覚えている方がいるかどうか不安ですが、ちょっと投下してみます。
ちなみに、第一話と第二話はHシーンがほとんど無いので飛ばしてOKです。
『G−SHOCK』
カシオが開発した“決して壊れない”腕時計。
外殻から独立した内部機構やポリウレタン製の衝撃吸収材など、数々の対衝撃機構を備え、
あらゆる状況下でも壊れず、狂わず、傷付かない堅牢さを売りとする腕時計。
そのタフさから軍人やダイバー等、過酷な環境下で活動する職種の者達に長年愛用されてきた腕時計。
そうした「絶対に壊れない、タフで男らしい」という宣伝文で一介の中学生を惚れ込ませて、
死に物狂いで貯金させ、今もこうして愛用させている腕時計。
しかし、ただ1つ――この時計には欠点がある。それも俺にとってはある意味致命的とも言える問題が。
ある推理小説曰く――刑事にGショックは似合わない。
ひでぼんの書・外伝2
『スカーフェイス“G”』
1.「G」
「聞いているのか、緋硯(ひすずり)警部」
「聞いてるよ、五十鈴警視」
嫌味臭い眼鏡の弦を嫌味臭く弄る嫌味臭い眼鏡――五十鈴警視の嫌味臭い声に、
俺はGショックの溝に溜まったホコリを爪楊枝で取り除きながら答えた。
無論、目を合わせもしない。
この、本体外殻の溝に汚れが溜まりやすいという欠点さえ無ければ、こいつは最高の相棒なんだが。
だが、あの眼鏡上司から嫌味臭さという欠点が無くなっても、あいつとは仕事上の相棒という関係にはなれそうもない。
「……先輩、ヤバイっすよ」
背後のパイプ椅子に座る部下に背中を突付かれて、俺は心の中で溜息を吐き吐き前を向いた。
一応は部下を預かる身としては、あまり上司に対する反抗的態度を見せ続けるわけにはいかない。
薄暗い会議室の正面に鎮座する巨大なプロジェクターモニターに写る映像に、
俺はこれで当分肉料理は食えそうにないな、という月並みな感想を抱いた。
警視庁○○署刑事課超常現象特殊強行犯係――巷じゃ国連直下の退魔組織である
『IMSO(国際妖魔対策委員会)』の出張所と揶揄されている――
警視庁直属の退魔組織ともいえるこの部署は、平安の時代には陰陽寮だの呼ばれていた怪しい組織が母体となっているらしいが、
そういった事に全く興味の無い俺には詳しい事はよく分からない。
早い話が、『人間以外の魔物の類や魔術師等の超常能力者による犯罪を担当する警察部署』ってわけだ。
今更言うまでもないが、この世界には文字通りの人外の力をふるう様々な魔物や妖怪、
幽霊にUMA、魔術師に超常能力者、神々や悪魔の類までもが実在している。
そういった存在から治安を守り、または引き起こした犯罪を捜査解決する能力が、当然ながら俺達警察機構にも必要となる。
しかし、国家権力というコネと警察権という大義名分があっても、悲しいかな俺達一般人には
魔物どもが使う様々な魔法、妖術、超常能力の類には対抗できないのが現状だ。
いや、単に魔物をブチのめすだけなら現状の兵器でも可能なんだが、
犯罪捜査のような繊細さを必要とする行為はほとんど不可能といっていい。
結果として警察は、古来よりそうした魔物達と接触、交流、
そして応戦していた組織――『退魔組織』に捜査協力を依頼していく事となった。
小は個人経営しているフリーの退魔師から、大は数千年の歴史を持つ宗教系退魔組織まで、
公務員の安月給とは比べる気にもなれないバカ高い依頼料と引き換えに、だ。
当然ながら、調査を外注せざるを得ない超常現象特殊強行犯係は、
予算はともかく設備と人員は最低限の規模であり、そのまま窓際族としてひっそりと警察署の隅にいる存在となった。
いや、なっていた――数年前までは。
そんな窓際部署が急速な拡大を遂げて、今や警察組織内でも最大級の部署となり、
こうして通常の強行班に所属していた俺までが、警部への昇進と引き換えに引き抜かれる結果となったのは、
IMSOがそうした超常の力に対抗する画期的な理論を完成させたからだが――
「聞いているのか、緋硯警部」
「聞いてるよ、五十鈴警視」
嫌味眼鏡に生返事しつつ、俺は2人を除いて誰もいなくなった会議室を見回した。
最近改築したばかりで内装は無駄に豪華だが、同時に無駄にだだっ広いだけに、
こうなると空っ風でも吹きそうな虚しさが部屋中に漂っている。
どこかで虚しい口笛が聞こえたような気がしたのは、さすがに幻聴だろうが。
「相変わらず目上の話を聞かない男だ。警察学校の頃から変わってないな」
「うるせぇ、いいから本題に入れ」
捜査会議中にGショックを弄り回してばかりで、ロクに話を聞いていなかったからという理不尽な理由で、
俺は1人居残って嫌味眼鏡――五十鈴警視の捜査報告をもう一度聞く羽目になった。
どうせ俺個人に対して何かオフレコの話があるので人払いしたんだろうが、そんな小学生みたいな理由があるか。
ちくしょう、退室する部下の視線が痛かったぞ。
「……で、本当に捜査報告は聞いていたのか?」
「そこまでボケちゃいねぇよ。要は――」
要は、不可能犯罪が発生したって事だろ。
壁掛け式の大型プロジェクターに映し出されている映像――それは、
軍隊顔負けの重火器で武装した屈強なヤクザ十数人が、誇張表現抜きでミンチと化している猟奇的な殺害現場だった。
事件の概要はこうだ。昨日未明、広域指定暴力団○○組の組長邸宅に襲撃事件が発生。
屋敷にいた組長以下十数人の武闘派暴力団員が皆殺しにあうという凄惨な事件だった。
だが、それだけなら普通の警察の仕事の範疇であり、わざわざ超常現象特殊強行犯係が担当するような事件じゃない。
問題は、襲撃者がたった1人――それも近所にいた幼稚園児の女の子だったという事だ。
取調べによると、女の子には事件の記憶が全く無かったという。
当然ながら女の子に十数人のヤクザを挽肉にする動機も無ければ、そんな行為ができる装備もない。
5歳の幼女が、素手で熊も捻り殺しそうな強面のヤクザを、それも近々計画されていたという抗争の為の準備として、
軍払い下げの重火器で武装していた連中を1人も残さずに“セント・バレンタインズ・ディ”と来たもんだ。
到底まともな事件じゃないって事は、それこそ幼稚園児でもわかるだろう。
だがそれも、背後に魔物や魔法といった超常の力が絡んでいれば話は違ってくる。
たちの悪い悪霊の類に憑依されたり、精神操作系の術で洗脳されれば、純朴な少女が殺人鬼に変貌するのも不思議じゃない。
武装したヤクザ集団を素手でミンチにするのも、そうした超常の力を使えば十分あり得る話だ。
つまり、それだけなら超常現象特殊強行犯係にとっては特別な事件じゃなかったわけだが――
「――『今回のケースにおいて、魔物・魔法その他あらゆる超常の力が関与した痕跡を認められず』――
IMSOから返ってきた調査報告だ」
五十鈴警視の感情を極力伏した言葉は、そんな常識を木っ端微塵に打ち砕くものだった。
「信じられねぇな……報告ミスって線は無いのか?」
「そっちは確認済みだよ」
氷の仮面を着けたような表情は崩さずに、五十鈴警視は一度眼鏡を外してしばらくレンズを眺めた後、再びかけ直した。
昔から変わらない、困惑した時のこいつの癖だ。
困惑するのも無理はない。正直言えば俺も似たような気分だ。
魔物や魔術の類――超常の力を使わずに、どうすれば幼稚園児がヤクザどもを皆殺しにできる?
さっぱり見当もつかない。
「さすがのお前も困惑しているようだな」
0.1ミリグラムほどの苦笑を混ぜた液体窒素みたいな声に、
俺は自分の左目から顎の下に走る傷痕を、無意識の内に撫でている事に気付いた。
昔から変わらない、困惑した時の俺の癖らしい。
「いいからさっさと本題に入れよ。まさか本当に事件の再確認の為に、わざわざ俺を残したわけじゃねぇだろうが」
内心の僅かな動揺をごまかしつつ、俺は50%の本気を込めて目の前の嫌味眼鏡を睨んだ。
だが、部下なら一発で震え上がるメンチ切りも、相手がガキの時分からの馴染みでは、眼を逸らさせる事もできやしない。くそったれ。
「無論だ――なら単刀直入に言おう。お前には一時的に捜査班から外れて、独自に別方面から事件を捜査して欲しい」
「……ぁあ?」
あまりにも普段と変わらない調子で嫌味眼鏡は言い放ったので、俺は生返事を漏らす事しかできなかった。
「早い話が、お前だけチームから抜けて1人で捜査しろという事だ。この件が解決するまで、お前の部下は私が預かる」
「……ふざけんじゃねぇ!」
俺は激昂した。当然だろう。
捜査班から俺だけが追い出された挙句、1人で捜査しろだぁ!?
理不尽なんてレベルじゃねぇぞ。イジメかこれは。
「そう吼えるな、ちゃんと理由があっての事だ」
マホガニーのデスクが凹むほど拳を叩きつけ、鼻先を噛み付かんばかりに怒鳴りつけても、
五十鈴警視のポーカーフェイスは変わらなかった。その度が過ぎた冷静沈着っぷりに、
不本意ながら俺の怒りもたちまち萎えちまう。あまり認めたくはないが、これが人の上に立つ者の人心操作術という奴か。
腕っ節と恫喝で部下を従えている俺には程遠い要素だ。
「『闇高野』の名前は知ってるな?」
「資料を読んだ程度にはな」
なぜ急にその名前が出るのかと訝しみながら、俺はこの部署に引き抜かれた際に渡された資料の中身を思い起こした。
『闇高野』――それは国内最強と称されている宗教系退魔組織だ。
名前の通り表向きは仏教系退魔組織の体裁を取っているが、
その中身は様々な東洋系古代退魔技術をベースに独自の体系を組み込んだ、極めて実戦的な戦闘退魔集団だという。
まだ人類が文字を書くこともできなかった時代から、様々な魔物を退魔し続けていたその実績は凄まじく、
こんな東洋のちっぽけな島国の一退魔組織に過ぎない存在でありながら、バチカン直属の『テンプラーズ』、
イスラム圏最大の退魔組織『アズラエル・アイ』、仙人達の総本山『崑崙山』に並び称されているって話だ。
だが、それほどの歴史と格と実績を併せ持った退魔組織にもかかわらず、
闇高野は常に数多くの人々から忌み嫌われていた存在だったらしい。
それは、そのあまりにも優秀過ぎる退魔戦闘能力への不信と、一部の目撃談から浮上した噂からもたらされる物だった。
曰く――闇高野の退魔師は人間ではない。人間に姿を変えた魔物達が、自分の同族を狩っているのだ。
曰く――そのため、闇高野の退魔師は、人間と魔物双方から裏切り者と呼ばれている。
曰く――そうした退魔師の中でも特に力ある者は、“邪神”と呼ばれる超越存在の眷属で……
そんな噂を信じていたわけでもないだろうが、以前の超常現象特殊強行犯係も
闇高野に捜査を依頼するのはかなり稀なケースだったようだ。
基本的に報酬は寸志しか受け取らないらしいので、ガンガン依頼すればいいんじゃねぇかと個人的に思うが、
やはり長年積み重なった疑惑の念は、ちょっとやそっとじゃ拭えないらしい。
そんな事情もあってか、IMSOが例の技術を開発して以降は、
闇高野は完全に俺達警察機構とは関わりのない存在となった。
……いや、関わりのない存在となった筈だった。
「お前には、その闇高野の退魔師と組んで事件を捜査してもらう」
「はぁ?」
さすがに少しよろめいた。
「なぜ今更あんなインチキ臭ぇ連中とつるまなきゃならねぇんだ?
そもそもこの件にそうした魔物や超常の力は関与してないって話だろうが。
何の意味があるんだオイ!?」
再び激昂する俺に対しても、五十鈴の眼鏡はいつもの冷たい光を返すだけだ。
「だからこそ超常的な事件のプロと捜査して欲しいのだよ。この一件がある種の不可能犯罪である事を忘れたのか?」
「…………」
言い方はムカつくが、中身はあながち的外れなわけじゃない。
魔法や超常の力を使っていない事件――しかし魔法や超常の力を使わなければ成り立たない事件。
そうした矛盾した事件を調査するには、複数の可能性を考慮して、双方向から調べるのがセオリーだ。
つまり『魔法を使わずに、魔法を使ったとしか思えないトリックを使った事件』であるケースと、
『魔法を使ったが、どうにかしてその痕跡を完全に消した事件』であった場合にと。
あの嫌味眼鏡は、俺に後者のケースとして調査しろというわけか。
だが……
「……だが、なぜ担当する捜査員が俺1人なんだ? 部下を取り上げる必要はないだろうが」
「闇高野の方から指定してきたのだよ」
「はぁ?」
「闇高野がお前を名指しで選んだのだ。警察側の捜査官はお前1人だけでいいと。
その条件さえ飲めば闇高野は全面的に調査に協力すると。おまけに捜査費用は闇高野側で持つとな」
もう一度俺はよろめいた。
「理由がさっぱりわからねぇ……つい先日この部署に配属されたばかりの素人を指名するなんて、
どんな了見だ!? いくら闇高野側が全面的に協力するといってもだな……」
「全面的な協力といっても、あちらが送ってきたのは1人だけだがな」
今度は流石にずっこけた。
「…………」
「呆れて怒る気にもなれないといった態だな……そう腐るな。
確かに送られてきた退魔師は1人だけだが、闇高野でも3本の指に入る凄腕だそうだ」
「捜査員が2人だけで凄腕もクソもないだろ……」
ケツに付いた埃を叩き、Gショックが汚れなかったかチェックしながら、俺は何とか立ち上がった。
正直あのままずっと床に伏していたい気分だったが。
「資料によれば、その退魔師は闇高野退魔剣法を極めつくした伝説の剣士にして、
同時に世界最高位の“風使い”らしい。
闇高野でも最古参メンバーの1人で、その驚異的な戦闘能力は魔物すら凌駕するのではないかという噂だ」
「どれも犯罪捜査には何の役にも立ちそうにねぇデータだなオイ」
五十鈴警視の言うとおり、もう怒る気にもなれねぇ。
本庁はこの事件を真面目に解決する気があるのか?
「愚痴をこぼすのは勝手だが、もうこの件は決定事項だ。正式な命令だと思え」
まるで厄介払いをするかのように、五十鈴警視は無造作に指令書を手渡した。
「で、その退魔師がそろそろ到着する時刻だ。一応は外部協力者だからな、正面門まで迎えに行けよ」
「……クソ寒ぃ」
陰鬱な気分で外に出た俺を迎えてくれたのは、同じくらい陰鬱な冬の空と、身を切るような冷風だった。
地球は温暖化している筈じゃなかったのか? と理不尽な考えが浮かぶくらい、今日は一段と寒い。
ひゅぅるるるるる、と電線や枝先が立てる口笛みたいな音――虎落笛(もがりぶえ)が鳴り響く度に、
俺は震えながらペラペラのコートの襟を寄せた。体脂肪率が5%を切っている俺にとって、この季節は実に辛い。
「ふぅ……」
何十度目かの白い溜息が漏れる。
駐輪場に止まるパトカーを横目に、俺はとぼとぼと正面門に足を進めた。
なぜ俺があんなわけのわからん方法で事件を捜査しなきゃならないんだ?
自分が上司部下同僚と例外なく疎ましく思われているのは承知しているし、それを改めようとは微塵も思わないが、
まさかこんな露骨な嫌がらせを受けるとは思わなかったぜ。どうせその退魔師とやらも――ん?
そういえば、俺はその退魔師の名前も外見も全然知らされてないぞ!?
「それでどうやって迎えに行けっていうんだ……」
どうやら五十鈴警視の嫌味眼鏡も、あまり真面目に胡散臭い退魔師を相手にする気はないらしい。
「……まぁ、どうせ退魔師って言うくらいだから、いかにも退魔師な感じの姿格好なんだろうが」
勝手にそう決めつつ、俺はやたらでかい正面門――完全に門を開放すれば、幅80mを超えるらしい――の脇に建てられた、
対照的に小さな守衛の詰所の脇を抜けようとして――
「ねぇねぇ、返してくださいよぉ……」
「だめだめ、子供がこんな物を持ってちゃあ……」
その何ともノホホンとした言い争いの声を聞いた。
「どうしたんだい、おやっさん」
俺は無遠慮に詰所の中に立ち入った。本音を言えば、あまりの寒さにちょっと暖を取りたくなったからだが。
「よぉ緋硯」
シュンシュンと湯気を漏らす薬缶を載せた電気ストーブが何よりも魅力的な、狭苦しく雑然とした詰所の中で、
顔馴染みのおやっさん――昔の上司で、定年退職した今はここで守衛をやっている――が
白い顎鬚を綻ばせながら片手を上げた。その手に長さ80cmほどの無骨な杖が握られているのを見て、
「おやっさん、また腰を悪くしたのか」と苦笑しかけたその時だった。
「その杖がないと困るんでさぁ……」
おやっさんの背後から、その子がひょっこりと姿を見せたのは。
その瞬間――世界が止まった。
ここに断言しておく。
断じて、俺に幼児趣向の気はない。むしろ俺の好みは幼女とは正反対の属性だ。それは俺を知る誰もが認めている。
「…………」
にもかかわらず、俺はその『少女』に完全に見惚れていた。
美しい。可愛い。愛らしい。可憐だ。綺麗だ。華麗だ――どんな美の形容を使えば、この少女を表現できるんだ?
それができた者は世界一の詩人と称えられ、歴史にも名を残せるだろう。
当然ながら俺のような無骨を絵に描いた男にそんな資格があるわけない。
ただ1つ確実に言えるのは、俺は今まで37年間生きていて、彼女ほど美しい少女を見た事が無いという事実。
そしてこれからの人生で、彼女より美しい少女を見る事は決して無いだろうという絶対の確信だ。
年の頃は5〜6歳ぐらいだろうか。この時分に珍しい真紅の着物を藤色の帯で締めていた。
星を散りばめた様な限りなく黒に近い紫色の髪は、肩口で綺麗に切り揃えられている。透き通るような乳白の肌。
形の良い耳に小さな鼻。薄桃色の花弁を貼り付けたような薄い唇。抱き寄せればそのまま消えて無くなりそうな華奢な身体――
全てのパーツが神の精度で完璧な美少女を完成させていた。
もしも“それ”が無かったら、冗談抜きで俺はいつまでもその少女に見惚れ続けていたかもしれない。
“それ”とは、その少女のやや釣り目気味の大きな瞳だった。
その瞳には光が無かった。
ハイライトが完全に欠落した黒瞳は、それだけで少女が『盲目』である事を如実に語っていた。
そして、その瞳の奇妙な存在感は、不思議な事にそれだけで少女の美しさを得体の知れない不気味さで覆い隠しているのだ。
あたかも猛毒を持つ美しい蛇が、その奇怪な目だけで己が危険な生物だと訴えているかのように。
はっと我に返った俺は、そこでようやく少女がおやっさんの周りをぐるぐる回りながら、
頭上にかかげた杖に向かって不器用に手を伸ばしている理由に気付いた。
「おいおやっさん、意地悪しないで杖を返してやれよ」
呆れた調子で俺はおやっさんに苦笑を向けた。盲人にとって杖は必需品だろう。
少女が取り返そうと必死なのも当然だ。
しかしあのおやっさんは、そんな子供っぽい真似をするような人じゃなかった筈だが……
「いや、俺も好きで意地悪しているわけじゃねぇんだけどなぁ」
申し訳なさそうなおやっさんの空いた片手が杖の反対側を掴むと、
あまり高価そうには見えない杖から白銀の輝きがあふれ出た。
「おい、これは……」
「そうだ、仕込み刀ってやつだな。
さっき正面門を通ろうとしたお嬢ちゃんが、門の危険物探知センサーに引っかかったんだ」
映画や漫画では定番の隠し武器だが、実物を見るのは俺も初めてだ。
杖の柄から真っ直ぐに伸びる薄手の刃は、それ自体が銀光を放つように妖しく輝いている……が、
「やっぱり返してやりなよ、おやっさん」
「おいおい、あんたも規則は知ってるだろ?
許可無く敷地内に危険物を持ち込むのは禁止されて――」
「危険物じゃねぇよ」
俺は無造作に仕込み杖の刀身を握り締めると、そのままぐいっと引き抜いた。
何の抵抗も無く刃が掌に食い込みながら滑り抜ける。
おやっさんの小さな悲鳴が聞こえたが、俺は何事も無かったようにウインクしながら掌を広げて見せた。
「ありゃ?これは」
「見ての通りさ」
自分でもごついと思う俺の掌には、うっすらと赤い筋が走っているだけだった。
「模造刀だよこれは。紙も切れないこけ脅しだ」
「なるほどねぇ……しかしよく見破れたもんだ」
「職業柄かな」
地響きと共に大地が揺れたのはその時だった。
断続的な振動と重量感のある轟音が立て続けに詰所を揺らし、
慌てておやっさんが積み重ねられた書類の山を押さえる。
「地震か――」
「違うね、あれを見なよ」
おやっさんに促されて外を見ると、いつの間にか全開状態の正面門から、
何台もの大型トラックが地響きを立てながら次々と敷地内に入っていくという、なかなか迫力のある光景が展開されていた。
しかし何より目を引いたのは、大型トラックそのものよりも、その荷台に積まれたデカブツだ。
「あれは危険物にならないのかい」
「危険物には違ぇねぇが、もうそっちの許可は得ているよ」
体長6mを超える巨大な金属製のゴリラとでも言うべきか。
『Martense03型強化外骨格』――米軍払い下げの対大型魔物鎮圧用パワードスーツだ。
そういえば今日5台ほど配備納入される予定だったな。
「こんな漫画みたいなロボットを乗り回せるたぁ、俺がいた頃と比べて超常強行も出世したモンだねぇ」
「金だけは無駄にある部署だからな。どうせ無人操縦で動かすんだろうが」
「へぇ、人が乗らなくても動かせるのかい」
「おやっさんがいた時代と違って、人工知能も随分進歩したんだよ」
「ふぅん……何だか俺がガキの時分にあったゾイなんとかってオモチャに似ているねぇこいつ」
「その辺はあまり突っ込まないでやってくれ」
「んじゃ、ちょっと入門許可証をチェックしてくるわ。こういう物騒なモンの搬入手続きって面倒臭ぇんだよなぁ」
「頑張りな」
かったるそうにトラックに向かうおやっさんを尻目に、
例の退魔師とやらが来るまで茶でも飲もうと、ストーブ上の薬缶に顔を向けた――その時、
「あらららら?」
「!?」
さっきまでふらふらと危なっかしく俺とおやっさんの周りをうろついていた少女が、
絶え間無く続く地響きによろめいたのか、沸騰する薬缶が載ったストーブに向かって、今にも倒れそうな事に気付いた。
「危ねぇ!!」
叫ぶよりも先に体が勝手に動いていた。運の悪い事に、突進する俺と少女の間にストーブが置いてある。
少女を受け止めるのは間に合わないと咄嗟に判断した俺は、
スライディング気味に飛び込みながら、ストーブに横殴りの足払いを食らわせた。
狙い違わず真横に吹っ飛ぶストーブが電気ストーブだったのは不幸中の幸いか。
上に載っていた薬缶が派手にぶちまけられて、熱湯の飛沫をモロに浴びたが、
これくらいで音を上げるほどヤワな身体はしていない。
「きゃあ!」
「ぬおっ!?」
だが、次に目の前に飛び込んできた光景には声を上げずにはいられなかった。ちくしょう。
支援
一体どういう転び方をしたんだか、着物の裾を腰までめくり上げた大股開きの姿勢で、
少女の股間がバックから俺様の顔面に直撃した。しかもご丁寧にもパンツをはいていないときたもんだ。
いや、着物だからそれでいいのか? いわゆる69の体位で床に倒れた俺の視界一杯に、
少女のスジや尻が広がっているわけだが、ロリコンのロの字も持ち合わせてない俺にとっては全然嬉しくもなんともない。
あーションベン臭ぇ。
「ふわぁ?なになになにが起こったんスかぁ?」
「うぷっ、暴れるな嬢ちゃん」
状況が理解できてないらしい少女がジタバタ暴れる度に、顔面に押し付けられる股間に辟易しながら、
俺は必死に起き上がろうとしていた。この状況はあらゆる意味で危険過ぎる。
誰かに見られたら俺が今まで築いてきた社会的立場はオシマイだ――
「……緋硯よぉ」
……オシマイだ。
「ちょっと見ないうちに、ずいぶんその子と深い仲になったもんだねぇ」
「いや、これはだな……」
詰所の入り口から俺達を見下ろすおやっさんを、少女の股間越しに目撃してしまった俺は、
慌てて誤解を解こうとして――おやっさんの背後に立つ“それ”も目撃した。
「危ねぇ!!」
今度も叫ぶより先に体が動いた。少女を抱きかかえながら素早く起き上がり、おやっさんの腰めがけてタックルする。
「ぬおぉ!?」
「ふえぇ!?」
間一髪だった。
俺と少女が詰所から転がり出て、ついでにおやっさんをはね飛ばすと同時に、
巨大な鋼の塊が小さな詰所を文字通り粉砕した。
爆音に等しい破砕音と土煙が荒れ狂う中、完全に瓦礫と化した詰所の残骸の上に鎮座するのは、
巨大な鋼の類人猿――Martense03型強化外骨格!?
「痛ててて……な、なんだこりゃ!?」
「ふわぁ……杖はまだ返してくれないんスかね」
緊張に強張るおやっさんと緊張感のない少女を背後にかばいつつ、俺は懐から拳銃を取り出した。
ついさっきまでトラックで搬入されていたパワードスーツが勝手に起動して動き出し、あげくに襲いかかってきただと!!
一体何が起こったんだ!?
「な、何が起こったんだよ緋硯ぃ」
「さっぱりわからねぇよ……だがな」
詰所を一撃で瓦礫と化したゴリラだけじゃない。
いつのまにか残る4機のMartense03型強化外骨格までもが起動していて、俺達を完全に包囲していやがる。
「俺達をミンチにしたがっているのは確かだと思うぜ」
残酷なくらい無機的な電子の瞳が5つ、まっすぐに俺達を見据えていた。
何の警告もなく襲い掛かり、じりじりと包囲網を狭めてくる鋼の類人猿からは何の殺意も感じられない。
それがかえって不気味だった。
一体どこのどいつがこんな真似を? 誰かに命を狙われるような覚えは……色々あるな。
だが魔物鎮圧用パワードスーツ5機がかりで襲いかかってくるような相手なんて見当も付かねぇ。
「何の悪ふざけだ!!誰が操縦して――」
台詞すらまともに言わせてもらえずに、巨大な拳が叩きつけられた。間一髪でアスファルトの上を転がり避ける。
その固いアスファルトが拳の一発でスポンジのように凹むのを見て、俺の心臓が早鐘と化した。
「くそっ」
無駄だと思いつつ拳銃の引き金を引いたが、案の定強化外骨格の表面に火花を散らせただけだった。
巨龍クラスの魔物との戦闘を想定して設計されたMartense03型の特殊装甲は、
戦車砲の直撃にも傷1つ付かず、100年間放置してもサビ1つ浮かないという話だ。現状の装備じゃとてもかなう相手じゃなかった。
かといって三十六計しようにも、こう完全に周りを囲まれては……くそっ、万事休すか?
せめておやっさんとあの少女だけでも逃がせないか――うおっ!?
「うおっ!?」
何の前振りもない横殴りの攻撃をかわせたのは99%偶然だ。
だがはずみで無様に尻餅をついた俺にとっては、死神の手が瞼に触れるのを数秒ほど遅らせただけの事だった。
鋼鉄の類人猿の豪腕が頭上に振り上げられるのを、俺は絶望的な心地で見つめていた。
ぱちん
だから、その豪腕が目の前でピタリと停止したのは幻覚だと思った。
次の瞬間に鋼の腕が賽の目切りに分断されて、その破片が顔に当たってから初めて現実の光景だと気付いた。
ぐおおおおおお……
片腕を失ったパワードスーツが苦悶の叫びを漏らすのを、俺は確かに聞いた。
な、何が起こったんだ!?
「すいませんねぇダンナ、勝手に杖を返してもらいましたぜ」
やたら爺むさい口調で俺に語りかけたのは、まるで石か草のように何の気配も立てずに静かに佇む、
仕込み杖を手にした真紅の着物姿の少女だった。
「お、おい……」
「ダンナ、危ないから下がっていてくださいな」
そりゃ俺の台詞だと答える余裕もなく、隻腕の巨大な類人猿が少女に踊りかかる。
ぱちん
その脅威が見えないかのように――いや見えないんだろうが――ゆっくりとした動作で、少女は仕込み刀を杖に納めた。
そう、刀を抜いたんじゃない。刀を納めたんだ。
その恐るべき意味に気付いた瞬間――Martense03型強化外骨格は、四肢を細切れに切断されて、
外部装甲が粉微塵となり、誰もいないコックピットブロックが剥き出しとなった内部機関を無様に晒す鉄屑と化した……
「ありゃ、中に人間さんはいないんですかい」
「……ああ……無人操縦らしい……」
達人技を通り越した神技、魔技とさえ称せる居合い術を披露した気概なんて欠片も見せない、
春の野原を散歩しているように静かに微笑む少女に生返事で答えながら、俺は五十鈴警視の言葉を思い出していた。
――その退魔師は闇高野退魔剣法を極めつくした伝説の剣士にして――
「じゃあ、こっちの方が手っ取り早いですかねぇ」
少女が僅かに唇を尖らせた。その幼い容姿にそぐわない妖艶な唇から漏れたのは――虎落笛だった。
真冬の冷風が枝先や電線を吹き抜ける時、
ひゅうひゅうぴゅるるると鳴くあの寂しげな笛の音――虎落笛。
四方を囲む鋼の類人猿達は、その物悲しい調べに殉じたのかもしれない。
100年間放置してもサビ1つ浮かないと称される、Martense03型の特殊装甲。
だが、もし、100億年間放置した場合はどうなる?
眼前に広がる光景が回答だった。
刹那にも満たない刻――特殊装甲が、いやMartense03型強化外骨格そのものが
瞬時に錆びた粉塵と化して、真冬の風に吹かれて灰色の空に消えていくのを、俺は呆然と見つめていた。
――世界最高位の“風使い”らしい――
おい……冗談だろ……
まさか、あのチンチクリンが――!?
「やれやれ、最近は何かと物騒ですなァ」
一瞬にして4機のMartense03型強化外骨格を“風化”させた幼い少女は、
盲人特有のどこかぎこちない動作で、傍らで腰を抜かして茫然自失しているおやっさんに肩を貸していた。
――闇高野でも最古参メンバーの1人で、
その驚異的な戦闘能力は魔物すら凌駕するのではないかという噂だ――
手首のGショックが妙に熱い。
顔の痕を撫でる手の震えが止まらない。
「ええと……挨拶が遅れちまいましたが……緋硯 鯨人(ひすずり げいと)さんですね」
真紅の着物を身にまとい、盲人用の杖をついた少女の、
細く、小さな、か弱い、そして恐るべき掌が差し出された。
「初めまして。闇高野退魔師“G”と申します」
その『盲目のもの』は静かに微笑んだ。
虎落笛が鳴いた。
続く
何だろ…
このみぞおちの辺りがむずむずする感覚
うおおおおおお!!!
ひでぼん復活!!!
伝説が蘇る・・・!
>>220 今期の鬼太郎の妖怪の萌えナイズっぷりは異常w
そして、まさかのひでぼん外伝キタワー
相変わらずテキストとディテールがいい意味で煮えてて、かっけぇなぁ・・・・・
続きも楽しみにさせて貰うぜ
ひでぼんの人が復活したと聞いて
有名な人?
ひでぼんの人が来ているとは!
まだ導入部分だけなんだろうけど、それでも引き込まれます。
和装ロリがエロ可愛いなぁ。
続きを楽しみにしております。
漫画、アニメ、ゲームetc....と、界隈に萌え妖怪ムーヴメントが来てるのは間違い無い!!
座頭市少女とは。wktkwktk
ああ、嗚呼! お帰りなさい、ひでぼんの人!
だいたい2年と半年振りなのか……無事でよかった
そしてロリ座等市に萌え燃えしつつ続きwktk
ひでぼんさん復活に全俺どころか全2chクトゥルフ住人が泣いた!!!!!!!!
249 :
コマネコの人:2008/10/31(金) 20:11:01 ID:yhnh3qqT
毎回、流れを断ってしまうけれども、みんな気付いているだろうか?
今日はジャックランタン娘が
「とりっく・おあ・とりぃーっと!」って、家々を渡り歩く日ということ。
ちなみに私の家には残念ながら来ていない。
最近、風邪が…
マボさんはどうしてるんだろう。
小説書くとき役に立つ(かもしれない?)ので類語辞典を貼っておきます。
ttp://thesaurus.weblio.jp/ 文章作成時など、ある言葉を同じ意味の別な言葉に換えたい時使用します。
より小説文章に近い「表現類語辞典」というのもあるそうですが、残念ながら一冊7千円弱します。
マジでひでぼんの人帰ってきてんの!?
>>254 187の正体か。
『“旧支配者”の復活を予言する者』となると――
「ある時は燃える三眼、ある時は名も無き予言者。しかしてその実体は………」
トラペゾヘドローン・フラーッシュ!!
「千の姿を持つ邪神(オトメ)、ニャルラトテップ!
アナタの人生――変わるわよ(コズミックホラー的な意味で)」
――ってトコじゃなかろうか。
>>256 >アナタの人生――変わるわよ
変わるというか終わるな
258 :
マージ:2008/11/04(火) 00:52:03 ID:GufH00Ov
糾「マージ、うっ、うっ、はあー」
可愛らしい顔をした青年のナニから勢いよく白い液体が飛散した。
糾「はあ、ふうふうすっきりした」
青年は満足したのか汚れたナニをティッシュで拭きズボンを履いた。屋敷に居る愛しい女性と会いたい、知ってしまった男女の気持ちいい営みを行いたい。何時もそう思っている、だが彼女は精霊であり人間界で一緒に暮らせない会えるのは屋敷に帰った時だけだ。
糾「マージたちは今頃どうしているのかな」
続く
259 :
マージ:2008/11/05(水) 00:27:25 ID:gBvK5b5N
あと二週間で冬休みになる。屋敷に戻ってマージに会えるそれだけを胸に秘め、孤独な一人暮らしを耐えていた。
糾「一緒に暮らしたいなあ」
今まで数え切れないほど口にしたぼやきがまたこぼれた。今まで一人には慣れていた、だから家族が出来たときはとても嬉しかった。
もう一人じゃない、しかし、その家族は全員が精霊、一年の特定の間しか会えない。そのためにまた
別の悲しさを覚えてしまった。糾は悲しさを仕舞い込むため、何時もより早く布団に潜った。目が覚めれば、また1日再開の日が近づく。
糾「おやすみ」
遠く離れた家族に向かって、語りかけ眠り落ちた。
続く
260 :
マージ:2008/11/05(水) 00:54:12 ID:EyzhO8Fs
飽きたのでここでやめます
どう見ても偽物なのに反応するとか
>>256 「そこまでよ、ハスター!」
「貴様はニャルラトテップ!
ええい、バイアクヘー達!やってしまえ!」
「「「「イー!!」」」」
こうか
264 :
式神馴らし:2008/11/06(木) 21:06:00 ID:o1YplKp8
投下します
半分ほど開いた窓から流れ込んでくる秋の風。卓袱台の前の座布団に座ったまま、初
馬は現実逃避気味に窓の外の青空を眺めていた。
「どうしたものかなぁ……」
そんな言葉が喉から漏れる。やや甲高い女の声。
自分の右手を持ち上げてみた。節くれ立った男の手ではなく、白く細い女の手である。
腕も細くきれいな女の腕。頭を撫でてみると、狐色の長い髪の毛。視線を下ろすと、白い
ワンピースを着た細い体躯。胸の生地を押し上げる膨らみ。本来なら両足の間にあるも
のもない。空気に触れているため、足もすかすかしていた。
視線も普段から十五センチほど下がっている。身体が一回り小さくなっているため、見
える風景が別のものになっていた。部屋が大きくなっている。
「他人の身体ってこんな感じなんだな。うん、興味深い」
狐耳と尻尾を動かしながら、感心してみた。どちらも人間にはない未知の器官。腰の上
辺りと、首筋に奇妙なくすぐったさを覚える。
まとめると、初馬は一ノ葉になっていた。なお、狐状態ではなく人型である。
「というか、さっさとワシから出て行け!」
自分の意思とは無関係に、口が声を発する。一ノ葉の口調で一ノ葉の台詞だった。
初馬は短く吐息し、両腕を広げて見せる。無論、動くのは一ノ葉の両腕だった。ついで
に尻尾を左右に一振り。腰の付け根に引きつるような感触。
「出て行きたくとも、出て行く方法が分からないんだから仕方ないだろ」
首元の赤いチョーカーを弄りながら見つめる先――ベッドに座って両手で印を結んだ初
馬の身体があった。目を閉じたまま動かない。分かりやすく言うと、眠っているような状態
である。
両腕を腰に当て、一ノ葉は眉根を寄せた。
「貴様は……もう少し計画性を持て。何でワシに取り憑いてるんだ!」
「うーん」
初馬はパソコンデスクの椅子に腰を下ろした。身長が変わっているせいで、座り心地が
悪い。両腕を下ろしてから腕組みする。胸の膨らみが腕に触れているが、とりあえず無視。
一ノ葉も気づいていないはずないが、特に何も言わない。
初馬は言い訳するように答えた。狐耳が勝手に動いている。
「いや、俺も好きでこんな事になってるわけじゃないんだけど。この状態は明らかな事故だ
し、今すぐ元に戻るってのは無理だ」
式操りの術の応用による、視聴覚の共有。それを試そうと思ったのだが、術の発動に
失敗。一ノ葉との全感覚共有が起こってしまった。しかも、本体の意識は閉じてしまい、事
実上一ノ葉に憑依している状態である。
稀にこのような事故は起こるらしい。だが、実際に起こるとは思わなかった。
「術式に問題はないはずなのに、遣い魔の契約式組み込んだのがマズかったかな?」
初馬は顎に手を当て、天井を見上げた。首の後ろでさらりと流れるきれいな狐色の髪
の毛。自分の身体ではないのだと自覚させられる。
「何にしろ、実家に連絡しないとな……。感覚共有を強制解除する薬があったような気が
する。速達で送ってもらうことにして、明日かな? 届くのは」
実家までは電車で二時間ほど。遠いというほどではない。しかし、わざわざ取りに行く気
にはなれなかった。笑われるのは目に見えている。
「ということは、明日までこの状態だというのか……?」
一ノ葉が頬を引きつらせ、自分の身体を見下ろしていた。一人の身体に二人の意識。
端から見れば滑稽な一人芝居をしているようなものだが、幸い観客はいない。
「そういうことだ。よろしく」
「貴様と身体を共有するのは、ぞっとしない……。どうせよからぬ事をするに決まっている。
貴様が大人しくしているはずがない」
不服そうに口元を引き締め、一ノ葉は唸った。苛立ちに歯を噛み締めつつ、尻尾に力
が入っている。他人に身体を動かされるのは、いい気がしないだろう。
「それはこういうことかな?」
にやりと笑いつつ、初馬は両手を胸に触れさせた。
それほど大きいとは言えないものの、丸く滑らかな膨らみ。指を動かし服の上から優しく
揉んでみる。ほどよい弾力と柔らかさ。胸の先の小さな突起を服越しに軽く引掻いてみる
と、微かなくすぐったさが走った。
「貴様は……!」
両手が引き離されて、表情に怒りが浮かぶ。
口元を右手で抑え、初馬は首を傾げてみせた。胸を指でつつきながら、
「自分で触っても気持ちよくないんだな。もう少し気持ちいいと思ったんだけど」
例えるなら、自分で自分の肩を揉んでいるようなもの。特に感じることもなく、興奮もしな
い。元の身体のまま人に変化させた一ノ葉の胸を触る方が気持ちいいいし面白いだろう。
雰囲気の問題なのかもしれない。
「当たり前だ、ボケ!」
右手で頬を引っ張りながら、一ノ葉が怒る。自分の頬を引っ張るので一ノ葉も痛いはず
だが、初馬に痛みを与える方が重要らしい。
「さてと」
初馬はその手を頬から引き離した。両手を組んで印を結び、意識を集中させる。狐耳と
尻尾がぴんと立った。自分の意識が手足の先端、狐耳や尻尾の先まで届くように。
両手を膝に置いて一息つく。準備は完了。
五秒ほどだろう。一ノ葉が身体を動かそうとした気配が伝わってくる。だが、一ノ葉は身
体を動かすことはできなかった。
『……貴様、何をした!』
意識に割り込むような一ノ葉の声。今までのように声帯を通した声ではなく、思考に直
接響いてくる声だった。念話というのはこういう感じらしい。
「すまん、しばらく身体の支配権は俺が貰うから」
狐色の髪を手で梳きながら、初馬は笑う。
感覚の共有率を高めて、一ノ葉の支配権を押さえたのだ。今まではお互いに身体を動
かしていたが、これでほぼ初馬の意思のみで身体を動かせる。穿った言い方をすれば、
一ノ葉の身体を完全に乗っ取った。
『ふざけるな! この身体はワシのものだ。勝手に使うな!』
「気持ちは分かるけど、お前じゃこの状態直せないだろ。こっちは命掛かってるんだから
多少無茶はさせてもらう」
言い訳しながら、ベッドに座ったままの自分の身体を見やる。一ノ葉も見ているだろう。
厳密には一ノ葉に見せている風景を、初馬も見ているのだ。
両手で印を結んだまま動かない身体。放っておけば、ずっとそのままである。
「これ、早く戻さないと衰弱死するから」
『そのまま死んでしまえ……アホが』
不機嫌そうな一ノ葉の悪態。冗談めかしているが、半分は本気なのだろう。初馬を主と
認めたとはいえ、お世辞にも服従しているとは言い難い。しかし、現実味がないとはいえ、
危機的状況であることは理解してくれたらしい。
「……そうもいかないんでね。俺はまだ死にたくないし」
初馬は椅子から立ち上がった。
尻尾を動かしながら、自分の身体の元へと歩いて行く。普段から鏡で見慣れている姿で
あるが、他人の視線となって見てみると、自分なのに他人のように見える。
軽く肩を左に押すと、身体は力無くベッドに倒れ込んだ。印が解けるが、効果に変化は
ない。そのまま、両足をベッドの足下に移してから、布団をかけて終了。とりあえず寝かせ
ておけば、しばらくは大丈夫だろう。
『これからどうする気だ? さきほどの話しぶりからするに、自力で戻るのは無理なんだろ?
最終手段はあるんだろうがな』
「実家から感覚共有を解除する薬を送ってもらう。自分で強制解除する度胸はない」
答えつつ、初馬は椅子に座った。パソコンの電源を入れる。
首元のチョーカーを弄りながら狐耳を動かし待っていると、三十秒ほどでOSが立ち上
がった。両手の指を組んで、解すように動かす。一ノ葉はキーボードを触ったことがないも
のの、今身体を動かしているのは初馬の意思。入力に問題はないだろう。
メールソフトを立ち上げ、実家のアドレスを開く。
------
式操りの術を試していたら、感覚共有事故が起こった。自力じゃ戻れないから、解除薬を
送って欲しい。できるだけ早めにお願い。
白砂初馬
------
本文は手短にして送信。言いたいことは伝わるだろう。
それから両手の指を見つめる。身体が変わっているため、指の長さも太さも違う。しか
し、さほど不自然さはない。一ノ葉の身体の感覚もある程度利用できるのだ。
『元に戻る薬が来るのは、早くても明日。それまでどうやって時間潰すつもりだ? さっさと
ワシに身体を返せ。貴様は大人しくしてろ』
「あと、手紙出して来ないといけない」
一ノ葉の言葉は無視して、初馬はパソコンの上に置いてあった封筒を手に取った。長形
3号の白い封筒。宛先は知り合いの術具師の家である。内容は大したことないが、早め
に出しておいた方がいいだろう。
『外を出歩く気か? 手紙は今日でなくてもいいだろうに』
「面白そうだから」
きっぱりと断言し、初馬は椅子から立ち上がった。狐色の髪が揺れて、胸の重さが微か
に肩を引っ張る。どちらも男にはない感覚だった。
「やっぱり、女って男と違うんだよな――」
右手で胸を撫でながら、左手で髪を梳く。セクハラじみたことをしている自覚はあった。
しかし、意外と卑猥なことをしている感じがしない。
『だから、人の身体を勝手に弄るな! このスケベが』
一ノ葉にしてみれば勝手に身体を弄られているだけ。良い気分ではないだろう。
「それよりこの格好じゃ外歩くのはちょっと難しいかな?」
初馬は両腕を左右に広げてみた。飾り気のない、半袖の白いワンピース、裸足に室内
用サンダルを履いていた。サンダル以外は全部術で作ったものである。
術で狐耳や尻尾、髪色を誤魔化すのはともかく、白いワンピースのみの格好で出歩くの
はまずいだろう。格好が不自然すぎて、目立つ。
『またよからぬことを考えているな?』
「よからぬこと――だなんて心外だな」
朗らかに告げてから、初馬は両手で印を結んだ。一ノ葉の持つ妖力を利用し術を使うこ
とも可能だ。正確には一ノ葉に術を使わせているのだが。
「変化!」
術が発動し、狐耳と尻尾が消え、髪色が濃い茶色へと変化する。
術によって作られたワンピースが一瞬で組み替えられ、別の服装へと変化した。
淡い水色の半袖パーカーにデニムのハーフパンツという格好。足には白いハイソックス
を穿いている。表からは見えないが、下着も普通のものからスポーツ用に変化している。
胸回りと腰回りがぴっちりと引き締められるような感触。
右手に具現化させていた赤いリボンで、長い髪の毛をポニーテイルに縛り上げる。これ
でスニーカーを穿けば、活動的な少女の出来上り。
首元のチョーカーは術で見えないようにしてある。
封筒を手に取り、財布をポケットに入れ、初馬は玄関に向かった。
『ひとつ訊きたい』
どこか醒めた一ノ葉の声。
「何だ?」
玄関に向かいながら促すと、約三秒ほどの沈黙が返ってきた。何か言うのを躊躇うこと
を思いついたのだろう。その内容は初馬にも想像が付く。
意を決したように、予想通りのことを訊いてきた。
『これは何と言うべきか……。貴様、やけに手慣れた手際で、妙に楽しそうにワシの服装
を変えているが。もしかして、女装願望でも持ってないか?』
「普段からお前にどんな服着せたら可愛いかなー。とかは考えてる」
こちらも正直に答える。
一ノ葉は自分から人の姿に変化することはない。単純に好き嫌いの問題なのだろう。人
の姿になる時は、いつも白いワンピース。本人は他の服を着るのが嫌らしい。だが、色々
な服を着せたら似合うとは常々思っていた。
初馬は下駄箱からスニーカーを取出す。時期が来たら一ノ葉に穿かせようと思って買っ
た物である。結局、一ノ葉になった自分が穿くことになってしまった。
スニーカーに両足を通し、爪先で床を叩く。サイズはぴったりだった。
『本当に変態だな……』
「ありがと」
『褒めてない』
一ノ葉の言葉を聞きながら、初馬は玄関のドアを開けた。
以上です
続きは来週辺り
ここからの展開が楽しみだ・・・
きたきたきたkちあkたkたktじゃおいtか
憑依モノの定番プレイといえばやはり…
275 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/11(火) 16:51:34 ID:m9wk+TcX
ほ
ん
と
に
あ
な
る
し
か
き
285 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/12(水) 17:14:33 ID:IxpwAwws
スプ子 顔はスプーに似る。 女の子なので体は真っ赤。
286 :
式神馴らし:2008/11/12(水) 18:39:42 ID:erFAcWvU
投下します
>>265-270の続き
手紙を郵便局に出してから、アパートに戻る。
用事が終った後、一ノ葉にこのままどこか遊びに行かないかと誘ってみたが、さっさと帰
るという冷めた返答。しかし、欲しかった本があったため、初馬は帰りに本屋に寄って本
を買い、ついでに立ち読みもしてきた。
「ん?」
玄関のドアの締めてから、初馬は振り向く。
『どうした?』
郵便受けに荷物がひとつ放り込まれいた。取り出してみると、やや厚みのある封筒だっ
た。宛先などは書かれていないが、白砂家の家紋の判子が押されている。裏面には実家
の住所。実家からの荷物らしい。
『……届くの早くないか? 貴様が実家に薬を送るように連絡してから、まだ三時間程度
しか経ってないだろ。転送の術でも使ったのか?』
一ノ葉が訝っている。メールを読んでから郵便局に行き速達で送っても、今日中に届く
ことはない。しかし、現実にここに封筒はある。実家に転送の術を使える人間はいない。
物質の転送には、高度な術式構成と膨大な術力の消費が必要なのだ。
まさか危険物ではないだろう。
自分の発想に失笑しつつ、初馬は封を開けた。小さな密封パックに入った茶色の顆粒
が三袋と、手紙が一枚だった。顆粒の方は感覚共有を解除する薬だろう。
手紙を見てみると父からである。
《仕事で下宿先の近くを通るから、ついでに置いていく。三種類の薬をお湯に溶かしてか
き混ぜて、二時間待ってから飲めば術は解除される。あと、式操りの術は危険性の高い
術だから、遊び半分に使わないように。
白砂徹也》
内容は月並みだった。
『ふむふむ。思ったよりも早く元に戻れるのだな。よかったよかった。というわけで、さっさ
と薬を作って、早くワシから出て行け』
手紙を眺めながら、一ノ葉が嬉しそうに言ってきた。明日までこのままの予定が今日中
に元に戻れることになったのだ。一ノ葉にとっては吉報だろう。
初馬は両手を見つめた。細くきれいな女の手。
「そうさせてもらうよ。何だか思ったより面白くなかった」
ため息混じりにそう言いながら、台所を見回し適当なコップを掴む。
一ノ葉になっても、特別普段と変わることはなかった。確かに女になるというのは珍しい
体験であった。それでも、何か大きく変わるということはない。
コップに三種類の薬を放り込んでから、電気ポットのお湯を注ぐ。スプーンでかき混ぜる
と、焦げ茶色の液体になった。見ていると、ぷくぷくと小さな泡が湧いている。何か反応を
起こしているらしい。
二時間というのは、反応が終るまでの時間だろう。
コップを台所に置いたまま部屋に移り、窓を半分開けた。アパート横の駐車場。部屋に
流れ込んでくる涼しい空気。卓袱台の前に戻って、座布団に腰を下ろす。
『さ、ワシに身体を返せ』
「あと二時間だしな」
そう呻いてから、初馬は両手で印を結んだ。
「変化」
服装が外行きの格好から部屋着へと変化する。白いシャツと白いハーフパンツという格
好。ワンピースは落ち着かないというのが本音だった。ついでに、焦げ茶色の髪が狐色
に戻り、狐耳と尻尾が生える。
続けて印を結んで、身体の支配を弱めた。
支配権がある程度戻ったことを自覚したのだろう。初馬の意思ではなくぱたりと跳ねる
尻尾。一ノ葉は首を左右に動かしていた。
「ようやく元に戻った……」
声帯を通した声で呻いてから、眉根を寄せる。今まで違和感を覚えていたのだろう。両
腕を持ち上げ具合を確かめるように動かしてから、尻尾を上下に振ってみた。全身を解
すように動かしている。
しばらく動いてから、一ノ葉は目蓋を落とした。
「狐の姿には戻らないのか?」
「四つ足の獣になるのは、ちょっと怖い」
初馬は頷いて答える。生まれてこの方二本足の人間として暮らしてきた。まだ、獣の感
覚を試してみる気はない。今回も全感覚共有事故を恐れて、一ノ葉を一度人に変化させ
てから術を試したのだ。備えあれば憂いなし。
「ワシは元々四つ足の獣なんだが?」
「式神は人間に化けられると色々便利だから。うちの式神は仕事がない時はよく人間に
化けて遊びに出掛けたりしてるのに」
実家にいる式神は、動物型が多い。そして、全員が人間に変化する術を習得している。
休日などには人間に化けて出掛けたりしていた。私的な用事以外にも、他のものに化け
られるという技術は役に立つ。
初馬は自分の身体を見下ろした。人間と変わらぬ四肢と身体。狐色の眉毛を動かしつ
つ、右手で狐耳の縁を撫でる。
「お前は、自分から変化の術使うことないよな」
「ワシは狐の姿が落ち着くんだ」
初馬の問いに、一ノ葉は鼻を鳴らして答えた。
一ノ葉は自分から人間に化けることがない。初馬が式神変化を用いて人間に変化させ
ることはあるが、自分から変化の術を使うことはない。外に出る時も幻術で姿を隠してか
ら出掛けている。
「いいけどな」
初馬は両腕を広げた。
時計を見ると午後五時過ぎ。まだ外は明るく、涼しい秋風が窓から入ってくる。薬が出
来るまでは二時間ほど暇な時間が続くだろう。
「やることがない」
卓袱台に置かれた本。大学で使う難解な参考書だった。読みながら時間を潰すという
気にはなれない。もっとも、暇を潰す方法ないくらでもあるが。
その方法がどうやら表情に浮かんでいたらしい。
「貴様、何を企んでいる?」
怪訝な呟きを漏らす一ノ葉。身の危険を感じたのだろう。背筋に寒気が走り、尻尾の根
本に力が込められる。身体を共有していると、色々伝わることが多い。
初馬は尻尾を動かして、自分の前に持ってきた。
「まさか――!」
一ノ葉が鋭く呟く。さすがに意図を察したようだった。必死に尻尾を戻そうとしているが、
尻尾を動かすことはできない。身体の支配力は初馬の方が強いのだ。
狐色の毛に覆われたふさふさの尻尾。先端が白く、きれいな毛並み。
左手でそっと先端を押さえ、右手で毛を撫でる。
「っ……」
喉が震えた。
尻尾の付け根から背中まで、痺れるようなむず痒さが駆け上がる。その感触に思わず
肩を竦めて、背中を震わせた。尻尾を触られるという、未知の感触。
先の方を左手で押さえたまま、表面を丁寧に撫でていく。
手の動きに合わせて、狐色の毛が動き、毛の動きが尻尾の芯に伝わり、痺れるようなく
すぐったさが尻尾から背中、全身へと伝わっていく。
身体の芯が熱くなり、狐耳がぱたぱたと動いていた。
「だから、止めろ!」
一ノ葉が叫ぶ。だが、身体を動かすことはできない。
初馬は丁寧に尻尾を撫でている。
「普段から気持ちよさそうに毛繕いしてるの見てて、どんな感じかと思って。……これは、
癖になるな。思ったよりも気持ちいい」
尻尾を撫でる動きは止めぬまま、初馬は答えた。
狐の姿の時、一ノ葉はよくベランダで毛繕いをしていた。部屋の中では抜け毛が大変な
のでしないように言っている。毛繕いをする姿は非常に気持ちよさそうに見えた。
「毛繕いしてないだろ!」
的確なツッコミが返ってくる。
それには答えず、初馬は両手で尻尾を抱え上げた。先端を口に咥えてみる。それだけ
で背筋が痺れた。やはり予想していた通り、尻尾を弄るのは気持ちがいい。
尻尾の先端を甘噛みしつつ、両手で尻尾全体を撫でる。
「これは、意外と……」
尻尾から全身に広がっていく、むず痒さ。
初馬は止めることなく、尻尾を弄り続ける。今まで感じたことのない心地よさが、尻尾か
ら全身へと広がっていく。
「貴様、は……」
一ノ葉は必死に抵抗するが、身体は初馬の意思によって勝手に動き続けた。尻尾の先
端を噛みながら、両手の指を毛の中に差し入れ、芯を指先で引掻く。その度に、身体が
びくりと震える。だが、指の動きは止めない。
二分ほどだろう。
初馬は尻尾から手を放した。
全身からうっすらと汗が噴き出し、身体の芯が熱く燃えている。喉の奥に感じる乾きと、
胸の奥で疼く切なさに喉を鳴らした。予想していた通りの反応。
身体から力が抜けて、胸や下腹部に熱がこもっている。女として出来上がった状態だろ
う。これなら、最初に胸を触った時のような淡泊な反応はない。
「貴様、最初からコレが目的だったのか……?」
出来上がった自分の身体に、一ノ葉が怒りを含んだ声を発する。
「ま、俺も健全な青年男子として、女の快感というのには興味ある。尻尾弄ったらスイッチ
入ると踏んだんだけど、大当たりだな」
不敵に笑いながら、人差し指で胸の先の突起を弾く。
「んっ……」
口元から漏れる甘い声。自分のものか、一ノ葉のものかは分からない。
今まで感じたことの無いような痺れが神経を駆け抜けた。男とは違う女の快感。しかも、
他人の身体を使ってその未知の快感を得るという行為に、異様なまでに興奮していた。
それは身体の持ち主である一ノ葉も十分に理解している。
「貴様、このドスケベが。だから嫌だったのだ!」
「あと、俺はお前を弄るのが大好きだから。大丈夫だ、安心しろ。ちゃんと気持ちよくなる
ように可愛がってやるから」
怒る一ノ葉に、初馬は笑顔で言い切った。
今までに二度だけだが、一ノ葉と身体を重ねている。その経験から感じる手順は大体
分かっていた。そこを愛撫すれば快感が得られるだろう。
「それに……お前も放っておかれるのは困るんじゃないか? このまま疼きが収まるまで
待つのは無理だろ。感覚を共有してるから、はっきり分かるよ」
「………」
初馬の言葉に反論はなかった。
身体の疼きが収まるまで大人しく待っている――それは一ノ葉にとってかなり辛いもの
になるだろう。自分の身体なので、その辺りの自覚があるようだった。
代わりに悪態をつく一ノ葉。
「本当に変態だな、貴様は」
「ありがとう」
「だから、褒めてないッ!」
一ノ葉の言葉には構わず。
初馬は身体へと手を伸ばした。
以上です
続きは来週を予定しています。
+ 。 * ワクワクテカテカ +
ツヤツヤ ∧_∧ +
+ _(u☆∀☆) ギトギトヌルヌル
⊂ (0゚ ∪ ∪。⊃ +
⊂ ゚̄ と_u _)__)゚  ̄⊃ + ワクワクキラキラ
⊂_。+ ゚+_⊃
⊂__⊃. + * + ワクテカ +
これなんて生殺し?
来週まで座して待つ、待つよ、いいこにして待ってるからね……っ
『童話の消えた森』計画――そのプロジェクトは通称そう呼ばれている。
21世紀初頭にヒトゲノムの完全解析が行われたのと同じように、『魔法』『超常能力』といった人外の力それ自体の原理や構造を、
あらゆる側面から“科学的に”解析、解明、そして完全再現するという、国連をバックにIMSO主体で行われた一大プロジェクトだ。
過去に幾度も試みられたがその都度失敗し、もはや不可能とされていたその理論を成功させたのは
“時計男”と呼ばれる謎の人物の協力があっての事だと噂されているが、いずれにせよ計画が成功した事により、
人類は新たなステージに到達した……らしい。俺にはいまいちピンと来ないが。
とにかく計画の完成によって、今まで一部の魔術師や退魔組織だけが独占していた魔法技術を、俺たち一般人も利用できるようになったわけだ。
反対に割を食ったのは当の魔術師や退魔組織の側だった。何せ何百年もの間修行した大魔術師が、
数限りない手間をかけた儀式の末、ようやく行使できる大魔法が、ボタン1つ押すだけで再現できるのだから話にならない。
こうして退魔師や魔術師の世界は見る影もなく衰退していく事になるのだが、俺達のような警察にとっては、クソ高い金を支払って、
そうした魔術師の連中に魔物や魔法に関する事件の捜査協力を依頼する必要がなくなったので、ありがたい話ではある。
とはいうものの、現在この技術はIMSOによって特許の1つまで完全に管理された、事実上IMSOの独占技術となっている。
極めて強力な魔法的技術が大量に一般社会へ流通すれば、既存の価値観が崩壊するからだ、というのが連中の苦しい言い訳だ。
まぁその言い分も納得できないわけじゃない。
その辺のチンピラ犯罪者が携帯よろしくお手軽に火の玉や稲妻を撃ちまくったら、俺達警察はたまったもんじゃねぇし、
その気になれば大陸1つ沈める事も可能だという大魔法が、戦火の軍隊にでも使われたら……ゾっとしない話だ。
それに独占といっても非合法的なものでない限り、IMSOに依頼すればタダ同然の手間賃で動いてくれるのだから、実用面では特に問題はないのだが……
……そうした理論や技術では解明できない不可能犯罪が、よりによって俺達の管轄内で発生したのだ。ちくしょうめ。
2.「童話の消えた森」
「襲撃者の痕跡が何も残ってないって……どういう事だよオイ!!」
「聞いての通りだよ。あのMartense03型強化外骨格の残骸に残されていたメモリーの中身は真っ白だった。
それも破損の際にメモリーが損傷したわけではない。初めから何の命令も書き込まれていなかったという事だ」
「つまり何だ……あのデカブツは自動操縦モードすら稼動せずに、
ただ電源が入っただけの状態で勝手に動き出して、俺達に襲いかかったって言いたいのか!?」
「現状ではそうとしか言えないな」
「ふざけんな!! こっちはおやっさん共々殺されかけたんだぞ!?」
「そう焦るな、まだ暴走事故から6時間しか経過していないのだ。これから何か新発見があるかもしれない」
「お前も一度あのゴリラに襲われてみろよ。俺が焦る気持ちが理解できるだろうさ」
「……とにかく、この一件は我々の方で調査する。
進展があり次第連絡するから、お前は闇高野退魔師“G”氏と共に捜査を続行しろ。以上だ」
「ふん……相変わらずだな五十鈴警視」
「お互い様だ。緋硯警部」
普段はあまり人気のない署内唯一の給湯室前の廊下も、つい6時間前に魔物鎮圧用大型パワードスーツ暴走事故があったばかりでは、
事後処理にバタバタ走り回る下っ端警官どもの姿で妙にせわしない。
そんな周囲の光景など目に入らないように――当たり前か――静かに廊下の隅にちょこんと腰を下ろしているのは、
真紅の着物に藤色の帯、黒いおかっぱ頭に光の無い瞳、安っぽい杖と緑茶の入った紙コップを持つ盲目の美少女――闇高野最強退魔師“G”氏だ。
「おや、もう報告は終わったんですかい」
声をかけたわけでもないのに、近付いただけで俺だと判別できたらしいG氏は、緑茶入りの紙コップを軽く掲げて見せた。
こいつ、実は目が見えてるんじゃねぇか?
「報告といっても結局は何も分からず終いだ。勝手に動き出して俺達を襲ったとしか思えないとさ」
客人扱いの外部協力者ではあるが、こんな座敷童子みたいなガキに敬語を使う気にはなれず、俺は無遠慮にG氏の傍に腰を下ろした。
強行犯時代はしょちゅうヤクザと勘違いされていた強面の大男と着物姿の盲目美少女というチグハグな組み合わせに、
周囲の連中が露骨に奇異の視線を向けるが、知った事か。
「やっぱりねぇ……人間の匂いがしませんでしたよ、あの機械人形からはねぇ」
外見とは正反対にやたら爺臭い口調のG氏は、やたら爺臭く音を立てながら紙コップの中身をすすった。
「無人操縦なら人の匂いがしないのは当たり前だ」
「いやいや、無人だろうが人間が関与していれば、人間の匂いは染み付くもんでさ」
「何でそんな事がわかるんだよ。それが退魔師の力ってやつか?」
「いやまぁ、肉の匂いには敏感なものでしてねぇ」
普段の俺なら、ふざけた事言ってんじゃねぇ、と小突き回す所だが、あの光景を見てしまっては別だ。
強化外骨格の特殊装甲を、抜き身すら見せずに切り刻んだ凄まじい剣技と、口笛一吹きで錆の粉に変えた奇怪な術。
この儚いとさえ称せる盲目の美少女は、恐るべき戦闘能力を持つ凄腕の怪人なのだ。
何者なんだ?このガキは……
俺は不審の眼差しを隠しきれずにいた。
「そう見つめないで下さいな。あたし、照れちまいます」
「……あんた、やっぱり見えてるんじゃないのか?」
「いやいや、生まれつきの目無しですよあたしは」
確かに、そのどこかぎこちない動作は盲人特有のものだ。
だが、あの驚愕を通り越して唖然とするような戦いぶりを見てしまっては、盲人どころか人間ですらないような気がする。
やはり退魔師というぐらいだから、何か怪しい術でも使って周囲を探っているのだろうか。
「ところで、ヤクザ屋さん家の襲撃事件の調査はどうするんですかね」
「無論、これから続行だ」
「へぃ……ところでダンナ、さっきから虫にでも刺されたんですかい」
「…………」
無意識の内に左頬の傷を撫でていた事に気付いて、俺は憮然としながら立ち上がった。
襲撃事件のゴタゴタで、もう夕方になってしまったが、まだ現場は保存しているはずだ。
「今から現場に向かうぞ」
「あわあわ、ちょっと待ってくださいよダンナぁ」
さっさと廊下を進もうとすると、G氏は慌てた様子でおたおたと立ち上がり、ぎこちなく杖で周囲の床を弄りながら、
産まれたての小鹿よりも頼りなさそうに廊下を歩き出した――俺のいる側とは正反対の方向に。
「……あんた、目が見えてるのか見えてないのか、はっきりしろよ」
「どこにいるんですかダンナぁ?」
――10分後、仲の良い親子よろしくG氏と手を繋いだ俺は、
同僚の奇異を通り越して犯罪者でも見るような視線に耐えながら、駐車場までエスコートする羽目になった。ちくしょう。
安月給の国家公務員にとっては価値なんざさっぱりわからないが、
とりあえず高価なのだろうと推測はできる程度に見栄えのいい調度品の数々が置かれた部屋――これがヤクザの組長部屋だとは世も末だ。
まぁそれも死体の場所を示す白チョークの跡や、四方八方に刻まれた重火器の弾痕で全てが台無しになっているのはいい気味だが。
「緋硯だ。例の件で再調査に来た」
「ご、ご苦労様です」
現場保護テープの前で番をしていた若手警官に警察手帳を見せて、俺達はようやく本来の事件現場に足を踏み入れた。
若手警官の顔が少し引きつっていたのは、俺の腕にひっしとしがみつくG氏を見たからだろう。
ちくしょう、今後俺が署内でどんな渾名を付けられるのか想像しただけで気が滅入るが、今は絶望をこらえて仕事に集中しよう。
事件発生から3日が経過し、流石に死体は片付けられているものの、それ以外はほとんどが事件直後のまま現場保持がなされている。
「ここが現場だ。IMSOの報告以来、何十回も調べつくしたから、今更何か見つかるとは思えないが……って、おいGさん!?」
ついさっきまで俺の腕にしがみついていたG氏は、いつのまにか若手警官の周りをウロウロうろついていた。
イライラしつつ大声で呼びかけると、ペコペコ頭を下げながら危なっかしい足取りで傍に来たんだが……
「……あんたみたいな退魔師の捜査方法はよくわからないが、犯行現場であまり勝手に動かれるとだな――」
「見て見て、あのお巡りさんからアメ貰えましたぜ」
「…………」
俺は無言で飴玉を取り上げると、素早く口に含んでバリバリと噛み砕いた。
「ああー!?」
「働け」
「ううぅ……ヒドイですよダンナぁ……」
べそをかきつつ、G氏はまだ血の跡があちこちにこびり付いている絨毯の中に足を踏み入れた。
ちょうど部屋の真ん中に当たる位置だ。ぞわり、と毛足の長い絨毯の中に杖の先端が埋まる。
そのまましばらく微動だにしないので、声をかけようとしたその時――
虎落笛。
物悲しい調べが陰惨な事件現場を癒すように浪々と響き渡った。
あの時のように周囲の物体が灰燼と化すのではないかと一瞬身構えたが、始まりと同じく唐突に口笛は止んだ。
「わかりましたぜダンナ」
「お、おい、そんな事でわかるのか?」
「へい、間違いありませんぜ」
自信たっぷりにG氏は頷いた。退魔師の捜査方法なんてさっぱりわからないが、おそらく何らかの術を使ったんだろう。
「どうやら加害者の幼稚園児は何かの術で洗脳されたらしいですぜ。
八九三さん達を皆殺しにできたのも、魔法の手助けがあったからですなぁ」
さすがに少しよろめいた。
ちょっと待てオイ!! IMSOの調査報告と全然違うじゃねーか!?
思わず抗議しようとした、その時――
「……!?……それともう1つ……」
全身が凍りついた。G氏の一言はそんなつぶやきだった。
「この匂い……懐かしい……忘れようったって……忘れられないわ……」
絨毯の毛足がザワザワと波立ち、調度品がカタカタと揺れ始めた。
目に見えない波動が部屋中に満ちて、息をする事もできない。
「こんな時代にまで……精神転移していたなんて……面白い……」
なな、な、何なんだこのプレッシャーは!?
「今度こそ……――してやる」
「おい! Gさん!!」
心臓が握り潰されそうな心地を味わいながら、俺は気力を振り絞って呼びかけた――が、
「はいな、何ですかダンナ?」
あまりにもあっけらかんとした返事に、あやうくその場でずっこけそうになった。
そのノホホンとした姿に、さっきまでの戦慄は欠片も感じられない。
何だったんだ今のは……気のせいか?
「今のは……何だ?」
「はぁ、ちょっと懐かしい匂いを嗅いだ気がしましてねぇ……
でも断言できるほどはっきりとは分かりませんでしたわ」
「……まあいい、それ以外の事は何か分かったのか?」
「現時点ではこれ以上の事はちょっと……」
どうやらここまでのようだ。
「署に戻るぞ。報告書を書く」
「ああっ、待ってくださいよダンナぁ」
本来ならもう少し念入りに調査すべきだろうが、俺達はさっさと現場から引き上げた。
得体の知れない不気味さに包まれて、これ以上あの場所にいる事に耐えられなかったからだ。
……あの時、確かに盲目の少女はこう言った。
『今度こそ……食い尽くしてやる』
「仏教系の退魔師が肉食っていいのかよ」
「まぁまぁ、固いこと言いっこ無しですよダンナ」
じゅうじゅうと食欲をそそる匂いと音が充満する焼肉レストランのボックス席で、俺とG氏は遅い夕食を取っていた。
あの後、五十鈴警視の嫌味眼鏡に報告書を提出し、そのIMSOの報告と矛盾しまくった内容について散々突っ込まれたものの、
また明日にでも再調査するという事でようやく開放されたのだ。
まったく、襲撃事件の被害者なんだから、こんな日くらいは残業前に帰して欲しいぜ。
その後、一応は捜査のパートナーであるG氏を親睦会も兼ねた夕食に誘った――というか、飴玉の代価として強引に奢らされる羽目になった――のだが、
まさか遠慮無しで焼肉を要求されるとは少し予想外だ。刑事の安月給を知ってるのだろうか?
知ってて言ったのなら後でお仕置きしてやる。非性的な意味で。
「お、お待ちどうさまー! カルビとホルモンの盛り合わせ8人前でーす!」
顔を引きつらせた店員の兄ちゃんから大皿を受け取り、さてまずはタン塩から焼こうかとトングを手にして――思わず固まった。
「頂きますねぇ」
嬉しそうに両手を擦り合わせたG氏は、肉が山盛りの大皿を手に取ると、当然ながらまだ焼けていない生肉を……そのままガツガツと食べ始めやがった。
「うぉおおおい!? ちょっと待て!!」
「ああ、すいませんねぇ。取り皿に肉を分けなきゃ駄目でしたなぁ」
「そうじゃねぇ! ユッケじゃあるまいし、何で生のまま食ってんだよ!?」
「あたしの種族は、生肉が好物なんですよ」
何をわけのわかんねぇ事を……ああ、只でさえ盲目の着物少女と強面の中年男性という怪しい組み合わせが、
さっきから他の客や店員の不信の目を招いているのに……周囲の視線が完全に変質者を見るそれだ……
頭を抱える俺に、G氏はハイライトの無い瞳で笑いかけた。
「ダンナも『人食い』なんて渾名もらっていた割には、細かい事を気にし過ぎですぜ」
ちょっと待て、何でお前が強行犯時代の渾名を知っているんだ。
愕然としながら問いただすと、
「五十鈴警視さんからダンナの個人情報を聞いたんですわ。いや、聞いたというより向こうが勝手に教えてくれたって言うのが正しいですな」
あのクソ眼鏡がぁあああ!!! 後で絶対にお仕置きしてやる!!! 性的な意味でもな!!!
「どどど、ど、どこまで俺の事を知ってるんだ!?」
「ええと……本名:緋硯 鯨人。20XX年、3月3日生まれ、37歳。身長198cm、体重138kg、血液型はO型。本籍は○○県○○市。
家族構成は独身で、田舎に両親と妹が健在。柔道剣道空手合気道居合道その他もろもろ合計49段。
射撃の腕前も達人級で、全国警察逮捕術大会及び全国警察拳銃射撃競技大会では現在怒涛の10連覇中。
○○大学卒業後、警察学校を卒業後に○○県警に配属、強行犯配属後はその検挙率の高さと正確さで注目されるも、
犯罪者に対する容赦の無さから『人食い』と恐れられる。現在は警視庁○○署刑事課超常現象特殊強行犯係に配属。
趣味は飲酒と時計集め。左瞼から顎にかけて特徴的な切り傷あり。性格は無骨かつ無愛想……もがっ!?」
「黙れ」
いつまでも喋り続ける口の中に焼肉を突っ込んで、俺の個人情報暴露大会を無理矢理黙らせた。
あのまま語り続けたらイチモツの大きさまで口にしかねない。
「むぐむぐ……うえっ、やっぱり焼いた肉は味気無いッスね」
「どういう味覚しているんだよ……もういい、その話は終わりだ」
「はぁ……じゃあちょいとお聞きしたいんですが、さっきのプロフィールにも出ていた時計集めの事なんですがね、
ダンナはGショックって時計をご存知で?」
知らないわけがない。ぞんざいに傾くと、G氏は膨らみが皆無な胸元から小さなコイン状の物体を取り出した。
薄汚くボロボロな錆びた鉄の塊にしか見えない……って、よく見りゃこれ腕時計?しかもGショックか!
「こいつ何とか治せませんかねぇ」
根元からベルトは千切れているわ、全体を鑢にかけたように傷だらけだわ、当然ながら時刻表示すらされていないわ……
堅牢性が売りのGショックを、どうすればここまで無残な姿にできるんだ?
「無理に決まっているだろう。いくらなんでも乱暴に扱いすぎだ」
「いやぁ、自分では結構大事にしていたつもりなんですがねぇ」
「ウソつけ。そいつは今俺が使っている物と同じモデルだが、今年発売されたばかりなんだぞ」
確かに、事故か何かで破損したというより経年劣化したような壊れ方だが、
どう頑張っても最新モデルを1年以内にここまでボロボロにするには、相当過酷な使い方をしたとしか考えられない。
「……すいません」
心底申し訳なさそうな様子で、G氏はGショックの残骸を懐にしまった。いや、そんなに落ち込まれても俺が困るぞ。
何だかこっちが苛めているみたいじゃねぇか。俺は他人の所有物の扱い方にまで口を出すような痛いマニアじゃない。
無論、俺のコレクションを傷つけた奴には地獄を見てもらうがな。
「……っと」
胸ポケットの携帯電話が気味悪く振動したのはその時だった。
送られたメールのメッセージを確認した俺は、懐から財布を取り出し、G氏の胸元に押し付けた。
「ひゃあっ! な、何ですか?」
「悪いが急な呼び出しがあった。これで勝手に食べてくれ」
「誰からですかい?」
「コレだよ」
どうせ見えないだろうと小指を立てると、G氏は意味有り気な笑みを浮かべて見せた。
やっぱりこいつ、目が見えてるんじゃないのか?
「Gさんの方はこれからどうするんだ?」
「飯を食ったら、その辺の軒下を借りて寝ますかねぇ」
流石にそれは気が引けるので、警察署に連絡を入れて仮眠室に泊まれるように手配した。
っていうか宿くらい決めておけよ。退魔師ってのは本当に浮世離れしてやがる。
「あー、今更だが1人で大丈夫か? 何なら警察署までのタクシーを手配するが」
「大丈夫ですよ、目明きと違って夜道はかえって楽なんでね」
まぁ、こいつの実力なら暴漢に襲われるような心配もないだろう。
「んじゃ、俺の分までたっぷり食べてくれ。また明日、署で会おう」
「ご馳走様です……ああー!?」
帰り際にG氏のおかっぱ頭をクシャクシャに撫でてやると、実にいい悲鳴を上げてくれた。今度またやろう。
「……さて、と」
店内とは正反対の凍てつく様な外の寒さにコートの襟を直しながら、俺は繁華街へと足を進めた。
「だ、ダンナー!! この財布、中に千円しか入ってないー!?」
「思ったよりも時間がかかったな」
「仕方ないわよ、退魔組織の情報はレアなんだから」
ボリュームのある尻を振りながらコーヒーを入れるブロンド女を横目に見つつ、
バスローブ姿の俺はノートパソコンに表示された情報を頭の中に叩き込んでいた。
この町の繁華街ならどこにでもありそうなソープランド――その中の泡姫の1人が、国内屈指の凄腕情報屋だと知るのは、
署の管轄内では俺の他に何人いるのやら。
「今日は少し元気がなかったわね、流石にもうお歳かしら?」
「うるせぇ」
若干トウは立ってるが、すこぶる美人でナイスバディなこの女とは、
情報屋としても肌を合わせる仲としても長い付き合いになるが、実はいまだに名前を知らない。
本人曰く、自分のパーソナルデータが一番高価な情報なんだそうだ。
いつも一言多いのとナルシスト気味な点が少し気に障るが、
その仕事の正確さとソープ嬢としてのテクニックは、そうした欠点を補って余りあるのに十分だった。
「そんな可愛い女の子が気になるなんて、趣味が変わったの?」
「いいから向こうで飲んでろ」
モニターを覗き込む女を邪険に追い払うと、わざと聞こえるように「相変わらず嫌な男ね」とか
「友達いないでしょ?」だのぶつくさ言い始めたが、あえて無視した。今はそれどころじゃない。
闇高野退魔師“G”――奴は何者なのか。
悪い奴ではないとは思うが、得体の知れない怪人物であるのも確かだ。
正体不明の味方というのは、時には正体不明の敵よりも厄介な存在となる。
だからこそ、わざわざ高い金を払ってパーソナルデータを洗っているのだが……
「……骨折り損か」
だが、数か月分の給料を代価に手に入れた情報も、五十鈴警視から受け取ったものと大して違いはなかった。
――赤い和服の盲人。絶世の美少女――
――闇高野退魔剣法を極めた伝説の剣士。その居合の速さは物理法則をも超越する――
――世界最高位の風使い。『虎落笛』と称される独自の風術を使う――
――闇高野最古参メンバーの1人。外見年齢は6歳前後だが、活動期間から推定される実年齢は最低でも数万歳――
しかし唯一、この情報だけが少し気になった。
――闇高野退魔師はそのメンバーの大半が人外の存在だと噂されている。
特にトップの実績を持つ2人の退魔師は『邪神』と称される超高位存在の化身であって、“M”と呼ばれる個体は『食屍鬼(グール)』、
“G”と呼ばれる個体は『盲目のもの』と呼ばれる『邪神』の一種族であるとの未確認情報がある(ただし“M”は引退後、現在行方不明)。
また、闇高野の頂点に位置する“大神王(おおかみおう)”の異名を持つ大僧正も『邪神』の化身であると言われているが、
詳細は一切不明――
『盲目のもの』?
『邪神』?
何の事やらさっぱりわからんが、どうやらこの辺りにG氏の正体を探る手がかりがある――
古臭い言い回しだが、刑事のカンがそう告げていた。
「なぁ、この部分の情報をもう少し詳しく調べてくれな――」
ぴちゃん
キーボードの上に落ちた真紅の液体に、俺の声は硬直した。
雨だれのように断続的に落ちる赤い雫の正体は、今さら確認するまでもない。
ゆっくりと顔を上げ、天井を見上げた――そこには、
「――ッッッ!?」
車に轢かれたカエルのようにグシャグシャに潰れた、情報屋の無残な死体が貼り付いていた。
ぐしゃん
まるで俺が見上げるタイミングを計ったかのように、情報屋の死骸が落下する。
慌ててその場から転がり離れる俺を、そこだけは綺麗なままの顔が恨めしそうに睨んだ。
な、何が起こった!?
いつの間に――どうやって!?
とにかく何かやばい事が起こっているのは間違いない。
まずはフロントに連絡しようと、廊下へのドアを開けた――が、
「こ、こいつは――!?」
そこで俺が見たのは、廊下中に散らばるソープ嬢や客と思われる死骸の山だった。
くそっ!!
何が一体どうなってやがる!?
『そう慌てないでくれたまえ』
唐突な背後からの声――素早く拳銃をかまえながら振り向く。
そこには、情報屋の生首を、優しく、静かに、愛しそうに撫でる、全裸の中年男性の姿があった。
『おはよう、ハリー・エンゼル君』
続く
乙
乙でした!
こういう娘はなんていうんだろう……ロリババアならぬロリジジイ?
あと主人公の名前がウィンゲート・ピースリーのもじりだといまさら気づきました。
>“時計男”と呼ばれる謎の人物
どうみてもチクタクマンです、ほんとうに(ry
ラストダンサーを読み直したせいか、
Mの名前を見ることができてなんか嬉しい
しかしヒロインの魔乳→爆乳→ロリという変遷を見ると
作者の心に何が起こったのかと少し心配になった
ところで会話からはわかり辛かったが、
やはり五十鈴警視は女性だったか
その作品は、とうに昔のものの続編に過ぎないのに、私の心を捉えるという不可解な働きをしていた。
さらがらそれは、首吊り縄か投げ縄を掛けられ、手繰り寄せられているかのようであった。
Mの名前を見てちょっと切なかった…。
>魔乳→爆乳→ロリという変遷
い、言われてみれば?! いったい何があったんですか、ひでぼんの人!
309 :
マージ:2008/11/14(金) 00:21:51 ID:sIaqskmY
〉〉259の続き
あれから二週間が達ち、無事長期休暇に入った。あの日から今日のためにオナ禁を行い愛しい人との
行為のため最善の準備を整えた。今こうして屋敷に向かうために山の中を進んでいる間も股関のイチ
モツがそそり立ち自己主張をしている。頭の中はマージの裸で一杯になり、マージの豊かな胸、陶器
のような白い肌、そして気持ちいい秘密所。自然と股関に手が伸びるが、必死で思いとどまる。
糾(せっかく今日のために我慢したんだ)
そうこうしながら歩くうちに懐かしい建物が顔を覗かせた。
そういえば…
コマネコのヒトは?
>ひでぼんの人
GJ!
Gちゃんが可愛いです。
でも手出そうものなら、漏れなくSANチェックする羽目になりそう。
>魔乳→爆乳→ロリという変遷
そのうちグルッと一周回って、また先頭に戻るとか。
ひでぼんの人といえば俺の中では
「野外露出羞恥輪姦コンボ」
「拷問レベルの陵辱SM」
というイメージがあるが、今回はあるのだろうか
あるとしたら“つぁとぅぐあ”さんみたいに
どんなプレイでも悦ぶ人なら気が楽だけど
313 :
コマネコの人:2008/11/15(土) 01:43:34 ID:6MOrBKno
妄想と忙しさばかりが加速して、あまり進行してませんが
自分を追い込む意味で、第三話の「さわり」だけでも投稿しておきます。
至って普通の会社のような高層ビルの施設。
1階には受付があり、各階にはそれぞれ部署が配置されている。
広報課、人事部、開発営業、それらたくさんの部署の中にある一般的には異色の部署。
『人外対策課本部』
オフィス自体は他の部署と何ら変わりなく、一人ずつ仕切られた机とPCと電話端末。
奥の方には『階級(クラス)』が上の者のための個室が設けられている。
狗牙とコマはその個室のひとつ、『ミカサ』という女性退魔師の部屋に呼び出されていた。
『ミカサさん、遅いですねぇ・・・』
呼び出されてから20分程、部屋のソファーに座って待っているが当のミカサがいつまで経
っても来る気配がしない。
コマはいつもと変わらぬ独楽柄の白い着物姿で、耳をピクピクと動かしながらつまらなそう
な顔をする。
『どうしてこう、お偉い人の部屋って、味気がないんでしょうねぇ・・・』
ミカサ専用の部屋は広さの割に大きな机がひとつと大きな本棚が壁に沿って並べられる
だけ並んでいる。
書物はどれもこれも伝奇やら妖怪や幽霊、物の怪の類の書物ばかりが並んでいた。
「少しぐらい落ち着いて待てないのか、お前は・・・」
狗牙は部屋に入る前にコマに「静かにしているように」と念を押したが、部屋に入ってから
5分ほど経つとコマはそわそわし始めて、10分ぐらい経ったあたりから、ぶつぶつと不満を
漏らし始めた。
『人を待たせるにしても限度ってものが・・・』
ガチャッ。
コマが狗牙に向かって新たな不満を漏らそうとした瞬間、二人の背中越しに扉が開く音が
聞こえる。
『待たせてしまったようだな』
扉を開けて、二人が座っているソファーを横切り、自分の机へ向かう女性。
背丈は170cm前後で服装は濃紺のジャケットとパンツのいわゆるOL姿でツヤツヤしたロ
ングストレートの黒髪をなびかせている。
整った顔立ちと切れ長の目を見ると全てを見透かしているような余裕のある印象を持つ。
そして何より、全体的に見るとスラッとしたスレンダーなスタイルだが、胸だけが苦しそうに
ジャケットの中のYシャツをはちきれそうに膨らませて自己主張をしている。
机の椅子を引き、ゆるやかに腰をかけて、ふぅっと軽く一息つく。
そして、狗牙とコマのほうに顔を向けてハキハキとした口調で自己紹介を始めた。
『初めまして、私がミカサだ、君はコマ・・で良かったかな?』
『は、ははははいっ!』
急に叩き起こされたような声を上げて体を強張らせるコマ。
「ど、どうしたんだ急に素っ頓狂な声を上げて?」
驚いた狗牙も思わず声を上げる。
『い、いや、おっぱいおおきっ、じゃなくてですね・・あのっ!』
コマ一人が座ったまま大慌てしている、そんな不可解な状況に陥りかける。
『え、だって、この人、いや、人じゃなくて、えー!?』
「いいから、少し落ち着け・・・」
狗牙の引き気味で冷め始めた声にコマは何とか冷静さを取り戻したが、どこかやりきれな
い表情で狗牙にボソボソと耳打ちを始める。
『だって、あの人、妖気というか、何かこう吸い込む感じというか・・・危なく魅了されかけたの
ですけど・・・』
耳打ちされた狗牙はただ訝しげ(いぶかしげ)な表情を見せていた。
それを見たミカサが楽しそうに目を細めて微笑んだ。
『どうやらコマとやらの勘は良いみたいだ。狗牙のほうはもう少し修行するべきだね』
狗牙が尚更わからないといった表情になったのでミカサは微笑みながら『そのうちわかる』
と言い聞かせた。
『さて、一応、自己紹介してもらおうか?』
急にミカサが微笑みを消し、落ち着いた切れ長の目でコマを見つめた。
少しの間、コマは何をして良いかわからずボーっとしていたが、狗牙が肘で脇腹をつつい
たことによって我に返り、バッとその場に立ち上がる。
『あ、え、はい・・あの、コマと言います。猫です、えーと・・・』
他に何を語れば良いのかわからないまま、コマが少し考え込みそうになった瞬間、ミカサ
が『ふむ、何となくだが理解できた、座っていいよ』とコマに座ることを促した。
コマは言われるがまま、座ろうとするがどこか緊張しているためか、ソファーの高さを誤っ
て尻餅をつく形で、ぽてんっ、と座り込んでしまう。
ミカサの視線がコマから狗牙に移される。コマは自分から視線が移されたことで若干、安
堵した表情を見せている。
『狗牙、私がお前を呼んだ理由はわかるな?』
「コマのことでしょうか?」
『今日は察しが良いな』
ミカサがわざとらしく感心した表情をしてみせる。
「それ以外に呼び出されることも無い気が・・・」
狗牙が少し困った顔を見せるとミカサが少し微笑んで見せた。
『すまんな、どうも狗牙の困った顔が見たくてな』
「勘弁してくださいよ・・・」
狗牙が更に困ったような、疲れたような顔をすると、ミカサはまた嬉しそうに少し微笑んだ。
『実はな、調度良い機会だから、コマの保護以外に今後の監視と「躾」をお前の任務に組み
込もうと考えている』
狗牙が一瞬ドキリとした表情を見せる。
実のところ、狗牙はコマと今後を話し合った後、本部にはその連絡を入れていない。あわ
よくば今回の呼び出し中に切り出そうと思っていた話の一つであったためか、狗牙はまるで
自分を見透かされているかのような錯覚に陥った。
『まぁ、実際難しい話ではなく、我々の監視下で悪さをする気がなくなるまでタダ働きでもさ
せておこうという話だ。いわゆる、社会復帰プログラムみたいなものだな』
「あ、あの・・・」
狗牙がそれについて語ろうとした時、
『わかっている、狗牙も同じことを考えていたのだろう?』
ミカサが狗牙にみなまで語る必要は無いと諭した。思わぬ発言に狗牙は目を丸くしてしま
う。しかし、ミカサはそんなことも気にかけずに話を続ける。
『そこでだ、コマを正式に狗牙のパートナーに任命したいのだが、異存はないな?』
あまりに先を越された展開に狗牙とコマは出す言葉を失って、とりあえず首を上下に振っ
てしまった。
『よし、決定だな。では今後、コマは狗牙に付き従い、私が狗牙に与えた任務の補佐を行っ
てもらう。わかったな、コマ?』
『は、はいっ!』
今までの話が全部自分絡みの話だということに今更気付いたのか、慌てて声を上げるコマ
。
ミカサはその返事を聞いて嬉しそうに目を細めたがコマを一瞥すると『もっとも、本当に人
を襲ったのは「今の君」ではないようだがね・・・』と呟いた。
その後、少しの間、ミカサはコマの容姿を上から下へ見ながら、『もう少し良い服を支給し
よう』だとか『食費ぐらいは経費で落とせるから申請してくれ』とか、そういう話をしていたが、
コマの首元についている首輪と鈴を見ると急に落胆したような溜め息を吐いた。
『狗牙、お前はまた「印付」(マーキング)をしてないのか・・・?』
ミカサが狗牙の方を向き直って、少し頭を抱える仕草をする。
『コマから妖気が漏れてないから「マーキング」はしてあるものだと思っていたのだが・・・』
「すみません、極力、あの術は使いたくないんです・・・」
狗牙が少しバツの悪い顔をして謝るがミカサは顔を上げて狗牙に向き直り少し怒ったよう
な口調で説教を始めた。
『相手の意思を尊重したいという気持ちは汲み取れるが、最低限必要なことをしておかない
と色々と面倒なことになる・・・』
ミカサのくどくどとした説教が始まって数分が経ったあたり、
『つまりだ、それなりの代価というものは・・・』
『あ、あの・・・』
コマが恐る恐るミカサに声をかけた。
ミカサはコマに声をかけられた瞬間に少し怒り気味の表情を穏やかな笑顔にして向き直る
と『何だね?』と丁寧に応答した。
『先ほどから気になっていたのですが、その「マーキング」って何でしょうか?』
『ふむ・・・ちゃんと聞かされていないようだな。つまり「マーキング」とは・・・』
マーキングとはつまりこういうことだ。
狗牙が使える術式の一つで性的な交渉を用いて相手の「気の道」に「術者の気」を逆流さ
せ、「相手の気」を取り込みながら「気の核」となる部分に制御(リミッタ)をかける。
使える人間が少ない術式だが、自由度が高い術で「相手の気を完全に封じ込められる」、
「特定の条件下で気を封じられる」(自分に対して気を向けられないようにする、無力化)とい
った使い方も出来る。
簡単に言えば性交渉で行う、封印作業である。しかしながら、封印が持続される期間も相
手の妖気(霊気)やこちらの気の強さで、ある程度決まっており、封印を持続するためには
定期的なマーキングが必要になる。
それらの特性から総じて「マーキング」と呼ばれるようになっている。
元々、狗牙の主な任務は「それ」であり、各地に居る「害を為した妖怪」や「害を為しそうな
妖怪」にマーキングを行い、妖怪による事件を防ぐといった役割なのである。
そのため、当時「名無し」だった狗牙は気付けば周りから「犬」(縄張りと主従意識)と呼ば
れ始め、流石にそれだと体裁が悪いのでミカサが正式に「狗牙」と名をつけたのが今の名前
の始まりらしい。
『っと、いらぬ話までしてしまったな・・・マーキングについては今、話した通りだ』
318 :
コマネコの人:2008/11/15(土) 01:59:35 ID:6MOrBKno
中途半端になりますが、現状、こんな感じで止まってます。
がんばります。
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
エロい術だな
『おはよう、ハリー・エンゼル君』
「動くな! 何者だ!?」
『私? そうだな……君がハリー・エンゼルならば、私はルイ・サイファーと名乗らなければならないかな』
「ルイ・サイファー? メガ○ンか?」
『いやいや、ロバート・デ・ニーロの方だよ。気軽にルイと呼んでくれたまえ』
3.「Lucifer」
血臭と臓物臭が充満する地獄のような部屋の中で、俺は奇怪な中年男性に拳銃を向けながら対峙していた。
貧相な体格に禿げかけた頭と、見た目は冴えないおっさんだが、その腕に情報屋の生首を抱えているとなると印象は一変する。
あくまでも物静かで、笑顔を絶やさず、殺気も敵意もないその姿が、逆に息を呑むほど不気味だった。
「店中の人間を殺したのはお前か?……いや、ヤクザの邸宅を襲撃したのもお前なのか?」
『単刀直入だね君は。イメージ通りで嬉しいよ』
「答えろ」
『そうだ、と言えば満足するのかね? しかし、私の言葉が真実だと誰が保障する?』
「それを決めるのは俺だ。いいから答えろ!!」
やれやれ、と肩をすくめて、ルイと名乗る男は、情報屋の凄惨な生首をテーブルの上に置いた。
「動くな!! 次は警告無しで撃つ!!」
『わかったわかった』
もうお手上げといった調子で、ルイは両手を降参の動作でかかげた。
何の躊躇もなく、俺は発砲した。
狙い違わず、弾丸は奴の左肩に命中する――が、
『参ったね。ここまで直情的な人だとは思わなかったな』
まるで他人事のように自分の肩に空いた弾痕を眺める男の顔には、苦痛など欠片も浮かんでいなかった。
何なんだこいつは……魔物や魔術師の類なのか!?
『では、私も直接的に説明する方が良いかもしれないね。ハリー・エンゼル君』
「…………」
『そんな怖い顔をしないでくれたまえ。正直に答えるよ……確かに、前回と今回の“殺人実験”を行ったのは私だ。
だが私自身が手を汚したわけではないのだがね』
「どういう意味だ?」
『私はただちょっと実行犯に“精神交換”を施しただけだよ。私はただ命令したに過ぎないって事さ』
「馬鹿野郎。実行された殺人教唆は実行犯と同罪だ」
『ああ、この時代のこの国では、そういう法律だったかな』
くくく、と余裕たっぷりに微笑するルイ何某に、俺は本気の殺意を覚えた。
あの野郎……正直、あいつの言っている“殺人実験”だの“精神交換”についてはさっぱりわからないが、
あの男が一連の事件の黒幕か、それに近い立場にある事は、刑事の本能的に推測できた。
それともう1つ、こいつは間違いなく断言できる。
あの男は、この人間社会に存在する事を許されない、邪悪の化身だ。
『だがね、この国の法律で裁くのなら、やっぱり私は許される存在なのではないかな』
「そんなわけがあるか阿呆」
『そうかね? この国の法律では、数億年前の人物起こした事件は、普通は時効になると思うのだが』
「……もう1つ聞く、Martense03型強化外骨格が俺を襲撃したのもお前の仕業か?」
『?……いやいや、それは私じゃないよ。君のような優秀な素体を傷つけるような真似を、この私がやると思うかね』
くそっ、さっきから何を言っているのか全然わからねぇ。このまま会話を続けても、煙にまかれるだけで時間の無駄か?
できるかどうかはわからないが、何とかしてブチのめして逮捕する方がよさそうだ。
『どうも会話が噛み合わないね……さっさと君を確保する方が効率的かもしれないな』
どうやら、向こうも同じような事を考えていたらしい。
真っ直ぐに自分を狙う銃口が目に入らないかのように、すたすたと散歩するように接近してくるルイに向かって、
俺は本気の殺意を込めて引き金を引いた――が、
『先程の発砲で、私を攻撃するのは無駄な行為だと判断しなかったのかな? あまり失望させないでくれたまえ』
半ば予想していた結果だが、両足の膝を完全に破壊されたルイは、しかし何のダメージもなく俺の眼前に迫ってきた。
犯人を目の前に三十六計決めるのは警察官としては死んでも御免だが、
どうやら趣味の悪い事に、奴の狙いは俺を拉致誘拐する事らしい。
ちくしょう、ここは信念を曲げるしかないか――!?
虎落笛
どうやら、その必要はなさそうだ。
明り取りの窓が粉々に砕け散った。朝日にキラキラときらめくガラスの破片を纏いながら、
ふわり、とダブルベッドの上に降臨したのは、着物姿の盲目美少女剣士――
「Gさん!!」
『なっ……馬鹿な!?』
初めてルイの声に驚愕と焦りが混じった事に満足しながら、俺は拳銃に残った弾丸全てを奴に叩き込んだ。
無論、銃が通じないのは薄々気付いているが、これはあくまでもG氏への援護射撃だ。
だが、それも余計なお世話だったらしい。
ぱちん
G氏の仕込み刀がゆっくりと杖に納まると、ルイの四肢は根元から粉微塵と化し、
残された頭部と胴体が床にキスを――しなかった。
間髪入れずに突き出された杖が、ルイの喉に正面から突き刺さり、そのまま壁に縫い付けたのだ。
『なぜっ……きさまが……ここに……いるッ!?』
「…………」
喉を貫かれたせいか、妙にたどたどしいルイの声に、しかしG氏は答えなかった。
丁度俺に背を向けているので、その顔が見えない事を、俺は神に感謝した。
無言のG氏から放たれる殺意と怒りの波動――それはあの時ヤクザの邸宅で垣間見せたものと同質の、
そして何百倍も凄まじいものだったからだ。正直、今の俺はルイよりもG氏の方に恐怖を感じていた。
『あの……人間め……黙っていたのか……計画の……修正が……必要……』
「お、おいGさん……殺すなよ?」
ルイの声が徐々に弱くなっていくので、さすがに俺はG氏に注意を促した。
こいつが真犯人なのかどうかはまだわからないが、犯人サイドの重要参考人なのは間違いない。
そんな俺の焦りが伝わったわけじゃないだろうが、ルイの首がぎこちなく俺の方を向いた。
『心配は……無用だよ……この体は……仮初の宿……だからね……本体は……無事さ……』
誰がお前の心配なんかするか馬鹿野郎。容疑者死亡で事件を不起訴処分にしたくないだけだ。
『この怪物が……いるのでは……これ以上……ここには……いられないな……帰らせて……もらうよ……』
「お、おい!」
『また会おう……ハリー……エンゼル君……』
かくん、と糸が切れた人形のように、唐突に中年男性の体から力が消えて、
そのまま永遠に動かなくなった……ちくしょう。
「くそっ……おいGさん、少しやりすぎだぜ? この場合は容疑者を殺しちゃまずい――」
「もう死んでましたよダンナ」
「……は?」
「これは数時間前に死亡した人間ですぜ。
奴は死体に精神憑依して動かしていたんですよ……あの連中め、新技術を開発したらしいですな」
「何を言ってるのかさっぱりわからん」
「後で詳しく説明しますよ……それよりも、ダンナぁ……」
地獄の底から響いてくるような怨念に満ちたG氏のうめき声に、思わず後退りしかけた――次の瞬間、
「ヒドイですよダンナぁぁぁ!!! あの後、焼肉屋さんに散々怒られたんですよぉぉぉ!!!」
ハイライトの無い瞳に涙を溜めながら、俺の胸をポカポカ叩くG氏であった。
「あー、うん、悪かった……なぜ怒られているのかよくわからんが」
ついさっきまでの無言の迫力に満ちた後姿とのあまりのギャップに、俺は面食らって唖然とする事しかできなかった。
何というか……この女の子が実は人間じゃないって話も、今は信じられそうだ。
「夜明けまでずっと泣きながら皿洗いしていたんスよぉ!!」
「わかったわかった、よくわからんが、とにかくわかった」
とりあえず落ち着かせるために、俺はG氏の頭を撫でるように手を置いて――思いっきりかき回した。
「ああー!?」
「落ち着け」
「ううぅ……ヒドイですよダンナぁ……」
半泣きでグシャグシャに乱れた髪を櫛で直すG氏を尻目に、俺は改めて凄惨な現場を見渡した。
ズタズタになった情報屋の残骸が散らばるソープの一室は、
ガラスが砕けた窓から差し込む朝日で奇妙に荘厳な雰囲気を漂わせている。
まだ確認はしていないが、廊下の惨状を見る限りでは、店内全体が似たような光景なのだろう。
とりあえず署に連絡を入れようと、情報屋の生首を片手で拝みながら、携帯電話を取り出して――ん?
ちょっと待て……朝日!?
俺は愕然としながら明り取りの窓へと振り向いた。
さわやかな朝の空気と共に、能天気な雀の鳴き声と活動を始めた街の雑踏が聞こえてくる。
俺がこのソープに入店したのは午後11時ごろだった。
それから情報屋と一戦交えて、ゲットした情報をノートパソコンで確認していたのは1時間後くらいだ。
直後にルイ・サイファーと名乗る怪人が出現して、G氏に撃退されるまで10分も経過していないだろう。
まだ日付が変わったばかりの深夜のはずだ。なぜ朝になっているんだ!?
まさかと思いながらGショックを確認しても、無常にも午前8時15分を表示しているだけだった。
俺が気付かない間に、時間が8時間ほど経過しているだと?
何が起こったんだ?
説明の付かない事態にしばらく困惑していた俺は、不覚にもそいつらの存在を、
部屋の中に踏み込んでくるまで気付かなかった。
ここに来るまでに店内の猟奇的な殺人現場を散々目撃したのだろう。
がやがやと狭い部屋や廊下に押し寄せてきた警官の顔は、皆一様に青ざめた顔をしていた。
中にはその場で吐き出している者もいる。顔色1つ変えていないのは、先頭に立つ五十鈴警視ぐらいのものだ。
「……緋硯警部」
「遅かったぜ五十鈴警視、少し前に容疑者は――」
がしゃん
自分の両腕にかけられた手錠を、俺は呆然と見つめた。
「お前を殺人容疑で逮捕する」
「どういう事なんだ? 五十鈴警視」
「何度も説明しただろう、緋硯警部」
普段と座る位置が真逆な取調室は、空気までもがどこか違って感じられる。
机の反対側――取り調べる側の席に座る五十鈴警視のポーカーフェイスは相変わらずだが。
「店内にあった全ての監視カメラが録画しているのだ。
お前が客やソープ嬢を1人残さず皆殺しにしている映像をな」
「明らかに盗撮だな。店の経営者を逮捕しろよ」
「関係者は全員死んでいるよ。お前の手によってな」
俺は全力を込めて拳を机に叩きつけた。
取調室が揺れるほどの轟音も、しかし五十鈴警視の眉一筋動かす事もできない。
「俺が人殺しをするような奴に見えんのか!!あぁ!?」
「それに関してはノーコメントだ……とにかく、ほとんどの証拠がお前が実行犯だと告げているのは間違いない」
ぐうの音も出ない嫌味眼鏡の断言に、俺は頭を抱える事しかできなかった……
ソープランドでの事件と、直後の俺の逮捕から3日が過ぎていた。
なぜ俺が逮捕されなきゃならないんだと当初は憤慨し、今も憤慨しているわけだが、
五十鈴警視の言う通りに、様々な証拠が俺が犯人だと示していた。
監視カメラには、俺が逃げ惑う客やソープ嬢、そして情報屋を惨殺している姿がはっきり映っているし、
鑑識までもが被害者の体に付着した指紋や生活反応から、俺が100%犯人だと保証書付きで断言しやがった。
ここまで証拠が出揃うと、本来なら容疑者扱いする必要もないだろう。
だが、俺が真犯人だと断言するには難しい状況証拠もないわけじゃない。
「監視カメラに映る俺は、被害者を素手で引き千切っているじゃねーか。
いくら俺が腕っ節に自信があるとはいえ、そんな無茶ができるわけないだろ?」
「上にもそう言われたよ。だが、お前の写真を見せたら『この顔ならやりかねない』と頷いたぞ」
「あのな……」
「お前の言い分も理解はできる。そもそもお前に事件を起こす動機は何もないのだからな……
だが、これと同じようなケースを、お前も知っている筈だろう」
「……幼稚園児のヤクザ襲撃の件か」
「ルイ・サイファーと名乗る男との遭遇と、8時間近い体感時間の消失に関する証言書は読ませてもらった。
それがお前の狂言でないなら、その男がお前や幼稚園児の意識を何らかの手段で一時的に乗っ取り、
ヤクザの邸宅やソープランドで虐殺を行ったという線も考えられる」
「さっきから俺はそう主張しているぞ」
「監視カメラには、ルイ・サイファーとやらの姿は何処にも映っていなかったのだがな」
「…………」
「いずれにせよ、IMSOの調査報告待ちだな。それで全てがはっきりする」
「この件もIMSOに丸投げか……警察も形無しだな」
「欲しいのは確かな事実だ。刑事のプライドなど捜査には邪魔なだけだ」
ったく、そんな可愛くない物言いだから、いつまでたっても再婚できないんだよ嫌味眼鏡が。
「IMSOからの返答が、幼稚園児によるヤクザ邸宅襲撃のケースと同じなら、
この件も不可能犯罪として不起訴処分になる。他の返事でも何らかの進展はあるだろう」
「それを祈ってるよ。留置所のメシは不味いからな――」
「失礼します。IMSOからの返信が届きました」
噂をすれば何とやらだ。
下っ端巡査から書類の束を受け取った五十鈴警視は、
それに素早く目を通して――その体が一瞬硬直したのを、俺は見逃さなかった。
「調査結果が出たぞ……前回の事件についての追加報告もだ」
……おい、マジかよ……手が微かに震えているぜ。あの鉄面皮が。
一体何が書いてあったんだよ?
「……『容疑者“緋硯 鯨人”が魔術的な肉体強化薬を服用し、被害者達を殺害した痕跡を確認。
また、別件の幼児による大量殺害事件も、真犯人は“緋硯 鯨人”である証拠を発見』……以上が要約だ」
「……なっ」
流石に声が詰まった。
ここまで事実とかけ離れた内容を堂々と断言されると、もう茫然自失するしかない。
口で否定するのは簡単だ。
だが、容疑者自身の「自分は無実だ」という言葉ほど無意味な物は無いって事は、
元強行だった俺は痛いほど理解している。
具体的に俺が無実であるという実証がないなら、冤罪を甘んじて受けるしかない。
「……G氏はまだ見つからないのか」
「依然、行方不明のままだ」
俺の無実を証明する手助けになってくれるかもしれない、唯一の人物――G氏は、
しかし俺が逮捕されてから姿を消していた。それが俺の立場を悪くしているのは言うまでもない。
万事休す――か。
「今日はここまでにしよう」
溜息混じりに五十鈴警視が告げると、傍らにいた俺の元・部下が手錠をかけようと――
「いや、私がやろう」
どんな風の吹き回しなのか、五十鈴警視サマ自らが俺に手錠をかけて下さりやがった。
「……そういえば、1つ言い忘れていた」
「今更なんだよ」
「先日、お前が私に頼んだ件だ。ハリー・エンゼルとは何者かという話だったな」
「ああ、奴は確かに俺の事をそう呼んでいた。何の事だったんだ?」
「ハリー・エンゼルとは、ある映画の登場人物だよ。
ルイ・サイファーという悪魔と契約し、自覚の無いまま次々と殺人を犯していく私立探偵だった」
「…………」
取調室の外は野次馬職員達で一杯だった。マスコミの姿が見えないのはせめてもの慰めか。
前後左右を屈強な警官に囲まれた俺は、両手を繋ぐ手錠を隠す事もできずに、
五十鈴警視に先導されながら廊下をとぼとぼと歩んでいた。
周囲の野次馬どもが「やっぱりね」「いつかやると思っていた」などと交わす陰口が耳に届く度に、
自分が周囲にどう思われているのか思い知らされる。別に他人に好かれようとは微塵も思わないが、
味方が全くいないというのも寂しい話だぜ。ちくしょう、部下に飯を奢るんじゃなかった。
心中で愚痴をこぼしている間に、俺は警察署の正面玄関に横付けされた囚人護送用パトカーの傍に到着していた。
まさかこんな形で、長年世話になっていた警察署を離れる事になるとは思わなかったな。
「乗れ」
かつて部下だった男が、ドアが開けられた後部座席へとぞんざいに促す。
俺はそいつに全力で笑顔を向けてやった。
「よう、景気はどうだい」
「…………」
軽蔑の眼差しを隠そうともしない部下は、愛想笑い1つ見せなかった。
だが、鍵を外した手錠を目の前で振ってやると、さすがに驚愕の声を上げてくれた。
「なっ!?」
拳による情熱的なキスで元・部下を黙らせて、間髪入れずに後ろ蹴りで背後の警官を吹き飛ばす。
直後に右に立つ警官の鳩尾に抜き手を突き入れた頃、ようやく残った警官が拳銃を構えて見せた。
全く、反応が鈍すぎるぜ。一から鍛え直さなきゃな。
「動く――」
「遅ぇよ」
拳銃を構える手を蹴り上げると、あっさりと拳銃は空中に解き放たれた。
そいつを素早くキャッチすると、そのまま裏拳にして持ち主の顔面に叩きつける。
「全員動くな!!!」
冬の空に響き渡った俺の声に、周囲の動きがぴたりと止まったのは爽快だった。
1人だけ仏頂面の五十鈴警視に銃口を向けたまま、護送用パトカーの運転手を蹴り落とし、
五十鈴警視を運転席に座らせて、俺は素早く助手席に乗り込んだ。
「車を出せ」
「何処へ?」
「こいつらがいない場所だ」
こめかみに拳銃を突きつけられても全く動揺する気配を見せないまま、五十鈴警視はパトカーを発進させた。
署の駐車場の脇を抜ける際に、停車中の車のタイヤを撃っておく事も忘れない。
制限速度を完全に無視した運転に、あっという間にバックミラーに映る警察署は小さく消えていった。
追っ手の車がまだ追跡してこないのを確認した俺は、ようやく一息吐いてシートに身をゆだねて、五十鈴警視のポーカーフェイスを横目に覗き込んだ。
警察署の敷地から抜けるまで、その横顔に突きつけられていた拳銃は、今は俺の膝の上に転がっている。
「もう少し簡単に外せる手錠にして欲しかったぜ。手首が外れそうになったぞ」
「腕が落ちたか? 鍵を緩めてやっただけでも感謝しろ」
「へいへい、ありがとうございますよ。五十鈴警視サマ」
あの時、五十鈴警視に手錠をかけられた瞬間、その意図に気付いた俺は、
こうして何とか一芝居打てたわけだが……
「正直、俺の事を信じてくれるとは意外だったぜ」
「何年私がお前と付き合っていると思っているんだ。お前に大量殺人を犯す度胸なんてあるものか」
「へっ、ほざいてろ」
憎まれ口を叩きながらも、俺はどこか愉快な気分だった。
30年近く昔、朝から日が暮れるまで、3人で屋敷や公園を遊びまわっていた頃が、ふと脳裏に浮かんだ。
もっとも、3人で遊んだというよりも、暴走する兄貴と俺の後ろを必死に五十鈴が追いかけていたって言うのが正しいか。
その頃はこいつもまだ可愛げがあったんだがなぁ。
「何だ、私の顔をジロジロ見て」
「小皺の数を数えているのさ」
「ふん……ところで、これからどうする気だ? 私も最後までは付き合えないぞ」
「そうだな、どこか裏のセーフハウスでも使って、しばらく身を隠すか――」
「それならいい所がありますよ、ダンナ」
「ぬおわ!?」
「っ!?」
突然、背後から予期せぬ声がかけられて、俺はシートから飛び上がった。
五十鈴警視もハンドルを切り損ねたらしく、車が危うく反対車線に飛び出しそうになる。
愕然と振り向いた後部座席には、おかっぱ頭に真紅の着物の盲目少女――
G氏が悪びれもせずにニコニコと微笑んでいた。
「てて、て、てめぇは!!」
「はいな、3日ぶりですダンナ。五十鈴さんも相変わらずお綺麗で」
「いい、何時からそこにいた!? どうやって入ってきたんだ!?
今まで何処で何やってた!? やっぱりお前目が見えてるだろ!?」
「し、質問は1つずつお願いしますよ、ダンナぁ……」
数分後、ようやく落ち着いた俺と五十鈴警視に、G氏は茶飲み話でするかのように語り始めた。
「例のルイなんとかの正体を、ちゃんと確定させようと思いましてね。
闇高野で魔道書漁ったり、オーストラリアの遺跡調べたりしてたんですよ」
「3日で、かよ……それで何かわかったのか?」
「へい、案の定、あたしの予想は的中しましたよダンナ」
一瞬、G氏の瞳に危険な光が宿った気がした。
「あのルイの正体は……“イスの偉大なる種族”ですな」
「“イスの偉大なる種族”? 何だそりゃ」
「ダンナ達人間さんが『邪神』と呼んでいる高位存在の一種ですわ。
今から5億年前の昔から5千万年前までオーストラリア周辺を支配していた、まぁ宇宙人みたいなモノですな」
「どんな連中なんだ、そいつ等は」
「一種の精神生命体――まぁ魂だけの生物だと考えてくださいな。
他の知的生命体と精神を交換して、相手の体を乗っ取る技術を習得しています」
「……参考までに聞くが、乗っ取られた体の元の精神はどうなるんだ?」
「代わりに“イスの偉大なる種族”の体に入っちゃうんですわ。
そのまま“イスの偉大なる種族”が元に戻ろうとしない限り、永遠にその体に取り残されたままです。
この“精神交換”の技術を使って、“イスの偉大なる種族”は滅びかけた故郷を捨てて、
今から5億年前に地球上で繁栄していたある生物を丸ごと乗っ取っちゃったんですね。
無論、その生物は元・偉大なる種族の肉体に取り残されたまま、滅び去ったそうです」
「ロクでもない連中じゃねーか」
「全くですな。あまつさえ連中はあたし達を監禁して――」
「は?」
「……何でもありませんよダンナ。
とにかく“イスの偉大なる種族”は、科学的にも魔法的にも人知を超越した凄まじい技術力を持った連中なんです。
その力は時間の壁さえも易々と乗り越えて、例の精神交換の技を遥か未来の生物に対して使う事もできるぐらいなんですわ。
そうした時間をも自在に超越するが故に、連中は“偉大なる種族”と称されているのですな」
「…………」
何だかあまりにも荒唐無稽な内容で、コメントのしようがないぞオイ。
「少し質問していい?」
それまで無言を通していた五十鈴警視が、独り言のようにポツリと台詞をこぼした。
「さっき“偉大なる種族”は、今から5億年前の昔から5千万年前までオーストラリア周辺を支配していた、
と言っていたけど……今現在はどうしているのかしら?」
「へい、“イスの偉大なる種族”は5千万年前に滅亡してますな。
まぁ滅亡といっても肉体だけで、例によって精神は今現在から遥か未来の知的生物の体を乗っ取って、
ちゃっかり避難しているんですがね」
やっぱりロクでもない連中だ、と言いかけて、俺は五十鈴警視の言わんとしている事に気付いた。
「……ちょっと待て、つまり、今の時代に“イスの偉大なる種族”とやらは1人もいないって事か?」
「調査の為に今の人間と精神交換している奴はいるかもしれませんがね。
偉大なる種族本体は1匹もいませんな」
「おい、つまりあのルイ・サイファーは――」
「今の時代から5億年前から5千万年前の人物と言う事になりますなぁ。
過去の時代への精神交換は無理らしいですから、未来から来たわけじゃないでしょう」
あっけらかんとしたG氏の言葉に、俺の目の前は真っ暗になった。
『そうかね? この国の法律では、数億年前の人物起こした事件は、普通は時効になると思うのだが』
ルイの言葉はそういう意味だったのか。
お手上げだ。数億年前の犯人を捕まえる方法なんてあるわけがない。
「そう気を落とさないでくださいなダンナ。
まだその偉大なる種族が真犯人だと決まったわけじゃないんですから」
「だがな、今はそいつを捕まえる事ぐらいしか、状況を改善させる手がないんだぞ」
すっかり肩を落とした俺のそこを、G氏は慰めるようにポンポンと叩いた。
相変わらず見た目はガキの癖に、どこか仕草や口調が年寄り臭い奴だ。
「方法が無いわけじゃありませんぜ。
ルイがまたこの時代に精神交換した時に、そいつを捕まえればいいんです」
「簡単に言うんじゃねぇ。いつ、どこで、誰に乗り移るのかがわからないんじゃ、手の打ちようがないぞ」
「その辺は、たぶんうちの大将に相談すれば何とかなると思いますぜ」
「お前の大将って……闇高野の大僧正の事か?」
「へい、ですから今からそこに――きゃん!!」
「ぬおっ!?」
突然の急ブレーキに、俺とG氏は派手に体勢を崩した。
特に後部座席に上体を曲げていた俺は、フロントガラスにモロに後頭部を激突させる羽目になった。
いてて、やはりシートベルト着用は大切だな。
「おい、どうした五十鈴警視!?」
「この辺りでいいだろう」
隣のすまし顔に乱暴運転を注意しようとした俺は、
いつのまにか周囲の風景が郊外の田舎道に変わっている事に気付いた。
「ここならパトロールの車も滅多に来ない。バスは通っているから他所の土地に逃れるのも楽だ」
「すまねぇな」
「お前に迷惑をかけられるのは慣れてるさ」
けっ、相変わらず嫌味な眼鏡だ。
その嫌味眼鏡がG氏の方を向いた。久しく見た事のない、優しい眼差しだった。
「これ以上は私の前で行動の予定を言わないで。私は貴方達を追う立場なのよ」
「へい、肝に命じておきます」
「……鯨人を守ってやってね。不器用で無鉄砲な人だから、誰かが手綱を握ってないとすぐ暴走しちゃうの」
「それはもちろん」
「いい加減にしろお前ら」
ったく、今までロクに会話を交わしてなかったくせに、女同士はすぐ連携しやがる。
だから女は嫌いなんだ。男はもっと嫌いだが。
そんな俺の毒づきが伝わったわけじゃないだろうが、
再び俺の方を向いた五十鈴警視の顔は、いつも通りの愛想の欠片もない鉄面皮だった。
クールビューティーだと署員からは絶賛されているが、俺には顔面神経痛にしか思えない。
「3日だ。捜査網が全国区に広がるまでを、何とか3日遅らせる。それまでに何とかしろ」
「へいへい、暇な時にでも健闘を祈っててくれ」
拳銃に弾丸を装填し直した俺は、その銃口を真っ直ぐ五十鈴警視に向けた。
「どこを撃って欲しい?」
「右肩」
「……すまねぇ」
「迷惑かけられるのは慣れてるよ。ちい兄ちゃん」
くそっ、やっぱり嫌味な奴だ。
乾いた銃声が、郊外の冷たい空気を少しだけ揺らした。
「……ちょっとやり過ぎじゃないですかねぇ」
右肩の銃痕から赤い血を滲ませながら、ぐったりと運転席に横たわる五十鈴警視の様子をうかがいながら、
G氏は少しだけ頬を膨らませて見せた。
「このぐらいやらなきゃ、今の警察の目は誤魔化せねぇよ。
下手に俺達の肩を持ったと疑われる方が、こいつにとっては致命傷なのさ」
無論、急所は外したし、さっき警察無線のスイッチも入れた。すぐに救援が来るだろう。命に別状はない筈だ。
「それにしても綺麗な人ですよね五十鈴さんは。同じ女としては憧れちまいます」
コイツは絶対に目が見えてるに違いないと確信しながら、俺はぞんざいに首を振った。
「昔からの馴染みから見ると、その辺の差異はよくわからんがな」
「へえ、ダンナと五十鈴さんは幼馴染ですかい」
「あいつの実家は大金持ちの地主様って奴でな、
俺の親父は家族ごと住み込みで働く専属の運転手だったんだよ。昔は兄貴と一緒によく遊びまわったもんだ」
「ふぅん……あれ? 五十鈴さんから貰った資料には、ダンナの兄さんの話は無かったような」
「……気にすんじゃねぇ」
失言を誤魔化すために、ニヤニヤ笑っているG氏の髪を思いっきりかき回してから、
俺はさっさと護送用パトカーを後にした。
「ううぅ……ヒドイですよダンナぁ……」
「ううぅ……寒いですよダンナぁ……」
「我慢しろ」
その日の夜――何とか捜査の目を逃れて港町に降りた俺達は、
とりあえず無人倉庫の物陰に身を隠していた。五十鈴警視の言葉を信用するなら、
まだしばらくは全国区には指名手配されてないだろうから、公共の交通機関を使う事もできるはずだ。
しかしそれも夜が明けてからだな。今の時間に下手にうろついていたら、それこそ目立ち過ぎる。
そうでなければ、誰が好きこのんでこんな倉庫の片隅で使い捨てカイロにすがりながら震えているもんか。
ちなみに、俺の着ているコートの内側にG氏が潜り込んで抱き合っているわけだが、
相手がこんなガキでは父性愛を刺激されるだけで嬉しくもなんともない。
「あたしはチビっこいから、この季節は辛いんですよ」
「俺もメタボじゃないから、寒いのは苦手なんだ」
口ではそう言いつつも、身震い1つしないG氏はあまり寒そうには見えない。
震えているのはもっぱら俺の方だ。
そんな細かい事でも、やはりこの少女が何か人間とは異質の存在である事を意識させた。
「……なぁ、Gさん」
「はいな」
「さっき例のルイが『邪神』の一種だとか言ってたが……やっぱりお前もそうなのか?」
「ええ。“イスの偉大なる種族”とは別種の存在ですがね。
あたしの種族は“盲目のもの”って呼ばれていますわ」
ネタは正しかったわけだ。成仏してくれよ情報屋。最後は名前を知りたかったぜ。
「そうだったのか」
「別に隠していたわけじゃないんですがね」
「邪神って言うくらいだから、もっと化け物みたいな姿かと思っていたぜ」
「へへへ」
そう言って、どこか気恥ずかしいように照れ笑いするG氏は身震いするほど可愛らしかった。
なるほど、確かにこの美しさは人外の領域だ。
そんな美貌が今俺が着ているコートに潜り込んで、すぐ目の前にあるのだからたまらない。
ほんの欠片でも幼児嗜好の気がある者なら、形振りかまわずむしゃぶりついていただろう……
って、何を考えてるんだ俺は。
いつのまにかそんなG氏に見惚れていた自分に気付いて、俺は慌てて頭を振った。
くそっ、何か話題を変えなくては。
「と、ところでこれから何処に行く気だ? さっき隠れるのにいい所があるって言ってたが」
考えてみれば、まず真っ先にそれを聞くべきだったか。
「へい、あたしの身寄りですわ。京都の山奥まで行く事になりますがね」
「……闇高野の総本山か」
超常強行に配属された際の資料によれば、退魔組織の本部には人避けの結界が張られているという話だ。
確かに身を隠すにはもってこいかもしれないな。
だが、G氏と一緒に逃げている事が知れたらそれも危うくなるだろう。
「すまねぇ、迷惑かけるな」
「それは一向に構わないんですがね……ただ1つ、ちょいと問題がありまして」
少し困ったようにG氏は頬を掻いた。
「うちの大将の事なんですがね……」
「闇高野の大僧正か。あの正体が『邪神』って噂の」
言った瞬間、しまったと思ったが、G氏は特に気にした様子もなさそうだった。
「噂は当たってますぜ。あたしの大将はかなり大物の大邪神なんですよ」
「その大邪神サマが――お前さんもそうだが――なんで退魔師をやってるんだ?
普通、邪神って人類の敵なイメージなんだが」
G氏は可笑しそうに目元を緩ませた。
「40万年ぐらい前、ある人間に頼まれましてね……そうでなきゃ、あたし等『邪神』が退魔師なんてやりませんよ。
もっとも、あたしの元・同僚の“M”みたいに無理矢理協力させられた奴もいますが、
それもそいつの連れ合いを他の退魔組織から守るためでしてね」
「何を言ってるのか、さっぱりわからねぇ」
「そのうち分かりますよダンナ……で、話は戻りますが、
うちの大将の腹の中に、ちょいとダンナが近付くとまずい物がありましてね」
「何だそりゃ?」
「きっと説明しても今は理解できないと思いますぜ」
何だか馬鹿にされているような気がする。
例によってG氏の頭をかき回したい衝動にかられたが、とりあえず話の続きを促した。
「こうしてダンナと大将が距離的に離れているのなら問題ないのですがね。
総本山の中まで接近すると、ちと困った事になるんですわ」
「だから具体的に何がどう困るんだよ」
「まず間違いなく、ダンナの精神は再生不可能なまでに破壊されますな」
「ぶっ!?」
思わず吹き出した。無論、面白かったからではなく動揺したからだ。
「ふざけんな!! 何で俺がそんな目に会わなきゃならねぇんだ!?」
「ああ、大将を責めないでやってくださいなダンナ。
うちの大将ほどの大邪神が押さえ込んでなければ、こうして同じ時空間上に存在しているだけで、
本来ならとっくにダンナの精神はぶっ壊れている筈なんですから」
「そういう問題じゃねぇ!!」
ぎゃあぎゃあ吠える俺をまぁまぁとなだめながら、G氏は強引に話を続けた。
「というわけで、ダンナの脳味噌がトコロテンになるのを防ぐためには、
ダンナの生体情報を調整する必要があるんですよ」
「何が『というわけで』だ。話の前後が微妙に繋がってねぇぞ」
「こほん……というわけで、ダンナの生体情報を調整する為に、ダンナの命の一部を分けて欲しいんです」
「命を分ける?……もう少し人間にもわかりやすく言え」
「早い話が、ダンナの精液を採取したいんです」
「……は?」
一瞬聞き間違いだと思ったが、G氏のハイライトの無い瞳はマジだった。
「これは魔術の世界では基本概念の1つなんですがね、ダンナみたいな殿方にとって、
新鮮な精液は命の分身と言える存在なんですな。遺伝学的にもあながち間違いじゃないでしょ」
「……他に方法は無いのか?」
「ダンナの生き血や生肉でも可能ですがね。ただし量が精液よりも格段に多く必要なんですわ。
具体的には生き血なら約3リットル、生肉なら約20kg」
「殺す気か!!」
「ですから精液を使うのがベストって奴でして……
概念的な魔術法則ですから、不条理を受け入れてくださいな」
「マジかよ……」
「ちなみにこの法則を、あたし達邪神の間では『Hシーンに持ち込む為の強引な展開』と言います」
「意味が分からん」
今までの人生で確実にベスト3に入るだろう、
海より深く空より大きな溜息を吐いて、俺はよろよろと立ち上がった。
「どこへ行くんスか」
「ソープにでも行ってくる」
コンドームに入ったザーメンを持ち帰らせてくれと頼んだら、ソープ嬢はどんな顔をするだろう。
正直、もう全てを投げ出して逮捕されてもかまわない気分だぜ。
「いやいや、待ってくださいよダンナ」
脚にひっしとしがみ付いたまま、G氏は俺を引き止めた。
「新鮮な精液じゃないとダメだと言いましたぜ。この場で出してもらわないと」
「……ここでマスをかけっていうのか?」
「ああ、それは大丈夫ですよ……僭越ながら、あたしがお相手しますから」
ニコニコ微笑むG氏に、俺は今までの人生で確実にベスト1であろう、
宇宙よりも果てしない溜息を吐いた。ついでに足元のおかっぱ頭を思いっきりかき回した。
「ああー!?」
「あのなぁ、Gさん……」
泣きながら手櫛で髪の毛を整えるG氏の肩を、俺は努めて優しく叩いた。
本当は一発かましてやりたかったが。
「お前さんみたいなチビでツルペタでチンチクリンなションベン臭い幼女に、
俺を興奮させるセックスアピールが欠片でもあると思ったか?」
「ううぅ……ずいぶんはっきり言いますねダンナ」
「俺の好みは乳と腹と尻に脂の乗った三十路過ぎの粋な女なんだよ。
お前さんとは正反対の属性なんだ。わかるな?」
「……あたしの種族はこの次元では、肉体の一部分しか実体化できないんスよ。
この身体が成長の限界なんです」
「もう何度言ったかわからないが、何を言ってるのかさっぱりわからん」
「それなら、言葉じゃなくて実施で教えやしょう」
止める間もなく、G氏の小さな手がズボンの上から俺のペニスに触れた
――刹那、股間から脳天へと稲妻が走った。
「うぉっ!?」
思わず情けない声が漏れる。
な、何なんだ今の快感は!?
たった一撫で――ただそれだけで、寒さで縮こまっていた俺のペニスはギンギンに勃起していた。
「お、おい!?まさか何か術を――」
「違いますよダンナ、これはあたしの手練です」
まるで指に残ったペニスの温もりを味わうように、G氏は己の指先をぺろりと舐めた。
「あたしもねぇ……別に未通女ってわけじゃないんですよ」
盲目の着物少女の瞳が、その時確かに光ったのを俺は見た。
身震いするほど妖艶な輝きだった。
「お、おい止め――」
「お嫌なら抵抗してくださいな。女子供くらい簡単に跳ね除けられるでしょダンナ」
ズボンの上からペニスに愛しそうに頬擦りして、ジッパーを唇で引き降ろす。
痛いくらいに勃起したペニスが、バネ仕掛けの人形のように飛び出して、G氏のおでこを叩いた。
「ふわぁ……ご立派な息子さんですねぇ」
今まで幾人もの女を鳴かしてきた自慢のイチモツの形を確かめるかのように、
G氏の細い指先がシャフトを撫でる。熱い吐息が亀頭に触れる度に、
あまりの気持ち良さに腰が砕けそうになった。
「では、いただきますね」
桜色の唇を割って、小さな真紅の舌先が顔を出した。
それが躊躇う事無く陰嚢に触れて、じれったいくらいにゆっくりと竿を伝い、
カリをくすぐり、亀頭を舐めながら鈴口に達する。
「ぐおっ」
不覚にも声が漏れた。
G氏が両手で力強くも繊細に俺のペニスをしごきながら、亀頭の先端をぱくりと咥えるや、
舌先で鈴口をチロチロとほじくり始めたのだ。
「んっ……ちゅ…ぷはぁ……大きぃ…んむぅ……全部…んちゅ……食べきれ…ちゅうっ……ない……」
もう呻き声を上げる事もできない。
抵抗なんてできるわけがない。
脳味噌が漂白されるような快感の怒涛に、俺はされるがままだった。ちくしょう。
「……んちゅう…んんっ……ぷはぁ!…はぁ…はぁ……どうですダンナぁ……はぁ…気持ちいいですかぁ」
今度はペニスに抱き付くように顔を寄せ、指先と舌を肉棒に這わせながら頬擦りするG氏の顔は、
とても幼女のそれとは思えないくらい上気して、淫猥な笑みが浮かんでいた。
認める。
こいつのテクニックは今まで抱いたどんな女よりも上だ。
もう俺の脳味噌とペニスは爆発寸前だった。
「はぁ…はぁ……今度は…頑張って……はぁ…全部…咥えて見せますよ……」
カウパーと唾液で濡れたペニスの先端を、正面からうっとりと眺めたG氏は、
その小さな口をあーんと限界まで開いて――ペニスを一気に中程まで飲み込んだ。
「ぐぅっ!!!」
「んぷぅ!?」
その瞬間、俺のペニスは爆発するように射精していた。おそらく今までの人生で最大の量だったろう。
G氏は突然の射精にも驚いた様子もなく、喉を鳴らしてザーメンを飲んでくれたが、
それでも口元から飲み切れなかった白濁液が大量にあふれ出た。
「んっ…んっ…んっ…んんん……ぷはぁ!……はぁ…はぁ……たくさん出ましたねぇ……ダンナぁ……ちゅるっ」
ペニスから滴り落ちるザーメンを舐め取り、自分の顔にへばり付いた白濁液まで啜り飲むG氏は、
息を呑むほど妖艶で、淫靡で――美しかった。
……それにしても、どちらかと言えば遅漏気味の俺が、こうもあっさりとイかされるとは……
正直、今まで半信半疑だったが、今なら間違いなく断言できる。
G氏は、この少女は――人間じゃない。
人間には絶対にこの快感を引き出せない。彼女は人外の存在――『邪神』だ。
俺のような人間とは比べ物にならない究極の存在――邪なる神の名を冠する者だ。
――だがな、
「ふふふ……まだまだ元気ですねぇ…ダンナぁ」
あれだけ大量に出したというのに、まだビクンビクンとそそり立つ俺のペニスに、
G氏はゆっくりと舌を這わせようとして――その両肩をがっしと掴んだ。
「ふぇ?」
「だがなGさん……あんたが邪神だろうが何だろうが……」
「な、何ですかダンナ? 怖い顔がもっと怖いですよ?」
「女に一方的にイかされちゃ、男が廃るんだよぉ!!」
「ふにゃあ!?」
両手で着物の襟を掴み、思いっきりかき開いた。
まるで凹凸の無い平坦な胸と、乳白色の肌に浮かぶピンク色の小さな乳首がまろび出る。
そのまま二の腕まで着物をずり下げて、両腕を動かせなくしてやった。
「おおお落ち着いてダンナ」
「よくも好き勝手にイかせてくれたな!? お礼に死ぬほど喘がせてやる!!」
「きゃあん!」
間髪入れずにG氏の両足首を掴んで、持ち上げるように引っくり返した。
仰向けに寝転がらせるようにG氏を床に押し倒しながら、両足を開脚させながら持ち上げて、
目の前に股間が位置するように支える。いわゆるまんぐり返しって奴だ。
乱れた着物の裾をめくり上げると、白く長細い足に肉付きの薄い尻とピンク色のアヌス、
そして毛の一本も生えてない幼女の性器が登場した。
……後から思い起こすに、この時の俺は『人外の快楽』とやらのおかげで一時的に正気を失っていたのだろう。
でなければ、あんな幼女に手を出すなんて真似を、この俺がやる筈がない。
だが、この時の俺は目の前の美少女――いや美幼女を手篭めにする事しか考えられなかった。
「ふひゃあ……こ、この姿勢は恥ずかしいですよダンナぁ……」
「ついさっきまで俺のチンポをしゃぶってた奴が何言ってやがる……それに、な」
本当に恥ずかしそうに、顔を真っ赤にして訴えるG氏だが、
眼前5cmの位置にある未成熟なスジ状の性器は、
しかしふっくらと火照りながら、愛液でてらてらと濡れている。
「何もしてないのに、しっかり濡れてるじゃねぇか。フェラしながら感じていたんだろ?」
「そ、それはぁ……あたしも久しぶりだったもので。それに、ええと……ふにゃあん!!」
何やら言い訳を始めたので、黙らせるためにスジ状の性器を指で左右に広げてやった。
ビラビラなんて欠片も無い未成熟な性器は、
一丁前にも米粒のようなクリトリスを露出させて、膣口も小さく顔を覗かせている。
「あ、あぁ…あんまり見ないでくださぁあああああんっ!!」
クリから尿道口にかけてふっと息を吹きかけると、実にイイ声で喘いでくれた。
そのままヴァギナ全体を指先でゆっくりと撫で回してやる。
「きゃうぅん!! あっ! あっ! あぁあああっっっ!!」
「おう、どんどん濡れて来たじゃねぇか……ではクリトリスを突付くとどうなる?」
「だだだダメですよぉ……ふにゃん!! にゃあああん!!!」
「尿道口は?」
「っぁあああああッッッ!! そこはダメっ!! ダメにゃのぉぉ!!!」
「ついでにアナルもほじってやろう」
「にゃおぅぅぅん!!!」
足元でG氏の小さな肢体が乱れ悶えるのは最高だった。
しばらくこの淫らな楽器を演奏し続けていたが、
その小さな身体に時折走る痙攣の間隔が徐々に狭くなっているのが感じられた。
どうやらそろそろ限界らしい。さて、とどめを刺してやるとするか。
俺は上体を屈めると、G氏の胸元に手を置いた。
親指の腹を両乳首の上に当てて、そのままクニクニと押し潰す。
ほとんどあるのかもわからない乳頭は、しかししっかりと硬く勃起していた。
緩衝材のプチプチを潰しているようで面白いな。
「はぁああああ……だめぇ…切ないですよぉ……」
もどかしい快感に身悶えするG氏――そこでヴァギナに舌を這わせてやった。
「きゃふぅ!? にゃああああああああん!!!」
乳首をコリコリと弄くりながら、舌先を膣口に刺し、尿道口をほじくり、クリトリスを嘗め回す。
もう愛液なのか涎なのかわからない液体で、G氏のヴァギナはグショグショに蕩けていた。
「ふにゃあああああ!! もうダメぇ!! イクっ!! イっちゃいますぅぅぅ!!!」
「よし、イきな」
最後のとどめに、勃起したクリトリスを軽く噛んだ。
「にゃああああああああああッッッッッ!!!」
小さな肢体を思いっきり仰け反らせたG氏の絶叫が、薄暗い倉庫に響き渡った――
「ううぅ……ヒドイですよダンナぁ……」
「悪い、少し調子に乗りすぎた」
「ダンナの精液を採取するのが目的なんですから、あたしを感じさせる必要は無かったじゃないですかぁ……」
「だから悪かったってば」
あの後、我に返った俺は慌ててG氏を介抱して、数分後には、
再び俺のコートの中にG氏が潜り込んでいるというポジションに戻っているわけだが……
まさかこの俺様がこんな幼女に手を出す事になるとは思わなかった。正直落ち込むぜ。
しかし思ったよりも自己嫌悪の情が小さいのは、G氏の方から手を出して来たのと、
あの『人外の快楽』の前では、どんな聖人君子でも色情狂にならざるをえないという確信からだ。
まぁ、過ぎた事をウダウダ悩んでいても仕方ないから、あまり気にしない事にしよう。
「気にしてくださいよぉ、ダンナぁ」
「ナチュラルに心を読むんじゃない……で、例の生体情報の調整とやらはどうなったんだ」
「へい、それはバッチリですぜ。ダンナにイかされている間にやっておきましたよ」
いつの間に……例によって具体的にどうやったのかはさっぱりわからんが、
とりあえず俺が大僧正サマとやらに近付いても、脳味噌がトコロテンになる心配は無くなったわけか。
「それともう1つ、ちょっと面白い事がわかりましたよ」
「面白い事?」
「ダンナはね、『接触者』の素質があるみたいですわ」
接触者? 何だそりゃ。
「接触者というのはですね、まぁ簡単に言えば、あたし達『邪神』に好意を持たれた人間の事です」
「だから心を読むなよ……って、邪神に好意を持たれた?」
「へい、そういう人間がたまに出現するんですよ。
今から40年くらい前にも5人ほど出現しまして、色々な大騒動を巻き起こしましたぜ」
邪神に好意を持たれる……何だか字面じゃろくでもない事にしか聞こえないぞ。
「で、具体的に接触者になるとどうなるんだ?」
「邪神から様々な恩恵を受け取れますな。とはいっても、どの邪神に好かれるのかを選べるわけじゃありませんし、
邪神によって恩恵の形も様々です。それに『好意』といっても、恋愛感情だったり、友達としての好意だったり、
接触者を部下やペットとして飼いたいだけだったりと様々なんですわ。
中には『食べると美味しそうだから好き』なんて例もあります。
それに邪神側に愛想を尽かされたら、大抵はその場でポイ捨てです」
やっぱりろくでもなさそうだ……って、ちょっと待てよ?
「……参考までに聞くが、まさかGさんは『邪神』として、俺の事を接触者と意識しているのか?」
「そりゃあもちろん……」
恍惚の表情を浮かべながら、G氏は俺の瞳をじっと見つめて――
「あたしはダンナにメロメロですよぉ」
――胸板に甘えるように頬擦りしてきた。
そのあまりの可愛らしさにクラクラしつつ、俺は何とか次の質問を紡ぎだした。
「ね、念の為に聞くが……Gさんの『好意』の形は何なんだ?」
ぴたり、とG氏の頬擦りが停止する。その瞳が明後日の方向を見ているのを、俺は見逃さなかった。
「ええと……それは……その……」
「何なんだ?」
「あー……『食べると美味しそうだから』……ですかね?」
可愛い顔を引きつらせるG氏に、俺は満面の笑みを見せてやった。ほーう、そういう事かい。
「ででででも、ほら、あたしの種族は肉食種族ですから、人間を食べたいのは本能でして……
その、でも、本当に食べたりはしませんから!!
たまーに精液や生き血を飲ませてもらえれば十分でして……ですから、あの、えーと」
俺はその場に正座すると、あれこれ言い訳を続けるG氏をひょいと持ち上げた。
そのまま横から俺の膝の上に跨るようにうつ伏せにして乗せる。
「あ、あの……何をする気で?」
無言でG氏の着物の裾をめくる。
小さくて肉付きの薄い真っ白な尻が、ぺろんと可愛らしく顔を見せた。
「だだだだダンナ!?」
「……お仕置きだ。2度とそんな事を考えないようにな」
俺は容赦なくお尻に平手を叩きつけた。
ぱぁん
「きゃあん!!」
うーんいい音だ。俺の掌に対してG氏の尻は小さ過ぎるので、
片手で同時に左右両方の尻肉を叩く事ができる。たった1回のスパンキングで、
哀れG氏の真っ白な尻は真っ赤に腫れ上がってしまった。
「ぁあうぅ……何をするんですかダンナぁ!?」
「何度も言わせるな、お仕置きだ」
俺は連続で尻を叩き続けた。
ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん!……
「ひゃあん! きゃあん! あ、あたしは! ふひゃあ!
正直に! にゃあん! 答えた! やぁん! だけなのにぃ! にゃうぅん!」
無論本気で叩いているわけじゃないが、G氏の小さな身体にはよく効く事だろう。
やっぱり昔から子供へのお仕置きは尻叩きに限る。
……ところが、
ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん!……
「ふにゃあ……ああっ!……きゃうん!……ぁああ……くぅん!……ぁはああぁ……」
プルプル震えながらお仕置きを受けるG氏の悲鳴に、艶かしい嬌声が混じり始めた事に気付いた。
「おいおい、ケツを叩かれて感じているのかよ」
「はうぅ……そんにゃ事はぁ……はぁん! ふにゃあん!!」
「やっぱり感じているんじゃねぇか」
プルンと震える文字通りの桃尻は、普段の1.5倍くらいの大きさに腫れている。
汗と愛液で瑞々しく濡れたピンク色の尻たぶに軽く爪を立ててやると、
「きゃうぅ!!」
実にいい声で鳴いてくれる。
「やれやれ、これじゃお仕置きにならないな」
「あうぅ……もう勘弁してくださいにゃあ……」
ハイライトの無い瞳に涙を浮かべ、はぁはぁと荒い息を吐くG氏の上気した顔には、
しかし苦痛の中に明らかな恍惚の影があった。ならば、それに応えてやるのが男の本懐だろう。
「ちょっと過激にやるぜ。気をやらないようにしろよ」
俺は物欲しそうに口をパクパク開く薄桃色のアヌスに親指を、愛液を滴らせる膣口に人差し指を当てると――
「ふえぇ……な、なにを……あにぁうううううん!!!」
――ずぶり、と一気に根元まで挿入した。
「んぁああああ!! き、きつぃいい……はぁああっ!! はにゃああっ!!」
さっき念入りにほぐしてやった所為か、思ったよりもスムーズに指が動かせるな。
しかし、それでもG氏の小さな身体にとって、
俺の太くて長くてごつい指の挿入は、極太バイブの二本挿しに等しいだろう。
その幼い身体には刺激が強過ぎるかもしれない……まぁ、遠慮する気はないけどな。
「にゃううっ!! ぁあああっ!! あはぁうぅぅ……ひゃぁん!! あっあっあっあああああ!!!」
時にはねぶるようにゆっくりと捏ね繰り回し、時には目にも止まらぬスピードでピストンさせる。
膣口の襞とアナルの皺を指先で優しく撫で回し、一気にS字結腸と子宮口の入り口に指を突き刺す。
その度に小さな艶姿は身をよじり、涙を流しながら悶えて、快楽の悲鳴を薄暗い倉庫に響かせた。
うむ、やっぱりこれくらい反応してくれないと面白くないよな。
「にゃあぅうううん……はぁ…はぁ……ぁああっ!!……も、もうダメぇ……ぁああぅううっ!!」
小さな肢体が断続的に痙攣する間隔が、徐々に短くなってきた。
さっきクンニした時と同じように、そろそろ限界が近いらしい。さて、止めを刺してやるか。
「ほれ、イっちまいな」
俺は挿入した指先をGスポットの箇所に導いて、そこを人差し指と親指の腹で押し潰すように、
アナルとヴァギナの双方向から全力で擦り合わせた。
「にゃああああああああああんんんんん!!!」
ビクビクッと絶頂の痙攣が、彼女の全身から伝わって来る……その時、
ぷしゃあああああ……
突然、俺の膝に生暖かい感触が広がり、香ばしい匂いと共に白い湯気が冷たい倉庫の中を立ち昇っていった……
……えーと、これはつまり……
「あー、悪かった。その、ちょっとやり過ぎた」
「ううぅ……ヒドイですよダンナぁ……」
数分後――すんすん泣きじゃくるG氏の頭を撫でながら、俺はひたすら頭を下げまくっていた。
「ダンナはいじめっ子だ……」
「悪かったな。俺は昔から弱い者いじめは大嫌いだが、強い者いじめは大好きなんだよ」
だから刑事なんて仕事をやっている。
「損な性分ですね、ダンナは」
「ほっとけ」
図星なので何も言い返せねぇ。ガキの頃から貧乏くじを引きっぱなしなのは、この性格が最大の原因だろう。
「でもね、あたしはそんなダンナが好きですよ」
「好きじゃなくて美味しそうの間違いだろ。もう寝るぞ」
「はいな」
コートの中に潜り込んできた小さな身体を優しく、そしてしっかりと抱きしめる。
その温もりに奇妙な安堵を覚えた俺は、ゆっくりと瞼を閉じて……
「そうだ、1つ言い忘れてましたよダンナ」
「……なんだよ、今度はもう少しマシな話なんだろうな」
「あまりマシな話じゃないかもしれませんがね……さっきダンナに接触者の素質があると言いましたよね?
それをあたし以外の連中に知られた可能性がありますぜ」
「……何処のどいつにだ?」
「IMSO」
「なっ!?」
「ソープランド襲撃の件で取調べの際に、真偽を計る為にダンナの情報がIMSOに行きましたよね。
その際、ダンナが接触者だってバレた可能性があります。接触者かどうかを調べるのは人間にもできますからなぁ」
「……で、もしバレたらどうなる?」
「極めて危険度の高い人物だと認識されるでしょうな。
接触者はいわば邪神から力を借りる事ができる可能性のある人間ですから。
もしも対象の邪神が、接触者の願いを何でもかなえてあげる気前のいい奴だったら、
事実上その接触者は邪神の力を好き放題に使う事ができるんです。
仮にそいつが世の中に絶望して、人類を滅亡させようと考えたら……冗談抜きで人類は滅亡しますよ。
あたしが言うのも何ですが、邪神ってのはそれほどの力を持った存在なんです」
「マジかよ」
「マジっスよ」
「……つまり、誰かが接触者だと分かれば、IMSOはそいつを排除しようとする動きに出るわけか」
「さすがダンナ、勘が鋭いですね。事実、40年前に接触者が出現した時には、
我々退魔師の一部が接触者を抹殺しようとしましたぜ。もっとも、接触者側の邪神に返り討ちに合いましたがね」
「今回もそうなる可能性が高いのか?」
「さぁ、一度失敗してますからね。何か邪神に対抗できる特別な手段が見つからない限り、
そう露骨に排除行動に出るとは思いませんが……」
「それを祈るしかないか」
「もし襲撃者が来ても、人間相手ならあたしが蹴散らしてやりますよ」
「頼りにしてるぜ……さて、話が終わったのならもう寝るぞ」
「はいな、おやすみなさいませ」
「おやすみ」
……G氏との生体情報調整とやらで疲れ果てていた俺は、瞼を閉じると同時に睡魔に包まれた。
だから、その直後に聞こえたG氏の呟きを、俺が聞く事はなかった……
『……でも、もしあいつが襲って来たら……あたしでも危ない……』
「やれやれ、このチケット代は経費では落ちないんだろうな。ちくしょうめ」
代金の欄にうんざりするくらいゼロが並んだ航空チケットを睨みながら、俺は頭を抱えた。
今の時代、化石燃料の枯渇だとかで、燃料サーチャージ料金が恐ろしく上乗せされた航空便は、
もはや庶民の移動手段とはかけ離れた存在となっている。
俺も職務以外では絶対に使いたくはなかったんだが、闇高野の総本山がある京都に向かうには、
時間的にこれがベストなのだから仕方がない。今は財布の中身よりも時間の方が大切だ。
倉庫で刺激的な一夜を過ごした翌朝、何とか警察に見つからずに隣県に脱出できた俺とG氏は、
真っ先にこの空港へ向かった。目的地は闇高野総本山――そこにいる大僧正なら、
ルイを捕まえる事ができるかもしれないというG氏の言葉を信じて、
ついでに警察の追跡から隠れる為に、今からそこへ向かうわけだが……
「何で女はトイレ1つに、こんなに時間がかかるんだ?」
人の数がまばらなのをいい事に、俺は空港のロビーにあるソファーのひとつを占拠してふんぞり返っていた。
『ちょいと花摘みに行ってきますわ』の言葉を残して、G氏が女子トイレに消えてからもう10分近く経つ。
まぁ盲人なのだから、用を足すのにもある程度時間がかかるのは仕方ないだろう。
とはいえ、今は情況が情況だから、あと2・3分過ぎても戻ってこないのなら、
受付のねーちゃんを呼んで様子を見てもらうとするか。
そんな事を考えつつ、大あくびしながら仰け反った俺は、
「んぁ?」
視界の片隅に“それ”を見つけた。
車椅子に乗った青い毛布の山――初見の印象はそれだ。
よく見れば、それが教会のシスターが着るような青い修道服を着た人物であると分かるが、
何せ頭をすっぽりと覆うフードに指先まで隠す長い袖、そして足先も見えないロングスカートまでもが、
異様にブカブカでゆったりとしたものなので、遠目には本当に毛布の山にしか見えねぇ。
そんな青い毛布が車椅子で受付に続くスロープを登ろうとしているのだが、勾配が急なのか四苦八苦しているようだ。
周囲の人間は忙しいのか薄情なのか、誰一人手伝おうとせずに通り過ぎていく。
「ちっ」
俺は舌打ちを残してソファーから立ち上がると、あくびを噛み殺しながらスロープに向かった。
面倒臭ぇが、見ちまったものは仕方がない。これでも一応は公僕だからな。
「きゃっ」
無言で後ろから車椅子を押すと、青い修道服を着た人物は小声で可愛い悲鳴を漏らした。
背後からではよく分からないが、若い女らしい。
「受付まででいいですか?」
「あら、申し訳ありません。お心遣いに感謝しますわ」
こちらに顔を向けてぺこりとお辞儀する女の顔は、フードで目元が隠れているが、
その僅かに覗く口元だけでも、相当な美人である事が想像できた。
真紅のルージュが色っぽいぜ。こりゃ役得だったな。
しかし、そんな美人をさっき誰も助けようとしなかったのは、その異様な身体のシルエットが理由なのかもしれない。
遠目ではよく分からなかったが、指元まで隠す長い袖と床に引き摺るほどのロングスカートは、
何か異常な形状に内側から膨らんでいた。
尋常な人間の手足とは全く異なる何かを、無理矢理修道服の中に押し込めたような感じだ。
どうやら四肢が欠損したとか動かないのではなく、奇形化しているタイプの障害者らしい。
車椅子に乗っているのもそれで納得できた。
「障害者の方なら、空港職員に言えばトランスポーターサービスを無料で受けられますよ」
「あら、そうでしたの。この国に来たのは初めてなので、勝手がわからなくて」
外国人か。確かに首元から見下ろせば、
修道服の上からでも、その日本人離れしたサイズの爆乳の片鱗が見て取れた。
お、よく見れば谷間もちゃんとわかるぞ。よっしゃ、やっぱり役得だったな。
そんな風にニヤニヤしながら爆乳を鑑賞しているうちに、車椅子はスロープを登りきっていた。
目の前はもう受付だ。再び、爆乳修道服が頭を下げる。
「ご親切にどうもありがとうございます」
「いや、お安い御用ですよ」
「それだけご親切なお方なら、さぞ『邪神』からも慕われるのでしょうね」
「!!」
俺は何の躊躇もなく車椅子を蹴り倒し、懐に隠し持っていた銃を構えようとして――できなかった。
車椅子を押す姿勢のまま、俺の体は完全に硬直していた。
銃を構えるどころじゃねぇ、指1本動かせず、呻き声も漏らせない。
よく見れば受付の職員も他の通行人も、時間が止まったかのように動かないでいる。
何だこれは!? 何が起こった!?
「私の車椅子を押している時も、拳銃をこっそりと突きつけてましたわね。私、そういう御方は好きですわよ」
きこきこと車輪を軋ませながら車椅子を超信地旋回させて、蒼い修道服の女が俺の正面を向く。
「初めまして。緋硯 鯨人様ですわね」
その爆乳の谷間に、修道服の上から1枚の蒼い羽根――猛禽類の風切り羽根――が差し込まれているのを見て、
俺はなぜかゾっとした。
真紅のルージュが妖艶に歪む。
「バチカン特務退魔機関『テンプラーズ』所属退魔師、シスター・シャンテと申します」
ゆらり、と風切り羽根が揺れた。
続く
続き来てたー
本当に乙です
自分もルイ・サイファーでメ○テン連想しました
40年前に出現した5人の接触者とか、
40万年ぐらい前ある人間にとか、
心躍るキーワードがそこかしこにぃ!
ま、読んでて気恥ずかしいキーワードでもあるけど
意図的なんだろうか?
40万年前の“ある男”と40年前の“5人”いうキーワードだけで大体15回目の読破を敢行したくなるwwwww
幻になったアレとかスゲェ気になるしw
ひでぼんの書読み返してたんだけど第2部第9話の
日野さんの台詞、「『旧支配者』が三柱」って、
いたくぁとあとらっく=なちゃとあと誰?
接触者とか聞くとゼノギアスを思い出すのは俺だけ?
投下します
おお!!
しえん
>>287-291の続き
胸の膨らみを両手で包み込み、優しく押し込んだ。
前に触った時は何も感じなかったが、今は違う。じんわりとした熱が手の平から胸の奥
まで染み込んでいった。やはり雰囲気とかが大事なのだろう。
服の上から胸全体を撫でるように手を動かす。
「ん……」
喉から零れる声。
こねるような手の動きは、熱を帯びた身体にさらなる熱を与えていく。男が自分の胸を
触っても、このような心地よさは得られないだろう。
ぴくぴくと動く狐耳と、ぱたぱたと動く尻尾。
「えっと、この辺りだったかな?」
初馬は人差し指で、胸の先端辺りを撫で始めた。服の上からであるが、乳首が起って
いるのが感じ取れる。次の刺激を待っているかのように。
「う、んん……」
今までとは違う鋭い刺激が、背中を跳ねさせた。
指先が胸の突起を擦るたびに、みぞおちの辺りに痺れるようなくすぐったさが渦巻いて
いる。女の性感帯はいくつもあるという言葉を思い出ながら。
指の動きはそのままに、自然と身体が丸まっていた。ぱたりと絨毯の上に倒れる。快感
を拒否するような受け入れるような、奇妙な体勢。だが指の動きは止めない。
癖になるような気持ちよさ。
だが、初馬はそこで手を放した。肩から力を抜き、何度か深い呼吸を繰り返す。身体の
芯が熱い。男の身体ではこのような反応は起こらない。
「これが、女なのか……」
「貴様……!」
口元から漏れる怒りの声。
初馬は答えることなく、シャツの下に両手を差し入れた。
「ま、待て――!」
焦る一ノ葉だが、身体を動かすことはできない。そこまで支配を弱めてはいないのだ。
一ノ葉の意思で初馬の動きを妨げることはできない。
シャツの中に差し入れた両手が、ブラジャーを押し上げ、乳房を直接掴む。
「ぅん」
直接触れ合う皮膚と皮膚。布越しに触れた時とは明らかに感度が違った。
両手の動きに合わせて乳房が形を変えている。指の動きに合わせて、熱を帯びたくす
ぐったさが染みていく。しかし、胸を揉むだけではそれほど気持ちよくない。
それ以上に、胸の突起が触って欲しそうに疼いている。
その欲求に素直に従い、初馬は両手で胸の先を摘んだ。
「!」
予想していた通り、痺れるような衝撃が走る。
「やっ……ぱり、な」
にっと口端を持ち上げ、初馬は親指と人差し指で乳首を転がすように弄った。弱いなが
らも鋭い刺激が、胸から身体全体へと広がっていく。
「あっ、ふぁ、勝手に人の身体で……! んん、いい加減にしろ!」
一ノ葉が必死の声を上げているが、初馬は止めない。
左手で乳首を弄りながら、右手をシャツから抜いた。
「待て、貴様! その手で、何をする……ッッ!」
その挙動に焦る一ノ葉。だが、何をするかは既に分かっていただろう。分かっているか
ら焦ったのだ。分かっていても、声を上げずにはいられなかった。
初馬は右手で、頭の狐耳を摘む。
「ひっ、耳は駄目、だって」
短い獣毛に覆われた三角形の狐耳。右手でそっと摘むだけで、首筋から背中まで電撃
が走った。その未知の感覚に、胸を弄っていた左手の動きも止めてしまう。
「これ、もし男の身体だとキツイな……」
男の脳では女の快感に耐えられない、という言葉を思い出す。ただの迷信だろうと思っ
ていたが、あながち迷信ではないのかもしれない。
「そう思うなら、さっさとやめろ!」
「嫌だ」
あっさり拒否してから、初馬は右手を動かし始めた。
狐耳を容赦なく攻める。短くふさふさとした獣毛に覆われた、固く弾力のある三角形の
耳。表面を引掻き、狐耳全体を揉みほぐし、耳の中へと人差し指を入れる。
無論、胸を攻める左手の動きも再開していた。
「んあぁ、ああっ、耳は止めろ、止めろぉ……!」
悩ましげな一ノ葉の悲鳴。
指を動かすたび、感電したような痺れが首筋を通り背中へと流れていく。
男として、人間として、想像すらしたこともない未知の快感。男にとっては許容量以上の
快感だろう。しかし、初馬は止めることなく、胸と狐耳を攻める。いや、自分でも手が止め
られない。悶えるように身体が跳ねている。
自分の意思を無視して、自分で自分の弱点を攻めるという状況に、一ノ葉は引きつるよ
うな声音を上げていた。怒りと羞恥と興奮が入り交じった感情。
「ああっ、この、バカが……。もういい加減にぃ……っッ、ふっ、ぅああぁッ!」
がくん、と。
身体が跳ねる。
今まで溜まった電撃が弾けたように、全身に跳び散った。思考が止まり、目の前が一瞬
真っ白になる。手足を痙攣させてから、ゆっくりと脱力していく。
絨毯の上に寝ころんだまま、初馬は自分がイったのだと理解した。男の射精とは全く違
う絶頂である。全身を包み込むような、深く暖かい快感。
ただ、普通はこれだけでイくことはないだろう。
絨毯の上に倒れたまま、初馬は軽口を叩いてみる。
「お前……相変わらず敏感だな」
「ほざけ……!」
気丈に罵声を返す一ノ葉。
「これで、満足しただろ……。大人しくしていろ」
「満足してないのは、お前が一番分かってるだろ?」
初馬は不敵な笑みともに、再び狐耳を摘んだ。前とは違う一段先鋭化された刺激が、
首筋から背中へと疾る。一ノ葉の感覚は全て分かっていた。一度達してもまだ身体が足
りないと主張している。
くにくにと優しく狐耳を弄る初馬。腰が抜けて起き上がれないが、一ノ葉の身体を弄るこ
とは止める気もない。
「んん、くっ……」
必死に声を抑えようとする一ノ葉。
そして、気づいた。
「ッ、貴様!」
シャツの中にあった左手が、いつの間にかハーフパンツの中へと滑り込んでいた。一ノ
葉が狐耳に気を取られているうちに、左手を移動させたのだ。手品ではないが、一ノ葉に
は手品のように感じたらしい。
一ノ葉が引きつった声で制止してくる。
「そっちは、本当に止めろ――!」
「止めろと言われるとやりたくなるのが俺の性格。何度もそう言ってるだろ?」
からかうように告げてから、初馬はショーツの上から指先を秘部に触れさせた。男とは
違って何も生えていない股間。指先に触れる柔らかな生地と、柔らかな肉の感触。今まで
の刺激で感じていたのだろう。しっとりとした湿気を感じる。
その中心部を指先で軽く撫でた。
「!」
それだけで呼吸が止まる。
今度は下腹から脳天まで突き抜けるような痺れがあった。熱の波紋が秘部から全身へ
と伝わっていくような、未知の性感。それを感じることに微かな恐怖はある。しかし、ここで
止める気はなかった。
「行くぞ?」
「だから、手淫は自分の身体でや……ッ!」
左手の人差し指が、ショーツの上から秘部を前後に撫で始める。決して激しい動きでは
ない。優しく丁寧に、敏感な部分を刺激する。ふたつの微かな膨らみ。その間にある割れ
目。そして、割れ目の上の方にあるほんの小さな突起。
「んんんっ……」
身体が仰け反り、狐耳と尻尾がぴんと伸びた。
今までの強い快感とは違う、身体の奥深くまで染み込むような快感。下腹が溶けるよう
に熱い。喉が震えて、呼吸もままならない。閉じようとする目を無理矢理開けて、口元を引
き締めながら横隔膜を震わせる。
指先が割れ目の先にある突起を撫でた。
「ふアッ!」
びくりと身体が跳ねる。
ショーツの生地越しにその部分を指で優しく撫でる。女の快感の中心。指の刺激がある
たびに、男の射精並の快感が神経を焼いていた。
「ああっ、ひぅ、お前は……! ヒトの身体を弄ぶな……!」
快感に耐えるように、一ノ葉が歯を食いしばる。
誰も勝手に身体を弄られるのは嫌だろう。ましてや人一倍他人に干渉されることを嫌う
一ノ葉。自分の意思ではなく、他人の意思によって自慰を強制されるのは、屈辱以外の
何者でもない。今更止める気もないが。
初馬は開いていた右手を後ろに伸ばした。
「貴様、まさか!」
一ノ葉が焦るが、止めることは出来ない。
初馬は右手で尻尾を掴んだ。快感に反応するようにぱたぱたと暴れる尻尾。こちらも人
間にはない未知の器官。そして、ヒトの姿の一ノ葉にとっては性感帯に等しい部分。
「ひぃぅッ!」
喉から漏れる引きつった声。快感が一気に跳ね、鳥肌が立った。
だが、初馬は気合いを入れて尻尾を上下に扱き始める。
「あああっ、尻尾は駄目だって! 言ってる、んん、のにぃ……ふぁ、あぁ」
丁寧に刺激する淫核からわき上がる熱い快感。尻尾から全身に響く、電撃のような戦
慄。男が感じられる快感を何倍も超えているだろう。
「貴様は、ああっ……本当に、んんッ、ヒトの身体で、あくっ、遊ぶのを止めろ……! ふぁ、
ワシは貴様のおもちゃでは、んぁ、ない……、ッぁぁ、あああァッ!」
再び大きく痙攣する四肢。両目から零れる涙。
二度目の絶頂が、身体を貫いた。目蓋の裏に星が散る。やはり、男とは比べものにな
らない。全身の筋肉を収縮させ、脳髄を焼くような快感を受け止める。
その余韻を楽しむこと十秒ほdp。
「貴様は……」
一ノ葉が囁くように唸る。
だが、初馬は不敵に言い返した。荒い呼吸とともに。
「お前だって、気持ちいいんだろ? 身体は正直だぞ」
初馬は左手を動かし、ショーツを横へとずらした。
白いハーフパンツに包まれているせいで中で何が起こっているのかは見えない。だが、
指先に感じる水気。一ノ葉の秘部は既にじっとりと濡れていた。微かに粘りけのある液体
が、体内から外へとあふれ出ている。
初馬は左手の人差し指を膣口へと触れさせ、そのまま体内へと差し込んだ。
「くっ!」
身体の内部へと指を入れる。
男ではおよそ実行しないことが、女の身体で実行されている。自然と下腹に力が入り、
膣内の指を締め付ける。細い指に感じる体温と濡れた肉。卑猥ながらも、どことなくグロ
テスクな肉の感触。
指をゆっくりと上下させながら、初馬は続けた。擦れた声で。
「……この身体はお前のものだから、自分でも分かってるだろ? これは普通の感じ方じ
ゃないぞ? お前も俺に好き勝手に身体弄られる状況に興奮してるんだろ?」
「ぅぅ……」
小さな呻きが漏れる。反論はできなかった。
膣内で上下する指に、切ないような感覚が全身に広がっている。じわじわと手足を締め
付ける、熱く冷たい疼き。女の快感は色々と種類があるのだと感心しつつ、語りかける。
「どうする? 続けるか? それとも、ここで止めるか。俺は……感覚共有を弱められるか
ら大丈夫だけど、ここまでやってお前はどうするんだ?」
自分は感覚共有を弱めて、身体の疼きを半分以下に遮断できる。しかし、一ノ葉はそう
もいかない。自分で自慰を続けるという選択肢はまず取れないだろう。
一ノ葉の喉が微かに動いた。
「続けてくれ……」
「そういう時は、ちゃんと頼む言い方があるだろ?」
ぴしっと額に怒りのマークが浮かぶのが分かった。
初馬は気にせず膣に入れる指を増やす。人差し指だけの一本から中指を加えた二本
へと。下腹の圧迫感が少し大きくなった。二本の指をうねるように動かしつつ、右手の人
差し指で淫核を優しく叩く。
「んんっ!」
今までのような強烈な快感ではなく、じらすような動き。
刺激に耐えるように背中が丸まり、尻尾が縮まる。しかし、一ノ葉に出来るのは身体を
丸めて、初馬の攻めを甘受することだけだった。抵抗はできない。初馬が動かしている両
手を止めることは出来ない。
一分ほどの時間を置いて、一ノ葉が小声で言ってくる。
「続けて下さい、ご主人様……」
「よろしい」
初馬は中指で膣の内側を撫でた。
膣口から奥の方へ指を半分ほど進めた所に、微かにざらつく箇所がある。指を折り曲
げ、その箇所をやや乱暴に引掻いた。Gスポットと呼ばれる膣内急所への刺激に、快感
が破裂し、身体が大きく跳ねる。
「ッッ! あッ! ふあぁ、っぁ、ああぁ……!」
一ノ葉の喉から漏れる、悲鳴じみた喘ぎ声。
人差し指と中指で膣内をかき混ぜつつ、さらに親指で淫核を引掻くように刺激する。な
すすべなく身体が反応していた。一瞬で達するのではなく、深く熱い絶頂の継続。丸まっ
ていた身体が、今度は弓のように仰け反っていく。
今までとは全く違う快感に、一ノ葉は悶えながら当惑の叫びを上げていた。
「あ、ああッ、熱い……、身体がおかしい……! あっ、ああっ、何だ、貴様、うあぁ、何を
して、るんだ……! 待て、待て……! 頭が、おかしく……なるッ!」
下腹部から神経に流れ込む甘い波紋に、脳が沸騰している。身体が熱く火照り、全身
から汗が噴き出していた。胸の奥が熱く切なく、疼いている。
男のものとは全く違う快感。感覚共有を通しても、その凄まじさが体感できる。それを直
に感じている一ノ葉は、もう失神寸前だろう。
初馬は左手の動きを右腕をおもむろに後ろに伸ばした。
「あっ、ひっ、待へ……尻尾は駄目――!」
ぱたぱたと跳ねる尻尾を無造作に掴む。
「!」
がくん、と身体が大きく跳ねた。新たな刺激に、快感の許容量の限界を超える。
だが構わず、右手で尻尾の根本を上下に扱く。手の動きに合わせ、尻尾の毛から芯へ、
そして付け根から、背中へ。さらに全身へと。感電したような甘い痺れが広がり、火照っ
ていた皮膚が一気に粟立つ。意識が飛びそうになるほどの絶頂感。
一ノ葉は背骨が折れるかと思うほどに、身体を仰け反らせていた。
「いいぃ、ひッ、尻尾は駄目……、ひいいィ、ああッ、駄目らって言っへるのにィ、イィィああ
ああッ、もう、許して、許し――ッ、ぁぁああああッッ!」
何度目か分からない絶頂を迎え。
ブチッ。
という音が聞こえた。
------
数瞬意識が止まり、初馬は目を開けた。
天井が見える。
「?」
状況を理解できずに戸惑うが、ほどなく感覚共有が遮断されたのだと理解する。一ノ葉
の中にあった共有部位が壊れ、本体の意識が開いたのだろう。さきほどまでの灼熱の性
感は消え去り、妙に落ち着いた気分である。
とりあえず、ベッドから身体を起こし、一ノ葉を見やった。
絨毯の上に倒れたまま、身体を痙攣させている。既に意識はない。さきほどの許容量を
遙かに超える快感を思い出し、下腹部が反応している。
「やりすぎたかな?」
初馬は他人事のように呟いた。
「さて、どうしよう。これ」
初馬は卓袱台の前に座ったまま、コップを見つめていた。
コップを満たしている、茶色い液体。感覚共有の強制解除薬。匂いは、風邪薬の葛根
湯に似ていた。極端にまずいということはないだろう。
「捨てろ」
一ノ葉が言い切った。
既に狐の姿に戻り、正面に座っている。
あれから一時間ほどしてから目を覚ました所で、式神変化を解き、狐の姿に戻って貰っ
た。胡乱げな眼差しで薬を見つめている。
「こういう術系の薬は不用意に捨てると危ないからな」
初馬は右手を伸ばして、コップを掴んだ。
一ノ葉が絶頂を迎えたショックで感覚共有は解除された。だが、ショックによる強制解除
だったので、まだ中途半端な共有が残っている。一ノ葉に自覚はないようだが、初馬には
うっすらと一ノ葉の感覚が流れ込んできて気持ち悪い。
初馬はコップの縁に口を付け、中身を口に注ぎ込んだ。見掛け同様葛根湯のような甘
苦い味。喉を動かし、薬を胃へと流し込んでいく。
「ふはぁ」
コップを置き、初馬は薬臭い息を吐き出した。薬の効果か、微かな感覚共有が無くなる。
頭の中がすっきりしていた。
「むぅ」
一ノ葉が匂いから逃げるように顔を背ける。吐き気がするほどの匂いではないが、お世
辞にも香しいものではない。獣の嗅覚には堪えるのだろう。
だが、首を振ってから初馬に向き直る一ノ葉。胡乱げな表情で、狐耳を立てる。
「そうだ。ひとつ言っておく」
「何だ?」
「今回みたいなことは二度とやるな」
睨むような眼差しとともに告げてくる。さすがに、今回のように好き勝手身体を弄り回さ
れるのは嫌だろう。一ノ葉の意見はもっともだった。
しかし、初馬は横を向いて呟く。
「面白かったのに……」
「二度とやるな!」
一ノ葉は叫んだ。
以上です。
来月の半ばか終わり頃に
Blue Liquidの続編か、猫耳メイドものを投下する予定です。
予定なので未定ですが
∩
( ⌒) ∩_ _
/,. ノ i .,,E)
./ /" / /"
./ / _、_ / ノ'
/ / ,_ノ` )/ /
( / good job!
ヽ |
\ \
GJ。愚息がぎんぎんになり申した
ああああああああああ美少女お稲荷様と結婚してーーーーーーーーーーーーーー
ホーンテッドじゃんくしょんって漫画の花子さんが何気にツボだった私は異端でしょうか?
後半になればなるほどに花子さんにピンチも訪れたし
よく見ればGさんの外見は、ふしぎ通信トイレの花子さんと同じだ・・・
>>367 ベートーベンが未登場だったり
にの君が正式な術式を使える特殊な二宮金次郎の銅像ポジションになってるとか原作と一部、違う点があるけど
アニメ化してる筈だよ。ホーンテッドじゃんくしょんは
>>368 veohさんに尋ねたら、今でも全12話上がってた。
花子さんもいいがヤミ子さんや青半纏姐さんもセクシーだったなぁ
勿論鏡子ちゃんもかなり好き
人外旅館の人は元気だろうか?
372 :
マージ:2008/11/24(月) 18:30:33 ID:iHhEhAJo
糾「やっと着いた」
これが自分の所有する屋敷だなんて今でも信じられないことがあるが、紛れもなく家族と大切な日々
過ごした場所だ。そう感慨に浸っていると、屋敷の方から凄まじいスピードのものが飛びかかってき
た。バタッ、飛びかかってきた来たものが糾の体に抱きつくとバランスを崩し尻餅を着いてしまった。
あまりの突然の出来事で呆気に取られていたが、抱きついてきたものをよく見ると、銀髪の髪にメイ
ド服の女性だ。それは間違いなく
糾「マージ」
マージ「くぅーん御主人様、待ってましたよ」
マージだ、僕は久し振りのマージに会った嬉しさのあまりマージ力いっぱい抱き締めた。
マージ「ちょっと御主人様」
マージがびっくりしたような声を上げて、我に返った。
糾「ごめん、痛かったかい?」
マージ「そうじゃなくてその…」
口ごもるマージは何か言いたそうだが、何か分からず聞いてみた。
糾「何か言いたいことが有るなら言ってよ、僕たちは家族でしょ」
マージ「えーと、その御主人様のこ、…股関がっ」
そう言われて自分のナニの感覚を確かめると、勃起していた。マージと会う直前までいやらしい妄想
をしていたせいか勃起したままマージと体を接触させてしまった。しかもちょうどマージのアソコにくっつく形となっている。
糾「わー、ごめんっ」
僕は慌てて謝罪したが、マージを抱き締める手の力を緩めることが出来なかった。
えっと…
・細切れにせずある程度の量書いてまとめて投下すべき
・括弧の前に名前はいらない
>>372 とりあえず、一区切りついた所でまとめて再投下してくれ。
今の状態じゃ、さっぱり内容が分からんぞ。
ああ…狐耳巫女が読みたい…
87 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/11/10(月) 20:07:47.38 ID:7jOSJul30
ある日、夜中に目が覚めたことがあったな・・
ふと見ると枕元に長髪の女の子の霊がいたんだけども、
眼孔が黒く落ち窪んでて、凄い憎憎しげに睨んできてるんだよね。
んで、可愛い声で口をニヤリとさせて「死ね・・・・死ね・・・」とつぶやき続けてるの。
確かに目が真っ黒でキモ怖かったけど、
寝ぼけてたのもあって、思わず彼女の腕を掴んでしまったのよ俺。
すると、彼女は「きゃ、な・・何するの・・!」と思いっきり慌ててさ、
その瞬間に目も可愛らしいちゃんとした目に変わったわけ。
その顔が凄く可愛くてさ、寝ぼけてたのもあって思わず「か、かわいい・・」と呟いたんだよ。 その瞬間だよ。いきなりグーパンチ。
幽霊にグーパンチされたのって俺くらいじゃないか?
一瞬で眠気が覚めた俺に、白磁のように白い肌を朱に染めて、
「し、死ね!死んじゃえっ・・!」と叫んで消えちゃった。
それで終わりかと思ったんだけど、次の晩も俺の枕元に座っている。
死ねぇ・・死ねぇ・・」ってね。
んで俺が「全然怖くないんだけど」っていうとプンプン怒って殴ってくるのよ。
そこで俺が「そんなに可愛い顔を怖がれるかよw」って言うと、
とたんに「な・・・・っ!」って顔が真っ赤になって硬直するんだよ。まじ可愛い。
その日はそのまま逃げるように帰ったんだけど、それからも毎晩彼女は現れた。
寝たふりをしてると、俺の頬を突ついてつまらなさそうにしたり、
しれっと布団に入って来ようとするんだけど、俺が「何やってんの?」と急に起きた時の慌てようと言ったら。
何か自分は低体温だから凍え死なせる為だとか、何だかんだと言い訳が良く出て来るもんだ。
結局最後は俺が「しゃあねぇな。じゃあ入れよ」って言って布団を開けると、
一瞬うれしそうな顔を浮かべた直後、「し、仕方ないわねっ・・!」とむくれ顔。
で、なんだかんだで、寝つく頃には布団の中で俺の胸にしっかりしがみついて来てます。
ツンデレ幽霊バンザイっ、これ回数かさなると、精気を吸われて結局死ぬわけだw
というかまた懐かしいものを
(1)
この一帯に壮大な暗闇が広がっている。ここは天井も壁も床も無い、果てを失った空間。
ただ暗闇と言っても光の点が無数に散らばり、真の暗闇ではなかった。それは満天の星空を思
わせるほど見事なものだ。
そんな空間に一人の少女が一糸まとわぬ産まれたままの姿で浮かんでいる。そして、まるで寝
ているかの様に目を閉じている。
灰銀色の長い髪、赤に近い茶色の目、凝視できないほど美しい肌と体のライン、可憐と言う言
葉が似合う容姿、それらを持った十五歳くらいの少女がそこにいたのだ。
その少女は二つだけ、普通の人と違うものを持っている。それは白地に先だけ黒い狐耳と白い
狐尾、つまりその少女は稲守狐(いなもりぎつね)なのだった。
そんな最中、少女の耳に微(かす)かな人の声が聞こえてきた。
「コン……」
「誰?」
「コン……俺や……」
「誰なの?」
それは幼い少年の小さな声。そして、その少女を呼ぶ声。
しかし、その名前は違っていたのだった。心当たりの無い少女の心中(しんちゅう)に少しの混
乱と不安感が渦巻き始める。
『あなたはどうして私をコンと呼ぶの?』そう思った少女は、狐耳は素早くその方向に向けた
のだった。
「俺や……起や、コン……」
「誰? 私を呼んでるの? でも私は……楓(かえで)……」
少女楓は反論してみたものの、どうしても目を開ける勇気が出ないでいる。
しかし散々迷ったあげく、意を決してゆっくり目を開けた。それでも楓はしばらく状況を把握
できずにいたのだった。
だが、把握できるや目を見開き驚いた。
「あっ! あなたは……」
楓の目前に一糸まとわぬ産まれたままの姿をした、六歳くらいの幼い少年がいたのだ。短髪の
黒髪に黒い目を持った、よく見る普通の少年だった。
「あなたは……もしかしてカッちゃんなの?」
少年を見た楓はしばらくすると懐かしそうな表情に変わっていた。『私……この少年知ってる、
覚えてる……』楓の中に少年の記憶が蘇(よみがえ)り、少年がコンと呼ぶ理由も悟ったのだった。
「そうや俺やコン……会いたかったんや……探したんやで……」
「……私を? 探してたの?」
「もちろんや……国中(くにじゅう)立ち寄ってへん所なんか無いって言うほど探したんや……俺、
一時(いっとき)も忘れたことあらへんよ、コンのこと……」
「それ……本当なの?」
「ああ、もちろんや……」
「うっ、嬉しいっ! 私嬉しいよ! カッちゃん……」
知人との再会。楓はよっぽど嬉しかったと見え、少年に向けて微笑み始めた。
そんな嬉しさから、無意識に楓の狐尾が振れ始めている。それはまるで犬の様に……
「そりゃよかったわ……俺、わざわざ会いにきた甲斐(かい)があったちゅうもんやな」
「それはそれはご苦労様でした。それでね、カッちゃん……」
「何や?」
「私全然見当がつかないんだけど……カッちゃん、ここどこなのか分かる?」
「さあ……俺も辺り見てみたんやけど全然見当つかへんな………………………………そやっ!
ここ、二人だけの世界っちゅうのはどやろ?」
「ブッ……ハハハハハ……二人だけの世界って……何言ってるのよぉ、カッちゃんは」
二人の世界って言葉、臭いと言うかむずがゆいと言うか、楓は『冗談はよしてっ』と言いたげ
に手を上下に振って笑い飛ばしていた。
その言葉、幼い少年には合わない。楓は少年のそれに滑稽さ感じたのだった。
「わ……わ……笑わせないでよぉ……ハ、ハハ……」
「やっぱ変か? セリフ何か可笑しかったんか?」
少年は楓の行動を見て、“二人だけの世界”なんてセリフに羞恥を感じたのか、頬を赤く染め
照れてしまったのだ。
「うんっ、何だか変過ぎぃ……カッちゃんには合わないよ……でも確かに私達以外誰もいないみ
たいだね。ここって」
「そやろ? まるで二人の世界みたいやんか、ここって」
「まぁ、確かにそう言えなくもないかなぁ?」
楓はしばらく辺りを見回していた。しかし何を思ったのか、楓は少年へ向き直り、突然ポンと
手を一つ叩いた。
「……そうね……誰もいないんだし、ここは二人の世界ってことにしちゃおうか? フフ」
「おうっ! 俺も賛成やっ!」
楓は片手を大きく上げ、少年は親指を立てている。
彼らはこの暗闇を勝手に自分たちの世界としてしまった訳だ。まるでこの状況を楽しんでいる
様にしか見えないのだった。
「ここが俺達の世界に成った所でやな……俺、コンにお願いがあるんやけど?」
「お願い? お願いって何? 金貸してって言われても出せないよ? 持って無いし……」
「いやいや、それは見たら分かるがな……金じゃなくてやな……」
「じゃぁ、何かな?」
「何て言ったらええんやろな……その……」
「うにゅ?」
楓はきょとんと少年の顔を見ている。
少年は非常に言い難(にく)いお願いをしようとしていた。なぜ赤くなるのか分からないが、
段々少年の頬が赤く染まって行くのだった。
「あの……コン……コンがほしい……」
「はい? ……ほしい? 私を?」
少年はこくり頷(うなず)くと、顔を真っ赤にさせて俯(うつむ)いてしまったのだ。
その言葉の意味を楓はしばらく理解できなかった。
しかし、その言葉の理解は突然やってきた。このほしいとはエッチの隠語、楓は半心そう悟っ
たのだ。しかし半心で否定もしていた。
楓は少年の様子を見てあせり、ごまかし笑いを始めたのだ。
「や、やだなぁ〜カッちゃん……顔を赤くして黙られても、私困っちゃうじゃないのよ〜」
「じゃあ、はっきり言うわ……」
『この子は一体何を言い出そうとしてるの?』そう思いつつ楓は唾を飲んだ。
さっきまで振っていた尾もいつのまにやら止まっていたのだった。
「俺のお願いはな……コン……コンの全部が欲しいんや……つまりコンとその……コンとエッチ
したいんやっ!」
少年はさっきの小声から一変し、大声で楓に広言(こうげん)した。
それを聞くや楓の顔が瞬時に攣(ひきつ)った。楓自身が悟った通りだったので、驚いた。そし
て楓はこれを少年の冗談だと強引に位置付けしようとし始めたのだ。
「えっと……あの……カッちゃんの目、本気(まじ)……冗談に聞こえないんだけど……」
「冗談やないで! 俺……コンと……コンと本当にエッチしたいんや……」
「えぇぇっとその…………あの…………え? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
それを聞いた楓の、狐尾の毛全部が一瞬で逆立った。これはかなりの驚きだった様だ。
「エ、エッチぃっ! エッチって……あのエッチっ!」
「そやっ!」
少年は純真無垢な笑顔で肯定した。楓はエッチの行為自身にもその言葉にも免疫が無い。
楓は頬だけ赤く染め、驚きとあせりで叫びながら意味の無い動きで両手をパタパタさせるだけ
だった。
「それまずいよ! まずいって!」
「まずいの? ……そっか……コンやっぱり俺のこと嫌いなんやな?」
「そんなことないっ! そんなことないけど……でもね……」
「そやのに? コンどうして拒否するんや? あの時俺の子供産むって言ってたやんか?」
「それは……えっと……」
『まさかそれを持ち出してくるなんて……』楓はどう説明しようか悩み続けた。
でも、何とかして説明を行うしかない。仕方なくも、楓は口を開いた。
「カッちゃんに初めて出会ったころ、私は無知な霊狐の子狐だった。そしていつの間にか、私は
『将来あなたの赤ちゃん産むことになるのかな?』と単純に思う様になってた。もしそうなった
ら、あなたを受け入れようとも考えてた……そんなの不可能だってことも知らずにね……でも今
は状況が違うのよ」
「状況やて? ……今コンは稲守狐で、しかも一部の稲守狐しか許されてへん特殊変化(とくしゅ
へんげ)で人間になってるやんか? ……今は人間と変わらんのやろ?」
「そりゃ人間に変化(へんげ)してるんだから、人間と同じことできるけど」
「だったらええやんか?」
「だからこそねっ、心の準備が必要なのよ…………じゃなくって、社会常識をねっ」
「社会常識って言われてもやな……」
「だから……あなたはまだ子供! エッチなんかしちゃいけない歳でしょっ!」
「コン、歳なんて関係あらへんよ」
「ある……あるんだってばぁ……」
少年はさらに楓を追い込んでいく…………
楓は完全に断ることができない。それは楓がその少年に嫌われたくないと言う心情なのだった。
楓は不安と困惑で狐耳を倒し狐尾を股に巻き込んでいる。
「我がまま言わないでよ……分かってよ……お願いだから……」
「大丈夫や、コンの全てを俺に預けてや。今まで味わったことのあらへん素晴らしい世界を味あ
わせてあげる」
「素晴らしい世界って? ……あのね分かってる? 君はまだ子供だよ、こんなことしちゃいけな
………………………………うぐっ!」
楓は少年に対して少し強めに忠告を与えた。しかし、少年は目を閉じ『何も言わなくていいよ』
と言わんばかりに、口をふさぐがごとく楓の唇を奪った。
楓は突然の行為に驚き、眼(まなこ)を広げて少年を見ている。
そして少年野郎はさらに行動をエスカレートさせていく。
(2)
それは少年と思えない行動。
少年の舌が楓の口を割って入ってくるや楓の心を解(ほぐ)すため、口中のあらゆる部分を刺激
し続けた。
それは楓の常識を心の底に沈め、本能的思考を押し広げ陶酔させる行動となった。
そんな行為が続き、楓も少年の舌を迎え入れるかのごとく自分の舌を絡ませ始める。
「んぐっ…………ふはっ……はぁはぁ……」
少年は自分の唇を楓から離した。
「……こんなことして……後悔しても知らないからねっ」
「俺は子供やし……後悔なんかせえへんよっ」
唇を離された楓は頬を赤く染め、トロンとした目で少年を見ている。同じく少年も楓を微笑で
見ている。
楓の狐耳も少年の行動を捉(とら)えるべく、その方を向いている。楓は『もうどうにでもなれ!』
と言う心情で固まっていたのだった。
とうとう少年は楓の性欲と呼ばれる本能に火を点けてしまったらしい。
「もうやめるの?」
「うんにゃ、本番はこれからや……」
「ほ、本番?」
「それはやな……ここなんかどや?」
「そっ……そこはっ……」
少年は楓の両乳房を弄(まさぐ)り始めた。つまり、行為のシーケンスを実行し始めたのだ。
とたん楓の反応が変わる。口で息をしつつ段々荒くなり、目を閉じつつも恍惚の表情に変わっ
ていた。
楓の体が面白いくらいに反応している。と同時に狐尾も同様に反応するのだ。少年は楓の反応
を面白がっている様に見えた。
「……あふ……ん……はぁはぁ……んく……」
「まだまだ行くで、覚悟しいや……」
「あっ、あく……あんっ……あ……んん……ああっ、あああっ……」
少年は楓の両乳房を両手に納め、少し押さえ気味に円を描きながら愛撫し始める。
少年は愛撫を強くしたり弱くしたりしながら、時に膨らみを震わせて刺激しつつその柔らかい
乳房への愛撫を楽しんでいる。
楓は狐耳を倒し、荒い息を混ぜながら善がり声を強めていった。
「んああっ……だめぇ……そんなに揺らしちゃ……だめぇぇっ! 感じ過ぎるっ!」
「何や何や? ここで音を上げたらこの先大変やで、コン」
楓は感じ易い体質なのか、または性的快感で苦しいのか、涙を滲ませ少年に懇願していた。
少年は楓を確実に絶頂まで押し上げたいと願望し、今度は秘部に向けてゆっくり手が滑り始め
る。
しかし、その手は感じると思われるあらゆる場所を寄り道していたのだった。
「あっ! ……な……何っ? 何っ?」
「ここはすごいで……女の特権や、極楽浄土見せたるで」
少年の手が下腹部に到達すると、楓は恐怖と羞恥が心に生まれた。
そのため楓は仰向けに膝を立てた状態で抵抗の意思を示すべく、狐尾を挟んだまま膝と太もも
を硬く閉じてしまったのだ。
「い……いや……極楽浄土……だめ……」
楓は強く懇願していた。当然、少年は聞く耳など持っているはずもない。
「コン……大丈夫、大丈夫や、心配あらへんよ。だからその脚、開いてや」
「だめ……だめ……」
「ええやん、ええやんか……」
それでも楓は涙を浮かべつつ、首を左右にゆっくり振って拒否している。
しかし少年は楓の両膝をつかんで力を込め始めた。少年は楓の股を広げるべく、段々と力を強
めていく。
楓はそれに抗(あらが)おうと必死に耐えていたがどうすることもできない。それは少年と思え
ない力だったからだ。
そして楓の太腿(ふともも)がプルプル震えながら開かれていく。
「だめ……だ……だめえぇぇぇぇぇっ!」
とうとう少年の力により、楓の股があらわにされてしまったのだ。
最後の砦である狐尾も難なく払われてしまい、その中心にある綺麗なピンク色の秘部があらわ
にされた。その秘部は少し濡れ、光っていた。
そして楓は羞恥心のため、頬を赤く染めて横を向いてしまった。
「うわぁぁ、コン……ここ、綺麗なピンク色してるやん。それにキラキラ光ってるやん」
「いや……いや……」
楓は横を向いたまま、羞恥心に耐えるかの様に目を閉じている。
少年は自分と楓の体制を整えると、楓の秘部、淡いピンク色のそれに誘われるがまま自分の顔
を近づけていく。まずは楓の香りを楽しむ。
「おお、これはフローラルの香りや……って、どんな匂いから知らんけど…………んぐ……」
少年の舌が楓の秘部に触れた時楓は「あうっ」っと小さな声を漏らすと同時に、狐耳狐尾と体
が反応したのだ。
少年は舌による愛撫を繰り返し始めた。最初は一定のリズムで……
「ああっ……んあああっ……だめ……そこも感じ過ぎるっ…………感じ過ぎるぅぅぅっ!」
「大丈夫、大丈夫や……段々よくなるから……」
その愛撫は乳房と比較にならないほど強い性的快感が押し寄せてくる。
楓が懇願しても少年はやめてくれず、楓は少しの恐怖心と戦いながら善がり悶えるしかなかっ
た。
しかし楓自身期待もあって、拒絶までは至らないのだった。
「あはぁ……んっ……んあっ……はぁはぁ……んっ……ああっ……んんっ」
少年は舌による愛撫のリズムをいろいろ変化させていく。それが後押しとなり、楓は絶頂へ少
しずつ少しずつ上がっていく。
狐耳は倒れたまま微かに振るえ、痙攣している様に見えた。
「あっ、やっ、やっ、あっ……ああっ、んんんっ……んああっ、んふっ……」
この間少年の行為を受け止め様としているのか、ぴったり閉じていた楓の秘部はまるで雌花が
開花するがごとく性的興奮を受けてゆっくり開き始める。
そして淫核――クリトリス――も少し覗き始めている。
しかし、あごに疲れを感じた少年はあっさりその愛撫をやめてしまった。
「あかん……舌とあご疲れたわ……」
「はぁはぁ……」
楓の秘部は愛液で満ちあふれ、一部は漏れ落ちていた。
楓は恍惚の表情のまま狐耳を少年に向け、そして少年をじっと見ている。少年は無邪気に、微
笑を楓に向けていた。
「カっちゃん……そこ……気持ちよかった……」
「な、ええやろ? でやな……もっと気持ちよくしてええか? ええよなコン? 俺、コンの可
愛い鳴き声もっと聞きたいんや」
「う、うん…………………………んくっ……」
少年は楓の両太もも内をゆっくり念入りに撫で続け、そのまま楓の股に手の平を滑らせた。
その時淫核に触れたのか、楓の体が微かに反応したのだった。
楓は狐耳を倒して顔を横に背(そ)けているものの、頭の中は羞恥心と期待が混濁していた。
「ここはな、こうやって可愛がるんや……気持ちいいやろ?」
「ああっ! …………あは……んっ、んんっ……んああっ、はぁ、はぁ……あはぁっ」
少年は楓の秘部全てを手で覆い、幾度も幾度も小さな円を描く様に手淫を与える。
楓は即効で善がりと悶えに落ちた。そして、狐尾は時折反応しながら小刻みに揺れいる。
楓は善がり声でまともな言葉にならない状態になっていた。
「あんっ、んんっ、ああ……んはぁ……ああっ……んぐっ……」
少年は楓に慣れさせるためかしばらくはゆっくり擦(さす)り、それを徐々に早めていった。
少年が楓の秘部を擦る度に秘部全てが弄(もてあそ)ばれる様に踊り、そのつど愛液による粘り
気を帯びた音が聞こえてくる。
その性的快感は絶頂に向け、ゆっくりと強くなっていく。楓の善がり声、お腹と腰の痙攣、狐
尾の痙攣から、強く感じているのが見てとれた。
「ひゅぐっ!」
少年は膣口に中指を、処女膜の抵抗に遭いながらもゆっくりと挿入していく。そしてGスポッ
トのありかを探り始め、それはすぐに見付かった。
この場所に触れた時、楓は明らかに違う反応を示したのだった。
少年は本格的に楓のGスポットへ手淫を与え始めた。当然、淫核の手淫も怠(とどこお)り無く
与えられている。
楓は絶頂へ向け猛ダッシュでかけていく。ここはそれほどまで強い性的快感を楓に与えてしま
う所なのだ。
「んっ、んんっ、んあっ、んあっ、あああっ……」
しばらくすると楓は頭と喉を反らせ、時々背中も反らせ、足はバレリーナの様につっ張らせて、
何かを求めるかのごとく時折動かしていた。
楓が絶頂に近づくにつれて善がり声が段々甲高くなっていく。そして狐尾が時折反応している。
少年は楓の淫核とGスポットに激しい手淫を与え始めた。ラストスパートに入ったのだ。
その間その二点を擦る度、気泡音と多量に濡れた愛液の音が鳴り響いている。
楓は頬を赤く染め、性的快感に耐えるかの様な表情をしている。
そして楓は忙(せわ)しない息づかいと激しい善がり声をあげながら絶頂に向かって登っていく
のだった。
その間お腹の辺りと腰が激しく揺れている。さらに狐耳や狐尾も頻繁に反応している。
「あっ、ああっ、んあっ、んんっ、いっ、んいっ、いっ、んいくっ!」
強烈な性的快感に、楓はほとんど言葉にできない。いつの間にか体全体に力が入るため、時折
全身が痙攣している様に見える。
楓が絶頂に達そうとする瞬間強烈な性的快感が全身を駆け抜け、痙攣させながら体を大きく反
り返らせた。そして……
「そらコンっ! フィニッシュやっ!」
「……んくっ………………んああああああっ!」
楓は悲鳴の様な甲高い善がり声をめいいっぱい上げ、そして狐尾を伸ばし狐尾の毛全てを逆立
て達したのだった。
「……逝く時コォォォォォン≠チて言わんのやなぁ」
楓の意識はそのまま暗闇の彼方に逝ってしまった様だ。
(3)
「ほにゃあぁぁぁぁ……ほにゃ? ………………………………げっ!」
楓は目を覚まして、最初寝ぼけていたが我に返ると瞬時に飛び起きた。あのエッチなできごと
は全て夢の中、つまり楓は布団に寝ていたのだった。
つまり楓の妄想ってことか?
それにしてもここにいる楓の姿は――――誰が見ても四足獣の狐、右前足の半分が白いキタキ
ツネの姿になっていた。
尾の先付近に装着している黄金色の狐宝輪(こほうりん)が正式な稲守狐であることを示してい
る。
楓は今エッチで強烈な夢に、頬(ほほ)を赤く染めつつ心の中はかなりパニクっている様だ。そ
して楓は何やら心の中でつぶやき始めた。
『やばっ! そんな勇気も無いくせにあいつとエッチする夢見るなんて……しかもすんげぇリア
ルだった……でもどうして子供で出てくるのよ? 私ってショタの気ありなの? もしかして、
私ってやばいやつ? うううぅ〜』
楓は狐耳を倒して頭(こうべ)を垂れ、心の中をブルーに染めていく。
善悪は別にして今やロリ・ショタの時代ゆえ落ち込むことは無いのだろうが、楓自身よほどシ
ョックだったらしく落ち込むしかないのだった。
「はぁ……アルバイト行くか……憂鬱だよぉ……」
それでもアルバイトをサボる訳にはいかない。
楓はただちに裸だが人間の少女へ変化(へんげ)した。かかった時間はほんの二、三秒くらい。
ただ狐耳と狐尾はそのまま残ってしまう。こればかりはどうしようもないのだが、幸いにして
普通の人には見えない様だ。
さて、裸のままでは当然まずい。そこで服を出現させようとしたが結局失敗してしまった。
毎日挑戦しているものの、これまで成功したことは一度も無いのだ。
「はぁ……今日もだめだったのね……どうして服できないんだろなぁ? 白狐を飛び越えてキタ
キツネまで戻っちゃうといい、どうなってんのよっ? この狐宝輪はぁ……」
と言って、尾にある狐宝輪を恨めしそうに見ている。楓はこのことで悩んでいたのだった。
とは言え、これはいつものことなので楓は考えるのをやめ、予(あらかじ)め準備しておいた下
着と裾が太腿まであるパジャマTシャツを着たのだった。
「うにゃぁぁ……何だか眠うぅぅ……」
楓は服を着た後も、布団に座ったまましばらくは眠そうにボーっとしていた。
しかし、これではだめだと思った楓は両手の平で両頬を軽く叩き、立ち上がったかと思ったら
「おっしゃあぁぁぁぁぁぁっ!」と、大声とともにコブシをあげて気合を入れた。
とにかく、まずは朝が弱いらしい妹を起こさなければならない。
「おい諷歌(ふうか)! 朝だぞっ起きなさいっ!」
隣には楓の、十歳くらいの妹である諷歌が眠っていた。彼女も楓と同じく狐耳と狐尾が付いて
いたが、尾に狐宝輪を付けてはいなかった。
楓は諷歌を起こすため、彼女を思いっきり揺さぶり始めた。
「うんもぉぉ……何だと言うのだ、姉御ぉぉ……」
「だから朝なんだってっ」
「ええ〜、もう朝ぁ〜…………何だか寝足りんぞぉぉぉ」
「ほら、あなたも掃き清め行くんだから起きた起きた! 早くしないと遅刻するよ?」
「分かったから……朝っぱらから怒鳴らんでもよかろう……」
楓に起こされた以上起きるしかない。諷歌は何だか面倒そうに起きると、楓の方を見た。
目はまだ眠足りないと語ってる様だが……
「………………なぁ姉御?」
「何よっ?」
「昨日の夜寝てる時だが、うなされてる様な違う様な……何と言うかその……妙な声あげてたが、
あれは何なんだ?」
「げっ! …………私、寝言を言ってた? 寝言聞こえた?」
「おう、言っておったぞ……あれは寝言と言うよりうめき声だった。すごかったぞっ!」
「あっちゃぁぁぁ……」
「メモ録機で録音すればよかったと、つくづく残念に思うぞ」
「やめてよっ」
楓は一瞬真っ白に硬直し、戻るや『ひえぇぇぇぇ! あの声、妹に聞かれたぁぁぁ!』と、心
の中で叫び泣いていた。そして顔が真っ赤になっていた。
楓は頭脳をフル回転させて言い訳を導き出そうと、必死に思考し始める。
「うぅぅんとね……いやちょぉぉぉっと怖い夢見てね……大丈夫、何でも無いよぉぉ……ニャハ
ハハハ……」
「怖い夢とな? うなされておったのか……大丈夫なのか? 姉御?」
「大丈夫大丈夫! 気にしない気にしない! だから忘れなさい……」
楓は悟られない様に両手をパタパタさせながらごまかしていたが、幸いにして諷歌は気にする
様子も無い。ただ「お、おう……」と眠そうに返事を返しただけだったのだ。
しかしながら、楓が考えた言い訳は頭脳をフル回転させたわりに陳腐(ちんぷ)な内容だった。
(4)
日差しがまぶしい七月夏の早朝、どこからともなくセミの声が聞こえてくる。
ここは都会から外れた田・畑・農家の点在する田舎町。その中心にある大狼山(だいろうざん)
の山麓に於清稲荷神社(おきよいなりじんじゃ)がある。
ここは楓達のバイト先なのだった。
「あ、楓ちゃん、おはようさん」
「ほいっ! おはようございます、沙奈さんっ!」
楓はまるで敬礼でもするかの様な仕草で、沙奈に元気よく挨拶していた。楓と諷歌が社務所の
出入口で、二人にとって先輩にあたる沙奈と出会ったのだ。
沙奈は宮司の娘で、二十三歳の正式な巫女兼事務員であった。そして稲守狐ではなく普通の人
間なのだ。
見ると、楓も諷歌も巫女装束を着ている。つまり彼女達もアルバイト巫女なのだ。
「ハハハ……朝早いってのに相変わらず元気だねぇ、楓ちゃんは」
「そう見えます? 佐奈さん」
「うん、見える見える」
「なんせ、元気が私の取り柄みたいのものなんですよ。だからたとえ演技でも元気にしとかない
と、私じゃないんですよねっ」
「いや……演技はまずいでしょ……」
沙奈は笑って言い、楓はそれを受けて照れ笑いをしている。
「姉御の言う通り、昔から姉御は馬鹿′ウ気だけが℃謔阨ソなのだよな?」
「あのね……それじゃあまるで私がアホ丸出しに聞こえるでしょ! ……てか、他に取り柄は無
いのかっ!」
「あったか? 我は知らぬぞ?」
「……てめっ!」
諷歌は言葉を放つや、してやったりとほくそ笑んでいた。
それを聞いた楓はコブシを震わせながら掲げた。そして楓の額、コブシには怒りの血管が次々
と浮かび上がっていく。
沙奈はヤバいと思ったのか、話題をそらし始めた。
「……でも……楓ちゃん見てるとてんで悩み無しって感じだね」
「いやいやいや……これでも悩みくらいありますよぉ、やだなぁ……」
「何かあるの? 悩み?」
「そっすよ……例えば……こいつの存在とか!」
「痛でっ! 痛でででででででっ! つ、つねるなっ! 痛いではないかっ!」
「か、楓ちゃんやめなさいって……」
楓は諷歌の頬をつねりつつ、後ろ頭をなでながらまるでごまかす様に笑っていた。
沙奈はあせりながら楓を制した。楓はしょうがなく、つねるのをやめたのだった。
「それに引き替え諷歌ちゃんは……朝はいっつも眠たそうな顔してるのね」
「諷歌……またも言われてるし……」
「誰が何と言おうと、我(われ)は朝とても眠いのだ……仕方あるまい?」
「諷歌っ……分かってると思うけど、眠たいからってサボるんじゃないよっ」
「分かっておるわっ!」
楓は諷歌に向かってしつこいほどに忠告を与えた。妹はうんざいりという感じの様だ。
「まぁまぁ楓ちゃん抑えて……それからね、寝ながら掃除するなんてことしちゃだめだよ、諷歌
ちゃん」
「寝ながら掃除だと?」
「それは流石に……そんな器用なことは無理ですよぉ……佐奈さん……」
楓は笑いながら否定していた。否定したものの楓は、諷歌ならやりかねないと思ったのも事実
だった。
「いやね……前から諷歌ちゃんならできそうな気がしてたのよねぇぇ……」
「できぬわっ、そんな芸当っ」
「ハ、ハハ……そう言えば、君達もう夏休みよね? 私はもう思い出の彼方になっちゃったけど、
楓ちゃんは試験終わったのよね?」
「そ、そうなんですよっ! 当たって砕けろってやつで期末試験に臨(のぞ)み、それも終わって
夏休みですよ。だから気分はもう『終わったぜえぇぇっ! 夏休みだぜえぇぇっ! べらぼぉぉ
ぉめぇぇっ!』って、海に向かって叫びたいくらいですっ! いやほんとに……」
「どうして江戸っ子で、海なのかな」
沙奈は苦笑していた。海が出たのは夏だからなのだろう。
しかし楓は突然暗雲をめぐらすがごとく、どんよりと落ち込んでしまったのだ。
「でもね……結局……当たって砕けちゃったんです……」
「あららぁぁ……」
「姉御は英語が苦手で、英語の成績悪かったとか嘆(なげ)いておったよな?」
「まさか……もしかして英語補習だとか?」
「訊かないで下さいよ……沙奈さん……」
「ハハハ……図星だったみたいね……あそっか、それも悩みって訳ね?」
「ぐすん……」
楓は肩を落としたまま涙が止まらず、それを見ていた沙奈と諷歌は笑っていたのだった。
「おぉぉぉい君達っ! なにサボってんだよっ!」
「しまったっ! 兄さんきた……」
「もしもし沙奈さん、この後厄払い祈祷しなくちゃならないんだけどね? 早くしないと依頼者
きてしまうぞっ! 君達、竹箒(たけぼうき)持って朝のお勤め早くやりなさいっ!」
突然二人の後ろから声がかかった。二人が後ろを振り向くと、竹箒を持った禰宜が少々ご立腹
の状態で立っていたのだ。
禰宜は三十歳の、宮司の次に偉い神主。当然この人も純粋な人間なのだ。
「朝から怒鳴らないでよぉ……兄さんはもぉ〜」
「おいっ!」
「痛っ! ……いったあぁぁぁぁぁ……何するのよ兄さんてばっ!」
「兄さんじゃねえっ! ここでは禰宜さんと呼べ、禰宜さんとっ……こんなこと言っちゃ不謹慎
だが、職場だぞここはっ!」
「こだわり過ぎっ! どっちだって同じでしょっ!」
「同じじゃねぇっ!」
沙奈の発言に禰宜は頭の線がぶち切れてしまい、沙奈の頭にげん骨を落としたのだった。
こうして今日も、禰宜と巫女――実態は兄と妹――のバトルが始まった。
「あ、あのおぉぉ……禰宜さん沙奈さん……この後厄払い祈祷があるから、サボってる時間無い
んじゃありませんでしたっけ? ………………んもぉぉぉこの二人、全然聞いて無いしぃ」
楓は少し不安になりつつ、忠告はしてみた。しかし案の定、このバトルが停止することはない
のだった。
「姉御よ、こういう喧嘩(けんか)を『夫婦喧嘩は犬も食わない』って言うんだったよな?」
「いや……夫婦違うから……」
楓と諷歌はただ観戦しているしかなく、二人は呆れていた。
この神社は禰宜も含め大勢でこの掃き清めを行うのだが……時折、こんな兄妹バトルから始ま
る日もある。
見ると、於清稲荷講社の人達や主典――神主見習い――の人達も集合している。そしてみんな
呆れ果てながらそのバトルを見ていた。
そしてこのバトル、この後宮司――つまり彼らの父親――が放つ一発の雷で幕を閉じるのだっ
た。
(5)
それから半月が過ぎた……
楓はある丘に立っている。暑い夏のくせに、この丘を渡る風は涼しく何だか気持ちがよかった。
ここは三田山霊園、海が一望できる広い霊園だ。
楓はちょっと歩みを止めた。見ると、展望台公園では小さな男の子と女の子が楽しそうに遊ん
でいる。『兄妹なのかな? それとも幼馴染なのかな?』そう心で呟きながら再び歩みを再開し
たのだった。
それから数え切れないほどのお墓を通り過ぎ、楓はあるお墓で止まった。
このお墓が目的だったのだ。そこには鷹羽家之奥都城≠ニ彫刻されている。
「お参りはこれで何回目だっけ? もう忘れちゃったな…………せっかくこの身一つで稲守狐と
して尋ねてきたのに、あんたが死んでたんじゃ稲守狐になった意味無いよ……」
呟いた楓は、お墓の供物台に和菓子・塩・酒・榊を供え、ロウソクを灯した。
楓が死んで間もない子狐だった頃一緒に遊んだ少年、言わば楓の幼馴染と言える少年がここに
眠っている。
だが、楓はその少年の本名を知らない。知っているのは愛称だけ……ただ忘れているのかも知
れないが……
楓はお墓の前にしゃがみ、手を合わせた。
「今日もきたよ……カッちゃん……」
もうあの楽しい時間は二度と帰ってこない。そう思うと……楓の頬を一粒の涙が流れた……
【おわり】
GJ
前回いっぱい指摘をいただきましてがんばって修正したのですが……
今はこれが限界です……すいません……
狐スキには辛い終わり方でゴメンね。
ということですみませんが、全面差し替えになります。
これは非エロ作品として作った方が面白いのではないだろうか?
何時もとは違う場所で投下しようとしている俺が通りますよ、と。
サキュバス物を投下します。内容は60KB近くとかなり長いです。
長くてウザったらしいと思ったらコテをNGにしてください。
作品タイトルとしては『少年と少女の?な関係』で。
では、次レスより投下。
ぐぽぐぽぐぽぐぽ
糠漬けに腕を突っ込み、無理やり掻き回した時のような音が
奇妙なリズムを刻みながら薄汚れたリノリウム張りの階段の踊り場に響く。
その音のリズムに併せて、股間を包む生暖かい何かが蠢き、蕩ける様な快感を脊髄経由で脳ヘ送り込んで行く。
快感に意識の大半をピンク色に染め上げられながらも、彼はぼんやりと考えていた。
―――何で、自分はこうなったのだろうか、と。
だが、彼はその自問したその答えを、とうの昔に知っていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「おねがいっ! 私の一生の頼みを聞いて頂戴!」
築30年という月日による経年劣化の為か、
壁の所々に薄っすらと罅(ヒビ)が見える何処か薄ら汚れた雰囲気を感じさせるとある高校の学生食堂。
それにも関わらず、お昼時の時間の所為か彼方此方のテーブルには空腹を満たそうとする学生で溢れかえっていた。
その片隅のテーブルで、彼――樋口 歩(ひぐち あゆむ)は空っぽになったカレー皿を押し出しながら、
テーブルの向かい側――彼にとっては目の前の席に座る、歩に向けて手を合わせて頭を下げる少女を眺めた。
――遠藤 久実、歩とは別のクラスに1週間ほど前に転校してきた少女。
身長は歩とほぼ同じ、スレンダーな体型に前髪にシャギーの入った黒のショートカット、
そして何処か猫を思わせるパッチリとした双眸が特徴の美少女で、
その上、性格も明るく快活とあって同級生の男子の間での人気が急上昇中。
と、歩は自分の脳内データベースから、目の前の同級生の女に関する情報を引っ張り出した。
だが、それ以上の事は、生憎、歩の脳内データベースには収まってはいなかった。つまりは良く知らないという事だった。
まあ、転校生な上に、別のクラスの人間という希薄な関係である以上、それくらいしか知らないのも当然なのだが。
無論、今の今まで歩が久実へ話し掛けた事も無ければ、久実も歩に対して勧んで話しかけた事も無かった筈である。
――なら何故、そんな希薄な関係でしかない自分に対して、
久実はわざわざカレーを奢ってあげる、などと言い出した挙句、自分へ一生の頼みとやらをするのだろうか?
歩はその理由を暫し少し考えた。しかし、納得できる結論は思い浮かばなかった。いや、思い浮かぶ筈も無かった。
取り合えず考えるに窮した歩は、コップのお冷をひと呷りした後で目の前の少女へ問い掛ける事にした。
「一生の頼みって……なんで俺だよ? つか俺じゃなくても同じクラスの連中に頼めよ」
「いやぁ、同じクラスの子に頼むのもなんだし、それに歩君は見た感じ、
女の子の頼みを断れ無さそうだなーっと思ったから」
「……帰る」
「ちょ、ちょっと待って待って待ってって!?」
あっけらかんと答えた久実に、付き合ってられないとばかりに席を立とうとする歩。
が、慌てた久実が歩のシャツの裾をがっしと掴まえ、歩のシャツが伸びるのも構わず強い力で引っ張られた事で
歩はつんのめる形で足を止めざるえなかった。
「じょーだんだって、じょーだん! ね? だから帰らないで頂戴!」
「冗談にしても、言って良い冗談と悪い冗談がある。そしてあんたの言ったのは悪い方だ」
「悪かった、その点は本っ当に悪かった!
本当はそうじゃないから話を聞いて頂戴! カツカレーを奢ってあげたんだし!」
「……じゃあ、そうじゃないとすれば本当はなんだよ……?」
立ち去る事を諦め、仕方なく座り直した後で半眼で聞き返す歩に、
久実は妙に真剣な面持ちで歩へ顔を寄せると、囁くように耳打ちする。
「歩君なら……秘密を守ってくれそうだと思ったのよ」
「は……?」
思わぬ言葉に、目を点にして間抜けな声で疑問符を漏らす歩。
その歩の様子に構う事無く、彼女は周囲に少し気を配りながらひそひそと話を続ける。
「私の頼みと言うのはね、それこそ余り人には知られたくない問題なの、
しかも、その問題と言うのが…私一人だけでは解決の出来ない厄介な物な訳よ。
まあ、それで……その、口が硬そうで尚且つあんまり友達が居なさそうな君に頼む訳、分かる?」
「そうか……分かった」
口が硬いのは分かるが友達が居なさそうは余計だ、と胸中で呟きつつも、歩は取り合えず頷いた。
――とはいえ、別に歩は納得して頷いた訳ではなく、
ただ単に学生食堂で一番高いメニューであるカツカレーを奢ってもらった以上、
このまま話も聞かずに帰るのもなんか悪い気がすると思っただけである。
だが、その歩の心境を知ってか知らずか、久実はにぱっと笑顔を浮かべて、
「それじゃ、ここで話すのもなんだし、後の話は学校が終わった後で、私の住んでるアパートに来て話さない?」
と、恐らく自分の家がある方向を適当に指差し、彼女は言った。
* * *
「んじゃ、好きな所に座って頂戴」
それから時刻は放課後を少し過ぎた辺りに移り変わり。
学校近くのアパートの一室、ピンク色を多く使った何処か女性らしさを感じさせる内装の部屋で、
訪ねて来た歩を出迎えた薄手のカーディガンにミニスカートの私服姿の久実が、部屋の床の適当な所を指差し、
部屋に上がった歩に座る様に促す。
「……なら、ここで……」
初めて来た女性の部屋の空気を前に、歩は僅かに躊躇した後、
取り合えず、床に転がっていたやたらとファンシーな柄のクッションの上に腰掛け、
ベッドに腰掛けてにこにこと笑顔を浮かべる彼女に向けて問い掛けた。
「で、早速で悪いんだが、俺に頼みってなんだよ?
言っとくが、俺は力仕事には向いていないと思うんだがな……」
言って、歩は視線を下に向け、やや草臥れたシャツ越しに自分自身の少し貧相な身体を見やる。
――歩はそれなりに自分の体の事は分かっていた。
数年前、家族の引越しを手伝った時、引越し業者が手際良く箪笥などを運んで行く中。
自分も何かやろうと小さめな戸棚や荷物の入ったダンボールなどを家からトラックまで運んだ結果、
翌日は酷い筋肉痛で寝こんでしまった事を思い返す。
その事もあって、歩は自分には力仕事は無理、と言う事をはっきりと自覚していた。
だが、それでも彼女は男手と言う事だけで自分に頼もうとしているかもしれない、と言う予測を立てて、
歩は久実に向けて更に付け加える様に言う。
「まあ、そう言う訳だから。もし力仕事を頼むつもりなら、悪いけど俺じゃ君の期待には……」
「大丈夫大丈夫! 私の言う頼みってのは、ちょっと体力使うけど力仕事とは違うから心配しないで」
と、歩の言葉を遮って、久実が否定の意味か平手をぱたぱたと左右に振りながら答える。無論、その笑顔は崩さない。
その笑顔の否定に、何処か怪しい物を感じた歩は半眼になって問う。
「体力を使うけど力仕事じゃないって……なら、その頼みってのは一体なんだよ?」
「んー、そうね……」
何処かもったいぶった様に、そして焦らしている様な感じで彼女が天井の方を見やった後、
おもむろに歩の方に向き直り、彼女はまるでお隣から醤油を借りるような軽いノリで頼みを言った。
「頼みってのは、歩君に私のゴハンになって欲しいって事なの」
…………。
一瞬、歩は目の前のベットに腰掛けている同級生の少女が言っている意味が理解できなかった。
無論、彼は即座に、『私のゴハンになって欲しい!』と言うのは別の意味の言葉である可能性も考えたのだが、
幾ら如何考えても、彼女の言った言葉はその言葉通りの意味でしかなく、
彼の困惑をよりいっそう深める結果になるだけでしかなかった。
だが、何時までも困惑している訳にも行かなかったので、歩は恐る恐るであるが言葉の意味を聞く事にした。
「え、えっと……ゴハンになって、って如何言う意味だ?」
「んー、まあ、言った通りの意味、と言えばそうね」
「……つー事は、あんたは俺を食べたいってか? ひょっとして人肉が主食!?」
言って、何処か恐れる様にひっ、と口から漏らしつつ後ろへ身を引く歩。
その様子に久実は手を縦にひらひらと振って苦笑しつつ、
「違うわよ、流石にこんなかわゆい娘さんが人を頭からバリバリ食う訳ないじゃない」
「自分でかわゆいって言うなよ……」
「いーじゃない、私は本当にかわゆいんだから。 と、それはそれとして、私が食うのは専ら精の方なのよ」
「精?」
更に言葉の意味が掴めず、歩は思わず首を傾げる。
その反応を、彼女は説明を求めた物と受け止めたらしく、
何処か得意げに、かつ、捲くし立てるように話し始める。
「精、といっても精力の事じゃなくてね、まんま男の人の精液なのよ。
そう、子種とか呼ばれてるおちんちんから出るどろどろとした白い液体の事、
歩君もオナニーをした事あるなら知っているでしょ?」
「あ? あ、ああ……」
さり気に彼女からとんでもない事を言われたような気もするが
捲くし立てる様に言われた所為で、突っ込む事も出来ずに思わず相槌を打ってしまう歩。
「で、私はその精液を糧にして生きているのよ。何たってサキュバスなんだし。
それで、私の為に精を提供して欲しいなーって歩君に頼む訳」
「…………」
一瞬、歩はどう返せば良いのか分からなかった。
しかし、ずっと黙っている訳にも行かなかったので、先ずは疑問に思った事を口にする。
「……なんか、色々と聞き捨てならない言葉が出てきたが、
一応、それはそれで置いとくとして、尤も気になった事を聞くけど、その、さきゅばす、ってのは……マジか?」
「うん、マジよ」
「…………」
にっこりと笑顔で即答する久実。それを前に、歩は聞いてしまった事を激しく後悔した。
サキュバス――サクブスともサッカバスとも呼ばれる、一部の嗜好の人の間では言わずと知れた悪魔の一種。
実の所、サキュバスは悪魔ではなく、本来はとある地方の地母神だったりするのだが、
キリスト教の布教の際、一神教であるキリスト教にとって不都合な他の宗教の神を悪魔扱いした事が元となっており
今となっては、その手の業界ではお手軽なエロキャラとして便利な存在と扱われ、意外と知名度は高い。
……無論、歩の知る限り、サキュバスなんてのは現実に存在する筈の無い、想像上の産物である。
しかし、自分自身をそのサキュバスだと思いこむ様な酷い妄想癖をまさか転校生の少女が持っているとは……。
幸い、その事を知ったのが彼女とは余り関わりの無い自分だから良かったが、
これをもし、彼女に好意を擁いている人間であれば、かなりの割合で幻滅する事は間違い無いことだろう。
そう、歩は僅かに頭痛がわき上がり始めた頭でぼんやりと考えた。
「ちょっと、その顔!」
しかし、その思考はどうやら無意識の内に表情に出てしまっていたらしく、
それを見咎めた久実は眉根を寄せて歩へ詰め寄り、彼の眼前までその不機嫌そうな顔を目一杯に寄せて、
「なーんか私の言ってる事が只の妄想だとか思ってる顔ね!」
「いや、それわその……」
「分かったわ! なんだったら今から証拠を見せてあげる! 私がサキュバスである証拠をね」
何とか誤魔化そうとする歩の言葉を遮り、彼女が叫んでがばぁっ、と立ち上がると、
その場で両手を広げ、目蓋を閉じると口から何か呪文のような言葉を小さく漏らし始める。
「なっ……!」
そして――唐突に空気がザワリと震えると同時に、彼女の耳が長く尖り、その耳の上から山羊を思わせる角が生え、
更に腰から鏃の様な先端を持った黒く長いしなやかな尻尾が生え、生え切った事を確認する様に左右に振られる。
そんな目の前で起きる酷く現実味の無い光景に、歩が驚きの声を上げようとした矢先。
びりびり
「…………」
久実の背中の方から何かが破ける嫌な音が響き、その動きが硬直した。
数瞬ほどの間を置いて、ようやく我に帰った歩が何事かと、硬直している久実へ恐る恐る問い掛ける。
「ど、如何した……?」
「うう……翼が引っ掛かって服が破けた……」
と、縦長の瞳孔と言う人に在らざる物となった紅の双眸に涙を浮かべた久実が、その場にがっくりとしゃがみ込む。
見れば、彼女の着る薄手のカーディガンの背中の辺りが縦にざっくりと裂け、其処から蝙蝠を思わせる翼が生えていた。
恐らく、翼を生やした際、その翼に付いたかぎ爪が服の生地に引っ掛かって破けてしまったのだろう。
「……お気に入りだったのに……うう、服脱いでからやりゃ良かった、私の馬鹿……」
「…………」
それは彼女にとってかなりショックだったらしく、その場でしゃがみ込んだまま、絨毯に『の』の字を書き始めていた。
歩はその様子を前に、久実が人外であった事への驚きの感情よりも、何だか遣る瀬無い感情を感じて仕方がなかった。
「ま、まあ、そういう事もあるって……」
とりあえず、流石に見ていられなくなったので、
歩がしゃがみ込む久実へ手を差し出し、何か話し掛けようとした矢先、
「こ、これくらい何よ! 服が破けたんだったら縫えば良いだけの話じゃない!
こんな些細な事でいじいじ挫けている前に、私にはもっとやるべき事があるのよ、うん!」
何だか勝手に自己完結したらしく、久実はやおら立ち上がると顔の前で握りこんだ拳を震わせて言う。
そして、歩が差し出し掛けた手を彼女ががっしと掴むと、細腕の割に意外に強い力でベットの方へ引っ張る。
「ほら、ぼうっとしている暇は無いわよ! さっさと服を脱いでベッドに横になって頂戴!」
「いや、あの……」
いきなりの行動に思わず口篭ってしまう歩だが
どうやら久実は歩が躊躇していると取ったらしく、むっとした表情を浮かべると、彼の服に手を掛ける。
「あーもうっ! 躊躇しているんだったら無理やり服を破いてでもやっちゃうわよ! それでも良いのっ?」
よくよく見れば、彼女の指先の爪が異様な長さに伸びており、彼女が力を込めればあっさりと服を破りそうな感じがした。
「わ、分かった、分かったから服に爪を掛けて力を込めないでくれ! 自分で脱ぐから!」
「うん、分かれば宜しい」
流石に服を破かれたくなかった事と、人外の双眸に闘志の炎を燃やした久実に対して妙な迫力を感じた事もあって、
歩は仕方なく了承すると、一人頷く彼女に背を向け、その場で服を脱ぎ始める。
……本当はこんな事はしたくない気持ちで一杯だったのだが、
今なお背後に突き刺さる彼女の視線がひたすら恐ろしく、素直に命令に従わざる得なかった。
「えっと、これで良いかな……?」
シャツを脱ぎ捨て、そしてズボンも脱ぎ捨て、トランクス一丁の姿となった後、彼は言われた通りにベッドに横になる。
その様子をじっと見ていた久実が、何処か不機嫌そうに歩のトランクスを指差し、
「そのトランクスもよ」
「……ヘ?」
「さっさと脱ぐ! と言うかもう待ちきれないから無理やり脱がーすっ!」
「ちょ! おま!?」
歩の浮かべた疑問符を無視し、翼を広げた彼女が獲物を襲撃する猛獣の様にベッドの上の歩へ飛び掛ると、
慌てる歩の両手を手際良く片手で抑えつけ、空いた片手でトランクスに手を掛けると一息にずり下ろし脱ぎ取る。
そして、露出した歩の股間をじっと見やり、何処か残念そうに呟きを漏らした。
「んー、流石に縮こまちゃってるかー……やっぱいきなりじゃ駄目だったかしら……?」
「……ううっ、御無体な……」
同級生にまじまじと股間を見られる羞恥の余り、歩は抑え付けられたまま涙混じりに呻く。
無論、こうなるまでに歩は何度か自分の上に跨る久実を振り払おうとしたものの、彼女の力が意外に強い上、
身体に触れる彼女の太腿の柔らかく暖かくそしてすべすべした感触と、彼女から漂うほんのりと甘く蠱惑的な香り。
それらが歩の思考を容易く掻き乱し、思う様に力を生み出せない状態に追いやっていた。
「まあ良いわ、縮こまってるなら起たせるまでだし」
「へ?―――んぅっ!? むーっ!?」
久実の言葉に歩が疑問に思う間も無く、歩の唇にそっと顔を寄せた久実の唇が重ねられる。
思わず離れようとした歩を逃がさない様に、歩の頭に両手を回して抱き締める様に固定し、
その後で下唇、上唇の順に舌先でねっとりと舐め回し、じっくりと愛撫してゆく。
その異質な感触と迸る快感によって、彼が思わず口を緩めた所で、彼女がすかさず舌を口内へ差し入れ、
歯茎の粘膜や頬の裏側の感触を味わう様に、そのぬめった舌先を滑らせ撫で回し、念入りに愛撫して行く。
ちゅ…ぢゅう……ぢゅるるるっ、ぢゅうぅぅ……
更に口内に侵入した久実の舌が、歩の舌へ到達するなり、
獲物へ襲いかかる捕食者の様に、瞬く間に歩の舌へ絡み付いて吸い寄せ、
舌先から根元にかけてねっとりと愛撫する事で、久実の長く淫猥な舌の感触を歩の舌全体に味あわせる。
ぬめり、ざらつく感色が口内で蠢く度に、歩の意識は着実に快感に支配されて行く。
「んっ、ふぅっ……んん」
更に、彼女は僅かに頭の角度を変える事で、歩の口を咥え込むまでに顔を密着させると
その長い舌を、歩の口内のより奥へと侵入させ、口腔全体に自分の唾液を擦り付ける様に、
粘膜全体へ自分の舌の感触を刷り込む様に、舌を歩の口腔を縦横無尽に蠢かし、
歩の唾液を吸い出し、代わりに彼女の甘ったるい唾液を送りこんでゆく。
「んふっ……ふ……」
「あ……」
やがて、歩の表情が陶然とした物に変わった所で、
久実は唾液の糸を引かしつつ唇を離し、紅く輝く双眸で放心する歩を見下ろして、舌なめずりをしながら囁く。
「ふふっ、如何かしら? 私のキスの味は」
「…………」
歩は何も答えられない、それだけ久実の――否、淫魔のキスは凄まじかったのだ。
だがしかし、そんな放心する主に代わって、歩のペニスは真っ赤になって怒張する事でその喜びを大いに表していた。
それに気付いた久実は淫靡な笑みを浮かべると、怒張している歩のペニスへそっと手を伸ばす。
「どーやら効果覿面みたいね。よかったよかった」
「―――ひぃっ!?」
唐突にペニスを襲った柔らかくすべすべした久実の掌の感覚によって、
放心していた歩の意識は一気に現実に引き戻された。
その様子に気を良くしたのか、彼女は何処か悪戯っ子のような笑みを浮かべ、
彼の耳元へ囁きながら歩のペニスを更に撫で繰り回す。
「ほら、この程度で放心してちゃ駄目よ。これから、君にはもっと凄い事するんだから」
「あふぁっ!? ひうっ! あぁぁっ!?」
柔らかい掌ですりすりと亀頭を撫で回したかと思えば、雁首を優しく握りこみ、
更に片手で竿を扱き上げながら、もう片方の手の指先で鈴口の辺りをくりくりと弄繰り回す。
飽くまで強い刺激を与えず、じわじわと快楽を与え、
念入りに、そしてじっくりと獲物を確実に昇り詰めさせ、追い詰める淫魔の責め。
凄まじい快感に嬌声を上げ、身を捩じらせる歩を見下ろしている内に、久実も興奮してきたのか、
彼女の表情が次第に上気した物に変わり、捕えた獲物を前にした猛獣の様に舌なめずりをする。
「ほらほら、一人でオナってるよりずっと気持ち良いでしょ?」
「あがっ、ああ、うぁっ…くぅっ!」
その責めを前に、歩の意識は瞬く間に快感に染め上げられ、
ペニスはこれまでに無い位に怒張し、びくんびくんと脈動し始める。
それに気付いた彼女が あ、と言わんばかりの表情を浮かべ、慌ててペニスを責めていた手を止め、離す。
「――と、危ない危ない、反応が面白過ぎてつい調子に乗りすぎちゃったわ。
こんなところで射精させて如何するのよ。後ちょっと気付くのが遅れたらかなり勿体無い事になってたわ……」
「……う、あ……?」
再度、快感によって放心しながらも、歩は突然責めが止んだ事に疑問符を浮かべる。
「よっと、ちょいとごめんね、変に動かれると困るし」
「ふむぐっ!?」
その間も無く、馬乗りの状態から立ち上がった久実が、歩の顔面に自分の股間を押し付ける様に腰を下ろし
所謂シックスナインの体勢となると、そのまま歩のペニスへ上気しきった顔を寄せる。
柔らかな尻肉と如何言う訳か濡れているパンツに顔を圧迫される息苦しさに、彼がくぐもった抗議の声を上げるものの、
彼女はそれを一切気にせず怒張した歩のペニスを前に、まるで朝ご飯を食べる前の時の様に合掌し、
「んじゃ、いただきます」
言って、徐(おもむろ)に歩のペニスを咥え込んだ。
「むっ、むぐぐぅぅぅぅぅぅぅっ!?」
言葉と共に、再びペニスから押し寄せた甘くも激しい快感によって、快感で陶然とした歩の意識は一気に覚醒された。
竿の真中辺りを軽く締め付ける、温かい上に柔らかくぬめった感触の物体は、恐らく彼女の唇。
更に亀頭にねっとりと纏わり付き、ざらざらとした弾力のある感触を与える物体は彼女の舌であろう。
雁首の裏側をなぞる様に舌先が動くと同時に、亀頭に纏わり付いている部分がうねる様に蠢く、
そして雁首の裏側をなぞり終えると、今度は蛇が棒に身体を巻き付かせるに長い舌を動かし
歩のペニスへ螺旋状に舌を巻き付かせ、ペニス全体に唾液に濡れた舌の感触を味あわせて行く。
そしてある程度、歩のペニスの真中辺りに来た所で巻き付く舌の動きを止めると
今度は逆方向に舌を引かせ、竿に唾液を塗り付けながら、巻き付かせた舌を解いて行く。
「んぐぅっ! ぐぐうっ!」
ペニスの表面を這い回り、カリ首や裏筋、鈴口などの敏感な部位を責め弄る熱くぬめったざらつく感触
両頬を挟みこむ柔らかな尻肉の感触、濡れたパンツの布越しに感じる女性器の柔らかさと体温、
女性器から発せられる蒸せ返る様な甘い体臭、それらに意識を侵されつつも、歩は止めてくれとばかりに声を上げる。
だが、どうやら久実は歩の声に対して全く聞く耳は持ってはおらず、
その責めを止めるどころか、片手で竿を上下に扱き始め、もう片方の手で陰嚢を優しく揉み上げ
更に舌先を鈴口に這わせ、2度3度、尿道を広げる様に捻り込み、尿道の粘膜を刺激する。
「んふっ、はひはひりはへへひは、おいひい(先走りが出てきた、美味しい)」
「むぐぐっ! ふぐぅっ!」
刺激を受けて、次第に溢れ出した先走りを舐め取った彼女が感想を漏らすと、
ペニスを口内へ咥えこみ、軽く甘噛みしながら溢れ出る先走りを味わう様に亀頭に舌を這わせる。
その際、久実がペニスを口に含んだまま喋った事で、ペニスに纏わり付く舌がより複雑に蠢き、歩をより追い詰める。
先走りの味が(久実にとって)よほど良かったのか、嬉しそうに振られる彼女の尻尾が歩の視界の端で見えたが、
意識を侵しつつある快感に喘ぐ今の彼に、それを気にしている余裕は殆ど無いと言って良かった。
「うグっ…んううっ、ぐぅぅぅ!」
ペニスに纏わり付き波打つ様にうねる舌、ペニスの両側を撫でる両頬の粘膜、刻折コツコツと亀頭に当る彼女の歯、
陰嚢を優しく揉み上げ、竿を緩急付けて扱き上げるすべすべとした温かい彼女の掌
グリグリと押しつけられるパンツの布越しに感じるじっとりと濡れ始めた女性器、それによって一段と強まった甘い体臭、
それらが一体となって、歩へ断続的な快感と強烈な性的興奮を与えてゆく。
次第にペニスは膨張すると共に脈動が強まり、その速さを増して行く。歩はもう限界だった。
それを察した久実は歩のペニスを口内の粘膜でキュッと挟み込み、動かぬ様に固定すると、
「んー、ひょろひょろへんはいへ? んひゃ、ほほめ!(そろそろ限界ね? んじゃ、とどめ!)」
――そのまま一気に吸い上げる!
「んぐっ――ぐぐぅぅぅ!……ぐぅぅっ!!??」
凄まじい快感が歩の限界を突き崩し、
今まで感じた事の無い悦楽が身体を駆け巡る感覚を感じながら
一際大きな呻き声をあげると共にビクリビクリと身体を震わせ、久実の口内へ熱い滾りを解き放った。
精液を吐き出すべくペニスが脈動する度に歩は凄まじい快感を感じ、何処か嬌声を混じらせた呻き声を上げる、
「……んぐっ、んんんっ、んふ、ん、ん、んっ」
「ぐぅっ、ううっ、ぐむぅぅっ! ぐぅぅぅっ!!」
口内に噴出する精液に、久実は顔をしかめるどころか、双眸に愉悦の笑みを浮かべ、
舌を巧みに操り、噴出する精液を受けとめ、あるいは吸い上げ、喉を鳴らして精液を嚥下して行く。
久実が亀頭に舌を這わせ、鈴口からストローの様に精液を吸い上げられる度に、
歩は体の奥底から何かが吸い出されるような強烈な快感を味わい
よりペニスを猛らせ、ドクリドクリと脈動する様に精液を解き放っていった。
「………ふう、ご馳走様でした、と」
そして、歩にとって狂おしいほどに長く続いた射精の後。
久実はようやくペニスから顔を離したのか、ふっと、歩の顔を圧迫させていた臀部を離し、側へ座ると、
尿道の残滓まで吸い上げられた凄まじい絶頂の余韻と、
顔を股間で塞がれ酸欠になり掛けた事で、荒い息を漏らすだけとなったベットの上の歩に向けて
「思った通り美味しかったわよ、歩君の精液」
言って、今まで見せた事の無い妖艶な笑みを浮かべ、見せ付ける様に口内に残った歩の精液を飲み込んで見せる。
その様子に歩は一瞬だけ見蕩れたが、なんとか気を取り直し、荒い息の合間をぬって久実へ問い掛ける
「……な、なんで…俺に、こんな事を……?」
「何でって、何が?」
きょとんとした表情を浮かべ、逆に聞き返す久実。
「いや……だから、やった後で言うのもなんだけど……君は、なんで俺を選んだのかが気になるんだが……」
「ああ、その事ね」
歩の言葉で久実はようやく合点がいったのか、ポンと手を打つと
「簡単に言っちゃえば、私から見て歩君が美味しそうに感じたからよ」
「美味しそう?……俺が?」
「まあ、ちょっと端折って説明するとね、
私達サキュバスには、人間には無い超感覚で人間の纏う気を感じとる事で、精の味を”見る”事が出来るのよ。
例えば、あの人間は味が薄そうだ、とか。あの人間は後味がしつこそうだ、とか……。
普通はそれを参考にその場の気分に応じて、ある程度は妥協して獲物を決めるんだけどね」
「ああ……」
「で、私達サキュバスにも人間と同じ様に個人的な嗜好って物があるんだけど。
人間とは違って、サキュバスが自分の好みの味に出会えるって事は本当に稀でね、
それこそ100年捜し回ってやっと見つかるか如何か、な位に貴重なのよ。分かる?」
「……えっと、という事は?」
半分ほど意味が掴めぬまま聞き返す歩に、久実は何処かやれやれと言いたげなジェスチャーを取り、話を続ける。
「言ってしまえば、歩君は私にとって凄く好みな味をしている人間だったって訳
もう、君を最初に見た時なんか本当に大変だったわよ?
何せパンツがあっという間にアソコから溢れ出た愛液でぐしょぐしょになっちゃったもん、
その溢れた汁とか匂いとかが他の生徒や先生に気付かれて無いか、ずっとヒヤヒヤ物だったわ」
「………つー事はなに? 俺は……君にとって大好物のおかずみたいな物なのか?」
「んー、まあ、そう言う事になるかしら?」
「……それで、ゴハンになって欲しいってのは、そう言う意味での事だった訳か?」
「うん、ご名答!」
歩は瞬時に判断した。よし、逃げよう。今直ぐ逃げよう。これは逃げた方が良い。
今、自分の側にいる少女は、いわば人間にとって捕食者といえる存在なのだ、しかも一度搾られたばかりだ。
このまま放っておけば、自分はこの人外の少女に食料的な意味で喰われてしまう。
最悪、ミイラ化と言う普通では有り得ない死に方を遂げる事になるやも知れない。
無論、そんなのは御免だ。やりたい事は沢山あるし、行って見たい所もある、まだまだ死ぬ訳には行かない。
そう思った彼は、即座に立ち上がってその場から逃げ出すべく、身体に力を込める、
「だ か ら 今、ここで逃げられる訳には行かないのよね!
ここで逃したら、何の為にカツカレーを奢ってまで誘ったかが無意味になるんだし!
しかも、お気に入りのカーディガンも駄目にしたんだから尚更よ!」
だが、どうやら逃げようとしていたのが既に気付かれていたらしく、
歩が立ち上がろうとした所で、久実が飛び掛るようにして歩に馬乗りになり、ベットに抑えつける。
見れば、彼女の額には青筋が浮かんでおり、彼が逃げ出そうとした事に対して久実が不機嫌になったのは明白だった。
当然、色々な意味での恐怖に駆られた歩が悲鳴混じりに懇願の声を上げる。
「や、やめてくれ! お、俺はこんな若さで死にたくないぞっ!
まだ学食のメニューも完全制覇出来てないってのに、こんな所で殺されたくは……!」
「――って、ちょっと待ちなさいよ!」
それを遮って、表情をより不機嫌な物に変えた久実がずいと顔を詰め寄らせ、歩へ怒気混じりに問い掛ける。
「なんでいきなり死ぬとか殺されるとか言う話になる訳? 訳分からないわよ!」
「え、いや、それは……」
「ひょっとして、私に吸い殺されるとか思った訳?」
口篭もった所で、久実に答えを言い当てられ、歩は思わずコクコクと頷いた。
それを見た久実は、歩に馬乗りになったまま何処か疲れた感じにかぶりを振りながら深い溜息を付くと、
「あのね、何処の漫画か映画を見て思い込んだのか知らないけど、
この、人間のうら若き少女として青春を謳歌しようとしている私が、
同級生の生徒を吸い殺すなんて、常識も節操も恥も外聞も蔑ろにした真似なんてする訳無いじゃない」
「いや、でも……」
「そりゃあ、歩君が思っている様に、
私の同族の中には、相手が死ぬまで吸い尽くす人だって居るかもしれないわ。
でも、それは今じゃ少ない方よ。だって、人間社会の中で人間に紛れて生活する以上、
そんな事すれば当然、人間社会に溶け込む同族達の間からは厄介者として爪弾きにされるし、
場合によっちゃ最悪、お尋ね者としてその手のコワイ人に追い掛け回される事だってありうるわ。
無論、私はそんなすさんだ生活なんて御免よ」
「そうなのか……」
歩は一瞬、その手のコワイ人ってなんだ? と言う疑問が脳裏に浮かんだのだが、
ここで迂闊に話の骨を折るような事を聞くと、久実が余計に不機嫌になりかねないと賢明な判断を下し、適当に頷いた。
が、その頷きを納得した物と受け取ったらしく、久実はイイ笑顔を見せて言ってくる。
「まあ、そう言う訳だから、安心して私に精を献上して頂戴。悪い様にしないから」
「安心できねえよ!」
「なんでよ! 別に精液の2、3発くらい献上したって死ぬような事になる訳ないのでしょ?
……ひょっとして、歩君はカブトムシの雄みたいに一回交尾したら直ぐに死んでしまうようなヤワな身体な訳?」
「いや、そう言う訳じゃなくて……」
いって、歩は何処か恥ずかしそうに顔を赤らめて、もぞもぞと言い出す、
「あの、アレだ、俺達はまだ高校生なんだ。そう、まだ若いんだ、だからそう言うのはまだ……」
「―――要するに、歩君はまだ童貞って訳ね?」
「ぐはっ!?……ストレートに痛い所を突かれた……!」
言葉を途中で遮って久実が言った歯に衣着せぬ痛烈な一言に、歩は思わず痛恨の呻きを漏らした。
その様子を見てうんうんと一人頷いた後、久実は酸いも甘いも知った女の笑みを浮かべ、歩へ囁く。
「ふふっ、だったら尚更安心して頂戴、この私が、歩君の童貞を心地よく奪ってあげる。
そう、何もする必要は無いわ、ただ、私に身を任せるだけで良いのよ」
「……なんだかその言い方って、どこぞの怪しい宗教のエセ教祖みたいな喋り方だな……?」
歩が何気に言った言葉に図星を突かれたのか―― 久実は一瞬だけうっ、とうめいた後、
「ああっ、もう! 一々うだうだ言っちゃってくれて! 本っ当にじれったいわねっ!!」
いきなり顔色を変えると、久実は癇癪を起こした様に叫ぶ。
普通なら、ここまで魅了すれば男の方から行為を望む筈なのに、歩の場合はこれである。
どう言う風に魅了しても、なんやかんやと渋って嫌がって、全然思う通りに動いてくれない。
彼女が癇癪を起こすのも当然だった。
「こうなったら無理矢理にでも犯してあげるわよ! と言うか私も限界!」
「え、ちょ、おい!」
そのまま歩が声を上げるのも無視し、久実は歩の下腹部の辺りで膝立ちをすると
カーディガンの裾に手を掛け、完全に破けて駄目になるのも気にせずに一気に脱ぎ去り、ベットの側へ放り捨てる。
「あ……」
それを前に、歩は動揺し、思わず間抜けな声を漏らす。
そうなってしまうのも当然の事だった、どうやら久実は下着の類を一切身に付けて居なかったらしく、
無駄な贅肉と言うものが存在しない引き締まった腹部。くびれが芸術的なラインを描く腰回り。
その腰から続く僅かに浮いたあばらがより淫靡さを強調させる胸回りに
思わず貪り付きたくなるような、ツンと上に張った釣鐘型の小ぶりな乳房がぷるんと震える。
それはある意味、完成されたと言っても良い均整の取れた健康的な少女の身体、
今まで様々なメディアで女性の身体を見た事のあった歩でも、それを前に見上げるような形で釘付けとなってしまった。
「あーもう、パンツもベトベト、後で洗わなくちゃ」
そんな歩に気に掛ける事無く、久実は更にミニスカートの下のパンツに手を掛けると、これもまた一気に脱ぎ捨てる。
パンツを脱ぎ捨てた際、股の辺りからぬめりのある液体が糸を引いて離れ、甘い香りを周囲へ振りまく。
その匂いに惹かれる様にその辺りを見た歩は、驚きのままに更なる呟きを口から漏らす。
「うあ……はえて、無い……」
パンツと言う邪魔が無くなり、外気に晒された久実の秘所は陰毛が一切生えておらず、
その割れ目のやや赤味がかった桃色の陰唇の内側に僅かに見える、愛液まみれの淫穴が刻折ヒクヒクと艶かしく蠢き、
其処から溢れ出した愛液が、つつっと糸を引いて滴り落ち、彼の下腹部を濡らしていた。
その途端にその強さを増す甘い香り、どうやらこの甘い香りの大本は久実の愛液だったらしく、
直にそれ嗅いでしまった歩は、心臓の鼓動がどくんっ、と高鳴る感覚を感じると共に、ペニスをより怒張させてしまう。
それを見て取った久実は双眸を愉悦の形に歪め、愛液を滴らせる秘所へ両手を添えると
「ふふ、今から君は、私のここに精液をタップリと献上するのよ? 良いわね?」
言って、両手の指先で陰唇を割り開き、その内側に隠れていた淫核と淫穴を歩へ見せつける。
その際、広がった淫穴の内側をみっしりと覆い尽くす肉襞と肉疣が、
目の前の獲物を求める様にウネウネと蠢いて見せる。
同時に、陰唇を割り開いた事で、口を大きく広げた淫穴から溢れ出る愛液の量が増し、
歩の下腹部はおろかペニスの根元辺りまでをもヌルヌルに濡らし、強さを増した淫臭が歩の思考を奪う。
「あ、ああ……」
うめく様に答えた歩に、久実がくすり、と笑いかけると股の間に歩のペニスの先端が行くよう、僅か後方に腰をずらす。
そして、そっと歩のペニスの根元を掴むと、その先端を愛液を滴らせる秘所へあてがう様に腰を下ろす。
ぶぢゅ、と何とも形容しがたい粘った水音と共に、亀頭の先端に非常に柔らかく温かい粘膜が触れ、愛液が伝い落ちる。
その初めての感触に、歩は戸惑いと動揺と、そして僅かな歓喜を入り混じらせた声を上げた。
「うぁ! なっ、ちょ、やめっ!」
「それじゃ、歩君の初めて、頂きます」
だが、久実は歩の声を意に介せず、ゆっくりと腰を沈め始める。
先ず、柔らかい入り口が僅かに広がり、歩のペニスを内部へ飲み込み始め、
その中の、粘液にぬめる襞にみっしりと覆われた柔らかな内壁が、ペニスを更に奥へ飲み込むべく蠕動を行い、
幾重にも重なった肉襞が、歩のペニスの亀頭やカリ首、竿を撫で上げ、粘液を擦り付けながら通り過ぎて行く。
「あっ、かっ…はぁっ!?」
その凄まじい感触を前に、歩の意識は瞬く間に快感に染め上げられ、痺れるような感覚が腰の奥を渦巻き始める。
一度射精したにも関わらず、彼のペニスは早くも久実の胎内で張り詰めるくらいに膨張し、熱く脈動を始める。
(なっ、こ、これがっ、彼女の…中なのかっ!? 凄まじ…過ぎるっ!!)
そう、今、歩のペニスが飲みこまれているのは、精液を搾取する為に特化した魔膣なのだ。
例え、それが挿入しただけであっても、先程まで童貞であった彼が耐えられる筈が無い。
そして、亀頭が膣の奥の方にある、無数の肉疣に覆われたざらざらとした内壁に包まれたと同時に、
歩はあっさりと限界を向かえた。
「あぁっ、くっ、でっ、でるっ、あぁぁぁぁぁぁっ!!」
「あっ、早速来た! 歩君の精液がどくどくって出てるっ! 美味しいっ!」
歩が叫び声を上げ、腰をがくがくと痙攣させると同時に、
腰の奥で渦巻いていた熱が、ペニスの先で弾けるような感覚と共に精液を勢い良く放出させる。
どくどくと、胎内に注ぎ込まれる熱い物を感じ取った久実が、嬌声混じりに歓喜の声を上げると共に
より多くの精液を搾り取るべく膣の内壁を蠕動させ、肉襞と肉疣をペニスへ絡みつかせる。
そしてそれに応える様に、彼のペニスが暴れる様に脈動し、更なる精を放っていった。
やがて長く続いた射精が収まった頃、紅い双眸を潤ませた久実が身体を僅かに前傾させると、
口から荒い息を漏らすだけとなった歩に囁くように言う
「……ふふ、歩君の童貞、美味しく頂いたわよ。
それにしても、入れただけ出しちゃうなんて、私の中がよっぽど良かったのね?」
「…………」
歩からの返答は無い。だが、それも当然である。
凄まじい射精の余韻と、未だにペニスに絡み付き、優しく撫で上げ続ける内壁の感触に声を出せない状態なのだ。
――だが、どうやら元より返答はこない物と考えていたらしく、久実は続けて歩へ囁きかける。
「しかし、この程度で惚けているようじゃ、こうやった時にはどうなるのかしら?」
(……こうやった時?)
久実の言葉に、歩が僅かに残った理性を疑問に振り向ける。
――その疑問の答えは直ぐに訪れた。
「……っ!」
ペニスを包み込んでいた温かい内壁が、別の意思を持った様にじわじわと蠢き始めた。
別の生物の様に内壁が意思を持ってうねり、蠕動しながら歩のペニスの全体へ肉襞と肉疣が纏わり付き、
亀頭から根元までに吸い付くようにぴったりと隙間無く絡みついて行く。
「あ、ああっ!?」
その異様な感触を前に、歩は堪らず声を上げた。
幾重に重ね合わされた肉襞が蠢きながら歩のペニスに纏わり付き、グネグネと複雑な動きで蠕動運動を繰り返す。
亀頭やカリ首、裏筋や竿の全てに粘液にまみれた肉襞の一つ一つが満遍なく吸いついて
言い様の無い快感を歩の脳へ断続的に送り込み、瞬く間に射精感の限界ヘ追いやっていく。
(こ、こんなの…我慢出来る訳が無いじゃないかっ!)
我慢し様にも我慢出来る物ではなかった。そう、久実の膣はその我慢する意思すらをも殺ぎ落として行くのだ。
ならばせめてと、歩が腹筋に力を入れ、更に括約筋を引き締めてなんとか耐えしのごうとした矢先。
「さ、もっと出して頂戴」
久実の言葉と共に、ペニスを包みこんでいる膣がぎゅっと締まり、纏わり付いている肉襞や肉疣が更に密着してきた。
それと同時に、亀頭の先端に弾力のある子宮口が吸いつき、ポンプの様に無造作に吸いついてくる。
無論の事、この不意討ちに歩が耐え切れる筈が無く、
「あ、あ、く、久実っ、くぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」
身体を弓なりに仰け反らせながら、蠢き続ける久実の胎内へ射精した。
胎内に解き放たれた白濁に歓喜する様に、内壁がうねりを強くして肉襞と肉疣を蠢かせ、
鈴口にぴったりと吸い付いる子宮口が、解き放たれて行く精液を一滴残らず吸い上げて行く。
射精している最中も尚、より多くの精を吸い上げる為にペニスを愛撫する膣の動きは止まらない。
久実の胎内への一発目からニ発目まで僅か三十秒足らず、それだけ久実の――いや、淫魔の膣は凄まじいのだ。
ミミズ千匹、カズノコ天井とか呼ばれる名器の特性をすべて兼ね備えていると言っても良い。
それを前に普通の人間が幾ら我慢した所で、果たして何の意味があるのだろうか?
精を吸い上げられる感触に身体を震わせる彼の表情を、久実は何処か愉悦を入り混じらせた眼差しで見下ろし、
胎内でビクリビクリと震える歩のペニスから、勢い良く放たれる精液の感触の感想を漏らした。
「ん、ニ発目、いや、三発目も勢いが良いわね。く…子宮をどんどん叩いてる」
そして僅かに腰を揺すると同時に、リズミカルにきゅっきゅっきゅぅっと膣を締め付けさせる事で、
ペニスへ与える快感を増大させ、歩から更なる精を搾り取って行く。
そして、精液の放出が収まった所で、淫らな笑みを浮かべた久実が歩へ語りかける。
「……ねえ、歩君が良いって言うなら、もっともっと気持ち良くさせてあげるわよ?」
久実は思っていた。歩はそろそろ『墜』ちる頃だと。
為す術も無く一方的に犯され、快感を強制的に味あわされた上で、精を搾取されていく
それは何処までも倒錯的な感情、だが、同時に一度味わえば病み付きになってしまう魅惑的な感覚。
彼はその内の悦楽に浸り、溺れ、肉欲の望むままに久実を受け入れる事だろう。
そうすれば、後は彼が死に至らない限界まで楽しむだけ。と、そう考えていた。
連投規制避けのため、一旦切ります。
1時間位したら投下再開しますので暫しお待ちを。
(ちょいと早いけど投下再開)
――だが、歩の精神力は、久実が想像していた以上に強かった。
「い、いや。…もう、結構だ……これだけ、やれば……もう、充分だ」
肩で息をしながら、歩は久実に向かって億劫ながらも口を動かす。
歩にして見れば、もう3発も献上させられた時点で充分だと思っていた。
何時も、彼が自慰を行う時は多くて3発までにしている。そうしなければ疲労が明日に響く事になりかねないからだ。
そう、彼が倒錯的な快感を振り払って言い出したのも、只、単に疲れた状態で学校に行きたくないだけの事だったのだ。
本質的に樋口 歩と言う男は、そう言う面倒な事になるのが嫌な人間であった。
だが、そんな歩の考えを余所に、久実の感情は驚きの物に変わっていた。
(信じられない。これだけやってまだ『墜』ちないなんて……!
普通、歩君くらいの子がこれくらいやられたら、もう子供みたいにねだってくる筈なのに……)
サキュバスと言う存在は、男に快楽を提供する代償に、精を提供してもらわねば生きていけない存在だ。
久実もサキュバスである以上、生きていく為に何人もの男に快楽を与え、その代償として精を搾取して行ったのだ。
その中で、彼女は男を魅力で『墜』とす事で、愉悦を味わえる上に、普通よりも多く効率的に精を搾取できる事を知った。
そうやって幾人もの男を魅力で『墜』とし、男が望むままに(無論、死なせない範囲ではあるが)精を搾取して行った。
その内、久実は自分の魅力で『墜』ちない男はおらず、
同時に、自分のテクニックで『墜』ちない男もいない、と確固たる自信を持つようになった。
だが、その自信は今、歩が何気に言った言葉に粉々に打ち砕かれてしまった。
(……思った通りだ。歩君は、私が見込んでいた通りの子だった)
しかし、彼女は自信が打ち砕かれた事に関して怒りは感じなかった。いや、むしろ喜びに近い感情を感じ始めていた。
自分の見込んだ樋口 歩と言う男が、予想よりも遥かに強靭な精神力を持ち合わせていた事に、
そして、その歩を自身の魅力で『墜』とす事が出来れば、自分はよりサキュバスとして高みに昇る事が出来る、と。
そう、久実はある意味、求道者的な一面も持っていた。
(ふふ、何時かは、歩君の方から望む様にしてあげたいな♪
……と、その前に先ずはやる事をやっとかないとね)
何時かは自分の魅力で歩を『墜』とす事を、胸中で硬く決意した所で、
久実はようやく自分のやるべき事を思いだし、呆然と此方を見上げる歩に、くすり、と笑いかけると、
「歩君。残念だけど、私の方はまだ充分じゃないのよ」
「え゛っ?」
彼女の言葉に、歩は何処か信じられないと言った感じに声を上げる。
しかし、彼女はそれを一切気にしていないように続けて言う
「だ・か・ら、私が満足するまで、容赦無く搾ってあげるわ」
「ちょ、ちょおま!……っ!」
焦る歩の胸へ彼女が乳房を押し当てる様に体を倒すと、両手を歩の首の後ろに回して固定する。
その際、押し当てられた乳房の柔らかな感触と勃起した彼女の乳首の感触に、歩は声無き声でうめく。
そんな眼前の歩の表情を、彼女は目を細めて眺めると、
「それじゃ、行くよ。 いっぱい出して頂戴ね?」
「う、うあっ、あぁっ!!」
歩に有無を言わせる前に、ぐいぐいと腰を前後に動かし始める。
ペニスが中から抜け出す時は肉襞と肉疣が名残惜しげにしがみ付いてペニス全体を撫で上げ。
反面、ペニスが中へ沈みこむ時はみっしりと詰った肉襞が蠢きながらペニスを包みこみ、揉み立てる。
その度に、柔らかな肉の圧迫をペニス全体に受け、肉襞が裏筋と竿全体を扱き上げ、肉疣が亀頭を揉み上げる。
彼女の動きに合わせて結合部から淫猥な水音が漏れ、愛液が溢れ出るも、
どうやら精液は一滴残らず吸上げられているらしく
彼女がどの様に動いたとしても、結合部から精液が漏れ出す様子は見られなかった。
「あがぁっ、あ、く、あ、う、や、あっ!」
彼女の動きに併せる様に、脳髄を貫くような凄まじい快感が身体を駆け巡り、歩は身体を仰け反らせて呻く。
動かずに締めただけでも凄まじかった物が、今度はテンポ良く腰が振られる事でそのうねりがより激しくなっているのだ。
その快感は動かなかった時の比ではない、これで悶絶しない方がおかしかった。
それでも、彼は断続的に襲い来る強烈な快感から耐えようと必死に歯を食いしばり、括約筋を振り絞るが、
久実の魔膣の前では、歩の抵抗なんぞ最早、蟷螂の斧にも等しかった。
「う、あ、あぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
そのまま四度目――久実の胎内では三度目の絶頂を迎え、身体を痙攣させながら射精した。
四度目にも関わらず、膣に解き放たれる精の勢いは衰える事は無く、いや、むしろ増している様にさえ思えた。
吐き出される精の感触に反応して、ペニスを包みこむ肉壁がうねうねと奥へ送り込む様に蠕動し
更にすかさず、彼女の子宮口が歩の鈴口に吸いつき、脈動する様にどくリどくりとペニスから精を吸い出して行く。
その時でさえも彼女が腰を動かし続けているのだが、それにも関わらず子宮口が鈴口にぴったりと吸付いているのは、
なるべく多くの精を搾取する為に膣を特化していった淫魔がゆえの構造なのだろう。
「あ、あぁぁぁっっ……」
「ふふ、もう出しちゃったの?」
尿道に残った残滓まで吸われていく快感に打ち震える歩の表情を、彼女は腰を動かしつつ愉悦の眼差しで眺めていた。
彼は精を出しきった後で、彼女が少しは間を空けてくれるだろうと思っていた―――が、
その彼の期待を裏切る様に、頬を赤らめた久実が言ってのける。
「それじゃ、続けよっか……」
「え、ちょ!? あ、あぁっ!」
慌てる歩を余所に、久実が愉悦と快感を入り混じらせた妖艶な笑みを浮かべ、腰を艶かしく動かしつづける。
ペニスにびっちりと纏わりついた、ぬるぬるに濡れた無数の肉襞と肉疣がうねりを上げて揉みしだくように蠢き、
射精して間も無い歩へ、えもいわれぬ快感と興奮を与えてゆく。
(な、なんで……!)
先程射精したにも関わらず、再び腰の奥に込み上げてくる痺れに近い熱い感覚。
このままでは再び射精に追い込まれるのも時間の問題だ。
「さっき、言ったわよね? 容赦無く、搾って、あげるって」
まるで歩の思考を読取った様に、久実が笑みを浮かべながら、
紅い双眸を怪しく輝かせて腰の動きのリズムに合わせてぶつ切りにした言葉で言う。
「休む暇を与えてくれる、だなんて、期待しないほうが、良いわよ?」
「…………!」
この時、ようやく歩は、今の自分の立場と言うものを理解した。
そう、この時の自分は、彼女にとっては飽くまで搾取される側の『獲物』に過ぎない存在なのだ。
捕食されている最中、獲物がどの様に抵抗を試みた所で、喉元に食らい付いた捕食者が食うのを止める筈が無い。
この場合で言えば、獲物を喰らう捕食者が久実であり、逆に捕食される獲物が歩である。
歩が我慢と言う形で抵抗を行った所で、久実はそれ以上の快楽を送り込み、結局は射精させられ搾り取られてしまう。
そう、歩はまさに久実に喰われているのだ。それも、牙や爪を使って肉を引き千切り、血を啜ると言う形ではなく、
魔膣によって強烈な快楽を強制的に送りこまれ、屈辱的な形で精を搾取されて行く形で。
だが、今更それを知った所で、彼のペニスへ快楽を送り込み続ける膣の動きが収まる筈も無く、
彼女が腰を下ろした際に、亀頭の辺りヘ食いつく様に纏わり付いた肉疣が、
亀頭をもむもむと咀嚼する様に蠢き始めた所で、歩に限界は訪れた。
「うっ、あぁぁっ!」
「んっ、まだ、こんなにっ、出るのねっ…一体、何処に溜め込んでいたの、こんなに」
「あ、ああぁ……」
脈動するペニスからの四回目――いや、五回目の射精を胎内に感じながら、
ようやく腰の動きを緩めた久実が、何処か捕えた鼠を弄ぶ猫を思わせる眼差しを歩に向け、甘い声で語りかける。
だが、歩は呻くだけで何も答えられない。それだけ彼ヘ送りこまれる快感が凄まじいのだ。
ペニスに絡みつく肉襞が精の残滓を搾り取る様に、根元から先端への圧迫を繰り返し、
亀頭に吸付く子宮口がポンプの様に吐き出される精液を機械的に吸い出して行く。
絶頂を繰り返しても尚、休む暇は殆ど与えられず、次第に歩は息も絶え絶えの状態になりつつあった。
同時に、彼女の腰が艶かしく振られる度に、快感と共に確実に魂を削り取られるような感覚をも感じ初めていた。
「何も答えないの? ……まあ良いわ。まだ大丈夫っぽいみたいだし、続きをしましょ」
歩の答えを待つ事無く、久実は僅かに腰を浮かすと、再び腰の動きを再開する。
最初の前後へのグラインドだけだったものを、左右への動きを加えた円運動に変えて腰を動かしてゆく。
前後に動いていた時でさえ耐えるのがかなり厳しいのに、彼女はより動きを複雑に、そして激しくさせて行く。
その動きに合わせて、膣内にみっしりと詰った肉襞と肉疣が複雑な動きでペニスに絡みつき、
無数の肉襞が亀頭を撫で上げ、カリ首を左右に擦りたて、裏筋を舐り、竿を上下に扱き上げる。
幾度の射精によって、痛みどころか感覚さえもあやふやになっていたペニスが、
歩の意思に反して再び久実の膣内で破裂しそうなまでに膨れあがり、びくんびくんと熱く脈動し始める。
「あっ、ああぁっ、もうやめっ…! うぁっ!」
「あんっ、抱いてくれるの? だったらもっと頑張っちゃうよ」
一段と激しさを増したペニスへの責めに、激烈な快感を歩は思わず久実の身体に抱きついてしまう。
……しかし、それが行けなかった。
抱きついた際に歩の乳首へ上手い具合に硬くなった彼女の乳首が押し当てられ、
彼女の体温と乳房の柔らかな感色と共に、歩の乳首をくりくりと巧みに擦り上げる感触がプラスされる。
そして更に腰の動きもヒートアップして行き、歩は意識が白く染まり始める感覚と共に絶頂へと昇り詰めさせられてしまう。
「あぁっ、あっ、くぁぁぁぁっ!!」
「んっ、ちょっと勢いが弱まってきたかな……?」
先程よりも僅かに弱まった射精を胎内に感じ、久実は一人呟きを漏らす。
しかし、そうなってしまうのも致し方が無い事だった。何せ歩は立て続けに5度も久実の胎内へ射精したのだ。
普通ならば射精どころか、勃起を維持する事すらも困難になる程に責め立てられ続けていたのだ。
だが、彼女はまだまだ容赦する気は無かった。
「んじゃ、その時の手段、という事で……ちょっと力抜いてね」
「……うぁ……?」
久実の言葉に、歩は朦朧とした意識の中で首を傾げる。
そして、その言葉を理解するよりも早く、
「―――――っっ!?」
唐突に、窄まりをつつっ、と何かが撫でる異様な感触を感じ、歩の意識が一気に覚醒した。
見れば、久実の長くしなやかな尻尾がUの字に曲がり、歩の窄まりの方へ伸びているのが見えた。
それに気付き、慌てる歩の様子を見つめながら、彼女がどこか悪戯っ子の様に歩へ囁く。
「ふふ、歩君のお尻の初めて、頂きます」
「がっ!?…あぁぁっ!!」
ずぶり、と言う感触と共に、愛液に濡れた彼女の尻尾が窄まりを容易く突き抜け、歩の直腸へ侵入を果たす。
何時もは出すだけの器官に、異物を突っ込まれる衝撃的な感覚に思わず悲鳴を上げる歩。
体内に入り込んだ尻尾は数度、直腸内でうねると、膀胱の裏側の辺りでクルミ程の大きさの膨らみを探り出す。
その膨らみこそ、男性のみが有する前立腺と呼ばれる器官であり、女性で言えばGスポットにあたる器官だった。
それを見つけ出した久実は舌なめずりをすると、早速、体内に侵入させた尻尾でその部分を重点的に刺激する。
無論の事、今まで感じた事の無い異質な快感に歩は声にならない呻きを漏らし、
久実の胎内でペニスを熱く膨張させる。
「お、早速私の中で大きくなってる……私の尻尾で感じてるんだね?」
「ち、ちが…う…」
「ふーん、違う、ねぇ……うそつき」
「あうあぁがぁっ!?」
効果有りと感じ取った久実は、歩へ意地悪げに囁きながら尻尾を巧みにうねらせ、歩の直腸を蹂躙する。
無論、その間にも彼女は両手で、歩のわき腹や脇の下等の敏感な部位を優しく撫で上げ
更に僅かに身体を前後させる事で、自分の乳房で歩の乳首などの性感帯を巧みに刺激して行く。
同時に、歩のペニスを包みこむ粘液にぬめった肉壁の責めも止む事は無く、
まるで我慢する歩を嘲笑うかの様に、肉襞がぐにゅぐにゅとうねりながらペニスを締め付け、快感を送りこんで行く。
「うっ、ぐっ、ぐぅっ!」
「ん、ふっ、突き上げてくれるの? あんっ、良いわ、来て」
断続的に送り込まれる快感に歩の思考は再び掻き乱され、何も考えられぬまま腰を突き上げ、昇り詰めさせられる。
その突き上げを感じ、久実は僅かに嬌声を漏らしながら突き上げに合わせる様に腰を動かす。
ぺちんぺちんと腰と腰がぶつかり合い、愛液と汗と僅かな先走りが入り混じった液がベットに飛び散る。
どちらかの腰が動く度に、歩は脳髄を焼くような快感を身体全体に感じ、それを求める様に更に強く突き上げる。
そして一際強く突き上げた所で、何処か獣のような声を上げながら歩は絶頂に達した。
「あっ、ぐがっ――――があぁぁぁっ!」
「んっ、勢いが戻った、ビクビク震えてる」
久実の尻尾でさんざん前立腺を刺激され続けた所為か、
先程の弱まった物とは比べ物にならない量と勢いを持って、白濁が一気に尿道を駆け抜ける!
堰を切った様に鈴口から精液が噴き出し、命が削り取られる様な快感と共に次から次へと久実の胎内へ注ぎ込んで行く。
彼女はそれを膣で感じ取りながら、歓喜の声を上げて腰を僅かに揺さぶって膣を締め付け、
更に歩の直腸に侵入させた尻尾をうねらせ、射精を助長してゆく。
一滴残らず膣に精液を吸上げられる中、歩は最早、彼女の身体の下で身体を震わせるしか出来ないでいた。
「さて、もう一回しましょう」
そして再び精液を搾り取るべく動き始める彼女の腰。
真っ白に染まってしまった意識の中、歩が感じるのは身体中から断続的に送り込まれる快感のみとなっていた。
身体に擦りつけられる彼女のすべすべとした肌が何処までも心地よく、彼女の乳房がふにふにと胸を刺激する。
ペニスに纏わり付いた肉壁がうねり、肉襞が竿を撫で上げ、肉疣が亀頭を揉み解してゆく。
彼女の尻尾が歩の体内をうねうねと動き回り、ぐりぐりと前立腺を弄んで行く。
快感が身体の細胞の一つ一つまでを支配し、思考が隅に追いやられる。
更に疲労の所為か、次第に視界が闇に蝕まれ、身体から意識と感覚が遠のいて行く。
―――それは何処かの小説か漫画で知った、『死』の感覚に程近い物があった。
「あ、ヤバッ……」
そんな闇に沈みゆく意識の中、
久実が慌てた様に何かを言ったような気がするが、其処から先は良くは覚えていない。
* * *
―――歩は走っていた。
何処までも広がる広大なお花畑を。
頬に吹き付ける風が何処か心地が良い。
恐らく、景色の向こうで流れゆく川がゴールなのだろう、誰かが此方を応援している。
こっちに来い、こっちに来い、と川の向こうの誰かが此方に声を掛け続けている。
さあ、急げ。川を渡ればゴールはもう直ぐだ。
ざぶざぶと川を渡り始めた所で、彼はふと気付き、叫んだ。
「――…って、ここ三途の川っ! 渡ったら駄目じゃん!」
そして次の瞬間、彼の意識は再び暗転した。
…………
――何だろうか?
さっきから、誰かが歩の口に何かを指し込んで来る。
彼は即座に、口に指し込まれる『それ』が何なのかを確めようとするが、
生憎、舌はおろか口内の粘膜の感覚があやふやで、『それ』の正体が殆ど分からない。
わかる事といえば、『それ』がとても柔らかく温かい事と、うねうねと口内で自在に動く、それだけだった。
『それ』が何度か、全く動かない彼の舌に纏わり付くと。今度は何かの液体を口内に注ぎ込み始めた。
その『液体』の物なのだろうか、ほんのりと甘い香りが鼻腔を満たし、練乳を更に優しくしたような甘さが口内に広がる。
無意識の内に、そして反射的に、歩は喉を鳴らして口内に注ぎ込まれる『液体』を飲んでゆく。
如何してかは分からないが、身体が今、注ぎ込まれている『液体』を求めている様な気がした。
気が付けば、歩は母乳を求める赤ん坊の様に、夢中になって『液体』を飲んでいた。
『それ』はある程度、『液体』を歩の口内に流しこむと、不意に口から離れ、
そしてある程度時間を置いて、再び『それ』が歩の口内に指し込まれ、当然のように『液体』を流しこんでゆく。
――何度か、それを繰り返したところで、
ふと、彼は身体の内側からじんわりと込み上げる熱のような物を感じた。
体温とか、そういう物ではない。人間が生きるのに必要な根源的な何か。
それが熱、と言う感覚を持って、身体の内側から込み上げてくる。
歩は、それが何なのかを知っていた。
そう、これは……
「――………っ!?」
うっすらと目を開けた所で、ほぼ眼前にあった少女の顔に気付き、歩の意識は驚愕と共に完全に覚醒した。
同時に、先程から彼の口内に指し込まれていた彼女の舌が引っ込み、彼女の顔が離れる。
それは久実だった。どうやら意識を失っている歩に口付けをしていた所だったようだ。
状況が理解できず、未だ驚愕に目を見開く歩に、久実は優しく微笑みかけ、問い掛ける
「気が付いた?……調子はどう?」
聞かれて、歩は一瞬、どう答えて良いのか分からなかったが、取り合えず、先ずは自分の身体の調子について考える。
なんだか暫く走り続けた後の様な纏わり付く様な倦怠感こそ感じる――だが、立って歩く事も出来ない程ではない。
まあ、学校に行く分には少し酷な状態、と言えばそうかもしれない。
と、其処まで考えて歩は、ふと、ある事を思い出す。
(そう言えば、俺は彼女に散々……)
其処で歩はようやく、自分がきちんと服を着せられた状態で寝かされていた事に気がついた。
「ゴメンナサイッ!」
歩が何かを言おうとする間も無く、いきなり久美が手を合わせて歩へ謝る。
その突然の行動に、歩は意味がわからず目をぱちくりとしていると
「私、お腹が空いてたから、ちょっと調子に乗りすぎちゃって……歩君に大変な目にあわせちゃった……。
歩君の心臓が止まってるのに気付いた時は、私も本当に心臓が止まりそうだった……
とにかく、本当にごめんなさい」
目に涙を浮かべる彼女の話を聞く限り、どうやら本気で死に掛けたらしい。
つー事は、あの川を渡りきっていたら死後の世界へご招待されていた訳である。
歩は、寸での所で生命の危機を乗り切った自分の悪運の良さに感謝した。
「もう良いよ、もう済んだ事だし……俺は怒ってないよ?」
「え?……本当?」
「そりゃ、死にかけた事は確かだけど、結果的に俺はこうやって生きているんだし
済んだ事で一々怒ってたらそれこそストレスで身が持たないよ」
言って、歩は涙目になっていた久美へ微笑みかける。
基本的に、樋口 歩は済んだ事に関して、反省はすれど気にしない性分であった。
そして、久美は涙を手で拭った後、歩へ何処か心配気に問い掛ける。
「で、さっきは答えてくれてなかったけど……本当に身体の方は大丈夫なの?」
「うん。身体の方も少しだるいだけで、如何って事無いし……だから気にしないで」
「……ありがと。……本当は怒られるの覚悟してたけど、歩君って優しいのね……」
優しげに返す歩に、久美は申し訳無さと嬉しさを混じらせて言う。
其処で、歩は一つの疑問を思い返し、久美が落ち着いた所で聞く事にした。
「所でさ……さっき、俺に口移しで飲ませてたあれ、いったい何?」
「ああ、それ? あれはね、私オリジナルの滋養強壮作用のある栄養ドリンクなのよ」
「栄養ドリンク?」
「うん、せっかく精を提供してくれた人間に、後で倒れられたりしない様に
私が搾取した人間に対して、行為の後で必ず飲ませている栄養価抜群の飲み物なのよ。
けど、感謝して頂戴、本来はコップに入れて飲ませる物であって、わざわ口移しで飲ませるような事はしないのよ?
あの時は歩君が本当に死に掛けてたから、仕方なしに口移しで飲ませたのよ」
と、そっぽを向きつつ何処か恥じらい混じりに言う久美、
その際、歩はあれだけ搾っておいて何を今更、とか、
そもそもその栄養ドリンクの材料って一体、何? とか彼女に突っ込みたかったが
言ったら言ったで何か恐ろしい事になる可能性が高いと考え、
喉元まで出掛けていた突っ込みの言葉は胸中にひっそりと仕舞う事にした。
そんな歩の心境を余所に、久美ははと何かに気が付いた様に歩へ向き直り、
「そういや、歩君、家には何時帰るとか言ったの?」
「え?……特には言ってないけど……?」
「うあちゃ〜……歩君は気付いてないけど、時間は夜の八時を周ってるのよ?
そんな遅くまで帰らなかった事を、君は親御さんに如何説明をするつもりよ」
「え゛? マジ?」
言われて窓に目を移してみれば、窓の外はすっかり暗くなっており、夜空に満月が輝いていた。
こう見えて歩の親は門限に結構厳しく、規定の時間まで帰らなかったら最悪、家を閉め出される可能性すらもある。
久美の言葉が正しければ、もう今更家に帰った所で怒った親によって閉め出されてしまう事だろう。
その絶望に、歩は目の前が真っ暗になる感覚を感じた。
「そんな顔しなくても大丈夫よ。歩君の容態が落ち着いた所で、私が親御さんに電話しておいてあげたから。
『友達との勉強会で一晩泊まる事になります』ってね。 もちろん、親御さんの許可も下りたわ」
「なんだ……びっくりして損した……」
久美が機転を利かせてくれていた事を知って、歩は思わず安堵の息を漏らす。
と、其処で歩はある事に思い当たり、久美へ問い掛ける。
「って、ちょっと待って? そうなると俺は……何処で泊まる訳?」
そう、今夜は家に帰れない以上、自分は何処で寝泊りするか、と言う事に気付いたのだ。
しかし、そんな歩の問いかけに対し、久美は「そりゃあ勿論」と言って、自分の部屋のベッドを指差す。
歩はしばし思考を逡巡させた後、やや掠れた声で言う。
「……えっと、それは……君の部屋に泊まれって言う事?」
「そう言う事♪ あ、心配しなくても大丈夫よ、さっきと違って優しくしてあげるから」
ちっとも大丈夫じゃないのは自分の気の所為だろうか、と歩は考えたのだが
それを口に出す勇気は生憎、今の歩に持ち合わせてはいなかった。
「はあ……分かったよ。ならお言葉に甘えて今晩だけお世話になりますよ……」
「うんうん、人間、素直な事は美徳よ♪ さ、先ずはお風呂で汚れた身体を洗ってあげるわ」
「へいへい、お手柔らかにお願いします……」
ぐいぐいと手を引いて風呂場へ向う久美に、何処か諦め混じりに言う歩。
かくて、歩は久美の家に泊まる事となるのであった。
尚、この一晩の間、久美によって歩は三発ほど搾り取られたのは、言うまでも無い事だろう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして、話は冒頭へと戻り……
「ん〜、やっぱり歩君の精液は実にデリシャスね!」
「あの……少し言いたい事があるんだが」
「ん? 何?」
学校の屋上へと続く階段の人気の無い踊り場で、
つい先ほど口淫によって自分の精を搾り取った久美へ、歩がズボンへペニスを仕舞いつつ少し文句有り気に言う。
「何で学校でまでやるんだよ、こっちとしては何時誰かに見つからないか冷や冷やもんなんだが……」
そう、確かに歩は久美のご飯として精を提供する関係となった。
だが、それは飽くまで久美が生きる為に協力している関係であり、
歩自身は久美が望んだ時に何時でも精を提供するその代わりに
久美は必要以上の搾取を行わず、更に見返りとして歩の勉強の手伝いを行うと言う条件での同意となった。
……実の所、歩自身は既に久美から凄まじい快楽を貰っている為、余り多くの事を望みはしなかったのだが、
逆に久美の方が『折角、精を提供してくれる歩君に何かしてあげないと私の気が引けるわ』と言い出し。
数時間に及ぶ論議の末、今の条件に落ち着いたのであった。
「ああ、その点については大丈夫。 やる時は必ず結界を張って誰にも見つからないようにしているし」
「なんだ、それなら大丈夫……って、そう言う問題じゃなくて!」
「なら、如何言う問題なのよ?」
不思議そうに聞き返す久美に、歩は深い溜息を一回ついて、
「わざわざ誰かに見つかる危険を予防する為の結界を張る手間をしてまで学校でやらなくても、
学校が終わった後でなら何時でも出来るだろって俺は言いたいんだよ!」
「ああ、そう言う事」
やや息を荒げて言った歩の言葉に、ようやく理解のいった久美は手をぽんと叩いて見せる。
そして、久美は飛び切りの笑顔を歩に向けて言う。
「だって、精の味を含めて歩君が大好きだから、私が我慢できなくなるのも当然じゃない?
…あ、そろそろ授業が始まるみたいだし、悪いけど私は先に行くね。 歩君も遅刻しない様に急いで頂戴ね」
久美の笑顔に、心にどきりとした物を感じた歩が何かを言おうとする間もなく、
授業が始まるチャイムがなり始め、それに気付いた彼女は踵を返して教室へと去ってゆく。
歩はこの時、自分の心がほんの少しだけ、彼女の笑顔に『墜』とされているのを自覚した。
だが、歩はその事に対して決して悪い気はしなかった。
むしろ、こう言うのも悪くないな、と思いつつ、歩は自分のクラスの教室に向けて歩き出すのであった。
――――――――――――――――――――了―――――――――――――――――――――――
以上です。
ノッてしまうと長くなる悪癖が出てしまった……orz
一応、投下前に確認はしていますが何分、長かったので考察不足な所もあると思いますが、
其処は笑って許してください。はい(汗
GJでした。
久美がもっとデレデレになるのも見たいと思ったりします。
これはGJと言わねばならない。
以前自分の投下したやつと見比べると、
やっぱり上手い人は冒頭が無駄に長くても、
自然に引き込めるような文章を書いている・・・
正直、俺も描写が上手くなりたいです。
GJとしか言えない。久々にフルボッキできるものに出会えた気がする気がする。
もっかいGJ
GJ。長いのに長さを感じさせない良SS。こっちでも読めるとはなんだか得した気分だ。
久々に来たが…過疎ってるな?
みんな雪女にでも会いにいったのか?
狐耳巫女を全裸で待ってます
一ノ葉の作者が、次は一ノ葉に巫女装束着せると日記に書いていた
でも年明けになるとも書いてあった
>>狐耳巫女
俺は書くの挫折した。
まぁがんばれ。
426 :
名無しさん@ピンキー:2008/12/08(月) 23:36:32 ID:hTRfvSIW
保守age
女版のブルック?
国籍法が改正。
よって、妖怪とも子供をもうければ結婚できる世の中に!!
これ、なんかに使えないかな?
妖怪を法で扱うって色々考えること多いような…
妖怪はまず名前や成立自体が差別的だったりするしね。
なんちゃら小僧だの坊主だの爺だの婆だの女だの。
そもそも結婚に法的根拠が必要なのか?
当事者同士で仲良く暮らすだけなら問題無いんじゃね?
不動産買うとか学校通うとか、国のサービスを受けるとかなら、色々必要になりそうだが。
そういやこのスレでも昔、どっかから戸籍謄本持ってくる話なかったっけ?
>>433 アイリスの話かな?
あれは結婚するために戸籍とってきたはずだ
あの作者さん、いまどうしてるんだ?
436 :
名無し三等兵 :2008/12/14(日) 03:44:30 ID:w0VTtBAu
ほ
ね
と
ほ
も
さ
ぴ
え
ん
ぬ
す
骨とホモサピエンヌス……
新人類ですね、わかりません><
保守
450 :
sage:2008/12/26(金) 15:01:54 ID:Ly+8FfIy
みなさん、クリスマスで忙しいのかの?
クリスマスはユールの儀式で忙しいんだ
452 :
マージ:2008/12/27(土) 15:42:36 ID:GGDMYi6B
〉〉374、375
すいません以後気をつけます。
続き
それどころかマージが醸し出す女性特有の良い匂いが僕を欲情させてしまう。マージを抱きたい。マ
ージを抱いて、勃起したナニの中身を解放してスッキリしたい。そう考えると理性が一気に吹き飛ん
でしまった。僕はマージに抱き締めたままナニを盛りづいた犬のように夢中になってこすりつけた。
「御主人様、いけませんこんな所で!」
「ごめんねマージ、でももう止められないんだ」
形だけ謝ると上半身を起こすと胸のはだけたメイド服とその下にある豊満な胸に目がいった。
柔らかそうだ。僕は胸を覆う布を剥ぎ取り、力いっぱい胸を揉んだ。
「痛いっ、そんなに強く揉まないで下さい」
「マージのおっぱい、柔らかくて気持ちよい」
マージの抗議を無視して、胸を揉みし抱き続けると乳首がすっかり固くなっているのに気付いた。
「固くなっているね」
クリクリと指で乳首を触ってみた。
「ああん、もうやめて」
胸を一通り味わった後、もうそろそろ良いかと思い、スカートを捲った。
453 :
マージ:2008/12/27(土) 17:06:23 ID:GGDMYi6B
そこにはショーツが びっしょり濡れたマージの股関があった。
「感じているんだね」
「…」
マージは無言のまま顔を赤らめた。もう我慢出来なくなりショーツを強引に引きずり下ろした。
「御主人様お部屋の中でお相手しますから、だから待って下さい。ここじゃみんなに見られちゃいます」
「でも今すぐにしたいんだ。マージだって」
最後まで言葉を出す前にズボンからそそり立つ肉棒を引きずり出し、マージの前でしごいて見せ、
マージの性器に挿入しようとした。
「きゃあっ」
マージは急に僕を突き飛ばした。ズドン、と気がついたら木にもたれかけていた。
454 :
マージ:2008/12/27(土) 22:38:08 ID:GGDMYi6B
「あいたた」
「大丈夫ですか、御主人様」
先ほどの場所から10メートルは離れていているだろう巨木まで突き飛ばされたようだ。マージはあん
なに可愛いとはいえ狼の精霊、本気を出せばあっという間に僕を八つ裂きにするくらいの力を持って
いることを忘れていた。
「すいません、そのつい…」
マージが慌てて僕に謝るとふとよからぬことを思いついた。 「マージは僕のことが嫌なんだね」
わざと悲しそうな声で囁いた。
「そんなことありません。私はただこんな場所でするとみんなに見られちゃいます」
もっともだ。だが僕の性欲は収まらない。
「良いじゃないか、僕らは愛し合っているんだからみんなに愛し合っているところを見せつけれるよ」
「そんなこと言われましても恥ずかしいです」
「僕とセックスするのが嫌なのそうじゃないの!?」
脅すようにマージに問いただすと
「それは私も…したいですが」
「何がしたいのかはっきりして」
「私もセックスしたいです」
マージは恥ずかしそうに声を絞り出した。もう一息だ。
「なら態度で示してよ」
「分かりました」
巨木に手を掛け、後ろ向きに腰を突き出した。
「どうぞ」
「どうして欲しいか言ってよ」
「そんなこと言えません」
「しょうがない、仕方ないから代わりにエリカとしようかな」
そのひとことを聞くとマージはビクッと反応した。
「言います、言いますから、その御主人様のを入れてください」
455 :
マージ:2008/12/27(土) 23:48:56 ID:GGDMYi6B
「マージは変態だね。こんな格好でそんなこと言って」
マージは恥ずかしさに震えながら、顔を下に向けた。可愛いこんなに可愛いマージが僕のものだなんて。
「いくよ」
僕はスカートを捲り上げてナニを握りしめマージの性器にあてた。熱い、マージのそこは愛液でぬめ
っていた。僕は一気にマージの内部にナニを突き入れた。
「んんっ」
「アアー」
気持ちいい、久しぶりのマージとのセックスに思わず変な声を上げてしまった。
マージの性器内部での愛液の暖かさ、絡みつくヒダヒダの感触にうっとりしてその感触を楽しんでい
ると、直ぐに欲望に火がついて腰を動かし始めた。
「御主人様激しいです」
「マージ、マージー」
どんどん腰を動かす速度を速め、夢中になって腰をぶつけた。もう何も考えられない。
「もうそろそろいっちゃいます」
「僕もだよ一緒にいこう」
久しぶりのためにあまりにも早く射精してしまいそうになったが,久しぶりなのはマージも一緒のようだ。
「アアー」
「んー」
ナニの先から熱い精液がマージの内部に流れこんでいった。ことを終えてしばらく余韻に浸っていた。
「とっても気持ち良かったよ」
「私もです御主人様」
僕らはどちらともなくキスをした。その後冷静になりあたりを見回すと、
「あっ」
みんながお屋敷の中から一部始終を見ていたのか、顔を真っ赤にしながら覗いている。僕とマージは
あまりの恥ずかしさに直ぐに離れて身なりを正した。
「ごめんねこんな乱暴な真似をして」
僕は今更ながらマージを強引にセックスをして恥ずかしい思いをさせたことを詫びた。
「良いんです。私も気持ちよかったです」
そういうと僕の耳元で囁いた。
「続きは今晩しましょう」
そうまだ始まったばかりだ。僕はみんなになんて説明するかを考えながらマージと屋敷に入っていった。
終わり
すまないが、もう少し文章技術の勉強をしてくれ。
酷く拙いと感じる
そういえば、暫く書いてなかったな・・・。
休みを取るか、趣味を取るか、悩みどころだ。
458 :
若旦那:2008/12/29(月) 21:34:48 ID:RN6MifjT
年が明ける前に一本投下させていただきます。
一応最終話、申し訳ありませんが絡みはありません。
狐巫女『其の三 〜また出会えると信じて〜』
書き忘れました。
前半いきなり痛い表現があります。
460 :
1:2008/12/29(月) 21:38:08 ID:RN6MifjT
「うわぁぁぁぁぁ……」
山道を歩いていると、突然体が落下する感覚に襲われた。
周りは崖というわけでもなかったし、落ちる理由が思い当たらない。
まさか、道の真ん中にでかい穴でも開いていたのだろうか。
譲は、底の見えぬ真っ暗な闇の中をひたすら落ち続け……
気が付くと、木の根っこや蔦のような物が巻きつき体を拘束していた。
・
・
・
「あれ、デジャビュ?」
つい先日、まったく同じ状態に陥った記憶が頭に浮かび、
“落ち着け、俺”と自分自身に言い聞かせる。
前回コレを使用したのは、雪風の姉である時雨であったが、
まさか時雨が同じ罠を使用するとも考えにくい。
譲の脳裏に浮かぶのは、この後自分に訪れるであろう状況。
その予想が確かならば、まずは獣人のお姉さんが出てくるはずなのだが、
「ほらな、やっぱり」
傍の草むらから聞こえるのは、草を掻き分ける音。
今度はいったいどんなヤツが出てくるのか、草むらをじっと眺めていると、
そいつは現れた。
「……誰?」
眼前に立っていたのは、確かに獣人らしい女性であった。
頭上に飛び出た耳と、尻の先から飛び出た尻尾。
丸みを帯び、茶色がかった‘それ’を見る限り、彼女が狐の獣人でないことは理解できる。
そして、自分に対して友好的でないということも。
今回登場した人物は前回と雰囲気が違っていた。
“犯る気”というより“殺る気”満点といった面持ちで、殺気立った瞳で譲を見下ろし、
躊躇することなく言い放った。
「人間、死ぬがいい」
「へ?」
次の瞬間には、獣と化した獣人の爪が譲の腹を貫いていた。
突然のことに、自分の身に何が起こったのか理解できない。
ただ、自分の腹と、それを貫く獣人の爪の隙間からジワリと赤い血が染み出すのが見える。
一瞬の出来事に、眼前の光景が現実のものと理解できなかったが、
時間が経つにつれて恐怖が吹き出し、我慢しきれずに叫び声をあげた。
「うっ、あっ、うわぁぁぁ」
腹を貫かれ、溢れ出る血液。
‘死’という言葉が頭をよぎり、拘束されている身を激しく捩るが、
抜け出ることは出来ない。
獣人は、そんな譲の姿を見つめつつ、腹に爪をめり込ませながら言い放つ。
461 :
2:2008/12/29(月) 21:39:24 ID:RN6MifjT
「黙れ人間、騒ぐな、痛くは無かろうが」
「えっ」
捩らせていた体の動きを止め、意識を落ち着かせてみると、確かに痛みを感じない。
爪が突き刺さっている腹よりも、むしろ、体を拘束している蔦のほうが痛みを感じ、
自分の身に何が起こっているのか理解できなくなる。
「せめてもの情けだ、意識を無くしてから、その身を喰らおう、新鮮なうちにな」
「喰らう、俺を喰うっていうのか!?」
「そうだ、今まで喰ったことは無いが、人間の肉は、実に美味いと聞く」
死の恐怖の上に、眼前の獣に喰われるという恐怖が圧し掛かる。
体を拘束された上、獣と化した腕に腹を貫かれては、何も出来ない。
もとより、ただの人間である譲には、どうする事も出来ないのであるが……
「血が流れ出る、もったいない」
「くうっ」
譲の腹に顔を寄せると、湧き出る血をペロリと舐めた。
が、舐めて、眉を顰めて微妙な表情を見せた。
「うっ、うまいのか?」
「正直、微妙だ、どちらかというと、不味い」
顔をしかめ、自分の血が不味いと言われるのが、妙に腹立たしく感じられた譲。
譲の頭は、すでに現実を逃避していたのかもしれない。
現実を逃避していたからこそなのか、譲は、眼前の捕食者に話しかける。
「何故、どうして俺を殺す?」
「貴様ら人間達は、森を壊し、我等の仲間を殺してきた。貴様も殺されて当然だろう」
「何故、俺を?」
「私は人間が嫌いだ。獣人と仲良くする人間はもっと嫌いだ、しかも、こっ……」
「こ?」
「獣人と交尾するなどもってのほかだっ! 殺すぅ!」
実に単純な発想、恨みというより嫉妬を多分に含んでいる。
だが、獣人の殺気立った瞳に迷いは無い。
本能に順ずる獣人に迷う必要など無いのかもしれないが……
「食い散らかした貴様の骨と肉片を、あの子狐にでも届けてやろう」
何故か、血が流れ出るにつれ、死が近づくにつれ、冷静に物事を見ることが出来た。
相手の言い分にも一理あるのではないかと思え、
己の血と肉で、一時でも欲求が満たされるのなら良いのではないかと考えてしまう。
「なぁ、最後に」
「最後に、何だ?」
「俺を殺す者の名を教えてくれよ」
462 :
3:2008/12/29(月) 21:40:11 ID:RN6MifjT
譲を見下ろす殺気に満ちた表情が、“最後に言いたいことがそれなのか”
と言わんばかりの驚きに満ちた表情に変わが、すぐ元に戻ると、
「人間ごときに名乗る名など持ち合わせていない、ただ、私は狸の血脈とだけ教えよう」
「そうか……あ……れっ」
血を流しすぎたのか、意識がだんだんと遠のいてゆく。
己の意識が白く染まることだけが理解でき、痛み無く死ねる事が異様にうれしく感じられ、
譲の顔には笑みが浮かんでいた。
「死に逝く途前で笑うか、人間」
最後に止めを刺すためか、腕を大きく振るう姿が見える。
だが、殺意に満ちた視線を送り続けていた瞳が、哀しみに染まってゆく。
後は腕を振り下ろすだけで殺せるというのに、そのまましばらく時が止まる。
恐怖を長く与えるつもりなのか、祈る時間を与えてくれているのか、
譲には、後者のように思えて仕方が無い。
彼女は好き好んで殺すわけではない。心の迷いをぶつける相手が居ないだけ。
譲は、それが理解できただけで満足し、瞳を閉じた。
閉ざした瞼の裏側に、これから会おうとしていた愛らしい狐の姿が浮かぶ。
(あいつ、おれの死骸を見たら、泣いてくれるかな、いや、きっと泣きじゃくるさ)
ふと、そんなことを考えていた。
「貴様のような人間に出会ったのは初めてだよ、サヨウナラ」
狸娘が、獲物に対して最後に放った言葉。
瞳を閉じながら耳に届いたその言葉が、譲には妙に温かく感じられた。
そして、腕に力を込め、振り下ろさんとした、まさにその時、
463 :
4:2008/12/29(月) 21:41:09 ID:RN6MifjT
「何をしている、貴様、何をしている!」
意識を手放そうとした刹那、譲の頭の中で、どこか懐かしい声が響いた。
快活で愉快で騙されやすい、そんなところが可愛いアイツ。
(あれ、だれだっけ?)
だが、その名前が思い出せない。
(もう俺を起こさないでくれ、俺はとても眠たいんだ……)
譲の意識は白い世界で漂い続ける一方、
現実の世界では激しい戦いが繰り広げられようとしていた。
「よくも、よくもっ!」
社から急いで駆けつけたのであろう。
巫女服を身に纏った雪風は、予想外の事態に驚きを隠せないでいた。
胸に大きな穴を開け、血液を噴出させて死にかけているのは、自分が処女を捧げた人間。
それに跨り、手や口を大量の血に染めて内臓を貪ろうとする獣人の女。
木の上から現状を把握し、怒りに震える雪風は、鬼の形相であった。
雪風は己の腕を凶暴な獣のソレへ変化させると、そのまま狸娘に飛び掛かる。
「ふんっ、子狐の分際で私に歯向かうとはいい度胸だ、返り討ちにしてくれる」
口の周りについた血を舌で舐めとると、雪風に対して身構えた。
転瞬、木の上にいた雪風の姿が消えると、次の瞬間には狸娘の懐へ潜り込み、
狸娘を見上げた雪風と視線が交差する。
金属同士が衝突するような轟音が森中に木霊し、
2匹の獣による真昼の決闘の合図となった。
両腕を獣のように変化させた雪風に対し、狸娘は人間形態のままで、
余裕の笑みを浮かべつつ、雪風の爪を受止めている。
「甘い」
「キャンッ」
先制をかけた雪風の一撃が、あっけなく返される。
狸娘は、雪風の爪を受け止めた腕を無造作に振るい、地面にたたきつけた。
雪風も負けじと立ち上がり、両腕の爪を縦横無尽に奔らせるが、
寸前ですべての攻撃がかわされ、変わりに狸娘の強力な一撃が見舞った。
「ぐがっ」
腹に入った拳が体にめり込み、そのまま拳を振りぬくと、雪風の華奢な体が宙を舞い、
そのまま木の幹へ叩き付けられた。
さらに、幹に叩きつけられた雪風の体めがけて、狸娘が更なる一撃を加えるが、
間一髪のところで回避し、狸娘の拳は木の幹に直撃した。
「ちっ、外したか、だが、逃げれば逃げるだけ、貴様の苦痛は続くぞ」
狸娘の拳が打ち込まれた木が、ミシミシと音を立てて崩れ落ちた。
雪風もその光景を目にして、この戦いの部が悪いことを認識するに至る。
だが、引くことは出来ない。
464 :
5:2008/12/29(月) 21:43:08 ID:RN6MifjT
「くっ、ふぅぅぅぅっ」
怒りに震える雪風の瞳は輝きを失ってはいないが、戦闘力の差は歴然であった。
自分の攻撃はすべてかわされ、相手の攻撃により確実に体力が削られる。
妖狐としては幼い雪風にとって、今回の相手は部が悪すぎる。
「貴様もあの男と同じように、冥土に送ってやるよ」
「がっ!」
転瞬、視界から消えた狸娘が雪風の眼前に現れ、雪風の細い首を鷲摑みにすると、
そのまま小さな体を持ち上げ、腕に力を込めた。
首がギリギリと締め付けられ、苦しみにあえぐ雪風の声が漏れ聞こえる。
「くくっ、呼吸が止まるのが先かな? それとも、首の骨が折れるのが先かな?」
持ち上げられた雪風は手足をバタつかせるだけで、反撃する余力はない。
数秒後にはバタついていた手足も力なく垂れ下がるだけになり、
やがて、口からは泡を吹いて意識を喪失した。
「獣はな、食事の邪魔をされると怒り狂うんだよ……もう聞いてはいないようだな」
雪風の生気がなくなるのを感じると、譲の傍へと無造作に投げ飛ばした。
「ふんっ、陽炎の一族とはいえ、所詮はこの程度、さて、食事の続きでもしようか」
狸娘は再び譲の元へと歩みを進めるが、無論、雪風が諦めたわけではない。
男の傍らへ投げ捨てられ、口から泡を吹き、目を開けたまま力無く体を横たえ、
光無い瞳に、死を迎えようとしている譲の姿を映す。
雪風の心には、さまざまな思いが廻っていた。
人間一人守る事ができない悔しさ、無力な自分への憤り。
ハラワタを掻き回されながらも生を強要されている人間を助けたいと言う強い思い。
その思いが、感情が、異性に対する特殊な感情であることを理解したとき。
自分が‘愛する’者を守りたいのだと理解したとき。
覚醒する。
心から、熱い何かが溢れ出す。
体中に、今まで感じた事の無い力が満ちてゆく。
食事を再開しようとしていた狼娘も異変に気が付いた。
確実に仕留めたと思っていた雪風の中から強い力が発せられている。
横で倒れる雪風の体に目を向けると、その瞳は相変わらず死んだままであるが、
体からは何か異質な力が湧き出ている。
確実な止めを刺すために、喉笛を食いちぎろうと彼女の首筋めがけて飛び掛かるが、
それは寸前で止められた。
雪風の首に牙が触れようとした瞬間、狸娘の体を衝撃波が遅い、跳ね飛ばされる。
状況が把握できないまま、なんとか体勢を立て直して着地し視線を戻すと、
眼前にソレが立っていた。
雪風ではない、何か別の存在が。
尻尾や耳、獣と化した腕に見られた金色の毛がすべて白銀に変わっており、
瞳は閉ざされていて周りを見ることはできないはずなのに、真っ直ぐに歩いてくる。
465 :
6:2008/12/29(月) 21:45:35 ID:RN6MifjT
「何のつもりか知らんが、年寄りみたいに白くなっただけで私に勝てると思っ」
狸娘がセリフを言い切る前に、雪風は一筋の光となって飛び掛った。
目にも止まらぬ速さで突撃し、狸娘の後方に着地するが、
寸前でそれを察知した狸娘は回避し、自分の後ろに着地した雪風に向き直る。
「ふんっ、そんな不意打ちでこの私に……つっ!」
脇腹に異様な感覚を覚えて手を当てると、体中に激痛が走る。
視界が揺れ、足元がふらつく。
何事かと脇腹に当てた手を見ると、表面が真っ赤な血で濡れていた。
狸娘は、自分の脇腹が裂かれ血が滲み出ていることに気が付く。
(ばかなっ、完全によけたはずなのに)
キッとにらみをきかせて雪風を見るが、相変わらず目を閉ざして立っているだけだ。
しかも、
「なっ!?」
雪風が再び閃光となり、視界から消える。
自分の真横を2度目の閃光が駆け抜けた瞬間、さっきとは逆の脇腹から血飛沫が飛んだ。
今度の傷は、先ほどより深い。
一度だけなら偶然で済ませられるが、2回連続となるとそうはゆかず、
相手が自分よりも上のスピードを誇っていることを認識させられる。
ふと足元を見ると、自分の眼前に自分の足跡が見え、
無意識のうちに後退りしている事に気づき、冷や汗が出た。
余裕の戦況は一転した。
脇腹の痛みが、狩る立場から狩られる立場へと逆転した現実を語りかける。
噴き出した冷や汗が、頬を伝って地面に落ちるのも自分で気づかぬほどの動揺。
2匹の獣は対峙したまま、言葉を発すること無く時間だけが過ぎる。
高かった日も傾き、木々の間から降り注ぐ木漏れ日も赤く染まり、
暗い森の内部をほのかに照らしていた。
劣勢の狸娘は自分から攻撃に出ることはせず、雪風も瞳を閉じたまま動こうとしない。
狸娘は、このまま夜を待ち、闇に紛れて逃走を計るつもりであったが、手遅れだった。
急に木々がざわめき始める。
風があふれ、木の葉が舞い、渦を作る。
すべての風は雪風の上空で混ざり合い、雪風に流れ込む。
狸娘は、雪風の力が高まっていくことを感じる。
雪風が、ゆっくりと瞼を開く。
表情は何も感じさせないが、瞳は赤く染まり、狸娘を見つめる。
同時に、気配がまったく感じられなかったのが一転し、強力な気の流れに襲われた。
(くそっ、くそっ、何だコイツは!? あのガキにこんな力があるなんて聞いてないぞ!)
目を閉じ、気配をほとんど消した状態でも攻撃を避ける事ができなかった。
その力を解放した状態では勝ち目が無いとうのは、本能云々の話をせずとも明らかである。
(ちっ、ここはひとまず退却だ)
その場から逃走するために地を蹴り、雪風の方向を向いたまま高く飛び上がる。
雪風が襲ってこないことを確認すると、飛び上がった空中で体を回転させ、
雪風に背を向けた。
466 :
7:2008/12/29(月) 21:46:37 ID:RN6MifjT
瞬間、己の体を衝撃が走り、銀色の閃光が自分の脇をかすめていくのが見えた。
攻撃を受けてバランスの崩れたところへ再び閃光が駆け抜け、さらなる一撃。
空中で攻撃を受けたため、体勢を立て直すことができない。
よろけたところに更なる一撃が加わり、狸娘は空中で回り転げた。
踊る、踊る。
何度も何度も、閃光が脇をかすめる度に狼娘の体が空中でバウンドし、弾き飛ばされる。
落下の直前に次の閃光が飛来し、再び上空に弾き飛ばす。
血飛沫を撒き散らしながら、空中で踊り続けるその姿は、不思議と見ている者に対して
‘美しい’と感じさせてしまう。
立ち直る余裕を与えることの無い連激が、屈強な狸娘を翻弄し、恐怖させ、
踊り続けた体は、地面へ落下する頃には斬撃の跡を無数に残していた。
「がはっ!」
受身を取ることもできずに地面に激突した衝撃で口から血を吐き、
よろめきながらも立ち上がろうとするが、疲弊した体はそれを許さずに膝を付く。
ヨロヨロと腕をつきながら顔を上げると、目の前に白銀に輝く狐の姿があった。
爪の先から血をたらし、表情を変える事無く立ち尽くす銀髪の狐。
真っ白だった巫女服を、血飛沫で赤く染めた異様な姿。
その姿を見る狼娘の表情は、まるで捨てられた子犬のように弱弱しかった。
「どうしたのかな? 猛々しい狸の娘がおびえた犬のような表情をしてしまって……」
ふいに、雪風が腕を振ると、狸娘の身体が吹き飛ばされる。
吹き飛ばされた本人は、何が起こったのか理解できぬまま、地面に叩きつけられた。
「逃げないの? 逃げないと、殺しちゃうよ?」
攻撃の手を休め、倒れこむ狸娘に冷たい言葉をかける。
狸娘は何とか立ち上がろうと試みるが、雪風はさらなる一撃を加えた。
「ほらっ ほらっ」
雪風の腕が降られるたびに衝撃波が放たれ、狸娘の身体を翻弄した。
回避する余力の無い狸娘は攻撃をモロに喰らい、苦痛と恐怖のあまり地面でのた打ち回る。
「しょうがないよね、私のツガイになるべきヒトを、殺しちゃったんだものね」
無防備な身体に何度も衝撃波を叩きつけられた結果、狸娘は動けなくなっていた。
動くことはできないが、不思議と意識は残っている。
いや、雪風によって意図的に‘残されている’と言う方が正しいだろう。
自分がそうした、人間の男のように。
仰向けに横たわり、痛みに顔を歪める狸娘にゆっくり近寄ると、その首に己の爪をかけ、
ゆっくりと力をこめていく。
「くがっ!!」
首にゆっくりと爪がめり込み、血が染み出る。
殺す事を厭わない冷たい瞳を見て、狸娘は自分の死を覚悟した。
雪風は、悪びれる表情も見せず、無表情のまま、赤い瞳を輝かせていた。
ドキドキ…
468 :
8:2008/12/29(月) 21:49:00 ID:RN6MifjT
「だめだ……殺しては……」
雪風の耳が、ビクッと反応する。
声の方に顔を向けると、譲が生きているのが分かった。
腹に大穴を空けられていても生きていることに驚き、
狸娘の事を意にせず、男の元へと走り寄る。
施されていた拘束をはずすと、その頭をやさしく抱きかかえた。
「アイツはな、根っからの悪じゃない、心根は優しいヤツなんだよ」
譲から発せられたその言葉に、雪風だけでなく、瀕死の狸娘も驚きの表情を見せる。
「本当に俺を苦しめる気があったのなら、痛覚を消す必要なんて無いはずだ」
「そっ、そんなっ」
譲の言葉が信じられないと言った表情をする雪風だったが、
しばらく目を瞑って考えると、狸娘に対して背を向けたまま、小さな言葉で呟いた。
「今は譲を救うのが先決、去れ、もう2度とこの森に現れるな、次は殺す……必ず殺す」
頭に直接響く言葉に身体を震わせる狸娘は、傷だらけの身体をなんとか持ち上げる。
飛び上がる気力は無いようで、ヨロヨロと体をふら付かせながら歩みを進めていたが、
「待て」
引きとめられて足を止めるが、雪風に対して背を向けたまま、振り返らない。
いや、殺気のこもった気配が背中に突き刺さり、殺されるのではないかと言う恐怖に、
振り返ることが出来ないのだ。
だが、
「命をかけて戦ったのだ、最後に、名を名乗っていけ」
「……我が名は“睦月”滅んだ一族の、最後の生き残りだ」
チラリと振り返って名を名乗ると、その言葉を最後に、森の奥へ消えていった。
雪風は睦月の気配が遠のくのを確認すると譲を抱き上げ、顔を覗きこむ。
その顔は、先ほどまでのような無表情ではなく、やさしい少女の顔に戻っていた。
「生きてた、良かったよぉー ウワーン」
「ははっ、生きていると言えるのかは分からんけどな」
大きな瞳から涙を溢れさせ、泣きじゃくる雪風。
譲が、その涙を震える腕でやさしくぬぐってやると、かわいらしい笑顔が現れた。
「お前は、笑顔のほうが似合って……かっ」
せっかく戻った笑顔が、再び悲しみを帯びる。
譲は口から大量の血が吹き出し、返り血を浴びた純白の巫女服を、さらに赤く染めたのだ。
「俺は、もうだめかなぁ」
すでに内臓の一部が大きく損傷しており、命が長く持たない事を自覚した。
不思議と恐怖はなく、ボーっとする頭で夕暮れの空を見上げる。
雪風は冷静な表情で顔を横に振ると、穴の開いた男の腹に手のひらを当てた。
469 :
9:2008/12/29(月) 21:50:36 ID:RN6MifjT
「今の私なら、あなたを癒せる」
目を瞑り、何かを念じると、腹に当てた雪風の手がほのかに光る。
腹の傷は見る間に塞がり、譲の身体には生気が満ち溢れるが、
雪風の方は逆にやつれていくように感じられた。
「もういい、大丈夫だ、これ以上はお前が」
「まだ駄目、今のままだと後遺症が残るかもしれない、もう少しだから」
腹から体中に拡がる暖かな力を感じながら、譲は生きる喜びをかみしめる。
それと同時に、獣人という種族と関わることの恐ろしさも。
自分を癒す雪風の腕は、攻撃的な別の面も持ち合わせるという事実が、
これから彼女とどう向き合えばよいかという疑問を突きつける。
「さ、終わったぞ、立てるか?」
「あ、ああ、なんとか」
狸娘を撃退したとはいえ、この場所が安全だとは限らず、譲にも安静が必要であり、
その場から離れるために二人で立ち上がる。
すると、森での異様な気配に察知したのか、姉の時雨が現れた。
まぁ、ド派手に森の木々をなぎ倒せば気が付くのも当然であろうが。
「雪風、おまえ」
雪風の体を見た瞬間、時雨は目を見開き、驚きを隠さなかった。
何事かと駆けつけてみると、目の前にいるのは見慣れた可愛らしい妹ではなく、
神々しい輝きを放つ銀髪の狐。
体を血で赤く染めながらも、神々しさを放つ姿であった。
「お姉さ……ま……」
安心したのか、雪風は姉の姿を確認すると糸の切れた人形のように倒れこんでしまった。
地面に倒れる前に譲がなんとか抱きかかえると、元の金色の毛並みに戻ってゆく。
大丈夫かと心配したが、スースーとかわいらしい吐息を立てて眠っており、
譲は安堵のため息を吐いた。
「いったい、何があったんだ、説明してくれ」
銀色に変化した雪風、血に染まった巫女服、なぎ倒された木々。
状況を判断しかねた時雨に問いかけられる譲であるが、
譲自身もすべてを把握しているわけではなかった。
少しずつ、ゆっくりと、話を進める譲の言葉に、時雨は黙って耳を傾け、
事の次第を全て聞き終えると、彼女は真剣な表情で言った。
「君は、もう私たちに関わらない方が良い」
時雨の口から発せられた予想外の発言に、譲は目を見開いて時雨の顔を見る。
「私たちと関わりを持つとどうなるか、わかっただろう?」
腹を貫かれ、内蔵を掻き回される恐怖が頭の中でフラッシュバックする。
自分でも気が付かぬうちに腕が振るえ、それを抑えようと力をこめるが、止まらない。
470 :
10:2008/12/29(月) 21:52:26 ID:RN6MifjT
「後始末はつける、雪風にも私が話す。お前はもうここに来るな、関わるな……いいな?」
初めて見る時雨の真剣な顔に事の重大さを再認識し、しばらく考えた末、決断した。
もう、彼女たちと関わらないことを。
自分の両腕に抱かれて眠る雪風に別れの口づけをすると、耳がピクッと動いて反応した。
「それじゃぁ、さよなら、もう2度と会うことも無いだろうな」
雪風を時雨に託すと名残を惜しみつつその場を後にする。
それが最善の策だと、それが彼女のためだと自分に言い聞かせるが、
雪風に対する想いが獣人に対する恐怖に負けたかのように思え、心が締め付けられる。
下山の途中、雪風の癒してくれた傷跡に手を当てると、わずかに温かみを感じた。
「いくな」
山道をトボトボ歩いていると、後ろから声が聞こえ思わず足を止める。
「帰ってこい、いかないでくれ」
短い間に起こった様々な出来事、かわいらしい彼女の笑顔が頭をよぎる。
だが、振り返ることなく山を降りた。
山から吹き抜ける風の音に、雪風のすすり泣く声が混じっていたように感じたのは、
気のせいでなかったかもしれない。
――だが、話はここで終わらない。
471 :
若旦那:2008/12/29(月) 21:56:32 ID:RN6MifjT
今年はここまでです。
後半は正月の休み明けごろには投下し……できればいいなと思います。
ちゃんと絡みを付けますので。
お疲れさまでした!
リアルタイムGJ!
GJ
ずっと規制されてて書き込めなかったから今のうちに言っておく
このスレで何度か投下されている「マージ」という題名のSSは
マージ 〜MARGINAL〜 というエロゲーの二次創作
投下する際に二次創作だと明記してくれ
文章の出来えとか以前の問題だ
マージかよ!
いやその、マジかよと掛けてみたんだけど。
いろいろとだめっぽいな。
おれはてっきり、マージ・ジルマ・マジジンガかと思った。(なんのこっちゃ)
ところでコマネコってどうなってんの?
作者乙
書き手いないなぁ
スカーフェイスGの続きを全裸で待つ日々
ブルーリキッドの続きを待ってるけど
作者は別の書き始めてる
>>476 数年前にあった子供向けのイベントに、アルバイトとして参戦したときに
場内に延々と流れて耳に焼き付いたが、一年近く経ってやっと耳から消えたその歌が
再び再生されはじめた。どーしてくれる
床上手な日本妖怪っていそうでいない気がする今日この頃
床にミミアリー障子にメアリー
雪女は?
487 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/10(土) 09:50:46 ID:3OtHSd/M
妖怪とか幽霊の類だと呪い殺す対象を愛してしまい
思い悩む狐娘とかは王道だろうか?
さあ執筆作業に戻るんだ
老衰&寿命で死ぬ呪いをかければいいよ
術者が死ぬまで死ねない呪いとかもいいな
無論妖怪が百年やそこらで死ぬわけもなく
そして死ねない人間は次第に狐娘を恨むようになってゆく
実にいい
狐娘は一緒に居たかっただけならなお良い
そして、なら狐娘を殺せば良いと狐娘の首を締め上げるけど何故か何で?どうして?って表情で無抵抗
この後に殺害して狐娘の私物を処分してる際に
日記を見つけ狐娘の本心を知り愕然し絶望する男性
途中でやっぱり殺せないと手を離した男性の叫びを聞き
狐娘が素直な本当の気持ちを伝えたら男性も好きだから殺せなかったと告白し二人は結ばれハッピーエンドに
と二つのルートに分岐と
おまえそれ『ごんぎつね』やん。
『ごんぎつね』やん。
だまされたと思って読んでみ『ごんぎつね』
>>494 全裸でちんこ握り締めて読んでも大丈夫?
保障する?
>>495 フロイト心理学フィルターかければ大丈夫。
てっぽで撃たれてぐったりしながらこくりとうなづく狐っ娘とか萌えてこないか。
おい、どうしてくれる。
ごんぎつね思い出したら目から汗が止まらなくなっちまったじゃないか。
俺もさっき全文読んで目から汗が出てしまったが
とりあえず。ごんの性別に関する記述は全くなかったことだけを報告しておく。
ティッシュ必要だって言ったのに…
ハンカチの間違いだろ…
獣耳と尻尾が生えた狼少女なら
封印から解放された狼少女が十四年前に封印された恨みを今、晴らすと
再封印しようとした母親と姉をボコボコにして
トドメの瞬間に主人公が割って入り母親と姉がダメ!逃げてって苦悶の表情で叫び
邪魔をするならお前からって狼少女が牙を剥き出しにした瞬間にクンクンと匂いを嗅いだら
何故か頬を紅く染めてポーッとして。あの時の良い匂い。って言ってハッとして
今日はこれ位にしていとやるとアタフタしながら狼少女が撤収
その後に十四年前に母親との戦いで傷だらけの狼少女(獣モード)の隠れ家の洞窟で鉢合わせし優しく看病してくれたのが実は主人公と判明したり
明らかに主人公の気を引こうとする余り恋愛に慣れてないのもあってストーカー化した狼少女が不憫で姉が手を貸したり
色々あって主人公と狼少女は最終的に結ばれる
>>優しく看病してくれたのが実は主人公
とかその家系の人間とかな
504 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 20:24:09 ID:6G1EHhPn
違う種族同士の差別や偏見に
人間を愛してはダメで愛した者には死。あるのみと言う厳しい掟など
様々な苦難や壁を乗り越えて、やっと結ばれた二人だけで。獣耳の少女は余命半年と言う哀しい悲劇に見回れ
ってのも良くある話だよね。
505 :
古寺の女幽霊:2009/01/14(水) 23:03:26 ID:WpHvlhSc
時折酒の肴として語られる怪異であるが、なんでもこの近くの廃寺に夜な夜な女の幽霊が出るんだそうな…
その女の幽霊ってのが、見た者の話によるとな…
言葉に尽くせない程の凄絶なる美貌の持ち主で、胸元がはだけてて豊満な乳房を忍ばせるそりゃあまあ扇情的な幽霊だそうな…
でな…ある夜酔っ払いが、その寺で寝こけてたら出たんだとよ…そいつがな、見た瞬間怖さより余りの美しさに魂を奪われて呆然とするってんだよ…
でな、呆然とするそいつを妖艶なる笑みを浮かべながら、そいつに何と口付けを交して、全身を撫で回すんだそうな…
んで、余りの気持ち良さに恍惚としてるとな…
そいつの股間をまさぐり、何と!一物を取り出すんだそうな!
506 :
古寺の女幽霊:2009/01/14(水) 23:17:39 ID:WpHvlhSc
なにしやがる?って言う言葉すら出ずに呆然とその行為を眺めるだけなんだってよ、んで、一物に何するかって?
ああ、そら勿論あれする訳よ…ほら、フェラテオ?ああ、フェラチオって奴さ…まー幽霊にあそこはねーべな!やる事つったらそれしかねーべ!
でな、白くて透き通った女の手が一物を扱いたと思ったらおもむろに口に含んだんだってよ…
それがな、なかなかの技巧派みたいでな?
空いてる手で玉袋をもみながら竿を巧みにしゃぶり上げる訳よ…
当然我慢ならず果てる訳だが、不思議なことにだな、精液が女の後頭部に突き抜けずに女の口の中に消えて行く訳よ…
幽霊なんだから実体は無い訳だよな?
にも関わらず、実体があるかの様に消えて行く訳よ…
でもな、当の本人は余りの気持ち良さに我を忘れて考える余裕は無い訳よ…
んで、異様な射精感と疲労感が襲うんだが、射精が止まらないそうな…
んで、そのまま精液も精も吸い尽くされて死ぬんだそうな…
今でも居るかって?確かめる気かい?やめとけって!さっきいったろ?死ぬってな?!
507 :
古寺の女幽霊:2009/01/14(水) 23:30:01 ID:WpHvlhSc
それから数日経って、どうしても話が信じられないので、物は試しその夜廃墟になった古寺へ行って見た…そしたら、「ウフフ…」と言う女の笑い声が聞こえて、振り向くと…居た!話の通りの美しい女幽霊が!
逃げようとしてるんだが、何故か体が動かない!
そして、意思とは関係無く勝手に服を脱ぎ出し女幽霊の元へ…
翌朝…そこには全裸で、てらてら濡れた一物を隆々といきり立たせ、精を吸い尽くされた男の死体があった…
お終い
住所はどこですか?
今すぐ逝ってきます!
ピチャピチャ・・
うッ!・・ウッ!ピュル!ドプ!
狐耳を生やした女の子が僕のペニスから吹き上がる精液を一生懸命舐めて居る…余りのザラザラ感の気持ち良さに、またしても射精してしまった訳だ・・
この狐少女は、初めて見る人間の雄のペニスに戸惑いを見せて居た筈だが、最初僕が扱いて出して見せた精液に興味津津となり、今二度目の射精に驚きながらも美味しそうに舐め取って居る・・
尿道や裏筋や亀頭の傘を舐め続けられ、射精直後でもあり、若い僕の敏感な亀頭は、ザラザラした狐娘の舌によりまたしても固く膨張する、ペニスは再び大きく勃起し、睾丸がセリ上がる・・
ああ、気持ちよさ過ぎる!
しばらく悶えた後、咥えさせた狐娘の口の中に三度目の射精をした・・
狐娘の話の前に突如浮かんだ話を先に・・
私の住んで居る村には世にも奇妙な風習がある
それは、何と!村では、子宝と子孫繁栄を願って、射精可能な男達全員が御身体に対して男性器を露出させて、射精し、精液を神様に捧げ・・出産可能な若い女達は、全裸になり神像に女性器を向けて、滲み出る愛液を神様に捧げると言うんだ!
その神様って言うのが、対になって居て片方は逞しい男性器を誇示している男神像で、もう片方は、美しい女神の全裸像で祭りに参加する男女は、それぞれの神殿へ全裸で赴き精液や愛液を捧げると言う
尚、未婚の男性つまり女性経験が無い男は、男性器を捧げるだけで射精は、許されない、何故ならその夜女神が美しい女性の姿で、その男の前に現れて、何と筆卸しをしてくれるんだそうな!
これは、処女には無くて男性のみらしいが
そしてわたしは、期待と不安で待ちつつ男性器を怒張させている。
511 :
名無し三等兵 :2009/01/15(木) 02:07:29 ID:MRJ9Kneg
まさに全裸正座wktk状態か
512 :
奇妙な風習2:2009/01/15(木) 15:41:47 ID:l+gihR3q
村にはこう言う話もある
とある昔にアーミアと言うとてもとても美いのだが、凄まじく淫乱な女の怪物が居てな、人間の男の精液が好きらしく近隣の男達を襲い精液を飲み干すんだと、
やられた男達は、抜かれ過ぎて働けなくしてしまうから畑作業やら漁やら出来なくなって困ると言う事で、高位の祈祷師にお願いして、何とか祠に封印した訳だが、それでも鎮まらず鎮める方法として考えられたのは生け贄を捧げるって事何だが、選ばれた男は
封印された塚の中へ入り、中の像の女性器を象った穴にペニスを差し入れるんだと、するとな、たちまち物凄い快楽によりたちどころに射精して、睾丸が空になるまで精液を吸い上げてしまうらしい。
生け贄とは言っても吸い殺される程酷く吸われる訳じゃなくて、2〜3日したら元通り射精出来るんだとよ?
まあ、アーミアは人を殺害する様な悪い怪物じゃなくむしろ人におねだりする位に優しいつか可愛い怪物なんだが、何せ一時的に精液が枯渇する位飲み干すからな?
しかも、一人じゃ満足出来ずに際限無く精液を欲しがり、他の男達に興奮して襲って吸い上げるから始末が悪いんだ
ああ、生け贄捧げないと封印が解けるからだと?
いいや、二度と出れはしないさ・・だけどな、アーミアは精液を貰えないと泣き叫ぶんだよ・・正確には泣き吠えるんだが、それがまた甘くて官能的な声色で泣くんだよ・・
で、男達はかつて飲み干された快楽を思い出してしまい、仕事がおぼつかなくなるし、女達は嫉妬で怒り狂うしで、困るんだな・・
かと言って殺すのも可哀相で気が引けてな・・
で、生け贄を三日に一度捧げるんだとよ。
まーぶっちゃけた話、生け贄以外でも、抜かれたい盛りの若い男達がこっそり行くんだけどな?
これは内緒な?
で、最近精通が始まったばかりのなのに村娘とセックスしたお前さんが、罰として明日の生け贄に選ばれたって訳だ!
気持ち良くて楽しいぞ!
たっぷり抜いて貰え!
だが、癖になるなよ?
そして翌日・・僕はその祠へ連れてかれた
僕一人だけ入れと言われて入ると、なんだか甘酸っぱくてそれでいて、栗の様な匂いも交ざってなんだか興奮してしまい、全裸の僕のまだあどけないペニスは、痛い程固く膨張してしまってる
中に入ってちょっと歩くと、奥に美しい女性の石像があり、大きさは丁度ちょっと背の高い大人の女性位で、豊満な乳房と女性器の形まで寸分違わず再現されて居るみたい。
像から、うら若い女の様だがすごく官能的な声色が発せられた・・
「ああ・・来てくれたのね・・貴方のを頂戴・・貴方の全部を頂戴・・」
僕は堪らず、石像に操られるかの様に抱き付き、ペニスを女性器を象った石像の穴に挿入した・・
「うあぁぁあ・・で、でるぅ〜」
僕は、吸い込まれかつペニス全体を擦られるかの様な感覚に襲われて、上り詰め石像の中に大量に射精した
亀頭は、限界まで張り詰めペニスは固く固く膨張し、睾丸がセリ上がり精液を絞り出す、やがて睾丸が空になり射精が終わると、ポンと石像の穴から僕の萎えたペニスが抜け、絞り尽くされて痛む睾丸を押さえながらその場にくずおれ気絶した・・
なんだか優しい声がする・・
目が覚めると、扇情的な像が目の前にあり、痛む睾丸を押さえながらその場を後にした・・
祠の外に掛けてあった僕の服を来て、抜けた腰の脱力感と痛む睾丸に泣きそうになりながら何とか家に帰った・・
毎日射精してた僕でも、睾丸痛みの治まりと射精出来るまで、四日も掛かった・・実は、回復力が高いせいで通常より沢山射精させられたからっぽい・・
でも、癖なりそう・・
後少ししたらこっそり行こうかなと、思っただけでひくつき勃起するペニスを感じながら思ったんだ。
お終い
GJ
470の続きです。
518 :
11:2009/01/18(日) 21:16:32 ID:5s5k4E0T
「うっ、あ、あれ、お姉さま?」
気が付くと、姉の腕の中だった。
静まり返った森の中には闇が降り、月明かりだけが木々の隙間からわずかに漏れる。
雪風には、姉がここにいる理由、自分を抱きかかえている理由が理解できずに困惑する。
「あいつは無事だ、敵はお前が撃退した……覚えていないのか?」
思い出そうとすると、頭にズキリと痛みが走る。
譲が殺されかけているのを見て、怒りと憎しみで周りが見えなくなった。
自分が自分でなくなり、溢れる力で全てを壊したくなった。
瞳を閉じると、自分を見上げる傷だらけになった狸娘、睦月の姿が見える。
脅えた瞳が印象的だが、あれは私を見ているのだろうか?
そして、私は己の爪を彼女の体に……
「痛ッ」
走馬灯のように記憶が流れ、全てを理解したとき、護ろうとした人間の顔が頭に浮かぶ。
「譲はっ? どこにいるの?」
「アイツは、もう、2度とここに戻らないだろう」
姉の時雨は顔を背けると、呟くように答えた。
驚きの表情で姉の顔を見るが、姉の瞳は、どこか遠い所を見つめている。
「譲っ!」
「あ、こらっ、雪風っ!」
優しく抱きしめる姉の腕を振りほどき、制止を振り切って夜の森に飛び込む。
その後姿を見送った姉が、呟いた。
「まったく、人間に惚れるなんて……あーあ、私もあんな彼氏が欲しいなぁ」
ここは自分が山神を勤める土地、譲が山を抜けきっていないことは分かる。
森の木々を縫うように、木の上を翔け続けると、視界にあいつの姿が映った。
音も立てずに地面へと降り、去り行く譲の後姿を眼にするが、
その姿はどこか弱弱しく感じられた。
妖力で癒したとはいえ、瀕死の重症を負ったのだから当然かもしれない。
だが、そんなことを気にかけることも無く、夢中で声をかけた。
「いくな」
譲は歩みを止めた。だが、振り返らない。
「帰ってこい、いかないでくれ」
立ち止まったまま、やはり、振り返らない。
後姿のまま顔を見せず、表情を読み取ることはできないでいたが、
グッと拳を握り締めるのが見え、結局そのまま、無言で歩みを進めてゆく。
このまま後ろから抱きしめてやりたいが、その後姿を黙って見送る事しか出来ない。
足を前に出せばいいだけなのに、それができない。
519 :
12:2009/01/18(日) 21:18:01 ID:5s5k4E0T
後を追うことが出来なかった。
譲をひどい目に合わせた負い目、再び傷を負わせてしまうかもしれないという恐怖。
これが最善なのだと自分に言い聞かせるが、後悔をぬぐうことが出来ない。
「うぐっ ひくっ」
譲の姿が視界から消えた途端、その場に崩れ落ちた。
闇に包まれた山、月明かりが照る森の片隅ですすり泣く狐の少女。
子狐の小さな泣き声を、森の木々だけが静かに聴き、静寂が優しく包み込む。
雪風は、泣きに泣いた。
泣きに泣いて、疲れて泣くのをやめた。
思い立ったように立ち上がると、トボトボと歩きながら住処である社へ戻る。
押入れから布団を引出し、床に敷き述べると、
返り血を浴びて赤く染まった巫女服もそのままに、倒れこんだ。
「はうんっ……譲ぅ……」
寝転がりながら布団に鼻をこすり付けると、微かに思い人の匂いがした。
じっくりとその香りを嗅いでいると、身体の芯が僅かに火照る。
悲しんだばかりで我慢できない自分の身体に飽きれつつも、火照る箇所に指を添えた。
「ひっ」
触れた途端に、身体を貫く快感。
今までの度重なる行為で慣らされたはずの感覚が、
初めてを捧げた際に味わったかのごとく蘇り、身体を襲う。
異常な事態を理解することはできなかったが、それでも指の動きを止めなかった。
秘所からは蜜が溢れ、垂れた液が布団を汚す。
声を殺しつつも、漏れでた声が社の中で反響する。
「ひあぁんっ、譲、譲ぅぅ……ひんっ」
思い人の名を叫びつつ、自らの秘所を弄り、自慰にふける。
2度と会うことのできない悲しみが雪風の心を縛り、
その縛りを和らげようと、自らの身体に快感を刻み込む。
敏感な神経は、経験を積んだ少女の身体を、簡単に絶頂へと導いていた。
「はぁ、はぁ、ふぅ、くぅん……」
指を僅かに挿入し、クチュクチュと卑猥な音を立てながら蜜壺をかき回す
一本の指では満足できず、何本もの指を、代わる代わる挿入し、その度に達する。
だが、何度絶頂を迎えても、どこか満足できない。
再び布団に鼻を擦り付けると、思い人の香りに重なって、自分の蜜の匂いがした。
「はぁ、譲ぅ、大好きだよぉ」
疲れているのだが、火照る体は一向に引く気配を見せず、眠りにつくこともできない。
何とかしてなだめようと、再び自分の秘所に指を添えようとした、
雪風の耳が異様な物音を察知したのは、まさにその時である。
「だっ、誰だっ」
520 :
13:2009/01/18(日) 21:19:41 ID:5s5k4E0T
室内に響いた突然の物音に、飛び起きた。
音が発せられたのは、社の外ではなく、中からのように感じられた。
追い返したはずの敵が再び現れたと思い、喉を鳴らして敵意を露にする。
耳を縦横に動かしながら音源を探ると、どうやら、隣の部屋からのようだ。
今まで気がつかなかったが、障子戸で仕切られた隣の部屋からは、何者かの気配。
しかも、戸が僅かに開かれている。
失意の底にあったとはいえ、油断をした自分を心の中で叱咤する。
相手は戸を挟んだ反対側で、動く気配を見せない。
雪風は、戸へ一気に近寄ると、思い切って襖を開け放った。
開けて、そのまま硬直した。
「あ、いや、声をかけようと思ったんだけど、タイミングを逸してさ……」
目の前にいたのは、先ほど分かれたはずの思い人。譲そのひとである。
2度と会うことができないと、諦めていたその人である。
「見、見ていたのか?」
「うん、見てた」
「いつからだ、いつから見ていたのだ!?」
「いつからって……俺はお前が帰ってくる前からここにいたんだぞ」
全部を見ていました、といわんばかりの言葉に、雪風の顔が一気に赤くなる。
何度も情を交わした相手とはいえ、自慰を見られるのはやはり恥ずかしい。
なにしろ、眼前の人物の名を呼びながら自慰に興じていたのだから、なおさらだ。
「なぜ、ここにいるのだ」
だが、思い人に再び会った雪風の言葉は、異様に冷たいものであった。
泣きはらした瞳は涙で赤く染まり、譲を見つめる視線には異様な冷たさが篭っている。
その冷たい視線に居た堪れなくなった譲は、ふい、と視線をそらした。
「俺は、最後に一目、お前に会いたくて」
「ふん、私が止めたとき、振り返りもせずに帰ったじゃないか!」
「そっ、それはっ」
譲は再び雪風を見つめたが、今度は雪風のほうがプイッと顔を背けてしまった。
怒りを伴った声が、譲に向けられるが、
当の雪風も、心の底から怒りに震えていたわけではない。
再び自分を訪ねてくれた譲の行為に、感激しているが、表情に表すことができない。
そんな雪風の心を知ってか知らずか、
「な、なぁ、雪風」
「なんだっ……ひやあっ」
譲がそっぽを向いた雪風の油断を衝いて、距離を一気に詰めるとその体を押し倒した。
突然の事態に雪風も混乱するが、ただ、眼前の男が異様に興奮していることだけは、
見て取ることができた。
「貴様、何をっ」
「ごめん雪風、俺もう、我慢できそうに無いんだ」
「我慢って、いったい……」
いったい何を、と言い出そうとした瞬間、雪風の目に飛び込んできたのは、
雄雄しく怒張した譲のモノであった。
521 :
14:2009/01/18(日) 21:20:35 ID:5s5k4E0T
いつの間にズボンやパンツを脱いだというのか、という疑問も浮かんだが、
譲がソレを出したということは、これから雪風に対して何をしようとしているのか
考えるまでも無い。
「ちょっ、おまっ、さっきシリアスな別れのシーンを演じたばかりだろうがっ」
「じゃあ、さっきまで、俺の名前を呟きながら自慰に興じていた君はどうなんだい」
「ううっ、それは」
慌てて譲の体を押し返そうとする雪風に対し、体に圧し掛かったまま、熱い血の滾るソレを、ゆっくりと雪風の顔に近づけていく譲。
雪風が自慰に興じている間に己で高めたのか、張りつめた肉棒の表面には血管が浮かび、
充血し、赤く染まった亀頭の先端から、透明な液体が垂れていた。
「うっ、すごい……雄の匂い……」
譲がさらに腰を前に動かすと、イチモツが雪風の鼻先へと向けられる。
雪風が‘獣’の力を使えば、人間である譲を払いのけることなぞ造作も無い。
それをあえて行わないのは、このまま譲の行為を受け入れたい気持ちがある証拠で、
猛烈な匂いを発する大好物を目の前にして、雪風も興奮の色を隠せなくなり、
ついには、
「はうっ、おいしそう……はむっ」
雪風は、眼前で滾る譲の分身にしゃぶりついた。
舌を亀頭に絡めると、先端の割れ目から溢れ出していた透明な液体を舐め取る。
亀頭だけではない、竿にまで伝い、筋を描いていた液体までも丹念に。
全てを舐め終えたころには、先走りでなく、唾液に濡れたイチモツが
怪しい光を放っていた。
「んっ、やっぱりおいしい」
亀頭の付け根を優しく甘噛みし、イチモツが動かないように固定すると、
舌の先端を上下に激しく動かし、擦り付けた。
亀頭全体を優しく包み込むように舐めたかと思うと、
尿道口をグリグリと抉るように舌を回転させる。
度重なる譲との行為で、弱点を知り尽くしている雪風は、さらに攻勢を強め、
「うあっ」
「ひああんっ」
途端に、譲は絶頂を迎えたのである。
射精の瞬間にイチモツを口から放してしまった雪風は、欲望の塊を口だけでなく
顔全体に受け、その強烈な匂いを直に嗅ぐ。
真っ白な精液を顔全体に塗りつけ、その匂いで恍惚の表情を見せ、脱力する雪風の姿、
全身を覆う巫女服は所々剥がれ、胸元からは片胸がその姿をさらす。
袴は、股間の辺りにグッショリと濡れ、自慰の跡を残していた。
その扇情的な姿や表情は、射精で縮まりそうになっていたモノの硬度を
保つのに十分過ぎた。
一旦はその場を退いた譲であったが、布団の上に横たわる雪風に覆いかぶさり、
だらしなく口を開いたままの雪風に、再び腰を向けると、
喉の奥へ、一気に挿入した。
522 :
15:2009/01/18(日) 21:21:40 ID:5s5k4E0T
「はむっ、んぐぅ!?」
考えもしなかった再びの奇襲。
小さな口に、溢れんばかりのモノが挿入され、雪風は目を見開いた。
さっき出した精液が潤滑財となり、雪風の口は何の抵抗も見せること無く、
譲の分身を奥深くまで導いていた。
小言を言いたくとも、口が封じられている雪風は、何も言うことができない。
「先端が、喉の奥に当たってるよ」
実際、譲のイチモツは雪風の小さな口を貫き、喉にまで到達していた。
だが、喉の奥に当たっているということは、気道を塞いでいるということでもある。
雪風は妖狐であるから、息ができなくとも別に問題はない筈だが、
気持ちの問題なのか、その表情は息苦しそうだった。
口への挿入を果たした譲は、それだけでも達しそうな勢いであったが、グッと堪え、
「うっ、動かすからね」
雪風の顔を両手でがっちり掴むと、腰をゆっくりと後退させた。
口内の肉が引っ張られ、イチモツに密着し、ミチミチと音を立てながら擦れあい、
半分ほど抜けたところで、
「んぐっ、むぅぅ」
再び雪風の口を貫いた。
奥まで突き入れるたびに、自分の分身を包み込む生暖かい感触。
溢れる唾液で滑らかな口内は、最初から譲のモノを受け入れるためにあったかのように、
その感度を増していた。
「はっ、ふぅ、はむぅ」
「上手だよ雪風、きみのお口が、俺のを部、包み込んで……」
(そんなっ、嘘よっ、私のお口、お口の中が、気持ちいいよぉ)
半分抜いては奥まで突き入れる。
繰り返されるピストンの連続に、頭を固定された雪風は、成す術も無く従っている。
「奥に、奥に出すからねっ」
今度は、イチモツを喉の奥へ突き込んだまま、精を放った。
雪風は、譲のイチモツが口の中でビクッビクッと痙攣しながら、
喉の奥へ熱いものを放出する様を感じ取る。
精液は、口を介すことなく、直接喉の奥へと流れ込み、
喉から鼻に向かって駆け抜ける精液の生臭い匂いを嗅いだ雪風は、涙目となった。
だが、譲は雪風の状況を気にすることも無く、間髪をいれずにピストンを続けた。
ピストンを繰り返すたび、精液と唾液が混ざり合い、泡立ち、腰を引くたびに、
それらが少しずつ口の外へ押し出されてくる。
雪風の口が開放されたのは、3度目の口内射精が行われた後だった。
523 :
16:2009/01/18(日) 21:22:46 ID:5s5k4E0T
「雪風、君のお口、とっても、気持ちよかったよ」
粘液を滴らせながら引き抜かれた譲の分身には、
精液だか唾液だか分からない液体がビッチリとこびり付き、異臭を放っていた。
譲は両手で押さえつけていた頭も解放して様子を見るが、
雪風はだらしなく開けた口から精液を滴らせ、目を見開いたまま動く気配を見せない。
唯一、頭上の耳だけが、ピクピクと痙攣しているのみであった。
「ちと、張り切りすぎたかな、おい、大丈夫か、おーい」
最後の別れを惜しむはずが、己の性欲を抑えきれずに、
激しい行為へと発展してしまった。
頭をペチペチ叩いて起こそうとしても、一向に反応が無い。
「しょうがない、とんだ最後になっちまったが、これでお別れだな」
立ち上がると、辺りを見回して、襲い掛かる前に脱いだ下着を探すが、
雪風に背中を見せた瞬間、異様な気配を感じて動きを止める。
「待たんか、バカモノ」
ふいに聞こえる、雪風の声。
「一人で満足して、帰るつもりか?」
「えっ」
「帰るなら、私の‘ココ’も、満足させてからにせんかっ」
振り返ると、上半身を布団にこすり付けつつ、尻を高く突き出す雪風の姿があった。
ピンと張られた尻尾は天を仰ぎながら微かに揺れ、その付け根では、
だらしなく開いた入口から愛液を垂らす蜜壷が小刻みに蠢いていた。
「だ、大丈夫なのか、気を失っていただろ?」
「あれは、濃密な“気”を口から直接流し込まれて、体が驚いただけだ、それに……」
「それに?」
「貴様の淫乱な気のおかげで、もう、我慢できんぞ」
突き出した尻を左右に揺すり、挑発するかのような姿勢を見せ、譲を誘う。
一度は満足した譲も、秘所から香る、男を惑わす強烈な匂いをかぎ、
再び自らの分身を奮い立たせていた。
「じゃぁ、口で気持ちよくしてくれたお礼に、俺も口で気持ちよくしてあげるよ」
「うっ、ひやぁぁ」
雪風の小さな尻に両手で掴みかかると、迷う事無く己の舌を愛液溢れる蜜壷に突き入れ、
激しく嘗め回した。
少女のものとは思えぬほどに使い込まれ、プックリと膨らんだ無毛の丘は、
入口を淫らに開閉させ、愛液を垂らしながら譲を欲する。
「はうううっ、舌が、舌が中にいっ、気持ちいいよぉ」
割れ目の真ん中に突っ込んだ舌をゆっくり引き抜くと、割れ目に沿って上下に動かす。
舌に絡みついた粘り気のある愛液を塗りたくるように、
特に、ピンと張った小さな蕾を、丹念に、磨きあげるかのごとく愛撫する。
524 :
17:2009/01/18(日) 21:23:49 ID:5s5k4E0T
股の間からその光景を眺める雪風は、自分の親指を咥えながら顔を赤らめ、
譲の行為にその身を任せていた。
「……にしも、今日の雪風は、我慢が足りないんじゃないか?」
「かっ、体中が敏感になっているんだ、しょうがないだろう」
「敏感って、やっぱりここも?」
「っつ!」
そう言って握りこんだのは、ふさふさの尻尾。彼らの性感帯のひとつである。
やさしく撫でるように触れただけだというのに、雪風は背を仰け反らせ、
脳天まで貫いた衝撃に言葉を発することも出来ずにいたが、
「ばっ、ばかものぉ、尻尾を触る前には一言言えと、いつも言ってるだろうがぁ」
「そうだった、ゴメン、じゃぁ……いっぱい触るからね」
「ひゃめぇっ」
怒り顔で告げる雪風にニッコリと笑顔を返した譲は、尻尾の先端を摘み上げ、
途端に、盛大な潮を噴き上げる雪風。
「ひゃめっ、もうっ、ふあわぁ」
金色に輝く毛並みの尻尾の中で、唯一白に染まった先端部分から、
指を優しく絡ませ、付け根に向かってゆっくりと愛撫を行う。
毛並みの良い金色の尻尾が暴れようとするのを抑えるが、尻尾から流れ込む快感は
雪風の秘所を容赦なく刺激し、腰をヒクヒクと痙攣させる。
譲の手が尻尾の根元まで達したとき、快感に呻く雪風の瞳が赤く染まると、
「あうんっ、もおっ、我慢の限界だ!」
自分の尻や尻尾を愛撫していた譲の首を尻尾で巻きつけると、獣の力を全開にして
譲の体を布団の上に押し倒す。
無理矢理寝かし付けた譲の上に跨ると、赤い袴を捲って自分の秘所を見せ付けながら、
興奮で息を荒げた顔で譲を見下ろす。
「ふふっ、今度は私が、気持ちよくしてやるからな」
自分の割れ目を譲の先端に宛がうと、躊躇無く腰を落としこんだ。
散々にイき狂い、潮を噴出していた雪風の秘所は、血潮の滾る譲の分身を
すんなりと受け入れた。
「ふあぁぁ、コツンッて、私の奥で、一番深いところに当たってるよぉ」
自分の膣が満たされる感覚に、熱い吐息を漏らす。
無数のヒダが突き出た内部は、興奮冷めやらぬ譲の分身を激しく捲し立て、
根本から亀頭に向かって波打つような膣の動きが、譲を一瞬で果てさせる。
根本から先までみっちりとした肉に包み込まれており、行き場の無い精液は
必然的に、閉ざされた子宮へ向かう他無い。
激しい締め付けにより勢いを増した精液は、子宮の入口をこじ開け、
子狐の小さな子宮を満たしていった。
525 :
18:2009/01/18(日) 21:25:16 ID:5s5k4E0T
「子宮が、焼けてるみたい……子宮がぁ、精液にぃ、犯されてるよぉ」
待ちに待った胎内射精。
研ぎ澄まされた神経は子宮内部に流れる精液の熱さを過敏に感じ取り、
締め付けを弛めぬように力を込めつつ、抑えきれぬ快感の波に耐える。
何度も受けているはずの射精であったが、今日の雪風はいつもと違う感覚を覚えていた。
悦びというより、温もりとでも言うのだろうか。
「はううっ、満たされてる……でも、まだ足りないよぉ」
腰を上下させるたびに絶頂を迎える、イきっぱなし状態。
普段の雪風ならば数分で力尽き、気を失ってしまうほどの快感が、
津波となって雪風の体を襲い続ける。
一心不乱に腰を上下させ、膣を締め付け、譲のモノを絞り続ける様を見ると、
何かに取り付かれているかのように感じられる。
「なぁ、何で今日の俺たち、こんなに盛ってるんだろう、尽きないんだろう」
「きゃうっ、多分、私の変身が関係っ、ひいんっ」
「お前はそれで理由になるとして、俺がこうなるのはなんでだよ?」
「それはっ、傷を癒すときにっ、ひっ、私の力を流し込んだからっ、はうんっ」
「うっ、じゃ、じゃあ、こうした責任、ちゃんととってくれよな」
腰の上下動を加速させる雪風は、尖った八重歯をむき出しに、
歯を食いしばりながら快感に耐える。
「ごめんっ、雪風、もうっ、止められないよっ」
「私もっ、イきっぱなしで、気持ちいいのが、止まらないっ」
「あっ、また、また出すよっ」
「うんっ、来て、奥の奥まで、精液で満たしてぇっ」
それから、どれだけの時間交わっていたのだろう。
喜びを分かち合うかのように、悲しみを振り払うかのように、
途中から再び攻守を逆転しつつ、二人とも気を失うまで体を重ね続け、
社の中へ朝日が差し込む頃、ようやく目を覚ます。
目が覚めてからも、瞳を見つめあいながら抱き合い、唇を重ね、最期の交わりの、
その余韻を楽しんでいた。
そして、別れの時……
「やはり、行くのか? もう、会えないのか?」
「そんなことはないさ、君がもっと一人前になったら、また、会えるかもしれない」
「私、頑張る。母さんのように、立派な九尾になるんだからっ」
涙目になりながら叫ぶと、そのまま譲の腰へ抱きついた。
腰に手を回し、顔を譲の腹にこすり付けつつ、上目使いに譲の顔を覗く。
譲は、そっと肩を抱いて顔を落とすと、そのまま雪風のおでこへ優しく口付けし、
最後の別れを告げた
「また……な」
「うん、きっと、きっとだよぉ」
朝の日差しと、森を駈ける清々しい風が、二人の間を駆け抜け、
去り行く譲と見送る雪風を、やさしく見送っていた。
【終】
527 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 17:19:11 ID:M3OsBeRL
何というgj・・・
感動をありがとう
ほしゅアゲ
投下します
シロが死んだ。
俺が生まれた時に我が家にやってきた猫である。
身体が白かったからシロと名付けられた。かなり適当な理由であると思う。何にしろ、
物心付いた時からほぼずっと――十八年も一緒に暮らしていた。それが去年死んでしま
った。猫としては相当な長生きだろう。
死んだと言っても、死んだところを見たわけではない。獣医にあと数日の命と言われた
翌日、衰弱した身体のまま居なくなり、そのまま帰ってこなかった。
シロの写真を見ながら正博は、小さく嘆息する。
「もう一年か、長いようで短かったな……」
シロが死んでから一年。正博は高校を卒業して専門学校に入り、親元を離れて一人暮
らしをしていた。今でも時々シロのことは夢に見る。
暖房の効いたワンルーム。一人で使うにはやや大きめのこたつで暖まりながら、窓の
外を見つめる。十一月終わりの冷たい夜の闇が広がっていた。寒気が流れ込んで気温
は十二月後半並と、天気予報で言っている。
付けっぱなしのテレビから流れるバラエティ番組。
そちらをちらりと見やってから、正博はレポートに視線を戻した。
カリカリ……。
窓の方へと目を移す。何かが窓を引っ掻いているらしい。ガラスの上半分は透明だが、
下半分は磨りガラスだった。そこに写る小さな影。猫だろう。
「やれやれ……」
正博はこたつから起き上がり、窓の方へと歩いていった。放っておいてもいいのだが、
すぐに止めるとは思わない。適当に追っ払いておいた方が面倒はないだろう。
そう判断して、窓を開けようとした時だった。
「正博さん」
窓の外から声が聞こえてくる。聞き慣れない若い女の声だ。
いきなりの声に、正博は動きを止めた。理解不能な展開に、思考が止まる。窓の外に
人はいない。ここはアパートの二階で、ベランダにいるのは一匹の猫だけ。
「お久しぶりです。私はシロです」
「え……?」
思わず声を漏らす。意味が分からない。磨りガラスに映った猫の影はガラスを引っ掻く
のを止めて、その場に腰を下ろしていた。
「シロ……?」
「はい。もう一度あなたに会うために、猫又になってやって来ました」
その言葉に息を呑み込む。
正博の思考はほとんど働いていないが、言いたいことは理解できた。猫又。年を経た
猫がなると言われる妖怪。シロが猫又になって、自分に会いに来た。信じられない話で
あるし、現実とは思えない。
その動揺はシロにも伝わったらしい。
数秒の沈黙から、シロが言葉を紡いだ。
「信じられないと思いますけど、私はここにやって来ました。ただ、これは私の我が儘です
し、猫又は猫の妖怪ですし、会うのが嫌だというなら私は帰ります」
期待と不安の入り交じった声。
「それでも、会ってくれますか?」
その問いに。
正博は十秒近く迷ってから。
「分かった」
ガラス戸を開けた。
冷たい風が頬を撫でる。夜の肌寒さとは違った不思議な緊張感。
視線を落とすと、そこに一匹の猫がいた。
「ありがとうございます、正博さん」
絵に描いたような白猫が座っている。きれいな白い毛並み。ただの白い猫だが、その
体つきと毛並みはシロのものだった。よく似た白い猫ではない。そして、尻尾は二本。
黄色い瞳でじっと正博を見上げていた。あまり表情を変えない猫ではあるが、嬉しそう
に微笑んでいるのが分かる。
「本当にシロなのか?」
正博は息を呑んでそう問いかける。あまりの出来事にこれが、まだ現実であるという自
覚がなかった。レポート作成の途中で寝てしまい、夢を見ているのかもしれない。
「はい。本物のシロです。本当にお久しぶりです。私が普通の猫を止めてから、もう一年
も経つんですね。もう少し早く会いたかったんですけど、修行にちょっと時間がかかってし
まいました。すみません」
「とりあえず――」
正博は窓辺から離れてウエットティッシュを二枚手に取った。
ベランダでじっと待っていたシロを左手で抱え上げる。以前と変わらぬ軽い身体。柔ら
かな毛並み。衰弱していた時は毛並みもぼろぼろだったが、今は元気だった頃と変わら
ぬきれいな毛並みに戻っている。
足の裏をウエットティッシュで拭いてから、フローリングに下ろした。
「外は寒いだろうし、中でゆっくり話そう」
正博はこたつを示す。シロは冬になるといつもこたつに潜っていた。猫はこたつで丸く
なる、という言葉通り、寒いのは苦手だった。
「そうですね、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げてから、シロはこたつへと歩いていく。根本から分かれた二本の白い
尻尾が揺れていた。しかし、こたつの中には入らず、こたつ布団の縁に寝そべる。
「中に入らないのか?」
「こたつの中では正博さんとお話できません」
シロが答える。
「それもそうか」
苦笑してから、正博はこたつへと戻った。こたつ布団を持ち上げ、両足を入れて、一息
つく。冷えていた身体に暖かかさが戻ってくる。
そっと手を伸ばし、正博はシロの頭に触れた。ゆっくりと手を動かし、優しく頭を撫でる。
整った毛並みと暖かな柔らかさ。懐かしい手触り。
「本当にシロなんだな……」
「私も、また正博さんに撫でてもらえるとは思っていませんでした」
正博の手に心地よさそうに目を細めるシロ。
シロから手を放し、正博は尋ねた。
「でも、何で猫又になって、俺の所に?」
その問いに、シロは身体を起す。腰を下ろしたまま、両前足を揃えて背筋を伸ばした。
まるで気をつけの姿勢を取っているように。
「私は正博さんに恩がありましたから。猫の神様にお願いして、恩返しに参りました。猫
の神様については、詳しくは答えられません。すみません」
「恩返し……?」
正博は首を傾げた。
シロとは生まれた時からの付き合いであるが、シロに対して何か特別なことをした記憶
はない。普通に可愛がっていたとは思うが、恩返しを受けるようなことをしたとは思えない。
シロには何か心当たりがあるのだろう。
「それに、私は生まれた時からずっと正博さんと一緒にいまいたから、別れるのは本当
に辛かったんです。たとえ、私の寿命でも別れるのは辛かった……」
顔を伏せ、悲しそうに呟くシロ。
正博はシロの身体を持ち上げ、両手で抱きかかえた。軽く暖かい猫の身体。優しく背
中を撫でながら、話しかける。
「色々あったとは思うけど、俺の所に来られたからいいじゃないか。また前みたいに一緒
に暮らそう。このアパートはペット禁止なんだけど、そこら辺は上手く誤魔化してくれ。猫
又だし何とかできると思う」
「ありがとうございます、正博さん……。やはり、あなたは本当に優しい人です」
正博の腕に顔を埋めたまま、シロは囁くように言ってくる。顔は見えないが、何となく泣
いているようにも思えた。正博は何も言わぬまま、シロを撫でる。
そうして二分ほどだろう。
シロが顔を上げた。
「でも正博さん」
やや強い口調でそう言ってくる。
シロは正博の腕からするりと抜けだし、床に降りた。すっと背筋を伸ばして、両前足を
揃えた気をつけの姿勢から、
「私ももう猫又です。以前の普通の猫ではありません。ただ、正博さんに飼われるという
のでは、私がこうして猫又になった意味がありません。私は正博さんに恩返しするために
やって来ました」
きっぱりとそう答える。強い決意を伺わせる口調。黄色い瞳には、意志の光が灯ってい
た。猫とは思えない威圧感を覚えるほどに。
「だから、これから私は正博さんのお手伝いをさせて貰います」
「お手伝いって……」
正博は頭をかいた。
猫又。尻尾が二本増えて、人間の言葉を喋り、知能も少なくとも人間と同じくらいまで上
がっている。しかし、猫は猫である。あまり大きなことが出来るとは思えなかった。
その考えを読んだように、シロが声を上げた。
「大丈夫です、正博さん」
「大丈夫?」
「はい。私、猫の神様にお願いして、人間に化ける術を教えてもらいました。だから、人間
として正博さんのお手伝いができます」
自信に満ちた声音で、そう言ってくる。
正博は瞬きをした。
「化ける?」
「はい」
頷いてからシロは腰を上げ、少し離れた所に移動した。正博に向き直ってから、神妙な
面持ちで目を閉じ、口笛に似た鳴き声を発する。静かに歌うような奇妙な鳴き声。
「変化!」
その言葉とともに、シロの姿が霞んだ。白い煙のようなものがシロを包み込み、その輪
郭が大きく膨れ上がる。猫の輪郭から、人間の輪郭へと。
煙が空気に溶けるように消え――
人間の少女がそこに佇んでいた。
「どうですか、正博さん?」
年齢十七、八歳くらいで、身長は百六十センチ弱。背中の中程まで伸びた髪はきれい
な白い髪。どこか幼さの残る穏和な顔付きで、黄色い瞳と猫目のような細い光彩。身体
は細く引き締まっている。全体的に猫のような印象の少女だった。
そして、なぜか紺色の長袖ワンピースで、白いエプロン。頭にはカチューシャを付けて
いる。さらに、猫耳と二本の尻尾があった。
「ちょっと待て」
さすがに見逃すことは出来ず、正博は制止の声を上げていた。
「何だ……その格好は?」
「ネコミミメイドです。あと、今からご主人様と呼ばせて下さい」
至極当然とばかりに答えてくるシロ。それが当たり前のことであり、疑問に思うことがむ
しろ不自然と言いたげ様子。危うく納得しかけるが、何かが間違っている。
次の言葉に困り、正博は一言だけ呟いた。
「何で?」
「ご主人様がよくそういう本を読んでいたので、この姿ならきっと喜んでもらえると思いま
した。それに、私この姿以外には化けられないので……他の姿になれと言われましても、
今すぐというのは無理です」
済まなそうに猫耳と尻尾を垂らす。よくは分からないが、人間に化けるというのは大変
らしい。シロはこの姿に化けることだけを練習していていたのだろう。
「そう、か……」
喉を引きつらせながら、正博は頷いた。色々と腑に落ちないことがあるものの、考えて
はいけないような気がする。母親にバレていることはある程度予想していたものの、まさ
か飼い猫にバレているとは思わなかった。母親にバレるよりもショックかもしれない。
ふと頭をかすめる疑問。
「あと、シロって確か猫としてかなり高齢だったのような……」
「私が普通の猫を辞めた時が十八歳でしたので、人間の姿でも十八歳ということにしてい
ます。それとも、お婆ちゃんの方がよかったでしょうか?」
「いえ、今の姿で大丈夫です」
正博は即答する。
シロは両手を腰の前で組み、丁寧に頭を下げた。
「それでは、ご主人様。これからよろしくお願いしますね」
そう言ってくる姿はどこか楽しそうだった。
以上です
最後は4/5でなく5/5でした。
続きは一週間後くらいに。
投下乙です
続きに期待
>>535 新作キター
酒が入って妄想力全開の脳みそで映像化完了でけますた
続きに蝶機体します
しんみりしてたのにwwww
GJ&続き期待!
エロパートまだああああああああああああああああああああああああああ
作者HP見ると4章編成でエロパートは多分4章だから
かなり先になるな
542 :
sage:2009/01/25(日) 02:32:42 ID:OfqE0cPU
これは良い猫又!大好物であります。
続きに期待!
GJ!
+ 。 * ワクワクテカテカ +
ツヤツヤ ∧_∧ +
+ _(u☆∀☆) ギトギトヌルヌル
⊂ (0゚ ∪ ∪。⊃ +
⊂ ゚̄ と_u _)__)゚  ̄⊃ + ワクワクキラキラ
⊂_。+ ゚+_⊃
⊂__⊃. + * + ワクテカ +
ロリ退魔師マダァ-?
投下します
>>530-534の続き
「ただいま〜」
正博は玄関のドアを開けた。時間は四時過ぎ。以前ならその辺りで遊んで帰っていた
のだが、最近は授業が終わり次第アパートに戻っている。
「おかえりなさい」
ドアの向こうからシロの声が聞こえてくる。
正博は玄関で靴を脱ぎ、スリッパを履いてから狭い台所を横切り、ドアを開けて部屋へ
と入った。ほんのりと暖かい八畳の部屋。こたつと本棚と机とテレビ。ロフトへと続くはし
ごがあり、いつもはロフトに敷いた布団で寝ている。
最近ではこたつに入ったまま寝てしまうことも多いが。
「おかえりなさい、ご主人様」
こたつの横で起立したまま、シロが一礼した。白い髪と紺色のワンピースが揺れる。今
までこたつに入っていたのだが、正博の帰宅に気づいてその場に起立したのだろう。服
装はメイド服姿。他の服装には化けられないらしい。
こたつの上に四冊の古めかしい本が置かれていた。
「勉強してるのか?」
「はい」
頷くシロ。シロが来てから今日で一週間が経つ。掃除や料理など、シロは色々と手伝い
をしてくれる。元々猫なので、さすがに人間と同じようにというのは無理だが、仕事の量
は減るし手伝ってくれるという優しさが嬉しかった。
「それにしても、勉強熱心だなー」
古めかしい本を眺めながら、正博は荷物を置いてこたつへと入った。暖かさが足から
背中へと上っていく。その心地よさに頬をゆるめながら、エアコンのリモコンを手に取り、
暖房を入れた。ピッ、という動作音。
「私、立派な猫又になりたいと考えてますから」
右手を握り締めて、力強く頷くシロ。白い前髪が跳ねた。
その場に腰を下ろして、こたつへと両足を入れる。その暖かさに、白い猫耳と二本の尻
尾がへなりとたれる。だが、気を取り直して本を手に取った。
本に書かれた文字は日本語のようで微妙に違う文字。猫又の文字らしい。
正博はその本を眺めながら、口を開いた。
「シロがここに来てから、一週間……いや、六日が経つけど」
カレンダーを見やる。
シロが正博の元に来たのは先週の土曜日、そして今日が金曜日。シロが来てから六
日。特に問題が起こることもなく普通に暮らしている。シロは昼間、猫の神様とやらの所
に行っているらしい。もしくは、今のように自主勉強をしているか。
「それが、どうかしましたか?」
カレンダーを見つめ、シロが訊き返してくる。いつも通りの穏やかな口調。だが、正博
は尻尾の先が小さく跳ねるのを見逃さなかった。
気づかぬ振りをしたまま、正博は続ける。
「シロはこれからずっと俺の所にいるのか?」
「え――」
シロの肩が跳ねた。猫耳が動き、尻尾がぴんと伸びる。
それも一秒ほどの出来事。驚きの表情から、困惑の表情へと移っていた。不安げに尻
尾を動かしながら、黄色い瞳に不安の色を見せ、縋るように見つめてくる。
「できれば、そうしたいですけど……。いけませんか? ご主人様が駄目というなら、私は
大人しく出て行きますけど」
「うーん。そういう意味じゃないんだけど」
視線を泳がせながら、正博は頭を掻いた。別に追い出すつもりはない。シロがここにい
たいというのなら、可能な限り置いておくつもりである。
しかし、疑問は解消したいと思っていた。
「何だか、シロは俺に隠し事してるみたいに思えて。俺の所に来た理由は恩返しだけじゃ
ないと思ったから。他に別の目的みたいのがある気がする」
「そうですか……」
シロは寂しげな微笑みとともに頷いた。
「やっぱり、ご主人様に隠し事はできませんよね」
「付き合いは長いからな」
正博はぱたぱたと手を振った。猫であった時からシロの考えていることは何となく分かっ
ていた。当時は相手が猫なので確認しようが無かったが、意思疎通が出来る今では自分
の見当が正しかったと実感できる。シロの考えは分かりやすい。
シロは一度目を閉じてから、
「もう少し経ってから言おうと思ったんですけど、仕方ありません」
神妙な口調でそう呟いた。
正博は表情を変えるでもなく、シロを見つめる。
不安げに動く猫耳と尻尾。視線も迷うように泳いでいた。口にするのには勇気が必要な
ことなのだろう。ただ、言う覚悟は出来ているらしい。
ゆっくりと息を吸い込み、シロは答えた。黄色い瞳で正博を見つめ、
「お願いします。私をご主人様の――正博さんの妻にして下さい」
そう告白した。
「私、猫でしたけど、ご主人様がずっと好きでした。人間の恋愛感情とはちょっと違うんで
すど、とにかくご主人様がずっと好きでした。だから頑張って猫又になって、ご主人様の
所に来たんです……」
尻すぼみになる言葉。不安げに目を伏せてから、
「あの、無理にとは言いません。無茶なこと言ってるのは分かっています。でも、よかった
私をあなたの妻にして下さい……。ずっとあなたの側に置いて下さい」
「多分、そう言うと思ってたよ」
正博は静かに答えた。小さく宥めるように笑ってから、右手を伸ばしてシロの頭に触れ
る。柔らかな白い髪の毛。人間とは少し手触りが違う。
丁寧に頭を撫でていると、シロの身体から力が抜けてくる。緊張がほぐれていた。
「返事も考えてある」
はっとシロが顔を上げる。
シロが自分の所に来たのは、妻になるため。それは予想していた。予想していたからこ
そ、それに対しての答えも考えてある。
正博は考えておいた返事を口にした。
「当たり前だけど今すぐ頷くわけにはいかない」
「そう、ですよね」
正博の言葉に、シロは肩を落とす。
しかし、正博は続けた。
「でも、俺もずっとシロと一緒に居たいと思ってる。シロが嫌だと言うなら仕方ないけど、で
きれば俺の側にずっといてほしい。何と表現するべきかな……。あれか、結婚を前提に
した付き合いってやつだ」
無言のまま、シロが見つめてきた。黄色い瞳が大きく見開かれ、その縁に涙が滲む。
悲しみの涙ではなく、喜びの涙だった。
そして、その顔が笑顔に変わる。
「ありがとうございます、ご主人様!」
「といっても、シロは猫又だし、これから大変だろうな……」
ぽろっと本音が漏れる。とりあえず今は人間の姿をしているが、シロは猫又である。人
間と一緒に暮らすのは大変だろう。この一週間は大丈夫だったが、これから問題が起こ
らないという保証はない。
「大丈夫です。私にもちゃんと考えがありますから」
目元の涙を拭いてから、自信たっぷりにシロは頷いた。今まで見えていた微かな影が
消えている。自分の思いを受け入れてもらえて、不安が拭えたのだろう。
「あと六年待って下さい。ちょっと長いですけど、六年で準備が整います」
「六年?」
訝しげに正博は繰り返す。六年、それが何を示す時間なのかが分からない。六年も経
てば社会人として働いているだろうが、そういう意味ではないだろう。
「はい。私、今猫の神様の所で勉強してるんです、人間になる方法」
「人間になる方法?」
嬉しそうに続けるシロに、間の抜けた問いを返す正博。何となくは理解できるのだが、
思考がそれを受け入れない。認識の許容量をやや上回っている。
「今は変化の術で化けてるだけですから、本物……じゃないですけど、本物に近い人間
になる方法を勉強しているんです。ご主人様と子供もちゃんと生めますよ。神様には六
年くらいかかるって言われましたけど、私頑張ります」
「凄いな……」
シロの説明に、ただ感心する。
「昔話である助けた動物が若い女の人になってやってくるのと同じですよ」
その説明は非常に分かりやすかった。冴えない村男の元に助けた動物が若い女になっ
てやってくる昔話。ただの作り話だと思っていたが、シロのような実例を考えると、実際に
あった話を元に作られた昔話なのだろう。
それから、シロは一呼吸する。ややかしこまった口調で、
「あの……、ちょっとよろしいでしょうか?」
「なに?」
「ご主人様から夫婦になる了承を得たことを、神様に報告しなければいけないのですが、
しばらく席を外してよろしいでしょうか?」
シロが自分の思いを告白し、正博に受け入れられる。それが、人間になるための条件
のひとつなのだろう。その第一段階通過を報告しに行きたいらしい。
正博は頷いた。
「いいよ。報告に行ってきても。俺は一人でも大丈夫だから」
「はい、ありがとうございます」
シロはこたつから立ち上がると、目を閉じて口笛のような声を出した。化生した獣が用
いる呪文のようなものらしい。
「変化」
シロの姿が崩れ、人型から元の小さな猫へと変わる。
尻尾を二本生やした白猫。見慣れたシロの姿。ただ、最近はヒトの姿でいることが多い
ので、猫の姿を見るのは久しぶりだった。
一礼するように頭を下げるシロ。
「それでは、ご主人様。行ってきます」
「そういえば――」
正博はふと疑問に思って口を開いた。唐突に頭に浮かんできた疑問。それほど重要性
は高くないが、何となく気になった疑問。
振り返ってきたシロに尋ねる。
「猫の神様ってどんな人なんだ? ヒトというか猫だけど」
シロはすっと視線を持ち上げてから、
「私みたいに化生化して妖怪になってから、神格を手に入れた猫です。百五十年くらい生
きていると言ってました。ちょっと変なヒトですけど、優しくて好いヒトです。あんまり詳しい
ことは答えられないんですけど。ごめんなさい」
「そうか。じゃその神様にもよろしく言っておいてくれ」
「分かりました。明日のお昼過ぎには戻りますので」
頷いてから、シロは窓辺へと歩いていき――
動きを止める。
数秒の硬直。そして、何度か窓ガラスに触れてから、ツメを出して引っ掻いてみたりも
する。しかし、窓は空かない。ガラスが重い上に、埃のせいで滑りもよくない。猫の力では
開けられないっだろう。
「すみません、ご主人様。開けて下さい……」
シロが泣きそうな顔で、そうお願いしてきた。
以上です。
続きは一週間後くらいに
GJ!
窓開けれず泣きそうになってるの想像して和んだw
GJ!
「開けてください……」に萌えた
_n n_
_、_ .( ll ) _、_
( ,_ノ` ) `/ /ヽ ( <_,` )
(  ̄ ̄___/ ヽ___ ̄ ̄ )
\ 丶 / / good job!!
聞きたいんだが妖怪の師匠と人間の弟子というシチュに需要はあるか?
あるなら今書いてるSSが片付いたら書いてみようと思うんだが。
テラモエス!テラモエス!
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
>>556 >妖怪の師匠と人間の弟子
それなんて住み込み弟子?
次は誰が投下するかな?
そろそろ逆恵方のシーズンである
おまいら準備はいいですとも?
投下します
,、_ __,....,_ _,...、 ■ ■
■ ■■■ ,} {`i;:r,;'ニ (;;;;、` , r' ■ ■
■■■■ ■ ■ {i' i:.'ー<.・)}:ム ヾi, ■ ■
■ ■ ■ ■■■■■ノ// -r /:::ミ ('ーヽ■■■■■ ■ ■
.■■■■ ■■■ i゙ i:/ /二./ /',=、__ノi/ ■ ■
■ ■ ヽヽ! {:::} //::::''´`'7!/
■ ■ ヽ、__ヽ!l::i:::::ii;;;;;;;|,ノ ● ●
`ヽ、`ー""ヽ
`'ー-'''
>>547-551 の続き
「ご主人様、起きて下さい」
そう声をかけれから、正博はぼんやりと目を開けた。
窓から差し込む明るい日の光。視線の先に座っている尻尾が二本ある白い猫。ぺたぺ
たと正博の頬に触れている。ほんのり冷たい肉球の感触。
「あー。おはよう……」
「もうお昼ですよ」
正博は寝ぼけ眼でシロを見つめた。
シロの帰りを待ちつつ窓辺に寝転がっていたら、そのまま眠ってしまったらしい。元々、
薄い敷き布団を敷いて、折り畳んだ座布団を枕にしていたのだ。眠ってしまうのも当然だ
ろう。窓の外には晴れた空と、小春日和の暖かな空気。
窓は少し開けられている。シロが入れるように十センチほど開けておいたのだ。
「どうだった?」
シロを両手で抱え上げて、胸の上に乗せる。
背中を撫でると柔らかな毛並み。もう二度と触れることはないと思っていた、肌に慣れ
た手触り。シロが戻ってきたということが実感できる。
「おめでとうと褒められました。でも、これから色々とやることあるとも言われました。猫か
ら人間になるのは大変ですから」
胸の上に乗ったまま、シロは二本の尻尾を動かしていた。
正博が寝転がっていると、よくシロがやってきて胸の上に乗っかる。シロにとって居心
地がいいらしい。先日尋ねたら、そう答えた。
正博はシロの首元を指でくすぐりながら、何となく口にしてみる。
「人間から猫になるヤツっているのかな?」
「ほとんどいないみたいですね」
シロが答える。
正博は左手で自分の頭を撫でた。
人間から猫になろうとする物好きはいないだろう。しかし、ほとんどいないということは、
少しはいるということだ。猫になりたい、と言う人がいるが、そのまま本当に猫になってし
まうのだろう。多分。
「人間も化生化できるのか?」
そんな疑問を口にする。人が妖怪や神になる。今まで考えたことすらなかった話。天神
様の菅原道真や首塚で有名な平将門。そういうものはあくまで伝承の中の話であって、
実在の話ではない。――と思っていた。
「できるみたいですよ」
しかし、シロはあっさりと頷いてみせた。
「生きてるうちに、神様と知り合いになって化生化する方法を教えて貰えばなれると思い
ます。死んでからなる人もいるようですけど」
「じゃあ、シロは何で?」
話の流れとして自然に質問する。
シロは右前足で自分のヒゲを撫で、黄色い瞳をぐるりと動かした。その動作の意味は
分からない。何かを言うのを躊躇うような仕草。
それでも普通に答えてくる。
「私は十年くらい前に猫の神様に会いました。その時に人間になりたいとお願いしたら、
猫又になる方法を教えて貰いました」
そこで口を閉じた。話し終えるのではなく、口を閉じる。
言いたくないのは、猫又になる方法らしい。猫が猫でなくなる方法。人間が人間でなくな
る方法とも共通するはずだ。それは感単に口外していいものではないだろう。興味が無
いと言えば嘘になるが、無理に訊くことでもない。
正博はシロを両手で抱え上げて、床に下ろした。
両腕を真上に持ち上げて思い切り背伸びをして、その場に起き上がる。部屋を見回し
てから、テレビの横に置いてあるデジタル時計を見やった。
「さて、これからどうしよう? 午後二時半、と」
「散歩に行きましょう。二人でその辺りをぐるっと」
シロが挙手するように右前足を上げていた。どこか招き猫を思わせるような仕草。
しかし、正博は眉を寄せた。
「それはマズくないか? シロは猫耳メイドにしか変化できないんだろ……? さすがに
危ない人間に見られるのは嫌だぞ」
「何言ってるですか。私は猫のままですよぉ」
笑いながら、言ってくるシロ。最近はいつも人の姿をしていたので、散歩に出かける問
いも人の姿をしていると勘違いしてしまった。
「それなら……」
と言いかけて、視線を斜め上に向ける。
「尻尾二本の猫と一緒に歩くってのも、微妙にマズくないか?」
頬を引きつらせつつ、シロの尻尾を見つめる。
猫と散歩というのは不自然ではない。滅多に見かけるものではないが、猫と一緒に歩
いている人を見たことがないわけではない。しかし、尻尾が二本の猫と一緒に歩く人間は
いないだろう。
「大丈夫ですよ」
シロは気楽に答えた。
「猫又って普通の人間には普通の猫にしか見えませんから。こっちから猫又だと自己紹
介した人、ご主人様のような人には猫又に見えますけど」
「ほう」
何だかよく分からないが、頷いておく。
ようするに、普通の人間にはただの猫にしか見えないらしい。それならば、奇異な目で
見られることもないだろう。
「じゃ、散歩行くか」
-------
午後八時半頃だろうか。
「ご主人様」
シロがふと口を開いた。
猫ではなく人の姿である。いつもの猫耳メイド姿。こたつに向かい合ったまま、お互いに
教科書を開いていた。シロが日頃から熱心に勉強する姿を見ていると、自分も真面目に
勉強したいという気持ちになる。
参考書から目を離し、正博はシロを見つめた。
「どうかしたのか?」
「いえ、ひとつお願いがありまして」
勇気を振り絞るように、その言葉を口にする。重要なことを口にしようとしているようだ
った。人間になる話の関係だろう。
「私が人間になるために、ちょっと必要なことがありまして。それを、ご主人様にお願いし
たいのですが……。よろしいでしょうか?」
「まあ、できることなら」
シロの口振りに戸惑いつつも、正博は頷く。
言いにくいことを言おうとしているらしい。口元を引き締めつつ、黄色い瞳をゆらゆらと
動かしていた。頬がほんのりと赤く染まっている。
しばらくしてから、覚悟を決めたように頷いた。
「私と交わって下さい」
「………」
意味を理解するのには数秒を要した。想像していなかった台詞ではない。だが、実際
にそれをシロの口から告げられると思考は止まる。
恥ずかしそうに頬を赤くしたまま、目を伏せるシロ。
一度深呼吸をしてから、
「何で?」
それだけを訊く。
シロは再び視線を彷徨わせてから、
「猫の神様に言われたんです。人間になるには、人間の身体の一部を自分の身体に取
り込む必要がある、と。人間という要素を取り込むんです。それには、生き肝が理想的な
んですけど……。心臓とか肝臓とか脳髄とか。でも、さすがに無理なんで」
「物騒だな……」
息を呑みながら、正博は囁いた。人間になるために人間の要素を取り込む。内臓や脳
髄などの重要器官には、人間の要素が沢山詰まっているのだろう。
猫又が人を食い殺す姿が頭に浮かぶ。
正博の思考を読んだように、シロが続けた。
「稀に人を襲っちゃう猫又もいるみたいなんですけど、大抵退魔師に退治されてしまい、
人間になることはできません。でも、私にはご主人様がいますから、大丈夫です」
照れたように笑ってみせる。
退魔師、という単語が引っかかる。名前からして、妖怪退治などを生業とする人間だろ
う。下手なことをすれば退治屋に襲われるため、正博の協力が必要となる。
「シロには俺がいるってのはどういう意味だ?」
この場で食い殺されるということはない――と思う。そこで正博の協力が必要となって
いるらしい。協力の内容は何となく想像は付いているのだが。
シロは頷いた。
「男女は問わずに人間の身体の一部なら何でもいいんですけど、若い人のものがいいみ
たいです。髪と毛とか爪でも大丈夫なんですけど、それだと物凄く沢山必要なんです。で
も、血や精液とか生きている組織ならある程度の量で大丈夫ですので、お願いします」
そう言いながら、こたつから出てくる。四つんばいでこたつの縁を回り込み、正博の真
横まで移動した。くねくねと動く尻尾と、ぴこぴこと動く猫耳。頬を染めながらも、黄色い瞳
に映る期待のきらめき。
「でも、血を採るのは痛いと思いますので、精液を頂こうと思いました」
何となく言いたいことを理解する。というか、確信する。
数度首を動かしてから、正博はジト目でシロを見つめた。
「お前……実はそっちの事にかなり興味あるだろ?」
固まる。
数秒の沈黙。図星らしい。
白は小さく頷いてから、シロは目を逸らした。
「えっと、はい……。人間同士の交わりは物凄く気持ちがいいと描いてあったので……。
お恥ずかしながら、うぅ……一度その気持ちよさを味わってみたいと思いまして。あの、
えっと……すみません。私、はしたなくて……」
頬を真っ赤に染めて、顔を伏せる。
何と言うべきか言葉を選んでから、正博は口を閉じた。隠してあった本を盗み読みして
いたのだろう。知識としては間違っているのだが、訂正する度胸はない。
(俺もシロが来てから処理に困ってったのは事実だし……。俺の趣味ど真ん中の猫耳メ
イド少女と毎日一緒にいるってのは、精神衛生上よくないと思う。元が猫だから、動きが
無防備だし……。据え膳食わねば男の恥ってか? ハハ……)
そう自分を納得させてから、正博はこたつから両足を出した。既に身体は臨戦態勢へ
と移行している。喉の奥が熱い。シロに向き直り、やや困ったような苦笑いを見せた。
「俺は女性経験ないから、上手くできるかは分からんけど。出来るだけ気持ちよくなるよ
うに頑張るから。痛いとか辛いとか思ったら言ってくれ、すぐ止めるから」
「ありがとうございます」
シロはそう答えてから、そっとその場に腰を下ろす。
今までとは違う、ほんのりと染まった頬。微かに下ろされた目蓋。憂いを帯びた黄色い
瞳。そして、口元に浮かぶ淡い微笑み。期待と不安に揺れる二本の尻尾。
身体の熱をはき出すように吐息し、正博は両手を差し出す。
「おいで、シロ」
「よろしくお願いします、ご主人様」
一度頭を下げてから、シロが腕の中に身体を預けてきた。
以上です
続きは金曜日の夜を予定しています。
/j^i
./ ;!
/ /__,,..
/ `(_t_,__〕
/ '(_t_,__〕 GoodJob!!!
/ {_i_,__〕
/ ノ {_i__〉
/ _,..-'"
/
生殺しwwwww
金曜が待ち遠しいぜ
今週もサバイバルするモチベーションができた!
ぐはっ…寸止め('A`)
いいところで止めてくれる…期待してますぜ
ところで今日って節分だっけ?
鬼っ娘が来てくれるなら逆恵方するけどなぁ…
鬼っ娘SSマダーチンチン
最近は恵方巻きやら豆まきする人が少ないから鬼ッ子もてんてこ舞いだろうな
さて化け猫は今日か。
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
580 :
猫が恩返し:2009/02/06(金) 18:08:00 ID:OCVF48ap
投下します
>>566-571の続き
お互いに顔を見合わせてから、ゆっくりと唇を合わせる。
「ん」
シロの喉から細い息が漏れた。
滑らかで柔らかな唇の感触を味わいつつ、正博はシロの背中に左腕を回し、右手でそっ
と頭を撫でた。きれいな髪の毛の手触り。白い猫耳が動いているのが分かる。
お互いに何度か舌を絡ませ、どちらからとなく唇を放した。
「ご主人様とのキス……」
口元を緩ませ、シロが呟く。
正博は自分の唇を嘗めてから、笑って見せた。
「俺のファーストキスだったな」
「そういうことは女の子が言うものですよ」
苦笑いをしながら、シロが指摘してくる。
正博は視線を逸らした。そうかもしれない。そうだろう。緊張のためか、口の中が乾い
ている。胸の奥が焼けるような熱を持っていた。
正博は頭を掻いてから、そっと右手を下ろした。一応、訊く。
「さわるぞ?」
「はい」
恥ずかしそうに俯いて、シロが頷く。
数拍の躊躇を挟んでから、正博はの胸に右手を触れさせた。絹のように滑らかな生地
と、丸みを帯びた控えめな膨らみ。そっと押すと、柔らかな感触が手に返ってくる。
女の子の胸を触るのは、生まれて初めてだった。予想通りのものなのか予想とは違う
ものなのか、それは分からない。手の動きに合わせ、柔らかく形を変えている。
「何だか、くすぐったい……。頭がふわふわします……」
目を閉じたまま、シロが呟いた。両手でワンピースの裾を強く握り締めている。くすぐっ
たそうにしているが、嫌がっている素振りは見られない。顔を真っ赤にして目を閉じて、
顔を背けている。
正博は何も言わぬまま右手を放し、シロの両腋に両手を差し込んだ。
「え?」
思いの外軽いその身体を持ち上げて、前後を入れ替える。ぴこりと跳ねる猫耳。
正博は後ろからエプロンの下に両手を差し込み、シロの胸を包み込んだ。乱暴に揉む
のではなく、両手で揺らすように撫でる。小柄ながらも存在感のある膨らみを、両手でじ
っくりと丁寧に味わう。
「ん、くすぐったいです……」
正博の手に自分の手を触れさせるシロ。しかし、嫌がっているわけではなく、正博の手
の動きを自分で確かめているようだった。
「んん……ぁ……」
シロの鼻から悩ましげな息が漏れる。
自分の愛撫にシロが感じているのだと、正博は焼け付くような興奮を味わっていた。頭
が熱い。だが、妙に冷静な部分も残っている。手の平に感じる小さな突起。
「シロ、気持ちいい?」
「はい……。人間って凄く、熱いです……」
口元を抑えながら、シロが頷く。人間の性欲は他の動物に比べて非常に強いと聞いた
ことがある。猫であるシロが人間の性に触れるのは初めてだった。
正博は指先で服の上から胸の突起を摘んだ。
「んッ!」
シロが微かに顎を持ち上げる。猫耳と尻尾がぴんと立った。
痛くないように、正博は優しく両手の指を動かす。小さなグミを弄っているような手触り
だった。両手で転がしたり、撫でたりつ、軽く潰してみたり。
「ん……! っ……」
シロは声が漏れないように、自分の両手で口を押えた。
その耐える姿に言いようのない興奮を覚える。正博は手の動きに緩急を付けながら、
つんと立った乳首のみを攻めていく。ただ、欲求の赴くままに。
「くぅ……。んんん」
口を押えたまま、顎を上げ、背筋を反らせるシロ。両足を擦り合わせて、逃げるように
肩を動かしている。尻尾と猫耳が跳ねるように震えていた。
しかし、正博は指の動きを緩めることもしない。
両手で口を押えながら、シロが何とか口を動かす。
「ご主人、様……っ! んぁ、そんなに、胸ばっかり……」
「シロ、気持ちよさそうにしてるし。このままもう少し続けてもいいんじゃないかな? あと、
多分大声出すと隣の人に聞こえちゃうから静かにね」
囁くような正博の言葉に、シロが慌てて口を塞ぐ。このアパートはそこそこ防音対策が
してあるので、よほどの大声でない限り隣には聞こえないだろう。ついでに、現在は外出
中のようだが、シロはそれを考える余裕もないらしい。
「胸だけ弄るのもワンパターンだし……」
自分で確認するように呟き、正博はそっとシロの猫耳を舐めた。薄い毛に覆われた三
角形の白い耳。薄い獣毛の感触を舌先に感じる。人間に化けた時は普通に人間の耳が
あり、猫耳は飾りのようなものになってしまうらしい。
「ヒッ……」
びくっと音がしそうなほどに、シロは身体を強張らせる。
正博は右の猫耳をそっと口に含み、甘噛みを始めた。胸を弄る手の動きはそのままに、
猫耳への攻めを開始する。
「あっ、っ――。んんん……!」
両手で必死に口を押え、シロは声を呑み込んでいた。それでも、喉から漏れ出る声を
完全に抑えることはできない。ぴんと伸びた二本の尻尾がぴくぴくと跳ねて、気持ちよさ
を主張している。
「思いの外凄いな」
右の猫耳から口を放し、左の猫耳への甘噛みを始める。乳首を弄っていた左手を放し、
おなかや腕や首筋などを丁寧に愛撫しはじめた。
「んんッ! くぅぅ――! ご、ご主人、さま……っ!」
引きつるような、どこか苦しげな声。
正博はすぐに手と口を放した。
「すまん、大丈夫か……?」
「はひ……」
呂律の回っていない口調で答え、シロが振り向いてくる。既に目の焦点は曖昧で、呼吸
も荒い。頬は赤く染まり、うっすらと汗が滲んでいた。
「大丈夫、です……。でも、もう身体が熱くて、熱くて……。何だか、私が私じゃなくなっち
ゃうみたいな……。人間って、凄い……ですね……」
切なげな声で、そう言ってくる。
正博は一度大きく息を吸い込み、そっとシロの右頬に自分の右手を添えた。顔を左側
に向けさせ、自分の身体を少し前に出す。そのまま、シロの唇に自分の唇を重ねた。
「んっ!」
黄色い目が大きく見開かれる。
正博はシロの咥内へと自分の舌を差し入れた。そして、シロの舌を優しく撫でる。紙ヤ
スリのような猫舌であることも予想していたのだが、幸い人間の舌とさほど変わらないも
のだった。
「ん……」
シロが舌を舐め返してくる。
それから、お互いに舌を絡ませ合うような、濃厚なキスへと移っていった。シロの瞳から
はほとんど理性の色が抜け落ちている。
同時、正博は紺色のスカートの中に左手を差し入れ、太股を撫で始めた。柔らかく、弾
力のある筋肉。どこかぎこちなく、それでいてイヤらしい手付きに、シロが太股を閉じよう
としている。だが、足を閉じることはできない。
正博は一度唇を放した。
「ふぁ、ご主人様……、もっとお願いします……。私を可愛がって……」
唇を震わせ、泣きそうな声を口にする。その言葉に込められた真意までは、分からな
い。ただ、正博は再びシロと自分との唇を重ね合わせた。
シロは両手を正博の首に回し、貪るように吸い付いてくる。
太股を撫でていた正博の手が、さらに奥のショーツへと触れた。
「ん!」
その感触に、シロの動きが止まる。
その反応には構わず、正博はシロの大事な部分をショーツ越しに撫でた。指先が柔ら
かな生地と、微かに粘り気を帯びた液体に触れる。指をゆっくりと上下に動かすと、ショ
ーツに染みた液体が少しずつ増えていくように感じた。
唇を放し、シロは瞳から涙を流しながら、懇願してくる。
「ふあ。ああ……ご主人、さま……。早く、お願いします……。早く、私の中にお願いしま
す。このままだと、私……おかしくなっちゃいますよ……!」
「分かった」
正博は頷き、シロを抱え上げた。
そのままこたつの上へとうつ伏せに下ろす。四肢に力が入らず、身体を起すこともでき
ない。猫耳と尻尾も力なく垂れている。
「失礼……」
そう一言断ってから、紺色のスカートの裾を持ち上げた。
きれいな太股と、丸く小さなお尻。三角形のショーツのクロッチ部分は、しっとりと濡れ
ていた。さほど前技はしていないのだが、シロは既に我慢の限界に達しているようだった。
これ以上じらしても、苦しいだけだろう。
「ご主人様……」
「大丈夫、力を抜いて」
不安げに呟くシロに声を掛けてから、正博はズボンのチャックを開けて、自分のものを
取り出した。熱いくらいに張り詰めている男性器。
ショーツのクロッチを指で横にずらす。
露わになるシロの女性器部分。ピンク色をした、綺麗でグロテスクな肉の割れ目。見た
目は人間とほぼ変わらない――と思う。シロは子供を産んだことがないが、処女なのか
どうかは不明だった。
「行くぞ?」
「はい。来て下さい……」
振り向かぬまま、シロが答える。こたつの上にうつ伏せになったまま、両手で顔を押え
ていた。恥ずかしさに耐えるような仕草に、嗜虐心が微かにうずく。
正博の先端が、膣口に触れた。
ゾクリ、と背筋を走る寒気。
息を呑み、覚悟を決め、正博はシロの中へと挿っていく。
「んん……。あぁ……。ご主人さまぁ……」
シロが甘く切ない声を上げていた。
柔らかな濡れた肉を先ながら、奥へと進む。絡みつくような肉の感触に、歯を食いしば
って射精を耐える。そうして、根本までシロの中へと呑み込まれた。
「入ったぞ……」
シロの頭を撫でながら、正博は擦れ声を口にする。
「はい。ご主人様が、私の中に……。ありがとうございます」
シロが満足げに頷いていた。
正博は息を呑み込む、全身が重い。性行為というものが異様に体力を消耗するもので
あると、思い知らされていた。だが、今更止めるわけにはいかない。
シロのお腹に右手を差し入れ、少し腰を持ち上げる。
「動くぞ」
そう言うなり、返事も聞かずに正博は腰を前後に動かし始めた。決して速い動きではな
いが、丁寧にシロの膣内を刺激している。
「ああっ……、んんん……、何だか、身体が痺れます……!」
両手でこたつの縁を握り締め、シロが必死に声を噛み潰している。さきほどの言葉が
頭に残っているのだろう。
「こっちも、かなり限界近い」
あくまで丁寧に動きながら、正博は正直に呟いた。
「できれば一緒に行きたいんだけど……」
「っ、私の、尻尾……。付け根……、触って下さい」
シロが何とか声を絞り出す。
何度かイタズラでやったことがあるから分かる。痙攣するように跳ねる二本の尻尾。そ
の付け根を、左手の指先で軽く叩く。
「にッ!」
鋭い吐息とともに、シロの身体が跳ねた。膣内が一気に締まる。
猫にとって尻尾の付け根は一種の性感帯らしい。敏感な部分だけに、触られるのを嫌
がることも多い。何度か引っかかれた経験もある。だが、このような状況下なら、簡単に
絶頂を調整できる部位として使えるだろう。
「なら、そうさせてもらう」
正博は腰の動きを早めつつ、人差し指で尻尾の付け根を軽く叩き始めた。
「にっ、にゃぁ、なぁぁ……、ふあぁ……」
シロの喘ぎ声が人間のものから猫のものへと変わっていく。付け根を指で叩くたびに、
身体が震えて膣内が締め付けられた。リズムを取るように付け根を指で叩き、シロの快
感を調整しながら、ともに絶頂へと上り詰めていく。
「なぁぁぁ、うぅぅぅぅ……」
沸き上がる性感を受け止めるように、シロはこたつの縁を両手で掴み、歯を突き立て
ていた。十八年間も猫として生きてきたシロにとって、人間の性感は許容量を遙かに超
えたものなのだろう。
こたつの縁から口を放し、シロが振り返ってきた。両目から涙を流し、口元から涎を垂
らした、恍惚とした表情。黄色い瞳は焦点も合っていない。
「ご主人様……。もう、私、限界です……!」
「なら、一緒に行くぞ」
そう告げるなり、正博は尻尾の付け根を指で強く押した。さらに、身体を前に傾けること
により、今までよりも奥深くまで挿入。駄目押しとばかりに、シロの猫耳に軽く噛み付いた。
シロの動きが一瞬止まる。
「っ! なあああぁぁぁぁ、んにゃああああぁぁぁぁぁ!」
発情期の猫のような嬌声とともに、シロが一気に絶頂を迎えた。跳ねるような大きな痙
攣とともに、全身の筋肉収縮させ背中を大きく仰け反らせる。
強く締め付けられた膣肉に、正博は溜まらず精を放っていた。
今まで溜まっていた分を一気に出し切るような、痛みすら伴った強烈な快感とともに、
十秒近い射精感を味わう。それは、今まで感じたこともない強さだった。
思考の空白から戻り、自分のものを膣内から引き抜く。勢いはまだ残っているが、二回
目は無理だろう。シロはこたつの上に突っ伏したまま、荒い呼吸を繰り返していた。既に
体力を使い切ってしまっている。
「シロ、大丈夫か?」
「だ、だいようふでス……」
呂律の回っていない回答。
「でも、とっても気持ちよかった……です……。私が、人間になるには、まだ足りないので
……またお願いしますね、ご主人様」
肩越しに振り向いて、嬉れしそうに微笑んでみせる。しかし、ぐったりとしていて身体は
まともに動かないようだった。しばらくは動けないだろう。
正博は右手でシロの頭を優しく撫でながら、気の抜けた笑みを向ける。
「分かってる。でも、毎日は無理だぞ。俺としても」
「はい」
頷くシロ。本当に満足そうに微笑んで見せた。
「ありがとうございました。ご主人様……」
一人用の布団に二人が入るのはやや窮屈だが、苦痛というほどでもない。
シロは正博の身体にぴったりと寄り添っていた。服装は水玉模様のパジャマである。術
で作ったものではなく、シロに着せようと買っておいたものだ。紺色のメイド服はシロが脱
いだ途端に消えてしまった。そういうものらしい。
正博の腕を枕にしたまま、シロが楽しそうに呟く。
「ご主人様のお布団暖かいですね」
「二人で入れば暖かいよ」
左手でシロの頭を撫でながら、正博はそう答えた。二人分の体温で、布団の中は多少
熱いくらいである。体温だけが原因でもないだろうが。
気恥ずかしさを誤魔化すように、正博は頷いた。
「そういえば、シロの名前決めないとな。いつまでもシロじゃまいずいだろ。シロなんて名
前の人間はまずいないんだから。あと戸籍もどうしよう?」
今まで特に気にせずシロと呼んでいたが、人前でシロをそのまま呼ぶわけにはいかな
い。相応しい名前も決めておかないといけない。それに、猫に戸籍があるわけでもなく、
その辺りも何とかしなければいけないだろう。
「戸籍とかの公的手続きの方は神様が何とかしてくれるそうです」
そう答えてから、シロは首を左右に動かした。
「あと、名前はまだいりません。まだ人間としての名前を貰っちゃいけないんです」
「よく分からないな……」
正直な感想を口にする。
シロは困ったような顔をして、自分の頬を撫でる。
「決まりなんです。猫が人間になるって、生き物が別の生き物になるってことですから。そ
の手順も色々沢山ありますし、その手順も間違ってはいけないんですよ。たとえば、私が
人間として問題なく動けるようになるまで、ご主人様のことはご主人様と呼ぶとか、色色
々あるんです」
詳しいことはよく分からないが、本当に大変らしい。
好奇心のままに、正博は尋ねてみた。
「もし間違えたら?」
「人と猫又の間の中途半端な妖怪になってしまう、と神様は言っていました。それがどう
いうことなのかは、私も分かりません」
明後日の方向に視線を向けながら、シロが答える。
しかし、その状態を恐れているようには見えなかった。そうなることがないと確信してい
るのか、そうなっても平気なのかは分からない。ただ、滅多に起こることではないことは
理解できた。
「前にも言いましたけど、私が人間になれるまでは、七年くらいかかると思います。それま
で、色々とご主人様にも協力して頂きたいこともありますが、いいでしょうか?」
シロがふっと不安げな顔色を見せる。
やはり、まだ自分が受け入れられないかもしれないという不安を持っているようだった。
シロは元々猫である。それが人間に姿を似せ、思考や言葉を覚えても、結局は人間では
ない。それは仮に人間になっても、一生つきまとうことだった。
「大丈夫だよ。安心してくれ」
正博は両手でシロの身体を抱き締め、そっと背中を撫でる。それで少しは安心したよう
だった。少し緊張していた身体から力が抜ける。
「未来の妻に協力しないほど、俺は薄情じゃないって」
「ありがとうございます……」
その声は少しだけ震えていた。
以上です。
メイド服着せる必然性はなかった気がしますが、
そこはご容赦下さい。
\ _n グッジョブ /
\ ( l _、_ /
\ \ \ ( <_,` ) /
\ ヽ___ ̄ ̄ ) /
_、_ グッジョブ \ / / / _、_ グッジョブ
( ,_ノ` ) n \∧∧∧∧/ ( <_,` ) n
 ̄ \ ( E) < の グ >  ̄ \ ( E)
フ /ヽ ヽ_// < ッ > フ /ヽ ヽ_//
─────────────< 予 ジ >───────────────
∩ < ョ >
( ⌒) ∩ グッジョブ < 感 ブ > |┃三 話は聞かせて
/,. ノ l 'uu /∨∨∨∨\ |┃ ガラッ もらった
/ / / /" / \ |┃ ≡ _、_ グッジョブ
/ / _、_ / ノ / グッジョブ \ |ミ\__( <_,` )
/ / ,_ノ` )/ / /| _、_ _、_ \ =___ \
( / /\ \/( ,_ノ` )/( <_,` )ヽ/\≡ ) 人 \
ヽ | / \(uu / uu)/ \
これはGJ!
続くんだよね?というか続いてくれ。いや、ください。お願いします。
> 人と猫又の間の中途半端な妖怪になってしまう
つまり半獣?おk
大好物だ
GJとしか言いようが無いこのラブラブぶり……!
GJ!
続きがきになる…
シロがかわいくて萌える。
595 :
コマネコの人:2009/02/07(土) 21:41:17 ID:cv4Iwh/x
文章力と猫のレベル差を思い知らされまryご馳走様です。
余裕が出来たらコマネコの続き書きたいなぁ。
創作意欲とネタ帳ばかりが膨れていくorz
596 :
若旦那:2009/02/08(日) 21:45:25 ID:79kvOspS
時期外れですが、これ以上立つとさらに時期外れになるなので、前半投下します。
「人外旅館シリーズ」
597 :
1:2009/02/08(日) 21:46:24 ID:79kvOspS
『其の四 〜旅館の役目と恵方鬼〜』
「これは堺様、遠いところへわざわざ、相変らずお元気そうで」
「若旦那さんも……って、年がそう変わらないのに様付けはやめてください」
「いや、一応客商売だし、うちの両親もうるさいんだよ」
「そうかぁ、大変そうだな、お互いに」
「そうだな、お互いに……」
幸一にグイと顔を寄せ、ニヤリと微笑むお客に合わせ、幸一も怪しい微笑を返す。
陣甲斐旅館には珍しい人間の、それも男性客。
男の名は『堺 修平(25)』一端の社会人であるが、彼の背後から巨大な影が近づくと、
影の主が修平に声をかけた。
「シュウ、何をゴチャゴチャ言うとる、うちは疲れとるんや、ちゃっちゃと済ませてんか」
妙にトーンの高い変な大阪弁、スレンダーな体、冬だというのにヘソだしの半裸姿、
さらに、身長が2メートルを超えていそうな大女である。
鋭い視線は玉に瑕であるが、絶世の美女であることは言うを待たない。
「ああ、またアンタに責苛まれるかと思っただけで、アソコがジュンとなってまうわぁ」
「馬鹿、ここでおきな声を出すなって、他のお客も居るだろうが」
「そんなんかまへん、あたいらの仲の良さを、見せつけたるだけや」
自分より体の大きな女性に後ろから抱きしめられ、修平の後頭部は豊満な両胸の間に
沈められてしまい、思わず顔を赤らめる。
そんな修平の姿を見下ろして満面の笑みを見せるこの女性は、もちろん人間ではない。
種族は『鬼』名は『恵方 真鬼(えほう まき)』年齢に関しては伏せておこう。
数ある鬼の中でも『恵方鬼』と呼ばれる特殊な種族で、普段は一般人に化けているが、
本性を現せば、角を生やした怪力自慢の鬼となる。
秀平が真鬼と出合った経緯は以前お話した事がある通りだ。
帰宅途中に立ち寄ったコンビニで売れ残った恵方巻を手にしたのが運の尽き。
帰りに丸齧りしながら歩いた結果、それが偶然にも『逆恵方』と呼ばれる古の儀式となり、
恵方鬼と呼ばれる鬼の真鬼が姿を現し、たっぷりと犯された。
その後は、一年おきの逆恵方を続け、奇妙な共同生活を行っている。
さて、2月3日の節分に、人間の男である修平が鬼の女を連れてやってきた理由。
人間の男が人外女性から性的に“喰われる”事が明確なこの旅館に足を運んだ理由。
まずは、彼らが最初に旅館にやってきた、その経緯からお話しなければなるまい。
598 :
2:2009/02/08(日) 21:47:16 ID:79kvOspS
△▽△
「たっ、助けてください、こっ、殺されるぅ」
その男、秀平が旅館に駆け込んできたのは、秋も深い11月も過ぎた頃であった。
最初に対応に出た若旦那の幸一も、息を切らしながら話をする修平の話が理解できず、
父親に相談を持ちかけていた。
「はいっ、実は、かくかくしかじかで……うううっ」
かくかくしかじかでは分からない。
数時間前の秀平と真鬼のやりとりを盗み聞きしてみると、
「きぃぃっ、あたいというものがありながら、他の女の匂いを付けてくるやなんて」
「落ち着けっ、俺は先輩とキャバクラで飲んできただけであってだな」
「キャバクラやて? あたいというものがありながら、他の女と酒を飲むやなんてぇ」
「落ち着けって、そもそも俺達は契約で一緒にいるだけだろ?」
「うるさい、他の女に劣ると思っただけで悔しうて悔しうて、殺すっ!」
「ぎゃーーす」
これだけ聞いていただければ、大体の事情は理解いただけるだろう。
秀平は、これより逃走の道を辿るわけだが、どこへ行っても必ず居場所へ現れる真鬼から
逃げるために、秀平の苦労は並々ならぬものがあったようだ。
なんでも、真鬼は秀平の臭いを追うらしい。まさに獣の所業といえよう。
「ほぉ、しかし、なんでこの旅館に、よく辿りつけましたね」
「ええ、大阪の駅で出会った、見知らぬ少女に紹介されましてね」
「見知らぬ、少女?」
「ええと、『国有 鉄子(くにあり てつこ)』とか言ってたな」
「もしかして、小学生ぐらいの身長で、でかい時刻表を抱いてませんでしたか」
「そうです、よく、ご存知ですね」
「以前、ここに泊まりにきたこともあるものですから」
どこか遠い所を見ながら、思い出に浸るかのごとく話をする幸一。
ちなみに、鉄子という人外は、長年使われた鉄道車両に宿る『ツクモガミ』の一種である。機会があればお話しすることもあるだろう。
そんな感じに世間話を続けていると、親父が手招きをしながら幸一を呼び寄せた。
「おい、準備が出来たぞ、このお客さんを、例の部屋にご案内しろ」
「例の部屋? あぁ、『新月の間』の事か」
「そうだ、ちゃんと布団も敷き延べておいたぞ」
疲れ果て、訳のわからぬまま二人のやり取りを聞いていた秀平であったが、
幸一に案内されるまま、旅館の長い廊下の突き当たりにある部屋へと案内された。
秀平を追う真鬼が旅館に姿を現したのは、秀平が部屋に入るのと、ほぼ同時であった。
「ここやなぁ、秀平の臭いがするんは、ここやなぁ」
秀平を追う真鬼の姿は、胸と腰を虎縞の布で覆い隠しただけの簡素な姿。
鬼の正装とでも言えばよいだろうか。
頭には鬼らしく尖った角を生やし、肩には重そうな金棒を担いでいる。
殺気に満ちた目で旅館を見渡す彼女の対応に出たのは、若女将のハクであった。
人間の幸一では迫力負けしていただろうが、人外で蛇女のハクは、真鬼程度の迫力で
遅れをとることは無い。
599 :
3:2009/02/08(日) 21:48:19 ID:79kvOspS
「秀平はどこや、ここに居るんは、お天道様もお見通しやでぇ」
「お客様、ご案内します、どうぞこちらへ」
「ほぉ、やけに正直やないか」
ズンズンと勝手に上がってくる真鬼に対し、正面から向き合う形で対峙した
二人であったが、ハクは他のお客様に対する時と同じような笑顔で対応した。
「あっ、お客様」
「あん?」
「その、得物はこちらでお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「ええで、秀平を仕留めるんにコイツはいらんからなぁ、ほらっ」
重量数百キロの金棒を放る真鬼。
ハクを普通の人間と見た真鬼が、わざと重量物の金棒を投げたわけだが、
「それでは、ご案内します。」
「なっ……」
何事も無かったかのように金棒を受け取り、真鬼の先に立って廊下を進むハク。
愛想を見せつつも、チロリと蛇舌を見せ、自分が人外であることを真鬼に知らせると、
驚きを見せていた真鬼も、納得したような表情を見せる。
「お客様、こちらでございます」
導かれるまま部屋に入ると、布団が敷かれ、秀平がその上にちょこんと座っていた。
真鬼が入ってきた瞬間にビクッと身体を反応させるが、逃げようとしない。
秀平は、幸一に言われた通りにしていた。
「ここに真鬼さんが入ってきても部屋から出てはいけません」
「えぇ、俺、殺されますよ」
「大丈夫、あなたの相方が部屋に入ったら、そのまま押し倒して、やっちゃって下さい」
「え?」
「ですから、犯っちゃうんです」
「なっ、何言ってるんですか、無理に決まってますよ、相手は本物の鬼なんですから」
だが、幸一は何も言わず、笑顔のまま、秀平をその場に残して部屋を後にした。
秀平には、言葉の真意を考える余裕すら与えられず、部屋にはハクに案内された真鬼が
姿を見せた。
筋骨隆々の真鬼に鋭い瞳で睨みつけられた秀平は、身体全体を震わせ、
その頭では、今まで歩んだ人生の思い出が、走馬灯のように流れていた。
「ほぉ、布団を敷いて永眠の準備までしとるとは、殊勝な心がけやな」
「いや、これは旅館の人が準備してくれていただけで、俺がやったわけじゃないぞ」
パキポキと指を鳴らしながら秀平に近づく真鬼。
鬼の形相を見せる真鬼の迫力に、後ずさりを見せる秀平であったが、
あっという間に壁際まで追い詰められると、壁に寄りながら立ち上がる。
「さぁてシュウ、覚悟はできてるんやろなぁ?」
「待て、話せば分かる」
「問答無用! 必殺、シャイニングゥ」
「ひえぇぇぇえ」
「フィンガァー!」
Z^ヾ、 Zヾ
N ヽヘ ん'い ♪
|:j rヘ : \ ____ _/ :ハ;、i わ
ぐ^⌒>=ミ´: : : :": : :`<ヘ∧N: :| し っ
∠/ : : ヘ: : : : : : : : : : : `ヽ. j: :| l ち
/ /: : /: /: : : /: : : : ^\: : :∨: :| て わ
/ //: : ∧/: : : :ハ : : \/:ヽ : ',: :ハ や っ
/:イ: |: : :|:/|\: / : :_/|ヽ: :|: : :l: : l ん ち
. /´ !: :l: : l代ラ心 ヽ:ィ勺千下 : | : :| よ に
|: :|: : |l∧ト::イ| |ト::::イr'|ノ゙: | : :| l
|: :l: :小 弋少 :. ゞ=‐'/: : ;リ : :| ♪
|: :|: : 八"" r‐― V)"/: : /: : ;.;' />
Y : : : |>ーゝ _____,.イ⌒^`ーi : :八 </
ヽ{: : !: /: : /IW ,(|_;i_;|_j__j: : : : \ に二}
, 人: ∨: :/{_幺幺 廴二二ノ: : : : : : ヽ
_b≒==く: : ヾ:{__;'ノ∠ムム>‐弋 : : : : : : j: : : : '.
_b≒/竺≧=巛_>''7 | >、!: : : ハ: : : }
レ'´|/く二>{__,|x-</}: / } /∨
/;∠.___ノレ<〕__'´ ´
__厂X/XX{ ) ヾ! \ \ヘヘヘ、_
{{Zんヘ/XXXXじ |! `くxべべイ }
_∧/ん<Xx厶 |! r' ̄〈ヽ_!〈
\ L 辷ヒ二二/ |! _/\「 r┘ーヽ`} ノ}
`ヘ_`¬ヘxヘxヘxヘル^ xヘ厂: :=-: :(◯)'′
~^∀ヘxヘxヘxヘ/∀ー=-一'^ ̄´ ̄
保守
海
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
O 。
, ─ヽ
________ /,/\ヾ\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_ __((´∀`\ )< というお話だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/''' )ヽ \_________
||__| | | \´-`) / 丿/
|_|_| 从.从从 | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\ / ::::::::::::ゝ/||
────────(~〜ヽ::::::::::::|/ = 完 =
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,.-―っ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
人./ノ_ら~ | ・・・と見せかけて!
从 iヽ_)// ∠ 再 開 !!!!
.(:():)ノ::// \____
、_):::::://( (ひ
)::::/∠Λ てノし)' ,.-―-、 _
______人/ :/´Д`):: ( _ノ _ノ^ヾ_) < へヽ\
|__|__|__( (/:∴:::( .n,.-っ⌒ ( ノlll゚∀゚) .(゚Д゚llソ |
|_|__|_人):/:・:::∵ヽ | )r' ー'/⌒ ̄ て_)~ ̄__ イ
||__| (::()ノ∴:・/|::| ./:/ /  ̄/__ヽ__/
|_|_| 从.从从:/ |__|::レ:/ ___/ヽ、_/
|__|| 从人人从 ..|__L_/ .( ヽ ::|
|_|_|///ヽヾ\ .|_|_ /⌒二L_ |
──────── ー' >ー--'
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巛ノi
ノ ノ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノ')/ノ_ら ∧_∧ | いきなり出てくんな!!
、)/:./、 ( ´Д`) | ビックリしたぞゴラァ!!!
)/:./.:.(,. ノ) `';~"`'~,. \ ________
\\:..Y:.( ・ '' :, ,. -―- 、|/
_____ 从\、,. ,; .,、∴';. ・ ( _ノ~ヾ、ヽ
|__|_ _(_:..)ヽ:∴:@) ノ(゚Д゚ #) )
|_|__|_人):|:・:::∵ヽノ) (_(⌒ヽ''" `ー'
||__| (::()ノ∴:・/|::|( \ \ \) ) _
|_|_| 从.从从:/ |__|::|ノ \ ミ`;^ヾ,)∃ < へヽ\
|__|| 从人人从 ..| /:/ _,,,... -‐'''"~ /ー`⌒ヽ、 (( (゚Д゚llソ |
|_|_|///ヽヾ\ ./:/ _ \ / /T;) /~  ̄__ イ
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