無口な女の子とやっちゃうエロSS 六言目

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611名無しさん@ピンキー:2008/12/08(月) 03:15:05 ID:ETrKgNJQ
>>607
無口っ子が出ないならこのスレ向きではないかな?
職人さんはありがたいけど、NTRスレの方が喜ばれると思いますよ?
612名無しさん@ピンキー:2008/12/08(月) 06:22:46 ID:4ghQQqPy
ハッピーエンドになったらNTRスレじゃ喜ばれないんじゃね
613「ラヴ・リンク」 四話 1/9:2008/12/09(火) 07:27:51 ID:Vntv1Q/v
おまたせしました。



☆「ラヴ・リンク」 四話



「ああ゛っ……っ、あぅっ! ……くぅっ!」

 聖羅高校二階、一年生の教室が中心に置かれているフロアの女子トイレに、嬌艶な旋律がひびき渡っている。
 授業中だというのに、トイレの個室の中で情事に耽っている者がいるのだ。
 半裸にされて縛られ便座に拘束された哀れな少女――比奈見亜里沙。
 ツインテールを揺らし、眼鏡の奥の双眸をうるませながら、自らの身体に出し入れされているモノの痛みと――快楽に耐えている。
 悔しかった。
 自分が女であることは自覚していたものの、無理矢理生娘を奪われ、そのうえでよがる女がどこにいるというのだ?
 眼の前で腰を振るい、冷たい笑みを張りつけている男――背川正義は、普通にしていれば精悍な面差しの少年といってよかった。
 亜里沙はそれに惹かれたわけでは断じてない。
 だが、口調も性格も少年のそれに近いものの、本質的にはやはり女であったらしい。
 それも、とびきり淫乱な、である。

「はぁっ……あっ、はん! …………あぁぁっ!!」

 自身も信じられないくらいの、淫楽に溺れる娼婦のようなあえぎ声が洩れ出てくる。
 なによりおかしいのは、処女喪失したというのに気持ち良いという事だった。
 普通、初体験のときは感じる余裕などなく、殆どが痛みによって費やされるはずなのだ。
 ところが何ゆえか、この男に突き入れられる陰茎の感触は、亜里沙に確かな悦楽を与えていたのは間違いなかった。

「あんっ! やぁん!! だ……――――あぁぁあぁあ゛っっ!!!」

 快感を制御しきれず、突如として昇りつめてしまう亜里沙。
 絶頂をむかえた彼女の顔は、初めて堪能するはげしい恍惚に満たされ、気絶寸前のところまできていた。
 肉の棒が引きぬかれると、個室の中に潮が散った。
 ありえない事に、その相手は満足――射精していないらしい。
 正視したくはない肥大したモノは、未だ萎えようとはしていない。

「…………なかなか良かったが、これじゃない」

 普通なら、いきなり何を言い出すのかと訝るところだが、彼女にそんな余裕はない。
 たったいま自分の身に降りかかった災難を直視できずにいた。
 だが、彼はそんな亜里沙にはもはや何の興味も示していないようだ。
614「ラヴ・リンク」 四話 2/9:2008/12/09(火) 07:28:27 ID:Vntv1Q/v


「……おいお前。着替え終わったら授業に戻るんだぞ。いいな?」

 何事もなかったかのような口調。
 いつもの、堂々とした生徒会長然とした雰囲気をまとい、手早く服を着替えてさっさと退出してしまう。
 扉の外には、「黒い三連性」が待っていた。

「……どうだった?」

 三人のうちのひとり、ウルフカットが尋ねた。どうやら彼女がリーダー格らしい。

「悪くはない。だが違う……」

 生徒会長の言葉にやや肩を落とすウルフカット。
 そしてついに、彼の口から重大な発言がおこった。

「もう長いこと見つかっていないから、そろそろと思ってな――潮時だ。鈴森朋美を呼び出せ。今日の昼休み、屋上に来いとな」

 ―――

 比奈見亜里沙が蹂躙された、前日の夜のこと。
 槍田秀一はいつものように、机に置かれているPCに向かっていた。
 なにやら絵を描いているのだが、秀一の暗い表情と同様、手がおぼつかない。
 それに、普段の彼が描くとは到底考えられない、冷たく、良くいえばクールな雰囲気の女性を書いている。
 長い黒髪をなびかせ、目鼻立ちの整ったりりしい面差し。均整のとれた肢体。
 いつもよりシャープに。可憐さより精悍さを。繊細さより豪胆さを。
 それを踏まえたうえで朋美を意識して格好良く描いてみたものの……やっぱり慣れないことはするもんじゃないな。
 彼自身も、その絵の巧さは萌え方面に特化したものだと分かってはいたものの、今は到底そんな気分じゃあなかった。
 言うまでもなく、朋美が女子トイレで辱めに遭っている現場に居合わせてしまったからである。
 一度は見張りに見つかってしまったものの、実はその後戻ってきて一部始終をほとんど耳に入れてしまったのだ。
 油断したのかしらないが、一度遠くまで逃げた後誰も見張らなくなったので見つからなかったのである。
 だが、果たして戻ってきて良かったのかどうか。
 自分に問いかけては、頭を抱えるの繰り返しだった。

「なんで……なんであの時助けにいかなかった? 情けねぇ……」

 そう……ただ呆然と立ち尽くすだけ――それどころか、高揚さえ覚えていた自分があまりにも腹立たしいのだ。
 朋美のあえぎ声をきいて、あげくに自涜に及ぶ彼女を想像して自らの男を硬くするなんて……彼女の友として失格だとさえ思った。
 それに、あいつらの口から出てきた言葉……
615「ラヴ・リンク」 四話 3/9:2008/12/09(火) 07:29:15 ID:Vntv1Q/v


「これ撮っとかない? セーギのやつ喜ぶだろうし」

 セーギ――生徒会長である背川正義の愛称だ。
 なぜそこで彼の名が出てくるのか。
 あの温厚誠実な背川が、少女達が痴態に及ぶ写真を集めている、なんて考えたくもない。
 秀一は背川のことなど全く興味はないが、朋美に関わっているとなると話は別になってくる。
 いや、むしろ最初になんとかすべきなのは、「黒い三連性」のほうかもしれない。

「……俺に何ができる? 何が出来るっていうんだ! くそっ!」

 自分の無力さを呪い、思わず額に掌底を当てた。
 歯噛みしながら瞑目し、思考する。
 というより、何時間もそのことが頭から離れないのだが、何一つ良い案が浮かばない。
 それに、もし浮かんだとしても、自分に実行する勇気があるのか疑問だった。

「……む?」

 なんとなくデスクトップを眺めていたら、重大な見落としに気付いた。
 なんで今までメールしようと思わなかったんだろ……?
 おもえば、朋美の誘いを断って以来、メールでの交流は絶えている。
 自分は送っていないし、彼女からも……

「! おぉ……」

 秀一は、小さく感嘆の声を発した。
 来ていない筈のもの――朋身からのメールが届いていたのである。
 早速内容を見た。

「槍田くん、先日は無理なお願いをしてごめんなさい。
 でも、また一つ頼みたいことができてしまいました。
 ――今から私と会ってほしいんです。
 もちろん、槍田くんがよければですし……槍田くんも私に頼みたいことがあればなんでも言ってください。
 返信まってます――suzutomo」

 ……。
 …………。
 
「――ぐっっ!! うぅっ!!!」
616「ラヴ・リンク」 四話 4/9:2008/12/09(火) 07:30:05 ID:Vntv1Q/v


 短い本文に目を通し終えた数秒後。
 秀一はいきなり胸をぎゅうっとおさえた。
 呼吸が荒く、手で眼を覆って何かに耐えている。
 ……駄目だ……駄目だ! この誘いに乗っちゃいけないんだ!
 彼女と会って何しようとしてる俺は!? 何を考えてる俺は!?
 いかん……そうだ! 朋美がどんな目に遭ってるか知ってるのかお前はっ!!
 それを知ってて……知って、て…………
 秀一は段々と、理性が本能に喰われてゆくのに身を任せていた。
 今の彼に、そこまで御する程の力は無かったのだ。

「そうだよ……もしかしたら、一緒に寝れば癒されるかもしれないじゃん……」

 欲情にのまれた男の思考は、ほぼ全てが、理性と客観性に欠けるもの。
 とんでもない台詞を吐く秀一の表情も、性欲抑制を妥協したことを思わせる、冷たい笑みが張りつけられていた……

 ―――

 聖羅公園。
 夜になると人気はまばら、どころか皆無になるといっていい。
 周囲に木々が並立しているため外部からは園内は見えにくいが、設置物は数個のベンチだけという殺風景な場所だ。
 ここを待ち合わせる場所と決めたのは朋美である。
 どうやら父親がいるらしく、彼が朋美の外出を許さないので、‘抜け出して’くるというのだ。
 一軒家と聞いたので、そう難しいことではないのだろうが……

「! 朋美……」

 先にベンチに座って待っていた秀一が、宵闇の中を歩む少女の姿をみとめて呟いた。
 ……エメラルドグリーンのワンピース一枚。
 夏だから別に違和感はないのだが、今の秀一には刺激的過ぎるかもしれない。
 淡い光をはなつ街灯が公園の中にまでおよび、あいかわらず不安定な足取りの朋美を照らしていた。
 ――その整った顔が、くしゃくしゃに歪んでいる。

「……槍田くん…………槍田くん!」

 立ち往生してややひきつった顔色の秀一に、全くスピードを緩めずにぶつかりかねない勢いで抱きついた。
 秀一も彼女の腰に手を回そうとしたが、震えていてできない。
 初めて経験する女の子の身体の感触・ぬくもり(特に胸)に、興奮より先に感動を覚えたのだ。
 魂が抜けたような阿呆面を暗闇に向け、やや呆けた調子になってしまっていた。
 ――ハッ!!
 と、彼はようやく‘目覚めた’らしい。
 少女が見ていないうちに表情を引き締め、嗚咽をもらす朋美の腰に手を回し、ひしと抱きしめた。
 彼にしては奇跡的なまでの動作といっていいだろう。
617「ラヴ・リンク」 四話 5/9:2008/12/09(火) 07:30:50 ID:Vntv1Q/v


「鈴森、さん…………どうしたの?」

 努めて平静を装いながら、優しく問いかける少年。
 おそらく、心臓の鼓動はかつてないほど鳴りひびいていた。
 相手に伝わってないかと不安になるが、お互いそれどころでは無いように思う。
 懸念を表情に出さなかったのは、朋美に不安を抱かせないのと、何より彼自身のプライドのためでもある。

「……………………」

 返答はすぐには得られなかった。
 むろん、それに苛立ったりするようなことはなく、むしろこうしているのが心地よく感じていた。
 朋美の途息。やわらかな肌のぬくもり。性的な意味ではなく身体を重ねあっているこの感覚。
 しばらくされるがままもいいかな、と、なにか安寧とした気持ちになっている。
 不思議だった。
 考えたくもないが、ついさっきまで彼女を手込めにしようなどと思っていたではないか。
 それがどうだろう。
 別に意識するでもなくそういった邪な欲望が無くなっているのだから、人間の感情とは奇異なものである。 

「…………槍田……くん」

 どれほどの時間、そうしていたかは分からない。
 かわいい声で唐突に呼ばれ、秀一は身体を跳ね上げそうになるほど驚いた。
 ほどなくして、ようやく朋美が秀一から離れた。
 といっても、一歩にも満たない絶妙な距離間である。
 最高に美しい少女の澄んだ瞳が、お世辞にも男前とはいえない少年のおもてを、真っ直ぐに見据えている。
 一方、彼の方はというと……彼女の期待に応えきれず、なかなか目を合わす事が叶わない。
 たまに合わさってもすぐにそれてしまい、何か気まずげにうつむくのだ。
 それは秀一という人間を十二分に表していたが、こんな場面では雰囲気を悪くするだけだ。
 ――と思われた。
 少女の真剣な表情が急にほころんだかと思ったら、

「……くすっ」

 という忍び笑いがもれて、さらにはくつくつと微かな笑い声を発し始めたのである。
 口元をおさえながら上品な笑声を響かせるところが、なんとも彼女らしかった。
 ぽかんとする秀一をよそに、朋美が口を開き始めた。

「槍田くん………………チャック……」
618「ラヴ・リンク」 四話 6/9:2008/12/09(火) 07:31:26 ID:Vntv1Q/v


 少女がその単語を重々しく開くなり、少年はハッとして社会の窓を見た。
 ――全開だ。
 ‘実’まで出ていなかったから良かったものの、いや、どちらにせよこんなことで笑ってくれるとは、助かったと思った秀一である。
 目線を合わせられずキョドっている自分を見て吹き出したのかと思ったが、とんだお門違いだったらしい。
 慌てて窓を閉めてから、ちょっとした恥ずかしさを隠すように言った。

「良かった、鈴森さんが笑ってくれて。もう見れないんじゃないかって、心配してたんだぜ?」

 事実である。
 常日頃からあんなコトをされているのだと思うと胸を裂かれるし、彼女にとってあれはどれほど辛いものなのか、今はそれが一番気がかりだった。

「………………ごめん、なさい……」
「いや……全然気にしてないよ。寧ろ……」

 凄く嬉しかったよ。
 俺、朋美のことが好きだから、抱きつかれた時なんかもう、死んでもいいとさえ思ったよ――
 などと言える秀一ではなかった。

「……それより、用事って何?」

 どうにか別の台詞に切り替えることができた。
 ここまで気転がきく自分に感心した少年である。
 ふだんの、あるいは以前の自分だったら、どうしたってこんなに口が回るとはおもえない。
 ……自分も訊きたい事が山ほどあるのだが、相手から用を告げられた以上は、大人しく聞く必要があるだろう。
 秀一には、それだけの気遣いを出来る心と、度量の大きさが持ち併さっていた。
 だが、朋美の方はと云うと、どうしようかと思案に暮れるはめになっていた。
 まさか――彼に抱かれたくて家を飛び出してきた、などと、今の雰囲気となってしまっては言えまい。

「………………あのね……槍田くん、実は……――」
「無理しないで」

 極めてゆっくりと喋る朋美の台詞を半ば遮る格好となった。
 しかし、朋美の反応はどうだろう。
 優しく、諭されたかのようなひと言に、呆気にとられて秀一を見た。
 不器量な顔立ちだが、微かな笑みを見せる秀一のおもてには、どこか人を安心させる雰囲気を纏っているようだ。
 朋美も例外ではなく、いや、それどころか聖人のような感覚さえ抱かせた。

「あ……いや、ゴメン」
619「ラヴ・リンク」 四話 7/9:2008/12/09(火) 07:32:13 ID:Vntv1Q/v


 突然くだけた感じになって、苦い表情を浮かべる少年。
 さっきまでの雰囲気はどこへやら、である。

「……でもさ、こういうのもなんだけど…………俺がいるじゃん?」

 朋美はふたたび呆気に取られて……今度は少年の顔を見ることができなかった。
 秀一がかすれ声になっているのに気付いていたからかもしれない。

「俺がいる……………………だからさァ……」

 いつの間にか、彼が自分の両手を握っていたことに気付く。
 乾いた、ざらざらした掌だけど、あったかい。
 頭を垂れる秀一を見て――視界が霞んでいた。
 恐らく、相手も同じ状況だと思う。

「話してよ…………! 俺って……そんな、に、頼りない奴かぁ……? お願いだよ朋美……」

 情けないとは思っていても悲哀の感情は止められず、涙と鼻水でくしゃくしゃになった顔と声で、言葉をつむぐのもやっとだった。
 初めて名前で呼ばれた感慨にふけるより、自分に対しての嘲笑いたい気持ちでいっぱいだった。
 たぶん秀一くんは、私がどんな目に遭っているか知ってる。
 だからこそこんなに心配してくれていたのに、自分は何を求めて会いに来たのだろう?
 涙が白い頬をつたっていくと同時に――朋美は腹をきめた。
 揚々にして、全てを話そうと誓ったのである。

 ―――

 ふたりは場所を移動して、ベンチに腰掛けて喋っていた。
 夜の闇に落ちた空間の中で朋美が発する透きとおった声は、鱗粉を散らす蝶々のような甘やかさを感じる。
 全てを話し終えたとき……少女は息切れを起こしていた。
 もともと歯切れは良くないし、話すのも不得手なものだから、どれほどの時間を要したかわからない。
 秀一はとぎれとぎれな彼女の言葉を一度もさえぎることなく、ずうっと口を閉ざして聞いていた。
 これは半端じゃなく苦行になる。そう思った。
 いまや、朋美と寝たいだとか、肌を重ねたいだとか、そういう思いは良い意味で萎えきっていた。
 これだけの話を聞かされたら、自分も彼らと同類項に位置するのではないかと思うと、とてもじゃないが彼女に手を出そうとはおもえない。
 それよりも、奴らをどうするかの方がよっぽど大事な事柄だ。
 とはいえ、一体どうすれば彼らを止められるのか。
 極論を言えば、実力行使すればいいだけの話かもしれないが、それは自分の身をも滅ぼすことになる。
 かといって行動を起こさないことには何も変わらない。
 悩みに悩んだ末に、秀一はこういう結論を出した。

「わかった。俺もついてくよ」
620「ラヴ・リンク」 四話 8/9:2008/12/09(火) 07:32:50 ID:Vntv1Q/v


 堂々きっぱりと宣言した。

「……秀一くん、が?」

 もう名前呼びだろうが、違和感など微塵にもない。

「ああ。相手が猛獣ならともかく、言葉が通じるならまだましな部類だ。
 それに俺がいるとなっちゃ、眼の前でおま……朋美を踏みにじろうとはできないだろ。いや、俺がそんなことはさせない。絶対に」

 確かにそのとおりだった。
 無抵抗な美少女ひとりに猛威を揮えても、男も同伴とあっては下手な真似は出来ないはずだ。
 実は秀一、身体には自身がある。
 喧嘩は小学生以来していないが、一時期筋トレにハマっていたためか、胴長短足のきらいはあるものの体格は立派なものだ。

「だからさ、朋美。安心しろなんて言わないから、無理はしないでほしい……俺がいるんだから、いつでも頼ってくれよ」

 まァそこまで頼れる男かは疑問だけど……
 とは彼が口に出さずに付け加えた自虐だが、果たしてそれは本当なのか。
 ――ふと、隣に腰掛ける朋美が、寄り添うように秀一の顔を覗き込んできた。

「……じゃあ、いつでも頼っちゃおうかな。……そうしないと、私の……きゅ、救世主様に怒られちゃうもの」

 朋美の歯が浮きそうな弁に少しぼうっとした秀一だったが、すぐに引き締めた。

「おうよ! いつだっていいぜ。その代わり……」

 …………。
 その代わり――次につづく口上が、喉につっかえて出てこない。
 なんとなく、流れからしてあれしかない様な気がするのだが、いざとなるとどうにも口にしづらいものだ。

「…………その代わり――!」
621「ラヴ・リンク」 四話 9/9:2008/12/09(火) 07:34:04 ID:Vntv1Q/v


 言いあぐねる秀一に、衝撃がはしった。
 お互いにベンチに座ったまま、身体は深く寄り添い合い――唇が重なり合っていた。
 朋美が、半ば強引に自分の方へ向かせ、奪ったのだ。
 声に出して狼狽しそうになったが、あいにく塞がれていて叶わない。
 しかしすぐに心を落ち着けると、少年も少女に倣い、まなこを下ろした。
 正直、おどろいた。彼女がこんなに積極的だとは思わなかったからだ。
 俺も俺だ。ファーストキスだってのに、なんでこんなに落ち着いてられるんだろう……
 程なくして、お互いの口を遠ざける。
 見つめ合うふたりの頬はわずかに紅潮していたものの、色めいている雰囲気はない。 
 深い接吻ではなかったが、二人にとっては人生において最も濃縮された時間だったのは間違いなかった。

「…………女神さまのキスとあっちゃ、こりゃ頑張らないわけにいかないな」
「まぁ…………秀一くんったら……」

 ここまでくるとバカップルもいいところだ。
 その代わり……後に続くセリフなど、かれらにとっては暗黙の了解だった。
 全てが終わったら、ふたりで――

 四話 おわり



焦らしプレイごめんなさい。
今更ですが、本当にこのスレ向きではありませんね……
622名無しさん@ピンキー:2008/12/09(火) 09:42:17 ID:la4yXB8j
問題ない。逆転のターンに差し掛かろうとしてるし、続き楽しみ
ヘタレ一直線かと思ったら違ったwなんとか踏みとどまって何よりです
二話で問題解決してラスト一話で結ばれるって感じかなあ
ペースも早いし頑張ってください
だが、残り容量が……
623名無しさん@ピンキー:2008/12/09(火) 17:29:31 ID:u2JCkRST
期待している
624名無しさん@ピンキー:2008/12/10(水) 03:37:54 ID:V6KlPxo3
>>622
なあに、次スレで続行すれば問題あるまい。
……たぶん。

いつ頃立てれば良いんだろ。
490kb到達ぐらいが丁度良いのかしら
625名無しさん@ピンキー:2008/12/10(水) 09:47:42 ID:KYTNdOKZ
480超えると最終書き込みから一定時間で勝手に落ちるから、立てるなら今が立てどき。
626名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 18:50:14 ID:s5qRF3Ut
「……ぐすん…」
「どうしたの?」
「出来なかった……」
「何が?」
「……スレ立て。私は認められてないのかも…うぅ」
「あぁーもう泣くな、泣くな。可愛い顔が台無しだぞ」
「…ほんとに?」
「お前、感情が顔に出すぎ…」


本当に誰か頼みます…
627名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 18:59:46 ID:5C/jlaQf
無口な女の子とやっちゃうエロSS 七言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1228989525/

立てましたよん
628名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 20:13:26 ID:uU/nVeb7
>>627
ありがろん
629名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 20:48:31 ID:6KOZq/6S
「……ありが、っつ……ろん」
「ありがろん?」
「うるひゃい」
「噛んだのか」
「……」
「噛んだんだな。急にしゃべるからだ。どうしたんだ?」
「お礼」
「新スレだからか」
「ん」
「そっか……ってイテイテ! 何で殴る!?」
「……なんとなく」


ってなわけでありがろん。
630名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 22:43:46 ID:8rliWb+g
>>627
乙ー


今日、台という字を見た時に「ムくち!?」と思ってしまった
631名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 01:09:07 ID:djRlDM7X
>>627のスレ立てと、>>628-629のコンボと、>>630の良き病みっぷりに乾杯。
632名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 03:09:13 ID:CsbSeCg0
スレが進むほどに口数が増えていくな
633名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 08:35:10 ID:HuwzHHM+
「暫し俺の話に付き合ってくれないだろうか。
俺の妹はユカリというんだが、あぁ文字は優しい香りのする里と書いて優香里だ。可愛い名前だろう。
その優香里がだな、本当にいい子で……なんせ生まれたときから夜泣きもしない静かな子だったんだからな!
本当に良くできた妹でこの前も風邪をひいた俺にお粥を作ってくれて、その際に火傷をしたけども心配をかけまいと黙っているようなやつで。
痛みのある指で、これもまた人形のように綺麗なんだな、おっとズレた。
まぁともかくレンゲを持つとふぅふぅと吹き冷まし、微かに聞こえるかどうかの……無論俺は聞き取るが!オルゴールのような声で口を開けるように促して食べさせてくれたんだ。
いやもう何て言うんですか可愛いすぎて抱きしめたくなりますよね。
ですが耐えました。兄ですから。誇らしく悔しながらも兄ですから。
偉いと思いませんか俺は偉いと思います。
ですがそんな俺に新たな試練! いやむしろ神の与えた奇跡! 二人に血の繋がりが無いと、優香里が二十歳になった三日前に親からから伝えられました!!
俺はどうすれば! 悩み続けて徹夜三日目です」
「寝たら……?」
そんなうるさい兄と無口な妹の話が始ま……らない。
634名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 11:50:50 ID:gIQ1SSjg
始まっちまえよw 今から全裸待機だよw
635名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 00:00:19 ID:aX8tbrX3
裸になることで神が降臨するというのなら喜んで脱ごう。
だが紳士として皮靴とシルクハットだけは許してほしい。
636名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 00:14:44 ID:lkzroOnK
なんという隙のない紳士道……っ!
さっきから既に降臨していたクール系無口っ娘が斜め後ろから
軽蔑するような瞳を向けていることもわかっているに違いない……!!
637名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 14:05:58 ID:SgOANskr
         ∧_∧                             ∧_∧
ち下さい ( ・∀・)  そのままマターリでお待ち下さい  ( ・∀・)  そのままマターリでお待
      ( つ  つ                            ( つ  つ
  ∧_∧                            ∧_∧
 ( ・∀・)  そのままマターリでお待ち下さい ( ・∀・)  そのままマターリでお待ち下さい
 ( つ  つ                           ( つ  つ
                             ∧_∧                            ∧_∧
  そのままマターリでお待ち下さい  ( ・∀・)  そのままマターリでお待ち下さい ( ・∀・)
                      ( つ  つ                     ( つ  つ
638名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 04:05:20 ID:a3esh9bz
 
639名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 19:05:19 ID:hwfiyAkx
>>633
「寝たら」ワロタwww
続き読みたいなあ
640名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 08:13:50 ID:S23EGdSb
「今年の優香里の誕生日はラッキーなことに三連休の前日。可愛い妹が晴れて酒を飲めるようになるのだから、良いものをと思うのは兄として当然だろう。
プレゼントと酒を持ち有給をもぎとり、東京への新幹線へ乗り込んだ時の気持ちはまるで花畑へ向かうときのようで……来年は花束も買うべきだな。
小さく綺麗と呟く優香里はそれはもう奇跡としかいいようがないのはわかりきっているからこそ見たい!
なんで十月から大阪の本社勤務なんですか部長。
俺がどんなに頑張って優香里が待つ家に早く帰るために作業効率を向上させたと思ってるんだちくしょう。
迫りくる冬がこんなに辛かったことはないぜ、帰宅後、静かに差し出されるコーヒーの旨さが恋しい。
しかしここはエデン。神の住まう地、さぁ皆の者神の御名を叫ぼうではないか!
ああ! ゆーかーりー! オゥマイスィイイイトッ!!
ハァッ! そうか、神か。だからこそ不可侵。しかし背徳の美学が俺を誘う……!
揺れる心はノンストップ。それはまるで優香里の艶やかな髪から香るほのかなシャンプーのように」
「……怖い」

兄の壊れっぷりもノンストップ。
キモイと言わない妹の優しさはプライスレス。

埋めネタにでもなれば。
641名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 01:39:12 ID:h+rU3tZu
無口娘にクリスマスプレゼントするとしたら何にする?
という埋めネタ振り
642名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 20:58:23 ID:t/sS/eFc
外国語のテキストをあえて贈ってみる
643名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 11:07:49 ID:nL/IgIOy
耳元で「好きだよ」と囁く。
644名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 19:56:46 ID:kDbxVOcR
>>640
つまり大阪での二人きり生活フラグか。
次スレで全裸で待ってればいいのかな?
645名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 00:48:38 ID:Aa9rdDRo
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        ~''ー―''"~'| |  l __ ̄    ,    ̄〃l /| ヽl   ̄
            ヽlヽ_>'::::ヽ    __   ‐'!:::''<レ 
                く"~:::::::::::::|、_   '  _//:::::::::::::::~>    
              ヽ:::::::::::::::ヽ!、T'ー-‐"|/l'/:::::::::::::::::/     
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                __> -、_\  /_/::::::::ヒ'_            
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            /   :::::::::::::::::::~"フ"/Tヘヘ''"~::::::::::::::::::  ヽ             


……埋め。
646名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 13:53:07 ID:OGmjvIdr
さて、メイドロボを徹夜で作り上げたはいい。
AI、体、共に問題はない。
だがこいつには一から感情を教えなければいけない。
感情がないから、いまのこいつはただの人形だ。
さてとどうするかな?
とりあえず胸でも揉んで見るか。
ふに ふに
俺はロボの胸を撫で回す。
ロボは声は出さなかったが少しうつむいていた。
「分かるか?これが嫌だっていう感情だ。」
フルフル
ロボは首を横に振った。
「気持ちいいのか?」
フルフル
また首を横に振った。
「いったい何なんだろうな?」

数日後に分かった話だが俺に揉まれるのだけが嫌じゃなかったらしい。
この分なら感情を教えるのも早く済みそうだ。
647名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 12:17:47 ID:ECVczED8
無口ドジッ子メイドロボ。
これでかつる!
648名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 14:23:27 ID:C1cXWTkE
次にテレビのお笑いを見せてみる。
ピクリともしない。
なるほど。最近の芸人が顔だけと言うのがよく分かった。
よし。こうなったら奥の手だ。
俺はこのために買っておいたくまのぬいぐるみをロボに与えることにした。
まずはくまのぬいぐるみを見せてみる。
どうやら興味を引くことには成功したらしい。
だが、ちょうだいや貸しての一言がでない。
何か戸惑っている様子であった。
「やるよ。」
俺はロボにぬいぐるみを手渡した。
ロボは恥ずかしそうにしながら何かを言おうとしていた。
声帯の取り付け不良だろうか?
あまり使いたくないのだがやむをえない。
俺はリモコンのスイッチをおした。
「ボイスシステム、システムオールグリーンです。」
ロボは自分の意思とは関係なく喋りだした。
そしてさっきの状態に戻っていく。
どうやら体に異常はないようだ。
「ありがとうだろ?ちゃんと教えたはずなんだがなぁ。」
「あり……がとう……」
そう、蚊の泣くような声で言うとロボは走って逃げ出した。
どうやら恥ずかしがりやのようだ。マシントラブルじゃなくて良かった。

今日はここまで。
649名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 21:23:30 ID:XdPcNmI3
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           O 。
                 , ─ヽ
________    /,/\ヾ\   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_   __((´∀`\ )< というお話だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/'''  )ヽ  \_________
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|_|_| 从.从从  | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\  /   ::::::::::::ゝ/||
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                   ,.-―っ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                人./ノ_ら~ | ・・・と見せかけて!
           从  iヽ_)//  ∠    再  開 !!!!
          .(:():)ノ:://      \____
          、_):::::://(   (ひ
          )::::/∠Λ てノし)'     ,.-―-、   _
______人/ :/´Д`)::   (     _ノ _ノ^ヾ_) < へヽ\
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|_|__|_人):/:・:::∵ヽ | )r'        ー'/⌒ ̄ て_)~ ̄__ イ
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        巛ノi
        ノ ノ                  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     ノ')/ノ_ら      ∧_∧       | いきなり出てくんな!!
      、)/:./、      ( ´Д`)      | ビックリしたぞゴラァ!!!
     )/:./.:.(,. ノ)    `';~"`'~,.       \   ________
     \\:..Y:.(  ・ ''    :,   ,. -―- 、|/
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|_|_|///ヽヾ\ ./:/ _ \        /     /T;)   /~  ̄__ イ
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|_|__|___い 、  , ,ソ_|_|
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650名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 21:24:40 ID:XdPcNmI3
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651名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 23:22:19 ID:IpxYJWe3
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   ~''-、:::::::::::::::` ヘl ` |ヽpノl `  ``  pノl /ヘ! ∧ T-、_  _,,,, -―‐'"
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            ヽlヽ_>'::::ヽ    __   ‐'!:::''<レ 
                く"~:::::::::::::|、_   '  _//:::::::::::::::~>    
              ヽ:::::::::::::::ヽ!、T'ー-‐"|/l'/:::::::::::::::::/     
                  ヽ:::::::::::::::∀    ト/::::::::::::::/            
                __> -、_\  /_/::::::::ヒ'_            
              /::::::::::::~"::::|:::::::::`l-‐r'":::::|:::-':::::::::::::'-、         
            /   :::::::::::::::::::~"フ"/Tヘヘ''"~::::::::::::::::::  ヽ             

まだ……こちらは埋まってない……?
652名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 12:07:37 ID:cYV6p5Yx
どうせならみんなのお気に入りの無口っ子のAAでも貼って埋めたらいいと思う
653名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 13:47:01 ID:Q5EmBIyc
すみません、埋めネタ書いてるのでしばらくお待ちを
654メリークリスマス!:2008/12/24(水) 13:54:05 ID:YY2u8yy9

   <ヽ.   「:l  _         __   />
   \`ー-.' :l__l:|    「:l___|::|___//
      ̄ ̄`ヾノ'´~  ̄ ̄ "ヾ-ーー´
         /         `,
        {    ,´⌒ o ⌒','
        (G)   ё) ,ё) ,'  ___
       巛|ゝ     J   {/  \__
       ゝ.し,     'こ'  )|/\/ ミー..,,_
       / ̄| 'ヽ..,,____,.ノ`ヽ)  `| l//// |\__
        {  'ー||    ー-川\ \ ,| } //|-、ノ\ミ}
        ゝ__||_、___,川_\ \L_|\__,..lーヽ_ミ}
655かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2008/12/25(木) 15:02:43 ID:tOVfG9Ca
『クリスマスレター』



 俺の彼女、下園あやめは結構な恥ずかしがりやだ。
 口下手でおとなしく、人と触れ合うのが苦手。
 手を繋ぐだけで顔を真っ赤にするし、初めてキスしたときなど熱を出して倒れてしまった。
おかげでそれ以来キスはしていない。
 初めて言葉を交わしたのは高校に入ってしばらくしてから。
 五月のゴールデンウィーク明けに最初の席替えがあって、窓際の最後尾という絶好の
ポジションを獲得した俺の前の席があやめの席だったのだ。
 入学から一ヶ月、まだクラスの女子とはそこまで親しくはなかった。せっかく席替えを
したのだしとりあえず近くの女子から友好関係を築こうとあやめに話しかけると、彼女は
途端に真っ赤な顔でうつ向いてしまった。
 返事が返ってこない。無視されたと思って俺は鼻白んだが、帰りのホームルーム中に
こっそり小さな紙を渡された。
 ノートの切れ端だった。小さいながらもそこには綺麗な文字が書かれていて、首を
傾げながらもとりあえず読んでみた。

『さっきはごめんなさい。
 私、ちょっと人と話すの苦手で、あなたに悪いことをしてしまいました。
 話しかけてくれてありがとう。これからよろしくです、山口くん。』

 なんというか、嬉しかった。
 きっと彼女は人見知りするタイプで、このメモを書くのにも勇気がいったに違いない。
そう考えると余計に嬉しかった。俺に対して真摯になってくれたことが嬉しかった。
 だから俺も返事を書いた。

『こちらこそよろしく。下園さん。』

 渡してからしばらく彼女の後ろ姿を見つめていると、肩がなぜか強張った。耳が真っ赤に
染まっていくのがはっきり見えて、俺はちょっとおもしろいと思った。
 後日訊いたところ、嬉しくて、でもちょっと恥ずかしくて、頭の中がわけわかんない
ことになっていたらしい。
 俺たちの初めての会話は、声すら出さないそんなやり取りだった。
656かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2008/12/25(木) 15:04:40 ID:tOVfG9Ca
 あやめは見ていて飽きない女の子だった。
 とにかく喋るのが苦手で、聞き手役に徹するのが基本スタイル。頑張って何か言おうとは
するものの、大抵何と答えていいのかわからずに真っ赤になってしまう。正直コミュニ
ケーションには困る性質だが、俺は特に苛立ったりはしなかった。
 普通の会話の代わりに、メモ用紙でやり取りをしていたからである。
 主に授業中、俺たちはこっそりメモを渡し合った。小さな手紙の中の彼女は、普段と
違ってとても雄弁で、いろんなことを教えてくれた。
 昨日見たテレビのこと、姉のこと、お店の手伝いのこと。
 綺麗な字はとても読みやすく、それにつられるようにこちらも丁寧に文字を書くように
なった。
 あやめとのやり取りはなんだかドキドキした。
 こんな女の子同士みたいなやり取りが、なぜか妙に楽しい。彼女の手紙を通して、魅了
されていくのが自覚できて、
 気付いたら好きになっていた。
 教室で授業を受けるとき、ずっと彼女の後ろ姿が視界にある。それだけで幸せな気持ちに
なれた。ショートカットの髪が揺れるのを見る度に思わず見とれ、手紙を渡して手が
触れると胸が高鳴った。友達には気持ち悪いと言われたが。
 確かにあまりの純情っぷりに、自分でも困惑した。どこの乙女だ。
 でも別の友達には「幸せならいいんじゃないか」とも言われた。それもそうかと思い
直して、俺はあやめとのやり取りを続けた。

 ……知り合って二ヶ月後、俺はあやめに告白した。
 返事は『よろしくお願いします。』という短い文面の手紙だった。



 こうして俺たちは付き合うことになった。
 幸いなことに想いが冷めることもなく、交際は順調に続いている。
 相変わらずあやめは恥ずかしがりやで、デートのときも始終顔を真っ赤に染めている。
たまに不安そうにこちらを見つめてくるので、そんなときはにっこり笑って手を繋ぐことに
している。
 そうすると、卒倒しそうになりながらもあやめは嬉しげに握り返してくれるから。
 あやめはいつも不安そうにしている。こんな性格だからか、自分に自信が持てないの
だろう。いつか愛想を尽かされるのではないかという恐れを、なんとなく感じられるときが
ある。
 もちろんそんなことは有り得ない。俺は出会ったときからあやめに惚れっぱなしだ。
あやめに愛想を尽かされることはあっても、逆はないと確信できる。
 不安なのはこちらの方なのだ。
 たまに思う。あやめは俺のことなど特に何とも思っていないのではないかと。
 俺の告白に流されてしまって、付き合っているのではないかと。
 もしもそうなら、俺はもっと頑張らないといけない。あやめが俺を好きになってくれる
ように。
 あやめのことが大好きだから。
657かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2008/12/25(木) 15:07:31 ID:tOVfG9Ca
「殴られたいのアンタ」
 店のカウンター内に立ちながら、大村聡子は剣呑な目付きで毒づいた。
 聡子は俺やあやめと同じクラスメイトで、特にあやめとは仲がいい。なんでも小学校
からの付き合いで、昔からいろんなところで助けてもらっているとあやめが手紙で言って
いた。
 あやめがそういうのだから本当なのだろう。クラスでもムードメイカー的存在だし、
想像しやすい関係だ。
 聡子の家は小さな雑貨屋で、クリスマスイブの今日、俺は注文した品を取りに来ていた。
 その際に俺が前述の不安を吐露すると、彼女はかなり危険な目付きで俺を睨んできたの
だった。
「アンタ、あやめを馬鹿にしてるの? 流されてるって、そんなわけないでしょ」
「い、いや、あくまで可能性の問題だぞ?」
「ゼロよゼロ! あの子はあんたにもったいないくらいに惚れてるわよ。もったいない」
 二度言うな。
「あの子は気弱でおとなしいけど、流されて行動するような馬鹿じゃないわ。あんたの
百兆倍賢いんだから、そんな心配するだけ損よ」
 そこまで言うか。
「悪かったよ。ちょっとした気の迷いだ。許せ」
「悪いと思うなら早くプレゼント届けてやることね。喜ばせたいんでしょ?」
 聡子は言いながら、小さな箱を差し出してきた。綺麗にラッピングされた、あやめへの
プレゼント。
「業者に頼んでいいやつを取り寄せたから、品質は保証するわよ」
「ありがとな。それじゃまた来年」
 なぜか親指を下に向けて突き出されるのを尻目に、俺は店を出た。
 その足であやめの家へと向かう。確かここから歩いて五十メートルくらいだったはずだ。
 手元に抱えるは小さなプレゼント。
 あやめは喜んでくれるだろうか。聡子に相談したら、「アンタにしては悪くない」と
一応合格点をもらっている。一番の友達なのだ。その言葉、信じるぞ。
658かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2008/12/25(木) 15:09:40 ID:tOVfG9Ca
 しばらくして、あやめの家に着いた。
 あやめの両親が経営している喫茶店『白雪』は、クリスマスイブということもあってか
大賑わいだった。
 イブの夜は普段より遅くまで開けているという。手作りケーキの販売も行っていて、
表の入り口には人だかりができていた。
 俺は人だかりを避けて店の裏手に回る。予想以上に忙しそうな感じだ。
 果たして会えるだろうか。終わるまで何時間でも待つつもりだが、迷惑なら帰った方が
いいのだろうか。あやめは問題ないと言っていたが……。
「ん?」
 裏口の方を窺っていると、髪の長い女性が中から出てきた。すぐにこちらに気付いて
不審の目を向けてくる。
 が、女性はすぐにああと頷き、にっこり微笑んだ。
「君があやめの彼氏ね」
「え……あ、はい」
「あの子ならキッチンにいるよ。呼んでこようか?」
「お、お願いします。……あなたは?」
「姉よ」
 びっくりした。姉がいるとは聞いていたが、あやめとは全然似てない。
 初対面の相手にも動じたところはなく、血が繋がっているとは到底思えなかった。
「ね、一つ訊いていい?」
「なんですか?」
「あやめのどういうところを好きになったの?」
 不意打ちだった。急な問いかけに俺は狼狽した。
「あー、その……」
「ん?」
 どう答えたものか、俺はしばし悩んだ。
「……ずるい言い方していいですか」
「? どうぞ」
「……全部好きです」
「……全部?」
 俺はヤケクソ気味に想いを吐き出した。
「だから全部です。おとなしいのも恥ずかしがりやなのも顔を真っ赤にするのもたまに
笑ってくれるのも全部、好きです」
 お姉さんはしばらく呆気に取られたように俺を見つめていた。
 それからぷっ、と吹き出し、
「なるほどね、それはずるいなー」
「すいません」
「んーん、いいよ。じゃあ呼んでくるね」
 お姉さんはドアの向こうに引っ込んでいく。
659かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2008/12/25(木) 15:12:57 ID:tOVfG9Ca
 それからすぐにあやめが出てきた。
 エプロン姿で、白頭巾を被っている。接客が苦手なあやめはキッチンの手伝いに回って
いるという話だった。
 俺が話し出さないのを見て、あやめは小首を傾げる。
「浩平、くん?」
「ああ、いや、頑張ってるんだなって」
「──」
 恥ずかしそうにうつ向いてしまうあやめ。こういうところは全然変わらない。
 そんな彼女に俺は手元の箱を渡す。
「はい、プレゼント」
 あやめが恐る恐る顔を上げる。微笑みかけると一気に耳まで上気した。
「気に入ってくれるかわからないけど」
「……わ、私も」
 あやめはそう言うと、後ろ手に隠していた紙袋をおずおずと差し出してきた。
「……プレゼント?」
 小さく頷くあやめ。
 めちゃめちゃ嬉しかった。
「ありがとう、あやめ」
「こ、これもっ」
 続けて白い封筒を差し出してくる。
 いつもの手紙だ。言葉の代わりに俺たちを繋ぐ大事な架け橋。
「後で読んで……」
「わかった。俺のもいいか?」
 交換するように俺も手紙を差し出す。
 あやめはびっくりしたように目を丸くした。
「後で読んでくれよ」
「あ……」
「そんなに予想外だったか? いつも渡し合ってるじゃん」
「け、けど……」
 あやめはまたうつ向いてしまう。
 俺は何も言わずに彼女の言葉を待った。
 あやめがゆっくりと顔を上げる。
 はっきりとした喜びの笑顔を浮かべて、あやめは言った。
「ありがとう……浩平くん」
 その言葉は俺を満足させるのに十分な力を持っていた。
660かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
 帰りの電車の中で、俺はあやめの手紙を読んでいた。

『メリークリスマス! 浩平くん。
 うちは毎年この時期忙しくて、いっしょにはいられないけど、プレゼントを用意しました。
 セーターです。一応手編みです。
 多少大きめに編んでますが、ちゃんとできてるでしょうか? 似合うといいな。
 付き合ってもう半年になるんですね。
 夏休み前に浩平くんに告白されたとき、すごく嬉しかったです。きちんと返事をする
ことができなかったけど……。
 いつも迷惑かけてごめんなさい。……って言ったら怒られるかな?
 聡子ちゃんに言われました。謝られても相手は嬉しくないって。
 だから私は自分の気持ちを素直に書きます。
 いつもありがとう。大好きです。

 P.S.初詣、いっしょに行きましょう。神守神社はどうですか? 後で連絡下さい。』

 ぶっちゃけた話、メールを使えばいくらでもやり取りできる内容なのだ。わざわざ手紙を
書く必要など、本当はない。
 それでも俺はこっちの方が好きだ。あやめの心が込められた、綺麗な文字の手紙の方が。
(メリークリスマス、あやめ)
 俺は心の中で恋人に囁いた。

      ◇   ◇   ◇

 仕事も全て終わり、私はすぐに部屋に戻りました。
 ベッドに腰掛けて、浩平くんからのプレゼントを丁寧に開けます。
 中には万年筆が入っていました。
 白を基調とした綺麗なデザインです。ちょっと意表を突かれました。
 手紙には、ちょっと角張った見慣れた字でこう書いてありました。

『メリークリスマス、あやめ。プレゼント見てくれた?
 その万年筆、よかったら使ってほしい。大村に選んでもらったやつだけど、気に入って
くれるかな。
 そいつで手紙を書いてくれたら、俺はすごく嬉しい。
 あやめの手紙が好きだから。

 正月は時間あるよな? 楽しみにしてる。』

 あまりの嬉しさに胸がドキドキしました。
 同時に恥ずかしくなって、思わずベッドに突っ伏してしまいます。ギュッと目をつぶって
嬉しさに身悶えしました。誰かに見られたら死んじゃいそうな自分の姿です。
 ようやく落ち着くと、私は贈られた万年筆をまじまじと眺めます。
 自然と笑みがこぼれました。
(メリークリスマスです、浩平くん)
 心の中で私は小さく呟きました。