卓上ゲームエロパロ総合スレ22

このエントリーをはてなブックマークに追加
249名無しさん@ピンキー
というわけで(だからどういうわけだ)投下します。

ハンドアウト
OP1〜2
マスターシーン1
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1210519940/490-491

マスターシーン2 これから
ミドルフェイズ1 これから


エロはまたしてもありません。申し訳ない。
例によって、ルールや世界観的におかしくね?という部分は
指摘していただければ幸いです。


では、投下します。
250名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 17:22:00 ID:+yHXspcL
ああ、すんません、雷火×武田の続きです。
肝心なこと書き忘れてへこみーorz

では、気を取り直して投下します。
251名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 17:22:11 ID:+yHXspcL
 封印から解放された彼女を待っていたのは、絶望だった。
 青く透き通った空の中で、彼女は絶望した。
「あ……ああ……」
 彼女を待っていた者が、既にそこにはいない事を、彼女は理解してしまった。
 遥か空の彼方から見下ろしたそこに、彼女を待っていた者がいる標はなかった。
 楔が消え、彼女が解放されたのではなく、標があったという痕跡すら、そこには存在しなかった。
「どうして……どうして……」
 彼女を待っていた者が、そこにはいた。そのはずだった。
 彼女を待っていて、彼女はそれを助ける為に……救い出す為に……その為に、その為に
だけ、永き時を封じられながらも、想いながら想いながら滅ばずにいられたのに。
 そこに、彼女はいなかった。そこには誰も待っていなかった。
 孤独から逃れる事が出来たと思ったのに、そこに待っているはずの者はいなかった。
 孤独から逃れる事が出来たと思ったのに、そこに待っていたのは孤独だった。
 絶望を晴らす事が出来たと思ったのに……そこには、絶望しかなかった。
 彼女は最早その絶望が拭えない物である事を、知った。
 絶望した者は、その絶望が拭えぬ物である事を知った時、どうするか。
 答えは単純だ。その絶望の大元を、絶望をもたらした諸悪を、その根源を滅さんとする。
 何もかもを滅しても、絶望だけは消えないという事を知りながら、人は……人ではなくとも、
想うという行為をする生き物は、まだかろうじて想うという事をしていた人でないモノは、何もかもを
その絶望の道連れにしようとしてしまう。
 彼女もまた――
「あいつらのせいだ……」
 彼女の目の前に、幻が現れた。憎き存在。彼女を、彼女の愛しい者を封じた存在の、幻が。
「あいつらのせいだ……あいつらのせいだ……あいつらのせいだ……あいつらの……!」
 狂ったように……いや、最早狂気そのものの笑みを浮かべながら、彼女は呟き始め、
そして、次には叫び始めた。
「あいつらのせいだあいつらのせいだあいつらのあいつらのあいつらのあいつらのあいつ
 あいつあいつあいつあいうつあいつあたおあいたいたたいちあつたああがああああああ
 あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
 遥か空の上、その叫びは誰の耳にも届く事はない。
 だが、その叫びをもしも誰かが聞いていたならば、こう想っただろう。
 ……なんて、悲しい声だろう、と。

 こうして、悲しき獣は野に放たれた。
 復讐という名の絶望の拡散を行わんと。
 永き時を経て、衰えた力を取り戻そうと、彼女はまず減衰した魔力を取り戻さんとした。
 その彼女が目につけたのは、若き、無垢なマナの持ち主が集まる場所。

 つまり――学校。
252名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 17:24:43 ID:+yHXspcL
ここまでマスターシーン2です。

続けてミドルフェイズ1です。
253名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 17:26:50 ID:+yHXspcL
「おはよー、服部!」
 いつもの通学路。いつもの挨拶。
 一週間ぶりのその声に、雷火は張り詰めていた心が少しだけ緩むのを感じた。
「おはよう、武田殿。久しぶりですね」
「おう、久しぶり! 元気だったか?」
「それがしは息災です。武田殿もお元気そうで」
「元気とサモモンくらいしか取り柄ねーからな、オレ!」
「ふふっ……そんな事はないと思いますよ」
 微笑を浮かべ、ふと気付く。
 自分がこんな風に笑顔を見せるのは、彼に――武田正一対してだけだな、と。
 ――どうして、なんだろう?
 最も近しい人間である祖父にすら、雷火は笑顔を見せた事がなかった。
 ――どうして、彼と話す時、自分は笑顔を――
「でもさ」
「……え?」
「一週間、一体何してたんだ、服部?」
 不意に湧いた疑問は、彼からの疑問に掻き消された。
「ええ……少し、知り合いの仕事の手伝いを」
「知り合いの仕事……?」
「はい。詳細はお話できないのですが、少々手間取ってしまいました」
「へえ、よくわかんねーけど、大変だったんだな」
「ええ……その甲斐はあったと思います」
「そっかー。んじゃ、今日は放課後がっちりサモンバトルしようぜ!」
「そうですね。武田殿がよろしければ」
「よくないわけねーじゃんか。見せてやるぜ、オレの新魔術デッキ!」
 彼との会話を楽しんでいると、時間はあっという間に経っていく。
 これから待ち受けているであろう戦いの予感すらも、時間の経過と一緒にどこか他所へ
置き去ってしまいそうになる程リラックスしている自分を意識し、
 ――ああ、自分は気負っていたのだな。
 今更ながら、雷火はその事に気付いた。
 強く感じた戦い――それも、今まで経験した事のない類いの戦い――の予感に備えよう
とするあまり、固くなっていた自分が、彼との会話で解れていく。
「……ありがとう、武田殿」
 自然に、感謝の言葉が雷火の口から漏れた。
「な、なんだよ急に」
「いや……何となく、感謝したくなったので」
「……変なの」
 自然体でいられるかどうかは、戦いにおいて勝敗を左右する重要な条件の一つ。
 これから先に待つ戦いに、雷火はどうやら自然体で望めそうだった。
 笑顔を浮かべたまま、雷火は空を見上げた。
 透き通るような青空が、どこまでも果てがなく広がっている、快晴と言うに相応しい空。
 雨が降る時には黒雲が一面に広がり、そうでない時には雲一つ無い、極端とも言える、
この地方独特の空の姿は、今日も何も変わりないようだった。
「……武田殿」
 しかし、そんな空の下であっても、全てが変わらないわけではない。
 自分と彼との関係が変わったように、いい変化ばかりが起こればそれでいい。
 だがしかし……変化は良い方に転ぶとばかり限ったものではない。むしろ、変化とは
安定を破壊し、混沌をもたらす悪である場合の方が多い。
 きっと、この変わらぬ空の下で、日常を無理矢理変えようとする戦いが起こる。
 だから……だから、先の感謝の言葉と同く、雷火の口からは自然に言葉が漏れていた。
「ん?」
「今日は……何か、嫌な予感がします」
「……嫌な、予感? 虫の知らせ、って奴か?」
「はい。ただの予感です。杞憂であればよいのですが……もしも、武田殿の身に何かが
 起ころうとした、その時は……」
「そん時は……?」
「それがしを、呼んで下さい……きっと、お役に立てるでしょう」
 本来は、口にすべきではない事かもしれない。異常事態の可能性など。
254名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 17:27:02 ID:+yHXspcL
 日常を守る為には、日常の中に身を置くものに、異常の可能性を報せるべきではない。
……それは、いわば鉄則のようなものだ。
 だが、何故か、雷火は彼にそれを伝える必要を感じた。
 ――どうして、なんだろう?
 再び、一度は掻き消えたはずの疑問が胸に浮かぶ。
 ――どうして、普段は黙っておくようなことを、彼にだけ――
「……なあ、服部」
 だが、やはり疑問は掻き消された。今度は、彼からの疑問ではなく、彼からの怒りで。
「その予感とかいうのがなんだかんだとは聞かねーけどさ……」
 彼は、怒っていた。
「何かあった時は自分を呼んでくれって……それじゃ、何かあった時、オレには何も
 できないみたいじゃんか」
「え……あ、それは……ですね」
 実際に、貴方には何もできないのだとも言えず、雷火はどう言うべきか言葉に詰まった。
奈落の存在と、その圧倒的な一般人に対する優位性を説明するわけにもいかない。自分が
クエスターであり、奈落に対する事のできる唯一の存在だなどと言ってみた所で、一笑に
伏されるか、熱でもないか心配されるかのどちらかだ。
 しかし、そういった説明に窮しているという状況以上に、彼を怒らせてしまったという
事実に、雷火は酷く動揺していた。最早彼女の自然体などどこにも無く、ただ戸惑い、
焦り、慌てるだけの少女の姿がそこにはあった。
「……まあ、実際に何かできるかどうかはわかんねーんだけどさ、はははっ」
 だが、そんな刹那の戸惑いの間に、彼は既に笑みを取り戻していた。
 しかし、その笑みは普段彼が浮かべているような、ただ快活なだけの笑みではなかった。 一月ほど前、雷火と彼の関係が代わる切っ掛けとなった、固さを帯びた笑み。
 彼が、悔しいと思っている事を、悲しいと思っている事を、そして今日は怒っている
という事を示す、だが同時に彼の強さも表す、そんな笑みだ。
「それでも、だ」
 だが、その自嘲と決意を含んだ笑みすらも、今日は一瞬で消える。
「それでも、何ができるかはやってみなきゃわかんねーんだからさ……お前に何か
 あったらさ……オレを呼んでくれよ」」
 後に残ったのは、雷火を見つめる真剣な眼差し。
 そして、彼は、その眼差しで正面から雷火を見つめながら、言った。
「オレは……お前のこと、大事に思ってるんだからさ」
 その言葉と、その眼差しに、雷火は自分の心臓が強く鼓動するのを感じた。
「オレだけじゃねーよ。先生だって、クラスの連中だって、お前の事ちゃんとわかって
 きて……今じゃ、クラスメイトとして大事に思ってるんだからな」
 続く言葉は、雷火の耳には殆ど入ってきていなかった。
 何故その言葉が自分にここまでの衝撃を与えているのか、それすらも考えられず、
雷火は物心ついて以来経験した事の無い、自分の頭が真っ白になるという状況に陥った。
「って……おーい、服部? 聞いてるか?」
「………………」
 雷火は、彼の言葉にも応える事なく、ただただぽかんとした表情で、心ここに有らずと
言った様相を呈していた。
「……オレ、何か変なこと言ったっけな……? おーい、服部ー! おーいってばー!」
 声をかけても、肩を掴んで揺さぶっても、まるで雷火は反応を返さず……。
 結局、雷火が我に返るまで、十分弱の時間を要し、その結果二人は遅刻寸前の時間に
なってようやく学校に辿り着く事となり――その異変に、外から気付く事になった。