スクールデイズの分岐ルートを考えるスレ part7

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1名無しさん@ピンキー
もしかしたらあり得たかもしれない物語。
ひょっとしたら辿り着けたかもしれない結末。
そうした幾つもの可能性が重なり合ってるのがSchool Daysです。
そこで、スクイズで可能だったと思われる展開を自由な発想でSSにしてみませんか。
もちろん、Over flow関連作全てが「あり得た可能性」に含まれるので他作もアリです。

(前スレ)
スクールデイズの分岐ルートを考えるスレ part6
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1214095427/l50

<乙女との約束だからね>
次スレは980レス、480KB超えたら立てるの。
荒らしはスルーよ。 みんな仲良く、いじめなんてしちゃ駄目よ。
だ・・誰よ、お前が言うななんて言ってるのは? うっさいわね!
基本的にsage推奨だからメール欄にしっかりsageって入れなさいよ。
べ・・別にあんたのために言ってるんじゃないわよ。
以上の事はこのスレの約束事なんだからね。きちんと守りなさいよ!
2名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 19:49:01 ID:Xse/fRGA
オルガフロウ
3tyoujiya:2008/09/21(日) 20:20:17 ID:R8Lw+yOK
>>1 =前スレ592さま
スレ立て乙彼さまです&ありがとうございました

それでは早速
乙女SS
前スレ>>571 の続きいきます。
4tyoujiya:2008/09/21(日) 20:22:42 ID:R8Lw+yOK

桂が付き合ってほしいと私を連れてきたのは屋上だった。
鍵は閉まっていたけど、何故か桂は鍵を持っていた。
そして私たちは重い扉を開け、冷たい風を感じながら外に出る。
当然だが、そこには誰もいなくてとても静かだった。

そして、ここへ着くまでずっと無言だった桂が口を開いた。
「ここで私、初めてま・・伊藤くんとお話したんです」
「え?」
「西園寺さんが紹介したい人がいるって、伊藤くんを連れて来てくれて・・・
 あの時の伊藤くん、何だか緊張してるみたいで可笑しかったなあ。
 そのあと、あそこのベンチで3人でお昼を食べて・・・。
 その日から、毎日あそこで私たち、お昼を一緒にしてたんですよね。
 私・・、この学校に入ってから、いえ、中学の頃からそういうお友達がいなかったから・・・
 楽しかったなあ。何だか、夢みたいでした」
「・・・・・・」
友達と一緒にお昼を取る毎日・・そんなの私にとっては当たり前の事だ。
でも桂にとってはそうじゃなかった。桂にはずっと、友達がいなくて、
だからそんなあたり前の時間が夢みたいだなんて・・・。
でも、単に気に食わないからという理由だけで、クラスで桂を孤立させてたのは他ならぬ私だ。
私はまた、その事実に苛まれる。

「それから、伊藤くんが私と付き合いたいって言ってくれて・・・。
 最初は戸惑ったけど、私は伊藤くんの事をどんどん好きになっていって、
 伊藤くんと一緒にいる時はすごく幸せだった。
 あの幸福が失われるなんて、あの頃は思いもしなかった」
「・・・・・・」
「でもあんな時間は、もう戻らないんですね。
 そう思うと・・ついこの前の事なのに、何だか凄く昔の事みたい。おかしいですね?」
「・・桂・・・」
「ふふっ、何だかいろんな事思い出しちゃいました」
桂はそう言って微笑むが、その微笑みは何だか凄くはかないように思えて、
だから私は何か声をかけたいと思うけど、未だにかける言葉は見つからなくて・・・。
その時・・。

5tyoujiya:2008/09/21(日) 20:23:53 ID:R8Lw+yOK

「ねえ、加藤さん。一緒に・・泣きませんか?」
「え?」
「私たち、失恋した者同士ですし・・・
 それにここなら誰も見てないし、聞いてませんから・・
 だから、思いっきり泣けますよ」
そう私に誘いかける桂の笑顔は、何処か悪戯っぽくも見え、私を戸惑わせた。
「でも、そんな・・いきなり泣こうって言われても・・・・」
「そうですか・・。加藤さんは泣かなくても平気なんですね・・・」
「え?」
「加藤さんは強いですね・・。
 でも、私はもう駄目みたいです。だから・・一人でも泣かせて・・ください・・・」
その言葉と共に先程までの桂の笑顔は、辛そうな表情へと変わっていき・・

「う、ううううううぅう」
嗚咽と共に、桂は大粒の涙をこぼしながら泣き出した。

「桂・・・あんた・・そんなに伊藤の事・・・」

「ぅ・・はい・・好きでした・・。大好きでした・・。誰よりも・・・。
 あんなに人を好きになったのは、生まれて初めてでした・・・」
桂は涙声で、もう叶う事のない伊藤への思いを言葉にする。
そんな桂の身体を、私は思わず自分の胸に抱き寄せる。
私の腕の中で桂は、震えながら尚も泣いていた。
そう・・桂はそんなにも伊藤の事が好きだったんだ。
でも、それは私も一緒だ。
私だって伊藤の事が好きだった。大好きだった。誰よりも・・・。
あんなに人を好きになったのは、伊藤が初めてだったんだ。
だから・・・。

「桂、私だって・・強くなんかないよ・・」
「え?」
私のその言葉に顔をあげた桂が、驚きの表情になる。
そう私はもう気づいていた。自分の頬も濡れていることに。
私もまた、失った恋心ゆえに泣いていたんだ。

「ねえ桂、もっと思いっきり泣こうよ。もっと大声で・・2人でさ」
「・・・は、はい」
私の言葉に、少しだけ戸惑いながら涙声で返事をする桂は、
しかし何処か嬉しそうで・・・
そして・・・

「う・・うわあああぁぁぁぁん!」
「うあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

私たちは悲しみを全て吐き出すように、大声で泣いた。


6tyoujiya:2008/09/21(日) 20:25:07 ID:R8Lw+yOK

ずっと・・長い間泣いていたような気がしたが、それはほんの僅かな時間だった。
私と桂は、まるで測ったように同時に泣き止み、今は2人でベンチに腰掛けていた。
「いっぱい、泣いちゃいましたね・・」
桂がはにかんだような笑顔でそんなことを言う。
「うん。いっぱい泣いちゃったね」
私も笑顔でそれに答える。
そしてまた僅かな沈黙の後、桂が再び口を開く。
「加藤さん。ありがとうございました」
「え?」
「私、加藤さんのおかげで本当の事をきちんと確かめることができたから・・」
「・・・・・・」
「いえ、私本当は以前からわかっていたのかも知れません。
 わかっていながら、私はただ闇雲に信じることでそこから目を背けようとしていたのかも知れない・・。
でも、もし加藤さんがいなかったら、私はあのまま、自分の思いを断ち切れずに、
 まだまこ・・伊藤君の彼女なんだってありもしない幻想にすがりついていたかもしれません」
「私は・・別に何もしてないよ」
「いいえ。加藤さんは私に真実を知る勇気をくれましたから。
 だから・・・本当にありがとうございました」
 そう言って桂は私に頭を下げる。そして・・

7tyoujiya:2008/09/21(日) 20:25:45 ID:R8Lw+yOK

「私・・、また男の人を好きになることがあるのかな?」
桂は誰に言うともなく、どこか悲しげにそんな疑問を口にする。
「私、結局男の人が苦手なままだし、やっぱり、こんな私を好きになってくれる人なんて・・」
そんな桂に私は元気づけるように微笑んで言う。
「大丈夫よ。桂は可愛いし、男にだって凄く人気あるから・・・」
「ええ、でも・・」
「え?」
「私を見る男の人たちの目って、なんかいやらしいって言うか・・
 胸ばかりみてるような気がして・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・あの・・加藤さん?」
黙り込む私の顔を、桂が心配そうに覗き込む。
私はその桂と目を合わせず、わざと不機嫌そうに言う。
「桂、それって私の胸に対するあてつけ?」
「え? 
 ・・・・・・・・えっと・・・・あの・・・・!
 そ・、そんなつもりじゃ・・・
 すいません! ごめんなさい!」
ようやく私の言った意味を理解した桂は、焦って私に何度も頭を下げる。
私はそんな桂の様子が可笑しくて、思わず吹き出してしまう。

「ふふっ、大丈夫よ桂。別に怒ってないから」 
私は微笑みながらそう言って、桂の頭に優しく手を置く。
「本当に?」
「うん」
尚も心配そうに訊いてくる桂に、私は一層優しく微笑んで答えた。
「よかった・・」
その応えにようやく、心底ほっとしたように微笑む桂を見て、
私は桂の頭の載せた手を、優しくなでるように動かす。
「え?」
「桂は・・いい奴だね」
そう言い、桂の頭をなで続けながら私は思う。
私は、何故桂の事をずっと嫌なやつだなんて思い続けていたんだろう?
そんな私に、桂は再び語りかけてくる。
「加藤さん・・」
「ん?」
「また・・今度こそ、素敵な恋がしたいですね。・・・お互いに」
「うん。・・・でも・・・」
「私は、しばらく男はこりごりかな・・」
苦笑いしながらのその私の答えに、桂は一瞬きょとんとして
「うふふ。わたしも・・しばらくはこりごりかな?」
と、笑って私の言葉に同意する。

そして私たちは顔を合わせ、どちらともなく・・
「ふふっ」
「うふふ・・」
「あははははははっ!」
「うふふふふふふっ!」

お互いに声を出して笑い合った。


8tyoujiya:2008/09/21(日) 20:26:24 ID:R8Lw+yOK

そして、私は桂と一緒に家路についた。
さっき泣いていた夏美の事も気になったが、それでも、今は桂を一人にしたくなかった。
今まで一緒に下校したことはなかったけど、家は同じ方向だったし当然同じ電車に乗った。
だからと言って道中私たちは何を話すというわけでもなかった。
が、桂の降りる原巳浜に間もなく着くという時、
「加藤さん。本当に今日はありがとうございました」
改めて桂が、私に今日の礼を言ってきた。
「いいよ、もう・・」
私はそっけなくそう答える。
実際私は礼を言われるようなことは何もしていないと思うし、
何よりも今まで桂にしてきたことを考えれば、礼どころか逆に罵られても当然なくらいだ。
そう思うと、何度も礼を言う桂の態度が、なんだか嫌味にさえ感じられてきた。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか・・
「あの・・加藤さん・・」
桂は尚も私に話し掛けてくる。
「何よもう、いいって言ってるでしょ!」
私はつい声を荒げてしまう。
「いえ、あの・・そうではなくて・・・」
「うん? だったら何よ?」

「加藤さん、私たち、友達に・・・なれませんか?」

え?!
そう私に問い掛けてきた桂は、
何処か照れくさそうにはにかんだ笑顔を浮かべていた。

桂と・・・私が友達に?

確かに、今日いろんなことがあった中で、
桂が今まで私が思ってたような嫌なやつじゃないことはわかったし、
桂の事は以前のように嫌いじゃなくなっている。
・・いや、いい奴とさえ思っている。
それだけじゃない。
さっきは桂と一緒に泣き合い、そして笑い合った。
桂と気持ちが通じ合ったような気がした。

そう、私もまた桂と・・・・。

だからこそ・・私は桂に答えた。



「友達になんか・・・なれるわけないじゃない」



9tyoujiya:2008/09/21(日) 20:27:45 ID:R8Lw+yOK

今回はここまでです。
次回は明日か明後日に少し短いのを投下する予定で、
その後にいよいよ物語はクライマックスに突入する予定です。
それではこのスレでもうしばらく本作を宜しくです。

10名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 20:33:09 ID:t6ebPlXo
リアルタイムGJ!
。・゚・(ノД`)・゚・。言葉……
11名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 20:58:30 ID:rq2s8hG1
>>tyoujiya氏
なんというか…… 苦い青春ですねえ。
屋上は言葉にとって、ついこの間まで誠や世界と過ごしていた思い出そのものであり、
ある種秘密の場所だったわけですけど、そこに乙女を招き入れた
事で、共に大切なものを失ったという感情の共有を自然に
呼び起こしたのでしょうか…… 原作でも誠に捨てられた言葉に乙女達が同情するシーンも
実はあるみたいですが。

ラストのセリフは、言葉に対するけじめのつもりでしょうか?
理由はどうあれ、言葉に酷い事をしてきたわけですし、乙女としては言葉と
わだかまりが解けたからと言って自分が友達になる資格はないと思っているのかな?
12名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 22:06:44 ID:xls7qiae
>9
GJでし!
相変わらず美味しい場面で引きますねぇ
次回も楽しみに待ちます
13tyoujiya:2008/09/23(火) 17:38:25 ID:T62C1TM4

どうもです。
乙女SS
>>8 からの続きを投下します。
14tyoujiya:2008/09/23(火) 17:40:33 ID:T62C1TM4

家に戻り寝床に入った私は、ベッドの上に涙を零していた。


あの時・・

「友達になんか・・・なれるわけないじゃない」

私がそう言った直後に電車は原巳浜の駅に着き、
「ごめんなさい加藤さん、変なこと言って・・・
 でも、今日は本当にありがとうございました」
桂はそう言って、電車を降りていった。
その時の桂の悲しそうな顔が、今も頭から離れない・・。

桂のヤツ・・・。
何が友達になりたいよ。
本当にあんたってむかつく。
私はあんたをずっと嫌って、傷つけてきたのよ。
気に食わないからって、クラスで孤立させて
嫌な仕事も全部押しつけて・・・
それに今日なんか・・・
澤永なんかを唆してあんたを・・・

そんな私に友達になろうなんて、
大体、私にそんな・・・・・・。

・・・私は、あんたのそういうとこが・・・。


でも・・こうやって私は・・・ずっと自分の心に嘘をつき続けるのだろうか?

そう思うと、涙が止らなかった。

15tyoujiya:2008/09/23(火) 17:41:19 ID:T62C1TM4

その時・・
「お姉・・・泣いてるの?」
上から可憐の声が聞こえた。
そうか。声を殺していたつもりだったけど、気づかれちゃったのね。
はぁ・・こういう時に相部屋二段ベッドは困るわよね。
こっそり泣くことも出来やしない。

「可憐・・起こしちゃった?」
「うん」
「そっか。ごめん」
私は涙を手でをこすりながら可憐に謝る。
「そんなこといいんだけどさ・・それよりお姉、どうしたの?」
「うん、私ね、自分が嫌な奴だなってさ・・そう思ったら泣けてきちゃった」
上から覗き込んで訊いてくる可憐に、私は無理に笑顔を作りながらそう答えた。
可憐もそんな私にくすっと笑って、
「何言ってるの? そんなの今更言うまでもないことでしょ?」
と、嫌なことをずばりと言う。
「そうなんだけどさ、改めて思っちゃった。
 私・・・ひどい人間なんだ・・・」
その私の言葉は涙声で震えてしまい、
そんな私に可憐は笑うのをやめて、真顔で
「・・・わけ・・話せる?」
そう訊いてきたけど・・
「言えない」
「そっか・・・」

私の答えに、可憐も僅かな間黙り込むが、
「山県さんの事じゃ・・・ないよね?
と、私の泣いてた理由をしつこく追及しようとしてくる。
「違う。・・・けど・・・」
「じゃあまた、別の女の子が先輩に告白しようとしたのを邪魔したとか・・」
「ううん・・。もっと酷いこと・・・しようとした。
 可憐だって、私が何しようとしたか知ったら、きっと軽蔑するよ・・」
「ふうん・・・」
「・・・・・・」
その私の言葉に、可憐は再び僅かに黙り込んだ後
「でも、しようとした・・って事は結局はしなかったんだよね?」
「そ・・それは、そうだけど・・・」
「なら、いいじゃない」
そう言って私を慰めようとする。でも・・
「・・・よくない・・。
 それに、今までだって酷いこといっぱいしてきた・・・」
そう。やはり私は、自分で自分のしようとした事が・・・今までしたことが許せなかった。

16tyoujiya:2008/09/23(火) 17:41:50 ID:T62C1TM4

「それに、山県の事だって本当はやっちゃいけないことだった。
 山県だって・・伊藤だって・・あの時、必死で自分の思いを伝えようとしてたのに、
 嘘ついてそれを邪魔するなんて・・・」
そう震える声で言う私を可憐が、怪訝そうに見つめている
「何だかお姉。人が変っちゃったみたい」
「・・・・・・」
可憐の言葉に黙り込む私だが、
「ま、お姉はいくら悪ぶっても、結局は人がいいから所詮悪人にはなれないって。
 私は最初からそんなのわかってたけどねー」
と、可憐は知った風なことを言ってくる。
「何よそれ? それに・・だったら可憐はどうなのよ?」
「いひひひ、私は土壇場になったらお姉でも平気で裏切る真のワルですからのう」
「ばか」
ふざけたような口調の可憐に、私は素っ気無くそう言い返すが、
上から覗き込みながら、私を見つめる可憐の顔は優しく微笑んでいた。
そして私もそんな妹に微笑み返す。

「ありがと可憐。話してたら少しだけ気がまぎれた」
「うん。結局なんの事かわかんなかったけど、とりあえず元気だしなよ、お姉」
「ん・・」
礼を言い、励ましの言葉に素直に返事をすると、安心したように可憐は
こちらを覗き込んでいた首を引っ込め自分の布団に再びもぐり込む。
そして微かな沈黙の後、再び話し掛けてきた。

「でも私、お姉があんまり辛そうに泣いてるからさ、
 ついに伊藤先輩に失恋でもしたのかと思ったよ」
その言葉に、私はさっきまでそのことを忘れたことに気づき、
それが何故か可笑しくて悪戯っぽく答える。
「ふふっ、そう言えばそうだった。今日、伊藤にもはっきり失恋したよ」
「えぇっ?!」
その私の言葉に素っ頓狂に驚く可憐。
私はそれに構わずに、自分の布団にもぐりこみ目をつぶる。
「じゃ、おやすみ」
「ちょ・・・ちょっとおネエ! どういうこと? 
 むしろそこんとこちゃんと聞かせてよ」
再び、上の段から身を乗り出してこちらに問い掛けてくる可憐
「また今度ね・・。気がまぎれたら急に眠くなっちゃった・・」
「ちょ、ちょっとおネエ・・。おネエったら!」

自分自身がしてきたことへの嫌悪と後悔、桂への罪悪感・・
それらによる心の痛みは決して消えたわけではないが、それでも・・
しつこく問い詰めてくる可憐の声を聞きながら、私は眠りへとまどろんでいった。


17tyoujiya:2008/09/23(火) 17:42:29 ID:T62C1TM4

今回はここまでです。
先にも記したとおり、次回で本作は、物語としての一応の着地点に至ります。
もうしばらくのおつきあい、宜しくです。
18名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 18:05:59 ID:nH+cGW6q
>>17
GJです!
…って、意地張っただけかい乙女!ここまで来たら素直になろうぜ。
とは言え自己嫌悪する気持ちもわかるので、こういう葛藤は好きです。
19名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 01:03:33 ID:rsXxilNI
>>17
GJ。
結末を、見たいような見たくないような(苦笑)。
20名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 21:38:09 ID:0EGmlr8Y
まずは普通のクラスメイトから、そして少しずつ友達になっていけばいいさ
21SINGO:2008/09/25(木) 02:10:30 ID:/zGSGacQ
お久しぶりです、先輩がた。
過去編を書いた事が無いんで、今回は中学時代の話に挑戦してみました。

【中学生日記帳】School Days 回想編
22SINGO:2008/09/25(木) 02:12:14 ID:/zGSGacQ
【中学生日記帳】School Days 回想編

世の中の男は、救いようの無いクズでいっぱい。
中でも、痴漢というものは例外なくクズ。ビッチの恥垢よりもタチ悪いわ。
それを見て見ぬフリする男も同様ね。
正義の味方なんて、いる訳ない。下心が見え見えで嘘臭い。
私は、そう思ってた。少なくとも、実物に出会うまでは。

休日だってのに、私の気分は憂鬱だった。
なぜって満員電車の中にいるから。
今が花見のシーズンだって事を忘れてた私は、帰りの電車でラッシュに巻き込まれた。
まったく…春だってのに暑苦しい(精神的に)。
すると、
不意に突然、足に異様な感触。
(!?)
見れば、大きな手が私のフトモモを撫でさすってた。
(ななな何これ?何なの!?)
その手の主を探すと…私の背後に、髭で禿でメタボな超ブサメン中年が、至近距離にいた。
ようやく理解。私は痴漢に遭遇した。

さわさわ…。
痴漢は、なおも私のフトモモを撫で回す。
初めて感じる恐怖と嫌悪感。
周りを見回したけど、この髭禿の痴漢行為に、乗客の誰もが気付いてない。
気付いてたとしても、期待できない。たいてい人間は、他人との衝突や揉め事を避けるから。
世間というものは、私が思っている以上に冷たく、あっけないもの。
(ううう…)
大声を上げたいけど、ひきつって声が出ない。
こういう時、か弱い女の子って損。
女子中学生の力は、たかが知れてる。
それに、抵抗したくても出来ない。下手に相手を刺激して怒らせたら、何をされるか判らない。
何しろ相手はメタボ。混雑と揺れに乗じて、圧殺しにくるかもしれない。
やがて、
満足したのか痴漢は手をはなした。
助かった…と思う暇もなく、今度はお尻を触ってきた。
(ひっ…!!)
危機は去ってなかった。どころか、さらに悪化した。
私は依然、金縛りにあったように動けない。
私、涙目。
さわさわ…。
今度は両手で触ってきた。どんどんエスカレートしてくる。
心臓が早鐘のように鳴ってた。喉はカラカラに渇いてた。吐き気もする。
もう限界。トラウマになりそう。
誰が助けて!!
23SINGO:2008/09/25(木) 02:13:02 ID:/zGSGacQ
すると、どこからか別の手が伸びてきて、痴漢の手を掴んだ。
正義の味方の登場?私、助かるの?
痴漢は目つきを険しくして、
「なな何だね、君は!警察を呼ぶぞ」と逆ギレした。
黙れ恥垢。
「黙れチンカス。てか、それ俺の台詞な。…で、何でオッサンの手が、こんなトコにあんの?」

正義の味方は怯まなかった。
「うう…」
形勢逆転。

そろって次の駅で降りると、いきなり痴漢は猛ダッシュで逃げ出した。
不意を突かれた私達は、咄嗟に捕まえる事が出来なかった。どう考えても追い付けない距離。
仮に、痴漢を警らに突き出せば、被害者側も名前・住所・在籍学校等を警らに明示しなければいけない。
そうなると学校に連絡され、最悪、生徒達に知れ渡る可能性もある。
痴漢に遭った女子なんて、イジメの恰好の標的。嫌すぎる。
結局、深追いしない事にした。
(あの髭禿…今度会ったら、ブッ殺す)

ホームには、私と正義の味方が取り残された。
そして気付く。これって、もしかして…
恋愛モノにありがちで、よく見かける月並みでヤッパリな展開。いわゆる、お約束。
で、私のポジションは
正統派ヒロインそのもの!
(↑特に、ピンチになったらピーピー泣いて、助けてもらったらヘラヘラ笑う所が)
「あ、あの。ありがとうございます。助けてもらって」
すぐさま私は上目づかいになり、瞳をキラキラさせて媚びを売った。
必殺(悩殺)微笑みビーム。これでコイツは、私を強く意識するはず。絶対に。
さあ惚れろ。
「ん?…ああ…」
意外にも虚ろな返答。正義の味方は、私には興味が無い感じで、痴漢の後ろ姿を睨んだまま。
恋愛モノの、頬を染め合う展開を期待してた私には、予想外だった。
(そんな…私の魅了が通じないなんて)
「んじゃ、俺はこれで…」
正義の味方は、名も告げずに去って行こうとした。
そういう所は好感が持てるけど、その愛想の無さはマイナスポイント
…って、そうじゃなくて!
「待って!」
無視されてたまるか、この私が!
「んー?」
正義の味方は振り向いた。
あれ?
さっきまで横顔ばかりで気が付かなかったけど、よく見ると、見覚えが…。
あ。思い出した。
「あなた、同じクラスの…えーと、あれ?名前、何だっけ?」
何しろ、新学期に入ったばかりで、新しいクラスメイトを全員覚えてる訳がない。
顔は記憶に残ってても、名前まで覚えてなかった。
「んー?クラス?」
正義の味方は、私の顔すら覚えてなかった。

今思えば、これが私とコイツの、運命の出会いだった。
24SINGO:2008/09/25(木) 02:14:02 ID:/zGSGacQ

以上、回想おわり。

光「…という訳なのよ〜」
泰介「あー。そんな事もあったかな」
誠「信じられないな。けど、偉いぞ
レイパー」
世界「ホント、見直したわ
レイパー」
泰介「どーゆー褒め方だよ!!」
七海「いや、凄いよ。女の子を、澤永の魔の手から救うなんて」
泰介「何で痴漢の名前が俺と同じなんだよ!!」
刹那「ユーザーの間で頻繁に使われてるから、混同してるの。待ってて。
今、注意書きを出すから」

【注 読者の皆様 澤永および泰介という英単語は、ここではレイパーを意味します】

泰介「英単語じゃねーし!てか、お前ら、俺とレイパーを逆にして喋るな!同義語と思われるだろ!」
誠「すまん、泰助平」
泰介「その呼び方もやめろ!流行ったらどーすんだ!」
誠「中学時代のアダ名って聞いてたけど。すまん。松平と遠山には、俺から注意しておく」
泰介「そいつら、お前の中学出身だろーが!一発でバレる冤罪かますな!」
光「え〜と…みんな。なんか話が、違う方向に行ってない?てか私の言いたい事、わかってる?」
刹那「ん。満員電車で痴漢行為に走ったけど、偶然にも、もう一人の痴漢とダブったんで、
その手を掴んで、これ幸いと罪を着せてバックレた澤永の話でしょ?」
泰介「何その改悪!!」
誠「裏切ったな。俺、お前のこと信じてたのに」
泰介「おい誠、最初と言ってる事が真逆だぞ!」
世界「サイテー。見損なったわ。今更だけど」
泰介「西園寺まで!」
七海「あんた、光をハメる気だったのね」
泰介「カタカナで喋るな!性的に聞こえるだろ!てか全部、誤解だ!」
光「泰介。どさくさに紛れて何しとったんじゃ、貴様?」
泰介「えェー?お前が俺を弁護しなくて、誰が俺の潔白を証明すんだよ!」
言葉「あの…ケッパクじゃなくてレイパ君なら証明できますけど」
泰介「をわァ桂さん!何でココにィィ!?」

この後、泰介は袋叩きにされ、足腰(と股間)が立たなくなりましたとさ。
めでたし、めでたし。
泰介「ちっとも、めでたくねェェー!!!」
大変、泰介。
大へんたい介。

      おわりんぐ
25SINGO:2008/09/25(木) 02:15:26 ID:/zGSGacQ
激終。
彼のポジション、どうあっても三枚目なのね。
あと加藤ファンの方々、すみません。Cパートは削除してもらって結構です。
26名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 14:37:06 ID:GcPLZxhj
乙女ってリアルだとすごい不細工なんだろな(´・ω・`)
27名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 17:25:27 ID:44Z5SSm6
不細工にいじめ主犯やら運動部の幹部は無理な気がする
28tyoujiya:2008/09/25(木) 19:12:53 ID:ZUi73zWL
>>25
GJ
しかしCパートは、レイパーが、「お、俺は加藤に唆されたんだ!」とか口走って
乙女も破滅するんじゃ?
29名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 23:29:17 ID:zkfWsemH
>25
お美事です
SINGO氏の描く泰介は相変わらず美味しい役回りだなァ
>22-23だけなら普通の朴念仁系ボケ主人公って感じなのに……>24での怒濤のフルボッコなオチに笑いました
30名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 00:03:40 ID:waPVpIE8
>27
不細工でも立ち回りが上手ければなんとか…。
31名無しさん@ピンキー:2008/09/27(土) 17:47:27 ID:m5P+CVZU
亀レスですが>>17 tyoujiya様乙!
一気に読ませていただいたよ

乙女が、誠への想いをすっぱり断ち切るところが凄くよかったっす
アニメでもあの潔さにGJコールを送っていたのでw
あと tyoujiya様のおかげでみなみに惚れかけた。
チクショウ三馬鹿も友達想いのいい子じゃねえか

続き楽しみに待ってます。
32tyoujiya:2008/09/27(土) 21:53:07 ID:+Rer8eks
いろいろ感想ありがとうございます。
ちなみに今日はあのアニメ版最終回放映一周年とのことですね。

では乙女SS
>>16 からの続きです。
クライマックスは、一気に読んでいただきたいので
少々長いのを一気にいかせて貰います。
33tyoujiya:2008/09/27(土) 21:54:07 ID:+Rer8eks

翌朝。私は重い足取りで学校へ向かった。
桂と会ったらどんな顔すればいいんだろう。
確かに私は桂と友達になることを拒絶はしたけど、
それでも無視したりするとか、冷たい態度を取ったりとかはもうしたくないし・・。
普通にクラスメートとして軽く挨拶すればいいのかな?
いや、そもそも桂は、あんなふうに友達になることを拒絶した私の事をどう思っているのだろう?
・・そんなことばかりを考えて、頭はぐちゃぐちゃだった。

学園前駅の改札を出ると、みなみ、夏美、来実の3人が私を待っており、
挨拶もそこそこに、
「乙女、話があるんだけど・・いい?」
真剣な顔でそう問いかけてきた。
「え? うん・・いいけど何?」
私も、昨日夏美が泣いてたことについて聞きたかったから丁度良かったけど・・
けど、私に話って・・

「桂の事なんだけど・・」
「え? ・・・・」



その日の昼休み。私はみなみ、夏美、来実と一緒に屋上にいた。

私は今朝桂とあったらどんな顔をすればいいのかとか、そんなことばかりを悩んでいたけれど
朝のみなみたちの話は、その前に自分にはやるべきことがあったと教えてくれるものだった。

かくして私たちの目の前には桂の姿があり、私たち4人は膝を・・そして両手を地面につき
桂に向かって頭を深く下げていた。


今朝の話の中で―
昨日、私が桂のところへ向けて駆け出したときに夏美が泣き出したのは、
桂への罪悪感と、桂に対して今までしてきたことへの後悔からだったと、
他ならぬ夏美が語ってくれた。
そう、夏美も・・いや、来実たちも私と同じだった。
桂の事を嫌な奴だと思って、あたり前のように辛くあたって、
ついにはあまりに残酷なやり方で汚そうとさえして・・・。
でも、休憩室の外で私と桂の話を聞いていて、夏美たちも知ったんだ。
ただ嫌な奴だと思っていた桂が、
どれだけ真剣に恋をしていたか、それゆえにどれだけ傷ついていたか・・・。
そして自分たちがそんな桂を更に傷つけようとしていたことに・・・。
その自分たちの間違いに・・・。

だから、桂がそんなに嫌な奴じゃなかったんだと気づいて、
桂がどんなに傷ついていたかを知って、私たちは桂に味方したけど、
責められるべきなのは私たちも一緒だ。
でも、そんな自分たちの事を棚に上げて、伊藤や西園寺を責めた・・
そんな自分自身がひどく醜く・・・汚らしく思え・・・
だから夏美は泣いた。
来実もまた、泣きはしなかったが気持ちは同じだった。

だから今朝、夏美は言った。

「私、桂に謝りたい。
 ううん、謝らなくちゃいけない・・」

その夏美の言葉で私は気がついた。
34tyoujiya:2008/09/27(土) 21:54:50 ID:+Rer8eks

そう、私は、まず何よりも桂に謝らなくてはならなかったのに,
昨日もだってごめんの一言も言っていなかったって。
だから私は・・私たちは昼休みに桂を屋上に呼び出し・・・

「ごめんなさい!」

心の奥底から引き絞るようにその言葉を口にした。

「え・・? あの・・えっと・・・」
桂は驚きと困惑の入り混じった表情で戸惑っていた。
まあ気持ちはわかる。
昨日まで自分に辛くあたっていた人間がいきなり、
目の前でそろって土下座し、謝罪しているのだ。
それは驚くだろう。いや、私なら何かの罠だと思うかもしれないわね・・。
でも・・・

「私たち、ずっと桂の事嫌ってた。嫌な奴だと思ってた。
 だからずっとクラスでハブにしてたし、嫌なこと桂一人に押し付けたり・・
 ずっと酷いことしてた」
「ううん、例え相手を嫌な奴だと思っても本当はそんなことしちゃいけなかったのに・・
 そう、本当に嫌な奴なのは私たちだった」
「だから・・ごめんなさい!」
「お願い!許して!」
私たちは桂に、これ以上ないほどに真剣に謝罪の言葉を口にし、深々と頭を下げた。
そして頭をあげると、桂が先ほどまでの困惑の消えた表情で、
真剣な目でまっすぐ私たちを見下ろしていた。
そして私たちと目が合うと、
「もう・・いいですよ」
そう言って微笑んだ。

「たしかに、今まで加藤さんたちに冷たくあたられたのは辛かった。
 けど、昨日は皆さんのおかげで、私は本当の事を知ることが・・
 そしてそれに向き合い、きちんと受け止めることが出来て・・私、感謝しています。
 ・・・だから、もう・・いいんです」
その桂に夏美が、泣きそうな顔で問う。
「桂・・・ほんとうに・・許してくれる?」
「はい・・・
 だいいち・・確かにいままで私は辛かったけど、
 だからと言って、別に皆さんを怒ってるわけでも、憎んでるわけでもありませんから」
その桂の言葉に、夏美の顔が嬉しそうにほころぶ。いや、それは私も同様だった。
私たちは桂にきちんと謝った。
そして桂は許してくれた。
・・・でも・・

35tyoujiya:2008/09/27(土) 21:55:25 ID:+Rer8eks

「そんなに・・・」
 え?
「そんなに・・簡単に許さないでよ」
 来実の声だった.
「ちょ・・ちょっと来実、さっき「許して」って言ったのあんたなのに、
 何なの? その矛盾した発言は?」
すかさずそうつっこんだのは夏美だったが、来実はふざけているわけじゃなかった。
むしろ怒っているような・・泣いているような来実の表情は今まで見た事のないほど真剣だった。
「桂・・。あんた聞いたんでしょ?」
「え?」
「私たち。あの・・澤永にあんたを抱かせようとしたのよ・・」
「あ・・」
「私たち、あんたが澤永に無理矢理抱かれそうになって泣き叫んでる時に、
 休憩室のすぐ外で、いい気味だってゲラゲラ笑ってたのよ。
 あんた、そんな私たちをそんなに簡単に許せるの?!
 もしあのまま澤永にやられてたとしたら、そんななふうに言えるの?!」
来実のその言葉に、さっき桂に許されほころびかけていた夏美の顔が、再び悔恨と苦悩の色に染まる。
いや、それは私も同様だった。
しかし・・・

「でも、結局あの時は加藤さんが助けてくれましたし・・・」
桂はまだそんなことを言うが、今度はそれに対し夏美が口を開く。
「桂、いい加減、人がいいのも程ほどにしなさいよ。
 だいたいあの時乙女があんたを助けなかったら、私たちは、
 あんたが澤永にヤラレてるのを聞いてもずっとそれを楽しんで、
 その後もきっと、傷ついたあんたを見ながらいい気味だなんてずっと笑ってたのよ。
 だから・・例え乙女が許されたって、私たちが簡単に許されていいことなんて・・ない・・・」
その言葉に対して、今度は私が口を開かないわけにはいかなかった。
「な・・夏美! 何言ってるのよ?!
 元々桂を澤永に抱かせようなんて考えて・・実際に澤永をそそのかしたのは私なのよ・・。
 それにあの時桂が私の名を呼ばなかったら、私だって・・・。
 だから・・やっぱり一番責められるべきなのは私・・・」
来実の言うとおりだ。私たちのしたことはそんなに簡単に許されるべきことじゃない・・・。

それでも桂は・・、
「じゃあ、どうすればいいんでしょうか・・?
 それでも私には、皆さんをずっと許さないで憎み続けるなんて出来そうにありません・・・」
そう困ったような表情でこちらに問い返す。
そう・・桂はこういう奴なんだ。
あれだけ辛くあたって、酷い事をしてきた私なんかをずっと信じて・・
そして今もこんな風に・・でも・・・
だからこそ、そんな桂を傷つけ、汚そうとした自分自身を私は・・私たちは許せないんだ。
36tyoujiya:2008/09/27(土) 21:56:06 ID:+Rer8eks

でも、桂はそんな私たちでも許さないでいるなんて出来ないと言う。
だったら・・・。
「だったら・・殴ってよ。私たちを・・」
「え?」
そう言ったのはまたも来実だった。
「あんた昨日、西園寺と伊藤を殴ったでしょ? 卑怯者って言って・・。
 私たちだって桂が大人しいのをいいことに、
 みんなでよってたかって辛くあたって、汚そうとさえした卑怯者だよ。
 だから・・西園寺たちみたいに私たちも殴ってよ」
「で・・・でも・・・」
来実の言葉を、それでも拒否しかける言葉を遮って、私も口を開く。
「お願い、桂。自分勝手な言い方かもしれないけど、桂が殴ってくれないと、
 例え桂が許してくれても、私たちはずっと、私たち自身を許せそうにないの」
そう言って私は、桂をまっすぐ・・真剣に見つめる。
いや、私だけでなく、来実も、夏美も、みなみも桂の返答を真剣な表情で待っていた。
桂もまた、私たち一人一人を真剣な表情で見つめ、そして静かに口を開いた。

「わかりました。ただ、条件があります」
「え?」
桂の申し出に、今度は私たちが戸惑う。
「な・・何? 条件って・・」
夏美の問いに、桂が微笑んで答えた。
「私が皆さんを殴ったら、それで私たちにはもう何のわだかまりもないわけですよね?
 そしたら、えっと・・・」
僅かに言いよどんだ後、桂は微笑みながらその条件を口にした。

「私の・・友達になってください」

な?
・・桂、あんたまだそんなこと・・。

昨日だって、私ははっきり拒否したのに・・・。
夏美や来実もまた、桂の言葉に困惑しているようだ。
しかし桂は
「あの・・・やっぱり、だめでしょうか?」
と、そう不安そうに訊いてくる。
一方夏美たち3人が私の方をじっと見る。まるで判断を全て私に託すかのように・・。

そして私は桂に問う。
「桂、どうして・・・どうしてあんたってそうなのよ?」
「え?」
桂が、私の言葉にきょとんとするが、私は構わずに言葉を続ける。
「私は、あんたの事をずっと理不尽に嫌って辛くあたってたし、傷つけるようなこともした。
 それなのにあんたは、そんな私の事をずっと信じて・・
 その上、何度も言ったように、
 私は一度はあんたをあの澤永に無理矢理抱かせて汚そうとしたのよ!
 あんたの心にも身体にも、簡単には消えないようなひどい傷を負わせようとしたのよ!
 それなのに、どうしてそんなに簡単に許せるの?
 どうして・・友達になろうなんて言えるのよ?!」

私は、一気にそうまくし立てるように言い・・・
そして、桂の答えを待った。
私だけじゃない。夏美たち3人も桂がどう答えるかを待っていた。
桂は少しだけ考えるようにして、

「初めての・・絆だったから・・・」

そう静かに言った。
37tyoujiya:2008/09/27(土) 21:56:43 ID:+Rer8eks

「初めての・・絆?」
桂の言葉の意味が私には・・いや、夏美たちにもわからなかったようで
私はその言葉を復唱するように問い返す。
「知っての通り、私この学校に入学してからずっと友達が出来ませんでした。
 皆さん、いつも仲がいいからわからないかもしれませんけど、
 同じクラスにいる誰とも親しく話すことが出来なくて、誰とも心を通わせう事が出来ない、
 誰の心もわからない・・そんなのが毎日続くって、そんな毎日がいつ終わるかわからないって
 とても不安で淋しい事なんですよね・・」
その桂の言葉を聞きながら、もし私がそんな状況だったらと考える。
私なら、きっとそんな淋しさには絶えられないだろう。
でも、桂の事が気に入らなくて、桂を孤立させるようにクラスみんなを煽ってたのは私だ。
その事実が、改めて私を苛む。そしてその思いは、夏美も来実も同じようだった。
しかし、何より私が気になったのは、私たちの誰よりもみなみが沈痛な表情をしていることだった。

そして、桂は言葉を続ける。
「でも、あの時・・加藤さんが痴漢にあっている私を助けてくれた時に・・・、
 加藤さんは、私と知ってたら助けなかったなんて言ったけど、
 それでも私は嬉しかった。怖くて嫌な人だなって思っていた加藤さんの、
 でも本当は困ってる人を放っておけないっていう、
 私がそれまで知らなかった心が知ることが出来て・・・。
 その時に私は、この学校に入って初めて誰かの心を知ることが出来たと思いました。
 
 ずっと孤独だった私が、初めて孤独じゃないって気がしたんです。

 ・・・それは私の一方的な思いだったかもしれないけど、
    私は初めて、絆を感じることが出来たんです」

桂・・、あんた、私の事をずっとそんな風に・・・。
 
「だから、そのあとも加藤さんに辛くあたられて、とても淋しかった。・・悲しかった。
 西園寺さんがお友達になってくれて・・、まこ・・伊藤くんが彼氏になってくれて・・・
 私には別の絆が出来たけど、それでも私、ずっと加藤さんと友達になりたかった。
 ずっと、そう思っていました。
 それに、今考えれば・・
 友達と思ってた西園寺さんも、恋人と思ってた伊藤くんも・・
 私を助けてくれたことはなかった。
 痴漢の時も・・それに昨日だって、私を助けてくれたのは、いつも加藤さんでした・・・。

 それに、自分自身を何処かごまかして、ただ盲目的に伊藤君を信じようとしていた私が、
 真実を知る事の・・それにはっきり向き合う勇気を出すことが出来たのは、
 そしてその真実を受け止めてきちんとけじめをつけることが出来たのは
 加藤さんの・・それに皆さんのおかげですから・・。

 だから、私は加藤さんと・・皆さんと友達になりたい・・・」

38tyoujiya:2008/09/27(土) 21:57:45 ID:+Rer8eks

桂が自らの思いを語り終えた後、私たちは皆言葉を発せずにいた。
その沈黙の中で、私も、夏美たちも、私たちと友達になりたいという桂の言葉が、
桂の心からの願いだということだけは強く感じていた。
しかし、それでいて尚私は桂の願いに応える言葉を発せられないでいた。
それは夏美も来実も同じようだった。

しかしその沈黙を破るように何処かとぼけた口調で
「乙女、もういいんじゃない?」
そう言ったのは、さっきは沈痛な顔をしていた筈のみなみだった。
「みなみ?」
「乙女たちが、今まで桂にしてきたことを思って、
 その罪悪感とかで素直に友達になるって言えないのはわかるよ。
 ・・・て言うか、まあ桂に酷いことしてきたのはは私も一緒だしね。
 でも、それは私たちの問題じゃない?
 少しは桂の事を考えてあげなよ」
「え?」
そしてみなみは静かに微笑んで言葉を続ける。

「だってそうじゃない?
 もしこのまま私たちが桂の友達になることを拒否したら
 友達や恋人に裏切られたまま桂は。また独りぼっちの淋しい学校生活を送ることになるのよ。
 乙女は、そんなことを望むの?」
「あ・・・」
確かにそうだ。わたしは桂への罪悪感とか言いながら、
結局そんな自分の気持ちばかりで、桂の事を考えてなかった。

気がつくと、夏美と来実が再び、判断を全て託すかのように私の方をじっと見ていた。
たださっきとちがうのは、夏美たちが私に期待している答えがもう一つしかないという事だ。
桂もまた、不安そうな顔で私の答えを待っていた。
そして私はそれ≠口にする。

「わかったよ、桂・・。
 私たち、友達になろう」

39tyoujiya:2008/09/27(土) 21:58:50 ID:+Rer8eks

その私の言葉を聞いた途端、桂が満面の笑みを浮かべる。
「本当ですか!加藤さん」
「うん・・・。
 でも、それは今みなみが言ったみたいに、
 桂に今までしてきたことを悪いと思ってるからとか
 淋しい思いをさせないためとか、そんな理由からじゃない・・」
「え?」
きょとんとする桂に、私は言葉を続ける。

「私・・・昨日、自分が澤永を唆したってあんたが知った時、
 これであんたに完全に嫌われると・・もう信じてもらえなくなると思った。
 でもわたし、本当は・・桂に嫌われるのが怖かった。
 桂にもう信じてもらえなくなると思うと悲しかった」
「・・・・・・」
その私の言葉を、まっすぐ顔を向けて桂は真剣に聞いていた。
私はその桂に問い掛ける。
「ねえ桂、昨日屋上で一緒に泣いたよね?」
「・・はい」
「一緒に笑いもしたよね?」
「はい」
「私、桂と一緒に泣いて、笑って、桂と心が通じ合ったような気がした。
 ・・・それが・・とても嬉しかった・・」
「はい」
私の一言一言にいちいち返事をする桂にはもう、私の気持ちは通じているのだろう。
その顔は一つ返事をする度に少しずつほころんでいく。

「私は、昨日七海に対して、桂と友達ってことを否定したけど・・
 そして桂が友達になろうって言った時にそれを拒絶したけど、
 それは今まで桂に酷いことしてきた私には、そんな資格ないと思ってたから・・。
 でもそう思いながら、私本当は気づいてた。
 資格がないなんて思うって事は、私自身桂と友達になりたいって思ってるからだって・・・」
「あ・・・・」
その私の言葉を聞いた桂がはっきりと喜びの笑顔になる。

「私、桂の友達になりたい。そう思ってるから・・・」
「はい・・」
「これからは私たちとお昼食べよ。
 休み時間におしゃべりしたり、一緒に帰って寄り道したりとか、
 それから・・・他にも楽しいこといっぱいしよ・・」
「はい」

「私たち、友達になろう」

「はい!」

40tyoujiya:2008/09/27(土) 21:59:34 ID:+Rer8eks

桂はそう大きな声で返事をすると、満面の笑顔で、
抱きつかんばかりの勢いで私の両手を強く握ってくる。
その手を握り返しながら、桂のまぶしいばかりの笑顔に、私も自然に笑顔となる。
そう、私は嬉しかった。
やっと・・・素直になれた・・。
そして、これからは桂と友達だ・・。
そう思うと、喜びで胸が一杯になった。

そして、どのくらい桂と笑顔を向け合い、手を握り合っていただろう。
それは多分ほんの僅かな時間だったろうけど、
ふと我に返って横を見ると・・
夏美が、来実が、みなみも・・
にやにやと笑っていた。

「あ・・あんたたち、何笑ってんのよ!」
私は、うろたえながら叫ぶ。
「あはは、乙女ちゃん照れてる〜、」
「顔真っ赤よ。乙女」
「あ・・あんたらうるさい!」
来実と夏美に言い返しながら私は、
彼女らの言う通り自分の顔が真っ赤になっているのがわかった。
そして
「いやー、涙が出るくらい感動の告白シーンでした」
と思い切りむかつくような口調でからかうみなみに
「告白じゃないわよっ!」
私はそう叫んで掴みかかろうとするが、みなみはその私の手をするりとかわす。
そのために更に頭に血がのぼった私とみなみの追いかけっこが始まり、
それを見て夏美と来実が爆笑する。
桂も、声を出して一緒に笑っていた。
「ちょっとみなみ、待ちな〜っ!」
剥きになってみなみを追いがら・・
私も、笑っていた。


結局みなみを捕まえられないまま、私は息をつき、
皆がひとしきり笑い終えた後、桂が口を開いた。
「じゃあ、これで私たち友達ですね?」
そう問いかける桂だが、しかし・・
「まだ、駄目よ」
そう答えたのは来実だった。
「え?」
「私たちと桂が友達になるのは、桂が私たちを殴ってから・・さっきもそう言ったでしょ」
そう・・確かにまだ大切なけじめが残っていた。

「で・・でも・・」
いまだ躊躇する様子の桂だが、今度は夏美が優しい口調で言う。
「ねえ桂。私たち、桂とは対等の友達になりたいの。
 でも、今のままじゃ私たち桂の心に痛みを与えていたことに
 ずっと負い目を抱いたままつき合ってかなきゃならない。
 でも・・桂はそんなわだかまりを抱えたままの友達関係でいいの?」
「あ・・いえ・・・」
「でしょ? 
 だからせめて一度でいいから桂にも私たちに、
 桂の感じてきた痛みの何分の一でもいいから痛みを与えてほしいの。
 私たち自身のけじめとして・・・」
夏美の言葉に、桂は一度私たち全員を見渡すように見て、そして強く頷いた。


41tyoujiya:2008/09/27(土) 22:00:45 ID:+Rer8eks


そして、私たちは横一列に並んでいた。
ああ、そう言えば昔の学園ドラマの再放送でこんなシーンあったなあ。
悪いことした生徒が先生にビンタされるために、自分たちから教室の前にずらっと並ぶってやつ。
あれ見てた時は、なんてクサイ展開なんだろうって思ったけど、
まさか自分がリアルでこんなことするなんてね・・。
ただ、私たちを殴ろうとしているのはドラマのようなごつい男性教師ではなく
見るからに非力で頼りなさそうな桂なわけだけど・・。
そんなことを考えていると
「じゃあ、いきますよ」
そう桂が私たちに断りを入れてくる。

「桂、絶対に手加減はしないでよ」
そう来実が念を押す。
「はあ・・でも・・・」
と、またも何か躊躇するような態度の桂だが
「もし本気で殴らなかったら、私たち、絶対あんたの友達になんかならないんだからね!」
更にそう来実が言うと、意を決したように頷いた。
「はい、わかりました。ただ・・私が本気で殴ったら、
 多分、凄く・・・痛いですから歯を食いしばってくださいよ・・」
その桂に今度は私が答える。
「あたりまえでしょ。凄く痛いくらいじゃなきゃ、
 今まで桂に私たちがしてきたことと釣り合いが取れないんだからね」
「はい」
桂は私の言葉に再び強く頷く。

ただ、私は・・いや私たち全員がそう言いながらも何処かタカを括っていた。
いつも体育も休みがちなひ弱な桂が本気で殴ってもタカが知れてるって。
だから、本当は2,3発くらいは殴られなければとも思ったけど、
桂は優しいから1発しか殴れないだろうし、仕方ないな・・とか、そんな風に思っていた。
だが桂が、まず最初に殴る相手である夏美の前に立って平手を構えた時、
殴る前に腰を落としひねるその一連の動作が妙にキマっており、
そして、何よりもその目が据わっていたのを見て、私たちは寒気にも似た危険な何かを本能で感じた
そして次の瞬間、桂の平手が夏美の頬を張る音が響いた。。

 ば し ぃ っ ! !

42tyoujiya:2008/09/27(土) 22:01:30 ID:+Rer8eks

え? 何・・今の音?
なんか、昨日桂が伊藤たちを殴った時の音と全然迫力が違うような・・。
そう思う私の目に、まるで吹っ飛ぶように地面に倒れこむ夏美の姿が目に入った。
ちょ、ちょっと夏美、その倒れ方は流石に大げさじゃあ・・・
そう思ったが、夏美は頬を押さえながら起き上がることも出来ず、
「痛っ・・痛ァ・・・」
とうめきながら、涙まで流していた。
それが何を意味するのか上手く理解できぬまま、私の耳に・・

 ば し ぃ っ ! !

「ぐぎゃっ!!」

今度は桂の平手がみなみの頬を張る音と、蛙の潰れたようなみなみの悲鳴が響いた。
そしてみなみもやはり吹っ飛ぶように地面に倒れこみ、大の字で頬を押さえたまま、
「う〜ん、う〜ん・・」
とうめいていた。
そして、桂は次に私の横に立つ来実の目の前に立つ。
「あの・・、桂・・ちょっと待っ・・・」
夏美とみなみの様子にびびりながら来実が言いかけた言葉は、
しかし桂の耳には入らなかったようで

 ば し ぃ っ ! !

三たびものすごい打撃音が響くと、来実もまた吹っ飛ぶように地面に倒れこみ、
まるで痙攣したようにぴくぴく全身を震わせていた。

そして今度は、桂は私の前に立った。気がつくと私の足はガクガクと震えていた。
桂は、そんな私の恐怖を知ってか知らずか先の3人の時と同様に
腰を落とし、ひねりながら平手を振り上げる。
その一連の動作はまるで美しい舞いのようで、私は思わず見惚れてしまう。
そして、その私の顔をじっと見据える桂の顔が一瞬笑ったように見え・・

 ば し ぃ っ ! !

その音が響いた瞬間、私は自分の身体が一瞬浮いたように感じられ、
そしてスローモーションのように目の前に近づく地面を見ながら、ゆっくり倒れこむ。
頬の痛みが感じられたのはその直後だった。
・・・って、痛い! マジ痛いって!!
なんか頭がしびれて耳鳴りもするし・・一体何なのよ? このもの凄い平手は?!
私は、意識を失わないように保つのがやっとだった。

43tyoujiya:2008/09/27(土) 22:02:10 ID:+Rer8eks


私たちは皆、あまりの痛みに立ち上がることもできず、
やがて桂が心配して
「あの・・、皆さん大丈夫ですか?」
と不安そうな顔で訊いてきた。
「だ・・・大丈夫よ・・」
それだけ答えるのがやっとだった私の耳に
「桂ぁ・・、あんた、少しは手加減しなさいよ・・」
さっきは手加減したら許さないといっていたはずの来実の、
搾り出すような言葉が聞こえた。そして・・
「来実ぃ・・、あんたまた言ってること矛盾してるよぉ・・・」
つっこみを入れる夏美の声にも全く力がなかった。
ていうかこんな痛みの中でもしっかりボケつっこみは忘れないのね・・。
私は、2人に対してそう感心せずにはいられなかった。


既に昼休みは終わり午後の授業が始まっていたが、
私たちは相変わらず痛みで立ち上がる気力もわかなかった。
それでもようやく少しだけ痛みが引いてきたような気がして、
私は、相変わらず心配そうに皆の顔を代わる代わる覗き込んでいた桂に話し掛けた。
「ねえ、桂・・ちょっと質問していい?」
「え? ・・はい」
「あんたのビンタ・・手加減無しとかそういうレベルじゃない痛さなんだけどさ、
 一体何どういうこと? あんたビンタの段持ちか何か?」
「い・・いえ、そんな段は持ってませんけど・・」
と桂は、私の冗談半分の問いに糞真面目に答え、更に言葉を続ける。
「ただ私以前習い事で少し武道をかじっていて、それでちょっと段持ってるのもあったりして、
 腰のひねりとか腕の振り方もその辺の要領を生かしたって言うか・・」
あー、なるほど。何となく納得・・・そう思いながら私は・・・
いや、他の3人も改めて頬をさすりながら揃って苦笑いをしていた。

そして私には次の疑問がわいた。
「でもさ・・桂、
 あんた澤永に抱かれそうな時もこの平手でに抵抗すれば撃退できたんじゃないの?」
「いえ、あの時は無理矢理押し倒されて身体に力が入らなかったから・・
 今みたいに相手が動かないでくれて、私自身もきちんと腰をすえた姿勢で動作を取れないと
 さっきのような平手は・・・」
あー、なるほど。またも納得。
と言うか、こちらの質問にいちいち真面目に、且つわかりやすく答えてくれる桂を、
改めていい奴なんだなと微笑ましく思った。

44tyoujiya:2008/09/27(土) 22:02:50 ID:+Rer8eks

そして私は最後の疑問を口にする。
「あとさ桂。あんたさっき、私を殴るときに笑わなかった?」
その私の問いに
「あ、やっぱり気づいちゃいました?」
と桂は、まるで悪戯が見つかった無邪気な子供のような口調で答えた。
「私、これで加藤さんを殴れば、やっと皆とお友達になれるんだなって、
 そう思ったらつい嬉しくて顔がほころんじゃって・・・」
そう言って微笑む桂は全く悪びれた様子がなく本当に嬉しそうで・・

いや、嬉しいのは私も一緒だった。
そうだ、これで桂と友達になれるんだ・・。

でもねえ、だからって笑いながら人を殴る?
私はそう思い、眉をしかめながら・・・
でも、そんな桂が何だか可笑しくて、
「桂あんたってば、ホントに・・・・・ふふっ・・ふふふっ」
と、思わず笑い出していた。

そして・・
「ふふふっ・・」
「あはははっ・・」
夏美や来実、みなみも一緒になって笑い出し、
はじめはわけがわからないように戸惑っていた桂もまた、
「うふふ・・」
一緒になって笑い出していた。



下では何処の教室でも真面目に授業をしているというのに、
屋上では私たち5人の笑い声が響いていた・・。





 こうして―― 

 私たちと桂は友達になった。





45tyoujiya:2008/09/27(土) 22:05:23 ID:+Rer8eks

――今回はここまでです。
スクールデイズらしからぬクサいクライマックス展開となりましたがいかがでしたでしょうか?

今後は、3回くらいに分けてエピローグ的なエピソードを投下する予定です。
あと僅か、出来ればあと少し、最後までお付き合い宜しくお願いします。

46tyoujiya:2008/09/27(土) 22:08:42 ID:+Rer8eks
今気づきましたが手違いでメル欄が全部ageになってました・・OTL
すいませんでした!
47名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 00:14:18 ID:BVHGwcar
>>tyoujiya氏
どんまいどんまい。昔自分が投下してた時は直打ちで投下して、長時間スレを独占して
迷惑かけましたから(汗)。あまり気になさらずとも。

それはそうと、確かにクサい展開だ(笑)。夏美・みなみ・来実も昨日までの
安易な自分たちを反省して、本心から謝ってくれたのはよかったです。
色々とお互いに慣れない事もあるでしょうが、少しずつ友情を築いてくれれば
いいかなと。4連ビンタは言葉らしいオチをつけてくれましたね。

問題は七海との今後の関係かな?1度は激しくやりあいましたし、世界の件もあって、
複雑な思いに囚われるのかも。誠と世界……誰それ?
48名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 01:18:55 ID:EJNeFZcB
>32
ついに、ここまでたどり着きましたか……

確かにスクイズらしからぬ中学生日記のような展開でした
……が、それがいい
分岐ルートならではのIF展開、楽しませていただきました
きっちりとケジメをつけた乙女&三人娘にGJ!

エピローグ話での幕引きにも期待します
皆が笑顔でラストを迎えられるといいですね
49名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 21:39:57 ID:uyKTYFsv
>>tyoujiya氏
いいですねー!青春って感じで。
さりげないギャグにもクスリと笑わせて頂きました。
エピローグもですが、後日談SSとかで五人のほのぼのも
見たいなぁ、と言ってみる。
50名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 06:00:30 ID:d5S+GLvX
>>tyoujiya氏
ドンマイ。
それにしてもここまできましたね…。
けじめをつけて、友達に。
威力のありすぎるビンタと、言葉と乙女達とのやり取りが素敵です。
エピローグも楽しみにしています。…澤永の馬鹿にも相応の何かがあるのか、それとも馬鹿のままなのか…それも気になる所です。
51tyoujiya:2008/09/29(月) 18:47:59 ID:vCB4rs2D
どうもです
感想&慰めの言葉ありがとうございます

乙女SS
>> のつづき

エピローグその@投下します
52tyoujiya:2008/09/29(月) 18:49:15 ID:vCB4rs2D

学園祭から幾日か経った。







あれからについてだが――

私自身にあった変化として、私はあの日の翌日にバスケ部を退部した。
ただそれは考えるところがあったからで、別に七海と険悪になったからというわけではない。
むしろ名門である榊野バスケ部において、半ば自分勝手な都合での退部を私があっさり出来たのは、
先輩に七海が上手く口を利いてくれたからだった。

七海もまたあの日の事以降、これまでに桂に対するこれまでの自分の仕打ちや態度について
いろいろと考えるところもあったらしい。
桂に対しそれまでの事をはっきり謝ったわけではないが、まあそれでも
前みたいに悪い評判を口にしたりするようなことがなくなれば、それはそれでいい。


     *          *
53tyoujiya:2008/09/29(月) 18:51:16 ID:vCB4rs2D

七海と言えば3組の他の面子はと言うと――

私はあの日以降伊藤と会うこともなかったのだが、
偶然廊下で山県に出会ったとき、さり気なく様子を聞いてみた。

その時の話によると、西園寺は学園祭の翌日以降、学校を休んでいるとのことだ。
一応病欠ということになっているが、実際には山県には理由はわからないが家に引きこもっているらしく、
毎日のように伊藤と清浦が訪ねて学校に出てくるように説得しているらしい。
一方、西園寺と仲の良かった黒田や七海がまるで、西園寺の欠席に関心を示さず、
やはり仲のよかった清浦とも距離をおいているということで、そのことを山県は不思議がっていた。

その話を聞いたとき、彼女らの関係を壊してしまったは私かもしれないと思いあたり、
少し後味が悪かった。無論あの時の自分のしたことを後悔したわけではないが・・・。


山県は、伊藤と西園寺がつきあっているのを知っており、
話の中でそのことにふれる時は少しつらそうな表情になった。
そう、山県はまだ、伊藤の事が好きなんだ。・・・あの頃からずっと好きだったんだ。
そして私は思う。

中学の時、私が邪魔しなければ、今伊藤の隣りには山県がいたのかもしれないと・・。
そうすれば、伊藤は今も、あの時の優しい伊藤のままでいたのかな?
そんなことを思っていると、山県への遅すぎる罪悪感が生じてきた。

私は山県に「ごめん・・」と何度も言いかけたが、その度にその言葉を呑み込んだ。
今更伊藤はあの時山県の事を好きだったなんて告げても、ただ山県の心をかき乱すだけだから・・・。
そして私は謝ることすら出来ない罪に苛まれながら、山県と別れた。


     *          *
54tyoujiya:2008/09/29(月) 18:54:13 ID:vCB4rs2D

そして、私と桂の事だが――

当然のようにあの日から、私たちと桂は友達として付き合った。
あの時の言葉通り一緒にお昼を食べ、休み時間にはおしゃべりし、一緒に帰って、時には寄り道をした。

クラスの皆は、この前まで桂に辛くあたっていた私たちが、
当の桂と仲良くしてるのを見て最初は驚いていたが、そんなの一向に構わなかった。

みんなで話をしている時、桂と話がかみ合わないこともあったが、
そんな桂を私たちは天然で面白いやつだと悪意なく笑った。
桂もきょとんとしながら、一緒になって笑った。

かつての私たちなら、そんな桂を空気が読めなくてうざいとか思ったんだろうけど、
今は微笑ましく思っている。我ながら勝手なものだ。

話していると桂は実に明るく、ころころとよく笑った。
それまでは、教室で暗い表情をしている桂しか知らない私たちには凄く新鮮だった。

友達としてつきあう事で、桂は面白いやつだとわかってくる。

友達としてつきあう事で、桂はどれだけいい奴かがわかってくる。

そして、それがわかってくるほどに、
そんな桂にずっと辛くあたり、汚そうとしたという現実が自身を苛む。
この胸の痛みはきっと、いつまでも消えることはないだろう。

だけど私はその苦悩をぐっと胸に押し込み、そして笑う。
かつての自分のしたことにいつまでも私が悩むことを、桂は決して望まないから。



そして、私は
ずっとこの胸の痛みを受け止めながら・・・

桂と友達でいよう――



55tyoujiya:2008/09/29(月) 18:58:27 ID:vCB4rs2D
――今回は以上です。

>>50 氏他が期待されている澤永についてですが
今回も今後とも特に言及はありません。
すいません。

まあ、もし彼を糾弾しようとすれば、
やはり彼を唆した乙女にも制裁が必要になるでしょうが、
言葉はそんなことを望まないでしょうから・・。

まあ澤永は結局自分が悪いとか理解できないまま、
今後も変わらないでしょう。

エピローグは今週中に全て投下するつもりです。
あと少しのお付き合い、宜しくお願いします。
56名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 20:32:59 ID:kruirC/F
>>55
GJ。あー……やっぱり世界は引き込もっちゃうのねw
刹那はこれからも世界を支えていくんだろうな。誠はどうでもいいや
レイパー放置wwこういうところはスクイズらしいなww

愛ちん……。・゚・(ノД`)・゚・。
57名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 21:19:43 ID:Mb6EoAXE
言葉と乙女仲良くなれて良かったね。凄く和む
個人的に世界と誠と七海はもう少し糾弾されてもいいかなぁ
58名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 23:40:44 ID:wB9Q0w8G
GJGJGJ
言葉の容赦ないビンタにワロタw
乙女と三馬鹿達を好きになれる良SS!

個人的には誠、世界、七海達はどうでもいいや
言葉に友人が出来たのが、ホントにわが事のように嬉しい
59名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 01:35:30 ID:dTfJ2Bdy
>>55
前スレから読ませてもらってますが、あまりに内容に引き込まれすぎて
せめてMADででも映像化したい衝動に駆られますた
続き是非とも期待
60名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 01:38:31 ID:THZM8unS
>>55
やはり、言葉に必要なのは彼氏ではなく友達なんだなと思う。

しかし、疑問思うことがある。
>一方、西園寺と仲の良かった黒田や七海がまるで、西園寺の欠席に関心を示さず
たしかに幻滅はするだろうが、七海はどうかはわからないが、光はPS2の「愚行の果てに」
で殺人を犯した世界に対して「何があっても友達です」と言いきっているのに
そんな簡単に壊れるのはおかしいじゃないか(PS2は黒歴史だと言ってしまえばそれまでだが)?
そもそも内容自体がは他人が口を出して良いものじゃない三角関係(しかも七海に限っては元々言葉を敵視している)。
61名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 02:42:15 ID:5aJvlBUF
>>60
まあIF展開だからといえばそれまでだけど、この場合、皆の前で誠の口から
弁解があったのが大きいんじゃないかと思う。乙女たちに追及され逃げ場がなくなって
曖昧な状態のままやり過ごす事ができなくなった結果、誠も真実を吐き出さざるを
得なかったわけで。どれだけ追及しても最終的に誠が事実を認めない限り、
世界グループに反論する余地を与えてしまうだろうし。あとはあの場では刹那が
比較的冷静だった事。彼女が居なかったら確実に大喧嘩になって取り返しのつかない
事態になってたな。
原作やアニメも曖昧なやり過ごしでより深刻な事態に陥るわけだしねえ。

愚行の場合は、光の様子から言葉が世界や誠と関わったせいであの事件が起きたと
思っているのかもね。世界グループは最初誠が世界と
付き合ってると思ってるし、二股状態になっても、彼女達から見れば
言葉が横取りした風に見えてしまうのかも。(実際は逆なんだが、その辺の経緯を
世界や誠ははっきり示さないので、それも誤解を招いてしまう原因の1つ)

結論を言えば、世界に近い連中ほど、彼女の本質を見ていなかった
事に尽きるんだけどね…… 誠はほとんど全員だがw
62名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 02:48:12 ID:vWKoba7c
愚行の光はちゃんとした手順踏んで誠と世界が付き合った思ってるんじゃないの?
んで、言葉が横恋慕してああなったから世界は悪くない、みたいな
63名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 02:51:32 ID:vWKoba7c
ごめん。リロしなかった。>>61さんと内容かぶった
64名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 05:08:08 ID:3AlVxIq1
>tyoujiya氏
今回もGJです。仲良くなっても過去は消せないよな…。
でも、五人とも根底は色々あるだろうけど、仲良くなれて本当に良かった。
他エピローグ楽しみにしてます。
65名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 01:14:48 ID:tRTB3R1k
>59
さあ、今すぐMADを作る作業に戻るんだ
66名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 04:29:17 ID:eKzDjF3+
>>tyoujiya氏
GJです。
まぁ、澤永は仕方無いですね。扱い含めて、そういうキャラな所もありますし。
ともあれ、言葉達が仲良く、幸せそうに笑っているのが本当に嬉しいです。乙女も色々思いつつ、それでも笑って、友達でいる事を決めて…。
これから先、色々あっても、皆で笑って過ごしていってくれると良いですね。
他エピローグも期待しています。
67名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 17:38:50 ID:r+XLX0fH
しかしこういう状態で世界に引き籠もられると、悩んで反省というより
まるで拗ねてるか当て付けか何かに見えるな
68tyoujiya:2008/10/01(水) 18:36:16 ID:N4Cjaevd
どうもです
乙女SS
>>54 のつづき
エピローグそのA投下します
今回は気にしてた方の多かった
みなみ編です
69tyoujiya:2008/10/01(水) 18:37:13 ID:N4Cjaevd
エピローグA

桂と友達として過ごしながら、
私も、夏美たちも、かつて桂に辛くあたったことを悔やまない時はなかった。
桂が一緒にいる時は、そのことについて話すと、
当の桂がもう気にしないでほしいと却って嫌がるのでふれないが、
桂がいない時には、私たちはお互いにそのことを省みて、
時にひどく落ち込み合う事もあった。


そして・・
その日の放課後も私は、来実と夏美が用事があるからとさっさと帰ったあと
みなみと2人で桂の委員会の終わるのを待ちながらそんな話をしていた。
思えばみなみと2人きりというのは珍しいことだった。

そこで私はいい機会だと・・
「みなみ、あの時はありがとね」
そう礼を言った。
「え?」
「みなみがあの時、私たちと3組の連中を上手くまとめてくれたから、
 私と桂ははっきり真実を明らかにして、それを受け止めることが出来たし、
 伊藤たちにも、自分たちのしたこととのきちんと向き合わせることが出来たからさ・・。
 それに今、桂と友達でいられるのもみなみが背中を押してくれたからだし・・・」
しかし・・その私の言葉にみなみは・・
「私は・・何もしてないよ」
薄く笑って、どこか素っ気無くそう答えた。
「それに、夏美や来実はともかく、3組の連中を押さえたのはむしろ清浦さんだしね・・」
「清浦・・・か」

たしかにそうだ。あの時七海や黒田を制していたのは確かにみなみより清浦だった。
「そう言えば、清浦さんって、西園寺と幼なじみの親友らしいね・・」
「え?」
「だから清浦さんはあの時、甘露寺さんたちと一緒に西園寺を庇ってもおかしくなかったのに、
 むしろ冷静に、真実を確かめようとしてくれた。
 多分あの子はあの子なりに、それが西園寺のためだと判断したんだろうけど、
 でもそれって中々出来ることじゃないよね・・。
 本当、清浦さんって凄いと思う。
 だからお礼言うんなら私なんかより、むしろ清浦さんに言わないと・・」
そうみなみは言うが、でも・・・
「でも、結局そのために西園寺は・・・」
「ああ、なんかまだ学校休んでるんだって?」
「うん」
そう、あれから10日近くも経つのに西園寺はまだ学校を休んでいた。
70tyoujiya:2008/10/01(水) 18:37:46 ID:N4Cjaevd

そして私は思う。
「でも、私たちはあの時、桂を傷つけたことで西園寺や伊藤を責めたけどさ、
 ずっと桂を傷つけてた私たちに、本当はそんな資格なかったのよね。
 それなのに、学校を休ませるほど西園寺を追いつめて・・・」
「くすっ、乙女ったらまた自己嫌悪?」
「何よ、悪い?」
何処か呆れたように言うみなみに、私は少しだけむっとするが、
みなみはそんな私に優しく微笑んで言う

「乙女たちと西園寺たちは違うよ」

「え?」
「乙女たちは確かに桂の事が嫌いで、だから桂に辛くあたってた。
 そのことでいつまでも自分の事を責めてるけどさ、
 誰にだって、大した理由がなくても気に食わない相手なんているもんだし、 
 それでその相手に辛くあたったりする事だって珍しいことじゃない。
 もちろんそれはいい事だとは言わないけど、
 だからって、桂だって許してくれてるんだし、
 いつまでも気にすることじゃないわよ」
「う・・うん・・」
みなみの言う事は尤もだがどこか違和感があった。
それは・・
そう、さっきからみなみは「乙女たち」って言ってるけど、
まるで自分の事はその中に入っていないみたいな言い方なのだ。
私がそんなことを感じていると・・ 

「でも・・西園寺たちは多分自分たちのしていることが間違いだって気づいてたはず。
 それなのにあいつらは、そのことから目を背けて桂を裏切って、傷つけていた・・。
 だからあいつらは責められたってしょうがない・・」
「・・・・・・・」
一瞬の沈黙の後、みなみの顔からはさっきまでの笑顔が消え、
どこか悲しげな表情となった。

「そして・・・
 だから、私は西園寺たちと一緒なの」

71tyoujiya:2008/10/01(水) 18:38:42 ID:N4Cjaevd

「え?」
何? みなみが西園寺たちと一緒って・・どういう・・?
私の心中の疑問に答えるように、みなみは話し続けた。

「私ね、中学の時は友達いなかったのよ。
 別にいじめられはしなかったけど、
 それでも上手くみんなの輪に溶け込めなくて、ずっと一人だった。
 ほら、桂が言ってたでしょ?
 同じクラスにいる誰とも親しく話すことが出来なくて、誰とも心を通わせられなくて、
 誰の心もわからない・・そんな毎日が続いて、そんな毎日がいつ終わるかわからなくって
 私もそんな不安で淋しい思いをずっとしてきたの・・」
それは、初めて聞く中学時代のみなみだった。
そして、みなみが更に言葉を続ける。

「だから、この学校に入った時は、また友達が出来なかったらどうしようかって、凄く不安だった。
 乙女たちと仲良くなれて私は凄く嬉しかった。
 ・・でも、だからこそ私は何よりも孤独を恐れたの」
「・・・・」
「私はね、乙女たちと一緒に桂に辛くあたりながら、
 本当は桂がどれだけ傷ついているかもわかってた。
 いや、乙女たちと一緒に桂を孤立させるようクラスを煽りながら、
 さっきも言ったように私は、孤独の辛さを本当は誰よりも知ってた。
 だから・・自分たちがしていることが間違っているって事にも当然気づいてた・・。
 でもそれでいて、その間違いを指摘することも、自らやめることもしなかった。
 そうすることで、今度は私が乙女たちから拒絶されるかもしれないって思ったから」
「・・・・・・」

「だから、私はそれが間違ってると気づいていながら、
 乙女たちの友達だっていう自分の立場を守るためにずっと、平気で桂を傷つけていたの。
 ・・自分のしていたことが間違いだって気づいた時に夏美は泣いたけど、
 私は間違いだと気づいていながら、ずっと笑って、桂を傷つけていたのよ」
「・・・・・・」
「わかった? 
 私は誰よりも弱くてずるいから、だから流されることをよしとしただけ・・。
 私はそういう汚い人間なの・・」
そう語るみなみの表情は、ひどく悲しげだった。
知らなかった。
みなみは私たちと一緒にいる時はいつも笑ってたけど、
でも・・その笑顔の裏でそんな思いをしていたんだ。
72tyoujiya:2008/10/01(水) 18:39:16 ID:N4Cjaevd

「でもね、本当は私そんなのずっと嫌だった。
 だから、乙女が澤永のやつを唆して桂を無理矢理抱かせようとした時、
 夏美たちと一緒に笑いながら、本当は私はひどく恐れていたの。
 これでもう後戻りは出来なくなるって・・・」
「・・・・・・」
「ただ、もし乙女が澤永を止めないで、あのまま桂が汚されていたら、
 そして、乙女たちがそれをずっと笑っていたら、
 結局私は自分が孤独にならないためにずっと一緒になって笑ってたと思う。
 ・・・でもさ、それって結局自分の間違いに目を背けるってだけじゃなくて、
 乙女たちにも大きな間違いを犯させるところだったんだよね」
「・・・・・」

「もしあの時、澤永のヤツに桂が汚されていたら、私たちの心も同時に汚れていた。
 そして本当に怖いのは、そうやって汚れていながら乙女たちが、
 自分たちが汚れていることにも気づかずに前と変らず笑いながら日常を過ごして・・
 私だけはそれに気づきながら、そんな日常を許容していただろうってこと・・。
 でも、そこまでわかっていながら、私は桂を汚そうとしている澤永も、
 汚させようとしていた乙女のことも自分で止めようとはしなかったの。
 本当、汚いよね。私って・・・」
「みなみ・・・」

みなみは、ずっと悲しい表情のまま、自分の事を汚いと何度も言った。
たしかにそうかも知れない。でも・・私はそれを責めようとは思わなかった。
むしろ私はそんなみなみにすまないと感じていた。だから・・
「ごめんね。みなみ・・・」
「え?」
「私さ、桂にしてきたことが間違いだって事の気づいた時、ひどく辛かった。
 だから、気づいていながら間違いを犯し続けてたみなみは、
 本当はずっとずっと辛い思いをしてきたんでしょ?」
「あ・・・」
「もし私たちが、もっと早く自分たちの間違いに気づいてたら、
 みなみにそんな辛い思いさせずにすんだんだよね?
 みなみは今、私たちを汚すところだったって言ったけど、そんな自分を汚いって言うけど、
 むしろみなみの気持ちに気づけないことでみなみの事を汚してきたのは私の方・・。
 だから・・・ごめん」
73tyoujiya:2008/10/01(水) 18:40:05 ID:N4Cjaevd

私の謝罪に、みなみはしかし嬉しそうに笑顔を返してきた。
「ううん。そんなことない。・・ただね・・」
「え?」
「あの時、休憩室で澤永に汚されそうになりながら桂が乙女の名前を呼んで、
 乙女に助けを求めた時に、乙女は迷い始めた・・自分の間違いに気づき始めたよね?」」
「う・・うん」
「私、それに気づいて、心の中で必死で祈ってた。
 取り返しがつかなくなる前に乙女が間違いにきちんと気づいてくれることを・・」
ああ・・そういえばあの時みなみはずっと私の事を見つめてたっけ・・。
「だから、乙女が休憩室で桂を助けて、夏美たちも間違いに気づいて・・
 私はそれが本当に嬉しかった」
そっか・・、私が桂と一緒に休憩室から出てきた時にみなみは優しく微笑んでいたけど
そういう事だったのか・・。
「そして、乙女たちと一緒にやり直せるなら、私も少しは綺麗な人間になれるかなって・・
 そう思ったから、あの時、私は私なりに
 乙女たちが桂たちにしてあげようとしていることを後押ししてただけなの」

みなみの言葉に、何だか私は胸がいっぱいになる。
私がみなみの気持ちに気づいてやれなかったせいで、
そして自身の間違いにずっと気づけなかったせいでみなみにずっと辛い思いをさせてきた。
そのことに対する、罪悪感で・・。
でも、そのことをまた謝ってもきっとまたみなみは私の罪を否定して、ただ優しく笑うのだろう。
だから、きっと私がみなみにしてやれるのは一緒に笑うことなのだろう。
そう思ったから、私はわざとからかうような口調で、あの時から思ってたことを口にする。

「それにしてもさあ〜、いくらなんでもさ〜、みなみ先生はないよね〜〜」
74tyoujiya:2008/10/01(水) 18:40:41 ID:N4Cjaevd

「えぇっ? な、何よ、突然!」
唐突に話題を変えられて、さっきまでの静かな雰囲気から打って変わって
みなみはわたわたとうろたえ始める。
「し、仕方ないでしょ、あの時は咄嗟のことだったし、私なりにあの場を収集するには
 全員を呑んでかからないとって思って・・・とにかく必死だったのよ!」
そう言いながら、みなみの顔は真っ赤だった。そうか、やっぱり恥ずかしかったのか。
とは言えやっぱりあのセンスはないよねえ・・。
さっきみなみは中学時代に友達いなかったって言ったけど、こういうセンスが原因だったんじゃない?
私は半ば本気でそう思ったが、流石にそれは口にしなかった。

「桂もさあ、私に何かにつけて「またみなみ先生になってくださいよぉ」とか言ってきて
 本当、まいってんのよね」
そうため息をつくみなみ。
ああ、そう言えば桂、あの時やたら空気読まずにうけてたもんねえ・・。
「いいじゃない? やってあげれば・・。
 なんなら次のホームルームの時私、夏美たちとわざと騒いであげるからさ、
 そこで颯爽とHRを妨害する悪者乙女さん一派を、みなみ先生が一喝って筋書きはどう?」
「じょ、冗談じゃないわよ! 私絶対やらないからね!」
あ〜、本当に嫌なんだ・・。そう思いながら
からかい半分の私の言葉に剥きになるみなみが何だか可笑しかった・・・。

しかしみなみは急に真顔になり
「ところでさ、乙女・・」
「え?」
「バスケ部・・やめてよかったの?」
そんなことを訊いてきた。
「おや、それで上手く話題を変えてるつもり?」
「う、うるさい!」 
私の意地悪な言い方に、頬を膨らませるみなみ。
「ふふっ、ごめん・・・。
 でも、バスケ部の事ならいいのよ」
私は素直に謝って言葉を続ける。
「私がバスケ部に入るのを決めたのはさ、
 入部しようかどうか迷ってる時に、伊藤に「がんばれ」って言われたからなの。
 だからバスケは嫌いじゃないけど、それでもバスケ部をやめたのは
 長い間抱いてきた伊藤への気持ちにはっきり踏ん切りをつけるためだから・・・」
そう、それは私の偽らざる気持ちだった。
それなのに、みなみは突然くだけた口調で・・・。

「でも、それだけじゃないよね〜?」
75tyoujiya:2008/10/01(水) 18:41:16 ID:N4Cjaevd

「え?」
「バスケやってると、大切なお友達の桂と一緒にいる時間が減っちゃうもんね〜?」
「な・・な・・・」
見るとみなみの顔はさっきの真顔から一転、いやらしいほどニヤニヤと笑っている。
「いや〜、あの時の屋上での乙女の桂への告白は、今思い出しても泣けてくるわ〜」
「だ・・だから告白じゃないって言ってるでしょ!」
わざとらしく目頭を押さえながらの芝居がかったみなみの言葉に、
私は剥きになりながら、今度は自分の顔が真っ赤になるのがわかった。
確かに私がバスケ部をやめた理由には、みなみの言うことも大きかった。
でも、なんかその言い方は・・誰かが聞いてたら、
私が桂に気があるみたいな変な風に聞こえるじゃない・・。
なんかそう考えただけで、ますます自分の顔が赤くなるような気がした。
そしてみなみはというと、そんな私をちらちらと見ながら肩を震わせて笑っていて・・
くそ、みなみのやつ、さっきの仕返しのつもりね・・・・。

その時、教室の扉が開き
「あら、2人ともどうかしたんですか?」
そう言って、桂が委員会から戻ってきた。
「え? あ・・桂ァ?」
話題の一方の主の登場に、私はついうろたえてしまうが、みなみは
「ううん、何でもないの。じゃ、帰ろっか?」
そう落ち着いた様子で言った。
「はい」
と桂はそれに答え、
「ほら、乙女も・・行こ」
みなみはそう言いながら、私に笑いかけた。

それはさっきまでのからかうような笑いではなく、とても優しい微笑みで、
私はその笑顔を見ながら改めて、みなみがこれまで感じてきた辛さを思った。
そしてそれでも今、こんな風に優しく笑えるみなみを、本当に強いと思った。

みなみはずっと辛い思いをさせてきた原因は、私にもある。
私はそのことを後悔しつつ、でもそれだけじゃ駄目だとも思った。
私も、強くならなきゃ・・・。

そして、もう自分のせいでみなみに辛い思いをさせちゃいけないと、
自分が汚い人間だなんて思わせちゃならないと強く思う。
いや、みなみだけじゃない。夏美や来実にも・・そして・・桂にも・・。

だから私は、今ある彼女らの笑顔を大切にしようと思う。
そして私も彼女らに、笑顔を向けていこう・・。
ずっとみんなで笑い合っていこう・・。



だから今は――

「乙女〜、行くよ」
「加藤さん帰りましょう」

「うん!」

立ち上がりながらそう強く答えて・・

私は、2人に心からの笑顔を向けた。



76tyoujiya:2008/10/01(水) 18:42:07 ID:N4Cjaevd

――今回は以上です
本作のキャラクターは自分的には基本的に(異論はあるでしょうが)原作準拠のつもりですが、
おわかりのようにみなみの設定のみは完全に作ってます。
賛否はあるでしょうが、できれば許容いただけると助かります。

では次回で本作は、本当に完結です。
投下は3日(金)19時頃です。
わざわざ時間を予告するのには、ある理由がありますので、
できれば投下後早めに見てもらえると幸いです。

77名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 21:52:01 ID:hK71RulJ
>>tyoujiya氏
お疲れさまです。みなみが過去に苛められっ子だったのではという説は
2chでもたまに見かける意見ですが、なるほど彼女は孤立する辛さを
乙女たちの中では誰よりも知っていたというわけですね。しかし、みなみは
内心罪悪感を持ちながらも、再び孤独になる事を怖れて、乙女たちに迎合して
しまうところだったというわけですか……

精神的に強い人から見れば、そんなの保身の塊じゃんかと批判されるでしょうし、
事実その通りなんですけど、考えてみれば、言葉やこのワールドの乙女みたく
誰でも真の意味で強くなれるわけじゃないしね。多かれ少なかれ自分可愛さや
ずるさ汚さは持っているわけで(苦笑)。

ともかく、ラストを楽しみにしてます。
78名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 22:29:10 ID:VL/I0VFb
かつてみなみをこんなにかわいいと思ったことはないw
いいキャラだなあ。10月3日?なんだろ。あれかな
79名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 23:19:33 ID:Zs+EhS9Y
言葉×世界




百合は駄目かな・・・・?
80名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 18:12:19 ID:B4rNaZ7w
>>79
是非!
81名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 19:56:09 ID:QcH52Fl4
>>33-44,>>52-54,>>69-75
tyoujiyaさん、長きにわたったSS連載お疲れ様でした

叔母風呂作品ならまずありえない結末ですが、
スクイズでこのような王道の学園ドラマっぽい展開は、逆にとても新鮮でした
L×Hもせっかくコンシューマ用(それもCERO15歳以上)なのですから、
中途半端なバッドエンドばかり作らずに、このように良い意味で期待を裏切るエンドがほしかったです
(主人公はあくまで誠ですから、無理は承知ですが)

また、多少の性格に違いがあるとはいえ常にセットで描かれる三馬鹿(このSSではもはや三馬鹿呼称は失礼かも)が、
ちゃんと三人三様のキャラクターに、それぞれ独立した個性・意思が与えられているのもこのSSならではだと思います
言葉もええ娘すぎると感じていたら、半分ネタとはいえちゃんとビンタで潜在する怖さを発揮しており、
スクイズらしさもバランスよく残っているとも感じました
もし良かったら、事件後の世界・刹那・光・七海の葛藤と反省を描いた補完SSも読んでみたいです

最後になりましたが、どす黒いまでに救いの無く凄まじい愛憎と破滅が売りのスクイズにおいて、
贖罪と絆の再生といった白展開のIFスクイズを作ってくださりありがとうございました。
これからも新作ができたら、また読んでみたいと思います
82名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 21:55:46 ID:B4rNaZ7w
>>81
あと一回ありますよ
83名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 02:16:18 ID:0kh3Y7uD
いっそもうtyoujiya氏の乙女と言葉で百合展開でもいい
84SINGO:2008/10/03(金) 04:11:39 ID:Jivkiwcn
どうも先輩がた。
Niceボート一周年と聞いたんで
Niceボートネタを描いてみました。
ので、投稿します。

【破局に向かって】第0部
  〜予兆〜

舞台はアニメLast(グロ注意)の後日談Ifです。
主人公は、田中一郎です。下の名前もらえて、おめでとー。
85SINGO:2008/10/03(金) 04:15:18 ID:Jivkiwcn

【破局に向かって】第0部
  〜予兆〜

♪ズンチャ、ズンチャ、Do Me. Do Me.♪
携帯電話が鳴った。クラスメイトの澤永泰介からだ。
ピッ
「もしもし。何だ?澤永」
『田中!聞いたか!?』
いきなり意味不明な質問だな。
「……?何をだ?」
『誠が死んだ!』
「は?」
お前は、そんな下らない冗談を言うために、通話料金30円を払うのか?
そういえば俺が入院した時も、お前、俺を勝手に死なせてたらしいな。
そういう冷やかしは他所でやれ。こちとら、X'masをシングルで過ごしたから、哀愁ただよってるんだ。
『嘘じゃねーって!ニュースになってる!あー、もー!とにかく、TVつけてみろ!!』
迫真の演技だな。
このまま切ってもリダイヤルしてきそうなので、言われた通りにTVをつけてみた。
『…凄惨なニュースです。本日未明、東原巳のマンションで男性の死体が発見されました。
被害者は、このマンションに住む伊藤誠さん16歳…』
俺は携帯電話を取り落とした。
(伊藤が…死んだ…?)
俺は、身近な人間の死に、ショックで茫然とした。
俺の視界が暗く狭くなっていく。頭が痛い。耳が遠くなる。
『被害者…腹部を刃物で刺………被害者の首…切断……頭部…遺棄…』
凄惨な内容が断片的に俺の耳に入ってくる。
俺は、かろうじて意識を保った。
(明らかに他殺…しかも首を切断だと?)
訳が解らない。
伊藤…お前、誰の恨みを買ったんだ?
X'masの数日前、伊藤は西園寺世界とモメた。何でも西園寺を妊娠させたとか何とか。
それ以降、伊藤の評判はガタ落ちした。女生徒、特に四組女子からの評判が劣悪だった。
だからといって、殺されるに値するとは思えない。
……吐き気がする。
(駄目だ。深く考えると鬱になる)
そうだ。大晦日とか初詣の予定でも考えるんだ。
俺は頭を振って、気持ちを切り替えた。現実逃避と知りながら。

その数日後。俺は再び茫然自失となる事件を知る。
西園寺が死体で発見されたのだ。俺達が通う榊野学園の校舎屋上で。
しかも伊藤を殺害した犯人として。

年が明け、
冬休みも終わり、
新学期。
俺と担任教師は、そろって生徒指導室に呼び出された。
伊藤と西園寺の件で尋問されるのだろう。
クラス担任が呼び出されるのは当然で、俺はクラス委員長という理由でだ。
86SINGO:2008/10/03(金) 04:17:04 ID:Jivkiwcn
《生徒指導室》
「伊藤君と西園寺さんの件は聞いてますね?」
生徒指導の教師が尋ねてきた。
「どこまで知ってますか?」
「先生の方が詳しいのでは?」
警察から、ある程度の情報を聞かされている筈だろ。
「いいから話しなさい」
「えと、伊藤は腹を刺されて死亡。頭部が切断されて行方不明。犯人の西園寺さんも死亡」
ここまでがマスコミ報道の限界だ。俺は憶測など交えず、知っている事だけを話した。
「警察の方から聞いたのですが、伊藤君はただ刺されたのではなく、メッタ刺しにされてました」
メッタ刺し?今、メッタ刺しと言ったのか?
「西園寺さんは相当な憎しみと殺意があったと思われます。確か彼女、伊藤君とモメたらしいですね。
妊娠がどうとかで」
確かに西園寺は去年、ある日を境に不登校になった。それがX'masの数日前、ふらりと登校して、
伊藤の子を妊娠している旨を告白したのだ。教室の、皆がいる時に大声で。
その後の事は想像するしかないが、おそらく伊藤は堕胎を提案しただろう。
それに激怒した西園寺が、衝動的に伊藤を害しても不思議ではない。
だが、メッタ刺しにするとは明らかに異常だ。
明確な憎しみと殺意をもってトドメを刺しに行っている。
「西園寺さんについては妊娠の情報はありません。が、他殺である事が判明しました」
他殺!?そんな馬鹿な。無理心中、後追い自殺ではないのか?一体、誰が?
どれもこれも、俺には訳が解らない。
それよりも解らないのは、
「なぜ俺に、そんな話を?」
いくら真実とはいえ、黙っていれば良いものを、なぜ悪印象をわざわざ俺にバラす?
余計に生徒を混乱させるだけだろ?何の益が?
俺は、その理由に気付いた。俺はクラス委員長。クラスをまとめる役だ。
学園側は真実を隠蔽するため、発言力のある俺を利用するつもりだ。
「つまり、みんなに嘘をつけ、と?」
クラス内を情報操作(捏造)しろというのか。
学園にとって都合の悪い真実を潰せば、学園のイメージ低下を抑えられる。
怨恨による殺害を、予測不能な突発的事故にすり替えれば、学園側は生徒管理責任には問われない。
(腐ってる…)
思い返せば、学園側はいつも知らんふりを決め込んできた。スキャンダラスな事は隠蔽しようとする。
学園祭の裏側での、休憩室(擬似ラブホ)の存在を知りながら放置する。
イジメの存在を公にしたくないゆえに、加害者側を処罰せず被害者側の自主退学に期待する。
伊藤と西園寺の妊娠騒動にも、学園側はスルーした。
どれもこれも、学園側の怠慢・生徒指導不足を認めたくないがゆえの、無責任な保身だった。
87SINGO:2008/10/03(金) 04:18:27 ID:Jivkiwcn
今回の殺人事件にも同様だろう。さすがに知らぬ存ぜぬでは通せないレベルだが、
それでも学園側は生徒達の無責任な噂や作り話を潰したいのだろう。
「あなたはコレに近い噂を否定して下さい。その上で『あれは事故』と言うのです。
理由作りは、あなたに一任します。先生に聞いたと言えば、クラスの皆は信じてくれるでしょう。
勿論、事故だという噂なら、否定する必要はありません。放置して結構です」
もし真実を伝えると、伊藤と西園寺の暗黒面が露見する。それは死人を冒涜する行為だ。
だからこそ、二人の尊厳を守るため、積極的に嘘をつくべきだ。『あれは事故だ』と。
悪い提案ではない。
だが、気に入らない。
この教師は俺の性格を知った上で、俺の良心に付け込んできている。
(くそ…ふざけるな)
隣を見れば、俺の担任が申し訳なさそうな表情をしていた。
「話は終わりですか?俺、これで失礼します」
付き合いきれない。
俺は、俺のやりたい様にする。
とりあえずクラスの皆には、悪い噂や変な作り話はするなと言っておこう。
まずは西園寺の親友だったグループ、甘露寺達からだな。
特に黒田は伊藤と西園寺の交際に反対していた。最悪、伊藤を悪人に仕立て上げるかもしれない。
遠山や松平は伊藤と中学時代からの仲だ。西園寺を悪く言いかねないな。
あと他は…見つけ次第、注意しておくか。
澤永?ああ、あいつは放置しても大丈夫だ。澤永の作り話を信じる馬鹿は、この学園には皆無だからな。
世の中には、知らない方が良い事もあるというが、ソレには俺は懐疑的だ。
真実を知り、その上で自分の人生を選択するべきだと思う。
ただ、今はその時期ではない。俺が真実を告げるのは…保留だ。
(くそ…何だかんだで、学園側の思惑通りになっているな…)
俺が指導室を出て行こうとした時、
「待ちなさい」
呼び止められた。
「もうひとつ。貴方のクラスで、去年、パリに転校した生徒がいましたね?」
清浦刹那の事か?
彼女なら、西園寺の妊娠騒動よりずっと前に転校して行った。事件とは無関係の筈だ。
「彼女が、どうかしましたか?」

「今日か明日にでも帰国します。手続きが済み次第、すぐにでも本校に復学する予定です」
88SINGO:2008/10/03(金) 04:20:21 ID:Jivkiwcn
《翌日 昼休み》
俺は夢遊病者の様な足取りで、教室へと向かった。
先程、学食で昼食をとってきたが、味はおろかメニューすら覚えていない。
昨日と今日、俺の脳裏を占めていたのは、清浦だ。
(くそ…なんてタイミングの悪さだ…)
清浦が帰国だと?
まだ復学していない様だが、西園寺が伊藤を殺した事件は、すぐに清浦の耳に入る。
清浦は深く悲しむ。
それ自体は、仕方のない事だ。
清浦と西園寺は、本当の姉妹の様に仲が良かった。
さらに伊藤の事が好きな癖に、自ら身を引き、伊藤を西園寺に譲っていた(あくまで俺の見立てだが)。
だから、清浦には真実を知る権利がある。
問題なのは、その真実だ。
西園寺が、事故でも衝動的でもなく、明確な憎しみと殺意をもって伊藤にトドメを刺し、しかも
無理心中でも後追い自殺でもなく、誰かに殺されたという真実。
清浦の心をズタズタに切り裂く、真実という名のJOKER。
ただし、ババ抜きのJOKERだ。あのクソ教師に押し付けられたせいで、今、俺の手にある。
次に押し付けるべき相手は……清浦だ。他に無い。
決断の時は必ず来る。しかも清浦の席は俺の隣だから、俺に逃げ場は無い。
俺は、どうすれば良い?
優しい嘘で、清浦の心を守るか。
残酷な真実で、清浦の心を閉ざすか。
…前者だ。消去法で。
清浦を欺き、その信頼を裏切る事になるだろうが、それでも清浦だけは傷付けたくない。
いや違う。俺は…ただ清浦に嫌われるのが怖いだけだ。
…ああ、そうか。
ようやく自覚。俺は清浦の事が…。
いや待て。馬鹿か俺は。身の程を知れ。
清浦は俺の事など眼中に無い。
やはり俺は器が小さい。
真実を告げる資格は、俺には無いな。
その役目は、本気で清浦の事を想ってる男に任せるべきだ。
…逃げようか。清浦の復学に合わせて病欠するのも良いかもな。
そんな出来もしない馬鹿な事を考えながら、俺は教室のドアを開け、中に入った。
だが、その前に俺は予期しておくべきだった。帰国したての清浦の行動を。

「何コレ…何なの…何の冗談?光、七海!」
西園寺と伊藤に早く会いたいがために、フライング気味に復学した清浦が…
伊藤と西園寺の席に飾られた菊の花を見て、叫んでいた。

       第0部 完
89SINGO:2008/10/03(金) 04:24:03 ID:Jivkiwcn
終わりです。
過去スレにも【破局に向かって】を投稿しましたが、
今日のSSは、↑の序章(プロローグ)という設定です。ので、
この後、田中と刹那がどんな運命を辿るのかは、すでに過去スレでネタバレしています。

あと、矛盾点、つじつまが合わない点などは、ご容赦ください。
90名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 12:27:19 ID:tN3xmjgh
あれ?言葉の名前が一度もでてきてない。わざと?

ともあれ>>89GJ!!
91名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 16:44:27 ID:xpH8OwAh
>>89
GJ!
胸にざわざわと来るプロローグです
92名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 16:47:50 ID:mFjPruhm
>>90
たぶん周囲の証言からはすぐに言葉が世界を殺した犯人に結び付かない為
言葉が行方不明になってしばらくして発覚

というかんじな為言葉の名前が出なかったのではそれに田中にとって言葉は
興味の対象ではないしね
93tyoujiya:2008/10/03(金) 18:59:18 ID:xpH8OwAh
どうもです

>>81
長文の感想ありがとうございます。
でも、あと一回ありますよ〜

というわけで予告の時間となりました。
乙女SS
>>75 のつづき
エピローグそのB投下します

最近の感想とか読んでると、求められていない展開のような気もしますがあえて投下。
泣いても笑ってもいよいよ本当に完結です

94tyoujiya:2008/10/03(金) 19:00:16 ID:xpH8OwAh

エピローグB


学園祭から2週間が経った、その日曜日、
榊野町に遊びにきていた私と桂は、ちょっとしたピンチに立たされていた。

「だからよぉ、お茶だけつき合ってくれたら許してやるっていってるだろぉ〜」
そう言いながら私の正面に立つ男が下卑た笑いを浮かべ顔を近づけてくる。
その男の連れの男たち2人も、私たちを囲むようにしてニヤニヤと笑っている。
「だからそのことはもう謝ったでしょ!」
「そんな口先だけで謝られても、俺の足の痛みはおさまらねえんだよぉ」
「いい加減にしてよ、女の子に足を踏まれたくらいでみっともないわよ!」

そう、事の始めは余所見して歩いていた私が、その男の足を踏んでしまったことなのだが、
その相手が悪かった。男と、その2人の連れは見た目からしてガラが悪かったが、中身も最悪で、
すぐ謝ったにも拘らず、こうやって私たちに、お詫びにつき合えとしつこく絡んできているのだ。
「なあ、そっちのオッパイでかいねえちゃんも、俺たちと楽しいことしようぜ」
男たちの1人が、さっきからおびえたように私の腕にしがみつくようにして寄り添う桂に声をかける。
だが、桂はそれに答えることも出来ず、私の腕を掴む手に力を入れてくる。
ほんとにしつこいわね、こいつら・・。それに・・
私は、不安そうな桂の顔をチラッと見て、
男が苦手な桂にこの状況はちときついわね・・
そう思ったが、周囲を歩いている人間も巻き込まれるのを恐れてか
みんな見て見ぬ不利をして通り過ぎていき、現状を打開する術は中々見つかりそうになかった。
そして私が流石に焦りを感じてきたその時・・・

「おまわりさーん、こっちです! 女の子が絡まれてるんです!」
という若い女性の声と、それに答えるように
「よし、こっちだな!」
という若い男性の声、そして近づいてくる足音が聞こえてきて、
「おい、やべえぞ」「あ、ああ・・」
という言葉と共に私たちに絡んでいた男は、うろたえながらあっけなく去っていった。

「ふう・・」
ほっとした私と桂は思わず2人同時にため息をついた。
でも、今の聞こえてきた女性と、警官らしきの男性の声って、
どっちもやたら若くて・・それに何処かで聞いたような・・・
私がそんなことを思っていると、
「上手くいったみたいね」
さっきの女性の声が聞こえ、そして物陰から現れたのは・・
95tyoujiya:2008/10/03(金) 19:01:05 ID:xpH8OwAh

「あ・・あんた・・?」
「清浦・・さん・・?」
桂が口にしたように、私たちにVサインを向けながら澄まして現れたのは清浦だった。
そして・・・。

「やれやれ、行ってくれてほっとしたよ」
そう言いながら清浦に続いて現れたのは男性は警官なんかではなく・・
「?!」
「あ・・・」
私と桂は、咄嗟に言葉がでなかった。
でもさっきの声を聞いたとき、私は・・そしておそらく桂も半ば気づいていた。
でも、そんなわけがないと思っていたのだ。
そして・・
「よぉ・・・。加藤・・それに言葉も・・大丈夫だったか?」
その男性が照れくさそうに、そしてどこかばつが悪そうにそれだけを言う。
そして私と桂もようやくその男性の名を口にした。
「伊藤?!」
「ま・・伊藤くん・・」

名前を呼ばれても、ただ照れくさそうに頬を掻きながら微笑んでいた伊藤は
「ど、どうして伊藤が? それに清浦さんも・・」
という私の問いに
「いや、たまたまお前らが、あのガラの悪い男たちに絡まれているのを見かけてさ、
 ただ真正面から助けようとしても、俺の力じゃああいつらにかないそうになかったから、
 清浦に協力してもらって、ひと芝居打ったんだ。
 まあちょっと姑息な手だったけどな・・」
と、そう答えた。
「全くだ。情けない・・」
「はは・・相変わらず手厳しいな。清浦は・・」
「ふ・・」
どこか小馬鹿にしたような清浦の言葉に、伊藤は苦笑いを返すが、
そのやりとりは、どこか微笑ましく映った。

「まあ、だからと言って困っている女の子を見て、見ないふりをしたら
 また、加藤に怒られちまうからな」
「え?」
「もうこれ以上加藤の、そして言葉の中にある俺を汚すわけにはいかないから・・」
そう言いながら、伊藤は私たちの方をまっすぐ見ていた。
私は、その伊藤を何か呆然と見つめる。
そう、今私の目の前にいる伊藤は、言うことも態度もハッキリしていて、
それはあの学園祭の夜の、私たちからずっと目を逸らして黙り込んでいた伊藤とは
まるで別人のようだった。

「だから・・・」
え?
「言葉、ごめん!」
そう言って伊藤は、桂に向けて深く頭を下げた。
96tyoujiya:2008/10/03(金) 19:02:16 ID:xpH8OwAh

「え・・あの・・伊藤くん?」
言葉もあの夜とは明らかに違う伊藤の様子に、戸惑っていた。
そんな言葉に、伊藤は真剣な顔で言葉を続ける。
「あの学園祭の時は動揺もしてたし、何を言っても言い訳になりそうで何も言えなかったけど、
 それでも、言葉に一言も謝ることも出来なくて・・後悔してる。
 だからもう遅いかもしれないけど
 言葉には本当にすまなかったと思ってるから・・」
その伊藤の言葉からは、誠実な桂に対する気持ちが滲み出ていた。
桂もそれを感じているようで、真剣な表情で伊藤の言葉を受け止めようとしていた。

「それから加藤・・」
「え?」
「あの時加藤は俺に、桂が男子が苦手だから嫌になったのかって・・
 そして、だから簡単に何処でもやらせてくれるような世界に気持ちが行ったのかって
 訊いたけど、決してそんないい加減な理由で世界を好きになったわけじゃない」
そして伊藤は、私と桂を交互に、それぞれ真剣に見つめながら言葉を続ける。
「加藤も言葉も、きっと今世界の事を、友達を裏切ったひどい奴だと思ってるかもしれないけど、
 それでも世界にはいいところもいっぱいあって、
 いつしかそんな世界を大切に思う気持ちが俺の中に生まれて・・
 それが言葉を大切に思う気持ちより大きくなっていった。
 それはもちろん言葉を傷つけた言い訳になんかならないけど、
 ただ、いい加減な気持ちじゃなかったって・・それだけは・・わかってほしい」
そう言って伊藤は沈痛な表情で、私たちに向けて再び頭を下げた。

僅かな沈黙の後、
「伊藤くん・・」
と桂が口を開いた。
「まず、最初にいいですか?」
「え? ああ・・」
「私の事はもう言葉とは呼ばないでください」
「そ、それって・・」
顔をあげた伊藤の顔が不安と戸惑いで曇るが、桂はそんな伊藤にやわらかく微笑んだ。

「勘違いしないでくださいね。軽軽しく名前を読んでほしくないとかそう言う意味じゃないですから。
 ・・・ただ、私たちが名前で呼び合うようになったのは恋人同士になった証だったから、
 だから・・もう、伊藤くんが名前で呼んでいいのは西園寺さんだけですよ」
「そ・・それって・・俺と世界の事を認めてくれるって事か?」
そう問う伊藤に、桂はため息をつきながら答える。
「認めるも認めないも、これだけはっきり私より西園寺さんが大切だって言われたら、
 それを事実として受け止めるしかないじゃないですか」
「そっか、ごめん。・・でも、ありがとな、こと・・いや、桂・・」
「いえ・・。でも、最初から今みたいに伊藤くんが自分の気持ちをはっきり言ってくれていたら、
 私だってあそこまで傷つかずにすんだんですからね。
 そこは、きちんと反省してくださいね」
そう言う桂の態度は決して怒っているわけではなく、
むしろはっきり自分の気持ちを伊藤が言ってくれたことを嬉しく思ってるようであった。
97tyoujiya:2008/10/03(金) 19:02:51 ID:xpH8OwAh

「全くよ! 伊藤は少しは反省しなさいよ」
「ちぇ、なんだよ加藤まで」
伊藤は、桂に気持ちを受け止めてもらって少し余裕が出てきたのか、
桂に便乗するような私の言葉に、少しすねたような声で口を尖らせて答えた。
そんな伊藤に私は優しく言葉を続ける。
「ふふっ。でも今日の伊藤はきちんと気持ちを言葉にしてくれて偉いし、ちょっと・・かっこいいよ」
「そ・・そうか?」
「そうよ。一体何があったのよ?」
その私の問いに伊藤は、
「まあ、実はある奴に、あの時の俺の態度についてこっぴどく説教されちまってさ・・」
そう言いながら視線を泳がせる。
「ある奴って・・?」
そう言いながら私と言葉が追った伊藤の視線の先には・・・・・・清浦がいた。

清浦は私たちと目が合うと、無表情にその目を逸らした。
いや・・無表情なように見えて、頬がほんのり赤くなっていた。
どうも照れているらしい。
私は隣りのクラスのやつながら清浦の事を、
愛想のない無愛想な奴だと思ってたけど中々どうして可愛い奴じゃない。
清浦は、しばらく目を逸らしたままだったが、やがて思いなおしたように桂のほうへ向き直り・・
「あの、桂さん・・」
「え?」
「世界の事を許してあげてほしいの」
そう言って頭を下げた。

「世界は弱いから、桂さんの事を裏切って傷つけて、
 それなのに、その・・自分のした事から目を背けて逃げようとした。
 それはもちろんやっちゃいけない事だったけど、
 でも桂さんを裏切ったことに、傷つけたことに平気なわけじゃなかった。
 それだけは、わかってあげてほしいの」
「・・・・・」
その清浦の言葉を桂は無言で聞く。
「知ってると思うけど、あれから世界はずっと学校を休んでる。
 それは未だに、自分のしたことと向き合う勇気が持てず
 傷つけた相手である桂さんだけじゃなく・・
 学校からも、友達からも逃げている世界の弱さ・・・」
その清浦の言葉にを受け継ぐように、伊藤が口を開く。

「でも、世界のそんな弱さは俺がきちんと支えるから・・。
 あれから俺と清浦は毎日世界の家に行ってる。
 最初は会いたくないって門前払いも食ったけど、
 今は世界もだいぶ落ち着いて、自分のしたことと向き合おうとしてる・・」
そして再び清浦が、
「そう。だから・・近い内に世界は学校に出て来れると思うから、
 そしたら、改めて桂さんにもきちんと謝らせるから・・そしたら世界を許してあげて」
そう言って、桂に再び頭を下げた。

そして伊藤も、
「ああ、その時は世界の事も、そして・・できれば俺の事も許してほしい。
 都合のいい願いかもしれないけど・・」
そう言って、深く頭を下げた。
「・・・わかりました。ただし・・2人を許す代わりに条件があります」
それまでじっと、真剣に二人の言葉を聞いていた桂は静かに微笑んで言った。

98tyoujiya:2008/10/03(金) 19:03:25 ID:xpH8OwAh

「許してあげる代わりに、伊藤くんは素敵な男性になってください。
 私が・・・いえ、私と加藤さんが好きになってよかったって思えるような・・、
 好きになったことを誇れるような・・そんな男性になってください」

「え・・? それって・・・・何だか漠然として難しそうだな」
桂の言葉にそう戸惑ったように言う伊藤だけど・・・
「いえ、今の伊藤くんでいいんです。
 自分にしたことをきちんと受け止めて、相手にきちんと自分の気持ちを告げて謝ることが出来て、
 今は・・ちょっと悔しいけど・・・一番大切な西園寺さんのために一生懸命で、
 そして、困った女の子を見たら放っておけない・・・そんな伊藤くんでいてくれれば・・・」

伊藤は、そう言う桂をまっすぐと見返し、
「・・・・・わかったよ・・桂」
そう答え、優しい笑顔を向ける。
「それが、俺たちが傷つけてしまった桂に対するけじめでもあるんだな」
「はい!」
桂もまた、その伊藤の言葉に満足したかのように、笑顔で答えた。
それを見る清浦も、そんな2人の様子に満足し、嬉しく思っているようだった。

そしてそれは、私も同様だったが・・
「でも伊藤、あんたそんな約束して本当に大丈夫なの〜?」
とつい茶化してしまう。だが伊藤はそんな私に微笑んで答えた。
「ああ・・がんばってみるさ。また言葉にぶたれるのはたまらないしな」
「え?」
「言葉の平手は痛いからな。あれをくらうのはもうこりごりだよ」
伊藤はそう言ったが、あの時伊藤が受けた平手は打たれて頬を押さえる程度・・。
でも・・・それを思って、私はつい吹きだした。
「ぷふっ・・、伊藤は幸せだよ」
「え? なんだよそれ?」
見ると伊藤と清浦は不思議そうに顔を見合わせており、
桂は、私の言った意味がわかったらしく、困ったような顔で
「言っちゃ駄目です」と目で訴えていた。

すると伊藤は、今度は真顔で言った。
「いや、ホントに約束するよ。ずっと俺を好きでいてくれたのに、
 その思いに最後まで気づいてやれなかった加藤へのけじめのためにもな」
99tyoujiya:2008/10/03(金) 19:03:59 ID:xpH8OwAh

「な・・な・・」
今度は自分の事に話を振られて焦ってしまう私に、
伊藤はさっきの真顔から一転、
「って言うかさ〜、お前中学の時から好きだったなんて今になって言うんなら、
 最初からちゃんと言ってくれよな。
 なんか加藤っていつも強気なようでいて、そういうとこ度胸ないんだよなあ〜」
と軽口を叩いてきた。

「う、うるさいわね! 大体気づかない伊藤のほうが鈍感すぎるのよ!」
「え〜、そんなことないだろぉ?」
剥きになる私に反論する伊藤だが、
「いや、加藤さんの言うとおり・・。伊藤は鈍感すぎる」
「そうですね、伊藤くんはもう少し女の子の気持ちに気を使った方がいいです」
と、ここぞとばかりに清浦と桂が私の味方をしてきた。

「え、俺ってそんなに?
 って言うか、俺フルボッコ?」
うろたえる伊藤に、
「ま、そこが伊藤らしいって言えばらしいんだけどね」
「そうですね・・」
「所詮伊藤誠だしね・・」
と私たちが、それぞれ気持ちをあわせて追い討ちをかける。

「何だかフォローされてるんだか、一層けなされてるんだかわかんねーよ」
そう言って首をひねる伊藤が可笑しくて
「うふふっ・・」
「あははっ・・」
「ふ・・」
私たちはみんなで笑い出し、
そして伊藤も苦笑いを返してきた。

100tyoujiya:2008/10/03(金) 19:05:02 ID:xpH8OwAh



ひとしきり笑った後、伊藤と清浦は私たちと別れた。
これからまた西園寺のところへ行くそうだ。

2人を見送りながら、桂は嬉しそうに微笑んでいた。
そして、それは私も同様だった。

そして桂が口を開く。
「よかった・・」
「え?」
「伊藤くんが私の・・・私たちの大好きな伊藤くんでいてくれて・・」
「あ・・・うん、そうだね」
私もまた、本当にそう思った。
「でも、伊藤自身が言ってたように、清浦の説教のおかげらしいけどね。
 その辺がやっぱりちょっと情けないかな?
 ま、みなみも言ってたけど、そのうち清浦にはお礼言わないとな・・」
「・・・清浦さんって・・伊藤君の事が好きなのかもしれませんね」
「え?」
「私たちが今こんなに嬉しいように、
 清浦さんも伊藤くんに、自分が好きな伊藤くんでいてほしかったから・・
 だから一生懸命伊藤くんにお説教したんじゃないでしょうか・・」
「・・・・そう・・かもね」 
そう・・、そう思うと、さっきの清浦の、
私に同意しながらの「伊藤は鈍感すぎる」って言葉の意味も分かる。

でも、だとしたら、清浦って本当に凄い奴なんだな。
私や桂は以前と変わった伊藤を一度は見限ろうとしたのに、清浦は、
以前の・・自分が好きな伊藤を自分の手で取り戻したんだ・・。
そして私は思う。
そんな清浦や、伊藤があんなに一生懸命になる西園寺にも、
私にはまだわからないいいところがあるのかもしれないと・・・。

101tyoujiya:2008/10/03(金) 19:06:39 ID:xpH8OwAh



それにしても、榊野町に遊びに来て・・まだ何もしてないというのになんだか凄く充実した気分だ。
だから、思わず・・

「じゃ、行こうか? 言葉・・」

「はい。・・・え?」 
桂は戸惑ったように私を見返す。

「あの・・今?」

そう、それはいつかそうしなければと思っていながら、照れくさくて中々口に出来なかった呼び方。
でも最高の気分の今だったからか、自然に口から出ていた。

「この呼び方・・嫌?」
私のその問いに桂は、ぶんぶんと首を横に振って嬉しそうに答えた。

「いえ・・。じゃあ行きましょうか、乙女さん!」
「あ・・うん!」

そして私たちは満面の笑みを向け合い、そして歩き出す。




――今日も・・素敵な1日になりそう♪











―完―




102tyoujiya:2008/10/03(金) 19:08:14 ID:xpH8OwAh

――以上です


>>56 氏 他、誠はどうでもいいやという意見が多かったのでマジ感想が怖いです。
まあ今回は誠より、誠をサルベージしたせっちゃんを褒めてやってください。

>>59
MAD作ってもらえたら自分も本当に嬉しいです。

>>60
 七海と光は、”大好きな世界が友達を裏切っていた≠ニいう事実に
 心の整理が出来ないまま距離をとっていると、
 でも世界がまた学校に出てきて反省の意を表せば、
 多少わだかまりはあっても、また元通りの仲になると思ってください。
 あまり説明的になりそうなので本編では書きませんでしたが
 ・・って、ここで書いてれば一緒かw

>>83
そう言う展開はマジで考えましたw


あと、先にも書きましたが、本作のキャラはみなみの設定以外は
自分的には(異論もあるでしょうが)原作遵守のつもりです。

原作の乙女は屑呼ばわりされていることもありますが、自分はそうは思ってません。
ただ、自分の間違いに気づけないままに間違いを犯してしまう子供なのだと思っています。
何せ十代半ば・・・少し前までは中学生だったわけですし・・・。
三馬鹿にしても原作乙女EDでは実にいい友達っぽいカンジですしね。
もちろん「散る言葉」でのレイプ教唆は許せないことですが、ソレについても
間違いに気づけないまま取り返しのつかない間違いを犯してしまう悲劇だと思っています。
(この辺は、エピローグAのみなみの台詞参照。まあ言葉にとってはもっと悲劇ですが・・汗)
だからこそ、そんな「散る言葉」における乙女に救いを与えてあげたかった・・
ぎりぎりのところで間違いに気づかせてあげたかったというのが、
本SSを書いた最大の動機でした。
103tyoujiya:2008/10/03(金) 19:09:49 ID:xpH8OwAh

ともあれ本作は以上で完結です。
誤字脱字とか、書式の統一性のなさとか、
構成バランスの悪さとか、根本的な文章の下手さとか、
いろいろ恥ずべき点や心残りはありますが、
多くの皆さんの感想や励ましが力となり、ここまでたどり着くことが出来ました。

この話は元々同人誌の漫画用に思いついたものですが、話が膨らみすぎて
こちらに投下させてもらった次第です。
それにしてもここまで長くなるとは・・・


ともあれ、長い間のお付き合いありがとうございました。
そして、ここまで読んでいただいて、
本当にありがとうございました。




PS 前回投下時刻予告の理由=おまけ↓
http://www.vipper.org/vip942989.jpg

  すぐ流れると思いますが、見れた方はラッキー(かな?)ということで・・
104名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 19:43:11 ID:6cMI2jsC
tyoujiya氏乙!
おまけ保存しました、可愛いなあw
105mark:2008/10/03(金) 19:54:35 ID:7B7DH4hL
>>tyoujiya氏
なるほど、そういう事だったわけですか(笑)。たまにアニメ版で
可愛い絵を投下してくれる方がいましたが、まさかあなただったとは……

誠は最後にようやく屑男返上ですか。思えば最初は言葉が痴漢されて
それを乙女が彼女だと知らず偶然助ける展開からスタートだったわけですが、
それの対になってますね。見つけたのは偶然とはいえ、自分の意志で乙女たちを
助けました。そして本当に反省してくれたようで何よりです。
でも、最初から素直にそうしてれば、ここまでの事態にはならなかったのも事実。

最後に乙女と言葉が初めてお互いを下の名前で呼び合えるようになった事で、
より深い友情の一歩となりそうです。
長編は書いても書いても終わらなくて大変だったでしょうが、その分達成感も
大きいかと思われます。リアルタイムで見つづけましたが、どうもありがとう。

キモいと思われようが、今日は名前出していいか(笑)
106名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 23:13:12 ID:gs7tWtED
>>103
GJ!刹那本当にいい娘だなぁ……おまけかわええw
誠はどうでもいいやって言ったけど、こういうけじめの付け方するならいいかな
まあ誠がしっかりしようとしていることさえ、刹那GJ!に見えてしまうわけですがw
楽しませていただきました。ありがとうございました
107SINGO:2008/10/04(土) 16:16:56 ID:s7cQ2InA
>>90
すみません。言葉は空気になってもらいました。
あと
言葉は依然、行方不明で生死不明。
警察が初歩的な推理ミスをして、伊藤の頭部を遺棄した犯人は西園寺世界
という流れになってます。
108名無しさん@ピンキー:2008/10/05(日) 02:11:15 ID:mPbHzhTg
>tyoujiya氏
長編完結お疲れ様でした。
少しだけIFを付け加えることで分岐させたルートを最後までまとめ上げたこと、その過程で乙女は元よりあの三馬鹿娘達にまで魅せ場を与え演じきらせたことに敬意を表します。
「そう来たかw」「そこで引くかw」と唸らせられたことも一再ではありません。

最後の最後に誠のフォローがあるとは、嬉しい誤算でした。
世界も……前向きに再起できることを期待させる誠のセリフがありましたし……

毎回の更新が楽しみなSSでした。
面白い話を読ませていただき、ありがとうございました。
GJ!


投下の始まった時に「散る言葉」再演にビクつきながらスレを読んでいた自分に「このSSはハッピーエンドで終わるんだぜ」と教えたらどんな顔をするかな?
109名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 04:30:55 ID:kHdgwe6f
hosyu
110名無しさん@ピンキー:2008/10/11(土) 17:41:28 ID:nPBTN8zo
保守
111名無しさん@ピンキー:2008/10/12(日) 01:05:19 ID:7NUXNMfC
CROSS DAYS
112名無しさん@ピンキー:2008/10/12(日) 08:41:35 ID:dryoWlpu
【表現規制】表現の自由は誰のモノ【105】
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/news2/1221297333/
113名無しさん@ピンキー:2008/10/13(月) 20:39:44 ID:+/BUDkJo
保守。
114名無しさん@ピンキー:2008/10/15(水) 18:06:53 ID:UHsGACWt
保守
115名無しさん@ピンキー:2008/10/15(水) 20:21:40 ID:CJkFrmf2
なんという受け身スレw
116名無しさん@ピンキー:2008/10/15(水) 20:56:23 ID:/5QHP8V/
117名無しさん@ピンキー:2008/10/17(金) 00:15:04 ID:Q5Zf+po6
118名無しさん@ピンキー:2008/10/18(土) 02:13:14 ID:ebUeSyJI
119名無しさん@ピンキー:2008/10/20(月) 18:05:06 ID:Di1wFIPQ
さびしいです
作家さんが去って行かれたのが痛いですね
さしつかえなければ、初期スレとかの作品をリメイクして下さい
自分、途中参加なもんで見れないんです
120名無しさん@ピンキー:2008/10/20(月) 19:54:28 ID:kNkO5y9Z
今度の「CROSS DAYS」により、またネタが出てくるかも・・・・・・

けっこう期待して待ってる
121名無しさん@ピンキー:2008/10/21(火) 07:50:42 ID:fQXXGpQ3
>>1から過去スレを辿っていけ

2chDAT落ち変換
http://www.geocities.jp/mirrorhenkan/
122名無しさん@ピンキー:2008/10/24(金) 00:06:59 ID:BAMxmgCy
このスレもpart7まで進んだことだし、やっぱ過去ログ倉庫が必要な気がする。
>>119みたいな、新規の人も過去ログを見れた方がいいだろうし。

サイト形式と、wiki形式と、2chエロパロ板SS保管庫に保管依頼するのと、
どれがいいんだろ?


自前の保管庫持ってるスレは、@wikiがそこそこ多いみたいだけど、
規約違反で消されたところもあるみたいだし、どんな形式が良いのかよく分からん…。
123名無しさん@ピンキー:2008/10/24(金) 12:02:51 ID:bQKEseo4
>>121
http://www.geocities.jp/mirrorhenkan/

エラーが発生しました。
(WJ46065E)
124名無しさん@ピンキー:2008/10/25(土) 01:14:52 ID:htAgj41G
新作全くこないな〜
125名無しさん@ピンキー:2008/10/25(土) 09:16:49 ID:gtpUVCJA
>>122
収載をするのかどうか
書き手さんに確認はするのかな?
126名無しさん@ピンキー:2008/10/25(土) 19:41:21 ID:rYHSWyw+
>>122
2chエロパロ板SS保管庫に保管依頼、でいいんじゃない?
wiki借りて作っても、アダルト規制で垢停止&削除、では意味ないし。


>>122>>125
とりあえず、1〜2週間くらい、このスレで保管庫を作るか作らないかのアンケートやって、
気付いてくれた職人さんには、同時に収録の是非も回答してもらばいい気がする。

保管庫に収録した後で、「あの作品の収録はちょっと…」と言う場合は、
当該作品の削除依頼→保管庫から削除、という形で対処すればいいような。
いくらなんでも、全職人さんの回答も待つわけにも行かないだろうし。


長文スマソ。
127名無しさん@ピンキー:2008/10/25(土) 22:00:18 ID:M204IyHK
>>126
基本的に2chに投稿したのであって
勝手に他所へ転載されるのを承諾したわけじゃないよ
2chの管理人がするというなら話は違うけれどさ

わたしも元書き手だけれど
HNをいれたものいれないもの含めて
他所には置いてほしくないと思ってる
削除依頼をすればいいというのも乱暴な話
いなければ勝手に入れてしまうというのはおかしな理屈でしょう
「一定期間の告知中、承諾をしたものだけ」というのが最低限の礼儀だと思います
128名無しさん@ピンキー:2008/10/25(土) 23:57:49 ID:87dBKPhO
129mark:2008/10/25(土) 23:57:51 ID:3i+hGxaL
名前出すのは久々ですが、作品の保存に関する意見が出ているようなので。

私も126さんと大体同意見です。今まで投稿されたものを見たいというのは
新旧問わず読者の要望としてあるかと思いますが、書き手の意見なしで
進めてほしくはないですね。

私個人は、過去作品の保管自体は反対ではありませんが、やるならエロパロ板の保管庫
に限るのが条件ですかね。

別に多くの人に見てもらいたいというよりは、ほとんど自己満足で書いていた
ようなものでして(汗)。それでもよければ、長編以外では、題名か
シチュエーションを挙げて頂ければ承諾はしようかと。(後で没にしたのや、
気に入らない自作もあるので、全部はムリですが)

何にしても、これをきっかけにまたスレが活気付くといいんですけどね。
本格的な復活にはクロスデイズの発売まで待たなければならないかもしれない
ですが・・・
130mark:2008/10/26(日) 00:32:49 ID:CVzTinF7
間違えた 127と同意見という意味ね(汗)
すぐ上で過去ログを投下してくれた奇特な方が出ましたので、もし見れる人は
それを見て忌憚なく意見プリーズで
131名無しさん@ピンキー:2008/10/26(日) 03:57:47 ID:aoH5yHX4
>>126は書くスレ間違えたな。
他のスレなら、「じゃあ投下のまとめと収録依頼よろ」くらいであっさり済んだだろうに。

このスレ、(いい意味で)他のスレとはだいぶ雰囲気が違うから、
しゃーないと言えばそれまでかもしれんが、
少しは職人さんのことも考えてカキコ汁
132名無しさん@ピンキー:2008/10/26(日) 10:54:16 ID:YVUTUxOK
職人さんが去った理由は、過去レスみるとなんとなくわかる。
保管庫を作るなら、以後はここに収めるって
スレのテンプレートの中で、宣言するといいかも。
これまでの分は、諦めたほうがいいと思う。
133名無しさん@ピンキー:2008/10/27(月) 18:54:01 ID:qq+dtY5R
はじめまして。tyoujiyaさんの乙女改心SSが好きでこのスレを呼んでいる者ですが、
残酷だけど重く悲しいスクイズの魅力に惹かれ、未熟ですが自分なりにSSを書いてみました
初めてのSSなので(同時にもしかしたら最後かも)お目汚しになったら大変恐縮ですが、どうかよろしくお願いします

シチュエーションは唐突ですが、もし刹那がアニメ版最終話に立ち会って、
世界が誠の子を本当に妊娠し、子供だけでも無事だったらという展開です
やや刹那・世界寄りなので言葉ファンはご了承ください
134名無しさん@ピンキー:2008/10/27(月) 19:25:51 ID:qq+dtY5R
「残された希望」<1>
私・清浦刹那が原巳浜に戻ってきたのは、クリスマスで賑わう12月末のことだった
もう当分ここには戻ってこられないと思っていたが、母さんの仕事の関係でなんともあっけなく帰れて、拍子抜けしてしまった
けど私は世界も伊藤にも会うつもりは毛頭無かった
2人に会ったりでもしたら、すべてを振り切ったはずの決意が揺らぎそうだから・・・

とは言え、我が家を完全に撤去した今、近くのビジネスホテルに泊まり続けているわけで、
母さんの仕事の邪魔をするわけにもいかず、クリスマスなのに部屋でくつろいでいるのも
なにかさびしいだけに思えた私は、街の中をぶらぶらと歩いていた
ほんの2ヶ月だけなのに、みんな懐かしい。ここでの私の記憶がそこまで曖昧になったのだろうか・・・

ふと目の前に見覚えのある人影が映った。間違いない、世界だ!
だが遠目に見ても様子がどこかおかしい。目は血走り、視線の先もどこか虚ろだ
何か嫌な予感がした
あの時私は世界と伊藤を結びつけることに必死で、今思えば相当焦っていた
汚れ役・憎まれ役になってまで、あくまで伊藤の彼女と言い通す桂さんと伊藤の間を引き裂き、
あちこちの女子にふらふらしている伊藤を繋ぎ止めるために私は…これ以上思い出すのは止めておこう

とにかく旅立って時の伊藤と世界の間はかなり不安定だった
私もパリにいる間、なぜか2人がうまくいっているといいという希望より、
余計な心配など杞憂だと言い聞かせながらも、世界は本当に伊藤と幸せになれたのかという不安の方が大きかった

そうこうしているうちに、人混みの中に世界は消えつつあった
背の低い私は無我夢中で世界を見失わないよう人ごみをかきわけたが、
途中踏み切りに阻まれ大きくタイムロスしてしまった
だが遠目ながら世界を視点に捉え続けることができ、
その目的地―榊野学園に辿り着いた
135名無しさん@ピンキー:2008/10/27(月) 20:21:41 ID:qq+dtY5R
「残された希望」<2>

世界が行く場所はなんとなく予想がついていた
伊藤とそして桂さんと3人だけの秘密の場所―
息を切らせながら長い階段を上りきり、目の前に飛び込んできたのは、対峙する世界と桂さんだった
奥にいる世界はよくわからないが、手前にいる桂さんは手になにかを取り出し、次の瞬間それを世界に振りかざした
「!!!」
私の本能がそうさせたのか、すぐさま桂さんに飛びつき、振り落とされそうになりながらひたすらしがみ続けた
耳から、鼻から、肉を切り裂く鈍い音と鉄の匂いが充満しながらも、最後の力を振り絞って桂さんを世界から振り払い、
私は血溜まりの中に崩れ落ちた世界の元へ駆け寄った
胸から血が流れ出す世界を、保険の授業で覚えた記憶を頼りに応急処置まがいのことをするだけで精一杯だった

「世界、世界、しっかり!………桂さん、どうしてっ!」
きっと睨み付けた視線の先にいる桂さんを見た瞬間、私ははっと息を呑んだ
桂さんの大きな瞳は闇夜のように漆黒に包まれ、この世のものとは思えない禍々しさが漂っていた
「お久しぶりですね、清浦さん。西園寺さんっておかしいんですよ。私が誠くんの彼女なのに、自分のお腹の中には誠くんの赤ちゃんがいるなんて」
一応私の名を呼んだものの、桂さんは伊藤との仲を裂いた張本人である私にさほど関心を持っていないようだった
「でもそんなこともどうでもよくなってきました。もう誠くんは永遠に私だけのものだから、西園寺さんには決して手の届かないところまでもっていくから…」
歌うように一人呟きながら、桂さんはバックと地面に落ちていた凶器(…よく見たらそれは血に塗れた鋸だったが)を持つと、
体育の時間からは想像できないほど器用に、金網のフェンスを登っていった

まさか…

世界も心配だが、もっと恐ろしいことが起こりそうな気がして、
桂さんの元へ向かう私に、桂さんは鋸を突きつけて牽制した。
じりじりと引き下がるしかない私を見届けると、桂さんはふと表情を和らげて目から光が戻った
しかし、鋸を捨て、その次にバッグを捨てた桂さんがまだ手にしているものを見て、私はわが目を疑った
恍惚の笑みを浮かべる桂さんが愛でているもの――、それはかつて伊藤だったものだった
昔読んだ小説「サロメ」の美しくもおぞましいワンシーンが、まさか目の前でそのまま繰り広げられるとは!
ふと、その生々しさに強烈な気持ち悪さが襲い掛かって眩暈がしそうになった私を尻目に、
フェンスの反対側を降りきった桂さんは、まるで生まれたばかりの無垢な赤子のような笑顔を一瞬こちらに向けた後、
「誠くん、一緒に行きましょう。2人きりの“世界”へ…」
と言い残し、私の視界からあっという間に消えていった

「待って、桂さん…いやぁぁぁぁぁ!!!」

どれくらい時間がたったのだろうか?
桂さんが宙に身を躍らせ、にぶい音がして、パトカーやら救急車が駆けつけ、
懸命に介抱する世界が救急車に運ばれ、自分は事情聴取を受け、
放心状態でホテルの部屋に戻った私を、母さんは何も言わず抱きしめてくれた

それからテレビのニュースやホテルの中においてあった新聞や雑誌で、私は知った
『榊野学園の男子生徒Aが自宅で首の無いの遺体で発見され、
同じクラスの女子生徒Bがその男子生徒Aを殺害、
さらに別の女子生徒Cが女子生徒Bに重傷を負わせ、その直後に飛び降り自殺したこと
そして雑誌のようなゴシップ記事では、さらにその亡骸は男子生徒Aの首を抱きしめていたとのこと
なお、女子生徒Bは一命は取り留めたものの、意識不明の重態となって病院で治療を受けている――』

今回はここまでです。
136名無しさん@ピンキー:2008/10/27(月) 23:49:40 ID:uIHCpD8l
>>135
投下乙です。設定も無理なく読めました。
改行も上手でマジ羨ましいです。
全力で続き待ってます!


あと、出来るだけ書きながら投下は避けた方がいいかも…。
137名無しさん@ピンキー:2008/10/27(月) 23:52:29 ID:GXe4Jdrl
>133
言葉ファンですが、続きを待ちます。

これもありえた分岐の一つ。
138名無しさん@ピンキー:2008/10/29(水) 15:47:19 ID:wAk05dn1
このIFで最も危惧すべきは
世界が一生目覚めないかもしれない、という事。
お腹の赤子は確実に成長する。父親がいないぶん、
下手すれば君望のあのエンドより悲惨に…
139名無しさん@ピンキー:2008/11/01(土) 08:36:23 ID:oH82B8SU
世界は逮捕→死刑でお願いします
140名無しさん@ピンキー:2008/11/02(日) 01:26:10 ID:Eu7KaXgM
さぶいさぶい
独立したSSを作ったので、個人のネームを考えてみました
>>135-139のみなさん
まさかこれ程まで反響が出るとは思いませんでした。コメントありがとうございます
指摘があったように、思いついたまま書きながら投下していたのですが、
後から読んでみると文章表現がめちゃめちゃで誤字・脱字も多く、
自分で作っておきながら恥ずかしい限りです

今回のSS創作は、特別顧問様の3/23の刹那イラストに感銘を受けたのがきっかけです
世界と誠が無残な最期を遂げ、言葉も深い闇に堕ちていったことに対し、
スクイズでは珍しく他人を思いやる良心を持つ刹那は、世界のためといって
結果的に言葉を深く傷つけたことを、激しく悔い悩んだのではないでしょうか?
(アニメエンド後に、良心の叱責に耐えかねて自殺したという説もありますし)
私的には、自分のエゴばかり優先して精神的に幼すぎる誠と世界に対し、
刹那は逆に優しくていい子なのですが、内罰的で自分を責めすぎてしまうような性格に思えました
(ほとんどアニメ版とプレステ版(動画)でしか見ていないので、他作品の描写はわかりませんが)

また、このSSの結末はすでに決めてあるのですが、以前私がアニメ2のスクイズスレに投稿した
「もしスクイズが実写ドラマ化されたら…」を元にした、よくある実写ドラマみたいな作りになる予定です
(昔でいう野島伸司、最近だと浅野妙子ドラマみたいな感じ)
私も一度SSを書き始めたからには、読者の期待を裏切らないためにも、
必ずや完結させて、内容・書き方も見苦しいものにならないよう、
次回からはその場で作らず、推敲を重ねて恥ずかしくならないものを順次載せたいと思います
書いててわかったのですが、SS(しかもスクイズのように鬱な話)を作るのに膨大なエネルギーを使うので、
次の投稿はまだ不確定ですが(先月のように、規制されるとさらに間が開いてしまいますし)
よければ、これからもよろしくお願いします
142名無しさん@ピンキー:2008/11/02(日) 14:09:41 ID:5ZdfURJ/
なんだssじゃないのか
143名無しさん@ピンキー:2008/11/04(火) 17:47:38 ID:DluyfxiJ
hoshu
144名無しさん@ピンキー:2008/11/07(金) 17:37:58 ID:xNYWJVzn
ダメダコリャ
145名無しさん@ピンキー:2008/11/12(水) 02:14:25 ID:w8352YeX
捕手
146名無しさん@ピンキー:2008/11/15(土) 23:33:47 ID:ST8cgnmP
ポッポッポッポ
147mark:2008/11/16(日) 13:48:02 ID:1AZO4b/O
なーんか閑散とし過ぎですねえ…… 追加経済対策じゃないけど、臨時で一発ネタを。


TAKE1 美容室に行った方が……?


アナウンス「間もなく電車が発車します〜」
言葉「まってぇ〜!」

駆け込み乗車をしようとする言葉。それを例の如く間近で見る誠。
しかし……

プシュウ……(扉が閉まる音)

言葉「ふう……(間に合った)」

そう言い、空いている座席に座ろうと歩き出そうとする。
しかし、後ろから髪が強く引っ張られるような感触がし、振りかえると…

言葉(やだ…… 髪の毛が引っかかってる)

扉が閉まるギリギリで乗車したせいか、扉の隙間に髪の毛が挟まっていた。
このまま次の駅に到着するまで待つ事も考えたが、読書する習慣がある彼女には
慣れない状態で立ち読みするのは憚られた。
挟まったのは幸い髪の先っぽが数本程であり、なんとか引きぬけそうだ。
何食わぬ顔でそのまま席に向かおうとする。

すぽっ。

言葉「きゃっっ!?」

ビターーーーーーン………

盛大な音がし、思わず誠だけでなく他の乗客も言葉を見てしまう。

誠 「あ、あの…… 大丈夫?」
言葉「うう…… はい、どなたかはご存知ありませんが、大丈夫です」

まるで潰れた蛙のように、言葉は地面にキスをしていた。


夜の桂家

心 「お姉ちゃんどうしたの?そのバンソーコー」
言葉「ええと、今日ちょっと体育の授業でボールに当たっちゃって、それで……」
心 「お姉ちゃんドジだねぇ〜」
言葉「むう……(言えない、こんな事絶対言えない)」

(おしまい)
148名無しさん@ピンキー:2008/11/16(日) 23:46:20 ID:EDQdL2fu
???なぜコケたのかがわからない・・もしかして俺が異常なのか?
149名無しさん@ピンキー:2008/11/18(火) 06:47:58 ID:CpzXAfyR
IFルート 誠が世界の誘惑に乗らない
極めて普通のラブコメ それでも言葉様の可愛さは異常
150名無しさん@ピンキー:2008/11/20(木) 01:08:10 ID:QoTDyQsd
>147
ほのぼの笑いGJ。
151名無しさん@ピンキー:2008/11/23(日) 14:41:05 ID:aLuBhgXr
もしもスクールデイズのキャラが性転換したら
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1227415291/
152名無しさん@ピンキー:2008/12/01(月) 05:12:40 ID:TIvyC+qL
hosyu
153名無しさん@ピンキー:2008/12/06(土) 21:05:43 ID:8IUbu3EK
中に誰もいません
154SINGO:2008/12/08(月) 03:10:15 ID:MWlMLMVW
どうも、お久しぶりです。
過疎ってるようので、保守の意味も込めて
>>85-88の続きを書きました。
といっても、過去作のリメイクですが。
ネタ不足&マンネリ気味で、すんません。

舞台はアニメLastの後日談Ifで
>>85-88の続きです。
誠と世界が逝亡くなった日常で、刹那がパリから帰国してきました。
主人公は刹那。
ヒロイン?は田中です。

【破局に向かって】第2.0部 Prelude
 School BABYL その前に

元ネタは TOKYO BABYL です。
155SINGO:2008/12/08(月) 03:11:24 ID:MWlMLMVW
【破局に向かって】第2.0部 Prelude
 School BABYL その前に

伊藤誠と西園寺世界の交際(と世界の妊娠疑惑)は意外な形で破局を迎えた。
世界が伊藤宅にて伊藤を刺殺。その首を切断し、頭部をどこかに遺棄。
世界自身も、この榊野学園校舎屋上にて死亡。
全ては私…清浦刹那がパリに転校した後の出来事だった。
日本に帰国したての私にとっては、寝耳に水だった。

《学園中庭 ベンチ》
私は隣に田中を座らせ、あの事件の真相について問い詰めた。
田中はクラス委員長だから、クラスを(精神衛生的に)まとめるため、事件のある程度の
情報を教師から聞かされてる筈。
「光は、世界は悪くないの一点張りだし。山県さんは、伊藤は悪くないの一点張り。
七海は、無理心中だろうって。澤永は、訳が判らないって。他の連中は、もう嫌。
やれ猟奇プレイだ、やれSMプレイだ、妊娠だ中田氏だの、訳が判らない」
私の執拗な尋問に、最初こそ黙秘権を行使してた田中も、とうとう口を割った。
「西園寺さんが嘘をついたとは思えない。多分、想像妊娠だ。それに気付かず伊藤が堕胎を望んだと」
「伊藤、無責任」
私は、もうこの世に逝亡い伊藤を非難した。
「ある意味、責任ある決断だと思うが」
「どうして?」
「仮に出産となれば、双方、退学は確実だ。世間体も悪くなる。高校中退者が育児しながら
マトモな職に就けると思うか?」
「や…思わない。せいぜいバイトくらい」
「それに、双方の親が不幸になる。なぜだか判るか?」
「親が援助…でも、それは不幸とは違うと思う。子や孫の為なら…」
「そっちではない。親の夢をブチ壊すからだ」
…あ。そっか。
「親の夢はな、我が子が立派に高卒して、立派に大卒して、立派な職について、立派な相手と
結婚してくれる事だ」
ん。わかる。
「伊藤は、それを考えた上で堕胎を選んだのだろう。俺はそう思う」
「そうだったの…」
「多分、タイミングが悪かったと思う。西園寺さん、情緒不安定になってたし。伊藤に
拒絶されたと勘違いして、喧嘩。勢い余って刺殺という感じか。だから誰も悪くない。
好きという気持ちがズレ違っただけだ」
「じゃあ何で世界は死んだの?」
「報道は他殺と言ってるが、真相はどうだか判らん。犯人特定されてないし、手掛かりも無い。
無理心中…後追い自殺と思った方が幸せだろう」
じゃ、事故だったの…。
良かった…いや、良くはないけど、なんて言うか、胸のつかえが取れた。
伊藤も世界も、決して互いを裏切った訳じゃなかった。
156SINGO:2008/12/08(月) 03:12:28 ID:MWlMLMVW
《放課後 昇降口》
友人の光(と澤永)の背中を見つけた。一緒に帰ろ…と声を掛けようとして、
「でも田中は優しいわね。刹那の為にあんな嘘までついて」
その光の台詞で私は凍りついた。
…え?光、今なんて言ったの?『嘘』って何?
「刹那を悲しませたくなかったんでしょ?だから二人に非は無いって嘘ついた」
私は慌てて物陰に隠れた。きき耳をたてる。
「バレていたか。黒田さんには、かなわないな」
(田中!?)
明らかな肯定。私が求める真実を、田中が捏造してた?
田中が私を欺いた?
「だって、どー考えてもアノ伊藤が責任感じるわけ無いじゃない?」
「そうかぁ?わけ判らん奴だが、いい所もあるんだぜ」
「いい奴だが、お人よしな反面、面倒事から逃げる癖がある。恋人の妊娠においてもな。
女生徒、特に四組女子からの評判が劣悪だった」
「伊藤の浮気、それこそ手当たり次第だったらしーわよ」
…な!?伊藤…!桂さんやアノ人だけじゃなく、他の人とも浮気を!?
「そーなのか?けどよ、誠って殺される程のワルなのか?」
「ただ刺すのではなくメッタ刺しにされていたのが何よりの証拠だ。相当、西園寺さんに憎まれていたと思う」
「まあ、首斬られるくらいだもんなー」
「いや、それは違う」
田中は否定した。
「確かに西園寺さんは怒り狂っていたと思う。なら首を切断するはずがない」
「そうかぁ?首斬るなんて狂気の沙汰だぜ」
「殺す為に切断するなら、そうだろうな。だが殺す為ではなく、運ぶ為に分断した。
その方が軽くて運びやすいと冷静沈着に計算できるからこそ、死体を分断した。なら首の件、
西園寺さんではない。怒り狂っていたならな」
「犯人は他にもいるってのか?マジかよ?ソレ清浦には…」
「言ってない。ただの想像だからだ。証拠も無い。清浦さんには、あの事件、無理心中に
しておいた方が良い。誰かを憎んで生きる清浦さんなど、見たくない」

私は廊下を引き返していた。手すりにすがりながら階段を昇る。
(伊藤が世界を裏切った?世界が伊藤を制裁した?有り得ない有り得ない有り得ない…)
かつて私は、惚れた伊藤を世界に譲った。大切な世界を伊藤に託した。
なのに、その二人が私の願いを…裏切った…?
だとしたら、私のしてきた事は、キューピッドじゃなく…ただの疫病神?
(違う違う違う違う…!)
気が付けば、私は校舎屋上にいた。世界の遺体が発見された場所でもある。
本来なら事件以後閉鎖されてる筈だけど、誰かの悪戯で鍵ごと壊されてて、今は開放状態。
件の床の一点を見て、思う。
洗濯でもそうだけど、血脂の汚れって、かなり落ちにくいよね。
ああ…これが現実なんだ。なら、
こんなセカイ、もう…イラナイ…。
私はフェンスをよじ登った。
破局に向かって。
157SINGO:2008/12/08(月) 03:13:23 ID:MWlMLMVW
《後日談 廊下》
ちらちらと私を見る視線。田中だった。
「安心して。もう自殺なんて考えないから」
あれ以来、私は田中の監視下に置かれるようになった(もちろん学園内でだけ)。
明らかに田中は私の自殺を警戒している。
その田中の姿は、なんて言うか、痛々しい包帯姿だった。
まあ、いくら巨体でアスリートでも、校舎屋上からダイブした人間を受け止めたら、そうなる。
聞けば、その際に片方の鼓膜を傷めたとか何とか。
奇特な人。なぜ私なんかのクッションになったの?下手したら田中が死んでたかも知れないのに。
申し訳ないと思いつつも、私を救ってくれた田中に対して、なぜか感謝の気持ちは湧いてこない。
てか私の自殺を邪魔したんだから、むしろ有難迷惑?
「で、田中。女子トイレにまでついて来る気?」
田中は慌てて回れ右。
私は溜め息をついた。
(私、何やってんだろ…)
世界と伊藤の後を追う事もできず、かといって、人生に何の希望も見出せず…。
コトッ…。
不意に田中が携帯電話を落とした。田中は気付かないまま歩いて行く。
「あ。田中、ケータイ落とした」
「む。ありがとう…って、うわ駄目だ、見るなぁ!」
なぜか慌てる田中。構わず、私は田中の携帯電話を拾った。
「え?コレって…」
その待受画面には私の写真が。
それは、ここ榊野学園で流行っている、おまじない。
待受画面を好きな人の写真に設定すると、その人と両想いになれる。
入学当初は、誰にもバレずに3週間隠し通せというルール付きだったけど、次第にルールも変わり、
今ではバレてもいいかわりに設定期間が一年間。(ハードルが低いんだか高いんだか)
…ああ、そっか。ようやく理解。
今まで気付かなかった私が馬鹿なんだけど、田中、私の事が好きだったの?
「その、すまん!すぐ消すから!清浦さん、今のは見なかった事に…」
「ん。私は何も見なかった」
私は即答した。
田中は誠実な人間だけど、私は田中に特別な感情を抱いてる訳じゃない。
とはいえ、きちんと向き合って田中の気持ちを真剣に考えてみる余地はあった。
だけど、その気すら湧いてこない。
なるほど。
今更だけど、どうやら私は自分の恋愛に対して余程の臆病…いや、無関心になってる。
たぶん、それは私の好きだった人達が、私を置いて死んで逝ったのが原因かも知れない。
(私…病んでる…?)
田中は安堵したような、それでいて非常に残念なような、何ともいえない表情。
(ホント、田中って奇特。私みたいなののドコが良いのやら)
158SINGO:2008/12/08(月) 03:15:11 ID:MWlMLMVW
《さらに後日 昇降口》
「む」
いきなり田中は歩みを止めた。その足元には蟻の行進。
田中は蟻を踏まないように跨いでいく。
遠山や松平なら、平気で蟻を踏み潰していったかも。
なぜか伊藤を虫ケラのように殺す世界…を想像してしまい、私は思わず口走ってしまう。
「人の命も虫の命も同じよね」
たぶん…いや、確実に私の心は病んでる。
「清浦さんは優しいな。確かに、虫も人と同じくらい大切にしないといけないな」
は?一体、何を言い出すのか、この巨人は。
てか、私の台詞のドコをどう捉えたら、そうなるの?
「ふうん。じゃ、人の命も石ころと同じ…って言ったら?」
「石ころにも命があるというのか?驚いた。さすがにその発想は無かった」
いやいやいや、それは私の台詞。
どこまで私を美化する気?てか田中、天然?
呆れ果てたけど、なぜかソレが興味に変わってしまった。
田中、面白い。私の興味を引く程度に面白い人。
なぜか不意に、今はもう逝亡い初恋の人を思い出した。
「そういえば田中、まだ私の写真、待受にしてるの?」
「え?…あ!ああ、すまない。まだ消してない」
「不公平」
「え?」
「不公平だから、田中も写真よこしなさい。私の待受にするから」
「え?え?あの、清浦さん…?」
困惑する田中。
思えば、これがキッカケだったかも。もう一度、人を好きになってみようかなと思ったのは。
「どう?私と付き合ってみる?」
「え!?えと、あの、それって…つまり」
狼狽する田中。
「ん。恋人」
「おおお俺なんかで良ければ、ヨロコンデ」
田中は満面の笑顔&赤面。
私は携帯電話の待受に田中の写真を設定した。おまじないのルールは一年間設定。
そう、一年間。
「田中、■■しましょ」
「え?すまない。よく聞こえなかった」
田中は片方の鼓膜を傷めてたから、上手く聞き取れないみたい。
けど、構わず私は言葉を続ける。
「田中は綺麗な心を持ってる。優しくて純粋で誠実で。それは私には無い心」
「…?」
「たぶん、私と交わっても田中は最後まで綺麗なままでいると思う」
「えと、清浦さん?一体何を言…」
「私は田中を好きになるよう努力してみる」
一年間、田中と恋人同士になってみる。一年間、恋人同然の態度を取り続けてみる。
「好きよ愛してると言い続ける。田中だけを見続ける。田中だけを守り続ける」
「あ、ありがとう清浦さん」
「そして一年経って、もし田中を特別だと思えたら、■■は成功。私は田中を受け入れる」
でも、やっぱり田中を特別だと思えなかったら、

その時は、
田中を切り棄てる。
さあ、始めましょ。『実験』を。

       The Start
159SINGO:2008/12/08(月) 03:31:33 ID:MWlMLMVW
終わりです(TheEndではなく、Startで締めてますが)。
キャラ崩壊、矛盾点、つじつまが合わない点などは、ご容赦ください。

過去スレにも【破局に向かって】を投稿しましたが、
今日のSSは、↑の第一部と二部のルートチューブという設定です。ので、
この後、刹那と田中がどんな運命を辿るのかは、すでに過去スレでネタバレしています。

クロイズで、刹那スキー田中の公式設定化(←数分間だけだった)、おめでとー。

160名無しさん@ピンキー:2008/12/08(月) 20:23:55 ID:qu5D47AL
>159
乙彼

そうか、公式で刹那スキー認定されたか田中

161名無しさん@ピンキー:2008/12/09(火) 15:27:06 ID:ZNfQlHBQ
>159
good job.
締め方にもセンスを感じました。
162名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 00:34:41 ID:MdEFTJIY
やっぱり誰もいません
163名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 12:10:33 ID:pMEgYtOC
ソフマップアミューズメント館に、Overflowから2008年2月27日発売予定の
Cross Days(クロスデイズ)の予約受付を22日から始まる告知が出ていた。

主人公足利勇気とメインヒロイン喜連川 路夏のほか、スクールデイズにも
登場した誠・言葉・世界のイラスト入り。

『CrossDays(クロスデイズ)』は、テックジャイアンの記事によると
『スクールデイズとクロスオーバーするフルアニメーションADV』。ドリパ大阪の発表?では
『主人公は、伊東誠ではない』・『時間軸は、School Daysと同じ』・『人が死ぬ』とかだったみたいで、
暇つぶし日記みたいなものさんでもドリパでのCross days情報を書かれている。
------------------------------------------------------------------------------------------------
学園で図書委員を務める足利勇気は、ある日、先輩に理想のタイプを聞かれた際、
偶然通りかかった女の子・喜連川路夏が自分の好みにピッタリであることに気がつく。
その後、路夏の部活の先輩にして勇気の姉・知恵の後押しもあり、ふたりはお互いに惹かれ合うように。
しかし、勇気の交友関係を勘違いした路夏が彼に嫉妬心を抱き、勇気もまた、路夏は出身校が同じ
”伊藤誠を好きらしい”という噂を信じたことで、彼らの気持ちに大きなすれ違いが生じてしまうのだった。
そして、勇気は路夏を誠に渡したくない−ここから、図書室の常連で誠の彼女ー桂言葉の恋愛を応援しようと思い…
------------------------------------------------------------------------------------------------
なお、みんなで見よう!Youtubeとニコニコ動画さんでは、Cross Days(クロスデイズ)』のロゴ下に書いてある英文を
直訳すると『これらの運命が、彼の努力によって変えることができる、それが、幸せとは限らないけれど・・・・』になるみたい。

アキバBlog
http://blog.livedoor.jp/geek/archives/50763405.html
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http://img.akibablog.net/lamb/2008-11-15-103.jpg
http://img.akibablog.net/lamb/2008-11-15-104.jpg
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164名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 09:54:21 ID:gqGtHi9r
ほんとに誰もいません
165名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 00:47:40 ID:C1nsfrMy
         ,      /〃ハヾ  / ∧∨〃、ヾ} l| :}ミ;l\
        /〃// / 〃l lヽ∨,〈ヾ、メ〈 }} ;l リ ハ l`!ヽ.
          //' /,'  ,' 〃 l l川/,ヘ丶\;;ヽ/:'/〃∧ l ト、:l !
         〃,'/ ;  ,l ,'' ,l| レ'/A、.`、\;;ヽ∨〃/,仆|│l }. |、
         i' ,'' l| ,l ' l. !| l∠ニ_‐\ヽ;\,//,イ| l | l ト/ λ!   、
.        l ;  :|| ,'i:/ l| |:|: |``'^‐`ヾ∨`゙//|斗,l ! | ,タ /l.| l  三__|__
       l ' l |」,' l' lハ |'Ν    ̄´ /` ,|l_=ミ|! ly' ,〈 :|| |  口 |
        |l .l H|i: l | ゙、| l        _.::: ,!: l厂`刈/ /!} :l|    ‐┬‐
        |! :l |)!| ! |  ヽ      '´ ’/'_,.   ノイ.〃/|!    │田│
        l|l |l 「゙|l |`{             ..   _   |}/,ハ l     ̄ ̄
       |!l |l、| !l :|.      ‘ー-‐==ニ=:、__j:)  l'|/|l リ    、 マ
ヽ ̄ニ‐、__.」乢!L!lヱL」__           ー、 `'''´   从「 /     了 用
 \ `ヽ\      /l |       / ̄´     //        '"`ー‐
.  ,、  l  ゙、    / ' |、      {        /l/         ,
   '}  l  ゙,    /   |:::\      }     ,.イ/          レ |
   l  l   l  ,.イ   l:::::::::\__   `'-‐::"// |′          ノ
   l   !   K ヽ,、 \「`''''''''"´:::::::;;:" //
.    l   l   ト、\( _.... ヽ  .:.::::::::;;″ /'       _
\   |  l|  八、ヽi´    | .:.:::::::::::::i' .:/'"´ ̄ ̄ ̄ ,.へ\
166名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 11:53:52 ID:i+wtG/Z8
どこから狂ったんだろうかって
見直してみるといろんなものが見えてきて面白いな
167名無しさん@ピンキー:2008/12/28(日) 09:57:18 ID:+rLO1qeX
ウホッ!路夏たんいい女
168名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 10:32:54 ID:ON4Ymm26
ハァ ハァ・・・
169名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 21:51:22 ID:uGVacKUs
もしこのスレを見ている人がいるなら聞きたいんだがこのスレで書いていた人で今ブログの
方だけで書いている職人さん達にここでまた書いてもらえるように頼むってのはやっぱ問題あるか?
正直クロイズが発売されてもこのスレに活気が戻るとは思えない
もしクロイズ発売で書き手がいても今の寂しいスレの状態じゃ書く気が沸かないと思うんだがどうだろう?
170名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 21:56:13 ID:uGVacKUs
すまん 一応質問だからあげとく
171名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 22:40:26 ID:UBazKVMX
是非頼んでくれ。
感想でもなんでもかくから職人さんのSSが読みたい!!
172名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 23:38:41 ID:uGVacKUs
おう 頼むのは問題ないんだが俺、スクイズのSS書いている人のブログは
「勝手にschool days」と「その他もろもろ」しか知らないんだよな
ついでに言うと「勝手にschool days」の方は去年の11月4日以降更新が途絶えてるんだよな
173名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 23:55:31 ID:uHDyIyj/
>>172
元からその2つしかない気がする。

質問だからageるのは仕方ないとして、個人ブログの名前思いっきり出すのはどうよ。
せめて伏せ字とか。
174名無しさん@ピンキー:2009/01/03(土) 01:43:13 ID:E8uSuVXP
丁○屋さんがHPもってくんないかな
175名無しさん@ピンキー:2009/01/03(土) 10:11:34 ID:lL8CINiw
>>173
す、すまない 以後気をつけるよ
スクイズ〇フ氏がこのスレを去るときブログをやってると言ってたような気がするんだが勘違いか?
176SINGO:2009/01/08(木) 03:23:28 ID:Jjmu0oBE
あけましておめでとうございます。
スレ活性化に向けて
>>154-158の続きを書きました。
今回もウザイくらいに田中×刹那のカプコンビでいきます。

舞台はアニメLastの後日談Ifで
>>154-158の続きです。
誠と世界が逝亡くなった日常で、刹那と田中が交際しています。

【破局に向かって】第2.1部
 School BABYL その秋に

元ネタは TOKYO BABYL です。
177SINGO:2009/01/08(木) 03:24:34 ID:Jjmu0oBE
【破局に向かって】第2.1部
 School BABYL その秋に

《学園祭 準備期間》
学祭運営委員会で、早くもトラブルが起きていた。
我が3組委員長と4組委員長が口論。
暗幕の使用権を巡って、二人は争っているのだ。
何しろ、学園側から貸し出される暗幕は、数に限りがあるからな。
「何言ってんのよ!ウチらが先に予約したのよ!!」
4組委員長の少女が怒鳴った。ええと名前は…志村だったか?
「ウチは厳選な抽選で暗幕を得たの。4組に譲る義務は無い」
我が3組委員長の少女…清浦刹那は、当然の主張で返した。冷静に。
「アンタのクラス、ホステス喫茶でしょ!そんなイヤラシイ出し物が優先なんて、間違ってる!」
「それを言われると俺も頭が痛い。が、4組に言われる筋合いは無いな。去年の事もあるし」
俺は刹那をフォロー。
噂では、4組は去年の学祭でオバケ屋敷を催す裏で、暗幕を利用し擬似ラブホテルを営んだらしい。
その罪で、今年の4組は抽選から外されたのだ。意図的に。
(流石は生徒会。公平な処置だな)

おっと申し遅れた。俺の名は田中。2年3組。
清浦刹那と同じく3組のクラス委員長で、彼女のパートナーだ。
端的に説明すると、ウチの暗幕が4組に横取りされそうな状況だ。いや、恐喝されていると言うべきか。
「出し物に貴賎は無い。ルールに乗っ取ってる。てか暗幕くらい家から持ってくれば?」
「無理に決まってんでしょ!」
ひとクラスの窓全部を覆う大きな暗幕など、一般家庭には滅多に配備されていない。
「軍資金は?」
学園側から全クラス平等に支給された運営兼準備資金の事だ。ただし微々たるもので、無駄使いはできない。
「足りる訳ない!!」
暗幕は面積が広いほど高価になる。ひとクラスの窓全部を覆う暗幕は、一体いくらするだろうか。
「ふうん。問題なのは、労せず暗幕が手に入るだろうとタカをくくって、何の対策も準備もしなかった
4組の怠慢、加えて協調性の無さね」
刹那の指摘は強烈な口撃だった。
うわ。志村は怒りで顔が真っ赤だ。握り拳が震えている。
ヤバイ、危険だ。刹那の身…ではなく、志村の身が。
今の刹那は、なぜか容赦がない。
刹那の、持ち前の冷静さに無表情。それが、かえって恐ろしい。
全てを破局させるような得体の知れない雰囲気が、刹那から感じられた。
俺は慌てて止めに入る。
「待った!暗幕は俺が何とかするから!だから、ええと…志村さんだっけ?今日は抑えて…」
「加藤よ!誰がドリフタアズか!!」
乙女に怒鳴られた。
178SINGO:2009/01/08(木) 03:25:52 ID:Jjmu0oBE
《帰り道》
「なあ、清浦さん」
「二人きりの時は刹那」
「ああ、そうだった」
俺と刹那は今年の春から交際している。
だが刹那、今だに俺を下の名で呼んでくれないのは、いかがなものか。
いや、そんな事より、
「今日の刹那さん、尋常でなかった」
まあ、無茶な理屈で迫られたのだ。気分を害したし、無情に突き放したくもなるだろう。
加藤が欝陶しいというのも解る。だが、あの時の刹那の目つきは、
「なんていうか、敵意…いや、害意があった」
「ん。あの人、伊藤の浮気相手だったの」
刹那は、さらりと言った。
「それ、ただの噂だろう」
「私、現場を見た。体育倉庫で性交してた。ちょうど去年、学祭の後だったと思う」
そうだったのか。
だが、加藤に非は無いだろう。むしろ、据え膳食わぬはナントカ理論の伊藤に非がある。
「あの人、セフレ同意の上で伊藤と性交してたの。セックスフレンド。体だけの関係。
そんな軽い気持ちで、世界から伊藤を寝取ってた。それが許せない」
絶句。俺は返す言葉が無かった。

去年のX'mas。
伊藤誠と西園寺世界の交際は意外な形で破局を迎えた。
西園寺が伊藤宅にて伊藤を刺殺(西園寺自身も、その後に死亡)。
噂だと、原因は伊藤の浮気で、それを西園寺が制裁したとか。

伊藤誠は、刹那の片想いの相手だった。
西園寺世界は、刹那の大親友だった。
大切な人を二人同時に亡くした刹那の気持ちは、俺ごときが想像できるものではなかった。
「それより田中。4組の暗幕、どうするの?あんな安請け合いして」
そうだった。二人を止めるのに精一杯で、何も考えてなかった。
「別にいいのよ、用意しなくても。する義務も無いし」
あとが恐そうだ。それに、何とかすると言った手前、何もしないというのも無責任だし。
「責任は責任者が取るべき。もともと4組の落ち度なんだし、田中が責任感じる必要ない」
確かにな。だが俺達3組と4組がいがみ合ったままというのは、何か哀しい。
学祭は年に一度っきりだ。4組にも学祭を楽しむ権利はあるし、楽しんで欲しいとも思う。
「つべこべ言ってくる様なら『窓にペンキでも塗っておけ』とでも言い返せばいい」
ははは。確かに、黒ペンキなら遮光できるな。
ああ、そうか。その手があったか。
「刹那さんは優しいな」
突き放している様で、きちんと4組の事を考えている。
だから俺は刹那に惚れたのかもな。
「え?田中、一体、何を言…」
「刹那さん、すまない。俺、急ぐんで」
俺は走り出した。
まずはペンキだ。
ホームセンターとかに売ってる筈だ。そんなに高い物ではないだろう。
179SINGO:2009/01/08(木) 03:27:04 ID:Jjmu0oBE
刹那 Turn

《翌日 放課後》
今日の授業が終わった。
例によって、クラスメイトは学祭の準備。
委員長の私と田中は、学祭委員会の打ち合わせに向かう。
「すまない刹那さん。先に行ってて。俺、部室に寄ってく」
「どうしたの?」
「忘れ物だ。大丈夫、すぐ戻る」
田中は黒いシミだらけの笑顔で、同じく黒いシミだらけの手を振って、走って行った。
(あのシミ、今朝からああだったけど、間違いなくペンキの跡ね)
田中の人格からして、4組の窓を塗り潰したとは思えない。もし実行したなら、すでに騒ぎになってる筈だし。
私は気にしないようにした。あの田中が問題を起こすわけが無い。

会議室に入って待ってると、しばらくして加藤さんが入って来た。
「ねえ3組の人。昨日言ってた暗幕だけど、用意してくれた?」
私は憂鬱になった。
(まったく…何で田中、こんな厄介事を…)
そこへ田中が遅れて入ってきた。何か巨大な風呂敷包みを背負ってる。
まさか暗幕を調達できたの?
「えと4組さん。すまない。暗幕は用意できなかった。代わりにコレを…」
ドサッ。
田中は立方形の風呂敷包みを開けた。その中身は、
「え?コレって…」
段ボール箱を展開したものだった。その数、数十枚。ひとクラスの窓を全部覆える程の数。
なるほど。段ボールの厚みなら遮光性は充分。
しかも念入りに、ペンキで黒く塗り潰してあった。
「ガムテープで窓に貼り付ければ、暗幕代わりになるだろう」
「あ、ア、アリガト…」
加藤さんは呆然とした。おそらく感謝よりも驚愕の感情でいっぱいかも。
でも、それは私も同じ。
「田中、ゆうべからコレ作ってたの?」
「ああ。資源古紙収拾所から拝借してきた。ペンキも安い物だったし」
だけど、その労力は並大抵じゃない。数を揃えるにも数ヵ所は遠出したと思われる。
私は呆れ果てた。何も、そこまでする義務は無いのに。
言いたい事はいくつかあったけど、あえて今は何も言わない事にした。
「ありがと、助かった。でも、どうして私に手伝わせなかったの?」
「ああ、コレばかりは汚れる作業だし。下手すると顔まで…」
「まあ、いいわ。それにしても田中、ナイスアイデアね」
私は考える事すら放棄したのに。
「え?コレ、刹那さんのアイデアだろう」
…え?確かにペンキとは言ったけど…。
(驚いた。田中、天然か)
私も田中に対する認識を改める必要が…いや違う。予測はしてた。それが確固たるものになっただけ。
あとは私次第という事か…。

「ちょ、コレ全部、私が運ぶの!?」
加藤さんが段ボール束を抱えたまま絶叫した。
180SINGO:2009/01/08(木) 03:37:27 ID:Jjmu0oBE
《前夜祭》
暗幕を掛け、キャンドルと天井のミラーボールにライトを燈す。
3組教室はホステス喫茶の雰囲気?を醸し出した。
クラスメイト達の歓声、万歳賛賞。
やるべき準備は全てやった。あとは明日の本番にそなえて、ゆっくり休む…訳が無い。
田中が風呂敷包みを、澤永がクーラーボックスを持って来た。中はそれぞれ大量のスナック菓子とジュース。
クラスは再び歓声に包まれた。

18:00 PM
どれくらい時間を忘れて騒いだのか、すでに下校時刻は過ぎ、残ってるのは、
私、田中、光、澤永の四名だけだった。
光と澤永は床に座って、飽きずに乾杯してた。二人の笑顔が眩しくて…赤い。
(澤永、どさくさに紛れて酒も持って来たか)
…あ。よく見れば、私の缶もアルコール入り。
一方、田中はアルコールにいっさい手をつけてない。真面目すぎ。
しばらくして、私は酔いが回ったのか、悪戯心がムクムクと湧いてきた。
私は今、おあつらえ向きにウエイトレス制服試着状態。しかもフリルのミニスカート。
「田中」
私は立ち上がると、スカートをたくし上げ、田中を誘惑した。
「せ、刹那さん…!?」
田中は顔を真っ赤にして目をそらした。
「ち。田中、真面目すぎ」
付き合って半年近く経つのに、田中は今だに性的なアプローチをしてこない。てか我慢してる。
「澤永達が見ているだろ…って、あれ?」
いない。いつの間にか二人の姿は消えてた。
黒田光と澤永泰介は、3組裏方の主力メンバー。
光の実家はケーキ屋で、彼女が作ったレモンカスタードケーキは絶品。
澤永は意外にも料理が上手で、姉に弁当を作ってあげてる程のレベル。
残念なのは、今年は世界と伊藤が逝亡い事。
(二人が作ったババロア、人気あったのに…)
「刹那さん。泣いてるのか?」
…え?泣いてるって、誰が?
言われて気付く。私の目から、何か熱いものがこぼれ落ちてた。
どうして?
「ほら」
田中は私にハンカチを渡すと、自分のブレザーを脱ぎ、それを私の肩に着せた。
田中は私に何の手出しもしてこない。私が傷心中の今こそ、絶好の機会なのに。
田中の胸中など、容易に察しがつく。
田中は、傷心の私に付け込む様なマネはしたくない…んだと思う。
綺麗な心。優しくて、純粋で、誠実で。
『好き』『大切にしたい』という田中の心が、私の心に流れ込んでくる。
でも、それだけじゃ駄目。
足りない。
「物足りない」
田中は、もっと私の心に踏み込んでこないと駄目。
「あの、刹那さ…むぐ!?」
私は田中の唇を塞いでやった。

だけど、私は何も感じなかった。
何も感じられなかった。
『実験』は、今だに実を結んでいない。

        秋 END
181SINGO:2009/01/08(木) 03:44:39 ID:Jjmu0oBE
終わりです。

過去スレにも【破局に向かって】を投稿しましたが、
今日のSSは、↑の第二部の追加Storyです。
ので
この後、刹那と田中がどんな運命を辿るのかは、すでに過去スレでネタバレしています。

あと、
転載ですが、お年玉です。
http://blog-imgs-11.fc2.com/a/4/4/a442b/setsunaweb001.jpg
182名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 23:20:50 ID:V+2UiUvt
>>135
乙です

刹那は、やはりスクイズにとって悲劇回避の要の人物だな。

でも、ダーク刹那も見たいような見たくないような……。
183名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 23:31:06 ID:szVqyozl
妊娠したと聞かされ、世界のところへ行こうとする誠。
言葉は取り返して独り占めにしようと、誠を監禁。妊娠するまで連日連夜の逆レイプ。
しかも持ち前の勉強上手と淫乱な体のせいで、回数を重ねるごとにエグいSEXに。
それでも世界と産まれてくる子供の事を思い、何とか正気を保つ誠、
だが食べさせられていた媚薬入りの肉料理は言葉に殺されて調理された世界と
その腹から取り出した自分の子供である事を告げられ、証拠に顔以外の肉を削がれた
世界と胎児の遺体を見せ付けられ、ついに自我が崩壊し幼児退行。
言葉は妊娠→出産でさらに巨大になった乳房を赤子同然になった誠にしゃぶらせ、
母乳を飲ませながらSEX。 トゥルーエンド「母性愛」
1841:2009/01/11(日) 03:21:41 ID:L9rQDW3m
言葉と改めて付き合い始めた誠。
月日は流れ気が付いたら高3の12月。卒業手前で進路について語る二人。
言葉は大学を推薦で通ったが誠は推薦とれず一般で挑むことに。
しかし誠は合格発表の掲示板に彼の受験番号はなかった。
気まずい空気のなか帰路につく二人。
結局誠は一年浪人することになった。受験勉強も本格的になりはじめる夏手前
久々に言葉からデートの約束を受ける。待ち合わせ場所に来た言葉は見違えるほど美人になっていた。
苛められて影で泣いていたかつてのか弱いお姫さまから前向きな一人の女性として生まれ変わっていた。
いつのまにか言葉と自分とは住む世界が違っていたことを感じた誠。
このまま同じ大学に進学してよいのか?成長した言葉とやっていけるか?
一晩考えた誠はひっそり別な大学を受験することに。
やがてセンター、一般とこなしていき言葉に謝りに行った誠は言葉が男と楽しそうに笑っている光景を見てしまう。
1852:2009/01/11(日) 03:56:48 ID:L9rQDW3m
ごめんあげた。

その光景をみた誠はもう自分は言葉にとって必要ない、過去の人間でしかないと感じる。
その晩携帯に何度も言葉からメールや着信があったが誠は出ることはなかった。
そして誠は涙ながらに愛しの彼女のアドレスを削除する。
一方言葉は誠から着信やメールがこないことに強い疑問と悲しみを感じていた。
直接結果を聞こうと誠の家に行ったが誠達はすでに引っ越したあとだった。
結局連絡が途絶えたまま半年がたつ。たまたま休講だった誠は原巳浜駅で言葉と再会してしまう。
そこで誠は言葉にすべてを話した。変わりすぎた容姿のこと
別な男性と喋っていたことに嫉妬を感じたこと別な大学を受験することにしたこと
自分とあなたは世界が違いすぎること。
言葉は激怒した。今までずっと待っていたのはなんのためなのかと。
誠は謝り続けた。だが言葉は許さなかった。自分が待っていたのはこんな誠じゃないと。頼りないけど優しくて前向きな
かつてクラス中の人間を敵に回した自分を守り抜いた彼だと。
どんなに容姿が変わっても、明るい性格になっても、男性と喋べるようになっても
彼女は誠への想いは変わることはなかったのだ。
言葉は彼に別れを告げた。泣きながら。誠は了承した。こうして二人は二度と会うことはなかった。
最終回「さよなら誠」
186名無しさん@ピンキー:2009/01/11(日) 04:14:37 ID:L9rQDW3m
今読み返したらおかしいところ結構あったな。
引っ越したのに原巳浜にいたのはあそこ付近ってことで。
あとクラス中の「人間を敵に回した」んじゃくて「クラス中が敵だった」んだよな。
書いてて気付かなかった
187名無しさん@ピンキー:2009/01/11(日) 10:37:35 ID:w2p8xgLa
言葉は激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の世界を除かなければならぬと決意した。
言葉には誠を取られた理由がわからぬ。言葉は、奥手である。
部屋に籠もり、本を読んで暮らして來た。けれども乳首に対しては、人一倍に敏感であった。
188名無しさん@ピンキー:2009/01/11(日) 11:13:29 ID:i+fIJY+9
走れメ〇ス 乙
189名無しさん@ピンキー:2009/01/11(日) 11:26:21 ID:w2p8xgLa
「誠は、女を弄びます。」
「なぜ弄ぶのだ。」
「傷心を被っている、というのですが、誰もそんな、ごとう氏の言い訳漫画を聞いては居りませぬ。」
「たくさんの女とヤったのか。」
「はい、はじめはクラスメイトの世界を。それから、4組の乙女を。それから、世界の友人の光を。
それから、乙女の取り巻きのみなみを。それから、夏美を。それから、彼氏持ちの来実を。」
「おどろいた。誠は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。彼女である言葉を、素直に愛する事が出来ぬ、というのです。
このごろは、自身の心をも、お疑いになり、少しく無難な也をしている学園の女には、片っ端から手を出します。
きょうは、6人犯されました。」
聞いて、視聴者は激怒した。「呆(あき)れた主人公だ。生かして置けぬ。」
190名無しさん@ピンキー:2009/01/11(日) 12:08:44 ID:w2p8xgLa
これじゃあ顧問様の漫画を否定するような感じになってしまうか
「誰もそんな、無料配布Daysの誠の言い訳を聞いては居りませぬ。」
に修正
191コトノハマンメビウス:2009/01/12(月) 02:14:00 ID:lBF37TYn
光「世界エネルギー?」
七海「人の彼氏を奪うと発生するエネルギーのことです」
泰介「あ、あれは!?」
心「マコトラマン・・・」
刹那「80・・・!」
「私達たちの・・・」
「彼氏・・・」
言葉「誠君・・・、誠くうううううん!!!」

次回「思いでの誠」
192名無しさん@ピンキー:2009/01/12(月) 10:29:40 ID:ZOEV5Imr
>人の彼氏を奪うと発生するエネルギーのことです
激ワロタ〜
193名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 00:39:09 ID:u5YQHGD5
なんだかなぁ
穴埋めにしても・・
194名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 01:53:04 ID:rlxW5Un8
>>174
ブログ始めたらしい。SSは書かないのかな?
195SINGO:2009/01/15(木) 06:53:06 ID:68G71U+j
田中刹那SSの続きを投稿します。

舞台はアニメLastの後日談Ifで
>>176-180の続きです。
誠と世界が逝亡くなった日常で、刹那と田中が交際しています。

【破局に向かって】第2.2部
 School BABYL その冬に

元ネタは TOKYO BABYL です。

196SINGO:2009/01/15(木) 06:54:03 ID:68G71U+j
【破局に向かって】第2.2部
 School BABYL その冬に

『私は貴方を好きになるよう努力してみます。そして一年経って、もし
貴方を特別だと思えたら、賭けは貴方の勝ち。私は貴方を殺しません。
でも、やっぱり貴方を特別だと思えなかったら、その時は貴方を殺します』
ボクハ アナタガ… スキダッタンデス…
(TOKYO BABYL より抜粋)


君の為になら死ねる。
そんな、ひと昔前の恋愛小説に出てくる台詞が、格好良いと思えた時があった。
かく言う俺もその一人で、彼女の為なら死んでもいいと本気で思っていた。
だが、逆の立場に立たされて、それは残酷な言葉だと思い知らされる事になる。

《X'mas Days》19:30 PM俺は清浦刹那と一緒に、榊野町の繁華街に来ていた。
恋人と二人きりでイルミネーションを見るのは初めての経験で、結構ロマンチックだった。
思い出に残る最高の日…になるはずだった。
なのに俺達はウンザリしていた。
なぜかって?
見るからに不良ヅラした(てか不良そのもの)男三人組が、俺に言い掛かりをつけてきたからだ。
俺に身に覚えは無いが、何とか穏便に済まそうと下手に出てみた。暴力は嫌いだしな。
すると男達は俺の事をカモだとでも思ったのか、さらに調子に乗って金まで要求してきた。
「田中を怒らせない方がいい。柔道やってるから」
刹那が男達に忠告した。チンピラ相手に一歩も引かない。(不謹慎だが惚れ直した)
すると、いきなり男の一人が刹那の胸をわし掴みにし、「小せえ」と言って笑った。
あっと思った時には、俺の体は勝手に動いていた。
俺のビンタで、男は5mは吹っ飛んだ。
「野郎!」
残る二人が殴りかかって来た。
俺はビンタで応戦した。そのたびに男達は吹っ飛び、立ち上がっては殴りかかって来る。
俺は得意の柔道技は使わない。片手で充分だし、もし俺が本気を出したら、三人とも入院確定だからだ。
だが、俺は手加減した事を後悔する事になる。
男の一人がポケットからナイフを取り出したからだ。
(くそ。甘く見ていた)
俺は刹那を背後に庇った。
「刹那さん!逃げ…」
直後、刹那は驚くべき行動に出た。
「私の田中を殺す気?」
刹那は俺の脇をすり抜け、猛然とナイフ男に突進したのだ。それは最も危険な行為。
(う、嘘だろ!?)
刹那は躊躇なく男のナイフを掴み、その手に噛み付いた。
「いで!このチビ、放しやがれ……あぎゃあッ!!」」
刹那が男の手の肉を噛みちぎり、ナイフを奪い取った。
「野郎、覚えてろよッ!」
男達はようやく不利を悟ったのか、捨て台詞を吐いて逃げ出した。
捕まえて警察に突き出したかったが、そんな事よりも…、
「刹那さん、大丈夫…って、ああ!!」
刹那の足元に赤い雫が落ちていた。
197SINGO:2009/01/15(木) 06:55:03 ID:68G71U+j
刹那の左掌が裂けて出血していた。ナイフの刃を素手で掴んだせいだ。
「どうして、こんな無茶を!?」
下手をすれば指を失うか、最悪、刺されて死んでいたかも知れないのに。
「ん。愛する人を守る為、やむを得ず」
刹那は、さも当然だというふうに答えた。
普段の俺なら、その言葉だけで天に昇る気持ちなのだが、今回ばかりは真逆だ。
この事態を招いた元凶は俺だから。
(俺のせいで…俺のせいで…)
俺は思考が暗転しながらもポケットからハンカチを取り出し、刹那の左手に応急手当てを施した。
傷は浅かったが、それでも女の子にとっては、ただ事ではない。きちんとした治療が必要だ。
(ここから近い病院は…)
「ありがと……って、ちょ、田中!?」
俺は刹那の体を脇に抱えると、最寄りのタクシー乗り場まで走った。
通行人が何事かと俺達に注目するが、なりふり構っていられない。
「どうせなら、お姫様抱っこの方が雰囲気でるのに」
刹那は平然と軽口を叩いた。まるで他人事みたいに。


《榊野総合病院》
診察室に入った刹那を見届けると、俺はその場に座り込み、頭を抱えた。
後悔。自責の念。そして恐怖。
(…?恐怖?)
刹那の傷は一目で軽傷と判る程度だったし、刹那も平然としていた。
なら、俺は何を恐れている?
解らない。解らないが、確実に俺は恐慌状態にあった。
不安に耐え切れず、俺が取った行動は、ひどく子供じみたものだった。
「もしもし、澤永。聞いてくれ。俺、どうしたらいいのか…」
携帯電話で澤永に打ち明けた。
相談なのか懺悔なのか、理解者が欲しいだけなのか。とにかく、この不安を消し去りたかった。

『へっへっへ。つまり、お前、清浦に失望されたかも、嫌われたかも、振られるかもって不安なんだろ〜?』
いきなり言い当てられた。
そう。澤永の指摘で気付いたが、ただ俺は刹那に棄てられるのが怖かっただけだ。
『別れ話を持ち出される前に、男らしくこう言ってやれ。ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ〜』
ははは。わかっているさ。俺には謝る事しかできないからな。たとえ許してもらえなくても。
ありがとう澤永。お前は御チャラケているが、その明るさは確実に俺から不安を取り除いてくれた。
『しっかし田中、ずいぶん変わったよな。昔は、いっつも周りに気ィ使って遠慮してたのに』
変わった…?俺が?
『言いたい事も言えなかったお前が、そんなに感情ぶちまける様になるなんてな〜』
そうだったな。そんな自分を変えたいとは思っていたが、その願望は叶っていたのか。
「いや、むしろ変わったのは彼女の方だ」
だからこそ、刹那は俺なんかと付き合ってくれて、そのおかげで今の俺がある。

『はあ?清浦は何も変わってねーだろ』
198SINGO:2009/01/15(木) 06:56:02 ID:68G71U+j
 刹那 Turn

傷の治療が終わり、診察室を出ると、待っていた田中が頭を下げてきた。
「すまない。許してくれ」
「…?どうして謝るの?悪いのは、あいつら」
「俺なんかを庇って大怪我を…」
「コレ?田中が助かったなら、片手なんて安いものだし」
「そんなの間違ってる。俺、刹那さんを守るって決めてたのに。なのに俺のせいで…」
田中は優しい。何でも自分の責任にする。
「もし逆に、田中が私を庇って、それで田中が片手を失ったら、私の事をを憎むの?」
田中は首を横に振った。
「でも俺、刹那さんに嫌われたんじゃないかって、自分の事ばかり考えていた。最低だ、俺」
「田中、自惚れてる。人間なんて、みんな自己中心の塊」
「え?」
「ただ私は田中に生きていて欲しかった。だから自分の欲望に従って行動しただけ。怪我は私のミス」
「……」
「それで田中を悲しませる事になっても、そんなの、私の知った事じゃない」
「刹那さん…」
「ホラね。私、自己中心的でしょ。だから田中が気に病む必要ない」
「俺を許してくれるのか?」
「許すも何も。私が勝手にやった事だから」
まったく…。田中、真面目すぎ。
「ま、それでも田中が納得いかないって言うなら、納得いくまで殴ってあげよっか?」
私は冗談めかして言った。
「ああ、殴ってくれ。だから刹那さん、二度とこんな無茶はしないと約束してくれ。かわりに
俺が刹那さんを守るから」
田中は膝まづいた。私のすぐ目の前に田中の顔。
田中は泣いてた。
田中は、自分以外の誰かの為に、本気で泣いたり怒ったりできる。
綺麗な心。優しくて、純粋で、誠実で。
『好き』『大切にしたい』という田中の心が、私の心に流れ込んでくる。
(でも、それだけじゃ駄目)
足りない。
「物足りない」
田中は、もっと私の心に踏み込んでこないと駄目。
「…むぐ!?」
私は田中の唇を塞いでやった。


《マンション 自宅》
「お帰りなさい。デート、どうだった?」
お母さんが興味深そうに聞いてきた。
「ん。今日は楽しかった。珍しいものを見れた」
田中の激情する姿なんて、滅多に見れないから。
ちなみに、怪我した左手はポケットに突っ込んだまま隠している。まあ、すぐにバレるだろうけど。
ひと通り今日のデート結果を報告してると、不意に、お母さんの表情が曇った。

「刹ちゃん。言いにくいんだけど、やっぱりパリに戻る事になったわ」
199SINGO:2009/01/15(木) 06:56:57 ID:68G71U+j
お母さんの仕事が、再びパリ支店にシフトする。
それは私も承知してる。すでに今年の春からあった企画だし。
ただ、お母さんの代わりに同僚の西園寺踊子さんがシフトする可能性もあった。
だけど、踊子さんは一人娘の世界を亡くして以来、心を閉ざしたまま。
もし、このまま踊子さんを孤独の地に放り出したら、精神的に破局するかも知れない。
だから私のお母さんが代理で行くという訳。
当然、私も同行する事になる。
田中は、この事を知らない。
「田中君と別れたくないなら、刹ちゃんだけでも日本に残っていいのよ。何なら、踊子と一緒に…」
「や、いい。私も一緒にパリに行く。でも、もしかしたら、土壇場で田中を選ぶかも知れないから」
「あら。うふふ。それは覚悟してるわ」
私は携帯電話を開いた。待受画面には田中の写真(田中の携帯には私の写真)。
コレは、ここ榊野学園で流行ってる、おまじない。
待受画面を好きな人の写真に設定すると、その人と両想いになれる。
入学当初は、誰にもバレずに3週間隠し通せというルール付きだったけど、次第にルールも変わり、
今ではバレてもいいかわりに設定期間が一年間。
来年の春で、ちょうど一年が経つ。
それは同時に、お母さんがパリに発つ時。
『おまじない』が効かなければ、私はお母さんと共にパリに行く。田中を切り棄てて。
田中、これを知ったら、どうする?私を憎む?
まあ、最後だから好きなだけ殴らせてあげてもいいけど。
やっぱり、世界と伊藤が逝亡くなって以来、私の心は病んだまま。
田中と付き合って半年以上も経つのに、やっぱり田中に対して何も感じない。
もし逆に田中が転校して行っても、私は何も感じずに過ごすと思う。
ホント、おまじないってアテにならない。
世界と伊藤は破局した。伊藤は土壇場で私を拒絶した。
そして田中の想いは一方通行のまま。
もうこんな『実験』、終わりにしようかなって思ったけど、田中の綺麗な心に免じて、最後まで
続ける事にしよう。
まだセックスはおろかペッティングすらしてない事だしね。
そういえば田中、どうして私に手出ししないの?私なら拒絶しないのに。
私を汚したくないから?
それとも、自分は伊藤とは違うんだって言う意志表示?
まあ、どっちでもいいけどね。
とにかく最終期日までは、私は田中を好きになるよう努力してみる。
好きよ愛してると言い続ける。
田中だけを見続ける。田中だけを守り続ける。

私は携帯画面の田中に口づけた。

        冬 END
200SINGO:2009/01/15(木) 06:58:04 ID:68G71U+j
終わりです。

過去スレにも【破局に向かって】を投稿しましたが、
今日のSSは、↑の第二部の追加Storyです。
ので
この後、刹那と田中がどんな運命を辿るのかは、すでに過去スレでネタバレしています。
201名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 12:06:41 ID:kDiOAgJw
SINGO「終わりでウィッシュ」
202名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 17:50:31 ID:cnyUYQhE
エロゲだからありえたかもしれない誠の女体化
203名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 20:38:57 ID:qwW4Kr2y
女体化好きだねぇ
書きかけで放り出してるのあるし再開するべかな・・
って長々書いてたのもそのまんまなんだよね
一度書くのやめちゃうと
なんかその気になんなくてね
ダメだなoz
204sm125732sm720699:2009/01/19(月) 23:33:52 ID:LfyWdl8O
>>172
どうせ公開されてるもねなんだから、がんがん出していい。嫌なら公開なんかやるな。
205sm125732sm720699:2009/01/19(月) 23:35:40 ID:LfyWdl8O
すまん>>204>>173
206名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 00:51:23 ID:jLsXhBRt
そういう態度をとってるから
パス設定にされてしまうんだよ
207SINGO:2009/01/20(火) 03:35:54 ID:+TChnxRA
田中刹那SSの続きを投稿します。

舞台はアニメLastの後日談Ifで
>>195-199の続きです。
誠と世界が逝亡くなった日常で、刹那と田中が交際しています。

【破局に向かって】第2.3部
 School BABYL 春《Tanaka view》
(加筆修正版)

元ネタは TOKYO BABYL です。

208SINGO:2009/01/20(火) 03:37:14 ID:+TChnxRA
【破局に向かって】第2.3部
 School BABYL 春《Tanaka view》

「なあ刹那さん。コレって何か気恥ずかし…じゃなくて、やっぱり良くないよ」
「いい加減、腹をくくって。…あ、田中、濡れてる。もっと、こっち寄って」
俺の事はいいから。刹那こそ濡れてるじゃないか。
「なに恥ずかしがってるの?まさか田中、こういうの初めて?」
「そう言う刹那さんこそ、どうなんだ?」
「私?私なら世界とした事あるけど」
同性相手と異性相手では、恥ずかしさの度合いが違うだろ。
にしても、刹那と西園寺が寄り添う光景というのは、微笑ましいな。
で、互いに見つめ合って、腰に手を…
…って、いかん、いかん。何を考えているんだ俺は。
「なに想像してるの?…もういい。貸して。私が持つから」
「無理だろ。身長差がありすぎる。こういうのは男の役目だから、俺に任せて…」
「だったらホラ、ちゃんと入って」
刹那に引き寄せられ、体が密着してしまう。
「おいおい。あんまり見せ付けんなよー」「ういういしいわね〜」
澤永と黒田が羨ましそうに俺達を見ていた。
「それとも、澤永に入れてもらう?」
嫌だ。何が悲しくて澤永なんかと…。
「やっぱ、雨あがるまで、どっかで時間潰そーぜ」
ああ。いくら刹那が小柄でも、傘一本では二人(特に図体のデカイ俺)を覆いきれないからな。
このまま刹那と相合い傘でいくのも良いが、確実にどちらか片方がズブ濡れになる。
風邪をひかせては元も子もない。
しかしながら刹那。傘を持ってこなかった俺(と刹那自身)の為に傘を調達してくれたのは
嬉しいが、学園昇降口(職員用)の傘立てから無断拝借してきたのは、やっぱり良くないだろ。
明日、返却しに行かされる俺の身のにもなってくれ。


18:00 PM
「ん〜楽しかった。泰介、この後どーすんの?」
「いい時間だし。んじゃ二人でホテルと洒落こむか」
「なッ…!!」(赤面)
「じゃ〜ん☆榊野ヒルズのディナーチケット。姉ちゃん拝み倒して譲ってもらった」
「…あ、そっちなの…」
澤永と黒田は、高級ホテルの最上階で食事するらしい。
「じゃあな、田中」「じゃあね、刹那」
「ああ、またな」「ん、また明日」
俺達は澤永と黒田を見送った。
209SINGO:2009/01/20(火) 03:38:13 ID:+TChnxRA
二人きりになると、刹那は俺の手を握ってきた。

春が来て、刹那との交際も年季?が入って来たものだ。バカップルとまではいかないだろうが、
それなりに節度を持って、その、アレだ、『恋人』している。

「Wデートも、たまには良いものだな。さて俺達はどうするか」
「じゃ私達もホテル行く?」
そう言われても、俺の甲斐性で榊野ヒルズは無理だ。
残るは普通のホテルだが、このシーズンは、どこも予約でいっぱいだろう。
「すまん、予約取ってない。レストランで勘弁してくれないか?」
「や、そっちじゃなくてラブホテルの方」
「ぶっフォ!」
俺は吹いた。
刹那は、持ち前の冷静さに無表情。冗談を言ってる様には見えない。
「なな何言ってんだ!もっと自分を大事にだな…」
つい時代錯誤な台詞を口走ってしまった。
そもそも去年、俺は刹那と付き合うと決めた時、一線を越えるアプローチはしないと誓った。
伊藤と西園寺を失った刹那に、付け込む様なマネはしたくなかったからだ。
それに今の、つかず離れずの関係はとても気に入っていたし、壊したくなかった。
だが、まさか刹那の方から求めてくるとは思わなかった。
「しないの?残念。やっぱり、おまじない効かなかったみたい」
刹那は自分の携帯電話を見て、残念そうに溜め息をついた。
「どどどうして、そんな、いきなり」
「ん。そろそろ一年経つし、最後の思い出にと思って」
…え?今、何か聞き流せない台詞を聞いたが。
「最後って、どういう意味だ?」
「私、パリに行くの」

時間が凍り付いた。
いや、凍り付いたのは俺の思考だ。あまりのショックに声が出ない。
冗談かと思いたかったが、刹那はこんなタチの悪い冗談は言わない。
「い…いつ?」
なんとか声を絞り出した。
「来月中に。多分、もう日本には帰ってこない」
「何とかならないのか?」
「ん、無理。前から決まっていた事なの。ちょうど去年の今頃から」
一年前?俺と刹那が付き合い始めた頃だ。
「なぜ、黙ってたんだ?」
一年もの猶予があったのに。
「田中が聞かなかったから」

タナカガ、キカナカッタカラ。

何だよソレ?言えなかったという理由なら、まだ納得がいく。だが、
俺が聞かなかったから、答えなかった?
刹那、なに他人事みたいに平然と…。
これは拒絶なのか?
210SINGO:2009/01/20(火) 03:39:15 ID:+TChnxRA
「まさか俺の事、嫌いになったのか?」
刹那は首を横に振った。
「大好きだった世界と伊藤が、私を裏切って、そして死んで…。それからなの。人を愛せなくなったのは」
刹那、何を言っている?冗談だろ?だって今まで何度も俺の事…。
(刹那、病んでいるのか?)
俺は刹那を凝視した。
持ち前の冷静さと無表情。どこも異常な所は無い。刹那は、いつもの刹那だった。
一年前から、何も変わっていない。違和感が無い。だが、それこそが違和感だった。
付き合って一年も経つのに、何ひとつ変わらない。そんな事が、ありえるのか?
ありえるとすれば、それは……、
「う、嘘だろ…」
いつだって、刹那の方から積極的にキスしてくれた。
もし、付き合い始めてからこの一年の間、刹那は俺を一度も愛した事など無かったというのなら…
「なら、どうしてあの時、俺を庇ったんだ?」
去年のX'mas、刹那は俺を庇ってチンピラにナイフで切られた。
下手をしたら刺されて死んでいたかも知れないのに、身を盾にしてまで好きでもない男を庇うか?
「おまじないには田中が必要不可欠だから」
刹那は携帯電話を開いて俺に見せつけた。待受画面には俺の写真。
一年間、待受画面を好きな人の写真に設定すると、その人と両想いになれる。
俺もした、おまじない。
「覚えてる?私が田中に交際を持ち掛けた時の事」
一年前、臆病な俺は刹那に告白できなくて、そんな時、刹那の方から交際を持ち掛けてくれた。
俺は喜びのあまり、ふたつ返事で受け入れたが、それだけだったか?

『田中、■■しよ』

刹那は、もうひとつ提案をしてきたはずだ。
ただ、その時の俺は、それをよく聞き取れていなかった。
あの時、刹那は何て言っていた?
「一年間、田中と恋人同士になってみよう。一年間、好きよ愛してると言い続けて、恋人同然の態度を
取り続けてみよう。田中だけを見続けて。田中だけを守り続けて」
違う。何かが致命的に間違っている。
「もし少しでも田中を特別だと思えたなら、パリには行かないでおこうと思った」
ぐいとタイを引っ張られた。前かがみになる俺。
「努力もした。でも駄目だった」
すぐ目の前に刹那の顔。
「今、思い返してみると、私にとって特別だったのは世界と伊藤だけ」
刹那は、いつもの様に俺の唇を塞いだ。
得体の知れない恐怖を感じた俺は、刹那を引き剥が…せなかった。
「ホラ、こんな事しても私、何も感じない」
まさか刹那、今まで物足りないと言っていたのは…そういう事か?そんな嘘だろ?
211SINGO:2009/01/20(火) 03:42:05 ID:+TChnxRA
「田中、悲しそう。私に裏切られたと思った?人が人を裏切るなんて、世の中どこにでも転がってるのに」
違う。刹那は俺を裏切ってない。
裏切ってすらいない。
裏切られた方がマシだった。

これは…『実験』だ。

「私、田中の事、嫌いじゃない。憎んでない。でも愛してもいない。ただ息をしてソコに居るだけのヒト」
俺は…不適合の烙印を押された?
だとしたら、俺はヒトですらなくなる。

俺は…モルモットだ…。

「田中の綺麗な心を受け取り続けても、私は何も変わらなかった。付き合って一年も経つのに、
何も感じない」
俺の目から、何か熱いものがこぼれ落ちた。
やっと…やっと俺の事を見てくれたと…そう思っていたのに…。
「どうして…どうして、こんな事に…?」
「解らない?解らなくて当然。田中は最後まで綺麗なままでいたから。綺麗な心を持つ人は、
持たない人を理解できない」
ああ、そうか。俺は自惚れていた…。
身の程知らずで、大それた誓いを立てていた。
刹那を守るだと?馬鹿か俺は。
この一年間、刹那の一番近くにいながら、刹那の心が病んでいる事に気付かなかった。
「おまじないは効かなかった。『実験』は失敗。だから私、パリに行く。田中を切り棄てて」
…結局、俺は刹那を守れなかった!
絶望感。
だが、俺はまだ本当の絶望を知らなかった。

「何、泣いてるの?早く行きましょ」
刹那は俺の手を引いて歩き出した。
俺をどこへ連れて行く気だ?
「ホテルに。セックスがキッカケで愛せるかも知れないし」
俺は心底、絶望した。

          END
212SINGO:2009/01/20(火) 03:48:57 ID:+TChnxRA
終わりです。
過去スレにも【破局に向かって】を投稿しましたが、
今日のSSは、↑の第二部の追加Storyです。
ので
この後、刹那と田中がどんな運命を辿るのかは、すでに過去スレでネタバレしています。

213名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 22:13:31 ID:9fjSSakD
好きになれるか賭けをして特別に思えなかったら殺すって東京バビロンみたいだな
214名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 00:14:15 ID:OIjP/FZ5
ショートネタ(30くらい?)


語り手:いたる(電話越しに誠に伝えた言葉)


おにいちゃ・・・・・・くすん・・・・・・くすん・・・・・・おにいちゃ、いたぅを助けて欲しいの・・・・・・
あのね・・・・・・くすん・・・・・・くすん、おとうさんがね・・・・・・いたぅが落ち着かないからって・・・・・・くすん・・・・・・
しばらくの間、おにいちゃに会っちゃいけないって・・・・・・言うの・・・・・・くすん・・・・・・いたぅ・・・・・悲しいの・・・・・・
もう、一ヶ月もおにいちゃに・・・・・・会ってないのに・・・・・・

だから、いたぅね・・・・・・おとうさんが意地悪するから・・・・・・
頭にきて・・・・・・おとうさんの背中を「えぃっ」って・・・・・・押したの・・・・・・
くすん・・・・・・くすん・・・・・・そしたら・・・・・・おとうさんね・・・・・・
階段をゴロゴロって、転がって・・・・・・「ぐげぇ」って言って・・・・・・動かなくなっちゃったの・・・・・・くすん・・・・・・くすん・・・・・・
いたぅ、ちょっと押しただけなのに・・・・・・
くすん・・・・・・くすん・・・・・・おとうさん、いたぅがいくら呼んでも・・・・・・お目目を開けたまま、お寝むしちゃって・・・・・・くすん・・・・・・くすん・・・・・・何も言ってくれないの・・・・・・

・・・・・・おにいちゃ・・・・・・いたぅを助けて。
おとうさんが、動かなくなちゃったから・・・・・・いたぅ、おにいちゃから貰った、ぱふえ・・・・・・食べられないの・・・・・・くすん・・・・・・くすん・・・・・・
おにいちゃ・・・・・・早く・・・・・・早く、いたぅにぱふえを食べさせて・・・・・・
それから、おとうさんを・・・・・・話せるように・・・・・・直して欲しいの・・・・・・

いたぅ・・・・・・待ってる・・・・・・
215名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 21:32:31 ID:R6xwkWj/
>>213
懐かしいな

>>214
怖ぇよw
216世界再び:2009/01/25(日) 23:06:27 ID:MtjWiNty
随分お久しぶりです。

久々のいたるSSを投下します。
今回はいたると子犬の続編です。
217世界再び:2009/01/25(日) 23:07:51 ID:MtjWiNty
桂家にて。

「(もしもしいたる?実はちょっと頼みがあってさあ。)」
「何?」
「(また世界預かって欲しくてさあ。庭先に繋いどいたからよろしくね。)」
「こ・こら!そんなとこ繋がれても困る!私は今そこに住んでないんだから!」
「(そうだっけっ!?表札同じだから置いてきちゃったよ。
 じゃあ今から回収に行く。)」
いたるはちらっと時計を見た。
そろそろ例のやつが帰ってくる時間だった。
「ちょっと待って!私が行くから!」
いたるは友人の身にもしもの事があるとまずいので慌てて止めた。
「今回は私が回収するから次からは先に言ってよ。」
「(ごめんね。今回は一日だけで良いから。)」
218世界再び:2009/01/25(日) 23:08:50 ID:MtjWiNty
沢越家付近の路上にて。


「いたるちゃん、家の前に行っても良いんだよ?」
運転席で心が言った。
「それは絶対やめて!」
犬が繋がれている家から200メートル位離れた場所でいたるは車を降りて
かつて自分が住んでいた家に向かった。
そして家に辿り着くと庭先に2周りほど大きくなった世界が繋がれていた。
いたるは周りを見回して危険人物の不在を確かめると
さっさと世界を連れてその場を後にした。


桂家にて。


「やっぱり可愛いね。」
心が世界の頭を撫でながらそういった。
世界も嬉しそうに心を見上げている。
「うん。この子人懐っこいから余計そう感じるよね。」
「うちでも犬飼いたいけど毎日の世話って大変そうだもんなあ。」
心は心底残念そうだった。

「所で今週はお兄ちゃんとお姉さんがここに来る予定は無いんだよね?」
「うん。」
「前はこの子の名前が原因でお姉さんに随分悲しい思いさせちゃったからなあ。」
「お姉ちゃん達の反応も不思議だったけど
 世界って珍しい名前だよね?誰がつけたんだろ・・」
「そうだね。明日飼い主に聞いてみるね。」
219世界再び:2009/01/25(日) 23:09:41 ID:MtjWiNty
翌日夕方飼い主宅の庭先で。


桂家で一日過ごした後、世界は飼い主に無事返された。
やはり飼い主が一番なのだろう、
世界は尻尾を千切れんばかりに振って甘えていた。
そこでいたるは気になった事を聞いてみた。
「所でさあ。」
「何?」
「その子の名前なんだけど何で世界ってつけたの?」
「お母さんの知り合いの人の娘さんの名前なんだって。
 覚えやすいからそのままつけちゃった。」
「その娘さん今も元気なの?」
「これはこの子に名前をつけた後で知ったんだけどね。
 私たちと同じ位の年のクリスマスに行方不明になっちゃったんだって。」
「え!?」
「同じクラスの男の子を巡って他の娘と争いになってたらしくてね。
 それが原因じゃないかって・・・」
「その娘さんって今は・・・・」
「私もそれ以上は知らないんだ。」
「そう・・でもそんな由来の名前をよく今もつけてるね。」
「この子がもう他の名前に反応しないからね。」

帰り道にて。

桂家に帰りながらいたるは思った。
『他の娘ってお姉さんで男の子はお兄ちゃんだよね。
 それにしても行方不明なんて・・・・・
 この事は心お姉ちゃんには言えないな。』
220世界再び:2009/01/25(日) 23:10:31 ID:MtjWiNty
いたるの帰宅直後再び飼い主宅にて。

飼い主が世界の頭を撫でていると
「どうも。また世界ちゃん撫でてもいいかな?」
と若い女性がいたると入れ替わるようなタイミングで庭先に来ていた。
「ええどうぞ。」
世界はその女性とは顔見知りらしく両前足を上げて歓迎していた。
その女性は20代半ばくらいの美人だった。
「さっきの娘ってお友達?」
「ええ。昨日この子を預かってもらってたんです。」
「・・・誠・・・・」
女性はポツリと言った。
「え?なんですか?」
「ううん。何でもないの。」
そういった後女性は薄笑いを浮かべて世界を撫でていた。

End
221世界再び:2009/01/25(日) 23:17:32 ID:MtjWiNty
気分転換も兼ねて久々にこちらにいたるSSを投下させていただきました。

以前こちらを覗いた時に古い書き手は全員引退しろって書き込みがありましたので
投下を控えていましたが、もしお邪魔でなければまたいつかお邪魔しようと思います。
222名無しさん@ピンキー:2009/01/26(月) 23:05:30 ID:ZCOwgXx9
>>221
乙 これからもどんどん投下していって下さい
古い書き手は引退しろ っていうのは一部の(荒らしか?)意見でしょうし多くの読み手は
昔からの書き手、新しい書き手に関わらず多くの作品を読みたいでしょうから
223名無しさん@ピンキー:2009/01/28(水) 17:55:06 ID:xj2fo65S
>>221
世界怖いよ世界
224tyoujiya改め丁字屋:2009/02/01(日) 08:46:40 ID:WZtFBbgV
お久しぶりです
久々に新作投下します
225丁字屋:2009/02/01(日) 08:47:24 ID:WZtFBbgV
もう・・・・歩けない。
林の中を隠れるようにして歩いていた私は一本の木にもたれかかるようにして座り込む。
足が・・・痛む。傷口が腫れて熱をもっている。何かばい菌が入ったのかもしれない。

この傷は、何か武器になるものを探して廃屋の物置を探っている時に、
投棄されていた針金のようなものに足を引っ掛けて出来た傷だ。
その時はあまり痛みを感じなかったのが、今になってこんなに痛み始めるなんて・・・。

私は鞄を開け、支給された食糧を口にする。
それは乾パンのようなもので何の味もしなかった。

その時定時放送が流れてきた。今度の死者は3人だ。
もうクラスの半分は死んだことになる。
その後に禁止エリアが報らされる。
私は地図を確認するが、とりあえずこの場所は未だ大丈夫なようだ。
そう思い、取り敢えずはほっとする。

私は懐から携帯電話を取りだし、
アルバムに保存されている友達とのスナップを見る。
そこに映っているうちの一人は、もうこの世にはいない。
更に私はまた、記録されているメールを見る。
それは一昨日まで私にもあった、友達との楽しい日々を示していた。
でも・・・それも今は遠い昔の事のような気がする。

なぜ・・・こんなことになっているのだろう。
そう思いながら、私の目から、いつしか涙が零れていた。

226丁字屋:2009/02/01(日) 08:48:24 ID:WZtFBbgV

この国には年1回、全国の学校から1クラスを選び、最後の一人になるまで殺し合わせる「BR法」・・
新世紀教育改革法なるものがあることは私も聞かされていた。
でも私はこれまで、それは何処か遠い世界の話なのだと、そう思っていた。
2日前、授業中に突然ガスで眠らされた私たちのクラス全員が、
眠っている間につれてこられたこの誰もいない島で目覚め、この殺し合いが開始されるまでは・・・
私のクラス、榊野学園1年4組がこの殺人ゲームに選ばれたと報らされるまでは・・・


いつまで座り込んでいただろうか
行かなきゃ・・
そう思って立ち上がろうとするが体に力が入らなかった。
それに体の節々が痛み寒気もする。
どうやらいつの間にか熱がでていたみたいだ。

まずい・・
心底そう思った。ゲーム開始から2日の間に、
定時放送によって約半数のクラスメートの死が知らされている。
死んだクラスメートの中には私がいつもつるんでいた親しい友の名もあった。
私自身、近くに銃声を聞いて慌ててその方向から逃げ出したこともあった。
そう、数はわからないが、クラスメートの何人かがこのゲームに乗っているのは確実なのだ。
更にその内の幾人かは、銃器のような強力な武器を持っている。

一方私に支給された武器はブーメランだった。
使いこなせる人間には協力な武器にもなるかもしれないが、
私にとってはその辺に落ちてる木の棒と代わらない頼りない武器だ。
いや、もし手元に強力な武器があったところで、誰かを殺すなんて・・・
ましてや、見知った顔のクラスメートを殺すなんて私には考えられなかった。
227丁字屋:2009/02/01(日) 08:49:02 ID:WZtFBbgV

嫌だ・・・
誰かを殺すのも、自分が死ぬのも嫌だ・・・
そう思ったところでこのゲームでは、
もし制限時間に最後の一人が決しない場合、生存者全てが殺される。
結局最後に残る選択肢は殺すか死ぬかしかない。
それでも私は殺すのも死ぬのも嫌だ・・・
いや、怖いんだ・・・

そして今私は、足の傷の痛みで動けない。
熱の上、このゲーム開始以降ろくに眠っていないために意識も朦朧としてきた。
もしこんな時誰かに出会ったら・・・
その相手がゲームに乗っていたら・・・
私は確実に殺されるだろう。

その恐怖と、傷の痛みと熱による苦しさで、私は声を出して泣き出しそうになる。
その時・・・

ガサッ

近くで草を踏む音がした。
誰かいる!?
そう思った瞬間、私の身体は恐怖ですくんだ。
お願い。誰だかわからないけどこっちへ来ないで。
そう祈ったが、気配は足音と共に確実に近づいてきた。
そして・・・

「誰か、いるんですか・・?」

そう言って林の影から姿を見せたのは・・・

「加藤・・さん・・?」
「桂・・・」

そう、このゲームが始まって、初めて私・・・加藤乙女が出会ったのは、
クラスメートの中でも私が最も嫌う、そして向こうも私を嫌っているであろう
だからこそ私が最も出会いたくなかった相手・・・
クラス委員の桂言葉だった。

そうわかった瞬間、私は絶望と共にで意識を失った。




「スクイズ ロワイアル −乙女編−」
228丁字屋:2009/02/01(日) 08:50:06 ID:WZtFBbgV

というわけで今回は今更なあれネタです。
て言うかまた乙女−言葉ですよ。しかも出会いの演出も殆んど一緒だ・・・OTL
とりあえず続きはいずれまたそのうち・・・
今回は短くまとめたいなあ。
229名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 17:07:25 ID:+aZytOhv

誰が生き残るのかトトカルチョしてみるのもいいかも
230名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 00:17:02 ID:hi/dadFM
いたるSSさんの帰還をどれほど待ち望んだことか(iдi)
231名無しさん@ピンキー:2009/02/06(金) 15:59:37 ID:pCUrBQ8A
あいかわらず閑散としてるね
232名無しさん@ピンキー:2009/02/06(金) 23:32:45 ID:TWLJMVM+
まあ旬を過ぎた作品だってのがあるから仕方ないかと。
過疎スレなんてどこもこんなもんだし、もっと酷いとこもあるさ。
233名無しさん@ピンキー:2009/02/07(土) 22:29:03 ID:JKYofe1W
言葉×誠のちゅっちゅSSが見たい
234名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 02:21:52 ID:yTeWmk6V
言葉一筋ルートってどんなんだろ?
235名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 07:52:27 ID:v15fep4h
クロイズであるの?
236名無しさん@ピンキー:2009/02/13(金) 01:07:43 ID:oqYQ4lma
言葉一筋ルートはボツったのがみたい

ポルナレフ修正版とか
237名無しさん@ピンキー:2009/02/13(金) 15:43:35 ID:7fPfnV9T
クロイズでは七海も誠の攻略対象になるみたいだから
先輩・七海・誠の3Pとか書いてくれないかな?
238名無しさん@ピンキー:2009/02/15(日) 12:32:22 ID:Plix4/bZ
第1話
僕が勤め先の病院に車で向う途中、窓越しで彼女を見た。
それが桂言葉と僕の出会いだった。桂言葉はまだ、中学生
だった。
 ほんのちょっと視界に入っただけの彼女を、僕は忘れら
れなかった。彼女をもっと見ていたい、彼女のことをもっ
としりたい、僕はそう思うようになった、それだけ、彼女
は僕にとってかけがいのない存在だったんだ。
 僕はまた、翌日、車の窓越しで彼女に会った。僕は携帯
で彼女の写真をすばやくとった。中学と顔、あと金に糸目
をつけなければ、個人情報など簡単に調べることができる
からだ。
僕の実家は大手製薬会社のオーナー一族だったから、金に
ついてはまったく困らない。
 その筋では結構有名な大手興信所はすぐに彼女について
教えてくれた。彼女の名前、趣味、誕生日、好きな食べ物、
色々なことがすぐにわかった。それだけで、何故だか僕は
彼女に近づけた、そんな思いがした。実際には一度も会っ
ていないのにも関わらず
239名無しさん@ピンキー:2009/02/15(日) 12:32:43 ID:Plix4/bZ
僕は興信所に頼んで、彼女の行動について、定期的に調
べてくれないかと頼んだ。興信所は訝しがっていたが、金
はいくらでも払うといったら、快く依頼を受けてくれた。
 それから、毎日が楽しかった。興信所から、送られてく
る、彼女の些細な日常を聞くだけで、幸せな気分になった。
彼女の写真を見るだけで、心が満たされた。僕にとっては
彼女が全てだった。彼女のことを、夢で思わなかったこと
はなかった。お稽古事が大変そうだな、今日も体育を休ん
だんだ、とか、そういうことを知ることで、彼女のことを
全て知ったような気持ちになった。
僕はそんな生活を一年半続けていた。彼女は高校一年にな
っていた。僕はその日も彼女についての報告を読んでいた。
今日はどんなことが書いているんだろう、そんなわくわく
した気持ちは、報告書の内容を読んでふっとんだ。彼女に
彼ができたのだ。名前は、伊藤誠というらしい。デートと
いっても、まだサカキノヒルズに行ったくらいだ。普通の
女の子なら、なんでもないことかも知れない。だけど、男
性恐怖症の彼女には、それがどういう意味を持つのか、
僕にはよく分かった。僕はそのまま、報告書をやぶり捨て
た。伊藤誠という男に対する殺意がわいた、人の命って、
僕のマンションの部屋(一億円)の値段の十分の一の価値し
かないんだよな、そんな風に考えた。だけど、同封されて
いた、彼女が伊藤とデートしている写真を見ると、そんな
気もうせた。それは、僕が見たなかで、一番いい、彼女の
笑顔だったからだ。殺すのはやめよう、そう僕は思った。
彼女が他の男に微笑む顔はみたくない。けど、その男が死
んで、彼女を悲しませることはしたくない。だから、僕は、
もう彼女を見ることをやめようと思った。興信所には、も
う報告はいいといった。
240名無しさん@ピンキー:2009/02/15(日) 12:34:02 ID:Plix4/bZ
それから数ヶ月がたったある日のことだ。僕はその日、
部下の看護婦に呼び止められた。
「先生、今日、措置入院の患者さんが入ります」
「措置入院で入るのって厄介のが、多くてこまるんだよね」
 僕は病院では精神科に勤めている。措置入院とは、精神保
健福祉法第二十九条に基づいて、他人、もしくは自分を傷つ
ける恐れのある精神異常者を、行政が強制的に入院させるも
のだ。刑事事件で、責任能力がないとされた、精神異常者も、
措置入院という形をとる。
 「先生、そんなこといったら問題になりますよ。でも、今
回は殺人犯らしいので、ちょっと怖いですね。」
 「殺人犯か。ちょっとしんどいな。」
 「なんでも、男女関係のもつれとか、いじめとかが原因ら
しいですが。あ、これが指定医(措置入院をするかどうか決
める人)のカルテです。」
 「わかった。・・・・・え」
 そこには、僕にとって、かけがいのない人の名があった。
患者は、桂言葉だった
241名無しさん@ピンキー:2009/02/15(日) 12:34:22 ID:Plix4/bZ
数時間立って、手錠をされた痛々しい彼女が閉鎖病棟に
運ばれた。僕は、なんの因果か彼女の担当医になるのが決
まっていた。
「えっと、桂言葉さんな。」
僕は彼女に声をかけた。正直いって、すごくつらかった。
「どうして、ですか。どうして、そんなによそよそしいん
ですか。言葉って呼んでくれないんですか。私が。西園寺
さんのことを殺したから、私のこと嫌いになったんですか。
誠君。」
 彼女は僕にそう言った。僕はちょっと混乱した。西園寺
って女のことはよく知らないし、僕の名前は誠じゃない。
だけど、すぐに分かった。言葉の彼が、誠という名前だったこと。
言葉が僕と誠を間違っていること。言葉は、自分の愛しい人が誰
なのか分からないほど、心がボロボロに傷ついている。伊藤誠が
、彼女をこんな風にしたんだ。ごめん、言葉、助けてあげられな
くて、僕はそう心で泣いた。僕は彼女のためをおもって伊藤誠を
殺さなかった。でも、あの時、そうしていたら、彼女はこんな風
にはならなかった。
 「誠君・・・・・・」
 彼女はとても悲しそうな顔をしていた。
彼女が悲しんでいる顔はみたくない。だから。
 「そんなこと、気にしてない。俺は言葉のことが好きだから。」
 僕はそう微笑んで言った。
  その日から、僕は彼女の前では伊藤誠のふりをすることになった。
242丁字屋:2009/02/16(月) 05:16:02 ID:m8uBN4QK
>>241
おお、これは興味を魅かれる切り口の新作が来ましたな。
期待してます。

ではこちらもスクロワの続き投下します。

243丁字屋:2009/02/16(月) 05:17:03 ID:m8uBN4QK





ん・・・ここは?
目をあけると私は草の上で横になっていた。
体には毛布がかけられ、額には濡れたハンカチが乗っていた。
私はぼんやりする頭で今の状況を理解しようとする。

そうだ、私は怪我と熱で動けないところで桂と出会って・・そのまま気を失って・・・
そこまで思い出した時・・

「あ、気がつきました?」

そう私に問う声が聞こえた。
声のした方・・すぐ横を見ると、
そこにしゃがみこんで私の顔を心配そうに見つめていたのは桂だった。

「桂?」
「よかった。急に倒れて驚きましたよ・・・・」
え? 桂は何を言ってるの? もしかしてこの・・・
「桂、この毛布と額のハンカチって・・・?」
「はい。加藤さん、意識を失いながら熱の所為かずっと苦しそうに震えていましたから。
本当は、すぐ近くに空家がありますからそこに運べればよかったんですけど、
私の力じゃ加藤さんを抱えて運ぶのは無理でしたんで、毛布だけそこから持ってきて・・・
それに足の傷の方も・・・」
その言葉に、私は初めて右足の傷に包帯がどこか不器用だが丁寧に巻かれていたのに気づいた。
そして包帯からは、何か・・草をすりつぶしたようなものが傷口の上の部分からはみ出していた。
「それ、島に生えていた薬草です。
役に立つかも知れないと思って摘んでおいて幸いでした」

淡々とそんなことを説明する桂だけど・・・でも・・・。
「何故?」
「え?」
「あんた、今の状況わかってるの? クラス中で殺し合ってるんだよ。
最後に残った1人以外生き残れないんだよ。
目の前で無防備に私が倒れたら、絶好の殺すチャンスだったんじゃないの?
それなのに・・」
私はそこまで言って、桂がひどく悲しそうな顔をしていることに気がついた。
「桂?」
「・・そんなこと・・・できるわけじゃないですか」
244丁字屋:2009/02/16(月) 05:17:56 ID:m8uBN4QK
しぼり出されたようなその桂の声は震えていた。

その時私は、自分が桂に対してとても嫌なことを言ったことに気がついた。
そうだ、私だってこのゲームが始まってからも、ずっとそう思ってた。
誰かを殺すなんて・・・
ましてや、見知った顔のクラスメートを殺すなんて考えられないって・・・。
だから私の口からは
「ごめん」
そんな言葉が自然に口から出ていた。
思えば、私が桂に謝るなんて初めてだった。
榊野学園に入学して桂と同じクラスになって以来、私はずっと桂を嫌って、
辛くあたったり嫌なことを押し付けたりしていたって言うのに・・・。
そんなことを思った時、私は新たな質問を発していた。
「そ・・それでもさ、私桂には結構辛くあたってたはずよ。
だったら、殺さなくても・・そのまま見捨てて行けばよかったじゃな・・・あ・・」
その私の言葉に、再び桂はひどく悲しそうな顔をしながら答えた。
「そんな・・目の前で苦しんでいる人を・・ましてやクラスメートを見捨てて行くなんて、
少しくらい嫌な目に合わされたことがあるからって・・・そんなこと、
出来るわけないじゃないですか・・・」

あ・・・
私は、悲しげに・・しかしはっきりとそんなことを言う桂を呆然と見つめる。

桂の言ったことは、確かに人の道として正しいことかも知れない。
でも・・私、そんなのきれい事でしかないと思っていた。
そんなことを真顔で口にする人間は胡散臭い奴だと思っていた。
そう、仮にもし私と桂の立場が逆だったら、
ただでさえ嫌っている相手が更にこの最悪の状況下で足手まといになることを厭い、
私は桂がどんなに苦しんでいたとしても、迷いもなく見捨てていただろう。
しかし、それは・・私の弱さだ。

でも、桂はそんな・・私にとって奇麗事でしかなかった理屈で私を助けた。
今まで散々つらくあたってきた私を・・・だ。
それも、こんな状況下で・・・。
その事実を理解した時に私は、桂の心の強さを痛感した。
そして・・・それを感じた瞬間に、私の目からは涙が零れていた。
245丁字屋:2009/02/16(月) 05:19:12 ID:m8uBN4QK

でも・・その涙が、
私を助けてくれた桂に今までつらくあたっていたことへの悔恨からなのか、
桂に比べてあまりにも弱い自分が悲しかったからなのか、
私自身にもわからなかった。

「あの、加藤さん。お腹空いてませんか?」
桂は私が涙を拭きおえるのを待っていたかのように、
涙の理由も訊かずにそんなことを尋ねてきた。
「うん。まあ・・・。
このゲームが始まってから支給の不味い食料を節約するように食べてただけだったし・・・」
私がそう応えると、桂は嬉しそうな顔をして
「よかった。
実はこの家、さっき調べたら米や味噌、野菜と揃ってまして、今お米を炊いてます。
これからおかずもつくりますから出来たら一緒に食べましょう」
そう言った。
「う、うん」
「じゃあ、私お台所に行ってきますね」
「あ・・・待って」
そう言って、席を立とうとする桂を私は呼び止める。
「え?」
「あんた、今この家の事調べたって言ったけど、何か武器になるものってあった?」
「・・・武器・・・ですか?」
そう問い返す桂の顔からは、ついさっきまでの笑みが消えていた。
「うん。実は私の支給された武器ってブーメランでさ、
そんなのただの女子高生に使えるわけないじゃない。
だから・・・あ、そう言えばあんたの武器って何?」
「私のは・・ノコギリですけど・・」
「え? ノコギリって・・大工道具の?」
「はい。こういう・・・」
私の質問にそう答えて、桂は材木でも切る様な手付きをした。
その仕種が、お嬢様然とした桂となんともミスマッチで私の口からつい笑みがこぼれる。
「ふふっ、お互いハズレってわけね」
「ハズレ・・ですか?」
私の言葉にそう問い返す桂の顔からは、しかしさっきまでの微笑みが消えていた。
だが、私はまだその意味に気づかぬまま言葉を続ける。
「うん。お互いそんな武器しかないんじゃあ、
銃とか持ってる奴らに出くわしたらどうにもならないでしょ?
だから、もっと強力な武器を手に入れなきゃ・・・」
「その・・強力な武器で、加藤さんはクラスメートを殺すんですか?」
246丁字屋:2009/02/16(月) 05:20:04 ID:m8uBN4QK

「あ・・・そ、それは・・・」
私を遮るような桂の問いかけに、私は言葉に詰まる。
桂はひどく悲しそうな顔をしていた。
そして
「加藤さん。今、この島にはクラスメートと殺しあってる人が確かに存在しています。
でも、それは何故だと思います?」
そんなことを問い掛けてきた。
「え・・えっと・・」
「それは、簡単に人を殺せるような強力な武器を持ってしまったからじゃないでしょうか?」
「あ・・・」
「だから、私は強力な武器なんて持とうとは思いません。
誰も・・殺したくないですから・・・。
もちろん死にたくはないですし、生きる努力はしますけど、
それでももし武器を持たないから・・・人を殺すことが出来ないからという理由で殺されるなら、
それも仕方ないと思ってます」
そう言う桂は、悲しげな顔をしながらもいつもの弱々しい印象はなかった。
いや、私をまっすぐ見る瞳にははっきりした意志さえ感じられた。
そして・・
「桂は・・・強いんだね」
そんな言葉が私の口から出ていた。
しかし・・・
「いいえ、私は強くなんかありませんよ」
「え?」
「私は、人をを殺した事の重みに耐えながら生きていけるほど強い人間じゃない。
でも、自分で死ぬ勇気もないまま消極的に誰かの手のかかっての死を受け入れるしかない。
私を殺す誰かが、そのことで私の耐えられないはずの重みを背負うことを承知しているのに。
私は・・・そんな弱い人間なんです」
そういう桂は、ひどく悲しそうな顔をしていたけど、でも・・・
「ううん。やっぱり、桂は強いよ」
心からそう思い、私はそれを口にした。

そして私は感じていた。
今までずっと嫌いだったはずの桂が、今は心から信頼できる存在になっていることを・・・。
そして、クラスメート同士が殺しあっているこの状況下で、信頼できる人間が側にいることの心強さを・・・。


247丁字屋:2009/02/16(月) 05:20:55 ID:m8uBN4QK
今回はここまでです。
248名無しさん@ピンキー:2009/02/16(月) 11:49:15 ID:qOGFFchL
>>238
>>242
乙!
W投下で嬉しい限り。
両方とも続きが大いに気になる
249視線1:2009/02/19(木) 00:42:03 ID:yMS8T9VT
いたるSSを投下します。
うーん誕生日には間に合いませんでした。
250視線1:2009/02/19(木) 00:42:55 ID:yMS8T9VT
桂家にて。

心といたるは心の部屋でコタツに入ってのんびりと過ごしていた。
「ねえ心お姉ちゃん。」
「どうしたの?いたるちゃん。」
「最近さあ、なんか妙な視線感じるのよね。」
「えっ!ひょっとしてまたストーカー?相手の姿は見た?」
「ううん。気配を感じて振り返ったらもういなかった。
それが何回も続いてるんだ。」
心もいたるもストーカー被害にはうんざりしていた。

「だとしたら強敵だねえ。
 いたるちゃん可愛いから変なやつによく目をつけられるし。
 それもいきなり。」
「うっそれ言わないで。」
そう言っていたるは頭を抱えた。
いたるに迫ってくる男はストーカーやらヤンキーやら
本当にロクデナシばかりと言ってよく
何でこうなのかといたるはいつも本気で悩んでいた。
251視線1:2009/02/19(木) 00:43:35 ID:yMS8T9VT
「それともいたるちゃんが年の割にはこんなに発育しちゃってるから
 変なやつが寄ってくるのも仕方無いのかなあ?」
心はいつの間にかぴったりといたるの背中に張り付いて
肩に顎を乗せていた。
そしていたるの耳に息をふっと一吹きした。
「ちょちょっと!心お姉ちゃん!」
背中にぞわりと寒気を感じたいたるは当然声を上げた。
そんないたるを無視して心はいたるの胸を揉んだり脇をくすぐり始めた。
「きゃははははやめてってば!」
いたるが耐え切れずに体勢を崩すと心はいたるを押し倒して更にくすぐり始めた。
「いいじゃない女同士なんだし。それにいたるちゃんって触り心地良いし。
 それにしてもまた胸大きくなったね。じゃあこっちはどうかな?」
「も・もうほんとにくすぐったいって!ちょっとそこはいやあ!!やめてえ!!」
252視線1:2009/02/19(木) 00:44:26 ID:yMS8T9VT
それからすぐに言葉と誠が部屋に飛び込んできた。
「どうしたの?二人とも。」
いたるを押し倒したままの心がきょとんとした表情で訊いた。
「玄関に入ったらいたるちゃんの悲鳴が聞こえたから。
 それよりあなた達一体。」
言葉は複雑な表情だ。
「いたる・・心ちゃん・・二人ともやっぱり・・」
「誠お兄ちゃん!そんな事あるわけないでしょ!」
「もう心お姉ちゃん!それはいいから胸から手を放してよ!」
「ごめんごめん触り心地良かったからつい。」
心がいたるから離れるとようやく上気した表情のいたるが身を起こした。

「それよりいたるちゃんにまた変なやつが纏わりついてるみたいなんだよ。」
「本当か?いたる。」
「確証は無いんだけどね。」
「何でしたら探偵さんでも雇いますか?
 警察は動いてくれるまで時間かかりますし・・・」
「うーん・・今の所実害無いからなあ。
 もうちょっと様子を見るよ。」
「ヤバイと思ったらちゃんと逃げるんだぞいたる。」
「うん。」
253視線1:2009/02/19(木) 00:45:20 ID:yMS8T9VT
いたるは子供の頃から自分に迫る危機を事前に察知する事が得意だった。
今まで無事でいられたのもそのおかげと言っていい。
でもそのいたるが確証を持てないのだから相手に対して
警戒を怠る事は出来なかった。
誠も言葉もそこが不安だった。

翌日の夕方帰り道にて

いたるは喫茶店で友達とダベッた後に1人で家路についていた。
でもさっきから背後にこの所感じている妙な気配がする。
『え?昨日の今日でもう来たの?
 誰だろう?でもこの気配って何か覚えがあるような・・・
 ちょっと不気味でなんとも言えない怖さが・・・』

いたるは自然に足を速めて歩き出した。
助けを求めようにも他に人通りは無い。
後ろの気配は消えた気がする・・・
或いは引き離したのか?

ほっとしたいたるはそのまま歩き出した。
暫く歩くと正面に見えた看板には”工事中”と書いてあった。
『やれやれ少し戻って回り道するか。』
と踵を返したところで横の路地から二本の腕がにゅっと伸びた。
そしていたるの口と腹部を押えてそのまま路地に引っ張り込んだ。
『しまった!!看板に気を取られた隙に!!』
いたるは口を塞がれているせいで声も出せなかった。
この絶望的な状況ではいたるの中には恐怖心しかなかった。
背中から自分を押えているのは間違いなくあの不気味な気配の主だったから・・・

End
254視線1:2009/02/19(木) 00:47:06 ID:yMS8T9VT
いたるの誕生日記念にリリースするはずが帰宅が遅れたせいで
間に合いませんでした・・・・

続きはまた後日という事で。
255名無しさん@ピンキー:2009/02/19(木) 19:28:48 ID:zlc3GcUK
伊藤誠がZガンダムのエウーゴに参加したら
たまたまティターンズ兵に悪戯されていた言葉を助けたが
逆にティターンズに拘束されるもそのままマークII強奪事件のどさくさ紛れに逃走
そのままエウーゴに参加する。
桂家はエウーゴに支援するだろ
256SINGO:2009/02/20(金) 03:26:42 ID:rUwpI32a
【言葉様と自動車免許教習所】

教官「え、ええと、君が桂さん?」
言葉「はい。よろしくお願いします」
教官の足元に園児サイズ?の言葉。
教官(資料の顔写真からして嫌な予感があったが…何だ、このUMAは?頭と胴体のサイズが同じだ)
教官「君。本っ当〜に桂さん本人なのかね?」
言葉「あら、これが嘘をついてる目に見えますか?」
教官「白目をむいたままの人に言われても…」(誰だ、こんなSDガソダムみたいな生物を連れ込んだのは…)
教官、嫌な予感が全開破利破利、夜露死苦。

《シミュレータ室》
言葉「ここは…?」
教官「運転を擬似体験できる機械…まあTVゲームみたいなもんだ。君もゲームくらい持ってるだろ?」
言葉「ゲーム?寝取り魔をノコギリで斬首するゲームなら持ってますけど」
教官「何そのDQNゲー!正気か、そのゲーム会社!てか女の子がそんなゲームしちゃいけません!」

言葉、シミュレータ機に座る。
教官「その体じゃアクセルに足が届かないだろ。どう見ても50cmは足りないな」
言葉「大丈夫です。靴で補えますから。こんな事もあろうかと…」
☆じゃ〜ん☆
教官「うを、何だソレ!竹馬か?いや長ゲタか?しかもゲタの歯が刃になってるー!!」
言葉「ノコギリシューズ。二刀流です」
教官「何が二刀流だ!武蔵じゃなくて無茶師だろ!」
言葉「準備万端でしょ。まあ、ラブホに入る前から今度産ムを装着してる誠君ほどではありませんが」
教官「そいつ、アホの子だろ!てか聞けよ!ノコギリシューズは違反だ!」
言葉「変ですね。道路交通法で禁止されてる運転は、厚底サンダルやハイヒールくらいなのに…」
教官「どこの世界にノコギリまで禁止する道交法があるかー!」

気を取り直して、
教官「あー。まずクラッチ踏んで、ローに入れて」
言葉、教官にキック。間一髪、よける教官。
教官「なにすんだテメー!」
言葉「だって今、ローに入れろと…」(←キックボクシングの構え)
教官「1速の事だよ!武蔵から離れろ!てかノコギリシューズで蹴るな!シャレになんねーぞ!」

気を取り直して、
教官「あー、車だす時は、まずウインカーつけて」
言葉、片目をパチパチ。
教官「方向指示器の事だよ!てか白目むいたままウインクするな!キモいんだよ!」
257SINGO:2009/02/20(金) 03:27:48 ID:rUwpI32a
ブロロロ…。
言葉「ふう。何だか喉が渇いてきました」
プシッ。ゴクゴク。
教官「テメー!なにチューハイ飲んでんだ!飲酒運転になるだろが!」
言葉「大丈夫です。これ、アルコール度数0.1%ですから。1%未満はノンアルコールなんですよ」
教官「うるせー!没収だ、没収!」
10缶没収。でも全部、開缶済み。
ええと、0.1%×10は…
教官「10本飲んだら、余裕で1%越えるだろーが!」

ブロロロ…。
!!突然、猫が路上に飛び出す。
言葉、フルブレーキ。キキキー。
間一髪、間に合った。
言葉「ふう。危なかったです…」
教官「気をつけたまえ。コレは危険予測も兼ねた講習だ」
言葉「はい。言われてみれば、本物の路上では飛び出しが付き物ですよね」
教官(ふん。少しは運転の怖さを思い知ったか小娘)
ブロロロ…。
!!今度は、人が路上に飛び出す。
言葉、アクセルオン。
どげしっ。
教官「轢きやがったァ!気をつけろって言っただろが!何やってんだ!」
言葉「だって今の人、西園寺さん…いえ、ブレーキとアクセルを間違えました」
教官「嘘つくんじゃねェ!今、思いっきり相手特定して轢いただろ!西園寺って誰だァ!」
言葉「どうしましょう…オロオロ」
教官「まったく…シミュレータで良かった。これがリアル路上なら、ケガ人が出てたところだ」
言葉「それわ好都合です。せっかくですから…」
言葉、ギヤをバックに入れ、アクセルオン。
どげしっ。
教官「テメー!なにトドメ刺してんだコラぁ!」
ブロロロ…。
教官「まさかアンタ、その西園寺さんとやらがダンプに乗ってても突っ込むつもりか?」
言葉「はい」
教官「否定しろよ!もしエアバッグが作動しなかったらテメーも死ぬぞ!」
言葉「大丈夫です。澤永さんをクッションにしますから」
教官「知り合いをエアバッグがわりにするなァ!」

一時間後…。
教官「今日の講習は、ここまで」(もう嫌だコイツ。上にかけあって担当替えてもらおう…)
言葉「ありがとうございました。あら?いけない、もうこんな時間!誠君とのデートに遅れちゃいます」
言葉、山の向こうめがけてノコギリをブン投げる。
言葉、ジャンプ。カッ飛ぶノコギリの上に着地。そのまま言葉は山の向こうに消え去った。
教官「何だ、ありゃあ…あんな技、ドラゴンボーノレでしか見た事ねえ…」
てか、それ以前に、

「テメー!車も免許も必要ねーだろォがァ!!!」

おわり
258SINGO:2009/02/20(金) 03:30:19 ID:rUwpI32a
終わりです。
言葉様は使い所が難しいっす。

最後に
このSSはフィクションです
内容に感化されて真似したり
無謀運転に突っ走り愛車を傷付けたり失ったり
また命を落とされてましても
作者は一切責任を負えませんので
あしからず

259名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 14:23:25 ID:S9qLUMPR
コトノハサマwwwバロスwww
ていうか殺し屋・桃白白ネタ分かる奴は今どれくらいいるのかと、
260名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 14:37:56 ID:dKBu/h64
>>254
犯人は・・・・やっぱアイツなんだろうなw
261名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 00:22:14 ID:4TiQIUq+
>>254
続きが非常に気になります。
やはり貴方様はSSがうまい
262視線2:2009/02/24(火) 20:37:44 ID:3il37jhb
いたるSSを投下します。
視線1の続きです。
ちょっと長いです。
263視線2:2009/02/24(火) 20:38:27 ID:3il37jhb
『やめて!一体何なの!』
「もごっ・・くっ・ううっ。」
いたるは口を塞がれてるせいで声が出せない。
『あれ?でもこの人・・』
少し冷静になったいたるが相手を確認すると自分を押えている相手は
全体的に柔らかくて華奢だ。
それに体臭と言うよりは香水の匂いが身を包んでいるし指にはマニキュアが塗ってあった。
『女の人?』
「ごめん!お話したいだけだから暴れないで!」
いたるを押さえ込んでいる人物は耳元でそう言った。


いたるが抵抗をやめて振り向くと
「本当にごめんなさい。」
と言いながらその女性が深々と頭を下げていた。
やがて身を起こした相手はまっすぐにいたるの顔を見つめてきた。
その瞬間いたるの背中に戦慄が走った。
そう小さい頃に感じたあの戦慄を・・・
「もう覚えて無いよね?君小さかったもんね?」
『知っている・・・私はあなたを知っている・・』
いたるはそう思ったけれど口に出せなかった。
264視線2:2009/02/24(火) 20:39:08 ID:3il37jhb
「私は・・・
 『世界っていう名の邪悪なおねーちゃ』
・・・世界っていうの。」

いたるの感は当たっていた。
いたるには誠の知り合いで怖いと感じた人物が二人いた。
1人は加藤乙女でいたるをあやそうとして誤って天井にぶつけた事から
しばらく怖くて近づけなかった。
でも乙女とはその後段々と打ち解けていく事が出来た。
そしてもう1人は世界だった。
世界には最初からいたるを受け入れる様子はなくてただの邪魔な
石ころでも見るようにいたるを見ていた。
その視線からは誠に近づくものは何者をも許さないし近付けば
手段を選ばず排除しそうな禍々しい雰囲気を感じ取ったものだった。


いたるにはその当時感じた恐怖感が蘇っていた。
世界は当時と違って後ろ髪も肩の下辺りまで伸ばしていたし
年相応の落ち着きは見せていた。
でも小さい頃の強烈な印象によっていたるの足は自然に震えてきた。
「ねえ?」
「は・はい。」
「君は誠の妹さんでしょ?伊藤いたるちゃん。」
名前まで知られているようでは他の事も知られているだろう。
いたるはここは素直に答える事にした。
「はい。」
265視線2:2009/02/24(火) 20:39:40 ID:3il37jhb
「そっかーやっぱりね。
 犬の世界ちゃんに会いに行った時に見かけてから気になってたのよ。
 それで飼い主の娘に君の事を後で色々聞いてるうちにね
 君とお話したいなって思ったの。」
「何故ですか?」
「やっぱり君があの頃の誠に似てるからかな。
 でもさあ、いざ声をかけるとなると色々迷っちゃって。
 で結局さっきみたいな最悪の形に・・アハハハハ。」
そう世界は頬をポリポリかきながら言った。
「そうだったんですか。」
いたるが察知できなかった理由もわかった。
怖い印象がある相手とは言え邪心があってつけてきたわけでは無いからだ。


「誠は元気?」
「はい。」
「そう。あの二人は結婚したみたいだね。」
「ええそうです。」
「幸せそう?」
「はいそれはもう。」
「そっかーやっぱり誠には桂さんか。」
そう言いながら世界は複雑な表情を浮かべた。
この話題は続けない方が良さそうだと判断したいたるは
今一番気になっている事を訊く事にした。

266視線2:2009/02/24(火) 20:40:12 ID:3il37jhb
「所で私は犬の飼い主からあなたが高校の頃のクリスマス以来
 行方不明になってるって聞かされてたんですけど?」
「えー私が!?そりゃ振られたショックとその後のゴタゴタに
 嫌気が差して何日かあちこち彷徨ったけど・・」
「え?」
「そう言えば飼い主の娘には私の名前名乗ってなかったわね。
 知ってたらそんなこと言うはず無いもんね。
 今度行ったらちゃんと名乗っとくわ。」
確かに世界の言う通りなのだが飼い主の癖を思い出したいたるは頭を抱えた。
飼い主には人から話を聞いても肝心な所を忘れたり自分の印象で話を歪曲する癖があった。
いたるが引っ越した後なのに沢越家に犬を置いてきたりするのはその典型といえた。
恐らく未だに行方不明という項目は勝手に飼い主が脳内補完したのだろう。
こういうタイプはよくいるのだが本人に悪気が無いとは言え迷惑な事この上ない。


「どうしたの君?」
「い・いえ何でもないです。所で今日あなたにお会いした事は兄達には・・」
世界は首を横に振った後に
「言わない方が良いと思う。」
と言った。
それを聞いていたるもほっとした。
やはりそれが一番だと思ったからだ。
「ねえ君の事いたるちゃんって呼んで良いかな?」
「はい。」
267視線2:2009/02/24(火) 20:40:48 ID:3il37jhb
「いたるちゃんに一つお願いがあるんだけど。」
「なんでしょう?」
世界は歩を詰めると正面からいたるを抱きしめた。
「えっ?」
突然抱きつかれたいたるは当然困惑した。
でも
「ごめんね。少しの間で良いからこうさせて。」
と涙声で世界に言われると振りほどく事は出来なかった。
いたるは戸惑いつつもいたわるように世界の背中に手を回した。


そして数分後世界は
「さよなら誠。」
とポツリと言っていたるから離れた。
「ありがとう。いたるちゃん優しいんだね。」
「いえそんな。」
そう言つつもいたるは思った。
世界の表情が実にすっきりとしたいいものに変わったと。

「所でいたるちゃんは今恋してる?」
「うっ・・・」
いたるの頭の中をろくでもない連中が横切る。
世界もただならぬ気配を察して
「ま・まあそのうちいい相手が現われるよ。」
とフォローした。
「そうでしょうか?」
「うんいたるちゃん可愛いし。
 でも私や桂さんみたいに命のやり取りをするような辛すぎる恋は
 やめた方が良いかもね。」
『全くあのバカ兄貴は一体何をやらかしたのよ・・・・』
268視線2:2009/02/24(火) 20:41:17 ID:3il37jhb
「じゃあね。今日は話せてよかった。」
と世界はそう言ってその場を去ろうとして振り返った。
「あのね。」
「はい?」
「もういたるちゃんに話しかけちゃダメかなあ?」
「え?」
「別にいたるちゃんの電話番号聞いたり家まで行ったりはしないよ。
 犬の世界ちゃんの所でたまに会ったら挨拶くらいしてもいいかなあ?」
「はい。」
といたるは満面の笑顔で答えた。

「ありがとう。」
「でもそれなら飼い主にあなたの名前は言わないで下さい。」
「え?」
「あの娘からお兄ちゃんたちに話が伝わるかも知れませんし。」
「そうだね。じゃあ適当な名前を名乗るよ。
 その娘から私の噂を直に聞きたいし。」
「それが良いですね。」
そして二人はお互い手を振って別れた。

269視線2:2009/02/24(火) 20:42:40 ID:3il37jhb
帰り道にて


いたるは世界の事を考えながら家路についていた。

『聞きそびれちゃったけど今は幸せなのかなあ・・いい人見つかったのかなあ。』
『あの人邪悪というより必死だっただけなのかも知れないなあ・・・
 でも場合によってはあの人をお姉さんって呼んでたわけだよね・・・
 そう思うと複雑だなあ。』
『今日あの人が私と話したかったのはお兄ちゃんにちゃんと
 お別れが言いたかったからなんだね。
 そう思うと切ないなあ。』
『でも私でお兄ちゃんの代わりが出来たみたいだし良かった。ん?待てよ?』

いたるがそこまで考えた所で後ろから心が走ってきた。
「いたるちゃーん。今そこで焼き芋屋さん捕まえてさあ。
 いっぱい買っちゃったあ。」
と心が幸せいっぱいの笑顔で焼き芋が入った紙袋をいたるに見せた。
でもいたるにとっては芋どころでは無かったようだ。
「心お姉ちゃん!」
と真剣な顔でいたるは心に迫った。
「な・何?いたるちゃんにもちゃんとあげるよ。それに一個余ったらいたるちゃんが食べていいよ。」
「私ってそんなに男顔?」
「え?何の話?」

「これって私の一生がかかった問題なの!ちゃんと答えて!」
「訳わかんないよ!早く帰らないとお芋冷めちゃうよ!」
そう言って心は紙袋を抱えて家に向かって走り出した。
「心お姉ちゃんってばー。」
いたるは慌ててその背中を追った。
いつもの日常に戻れた事を嬉しく思いながら。

End
270視線2:2009/02/24(火) 20:44:32 ID:3il37jhb
今後世界を出すかは未定です。

でも犬の世界はまた出したいなと思っています。
271名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 21:16:09 ID:jvd8C8F4
>>270
とりあえずヤツじゃなくって、ほっとしたw
272名無しさん@ピンキー:2009/02/25(水) 00:28:13 ID:lQLwjwft
芋ENDですね、わかります
ちょっとドキドキしたけどいたるが変な目に遭わなくてよかったw
面白かったです。次も期待
273名無しさん@ピンキー:2009/02/25(水) 00:40:20 ID:MuL0010T
>>270
展開、描写、オチのつけ方、
随所に光るいい仕事。
GJ。
274視線2:2009/02/25(水) 22:11:00 ID:yNL8tnBH
>>271-273
ご感想ありがとうございます。

世界の扱いは難しかったのですが彼女にまともに会えるのは
いたるだけだなと思って作ってみました。

ブログの方も頑張らないとな・・・・・
275名無しさん@ピンキー:2009/02/26(木) 00:31:52 ID:RQ2gdnTv
>>247
そう言えば、「ギャルゲ・ロワイアル2nd」にスクイズが参戦していたな、
ttp://www7.atwiki.jp/galgerowa2/pages/2.html?PHPSESSID=5df2c899572fea756f22f7f37001e4cf&flag_mobilex=1

刹那は最初、一般人相応の反応だったが、
言葉と世界はあっさり環境に馴染んでた(後半、もっとすごい事に)。
この二人は一応、一般人だよな…?
276名無しさん@ピンキー:2009/02/26(木) 16:17:14 ID:2bdnzK0b
>>275
sageろよ。

それよりここ保管庫ってある?
277名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 01:36:16 ID:hPPEIGn7
>>276
ない

作らないか?

じゃあ作品1つ1つに許可取ってね

無かったことに

過去の作品の収録について神様達が難色示してるんで、
多分永遠に作られることはないっしょ。
このあたりで、地道に過去ログあさるが吉。
ttp://www.geocities.jp/mirrorhenkan/
278名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 01:48:22 ID:hPPEIGn7
上のカキコ、別に神様達の判断に否定的だとか、ケチ付けてるとか、そういう意味じゃないので。
念のため補足しておきます。
簡単に経緯をまとめただけ…のつもりです。気分を害されたとしたらすまないです。

連投スマソ。
279名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 01:39:34 ID:PGyECNGe
>>278
d
280名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 10:15:41 ID:URO7WylA
あげ
281Summer Radish Days 1:2009/03/14(土) 01:12:22 ID:G9TZbT98
Summer Daysの「そして快感へ」Endの後日談です。
投下初心者なんで誤字脱字とかあったら色々とご了承下さい。
282Summer Radish Days 1:2009/03/14(土) 01:13:11 ID:G9TZbT98
どうしてこうなってしまったのか自分にはよくわからない。
昨日までの1週間ぐらい、刹那の家に軟禁されて刹那の母親である舞さんと一緒に
色々されてしまった。
(ま〜、それなりに痛かったが気持ち良かった。)

家に帰れなくなったので母さんが心配していたと思っていたが、
刹那の母親である舞さんが母さんに直にしばらく刹那の家で過ごすと伝えた。
ちょうど夜勤が続いていた母さんには、願ったりのことであった。
母さんは、何気に刹那のことを気に入っているので安心してOKを出したらしい。

それにしても、舞さんが刹那の母親っていうのが今だに信じられない。
それを言ったら、踊子さんが世界の母親というのも信じられない。
二人ともおかしいぐらいに若く(実質若いのだが)、自分と同い年の子供がいると思えない。
母さんも俺みたいな子供がいるとは思えないぐらい若いと思うが、二人はそれ以上である。

踊子さんと舞さんは、もともと古くからの友人で親友同士である。
しかし、それを俺がぶち壊してしまった。
踊子さんからみれば俺は刹那と浮気した浮気者で、
刹那からみたら踊子さんと世界の母子に手を出した獣である。

もともと踊子さんと付き合っていたが、踊子さんと連絡がとれなくなり、
遊ばれ捨てられたと思った。
それと同じ時期に刹那と出会い、夏祭りをきっかけに付き合い始めた。
刹那とはそれなりに真剣に付き合っていた。
ただ俺は、瞬さんのことで勘違いをしてしまい刹那を傷つけてしまった。
それが原因で刹那はパリに行ってしまったけど、許してくれるつもりで
日本に帰って来てくれた。
それなのに、踊子さんと世界に手を出した。
怒るのは無理ない。
どちらにしろ、刹那と喧嘩しなくても踊子さんが帰って来たら
自動的に連絡がきてしまうから、遅かれ早かれ問題は起こってしまうのだ。
283Summer Radish Days 1:2009/03/14(土) 01:13:50 ID:G9TZbT98
世界の家に行った時、世界に迫られたけど、俺は刹那のことが諦められず帰ろうとした。
でも、タイミング悪く踊子さんと鉢合わせてしまい、流され踊子さんを抱いてしまった。そして、そのままなし崩し世界も抱いてしまった。

自分がここまで流されやすいなんて思いもしなかった。
まるで女性関係が、父親みたいと思うと自己嫌悪に陥る。
母さんがもし聞いたら泣くし、止がこのことを知ってしまったら嫌われると思うと、
自分がいかに軽率な行動をとっていたことか。

自分自身これからどうすれば良いのかわからない。
刹那のことは好きだが、今それを聞かれると好きと言える自信がない。
俺は、刹那を二度傷つけたのだから。
いくら刹那が許してくれても罪悪感で胸が一杯である。

考えているうちに刹那のマンションに着いた。
今日は、刹那の家で夕食を食べる予定である。
舞さんは、俺が料理上手なことを知ったので、夕食を作るのを手伝うことになった。
この時間帯からだと下ごしらえ準備に相当時間あるから凝った料理が作れるだろう。

そんなことを思い玄関のチャイムを鳴らした。

舞 「どちら様ですか?」
誠 「誠です。」
舞 「あら、誠君ね。玄関空いてるから入って来ていいわよ。」
誠 「わかりました。」
284Summer Radish Days 1:2009/03/14(土) 01:14:37 ID:G9TZbT98
俺は、玄関を開け靴を脱いだ。
夏祭りからよく刹那の家によく来て慣れているが、今は少し気が重い。

ふと、リビングに入るとき笑い声が聞こえた。
誰か来ているのかと思い、覗くようにリビングに入った瞬間、
俺は混乱の頂点に達し思考が停止した。

踊子 「誠〜、いらっしゃ〜い。」
誠  「えっ・・・・・・・・・?」
踊子 「私も今日の夕食ご馳走になるから。誠が料理が上手いなんて初耳だし
食べてみたいじゃない。」
誠 「(何で、踊子さんがここにいるわけだ?まさか、これから修羅場が待っているのか?
舞さんが、早めに呼んだのはこれのことだったのか?)」
踊子「どうしたの誠。何そんな口を開けて固まってるの?」
舞 「たぶんこの状況が理解できてないんじゃない?」
踊子「状況って?」
舞 「たぶん、私と踊子が喧嘩していると思ってたのに、楽しく話してるからじゃない?」
踊子「そうなの、誠?」

俺は、首を縦に振るしかなかった。

踊子「まあ、確かにありえない光景かもしれないけど、こんな状況は慣れてるしね。」
誠 「慣れてるって、どういうことです?」
踊子「慣れてるっていっても、過去に1回こういうことがあったんだけどね。
まさか、今回はセッチャンだとは思いもしなかったけど。」
舞 「踊子、セッチャンを悪者にしないでよね。」
踊子「だって〜。まさか親子2代で彼氏を取られるなんて、思いもしないじゃない。」
誠 「お、親子2代って何です?」
舞 「踊子〜、誠君が余計混乱するでしょ。」
踊子「15年くらい前に、ほとんど同じ状況があったってこと。ちょうど夏だったしね。
   その時は、セッチャンじゃなくて舞だったんだけどね。」
舞 「別に私が悪いわけじゃないんだからね。」
踊子「わかってるわよ。あいつの節操なしがいけないんだから。」

セッチャンの父親は瞬さんである。
15年前くらい前というと、舞さんの相手は当然瞬さんのはずだ。
俺は、確認のうえで二人に聞いてみた。

誠 「『あいつ』っていうのは、瞬さんのことですか?」
踊子「げっ、誠は瞬のこと知ってるの?」
誠 「ま〜、少しは話をしました。」

聞くところによると、15年前に舞さんと踊子さんが取り合ったのは瞬さんである。
確かに今の俺が起こしたこととよく似ている。

あれっ、ちょっと待て?
俺は、ある疑問が浮かんできた。
刹那の母親が舞さんで父親が瞬さん。
二人が瞬さんを取り合っていたのが15年前ぐらい。
だとしたら、踊子さんの相手は当然瞬さんである。
世界の父親は瞬さん?
じゃあ、刹那と世界は母異母姉妹なのか?
俺は、聞いてはいけない気がしたが聞かずにはられなかった

誠 「もしかして、刹那と世界って姉妹なんですか?」
285Summer Radish Days 1:2009/03/14(土) 01:16:08 ID:G9TZbT98
導入ということで今回はここまでです。
286名無しさん@ピンキー:2009/03/14(土) 16:54:30 ID:lAIHQ+7r
good job
287名無しさん@ピンキー:2009/03/15(日) 04:02:35 ID:YJxeqMxn
ゲーム中ではなかったが実際、誠が世界と刹那、踊子さんと舞さんと
関わっていたら、その内なんかのキッカケで発覚するよな、
互いの血の繋がり…
288名無しさん@ピンキー:2009/03/17(火) 01:05:02 ID:D0/d1ZzO
>285
いい仕事。
わくわく。
289Summer Radish Days 2:2009/03/18(水) 01:23:47 ID:UgTW8KfE
>>284の続きを投下します。
290Summer Radish Days 2:2009/03/18(水) 01:24:44 ID:UgTW8KfE
踊子「あれっ、わかっちゃった?」
舞 「踊子〜、誠君はセッチャンの父親が瞬だって知ってるんだから
   わかるに決まってるでしょ。」
踊子「そうだよね〜。誠、このことは世界にはオフレコね。」
誠 「えっ!?世界は、瞬さんが父親って知らないんですか?」
踊子「ん、まあね〜。世界には教えてないのよ。」
誠 「何で世界に教えないんです?」
踊子「瞬のことを避けていたら、教えるタイミングがなかったのよ
   そしたら世界に話す前に瞬と会ってしまったの。」
誠 「でも、刹那は瞬さんが父親ってコトを知ってるんですよね?」
舞 「知ってるわよ。セッチャンが小さい頃、瞬はこまめに会いに来てくれてたから。
   踊子と違って、ちゃんと教えました。
   世界ちゃんは小さい頃から一緒に遊んでいたから、それで瞬と会っていたのよ。
   でも、セッチャンはあまり人に瞬を自分の父親って言わないわね。」
踊子「そりゃ、そうでしょう。」
舞 「小さい頃は、セッチャンも瞬が来るたびに喜んでいたのよ。
   だけどね、瞬の女性にだらしないことを知ってから距離をとり始めたわ。
   セッチャンに女性にだらしないのを治すって約束しては破って繰り返し。
   相当、愛想尽かしてるからね。」
踊子「セッチャンもなかなか瞬のこと『お父さん』って呼ばないからね。
   でも、瞬は呼んで欲しいのよね〜。何度セッチャンにお願いしてることやら。」

刹那が、瞬さんが自分の父親だということを話さないのは知ってる。
それが原因で、俺が瞬さんのことを刹那のモト彼と勘違いしてしまったのだから。
刹那が、父親のことを人に話したくはないのは、今なら良く理解できる。
俺だって自分の父親のことを人に話したくはない。
刹那にだって母さんや止のことは話すけど父親のことは一度も話したことはない。
そう考えると、いかにあの時一人よがりの行動をとっていたことか。
刹那の気持ちを一番理解できるのは自分ではないか。
291Summer Radish Days 2:2009/03/18(水) 01:26:10 ID:UgTW8KfE
誠 「じゃあ、二人は姉妹だって知らないんですか?」
踊子「そういうことになるわね。」
舞 「でも、セッチャンは世界ちゃんと姉妹だってことに薄々気づいているかもしれなわね。」
踊子「何で?」
舞 「ほら、あの子はそういう所は鋭いから。
   私たちと一緒に生活してるんだし、瞬ともたまには会ってるんだから。
   気づいてもおかしくないでしょ。」
踊子「でも、世界の父親が瞬だなんてわからないじゃない。
   セッチャンにそういうこと一度も話したことがないんだから。」
舞 「それは踊子や瞬の関係を見てたら、ただならぬ関係だってあの子は気づくわよ。」
踊子「ただならぬ関係ってやめてよ。」
舞 「事実じゃない。」
踊子「もう、そんな関係じゃないんだから。」
舞 「よく言うわよ。他の男性と付き合っても長続きしないんだから。
   なんだかんだいって、瞬が戻ってきてくれることを期待してるんだから。」
踊子「何、馬鹿言ってんのよ!」
舞 「だって、忘れた携帯を瞬に取りに行かせて、嫌味ったらしく
   『今の彼氏とはそれじゃないと連絡取れないの〜。』
   って、言う普通?」
踊子「そんなこと言ったら、舞だって瞬に誘われたら嫌々ながらついていくじゃない。」
舞 「たまには、親子3人で食事するのもいいでしょ。」
踊子「ず、ずるいわよ。セッチャンを盾にするなんて。素直じゃないわね〜。」
舞 「あなただって!」

なんか俺、結構二人のトップシークレット条項に触れてる気がするな〜。
なんだかんだ言って二人とも瞬さんのこと好きなのかな・・・?

すると踊子さんが、バツが悪くなりそうなので話を変えてきた。

踊子「それにしても、今回のセッチャンは少しおかしいわね。」
誠 「おかしいって何です?」
踊子「だって、誠は喧嘩中に別の女性と浮気してたのよ。
   まるで、瞬みたいな行動よね。
   だから、瞬みたく愛想尽かすと思いきや、軟禁して誠に愛の罰を与えるなんて
   思いもよらないじゃない。」
舞 「私も、それは思ったわ。
  『おあいこにするからお母さんも来て』なんて、びっくりしたわ。」
踊子「誠に愛の罰を与えるんだったら私も参加したいじゃない。」
舞 「そんなの無理に決まってるでしょ。」
踊子「何よ〜、舞は参加したのに。ずるいじゃない。」

俺は、苦笑いするしかなかった。
292Summer Radish Days 2:2009/03/18(水) 01:27:09 ID:UgTW8KfE
ふと二人と話していたことに夢中に聞いていたが、刹那の姿が見当たらなかった。

誠 「あれっ、刹那は家にいるんですか。」
舞 「今、セッチャンは世界ちゃんの所に行ってるのよ。」
誠 「世界のところですか・・・。」

そういえば、踊子さんと世界を一緒に抱いた日から世界とは一度も会ってない。
世界をなし崩しのまま抱いてしまったのだから、きっと世界も傷ついているはずだ。

踊子「ホントは世界も一緒に来るはずだったんだけど、出掛けるときに渋ってね。
   家から出なくなっちゃったのよ。」
誠 「(ぐっ、やはり世界は俺のせいで。)」

俺が、まずそうな顔をしているのを踊子さんが見たらしく、

踊子「あ〜、誠は気にしなくていいから。いつものことだし。
   気分がダウンしちゃうとあの子は部屋で閉じこもる癖があるのよ。」
誠 「そんな、閉じこもってるのは自分のせいなのに、気にならない訳ないじゃないですか。」
踊子「いや、なんかセッチャンに後ろめたいことがあったらしいのよ。」
舞 「セッチャンはそのことで世界ちゃんを説得中なの。いつものパターンね。」

それでも、俺は気になってしかたがなかった。

誠「あのう、世界の所に自分も行っていいですか。」

二人は少し驚いた顔をしたが、すぐに笑った顔をした。

舞 「誠君はホントにやさいしいのね。」
踊子「それが良いところなんだから。」
舞 「でも、こういうことに逃げ出したら瞬みたくなるから覚えといてね。」
誠 「はあ、わかりました。いってきます。」
踊子「あんまり渋ってたら無理矢理にでも連れて来ちゃってもいいから。」
誠 「善処します・・・。」

俺はリビングから玄関に戻り外に出た。
まだ、外は日差しが強く、涼しい部屋にいたので、出た瞬間肌が焼けそうになった。
293Summer Radish Days 2:2009/03/18(水) 01:27:48 ID:UgTW8KfE
たしか世界の家はこの近くだったよな。
なんだろ、世界が刹那に後ろめたいことってなんだろ。
そう思いながらマンション出口を出ようとした瞬間、誰かにぶつかってしまった。

?「きゃっ!?」

どうやら女性とぶつかってしまったらしい。

誠 「すみません、よそ見してしまって。怪我してませんか?」
? 「大丈夫よ。尻餅ついただけだから。」

その人は、微笑みながら立ち上がった。
歳は舞さん達より上かな。かなりの美人であった。

誠 「本当に大丈夫ですか?」
? 「そんなに心配しなくても大丈夫よ。それよりも急いでるんじゃないの?」
誠 「じゃあ、すみませんでした。それでは失礼します。」
? 「ふふふ。頑張ってね。」

俺は、頭を下げてその場から離れた。
『頑張ってね』か。
そう言った人は、これから俺が何をしに行くのかまるで見透かしているようだった。
なんだか、あの人の笑顔を思い出すと、なぜか懐かしい感じがした。
初めて会ったのになぜだろう。

頭に疑問を抱きながら歩いていたら、いつのまにか世界の家に着いていた。

何、他の女性のこと考えてたんだよ。
今は世界の閉じこもりをどうにかする時じゃないのか。
反省しながら玄関のチャイムを押した。

数秒したらドアが開き刹那が立っていた。
294Summer Radish Days 2:2009/03/18(水) 01:29:24 ID:UgTW8KfE
刹那「あっ、まこちゃん。どうしてここに?」
誠 「そのう・・・、舞さん達から話を聞いて、世界が閉じこもってるって聞いたんだ。
   でも、その原因は俺だろ。」
刹那「違うよ、まこちゃん。世界が閉じこもってるのは、私と世界の問題なの。」
誠 「そうなのか。でも、少なからずとも俺も関係してるんじゃないのか?
   世界にあんなことをしてしまって。」
刹那「まこっちゃん、状況が状況でも世界を抱いたことを悪く思うのは良くないよ。」
誠 「えっ!?」
刹那「好きな人に抱かれるのは誰だって嬉しいんだから。
   でも、オバサンと一緒というのは、いただけないけどね。」
誠 「うっ・・・・・・。」

まあ、そこを責められるのはしょうがない。それでも・・・。

誠 「何か俺でも手伝えることない?」
刹那「まこちゃん・・・。」
誠 「確かに刹那と世界との問題だったら俺の出る幕はないけど、
   今回はやっぱり俺も関係してると思うんだ。」
刹那「でも、まこちゃんが加わってもダメだと思うし。」
誠 「そうなのか・・・。」

でも、ここまで来てしまったら俺自身納得が出来ない。

誠 「世界が刹那に対して後ろめたいことがあるって聞いたんだ。それって何なんだ?」
刹那「・・・・・・・・・。」

刹那は気まずそうな顔をした。
それでも俺は続けた。

誠 「何で後ろめたいか、もう分かるだろ。聞かせてくれよ。」
刹那「・・・・・・わかった。」

刹那は、玄関から外に出てドアを閉めた。

刹那「私がパリから帰る前に世界に電話したんだ。
   その時に、まこちゃんと喧嘩したことを話したの。
   それで帰ることになったから、仲直りするために世界に
   まこちゃんを呼び出してほしいって頼んだの。」
誠 「そうなのか。」
刹那「でも、世界がその時に曖昧な返事したの。
   その時は、世界が私に仲直りするんだったら自分でやらなきゃダメだよって意味だと思ったの。
   でも、ちょうど帰国した日、世界はまこちゃんと一緒に出掛けてたんだよね?。」
誠 「(あの日か。)」
刹那「世界は、私とまこちゃんを会わせたくなかったの。理由はもうわかるよね。」
誠 「ああ・・・。」
295Summer Radish Days 2:2009/03/18(水) 01:31:11 ID:UgTW8KfE
あの日、世界は部屋で俺に告白した。
あの時の世界は、確かに行き先をコロコロ変えていた。
今覚えば、何かからか逃げているように思えた。
それが、刹那からだったとはな。

刹那「世界もまこちゃんのこと好きだから。
   喧嘩した私たちを見て、まこちゃんを元気付けようとしたんだよね?」
誠 「ああ、そうだな。」

たしかにあの時、俺が浜でほうけていたとき元気づけてくれたのは世界だった。

刹那「あの時、私は何もかもから逃げ出したくなって、誰からも追いかけて
   欲しくなくてパリに行ったの。
   だから、その間に世界がまこちゃんにコンタクトをとったのを別に悪いとは思っていないよ。
   逃げ出した私が悪いんだしね。」
誠 「そんな、刹那は悪くないよ。悪いのは俺なんだ。
   せっかく、あの時瞬さんが刹那に大切なことを言っている最中にあんなことをしてんだから。」
刹那「まこちゃん・・・。」

刹那は少し微笑んでくれたが、また困った顔に戻ってしまった。

刹那「世界は、まこちゃんを元気づけているうちに好きだって感情を押さえられなかったと思うの。
   だから私の代わりに、まこちゃんの彼女になろうと思ったの。
   でも、予想以上に私が早く帰ってくることになったから、慌ててしまったんだと思う。」
誠 「そうだったのか。」
刹那「そのことが、私にばれてしまって部屋に閉じこもってしまったの。
   今日の夕食を使って世界を連れ出すつもりが、オバサンが失敗してしまって
   私が世界を説得しにきたの。」
誠 「刹那は、もう怒ってないのか?」
刹那「うん。そのことを言っても、なかなか出てくれなくて。」
誠 「じゃあ、俺も説得に加わっていいか?」
刹那「だから、まこちゃんが説得に加わると私たちの関係を見せ付けてるようで逆効果だと思う。」
誠 「そうかもしれないけど、そんなことで刹那と世界の関係が壊れると思うほうがおかしい。」
刹那「えっ・・・。」
誠 「瞬さんが、
  『刹那は、いつだって世界と一緒だった。
   刹那は、全てを世界と共有し、世界と共にあった。』って、言ってた。」
刹那「瞬さんが・・・・・・。」
誠 「だから、大丈夫。もと通りになるって。」
刹那「・・・・・・・・・。」
誠 「まずくなったら出ていくから。このまま刹那だけ説得しても平行線のままだろ。」
刹那「・・・わかった。まずいと思ったら合図するから。」
誠 「よろしく。」
296Summer Radish Days 2:2009/03/18(水) 01:35:37 ID:UgTW8KfE
2はここまです。
話し内容の転換に苦しみました・・・。
297名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 16:15:29 ID:1YW0Zjjg
ところでなんで台本形式なの?台本形式は荒れる元だよ。ま、荒れるほど人いないけど。
298名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 15:44:35 ID:fPVjZJZB
>>296
あのENDの続きは気になってたんで、楽しく読ませてもらいました。続き期待してます。

>>297
そう言うなよ、ただでさえ過疎ってるんだから。
書き方が嫌ならスルーすればいいだけだろ。
299名無しさん@ピンキー:2009/03/20(金) 18:56:21 ID:n44SHiDP
ま、荒らしってのは、荒らすためならどんな屁理屈でもこねるものさ。
荒らしたいがために台本形式を口実にしてくる輩がいるかも知れないから、
作者さんも気をつけた方がいいかもね。

でも台本形式は、どのキャラがどのセリフを言ってるのか一瞬で判別できるし、
スピーディーに読めるってメリットもある。
台本形式にした方が良い作品になる!と作者さんが判断したなら、迷わず台本形式にした方がいい。

俺はもっぱらゲーム三昧で、小説とは縁遠いから台本形式に不快感は無いんだよ。
300名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 07:08:09 ID:b6yd6uoi
┏━━━━━━━━┯━━━━━━━┯━━━━━┯━━━┯━━━┓
┃      名前      │    3サイズ.  │   身長   │血液型│誕生日┃
┣━━━━━━━━┿━━━━━━━┿━━━━━┿━━━┿━━━┫
┃伊藤   誠       │ 88−58−92.│  167.5.│    O.│ 10/16.┃
┃西園寺 世界     │ 84−62−86.│  155.3.│   B.│ 12/07.┃
┃桂     言葉     │102−60−84.│  156.7.│    A │ 01/04.┃
┃桂     心       │ 52−46−56.│  118.9.│    A │ 11/28.┃
┃清浦   刹那     │ 74−54−76.│  142.5.│    A │ 02/14.┃
┃加藤   乙女     │ 78−64−90.│  164.1.│  AB.│ 04/01.┃
┃黒田   光       │ 82−64−88.│  161.4.│   B.│ 11/09.┃
┃甘露寺 七海     │ 98−68−88.│  172.9.│  AB.│ 07/20.┃
┃小渕   みなみ .   │ 78−62−82.│  164.8.│   B.│ 06/25.┃
┃小泉   夏美     │ 82−62−84.│  163.4.│   B.│ 01/08.┃
┃森     来実     │ 77−58−80.│  152.6.│  AB.│ 07/14.┃
┃山県   愛       │ 76−57−81.│  156.7.│  AB.│ 06/14.┃
┃伊藤   止(いたる) │ 45−40−45.│   97.3.│    A │ 02/18.┃
┃澤永   泰介     │ 88−58−92.│  171.6.│    O.│ 07/26.┃
┗━━━━━━━━┷━━━━━━━┷━━━━━┷━━━┷━━━┛
301名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 10:13:17 ID:1e4zX6J4
人がいないな
前板ひとたちはどこにいっちゃったんだ?
302名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 21:52:23 ID:RzRZeWIL

         (⌒⌒)
          ii!i!i ドカーソ
         /~~~\
  ⊂⊃  / ^ω^ \ ⊂⊃
.................,,,,傘傘傘:::::::::傘傘傘...............

        【過疎山】
303名無しさん@ピンキー:2009/03/29(日) 12:53:39 ID:VifenvF5
>249-254,262-270
激遅レスですが、お疲れ様です。
作者様が書かれるハートフルなお話が大好きです。
世界はまた出して欲しくもあり、出して欲しくもなし…。
304名無しさん@ピンキー:2009/04/04(土) 14:35:05 ID:Xac6Jtum
つまんね
305名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 14:29:23 ID:XWpCerL5
すごすぎ
一気に過疎ったな
306名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 23:22:38 ID:dEdisTxD
保守
307名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 19:10:36 ID:6m/S0z3b
アニメも終わって結構立つし過疎もしかたない
308名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 09:45:50 ID:nes2cNsU
【隔離】場外乱闘専用スレ【施設】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1239770078/
309名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 19:06:13 ID:KFqgHOpW
ショートネタ 31

語り手:住人A

原巳浜にあるこのマンションでは、かつて、女子高生による飛び降り自殺があったという。
それ以来、このマンションでは根も葉もない噂が立つようになり、更に、マンションの住人が
全体の三割も減少してしまい、その影響もあってが、賃貸料が大幅に値下げされた。
不動産屋からすれば迷惑な話だろうが、その恩恵に授かる者がここに存在していた。
それが、四月に榊野学園への入学を控えた俺である。

元々、一人暮らしに憧れていた俺は、学生のバイト代でも借りられるという、夢のような
この物件を知ったとき、我先にと親に頼んで契約して貰い、見事入居を果たした。
夢のようなというのは大袈裟かもしれないが、そんな表現をしたのには理由がある。
まず、俺が入居した部屋が、このマンションの高層階であること。
窓辺に出れば見晴らしのいい景色が視界に広がり、海が一望できる。
それに、マンションからバス停も近く、足を延ばせば飲食店もあるし、交通の便にも恵まれている。
肝心の学園からの距離はあるが、電車で通える距離なので、遠いと思える距離ではない。
そう言えば、飛び降り自殺をした女子高生も、榊野の学園の生徒だったという。


月日が流れ、十二月中旬のある夕方。
自分だけしかいないはずの部屋の中から、誰かが喋る声が聞こえた。
声の主は女性のようだが、声のするところには誰もいない。
声は要領を得ない片言のもので、しばらくすると、居間から玄関へと移動した。
それからも声を聞いていると、どうやら、何かの会話のものらしいことが分かった。

『…たし……くんの……と仲良く……ましたよ……。まこ……さんだって………』

声を聞く限り、彼氏と彼女の会話のようだが、雲行きが怪しい。
そして、それは案の定、危険な気配を漂わせ始めた。

『……りは…………と思います……。だって……ずっと……』

それを最後に声はまた移動を開始したが、その時、何故か分からないが、俺は声の主が、
一方的に会話を中断したらしいことを察した。声追いかけていくと、ベランダに辿り着いた。
そこで、俺は急に、この部屋に入居する時の不動産屋の話を思い出した。
この頃にはすっかり忘れていたが、例の女子高生の自殺の話し。
女子高生は、マンションの一室から飛び降りたという話だった。
まさかとは思ったが、そのまさかは的中することになる。

翌日、学校を体調不良を理由に休み、不動産屋を訪ねた。
やはり、女子高生は俺の入居した部屋から飛び降りたという。
俺は事情を話したが、前に入居していた住人が、事件から間もなくして引っ越したこともあり、
怪現象については始めて知ったとのこと、また、事故物件については説明する義務があるが、
既に入居前に話しをしたと主張され、自分が同意の上で入居したということにされてしまった。

結論として、俺はまだこの部屋にいる。怪現象が起きたのは、あの時だけだったからだが、
俺は近々、学園近くへのアパートへの引越しを考えている。あの日からというもの、部屋に
いると常に誰かの視線を感じたり、リビングに置いたソファに誰かが座ってる気配がする。
また、入浴時や、彼女と部屋でだべったり、エッチしてる時にも、覗かれているような気配を
感じるように




END
310名無しさん@ピンキー:2009/04/19(日) 04:57:51 ID:fTGuEpO1
保守
311名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 01:58:14 ID:iS37pddq
本スレ過去ログからのコピペ

女「ようこそ、滅びの学校……タイム・クラッシュ爆心地に!」
女「久しぶりですね、いたるちゃん。……と言っても、いたるちゃんは覚えてないかもしれませんね。それも無理ありません。いたるちゃんはまだ、ほんの小さな子供でしたから。」
女「私は言葉。桂言葉。あなたのお兄さんの彼女だった者です。」
言葉「外の時間で言うと、もう14年にもなるんですね、あの嵐の夜から……。」


誠「ここは一体、何だろう?」
言葉「これは……私たちが、触れてはいけないものじゃないですか…?」

その子を……
その傷ついた子供を……
わたしのところへ……

言葉「な、なんです……、今の声!?」
言葉「待って下さい、誠くん!!どこへ行くんですか!?」
誠「この嵐じゃ、もう車を出すのはムリだよ。一刻をあらそう。このままじゃ、いたるは……!」
言葉「ですけど……!!」
誠「奥でなにが待ってるにせよ、俺は行くよ……。このままだまって、妹を見殺しになんかできるか!言葉は、ここで待ってて。今夜は一緒に来てくれて、ありがとう、言葉。」
言葉「ねぇ、待って下さい!!誠くん!!」


言葉「そう、あの14年前の嵐の夜から、私はずっと、ここにいます……。もっとも、当時はここも、こんなじゃなかったんですけど……。10年前に、ある事件がもとで、死海化してしまったんですよ。」
言葉「知ってますか?この世で、死ほど平等で、無慈悲なものはないんです。あらゆる生き物は年をとり、やがては死ぬ……。どんな偉大な生命だろうと、どんなちっぽけな生命だろうと、ね。」
言葉「それに生きているということは、同時に、ゆるやかに死につつある、ということでもあるんです。」
言葉「だけど、ここにはそれがありません。ここでは何一つ年をとらないし、朽ち果てて倒れるものもない。限りなく静かで、美しい。夢でしか見られないような、理想的な世界でしょう?
    それはね、ここが……どこにも、いつにも、属さない場所、時間……殺された未来だからです!!」
言葉「歴史は、選択と分岐で成り立っている。自分で選びとったものが、新たな世界をつくり、新たな未来を生み出して行く。だが、何かを選びとるということは、同時に選ばれなかった他の未来を殺してしまう、ということでもあるんですよ。」
言葉「過去が変えられたために、存在することを許されなくなった未来……。生まれる前に、すでに殺されてしまったひとつの未来が、ここに、この死海に凝縮されているんです。」

刹那「どうして、こんなことが……!?」
言葉「゛運命゛です。 私たちはみんな、運命に導かれているんです。運命は、すべてを知り、すべてを支配します。誰も、運命から逃れられはしません……。」
言葉「みなさんがここへ来ることも、さだめられていたんですよ。もうずっと遠い昔から、ね。」

言葉「みなさんも、この世界とひとつになりたくはないですか?」
言葉「永遠の一部になりたいとは思いませんか?どう、いたるちゃん?もう、ひとり孤独に縛られてあがくこともなければ、見えない明日におびえて震えることもなくなるんです。どうです?」

いたる「い、嫌だ…!そんなの、気味が悪いよ……」

言葉「そう……。結局、傷つけあうしかないんですね……。」
言葉「みなさんは、次元の揺らぎを復活させたいのでしょう?私を倒して、ここを解放すれば、揺らぎは元に戻りますよ。」
言葉「仕方ありません……。出会うこともあれば、戦うこともあるでしょう。遠慮はいりません。死にたくなければ、本気でかかって来てください。」
言葉「すべては運命の導きのままに……!!」
312名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 22:56:30 ID:vwj9fSWr
まさかこんなとこでクロノクロス見れるとはwww 
313名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 11:40:25 ID:l9Y610OT
199x年、世界は沢越止が生きている世界と死んでいる世界に分かれた
314名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 17:26:59 ID:mXkZylVB
>>313
なんて平和なアナザーワールド・・・・
315名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 13:40:17 ID:Kk8YTD+M
ということは、誠もいたぅも瞬も世界も澤長も踊子さんも刹那もいないのか…
桂一家はいるんだろうけど
316名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 19:54:59 ID:Wz8eXjU+
登場人物の大半の存在が消える予感。
歴史は大きく変わった・・・・
317名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 22:49:58 ID:mczrInIF
つーか、沢越が存在しないと、オバフロのウィンターから始まるゲームが存在しなくなるんだよな…
沢越がいなくても存在できるのって、桂一家しかいない悪寒
318名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:06:27 ID:Wr24giau
加藤家は残るのかな?
319名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:08:59 ID:Uj5ccU8U
転載

533 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日: 2009/04/25(土) 22:56:43 ID:FOMz7Mv4
>>529
加藤家も黒田家も足利家も喜連川も甘露寺も花山院も(以下略)
今のところ、一族とは関係ないよ

つか、血族絡んでいるのは西園寺と清浦と伊藤と澤永と二条だけ



結構残りそうだ
320名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 00:45:50 ID:Wr24giau
>>319 
ありがとうございます。
あれ、確かに残るね。 
321名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 07:01:37 ID:cu587h23
その面子だと主人公は勇気になっちゃうなw
322名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 07:46:28 ID:68589YFg
死海に埋まってる未来は、ウィンターから始まる沢越の生きてる世界ということか…?
323名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 16:44:45 ID:Wr24giau
けっこう知ってる人多いんだね。
それとこのスレをみてる人も以外といるのかな?
職人さん方どこにいっちゃったんだろう・・・・・
324名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 00:04:07 ID:Gk26yl7q
一時期の盛り上がりが、今となっては懐かしいなぁ。

>>323
結構いるみたいだな。
マジでクロノクロスネタやるとしたら、沢越あぼんだと、
大半のキャラが出番ないという…
325名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 18:23:58 ID:IOaesUtj
セルジュはキッド公認の無口キャラだから、田中は…駄目かしらん?
326SINGO:2009/04/29(水) 03:58:04 ID:39MZVWSO
どうも。
いまだに発売されていないCross Days。
今回は(無謀にも)このクロイズのメインキャラを題材にしてみました。
ので投稿します。

!注意!
このSSには、ホラー描写が含まれています。
あらかじめご了承ください。
327SINGO:2009/04/29(水) 03:59:35 ID:39MZVWSO
【夢散幻想】Sin Cross Heart

「ちょっと待ってよ!誤解だってば!別に桂とは何もしてないし、何でもないんだよ、ホント!」
「もういいって言ったでしょ!嘘なんて聞きたくない!」
路夏には、勇気の言っていること全てが言い訳にしか聞こえなかった。
「嘘じゃないって!」
「まだ言うの?もう我慢できないよ。別れよ」
「どうして、そうなるんだよ!」
「勇気が浮気したからでしょ!悪いのは勇気なんだから!」
「ちゃんと聞けよ!くそっ、頭にきた!」

足利勇気と喜連川路夏の交際は、早くも亀裂が生じていた。
きっかけは、勇気が4組の桂言葉と浮気した事。
ただし、それは路夏の誤解だった。
桂と仲が良いのは事実だが、決して浮わついた関係ではない。

(どうして、こんな事に…)
そもそも勇気と付き合う以前の路夏は、同じ中学出身の伊藤誠を好きだと言っていた。
もし路夏が今でも伊藤の事が好きだったら…という疑惑は、常に勇気の脳裏にあった。
だから勇気は、伊藤の心が路夏に向かないように、4組の桂を伊藤とくっつけようと画策した。
それを図書室で桂と相談していたら、そこを路夏に見られ、密会だと誤解された。
路夏の誤解は、今に始まった事ではない。
かつて黒田光とのケンカ仲を彼氏彼女の関係だと誤解された事もあり、
とにかく路夏の誤解は、勇気と付き合う以前から絶えたためしが無かった。

《足利宅 自室》
「あ〜あ。やっちゃった…。明日どんな顔して路夏と会えばいいんだよ…」
「ヤッちゃったの?ようやく勇気もオトナの仲間入りかい?」
姉の知恵が、勇気のベッドに腰掛けて煙草をふかす。
「違う!誤解を解こうとしたら喧嘩になったんだ!てか人の部屋で煙草吸うなよ!」
「んー。こりゃ前途多難だね」
知恵はつまらなさそうに言った。まるで他人事だ。
しかし、そこは姉。弟にアドバイスしてみせる。
「じゃ、イイコト教えてやるよ。そういう時はね…」
知恵は、やさぐれた生活態度とは裏腹に、面倒見の良い所もあった。
それに、はじめに勇気と路夏を引き合わせたのは他ならぬ知恵自身だったから。
328SINGO:2009/04/29(水) 04:00:34 ID:39MZVWSO
《榊野町 商店街》
勇気の目の前にアクセサリーショップ。
物思いに浸っているうちに、勇気はいつの間にかココまで歩いていた。
心のどこかに不安があった。路夏の顔が脳裏に浮かぶ。
(そういえば、しばらく路夏の笑顔を見てないな)

勇気は髪飾りを買うと、少しだけ頬を紅くして歩みを早めた。
これを渡した時、路夏はどんな表情をするだろう?
(路夏、喜んでくれるかな)
と、路夏の笑顔を想像して、
ふと喫茶店が目に入った。
そこには楽しそうに話す路夏と伊藤の姿があった。
「……」
勇気は下を向くと、唇を噛みしめた。そして、気付かれないように、その場を去った。

《喫茶店》
「それで、泰介の奴がさー」
「う、うん…」
路夏は、笑顔とは裏腹に、実は悩んでいた。
伊藤と世間話をしてはいるが、本当は勇気との事を相談する予定だった。
しかし、楽しそうな伊藤を見ていたら、何となく言い出しにくくなってしまった。
(何やってんのよ私?これじゃ本当のデートみたい)
路夏は内心の自嘲を払いのけるように首を振る。
と、その拍子に髪止めが落ちた。
「あ。もう切れちゃった…。バスケやってると、どうもね…」
「ふーん。じゃ、俺が新しいの買ってやるよ」
「い、いいよ、そんなの」
「遠慮すんなって。今日は何か付き合わせてしまったみたいだし。その礼って事で」

アクセサリーショップで、伊藤はいつもの笑顔で言う。
「へー。結構、似合うもんだな」
「あ、ありがと。…ねえ、伊藤」
「んー?何?」
「あ、えっと、その。そう。まだ時間あるし、どこか寄ってく?」

結局、勇気の事を相談できずに一日が終わった。
だけど、悪い気はしなかった。むしろリラックスできた。
伊藤と話すと楽しかった。話術というか、伊藤は人を癒す雰囲気作りが上手かった。
(勇気だと、こうはいかないかな…)
そこまで考えて、路夏は急に後ろめたさを感じた。

路夏は安らぎを欲していた。自分を支えてくれる人が必要だった。伊藤だろうと誰だろうと。
この時、路夏は気付いていなかった。自分の気持ちが伊藤に傾いている事に。


数日後。
勇気も路夏も凄惨な事件を知る。
桂言葉が死亡。伊藤宅のマンションベランダから、飛び降り自殺をしたのだ。
329SINGO:2009/04/29(水) 04:02:25 ID:39MZVWSO
《榊野学園》
あの事件以来、伊藤はよく早退するようになった。

路夏は女子トイレの鏡の前で、あえて笑顔を作ってみた。
(伊藤は繊細だから、きっと落ち込んでる。私が励まさないと。伊藤は気が弱いし、一人じゃ何も出来ないし)
頑張ろう。私達は幸せになるんだから。

「え?伊藤が?」
「うん。西園寺さんと付き合ってるの」
伊藤と同じクラスの山県愛は言った。
(何それ?伊藤、いくら恋人が死んだからって、乗り換えるの早過ぎる!)
いえ…そもそも桂さんが恋人というのは、本当の事なの?第一、それは勇気づての情報だし。
当の伊藤は、はぐらかすだけで、結局、認めず仕舞いだったし。

「路夏。伊藤の話は聞いたよ」
「勇気…」
「不思議でも何でもない。伊藤の奴、桂と付き合ってた頃から、西園寺と浮気してたんだ」
「……」
「桂の自殺も、おおかた伊藤が西園寺に乗り換えたのが原因だろうね」
「……」
「伊藤、西園寺に付きっきりで慰めてもらってたそうだよ。今ごろ仲良くやってる頃さ」
悪い事は言わない。あんな奴、諦めた方がいい。
…と勇気が言い出す前に、
「……どうして」
路夏は肩を震わせて勇気を睨んだ。
「勇気。どうして、そんなこと言うの?」
「…どうしてって、事実を伝えに来ただけで…」
「浮気相手が逝亡くなったら、私の事が惜しくなったの?」
「だから桂とは、そんな関係じゃないって!ただの相談相手で…」
「…嘘つき」
「え?」
「嘘つき。勇気は、いっつも嘘ばっかり。いつも私が幸せになろうとすると、ぶち壊しにする」
「僕が?ふざけるなよ。逆だろ!」
「これ以上、私の人生を無茶苦茶にしないでよ!私を不幸にしないでよ!」
路夏は叫ぶ。
気圧され黙り込んだ勇気を前に、路夏は両手で顔を覆った。肩を震わせて泣きじゃくる。
「…私が幸せになったらいけないの?…人を好きになったらいけないの?」
勇気は路夏の肩に手をかけようとして、出来なかった。
そのまま路夏を置いて立ち去る。
路夏は一人、泣き続けていた。

《東原巳》
勇気は伊藤のマンションの前まで来ていた。伊藤に文句のひとつでも言ってやろうと思ったのだ。
だが、自宅に三人の女性(同学園の女生徒)を招き入れている伊藤を見て、勇気は絶句した。
(あいつ…桂が死んで間も無いのに、もう別の女を…)
しかもココ、桂が自殺した場所だろ?なに平気で女を連れ込んでんだよ!
…路夏、ホント男を見る目ないよ。どうして、あんな奴なんかと…。
「くそっ。あいつさえ…伊藤さえいなければ…」
苛立つ勇気。
不意に、背後に人の気配を感じ、勇気は振り向いた。
そこにいたのは…
330SINGO:2009/04/29(水) 04:04:04 ID:39MZVWSO
《翌日 榊野学園》
「足利君?」
「ん?山県、どうかした?」
「何かあったの?」
「別に何も。でも何だか、全部の悩みが無くなったみたいで、すっきりした」
「…?」
怪訝そうな山県。
勇気はニッコリ笑ってみせる。心地良い感覚が胸いっぱいに広がっていく。
勇気はクスクス笑いながら、山県に優しい眼差しを向けた。

「勇気…?」
「え?ああ、路夏か。何か用?」
「…え、や、ただ勇気が変な笑い方してたから」
「まあね。僕は今、すごく気分が良いんだ。何もかも許せるくらいにね」
勇気は優しく微笑む。その眼鏡の奥には、恍惚の光があった。
「そ…そう…」
「待ってて。伊藤と路夏が仲良くできるようにしてあげるから」
「え?」
「今まで嫌な思いさせてゴメン。この復習が終わったら、仲を取り持ってあげるよ」
「あ、うん。ごめんね。その、私も、ホントごめん。私…」
「喜連川は可愛いから、きっと彼も気付くよ」
「う、うん…ありがと」
「今は西園寺さんに騙されてるだけなんです。待っていて下さい。誠君の目を醒ませてみせますから」
勇気の口調は、いつの間にか他人行儀になっていた。恋人でも友達でもない、ただの顔見知り。
(…もう、あの頃には戻れないのね。それでも勇気は私を気遣ってくれてる。
それに比べて私は、いつ勇気の言葉を信じた?下らない意地を張って、弁解すら聞こうとしなかった)
勇気との想い出に、美しい物は何ひとつ無い。誤解や擦れ違いで占められていた。
それが今になって、ようやく心が通じ合ったと思う。
だけど、すでに路夏の気持ちは確実に伊藤に傾いていた。

「あ、伊藤」
見れば廊下の向こうで、伊藤と西園寺が楽しそうに話していた。
331SINGO:2009/04/29(水) 04:09:19 ID:39MZVWSO

「見つけた…」
勇気の目が、目標を捕捉した。
勇気は変貌していく。足利勇気ではない何者かに。
「二人を…幸せになんか…させ…マ…」
「!?…ゆ、勇気?」
彼(あるいは彼女)は路夏を無視し、陶然と歩いて行く。目標に向かって。
「勇気!待って勇気!」

「…?」
世界と立ち話をしていた誠は、覚えのある名前と声が聞こえたような気がして、そちらに目を向けた。
こちらに向かって来る小柄な少年。あいつは…足利?
以前、誠のマンションにまで押し掛けて来て、誠と言葉の関係を執拗に問い詰めてきた男。
いや、そんな事より…その足利が、なぜノコギリを片手に…?
誠は得体の知れない殺気を感じ取った。
「逃げろ、世界!」
誠は、恐怖に震えながらも背後に世界を庇った。
そして、足利勇気に猛然とタックル。小柄な勇気は派手にフッ飛んだ。
「な…何やってんのよ誠!?」「何すんのよ伊藤!!」
世界も路夏も状況が理解できず、誠の暴力行為を非難した。
だが、状況が理解できないのは誠も同じ…いや、次元そのものが違った。
「え…?そんな…嘘だろ?なあ喜連川、これドッキリか何かだよな?」
勇気の頭は、まるで飛び降り自殺したかのように脳天が割れ、大量出血していた。
首は、ありえない方向に折れ曲がっていた。
勇気は絶命していた。
絶命しながら、顔には氷の微笑みを浮かべていた。
誠は、その微笑みに見覚えがある気がして、今はもう逝亡い女性の名前を呟く。
「……ことのは…?」

「嫌あァー!勇気!勇気いィィー!」
路夏は絶叫しながら勇気の胸にすがりつく。
次の瞬間、信じられない事が起こった。
絶命したはずの勇気が、むくりと上体を起こしたのだ。
勇気は必死の想いで路夏を突き放した。
「来るな…逃げろ路夏!来たら…桂に殺されるぞ!…う、が…い、嫌だ、やめろ!」
勇気の身体が跳ね上がった。勇気の意思を無視して。
目標に、西園寺世界に向かって。
右手にはノコギリ。その薄刃が世界の左首筋に当てられる。
『死んじゃえ』
勇気の口から、なぜか女性特有のソプラノ声が発せられた。見知った少女の声。

そして世界は真っ赤に染められた。

「世界…世界…」
誠は、動かなくなった世界の傍らに膝まづく。絶望。
そんな誠に向かって、路夏が叫ぶ。
「あははは!いい気味よ、いい気味!!」
路夏は発狂していた。涙をこぼしながら笑っていた。哄笑。
絶命した勇気の身体を抱き締めながら。

       Dead End
332SINGO:2009/04/29(水) 04:10:17 ID:39MZVWSO
終わりです。

ホラーが苦手なかた、スマソ。
異論は認める。後悔はしていない。
333名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 14:46:39 ID:rAc4czpF
>>332

久しぶりに見てみたら意外と人いるのな
クロスデイズ発売したら少しは活気ずくかもしれない


334名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 01:22:38 ID:v3HUvK05
ショートネタ32

語り部:澤永

 ネットカフェでアクセスした匿名掲示板。
そこは、痴漢を愉しむ人間が集まるサイトで、俺はそこで数人の男と知り合いになった。
その数日後、俺は痴漢グループのリーダーに誘われ、痴漢に加わった。
痴漢実行日、お互い、北は北海度、南は沖縄まで、顔も実名も知らない人間ばかりが集まった。
俺は痴漢グループのリーダーのワゴン車内にいた。会費の一万円を全員がリーダーに支払う。
支払いが終わった後、電車に乗り込んで、リーダーがターゲットの選別をし、視線を投げる。
その先にいたのは桂さんだった。

 リーダーが桂さんに最初に接近し、続く他のメンバーが桂さんを囲う。
慣れない俺は、遅れた結果、最後に移動し、近づこうとしたが、思いもよらぬトラブルが発生した。
桂さんの傍に刑事がいたとは知らず、リーダー含む、俺以外のメンバーが逮捕されてしまった。
俺は運良く逮捕を免れたが、グループは解散、サイトは閉鎖された。








 翌日。学校の昼休みの時間。








「澤永さん、これ、忘れ物ですよ。」
「え?」




桂さんは一万円を渡してきた。




END
335名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 00:08:26 ID:bh/ZY+g1
ショートネタ33

元ネタ:アメリカンジョーク

ある夜、西園寺家で家族会議が開かれていた。

「世界、誠くん、今日挨拶に来た時、どういうことなの!」
「お母さん、今更何を言い出すのよ。まさか、気に入らないなんて言わないでしょうね?」
「気に入るもなにも、酔っ払ったまま親に挨拶に来るなんて、いくらなんでも問題外でしょ!」
「仕方ないじゃない。誠、酔っ払ってないと私と結婚する気になってくれないんだから」




END
336名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 12:48:38 ID:BxFQcygl
>>334-335

上手くキャラを生かしてて面白かった
言葉が黒いw
337名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 09:50:03 ID:BWwOpdWl
世界「この吸い付くような肌に触れたら、もう誠のブヨブヨとした体なんて触る気もしないわ…。
誠なんて下半身になにかぶらさがってるくらいしか価値のない屑男よ。
桂さん。いえ、言葉さえ居れば私は・・・ 言葉ぁ、言葉ぁぁっ!」

某百合アニメのチョイ役で世界の中の人が出てるのをみて思いついた。
いっそ捨てられた誠が精神崩壊して言葉様に襲いかかったあげくあっさり
返り打たれる展開もいいと思う。
338名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 10:01:28 ID:+JvI2zRC
>>337
どうせなら女子校版スクデイでよくね、それw
スクデイ性転換のスレってあったよなたしか
339名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 23:43:27 ID:QUuEAuGZ
アメリカンジョーク改変

ある日の夜、桂姉妹の会話。
「お姉ちゃん。どうして世界さん、青い顔してるの?」
「いいから黙って掘るのよ」


学校の屋上で、伊藤誠と西園寺世界の会話。
「世界、下着もつけずに帰る気か?」
「あら誠、なんで私がパンツ履いてないって分かったの?」
「だって、スカートを履いてないだろう。」


いたると加藤乙女の会話。
「かとう!ねえ、かとうおきてっ。すいみんやくをのむじかんよ!」
340丁字屋:2009/05/27(水) 13:25:18 ID:Mup6etM7
お久しぶりです。
三ヶ月以上も放置していてすみません(汗
もう忘れてるかもしれませんが
>>246からの続きです
341丁字屋:2009/05/27(水) 13:26:28 ID:Mup6etM7
どさっ!
その音と共に突き飛ばされた桂が床に倒れる。
同時にテーブルが倒れ、その上にあった食器が床に転がり、料理が床を汚す。
そして、身体を打ってその顔を僅かに苦痛に歪めながら、桂は呆然と私を見つめてきた。
私は、その桂から目を逸らすように自分の両手を見つめる。
そう、桂を突き飛ばしたのは他ならぬこの私の両手だった。




342丁字屋:2009/05/27(水) 13:27:11 ID:Mup6etM7
あの後、そう・・・私が桂を、この狂った島において心から信頼できる人間だと意識した後、
桂は食事を作りに台所に向かい、残された私はまた眠りに落ちた。
次に私が目覚めたのはご飯と味噌汁のいい香りによってだった。

そして、その香りのする方に私が目を向けるのとほぼ同時に
「あ、目が覚めました?」
と優しく問い掛ける声が聞こえ、
私の目には桂が入り口のドアの近くに笑顔で立っている姿が入ってきた。
「丁度今、ご飯が出来たんですよ。
 加藤さんはまだ熱があるみたいなのでおかゆにしておきましたけどよかったですか?」
「う、うん」
私がそう返事をすると、
桂は部屋の隅にあったテーブルと椅子を私が横になっているベッドに近くまで運んできて一旦部屋を出ると、
おかゆと味噌汁、そして青菜の煮付けの入った2人分の食器を載せたお盆を持ってきてテーブルの上においた。
そうやって食事の準備をしている間、桂はずっと微笑んでいて、なんだかとても・・・。
「桂、ずいぶん楽しそうだね?」
そして私はその疑問を口にしていた。
「え? ・・あ、はい。
 私、クラスメートと一緒にお食事をするのって、これが初めてだから、なんだか嬉しくって・・・」
「あ・・・」
そう、桂にはクラスに1人も友達がいなかった。
元々そのお嬢様然とした振る舞いや、男受けのいい事から女子に嫌われるタイプだったが、
クラスでも顔である私が率先して桂を嫌い桂を孤立させるように煽っていた一層その状況に拍車をかけていた。
そうじゃなければ誰かしら友達も出来ていたかもしれない。
それを思い・・・
私は身体を起こすと
「桂・・・ごめんね」
そう頭を下げて謝った。
ところが桂は一瞬きょとんとすると、また微笑みを浮かべ
「え? ・・・嫌ですねぇ。いいんですよ、食事の準備くらい。
 加藤さんは熱があるし、怪我もしてるんだから私がやるのは当然じゃないですか?」
桂は私の謝った理由をしっかり勘違いしている。
「い、いや、そうじゃなくて・・・」
「もう、本当にいいんですよ。それより冷めちゃいますから早く食べましょう」
「あ・・・うん」
桂のあまりの屈託のなさに、結局私は謝るタイミングを失ってしまった。

343丁字屋:2009/05/27(水) 13:28:12 ID:Mup6etM7
私はベッドに腰掛けて、桂も席につく。
「私、実はお料理って殆んどしたことなくって、上手に出来たかどうわかりませんけど」
桂のその言葉は謙遜ではなく、青菜の煮付けは明らかに煮すぎのようにしなれすぎて色も変わっていたし、
味噌汁の具の大根も見るからに切り方が不ぞろいだった。
「ああ・・料理が苦手ってのは見ればわかるよ」
私がそう苦笑いしながら言うと、桂は
「そうですよね。で、でも見た目はともかく味はそんなに悪くないと思いますよ」
桂が赤面しながら、剥きになったように弁解する。
私はそんな桂が可笑しくて、ちょっと意地悪を言いたくなった。
「ねえ桂・・・」
「え・」
「あんた、私が熱があるかおかゆにしたって言ったけど、
ホントは普通にご飯を炊こうとして水加減を間違ったとかじゃないでしょうね?」
「そ、そんなことありませんよっ! 私は本当に・・・!」
更に剥きになり顔を赤くして必死で弁解しようとする桂の姿は、いつも澄ましている桂とは全然違っていた。
そして私は、なんだか桂の素顔を見られたような気がして、それが変に嬉しかった。
「ごめんごめん。冗談よ」
私はそう言って笑うと、
「料理の苦手な桂が、それでも私のために一生懸命作ってくれたんだもの。
 ありがたくいただかなきゃ」
私はそう言うと、さじを手にとって、おかゆを一口自分の口に運ぶ。
桂は私の反応を気にするかのように私のほうをじっと見ている。
そして私はおかゆを口に入れた。

344丁字屋:2009/05/27(水) 13:28:56 ID:Mup6etM7
そのおかゆは少し塩加減が強いような気がした。・・・が、それ以上に何か大きな違和感があった。
この違和感は・・・・薬の味?!


−毒?−

その違和感の正体に気づいた瞬間から、私の頭の中にはその疑念が支配した。
そして私は口に含んだ料理を吐き出していた。
「加藤さん、どうしたんですか!? やっぱり美味しくなかったですか?」
私の様子を見て、桂は心配そうにそんなことを訊いてくる。
だが、私はそんな桂を、さっきまでのように好意的な気持ちで見ることはできなくなっていた。

そうだ。よく考えてみれば最初からおかしくなかったか?
あの桂がずっと意地悪していた私にこんなに親切にしてくれるなんて・・・。
そう、桂はそうやって私に親切にするフリをして、私を殺す機会をうかがっていたんでは・・?
その機会をうかがいながら、自分に心を開いていく私を心の中であざ笑っていたんでは・・?
私の心の中で、桂に対する疑惑が膨らんでいく。
「ごめんなさい。美味しくなかったんなら作り直しますから」
一方の桂はそう言いながら、立ち上がって私の手元にある食器を下げようとする。
そして私は・・・
その桂を夢中で強く突き飛ばしていた。

345丁字屋:2009/05/27(水) 13:31:25 ID:Mup6etM7
どさっ! という音と共に突き飛ばされた桂が床に倒れ、
同時に倒れたテーブルと、床に転がった食器が、料理が音を立てる。
私はその音と、
身体を打ってその顔を苦痛に歪める桂の姿に、はっと我に返る。

何故・・・私はこんなことをしてしまったのだろう。
ついさっきまでは、桂のことをあんなにも信じていたはずなのに・・・。
桂が私に毒を盛ろうとしたから・・・?
いや、本当に桂は私に毒を盛ったのだろうか?
そもそも私が感じたのは、本当に薬の味だったのだろうか?
もしかしてそれは、こんな狂った島で過ごして神経の疲弊した私の中に沸いただけの
通りもののような疑念だったのではないだろうか?
私は・・・取り返しのつかないことをしてしまったのではないだろうか?

そう思い直そうとしながら、しかし私の心には新たな疑念が生じていた。
それは桂を突き飛ばした時に、私の手のひらに当たった固い感触・・・。

桂は・・・銃を持っている!?

346丁字屋:2009/05/27(水) 13:35:40 ID:Mup6etM7
今回はここまでです。
つづきも極力早く書きたいと思います。
347名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 16:18:36 ID:QhMYVq9q
乙!
続きがすごく気になる展開
無理はなさらず、でも待ってますw
348名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 21:37:48 ID:Q+xT6Gro
おお、続き来た
テーマは「信じることの難しさ」でしょうか

……あれ、本編と変わらなくね?
349名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 14:08:59 ID:PCpfrXVk
サウンドノベルゲームの「かまいたちのナイツ」を彷彿とさせる
疑心暗鬼状態だね、怪しい重苦しいBGMを思い出す
350名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 14:48:33 ID:ALKy6Nf7
なんだまたこの人か、
もっと別のが読みたいよな。
351名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 15:21:03 ID:PoPgRagQ
そう思うんだったら職人の一人でも連れて来てもらいたい物だ
352名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 09:28:33 ID:IQxS9bDS
でもあれだけいた職人さんを、
追い出しちゃったのは君らだろ。
353351:2009/06/04(木) 09:42:44 ID:4krWyEYq
少なくともそれは俺じゃねえよ
全員引退しろとかさ絶対スレ潰すのが目的だったろあれ
マジで処刑されて欲しいわ
354名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 01:25:58 ID:KeoUjYuQ
あれが直接的な要因じゃないと思うけどね。
書き手は 荒らしらしい荒らしは気にしないものだからな。
むしろ 善意の読者と思っているやつが壊したのだと思う。
しっかりログを読み返してみなよ。
355名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 12:10:41 ID:TcsTpif/
>>354
いくらなんでも荒らし擁護しすぎだろw
356名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 03:37:11 ID:kV33Aqco
うわ
357名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 22:51:57 ID:Q+k0OEJp
読者と荒らしの見分けかた(目安)
「面白くないからもっと面白いものを書け」と言うのが読者→建設的
「面白くないから全員引退しろ」と言ったのが荒らし→本末転倒
358名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 08:15:28 ID:7Zn8WoXT
>>357
悪い点や改善点を指摘しないなら、どっちも荒らしだろw
359名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 15:33:11 ID:taAJRAhQ
>>358
それくらい大目に見てやれよ。
いくらまともな読み手でも全員そんな編集長みたいなスキル持ってるとは限らないんだし。
360名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 16:17:00 ID:8tNtjbTJ
>>359
少なくともどこが欠点かは指摘できるはず
つか、読み手も書き手も相手を尊重できないとスレは荒廃するだけ
361名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 10:03:21 ID:sVgwXHSR
>>354
そいつって、もしかしてコテハン雑談をアンチしてた奴のことか?奴も自治を装った荒らしだろ。

雑談から生まれる名案って格言もあるのにな。雑談することで視野を広げる書き手もいるだろし。
362名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 10:02:01 ID:ADQxNRPT
感想すら書かないで「読み手」だなんていうやつの顔が見たいw
363名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 05:06:04 ID:IQ+S1O49
いたるSSの神、こっちで桂偽三姉妹+m(ryを書いてくれんかなぁ…。
ブログの方の展開は面白いし好きだけど、言葉が可哀想で少し辛いorz
この板で言うのもなんだけど、ほのぼの(屮゚Д゚)屮 カモーン!!
364名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 21:17:34 ID:jGvYBQoT
>>363
更新スピード落ちてるし、きっと忙しいんだろうな……
一段落したらこっちでもまた書いてくれるかもよ
365名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 17:12:43 ID:uxZAinGB
別のスレにあった有名なコピペをベースにしたもの。
(382の内容は「皆殺しEDあってもよくね?」的なもの。)
*  *  *
392 :名無しさん@初回限定:2009/06/27(土) 17:02:42 ID:XhN9LCPI0
>>382の誠視点版。
12月24日
妊娠したことで俺に言いがかりをつけてきた世界を殺した。死体は昔見つけた古井戸に捨てた。
次の日気になって見に行ったら死体はなくなっていた…

1月7日
刹那が急に戻ってきて世界のことを調べ回ったので殺した。死体はあの古井戸に捨てた。
次の日気になって見に行ったら死体はなくなっていた…

2月3日
泰介が言葉をレイプしたことを知ったので憎たらしいから殺した。死体はあの古井戸に捨てた。
次の日気になって見に行ったら死体はなくなっていた…

3月20日
加藤や(中略)

5月5日
言葉が付きまとってくるので邪魔になるから殺した。死体はあの古井戸に捨てた。
次の日行ってみたら死体はちゃんとそこにあった。
・・・その次の日も、そのまた次の日も死体はなくならなかった・・・
366名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 17:14:39 ID:AYlxY3u/
>>364
この状況だと、先にこっちが落ちるかもしれないけどな
367アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/07/15(水) 01:02:12 ID:p+fgNFHE
>>287で言われていたみたいな「互いの血縁関係に誠が気がついた」設定のストーリーです。
(ただし、誠が知っているのは「瞬が世界<&刹那>の父」「瞬の父=自分の父?」ということだけ。)
時系列はスクイズの世界と付き合い始めた辺りですが、何かの偶然でラディッシュバケーションで、
親たちに遭遇したということでかなり適当です。
(注:途中で登場する「佐藤」はオリジナルキャラです、クール無愛想は本来刹那のポジションですが、
   内容の関係上部外者でないと話を進めにくいので…)
*   *   *
(基準日)
「止?」
瞬が自分の父親の名前を言い出した時、誠はあれっと思った。
念のため容姿を確認したが間違いない…それにこんな珍しい名前の人物がやたらといるとも思えない。
(まあ、ありえそうだよな……)
父の事を思い出しため息をつきかけた瞬間、先程聞いた踊子と舞の「娘の父親は瞬だ」という発言を思い出した。

(・・・ってことは…世界や刹那は…俺の姪・・・?)
368アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/07/15(水) 01:04:39 ID:p+fgNFHE

翌日(1日目)、昼休み。
「はぁ・・・」
図書室の奥の席に座り込んで読みなれない分厚い本を読む誠。

「・・・うるさいな…読書しているこっちの迷惑なんだが。」
何冊も本を周囲に置いて読んでいる佐藤が眼鏡を上げて誠を睨んだ。

「…ゴメン。…あ、物知りの佐藤なら分かるかな…?あのさ、日本じゃ兄妹同士の結婚って駄目だよな?」
「?…ああ、日本の法律では四親等以上でないと婚姻ができない。」
「叔父と姪って駄目だっけ?良かったっけ?」
「叔父と姪は三親等だから駄目だな…ところで・・」
「父親と叔父が異母兄弟でも?」
「片親違いは親等を数えるのに関係ないよ…ただし、認められないのは婚姻だけ。
 つまり…近親を好きになるかどうかはそいつの自由。まあ、婚姻なしだと何かと不利なんだよね。」
<選択肢>
a「ま、これは若いころのはしかみたいなもの。」
b「ま、こういう時は諦めなさいってことだね。」(ab分岐はもう少し後で発生します。)

「ありがとう・・・はぁ…言葉と別れなければ(良かったのに…)」
最後の方を佐藤は聞き取れなかったが、もともと興味がないので気にしなかった。

図書室を出てぼんやりと屋上に向かう誠。
「あっ、誠。どこ行ってたの?」
西園寺世界が彼に声をかける。誠は力のない声で答えた。

「世界・・・ちょっといいか…」
「何?」
世界は首をかしげながら誠の方を見た。

「俺達さ…付き合っちゃいけない仲だったんだ。」

「えっ…?!何…今なんて・・・」
「だから、別れてほしい・・・」
呆然とする世界の横を通り過ぎて誠は立ち去った。その横顔は泣いているようにも見えた…
369アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/07/15(水) 01:10:27 ID:p+fgNFHE
今回はここまでです。
分岐選択肢はもう少し後で意味を持ちます・・・
370SINGO:2009/07/18(土) 04:15:18 ID:xbgJ5JdO
どうも。
過疎ってるようなので投稿します。

今回はSF物に挑戦してみました。

【戦闘妖精 セスナ】
371SINGO:2009/07/18(土) 04:16:03 ID:xbgJ5JdO
戦闘妖精 セスナ

《惑星フェアリイ 上空》
フェアリイ空軍の戦闘機6機は編隊を組んで飛行していた。
警報。モニターに表示。
【UNKNOWN】正体不明の飛行編隊が接近中。
表示が切り替わる。
【ENEMY】敵性。
「JAMの小型要撃機だ。交戦する」
戦闘開始。
ガンとミサイルが飛び交う。
撃破。
「Good Kill!! Good Kill!!」

やがて戦闘は終わる。敵機は全滅。
一方、こちらは6機のうち4機を失った。
生き残ったパイロットは、どのような過程で4機が撃墜されたのか見ていない。見る余裕すら無かった。
だが、この空戦の一部始終を観察していた戦闘機が一機いた。戦域のはるか上空、安全圏にて。

特殊戦隊3番機。機種はシルフ。
パーソナルネーム【セスナ】
特殊戦機セスナの任務は、戦場で敵のデータを収集し、必ず持ち帰る事。
そのさい味方を見殺しにしても構わない。
つまりセスナは、味方が殺られるのを黙って見ていたのだ。
「B-3、任務終了。これより帰還する」
セスナのパイロット、アイン中尉はそう報告すると、愛機セスナを基地へと向けた。
さも興味なさげに。

「なあ田中」
こら。ここではアイン中尉と呼べ。レイパー少尉。
「だからその呼び名、やめろ!コードネームじゃなくて悪口だろ!」
名は体を表す。セスナは日本語で一瞬を意味し、アインはドイツ語で…
「聞いてねーよ!てか何で俺達いきなり戦争おっ始めてんだ?スクイズと関係ねーだろ、コレ」
む。このSSは作者の趣味が入っているな。小説『戦闘妖精 ユキカゼ』のパロディらしい。
「とにかく読者にも解るように説明しろよ」
しょうがないな。
372SINGO:2009/07/18(土) 04:17:38 ID:xbgJ5JdO
端的に説明すると、地球に異星体JAMが侵攻してきて、俺達はそれを阻止する地球防衛軍だ。
「月並みだな。宇宙人を撃退するために人類は協力し合うんだろ?戦争をやめて」
いや、宇宙人が攻めてきても、相変わらず人類は国どうしで戦争をしている。
「アホかー!地球の危機だってのに、何やってんだ政治家どもは!」
あと、設定では日本は核兵器を所持しているぞ。北朝鮮に対抗してな。
「総理までアホか!てかシャレになんねーぞ、その舞台設定!」
事態を重く見た人類は、惑星フェアリイに地球防衛軍FAFを設立。地球に近寄る異星体を迎撃する。
「遠征軍か。マトモな人類もいるんだな」
いや、ここの兵士は犯罪者ばかりだ。命懸けで地球を守る事で、死刑を免除してもらってる。
「何それ!思いっきり捨てゴマじゃねーか!てか俺達も犯罪者なのかよ!?」
む。設定では俺の罪状は公開されていないな。過去に愛した女性に去られたという設定があるだけだ。
「あー、そうかい」
そのせいか人を信用できなくなり、今では愛機セスナだけが唯一信用でき……ん?
こら澤永。
「んー?何だ?」
真面目に聞け。鼻糞を掘じくるな。
「お前の清浦マンセーなんて聞きたかねーよ。…で、俺のプロフィールは?」
俺の相棒役。だが、すぐに死ぬからプロフィール自体が用意されていない。
「ふざけんなー!」
確かに、ふざけてるな。名前くらい設定してあっても良いと思うのだが。
「えー!?俺、名前すら無いのかよ!てか『レイパー』って仮名なのか!?」
すでにデフォルトになっているな。お前、レイプ罪で地球追放されそうなイメージだから良いだろう。
「良くねーよ!」
373SINGO:2009/07/18(土) 04:18:43 ID:xbgJ5JdO
突如、警報。モニターに表示。
【こちらに接近する飛行体あり】
「何だ?澤永、調べろ」
田中中尉は後部座席のレイパー少尉に指示を出した。
「数1機。1時の方角。距離15マイル。速度900ノット…速いぜ。JAMか?」
【IFF識別信号、発信】
【…照合中…】
【敵味方不明】
敵でも味方でもない。
「回避する」
だが不明機は方向修正して、なおも接近してくる。
やがて不明機と擦れ違った。
目視にて確認。不明機は自軍の機体だった。
「おいおいシルフだぜ。何でこんな所に?迷子かぁ?」
「無線でコンタクトしろ」
「やってるよ。応答が無い」
モニターには
【不明機は攻撃態勢にある。敵性と判断】と表示。
田中、セスナを反転させ、交戦モード。
セスナは、その呼称とは裏腹に高い戦闘力を有している。
「田中、何する気だ!?よく見ろ、ありゃ味方だ!」
レイパーが制止した。確かにセスナと同型機だった。が、
「奴は敵だ。セスナが…そう言っている」
「待てって。IFFの故障かも知れねーだろ」
後部座席のレイパーには操縦権が無いので、止めようがない。
すでに不明機も反転し、こちらの背後を取ろうとしている。
田中、素早く不明機をロックオン。躊躇なくトリガーを引く。
ミサイル発射。
不明機は回避するが、ミサイルはそれを追尾。
直撃。火を噴き墜落していく不明機。
「味方を撃ちやがった…正気かよ…」
だが、レイパーの呟きとは逆に、セスナのモニターには
【敵機、撃墜】と表示されていた。
「帰るぞ、セスナ」
田中はまるで無関心だった。
374SINGO:2009/07/18(土) 04:20:38 ID:xbgJ5JdO
《FAFフェアリイ空軍基地》
基地に帰還するなり、田中中尉とレイパー少尉は軍法会議にかけられた。
「なぜ攻撃したのか?田中中尉」と軍予審判事が問うた。
「奴はJAMだった。殺らなければ殺られていた」
「IFFは不明と判定してたし、通信機の故障もなかったっすよ」とレイパーがフォロー。
「相手側の故障かも知れん。カメラにはシルフが写っていた。君達もシルフを視認したはずだ」
「俺はセスナの警告を信じた。敵だとセスナが判断したなら、引き金を引くのを躊躇ったりしない。たとえ」
相手がFAF機だろうと上官だろうと…と言おうとした田中はレイパーに制止される。
「あー判事。あの不明機、どこの所属か調べてくんね?戦隊マークもパーソナルマークも付けてなかったと思うし」
「そちらの要求は認める。今日はこれで閉廷」

数日後。
予審法廷で、田中もレイパーも不起訴となり、謹慎も解けた。
違法行為を立証する物的証拠が認められなかったからだ。
だが、その曖昧さに田中は不満をもらす。
「セスナは正常だ。撃墜地点は記録に残っているはずだ。残骸を調べてみろ。一目でJAMだと判る」「予審会を告訴するのかね?」
「不満はありません。田中中尉は感情的に不安定な状態にあります」
弁護役のマナミが田中を制して言った。

閉廷後、田中はマナミにさんざん注意された。
「私の面子を潰すつもり?」
マナミ・カツラは、フェアリイ空軍の数ある部隊の内のひとつ『特殊戦隊』の司令官。
つまり田中のボスだ。部下の不始末はボスの不始末でもある。
「なぜ現場に検証隊を派遣しないのです?残骸を分析すれば、セスナの無実は証明され…」
「お黙りなさい」
「やれやれ。これじゃ、誰がボスだか判らねーな」レイパーがぼやいた。
田中にとっては愛機セスナこそがボスだった。

田中とレイパーが格納庫に戻ると、一人の女性がセスナからデータを受け取って解析していた。
甘露寺七海。
階級は少佐。特殊戦隊のキャプテン。田中やレイパーの上官だ。
かつてはパイロットだったが、今では整備指導や人員およびフライトスケジュール調整をやっている。
375SINGO:2009/07/18(土) 04:23:19 ID:xbgJ5JdO
甘露寺少佐の顔には一筋の切り傷痕があった。
まるでブラック・ヂャックやキャプテソ・ハーロックのような凄味がある。
手にはブーメランを持っていた。甘露寺は、暇があれば木を削ってブーメランを作っている。
甘露寺の趣味であり、『自分の部下達が無事に帰ってくるように』という願かけでもある。
かつて甘露寺は、100%帰ってくるブーメランを作った事があった。
翼に加速度計やコンピュータチップなどを組み込んだのだ。
知能を持ったブーメランは、予想外の勢いで帰ってきて、甘露寺はそれを受け取りそこねて、
結果、顔面を3針縫う怪我をした。
「自爆傷かいっ!!てか何で私の配役がコレなわけ!?」
特待生だから特殊戦隊の頭という訳か。こじつけにも程があるな。
「特待生って言うな!それ蔑称に使われてんだからさ」
「いーだろ別に。俺なんかレイパー呼ばわりだぜ」
正式な下の名があるぶん、俺よりマシだろう。
「言っとくけど、俺の下の名はレイパーじゃなくて泰介な」
「ところで澤永。アンタ何でココにいるの?」
「へ?何でって…同じ部隊で、甘露寺の部下って配役だろ」
「いや、そっちじゃなくてさ。設定だとアンタ、すでに死んでるから」
「何じゃそりゃー!!いつの間に!」
ああ。不明機と戦闘した後だ。
「それ初日じゃねーか!殺られる瞬間すら省略かよ!てか何で俺だけ死んで田中が生きてんだ!」
すまん。実はセスナがエンストを起こしてな。墜落する前に澤永だけが機から脱出した。
「それだと死ぬのは俺じゃなくて田中だろ!」
いや、俺はエンジン再始動に成功して無事。お前は脱出後、原住獣に襲われて死亡。
「ふざけんなー!!せめて名誉の戦死にしろ!」
「ねえ。このSS、原作小説をコケにしてない?いくらパロディでもギャグ化しすぎだし」
いや、どこも改変していないぞ。原作を忠実に再現している。
「って事は、原作もギャグだったの?」
いや、正統派シリアスSFだった。ただし、それをスクイズキャラでやると、こうなった。
「俺を見ながら言うな!もう止めろ、こんなSS!」
そうだな。今日はここまでにしておくか。

To Be Continued
次回【山県大佐の挑戦状】

「続けるな馬鹿!!」
376SINGO:2009/07/18(土) 04:25:52 ID:xbgJ5JdO
終わりです。
需要があれば続けます。
377アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/07/19(日) 13:12:49 ID:DPIE4ZOj
>>367-368の続きです。

さらに翌日(2日目)、昼休み。
「はぁ・・・」
図書室の奥の席に座って、ため息をつく世界。
「(今日もか)・・・うるさいな…読書しているこっちの迷惑なんだが。」
今日も何冊も本を周囲に置いて読んでいる佐藤が眼鏡を上げて世界を睨んだ。
「…ゴメン。…あ、物知りの佐藤なら分かるかな…?恋の悩みなんだけど・・・?」
「状況によるな。」
読んでいる本から目もあげずに答える佐藤。
「女友達が振られたんだけど、理由が相手から『俺たちは付き合っちゃいけない』って言われたの。」
無論、“女友達”とは世界本人のことである。
「ほう…何か心当たりになりそうなことは?」
少しだけ興味を持ったのか、佐藤がちょっとだけこっちを見た。
「・・・ないのよ、この間あったらいきなりそう言われたn…言われたんだって。」

その時世界の脳裏に、誠が去っていった直後、黒い長髪の子(顔は見ていない)がそっちに走って行った記憶が浮かび上がった。あれは・・・桂さん?

「・・・思い出した、その彼には別れた彼女がいたんだけど、その子は別れたあとも彼に…」
桂言葉のことを(名前は出さず)無意識のうちに悪く言う世界。佐藤は本を読みながら半分上の空で答えた。

「3人で一度話し合いえばいい・・・いや、ブレーキ役を入れて4人でやりな。」
さらっという佐藤、世界は無言でうなずいた。
378アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/07/19(日) 13:16:44 ID:DPIE4ZOj
さらに翌日(3日目)、昼休み。
「はぁ・・・」
図書室の奥の席に座って、ため息をつく言葉。
「(いい加減にしろ!)・・・うるさいな…って桂さんか。読書している隣で迷惑なんだけど。」
佐藤は何度か言葉と(図書室で)あったことがあり、一応顔見知りではあった。
・・・と言っても別にそれ以上は親しいわけではない。
「佐藤さん、聞いてください…」
言葉は一昨日の放課後、誠が物凄く暗い顔をしているのに気がついた。声をかける間もなく立ち去ってしまったが、恋人として(本人はまだ誠の彼女のつもり)
気になって仕方がないので、昨日の放課後本人に聞こうとしたら、刹那から「世界が呼んでいるから屋上にこい、伊藤もそこにいる。」と言われ屋上に向かったところ…

「誠くんと西園寺さんが一緒に泣いていたんです・・・こっちがいくら尋ねても何も言ってくれずに、
 清浦さんが訪ねてもただ泣きじゃくるばかりで…西園寺さんは親友ですし…心配です。」
言葉はまだ世界が誠を奪ったことを認識していなかった…いや、意図的に記憶を改ざんしていたという方が近い。

「・・・そういえば一昨日と昨日2人から相談を持ちかけられたな・・・」
佐藤は本から目を上げて言葉を見た。脳裏にここ数日の記憶の断片が浮かぶ。

…メイと…言葉と別れなければ…
…女友達が振られたんだけど…
…西園寺さんは親友です…

「ひょっとすると・・・」
佐藤の推理は鋭かったが、残念ながら矛先が違った方向を向いていた。
「伊藤は過去の彼女…“メイ”とか言ってたな…に付きまとわれて非常に困っている。で、君を巻き込むまいと縁を切った。
 西園寺はそのことを知らず伊藤を抗議したが、訳を知ってもらい泣き…ってところかな?」
「そんな恐ろしいストーカー、私が片づけてみせます!」
珍しく意気込む言葉。

<選択肢>
A「まあ、せいぜいがんばってくれ・・・」
B「危ないからやめとけ…伊藤の好意を無駄にするな・・・」

「・・・」
無言のまま立ち去る言葉。佐藤は再び読書に没頭し始め、さっきまで自分が言いだした話を含め、言葉との会話内容をさっぱり忘れた。
379名無しさん@ピンキー:2009/08/03(月) 12:19:06 ID:wShPYS4y
久しぶりに来たら
380名無しさん@ピンキー:2009/08/04(火) 23:52:29 ID:1QQ1jqPT
誰もいないのか
381名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 00:14:21 ID:hnD+GwDI
中に誰も

おや、ケータイにメールが
382アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/08/17(月) 01:13:48 ID:P5O6l578
すみません、前回の内容ですが「ボツ」にさせてください。
いきなり4ルート分書き込むところで詰まってしまいました。orz

その代わりというのもなんですが、別のちゃんと完結した奴を投稿します。
時系列はかなり未来(本編から約10〜20年後?)
設定はアニメ版で言葉が一時的に回復したところから分岐した
(=nicebaotにならなかった)ルートってことで。
383アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/08/17(月) 01:14:29 ID:P5O6l578
『悪夢の終焉…』

「母さん、行ってきま〜す!」
「行ってらっしゃい、誠。」
西園寺世界は手を止め返事をしたあと、朝食の洗い物を再開した。

(・・・あの子、だんだんあいつに似てきたなぁ・・・やっぱり親子だわ。)
先程出て行った『誠』は無論伊藤誠ではない。世界が彼と同じ名前をつけた子供『西園寺誠』だ。
顔つきや髪の癖などは父親そっくり…と言っても『女の子』なのだが、伊藤誠が中性的な顔なのでその辺は違和感ない。
体形も父親似なのか、昔の世界以上にスレンダーだ…もっとも運動部所属のためか、華奢ではなく引き締まった感じである。

(あれから15年か…よく知らないけど、十分時効よね・・・)

ふと、過去の忘却に葬り去りたい記憶がよみがえった・・・

「・・・なんで桂さんがここにいるのよ…」「…私も誠の彼女になりたかった・・・なのに・・・」「誠…死んで・・・」

一時は付き合っていた伊藤誠と世界だったが、彼は浮気者で他の女子とも付き合っていた。
(そもそも、世界自身もすでに桂言葉がいた伊藤と隠れて付き合い始めた仲だったが。)
挙句の果てに自分は妊娠させられた挙句に捨てられた…と思ったら、その唯一の繋がりすら虚構のものだと知らされた。
やけになって学校でカッターで伊藤に切りかかったが、(休み時間中でそばにいた)言葉が伊藤をかばい、
それを胸に受けたこと(皮肉にも言葉が迷惑がっていた巨乳のせいで肋骨にすら届かず、致命傷を免れた)でそれは失敗に終わった。

・・・それからあとは世界にとって最悪の学生時代(SchoolDays)の幕開け。
伊藤はこれを機に完全に言葉側についてしまい(彼は攻撃対象が自分だと気がついていなかったらしく、
世界が嫉妬で言葉に切りかかったと思っていたようだった)、母親達からは半殺しになるほど怒られ、
桂家に頭を下げに行ったら言葉の妹に殴られる始末・・・
友人たちもさすがにあのような凶行に走った世界を庇いきれず、伊藤の説得もあって言葉の方に同情が集まり、
世界との間に溝ができた…いや、それ以前からよく欠席していたせいでずっと補修があったせいなのもかもしれない…
384アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/08/17(月) 01:17:08 ID:P5O6l578
卒業後、伊藤と言葉が結婚したらしいと聞いたときには、どうでもよくなっていた・・・

・・・あの幸せそうな妊娠した言葉を見るまでは・・・

(私も…誠の子供が欲しいな…)
願望は次第に妄想に代わり、いつしかベビー用品をそろえて子育てのまねごとを始めた。
そんなある時・・・

ショッピングモールで例の赤ん坊を乗せたベビーカーを押す言葉を偶然見かけた。

それからあとはよく覚えていない。おそらく何かで言葉がいったん子供から離れた際に・・・
とにかく世界は自宅にいて、生後1か月程度のその赤ん坊にミルクをあげていた。

最初はいつばれるかと恐ろしかったが、なぜかこのことは大事にならず、発覚することはなかった。

(桂さんは誠の子は何人でも作れるじゃないの…私にもせめて一人ぐらい…)
そう自分に言い聞かせ、自分がシングルマザーとして産んだ子にしてこの子を育て続けた。

すでに一人暮らしをしていたので、母親の踊子もこの子供の真相には気がつかず、
むしろに自分も一人で世界を育てた体験があっったためか、自分の子育てを支援してくれた。

その誘拐した女の子につけた名前は、かつて愛した彼の名から『誠』・・・

世界はふと電話のベルがなっているのに気がつき、慌てて受話器を取った。
「はい、西園寺で…え?うちの子が・・・部活中に倒れた!?」
さっき夏休みの部活の練習に行った誠が、練習中にボールが当たって意識不明だという。

(・・・そんな…嘘でしょ・・・)

世界は取るものも取らず、誠が搬送されたという病院に向かった。
385アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/08/17(月) 01:22:56 ID:P5O6l578
「・・・うちの子はッ?!」
「西園寺さんのお母さんですね?…娘さんですが大丈夫です、命に別条はありません。
 一次救命処置を偶然近くにいたうちの職員がやったそうで…入院はとりあえず大事をとってです。」
「よかった・・・」
ようやく平静を取り戻した世界は、娘の元に案内された。

「母さん…」
「誠…大丈夫なの・・・?」
娘を抱きしめ、涙を流す世界。
「ボールがボクの胸に当たって心室細動を起こしたんだって…電気ショックでもう大丈夫みたい。」
「そう…あなたが無事でなによりだわ。」
「・・・まず、ボクを助けてくれた人にお礼を言ってあげて。」
娘の視線の先には一人のやや小柄な男性がいた。
「娘を助けていただきどうも・・・」
「世界・・・だよね?榊野学園で隣だった・・・」
「この人、ボクを助けてくれた伊藤さん。すっごい偶然でボクと同じ『誠』って名前なんだ。」
その名を聞いて世界は絶句した。目の前が真っ白になり、足元がふらつく。
「母さん?!」「大丈夫か!」

気がついた時には病院のベットの上で誠(娘の方)が傍にいた。
「母さん。大丈夫?」
「ちょっと…慌てて飛び出して来たから・・・疲れたのね。」
世界は体を起こした。
「・・・誠…伊藤さんは?」
「さっき飲み物を買いに行った。あ、戻ってきた。」

紙パックを3本手に伊藤が病室に入ってきた。
「俺のおごりだ、飲んでいいぞ…」
「ありがと。」「・・・」
紙パックを手にしばし固まる世界。言いたい事が頭の中でぐるぐるしてまとまらない。

「誠くん、ちょっと悪いけど君の母さんと話があるんで…席を外してくれない?」
「分かった、じゃあ母さん。2人で大人だけの会話を楽しんでねww」
「もう・・・」
386アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/08/17(月) 01:25:31 ID:P5O6l578
2人になってからもしばらく両者は無言のままだった。
「・・・ねえ誠。あの後…卒業してからのことかいつまんで説明してくれる?」
「ああ、あの後大学に行かずに結婚して、母さんのツテでここに就職したんだ。」
「・・・桂さんは?桂さんと結婚したのよね?今どうしているのかしら?」
伊藤は数秒ほどドキッとしたような顔で目をそむけた。

「・・・言葉は…死んだ」
世界は耳を疑った。
「へ・・・今なんて・・・」
「もう10年以上前になる…生まれたばかりの娘が誘拐されて…そのショックで自殺したんだ・・・」

「嘘でしょ・ ・ ・ ・・・だ、だって桂さんの性格からして誠を置いて死ぬなんて…」

「出産のとき難産で、それが原因で以後子供が産めない身体になって…それなのにその子を・・・」

(・・・そんな…出来心でしたことが・・・)
世界は自分のしたことをひどく後悔した。

・・・しばらく無言のまま病室の空気が流れた。
「そ、そうなんだ…私はあの後・・・えっと…あの…娘…さっきの子…」
必死で話題を変えようとするがボロを出す世界。

「誠くんのこと?俺と同じ名前だけど何かあるのか?」
「う…うん。べ、別にいいじゃない。悪い名前じゃないし・・・誠実な子に育ちますようにって…」
必死に口実を探す世界。そこに伊藤が追い打ちをかける。
「女手一つで大変だったろ。」

「な…なんで知ってるの?あたしが結婚もしてないこと・・・」
「世界が気絶中に誠くんに聞いたから。」
世界は向こうがこっちの経歴を知っているのではないと知って安心したが、
同時に余計なことを誠(娘の方)が言ったのではないか気になった。

(…まずい、あの子には「あなたのお父さんと私は、大人の事情で結婚できなかったの。
  代わりにあの人の名前をもらって付けたのよ。」て言っておいたんだった・・・)

「…ねえ誠、うちの子なんて言ったの?失礼なこと言わなかった?」
「いや、名前を名乗っただけだよ。珍しい名字だから、母親の名前を聞いたら案の定『世界』だったんだ。」
「・・・そ、そうなの…『世界』なんてめったにないでしょうからね〜。」
必死に取り繕う世界、その頬に冷や汗が流れた。
387アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/08/17(月) 01:29:21 ID:P5O6l578
結局世界が倒れたのは、ただのめまいだということですぐ退院はできた。
しかしその日の晩・・・
「西園寺さん…わたしの赤ちゃん返してください・・・」
「桂さん…誠は渡さないわよ!!」
「分かっているんですよ、私の娘を連れてったのあなただということ。なんなら…」
誠(娘)の手をつかむ言葉、誠がこちらを見つめる。
「待って!!」
誠の開いている方の手をつかむ世界。言葉はそれを無言で見つめると・・・

・・・ノコギリが腕の肉をひきさく音と誠の悲鳴・・・世界は誠の手を握ったまま後ろに倒れた。

「嫌ぁぁっぁ…夢か。」
時刻はまだ夜…汗だくになって世界は目を覚ました。
「母さん?」
悲鳴で目を覚ましたらしい誠(娘)が部屋に入ってくる。世界は彼女を抱きしめた。
「誠…大丈夫?…今日は一緒に寝ましょう…」
「?!」
少々動揺しながらも、母の様子を見てうなづく誠。
(あなたは私の生きがいなの…絶対に…絶対に離さない!!)


次の日の朝食時に誠(娘)が世界に質問した。
「母さん、伊藤さんって素敵な人だよね。」
「え?ええ、そうね・・・」
突然の質問にどぎまぎしながら答える世界。
「ボクが16にあったらあの人と結婚してもいい?」
「・・・?! ダメよ!」
「なんで?結婚してたけどずっと前に奥さん亡くなっているって言うし、愛があれば歳の差・・・」
「ダメったらダメ!!!」
世界は鬼のような形相で相手を睨みつけた。誠はすっかり恐縮してうなずいた。
388アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/08/17(月) 01:30:50 ID:P5O6l578
その日の夜、世界が仕事から戻ると来客がいた。
「誠?誰か来ているの?」
「伊藤さんたちだよ。」
一瞬ドキッとしながら居間に入ると伊藤誠がこちらに気がつき会釈した。
・・・そしてその隣にいるのは・・・桂言葉?・・・

「か、桂さん?!(自殺したんじゃ・・・)」
「はい?…西園寺世界さん…ですよね?はじめまして、桂心です。」
「この人は俺の義理の妹の心。言葉の妹さん。」
「な…なんだ…てっきり・・・ハハッ…・・・」
世界は笑ってごまかした。ちょうどその時誠(娘)がお茶を入れてきた。

「病院で念のために検査を受けていた時また会ったんだけど。伊藤さん、母さんに話があるんだって。」
(なんで住所教えたのよ・・・)
世界は心(思考的意味で)の中で舌打ちをした。伊藤は気がついていないのか話を続ける。
「世界って、女手一つで働くの大変だろうけど、明日は日曜だから休みだよね?」
「ええ、まぁ・・・」
「俺のうちに来ない?パーティやるんだ。」
「なんのパーティ?」
「・・・少し早いけど、お盆の・・・」
祭られる相手が誰だか見当がついた。行きたくはないが、下手に断ると何か怪しまれる気がした。
伊藤誠から詳しい時間を聞いて世界はうなずいた。

その晩も悪夢だった・・・今度はあの冬の日、妊娠中の自分が伊藤誠を殺害する夢だ。
そのあと言葉が自分に復讐の刃を向け、首が切り裂かれるのを感じた。

・・・そこまでは、当然の報いという考えがどこかにあった・・・

「誠くんの彼女は私なのに、西園寺さんが誠くんの赤ちゃんを産めるはずがないじゃないですか・・・
 だって誠くんの彼女は私なんですよ…だから“この子は私のもの”です。」
ノコギリのギザギザが腹に触れ、首の時以上の熱さと激痛が走る。
「やっぱり…誠くんによく似ていますね・・・」
胎児をつかみ、もち去っていく言葉。世界は最期の悲鳴をあげた。

「や…めて・・・・・・返し・・・・て・・・!!」
389アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/08/17(月) 01:36:37 ID:P5O6l578
また汗だくになって目を覚ます世界。
(・・・あの時、私は伊藤に妊娠させられた挙句に捨てられたと思ったけど、妊娠は誤認と分かってすごく失望した。
 あのままだったら…誠を殺してこうなっていたかも…でも、バカよね。自分が手に入れたいものを、手に入れなくして…)
そこまで思ったとき、昨日と先程の悪夢に出てきた言葉が浮かんだ。

(・・・あの“桂言葉”は、あたし自身だったのかな・・・)

夢の中の自分の場合と違って、きっと彼女は恨みの矛先を向ける相手も分からずに死んだのだろう。

(明日、謝ろう・・・もうこの世にいないけど。)
布団にもぐり目をつぶる世界。 その頬にかすかに涙がこぼれていた。


翌日の夕暮れ…向こうの家に着くと、心が出迎えてくれた。どうも誠(娘)は前に来たことがあるらしく、彼女になついている。

「誠くん、よく来てくれたわね・・・」
「うん!」
それを見て世界は彼女に頼みこんだ。
「ちょっとこの子の面倒見てもらえますか?私はまこ…いえ、伊藤さんと話があるので。」
「ええ、いいですよ。誠くん、こっちにいましょう。」


伊藤と2人になると世界は部屋の鍵をかけた。

「桂さんの死について謝りたいの…」
「・・・続けて。」
「桂さんの赤ちゃんが誘拐された事件の犯人は私。どうしても誠の子が欲しかったから…それで気がついていた時には誘拐していて・・・」
過去の罪を告白する世界。伊藤は最後まで無言だった。

「・・・子供を失う悲しみが今さらになってだけど分かった・・・桂さんにゴメンねって謝りたいよ…
 それで許してもらえるとは思えないけど…うっ…せめて私に怒りを向けるぐらい…もう絶対できないけど…ひっく・・・。」

「できますよ・・・許してあげます。」
390アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/08/17(月) 01:38:52 ID:P5O6l578
背後の声に驚いて振り返ると心がいた。

「・・・お姉さんの代わりとして…ってこと?」
「いいえ…この私、桂言葉は西園寺世界の謝罪を受け入れます・・・いままで私の子供を大切に育ててくれたこと…
 それで誘拐したことは許してあげます…誠くんもあなたに懐いているみたいだし…」

「・・・そんな…心さん、子供だましはいいわよ…」

心(言葉?)はブラウスのすそをまくりあげ、ブラジャーをずらしてその大きな乳房の端の方を見せた。
白い桃のようなふわっとした表面についた一筋の光る傷…世界がカッターで言葉の胸につけたものだ。

「・・・じゃ、あなたは本当に桂さん?・・・死んだはずじゃ・・・」
呆然とする世界に伊藤が語りかけた。

「ゴメン…言葉についての話だが、ありゃ全部おれの嘘だ…誤解しないように言うと誘拐のショックで落ち込んでいたのは本当で、
 その悲しみをどうにか乗り越えて・・・今、こうして生きているんだ・・・」
世界はその時、言葉の腕時計に隠れていた古い幾重もの傷痕に気がついた。
「誠くんを見た時、もしやと思って・・・世界が自白してくれるように仕向けたんだ。」

世界は呆然とした・・・それと同時に安堵の気持ちが浮かんだ。
「良かった…桂さんが生きていて・・・嬉しい…桂さん、ゴメンなさい…誠のことについて全部…」
「西園寺さんは私の初めての友人ですから…そういってくれるのはうれしいです。」
世界は言葉のふくよかな胸の谷間に顔をうずめて涙で濡らした、詫びの意味も含めて傷跡をなでる。
ほっとしたことで世界はどんどん眠くなってきた。よく考えたらここ数日悪夢のせいでろくに寝てないのだ・・・
* * *
「・・・ねぇ誠…あんたにも謝っておかなきゃ…桂さんのこの傷…あれ本当はあんたを狙ってやったことなの。」
気が緩んだためか、つい口調が昔の物に戻る。
「え?」
「あんたがあたしを弄んだ挙句に捨てた…そうあの時思ってたの…本当は・・・」
『桂さんを心配していただけなのに』と言いかけたが、そこから先を言うことができなかった。

「・・・誠君を殺そうとした人なんか、生かしてはおけませんから・・・」
(い…息ができない・・・)
世界の鼻と口を、言葉の真綿のような柔らかな手がふさぎ締めつける。伊藤の方を見ると…

「誠くんには『お母さんの単身赴任で俺達が引き取ることになった』って言っておこうな・・・」

(嫌…助けて・・・苦しィィィ・ ・ ・ )
391アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/08/17(月) 01:43:31 ID:P5O6l578
世界は汗だくで目を覚ました。

(夢?・・・ってここは・・・)
「母さん…よかった…いきなり呼吸停止になるんだもん・・・」
誠(娘)が世界に抱きつく。

「すみません…どうも胸で鼻と口を塞いでいたらしくて…ww」
横で照れくさそうに頭を下げる言葉と、やれやれと言いたげな顔の伊藤がいた。
「まさか人工呼吸を3日間に2度もやるとは・・・」

「ところで、言葉さんの胸に顔うずめていたって・・・母さんひょっとしてレズ?」
「ち、違うわよ!!」
「冗談冗談…母さんに大したことがなくてよかった。」

「・・・ん?ところであんた言葉さんって…?『心』ってあの時は名乗っていたのに・・・?」

「母さん…いつまでも子供扱いしないでよ…ボクが今回の仕掛け人。今までのは全部ボクの入れ知恵だよ。
 ・・・いつも一つな真実!そんなこと知っているにきまっているじゃん。」
世界はなぜ話したといわんばかりに伊藤たちの方を見た。2人は違うと言いたげに首をふって笑ってごまかす。

「最初に伊藤さんと会ったのは偶然だけど、名前同じだし顔似てたから僕の父さんじゃないかって気になったんだ。
 そしたら伊藤さんの方でも心当たりあるって言うんで、母さんを試したんだよ。」
「試す・・・?」
「『伊藤さんと結婚したいな』ってやつ。つじつま合わせのため言葉さんには死んでもらってww 妹さんのふり。
 案の定母さんは理由も言わずに否定するだけだし、これはボクと伊藤さんが親子だというのを隠しているんだな…って。」

「・・・そう。全部分かってたのね…そうよ、あなたのお父さんは伊藤誠さん。そして本当の…」

「…理由は、『母さんの恋が浮気だったから』でしょ…すでに伊藤さんは言葉さんと結婚していたから、
 母さんボクに父さんのこと隠して育てた…でも、真実はお見通しだよ!」

(…はい?…そうかww なるほど、誠は自分が私の子だと信じ込んでいるんだ・・・所詮は○学2年生かww)
どこかおかしくなって笑いだす世界。

「その通り、世界は今まで女手一つで大変だったな…これからは協力するから。」
「本妻の私からもお願いです。うちの人の子を大切に育ててくださいね。」
どうやら3人で口裏を合わせ、この子を傷つけないようにしようというつもりらしい。

「うん。過去のことは水に流して・・・みんなでこっちの誠に乾杯しましょう!!」
(END)

刹那「…今回、どこまでが世界の夢だったんのかな…?」
392アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/08/17(月) 01:44:56 ID:P5O6l578
以上です。
実質初めてなのに長文すみません。
393名無しさん@ピンキー:2009/08/17(月) 10:42:03 ID:eTdH/P9n
GJ!
面白かったよ。
394名無しさん@ピンキー:2009/08/17(月) 22:25:57 ID:zNV/wQnM
>>392
初めてなのにこの出来はすごい。
誰も書かなかった展開だけに読んでてドキドキした。
長文も全然OK。

言葉様は我が子が誘拐されていたというのに笑って許すとは寛容すぎる・・・
世界はそれにしてもなんという悪・・・(w
395アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/08/18(火) 13:27:46 ID:Lxak5uiM
>>394
補足、
劇中「誠」が2人いるので紛らわしいですが、区別の必要がある場合伊藤誠の方を「伊藤」。
西園寺誠を「誠(娘)」と表現しています。

ちなみにこのプロット、ある同人誌で「言葉が世界の腹を裂いて『誠君の赤ちゃんください』。」
というアニメ版以上の恐怖オチの奴を見て思いつきました。(立場は逆で、そこ以外は無関係ですが。)

あと、なんか世界に都合がいい展開のように思えますが、考え方によっては…
・はっきり誘拐の描写がないので、西園寺誠≠言葉の子(ベビーカーの子)の可能性。
(顔が似てるのは伊藤と誰か別の女性との間の子?)
・最後の刹那のセリフの通り、夢と現実が入り混じっている内容なので、ラストも夢?
(世界が殺されているのが現実で、そこからは走馬灯…)
…世界が嫌いな人はそういった解釈でもいいです。

でも、言葉の性格からすると、マジで「娘が生きていて良かった」って喜んで、
復讐心とか後回しにしそうなんだよなぁ・・・
396名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 15:49:13 ID:kZ/dfNgR
言葉様は娘になんて名前を付けていたのでしょうか。
やはりまこと?
397名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 15:50:15 ID:kZ/dfNgR
彗星のような新星が出現して嬉しい限りでつ。
おもしろ(・∀・)イイ!
398名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 16:23:46 ID:yDPUBMl0
なんで娘をわざわざ僕っ子(笑)にしたり、伊藤誠に誠『くん』って呼ばせてたのかが気になるんだが

あと、読み手が世界をよっぽど好きじゃないと、殺人未遂かつ誘拐犯(言葉たちの子でなくとも誘拐は事実だよね)が
何の制裁も受けないってのは納得しがたいが二次創作なんで何でもアリか
399名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 20:20:55 ID:m4ejUFKo
神キタ---(゚∀゚)---!
SSスレを盛り上げてくださいまし
キャラの性格をよくつかんでいてうまいなあと感心しますた
心ちゃんは成人したら言葉様みたいになるんかね?
400アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/08/18(火) 21:14:55 ID:Lxak5uiM


>>396-399まとめて、
>言葉がつけた娘の名前
決めてませんww
というか新キャラの名前が決まらないので「父親の名」ということにしました。
ちなみに同じ戸籍内(親子兄弟)で同じ名前は付けられないので、
言葉がつけた名前は少なくとも「誠」ではありません。

>ボクっ娘
・・・アイドルマスターって知ってます?それを直前まで見てたので…真のイメージが混入ww。
もう一つの理由は一人称に区別をつけるため(伊藤誠→俺、世界→私、言葉→私)
必然的に「私」がこれ以上増えると誰のセリフか分かりにくいので「ボク」になりました。

>制裁
まず誘拐ですが刑法だと(未成年者略取か営利目的かで変わるが、罪が重い営利目的の方でも)
公訴時効は7年なのですでに時効なんです。(誠娘の年はぼかしてあるが、10年以上なのは確実。)
民事の方で賠償金を取ることはまだできますが、この場合世界を母親だと思っている誠娘に
真実を知らせる結果になるので黙っておこう…と2人は考えています。

次に言葉への殺人未遂ですが、10年以上前にすでに世界は制裁を受けています。
(年齢が低かったことと大事に至らなかったのでムショ入りにはなりませんでしたが。)
401名無しさん@ピンキー:2009/08/18(火) 22:06:57 ID:gMY+0VcE
ひらがなで「わたし」か「あたし」
「私」だとしても文脈で分かるんじゃないかな
書き手の自由だとは思うけどね

それから制裁は法によるものだけじゃないだろwww
被害者にとっちゃ犯罪は一生犯罪で、時に癒されるものではない
世界に肩入れしてない限り、単なる屑女の一人勝ちにしか見えないのが残念

水を注すような事を言ってすまんな
ともかく乙
402名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 06:54:30 ID:Q/2mE61B
言葉様の寛容さと慈悲深さに泣けた
世界の動揺振りに相変わらずワロた(w
なんて自分勝手な

とにかく乙です
403名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 12:06:34 ID:Yn7tlo6B
屑女が屑女らしい屑行動を取ったという事ですね
404名無しさん@ピンキー:2009/08/20(木) 09:17:07 ID:2KWZN/wJ
ここが最後尾か
405名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 23:07:29 ID:9ZODB71I
保管庫ないの?
406名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 23:12:14 ID:Wdqt0Qdf
>>405
作ろうか?っていう人がいたが、
職人さん側が「作品1個1個に許可とってね」という意見だったのでお流れに

このスレはエロパロの中でも他とは空気が違うようで
407名無しさん@ピンキー:2009/08/30(日) 23:23:45 ID:YGDL2FmC
確かに空気が違うな
408アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/08/31(月) 15:46:52 ID:lJHrWqj/
>>406
じゃあ、一番新しく投稿した自分からあらかじめ言っておきます。
「保管庫ができた場合、自由に転載どうぞ。」
409名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 22:09:47 ID:R6DCZU+l
127 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2008/10/25(土) 22:00:18 ID:M204IyHK
>>126
基本的に2chに投稿したのであって
勝手に他所へ転載されるのを承諾したわけじゃないよ
2chの管理人がするというなら話は違うけれどさ

わたしも元書き手だけれど
HNをいれたものいれないもの含めて
他所には置いてほしくないと思ってる
削除依頼をすればいいというのも乱暴な話
いなければ勝手に入れてしまうというのはおかしな理屈でしょう
「一定期間の告知中、承諾をしたものだけ」というのが最低限の礼儀だと思います
___________________

BBSPINKは2chとは厳密には違うということなので、
若干誤りはありますが、書き手の意見はきちんと尊重しましょう。
でもね、ひとが頑なになるというのは、それなりに理由があるものなんですよ。
それがこのスレの過去と今です。
410真夏の白日夢:2009/09/02(水) 22:27:04 ID:Zsza4/rU
いたるSSを投下します。
ちょっと季節外れになりましたが夏の海岸が舞台です。
今回はあの方とあいつが登場します。
411真夏の白日夢:2009/09/02(水) 22:28:39 ID:Zsza4/rU
いたるはいつの間にか道路から砂浜に下りる階段の上に立っていた。
『ここってお母さんのマンションの前?』
そして気のせいか子供の泣き声も聞こえる。
『えっ?泣いてるのは私?視線も低い!何で?』

「おにーちゃー、おにーちゃー、何でいないのお?」
『こ・こら泣きやみなって!恥ずかしいじゃん!』
いたるがそう思っても幼いいたるには通じないようだ。
幼い自分の格好から推測すると約10年前の夕方に戻ったようだった。
でも幼い自分は今の自分に気づいてないようだった。
『つまり・・・夢か。』
今のいたるには意識だけがあって体が無いのと同じだった。
だから自分の身を抓って夢か現実か確かめることすら出来ないのだ。
でも全ての感覚を共有しているわけではないらしく
幼い自分と違う方向を見ることもできた。
簡単に言えば幼い自分におぶさって周りを見回しているような感じだ。
412真夏の白日夢:2009/09/02(水) 22:30:33 ID:Zsza4/rU
どうやら幼いいたるは家出をしたものの家に誠が不在だったらしく
寂しくて泣いている様だった。
『こういう事よくあったよね。今じゃちょっと懐かしいかな。
 でもこうして泣いてると必ずお兄ちゃん来てくれたよね。』
いたるがそう思っていると手が伸びてきて誰かが幼いいたるの頭を撫でた様だ。
『そうそう、こんな感じでお兄ちゃんが・・・って・・・ええっ!?』

幼いいたるの頭を撫でていたのは同じ位の背の女の子だった。
『この子一体?榊野の制服着てるけど体が小さい頃の私と同じくらい?
 しかもこの子白目剥いてるし口も随分大きいしなんかすごく変だよ?』
いたるがそう考えると相手はギロリと睨んできた。
『ああっとゴメン!私を慰めてくれてるんだよね?』
いたるがそう思うと相手はコクコクと頷いた。
『優しいんだ。』
いたるがそう思うと相手はポッと頬を赤らめた。
どうやらこの女の子にはいたるの存在がわかっているようだった。
413真夏の白日夢:2009/09/02(水) 22:31:40 ID:Zsza4/rU
やがて幼いいたるも泣き止んでその女の子を見た。
目が合うと
「泣かないで。」
と女の子は可愛い声で言った。
「うん、ありがとう。」
幼いいたるの顔にようやく笑顔が戻ってきた。
「お名前は?」
「いたるだよ。」
「私は人からコトノハサマって呼ばれてるの。」
「じゃあコトノハサマだね。」
「うん。」

『コトノハサマあ?何この子自分を様付させて呼ばせてるの?
 ってそんな事より様をどけるとお姉さんと同じ名前!?
 よく見たら10年前のお姉さんと同じ髪型!』
いたるがそう思うとコトノハサマはまたジロリと睨んできた。
『わわっゴメン。』
幼いいたるは自分の頭の上を見た。
どうやらコトノハサマからはいたるの意識が
幼いいたるの頭の上に見えるらしかった。
「いたるの頭に何かついてる?」
コトノハサマはフルフルと首を横に振った。
414真夏の白日夢:2009/09/02(水) 22:32:45 ID:Zsza4/rU
「これ。」
そう言ってコトノハサマは幼いいたるの手に何かを握らせた。
「くれるの?」
コトノハサマはコクコクと頷いた。
手を開くとそこには汚れも欠けもない綺麗な桜貝の貝殻があった。
「わあっ綺麗。」
桜貝の貝殻は珍しくは無いけれどここまで状態がよいものは希少だ。
幼いいたるは完全に目を奪われていた。
『こらっ人から物をもらったらありがとうって言わなきゃ。』
といたるが思うとコトノハサマはいたるの方を見て少し笑ったようだった。

「ねえコトノハサマ、これからいたると遊んでくれる?」
コトノハサマはコクリと頷いた。
「やったー。」
と幼いいたるは万歳をして喜んだもののその上げた手を誰かに掴まれた。
見上げるとそれは父親の止だった。
「こらっいたる!何度も家出しやがって!」
「やー、おにーちゃと会うの!おにーちゃがいいの!コトノハサマと遊ぶの!」
「わがまま言ってないで帰るぞ!」
と強引に連れて帰ろうとした止の動きが止った。
見るとコトノハサマが止の左腕を掴んでいた。
415真夏の白日夢:2009/09/02(水) 22:33:49 ID:Zsza4/rU
「おいこら放せ!俺は今からこいつを連れて帰るんだ!」
「ダメです・・・連れて帰るならもう少し待って下さい。」
「ガキの遊びはもう終わりなんだよ・・・って何だこいつすげえ力だ。」
止がいくら力を入れてもコトノハサマは涼しい顔でビクともしない。
「てめえいい加減に!」
そう言って幼いいたるを掴んだ腕を放してコトノハサマを殴ろうと
拳を作った瞬間止は宙に浮いていた。
「何?」
そう呟くのと海に体が着水するのと同時だった。
何と止はコトノハサマによって10m以上も先の海面に瞬時に放り投げられたのだ。

「大丈夫?」
コトノハサマはいたるの身を案じて近づいた。
「いや・・・」
それなのに幼いいたるは近付かれた分だけ後退した。
目にはまた涙があふれていた。
「怖いよーー!」
そう言って幼いいたるはコトノハサマに背を向けて砂浜に向かって駆け出した。
『こ・こら!お礼も言わないで逃げるやつがあるか!
 あの娘はあんたを助けてくれたんだよ!
 そりゃ体の何倍も腕が伸びたりしたけどさ・・・・・
 とにかく引き返せ!!』
そんないたるの思いは幼いいたるには届かないようでコトノハサマとの距離は
どんどん離れていく。
『ごめんねー。私だけでもお礼を言うからね。助けてくれてありがとうー!!』
いたるはコトノハサマの方を向いて懸命にお礼を言った。
でもコトノハサマは明らかに肩を落として悲しんでいた。
416真夏の白日夢:2009/09/02(水) 22:34:58 ID:Zsza4/rU
幼いいたるは全速力で走っていたもののやがて躓いて倒れてしまった。
幸い砂浜だったので痛くはなかった。
でも倒れたときに胸元からペキッと何かが割れた音がした。
オーバーオールの胸元からその割れたものを取り出すと
さっきコトノハサマがくれた桜貝の貝殻が1/3程欠けてしまっていた。

「あっ!」
幼いいたるは無性に悲しくなった。
「せっかくコトノハサマがくれたのに・・」
でも悲しさの原因は貝殻だけじゃなかった。
コトノハサマは泣いている時に頭をなでてくれた、綺麗な貝殻をくれた、
親父から助けてくれた。
初対面とは思えないほどとても親切にしてくれたのだ。

それなのに自分は怖がって逃げてしまった。
きっとコトノハサマは悲しんでいると幼いいたるは思った。
そう思っただけで胸の奥が苦しくなって居たたまれない気持ちになった。
幼いいたるは立ち上がって元来た道を走り始めた。
『よしっいいぞ!さすが私!』
417真夏の白日夢:2009/09/02(水) 22:36:23 ID:Zsza4/rU
「コトノハサマアどこー!?」
『どこなのー!?』
二人のいたるはさっきの階段の所まで戻って辺りを探していた。
でもいそうにない。
いたるは何故かふとある場所が思い浮かんだ。
『お兄ちゃんの秘密の場所!でもどうやって知らせようかな・・』
いたるがそんな事を思っていると何故か幼いいたるはとことこと
そちらの方向に歩いて行った。

そこは防波堤だった。
夕暮れの光景が綺麗に見えるので誠お気に入りの場所だった。
そこにコトノハサマはいた。
彼女は沈みかけの夕日を見ながら体育座りで寂しそうに佇んでいた。
「コトノハサマア!」
幼いいたるはそう叫びながら駆け出した。

コトノハサマは立ち上がって振り返るとパアッと表情を明るく変えて
いたるに駆け寄った。
「ごめんなさいコトノハサマ。」
幼いいたるはようやくそれだけ言ったけどそれ以上は言葉にならなかった。
後はコトノハサマの服を掴んで泣いているだけだった。
『もうひとつあるよね?ほらっちゃんと言いなよ、ありがとうって。』
いたるがそう思うとコトノハサマはいたるを見て首をフルフルと振った。
『いいの?』
今度はコクコクと頷いた。
”もう伝わってるから。”と言いたげだった。
418真夏の白日夢:2009/09/02(水) 22:37:33 ID:Zsza4/rU
「もう泣かないで。」
そう言われてなんとか泣きやんだ幼いいたるは
「うん。じゃあ一緒に遊ぼう。」
と改めて言った。
でもコトノハサマはフルフルと首を横に振った。
「やっぱりいたるの事嫌いになった?」
とまた泣きそうになっていた。
「違うの。もう行かなきゃ。」
そう言ってコトノハサマは今にも沈みそうな夕日を指差した。
「でもまたいたる一人になっちゃう。」
幼いいたるは本当に寂しそうだった。

「大丈夫。もうすぐいたるちゃんが一番好きな人が来るから。」
そう言うと同時にコトノハサマの体がフワリと浮き始めた。
「えっ?待ってよ!」
「じゃあね。いたるちゃん。」
コトノハサマはそう言うと幼いいたるの頭に手をやって撫で始めた。
その間にもゆっくりと体は浮いていってるので傍目にはコトノハサマが
幼いいたるの頭の上で片手で倒立をやってるように見える。
419真夏の白日夢:2009/09/02(水) 22:38:43 ID:Zsza4/rU
それも限度が来たのかとうとうコトノハサマの手が頭から離れた。
するとコトノハサマは空中で逆立ちから通常の体勢に変えて
二人のいたるに手を振り始めた。
『さようなら。それと色々ありがとうコトノハサマ。
 あのバカ親父をぶっ飛ばしてくれて嬉しかったよ。』
「またね・・・グスッ・・・」
やがてコトノハサマの姿は段々と空の色と同じになって
溶けるように見えなくなった。

「いたるーそこにいるのかー!?」
と誠が現れたのはコトノハサマが消え去るタイミングと同じだった。
そしていたるの意識もそこで途切れた。
420真夏の白日夢:2009/09/02(水) 22:39:34 ID:Zsza4/rU
桂家リビングにて。


「いたるちゃんいたるちゃん。どうしたんですか?」
いたるは言葉に揺り起こされた。
「え?」
「泣きながら寝てるなんて何かあったんですか?」
「お姉さん?」
「昼真っから何泣いてるんだよ、いたる。」
そう言いながら誠も心配そうだ。
「コトノハサマ・・・」
「えっ!?一体どうしたんですか?いたるちゃん。」
いきなり様付けされたと思った言葉は当然驚いた。
いたるは左右を見回して
「夢・・だよね?」
とポツリと言った。
そして次の瞬間いたるは突然立ち上がって自分の部屋に駆け込んだ。
何が起こったかわからない誠たちはただ呆然としていた。


いたるの部屋にて。


いたるは小さいころに集めた大事な小物をカンペンケースに入れていた。
それをあけると接着剤で補修されたと思われる継ぎ目のある桜貝の貝殻が出てきた。
いたるは廊下で心配そうにしていた誠にそれを渡して
「ねえお兄ちゃん、これに見覚えある?」
と訊いた。
「ああこれか。大事な友達にもらったんだろ?
 でもお前が壊しちゃったから俺が直してやったんだよ。
 あの時のお前ってなかなか泣きやまなくてさ・・・・・・」


End
421名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 22:47:36 ID:tAEiLgwm
GJ!
いい話だ、和む
いたる可愛いな
422名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 10:48:51 ID:WsSk0KE0
GJ
>パアッと表情を明るく変えて
ここがどうしても想像できなかったけど面白かったですw
423名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 21:25:59 ID:2/MPWRgJ
>410-420
いたるSS神!乙であります!!ほのぼの話は相変わらず神ですな。
コトノハサマ書くとは思わなかったなぁ。それでも和むって凄い。
でも、「あの方」と「あいつ」って差別過ぎますw
ブログの連載も頑張ってくださいね。いつも見てますぞ!

でもこっちの方でもほのぼの話やアクション系を書いて欲しい…。
424名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 22:21:34 ID:CqMwz/jS
>>420
GJです! まさかのコトノハサマ降臨wwでもいい話だ

>>423
あっちの話は心臓に悪いわwそこが面白いんだが
425真夏の白日夢:2009/09/03(木) 23:10:16 ID:Np4wpCU/
>>421-423
ご感想ありがとうございます。

コトノハサマは土地神(道祖神)なので多くの土地神と同じように
子供の味方という設定で書いてみました。
泣いている子供(いたる)を見るに見かねて慰めに出てきたという感じです。
実際頭身も近いし見た目は良いコンビになりそうな気がしてます。

今回は書き上げた後も半信半疑でリリースするか随分迷いました。
概ね好評なようでほっとしています。

>>421
久々に小さないたる(というかこっちが本来のいたる)を書いてみました。
ちょっと泣かせ過ぎたかなあと反省してます。

>>422
書いてる時にはタペストリーに出てた両手にチェンソーを持って
嬉しそうにこちらに駆けてくるコトノハサマを思い浮かべてました。

>>423
毎度ブログにご来訪いただきありがとうございます。
コトノハサマは色々なイメージがあって定まりにくいキャラなので
書くのは難しかったのですが書くと楽しいキャラですよ。

「あいつ」と「あの方」の差ですが多分皆さん同じように思われているのではないかとw
426真夏の白日夢:2009/09/04(金) 00:09:30 ID:NdWoPCvW
>>424
ご感想ありがとうございます。

喜んで頂けて嬉しいです。
427名無しさん@ピンキー:2009/09/04(金) 02:09:57 ID:x1RduMzw
そういえば言葉とコトノハサマは別の存在と顧問様が明言しているが、
他のコトノハサマ系SDキャラはどういう扱いなのだろうか。
羅刹世界とかチェーンソー桂姉妹の心とか。
428名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 06:43:46 ID:r5muxcrS
違う存在なんだろうな
アレがどういう存在なのかはよくわからんが
429名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 14:07:24 ID:x8xM5qfD
いい加減保管庫欲しいね……
430名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 01:43:41 ID:tWp0eYOk
>>429
言い出しっぺの法則w


とりあえず、今のところ許可出てるのはアビヌス ◆gPWtcYAlts氏のみ、だね。
許可もらってからの収録方式なら、一度にたくさんの量を収録する必要はないから、その意味では他スレよりも楽。
431名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 01:51:36 ID:tWp0eYOk
ま、保管庫設置の議論くらいはしてもいいんじゃないの、ってことで踏み台的なもの。
現実的には、上2つのどちらかで収録許可制を使う、あたりかな?


・wiki方式
誰でも収録出来る、ってメリットはあるけど、
閑古スレでwikiを採用すると放置プレイになってるとこが多い。

・エロパロ板保管庫
ログと作品のリストを用意すれば掲載してもらえる。
ここなら収録オケ、っていってる職人さんもいた。

・個人サイト
これは…キツイだろう
432名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 21:54:33 ID:zkAg+DWC
収録おkっていう職人さんもいる保管庫がいいんじゃないかな。
433名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 19:50:16 ID:kk9LjMET
アイチェリーのDVDのスクイズしてますが
「無垢」終了、(パスワード625)から
どないしても、刹那とセクロスしてしまいます。→「刹那」
避ける方法、→「本当の恋人」に行くには、
どうすればいいのでしょうか?
刹那ファンの方、御免なさい…

434アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/09/17(木) 22:23:14 ID:lqEu8ZUy
アニメ版最終話の数百年後(誤記にあらず)が舞台のSS投下します。
オーバーフローワールドなら、わりとあり得そうな展開ですけれど…
435アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/09/17(木) 22:37:55 ID:lqEu8ZUy
西暦22XX年…ある大学の構内…
「伊能教授、レポート読みましたよ。大発見ですってね。」
生徒から伊能と呼ばれた老教授は振り返ってうなずいた。

「ああ…私もこの23世紀の時代、外部と隔絶した文明が残っていたとは、この目で見るまで信じられなかった。」
海洋学者の伊能教授の大発見というのは、太平洋のある孤島に住んでいた民族のことであった。
彼らの乗る海洋実習船が故障して、偶然流れ着いた島で教授はその民族たちと遭遇したのである。

「彼らは人種的に言うとモンゴロイド…それも東アジア系だったんだが、彼らの伝説に興味深いものがあったんだ。
 君たちは『タナ婆伝説』というのを聞いたことがあるかね?」
「いいえ、なんですかそれ?」
「日本の八丈島の伝説で、人々が一度死に絶えた際にタナという妊婦が子を産み、その子と交わることで子孫を残した…
 面白いことに東南アジアやミクロネシアの島々にも似た伝説があってね、今回の島も・・・」

教授の話が長くなりそうなので生徒の一人が流れを戻した。
「他に何か興味深いものはありましたか?」
「…そういえば、彼らの社を見せてもらったが。神体として“頭蓋骨”と“鋸”が祭ってあった。」
「頭蓋骨は分かるけど…鋸?斧なら分かるけど…妙な文化だなぁ・・・」

・・・彼らは知る由もなかった。
・・・平穏なその島民の発祥に、血なまぐさい過去があったとは・・・
436アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/09/17(木) 22:51:50 ID:lqEu8ZUy
<ここから過去編(最終話の頃)です。グロ注意。>
*  *  *
数百年前の12月・・・
「・・・!!」
桂言葉は手にした買い物袋を落とした。
彼女が買い物に出かけて帰ってみると、伊藤誠が血の海の中で倒れていたのだ。
「誠くんッ!!」
駆け寄ったが、すでに誠はこと切れていた。

「そんな…嘘・・・」
せっかく誠が自分の元に戻ってきてくれた。これでやっと幸せになれる…
そう信じていたのに・・・なぜ・・・
言葉は目を瞑り、体を震わせ涙を流した。そしてある程度落ち着いてきた後、再び目を開けた。

「・・・西園寺さんを 犯人 ですね・・・」

否、眼を開けたのは桂言葉ではなく、別の何かだったのかもしれない・・・
次に彼女は誠の死体を見た。まだわずかにぬくもりがあり、死後硬直もさほどないその身体を。
彼女はズボンの股間に手を触れ、そこに張りを感じるとにっこりと笑った。

「誠くん?私と…したいんですね?」
それはただ単に刺殺によって、血圧や筋肉の変化が生じたためだったのかもしれない。
しかしそんなことは彼女に関係のないことであった。彼と最初で最後の交わりができるなら…
437アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/09/17(木) 23:16:13 ID:lqEu8ZUy
<ここからエロ要素ありですが、一応エロパロ版なのでまあ…ww>
*  *  *
「・・・いきますよ…いいですか?」
誠の死体の上にまたがり、彼のズボンを下ろす言葉。
皮肉にも泰介に犯されたことで、この行為の『やり方』は分かっていた。

誠の一物は死してなお、彼女を求めるかのように言葉の手の中で張りを保ち続けている。
言葉は自身も下半身をあらわにして、その内部の肉壺に彼の肉棒を差し込んだ。

「ううっ…はぁっ…はぁっ・・・はあん…」
まだこうした行為に慣れてない自分の胎内に、潤滑性0の死人のモノを入れるのはさすがに楽ではない。
しかし、それ以上に彼との間の交わりを求める彼女の欲望の方が強かった。

ぐぢ ぢゅっ ぐち ぐぢちゅ ぐち ぐちゅり ・ ・ ・

次第に言葉の胎内は湿り気を帯び、それに伴い体温の下がり始めてきた誠の一物も温まり始める。

「誠くん・・・あと少し…あと少し・・・」

言葉は少しでも彼のモノを受け入れようと自分の腰を一生懸命擦り続ける。
腰を振りたくって起こす濡れ音だけが静寂の中、途切れずに響き続けた。

「気持ちいいです…気持ちぃ…誠くん…誠くぅぅぅぅぅん!!」
ついに彼女の胎内に待ち望んでいたものが、どういった圧力によるものかは分からないが流れ込んできた。
貪欲に待ち受けた彼女の子宮がそれを温かく受け入れ、飲みこんでいった・・・

それまで別々の存在だった二人は、この瞬間完全に一つに混じり合うことができた。
そして次の瞬間、すべての力を使い果たしたかのように両者は弛緩した・・・

・・・いや、それから数分ほどして言葉は起き上がった。
「誠くん、一緒に行きましょう。西園寺さんをやっつけに。」

彼女の気のせいか誠の死顔は、先程に比べて穏やかで笑っているようにも見えた。
438アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/09/17(木) 23:31:54 ID:lqEu8ZUy
翌日の早朝・・・
「やっと、2人きりになれましたね・・・」

言葉は誠の首に声をかける。
幸運なことに目的を果たしたあと、ヨットまで誰にも会わずに逃亡することができた。
そしてここはすでに外洋…もう誰として追いつくこともできまい…

誠にキスをした後、喉が渇いた彼女は船内に戻って水を飲んだ。
元々、外洋航海をするつもりではなかったので生活物資はさほど積んでない。
(・・・自分もそのうち誠くんと同じ運命をたどるのだ・・・)
別に嫌ではなかった…あの世で一緒になれるなら…


一週間後・・・
ヨットは嵐の海を木の葉のように舞っていた。
その中には非常用の食料と水を使い果たし、飢えと渇きに苦しみながら
船室のベットの上に横たわる言葉と、異臭を放つようになった誠の生首がある。
(雨水を飲みに出ることもできない…いっそ、自殺を・・・)
そう思ったが船内に刃物はない。鋸があるが自殺には使えそうにない。
海に身投げするのも首を落としてしまいそうで嫌だった。
(首でもつろうかな・・・むりだ…この状況じゃそうするだけの体力も・・・ん?)

突然大きく持ち上げられた船が何か固いものにたたきつけられ、傾いて止まった。

(座礁?・・・何か違う。)

最後の力を振り絞ってハッチをあけると、そこは波打ち際から遠く離れた海岸だった。
どうやら特大の波に乗って偶然ここに漂着したようである。

「よかった・・・」

頬を伝う雨水をなめる言葉。それは今、何よりもおいしいものに思えた。
「生きよう…誠くんとの赤ちゃんのためにも…」
そういいながら彼女はとりあえず容器を探し、水の確保を始めることにした。
439アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/09/17(木) 23:44:16 ID:lqEu8ZUy
それから十月十日…いや、十月三日か?・・・

言葉は島の中に自力で作り上げた小屋のなかで陣痛に苦しんでいた。
(はぁ…痛いよぉ・・・このまま死んじゃうのかな・・・それは嫌っ!!)
自作の棚…というか祭壇の上に置かれた頭蓋骨を彼女は見つめた。
あの後彼女は腐乱しかけた誠の首にたかる虫を毎日毎日すべてつまみ取り、
綺麗な白い骨になるまで守り続けたのだ。
(誠くん…力を貸して・・・)
・・・やがて、苦しさの余り言葉は意識を失った・・・

後で考えると数分ほどだったのだろうが、彼女は長い夢を見ていた気がした。
自分を虐める女子から誠が助けに来てくれる夢である。
最後に里芋のお弁当を食べながら、彼とキスをして幸せな恋路が始まる・・・

(・・・夢?)
気がつくと、すぐそばでへその緒のついた赤ん坊が泣いていた。
「あ…産まれたんだ・・・よかっ…た・・・・・・男の子か・・・。」
泰介の子の可能性もあるのだが、直感で言葉は誠の子に間違いないと思った。

「誠くん…生まれ変わっても、また私と恋人になってくださいね。」
440アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/09/17(木) 23:48:22 ID:lqEu8ZUy
*  *  *
終わりです。
アニメ版の最終回を救いがあるように・・・却ってドロドロにした気もしますがww

このあと言葉は誠との間にできた息子を育て上げ、彼とともにこの島のアダムとイヴに…
…といった非常に壮大な展開になるはずですww
・・・でも、まあそれは別の話ってことで・・・ww
441SINGO:2009/09/20(日) 03:59:48 ID:Cfbsdvuh
どうも。
ふと思い付いたネタ、即興で書いてみました。
題して
【澤永泰介 草食系男子化計画】

舞台はアニメラストのCパート
泰介と田中のコントです。
442SINGO:2009/09/20(日) 04:00:57 ID:Cfbsdvuh
【澤永泰介 草食系男子化計画】〜無駄無駄無駄〜

「よう田中。ちょっといいか?」
すまん澤永。その日は弟の葬式で忙しいんだ。また今度にしてくれ。
「あからさまに避けるな!てか、その日っていつだよ!?まだ日時指定してねーぞ!」
お前と会話するだけで俺のイメージダウンなのだ。手短かに済ませろ。
「アニメで誠が逝亡くなったろ。とうとう俺の時代が来たわけよ」
まるで自分がナンバー2だったみたいに言うな。てか邪魔者が死んで好都合みたいな笑顔は止めろ。
「でよ、最近流行りの草食系男子ってやつにイメチェンしよーと思ってな」
草食系?ベジタリアンになってどうする気だ?
「違う。人畜無害な男を草食系男子ってんだ。最近じゃ、こういうタイプがモテるらしい」
俺は人畜無害だが、モテないぞ。
「俺みたいな野性的な男は流行らないらしーからなー」
お前は野性的というより、女性の敵だろう。
で、草食系になったら、どうなるのだ?
「そーだな。例えば…」

澤永「うひょー!スイカップの巨乳!しんぼうたまらん!」
言葉「キャアーッ!!」
ずっこん、ばっこん

澤永「うひょー!可愛いサクランボ!しんぼうたまらん!」
桂心「キャアーッ!!」
ずっこん、ばっこん

澤永「うひょー!ワカメ髪!しんぼうたまらん!」
山県「キャアーッ!!」
ずっこん、ばっこん

澤永「うひょー!イカリング……はイラネ。俺、草食だし」
黒田「ええー!?」

「↑ってな具合にだな…」
ちょっと待て。以前より見境いが無いぞ。てか終始一貫してレイプだろうが。
「だって俺、草食系男子だし」
確かにスイカとかチェリーとか草食だが、根本的に間違ってるぞ。人畜無害はどうした?
「ただマジメだけが取り柄でウスノロで禁欲で糞つまらねー男じゃ、誠の後釜を張れねーだろ」
それは俺の悪口か?
そもそも続編など無い。クロイズはパラレルだし、伊藤も生きている。
それにレイプシーンはカットされると思うぞ。前例と同様にな。
「そーなのか?」
クロイズ発売よりも、倫理でレイプ規制されるのが先だろう。
何しろ、小さい娘の裸すら規制される時代だからな。
「そんなの【本作品の登場人物は全員18歳以上です】って注意書き出しときゃOKじゃん」
よくある手口だな。
443SINGO:2009/09/20(日) 04:02:09 ID:Cfbsdvuh
だがレイプ規制となれば話は別だ。『レイプ礼』というエロゲーも散々叩かれたからな。
「だから【本作の性行為は全て両者合意のもと行われています】って注意書き出しときゃいーんだよ」
それ思いっきり偽造表示だろ。説得力ゼロだ。
「この手法を使えば、あの時の桂レイプも和姦になったわけよ」
レイプの自覚あったのかコイツ。てか確信犯だ。あとで通報しておこう。
「んで、クロイズでも俺と桂が、でへへ…」

澤永「誠は君を裏切って西園寺と付き合ってる!」
言葉「ちょ、やめ…」
ずっこん、ばっこん

「↑ってな具合に和姦に…」
なってない。俺(と読者)の予想通り、1ミリも和姦になってないぞ。
第一、クロイズの主人公は足利だ。Hシーンは主に伊藤が担当らしいし、お前にスポットが当たる訳が無い。
「そーなのか?じゃあ…」

足利「伊藤は君を裏切って西園寺と付き合ってる!」
言葉「ちょ、やめ…」
ずっこん、ばっこん

伊藤「花山院は君を裏切って卯月(女子小学生)と付き合ってる!」
七海「ちょ、やめ…」
ずっこん、ばっこん

田中「伊藤は君との約束を破って加藤と三馬鹿と黒田とその他大勢と浮気してる!」
清浦「田中、ちょっと尻出しなさい」(八つ当たり)
田中「ちょ、やめ…」
ずっこん、ばっこん

「…と、↑な感じになるのかー」
待てコラぁーッ!!何だソレわー!?
「ん?田中、知らねーのか?誠と甘露寺のセクロス。エロゲ情報誌で、CGまで掲載されてたぜ」
違う!そっちじゃない!最後のは何だ!!さも自然体みたいにスルーするな!!
「いや、田中、まじころ(OVA)で清浦にケツ犯されてパワーアップしてたから、てっきり」
誤解を招くような言い回しをするなァー!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

ん?何だ、この徐々に奇妙な効果音は?
「ふーん。田中、そんな性癖があったの」
「よう清浦」
をわァーっ!清浦さん!!いつ帰国したんデスカー!!??
「委員会で、やけに私に従順だと思ったら、やっぱりそうだったのね」

ちち違う!誤解だ!これわ澤永が勝手に!てか『やっぱり』って何!?疑ってたの前提!?
「おいおい。いくらお前が草食系男子でも、受けでドMってのは度が過ぎてるぜ」
待て澤永!これ以上、清浦の誤解を増やすな!てか、事の元凶がなに傍観者サイドに立ってんだ!!!

Bad End
444SINGO:2009/09/20(日) 04:11:37 ID:Cfbsdvuh
終わりですとろいやー。
なんつーか、スクイズ唯一のマトモな男キャラが、どんどんアレなイメージに…。
クロイズの彼に幸あれ。


あと保管庫の件ですが、私めのSSを保管していただけるのなら恩の字です。
過去ログにある私のSSも御自由に保管して下さい。
445名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 17:10:49 ID:Cfbsdvuh
446名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 19:04:23 ID:weVfPMk2
>441-444
乙。田中SS今回も笑わせていただきました。
レイパーって本当に疫病神w
447アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/09/24(木) 20:05:29 ID:bjEbeH06
>>441-444
乙、なかなか笑える内容でした。
自分もSSで一発ネタ(元ネタはヤンデレCDのあれ)投稿します。
448アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/09/24(木) 20:07:30 ID:bjEbeH06
寝室で一緒に眠る誠と止(いたる)・・・
止「おにーちゃ おきてる?」
誠「ん…いたる、どうしたんだ?」
止「ごめんね きゅうにきちゃったこと おにーちゃにあやまりたいの」
誠「いいんだよ、別にそんなこと。」
止「でもね いたるがきたせいで ばんごはんのしたくがいそがしくなっちゃったでしょ」
誠「大丈夫だよ、これぐらいなんでもない。いたるには作りたての料理食べてもらいたいからな。」

止「うん・・・あとね いたる お父さんのところ もうもどりたくないの…お父さん」
誠「分かっている…もう戻らなくていいんだぞ、ずっとお兄ちゃんと一緒に居られるようになるから。」
止「ほんと?」
誠「ああ、本当だとも・・・幽霊になって出てきても、お兄ちゃんが退治してやるから。」

止「?!・・・ど どういういみなの・・・?」
誠「どういうって…そのままの意味だよ、いたるを虐めるひどい親父はもうこの世にいないんだぞ。」

止「?(なに、おにーちゃ いってるの?)・・・??」
誠「ほら、お兄ちゃんの手嗅いでみろ。ちゃんと綺麗にして来たから親父の臭いなんか全然しないだろ。」
止「うん・・・おにーちゃの匂いだけ・・・」
誠「今日、いたるの晩御飯の片付けが遅くなったのは、ひどい親父を始末しに行って来たからなんだ…」

止「・・・おにーちゃ・・・」

誠「だって、いたるはお父さん嫌いなんだろ、二度と会いたくないんだろ?あんな奴と一緒にいたらいたるは…」
止「・・・うん・・・」
誠「どうした?いたるの望みどおりにしてあげたんだぞ…なんで逃げるんだ、いたる?…
  ・・・まさか親父にやられたせいで、おかしくなっちゃったのか…もしそうだったら…
  …早く“アレ”をいたるから取り除かないと・・・にん…しちゃったら・・・」

止「・ ・なにいってるの?・ ・」

誠「じゃあ、俺がいたるの中をきれいにしてあげるか・・・ふふっ・・・」
止「・・・あ、そうか…これでずっといっしょにいれるね・・・おにーちゃ…んーっ!!」
449sage:2009/09/25(金) 01:51:50 ID:tue5q6iB
なにかににている
450名無しさん@ピンキー:2009/09/25(金) 05:12:48 ID:eHUc337K
某CDの事ですね
451名無しさん@ピンキー:2009/09/25(金) 14:19:08 ID:lWMSDsdy
いたるってやっぱりあのじじいにやられてるの?
悪夢すぎるorz
452名無しさん@ピンキー:2009/09/25(金) 18:27:21 ID:G/mAb4qI
>>451
よく>>448読むと分かるが、それはヤンデレ誠の妄想だから。(いたるの方では意味不明)
ヤンデレCDネタというと、あとヤンデレ幼馴染(乙女?)、ヤンデレ同級生はもろ言葉&世界なので飛ばして、
ヤンデレ従妹…人物関係複雑すぎて誰が誠の従妹か分からんww ナナたちは刹那かなぁ…(クールロリってことで)
巫女とか・・・意外とやりにくい奴多いな。
453名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 00:07:49 ID:R04Gnqub
あいもかわらず
感想もかかずに雑談の継続・・
454名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 23:45:28 ID:FLenYNBm
義理で感想書くのも疲れる
良い作品にはそれなりに感想来るんじゃね
455Setsuna's Memories:2009/10/08(木) 17:49:22 ID:cJL0q5Or
清浦! 清浦!
――さようなら

 パリに引っ越して少しが経つ、慣れない環境にもだいぶ鳴れたこ
ろだ。ただひとつの後悔と不安以外は・・・
 あれから少ししてのクリスマス明けのことだ。
思えば、世界と一緒じゃないクリスマスなんて初めてかもしれない。
物心付く前から私はずっと世界と一緒だった。
だから、今年のクリスマスは今までの中で最も寂しいものとなった。

「せっちゃん、ちょっとTV! TV!」そういうお母さんが携帯片手
に血相を掻いてTVをつけチャンネルを回すと・・・

『事件の起こった東原巳の住宅街です。このマンションの自宅で榊
野学園に通う1年生の男子生徒のものらしき血痕があるの男子生徒
の母親が発見し警察へ通報、警察が昨夜未明から辺りを捜索してい
ますが現在も男子生徒の行方は分かっていません。自宅には争った
痕跡があることなどがあり、自宅から包丁と鋸が消えており、警察
では男子生徒がなんらかの事件に巻き込まれ、既に死亡している可
能性もあるものとして現在行方を捜索すると共に、床の血痕のDNA
鑑定を急いでいます。現在分かっている情報はこれだけです。また
情報が入り次第お伝えします、こちらからは以上です。』
456Setsuna's Memories:2009/10/08(木) 17:50:27 ID:cJL0q5Or
 ――えっ?
 1年生の男子生徒、東原巳って・・・まさか伊藤!?
私がいまいち状況を飲み込めないでいるとまたニュースが聞こえてきた。
そして今度こそ私は一番知りたくない現実を知ってしまうことになる。

『そして男子生徒の交際相手であった女子生徒が榊野学園の屋上で殺害
されているのを教師が発見し警察へ通報しています。それでは事件の
あった榊野学園から中継です。』

 ――! まさか・・・

『はい、事件があったのはここ榊野学園高等学校の屋上で、殺害された
1年生の女子生徒は首を鋸のようなもので切られて殺害され、更に死後、
腹を裂かれた状態で発見されました。また、現場に落ちていた包丁は東
原巳の男子生徒の自宅から持ち出されたものであることが判明し、付着
していた指紋が殺害された女子生徒の指紋と一致していることから、女
子生徒が男子生徒を包丁で刺した可能性が強いと見て警察では関連を現
在調べている模様です。この女子生徒は先ほどの東原巳で行方不明にな
っている男子生徒と交際しており、交際でなんらかのトラブルが起こり、
事件に至ったものと思われます。現在分かっている情報は以上です。ま
た情報が入り次第お伝えします。以上です。』

 ――世界!!
おもわず叫んでいた。体中がガクガク震えて止まらない。さっきの男子
生徒がもし伊藤なら交際相手は・・・!!! 嫌・・・!
どうして!? 意味がさっぱり分からなかった。
457Setsuna's Memories:2009/10/08(木) 17:51:27 ID:cJL0q5Or
『また、昨夜未明から榊野学園に通う1年生の別の女子生徒も現在行方
が分からなくなっており、母親が捜索願を届け出て、警察が現在行方を
探しています。そして先ほどの事件と関連性が高いものとみて行方不明
の男子生徒と女子生徒の行方を捜しているとのことです。』

 ――誰? ・・・もしかして桂さん?
どうして桂さんの名前が出てきたのか私にも分からなかった。
仮にもし桂さんだとしてもどうして?
 頭の中がこんがらがって何がなんだかさっぱり分からない。
「踊子と連絡が取れないってどういうことなの? ねぇ!」
お母さんが話している相手、おそらく瞬さんだろう。
お母さんは携帯で瞬さんと話しながらも自宅の電話を片手に
誰かに電話をし始めた。しばらく経っても出ない。
「踊子出て! お願いよ!」
結局、おばさんは電話には出ず、瞬さんもおばさんとは会えないでいる。
私は今のニュースと気持ちの整理をするので頭がいっぱいで旗から見れ
ばただぼーっとしているだけに見えたのかもしれない。
458Setsuna's Memories:2009/10/08(木) 17:52:26 ID:cJL0q5Or
 そんな時だった。ピンポーンとチャイムが鳴り響いたのは。
私もお母さんも出る気がなかったのだがあまりにしつこいので、お母さ
んが痺れを切らして出ると「刹那! ちょっと!」との声がした。
私は玄関へ行ってみるとパリで見るのは久しぶりだろう日本人男性の姿
があった。もちろんこんな人と面識などない。
「FBI連邦捜査官の者ですが、清浦刹那さんですね?」
そう言いながら男は黒い手帳とバッチを私に見せた。
はいそうですが、そんな風に答えると、男は開口一番こう言った・・・
「殺害された西園寺世界さんのことでお話があります」
 ・・・思わず目眩がした。グラリと倒れそうになるのをお母さんが支
えてくれていたことを思い出したのは任意同行でパリの警察署へ行く最
中のパトカーの中でのことだった。
 さっきのニュース、それはにわかには信じがたい報道だった。何より
まだ名前もはっきりしていなかったのだ。あれは世界や伊藤ではない。
・・・そう信じたかった。
だがFBIの男の言葉で私はようやく現実を思い知らされることとなった。

 ――悪夢という名の現実を
459Setsuna's Memories:2009/10/08(木) 17:53:30 ID:cJL0q5Or
 明日、私とお母さんは日本へ一時帰国することとなる。
――世界の葬儀に出るため・・・
 これから数日の間に警察やマスコミの報道で世間には大体の真相が
判明することだろう。
 でも、私にとってはもう――どうでもいいことだった・・・

 ――のぼるお兄さん、世界を守れなかった。約束守れなかった。
ごめんなさい、私が守るって約束したのに・・・
 ――世界、側にいてあげれなくてごめんね、約束破っちゃって・・・

 人間は本当に悲しいとき、涙さえ出ないと言う。どうやら本当みたいだ。
すごく悲しいはずなのに一滴も涙が出ない。

 ――あぁそうか
 ――悲しむことなんてないんだ・・・
 私が今するべきこと・・・それを悟った。
無言でベランダへと歩き出す・・・そう、今度こそ世界を1人にはさせない。
 ――世界・・・今行くからね・・・お母さん、ごめんなさい・・・
瞬さん・・・お父さんごめんなさい・・・
待っててね・・・世界・・・今度こそ私が世界を守るから・・・世界
                        ―完―
460Setsuna's Memories:2009/10/08(木) 17:54:40 ID:cJL0q5Or
<番外編>
世界「やっほ〜刹那」
刹那「世界! 良かった会えた」
世界「これからはずっと一緒だよ」
刹那「うんずっと一緒」
誠「おいおい、俺は除け者かよw」
世界「も〜いいところなんだから誠は黙っててほしいなぁ〜もぅ〜」
誠「うぅ・・・ごめんなしゃいでしゅ・・・」
刹那「伊藤? 首はどうしたの?」
誠「な〜んかさ、言葉が俺の首を持ったままで首だけ成仏できなかったんだよな〜」
世界「ま、自業自得でしょ」
誠「そんなこと、言って世界だってほら」ガバッ!
世界「いや〜ん♪ 誠のすけべw」
刹那「うわぁ、お腹真っ二つじゃん」
世界「でもすーすーして涼しいよ? 刹那もやってみる?w」
刹那「いい、遠慮しておく」
「「「あははは」」」
                         ー完ー

突拍子もなく書いてみた。
ごとうさんのぶろぐで転校したあとの刹那の重い表情を見て、
書いてみたくなった。下手にハッピーにしても起こった事件は
変わらないからな。そういう意味でもバッドエンドにしてみました。

なのでせめてあの世くらい和気藹々でもいいんじゃね?っとw
まるでDBZのダーブラが死んでから改心したようだw
461名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 22:10:19 ID:KYEjomEM
なぜかアダムスファミリーを思い出した。
462アビヌス ◆gPWtcYAlts :2009/10/08(木) 22:54:47 ID:4uKJQCI9
>>460
途中までシリアスだなと思っていたが、ラストの「首なし誠」に思わず吹いたww
ところで何でパリまで警察がわざわざ調査に来たんだろう?

余談だが、うちが前に書いた形式のような「本編から数年以上あと」の奴の需要ある?
一応誠と世界が結ばれている設定で、内容はグロ要素ありのを書こうと思っているんだが。
463名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 23:07:24 ID:cJL0q5Or
警察は国を跨いで捜査はできないけど、
FBIは国境を越えて捜査できるからっていうのを
TVで見た記憶があったのでw
FBIがきたのは刹那の意味深なお別れメールを
そんな昔じゃない時期に送っていたので、動機などを
刹那なら何か事情を知っているかもしれないというもので
事情を聞きに来ただけで容疑者として疑っているわけじゃない。
ってか当たり前だがw
描写カットしたけど、当初は刹那が国際電話で光や七海に
電話を掛け、光から事情聴取を受けたことを聞くシーンも考えてた。
七海は音信不通で光も事情知らない(休憩所の件)ので
連絡が取れず仕舞いという展開でした。

事件のあらすじを長々と描写してもそれはアニメ見たまんま
なのでその辺りもごっそりあえてカットしましたw

大人が絡まなかったことも要因の一つではあった
アニメスクイズ、本当は大人である舞と瞬が刹那を
支えることで自殺を回避するっていうのも考えてたけど、
刹那にとっては助かってもこちら側は世界のいない「世界」
でしかない。そう思ってせっちゃんを泣く泣く飛び降り
させることに・・・本当はせっちゃん大好きです。
最後のあの世の会話はまとめてうpしようと思った矢先に
ふと思いついたので追加したw
464mark:2009/10/09(金) 20:07:37 ID:o9AEIg6/
 もう書くつもりなかったけど、せっちゃんに触発されてしまったので、即興で。
(私は刹那生存派なので)アニメ版の彼女は自殺さえ出来ないと思ってます。
死んだほうがましと思えるくらい自虐的ね……


 待合室。どうして私はこんな所にいるのだろう――――

親族だけの密葬とあってか、ここに居る人間は私を含めて10人も居ない。
私、お母さん、踊子さん、瞬さんと、確か二条さんだったか、双子の姉妹。
みんな無言だ。こんな形で集まるなんて誰が思っただろうか。
私がこの為に日本に戻る事も。

「……が……りましたので、………はこちらに」

係員の呼ぶ声がしたような気がする。私は椅子から立ちたくなかったが、
お母さんに促され、ようやく顔を上げて椅子から離れた。
なんだか頭がふわふわする。これは現実なんだとわかってるのに、まるで
スクリーンのモノクロ映像を視る気分だ。

フランスでの学校生活も慣れない内にあっという間に冬休みを迎え、
現在の住居で何をするでもなく漫然とした日々を過ごしていた。
そしてパソコンのインターネットで日本の話題を暇潰しに検索していた時だ。
ニューストピックに「男女のもつれか?高校生が惨殺」

……くだらない。こんな事件は昔からあった事だ。ネットのおかげで
良くも悪くも情報があっという間に伝わるようになっただけの事。
そう思いつつも、なぜだかひっかかる思いが消えなかった。
詳細を知るべく、さらにクリックした。
今思えば、それが虫の知らせというものだったのかもしれない………

465mark:2009/10/09(金) 20:08:00 ID:o9AEIg6/
「熱いので、火傷等に十分注意して頂いてもらってですね……」

係員が(恐らくマニュアル化されているだろう)骨を取り扱う際の注意を私達に説明していた。
私のすぐ目前の台には、世界……だったものの骨や灰が在った。
別の人間が骨を納めるための骨壷を持ってきた。
そのままでは骨が入りきらないから、私達が小さな骨を作業用の箸で拾い上げる中、
頭蓋骨が小型のハンマーで砕かれていく。

そんな様子にも、私は何も感じない。
全て骨壷に入れた後、「赤ちゃんの頃より小さくなっちゃって」と踊子さんが
呟くように寂しげな笑顔で骨壷の入った箱を抱いていた。
なぜかお母さんがハンカチで目頭を押さえていた。
瞬さんもずっと硬い表情のままだった。

葬儀場から出た後、二言ほど瞬さんとしゃべった気がするが、思い出せない。
1週間ほど日本に滞在した後、またフランスに戻り、表向きは
何の変哲もない生活を送っている。
……色々と、事件の経緯や真相など明らかになっていくのと同じくらい、
マスコミ受けするようなゴシップが竹の子みたく生えては消え、そして一月もしない内に
メディアで取り上げられる事もなくなったようだ。

もっと感傷に浸れてたなら、死んだ世界の後を追って逝けたのだろうか。
何の助けにもならず、以前と変わらない日常を送っているでろう級友達に
憤りをぶつけれただろうか。
知っている何もかも消えてしまえ。自分も。
そう強く願っても、行動が伴わない。
不思議な事に手首を切ろうとも、高い所から飛び降りようとも、首を吊ろうとも思えなかった。
466mark:2009/10/09(金) 20:09:18 ID:o9AEIg6/
結局、私は世界を守るどころか、その彼女も、そして自分も裏切り、あまつさえ
伊藤や桂さんの人生まで狂わせてしまった。

……世界や桂さんにとっては、伊藤に裏切られ、そして失う事は何よりも辛かったのだろう。
そして閉じた愛を選んでしまった。
しかし、私は知ってしまった。この世で最も辛い事はそんなものじゃない。
真実を認める事、そして死ねない事だ。
肉体的生物学的に寿命が来ることなどはもちろん承知だ。
でも、仮にあの世があったって、私はもう誰にも顔向けできない。
自分で自分を許せない。

……だから、これは私の義務なんだ。
真実から逃げた代償として。
明日もいつも通り全てに仮面を被せて過ごしていく。


(おわり)
467原作 乙女エンド後:2009/10/10(土) 00:03:53 ID:vfWl0Sr0
 今日はお姉がいない。そして私は現在先輩の家にいる。
私は先輩にどうしても聞きたいことがあった。それは・・・
――先輩お姉と付き合ってるの?
「あぁ付き合ってるよ」
――お姉のどこが良かったの?
「あいつはいつだって俺の側にいてくれた。それに気づいた時、
俺は乙女が好きなんだなって思ったよ」
――側にいたのは私だって同じ。学校が違うから会えないけど
私も先輩のこと・・・私・・・私!
「か・・・れん?」
――先輩は私をお姉の妹としてしか見てないかもしれないけど、
私は・・・私は先輩を異性として・・・
 気が付くと私の目からは涙が溢れていた。嬉しいとも悲しいとも
言えない現状でどうして泣いてるのか私自身分からない。
この後は言葉にならず私はただただ泣いていた。
「可憐・・・」そう言いながら優しく私を抱きしめる先輩
――!
先輩の身体、あったかい・・・
「可憐の気持ちに気づいてあげられなくてごめんな。そうだよな。
可憐ももう大人だもんな。でも俺、今は乙女t!
 その先を聞きたくなかった私は自分でも凄いと思える反射神経で
先輩の唇を遮った。
(あっ・・・キス・・・)
先輩との・・・ううんキス自体・・・初めてのことだ。
――先輩、私にも時間をちょうだい。私もお姉も先輩のこと好きなのに
お姉だけ機会があるなんてずるいよ・・・うっうっ・・・
468原作 乙女エンド後:2009/10/10(土) 00:04:37 ID:vfWl0Sr0
 数分だろうか、私は先輩の胸で泣いていた。
先輩はただただ黙って私を抱き寄せ頭を撫でてくれた。
なんとか泣き止んだ私は先輩の元から離れる。
「可憐って・・・知らない間に大人になってたんだな。
いつの間に胸・・・あ、いや、なんでもない。忘れてくれ、あはは」
先輩が今何を考えてるのかなんとなく分かった。
さっきから先輩の視線が私の顔ではなく下の方、
胸の方にあるのも気になっていたのだ。――先輩のえっち
 お姉とももうしてるのかな? しちゃってるよねきっと・・・
でも・・・お姉に出来て私に出来ないはずない。
私がお姉より魅力的な女だってこと、知ってほしい。
私はすっと先輩の手を取り胸にあてがわせた。
「か、可憐・・・(ごくり)」
先輩の顔がどんどん赤くなるのが分かる。可愛い
――先輩? 揉んでもいいよ?
469原作 乙女エンド後:2009/10/10(土) 00:05:24 ID:2wS/wfi0
私は揉んでとはあえて言わずちょっと意地悪な
言い方をしてみた。先輩の困惑する顔が・・・可愛い
――ん!
私から誘ったとは言え、突然揉まれるのは凄い恥ずかしい。
あと・・・ちょっぴり気持ちいい。
 右手で私の左胸を揉み出した先輩はだんだん大胆に
なっていき、両手で私の胸を揉み出した。
――や! あっ! んっ!
身体が・・・下半身がジュンとなるのを感じる。
気持ちいいような恥ずかしいような感じで頭がぼーっとしていると
私のセーターを捲り上げて、私の胸を隠しているブラが露になった。
顔が熱い、きっと私の顔は真っ赤なのだろう。
「可憐、綺麗だよ・・・それにすごく大きい」
――や!
先輩が言い終わるや否やブラ越しに胸を揉んで来た。
さっきと違って先輩の手の感触、体温が伝わってきてがより分かるようになって
下半身が更にジュンとするのを感じた。
見つめ合っているのが恥ずかしくなって視線を逸らすと先輩のズボンの一部が
凄く盛り上がっているのに気づいた。さっき抱き合っているときも感じたもの・・・
私はなんとなくそのふくらみをさすってみた。
「うっ・・・可憐」
――先輩、気持ち良いの?
「ああ 続けて」
――うん・・・あん!
470原作 乙女エンド後:2009/10/10(土) 00:06:30 ID:vfWl0Sr0
 そうして少しの間お互い触りっこしてると
「可憐俺もう・・・」
――先輩、私どうすればいいの?
「じゃ、じゃあ胸で・・・挟んで」
――胸で?
「パイズリって言うんだけど」
私だって年頃の女の子、えっちなことは普通に興味があるのでそのくらい知ってる。
(あれを私が? できるのかな?)
 先輩のチャックに手を伸ばしジーッと開け中を触っていると
――!
ビンと出てきた・・・初めて見る男の・・・先輩のちんちんだった。
(こんな風になってるんだ・・・)
「可憐・・・挟んで・・・」
ブラもしたままだしどうやって挟もうか迷ってると
先輩がブラをしたまま下からちんちんを押し込んできた。
「ああ・・・可憐の胸・・・おっきくて気持ち良い・・・」
先輩のちんちんが私の谷間に・・・
なんだかえっちぃような、恥ずかしいような気がして私は
先輩の目を見ていた。
471原作 乙女エンド後:2009/10/10(土) 00:07:04 ID:2wS/wfi0
「可憐・・・ツバを垂らして両手で胸を寄せて圧迫して上下にこすって・・・」
私は言われた通りにすると擦るたびにクチュ、クチュっといやらしい音がする・・・・
「可憐・・・気持ち良い・・・はあ!」
――お姉にはこんなことできないでしょ?
「はぁ・・はぁ・・そうだけど・・・」
それを聞いて私は少し嬉しくなった。
こんな真似、寄せたって谷間のないお姉には到底無理なこと。
お姉には出来ない、私だけの行為。
そう思うと嬉しくてつい私は夢中で胸で擦った。
(こうやって見ると、先輩のちんちんって可愛い)
赤くなっている先端の部分――亀頭だっけ?
そこの入り口から何か透明の汁が出てきてて私は無意識のうちに
舌を伸ばしてそれをすくってみた。
――しょっぱい・・・でも・・・これが先輩の味・・・
おいしくはないけれど、なんだかえっちな味がして私は夢中になって
その透明な汁を舌で味わっていた。
「はうんあ!」先輩がそう喘ぐと先輩のちんちんが更に
硬くなった気がした。今にも破裂しちゃうんじゃないかって
くらい私の谷間でドクンドクン言ってる。
――先輩、痛かった?
「違うよ可憐・・・はぁ・・・気持ちいいんだ・・・続けて・・・」
先輩が気持ちよくなってる、お姉に出来ないことで感じてる。
私は嬉しさといやらしさ恥ずかしさが混ざった状態で
無我夢中で先輩のちんちんを扱き、しゃぶった。
先端から透明の汁が凄い溢れてくる・・・
「はぁ・・・はぁ・・・可憐・・・はぁ! もう・・・出ちゃいそうだ」
先輩が何か言っていたが私は私で夢中でしゃぶっていたので気づかなかった。
そして「出る・・・! 出す・・・!」
そう言うと同時に先輩のちんちんがドクンドクンと脈打ち、それに合わせて
私の口に生暖かいドロッとしたものが流れ込んできた。
――!
472原作 乙女エンド後:2009/10/10(土) 00:08:34 ID:2wS/wfi0
咄嗟のことで私は無意識にそれを飲んでしまった。
やがて先輩のちんちんが静かになるのを確認するとちんちんから
口を離す。
(これが先輩の・・・精液・・・先輩の赤ちゃんの素・・・)
味は微妙だったけれど、まずくはない。タンたんみたいな
食感はちょっと抵抗あるけど・・・
先輩は私の谷間からちんちんを引き抜くと
「可憐・・・最高だよ・・・」
――あっ
そういうと先輩は私を抱きしめてくれた。


一応終わりw
原作乙女エンド後の可憐視点でのエロを
書いてみたくなったw
可憐だけに限らずスクイズは巨乳多いのに
パイズリが言葉だけというのは残念でならないw
473名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 12:12:01 ID:j8mm0NWd
素晴らしき投下ラッシュ!皆GJ

>>455
番外編雰囲気変わりすぎワラタww
>>464
刹那は自殺しなさそう(出来ない)に同感
世界と誠がいなくなったら刹那の人生崩壊しそうだよな…
>>467
可憐かわゆす
どうせなら本番もよろしくw
474名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 20:04:18 ID:oJH7JYQ+
>>472
Good job
475名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 00:45:10 ID:BDAYVogo
>>474
そこは「Nice job」にすべきじゃないかね?ww
476名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 01:00:32 ID:oZjvZ+vq
ショートネタR @


蛇口から流れる流水の音。
食器洗い桶の中で回る皿の音。
後ろの方から聞えるテレビの音。

気が付けば、俺は台所にたって皿洗いをしていた。
洗いかけの皿を手に持ったまま静止していたらしい。
居間では言葉がテレビを見て寛いでいた。

「誠くん、どうしました?」
「いや、なんでもないよ。ちょっと考え事してた」

手が止まってたのが気になったのだろう。
残っている皿を片付けるため、皿洗いを再開する。
しかし、どうして洗いかけの皿を持ったままボーっとしてたのだろう?
考え事をすることがあるとはいえ、ここに立つ前の記憶が何故か無い。
それに、背中が妙に張り詰めたような、身体がふわふわしたような感じがする。

皿を洗い終えると、横に置いてある乾燥用の桶に、洗った皿を全て置き、
エプロンを解いてから居間にいる言葉の元へ向かった。
テレビに夢中らしく、居間に入ってきた俺に一瞥することもなかった。

と、その時だった。

「え?」

突然、言葉が見ていたテレビが砂嵐になってしまった。
それだけではない。周りにある家具が次から次へと消えていく。
その裏にある壁や、床が次から次へと姿を見せた。
ついには、テレビと言葉が座っているソファを残し、部屋は、あっという間にがらんどうになってしまった。
面食らっている俺の傍で、言葉はゆっくりと立ち上がり、こちらを向いた。

「言葉…?」
「…誠くん。誠くんと一緒に居られて、私、とても楽しかったですよ」
「お、おい、言葉…!」
477名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 01:01:24 ID:oZjvZ+vq




「…!」




気が付くと、俺はベッドの上だった。


「…夢」


そう呟いて、今起きたことが夢であることを理解した。




体を起こして、頭の中を整理し、まず、言葉は既にこの世にはいないことを思い出した。
それから、俺が夢の中で居た場所は、言葉の家であることを思い出した。
なるほど、どうりで皿洗いをする前の記憶がないわけだ。
窓の外に目を向ければ、夜の帳は下りたままで、部屋には月明かりが差し込んでいた。




「言葉…。お前は、俺のこと…許してくれたのか?」








あれから、13年の月日が経った。




言葉の13回忌の早朝の出来事だった。








END
478名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 16:11:41 ID:v21Z0Zzf
age
479SINGO:2009/11/01(日) 04:16:02 ID:rqp/rt/M
どうも。
今回のSSは西園寺踊子さんが主人公です。

もし踊子さんの子供が男の子だったら…の話。

 【Silent Siren】
    出演
西園寺踊子   沢越止
西園寺真琴   


!!注意!!
このSSにはショッキングなシーンが含まれています。
あらかじめご了承ください。
480SINGO:2009/11/01(日) 04:17:26 ID:rqp/rt/M
【Silent Siren】

プルルルルル…
スタッフルームの電話が鳴った。
カチャ。
「はい。こちらラディッシュ原巳浜店です」
『もしもし!西園寺さんをお願いします!!』
電話の相手は、なぜか切羽詰まった口調だった。
「はい。西園寺は私ですが…」
『お宅の息子さんが大変な事に!!』
「ええ!?真琴が!?」
踊子は思わず大声を上げた。

《榊野総合病院》
踊子は『西園寺 真琴』の病室に駆け込んだ。
「真琴!大丈夫!?」
「あ、ママ」
真琴はベッドに寝かされ、その足は両方ともギプスで固定されていた。
「どうしたのコレ!?何があったの!?」
多分、両足骨折。交通事故だろうか。
「んとね、階段から飛び降りたの」
「へ?」
落ちた、じゃなくて飛び降りた?
「度胸だめし」
聞けば、真琴はクラスメイトと一緒に『度胸だめし』とやらをしたらしい。
模手原小学校で流行っている、いわゆる命綱なしのバンジージャンプ。
どれだけ高くの段から飛び降りたかを競う、漢の勝負。
かくして勇者は負傷した。
「〜〜〜」
踊子は、そのあまりの馬鹿らしさに開いた口が塞がらない。
「で、ママ。お見舞いに何持って来てくれたの?」
ブチっ!
踊子は眉間にシワを寄せると、真琴のキンタ○に鉄拳を『お見舞い』した。


その後、真琴は入院となった。
母子家庭で母親が稼ぎに出ている西園寺家では、真琴の面倒を見る者がいないからだ。
だが翌日、
「こらー真琴!待ちなさい!」
「やだよー。ママこそ、お仕事行かなくていいの?」
「あんたがそんなだから、行けないのよ!」
車椅子に乗った真琴は、まるで校舎内でバイクを乗り回す不良のごとく、病院内を爆走していた。
真琴の新しい遊びだ。医者もとんでもない玩具を真琴に与えたものだ。
踊子は勤務時間の半分を真琴を止めるのに費やしていた。
(ちなみに仕事の方は、部下の橋本&村山のベテランコンビに任せてある)
これなら家で面倒を見た方がまだマシだった。
踊子は早くも真琴を入院させた事を後悔した。

だが、真琴のこの遊びが、のちの沢越止との出会いに繋がるとは、この時、踊子には知るよしもなかった。

481SINGO:2009/11/01(日) 04:18:52 ID:rqp/rt/M
ある日のこと。
この日も踊子は、車椅子の真琴と鬼ごっこをしていた(踊子にとっては不本意だが)。
踊子は寄る年波には勝てないのか、とうとう真琴を見失った。
でも、真琴も体力の限界のはず。
踊子は慌てずに耳をすました。車椅子の軋む音が聞こえない。
(真琴…かくれんぼに切り替えたわね)
ふと真琴の笑い声が聞こえてきた。
廊下の突き当たりの病室。その中で何やら喋っている。
(誰かと会話してる?)
病室のネームプレートには
『沢越 止』と書かれていた。
踊子は、なぜかその名に忌避感を抱いた。
ノックもせずに扉を開く。
室内には真琴と、そして白衣の少女が一人いた。歳は中学生くらいだろうか。
「真琴、こっちに来なさい」
つい厳しい口調で真琴を少女から引き離した。
「ママ…?」
「真琴君のお母さんですか。はじめまして」
少女は礼儀正しくお辞儀してきた。
「いえ、こちらこそ息子がご迷惑を…」
踊子は慌てて笑顔で応えた。
(私は何を神経質になってるのか)
よく考えたら、この少女が真琴を害するはずが無い。先程の忌避感は気のせいか。

少女は沢越トマルと名乗った。極度の貧血症らしく、長い間入院しているらしい。

やがて真琴は毎日、病室を抜け出しては彼女の部屋に遊びに行くようになった。
踊子はそれを止める気は無い。むしろ、そちらの方が真琴が大人しくしてくれるので好都合だった。
(それにしても真琴…小学生の癖に…)
父親に似て、女性には手が早い。しかも年上好きだったとは。

そして数日経ったある日のこと。
踊子は真琴を捜して沢越止の病室を訪れた。
だが、そこに二人の姿は無く、寝具一式、生活用品全てが無くなっていた。
ナースに事情を聞くと、どうやら彼女は別の病室に移ったらしい。
踊子はその病室の場所を聞き、そこへ向かった。
多分、真琴もそこにいるはずだから。
はたして踊子の予想通り、そこに真琴は居た。そして彼女も。
ただし、その場所だけは踊子の予想とは掛け離れていた。
(私もボケが入ったわね。ただの貧血で入院する患者なんて、いる訳が無いのに)
482SINGO:2009/11/01(日) 04:20:49 ID:rqp/rt/M
そこは集中治療室…いえ滅菌室というべきか。
その中に彼女は居て、完全に外界と遮断されていた。出る事も、こちらから入る事もできない。
唯一のコミュニケーション手段は、マイクとスピーカーによる会話のみ。
「ねえママ。止お姉さんが、もうここに来ちゃいけないって。どうして?」
踊子は理解。あの娘は…死病に侵されてる。
「真琴君のお母さんですか?私、あと何日かで死にます。だから私達、もう会わない方がいいんです」
ガラス壁の向こうで彼女は顔を伏せた。
「そんなのヤダ…」
真琴は泣いていた。
どうするべきか踊子は迷った。普通なら彼女の言葉に従うところだ。
でも、真琴は彼女に恋心を抱いている。
「ねえ真琴。止お姉さんの事、好き?」
「うん」
「なら、泣いちゃ駄目。泣いてるだけじゃ、止お姉さん本当に死んじゃう」
「そんなのヤダ…」
「止お姉さんを助けたい?」
「うん」
「多分…いえ絶対、真琴が辛い目に合う。痛い思いもする。それでも止お姉さんを助けたい?」
「………うん」

「先生。息子と私を、沢越さんのドナー(臓器提供者)にして下さい」
彼女の病気を治すには臓器移植手術しかなかった。
「いいのですか?この病気は、型が合わなければ ドナーにはなれないのですよ」
型が合う確率は、血の繋がった兄弟でも4〜5人のうち1人の割合。それ以外では百人〜万人に1人の割合らしい。
「構いません」「かまいません」
もしかしたら、合うかもしれない。そんな根拠の無い自信があった。

こうして踊子と真琴はドナー適合検査を受ける事になった。
検査結果が出るのは一週間後。
それまで踊子は何もしなかった訳では無い。
「もしもし、舞?お願いがあるんだけど…」
踊子は、パリにいる親友にもドナーになってもらうよう頼んだ。もし自分達が不適合だった場合の保険だ。
『…わかったわ。こっちで検査受けてみて結果が出来次第そっちに送るわ』
「ありがと。それから瞬と……刹ちゃんにも頼んで」
『踊子…あんた…!』
「ごめん。無茶な頼みなのはわかってる。でも、どうしても、お願い!」
懇願しながらも踊子は、どうして他人の為にここまでしているのか、疑問に思った。
情がうつった?
違う。真琴を悲しませたくないだけ。決して赤の他人の為じゃない。
そう。これは母親の役目。真琴の笑顔ひとつ守れないで、何が母親か。
483SINGO:2009/11/01(日) 04:25:15 ID:rqp/rt/M

そして、一週間後。
「残念ですが…」
その主治医の言葉に、踊子と真琴は愕然となった。
不適合。結局、彼女と型の合うドナーは誰もいなかった。
このまま彼女が死んで逝くのを、黙って見ている事しかできない。
(私のしてきた事は一体何だったの?)
ただ全力を尽くした気分になって、良き母だと真琴に認めて欲しかっただけなのか。

ナースがやって来た。
「先生。沢越さんの様態が悪化しました」
「わかりました。すぐに行きます」
その主治医の腕を、踊子は思わず掴んだ。
「何とかなりませんか!?早く型の合うドナーを捜し…」
「いたのですよ」
「え?」
「いたのです。彼女と型の合うドナー、彼女のお兄さんが。ですが、彼はすでにお亡くなりになってます」
脱力する踊子。
「ママ?」
真琴は不安げに踊子を見上げた。
踊子は顔面蒼白だった。
突如、真琴を置き去りにして廊下を走る。
「ママ!?」
踊子はトイレに駆け込み、吐き気を堪えた。
踊子は確信した。それは、つまり、
最初から真実を知っていた。知っていながら今まで目を背けていた。
(止さんのお兄さん…)
彼女の兄は死んだのではない。殺されたのだ。
(真琴には言えない。口が裂けても)
まして止の兄こそが真琴の実の父親で、殺した犯人が私の実の娘だなんて。
それが西園寺世界。真琴の本当の母親だなんて。

言えるはずがなかった。

END
484SINGO:2009/11/01(日) 04:26:40 ID:rqp/rt/M

終わりです。
またしても、このオチです。

沢越止は仕様です。
ちなみに病名は再生不良性貧血。骨髄の異常で正常な血液が作れなくなる病気です。
485名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 23:19:24 ID:DY4THDRz
GJっす!!
ラストのオチが怖いですが…

なんか剛田で路夏ちゃんが不良達にレイプされてる感じの絵があった…
と又聞きしたけど、…ちょっとそんなダーク系な話も見てみてぇ…
486名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 23:37:47 ID:MljWBSd9
いたるのことかw
漢字で止と書いていたると読むって話だしなw
ごとうさんのぶろぐでは伊藤止ってなってたな。

どうせならこの真琴と言成が事情を知らずに
親友になるダークなお話があっても面白いかもなw
487名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 05:14:39 ID:H60q/zjK
>>476-477
理解に苦しむネタはやめてもらえませんかね?
空気の読めない作者は荒らしと変わりませんよ
488名無しさん@ピンキー:2009/11/03(火) 03:38:48 ID:GlvzXp70
全くだ
489名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 15:42:19 ID:pPBqsxhJ
「Trans Days」とでもいうべき「全キャラ性別逆転」のパラレルワールドに需要ある?
(誠・泰介=女子、後の連中男子。)
別のスレで面白そうなネタを見つけたんだが・・・
490名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 11:56:59 ID:dONSf2dX
>>488
それは確かな情報か
491名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 12:24:24 ID:cnyeUUCf
>489
需要がないことはないだろうけど、一般受けはせんはな
492名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 15:28:50 ID:h2zLKpNX
>>489
エロゲネタ板に「もしもスクールデイズのキャラが性転換したら」があるだろ
そこで書いたほうが喜ばれるとおもうぞw
493名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 18:41:21 ID:GmXbjxqt
>>490
確かですとも
494名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 02:48:30 ID:zu5RT5/E
ほほう
495ぎちょう:2009/11/08(日) 03:30:12 ID:DRuDHRLx
ショートネタうぜぇの一言で済むのを、何故ネチネチ粘着し続けるのか理解出来ない
496名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 18:32:33 ID:/GQBrYb2
聞くところによると、どうも路夏が
乙女に謀られて不良たちにレイプされる…と言った話を聞いた。

腹ただしいので、「不良達を使って路夏に酷い目に遭わせたつもりが
乙女も不良達によって『もっと』凄い目(性的に)に…」な、話を
誰か…路夏が不憫だ…(泣
497名無しさん@ピンキー:2009/11/12(木) 21:03:59 ID:r49+OxZw
>>496
それと違うけど、乙女がひどい目にあう奴なら短編であるよ。それでもいい?
(内容は本家の「言葉が果物ナイフ持ちだす」ところからの分岐)
498名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 00:03:00 ID:y49e/Six
>>497
うーん…出来れば、「五人以上の不良達に、入れ替わり立ち替わり
三穴中出し+手コキ+ポニテ巻き付け髪コキ+ぶっ掛けられ」、…
そして、不良達の牝奴隷に…がいいんだけど…

その分岐エロあります?
499名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 00:13:19 ID:OvGGjCXd
ポニテ巻き付けってw 髪の毛巻いてシコるのかよw
どんなプレイだよw
500名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 00:32:39 ID:y49e/Six
>>499
そりゃあ、不良達によるヒャッハーリンカーンにきまってるでしょw

只の髪コキよりはインパクトあるかな…と。
501497:2009/11/13(金) 00:59:35 ID:pUKCh5tg
>>498
短編だからもっとあっさりしたの(実質性描写なし)だったが、あんたの欲求に基づき書き足してみる。
ちなみに世界も巻き添えになるので彼女好きな人はすまんな。(というか本来世界がメインの鬼畜モノだった)
502名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 09:06:52 ID:unvJ5XRY
>>501
おぉ、世界もいっしょですか、世界の三穴輪姦…凄くエロそう…。
そしたら不良の人数増やして乙女と世界のW三穴+手コキ(以下略)なシーンがあるといいな…

書き足しの件、心から感謝します、何か催促したみたいで…(汗

投下の時が楽しみです。
(出来れば三穴輪姦シーンとフィニッシュが『濃厚』なのを…)
503SINGO:2009/11/14(土) 03:37:59 ID:IPxuUQ0E
どうも。
なんか加藤が需要あるみたいですね。

ご要望とは全く外れますが、
今日のSSは、ダーク加藤が主人公です。
題材は
アニメスクイズの誠無双
【みんなの誠】からの派生です。まんまパクリですが。

タイトルは
【ひとりの誠】
504SINGO:2009/11/14(土) 03:39:25 ID:IPxuUQ0E
【ひとりの誠】〜乙女Side Story〜

荒い呼吸。
律動する身体。
「ああ…加藤。イクっ!」
暗闇のベッドの上、私のお腹で伊藤の欲棒が果てたのを感じた。
やった。
やった。ざまあみろ。
これで桂を出し抜いてやった。

事の始まりは、桂言葉のコトバだった。
『誠君の彼女は私ですから』
私は中学の頃から伊藤誠に惚れてて(でも告白できないままだった)、
それを知った桂が勝ち誇った様に伊藤の彼女宣言してきた。
桂のコトバが真実でない事は、七海づての情報で知ってる。七海いわく、
『伊藤ならウチのクラスの西園寺世界って娘と付き合ってるよ。え、桂?有り得ないって、あんな女』
つまり桂は虚勢を張ってる(伊藤とは、せいぜい友達止まりの関係だろう)。
だけど、虚勢すら張れない私自身が桂よりも劣ってるように思えて、気に入らなかった。
だからこそ私は、学園祭のオバケ屋敷に仮設した『隠し休憩室』に伊藤を誘い、そして押し倒した。

思ったよりも上手くいった。
昔馴染みの私は、伊藤の性格をよく知ってる。
伊藤はすでに彼女持ちだから、他の女(私)を抱く事など、伊藤の性格上、ありえない。
なのに伊藤は私を抱いた。
これは伊藤と西園寺さんの仲が上手くいってないのが原因だと思う。
たぶん伊藤は西園寺さんに不満を持ってる。
邪推するならば、西園寺さんのガードが固くて、伊藤は手を出せない。
だからこそ欲求不満の伊藤は私を抱いた。

「私なら、いつでもいいよ。こうゆう関係で」
あえて私は、体だけの関係(いわゆるセックスフレンド)に甘んじた。
そこには私なりの打算があった。
こうやって西園寺さんよりも聞き分けの良い女を演じていれば、いずれ伊藤の心は私に傾くはず。
西園寺さんには気の毒だけど、これは伊藤を満足させてあげない方が悪い。

こうして、私は伊藤と体を重ね合うようになった。いつでも、どこでも。

505SINGO:2009/11/14(土) 03:41:18 ID:IPxuUQ0E
学祭が終わって数日後。
私は女子バスケ部の親睦会に参加した。
場所は、なぜか榊野学園の視聴覚室。
先輩達の主催らしいけど、一体、何をするんだろ?
やがて照明が消され、室内が真っ暗になった。
スクリーンに何やら映し出される。
「!?」
そこには、七海と男子生徒がベッドで性行為をしてる映像が。モザイクもかけないままで。
七海の悲鳴が響く。
(あそこは学祭の時の休憩室?先輩達に隠し撮りされてた?)
という事は、もしかして…。
映像は止まらず、続いて(私の予想通り)私と伊藤のセックスシーンが流される。
部員達の嬌声。
このショッキングな状況で、不思議にも私は冷静でいた。
この上映の内容は、明日から学園中の噂になる。確実に。
でも、これはこれで好都合。
これで私と伊藤の仲が公認になる。
(しかも、おあつらえ向きに……)
ちらりと私は横を見た。
この上映会に、なぜか西園寺世界さんも参加してるから。
西園寺さんは、信じられないといった表情で震えてた。
これで伊藤と西園寺さんの仲は険悪になる。二人の距離は、さらに開く。
最悪、破局。
そうなれば伊藤は私のもの。
私は不謹慎にも、笑みすら浮かべた。


ところが数日後、予想外の事態が起きた。
『3組の伊藤が、西園寺を妊娠させた』
その噂は、たちまち学園中に広まった。
悪い冗談かと思ったけど、どうやら西園寺さん本人が告白したらしい。
まあ、恋人同士だから有り得る話なんだけど、私にとっては全くの予想外だった。
二人の仲がソコまで進んでないとタカをくくってただけに、結構ショックだった。

きっと伊藤は、どうやって責任を取るか、独りで悩んでるに違いない。
だけど今の状況だと、相談に乗ってくれる相手がいそうにない(事実、伊藤は全生徒から避けられてる)。
なら、私が相談に乗って何とかしてあげないと…。
ふと、桂の姿が視界に入った。
「桂。これでわかった?アンタは伊藤の彼女でも何でもないの」
だけど桂は、まるで噂など聞こえてないかのように、平然としてた。
「…誠君の彼氏は…私ですから…」
…こいつ!
現実から目をそらして、一途に伊藤を想い続けるヒロインを演じてる!?
頭にきた私は、桂の頬を叩いた。

506SINGO:2009/11/14(土) 03:42:43 ID:IPxuUQ0E
《伊藤宅 玄関》
「世界の事なら、俺のせいじゃないよ!」
その伊藤の怒声に、私は自分の耳を疑った。
伊藤は、まるで最初から私に相談する気など無いかのように、結論を出していた。そして、
「そんな所で突っ立ってないで、さあ入って」
伊藤は笑顔に戻り、私を中に招き入れようとした。相談の余地も無いのに。
…ああ、そうか。
ようやく私は自分のポジションを再確認した。すでに私達は親友ですらなくなっていた。
(私は…伊藤のセックスフレンドだった…)
伊藤は、このまま恋人の妊娠をスルーして私をベッドに誘うつもりだ。
それを悟った私は、目の前の男が途方もなく身勝手で不誠実でツマラナイ人間に見えた。
「…もう、いい。…出ておいで」
私の呼び掛けで、ドアの陰から桂言葉が姿を見せた。
「こ、言葉!?」
伊藤は、私が連れて来た人物に驚きを隠せないでいた。
「…誠君、変わりましたね。以前の誠君は、そんな事を言う人じゃありませんでした」
「ち…違うんだ、言葉…」
「あの頃の優しかった誠君は、どこにも居ないんですね…」
その桂のコトバは私の気持ちを代弁していた。
「さよならです」
桂は伊藤に背を向け、歩き出した。
「私も。サヨナラ伊藤」
私も桂を追う形でその場を去る。背後で伊藤が何か言ってるみたいだけど、無視した。
私も桂も失望していた。
伊藤は女を孕ませ、それを責任転換し、自己正当化した。恋人の身体よりも自分のエゴを優先した。
その上で、まだ自分を慕ってくれる女が居ると自惚れてる様なら、伊藤は世の中の女をナメきっている
としか言いようがない。
私と桂はエレベーターに乗り込んだ。もう振り返らなかった。

エレベーターの中、私は桂と二人っきりになった。
「加藤さん、ありがとうございます」
いきなり桂が礼を言ってきた。
「な、何よ?いきなり」
礼を言われるような事は何もしてない。
そもそも桂をココに連れて来た目的は、しつこく伊藤の彼女ヅラしてる桂を全否定してやるためだった。
それが結果的に、桂を救った形になった(少なくとも、これ以上、桂が伊藤に惑わされる事は無いから)。
「西園寺さんも清浦さんも嘘ばっかりで。加藤さんだけでした、本当の事を教えてくれたのは」
「そ、そう…」
真実を知らないまま一途に伊藤を想い続けるヒロイン、というのも良かったかも知れない。
けど、伊藤本人の口から女性をないがしろにする発言をされて、誰が一途でいられるだろうか。
(そんな女は一途とは呼ばない。ただの馬鹿女よ)
別離がこんな形になってしまったのは残念だけど、もともと伊藤とは恋人関係じゃなかった。

507SINGO:2009/11/14(土) 03:46:36 ID:IPxuUQ0E

「で、アンタ。これから、どうすんの?」
「まず勇気君に報告します。彼に謝らないと」
「ユーキ?」
「友達です。私の恋を応援してくれました。結局、それに応える事ができませんでした」
男女間の友情か。相手の恋心に気付かないと、後々ややこしい事になるわよ。
「よくわかんないけどさ。アンタ、そいつと付き合った方がいいんじゃない?」
私がそう助言すると、桂は驚いたような表情をして…、
だけど何も答えず、ただ微笑みを向けてきた。

一階。
エレベーターを降り、マンションから出ると、予期せぬ人物と鉢合わせした。
山県愛と喜連川路夏。
二人とも中学時代からの顔見知り。伊藤に気があるらしく、いけ好かない女だった。
ココに居るという事は、この二人も伊藤のアレを問い詰めに来たクチか。
さて、どう説明すれば良いのやら。
「あー伊藤の事なんだけどさ。何て言うか…」
私が口ごもると、
「知ってる。下まで聞こえてきた」
「アレは非道いよね…」
どうやら伊藤の『俺のせいじゃない』発言は、一階まで響いてたみたい。
「ね。これから皆で、ピュアバーガーにでも行かない?」
「えと、桂さんでしたっけ?あなたも一緒に」
さすがの二人も、もう伊藤と会う気は失せたみたい。

桂も山県も喜連川も、まるで憑き物が落ちたかのように、目が生気に満ちていた。
百年の恋がさめると、皆こうなるんだろうか。
私は、どうだろう?ただ保身に走っただけじゃないのか?
私も西園寺さんみたいに孕まされて棄てられるかもしれない。そんな危機感を抱いたからこそ、
伊藤から避難したのかもしれない。
私はパスケースから一枚の写真を取り出した。
中学卒業の記念写真。伊藤と私が肩を組んで笑っていた、あの頃。
「馬鹿…本気で好きだったんだゾ」
私は、その写真をゴミ箱に放り捨てた。未練を断ち切るかのように。


     独りの誠 END
508SINGO :2009/11/14(土) 03:56:36 ID:IPxuUQ0E
終わりです。

エロ無しでスマソ。

509名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 09:34:50 ID:phWxgEa7
乙でした、この後、誠どうなるのやら…
次はエロいの見たいっす。
510名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 16:40:28 ID:DLvuYHdw
>496
あの名前負けの腐れビッチはまたそんな事すんのか!
初期設定の公衆便所ネタで痛い目に遭えばいいのに。

>504-508
乙です。後日談とか気になる所ですが…
総スカンで世界とデキ婚コンボだろうなあ。自業自得とはいえやりきれんですな。
511名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 18:55:06 ID:5NP/9yxK
>>495
ぎちょう氏、乙です
シスプリのSS執筆をやめて、今は自治厨ですか?
512SINGO:2009/11/14(土) 20:35:48 ID:IPxuUQ0E
スマソ。
>>505の誤字を修正。

誤> 「…誠君の彼氏は…私ですから…」

正> 「…誠君の彼女は…私ですから…」
513497:2009/11/14(土) 22:29:12 ID:RH4nMB7P
>>512
アッー!

危うく「School Gays」になるところでしたなww
ちなみに>>497で言っていた奴は、現在基本ストーリーはできているもののエロ要素で考え中。

ネタバレにならない範囲でいうと、腹黒世界が墓穴を掘る話で乙女は巻き込まれる立場。
(原作でも本人がわけわからないうちに勝手に誠と肉体関係持っていた噂が立ってたし。)

514名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 00:03:13 ID:h0hxSsr/
ぎちょう氏をスクイズスレで発見
515名無しさん@ピンキー:2009/11/15(日) 17:23:06 ID:1M/QMwHg
>>508
SINGO氏、投下乙でした!


cross days、年内に発売されるんだろか…
516CrossChristmas:2009/11/16(月) 19:16:37 ID:9bemsqEz
<12月中旬>
 それは12月半ばごろのことだった。
西園寺が伊藤の子を妊娠したという噂が学校中でささやかれていた。
伊藤は桂と付き合ってたんじゃなかったのか?
噂が流れたのは12月の半ばの1時限目が終わったあたりからだ。
そして噂は人から人へと渡り、昼休みの現在、食堂でもその話題で
皆盛り上がってる。関係ない人間からしたらこれほどの楽しい話題もないのだろう。

 今向かいには路夏が座っている。一緒に食堂で昼ごはんを食べているのだ。
しかし、今日の路夏はなんか変だ。一人ずっと考え事をしている。
ひょっとして伊藤のことを考えてるんじゃあ?
学校中の噂になってしまっているので路夏だけが知らないとは考えにくい。
思い切って聞いてみたいが路夏の前で伊藤の話題はタブーに等しい。
以前路夏は伊藤のことを好きだった可能性があるからだ。
誤解や勘違いであることは分かったものの本当はどこかで伊藤のことを
好きだったんじゃないかと思う面も捨てきれない。しかし、こうやって路夏と
結ばれた今、下手に伊藤の話をするのはまずい上に気まずい。
「ごめん、ちょっと今日は気分が悪くて。教室に戻るね。ごめん」
路夏は食べ終わるなり、そう言うと教室へと行ってしまった。
路夏大丈夫かな?

 組が違うと、教室で一緒に喋ったりすることもできない。
他クラスに入り浸るのも心象はあまりよろしくない。
かと言って自分の教室に戻っても暇なのは変わらない。
桂がいるのかと思って図書室に行ってみたがいない。
最近桂、図書室に来ないな。別に友達というほどの仲でもないし
図書室に来るから関わりがあるだけなのでここで顔を合わせないのであれば
ほぼ会う機会がない。以前は駅でも見かけたりもしたが最近は
時間が合わないのか見かけることもなくなっていた。

 ということで何をするでもなく校舎をぶらつく。
すると女子生徒が4階に上がっていくのを見かけた。
あの特徴ある髪型は間違いなく黒田だろう。
でも黒田が4階に何の用だ? 4階と言えば理科室と音楽室くらいしかない。
そういえば、黒田とも最近喋ってないな。
別にこっそり後をつけるつもりはなかったが、妙に気になる。
黒田はもう階段を上りきってしまっていて、僕は早足で階段を上がる。
けど廊下には誰の姿もなかった。
黒田どこいったんだ? 僕がそう考えながら歩いていると
話し声が聞こえてきた。声の場所は・・・第二理科室?
517CrossChristmas:2009/11/16(月) 19:17:24 ID:9bemsqEz
「俺にどうしろって言うんだよ・・・」
「自業自得でしょ。ちゃんとしてなかったの?」
「あの頃は・・・その、まだ慣れてなくて・・・つい焦って」
「はぁ・・・男ならちゃんと責任取りなさいよ」
「って言われてもさぁ・・・おいどこへ?」
「今はあんまりあんたと一緒にいると、私までそういう目で
見られそうなんですけど・・・」

 そりゃそうだろう。僕だってこんな場面見たら疑いたくもなる。
伊藤のことは名前と顔くらいしか知らないので、声の主が伊藤なのか
どうかは分からないが、話してる内容から黒田と一緒にいる男は伊藤だろう。
って、そんな場合じゃないだろ! 足音が近づいてくる。やばい黒田がこっちに来る!
僕はとっさに後ろを振り返り逃げようとして・・・
4階の廊下は滑りやすい。とっさのことだったのでそのことを失念していて
僕は見事にすっ転んでしまい、ガラッと開く音がすると僕を見下ろす黒田と目が合った。
「足利?・・・ はぁ・・・ 盗み聞きなんて趣味悪いわよ」
――ごめん・・・そんなつもりじゃなかった」
「まぁいいわ、行きましょう」
いつもの黒田なら「何聞いてんじゃー!」と一発パンチか
チョークスリーパーが来るところだがそんな気分ですらないらしい。
黒田は早足で歩き始める。早足なのだがどこが足取りが重そうだ。
――黒田大丈夫か?
「大丈夫じゃないわね、色々と」
――色々ねぇ・・・
「あんたも知ってるでしょ。学校中で噂になってるんだし」
あぁやっぱりさっきの話し相手は伊藤か。
――西園寺だっけ? でも伊藤は桂と付き合ってるんじゃなかったのか?
「学際前に別れたってさ。世界・・・あっ西園寺世界と伊藤、学際ではバカップル
全開だったのに学際終わってからなんか急に世界が休みだしちゃって」
桂が伊藤と別れた? あの伊藤にどう考えてもベタ惚れな桂が?
にわかには信じがたい話だが西園寺と付き合ってるとなると、伊藤が振ったのか
・・・最悪二股の可能性もあるな。くっ伊藤のやつ・・・
「世界が休みだすのと同じ時期に七海も元気なくなっちゃったし・・・
あっ喜連川さんから何か部活のことで聞いてない? なんか部の方で揉めたらしくて
そっから七海、甘露寺七海っていう子も元気ないんだよね」
――甘露寺なら知ってる。でも路夏からは何も聞いてないけど?
「そう。それにしても伊藤のやつ世界の見舞いにちっとも行かないし
他の女と遊ぶことに夢中で・・・伊藤はもう世界のこと好きじゃないのかもね」
518CrossChristmas:2009/11/16(月) 19:18:14 ID:9bemsqEz
 他の女・・・最悪の予想が頭をよぎる・・・路夏・・・
いいや、そんなはずはない。あれは誤解だったはずだ。

 早足で歩いてきたので3組の教室の前に来るのもあっと言う間だ。
「あんたと喜連川さんが羨ましいよ」
羨ましい・・・んだろうか? 僕自身、女の子と付き合うのは
路夏が初めてだから、人から羨ましがられるような状況かどうかは
よく分からない。それに色々すれ違いもあってやっと結ばれた仲だ。
僕としては普通にすれ違いもなく結ばれたカップルの方がよっぽど羨ましい気もする。
でも黒田が僕と路夏の仲を見てそう思ってるのなら悪い気はしない。
客観的に見て僕らはカップルとして認められているのだ。


<12月下旬>
 それから数日後、まだ噂はあるものの次第に興味がなくなって
いったのか、伊藤と西園寺の噂は少しずつだが沈静化してるようだ。
路夏も数日の間にはまた元通りになってまたいつものように僕に微笑みかけてくれる。
そして恋人たちの一大イベント・・・クリスマスがもうすぐに迫っていた。

 さて、路夏をどこに誘ってどこでクリスマスを祝うか僕は迷っていた。
榊野町が鉄板なのかもしれないが、小洒落たレストランはどこも予約で
いっぱいそうだし何より、学生の身分である僕にそこまで金銭的な余裕もない。
間違っても姉ちゃんに資金援助頼もうものなら脊髄反射でチョップ食らうのが目に浮かぶ。
そして出来るなら路夏と二人きりで過ごしたいのだが、僕の部屋は365日、姉ちゃんたちの
溜り場みたいなものなので僕の部屋に呼んでもクリスマスというよりもいつもの光景で特別感が
まるでない。さて、どうしたものかね?
 天気予報では今年はホワイトクリスマスらしい
519CrossChristmas:2009/11/16(月) 19:19:01 ID:9bemsqEz
<12月24日 クリスマスイヴ>
 イヴの日も路夏と過ごしたかったのだが、イヴは路夏の都合が合わない。
おまけに今日は糞寒いわでそんな中姉ちゃんにスイーツおおはらに
強制パシリさせられるわで厄日だな。しかも姉ちゃんが帰ってくるなり
「勇気、スイーツおおはら行って来い」といきなりだ。
もう6時だぞ。せめて僕が帰る前に言ってほしい。

「いらっしゃいませ。スイーツおおはらへようこそ」
うわ、凄い混んでるな。イヴの日だから混んでるとは
思ってたけど、こりゃ1時間近く掛かるかもな・・・
「あら? あなたは確か、光さんのボーイフレンドだったかしら?」
そう話しかけて来たのは確か・・・店長の遠野さんだったかな?
以前黒田がそう呼んでたのをなんとなく覚えてた。
未だにこの人には誤解されっぱなしだ。まぁこの人なら害はないからいいけど。
――黒田今日はバイト休みなんですか?
「ごめんなさいね。今日は光さんお休みなんですよ」
――そうですか
「それで、どのようなケーキをお探しですか?」
――えっと・・・レモンカスタードケーキと・・・
「30分ほど掛かりますがご了承ください」

 うぅ寒い・・・暖房の効いた店内に長く居たため、
外は余計寒く感じるがそのせいだけではない。
さっきまでは振ってなかった雪が降ってる。
明日の路夏と一緒に食べるケーキの予約もしてなんだかんだで
1時間近くもいたな。用事も済んだしとっとと帰ろう。遅いと
姉ちゃんに何言われるか。
 しかし、どこを見てもクリスマス一色だ。
一応彼女がいる身ではあるがこんなカップルだらけの榊野町と
イルミネーションの装飾の前では、心底1人者は浮くなぁっと感じる・・・

 駅前には大きなクリスマスツリーがあり、たくさんのカップルがいる。
そんな中、ふと1人でいる黒髪のうちの学校の女子生徒・・・桂がいた。
――桂、こんなところでなにやってんだよ?
言いながら僕はいつもの感じと何かが違う桂を目の前にして
なぜだか知らないが妙な感覚に陥った。それに肩には雪が積もってる。
こんな寒い中コートも着ないでなにやってるんだよ?
そう言おうとして桂の目を見たとき、僕は思わず言葉を呑み込んだ。
桂の目と顔にはまるで命が宿っていないかのように冷たく、冷え切っていた。
まるで死んでいるかのように・・・
僕は背筋が凍りそうなほどの寒気・・・先ほどのまでの冬の寒さとは
全く別物の鳥肌が立った。
「足利くん・・・待ってるんです。誠くんを・・・
待ってるんですよ。うふふ・・・誠くんとお約束しましたから・・・うふふ」
何かを喋ろう、そう思っても声が・・・出ない。

 僕が何も発しないで固まっていると桂はふと何かに気づいたのか
静かに立ち上がると無言で歩き出した。
その視線の先にはツリーのところに一人ポツンと座っている男・・・伊藤がいた。
なんで伊藤がこんなところに?
伊藤は携帯を眺めていた。その顔はなんだか不思議と和らいでいるようにも見える。
僕は一瞬止めようかどうか迷っていたがあの桂には正直近づきにくい。
それに桂の「待ってるんです」という言葉を思い出し踏みとどまった。
520CrossChristmas:2009/11/16(月) 19:20:48 ID:9bemsqEz
――誠くん?・・・・・・良かった・・・来てくれたんですね
「ええ・・・あぁ・・・ああ・・・何やってるの? こんなになるまで」
――待ってたんです
「えっ?」
――待ってたんですよ。 誠くんのこと・・・
「言葉」
――西園寺さんも応援するって言ってくれました
「えっ?」

 西園寺が? 西園寺は伊藤の子を妊娠してるのに
伊藤と桂の仲を応援? 僕は意味が分からなかった。
盗み聞きは悪趣味なのだろうが、どうしても気になってしまう。

――だから、私・・・誠くんに相応しい彼女にならなくちゃいけないんです
「ことの・・は」
――お料理も・・・お裁縫も・・・もっといっぱい練習して・・・
  胸張って誠くんの側にいられるように・・・

 会話がまるで噛み合っていない。というよりも桂が一人で喋っている感じがした。
伊藤、桂の異変に気づいてやれよ。あの子にはお前が必要なんだよ。
どうしてそれを分かってやれないんだよ。

「あっ・・・言葉!」
――誠くんに恥ずかしくない彼女になるんです。うふふ・・・
「言葉!」
――誠くんのために・・・うふふ
「なぁ! おい!」
――誠くんのお役に立ちたくて
「なぁ! どうしちゃったんだよ!」
――誠くんと一緒にいたいから
「勘弁してくれよ・・・」
――誠くんのこと信じてます
「もうやめてくれよ・・・」
――私、誠くんの彼女ですから
「もぅ・・・ぃぃょ・・・」

 伊藤は泣き崩れた。伊藤が涙もろい性格なのかどうかは知らない。
が、今のは心の底から絞り出たような声と涙なのだろう。

――誠くんのこと・・・好きです
「!!!」
――大好きです
「なんで? どうして? 俺なんかを・・・・・・俺、俺、知らなくて・・・
ごめん、本当にごめん 俺、俺・・・
言葉・・・俺、言葉のこと・・・好きだ」

 ・・・良かったな、桂。
本当に伊藤と桂はここで待ち合わせたいたのか、とか
知らなかったで済ませるな! とか・・・色々思うことは
あるがとにかく・・・良かったな桂。
伊藤、二度と桂を離したりするなよ。
今度桂をあんな風にしたら僕が絶対に許さないからな。
521CrossChristmas:2009/11/16(月) 19:21:50 ID:9bemsqEz
 イヴの夜にこうやって抱き合ってるカップルはそこらじゅうにいる。
だから伊藤と桂が抱き合ってるのも特別珍しい光景ではない。
でもこの2人は・・・周りに溶け込むカップルとはまた違うものに見えた。
西園寺の妊娠のことを考えるとあの2人にはまだまだ壁がある。
でもそれを僕が考えてもしょうがない。それにあの2人ならきっと
乗り越えてくれるだろう。

 僕は今一度、抱き合う桂と伊藤を見てから、駅へと歩き出した。


<12月25日 クリスマス>
 昨日、帰るなりいきなり「遅い」とチョップを食らった。
イヴの日に予約もなしにケーキを買うのはかなり大変なんだぞ。
僕の努力をもうちょっと評価してほしいものだが・・・
まぁそのおかげで今日のケーキの予約も取れたのだが。

 夕方、僕は一度帰ることにした。さすがに学校に
クリスマスプレゼントは持って行きにくいし渡しにくい。
あとスイーツおおはらで予約したケーキも取りに行かないといけない。

 恋人と過ごす初めてのクリスマス。どんな日になるんだろうと
期待に胸を躍らせていると、原巳浜で偶然、コートにマフラー姿の桂が同じ車両に乗った。
桂の顔を見ると、昨日とは全く違う、そして普段とも違う
温かいオーラを放っていた。これなら普通に話せそうだ。
522CrossChristmas:2009/11/16(月) 19:22:41 ID:9bemsqEz
――よう桂
「あっ、足利くん、こんにちは」
――昨日は榊野町で今日はこっちかい?
「なんで知ってるんですか?」
昨日僕と会ったこと、覚えてないのか?
――さぁ なんとなくね。桂の顔にそう書いてあるような気がしたから
桂は頭の上に?マークが付きそうな顔をして僕を見つめる。
見ると桂の片手には袋があり、野菜など食材がいくつか透けて見える。
伊藤の家で料理作って祝うんだろう。今頃路夏もその準備をしている頃だ。
「足利くんも今日は彼女さんと一緒に過ごすんですか?」
――うん、そうだけど
「お互い良いクリスマスになるといいですね。うふふ」
桂は本当に嬉しそうに笑う。こっちまで自然と笑顔になってしまいそうだ。

 東原巳に到着し、一緒に歩く。そういえば桂とこうやって一緒に歩くなんて
初めてかもしれないな。
「私はこっちですので。それじゃあ」
路夏と伊藤の家は反対方向かっと思いながら
――あぁ またな。・・・・・・桂
「はい?」
――頑張れよ・・・伊藤と
「あっ・・・はい!」
その返事は、照れながらも力強いものだった。

 この時、事態は既に取り返しの付かないところまで発展していることを
僕を含め、桂もまだ知らない。
もし、僕に未来を見通す予知能力があったら、桂を引き止めただろうか?
否、この段階では全てが遅すぎた・・・そう、全てが・・・

                            ー終ー
523CrossChristmas:2009/11/16(月) 19:23:41 ID:9bemsqEz
<番外編 路夏>
 勇気はどこまで知ってるのかな?
聞いてみたいが聞くことで関係が壊れてしまいそうで・・・怖い。
この前、勇気に「女バスで何か揉め事でもあったの?」って聞かれたときは
知恵先輩が教えたのだと思ってたけど、会話の中で勇気は上映会のことは
どうやら知らないようだった。もちろん真相を言えるわけもなく、
――勇気に言ってもきっと分からないことだから・・・
と言葉を濁した。

 あの上映会があってから、女バス内では言い知れぬ空気が漂っていた。
部長は責任を感じているのか突然理由も告げず部活を辞めてしまった。
甘露寺さんはあれ以降、部活に顔を出していない。出せる方がどうか
しているのかもしれない。
加藤は部活に出ていたがその表情はとても暗い。
あの時は分からなかったけど、上映会で甘露寺さんの隣にいた女子が
伊藤の子を妊娠した西園寺さんだと知ってから加藤の表情の暗さの
理由がよりはっきり分かった気がした。
伊藤と西園寺さんが付き合ってる中、加藤は伊藤を休憩所に呼んだ。
その一部始終の映像を西園寺さんと一緒に見ていて、その上、ここに来て
西園寺さんの妊娠・・・ 私だったらどっちの立場でも耐えられないな。

 そんな私はと言えば・・・部活には出ていたが女バスを支配する
言い知れぬ空気はやっぱり同じ空間にいて息苦しかった。
何より知恵先輩たちと自然と距離を置いてしまっている。
伝統だからというのと、憧れの知恵先輩が賛成していたから
私も賛成しようと思って動いた休憩所設営。別に私の手柄だとは
思ってないけど、こんなことになるならあの時何もしなければ
よかったとさえ思えてしまう。あの時私が動かなければ中止に
なっていたかもしれない、それに知恵先輩はきっと甘露寺さんが
映ってたから上映会をした可能性が高い。
あの時私が動いたから、甘露寺さんに相談したから・・・
そう思うと私のせいなんだと思えて・・・胸が苦しかった。

 知恵先輩・・・どうしてあんなことしたの?
いくら甘露寺さんが嫌いだからってあれはやりすぎだよ。
勇気の・・・彼氏のお姉さんであり、私の憧れの先輩でもある
知恵先輩がこんな行為をしてしまうことに戸惑いを隠せない。
私は今、知恵先輩のことをどう捉えているのか、どう捉えていけばいいのか
分からなくなっている。だから自然と知恵先輩たちとは距離を置いてしまっているのだろう。
吉良先輩や石橋先輩は「最近付き合い悪くない?」と言うけれど知恵先輩は私には
何も言ってきたりはしない。多分、私のことを察してくれているのだろう。
524CrossChristmas:2009/11/16(月) 19:28:29 ID:9bemsqEz
 そんな色んなことを抱えながらも勇気に対する想いだけは減るどころか
どんどん強くなっている。恋の力って凄いなぁって思う。
勇気と一緒にいるだけでドキドキして全身が痺れたような高揚感に包まれる。
勇気と一緒にいる時だけは嫌なこと全部忘れさせてくれる、そんな気がした。

 今日は12月25日、クリスマスだ。
勇気に金銭的な負担はあまり掛けさせたくない。勇気の部屋というより
勇気の家に行くと知恵先輩たちがいる可能性があって気まずい。
そこで勇気を私の家に呼ぶことにした。今日親は夜勤なので好都合だった。

 学校帰りに一緒に私の家に行っても良かったのだが勇気は
榊野町でケーキの予約をしているらしいので一度帰ってから来ることになった。
勇気はケーキ担当で私は料理担当だ。どんくさい私の唯一の得意分野でもある。
そういえば勇気に何か作るのって今回が初めてかも。

 先にお風呂に入ってから、料理の準備を始めようとして・・・
ふと、ある食材が足りないことに気づく。
もぅ! 自分で自分に腹立ちながら駅前のスーパーへ行こうと
身支度を整える。お風呂にはゆっくり入ったものの湯冷めして
風邪引くのは嫌なので十分厚着する。
525CrossChristmas:2009/11/16(月) 19:29:38 ID:9bemsqEz
 駅前のスーパーで食材を買い、家に帰ろうとした時だった。
私のすぐ横を薄ピンク色のコートを羽織った女の人が物凄い形相で
駅の方へ走っていく。
顔を見るのは上映会の時以来の・・・西園寺さんだった。
左手はコートのポケットの中で、何かを庇うような感じにも見えた。
伊藤と一緒に過ごすなら駅に行くのはおかしい。
今日は伊藤と過ごさないのだろうか?
でも走ってきた方角、それは伊藤の家がある方向だ。
それにしても物凄い怖い顔してたな。
西園寺さんも大変だろうな。高校生で妊娠なんて。
そんなことを考えながら私は家路へと急いだ。

 う〜寒い。身体がすっかり冷えてしまってる。
私はちょっと温まるためにベッドに入った。
これから勇気と過ごすクリスマスのこの部屋、時間・・・
今日は最高の一日になるといいなぁ
そう思いながら勇気の顔を浮かべる。

――勇気・・・!
心臓が高鳴り、身体、特に下半身が熱くなる。
――んっ!
私は無意識に自分で胸を揉みだす。
――んん! 勇気いいよ・・・もっと強く ん!
私は我慢できなくなって、あそこへと手を伸ばす。
ぬちゃ、くちゃっといやらしい音が立つ。
――勇気のこと考えるだけでこんなに濡れちゃうなんて・・・ん!
私は自分の快楽に身を任せるままに弄り続けた。

――勇気 もぅ・・・! イッちゃう!
ピンポーン
――!!
 私は我に返った。勇気が来たのかな?
まだ途中だったけど私は服を着なおすと玄関へ向かった。
お互い一線を越えてる仲なので別に隠すことでもなかったのだが、
1人えっちしてたなんて知られるのは・・・恥ずかしい。
526CrossChristmas:2009/11/16(月) 19:30:22 ID:9bemsqEz
――はい
「僕だよ、勇気だよ」
私はためらいもせず玄関を開けると愛おしい人が
両手に荷物を持っていた。
――勇気、鼻赤いよ〜
「そんだけ寒かったんだって、入っていい?」
――もちろん
「お邪魔します」
――今日は親いないから遠慮しないで
勇気は玄関を閉めて鍵を掛けると
――!
私を抱きしめた。
「路夏温かい」
――やっ! あっ!
だめ・・・ さっき中途半端だったせいもあり、勇気に触れられるだけで
全身の力が抜けてしまう・・・身体が・・・求めてしまう・・・
欲しい・・・勇気の・・・
「路夏?」
勇気の欲しい・・・!
私は無意識に勇気にキスをして舌を絡ませる。
ぴちゃ・・・くちゃ・・・
勇気は突然のことに一瞬戸惑ったものの、すぐにスイッチが
入ったのか合わせて舌を絡めてくれる。
――んっ・・・んはっ・・・んっ・・・やっ!
キスの最中、勇気が私の胸を揉みだした。
ただでさえ全身が敏感なのに胸まで揉まれたら・・・私・・・!
私は足がガクガク震えだしついには立っていられなくなり勇気にしがみ付いてしまった。
「路夏・・・ここじゃあ寒いし路夏の部屋へ行こう。ほら」
そう言うと勇気は腰を屈めた。おんぶしてくれるようだ。
私は勇気に甘えることにし、勇気の背中に身を預ける。
勇気の背中、温かい・・・
勇気は私と同じくらいの身長なのに力は割と強く、難なく私をおんぶする。
そのまま荷物を持ち、そのまま私の部屋へと歩き出した。
勢いでえっちなことになっちゃったけど先に言わなきゃいけないことが
あったのを思い出す。
――ねぇ勇気?
「なに?」
――勇気、メリークリスマス 大好きだよ。
「メリークリスマス 路夏、僕も大好きだ」

 クリスマスプレゼントの交換はまた後でやろうね、勇気。
料理も作らなくちゃね。絶対勇気をとろけさせちゃうんだから!
でも・・・その前に・・・私たちは心行くまで愛を確かめ合うのだろう。

 こうして私たちのクリスマスは過ぎてゆく・・・
今この瞬間、数キロ先のマンションと、うちの学校の屋上で
起こっていることなど知りもしないで・・・
                       ー終ー
527名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 19:31:20 ID:9bemsqEz
連投規制うぜぇw

まだクロイズ発売前なので勇気や路夏のことがはっきりとは分かっていないので
勇気視点、路夏視点は完全な妄想だけど、アニメ版で勇気と路夏が結ばれていたら
というコンセプトで書いてみたくなって書きました。
勇気たちが関わることで未来を変えようとも思ったけど、あえて結末はそのままにした。
あと今回、一番描きたかったのは勇気と路夏の恋路よりも勇気と言葉の友情だったりするw
言葉にはいつも味方がいなさすぎるので、性別を超えた友人に勇気にはなってもらいたいという
願望もあり、しかしそこまで友情は芽生えることもないまま事件へと言うダークな風に書きました。
クロイズでは勇気と言葉が性別を超えた純粋な友達になれるといいなぁw

いくつか勝手な設定をしているのでまとめると
・学際前に勇気と路夏は誤解や勘違いを乗り越え結ばれている
・路夏は誠とは関係を持っていない
・えっちするフラグで路夏を片親にし、夜勤退場w
・これまたえっちするフラグで路夏には兄弟、姉妹はいない
・なんとなく一軒家っぽいw
・料理が得意な設定は何でもてきぱきこなすが料理は下手な言葉と
対にしたかったのでどんくさくなんでも要領は悪いが料理は上手にしたかったw
などですねw
528名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 21:16:42 ID:3eLYRrLu
>>516
GJ! 乙でありました。

オリジナルシチュで勇気が路夏のレイ―ポ阻止な話(その余波で乙女が不良達に
リンカーン…な話とかw)が見たいです。
529mark:2009/11/16(月) 23:59:38 ID:/KzPu3ZE
>>527
お疲れさんです。天国と地獄そのものな人間模様ですね……
なんか自分も久々にまた書きたくなったな(笑)
3つほどネタは思いついてるんだが、具体化がまだまだ先になりそう……

エロはないですが、
アニメ版で例の事件後の知恵らの動きと、エイプリルフールであった言成
を絡めた我が子ネタと、乙女の明るいネタなんかはどうでしょう?
530丁字屋:2009/11/20(金) 21:37:30 ID:VJK4RXGX
お久しぶりです。
半年もの間投げっぱなしで申し訳ありません。
もう忘れてるかもしれませんが、
345からのつづき・・・完結編です。
531丁字屋:2009/11/20(金) 21:39:19 ID:VJK4RXGX
気のせいじゃない。
確かに桂の懐には固い感触があった。
でもさっき桂は支給された武器はノコギリだって言っていた。
ということは・・・・・・
毒が入っていたかなんてもうどうでもいい。
桂は私に嘘をついた。
桂は私を騙した。
そう認識したとき、さっきまで私の中にあったはずの桂への信頼は完全に砕け散った。
そして同時に私の心に恐怖がわきあがった。
たった今、私は桂を突き飛ばした。
そう、桂の中で私は敵と認定されたのではないか?
だとしたら、桂が次にとる行動は懐の銃で私を・・・。

そう考えが至った時、桂が顔を上げた。
「加藤さん、いったいどうして・・・?」
そう言いながら、転んだときの痛みをこらえるかのようにしている桂は
私に向かって微笑もうとしているように見えた。
だが、私にはもはやその笑みは、いつでも私を殺せるのだという余裕の笑みにしか見えずに・・
「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
私は叫びとともに床に転がる・・・さっきまで桂が座っていた椅子を手に取り、そして・・・
532丁字屋:2009/11/20(金) 21:39:57 ID:VJK4RXGX
ガッ!!

その椅子で力いっぱい桂に頭を打った。
鈍い音とともに桂が再び倒れる。その頭からは血が流れだす。
桂は声を発することも無く意識を失ったようだが、
それでもぴくぴくと痙攣する身体が、桂がまだ生きていることを示していた。
私その身体に馬乗りになり、更に桂の頭を椅子で何度も打ちつける。
そのたびに桂の身体はびくんとと震え、返り血が私の身体を赤く濡らす。

やがて桂の身体はまったく動かなくなった。
その頭から流れ出した大量の血が床を濡らしている。
私は血に染まった椅子を床に落とし立ち上がると、桂の身体をつま先で軽く小突く。
桂の身体はまったく動かず、瞳孔も開ききっている。

そう・・・桂は死んでいた。

そう認識した瞬間。私は床にへたり込み、そして身体が震えだした。

殺した・・・!
私が・・・桂を・・・・。

目の前に横たわっている、もう動かない桂の死体が否応なくその現実を私に突きつけてくる。

533丁字屋:2009/11/20(金) 21:40:52 ID:VJK4RXGX
どうして?
どうしてこんなことになっちゃったの?

混乱する頭で私は考える。
何故・・・・私はこんなことを?
そう、あの時・・・桂の料理に薬の味を感じた時にから・・・
毒を飲まされたって・・・私の心に桂への疑惑が広がって・・・。

あ・・・でも、私の身体・・・なんともない。毒を飲まされたなら私だってもう死んで・・・
そうでなくても処か苦しくなってる筈じゃあ・・・。
だったらあれは私の気のせいだったの?
だとしたら、私は取り返しのつかない間違いをしたんじゃ?

でも、もしかしたら遅効性の毒かも?
・・しかしそれは、半ば私が犯したことを正当化するための願望であったのかもしれない。
そう思いつつ、それでも私は立ち上がると、桂が料理をしていたキッチンへと向かう。

そしてキッチンのテーブルの上に・・それはあった。
そう・・・錠剤の瓶が・・・!
やはり桂は私を殺そうとしていた!?

534丁字屋:2009/11/20(金) 21:41:40 ID:VJK4RXGX

だが手にとってみればそれは、ただの風邪薬だった。
熱のある私に飲ませようとしていたのだろう。蓋が少し揺るんでいる。
じゃあ、あの時私が感じた薬の味は、この風邪薬?
でも、これって食後に飲むもので食事に混ぜるものじゃあない・・・。
確かに桂ってちょっとずれたとこあったけど、まさか食事に混ぜちゃったの?
・・・いや、うっかり私の皿に落として気づかなかったのか・・・?
桂ってほやっとしてるとこあったから、ありうるかも・・・。
だがいずれにせよ確かなことは一つ・・・

桂は・・・
ずっと私のことを心配して、気遣ってくれてたんだ!

そのことを確信すると同時に
私の瞳からは涙が溢れ出し、

「う、うああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

私は床に突っ伏し大声で泣き出していた。

535丁字屋:2009/11/20(金) 21:42:45 ID:VJK4RXGX

どれくらい泣いたのだろう。
外はもうすっかり暗くなっていた。

私は声がかれるほど泣いた後、再び桂の死体の横たわる部屋に戻ってきた。
明かりをつけると、再び、もう物言わぬ桂の姿が目に入る。
開ききった桂の瞳を閉じてやると、
「ごめんね、桂・・・ごめんね・・・ごめんね・・・」
死体のそばに座り込んだまま・・・そうあやまり続けた。

もう動く気にもならなかった。
いつゲームに乗った人間が殺意を持ってこの家に入ってくるかもしれなかったが、そんなことはもう関係なかった。

「私は、人を殺した事の重みに耐えながら生きていけるほど強い人間じゃない」
その桂の言葉が脳裏によみがえる。

そう、私も人を・・・
ましてや自分を気遣い優しくしてくれていた筈の相手を殺した事の重みに耐えながら生きていけるほど強い人間じゃなかった。

だから・・・もうどうでも良かった。

その時、背後で部屋のドアの開く音がした。
536丁字屋:2009/11/20(金) 21:44:49 ID:VJK4RXGX

その時、背後で部屋のドアの開く音がした。
いつの間にか家にだれか入ってきていたのか・・・おそらく明かりを見て入ってきたのだろう。
ふりかえると、そこに立っていたのは夏美だった。

その姿を見て、投げやりになっていたはずの私は・・しかし心のどこかで親しい友人との再会を喜んでいた。
だが夏美は・・・
「乙女・・・アンタ、桂を・・・」
震える声でそう言いながら、拳銃ーおそらくは夏美の支給武器なのだろうーの銃口を震える手で私に向けてきた。

そう、血まみれで死んでいる桂と、その側で返り血にまみれている私を見て彼女がこの状況をどう受け取ったかは明白だ。
しかも、それは誤解でもなんでもない。
それでも、私は友達にゲームに乗った殺人鬼と思われるのがやりきれなくてなくて・・・
「夏美・・・私は・・・」
そう言いかけて立ち上がろうとするが、その瞬間
「いやああああああっっ!!」
夏美の悲鳴と同時に閃光が目に入り、銃声が聞こえると共に腹部に鋭い衝撃を受ける。
その瞬間身体の力が抜ける。夏美のほうを見ると彼女の手にある拳銃の銃口から硝煙が立ちのぼっていた。
537丁字屋:2009/11/20(金) 21:46:48 ID:VJK4RXGX

そして理解する。

私・・・撃たれたんだ・・・。

そう、夏見が私のことをゲームに乗った殺人鬼と思ったなら、それは当然あるべき行動だった。
それでも私はおびえる夏美を安心させようと手を伸ばそうとするが、再び銃声が幾度か聞こえ、そのたびに腹部に熱い痛みが走る。
そして
「あああああぁぁぁっっ!!」
叫び声とともに、夏美が飛び出していくのが目に入ったが、私にはもう意識を保つことさえ困難になっていた。


私は床に倒れ付し、目を閉じる。
お腹の傷から血がどんどんと流れ出していくのがわかる。
そして失いかけた意識の中で私は思う。
私が桂を信じていれば・・・信じることができていれば、こんなことにはならなかった・・・。
そうすれば私は桂と二人で、この狂った島で今だかりそめの平穏の時を過ごせていたはずだし、
夏美との再会をお互いに喜べていた筈なのに・・・。
でも、結局私は桂を疑って殺し、それが夏美に私を撃たせることになった。
そう、私は桂を殺したことで、夏美にまで私を・・・人を殺した重荷を背負わせてしまったんだ・・・。、

だから・・・

ごめんね・・・ごめん・・・。


そう桂と夏美の二人に心の中で謝り続ける私の意識は、やがて暗闇に吸い込まれていった。


END
538丁字屋:2009/11/20(金) 21:48:20 ID:VJK4RXGX

というわけで終わりです。
何の救いもない酷い終わり方の上、この後この島でのゲームがどうなるかとかは投げっぱなしです。
散々更新に間を空けた挙句こんな終わり方でごめんなさい。
539名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 16:59:53 ID:8d2EXeG6
540mark:2009/11/24(火) 23:22:15 ID:wBMNYwJD
 誠達の事件後の知恵プラス二馬鹿もの。さすがの彼女も守勢にまわるしかないか……
勇気・路夏は交際中か互いに接点がないままなのか?(いずれにせよ、誠達の事情には深入りしない)
クロイズ発売前なので、自分の想像がほとんどですが。

足利家

「お待たせ」
「遅いよ。五分遅刻」
「ごめんごめん。家には友達ん家で宿題するって事でアリバイ作ってきたから」
「洋佳ならもう先に来てるよ。上がって」
「ああ」

短いやりとりの後、家の中に消えていく。足利知恵、石橋伊穏、既に知恵の家に
お邪魔している吉良洋佳の三人は榊野学園のバスケ部の部員であり、友人同士でもあった。
階段を上がり廊下を歩きながら知恵が伊穏に話しかける。

「今日は勇気の部屋じゃなくて私の部屋だから。タバコはなしで」
「わかってるよ。今日はさすがにね」
「例のヤツちゃんと持ってきたね?」
「もっちろん」

喫煙する為にいつもたむろしている弟の勇気の部屋を通り過ぎ、知恵は自分の部屋へ伊穏を通した。

「これで揃ったね」
「今日はゆうちゃんは居ないんだ?」
「当たり前でしょ。あいつに聞かれると厄介だし。ま、勝手に私の部屋に近づいたら
ぶっ殺すって常々言ってるけど」
「優しいお姉さんだことで」

伊穏が軽口を叩くが、知恵は特に反応しない。

「伊穏。今日は遊びに来たんじゃないんだよ」
「そうだね。ゴメン」

そう言い、伊穏は真面目な表情になり、
黙って手持ちのバッグから宿題用のノートや問題集ではなく、あるモノを取り出した。
同時に知恵もクローゼットの奥をごそごそし出す。
洋佳はその様子をいつになく厳しい表情で見つめていた。
541mark:2009/11/24(火) 23:22:38 ID:wBMNYwJD
床には録画用のDVDやビデオテープ、ビデオカメラが置かれ、
それらを睨むような、迷惑そうな表情で3人が見つめる。
「まさかあの時映っていた男子が事件の犠牲者だったとはね。確か甘露寺と同じクラスだったっけ?」
「1年の間ではかなり噂になってたみたい。もう一人の亡くなった娘以外でもそっち関係が派手だったって」
「とんだとばっちりだよ。でも、死人が出たんじゃ引くしかない」

知恵のそのことばに伊穏、洋佳も頷く。

「冬休み明けには先生たちも調査すると思う。もし上映会の件が表沙汰になったら、私達も
ただじゃすまないし、部の存続に関わる」
「まずはこれを今日中に処分しなきゃ」
「あいつらが映っていた時はカモだと思ったけど、今となっちゃ爆弾だわ」

軽い気持ちで『休憩室』にカメラを仕掛け、後日内容をチェックしたら、偶然にも目の敵にしている
1年のエース、甘露寺七海が彼氏とあられもない姿で情事にふけっていた――
そして同じ1年の加藤乙女も、やはり休憩室で彼氏(その時は単純にそう思っていた)と情事に及ぶシーンが
録画されており、彼女も露骨には出さないものの、知恵を嫌っている態度が見え隠れしていた事から、
ついでに晒し者にしてやれと、悪魔的な企みを実行した知恵達だった。

しかし、乙女のその相手が知恵らの及ばないところでトラブルを抱えており、それが先日、誰も想像だに
しない凄惨極まりない形で爆発してしまった――――

「男は首無しで、女の子は屋上で腹が割かれて死んでいた。どこのホラーだっての」
「悲惨すぎて成仏できなくない?ああいう死に方はしたくないわ」
「来年の学祭に影響でるかもね。噂に変な尾ひれがついたりしてさ」

男女2名が惨殺。さらにその女の殺害に関して事情を知っていると思われる別の女は行方不明。
他人事とはいえ、陰鬱な気分にさせられる。
が、それにずっと浸るほど感傷的にはならず、伊穏達はある後輩についての懸念を持ち出した。

「念の為、喜連川にも余計な事言わないよう釘刺しとく?」
「上映会過ぎてから、私らの事避けてるしね。外にバラす可能性もあるよ」
「いや、彼女には何もしなくていい」
「でもさあ、万が一って事もありえるよ?やっぱり…」
「下手に動くとかえってまずい。あの娘、私が上映会でした事をかなり悩んでいると思う。
変に刺激しない方がお互いに安全だよ」
「…………」
「とにかく、喜連川には手は出さない事。いい?」
「……わかったよ」

伊穏達は少々不満げな様子を見せたが、それ以上は知恵に何も言わなかった。
その後は隠蔽の為の具体的な事を話し合い、密談は終了した。
542mark:2009/11/24(火) 23:23:23 ID:wBMNYwJD


「じゃ、これは責任もって処分するから」
「頼んだよ」
「頭の切れる友達が居て助かったわ。うちらだけだったら、上手く隠すのは無理だったね」
「……別に私のおかげじゃないさ」
「? らしくない事言うじゃん」

普段の知恵を知る伊穏や洋佳から見れば、彼女の発言は意外に思えたが、すぐに
「何でもない」と否定され、彼女達も本来の目的を果たすべく、知恵の自宅を後にした。
2人の姿が見えなくなるのを見届けた知恵は、再度自宅に入り、今度は勇気の部屋で、
いつものように煙草をくゆらせ始めた。
しかし、彼女の顔から険が消える事はなかった。

こうして、事件の喧騒の陰で、知恵達が犯した暗部は永久に葬られた。

事件から数ヵ月後、2年に進級した乙女とバスケ部に復帰した七海達が中心となり、
活気に満ちた部活動が行われていた。
そして、そこに知恵らの姿は無く、その理由も明らかにされる事はなかった。
何も知らない新入部員には初めからなかった事。
当時を知る部員にとっても、『なかった』事。


(おわり)
543mark:2009/11/24(火) 23:27:37 ID:wBMNYwJD
はたして知恵は保身だけを優先したのか判りかねますがどうでしょう?
それにしても過疎傾向は変わらずか……
クロイズ発売が無事に為されますように(笑)
544名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 23:49:08 ID:m4HcWfcQ
>>543
乙でした。
こうして事実は闇に…w。

497氏様の乙女三穴(&世界も巻き添え)早く来ないかな・・・
545名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 18:26:09 ID:Erbd954p
七海のは無いの?
546名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 16:22:45 ID:2Q5/ZD18
今月のバグバグに出てた不良二人、刹那を苛めてたらしいな、
何かそのネタで「Hな(ハードコアな)苛め話を誰か…
547名無しさん@ピンキー:2009/12/09(水) 22:22:46 ID:yjit4izt
誰も来ない…(泣
497氏規制かな・・・
548mark:2009/12/09(水) 22:42:57 ID:XnFfo4pJ
一応私は言成SSを執筆中。いたるが高校生くらいになった話を書かれた
人も過去にいましたが、私はエイプリルネタをパクって、
言葉と誠の忘れ形見である言成(ことなり)を題材に、いつものように湿っぽい話を。
完成まではまだかかりそうですが、年末までに出来るといいな(棒読み)

昔の活気が懐かしい…
549名無しさん@ピンキー:2009/12/15(火) 21:16:55 ID:tlTRrOTR
言葉×世界でレズってどうだろう。「二人の恋人」を参考に。
550名無しさん@ピンキー:2009/12/15(火) 22:57:41 ID:UjK3yK1R
>>549
「スクールレズ」か…ちょっと気になる書き込みをよそのスレで見つけたので参考までに…

『(前半部分略)原作全く知らずに見始めた私は割と中盤になるまで
 「世界は言葉の気を引く為に誠に……」と結構本気で信じてた。まさかエロゲ原作だったなんて!』
(ちなみに前半部分はDVDパッケージについての話。たしかにそう見えるww)

あとDNAコミックのアンソロであったネタ。
その1、名苗さんの「二人“は”恋人」
言葉がまだ誠と付き合い始めたばかりの頃(世界はまだ誠を未誘惑)、誠に接触されるのをなじめない言葉に世界が協力。

キスの真似事とかしているうちに、百合関係に目覚めちゃったよww
(ついでにほかの女子たちからも・・・)

その2、苺畑さんの「ラブコメSchoolDays」
基本ストーリーは原作冒頭部と同じなのだが、言葉のことを調査しまくっていた世界が彼女に興味を抱いたことで恋してしまう。
一応「桂さんのこといろいろ知りたいな」→「私たち女の子同士ですし…」というやり取りあり。
551名無しさん@ピンキー:2009/12/17(木) 10:53:50 ID:6T9+jhIP
もしもスクールデイズのキャラが性転換したら
ttp://set.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1227415291/
エロゲネタ板

こういうスレもある
552名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 00:03:46 ID:kvexym1E
クロスデイズで、不良っぽいのが二人出るみたいなので、
言葉が、こいつらに誠の前でマワされる話を希望。
553名無しさん@ピンキー:2009/12/23(水) 22:51:05 ID:dq8cYxRz
>>550
パッケだけ見たらそう思うよなぁ・・・。
アンソロみたいなルートがあればとどれだけ願った事か。

三角関係は女の子同士がくっ付けば円満解決なんですよ。
超時空もそう囁いている。
554名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 00:55:13 ID:m5a2+4qk
>>553
そこで誠も女の子なパラレルワールドですよ・・・(もう落ちちゃったスレにあったネタ)

・誠以外の性別は全員もとのままなので、予想通りに父親の方の止が誠に手を付けている。(これが離婚原因)
・父に犯され、何度も孕ませ→堕胎の経験で自暴自棄になった誠はビッチな性格。
・言葉はレズ、世界と誠はバイ設定。(他はノーマルだが誠に覚醒させられる)
・グッドエンド(ハーレムエンド)は、上記の過去を知った皆が激怒して止抹殺作戦実行。凱旋乱交パーティで終わる。
555名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 08:38:12 ID:fejKe4Kt
>>554
あー、やっぱ落ちてたかーw
556名無しさん@ピンキー:2009/12/25(金) 20:51:30 ID:sXYXDdka
497氏、早く来ないかな・・・
557名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 12:33:12 ID:GDbsKLoo
結局、年末年始 誰も来んかったな
558名無しさん@ピンキー:2010/01/07(木) 00:50:11 ID:7rJvjQw1
言葉のSSをブログ上で書いていた者ですがこの間ようやく終えまして
ここの住人と思われる方からも暖かいメッセージを頂きまして
ありがとうございました

もっと早く御礼に来るつもりだったのですが巻き添え規制食らって
なかなか来れなかったので申し訳ないです・・・

私の書いてたいたるSSですが長編を終えましたので
自分のブログに修正しながら載せて行く予定ですから
保管庫の方には載せない方向でお願いいたします

ぜひ他の方々の素晴らしい作品で構成してください
559名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 16:44:28 ID:hg0IVtUO
早く七海のHシーンで抜きてえ〜〜〜
560名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 20:25:06 ID:BkCWlJ5R
>>558
神キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
神のSSが楽しみで生きてきただけに生きがいがなくなってしまった・・・
561mark:2010/01/11(月) 20:39:04 ID:7AjcUlWN
もう少しで言成SS完成予定。でもその前に急遽即興で思いついた
七海SSを。(我が子END後10数年後くらい)普段はかなり
冷静なんだけど、言葉・世界絡みでは視野が非常に狭いのが一番の欠点か。
562mark:2010/01/11(月) 20:39:45 ID:7AjcUlWN
十数年後

幹事役の男性が、今日は心ゆくまで楽しんで、
当時の思いなど語り合っていきましょうと音頭をとり、
榊野学園の同窓会が開催された。

私は卒業して10年ぶりくらいになるクラスメートや、女バスの部員、
光達と再会し、積もる話で盛り上がった。
残念ながら乙女とは都合が合わず、再会はかなわなかったが、今でも
たまにメールでやりとりはするので、音信不通にはなっていない。

卒業してからは御たぶんに漏れず、当時バスケットの強豪だった
大学に推薦入学し、バスケ漬けの大学生活を送っていたけど、
故障に悩まされ、高校時代ほど満足のいく成績は残せず、途中で
退部する結果となり、当時は随分落ち込んだっけ。
幸い人間関係には恵まれたので、やさぐれずに済んだけど。

今はインストラクターの仕事をしながら、たまに小学生にバスケのコーチを
して、マイペースで生きている。
七海らしいとからかわれたが、今の方が学生時代よりも充実してるかも
しれない。

光は子育てに忙しく、最近子供が反抗気味になってきたので大変だと
ぼやいていたが、しっかりと母親してる様子で何よりだ。
まさか10代で、しかも澤永と出来ちゃった婚するとは思わなかったけど、
ある意味彼女が一番正直で賢い生き方してるのかもしれない。
当の澤永が居ないのが実に残念。(来ても馬鹿騒ぎしそうで困るが)

みんな、それぞれの人生を生きているみたいだが、私は
1人だけ、本来ならきっとこの会場にいるはずの『彼女』がいない事を
表情にも出さず、思い浮かべた。

世界があんな事件起こすとは当時考えもしなかった。
私とも同じクラスだった伊藤誠と、私にとっては天敵同然だった桂言葉。
2人の関係は伊藤が世界に殺害され、永久に壊れてしまった……

当時は桂のせいで世界が犯罪者になってしまったと信じて疑わなかったが、
今思えば、3人の関係に中途半端に関わった為に、世界たちそれぞれが
少しずつ追い詰められていったんじゃないかという想像をするようになった。

どんなにいきがってても、世界の退学にも、凶行にも
何にも出来なかった私。一番の友達だと嘯いた結果は無残なものだった。
563mark:2010/01/11(月) 20:40:43 ID:7AjcUlWN
事件以降、日常は相変わらず部活動に明け暮れる毎日を
送りつつも、時折陰の差す雰囲気を誤魔化していたのかもしれない。

それは、榊野当時、私がいかに狭い世界で生きていたかを
わかる切欠になったと、今なら素直にそう思える。
恋愛にしても、正直世界たちの事を言えたもんじゃない。
なんで当時花山院さん(一応はもと先輩なので、呼び捨てはやめとく)
みたいな男性を好きになったのか、今では自分の七不思議のひとつだ。

……当時の女バスメンバーの1人が私を呼びにきた。
何でも二次会を開催するらしい。他の女バスの子も何人か出るようだ。
私だけ出ないというわけにはいかないようだ。

七海は参加の旨を伝えるべく、幹事のもとへ移動した。

(おわり)
564名無しさん@ピンキー:2010/01/12(火) 04:50:56 ID:j7oojVl6
>558
神!お疲れ様でした。最後全自分が泣いた…!
別ジャンルも見たいからブログにリンク貼って欲しい…


>mark氏
お疲れ様でした!言成話早く見てえー!
年を取って改心したというか色々理解した七海というのもいいですね
当時は視野が狭いから嫌な奴になってるわけですし…
三人の真相を知ったらどうなるか凄く気になる
565名無しさん@ピンキー:2010/01/14(木) 23:13:25 ID:PKuwdctn
父、巨凶 沢越止が世界中に撒いてきた種である娘たちとヤリまくる為、
海外に出奔する誠。
566名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 19:24:32 ID:z40Le0mx
いよいよ七海で抜く時がキターーーーー!
567名無しさん@ピンキー:2010/01/21(木) 20:57:47 ID:qv/Glb5X
また、延期ですよ。

予想はしてましたけど。
568名無しさん@ピンキー:2010/01/22(金) 03:32:39 ID:96Z9e/Q4
遅ればせながらGJ!
569名無しさん@ピンキー:2010/01/22(金) 03:35:58 ID:zvXTzZWv
ご馳走様でした。
570名無しさん@ピンキー:2010/01/23(土) 22:06:39 ID:KeIqvlyD
代わり映えしないな
571名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 15:19:28 ID:mkcTc6tH
誰かパグバグに出てた路夏のレイ―ポシーンの予想的続きを…

(もし製品で違っててもパラレルwと言う事で…、もし製品とドンピシャだったwとしても
偶然の産物と言う事で…)
572名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 21:04:51 ID:li7wA0kl
どうもお初です。

需要があるか解りませんが
アニメ5話のプールでのお弁当のシーンから
メンバーにいたるを追加した状態の短い話を投下したいと思います。
573名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 21:06:42 ID:li7wA0kl
「すげーこれ桂さんが造ったの?」
「はい、沢山ありますから」
「うはーうまっ、うまっ」
「そうか、うまいのか?」
「女子の手料理ってだけで俺は幸せだ誠ももっと食えよ」
「ええまだ沢山ありますよ」
「いや、もう俺はお腹いっぱい」
「あっ、」
そういって言葉は誠の口に付いた汚れを取ろうとする
「いいよ自分で拭くから」
「へーいい彼女じゃない」
「あれ?伊藤って西園寺と付き合っているじゃ無かったっけ」
空気を読まない澤永の質問に対して
「あ、ああその……」
「はい誠君とお付き合いさせて貰ってます。」
どことなく気まずい少し沈黙の後に澤永が

「あ、あああっはっはなんだそうなんだ俺目から水がちくしょーー」
「ばか」
するとその会話に紛れて一人の子どもが答える
「言葉おねーちゃ、おにーちゃのこと大好きなんだよ
おにーちゃを見てるときいつもお顔がまっかっかなんだよ」
「へーいたるちゃんだっけ?、子どもはちゃんと見てるもんなんだねー」

574名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 21:07:56 ID:li7wA0kl
「えへへーえらい?」
感心する光だがいたるが見ていたのは言葉に関することだけではなかった。
「あとねあとね、光おねーちゃは澤永のおにーちゃをみているとお顔が
ニコニコってしててとってもうれしそうだったよ。きっと澤永のおにーちゃの
事が大好きなんだねー、えへへー。」
沈黙が7人の間を通り抜ける
「い、いたるお前何言ってるんだよ」
「伊藤、ちょっとこの子何とか黙らせなさいよ
やっぱり伊藤の妹は伊藤よーー」
「えー…えらくない?」
「えらいとかそういう問題じゃ、あーもう」
「黒田……おまえって俺のこと……」
「あ……その……えっと」
どきまぎした二人の様子をみかねたのか刹那が口を開く
「澤永?」
「なんだよ」
「憧れていた人に恋人がいて落ち込んでいた所に澤永を光は慰めてあげようとしてるんだから
ここは好意に乗れば良いんじゃない?」
「ああ、ありがとな黒田」
「へへへへっ、いたるちゃんだっけありがとね後でちゃんとお礼するからさ
さっきは伊藤なんかと同列に数えたりしてゴメンね」
「おい黒田、なんだそ……まっ、いっかせっかくいたるが作ったチャンスを
俺が壊すわけにはいかないもんな」
「ほえ?」
二人共どこか照れくさくなりつつもお互いに意識しているのがわかる。
これは光の想いが通じて無事にカップルが誕生したといっていいだろう
「やけるねーお二人さん、刹那、これで相手がいないのは私たちだけだよ」
「世界…」

「いたる、すごいじゃんどうしたんだよ」
「えへへーえらい?」
「ええ、とっても、黒田さん幸せそう」
「やったーえへへへ」
「いたるちゃんだっけ?後で光に何かおごってもらいなよ
アイスでもパフェでもさ」
「ぱふぇー」
「ははは、でも今はお昼御飯の時間だからパフェはあとでだぞ」
「うん、ぱーふぇー、ぱーふぇー」
今回みんなでプールに来た目的の一つである光を澤永とくっ付ける作戦は
無事に成功したといって良いだろう。
575名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 21:09:12 ID:li7wA0kl
「いたるちゃん」
「あっ、きおうらー」
いたるの前に出てきた刹那がそっと声を掛ける
(えっ、何でこの子私だけ呼び捨てなの)
「いたるちゃん、お兄ちゃんの好きな人は誰だか判る?」
「ほえ」
「ちょっと刹那何聞いてるのよ」
伊藤は世界と付き合っているのかと思っていた。
普段の二人の様子を見ればというのは勿論のこと
それなのに伊藤と桂さんが付き合っているということになっている。
これは一体どういうことであるのか
この子どもに聞いてみるのが一番だと考えたからだ。
「ちょっと刹那、何聞いてるの」
「おい清浦、待てって」
「誠君、何を戸惑っているんですか?私たち付き合っているのに
いたるちゃんだって分かってますよ………」
(いたる……いたるには今の俺をどういう風にどう見えているんだろう?
俺は……俺は……)
576名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 21:10:22 ID:li7wA0kl
「えっとねーおにーちゃはいたるのこと大好きだよ、ねー」


「あ、ああ」
「いたるもおにーちゃ好き」
空気を呼んでくれたのか、状況をよく理解できてないのかは分からないが
とにかく問題にならないような答えをして安堵の表情を見せる。
言葉と答えてくれるのがBESTだったがもしここで世界とでも
答えられたらとてつもない険悪な雰囲気になってしまうのは予想が付いた。
年の離れた小さい妹の発言という事を考えれば問題は無いだろう。
「そっか、お兄ちゃんと仲良いんだ」
そういって刹那はいたるからの回答に対して小さな笑顔で答える。」
「うん、えへへー、きおうらもおにーちゃのこと好き好きー
だっておにーちゃの方見てるとにこにこしてたよ」
「えっ」
「うそ」
「はいっ」
「きおうらだけじゃなくてこっちのおねーちゃも、そっちのおねーちゃも
おにーちゃを見てるとにこにこーってしてたりお顔まっかっかだったり
おにーちゃが人気者でいたるうれしーの」
そういっていたるは言葉と世界を指差して説明している。
本人としては兄を自慢しようといってるのか悪気があるようには見えないが
隠していた想いをあっけなくばらされて顔を赤らめながら凍り付いている
特に世界にいたっては誠と言葉の仲人のような立場でもありながらも
周囲から誠と付き合っているなどの噂が流れていたために言葉を納得させるのは
相当根気の要ることだというのが簡単に予想が付く。
しかもさっきの光と澤永をくっ付けた直後だったため
小さい子どもが言った戯言という最も簡単な逃げ道に誰も気づかなかった。
「いたるちゃーんさっきのお礼にジュース買ってあげる、どれがいい?」
「えっとねーももじゅーす!」
そういっていたるは光たちの方へと行ってしまった。
(なんなんだこの殺伐とした雰囲気は、俺に問題は無いよな
うん、問題は無い、)
「な、なあ西園寺……」
カッ
キリッ
ギロッ
「それぞれの思惑の篭った視線が3方向からの視線を
感じる、それは一人の人間がらの痛い視線から
俺はどう対処すればいいのだろうか
そして少なくとも表面上は仲の良い様に見えた
言葉、世界、清浦の関係にヒビが出来てしまったのは間違いないだろう。

577名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 21:12:40 ID:li7wA0kl
以上です。
まり書かないのでどことなく中途半端になってしまいましたが
楽しんでいただけたら幸いです。

こんな未熟者ですがこれからも書くかも知れなのでその際はよろしくお願いします。
578名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 12:48:19 ID:dbjMNB7R
ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャーーーーーーーーーー
579イフ:2010/01/27(水) 19:07:09 ID:C5NTUIsJ
>>577
GJ
なかなか面白い使い方だね>いたる

いたる出すと大概いい方向にいくのに混乱を招く存在になるとは

でも最悪ルートを外れそうで新たな物語が生まれそう

ご苦労様でした
580名無しさん@ピンキー:2010/01/31(日) 11:00:27 ID:W+4VszbK
七海とヤりてえ〜〜〜〜〜〜〜
581名無しさん@ピンキー:2010/01/31(日) 14:42:45 ID:n8owwWLo
調教物
582名無しさん@ピンキー:2010/01/31(日) 19:38:47 ID:kBW6JWuL
路夏のレイ―ポシーン(限りなく確定)の作家オリジナル物を…
バグバグの記事でワクテカなのだが、
いい加減延期ばかりで、息子が暴発しそうだw

誰かオリジナルで・・・
583名無しさん@ピンキー:2010/02/02(火) 01:41:10 ID:1WlvMy1K
おんのれええええええええええい!
584名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 21:57:21 ID:spfZbj6X
七海のHシーンを楽しみにしていたのに・・・


おのれ叔母風呂
585名無しさん@ピンキー:2010/02/05(金) 12:12:12 ID:jA7ILWjV
173cm 59kg 上から98、68、91のド迫力ボディ
586名無しさん@ピンキー:2010/02/05(金) 20:46:20 ID:JBIwMDe8
しかし言葉様のおかげで空気
587名無しさん@ピンキー:2010/02/05(金) 23:34:06 ID:u+fs03UO
そんな七海もクロイズでは誠に突かれまくってヒイヒイいわされるw
588名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 18:19:56 ID:SaZakDiV
つかあんまりこのスレ、エロ成分少ないよな
その方がこっちも書きやすいけど
589mark:2010/02/07(日) 21:31:51 ID:VqGiB39s
だいぶ遅れましたが、完成。以前話した通り、去年のエイプリルネタの
言葉と亡き誠の間に生まれた一人息子、言成の高校卒業近くお話です。
死んだり狂気に走ったりはしないけど、いつも通り、重い(苦笑)
話の流れは単純だけど、色んな見方はできるんじゃないでしょうか?
590mark:2010/02/07(日) 21:32:28 ID:VqGiB39s
 連鎖―言成18歳(我が子へIF)


「では、言成君の大学合格を祝福して、カンパーイ!」
「乾杯」
「おめでとう言成」
心が乾杯の音頭をとり、桂家の家族パーティーが始まった。

「あ、言成君はまだ未成年だからお酒はダメよ」
「ちぇ。心姉ちゃん僕はもう18だよ?いつまで経っても子供扱いするんだから」
心のからかうような口調にやれやれと少年は肩を竦める。

彼の名は桂言成(かつらことなり)。約19年前、当時高校生だった母親の言葉と
亡き父、伊藤誠との間に生まれた一人息子である。
父親がいない寂しさを感じなかったといえば嘘になるが、言葉をはじめ、祖父母にあたる
真奈美夫妻、言成から見て叔母にあたるが、むしろ年の離れた姉に近い、
言葉の妹の心らに可愛がられ、何不自由ない生活を送ってきた。

笑い声が響く桂家の食卓。202X年は、温暖化が続く時代には珍しく
久々に寒い冬となったが、家の中は暖かった。

「早いものね。ついこの前までは心より小さかったのに」
「言成が産まれてからもう18年か。もう少ししたら、男同士酒も酌み交わせるな」
「お父さん嬉しそうな顔してるよ?」
いつもは堅物な言成の祖父も目を細める。
言成の学力なら受かって当然だと素っ気無さを装っていたが、内心は孫の進路を
心配していたのが、見え見えだった。

「合格おめでとう。勉強大変だったでしょうに、よく頑張ったわね」
「ありがとう母さん。本命の発表前でちょっと大げさかなとも思ったけど、
でも嬉しいよ」
「言成君なら頭良いし、本命も多分大丈夫なんじゃないかな?」
「どうだろうね?僕より出来る人はいくらでもいるし」

そう笑いながら心に対して謙遜する言成だったが、高校入学以来、常に上位の成績を維持している
彼に、死角と呼べるものは存在しなかった。

「T大も合格したら、どこか美味しい店に行きましょうか?」
「そうだな。最近は久しく家族揃って外食する事もなかったしな」
「私も一緒に行っていいでしょお父さん?」
両親の提案にすかさず心が入り込んだが、食事代は自分で負担しなさいと
返されて口を尖らせ、再び笑いに包まれた。
591mark:2010/02/07(日) 21:33:01 ID:VqGiB39s
一月下旬

「センターの結果、どうだった?」
「ん〜、全然だな。自己採点してみたけど、国語がヤバい」
「俺はまあまあだったけど、二次の国立変えようかな?言成はどうだったよ?」
「言成は心配ねえだろ。学年トップなんだしさ」
「いや、そんな事ないよ。僕も何問か間違えてた所あったよ」
「お前の『間違えた』ってのは、俺達と次元違うじゃないか。あーあ、神様は不公平だぜ」

言成は下校後、寄り道がてらファミレスで友人達とセンター試験の出来について報告し合い、
注文したコーヒーやデザートを食しながら、受験予定の大学への出願や、最後の追い込みについてなど、
それぞれ悲喜こもごもに盛り上がっていた。

「そういや言成はこの店来た事なかったんだよな?」
「うん。女の店員さんが多いんだねココ」
「ほう、よくぞ気付いてくれた。ここはうちの男子どもの隠れた癒しスポットなのさ」
「そりゃお前だけだろ。このイヤラシ系が」
見渡してみるとこの店の店員は女性が多い上、かなり『個性的な』制服を着ている。
しかも露出が多く、年頃の言成には目の毒に感じた。

「お勉強ばっかりで息抜きの暇のないお前の為を思って、わざわざ俺様が連れてきてやったんだぜ?
どの娘が好みだ?ほれ言ってみ」
「いや、僕はまだそういうのはいいよ…」
「真に受けるなって。こいつの女好きは病気なんだからさ」
「ちょっとトイレ行って来る」
言成は照れ隠しに慌てて席を立ち、化粧室に行こうとしたが、
別の客に食事を運ぶ途中だった店員が横から来るのを見落としていた。

「言成、危ない!」
「え?」
「きゃっ?!」
店員が言成にぶつかってバランスを崩し、店内に食器の割れる音が響く。
言成は横倒しになり、店員がその上に覆いかぶさった。

「おい言成、大丈夫かよ?」
「ああ、こりゃ酷いな」
言成の制服やカッターシャツは染みだらけになり、床には皿の破片や料理の具が飛び散っていた。

「いててて……」
「大変申し訳ございません。お客様お怪我はございませんか?」
「いえ、大丈夫です」
店員が言成に謝るが、床の惨状を見て動転気味になっていた。
592mark:2010/02/07(日) 21:33:25 ID:VqGiB39s
「何やってるの。他のお客様にもご迷惑でしょう。早く片付けて」
店長らしき女性がやって来て注意する一方、他のスタッフにてきぱきと指示を出す。
汚れた床を何人かが掃除し出し、それを確認した後、
店長が言成と友人達に向き直った。

「お手数かけますが、そちらのお客様をお借りしてよろしいかしら?
・・・さんも一緒に来てちょうだい」
先程の店員も店長に呼ばれる。
言成は店長達に促され、関係者用との表札が貼られたドアの向こうへ消えていった。

「先ほどは本当に申し訳ございませんでした」
「いえ、僕も周りの注意が足りなかったですし、店員さんが怪我しなくてよかったです」
「お気遣いいただきどうもすみません」
先程の店員も平謝りで、かえって言成の方が申し訳ない気分になっていた。

「後は私が応対するから、あなたは休憩に入ってていいわ」
「はい。どうもすみませんでした」
店員はもう一度謝罪すると、店長に言われた通り、部屋を退出した。
「これだけ汚れているとクリーニング屋に持っていってもらうしかないのだけど…
ちょっと待っててもらえる?」

店長は部屋を出て、数分後タオルや中性洗剤など染み抜きの為の道具を持ってきた。
何もしないよりはましという事なのだろう。
「少しだけじっとしていただけないかしら?」
「あ、はい」

洗剤を染み込ませたタオルで汚れた箇所を拭いたり叩いたりし、服の汚れが薄くなる。
が、やはり完全に落とすには程遠い。
ふと、店長は言成の顔をまじまじと見つめているように見えた。
何か驚いたような表情に見える。
「? どうかしたんですか」
「あなた……誠君?」
「え?」
「あ、し失礼致しました。クリーニング代は私共の方で弁償させて頂きます」

店を出た後はさすがに心配されたが、家に予備の制服があるとわかると
あっさり話題を替え、バイトの店員や女性店長の魅力について与太話で盛り上がる友人達だったが、
言成の心には引っかかる思いが消えずにいた。
(なんであの店長さん、僕の父さんの名前、知っていたんだろう……)
593mark:2010/02/07(日) 21:33:49 ID:VqGiB39s
「ただいまー」
「お帰り。あら、どうしたのその汚れは?」
「ああこれ?帰りに友達とファミリーレストランに寄ってさ、そこで店員さんとぶつかっちゃってね」
「それは災難だったわね。後でクリーニングに出さないと」
「あ、クリーニング代ならお店から出してくれたよ」
そう言い、鞄からお札入りの封筒を取り出した。
「別にいいのよ。それくらいならお小遣い代わりにしても」
「明日は予備の制服着ていくから」

汚れた服を脱衣かごにまとめた後、部屋で着がえ、居間に下りて一息つく。

「それにしても、言成が寄り道して帰ってくるなんて珍しいわね」
「最初は行くつもりなかったけど、センターも終わったし、気晴らしにいいかなって。
ラディッシュっていうお店なんだけど、夜のお店みたいで恥ずかしかったよ」
「え… ラディッシュ?」
「? どしたの母さん?そのお店、知ってるの?」
「いえ、何でもないわ」

言葉が少し驚いたような表情をしたが、すぐにいつもの穏やかな顔に戻り、
夕飯の支度をする為にキッチンへ移動した。
594mark:2010/02/07(日) 21:34:10 ID:VqGiB39s
二月下旬

言成は全ての受験を終え、卒業までの自由登校期間中、久しぶりに友人達と学校で顔を会わせていた。
授業らしい授業もなく下校となり、ほとんど暇つぶしだ。

あと数日で高校生活も終わる。過ぎてみるとあっという間だ。
みんなそれぞれ違う大学に進学し、今後は会う機会も少なくなるだろう。
言成はT大の結果発表を三月に控えており、気を抜くとこいつみたいに落ちるぞと
唯一浪人が決定しそうな友人を引き合いに出してからかい気味に発破を掛けられ、
相変わらずいつものようなやりとりが過ぎていく。

「じゃあな」
友人達と別れ、言成は家路に着こうとしたが、一つ気になっていた事を
思い浮かべた。

この前行ったラディッシュ。言成はそこへと足を向けていた。
卒業シーズンを見込んでか、店内はこの前来た時よりも客が多いように感じた。
適当な席に座り、飲み物を注文する。
時折、店員達が季節限定のデザートを宣伝していた。
(今日はあの店長さんは居ないのかな?)

自分の不注意で店員とぶつかって服を汚してしまい、その時は店長が応急で服の染み抜きをしてくれた。
それだけなら、別に気に留める事もない。
しかし、あのコトバが言成の頭の中から消えずにいた。
(あなた……誠君?)

何で自分の知らない人間が亡くなった父親の名前を知っているんだ?
父親の事を知っているのは自分の家族以外、殆どいないはず。
それとも、あの店長が知っていた人の名前がたまたま父のそれと同じというだけで、
亡くなった自分の父、『伊藤誠』とは別人なのか?単なる考えすぎなのか?

母はあまり父の事を話したがらない。幼い頃はそれを不思議に思い、
質問したが、そんな時は悲しそうな笑顔を浮かべていた。
そのうちにそれが母にとってとても残酷な問いである事がわかるようになり、
自分からそういう類の話はしなくなった。
それよりも、例え父が居なくても、今自分や家族が幸せなら充分だと思うようになっていった。
しかし……

しばらく店内に留まっても店長が出てくる気配はなく、無駄にドリンク代を費やしただけだった。
595mark:2010/02/07(日) 21:34:34 ID:VqGiB39s
三月中旬

無事に本命であるT大の合格も決まり、家族全員で久しぶりに外食を楽しんだ。
入学手続きも終え、あとは大学生活を送る為の下宿先を探すだけだった。
幸い祖父の知り合いの不動産会社が、大学から近場にある学生向けの賃貸マンションを便宜してくれるそうで、
そちらの問題も解決しそうであった。

言成は入学までの何もない期間を友人達と遊んだり、家でネットをして過ごしていたが、
あの店長の発言がずっと気に掛かっていた。

ある日、ラディッシュに再び足を向けた。店内はこの前と変わらない様子だ。
今回もあの店長の姿は確認できず、空振りに終わった。しかし、
いくら訊きたい事があると言っても、自分はお店の関係者でもなく、しかも確信のもてない
事柄でわざわざ呼び出すのも憚られる。

このまま自分ひとりの胸にしまっておけば、きっと、入学まで大きな変化もなく
何事もなく時間が過ぎていくだろう。
あの名前さえ聞かなければ、こんな事で悩むこともなかったろうに。
しかしこのまま無かった事にするのも、何故か気がひけた。
どうしたものかと思いながら店を出て、振り返る。
ふと、入口の張り紙に目が留まった。

『学生アルバイト募集中』
応募の方は気軽にスタッフに声を掛けて下さい
電話での申し込みは※※※-※※-※※※※  担当 西園寺

(本当はいけない事だけど、あの店長さんに会うとしたら……)

596mark:2010/02/07(日) 21:34:57 ID:VqGiB39s
「アルバイトの応募ですか?今店長は外出中なので、暫くお待ちいただけないでしょうか?」
翌日、言成はラディッシュに面接を受けに行った。
空いてる隅の席に座り、待つ。
30分ほど経ち、店長が言成の席にやってきた。
「あら、あなたはこの前の学生さんね」

どうやら自分の事を覚えていたようだ。
「今日はバイトの応募に来たのかしら?待たせといて大変申し訳ないんですが、男性スタッフは
今足りていますので、またの機会にしていただけないかしら」
「そうですか。でも、僕が今日ここへ来たのはバイト目的じゃないんです。
どうしても、店長さんと話す機会が欲しかったので、嘘をつきました」
「あら、そうだったの?でも、嘘は感心しないわね」
「すみません。これしか思いつかなかったんです」

こんな返し方をする客は予想外だったのか、それとも言成の話し振りから
本当に自分に用があって来たのがわかったのか、
それ以上は責めず、あらためて彼に用件を訊いた。

「まあいいわ。どうやら冷やかしじゃなさそうだし。私に話したい事って
何かしら?こう見えても、結構トシなのよ」
「違いますよ。そういうのじゃないです」
「あら、それは残念」

からからと店長が笑い、少し拍子抜けした気分になる。
以前自分の不注意で招いたトラブルの際に見せた、きびきびした行動や態度とは異なり、
自分の母よりも年上のはずなのに、何だか可愛らしいような雰囲気を感じた。
やっぱり自分の勘違いかもと思いながら、店長に訊く予定だった事柄を訊く事にした。

「僕の父、伊藤誠について、何か知っているんですか?」
「えっ…」
「なぜ僕を見て、父さんの名前で呼んだんですか?」
きっと、頓珍漢な事聞くのね、人違いよと言われて
笑い話で終わる―――
597mark:2010/02/07(日) 21:35:19 ID:VqGiB39s
「あなたの勘違いよ。昔付き合っていた男の人に似てたものだから」
店長が笑顔で応える。
言成が望んだはずの答え。なのに、間を感じた。
それ以上に、店長の顔が気にかかった。
笑顔で応える前に一瞬だけ見せた表情。
母とは全然似ていないのに、昔自分が母に父の事を訊いた時に見せた表情と
重なった気がした。

「おかしな事訊くのね。あなたの力になれなくて申し訳ないけど、仕事に戻らないと
いけないから」
何か注文したいならゆっくり寛いでちょうだいと言いかけて。
「あ、待ってください」

よすんだ。これ以上は訊かないほうがいい。
きっと、戻れなくなる。
これは自分の勘違いだ―――

「僕は真実を少しでも、知りたいんです」
口から出るコトバは心の中とは反対だった。
「本当の事、聞かせてくれませんか?あなたは僕の父の事、知っているんでしょ?」
「だから本当にあなたの勘違いよ。あなたのお父さんの伊藤誠さんなんて人は知らないわ」

これ以上余計なお話をする時間はないからと席を立とうとしたが、
言成にはそれが話を打ち切りたいが為の行動に見え、
思わず彼女の手を掴んでしまった。
「逃げないで下さい。ただの勘違いなら別に悲しい表情する事ないじゃないですか。
僕の知ってる人と同じ顔、してましたよ」

一瞬だけ。

「……本当に、良く見てるのね。やっぱり私は真顔で嘘つけないタイプなのかな。
しばらく外で待っててちょうだい」
598mark:2010/02/07(日) 21:35:44 ID:VqGiB39s
そう言われ、言成はラディッシュの外で待つ。
遠目で店長が従業員の一人と話した後、関係者用の部屋へ消える様子が窺えた。
体よく追い払われたのかと一瞬考えたが、
10分ほどして、彼女が上着を羽織って店から出てきた。

「2時間だけ。秘密のデートというわけにはいかないわね」
互いに自己紹介し合い、店長の名前が西園寺踊子だとわかった。
軽い雑談をしながら歩いたが、先程と違い、ぎこちなさが消えなかった。

「ふうん、結構長い事ラディッシュに勤めていらっしゃるんですね」
「原巳浜店に戻ってきたのはここ最近よ。別に、ただしがみ付いてるだけで
何の取柄もないだけ」
そんな事ないですよと言おうとしたが、ことばの端に単純に仕事の悩みだけではない、
もっと深刻なものを抱えているように感じられ、
月並みな事を言うのは憚られた。

「言成君は今年卒業なんだ。4月からは大学生なのね」
「はい、一応。目処が着いたら留学したいと考えています」
「そう……」

それきり踊子は無言になる。


踊子と言成は、とある公園のベンチに座っていた。
「お父さんの顔はご存知かしら?」
「幼い頃父の実家に行った際に遺影を見た位であまり印象にないです。母は亡くなった父に良く似てると言ってますが」
「どうして亡くなったのかも?」
「家に帰る途中、交通事故に遭って死んだと」
「そう…」

踊子はバッグから小型の写真用ファイルを取り出し、静かにめくり出す。
彼女の若い頃や、言成の見覚えの無い少女が写っていた。
「これは、西園寺さんの娘さんですか?」
「ええ。世界っていうの」
599mark:2010/02/07(日) 21:36:24 ID:VqGiB39s
そして、踊子は一番後ろに収められていた写真を取り出した。
彼女の娘である世界と、もう一人同じ年頃の、言成と瓜二つな男子の姿。
2人とも、自分と同じ高校生の頃だろうか。
「世界が誠君を家に連れてきた時に、撮った写真」
世界は嬉しそうな笑顔で、男の方は少し照れたような困ったような表情をしていた。
「世界には当時、好きな男の子がいたの。それが、あなたの亡くなったお父さん」
確かに、母が言ってた通り、自分とそっくりだ。
「これが、父さん……」

「あの子、誰に似たんだかとても臆病でね。自分から好きだと言い出せなかったみたい。
でも諦める事が出来なくて、強引に振り向かせようとした」

写真からはそんな印象は感じられないが、母親の踊子さんがそう言う以上、
間違いないのだろう。でも、世界さんと亡くなった父との間に一体何があったんだ?
それにその世界さんはどうしたのだろう?
言成のそんな疑問は顔に出ていたのか、踊子も複雑な表情を見せた。
「私も似たような事を経験したから、人の事は言えないのだけど、
結論を言えば、世界と誠君は三角関係でこじれてしまったの」

でも、それがわかったのは取り返しのつかない事になってから。
そう言う踊子の目は整った顔立ちに似合わない、深い憂いを帯びていく。

「結局、あなたのお父さんは言葉さん、つまりあなたのお母さんを選んだ」
「…………」
「違う女性を好きになる事は別に珍しくない。恋愛って中々互いの思い通りにはいかないものだもの。
ましてや誠君は元々言葉さんが好きだったみたいだから、彼女とよりを戻したくなったとしても不思議ではない。
誠君もきっと、悩んだと思う。でも、世界にはそれが耐えられなかった」

自分が捨てられたような気持ちにでも、なったのだろうか。
でも、元々は世界さんが最初から勇気を出していれば済んだ話じゃないのか?
いや、それが出来なかった為に……

「ある日突然学校を辞めて、家からも姿を消した。捜索願も出したけど見つからなかった」
「…………」
「そして半年位経って、原巳浜海岸で、ある高校生が刺殺される事件が起きた。…もう分かるわね?」
「…はい。父さんが死んだ」

言成もさすがに沈んだ表情になる。しかしそれほど動揺した様子は見せず、
踊子の話を静かに聴き続けた。
「よっぽど慌てていたのかしら、現場に凶器を落としていったみたいで、警察の調べで世界が誠君を刺したって
すぐにわかった。でも、その後の足取りが掴めなくて、結局行き詰まったまま終わってしまった」

きっかけは人が人を好きになるありふれた事。なのに、何でこうも捻じ曲がってしまったのだろう……
誰が悪いとか以上に、ただ哀しかった。
しかし、踊子の次の発言はそんな言成をさらに打ちのめしていった。
600mark:2010/02/07(日) 21:37:08 ID:VqGiB39s
「そしてまた数ヶ月ほど経って、ラディッシュの裏口に、一人の赤ちゃんが捨てられていた。
身元が分からなかったけど、世界が産んだ子供だって私にはわかった」
「………!」
わかりたくない。いくら父が当時高校生で2人との関係に悩んでいたとしても、
それはあまりに無責任すぎる―――

「……つまり、父は当時付き合っていた母さんだけでなく世界さんも妊娠させていたと」
「ええ…」
「その、つまりは……浮気してた」
踊子は無言で頷いた。

「そうですか……」
「もちろん、これはあくまで勝手な想像に過ぎないわ。本当の所は世界や亡くなったあなたのお父さんにしか
わからない事だし。それに」
そこで区切り、小さな、しかしはっきりとした声で次のコトバを紡いだ。
「どんな事情があったって、世界は絶対にしてはいけない事をした」

親としては決して認めたくない、しかし絶対に覆せない事実。
そのはざまで、今も苦悩している現実を、淡々とした踊子の語り口が
かえって浮き彫りにしていた。

「そして、私も世界と同罪ね。娘の事に何も気付いてやれなかった。誠君と嬉しそうにしてる姿を見て、
それで安心してしまった。それが、言葉さんや、誠君のお母さん達の人生を大きく狂わせて、
人って、あんなにも冷たい目になるんだって……
本当に取り返しのつかない事をしてしまったって、思ったわ……
当時は責任をとってお店辞めるつもりだったんだけどね。結局ずるずるこうしている。
しばらくは系列のお店に異動してたから、昔の事を知ってる人はもうラディッシュには
居ないのだけど皮肉なものね…… 言葉さんと誠君の子供とこうして昔話をしてるなんて」

初めて知った父と母の過去。当時両親と同級生だった世界との複雑な関係と
その破局。そして、悲劇。
真相が穏やかなものではないだろうとは、話す前の踊子の表情からなんとなく察しがついたが、
その結果は言成の想像を超えるものだった。
601mark:2010/02/07(日) 21:37:37 ID:VqGiB39s
「その世界さんが産んだらしい子供はどうしてるんですか?」
「私の娘として育てている。あの子は本当の事は知らない。デザインの勉強がしたいって家を出て専門学校に通うつもりだけど、
飽きっぽいからね、あの子も世界に似て」
どうなる事やらと付け加え、少しだけ笑顔を見せた。
踊子さんは真実を墓場まで持っていくつもりなのかもしれない。その人が幸せに生きる為に、
本当の親の事を知らせずに。でも、どうして自分には打ち明けたのだろう?

「私は、自分の罪悪感をただ吐き出したいだけなのかもしれない。あなたを巻き込んで
本当にずるい人間だわ」
「いえ、踊子さんはもう十分苦しみました。……世界さんもきっと、苦しんだと思います」
「言成君……」
「罪を償う為に自首してほしいというのはありますけど、それはもう、自分ではどうにもならない。
僕に出来る事は、父や世界さんが出来なかった、自分の人生を生きる事だけです。
それが、亡くなった父も望むことだと思います。
……教えてくれてありがとうございます」

個人的な感情だけなら、父を殺した世界にも複雑な思いはあったが、
良くも悪くも言成は部外者であり、比較的冷静に物事を見れる歳になっていた。
父も純粋な意味での被害者ではなく、世界を加害者にしてしまった面がある事を。
この場で踊子を責めても何にもならない事を。

それでも、最後に一つだけ訊かずにはいられなかった。

「…もし、世界さんが踊子さんのもとに姿を見せたら、どうするつもりですか?」
「思いっきりひっぱたくわ。……遅すぎるけど、謝りにいかせる」

踊子さんはこれからもずっと、生きてるかもわからない世界さんの帰りを待ち続けるのだろうか。
言成はそう思ったが、これ以上を問うのは憚られた。
ここから先はもう、自分が立ち入れる領域ではなく、自分には何も出来ないのだと。
踊子と別れた後も、言成は娘の世界を想う彼女のコトバが離れなかった。


いつかきっと、戻ってくる。
世界は私の娘だから。
602mark:2010/02/07(日) 21:39:15 ID:VqGiB39s
三月下旬

萎れた花を替え、父、誠の墓の前で手を合わせる。
「久しぶりだね、父さん」
墓地には誰も居ない。
数珠を手に掛け、静かに祈る言成がいるのみだった。

「無事に大学受験も終わって、家を離れる事になったんだ。
初めての一人暮らしで不安もあるけど、何とかやっていくつもりだから」
これは、父親の記憶がない自分が憧れていた、伊藤誠の息子としての素直な気持ち。
そして。

「もう一つ、今日は父さんに言いたい事があるんだ」

別にこんな事したって、意味なんかないのに。
でも、なんかムカつくんだよな。

「さよなら」
言成は静かにそう呟き、墓地を後にした。
もうこの場所に来る事はないかもしれない。
誠の墓石には赤色のスプレーで大きく、『バカ』と落書きされていた。

603mark:2010/02/07(日) 21:39:48 ID:VqGiB39s
出発前日

夕食を終え、特にする事もなく自分の部屋で休んでいたが、
気分は優れなかった。いつもなら勉強後一人でリラックスする為に、幼い頃はプールみたく無邪気に泳いでた広い風呂も
余計気分が滅入るような気がし、入りたくなかった。しかし、
変に心配されて自分の部屋に来られるのはもっと嫌だったので、
シャワーだけ浴びて浴室を出た。

なんだか、踊子さんに過去の話を聞いてから、自分の家なのに居心地の悪い、違和感を感じるようになった。
あれはもう、終わってしまった事なんだ。自分は自分。親だって人間、完璧なんかじゃない。
そんな常識を自分に言い聞かせていた。しかし、そうすればするほど
目に映るものが不愉快になり、苛立ちを感じた。

きっと疲れているんだ。
今日はもう寝よう。明日はなるべく早く家を出よう。
それがいい。多分、今の自分には。
少し乱暴にタオルで身体を拭き、寝巻きに着替えて二階に上がろうとした。

「言成、ちょっといいかしら?」
「…ん、なに?」
母の呼ぶ声が聞こえ、ついいつもの調子で反応してしまい、二階に行きそびれた。

「忘れるといけないから、明日の電車賃と食事代、渡しておくわ。はい」
そう言い、お金を渡された。
何も知らなければ何の疑問も持たず、ありがとうとか別に明日でもいいよと
言いつつ受け取っていただろう。
そんな何気ない事ですら、今の言成は違和感を感じていた。

「そろそろお墓のお手入れもしないといけないわね。お花も萎れているころだし」
「花なら、一昨日替えてきたよ。ついでに父さんに進路報告してきた」
「ありがとう言成。あの人もきっと喜んでいるわ」
いつものように優しい笑顔で応える言葉。
言成にとっては最愛の母。
604mark:2010/02/07(日) 21:40:12 ID:VqGiB39s
「今日はもう寝るね、おやすみ」
「おやすみなさい」
言成はそのまま二階に上がり、自分の部屋で就寝する。
いつもなら。

「ねえ母さん」
「なに?」
言葉に背を向けたまま立ち止まり。

「僕の事、どう思ってるわけ?」
「どうって、どういう事?」
「その…… 好きだとかそういう意味で」
「え、何かしら突然。もちろん愛してるわ言成の事」
「そうなんだ」
言成も笑顔になる。

「変な言成ね。急に甘えん坊さんになっちゃって」
「へへ…」
再び背を向け、照れ笑いをし出す。初めはそう思った。
しかし、笑い声が途切れず、背を向けたままうな垂れる。
「どうしたの?…何か悪い事言ったかしら?」
いつもと違う様子の彼に、言葉は戸惑いを見せたが、
そのすぐ後に、言成にとっての聖域を自ら砕いてしまった事を
思い知らされるのであった。

「……やっぱり、母さんでも嘘つく事あるんだね。それに気付いたのは最近だけど」
「え…?それってどういう」
「西園寺踊子さんって人と最近知り合いになってさ。その人に聞いたんだ。昔の事」
言葉の顔が青ざめていく。言成は父親の「事故死」の真相を知ってしまった?!

「母さんとも昔、会った事があるんだってね」
言成の声色、そして顔は普段の穏やかな雰囲気とは異なる、冷たさを含んでいた。
「なんで母さんがラディッシュに行こうとしなかったのか、わかったよ。あそこは
父さんを殺した、西園寺世界さんのお母さんが働いているお店だからなんでしょ?」

気が遠くなりかけたが、自分が隠してきた事は紛れもない事実である。
それにきっとショックを受けてしまっている。
あんなに穏やかな言成が、こんな冷たい目をするなんて。
まるで昔の自分のよう……
605mark:2010/02/07(日) 21:40:44 ID:VqGiB39s
「今まで本当の事を言わなかった事は、謝るわ。でも、もし言成があの人の死の真相について
知ってしまったら、きっと事件に関係する人を少なからず恨んでしまう。
言成にはそんな思いに囚われずに、普通の人生を送ってほしかったの」
「…それはわかるよ。僕が親の立場だったら同じ事すると思う。でもさ、僕が怒ってるのはそういう事じゃない」

言成が何を言ってるのかわからない。西園寺さんのお母さんから事実を知って
あの人を……殺した彼女を恨んでいるんじゃないのか?

「母さんが好きだった人を殺されて辛い思いをしたのはわかるよ。昔の話はあまりしたがらなかったし、
僕も母さんが悲しむ顔は見たくなかったから聞かなかった」
「だったら、何で今になって……」
「僕が信じていた幸せが、誰かの重い犠牲を支えに成り立っていた。それを、知ってしまったから」
「確かに私は当時、あの人の事で西園寺さんと色々あった。でも、その事で言成が気を病む必要はないのよ」

表情は困惑しながらも、言成を気遣うそぶりを見せたが、
息子の心情を推し量る余裕などなく、話を打ち切りたがっている様子が
明らかだった。

「もうやめましょう。昔の事は言成には何も関係ないわ。あなたは自分の進みたい道を
目指してくれたらそれでいいの。ね?」

これ以上母さんを追い詰めなくていいじゃないか、
もう過去を暴くような真似はやめるんだ。
何で今までの幸せを壊すような事するんだ――

言成の理性は警鐘を鳴らし続けていた。しかし、真実を隠してはいけないという感情に
駆られていた言成は、言葉にとって、決して触れられたくない真実を
突きつけてしまう。

「父さんが死んだ事は寂しいけど、それには父さん自身にも原因があったし、ひょっとしたら
母さんだって悪い所はなかったとは言えないかもしれない」
「あれは西園寺さんが勝手にあの人を刺したのよ。言成まで何を言い出すのよ!」
滅多な事では怒らない言葉が、声を荒らげた。思わず言成もたじろぎそうになり、
正直怖いとさえ感じた。
そして、それこそが母の図星を突いたものであり、誰にも触れられたくない深い傷痕であると。
言成はわかってしまった。
606mark:2010/02/07(日) 21:41:20 ID:VqGiB39s
「……怒鳴ってごめんなさい。でも今のことばは取り消して。あの人の事、言成は誤解してるわ」
「母さん……」
なんで僕の事を見てくれないんだよ。間違った事は言ってないつもりなのに。
信じていたのに。
僕と同じ顔した、母さんや世界さんを苦しめた原因を作ったあの男の方がそんなに大事なのか!?
母さんがわからない。
こんなの、僕の知ってる母さんなんかじゃない……

言成の感情はぐちゃぐちゃになっていく。
それは母に対する怒りなのか、それさえ通り越した失望なのか、
他にもわけのわからない感情が渦巻き、眩暈がしそうになって、
しかし口から吐くコトバは辛辣であり、暴言同然だった。

「母さんさ、自分が傷ついた事に目が行き過ぎて、その西園寺さんも傷つけていた事には鈍感だったんじゃないの?
それとも、死んだ父さんと母さんさえよければ、誰がどうなっても何とも思わなかったの?」
「言成!」
「その結果、僕が生まれたわけ?そんなの愛の結晶でも何でもないや。エゴの塊だよ。
おまけに父さんは他所で別の女の人傷つけて孕ませてさ。そんな人間を母さんは愛してたの?
……死んで当然だよ。僕に父さんの記憶がなくてせいせいする」
乾いた音が響く。

「……私はいくら糾弾されても構わない。でも、
あの人の事を悪く言わないで……」
言葉の顔が悲しそうに歪む。自分は最愛の母親をいたく傷つけてしまった。 
そして、気づきたくなかった。
母である言葉の愛情は言成へではなく、今もなお、亡き父、伊藤誠にしか
向けられていなかった事に。そしてそれを自分への愛情だと勝手に信じていた事を。

「……死んだ父さんを庇うのは勝手だけど、僕はもう、何も知らなかった頃には戻れないし、
なかったふりをする気もない」
僕の好きになれそうな居場所は、この家の外で見つけるしかないのかもしれない。
「用事がある時は帰省する事もあるだろうけど、しばらく一人になりたい」

言成は言葉に背を向け、自分の部屋へ去っていった。
607mark:2010/02/07(日) 21:42:25 ID:VqGiB39s
深夜、言葉は独りでソファーに座り、頭を抱えていた。


私は、あの人の、誠君との間に授かった言成を立派に育てる事が、残された私の
生きがいだった。いや、そうだと信じていた。
でも、それは私の思い違いだった。
私達の清算できなかった十字架をあの子に押し付けただけだった。
私は言成に裏切られたんじゃない。私が言成を裏切っていた……

私はどうすればよかった?
誠君を好きになったのがいけなかったのか?
でも西園寺さんは、私の気持ちを知りながら、彼を奪おうとした。
では、大人しく自分が身を引けば良かったのか?
でも誠君は最終的に私を選んでくれた。
彼女への未練を断ち切る為に、心にもない悪口を言ってまで。

…そして、西園寺さんは誠君の命を奪い、姿を消した。当時は
この手で殺してやりたいほど憎んでいたし、今でも誠君を殺した事は許せない。

しかし、いくら呪ったところで誠君は帰らないし、彼がそんな事を望むとは思えない。
だから、誠君との間に授かった言成に愛情を一心に注いだつもりだった。
何もかもが初めてな上、多くの困難の中で言成を育てるのは大変だったけど、
成長するにつれ、在りし日の誠君を髣髴とさせる容姿や仕草を見て、
誠君が生まれ変わってくれたとさえ思え、嬉しかった。
言成の存在が凍てついた私の心を温かくしてくれた。
それなのに、どうして…?
608mark:2010/02/07(日) 21:42:57 ID:VqGiB39s
出発の日、言成は一人、電車に揺られていた。

ほとんど一睡も出来ず、家族が目を覚ます前に家を出てしまった。
……まるで夜逃げでもした気分だ。
このまま下宿先に行くと時間が余りすぎるので、
途中の駅で降り、昼までネットカフェで時間を潰すことにした。

そろそろ出ても良い頃だろう。
時計を確認した言成はネットを切り上げ、個室を出た。
不意に、携帯の着信音が鳴る。
言成は近くの椅子に座り、新着メールを確認した。


FLOM 桂 心
 
 このメールには返事しなくていいから(出来れば消さないでくれると
 ありがたいんだけど、それは言成君に任せるね)

 お姉ちゃんがとても落ち込んでいたので心配したんだけど、
 言成君と喧嘩しちゃったんだってね。
 なんでそうなっちゃったのかは聞かないし別に聞くつもりもないから。
 家の事は心配しなくていいよ。
 
 でも、これだけは言わせてください。
 ごめんね言成君。今まで隠してて。
 何を言っても言い訳にしかならないけど、でも
 お姉ちゃんは言成君に幸せになってほしくて、何も言わなかった。
 それだけはわかってほしいの。

 大学生活、頑張ってね(^0^)/


苦い表情になる言成。
メニュー欄を開き、メールを削除しようとした。

「…………」

結局、心からのメールを消さず、そのまま
携帯をポケットにしまい、再び歩き出した。


連鎖―言成18歳 完
609mark:2010/02/07(日) 21:53:47 ID:VqGiB39s
以上、投下終わり。疲れた……
話の大筋はすぐに決まりましたが、文章の手直しに時間掛けすぎました(苦笑)。
残しては切っての繰り返しで、30KBくらいいったかな?
結局過去に書いた長編や短編と構図がもろに被ってしまい進歩がないなあと(汗)。

ネタとして公式に出たとはいえ、殆どオリキャラに近い言成や推定50代半ばの
踊子、そして言葉の葛藤や苦悩はいかがばかりかと。ただ、超絶BADENDではなく、
身体は子供でも恐らくはこのワールドでは一番大人な心が救いでしょうか。
難しいけど、いつか言成が言葉の弱さを許せる時が来て欲しいです。
610名無しさん@ピンキー:2010/02/08(月) 00:03:57 ID:lXSiI/op
  /'           !   ━━┓┃┃
-‐'―ニ二二二二ニ>ヽ、    ┃   ━━━━━━━━
ァ   /,,ィ=-;;,,, , ,,_ ト-、 )    ┃               ┃┃┃
'   Y  ー==j 〈,,二,゙ !  )    。                  ┛
ゝ.  {、  - ,. ヾ "^ }  } ゚ 。
   )  ,. ‘-,,'   ≦ 三
ゞ, ∧ヾ  ゝ'゚       ≦ 三 ゚。 ゚
'=-/ ヽ゚ 。≧         三 ==-
/ |ヽ  \-ァ,          ≧=- 。
  ! \  イレ,、         >三  。゚ ・ ゚
  |   >≦`Vヾ        ヾ ≧
  〉 ,く 。゚ /。・イハ 、、     `ミ 。 ゚ 。
611名無しさん@ピンキー:2010/02/08(月) 11:00:10 ID:mip0oLZE
ショートネタ34

誠と一緒に、同じ大学に進学した言葉。
ある日の放課後、教室での出来事だった。
一人の男性が言葉に花束を差し出してきた。
見慣れない花だった。

「桂さん、華道部入部記念です。受け取ってください」
「いりません」
「いえ、せっかくですから」
「私はいらないと言ってるんです」
「……」

相手の男性は黙り込んで教室を出ていった。

「言葉、今のはいくらなんでも酷いんじゃないか?」
「そんなことありません」
「何が悪かったんだ?もしかして、俺がいたからか?だからって…」
「そうじゃないんです」
「え?」


この大学に華道部は存在しない。


END
612名無しさん@ピンキー:2010/02/09(火) 11:23:53 ID:2DiVp8jq
プギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
613イフ:2010/02/09(火) 16:46:47 ID:c09jChLh
>>609
GJで乙でした

やはり誠が殺されて互いの子供が産まれると必ず直面するだろうと…
子供も親も悲劇ですよね
前にアニメ版の後に刹那が妊娠して双子が産まれたifを書いた時も
やはり彼らには過去がついてきて苦しめるのを書きましたが
悲劇しか生まないですね〜バッドエンドは…


まあこれで言成くんが世界の娘と関係してきたらロミオとジュリエットだなw
とりあえずお疲れ様〜
614名無しさん@ピンキー:2010/02/10(水) 21:54:28 ID:nLDiw0wX
>>609
GJです

日頃ここでいたるSSを書いてるものですが実は私も言成のショートネタを
考えていたので興味深く読ませていただきました

独特の世界観がとてもいいですね
また次の作品を楽しみにしています
615名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 15:16:32 ID:IYDJG5vm
七海エロイよ七海
616名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 21:03:28 ID:dJ66jvUx
SS職人さんGJ!
このスレのぞくの楽しみにしてるよ
617名無しさん@ピンキー:2010/02/24(水) 10:57:06 ID:oO9F8Du1
ぷうw
618名無しさん@ピンキー:2010/02/25(木) 17:25:36 ID:j5W6BQ8p
新作こないかな?
619SINGO:2010/02/28(日) 02:11:14 ID:pb4PRYbb
どうも。
今回のSSはオカルトです。
舞台は中学時代です。

【妖怪 蜘蛛女】

620SINGO:2010/02/28(日) 02:12:24 ID:pb4PRYbb
【妖怪 蜘蛛女】

ある日の朝。
俺は原巳中学校に向けて自転車をこいでいた。全力で。
くそ、寝坊した!(←母子家庭で母さんが夜勤なため、起こしてくれる人がいない)

前方に原巳駅。この駅のすぐ横の踏切を、いつも通り渡るはずが、
カンカンカンカン…。
今日に限って遮断機に阻まれた。
俺はイライラしながら電車が通過するのを待った。
ここからだと駅のホームが見える。
通勤時間帯だけあって、榊野行きのホームにはサラリーマンの姿が目立つ。
(一方、反対方面行きのホームには誰もいない)
やがて電車は彼等を乗せ、俺の目の前を通過した。
何気なく、駅に視線を戻す。反対方面のホームの、その下に。
「!!」
見れば、いつの間にか線路の上に小学生くらいの男の子が倒れていた。転落したのか?
カンカンカンカン…。
再び警鐘。今度は反対方面の電車が来る。
男の子は脳震盪でも起こしたのか、避難する様子がない。このままだと電車に轢かれる。
駅員が即座に非常ボタンを押したけど、間に合うかどうか判らない。
助け出すにしても、俺だと距離的に間に合わない。
ホームに少女が一人いるけど、気が動転してるのか、ただ男の子を見下ろしてるだけだ。
「…?」
俺は異変に気付いた。
よく見ると、男の子の体にはロープが絡み付いていた。だから避難できないのだ。
しかも、そのロープの先は例の少女の元に延びていた。それは、つまり…
「う、嘘だろ?」
あの少女の仕業か!?
「やめろーッ!!」
その俺の叫びが聞こえたのか、少女がこちらを向いた。
少女は、人殺しとは思えない程の華奢な体をしていた。歳は俺と同じくらいだろうか。
平凡な容姿。薄幸そうな表情。
ウェーブ掛かった髪が背中まで伸びている。
驚くべき事に、その髪は例のロープと繋がっていた。そして蛇みたいに動めいて…。
「え?」
俺の目の錯覚か?
手足をいっさい使わず髪でロープを操る少女。いや違う。
あれはロープじゃない。髪そのものだ…。
少女の髪が、あさぎ色に変色していく。明らかに人間離れしている。
俺は息を呑んだ。

どうやら俺は妖怪と遭遇したみたいだ。

621SINGO:2010/02/28(日) 02:13:45 ID:pb4PRYbb
《原巳中学校》
「伊藤、どうしたの?顔が真っ青」
「何かあったの?」
加藤と喜連川が声をかけてきた。
まさか妖怪が出たなんて言えない。
どうせ信じてくれないだろうし、俺の神経が疑われる。当事者の俺でも、おかしいと思うくらいだ。
「いや、大丈夫。何でもない」
あの後、あの男の子がどうなったのか、俺は見ていないし、知らない。
俺は怖くなって、ひたすら逃げて、気が付いたら学校に到着していたのだ。
よく考えたら俺、事件の目撃者なんだよな。警察に事情聴取されたら、どう答えりゃ良いんだ?
あれは男の子を見殺しにしたとか、殺人犯人を見逃したとか、そういう次元の問題じゃない。
俺じゃ電車を止められなかったし、殺人犯人は妖怪だ。どちらも人間じゃない。
俺に、どうしろって言うんだよ?

やがて放課後。
帰り道は、必然的に原巳駅を横切る事になる。
今は、あの少女の事は忘れよう。
それより、男の子がどうなったかが気になる。とはいえ、直接駅に入って確認する度胸は無い。
とりあえず近くの売店で聞いてみる事にした。

「え?何ですか、それ?」
なぜか店員はハテナ顔。
聞けば、事件など発生していないとの事。
それは変だ。あの状況で男の子が無事でいられるはずがない。
なのに実際には、警察や救急車が来た形跡が無い。
まるで最初から男の子(と少女)が居なかったかの様に。
「いや、あの時、確かに駅員が非常ボタンを押したはず…」
「朝の急ブレーキの事ですか。そのせいで数十分は運休しましたけど、それだけですよ」
だったら、あの時、俺が見たものは何だったんだ?
「おおかた猫でも飛び出したんでしょう」

家に帰って、新聞やテレビのニュースで確認してみたけど、何の情報も無かった。
原巳駅は相変わらず平穏そのものだった。
…訳が判らない。
あれは幻覚だったのか?おかしいは俺の頭か?
まあ、それならそれで良いさ。
うん。事件など起こらなかった。妖怪など、この世に存在しない。
俺の日常は平穏無事なまま。
あの店員が言う通り、猫が飛び出しただけなんだ。
…あれ?
確か鉄道運転手って、小動物相手にはブレーキをかけないんじゃ…?
まあ、どうでもいいか。
俺は、朝の出来事を全部忘れて寝る事にした。

622SINGO:2010/02/28(日) 02:14:44 ID:pb4PRYbb
《翌日 原巳中学校》
ざわめく教室内。
「えー、みんな静かに。いきなりで突然ですが、転校生を紹介します」
「えと、山県愛といいます。よろしくお願いします」
…俺は、まだ幻覚を見続けてるのか?
昨日の朝、原巳駅にいたあの妖怪少女だ。眼鏡をかけ、髪を黒く染めてはいるが、間違いない。
転校生は俺と目が合うと、意味深に笑みを向けてきた。

この中途半端な時期に転校(しかもピンポイントで俺のクラス)というのが、何か変だ。
とにかく得体が知れない。なるべく関わらないようにしよう。

やがて昼休み。
「えと、初めまして。や、もしかして二回目かな?」
くそ。奴の方から関わってきた。
「ハジメマシテ。オレ、イトウ…」(←棒読み)
「伊藤君。良かったら、一緒にお弁当食べよ」

「山県さんだっけ?俺の事、知ってるの?」
「呼び捨てで良いよ。伊藤君こそ、私の『正体』を知ってるでしょ?」
ドクン。俺の心臓が跳ねた。
「お前、やっぱり昨日の妖怪か?」
「せめてスパイダーガールって呼んで」
山県は開き直ったのか、否定する様子が無い。
嫌な予感が最悪の形で的中した。そして理解。
山県は俺を追って来たのだ。俺が山県の正体を知ってしまったから。
その俺を、妖怪が生かしておくとは思えない。
俺は即座に逃走しようとして、
「!?」
足が動かない。
机の下を見ると、いつの間にか俺の足と机の脚が固定されていた。ロープみたいな物で。
いや違う。山県の髪だ!
「くそ。俺をどうする気だ?」
「別に何もしないよ。私の正体をバラさなかったら…の話だけど」
「もしバラしたら…?」
「え、ダメだよぅ。加藤さんの首に回した『糸』は、私じゃないと外せないよ」
くそ。親友を人質を取られた。
「わかった…喋らない」
よく考えたら、破格の条件だ。ただ俺が黙ってるだけで平穏な日常が戻ってくる。
口封じに俺を消せば手っ取り早いのに、それをしてこない。
こいつ、意外と甘いんだな。
いや待て。
「おい山県。あの子をどうした!?」
「あの子?」
「昨日の朝、駅のホームで男の子を…」
いや、事件は起こらなかった。という事は、この妖怪、
「まさか、あの子を喰ったのか?」
山県は一瞬キョトンとして、
「あはは。そこまで餓えてないよ。私の好みは、伊藤君みたいな中肉中背で…」
こいつ、悪趣味だ。人を怖がらせて楽しんでやがる…。

623SINGO:2010/02/28(日) 02:17:27 ID:pb4PRYbb
《放課後 帰り道》
俺の横には山県。
原巳駅まで一緒に帰ろうという山県の提案だった。
あくまで俺を監視するつもりか。
やがて原巳駅が見えてきた。
「あ」
例の男の子が居た。
見たところ外傷は無く、ピンピンしている。良かった。無事だったのか。
しかしながら山県。人を怖がらせるのが妖怪の本文とはいえ、昨日のアレは度が過ぎてた。
一歩間違えたら大惨事になってたぞ。
「なあ山県。あんな危ないマネは二度とするなよ」
すると、
「あ。やまがたさん」
男の子が山県を見つけ、なんと、駆け寄って来て山県に抱き着いた!
なんて怖いもの知らずな子だ。この女は君を線路に落とした妖怪なんだぞ。
「きのうは、たすけてくれて、ありがとー」
…へ?
山県が、この子を助けた?
「どういう事だ?」


結局、俺の勘違いだった。
あの時、この子が線路に落ちて、それを山県がロープ(正確には髪技)で引き上げて助けた。
それを最後まで見てなかった俺が、アレを突き落とし行為だと思い込んでいた訳だ。
「あー。ゴメン、山県」
「…?何が?」
「俺、お前のこと誤解してた。お前、すごく良い奴なのに…」
「危ない!!!」
山県の叫びで、俺の台詞は掻き消された。
「え?」
一台のスクーターが猛スピードで突っ込んで来た。
運転手が携帯電話を片手に、信号無視してきたのだ。
早く避け……駄目だ!俺が避けたら、この子が轢かれる!
俺はとっさに男の子を庇った。
そして時は止まる。
「……え?」
俺達は、かすり傷ひとつ無い。
落ち着いて見てみると…俺達の目の前、空中にネットが張り巡らされていた。
何だコレは?
例えるなら、それは巨大な蜘蛛の巣。そこに先程のスクーターが運転手ごと引っ掛かっていた。
「大丈夫?」
山県の心配そうな顔。その髪は、あさぎ色に変色していた。あの時と同じだ。
この蜘蛛の巣、山県の髪なのか。妖術すげー。
「ああ大丈夫。ありがとう、助かった」
…じゃなくて!
「山県!髪、早く隠せ!バレるだろ!」

624SINGO:2010/02/28(日) 02:18:43 ID:pb4PRYbb
「今の何?アンタ、何者?」
背後から聞き覚えのある声。
振り向くと加藤が居た。
何で加藤が?まさか山県を尾行してきたのか?
とにかく加藤に正体を見られた。しかもスクーターを運転手ごと捕らえた場面を。
「や、違うの。加藤さん。コレは…」
山県が歩み寄ろうとすると、加藤は脅えて後退りした。
加藤から見れば、山県は妖怪蜘蛛女だ。そして運転手は蜘蛛の巣に捕まった哀れな獲物。
「嫌、近寄らないで!バケモノ!」
絶叫する加藤。もはや恐慌状態にあった。
この状況はヤバイ。
確か、山県は言っていた。『加藤さんの首に回した糸は、私じゃないと外せない』と。
「待て加藤!下手に騒いだら…!」
「誰か助けてー!殺される!」
「……」
何も起こらなかった。
依然、加藤に何の外傷も無い。
「え?」
山県が加藤を見逃した?
いや違うだろ。馬鹿か俺は。
「山県が人を傷付けるわけ無いだろ!どれだけ疑えば気が済むんだ!」
俺は怒鳴った。自分自身に。
「そうだよ。やまがたさん、ぼくをたすけてくれたもん」と男の子も弁護。
山県はいたたまれなくなったのか、突然、俺達を置き去りにして走り去る。
「待ってくれ!」
山県を見失ってはいけない。もう二度と会えなくなる。そんな予感がした俺は、すぐさま後を追いかけた。

ほどなくして山県を捕まえた。
「なあ山県。転校してきた理由は、やっぱりアレが原因か?」
おそらく、以前住んでた町でもバケモノ扱いされ、町から追い出されたのだろう。
「うん。せっかく伊藤君と知り合えたのに、残念…」
「また転校する気か?認めないぞ、そんなの」
「伊藤君…?」
「俺は何があっても山県の味方だ。だから、いなくなるな」
山県の表情に笑顔が宿った。
俺は不覚にも赤面した。
どうやら俺の心は、この心優しい蜘蛛に捕われたようだ。

END
625SINGO:2010/02/28(日) 03:06:07 ID:pb4PRYbb
終わりです。

企画段階では言葉がヒロインでした(髪が長いから)
が、
どちらかというと山県が適任(転校生で異様な髪色だから)って事で
山県に変更しました。
626名無しさん@ピンキー:2010/03/01(月) 10:34:14 ID:6sQb+NXw
有朋いいよ!いいよ!
627名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 23:48:46 ID:NI8Agset
復旧&規制解除記念に感想でも・・・
>>619
投下乙です。
山県の転校を繰り返してた理由は妖怪だったからとはまたすごい

でも外見でいい奴か悪い奴かなんてわかんないし
誤解誠や加藤に誤解されているのはなんかかわいそうでした。

なんにせよGJこれからも期待したいです。
628名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 01:05:30 ID:aHNXGzQZ
人類と猿との間を埋めるミッシング・リンク、生きた猿人が発見された。
科学者たちはこの大発見に狂喜し、猿人のメスと人間との交配実験をすることにした。
500万ドルで猿人と交尾してもいいという人間の男を募集する新聞広告が、ただちに出された。

募集に応じて来たのは日本人で、沢越止と名乗った。
彼は、猿人のメスとセックスすることは別に構わないが、3つだけ条件があると言った。

1.別れた女房たちには内緒にすること。
2.生まれた子供に俺を親だと教えないこと。
3.それと、500万ドルは分割払いにしてもらいたい。
  なにしろ、今ちょっと持ち合わせがないもんで…
629名無しさん@ピンキー:2010/03/06(土) 00:28:31 ID:zitYQBzT
>>628

きもいからやめて
630名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 02:16:10 ID:HyOM/EAj
学園祭で澤長が、校門近くに立って大声をあげて客寄せをしている。
「このニュースを読もう。50人が詐欺にあった!50人が詐欺にあった!」

興味をもった誠が澤長に声をかけ、新聞を購入した。
さっそく一面を見てみたが、そのようなニュースは何も書かれていなかった。
誠は澤長に文句を言った。
「50人が詐欺にあったなんてニュースどこにも書いてないぞ」

澤長は誠の言葉を聞き流し、更に大声をあげ続けた。
「このニュースを読もう。51人が詐欺にあった!」
631572 :2010/03/07(日) 03:32:02 ID:kwvGI3ZN
「お姉ちゃんまた本読んでるの?これからみんなで出かけるけど準備できたの」
「えっ、もうそんな時間、こころ、ちょっと待ってねすぐ支度しちゃうから」
「はーい」

今日は祝日、偶然にも家族全員そろっていたので家族みんなでこれから食事に
行くことになったのだ行き先は榊野ヒルズの展望レストランである。
今言葉は出かけるために着替えておりこころの目の前には1冊の本が置いてある。
さっきまで読んでいた学校で借りてきた本である。

(……お姉ちゃんどんな本読んでんだろ)
目の前の本を取ってタイトルを見てみる。

『愛と誠その崩壊の序曲』

「何、この本?」
横に置いてある本にも目を向けてみる。
『新撰組 愛と誠を掲げし者達の散りざま』
『愛と誠は繋がらない』
『誠の愛などありえない』

1冊だけならまだしもこんなにも数があると流石に何故こんなものが
何冊もあると不自然に見えてくるお姉ちゃんに何かあったのかと
心は勘ぐっていた。
すると着替えている言葉が何か呟いているのが聞こえてきた。

「誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君
誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君
誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君
誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君
待ってて下さい、山県さんからいつでも戻ってきていいんですよ。
いえ誠君なら必ず戻ってきてくれますよね
誠君の彼氏は私なのですからあの山県さんも分かってくれますよね
ふふふふふふふふふふふふ」

「お、お姉ちゃん?」

そういえば聞いた様な気がする、今、誠君は山県さんと付き合っていると
最初お姉ちゃんは振られたショックを隠そうとしてたのんだと思ったけど
それは違うのかも知れない、
自分の知っている姉はもういないのかもしれない
そう思い心はそっと言葉の部屋を後にした。


山県愛endの言葉を書いてみた、
632名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 09:12:15 ID:wTJbSD9q
山県逃げてー。
633名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 17:12:59 ID:o/nntRqB
>>631
ニコニコで見た、アリプロの「愛と誠」をスクイズと組み合わせたMADを思い出したw

替え歌歌詞が神だったんだよ・・・「切るは肉 裂く鋸の血に匂う強さに」とかw
634名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 18:24:11 ID:lCHcGhSn
古典小説をプロットにしたシナリオ(基本設定などを使っている)考えたんですが、需要あります?
内容は世界ルートどれかの後日談(誠と世界が結婚済み)。ややグロあり、死亡あり。
635SINGO:2010/03/10(水) 01:25:41 ID:sjwzhCkd
どうも。もうすぐクロイズ発売なんで、テンション上げて投稿します。
今回はNTRSSに挑戦してみました。

636SINGO:2010/03/10(水) 01:26:51 ID:sjwzhCkd
【祭の後】

《秋》
『行為』が終わって、彼は満足感と共に違和感をも抱いていた。
(大丈夫なのか?この学園…)
学園祭の出し物の一つがオバケ屋敷というのは理解できる。
が、その暗闇に乗じて擬似ラブホテルが展開されているなど、誰が予想できただろうか?
彼自身、学園校内で性行為に誘われるとは予想外だった。
彼女に連れ込まれ、最初こそ面食らった彼だが、別段、支障がある訳ではない。
むしろ彼女からのサプライズプレゼントで、彼は存分にそのプレゼントを味わった。
誰かに覗かれているかも知れないスリリングな状況の中で。

《11月某日》
「すっかり遅くなったな…」
彼はアルバイトを終え、帰りの夜道を歩いていた。
バイト時間を増やしたため、そのぶん恋人と会える時間が少なくなった。
(彼のバイトには訳があって、その理由を恋人には伝えていない)
彼は恋人の淋しそうな顔を想像して…、
と、ベンチに座り込んでいる一人の男を発見した。男も彼に気付いたのか声をかけてきた。
「よお、どぉした?こんな所れ」
ろれつが回っていない。
男は彼の友達だ。
その男が今、目の前で一升酒瓶片手に酔っ払い、堕落している。
「な…!お前、何やってんだよ!?」
「なにも。おれには、もー何もない。なにも無いんだ」
男は泣いていた。
「何か哀しい事でもあったのか?」
「ああ。おれは本気だった。ほんきで惚れてたのに…」
どうやら女にフラれたらしい。
「よりを戻せないのか?」
「むりだよ。おれわ棄てられた」
聞けば、最近になって女の浮気&通姦が発覚。問い詰めた男に対し、女が別れを突き付けた。
直接的な表現をするならば、
「つまり、女を寝取られた訳か」
「ちくしょお…」
男の言葉の端端に『イトウ』という名前が出てきた。おそらく、そいつが女の浮気相手…寝取り魔なのだろう。
彼は男に何もしてやれなかった。ただ慰めの言葉をかけるだけだ。結局は他人事だから。
「たしか、サカキの学園だったか?なら、おまえの女もヤバイな。せいぜい気お付けろよ」
寝とられないようにな、と男は彼に忠告してきた。
男にとっては善意でも、彼にとっては無神経極まりない言葉だった。
「な!?お前…!!」
怒声が出かかったが、彼は何とか自制した。

637SINGO:2010/03/10(水) 01:28:02 ID:sjwzhCkd
《後日》
彼は恋人との情事にふけっていた。
「ねえ。早く、ちょうだい」
恋人がねだってきた。すでに開脚状態だ。
やけに積極的だな、と彼は思いながら、
「じゃ、入れるから」
彼は恋人の中に欲棒を突き入れた。恋人の締め付けをじっくり味わう。
「もう。焦らさないで」
恋人の要望で、彼はすぐに前後運動を始めた。
「もっと強くぅ」
何度も何度も前後運動を繰り返す。
「あっ、あん!イイ」
やがて彼の欲棒にも限界がきた。
「俺、もうイクっ!」
「や、ダメぇ。もっと!」
どくん。
彼は恋人の腹で果てた。

恋人と肌を重ねるのは久しぶりだった。思い返せば、学園祭での校内シャセイ以来だ。
そのせいか、行為が終わっても恋人の表情は物足りないと言いたげだ。

実のところ、彼は不安だった。友達の忠告が現実のものになってしまう事が。
『榊野学園だったか?お前の女もヤバイな。イトウに寝取られないようにな』
恋人が浮気している可能性。
とはいえ、直接、恋人に確認する訳にもいかない。酔っ払いの戯言が発端だし、何より証拠が無い。
彼に出来る事は、雑談にみせかけた誘導尋問だけだった。
「そうそう。この前、俺の知り合いがヤケ酒してて。聞けば、恋人を寝取られたんだってさ」
「へ〜、かわいそ」
「その寝取り魔、イトウって名前なんだけど。そいつも榊野の生徒なんだ。心当たりある?」
「ううん、知らない」
恋人は即答。だが、恋人の顔に生じた僅かな緊張を、彼は見逃さなかった。
「噂じゃ、手当たり次第の浮気者らしい」
「へ〜。その男、最低」
おい待てよ、と彼は思った。
彼はイトウの性別を彼女に伝えていない。なのに彼女はイトウを男だと断定した。
(こいつはイトウを知ってる。その上で、知らないフリをしてる)
隠し事をしている。
恋人が浮気している可能性は、彼の頭の中で数百倍にも跳ね上がった。

不意に、恋人が口付けてきた。
「んも〜。こんな時に、そんな話しないでよ」
彼は恋人の瞳を凝視した。
無垢な瞳だった。
俺はなんて馬鹿なんだ、と彼は思った。
恋人を疑うなど、重大な裏切り行為だ。
(こいつが俺を裏切るはずが無い。俺は間違ってた。あの馬鹿のせいだ。戯言に乗せられてしまった)

638SINGO:2010/03/10(水) 01:28:47 ID:sjwzhCkd
《12月某日》
彼は一人で榊野町の繁華街を歩いていた。
どこを見てもクリスマス用の飾り付けでいっぱいだった。
彼の手には、綺麗にラッピングされた小箱。今までのバイト代をはたいて買った、恋人へのプレゼント。
彼は恋人の笑顔を想像して、
「あ」
人ごみの中に偶然、恋人を見つけた。彼は慌ててプレゼントをポケットに隠した。イブの夜まで内緒だ。
恋人は携帯電話での会話に夢中なため、彼の存在に気付いていない。
彼は恋人に声をかけようとして、
「じゃあ、イトウの家にレッツゴー」
彼女の台詞を聞いた彼は絶句した。

「イトウ」「テクニシャン」「ベッド」「セックス」「三ピン」「今度産ム」
卑猥な言葉を拾いながら、彼は彼女に気付かれないように尾行した。まるで警察かスパイみたいに。
東原巳駅で下車して以降、どの道を辿ったのか、彼は覚えていない。
やがて彼女は、とあるマンションに入って行った。
彼女はエレベーターに乗り込んだようだ。
ドアが閉まるのを確認した彼は、その扉に駆け寄った。
表示パネルを見る。エレベーターの止まった階を確認し、彼は後を追った。
その階に辿り着くと、彼は玄関のネームプレートを確認して回った。
やがて『伊藤』宅の玄関を発見。中から恋人の楽しそうな声が聞こえてきた。
彼は携帯電話を取り出すと、恋人の携帯にかけた。
『もしもし。何?』
恋人はすぐに出た。
「今、どこ?」
『自宅』
嘘が返ってきた。
「今、お前ん家の近くまで来てるんだけどさ。出て来れる?」と彼は揺さ振りをかけた。
『え?今、無理。取り込み中ー』
「急に会いたくなってな。顔見せてくれるだけでいい」
『え?無理、無理』
「何で?俺のこと避けてるの?てか今、何してるの?他の男でも居るの?」
それでも恋人は頑なに拒否。
彼は最終手段に出た。
「もういいよ。俺達、別れよう」
そう言って彼は通話を切った。もちろん、ただのブラフだ。
普通なら、この直後、恋人から電話なりメールなりが返ってくるものだ。
もしくは、ただちに伊藤宅を出て彼に会いに行くかだろう。
だが、現実には彼の電話も伊藤宅玄関も沈黙を保ったままだった。
それでも彼は恋人を待ち続けた。
やがて伊藤宅の中から、あえぎ声が聞こえてきた。その中には、彼のよく知る声も混じっていた。
彼の体から、全ての力が抜け落ちていった。幸せも希望も、心さえも。

639SINGO:2010/03/10(水) 01:30:02 ID:sjwzhCkd
あれ以来、彼のもとに電話やメールは来なかった。どころか、彼女自身も来なかった。
彼女は、彼の『別れよう』発言を冗談だと判断したのか、能天気にも彼を放置。
彼自身も自分からの接触を諦めていた。

最終的に、先に動いたのは彼女だった。なぜなら…
彼は、ある噂を友達から聞いた。例の伊藤が誰かを妊娠させたという噂。
ここにきて、ようやく彼女は彼に電話した。遅すぎるくらいだ。内容は復縁。
このタイミングの良さ、変わり身の早さに、さすがの彼も頭にきた。
仮に彼女が伊藤に孕まされていたとしても、彼は同情しない。もう愛想が尽きた。
「お前には伊藤がいるだろ。さんざん俺を放置しといて、今さら俺にどうしろって?」
『伊藤って誰よ!変な言い掛かり付けないでよ』
「しらばっくれんな!俺、知ってんだよ。お前が伊藤とセックスした事」
そして彼は全てを彼女に伝えた。
あの日に彼女を尾行した事。その時の彼女のエロ通話。伊藤宅内から聞こえてきた、あえぎ声。
「浮気相手が危険な男と判ったら、即モトサヤかよ?ふざけんな!」
全てをぶちまけた彼は通話を切り、着信拒否モードにした。

《聖夜》
彼女は彼の家にまで押しかけて来た。一人では不安なのか女友達二人を同伴して。
彼女は弁解してきた。そして女友達二人は彼女を弁護。
聞けば、この女友達二人は無理に彼女を伊藤宅に呼び出し、行為に及ばせたらしい。
あくまで悪ふざけで、彼女はただ巻き込まれただけだ、と。

そこへ、
「よう。いっしょに飲もうぜ〜」
彼の友達がやって来た。かつて伊藤に女を寝取られ呑んだくれていた(今でも酔っている)男。
「…って、あれ?そいつら、たしか東はらみで…」
「ん?お前、知ってんの?」
「ああ。みおぼえがあるろ。そのシャギーの子にボブのこ。そっちのヘアバンドの子は確か…」
男は順番に指さして彼女達を確認した。
ちなみにヘアバンドの子が恋人だ。もっとも、これから恋人ではなくなるわけだが。
「んん、まちがい無い。伊藤のマンションに入っていったろ」
なぜか男は伊藤の住所を知っていた。おそらく調べたのだろう。女を寝取られた報復のためか。
「さんにんそろって」

640SINGO:2010/03/10(水) 01:30:56 ID:sjwzhCkd
「…え?今なんて?」
彼は自分の耳を疑った。
「だからー。三人そろって」
いや。あの日、彼が見たのは、彼女が単独でマンションに入って行く場面だった。
それが、三人そろって?
「おい待て。それ、いつの話だ?」
「いっかげつくらい前かなあ」
彼が彼女を尾行した日よりも、さらに前だ。
♪ピリリリリ…。
不意に、彼女の携帯電話が鳴った。
彼は彼女の手から携帯電話を奪い、ディスプレイを見た。
『着信あり:伊藤 誠』
「なあ、メールボックス見ても良いか?」
おそらく伊藤とのエロトークでいっぱいだろう。
彼女は首を横に振った。
確定。もう見る必要は無い。
彼は携帯電話を投げ、憎悪の瞳で彼女を睨みつけた。
「よくも騙してくれたな。このビッチ糞が…」
すると彼女の女友達の一人が、彼女を庇うように割って入ってきた。
「ちょっと!その言い方、非道過ぎない?大体、ボンヤリしてたアンタが悪いのよ」
「部外者は黙ってろよ。いや、共犯者だったか。腐れヤリマン」
「うっさい、負け犬」
「なんだと?」
話が違う方向にズレてきた。
「ちょ、やめてよ。ナツミちゃんも」
彼女が女友達を止める。が、ナツミと呼ばれた女友達は構わず暴言を続ける。
「女を満足させるテクも無いくせに。だから飽きられるのよ。その点、伊藤は凄く上手くて…」
その言葉は彼の心を深く傷付けた。絶望。彼の目から涙がこぼれ落ちた。
「うわ。何コイツ、泣いてるの?男のくせに」
「どうせ俺は負け犬だよ。でも負けるならセックスじゃなくて、優しさとか誠実さとかで負けたかった」
これが彼と恋人の決定的な違い。
恋人は自由奔放だった。目先の快楽を求めて。
一方、彼は今まで自分の自由を犠牲にしてきた。自分と恋人の将来を見据えて。
自由よりも遥かに尊い不自由がある。そういって自分を納得させてきた。
その結末に、彼が手に入れたものは……。
彼はポケットの中身を取り出すと、彼女の足元に叩き付けた。
それは綺麗にラッピングされた小箱。今までのバイト代をはたいて買った、恋人へのプレゼント。
中身は、彼女の薬指に合うサイズのプラチナアクセサリー。
「メリークリスマス、来実。さようなら」
今度こそ、本当に。
彼は、酔っぱらいの友達を自宅に引き入れると、内側から鍵をかけた。
しばらくして外から彼女の声が聞こえてきた。玄関の扉を叩く音も。
だが、彼は何も聞かなかった。何も聞こえなかった。

Bad End
641SINGO:2010/03/10(水) 01:57:29 ID:sjwzhCkd
終わりです。
このSSはアニメスクイズとリンクしてます。
642名無しさん@ピンキー
「いらっしゃいませ・・・って足利?」
「げ・・・黒田」
明後日はホワイトデー、バレンタインのお返しになるお菓子を買おうとしてスイーツおおはらに
入っていったのだがそこで待っていたのは同じ中学出身で路夏との仲を取り持ってくれた黒田光の
姿があった。
「まあ、丁度よかったのかな?、ほら明後日ホワイトデーだろ、だから路夏に何か買ってあげようと思ってさ」
「ほー、おあついねぇ」
一時は誤解もあったものの黒田の協力により今では無事路夏と付き合う事になった、
それで路夏へのバレンタインのお返しにクッキーでも買っていこうと店に寄ったのであった。
「じゃあ、このクッキーセットを一つ、あと・・・姉ちゃんたちの分も買っといたほうがいいかな」
「そうそう、恋人以外からももらったんだったらちゃんとお返しした方がいいわよ、って私もあげたんだっけ?」
「黒田からもらったチョコは金払っただろ、バレンタインにってよりかは単に商売根性丸出しにしてただけじゃないか」
「はははは、でも買っていくんでしょ?」
「たくっ、この商売上手め」
そういって、黒田の口八丁に騙されたのか、結局路夏の分以外にもいくつか多いクッキーを買い込んでしまった。
まあ、もらって悪い気はしないだろうしまあいいかと納得して家路に着く。
「じゃあ、黒田もありがとな、なんだかんだ黒田のおかげでこういう時の女の子の気持ちがわかった気がする。
せっかくだし明日は田中あたりを連れてくる、じゃあな」
「さんきゅ足利、どんどんお客さん連れてきてね」
「たくっ、俺はサクラじゃないっての」
そういって勇気は店を後にした、相変わらず背はちっこいながらも昔と比べて随分大きくなったようにみえた。
別に足利に恋愛感情を持ってるわけではないがやはり心は成長しているのだろうか

翌日

「うっす、田中は部活だったから代わりに澤永連れてきた」
「おーす、」
「さっさささっ澤永ぁ!!?」
「どうしたんだ、変な声出して」
「なっななな何でもないーー」
「そうか、でも足利、俺バレンタインの時1つもチョコもらってないんだぜ
返す相手なんかいないのにこんなとこ連れてきやがって」
「そうなのか?」

前言撤回、やっぱり足利は女の子の気持ちなんかわかっていないし
心も体格どおり子どものままだ。黒田は心の中でそう確信していた。


続かない。バレンタインの時は規制で投下できなかったのでホワイトデーの前日談ネタで
リベンジしてみました。

>>634
個人的に見てみたいので楽しみにしています。
>>641
投下乙です。
そういえば加藤の取り巻きに彼氏持ちがいたっけ、すっかり忘れてた。
スクイズらしい誤解や不安が面白かったです。

それと長編を書く場合ってできた所から投下するのと
全部完成してから投下するのってどっちがいいですか?
もうすぐ4話が終わるってところまで書き終わってるんですけど…
(問題点は多いけど)