【こわしや我聞】藤木俊作品全般でエロパロ_8

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1名無しさん@ピンキー
このスレは藤木俊先生によりサンデーで連載されていた漫画
『こわしや我聞』および、きっとすぐに始まるに違いない次回作や読みきりなど、
藤木俊作品のエロパロスレです。

あくまで藤木作品のエロパレスレですので、
他作品とのクロスオーバーはご遠慮ください。

・950レス、もしくは450KBを越えたら流れを見ながら新スレについて検討を。
・新職人は常時募集中。
・酷評受けても泣かない、荒らし煽りは放置。
・ちなみにこのスレで言われる「低能」とは「GJ」の意。褒め言葉なので怒らないでね。
・801は禁止。専用スレにてどうぞ。
・陵辱、ダーク、鬼畜、百合は不快に感じる人もいるので、ちゃんと予告しましょう。
・投下し終わった場合、その旨を書きましょう。

前スレ
【こわしや我聞】藤木俊作品全般でエロパロ7
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1157543897/l50

2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.arings2.com/

関連スレ
【こわしや我聞】藤木俊作品 女性キャラ萌えスレ9【劇団SAKURA】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1141140625/
こわしや我聞の桃子・A・ラインフォードに萌えるスレ (DAT落ち)
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1122707581/
☆こわしや我聞の我聞&斗馬に萌えるスレ☆
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1116491861/


2ツンデレ王子:2008/08/19(火) 04:49:17 ID:FU8X/mcR
申し訳ない
前スレにギリギリ入ると思ってたら…入らなかった><

こっちに新たに全部投下します
3誕生日_1:2008/08/19(火) 04:50:02 ID:FU8X/mcR
――8月某日

「社長!社長!」

 プレハブ小屋の一室、工具楽屋のオフィスである。
 この日は現場の仕事が入っていなかった為、工具楽我聞は書類仕事に精をだしていた―はずであった。
 ところが、彼の秘所である國生陽菜が判を貰おうとしたところ、我聞は社長椅子に腰掛けたままうとうととしているではないか。
 陽菜は彼の肩に手を掛けると、ゆさゆさと揺さぶり起こそうとする。

「…ん……あ、國生さん」
「『あ、國生さん』じゃありません!社長、こちらに判をお願いします!」
「ああ、すまない」

 バン!と卓上に書類を叩きつける陽菜。
 その剣幕におののきながらも軽く目を通し判を押すと、自分の席へと戻る陽菜の後姿を眼を擦りながら眺める。

(む…いかんいかん、仕事中に居眠りなど)

 気合いを入れなおす為に己の頬を叩くと、デスクに残っている書類に目を通し始めた。

「はるるん、そんなにカリカリしなくても…」
「カリカリなんてしてません!」

 技術部長である森永優が取り成すも、けんもほろろと言った感じで取り付く島もない。

「我聞くん、陽菜ちゃんと何かあった?喧嘩でもしたの?」

 我聞の許へと赴き耳打ちをする優。
 だが、そう言われても我聞にも彼女の不機嫌の理由など知る由も無い。強いて挙げるなら、やはり先程うたた寝をしていた事だろうか。

「いや、オレもさっぱり…」
「今日の陽菜くんは、何時にも増してピリピリしとるのう」
「我聞くんがなかなか告白しないからじゃないの?」

 専務の中之井千住を交え我聞・優の3人はこそこそと、ここ数日の彼女の態度について話し合う。それが耳に入ったのか、陽菜は例の凍える視線で彼らを見やった。
4誕生日_2:2008/08/19(火) 04:50:33 ID:FU8X/mcR
「仕事仕事」

 中之井と優はそれぞれに呟きながら己の業務へと戻っていく。
 そこに、17時を告げる時計の音が鳴り響いた。

「じゃぁすみませんが、後はよろしくお願いします。緊急でしたら携帯に連絡下さい」

 高校を卒業して直ぐに買い求めた最新機種の携帯電話を掲げて告げると、我聞はそそくさと帰宅したのだった。




「最近の社長、何かおかしくないですか?」

 陽菜の父、武文の爆弾発言から2年半。
 この2年と半年の間、我聞はひたすら社長業を勤め上げてきた。真芝壊滅による本業の激減により当初こそ赤字に悩まされはしたものの、彼の働きと営業部長である辻原蛍司の働きによって最近は黒字が続いていたのだ。
 それなのに、7月の末辺りから我聞の様子が変わり始めた。工具楽屋の仕事自体には手を抜くとかいった様子は無い。むしろ以前よりもスピーディにこなし、必ずと言って良いほど17時には退社するのである。

「まぁねぇ」
「じゃが、きちんと仕事はこなしておるようじゃし、問題は無いじゃろう」
(でも、今までは仕事中に居眠りなんて無かったのに…)

 陽菜が訝しげな表情で考え込んでいると、外からカツンカツンと階段を上ってくる音が聞こえてきた。

「ども、お疲れさまです…って、どうしたんですか?」

 戻ってきた辻原は、事務所内で3人が神妙な顔をしているのに気付き不思議そうに尋ねる。ただし、声の調子はいつのも飄々としたままだ。

「辻原さんはご存知無いですか?」
「は?何をです?」
「最近の我聞くん、何か様子が変じゃないって話してたのよ」
「んー、そうですねー」

5誕生日_3:2008/08/19(火) 04:51:36 ID:FU8X/mcR
 顎に手をやり考える素振りを見せる辻原の口から出たのは、とんでもないものだった。

「もしかしたら、デートじゃないですか?」
「……」
「……」
「……」
「「「ぇええええ!!」」」

 これにはGHKデルタ1としても暗躍する優を始めとして、他の2人も驚きを隠せないで居る。

「そ、それ本当?辻原くん、相手の娘とか知ってんの?」
「いえ、あくまでも私の想像に過ぎませんが」

 我聞は携帯電話を持って約1年。しかも最新機種。
 迷惑メールなどから出会い系サイトに登録してしまったものの、相手の執拗な誘いに断り切れずに会う事になったのではないか。そして、一度だけのはずが相手の娘が好みのタイプだったので、そのまま関係が続いているのではないか――と、これが彼の言い分である。

 冷静に考えれば、我聞の性格上起こりえるはずは無いと気付いたであろうが、彼の最初の言葉で動揺していた3人はそこまで頭が回っていない。

「嘆かわしいですぞ、社長!そのような物に頼ろうとは!」
「こ、こうしちゃ居られないわ!はるるん、後を追って真相を突き止めるのよ!」

 ぼやく中之井。慌てて飛び出そうとする優。
 だが、そんな中1人だけ周囲の反応と違う陽菜。

「はるるん、どうしたの?早くしないと我聞くん見失っちゃうよ」

 陽菜の腕を掴み、連れ出そうとする優。
 しかし、予想に反して彼女は抵抗を示すと、今にも消え入りそうな声で『やめましょう』呟いた。

「…へ?」
「やめましょう」
「な、なんで?」
「もしそれが本当だったら、社長の邪魔になりますから」

6誕生日_4:2008/08/19(火) 04:53:08 ID:FU8X/mcR


――もしかしたら、デートじゃないですか?

 その言葉を聞いた瞬間、私は巨大なハンマーで頭を殴られたような気がしました。

(社長が…デート…)

 お父さんのあの言葉以来、それまでの社長と秘書って関係よりも少しは進んだ気がしていたんです。あの時の社長の反応も満更では無いと言った感じでしたし、それが私にはとても嬉しかったのですから。
私自身、お父さんの言葉に度肝を抜かれましたが、あれ以来そうなればいいなと常に思っていました。
 私が彼の事を意識するようになったのは、やはり桃子さんからの『嫁候補』って言葉が原因だと思います。いえ、もしかするともっと前から私は社長に惹かれていたのかも知れません。

 優さんが後を追おうって言った時、私も一緒に行きたいと思いました。
でも、身体が動いてくれなかったんです。腕を取られた時もそうでした。

 辻原さんが仰っている事は嘘だと分かっていました。
いえ、頭ではそう理解したつもりでした。彼の性格上、出会い系サイトなど利用するはずが無い――と。
 ですが、心が、身体が言う事を聞いてくれませんでした。
 もしそれが本当だったらどうしよう。もし彼が他の女性と手を繋いだり腕を組んだりしている所を目撃してしまったら…。
 そんな考えが私の知らないところで湧いてくるのです。

「はるるん、どうしたの?」

 優さんが心配してくれていますが、私は声が出ませんでした。彼女に心配を掛けたくは無かったのですが…。
 せめてジェスチャーででも大丈夫だと伝えようと思い頭を振ったのですが、その拍子に手に何やら水滴が落ちて来たのです。そこで漸く、私は泣いているのだと思い至りました。

「陽菜ちゃん…」
「だ、大丈夫です。すみませんが、今日はお先に失礼します」

 皆さんの制止の声を振り切って工具楽屋を飛び出した私は、何時もより早い時間に寮へと帰宅したのです。
7誕生日_5:2008/08/19(火) 04:53:46 ID:FU8X/mcR
 



 翌朝我聞が出勤してみると、オフィス内には異様な空気が漂っていた。

「?どうしたんですか、皆」

 彼の問いに答える者はおらず、代わりに中之井と優からどこか蔑みの色を含んだ視線が返される。

(何なんだ、一体?)
「そういえば國生さんは?」
「彼女は今日お休みと連絡が有りましたよ」

 重苦しい雰囲気の中、応接用のソファーに腰掛け雑誌を読んでいた辻原が答えた。

「そうですか…」

 彼女に何があったのか気になるところではあったが、今日は現場での作業が予定として組まれている為、今すぐ彼女の部屋へ様子を見に行くわけにもいかない。

「では、行ってきます」

 作業着に着替え終わった我聞は、後ろ髪を引かれる思いながらも現場へと駆け出した。




 習慣とは恐ろしいもので、あれだけ泣きはらした翌日だというにも関わらずいつも通りに目が覚めてしまった。昨夜の内に優に休みの連絡を入れておいたのだが。

(しゃちょう…)

 ヘッドボードの上に飾っていた集合写真を手に、想いを馳せる。

「私はどうしたらいいんですか?」

 答えが返ってくるわけでは無いのを承知の上で写真立ての中の我聞に問いかける。

8誕生日_6:2008/08/19(火) 04:54:19 ID:FU8X/mcR
(それでも…社長と一緒に…居たいです)

 我聞の父であり工具楽屋の先代社長でもあった工具楽我也から高校進学の祝いとして貰い、我聞自身からも“家族の一員だから”と手渡された彼の母親の形見でもある手鏡を覗く。
 泣きはらした所為で、目の周りが真っ赤に腫れあがっている。

(こんな顔じゃ、愛想尽かされちゃう)

 顔を洗って心を落ち着かせると、陽菜は決意を新たに明日は出社しようと心に誓うのだった。



 それから1ヵ月。
 我聞の傍で日常を過ごしたいとの想いから、陽菜は彼の秘書を続けていた。
あの時の彼女の決意、それは少しでも我聞と一緒に居る事。そして、例え今他所の女性に気持ちが向いていたとしても、絶対に自分の方を向かせようと自身を磨くのを怠らないことであった。
 その努力の所為か、この1ヶ月で彼女は傍目からでも直ぐに判る程に変貌を遂げていた。

「最近、陽菜くんは前にも増して明るくなったのう」
「ええ、しかも前より美しさに磨きがかかった様にも見えますね」
「そりゃそうよ!恋する女は強いのよ!」

 社内でそのような評価を受けているとは、本人は気付いていない。

「工具楽我聞、ただいま戻りました」

 そんな中、現場へと出ていた我聞が戻ってきた。

「お疲れさまです、社長」

 陽菜は手を留めて立ち上がると、まだ残暑厳しい中で汗を流した彼の為に冷たい麦茶を入れる。
 そんな彼女の様子と打って変わって、我聞の様子は何故だかそわそわと落ち着きが無い。

「あ、あの國生さん」
「はい、何でしょう社長」
「そろそろ仕事上がりの時間だけど、この後何か用事あるかな?」
9誕生日_7:2008/08/19(火) 04:55:04 ID:FU8X/mcR
「いえ、特には…」
「じゃ、この後残ってくれないか?大事な話が有るんだ」

 一瞬びくりと身を震わす陽菜。少し間をおいて、はっきりとした声で頷いた。



 付き合っている訳では無いから、別れ話では無いだろう。
 あの時の言葉を無かった事にして欲しい、とでも言われるのだろうか。
 正式に付き合って欲しいと告白されるのだとすれば、これほど嬉しい事は無いのだが。
 いやそれとも、私はクビだろうか。自惚れる訳では無いが、私はこの社にとって必要な人材だと思う。だが、社長は彼だ。一社員である自分に彼の決定を覆す権利は無い。

 皆が帰宅した後の工具楽屋の応接室。
 陽菜はそんな不安と期待が入り混じった気持ちで、我聞を待っている。
 押し潰されそうになりながらも気丈に待ち続け、やっと我聞が姿を現した。

「すまん、遅くなった」
「いえ、大丈夫です。それより」
「ああ。だがその前に、國生さん、今日は何の日か覚えてる?」
(何の日…私の入社日は今日じゃ無いし…)
「えっと…9月の17日、ですよね?」

 恐る恐る確認する陽菜に対し、我聞は大きく頷いてみせる。

「そう、9月17日。君の誕生日だよ」
「あ…」

 自分でも忘れていたのだろう。
 言われて初めて思い出した、そんな表情で上目使いに我聞を見る。

「それで、その…渡したい物が有るんだ」
「社長…」

 まだ言葉だけ、それでも陽菜は感極まって今にも泣き出しそうになっている。

「これを誕生日プレゼントにするのは如何かとも思ったんだが、これしか思い付かなかったんだ。嫌でなければ…受け取って欲しい」

 そう言って我聞はズボンのポケットから小さなブルーの箱を取り出した。
10誕生日_8:2008/08/19(火) 04:57:39 ID:FU8X/mcR
「こ、これ…」
「國生さん、いや、陽菜さん。オレと結婚して欲しい」

 我聞はそう言うと、陽菜の目の前で手にした箱を開いた。
 そこには、10カラット――とはいかないながらも、美しく輝くダイヤがはめ込まれた指輪が収まっていた。

「…社長」

 終に堪えきれず、ぽろぽろと涙を零す陽菜。

「受け取ってくれるね?」
「はい…はい…」

 しゃくり上げながら頷く陽菜の左手を持ち上げると、我聞は手ずからその指輪を彼女の薬指へと通していった。

「好きだよ」
「私も…愛してます、我聞さん」

11後日談_1:2008/08/19(火) 04:58:30 ID:FU8X/mcR
「そう言えば、我聞さん」
「ん?どうしたの?」

 婚約してから半年。
 どうやら会社の皆や果歩たちに覗かれていたらしく、翌日には全員に知れ渡っていた。なんでも、面白半分に覗こうと優さんが盗撮していたらしい。それを我が家で皆揃って見ていたらしいのだ。

(まったく、悪趣味だよな)

 しかし、お陰で隠す必要は無くなった訳だし、まあ良しとするか。

「あの時、しばらく帰社が早かったですよね?何をしてらしたのですか?」
「ああ、あれね」


 実は、会社が黒字続きだからと言って家計までそうかと言えば、全然違っていたのだ。何しろ食べ盛りの人間が揃っている為、火の車とまではいかなかったがそこから彼女へのプレゼント代を捻出するのは到底無理な話だった。
 そこで、短期でのアルバイトをしていたのだ。

「そうだったんですか。私はてっきり、他所に恋人でも作ってるのかと思っていました」

 それを聞いた途端、オレは愕然とした。
 確かに彼女への指輪の為とは恥ずかしくて言えなかったオレが悪い。けど、そんな誤解を与えていたとは夢にも思っていなかったのだ。

「すまん、陽菜さん。オレの説明不足の所為で」
「いえ、今では杞憂だったと判ってますからいいんです」

 それから彼女は話してくれた。何故にそう言った誤解が生じたのかを。

「辻原さんも酷いなぁ、あのバイト紹介してくれたの辻原さんなのに」
「えっ、そうなんですか?」
「うん、オレが悩んでいたら良い方法が有りますよってね」

 確かに皆には内緒にしててくれって言ったけど、そんな誤解を生むような言い方しなくてもいいじゃないか。
 これは後から聞いたんだが、辻原さん曰く
『その方が、後からの感動も一入(ひとしお)だと思いまして』
12後日談_2:2008/08/19(火) 04:59:48 ID:FU8X/mcR
だそうだ。

「辻原さんには、してやられましたね」
「ああ、全くだ」
「でも、そのお陰で私も決意出来たんですから」
「え?何を?」
「ふふ、そ・れ・は・秘密、です♪」

 そう微笑む彼女と手を繋ぎ、オレたちは歩き出した。
 オレの母に彼女の事を報告する為に――


END


13ツンデレ王子:2008/08/19(火) 05:03:02 ID:FU8X/mcR
今回は以上です

いやー、思いついて書き出したら止まらないw
お陰でこんな時間なっちゃいましたよw

誤字脱字や
「このキャラはこんな喋り方ちゃうわい!」
など有りましたら、ご指摘お願いします^^;

感想など頂ければ幸い

では、これにて〜ノシ
14ツンデレ王子:2008/08/19(火) 15:23:55 ID:XoxDfjSS
今気付いた

後日談_1の
>あの時、しばらく帰社が早かったですよね?
帰社 ではなく 退社 ですね

保管庫入れる際、修正できるならお願いします
15名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 16:06:38 ID:je457lvb
んもー超乙だよ低能。
國生さんの可愛らしいこと。

つか帰社より>>3の誤字を何とかしてやれよw秘書さんがあんまり可哀相だ
16名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 19:32:40 ID:iQHXyI55
おつー
しかし1スレに2年かかってる割には500KBで終了とは
17名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 19:58:21 ID:GUN7JVsN
乙乙乙

しかしアゲるのは最後だけでもいいとおもうよ
18名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 01:30:26 ID:ZrIuOoyW
スレ建て&投下乙っ
それじゃあその波に乗って新スレ一発目のネタ系投下します

エロなし、13レス予定
『我聞が福引で頑張ったそうです』
191/13:2008/08/21(木) 01:31:28 ID:ZrIuOoyW
「まったく、果歩は毎回こんな荷物を持って歩いているのか」

まだ日も高く、見るからに、そして聞こえるからに休日らしさを表している慌しさが陽気を誘う。
あたり一面とは言い難いものの、ごたごたしてはいるが居心地が悪く無い商店街の片隅で、
ぶつぶつと何にいちゃもんをつけているのかわからないな、と頭を捻る一見優秀な弟と、
肉体的には優秀であるが、こう、何もかもがすっとんでる兄が一匹。
うららかな気温に踊らされながら、すったかすったか買い溜め任務を着々と遂行していた。

「兄上、あの福引は」
「おお、そういえば貰ったな。引換券みたいなものを」

ガラガラとありきたりな音が鳴り響き、愕然とその列を後にする輩を眺めながらポケットから二枚の挑戦券を引き出した。

「ここは正々堂々、一人一枚で勝負だな」

何が正々堂々なのかよくわからないがきっとそうなのだろうと、無理やり反論を叩き出す頭に鞭打って納得。
時には強引に話を持っていったり、理不尽なことも自己完結しないといけないと学んでいる自分が恐ろしい。
そんな素直さ全開の斗馬に渡されたチケットを店員はにこやかに受け取り、勝負を促す。
こいよ、と挑発しているようにも見えた。
よかろう、我を侮ったこと後悔するがいい。
斗馬の勝負が、今、始まった。

「残念でしたぁ、こちら残念賞のティッシュになります」

目指した特賞に陣取っている軽井沢への旅を逃し、涙目どころでなく号泣気味な弟を一瞥し奮起一番。
がっちり奪い取ってやると鼻息荒く、不審がっている店員に引換券を差し出す。

「おりゃぁっ!!」

怒号が響く中、そんな声と真逆のようにカランと小さな音と共に現実がこの世界に降り立った

「おめでとうございまぁ〜〜す」
「どうだ、斗馬っ!!」

はっはと満面の笑みで弟に顔を向ける。勝負事に自分が負けるわけが無いであろうとの言葉も付加えて。

「こちら三等のみみちゃん人形になります。どうぞ」

そう言う店員から大きさに関して定評のあるみみちゃん人形なるうさぎが、綺麗にラッピングされて登場した。

「え? みみちゃん?」

カランと飛び出した赤玉と店員の言葉に騙されたが、三等らしい。
今になって気が付く兄に少し落ち着けよとタメ口ききながら説教でもしてやるべきなのかと本気で考え始める斗馬。

「は、ははは……これは勝ちなのか?」

こいつのアリガタミを理解出来ない我聞が弟に助け舟を求めても、相手にしてくれる様子は見られなかった。

202/13:2008/08/21(木) 01:32:30 ID:ZrIuOoyW
〜〜天野の場合〜〜

「くぐっちじゃん、何やってんの?」
「おぉ、天野か。いや、買い出しだけど」
「ふ〜ん……って、そのうさぎはっ!?」

即座に間合いを詰め、詳細を吟味するようジロジロみみちゃんを見つながら、ニタニタ話しかけてくる。

「これは、るなっちへの……」
「なんで國生さんが出てくるんだ?」

心底不思議そうに驚いている姿から想像するに、あぁ、こいつはこういう奴だったんだよなと再認識させられる。

「それより、どうだ? みみちゃん」
「え? あぁ、こいつね。かわいいんじゃない?」

うさぎだし、恐かったら反則であろう。そもそもうさぎ人形が気に食わないのは滅多に無いだろうなとも思う。

「そうか。ならどうだ? 引き取ってもらえないか?」
「あたしがっ!?」

あんまりにもなことを言い出す我聞に口あんぐりといった反応を示しそうになる。

「嫌なのか?」
「いや、そういうわけじゃないけど……」

るなっちに渡せばともう一回言えば渡すのだろうか? と考えてみても、先ほどの反応から推測するに可能性は低い。
しかもこの性格が響いて、頑なに渡すのは躊躇うであろうし、下手なことはいえない。
どうすれば進展するのかもわからない関係なのに、このチャンスを逃すのはもったいないな。
こんなにもこの二人の仲を考えているのは自分くらいであろう。友達思いな自分が少し誇らしい。
あ、中村と友子も少し考えてそうな気がするな。あいつら親切だしね。
佐々木は無理だろう。るなっちに気があるし、そもそもそこまで踏み込んで考えてる風には見えないし。
まったく、あいつは本当にどうしようもない奴だな。今度しっかりとヤキ入れてやるべきなのか?

「じゃあほら、おまえの家にでも置いておいてくれ」
「あ、うん……ありがとう」
「はっは、礼にはおよばんさ。じゃあまた学校で」
「……学校で」

なし崩しに渡されてしまったニヤケ面のみみちゃん人形を眺めながらこれでよかったのかと自問自答。
でもあたしが断ったとしてもきっとるなっちには渡さないんだろうなとも思う。
誰かに渡そうとしたものを違う人に渡すとも思えないしね。
くぐっちはそういう人だ、だからきっとこれが最善策なのであろう。
気が付いたら遠くに行ってしまっていた仲の良い兄弟の後姿を眺めながら、
今日から家で世話するうさぎ人形に悲しい思いをさせないよう精一杯大切にしてやろうと誓った。
本当はココに来るはずじゃなかったのと、言わせないためにも。

213/13:2008/08/21(木) 01:33:35 ID:ZrIuOoyW
〜〜住の場合〜〜

「こんなところで何つっ立ってんだ?」
「おぉ、中村と住か。いや、これを貰ってさ」
「あ、それみみちゃん」

後方から聞こえてきた聞き覚えのある声に振り返り、斗馬そっちのけで世間話を繰り広げていく。
こういう時、部外者は居心地悪いんだよなと斗馬は改めて思う。
そんな斗馬放置でみみちゃん人形に住が食いついていた。

「知ってるのか? 丁度良かった、これ貰ってくれないか?」
「え? わたしが?」
「中村に渡すわけが無いだろうが」

またまた〜と言ってのける我聞を気にも留めず、住と中村の視線は極自然に交わっていた。

「もしかして嫌か?」
「そうじゃないけど、中村君以外からプレゼントは貰えないの」
「あぁ、そうか。そうだよな。これは無礼を」
「ううん、いいよ。こちらこそゴメンね。また学校で」
「おう、中村もまた学校で」
「おぉ、元気でな」

大げさに手を振る我聞をその場から動かず笑顔で見送る。
なんで我聞は常日頃、あんなにも元気満天で生活できるのかと疑問に思う。
どうにか姿が霞んで見え始めたときに中村から口を開いた。
お互い基本的には考えていることが同じであったのであろうことは、先ほどの視線交換でおおむね伝わっていた。

「あの人形どうなるんだろうな」
「妹さんにあげるんじゃないのかな?」
「國生には渡さないのかね」
「どうだろう。それより……」
「それより?」
「わたしもみみちゃん、欲しいな」
「あの大きさのか?」
「うん」

あれだけの大きさだと購入金額はいったいどれぐらい飛んでいくのだろうか? 
できれば避けたいと思い、何か他にいい方法はないかと思考を巡らせる。

「福引にかけるのが得策だな」
「運任せですか」
「しょうがないだろ、流石にアレは厳しい」

む〜、とふくれる住が無性に可愛らしく見え、身長効果も加わってやけに幼く見えた。
同い年なのに完璧な上下関係? ともいえる関係を作ってる気がして少し複雑な気持ちになる。
嬉しいような、悲しいような。

「まぁとりあえず福引券貰う為に買い物いくか」
「……うん」

彼女の後頭部を軽く二度叩き、しっかりと手を握って我聞達と逆に道を辿って行く。
どうか、みみちゃんが当たりますように
そう彼女の為に存在の確認が取られていない神様にそっと願ってみる。


224/13:2008/08/21(木) 01:34:46 ID:ZrIuOoyW
〜〜ほっちゃんの場合〜〜

「お、エロ社長。こんな道の真ん中でまたセクハラか?」
「なっ!? 何をいきなり言い出すんですかっ!?」
「HAHAHA、そんな隠すことじゃないだろ? どうせセクハラ大好きなんだろ?」
「んなわけないじゃないですかっ!! 常識的に考えてくださいよ」
「誰が常識ないだこのやろうっ!!」

兄が見知らぬ女性に蹴り飛ばされている姿を眺めながら、こいつは女癖の悪い奴なんだなと初めて気が付いた。
何故こんな中身を吐露しまくっているのに兄の周りには魅力的な女性ばかり集まるのだろうか? 
今度じっくりと聞き出してみようと思う。
変な音を体や口から出しながら飛んでいる今ではなく、もっと落ち着いているときに。

「保科さん……そんなこと言ってませんて」
「まったく、これだからエロ……ってなんでこんな人形持ってんだよ」
「それはさっき貰ったんですよ。福引です」
「はぁ〜〜ん」

マジマジとうさぎの人形と睨めっこ。
最初から笑いっぱなしの人形相手に勝負を挑んでも連戦連勝、
歯ごたえの無い相手と戦ってもなんら面白くは無いなと目を離す。

「どうですか? この人形持ち帰ってくれませんか?」
「なんでだよ? ……ははぁ〜ん、ここで媚売っておこうって魂胆だな」
「違いますって。そもそも俺社長だし」
「まったく浅はかな奴よのぉ〜」
「いやいや。ってかやっぱりこういうのが部屋にあった方が」
「どういうことだこのやろうっ!!」

膝が我聞の顎にがっしりヒットし、空高く舞い上がる我聞。
弟の目には完璧にこの二人の上下関係が線引きされてしまったのは言うまでも無い。
チビか? 童顔か? 女らしくないってか?
などとギャアギャア騒ぎ立ててはいるが何一つ我聞には届いていなかった。
既に夢の中、現実に帰ってくるまでここから動けないのかなと斗馬はため息一つ。
もちろん心の中で。蹴られたくないし。

「おお少年、こいつは没収したって伝えといてくれ」
「ら、らじゃーっ!!」
「よし、いい返事だ。兄貴にも見習わせたいぐらいだ」

グシャグシャ髪の毛を掻き回し、満足げにその場を後にすることにする。
あんな奴の弟にしてはしっかりものだったな。そういえば妹もいたよな。しかも二人。
年の割りにしっかりしてる奴が多いな、と思うも、そうなるしかなかったのかと自己嫌悪。
あたしだって頑張って生きてるやい、そう胸張って言ってやる。
そんな感じで自分に言い聞かせ、再び戦利品に目を落す。
あたしの当分負ける気配の無い睨めっこ顔をあざ笑うかのようにニヤケてるうさぎが憎らしい。
こうなりゃフルボッコだな。
そう心に誓っているうちに、あっさりとニヤケてしまう顔を抑えるのに少し手間取った。
235/13:2008/08/21(木) 01:35:48 ID:ZrIuOoyW
〜〜果歩の場合〜〜

「「ただいまぁ〜」」
「お帰りなさい、ってそれはいったい何よ?」
「みみちゃんだ」

何ってそういう意味じゃないっつーのと思いながらも、自分の説明が足りなかったと言えば足りなかった。
まったく、何がみみちゃんだっての。

「んで、それはどうしたのよ」
「おお、福引で勝ち取ってきた」
「あぁ、そういえば福引やってたわね」

どうせならもっと有意義なものを取ってくれば良かったのに。
確か特賞は軽井沢ペアチケット、あぁ、もったいなかった。GHK的にだけどね。

「ほらこれ、やるよ」
「え? なんで」
「俺らじゃどうしようもないしな」

頷く斗馬。まぁそりゃそうだろうな。こいつらの部屋にこんなものがあったら確かに気色悪い。
そう言われてしまうとそんなに興味なかったとしても、興味が湧いてきてしまうのが人間ってもんだ。
まったくもって不思議な生き物だ。
みみちゃんでなく、わたしたち人間の話だけど。

「どうだみみちゃん、かわいいだろ」
「そりゃそう作ってるんだからかわいいでしょうが」
「はは、そうだな」

そう言いながらそっと、みみちゃんなる人形をわたしに優しく手渡してきた。
文句しか言ってないわたしと、言われっぱなしなのに嫌な顔一つしない兄。
どうして同じ屋根の下で育ったというのにこうも変わっていくものなのだろうかと、本気で考えてみる。
血か? わたしは兄弟の中でどちらかというと母の血が濃い気がする。
仙術もそうだが、こう、雰囲気が違うのが手に取るようにわかる。
たまに考えることは、わたしだけが残った家族で違うということ。
そんなことが気になって気になってしょうがなかったことが、鮮明に思い出されていた。

「そんなところに立ってても何もないだろうが」
「あ、あぁ。うん。今手伝うね」
「その前にそれをしまって来いよ。珠には秘密だぞ?」

そう自分の前で、秘密だぞ? 的仕草をしたかと思うと大荷物を抱えて台所に引っ込んでいった。
あの狭い部屋で、この小さい家でどう誤魔化し切れというのだ。
全て筒抜けで、隠し事なんて出来たことは無かったではないか。
今思い出した、結局深く考えることなんて一度もできなかったんだ。
そう、くだらない事で悩むことも出来なかった。微々たる変化もすぐに見透かされてしまった。
くよくよ悩む時間ぐらい欲しいよね、と試しに話しかけてもみみちゃんは答えてくれない。
ため息交じりでそそくさと部屋に帰っていくことにする。ダメダメな兄を手伝わなくちゃね。
そういう会話は面と向かって言わなきゃね、とどこからか声が聞こえてきた気がした。
246/13:2008/08/21(木) 01:36:49 ID:ZrIuOoyW
〜〜珠の場合〜〜

「「ただいまぁ〜」」
「お帰りなさい、ってそれはいったい何よ?」
「みみちゃんだ」
「みみちゃんっ!?」

にゅっと沸いて出た珠がキラキラと、思いのほか興味を示していた。
もちろん、こんなにも食いつくとは誰もが想像していなかった。

「なんだ、知ってるのか」
「うんっ! まるちゃんも知ってるよ」
「今はそんなのが流行ってるのね」

これぐらいならピチピチの女子中学生でも知ってるのであろうが、まったくついていけない自分がいる。
その瞬間、自分が既にピチピチでないことを悟った。そう、瞬時に。
愕然と膝を突きたくなる衝動に駆られるも、本当にギリギリのところではあるが踏ん張っている果歩。

「じゃあ珠、こいつを貰ってくれるか?」
「本当にっ!? いいのっ!?」

今にでも地球一周できそうな勢いの笑顔を披露しながら我聞に張り付く。
正確にはみみちゃん越し、ではあるのだけれども。

「あぁ、もちろんだ。果歩がそれでいいならな」
「姉ちゃんいいの?」

ここで初めて不安そうな面持ちを披露するも、

「え? あ、あぁ。いいわよ……」
「だってぇっ!! やったぁっ!!」

飛び跳ねながら、とても大事そうにみみちゃんを抱きかかえる。
その仕草が年相応で、やっぱりまだまだこどもなんだなと高校生風情が考えている。
そんな暖かな視線の範囲内に紛れ込む不穏な空気感。

「ふふ……女の寿命っていくつなのかしらね」
「か、果歩? どうしたんだ? 腹でも痛いのか?」
「ぇえ? まったくもって健康体よ? ただ若々しさが足りないだけよ」

はははと少し壊れ気味な果歩が荷物を受け取って台所に向かっていった。
嬉々として自室に向かって行く珠とは反対に、まんま明暗であるように感じられる。
斗馬と目で意思の疎通を試みるも、原因不明の故障はどうしようもないなとすぐに結論が出た。
何せ謎だらけ、お互いがこの件から手を引くことを誓い合った。
そう、触らぬ神に崇り無し、だ。
静かに合掌しあい、この日は何も無かった日に決定した。
決まったものは決まったんだ、と確認しあいながら。
257/13:2008/08/21(木) 01:37:51 ID:ZrIuOoyW
〜〜優の場合〜〜

「やっほう我聞くん、今帰りかい?」
「えぇ、丁度買い物も終わって」
「むむっ!! そのぬいぐるみは」

ささっと瞬時に間合いを詰め我聞の荷物からぬいぐるみだけ奪い取る。
滑らかな動作と、なんら躊躇わない身軽さに翻弄され我聞はピクリとも動けなかった。

「これはいったい……いや、それより……」
「あぁ、これですか? さっき福引で貰ったんですよ」
「ほほぅ、福引ねぇ」
「それが気になるんですか?」
「そりゃ……興味深いね」

我聞がかわいらしいぬいぐるみを持っていたとして、じゃあそれの使い道は? と即座に浮かんでくる疑問。
多分、我聞を少しでも知ってる人なら即答で國生陽菜にプレゼントと答えるであろう。
しかも完璧なラッピング。
誕生日には早いが、それでもこれだけの物貰って嫌な気分になることはないであろう。
なんてついているんだと、GHKついに完全勝利かと頭の中でこれでもかとファンファーレが鳴り響いていた。

「じゃあ優さん受け取ってくださいよ」
「……はい? 何を言っているのかな? 我聞くん?」
「いや、だからこれどうしようもないんですよ」
「な、なぁ、何を言ってるんだこらぁっ!!」
「えぇっ!? なっ、ちょっと」
「これははるるんに愛と共にプレゼントでしょうがっ!!」
「なぁっ!? 優さんこそ何を言い出すんですかっ!?」
「それはこっちの台詞だっつーのっ!! おとなしくはるるんに渡しなさい!!」

お互いに一歩も引かずにギャアギャア騒ぎながら押し付けあっている。
まぁ我聞が押しているのは、単に引けないからと状況そのまんまだからではあるのだが。

「これを渡して愛の一つでも囁けば落ちるってのっ!! ってかもう落ちちゃってるってのっ!!」
「さっきから何わけのわからないことを言い続けてるんですかっ!?」
「えぇいっ!! 何が何でも受け取らないぞコンチクショーっ!!」
「そんなこと言わないでくださいよっ!!」

「斗馬さん、あのお二人は先ほどから何についてあんなにも熱くなっているんですか?」
「いや、あの……」

あなたの為にデルタ1が頑張ってます
なんて口が裂けても言えなかった。

「どうすればこの騒ぎは収まるのでしょうか」

むむむと悩んでいる姿に、あなたがアレを奪えば終わりますと、どれだけ言いたかったことか。
絶対に言えないし、言えるわけがない。
もし言えたとして、理解してくれたとしても、きっと走り去ってしまうだろうなと簡単に結末が予知できた。
そろそろ大姉上が怒気混じりで登場しそうだ。正直、かんべんして欲しい。
そんな悩み事などお構い無しに騒ぎ続ける標的Aとデルタ1。
もう、勝手にしてくれ
268/13:2008/08/21(木) 01:39:17 ID:ZrIuOoyW
〜〜桃子の場合〜〜

「ガモ〜〜ンっ!! お帰りなさぁいっ!!」
「ただいま……って、桃子っ!? なんでおまえがここに居るんだっ!?」
「遊びに来てあげたのよ。それなのにこの家にはガモンはいないし、薄胸はうるさいし」

ただいまを自分から発する前に、まぁいつものことではあるが、若干爆走気味に桃子が飛びついてきた。
満天の笑みともいえるものから、プンスカとふくれてグチの量なら数知れずといった面持に推移しているのだが、
どちらかというとそういうのも込みで楽しそうだな、と我聞なりではあるが理解している。

「そんなことより、コレなに?」
「あぁ、これか? これはみみちゃんだ」
「みみちゃん?」

なんのこっちゃと頭に?を浮かべるという、天才らしからぬ唖然と言った事態発生。
桃子自身が、はっと気付くまで時は止まりきっていて、我聞もニンマリ満足顔のままであった。
その笑顔にまた硬直しそうになるも、強靭な精神力(本人談)でどうにか本題へ帰還する。

「よ、要するにぬいぐるみってことね」
「まぁそうなるな」
「これはアタシへのプレゼントねっ!?」
「ん? あぁ、そうだ」

よっっっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああああっ!!!!!
なんて頭の中でガンガンに鳴り響いている勝利の咆哮を雑音としか捉えられないくらい動揺しきっている。
そう、これは確実に〜〜愛〜〜が込められたプレゼントであるからだ。
こんなに大きなぬいぐるみを綺麗に、美しく、丹誠込めてラッピングしてくれた。
これは即、結婚への前段階なのねと、指輪は金銭的にキツイからそのつなぎね、等と
次から次へと止めどなく沸き起こる妄想を、なんら疑うことも無く真実であると思い込んでいた。
我聞の顔を覗き込んでも満足そうに微笑んでいるだけ。
我聞の考えとしては、こうも簡単にこのぬいぐるみの処理が上手くいくなんてな、
なんて思っているとは微塵も想像できていない。
幸せ者といえば世界トップレベルの幸せ者である。

「ありがとうっ!! 大切にするからっ!!」
「そうか、そう言ってもらえると俺も嬉しいよ」

そう笑顔の交換、なんて素晴らしいんでしょう。どこかに婚姻届は落ちてないのかしら?
気の利かない紙切れね。
そんな止まらない妄想が現実世界に影響を及ばさ無いのにかなりご立腹。
もうここまで来たら誰にも止められない。
279/13:2008/08/21(木) 01:40:34 ID:ZrIuOoyW
「それでね、ガモン……」
「ん? どうかしたのか?」
「えぇっと、指輪のサイズなんだけど……」
「ってドサクサに紛れて何を言い出すんじゃおんどりゃぁっ!!」

びくっと驚く桃子含む三名、声だけが先行してその体が後から宙を滑らかに流れて登場した。
もちろん、とび蹴りで。
とっさではあるがその殺気全開の攻撃をヒラリと避ける桃子。
伊達に五研のアタマを張っていたわけではないようだ。
こいつらに関わってからグイグイと身体能力が伸びていった可能性も否定はできないが。

「カホはいったい何を言い出すのかしら? アナタは了承すれば言いだけよ」
「あんたこそ頭の中いったいどうなってるのよ。今度キノピーにメンテでもしてもらったら?」
「そういうアンタは食事のエネルギーはどこに行ってるのよ? 胸にも頭にも行ってないようよ」
「何よっ! 胸はあんたのほうがないでしょうがっ!」
「ふん、なんとでも言うがいいわ。結果的にアタシがガモンの奥さんなんだから」

ギャアギャア騒ぎ立てる二人を眺めながら、今日も平和だなと思う緩い兄と、
もう何がなんだかわからず、下手に参加したら冗談抜きで身の危険が、なんて考えてる弟。
同じ空間、同じように物事を見ているはずなのにここまで考えにひらきが出てきてしまっている。

「カホもしっかりと目に焼き付けとくべきよ、この愛の証をっ!!」
「ってただのぬいぐるみじゃないのよ。よこしなさい、陽菜さんにあげてくるからっ!!」
「なっ、ちょっとっ!? 近寄らないでよ」
「よこせ、よこせっ! よこせっ!!」
「カホ、ま、ちょっとタンマっ!! ホンキで恐いわよっ!?」

そんな現状を悲しんでいるのは、笑顔全開のみみちゃんだけであった。
もちろん、誰もそんなことには気付きもしないのであるが。

「よこせぇっ!!!!」
2810/13:2008/08/21(木) 01:41:36 ID:ZrIuOoyW
〜〜陽菜の場合〜〜

「ところで兄上、そのぬいぐるみはいったいどうするのですかね?」
「あぁ、そうだな……」

斗馬がニヤニヤとした表情を出してしまっては、兄の性格上、絶対に陽菜に渡すことは無いであろうと直感的に理解した。
そう、これは自分にしか成し遂げることのできない任務である、と。
もし、この任務の失敗が姉上にばれたら……地獄一直線コースな展開が目に浮かぶ。
嫌な汗が背中を流れることだけは避けねばと手に力が入る

「國生さんに贈ろうかな〜、と」
「そ、それはナイスアイデアですぞ」

予想に反してすんなりと、そして少し照れくさそうに言ってのける兄が微笑ましく、軽く殺意が湧いてきた。
年齢だと圧倒的に兄には及ばないのだが何故微笑ましいのかな、とも考えてしまう。
先ほどまでの茶化した気持ちが少し恥ずかしく、どっちが幼いのやら、と自責の念が込み上げてきた。
まぁもちろん幼いのは自分の方なのだけれども。

「それでは兄上、荷物はわたくしめが必ずや我が家まで持ち帰りますので」
「いや、そうは言ってもこれかなり重いぞ? おまえにはまだ無理だ」
「思い立ったが吉日、即行動が成功の鍵を握っているもの同然……」

うんうん頷きながら反論する我聞を言いくるめようと努力努力。
ちょっとしたことかもしれないが、紳士的に応援してみたい、なんて少し大人びた考えが誇らしく思えてくる。

「そうは言ってもだな、國生さんの家も近いわけで」
「さぁさぁ、荷物を渡して優秀な秘書の下へ。さぁさぁ」
「わかった、わかったから……まったく、気をつけて帰るんだぞ?」

そう言って大事そうにみみちゃんをぎゅっと、力いっぱい大切に抱きしめながら走りだす。
自分に渡された重荷も、やさしく手渡されれば幾分軽く感じる。
精神的なことなのにこれだけ事実を捻じ曲げるとは、なんて実感できた有意義な休日。
ごろごろ過ごしてたら味わえない大発見、姉上に感謝の気持ちを伝えようかな、なんて考えてもみる。

「本当に大丈夫なのか?」

少し離れて、すぐに今までの場所に振り返る兄。
いつまで心配しているのだろうか? 成長しているのは自分だけでないと学んでみて欲しい。

「なんの問題もないっ!!」

心配性で、少し考え方がおかしく、すぐに曲がった結論を導き出す我が家一のトラブルメイカー。
そんな問題だらけの、非常に頼りになる兄の背中をわずかでも押せればと、自分でも驚くくらいな大声で返事をした。
その声に押されてか、緩みきった表情を隠すこともせず再び前を向き駆けていく兄。
なんだなんだと振り返る野次馬視線が無性に恥ずかしく思えたが、ばんっ、と胸を張って帰路に着く。
今自分にできることをすればいい。
そう言い聞かせ、耳から入ってくる雑音を気にもせず、雲かと勘違いするような荷物を手に家に向け歩を進める。
今晩の夕飯はとっても美味しそうだな、なんて鼻歌交じりにニヘラっと笑みが零れた。

2911/13:2008/08/21(木) 01:42:39 ID:ZrIuOoyW
ピンポ〜ン
とありきたりな音が響いている中、我聞の鼓動は早く、弾け飛びそうな心臓は走ったからかな?
なんて推測が正しいのか正しくないのかの答えが導き出されるには時間が足りな過ぎた。

「はい、どちら様でしょうか?」
「あ、えっと。工具楽です」
「社長? 少々お待ちください」

用事なら電話でもいいよな、なんて今更ながら気付く。
きっと不思議がって出てくるのだろう、っと我聞にしてはありえないほどのスピードで脳みそフル回転。
既に休みに入った体と真逆に心臓のギアがトップに入っていくことに気付き、先ほどの答えが見つかった。
あぁ、緊張ね
そう軽く受け止めるも、余裕ゼロな極限状態。
昔渡した手鏡とは状況が違うし、心境も違う。

「何か急なことでもあったんですか?」
「いや、ちょっと渡したいものが」
「渡したいもの?」

チャイムを鳴らしてからすぐ、流れるように登場した陽菜に緊張MAXな男は躊躇わず口を割った。
そう、下手に考えることも出来ず、ここにきて誤魔化すことも出来ず。
普段より数段おかしい我聞を謎に思いながらも、後ろ手に隠された物体に興味津々。
これまた流れるように我聞の背後確認。仙術使いも驚きの軽やかさであった。

「これは……」
「みみちゃんって言うらしいんだ」
「えぇ、知ってます。これをわたしに?」
「あぁ、ほら、家には女の子二人居るし、取り合いになったら不味いからさ」

あたふたと目は泳ぎ、両手をばたつかせ、足もしっかりと直立することも出来なくなっていた。
そんな我聞に目もくれず、じっ、とみみちゃんを見つめ続ける陽菜。

「あの〜、國生さん?」
「あ、はい。少々お待ちください」
「え、あぁ、はい」

そう言って我聞に目配せ一つなく、再び家の中に入っていく陽菜。
やっぱり変わってる人だなと、お互いが自分を棚に上げ、まさかお互いが同じ思いであるとは思いもしないであろう。
家の中からばたばた、がたがたと何をしているのか容易に想像できる音が耳から伝わってきた。
きっと何か探しているんだろうなと、呆然とみみちゃんを抱え立ち尽くしながらそう考えていた。
3012/13:2008/08/21(木) 01:43:41 ID:ZrIuOoyW
「お待たせいたしました」
「いやいや、それより何してたの?」
「えぇ、これを探していました」
「これ? これは」
「五等の夏野菜種セット、だそうです」

陽菜の手の中には何種類もの野菜種があふれかえっていて、後ずさりしそうになってしまう。
それを持ってきた陽菜自身も少しう〜ん、といった感じであり、複雑な心境であることは伝わってきた。
そんな陽菜を見ながら、ふと気になるワードが含まれていたことに遅まきながら気付いた。

「五等ってことは」
「そうです、わたしも挑戦したんですよ」
「それでこれか」
「はい。でも、一応当たりですからね」
「いや、俺は何も言ってないんだけど」

負けではないんだ、と言わんばかりにキラリと輝く瞳が眩しく、思わず口から本音が零れた。
少しの間があり、不意に訪れる可笑しさ。
どちらとも無く笑い出していた。

「まぁそういうわけで、貰ってくれるかな?」
「喜んで。社長こそこれを受け取ってもらえますか?」
「任せとけ! 成長しきったら我が家で野菜パーティーだな」
「とても楽しみですが、盛り上がるのでしょうか?」
「それは、どうだろう」

お互いの荷物を交換するところまで続いていた明るい雰囲気は消え去り、お互い真剣に考え出した。
う〜〜ん、なんて悩みだし、どう盛り上げるかで構想を練り合う。

「本当のことを言うとですね」
「ん? あぁ、どうしたの?」

急に耳に届いた陽菜の声によって妄想世界から強制帰還させられる。
少し俯き気味な顔が気になり、真剣に耳を傾ける。

「みみちゃんを、その……狙ってたんですよ」
「……あ、あぁ。福引ね」
「今、いい年して、って思いましたか?」
「いいや。それより、コイツも本当に欲しがってる人の下へ来れて幸せだろう。大切にしてやってくれ」
「はいっ!」

先ほどまでの不安なんてどこ吹く風、ぱっと広がる笑みが楽しげでついついうつってしまう。

「さて、それではわたしは買い物に行ってきますので」
「買い物? 今から?」
「えぇ、調味料などのストックが突然欲しくなりまして」
「だからさっき早く出てこれたのか」

あまりの速さに自分の考えがまったくと言っていいほどまとまっていなかったことを思い出した。
実際問題、どれほど時間があってもしっかりとまとまるわけもなく、むしろぎこちなくなるとは思いもしない。
それが良いところであり、悪いところでもあるのだが。
3113/13:2008/08/21(木) 01:44:42 ID:ZrIuOoyW
「そういえば福引って今日までだっけ?」
「そうですね。偶然です」
「偶然って」

きっぱり、すっぱり、そしてさらっとまんま素顔で言ってのける陽菜。
その陽菜に少し噴出しそうになるも、後々許してもらえそうにないのも経験的にわかった。
わざわざあのジト目を披露されたいと思うものは極少数だろうな、なんて考えていた。
そしてお互いそれだけの経験を積み、歩み寄ってきった。
別にこの二人だけに言えた事ではないが、それだけの時間を皆で共有してきた。

「社長? 何をお考えですか?」
「いや、別に」
「そうですか」

もちろん陽菜も経験的、でなくわかり安すぎたとも取れるが我聞の考えを理解している。
言葉と裏腹に、当然ジト目で訊ねてみる。

「ソ、ソレヨリ……うん、急がないと福引終わっちゃうかもしれないな」

若干どころでなく、純度100%の棒読みで逃げようと試みる。
そしてそのまま力押し、強引に話をぶった切る。

「それは困りますね」
「だろ? じゃあ行こうか。荷物持ちは必要になりそうだしね」

目的不明の買い物になるのは陽菜としては時間の無駄である。
はっ、と驚き、気が付けば我聞のペース。

「そう、ですね。それではお願いします」
「急ごうか、思い立ったが吉日、即行動が成功の鍵を握っているのも同然らしいからな」
「そうですね。では、みみちゃんを置いてきますね」

再びバタバタと室内に入って行き、枕元に大事そうにみみちゃんを座らせる。
すぐに仲間を連れてきますから、少しの間待っていてくださいね
優しく囁き、ぐっと気持ちを込めた合図を送って再び駆け出していく家主。
そんな負けず嫌いの背中をじっと見つめ、ポツリと残された完全に無音といえる部屋の中、
あなたとなら、一人っ子でも悪くはないかな
と、そっと静かな部屋に響いては消えていった。
32名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 01:45:41 ID:ZrIuOoyW
以上です
わかりにくい作りな上、イロイロスミマセン
でも新スレだし、新作もあったし、多めに見てくだせぇ
ではでは
33名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 03:00:14 ID:p7zkwh2y
>>32
GJ!
コレだけのパターンを書き別け出来るのは、正直凄いと思いますです、はい
ほのぼのしたし、作中に良いネタを見つけさせて頂きましたしね

最後にもう一度、GJ!
34名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 23:10:41 ID:WSyxVvCd
ちょw新スレ早々転がっちゃったんだぜ?
そして久々にこの言葉を送りたい。

低脳乙!
35名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 23:38:04 ID:1TZ6J+u+
サムネイルで騙されたヤツは手を挙げなさい
ノシ
36名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 23:43:11 ID:ZolJE+Na
ノシ
上手く騙されたぜ……
37名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 01:38:01 ID:7iKNUtR4
ほしゅりたい
38名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 21:33:04 ID:Byy3AH/V
>サムネイルで騙されたヤツ

ノシ
いや、騙されるってw
39名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 01:03:03 ID:pZ/pSp4T
保守
40名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 09:19:32 ID:pZ/pSp4T
保守
41名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 01:27:51 ID:+KRCAdOy
保守る
42名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 20:09:36 ID:+KRCAdOy
ほす
43名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 00:39:33 ID:mAzvwuDX
ちょw
しばらく見ないうちに新スレになってるしブログも神更新w
祭りじゃ祭りじゃあ!
44名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 22:59:13 ID:xuIljD/g
ブログ更新記念
45名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 23:03:47 ID:4bOrkdDl
おっぱいキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
46名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 21:28:38 ID:L/ZNt+gy
まだ油断はできん保守
47名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 21:11:34 ID:lX9MvAZP
ほふ
48名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 22:49:39 ID:lgVYdrBM
ほしゆ
49名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 11:07:44 ID:cVfghJ/X
保守
50名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 12:03:30 ID:Z0uRW9Dj
斗馬のエロパロキボンヌ!
51名無しさん@ピンキー:2008/09/02(火) 13:00:11 ID:zO54WeyF
おっぱい見たかった・・orz
52名無しさん@ピンキー:2008/09/03(水) 07:16:41 ID:dbi8gBck
おっぱいも國生さんのぱんつも見れた俺は間違いなく勝ち組
53名無しさん@ピンキー:2008/09/04(木) 04:50:58 ID:Z5FVE2HA
ありがとうヤフーのキャッシュ!
ありがとう!
54名無しさん@ピンキー:2008/09/07(日) 20:43:05 ID:XPNiV0jy
ほちゅっ
55名無しさん@ピンキー:2008/09/09(火) 13:18:08 ID:x1deHAJg
斗馬のエロパロまだー?
56名無しさん@ピンキー:2008/09/12(金) 16:26:09 ID:xpav7+pG
ていのう!ていのう!
57名無しさん@ピンキー:2008/09/16(火) 12:32:35 ID:/DdhFvYX
とーこ!とーこ!
58名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 21:40:25 ID:pDHX8O54
本格的に過疎化が進んでしまったか
59名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 22:02:21 ID:DpEgPOz9
>>58
まあ、ネタがないからしょうがない
今度の読みきりに期待しようぜ
60名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 14:42:59 ID:v5GmkI4+
斗馬のエロパロ書けばまた盛り上がるさ!
61名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 15:20:57 ID:pzNJDl6W
ほしゅ
62名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 20:34:52 ID:Od6pQHtZ
たまにはアゲてみる
63名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 13:03:22 ID:bVoQM3vX
王道きぼん
64名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 00:55:31 ID:TKOZ/+yt
バンジー
65名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 19:42:15 ID:bZUmrpfV
あか☆スタ
66名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 22:24:16 ID:RH2L+b4G
はるるん・・・ハァ ハァ ハァ
67名無しさん@ピンキー:2008/10/12(日) 18:12:45 ID:yGxyPt+c
あくぇsfdtyれdふゅfdr
68名無しさん@ピンキー:2008/10/15(水) 14:55:52 ID:VpwqT2YQ
読み切りが超にちように載るってな
69名無しさん@ピンキー:2008/10/16(木) 01:45:59 ID:kPmJhnAb
今週の予告見てwktkした
70名無しさん@ピンキー:2008/10/16(木) 17:58:09 ID:mu+zhKtX
斗馬のエロパロ誰か書いてくれ!
71名無しさん@ピンキー:2008/10/21(火) 22:19:55 ID:zAxsaEcI
そろそろ発売日だな
72名無しさん@ピンキー:2008/10/22(水) 10:46:59 ID:zPDpTrOs
たのしみだ
73名無しさん@ピンキー:2008/10/26(日) 08:39:12 ID:p1JrL4p3
あかねかわゆすなあ
74名無しさん@ピンキー:2008/10/26(日) 13:31:01 ID:p4afRASy
Dカップ!!
75名無しさん@ピンキー:2008/10/26(日) 13:56:06 ID:bgtxgtLX
百合系のSSってある?
あ、ふたなりは邪道だからね。
76名無しさん@ピンキー:2008/10/26(日) 22:48:37 ID:yLxkSq1j
読み切り読んだ
なんてエロパロ向きなヒロインなんだ!

なんてエロパロ向きなヒロインなんだ!
77名無しさん@ピンキー:2008/10/26(日) 23:05:20 ID:oaHH5RNT
何で2回言うの?
しかしそんな事を言われるとすっごい気になる…
明日にでも買ってくるか
78名無しさん@ピンキー:2008/10/27(月) 00:41:55 ID:yoNNb+KY
そばかす柔道少女とは雲泥の差だな。
79名無しさん@ピンキー:2008/10/27(月) 08:21:27 ID:s/Bl0Pw/
>>77
大事なことだから
80名無しさん@ピンキー:2008/10/27(月) 21:00:39 ID:0cS9hZg0
確かにかわいかったw
81名無しさん@ピンキー:2008/10/27(月) 21:48:38 ID:mwz79bZE
確かに、ありゃたまらん
新聞部の皆さんに「お礼」と称してあんなことやこんなことを…
いや、新聞部の皆さんが「お礼」と称してあんなことやこんなことを…

いかん、妄想エンジンに火が付きそうだ
82名無しさん@ピンキー:2008/10/29(水) 02:00:10 ID:KgyQPSm/
あか☆スタ読んだ
あかねちゃん可愛いよあかねちゃん

しかし、男性陣が3人も必要だったのか激しく疑問
一人一人の付き合いが薄くなるから、ここからラブコメに持っていくのは厳しいとおもた

何が言いたいかと言うと、エロパロ作るのは難しいなぁ、と
83名無しさん@ピンキー:2008/10/29(水) 02:11:11 ID:nwfH7/+7
連載にするならシリーズごとにかわいい女の子が入れ替わり立ち代り登場して、超新聞部にアレな取材されるのか
……あれ? それって何かと被らね?
84名無しさん@ピンキー:2008/10/30(木) 21:54:52 ID:rH6rcRwJ
味噌汁方式じゃなくアイマス方式で
一人だけをしっかり書き込んでくれれば良いのでは
ちょっとした育成モノみたいな感じで
85名無しさん@ピンキー:2008/11/02(日) 18:10:55 ID:466/Nmqk
工具楽斗馬のエロパロを書いてくれ!
86名無しさん@ピンキー:2008/11/07(金) 22:06:39 ID:tI0DUYOS
色々期待込みでほしゅ
87名無しさん@ピンキー:2008/11/09(日) 18:31:35 ID:yaZDk/UA
>>83
あれ、こわしやとか卓球部とかいる学校だね
88名無しさん@ピンキー:2008/11/13(木) 11:26:53 ID:04Bgt7+f
おっぱお
89名無しさん@ピンキー:2008/11/17(月) 20:40:51 ID:hafcvt9F
90名無しさん@ピンキー:2008/11/18(火) 22:02:40 ID:fNOO6msB
ああああああああああ
91名無しさん@ピンキー:2008/11/22(土) 20:33:52 ID:9uIM9g4a
新作はまだかのぉ
92名無しさん@ピンキー:2008/11/29(土) 10:33:48 ID:cYoIh2l8
>>91
12月中になにか来るらしいぜ
ソースは公式
93名無しさん@ピンキー:2008/12/03(水) 12:42:53 ID:oItjpTMw
ブログ確認
期待が止まらねぇw
94名無しさん@ピンキー:2008/12/03(水) 21:06:07 ID:dYqcwLhc
サンデーさっさと発表しろや
95名無しさん@ピンキー:2008/12/09(火) 15:52:33 ID:5rDazPpx
断固保守
96名無しさん@ピンキー:2008/12/09(火) 23:46:53 ID:f8LeTQYp
同じく断固ほしゅ
97名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 01:31:38 ID:u2SDN5Xd
新連載ひゃっぽう
98名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 19:29:56 ID:De2InjO/
kwsk
99名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 19:57:31 ID:zFgNWdVi
【我聞】こわしや我聞(藤木俊)スレ【斗馬】2
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/rcomic/1166591174/553-555
100名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 22:45:30 ID:ivqi4yo0
お、次は本誌で読みきりかと思っていたが、連載か
これは楽しみだ
101名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 09:06:26 ID:BRf3TB8R
待ち続けた甲斐があったな
102名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 07:56:09 ID:tFwl7Q8L
軽く泣きそうだ……
103名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 07:26:10 ID:+ctGV5m2
保守
104名無しさん@ピンキー:2008/12/25(木) 14:24:21 ID:NLSdcUIg
105名無しさん@ピンキー:2008/12/28(日) 10:02:14 ID:+rLO1qeX
106名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 22:58:03 ID:XjlCKcp4
アッーーーーー!
107名無しさん@ピンキー:2009/01/04(日) 14:13:10 ID:45qRompL
イッーーーーー!
108名無しさん@ピンキー:2009/01/05(月) 10:30:42 ID:j+v2QBca
ウッーーーーー!
109名無しさん@ピンキー:2009/01/07(水) 11:27:58 ID:iW4tZ89j
本誌新連載age
110名無しさん@ピンキー:2009/01/07(水) 12:38:37 ID:Aikt5NJJ
しかもエロパロにしやすい題材

幹部ルックの姉ちゃんの鞭を最初に受けるのは、おまえだから俺は、靴なめるから
111名無しさん@ピンキー:2009/01/07(水) 18:17:28 ID:SU6lICB+
亀甲縛りカバンであれやこれや
これから出る素敵アイテムにも期待したい
112名無しさん@ピンキー:2009/01/07(水) 21:46:35 ID:WwPJ6JrP
今度は無乳かw
実にかわいらしい
113名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 00:43:36 ID:6bEUw72Y
前回のヒロインはクーデレだったな。
今回のヒロインはツンデレであることに期待している。
114名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 20:40:48 ID:B1RkU+K5
すばらしい
115名無しさん@ピンキー:2009/01/11(日) 05:12:43 ID:tT1tZEhn
はじめてのあくで
116名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 13:23:40 ID:oLyPUItV
くだらん
117名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 02:28:33 ID:Ho1t/QJ4
ギガグリーンの載ってるサンデー超を手に入れる方法は無いものか・・・
都内で売ってる所あったら教えてください

なんであの時買わなかったんだ、俺の馬鹿 orz
118名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 21:43:01 ID:vqiRggXn
しまパン!しまパン!
119名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 15:17:18 ID:PV2ChNYJ
しまパンw
使うとは思わなかったぜ
120名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 09:31:56 ID:uNvdw7ed
斗馬のエロパロを誰か書いてくれ。
121名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 10:08:48 ID:JdYb6dLO
なんか一話目でジロキョーでエロまで妄想いった。
やべーとか思ってたら二話目でもうお前ら結婚しろよとか思っちまった辺りどうしようもねぇw
ああいうドタバタノリで周りから見りゃイチャこきかじゃれてるよーにしか見えません
て感じのに弱いんだ。いやまだどうなるかも解らんけれども!!
その内書きたいものだがあの二人需要あるんかねぇ。
ともあれ明日が楽しみです。
122名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 16:12:27 ID:kAZ9iSvU
>>121様に超期待age
123名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 23:05:14 ID:eooXre2N
同じく熱烈期待だがsage
124名無しさん@ピンキー:2009/01/24(土) 09:56:49 ID:Dtiu9Ak1
取り敢えず ほしゅ
125松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:12:05 ID:zJ/5sCaH
超久しぶりに投下

はじめてのあく・・・ではなく、今更ギガグリーンネタだったり
126松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:12:57 ID:zJ/5sCaH
 昔から、私はなんでも出来た子供だった。

 成績はクラス――いや、学区内でも一番良く、多分日本中で考えても上位だっただろう。
 身長は低いが身体能力は低くなく、短距離走で全国大会に出た事もある。

『アキラちゃん、すごいねー』

 他人は、私の事を恵まれていると言う。
 なるほど、確かに私の家は裕福だ。
 勉強は家庭教師が付きっ切りで見てくれたし、運動も学習の一環として鍛えられた結果だった。
 他人から見れば、恵まれている環境なのだろう。

 でも、私は自分が恵まれていると思ったことは無い。

 両親は仕事にかかりっきりで、一緒に食卓を囲んだ記憶すら無い。
 家庭教師達はあくまでビジネスとして私に付き合い、それ以外の事を教えようとはしなかった。
 それが両親の希望なのか、それとも無愛想な私と一緒に居たくなかっただけなのかは知らないが。
 おかげで、5人いた家庭教師の名前はまったく覚えていない。
 もしかしたら、最初から名乗っていなかったのかもしれない。
 それでも、家庭教師としての仕事はきっちりと行い、私の知的好奇心を満たしてくれたのはありがたかった。
 居心地が悪かろうが、興味が持てるだけマシだった。

 ツマラナイ学校に比べれば、だが。
127松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:13:42 ID:zJ/5sCaH
『アキラに任せておけばいだろ』
『アキラちゃんは私たちと違うもんねー』

 友人という名の仮面を被ったその子達は、面倒な事は全て私に押し付けていった。

 別に難しい事ではないのに。
 調べれば簡単に終わるのに。
 やれば出来るはずなのに。

 面倒な事はしたくない、という理由だけで、彼らは全てを私に押し付けた。
 押し付けられた事自体は、別に気にしていない。
 学校の授業はすでに家庭教師から学んでいたし、いいヒマ潰しになったから。
 だけど、どうしても理解出来なかった。

 なぜ、自分でやろうとしないのか。
 
 難しいのなら、手伝うから。
 分からない事があるなら、教えるから。
 そう言って、一緒にやるように促したけれど、誰も一緒にやることは無かった。
 結局、そう言う事自体が面倒になって、私は何も言わなくなった。
 無駄な努力に時間を割く事ほど、意味が無いものは無いと知っていたから。

 そんなツマラナイ学校と、居心地の悪い家を往復するだけの日々。

 それでも当時の私は、それが普通なのだと思っていた。
 そう、彼に会うまでは――

『ヒーローにならないか?』
128松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:14:29 ID:zJ/5sCaH
***

 ……PiPiPi……PiPiPi……

 断続的に聞こえてくる電子音に、私の意識は急速に現実へと引き戻されていく。

「ん……」

 カーテンの隙間から漏れる陽光に目を細めながら、私はゆっくりと身体を起こした。
 そのまま、聞き慣れた電子音を奏でる目覚まし時計を乱暴に叩いて黙らせる。

「……変な夢」
 
 溜息と共に呟いて、私はおおきく背伸びをする。
 今更、あんな夢を見るとは思わなかった。
 もう、思い出すこともないと思っていたのに。

「ふう……」

 背伸びの終わりと共に、もう一度溜息が漏れ出た。
 八つ当たり気味に叩いた目覚まし時計に視線を落とすと、仰向けに倒れている以外は何事も無かったかのように正確な時間を刻んでいた。
 100均で買ったやぼったい時計だが、その頑丈さだけは褒めてやってもいい。
 
 ――まるでどこかの誰かみたいだ。

 そんな事を考えつつ、いつもの時間である事を確認してベッドから抜け出す。
 今日は休日だが、そんな事は関係ない。
 日課は毎日続けてこそ意味があるのだから。
 年季の入った黒いジャージに身を包み、使い古した運動靴の紐を結ぶ。
 毎朝のジョギング。
 それが一人暮らしを始めてからの日課だった。
 トレーニングと――パトロールを兼ねて。
129松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:15:10 ID:zJ/5sCaH
「行ってきます」

 誰もいない部屋に向けてそう言うと、私は準備運動もそこそこに走り出す。
 休みの日くらいゆっくりしたら? と言う人もいるけれど、私はそうは思わない。
 そして、彼もそう言わないだろう。
 休日だろうが、祝日だろうが。
 雨が降ろうが、台風が来ようが。
 槍が降ろうが、砲弾が降ろうが……いや、これはさすがに元凶を探すけど。
 まあ、とにかく、彼はきっとこう言うのだ。
 
 ヒーローに休日は無い――と。
130松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:16:52 ID:zJ/5sCaH
***

 マンション前の道路から商店街を抜けて、河川敷まで。
 それがいつものコース。
 まだ早朝だというのに、商店街にはすでに仕事を始めている人の姿があった。

「おはよう、アキラちゃん。今日も早いね」

 声の方向に顔を向けると、行きつけの八百屋の店主が人懐っこい笑顔でこちらを見ていた。

「おはようございます、八百屋のおじさん」
「毎朝、頑張るねぇ。さすがは正義の味方。こりゃ俺もうかうかしてられないな」
「おじさんは運動より先にダイエットすべきだと思う」
「はは、確かに。最近は下っ端スーツ着るのも一苦労でさ」

 ちなみにこの人、悪の組織の下っ端23号だったりする。
 というか、この商店街の男連中ほとんどが悪の組織に所属している。
 この町に来た当初は悪の組織に属している人が普通に暮らしているのを見てびっくりしたものだが、当人達曰く、

『それはそれ、これはこれ』

 という事で、今ではすっかり慣れてしまった。

「お、アキラちゃんじゃねーか」

 八百屋の向かいにある魚屋から、これまた見知った顔の店主が声をかけてきた。
 勿論、彼も(以下略

「おいおい、八百屋の旦那。アキラちゃんのトレーニングの邪魔しちゃ駄目だろ」
「ちょっと挨拶しただけで邪魔なんてしてないさ」
「どうだか……この前も野菜オマケして、手加減してもらおうとか考えてたくせに」
「な! そ、そういうあんただってサービスしてただろ!」
「ふ、甘いな八百屋。俺は『優先的に俺を狙ってもらう』為にサービスしたのさ!」
「な、なんだってー!」
「……」

 前言撤回。あまり慣れてません。
 まあ、彼らは彼らなりに充実してるみたいなので、変なストレスを溜め込むよりは、これはこれでありなのかもしれない。
131松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:17:37 ID:zJ/5sCaH
「あんた、エーコ様FCの誓いを忘れたのか! 『その11:エーコ様以外に踏まれてはならない』を!」
「忘れてなどない! だが戦闘中にヒーローにやられるのは下っ端戦闘員の仕事であり義務であり不可抗力だ!」
「くっ! た、確かにその通りだが……」
「エーコ様に踏まれるのは幸せだ……だが、毎回毎回メインディッシュだけではマンネリで飽きが来てしまう! お前だってたまには甘いデザートを食べたくなるだろう!」
「――っ!」
「エーコ様とアキラちゃん、交互に踏まれ、そして蹴られて事こそ、真の下っ端道を極める事が出来るのだ!」
「そ、そうか! そうだったのか!」

 ビシッ! と私――の足を指差しながら力説する魚屋の店主。
 それを感激した面持ちで見つめる八百屋の店主。
 ……今ここで止めを刺すべきかどうか悩んでいるのは内緒だ。
 いや、それはそれで喜ばれそうな気もするけど。

「……じゃあ、私行きます」
「おう、アキラちゃん、頑張りなよ! 今度はもっと強く蹴ってくれよ!」
「あ、アキラちゃん、僕にも強く蹴っていいからね」
「分かってくれたか、八百屋の旦那!」
「ああ、兄貴! 一生ついていきやす!」

 なんというか……世界は思ったよりも平和だと思う。
 とりあえず、今度から二人のサービスは断ろう、うん。

「さてと……」

 道草を食った分、少しペースを上げて走りだす。
 このままだと、いつもの時間に間に合わない。
 私は腕を大きく振ると、強く地面を蹴った。
 同年代の子よりも軽く小さい身体は、私の意志通りに加速する。
 スピードに乗ったまま商店街を駆け抜け、路地裏を抜け、河川敷の方へ向かう。
 これなら約束の時間には間に合うだろうが、それでもペースを緩める事はしない。
 そして、川縁の土手を越えて開けた視界の先に――
 
「……お、きたきた。遅かったですね」

 河川敷にある遊歩道で、彼はいつものように待っていた。
 タオルを首にかけて、ゆっくりとした動きでストレッチをしながらこちらに語りかけてくる。

「うん……ちょっとね」

 さすがに悪の組織の人と世間話してました、とは言えず、私は息を整えながら曖昧な返事を返す。
 決めていた時間は朝の6時。
 ちなみにまだ6時にはなっていない。
 それでも彼は、当たり前のように私を待っていた。
 ……それが分かっていたから、私も急いだのだけど。
 歯切れの悪い私の言葉に疑問符を浮かべながらも、彼がそれ以上追及することは無かった。

「……よし、じゃあ今日もやりますか、アキラさん」

 私の息が整ってきた事を確認すると、彼は私に向かって拳を構える。
 さすがに毎日続けている分、構えだけは様になってきた。

「今日こそ一本取りますよ」
「やれるもんならやってみなさい、ヒカル」

 彼の名は緑川ヒカル。
 最近、ヒーローになったばかりの新人であり――そして、私がヒーローになるキッカケを作った人物だ。
132松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:18:47 ID:zJ/5sCaH
***

 ヒカルと一緒にトレーニングをするようになったのは、彼がギガグリーンを受け継いでから暫くしてのことだった。
 ある日、真剣な顔で私に近づいてきたかと思うと、

『黒澤さん、お願いがあるんですが』
『緑川君……何?』
『お、俺に手取り足取り教えてください!』
『……暴漢を撃退する方法なら、今ここでその身に叩き込んであげるけど』

 言い方は紛らわしい(というか完全にアウトだ)が、要はどのようなトレーニングをしているのか教えて欲しいという事だった。
 元々、トレーニングはしていたらしいが、さすがに自己流では不安だったようで私に尋ねたらしい。
 とは言っても、私も別に特別なトレーニングをしている訳ではない。
 とにかく鍛えたいと言うのであれば、赤井さん辺りに教えを請うべきだと伝えたのだが……

『あの人、真顔で太平洋を走って往復して来いって冗談しか言ってくれないので……』

 ……それが冗談かどうかは、彼の為に黙っておいた。
 本気だと分かれば、やりかねないし。

『それで私に聞きに来た、と』
『そうです。他のメンバーに聞こうかとも考えたんですが……』
『……あの二人はあまり参考にならないわね』

 青島さんはトレーニングではなく、ギガスーツ(変身スーツ)を改造する事で戦闘能力を高めている。
 技術部に内緒で勝手に改造しているので、その技術部の評判はすこぶる悪いのだが、その改造の腕は確かであり、青島さんが作ったものが技術部にフィードバックされて、正式採用された武器も少なくない。
 ……問題は自分のスーツだけでなく、他人のスーツまで改造したがるという事だが。
 うっかり彼に強くなりたいなんて言ってしまったが最後、

『とりあえずドリルつけるか』

 何て事になりかねない。
 多分強くなるのだろうが、どう考えてもマッドサイエンティストの発想だ。
 ちなみに私のスーツに勝手にミサイルを取り付けた時は、即座に全弾を青島さんにお返しした。
 どこに付けられていたかは聞かないで。とゆーか、聞くな。
133松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:20:17 ID:zJ/5sCaH
『青島さんは言わずもがな、横山さんも……』
『あの人も特殊だしね……』

 横山さんはパッと見て何か目立つ技能は無い。
 運動能力は平凡だし、頭もよくは無い……というか、ちょっと弱い。
 秀でていると言えば、スタイル位……いや、私だってあと数年すればあの位は――と、話が逸れた。
 とにかく、彼女は普通の人だ。
 唯一つ、ギガスーツとの相性が信じられないくらい良い、という点を除けば。
 ギガスーツにも相性があり、同じくらいの強さの人が着たとしても、相性の良い方が最終的には強くなる。
 生身での戦闘能力で言えば、横山さんはギガレンジャーの5人の中で最弱なのは間違いない。
 でもギガスーツを着ると、横山さんの戦闘能力は一気に跳ね上がる。
 単純な力比べなら、ギガレッド以上かもしれない。
 それほど、彼女とギガスーツの相性はいいのだ。
 一度、彼女になにかトレーニングをしているのか聞いたことがあるのだが、

『食う、寝る、遊ぶ』

 豚になれ――危ない危ない、うっかり本音が漏れた。
 つまりは何もトレーニングしなくても普通に戦えるくらい、彼女はスーツとの相性がよいのだ。
 それはもう、ギガスーツに愛されていると言っていいほどに。
 ギガレンジャーになるには身体能力も大事だが、この相性も同じくらい重要になる。
 いくら身体能力が高くても、相性が低ければギガレンジャーにはなれない。
 ちなみにヒカルはスーツの相性が最低基準に達していなかったのだが、今後に期待と言う事で入隊を許された過去がある。
 私にトレーニングのやり方を聞きに来たのも、その事に負い目があったからだろう。 

『まあ、教えるくらいなら別にいいけど……』
『本当ですか、黒澤さん!』
『でも、一つだけ条件がある』
『な、なんですか』

 教える事自体は別に問題ない。
 ただ、ちょっと引っかかっている事があった。
134松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:21:01 ID:zJ/5sCaH
『黒澤さんって呼ぶの禁止』
『……へ?』

 どんな無茶な条件を想像をしていたのか、彼は間抜けな顔で私を見つめ返す。

『私の方が年下なんだから、敬語なんて使わなくていい。名前もアキラって呼び捨てでいいから』
『で、でも、黒澤さんの方がヒーローとしては先輩ですし……』
『嫌なら教えない』
『う……』

 別に難しい事じゃないと思うのだけど、見た目通りの体育会系の彼の場合、なかなかに難しい事らしい。
 腕を組み、眉間に皺を寄せて、たっぷり30秒は考えて――

『じゃ、じゃあ、せめてアキラさんと呼ばせてください。敬語は努力しま……努力するから!』
『……』
『そ、その代わり、俺の事も緑川じゃなくてヒカルって呼び捨てでいいですから! お願いします!』
『――っ!』

 真面目な目で、彼はじっとこちらを見つめてくる。
 そのまっすぐな視線は、『あの時』とまったく変わっていなかった。

『しょ、しょうがない……それで我慢する』
『じゃ、じゃあ――』
『明日の朝6時に河川敷の遊歩道に来る事。言葉で教えるより、一緒にトレーニングした方が効率がいいでしょう』
『あ、ありがとうございます、黒――じゃなくてアキラさん!』
『遅れないようにね……ひ、ヒカル……』
『ハイ!』

 こうして、私とヒカルは一緒にトレーニングをする事になったのだ。
135松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:21:56 ID:zJ/5sCaH
***

「? どうしたんですかアキラさん? 何か嬉しそうですけど?」
「……気のせいよ」

 昔を思い出していたら、顔に出ていたらしい。
 咳払いして間を取ると、正面で構えているヒカルに向かって私も拳を構える。
 トレーニングと言っても、別に特別な事はしていない。
 子供の頃に護身術として教わった格闘技――太極拳と合気道をベースに私が考えたオリジナルの型を繰り返すだけだ。
 静と動を併せ持った太極拳と、受けに特化した合気道。
 体格的に劣る私には、このスタイルが自分のベストだと確信していた。

「じゃあ、もう一度」
「ハイ!」

 彼の着ているジャージは泥と汗ですでにボロボロだが、そのやる気だけは始めた時とまったく変わっていなかった。

「では――行きます!」

 型と言えば演舞を想像する人もいるが、実際には全然別物だ。
 演舞とは舞であり、芝居。人に見せ、人を魅せる事に主を置いた動き。
 型とは技であり、実戦。自分を守り、相手を倒す事に主を置いた動き。
 その動きを繰り返す事により、相手の動きに対して考えるよりも早く身体が動くように覚えこませる。

「まだ遅い……まだ考えてる」
「ウスっ!」

 勿論、相手が同じ動きをしてくれる訳は無い。
 じゃあ、どうするか。
 簡単な事だ。
 相手がどう動いても対応できるように、沢山の型を覚えればいい。
 実際には人間の身体の構造から出来る動きは限られてくるので、覚えるのは200程度で十分なのだが。
 
「はっ!」

 私の動きに対応して、ヒカルは身を翻らせた。
 右の上段蹴りを左腕でブロックし、がら空きになった私の身体めがけて最短距離で右の拳を突き出す。
 右足はまだ空中にあり、残る片足でできる動きは限られている。
 かわせない間合い。
 だけど――
136松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:22:42 ID:zJ/5sCaH
「甘い」

 ブロックされた右足をヒカルの左腕に引っ掛けるように絡ませ、残る左足で地を蹴る。
 突き出された拳を空中で仰け反りながらかわし、そのままヒカルの左腕を手で取り、全体重をかけてその腕を伸ばす。
 いくら私の身体が軽いとはいえ、突きを出して不安定になっている状態では支えきれるものではない。
 そのまま、絡まりあうように私たちは地面へと崩れ落ちる。

「いたたたたたた! 決まってる! ギブ! ギブです!」

 右腕でバンバンと地面を叩きながら、ヒカルは情けない声をあげる。
 いつもは男らしい彼だが、こういうときに出す声はちょと可愛い。

「すいません、マジ決まってますから! 変な音なってますから! ミシミシって! 筋がー骨がー!」

 さすがにこれ以上はマジ泣きしそうだったので、ちょっと勿体無く思いながらも手を離した。
 一応、きちんと見極めて極めていたので、後に残るような痛みは無いはず……多分。

「また同じ間違いをした罰……今のはスウェーでかわすか、右足を取りにいくって教えたはず」
「あ、そ、そういえば……」

 体格がいい分、それに頼った戦い方をするのが彼の悪い癖だ。
 軽い私の蹴りだから簡単にブロックできただろうが、もしもっと体格のいい相手と戦った場合、ブロックした腕ごと持っていかれる可能性がある。

「まだ完全にスーツに適応できてないのだから、力比べをするのは危険よ……まず、自分の弱さを認めなさい。そこが原点よ」
「はい……」

 スーツの事はずっと気にかけているのだろう、目に見えてしょげ返るヒカル。
 だが、それはれっきとした事実であり、弱点だ。
 それを認め、そして受け入れない限りは強くなれない。

「そろそろ時間ね……じゃあ、今日はここまで」

 時計を一瞥し、時刻を確認する。
 7時。
 ダラダラと長くやるより、時間を決めて集中してやるためにトレーニングの時間は一時間と決めていた。
137松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:23:43 ID:zJ/5sCaH
「ま、まだやれます! 今日は休日で時間もあるし……」
「その腕でやるの?」
「う……」

 ちょっと力を入れすぎたのか、彼の左腕はまだ痛みが残っているようだった。
 ……今度からは、もう少し手加減しよう。

「もっとトレーニングしたいなら、型をちゃんと覚える事。まだまだ遅いから」
「はい……」

 自分の弱さが不甲斐ないのか、ヒカルはうつむいて唇を噛む。
 だが、それも一瞬の事。
 勢いよくと立ち上がり、まっすぐな瞳で前を見て、私に向き直る。
 『あの時』と同じように。

「お疲れさまでした!」

 弱さを認め、不甲斐ない自分を奮い起こし、彼は大きな声で叫んだ。
 その叫びは、もっと強くなってやるという決意の表れなのかもしれない。
 私に一礼した彼は、そのまま振り返る事無く土手に向かって歩いていく。
 その後ろ姿を見つめながら、私はしばし逡巡する。

 ――何か声をかけるべきだろうか?

 トレーニングは終わりだが、今日は休日。
 彼が行った通り、時間はまだあるのだ。
 たまには気分転換もいいかもしれない。
 早朝の空は綺麗に澄み渡り、今日は一日いい天気だろう。
 うん、そうだ、もしヒカルに何も予定が無ければ、どこかに――
138松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:24:34 ID:zJ/5sCaH
「ひ、ヒカ――」
「おはよー、緑川くん!」
「あ、亜久野!?」

 私が声をかけようとした、同じタイミングで。
 ヒカルの腕に、見覚えのある女性が抱きついていた。

「な、なんでここに!?」
「緑川くんがここでトレーニングしてるって聞いたから、見に来ちゃった」
「だ、誰に聞いたんだよ!」
「えーと……ほら、ギガレンジャーの黄色の……横山さんだっけ?」
「あ、あの人は……」

 ……横山め……

「……あ、おはようございます。ギガブラックの人ですよね?」

 声をかけようとした体勢で固まっていた私に気付いたのか、彼女が笑顔で問いかけてくる。 

「……そうだけど」
「お互い、この姿でお会いするのは初めてですよね。悪の組織キルゼムオールでブラックレディをやってます、阿久野フミといいます」
「……黒澤アキラよ」

 悪の組織の幹部がにこやかにあいさつしてくるのは絶対におかしいはずなのだが、何故かこちらも名乗らなければいけないような雰囲気なので取り合えず名乗ってみる。
 ヒカルは何を言っているのか分からないという顔でこちらを見ていたが――実際、私も分からなかった。

「いつも、うちの怪人や下っ端たちがお世話になってます」

 お世話した覚えはない――と言おうと思ったが、ふと八百屋&魚屋の店主の顔が浮かんだのでグッと言葉を飲み込む。
 あの商店街でもう二度と買い物はしないでおこう、うん。

「隠れて見させていただいたんですけど、やっぱりお強いですね……でも、こっちも負けませんからね! 同じ黒をイメージするキャラとして、お互い頑張りましょう!」
「う、うん……頑張ろうね」

 な、何を言っているのか(以下略
139松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:25:25 ID:zJ/5sCaH
「って、今の見てたのか阿久野?」
「うん、バッチリ見てたよ! 緑川くんが可愛い悲鳴あげるのも!」
「なるほど……バッチリ見ていて、俺の腕に抱きついてるわけだ」
「えへへー、また可愛い悲鳴を聞きたいなー、なんて」

 この子、可愛い顔してなかなかやるわね……さすがは悪の組織の幹部。

「すまんが、悲鳴をあげる前に気を失いそうなんで離れてくれ……あ、それとアキラさん」
「……何?」

 腕の痛みからだろう脂汗をダラダラと流しながら、ヒカルは首だけを回して私へと尋ねた。

「さっき何か言いかけました?」
「……別に、何も」

 そう、別になんでもない。
 あなた達がこれから二人でどこに行こうと、私にはまったく関係無いから。

「そ、そうですか……」

 私の言葉に何かを感じ取ったのか、ヒカルは怯えた顔で言葉を返す。

「緑川くん、お弁当作ってきたから一緒に食べよっか。朝食まだでしょ?」
「あ、ああ……とりあえず腕を放してくれないか」
「あ、そうだ黒澤さんも一緒に食べませんか? みんなで食べた方が美味しいですし」

 彼女の方はまったく何も感じていないようで、無邪気な笑顔をこちらに向けてくる。
 もしこれが分かっていながらこの笑顔なのだとすると、この女、とんだ女狐だ。
 まあ、さすがにそれは穿ち過ぎだろうけど。

「私は……遠慮するわ」
「そっかー、残念」
「いや、そろそろ腕を……」
「あ、ちょうど向こうにベンチあるね! 行こう、緑川くん!」
「ぎゃああああーーー! 筋がー骨がー!」

 空は綺麗に澄み渡り、今日は一日いい天気だろう。
 そんな空の下に響く、ヒカルの絶叫を聞きながら、私はふと後悔する。
 うん、そうだ、こんな事ならいっそ――

「折ればよかった」

 と。
140松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/01/25(日) 22:26:53 ID:zJ/5sCaH
とりあえずここまでです
続きはまた来週……投下できたらいいなぁ

では ノシ
141名無しさん@ピンキー:2009/01/26(月) 20:28:24 ID:d86jvznN
うおお!
復活! 松雪さん、復活!

相変わらず低脳で素晴らしい作品、ありがとうございます

続きを全裸にネクタイ締めて待ってます!
142名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 05:25:16 ID:bl2ByCWc
121ですが投下します。
あの三話の衝撃やら萌えやらの勢いのまま書き上げてみた。
色々とおかしい所もあると思いますが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
はじめてのあく、ジロー×キョーコで。エロは期待しないでくれ…。
143名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 05:26:41 ID:bl2ByCWc

 それは、お姉ちゃんこと阿九野エーコの言葉から始まった。
 ……多分この人、面白ければそれでいいのではなかろーか。


「えええっ!?ちょっ……!!お、お姉ちゃん、それは……」
「成果見せる度に少しずつ、解りやすいごほーびは与えないとね?」
「で、でも、そんなことするの?」
「言葉だけじゃ、流石にあいつでも感付いちゃうかもしれないからねー。実は改造される気なんて全然ありませんでしたー、なんて知られちゃうと、あいつ何するかわかんないよー?」
「うぅ……でも……」
「それで時間稼ぎして、改造される前に真人間にしちゃえばいいんだから!!キョーコちゃんふぁいとー!!」
「あうぅ……」


「乙女の体はデリケートなんだから、しっかり調べてからにしなよ?ちゃんとやさしーく、ちゃんと素手でね!!」
「むぅ……。しかし科学者としては」
「道具使うのは後!!まずは表面を生でチェック!!いいね?」
「む……。まあいい、改造するにも順序というものがあるからな。心得た!!」

144名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 05:31:27 ID:bl2ByCWc
 そんなこんなと。
 何だかんだと丸め込まれたキョーコとジロー両名は今。
「よし!!では第一段階、いくぞっ!!」
「うぅ……。もう何だこれ……」
 キョーコの自室でキョーコを改造する前段階、素体の点検を開始しようとしていた。
(優しく、だったな……)
 取り敢えず、それを念頭に。
 キョーコは学校指定の体操服に身を包み、ジローの眼前に座っている。
 本来ならば研究室でじっくりといきたい所ではあるが、生憎キョーコの家にはそんなものは無いし、造ってもいない。
ジローにとって造る事自体は簡単なのだが、間違いなくキョーコが怒るだろうし。
(オレの自室は何故か姉に禁じられたからな……。むぅ。何故だ。その方が色々道具も使えるというのに。……いや、使うのは素手のみ、点検可能箇所も、露出している箇所だけ、という約束だったな……)
 制約はあるが、まぁ仕方ない。そう考え、改めてキョーコを見る。
 正座だ。眉を八の字にした困り顔で、何やらもじもじと足を動かしている。
 口はへの字に結ばれ、先程から一言も発しない。両手はグーの形に固定され、膝の上。
 上目遣い気味にこちらの様子を窺い、目が合うと気まずげに逸らす。
 ……落ち着かないのは緊張の為だろうかとジローは思う。別に痛みなど与えないというのに。
 何せ、いつかは自分の優秀な部下となる大事な体なのだ。
 今回は改造はする気はないし、どうしてもというのなら麻酔を使っても構わない。……それはこちらが拒絶されている様で何だか嫌だな、と自覚無く思いつつ。
「……そう心配するな。別に痛みは無い。少々お前の体を調べるだけだ」
「……健康チェックとかだけじゃダメなわけ?えーと、ほら、なんか機械とかでこうウィーンって。……まぁジローの造ったやつとかだと怖いけど」
「失礼なっ!?……っと。まぁ、今の暴言は許してやろう。姉上との約束だからな。今日は素手のみでやる。
本来ならじっくりたっぷりいじくりまわしたい所だが仕方ない。科学者たるもの、素体の状態を調査し、良好に維持し、調整するのは当然!!それがオレのキョーコの事となれば、それは最早義務だろう!!」
「……あーうん、そーだねー」
 いっそ素晴らしい程に棒読みでキョーコ。
 相変わらず誤解を招きまくる言い方しおって……とも思うが、正直今更だ。
 それに姉に丸め込まれた感もあるが、自分も同意して了承してしまったのだから仕方ない。
キョーコは早々に諦めた。
どうせ何を言ったところで、ジローがやめる筈もないのだ。

145名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 05:32:54 ID:bl2ByCWc

 ともあれ、最初は腕からだ。
 体操服は半袖である。
 腕をとって、肘辺りから形と感触を確かめる様に撫でる。
「……ん、む……」
「む、痛かったか?」
「あ、ん、いや……」
 吐息に混じった微かな声に反応するジローに、曖昧に返すキョーコ。
 別に痛かった訳ではない。ないのだが……。
「ちょ、ちょっとくすぐったかっただけ……」
 大体がこんな行為をする事自体初めての事である。 腕とはいえ、異性に肌を撫でられる、など。
 くすぐったかったのは本当だが、それだけでもなく。……キョーコ自身にも実際なんだったのかはよく解っていないのだが。
「ふむ、そうか?」
 難しいものだな……などと呟きながら、その行為を再開させる。
 手の平で柔らかく腕を包んでみたり、緩く揉んでみたり、指先でなぞる様にしてみたり。
 丹念に、指の先まで、爪の形まで己の手指に覚え込ませる様に、入念に。
 勿論両腕を、時間をかけてじっくりと。
(むう、やわいな……。この腕で何故ああも破壊力のある攻撃が可能なのか……)
「ぁう……」
(ん?)
 つう、と手の甲に透けて見える血管をなぞる様に触れると、微かな声と共にひくん、とキョーコの体が震えた。
(……もしや触れられるのが苦手なのか?)
 疑問と共にそれは困るな、と思いつつ様子を見ようとして。
「んっ……」
 何かに耐える様な声に、動きを止めた。
(……や、約束だからなっ!!キョーコが触れられる事を苦手としていても、ここで止める訳にもいかんっ!!という訳でさっさと終えてしまおう!!)
 そう言い訳の様に自身を納得させ、何故か凄まじく落ち着かない気分になりながらも、行為を続行した。
146名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 05:35:06 ID:bl2ByCWc
 そして。
 二の腕に差し掛かった時に脂肪過剰とか余計な事をのたまって殴られたりもしたものの、その行為は滞りなく進み。
 一通りの『調査』が終わる頃。
「……ふむ。こういう感じか。……よし、その時にはロケットパンチ……いや、ドリルの一つでも……」
 満足気に頷き、不穏な事をほざきつつ顔を上げて。
 ……絶句した。
「……お、おぉっ……!?」
 見上げた先にはキョーコの顔。何故か真っ赤で涙目で息を乱してふるふる震えてました。
「……キョ、キョーコ!?どうしたっ!?……ハッ!!どこか痛くしたかっ!?」
 思わずオロオロしつつ問うも、キョーコはぷるぷると首を振るだけで。
「……い、いーから、続き、しなさいよ……」
 そんな事を言うが、その声も些か震えていた。こちらを睨んでいる様だが、なんというかいつもの凶暴性が全く無くてジローは戸惑う。
 涙目も直っていなければ、顔も赤いままで。
(……うぅ……何これ……もー早く終われー!!)
 キョーコの内心はこんな感じだったりするが。
 ジローの手はやはり男のものだけあって大きくて変に意識してしまう所から始まり、触れ方も科学者としてのものなのか存外に繊細で調子狂うし、触れられた場所は何故か熱を持って、くすぐったいだけではない未知の感覚が襲ってくるしで……。
「……ジロー……?」
「い、いや、しかし……」
 続きを促す様に呼ばれ、ジローは戸惑いつつ、ちらりと次の『調査』するべき箇所を見る。
 約束では、今のキョーコの姿の、露出した部分、という事で。
 ……次は足、という事になるのだ。キョーコの着ている体操服はブルマなので、足の付け根から足の先までだ。
(……何か……ヤバくはないだろうか……)
 具体的に何がヤバいのかは解らないが。
 今更事の危険性に朧気にでも気付き、ごくりと唾を飲み込むジローであった。
147名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 05:37:33 ID:bl2ByCWc


 取り敢えずベッドに腰掛け『調査』の続き。
 双方共に、動きがぎこちないのは仕方ない。
「いっ、いくぞっ……」
「へ、変なとこ触るんじゃないわよ!?」
「触るかぁ!!」
 そんなやり取りをして、多少空気も変わったが、払拭する程のものでもなく。
 変な緊張感のある中、腕の時と同じく形を確かめる様に、まず足の外側を手の平で包み、腿から下へゆっくりとなぞっていく。
「んっ……」
「………」
 内腿に手をかければ体ごと揺れ、息を詰めたのが解る。
 ジローの手にも、随分と柔らかな感触が残り。
「ひゃぅ……」
「………………」
 肌を撫でる度に、ぴくぴくと微かな反応を返し、普段ならば出さない類の、吐息混じりの声を漏らす。
「っ、ん……!!」
「………………………」
 ちろりとキョーコの顔を見てみれば、頬を紅潮させ、汗ばみながら息を乱し、与えられる感覚に目を閉じて耐えている様がありありと。
(………………………………集中できんんん!!)
 色々と常人からは外れていても、健全な男子としてはこの状況はなんともアレだ。
(いや!!いやいやいや!!科学者としてこんな事で手を止めるなど!!……くそう、罠かっ!?おのれキョーコめ……おかしな技をっ!!)
 なんという冤罪。というか寧ろ言いがかり。キョーコに言ったら蹴られるだろう、間違いなく。
 しかしキョーコにとっては幸か不幸か口には出さず。
(だがこの程度でオレを止められるなどと思うなよキョーコ!!)
ギラリと瞳を光らせ、気を取り直し、ジローは行為に戻る。
「ふぁ!?」
「うおっ!?」
と、力が入ってしまったのか、大きな反応と共に悲鳴じみた声が上がり、反射的にキョーコの足から手を離してしまう。
「……な、なんだ、どうした?……痛くしたか?」
「あ……。う、ううん、ちょっと驚いただけ……」
(……ぐぬぅ)
 文句と同時に手やら足やらが直ぐ様出てくるのが常だというのに、よりにもよってこの状況で随分と大人しいキョーコに、ジローは焦る。
 その理由が解らない為、焦りは加速し止まらない。
 行為を続行しようにも、何故か身の内に存在する躊躇いに、手が動かない。
(………………むうぅぅぅ………………)
 内心で唸るも、一向に出口は見つからず。
148名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 05:39:46 ID:bl2ByCWc
「……どーかした?」
(……お前がそれを言うか……)
 そんなきょとん、とした、無防備な幼い顔をしてこちらの顔を覗き込むのはやめてほしい。ジローは切実に思う。
 しかし、同時に閃いた。
「……むっ!?そうか!!」
「え!?なになに!?」
「……顔が見えるからいかんのだ!!」
「……はぁ?」
「という訳で場所移動だ!!」
「え?え?え?」
 事態を把握できないでいるキョーコを置いて、ジローは場所を移動する。
 ベッドの上、キョーコの背後に回り、すとんと腰を下ろす。
「え、ちょっ……?な、なに!?」
「気にするな。少し角度を変えてみただけだ」
「え、えぇ〜……」
「……仕方なかろう。本来なら横になって行う所をそれだけは嫌だとお前が……」
「だ、だって、なんかそれって、その……良い気しないしさぁ……」
 色々と不安な事この上ない。
 ……一応、年頃の乙女なんだしさぁ……とか思うし。ジローに言っても解りゃあしないだろーから言わないけれど。
 そう内心で愚痴ってみるが、当然ジローに伝わる筈もなく。
「とにかく続けるぞ!!」
「……うー」
 もうどーしようもないので好きにさせるキョーコである。
 ……ところで。
 今の状態を改めて考えてみると。
(……顔が見えなくなって気が散らなくなったのはいいが……これは……)
(……な、なんか密着度が高くなってない?これ……)
 そりゃあ背後から足の『調査』となれば。キョーコを腕に抱え込む形にもなる訳で。
(……しまった……この体勢……無理がっ……!!)
 失策に気付き、ぎりっ、と歯を軋ませるジローの目に入ってきたのは、キョーコのうなじ。
(………………こ、孔明の罠っ!!)
 ジローは混乱している!!
 とまぁ、そんなネタはともかく。
 今回の『調査』は、露出部分に限る、との事で。
 つまりは、顔やら、うなじやら、首筋やらもその対象となる訳で。
(……使うのは素手のみ。しかし……)
 なんというか。
 この箇所に使うのは。

   かぷ

「ひゃう!?」
 ……口、もしくは歯。そして。

   ……ぴちゃ

「やっ、ふぁ!?」
 ……舌、とかではないだろうか、と。
 考えて導き出した答えでも、唐突に浮かんだだけの発想でもなく。自覚なくただそうしてみたいと思ったその欲望に、ジローは忠実に従った。
「なっ、ななっ、なにをっ!!」
「……皮膚の薄い場所の『調査』は、ここで行うのが丁度良いだろう」
「ちょっ……いやそれはちょっと!!」
 慌てて振り返り、その行為を止めようとするが、目が合った途端にキョーコの方が動きを止めた。ジローのいつになく真剣な瞳に捕らわれた様に、体が動かない。
(え?え!?ちょっ、なにこの展開!?)
 わたわたしつつ、取り敢えずジローから離れようとするも、ジローの腕に阻まれて。
 するり、と首筋を撫でられ、頬を手に包まれ。
「……『調査』だ」
 常時より低い声に、鼓膜を震わせられた瞬間。
「……んぅっ……」
 唇を、塞がれた。
149名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 05:41:40 ID:bl2ByCWc

──とか、やっぱりこんな感じ?」
 朗らかというか、とぼけたというか。
 ほんわかした空気を纏いつつ、にこにこしながら一通りの妄想を語り終えてそう言うのは、左右に一房ずつくくった髪を前に垂らした少女。
 キョーコの友人、ユキである。
 その眼前には妄想の犠牲になった本人、キョーコが机に突っ伏している。
 そしてキョーコのもう一人の友人アキ。……こちらは語られた妄想の内容っぷりにぐはぁ!!と叫び、ショートしたまま固まっていた。彼女のポニーテールはぷらぷらと揺れているが。
「……なっ……何でそんな話にっ!!」
「えー、だってー……ねぇ?」
「意味ありげなその顔と態度やめー!!何でそんな展開になんなきゃなんないのよー!!」
 うわーん!!と涙飛び散らせつつそう抗議するも、全く効果は得られずに。
「大丈夫!!はぢめては不安だとは思うけど、きっとその内慣れるから!!」
「会話になってないぃー!!」
 頭を抱え絶叫するキョーコ。援軍は期待できない。
「何だ!?どーしたキョーコ!?」
「ふぎゃーーーっ!?」
 代わりにいらん奴が来た。
 妄想の犠牲者その2、阿九野ジローその人である。
「う、うわわわわ」
「む?どうした?」
「わあぁっ!!ちょっ、待っ!!」
 妄想語りの内容が内容だっただけに、思わず顔を赤くして後退る。
「ええいわからん!!ちゃんと説明をしろ!!」
 と、その分の距離を一気に詰め、ジローがキョーコの腕を掴む。
「あ゛」
「む?」
 固まるキョーコ。その反応に怪訝そうな声を漏らすジロー。
 そんなジローの目の先、キョーコの顔が真っ赤に染まっていく。更に瞳が潤み、涙目に。
 眼前でのその変化に、ジローもぎしっ、という擬音が聞こえてきそうな程に解りやすく固まった。
「……どうっすか、解説のユキさん」
「いやー、ギャラリーがいる時点でこの先は見込めませんねー」
 そして、友人二人の見守る中。
「ばかーーーーっ!!!」
「何故だぁぁぁっっ!!?」
 キョーコの黄金の右により、ジローはお空の星になるのだった。
 やはり解説のユキさんの言葉通り、残念ながらこの先は見込めなかった様です。


 とはいえ。

「……ううっ、ちがう、ちがうぅ……!!あたしはあんな妄想みたいにはなんないんだからーーっ!!」
 自室にて頭を抱え、涙目で吠えるキョーコと。

「……何だあの反応は……。……ああもうわからん!!かわいいのはいいが何なのだあの反応は!?……いや待てオレ今何言った!?」
 同じく自室でどうしようもなく混乱しまくるジローはともかく。

「……ほほう」
 二人の様子に怪しい笑みを浮かべつつ、きらりんと瞳を光らせるエーコお姉ちゃんがいる時点で、この先どうなるのかは解らないのであった。
150名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 05:45:11 ID:bl2ByCWc
終わります。
まだどーなるか解ったもんじゃないので妄想オチに逃げてみた。
そして本番まではいかなかった。すまない。
お目汚し失礼しました。
151名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 09:59:50 ID:bb7+pwiS
ありがとうありがとう
存分にニヤニヤさせて頂きました
152名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 10:36:56 ID:hhsWgZUJ
すばらしかSSやね。
153名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 15:32:58 ID:DYGCAmu9
ナイス低脳!
154名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 15:47:15 ID:8EsYdKjo
松雪氏も122氏もGJ!

このまま、盛り上がっていきますように
155名無しさん@ピンキー:2009/01/28(水) 01:24:01 ID:JdxUxbqF
松雪氏、GJ

121氏、「阿九野」ではなく「阿久野」な
156121:2009/01/28(水) 02:20:38 ID:lEma78F5
>>155
うわすまん!!原作読みながら書いた筈なのに、それと思い込んでた様だ…。
そしてレスしてくれた人達ありがとう。
次書く事あったら気をつけます。
157名無しさん@ピンキー:2009/01/30(金) 09:48:31 ID:Ty+w71xN
久しぶりに来たら…何だこのGJっぷり!? けしからん(笑)
158名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 00:44:18 ID:OSnv0JcJ
もうね、低脳。まじで低脳。さいこう。
すんばらしい。
159松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/02(月) 22:51:45 ID:dvIKZTux
>>139からの続きです
160松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/02(月) 22:52:41 ID:dvIKZTux
***

 私の元に『正義の味方』となのる人達が現れたのは、中学に入ってしばらく経った頃だった。

『近頃はどこも人材不足で、ヒーロー候補を探すのも一苦労なんだ』

 テンガロンハットをかぶった男性が、苦笑しつつ私に話しかける。

『だから……もし君にその気があるなら、一緒に地域の平和を守ってみないか?』

 胡散臭いにもほどがあるその台詞。

『興味ないです』

 勿論、そんな戯言を信じるような私ではなかった。

『他に用事が無いのなら、失礼させていただきます』
『え、あ、ちょ、ちょっと!』

 まだ何か言いたげな男性を尻目に、私はさっさと歩き去る。
 さすがに何度もこんな事があれば、断るのもすっかり慣れてしまう。
 実際、似たような誘いは他にもあった。

『一緒に世界を目指さないか?』
『一緒に世界を征服しないか?』
『一緒に二人だけの世界で暮らさないか? ハァハァ』

 さすがに最後のは何か犯罪の匂いがしたので、警察に突きだしたが。

『……めんどくさい』

 人に必要とされるのは悪い気はしない。
 でも、そのどれもが『私』ではなく『私の能力』が目当てなのだと分かっていた。

 ――自分では何の努力もせず、ただ人を当てにするだけ。

 そんなツマラナイ世界は、学校の中だけで十分だ。
 最初のうちは丁寧に断りの言葉を作っていたが、やがてそれも面倒になって、結局はさっさと断わるようになった。
 下手に丁寧に断わるよりも、問答無用で断わってしまったほうが後腐れが無いと気付いた事も理由の一つ。
 どんな誘いでも、にべも無く断れば普通はもう来なくなる。
161松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/02(月) 22:53:31 ID:dvIKZTux
 来なくなる――はずだった。
 
『やあ、また会ったね』
『……』

 この自称正義の味方は普通ではなかったようだ。

『また来たんですか?』
『諦めが悪いのと、負けず嫌いなのが自慢でね。たとえジャンケンでも勝つまでやめないのがモットーなんだ』
『……凄くはた迷惑なモットーですね』
『はは、そう褒められると照れるな』
『褒めてないです』

 勿論、今回も速攻で断わった。
 それでも、この男性は次の日も、その次の日も私の前に現れた。
 自分で言うだけあって、諦めが悪いのは本当らしい。

『……どうしようかな』

 夕暮れの河川敷で、私は川面を見つめながら考えていた。
 赤井と名乗った男性は、結局毎日のように私の前に現れては正義の味方にならないかと勧誘していた。
 それだけ本気で誘ってくれているのは分かったし、それだけ必要とされているのは嬉しかった。
 だから、私は迷っていた。
 この人達なら、ツマラナイ日常を変えてくれるんじゃないか、と。
 だけど、私は迷っていた。
 結局、どこに行ってもツマラナイ日常のままなんじゃないか、と。

『おねえちゃん、どうかしたの?』

 ふと横を見ると、犬を連れた少女が心配そうにこちらを見ていた。
 散歩中らしいその少女は、膝を抱えながら思考にふけっている私の姿を、具合が悪いのと勘違いしたらしい。

『ううん、なんでもない。ちょっと考え事してるだけ』
『かんがえごと?』
『そう……これからどうしようかな、って』
162松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/02(月) 22:54:45 ID:dvIKZTux
 少女を心配させないように、私は笑顔で言葉を返す。
 それでも少女はまだ心配そうに私の顔を覗き込む。

『なやんでるの?』
『なやんでる……うん、そうだね、悩んでる』

 少女の問いかけに、私は素直にうなずく。

『……どうしようか悩んでるんだ。やった方がいいのか、それともやらない方がいいのか……どっちがいいのか分からなくて』

 まだ小学校にもあがっていないだろう少女にこんな事を言ってもしょうがないのは分かっていた。
 それでも打ち明けたのは、誰でもいいから聞いて欲しかったからかもしれない。

『? えーと……』
『ふふ、ごめんね、まだ分からないよね』

 案の定、少女は頭に疑問符を浮かべながら小さく首を傾げる。
 だけど次の瞬間、少女は何かを思い出したように顔をあげた。

『えっとね、となりのにーちゃんが言ってたよ。『やらずにこうかいするくらいなら、やってからこうかいしろ』って』
『――っ!』

 きっと、その少女はその言葉の意味を理解して言ったわけではないのだろう。
 その言葉を少女に伝えた人も、少女が理解するとは思わずに言ったのだろう。

『そっか……そうだよね』

 だけど、私にはその言葉が理解できた。
 どうやら私は、私が思っていた以上に臆病になっていたらしい。

『ごめんね、心配かけて。でも、もう大丈夫』

 少女にもう一度笑顔で答える。
 今度は少女も笑顔を返してくる。
 子供というのは、私が思っている以上に感情に敏感なのかもしれない。
163松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/02(月) 22:55:27 ID:dvIKZTux
『どういたしまして。じゃあね、おねえちゃん!』
『うん、じゃあね』
『行こう、シロ!』

 犬と一緒に元気よく駆けていく少女を見送ると、私はゆっくりと立ち上がる。
 うん、そうだ、何を迷っていたんだろう。
 どうせ今のままでもツマラナイんだ。
 だったら、やってみてもいいんじゃないか。
 それでツマラナイままだったら、その時に考えればいい。

『あの子に感謝しなきゃ……って、あれ?』

 少女が駆けていった方向にもう一度視線を送ると、駆けていったはずの少女がこちらに戻ってきていた。
 だが、何か様子がおかしい。
 見ると、さっきまで一緒にいた犬がいなくなっている。

『おねえちゃん! シロが! シロが川に!』

 私を見つけた少女は、半泣きになりながら私にすがり付いてくる。
 その慌てように、私も慌てて少女の視線を追う。
 少女の視線の先――それは川の中。
 そこに、先ほどまで少女と一緒にいた犬がいた。

『ちょうちょ追いかけて、水の中に落ちて、引っ張ったけど助けられなくて――』

 慌てている少女の口ぶりから、大体の事情は把握できた。
 半泣きになっている少女をなだめながら、私は周囲を見渡す。

 ――駄目だ、誰もいない。

 誰かを呼びに行く? いや、そんな時間は無い。
164松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/02(月) 22:56:19 ID:dvIKZTux
『いい、落ち着いて聞いて。今から誰かを呼びに行ってくれる?』
『う、うん! おねえちゃんは?』
『私は――シロを助けに行くから』

 そう言うと、私は川へ向かって走り出す。
 シロと呼ばれた犬は、流されながらもこちらに向かって泳いでいるが、川の流れは予想以上に速く、このままでは岸にたどり着けないだろう。
 躊躇している時間は無い。

『えい!』

 勢いをつけて飛び込み、シロの元へと泳ぎ始める。
 川の流れに苦戦しながらも、私はなんとかシロの元へとたどり着く。
 よし、あとは岸に帰れば――

『くっ!』

 岸までは10メートルほどの距離。
 でも、その10メートルが遠かった。
 せめて上着だけでも脱ぐべきだったと、今更な思考が頭をよぎる。
 身体に絡みつく服を疎ましく思いながらも、私は必死で岸へと向かう。
 あと7メートル……5メートル……
 時間にすればほんの数十秒の事なのだろうが、私には何時間にも感じられた。
 だけど、岸まではあと3メートルもない、これなら――

『痛っ!』
 
 鈍い痛みが私のふくらはぎを襲う。
 足をつった!?
 こんな時に!?
 痛みに身を捩らせながら、せめてシロだけでもと、岸へ向かってシロを押し出す。
 押し出されたシロは必死で泳ぎ、なんとか岸へとたどり着く。
 よし、あとは私も――
 腕の力だけで身体を浮かせようとするが、濡れた服が邪魔をする。
 足はもう使い物にならない。

 ――あと少し、もう少しなのに。
165松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/02(月) 22:57:15 ID:dvIKZTux
 すでに泳いでいるというより、もがいているといった方が的確な表現だろう。
 それでも私は必死に岸へと向かう。
 だが、水の流れは無慈悲に、そして残酷に私を岸から引き剥がす。
 駄目、もう――

『諦めるな!』

 諦めかけた、その時。
 私の腕を掴む、力強い腕。
 そして次の瞬間、私は岸へと引っ張り上げられていた。

『大丈夫か?』

 吸い込んでしまった水に咳き込みながら、私はその声の主へと視線を移す。
 そこには先ほどの少女と、助けた犬と、そして――

『まったく、無茶するなよ』

 ずぶ濡れになりながらも、心配そうに私を見つめる彼がいた。

『あのね、となりのにーちゃんが近くにいてね――』

 どうやら少女にさっきの言葉を吹き込んだ張本人らしい。

『あ、ありが――』
『お礼はいいから安静にしてろ。足つってるんだろ』

 そう言うと、彼は私の足に手を伸ばす。

『な、何を!』
『準備運動もせずに飛び込むからつるんだ。焦っていたのは分かるけど、ちゃんと準備は怠るなよ』
『いや、そうじゃなくて――』

 私が何かを言いかける前に、彼は私のふくらはぎに手を這わせ、ぐっと力を入れて足を伸ばす。
166松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/02(月) 22:58:00 ID:dvIKZTux
『痛っ!』
『ほら、じっとしてろ。ちゃんと伸ばさないとまたつるぞ』

 だからそうじゃなくて……もういいや、どうでもよくなってきた。
 とりあえず、彼が私を助けてくれたのは事実なんだ。
 もし彼が助けてくれなかったら、私は確実に沈んでいただろう。

『……もういいか』

 十分に時間をかけて伸ばした後で、彼はやっと私の足から手を離した。
 そっと足を動かしてみる。
 まだ少し痛みは残っていたが、またつるという事はなさそうだ。

『よし、大丈夫そうだな。それじゃあ……』

 その様子を見て、やれやれといった感じで彼は私の顔を正面から覗き込むと――

 パンっ!

 私の頬を、平手で叩いた。

『何やってるんだ!』

 そして、怒声。

『たまたま俺がいたからいいものを、誰も来なかったらどうするつもりだったんだ!』

 叩かれた頬に手を当てながら、私は驚愕の表情で彼を見る。

『なんでも一人でやろうとするな! あのままだとお前が溺れていたんだぞ!』
『で、でも……誰もいなかったから……』
『俺がいただろうが!』
167松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/02(月) 22:59:19 ID:dvIKZTux
 ――!

『いいか、必ずどこかに正義の味方はいるんだ! 困ったらとりあえず呼べ。必ず来るから。それでも来なかったら……俺が来るから』

 冷静に考えれば滅茶苦茶な事を言っているのだが、それでもなぜかその言葉は説得力があった。
 彼は必ず助けに来てくれる――そう、思えた。

『……すまん、つい熱くなっちまった』

 ふと我に返ったのか、彼は気まずそうに頭を掻く。

『ごめんな、叩いて。痛くないか?』
『う、ううん……大丈夫』

 痛くは無かった。
 ただ、熱かった。
 それがなぜかは分からなかったけれど。

『だめだよにーちゃん、おねえちゃんを叩いたら!』
『あ、ああ、すまん』
『おねえちゃん、大丈夫?』
『う、うん、大丈夫』

 横で見ていた少女が、心配そうに私を覗き込む。

『えっとね……ありがとう、シロを助けてくれて』

 そして少女は、精一杯の笑顔を私へと向けてくる。

『え、あ、でも……』

 最終的に助けたのは私じゃなくて……
 困ったように彼に視線を移すが、彼は笑顔を浮かべながら首を振る。
168松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/02(月) 23:00:22 ID:dvIKZTux
『シロを助けたのはお前だから』

 そう言って、彼は立ち上がる。

『さっきはつい熱くなって、あんな事言っちまったけど、お前は頑張ったよ。躊躇なく川に飛び込める奴なんて、そうそういない』

 少女の頭を撫でながら、彼は私を見る。

『だからさ、もし、お前にその気があるなら……』

 恥ずかしそうに一瞬言いよどみ、それでもすぐに顔を上げて。

『ヒーローにならないか?』

 そして、まっすぐに私を見つめながら、彼は言った。

『……ヒーロー?』
『ああ、俺もヒーローになりたくて正義の味方の基地で働いてるんだけど、お前ならきっと立派なヒーローになれると思うんだ』
『にーちゃんはまだ下っ端だけどね』
『い、いつかはちゃんとヒーローになるぞ!』

 からかう様に呟く少女に、彼は慌てて言い返す。
 正義の味方……という事は、赤井さんの言っていた組織なのだろうか。

『まあ、無理にとは言わないけどな。でも、少しでもその気があるのなら、一緒に頑張ってみないか?』
『一緒、に……』
『ああ』
『か、考えとく……』

 口ではそう言ったものの、どうするかはすでに決めていた。
 少なくとも、ツマラナイって事は無さそうだ。
 ――彼と一緒ならば。
169松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/02(月) 23:01:04 ID:dvIKZTux
『よし、じゃあ俺はもう行くぞ。まだトレーニングの途中だったしな』
『ま、待って!』
『ん、何だ?』
『あ、えと、その……ありがとう』

 消え入りそうな声で呟いた私に、彼は満面の笑みで答える。

『この位、正義の味方なら当たり前のことだから』
『そ、それと……』
『ん、まだ何かあるのか?』
『……まだ、名前聞いてない』
『え……あ、ああ、そうか』

 うっかりしてた、とばかりに彼は頭を掻く。
 そしてゴホンと咳払いをしてしばしの間を取ると、ビシっと自分を指差して――

『俺の名前は緑川ヒカル。ヒーロー見習いだ』

 ――それが彼の初めての名乗りであり、そして私との初めて出合いだった。

 その後、私は両親と喧嘩別れするように正義の味方の一員となり――気付いたら彼よりも早くヒーローになってしまったのはちょっとした誤算。
 そしてもっと大きな誤算だったのは――彼が私のことをまったく覚えていなかった、という事なのだが。
 でも、まあそれは――

『おねえちゃん、大丈夫?』
『え? う、うん、大丈夫だよ』
『でも、なんか顔が赤いよ? 風邪?』
『これは……ふふ、なんでだろうね?』
『……変なおねえちゃん』

 もう少し先のお話。
170松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/02(月) 23:03:28 ID:dvIKZTux
とりあえず、ここまでです

おかしいな……こんなに長くなるはずじゃなかったのに
来週で終わるといいなぁ……ノシ
171名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 23:07:58 ID:Z/F+QM2q
て、低能じゃあっ!!
今宵は低能祭りじゃあっ!!

続きも楽しみにしてますっ
172名無しさん@ピンキー:2009/02/03(火) 09:34:27 ID:8VDZJl8H
GJ!

アキラかわいいよアキラ
173名無しさん@ピンキー:2009/02/04(水) 11:21:23 ID:F7PuUDah
GJすぎるよ…
174名無しさん@ピンキー:2009/02/08(日) 02:41:08 ID:NzdTfy7L
保守
175松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:12:50 ID:/eg6UkjP
>>169の続きです
176松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:13:38 ID:/eg6UkjP
***

 トレーニングを終えた後、私はなんとなくギガレンジャーの基地へと来ていた。
 家でゴロゴロしようかとも考えたが、こんないい天気に引き篭もるのはやはり勿体無い。
 ……まあ、基地に行ってもやる事は無いので、ゴロゴロする場所が変わるだけなのだけれど。
 
「はぁ……」
 
 そこらに転がっていた少女漫画をパラパラと捲りながら、私は溜息をつく。
 それでも一人でいるよりは、余計な事を考えずにすむのはありがたかった。

「ヘイ、そこの少女! 辛気臭い顔してるじゃなーい!」

 ――こんな風に、絡んでくる人がいるから。

「辛気臭いのはいつもの事です」
「自覚してたんだ……って、若い身空でそんな枯れてちゃ駄目でしょ!」

 余計なお世話だ。

「それよりもなんですか横山さん、急に抱きついてきて」
「んー、アキラちゃんはいつも抱き心地いいにゃー」
「頬擦りしないでください……あと、当たってるんですけど」
「当ててるんだもん」
「……出てる腹を当てて喜ぶとは、特殊な性癖をお持ちですね」
「そっちは当ててないし、出てない!」

 この無駄にハイテンションな人は横山チサさん。
 ギガレンジャーの一人、ギガイエローであり、私の先輩であり、ちょっと頭の弱い人だ。

「……なんか今、失礼な事考えなかった?」
「気のせいです」

 あと、無駄に勘が鋭いってのも追加で。
 横山さんはしばらく私に頬擦りした後、やっと満足したのか、拘束していた手を離す。
177松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:14:20 ID:/eg6UkjP
「ふー、充電完了。これであと二時間は戦える」
「その電池はもうヘタっているので、交換する事をお勧めします」
「二時間毎に充電すれば大丈夫!」
「なるほど……だが断る」
「もー、アキラちゃんは可愛いのに、ちょっとぶっきらぼうなのが玉にキズね」
「ぶっきらぼうなのは生まれつきです」
「そんなんじゃモテないよ?」
「……余計なお世話です」

 そう、本当に余計なお世話だ。

「せめて服装だけでも女の子っぽくすればいいのに。いつも制服かジャージじゃない」
「学生の正装は制服です。私服にしても動きやすい方が好きなので」

 可愛い服に興味が無いわけではない。
 でも、どうせ私に似合うような服なんてないのは分かっていた。
 似合わない服を着るくらいなら、ジャージでゴロゴロする方がよっぽどいい。

「やっぱり枯れてるわねー……でも、動きやすくて可愛い服があればいいのよね?」
「……まあ、そんな服があるのなら考えますけど」

 私のその言葉に、横山さんは嬉しそうに含み笑い。
 ……なんだろう、この嫌な予感は。

「ふっふっふ……じゃじゃーん!」

 彼女はどこからか大きな袋を取り出すと、その中身をもったいぶった動きで私の眼前に晒す。
 出てきたのは――
178松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:15:01 ID:/eg6UkjP
「……なんですか、これ?」
「動きやすくて可愛い服、よ」

 出てきたのは、黒い生地に白いフリルをあしらった――あしらったと言う言葉で表現していいものか迷うほどに大量のフリルを纏ったロングドレス。
 俗に言う、ゴシックロリータドレスだ。

「……」
「可愛いよね?」
「……まあ、確かに」

 可愛い、のは認めよう。
 しかし、どう考えても動きやすいとは思えない。

「ふふふ、アキラちゃんが何を考えてるのかは分かるわ。確かに、お世辞にも動きやすそうには見えない服よ。でも……」

 またもやもったいぶった動きで、横山さんは手に持っていたドレスを空中に放り投げる。
 次の瞬間、横山さんの手には機関銃が握られており、それは空中に投げたドレスへと狙いを定めていた。
 ――そして、銃声。
 大量の弾丸に晒されたドレスは、一瞬で無残なボロ布に……って、あれ?

「へへー、すごいでしょ、これ」

 嬉しそうな表情で、横山さんは床に落ちたドレスを手に取る。
 それは穴どころか傷すらもなく、たった今まで機関銃で打ち抜かれていたとは思えない状態だった。

「……なんですか、これ」
「ふふふ、うちの技術部特製のゴスロリ服よ。防弾、防刃だけじゃなく、防熱、防水、防塵も完璧。伸縮性も高いから動きにくさも無し。しかも洗濯機で洗えるのよ」
「……」
「あれー、なんか反応悪いね?」
「いや、まあ……なんというか……」
「せっかく技術部がアキラちゃんの為に、持てる最高の技術を結集して作ったのに」
179松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:16:00 ID:/eg6UkjP
 ……技術の無駄遣いとは、きっとこういう事を言うのだろう。
 うちの技術部は力を入れる部分を間違っていると思う。

「その……横山さんと技術部の心遣いは嬉しいのですが、さすがにこれは私には似合わないかと……」
「えー、そんな事無いって」
「どちらかというと、横山さんの方が……」
「ゴスロリは胸が無い方が似合うって」

 ――どうしてやろうか、このビッチ。

「……あー、その、ゴメン。満面の笑顔で殺気振りまくのはやめてくれないかな」

 怯えた顔で私から視線を外す横山さんを、私は溜息と共に見る。

「とにかく、こんな服は私には似合いません。着るつもりもありません」
「……汗臭いジャージよりはいいと思うんだけどなー」
「っな!」

 思わず、自分のジャージ服に視線を落としてしまう。

「ちゃ、ちゃんと洗ってます! 汗臭くなんてありません!」
「知らぬは本人ばかりなり、ってね。今日もそのジャージでヒカル君とトレーニングしてきたんでしょ? その汗臭いジャージ姿で手取り足取りやってきたんでしょ?」
「紛らわしい言い方しないでください! それに汗臭くないですから!」

 そ、そうよ、汗臭くなんて……ないよね?

「まあ、汗臭いかどうかはともかく、たまには気分を変えてみるのもいいんじゃない? この服着たらヒカル君もやる気出すかもしれないよ、別の方向に」
「どんな方向ですか! そ、それに、ヒカルとはあくまで真面目にトレーニングをしてるだけで――」
「へー、真面目に、ねー」
「そ、そうです!」

 楽しそうな視線を向けてくる横山さんから視線を外すと、私は読んでいた漫画に視線を戻す。
 読んでいたと言っても、ただ絵を目で追っていただけで、内容はさっぱり頭に入っていないのだけれど。
180松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:16:53 ID:/eg6UkjP
「うーん、せっかく作ったのを捨てるのもなんだし……そうだ、フミちゃんにあげようか!」
「っ!」
「フミちゃんはアキラちゃんと違ってスタイルいいけど、私よりは似合いそうだし」

 ……わ、私だって、あと二年すればあのくらいは……

「ん? なにか言ったアキラちゃん?」
「いえ、何も」

 そう言いつつ、動揺しているのはバレバレだろう。
 むしろ、私の反応を見るために彼女の名前を出したのかもしれない。

「そうそう、フミちゃんと言えば、昨日街中で会ったのよ」
「……」
「で、色々と雑談したんだけど」
「……」
「……どうだった?」
「……何がですか?」

 確実に分かって言ってるのだろう。

「……彼女と会ったんでしょ?」
「……何のことですか?」
「またまたー、とぼけちゃって」
「……」

 口元に小さく笑みを浮かべながら、横山さんは私の顔を覗き込む。
 彼女が何を言ってるのかは分かる。
 分かるけど、それを認めるのは癪なので気付かないフリで無視する。
 せっかく忘れかけた『余計な事』を思い出すのも癪だった。

「会ったんでしょ、フミちゃんに?」
「……」
「もしかしたら修羅場になるかなー、とか思ってたんだけど、その様子だと戦う前に逃げたみたいね?」
「……仕事でならともかく、日常生活で私と彼女が戦う理由はありませんから」
「へー、ないんだ」
「ないです」
「ヒカル君と彼女が仲良くしてても?」
「ヒカルと彼女が仲良くしようが、イチャイチャしようが、子作りしようが、私には何も、まったく、これっぽっちも関係ありませんから」
181松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:18:08 ID:/eg6UkjP
 即答。
 そう、ヒカルと彼女が何をしようが関係ない。
 だから、私と彼女が戦う理由なんて――

「じゃあ、なんでそんなにショック受けてるのかな?」
「……別にショックなんて受けてません」
「本当に?」
「本当です」
「ふーん……あのさ、アキラちゃん」
「なんですか?」
「漫画、上下逆だよ?」
「……これは漫画を読みながら脳を鍛えるトレーニングで、高尚な趣味であり、凡人には理解できない深い意味があるんです」
「へー……」
「……」

 さすがに無理があったので、ジト目で睨む横山さんから逃げるように視線を外す。
 なんという失態。さすがにこれは言い訳できない。
 というか、今まで気付かなかった私も私だ。
 ……横山さんが言う通り、それほどショックだったのか。

「……」
「……?」

 ネタにされてからかわれるかと思ったけど、返ってくるのは無言のみ。
 不思議に思って横目で伺い見ると、横山さんは真面目な表情でこちらを見ていた。

「はぁ……これは本当に重症だわ」
「……なにがですか」
「アキラちゃん、我慢は身体に毒よ?」
「横山さんのように欲望に忠実に生きるのもどうかと思いますよ? 体重的に」
「だ、ダイエットしてるもん! まだセーフだもん! 2ストライクからバントで粘ってるもん!」

 それはアウトだ。
182松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:18:57 ID:/eg6UkjP
「ゴホン……と、とにかく、アキラちゃんはもっと素直になっていいと思うよ」
「……私は素直ですよ」
「本当に素直だったら、そんな顔はしないわ」

 思わず、自分の顔に手を当ててしまう。
 今の私はどんな顔をしているのだろうか。

「その様子だと、自覚はあるみたいね」
「な、何のことですか?」
「……言わなきゃ分からない?」
「だから、何のことだか――」
「あ、ヒカル君」
「えっ!」

 とっさに振り返るが、そこには誰もいない。

「嘘だけどね」
「……」

 振り返った姿勢のまま固まる私の頭を、横山さんはポンポンと叩く。

「いつもはクールなのに、こういうのは分かりやすいね、アキラちゃん」
「…………いつからですか?」
「ん?」
「いつから……気付いてたんですか?」

 私の疑問に、横山さんはぽりぽりと頬を掻きながら答える。

「んー……なんとなく最初からそんな感じはしてたんだけどね。あ、でも安心して、それに気付いてるのは私くらいだから」
「最初から……」
「と言っても、あくまでそんな気がしてただけで、それが疑念に変わったのもつい最近の事だし」
「……」
「分かってるみたいね。そう、フミちゃんとヒカル君が付き合うようになってからよ」
183松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:19:45 ID:/eg6UkjP
 その言葉で、私の脳裏にあの日の出来事が鮮明に浮かび上がってくる。
 ヒカルが、阿久野フミの告白した日の事が。

「アキラちゃん、あの日からちょっとおかしかったよ。なんというか……ピリピリした感じで」
「……そう、ですか」
「自覚あった?」
「少しは」

 出来るだけ外には出さないように気をつけていたけれど、私もまだ修行が足りないようだ。

「で、昨日ちょうど良く街でフミちゃんに会ったから、教えてあげたのよ。朝のトレーニングの事を」
「……」
「会ったのよね、彼女に」
「……はい」

 なるほど、最初からヒカルの為ではなく、私を試す為にトレーニングの事を教えたのか。
 そして、私はそれに見事に引っかかったと。

「……ごめんね、アキラちゃん」
「別に横山さんが謝る必要は無いです……どうせ、もう今更な事ですし」

 そう、今更な事だ。
 私がヒカルを好きな事は事実だけど、そのヒカルはもう阿久野フミと付き合っている。
 私が二人の間に入る余地など無いのだ。
 むしろ、ちょうど良かったかもしれない。
 現実を見せられて、微かな希望も打ち砕かれて。
 よかったじゃない、黒澤アキラ。
 これで何の憂いも無く、またツマラナイ日常が――

「それでいいの?」
「――っ!」

 顔を上げると、横山さんが真面目な表情のまま私の顔を覗き込んでいた。
184松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:20:31 ID:/eg6UkjP
「本当にそれでいいの?」
「……だ、だって、二人はもう――」
「私はアキラちゃんに聞いているの……他人の事は関係なく、アキラちゃんがどうしたいかを」
「……」

 だって、もう――

「……なんで赤井さんがあなたを一生懸命に勧誘したか分かる?」
「え……」
「内緒って言われたんだけどね……赤井さん、あなたを心配してたのよ」
「赤井さんが……?」

 心配してた? 私を?
 横山さんは優しく、だけどどこか悲しそうな笑顔で、私へと語りかける。

「断られたら諦めようと思ってたらしいんだけどね……この子は絶対に誘わなきゃ駄目だって思ったそうよ」
「な、なんで……」
「『我慢する事が普通だと思っては駄目だ!』ってさ。その時は良く分からなかったけど、今なら赤井さんの気持ちが分かるわ」
「……」

 赤井さん……ただの迷惑な人じゃなかったんだ。

「だから我慢しないで、そして諦めないで……もう一度聞くわ――あなたはどうしたいの?」

 最初に脳裏に浮かんだのは、屈託のないヒカルの笑顔。
 あの日、私を助けてくれた時に見せた、純粋な笑顔。
 私のヒーローの笑顔。

「私……私は……」

 我慢しなくてもいいのなら。
 諦めなくてもいいのなら。

「私は――ヒカルと一緒にいたい」
185松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:21:27 ID:/eg6UkjP
 涙と共に零れたのは、その一言だった。
 もっと、ヒカルと一緒にいたい。
 もっと、ヒカルに触れていたい。
 もっと、ヒカルを見ていたい。
 もっと、ヒカルに見てもらいたい。
 だって――

「ヒカルのことが――好きだから」

 一度零れた想いは、もう止まらなかった。
 今まで胸の中に秘めていた想いが一気に溢れ出る。

 子供の頃のツマラナイ日常。
 それを変えてくれるかもしれない、赤井さんとの出会い。
 悩む私と、道を示してくれた少女。
 そして、私を助けてくれたヒカル。
 彼を追って入隊し、ギガレンジャーになった事。
 それなのに、すっかり私の事を忘れていたヒカルへの怒り。
 怒っていたはずなのに、一緒にトレーニングする事になった時の喜び。
 そして、ヒカルと阿久野フミが付き合う事を知った時の絶望。
 やり場の無い想い。

 それら全てが涙と共に溢れ出る。
 横山さんは優しい笑みを湛えたまま、最後まで聞いてくれた。
 そして全てを吐き出した頃には、涙はすっかり枯れていた。

「スッキリした?」

 私が話し終わった後、横山さんは笑顔のまま尋ねた。
 私は小さく、だけどはっきりと頷く。

「はい……心の整理も出来ました」

 今まで私の心に影を落としていたモヤモヤはすっかり消えていた。
 我慢するなと言われても、諦めるなと言われても、どうしようもない事はある。
 だけど、生きている限り、私の道は続くのだ。
 終わってしまった事を悔やんでもしょうがない。
 きっと、横山さんは私にそれを教えたかったのだろ――
186松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:22:30 ID:/eg6UkjP
「ちょーっぷ!」
「いたっ!」

 唐突に飛んできた本気チョップに、私は思わず顔をしかめる。

「そんな顔しない! 大体アキラちゃん、一つ勘違いしてる」
「か、勘違い?」

 あ、あれ、このお話まだ続くの?

「あのね……ヒカル君とフミちゃん、まだ付き合ってないよ」
「……へ?」

 え、で、でもヒカルは確かに告白したはず……

「フミちゃんに告白したシーンを思い出してみて。あの時、ヒカル君は何と言ったか」

 ……えーと、確か『オレ、お前の事が好きだ!!』と……

「その次」

 次? 次って……『い、いやっ!! とっ……友達としてだ、友達として!!』……ん?

「気付いた? あくまで『友達として好き』としか言ってないのよ」
「っ!」

 た、確かにそういえば……いや、でも、これは照れ隠しじゃ……

「照れ隠しだろうがなんだろうが、恋人として告白してないの! だったら、まだアキラちゃんが恋人になる可能性はあるでしょ?」
「……そ、そうかもしれないけど……」
「それがただの言い掛かりってのは私だって分かってるわよ……でもね、まだ可能性があるのに諦めるのは早すぎじゃない?」
「それは……」
「大体、アキラちゃんは何か努力した? ただ、なんとなくヒカル君の側にいただけじゃない?」

 そ、それは……そうだけど……
187松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:23:41 ID:/eg6UkjP
「『やらずにこうかいするくらいなら、やってからこうかいしろ』」
「!」
「諦める前に、自分が出来る事を全力でやってみなさいよ。頑張って、努力して、これ以上は無理ってくらいに全力を出して……それでも駄目なら、またこんな風に話を聞いてあげるから」
「……横山さん……」
「枯れるのは早すぎるでしょ……まだ若いんだから」

 そう言って、横山さんは手にしていたドレスを私へと手渡す。
 似合わないと思っていた、そのドレス。
 だけど……今なら、着てもいいかもしれない――そう、思えた。

「さて、そうと決まったらこれからどんな作戦でヒカル君を手篭めにするか……」
「お願いですから、もう少し言葉を選んでください」
「言葉を変えても、どうせやる事は同じでしょ?」
「……」

 というか、別にその方法まで頼んではいないのだけど……

「……それにほら、たとえ駄目でもまだ手はある訳で……」
「……?」
「相手は敵の幹部で、こっちは正義の味方。うっかり戦闘中に――」
「す、ストップ! それ以上は――」
「『殺らずに後悔するくらいなら、殺ってから後悔しろ』ってね」
「汚すな! 私の思い出をそれ以上汚すな!」

 まったく、この人は……せっかくちょっとは尊敬してもいいかなって思ったのに。

「ふふ、やっぱりアキラちゃんはそのくらい生意気な方が似合ってるわ」

 冗談よ、と笑いながら、横山さんは私の頭をぽんぽんと叩く。
 ……冗談にしては目が笑ってなかった気もするけど……気のせいと言う事にしておこう、うん。

「まあ何にせよ、これからはアキラちゃん次第だから……頑張ってね」
「……はい」

 手にしたドレスを見つめながら、これはどのタイミングで着るべきかを考える。
 明日のトレーニング? いやいやイキナリこんなのを着ていったら、怪しすぎる。
 ここは少しづつ着てもおかしくない雰囲気に持っていかないと。
 とすると……えーと……
188松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:24:40 ID:/eg6UkjP
「……アキラちゃん」
「はい?」
「残念だけど、色々考えてる時間は無さそうよ」
「……はい?」

 真面目な顔で横山さんが呟いた、その瞬間。
 基地内に大音量のブザーが鳴り響いた。

「大変です! 悪の組織が――」

 慌てて駆け込んでくるオペレーターの台詞を待たず、横山さんが呟く。

「……チャンス到来?」
「それ以上言ったら、本気で怒ります」
「冗談よ」

 しれっと舌を出す横山さんを尻目に、私はオペレーターの台詞を待つ。
 ――この時、私はまだ軽く考えていた。
 また、悪の組織が騒いでいるのか、と。
 だけど、次に発せられた台詞は、私の……いや、多分、基地内にいる全ての人間の予想を超えていただろう。

「悪の組織が――悪の組織に襲われています!」
「「……へ?」」
189松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/08(日) 23:28:31 ID:/eg6UkjP
今日はここまでです

……書いてる方は楽しいのですが、読んでる方が楽しめているのかと疑問に思う、今日この頃


来週中にはおわります……きっと、多分、はい ノシ
190名無しさん@ピンキー:2009/02/09(月) 06:00:18 ID:LkEH1NxV
イェーイ ていのう!ビバ☆低能
191名無しさん@ピンキー:2009/02/09(月) 09:34:10 ID:OCYG+dhj
GJ!!
楽しく読ませて頂いておりますとも!!
低能低能!!
192名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 01:03:32 ID:4YLLJD9w
GJ! そして低脳!

楽しんで書いたものは、読んでるこっちも楽しい気分になれるもんですよ
藤木先生の作品が好きなんだなーって、伝わってきます
続きも楽しみにしています
193名無しさん@ピンキー:2009/02/12(木) 01:10:21 ID:EBwyTiDS
乗り遅れた……

そして、ナイス低能
夢中で読ませてもらいましたっ!!
続き、楽しみにしてますよ
194名無しさん@ピンキー:2009/02/12(木) 13:28:57 ID:JluZzt+j
GJ!

そして携帯用にあげ
195松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:04:45 ID:Kp49xvyC
>>188の続きで今回がラストです
196松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:05:42 ID:IaRilUOP
***

「――くだらない」

 それが、今の状況を聞いて最初に私が呟いた言葉だった。
 オペレーターから聞いた話を纏めると――

『悪の組織をリストラされて怒った怪人が新しく悪の組織を作り、リストラした悪の組織に復讐しに来た』

 と、言う事らしい。

「……確かにくだらないわ」

 横山さんもうんざりした顔で同意。
 オペレーターは何も言わなかったが、浮かべている苦笑が答えだろう。

「悪の組織をリストラされる怪人も怪人だし、それを逆恨みして悪の組織作って復讐って……そのやる気をもっと別な事に向けなさいよ」

 まったくその通りだ。
 まあ、別な事に使えるのならリストラはされないだろうし、なにより怪人になんてならないだろうが。

「で、襲われてる悪の組織ってキルゼムオールなんでしょ? だったら別に放っといてもいいんじゃないの?
 戦って相討ちになったら儲けモノ。どっちかが勝っても、戦闘で消耗しているうちに襲えば楽に潰せるでしょうし」

 これまたまったくその通り。
 その方がアキラちゃん的にも都合がいいよね? という呟きは聞こえないフリをしたが。

「それがそうも行かなくて……」
「?」

 歯切れ悪く呟いたオペレーターが小さく溜息をつく。
 溜息と共に出てきたのは、心底つかれきった声だった。

「最前線で戦っているのが……ギガグリーンなんです」
197松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:06:13 ID:IaRilUOP
***

「あの馬鹿!」

 隣を走っている横山さん――ギガイエローは正義の味方には似つかわしくない台詞を吐き捨てる。
 それに対して私は何も言わない。言えるわけがない。
 だって、私も同じことを思っているのだから。

『現在、キルゼムオールはほぼ壊滅状態で、一部怪人たちが敵組織をギリギリで押し留めている状態です……ギガグリーンはその中に混じって、戦闘中です』

 ギガスーツ内に取り付けられたレシーバーから、オペレーターの冷静な声が聞こえてくる。
 ――正義の味方と悪の組織が協力して、別の悪の組織と戦う。
 言葉だけなら燃えるシチュエーションかもしれないが、巻き込まれる方の身にもなって欲しい。

「キルゼムオール側は何て言ってる?」
『一時撤退するから、時間稼ぎよろしく、と……』
「正義の味方に助けを求めんな! つーかもう戻って来るな! ……ったく、とりあえずもう一個の組織を何とかしないと駄目か」

 キルゼムオールの脅威レベルは高くない。
 だけどそれは、あくまでやる気の無さが原因であって、個々の戦闘力で言えばかなり高いレベルのはずだった。
 それを壊滅状態にする組織……このまま居座られたらどんなに迷惑かは簡単に想像できた。

「それで、ギガグリーンは無事?」
『なんとか持ちこたえている様ですが……お二人とも、なんでグリーンがそこに居るか聞かないんですね』
「そりゃ、言われなくても大体想像できるし」

 そう言って、こちらをちらりと見るギガイエロー。
 マスクで表情は隠れているが、その下でニヤニヤ笑っているであろう事も簡単に想像できた。
 とりあえず脇腹めがけて肘を撃ち込んでみたが、ギガスーツ越しでどこまで効いたかは謎だった。

『……その道を右折です』

 何も言わない方がいいと判断したのか、オペレーターは本来の仕事へと戻る。
 今、私達が走っているのは、キルゼムオールの秘密基地だ。
 秘密基地というだけあって、内部構造は無駄に複雑だった。

「あー、もう、道多すぎてどれを右折なのか分かんないわよ……これ?」
『それじゃないです、その隣です』

 そんなやり取りをしながら、少しづつ基地の最深部へと向かう。
 オペレーター曰く、そこが最前線らしい。
198松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:06:44 ID:IaRilUOP
「それにしても、敵はどうやってここまで入り込んだのかしら?」

 私も感じていた疑問を、横山さんは何気なく口にする。
 いくら元組織の基地とは言え、こんな複雑な構造を仲間を連れて進入できるものなのだろうか?

『それですけど、元同僚って事で普通に通したらしいです。連れてきた怪人はその友人だと思ったらしく、応接間に通してお茶を出したとか』
「……ちょっとは怪しみなさいよ」
『で、お茶を飲んだら急に暴れだした、と』
「お茶は飲んだのね……」

 なんと律儀な悪の組織だ。
 それが悪の組織にとって褒め言葉なのかは知らないけれど。

「そういや、レッドやブルーはどこに?」
『二人とも別方向から最深部へ向かっています。向こうはかなり派手に暴れているので、いい陽動になってます』
「なるほど、だからこっちは敵がいないのね」
『狙ってやっているのか、楽しんでやっているのか微妙なところですけど……あ、次の曲がり角を左に――って、何だこれは!』

 それまで冷静だったオペレーターの声が急に大きくなる。
 その只ならぬ様子に、私達は顔を見合わせて立ち止まる。

「? どうしたの?」
『増援です! 新たに怪人が3、5……8人!? そちらに向かっています!』
「はぁ!?」

 慌てて後ろを振り向くと、確かに嫌な気配がこちらに向かって来るのを感じた。
 この距離でも分かる位だから、かなり強力な怪人だろう。

「たかがリストラされたくらいで、やりすぎでしょ!?」

 イラついた様に叫ぶ横山さん。
 確かに、今もギリギリで持ちこたえているというのに、さらにこの怪人たちが合流したら撤退するのも困難になる。
 相手は本気でキルゼムオールを潰す気のようだ。
199松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:07:37 ID:Kp49xvyC
「どうする、アキラちゃん? ここで迎え撃つ?」

 それも一つの手だろう。
 だが、奥で戦っているヒカルがどうしても気になってしまう。
 ここで迎え撃てば撤退の時間稼ぎにはなるだろうが、最前線で戦っているヒカルたちの負担が大きすぎる。
 適当な所で逃げてくれればいいが……彼が途中で逃げ出す事は絶対に無いだろう。
 じゃあ、どうする? 二手に分かれる?
 それこそ無謀だ。8人の怪人相手にどれほどの時間稼ぎが出来るかも分からない。

「……くっ」

 駄目だ、いい考えが浮かばない。
 だが、こうして考えている間にも時間は失われていく。
 早くなんとかしないと――

「困っているようだね! ギガレンジャー!」
「ふっ、俺たちが助けてやるぜ!」
「「!?」」

 背後から突如聞こえてきた、自信満々な叫び。
 驚いた私達が振り向いた瞬間、暗かった通路が一斉にライトアップされる。
 照らされた通路の先にいたのは――
200松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:08:16 ID:IaRilUOP
「……何やってるんですか、八百屋と魚屋のおじさん」

 キルゼムオールの下っ端スーツを窮屈そうに着込んだ二人が、変なポーズを決めながら立っていた。

「八百屋じゃない!」
「魚屋でもない!」
「そう、私たちは無く子も黙る下っ端の星!」
「雨にも負けず、風にも負けず!」
「ヒーローたちにも負けやしない!」
「だけどかーちゃんだけは勘弁な!」
「いつかは決めるぞ亭主関白!」
「その日の為に生きている!」
「「その名も、商店街ブラザーズ! 華麗に参上!」」

 ……

「……アキラちゃんの知り合い?」
「知りません、こんな変態」
「変態って言うな!」
「この名乗りだって、いつか使う時が来るだろうと必死で練習したんだぞ!」

 その情熱と時間をもっと有意義な事に使えば、奥さんも優しくなると思う。

「と、とにかく、困っているみたいだね、ギガレンジャー」
「俺たちが手伝おうか?」

 胡散臭げに見つめる私たちの視線に怯みながら、二人はバレバレの虚勢を張る。

「……どうする、アキラちゃん?」
「どうすると言われても……」

 確かに猫の手でも借りたい状況ではあるが、あまりにも危険すぎる。
 あの怪人たちを相手にして無事でいられる保障は――
201松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:08:47 ID:IaRilUOP
「時間が無いんだろ、アキラちゃん」
「!」
「大丈夫だって。いくら下っ端と言っても、下っ端には下っ端の意地があるからな」
「そうそう、時間稼ぎくらいなら出来るさ」
「まあ、危なくなったらすぐに逃げるけど」
「おじさん達……」

 力強く頷く二人。
 そして横山さんが私の背中を押す。

「まあ、私も残って戦えば大丈夫じゃない?」
「横山さん……」
「行きなさい、アキラちゃん。彼が待ってるわよ」

 グッと親指を立てる横山さん。
 後ろのおじさん達も同様に親指を立てていた。
 それに対する逡巡は一瞬。

「お願いします」

 私は頷くと奥へ向かって走り出す。

「生きて帰ったら、後で蹴ってくれよ!」
「あ、僕にもお願いね!」
「お二人の犠牲は無駄にしませんから!」
「「俺ら、やられる事前提!?」」
「……できるだけ頑張りなさい。あ、逃げたら奥さんにチクるから」
「や、やってやる、やってやるぞー!」
「かーちゃんに比べればこんな奴らー!」
202松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:09:38 ID:Kp49xvyC
***

 最前線と言うだけあって、そこは激闘の跡がありありと見て取れた。
 崩れた壁、割れた床、そしてそこに埋まる怪人たち。
 私が付いた時、そこに立っているのは三人だけだった。
 ――いや、立っているというのは適切ではない。
 立っている一人が残る二人の首を掴み、持ち上げていたのだから。

「ヒカル!」
「あ、アキラさん……」
「ん、なんだお前、こいつの仲間――うぉっ!」

 掴まれている一人がヒカルだと認識した瞬間、身体が勝手に動いていた。
 掴んでいる相手に向かって最短距離を疾走。
 そのまま全体重を拳に乗せて、鳩尾へ撃ち込む。
 両手が塞がっていた相手はガードする事も出来ず、私の打撃をまともに食らう。

「今だっ!」
「うんっ!」

 その衝撃で拘束が緩んだ瞬間、掴まれていた二人は腕を振り解き脱出。
 そのまま、私と共にバックステップで距離を取る。

「大丈夫、二人とも?」
「あ、ああ、ありがとうアキラさん」
「ありがとう、アキラちゃん」

 掴まれていた二人――ヒカルと阿久野フミが苦しげに答えを返す。

「アキラさん、気をつけて。あいつ強いです」
「分かってる」

 二人ともボロボロの姿で、立っているのがやっとという状態。
 その姿が相手の強さを如実に物語っていた。
203松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:10:09 ID:IaRilUOP
「……ヒーローの癖に不意打ちとはやってくれるじゃねーか」

 撃たれた腹を押さえながら、そいつは私達に向き直る。
 その姿は普通の人の姿となんら変わりはなかった。
 スーツ姿で、まるで仕事帰りにちょっと寄っただけと言われても信じてしまうかもしれない。

「……怪人?」
「リストラされたサラリーマンをイメージした、怪人リストラーよ」
「……そのセンスはどうかと思う」
「その通りだ!」

 私の呟きに、リストラーは憎しみに染まった瞳をこちらに向ける。

「怪人にしてやると言われ、ホイホイと付いていった結果がこれだ!
 怪人になって上司を見返してやろうと思ったら、逆に笑われ、そして本当にリストラされる始末!
 それならそれで立派な怪人になってやろうと努力したのに、やりすぎと言われて悪の組織からもリストラ!
 たかがリストラされた会社を一晩で更地にしただけだというのに!
 お前らにこの苦しみが分かるか!」

 分かるか、そんな苦しみ。
 でもまあ、リストラされた理由はなんとなく分かった。
 横目で阿久野フミを見ると、申し訳なさそうにこちらに頭を下げてくる。

「あんたたちも怪人にする相手くらい選びなさいよ」
「いや、まあ、その……泣いて頼まれたので仕方なく……」

 自分から志願して、それで思い通りにならなかったから八つ当たりとは。
 本気で救いようが無い。
204松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:10:44 ID:IaRilUOP
「うるさい! 悪の組織が悪い事をして何が悪い!」

 それは確かにその通りだが、正直入る組織を間違えたとしか思えない。
 キルゼムオールも適当に改造しておけばいいものを。
 見た目は地味だが、そこから感じる威圧感は私が今まで感じた事が無いほどに強いものだった。
 吹き飛ばさないように手加減したとはいえ、私の打撃を受けて平然と立っている事からもその強さが伺える。
 ……これはやばいかな。

『……ヒカル』
『なんですか、アキラさん』

 敵に聞こえないように、マイクを通してヒカルに話しかける。

『私が引き付けている間にあなたたちは逃げなさい』
『な、何言ってるんですか!』

 慌てて私を見るヒカルを、私は片手をあげて制す。

『相手は強いわ。それはあなたも身を持って知ったでしょう』
『だ、だったらみんなで一斉にかかれば――』
『その身体で?』

 二人ともとても戦える状態ではない。
 特に阿久野フミは幹部と言う事で徹底的に狙われたのだろう。
 立っているのが不思議に思えるほど痛めつけられていた。

『戦えないものがうろついていると邪魔よ』
『で、でも……』
『足手まといって言っているの』
『く……』

 ヒカルも薄々分かっていたのだろう。
 だからそれ以上は何も言わず、隣にいた阿久野フミの手を強く握る
205松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:12:00 ID:IaRilUOP
『司令室、聞こえてる?』
『聞こえてるし、聞いてました。撤退路の確保は出来ています』
『ありがとう。二人を頼むわ』

 阿久野フミも私たちの狙いに気付いたのか、ヒカルの手を握ったまましっかりと頷く。
 ……そう、それでいい。

『ちゃんとヒロインを守りなさい、ヒーロー』

 その呟きと同時に、全員が動いた。
 ヒカルと阿久野フミは後ろに。
 リストラーは前に。
 私はその間に飛び込む。

「なんだぁ! 正義の味方が逃げるのか!」
「お前の相手は私よ」

 空中で拳が交差する。
 パワーは互角。
 
「ちんちくりんを相手にする趣味はねぇ!」
「あら、こう見えて脱いだら凄いのよ?」
「何ぃ!」

 二年後にはね。

「はっ! ちょっとはやる気出たぜ! 本当かどうか確かめてやるよ!」

 言葉と同時に二発目が放たれる。
 それを最小限の動きでかわす。
 計算どおり、相手の狙いは私に移ったようだ。
206松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:12:37 ID:IaRilUOP
「強引な男は嫌われるわよ」
「ベッドの上なら優しいぜ?」
「残念、タイプじゃないわ」
「うるせぇ!」

 高速で放たれる連撃。
 早い――が、かわせないほどではない。
 パワーは互角だが、スピードはこちらが上。

「はっ!」

 連撃に合わせたカウンターを顔面に放つ。
 よし、これなら――え!?

「甘えよ!」
「くっ!」

 綺麗に入った拳を意に介さず、リストラーは更に前に出てくる。
 その予想外の反撃に、私は慌てて距離を取る。

「どうした、お前も逃げるのか?」

 ニヤニヤと笑いながら、リストラーはゆっくりとこちらに振り向く。
 完璧に入ったと思ったのに……浅かったの?

「まだ始まったばかりだ……もっと楽しもうぜ」

 そしてまた突進。
 だがすでにタイミングは見切っている。

「ふっ!」

 初撃に合わせて肘を鳩尾に叩き込む。
 よし、今度こそ完璧に――
207松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:13:21 ID:IaRilUOP
「だから甘えって言ってるんだよ!」
「!?」

 リストラーは懐に潜りこんだ私を両手で抱きかかえ、そのまま後方へと投げ捨てた。
 完璧に決まったと思っていた私は受身を取る事が出来ず、そのまま壁へと叩きつけられる。

「な、なんで……」

 叩きつけられた衝撃よりも、二回も耐えられた事のほうが衝撃だった。
 手加減などしていない。
 特に二回目の肘は、必殺の威力だったはず。
 だが相手は何事も無かったように立っている。

「くくく……不思議でしょうがないって顔だな」

 リストラーは私の顔を見て、楽しくてしょうがないといった笑いを漏らす。

「こちとら元サラリーマンだぜ……それも生粋のジャパニーズサラリーマンだ」

 両手を広げ、ぱっと見て貧相に見えるその身体を自慢げに見せびらかす。

「サービス残業に休日出勤! 24時間戦ってきた俺にそんな攻撃など効くわけが無い!」

 ……なんでだろう、ちょっとだけ同情したくなった。
 しかしその耐久力は言うだけあって厄介だった。
 持久戦になると、体格で負けているこちらが不利だろう。

「さあ、我慢比べと行こうか……俺はしつこいぜ?」

 歪んだ笑みを浮かべながら、三度目の突進が来る。

「くっ!」

 今までのような最小限の動きではなく、大きくかわしながらすれ違い様に打撃を放つ。

「ははは! 今何かしたのか?」

 くるりと向き直り、もう一度突進。
 やはり効いている様子はなかった。
 どうする? 関節を取りに行くべきか?
 だがそれも効かなかった場合、また掴まれる可能性が高い。
208松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:15:13 ID:IaRilUOP
「ははは! 今何かしたのか?」

 くるりと向き直り、もう一度突進。
 やはり効いている様子はなかった。
 どうする? 関節を取りに行くべきか?
 だがそれも効かなかった場合、また掴まれる可能性が高い。

「おいおい、さっきまでの勢いはどうした!」

 動き自体は単純なので、食らう危険は無いだろう。
 だがこちらも打つ手が無い。
 結局、少しづつ打撃を当てていくしかない。
 それが相手の思う壺だと分かっていても。

「おらおら頑張れ! 疲れたらベッドの上で優しく介抱してやるからよ!」
209松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:15:40 ID:IaRilUOP
***

「……緑川君」
「なんだ」
「ここまで来ればもう大丈夫だから」
「……何を言ってるんだ?」
「言わなきゃ分からない?」
「……」
「前言ってたよね『やらずに後悔するくらいなら、やって後悔しろ』って」
「阿久野……」
「行くべきだよ緑川君……だって、ヒーローなんだから」
210松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:16:17 ID:IaRilUOP
***

 ――あれから何分が経っただろうか。

「はぁはぁ……」
「おいおいどうした! もうバテたのか?」
「……しつこい男は趣味じゃないのよ」
「は! 口だけは元気だな!」

 リストラーの攻撃は最初に投げられた以外は全てかわしている。
 逆にこちらは何度と無く打撃を打ち込んでいる。
 だが、形勢はこちらが不利だった。
 リストラーの見た目はボロボロだが、その動きには陰りが見えない。
 逆に私の方は体力と神経を消耗し、動きが少しづつ鈍っている。
 今の状態で掴まれたら、もう振り解く力は無いだろう。
 それが分かっているのか、相手も打撃ではなく掴み狙いに戦法を変えていた。

「おら、もういっちょ行くぞ!」
「くっ!」

 両手を広げて、私の腰めがけてタックルするリストラー。
 それを弧を描くように大きくかわす私。
 反撃する体力は無く、ただ逃げ惑うのみ。

「鬼ごっこじゃねーんだぞ!」

 楽しそうに叫びながらまた突進。
 大丈夫、ただ逃げるだけなら――
211松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:16:49 ID:IaRilUOP
「――なんてな!」
「――っ!」

 フェイント!?
 このタイミングで!?
 いや、まだ大丈夫。まだ逃げられ――

「えっ!?」

 急な方向転換に、踏み込んだ足場が崩れた。
 滑る足とは裏腹に、身体はその場に静止する。

「つーかまーえたー!」

 次の瞬間、私の身体はリストラーに掴まれ、押し倒され、馬乗りの状態で拘束されていた。

「しまった……」
「ははっ! 残念だったな黒いの!」

 押し倒された場所は、床が割れて砂利が散乱している場所だった。
 いつの間にか誘導されていたのだろう。

「くっ!」
「逃げ切れると思って油断したんだろう? 人を舐めてかかるからこうなるんだ」

 心底楽しげな言葉と共に、拳が振り下ろされる。

「……ベッドの上では優しいんじゃなかったの?」
「残念だがここはベッドじゃないんだ」

 拳、拳、拳。

「どいつもこいつも人を舐めやがって!」

 拳が振り下ろされるたびに、私の意識が削り取られていく。

「俺は使えるだろうが! 俺は強いだろうが! なんでリストラされなきゃなんねーんだ!」
212松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:17:22 ID:IaRilUOP
 視界がぼやけ、見えるのは振り下ろされる拳のみ。
 聞こえてくるのは、自分の骨が軋む音。
 浮かんでくるのは、彼の笑顔。

 ――彼は逃げ切れただろうか。
 ――彼女と一緒に逃げ切れただろうか。
 ――逃げ切れたのならそれでいい。

 すでに目には何も映らず、聞こえてくる音もない。
 暗く、静かに、私の意識は沈んでいく。
 我ながら可愛くない最後だと思う。
 でも、これはこれで私らしいとも思う。
 最後に彼を助ける事が出来たのだから十分だ。

 ――幸せにね、ヒカル。
 ――でも、たまには……私の事も思い出してくれたら嬉しいな。

『それでいいの?』

 意識が暗闇へと飲み込まれる瞬間、その問い掛けが私の意識を繋ぎとめた。

『本当にそれでいいの?』

 何を今更。
 もう、何も出来ないのに。
 身体に力が入らないのに。
 私はもう――

『あなたはどうしたいの?』

 私は――
 そう、私はまだ――
213松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:18:17 ID:IaRilUOP
「諦めるな!」

 その声は、暗闇へと沈んでいた私の意識を一気に引き上げる。
 幻聴?
 ううん、違う。
 聞き間違えるはずが無い。

「なんだ、てめえ……逃げた奴が今更何しに――うぼぁっ!」

 打撃音。
 そして私の上にあった重みが消えた。

「大丈夫ですか、アキラさん!」

 視界に飛び込んできたのは拳ではなく、最後に思っていた彼の姿。
 幻覚じゃない。
 本物の――ヒカル。

「……何しに戻ってきたの」

 自分でも素直じゃないと思う。
 本当は抱きつきたい位に嬉しいのに。

「ピンチに正義の味方は必ず現れますから」

 私の言葉に苦笑で返すヒカル。
 うん、そうだね。
 あの時も、そして今も。
 君は――私のヒーローだから。
214松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:18:59 ID:IaRilUOP
「やってくれるじゃねーか、てめえ! 人がせっかく楽しんでる時に!」

 壁まで吹き飛ばされたリストラーが怒りに顔を赤くして立ち上がる。
 そのタフさと執念深さは敵ながら見事としか言いようがない。

「雑魚が吼えるな」
「何だと!」
「吼えるなと言ったんだ!」

 リストラー以上の怒りを胸に秘め、ヒカルが叫ぶ。

「強い? お前のどこが強いんだ? やれる事をやらずに放り投げて、後付けの力に頼っているだけじゃないか!」
「な、なんだと……」
「本当に強いやつってのは、諦めない奴の事をいうんだ! 諦めて、不貞腐れて、八つ当たりしているお前のどこが強いんだ!」
「て、てめえ……!」

 ゆっくりと立ち上がり、リストラーへと向き直るヒカル。
 その迫力に気圧される様に後ずさるリストラー。
 そうだ、諦めるのはまだ早い。
 まだ私達は戦えるのだから。

「そんなボロボロで何が出来る!」
「そんなの知るか! だけど俺は――俺達は諦めない!」

 そう、諦めない。
 絶対に、諦めない。

「俺の名前は緑川ヒカル! ギガグリーン!」
「同じく黒澤アキラ! ギガブラック!」
「「正義を貫く、ギガレンジャー! ここに参上!」」

 二人とも立っているのがやっとの状態だった。
 それでも負ける気はしなかった。
 負けるわけが無かった。
215松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:19:44 ID:IaRilUOP
「ほざけ! ガキ共が!」

 怒りに身を任せ、リストラーが前に出る。
 大きく腕を振り回し、二人一緒になぎ払おうとする。

「「ふっ!」」

 それに対し、私達はまったく同じ動きで回避。
 腰を屈め、懐に潜りこむ。

「甘いんだよ!」

 懐にもぐりこんだ瞬間、狙い済ました膝が私に飛んでくる。

「アキラさん!」
「大丈夫!」

 それを私は身を回して回避。
 そのまま後ろへと回り込む。
 だがリストラーはそのまま私に向けて足を――違う!

「食らえっ!」

 私の胸元を通り過ぎた足は、そのまま半回転して後ろにいたヒカルへと向かう。
 体重の乗ったその蹴りは、受け止めた身体ごと吹き飛ばすだろう。
 だが――
216松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:20:28 ID:IaRilUOP
「遅いっ!」

 上半身をわずかにすらし、蹴りをいなすヒカル。
 そのまま身体を半身にし、腰を落として拳を構える。
 それとまったく同じ動きを、リストラーを中心にして私も行う。

「アキラさん!」
「ヒカル!」

 叫ぶと同時に構えた拳を一直線に突き出す。
 狙うはリストラーの中心、ただ一点。

「「うおおおおおおお!」」

 雄たけびと同時に、拳がリストラーに叩き込まれた。
 両面から叩き込まれた衝撃は内部で反響し、行き場を無くしたエネルギーが身体を駆け巡る。

「ぐはあああああぁぁぁぁっ!!」

 暴れ狂うエネルギーの奔流に、リストラーが悶え狂う。
 だが――

「まだだぁ! まだ俺はやれるぅっ!」

 膨大なエネルギーに翻弄されながらも、リストラーは最後の力を振り絞りヒカルへと拳を振るう。
 大振りなその拳をヒカルは簡単に――かわさない!?
217松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:21:11 ID:IaRilUOP
「な、何ぃ!」

 打ち込まれた拳を、ヒカルは顔面で受け止めていた。

「……やればできるじゃねーか」
「な、なんだと!」
「なんでその力をちゃんと使わない! なんで諦めた! なんで――」
「ひ、ひいいいぃぃぃぃぃ!」

 ヒカルはもう一度振りかぶり、そして――

「なんで戦おうとしなかったんだ!」

 正義の拳が――放たれた。

「ぐうおおおおおおぉぉぉぉぉおっ!!!」

 それが止めだった。
 暴れ狂うエネルギー内に放たれた新たな衝撃は、リストラーの身体を食い破っていく。
 スーツの表面にヒビが入り、そこからあふれ出す神々しいまでの光。
 そして――

「……勝った、のか」

 そこに倒れていたのは、くたびれたスーツ姿の中年男性だった。
 これがリストラーの正体なのだろう。
 口から泡を出し、ピクピクと身体を痙攣させて気絶している。
 タフさが売りの怪人だけあって命に別状は無さそうだが、しばらくは再起不能だろう。

「……勝ったみたいね」

 そうは言ったものの、こちらもかなりボロボロだった。
 何も知らない人がこの状況を見たら、誰が勝者なのか分からないだろう。
 それでも、私達は勝ったんだ。
 私達、二人で。
218松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:21:48 ID:IaRilUOP
「や、やったわね、ヒカ――って、ヒカル!」

 前を向いた私に、ヒカルが抱きついてくる。
 ……と言うのは言葉のあやで、本当はただヒカルが倒れ掛かってきただけなのだけど。

「ごめんなさい、アキラさん……でも、もう限界……」

 そう言われてもこっちも限界なわけで、ヒカルを抱き止める力すら残っていないわけで。
 ――結果的に、ヒカルに押し倒される状態で地面へと転がってしまう。

「ちょ、ちょっと、ヒカル!」
「……」

 駄目だ、完全に気を失ったらしい。
 ギガスーツの機能が解除され、生身のヒカルが私に覆いかぶさっていた。
 それとほぼ時を同じにして、私のギガスーツも解除される。

「お、重い……」

 さすがにギガスーツ無しで圧し掛かられるのはキツい。
 それでも、嫌な感じがしないのは何故だろう。

「……まったく」

 まあ、彼が来なかったらやられていたのはこっちかも知れなかったわけで、それを考えればこの位は多めに見てあげよう。

「……ありがとう、ヒカル」

 目の前にあるヒカルの顔を抱きしめ、そっと目を瞑る。
 彼と亜久野フミは付き合っている。
 だけどそれはあくまで友達として付き合っている……と言う事らしいので――

「私も諦めないわよ、ヒカル」

 そう、諦めない。
 諦めないから――この位は多めに見なさいよね。
219松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:22:27 ID:IaRilUOP
***

 ――あの激闘から、一週間。

「おはようございます、八百屋のおじさん、魚屋のおじさん」
「ああ、おはようアキラちゃ……ん?」
「お、アキラちゃん、怪我はもう……へ?」

 あの後、私とヒカルは助けに来た横山さん達に助けられ、病院へと担ぎ込まれた。

『アキラちゃんたら、抱き合って何していたのかしら?』
『疲れて動けなかっただけです』
『本当に?』
『それ以上はノーコメントです』

 しこたま殴られたわりにはギガスーツがほとんど衝撃を吸収してくれていたおかげで、私の方は一日入院した後は自宅療養ということになった。
 深刻だったのはギガスーツと相性の悪いヒカルの方で、結局一週間の入院と言う事に相成った。
 ――そう、今日はヒカルが退院してくる日だ。

「おはようございます、オペレーターさん」
「はい、おはよ……おおおっ!?」

 結局、あの一件はギガレンジャーとキルゼムオールの総力戦だったと発表された。
 悪の組織が悪の組織に潰されたと言うのは(悪の業界での)世間体に関わるらしく、キルゼムオール側からそう申し込まれたようだった。

『まあ、しばらくは平和になるだろうし、それでいいだろ』

 と、リーダーの赤井さんも異論は無いようで、そういう事になったらしい。
 ……気になったのは、私が一人でキルゼムオールを壊滅させた事になっている事なのだけど――

『大丈夫、君ならその位やってもおかしくはない』

 と、見舞いに来た青島さんがしれっと言い放ったのはさすがに軽く殺意が湧いたが、それを簡単に信じ込んだ周りも周りだ。
 おかげで《黒い死神》なる可愛げの無い二つ名まで頂戴してしまったわけで。
220松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:23:48 ID:IaRilUOP
「おはようございます、みなさん」
「おう、おはよう。もう大丈夫……じゃないみたいだな」
「……えーと、これはもう一度入院させるべきか? それとも僕が改造して直そうか?」

 久しぶりに顔を出したのにこの仕打ちとは。
 どうしてやろうか、こいつら。

「あんたら、ちょっと失礼じゃない」

 横山さんだけはいつもと同じ反応だった。
 まあ、これを渡したのが横山さんなのだから当たり前か。

「うん、よく似合ってるわよ」

 褒められたのは素直に嬉しい。
 でも、本当に褒められたい相手はここにいなかった。

「……ヒカルはどこに? 今日、退院なんですよね?」

 その言葉に、すっと横山さんが目を背ける。

「……横山さん?」
「あー、そのー、あのね……」

 言葉に詰まる横山さんを見て、赤井さんが不思議そうに尋ねる。

「なんだ、まだアキラに言ってなかったのか、横山」
「え、ええ、その……」
「? 何の事ですか?」

 訳が分からず首を傾げる私に、青島さんが横から口を出す。

「ヒカルくんなら、今日から出張だが」
「……出張?」
「ああ、キルゼムオールが他の都市で再結成されたと聞いたのでな。それの監視という事でヒカルくんをそこに出張させたんだ」
「……はぁ!? で、でも監視って、キルゼムオールはもう……」
「まあ、監視というのはただの名目で、ラブラブな二人を引き離すのは可哀想だというヒーロー心なわけだが……」

 ま、まったく聞いてないわよ、そんなの!
 慌てて横山さんに視線を向けると、申し訳無さそうに頭を下げられた。
221松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:25:02 ID:IaRilUOP
「ごめんね、アキラちゃん。どうしても言い出せなくて……」
「……ちなみにその場所はどこですか?」
「えーと、どこだっけ? 確か関東の方だと……」
「三葉ヶ丘市とか言ってたな」
「ああ、それそれ……って、どうしたアキラ、急に荷物を纏めてだして」

 そんなの決まってる。

「私もそこに行きます」
「おう、そうかそうか……って、ええ!?」
「な、なんで急に!?」
「ヒカルだけだと不安です。だから私も一緒に行きます」
「「ええっ!?」」

 驚く赤井さんと青島さんに、苦笑いの横山さん。

「行ってらっしゃい、アキラちゃん」
「よ、横山!?」
「いいじゃない。どうせ今は平和なんだから、三人だけでも余裕でしょ」
「そ、それはそうだが……」
「そんな訳でアキラちゃん、こっちは心配しなくていいからね」

 ありがとう横山さん。
 教えてくれなかった件はこれでチャラにします。

「それではみなさん、行ってきます」
「はーい、いってらっしゃーい! ヒカル君とフミちゃんによろしくねー」

 あっけに取られている男二人を尻目に、私は基地を飛び出していく。

「――ったく、せめて一声かけてから行きなさいよ」

 そう口で言ったものの、実はそれほど怒ってはいなかった。
 今までの私なら、何もせずに諦めていただろう。
 でも、今の私は違う。

 ――何もせずに後悔するのは嫌だから。
 ――もう諦めないと誓ったから。

「待ってなさいよ、ヒカル!」
222松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/02/16(月) 00:27:03 ID:IaRilUOP
以上でギガグリーンネタ終了です

感想くれた方、そして最後まで読んでくれた方、ありがとうございます

また何かネタ思いついたら書きに来ます、それでは ノシ
223名無しさん@ピンキー:2009/02/17(火) 10:26:59 ID:CBdMTlB8
大作ですね。乙です。
また作品を書かれることを楽しみにしています。
224名無しさん@ピンキー:2009/02/17(火) 11:02:20 ID:WJKAWN1C
ナイス低脳!

アキラかわいよアキラ
225名無しさん@ピンキー:2009/02/18(水) 21:33:07 ID:t+HGvPVI
面白かったっ!!
終始ニヤニヤが止まらねぇ

次も期待してますっ
226名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 09:47:39 ID:MBEfqAuq
乙でした!!
素敵だ、アキラ!!
次も楽しみにお待ちしております。
227名無しさん@ピンキー:2009/02/26(木) 08:28:57 ID:eo9JlgXj
投下燃料になるようなネタが思いつかず、保守としか書き込めない自分が悲しいぜ……保守
228名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 05:36:49 ID:vNgZGWdY
ジーニアス登場
229名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 04:20:41 ID:w7Hi/+su
投下します。
はじあく、ジロー×キョーコ。
エロは微妙。キャラも違っていると思われますが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
230名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 04:22:04 ID:w7Hi/+su

「ふむ、こんなものか……」
 横たわる少女を前に、呟きつつ満足そうに頷くのはキルゼムオールが科学者ドクトルJ、本名阿久野ジロー。
 組織の解散により、渡家にお世話になっている現在。そんな彼は、今。
「……キョーコとの約束を反故にしてしまったのはアレだが、まぁこの程度の改造ならば、すぐに元に戻せるしな。……くくく、お前が悪いのだよキョーコ。そこそこ一般常識にも慣れてきたというのに、何も(改造)させてくれないから!!」
 ……そういう自分勝手かつ忍耐と我慢の足りない理由で。
目の前に横たわる少女、渡キョーコに改造を施してしまっていた。
正直突っ込み所しかないが、記憶操作も軽く出来てしまえる為に、問題無しと本人は思っていたりする。
流石元悪の組織の一員、卑怯だ。
出来るのなら最初から洗脳しろとか突っ込まれそうだが、彼には彼なりの悪の美学やらがあるのだろう、多分。
 それはそれとして。
 キョーコに施した改造がどんなものかといえば。
「……うにゅ……」
「む、起きたか」
「……ん、うにゃあ……?」
 寝惚け眼でのそのそ起きたキョーコの頭の上。柔らかそうな二つの耳がぴこぴこ揺れる。
 尾てい骨辺りから生えた、ふわふわの毛に覆われた尻尾がゆらゆら泳ぐ。
 ……いつぞやの、キョーコのファンクラブ連中との話の中に出てきたそれが、今ジローの目の前にいた。
 つまり。
「ふみゃあ……って何これぇぇぇぇ!!?」
 自分にはまだキョーコ改造の明確なビジョンが無かった為、取り敢えず、その話の通り。
「み、みみと、しっぽ………?…………猫になってるぅぅぅ!!?」
キョーコをネコミミ娘にしてみたのである。


231名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 04:22:57 ID:w7Hi/+su

──結果。
「………ぐふぅ」
「もーほんっと信じらんない!!」
ぼこられて地に伏すジローと、ぷりぷり怒るキョーコの図が出来ました。
 当然といえば当然である。
「……その改造はお試しの様なものだぞ。すぐに戻せるし」
「そーゆー問題じゃないでしょー!?」
「むぅ……。胸はそのままにしておいただろうが。俺としてはもっと大きぐはぁっ!?」
「黙れ馬鹿!!」
 勿論殴られた。改造の所為か威力倍増。
 しかし件のファンクラブ会長作ネコミミイラストを忠実に再現している為、手は肉球付きの獣の手。
 ビジュアル的には何だかアレだが、まあネコパンチは元々結構強力なので問題は無い。
「ふふふ……流石オレ!!……だがちょっと死にそうだ……」
 地に伏したまま、だくだく血を流すジロー。血まみれである。
「……自業自得でしょ」
 素っ気無くそう言いそっぽを向くキョーコだが、やはりやり過ぎたと思っているのか、気まずげにちらちらと目線を寄越す。
 ジローを気にしているのは明らかだ。
とは言っても、いつまでもそうしている訳にもいかず。
「……とにかく、早く戻しなさいよね!!すぐ戻せるんでしょ?」
「む……。仕方ないな」
 むっくりと身を起こし、不満気にではあるが、ジローも了承。
「……その改造でどの程度身体能力が向上されたのか少し調べたいのだが」
「却下」
「……ちっ」
 多少の未練はありつつも、元に戻す作業に取り掛かろうとするジローだったが。
「ジロー、いるー?」
「む、姉上?」
「わっ!?お、お姉ちゃん!?」
 そこへ声も掛けずにノックも無しに、ジローの姉、阿久野エーコがちゃりとドアを開けて入ってきた。
 そして、キョーコの姿を確認し、きらりんと瞳を光らせたエーコは。
「ああーっと!!うっかりー!!」
「「はぁっ!!?」」
 とてもわざとらしくずっこけ、何やら大量に持ってた粉をぶちまけた。

232名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 04:24:09 ID:w7Hi/+su

「……ちょ、な、なに?これ?」
「姉上……これは一体」
「あっはっは、いやー、ごめんごめん。ジローがキョーコちゃんに楽しそう……じゃない、変な改造を施そうとしてたからねー。キョーコちゃんの怒りを緩和する為のモノを用意してみたんだけど」
 ぶちまけられた粉に塗れる二人に、それをかました当人はにこにこと。
「怒りを緩和するものって……」
「あ、因みにキョーコちゃんの服はお姉ちゃんが着替えさせたからね!!安心して!!」
「へ、あ!?……ってそーいえば何この格好!?」
 今更ながらに説明しよう。
 首には首輪。ご丁寧に猫には定番の鈴も付いている。
 短パンはこれまた短く、正に男の欲望というか萌えというか、とにかく露出多めのネコミミ娘だ。
 勿論尻尾は弱点です。
 ユキの犬耳リード付けは今回は見送ったが、その内やろうかと思ってみたり。
 ただ、イラストの様に八重歯付き笑顔は性格とか弄くらないといけない為、スルーである。
 望まぬ改造であの笑顔は難しいだろうとの判断によるものだ。
 こちらが条件を満たせば快く改造されると共に、爽やかに清々しい笑みも見せてくれるだろう、とか思っているジローであるが……。
 無 理 だ。
「いや、そこは奴の設計図に忠実にだな……」
「こっ、この変態ー!!」
「なっ!?だ、誰が変た……」
 言い合いに発展しそうになったその時、
「……ひゃっ!?」
「お、おい!?」
 かくん、とキョーコの膝が落ちた。
「……ちょ、あれ?……な、なんか力が入んないんだけど……」
「何!?」
「おー、効いたー、またたびー!!」
 パニックに陥りそうになった空気は、そのどこまでも暢気な声に強制的に塗り替えられた。
 時も一瞬止まったかもしれない。
「……ま、またたび……?」
「……お、お姉ちゃん……」
 なんとも言えない顔で自分を見てくる二人に、エーコは笑顔で。
「ネコにはまたたび!!古来からのお約束!!」
 ぐっ!!と力強く親指立てたサムズアップを二人に向けてそうのたまって。
「じゃ、ゆっくり楽しんでね!!」
 元に戻す時に着替え手伝いにまた来るからー、と言い置いて、さっさと出て行ってしまい。
「………って!!何の話!?ちょっ!!お姉ちゃん!?」
「………楽しむ………?」
 その場には、唐突な登場と退場をかましてくれたエーコお姉ちゃんに反応が遅れ、力の入らない状態で今更わたわたと慌てるキョーコと、言われた言葉に首を傾げるジローが残されるのであった。


233名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 04:25:43 ID:w7Hi/+su


「むぅ……。姉上のする事はよく解らんな……。キョーコ、何か変化が……っ」
 眉根を寄せて姉の出て行ったドアを見ていたジローだが、戻って来る気配が無いのでキョーコの様子を見る為にそちらを向いた。
 と、同時に言葉に詰まる。
「……ん、うにゃぁ……」
 へにゃ、というか、くてっ、というか。
 とにかく、全く身体に力が入らないらしく、キョーコは床へと身体を投げ出す様に寝転んでいた。
 勿論それだけではない。
 ジローが言葉に詰まったのは。
「……うにゅう……」
 とろんと潤んだ瞳と、桜色に染まった頬。淡く色付く肌の所為だった。
「お、おおっ……!?」
 思わず後退る。
 キョーコ猫はまたたびの所為か、酔っ払い状態だ。
 平時の本人が酒に酔ってこの状態になるかは解らないが。
「……うにゅ?」
 ころん、と転がる。
 あうあう言ってるジローに視線を固定し、ジローが動く度にころんころんと身体を転がす。
 どうやらわたわた動きまくっている所為か、ジローに興味を持ったらしい。
「……にゃー」
 しかし離れている為か、面白くなさそうに一声鳴いて、手を伸ばす。
「うお!?……こ、ここまで猫に設定したつもりは無かったのだが……」
 にゃーにゃー鳴いてうるさいので、引っ掻かれない様に気を付けながら近寄っていく。
「にゃー」
「……理性無くしすぎだろう、キョーコ……」
またたび恐るべし……などと思いながら、おそるおそる近付いて。
「うにゃあ〜」
「うおっ!?ちょ、おま、キョーコ!?」
 抱き着かれました。
 力は入ってない為、すぐにでも引き剥がす事は出来るのだが。
「うにゃう……ふにゅ〜」
 こうも無防備に、ごろごろと喉を鳴らして擦り寄ってこられては……。
(ぬがあぁぁぁっ!!何だこれはぁぁぁっ!?)
 それ以前にキョーコの身体の柔らかさとか普段よりも高い体温とか平時では発する事の無い蕩けた声とかにパニックを起こしていたが。
(何か知らんが動悸がぁっ!?またキョーコの技かっ!?特殊能力かっ!!それとも改造の副産物かぁっ!?)
 誰も答えてくれない叫びは外には漏れず。

   ぺろ

「っ、な、なあっ!?」
 純粋に驚きによっての叫びが口から出た。
「にゃー……」

   ぺろぺろぺろぺろぺろ
234名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 04:26:57 ID:w7Hi/+su

「うお、ちょ、キョーコ!?なっ、何しとるか貴様ーっ!?」
「にゃー?」
 先程ぶちまけられたまたたびに塗れた二人は、それを落とす暇も無くこういう事態になった訳で。
 勿論ジローの身体に未だまたたびは付着しており、それに気付いた猫キョーコはジローを舐め始めたのだ。
「ちょっ、こらっ……」
「うにゃ〜」
「……………」
 真正面から抱き着いたまま、顔やら首やら舐めてくる猫キョーコ。
 キョーコの身に着けている衣服は、科学者ドクトルJの特製だ。
 しかし、その衣服もあのネコミミイラストに忠実に作られている。
 つまりは、機能性に優れつつも、その箇所を覆う衣服は薄い布一枚だという事に変わりない胸も押し付けられる。
 ……小さかろうが貧しかろうが胸は胸です。
 しかも、その感触をジローは既に知っている訳で。
 更には、露出の多い足だとか、モロに素肌な腹部だとかが、一切の躊躇も警戒も容赦も無く、すりすりとかしてくる訳で。
(………あ)
 健全な高校生男子としては。
(……これはオレが悪いのか?)
 反応してしまったのだ。男の欲望の具現が。
 解りやすく言うと欲棒が。ミもフタも無くぶっちゃけると肉棒が。
 その間にもキョーコはごろごろ懐いてくるし、その動きによって首の鈴はちりんちりんと鳴っていて。
 何やらおかしな気分になってくる。
「っていーかげんにっ……うぶっ!?」
「にゃー!!」
 このままでは流石にマズイ、と具体的に何がマズイのかはよく解らずとも本能で察したジローがキョーコを離そうとするが、猫キョーコはお構いなし。
 首や顔に付着したまたたびは粗方舐め終えたのか、今度は頭に被ったまたたび目掛けて飛び掛り。
 押し倒された格好になったジローの上を移動した後。
「ふにゅ〜……みぃ」
 ジローの頭に顔を埋め、へにょ、と力を失った身体をジローに預けて大人しくなった。
「……キョーコ……お前な……」
 ジローの声に力は無い。
 キョーコが移動した為、今、ジローの顔はキョーコの胸に埋まっている。というか、押し付けられている。
「ふにゅ、にゅ〜」
 幸せそうに鳴き、嬉しそうに尻尾が揺れ、擦り寄ってくる動きに合わせて鈴が鳴る。
 それと共に押し付けられた胸も貧しい癖にしっかりと柔らかく、ふにふにと顔の表面を刺激してくるものだから、堪らない。
 ジローは何か知らんが死にそうだった。
 キョーコを引き剥がそうかと両手をわきわきと動かすが、どこに手を持っていけばいいのか判断がつかず、何か勿体無い様な気もして迷った挙句、結局不自然な位置で停止したままわきわきと。
 そんなこんなとやってる内に。
「……何か下腹部が痛い」
 完全に勃ちました。
 一応知識はある。だがこんな反応は経験した事が無かったし、どうすればいいのかも解らない。
 取り敢えず、その内この酔っ払い状態も治まるだろうから、それを待って……と悠長にしていられる程、状況は優しくなかった。
235名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 04:29:35 ID:w7Hi/+su
「………あ、れ?」
「………え?」
 どこか呆けた声が聞こえたと思ったら、顔への圧迫感が消えた。キョーコが身を起こした為だ。
 そして、ぱちくり、と目を瞬かせたキョーコが、己の下にいるジローを見下ろして。
「……………え、あ?」
(あ、オレ死んだ)
 キョーコが前触れ無く唐突に正気に戻った事を悟り、反射的に結論が出た。
 諦観の為か妙に冷静なジローの視線の先、キョーコが見る見る間に顔を朱に染めていく。
 事態を理解したのか、それとも自分のした事を思い出したのか。
「な、なんっ、……にゃーーーっ!?」
「うおおっ!?」
 パニックに陥り、暴れ出した。
「なっ、なんでこんなことにぃっ!?」
「ちょっ、待てキョーコ、今そこで暴れられるとっ……ぐお!?」
「ふえっ!?」
 ぐに、と感触。それに伴い悶絶するジロー。
 慌ててキョーコが感触の発生源を見てみると、服の上からでも見て取れる、明らかな盛り上がり。
 それが自分の尻の下にあって、ぴくぴくと反応している。
(………えーっと、これは〜………)
 理解は出来る。ただ単に、感情が追いつかないだけで。
「ちょ、これ、あう……」
 さっさと退くべきだろう。そして一発殴って有耶無耶にするべきだ。
 そうは思うが、身体が思う様に動かない上、またたびの所為かまだ熱い。
 しかも先程の己の行動が思い出されて、羞恥で精神的にも動き辛い。
 自分の意思では無かったといえど、あんな恥ずかしい事をかました事実は消えないのだ。
 勿論それはジローとエーコの所為ではあるのだが。
 キョーコが思考放棄に走りたくなっている中、ジローが口を開いた。
「……と、取り敢えずだな、上から退いてほしいんだが……」
「うあ!?……あ、あぁ、そーだねっ!?」
 そういえば乗ったままだった。
 今更な事に気付き、慌ててジローの上から退こうとするが、
「……ふわぁっ!?」
「ぬおっ!?」
 やっぱり力が入らなかった。
 丁度そこを擦る様にしながら、身体が滑る。
「………にゃ、にゃー………」
 ジローの上に寝そべる形に戻ってしまったキョーコ。
 気まずげに、誤魔化す様に、上目遣い気味にジローに視線を向けながら鳴いてみた。
236名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 04:30:18 ID:w7Hi/+su
「………お、おまっ………!!」
 色々とピンチなジロー、思わずわきわきさせていた手が、苦し紛れか藁よろしく尻尾を掴む。
「ふみゃっ!?」
「っ、あ!?」
 再度言うが、尻尾は弱点です。
「ひゃ、にゃあ……っ!!」
「う、わっ……!?ちょ、こらっ、キョー……」
 びくびくっ、と大きな反応を示したキョーコの動きに、服の上からとはいえ接触していたジローの盛り上がりも刺激を受ける。
 二人してそんな動きをしていれば、どうなるか。
「にゃ……っ!!ぁ、ふ、みぃ……」
「……っ、ぐ……!!……は、ぁ……」
 程無くして、キョーコが一際大きく身体を震わせた後、脱力して息を吐く。ジローも一拍遅れてそれに続いた。
 達してしまったのである。
「…………ばか」
「…………い、いや、これは想定外で………」
 涙目で睨まれ、拗ねた様にそう言われてしまえば、男に勝てる術など無い。
(こ、これはどうすればっ………あれかっ!?責任を取るとかなんとかっ………)
(うぅ………どーすんだこれー)
 そのままぐるぐると考えを巡らす事暫し。
「ん?」
「む?」
 同時に気付いた。
「………あ、お姉ちゃんのことはお構いなく♪」
 ささっ、どーぞ!!なんて言う、扉の隙間から覗いていたエーコお姉ちゃんに。
 間。
 そして。
「ギャーーー!!!おっ、お姉ちゃんいつからぁぁぁ!!!」
「あああ姉上ーーー!!?」
 喧騒に満ちる部屋の中。
「……んー、ここまでかー」
 少々残念そうに、しかしやっぱり楽しそうな顔でエーコがそう言って。
「ま、お楽しみはこれからだからねー」
 その不穏な台詞にキョーコが反応する前に、
「えいやっ」
「はうっ!?」
「あ、姉上っ!?」
 エーコの繰り出した手刀によって、キョーコの意識はそこで途切れ。
「はいはい、じゃあ着替えさすから、ジローは出なー」
「ちょ、姉上!?」
「だいじょーぶ、ちゃんと加減してるから!!……それともこのにゃんこキョーコちゃんともっと戯れたい?」
「ばっ……!!ばばば馬鹿なことをっ!?」
「あはは、ちっとは素直になりなー。……ま、それはともかく着替えてきな。イカくせー」
「あああ姉上ぇぇ!!!」
 ……ともあれ。
 キョーコのネコミミ娘改造作戦は、この瞬間に終わりを告げたのであった。


237名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 04:34:25 ID:w7Hi/+su


 その後。
 何やらにこにこといつも以上に楽しそうなエーコの様子に。
「……なんかあったの?」
「……いいや、別に」
 疑問符を頭の上に浮かべつつ、首を傾げて不思議がるキョーコから目を逸らし、ずずーっと茶を啜るジロー。
(……オレもまだまだ修行が足りんらしいな)
 またたびであんな事態に陥るとは、全く予測出来なかった。
 言われるまま尻尾を弱点にしたのも色々とヤバかった。
 記憶を消す手段があって、心の底から良かったと思うジローである。
 だがしかし。
「ねーねー、キョーコちゃん?」
「え、何?お姉ちゃん」
「にゃんこも良いけど、わんこも良いよねー」
「?んー、うん、ウチにもいるし」
「だってさ!!ファイト!!ジロー!!」
「姉上ぇぇぇぇぇぇ!!!」
「え!?何!?何の話!?」
 エーコお姉ちゃんがいる限り、色々とヤバい事態には事欠かなそうな渡家なのでした。
238名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 04:38:15 ID:w7Hi/+su
終わります。
……もう何かエーコお姉ちゃんがいればどうにでももなりそうな渡家に(エロパロ的な意味で)
今更な感じのネコミミ娘ネタ、失礼しました。
239名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 20:04:24 ID:lMXZjPS4
なんという低脳!
そしてGJ!

エーコ姉さん万能説……でも、ガチエロまで持っていくのはキツイよねぇ、キョーコとジローの性格的に
240名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 02:26:48 ID:ciiJZJdY
超GJ!
241名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 03:06:25 ID:BLiJFICx
GJ!!!
ネコミミ娘エローイ!!!しっぽが弱点はお約束ですよね。わかりますwww

ジローの発明品とエーコ姉ちゃんがいればエロイベント発生はもはや必然!エロパロ的に!!
またの投下お待ちしてます
242名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 23:19:48 ID:qDiJrxF+
243名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 21:49:05 ID:JWZY97f3
244名無しさん@ピンキー:2009/03/17(火) 19:50:37 ID:BJQp3DVZ

245名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 01:51:15 ID:mu4YONZE
低脳GJ!!
246名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 18:23:44 ID:eanIY52x
保守
247名無しさん@ピンキー:2009/03/29(日) 23:39:19 ID:WDQt9quU
248名無しさん@ピンキー:2009/03/31(火) 07:21:53 ID:kSwfty9z
249名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 20:22:29 ID:1WefbCeo
に触れる柔らかな感触にジローは
250名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 21:57:06 ID:N9D3HyXK
ゆっくりと目を覚ました
251名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 04:27:27 ID:7IbuJlOq
するとそこには・・・・!?
252名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 16:49:00 ID:LJpD2Asc
キョーコ


の親父の胸板が
253名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 19:18:14 ID:CoOkMbV1
姉の豊満な乳房を押し潰している光景があった

目覚めたジローに気付くとエーコは一言
254名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 20:39:08 ID:oCvhxFe/
保守
255名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 20:49:02 ID:MXVi2QFg
保守
256名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 23:20:05 ID:4ohbLalk
かすかに聞き取れる程度の声で
そう呟き続けていましたとさ
257名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 20:04:08 ID:zCNYmYxy
保守
258名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 11:31:11 ID:eoQoq/08
保守あげ!
259名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 20:48:18 ID:ZNQNOMXH
保守
260名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 20:34:13 ID:BTq16qul
保守
261名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 20:17:42 ID:/5zzOCgJ
保守
262名無しさん@ピンキー:2009/04/27(月) 20:39:03 ID:ssTqkXdd
保守
263名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 00:53:28 ID:9ikBAbph
保守
264名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 19:44:49 ID:0zvw1kWN
保守
265名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 13:20:37 ID:tCe+nzw4
266名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 23:05:46 ID:mRu8MkZY
過疎ってますなぁ
267名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 21:31:49 ID:QY8DL3ee
キョーコかわゆすなぁ
268名無しさん@ピンキー:2009/05/25(月) 23:29:46 ID:BCewW9cF
ほすほす
269名無しさん@ピンキー:2009/05/27(水) 02:20:59 ID:5c4wHWLb
えーこ
270名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 02:14:45 ID:TA0oSlFb
ほしゅ
271名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 01:15:51 ID:TElt9OxV
こっそりと

http://sillytalker.web.fc2.com/novels/hajiaku/aya.html


アクセス規制が恨めしい……orz
272名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 04:21:14 ID:fkiY56nF
>>271
GJ!
273名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 20:14:02 ID:BGQW7ZJC
>>271
ナイス低能でおじゃる
274名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 18:57:00 ID:JQQQds8b
うあ、もう見れねー!

再うぷ希望!
275名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 13:20:12 ID:qUQ5hxA2
現在、長期にわたって全規制の影響を受けている職人の皆様。
ただいま、こちらのスレ(したらば・エロパロ避難所)に置いて代理投下の以来が行えます。

書き込み代行スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2964/1060777955/

投下して欲しいスレの名前とアドレスを張り、その後、作品を書き込めば有志のかたがそのスレに作者の代理として投下いたします。
(数日ほど、時間が空くことがあります。できれば、こちらに書き込める方、積極的に代理投下のチェックをお願いします)

276274:2009/06/08(月) 18:52:27 ID:HzYDzkQn
見れたー!
GJ!

>>275
そこは機能しているのか…?
277名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 00:10:17 ID:ArTNeVmY
>>271
素晴らしいSSによって俺の低脳度は有頂天になった、
この転がりはとどまるところを知らない
278名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 03:21:24 ID:kcByG4bM
>>271
おお!!低能GJ!!
279名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 17:17:36 ID:gQPwZLU6
たまにはage
280名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 14:09:24 ID:jWs14EeE
>>271
続きが読みたいと本気で思ってしまった
まだこんな低脳な職人がいたとは…
ありがたや
281名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 20:58:41 ID:+BBmAfVd
歩鮎
282名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 17:23:55 ID:hBPpYHKm
保守
283名無しさん@ピンキー:2009/06/26(金) 02:22:16 ID:Jo7/m/It
ほしゅ
284名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 09:35:50 ID:KkR3Z6NX
ほしゅ
285名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 10:43:35 ID:us571nBK
ジローのオートマントはエロパロ的にかなり使えるアイテムだと思うのだが
286名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 19:01:48 ID:TnXt6OoG
よい
287名無しさん@ピンキー:2009/07/14(火) 00:43:48 ID:Y/UEB/fn
エロ
288名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 14:39:49 ID:z3ba3K/7
ほしゅ
289名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 00:12:28 ID:RcjZ/wSJ
規制解除記念カキコ

ジローの実家でなにかムフフなイベントが・・・起きないだろうな、きっと
アヤ姉ちゃん出るからいいけどさ
290名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 19:44:03 ID:hurilYbJ
逆に考えるんだ
「アヤ姉ちゃんがヒロインでもいいさ」
そう考えるんだ
291名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 08:35:12 ID:3wGfZkHy
保守
292名無しさん@ピンキー:2009/08/09(日) 01:46:28 ID:DTAq+sFw
293名無しさん@ピンキー:2009/08/09(日) 02:42:13 ID:cuyNqfUM
せいしゅん18きっぷで りっしんべん
294エロなし今週号ネタ 1/2:2009/08/13(木) 09:50:52 ID:Xx0ij88A
「あ、あれ……?」
「おお、気がついたかキョーコ」

ジローはぱたぱたと扇いでいたマントを止めずに、
頭の上に乗せていた氷を外す。

「あたし、どうしたの」
「待て、急に起き上がるな!」
「な、なによジロー」
「湯あたりしたらしい。急に起き上がると良くないと母上が言っていたから、
 横になっていろ。そら、氷だ」

キョーコは良くわからないというような表情で、氷どおしが触れ合う
冷たそうな音を立てるそれが頭に載せられるのを見ている。
つめたーという言葉の響きから、ジローにもいつものひねた笑みが戻った。

「あたし、そんなに湯につかってたかなー。覚えてないんだけど。
 ……あれ、あたしいつのまにパジャマに?」
「姉上がさっきな。昔着ていたものだそうだ」
「ふーん、お姉ちゃん、意外とかわいい趣味だね」
「小学校の頃に」
「……あ、そー」

静かな怒りの波動は、ジローには届かないようだ。
ぱたぱたと扇がれる音しか聞こえない中、キョーコはジローの顔から視線を逸らした。

「まあ、ありがと。看病してくれたみたいで」
「フ、なに、運ぶことも満足にできなかったからな。このくらい」
「運ぶ?」
「……いや、違うぞ? オレが運んだのは、2歩くらいで、あとは姉上が」

寝たままでも見事に首を締め上げている。洗いざらいゲロさせられたのは一分程度だった。

「今回は緊急避難ということで見逃すけど。
 あんた、本当に変なことしてないでしょうね」
「変なことというのはなんだ! そもそも母上と姉上たちがいるのだ、何ができる!」
「まーそうよねー、お母さんお姉ちゃん大好きのジローちゃんにはねー」
「ぐ、それは……」

マントが止まってははためき、はためいては止まってを繰り返している。
扇ぎ続けようという意識を忘れないのはたいしたものだ。

「言っておくが、オレはそんなにすごーく帰りたかったとかそういうのではなくな、」
「いいね。やさしそうなお母さんで」

はにかむように笑う。
そこに何かを感じ取ってしまったのか、ジローの顔が少しく後悔の色を浮かべる。
珍しい気働きだ。かえって反応したのはキョーコのほうだった。

「あ、いや、違うよ、ジロー」
「……」
「あの、そんなふうにとってもらう意図とかはなくてっ」

一気に起き上がろうとするキョーコの体。それを静止しようとするジローの手は
及ばない。

「お、おおおおおお?」
「キョーコ!」
2952/2:2009/08/13(木) 09:55:13 ID:Xx0ij88A
ぱたりとまた布団に戻ってこようとした体をジローの手が受け止める。
布団の上に二人の影が重なった。

「急に起き上がるなというのに」
「うん、忘れてた」
「大丈夫だよ。ジロー」
「む?」
「お母さんのことは」

笑顔を向ける。楽しそうな笑顔だ。オレも最近ひさしぶりに良く見るようになった。
それを向けられたほうのジローは、なにも言えずにいる。

フ……しょうがない男だ。少しだけ、後押ししてやろう。
かりかりと爪でオレの足からそれをはがす。
たたみに落ちたそれを前足ではたき、自白シールをジローへと飛ばした。

「惚れてしまうから、そんなに見るな、キョーコ」
「は」
「……オレがずっと一緒にいるから」

「な?」
「なに?」
「な、なにいってんのあんた……」
「い、いやちょっとまて、これはオレが言いたいことではなく!」

そこまで言ってジローはさすがに思い起こしたのか、体中をはたいた。
ひらりとほどけたシールは、抱かれたまま顔を赤くしたオレの大事な家族へと。

「ばっ、馬鹿ジロー! そんなこと言われたら、もっと意識しちゃうでしょ!
 ほ、本当にあんたのこと好きになっちゃったらどうすんのよ!」
「!」
「!!」

慌てて口をふさぐキョーコ。ふむ、このくらいが頃合か。
紅潮した顔を見せ合う二人の間に歩み寄り、キョーコにくっついたシールをくわえて
元通り前足にはりつける。

「し、師匠ー!」
「ぽ、ポチー!」

「お前たち、つがうならふすまの影に気をつけろ」

振り向かずに告げたのと同時に、ふすまの先からギシリと物音が聞こえた。

「母上ー!」
「お姉ちゃんー!」
「うあああポチの裏切り者ー!」

居間に戻ると、丸まったタオルケットが用意されていた。
そばにはジローの大きい姉が礼の姿勢で立っている。

「お疲れ様でした、ポチさん」
「うむ、お休み」

ひさしぶりに野山をさんぽした疲れからか、別の部屋から聞こえてくる
うるさい物音にも影響されず、今日はゆっくり眠れそうだった。
296名無しさん@ピンキー:2009/08/13(木) 23:13:13 ID:kjTlF94K
GJ!

ポチ、かっけーw
297名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 22:03:20 ID:VM0Pm8o6
てーのーだぁっ!!
298名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 01:47:25 ID:6XfI0umL
GJ!
このスレ毎日のぞいてたかいがあったぜ!
299名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 17:20:50 ID:OkcJODF2
本編同様微笑ましすぎる
300名無しさん@ピンキー:2009/08/20(木) 22:16:16 ID:QVN7b6mz
新キャラいいな
301名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 10:05:04 ID:NrIoieaq
まだ出たばかりだから、何とも言えないな

でも、期待しちゃうぜ
302名無しさん@ピンキー:2009/08/26(水) 07:35:01 ID:FaQFo2jv
シルバームーン期待アゲ
303名無しさん@ピンキー:2009/08/26(水) 11:48:10 ID:pNJ3vhaJ
血の代わりに汗でもいいなら、当然精液でも。
304名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 03:23:35 ID:oowZ/Dm+
あの幼女を弾みにジロー王国建国パターンに走るのはやめてほしいところだ……
305名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 04:52:14 ID:fZH4SgYz
エロパロスレで何を言ってるんだお前は
306名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 15:27:56 ID:0c/W1tBn
つまりエロパロでは建国して欲しいと。
307名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 17:56:25 ID:qt+6divz
手元にサンデーが無いので確認出来ないのだが、アヤ姉さんって母親の事をなんて呼んでたっけ?

あと、阿久野家の風呂場って何人くらい一緒に入れそうだろうか
308名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 22:59:43 ID:a/ROsqWy
>>307

母上だよ

風呂は露天、四人で入って、なお余りあるスペース
309名無しさん@ピンキー:2009/08/30(日) 22:43:23 ID:9qjqmD6Y
SSクル―――(゚∀゚)―――!?
310名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 02:12:03 ID:2xilx4Y0
311松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/12(土) 19:04:24 ID:00lzVa4m
規制も解けたので、久しぶりに投下

とりあえず、第一話という事で
312松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/12(土) 19:05:03 ID:00lzVa4m
 
「ルナちゃん、お風呂入っていく?」

 蛍舞う、夏の夜。
 そう、エミさんが切り出したのは、振る舞ったスイカが全て無くなった頃だった。

「お風呂?」

 指についたスイカの汁をぺろぺろと舐めながら、ルナと呼ばれた少女は首を傾げながら聞き返す。
 その姿は、今日初めてここを訪れたとは思えないほど、この場に馴染んだものだった。
 首領と言うだけあって、他の悪の組織の本拠地でも堂々としたもの――と言う訳ではなく、ただ単に居心地が良いだけかもしれない。

「お風呂か……うーむ」

 だが、いくら居心地が良いとはいえ、そこまで世話になるのは気が引けるのだろう。
 彼女は腕を組んだまま、壁に掛かっている時計に視線を移す。
 首領としての体裁を気にしているのか、それとも時間が遅くなるのを気にしているのか、もしくはその両方なのか。

「ルナさま、そろそろ……」
「分かってる」

 横目でセバスチャンを見つつ、少女は名残惜しそうに呟く。
 首領、かつ夜の眷属とはいえ、まだ小学……じゃなかった、中学二年の女の子。
 心配する者の数は多いだろうし、本人もそれは自覚しているようだ。

「他の者に黙って出てきたから、そろそろ帰らないといけない。すまないが今日はこれで……」

 彼女がここに来た目的はジローをスカウトするという事だった。
 結局、その目的は達成できなかったものの、アイテムを開発して貰うという約束は取り付けていた。
 元々、アイテムを開発させるためにジローのスカウトに来たのだから、それはそれで目的は達成できている。
 つまり、もう彼女がここにいる理由は――

「あらそう? 残念ねぇ、うちのお風呂場は凄いのに」
「……凄い?」

 エミさんが何気なく呟いた言葉に、立ち上がろうとしていた彼女がぴくりと反応する。
313松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/12(土) 19:06:15 ID:00lzVa4m
 
「掛け流しの天然温泉で湯量も豊富。美肌効果抜群で、しかも豊胸効果まであるのに」
「なぬ!」「っ!」
「……母上、最後のは無いかと……」
「えー、うちの女連中、全員胸大きいからきっとあるわよ」
「いや、あの温泉出たのつい最近なんですが……」
「そうだっけ?」

 アヤ姉さんの冷静なツッコミを、エミさんは舌を出しながら軽く受け流す。
 そうか……ないのか……
 さすがにそんな話を信じる訳はないけど……って、みんな私から目を逸らしているのはなんでだ、この野郎。

「と、とにかく、そんなうちの自慢の温泉に入っていかない? ドラキュリアには私から連絡しておくから」
「うちの組織を知っているのか?」
「知っているも何も……そこの元首領とは、昔よく一緒に無茶したものよ」
「母さまと!?」

 驚きの混じった声を返す少女に、エミさんはニヤリと口元を歪ませる。

「ああ、やっぱりあの子の娘なのね。どことなく面影あるったからそうじゃないかと思ってたんだけど」

 お互いそういう歳なのねぇ、と小さく呟きながら、エミさんは携帯電話を手に取る。

「で、どうする? 入っていくなら連絡するけど?」
「んー……」

 少女はチラリとセバスチャンの様子を伺うが、そのセバスチャンは無言のままパタパタと浮いているだけ。
 それを了承と判断したのか、彼女はぽりぽりと頬を掻きながら言葉を返す。

「じゃあ、お言葉に甘えようかな……」
「了解、ドラキュリアには私から連絡しとくわ。そんなわけでキョーコちゃん、ルナちゃんを案内してね」
「私ですか!?」

 今まで蚊帳の外の会話だと思って聞いていた私だが、まさかここで振られるとは思っておらず、慌てて聞き返す。

「私達は色々と片付けがあるから、この中で手が空いてるのはキョーコちゃんだけなのよ」
「エーコお姉ちゃんもですか?」
「ええ、勿論……さあ働け、ニート」

 そう言うと、エミさんはこっそり逃げようとしていたエーコお姉ちゃんの襟首をがっちりと掴む。

「ニートじゃないもん! 自分探しの最中だもん!」
「自分より先に職を探しなさい、職を」
「無いからしょうがないもん! 全部不況が悪いんだもん!」
「いや、絶対お前も悪いから」

 エミさんはエーコお姉ちゃんの戯れ言を華麗に聞き流しながら、台所の奥へと引きずっていく。
 そんな二人の姿を呆れたように見つめていたアヤ姉さんは、やれやれといった感じで私たちの方へ振り返る。

 エミさんはエーコお姉ちゃんの戯れ言を華麗に聞き流しながら、台所の奥へと引きずっていく。
 そんな二人の姿を呆れたように見つめていたアヤ姉さんは、やれやれといった感じで私たちの方へ振り返る。
314松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/12(土) 19:07:16 ID:00lzVa4m
 
「そんなわけでキョーコさん、頼めるだろうか?」
「え、ええ、いいですけど……」

 歯切れ悪く呟きながら、私はちょっと胡散臭げな目で彼女の方を伺う。
 彼女――枕崎ルナはそんな私の視線を身構える様に受け止める。
 まあ、先ほどのやりとりからすると、当然の反応だろう。

「それじゃあ、二人で先に風呂場に向かってくれ。タオルは後で持って行くから」

 アヤ姉さんはそんな私たちを苦笑で見つめながら、奥に消えた二人を追って台所へと向かう。
 後に残されたのは、私と、ルナと、何故か無駄に意気投合しているジローとポチとセバスチャン。

「……」
「……」
「……」
「……な、なんだ、その目は」
「いや、別に……お風呂場はこっちよ」

 無言のまま歩き出す私に、無言のまま付いてくるルナ。
 悪い子じゃないのは、分かっている、分かってはいるんだけど……分かっていても、納得出来ない事はある訳で。
 なんせ、誰にも舐められた事のない場所を遠慮無く舐め回された上に、いい様に身体を弄ばれたのだから。
 それに……操られたとはいえジローにも抱きついて、うっかり押し倒しちゃったり……

「……」

 ……結構いい身体してたな、あいつ……やっぱり、男の子なんだな……

「――っ!」

 って、何を考えてるんだ、私は!
 うわ、さっきの事思い出したら、なんか恥ずかしくなってきた!

「ん? どうしたキョーコ、顔が赤いぞ?」
「な、何でもない!」

 あんたのせいよ! とは言えず、心配そうに聞いてくるジローから顔を背けながら、私は早足で部屋を出て行く。
 あーもう! いつもは鈍いくせに、なんでこんな時は鋭いのよ、あんたは!

「お、おい、ちょっと早いぞ」
「う、うるさい! あんたのせいでもあるんだからね!」
「?」

 困惑するルナを尻目に、私は急いで風呂場へと向かう。
 な、なんでこんなにドキドキしてるんだ、私は!
 こういう時は、お風呂に入って気分転換するに限るんだ、うん!
315松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/12(土) 19:08:07 ID:00lzVa4m
*****

「行った?」
「行ったみたいです」

 台所の奥。
 エミとアヤは扉の影から部屋の中を伺っていた。

「よし、これで第一段階はクリアね」

 うんうんと頷きながら、エミは満足そうに腕を組む。
 そんなエミを、アヤは首を傾げながら見つめていた。

「なんであの二人を一緒に行かせるように仕向けたんです?」

 歳が近いとはいえ、先ほどのやり取りからするにあまり相性が良いとは思えない。
 そんな二人を、忙しいと嘘をついてまで一緒に行動させようとしていた事に、アヤはイマイチ納得出来ていなかった。

「んー、まあ、将来を見越してね」
「将来?」
「そう、キョーコちゃんがお嫁さんに来てくれてからの話なんだけどね」

 ちょっと気が早すぎかな、と頬を掻きながら、エミは続ける。

「ジローと結婚したら、キョーコちゃんは悪の首領の嫁になるでしょう? そうなると、他の組織と会う事も多くなるわけで……」
「……ああ、なるほど」

 エミの言わんとしている事に気付き、アヤはポンと手を合わせる。
 つまり、今の内からキョーコを他の組織の人間と関係を持たせる為に一芝居うったという事らしい。

「それに組織の規模はともかく、ヴァルキュリアの資金力は魅力的だからねー。できれば、良い関係になっておきたいなーって」

 可愛い素振りでウインクするエミだが、その瞳の奥にルナの持ってきたお金が映っている事にアヤは見逃さなかった。

「ま、まあ、確かに人間関係は大事ですけど……でも、あの二人、大丈夫ですかね?」
「大丈夫って、何が?」
「相性が良いとは思えないのですが……」

 二人っきりにさせて親密度が高まればいいのだが、逆にもっとこじれてしまう可能性もある。
 むしろ、そっちの方の可能性が高いような気がする。

「んー、まあ、大丈夫でしょ」

 だが、エミは手を振ってアヤの心配を否定する。
316松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/12(土) 19:09:02 ID:00lzVa4m
 
「今はちょっとギクシャクしてるけど、結構似たもの同士に感じるのよね、あの二人って」
「似たもの同士、ですか?」
「そう。ぶっきらぼうに見えて、実は優しい所とかね。お風呂で裸のお付き合いすれば、案外簡単に仲良くなるかもしれないわよ」
「ふむ……」

 エミの言葉に、アヤは口元に手を当てて頷く。
 何も考えてないように見えて、実はちゃんと考えている。
 そんな母の性格を、アヤは十分すぎるほど分かっていた。

「母上がそう言うなら……それで、これから私たちはどうするんです?」
「まあ、しばらく二人っきりにさせた後、一緒にお風呂に入ればいいんじゃない? 昨日みたいに」
「……また既成事実を作ろうとするのは無しですからね」
「わ、分かってるわよ。そんな事する訳無いじゃない」
「そういいつつ、視線を逸らすのは何故です?」
「……あのー、盛り上がっているところ悪いんですけど」

 そこでやっと、エミとアヤはもう一人この場にいた事を思い出す。
 後ろを振り向くと、そこには大量の食器を前にしたエーコが半べそで洗い物をしている最中だった。

「お風呂には、私もご一緒してよろしいのでしょうか?」
「その洗い物終わったらね」
「無理! 絶対無理!」
「じゃあ、一緒にお風呂は無理ね」
「酷い!」
「自業自得でしょ」

 無駄に迫力のある笑顔のまま語りかけるエミから視線を外し、エーコは隣に立っている姉に嘆願するような目で語りかける。

「アヤ姉ちゃん、助けて!」
「働かざる者食うべからず、という言葉があってな」
「酷い!」
「自業自得だ」

 アヤにまでそう言われてしまったら、もう何も言い返せない。

「よし、じゃあ少し時間つぶしがてら、お菓子でも食べよっか? 水ようかんあったわよね」
「確か、先日買った残りがあったかと」
「私も−、私もー」
「「いいから働け、ニート」」
「うう、世間の風が冷たいとです、お父さん……」

 阿久野家の夜は、まだこれから始まったばかり――かもしれない。
317松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/12(土) 19:13:14 ID:00lzVa4m
ルナが出てきてから書き始めたのに、全然進んでないのはご愛敬
そしてすぐに九州編が終わってしまった事に愕然としたり

>>308さん、アホな質問に答えてくれてありがとう
それでは、また次回 ノシ
318名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 19:47:20 ID:Jcq/c45a
なんという低能!
ルナとキョーコのお風呂クルー!?

全裸待機して待ってます!
319名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 22:53:21 ID:vTbyqCNv
相変わらず低脳すなぁ
GJ!
320名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 16:51:02 ID:dXKlE0Kf
いやほんと、素晴らしか低能ですなぁ
続き楽しみにまってますよー
321名無しさん@ピンキー:2009/09/22(火) 01:02:42 ID:tdDsU0Ld
保守
322名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 20:01:02 ID:hUcUKhz4
期待保守
323松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/23(水) 21:46:54 ID:aiztrIZ+
なんとか連休中に間に合った……
そんな訳で第二話って事で
324松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/23(水) 21:47:36 ID:aiztrIZ+
 
 ――空気が重い、とはこういう事を言うんだろう。
 そんな事を思うほどに、私と彼女――枕崎ルナの間に漂う空気は暗く沈んでいた。

「……」
「……」

 阿久野家の脱衣所の中。私たちは無言のまま、服を脱いでいる。
 別に険悪な雰囲気という訳ではない。
 今の私に彼女に対する敵意は無いし、それは向こうからも感じられない。
 ――ただ、何を話せばいいのか分からないだけで。

「……」
「……」

 まあ、この状況も当たり前と言えば当たり前だ。
 何せ、私と彼女が出会ってからまだ数時間しか経っていないのだから。
 ……数時間しか経っていないのに、なぜ私たちは一緒にお風呂に入ろうとしているのだろう?

「……先、行ってるね」
「……う、うむ」

 ラフな格好だった為、脱ぐのはすぐに終わった。
 逆に彼女はドレスを脱ぐのに手間取っているようだ。

「……ん、む……むむ」

 はぁ……しょうがない。

「!?」
「動かないで」

 驚く彼女を尻目に、私は背中にあるドレスのボタンを外していく。
 なんでこんな所にボタンなんて付けるのだろう。
 見た目が大事なのは分かるけれど、それより実用的な方がいいに決まっているのに。
325松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/23(水) 21:47:57 ID:aiztrIZ+
 
「はい、終わり」
「え、えと、その……」
「ん?」
「そ、その……なんでもない」

 私が離れると同時に、彼女の身体からドレスがふわりと舞い落ちる。
 うわ、肌しろー。
 思わず、日に焼けた自分の肌と比べてしまう。

「……日焼け止めくらい塗るべきだったか」
「?」
「なんでもない、こっちの話」

 塗ったところで、元々の肌の色自体違うのだから比べられるものじゃないのは分かっている。
 それでも、ちょっと悔しいと思ったり。
 ……いかんいかん、張り合ってどうする。

「じゃあ、行こうか」
「あ、ああ……」

 タオル一枚だけを巻き付けた姿で、私と彼女はお風呂場へと向かう。
 最初は私が前を歩いていたが、ふと思いついて彼女の方を先に行かせる。

「?」

 私の不自然な行動に首を傾げる彼女。
 だがその理由は、彼女が脱衣所の扉を開けた瞬間、目の前に広がった。

「おおっ!」

 扉を開けた姿勢のまま、彼女は感嘆の声を漏らす。
 それもそのはず、エミさんは温泉としか言ってなかったし、私たちもあえてそれを隠していたから。
 温泉は温泉でも、それが露天風呂だとは思わなかったのだろう。
 広い浴場と、その上に広がる満天の星空を、彼女は口をぽかんと開けたまま見つめる。
326松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/23(水) 21:48:41 ID:aiztrIZ+
 
「さすがキルゼムオールの拠点……すごいな!」
「そ、そうね」

 これが『正義の味方』に壊滅させられた時に出た温泉である事は黙っておこう、うん。
 そういう私も、昨日ここを見た時は同じ様な反応をして、エミさんに笑われたのだけど。

「あれ、でもあんたって鹿児島出身よね? 向こうの方は温泉多いからこんなの見慣れてるんじゃないの?」
「確かに多いが、拠点に温泉が湧いている組織なんてほとんどないからな。珍しいのは確かだ」
「なるほど」

 私が呟いている間に、彼女ははやる気持ちを抑え、でも隠そうとはせずに湯船へと向かう。
 ちゃんとかけ湯をして汚れを落としてから、ゆっくりと湯船の中に身体を沈めていく。

「……ふぅ」

 思わず零れた可愛いため息。
 それを聞いて、私から小さな笑みが零れる。

「な、何がおかしい!」
「ううん、さまになってるって思っただけよ」

 温泉の多い地域出身と言うだけあって、かけ湯からため息を零すまでの流れは慣れたものだった。
 そんな彼女の動きを真似しながら、私もそっと湯船に足をつける。

「……ふぅ」

 そこまで真似する気はなかったのに、何故か零れてしまうため息。
 ニヤニヤとこちらを見ている彼女に、今度は苦笑を零すしかなかった。

「……」
「……」

 ――再び訪れる、無言。
 だけどそこに、さっきまでの緊張感は無かった。
 私も、彼女も、湯船に身を沈めたまま、頭上に広がる星空を無言で見上げていた。
 湧き出る温泉は湯船にそそがれ、小さな波音を立てて私たちの身体を揺らす。
 たまに迷子になった蛍が視界を横切り、それを呼び止めるかのように虫達の声が響く。
 音はある。
 それでも静かに思えるのは、きっと私たちの心が静かだから。
327松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/23(水) 22:04:13 ID:aiztrIZ+
 
「――すまない」

 賑やかな静寂の中に響いたのは、彼女の発した小さな呟きだった。

「何が?」
「その……さっき、お前を……」

 足蹴にした事に対してなのか、それとも操った事に対してなのか。
 どっちかは分からなかったけれど、多分その両方だと判断して、私はパタパタと手を振る。

「いいよ、さっきの事なら。私もちょっとやりすぎたし……ごめんね」

 あれを『ちょっと』の一言で済ますかは置いておいて、私も素直に謝る。
 確かに彼女にされた事は屈辱以外の何者でもなく、その他いろいろと複雑な感情がわき上がったりわき上がらなかったりしたけれど、
 それは全てジローを手に入れる=組織を救うという信念に基づいての行動だったと分かっている。
 正直、なんであんな奴を? と思わなくもないが、発明品の評価にジロー本人の性格は関係無いのだろう……多分。

「よいしょっと」

 私は立ち上がり、近くにあった手頃な大きさの岩へと腰を下ろす。
 夏とはいえ、木々に囲まれたこの場所は都会と比べるとかなり涼しい。
 木の香りを含んだ風が、火照った肌に心地良かった。

「風が気持ちいいな」

 ふと横を見ると、彼女も同じ様に岩に腰掛けて涼んでいた。

「……」
「? どうした?」
「え、う、ううん、何でもない!」

 まさか彼女の姿に目を奪われていたとは言えるはずもなく、私は慌てて目を逸らす。
 北欧系の血が混ざっているのか、全体的に色素の薄い彼女の身体は月光に照らされ、夜の闇の中で輝いているように見えた。
 今でさえ綺麗と思うほどなのだから、あと数年もしたら、彼女はきっとすごい美人になるだろう。

「……」

 数年後の彼女の姿を想像した後、現在の自分の姿に視線を落としてみる。
 自分が彼女と同じ年の頃はどうだっただろうか、と。
328・二年前:2009/09/23(水) 22:04:50 ID:aiztrIZ+
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329松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/23(水) 22:06:40 ID:aiztrIZ+

「まるで成長していない……」
「ど、どうした!? 何か今にも死にそうな顔してるぞ!?」
「き、気にしないで……ちょっと時の流れの残酷さにうちひしがれていただけだから」

 いやいやいや、まてまてまて、私だってまだ若いんだ。
 若さとは振り向かない事!
 そう、あと数年したら私だって――
330・BEFORE:2009/09/23(水) 22:07:48 ID:aiztrIZ+
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331・AFTER:2009/09/23(水) 22:08:31 ID:aiztrIZ+
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332松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/23(水) 22:09:12 ID:aiztrIZ+
 
 なんと言う事でしょう!

「いやー! こんなまったく劇的じゃないビフォーアフターはいやー!」
「ど、どうした!? いきなり錯乱して!?」
「き、気にしないで……お願いだから気にしないで」

 お、落ち着け、私。
 というか、なんで私は中学生の女の子に負い目を感じなきゃならないのよ!

「って、あれ?」

 ……中学生……そっか、まだ中学生なんだよね。

「あんたってさ……」
「……ルナ」
「へ?」
「あんたじゃない、ルナだ」

 それが呼び方を指しているのだと気付くのに、数秒かかった。

「あ、ああ、えーと、ルナ……ちゃん?」
「ルナでいい」
「分かった、じゃあ私もキョーコでいいよ」

 そう言えば今まで自己紹介してなかったっけ。
 キョーコ、キョーコか……と口の中で呟くかの……じゃなかった、ルナを見て思い出す私。

「じゃあ、改めて……ルナって、組織の首領なんだよね」
「うむ」
「今更だけど、なんでその年で首領なの?」

 ルナのお母さんとエミさんは知り合いと言っていたし、きっと歳も近いだろう。
 そんなエミさんがまだ現役なのだから、ルナのお母さんだってまだ首領でもおかしくはないはずなのに。
333松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/23(水) 22:10:04 ID:aiztrIZ+
 
「……私の能力はさっき見ただろう?」
「うん」

 見たというか、感じさせられましたが。

「あれは血筋的なものでな……それも若い内に発現するものなんだ」
「若い、うち……」
「そうだ。そして歳を取ると、少しずつ弱くなっていく」

 弱くなる……つまり……

「今、母さまに昔ほどの力はない。だから私が首領になった」
「……なるほど」

 能力の有無が首領の条件という訳か。
 で、その能力が弱いからジローに助けを求めに来た、と。

「……首領って大変だね」
「そりゃ、首領だからな」
「遊びたくなったりとかしないの?」
「……組織の方が大事だ」

 ルナは少しだけ逡巡したけれど、それでもはっきりと言い切る。

「……」
「? どうした?」
「うん……ちゃんと考えてるんだなって、感心してた」

 まだ中学生だというのに、ルナはしっかりと組織の事を考えて行動している。
 ううん、ルナだけじゃない。
 ジローだって悪の組織の首領になる為に、外の世界に飛び出した。
 いや、飛び込まれたこっちにはたまったもんじゃないけれど……それでも、ジローはジローなりに考えている。
 それに引き替え、自分はどうだろう。
 自分が中学生の時――いや今でも、そこまで考えているだろうか?

「……ダメだな、私は。今も、昔も、自分の事しか考えられなくて」
「?」

 不思議そうにこちらをのぞき込むルナに、私は頭を掻きながら呟く。
334松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/23(水) 22:10:50 ID:aiztrIZ+
 
「……私さ、お母さんいないんだ」
「む?」
「私がルナ位の歳の時にね、死んじゃったんだ、お母さん」
「っ!」

 視線を揺らすルナに、私は優しく微笑み返す。
 気にしないで、と。

「ちょっと色々あって、その事を正面から受け止めれなくて……私はお母さんが死んだ事から逃げてた」
「……」
「やっと最近それに向き合える様になったんだけど……それも、結局はジローとか友達のおかげでね。自分が頑張った訳じゃないんだ」
「……」
「だからかな、頑張ってるルナを見ると、その……羨ましいって思う。私は誰かの為に頑張った事って無いから」

 それは、本心からの言葉だった。
 自分が頑張ってなかったとは思わない。
 だけどそれは、全て自分の為。
 他の誰かの為に頑張っているルナやジローとは違う。

「……すまない。さっき、嘘を付いた」
「へ?」
「遊びたくないか? と聞いただろう」
「う、うん」
「……たまに、遊びたくなる」

 なるほど、さっきの逡巡はそれか。
 それでも言い切ったのは、きっとルナの覚悟の現れ。

「だから、さっきお前は誰かの役に立った事が無いって言ったけど、それは違うぞ」
「え?」
「その……今日、お前達と遊べて……ちょっと楽しかった、から……」

 顔を背けて、ルナは小さな声で呟く。
 その顔が少し赤いのはきっとのぼせているから……という事にしておこう。
 私は微笑を浮かべたまま、ルナの頭にそっと手を伸ばす。
335松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/23(水) 22:11:33 ID:aiztrIZ+
 
「ありがとうね、ルナ」
「こ、子供扱いするな!」

 拗ねたように俯くルナ。
 だけど、本気で嫌がっている様には見えない。
 だから私は、そのままルナの頭を乱暴に撫でる。

「ふみゃ!」
「まだ中学生が何言ってんの!」

 今度はちょっと嫌がってるように見えるけど、それ以上にルナが楽しそうなので私は撫でるのをやめない。

「また、こっち来るよ。その時はルナの所に遊びに行っていいかな?」
「私の所?」
「そう。ルナの組織、案内してよ」

 笑顔で言う私を、ルナは驚いた顔で見上げる。

「そ、そこまで言うなら……また操られても知らないからな」
「望む所よ」

 口を尖らせて、でもやっぱり嬉しそうにルナは言う。
 そんなルナを見て、私は満面の笑みを返す。
 次に来るのは冬休みだろうか。
 雪を見ながら温泉というのもいいかもしれない……って、こっちって雪降るんだっけ?

「それなりに降るわよ。積もる事もあるしね」
「へー、降るんだ……って、誰?」

 私でもルナでも無いその声に、私たちは慌てて振り向く。
 振り向いた先にいたのは――

「ふふ、いつの間にか仲良くなってるのね」
「お邪魔していいかな」
「エミさんと、アヤさん……?」
336松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/09/23(水) 22:12:44 ID:aiztrIZ+
次でラストになります
そしてきっとエミさん無双

ではまた ノシ
337名無しさん@ピンキー:2009/09/24(木) 22:27:12 ID:kwMNrBN7
GJ
期待して待ってます
338名無しさん@ピンキー:2009/09/26(土) 21:49:31 ID:zBqds/bg
ナイス低能!
エミさん無双に期待w
339名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 11:24:52 ID:auO5Thf5
よいよい
340名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 23:52:32 ID:tvKte0Kj
gj
341名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 22:08:42 ID:jjPr4p+q
342名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 00:13:08 ID:CgoA2izU
保守
343名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 20:43:02 ID:ppoUbgll
保守
344名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 20:06:12 ID:SupMdIl4
保守
345松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/10/12(月) 23:10:33 ID:5RilOwCT
投下しようとしたら、タイミング良く保守されて迷うのはいつもの事。

そんなわけでラストです。
346松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/10/12(月) 23:11:19 ID:5RilOwCT
 
 私でもルナでも無いその声に、私たちは慌てて振り向く。
 振り向いた先にいたのは――

「ふふ、いつの間にか仲良くなってるわね」
「私たちもお邪魔していいかな」
「エミさんと、アヤ姉さん……?」

 お風呂場の入り口に、身体にバスタオルを巻いた姿の二人が立っていた。
 ――って、あれ?

「後片付けは終わったんですか?」
「え? あ、ああ、多分終わって……るんじゃない?」

 何故か疑問形で目を逸らすエミさん。
 ……エーコお姉ちゃんの姿が見えないのは、きっとそう言う事なんだろう。

「い、いいじゃない。エーコは向こうでキョーコちゃんとスキンシップしてるんだから。たまには働かせないと」
「……まあ、それは確かに」

 スキンシップ云々はともかく、エミさんの言っている事は正しい。
 きっと今頃、泣きながら後片付けをやっているのだろう。

「さてと……」

 どこか嬉しそうに、エミさんはかけ湯もそこそこに温泉へと入ってくる。
 アヤ姉さんはそんなエミさんを呆れたように見つつ、しっかりとかけ湯をしてから温泉に足を伸ばす。

「「……ふぅ」」

 さすが親子と言うべきか、二人は同じタイミングでため息をつく。

「……どうしたの、二人ともニヤニヤして?」
「い、いえ、なんでもないです」
「う、うむ、なんでもない」

 思わず顔を見合わせて苦笑する私とルナ。
 零れるため息。それはきっと温泉の魔力なのだろう。
 そんな私達を見ながら、エミさんは懐かしそうに目を細める。
347松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/10/12(月) 23:12:05 ID:5RilOwCT
 
「ふふ、二人を見てると昔を思い出すわね」
「昔、ですか?」
「ええ。あの頃はまさか、あの子の子供と一緒に温泉に入るとは思いもしなかったけど」
「あの子って、母さまの事か?」
「そう、あなたの母さんともこうしてよく温泉に入ったのよ」

 ルナの顔を見ながら、エミさんはその向こうにいる相手の事を思い出しているようだった。

「結構、無茶したわよ……二人で正義の味方の基地に乗り込んだりね」
「へぇ……」
「ほんと、色々と頑張ったわ」

 エミさんの言葉に、アヤ姉さんは少し驚いた様に声を上げる。
 その辺りの話はアヤ姉さんも知らないようだった。
 何気に昔は真面目に活動して――

「ほら、正義の味方の男ってイケメン多いでしょ? だから二人で物色に――」
「ちょっと待てー!」

 エミさんがその言葉の先を言う前に、アヤ姉さんが後ろから羽交い絞めにしていた。

「頑張ったって何を頑張ったんですか!」
「え、それは勿論……ねぇ?」
「何が『ねぇ?』なんです、何が!」
「え、全部言ったほうがいい?」
「う、ぐ……」
「ほら、正義の味方の男ってイケメン多いでしょ? だから二人で襲いに――」
「言い直さなくていいです!」

 前言撤回、今も昔もあまり変わらないようで。
 むしろ、昔の方が酷かったような気がする。
 ……でも、ちょっと聞きたかったのは内緒だ。

「えー、アヤのいけずー」
「実の子供の前でいう台詞ですか!」
「まったく、真面目なんだから……誰に似たんだか」
「母上が不真面目なだけです!」

 どうやらアヤ姉さんの性格は遺伝ではないらしい。
 エーコお姉さんはどう考えてもエミさんゆずりだけど。
 むしろ、こんな家族だからこそしっかりとした性格になったのかもしれない。
348松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/10/12(月) 23:12:59 ID:5RilOwCT
 
「少しは不真面目になった方が、人生楽しいわよ?」
「結構です!」
「もう……そんなんだから、いつまでたってもあなたは処女なのよ」
「なっ!」

 ……何か今、凄い事を聞いたような。

「は、母上っ!」
「あら? もしかしてもう致したのかしら?」
「い、致したって……」
「どうなの? どうなのよ?」
「え、あ、いや、その……」
「……」

 阿久野アヤ。
 27歳。
 処女。←やっぱりまだココ

「ったく……一番下の妹を見習いなさいな。今頃あの子、正義の味方とイチャイチャしてるわよ?」
「そ、それとこれとは……」
「ねえ、どんな感じ? 妹に先を越されるってどんな感じ?」
「べ、別に……っ!」
「それとも何、魔法熟女にでもなるつもりなの?」
「熟女言うな!」

 顔を真っ赤にして慌てふためくアヤ姉さんを尻目に、エミさんは可笑しそうにケラケラと笑う。
 というか、まだ下に妹いたんだ……

「慌てる位なら早く相手見つけなさいよ。こんないい身体してるんだから、相手なんて選り取りみどりでしょ」
「は、母上! 何を!」

 エミさんはアヤ姉さんの拘束から抜け出すと、お返しとばかりにアヤ姉さんの胸に手を伸ばす。

「まったく、昔からあんたは奥手なんだから。学生の頃だって何度も告白されたでしょうに」
「わ、私は組織の幹部ですから……」
「私も幹部だったけど、来るものは拒まなかったわよ?」
「拒んでください! というか、それも子供の前でいう台詞じゃないでしょう!」

 アヤ姉さんのツッコミを華麗にスルーしつつ、エミさんはアヤ姉さんの胸を無遠慮に揉みまくる。
349松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/10/12(月) 23:13:49 ID:5RilOwCT
 
「ここか? ここがええのんか?」
「どこのエロ親父ですか!」
「昔もこうやって、洗ってあげたでしょう?」
「胸を揉まれた記憶はありません!」
「この胸はわしが育てた」
「育てられた覚えは無い!」
「揉んでくれる相手もいないしねー」
「う、く……」

 傍から見ると仲よさそうにじゃれ付いている様にしか見えない二人を横目に見つつ、私とルナは頬を赤らめて、お互いに顔を見合わせる。

「な、なんか、凄いね」
「うむ……さすがキルゼムオールの幹部だ」
「そ、そうね」

 感心する所が違うような気がするけれど、悪の組織的には間違っていないのかもしれない。
 視線を戻すと、満足そうな笑みを浮かべたエミさんがこちらに近づいてきていた。

「まあ、アヤを弄るのはこれくらいにして……キョーコちゃんもルナちゃんも、ちゃんと相手見つけなさいよ? じゃないとアヤみたいに行き遅れちゃうからね」
「行き遅れてない!」
「黙れ、27歳」
「うう……」
「あの……アヤ姉さん、向こうで膝抱えてますけど……」
「大丈夫、大丈夫。父親に似て、打たれ強い子だから」
「そ、そうですか……」

 というか、相手がエミさんだったら、どんな人でも打たれ強くなるような気がする。
 勿論、口には出さないけれど。

「まあ、アヤもエーコも大概だけど……一番心配なのはジローなのよね」
「ジローが、ですか?」
「そう、あの子は何というか……常識を知らないから」
「……確かに」

 母親の前で肯定するのもどうかと思ったが、エミさんは私の言葉に大きく頷いていた。

「唯一の男の子だからって、みんなちょっと甘やかしすぎたからね……だから、今回帰ってきた時はちょっと驚いたわよ」
「? 何がですか?」
「昔より大分まともになったってね」

 ……あれで、大分まともになった方なのか。
350松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/10/12(月) 23:14:34 ID:5RilOwCT
 
「ふふ、なんか納得いかないって顔してるわね、キョーコちゃん」
「そ、そんな事は……」

 思っていたけれど。

「いいのよ、前のジローを見てないと分からないかもしれないしね」

 エミさんは苦笑しながら、私とルナの隣へと腰掛ける。

「前にアヤがそっちに行った時も驚いてたわよ。ジローが立派になってたって……それも全部、キョーコちゃんのおかげだって」
「わ、私ですか?」

 慌ててアヤ姉さんの方を見ると、アヤ姉さんは膝を抱えたまま小さく頷いていた。

「べ、別に私、何もしてないですけど……」
「何もしてなくても、側にいるだけで良い影響を与える相手ってのはいるのよ」

 私とあの子みたいにね、とエミさんはルナの頭を撫でる。

「キョーコちゃんも、ルナちゃんも、そしてジローも……お互いにいい影響を与えれるような関係になって欲しいって私は思ってるわ」

 優しい目で呟くエミさん。
 私はその目を知っている。
 知っていて、そしてしばらく忘れていた、その目。
 それは――母親の目だった。

「二人とも、ジローをよろしくね」

 正直な話、ジローは迷惑な奴だと今でも思っている。
 思ってはいるけれど――嫌な奴では無いとも分かっている。
 だから――
351松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/10/12(月) 23:15:25 ID:5RilOwCT
 
「はい」
「ああ、まかせておけ」

 私とルナは、同じタイミングで言葉を返す。
 そしてお互いに目を合わせて、笑い会う。
 エミさんとルナの母さんの様に、私たちもそういう関係になれたらいいと思う。
 その中にジローも入れてやるか。頼まれちゃったしね。

「ふふ、ありがと」

 エミさんは満面の笑みを浮かべながら、私たちの頭を撫でてくれた。
 それは、久しぶりに感じる母親の手だった。

「よし、じゃあ今日は一緒に寝よっか? ルナちゃんも一緒にね」
「わ、私もか?」
「大丈夫、母親にはもう連絡してるから」

 いたずらっぽく笑うエミさん。その手際の良さに私たちは苦笑を返すしかなかった。

「なんならジローも……」
「いや、それはいいです」
「だよね、寝るなら二人きりの方がいいもんね」
「……はい?」
「なんと、二人はそこまで……」
「違うから!」

 慌てふためく私を尻目に、エミさんはルナの耳元に口を寄せる。

「実はこっちに来る前に名古屋で二人っきりで一泊してるのよ」
「なんと……実家に挨拶に来る前に婚前交渉とは……」
「まてこら」

 あんた分かってて誤解してるでしょ!
 エミさんもわざわざ紛らわしい言い方するな!
352松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/10/12(月) 23:16:23 ID:5RilOwCT
 

「そうなると、やはりここは二人一緒の部屋にするべきだな」
「そうよね……勿論、布団は一つで」
「枕は二つと」
「ひ、避妊具は用意しておいた方がいいかと」

 さっきまでの良い雰囲気はどこへやら。
 私を置いて無駄に盛り上がる三人……って、アヤさんもいつの間にか加わってるし。

「……もうやだ、この悪の組織」

 呆れたように呟いて、私は湯船にざぶんと身体を沈める。
 綺麗な星空の下、私の呟きに答えてくれたのは迷子の蛍の明滅だけだった。

「ところで母上、私が弄られた意味はあったのですか?」
「んー、別に」
「別にって……」
「でも、行き遅れてるのは本当だしねー」
「う……」
「あんたといい、エーコといい、早く身を固めて欲しいのだけど」
「……精進します」

*****

「くそー、私も一緒にお風呂入りたいのにー! ジロー手伝ってよー!」
「いや、母上から手伝うなと言われているので……」
「ちくしょー! 私の出番これだけかよー!」

――おしまい。
353松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2009/10/12(月) 23:18:59 ID:5RilOwCT
>>271のSSと微妙にリンクしたりしてるので、まだ読んでない人は先にそちらを読んでいただけるともっと楽しめるかと

長々と読んでいただきありがとうございました
ではまた ノシ
354名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 10:45:27 ID:cHmFhpvq
>>345-353
GJ!
原作の雰囲気出てる
355名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 13:11:14 ID:07odiMVf
ナイス低能!
エミさん、はっちゃけすぎだw
356名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 21:48:29 ID:dNFOCeG6
いままさにキョーコ乙型が俺の中で最高に萌えている。
でも、原作を超える萌エロは書けそうにない。
357名無しさん@ピンキー:2009/10/15(木) 11:35:13 ID:uMc5K1m4
乙型可愛いけどはじあくてきには今週重かったなぁ
國生さんに見えた
358名無しさん@ピンキー:2009/10/16(金) 19:47:55 ID:Iui7B9Sk
松雪氏GJ!

そして乙型期待age
359名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 18:13:12 ID:LbvWzR9i
AI萌えでメイド萌えな俺にはキョーコ乙型はクリティカルヒットすぎる
360名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 22:32:26 ID:WnrNnIv8
最近、ジロー×キョーコを保ったままジローと乙型でエロい展開に持っていくにはどうすべきか
悶々と考え続けている
361名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 23:04:07 ID:z6RhKszZ
おれはジローがどうやったらキョーコに変態的なプレイを強要できるのかを考え続けて
熱が出た

とりあえずジローが不思議な機械か薬でキョーコの体の自由を奪うとこまではいいのだが
キョーコが猛烈に暴れまくる上に腕力・体力・気の強さが半端ないものを無力化しているので
どう考えてもレイプです。本当にありがとうございました。
362名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 01:25:52 ID:FmYmrzhq
逆に考えるんだ
ジローを襲えばいいのだと!

性転換薬でジロー女性化とか考えたけど、それだと相手は男性化したキョーコか・・・
と、考えて、頭に浮かんだのはどう見ても百舌鳥さんです、本当に(ry
363名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 05:37:42 ID:P71oNTpb
>>361
レイプだっていいじゃないか、ここはエロパロだ
364名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 08:04:52 ID:h+ru8PzP
>>360

先週号のネタだと、

(ヒューズを取り替えたのはいいが……AIも一応見ておくか。
 しかし、父上は『おんなはしきゅうでかんがえる』といっていたが、
 腰周りにAIの機能を詰め込むとはまた不可思議な……)
(どうもこの三角形の布カバーをはずすというのが恥ずかしいが、
 これも乙型のためだ。ええい、一気に)

これがスイッチか、とか、制御棒とかは自制。
365名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 14:01:46 ID:L8qAuGFW
「全身を防水加工するのは手間だから、とりあえず間に合わせで作ってみた
 防水ジェルだ。これを全身に塗布すれば雨に降られようが川に落ちようが
 支障はない。ただし効果は3日ほどしか続かん」

という感じでジローが乙型の全身にジェルを塗って乙型初めての感覚にアンアン、
ジローも乙型の予想外の反応にゴクリ、というのを思いついたが
いかんせん俺は乙型初登場の回を見逃したので、設定に矛盾が出そうで不安だ
乙型のボディはジローが作ったの?親父が製作に関与してるの?
366名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 19:26:21 ID:NbyqSrkO
父親の作ったAIをジローが作ったボディに組み込んだって言ってたはず
367名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 20:54:38 ID:dJLI+S3P
>>362
ジローを襲うキョーコが変態プレイとな。ゴクリ。
だがおれは無理やり押さえつけられたキョーコが始めは嫌がっていたのに
ジローの手によってだんだん気持ちよくなっていく身体に抗えない
羞恥心と快感でわけが分からなくなっちゃうつるぺたキョーコたんが好きなんだよおぉぉぉ

だがそもそもジローにキョーコを押し倒すほどの性欲があるのかが謎
368名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 02:33:42 ID:xMyqWZw6
>>366
d
じゃあ乙型の体はジロー好みのサイズって考えていいのか
しかしジローがどこまで性的な知識があるのかが不安だ
1話じゃ「男を縛るのはつまらん」とか言ってたが、女を縛るのがなぜつまらなくないのかとか
わかってんのかなコイツ
369名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 14:54:00 ID:fb/uKRIz
女体の実物を見た事がなかった則巻博士のつくったあの子はアレがなかったそうな
370名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 18:13:04 ID:GeEWtaR5
>>367
浴衣キョーコの回を思い出せ!
蚊が出なかったバージョンを妄想するんだ!
もしくはマントの中に2人で入ってしまうバージョン
371名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 21:38:58 ID:9HBFjz6R
それだ!ぬぬぬ>>370どの、さぞ名のあるモノノフとお見受けするっ!

だがしかしジローはバスタオル一枚のキョーコに接触すると気絶しちまーほど純情だぜ!?
ジローに変態プレイを妄想はできても実行する胆力などっ!
後一押し!後一押しを誰か!
372名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 08:09:06 ID:UokmHM3t
つ おねーちゃんがお酒を飲ませた結果暴走
373名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 17:48:04 ID:xP4iqlO9
374名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 16:21:08 ID:MGFK4/Jb
375名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 16:43:54 ID:GEdsi02Z
藤木も同人誌だす時代になったんだねぇ
376名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 21:02:51 ID:CWEwwndH
二年以上前の本だけどな
377名無しさん@ピンキー:2009/11/16(月) 00:35:28 ID:3Fn6rmWC
懐かしいな……わざわざ買いに行ったもんだ
378名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 23:40:08 ID:/cEyCrj4
保守
379名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 18:26:31 ID:+ZMFKISn
シズカ参戦は黒髪ロングスキーとして素直に嬉しいがかませにしかならなさそうなのがなー
でもジローは悪の組織なんだからハーレムだってあってもいいよね
380名無しさん@ピンキー:2009/11/26(木) 23:40:43 ID:h1gkfYLh
某ライトノベルのように法律を変える
381名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 00:52:32 ID:jJst6p23
ジローヘタレだからな
ハーレムどころか恋人すら作れるか……

キョーコには頑張っていただきたい
382名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 04:27:43 ID:PhcX+Oo0
保守を兼ねて、今さらですが我聞×陽菜の小ネタ。エロ無し。

9巻真芝に乗り込む前の場面。

第一研壊滅を誓い、ゆびきりする我聞と陽菜。
「…ふふ」
微笑む陽菜。
「む?どうした?」
「いえ…そういえば、よく私の父ともゆびきりをしたな、と思って。父は約束事に特に厳しい人でしたから。」
準備のために事務所に向かう我聞を見送る陽菜。

ただし、彼女が微笑んだのは父との約束を思い出したからだけではない。
彼女はもう一つの、彼女もとっくに忘れてしまっていたゆびきりを思い出していた。
それは陽菜がまだ小学生に上がる前の話。
「おとーさーん!」
「む?どうした陽菜?」
「ガモンくんがねー、私のことお嫁さんにしてくれるってー!今指切りしたんだよー!」

私でさえ忘れていた昔のことだ、社長もとっくに忘れているだろう。
そして、何よりこれから真芝第一研の壊滅作戦が控えている、甘い思い出に浸っている場合ではない。
でも、全てが終わり、父と先代が無事戻った時には…彼は「社長」でなくなるし、私も「秘書」でなくなるはずだ。
「その時には我聞くんって呼んでいいのかな…」
陽菜はゆびきりした右手をじっと見つめながら、現実に戻るかのように、
「がんばろうね、我聞くん…みんなを悲しませないために」
383名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 19:06:44 ID:Ad8JKjL1
うひゃひゃひゃひゃ
384名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 11:25:57 ID:h+0bsd43
いよおおおし
385名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 23:12:51 ID:z+FHI7Hx
あげ
386名無しさん@ピンキー:2010/01/09(土) 18:45:08 ID:uxu9QZgz
あけましておめでとうございます
ほしゅあげ
387名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 17:08:55 ID:pdC0L6/e
ほんわか大阪弁キャラ、イイ!
388名無しさん@ピンキー:2010/01/16(土) 23:23:46 ID:N1iuyExR
ほしゅしとくぜ
389名無しさん@ピンキー:2010/01/20(水) 03:13:21 ID:6sioK3W1
>>43-53
超亀だが今見てきたらおとっつぁんの勇姿が拝めるだけなんだな

あの時の噂の大中小とかまだ持ってる人いる?
390名無しさん@ピンキー:2010/02/02(火) 22:51:29 ID:aqmWCSrv
ほしゅ
391名無しさん@ピンキー:2010/02/09(火) 20:38:52 ID:lVWWB3SD
ほし
392名無しさん@ピンキー:2010/02/19(金) 20:23:23 ID:H+MAwsDU
はじめてのあく4巻で登場した乙型が陽菜さんにしか見えなかった。
393名無しさん@ピンキー:2010/02/20(土) 14:25:03 ID:CRbSazU5
>>392
素直な陽菜さんだ
394名無しさん@ピンキー:2010/02/22(月) 20:36:58 ID:dXLCGGzJ
そんなの陽菜さんじゃない!


いや、そうでもないか?
395名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 20:54:56 ID:UJ6Y5Dh4
「はじめてのあく」と「ギガグリーン」は同じ世界みたいだけど、「こわしや我聞」とは別世界ってことになってる?
なんかクロスオーバーできたら面白いなぁってボンヤリ考えてた。
396名無しさん@ピンキー
原作設定がどうかはわからんが
二次創作でクロスオーバーする分には構わんだろ
同じ作者の作品なんだし