので、投下いたします。
今回が、起承転結の起の終わりです。ギャルゲーで言うならば、この話の最後がOP。
以下ご注意を。
・鬱展開鬱エンド。誰も救われませんし誰も助かりません。
・なのはさん、フェイトさん、ヴィヴィオが漏れなく病みます。
・なのはさん、フェイトさん、ヴィヴィオ、ユーノ君、ナカジマ家、ハラオウン家(エリキャロ含む)、
 テスタロッサ家……と言うか、リリなのに登場するスカ家以外の全ての登場人物が危険です。
では。
235Cursed Lily:2008/09/28(日) 18:40:57 ID:z0skZlCK
 朝。早起きして作った朝食が、全く手付かずのまま冷め切っていた。時刻は八時過ぎ。いつもならば、とっく
に自宅を出ている時間だ。

「――ママも一緒に行ってあげるから。だから早くお着替えしよ?」

 平静を装った声には戸惑いしか無く、ヴィヴィオの身体を揺すっている手は心なしか震えていた。それに気付
かないヴィヴィオは母の声に顔を背け、布団を頭まで被る事で拒絶する。ヴィヴィオはパジャマのままだった。
 いつもと違う朝。ザンクト・ヒルデ魔法学院での騒ぎから一日。ヴィヴィオを聖王教会から連れ帰った次の日
の事だった。

「ヴィヴィオ起きてって、起きてってば!」
「……やだ」

 行きたくない、とただそれだけ。震える声がなのはの耳に届いた。
 分っている。あんな事があったのだ。誰だって行きたいとは思わない。けれどもそれで困るのは誰か。他でも
ない、ヴィヴィオ自身だ。
 だから勝手にしろなんて思わない。強引に引っ張ることだってしたくない。これはヴィヴィオ自身の意思で
なければ意味が無い。
 意を決して、と言うよりも恐る恐る慎重に、なのはが布団を捲る。途端、怯えたように身を丸くするヴィヴィ
オは、行きたくないと繰り返しながら、涙の溢れる両の瞳を覆っていた。

「ご、ごめんねっ、ヴィヴィオだって辛いのは分ってるから……ごめんね……」

 ヴィヴィオの涙に、なのはの手が止まりそうになる。それでも抱きしめて頭を撫でてほお擦りをして、どうに
かヴィヴィオが泣き止むようにとひたすらに。
 なのはが抱きしめたからなのか、或いは単に堪え切れなかっただけなのか。溢れた涙を頬に伝わせて、ヴィ
ヴィオがしゃくりをあげて泣き始めた。
 その間、なのははヴィヴィオを抱きしめる事しか出来はしない。それが悔しくて、辛い。

「ヴィヴィオは、どうしたら学校行ってくれるのかな? もう、ずっと行きたくないのかなぁ……? 学校、
きっと楽しい事もいっぱいだよ?」
「なのはママが、ずっと一緒だったら行く」
「そんなの――」

 子供は残酷だ。出来ないと分っている事でも、口にする事を躊躇わない。
 どれだけそうしてあげたいと願っても、現実には叶えられるものじゃない。そんな現実に、針に触れたかのよ
うに胸が痛む。
 情け無い。本当のママになると言って、泣いているこの子を抱きしめたいと、笑顔でいさせてあげたいと願っ
て、実際はこの体たらく。ヴィヴィオの涙を拭って上げられるのは自分しかいない筈なのに――。
 けれども、どうにかしてその現実を壊したい。今泣いているこの子の為に、出来る限りの事をしたい。嘘では
なく純粋に、心からそう思った。
 なのはが無言になる事数分。胸元のレイジングハートに手を伸ばしたのは、ヴィヴィオが母の様子を伺うよう
に顔を上げたのと同時くらいだった。

「ほら、ヴィヴィオ」
「ん……レイジングハート……?」
『はい、ヴィヴィオ』

 ヴィヴィオが呼びかけ、レイジングハートが瞬き応えた。
 自身の首にかけられたレイジングハートをおずおずと握ったヴィヴィオは、二三度母を見上げ、母が微笑むと
共にレイジングハートへ視線を戻すを繰り返す。

「辛かったら帰ってきたって良い。もしヴィヴィオが助けて欲しかったら、すぐにだって飛んでいく。レイジン
グハートがママに教えてくれるから」

 神様。どんな事にも屈しない、優しくて強い心をどうかこの子に――。

236Cursed Lily:2008/09/28(日) 18:41:56 ID:z0skZlCK
魔法少女リリカルなのはStrikerS
―Cursed Lily―
(4)


 時刻は丁度一時を回った辺り。午後の業務に向けて局員達が食事を取り、談笑し、また頑張ろうと一層のやる
気を示す時間。或いは、休憩が終わってしまったと嘆く時間か。
 そしてデスクにかじりつき、昨日手付かずだった教導スケジュール作成に勤しむ彼女はと言うと、食事も碌に
取らず周りから聞える囁き声を意識の外に追い出して、仕事に没頭し続けていた。
 教導予定の隊員達の名簿が開かれたウインドウを展開し、各々の能力などを頭に叩き込みながら、マルチタス
クで最も効率の良いスケジュールを決めていく。
 教導は基本短期集中。限られた時間の中では、些細な遅れも許されるものじゃない。それが武装隊の生死に繋
がるかもしれないのならなお更に。

「――ほら、コーヒー飲むだろ。後、少しくらい休憩したらどうだ?」
「ありがとヴィータちゃん。でも、もう少しだから。出来るだけ早めに終わらせたいんだ」
「無理すんなって。どっか手伝うぞ――」
「にゃはは、ありがとヴィータちゃん。でも大丈夫、一人で出来るよ」

 覗き込もうとするヴィータの視界を手で遮り、仕事を続行させた。作業を止めて一瞬浮かんでしまった少女の
事は、頭を横に振る事で思い出さなかった事にして。
 今は集中、何かあればレイジングハートが連絡をくれる――そういい訳をして。

「それよりさ、ちゃんとおめー休んだか? 顔色は悪くないみたいだけど」
「うん、おかげさまで。昨日ぐっすり寝たから」
「そっか。で、昨日ヴィヴィオ何かあったのか?」

 ピタリと、なのはの手が止まった。
 横目で見たヴィータは、強張った表情のままなのはを見つめている。いや、睨んでいると言った方が正しいか。
 無言の時間。なのはは作業を続行できず、ウインドウに視線を固定したまま。そんな彼女を睨みつけるヴィー
タは、小さく溜息を吐いていた。

「舐めるな。あれから少しは成長してんだぞ……お前が普通じゃねぇ事くらい見てれば分かる。それに寝たなん
て嘘だろ。何で休んでくれねぇんだよ」
「……昨日も勝手に帰っちゃったし。それに私、ヴィータちゃんの教育係」
「お前なんかいなくたってあたしは困らないぞ。ていうか、いたら逆に迷惑だな。気が散る」
「にゃはは、ごめんね。そっか、迷惑かぁ」

 なのはが笑う。いつもの様に誤魔化したように。効果の程は考えるまでも無く、ただヴィータの苛立ちが増し
ただけ。
 けれども、それ以外どうしていいかは分からなかった。

「知ってるか? 子供ってさ、親の態度とか心配事とか結構敏感なんだって。あたし海鳴でじいちゃん達と話し
てるからな色々知ってるぜ。やっぱり年長者の話はちゃんと聞くもんだな。何処で役に立つか分からねぇよ」

 朝、涙を見てしまった。まるで怒られる事を怖がるように、小さく丸まっている姿を見てしまった。
 それが、あの時の姿に重なった。助けたくても助けられない、ただ誰かに縋って泣くだけしか出来なかったあ
の時の事。あんな想いは感じるのもさせるのも、二度と御免だ。

「大丈夫だよヴィータちゃん。ちゃんといつも通りやるから」
「だからさ、そうじゃねぇだろ。いつも通りなんてしなくていいからさ――」
「うん、心配してくれてありがとうヴィータちゃん」

 でも、私は本当に大丈夫。
 ――途端、ヴィータが涙目になった気がした。


237Cursed Lily:2008/09/28(日) 18:42:53 ID:z0skZlCK
『――なんやなのはちゃん念話なんて。一体どないしたの?』
「ちょっとヴィータちゃんと喧嘩しちゃって。後で謝ってたって言ってくれるかな?」

 定時過ぎ。オフィスからやや離れた位置でそれを見続けた。
 視界の中心には、未だ帰ろうとはせずデスクにかじりついているヴィータの姿。
 まだ研修中であるヴィータには残業を強いる程の仕事は無い。残業をしているのは、なのはの残った仕事を片
付けようとしてくれているからなのだろう。あれから、作業なんて少しも進んでくれなかったから。
 言葉を交わさずとも、見ていれば分かる。恐らくヴィータもそうだった。

「迷惑かけてごめんね。ヴィータちゃん、話しかけても返事してくれなくて……ほんとごめん」
『ええって、そんな何回も謝らなくて。ヴィータもなのはちゃんと同じで頑固やからな、同じ仕事してたら喧嘩
もするやろ』

 苦笑するはやてに感じてしまうのは、怖いと言う初めての感情。
 いつヴィータと同じ事を聞くのか。また、自分は嘘を吐いてしまうのか。
 それがあんまりにも嫌だったものだから会話もそこそこに念話を終わらせようとして、結局はまた嘘を吐く。
 目の前、オフィスと通路を区切る窓ガラスに映る自分の顔は、寒気がする程の空々しい笑顔だった。
 化粧室で顔を洗い、じっと自分の顔を見つめて笑ってみる。毎朝見ている顔と違う、記憶にある写真の中のど
んな笑みとも違う――無表情。
 こんな顔、ヴィヴィオに見せられるものじゃない。

「しっかりしなくちゃ」

 と、不意の事だ。制服のポケットの中からの僅かな振動に気付き、なのはが目を見張る。
 ポケットにはいつも携帯電話が入っている。いつもで連絡を受けられるようにと、両親がきつく言っていた、
半ば癖になっているようなもの。
 勿論ディスプレイに表示されているのは翠屋、つまりは家族からの電話である。

「も、もしもし……なのはです」
『あ、なのは? お母さんよ、元気にしてる?』
「うん、元気だよ……いきなり何?」
『はやてちゃんがね、電話してやってくださいって。いきなりよ? 何かあったのかって心配しちゃったわよ。
そっちは大丈夫なのね?』
「そっか……こっちは大丈夫だから。ごめんね」

 普段とは打って変わった真剣な声に、そういえばと思い出す。こうやって離れた場所でメール以外で直接話し
たのは、自分に何かあった時か、家族が増えると報告した時くらい。
 娘の安否が確認できた桃子の声は、安堵したのか笑っている。だがそれでも、やはりどこか硬いままだった。

『うーん、フェイトちゃんと喧嘩したか、ヴィヴィオの事ってところかしら』

 だからその名前が出てくるのは当然の事。どんな完璧な嘘だって、多分この人だけは騙せない。

「……ヴィヴィオが、学校行きたくないって。学校でちょっと色々あって」
『で、なのははどうしたの?』
「ちゃんと行かせたよ。辛かったら迎えに行くって」

 そう、とただ一言桃子から。なのははじっと、続くであろう桃子の言葉を待っていた。

『理由は多分聞いても分からない事なのかもしれないけど、それよりなのは、そんなに焦らなくたっていいん
じゃないかしら』
「焦ってなんか――」
『焦ってるわよ。お母さんになろうなんて思ったって簡単には出来ないわ。そもそも、お母さんなんて普通はな
るものじゃないんだから……経験者が言ってるんだから信じなさい』
238Cursed Lily:2008/09/28(日) 18:43:47 ID:z0skZlCK
 返せる言葉は何も無い。何を言うべきか分からないのと、何を言っても桃子には通用しそうに無かったから。
 そんな娘の様子に桃子が笑う――馬鹿にされたようで苛ついた。
 ギリ、と握り締めていた携帯電話が悲鳴を上げた。それに構わず切るよとぶっきらぼうに告げ、なのはが携帯
電話を操作する。
 その僅かな間。桃子が思い出したように、兄の名を口にしたのだ。

『一人で焦ったっていい事なんて無いわよ。周りもそうだしなのは自身だって……一度それでみんなに迷惑かけ
てるでしょう?』
「……そんなの、分かってるもん」
『さっきからそうやって。いい加減にしないとお母さん怒るわよ』

 一体、何をやっているのだろう。こんなにも皆に迷惑をかけて心配されて、あまつさえ今度はこうやって子供
みたいに怒られる。
 強くなりたかった。どんな辛さも我慢できるくらいに強く。皆に心配をかけさせないくらい強く。だってこん
な事じゃあ、あの子を抱きしめてあげる事なんて出来やしない。

「もう切るから。また何かあったら電話する」
『ちょっと! なのは待ちなさい!』

 誰にかに頼ってたら駄目だ。あの子が頼れるくらいに強く、強く――それだけをただ想い通話を切った。その
後何度も続く母からの着信に耐えかねたように電源を落として。
 内からの弱音に逃げるように歩き出し、レイジングハートの呼びかけを聞いたのはそのすぐの事だった。


* * *


 レイジングハートがなのはを呼ぶおよそ数時間前の事。ヴィヴィオはレイジングハートと共に、ザンクト・ヒ
ルデ魔法学院を早退した。
 母から預かったレイジングハートを握り締め、涙を拭いながら向かった先は母の勤める時空管理局本局。
 ヴィヴィオはただ母に抱きしめて欲しかった。学校を早退してしまって、母の期待を裏切ってしまって、誤り
たかった。
 だが、見知らぬ地。周りを見渡しても知り合いは誰もなく、いるのは見知らぬ大人達。それは少女に不安を感
じさせるには十分すぎるほどで。
 怯えたように身を竦ませている少女に一番に声をかけたのが、ユーノだった。

「やっと見つけた。レイジングハート教えてくれてありがとうね……で、ヴィヴィオは何でこんな所にいるのか
な? まだ学校終わる時間じゃないよ……もしかして、どこか具合悪い?」

 何でもない、ユーノからしてみれば当たり前の問い。しかしそれにヴィヴィオの肩は大きく揺れた。体現した
戸惑い共に震えた声で紡がれるのは、”大丈夫”と言うどこか的を得てない問いの答え。
 それに、直感的に悟った。体調が悪い訳じゃないけれど、何かあったのだと。きっと、この手の嘘に慣れてし
まったからなのだろうとユーノは思う。

「なのはママに会いに来たのかな?」
「……うん。でもママお仕事中」
「そうだね……ヴィヴィオがいきなり来たらなのはママ困っちゃうだろうし。だからさ、もし良かったらだけど、
なのはママのお仕事終わるまで、僕の話し相手になってくれないかな?」

 ヴィヴィオに普段の明るさは無かった。ユーノが差し出した手を恐る恐る握りながらも、俯いて何かを堪える
ように唇を引き結んでいる。
 放っておけなかった。元より放っておくつもりなどさらさら無いが、こんな姿を見てしまえばなお更に。
 ユーノがヴィヴィオの手を引いて歩き、ヴィヴィオは無言でユーノの背中を見つめている。途中、ユーノと
言葉を交わし、案内された先で興味深げに辺りを見渡せば、あるのは大量の書物と宙に浮く職員達。
 無限書庫、とその名に些かも恥じない大量の情報の波がヴィヴィオを取り囲んでいた。
239Cursed Lily:2008/09/28(日) 18:44:46 ID:z0skZlCK
「ここが僕が働いてる所。無限書庫って言うんだ」
「……本がいっぱい」
「うーん、まぁ図書館みたいなものだからかなぁ。あ、僕の部屋はこっちだよ」

 幼子を連れているユーノをからかうように、司書達の声がした。顔を紅くし、早足になるユーノに引っ張られ
る形でヴィヴィオが歩く。
 司書長室に入れば、あったのはこれまた大量の本。ユーノの仕事の為の本と、趣味の本の山だった。
 先ずはヴィヴィオの為にジュースを運んだ。その後は、どうにかこの本の山を見苦しく無い様脇にどけるだけ。
 その間、ヴィヴィオはずっと無言だった。手伝おうとしているのだろう。ソファにも座らずうろついているそ
の姿に、できるだけ優しく頭を撫でてやる。
 嬉しかったのか、俯いたままのヴィヴィオが若干頬を染めていた。それから、んしょと本を持ち上げ、重いの
を堪えている姿はどこか微笑ましい。

「大丈夫? 重くない?」
「だ、大丈夫」

 とは言うものの、やはりその足取りはおぼつかない。素直に重たいと言わないのは、ヴィヴィオ本来の性格故
か、それともこんなところばかり似てしまうものなのか。
 司書長室に二つの音が響いた。一つはヴィヴィオが本を床に置いた音。もう一つは、それよりやや重た目の、
ユーノが本を置いた音。後者は僅かな間を置くだけで定期的に。前者は、時間が経つに連れて少なく、少しずつ
音も小さくなっていく。
 音が完全になくなった頃には、ヴィヴィオは若干息を荒くしてユーノの差し出したジュースのストローを加え
てソファに座っていた。

「うん、綺麗になった。ヴィヴィオありがとうね」

 ヴィヴィオが手伝い始めた時の様に、頭を撫でてやった。
 どうやらヴィヴィオは頭を撫でるのが好きらしい。再び頬を染め、だが思い出したように顔を伏せ拳をギュッ
と握り締める。
 その姿が、こちらが苦しくなる程に嫌だった。

「ヴィヴィオ、そろそろお話し……いいかな?」

 ヴィヴィオの肩が僅かに揺れた。今までよりも更に俯き、相変わらず握り締められている拳は、力が込められ
すぎているのか、小刻みに震えている。
 ユーノは話を切り出しただけで、ヴィヴィオを急かすような事はしなかった。その間行った事と言えば、空に
なったジュースのお代わりを持ってきたことと、ヴィヴィオが喋りだすまでの間、数回コールのあった通信の応
答くらい。
240Cursed Lily:2008/09/28(日) 18:45:37 ID:z0skZlCK
「――学校で、みんなに怖がられて」

 ややあって口を開いてくれたヴィヴィオの最初の一言はそんな、思わずユーノの顔が強張ってしまう程のか細
くて、震えたもの。
 聖王の鎧の事。ヴィヴィオが傷つけてしまった人の事。なのはが聖王教会に迎えに言った後、目の前で教師達
に謝罪していた事。朝、学校に行きたくないと言ってなのはを困らせてしまった事。

「フェイトママはその事知ってる?」
「……分からない」

 まだヴィヴィオの騒ぎから一日。フェイトが知らないのは無理も無いこと。なのはは恐らく、誰にも言ってい
ない筈だ。

「レイジングハートをヴィヴィオが持ってるのも、それの所為?」
「なのはママの代わりだって……なのはママが」
「そっか」

 何を言ってあげればいいのか。ヴィヴィオに言うべき言葉も、どうしたら解決できるのかも、経験の無いユー
ノには分からなかった。
 だから必死に伝えたい事を言葉にしようとしても、紡がれるのは月並みな気持ちが込められているのかどうか
も自分でも分からない、無意識に唇を噛んでしまいたくなる頼りない言葉だけ。
 でもその代わり、なのはの事を話してみた。なのはならどうするか。どうしたか。フェイトの事。フェイトと
親友になる前、ユーノがなのはと出会う前のアリサとすずかの事や、はやての事。なのははいつでも、あきらめ
なかったと言う事。
 言いたい事を一通り言い終えた後、ヴィヴィオを抱きしめた。出来る限り優しく、ヴィヴィオが安心できるよ
うに。
 ヴィヴィオもユーノに抱きしめられるに任せて、朝から零し続けだった涙をもう一度頬に伝わせた。

「ずっと泣いてばっかり……なのはママに強くなるって言ったのに――」
「そうだね、ヴィヴィオはちょっと泣き虫かも。なのはママは殆ど泣いた事無かったけれど」

 本当に数えるくらいしか記憶に無い。中でも一番印象的だったのは、やはりヴィヴィオがいなくなってしまっ
た時の事か。
 今思えば、なのははヴィヴィオと出会ってから良く泣いている気がした。少なくとも、今までよりは。きっと
ヴィヴィオはなのはにとって、それ程大きな存在なのだ。
 なのはの事を思い出して、ユーノの腕に力がこもる。
 今でもなのははヴィヴィオの事を心配しているのだろうか。無理をして、仕事なんて手もつかない筈なのに、
それでも無理して笑っている。
 見た訳でも無いのに簡単に、そんななのはの笑顔が浮かんでしまった。
 と、

「い、痛い……!」

 そんなにも力をいれてしまっていたのか。ヴィヴィオが呻いた。それに慌ててヴィヴィオの身体を引き離し、
謝罪する。
 ヴィヴィオは痛みに強張ったまま。だがそれでも、僅かに微笑んでいる気がした。

「大丈夫? 痛くない?」
「うん……でもちょっと痛い。ユーノ君、力強すぎ」
「そ、そうかな……そんな事無いと思うけど。ずっと部屋にこもりきりだし。普通の人より無いんじゃないかな」

 すっかりと――とはまだいかないものの、調子を取り戻し始めたヴィヴィオがユーノに抱きついたままの格好
で首を振る。
 短くて細い人差し指がピンと伸ばされて、ヴィヴィオが指したのは先程片付けた本の山。恐らく、本を抱えて
いた時の事を言っているのだろうとユーノが納得した。
241Cursed Lily:2008/09/28(日) 18:46:22 ID:z0skZlCK
「まぁ、これくらいはまだ僕でも。他の人たちはもっと沢山持てるだろうし、普段はこんな事しないから」
「そうなの?」
「んー、書庫から本を出したり運んだりするのは司書達がやってくれるし、たまに自分でする事があっても、魔
法使うから」

 言って、ユーノが視線の先の本に意識を集中させた。
 使うのは、ほんの少しの魔力だけ。物を動かすのは初歩の初歩、魔法学院の初等部で習う事だ。
 ユーノの緑色の魔力が本の周りに固定された。そのままユーノが少し念じれば、後は彼の思うまま室内を飛び
回り、最後にヴィヴィオの手の中に納まった。
 凄い、とヴィヴィオが目を輝かせたのはその直ぐの事。

「ヴィヴィオならこの位すぐ出来るようになるよ」
「ほんと!?」
「ほんとだよ。ヴィヴィオだったら練習すればすぐじゃないかな」

 その言葉がきっかけで、それからレイジングハートがなのはを呼ぶまでの数時間、ヴィヴィオに少しだけ魔法
を教えた。
 ユーノが驚かせたのはヴィヴィオの魔法センスと、持って生まれてしまった能力の強さ。
 始めに見せた本を動かす魔法は、コツを教えてからは一瞬で。つい調子に乗って教えてしまった検索魔法は
覚え切れなかったものの、きっと練習すれば覚えるのもすぐだろう。

「なんか、子供の頃のなのはママ見てるみたいだ……ママも凄かったからなぁ」
「なのはママも?」
「うん、僕が教えた魔法なんてすぐ僕より使えるようになって。あ、でもなのはママに教えたやつは
ヴィヴィオには危ないから教えないよ」
「ユーノ君のケチ!」

 頬を膨らませたヴィヴィオが、ユーノから顔を背けた。
 拗ねているその姿があまりにも子供らしくて、ユーノが声をあげて笑う。ムッとユーノを睨むヴィヴィオも
ややあってから同様に。

「それだけ笑えれば大丈夫だ」
「……迷惑かけてごめんなさい」

 恥ずかしそうに笑うヴィヴィオの頭をもう一度撫ででやった。もっとと言うヴィヴィオの声に応えて、何度も
何度も。

「ユーノ君がパパだったら嬉しいのになぁ」

 そう呟いたヴィヴィオの声に、思わず笑みが零れてしまう。
 暖かい何かを確かに感じた。ヴィヴィオの笑顔をもっと見ていたい気持ちと、護りたい気持ち。

「そうだね。僕もそうなれたら、嬉しいのになぁ」

 だから若干顔を熱くしながらも正直に、ヴィヴィオに言った。ますます笑顔になるヴィヴィオに、安堵の息を
吐いて。
 なのはが息を切らせて無限書庫に現れた頃には、すっかりヴィヴィオは元の笑顔を取り戻してくれていた。


242Cursed Lily:2008/09/28(日) 18:48:41 ID:z0skZlCK
「ユーノ君迷惑かけてごめんね」
「いいって。それよりさ、何かあったらすぐ誰かに相談しなくちゃ駄目だよ。なのははいつもそうなんだから」

 何だろう――。握っている母の手が、妙に汗ばんでいる気がした。
 見上げてみれば、そこにあるのは朝の様子が嘘の様な笑顔のなのは。昨日までの、いつもと変わらない母の姿
がそこにあった。
 だからこそ、ヴィヴィオは分からず口を閉ざしたまま戸惑っている。なのはが迎えに来てからずっと握り締め
られている手の違和感と、正体の分からない不安。全て、なのはが無限書庫に訪れてからのものだったから。
 耐えかねて、縋るようになのはの手を強く握れば応えるようになのはがヴィヴィオに視線を移し、どうしたの
と微笑みかける。
 それにすら、不安を感じてしまうのは何故なのか。

「ママ……?」
「ん、なぁにヴィヴィオ。そろそろ帰りたいのかな?」

 その言葉の真意を探ろうとして、痛みを覚えた。まるで触れられる事を拒絶されているような、針に触れたよ
うな鋭い痛み。
 なのはと会話するユーノは、どこか嬉しそうに見える。だから何も変わらない筈なのに。

「ごめんね、ユーノ君。ヴィヴィオ疲れちゃったみたいだから。そろそろ帰るよ」
「ヴィヴィオまだ疲れてないよ。もっとユーノ君とお話ししたい」

 ――ゾクリ、と悪寒がした。こちらを見て微笑んでいるなのはの笑顔が、一瞬無くなったような気がした。目
を擦り見てみれば、何も変わらない。ただ、震えが止まらないだけ。

「ごめんユーノ君。ヴィヴィオやっぱり疲れてるみたいだから。帰るよ」
「そっか。じゃあ、また今度ね。ヴィヴィオもまた――」

 ユーノがヴィヴィオに手を伸ばす。なのはが来る前、何度もしてくれた頭を撫でる最初の仕草だ。それを知っ
ているからこそ抵抗せず、大人しくユーノに頭を撫でてもらおうとヴィヴィオが目を瞑って。
 不意に、なのはの手の力が増した。
243Cursed Lily:2008/09/28(日) 18:49:27 ID:z0skZlCK
「ぁ……」

 目を開けると同時、ユーノの姿が遠ざかる。ヴィヴィオの頭を撫で損ねたユーノは、やや驚いた表情で眼を丸
くし、なのはに腕を引かれるヴィヴィオを見ていた。
 ユーノの姿が更に遠ざかる。なのはは止まらない。ヴィヴィオが制止を求めるように何度も呼びかけ、やっと
足を止めてくれた時には、無限書庫の姿はどこにも無くて。

「ごめんね、腕痛かったかな?」
「大丈夫……でも――」

 ユーノ君驚いてたよ。
 そんな、続けようとした言葉を遮るように抱きしめられて、頭を撫でられた。それから続けられたのは、何で
連絡してくれたなったのと言う、何となくではあったけれど聞かれるだろうと思っていた問い。それに正直に仕
事中だったからと答えれば、途端なのはの顔が曇った。

「そんなの、気にしなくていいのに」
「……ごめんなさい」
「呼んだらすぐにだって飛んでいくって言ったよ? 嘘じゃないよ?」

 何故だから安心した。ユーノと話しているときよりも、今眉根を下げている表情のほうが、不安じゃなかった。
けれど、やはり分からない。
 帰ろうと、なのはが再び手を差し出して、ヴィヴィオがその手を握り歩き出して。
 と、

「――っ」

 なのはが急に立ち止まった。バランスを崩しそうになって、慌ててヴィヴィオがなのはの腕にしがみ付き、立
ち止まって。
 見上げた先、まただった。また、ユーノと話している時の不安を感じた。

「ごめん、ヴィヴィオ。行こうか」
「えっ……う、うん……」

 なのはが笑顔のまま歩く。ヴィヴィオも一緒に。その横を金髪を靡かせ歩くもう一人の母は、俯いて何を考え
ている分からない。
 ヴィヴィオの事を見ようともせず、なのはに声をかけようともせず、俯き拳を握り締めて、きっと向かうのは
無限書庫。
 自宅に帰ってアイナの作った夕食を食べ、風呂に入って、一緒に瞼を閉じるまで、なのはが彼女の名前を出す
事は一度も無かった。
 そんな事、今まで絶対無かったのに――。


* * *


 夢を見た。とても悲しい夢。
 決して離れる事は無いと願っていた、この絆だけは永遠に続くと信じて疑わなかった、彼女との最後の思い出
だ。

「ねぇ、なのは。話したいことって何なのかな?」
「あのね、フェイトちゃん――」

 焦れたように私は言う。それになのはは言葉を捜すように目を瞑る。
 長い時間だ。なのはが何を言うのかが分からない。無言の時間でさえ安心できた筈の彼女と傍が、この日はと
ても息苦しかった。
 だから急かすようにもう一度、私はなのはの名前を呼んだ。けれどなのはは目を開けることは無い。

「なのは……? どうしたの……?」
244Cursed Lily:2008/09/28(日) 18:50:28 ID:z0skZlCK
 何か相談したい事があるのかもしれない。なのははいつも、困った事があるとすぐに隠そうとする。だから周
りにいる人たちが、気付いてあげないといけないから。
 そうしないと壊れてしまう。頑固で無理をしたがる癖に、本当は寂しがり屋で、誰かが傍にいないと動けなく
なるくらいに弱い人。

「もしかして、何かあったのかな?」
「……違うよ。そうじゃない。フェイトちゃんに伝えたい事があるって言ったよ?」

 そんな私の心配を笑うかのように、ゆっくりと目を開けたなのはが話し始めたのは、今までの事。私と出会っ
て、名前を呼んで友達になってからの二人で歩いてきた少しだけ長い道。
 はやて達と出会って、今のリインフォースが生まれた。なのはが大怪我をしてみんなを心配させて、リハビリ
中、執務官試験勉強なんて手もつかなかったのを良く覚えている。
 それから、エリオと出会った。私みたいな子供を一人でも無くしたいって言う、なのは以外で初めて護りたい
と願った男の子。
 まだなのはの話は終わらない。空港火災でなのはがスバルを、私がギンガを助けだして。スバルはなのはに憧
れて学校に通いティアナと出会った。やっぱり姉妹だから良く似ている。ギンガは、私に憧れているなんて言っ
ていたから。
 その後、機動六課が設立される三年くらい前にキャロに出会った。エリオとすぐにでも会わせてあげたかった
けれどあの頃のエリオは、少し乱暴だったから。
 それから機動六課が設立された。フォワードの子達の休暇中にヴィヴィオと出会って、なのはがママと呼ばれ
始めて、私も一緒にママなんて呼ばれて。エリオとキャロは少しもそんな風に呼んでくれないから嬉しかったん
だ。

「ははっ、こうやって言うといっぱいだね」
「うん……そうだね……」

 言葉を捜し終えたのだろう。なのはから笑顔が消えた。少し真面目な、仕事中に良く似た表情。それに構える
ように息を呑んで、耳を済ませて。

「私ね、フェイトちゃんの事がずっと好きだったんだ。今までも……これからも好きでいたいの」

 聞いたのはそんな、予想もしてなかったなのはの言葉。
 なのはは嘘でも冗談を言っている訳でもなく、真剣で。私は何も言えなくなってしまった。
 それを拒絶と取ったのかもしれない。なのはが少しだけ寂しそうに笑って、背を向ける。なのはの足音がし始
めて、なのはが帰っていくのが分かった。
 何か言わないといけなかった。なのはを傷つけないために。これからも、なのはと一緒にい続ける為に。なの
はを笑顔にさせる為に。
 その筈だったのに――。

「ユーノは……? ユーノはずっとなのはの事……」

 言えたのはそんな、ずっと心の奥にあった彼の名前。なのはと一緒にいる時にとても幸せそうに笑っている、
私が始めて好きになった人の事。

「ユーノ君は……友達だよ。私が好きなのは、フェイトちゃんだもん。ユーノ君なんかじゃない」

 それから先の事は曖昧だ。私は感情的に叫んで、なのはは背を向けたまま冷たい言葉を返すだけ。
 悔しかった。悔しくて、悲しかった。私が好きだったなのはは、そんな事を言わないはずなのに。まるで、今
までの思い出全てが嘘だったような、そんな苦しさ。

「フェイトちゃん……ごめんね。フェイトちゃんを怒らせたい訳じゃなかったんだ。フェイトちゃんが私の事好
きになる筈ないもんね……ごめんね」
「私はそんなのが聞きたいんじゃない! 取り消してよ! ユーノなんかって……ユーノはずっとなのはの事、
好きだったのに……!」
245Cursed Lily:2008/09/28(日) 18:51:22 ID:z0skZlCK
 嫌いになりたくなかった? なのはをあの時一番傷つけていたのは自分の癖に? 何を護ろうとしてた? 記
憶の中にある、護りたかったなのはの笑顔?
 きっとどれも全部嘘。ただ、彼の想いを傷つけたなのはを許せなかっただけ。私の気持ちを知っていた癖に、
知らないフリをしていたなのはの事が許せなかっただけ。

「ごめんね……私なんか、フェイトちゃんの友達にならない方が良かったのに」

 一番大切な思い出を踏みにじったその言葉が、彼女を嫌いになってしまう程許せなかっただけ。
246246:2008/09/28(日) 18:52:03 ID:z0skZlCK
以上です。すみません。投下行数ミスしました……orz
なのはさんが頑ななのは仕様です。
とりあえず、次回からはなのはさんとヴィヴィオメインだったのがフェイトさんメインに移ります。前書き
でしつこいくらいに書き連ねている方々も順次登場です。
ユノフェイとと言うか、ユーノ君←フェイトさんも次回以降に。フェイトさん←なのはさんも少しずつ。きっと、
なのはさんは嫉妬なんてしたら自己嫌悪で閉じこもりそうなタイプだと思っていたり。今回の展開だとなお更か
なぁと。
そして鬱展開の準備が整いつつあるので、皆様警戒態勢に入るようお願いします。
ではでは。
247名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 19:37:38 ID:6hlWUCkv
>>246
乙!
これは…なのはさんがガチレズってことでおK?
248名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 20:10:36 ID:M43Cjyys
>>246
GJ!
ノンケできれいなフェイトちゃんがなんか新鮮w
そして、なのはさんひとり無理して自滅していってる感が…

しかし、なのユーはわりとハッピーエンドのイメージがあるけど
ユノフェイってどこか悲恋のイメージがあるな。

鬱展開平気ですので、続き期待して待っております。
249名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 21:06:12 ID:mIl+wH5l
>>246
GJ!
本当に誰の想いも報われなそうな展開ですなw

ギャグ以外でなのは=ガチレズ、フェイト=ノーマルって見たことないな
ユノフェって俺も悲恋のイメージがあるというか悲恋が似合うというか

なのはさんスキーとしては読んでて胃が痛いですが、
マゾなんで鬱展開楽しみにしてますw
前書き見ると、ナカジマ家まで巻き込まれるというのか…
250名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 21:39:26 ID:L77yc6iS
ハラオウン家ってリンディ、クロノ、エイミィと双子も巻き込まれるのか?
ナカジマ家なら厚生組ナンバーズは、でもスカ一家は違うなら?
251名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 22:25:41 ID:b6/bXtTf
>>227
馬乗りになってSMしているフェイト(攻め)×はやて(受け)を想像してしまった。
252名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 22:31:26 ID:ZRlavvxe
>>246
GJ
続きがすげぇ楽しみです
253名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 22:37:21 ID:UzqVup7w
>>246
GJGJGJ!
いい感じの雰囲気になってきましたねw
次の投下も楽しみに待ってます
25444-256:2008/09/28(日) 22:39:43 ID:Z3G+hXob
>>246
GJです。なのはさんが疲れて壊れていくのがこわい・・・
欝ED嫌いですけど、どんどん物語に引き込まれる。

夜間に職人さんが押し寄せてくる前に、投下させてもらっても
よろしいでしょうか?
255名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 22:42:57 ID:cASJF25E
投下するのにお許しはいらねえぜ? イきたい時に好きなだけイくのが職人ってもんだ。
25644-256:2008/09/28(日) 22:44:15 ID:Z3G+hXob
それではお言葉にあまえて投下します。

・非エロです。
・けっこうゆるいです。
・JS事件より8年前が舞台です。
・主演男優はヴァイス、助演女優は・・・まぁわかると思います。
・全5話くらいになりそうです。
・2話目です。
257エンカウンターズ・ウィズ(2話 1/5):2008/09/28(日) 22:45:48 ID:Z3G+hXob
ブリーフィングが終わり、ヴァイスたち武装局員達は交代で当直を行っていた。

ミッドチルダ標準時で8時半、先ほど深夜帯勤務に切り替わり、さっきまで活気にあふれていた艦は当直以外休憩に入り、静寂に
包まれている。艦橋にはエンジンの駆動音とビーコン、そしてモニターに写る次元空間の単調なガス状の景色しか写らない。
そんな中、ヴァイスはあくびをもらした。

「ヴァイスくん、大丈夫?やっぱ艦の当直にまだ慣れてないから余計に・・・」
隣にいたオペレーターが心配そうに声をかける。年が近いせいか、ヴァイスはすぐに彼女と打ち解けた。

「いや、大丈夫だ。少し廊下で頭冷やしてくる」
「それなら私も一緒していい?」

「かまわないぜ。2人とも行ってこいよ。これからずっとディスプレイやソナーとにらめっこが始まるからな」
仲間の航海士から、そう声をかけられ2人は廊下へ出た。ひんやりした空気の中で背伸びをした。

当直とはいうが、どうにもオートパイロットの次元航行艦は緊張感に欠ける。
訓練で廃棄都市区画のビルの屋上にスタンバイしている間は丸2日寝なくても大丈夫だというのに。

「コーヒーでも飲むか」
「そうだね。私もどうにも落ち着けなかったし」
「年中、船に乗ってる海の人間でも落ち着けないことがあるとは驚きだな」
「うん、まあね・・・」

そう言って2人は休憩室へ向かおうとするが、途中の通路の奥のほうで何かが聞こえた気がした。この先は資材倉庫、クルーはめったに
立ち寄らない場所だ。
「どうしたの?」
「倉庫から声が。ちょっとそこで待っててくれ」

ヴァイスは警戒してかストームレイダーのドッグタグをつかんで資材倉庫に入った。
倉庫は薄暗く、左右のカーゴがかなりの高さまで積まれているのだけは凹凸の影でかろうじてわかる。

「・・うん・・・夫や・・今のところは・・・目処は・・・配性やな・・・ノくんも・・・」
話し声は倉庫の置くから聞こえてくる。
「誰かいるのか?」

ヴァイスがそういうと突然、黒く大きな影がヴァイスの目の前に現れ、ものすごい力でデバイスを握る手を掴まれた。
「ダメや!彼を離したって!!」

黒い影の正体は食堂で配膳をしていた大男であった。そしてその後ろから料理人の少女が現れる。少女に言われて褐色の大男は手を離した。

ヴァイスは手をさすりながら少女に問いかける。
「何だよ。コックの嬢ちゃんか、こんなところで何してるんだ?」
「明日の食事の材料を取りに。明日も今日みたいにありあわせのものじゃ、みんなにおいしい料理をふるえんもんやから」

そうして少女と大男の後ろには大量の食材カーゴが詰まれてあった。
相当な量である。
258エンカウンターズ・ウィズ(2話 2/5):2008/09/28(日) 22:48:14 ID:Z3G+hXob
「それじゃあ運ぼか、んしょっ!!っと、あわっ!?」
大男を手伝おうと少女も荷物を運ぼうとするが、そのあまりの重さに姿勢を崩した。それをヴァイスは受け止めた。

「熱心なのはいいけどよ、これを運ぶのは無理があるだろ。ほらっ、手伝ってやるからよ」
「おおきに。最近まで車椅子に乗ってたもんやから、どうにも荷物運ぶのは慣れてなくて」

少女がそういうのもヴァイスは納得した。落ち着いた物腰の割には背も低く、まだ幼さが残る。
「それだったらなおさらだ。全くそんな身体で、それによく荒くれ物そろいの海のコックなんかやってるな」
「う〜ん。私は料理しか取り柄あらへんから」

荷物を食堂の入り口まで運び終えると、少女はお礼にとヴァイスとオペレーターを休憩室へ誘った。しかしオペレーターは断って
一足先に艦橋へと戻っていった。
自販機からコーヒーを押し、ヴァイスと少女はそれを飲むんでいる間に話をした。
側に配膳係の大男がいるがまったく会話に入ってこなかった。少女は質問した。

「あの、ずっと気になってたんやけど、ヴァイスさんだけ制服の色が違うんですね」
他の局員は青を基調としたものだが、ヴァイスだけは白を基調とした制服である。

「ああ、俺はミッドチルダの航空武装隊からの出向だからな」
「へえ〜、何でこの船に乗ってるんです?」

「そうだな・・・」


1ヶ月前の夜。ミッドの航空武装隊の隊長室にヴァイスは呼び出された。

「実は、君に本局の次元航行隊の遠洋任務に出てほしいんだ」
「えっ?」

「たまにやっている空と海の短期の人事交流だ。君は隊に配属されて間もないが、なかなか良い成績を残してくれている。
引き受けてくれないか?」
回答は明日の夕方まで、隊長はヴァイスにそう告げた。

帰り際、ヴァイスはシグナムに相談した。
「ほう・・・本局への出向か、魔導師や騎士にとって違うフィールドで己を鍛えるのは良い経験になるぞ」
「ええ、姐さん以前は本局、本局勤めだったんスよね。だからどんなものなのか話を聞きたくて」

「行きたいのか?」
「正直迷ってるんスよ・・・妹の事もあるし」

「お前の妹、ラグナといったか。いくつになる?」
「5歳っス・・家族は俺とあいつだけだから・・・やっぱ隊長に言って断ってきます」

ヴァイスが立ち上がろうとするところをシグナムは止めた。

「待てヴァイス。せっかくの機会なんだ。もしお前の妹が良ければ、遠洋に出ている間の面倒は私の知り合いの家で見るか?
怪しいところではない。北ベルカ自治領の養児院だ。我が主は今は聖王教会に出入りしているのでな、教会の者たちやシスター
にはすぐに話が通すこともできる」

「いいんですか?何か悪い気が」
「大丈夫だ。たぶん『主はやて』なら快く引き受けてくださるだろう」
259エンカウンターズ・ウィズ(2話 3/5):2008/09/28(日) 22:50:03 ID:Z3G+hXob
ヴァイスはそんなシグナムの心使いを嬉しく思い、感謝したが一つの疑問がわいてきた。
「姐さん、前々から思ってたんスけど、『主はやて』って誰なんスか?」
シグナムの元で仕事をするようになってから半年以上になるが、家族構成やプライベートに関して質問したのは今回が始めてであった。

「私がお仕えしている、いわば保護者のような方だ。私のような騎士は他に4人いてな。我々の命の恩人で、強く、そして優しい方だ」
「強い・・・ですか(航空隊最強の姐さんより強いってどんな豪傑だ!?)」

「妹のことは我々にまかせて、お前は相棒と一緒に頑張って来い」
かくしてヴァイスは航空武装隊から本局へと短期出向する事となった。


「そのシグナム姐さんっていうひと、ずいぶんと頼りになる上官さんなんやね」
「さっき食堂で俺が話したエース、それがシグナム姐さんだ」

「でも『主』って?」
「ああ、俺も詳しくは知らないんだが、姐さんの保護者で、聖王教会の人みたいでよ。姐さんも空の世界じゃ、エースとして
恐れられているが、その鬼が畏怖と敬意を持っているみたいだから、おそらく超ド級な魔法の使い手か屈強な騎士だろうな」

そうしてヴァイスは右手にバズーカのようなゴツいデバイスを持ち、左手にサバイバル料理の本を持ったシルベスタ・スタローン
やアーノルド・シュワルツネッガーのような怪力コマンドー的おばさんを想像した。

「う〜ん、何かえろう勘違いをしているような・・・」
「どうした?」
「い、いや、何でもあらへんよ!」
少女はヴァイスの発言やその想像になぜか苦笑している。

「そうか、でもそんなの噂でしかないし、それに妹が世話になってる姐さんの『主』人に礼を言おうと思ってるんだ『本当にありがとう
ござました』ってな」

「・・・そうなんや。会えるとええな。その人に」
そんな少女の表情からヴァイスは何かを察したのか謝った。
「すまない。身内や仲間のことベラベラ話して。つまらなかったろ?」

「そんなことない、家族はほんまに大切やし。私は・・・私は以前は家族がおらんかったから」
少女も身の上を話し始めた。以前は身体も不自由で家族がいない日々を送った。しかしある日家族ができ、色々と個性的な面々で大変
な時もあるが、そこから以前よりも楽しい毎日になったという。

管理局に入局したのも、そんな家族と離れ離れで生活することのない様にという考えからだった。
「家族ができてから料理の腕もあがったんよ。でも最近ずっと忙しかったからあまり顔合わせられなくて。今の航海で休みが取れたら
みんなに会えるんや」
「そうか、俺も今回の航海が終わったら。休みを取って妹とゆっくり過ごしたいもんだぜ」

ヴァイスがそういうと少女は提案した。
「もし良かったら、私の家族と一緒に過ごせへん?妹さんも呼んで」
「いいのか?せっかくの家族水入らずに赤の他人の邪魔になるんじゃ?」

「かまへんウチの家族も小さいコおるし。それにもう他人やないやん。それにさっき夕食に出したお好み焼き、あれ結構種類あってな。
あれよりおいしいものもたくさんあるんよ。肉や海産物、それに最近じゃチーズも入れる事があるんよ。これが生地と相性バッチリ
でチーズケーキとは違った味も出せるんや」
「そうか、本当に楽しみだぜ。妹も喜ぶだろうし。それに嬢ちゃんの家族、聞いててすごく楽しそうだし、いい人達みたいだからな」

こんな子供が心から信頼する家族、どういう人たちなのかすごく興味がわいた。

そうしてヴァイスに少女は笑った。
「家族のことそう言ってもらえるとほんまに嬉しいな。ラグナちゃんも、ええ兄さんもってほんまに幸せや」

「あれ?、俺、妹の名前なんて言ったっけ?」
「い、い、いややわ〜!!お兄さん、妹さんの名前さっき言うたよ。ほんまに忘れっぽいんやから!あ、もうこんな時間や。明日の
仕込みせなあかん。それじゃあ、おやすみなさい」
260エンカウンターズ・ウィズ(2話 4/5):2008/09/28(日) 22:51:03 ID:Z3G+hXob
そう言って少女はあわてて立ち去った。そして終始無言であった大男が話しかけた。
「先ほどは倉庫ではすまなかった。しかし、持っていたデバイス、よく手入れがなされている。さぞ優秀な魔導師なのだろうな」
ヴァイスは初めて大男の声を聞いたが、寡黙なだけにその重厚な声には千金の重みがあった。

「は、はぁ、ありがとうございます・・・」

この人が魔導師だったら、明らかに旦那とか親分とか、師匠と呼んでしまうかもしれない・・・そう思いながら何故か配膳係に恐縮
してしまうヴァイスであった。


ヴァイスが休憩を終えて艦橋に戻ってから少し時間が過ぎ・・・某次元航行艦の艦橋にて

『あの、マイスター』
『何や?それにうちのことは名前でええで』

『さっきのヴァイス2等空士に事情を話して協力してもらうのはどうです?すごくいいひとです・・・味方は多いに限るです』
『せやな、確かにいい人や、でもな。今はダメや』

その会話を聞いていたのか、若い青年が念話を送ってくる。年はヴァイスより1つ上くらいだろうか。しかし、冷たい濃紺の眼や
容貌からしても非常に知的で冷徹な印象を受ける。

「その通りだ。まだ情報が特定できていない。今の時点で身分を明かすのはあぶないだろう。気をつけて慎重に行動してもらわ
ないといけない状況だ。第一、君はデバイスとしてマスターに客観的な状況分析を・・」
『はぅぅ〜〜(泣)』
激しい突っ込みを受け、生まれて間もないデバイスは泣きそうな顔になる。

「もう、相変わらずきつく言いすぎ、相手は小さい女の子なんだからね!かわいそうじゃない!」
隣にいた若い女性は彼をきつくいさめ、画像の方に向き直りいつものあっけらかんとした笑顔を向けた。

「ごめんね〜。冷たく言ってるけど、2人ともど〜んと、で〜んと構えていればいいんだよ!私達もいるんだしさ!」
『はは、おおきに(・・・この状況でど〜んとか、で〜んとか構えるって無理ちゃうか?)』

「しかし、どうにも心配でならない。本来なら武装局員としての身分の方がいいと僕は思ったんだが。全くヴェロッサもよりによって
何でこんなものしか用意できなかったのか・・・」

「ふ〜ん、あたしはすごく似合っててかわいいと思うけどさ」
「ほんとバッチリ似合ってるよ!!」
男の隣でドッグフードをかじりついている狼の使い魔が気楽に声をかける。
そして隣で若い女性が親指を立てて“ぐっじょぶ”のサインを送る。

『せやろ?わたしも気にいってん』
白いコック帽に料理服に赤いスカーフ、少女が小柄な背格好もあってか、少しブカブカだがよく似合っている。
そうして少女はみせびらかすようにヒラリと一回転して微笑んだ。

そして男の後方にいた金髪のおとなしそうな少女が話しかけた。
「大丈夫だと思うよ。私が言うのも何だけど、ずっと教会騎士団にいて武装局員や航行隊から出向しているの人とは全く面識がないし」

そして航行艦の艦長らしき女性が少女の言葉を後押しする。
「そうよ、それにあなたは2人の実力を考えて、了解したんでしょ?」

『私が言うのも何やけど、武装局員としてちっこいのがうろちょろしてるよりは、料理人してた方が目立たなくて動きやすいんよ。
それに艦のみんなも私の料理ほんまにおいしい言うてくれるし。明日は良い材料でもっと腕をふるわなあかんのや!!』

「・・・本来の目的を忘れてないか」
『冗談やて、ほな早いとこ解決せな!!学校の連休ももう少しで終わりやし・・・あれ?』
「どうした?」

『外部から艦の情報端末を介してない。暗号通信が入ってきた。これは・・・すぐにそっちへ転送するな!』
261エンカウンターズ・ウィズ(2話 5/5):2008/09/28(日) 22:52:20 ID:Z3G+hXob
次元航行艦にて以上のような通信のやりとりから数時間後。

ミッドチルダ クラナガン 第16準廃棄都市区画 ソーホー地区。

かつては本局の植民地といわれていたミッド地上本部であるが、レジアス・ゲイズ少将ら生え抜き強硬派が地上本部の主要派閥と
なったことにより、ミッドチルダの治安は急速に回復した。

しかし、犯罪の温床となっているという理由から、かつて本局がほぼフリーで通してきた低所得層や辺境の貧困世界から半ば違法で
出稼ぎにきた人々がミッドのシティや中央ブロックから退去させられ、この区画へと逃れて形成された地図に無い街、それがソーホー
地区であった。

こちらは現地時間の真夜中。“千客万来”など漢字で書かれたネオンや古い廃ビルの間を雪がちらつく。

そして夜の闇にまぎれて二人の男がとある廃墟ビルの一角を見上げてた。
一人は安物のトレンチコートの下に管理局陸士部隊の制服を着ており。もう一人はカタギの人間には着れない高級スーツを身に
つけていた。

高級スーツの男が倉庫に顔をむけて言った。
「あそこだ。俺達、ここら一帯の幇(パン=マフィア組織)に仁義切らずに占拠してる。見慣れないガキを連れ込んでな」
「感謝するぜ、ウェンロン」

「旦那には借りがある。ここらの救貧院もあんたが口聞いてくれたおかげで、聖王教会の信徒じゃない俺達にもカタギさん
連中の支援の手が回ってくるからな」
『旦那』といわれた陸士の男はコートから通信端末をとった。

「俺だ」
『ご苦労様です、準備のほうは?』

男が側にいた魔導師を見ると、魔導師はうなずいた。
周囲には倉庫を取り囲むように、完全武装の陸戦魔導師がすでに所定の配置についている。

「パーティーはいつでもOKだ」
一等陸尉の階級のその男は本局でもエリート中のエリートともいえる若手査察官にタメ口を聞いている。
言葉も「地上本部陸士〜部隊〜一等陸尉であります!」といった管理局特有の厳格な口調ではなく、工場労働者のようなようなもの
であった。

『事情が事情だけに慎重に頼みます。今回、あなたが情報を査察部へダイレクトに提供してくれなければ、行動が後手になっていました』

「地上本部、本局、そしてあんたら査察と手順どおりにヤマふんでたらヤバイと思っただけだ。でもあんたもグレアムじいさん
の弟子も頭の柔らかい奴で助かったぜ。俺らの海アレルギーもそうだが、海連中にも陸からのチンコロ(情報提供)と聞くだけ
でウザがる連中がいるからな」

そうして陸士の男は部下に言った。
「合図で突入だ。娘達が起きる前にさっさと帰って、朝食、洗濯、学校の支度をさせなきゃいけなんねー」
「はっ!!(一等陸尉、奥さん亡くなったばかりだってのに、しっかり主夫してるなぁ・・・)」

「お前さんお抱えの教会騎士様にもよろしく伝えてくれ」
『わかりました、伝えますよ』

そういってヴェロッサと陸士の男は通信を終えた。
26244-256:2008/09/28(日) 22:53:52 ID:Z3G+hXob
以上になります。
次回からちょっとだけ、ゆるくなくなってくるかもしれません。

それでは以下↓雑談、職人さんたちのSSをお楽しみください。
263名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 22:56:39 ID:8WoPubsA
GJ、いいなあ、こういうの。
名前がないのに皆誰のことかわかるってパターンは大好物だ。
264名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 23:02:29 ID:qlSFqz7k
gj
俺もこういうの好き
265名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 00:07:27 ID:UaLZBb8v
GJ
はやては潜入捜査のために潜りこんでいたのか。
ゲンヤさんが何だかやり手の刑事長みたいだ。差し詰めゲンさん? 苗字がナカジマだからナカさん?
266名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 00:13:25 ID:izEKl07D
はぐれ陸士純情派



いや、なんでもねぇ
267野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/29(月) 00:33:00 ID:fruCREWW
 ふと、頭に浮かんだモノを書いてみた。
 自分としては過去最高の「いいのか、これ?」
 非エロ。
 レス数三。
 メタ、オタ、おっさんホイホイ注意。

 タイトル「替え歌」
 あぼんは鳥かコテで
268野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/29(月) 00:33:36 ID:fruCREWW
      1

「機動六課のアニメ?」

 言ってから、なのはは盛大に首を傾げた。
 確かに、管理局のイメージ回復のために思い切った手を打つとは聞いていた。そのために協力を頼むかもしれないとは言われていた。
 だけど。
 なんで、アニメなんだろう。

「管理局のイメージアップはお子様相手から、ということやね」
「でも、はやてちゃん、今六課って言ったの」
「今の管理局では六課が一番イメージええんよ? ゆりかご事件を阻止した英雄部隊。所属するのは部隊長をはじめとする美女美少女揃い」
「英雄部隊……あー、なんかそういうのは聞いたことあるけれど、あんまり好きじゃない、そういうの」
「しゃーないよ。ごろつき扱いよりはナンボかマシやよ?」
「それに、所属するのは執務官をはじめとする美女揃いって……」
「なんかちゃっかり微妙に言葉変わってる!? しかも、自分のことやなくて、フェイトちゃん褒め!?」
「フェイトちゃんは美人なの」
「うん。それは認めるところやけどな」

 とにかく、とはやては続けた。

「六課の活躍をフィクションとはいえ、事実を元に脚色した形でかっこよくお茶の間の皆さんにお届けや。
私らの世界で言うたら、アンタッチャブルやプロジェクトX、水曜スペシャル矢○純一UFO特番みたいなもんやね」
「はやてちゃん、完全なフィクションが混ざってるよ」
「ウィークエンダーの事件再現フィルムとか」
「わかんない。それわかんないよ、はやてちゃん」

 そこでや、とはやてはテンションを上げる。

「どうせなら、文字通り六課の星、スターズ隊長のなのはちゃんの管理外世界時代の物語から始めようやないかと、アイデアが出てるんや」
「管理外世界時代って、もしかしてPT事件や闇の書事件のこと?」
「そや。あっと、もちろん脚色はするし、肝心なところはきちんと隠すで?」
「うーん」
「一応な、テーマソングみたいなんも作ってあんねん」
「え? まだ許可してないのに作っちゃったの?」
「テーマ言うても、替え歌や。私らの世界の有名作品の替え歌や」
「いいのかなぁ…」
「ここまではカスラックも来うへんよ。ちなみにフェイトちゃんに歌ってもらったんよ」
「道理でいないと思ったら……」
269野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/29(月) 00:34:16 ID:fruCREWW
       2

 ♪
 人の命は尽きるとも 不屈の心 レイジングハート
 争い絶えないミッドの中に 幸せ求めて悪を討つ
 人の魔力を加えたときに レイジング〜 ハート!  レイジング〜 ハート!
 お前こそ未来もたらす
 ♪


「……なにこれ」
「主題歌やよ」

 なのはは心からフェイトの不幸を悲しんだ。

「なんかおかしいよね?」
「何が?」
「レイジングハートが主人公なの?」
「ああっ!?」
「今気づいたの!?」
「うかつやった……完全に忘れてたわ、ごめん、なのはちゃん」
「忘れてたって…………」
「なーんて、嘘嘘。ちゃんと主人公の歌もあるて」
 

 ♪
 大空羽ばたく漆黒の翼〜 その名は やが……
 ♪
 (ブチッ)
 

「漆黒の翼ってはやてちゃんしかいないでしょ!!」
「あ、せっかく作ったのに最後まで聞いてえな」
「って、なんでマ○ンガーZなの!?」
「ちゃんと意味はあるんよ?」
「それはいいとして、どうしてPT事件にはやてちゃんの歌がいるのかな……」
「闇の書事件と間違えたんや」
「そこまで作ってるの!?」
「ちなみに主題歌はこれやで」


 ♪
 ヴォルケンリッターに守られた 自分の家に住んでいる 正義の少女 八神はやて
 ミッドの平和を守るため六課の仲間に命令だ (やー!)
 ♪
 (ブチッ)


「あれ? なのはちゃん、どしたん? 顔が笑ってるのに目が笑ってないよ?」
「……作ったもの、全部聞かせてくれるかな?」
270野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/29(月) 00:34:49 ID:fruCREWW
   3
 
 ♪
 ライトニングはキャロロロロ キャロロロロ キャロロロローー!
 ♪
 (ブチッ)

「意味わかんないよっ!」

 ♪
 ミッドの海は俺の海 俺の果てしない憧れさ
 ミッドの地上は俺の地上 俺の捨て切れぬ故郷さ
 友よー明日のない「陸」と知っても
 やはり守って戦うのだ 命を捨てて俺は生きる
 ♪

「今のは六課ですらないね」
「うん。私も作ってからそう思った」

 ♪
 俺は涙を流さないダダッダー
 デバイスだからAIだから ダダッダー
 だけどわかるぜ 鉄の忠誠
 Sirと一緒に悪を討つ
 必殺パワー サンダーフォール
 悪い奴らをぶちのめす トライデントスマッシャー 嵐を呼ぶぜ
 俺はバルディッシュ バルディッシュアサルト
 ♪

「ほら、レイジングハートの歌もあるんやから、バルディッシュかて」
「ふーん。私のレイジングハートはマ○ンガーで、フェイトちゃんのバルディッシュはグレートなんだ……」
「え、怒るところ、そこ!?」
「いいけど。ちゃんとした主題歌が見あたらないんだけど」
「うーん。せっかく取り寄せたCDやねんけどなぁ、しっくりこうへんなぁ」
「そもそも、どういうチョイスなのいったい?」
「なんとなく検索して、フェイトちゃんが歌うんならこれやと思ったんやけど」
 
 ジャケットを見せられると、なぜかなのはにもそう思えてくる。
 不思議と言えば不思議。

「あ、そういえば、これ、全部歌手が同じだよ」
「ほんまや。替え歌に夢中になって気付かんかったわ」
「みずき・いちろう……だって」
「みずき……」
「みずき……」

 なんだろう。何故だかフェイトちゃんにはピッタリな気がして。
 はやてとなのはは、顔を見合わせてやっぱり首を傾げるのだった。
271野狗 ◆gaqfQ/QUaU :2008/09/29(月) 00:35:27 ID:fruCREWW

 以上、お粗末様でした。
 実はセインさんかディエチでエロを書きたいと思っているんですよ?
 エロ神が降りてこない(泣)
 

 おまけの後日談
 そして、なのはに歌わせるために取り寄せる田村直美のCD
「魔法○士レイ○ース……なんだか親近感を感じるの」
 
 
 そして念のため
 マ○ンガーZ
 マジ○ガーZ
 バ○ル二世
 超人バ○ム1
 キャプ○ンハー○ック
 グレー○マジ○ガー
 
272名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 00:38:40 ID:tspOTijP
テラミズキ違いwww
273名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 00:40:30 ID:UaLZBb8v
20代で全部わかった俺っていったいww
274名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 01:21:05 ID:mH9WXyYj
>>273
アニメ好きなら全部分かるのが当然だから安心しろ
275名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 02:04:52 ID:mU2TgWaF
すっごい遅筆でここに書くのもかなり久しぶりですが、未完だった物を終わらせる為に投下。

・非エロ
・実はプロローグ〜1章をtxtで投下したので2章だけWikiに
・A'sから半年後の話
・オリキャラちょっと出ます
・JS事件に一部関わりのある話(にしたい)

前書いた物をそのまま投下するのもアレなので追筆と書き方をちょっと変えてみました。
それでは投下。
「……と、言うわけでこんな昼休みの時間に集まってもらったんやけど」
 JS事件も終わり、来年には解散となる機動6課の部隊のメンバー全員がそれぞれ昼食と共にテーブルを囲っていた。
「唐突なんやけど、実は新しい隊員のお知らせなんや」
「こんな時期にですか?」
 質問したのは眉を上げながら口を開いたティアナだった。
「そうや『絶対防御の監視人』と言えばみんな解るやろか?」
「それって、師団規模の撤退戦を作戦本部と連絡が取れない状態のたった1人で指揮して、死亡者0だったあの伝説の人ですよね?」
「それやね。でも、実際は死亡者が0なだけで重軽傷者は結構出たんで、伝説って言うには買いかぶりすぎやって言ってたで」
「それでも凄いじゃないですか!?」
「確かに買いかぶりでも無く、十分過ぎる戦果だと思います」
 目を輝かせながらそれを否定するスバルを横目に、あくまで冷静にティアナが答える。
「わたし達より攻撃能力は低いけど演算能力が凄くて、師団規模でも部隊員1人1人の状態を把握できる情報処理能力と、自分が襲われても確実に回避に持ち込めるマルチスキル持ちなおかげで、どんな状況でも1人で対応できるから戦場指揮官向きなんだよね、あの子」
 まるで事細かな詳細まで知り合いかのように話すなのは。
「そのおかげでどこの部隊からも引っ張りだこだから、いつも私達と一緒に仕事したいって言ってるんだけど、なかなか機会が無くて困ってたね」
 なのはと同じくフェイトも説明を付け足す。
「凄い人ですね。でも、そこまで知っているなら……もしかしてその人、フェイトさん達の知り合いなんですか?」
 フェイトに続いてエリオが自分の部隊長を見ながら質問する。
「うん、昔からの友達でね」
「そやね。なんか話によると時々部隊員のみんなを見に行ってたとか言うてたから、もしかしたら1回ぐらいあってる人がいるかもしれへんよ?」
「あ、そう言えばあたしがクロスファイアの特訓中にちょっとしたコツを教えてくれて……そうそう、ちょうどそこの後ろで髪を結んでる人って、あーっ!」
 ティアナが驚きながらも、座っていたはやての頭上を指さしていた。
「やっほー、ティア。あれからクロスファイアの精度は上がった?」
「はい、ありがとうございました。ええと……緑の人?」
 迷いながらその女性を呼んだティアナだが、はやての真後ろで手を振って答える緑と呼ばれた相手の服装は茶色を基調とした局員のスーツ姿であった。
 当然肌の色も普通の人と同じ若干白めな肌色で、年の頃もはやてを含む部隊長達とさほど変わらない容姿であり、何を持って彼女を緑と呼んだのかは不明だ。
「うんうん。どういたしまして」
「あ、あの時は本当にありがとうございました、緑の……人?」
 更にエリオまでもがその女性に緑と付け足してお礼を言う。
「おお! フェイトの言ってた通りホント良い子になったみたいだね。エリオ」
「はい、フェイトさんにはずいぶんと迷惑をかけましたが、あれからは少し改心しました」
「大変よろしい。でも2人とも、正確には緑の【変な】人だからね? 遠慮してはぶいたりしたらダメだよ?」
 どうやら前に会った時にそう呼べと指示していた様子で人差し指を立てて反論しつつ、そう呼ばれて嬉しかったのか笑顔のままはやての肩に手を置いてそう答えた。
「なんや。そんな所で盗み聴きした上に、そない変な呼び方まで教え取ったん? 青野みずほ陸将補殿?」
 真上を見るようにアゴを上げ、相手の顔を確認すると名前と階級をあっさりと言い当てるはやて。
「あーあ、みんなの前で階級で呼ぶのは無しって言ったのに……」
 みずほと呼ばれた女性は口をとがらせる。
「ダメや。こうでもしないと絶対自分から言わへんやん?」
「すっ、すいませんでした! 青野将補!」
「きちんと名前を聞かないですいませんでした!」
 頭を下げているティアナとエリオ見て、ばつが悪そうな顔をするみずほ。
「私の方からそう呼んで欲しいって頼んだんだから、そっちが謝る必要はないよ。まぁ、こうなっちゃうから黙ってたんだよね」
「いずれバレるんやし、変に隠しておくほうがタチが悪いと思うで?」
「うーん。確かにそうなんだけど……もうちょっと打ち解けてからの方が良いかなって思ってたから……」
「良いから、はよ自己紹介しとき」
 はやてに頬をぺしぺしと叩かれながら、少し不機嫌そうな様子で口を開く。
「はいはい……今はやてが言ったとおり本日付で機動6課に配属されました青野みずほ……階級はしばらく内緒にしたかったけど陸将補です」
 部隊員全員が少々どよめきを上げる。
「えっと、現部隊長のはやて……じゃなくて八神陸佐より上の階級ですが、本局の通知で事実上謹慎中の身なので指揮権は変わらずに八神部隊長のままなのでご心配なく」
 部隊員が一番気にしていたしていた部分を的確にさらっと答えると、そのどよめきはすぐに消える。
「短い期間ですが、今後は八神部隊長の指揮下において、他小隊長と同じく部隊員の教育と指導を行っていきますのでよろしくお願いします」
 最後に丁寧な礼をすると、部隊員達は歓迎の拍手でそれに返答していた。
「で、はやて。どこまで私の事について話したの?」
「二つ名にちょっと茶々入れた所ぐらいやね。昔話はみずほが来てからにしようと思ってたんや」
「そっか……じゃあさっさと話しますか。JS事件の始まりに関わった私の昔話を」
「JS事件の始まり……って、どう言う事ですか?」
「事は10年前。闇の書事件から半年後の話やね」
「要するに戦闘機人に関わる事件でね。そのおかげか、事件後に提出したレポートも結局は無かった事にされてたんだけど、JS事件でそれが明るみになった今になってようやく出番が来たって話なのよ」
「もしかして、謹慎中って事はみずほさんはその事件の……」
「そう言うこと。私は事件を引き起こした側の人間だったけど、その時の罪はとっくに恩赦されてるし、それ以降の前科も無いんだけど、その事件の立証に立たされるって事で裁判が終わるまで便宜上の謹慎状態になってるのよ」
「JS事件がなければ永遠に闇に葬られたであろう事件やからね……その分管理局も重大な事件って認識があるみたいなんよ」
「みたいだね。前置きはこの辺にして後は記録と一緒に話していくよ」
 みずほが記録媒体を取り出して再生装置に設置した。
「同士ジェイル・スカリエッティ。ついに私の研究が完成する時が来たぞ!」
 その部屋にはコンピューターの端末に大人1人なら簡単に入りそうな空のカプセルが多数存在していた。
 そこで白衣を羽織った科学者らしき人物が、大きな画面に映ったもう1人の科学者を相手に声高々にそう語りかけた。
「そうですか、同士アリオン・ロードスター。貴方の研究には期待していますよ」
「ああ、これが完成すれば戦闘機人の一番の難点であった制御の統一が可能となる。これさえ完成すれば後は量産を残すのみだ」
 ジェイルと呼ばれた画面の男は冷徹に、アリオンと呼ばれた科学者は狂気じみた笑い声を上げながらそう答える。
「アリオン様」
「なんだ、騒々しい」
 その一言で、笑い声を止め声の主相手に振り返る。
「例の魔力物質が間もなく『発芽』しそうです」
 ふわりとなびく長い髪も、玉のような綺麗な肌も白で目は赤く、典型的なアルビノ体質の様にも見える女性の姿がそこにあった。
「そうか。育成中の魔導師はどうなっている?」
「いつでも出せます『発芽』の位置が特定でき次第向かわせますか?」
「良くやった。後は魔力物質の回収次第で研究は完了する。よって、すぐに向かわせて欲しい。任せたぞ、アイシス」
「はい、ではこれにて報告を終了します。それでは」
 アイシスと呼ばれた女性は、丁寧な礼の後踵を返し闇にへと消えていった。


 無数の桜色に光る誘導弾が空へ舞い、互いに交差しつつぶつかりながらも衝撃音を撒き散らす。
「アクセルシュート!」
 色を持つ誘導弾の主が再び射撃体勢に入り、誘導弾の追加発射を行った。
 その主の名は高町なのは。
 制服とドレスの中間のような白い防護服に身を包み、杖の形をした魔法デバイス、レイジングハートエクセリオンの主でもある。
 なのはが追加で発射した誘導弾、アクセルシューターが正体の解らない物への迎撃を開始する。
 何故交戦中の相手の正体が解らないのかと言うと、単純にそれ自体が目視できないからだ。
 今のなのはに解る情報で言うのであれば、アクセルシューターとそれがぶつかる瞬間にだけ衝撃波が発生すると言う事。
 ただそれだけの情報で、数も威力も解らない相手に対して自由自在にアクセルシューターを操り、それを迎撃して行く。
《Master》
 不意にレイジングハートがなのはへ警告を告げる。
「えっ!」
 アクセルシューターをなのは自身が操作できる限界まで増やし、操作すると言う事は精神集中の為にほとんど動く事ができなくなる。
 相手はまさにその隙を狙っていた。
《Protection》
 すかさずレイジングハートが防御壁を作成し、なのはのフォローに入る。
「はぁっ!」
 初めて姿の見えた相手が、なのはへ近接攻撃を仕掛けてきた。
 なのはもレイジングハートのフォローにあわせ、防御壁を展開する。
 その姿を確認すると、なのは同じように緑を基調とした防護服を身に包み、見た感じ年齢もそれほど変わらない、もしかすると同年代かもしれない魔導士の少女の姿だった。
 後頭部辺りで大きく蝶結びにしたリボンで髪を束ねているのが特徴でもあり、両手にはそれぞれ両対に核のついたデバイスから刃を作り出し、なのはの防御壁を打ち砕こうとしている。
《Barrier Burst》
 レイジングハートがなのはを護るために再び魔法を発動させる。
 両者がせめぎ合っていた領域を中心に爆発が起きた。
 爆煙が収まった後、付近を確認するとその場に留まっていたのはなのはだけであった。
「あれ? さっきの子は……しまった!」
 なのはがそのミスに気が付いた時には、既に相手は事終えていた。
「シルフィード。これで、いいのかな?」
 ビー玉ほどの大きさの光球を手にした緑の防護服の少女が、両対にフレームと核がある1本の杖に形を変え、光を吸収させながら語りかけた。
《Yes Mam》
 シルフィードと呼ばれた杖は核を光らせつつ機械的な女性音で肯定を唱える。
「止まって! それはとっても危ない物なの!」
 ロストロギア疑いのある、正体不明の魔力物質。
 その被害を防ぐために、今相手の少女が手にした物を保護する事がなのはの仕事であった。
《Accel Shooter》
 相手は制止を受け入れる様子は無い。
「アクセルシュート!」
 相手を足止めするための3度目の発動、今度は完全に姿の見える相手。
 先ほどは突然の出来事だったのと、攻撃に必要な情報があまりにも少なすぎたので迎撃するだけに留まったが今度は違う。
 今回は相手を撃墜する絶対の自信があった。
「行くよ、シルフィード。発動タイミングは任せるね」
《Homing Blast》
 少女の服装と同じ色である緑色の魔方陣が彼女の足元から現れ、魔法が発動する。
 まさにこれが、最初になのはが相手にした正体不明だった衝撃波の正体。
 相手の少女から発せられた不可視の空気の塊が次々となのはのアクセルシュ−ターにぶつかり、衝撃波を発生させ四散して行く。
「えっ? 嘘っ!?」
 なのはの命令では、確実に少女へ直撃するようにアクセルシュ−ターを誘導させているが、その道中で幾度も空気の衝撃波に阻まれ、ありえない方向へ逸れて行く。
「でも、逃がさない!」
《Divine Buster》
 アクセルシューターに追われている割には、相手の逃げる速度が予想以上に早い。
 この距離で最短時間で最大の痛手を与えるにはこれしかない。
「ディバインバスター!」
 なのはの本来のスタイルである誘導弾で行動を制限させ、その間に弾速の早い砲撃を当てる一撃必殺。
 アクセルシュ−ターは狙った軌道を風の誘導弾で逸らされつつも、修正を続けながら少女を追撃している。
 相手の少女は賢明に桜色の追尾弾を回避しながら逃げるが、その相手を挟み込むようにアクセルシューターとディバインバスターが同時に着弾する。
 これを避ける事は事実上不可能のはずだ。
「やった!」
 見事に同時着弾を成功させ、バリアでの攻防時よりも更に大きな爆煙が広がる。
 しかし、爆煙の中から緑の防護服の相手の姿は現れなかった。
「ええっ! なんで!?」
 これほどの同時攻撃で逃げられたとなると、被弾寸前のシビアなタイミングでアクセルシューターをディバインバスターに誘導して当てて逃れたとしか考えられない。
 だが、シューターを誘導して当てるタイミングが早くても遅くても間違いなくディバインバスターの餌食になる。
 なのはの培っていた空間戦術ではそれはどう考えてもあり得ないと頭の中では否定しているのだが、こうして相手の姿が見えないのであれば嫌でも否定はできそうにない。
 結果的になのはは相手を取り逃してしまったが、自身は無傷であり魔力もほとんど使用しておらず、正直な所不完全燃焼であった。
「何でだろ。絶対に負けない感じはしたけど……うーん、なんで当たらなかったのかな?」
《Don't mind Master》
 レイジングハートが核を光らせ、主を慰めた。
「うん、ありがとうレイジングハート。これから帰ってアースラに報告と家で訓練だね」
《All Right》
 なのはは地上に降り立ち、防護服を解除し家路へと向かった。

「もう追ってこないかな。でも、予測プログラム以上に強かったね……今回は不意打ちだったのと、あの子だけだったから何とかなったけど……もう1人の子も着たら回収すら難しいかも」
 なのはに名前も告げずに逃げ去った少女が不安げに自分の杖に話しかける。
《No problem》
 こちらのデバイスも核を光らせ、少女を励ます。
「本当? 期待しちゃうよ?」
 少女の凍り付いていた表情がわずかに崩れ、口元も緩んでいた。
《Yes Mam》
 それに応じるかのようにシルフィードも反応した。

 一つの小さな事件は新たな出会いを呼ぶ。
 大きな事件は更に大きな出会いを呼んだ。
 今回の事件は新たな出会いとなるのか?
 それとも、ぶつかり合う事を避けられない命運となるか?

 魔法少女リリカルなのはWing's 始まります。
280名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 02:15:35 ID:mU2TgWaF
しまった……予想より改行少なくて(4/5)ですがこれで最初の投下は終了です。
突っ込み所などがございましたら適当にレスで突っ込んじゃって下さい。
3章ぐらいまでのデータはありますので修正急げばそれほど遅くないうちに続きをUPできそうです。
281名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 22:30:07 ID:UaLZBb8v
幼女なのはが出てくるのは久しぶりな気がする。
282名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 01:43:29 ID:Kxl/cjSi
>>280

うん、取りあえず読ませていただいた
しかし、保管庫に1章が無い以上話の取っ掛かりがわかんないんだぜ
再upなど考えていただきたい

続きの展開に期待しています
283B・A:2008/09/30(火) 02:29:53 ID:mNMhzdgz
スバルでエロいのが完成しました。
投下、やっちゃって良いですか?
284名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 02:32:45 ID:J1nfmx0r
GO!!
285B・A:2008/09/30(火) 02:35:21 ID:mNMhzdgz
それでは投下します。


注意事項
・ゲンヤ×スバル
・時間軸はSSXと同じ3年後。
・エロです。
・ナカジマ家の面々の体型について、かなり主観の入った表現を行います。
・プールで青姦
・SSXは聞いたことありません
・タイトルは「南国プールで抱き締めて」
・スバルとゲンヤは恋人同士になっています。
286南国プールで抱き締めて@:2008/09/30(火) 02:36:07 ID:mNMhzdgz
打ちつける波の音と遊泳客の嬌声が混じり合い、照明の光が人工の砂浜を照りつけ、室内だというのに見回せば緑色の熱帯植物が目に入り、
耳を澄ませば南国をイメージした音楽が聞こえてくる。そんな陽気なBGMを引き裂くように、更衣室を飛び出したウェンディは絶叫した。

「うぅぅみぃぃっすぅっ!」

喜び勇んでビート板(命名“ライディングボードMKーU”)を小脇に抱え、ウェンディは人工の砂浜を疾走する。年頃の娘が声を張り上げながら走っていく光景に、
周りにいた遊泳客達が何事かと彼女に視線を向けた。

「こらウェンディ、はしたないぞ」

「まあまあ、折角のお休みなんだから、少しくらい羽目を外しても良いんじゃない?」

「しかし、調子に乗って他人様に迷惑をかけてしまっては・・・・・」

「IS発動、波があたしを呼んでいるっス!」

「言っている側からやるんじゃない!」

波のプールで無理やりサーフィンしようとするウェンディを止めるため、チンクは長い銀髪を振り乱しながら砂浜を駆ける。
一拍遅れて、ギンガもフォローに回るために彼女の後を追った。

「馬鹿だ、馬鹿がいる」

はしゃぎ回るウェンディを遠くに見つめ、ノーヴェは呆れながら呟く。その隣では、ナカジマ姉妹の良心とも言えるディエチが無表情のまま佇んでいた。

「ここがプールだってことは誰も突っ込まないんだ」

基本的にボケ倒しの面子の中で、唯一のツッコミ役である彼女の言葉はとても冷ややかなものだった。

「ほら、父さんも早く」

「わかっているから引っ張るなって。焦んなくてもプールは逃げねぇよ」

最後にゲンヤがスバルに腕を引かれながら現れ、早速騒動を起こしている娘達を見て閉口する。普段は厳つい強面からは、哀愁すら漂っていた。

「またウェンディか」

「しょうがないよ、今日を楽しみにしていたみたいだし」

事の始まりはギンガが気紛れで応募した懸賞であった。本人も当たらないだろうと思い込んでいたそれは意外にも四等に当選し、
屋内型レジャープール施設の特別優待券を当てたのである。しかも最大8人まで無料と書かれていたので、
家族団欒を楽しもうとそれぞれの都合を合わせてやって来たのだ。

「あたし的には、父さんと2人っきりで来たかったんだけどなぁ・・・・」

「お、おい・・・」

スバルが腕を絡め、柔らかな胸の感触を押しつけてきたので、ゲンヤは思わず声を上擦らせた。だが、すぐに落ち着きを取り戻して最愛の少女の言葉に耳を傾ける。

「来年は、2人だけで海に行こうよ。人が誰もいないような穴場にね」

「人のいない海か。何でまた?」

ゲンヤが聞き返すと、スバルは彼の耳元に顔を近づけ、明朗とした性格からは想像もできない色香がこもった声で囁いた。
287南国プールで抱き締めてA:2008/09/30(火) 02:36:48 ID:mNMhzdgz
「父さんさえ良ければさ、あたしは裸でも良いよ」

「なっ・・・」

不意打ちの一言に耳まで真っ赤に染めたゲンヤが、弾かれたように愛娘にして未来の妻であるスバルの微笑を見やる。
すると、スバルは人差し指をゲンヤの厚い唇に添え、意地悪い笑みを浮かべて言った。

「本気にした?」

「お、お前・・・・」

からかわれたことに気づき、ゲンヤは顔をしかめて咎めるようにスバルを睨む。
しかし、スバルは悪びれた様子も見せずに可愛らしいピンク色の舌を覗かせて、向こうで騒いでいるウェンディ達のもとへと駆け出した。

「あ、おい・・・・・」

「蛸みたいに真っ赤になって。父さんもまだまだ子どもだなぁ」

「大人をからかうもんじゃねぇぜ」

「ごめんごめん。けどさ、2人っきりで海に行きたいっていうのは、本気だからね」

振り返りざまにあどけない笑顔を垣間見せ、スバルは悪戯っぽくウィンクして見せる。どこか小悪魔染みたその行為に、ゲンヤは苦笑するしかなかった。

「わかったよ、考えておく」

「うん、約束だよ」





コンセプトが南国のリゾート地ということで、施設内はそれをイメージした緑色の木や色鮮やかな熱帯の花が至る所に植えられ、
天井も一面が水色に塗られて白い雲が描かれている。そんな人工の空の下には、流れるプールやウォータースライダー、
波の出るプールや競泳用のプールに本物の砂を敷き詰めた人工の海岸など、大よそ思いつく限りの遊泳施設が設けられていた。
そんな中、思い思いの水着を纏って水と戯れる6人の美少女達の姿は、来園している男達の視線を捉えて離さなかった。
288南国プールで抱き締めてB:2008/09/30(火) 02:38:42 ID:mNMhzdgz
まずスバル。
日頃、シューティングアーツの訓練で鍛えているだけあって、スバルのスタイルは抜群だ。特に腰のくびれは旺盛な食欲からは想像もできないほど引き締まっており、
無駄な贅肉というものが一切ない。色白の肌は健康そのものであり、プールの水が弾けてしまうほど瑞々しい。また水色のビキニに包まれた彼女の胸は
どちらかというと巨乳の部類に入り、飛び跳ねる度にたわわに実った2つの果実がまるで風船のようにプルンプルンと上下に揺れる様は絶景以外の何ものでもなかった。
ヒップに至ってはきゅっと締まっていて弛みがなく、平手で叩けば間違いなく小気味の良い音が鳴ると意味もなく確信できてしまうほど丸みを帯びている。
そんな彼女が天使のような微笑みを浮かべてビーチバレーに興じている姿は、ノンケであっても惹きつけられてしまう程の輝きを放っている。
次にノーヴェ。
スバルと同じくクイントのクローンというだけあって、その体型はスバルととても似通っている。しかし年齢が幼い分、胸のボリュームはスバルに一段劣っていると言えた。
だが、それは決して彼女が女性としてスバルに劣っているという訳ではない。コンパクトかつ形の良い乳房は程よい手の平サイズであり、
指先がのめり込んでしまうのではないのかと思うほど弾力に満ちている。しなやかな太ももや引き締まった二の腕はスバルよりも幾分細く、
大人でも子どもでもない16歳特有の複雑な色香を醸し出していた。何よりも特筆すべきは臀部から太ももにかけての綺麗なラインだ。
扇情的なその美しさは、見ていると思わず前屈みになってしまいそうになる。とはいえ、それらは全てノーヴェという少女を彩る一要素に過ぎない。
彼女の一番の魅力は、時々垣間見せる女らしさである。大勢の遊泳客に囲まれて戸惑い、恥ずかしそうに自らの肢体を気にする姿は、
挑発的な赤いセパレーツと合間って何ともアンバランスな魅力を引き出している。
次にウェンディ。
緑色のビキニを着ている彼女を一言で言い表すならば、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいるグラマラスボディである。
活動的ではしゃぎ回る度に揺れる2つの膨らみは正に凶器であり、手にしているビート板の上にうつ伏せで寝そべられた時に見ることができる隙間からはみ出した
脂肪の塊は思わず指先で突きたくなってしまうほどである。また、明朗な性格ゆえか彼女は羞恥心に欠け、ノーヴェと違ってあまり周りの目を気にかけたりはしないため、
思いっきり泳いだ後に水着のズレを直す時も、彼女は人前で堂々とやってのけるので運が良ければ色の白い臀部を拝むことができるかもしれない。
その無防備さが、否がおうにも男の劣情を掻き立ててしまうのだ。
289南国プールで抱き締めてC:2008/09/30(火) 02:39:20 ID:mNMhzdgz
次にディエチ。
他の面子と比較すると今一つ地味ではあり、着ている水着も大人しめなオレンジ色のワンピースタイプである。だが、何気に着痩せするタイプなのか、
日頃の物静かな印象からは想像もつかないほどその体は肉感的であり、むっちりとした安産型のお尻が目を引きつけて放さない。
それでいて締まるところは締まっていて体のバランスも良く、ぼんやりと虚空を見つめる瞳がどこか浮世離れした印象を見る者に与えていた。
プールの縁に腰かけて、長い茶髪をかき上げる姿はまるで女神が水辺で休息している絵を見ているようである。
果たして、彼女は何気なく組んでいる足が造り出したデルタ地帯に男どもの視線が集中していることに気づいているのだろうか?
次にチンク。
言うまでもないことだが、チンクは小さい。設定年齢は19歳なのだが、その体型は11歳児とそう変わらないのだ。6人の中では一番小柄であり、
胸もお尻もまだまだ小さい。しかし、黄色いビスチェに包まれた幼いバストの膨らみは、何だか異様に背徳感溢れる魅力を滲み出させていた。
もしも可能のならば、後ろから抱きかかえて思いっきり持ち上げてやりたい。そんな欲求に駆られてしまう魅力がある。
くびれのない胴体や微妙に膨れていて触ると柔らかそうなお腹など、きっとその筋の方には堪らないだろう。そんな小さな体を周りに見せつけながら、
チンクは姉としての責務を果たそうと右へ左へと姉妹間をパタパタと駆け回るのだ。本人は至って真面目なのだろうが、
事情を知らない人間からすれば背伸びをしている幼女がお姉さんぶっている微笑ましい光景にしか見えなかった。
最後にギンガ。
唯一の20代だけあって、彼女は他の5人にはない大人の魅力を醸し出している。特に背中のラインの艶めかしさは思わず涎を飲み下してしまうほどであり、
かっちりした肩としなやかな太ももは健康美が眩しい。何より、年長者だけあって胸のサイズは6人の中で一番であった。どんと前に張り出した双丘は見事な形であり、
動く度に肌の上で波紋が起きているかのような錯覚を覚える。しかも心なしか紫色のビキニは食い込みが鋭く、目を凝らせば女性の大事なところが
見えてしまうのではないのかと勘ぐってしまい、何とも言えない緊張感があった。彼女が拳でコンクリートの壁をぶち抜く屈強な魔導師であるなどと、
その場にいた誰が気づいたであろうか?
そんな6人の美女に囲まれ、あっちこっちに引っ張り回されているゲンヤには、当然のことながら嫉妬と羨望が入り混じった刃のような鋭い視線が注がれていた。

「どうしたっスか、パパりん?」

「うん? ああ、いや・・・・・・何でもない」

突き刺さるような殺気が背中に当たって痛い、とはいえなかった。

「変なパパりんっスね。それより、向こうに2人で滑れるウォータースライダーがあるっス。
女の子は男の人の膝の上に座るのがデフォみたいっスから、パパりんの協力が必要っス」

「お、おい・・・・そんな恥ずかしい真似、出来るわけ・・・・・・」

「ええぇ、きっと楽しいっスよ。それとも、パパりんはあたしが膝の上に座るの嫌っスか?」

「いや、それは・・・・・・・悪い、ちょっと」

「え、どこ行くっスか?」

「トイレだよ」

「じゃ、帰ってきたら膝の上座らせるっスよ!」

(趣旨変わっているじゃねぇか)

大声を張り上げて手を振るウェンディに軽い頭痛を覚えつつ、ゲンヤは手近にあった男子トイレへと駆け込む。
半分は逃げるための口実だったが、尿意を催していたのは事実だった。

(やっぱ、やらなきゃいけねぇわな)

経緯はどうあれ、自分は彼女の父親なのだから、少しでも楽しい思い出を残してやる義務がある。
そう、これは父親としての務めなのだ。などと自分に言い聞かせながら男子トイレを後にしたゲンヤは、意を決してウェンディに声をかける。
290南国プールで抱き締めてD:2008/09/30(火) 02:40:14 ID:mNMhzdgz
「おーい、ウェンディ・・・・」

その時、不意に物陰から伸びてきた腕がゲンヤの手首を掴み、そのまま草むらの中へとゲンヤを引きずりこんだ。

「パパりん? おかしいっスね、確かにパパりんの声を聞いた気がしたっスけど、気のせいっスか?」

不審に思って周囲を探してみるが、ゲンヤの姿はどこにも見当たらなかった。さすがに男子トイレの中までは探す気にはならなかったので、
ウェンディはそのままノーヴェ達のもとへと戻っていった。





水に浸かっている浮遊感が頼りなく、ゲンヤはできるだけ平らな岩を見つけてもたれかかり、柔らかい乳房を押し付けてくるスバルの体重を受け止めた。
丁度ここは物陰になっているので、行為に耽っていても声を張り上げなければ周りに気づかれることもないだろう。

「やれやれ、妹相手に嫉妬したのか、お前?」

「べ、別にそんなんじゃ・・・・・・・」

頬を真っ赤に染めたスバルが反論するよりも早く、ゲンヤは彼女の唇を塞いで口の中に溜め込んだ唾液を注ぎ込む。最初は驚いて身を捩っていたスバルではあったが、
すぐに抵抗するのを止めて従順に唾液を飲み下し、零れた分が薄桃色の唇をドロドロに汚していく。

「わかっているぜ、本当は欲しくなっちまったんだろ?」

「そ、それも違う・・・・・」

「違わないのか?」

「うう・・・・意地悪だよ、父さん・・・・・・」

「こんなにしていたら説得力ないぜ」

ゲンヤがスバルの股間に手を回すと、粘着いた愛液が滲み出て塩素混じりのプールの水に溶け出していた。そのまま水着を押しのけてひくつく秘唇へと指を進めると、
呆気ないくらいに易々と2本の指を咥え込み、貪欲に締め付けてきた。

「これでもまだ言うか?」

「だ、だって・・・・・父さんの裸見ていたら、その・・・・・・」

「嬉しいこと言ってくれるな」

空いている手でスバルの背中を支えながら、ゲンヤは膣内の指を動かして肉壺を掻き回し、白いうなじをに舌を這わせて敏感な耳たぶを甘噛みする。
水の中にいるせいで浮力が働き、うまくバランスが取れないのでゲンヤは思うように愛撫することができなかったが、それが予想外な刺激となってスバルの急所を責め、
火で焙るようなじれったい快感をスバルに与えていた。

「はぅっ・・・ああ・・ううん・・・んんんぁぁ・・・・・」

結ばれてから何度もゲンヤに抱かれたが、こんな風に歯痒い思いを感じたのは初めてだった。ゲンヤの愛撫は巧みではあるが、後一歩というところで痒いところに届かず、
昇り詰めようとした瞬間に寸止めを食らってしまう。誰かに見られているかもしれないという恐怖と背徳感から女の芯は熱いくらい煮え滾っているというのに、
揺れる波が邪魔をして快楽という名の波を打ち消してしまうのだ。

「父さん・・・これ、これ入れて・・・・・・」

細い指で水着越しに勃起した肉棒を擦り、ゲンヤを誘う。際限なく昂ぶっていく火照りを沈めるためには、
固くて節くれだったゲンヤの肉棒で厭らしく濡れる肉壺をかき回してもらう以外に方法はない。
291南国プールで抱き締めてE:2008/09/30(火) 02:40:52 ID:mNMhzdgz
「どうした? 今日はいつになく欲しがりじゃないか」

「わ、わかんない・・・・けど、切ないの。変だよ・・・・・恥ずかしいはずなのに、お腹の中がジュンって熱くなって、
父さんのが欲しくて堪らなくて・・・・・・・・・・」

「俺の何が欲しいんだ?」

わかっていながら、ゲンヤは敢えて焦らすことを選んだ。彼もまた、公共の場で行為に及ぶということに異様な興奮を覚えて理性のたがが外れていたのかもしれない。
とにかく、今のゲンヤの脳裏には、目の前で喘ぐ少女を乱れさせてやりたいという欲求しかなかった。

「ちゃんと声に出すんだ、スバル」

「・・・・・チ・・・ん・・・」

「うん?」

「父さんの・・・・チ○チン・・・・欲しい・・・・入れて・・・・みんなの前で、スバルのこと犯して・・・・・・・」

淫靡な声で囁き、淫らに腰を振りながら大きな乳房を押し付けてゲンヤを誘う。すると、ゲンヤは水着の中から浅黒く変色した肉棒を取り出し、
一度だけ周りに誰もいないことを確認すると、スバルの体を抱きかかえるように持ち上げて勃起した肉棒を愛液で濡れそぼった蜜壷の入り口に宛がった。

「あっ・・・あぁぁ・・・はぁん・・・・・・・はぁぁあぁっ!!」

傘の張った亀頭が膣をかき分け、子宮口をノックした瞬間、スバルは欲しかった快感を得てどうしても昇ることのできなかった頂きを踏み越えた。

「ひゃあぁぁぁっ・・・・こ、こえ・・・でちゃ・・・・」

「こら、ちゃんと口を塞いでいないとばれるだろ」

「だ、だって・・・・・・ふ、深くて・・・・気持ちい・・・・・・」

突き上げられる時は自身の全体重がかかるため、膣の奥深くまでゲンヤの肉棒が侵入してくるのだ。
逆に抜かれる時は浮力が手伝って一気に入口付近までずり降ろされるので、大好物が目の前から逃げ出してしまうかのような切ない錯覚を覚えてしまう。

「やぁぁ・・・・いつもより、感じちゃ・・・・・・・」

『スバル』

(ひゃっ!? ギン姉?)

不意にギンガから届いた念話に驚き、スバルは素っ頓狂な声を上げてしまう。その戸惑いはゲンヤにも伝わったのか、
さっきまで激しく体を揺さぶっていた突き上げを止めてこちらの様子を伺っている。

『どうしたの、スバル?』

『う、ううん。何でもない』

口パクでギンガから念話が届いたことを伝え、息の上がった体をゲンヤに預けて念話に集中する。

『ウェンディが父さんのこと探しているんだけど、どこにいるのか知らない?』

『え、えっと・・・・それは・・・・・』

どう答えたら良いものかと、スバルは逡巡する。その時、予想外の一撃がスバルの下腹部を襲った。
292南国プールで抱き締めてF:2008/09/30(火) 02:41:36 ID:mNMhzdgz
『ひゃっ・・・・・』

『スバル?』

『な、なんでもない・・・・・・・』

言って、恨めしそうにゲンヤを睨む。事もあろうか、彼は念話中にも関わらず突き上げを再開したのだ。

『え、えっと・・・・父さんだっけ?』

『そう。どこにいるかわかる?』

さっきよりも一段激しく突き上げられ、ゴツゴツした節くれが膣内を洗浄するかのようにかき回していく。
一瞬、スバルは膣を抉る卑猥な音がギンガに聞こえているのではないのかという錯覚を覚えた。

『スバル、やっぱりあなた変よ? 体調でも悪いの?』

『そ、そんなことないよ。うん、すっごく元気』

『そう?』

『そ、そうそう・・・・だ、だいじょ・・・大丈夫だから・・・・・えっと、とうさ・・・さん、だね・・・・み、見て・・・・ない・・・』

『見てないの?』

『うんぅっ・・・・うん・・・・どぉ・・こいったんだろう・・ね?』

ゲンヤの責めは容赦がなかった。膣だけに飽き足らず、両の手の平で乳房を鷲掴みにし、口を動かす必要がないことを良いことに舌を突きれて口内を蹂躙してくる。
見開いた目の前にはゲンヤの皺だらけの顔がアップで映っており、欲情した男の吐息が鼻先に当たっては霧散していく。


『見かけたら、教えてくれる?』

『うぅ・・わぁ・・・わかあぁっ・・たぁっ・・・・』

『スバル?』

『にゃ・・・なんでもないよぉ・・・・・き、気持ち良いだけぇ・・・・プールって、気持ち良いねぇ・・・・・・』

『そうね。こんな風にまたみんなで来れたら良いわね』

『うん! 気持ち良いの、良いよね・・・・・さ、最高・・・あ、あたし・・・癖になるかもぉ・・・・・・・・』

『プールに来るのも久しぶりだもんね。あ、それじゃ、あたし達は売店の方を探してみるから』

『わぁきゃぁっ・・・・たぁ・・・・ま、また・・・・後でぇ・・・』

『うん、後で』

念話が切れた瞬間、一際強いアクメの波がスバルに襲いかかり、ゲンヤが塞いだ唇の隙間からとびきり甘い声が零れ落ちる。
気がつけばゲンヤの左手が引き締まった尻を支えながら水着の隙間に指を入れ、窄まったアナルへと指先を差し込んでいた。
293南国プールで抱き締めてG:2008/09/30(火) 02:42:15 ID:mNMhzdgz
「ふぁ、うううあぁぁぁぁっ! ひ・・・ひくぅ・・・・・ううああ・・・うぅぅ・・・ふぅあぁぁぁっ!」

燃えるような熱い迸りを感じた瞬間、スバルは絶頂へと達して失禁していた。
仄かに温かい温もりがジンワリと広がっていき、スバルは疲れ果ててゲンヤの胸へと抱きつく。

「と、父さん・・・・サドだよぉ・・・・・・」

「悪いか?」

「開き直らないでよ、拒めないの知っている癖に」

「だろうな。一発くらいじゃ満足できないって言っているぜ」

再び硬度を取り戻したゲンヤの肉棒を、スバルの膣は痛いくらい締め上げていた。彼女の厭らしい肉体はまだまだ熱い雄の欲望を注いでもらいたいようである。

「ねぇ、今度は流れるプールでしよっか? 抱き合ってキスしていたらきっとみんな気づかないと思うんだ」

「そうだな・・・・・ああ、やりながらウォータースライダーってのもアリか」

「ああ、それ面白そう」

色っぽい女の笑みを浮かべながら、スバルは厭らしく腰をくねらせる。
休暇はまだまだ、始まったばかりであった。



                                     おわり
294B・A:2008/09/30(火) 02:44:01 ID:mNMhzdgz
以上です。
一番頑張ったのはエロシーンではなく6人の肉体描写であった。
ディエチが一番しんどかった。
後、スバルがどんどん誘い受けになっていっている気がする。
295名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 07:02:16 ID:Esq4xEFc
>>294
いきなり朝から読んでしまった・・・このド変態!!GJ!!
296名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 08:48:09 ID:51XWDJh3
>>294
娘達の説明文がたまらん……。
GJ!!
297名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 11:14:10 ID:6kDY6Gre
>>294

心からのGJを貴方に。


よし。チンク姉をたかいたかいしてくる。
298名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 11:57:11 ID:+cLQNgcX
>>294
GGJ!!スバルブーム継続中ですなぁ
六姉妹のスペック説明が自動的にカーグラのナレーションで再生されたw
299名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 13:32:02 ID:7psS40lD
最高にエロくてGJ!
プールでするとは好きものカップルめwww

まったく氏のエロSSには毎回感服いたします。
300名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 19:10:33 ID:HLbxBUTE
エロスバルGJ!
301名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 20:08:11 ID:khrkeC3z
あえて言おう。
ディエチをください、お父さん
30244-256:2008/09/30(火) 23:25:32 ID:Esq4xEFc
すみません。投下させてください。

・非エロです。
・JS事件より8年前が舞台です。
・主演男優はヴァイス、助演女優は・・・まぁわかると思います。
・全5話くらいになりそうです。
・3話目です。
303エンカウンターズ・ウィズ(3話 1/4):2008/09/30(火) 23:26:36 ID:Esq4xEFc
ミッドチルダで一等陸尉と本局査察官がそのような会話が繰り広げられたのと、ほぼ同時刻

・・・現地時間の早朝、第137準管理指定世界。
こちらは雪のちらつく真夜中の廃棄都市区画のビル街と違い、朝日が昇る一面、灼熱の砂漠の世界である。

寒暖激しいこの世界で、燃えるように朝日が燃えるようにゆらめいていた、砂漠と岩山。その一角にある空き地に巨大な円形の魔方陣
が現れ、空戦魔導師たちが現れた。そして少し遅れて魔導師たちの中央に輸送ヘリが数台現れる。

ローターの轟音と砂ボコリの舞う中で、茶褐色の迷彩をほどこしたバリアジャケットとローブに身を包み、魔導師たちは機敏に周辺
を警戒する。

『全員転送完了、周辺状況グリーン』
『了解。今確認した』

(ガチャッ、ジャキッ)
ヘリの中でヴァイスはデバイスの準備を整えていた。来ているものと同じく砂漠迷彩に塗られたストームレイダーにカートリッジと
を取りつける。

近年になって航空武装隊でも、カートリッジシステムが試験的に運用されていたが、魔力の少ないヴァイスにはまさにうってつけで
あった。

スコープを覗いて、調整ネジをいじる。そしてデバイスが太陽の光を照り返さないように、カモフラージュ用の布を巻いた。

「他の連中と違って、相当な長物デバイスだな、兄ちゃん」
ヘリパイロットの老人の問いかけにヴァイスはスコープを覗きながら答えた。
「そいつはどうも」

「あんた、空から助っ人で来たって聞いてるが、周りの連中みたいに飛ばないのかい?」
「飛行魔法は使えるけど俺の場合は魔力量がほとんどないし、Cランクで使い物にならないんで、ここにやっかいになってるわけです」

「そうかい、普段は荷物ばかりだから、あんたみたいに話し相手ができてワシも嬉しいよ」
そう言ってヘリパイロットは後ろを振り向くとヴァイスの他に5人の陸戦魔導師が乗っていた。

「そう思ってくれるとはこっちも嬉しいぜ、よろしくな。じいさん」


そんな二人の会話に念話を介した仲間の通信が割り込む。
『じいさん、ヴァイス。おしゃべりは艦に戻ってからだ。まったく俺達に囲まれて、気分はVIPってところか?』
『せやで、ちゃんと任務に集中せんと!』

「ああ、確かにそのとおり・・・って!?」
スコープの先に見える、もう一機のヘリに料理人の少女が乗って、こちらに笑って手を振っていた。砂漠迷彩一色の中でひときわ
白い料理人の服が明らかに目立つ。何でヘリに!?

『艦長さんから、遺跡にいる人たちに料理届けるよう言われたんよ。普段は無人区画の奥地にいる学者さん達はおいしいもん食べて
ない言われたもんやから、道中よろしくな〜♪』

少女はニッコリ微笑んで魔導師たちに手を振った。そうやってにやける魔導師たち。

『よろしくな〜♪じゃないだろ!!作戦中に非武装の人間を、しかもコック+犬を連れて行くなんて聞いた事がない!』
『そんなに目くじらたてんなヴァイス。空の魔導師らしく、クールにいこうぜ』

『隊長も何か言ってください!!』
『まあ、なごやかになっていいじゃないか。ブリーフィングでも誰かが言っていたが、楽しいピクニックとしゃれこもうじゃないか』

『・・・』
ヴァイスは何ともいえない顔となり、一団は遺跡へと移動を開始した。
304エンカウンターズ・ウィズ(3話 2/4):2008/09/30(火) 23:27:26 ID:Esq4xEFc
到着したヴァイスたち輸送部隊の一団は、考古隊の出迎えを受けた。

内戦が起きていたばかりということもあるのか、本局管轄の無限書庫が直接発掘の監督にあたっているせいなのか、あたりは護衛の
魔導師で厳重な警戒がなされていた。

「皆さん、ご苦労様です」
出迎えたのは無限書庫の司書であるが、その人物は明らかにまだ11,2歳くらいであった。栗色の長髪を緑のリボンでたばねている。
優しそうな少年であった。

「ここで発掘の指揮をとっている本局無限書庫 上級司書のユーノ・スクライア先生です」
そばにいた考古学者の一人がユーノを紹介する。

『スクライア』・・・次元世界で考古と発掘を生業とする一族、数年前に一族の中でも天才と言われる魔法考古学者が管理局に入った
という噂をヴァイスは思い出した。

「それでは、皆さん・・・」
ユーノは隊員の尾も足る面々を見渡して言ったが、奥の飯場で料理を手渡しているコックの少女を見て驚いた。

「ほな、これはスクライア先生に。どうせ寝食忘れて発掘に没頭してるんやろ?」
「は、はぁ・・・よくご存知で」

ユーノの視線に気づいた少女は微笑みかけた。
「・・・スクライア先生?」
「ああ、失礼しました。それじゃあ、皆さん。ここで発掘された例のものをお渡しします」


作業用のランプにところどころ照らされた遺跡内をヴァイスたちは降りていった。ところどころにベルカの魔方陣を模した文様が
彫られている。ヴァイスはユーノに質問した。

「スクライア先生、もしかしてうちの料理人と知り合いなんですか?いや、なんだかそんな気がして」
「えっ?ええ。まあ、少しだけ」

「年は近いとはいえ、管理局でもトップをひた走る学者先生と航行隊の見習い料理人が知り合いってのも珍しいな」
「あの、彼女はどうですか?」

「大した嬢ちゃんだと思ってます。あまりメジャーじゃないけども、腕も確かでとんでもなくうまい料理出してきますよ。武装隊の
みんなとも完全に打ち解けていますしね。それに先生程じゃないと思いますけど、年の割にはしっかりしてるし」

「そうですか・・・良かった」
そうしてユーノは何かを思い出すようにヴァイスに言った。

「彼女は入局したときから色々な場所を渡り歩いて管理局でのは深く親交のある知り合いがあまりいません。でも彼女は誰にでも気遣い
のできる優しいコなんです。もし良ければ彼女と仲良くしてあげてくれませんか?」

「はい、自分でよければ」
ヴァイスはそう快諾した。

流浪の民出身である目の前の若き考古学者と同じく幼少の頃から、見習いとして様々な場所を転々とし、フライパン片手に料理を作って
生活してきた少女の姿をヴァイスは思い描いた。今も家族のために働いているといったが、まことに健気である。

そうして話をしているうちに、暗い遺跡の奥に青白い光を放つ部屋に出た。

その光は幾重にも封印されたシールドが放つ魔力光であった。封印がほどこされた扉は上の遺跡のような古さは感じさせない。合金製の
扉は錆びやホコリ一つない新品の雰囲気をかもし出していた。

学者の一人が説明する。
「古代ベルカのシール・マジック(封印魔法)、それもSランク級です。封印解除できる人物は次元世界でもなかなかいません。
今回スクライア先生から発掘の指揮をとってもらったのはこの封印魔法のせいなのです」
305エンカウンターズ・ウィズ(3話 3/4):2008/09/30(火) 23:29:29 ID:Esq4xEFc
「皆さん下がっていてください」

そうしてヴァイスたちの眼の前でユーノは古代ベルカ語で詠唱を始めた。少年の声に反応するかのように光は強くなったり弱くなったり
する。隣にいた学者が説明した。

「この封印魔法は、めったに溶けることはありません。でも、突発的なことで封印が解除されて武器が流出するとも限らない。本局へ
運んで処分してしまった方がいいと思いまして、あなた方に来てもらったというわけです」

そうしてユーノの詠唱が終わるとあたりはまばゆいばかりに青白い強烈な光に包まれ、ゆっくりと消えていった。

遺跡の奥から大きなカーゴがヘリに積み込まれていく。
しかし、封印魔法の処置がなされたアタッシュ・ケース。これだけは別格である。ユーノからヴァイスへ直に手渡された。
「それではこれを本局技術部のアテンザ技官までお願いします。我々はここで引き続き調査をすすめますので」

そんなヴァイスを学者の一人が呼び止める。
「それと、彼を連れて行ってもらえませんか?」

学者達は一人の少年をヴァイスたちの前へ連れてきた。頭にターバンをまいた地元の遊牧民である。
「転送地点の近くにある近くの村からずっと手伝いに来てもらってたんです」
少年は緊張しているのか「サイード」と軽く自己紹介するだけだった。

「積み込み完了だ。お二人さん、乗ってくれ!」
ヘリパイロットの声が聞こえた。

『積荷を受け取った。今から帰艦する』
『了解。帰路は無人区画のため、管理局の艦隊も巡視をしてない区域だ。砂嵐に巻き込まれても、簡単には救助にいけないからな。
そこまで手間をかけさせるなよ!!』
「余計なお世話じゃ!!」

パイロットはそう返事をしてヘリは飛び立った。

ヘリの中での帰り、ヴァイスはヘリに積み込まれたレーションのチョコバーを少年にあげた。それによって幾分か打ち解けてきた
少年と話をした。
「お前いくつなんだ?」
「13だけど」

「いくら暗い遺跡の中でターバンやローブ着てても、トシごまかしすぎじゃないのか?無限書庫の連中には黙っていてやるからよ」
「・・・10才」
「まじか!?」
コックの少女といい、スクライア先生といい、この少年といい、最近は低年齢で就業するのが流行なのだろうかと驚いた。

「内戦で父ちゃん亡くなったから。母ちゃんも身体弱いし、弟たちもまだ小さいし」
「そうか・・・」

かつて戦場となった無人の街を輸送部隊は通過しようとしていた。ヘリから時折、おびただしい砲撃跡や家に空いた大きな穴、そして
日干し煉瓦の廃墟が見える。しかし礼拝堂や医療院などの聖王教会施設跡は朽ち果ててはいるが、ほとんど形をとどめていた。

内戦をしていた両陣営もさすがに教会勢力と争うのは避けたかったのだろう。

そして少年はヘリに詰まれた様々な考古物の中でもアタッシュケースに眼をやる。
「なあ兄ちゃんたちの運んでるやつ、古代の武器なんだろ?」
「ああ、そうだぜ」

「俺さ、嬉しいんだ。こうやって管理局の人たちが武器を使えなくしてくれるから。もうこんなもので誰かが亡くなるのはイヤだから」
「安心しろ。もう戦いは起こさせない。この武器もさっさと廃棄処分してやるよ」

ヴァイスがそういうと、少年のホコリまみれの顔が笑顔になった。
306エンカウンターズ・ウィズ(3話 4/4):2008/09/30(火) 23:32:06 ID:Esq4xEFc
『部隊は現在、順調に飛行中』
ワンズ・ベセルのクルーはモニターに集中している。そんな中、艦橋に座る若い女性オペレーターの一人が、艦の制御と警備システム
を解除するプログラムを実行しようとしていた。周囲の人間は彼女の行動にまるで気づいていなかった。

指は振るえ、顔面は蒼白である。最初は躊躇していたが、彼女は何かを決意したように眼を閉じてenterキーに触れようとした。
「(艦長、ヴァイス君、みんな・・・ごめんなさい・・・)」

「"You got mail"」
キーボードを押そうとしたその瞬間、彼女のディスプレイが通信文を受け取ったことを告げた。



輸送部隊は晴れ渡る青空を順調に飛行していた。しかし、空の色が徐々に灰色を帯びてきた。
『天候が急に・・・いや、違う!!これは結界魔法だ!!』
『魔力反応!!退避!!』

その言葉の直後、左右前後上下から多角射撃魔法がヴァイスたちを襲った。
不意打ちをくらい周囲を飛んでいた魔導師たちは結界の中に落ちていった。射撃魔法の第2派がくる。今度はヘリを狙っていた。
「じいさんふせろ!!」

ヴァイスはヘリのフロントガラス越しに、カートリッジを一気に4発リロードして射撃魔法を2発放った。コックピットのフロント
ガラスを割って突き抜けた弾は、自分の乗るヘリめがけとんでくる砲撃魔法を相殺はできなかったものの、何とかはじいて方向を変え
ヘリの前面をかすっていく。

しかし落としきれなかった魔力弾がコックの少女が乗っていたヘリのローターを直撃した。
『ゴーイング・ダウン!リピート!!ゴーイング・ダウン!!』

狂ったように叫ぶ通信を聞きながら、ヴァイスの眼の前で少女を乗せたヘリは、煙を吹いて回転しながら結界魔法に飲み込まれていく。
不安そうに自分を見つめる少女とヴァイスは窓越しに眼が合った。
「嬢ちゃん・・!!」

「(今度の休みが取れたら家族と会えるんよ・・・)」
「(もし良かったら、私の家族と一緒に過ごせへん?妹さんも呼んで。きっと気に入るはずや、ウチの家族を)」
「(彼女は・・・管理局に深く親交のある知り合いがあまりいません。でも彼女は誰にでも気遣いのできる優しいコなんです。
もし良ければ彼女と仲良くしてあげてくれませんか?」

力になるって約束したのに!! 何もできずに結界に飲み込まれていく少女を見ながらヴァイスは後悔した。

その直後、先ほどかすった砲撃魔法のせいでヴァイスの乗るヘリのコックピットが爆発を起こした。アラートが鳴り響き、
煙に包まれてダッチロールする。
「ええい、くそ!!お前さん方、しっかりつかまえてくれ」

爆発の破片で負傷したのだろうヘリパイロットの頭から血が流れ出る。しかしそんな手負いの中、ヘリを何とかたて直して広がり続ける
結界魔法を全速で逃げ出そうとしていた。

『メーデー!!何者かから攻撃を受けている!メーデー!!』
ヴァイスは艦へ通信の念話を送る。
『・・・・・・・・・・・・・・』

しかし沈黙しか帰ってこない。先ほどまで十分に交信を行えたというのに、背後から灰色のカーテンはどんどん伸び続けた。
しかし、ある程度拡大して結界は動きを止めた。

灰色の結界を抜けたところで、突如現れたまぶしい太陽と青空にヴァイスは眼を細める。そしてヘリは廃墟と化した町の広場の前に
不時着した。
30744-256:2008/09/30(火) 23:33:51 ID:Esq4xEFc
以上になります。次回は全くゆるくありません。
戦闘描写をかくのは苦手です・・・
308名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 07:59:51 ID:i4VoZxFZ
GJです
急展開で面白くなってきました
さりげなくサイード少年に死亡フラグが立ってますがww
309名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 10:39:02 ID:k3ZXqdft
カシムって弟分がいるんですね、わかります
310名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 12:43:41 ID:LKweUJch
どうもカシムとかサイードとか聞くとDQ7を連想して困る
311名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 21:05:22 ID:UcacSTxf
突然ですがすみません、SSを探しています
エリオが主人公でキャロが病んでいく?話だったかと思います
後、覚えてるのはエリオと病んでしまったキャロがが海鳴市にいき美里?とか言う人の弟子エリオになっていろいろ学ぶ
みたいな話だった記憶があります
皆さんよろしくお願いします
312名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 21:11:16 ID:icq9vHw1
puremonsterだよ
313名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 21:12:59 ID:mJCyu2UC
スルーすべきなんだろうけど相手してあげる
理想郷に行け
314名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 22:06:34 ID:miG3CBaA
まあ、そこまで分かってんなら保管庫のタグ検索で地道に探せば見つかるよなあ?
質問厨は>>312氏に礼言っとけ。にしても>>312は優しい変態紳士・・・惚れてしまいそうだぜ・・・
315名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 22:22:30 ID:5wzWDgOE
キャラタグ検索でエリオ×キャロなら最初のページに出てきたから、そこから1話に飛ぶと良いよ。
316名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 22:23:24 ID:icq9vHw1
悪ぃ、俺にはディエチとはやてちゃん九歳とクア姉がいるんだ。
317名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 22:31:18 ID:x14fdxx8
>>314
変態紳士って誉めてないよね?
318名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 22:34:41 ID:zEys0/Nu
>>317
俺も前々からその紳士って単語は気に入らなかったんだ
……俺のことは、そう、変態濃尾無双とでも呼んでくれればいい
319名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 23:03:15 ID:5wzWDgOE
>>316
す、すごい家族構成ですね。一貫性が・・・・・・・・あ、アリシアとヴィヴィオがお風呂入ろうって向こうで手を振っている。
320名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 23:04:42 ID:OWWVjOnK
変態じゃないがなんとなく思い浮かんだ、なのはエロパロ的お尻三天王


シナイダ氏…………お尻フェイトの人。今も復活を待ち望む人多し
サイヒ氏…………クロフェの人。アナルファッカークロノの元祖
B・A氏…………けちゅ穴の人。名言「肛門出産だ!」を残す


語呂が悪いので求む、四人目
321名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 23:10:10 ID:evup1/4C
>>320
フェイトそんばっかりだなw
322名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 23:10:20 ID:LKweUJch
3人なら三銃士とか三羽烏で良くね?
無論4人目大歓迎だが
323名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 23:25:18 ID:ltDF4ipL
なにこの妙な流れ
自重しようぜ
32444-256:2008/10/01(水) 23:48:44 ID:2y+1bfsz
すみません投下させてください。

・非エロです。
・JS事件より7年前が舞台です。*8年前じゃありませんでした。
・主演男優はヴァイス、助演女優は・・・まぁわかると思います。
・全5話くらいになりそうです。
・4話目です。
325エンカウンターズ・ウィズ(4話 1/6):2008/10/01(水) 23:50:23 ID:2y+1bfsz
焼けつく広場に投げ出されるように止まったヘリ。中は散乱して荷物が飛び出したカーゴやらこわれた機体の部品に埋め尽くされ
時折、パチッパチッとショート音がなった。

「くっ、みんな無事か?」
「ああ・・・大丈夫じゃ」

ヴァイスの言葉に全員、残骸の中から顔を出す。何とか無事だったようだ。

ヴァイスは街はずれに形成された、灰色の半球状のカーテンを見て言った。
無数の黒い影がこちらに向かってくる。ヴァイスはデバイスのスコープで覗いた。違法魔導師、相当な数が接近してくる。

「あいつら・・・最初から俺達のヘリだけ本気で狙ってこなかった。はなから護衛を結界に閉じ込めて、俺達のヘリを外に出したんだ」
「そうか、おそらくこいつが目当てじゃな・・・」

そして少年が側で震えているのがわかり、ヴァイスは言った。
「どうした?」
「あの灰色の結界。アムラーダ、村を襲った奴らだ。崩壊した軍事政権側について、内戦への参加に反抗的な村々を
ああやって結界に閉じ込めて、助けを呼べなくしてから金品を奪い取るんだ。父さんとか抵抗したみんなも・・・管理局
のPKF(平和維持監視)艦隊が掃討してくれたはずなのに」


在野に下った武装集団が、村人のもつなけなしの金よりも高価なロストロギアのために密輸専門の次元海賊と手を組んだ。
おそらくそういったところだろう。

ヴァイスは決断した。
「じいさん、サイード、こいつを持って逃げろ。連中はまだ俺達に気づいていない。みんなも2人を護衛してやってくれ。
廃墟を越えた先の砂漠に、駐留している管理局PKFの基地に助けを求めるんだ」

「しかし、ここからだと転送魔方陣の方が駐留艦隊より近いんじゃないのか?」
「・・・さっき、艦に念話を送ったが。まったく通信ができなかった。あの結界の影響かもしれないが、艦自体が奴らの仲間に落と
された可能性も捨てきれない」
ヴァイスの言うとおり、転送先で蜂の巣にされる兆候が少しでもある以上は危険な行動はできない。

「それで、お前さんはどうするんだ?」
「俺はここに残る。連中は空戦魔導師、すぐに追いつかれちまう。それなら少しでも連中の足をここに止めさせて、時間稼ぐしかない」

「・・・」
ヴァイスの言葉にヘリパイロットや魔導師たちは納得した。しかし少年は明らかに不服そうだった。

「何で残るんだよ!!あんたも逃げろよ!!たくさんの魔導師がせまってきてるんだろ!!奴らは空戦魔導師だし、何よりあんな
数の中に一人で残るなんて、無茶すぎるよ!!」

一生懸命反対する少年にヴァイスは言った。
「大丈夫だ。無理だと思ったらすぐに引き上げる。それにお前が助けを求めれば援軍も駆けつけてくれる。今はこのロストロギアを
渡さない事が重要なんだ・・・もうこの世界、いや他の世界でも戦いを引き起こさせないためにもな。もう誰かが戦争で亡くなるのは
イヤなんだろ?」

ヴァイスは心配そうにしている少年に対して、笑って重ねて言った。
「大丈夫だよ。俺には家族が・・・妹がいるんだ。あいつを残して簡単にくたばってたまるか。安心しろ、俺とこいつでしっかり
守ってやるよ」

そう言ってヴァイスはストームレイダーを構えた。
326エンカウンターズ・ウィズ(4話 2/6):2008/10/01(水) 23:51:33 ID:2y+1bfsz
砂漠のむこうから飛行してくる魔導師の一人が飛行しながら資料に眼を通していた。
「B、Cランクの魔導師が合計で6名、それに非魔導師のヘリパイロットが搭乗、大した事ないな。周囲の防御を
固めすぎた結果がこれだ」

「あのオペレーターからの情報か?」

「あの女はなかなか役に立ってくれた。こいつが片付けば、女の弟も用済みだ」
「護衛の魔導師たちは結界に封じ込めた、あとはネズミ狩りをやるだけだ」

魔導師たちは大した警戒もせずに廃墟へと飛んでいた。空戦魔導師と陸戦魔導師の戦力差はそのフィールドの使える範囲から
圧倒的であった。また空士階級が一人混じっていたが、ランクから飛行魔法が未熟だと判断したのだろう。
その様子を見ながらヴァイスは物陰に隠れて、愛用のデバイスを構えた。
「頼んだぜ相棒、時間を稼ぐぞ」
『all right. one shot,one kill』

広場で黒煙をあげるヘリに、近づこうと先行していた2人の違法魔導師は気がつき、広場の上空へと飛んでいく。
すると、広場に止めてあったボロいトラックのエンジンがかかる。
「よし!!エンジンがかかったぞい!行くぞ」
「さすがじいさん!機械にかけちゃプロだぜ!」

「奴らトラックで移動しようと・・・」
「逃がすものか!」

そしてトラックへ向けて魔導師たちはデバイスを向けて射撃魔法を撃とうとする。
(ブンッ!!)
その時、何かが通過した。その直後に一人はストレージデバイスのコアを粉砕されもう一人も地上へ落ちていく。
そして射撃魔法音が廃墟の空に響いた。

「何があっ・・・!」
上で待機し、そう叫ぼうとした魔導師も言葉を終わらす事をできずに、前の2人と同じく地上へ落下した。

「狙撃だ!!」
違法魔導師たちは地上に降り、散会して廃墟の裏に隠れる。それに向けて逃げるトラックの荷台からも陸戦魔導師が応戦を開始した。

その様子をスコープで追いながら、ヴァイスは念話を送る。
『よしっ!!町を出るまで2人を頼むぜ!』
『わかった!』
そうして魔導師たちは移動を開始した。

「すぅ・・・!!」

1人になると、ヴァイスは大きく息吸い込んで呼吸を止める。ブレスコントロールを行い、呼吸による身体の余計な動きを止めた。
そしえ硬直した腕でデバイスをしっかりかまえトリガーを引いた。
スコープの先には標的は全くいない。

しかし2秒後に索敵を行おうと動いていた魔導師がスコープに移り、魔法が見事に命中する。

「はっ!! はぁはぁ・・・」
4人目をしとめてヴァイスはゆっくりと吐く。そして再び右眼に意識の半分を集中させた。もう半分の左目で周囲を確認する。
自分の今いる位置から魔力弾が届くまでの時間は2〜3秒。その2〜3秒後に相手がどう行動をとるのか予測していく必要がある。

身体中から汗が流れる。しかし、心は常に冷静であることを心がけた。

cool & glass heart。それが狙撃の魔導師に必要なことだとシグナムから教わった。トラックはもう少しでこの廃墟から抜け出せる
はず。それまでは相手の注意をこちらに引き付けなくてはならない。

「(あと少し。もう少しだけもってくれ!)」
そう思いながらヴァイスはまた息を大きく吸い込んだ。
327エンカウンターズ・ウィズ(4話 3/6):2008/10/01(水) 23:53:25 ID:2y+1bfsz
ヴァイスがなんとかしのいでいる時、とある次元航行艦でこんな念話が繰り広げられていた。

『ブリッジまで突入して、一気に制圧する!?』
『本気ですか?』

あわてる大人の男性達の問いに少女が冷静に答えた。
『通信が途絶えた・・・予断を許さない状況かもしれません』

そうして転送魔法が発動する。

2人のガラの悪い魔導師が廊下を歩いている。航行艦の時計は11:58を指していた。
「駆動系の機能が停止したようだ。さっきから船舶救難信号もピーピー鳴ってるらしい」
「そうか、これで管理局の最新鋭巡洋艦とロストロギアを・・・」
「どうした?」

仲間が話をやめてしまったので、魔導師は振り返った。すると、仲間の魔導師が床に倒れていた。
その背後にはシルエットしか見えないが、金色に光る大きな鎌のデバイスを持った小さな子供、11、2歳くらいの少女がいた。

暗闇の中でデバイスの発する金色の魔力光が薄暗い廊下の中で不気味に光る。

「なっ?」
そんな見た目の恐怖もあってか、魔導師達はデバイスを相手に向かって構えるが、接近してくる少女の方が鎌の柄を相手の
みぞおちに深くつきたて、昏倒させた。

それに気づいた仲間の魔導師たちであったが、あっという間の出来事であったため唖然としてしまう。

『ファイアリング・フリー!(魔法使用を許可します)』

少女は念話でそう言うと、艦尾の転送魔法の部屋へ通じる廊下の壁際で位置につき、待機していた重武装の武装局員がデバイスを
構え射撃魔法を撃ちながら援護と移動を繰り返して突撃してきた。


途端に薄暗かった海賊の航行艦は魔力光で明るくはじける。


違法魔導師たちは壁に隠れ、反撃の態勢を整えようとするが、少女は残像を残す程の速さで廊下を移動し、違法魔導師達の集団の懐に
飛び込んで鎌でなぎ払い、インターセプターとして後方の武装局員たちの道を作る。

奥にいた魔導師達は、やられている仲間ごと少女を吹き飛ばそうとするが、無数にとんでくる魔法弾を飛ぶように側転しながら
プロテクションで防いだ。そして少女は黒いデバイスを相手に向けた。
デバイスのコアが猫の目のように光り、文字が浮かぶ。

『Yes,sir. Photon Lancer.』
328エンカウンターズ・ウィズ(4話 4/6):2008/10/01(水) 23:54:09 ID:2y+1bfsz
魔導師たちはそれに応じてラウンドシールドを前面に張った。

『(ブォン・・・!)』
すると魔導師たちのすぐ背後に雷撃をともなった魔力球が大量に現れた。
魔力反応を感知できないくらい迅速な生成であった。

違法魔導師たちは驚き振り向こうとするが、防御が間に合わずフォトン・ランサーをゼロ距離で喰らって倒れる。
他の武装局員も統率の取れた動きで的確に少女の援護を行っていった。

そうして疾走しながら魔力球を生成して廊下を進んだ。
管理局の武装局員の鬼のような攻勢に違法魔導師たちは後退していった。

とりわけ、ものすごいスピードで切り込んでくる黒い魔導師に驚愕した。魔法が全くあたらない。
艦橋へ続く廊下は「黒い死神」のせいで死屍累々であった(実際は非殺傷設定で気絶させているだけであったが・・・)

『ブリッジへ通じる隔壁を閉じろ!!』

違法魔導師たちはブリッジを制圧されまいと、防御魔法と分厚い鉄で覆われた隔壁を下ろす。魔力と物理面の両方を強化した隔壁は
並の魔法や物理攻撃ではビクともしないはずであった。そこで時間をかせごうとしたが。

「みんな、どけぇ!!鉄拳粉砕!!」

しかし、誰かの掛け声とともに隔壁が思い切り吹き飛ばされた。ドアの前には若い長身の女性、耳や尻尾が生えている事から
使い魔であろうか・・・拳を前に突き出して立っていた。

その使い魔の背後から少女と武装局員が現れ、デバイスを違法魔導師達に構えた。
格が違いすぎる・・・そう悟った違法魔導師たちは全員、デバイスを床において両手を挙げた。

その直後少女に念話が入る

『ブラボー2、機関区画クリア』
『ブラボー3、船倉区画クリア』
『ブラボー1了解、艦は完全に制圧しました、テスタロッサ執務官補、いや・・・もう執務官でしたね』

「(カチッ・・・)」
その直後、艦の時計がちょうど12時を指した。
329エンカウンターズ・ウィズ(4話 5/6):2008/10/01(水) 23:55:44 ID:2y+1bfsz
「くそっ、このままじゃ弾の方角は南側の聖王医療院跡から見えた!」
「いや、他の場所はどうだ?」

「バカ野郎!!ここらに見える高層じゃ医療院跡以外で高い建物はかなりの距離があるだろ!!そんなところから狙えるヤツなんざ
いねえ!医療院を狙え!!」

正午、太陽は真南に昇っている。逆光の中、違法魔導師たちは一斉に医療院の上階や屋上を攻撃し始めた。すさまじい爆発音があたりに響く。
そして医療院の屋上は完全に瓦礫と化し煙があがった。

「やったぜ!!」
そう言って振り向いた違法魔導師たちの目の前で、後方に控えていた魔導師たちが一斉に倒れた。自分達の放った無数の射撃魔法の
光と音、煙にさえぎられヴァイスが反撃した位置を割り出すことができなかったのだ。

狙撃された魔導師は全員死んでいなかった。当たれば半日昏倒する程度の低出力の非殺傷設定の魔法。しかし、その分魔力反応
を感知しにくく、魔力は全く減衰をしない。そして何よりするどく早かった。

『防御魔法を展開しろ!』
仲間にそういわれ、他の数人は防御魔法を展開しながら索敵のため移動を開始した。
「低出力の魔法だ。プロテクションさえかけちまえば」

そして予想したとおり狙撃がとんできた。プロテクションでかき消されると思いきや、魔力弾の外殻がはがれプロテクションと相殺
しあい内殻が防御を抜けてヒットする。

ヴァリアブル・バレッドという相手の防御の上からでも落とす事のできる特殊技巧の魔法である。

「はぁはぁ・・・」
ヴァイスの足元に大量の薬きょうが転がる。魔力量の少ない、また魔力コントロールの習熟度の高くないヴァイスにとってこの魔法
はあまり使いたくないものであった。一発発射するだけで息が上がる。
「(こいつで相手の動きを更に鈍ってくれれば!)」

防御の上からでも落とす事ができる程の実力を持っている。相手にそれをわからせ、少しでも足止めしてくれることをヴァイスは願った。

「(・・・ターン・・・ター・・・)」
魔法の射出音が魔力弾より再び少し遅れて響いてくる。遠距離、それもかなりのアウトレンジから撃っている証拠だ。

「ホントに相手は『Cランク魔導師』なのか!?」
違法魔導師の一人はそうつぶやいた。

砂漠の中の廃墟。内戦や古代の戦による魔力素の乱れ、熱波をともなう風、蜃気楼、逆光。射撃魔法の行使にはかなりのハンディが
あるフィールドである。現にこちらの射撃魔法や砲撃魔法は思った以上に誘導が効きにくく、ゆがみや魔力の減衰が起こっていた。

(ヒュン)
そして指揮官の男の隣で、位置特定を行おうとスキャン魔法を詠唱していた魔導師がヘッドショットで落とされた。
弾は数10cm程度の廃墟に空いた穴をぬってとんできた。

「違う!各自警戒しろ。相手は・・・『エース』だ!!奴め・・・いぶいりだしてやる」
エース:戦場で華麗に敵を討つことのできる魔導師に与えられるもの。その言葉に他の違法魔導師たちは戦慄した。
330エンカウンターズ・ウィズ(4話 6/6):2008/10/01(水) 23:59:33 ID:2y+1bfsz
その頃、ヘリパイロットと少年達は街を脱出しようとトラックは廃墟を囲む城壁へと急いでいた。
背後で多数の射撃魔法の音が断続的に聞こえる。その合間にすんだ狙撃音のこだまが響いていた。
「もう少しだ!!」

トラックはヴァイスがワン・ショットで先に始末した違法魔導師たちが倒れているのを横切っていった。
しかし、出口付近で廃墟から逃がさまいと、違法魔導師たちが待ち構えていた。
仲間の魔導師たちはトラックを急停車させて側面の壁に隠して応戦するが、数もランクも違いすぎる。
違法魔導師たちは魔法を容赦なく撃ちこんでくる。トラックを隠した壁にもヒビが入った。

「これで終わりだ!」
砲撃魔法をチャージしていた魔導師が仲間にむけて発射しようとしていた。
万事休す!パイロットと少年を守っていた魔導師たちはそう思った。

しかし、倒れたのは砲撃魔法をチャージしていた魔導師であった。
そして倒れた魔導師が放とうとしていた特大の砲撃魔法があさって方向に向いたデバイスから発射され、射撃魔法が近くのエネルギー
タンクを直撃する。分厚い鋼板に覆われていたが、高出力の魔法によりタンクの鋼板は打ち抜かれ、そうして大きな爆発が起こり
違法魔導師たちは防御も間に合わずに巻き込まれた。一発の魔力弾により小隊が一瞬にして壊滅させてしまった。

少年は医療院の更に奥にある聖王教会跡の尖塔を見た。蜃気楼でゆらぐ塔の上に長大のデバイスを構えた男の姿がかすんで見えた。

ヴァイスは尖塔の中から途中の建物の窓や空いた穴を通して狙撃を行い、敵を混乱させていた。しかし、塔から廃墟の出口が死角に
なり見えなかった。そのため、尖塔の上にのぼり狙撃を行ったのだ。

『(守ってやるって言ったろ?)』
念話は使えなかったが、少年はそんな声を聞いた気がした。その直後、尖塔は砲撃魔法をくらい吹き飛んだ。
爆風の中でトラックは廃墟を脱出し、砂漠へと消えていくのをヴァイスは見た。

「見つけたぜ。自分の位置をさらすとは、しょせんCランク魔導師か。しかしそんな距離から撃っていたとはな、各自砲撃魔法を
くらわせてやれ!!」

違法魔導師たちはありったけの魔法を尖塔にぶつけた。ヴァイスは逃走のため塔からロープで降下しようとするが、砲撃魔法の一発が
塔の土台を崩し、ヴァイスは尖塔から放り投げだされて地面へ落ちていった。

落ちていく途中に垂れ幕の布やバザール跡の屋根に引っかかり、また自身の少ない魔力による飛行魔法で浮かび地面への直撃は避けら
れたが身体に力が全く入らない。砲撃や落下の途中であちこちが骨折していたのだ。


『戦場では誰が誰をしとめたところまではわからない・・・』
シグナムが訓練中に言った言葉をヴァイスは思い出していた。
『・・しかし【狙撃】だけ最初から名詞がついている事から全く別ものだ。誰が魔法を行使し、誰が撃ったか特定しやすい。だから
補足されてしまった狙撃手は例え負傷し、投降したとしても捕虜にはなれない。卑怯者のように見えないところに潜み、自分達
の仲間や指揮官を討った代償として、悲惨な末路を与えられる他ない。それを十分、承知しておくことだな』

しかし、後悔はしていなかった。今頃トラックは街を抜けて、砂漠へと消え管理局の駐留部隊に出会えるはず。少年達もロストロギア
も無事に保護されていると思ったからだ。

倒れて動けないヴァイスに違法魔導師たちは接近してきた。

「どうします?情報を聞き出しますか?」
「かまうな、やれ。一部隊を殲滅させるだけの腕を撃つ魔導師だ。今のうちに確実に仕留めておくに限る」

指揮官格の男がそう命じ、違法魔導師たちは砲撃魔法をチャージし始めた。今まで散々、仲間を倒された礼もあるのだろう。
完全にヴァイスを消し炭にするつもりであった。

ヴァイスは激痛ではっきりしない意識の中で思った。
「(そうか・・・もうダメなのか・・・ラグナ・・・)」
33144-256:2008/10/02(木) 00:03:44 ID:2y+1bfsz
以上になります。

司書様へ
今まで8年前が舞台と言っていましたが、ヴァイスは25じゃなく24だったことに
気づきました。

1話の冒頭(8年前、ヴァイス17歳)→(7年前、ヴァイス17歳)
訂正させてください。

他にも誤字・脱字等あるかと思います。申し訳ないです・・・
332名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 00:05:37 ID:tuD1/2Ft
そこそこ面白かった。乙
333名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 00:32:54 ID:1SQRd+bn
そいや、ゲンヤの相手がスバルってここで見たのが初めてだ。だいたいはやてがギンガだった。
……ところではやての相手がゲンヤってロッサよりも多く見る気がするが、フラグあったか?作中の印象だと昔世話になったけど階級抜いちゃいましたってのしか感じられない
334名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 00:45:43 ID:w3phJFBf
作中で会話=フラグ
それが二次創作
335名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 00:51:46 ID:DJaiafN2
>>334
そうそう、僕なんて

本編で遠くから姿を見た→IF展開でそいつと戦った

にして無理くり接点ないキャラ同士をくっつけたし。
336名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 00:57:06 ID:D/rOKuUH
あしながおじさんなグレアム提督に面倒見てもらってたせいで
はやてがオジ専になったとかいうのがあって、妙に納得してしまったことがあるw
337名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 01:26:29 ID:LD7cj5q6
所でユーノ×シャッハの続きって来たっけ?
338名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 01:32:04 ID:KA0aOTN1
>>331
GJだぜ!
早速次が楽しみになってきた。 もうこの展開からすると俺の想像しているとおりになるんだよね?
次回が待ち遠しいです。
339名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 01:34:03 ID:Ji5RULbm
>>337
たぶんシャッハじゃなくてアルトじゃね?

それとそういう事は自分で調べてから言おうな?
340名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 01:54:47 ID:UsO9f4iK
>>337
少なくともエロパロスレにユーノ×シャッハはない
341名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 01:58:06 ID:DJaiafN2
仮に書くとするなら、ユーノは受けだろうか?
シャッハは水橋キラーだしw
342名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 02:09:42 ID:SKNgncbg
すげえ面白い!最高!GJ!!
343名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 08:23:04 ID:9jDSm8gz
なのはのデバイス強化案
ttp://koideai.com/up/index.html
パス koujyou
344名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 17:02:16 ID:uw8q4ask
ちょっと質問
このスレの作品で職人が出したオリジナルの管理世界、管理外世界ってどんなのがあったっけ?
345名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 17:26:19 ID:ZcDM1Cj2
知らん
346名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 17:44:22 ID:+laDzB9w
キャロの出身世界を書いた職人が居なかったっけ
347名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 17:49:29 ID:xMX/S8Hz
>>345
知らんたんキタ━━━━━━━━━━━━ !!
348ておあー:2008/10/02(木) 17:55:37 ID:w2AJdB9+
>>346氏が言ってるのはたぶん26-111氏の著作『nowhereU』ですね。
>>343氏、よければチェックしてみてはどうでしょうか。

それはともかくあと5分ほどしたら出血バトル非魔法アクションSSを投げ込むので
痛々しいのが苦手な方は避難をお願いします
349ておあー:2008/10/02(木) 17:56:42 ID:w2AJdB9+
うおう、間違えた。
×>>343 ○>>344
ちなみにリリカルやがみけの続きの話です
350名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 17:59:14 ID:+laDzB9w
リリカルやがみけキタ!これで勝つる!!GOGOGO!
351ておあー:2008/10/02(木) 18:02:05 ID:w2AJdB9+
前回レス下さった方、ありがとうございました。
なんとかかんとか出来ました。リリカルやがみけの第8話その3です。
今回登場キャラ(主にチンクねえ)がかなり他のSSと違う変な戦い方をします。
そういうのがダメな方にはあまりお勧めできません。

今作の注意(さり気なく増減注意)
・非エロ
・時期的には三期が終わった後
・八神家とガリューメイン
・蟲的なものが苦手な方は注意しないといけないはずだったがそんな事もないみたいです
・捏造設定あり
・本編で明らかになっていない部分に対する妄想補完あり(←超重要)
・パロ、中の人など各種ネタをフル装備だけど過去編の間は自重中
・それに伴ってほぼ全員凄まじくキャラ崩壊
・目指すは笑いあり涙あり友情あり萌え?あり燃えありなごった煮話
・つまり総合するとデフォルトで超展開

あと今回は血とかも沢山出るので苦手な方は注意してください。

かなり間が空いてるので最低限のあらすじ
この話は子供フォームに失敗して芋虫になったガリューを八神家が助ける話だったが色々あって現在はギャグ分のない
過去編に突入中。
数年前に目の前で攫われた主人・ルー子に突如喚び出されたガリュー。混乱する彼の前に現れた死んだ筈(と思っていた)の
ゼストが現れ「(ガリューの前主人である)メガーヌを殺したのは自分だ」と彼に告げる。
それは自分の判断が原因でメガーヌ含む部下を全滅させてしまったという意味だったが額面通り受け取ったガリューは
激昂してゼストを襲い両者は戦闘状態に。我を忘れて暴走するガリューは主人であるルー子まで襲おうとし、彼女と一緒に
いたチンクはガリューを止める為に一時的ながらゼストと共同戦線を張る事になった……
そんなこんなでリリカルやがみけ始まります。
352魔法集団リリカルやがみけInsecterSその8-3:2008/10/02(木) 18:03:45 ID:w2AJdB9+
 開戦は唐突だった。


「上だ、ゼスト!」


 先に接近に気付いたのはチンクだった。
 即座に声を上げ、ゼストに敵の襲来を告げる。

「ぬうぅっ!」

 上空から急降下して放たれたガリューの攻撃を、ゼストは寸前でバリアを展開して受け止める。
 山吹色の魔力光に鋭い突きがぶつかり火花を散らすが、明確な意識下で術式を組み上げた今回の障壁はそう簡単には
砕けず、絶世の切れ味を誇る刃をしっかりと受け止める。
 上空に浮いた体勢のまま苛立つようにガリューが蹴りを放つ。
 脚の負傷の事など完全に考慮していないとしか思えない、凄まじい勢いで叩きつけられた一撃。
 障壁が拉げて亀裂が走るが、それでも壁はダメージを吸収しゼストには届かせない。
 さらにガリューがもう一発蹴りを放とうとした瞬間、その周囲を複数のスティンガーが取り囲んだ。

「ゼスト!!」
「構わん!!」

 短い遣り取り。
 最小限の言葉で互いの意思を確認したチンクはスティンガーを射出。刃は大きく爆ぜゼストごとガリューを爆炎の
渦で覆い隠す。
 オーバーデトネイションの射線は、先刻の攻防同様周到に計算された回避不能のもの。
 だが、だからこそチンクは欠片ほども油断する事無く自身の周囲に新たな刃幕を展開する。

「……何時でも来い」

 発した本人しか聞き取れないほどの、ほんの小さな呟き。
 その言葉に呼応するかのように、炎を切り裂いて黒い影が出現する。
 過程が同じならば、生じる結果もまた同様。
 爆発の中を突っ切った以上ダメージがゼロの筈は無いが、その姿に弱った様子は些かも見られない。
 身体に絡みつく残り火を風の力で引き剥がし、ガリューは翅を唸らせながらチンクに向かって突進する。

「はぁっ!」

 迎え撃つチンクは自身の声をトリガーに、空中に浮かぶスティンガーを撃ち出す。
 疾駆させる刃の数は六本。
 其々が異なる角度から射ち出された刃を前に召喚虫の眼が紅く輝く。
 次の瞬間――
353魔法集団リリカルやがみけInsecterSその8-3:2008/10/02(木) 18:05:11 ID:w2AJdB9+
脳内で全てのイメージを完成させた画家が、淀み無い動きでカンバスに絵筆を走らせるように。

 ガリューは全てのスティンガーを回避する。
 空中に描かれたのはまるで空戦魔導師が飛行ショーで見せるような流麗な軌跡。
 そしてその直後、軌跡を彩るように空中に咲き乱れる六つの炎花。
 最初の刃が着弾する寸前から始まり、一瞬で完成する芸術作品。
 戦闘者ではない者が同じものを目にしたならばきっと心奪われただろうと思いながら、チンクはISを発動させ己の
周囲に新たなスティンガーを補充する。
 彼女にとって今の攻防の結果に驚くべき点は無かった。
 最大速度で射出されたスティンガーは標準的な魔導師の高速直射弾に匹敵するスピードを持つが、それでもガリューの
動きと比べればかなり遅い。
 中距離以上から放っても反応されて回避されてしまうだろうと予測するのはそう難しい事ではない。

(そうだ、来い……!)

 故にチンクは予め射出する本数を抑え、迎撃を牽制程度に留めていた。

 今の攻撃はあくまでも囮であり、彼女の『策』の前段階に過ぎない。
 戦闘に赴く前、確かにゼストとは『援護に徹する』と約束した。
 しかし戦場では計算通りに物事が進む事などまずあり得ない。その為彼女はルーテシアを置いてきた洞穴から戦闘が
始まるまで、密かに単独でガリューと戦う事になった時の策も考えていた。
 間髪を入れず次々と時間差でスティンガーを射ちながら、その裏で彼女は計算を巡らせてゆく。

「そこだっ!!」

 両者の距離が当初の半分ほどに縮まったところで、チンクは仕掛けた策を発動させる。
 主の意志に呼応した刃が、闇夜を切り裂いてガリューへ馳突する。 
 その数は三十。初撃の五倍にあたる数だが、ただ数を増やしただけで目標を捉える事が出来ないのは彼女にも
わかっている。

 不意に、襲い来る刃を避けながら飛ぶガリューの動きに小さな変化が生まれる。

 今まではどれだけの刃を前にしても変わらなかったガリューの飛行速度が、少しではあるが落ち始めていた。
 飛行の軌道自体も流れるようなものではなく、かなりジグザグで複雑なそれに変わっている。
354魔法集団リリカルやがみけInsecterSその8-3:2008/10/02(木) 18:06:59 ID:w2AJdB9+
(よし)

 仕掛けておいた"小細工"が順調に機能している事を確認し、チンクは僅かながら手応えを感じる。
 スティンガーに施していた小細工の正体とは――速度。
 彼女はスティンガーの射出に使用するエネルギーの量を微妙に変化させる事で射出速度に幅を持たせ、刃の回避を
より困難なものにしていたのだ。
 速度も射出のタイミングもバラバラの刃弾、その一本一本の動きを全て正確に見極める事はただでさえ非常に困難だ。
 加えてチンクはここまで延々と同じ速度のスティンガーを撃ち続け、ガリューはそれをかわし続けてきた。
 ガリューの反応速度と戦闘センスの高さを考えれば、既にスティンガーの速度は肉体が記憶している筈。
 その記憶が今度は逆に、攻撃を回避する妨げになる。

 結果、ガリューは今まで最小限の動きで回避していたスティンガーをより余裕を持って避けなければならなくなり
その分だけ飛行速度が低下する。
 それでも何とか再加速しようとしたガリューに、チンクがさらに追撃の刃を放った。
 たまらず、ガリューが空中高く舞い上がる。


 僅かに数秒間、響き続けた爆音が止む。


 二つの月をバックにした黒い影が小さくなり――突如、再び大きさを増し始める。
 ロスした前後の距離を高さで埋める、空中で再度加速をつけての急降下攻撃。
 猛禽の狩りを彷彿とさせるガリューの突撃に対し、チンクは左眼を見開き真っ向から対峙する。
 突き出した両手の先から黄色の光が生まれ、彼女の目の前にバリアを生成した。
 勿論、これだけでガリューの攻撃を受け止める事が出来ないのは分かっている。
 チンクの防御力は"ナンバーズ"の中でも最高クラスを誇るが、それはあくまでも固有武装"シェルコート"という助力が
あっての話だ。
 各種の防御機構を搭載したあのコートは今、ルーテシアの元に置いてきてしまっていた。
 現状の彼女の防御力はコート装備時の半分以下といったところであり、彼女自身もそれを熟知している。
 だから、『受け止める』事が出来ないのは分かっている。

 攻撃の先端、刃の切っ先がバリアに触れ凄まじい衝撃がチンクを包む。

「ぬ、ぐうぅ……っ!」
 
 バリア越しからも伝わってくる、圧倒的なエネルギーの奔流。
 明らかに自身の防御力を超えた攻撃。
 その攻撃を、チンクは力の方向をずらしいなす事で『受け流し』た。
 刃はバリアの表面を大きく削りながらもチンク本人には到達せず、ガリューは加速をつけたまま大地に激突する。

「くうっ……」

 激突の衝撃で大地がひび割れ、足元の地形が変形してゆく。
 大きく揺れる地面にチンクのバランスが崩れかけるが、寸前で何とか踏みとどまった。
 ここで倒れてしまう訳にはいかない。
 何故なら――この状況、この瞬間にこそ彼女にとって唯一無二の勝機が存在するからだ。
355魔法集団リリカルやがみけInsecterSその8-3:2008/10/02(木) 18:08:26 ID:w2AJdB9+
(この召喚虫は確かに強い。だが、冷静になって考えれば決して手も足も出ない相手ではない……!)
 
 ここまでの全ては、彼女の作戦通りに進んでいる。

 単純なプログラムしか組めない機械兵器を除けば、これまでチンクの戦闘訓練の相手は彼女一人しか居ない。
 高い格闘能力とレーダーの追尾すら振り切る超高速移動能力を持つ姉、"ナンバーズ"3番・トーレ。
 高速機動能力を持つ相手に対しての戦闘経験『だけ』がずば抜けて豊富なチンクにとって、ガリューはむしろ楽に対策を
立てられる相手だった。
 チンクは未だ微弱な振動の続く大地を蹴り、舞い上がる土煙の中を跳ぶ。

 目的地はただ一点。
 最も深く大地が穿たれた爆心地。

(自分よりも速い相手と対する為には、まずそのスピードを封じる!)

 目標はただ一つ。
 『自然』という最強の盾に進行を阻まれた漆黒の召喚虫。

 高速機動は封じた。
 翅と両足を負傷し、飛行・再加速までに時間が必要な今のガリューならば攻撃を届かせる事が――出来る。

「はあああぁっ!!」


          ◆


 気勢を上げて飛び込んで来る敵に対し、召喚虫が再始動する。
 傷ついた体では回避に十分なスピードは出せない。
 何より『退く』という選択肢自体彼には無かった。自分を近づかせなかった相手が自ら来てくれるなら、寧ろ好都合。
 選んだ迎撃の手段は、腕を振り抜いて放つ一閃。
 己の突撃を彷彿とさせる、風の如き切り払い。


          ◆


 チンクの眼がその動きを捉えたのは当然だった。刃の軌道の先には、自分の顔がある。
 身を捩って回避を試みるが、彼女の頭脳は冷静に刹那の差で刃の到達の方が速いという計算結果を導き出す。
 それでもチンクは動揺はしない。
 そう、彼女は冷静さを失ってはいない。恐怖も躊躇も無く、肉体に指示を送り回避の為の動作を続けさせた。

 そして刃が触れる。
356魔法集団リリカルやがみけInsecterSその8-3:2008/10/02(木) 18:10:38 ID:w2AJdB9+
 刃はいとも容易く切り裂く。
 紙細工のように簡単にそれ『ら』を切り裂く。
 簡単に――チンクの眼前に発生した金属製の刃を数本一気に。
 ほんの僅かだけ勢いを弱めた刃はそのままチンクの額を掠め、持ち主から別たれた銀髪が数本宙に舞う。
 ただそれだけを代償に、彼女は敵の懐に潜り込んだ。
 本来は近接戦を得意とするガリューもこの距離では長い手足が逆に仇となる。
 この距離は即ち――チンクの間合い。

「はあっ!」

 身を屈めた体勢から放たれた足払いが、ガリューの脚を二本まとめて刈り取る。
 100キロを優に超えるガリューの体が浮き上がった。
 外見は小柄なチンクだが、彼女の肉体はスカリエッティの技術によってかなりの強化施術が施されている。
 その増強レベルはAA。人間の範疇に入る程度の重量であれば、このような芸当も訳はない。
 両手に発生させたスティンガーを掴み、バランスを崩したガリューにチンクが猛然と襲いかかる。

「……何っ!?」

 しかしその攻撃を、ガリューは空中に寝そべったような体勢で簡単に受け止めた。 
 予想外の行動に、繰り出される反撃への対処が遅れる。
 真下から顎に強烈な一撃をくらい、チンクの体と脳が撥ね上がった。

(馬鹿な、一体何をしたっ!?)

 チンクの体が地面に叩きつけられ、背中に鈍い痛みが走る。
 揺らぐ意識の中、左眼がガリューの姿を捉えた。

(尾か……!)

 人間には持ち得ない第三の脚であり、また或いは腕。
 支点にして体を支え、さらに身体を浮かせて反回転、鞭のように振り上げ顎に叩き込んだ。
 こればかりは幾らトーレとの模擬戦を繰り返したチンクでも予想できない、正に野生としか形容できない攻撃法だ。
 ただ、謎の正体がわかっても体が受けたダメージが消える訳ではない。かろうじて意識を繋ぎ止める事は出来たが、
自分に迫るガリューの攻撃を防げるほどに回復するには、まだ時間が必要だ。

 チンクは周囲の空間にスティンガーを喚ぶ。
 位置も射線も考えずただ滅茶苦茶に発生させただけの刃だが、用途は射出する為ではない。
 この刃に期待するのは空中に設置したまま固定しガリューが近づけば爆発させる、所謂機雷に似た役割。
 勿論シェルコートの無い状態で近距離から爆発を受ければ、自分も無事では済まない。
 その為実際は牽制としての意味しか持たないが、少しでもガリューが躊躇してくれればその間に肉体を回復させる事が
出来る。
 せめて十数秒、時間が稼げれば。
 だがそんなチンクの願いも空しく、ガリューはスティンガーを全く意に介さずゆっくりとチンクとの距離を詰めていく。

(……効果無し、やはり脅しの通用する相手ではないか)
357魔法集団リリカルやがみけInsecterSその8-3:2008/10/02(木) 18:13:17 ID:w2AJdB9+
 チンクは臍を噛む。
 元々刃の幕を突っ込んで抜けるような奴だ、期待薄なのは分かっていた。それでも実行したのは他に時間を稼ぐ方法が
見つからなかったからだ。
 ガリューがチンクの側に立ち、倒れた彼女を見下ろす。
 こうなれば一か八か全てのスティンガーを爆発させ、コイツもろとも自爆を試みるか?
 一瞬そんな考えも浮かぶが、すぐに次に浮かんだ騎士の顔に打ち消される。

(全く、お前が生かしたまま止めるなどと言うからだぞ、ゼスト……というかお前は何をやっているんだ? まさか先の
爆発で死んだなどと言うなよ)

 悪態をつく間も、チンクの脳裏には走馬灯のように家族の顔が浮かぶ。
 最近稼働したばかりの妹から姉、そして創造主まで。
 ガリューが彼女の息の根を止めるべく、死神の鎌と化した腕を振り下ろす。
 チンクが目を閉じた。


          ◆


 なぜ発生させた刃を爆発させなかったのかは分からないが、それはどうでもいい。
 まずはここでこの敵を殺す。
 ガリューはそれだけを考え禍々しい形の腕を振り上げた。
 コイツを殺して、次はあの男だ。
 勢い良く腕を振り下ろす。
 その時、敵が目を閉じ何かを投げつけた。
 ガリューの眼が即座に『それ』の正体を捉える。


 同時に、『それ』から放たれた強烈な光が二対の両眼を貫いた。


          ◆
 

「む……ぅ……」

 頭を押さえながらチンクが立ち上がる。
 ダメージが全て抜け切った訳ではないが、悠長に回復を待っている時間は無い。
 取り落としたスティンガーを拾い、チンクは膝をつくガリューに突進する。

 あの時脳裏を駆け巡った走馬灯。
 そこにスカリエッティの顔が映し出された瞬間、蘇ったのは彼が昔チンクに語ったある『言葉』だった。

 ――チンク、この地に私が拠点を構えたのは『聖王のゆりかご』が埋まっているからというだけではないよ。
 実はこの一帯は次元世界全体でも有数、いや唯一無二と言えるほどの鉱山地帯なんだ。地質学者にはあまり知られては
居ないがね。地表にほど近い場所にも大きな鉱床が幾つも手つかずで眠っているし、なんとたった数メートル掘り進めた
だけで簡単に各種の鉱物資源を採掘する事が可能だ。
 こんな土地は、おそらく他の何処を探しても見つからないだろうね。 
358魔法集団リリカルやがみけInsecterSその8-3:2008/10/02(木) 18:14:27 ID:w2AJdB9+
 如何な天才科学者といえど、全くの無から有を創造する事は出来ない。
 己の手足となる各種兵器の開発や実験には多くの資材が必要になる。外部から大量に輸送するには手間もコストも
かかる上、そこから足がつく可能性もある。
 結果、彼は採掘から製錬、生産までを全て独力で行えるようこの地に拠点を構えた。
 その事を彼女は思い出したのだ。
 今自分が居る場所は、ガリューの突撃によって大きく地面が削られている。
 淡い期待を込めて近くの小石を掴み、デトネイターのエネルギーを流し込む。
 ほんの僅かだが、エネルギーが吸収された感触があった。
 引き続きエネルギーを注入しながら、機人の握力で小石を握り潰し細かく砕く。
 理由の一つは少量のエネルギーでも爆発させられるようにする為。そしてもう一つは――

 ガリューの攻撃に合わせてチンクは目を閉じ、同時に破片をばら撒きデトネイターを発動。
 破片の一つ一つが花火のように輝き、ガリューの眼前の空間を昼間のように照らし出す。
 直接ダメージではなく、強烈な光で眼潰しの効果を狙った即席の炸裂閃光弾。
 月明かりがあるとはいえ、夜の闇の中でも正確にスティンガーの弾道を見切った眼を持つこの相手にはかなり有効な
攻撃手段だった筈だ。

(ここで……決める!)

 敵の接近を察知したガリューが構えを取る。
 回復の度合いは未知数だが、もう油断はしない。
 見えている、或いは他の感覚器官でこちらの動きを把握していると考えた上で挑む。
 スティンガーと刃がぶつかり、耳障りな金属音が響いた。

(やはり見えているか、だがっ!)

 もう一度懐に潜り込みたかったが、今度はガリューもそれを簡単には許さない。
 自分の間合いに持ち込もうとするチンクとそれを防ごうとするガリュー。
 そのまま数合打ち合ったが、唐突に均衡が崩れる。
 並の刀剣を超える切れ味と硬度を持つガリューの刃によって、片方のスティンガーに罅が入ったのだ。

「ちいっ!」

 チンクは使えなくなったスティンガーを捨て、襲い来る刃をもう片方のスティンガーを持つ手で受け止めた。
 そのスティンガーも既に限界だったのか、刃を受け止めた直後根元から砕け散ってしまう。
 攻勢の機と見たガリューが残った腕でチンクを狙う。
 最初の攻撃は何とか避けたものの、チンクの体が大きく揺らいだ。
 そこに刃を叩き込もうとして――ガリューの攻撃が受け止められる。

「質には……量で対抗させてもらうぞ!!」

 両の手に発生させた『新たな』スティンガーを掴んだチンクがその隙に乗じて反撃に転じ、再び戦局が拮抗する。
 攻めるチンク。防ぐガリュー。
 時に攻守を入れ替えながら、短くも永い一進一退の剣戟が繰り返される。
 再度の均衡を破って仕掛けたのはガリューだった。
359魔法集団リリカルやがみけInsecterSその8-3:2008/10/02(木) 18:15:59 ID:w2AJdB9+
「ぬあっ!?」

 ガリューが後頭部から触手を伸ばしチンクの両腕を絡め捕る。
 突然の事にチンクは声を上げるがそれでも冷静さは欠かなかった。
 素早く空中にスティンガーを出現させ、射出して触手を切断。
 互いにバランスを崩しチンクは転倒、ガリューも身を仰け反らせる。
 先に体勢を整えたガリューが倒れたままのチンクに追い打ちをかけようとした瞬間、チンクの小柄な体が宙を舞った。 
 全身の強化筋肉を総動員しての、地に伏した状態から放つ右の回転蹴り。
 アクション映画の登場人物さながらのトリッキーな動きに、虚を突かれたガリューは攻撃を中断しガードの体勢を取る。
 だがその結果、チンクは今度は無数の刃が生えたガリューの腕に自ら足を突っ込む事になってしまう。
 大多数の人間ならば、一秒後に起こる光景を想像して顔を顰めるか身体を震わすだろう。

 しかし、チンクの頭の中にそのような思考など無かった。

(足一本などくれてやる。その代わり――)

 両者が接触する寸前、ガリューの腕のすぐ側にスティンガーが出現する。 
 チンクの脚はそのまま勢い良くガリューの腕に突っ込む。
 飛び出た無数の刃に脚を切り裂かれ鮮血が舞った。
 それでも蹴りの勢いは全く衰える事無く、彼女の脚、踵の部分がスティンガーに触れ。

 金槌で木に釘を打ち込むように、踵はガリューの腕にスティンガーを叩き込んだ。
 
「っぐ、ああぁぁっ!!」

 痛みを知覚したチンクが押し殺すような悲鳴を上げ、一瞬遅れてガリューが凄まじい速さで腕を振り回す。
 蹴りに体重を乗せていたチンクはそのまま数メートル宙を舞い地面に着地する。
 着地の瞬間衝撃で激しい痛みが脚を襲ったが、彼女はそれを意志の力で強引に意識下に抑え込む。
 腕に深々と刺さったスティンガーを引き抜こうとするガリューに向けて、チンクは攻撃の続行を宣言した。


「足一本などくれてやる。その代わり――お前の意識を貰うぞ」


 スティンガーが、轟音と共に爆発する。
 非殺傷設定など勿論無い、正真正銘ゼロ距離からの一撃。
 膨れ上がった炎と煙でガリューの姿が消え、そこでチンクは漸く倒れるように座り込んだ。
 
(あの距離でのデトネイターの直撃……流石に効いた筈だ……奴の事だ、死にはしていないだろうが……確実に
ダメージは受けている……) 

 炎の先に意識を残しつつ、右脚のダメージを確認する。
 見た目からは想像もつかない防御力を持つ青いボディスーツはおろか、皮膚までぱっくりと裂かれ脚全体が真っ赤に
染まっていた。切り口をよく観察すれば基礎フレームや神経ケーブルの姿も確認できる。
 一歩間違えば完全に切断されていただろう。今更ながら自分の行動に寒気が走る。
 
360魔法集団リリカルやがみけInsecterSその8-3:2008/10/02(木) 18:17:08 ID:w2AJdB9+
(……しかしこの脚ではゼストも奴も運べんな。私も止血をせねば危険だ)

 傷のチェックを終えると、チンクはスカリエッティかウーノに通信を入れようとして――


「な……ん、だとっ!?」

 
 ――違和感に気づいた。


 すぐに視線をその正体に移す。

「馬鹿な……」

 違和感の正体――意識を残していた『その場所』にガリューの姿は無かった。
 倒れている訳ではない。
 いないのだ。
 倒れているにしても立っているにしても、そこにあるべき場所にあの漆黒の巨体が存在していない。
 これまでのガリューの防御力と爆発させたスティンガーの破壊力から考えて『跡形も無く吹き飛ばした』という
事は考えられない。『四肢欠損レベルの重傷は負うかもしれないが措置すれば死ぬ事はない』筈だ。
 だとすれば、考えられるのは――

(まだ奴の意識は断ち切られてはいない……! 何処から来る!? 右か? 左か!?)

 敵の姿を探し目まぐるしく動く視界が色を変える。
 今までよりもほんの少し暗く。
 原因は月明かりを隠す、影。

(上かっ!)

 見上げた先には、手を伸ばせば触れられるほどの距離まで接近している黒い召喚虫。 
 先ほどよりも加速のついた突撃はあまりにも速く、その姿を目にした瞬間、チンクは今度こそ迎撃も回避も間に合わない
事を悟った。
 見開いた眼を閉じる時間すら、無い。
 何故ガリューがそこにいるのか。
 デトネイターのダメージはないのか。
 混乱の極致の中、チンクは今日何度目かの死を予感した。


「ぬううおおおおおおおおおおぉっ!!」


 だが、その予感は死神よりも速い影によって外れる事になる。 
361魔法集団リリカルやがみけInsecterSその8-3:2008/10/02(木) 18:18:47 ID:w2AJdB9+
「ゼスト!?」
「おおおおおぉっ!!」

 文字通りチンクの眼前まで迫っていたガリューが、直前で超高速で飛んできた槍騎士の一撃を真横から打ち込まれて
吹き飛ぶ。
 ガリューはそのまま森の奥まで吹き飛ばされ、一人残ったゼストはまるで他の球にぶつかって全ての運動エネルギーを
失ったビリヤードの手球のように、槍を打ち込んだままの体勢で空中に留まりチンクの方を見やった。

「ゼスト……」

 顔を見れば言ってやりたい事は多くあったはずだったが、チンクは何を言えばいいのかわからず言葉に詰まる。

「……無事だったのか」

 少し考えた末、やっと一言だけを絞り出す。
 その言葉に対するゼストの返答は――

「『援護に徹しろ』と言ったはずだ」
「な……ふ、ふざけるな! そう思うならば援護に徹させろっ!! 私だって好きでアイツと一人戦り合っていた
訳じゃない!!」

 あまりといえばあまりな物言いに、チンクの口調が思わず荒くなる。
 頭の奥では目の前の男が好きで自分とガリューを一人戦わせていた訳ではない事は想像できる。
 世話係として長く彼を見てきたからこそ、彼が周囲の人間を危険に巻き込ませるのを良しとしない人間である事や、
その癖自分は誰よりも速く危険な場所に飛び込んで行く性格である事はよく分かっていた。
 このタイミングまで戦闘に介入しなかったのは『しなかった』のではなく『できなかった』のだろう。
 しかし、幾らなんでもこのタイミングでそれを言うか。

「チンク、その脚は」
「あ、ああこれか……心配するな。出血さえ収まればなんとかなる」
「ならばまずその出血を止めろ」

 ゼストはコートの裾を破り取るとチンクに手渡す。
 野宿など日常茶飯事の彼が何時も着ているコートである。
 これで止血して傷口に菌が入ったりしないだろうか、と一瞬チンクは考えるが今は感染症よりも失血死を心配するべきだと
思い直し傷口を縛ってゆく。

「お前は大丈夫なのか?」
「問題無い……と言いたいところだが万全ではない」
「だろうな」
「だが、そうも言っていられない。お前が負傷している以上、戦えるのは俺しかいない」
「……」
「前にも言ったように、これは元々俺の問題だ。お前はラボに戻って一刻も早く治療を受けろ」
「……アイツが、それをさせてくれると思うか?」


 ゼストが言葉に窮する。
362魔法集団リリカルやがみけInsecterSその8-3:2008/10/02(木) 18:19:33 ID:w2AJdB9+
 ゼストとチンクの視線は、同じ一点に向けられていた。


 何度倒されても、どんな攻撃を受けても輝きが絶える事の無い二対の双眸。
 勿論ダメージが無い訳ではない。
 幻想的に輝く紫紺の翅は無惨に破れ一枚として無事な物は無く。
 両の脚は自身の刃を突き刺し強引に固定しなければ肉体を支える事すら出来ず。
 甲冑を思わせる全身の外骨格は何度も炎の海を掻い潜った事で赤黒く焼け焦げていて。
 そして今、半ばから断ち切られた左腕からは絶える事無く血を滴らせている。

 どうすればあの召喚虫は倒れるのか。
 或いは本当に、その命を断ち切る事でしかアレを止める手段は無いのではないか。
 そんな風にすら思えてくる。

「あの腕は……」
「私がやった。ルーテシアお嬢様とお前には悪いが、私のISでは五体満足で止める方法が思いつかなかった。
脚と引き換えに意識を断つつもりだったが、結果は『等価交換』というやつだ」

 自嘲気味に呟くチンクにゼストが疑問の台詞を口にする。

「本当にお前がやったのか? あの切断面、お前の能力というよりは奴の刃で切断したように見えるが」

 言われチンクは傷口を注視する。
 見れば、確かにデトネイターの爆発ではあのような形にはならない。

「成程……」

 チンクの中で先程浮かんだ疑問が氷解する。
 おそらくガリューは左腕に刺さったスティンガーが爆発する寸前、自らの右腕で刺さった個所ごと左腕の一部を切断した。
 そして爆発で起こった風の力を借りて空に舞い上がり、自分の頭上から攻撃を仕掛けたのだ。
 途轍もない覚悟と判断力が無ければ実行できないアイデアだが、既に両脚を犠牲にしている以上、腕の一本くらい
失う事は躊躇しない。
 それどころか残る爪一本、牙一つで自分達の命を奪う事が出来るというならば、あの召喚虫は己の命すらも簡単に
差し出すだろう。

「いや、あれは間違いなく私がつけた傷だ。お嬢様には後で私から話す。お前に迷惑はかけない」
「そうか」
363魔法集団リリカルやがみけInsecterSその8-3:2008/10/02(木) 18:20:21 ID:w2AJdB9+
 過程はどうあれ、あの結果は間違いなく自分が原因で生じたものだ。
 チンクは事実だけを淡々と告げ、ゼストもまた短く頷く。

「仕方あるまい。生きていてさえいれば、償いの方法もある……む?」

 ガリューの妙な行動に気づきゼストが声を上げる。

 未だ血が流れ続けるガリューの左腕の先端が、小刻みに振動していた。
 次の瞬間、切断面から他の物より一際巨大な爪が飛び出す。 
 真っ直ぐに伸びるそれはまるで槍の穂先の様で、腕を柄と見ればガリューの左腕は短いながら確かに一本の突撃槍を
彷彿とさせる形状に変化していた。
 あまりに衝撃的な肉体の変貌にゼストが絶句する。
 長く彼と戦場を共にし、彼の『武装』が皮下組織や骨格を変形させたものであると知っていたゼストも、流石に
これほどの変化は見た事が無かった。

「……『等価交換』は撤回しよう」

 チンクが、ぽつりと呟いた。

 左腕を軽く振って『素振り』を終えたガリューが、二人に向けて進行を開始する。
 その姿に『風』と表現するしかなかったかつての面影は無く、明らかに速度、そして戦闘力は低下している。
 しかしそれはゼストとチンクにしても同じ事。
 応戦すべく飛び出したゼストにも往時の力強さは無く、彼の後を追おうとするチンクは脚の痛みに動きを止める。

 戦場に立つ三人の誰一人として五体満足な者はいない。
 決着の時は、着実に近づいていた。
364ておあー:2008/10/02(木) 18:21:45 ID:w2AJdB9+
以上です。お付き合いくださった方、ありがとうございました。
色々と無茶苦茶してますがベクトルを無視して無茶の度合いのみを自分の過去SSと照らし合わせた結果、
『アグレッシブなチンクねえ+狂化で2ランクはアップしてそうなバーサーカーガリュー<レジアス触手凌辱』
と判断して投下。比較対象がブッ飛んでいる事は認めます。
365名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 19:47:22 ID:+laDzB9w
GJでした!
しかし、展開がハードになればなるほど、
遠くない未来でキシャーキシャー言いながら八神家に弄り倒されるガリューが不憫でなりません。

ガチバトルなガリューに惚れつつ、八神家との絡みにも期待しつつ、GJでしたっ!
366名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 21:17:00 ID:/V0ZGAFZ
GJです!
本編とは比べ物にならない強さだな、ガリュー。

なぜかガリューを見てたらフリードとジョグレス進化してさらに究極進化やモードチェンジする様が思い浮かんだ
367名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 21:26:56 ID:d06+hUVj
ギガデスギガうま
368名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 22:51:22 ID:cZS8pN6I
>>311で質問したものです
見つかりました!!!
ホント皆さんありがとうございます
369名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 23:40:37 ID:PUp9p2q3
なぜガリューが活躍するとほぼ必ずジョグレスネタが現れるのか……デジモン好きだからもっとやって欲しいがそしたらクロススレ行きなのかorz
370名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 23:41:35 ID:LJgfT2Ok
クロススレか……あのヘイト臭さえなけりゃあな……
371名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 23:51:27 ID:DJaiafN2
ルー「インゼクトと白天王を融合させて、白天王の群れを召喚すれば・・・・・・・・」
キャロ「おっきなインゼクトが一匹だけ出てくるかもしれないよ」
372名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 00:23:35 ID:OTIvAXI5
そんなに、ヘイト臭あったけ?
373名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 00:30:59 ID:SdmBE/Dq
水掛け論のヨッカーン
まあ他スレの話題はどうでもいい

全裸で投下を待ってるが、最近は寒いな
374名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 01:00:23 ID:tIKPFVlL
欝モノマダー?
375名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 01:01:27 ID:UsKuqqzO
>>373
ネタ切れなんだ。
砂を吐くような甘いネタはないかい?
オチはできているんだけど、本編がまるで思いつかなくて。
376名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 01:16:35 ID:OucNbG2d
>>375
本編でいちゃつきまくりだったフリード(人間化)×エリオなんてどうです?
あんなに頬をすり付けたりして求愛行動をとってたフリードがロリヨウジョに変われるようになったと考えると…
377名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 01:32:04 ID:UsKuqqzO
>>375
あ、カプはもう決まっているんです。
ゲンヤが帰宅したら帰省していたスバルがリビングのソファで寝ていて・・・・・・・・。
この先が思い浮かばなくて。
378名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 01:32:58 ID:UsKuqqzO
間違えた、>>376だ。
379名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 01:56:52 ID:2/8nvr67
>>376
そういえば一期OPでフェレット形態のユーノは、なのはに身体摺りつけまくって顔まで舐めてるな…
380名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 02:06:41 ID:lirW1cuY
? どれも魔法少女のマスコットとして珍しくない行動じゃん。
381名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 03:50:42 ID:Fsa2G8+d
>>377
家に帰ってきたゲンヤがギンガが仕事で帰えらないので今日は一人だなと考えながらリビングのドアを開けるとソファーで眠るスバルを見つけ驚く
風邪にならないよう毛布を掛けると「うぅ……う…ん…」と色っぽい寝言と共に毛布を豪快に飛ばすスバルに呆れながらも色っぽい寝言に年甲斐もなくスバルを意識してしまう
掛け布団を掛け直す時に汗の匂いの混ざった女の香りのする今なき妻に似た女にゲンヤの男が反応するが「お父…さ…ん……ギン姉ぇ」と言う寝言に正気を取り戻す
少し見てようと考えてしばらくスバルに見入ってるとスバルが瞼を擦りながら起きる
ゲンヤは悪戯を思いつき狸寝入り始めるスバルが驚いてゲンヤを見たところで寝言のふりをして「スバル綺麗になったな」と言うが「お父さん起きてるでしょ」と見破られてしまう
諦めて起き上がったゲンヤにスバルが「ねぇお父さん私お母さんより綺麗になった?」と胸を押し当ててイタズラぽい笑顔で聞いくるのをゲンヤは「お前が悪いんだ」とつぶやいて押し倒す
と言うのはどうだろう?、近親相姦はエロシーンが大変だな
382名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 04:25:38 ID:uT1zmkwB
>>380
正体が人間だから色々言われるんだろ。
まあ、あの形状じゃ落ち込んでるのを慰めるとかするのに、前足で頭撫でたりしても行動が締まらないつかシュールだがw
383名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 06:25:13 ID:N4RPqmVJ
>>380
ガリューがルーテシアに身体摺りつけたり、舌っぽい何かで顔を舐めたりしたら
いろいろとダメだろ…
384名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 08:06:19 ID:i3Q1lhbo
>>344
自分が出したのは第7管理世界、第23管理外世界、第49管理外世界
そのうち第67管理外世界とかも出す予定
385名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 08:40:40 ID:JImc4RPy
>>383
めくるめく触手ワールドの完成w
386名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 09:26:52 ID:RKoFHDQO
>>364

GJ!

ギャグから戦闘までこなすガリューのチートぷりは凄すぎます。



で。触手がチンク姉に絡んだ瞬間、えろいシーンを想像した俺は末期かも知れない…。

あのピッタリしたスーツに触手のヌルヌルはガチだと思う。
387( ゚Д゚):2008/10/03(金) 11:38:12 ID:zySHzUZF
(゚д゚ 三;゚Д゚) 久々に投下してもよろしいでしょうか?
388名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 11:38:48 ID:nHPti88o
どうぞどうぞ
389( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc :2008/10/03(金) 11:46:57 ID:zySHzUZF
それでは……

注意事項
・もう捏造がモンの凄い事になっています。
・オリキャラ要注意。
・オリキャラTUEEEE要注意。
・準オリキャラ要注意。
・レジアス中将はモブか悪役だと思っている方は読まない方が懸命です。
・管理局(本局)ヘイト分がやや含まれます。
・あぼーんキーワードは「熱き彗星の魔導師たち」
390熱き彗星の魔導師たち 22-01/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/10/03(金) 11:47:57 ID:zySHzUZF
「なんや、落ち着きがたらんなぁ」
 レンに声をかけられて、ユーノはドキリとして、我に返った。
「そ、そんなに緊張した顔してた?」
 地下駐車場の天井を見上げていたユーノだったが、視線を隣に立つレンに移し、笑みを
引きつらせて、そう聞き返す。
「相当やで」
 レンは、悪戯っぽくそう言ってから、
「なんやもう、2人ともらしくないで。やたらピリピリしとるし、いつもの余裕があらへ
ん」
 と、わざとらしくため息をついた。
「2人ともって……」
 ユーノがキョトン、としたように聞き返すと、レンはあっさりとした口調で答える。
「アリサちゃんもや」
「ああ……」
 ユーノは、気の抜けたような声で返事をした。
「なんやな、あたしらと最初に出会った……あの時かて、かなりヤバかったはずやのに、
アリサちゃんいっつも自信満々て感じやったのに、この事件に関してはなんや2人して切
羽詰ったようにイライラしとるんやもんなぁ……」
 ぼやくように、レンは言う。
「そりゃ……しょうがないよ、あの時はボク達は子供だったのもあるし……それに、今回
はアリサに、負い目があるから……」
 ユーノは苦笑交じりに答える。
「せやなぁ……」
 レンは、もう一度、ため息混じりにそう言った。
「ユーノさん、レンさん」
 ユーノがレンに何か言おうと、口を開きかけたとき、2人に向かって別の声がかけられ
た。
 2人はそろって、その声の主のほうを見る。
「なんや、ギンガやんか」
 先程までのどこか憂いたような表情を消し、レンは、近寄ってくるギンガと向かい合っ
た。
「ギンガ、ホテルの時以来だったっけ」
 ユーノも、やさしげな笑みを浮かべて、そう声をかけた。
「そうなりますね」
 ギンガもくすっと微笑み返し、そう答える。
「えっと」
 ギンガはきょろきょろと軽く周囲を見回した。
 ティアナたち起動6課の人間も含め、他にも警備の人間はいるはずだが、視界の中には
とりあえず入っていない。
「なんや?」
「どうしたの?」
 ギンガの様子に、ユーノとレンは揃って、怪訝そうに声をかける。
「いえ、その……スバルのこと、少しお聞きしたかったんですけど」
「スバルの事?」
 困惑気に言うギンガに、2人はまだ合点がいかないようで、ユーノが鸚鵡返しに訊ね返
した。
391熱き彗星の魔導師たち 22-02/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/10/03(金) 11:48:31 ID:zySHzUZF
「この前うちに帰ってきた時。なんだかティアナさんとうまくいっていない様子だったの
で、気になったものですから……」
 ギンガがそう言うと、ユーノとレンは顔を見合わせ、苦い顔をした。
「ギンガ、それは……」
 一瞬だけ逡巡してから、ユーノがギンガに言いかけた時。
 ドォオォォォォォン!!
 1回目の爆発が、地上本部の巨大ビルを揺すった。

熱い彗星の魔導師たち〜Lyrical Violence + StrikerS〜
 PHASE-22:A promise that it was not achieved

「なんや今のは、爆発か!?」
 3人は反射的に身構える。レンが険しい表情で声を上げた。
『イグニスコメット02より各局、みんな、大丈夫?』
 ユーノが、機動6課の小隊員に念話を飛ばす
『イグニスコメット03。あたし自身は無事っス』
『イグニスコメット04。ウェンディ一士と一緒です。周囲に瓦礫が振ってきています』
 地上にいるウェンディとティアナから、緊迫感のある念話が返ってきた。
『レッドフレイムは?』
 ユーノは、改めて訊ねるように念話を投げる。
『レッドフレイム04……スバルともども不法侵入者と対応中』
『不法侵入者?』
『ガジェットと、XI型戦闘機人!』
 マギーの答えに、ユーノの表情が険しくなった。
「レン、襲撃者だ。ガジェットと戦闘機人が来てる」
「いつもいつもこう……気持ちええほど真正面からぶつかってきよるな!」
 ユーノが言うと、レンは不敵な笑みを浮かべてそう言った。
「頼む、イージス!」
『OK, Master』
「ジルベルンメタリッシュ! 行くでぇ」
『Ja Wohl!』
 2人は駆け出すと同時に、各々のデバイスを起動し、瞬時にバリアジャケットを展開す
る。
「あ! 待ってください!」
 一瞬遅れて、ギンガもそれを追って駆け出した。
「ブリッツキャリバー、お願い!」
『Yes, Master. Set up Ready』
 ブリッツキャリパーがギンガの声に答える。クイントの物とイメージの似た、レオター
ド地のバリアジャケットが展開する。
 ブリッツキャリバーのブレードローラーが駆動し、ギンガは先行するユーノとレンの前
に出た。
392熱き彗星の魔導師たち 22-03/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/10/03(金) 11:49:36 ID:zySHzUZF

『Protection, Dual exercise』
 量産型ストレージデバイスのシステムボイス。光の二重盾が、花のようにそこかしこに
開く。
 ドン、ドンドンドン!!
 ガジェット・トルーパーのロケット迫撃砲弾は、陸士隊員のシールドに阻まれて、爆煙
を上げて飛び散る。
「やった……!!」
 陸士隊員が薄く笑みを浮かべた、次の瞬間。
 ジジ……
 シールドの輪郭がぶれ、外周から霧散していく。
「なに……!」
 シールドを張っていた陸士隊員は、一瞬、目を円くする。
「前を空けろ!!」
 別の陸士隊員が、彼の背後から怒鳴った。
「!」
 背後でストレージデバイスを構えた陸士隊員の、そのデバイスを軸にするようにして、
現代ベルカの魔方陣が駆動し、デバイスの先端に光が収束する。
『Interference destroy』
 光が矢となって、放たれる。
 それは、ガジェットが発生させるA.M.F.に干渉されて、霧散した……かに見えた。
 だが、
 ミシッ
 という衝撃音を立てたかと思うと、ガラスが砕けるような視覚効果を伴って、A.M.F.が
砕かれる。
 ガジェットは陸士隊員に肉薄し、手に持つブレードを振り上げる。
『Ray Lance, Multi shot』
 無数の光の礫が、次々とガジェットに命中し、その装甲を傷つけていく。やがて動力機
構にも衝撃が及んだのか、関節からバチバチと火花を散らし、動きを止め、その場に擱座
する。
393熱き彗星の魔導師たち 22-04/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/10/03(金) 11:50:53 ID:zySHzUZF

 ────地下駐車場入り口付近。
「はぁぁぁぁっ」
『Knuckle duster』
 リボルバーナックルに魔力光の渦を纏わせ、スバルは鋭い速攻で正面に突っ込みをかけ
る。
 XI型戦闘機人はライディングボードを構える。
「Protezione」
 スバルのリボルバーナックルを嵌めた右手が、ライディングボードにぶつかると思われ
た瞬間、ライディングボードに渦巻状の光のシールドが現れた。
「っ、くっ」
 バチバチバチバチッ
 魔力光がせめぎ合い、火花を散らす。
「これでっ、どぉーだっ」
『Explosion』
 ドンッ
 リボルバーナックルが纏っていた光が、その拳の先端に向かって圧縮されるように動い
たかと思うと、そこで爆発を起こした。
 戦闘機人のシールドが砕け、ライディングボードに受けた衝撃で後方に吹っ飛ばされる。
 スバルも相応の反動を受けたが、マッハキャリバーの駆動で体勢を維持する。
 だが、正面のXI型戦闘機人を吹っ飛ばしたその脇から、2体の戦闘機人が滑り込むよう
に、スバルに向けてライディングボードの射撃端子を向けてきた!
「わっ……」
 シールドを張ろうとするが、間に合わないか、と、スバルが身構えかけた時。
『Load Cartridge』
「うらぁぁっス!!」
 ウェンディが、地下の狭い空間をすり抜けて、上からスバルの前に滑り込んできた。
『Protection, Dual exercise』
 ドンドンドンドン!!
 都合4発の魔力弾を、アンダウンテッドアイアスの前面に出現したシールドが、反動で
アイアスを揺らしつつ、弾き返して散らす。
「ウェンディ……」
 肘を顔の前に出したガードの体勢を解き、スバルはキョトン、として、意外そうな顔を
した。
 ウェンディは軽く振り返り、スバルを見て、また正面に視線を戻す。
「なんとか間に合ったっスねぇ」
 安堵の表情で、胸をなでおろすようにそう言った。
 2体のXI型は、新手が増えたことを見てか、少し間合いを取って構える。そして、その
2体の間から、もう1人の影が現れた。
「あらあら、早速お出ましになったのね〜」
 どこかのんびりした、それでいて鼻につくような口調で、高い声が告げる。
「!!」
 ウェンディの表情が、急に一気に引き締まる。雰囲気を察して、スバルも身構えた。
「そんな怖い顔をしなくてもいいんじゃないかしら?」
 微笑みながら出てきた、すらりとした女性。メガネをかけている表情は、しかし急に、
にこやかなものから、薄ら寒い不気味な笑みに変わる。
394熱き彗星の魔導師たち 22-05/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/10/03(金) 11:51:44 ID:zySHzUZF
「ウェンディちゃん」
 銀色のマントを羽織った青いレオタード地の衣装、ネックガードには“IV”の刻印。
「クアットロ……っスか」
 忌々しそうな口調で、ウェンディは言う。殺気にも似た警戒心をむき出しに、クアット
ロと呼んだ相手を睨むように見る。
「あらあら、クア姉……じゃなくなっちゃったのね〜。姉を呼び捨てだなんて、お姉様は
悲しいわ〜」
 芝居がかった口調と身振りで、クアットロは嘆くように言った。
「よく言うっス。ナンバーズ12機の中じゃ一番浮いてたくせに」
 憔悴感を隠せない笑みを浮かべ、ウェンディは言い返す。
「しかも姉に対して蔑みの声……これは本格的なお仕置きが必要よね」
 クアットロはそういうと、マントを軽く翻す。右手に持った、柄の長いスタンガンのよ
うな道具を構える。
「本当はウェンディちゃん自身に使う予定だったんだけどぉ、もっと効果的な使い方もあ
りそうねぇ」
 クアットロは不気味に笑い、2人を睨みつけてそう言った。
「な、何をするつもりっスか!?」
395熱き彗星の魔導師たち 22-06/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/10/03(金) 11:52:14 ID:zySHzUZF

『Axel stinger, Break shot』
 紫色の散弾が、向かってくる複数のXI型に向かって撃ち出される。
 或いはシールドに阻まれ、炸裂した魔力弾が魔力素の残滓となってあたりを満たし、一
瞬視界を奪う。
「この」
『Break Slash』
 マギーはWS-Fに魔力光の刀身を発生させ、身構える。
 ヒュンッ
 バチバチバチバチッ
 WS-Fの魔力の刃と、ライディングボードがぶつかり、激しく火花を散らす。
 ────まずい、スバルと離されてる……っ
『Revolver set』
 憔悴した表情を浮かべながら、WS-Fの周囲に6つの魔力弾を発生させる。
 ザッ、
 跳躍で間合いを稼ぎ、着地して姿勢をあわせると同時に、放つ。
『Stinger brad, Burst shot』
 剣を模った魔力弾が、4体のXI型めがけて迸る。
 ドンドンドンドンドンドン!!
 先程の散弾よりも強烈な、着弾の衝撃が、あたりの空気を振動させる。
「やったかしら?」
 身構えつつ、爆煙の向こうを伺おうとするが────
 ゆら
「しまった!!」
 想定より近い位置へ、XI型の1体が一気に飛び込んできた。
『Ray……』
『Phantom blazer』
 WS-Fに撃たせるより早く、別の角度から、バーミリオンの強力な射撃が、マギーに襲い
掛かろうとしていたXI型を吹っ飛ばした。
「ティアナ!?」
 マギーは一瞬振り返ろうとして、なお健在のXI型に意識を戻し、WS-Fを構えなおし、表
情を引き締める。
『Brake slash』
 ティアナはマギーの傍らにまで駆け寄ると、自らもクロスミラージュにバーミリオンの
魔力刀を発生させて、身構える。
「マギー、大丈夫?」
 一瞬だけ視線をマギーに向けて、ティアナはそう問いかけた。
「あたしは。でも、スバルが入り口のあたりで囲まれてる」
 マギーは視線を離さずに、ティアナにそう答えた。
「あっちにはウェンディ一士が行ったけど……」
『Probably, there is little danger, if Wendy is together』
 ティアナが歯切れ悪く言うと、クロスミラージュが、ティアナを嗜めるような発言をし
た。
「そうだと思う、だけど……」
「なんかいやな感じがするわよね」
 ティアナのつぶやきに、やはり余裕のない笑みを口元に浮かべて、マギーが付け加える
ように言った。
396熱き彗星の魔導師たち 22-07/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/10/03(金) 11:52:44 ID:zySHzUZF
「とっととこいつら、撃破しないと」
「うん」
『Load Cartridge』
 マギーの言葉にティアナが頷く。2人のデバイスが、それぞれ1発ずつ、カートリッジを
激発させた。
「この……」
 XI型が先に、仕掛けるべく動いた。
 察知したマギーが、かぶりを振った時。
『Chain bind』
 動いたXI型の足元に、緑色の、ミッドチルダ式の魔法陣が現れた。その魔方陣から緑の
魔力光の鎖が出現し、XI型3体を絡めとる。
 シュッ
『Fingerknochelstaubtuch』
『Knuckle duster』
 2人の両脇から、まさに電光石火の勢いで飛び出してきた影が、一瞬にして2体のXI型を
吹っ飛ばした。
「ついでやっ!」
 シュルルルっ
 ドガッ
 返す刀の勢い、という感じで、足に魔力光の渦をまとわせると、ハイキックで残るもう
1体のXI型も倒す。
「レン!」
「ギンガさん!」
 マギーが顔を輝かせて、ティアナは驚いたように、それぞれ現れた人物の名前を呼んだ。
「余計な真似してしもたかな?」
 にっと笑いながら、レンはそう言った。
「2人とも大丈夫?」
 ティアナとマギーの後ろから、もう1人、そう声をかけながら現れた。
「ユーノ」
 マギーが声をかける。
「私たちは大丈夫ですが、スバルとウェンディ一士が……」
 ティアナが表情を引き締め、そう言った時。
「うわぁぁぁぁっ!!」
 ウェンディの悲鳴が聞こえてきた。
397熱き彗星の魔導師たち 22-08/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/10/03(金) 11:53:56 ID:vR9fgHMm

 ドガァッ
 構えたアンダウンテッドアイアスごと、ウェンディは後方に吹っ飛ばされた。
「くっ……ど、どうなってるんスか……」
 ウェンディは姿勢を直して構えつつ、つぶやくように言う。
『It’s a damage to the armor surface. The 40% of intensity fall of armoring』
「ええっ!?」
 アイアスが、盾としての装甲にダメージを受けたと言った。ウェンディは顔色を変える。
そして、正面にその相手を見た。
 そこに、スバルが立っている。
「ど、どーなってんスか? 直前でシールドは張ったはずっスよ!?」
『Yes, That's right』
 ウェンディは目を白黒させる。
 目の前にスバル。だが、その見た目の印象が、どことなく変わっていた。姿かたちは変
わらない。だが、ただ正気ではないというだけではない変化が、起こっていた。
 ウェンディは気づいたか、スバルの瞳は、緑がかった碧眼ではなく、金色に変わり、不
気味に見輝いている。
「クアットロ! スバルに何をしたっスか!?」
 噛み付くように、ウェンディはスバルの後方にいるクアットロに向かって、怒鳴った。
「ちょっと聞きわけがよくなるおまじないをしただけよ。でも、まさかこんなことになる
なんて。ウェンディちゃんを連れ帰るより、儲けだったみたいかしら?」
 クアットロは悪辣な笑みを浮かべて、そう答える。
「くっ……」
 ウェンディは苦い顔で呻くように声を出すと、視線をスバルに戻した。
「スバル! 正気にもどるっス!!」
 右手を伸ばし、スバルを捕らえるかのように、ウェンディは飛び出す。
 そのスバルを迎え撃つかのように、スバルはリボルバーナックルを嵌めた右手を引き、
構える。
「schiacci oscillatore」
 短く唱えるように言ったかと思うと、スバルの右手が、ゆらりと陽炎のようにかすかに
ぶれた。
「えっ!?」
『Protection』
 いつもの魔力拳ではない。それはウェンディにも判別できた。そしてそれを、右手の手
のひらにシールドを発生させ受け止めた。はずだった。
 ガシャアッ
「え……あ……!?」
 シールド越しにしびれるような感触が走ったかと思うと、ウェンディの右腕は────
右肩から外れた腕は、ずたずたに破壊されて、ウェンディの後方に落下した。
「なっ……」
 ウェンディがあっけに取られた瞬間、スバルはさらに追撃をかけて、襲い掛かってくる。
「っ」
 ヒュンッ
 間一髪、後方に下がり、スバルのリーチから逃れる。そのまま後ろ向きに軽く跳躍する。
フローターボードをすり抜けさせ、その上に飛び乗った。
 低い地下駐車場の高低差を使い、スバル達から距離をとる。
398熱き彗星の魔導師たち 22-09/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/10/03(金) 11:54:31 ID:vR9fgHMm
『ウェンディ、大丈夫? スバルは?』
 ユーノの念話が、ようやく届いた。
『大丈夫じゃないっス、スバルが意識のっとられて……』
『なんだって!?』
 ウェンディの返事に、ユーノの驚いた言葉が返ってくる。
『今行く!』
「!」
 当然のように返って来たユーノの言葉に、ウェンディは顔色を変えた。
「きちゃだめぇえっス!!」
 思わず声に出して、大声で叫んでいた。
「え、ええっ!?」
 すでに声の届く範囲にいたユーノが、視界にウェンディ達を捉えつつ、ウェンディの声
に戸惑って、その場で足踏みをする。
「ぶっ」
 後ろから駆けてきたレンが、ユーノに追突した。
「スバル!?」
「スバル!」
 同じような声を上げて、ティアナとギンガが、ユーノの背後から、その前に姿を現した。
「ティアナ! 近づいちゃだめっス……!!」
 ウェンディが怒鳴りながら言った時、スバルが速攻で仕掛けてきた。フローターボード
のウェンディとほぼ同高度まで跳躍すると、その正面から打ち下ろすような右ストレート
を放ってくる。
 ヒュッ
 フローターボードに乗ったまま、ウェンディは回避する。スバルの放った拳は、そのま
ま、コンクリートの床面に叩きつけられた。
 グワァァッ!!
 叩きつけられた拳が、床を破壊する。ただ砕けたのではない。鉄筋の梁がうねり、床面
から飛び出してくる。
「なっ、なに、これ……っ!?」
 その破壊力に、ティアナは困惑の声を上げる。ギンガも破壊された床を見て、、息を呑ん
だ。
 だが、
「スバル! やめなさい!」
 ギンガは一瞬の躊躇を振り切り、スバルに向かって飛び出した。
「だめっス! この技はあたしら戦闘機人には致命的……!!」
 ウェンディがとめる暇も有らばこそ。
 急に飛び出してきたギンガに、無機質な表情のスバルは、視線を移した。
 ヴォン……
 スバルの右手が、再び鈍くぶれる。細かいが高い周波で振動している。
 ギャリッ
 声もなく、マッハキャリバーが駆動し、ギンガに向かって対峙するように飛び出す。
「っ……」
 スバルの右フックは、ギンガの腹を捉えていた。
「ギンガッ!!」
 ユーノが叫ぶ。
 だが。
 バチッ!!
399熱き彗星の魔導師たち 22-10/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/10/03(金) 11:55:16 ID:vR9fgHMm
 先程、ウェンディの右腕をシールド越しにも破壊した拳を、シールドのようなものが塞
き止め、火花を散らす。
「ええっ!?」
 ウェンディはそれを見て、逆に驚愕の声を出してしまった。
「……scudo di imperatore」
 普通の防御魔法とは異なる、ラウンド型ではない形のそれを模った光の盾が、ギンガの
身長をほぼ覆う大きさで、出現した。
 ギンガもまた、瞳の色が変わる。それは、明るい緑と、緋色のオッド・アイ。
「!? お前は……」
 それを正面、スバルの後方から見て、驚きの声を上げたのは、クアットロの方だった。
「よそ見してる余裕なんかないわよ!」
『Ray Lance』
 ヒュンッ
 クアットロの斜め後方、天井から魔力弾が迸る。
「っ!」
 クアットロは、羽織った銀色のマントで、払いのけるようにそれをはじいた。
「そんな程度じゃ!」
 クアットロの至近に躍り出たマギーが、WS-Fに強力な魔力弾を発生させる。
『Axel Stinger』
 ドンッ
「チッ」
 マギーが舌打ちした。クアットロを庇うように割り込んだXI型が、マギーの射撃を阻害
したのだ。もっとも、そのXI型は反対側の壁まで吹っ飛ばされたが。
「スバルを元に戻してもらうわよ!」
『Break slash』
 WS-Fに魔力刀を発生させると、飛行魔法によるホバリングで、クアットロに迫る。
「あら、怖い」
 ふわっ
 あざ笑うような笑みを残すと、クアットロはマギーの目の前で、まるでカーテンで覆い
隠したかのように、ふわりと掻き消えた。
「なっ!?」
 マギーは目を白黒させる。急停止して、キョロキョロと首を振って、辺りを伺うが、ク
アットロの気配さえ感じられない。
「また、これ……!?」
 歯噛みして地団駄を踏みかけたが、ふっと意識を戻す。
「スバル!」
 スバルの拳は、ギンガの光の盾によって、完全に阻まれていた。
 ただのシールド魔法ではない。それならば拳は受け止められても、放たれる破砕波はそ
の対象まで及ぶ。
 ギンガのシールドは、それさえ打ち消していた。
 ギャリリッ
 スバルは一度身を引き、着地して、態勢を立て直した。
「スバル!」
 ギンガも同じように着地し、スバルに声をかける。
「!」
 だが、ギンガが着地したのを見計らったかのように、2体のXI型が、ギンガに向かって
タックルをかましてきた。
400熱き彗星の魔導師たち 22-11/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/10/03(金) 11:56:36 ID:vR9fgHMm
 ライディングボードを押し付けられ、ギンガは壁に叩きつけられ、そのまま押さえ込ま
れる。
「ぐっ……スバル!!」
「ギンガさん!」
「ギンガ!」
 ギンガの呻くような様子に、ティアナとレンが声を出す。レンは同時に飛び出し、ティ
アナは射撃魔法を発動させている。
「! 今だ!」
 ユーノはスバルに向かって飛び出す。
『Chain bind』
 緑の魔力光の魔法陣が、スバルの足元に発生した。だが、そこから伸びた光の鎖がスバ
ルを捉える前に、スバルはクアットロと同じように、ふわりと姿を消してしまった。光の
鎖は、むなしく宙を切る。
「くそぉっ、どうなってるんだよ!!」
 ユーノは、らしくなく語気を荒げた。スバルの立っていた場所で、ダンッ、と、崩れか
けたコンクリートの床を蹴る。
「す、スバル!?」
 レンとティアナはXI型を倒し、解放されたギンガとともに、ユーノの立っている場所、
スバルの消えた位置に駆け寄った。
「ど、どうなったの、これって…………」
 ティアナが、戸惑った声を上げる。状況を完全に理解していない、というより、ティア
ナの意識が、理解することを拒んでいるようだった。
「スバルは、連れ去られたよ」
 ユーノは、彼にしては低い声で、呻くようにそう言った。
「そ、そんな……」
 ティアナが、漏らすように言う。
「嘘でしょ!? スバル……スバル……っ!!」
 ギンガはユーノの真正面でひざを突き、泣き崩れかけながら、うわ言のように言った。
「っ……あたしっ……スバルのことフォローしてみせるって……言ったのにっ……!!」
 マギーはうつむきながら呟きつつ、悔しさと後悔で歯噛みし、ギリッと歯を鳴らした。
「みんな、大丈夫?」
 オレンジの魔力光の翼を散らしながら、アリサとシグナムがその場に現れたのは、その
時のことだった。
401熱き彗星の魔導師たち 22-12/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/10/03(金) 11:58:17 ID:vR9fgHMm
>>390-400
今回は以上です。

 ブランクが開いたためか、全体的に微妙。


ヘルニアのせいで、1日2、3ページしか筆が進みません……仕事の日はまったく駄目なときも……orz
402名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 12:02:15 ID:6Y16A+zU
こいつのあとがきってなんでこんなにイラッと来るんだろう
403名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 13:25:07 ID:mkXMKtMS
>>402カルシウム足りないからじゃね?
404名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 13:29:46 ID:DUoO3w0G
>>401
久々だねえ。GJ
ところで歪んだ素直の後編を全裸で待ち続けているのだが俺の健康を担保してくれるのは誰だね?
405名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 13:42:04 ID:EQoXqE6F
>>402
確かに微妙とかは言ってほしくないね
でもイラつくとか描く人のやる気が無くなる様な事言うもんじゃないよ
406名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 13:47:52 ID:1fbtiMsc
そうか?俺は別に気にならなかったが。
407名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 13:49:57 ID:ayN/XV8N
まあ確かに、書き手の人には某中華料理漫画の主人公みたいに、「俺のSSは満点だ!」って胸を張ってて欲しいよな。
誤字脱字ならともかく、内容や描写の推敲なんてその時の精神状態次第でいくらでも変わってくるんだし、深く考え過ぎるとネガティブスパイラルにハマるしw
408名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 13:57:43 ID:WgrPPOTQ
>>374
鬱展開を書くのは好きだけど、単なるダークエンドだと華が気がして最後に救いのあるシーンを入れてしまいます……
このスレ、鬱展開が好きな方が多いようにお見受けするので、少し質問です。
鬱展開が好きな方は、鬱展開に苦しめられるキャラに感情移入してしまうMの方なのでしょうか?
それとも、鬱展開に苦しめられるキャラを見てニヤニヤしてしまうSの方なのでしょうか?
宜しければ、今後の執筆の参考にしたいので教えて下さい。
409名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 14:02:12 ID:chgyUjvb
>>408
鬱展開が好きっていうのにSもMもあるのか?
俺はただ鬱展開が面白いと感じるから好きであって、いちいちSとかMなんざ考えた事は無いぜ
410名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 14:45:35 ID:OLWQmSA2
>>407
SSは勝負?
411B・A:2008/10/03(金) 15:54:40 ID:UsKuqqzO
投下しにきました。



注意事項
・ゲンヤ×スバル
・時間軸はSSXと同じ3年後。
・エロです。
・前半、スバルは寝ぼけています
・SSXは聞いたことありません
・タイトルは「お父さんのお姫様」
・スバルとゲンヤは恋人同士になっています。
412お父さんのお姫様@:2008/10/03(金) 15:55:12 ID:UsKuqqzO
日付も変わった深夜、残業を終えて帰宅したゲンヤは、先に帰宅しているはずの娘達が誰も出迎えてくれないことに一抹の寂しさを感じていた。
時間が時間なだけに無理からぬことだが、労働を終えて帰宅した我が家の照明が落ちているのを見るのは、何とも物悲しいものである。
そんな風に黄昏ながら、ゲンヤはリビングの照明のスイッチへと手を伸ばした。
一瞬、暗闇に慣れていた目が眩しさで視界を失うが、すぐに順応して見慣れた団欒の間が目に飛び込んでくる。
すると、部屋の三分の一を占領しているソファーの上に、誰が寝そべっていることに気がついた。

「スバル?」

眠っていたのはスバルだった。彼女は現在、仕事のために家を出ているのだが、
翌日が休暇などの場合はこうして自宅に戻ってくることも多い。

「何て格好で寝ているんだ、まったく」

実家にいるという開放感からか、スバルはTシャツ一枚という非常にラフな格好であった。視線を下に向ければショーツに包まれた形の良いヒップと、
スラリと伸びた脚線がまるでこちらを誘うように自己主張している。

「スバル、おい起きろ」

「ううん・・・・うぅ・・・・・父さん?」

「そんな格好で寝ていたら風邪引くぞ。寝るなら自分の部屋に行け」

「へやぁ? へや・・・・つれていって・・・・」

「寝ぼけてやがる」

揺り起こされて瞼を開いたスバルの目は焦点があっておらず、トロンと呆けていた。口調も舌っ足らずで幼いものになっている。

「父さん・・・・抱っこしちぇ・・・・」

「お、おいおい・・・・」

「抱っこ・・・・してくれなきゃやだぁ・・・・」

スバルは聞き分けのない子どものように駄々をこね、両腕を伸ばして抱擁をせがんでくる。
断り切れないと観念したゲンヤは、彼女の背中と膝の裏に手を差し入れ、いわゆるお姫様抱っこの形でスバルを抱きかかえた。

「大きなお姫様だな」

「うん、スバルはお父さんのお姫様なのぉ」

寝ぼけて頬を擦り寄せてくるスバルに苦笑しつつ、ゲンヤはリビングを出て彼女の部屋へと向かう。
腕にかかる負担はスバルが子どもの頃の比ではなかったが、無防備な彼女の頬笑みを見ていると苦言も出てこなかった。

「まあ、間違っちゃいねぇわな」

そうして、苦労しつつ寝ぼけ眼のお姫様を自室まで運び、皺一つないベッドの上に横たわらせる。すると、スバルは退散しようするゲンヤの腕を掴み、
寝ぼけているのが信じられないほど強い力で愛しい人をベッドの中に引きずり込んだ。

「うぉっ・・・!」

一瞬で視界は反転し、柔らかい谷間に顔がのめり込む。張りのある弾力と吸いつく様な肌触りが左右から襲いかかり、
思春期特有の瑞々しい香りがゲンヤの鼻腔をくすぐった。
413お父さんのお姫様A:2008/10/03(金) 15:55:47 ID:UsKuqqzO
「父さん・・・・しゅきぃ・・・・だいしゅきぃ・・・・・・」

「スバル・・・・こら、放せ・・・・・」

「キスしちぇ・・・・・キスしちぇくれたらぁ、父さんの好きにして良いからぁ・・・・・・・・」

幼子のように甘えた声を出しながら、スバルはしきりにキスをせがむ。その普段とは違う幼稚な態度は、どこか哀願しているようにも見えた。

「おねがい・・・・してぇ・・・・・」

「わがままだな、お前は」

ネクタイを解いてワイシャツの第一ボタンを外し、一呼吸置いてから薄桃色のスバルの唇に自身の唇を重ねる。
ぶれないように片手で顎を押さえ、柔らかな唇を舌でこじ開けて愛しい女の温もりを感じ取る。

「ううんっ・・・・ううぅ・・・・・・・ううぅっ!?」

舌と舌が絡まりあった瞬間、スバルはカッと目を開いて我に返った。そして、自分がゲンヤと接吻していることに気づいて思わず彼の体を突き飛ばしてしまう。

「うぉぅ・・・」

「と、父さん!? な、何しているの・・・・・・・」

「自分から誘っておいて、それはないだろう」

「え? あたしからって・・・え、え?」

事情が呑み込まずに混乱した頭を抱え、スバルは必死で記憶を遡らせる。だが、彼女とのキスでスイッチが入ったゲンヤは戸惑うスバルをそのまま押し倒し、
ゴツゴツした手の平で柔らかな双丘を包み込んだ。

「あぁっ・・・や、やめ・・・・・」

「キスしたら俺の好きにして良いって言っただろ」

「い、言ってない」

「いいや、言った」

「い、言って・・・・・ああぁん、あ、待って・・・せめて話を・・・・・・」

反論しようとするスバルの口を自分の唇で塞ぎ、まるで粘土を捏ねるように乳房を揉みしだく。ほんの少しだけ手に余る膨らみは、
揉まれる度に歪な形へと姿を変え、手を離せば空気の詰まったボールのように元の形へと戻っていく。戦いの場では邪魔にしかならないこれも、
ゲンヤからすれば男を誘惑する破廉恥な武器でしかなかった。たまに聞こえてくる微かな喘ぎも、彼の欲望を刺激するのに一役買っていた。

「悪い娘だ、俺みたいな親父を誘惑して」

「それ、凄く言いがかりな気が・・・・・・・」

「なら止めるか? こっちは欲しがっているように思えるけどなぁ」

そう言ってゲンヤが股間に手を触れると、ショーツがジンワリと湿っていることにスバルは気がついた。
そのままゲンヤは手慣れた手つきでショーツを脱がし、女の匂いを発する肉壺へと指先を進入させていく。
肉ビラがきつく閉じられていたためか、外の濡れ具合からは想像もできにほど中は湿っていた。
収縮を繰り返す膣は侵入してきた指を痛いほど締め付け、放すまいと咥え込んでくる。
414お父さんのお姫様B:2008/10/03(金) 15:57:09 ID:UsKuqqzO
「こんなに濡らして、欲しくないのか?」

「もう・・・意地悪しないでよぉ」

観念したようにスバルは微笑むと、両足を広げてゲンヤが入りやすい態勢を取る。それを見てゲンヤは満足げに頷くと、
数度指を行き来させた後に膣から引き抜き、ズボンのチャックを下して凶悪なまでに勃起した肉の槍を秘唇へとあてがった。

「ああううっ・・・・は、入ってきたぁ・・・・・・」

膣壁を押し広げられる感触に、スバルは恍惚の表情を浮かべてだらしのない笑みを浮かべる。自分でもみっともないとわかっていながらも、
一度でも女の悦びを知ってしまった体は貪欲なまでに快楽を欲し、濡れそぼった肉壺を掻き回される度に頬が緩んでしまうのだ。

「ううああ・・・・・これぇ、これ好き・・・・お腹の中、捲れるのが好きぃぃっ・・・・・・・」

脳内麻薬の過剰分泌で呆けた頭の中が快楽で埋め尽くされていく。こうなってしまうと、スバルはただ純粋にゲンヤと交わることしか考えられなくなってしまうのだ。
意地の悪い言葉責めも厭らしい指の動きも彼女の劣情を燃え上がらせるだけであり、唇を重ねるとどうしようもないくらい情熱が込み上げて来て腰をくねらせてしまう。
快楽に酔った思考は目の前の男性を射精に導かんと熱く溶けた膣を肉棒に吸いつかせ、根元まで深く咥え込んで放さない。

「あ、ああっ、はあうんっ!! と、とうさん・・・・も、もっと激しくしてぇ、お腹、破れても良いからぁ、あたしの中ぐちゃぐちゃにしちぇ!!」

舌足らずな求めに応じ、ゲンヤは腰の動きを激しいものへと切り替える。すると、笠の張った亀頭が息つく暇もなくGスポットを擦り上げ、
スバルの瞼の裏で桃色の光が何度も弾けて火花が散った。

「いい・・ああぁっ・・・それいいのォっ・・・・ガンガンって、激しくされるのがぁ、良いのぉ!!」

熱にうなされる様に言葉を紡ぎ、スバルはゲンヤの背に両腕を回してその存在を強く実感する。激しく腰を打ちつけられる音が室内に響き渡り、
荒い息が耳たぶを擦ると今が夜更けであるということも忘れて嬌声を上げ、込み上げてくる絶頂の波に酔い痴れていく。

「ううぁ・・はぁっ・・・・」

「はあん・・あ・あ・・・・とうさん・・・・とうさんとうさん・・・・・イク、あたしイクぅぅ・・・いくのぉ
・・・いくいくいく・・・ああああああぁぁぁぁぁっ!!!!」

とどめの一撃を蜜壺にお見舞いされ、火照った子宮が圧迫されてスバルは肉欲の淵へと叩き落とされる。
一瞬の浮遊感は、子宮内で迸った男の欲望を受けて一気に加速し、スバルは降りようのない絶頂の渦に巻き込まれて四肢を痙攣させた。

「ううああ・・あああ・・・・射精・・・・・・父さんの精液、注がれちゃった・・・・・・・」

「嫌か?」

「ううん、もっとしてぇ・・・・・・父さんのふっといおチ○チンで、あたしのエッチな穴いっぱい掻き回して、熱いの注いでぇ・・・・・・」

「良いぜ、もう嫌だって言うまで注いでやるから」

「うん、してぇ、いっぱいしてぇ」

甘える様に唇を重ね、大好きな父と舌を絡ませる。
今夜はいったい、何回射精してもらえるのか? 今のスバルはそのことで頭がいっぱいで、腰の動きが再開されると歓喜の涙を浮かべて笑みを零した。

「父さん、大好き」


                                                                     おわり




415お父さんのお姫様C:2008/10/03(金) 15:58:04 ID:UsKuqqzO
おまけ




キツネ色に焼けたトーストにいちごジャム、ふんわりとした黄色のスクランブルエッグとカリカリに焼けたベーコン、
シャキシャキのレタスに可愛らしいプチトマトとスライスされたチーズ、ドリンクは各自で自由なものをチョイス。
食卓に並べられているのは理想的な朝食の献立であり、見ていると思わず涎が垂れてくる。
だが、視線を少し上げた先で繰り広げられている光景を目にした途端、空腹の虫が諸手を上げて退散し、食欲が彼方に飛び去ってしまった。

「父さん、あーん」

「止せよ、恥ずかしい」

椅子に腰かけたゲンヤの膝の上にスバルが座っており、猫が甘える様な声を出してゲンヤの口へと料理を運んでいる。
2人の周りには、目に見えるまでに実体化した桃色のオーラがバリアのように展開されていた。

「あーんしてくれなきゃご飯が食べられないよ。はい、あーん」

「・・・あーん」

僅かな躊躇の後、ゲンヤはゆっくりと口を開けて一口サイズに千切られたトーストを咀嚼する。
彼も満更ではないのか、ご丁寧にスバルの指に垂れたマーガリンまで舐め取っている。
すると、スバルはうっとりとした表情を浮かべて指についた唾液を舐めとり、次はどの料理を食べさせようかと視線を巡らせる。
すぐ目の前に義妹がいることなど、露程にも気づいていない。

「あ、あたし朝ご飯いらないっス」

もちろん、返答はなかった。
ウェンディは頭痛のする額を押さえて離れたところで読書に没頭しているノーヴェの隣に腰かけ、助けを求める様に話しかけた。

「何とかならないっスか?」

「無理だな」

一刀両断され、ウェンディは肩を落として項垂れる。
休日の2人は、だいたいいつもあんな感じなのだ。所構わず2人だけの世界を構築し、周りの人間を寄せ付けなくなる。
さっきも2人で一緒にシャワーを浴びていたようだったし、昨晩もよろしくやっていたようだ。部屋の壁が薄いのだから、もう少し自重してもらいたい。

「他のみんなはどうしたっスか?」

「チンク姉はとディエチは仕事、ギンガはカルタスに誘われて出かけちまった。用事がないのはあたしらだけだ」

「ど、どっか出かけないっスか? このままじゃ吐く息まで砂になるっス」

「良いけど、この本読み終えるまで待ってくれ」

「な、何読んでいるっスか?」

「ルーお嬢から借りた奴」

そう言って、ノーヴェは読みかけの本に栞を挟み、表紙をこちらに向ける。慣れ親しんだミッド語とは違う言語に、思わずウェンディは眉間に皺を寄せた。

「ミッド語じゃないっスね・・・・えぇっと、し・・・しつら・・く・・えん?」

「夢見たって良いだろう?」

「意味がわからないっス」

                                                                   今度こそおわり
416B・A:2008/10/03(金) 15:59:25 ID:UsKuqqzO
以上です。
>>381氏のシチュエーションから得たインスピレーションをもとに何とかできあがりました、
「お前が悪いんだ」、「寝言」くらいしか活かせていませんが。
考えてくださってありがとうございます。
417名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 17:07:46 ID:AlcdsYcN
>>416
GJ!! そしてノーヴェなに読んでるんだw
418名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 17:59:48 ID:04KIGNJt
>>416
エロいよGJ!!

あとノーヴェwwwwww
つかルーテシアから借りたって、まさか……
419名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 19:50:45 ID:5otftkZD
「キャロ、フェイト、シグナム…敵は多い。
…アギトは…私の味方だよね?」
420名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 20:47:15 ID:BZQRGskd
むしろアレだ、敵に回るような事がないせいでこのスレでは出番が無い……
421名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 20:55:55 ID:m+MTv47j
>>419
なんでフェイトとシグナムが敵なん?
シグナムなんてライトニングといいつつほとんど接点ないのに
422名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 21:02:10 ID:CQmCSHa2
>>421
このスレは初めてかい?
このスレの多くの作品での、(ルーテシアを除いた)エリオの彼女の三大候補がキャロ・フェイト・シグナムだよ。

だから、エリオとおつきあいしたいルーテシアにとっては敵というわけだ。
423名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 21:04:26 ID:H/9LL2sT
>>421
まあ言いたいことは分からなくもないが、カプ関係の話は荒れる要因になりやすいので自重してくれると嬉しい。

だが俺の中ではシグナムはヴァイスの嫁兼夜のペットというのが正義というのもまた事実。
424名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 21:06:30 ID:CQmCSHa2
個人的にヴォルケン一同は、♪はやて一筋目指して進め〜♪であってほしいが。
425名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 21:26:41 ID:rywU9Zrr
>>416
GJ!!
キャロからエリオを寝取るルーテシア…
ものんすごく見たすぎる。
そしてルーはエリオを勝ち取るのも俺の中ではまた事実なり。
426名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 22:36:05 ID:/s9sDZIX
ルーとの初体験をスムーズに行う為にキャロで慣れておいて
いざルーとの本番で緊張のため間違えてケツ穴に入れてしまうという
最低エリオを考えたけど途中で止まっちまったさ
427名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 22:48:46 ID:BYF8j3bC
>>422
脳内設定をさも公式のように語られるのが嫌なんじゃない?
428名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 22:53:00 ID:CQmCSHa2
>>427
エロパロ板でそれ言われても困る。
429名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 23:14:53 ID:DjYUryZ/
つーかエリオとシグナムは「紫電一閃」を伝授した仲なのに接点ないって
どっちが脳内よと思うぞ
430名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 23:29:59 ID:4ODohV6G
エリオ「キャロの容姿にフェイトさんの性格とシグナム副隊長のおっぱいを合わせた女性が理想です」
431名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 23:34:17 ID:FhNwbzFZ
>>429
いつ伝授してたっけ?
43244-256:2008/10/03(金) 23:45:51 ID:R1Xltttm
投下してよろしいでしょうか?
433名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 23:49:33 ID:CQmCSHa2
お願いします
434名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 23:50:03 ID:chgyUjvb
>>432
カモン!
この妙な流れを断ち切ってくれ
435名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 23:50:53 ID:UsKuqqzO
>>431
厳密にはラスバトの前に稽古つけてもらって勝手に盗んだ。

>>432
いいっすよ。
43644-256:2008/10/03(金) 23:52:21 ID:R1Xltttm
それではお言葉にあまえて投下します。

・非エロです。
・JS事件より7年前が舞台です。
・主演男優はヴァイス、助演女優は・・・まぁわかると思います。
・全5話です。
・5話目です。
437エンカウンターズ・ウィズ(5話 1/4):2008/10/03(金) 23:56:34 ID:R1Xltttm
ヴァイスがもうダメだと思ったその直後。
『ビキビキビキ・・・ドォォォン!!』

ヴァイスや違法魔導師の背後でゆらいでいた黒い半球の結界にヒビが入り、爆発した。
そして灰色の結界魔法の中には同じように白色半透明の巨大なプロテクションが現れ、中には砲撃魔法でおとされた空戦魔導師やヘリ
の乗務員達は地上に降りていた。
負傷してるようだが、全員命に別状はないようだ。

そして、結界の奥から誰かがこちらへ飛んできた。料理人の少女である。少女のコック帽の上には小さい人形のようなものが
のっかっている。

「ふぅ〜、結界魔法破るのに結構時間かかってしもうたわ。でも間に合ってほんま良かった」
「はいです。ヴァイス2等空士がここまでもたせてくれたおかげです」

「せやなリイン、さすがシグナムの言うとおりヴァイス二曹は『エース』やな」
「はいです!さすがです!!」
小さい人形、魔導生命体のようなものに少女は話しかけていた。驚いた違法魔導師達は瀕死のヴァイスにかまわず
少女に向けて砲撃魔法を放った。しかし、少女は逃げようともしなかった。


「バカ・・野郎・・逃げ・・ろ・・・・」
荒野の廃墟で砲撃魔法に飲み込まれようとしている少女を見て声にならない声をヴァイスは発した。
しかし身体が重くて言う事をきかない。何もできない絶望の中で風に舞い落ちる漆黒の羽が舞った。

「(ドゴォォォン!!!)」
そして砲撃魔法が少女にあたり、周囲は爆風の砂埃で何も見えなくなった。しかし、爆風が晴れるとヴァイスや違法魔導師たちは驚いた。
「な、何?」

爆風の中で少女は無傷で立っていたのだ。
しかし少女は真っ白い料理人の衣装ではなく、白いコートに黒と金を基調とした立派な騎士甲冑を身に付けていた。
そして左手には古代文字でかかれた魔導書を、右手には巨大な剣十字のデバイスが握られている。

そして少女の背中には、強大な抑え切れないほどにあふれる魔力の残滓であろうか、黒い羽が少女の周りを舞っている様に見える。

少女が変わったのは服装だけでなかった、少女の茶色がかった優しい色の髪は見事な金髪になり、瞳も色も落ち着いた黒から
ゆるぎない戦士の意思を秘めた真っ青な碧眼に変わっていた。

少女の前の真っ白いトライ・シールドが砲撃を全て受け止めていた。無数の砲撃魔法が打ち込まれたはずなのに、少女は顔色一つ
変えない。そして相手の足元に真っ黒な巨大なベルカ魔方陣が形成され、巨大な黒球が少女の頭上に形成されていく。

魔導師達は退避しようとするが、少女の横に巨大な蒼い狼が現れ大きな咆哮をあげた。
そうして足元から強烈な白い光の柱に身体を拘束された。並のバインドではなかったため、解除に手間取った。

『マイスター!!詠唱完了です!』
『了解やリイン!遠き地にて闇に沈め、デアボリックエミッション!!』

少女がそういうと、ドス黒い魔力の塊に周辺の魔導師があっというまに飲み込まれた。その魔力の強烈な波動にヴァイスはただただ驚く。
「(ただの料理人じゃなかったのか?つかそれ以前に明らかにただの魔導師じゃない!!)」

『よくぞそのデバイスとともに持ちこたえた。ここからは主はやてと我々にまかせろ!!』
『あんた・・・まさか!?』
蒼い狼から送られてくる念話。その渋い落ち着いた声には聞き覚えがあった。食堂の無口で屈強な配膳係である。
そうして周辺の空気を震わすほどに大きく吼える。

少女にも驚いたが、よもや男性の正体が屈強な狼であったことにヴァイスは驚いた。
『ザフィーラの言うとおり、安心し!もう大丈夫やから!』

昨日の夜は頼りなかった優しげな料理人の少女、いや聖王教会騎士団の騎士、八神はやての声は非常に頼もしく聞こえた。
438エンカウンターズ・ウィズ(5話 2/4):2008/10/03(金) 23:57:24 ID:R1Xltttm
そんな中、はやてのまわりを違法魔導師たちが取り囲み始めた。ヴァイスが陽動で混乱させ分散させていた敵が集まってきたのだ。

『予想以上に数が多い、ザフィーラ。もう一回、広域魔法の詠唱で一気に片付けるで!!それまで守りはお願いや!!』
そうしてザフィーラは巨体に似合わない速さで、スナイパーのヴァイスが眼でもやっと追える速さではやてへ攻撃を仕掛けようとする
もの達にとびこんでいく。

巨体でありながらもかなりのスピード。こんな速さの持ち主はシグナム以外に知らない。

ザフィーラは遠くの相手には鋼のくびきをお見舞いし、近くの敵に体当たりして、魔力を付した爪でデバイスごと切り裂き、けちらていく。
並の射撃魔法はかすったところで、ほとんどダメージを与える事ができず、違法魔導師たちはその牙や爪のえじきとなって地上へ墜ちていった。

ほんの数分前まではこちらが優位だったというのに。魔導師の一人はそう思ったが、更に仲間から悪い連絡があった。

「魔力反応!!あと数分で管理局の航行艦がこちらに転送されてきます!」
「護衛の騎士に艦船だと!?」

そしてヤケになった違法魔導師たちはミッドチルダにいる別の部隊に念話で遠距離通信を送る。
『くそっ!!俺だ!!あのオペレーター裏切りやがった。さっさとヤツの弟を殺せ!!』

少し遅れてから返答がくる。

『わかった・・・と言いたいところだがそいつは無理な相談だな』
声の主はそう言った。

『何だと!?てめえ誰だ?』
『名乗るほどの名前は持ち合わせてねえよ』

通信先の男、ゲンヤ・ナカジマ一等陸尉は違法魔導師に話を続けた。

『申し訳ないが、あんたらの仲間はパーティーからご退散願った』
念話の通信の背後でサイレンの音「さっさと護送車まで歩け!!」「人質の男の子は確保!!繰り返す・・」という声が聞こえる。

ゲンヤは倉庫に無造作に置かれていた書類を見ながら言葉を続けた。

『お前らの情報管理は、ドーナッツよりもひどい穴の開きようだったぜ。ゾウヒン流すのにこんな計画をたてるなんざ、俺から言わせて
みたら2流、いや3流だぜ。今度ヤマ踏もうとするなら、もう2度と俺達ミッド陸士のショバを使わないことだ』

「貴様!!」

魔導師は激昂したが、ゲンヤそんな魔導師の怒りを全く意にも介さずに魔法を詠唱するかのように、何かの一文を読んだ。

『・・・お前には黙秘権がある。その供述は裁判で不利な証拠として用いられることがある。また弁護士と相談することもできるし
取調べに弁護士を立ち会わせることもできる。自分で弁護士を雇うことができないときは、公費で弁護士を雇ってもらうこと
もできる・・・』

「何を言って・・・!?」
『そんな修羅場じゃ“ミランダ警告”も教えられてもらえねえと思うから、こいつは俺からのプレゼントだ。そんじゃ、せいぜい
残り数分のシャバを楽しめ(プツッ)』
「・・・」

違法魔導師は絶望のうちに通信を切られた。
439エンカウンターズ・ウィズ(5話 3/4):2008/10/03(金) 23:58:25 ID:R1Xltttm
はやてが詠唱を行っている間にザフィーラははやてに攻撃を加えようとするものをどんどんカウンターで沈めていったが、ザフィーラ
一人だけではたりず、わずかにスキが出た。遠くより4人の魔導師が複数で詠唱中のはやてに射撃魔法の狙いをつけている。
「・・・主!!!」
間に合わない、そう思ったのか、寡黙なザフィーラは思わず叫んだ。その時。

「ガンッ!!・・・(パン!!パン!!パン!!パリン!!)」

そんな魔導師達のデバイスコアを緑の光が駆け抜け、一気に割れた。地上からの一発の射撃魔法が彼らのデバイスを瞬時にして穿ったのだ。
地上にはかろうじて、骨折していなかった右腕でストームレイダーを空へかかげ。片手だけで狙撃を行うヴァイスがいた。
「今度は・・・きっちり守って・・・・やらないとな・・・」

そうしてはやては碧眼を見開いた。
「完了や!!」
その直後、今まで快晴だった空が、先ほどのデアボリックエミッションのような雲に覆われ始めた。はやての声があたりに響き渡った。
「夜天の書よ、主はやてが命ずる」

そして空気が振動し、激しい風がはやてを中心に巻き起こる。

『二人とも安心するデスよ!』
そんな幼い子供の念話を聞いたヴァイスやザフィーラに、スフィアプロテクションが形成される。

「眼下の敵を打ち砕く力を、今、ここに。撃て、破壊の雷!」

はやてがそう言ってデバイスを上空に掲げた瞬間、はやての持つ夜天の書から発せられる光が黒雲に昇っていき、増幅された紫色の巨大な閃光が
大地に突き刺さった。

そして結界魔法のごとく、紫の光が半球状に拡散していき全てのものが光の中に消えていった。

まさに旧時代に起こったと伝えられる次元震さながらの地獄の光景である。光が収まると、あたりにはパチパチと紫色の魔力の残滓が
スパークし、たくさんの違法魔導師が倒れていた。
「安心し、非殺傷設定や。24時間は立てへんと思うけど」

その光景を見ながらヴァイスは一つの噂を思い出していた。

かつて次元世界で猛威をふるった古代ベルカのロストロギア、闇の書。4人の勇敢なる守護騎士を率い、漆黒の羽をなびかせて
強大な破壊と死の力を行使する最強のS級のエース魔導騎士が管理局にいるという噂を。

「(そして、シグナム姐さんが尊敬する人。想像していたのとだいぶ違うぜ・・・)」


その直後どこからか、廃墟の真上に戦艦があらわれた。管理局のL級航行艦「アースラ」である。
そこから魔導師が多数降りてくる。そしてヴァイスの方へ救護班が降りてきた。

「グランセニック二等空士の容態は」
「バイタル安定!!」
そうして救護班はヴァイスに応急処置をほどこし担架に乗せた。

そうしてはやてが駆け寄って、こう言った。
「もう大丈夫やで、他のみんなもロストロギアもちゃんと保護しとるよ。さあ、ラグナちゃんの元へ帰ろか」

そんなはやての優しい表情を見ながら、ヴァイスの意識はゆっくり闇の中へと落ちていった。


−数日後、ヴァイスはロストロギアを狙ってワンズ・ベセルと輸送部隊を襲撃する計画を、陸士のナカジマ一尉からの情報提供を
受けた査察部から依頼を受けた聖王教会出向中の騎士、八神はやてとフェイト・テスタロッサ執務官候補生らアースラスタッフ
によって防がれたことを知る事になる−

そしてこれ以降、ヴァイスと八神家は様々な事件や出来事にともに巻き込まれたりしながら、今に至る。
440エンカウンターズ・ウィズ(5話 4/4):2008/10/04(土) 00:03:48 ID:R1Xltttm
「・・曹・・・ス陸曹、・・・イス陸曹、えい!!」
そうしてアルトは呆けているヴァイスの頬を思い切り引っ張った。

とたんにヴァイスは8年前の砂漠から、現在のロング・アーチの食堂テラスへと一気に引き戻される。

「ほい、ひてーよ、はると〜!!(おい!!痛ぇーよ、アルト!!)」
(結構伸ばしやすくて先輩の顔って面白い♪)そんな事を考えながらアルトはどんどん引っ張る。
「全く、何が小さい嬢ちゃんに借りがあったよ!!こんなロリコンが私の先輩だとは情けない。キャロも気をつけないさいね!」
「・・・えっ?ヴァイス陸曹」

キャロはヴァイスに対して不安な視線を向けてくる。そうしてヴァイスはアルトの腕をほどいた。
「アルト!!キャロに誤解を与えることを言うな!!」
「何やら楽しそうやな」

「八神隊長!待ってました!!」
空腹で今まで機能停止したターミネーターのように固まっていたスバルの補助エンジンが入ったようだ。目を輝かせる。

「これは何ですか?何かケーキとも違うようですけど」
ティアナが不思議に思ってはやての作ってきた料理をたずねる。

「これはな、お好み焼きいうんよ。今回は材料てんこもりに使ったんよ!!こっちはチーズともち、こっちは焼きソバと卵のヒロシマ風
いうてなこっちは豚肉とキャベツというオオサカ風いうんよ!!」
「へ〜、地方によって色々種類があるんですね、八神隊長」

そうしているとなのはとフェイトとヴィヴィオが更に追加で盛られたお好み焼きを持ってくる。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、持ってきたよ〜」

そこには様々な種類が並んでいるがひときわ形がいびつなものがあった。
「ヴィヴィオもお手伝いしたんだよ!!」
「にゃはは・・・まあ、おいしいと思うからみんなも食べて“あげて”ね」
「味のほうは本当においしいと思うから」

そう言ってなのはは新人達に遠慮したようにそう言った。

そうしていると、ゲンヤがヴォルケンリッターを伴って
「おっ、たまたまこっち寄ってみたらなかなかおいしそうなもんあるじゃねえか、俺も食べていいか?八神」
「お父さん?」
「ぶっ、姐さん?」

ヴォルケンリッター、とりわけシグナムがあらわれヴァイスはあわてて、賭けの皮算用メモを隠す。そんなヴァイスにシグナムは
「ヴァイス、お前が持っている表をおとなしく渡すのと、主の料理を食べた後に私のけいこに付き合うのとどっちがいい」
ヴァイスは泣く泣く、計画書を渡した。

「「「いっただっきまーっす!!!」」」
おいしそうなソースの香り、アツアツのお好み焼きを全員がおいしそうに食べる。そんな光景を見て、ヴァイスは何かを思い出したよう
に笑った。
441エンカウンターズ・ウィズ(5話 4/4+α):2008/10/04(土) 00:05:04 ID:2dPdqSpd
そんなヴァイスにはやては駆け寄った。

「ヴァイス陸曹はみんなと食べんの?」
そういうはやての頭を軽くポンポンたたく。

「な、何や?ヴァイス陸曹?」
「いや、別に。大きくなりやがって・・・そう思ってよ(もう8年か・・・長い付き合いだよな)」

ヴァイスの目にはかつて、家族思いの料理人の少女が映っていた。妹と2人だけであったが、今はこんなにも頼れる仲間がいる。
少女のもとに集った仲間が・・・

「ほほお・・・ヴァイス。上官にそんな口の聞き方とはいい度胸してるじゃねえか!!」
感慨にふけっているヴァイスにゲンヤがそう言って横槍を入れる。
「本局の提督にもタメ口を使うどっかの三佐には言われたくないっスよ」

そうしてヴァイスにまたもアルトがつっかかった。
「はは〜ん!!もしかして、八神隊長に気があるとか?」
「ば、バカ!そんなんじゃねえよ」

ヴァイスのあわてた大声とみんなの笑い声がテラスを賑わせた。

そんな中、ヴァイスの念話をはやては聞いた。
『嬢ちゃんよ・・・』
そう言われてはやてはクスッと笑う。
『なんや久しぶりやな、ヴァイス陸曹からそう呼ばれるのは。どないしたん?』


−ありがとな・・・そしてこれからもよろしくな−

−こちらこそよろしく−
44244-256:2008/10/04(土) 00:06:41 ID:2dPdqSpd
以上、主演男優ヴァイス 助演女優はやてでお送りしました。

最後はどうにも容量オーバーで+αとさせていただきました。
それでは失礼します。
44344-256:2008/10/04(土) 00:11:05 ID:2dPdqSpd
追記で悪いですが、「8年前」は全て「7年前」の間違いです。
申し訳ないです。
444名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 14:52:45 ID:vXiEAIMj
>>442
GJです。

>>408
ここでの欝系話の第一人者と言えば、246氏か・・・
個人的にも長編であそこまで欝展開や欝エンドに出来る心理をお伺いしたいところですね・・・。
246氏はどういう心理状態で話を書いているんでしょうか・・・。

ここからはどうでもいい話なのですが、246氏の書く長編「nameless」「君に届けたいただ一つの想い」、そして連載中の「Cursed Lily」とユーノが全然報われないポジションにいますね。
流石にここまで報われないと、246氏の作品でユーノが報われる話を見てみたい気がしますね・・・。
445名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 15:12:12 ID:smdYZtGO
いちいち>>444みたいなのに反応しないでいいですからね、246氏
長編がんばって下さい

>>442
GJ!
446名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 15:41:54 ID:kBlWt3Ak
まったくエロくないが六課とナンバーズで野球する話の構想練ってるんだがどうだろう?

ちなみに六課のポディション
ピッチャー、ティアナ
キャッチャー、スバル
仲よしコンビのバッテリー、ティアは変化球投げれそう

ファースト、ギンガ
セカンド、なのは
サード、フェイト
ちなみにギンガは後半ナンバーズ側に寝変えるのでヴィータと交代

ショート、ザフィーラ
センター、なのは
ライト、エリオ
レフト、キャロ

守護獣は鉄壁の守備、あとはテキトーに

フェイト、ヴィータ、シグナムは強打者

はやては監督
447名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 15:56:42 ID:2kQWDudD
>>444
あんたちょっと気持ち悪いね
448名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 15:58:49 ID:mwqfYmZq
>>446
どうもこうも思うようにやっちゃえばいいのさ
449名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 16:07:54 ID:AadbrJC2
>>421-422
そもそもルーテシア自体エリオとそんなに絡んでないわけだが
450名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 16:14:27 ID:n9cYIQKs
>>449
その話題はもういい
投下挟んでまでする話題じゃない
451名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 16:42:30 ID:kBlWt3Ak
1番はスバルだな、マッハキャリバーで盗塁盗塁
強打者で足もいいフェイトは4番
452名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 16:45:20 ID:mwqfYmZq
>>451
ああ、あの太ももはいいよな
453名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 17:24:58 ID:dpmhIQuu
スバル、エリオ、ギンガで繋いで4番フェイトってところか。
最初の2人が塁に出れば盗塁し放題だろう。シグナムは一発狙いになりそうだからちょっと怖いが。
454名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 19:05:23 ID:BSAdusFF
シャマルの持ち球はフォーク
455名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 19:21:08 ID:xli41R1G
一応鍛えているらしいなのはさん。
しかしスポーツと言うカテゴリーでは生来の運動音痴が復活……。
「わ、私は監督なの! 文句は言わせないの!」
456名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 19:22:12 ID:pZaq4LkY
     ____
   /__.))ノヽ   
   .|ミ.l _  ._ i.)  
  (^'ミ/.´・ .〈・ リ   ナンバーズは儂が育てた
  .しi   r、_) |  
    |  `ニニ' /       
   ノ `ー―i´
457名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 19:26:52 ID:dpmhIQuu
フェイト「視野は広いし知識はあるんだけど・・・・・・・」
はやて「そこそこ走れるし体力もあるけど・・・・・・・」
エリオ「ああ、なのはさんが空振った!?」
ヴィータ「あんなゴロをトンネルかよ!?」
シグナム「そっちじゃない、バックホームで何故ライトにボールが行く?」
なのは「えーん、球技は苦手なのぉ」
スバル「体力と運動神経ってイコールじゃないからなぁ・・・・・・・・」
ユーノ「大丈夫、なのはは夜のホームランキングなんだ」
458名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 19:27:36 ID:C/snHg65
やる気マンマンでバッターボックスに入るも、「幼女かよw」と鼻で笑われるキャロ
しかし打つ瞬間、自己ブーストでムキムキになり余裕で場外葬らん

六課チーム「何か今、打つ瞬間身体が膨らんでた様な気がしたけど気のせいだな!」

459名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 19:38:41 ID:vx2WBiBk
>>457
まて淫獣w
460名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 19:52:38 ID:IMHZA7dy
>>458メソwwwwwwもちろんバットは反対に持つんだよな
461名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 20:21:48 ID:qvTBoX/Z
フェイト「ぶぇー、ぶぇーぶぇーぶぇー」(バースのテーマ)
はやて「フェイトちゃんあかん! それは落下フラグや!」
462名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 20:36:50 ID:1FNlarnA
実際、ティアナが一番野球に向いてると思うんだけど・・・
あの動体視力に脚力、幻術でボールを分身させたりと
463名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 20:51:24 ID:dpmhIQuu
ナンバーズ組も考えてみた。

ピッチャー:トーレ
キャッチャー:ディエチ

恐らく、ストレートしか投げられない。ディエチは正確な狙いで盗塁を仕留める。

ファースト:ウェンディ
セカンド:チンク
サード:ノーヴェ
ショート:セイン
ライト:オットー
センター:セッテ
レフト:ディード


監督兼コーチ兼専属医:スカリエッティ
コーチ兼メディカルスタッフ:ウーノ
きぐるみ担当:クアットロ
チアリーダー:ドゥーエ

スポンサー:最高評議会
464名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 21:08:32 ID:wnhkz1hT
やべえ!!無性に野球対決見たくなってきたwww

ただ・・・地獄甲子園+アストロ球団+楽しい甲子園+逆境ナインばりの修羅場しか創造できんw
465名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 21:25:15 ID:2BBNNEsc
・なのは…ストレート、変化球、コントロールとも申し分なく突出しているが、スタミナが不安。100球をメドに降板することが多い。人気は抜群。
・スバル…ド迫力のストレートと無尽蔵のスタミナが武器。ただし、変化球とコントロールはからっきしでストレートが悪いと途端に打ち込まれる。
・ティアナ…コントロールが良く常に安定したピッチングを披露。七色の変化球を持つと呼ばれ通のファンから人気が高い投手。弱点はここ一番での度胸の弱さ。
・ヴァイス…精密機械と呼ばれる中継ぎ投手。針の穴を通すコントロールを持つ。デッドボールにトラウマがあるとか。

・トーレ…全ての能力において優れた力を持つ。変化球に若干の不安を持つが、それを補うストレートと変化球で機動六課に立ち向かう。
・セッテ…能力的にはトーレをも上回ると呼ばれる逸材。だが機械的な投球しかできないため一旦捕まると打ち込まれるケースもしばしば。
・オットー…知的な投球術を披露し、コントロールと変化球を武器に内野ゴロの山を築く。フィールディングも良い。弱点は本人曰く、無い。
・ノーヴェ…重いストレートとスタミナが武器。実質的なスバルの妹に当たり、対戦時は対抗心むき出し。周りが見えなくなってしまうことがある。
・ディエチ…爆発的なストレートを持つ。ナンバーズの抑えの切り札。当然、スタミナは無い。

フェイトさん以下ライトニングの面々やヴォルケンズは野手向きだと思うんだ。
ちなみにキャッチャーははやてさんとクア姉。

あれ? こんな内容の漫画をどっかで見たぞ?
466名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 21:54:34 ID:nOoUZVRu
ティアナは某大振りの主人公のイメージがあるな
ティ「私なんか!なのはさんみたいに速い球投げられないし……球威もないし……」
ザフィ「大丈夫だ。私の言うとおりに投げれば私がお前を勝たしてやる」
キャッチャーはスバルじゃないのはイメージ的に
467名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 22:00:06 ID:dcQACE1G
>>466
ヴァイスがアップを始めたようです
468名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 22:00:27 ID:XoaR1bD7
>>401
久々にGJっす。
この長編、伏線多くて纏めるの大変そうだなーって思いますw
浚われたのはスバルか…原作では主人公格のキャラが、敵にまわる(?)ってのは案外王道ですね。
脳味噌達とか、聖王教会は何企んでて(考えてて)、どう動くのかが見物ですな。
469名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 22:01:18 ID:pZaq4LkY
ザフィーラはアレだろ、広島にもいたボール運び犬。
470名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 22:03:31 ID:jMEXR7Xo
www.nicovideo.jp/watch/sm846388 他

パワプロでなのは を思い出した。
ティアナは三振とか振るわず、凡人だった。
471名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 22:05:46 ID:0VkYfscl
連絡
案の定
案の胴

って、誰になるんだろ
472名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 23:18:09 ID:7Yz7VI9i
>>465
トーレさん変化球に不安があるのに変化球で立ち向かうのか
473465:2008/10/04(土) 23:57:25 ID:Fz9jxNQ/
>>472
対して確認もしないで投稿するからこうなるんだよ…

・トーレ…全ての能力において優れた力を持つ。変化球に若干の不安を持つが、それを補うストレートとコントロールで機動六課に立ち向かう。
474名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 00:12:53 ID:kfAQ7sta
巨人の星とか見せたら、その気になって養成ギブスをドクターにねだりそうだな。
475名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 01:35:30 ID:0ezluqix
ドクターなら調子気に乗ってトーレが動けなくなるようなギブスを作るに違いない
476名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 01:36:01 ID:kFkdaavZ
>>465
不調時のスバルはARAKAKI連発ですねわかります


>>471
案の胴って誰?
477名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 01:41:37 ID:dKW0gD+p
>>476
つまりティアナはわだくんということやな
478名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 01:49:10 ID:Vt0Su5QC
>>476
案の胴=imok
479名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 01:59:29 ID:kFkdaavZ
>>477
一瞬、何故高級アイス?と思ってしまったw

>>478
dクス とらせん住民だけど初めて聞いた
480名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 05:24:54 ID:gGNaAkAU
ユーノ君はもう何もユーノ
ナンチテ( ´w`)b











なのはのばあか
481名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 06:01:38 ID:MSO4UhS8
マッガーレ!!
482名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 12:27:26 ID:Vt0Su5QC
帰りますよー[ー。ー]
483名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 13:03:21 ID:G6w2D7ta
なんだ貴様は
484562:2008/10/05(日) 13:44:29 ID:KZiENyqS
久しぶりの投下になります。
凄く長いです。



注意事項
・一応は1期の再構成になります
・高町家がアニメより、原作に近い設定になってます
・非エロ
・タイトルは『魔法少女リリカルふぇいと』
485562:2008/10/05(日) 13:45:51 ID:KZiENyqS
思い返して見ると、私が魔法少女になったのは、ユーノとの出会いでした。
傷付いたフェレットを拾い、訳が分からないまま化け物と戦い、そして、あの子が出てきて変な事に。
大変だったけど、死のうと思った事もあったけど、それでも、今こうして振り返ると悪い事では
なかったように思います。だからユーノを助けます。

そして、この衣装を考えたのは私じゃないと証言してもらいます!

いや、本当に今さらなんだけど、私の衣装ってユーノがデザインしたスク水を改造したような恥ずかしい
格好なんですよ。
クロノやリンディさんは、どう思ってるんだろ?
まさか露出癖のある変態少女なんて思ってないよね?
でも、少なくとも好意的な目では見られない気がする。ましてクロノって嫉妬深いし……

必ずユーノの口から真実を言わせなくちゃ。もし、ユーノが死んでしまったら、私がユーノの所為って
言っても、死んだ人に罪を押し付ける嫌な女になってしまいます。
絶対に助けよう。

そして、あの子。なのは・テスタロッサ。
あの子の所為で私は学校で白い目で見られ、死のうと考えるほど追い詰められたんです。
今度の戦いで絶対に倒します。それも2度と私の前に現れないように完膚なきまでに!

そして、戦いが終ったらクロノの想いを受け入れ、アリサとすずかに彼氏だと紹介して、誤解を解いて
人生をやり直します。

それではバラ色の人生に向って、魔法少女リリカルふぇいと始ります。



第11話

思い出したくない感触?

486魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 13:47:10 ID:KZiENyqS
朝日が昇るまで、あと少しという時間。海を一望できる場所、海鳴公園の一角に、フェイトは立っていた。
もうすぐ約束の刻限だと思いながら、公園に取り付けられている時計に目をやる。

「待たせたかな?」

時計に目を移し、地上から目を離したタイミングで声がかけられる。
狙ったようなタイミングだが、不意打ちをするなら兎も角、そんな必要の無い今回は単なる偶然だろう。
フェイトは、そちらに目をやると、少し意外な表情を浮かべる。
ユーノが居たのだ。てっきり、なのはのアジトに監禁されていると思っていたから意外に思ったが、
むしろ好都合だと考え、先ほどの問いに答える。

「別に待ってないよ。それより……」

フェイトはバルディッシュに呼びかけ、ジュエルシードを取り出す。
現れたジュエルシードは、フェイトの頭上まで浮かび上がり、淡く輝きを放つ。

「レイジングハート」

なのはも、それに応えジュエルシードを取り出すと、同じく頭上まで浮かび上がる。
そして、両者の出したジュエルシードは引き合うように互いの中心で集まり、円を描いた。

「これで、21個全部だね」
「そして、貴女を倒して、全て管理局に渡します」

殊更、冷たく言い放つフェイトに、なのはは悲しそうな表情を浮かべると、レイジングハートを
構える。

「ううん。それは、わたしが手に入れるの。そして、フェイトちゃんの洗脳を解いて上げるから……
 大丈夫だよ。安心して」
「また、ふざけたことを!」

フェイトが飛行魔法を発動し、海上に場所を移し、なのはがそれを追う。
そして、呪文が飛び火してジュエルシードが発動しないように距離を取った場所で2人は向き合った。
487魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 13:48:40 ID:KZiENyqS
「ランサーセット」
「ディバインシューター」

フェイトの周囲を金色の槍が囲み、なのはの周囲を桜色の光弾が囲む。
フェイトの槍は4本。対するなのはの光弾は12個。数だけで言えば1:3の戦力差だ。
そして、威力や操作性を加味すると、その差は縮まるどころか逆に開く。それが2人の実力差だった。
だがフェイトは怯まない。何故なら、その戦力差は、あくまで撃ち合いを限定にした差なのだから。

「ファイア!」
「シュート!」

2人同時にトリガーヴォイスを発し、光弾がぶつかり合う。
フェイトは撃った後、瞬時に場所を移し、なのはの懐に飛び込むもうと模索するが、なのはの周囲は
待機状態のディバインシューターに囲まれている。
そのため、迂闊に近づく事も出来なかった。
さらに、攻撃が出来ずにいるフェイトを誘導弾が追い、背後から近付いてきた。

「9」

だが、フェイトは振り返る事もなく、魔法で編んだ鋼糸を発動させると、その糸で誘導弾を迎撃する。
目に頼らない、魔力の気配を頼りに場所を特定する能力を、フェイトは身につけていた。
迎撃も、鋼糸ならば線の動きとなり、面の盾には及ばないが、点の射撃より容易に捕らえることが可能と
なる。
そして、追撃してくる光弾が無くなった機に次なる呪文を発動するため、バルディッシュをシーリング
モードに変形させ天に向ける。

「行くよ! バルディッシュ!」
『Yes sir』

フェイトの呼びかけにバルディッシュが答えると、晴天だった空が暗い雲に覆われ、地上に生まれし生物が
本能的に恐れを抱く音、雷の音が鳴り始める。
そして、フェイトの足元に開いていた魔法陣が放電し、術者のフェイトとバルディッシュを雷光が覆った。

「な、なに?」
488魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 13:49:51 ID:KZiENyqS
なのはは、失った数と同じだけディバインシューターを生み出しながら、フェイトの魔法に不安を覚える。
彼女が如何に強力な魔導師と言えど、そこは幼い少女。本能を揺さぶる音に恐怖を抱く。

「サンダーレイジッ!」

そして、フェイトの掛け声と共に幾筋もの落雷がなのはに落ちる。

『Lightning Protection』

なのはより先に反応したレイジングハートが自動で対雷撃系防御魔法を発動し、落雷から主を守るが、
これまで展開していたディバインシューターが、落雷により破壊され、周囲を守る光弾が無くなっていた。

「バルディッシュ!」
『Blitz Action』

最初から、それを狙っていたフェイトは高速移動魔法ブリッツアクションを発動させると、猛禽のように
なのはに迫る。
そして、バルディッシュを振りかざし、今のフェイトに可能な魔法の内、最大の攻撃力を持つ技を
準備する。

「―っ! レイジングハート、移動!」
『Flash Move』

フェイトは、なのはなら必ず防御すると思っていた。自分の防御に絶大な自信を持つ彼女が逃げるなど、
完全に想定していなかったのだ。
しかし、普段なら受け止めるはずの、なのはが回避を選んだ。そして、レイジングハートもなのはの指示を
受けてから発動したのでは無かった。
理由は無い。ただ、なのはもレイジングハートも、受けてはダメだと感じたのだ。

「レ、レイジングハート?」
『分かりません。ただ、受けない方がよろしいかと』
「だ、だよね」
『それと彼女……』
「うん。強くなってる。予想以上に」
489魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 13:51:13 ID:KZiENyqS
一方のフェイトも、避けられるとは思っていなかったので、弱冠の焦りを覚えていた。

「まさか、高速移動があったなんて……」
『大丈夫です。それでもスピードはこちらが上です』
「う、うん」

だが、そんなものは何の慰めにもならなかった。元々、実力で言えば圧倒的に、なのはの方が上なのだ。
それでも、フェイトが勝ちを意識できたのは、なのはが自分の事を敵として見ていない。言い換えれば
見下しているからこそ、その油断を突けると思っていたのだ。
しかし、当てが外れた。この後も、なのはは自分の接近を嫌がるだろう。そうなれば容易には近づけないし
離れていては勝てる可能性はゼロに等しい。

(どうする?)

フェイトが、そう思ったのと同時に、なのはも同じ事を考えた。
最初から彼女に油断が無かった理由は、単にフェイト相手に力を使い切るわけにはいかないからだ。
予測では、この後もクロノとの戦闘が控えている。それなのにフェイトを倒した後も充分な魔力が
残っていないと拙いし、傷を負うなど絶対にあってはならない。

『マスター、悩んでも仕方がありません。少なくとも長引けば、それだけ不利になるのですから』
「……うん。そうだね」

飛行にだって魔力は消費する。何より戦闘におけるストレスは精神力を消耗してしまうのだ。
ここは、多少強引にでも突破を狙う方がリスクが少ない。

「ディバインシューター」

そして、フェイトも腹を括る。睨み合っていても埒は明かないのだ。結局は己の全てをぶつけて戦うのみ。
隙が無いなら作れば良いだけだ。なのはがディバインシューターを防御に残すように、フェイトも魔力の
鋼糸を伸ばし、周囲を覆う。これで多少は迎撃がしやすくなる。
そして、高速移動をしながら、隙が出来るまで射撃魔法で攻撃する戦法に切り替えた。

「フォトンランサー!」

2人の戦闘は、互いが立てた当初の予想を外れ、2人の容姿に似合わぬ泥沼めいた消耗戦へと突入した。
490魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 13:52:43 ID:KZiENyqS


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


「凄いやフェイトちゃん。何時の間にあんな……」

呆然としたエイミィの呟きに、リンディも同感だった。
最初に出会った時から、外見の麗しさや、控えめな女の子らしい性格には目を奪われたが、能力はと
言えば、才能はありそうだが、偏った力をもつ使いどころが難しい魔術師と評価していた。
今は、自分の目が節穴だったことを認める。
そして、彼女の才能を引き出した息子を見直す。
確かにフェイトの素質は偏っている。それ故にユーノはフェイトの能力を引き出すことが出来なかった。
しかし、クロノは偏ったなりに長所を引き出し、鋼糸という奇妙な魔法を実戦で如何に使うかを検討た上で
防御力や空間認識の弱さを補わせたのだ。
同時に、フェイトの能力がクロノと組んだ時に、より強さを発揮する事に気付いた。クロノは一見、欠点が
無い魔導師のように見えるが、少しだけ機動に難があった。
もっとも指揮官が動き回るのは問題だし、無駄な動きをしないと言えばそれまでだが、ここでフェイト
のような高機動かつ接近戦型の魔導師がサポートすれば、より完璧になる。
もしかすると、クロノはフェイトを自分のパートナーにすべく育てたのではと、リンディは淡い期待を
抱いた。

「ユーノ、絶対に助けるぞ」

だが、あっさりと淡い希望は打ち砕かれる。クロノの視線は戦闘を見ておらず、人質としてアルフに
捕まえられたユーノを見つめていた。
そして、その脳内では如何に救出するか、高速でシミュレートされていた。

「……無理か」

やがて、ガックリと膝をつく。現状では飛び出したところで救出は不可能。せめて人間モードなら
何とかなったが、フェレットモードで、しっかりと掴まれている状態では、どうにも手が出せない。
諦めてフェイトとなのはの戦闘を見始める。
だが、その表情は明らかに「早く終わんねえかな〜」という無気力な表情だった。
491魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 13:53:53 ID:KZiENyqS


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


まさか、なのはがこうも手こずる事はアルフには完全に想定外だった。
本当ならフェイトは前哨戦として軽く片付ける相手のはずだったのだ。
だが現実は、なのはの表情に戸惑いと焦りが浮かび、無駄に時間と魔力を消耗している。

「―っ!」

その時、握り締めているユーノが短い悲鳴を上げた。

「悪い! 強く握りすぎたかい?」

アルフは自分の苛立ちが身体に出てユーノを掴む手の力が上がったのかと思った。
そのため、謝りながら、握る手の力を緩める。
だが、ユーノの慌てた発言は、その予測を否定する。

「ダメ! 緩めちゃダメだ!」
「え? う、うん」

そして、アルフが再び強く握るとユーノは僅かながらも安堵する。
ユーノの先ほどの悲鳴は、クロノの視線を感じての悲鳴だった。

「なあ、やっぱり来たくなかったかい?」
「だ、大丈夫」

勢いとは言え、なのはに協力する気になったユーノは、より確実に管理局側に約束を守らせるため、
目の前で人質になることを選んだ。
だが、この状況は本当は怖かった。突然、何処からかクロノが湧いてくる可能性があるのだ。
そんなことになったら、ユーノはクロノの腕の中で武装隊に囲まれる、なのはを見る羽目になるだろう。
なのはが武装隊に襲われるのも嫌だが、クロノに抱かれるのは死んでも嫌だった。
そのため、先ほどから、小動物のように……まあ、本当に小動物だが……警戒しながら辺りを探っていた。
492魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 13:54:57 ID:KZiENyqS


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


その頃、なのはの苛立ちは頂点に達しようとしていた。魔力を節約しているとは言え、フェイトに1発も
当たらないのだ。
いっそ、全開で撃てば当たるかもしれないが、当たらなかったときが困る。フェイトの動きは、それほど
速く、自信が無い以上、無駄な魔力消費に繋がる行動は避けたかった。

「こうなったら……」

確実に足を止める方法は1つしかない。バインドに引っ掛かる気配がない以上、相手の打撃を受け止める。

『マスター、危険です』

なのはの考えを察したレイジングハートが警告する。
だが、なのはは聞く耳を持たなかった。

「危険って何が? わかんないなら試すまで!」

なのはが待機させておいたディバインシューターを全て攻撃に転じさせ、フェイトに向けて飛ばす事を
決意する。今のフェイトなら、この数でも避けながら接近するだろう。
そして、周囲にディバインシューターが無くなれば、フェイトは近接攻撃をしかけるはず。
だが、フェイトの打撃を止める事が出来れば、受け止めている間にディバインシューターを誘導して
背後から当てる事が出来るのだ。

「シュート!」

フェイトは、自分に迫る豪雨のような光弾を見つめた。その先には、周囲を守る光弾を無くした、なのはが
いる。そうなることを、ずっと狙っていたのだが、あまりにも都合が良すぎた。

「誘ってる?……でも!」
493魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 13:56:36 ID:KZiENyqS
なのはは自分の攻撃を受け止めるつもりだと、フェイトは察した。
その、堂々とした態度に怯みそうになるが、ここで退くわけにはいかない。
なのはの防御が勝るか、自分の攻撃が勝るか。

「行くよ! バルディッシュ!」
『Yes sir』

鋼糸を1本だけ前面に展開し、最小限の動きで、どうしても避けきれない光弾だけを鋼糸で弾きながら、
矢のように突進する。
そして、光弾の豪雨を抜けると、目の前に白い魔導師がいた。すでにラウンドシールドを展開している。
さらに背後からは、先ほど通り抜けた光弾がターンし、フェイトを背中から襲おうと迫ってくる。
だが、構わない。

――杖を振りかぶり、なのはのシールドの構成を読む。

アルフのバリアブレイクやクロノのブレイクインパルスのように触れてからでは遅い。触れる前にシールド
の構成を読み取り、バリア生成プログラムに割り込みをかける魔力をバルディッシュの刃に付加させる。
初見のシールドには無理だが、なのはのシールドは何度も見ているため、構成を理解していた。
後は、シールドに流れる魔力の動きを読み取り、最も弱い部分を干渉しながら貫く。

――構成は読めた。後は貫くのみ。新たな魔法であり、御神流の剣技を口にする。

「貫!」

なのははシールドに魔力を込め、どのような攻撃にも耐え切れる心構えをしていた。
どれほど強力な魔法であろうと、数秒は耐え切る自信を持つ。そして対するフェイトから感じる魔力は
さほどの大きさでは無い。
絶対に耐えて見せると確信していた。

「え?」

しかし、次の瞬間、なのはの目にはシールドを擦り抜けてくる金色の刃が映っていた。


494魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 13:58:06 ID:KZiENyqS
◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


「なのはぁっ!」

主の名前を叫ぶアルフの目の前で、力なく海へと落下する、なのはの姿があった。
その手の中では、呆然と見ているしかなかったユーノが、何があったのか理解しようと頭を働かせる。
確かに、フェイトの斬撃は、なのはのシールドの上から叩かれた。
余程の力の差が無い限りは、普通ならば、そこで止まる。
その後に、攻撃側が勝ればシールドが砕けるし、防御側が勝れば攻撃は弾き飛ばされる。
だが、今回のは違う。シールドを何も無かったかのように擦り抜けたのだ。

「完成したんだ……」

かつて、クロノと出会う前、対なのは用に訓練していた技。
正直、ユーノは不可能だと思っていた。それにクロノと出会って、真っ当な魔術の訓練を受けたため、
そのような……ユーノにとっては奇策としか言いようの無い技には頼らないと考えていた。

「アンタ、あの技を知ってたのかい!?」

だが、アルフの責める様な口調に思考を中断される。
ユーノは、なのは達に囚われている間、フェイトの戦闘能力について聞かれたことがあった。
その時に、正直に話したのだが、貫に関しては話さなかったのだ。ただ、それは隠していた訳では無く、
必要ないと思ったからなのだが、アルフは肝心の部分を隠していたと捉えたようで、怒りを滲ませていた。
だが、アルフの感情は怒りけでは無い。アルフの瞳には裏切られたような悲しみも滲んでいた。

「……ゴメン。訓練してることは知ってたけど、出来るわけないって思ってたから」

本来なら敵同士で、謝る必要など無いのだが、ユーノの口からは自然に謝罪の言葉が出た。
アルフもその事に気付いたのか、バツが悪そうにそっぽを向くと、なのはが落ちた海に目を移す。
もしものために、プレシアが待機していたが、今の攻撃では時の庭園にいるプレシアにも反応しようが
無かった。もっとも、アルフは、なのはがフェイトに負けるはずが無いと信じていた。

「なのは……」

力なく主の名前を呼ぶ。アルフは、こんな呆気なく終わりが来るとは夢にも思わなかった。
495魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 13:59:09 ID:KZiENyqS


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


「……フェイトちゃん、勝っちゃった」
「ええ、勝ったわね」

エイミィとリンディが呆然と呟く。
完全に予想外の出来事だった。フェイトには失礼な話しだが、アースラのスタッフはフェイトが
負けることを前提に作戦を立てていたので、この状況ではどう動けば良いのか判らず、ボーっとしていた。

「ね、ねえ、クロノ君。今のなんだったの?」
「わ、分からない。ただ、シールドが機能しなかったとしか……」

クロノも事態を掴めずにいた。なのはの強力なシールドの前では、フェイトの攻撃でも確実に止められる
はずだった。
あの瞬間、フェイトの攻撃を、なのはがシールドで受け止めた時、クロノは終わったと思った。
なのはが抑えている間に、後方から襲ってくる光弾にフェイトが打たれる光景を想像したのだ。
そのため、すぐに出撃しようと心の準備をしていたのだが……

「君は何をしたんだ?」

モニターに映るフェイトに向って呟く。その声が届いたわけでは無いだろうが、モニターの向うの
フェイトは、大きく深呼吸をすると小さくガッツポーズを取った。
そして、はにかんだ笑顔を浮かべ、モニター越しに小さく手を振ってくる。
その笑顔につられ、クロノとリンディが手を振り返した時、桜色の閃光がフェイトを包み込んだ。

「か、海中から砲撃!? なのはちゃん! 健在です!」


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

496魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:00:52 ID:KZiENyqS
「……ん……?」

フェイトは目を開けると、自分が誰かに抱きかかえられている事に気付いた。
何がどうなっているのか分からない。確かに“貫”は成功したはずだった。シールドを擦り抜け、直撃を
当てた肉体から、血のように魔力が噴き出し、なのはは飛行能力を維持できずに海中へと落下した。
そこまでは間違いない。
しかし、問題はその後だった。貫の成功と、なのはの撃墜を理解し、勝利した実感が湧いた瞬間、
意識が途絶えた。
そう言えば、見覚えのある閃光に包まれた気が……

「フェイトちゃん、大丈夫?」

そこまで考えた時、聞き覚えのある声が直ぐ側で聞こえた。
そして、自分を抱えてる人間の正体と、自分の敗北を悟った。

「……一応」

もう、なのはを恐れる気持も逃げ出す気力も無かった。自分は死んだのだ。死人が恐怖を抱く必要は無い。
父と兄が聞けば怒るだろうか? いや、怒ってもくれないだろう。
敵の状態を確認もせず、勝ったと勘違いして油断するなど、剣士失格だ。

「その……泣かないでよ。フェイトちゃん」

なのはにそう言われて、フェイトは自分が泣いてる事に気付いた。
何処まで失態を晒せば気が済むのだろうと、自分を詰りたくなる。

「なんで?……なんで平気だったの?」

だが、口から出たのは、自責の言葉ではなく、相手が無事だった理由。
これでは、命を懸けた実戦ではなく、腕を磨きあう試合ではないかと思うが、口は止まらなかった。

「効いたはずだよ? 手応えがあったもん。魔力がたくさん飛び散った。魔力が残ってたとしても、
 痛みで動けなくなるはず」
497魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:01:55 ID:KZiENyqS
それは質問という名の言い訳だった。自分が油断したのは仕方がないという、子供染みた言い訳にしか
過ぎない。
あの勝負は自分の勝ちだった。なのはが今こうしているのは何かの間違いだと信じたかったのだ。
だが、なのはは、あっさりと説明する。

「うん。凄く痛かった。でも我慢した」

笑顔で言い切った。だが、それが逆にフェイトを落ち込ませる。
余りにも単純な理由。だからこそ、敗北感も強かった。
何の事は無い。魔力や戦闘技術の差ではなく、気力の差で負けたのだ。もう、涙を止める気力も無かった。

「と、ところでフェイトちゃん……」
「……なに?」
「洗脳、解けた?」

何を言い出すかと思えば……フェイトは完全に切れた。

「そんなもの最初から、されてない! 君が独りで盛り上がってただけ!」
「うっ!……そ、そうなんだ……実は心の何処かで、そんな気がしない事も……」

ずっと怖くて言えなかった事だが、自暴自棄になっているフェイトは、ハッキリと言った。
もう、どうなっても良い。殺すなら殺せと思っていた。
しかし以外にも、なのはは認めてしまった。彼女は彼女なりに、不自然だと感じていたようだ。

「そ、そうだよね。フェイトちゃんにとっては急すぎたかもしれない。うん……そうだよ」

何だかブツブツ言ってると、フェイトが思って、なのはを見ると、彼女は深刻な表情で何かを
考えてるようだった。

「そうだよ……うん。わたし、ちゃんと伝えていなかった。“言葉だけじゃ伝わらない思いがある”って
 知ってたのに……ゴメンね。フェイトちゃん。だから、今度こそ“私の想いを”ちゃんと伝えるよ」

そう言いながら、なのはの顔が近付いてくると……
498魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:03:08 ID:KZiENyqS













ズギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンンンンンンンンンン!!!!!

















499魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:04:32 ID:KZiENyqS


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


「え!? あのっ? えっと、その……さ、さすが、なのは! あたし達に出来ない事を……」
「良いよ。君もあんまり無理しなくても」

2匹の使い魔(?)の間で……


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


「女同士で? 正気か?」
「クロノ君が言っても……」
「最近の若い娘は……」

アースラで……


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


「プレシア、貴女の娘さん……」
「ごめんなさい。ごめんなさい。あんな子、作ってごめんなさい」

時の庭園で……

激震が奔った。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


500魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:05:37 ID:KZiENyqS
チュポンという音をたてながら、なのはの顔が離れる。

「……わたしの想い、今度こそ伝わったかな?」

何か言ってるが、フェイトはそれどころではなかった。
自分が何をされたかを考えると、ノイズが奔る。いや、本当は分かっているのだが、認めたくなかった。

「あう……あう……」
「まだ、足りないのかな?……もう、フェイトちゃんって鈍感さんなんだから。よし!」
「え? んんっ!?」




ズギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンンンンンンンンンン!!!!!





「どう?」

フェイトは、再び自分の考えの甘さを悟った。だが、今は気付いている。
なのはにとって、フェイトが断るといった選択肢は存在しないのだ。
あるのは2つ。

――なのはの想いが伝わり、結ばれるか。

――なのはの想いに気付いていないのか。

NOと言い続ける限り、なのはは想いの伝え方が足りないのだと考え、アタックしてくるだけだ。
それは、正に無限地獄といえた。
逃げ場など何処にも無いのだ。
501魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:06:39 ID:KZiENyqS
「茶番は終わりにさせてもらう」

フェイトを観察していた、なのはの背後から声と同時に激痛が奔る。転移してきたクロノの攻撃だった。

「―!」

痛みのあまりに抱いていたフェイトを手放すが、拾い上げる間もなく背後の魔力が高まっているのを
感じる。大きい魔法がくると察した、なのはは振り向いてシールドを構成した。

「今のダメージで防ぎきれるか!?」
「やってやる!」

なのはは落ちたフェイトを心配するが、構っている暇は無かった。
クロノも心配ではあったが、今はなのはを倒すチャンスだった。フェイトの奮闘で予想以上のダメージを
追っている。ここで倒さなければ、それこそフェイトに申し訳が立たない。

「ブレイズ――」

クロノのデバイスS2Uの先端に魔力が集中する。
そして、放たれんとした瞬間、クロノはS2Uの先端を、なのはから後方に向けると。

「――キャノン!」
「〜〜〜!」
「アルフ!?」

後方から奇襲をかけようとしたアルフにブレイズキャノンの直撃が当たった。
悲鳴すら上げられず吹き飛ばされるアルフを尻目に、クロノはS2Uを振り向き様に縦に振り下ろす。
その先端は、なのはのシールドを正面からではなく、上部の縁にデバイスが引っ掛かる形となった。

「これで――」

そして、引っ掛けたS2Uとシールドの接点を基点としてクロノは回転し、なのはの頭部に蹴りを
加えようとする。
しかし、その瞬間、何処からとも無く飛来した巨大な紫電がクロノを襲った。
502魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:08:48 ID:KZiENyqS
「――来ると分かっていれば、対処のしようもある!」

だが、その紫電、プレシアの次元跳躍砲をクロノはかわしてみせる。

「お、女の子の頭を蹴ろうとした〜〜!」
「そんなこと言ってる場合か?」

シールドの裏に回り込んでの攻撃は不発に終わったが、今のなのははシールドを展開していない。
もう、魔力が残っていないのか、それとも痛みで集中できないのかは分からないが、ここで悩む意味は
無かった。

「今度こそ――」

再びS2Uの先端を向け、ブレイズキャノンを放つ。
なのはは慌ててシールドを構成しようとしているが、展開が遅い。ダメージの大きさがうかがえる。

「――終わりだ!」
「なのは!」

アルフの悲鳴が響く。今すぐ盾になりに行きたいが、先ほど喰らったブレイズキャノンのダメージで
動けなかった。
そして、無情にも水色の閃光が、なのはに迫った。

「え?」

だが、撃ったクロノが驚きの声を洩らす。ブレイズキャノンが阻まれたのだ。
碧色のシールドによって。

「ユーノ!?」
「ユ、ユーノくん?」
「なのは! ジュエルシードの回収を!」
「う、うん」

503魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:10:05 ID:KZiENyqS
ユーノの言葉に従い、ジュエルシードを回収するなのはを、クロノは呆然と見ていた。
いや、正確に言えば、回収するなのはを庇うように立ち塞がるユーノをだ。

「アンタ……」
「アルフ、撤退の準備を」
「え?……OK、任せな」

隣に来たアルフが、戸惑うように声をかけるが、ユーノは力強く、次の行動を指示する。
新参の自分が仕切る事に不満を言われる事を覚悟していたが、アルフは嬉しそうに返事して行動に移った。
事実、アルフは嬉しかったのだ。ユーノが本当に味方してくれるのだから。

「何故だ? 何故、そいつらの味方を?」

そんな中、クロノがユーノに問いかける。
だが、その質問に対する回答をユーノは持ってはいなかった。でも、これだけは言える。

「分からない。ただ、彼女を守りたかった」
「ジュエルシード、回収終了!」
「こっちもOKだよ!」
「よし、戻ろうか!」
「うん♪ お母さん。喜ぶかな……」

プレシアの元に戻る。なのはは嬉しそうだった。ユーノは、その笑顔に複雑な想いを抱く。
そして、離れ行く3人を見ながら、クロノが愛する者の名前を叫ぶ。

「待て! 待つんだ! ユーノォォォォォォォ!!!」

そして、海に落ちたフェイトもまた、口に残っている感触を失くそうと、海水で口を洗い、うがいを
しながら絶叫する。

「ふぁ、ふぁあすときす! ふぁあすときすがぁぁぁぁ!!!」


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

504魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:11:02 ID:KZiENyqS
「ただいま、お母さん」

帰ってきた、なのはを迎えたプレシアは、真剣な表情で、なのはを見つめた。

「お、お母さん?」

母の笑顔を期待していた、なのはは、母の探るような強い眼差しに首を傾げる。
その2人を見て、ユーノは不安に駆られる。彼女は何をするつもりなのかと。
せめて、帰って直ぐくらいは労いの言葉をかけるのが普通ではないかと思うのだ。

「リニス!」
「はい、お任せを」
「レイジングハート、なのはのバリアジャケットを解除しなさい」
『All light』
「え? え? え? ちょっと、きゃあぁぁぁぁぁ!」

なのはの悲鳴が、辺りに響く。
本来、主を守るべきはずのデバイスが防御を解き、なのはは、普段着ている服をリニスの手で力任せに
剥ぎ取られていった。

「な、何をするんです!?」

ユーノが止めようと飛び出しかけたが、足を掴まれて止められる。
そして、ユーノは驚きの表情を浮かべる。止めたのは、なのはを守る事を第一とするアルフだったのだ。
だが、ユーノが驚いたのは、アルフの行動ではない。彼女の今にも力尽きそうな表情にあった。

「ア、アルフ!?」

ユーノがアルフに声をかけるが、アルフは荒い息を吐くだけで、黙り込んでいる。
やがて、大きな水音がしたかと思って、振り向くと、なのはが巨大な水槽に放り込まれたところだった。

「プ、プレシア……なのはは……大丈夫?」

アルフが苦しそうに声を上げる。質問されたプレシアは、何かのモニターを真剣に睨んでいたが、
やがて、大きな息を吐いて苦笑を浮かべながら返答をする。
505魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:12:53 ID:KZiENyqS
「大丈夫よ。ギリギリだったけど、これなら治療も間に合う。再生液に入れたから、ゆっくりだけど、
 魔力も回復する。傷もね」
「ははは……さすが、なのはだ」

ユーノは、その様子を見て、なのはが、危険な状態だったと察した。
なのはは最後まで笑ってはいたが、命の危機だったのだ。我慢強いにも程があると思うが口には出せない。

「本当に、我ながら頑丈な娘を生んだものだわ」

なのはは、プレシアが腹を痛めて産んだわけではない。だが、それでも、なのはを生んだのはプレシアだ。
人工生命体としての、なのはの生みの親は、間違いなくプレシアだった。

「アルフ、貴女も寝なさい。この後のことは良いから。貴女が何時までも起きてると、それだけで、
 あの子の負担になるのよ」
「うん。わかった……おやすみ」
「ええ、おやすみなさい。起きたら、すぐに、なのはの相手をしてもらうから」
「うん……」

そう言うとアルフは狼の姿になり、丸まって眠りについた。

「リニス、アルフをベッドに」
「はい……よっと」

ユーノは、その光景を黙って見ているだけだった。この空気に入り込めない。
そもそも、なのはのダメージにさえ気付いてなかった自分に、何が出来るというのか。
それなのにユーノは疑った。プレシアが、なのはに何かすると思ってしまった。

「ご、ごめんなさい」

そして、居た堪れなくなったユーノは、思わず謝罪の言葉を口にする。
謝られたプレシアは、キョトンと首を傾げるが、ユーノが謝った理由を察すると、苦笑を洩らす。

「謝ることはないでしょ?」
「で、ですが僕は貴女を疑いました」
506魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:14:19 ID:KZiENyqS
プレシアは苦笑を深めると、なのはの入ったシリンダーを見つめる。

「それこそ謝る事じゃないわ。何度、この失敗作を殺そうと思ったことか……今回も馬鹿なことして」

口では、そう言いながらも、その目に殺意は無かった。
困った子供を見るような、優しげな眼差し。どう見ても母親のものだ。
しかし、彼女は、今見ている娘に満足していなかった。
彼女の目的は死者の蘇生。絶対に不可能な領域への挑戦。そのために、今ある家族を傷つけている。
ユーノは、彼女を止めなければならないと考え始めていた。

「貴女の目的が、実の娘さんを生き返らせる事というのは本当なんですか?」
「この子に聞いたのね?……ええ。本当よ」
「無理です。いくらジュエルシードでも、そんな力はありません」

だからこそ、ハッキリと言う。
そして、自分がどうなろうと、プレシアの無謀な行動を止める事を決意していた。

「たしかに、ジュエルシードは、願いをかなえる力を持つロストロギアです。
 ですが、決して完全な願いがかなうわけじゃありません。死者の蘇生ともなれば…」
「上手く行っても、別人になってる。下手すればアンデッドってとこかしらね」

ユーノの説明を途中からプレシア自身が引き継ぐ。

「それが分かっていながら、何故!?」
「ジュエルシードを、そのまま復活のために使うわけじゃ無いわ。あれは、次元震の発生に必要なの」
「じ、次元震?……正気ですか? そんなことをしたら…」

世界の破滅。その言葉がユーノの脳裏に浮かんだ。子供を失って狂ったとしか思えない発想だ。
だが、プレシアはユーノの考えを察して、冷静に訂正する。

「心配しなくていいわ。ただ次元震を発生させるだけなら1個あれば充分。数が必要なのは、ちゃんと
 理由があるのよ」

言われて見れば、そうだとユーノは少しだけ落ち着く。
ただ、次元震を発生させるなら、1個で起こせるのだ。それが複数必要な理由を考えると……
507魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:16:51 ID:KZiENyqS
「闇雲に発生させる訳じゃなく、次元震の方向性を絞る?」
「聡いわね。さすがはスクライア族の神童ってとこかしら」
「茶化さないで下さい。それで、何処に行こうと言うんです?」

次元震の方向性を絞る事は分かった。そして、絞る理由が、行きたい次元があるのだとも察しがついた。
だが、その先が分からない。現状のプレシアの力を持ってしても辿り着けない場所などあるとは、
ユーノには思えなかった。

「アルハザード」
「は?」
「アルハザードよ。聞いたことがない?」

その地名は聞いた事はある。
だが、とてもプレシアのような聡明な人物の口から出てくる地名とは思えなかった。

「正気ですか? それって御伽噺じゃないですか!?」

やはり彼女は狂っていたのか。そうユーノが判断したのも無理はなかった。
だが、微笑むプレシアの瞳には狂気はなく、理性と知性が同居していた。

「実はあるのよ。次元の狭間にね。本当にあるって聞いたし」
「だから御伽噺の話しですよ。それは。誰が、そんな与太話をしたんです?」
「誰って……まあ、変な男ではあったけど、本物よ」
「本物?」
「自分はアルハザードの技術で作られた存在だって言ってたし」
「……それ、絶対だまされてますよ」
「その男がクローン再生技術の基礎を立てたとしても?」
「え?」
「それだけじゃないわ」

そう前置きして、プレシアは、その男が如何に並外れた知識を持つかを語る。どう考えても天才などという
言葉では表せない、異常な人物。

「で、そいつが、あまりに異常だから調べたんだけど、管理局って、かなり……まあ、貴方は知らない方が
 良いわね。うん」
508魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:17:57 ID:KZiENyqS
そう言って、ユーノを見ると、彼の目は焦点を結んでいなかった。
まるで、白日夢を見てるかのように、ボーっとしている。

「さすがに信じられない?」

プレシアは苦笑しながら呟く。呆れて、呆然とするのも無理も無いと思った。自分だって信じられずに、
納得行くまで調べた結果、ようやく信じることが出来たのだし、逆に否定しようと調べつくしたからこそ、
アルハザードの存在を信じたのだ。

「信じないならそれでも構わないわ。それに、すでに廃墟と化しているらしいし、その偉大な技術も
 埋もれてるだろうから、発掘して解析しなきゃならないしね」

だが、ユーノがボーっとしていたのは、プレシアの予想とは別の理由だった。

「……アルハザードが存在する。しかも発掘!」

――誰も言ったことが無い世界!

――まだ見ぬ領域!

――発掘しがいがある遺跡がたくさん!

――ロストロギアが、てんこ盛り!

そこに行ける手段を知ってる人物が目の前にいるのだ。

「行きましょう。先生!」
「せ、先生?」

好奇心旺盛なフェレット…もとい、スクライア族の少年は、まだ見ぬ世界を思い、目を輝かせていた。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇

509魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:19:25 ID:KZiENyqS
「さて、どうしたものかしら」

リンディが困ったように呟く。その原因は……

「ユーノ……どうして?」

全てのジュエルシードが敵の手に落ちてしまった。少しでも早く奪いに行きたい状況なのだが、
こんな事態にも関らず、執務官であり、息子でもあるクロノが、この世の終わりのような表情で落ち込んで
働いてくれないのだ。
リンディとしては、さっさと時の庭園に乗り込んで欲しいのだが、クロノがこれでは使えない。

「仕方ないわね。エイミィ、武装隊だけで突入させてちょうだい」
「わかりました」

先の戦闘で時の庭園の場所は掴んだ。エイミィは執務官抜きで武装隊に突入の指示を与えると嘆息した。
どうも、状況は予想を斜め方向に突きぬけていって、訳が分からなくなっている。
予想を超えるフェイトの奮闘も、ズギューン!で逆転され、挙句の果てにユーノの裏切りとも言える行為。
どうしたんだろうかと思いながら、クロノに視線を送ると……

「この戦いが終ったらプロポーズを……」

……やはり裏切って正解だったかもしれないと思った。その時、外部から通信が入る。
その通信先を見て、驚いてリンディに告げた。

「艦長! 時の庭園から通信が!」
「繋いで!」
「はい」

プレシア・テスタロッサが何を言ってくるのかと思いつつ、モニターを開くと、そこに映ったのは良く知る
顔であり、予想外の人物だった。

『やあ』
「ユ、ユーノくん!?」

満面の笑みを浮かべる少年は紛れもなく、ユーノ・スクライアだった。
510魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:20:51 ID:KZiENyqS
「ユーノォォォォォォォォッ!」

クロノ復活。慌ててモニターの駆け寄ろうとするが……

「そいやっ!」
「ぶほっ!」

……リンディの左フックをレバーに喰らい悶絶してしまった。
息子を沈めたリンディは、咳払いを1つして、表情を引き締めながらモニターに向かい話しかける。

「ユーノ君。どういうことかしら?」
『どうって?』
「え? あの……』

改めて聞き返されると困る。一応は裏切りと判断される行為を問いただしたかったのだが、冷静に考えると
ユーノは管理局員ではないし、裏切りとは少し違う気もする。
そんな事を考えてると、慌てた様子でユーノが口を開いた。

『ところでフェイトは?』
「え〜と……そう言えば……エイミィ?」
「ファーストキスのショックで、部屋の片隅、膝を抱えて不安に怯えています」
「……だそうです」
『……ま、まあ、オープニング曲通りってことで』
「そ、そうね。問題ありません」

エイミィは異次元会話するなとか、問題大有りとか、色々とツッコミたかったが、ここは我慢する。
それより、今はフェイトに何の用かを確認した方がいい。普通ならフェイトを心配してと思うのだが、
それはないと考えていた。もう、この世界にマトモな奴はいない。エイミィは最近、少しだけ人間不信に
なっていた。

「それで、ユーノ君、フェイトちゃんに何の用?」
『うん。バルディッシュを返してもらおうと思って」
「どういうことなの?」

フェイト本人はどうでもいいらしい。やっぱりと思いつつ、一応理由を尋ねる。
511魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:22:14 ID:KZiENyqS
『うん。アルハザードに行く事になったから、発掘のためにバルディッシュが欲しいなと思って』

予想を斜め方向に突き抜けた返答に唖然とする。
そう言えば、バルディッシュって発掘用のツルハシだったと思い出し、現実逃避を謀ろうとするが、
リンディが突っ込んでしまう。

「ユ、ユーノ君……アルハザードって?」

あ! 聞きやがった! と心の中でエイミィがツッコミを入れる。
まともな答えを期待してはいけない。何故なら“アルハザード”という単語を口にしたユーノの目は
怪しかった。ハッキリ言えば逝っちゃってる。

『アルハザードはアルハザードですよ。あの伝説の世界に行くんす!』
「はあ……でも、アルハザードって御伽噺の世界じゃ?」
『でも先生は、あるって言ったんです!』
『あ、あの……坊や、その先生って?』
『待っててください先生! すぐに話を終らせますから!』
『だから先生って……』

後方から、落ち着いた女性の声が聞こえた。この声がプレシア・テスタロッサだろう。
エイミィとリンディは、顔を見合わせて頷きあう。

――この人も苦労してるんだろうな

プレシアと通じ合うものを感じながら、リンディはユーノの要求を断る。

「却下です。バルディッシュは渡せません」
『お、横暴な! だから管理局は!』

それから、管理局の悪口が延々と続く。まあ、大体は合ってるし、変態を執務官にしてると言った辺りは
その通りだと賛同してしまった。

「横暴で構いません。それより、プレシア・テスタロッサと話をさせて下さい」
512魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:25:16 ID:KZiENyqS
息子を変態呼ばわりされて、少々ご立腹のリンディがきっぱりと言い放つ。ちなみに変態扱いされた
息子は、リンディのレバーブローのダメージが抜け切れず、床で悶えている。

『先生に何を吹き込む気かは知りませんが聞けません!』
『べ、別に話しくらいは……』
「後ろで、そう言ってますけど……」
『先生を渡すわけにはいかない! 先生は僕と一緒にアルハザードへ行くんだ! あの! 伝説の!
 理想郷へ! フフッ……アーハッハッハッ!』

もう色々とダメだった。アースラにユーノの哄笑が響き渡る中、リンディとプレシアは同時に溜め息を
吐いた。


◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇


『フェ、フェイト殿! しっかりして下さい! ア、アルハザードが! 私を置いてマスターが自分だけで
 楽しいところに行こうと! フェイト殿ぉぉぉぉ!』
「ふぁーすときすが……ふぁーすときすが……ふぁーすときすが……」

その頃、アースラの一室では、叫ぶデバイスの声も聞かず、焦点を失った瞳で呆然と呟く少女が
膝を抱えて蹲っていた。




続く
513魔法少女リリカルふぇいと:2008/10/05(日) 14:26:17 ID:KZiENyqS
投下終了です。
ユーノ、お姫様ポジションだけでなく、プレシアの哄笑シーンもゲット!
まあ、プレシアがユーノに代わっただけで、フェイトはショックで目が死んでるし、
ほぼアニメの本編通りの内容かと。

さて、次回の時の庭園戦もラストバトルだし長くなると思います。
読んでる方は、また待たせるとは思いますがご容赦を。
514名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 14:29:44 ID:uKmv33A9
>>513
GJ
ユーノ自重しろw
515名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 14:33:37 ID:0uBFHpbc
駄目だこいつら、早くなんとかしないと…
まともな奴らが刻一刻と減る中、フェイトの明日はどっちだ?!
516名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 14:40:57 ID:DbLs8LkA
>>513
GJ
フェイト……
517名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 14:56:20 ID:zOKvnNBw
>>513
>本編通り
嘘をつくなwwwwwwwww
518名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 15:37:11 ID:dON2t2tp
なにこのプレシアさんw
可愛すぎるんだけどw
あと、フェイト、がんばれ……
519名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 15:53:43 ID:kfAQ7sta
テスタロッサ家に婿入りしたくなった。
520名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 16:03:51 ID:Zvt5qNKl
しかし、それをするとついてくるのは白い悪魔だぞ……
521名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 16:12:22 ID:HFPcVrjJ
皆で行こうぜ!アルハザード!!!
522名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 16:13:30 ID:wCVE8hSR
そうだ、アルハザードに行こう
523名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 16:17:35 ID:tWeeeLaF
>>513
GJっす!! 
あらら ・ ・ ・ ついに、数少ない良識人の1人である筈のユーノまで堕ちちゃったかw
524名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 16:40:04 ID:CdpyPWvi
>>513
GJです!

登場人物皆自重しろwww
しかし、ユーノ×プレシアとか新しすぎてもう一度GJするしかないじゃないかwww
525名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 17:04:54 ID:3tvD9DlF
>>ア、アルハザードが! 私を置いてマスターが自分だけで楽しいところに行こうと!

バルディッシュお前もかwww
526名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 17:06:54 ID:e796hzDx
流れをぶった切って悪いが、メガーヌ×クライドとかいう謎電波を飛ばしたのは誰だ。
527名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 17:31:03 ID:NaL7RQy2
>>513
GJ! 最後の良心、ここに堕つ……w
まあ、プレシア一家(一応ユーノも含めて)はこのままアルハザードに行けば幸せになれるような気がします。なのはのあの性癖も、時間が経てば治るかもしれませんし。
ただアースラ陣営はもう駄目ぽwww
528名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 18:34:09 ID:nW0W0L3T
>>513
GJ!!ちょうど一期、観直してたところだからなおさら笑えたw

キスシーンでこれだけ笑ったのは始めてだよw
そして、ユーノ堕つwこの中でプレシアさんが一番の良識派に見えるw

何故か作中の不幸を一身に受け止めてるフェイト…
529名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 21:05:03 ID:aqkorYdd
>>513GJ!!・・・だが、ユーノ自重しろwwww
このままだと、プレシアさんが心労で倒れそうだな。そして、ラスボス化するユーノとかw

フェイトはまあ・・・アナコンダに噛まれたとでも思ってファイト!
530名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 21:25:26 ID:ZQyCvhp/
>>513
GJ! 全体としてすごく新鮮だw
この衝撃のファーストキスだが、勘違いに気づいたら正にとどめになるなw
がんばれフェイト。君は世界に偏愛されている。
531名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 21:38:03 ID:ppIgQ3Mc
そろそろ次スレの時期かな?
532名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 21:42:20 ID:B+myqeNK
あと29KB
533名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 23:19:10 ID:CrGhIUuP
>>513GJ
あれ?尊敬する主がまさかの裏切り・ラスボスって実はバルディッシュが主人公ポジ!?
534名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 23:25:08 ID:CrGhIUuP
535名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 00:35:39 ID:wkpu9qdF
ユーノ「戦闘相手は政治で決まる。自分に忠を尽くせ!」
バル「ボスゥゥッ!!」
536名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 00:40:09 ID:qldZ0jRZ
>>534
乙です。

>>513
あいかわらずのハイクオリティ…GJ!です。
ラストがどこに収束していくのか全く読めませんw
キャラ崩壊の結果一番の良識人になってしまったプレシアさんに惚れたw
フェイトはどっちの世界でも不幸なんだな――いや、ラストに明るい未来が待ってる…はず…ですよね?

続き楽しみに待ってます。
537名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 08:04:14 ID:PHDoMER5
>>513
GJす!
538名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 12:55:48 ID:nokyMwQC
GJです!

予想斜め上な展開が繰り広げられてるー。
クロノの名台詞はエイミィが言いそうだ。
539名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 19:34:40 ID:H5dJk9NM
>>513
久々のリリふぇGJ!
もうまともな原型残ってる数少ないキャラが今回にてまた一人消えましたw
本当にまともじゃないはずのプレシアが押されてるという時点で
この世界の破綻ぶりが良く分かります。
このssほどクロノのあの台詞がしっくりくるのはないんじゃないかね?
いずれにせよ終わりが全く読めない展開にwkwkです。
540B・A:2008/10/07(火) 15:56:54 ID:vxw1OyRd
埋めネタをジェバンニしてみました。


注意事項
・クロノ×なのは
・時間軸は二期終了後。
・エロです。
・短いです。
・タイトルは「ジョーカーは執務官」
541ジョーカーは執務官@:2008/10/07(火) 15:57:24 ID:vxw1OyRd
クロノが掲げた2枚のトランプを、なのはは真剣な表情で睨みつけていた。丁度魔力弾を制御する時のように意識を集中し、
カードの絵柄を透視できないものかと眉間に皺を寄せる。だが、どれだけ睨んでも赤い無地の裏側しか見えず、酸欠を起こして頭痛が起きただけだった。

「ううぅ・・・・・・」

「なのは」

「う、うん・・・・・・こっち!」

クロノに促され、意を決して右側のカードを引き抜く。そして恐る恐る裏返すと、鎌を持った死神が不気味なうすら笑いを浮かべている絵がそこにあった。

「にゃぁ・・・・・ババだぁ・・・・・」

「僕の勝ちだね。これで通算7連勝か」

もう1枚のカードをうちわのように扇ぎながら、クロノは勝者の笑みを浮かべる。何とも憎たらしいその笑顔に、なのはは頬を膨らませて唸った。

「うううぅ・・・・・」

「唸ったって結果は変わらないよ」

テーブルの上に散らばったトランプを箱にしまい、クロノは窓の外へと視線を向ける。ガラス一枚隔てた向こうでは、
まるでバケツを引っくり返したかのような土砂降りの雨模様であった。なのはが遊びに来た時からずっと降り続けており、一向に止む気配がない。

「これじゃ、お家に帰れないね」

「僕としては、嬉しい限りだけどね」

言うなり、クロノは小さななのはの体を抱きかかえるとそのままベッドの上へと押し倒した。

「こうして、思う存分なのはと一緒に過ごせるんだから」

「クロノく・・・・」

なのはが反論するよりも早く、クロノは恋人の小さな唇を自分の唇で塞ぐ。既に何度も交わした情熱的な恋人のキス。
その感触も触れあう舌の味も口の中の温もりも知り尽くしているというのに、不思議と飽きがくることはなかった。
できることならば、いつまでもこうしていたいという欲求が常に自分の中で渦巻いていることに、クロノは苦笑を禁じ得なかった。

「・・・・・するの?」

「ダメかい?」

「ううぅ、クロノ君っていつからこんなにエッチになっちゃったの?」

「最初にしようと言いだしたのは君の方だろう?」

耳元で囁きながら、クロノは焦らすようになのはの秘唇をショーツの上から指でなぞる。すると、なのははふるふると体を震わせながら、僅かに上ずった声を漏らした。

「にゃぁ・ああ・・・・・・」

「後ろですれば妊娠しないからって言ったのはなのはだろう?」

ショーツをずらして小さな菊の窄まりを探り当て、皺をなぞりながら指先を埋没させていく。
きつく閉じているはずの菊門は、驚くほど柔軟にクロノの指を咥え込んでいった。
542ジョーカーは執務官A:2008/10/07(火) 15:58:24 ID:vxw1OyRd
「ほら、こんなに欲しがっている」

「ああうあ・・あああ・・ううぅ・・・・・」

直腸を指先で擦られた途端、なのはは艶めかしい喘ぎ声を上げて身を捩った。
とても10歳とは思えない妖艶な振る舞いに、クロノの嗜虐心がむくむくと鎌首をもたげてくる。

「ねぇ、自分でしている?」

「ひゃぁ? 自分で・・・・・?」

「そう、自分で弄ったことある?」

「はうああ・・・あうう・・・・・・」

「答えてよ、なのは」

「・・・・・う、うん」

有無を言わせぬクロノの言葉に、なのはは抗うことができなかった。辛うじてまだ働いている理性も、
断続的に送り込まれてくる直腸の快感に焙られていては、いつまで保つかわからない。

「どれくらいしているの?」

「・・・・・・・・・・」

「週一で?」

「・・・・・うん」

「なのは」

クロノは咎めるように指の出し入れを早め、尿道の裏側付近を思いっきり擦り上げる。
直腸のGスポットを集中的に責められると、堪らずなのはは電流が走ったかのように四肢をバタつかせて喚き散らした。

「あぁぁぁっ・・・・3回・・・・3回なのぉ・・・・」

「週三か。やっぱりこっちでするの、好きなんじゃないか」

「う、うん・・・・・・・・・」

頬を真っ赤に染めながら、なのはは消え入りそうな声で頷いた。

「まだ処女なのにお尻で感じちゃうんだ。良いよ、だったらいっぱい感じさせてあげる」

不安の宥めるように恋人の髪の毛を撫で、クロノは勃起した肉棒をなのはの菊門へとあてがった。そして、なのはが息を吐いて括約筋が緩んだ隙を見計らい、
腸液でぬめぬめと湿った直腸に一気に根元まで突き入れた。

「はわうああぁぁぁぁっ!!」

肺の中の空気が押し出され、瞬間的な酸欠に陥ったなのはの視界が明滅する。本来ならば排出するだけの器官を犯される屈辱と、
直腸を押し広げられる圧迫感になのはは金魚のように口をパクパクさせ、恋人の背に腕を伸ばした。
543ジョーカーは執務官B:2008/10/07(火) 15:58:54 ID:vxw1OyRd
「あうあ・・・ああ・・・・お尻ぃ・・・お尻がぁ、あつい・・・・熱いよぉぉ・・・・・・」

「おいおい、まだ動いてもいないんだぞ」

「良いのぉぉ、お尻、お尻感じるのぉぉ・・・・頭の中真っ白になるの、なのは、おバカさんになっちゃうのぉぉ・・・・・・・
クロノ君、わたし、もうお尻のことしか考えられないよぉぉ・・・・・・」

「良いよ、なのはの好きなだけ穿ってあげるから」

「う、うん・・・・穿ってぇ。なのはね、もうずっと処女で良いのぉ。お尻だけでエッチするの、お尻で妊娠するのぉぉぉっ!!!」

半狂乱になって喚くなのはを抱き締め、クロノは直腸粘膜の絡まる肉棒を前後させる。根元から引き千切られるかのような締め付けと、
なのはの嬌声が肛虐の興奮を高めていき、あっという間にタガが外れて腰遣いが激しいものへと変化していった。

「あはっぁあ・・・あ・あ・・うぁぁ・あ・・あ・ああああぁっ!!!」

「ぐぅっ・・・・きつい・・・はぁ・・あ・あ・・・な、なのは・・・・・」

濡れそぼった秘唇から愛液が零れ、直腸を犯す肉棒を汚していく。粘着いた不快な汗も気にならず、2人は欲望の赴くままに腰を打ちつけ、快楽の波に酔い痴れた。

「クロノ君、くるのぉ・・・・大きいの来るぅぅ・・・・くる、ああああああぁぁぁぁっ!!!」

「ぐっ・・あ・・・・・なのは・・・・・なのはあぁぁぁっ!!」

「あうっ、いく、いっちゃ・・・・ああああ・・・・射精、クロノ君のザーメンきたぁっ!! あっちゅいザーメン・・・ザーメンいくぅ、いくのおぉぉぉぉっ!!!」

迸る精液を直腸の深くに浴びせられ、なのはは涎を垂らしながら肛虐のオルガズムを昇り詰めていく。
貪欲なアナルは注ぎ込まれた精液を一滴も逃すまいと腸壁を収縮させ、まだ固さを残したクロノの肉棒を締め上げていく。

「にゃぁぁぁっ・・・・・お尻、あちゅいよぉ・・・・・・」

胡乱な眼で恋人の顔を見上げ、なのははだらしのない笑みを浮かべる。まだ満足していないことは、言葉にするまでもなかった。

「クロノ君、もっとしてぇ・・・・・・」

「ああ、君がもういらないって泣き喚くまで犯してあげるよ」

そう囁いて肛虐を再開したクロノの表情は、まるでトランプのジョーカーのようにほくそ笑んでいた。


                                                                      おわり
544B・A:2008/10/07(火) 16:01:17 ID:vxw1OyRd
以上です。
クロノで書こうとすると何故かこうなる。
掘ってしまうのが提督クオリティなのか。
後、短すぎてあんまり埋まらなかった。
545名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 17:05:33 ID:21pJYAkt
GJ!!です。
えろいw子供のうちから、性交を覚えてしまうと十倍界王拳効果で、
それしか考えられなくなるぞw
546名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 19:06:06 ID:tu5W3ze6
>>541
>「後ろですれば妊娠しないからって言ったのはなのはだろう?」
なのはさんじゅっさいは、既に 生 え て る とな!?
547名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 20:14:48 ID:kJdUh0J9
>>543
gj!
なのはさんは受けが似合う
レイジングハートをぶち込んでデヴァインバスターでスターブレイカーしたい。

だが、それでもシャマルさんの迸る可憐美にはかなわないのだ!
ああ、シャマルさんのフトモモモフモフしてえ
胸をぱっふぱふしてえ
548名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 20:28:52 ID:plDlFHsQ
>>547
まあ落ち着けw星をぶっ壊してどうするんだw

今シャマルという文字を見て唐突にゼスト×シャマルという組み合わせが浮かんだ
闇の書事件後〜プラント戦までの時間軸なら可能だが、しかしゼスト死亡後の
シャマルさんが気の毒な事に……想像して鬱になったorz

っと、勿論B・A氏にもGJを。
クロノ=アナルファッカーの図式はもう覆らないのかw
549サイヒ:2008/10/07(火) 21:05:54 ID:xhmZaGjs
埋めネタに短めのもの投下させてもらいます。
クロフェで本編終了後。二人は結婚済み。
非エロ。
550ティアナ・ランスターの疑問:2008/10/07(火) 21:06:39 ID:xhmZaGjs
 この春、機動六課の解散に伴いティアナはフェイトの執務官補佐となり、クラウディア所属となった。
 新しい職場に始めは緊張したものだが、打ち解けるのは早かった。
 フェイトと執務官補佐のシャリオは一年間同じ職場で働いた仲であり気心は知れている。それ以外のク
ラウディアクルーも、大半が元アースラクルーでありフェイトとは長い付き合いだ。そのフェイトの補佐
ということで、ティアナにもなにかと親切にしてくれる。
 一ヶ月もする頃には、ほとんどの同僚と軽い雑談ぐらいは交わせるようになっていた。仕事の方もフェ
イトとシャーリーが丁寧に教えてくれ、大きな失敗は一度も無い。
 そうして余裕が出てくるにつれ、職場のくだらない噂なども小耳に挟むようになってくる。
 曰く、オペレーターのあいつと食堂のお姉さんが付き合ってるらしい。
 曰く、訓練室の壁が一ヶ所やたら新しいのは、たまたま仕事でやってきた某教導官がぶっ飛ばしたから
だ。
 曰く、あいつのバストサイズが急に上がったのは、さる伝説の乳揉み師に胸を揉まれたからだ。
 曰く、艦内の自販機に必ず「砂糖とミルク入り」とでっかく印字された緑茶があるのは、さる国家的陰
謀によるものだ。
 突飛なゴシップもどきな噂も多いが、そんな中でもまれに真実が含まれていたりして驚いたりすること
もある。
 そんな中で、ティアナが一番気になっているのが噂がある。

 曰く、クロノ艦長と妻であるフェイト執務官は時々艦長室でよろしくやっている。




         ティアナ・ランスターの疑問




「ここの部分だが、もう少し詳しく書いてくれ」
「いつもこれぐらいの説明で通じているんですが」
「提出先の空士五八部隊の隊長が変わったのは知ってるだろ。彼は最近まで内勤組だったから、まだ空士
隊について分かってないことが多いと思う。丁寧にやって悪いことはない」
「……そこまで気を使う必要あるんでしょうか」
「今はこちらも向こうも忙しくない。こういう時にこそ丁寧な処理を心がけていれば、本当に忙しくなっ
た時に困らずにすむ。違うか?」

 フェイトが提出した書類の報告をしているのを、同じく執務官補佐であるシャリオと並んで聞きながら、
ティアナは報告相手である男性にそっと目をやった。
 クロノ・ハラオウン提督。執務官時代から数々の功績を上げて、管理局記録至上最年少で提督に任命さ
れた人。ほんの一月前までは機動六課の後見人でもあった。
 そして、フェイトの夫でもある人。
 機動六課時代にしばしばクロノは六課の隊舎を訪れていたが、三等陸士にすぎないティアナと接点は無
く、廊下を歩いているのを眼にしたぐらいである。
 堅物だという噂を聞いていたが、実際に上司となってみるとけっこう柔軟な人だった。ミスについても
最初はじっくり話し合ってどうしてミスが出たのか、どうすれば同じミスをしなくて済むかを指し示して
くれる。厳しい叱責を受けるのは、同じ過ちを二度繰り返してからである。
551ティアナ・ランスターの疑問:2008/10/07(火) 21:07:26 ID:xhmZaGjs
「そういうわけだから、そこだけ書き直してからもう一度持ってきてくれ」
「分かりました」

 返された書類を揃えているフェイトと、ディスクに座って別の書類に目を通しているクロノの様子をティ
アナは見つめた。
 夫と妻という雰囲気はまるで感じられない。あくまで上司と部下といった風である。

「そろそろお昼だね。ティアナとシャーリーは先に食堂行っててくれる? 私はもうちょっと艦長に報告
することがあるから」
「はい。ついでにフェイトさんのご飯と席、確保しておきましょうか?」
「だったらお願いできるかな。Bランチで」

 フェイトに頷き、クロノに軽く頭を下げて部屋を出た。
 食堂ではティアナがフェイトの分を取りに行き、シャリオが売店で二人前のパンを買って席に着いた。
パンの中からジャムパンを選び封を切りながら、ティアナはハムマヨネーズを手に取ったシャリオに訊ね
た。

「フェイトさんって、前からクロノ艦長とはあんな感じでしゃべってるんですか」
「あんな感じって、書類差し戻されたこと? 元々細かいことまで目を配る人だから、けっこうああいう
ことも……」
「そうじゃなくて、あんまり夫婦らしくないかなと思って」
「あー、それは確かに。けどここは職場だから、夫婦だからってあんまり馴れ馴れしくするのは良くない
と二人とも思ってるんじゃないかな。真面目な人達だから」

 パンを口に運びかけたシャリオだったが、途中でやめて首をかしげた。

「でも、言われてみたらちょっと不自然というか、他人行儀かな。他にも夫婦のクルーはいるけど、もう
ちょっとそれっぽい雰囲気あるよね」
「食事を一緒にしてるのは時々見かけますけど」
「ほんと、それぐらいかな」
「……寂しくないんでしょうかね」

 ティアナに恋人はいない。いないが、気になった人はいる。
 機動六課時代に度々世話になったその人は、解散後武装隊に行ってしまい全く顔を合わせていない。想
いを伝えるもなにも、それ以前の段階だったのでそれが当たり前といえば当たり前なのだが、いなくなっ
てから大切さに気づくとはよく言ったもので、彼の顔が見れないというだけでティアナは時折無性に寂し
くなる。
 しかしそんな自分と違って、クロノとフェイトはスキンシップなどほとんどしていなくても平気そうで
ある。見ていると、自分のように強く想ってしまうのが特異なのかと考えてしまう。
 それともあの二人にもティアナと同じような強い感情を持っていた時期もあったが、思いを遂げてしま
えば鳴りを潜め、後は落ち着いてしまうものだろうか。
552ティアナ・ランスターの疑問:2008/10/07(火) 21:08:00 ID:xhmZaGjs
「実は、夜中にあれこれしてるとか。今もひょっとしたら、報告っていうのは嘘でこーっそりエッチなこ
としてたりして!」
「……趣味が悪いですよ」

 シャリオの発言に眉をひそめつつも、ティアナとて思春期の女の子である。ついつい想像してしまう。
 提督室で二人っきりになると、フェイトは制服のボタンを外し下着を露にする。クロノもその胸に手を
伸ばしてフェイトを抱き寄せ愛の言葉を囁き、やがて二人の唇は重なり……。

「それはないんじゃないかな」

 いきなり後ろからかかった声に、思わずティアナとシャリオはびくりとする。

「ティアナ、隣いい?」
「あっ……はい」

 スパゲティの乗ったお盆を手に座ったのは、エイミィだった。
 クロノとは士官学校からの付き合いで、アースラ時代からの古株の一人でもある。人付き合いの良さは
シャリオにも勝り、ティアナともすぐに親しい口をきくようになった一人である。

「それでさっきの話だけど」
「へ?」
「だから、クロノ君とフェイトちゃんがいちゃいちゃしてるかって話。気になるんでしょ?」
「そ、それは……」

 素直にそうですとも言い難く口よどむティアナだったが、エイミィは勝手に続けた。

「あの二人がくっついた時にも色々噂はあったんだよ。夜中にクロノ君がフェイトちゃんの部屋に入って
いくの見たとか、提督室から出てきたフェイトちゃんの制服が乱れてたとか。それで一度本当かどうか確
かめようと思って、モニター室の子に二週間ぐらい部屋の前を見張っててもらったんだけど……」
「それ、ばれたら減俸ものなんじゃ……」
「どうだったんですか!?」

 興味津々なのを隠そうともせず、シャリオが机の上に身を乗り出す。つっこみを入れたティアナ自身も、
ついエイミィに身体を近づけた。
 だが二人の期待に反して、エイミィは軽く肩をすくめた。

「全っ然そういうことはしてないみたい。二人とも寝る時は絶対自分の部屋。艦長室に長時間滞在した時
も、エッチなことした気配はなーんにも無し」

 クルー全員拍子抜けだったよと言うエイミィだが、シャリオはまだ納得しかねるという顔である。

「じゃあお二人とも夫婦なのに、航海中は本当に全くなにもしていないんですか?」
「それも違うと思うけど」

 スパゲティを一口食べて、もぐもぐと口を動かしながらエイミィは続けた。

「二人とも朴念仁と清純派っぽく見えて濃いからね。キスぐらいはこっそりといっぱいやってるんじゃな
いかなあ」

 そう言って、未だ現れないフェイトの分の定食を意味ありげな視線で見るエイミィだった。
553ティアナ・ランスターの疑問:2008/10/07(火) 21:08:44 ID:xhmZaGjs
          ※




 ティアナとシャーリーが出て行くと、フェイトもドアに向かった。
 報告すると言ったにも関わらず不自然な行動を取るフェイトだが、別にクロノも驚いた風もない。
 入り口のパネルを操作して鍵をかけると、再びクロノに近づく。今度はデスクの手前ではなく椅子の隣、
クロノの本当に目の前まで。
 いいとも何も訊ねはせず、フェイトはすぐそこにある唇に口づけた。
 乾いている唇は、少しだけざらざらしている。だがすぐにフェイトの唾液とクロノ自身の口から溢れて
きた唾で潤いがつく。唾液が糊の役目を果たしているように、ぴったりとくっついて離れない。
 唇を重ねクロノの体温と味を感じていると、身体の奥が騒ぎ出す。もっと深い場所で繋がりたいと。
 しかしフェイトは想いをしっかりと抑えて、ただ唇を重ねる行為に没頭した。
 これまでどうしても我慢できなくなって、提督室でしたことはあるにはある。しかしやっている最中は
背徳感で燃え上がったがやっぱり後ろめたさがあったため、相談して仕事場ではキスだけ、それも絶対に
他人がいない場合にということにしたのだ。

「ん………あ……」

 根を閉じて僅かに漏れてくるクロノの言葉を舐め取っているうち、情熱が増してくる。
 舌を入れながらありったけの力で背もたれごとクロノを抱きしめ、彼の匂いを肺いっぱいに吸い込む。

 少し苦しくなったのでフェイトは息継ぎをしながら、クロノの耳元で囁いた。

「あと一週間で休暇になるから……その時はいっぱい可愛がってね」
「ああ……けど、今もこれぐらいは」
「ふぁぁ……!」

 喉から顎までの敏感なラインを舐め上げられて、くすぐったい刺激が走る。同時に背中を大きな手の平
が優しく撫で回してくれた。
 ぞくぞくと身震いしながらフェイトも跡がつかない程度に歯でクロノの耳たぶを弄りつつ、横目で時計
をうかがう。
 ティアナ達に疑われない程度の時間まで、あと五分といったところ。
 その間はずっとキスしていようと、フェイトは耳を離れて最愛の人との口づけに酔いしれた。
554ティアナ・ランスターの疑問:2008/10/07(火) 21:09:35 ID:xhmZaGjs
          ※




「あ、フェイトさんこっちですよー!」

 食堂にやってきたフェイトを目ざとく見つけたシャリオが、手を振ってフェイトを呼ぶ。
 近づいてくるフェイトを見たエイミィが、ふとフォークを持つ手を止めたかと思うと、にやりと笑って
指差した。

「フェイトちゃん、襟元濡れてるよ?」

 エイミィが人差し指の先では、たしかにシャツが濡れていた。ほんの水一滴分程度の、よっぽど気をつ
けて見なければ気づかない程度の濡れ具合。
 だが指摘されたフェイトの変化は劇的だった。
 ばっと襟を押さえたかと思うと、見る間に顔の色が赤く茹で上がっていき、視線は落ち着かなくそこら
じゅうを動き回っている。
 その様子を見て、エイミィが笑みを一段深くした。シャリオも実に良く似た表情へと変わる。

「こっ、こっ、これはクロノの部屋で飲んだ水をちょっと零しちゃって!」
「へえ、コーヒーでも紅茶でもなくてただの水なんだ。クロノ君もケチだねぇ」
「く、クロノがケチなんじゃなくて、私が水でいいって言ったから……」
「あれ? そもそも艦長室って冷蔵庫ありましたっけ。ポットとインスタントコーヒーぐらいしかなかっ
たような?」
「ふーん、ということは、クロノ君ってば沸騰したお湯なんか飲ませたんだ。立派な奥さん虐待だね。裁
判所いっとく?」
「いや、あの、そうじゃなくて……」

 にやにやと、全てを分かりきった上で遊んでいるエイミィとシャリオ。
 対するフェイトは、しどろもどろで無理がありすぎる返事をしている。
 そんな三人を見ながら、ティアナは思った。

(ちゃんとやることやってたんだ)

 なんだか妙に安心するティアナであった。




         終わり
555サイヒ:2008/10/07(火) 21:10:43 ID:xhmZaGjs
以上です。
なんだかんだで職場では一定の節度を守っているうちのクロフェ。
家ではやりたい放題やってますが。

といいつつ、フェイトかカリムで艦長室プレイあと一回ぐらいは書きたいなーと思ってたり。
机の角とか使いたい。
556名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 21:54:54 ID:plDlFHsQ
>>555
埋めGJッス
エイミィさんとシャーリーは性格の相性が良さそうだ
557名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 23:24:14 ID:jumPP3M/
>>B・A氏
GJですぜ!!
ってか、なんというケツ穴好きwww このクロノは確実にエロノだwww
しかも10歳から既にここまで淫らとか素晴らしすぎる!


>>サイヒ氏
GJ!!
エロくはないが、ほんのりピンク色の話がたまらねえ!
勤務中はキスで我慢、仕事が終わって船下りたら速攻鬼畜プレイですね!!

お二方のこのクロノ祭り最高でしたぜ!
558名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 00:16:04 ID:vGsmClQF
81スレ329です。
投下させてください。

エリオ×ティアナ
タイトル:他愛のない話。
559名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 00:20:54 ID:vGsmClQF
こうも毎日好きです好きです愛してますと連呼されれば、耳にタコが大量発生してしまいそうだ。

「ねえ、私の短所って何?」
「可愛すぎるところでしょうか」
「頬を染めて言わないで。寒い!!」

しかも、このところ前よりパワーアップしてる気がする。

最近はいつもこうだ。
スバルが外で走り込みをしている間にエリオが部屋に来て、ティアナの邪魔にならない程度にたわいの無い話しをしたり、一方的に愛を語ったりしている。

「なんか、あんた、最近・・・・」
「はい?」
 フェイトさんが出張中だからって積極的すぎじゃない?という言葉を飲み込んで、
代わりにインスタントコーヒーで温められた熱い息を吐く。

「やっぱなんでもない」

エリオは眉をひそめた。
「はっきり言って下さい。直しますから」
「たいしたことじゃないから気にしないで」
「たいしたことじゃないなら言えますよね」
「ん――――・・・・・・」
言っても差し支えないだるが、反応が想像しにくいわ。
ティアナは口を開いた。

「なんか最近、スキンシップが過剰だ、な、と。」
「え?」
「・・・・だから、なんでそんな迫ってくるんだろうと・・・・・・・訊こうとして、止めただけ。」

最近のエリオはとても楽しげに、時に真摯にティアナを口説く。なぜ?
「へえ」

エリオが笑った。
彼がこの顔をしたとき、碌な目に合わないのをティアナは学んでいて。

急いでコーヒーを飲み干そうとして、むせた。

「迫りやすいんですよ。最近のティアさんって、本当に隙が多くなってて」
「ど、どこがよ・・・・・・・」
ティアナは涙目で咳き込みながら、それでも反論しようとした。
傍らにやってきたエリオの手が、咳のせいで丸くなったティアナの背を撫でた。
「さ・・・・・わんないで」
「押したら押しただけ反応が返ってきますし、あと、これが最大の理由なんですが――」
 
異物が気管に入ったせいで乱れた呼吸を、必死に整えようとしたのに。
その努力をどうしてこうもまあぶち壊してくれるんだろう、こいつは。

「落とせるとわかってるから、迫ってるんですよ」
水滴が、変なところに入った。

せっかく治まりかけていたものを、再び苦しむはめになる。

背を撫で続ける小生意気に成長した同僚を見ながら、飲みかけのコーヒーをぶっかけてやろうか、とティアナは思った。
560名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 00:25:34 ID:vGsmClQF
投下終了です。
エリオは他の人に短所何?と聞かれたら悩みに悩みぬいて

すみません、長所が多すぎて、むしろ短所なんて無いんじゃないですか?

て返しそうだな、と思いました。
561名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 00:29:21 ID:vGsmClQF
>>558 25行目
×言っても差し支えないだるが、反応が想像しにくいわ。

○言っても差し支えないだろうが、反応が想像しにくいわ。

です。誤字すいません
562名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 02:44:42 ID:Q+mJcSGG
……口から砂糖吐いて投げつけてもいいでしょうか?
563名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 17:47:47 ID:rAx/zErj
>>562
リンディさんがお前を狙ってるぞ
564名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 17:52:43 ID:m5qQLZn+
梅梅
565名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 18:04:17 ID:YbsoPCJ3
野球少女リリカルなのはヒルスイング
566名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 18:46:42 ID:YbsoPCJ3
…フルスイングでした……
567名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 19:59:39 ID:7KwTvqzZ

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   / /|∧          _,イ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::人:.::.:.::.:|::.:|.::.|::.::.|.::.::.::.::.|::.::.::.::.::.::.l

☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第86話☆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1223216594/l50
568うめ

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               / ̄\. C)〉ζ    〃"ナ'⌒ ~´ヘヘ^ 
               \` ´ \:: \─‐-- // ,ハノノソヽソハ  
                 \||\_/\\ヾ ハ  ヾl.゚ ヮ゚ノ!.
          ──    /||__|v/^v\`)´\\ ̄ ̄ ̄〉      ──
               /  ,(     `-t‐⊂>‐'´lL二ゝ          _ ,
              / 爪l^"       \)uハ  ━〈           / /
              /ノノ   ヾ -、     `Y´   ,、 .\       / /
                    \\    //|   ,| \ \    / /
                     ∠, .\ /ノ/ .|。 。|  冫、 _>   /ζ
                      ヘヘ、\ /〉/_vVVVv\f\_ ノ,r' 
                          >フ┌-‐'´ `‐--tノ?<   \
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____   r っ    ________   _ __
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| | | | | __  __ |  r┐ ___| |___ r┐  / / | |  /\   ヽ冫L_  _  |   | ┌─────┐ |
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| r┐| |___  __|. | | | 二 二 | | |く_/l |   |  , ‐'´     ∨|__  ___| r‐、 ̄| | ̄ ̄
| |_.| |   /  ヽ    | | | |__| |__| | | |   | |  | |   __    /`〉  /  \      │ | |   ̄ ̄|
|   | / /\ \.   | |└------┘| |   | |  | |__| |  / /  / /\ `- 、_ 丿 \| | ̄ ̄
 ̄ ̄ く_/   \ `フ |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |   | |  |____丿く / <´ /   `- 、_// ノ\  `ー―--┐
           `´ `‐' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`‐'     ̄          `  `´          `ー'    `ー───-′


☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第86話☆
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