そ〜こ〜ぬ〜け〜に
>>1乙やがな
前スレへの誘導は
>>1が正解でんな
>>3 うわ〜すみません!
前スレに、こっちへの誘導も訂正入れてくださってほんまお手数かけました。
以後精進します。
いえいえ、こちらこそスレ立てていただいて、ありがとうございます
(・∀・)ノ〜〜〜〜〜〜○
楽しいスレになりますよ〜に
(・∀・)ノ〜〜〜〜〜〜○
沢山投下されますよ〜に
1 底抜けに乙!
前スレさんの嘘山君挙動不審翌朝変!と
小草若若狭秘密の恋編希望です。
8 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 11:37:31 ID:7kYi0pV/
>>1乙!
今日からこのスレが俺のふるさとや!
小草若も帰り、新生・徒然亭の誓いも新たに、やっと心の荷が下りた草々師匠。
何より若狭も帰ってきて、この晩は大いに燃えた草々師匠。
嗚呼〜
>>1にも〜乙が〜ある〜 乙があ〜る〜
>>8 草々師匠、sage進行でお願いします。
そーこぬけに、>>1乙やがなあ!
( ゚∋゚) イチオツヤ ブス
吉田仁志×和田清海をキボン
12 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 01:46:22 ID:PLz5tFwz
草々×糸子
正典×清海
鞍馬×若狭
木曾山×若狭
松江×友春
需要ないかもですが、小草若×喜代美投下します。ちょこっとエロあり。長。
若狭高座大失敗〜小草若復活のあたりです。
小草若に少しだけ幸せになってもらいたい一心なので、
草々ファンの方にとっては不快かと。
こんな、こんなはずやなかった。
A子の企画したイベントをなんとか盛り上げたくて。
「おかげで大成功や!」て、お父ちゃんや秀臣さん達にも喜んでもらえて。
そして何より、小草若兄さんが戻って来てくれるんやないかって。
それが、こんな。
途中までは上手くいっとったはず。
でも小次郎おじちゃんが入ってきて、みんなの目が自分からそれて。
そしたら、、みんなをもう一度こちらに向けさせる力なんて、自分にはなかった…。
私、何を勘違いしとったんやろう?
自分がひとをひきつける力をもっとると、いつの間に過信しとったんやろう?
小次郎おじちゃんのせいだけやない。
いつも舞台が整えてあって、お客さんはみんな落語を聞くために来てくれとりなる人。
そして前座の自分の後には、頼りになる兄さん達。
完全に整えられた舞台で、みんなの力を借りて出来とったことやったのに。
なにを、思い違いしとったんやろう?
自分の力で小草若兄さんを呼び戻そうやなんて。
所詮B子やのに。できるはずあらへんかったのに。
自分に背を向ける人たち。がやがやと関係のない話が飛び交う室内。
怖い。怖い。やっぱり私には無理やったんや。
もうあかん。
すべてから目をそらすように、耳を押さえてかがみこむ。
いやや。いやや。嫌や。
たすけて…
すっと横切った黒い影。高座にあがるのは細い長身の姿。
それは、姿は全然違うのに、場所も全然違うのに、あの時の師匠そのもので。
「そ〜こ〜ぬ〜け〜にっ!お待たせしましたがな〜!!!」
どこまでも明るく、朗々と響きわたる声。皆がいっせいに振り返る。
その場の誰をも惹きつけるその力。その華。
ああ、これがほんまの小草若兄さんなんや…。
持ちねたの数なんて関係ない。ほんまもんの落語家。根っからの噺家。
その日小草若兄さんがかけたのは、兄さんの明るい魅力で一杯の、兄さんだけの「はてなの茶碗」。
子供もおばあちゃんも若い人も、みんなとてもとても楽しげに笑っとって。
気づけば、自分も泣きながら笑っとって。
―――ああ、小草若兄さんのふるさとは、落語やったんや。
「いや〜、小草若さんのおかげでほんま、助かりましたわ!!!」
「やっぱりさすが違うのう〜!」
「最高のイベントやったって感想も一杯もらいましたんですわ。
また小草若さん呼んで下さいてリクエストもぎょうさんあって往生しとるところですわ」
「ホンマ良かったで〜え〜」
イベント終了後の打ち上げで、たくさんの人が小草若兄さんを囲んで褒め称えていた。
無理やり引っ張ってこられた小草若兄さんの顔は、影になってよく見えない。
「お疲れさん、B子!」
「ひゃっ!!!」
端の方の席で、ぼうっとそちらの人垣に目をやっていた自分の額に、急に冷たいものが押し付けられる。
「順ちゃん…」
冷たいウーロン茶の入ったグラスを手渡しながら、順ちゃんがすっと隣に座る。
「なにぼ〜っとしとるん?」
「うん…」
「小草若さんのこと?」
「…私ってえ、傲慢やなあって思て」
少し眉をひそめて、順ちゃんが首をかしげる。
「傲慢?」
「自分の創作落語で、小草若兄さんに徒然亭に戻ってきてもらおうやなんて思て。
もともと、私が兄さんを傷つけてたことも兄さんが出て行ってしまいなった理由のひとつやのに…。
それやのに結局、、またこんな形で迷惑かけてしもて、なんの役にも立てんかって…。
小草若兄さんにあわせる顔なんて、、」
一息に言ってうなだれる。何の答えもないのが気になって、ちらと順ちゃんのほうを見上げると、
順ちゃんは、いつもの優しく呆れた顔でこちらを見ていた。
「まったくあんたは…。ま、ええか」
頭をひとつふって、順ちゃんは続ける。どこか遠くを見るような眼差しで。
「大切なひとのためやったら、なんぼでも力を出せる人がおる。小草若さんは…きっとそんな人なんやろね。」
「え…?」
「B子。人間、一生に一度は腹をくくらんとあかん時がある。」
「???順ちゃん?」
「その時は…きっと苦しいけど、考えて考えて考えぬき。絶対後悔せんように。」
「???…うん。」
「それじゃ、私帰る。春平と順平が待っとるし」
友春さんと連れ立って帰る順ちゃんを見送って打ち上げ会場に戻ると、やっぱりまだ小草若兄さんは
たくさんの人に囲まれたままだった。
誰かと話をするのも何となくおっくうで、飲めないビールを飲んでみる。苦い…それにくらくらする。
順ちゃん、何がいいたかったんやろう?
なにがあっても天災、のときも、なんでそんなこと言うんかその時は全然わからへんかったし…。
「B子」
ぽん、と肩をたたかれる。振り返ると、そこには少しはにかんだ表情をしたA子がいた。
「A子…」
「今日はほんまに…ありがとう。」
まぶしい笑顔に、思わずうなだれる。
「そんな…私結局なんの役にもたてんでぇ、、A子がせっかく私を頼ってくれたのに、全然答えられんかって…」
驚いたようにA子の目が見開かれる。
「そんな…そんなことない!B子が落語やってくれて、ほんま嬉しかった!」
「そやかて、、小草若兄さんがおってくれならんかったら、きっと、きっと何もかもだめになっとった…
私、やっぱり何にもできん。兄さんに迷惑かけてばっかりで」
「B子…」
いたたまれなくなって、またビールを一口飲んだ。不味…それになんかぼんやりしてきて。
隣にA子が座る気配がする。
「B子はあのときおらんかったね。魚屋食堂にゲスト・徒然亭若狭のシールを私が貼りに行った時。」
「え?う、うん」
「あの時小草若さんな、『もう落語家やない。別の仕事探す』って言うとんなった。」
「…」
「そんな気持ちやった小草若さんが、あんなすごい落語をするやなんて、どれほどの力と勇気がいったやろね。
私、、東京で失敗して、一回手の中から失われたもんにまた向かっていくって何て難しいんやろうってわかった。
気持ちが、だめになってしまうと人間って弱いね。でも…力を与えてくれる何かがあったら、いくらでも頑張れる」
「A子…」
「小草若さんにその力を与えたんは、、きっと、きっと…」
A子の言葉がそこで切れた。見上げると、A子はこちらをじっと見つめていた。不思議な目をして。
「その先は、B子が考えんとあかんね。」
そう言って、A子はすっと立ち上がる。去り際に、A子は少しはにかむようにして笑った。
「私も、人の気持ちがちょっとは分かるようになったんよ」
A子の言葉が頭の中でぐるぐると回り続ける。
小草若兄さんに力を与えたもの。
私があかんから。私が頼りないから。
ビールのせいかぼうっとして、頭がいつもよりなおいっそう働かない。
小草若兄さん。
明るくて、優しくて。私が悲しいとき、打ちひしがれているとき、いつも傍にいてくれた。
「どないしたんや喜代美ちゃん? 可愛い顔が台無しやで」
茶化しながら自分の顔を覗き込む、気遣うような優しい笑顔を思い出す。
小草若兄さんのマンションに行っていいかと尋ねた時もそうだった。
一瞬、ひどく複雑な顔をして。
「来たらええがな。なんぼでもおったらええがな!」
あの時の笑顔。今思えば、無理に絞りだしたようなやりきれない笑顔。
一体、どんな気持ちでそう言ってくれたんだろう?
たった一人だけ「喜代美ちゃん」と私を呼び続けてくれたひと。
いつも私を支えてくれたひと。
草々兄さんと結婚してからもそうだった。
結婚当時、テレビの仕事が殺到して戸惑っていた時。
草々兄さんはそれを横目に見て不機嫌な顔をし、どうするべきかとても相談できなくて。
あの時の私を励ましてくれたのも、小草若兄さんだった…。
好意に甘えきって、頼り切っていた。小草若兄さんの気持ちも考えずに。
優しい兄さん。いつも支えてくれるひとだと。そばにいてくれるのが、当たり前のように。
(だからあの時、あんなショックやったんや…)
あの時―――初めて小草若兄さんが自分を「若狭」と呼んだ時。
体の一部が、もぎ取られたような気がした。
なんでそんな気持ちになるのか分からず、衝撃をおし隠して「はい、なんですか?」と
にっこりと笑顔を取り繕ったけれど。
それ以来、小草若兄さんが「喜代美ちゃん」と呼んでくれることは無かった。
いつまでもそれに慣れることはできなくて、「若狭」と呼ばれるたびに心がきりきりと悲鳴をあげた。
(いつも傍にいて。離れて行かないで…)
なんて勝手な感情。吐き気がするほどいやな女。草々兄さんと結婚しているくせに。
ビールがすっかりまわったのか、ぼんやりと霞がかる頭。
少し酔いを醒まそうと、そっと打ち上げの席を立つ。
外はすっかり暗くなって、涼しい夜気が火照った頬に心地よかった。
どこからか、小さく三味線の音が聞こえる。珍しいなと思いつつ、いつか自分が三味線を弾いた
とんでもない「辻占茶屋」を思い出し、思わずくすりと笑う。もうあれは、、10年よりももっと前のこと。
酔いも手伝って、久しぶりに辻占をやってみようかなんて、いたずら心が顔をだした。
実家で小草若兄さんと交わした言葉が、なぜか頭から離れてくれない。どうしてだろう?
「大阪に戻ってもええで。そのかわり…草々と別れてくれ」
そのとき自分の体を駆け巡った奇妙な感情は何だろう?それは出来ない、と即答できなかったのは何故?
「嘘や嘘や、いけず言うただけや」の言葉に、心が痛んだのは何故だろう?
「ごめんな…喜代美ちゃん」
その言葉に、体がぞくりと震えたのは何故だろう?
『ホンマハスイトルンヤロ?』
心臓が、跳ね上がった。
ほんまは好いとるんやろ?…思わずその声のほうへ振り返る。
そこには、ほろ酔い加減のサラリーマンたちが、入店を断られたらしい居酒屋の中を覗き込んでいた。
(「ほんまは空いとるんやろ?」か…)
たかが辻占なのに、心臓が早鐘のように打っていて。
我ながらアホみたいやなと思いながらも、その結果が心から離れない。
(もうひとつ、もうひとつだけ)
小草若兄さんの心の中には、今、誰が住んでいるんだろう?
目を閉じて、じっと答えを待つ。
けれど、夜の空気はしんと静まり返るばかりで。
馬鹿馬鹿しいと目を開けようとしたそのとき、その声が背中から響いた。
『ワカサ…、、キヨミチャン』
ああ、この声は…。
振り返ると、そこには小草若兄さん。
前よりもすこし頬がそげ細くなった、でも紛うことなく小草若兄さん。いつも傍にいてくれたひと。
そして今日も、自分のすべてを傾けて、私を支えてくれたひと…。
「喜代美ちゃんが困ったときは、いつでも俺が底抜けに力になるで、な?」
いつか、ずっとずっと昔に小草若兄さんが言ってくれたのを思い出す。
その言葉に嘘偽りはなかったのだと、ずっとずっと見守ってくれていたのだと気づく。
そして自分の気持ちが、酔いで霞がかった意識の間から鮮やかに浮かび上がってきて。
わたしは このひとが すきだ…
「なあ、、、もう小草若がもどって来ることは、ないんやろうか?」
寝床にて。草々がぽつりとつぶやく。
あの四草が激昂して、はじめて分かった。自分がいかに小草若を追い詰めていたか。
草原と四草の視線が、草々へと向けられる。
「正直、俺にはわからん。30年以上も付き合いがあったのに、なんも小草若のことわかれへんかった
俺やからな。」
ゆっくりと杯を空けながら草原が答える。すこし間があって、口を開いたのは四草。
「…あるいは偶然が重なったら、小草若兄さんは帰ってくるかもしれません。自分の意思で。落語家として。」
「ほんまか!!!」
「若狭と、そしてあといくつか偶然がそろえば、もしかしたら。でも…」
四草は思う。
木曽山がとんだウソツキだったという偶然。
小草若が見つかったという彼の言葉を草々が信じず、すぐに小浜へ行かなかったという偶然。
そしてあといくつかの偶然が重なれば、小草若兄さんは戻ってくるかもしれない。
でももしそんな奇跡が起こったら、その時には…。
果たしてその奇跡が起こるのが良いことなのか。冷静な計算をはじき出せない。
「でも?でも、何やていうんや?」
珍しく少し言いよどんだ後、四草は半ば確信めいた直感を口にのせた。
「その偶然がもし起こったら…若狭は、、、草々兄さんの所にはもう、戻ってけえへんでしょう」
草々の手から、ことん、と杯が落ちた。
たくさんの人間に囲まれていい加減辟易しているところに、喜代美が外へ出て行くのが見えた。
あわてて周囲の人々に挨拶をして、小草若はその場を何とか抜け出す。
外に出るとそう遠くない所に、喜代美が酔いを醒ますように目を閉じて立っていた。
すこしためらった後、声をかける。
「若狭…、、喜代美ちゃん」
はじかれたように振りかえる喜代美。
どこか放心したような表情で小草若の顔をしばらく見つめ、そして。
「小草若兄さん、、今日はほんまにありがとうございました」
申し訳なさそうにそう呟いて、喜代美はすこしうつむく。
「兄さんがおってくれならんかったら、もうどねしょうもなかったです。
私、兄さんに戻ってきてもらえるような創作落語しよう思っとったのに、結局兄さんに助けてもろて。
いつも、いつも私は兄さんに助けてもらって、迷惑かけてばっかりですね…」
小さく震える肩。今にも消え入りそうな声。
違う、違う。そうやない―――
「ずっとずっとそうやったですね。小草若兄さんにいっつも甘えて、たくさん支えてもらって。
そやのに私は、兄さんをたくさん傷つけて…。そんなことにも全然気づかんで…」
今にもこぼれ落ちそうに、大きな目に涙が盛り上がる。
「違う!そうやない、そうやないんや」
「え…?」
驚いたように見開かれる喜代美の目。
(言うべきやない、黙れ!)
理性は止める。この子はもう他の男のもんなんやと。けれど、抑え続けてきた思いが悲鳴を上げる。
「俺をずっと支えてくれてたんは、、喜代美ちゃんがおったから俺は…!
今日かて喜代美ちゃんがおってくれたから、喜代美ちゃんが力をくれたから!」
そう。もう二度と高座に上がることができなかったはずの自分に力をくれたのは、この少女の面影を残した妹弟子。
ずっとそうだった。いつも自分に力をくれた愛くるしい笑顔。
でも、その微笑みはもう草々のもので。あきらめようとしてもあきらめきれない思いを振り切るために
“若狭”と呼ぶようになっても、到底消せる思いではなくて。
「俺は」
(言うな)
「俺は、喜代美ちゃんが…好きや」
血を吐くような苦しげな顔で、小草若兄さんは言った。
私を好きやと。
その言葉に、どれほどの想いが、苦悩がこめられていたか。
「大切なひとのためやったら、なんぼでも力を出せる人がおる。小草若さんは…きっとそんな人なんやろね。」
「B子。人間、一生に一度は腹をくくらんとあかん時がある。」
「その時は…きっと苦しいけど、考えて考えて考えぬき。絶対後悔せんように。」
順ちゃんの言葉の意味が、今、やっとわかった気がした。
草々兄さんの妻、そして木曽山くんのおかみさんとしての自分。
とてもとても大切なもの、今まで積み上げてきた限りなく愛しい時間。
失ってしまうと思うだけで、身を切られるような思いがする。
草々兄さんにどんな思いをさせるかと思うと、苦しくて苦しくて。まるで息が止まりそうに。
けれど、自分にとっての一生に一度は、きっと今この時。
「私も、私も小草若兄さんが、好きです」
後悔はしない。この先どれほどつらくても。悲しくても。
後悔は出来ない。大切な人たちを傷つけてしまう選択をしたのは、自分なのだから。
ほわりと暖かいものにつつまれる。小草若兄さんの腕。
信じられないといったようなぼうっとした表情で、兄さんは確かめるように私の頬に、髪に唇を落とす。
そして、ゆっくりと私の唇に口づける。小草若兄さんの唇は、少し乾いていて、そしてほんの少し震えていた。
その日、初めて2人で夜を過ごした。
この腕に抱き寄せた喜代美の体は、小さくて、本当にはかなくて。
長い長い口づけを交わす。10年間の思いを吐き出すように。
耳に、首筋に唇を落とすと、ひくんと喜代美の体が反応を返す。
「小草若、兄さん…」
潤んだような瞳でこちらを見上げる顔は、たまらないほど扇情的で。
「ベッド、行こか…」
抱き上げてささやくと、喜代美は驚いたように目をまん丸にする。
「小草若兄さん、細いのに力あるんですね。私、重いのに」
ついさっきの蟲惑的な表情とは逆の、あんまりの色気の無さに思わず苦笑する。
「全然重うなんかない。大体、底抜けに好きな女の子を重いと思う男なんて、おらへん…」
咽元に口づけると、あっとのけぞる首筋のその白さ。
それはまぎれもなく女の顔で。少女と女がめまぐるしいほどに入れ替わる。狂おしいほどに魅力的。
丸い肩。少し吸い上げただけで紅く跡のつく肌。静脈が浮き出るほどに白い、形のよい胸。そして
ほのかな桃色に彩られた先端。すべてが愛しくて、ひとつひとつに丹念に口づける。
そのたびに切なげに小さな息をもらして、喜代美は体をくねらせる。
そっと太ももの奥の茂みに指を滑らせると、喜代美の体が大きくはねる。
「やあ…んっ!」
その声を押し殺すかのように口を手で覆おうとする喜代美の手を、小草若は押さえ込む。
「もっと声、きかせて。知らんかった喜代美ちゃん、全部見せて」
「そん、な、恥ずかし…い、やああ、兄、さん…っ」
ゆっくりと指を抜き差しすると、すでに十分潤っているそこがどんどん蜜であふれて。
奥に隠された突起に指を滑らせ、扱きあげる。反射的に逃れようとする腰をとらえ、蜜を舌ですくい取る。
「あうっ…ん、兄さ、んっ、、やああっ!」
ひときわ高く鳴いて、喜代美の体がくたりと力をなくす。
切なげにひそめられた眉、固く閉じた目、ほの赤く上気する肌、甘い声。
(ごめんな、優しくは出来そうにない…)
一息に奥まで突き上げると、喜代美の中が小草若自身を包み込み、動かすとすぐに果ててしまいそうなほどに締め上げる。
そのあたたかさに、思わずめまいがしそうになる。いつまでもここにいたいような心地よさ。
少しずつ抜き差しをはじめると、その動きにあわせて喜代美が断続的なあえぎ声をあげる。
その声に煽られるように、小草若の動きも次第に激しくなる。もっと深くつながろうと、喜代美の脚を抱え上げる。
「や、、にい…さ、ん、、ああっんんっ!やああっ!」
頭の奥が白くなるような感覚とともに、限界が近いことを知る。
「喜代美ちゃん、、もう、いくで…っ」
「っああ!!こ、そうじゃく、に、さん…っ!」
激しく腰を打ちつけ、喜代美の中に精を放つ。魂を抜き取られるような快楽。
すべての精を放った後も、しばらくじっとそのままで、喜代美を抱きしめていた。
焦点のあわない表情でこちらを見上げてかすかに微笑みかける喜代美を、ただ限りなく愛しく思いながら。
四草は思う。
かつて自分に徒然亭を再び取り戻してくれた妹弟子の顔を。
自分のものにしたいと、焦がれたこともあったけれど。
(あの2人は、魂の形がとてもよう似とるから)
だからこそ、惹かれあうのだろう。
アホで、コンプレックスの塊で、けれど他人のためにこそ力をだせる、そんな2人。
自分が彼女を幸せにすることはかなわないけれど。
(願わくば、あのアホな2人が幸せであるように)
そんなことを考えてから、柄でもないとひとつ頭をふり。
そして、ぐでぐでになるまで飲んで酔いつぶれた草々のために烏龍茶をそそいでやった。
以上です。お粗末様でした。
実は日曜の夜に書いたのですが、月曜日の爽やかで感動的な徒然亭帰還を見て、
こんな話を書いている自分をちょっと頃してやりたくなりました。
自分の単調なギシアン鬱…でもこれが限界。職人さんの復活お待ちしてます。
朝からGJです!
本当に小草若兄さんには幸せになって欲しい
だから嬉しいです
有り難うございました
超GJ!
皆の心情が丁寧に描かれてるから十分に納得のいく展開だと思ったよ。
本編とは別のパラレルワールドとして全然おK。
もう小草若が恋愛で幸せを掴む展開はないだろうし、ホント幸せにしてやってほしい…
GJでした!
四草兄さんが切なすぐる。
28 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 12:05:23 ID:PLz5tFwz
小草若はA子と恋愛関係になって結婚するんだから十分幸せじゃん。
GJでした!
草々にいさん、辛いなあ…。
でも、パラレルワールドとしてあっておかしくない展開だった。
個人的には順ちゃんが順ちゃんらしくてツボでした。
30 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 17:24:22 ID:m6yKGiIC
常設小屋を建てる条件で怪しげな集まりに連れてこられて全裸に為る事を強要される若狭。
31 :
24:2008/03/20(木) 06:07:34 ID:Md/QmRzl
GJしてくださった方、ありがとうございます。
長くてエロ少ないのに読んで頂けてありがたいです。
本編はフィナーレに向けて盛り上がっている中、
「もしあの時こうだったら…」と妄想がふくらんてしまう今日この頃。
ちりとてちんの登場人物は改めて魅力的だと只今底抜けに再確認中。
前スレ729の続編(のことでいいんですかね?)小草若若狭秘密の恋編を
希望して下さった方が!
続編書くことが出来たら投下…できたらいいなと思います。
昨日の放送で、若狭が四草の意見に感心した時、
草々が湯呑みを乱暴に置いたのは嫉妬?
小草々初高座頃までの草々若狭夫妻のアツアツっぷりが、
この頃少しさめてきたというか落ち着いてきたように見える。
恐竜にも倦怠期があるのか?
と思ってたけど、今朝の放送の縁側のシーンは仲睦まじくて
よかったよ。
今朝の縁側のいちゃラブっぷりは最強だった
小草々のハイハイゴチソウサマ的な呆れっぷりがまた笑えた
小草々を間に挟んでいちゃつく草々若狭可愛いなー。
事ある毎にあんな風に弟子の前でいちゃいちゃしてんのか。
あんなん毎日見せ付けられてたらたまらんな。
37 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 14:40:29 ID:qVr64mrZ
小草々って、草々夫妻の外出時には若狭の下着頭からかぶったり舐めたりしてオナニーしてるよね。男が一度は通る道だしね。
下着に悪戯している小草々が、忘れ物を取りに帰った若狭にみつかって…ってな妄想をしてしまう。
怒られつつも泣きながら今までの想いを告白してしまう小草々。若狭は……
まあ、普通に引くな。
>>24 遅レスすまんけどGJ!
小草若→喜代美と四草→若狭が好きなので、全部入ってて嬉しかった。
喜代美が小草若にシフトするのは、ある面で自然だと思うし。
んで、アホ2人が大好きな四草がいい味・・・
つーか、出番少ないのにいい所持ってってるのが、また何ともらしくていいw
草々若狭のいちゃいちゃ燃えるなぁ
弟子がいようがおかまいなしのラブっぷりに朝からニヤニヤだった
どこまでお互いにデレデレなんだあの夫婦
あの狭い工房にA子と二人っきりで
ムラムラ来ないのか、オトーチャンよ?
>>37 小草々が若狭の下着かぶっているところに草々が帰ってきたら流血の惨事に
43 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 19:46:50 ID:UyouWiZb
>>37 若狭の下着に悪戯しているのは当然だし、恐らく若狭の飲物の中に精液
やら尿やらを混入して、それを飲む若狭を見て密かに勃起してると想う
よ。飲物の中に射精している姿を若狭に目撃される小草々…声をかける
ことが出来ず、かといって余りの変態に草々にも相談することができず
独り思い悩む若狭…。
ちりとてちんって続編やるんだよね、確か。
草々と若狭に子供できてるんだろうなぁ。
子供が出来て幸せそうな若狭に、まだ過去の想いを捨てきれない小草若が…ってなのもいいね。
>>46 へぇ、そうなんだ。
いきなり子供がいた、とかじゃなくて若狭の妊娠発覚!
必要以上に慌てる周囲の面々ってなエピソードが欲しいな。
まず「誰の子や」ってなるかもしれんなw
↑それ面白いね。
生まれてきたコがどことなく小草若に似てるのを、抱きながら怪訝な顔で見つめる草々…とか。
>49
その展開は、朝ドラじゃなくて昼ドラだろw
ちりとてちんは朝ドラなのに
かなりの昼ドラテイストだよ
盛り上がってる時に悪いが…
今のところ続編はありません、って公式サイトでプロデューサーが書いてたぞ
53 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/21(金) 19:30:13 ID:X+qqsV7K
草々×小草若お願いします。
>>48 会長がんばり杉で若狭の上で腹上死→生まれて来たのはそん時の子→遺産相続で天狗芸能の株式を大量取得→若狭とその一門ウマー
なんてどう?
>24
亀だけど、小草若若狭、ありがとう!
こんなエンドもありかもね。ただその後の4弟子の関係は気まずそうw
弟子時代の、四草x若狭、みたいなぁ。
今の小草若も四草も、まだ独身なんだよね。40近いのに。
>>46 >>47 バカじゃねーのw
続編なんかないし
若狭の妊娠エピは来週にするだろ…
ここって意外とライトユーザーが多いんだと知ってがっかりだわ
↑「ちりとてちんのヘビーユーザー」を自慢してるアフォがいますねww
恥ずかしすぎるww
まあまあ。
そりゃ続編については今のとこ否定されてるってことで確定だけど、
ここはエロパロ板だから、若狭妊娠をネタに妄想するってことで良しかと。
「妊娠発覚する若狭に、徒然亭一同&柳眉と鼻毛は色めき立つ。
『一 体 誰 の 子 な の か …?』
ノンキに大喜びする草々を尻目に、どうする身に覚えのありまくる一同!?
やがて十月十日。生まれてきた子供は誰の面影を宿すのか? 待て次号!」
みたいなw
…正直すんませんでした。
>>52>>57 プロデュ―サーもヒロインの役者も、大分前に
「今のところ続編は無い」って断言してるしね。
niftyの来週のネタバレ写真、微笑む若狭の頭を撫でる草々の手、
若狭を嬉しそうに見上げる草々。幸せそうで嬉しくなった。
>>59 愛妻家の草原兄さんは除かれますよね。
その代わり焦りまくる一同に鞍馬会長を含めてください。
こんな感じ〜?
(若狭と俺の子。ほんまにほんまの家族ができるんや…)
感動に打ち震える草々。
いつも家族を求め続けた自分にとってこれほどの幸せがあろうか?
(喜代美ちゃんが妊娠…もしかして俺の子やろか?)
数ヶ月前の罪深い行為を思い出す小草若。
自分を小浜まで迎えに来た喜代美と過ごしたあの日の…?
(喜代美が妊娠…あの時の…?)
バレンタインので貰った催淫剤入りのチョコを喜代美に食べさせ、
乱れ狂う喜代美をそのまま犯した記憶を呼び覚ます四草。
確か避妊はしたはず。けれど算段も、狂うことは、ある。
(若狭に子供が…私とのあの時の子やろうか…?)
「古典落語の会にまた出てくれ」との名目で若狭を呼び出した日、
真っ白いうなじに引かれるように口づけて、そのまま…。
柳眉は、苦悩する。計算は、あう。
(俺の子や。まちがいなく俺の子や。)
鼻毛、もとい尊健は確信する。
柳眉の落語会にでたんやったら、俺との創作落語の会にも出てくれ!
半ば脅すようにして頼み込んだあの日。
「創作落語のほかにも色々教えたる!」と、無理やり関係を迫ったあの日の?
(そうか、若狭に子ができたか)
常置小屋を建てたいと、一途に願い出る若狭にそっと耳打ちした。
「そんなに助けてほしいんやったら、出すもん出さんかい。なぁ若狭?」
苦痛に耐える若狭の顔を思い出す鞍馬会長。
前スレからいろいろ設定拝借。ご容赦!
あー小草若の「数ヶ月前」は時系列あわんね。訂正。
あれって5月5日だから、四草のチョコレートもいつまで保存しとったねん!てことにw
やっぱりテキトーなこと書くもんじゃないですねぇ。
ついでだから忘れてた小草々の分。
(おかみさんが妊娠…もしかして)
師匠とおかみさんの連夜の営みに疲れ果て、昼間はぼーっとしがちになった小草々。
だんだん夢遊病の兆候が現れてきたことを指摘される今日この頃。
(おかみさんを無理に犯したん夢や思うとったけど、実はほんまやったんやないやろか?)
おかみさんは普段どおりに接してくれとるけど、なぜかふとした弾みに固い表情を見せる。
あまりに生々しすぎる手触り、快楽の記憶。あれは。
(夢や、ない…)
なんつってw
ソースもないのに続編とか言い出すのもハァ?だけど
>>28みたいな事を得意気に書く人間もいるからな…
>>63 いい、時系列合わなかろうが細かい事はいい。
自分も大体そんな感じの妄想したからw
>>63 前スレでバレンタイン四草×若狭書いたものですが…
ちょwおまwwそれなんて昼ドラwww
素敵に設定いかしてくれてありがとう!
四草×内弟子修行中の若狭書きたいんだけど、今更需要あるのかな?
エロパロで妄想する分にはいいけど本編の方で本当に若狭が妊娠したら
草々と若狭ったらやっぱり…って感じでなんか生々しくてヤダw
>>66 4x若狭 ぜひ。平米師匠も絡めて欲しすw
>>63 妄想GJ!
小草々、夢遊病ですか。可哀想だけど、子供が産まれたら、
お世話係としても活躍しそうだね。子供に実は自分がパパだと吹き込んだりしてw
誘い受でスイマセン^^^^
四草×内弟子修行中の若狭(→草々)、書き上げてしまったので投稿します。
携帯厨なので無駄に長い+あんまりエロくない気がしますがご了承下さい。
そして四草兄さんの若狭を誘い出す手口が前スレバレンタインと同じ…orz
今日はお昼から四草兄さんに稽古をつけてもらった。
しぶしぶだけどしっかり教えてもらえたのでなんとか覚えられた。
兄さんが帰ったあと、庭掃除をしながら噺を何度も反復していたら電話が鳴る音がした。
「はい徒然亭です」
『居間に財布忘れた』
「し、四草兄さん?」
『ついでにバナナ買ってこい』
「あ、あの、ちょ…」
一方的に電話を切られた。
「これも修行の内…なんかなあ」
「そぉやぞ」
「し、師匠!」
「まあ気ぃつけてな、色々」
「はぁ…」
仕方なく私は兄さんの家まで財布(と平兵衛の餌であろうバナナ)を届ける事にした。
***
「…で、はいこれ財布とバナナです」
「まあ座れ、茶ぁぐらい淹れたる」
「あ、私手伝います」
「マアスワレワカサ!スワレワカサ!」
「平兵衛〜!久しぶりやねぇ」
四草兄さんと並んでキッチンに立つ(…と言っても私は見てるだけ)。
兄さんの手はすごく綺麗で、男なのに一つ一つの動作が色っぽい。
「兄さんって色っぽいですねぇ」
「……は?」
「女の私よりもなんや色っぽぉて羨ましいです」
すると兄さんはにやりと笑って私の耳元に顔を近付けた。
「そらな…処女に色気も糞もあらへんやろ」
「っ……!?」
「なんなら俺がお前の色気、引き出したろか」
「え!?ちょっと兄さ…っわあ!」
何がなんだか分からないうちにフローリングに押し倒されて、手をタオルで縛られた。
兄さんは私に跨がって、冷たい目で私を見下ろしている。
その目が何だかとても怖くて仕方がなかった。
「に、兄さん何のつもりですか!やめて下さい!!」
「だまれ」
「ダマレワカサ!ダマレワカサ!」
「いや!怖い…怖い!」
「だまれ」
トレーナーを胸までぐいと捲りあげられて、冷たい空気に肌が粟立つ。
経験はなくともこの先されるであろう行為はなんとなく分かっていて、頭の中が恐怖と戸惑いでいっぱいになった。
「胸はデカいな」
「い、や…」
「白いブラか…まあアリやな」
「兄さん…いや…!」
兄さんの整った鼻が臍から胸の方へ肌を滑ってくる。
そして左胸をペロリと舐めて、ブラの上から甘噛みされた。
右胸は痛いぐらいに揉みしだかれている。
体の震えが止まらない。
「いややあ…こんなん、ホンマにいや…」
「……」
「兄さん…助けて草々兄さん…」
草々兄さんの名を出した瞬間、今まで薄ら笑いを浮かべていた四草兄さんの顔が一瞬で凍り付いた。
そしてみるみるうちに怒りの表情に変わっていく。
「…そんなに好きか!?草々兄さんが!!」
「ひ…!」
「あんな落語だけの恐竜頭のどこがええねん!
あんな女も博打もしらんようなやつおもろないやろが!!」
「に、いさ…ん?」
「黙れブス!」
そのまま頬をはたかれて、身体を目茶苦茶にまさぐられた。
ショーツの中に兄さんの綺麗な手が入ってきて、自分でも触ったことのないような場所に指を挿れられる。
「い…った、ァ!」
「黙れ!お前なんか…!」
「痛い…!いや!痛い兄さん!!」
激しく指を抜き差しされて、ビリビリ身体が痺れた。
初めては痛いって聞いてたけど、これはちょっと痛すぎる。
私の目からはボロボロ涙が溢れてて、ぼやける視界の中に草々兄さんの笑顔が浮かぶ。そして同時に師匠の「色恋は禁止やで」という声が聞こえてきた。
所詮、叶わない子供の恋だったんだ。
そこからは殆ど放心状態でされるがままになっていた私に気付いた四草兄さんがすっと立ち上がった。
そしてシンクから何かを持ってきて、再び私の上に跨がる。
「子供出来たらかなんからな…これ挿れたるわ」
「……?」
「ま、意味分からんでえぇ」
そのまま下腹部を、兄さんの指とは比べ物にならない圧迫感が襲った。
痛くて痛くて思わず身体がのけ反る。
メリメリという音が聞こえてくるようだ。
「い……った…ぁ…い!」
「うまそうに咥えこむなあ」
「なに…?いた、い痛い…!」
「バナナ、そんな美味いか喜代美」
「…!」
考えられない。
私の下腹部にはバナナが挿さっていて、兄さんの手で抜き差しされている。
グチャグチャといやらしい音と平兵衛の羽の音が小さな部屋に響いている。
兄さんは、訳が分からなくて泣きじゃくる私の額にキスをして、何故かとても傷ついた顔をしていた。
「い…いやァ……あ、あぁ、い…ンああ!」
「お前なんか…死んでしまえばえぇのに…」
「あっ、あん…ぁ!兄さ…し、ぃそ…兄さん…っあ」
「死んでまえ、お前なんか」
「ひ…あァっ!」
それきり私は意識を手放した。
そして目が覚めたら草若邸の内弟子部屋にいた。
身体は痛みがあるものの、汗などは綺麗に拭かれていた。
おぼつかない足取りで立ち上がり壁に耳を当てると草々兄さんの寝息が聞こえて、涙が溢れてきた。
「兄さん…っ」
(もう私は、後戻りが出来ないんだ)
以上です。
思ったより長くなかったかな?
そして平兵衛がちょっとうっとおしい感じにw
欲望のまま書き進めたら、四草がただの変態レイプ犯にorz
読んでくださった方、ありがとうございました〜
若狭もまた動揺していた。
結婚して10年。
新婚当時こそ経済的な事情もあって避妊はしていたけど、
何とか生活も安定してきて、何時の頃からか子供を望んでいた。
だけど今まで何の兆候も無かったのだ。
それがどうして今・・・・・・?
そう思うと、妊娠の喜びに翳りが差す。
草々と自分が待ち望んだ、血を分けた家族なのだ。そう、そのはず。
そうでなくてはいけないのに・・・・。
処置してしまおうか、でも自分の胎内で新しい命は成長していく。
そして夫の本当に嬉しそうな表情を見ていると、そんな事は出来ないと思う。
幸か不幸か、夫の恐竜頭では自分の不貞なぞ思いもよらないだろう。
例え遺伝上の父親が誰であれ、自分の子供なのだ。
大丈夫、某野球選手の都市伝説みたいに、
肌の色が違う子供が生まれる事は無いだろう・・・・
>>63さんから妄想してみましたw
>>79 ちょww
もし若狭が黒い子を産んだら
伝説になるやろ
>>78 GJ!久しぶりの四×若狭ktkr
四草、やってることはほんまメチャクチャwながら、ちょっとしんみりした。
前スレの名作『アンバランスなkissをして』でも思ったけど、
やっぱ途中で自分以外の男の名前出されるのはキツいよなぁ…
感情表現下手な四草だけに、キレるとこうなっちゃうのか。あなおそろしやw
>>79 GJ! 63の妄想ネタからナイスな若狭心情編妄想して頂けてなんか嬉しい。
某野球選手の都市伝説ワロタ!確かに日本男子ばかりなんでそれはないw
ていうか、この話の展開だと草々兄さん男性不妊症設定?
しかも夫の恐竜頭って…ひでえよ若狭w
>>81 >ていうか、この話の展開だと草々兄さん男性不妊症設定?
ドラマ板本スレで、若狭が迎えに来た廃屋で高熱を出した際
種無しになった説があったww
いや、別にどちらに原因がある不妊と言うわけでなくても
たまたま出来なかったという事もあるわけで。
>>81 入れる所を間違えてるか、コウノトリ説orキャベツ説を未だに信じてる可能性も有りそうな気が…
回数を重ねすぎると出来ない説も
マジレスすると、健康な男女がタイミングよく合体しても、受精する確率は20〜30%と言われてる。
また妊娠成立しても15〜20%は流産。
現実なんてそんなもの。
純粋に排卵日とかに無頓着なだけな気がしてきた
「人間て哺乳類やろ?排卵なんかあるかいな!」
「エエッ、恐竜って卵で産まれるんですか?」
「若狭、楽しみやな。早よ生まれてこんかな・・・・・卵!」
「草々兄さん、卵が生まれたら、私、頑張って温めますさけ。」
「無理すなよ。卵が孵るまで家のことは俺もやる。」
「なんか俺、あの二人から卵生まれてきそうな気ぃしてきたわ。」
「卵が生まれるかどうか、賭けますか?」
「生まれるか、アホ!」
>>88 師匠…地獄から帰って来て、恐竜夫妻に性教育の稽古つけてやって下さい。
91 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/23(日) 22:02:07 ID:0Y3D+EDN
青木夫妻の仁義なき離婚戦争
失礼。
四×若狭内弟子時代、いいなあやっぱり好きだ。
ということで一気書きしてしまいました。
長めエロなし。ほんますんません。
そんなんで良かったら読んだって下さい。
女は勝手に寄ってくるもの。
つまり自分は、邪魔になった女を追い払うだけでよかった。
「もう用はあらへん。帰れ」
「カエレブス」
平兵衛とのこの連携で、大抵の女は泣きながら退散する。
多少粘っても、冷たく一瞥くれて部屋からたたき出せばそれで終わり。
女など、一時だけ体があればそれで上等。あいつらの心など必要ない。
…そのはずだった。
勝手が違う。
どう考えても勝手が違う。
田舎くさい子供じみた妹弟子を思い出して、四草は不機嫌になる。
アホで鈍うてどん臭うて色気ゼロで、不器用なことこの上なく。
すぐ落ち込むくよくよ陰気な子で、その上妄想癖まであるときた。
そのうえあいつは…草々兄さんを好いとる。
草々兄さんはといえば、あいつのことなんぞ気にかけとる気配もなく、
あいつと同姓同名のまあまあええ女にすっかり入れこんどる。
そやのにあいつときたら、草々兄さんに怒鳴られても睨まれても、
草々兄さんの背中ををいっちょまえに切なげな目で追いかけとる。
あんまりにも冷たくあしらわれとるから、「泣くな、喜代美」と肩に手をおいたが、
例外なくころりと女が落ちるはずの手管が、この鈍い子供にはまったく使えん。
「へ?呼び捨て?」とそんなところにだけ反応しよった。
自分達を徒然亭に必死で呼び戻したんも、草々兄さんのためやときた。
自分にとっては奇跡が起きたような天恵だったが、そうと聞いてはなぜか面白くなかった。
つまりこの自分が、生まれて初めて女のために心を砕いている。
そのことが四草を限りなく不機嫌にさせていた。
……算段、しまひょか?
算段の四草モード発動。
片付けをしとるあいつの後ろから声をかける。
「…おい」
「うっひゃぁぁ!、、、って四草兄さんやないですか。もう!おどかさんといて下さい!」
「…お前、ほんま色気無いな。なんやその絶叫」
「いいいいい色気なんてええんですっ!ほっといてください!それより四草兄さん、何の用ですか?」
「…そんなんやから、草々兄さんとられてまうんやぞ。」
途端、喜代美の顔がすうっと曇る。
「そんなん、最初から草々兄さんは私のことなんて全然好いとりならんし、それに、内弟子修行中やから…」
「お前に致命的に足らんのは、色気や」
あっけに取られたような喜代美に、さらに畳み掛ける。
「色気、あったら大抵の男は落ちる」
ぱくぱくと金魚のように口を動かす喜代美。声でてへんぞ。ほんま色気皆無やな。
「それさえあったら、お前もあの子から草々兄さん取り戻すことかて出来るかもしれんな。まあ俺には関係ないけど」
喜代美の表情が、すうっと迷うように揺れる。
そして、とどめの一押し。
「色気、ほしいんやったら、俺がなんとかしたろか?」
四草兄さんの言葉に釣られるまま、四草兄さんの部屋へ来てしまった。
草々兄さんの気持ちをA子から取り戻せるかもしれんって恋愛マスターの四草兄さんに聞かされたら、
思わず心が動いてしまったけど。
辺りを見回す。飾り気ひとつ無い質素な部屋。紛れもないおとこのひとの部屋。
気づいて、改めてドキドキしてしまう。よかったんやろか、こんな所来て…?
「なに緊張しとるねん」
私の気持ちを見透かすように四草兄さんが薄く笑う。
慌てて立ち上がった弾みで、机の上に置いてあったマグカップを手で払い落としてしまう。
「何やっとるねん…ほんま鈍くさいな」
「ドンクサイ」
ばたばたと羽音がして、九官鳥の平兵衛が繰り返す。なんだか微妙に落ち込んでしまう…。
「さて…。何から始めるかな?」
唇の端を吊り上げて、にいっと四草兄さんが笑う。な、なんやいやな予感…。
「まずはあれや。そのいっつも色気のうくくっとる髪。ほどけ」
「は?」
聞き返す間もなく、四草兄さんの手がすうっと伸びて、髪をくくったゴムを引き抜いた。
「そう。それでこの髪をちょっと顔にかけて、、ちょっと唇にかかるくらいに」
ぼんやりしてる間に四草兄さんの手はてきぱきと動いて、髪に触れ整えていく。
間近に見る四草兄さんの顔は、まつげが長くて、すがめた眼差しが…色っぽかった。
「…何をぼやっとしとるねん。で、ちょっと上向いて唇を開いて…鏡見てみ」
言われるままに差し出された鏡を見ると、なんや普段と違う自分の顔。
なんや、キスをねだって誘っとるみたい…。
「…まあまあやな。」
いつの間にか後ろに回ってきていた四草兄さんが、私の肩越しに鏡を覗き込む。
ふわりとグリーン系の香りと、あと何かが混じった香り。四草兄さんの、におい…。
四草兄さんの息が首筋にかかって、ぞくりとしてしまう。
「あとは目やな。うるませろ」
「はあ?そんなん潤ませようおもて潤むもんやないやないですか」
「簡単や。切ないこと考えたらええ。」
切ないこと…、、
草々兄さんがA子に見せるはにかむような笑顔。A子だけを追う眼差し。
A子を抱きしめる、草々兄さんの後姿…。
「…ちょっとはうるんだやないか」
鏡を見ると、しっとりと濡れた目。
「…お前、何考えた?」
凍てつくような冷たい声に振り返る。
さっきと同じ無表情なのに、なぜか四草兄さんの感情が凍てついているのがわかる。
「し、四草にいさん…?」
「答えろ。草々兄さんのことか?」
ぐい、と二の腕をつかまれる。大きな手。抗えないほど強い力。
「い、痛い!四草兄さん!」
「答えろ」
「そ、そんなんやないです!今までのつらかったこと思い出しただけです!」
気がついたらそう答えていた。怖かった。男の人の手。男の人の力。
急に四草兄さんが男の人やっていうことが、身に迫って感じられて。
「へぇ…」
つかまれていた腕が解放される。相変わらず四草兄さんの雰囲気はどこか怖いままだったけれど。
「まあええ。表情はそんなもんや。あとは、体やな」
「はあっ!?」
私の困惑もどこ吹く風の淡々とした声で、四草兄さんは続ける。
「お前、そのだぼっとした服なんとかならんのか?」
「何とかて…そんなこと言われても、ずっとこんなんやし…」
言いながら、自分の服を見下ろす。ゆったりとしたジーンズにパーカー型トレーナー。
内弟子中の雑用をこなすには、やっぱり動きやすい格好が一番やし…
「脱げ」
「はあぁぁぁっ!?」
耳を疑う。ぬげ、って、、えええええええ!!?
「どうせトレーナーの下、何か着とるやろ?」
「それは…Tシャツ、着てますけど。でも…」
「それやったら夏や思うたらええだけや。トレーナーやったら全体の雰囲気がわからん。色気の算段のしようがないやないか」
それは、、確かに夏や思うたら普通の格好やけど、でも、、なぜか無性に恥ずかしい気がした。
「まあお前が別に草々兄さんと今のままでええ言うんやったら、俺は全然かまへんけどな」
ちくり、と心が痛む。草々兄さんとA子が抱き合っている姿が目の裏に浮かぶ。
えいやっとトレーナーを脱ぐ。ひやっとした冷気に、思わず体がすくむ。
えりぐりの大きく開いた、体にそった薄いTシャツ一枚になった私を、四草兄さんが冷たい眼差しで検分するように見ている。
自分がマネキンにでもなったかのような感覚。見られているという恥ずかしさで、いたたまれないような気持ちでいっぱいになる。
「…けっこう胸あるな。色気だそ思うたら、乳放り出すくらいの気持ちで生かせ。」
淡々とした四草兄さんの口調は変わらない。けれど内容は完全にセクハラで。
「っ!!!四草兄さん!なんちゅうこと言わはるんで…、、ってきゃああああああ!」
いつの間にか、抗議しかけた私のすぐそばまで四草兄さんは来ていて。おもむろにぐっと私の胸を両側から寄せてあげた!
「ななななな、何するんですか四草兄さんっ!!」
ざざざ、と音を立てて後ずさった私を、四草兄さんは涼しい顔で見返す。
「何って、谷間作ろうとしたんやないか。色気でるように。」
ああそっか、色気出すための工夫の1つやったんですね…って、そんなわけありますか!!!
頭の中で猛烈な勢いで危険信号が点滅する。はやく、はやくここから出んと…。
「かかか帰りますっ!!!」
後も見ずトレーナーをつかんで部屋を飛び出そうとして、どんっと何かにぶち当たった。
あいたた…と見上げると、それはいつの間にか玄関近くまで来ていた四草兄さんで。
「もう遅い」
強い力で抱きしめられていた。厚い胸板、固い筋肉質の腕。男の人の、体。
息が出来なくなりそうになって見上げると、そこには四草兄さんの顔があった。
長いまつげ。整った鼻筋。そして…どこまでも冷たく澄んだ、氷のような目。
吸い寄せられるように、動けない。
その顔がすうっと見る間に近づいて、、唇に何かが当たる感触。
ふぁーすときす…と思う間もなく、舌で唇がこじ開けられる。続いてぬるりとした感触。
四草兄さんの舌は、私の舌をさんざんもてあそび、口の中を蹂躙する。
苦しくて息ができなくて、でもなんだかぼんやりしてきて、不思議な感触に陶然とする。
しばらくして唇が離れたとき、体中の力が抜けて、ぺたんと座り込んでしまった。
「目が潤んで、ええ感じの表情になっとるな。鏡見てみい」
言われるままに、ぼんやりと部屋にある等身大のスタンドミラーをを見る。
そこには、初めて見る自分の姿が映っていた。
ぼんやりと虚ろな目は潤みきって、半開きの唇にはほどけた髪がかかり、
ぺたんと前についた腕で胸は両側から寄せられて、Tシャツの胸を大きく盛り上げていた。
いやらし…
淡々とした四草兄さんの声が聞こえる。
「そんな顔されたら、大抵の男は落ちる」
座りこんだままの私のそばにすっと身をかがめる四草兄さん。
そして、そのまま覆いかぶさるように床に押し倒された。
「そんな顔で誘うからやぞ」
もうアカン。ぎゅうっと目をつぶる。いくら経験ない言うたかて、この先どうなるかくらいはわかる。
初めてやのに。なんで、なんでこんなことに。
なんでひょいひょい男の人の部屋に来たりしたんやろう。自分のアホさに腹が立つ。
でも兄さんやから、兄さんやのに、なんで、四草にいさん…?
草々兄さん…
涙がぽろぽろとあふれて止まらない。
ひっく、ひっくと自分のしゃくりあげる声と、平兵衛の羽音だけが部屋に響く。
けれど、しばらくたっても、四草兄さんは全然動かない。
「ぎゅううっっと目えつぶるな。ほんま色気ないな」
「イロケナイ」
先ほどと変わらない淡々とした四草兄さんの声に、おそるおそる目をあける。
「あの、しいそう、兄さん…?」
兄さんは、私に覆いかぶさった体勢のまま、私を見下ろしていた。
その顔はいつもの無表情…のように見えたけれど、少しだけ、ほんの少しだけ違って見えた。
すこし呆れたような、少し悲しげなような、少し苛立ったような、少し途方にくれたような…
それは、初めて見るとても不思議な表情だった。
「せっかくエエ線行っとったのに、今ので台無しや。まだまだ子供やな」
「え…?」
「その程度では、まだまだやな。もっと色気出るように精進しとけ。ただし」
四草兄さんは薄く笑う。
「色気は好きな男の前だけでだせ。せやないと、さっきみたいな目にあうぞ」
「兄さん…」
「まあそのうち俺の前だけで色気出すようにさせたるからな。覚えとけ」
そう言ってちらりと流し目をくれた四草兄さんの、その色気の凄まじいこと。
へなへなと力が抜けそうになったけれど、何とか立ち上がってトレーナをつかみ、
四草兄さんに一礼して、よろよろと師匠の家へ帰ったのだった。
その晩、兄さんの夢を見た。
草々兄さんではなく、四草兄さんの。
四草兄さんの不思議な表情と、最後の言葉と、そしてあの目が頭から離れなくて。
稽古場で今日も四草兄さんに会うはず。会ったらどんな顔をすればええんやろ?
そんなことばかり考えて、朝帰りした草々兄さんの姿に胸を焦がす暇もないくらいで。
「おはようさん」
四草兄さんの声を聞いただけで、胸がドキドキする。なかなか顔が上げられない。
「おはようございます、四草兄さん」
そこには、無表情ないつもの四草兄さんがいて。
人の悪い笑みをわずかに浮かべて、こちらを見るものだから。
私はなぜか動揺して、足元にあったバケツの水を見事にひっくり返したのだった。
自分に会うなり目が泳ぎ、見るからに動転して挙句の果てにバケツの水をひっくり返して
「ひゃぁぁぁ!!」と色気ない声をあげる喜代美を見て、色気のいの字もあらへん、と四草は思う。
(まだまだ子供や。けど…)
昨日、自分の部屋での喜代美の姿を思い出す。
誘うように軽く開かれた唇、濡れた瞳は四草だけを映してぬめる。
あんな顔をされたら……。いや、もともと喜代美を頂くつもりで部屋に連れ込んだのだが。
けれど、目をぎゅっとつぶってすすり泣く喜代美の姿を見ていると。
(算段の四草ともあろうものが)
アホで純情なあいつを算段にかけて部屋に連れてくるなど、赤子の手をひねるより簡単。
体を頂く算段は実に容易い。ならば心をも頂こう。
(覚えとけ。今度は自分からあの顔させたるからな)
四草は、心を手に入れたいと思ったこの初めての感情の名前を、まだ知らない。
『世界はそれを恋と呼ぶんだぜ』
以上です。ほんまお粗末でした〜。
>>88 なんか微妙にありそうでワロタ
会話上手いですね〜ほんま目に浮かぶw
101 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/24(月) 00:47:48 ID:xZnWyA/Z
なんか不器用な感じがよかったです
>>93 おお!GJです
これが本編ならどんなに嬉しいか…
続きwktkして宜しいですかな?
>>100 おお〜、すごくらしくて好きです。
四草は最終段階までは手を出せないだろうなー、というイメージなので、
ものすごく想像通りでした。続きよろです〜。
>>100 すごくいいですねー!
それぞれのキャラがよく出てるし、テンポがいい!
特に「もう遅い」がツボでした
続き待ってます!
>>100 乙です!オチが上手いですね!
話し変わって、今日の放送で今度は草若宅の2階に住んでいる青木夫妻。
弟子入りから6年近く経過しているから小草々はもう内弟子部屋を出てるだろうし
誰はばかることなくセクロスできる環境でご懐妊?
ていうか今日の若狭の服がスッケスケではあはあした(´Д`*)
えろすぐるw
今更だけど若狭は人妻になってからの方がエロいね
四草に抱き締められたり小草若に旦那と別れてくれ言われたり
でも、あんまりエロく感じなかったw>四草抱きしめ
個人的には、その後の頭撫で撫でと視線の方がエロく感じた。
あのとき弟子たちの前には亡き師匠が居たなーと
思い出したら哀しくなってきたんだぜ・・・(つД`)
地獄で師匠は志保さんといちゃこらしてるといい。
109 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/24(月) 23:01:10 ID:k8wXqcud
草々は早漏
早漏にいさーん!
若狭ー!
>>100 遅くなったがGJ!GJ!
やっぱり四草×若狭良いわ、面白かったです。
まだ子供子供してる若狭に四草が本気でのめり込むのが好きだ。
若狭の色気が覚醒した所も読みたい!
流れを読まずに小草若×若狭を投下します。
草々が無精子症で、小草若と草々が同じ血液型という設定です。
エロありですのでよろしくお願いします〜。
小草若はとあるホテルのロビーにいた。
というのも、可愛い妹弟子の若狭に突然呼び出されたからである。
平日の昼下がりとあってあまり人気のないロビーに、約束の時間ちょうどに若狭は現われた。
「小草若兄さんすいません、突然呼び出したりして…」
「おはようさん、別にかまへんがな〜
で?どないしたんや?」
向かい合わせに座る若狭の顔を覗き込むと、普段からは想像出来ないような暗い表情をしていた。
何かよっぽどのことがあったのだろうと察した小草若は、かつて彼女に恋心を抱いていた若かりし頃のように、優しく問い掛けた。
「若狭?どないした?
俺でよかったらなぁんでも聞いたるし、力になるから。
時間は気にせんでえぇし」
「あ…あの…」
「ん?」
俯いていた若狭はゆっくり顔をあげ、潤む瞳を左右させながら躊躇しつつも話始めた。
そしてその内容は驚くべきものだった。
「私、ずうっと子供が欲しかったんです…
でも結婚してから今まで、子宝に恵まれませんでした。
それで、もしかしたら何か悪いとこあるんかも思うて…草々兄さんと一緒に病院行ったんです。」
「え…あぁ…ふ、不妊とかそんなんの検査か?」
「はい…」
「そぉかあ…、それで?
結果はどないやってんな」
「私は何ともないぃ言われたんですけど…」
「?」
「兄さんは…草々兄さんは…
無精子症、なんです」
「……えぇっ!?」
あの見るからに健康な男が無精子症だなんて信じがたいことだった。
なんでも例の破門事件の際に高熱を出したことが原因かもしれないらしい。
「それ…草々は知ってんのか」
「いえ、結果聞きに行ったんは私だけですさけぇ」
「そうか…」
小草若は戸惑いを隠しきれなかった。
何故ならその件は自分が起こした暴力沙汰のせいであり、そのせいで最愛の妹弟子を苦しめてしまったからだ。
力になるとは言ったもののどうすることも出来ない、そう思って頭を抱えた瞬間、若狭の口から思わぬ言葉が出た。
114 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 02:17:02 ID:a012ih3/
「あのぉ、小草若兄さんと草々兄さん、血液型一緒でしたよね」
「え…あ、うん」
「小草若兄さんさえよければなんですけど…」
「…なんや?」
「私を、抱いてくれませんか…」
小草若は予想外の言葉に驚き、ゆっくり若狭を見た。
その若狭の顔は今までとは違い、凛とした大人の女性のものだった。
「若狭はそれで、えぇねんな?」
「はい」
「後悔せんか?」
「はい」
「……分かった」
小草若がこんなにも大変なことを承諾したのは若狭の強い意志と己の責任感もあったが、何より彼女を抱きたいと思ったからだった。
いつの間にか大人の色気を纏うようになった彼女を、純粋に抱きたいと思ったのだ。
「部屋はとってありますさけぇ、今からでもえぇですか」
「…かまへん」
そうして小草若は、初めて心から愛した妹弟子を抱くことになった。
++++++++++++
先にシャワーを浴びた小草若は、ベッドに腰掛けて目を閉じた。
当たり前だが、後ろめたさがない訳ではない…しかし他に方法がないのだから仕方がない。
そう言い聞かせて、安物のワインを飲み干した。
「兄さん、お待たせしてすいません」
声の方へ振り向くと、小草若は思わず息を飲んだ。
上気した肌をガウンに包み、少し湿った髪をおろした若狭は恐ろしいほど色っぽかったからだ。
若狭は小草若の隣りに腰掛け、震える手を握り締めた。
「小草若兄さん…お願いします」
「……喜代美ちゃん」
堪らず小草若は若狭…否、喜代美を押し倒した。
啄むようなキスを繰り返し、そして深く口付けた。
時折漏れるくぐもった声、乱れる髪や白い肌、全てに目眩を覚えた。
「あかん…優しく出来へんかもしれへん」
「構いませんから…小草若兄さんの、好きにして下さ…い」
「ゴメンやで…好きや、喜代美ちゃん」
「あ…兄さ…んぅ…」
手のひらで覆うのがやっとの胸を片方揉みしだき、もう片方は舌を這わせる。
それだけで喜代美は身体を震わせて悦楽の表情をみせた。
自分とは違う肉付きの良いふくよかな身体は柔らかくてとても気持ちがいい。
身体中にキスをしながら空いた手で下半身を撫でてやると、すでにそこは湿り気を帯びていた。
「嬉しいなあ…もう感じてくれてんねや…」
「あっ…いやや、そんなこと言わんでぇ…」
「せやかて、ココこんなにしてるんは気持ちえぇからやろ?」
「それは…ぁ…ひゃぅ!」
少しキツめに突起を擦り上げると喜代美は腰を浮かせた。
口ではいやと言いつつも、いつの間にか小草若の指に腰を押し付ける動きをしていた。
今度は中へと指を入れてやると、きゅうきゅうと締め付けてきた。
「あっあ…ん!こそ、じゃく兄さん…」
「喜代美ちゃん…もう、」
「来て、早く…挿れて下さい…!」
喜代美がそう言い終わらないうちに、小草若は己の熱を喜代美の中へとねじ込んだ。
「ん、んあっ!!」
「喜代美ちゃん…力抜い、て…!」
「あっ、は…ぁ!無、理です…んっ」
「動くで…?」
「は、い…っあ!」
小草若は性急に腰を動かし始め、喜代美も自ら腰を振る。
部屋には肉のぶつかる音と二人の吐息、そしてぐちゃぐちゃと粘着質な音が響いていた。
互いに限界が近くなり、更に激しく出し入れをする。
「あっ、にい、さん…も、アカン…っ」
「えぇで…俺ももう…」
「あ、ああ、あ…あぁあ…ん!!」
「…っく!」
思いっきり喜代美の奥を突いた瞬間、二人は同時に果てた。
小草若は喜代美の奥へ熱を放ち、喜代美はその熱を感じながら意識を手放した。
喜代美の懐妊が分かったのは、それから2ヶ月ほど後の話だった。
お付き合いありがとうございました!
す、すいません、途中で題名なし+ageてしまいました…
申し訳ない…orz
あまりに草々無精子症説が広がっていたので色々捏造してみましたw
草々×若狭派の方々には申し訳ない。
ちなみに題名は某ドラマから拝借ww
119 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 05:26:29 ID:3GTLP3jP
>>112-117 GJ!
私にとって、いろいろな意味(長さとかシチュエーションとか)でGJ!な話ですら
GJです!
同じ事を草原、四草、小草々にも頼む若狭をキボン
>>118 大人なエロさGJ!
今日の本編の妊娠騒ぎにそんな裏があったと思うと
背徳感&「良かったな!」と喜ぶ小草若の笑顔が
全く別の意味に思えてきていい感じに興奮した!
GJです
なんだかんだとちゃんと草若のDNAを受け継いだんですな
若狭が吐き気を催した時、「熊、何入れたんや?!」と
熊五郎を呼び捨てにする草々に萌えた
若狭、愛されてるね
妊娠と聞いて、若狭のお腹を見つめながらじりじりとにじり寄り、
若狭の両手を取り「ありがとう」と言う草々に感動。
まぁその後の「落太郎」「落子」に笑ったがw
若狭の幸せの象徴でもあるし、草々の落語を子守唄にして育てるのかな。
125 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 21:28:43 ID:OkyijKyP
草々オムツ変えたりお風呂入れたりしそうw
寝床で若狭のとなりに四草兄さんがいたから
何かおっ始まるのかと一瞬ドキドキしてから、冷静に戻ったw
自分は、子供が出来たと聞いた時の四草の表情に、心当たりあるのかとww
>>126 > 寝床で若狭のとなりに四草兄さんがいたから
字面で見たらスゲーエロい
>>111です。
皆さん感想ありがとうございました〜!
気力があれば鼻毛あたりも書いてみたいなあと思っています。
よろしければお付き合いお願いします。
鼻毛と清海、鼻毛と順ちゃんあたりもお願いしますうー
>>127 めっちゃきょとんとしてたねwどういう心情なのかな?
A.タイミング的に心当たりがある
B.草々兄さん無精子症情報入手済み→誰の子やねん
C.あの恐竜頭入れる場所知っとったんかい
>>129 鼻毛兄さん昨日の本編でええ味やったので、自分の中で株価↑↑!
wktkしつつお待ちしておりますです。
>131
つD.妊娠なんて都市伝説
>131
つE.生まれてくる子が女の子だったら光源氏計画の算段発動
134 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/27(木) 02:05:32 ID:qkR9XSXp
妊娠中もやんわりセックスしまくる草々夫婦。
おかげで年子が5、6人できました。
草々家族が増えて嬉しい\(^o^)/
これからも作るぞ!
若狭常に妊娠中、授乳中でヘトヘトになり体を壊して死んでしまう。
妊娠、出産回数が多い程
子宮は負担が少ない
毎月の月経の方が子宮には負担大
とマジレス、カッコワルイ
今まで出来なかったのに、2人目はあっさり出来そうな青木夫妻
>>134は妊娠中にセクースすると次の種が仕込まれると思ってるんだろうか
138 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/28(金) 00:27:35 ID:dPZzcuz8
颯太に犯される妊婦の若狭
颯太:ドラえもんが生き返らしてくれると思った
それはさすがに不謹慎
141 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/28(金) 09:27:43 ID:mCdWatVu
142 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/28(金) 10:43:51 ID:6bvDTz7+
若狭の妊娠は四草の算段
微妙に流れ読んでない感じで投下します。
四×若狭 常打ち小屋完成間近のある夏の日。
けっこうな長文で、ぬるいエロ有ですが合意なし
つまりレイプ系です。
あと四草はほぼ算段なしで、かなりダメダメです。
そんなんでもよろしければ、見たって下さい
144 :
祭りの後 1:2008/03/29(土) 02:29:20 ID:YErf4QqM
遠くから響く花火の音。華やかなざわめき。
(ああ、今日は夏祭りやったな)
別にもう、何の感慨もないけれど。
祭りはあまり好きではなかった。
太鼓の音、楽しげにさざめく人々。
徒然亭を失い心まで凍てついていた頃、それらは自分に、失ってしまった幸せな日々を
思い出させたから。
もう二度と高座など関係の無い自分に、あの高揚感を思い出させたから。
けれど、それはもう昔の話。
どんくさい少女という姿をとって舞い降りた奇跡が、自分に徒然亭をもう一度与えてくれたのは
もう15年も昔のこと。
師匠はすでになくなり、たくさんの危機もあったけれど、落語は四草の中で確固たる物として
息づき、もう二度とこの手を離れることはない。いや、もう離しはしない。
あのどんくさい少女――妹弟子の若狭は、今は兄弟子の草々の妻となり、人気落語家として、
そしておかみさんとして徒然亭を支えている。
おどおどとしてどんくさく不器用だった若狭は、今もその名残はあるけれど、落ち着きと貫禄を
備えるようになった。
あの頃…。
四草は、ほんのわずかの苦い思いとともに心の中だけで苦笑する。
あのどんくさい少女を自分のものにしたいと思ったこともあった。
自分に奇跡を起こした女。アホで不器用で、一途で強くて。
けれど、それももう昔の話。そう、遠い遠い昔の。
145 :
祭りの後 2:2008/03/29(土) 02:30:26 ID:YErf4QqM
「あ、四草兄さん。今から帰りなるんですか?」
稽古場をでて帰ろうとした時、縁側から声がかけられた。
「若狭」
そこには浴衣を着て、少しめかしこんだ若狭が立っていた。
ニコニコ笑いながら、こちらに走り寄ってくる。
「どないしたんや、その格好?」
「いえ、祭囃子きいとったらなんや落ち着かんようなってえ。ずうっと常打ち小屋のことで
落ち着かんかったさけ、お祭りに行く機会もなかったなあ思て。ちょうど浴衣着とったでぇ、
折角やからお祭り行ってみよかなぁ思て。」
子供みたいにころころとはしゃいで笑う。こういうところは昔から全然かわらんな。
「草々兄さんは?」
「草々兄さんは今日地方で高座があって、小草々くんもそれについていっとるんです。
一人でお祭りいうんも、なんや寂しいなぁておもとったとこで。」
「そうか」
そう言って帰ろうとすると、若狭はてこてこと四草についてくる。
「…なんや?」
「四草兄さん帰らはるんやったら、途中までお祭り、一緒に行きませんか?兄さんも
ちょうど浴衣やし」
「夏の落語家やったら普通のことやないか。」
「あきませんか?」
無邪気ににこにこと笑う。旦那が留守の時に、他の男と祭りに行くことになるという事に
全く気づいてないのだろう。というより、兄弟子が男やという発想が無いのか。
いや、と四草は自嘲する。そんなことを考える自分のほうがおかしいのだろう。
久しぶりに祭りをのぞくのもそう悪くはない。そんな風に思うのも、常打ち小屋の完成が
間近となり、こんな自分も少し浮かれているということなのかもしれない。
「どうせ帰り道やからな。」
そう答えると、若狭は花が咲いたように、それは嬉しそうに笑った。
146 :
祭りの後 3:2008/03/29(土) 02:31:25 ID:YErf4QqM
宵闇。露店の光と提灯が若狭の顔を照らし出す。
「四草兄さん!あれ!あれしましょう!!」
四草の袖をちょんちょんと引っ張り、若狭は無邪気な笑顔で見上げる。
その手はすでにたこ焼きやらリンゴ飴やらヨーヨーやらでいっぱいで、頭にはお面まで着けて
心から祭りを楽しんでいる風情だった。子供か、お前は。
「ほら!あれです!私得意なんですよ」
若狭が指差すのは射的の露店だった。
「見てて下さいね、四草兄さん!あの右から二番目のクマ、当てますさけ!」
言って5発の玉で狙うけれど、もとよりどんくさい若狭に仕留められようはずもなく。
がっくりとうなだれる若狭を見ていると、ほんの少し気まぐれがおこった。
「銃貸せ」
「へ?四草兄さん、射的やらはるんですか!?」
無言で玉を購入し狙いをつけた四草を見、あまりに意外だったのか若狭はきょとんとする。
昔から、負ける賭けはしたことがない。一発目は若狭の狙ったクマを、二発目はその隣のハコを。
「すごいすごい!!!四草兄さんほんま上手ですね!!!」
大喜びする若狭。その顔は本当に…昔と変わらなくて。眩暈がする。15年前であるかのような錯覚。
「次は、次はどれ狙わはるんですか!?」
「どれでも」
「大きいもんでも?」
「2〜3発かかるかもしれんけどな」
「それやったら、それやったら、、あの人形、どないですか!?」
無言で狙いをつける。残り3発。3発目で少し後にずらす。4発目でもうすこし。そして。
「わぁぁ!すごい!!すごいです兄さん!!!」
喜びで顔を輝かせて、若狭が四草の腕に飛びつく。と、慌てて手をはなす。
「すすすすいません四草兄さん!!つい興奮してもて…」
恐縮したようにぺこぺこと頭を下げる。なぜか、ちくりと心が痛んだ。
「それにしても、四草兄さんほんますごいですね!!一発も玉、外れなしやなんて」
いつの間にか。周りに少しずつ人垣が出来始めていた。若狭はそれにも気づいていない様子で、
嬉しそうに話していたけれど。
(――おいあれ、徒然亭若狭ちゃうんか?テレビによう出とった)
(ほんまや。若狭ちゃんやないか!一緒におる男は――旦那とちゃうな、見たことあるけど。あれは確か――)
(徒然亭四草や!ここ最近よう出とる)
(ほんまほんま?若狭ちゃん?四草さんもおるんやって!!)
「…おい、そろそろ帰るぞ」
「へ?もうですか?」
きょとん、とした顔で見上げる若狭。目顔で周りを指し示すと、はっとしたように若狭の顔がこわばる。
「…そうですね。空模様もなんや怪しなってきたし、帰りましょう」
147 :
祭りの後 4:2008/03/29(土) 02:32:19 ID:YErf4QqM
すみません、兄さん。私が興奮して騒いだでぇ、人が集まってきてしもて…」
人通りの多い道を急ぎ足で抜け出た後、若狭が申し訳なさそうにつぶやく。
「かまへん。潮時や。」
「けど…あ。」
ぽつり、と雨が若狭の頬に落ちる。と、見る間に雨は本降りになった。
師匠の家に帰り着いたときには、すでに雨にいいように濡れ、すっかり濡れ鼠だった。
濡れた肌に浴衣がはり付いて、髪からはぽたぽたと水滴が落ちる。
「すみません。兄さんほんまは家に帰りなるとこやったのに」
申し訳なさげな顔をしながら若狭は四草にタオルを差し出す。
「あ、それよりも着替え、とってきますね」
そう身をひるがえした若狭はまだずいぶんと濡れていたものだから、思わず声をかける。
「お前も早よ拭け」
「はい」
振り返って、若狭はにっこりと笑う。15年前そのままの笑顔で。
濡れた髪は顔に乱れかかり、浴衣はぺったりと肌にはりついて透けていて。
気づいたときには、若狭の腕をつかんで引き寄せて
「四草兄さん!?どないしなったん…っ」
若狭の声を封じるように、口づけていた。
「ちょっ、四草兄さん、やめ」
腕の中でもがく若狭を力ずくで抱きしめる。柔らかい小さい体。まるい感触。
(あの時と、同じ――)
いつか草々兄さんが出て行ってしまい、落ち込む若狭を抱きしめた時と変わらぬ感触。
あの時は<売れっ子の妹弟子を慰めて兄さんを探しに行かせて仕事を頂く>という
算段のつもりだったけれど。
(ただ若狭を抱きしめたかっただけ、か)
今になって気づく。抱きしめる必要性などどこにもなかったのだから。
別れる気のうても別れる言うたったらええと助言した自分に、どこかに本当にそうなれば
いいという期待が―――あった。
(浅ましい、アホな男や)
そう。算段もなく、ただ好きな女に好きやと言い続けたアホな小草若兄さんよりもずっと。
(底抜けの、アホや)
自分は、ずっと、この女を。
148 :
祭りの後 5:2008/03/29(土) 02:33:30 ID:YErf4QqM
もがく小さい体を畳におさえこみ、濡れた浴衣をはだける。
こぼれだす白い胸。あっと小さく声をあげ隠そうとする若狭の腕を、四草は片手でねじ伏せる。
手のひらにあまる柔らかな乳房をもみしだき、もう片方の先端を口に含むと、若狭の口から声が漏れる。
「くっ…兄さん、こんなん、あかん…」
切れ切れの声で懇願する若狭。目に涙を浮かべて。
その姿にさらに煽られるばかりの自分の浅ましさに、四草は罪悪感を覚える。
けれど、その感覚もどこか遠いことのようで。ただ若狭の体をむさぼる。
白い胸。カーブを描く腰のライン。吸い付くような肌。大きく割れた浴衣の裾からあらわになる脚。
止めろ、と頭のどこかで声が聞こえる。
なぜわざわざ他人の女を。しかも他ならぬ妹弟子を。
どうして負ける賭けに手を出す?
女など、他に掃いて捨てるほど手に入るのに。
結い上げていた若狭の髪はすっかり崩れ、畳の上に乱れ広がる。浴衣は乱れに乱れ、
かろうじて体にまとわりつくばかりで、裸よりもかえって淫猥な影を落とす。
雨で濡れて冷え切っていた肌はほの赤く火照り、いつのまにか声にも甘い響きが混じる。
秘所に指を伸ばし、ゆっくりと這わせる。そこはもう潤み滴っていたけれど、
ひっと細い悲鳴を上げ、若狭は腰を引き逃れようとする。
「や、やめ…兄さん、ひああっ!」
かまわず指をうずめようとする四草の手をおしとどめるように手で押し返そうとする。
けれどその力は悲しいほどに弱弱しく、その手ははかないほどに華奢で。
健気やな、と四草はぼんやりと思う。人妻の矜持か、草々兄さんへの操か。
逃れようとする腰をとらえ、秘所に顔を埋める。滴り落ちる蜜をこそげるように舌でなめとると、
若狭の背が大きくしなる。舌を挿しこみ、とめどなくあふれかえる蜜を吸い上げるたび、
身を震わせて小さく悲鳴をあげる。割れ目にそって指を滑らせ、蜜をたっぷりからませた指を
奥まで差し入れ、ゆっくりと抜き差しはじめると、ひくひくと内壁が震えまとわりつく。
「くっ、あ、に…さん、だめぇ…」
すでに体は蕩けきって、表情には官能の色が濃いのに、言葉は四草を拒む。
「…何でや?」
「そんな、ん、私は…草々兄さんの…あああっ!!!」
草々の名前が出た瞬間、秘所の隠れた突起を強く扱きあげる。
「聞こえへん」
「し…そう、兄さん、、何で、なんで、いやぁぁぁぁ!」
若狭の脚の間に体を強引に割り込ませ、奥まで一気に貫ぬく。硬直する若狭の体。
間髪いれず腰を引き、また最奥まで。若狭の内側が、四草自身をきつくきつく締め上げる。
「くぅ…っ」
あまりのきつさに思わず息をもらす。若狭の両脚を持ち上げ、さらに奥まで突き入れる。
「あああっ!!!」
内部をこするように激しく抜き差しする。そのたびに若狭の口からはあられもない嬌声が漏れ、
中は吸い付くように四草自身にまとわりつき、四草を限界へと導く。
「やあぁぁぁっ!!!」
一際激しく腰をたたきつけた瞬間、若狭の体が、中がびくびくと震え。
それと同時に、四草は若狭の一番深いところに、己のすべての精を注ぎ込む。
頭の芯が痺れるような感覚―――。
149 :
祭りの後 6:2008/03/29(土) 02:34:27 ID:YErf4QqM
もう既に祭りのざわめきも消えた闇の中。
若狭の白い体だけが、闇の中にぼんやりと浮かび上がる。
「…なんで、ですか?」
力なく横たわる若狭の口から、そんな言葉が漏れる。
答える言葉もない。
まだ荒い息をつきながら、若狭は続ける。
「な…んでぇ、そんな、悲しそうな顔、しはる…ん?」
かなしそうな、顔…。
「四草にいさん、泣きそうな顔、してはる…」
この、自分が? 泣きたいのは自分のほうやろうに。
若狭の言葉の意味がわからず、呆然としている自分に気づく。
一筋、二筋。頬に何かが流れ落ちる。
涙…?
「兄さん…」
気遣わしげにこちらを見上げる若狭。そんな、そんな目で。
「見るな…」
顔をそらす。けれど、涙はもう一筋、さらに頬をすべり落ちる。
(ああ、若狭に泣いとる所を見られるのは、これで二度目やな――)
なぜ涙がこぼれるのか、わからない。
ただ、自分の思いに気づいてしまった今、心に大きな穴があいたようで。
人には弱みを見せまいと、いつもポーカーフェイスを保ってきたのに。
この女の前では、どうしてそれが崩れてしまうのだろう?
ふわり、とあたたかいものが四草の身を包み込む。
「四草兄さん…泣かんでぇ…」
いつまでも、いつまでも若狭は、四草の体を抱きしめていた。
ぽつり、と若狭はつぶやく。
「いつか、兄さんとこうなるんやないかって…どっかで思うてたような…気ぃがします」
二ヶ月ほど後。
秋。常打ち小屋の完成が間近にせまったある日。
「若狭ちゃん、子供ができたんや」
感極まって若狭の手を握る草々兄さん。
大きな目をさらに見開いて驚きつつも、晴れやかな笑顔で祝福する小草若兄さん。
良かったなと、穏やかな笑みをみせる草原兄さん。
四草は、半ば確信する。若狭に宿った子は―――
以上です。お粗末さまでした。
若狭妊娠→四草の子供だったバージョンで書きたかったんですが、
予想以上に難航…。四草は華麗に算段にかけるのがお似合いだけど、
自分の出生のことがあるから、よっぽどでないと人妻に手は出さないぽ…
考えれば考えるほどドツボに…orz
読んでいただけた人がいたら、それだけで感謝です。
今日最終回と思うと、本当に寂しいなぁ…
うわぁ、リアル投下に遭遇!
GJです!やっぱり四草×若狭は萌えるなあ
>>150 最終回前の投下、待ってましたぁ!!
GJ!!!!
「聞こえへん」、底抜けにしびれましたがなぁ!
四草かわいいよ四草
>>150 やっぱり四草×若狭好きだ・・・(ほろり)。
んで・・・若狭も四草好きなんじゃん。
抱きしめた時、怒ってなかったもんなぁ。
またよろしゅう〜。
154 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 14:35:00 ID:wcLofa6J
ちりとて終わっちゃったからこのスレも疎かるのかな。。。
ちょっとせつない。。。
155 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 16:41:45 ID:YAFmln1Z
GJです!
終わってもまだ四草×若狭好きです。
暫くはまだまだイケる気がします。
なんか今さら四草×若狭が再燃してきた・・・。
四草の悪食にはビックリ
でも、初期の水商売風のおねえちゃんと、
太って年取ったけどやっぱり水商売崩れっぽいおばちゃんで、
テイストは似てるような気がしたw
だから若狭みたいなタイプが新鮮だったのだよ
公式の草若邸図面見てフイタww
一部屋分空けてない…隣り合ってるよ
160 :
150:2008/03/30(日) 03:36:29 ID:DXv/E6MW
読んで下さった方、ありがとうございます。
ほんま自分、45の男を泣かせるなよ…orzとかいろいろアレな話なんで、
感想頂けてめっちゃ嬉しいです。
本編は終わってしまいましたが、自分の中ではまだまだ…。
職人さん方の降臨、お待ちしております!!!
四×若狭熱はなぜか高まる一方。しかも、
1.新草若はまだA子呼び&結婚していない→ 若狭に未練たらたら。
同じ「キヨミ」の名に惹かれてる
2.
>>159さんの図面ネタより→小草々想像以上に眠れない日々w
3.DVD完全版発売→内弟子時代アゲイン
とか、依然妄想中。自分やばい…w
161 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 06:41:57 ID:gNVh7tzA
若狭の痴漢ネタ読みたいな。
バスか電車で痴漢されまくるの。
妊婦ってエロいよな
>>159 小草々くん・・・・
我々の想像以上の眠れぬ夜を乗り越えたのかも知れぬww
四草と若狭はお互い興味も接点もないんじゃない?
四草が執着してるのは平兵衛、師匠、小草若なわけだし。
初期設定では4兄弟のひとりは女性だったんだから、
四草がらみのカプで一番妥当なのは四草×女小草若でしょ実は。
何を特殊な想像ばっかりしてんねん
167 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 03:07:53 ID:G22ls+21
小草若(女体化)と四草いいな。
居候させてもらうかわりに四草に身体を差し出す小草若。
小「最近生理ないねん…もしかしたら…」
四「ガキでも出来たんやったら堕ろせ。」
と言いながら本当は嬉しくて密かにガッツポーズをする四草。
ある日、突然、小草若の腕を引っ張り草若のもとに。
四「小草若姉さんを僕にください。」
草「どうぞどうぞ。」
茂山氏の女装しか思い浮かばんよ…orz
自分の想像力では補完できんかった。
あんたらスゲーよ。
性別変わったら確かに薔薇ではないが、この板でアリ?
自分の感覚的には薔薇ぽだが。
無理…
自分は女体化もわりと大丈夫だが…小草若は無理。
一生懸命、スレンダーな女小草若を想像してみたが…
女体化妄想は四草のが簡単にできた。
いっそのこと両方おにゃのこにして百合は如何?
「小草若」っつー名前の時点で男が浮かぶから無理。
女体化は自分もムリぽ。
はてなの茶碗の稽古を小草若に頼まれた草原兄さんの如く、
想像しただけで「(・∀・)ムリ」となってまう。
175 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 09:58:48 ID:I8765ELk
同じく、このドラマで女体化はちょっと・・・。
へーべー師匠はどうだ?
黒髪の美女に化けて四草や草若師匠に性的な恩返しをするカラス…
女体化と言うより擬人化に近いか。
イイ!小草若より平兵衛師匠のほうが女顔だわ
178 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 11:22:29 ID:G22ls+21
いっそ四兄弟全員女体化して若狭が男体化したらおもしろいかも。
草原=太めな藤山直美タイプ
草々=長身の和田アキ子タイプ
小草若=華奢な久本タイプ
四草=セクシーな叶恭子タイプ
若狭=徳井優
徳井優…
せめて生田トーマにしてくれ
180 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 12:28:25 ID:2BQZ2vds
わっかんねぇwww
つか、変な方向に向かってるぞ、このスレwww
>>176 九か(ry
>>177 平兵衛師匠のどのへんが女顔なのか説明してもらおうかw
そしてスピンオフ正式決定おめ!
高校を卒業したばかりの僕が大阪で下宿したのは
自堕落な生活を送っている未亡人の師匠と、ぶっきらぼうで素朴な二番弟子一子が暮らす家
高飛車だが実は純粋な売れっ子タレントの仁子は師匠の実子だが仲たがいしている
師匠のもとを離れ、スーパーで働いている優子姐さん、男に貢がせながらも九官鳥と孤独に暮らす忍姐さん…
一門の結束を固めるために僕は奔走する!
こうですか?わかりません><
>>182 おもしろ〜い。
置屋さんの設定なら「(・∀・)アリ」だと思う。
若狭はちょんまげ結ってんのか
>>182 そして後半には、虚言癖のあるメガネっ娘が弟子入りして来るんですね。
186 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 15:41:17 ID:I8765ELk
普通に兄弟子と若狭の絡みが読みたい。
でもなあー、正直言って九官鳥の(性的な)恩返しはすごく読んでみたいw
つやっつやの黒髪なんだろうな(*´д`)
んだけど、四草の場合ある日部屋帰ったら妖艶な九官鳥女がいても
「帰れブス」で物語終わりそう……ね
いや、その妖艶な魔力で絡め取られてしまうんだきっと
191 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 15:53:56 ID:G22ls+21
優子まさこ
一美かずこ
仁絵ひとえ
忍しのぶ
美喜よしき
勇子ゆうこ
正子しょうこ
清きよし
順じゅん
友海ともみ
192 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 15:54:24 ID:G22ls+21
優子まさこ
一美かずこ
仁絵ひとえ
忍しのぶ
美喜よしき
勇子ゆうこ
正子しょうこ
清春きよはる
順じゅん
友海ともみ
連投ごめん
でも、需要あるなら全然九官鳥女書けるわ。
>>193 あれだけカラスのこと溺愛してるんだから、帰れブスはないでしょう
ところでここ数レス話題の女体化や人間化の話を書くなら、数字板の避難所の
イロモノスレのほうが適切だと思う
とりあえずノーマルも女体化も人間化もなんでもOK、待ってます
投下ヨロ
>>194 つまり、投下するとしたらここはあんまりふさわしくないってことですか?
内容について投下前にワンレスあれば
別にここでも構わないんじゃね
嫌ならスルーすればいいことだし
わざわざアッチに行かなくてもなあ
正直、女体化は腐くさいので勘弁してくれと思う・・・
原作キャラをやおらせるための言い訳にしか思えん。
そういったSSを投下する場所が他所にあるなら、そっちでやってほしい。
199 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 18:30:29 ID:G22ls+21
アッチってどこや?
答えろブス
そういうことばっか言うから書き手が減るんじゃないのか
サゲない奴は荒らしだから
ほかしとこ
ほやさけ四草×喜代美はエロいぃいうことやでぇ
四草にメスが近付くとヘーベーがティンカーベルみたいに嫉妬して嫌がらせするんだよ。
だから四草の「ガンバレ、ワカサ」の後に「ツカエヘン」言ってたのか>平兵衛
ちょw平兵衛ww
あの長生きっぷりからして、もうただのカラスではないような気はしてたけどww
もうすでに猫又みたいになってるのかもね。
「カエレブス」とか言って今まで散々女追い出してきてそうだし…。
もう獣姦でいいよ
そんな投げやりなw
平米の発情期に性処理の世話をしてやる四草
四草×擬人化女カラス……
モエス。
>>209 そういえば猫とかだと、発情期の処理は飼い主がやるんだよな…
鳥の場合は知らんが。
前の方で四草×九官鳥女書けるよーなんて抜かしてた者です。
やっぱ女体化ネタは荒れる原因になっちゃうんですかね。
反応してくれた人には申し訳ないけど、今回は自重ってことで様子見しますー
ごめんね。
じゃあ数字板ちりスレの避難所へ是非ともお願いいたします!
書いてくれ
避難所なら避難所でいいから
>>211 それは大嘘。都市伝説の類。
もし、そんなことしてる飼い主がいたら、飼う資格のないDQN。
男性の登場人物の女体化はキモいが、
(女小草若×四草とか)
平米が実はメスで人間になって…とかなら自分は萌える。
平米の性別って、四草が平米って男性名をつけただけで
実は不詳だと思うし。
ぜひ書いて欲しい!
もし非難所に書いたら、誘導してくれると嬉しい。
女体化は無理と良いながら小草若だけはおkって小草若ヲタってどんだけ〜
>>217 誰もそんな事言うてへんがな
自分は相手が女キャラだったら、女体化もギリいける。
女体化ではありませんが、平兵衛視点の四草→若狭なんてもん思いついたんで投下します。
エロなし。片思いものです。カラスの。
私がご主人に拾われたのは3年前。
傷を負って迷いこんでしまった人間の家に彼はいた。
その家のシショウと呼ばれる人間と賭けをした彼は、本と顔を突き合わせておっかなびっくり、だけどひたむきに私を介抱し続けて。
傷が癒えた時、彼は私を欲しいと言ってくれた。
それから私はご主人のものになった。
ご主人は人間の中でも美しい姿をしている。烏の羽みたいに黒々と濡れた瞳と、鷲のように逞しい四肢と。
それに魅きつけられてか、ご主人の住む部屋には常に人間のメスが群がってきた。
所詮鳥の身の私は籠の中からご主人の肌に触れるメスどもを見ていることしか出来ないけど。
ご主人にとってはそれらは餌と一緒で。用が済めば例外無くオガクズみたいに捨てて、籠の中の私を愛撫してくれた。
そう、ご主人の女はこの私ただひとり。たとえ九官鳥であっても、ご主人が戻ってくるのは私の籠の傍らなのだから。
いつもそうだったのだから。
あの日までは。
あの日。
私が迷いこんだ庭にご主人が通うこともなくなってから3度の夏がきた、あの日。
突然、ご主人の部屋にきた人間ふたりの前で、私は思わずご主人が毎日唱えていたウタをうたってしまった。
ご主人があまりにも苦しそうだったから。
そして、あの日からご主人はこの部屋を出て再びあの家へ行くようになった。
また3年前と同じように微笑むご主人を見て私は嬉しかった。
なにもかも3年前と同じ。に、思えた。
でも、私は気付いてしまった。ご主人の微笑に3年前とは違うものが含まれるようになったのを。
いつものようにあの家から部屋に戻ってきたご主人は、私の籠の前でウタをうたう。
それは滑稽なものだったり、恐ろしいものだったり、時には胸の締め付けられるようなものもあった。
ご主人の美しい喉からうたわれるそれらを、私は出来るだけ真似てうたってみる。
私の喉はご主人と違って嗄れていてちっとも美しくならないのだけど、ご主人はとても喜んでくれた。
「ほんまに覚えが早いな平兵衛は。小草若兄さんとはおお違いや」
そう言いながらしてくれる愛撫がたまらなく好きだったのに。
このごろのご主人は私がうたっても籠の前でぼんやりしている事が多くなった。
そんな時はきまってあるコトバを呟いている。
き よ み
そのコトバをご主人はまるで甘い露を味わうようにゆっくりと舌の上でころがしていて。
私はそれを聞くたびに苦しくなった。
ご主人の中に、私の他に特別な女がいる。
そのコトバの正体はすぐに知れた。ご主人に連れられてあの家に行った時、いつかの、部屋に来た女がいた。
女といってもまだほんのヒナのような小娘で。ご主人が連れ込んでくる人間のメスとは比べ物にならないくらい乳臭いのに。
ご主人はひたと見つめて。あの甘い露を含んだコトバで呼び掛けていた。
いつかこの女がご主人の部屋に来る。私は籠の中からそれを見てるしか出来ない。
嫌。嫌。嫌。
でも、それは拍子抜けするくらい、私の杞憂で終わった。
待てど暮らせどちっとも来ないのだ。
どうやらあの小娘はご主人以外の男に夢中になってるらしい。
「…どこがええんや、あないな暑苦しい落語バカの」
悔しそうに呟くご主人は少し気の毒だったけど、私は安堵していた。
風に冬の匂いが混じるようになったある日。
その日のご主人はいつもと違っていた。
部屋に着くなり上着も脱がず、私の籠の前に恐ろしいくらいの勢いで飛び付いて来たのだ。
「いいか平兵衛、いまから俺の言うことをよーく覚えるんやぞ」
その瞳はいつに無く真摯なもので。ふいに拾われて介抱してくれた日々を思い出していた。
私に出来ることなら。
あなたの美しい声を、嗄れた喉で拙く繰り返す事しか出来ないけれど、それがあなたの助けになるなら。
だけど、ご主人の唇から紡がれるその声に、私の羽は冷たく固まっていくのを止められなかった。
「がんばれ わかさ がんばれ わかさ がんばれ わかさ…」
わ か さ
聞き慣れないコトバだった。でも、そのコトバの温度は違えようもない。
き よ み
ご主人が大切に唇に乗せる、あの娘の名と同じ温み。
「がんばれ わかさ わかさ わかさ…」
いつの間にか、ご主人は私の籠に額を押しつけ、抱き締めていた。
長くて綺麗な指が、籠のつるをゆるりと撫でる。何度も。何度も。
それは、私の羽根を撫でるのとも、ましてや身体を重ねる女たちとも全く違う。
愛おしく 撫でる
文字通りのその行為の先に、あの娘がいた。
ご主人の指先は焦がれるように娘の姿態を描いていく。
柔らかな頬からふっくらとした唇。細い首筋を伝って、豊かな膨らみとその先端。
くびれを掌で包み、その下に秘められた箇所へわけいって。
かたく瞼を閉じ、籠に押しつけた額にはうっすらと汗を浮かべ、熱い吐息を乗せる唇で娘の名を恋う彼は
喩えようもなく無様で美しかった。
明くる日、ご主人に連れられて娘の前に来た私は、散々に叩き込まれたセリフを鳴く。
「ガンバレワカサガンバレワカサ…」
だけど、そうは問屋が卸すもんか。算段の平兵衛の名にかけてこの恋は実らせやしない。
「ムダムダ オマエツカエヘン カエレブス」
以上です。実はちりとて真剣に見始めたの、草々実家へ帰るの巻からなんで季節があいまいです。
そこらへんは流していただくと底抜けに有り難いです。
おお〜、新しい!
GJ!!楽しく読ませて頂きました!
美しいね!
四草は悶々としてるのが似合うよ
おもしろい!
そしてこんな乙女なのに「平兵衛」なんて名前をつけられてるカラスがいとおしい。
平兵衛可愛いよ平兵衛。
228 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/03(木) 10:36:32 ID:Y6gguFZd
四草×平兵衛(♀)よりも、
平兵衛(♀)→四草×若狭とか、
四草×若狭←平兵衛(♂)とかのほうが好きかも。
どれも四草×若狭前提やけど・・・。
>>219 おおお!GJ!GJ!
おもしろかった!ありがとう!
切ないのう、u師匠…。
>>227 きゅ(ry
GJ!面白かったです!
乙女な平兵衛タソに萌えました
平兵衛(擬人化とかでなく鳥のままで)×若狭とか読んでみたいと思ってた自分を頃してやりたい
>>219 超GJです!!!
綺麗で切なくてとても新鮮。
現実とおとぎ話のはざまのような空気感がとても魅力的!
若狭を無様に美しく恋う四草…ってなんとも絵的ではないですか。
すごく良かったです。
クサい言葉連発の感想でほんますみません。言葉選びが上手く出来ない…
GJ!
他に言葉が出ない
>>219 底抜けにGJ!
ものっすごく美しいのに、どこか官能的。
「頑張れ若狭」を仕込むのには、ものすごい愛情があると思うので。
そーこーぬーけーにっ!おもろおましたがなぁ!!
保存しますた
今さらこのスレの存在知ったorz
まとめサイトとかないよね……あああ過去ログ読みたいorz
携帯からだと過去ログが
読み放題なんだけどね
空気読まずぶったぎり投下失礼します。
それぞれのちりとて見れない悔しさからムシャクシャして書きなぐりました。
エロなし。落ちなし。五兄妹のgdgdギャグ。です。
―続いて大阪の気温です…日中の平均気温は…
徒然亭草原は片側の耳でニュースの気象情報を拾いつつ、電話口に立っていた。
『そういうわけで3、4日明けるけどな。時たまでええから様子覗いたってくれや』
師匠・草若は磯七の散髪屋組合の慰安旅行に便乗して夕日ケ浦温泉へ行っている。
ちゃっかりとした性格は昔とちっとも変わってない。苦笑しつつ草原は愛妻に声を掛けた。
「今日ちょっと師匠の家寄ってくるで、昼は颯太と適当に済ましといてな」
平成6年8月某日。
その年の最高気温を記録することになる炎天下の中、
草若邸を訪ねた草原は早速この日最初の頭痛を覚えた。
「なんでおまえが指図すをねん!」
「なんやとコラ!」
このクソ暑い中、飽きもせずに二番弟子と三番弟子が掴み合いの喧嘩の真っ最中。
真っ先に皮肉を言う筈の四番弟子はというと、板の間に突っ伏している。
「ソモソモーコレーワータイラノトモモリー」
物真似上手な九官鳥の声から察するに、船弁慶の稽古の途中で暑さにぶっ倒れたらしい。
「たらいまもどりまひたあ〜」
両の手から買い物袋をぶら下げて帰宅した末っ子弟子は、
今にも頭から湯気を吹きそうなほど真っ赤な顔に汗を滴らせ、へろへろと崩れ落ちた。
ほとんど日射病一歩手前である。
「若狭!!大丈夫か!?」
「草々!おまえこんな昼日中に喜代美ちゃんを買い物行かせたんか!!」
「やめえっちゅうねん!!!」
またもや取っ組み合う弟たちの頭へ一発ずつ拳固をくれ、妹を助け起こす。
「若狭、後はかたしとくからさき風呂浴びてき」
幾つになっても手が掛かる弟妹たちに頭を痛めつつ、
面倒見の良い長兄は取り敢えず食材を冷蔵庫に詰め込むと、
表通りを行くキャンデー屋を呼び止めに、再び射すような陽光の中へ出て行った。
冷菓を手に門をくぐった草原はやけに静まり返っている邸内を不審に思った。
先程まで取っ組み合いをしていた次男と三男は、何故か仲良く肩をそばめて息を詰めている。
見るとくたばっていたはずの四男までむっくりと頭を上げている。
(なんや…?)
弟たちの視線を辿って漸く合点がいった。と同時にその対象に目を奪われてしまった。
ふぅっという満足げな溜め息。密やかな衣擦れの音。
洗い髪にタオルをあてて佇んでいる、湯上がりの妹弟子の姿があった。
襟ぐりの大きく開いたシャツはサイズがあっていないのか
うなじから肩までの白い曲線が丸見えになっている。
下にはスポーツブラを着けているらしいが、はち切れんばかりの豊かな乳房を覆うには面積が足りず、
窮屈そうにくい込んでいるのがシャツの上にくっきりと見えてしまっている。
思いきりよく括れた腰と、形のよい尻を包んだハーフパンツの下から
真っ白な太股とふくらはぎが伸び、若々しい姿態を一層眩しいものにしていた。
(ああそうやった)
ふだん垢抜けない格好でドタバタ走り回り子供っぽさの抜けないこの末っ子は
実は小柄なわりになかなかグラマラスな身体の持ち主だったりするのだ。
とはいえ、二十歳の乙女の無防備な姿を
独身の三十男たちの前にこれ以上晒しておくのはあまりにも酷だ。
なにより草原自身の目の毒だ。
スウッと一息吸い込み些かわざとらしい大声で皆に呼び掛けてみる。
「差し入れや!アイスキャンデー買うてきたで!」
「わあ!草原にいさんありがとございます」
いそいそと嬉しげに卓袱台へついた末っ子とは対照的に、弟たちはなにやら不服げな顔を揃える。
中にはあからさまに「チッ」と舌打ちを鳴らした輩もいるようだが(恐らく四男)
…まあ聞かなかった事にしよう。
ともかく弟妹全員にキャンデーを手渡した長兄は、
師の留守を無事に守りおおせた充実感でいっぱいだった。
…筈だった。
「…んっ…んくっ…ぅん…」
白く太い棒が小さな口いっぱいに押し込められる。
柔らかな頬の内側できゅっと締めつけ、滴る液を白いのどがこくんと飲み干す。
飲み込みきれず、溢れ出した白い液体を追って赤い舌がちろちろとねぶる。
伏せた睫毛が揺れ、うっとりとした目元は朱をおび、形の良い眉は悩ましげに顰められ…
(だからなんでそないややこしいキャンデーの食いようさらすんじゃ!!!!)
叫び出しそうになるのをすんでの処で堪えた草原は、
本日何度めかの頭痛を覚えつつ男兄弟たちに目をやった。
案の定、そこには
自分のキャンデーが溶けるのも構わず、あんぐりと口を開けたまま固まる二男。
鼻の下を伸ばしウヒョヒョヒョ…とだらしなくにやけっぱなしの三男。
ムッツリと黙り込み、舐め回すようにジロジロ見つめている四男。
「…どねしはったんですか?にいさんらぁは?」
男四人の異常な視線にやっと気付いたのか、ふいっと顔をあげて若狭が聞いてくる。
「あ?あ、ああ、ほんまにおいそしーに食べんのやな、思てな」
動揺する弟たちの代わりに答えてはみたのだが。
「噛んでますよ草原兄さん?一体なにを考えてたんですか?」
「四草!おまえこそさっきからなに喜代美ちゃんのことジロジロ見てんねん!」
「人の事言えんのか?小草若!やらしい目ぇで若狭見てたやないか!」
「なんやと?!やらしいのはどっちやこのムッツリスケベ!!」
暑さも手伝ってか互いに互いを責め合う男たち。
誰もが妹弟子を「そういう」対象で見ていた後ろめたさを隠すため、
必要以上に声が大きくなる。
「ちょっと!やめてください!!ケンカせんといて…」
「…あ」
ぽた
わけもわからず立ち上がりかけた若狭の手から、溶けかけのキャンデーが落ちた。
よりによって胸の谷間と股間に。
掴み合ったまま硬直する男たち。
(…おい、どーする?)
(誰かなんか言うてフォローせい!)
(できるか!この状況で!)
「…ひどい…あんまりや」
若狭の顔が悲しげに歪む。
「…まだ全部食べてへんのにぃ〜!」
「…また新しの買うたるから、さき着替えぇ」
脱力感に襲われながら、なんとか長兄の威厳をもって草原は命じた。
「ほんまですか?ほんまに買うてくれなるんですか?」
ぱっと顔を輝かせる若狭。色気より食い気のお子さまかおまえは。
「まだまだ子どもやな若狭は」
「身体は充分おとななんですけどね。」
「だからそーゆーやらしい言い方やめ!」
着替えに内弟子部屋へ戻る末っ子を、どこかほっとした表情で見送る兄弟子一同。
いつの間にか、日も傾きかけ、
今年一番の真夏日は漸く終わりを告げようとしていた。
『で、どや?あいつらは。仲良うやってるか?』
なんだかんだで心配性の師の電話に、苦笑しつつ一番弟子は答える。
『ええ。いろいろありますが、まあ仲良うやってますよ。』
終われ
>>239-
>>246 あ、リアルに久々立ち会えました。
エロなしといいつつ、エロいですがな!GJ!!
>>239 そうそうそうこの感じ!!!懐かしの内弟子時代!
やっぱりこの雰囲気いいね。大好きだ〜!
無防備無自覚のエロ爆弾な若狭可愛い。
というわけでめっちゃGJです!!
面白かった!GJです
本編が終わったことで妄想が膨らませ易くなったね
居なくなった職人さん達、帰ってこないかな
DVD発売にスピンオフとまだまだちりとてビームは続いてるんで、
そろそろ帰ってきてくださるんじゃないかなと期待。
GJありがとうございます。
自分のアホ文が、少しでも職人さんの呼び水になってくれれば嬉しいです。
253 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/05(土) 09:46:38 ID:/sSyRd39
GJ!!
凄く楽しめました。
久々の5兄妹!
>>239 〆の『終われ』に噴いたw
こういう投げっぱなしなノリ大好きw
>>239 内弟子時代、なつかしくて楽しかった!
あのクールな飼い主さえぶっ倒れる暑さで平米師匠は大丈夫なのか心配になったw
>>239さんGJです!
ほのぼのエロ、ぐっときましたw
続いて投下させてください。
以前小草若×若狭を投下し、鼻毛を書くとか抜かしてた者です。
鼻毛が予想以上に書きにくかったため、痴漢ものに変更しました。
痴漢×若狭(年季開けして間もない、タレントの仕事が入り出す前)です。
あんまりエロくないですが。
若狭は京都に向かっていた。
小さな会場で催される半年に一度の反物市での営業の仕事が入ったからだ。
有り難いことに女性落語家はこういうとき重宝される。
マネージャーは今日は不在で、勿論車など用意されていないため、若狭はひとりで快速急行に乗り込んだ。
土曜日の朝とあって、なかなか車内は混合っていた。
(うわぁ…ぎゅうぎゅうやなあ…)
小さな体は人込みに流されて、車内の端っこに追いやられた。
ほぼ身動きのとれない状態も仕方ないと高を括り、目的地まで我慢することにした。
暫く電車に揺られながら今日の高座の内容を確認していた若狭だが、急に腰あたりに人の手が触れた。
(え…?)
驚いて身を堅くした若狭の腰を、何者かがゆるゆると撫でまわす。
(ち、痴漢!?いや…どねしよ…)
周りに助けを求めようとも、恐怖で声が出ない。
しかも次の停車駅まではまだだいぶ時間がある。
(助けて…誰か助けて!)
心の叫びは誰にも届かない。
腰を撫でていた手は段々下へ伸び、若狭の柔らかな尻を揉みしだきだした。
ジーンズ越しとはいえ、男の手のひらの熱さが伝わってくるのがなんとも気持ち悪い。
耳元にも熱い吐息がとぎれとぎれにかかる。
(どねしよ…気持ち悪いし、恥ずかしい)
恐怖で抵抗出来ない若狭に気を良くしたのか、男は体制を変えて若狭にぴったりくっついた。
後ろから抱きすくめられる形になり、今度は腹部を撫でられる。
腰には男の熱を帯びた肉棒が布越しに擦り付けられている。
するりと男の手が服の中に侵入し、直に若狭の弾力のある肌に触れた。
汗でしっとり濡れた手のひらが腹部をくすぐるように這い回る。
(もういや…誰か、誰か気付いて!)
助けを求めるように目を見開くが、目の前は壁。
誰も気付きはしなかった。
そうこうしているうちに、男の手がゆっくりとショーツの中へと進んできた。
そしてすぐさま指がクリトリスに触れる。
恐怖とは裏腹に先程からの見知らぬ男からの愛撫にそこはすでに膨れはじめていた。
男は鼻で笑い、若狭のそこを中指でコリコリと刺激した。
「ん……っ!」
突然の刺激に、若狭は思わず声を漏らしそうになった。
唇を噛み締めてなんとか堪えたが、涙は今にも溢れ出しそうだった。
(知らん人に触られて感じるやなんて…私、変態や…)
そんな若狭に、男は構わず刺激を与え続けた。
膝はガクガク震え、立っているのがやっとの状態だった。
男は指を更に下へと進め、すでに濡れている秘部に辿り着いた。
柔らかな肉が付いたそこに指を滑らすと、濡れそぼったそこは難なく男の指を受け入れた。
「ひ…っん…!」
くちくちと淫らな音をたてながら男の太い指が中を掻き混ぜる。
気がつけば3本もの指が立て続けに動いて若狭の中を犯していた。
もう片方の手で胸を揉みしだかれ、時たま耳や首筋を舐められる。
「あ…っん…ふ…」
若狭はただ、堪えて声を押さえるしか術がなかった。
気が遠くなりそうなぐらい長い時間がすぎていた。
『次は北大路、北大路です』
車内アナウンスが流れた瞬間、男は身を引いた。
そしてそそくさと電車を降りていった。
―助かった。
そう思い、溜め息を付いた矢先。
「ネェちゃん、俺も頼むわ」
若い男が体をぴったりと寄せ、耳元で囁いた。
以上です。
最後、タイトルミスりましたorz
あんまり長いとアレかな〜と思いましたが…ちょw短すぎだろこれww
楽しんで頂けたら幸いです。
乙!
御堂筋線とか阪急神戸線とか身近な「痴漢頻発線」を
想像してもたよ
>>256 GJ!GJ!GJ!GJ!がっつり痴漢えろktkr
オチがブラックすぎて良いね!
鼻毛も底抜けに期待してます。
>>260 痴漢電車イイヨイイヨ〜!GJ!
ああいう背の低いむっちり系おとなし顔の娘は狙われやすいらしいしw
これからは兄弟子の誰かに護衛してもらわんとね。
痴漢から守るために密着した兄弟子がだんだんハアハアしてきて……
援護のはずが痴漢に早変わりw
えー、流れぶった切らせて頂きます、すいません。創作は初投稿です。
四草×若狭+小草若(共犯)、みたいな感じ。
時期的には24〜25週。本編深読み。
若狭→草々が好きな方には、拷問以外の何物でもありません(陳謝)。
関係は持ちますが、エロ描写は皆無と言っていいでしょう。
書けませんでした。申し訳ないが、各自で脳内補完して下さい(ぇ)。
高座に復帰した小草若は、若狭とともに大阪に戻ることになった。
電車に座ると、不思議に思ったことを尋ねてみた。
「若狭。いっこ聞いてええか」
何だろう、と若狭に緊張が走る。
見開いた目がおかしくて、小草若は思わず笑った。
「大したことちゃうねん。ただな、何でかなー思ただけで」
「何で、若狭は、俺が『草々にだけは継いで欲しない』思てる、て
そない考えたんかな、て……ちょっと気になっただけや」
「え?!」
若狭は、ちょっとしたパニック状態になった。
それを説明しようとすると、草原が草々に襲名を勧めたとか、
草々が一度は襲名を受け入れたとか、もろもろを話さないといけない。
「いやいやいや、何やようわからんけど、細かいことはええねん。
ただ、草々が何か思てたんかな、て……気ぃ遣わせたかな、て思たんや」
「草々兄さんは、そんな細かいこと考えとらんでぇ。
小草若兄さんに継ぐのが一番や、とは、いっつも言うてますけど」
「そしたら、何で、『草々があかん』なんて思たんや」
「いえ、四草兄さんが……」
若狭の口から、意外な人物の名前が漏れ、小草若は目を丸くした。
小草若の反応に気付かず、若狭は、独り言のように続けた。
「四草兄さんが、あんなこと言いなったの何でやろ? 考えてたら、
もしかして、そんな風に思とんなるんやないやろか、て気付いて……」
ここまで言って、小草若の視線に気付いた若狭は、慌てて手を振った。
「ああああの、気にせんで下さい! 別に、草々兄さんが草若襲名することに
なりかけたとか、そういうわけやないですさけ!!」
言うてるがな、と突っ込むのはやめておいた。
小草若が気になったのは、そんなことではない。
常に草々のことで頭がいっぱいで、草々の立場からしか物事を見て
いなかったような若狭が、四草の言動について考えた。それが意外だった。
今思うと、それは予兆だった。
大阪に帰って、ひとしきり再会の喜びに浸った後、一門は「寝床」で飲んだ。
「若狭、ウーロン茶」
四草が言うと同時に、若狭はウーロン茶を四草のグラスに注いでいた。
「何や……珍しいな」
「四草兄さんにも……いっぱい迷惑かけたでぇ」
若狭の言葉に、小さく笑って首を振る四草。
が、次の瞬間、つまみの追加を言いつけていた。
自分の注文のためにぱたぱたと動き回る若狭への眼差しに気付いた者が
いようとは、四草にしては迂闊にも気付いていなかった。
(……思た通りや)
弟弟子と妹弟子の様子を見て、小草若は確信に至った。
そもそも、四草が若狭を思っているのではないか、という疑いはあった。
算段も笑顔も優しさも苛立ちも……四草が全ての感情を見せた唯一の女。
それが若狭だった。四草自身は、長らく自分の感情に気付いていなかったが。
年越しそばを奢ってくれたときに、さり気なく聞いてみたが、四草は
「何でそんなことを思いついた」と言わんばかりの顔をするだけだった。
草々を思い続けている若狭を愛するなど、リターンのない行動には
無縁でいようとするのが、四草のやり方だ。しかし
(もったいないなぁ……)
と、小草若は思う。どんなに自分が頑張っても、決して入り込めなかった
若狭の心の隙間に、四草はいつしか根を伸ばしていた。
それに気付かず、四草は、自分の心に生まれた愛情だけに気付いて、
穏やかな目で若狭を追っていた。
翌日、草々と若狭が暮らす草若邸を訪ねた小草若は、
久々にためらいなく居間に上がった。
草々と小草々は留守で、若狭は料理をしていた。
「ほんまは、二人とも今日は要らんのですけど、私がおらんときもあるさけ、
こうやって時間あるときに作り置きしとるんです」
「そうか。……ちょっと頼んでええかな」
このとき、小草若は、我ながら名案が浮かんだ、という思いしかなかった。
「俺の夕飯の当番、たまに代わってくれへんかな。
四草と交代で作ってんねんけど、俺、バイト入れながら落語稽古せんと
あかんし……そら、みんなそうやねんけど、とにかく……
四草のメシ、頼むわ。出来たら今日、早速」
若狭は、きょとんとした顔をし、それから笑って言った。
「ほしたら、今からこれ、持って行きましょか」
小草若が若狭を伴って四草の部屋に戻ると、四草はちょうど、
高座が終わって帰宅したところのようだった。
若狭は、さっと部屋に上がりこみ、持って来た煮物を広げた。
四草のとがめるような視線を気にも留めず、小草若は明るく
「ほな、若狭、あとよろしゅう頼むな。
俺はバイト行って、その後、袖から高座見てくるし、遅なるわ」
「小草若兄さ……」
四草の呼び止める声を気にも留めず、小草若は笑って出て行った。
(……余計なことを)
四草は内心で舌打ちをした。
小草若が、若狭への思いを見抜いているのは、何となく感じていた。
だからこそ、歯止めになると安心していたのに、
まさか、部屋に若狭と二人きりにさせるとは思ってもみなかった。
(無理強いは、しとない。そやけど……止まらへん)
「あ! お味噌汁、お味噌汁でも作りましょうかね?」
明るい声が、四草の理性を失わせた。
若狭の背中に、腕を伸ばす。
「四草兄さん?」
そのまま、若狭の全体を腕の中に収めてしまった。
若狭は身動きをしない。
自分で行動を起こしておきながら、そんな若狭に四草は苛立った。
「何で抵抗せえへんねん……どないなっても知らんぞ」
掠れ声で言った瞬間、若狭の腕が、そっと四草の腕を抱きしめた。
小草若から、「草々兄さんにだけは襲名して欲しない」という結論に
辿り着いた理由を聞かれたあの時、若狭は、夕方であることに感謝した。
四草の名前を出し、四草のことを考えることで、小草若の感情に気付いた。
その過程を振り返った時の、自分の感情を思い出して、顔が熱を持った。
(四草兄さんは、小草々君が言うような、悪い人やない、優しい人や。
草々兄さんが破門になったときかて心配しとんなったし、私が落語で
悩んで相談に行ったら、お手本を見せてくれなるし……。
その四草兄さんが、何で? 何で自分が襲名したいなんて……)
入門順が近いために稽古を見てもらうことも多かっただけに、
若狭にとって、いつしか四草は身近な存在になっていた。
だから、自分一人で考えた時は気付かなかった。
四草のことを、一生懸命に思っていた自分に。
今、後ろから回された腕に、記憶が蘇る。
結婚当初、草々と喧嘩して落ち込む自分を抱きしめた腕。
戸惑ったものの、決して嫌ではなかった。
そんな自分に余計戸惑って、草々を必死に追いかけた。
ずっと私が好きやったのは、草々兄さんなんやから。
だけど……
四草の唇が、首筋に触れた。回された腕の力は、決して強くない。
逃れようと思えば、いくらでも可能なのに。
「何や……動けへんのか?」
耳元で聞こえる四草の声。違う。動けないのではなく、動かないのだ。
自分の中にある思わぬ感情に、声が出ない。
若狭は、返事の代わりに、振り返って潤んだ瞳を四草に向け、
それから黙って彼にもたれかかった。
こんなにも優しく女を扱った記憶が、四草にはない。
そのくせ、こんなにも相手を求めた記憶もなかった。
若狭の全てを自分のものにできた。
求めても無駄だと諦めていた存在だったものを。
そして、若狭もまた、四草の温もりに、ずっと自分が求めていたものが、
これだったのだと知った。間近にある四草の顔を見て、若狭に笑顔が浮かぶ。
その時だった。
覆い被さっている四草が、突然乱暴になった。
若狭の腕を押さえつける力が強くなり、乳房を摘む指がきつくなり、
脚を強引に広げさせるようになった。
「し……四草兄さん……?」
呼びかけても、四草は若狭と目を合わせない。若狭は混乱した。
二人、同じ思いを抱いたと言うのは錯覚だったのだろうか。
関係を持つに及んだのは、ただの四草の気まぐれなのか。
一度、そんな疑いが生まれると、咄嗟に抵抗してしまう。
だが、力で敵うわけもなく。
「……いや……っ!」
若狭の悲鳴にも、四草は耳を貸さない。
ただ、無言で、淡々と若狭を支配した。
四草の豹変振りについて行けないまま、若狭は、その指に翻弄された。
いつしか、意識を手放していたらしい。
若狭が気付いた時には、四草はこちらに背を向けて座っていた。
四草の背中を、窓から差し込む西日が照らしている。
若狭は、自分の頬が濡れていることに気付き、そっと手の甲で拭った。
四草のものらしきモノトーンの布団が、若狭の体を覆っている。
その温かさは、確かに、四草が優しく触れた時のものだった。
「……四草兄さん」
四草の意図がわからぬまま、若狭は静かに呼びかける。表情が見えない。
若狭は、起き上がると四草に近付いた。が
「寄るな……!」
激しい叫びに、伸ばした手が止まる。四草は、相変わらず若狭の顔を見ない。
「四草兄さん、何で……」
「ええか、若狭」
押し殺した声に、若狭は目を見開く。
「お前は、夕飯の準備しに来ただけや」
え、と息だけが若狭の口から漏れた。四草は、静かに続ける。
「夕飯作りに来たったのに、このどうしようもない兄弟子に、
無理やり迫られて、犯されたんや。
女の力では……ろくに抵抗も出来んかったんやな」
「何で!」
若狭は思わず叫ぶ。
「何でそんなこと言うとんですか!」
掛け布団だけを身に纏い、四草の正面に座り込む。
四草の強い目が、若狭を捉えた。その目を知っている、と若狭は気付いた。
あの時と、同じ……。
「何で四草兄さんはそうなんですか!
自分で抱え込んで、自分だけが悪う言われるようなこと言うて……!
襲名問題の時かて、みんなに酷い責められて……何で、四草兄さん……」
若狭は次第に涙声になる。
草々に責められても黙ったままの四草を、見ているのがつらかった。
今回もまた、悪役を一人で引き受けようと言うのか。
「けど若狭。お前に、草々兄さんの家族幻想、壊せんのか」
四草の言葉に、若狭は草々の顔を思い浮かべる。
その昔、恋しくて恋しくて仕方なかった存在。
いつしか、恋い慕う相手ではなく、「家族」らしくなり、そして……
小草々がやって来て「師匠とおかみさん」の関係になった。
草々はむしろ、その関係に満足しているように見えた。
「おかみさん」を求め続けた、家族が欲しいと願い続けた草々……。
若狭は、ぶるんと頭を振って、思考を止めた。
「……今更、何言うとんなるんですか」
若狭の言葉に、四草は小さく笑う。
「そやな。でも、お前は草々兄さんをほっとけへん……やろ?」
どこまでも深く見通した四草の言葉に、若狭の目から涙が溢れる。
自分が四草を求め、四草を満たしてやりたくても……
「家族」の情としては、「草々一門」を壊せない。
「……ごめんなさい……」
「布団で涙を拭いたり、鼻をかんだりはやめろ」
若狭は慌てて布団を手放した。拍子に、白い体が露わになる。
今更ながら戸惑い所在なさげな様子を見せる若狭に、
四草は思わず笑みを漏らした。
そういうところは、初めて惹かれたときから、少しも変わらない。
手を伸ばし、指の腹で涙を拭ってやる。
「……泣くな喜代美」
言うと、喜代美の目から、さらに涙が溢れた。
次の瞬間、彼女は四草の胸にかじりついてきた。
震える体を抱きしめてやる。温かく、柔らかく、心地いい。
離れがたく思いながらも、この温度が刹那的であることを、
四草は自らに言い聞かせていた。
夜、小草若が帰宅した時には、四草は夕飯を食べ終えたところだった。
室内には、四草の布団が出ている。
それを見ると、日頃、四草から「頭悪い」と言われている小草若だったが、
留守の間に何が起きたかわかる。そもそも、そのつもりで外出した。
だが、逆に四草は憔悴していた。
彼の出生を思えば、実の親と同じ行為に及んだというのは、
思いを秘めたままでいたより苦しいのかもしれない。
常に自分を励ましてくれた弟弟子と、自分を迎えに来てくれた愛しい妹弟子。
二人のために、とこの場を離れたことが、かえって残酷だったかもしれない。
「……四草」
小草若は呼びかける。
「すまんかったな。その……メシ当番サボって、長いこと外おって……」
四草は、静かに小草若を見据えた。
この洞察力に長けた男は、小草若の侘びの真実を、確実に理解している。
「小草若兄さんが、謝る必要はありません」
起こった出来事を見抜かれていると悟ってか、四草は誤魔化しを言わない。
「出て行った後で何が起ころうと……
小草若兄さんの知ったこっちゃないでしょう」
「そうか」
小草若は、それ以上追求しなかった。
「そやけど、一人で何でも抱え込むんとちゃうで。
しんどなったら、俺に言え、な?」
四草は小さく笑った。どこまでも、若狭と小草若は似ている。
そんな陽の光のような性格を翳らせたくないものだと、四草は思った。
【終】
すいません、初投稿なので、文章の加減がわからず……(汗)。
確認画面が出ると思って安心してたら、連続投稿の時は出ないんですね。
おかげで、1記事辺りの分量が多くてすいません。
しかも前振りが長かった……(大汗)。
四草×若狭が好きなのもあったんですが、第一席の時から「小草若×若狭」を
見守る四草が出て来る話は結構あって好きだったので、
ふと「小草若と四草のポジションを入れ替えたら?」
と思ってしまったのが運の尽き。四草と若狭が二人でいるシーンより、
小草若の出番が多いではないですかorz。
お目汚し失礼しました。
なんぞこれ!!GJすぐる!!
GJ!おもしろかったです
ちょっと聞いてみたいんだけど、ここの書き手さん達ってみんなサイトもってるの?
>>256です。
皆さん感想ありがとうございました。
>>264さんのアイデアをいただいて、今度こそ鼻毛を書きたいのですが…よろしいですか?
そして今度こそがっつりなエロを書きたいorz
挿入なしのほうがエロい気がするのは俺だけでしょうか。
>>275 GJ!
四草はギャグならムッツリスケベ、シリアスなら鬼畜か苦悩がぴったし。
やつは普通に女と幸せになれんのか・・・涙
>>278 >>264のアイディアで鼻毛ってwww 楽しみにしてます
すみません痴漢電車、自分も
>>264さんから妄想です。
微妙に被り気味でほんますんません。
小草若→喜代美内弟子時代バージョン。エロくないです。しかも冗長。
それは暑い暑いある夏の日のこと。
小草若は、天神近くの懐かしの我が家へと足を向けていた。
仏壇屋のおばはんにちょいと顔を見せて、いつもの最高級線香を買う。
「なんや仁志、今日は朝からめずらしいやん。仕事は?」
「ああ、今日は久しぶりに休みなんや。売れっ子はつらいでえ、ホンマ」
「ホンマこの子は…言うとり。家帰るんか?」
「休みの日くらいおかんに線香あげたらなな」
師匠が復帰するまでは、こそこそと隠れて線香をあげるしかなかったから、
おおっぴらに線香をあげられるようになったのは本当に嬉しい。
それに…あの可愛い笑顔も見られると思えば、心が浮き立つのも仕方ない。
「なんやの嬉しそうににやけて。気色わるいなあ。」
おばはんのいつもの軽口に見送られて、足取りも軽く仏壇屋を出た。
師匠に挨拶をして、仏壇に線香をあげる。
(なんや…今日は喜代美ちゃん、おらんのかいな?)
おかんに線香をあげられればそれで良いはずが、やっぱりがっかりしてしまう。
居間でぼんやりしていると、師匠に稽古をつけてもらった後らしい四草がやって来た。
「小草若兄さんやないですか。珍しい」
「やかましわい。それよりおい四草…今日は喜代美ちゃんはおらんのか?」
ああ、と四草は涼しげな顔で頷く。
「今日は珍しく仕事が入る言うて、今自分の部屋で用意しとると思いますよ」
「さよか」
「ただ」
ほくほくと立ち上がろうとした小草若は、その一言に四草を振り返る。
「喜代美、なんや仕事行くのためらっとるみたいでした。」
「おいこら喜代美ちゃんを呼び捨てすな!…ってなんでためたっとるねん?」
「そこまで聞いてませんけど。悩みでも聞いたって点数上げたらどないですか?」
「ホンマお前は…まあええわ。ほなな」
軽く四草に手を振って、内弟子部屋に向かう。喜代美ちゃんが悩んどると聞いて、ほっておける訳がない。
四草も、四草なりに喜代美を心配しているのだろう。屈折しているからわかりにくいが。
内弟子期間中の仕事は、ちょっとしたものでも自分が認められたみたいで嬉しく思うはず。
(喜代美ちゃんも、前に仕事入った時はめっちゃ嬉しそうやったのに…)
内弟子部屋へ向かいかけたところに、向こうから小柄な姿が歩いてくるのが見えた。
お〜喜代美ちゃん!と声をかけようとしたところで、小草若はふとその表情に気づいた。
どこか思いつめたような暗い顔。足取りも重い。
(あかん…これは落ち込みバージョンの喜代美ちゃんや…可愛い顔が台無しやん)
そうこうしているうちに、喜代美のほうが小草若に気づいて頭をぺこりと下げる。
「あ、小草若兄さんやないですか。今日はお休みですか?」
声まで暗い。これはただごとではない。
「お、おう…喜代美ちゃんはこれから仕事やって?内弟子のうちは仕事なんてほとんどないさかい、
ちょっとしたことでも頼まれたら嬉しいもんやろ?俺も初めての仕事は嬉しかったで〜」
あかん。取り繕おうとして、やけに饒舌になってまう。
「仕事は…ホンマ嬉しいんです。けど…」
「けど、って…どないしたんや喜代美ちゃん!?何や嫌なことされたんか!!?」
「いいええ!仕事では良うしてもろてます。私なんか不器用やのに丁寧に色々教えてもろて」
「ほな、どないしたんや?」
しばらくうつむいて、喜代美は何か言いにくそうな顔をしている。
「俺で良かったら、、悩み、話してくれたらええで。底抜けに相談にのるで。
喜代美ちゃんが困った時にはいつでも俺が助けに行くよって。話して…ほしい」
途中からいつになく真面目な口調になってしまって自分でも慌てたけれど、喜代美は
その言葉に背中を押されたように顔を上げる。
「小草若兄さん…、ホンマありがとうございます」
喜代美は決心したように、でも口ごもりながら、とつとつと語り始めた。
「なに〜っ!?痴漢!!!!!???」
小草若は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。痴漢、って…。
「はい…」
うつむく喜代美。
聞けば、以前仕事で電車に乗った際、満員電車の中で痴漢に会い、怖くて声も出せないまま
体中を触られて、のみならず目的駅に着くまで何人もの男に順繰りに痴漢行為を受けたらしい。
周り中男ばかりで、助けを求めようにも声は出ないは満車で動くことはできないはで、あまりにも怖くて
それ以来電車に乗るのも怖くなり、電車での移動を伴う仕事が来るのが恐ろしかったという。
「その電車に、今日は乗っていかなあかんのです…」
「なんで早よ言わんねん!!!師匠や草々やったかて、それ聞いたらほっとかんかったはずやで!」
「こないなこと…恥ずかしゅうて言えませんよって…」
震える小さな声で答えてうつむいてしまう喜代美。この子がどんなに怖い恥ずかしい思いをしたかと思うと、
胸がつぶれそうで、何とかしてやりたくて。それと同時にに怒りがふつふつと沸いてくる。
(俺の喜代美ちゃんに何さらすねん…!!!)
小柄でグラマーな、しかも声をあげそうにないタイプの喜代美は、確かに痴漢の絶好の的だろう。
この子を守るには…どないしたらええんや?
「そや!今日は俺のスー!パー!カー!で…って車検中やった」
ほな今日はタクシーで…と考えたその時、四草の言葉が頭の中にフラッシュバックした。
(悩みでも聞いたって点数上げたらどないですか?)
点数…という何とはなしに算段めいた響きは微妙に嫌だが、喜代美を助けることができて、
しかもええとこも見せられたら…正直、言うことはない。
決めた。
「喜代美ちゃん、今日は俺が一緒に電車乗ってボディーガードするよって!」
「えええっ!?そそそそんな!小草若兄さんにそんなことさせる訳には…」
「ええねんええねん。今日は仕事休みやし、可愛い妹弟子がそんな目にあっとるのを
ハイそうですか言うてほっとかれるわけないやろ。痴漢とっ捕まえてガツン言わしたろやないかい!」
「で、でも…小草若兄さんみたいな有名人が電車乗ったりして大丈夫なんですか?」
「サングラスかけとったら意外と大丈夫なもんやで。問題あったら途中で降りてタクシー乗ったらええがな!」
「ほんま…ほんまありがとうございます、小草若兄さん」
恐縮しつつも安心したようにほわりと微笑んで、喜代美は頭を下げる。
今日初めてのその笑顔に、小草若は思わずふにゃふにゃとなってしまいそうになり、慌てて表情を取り繕った。
(あかん…やっぱり世界で一番底抜けに可愛いで…)
(ほんま、こんな混んどる思えへんかったわ)
久しぶりに乗った快速電車は恐ろしいほど混んでいて、小草若と喜代美は瞬く間に奥の方へと押しやられる。
まわりより頭1つ高い小草若でさえ、周りから押されて言いようのない圧迫感を覚える。
ましてや喜代美は…。
目を落とすと、案の定喜代美は頭まで埋まって苦しそうにもがいている。かなり厳しい状況だ。
(こらやっぱりタクシーで行っとくべきやったで…)
そっとため息をつきつつ回りを見回すと、通勤時間帯からはずれているもののサラリーマンの姿や、
大学生らしき男の姿が目立つ。男7割、女3割と言ったところか。
そのとき電車ががくんと揺れた。
「ひゃっ!」
軽い悲鳴とともに、喜代美の体が小草若の方に傾いた。あわてて支えようとするが、
思うようには行かず喜代美の体が小草若の胸に倒れこむような格好になった。
そのままの体勢で、喜代美は動くこともできす小草若に押し付けられている。
(すみません、兄さん)
喜代美は口の形だけでそう言って、申し訳なさそうにしていたけれど。
小草若は、、、それどころではなかった。
(うわ…めっちゃやらかい…)
腹のあたりと腕に感じるのは…柔らかい二つのふくらみ。喜代美の胸が大きいのは、普段の
ゆったりした服からでもそれと判っていたけれど、それは想像以上で。
そしてその柔らかいふくらみは、夏の薄い服をとおして、電車が揺れるたびに
小草若の体にぽわんぽわんと押し付けられる。
しかも…見下ろすと小草若の胸のあたりに押し付けられ、苦しげにあえぐ喜代美の顔。
息を少しでも吸おうと、少し上を向いて唇を少し開いたその顔は、小草若をそそるのに十分で。
汗で少し髪がうなじにはりついて、言いようもなく色っぽい。
これほど近くに喜代美を感じることは初めてで。その髪からは何ともいえないいい香りがして。
(あかん…このままやったら俺が耐えられへん)
思春期の高校生でもあるまいし、と必死で理性を総動員する。
痴漢の味方をするわけでは決してないが、これは痴漢にあっても…仕方ないような気もする。
少し痴漢の気持ちをわかりかけて…いかんいかんと首をぶんぶんと振る。
(アホか俺!喜代美ちゃんの気持ち考えんかい!ミイラ取りがミイラになりかけてどないすんねん!)
そや。これは可愛い妹弟子を守るためなんやと気を引き締めたところで。
また、大きく電車が揺れた。
今度は不埒なことを考えて注意がそれていたせいか、小草若までよろめいてしまう。
慌てて体勢を戻そうと、足をがっと開いたところに、ちょうど喜代美がよろめいてきて。
(すすすすみません兄さん!)
肩幅程度に開いた小草若の脚の間に喜代美の片脚が入り込んで、そしてそのまま押し付けられた。
やばい。これは非常にやばい。
先ほど以上の密着感。喜代美の脚が小草若の右足を挟み込む形になり、右足を動かせない。
膝も曲がっており非常に窮屈な体勢なので、小草若はむりやり右足を少しだけ動かそうとした。
「!」
その瞬間、喜代美が少し震えた。
(兄さん、脚が…その)
下を見て、言わんとすることを察した。ちょうど喜代美の股間辺りがぎゅっと小草若の腿あたりに
押し付けられて、小草若が脚を動かせばそこを…直撃してしまうということなのだろう。
とにかく次の駅に着くまでは、脚を動かせそうにない。
けれど電車が時々揺れるのはいかんともしがたく。揺れるたびに喜代美の股間が少し曲がった脚に
押し付けられて、その度に喜代美は小草若の胸の中でぴくんと震えて声をかみ殺す。
そして、先ほどとは位置を変えて押し付けられる喜代美の胸。
この状況は、、小草若にとってはすでに拷問に等しい。
そしてその当然の結果として、男の生理現象が起こってしまうわけで。
必死で関係のないことを考えようと窓の外に目を向けて、関係のないことを考えようとする。
(寿限無寿限無五劫のすりきれ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝る所に住む所…ってアカン!)
必死の努力にもかかわらず、意思とは関係のない所でむくむくとそれは形を変えて、
みるみる大きく固くなるのをどうすることも出来ない。
固くなったそれは当然、喜代美の腹から腰の辺りに押し付けられるわけで。
突然の異物の感触に驚いたように小草若を見上げる喜代美と目をあわせることができない。
口の形だけで(ごめん)と呟き、ついと目をそらすことしか、出来なかった。
(喜代美ちゃんを守るはずが…俺、ホンマ最悪や…)
ええとこ見せるつもりが、喜代美を守るつもりが。痴漢と変わらないではないか。
ホンマに好きな子に、痴漢と同列やと思われると思うと…やりきれなかった。
その時。
喜代美の体がびくっと動く。先ほどまでとは違う、どこか緊張したような動き。
はっと喜代美の方を見ると、怯えたようなそそけだったような表情をしている。
( ち か ん )
と喜代美の唇が動く。目で後ろのほうをちらと見る。
少し緊張して辺りに目をやる。喜代美の後ろのサラリーマン風の男が…あやしい。
人違いのないように、慎重に見定める。その男は喜代美の後ろから体をいやに押し付けるようにして
その手は…間違いなく喜代美の尻をまさぐっていた。
その瞬間。何かが頭の中でぷちんと切れた。
「おいコラおんどれは何さらしとるんじゃあ!!!!」
落語仕込みの大音量の声は、それはそれはよく車内に響きわたり。
そいつの腕をひねり上げたはずみで、サングラスはどこかへふっとんで。
「つ、徒然亭、小草若?」
腕をつかみあげられ声もなく青ざめる男の後ろのほうで、誰かがぽつりとつぶやいた。
やばい。
「うわ!小草若ちゃんや!」
「マジ!?うそあれ本物!!?」
「うっそ〜めっちゃカッコイイ!!!」
「ていうかマジ細!」
「あれ彼女やろか?」
そこここでひそひそ声が聞こえる。一度起こったざわめきは、加速度的に大きくなっていって。
あんばいよくちょうどその時次の駅についたものだから、小草若は喜代美と痴漢の手をつかんだまま
電車から飛び降りたのだった。
ごめんな。こんなことになるんやったら最初からタクシーで行ったらよかったな。」
タクシーの中で、小草若は申し訳なさそうに喜代美の顔を見る。
すっかりしおれた痴漢を降りた駅の駅員に引き渡して、いろいろと話を聞かれて駅を出たのは30分後。
時間には余裕をもって出てきていたから、喜代美の仕事にはタクシーで行けば間に合う範囲内だった。
「そんな。小草若兄さんのおかげで、ほんまに助かりました。一人やったらどねしようもなかったです…」
微笑んで頭を下げた後、喜代美は小さく身震いする。
「でも、しばらく電車には…。でもあの痴漢の人、どねなるんでしょう…?あんな青ざめとりなって、
きっと出来心やと思うのに…」
どうやら痴漢の男性が警察に連れていかれるのを心配しているらしいとわかり、小草若は少し呆れる。
「喜代美ちゃんはほんま甘いな。あれ、十中八九常習やで。」
「え、なんでですか?」
「男の勘。まあ日本は痴漢には甘いさかい、せいぜい叱られて出てくるくらいやろ。気にせんとき。」
そんなことはよく知らないが、喜代美を安心させるために適当にでっち上げる。
「ほんまですか。」
喜代美はそれを聞いて素直に安心したらしく、ほっと表情を緩める。
(ほんまこの子は放っておけんな。守ったらなあかん)
できたら俺が。
このほんわりとした真っ白な子を、優しい微笑を。
「そんなことより、もうしばらく電車は乗らんほうがええ。あの痴漢が逆恨みするかもしれんし、
前も何人かに痴漢されたんやろ?注意するに越したことない。師匠には俺から話しとくで。」
「え、でも」
「でも、やない。これは兄弟子としての命令でもあるって思うとき」
普段はこんな風に喜代美に強い口調で話すことはないけれど、あえて厳しい顔で告げる。
「いっつも俺か、草原兄さんや草々や四草がついておったれるんやったらええ。けど、それはいつも
できるわけやない。そやったら…身を守ることを考え。心配なことがあったら、みんなを、俺を
頼ってちゃんと相談してくれ。師匠や兄さん達は、喜代美ちゃんをこき使うためにおるんやないんやで。」
「小草若兄さん…」
「みんな、喜代美ちゃんを底抜けに心配しとるんや。それが」
にっこり笑って小草若は言う。
「家族やろ?」
喜代美は、それはそれは嬉しそうににっこりと最高級の微笑を見せた。
「心配せんとき。もしどうしても仕事で出なあかん時は、俺に相談してくれたらええから。
今日は仕事終わるの2時間後?適当に待っとるから、帰り、タクシーで帰ろな。」
「ほんま、ほんまに…ありがとうございます。いっつも…小草若兄さんはホンマ、優しい…」
喜代美と別れたあと、小草若は思う。
「家族やろ」とは言ったものの、本当は正直な気持ちではない。
喜代美は忘れているようだが、電車の中で喜代美に抱いた自分の思いは…痴漢のそれと大差ないのかもしれない。
家族?妹にそんな気持ちを覚えるわけがない。自分にとって喜代美は誰よりも…女だ。
本当は、自分だけが喜代美を守りたい。自分のものにして、自分だけを見つめさせたい。
けれど自分はいつも、冗談めかしてしか思いを伝えることが出来ない。
「ほんまに、底抜けに好きなんやけどな…」
夏の夜は長く寝苦しい。特に今夜の小草若にとっては。
きっと電車での喜代美を思い出してもんもんとするであろう今夜の自分の情けなさを思い、
小草若は小さなため息をついたのだった。
以上です。一気書きなんで穴だらけかも。
そして微妙に
>>24と台詞つながり。
ほんまにお粗末さまでした。
>>283 GJ!!
小草若ちゃんキタ――――――!!!そして底抜けに切ね――――――!!!
痴漢モノなのに純愛…朝から凄いもの読ませていただき感動です!
GJ!!
月曜日の朝から良いもの読ませて頂きました。
小草若と若狭、不器用同士で好きだ〜。
小草若が切ないままなのもツボだ〜。
>>283さんGJ!
書き手さんは女性かな?
小草若×若狭好きとしてかなりハアハアしました。
ただ、構想練ってた鼻毛×若狭と丸かぶりだ…orz
みんなゴメン、鼻毛もうちょっと待って下さい…
誰か俺にネタをくれ!
とびきりエロいのを書きたいお(´・ω・`)
>>277 俺は持ってないです。
>>283 GJ!!!!
売れっ子小草若ちゃんの喜代美呼びが懐かしいっ!
途中ハラハラしたけど、嫌われなくてよかったー
四草の算段もいい味になってる!
>>283 GJです!小草若兄さん大好きだ!
>>295 鼻毛難しいよね、自分も挫折した orz
創作落語を手ほどきしていて
バレ噺の方に話が進んで…てのはどう?
年季あけの喜代美がどうしても欲しいモノがあってキャバクラでバイトしようとするのをとめる鼻毛。
夜銭湯帰り、男数人にナンパされて集団●●プされかけたとこを助ける鼻毛。
四代目草若×清海って需要あるかね?
ある!
301 :
275:2008/04/07(月) 22:21:28 ID:rAflz6GK
GJ下さった方、ありがとうございました。
頭の中であるイメージを、文字に起こすって難しいですね。
特に官能シーン(汗)。映像はあるのに、文章の短いこと。
続き考えてあるんで、また投下させて頂きます。
>>277 エロなしなら一応あり。
>>297 自分は、初めて聞いたのが「食べ物粗末にしちゃいけません!」的なヤツだったんで、エロというより下世話なイメージが強いんだが…>バレ噺
普通に艶っぽい噺も有るんだろうが…
303 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/07(月) 22:51:00 ID:rDqPgKlE
304 :
283:2008/04/07(月) 23:20:48 ID:sk6YJUH+
GJ感謝です!
一気書きのことで、誤字ありますねすみません。
>>284 ラストから7行目 ためたっとるねん?→ためらっとるねん?
>>290 冒頭カギカッコ忘れ。
そんなんなのに読んで頂いてありがたや。
>>295 本当にすみません。
>>264さん見た後一気書きしたので、
>>278には
投稿直前まで気づかんかって。
キャラ違うからまあえっかと思ったんですが、ネタ丸被りとは申し訳ないです…
でも自分の全くエロくないんで、もしお嫌でなければエロい鼻毛バージョン
痴漢電車、お待ちしております。
>>295 あ、一応思いついたのを。
内弟子修行明けてすぐ、TVに出始めた若狭にはあれよあれよという間に
熱狂的なファンが…。のみならずストーカー行為に及ぶ不埒者も現れる始末。
師匠や兄弟子の目の届かないテレビ局で、若狭に魔の手がせまる!
みたいな系はいかがでしょ?テレビ局なんで鼻毛はからめやすい?
罪滅ぼしにもなりませんね。連投すんませんでした。
306 :
275:2008/04/08(火) 01:08:49 ID:/gxtFHil
>>265-274の続きです。
本編拡大解釈、最終回まで(ちょっと後日談)。
基本的に四草×若狭、かつ草々→志保前提の草々×若狭が少々。
多分、前作よりは官能的。
本編ラストシーンに感動した方は、読まない方がいいです。
常打ち小屋建設を巡って、一門の中で意見が割れてしまった。
それ自体は、仕方がない。
自分だって今は駄目だと考えているのだから。
しかし……
「若狭」
草原は妹弟子に声をかけた。
「……えっと……草々とは、どないなんや」
聞かれて、喜代美は首を傾げる。
「いや、ちょっと気になったんや。
前のお前やったら、絶対に草々の意見に賛成したやろ。
干される言うのかて、小草々の心配ばっかりしとったし。
そやから、上手く行ってんのかいな、思てな」
「え? そりゃ……私はおかみさんなんやでぇ」
喜代美は、草原の目を見た。
「草々兄さんの気持ちはわかるんですけど、いろんなこと考えんならんし」
「そうか」
優しい長兄は、にっこりと微笑んだ。
「大人になったな、若狭。この調子で、草々のこと頼むで」
はい、と素直な返事をして、喜代美は草原を送り出す。
兄弟子の姿が見えなくなると、小さな小さな溜め息をついた。
そういえば……うっかりしていた、と思う。
感情の赴くままに、感嘆してしまった。
もしも、胸の中の秘密を知ったなら……草原は、決して自分を許さないだろう。
最近、喜代美は時折四草の部屋を訪ねる。
表向きの理由は、男所帯の四草と小草若のために、妹弟子として料理するため。
「すまんな、若狭。ほな、俺バイト行くわ」
小草若は、そ知らぬ顔で部屋を後にする。
「……また脅しに屈して、のこのこと」
後に残った四草は、射抜くような目で若狭を見る。
続いて、腕を掴まれて引き寄せられる。
「この部屋でのお前の様子……兄さんらは、信じられんやろな」
ゆっくりと、四草の指が若狭の体をなぞる。
喜代美の丸い唇から、息が漏れた。
「兄さんらにバラされとなかったら……言う通りにせえ」
この部屋に来る裏の理由は、四草に関係を迫られ、されるがままになったと、
草々達に黙っている代わりに、と何度も関係を強要されているから。
しかし、それですら真実ではない。
喜代美もまた、四草を求めているのだから。
初めて関係を持った数日後、草々の留守に訪ねて来た四草は、耳元で囁いた。
「こないだの様子……誰にも言われとないやろ」
喜代美は、四草の意図がわからない。
忘れるつもりでいた。
自分を突き放したのは、四草の方だったのだから。
「言われとなかったら……また俺の部屋に来い」
喜代美の目が見開かれる。
それを見て、四草は薄っすらと笑みを浮かべた。
「わからへんか。脅してんのや。
犯されたの、バラされとなかったら、これからも部屋に来い」
「四草兄さん……」
「ええな」
言うだけ言うと、四草は立ち上がって帰ってしまった。
(またや……)
喜代美は悲しくなる。
四草は、決意してしまったのだ。
自分達の関係を続ける代わりに、全ての罪は自分が引き受けると。
悪役を演じることを厭わない四草の姿は、愛しくもあり、
見ていて胸が締め付けられるものでもあった。
それでも、四草のために何の解決策も浮かばぬまま、月日は流れた。
もし、草々が昔のように怒鳴ることがあったら、すぐに家を飛び出しただろう。
しかし、草々は、信じがたいほどに穏やかになっていた。
理由は簡単だった。
草々の理想の女性像である「おかみさん」の姿に、喜代美は年々近付いていた。
どうやら、それは日常の言動だけではなく。
「ほんまに……おかみさんみたいやな……」
ある日、布団の中で、草々は呟いた。
愛しげに喜代美の髪を撫でながら微笑んで言う。
「今のお前は、師匠といはった時のおかみさんそっくりや……」
昔は、草々の口から「おかみさん」が漏れるたびに悲しかった。
今は、何も感じない。
だって、「おかみさん似の若狭」ではない自分になれる場所があるのだから。
草々の心が、草若夫妻の営みを覗き見していた思春期のままであることには、
何の苦痛も感じなかった。
「……若狭……『師匠』て呼んでくれへんか」
ただ、この要求だけは、大変だった。
うっかりすると、今、愛しい人の名を呼びそうになってしまうから。
「し……しょ……う」
喜代美の小さな声に、草々は、若き日の志保を想像した。
いつか、自分が破門になったとき、この妹弟子が探しに来てくれた日のこと。
振り返った喜代美が、あまりにも志保を思わせ、心臓が高鳴ったのを思い出す。
いざ結婚してみると、志保と掛け離れた部分もあって気落ちしたが、
歳月を重ねると、あのときの自分の見立ては間違っていなかった……。
草々は心地よく喜代美を胸に抱いた。
最後の最後では、喜代美が自分を拒んでいるのに気付かないまま。
そんな日々に終止符が打たれたのは、常打ち小屋の完成も間近の日だった。
自分の中に宿った命に、喜代美は戸惑うばかりだった。
四草もまた、動揺していた。
自分の子であって欲しくもあり、またそうではないことを願った。
だが、喜代美の悪阻が収まるまで、糸子が大阪にいたこともあり、
ゆっくりと話をする機会はないままだった。
ひぐらし亭オープンからしばらくして、喜代美の具合が安定してきた。
草々も安心して地方公演に出かけるようになった。
その留守に合わせ、夜の公演も引けた後に、四草は喜代美を訪ねた。
「……四草兄さんの子供です」
喜代美は、確信を持って答えた。
四草は複雑な気分になる。
「やっぱり、血は争えん言うことなんやな。
親と同じこと、してしもた」
「後悔……しとんなるんですか?」
不安そうな喜代美に、四草は穏やかな笑顔を返す。
「困った話やけど、してへんのや」
それから、ふと真顔になって言う。
「そやけど……子供には、俺と同じ思いは、させとない。
温かい家庭を味わって欲しいんや……」
「私も、ずっと考えてました」
喜代美の表情もまた、真剣だった。
「ええ落語家にも、ええ奥さんにもなれへん。
ほやけど私……ええお母ちゃんにはなりたい」
四草は微笑んだ。
二人は同じ答えに辿り着いた。それでええ。
これで最後……と四草は喜代美の首筋に口付けた。
慣れた手つきで、白い肌をあらわにしていく。
乳房、腕、そして……
(ここに……おるんやな)
最初で最後に、父親としての口付けを届けた。
喜代美の手が伸びてきて、四草の髪の毛を梳く。
それに応じるように、四草は再び胸元へと戻る。
やがて、四草は意を決して、喜代美から離れた。
「……四草兄さん」
潤んだ目で呼びかける喜代美に、四草は微笑む。
「もう怖がらんでええ。……絶対に、誰にも言わへん」
わかりきっていることをわざわざ言う四草が愛しくて、喜代美は微笑んだ。
その唇に、四草は自分の唇を重ねた。
互いに味わうように、その記憶を刻みつけるように、口付けを交わす。
それすらも、ついに四草は終えた。
「……ご馳走様でした……若狭姉さん」
そんな出来事があったため、喜代美が突然
「私の最後の高座にお付き合いいただき、ありがとうございました」
と言い出したときも、四草は一人、その理由を察していた。
母親になるという腹をくくった喜代美は強くてまばゆくて。
四草は微笑んで、若狭の決意を見守った。
数ヵ月後。喜代美は、病院をストレッチャーで運ばれていた。
「頑張れ若狭!」
頭の上で響く草々の声に、遠い記憶が蘇る。
「ガンバレワカサ、ガンバレ、ガンバレ」
初高座で失敗した自分を励ますために、九官鳥に仕込みをしてくれた人。
「その道中の陽気なこと!」
草若の危篤の時、何かを吹っ切ったように「地獄八景」を演じた姿。
全てが四草に結びつくことに罪悪感を感じる暇もないほど、
母になるというのは苦痛を伴った。しかし、
「元気な女の子ですよ」
その声に、喜代美の顔に、心からの満足が浮かんだ。
同じ頃、大阪では、ちょっとした騒動が起きていた。
「ビーコ!おめでとう!」
情報をもたらしたのは、出産祝いに来た清海だった。
四代目草若の襲名祝いの様子を聞いていると、乱入者の話が出て来た。
「四草兄さんの……子供?」
呆然とした喜代美の顔は、単に驚きに映ったらしい。
「何やねんあいつは!責任も取らんと!」
かつて友春に説教をした草々は、すぐにでも大阪に帰って、
四草を怒鳴りつけんばかりの勢いだ。
「あ、ほやけど、小草……草若さんは、変や、て言うとんなりました。
その子の歳が、草若さんが四草さんと同居しとんなった時を考えたら、
四草さんの子供やてのはおかしい、て」
ほやけど四草さん、文句も言わんとその子抱き上げなって、
と清海の説明は続く。
草々の気持ちは収まったようだが、喜代美の動揺は続いた。
草若兄さんの気遣いかもしれない、という考えを消せずにいた。
不満に思うのは筋違いだ。
自分は、草々と結婚しているままなのだから。
それでも、四草が、他の女性と子を成したと考えるのは、胸が締め付けられた。
大阪に戻った後、ある晴れた日。
喜代美は、生まれたばかりの娘を抱いて、散歩に出かけた。
近くの公園を覗くと、四草がベンチに座っているのが見えた。
黙って隣に腰掛けると、四草は腕の中の赤ん坊に目をやった。
「……娘です」
四草は小さく笑うと、赤ん坊の手に自分の指を差し出した。
「四草兄さんとこの子は……」
「あの青い服のや」
子供達の集団の中の一人を、四草は指した。
その距離を確認して、喜代美は小声で切り出す。
「……大変やないですか、いきなり子供なんて。
確かめたんですか、ほんまに責任取らなあかんのか……」
「迷い込んできたもんは、しゃあない」
四草は微笑んだ。
「俺も平兵衛も、師匠のところに迷い込んだ。
どこの誰やなんてことは、大した問題やあらへん」
平然と言われた言葉に、喜代美は自分が恥ずかしくなる。
心の小ささに顔を赤らめた喜代美を見て、四草はおかしそうに囁いた。
心に描く、究極の算段を。
「それにな、ちょうどええってもんやで。
俺達の娘にふさわしい男を、俺が自分で育てるんや」
【完】
草々の扱いが悪くて申し訳ない(滝汗)。
とりあえず、個人的に、草々→若狭の要素を本編から感じ取れず、
どこか根底に、草々→志保がある感じがしたもんで。
草々は、光源氏タイプの男です、自分的には。
あと、四草×若狭派としては「ご馳走様でした」を言わせたかった(爆)。
前作が、かなり四草が苦悩してしまったので、完結編として、
四草的ハッピーエンドです、一応。
さりげなく小四草×落子(笑)。
>>316 うわ!リアルタイム投下!
心からGJ!!!ほんまありがとう!
四草に泣けた。切ない、切ないよ…。
本編で若狭が落語家辞める言うた時、四草が微笑んだのが落ちんかったんですが、
これですっきり落ちた。小草若×喜代美派の自分がここまではまるとは…。
>>316 前作よりも描写が丁寧で読みやすかった
説得力があった
オチもすごい GJです
これなら本編四草のラストも許せる…
(あのラストに納得いかなかったので…w)
GJです!
四草×喜代美派の自分としては
嬉しい限りでございます
>>316さんGJ!
やっとのことで鼻毛を書き上げたので投下します。
鼻毛×若狭で、本編では「二人ぐせ」あたりのお話です。
若狭がただの痴女に…orz
挿入なしですがエロです。
天狗座での出番を終えた尊建が楽屋に戻ると、良きライバルの妻である若狭がお茶を淹れていた。
久しぶりにみた彼女は、最近タレントとして引っ張りだこになっているためか少しやつれたように思える。
「よぉ若狭!久しぶりやのぉ、来とったんか」
「はい、勉強させていただきました。
最近あんまり落語聴けてなかったさけぇ、オフの日は勉強せなアカン思うて」
「なかなか忙しいみたいやなぁ」
「お陰様で…でも本業が疎かになってしもて」
「ま、今は仕方ないやろ」
若狭は尊建の言葉に頷きつつもどこか暗い表情を見せた。
よほど疲れているのだろう、いつもの覇気が感じられない。
そんな若狭を何とかして笑顔にしようと、尊建は明るく話だした。
「よし、ほな今日は俺が落語の勉強に付き合ったろ!」
「え、ホンマですか?」
「おう!オレん家でかまへんか?」
「わあ、あの、はい、ありがとうございます!」
「ほなちょっと待ってて、着替えるわ」
若狭の嬉しそうな顔を見て少し安心した尊建は、急いで着替えを済ませた。
*****
「〜っちゅう訳や!分かるか?」
「あぁ、そういう意味なんですねぇ!知りませんでした!」
ビールを片手に尊建は落語にまつわる色々なことを話した。
若狭は初めて聞くことが殆どらしく、その度大きなリアクションをみせる。
二人ともほんのり酔いがまわりだしたのか、時たまジョークを言ったりした。
「あはは、ふ〜っ、おもしろ〜」
「せやろ?これがまた堪らんわ」
「ホンマ、尊建兄さんは物知りですねぇ。
私はまだまだ知らんことだらけや」
「ほな、これは知ってるか?」
「なんですか?」
「艶笑噺ってやつ、聞いたことあるか?」
「えんしょうばなし…ですか?きいたことないです」
尊建はいたずら半分でこの話題を切り出した。
艶笑噺―またはサゲ噺ともいう―は、男女間のいやらしい話をおもしろおかしくしたものである。
そのことを説明すると若狭の顔はぼっと紅くなった。
それをみた尊建のいたずら心には火が付いたらしく、少し苛めてやろうと更に話を続けた。
「艶笑噺に出てくる女房はな、大体が旦那以外にも男がおんねんで」
「ふ、不倫ですか!?」
目を白黒させる若狭に、尊建はいくつか自分が知っている艶笑噺を聴かせてやった。
話終えると若狭は更に赤らめた顔を俯かせてしまった。
少しやり過ぎたかと思った尊建だったが、次の瞬間目を見張った。
「わ、若狭?」
「……っ」
若狭が、正座していた太腿をもじもじと擦り合わせていたのだ。
心なしか呼吸も荒く、半開きの唇は震えている。
「どないした若狭…大丈夫か?」
「あの…わ、私…」
「ん?」
「最近忙しいし、草々兄さんとちょっと喧嘩してて…その…ご無沙汰、なんです」
「…え!?」
「酔うてるんかな、どねしよ…
身体が…熱いんです、疼いてしもてます」
「わ、若狭、落ち着こ!な!」
「尊建兄さん…」
焦る尊建を尻目に、若狭は尊建の肩にもたれかかった。
腕に豊満な胸を押しつけられ、思わず股間が反応する。
「尊建兄さん…あきませんか?」
「あ、アカンて、お前は草々の嫁やし、今ゴムないし、アカンとにかくアカン!」
「お願いします、触るだけでもえぇさけ…」
そう言って若狭は尊建に跨がって手を取り、自分の胸に押し当てた。
そして自分の股間を尊建の勃起しつつあるペニスに擦りつけるように腰をゆるゆると動かす。
「若狭!やめんかい…!」
「触って…尊建兄さん、お願いです…」
「…っ」
「ん、はぁ」
切ない吐息をもらす若狭に、ギリギリのところで保っていた尊建の理性がプチンと切れた。
若狭の着ているTシャツをブラと一緒に捲りあげ、既に堅くなった乳首にむしゃぶりつく。
そして若く柔らかな白い肌を撫でまわしながらジーンズを脱がし、ショーツの上から尻を揉みしだいた。
若狭はピクピクと肩を震わせながら快感にひたり、更に腰を捩らせる。
「っあ!やぁ、もっと…兄さん…」
「はぁ、は…いやらしい女や」
「そんなこと言わんでぇ…」
布の上から中指を割れ目に沿って滑らせると、そこは既に湿っていた。
それならばとショーツを横にずらして中指を挿入する。
愛液が溢れ出しているそこは、尊建の長く骨張った指を勢いよく受け入れる。
指にたっぷり付いた愛液をクリトリスに塗り付け激しく動かすと、若狭は短く嬌声をあげた。
「あっあっあ…っ…きもち、い…ん」
「すごいな若狭のココ、とろっとろでぐちゃぐちゃや」
「や…ぁん!はあ、あ…っうあ…兄さ、ん!」
ショーツを脱がし、露になったそこに今度は指を二本に増やして中で掻き回すように動かしてやる。
そこはぐちゅんと音をたてて容易くそれを受け入れ、吸い付いて放さない。
「ひ、ん…あっ、もう、アカ…ンん!」
「…イってえぇで」
「っあ、あ…あああァ…!」
更に激しくピストンしてやると、若狭は絶頂を迎えたようだ。
ひくんと身体を震わした彼女の額に張り付いた髪を優しく梳いてやる。
暫くして指を引き抜くと、若狭は切ない顔で天井を仰いだ。
「はあ、は、は…ぁ」
「大丈夫か?体ツラないか?」
「だいじょ、ぶ…です、けど…兄さんこそ…」
「あ、うん…まあ…な」
先程から若狭に快感を与え続けた尊建のペニスは、既に張り裂けそうになっていた。
流石に申し訳ないと思ったのか、若狭は小さな声で謝ってからベルトに手を掛けた。
「そんなことせんでえぇ!」
「させて下さい…私ばっかりじゃあせこいですから」
「若狭……っ」
「…ん、むぅ、っ」
若狭は戸惑うことなく尊建の雄々しいペニスを口に咥えた。
そして右手で上下に扱きながら、亀頭を舌で丹念になぞっていく。
竿にねっとりと舌を這わせ、内腿にキスを落とし、咥えこんでじゅぶじゅぶと音をたてながら射精を促す。
「ん、ふ、ぅぷ、っは」
「アカン…出る…っく!」
尊建は絶えきれずに、熱い白濁を若狭の口内に注ぎ込んだ。
********
後日、二人はテレビ局で偶然会った。
ばつの悪そうな顔をした尊建を見て若狭はにっこり微笑んだ。
「この間はすっかり酔っ払ってしまって…兄さんゴメンなさい!
何にも覚えてないんですけど、何かありましたか?」
以上です。
何かホンマに若狭がただの変態欲求不満女に…or2
鼻毛ゴメン。ホンマゴメン。
反省している。
今作も楽しんで頂けたら幸いです〜。
>>327 GJです
鼻毛兄さんがジェントルマンなんでワロタ
次回作も期待してますよ!
若狭ったら積極的w
>>316 GJGJ!
うまいなあ、話の展開が本編とからんで無理がない。
自分の書きかけの四草×喜代美なんて
もう書きたくなくなったくらい感動した。これ以上は無理。
>>327 GJでした。若狭ってば、天然小悪魔だなあw
アナルものが読みたい。
柳眉とかってアナル好きそうw
いっそ3Pで二穴攻めはどうだろう。
333 :
316:2008/04/08(火) 22:29:26 ID:/gxtFHil
皆さん、感謝です。反応良くて、こっちが泣きそうになるほど嬉しい。
四草の微笑みに、お前絶対何か知ってるな、と思い。
あの少年は、四草の子供とは限らんよな、と考え。
・・・ゴタクを並べても、四草×喜代美フィルターで本編を見たら、
こない見える・・・っちゅうだけの話でございますw
なので、自分の独断と偏見に、こんな温かいGJ頂いて感動した。
>>327 GJですよー。
タイトルに「鼻毛」入ってるから、どんなやな奴が出て来るかと
思ったら、おたおたしてる尊建かわいい。
>>330 自分は逆に、本編から独立出来ないんで、
他の職人さんに色々投下していただけるとありがたい。
ので、書きたくなくなったなんて言わず、どうかよろしく頼みます。
>>328-330、
>>333 ありがとうございます!
なんか皆さん原型とどめた小説で羨ましいです。
自分のは果てしなくかけ離れてるし、ただの安いエロ小説だし…orz
女性にはすこぶる評判悪いかもですが、ヌける小説目指して頑張りますw
>>331 うはwその設定貰っていいですかww
>>334 ちょいと出遅れましたがGJです!!
鼻毛×若狭お待ちしておりましたですよ!
からかうつもりが翻弄される鼻毛がいい味ですねw若狭酒癖悪そうだもんなあ。
原型からかけ離れてるとおっしゃるが、エロエロ路線はやっぱ欠かせんですよ!
柳眉アナルものwktkしつつ楽しみにしております。
柳眉は変態プレイが似合う
>>335 ありがとうございます!
そう言っていただけると執筆しがいがあります。
今柳眉×若狭の執筆中です。
am2:00までにはうp出来る…はず。
最近連投し過ぎで申し訳ないorz
自重したほうがいいのかな?
小草若×喜代美の本編ベースを書きたいと思いつつ、
何かどこまでも救いがない印象になってしまうのはなぜだろう。
四草だと刹那的な結び付きでも、もっと言うと完全に一方通行でも、
そこまで痛々しく感じないんだけど。何なんだ、このキャラの違いw
つーわけで、以下に最終回後の時間軸で、無理なく本編を破壊するか考え中。
・・・今更、草々×A子はあり?
出来たやないか…
誰でも気軽に入れて職人たちがエロパロの腕を競うスレが。
いやマジで最近また職人さんたちが脂乗ってて嬉しいです。一時期過疎ってから…
いつ来ても皆さんの作品が楽しめる常打ちスレである事を願ってます。
>>340 コテハン叩きとか出て荒れた時期もあったしねえ。
>>338 草々×A子読みたいっす
初代スレからずっとリクエストしてるんだけど、ほとんど投下なし…
いちど自分で書いてみたけど
箸にも棒にも掛からん駄作でした
是非ともお願いします!
案外早く書きあがったので投下します。
アナルもので柳眉×若狭。
若狭のタレントの仕事が減ってきたころのお話です。
枕営業がテーマなんですが「なんで柳眉に枕営業すんねん!鞍馬にせぇ!」というツッコミはなしでおながいしますw
そして若狭の台詞が五割喘ぎ声でスイマセンww
「若狭、ほなそろそろ」
柳眉はすっと立ち上がり奥の襖を開けた。
その部屋には布団が一組だけひいてあり、大きな姿見が置いてある。
―…そう、いわゆる枕営業というやつだ。
以前に比べてすっかり仕事が減ってしまった若狭は、なんとかして仕事を手に入れようともがき苦しんでいた。
そして泣く泣くこのような形になってしまったのだ。
「さ、こっちゃ来んかいな」
「…は、い」
いやらしい笑顔に導かれ、若狭はゆっくりとそちらに向かった。
姿見の前で胡座をかいた柳眉は足の上へ座るように促し、若狭もそれに従う。
後ろから抱きすくめられる形になり、薄い浴衣越しに相手の温度を背中で感じる。
「お前もつらいかもしれんけどな…これがこの世界では当たり前やさかいな、堪忍やで」
「分かってます…」
「ほな」
「よろしく、お願いします」
柳眉はすらりと伸びる白い脚を右手で優しく撫でた。
脚を大きく広げさせ、手は徐々に上へ上へと前をはだけさせながら内股を擦る。
そして左手は胸元をまさぐり、大きな乳房が見えるよう浴衣を両肩からずらした。
決して脱がさず、帯だけで体に纏わりついた衣はやけに官能的で、若狭は鏡に映る自分の姿に唇を噛んで目を背けた。
「これこれ、大事な商売道具の唇を噛みなさんな」
「あ…す、すいません」
「ちゃあんと鏡見とき」
「…え?」
「丸見えやろ、お前の何もかも」
命令で湯上り後は下着を付けていなかったため、鏡の中の若狭は布を纏っただけの霰もない姿だった。
ふと鏡越しに柳眉と目が合う。
それは普段の優しい柳眉とはまったく違う『男』の目だった。
目は鏡に映る若狭の肢体を隅々まで舐め回す。
「前々から思うてたけど、お前やっぱりえぇ体しとるな」
「ん…っ」
「感度もえぇし若いし、草々が羨ましいわ」
「え、っあ…」
突然出された旦那の名に、思わず体がビクリと跳ねてしまった。
罪悪感がふつふつと込み上げる。
柳眉は若狭のその表情を楽しみながら秘部に指を差し込んだ。
わざとぐちゅぐちゅと音をたてながら中をかき混ぜる。
「っひ!ん…んン…う…っ」
「若狭、そこの紙袋開けてみぃ」
「あ…っは、はい…」
鏡の横に置かれていた紙袋に手を伸ばし、言われた通り中を覗きこんだ。
するとその中には男性器を象った真っ赤なバイブが入っていた。
「あ…あの柳眉兄さん、これ…」
「分かるやろ?」
「え…?」
「鏡見ながらそれでオナニーせぇ」
若狭は驚きのあまり紙袋を落としてしまい、中からバイブが転がり出た。
柳眉はそれを拾いあげ、嫌がる若狭の唇にぐいと押しつけた。
「ほれ、舐めて濡らさんと挿れられへんやろ」
「い、いや…!」
「口開けぇ」
「ん!うぐ…むうっ」
無理矢理口をこじ開けてバイブを押し込み、唾液を飲み込む暇もないほど激しく動かし口内を犯す。
暫くして柳眉はべっとり濡れて妖しく光るバイブを若狭に手渡した。
「さ、はよぉ挿れてオナニー見せぇ」
「っ…いや、です」
「……仕事欲しいんやろ?」
「!!」
その言葉にとどめをさされた若狭は震える手でそれを受け取り、おずおずと割れ目へと近付けた。
既にぬめっているそこにゆっくりバイブを擦り付けると、先端が少しだけ中に侵入する。
暫くそうしていたが、その刺激では物足りなさを感じ始めた。
(恥ずかしい…けど、仕事のためや。
それにもっと…もっと気持ち良ぉなりたい…)
心の中で都合よく自分に言い聞かせ、バイブをゆっくりと中に埋め込んでいく。
そこはズブズブと音をたてて卑猥なそれを飲み込んだ。
すかさず柳眉がそれに手を伸ばしスイッチをいれるとブルブルと震えだし、余計に若狭を興奮させる。
「あぁあ…っあ…はぁ…ん!」
「ほぉ…えらい艶っぽい声だすんやなあ」
「ん!んん…!あ、は…っ」
「よし…ほな四つん這いになり」
刺激に飲み込まれて頭がまわらなくなった若狭は、しっかりバイブを咥え込んだまま四つん這いになった。
「お〜お〜、こんなとこまでやらしい汁が垂れてきとる!
これやったらローションいらんなあ」
柳眉は溢れている若狭の愛液をたっぷり指ですくいあげ、アナルに塗り付けた。
「前はバイブでいっぱいやから後ろに挿れさせてもらおか」
前に突き刺さったバイブを左手でゆるゆるとピストンしつつ、アナルを解きほぐすように右手の人差し指を徐々にめりこませていく。
「ひ!い、いた…ああっ!いたい…っ」
「こっちは初めてかいな…開発し甲斐があるな」
「っうああ!ひ…やあ、っ…ん!」
「こらこら、力ぬかな痛いでぇ…」
畳に爪を立てて痛がる若狭の姿は柳眉を更に興奮させた。
柳眉は時間をかけてアナルへ挿入する指を増やしていき、最終的には3本もの指がすっぽり収まるほどになった。
その間若狭は何度も絶頂を迎え、朦朧とした意識の中で更なる快楽を求め腰を揺らしていた。
「そろそろえぇころやな…若狭、力抜いてくれや」
「はぁ…っあん…う…りゅ、び兄さ…ください…」
「安心せぇ、仕事は鞍馬会長に言うてお前にくれたるさかい」
「違う…はよぉ兄さん…下さい…!」
「ふは!やらしいこっちゃ…
ケツは初めてのくせしてもう感じてんのか」
柳眉は若狭のしなる背中をべろりと舐めあげ、アナルに自身をあてがい一気に貫いた。
痛みと快感とが混ざり合い、若狭は悲鳴に似た嬌声をあげた。
そしてどちらからともなく腰を振り、奥へ奥へと刺激を求める。
「ちぎれるがな!もうちぃと力抜かんかい…っ」
「うぅんっあぁ!あ!ひ、やぁぁあぁ!」
「っ…く!アカン、もう出てまう…」
「あ!あ!ぁああ…!」
「中で出してもかまへんな…出すで…っ!」
一層ピストンのスピードをあげ、柳眉は若狭のアナルに全てを吐き出した。
それと同時に愛液にまみれたバイブが畳にぼとりと落ちて震え続けた。
++++++
その後、減っていた若狭の仕事は元通りとはいかないものの増えていった。
タレント業を好ましく思っていなかった草々も理解を示し、若狭の仕事が増えたことを喜んだ。
若狭はその草々の姿を見ては何とも言えない気持ちになるのだった。
以上です。
オチが弱くて申し訳ないw
そしてここ最近投稿しすぎww
ちょっと自重しつつ、これからもひっそり執筆します。
GJGJ!
柳眉変態ワロタ
こうして若狭は普通のセックスじゃ物足りなくなっていくのかw
GJです!
やっぱり変態だよね、柳眉兄さん
いつの間にか
徒然亭(枕)営業担当になっている若狭
若狭の営業次第で一門の高座出演予定が決まる
GJ!おもろかった!
>>352 やっぱり変態てwww柳眉変態説は思いつかんかったけど
そう言われてみると…似合うな。
職人さんの変態柳眉兄さんがハマりすぎて、
ぐるっと関西お昼前のよね吉さんを直視できぬではないかw
>>351-356 いつも温かい感想ありがとうございます!
変態柳眉、好評で嬉しいですw
ちょっとチラ裏。
実は先日ぐる関のスタジオ観覧(外から見るだけ)に彼女と行ってきた。
どうしてもよね吉の笑顔がエロく見えてしまったw
よね吉ゴメン。
でも反省はしていない。
さぁてそろそろネタが尽きてきましたよw
ドSで両刀使いで女装癖の柳眉兄さん…
言ってみただけです。すみません反省してます
360 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/11(金) 18:06:34 ID:dTYHiqi7
柳眉「草々お前えぇケツしとるなぁ。」
草々「な、なんやねん…!気持ち悪いな!」
柳眉「キュッと締まってて…ムフフ」
アッー!
362 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/11(金) 21:09:28 ID:83v/MuJf
今日、喜代美が妹で正平が兄、という夢を見てしまった・・・。
今までアニメやドラマの夢を見たことがなかっただけに、
自分がどれだけこのドラマにやられているかを実感した。
sageてね
底抜けのジングルで目覚める自分は
大概イヤな夢で目覚めるよ
初めてここに来たんだが、エロパロなのにwちゃんと元ネタを大事にしてるところに敬意を表して一つ情報投下。
へーべー(九官鳥)はオスですねん。
ソースはえねっちけーの携帯サイトでの四草インタビュー
Q相棒である平兵衛クンとの仲は?
A「平兵衛クンとの仲なんですが(中略)特にはないんです彼とは」
いや、「平兵衛」って名前だけで、Q側もA側も「オス」と思い込んでるだけじゃ?
「特にはないんです彼とは」って真面目に答えてるAに吹いたw
烏のオスメスの区別は難しいからね
賭けますか?
草々×若狭書きました。
初めての投下なので、不手際ありましたらお許し下さい。
エロちょっとだけあります。
370 :
草々×若狭1:2008/04/13(日) 02:26:50 ID:b7miz8Ov
京都の廃屋に辿り着いたとき、草々は、それこそまるで息も絶え絶えに弱りきった恐竜のようにぐったりとしていた。
一目で具合の悪いことが分かる。若狭はそのごつい肩をやっとの思いで抱え上げ、自分の膝の上に乗せた。
“草々兄さん、こんなになってしもて”
額や頬に手を当てて、熱があるのを確かめる。救急車を呼ぼうか、それとも近所の人に助けを求めようか。草々の首の辺りの汗を持っていたハンカチで拭いながら迷っていると、
ふいに草々の手が、若狭のその手を両手で握り締めてきた。
「おかみさん─」草々がつぶやく。
“おかみさんの夢をみてはるんや…”若狭は草々の手を握り返した。
「おかみさんから師匠に謝ってください。小草若はほんまの子供やから、きっと許してくれる…」
“草々兄さん、こんなに悲しんでる。師匠のこともおかみさんのことも、小草若兄さんのことも、本当の家族や思って大好きなんや”
頑固で、いかつくて、ぶっきらぼうで、でもこんなに家族の愛情に飢えている草々。
そのことについては草原からも聞いていたし、自分でも気が付いていたが、熱にうなされ弱った草々のうわ言が今はっきりと胸の奥に響き、若狭はたまらず声を発する。
「大丈夫。絶対1人にはせえへん…」
救急車を呼ぶのは止めた。
“私が、私が助ける。草々兄さん。必ず。”
371 :
草々×若狭2:2008/04/13(日) 02:29:49 ID:b7miz8Ov
隣家へ赴き、毛布とタオルと洗面器を貸してもらった。
仰向けに横たわる草々に毛布をかけてやり、濡らしたタオルをしぼって
額に乗せるのを何度も繰り返す。
2時間ほど経ったころ、熱はまだ下がりきってはいないが息づかいが
かなり落ち着いた。草々の表情も随分穏やかに変化していた。
“良かった。明日の朝には楽になってる気がする。”
絶対に助けなきゃという緊張と意気込みが解けた若狭は、
ほうっと大きな息をついた。
安堵の気持ちで改めて草々の顔を見つめると、笑みがこぼれる。
「いっつも怖い顔してはるのに、なんか今は優しい顔してる…
寝るときはいつもこんな顔してるんやろか、草々兄さん…」
今までこんなに近くで草々の顔を見つめたことがあっただろうか。
好きで好きで、大好きで、でも好きだと言ってはいけない兄弟子の草々の顔。
草々兄さんの恋人になれたら、こんな風にこんな直ぐそばで兄さんの顔見てていいんや…
無防備な、草々の寝顔を眺めながら若狭は思う。
好きで好きで、誰にも取られたくなかったくらい焦がれた草々の、見たことも無い無防備な寝顔。
若狭の胸が高鳴り始めた。さっきとは別の緊張が走る。
372 :
草々×若狭3:2008/04/13(日) 02:31:46 ID:b7miz8Ov
草々にかけた毛布に、若狭はそっと、もぐりこんだ。
仰向けに横たわる草々の胸に静かに片手を置き、まだ身体に熱のあるのを感じ取ってから、
ゆっくりと頭を間を動かし愛しい人の顔を見上げた。
無精ひげに覆われたごつごつした顎、高い鼻、角ばった頬骨、そして今は固く閉じられている、
野生の動物のようにするどい視線を放つ大きな目。
“やっぱり好き…”心の中で若狭はつぶやく。
もうすぐ年季が明ける。明けたら好きと言ってもいいかもしれない。けれど、
この人に異性として好きではないと言われるのは怖い。だったら告白しない方がいいかもしれない。
こちら側は焦がれても焦がれても、これまで草々が自分に好意を寄せるどころか、
女としてさえ見ていないことは明確だ。
そう、ずっとずっと妹弟子のままでいれば、兄さんの傍にはずっとずっといられるんやから…
師匠の落語を伝えていく同士として!
もし、これからもそんな関係が続くなら、せめて今だけは…
せつない想いで、若狭は草々の肩に、頬をすり寄せた。
“今だけ、今夜だけ。ううん、5分でもいい。草々兄さんの恋人みたいにさせて下さい…”
熱い想いを込め目を閉じる。すると突然、草々の大きな体が覆いかぶさって来た。
373 :
草々×若狭4:2008/04/13(日) 02:33:33 ID:b7miz8Ov
さっきまで、おかみさんの夢を見ていたはずだ。
小草若と派手な喧嘩をした後とか、稽古の成果が思うように出ない時なんかに、度々見るあの夢だ。
春の陽だまりのように暖かい手のひらをしたおかみさん。
優しく肩を抱いて話を聞いてくれるおかみさん。
だけど、なんでや。俺の肩に手を回して優しく微笑んでいるのは、いつの間にか若狭に変わっていた。
なんで俺、若狭の夢なんか見てんねん。
おまけに俺を抱きしめて、髪の毛触ったりほっぺたくっつけて来たり、
なんでこんなに俺を可愛がってくれてんねん。
10歳も若くていっつもふにゃふにゃと泣き言ばっかりの妹弟子のくせに…!
そやけど、気持ちええなあ。
こいつの胸、柔らかい。なんや、抱かれてたら安心するわ。
ようわからんけど、俺の体えらい重うて言う事きかへんし…
このままこいつと抱きおうとこ。どうせ夢や、ええ気持ちや…
374 :
草々×若狭5:2008/04/13(日) 02:37:11 ID:b7miz8Ov
いきなり覆いかぶさってきた草々はうつろな目のまま、唇を若狭の唇に重ねた。
反対に思わず目を見開いて固まってしまう若狭。
予想もしてなかった出来事にどうしていいか分からない、頭の中はパニックだ。
身体はずっと硬直したままで、抵抗するどころか、
草々の口付けをじっと受けることしか出来なかった。
しかし草々の定まらない視線から、彼が正常な精神状態でないことはわかった。
風邪の熱のせいか、…きっと夢と現実がごっちゃになって、
自分の行動や心をコントロールできなくなっているのだろう。
どうしていいかわからず微動だにしない若狭。
けれど不思議なことに恐怖や嫌悪のようなものは少しも感じなかった。
生まれて初めてのキスなのに。
やはり自分は草々が好きなのだ。
小草若に抱きつかれた時は怖くて咄嗟に突き飛ばしてしまったけれど。
草々に抱きしめられる自分をこれまでに幾度となく妄想していた。
その妄想が現実になった今、どうして拒否ができるだろう?
草々の唇は熱く乾いていた。
視線を合わせると草々が正気に戻ってしまって、このくちづけが終わってしまうかもしれないと思った若狭は、
きゅっとまぶたを閉じた。
今夜だけ、今だけ、草々兄さんの恋人になれる…
長い長いいつまで続くか分からないキスに胸の鼓動がはちきれそうになって、
息が止まりそうになって、とうとう若狭がかすかに口を開いた。
するとねっとりとした草々の舌がその薄い小さな唇をつつ…と舐めた。
草々もまた、夢の中で、若狭の唇を舐めていた。可愛らしい唇や、と思いながら…
375 :
草々×若狭6:2008/04/13(日) 02:39:32 ID:b7miz8Ov
お互いの舌をたっぷりと絡ませた後、草々が若狭のシャツをブラジャーごとたくしあげた。
あっと驚く間もなく、両手で両方の乳房を掴み、顔を埋め、舌と指先で味わう。
力任せの愛撫に快感はなく、若狭はむしろ鈍い痛みばかりを感じていたが、
愛しい草々に求められているという事実だけで幸せだった。
声をあげるとやはり草々が現実にもどってしまうかもしれないから、
そのかわりに草々の頭を両手で抱えた。
カリっと乳首に立てられる度に、そのくるくると巻いたクセのある髪の毛を掴んだ。
草々の吐き出す熱い息に肌が火照ったときは、弄って愛おしさを伝えた。
そうしているうち、抱えていた頭が少しずつ下に降りて行って、
腹を伝いわき腹を通り、
ジーパンも下着も勢い良くまとめて下ろし、若狭が今まで誰にも見せたことの無い、
その部分に辿り着いた。
草々の両手がなんの躊躇もなく若狭の両足を押し広げる。
恥ずかしさに両手を草々の髪から離し、若狭は自分の顔を覆った。
もはやもう声は出ない。条件反射的に、出さない“癖”がついてしまったようだ。
さっきまで胸や脇腹を這っていた草々の舌が、とうとう一番恥ずかしい“そこ”を舐め回す。
376 :
草々×若狭7:2008/04/13(日) 02:42:06 ID:b7miz8Ov
平静な精神状態でない草々は、荒々しくまるで蹂躪するように若狭の粘膜を味わう。
舌の動きに逆らわない柔らかい肉に、甘いような生臭いようなねっとりとした液体。
そしてその奥にあるはずの、もっともっと自分を気持ちよくしてくれる場所を求めて。
そして若狭は、胸の愛撫の解きとは違うむず痒いような、
いや、例えようも無い経験したことも想像したこともない快感に打ち震えていた。
“恥ずかしい。こんなところ触られて、舐められて、気持ちよくていつまでもこうしていて欲しいなんて…!”
声が出ない代わりなのか、若狭の目尻から涙がこぼれた。
初めての交わりへの恐怖からではなく、緊張のせいでもない。
初めての快感に心も体も耐え切れなくなっていたからだった。
「草々兄さん…もっと、もっとして欲しい…!」
口に出して言わない代わりに手を伸ばしもう一度草々の髪を掴み、欲望を伝えた。
そんな心の声が聞こえたのかどうか、草々は指も中に入れて動かし始めた。
太く長い指をずっと奥まで差し込まれて、
内壁が擦り切れるようなかすかな痛みと圧迫感に襲われ、
若狭は少しだけ、今夜で最初の恐怖を感じた。
しかしそんな事に気づくはずもなく、朦朧とした意識の中で草々は
最後の瞬間へのタイミングを図っていた。
指を激しく抜き差ししながら。
“ここや、ここが若狭の中や。ここに入ってったらほんまに気持ち良さそうや…。
それにほら、若狭も気持ち良さそうな顔してる。はよう来てくださいって言うてる…”
377 :
草々×若狭8:2008/04/13(日) 02:44:34 ID:b7miz8Ov
チュンチュンと小鳥の鳴き声がして、草々は目を覚ました。
あるはずのない毛布がかかっていた。
窓から差し込む光に、少しずつ頭の中がはっきりして来て、昨夜見た夢も
まざまざとよみがえる。
「若狭を抱いた…。この手で、この体で。」
夢というにはあまりにもリアルだった。若狭の肉体の感触が、
この口に、指先に、そして…に確かに残っている。
まさか、大体こんなところにあいつが居る訳もないのに、ただの夢や。
雨に打たれて昨夜ものすごい寒気がして、いつのまにか寝てもうて…
それで、こんなけったいな夢見たんや。アホか俺は…
気を取り直しクシャクシャ頭をかくと、玄関が開く音がし、誰かが入ってきた。
「…若狭?」
「良かった。熱下がったんですね。これ飲んで下さい、ホットミルクです。」
いるはずのない奴が現れて、なんのためらいもなく額に手を当てて、ニッコリと笑いかける。
いっつもおどおどしてるくせに、今日はやけに自信たっぷりの頼りがいのある顔をして。
やっぱり、昨夜から若狭はここにいたのだ。この毛布がなによりの証拠。
それじゃああの、昨夜の官能的な恥ずかしい夢は、ホンマやったんか、それともただの夢なんか…?
大阪へ帰るために荷物をまとめながら、若狭の顔をチラチラと伺う。
「おい、若狭、昨夜な…。お前の夢見た気いすんねんけど…」カマをかけて見る。
すると、毛布をたたむ手を一瞬止めて若狭は幸せそうに微笑んだ。
「私も…草々兄さんの夢、見た気いするんです。」
そう答えるとくるりと向きを変え毛布を返しに玄関を出て行った。
ということは、どっちやねん…病み上がりの恐竜頭では、答えも出ず、
そしてそれ以上何も聞けないまま、草々は大阪徒然亭へと帰っていった。
以上です。
PART1読み辛くてすみません。
読んでくださった方、ありがとうございました。
長い割にあっさりしたエロですが、
喜んでくれる方がいたら嬉しいです。
“草々兄さん、こんなになってしもて”
いや、死んだかと思ってびっくりしたw
楽しく読みました
>>369 GJ
女じゃなくて妹弟子でなきゃいけなくて、せつなくなる若狭萌え。
>>379 _,,..,,,,_
/ ,' 3 `ヽーっ
l ⊃ ⌒_つ
`'ー---‐'''''"
きれいな顔してるだろ。 眠ってるんだぜ、それで….
もまいのレスで、このAA思い出しちゃったじゃまいかw
>>369です。
>>379>>380さん読んで頂き、ありがとうございました!
ちりとてらしく、ちょっと笑える部分も入れたかったのですが、
力不足でこの程度のものしか書けませんでした…
>>369 GJです!
エロいことしてるはずなのに、思春期の少年少女のような甘酸っぱさ。
この夫婦大好きだ。
>>369 乙です!久しぶりの草々×若狭で嬉しいです!
続き楽しみに待ってます
>369です。
>>382>>383さんどうもです。
続きなんて思いもしませんでした…
無邪気にエロい草々若狭の雰囲気が出てたなら嬉しいです。
テレビ終わったのに全然熱が冷めず、今頃初めてこのスレに来ました。
みなさん文章力スゴいですね!
四草×若狭、小草若×若狭、をずっと心に思っていたので
テレビでは物足りなく思えていた部分を完璧に補って貰えました!
ありがとうございます。
願わくは、もっと早くこのスレを知りたかった〜(>_<)
どなたか、携帯から過去ログの見方教えていただけませんか?お願いします。
ぜひ、前スレも読みたいです!
流れ読まずに投下させて頂きます。
喜代美→草々×A子 あとちょっと。
語り手が目まぐるしく変わるので、タイトル欄に語り手を入れています。
長くてエロ弱いです。そんなので良かったら読んだって下さい。
時期的には、ブラックA子が徒然亭を訪ねてきたところです。
みひつ−の−こい【未必の故意】
自己の行為から、ある事実が発生するかもしれないと思いながら、
発生しても仕方がないと認めて行為する心理状態。故意の一種。
****************************
(B子がいたら、その時は帰ろう。でも、もしいなかったら。)
懐かしい界隈の近くを、和田清海は徒然亭へと向かっていた。
かつてテレビでももてはやされた美貌は、けれど今は少しすさんで見えるかもしれない。
(いなかったら…草々さんを。もう一度、草々さんと。)
でも、草々さんはもうあの子と結婚しているのに。これは…罪ではないのか?
懐かしい、かつては親友とも思った少女の笑顔を思い出しては心が痛む。その繰り返し。
迷いは清海の足取りを重くさせ、表情に影を落とさせた。
いっそのこと引き返してしまえば楽なのに、とも思う。
けれど歩みを止めて引き返すには、自分の心はあまりにも乾きすぎていて。
あの角を曲がれば、もうそこは徒然亭。あのひとのいる、徒然亭――。
「あ…」
意を決して曲がりかけたとき、ちょうど角を曲がりかけてきた一人の男の姿が清海の目に映った。
男のほうも清海の姿に気づき、ほんの少し目を見開く。もしかすると驚いた表情なのかもしれない。
あれは確か…B子のすぐ上の兄弟子の、、、
「徒然亭、四草さん?」
ほとんど、というより少しも話したことはないけれど、にぎやかな徒然亭の面々を
一歩引いて見つめていたという印象の男だった。少し苦手と感じる相手ではあったが。
「お久しぶりです。前にお会いしましたね。和田、清海です。」
「…若狭の」
どうやら自分のことは覚えていたらしい。
「大阪出てきたから、久しぶりにB子に会おう思うて。」
「へえ…」
どことなくこちらを見透かすような目。やはり苦手な相手かもしれない。
「そしたら、失礼します…」
軽く会釈して歩みはじめた時、後ろから低い声が響いた。
「今、若狭いませんよ。」
はっとして振り返る。なんとなく自分の頭の中を読まれているような落ち着かなさに襲われる。
「そ、そしたら今日は、帰ろうかな…」
「…でも草々兄さんは、いますよ。」
「え…」
「久しぶりに懐かしい顔見たら、喜ぶ思いますよ。」
言って、男は薄く笑う。
「…『次の御用日』いう落語、知ってますか?」
男の言いたいことがよくわからないままに、清海はあいまいにうなづく。
「え、ええ…。前に落語見に行ったときに…。」
確か草々さんと、何回目かのデートで行った落語会でかけられていた。「アッ!」という奇妙な
声の連発がなんとも面白くて、「あれは落語家の咽つぶしや」と苦笑する草々と微笑みあったっけ。
懐かしい、幸せな恋。思い出すだけで胸が締め付けられるような思いがした。
「あれに出てくる“とおやん”。昔からあれが草々兄さんの理想の女やったそうですよ。
か弱あて、男が守ったらなあかんと思わせるような娘です。」
淡々と、男は語る。男の意図が読めず、清海はただ聞いていることしか出来ない。
「そのとおやんが、貴女にとても、似ていたんでしょうね。」
それだけ言うと、雷に打たれたように固まる清海を残して、徒然亭四草はきびすを返した。
だんだんと遠くなる徒然亭四草の後姿をぼんやりと見送る。心にわき上がる思いは唯一つ―――
(草々さんに、会いたい―――)
「A子ちゃんやないか!!ほんま久しぶりやなあ!」
懐かしい笑顔。よく響く大きな声。
久しぶりに会う草々さんは、以前と全く変わっていなかった。いや、以前よりも落ち着いて、
声に張りがあるかもしれない。弟子を取ったということだから、落語家として充実しているということなのだろう。
あたたかく自分を迎えて、嬉しそうな表情で近況を語る草々さん。もう自分とのことは、無かったことなのだろうか?
「A子ちゃんに振られた時は俺も落ち込んだけど、若狭の言うてた通り、時が解決してくれるもんやなあ」
ついでのことのようににこやかに語る。B子の高座名を口にする草々さんに、胸が焦げそうな想いがする。
(ほんまやったら。私が。このひとのそばにおったはずやのに―――)
無骨で大きな手。明るい笑顔。不器用な優しさ。全部私のものだったはずなのに。
そんな清海の心中など知らぬげに、草々は続ける。
「ああ、折角きてくれたのに今日、若狭おらんねん。俺は今から落語の稽古せなあかんけど――」
(いかないで)
立ち上がりかけた草々さんを引き止めるように、思わず口を開いていた。
「あ!あの、一つお願いしてもええですか?」
草々さんは少し意外そうに、けれど優しく微笑んだ。
「ん?なに?」
「…落語、聞かせてもらえませんか?」
「ええけど、、ほな何にしょか?」
(あれに出てくる“とおやん”。あれが草々兄さんの理想の女やったそうですよ。)
徒然亭四草の低い声が、閃光のように頭にひらめく。
(そのとおやんが、貴女にとても、似ていたんでしょうね。)
思い出して。どうか、私のことを。
小さく息を吸い、呼吸を整える。奇妙に声が震えないように。
「そしたら『次の御用日』…お願いします。」
その瞬間、草々さんの明るい表情が、ひび割れたように凍りついた。
久しぶりに訪ねてきた清海の姿に、なぜか心が騒ぐのを必死で無視していたのに。
『次の御用日』―――。
清海の口からその言葉が出た瞬間、草々の胸には激しく、ささくれたような痛みが走る。
無意識に、この何年間も避けていた落語。
とおやんの姿を思うたび、かつて自分に向けられたはかなげな笑顔が思い出されて、頭から離れなくなるから。
自分を一心に見つめる清海の姿に、懐かしい日々が重なる。
化石を見つけたのは自分ではなくB子だったのだと、涙ぐんで自分に告げた清海。
作った料理を食べる自分を、「おいしい?」と心配げにうかがう清海。
一緒に落語会に行って雨に降られ、濡れた瞳で自分を見上げる清海。
忘れていたはずの、時が解決してくれたはずの想いだったはずなのに。
「そ…そやな。あれやったら、はめもんなしでいけるしな。」
心とは裏腹に、口は勝手にそんな言葉を紡いでいる。
けれど心のさざなみは、予想以上に大きくて。口慣れた『次の御用日』の冒頭が出てこないくらいに。
「え、ええと…ちょっと待ってな。」
埋もれていたはずの遠い日々があふれてくるのを、止める術もなかった。
初めて会った時から、心を奪われた。
知れば知るほど、なおいっそう恋焦がれた。
この子を、自分が守りたいと思った。ただただ夢中で恋した。
今の若狭に向ける穏やかな想いではなく、それは燃やし尽くすような想い。
東京へ行って夢を叶えたいと清海が自分に告げた時の、絶望にも似た苦しみを思い出す。
行かないでくれと、声を枯らして叫びたかった。どこにも行くなと。俺の傍にいろと。
だから、清海が居なくなってどうしようもない虚無感に襲われた。
だから、想いを封印した。
なのに、どうして。どうして今になって。
「…々さん、どないしなったんですか?草々さん?」
清海の声が自分を呼んでいるのに気づいて、はっと顔を上げる。
見上げると、そこには心配そうに自分を見つめる女の顔。自分が、たまらなく恋した、女。
「なんで…」
「草々、さん?」
「なんで今になって、戻ってくるねん…」
否応無しに思い知らされる。時は全く解決の役には立たなかったことに。
「草々さんに…草々さんに会いたかったから…」
その不安に揺れる瞳。はかない表情。引き寄せられるように細い体を抱きすくめる。
「そうそう、さん…、、私、私、、…草々さんが…」
言いかける唇をふさぐように激しく口づけた。
頭のどこか奥のほうで、若狭の泣き顔が見えたような気がした。
買い物がすっかり遅うなってしもうた。
今日は木曽山君が用事で出とる日やから、あれやこれやとせなあかんことが重なって。
木曽山君、ウソツキなんは大問題やけど、ほんまにようてきぱき仕事する子やから、
普段ずいぶん助けてもらっとるんやなあって、こんな時に実感する。
師匠の家にやっとのことで帰り着き、ふと見ると玄関には見慣れない女物の靴があった。
誰やろ…?
お客さんが来るのは珍しくはない落語家の家だから、女の人が来ることもあるけれど。
なぜか、胸騒ぎがした。
頭をひとつ振って、奇妙な胸騒ぎを追い払う。
昔から自分には、妙に心配性なところがあるから。
勝手に妄想して、勝手にへこんで、勝手にひがんで。その結果…ドツボにはまる。
あかん、まだB子パターンが抜けきってへんのやな…。
苦笑いして、買ってきた物を片付ける。
客間からは何か物音がしている。やっぱりお客さんやったんや。お茶ださんとなあ。
そんなことを思いながら、まずはお客様に挨拶をしようと、客間を覗き込んだ。
覗き込まなければ、良かったのに。
そこでは。
草々兄さんと、女の人が、裸で。
すっかり見慣れた草々兄さんの大きな背中。そこに回された見慣れない白い腕。
草々兄さんの下でのけぞる白い首。その先に続く、快楽に紅潮した表情を見せる美しい顔は。
まぎれもなく、A子だった…。
草々兄さんが腰を大きく打ちつけるたびに、A子の口から細い喘ぎ声がもれる。
繰り返されるぐちゅぐちゅと湿った音。いやらしい、いやらしい音。
草々兄さんはA子の形のいい脚を持ち上げ、よりいっそう深くつながる体勢をとる。
大きく衝かれて甲高い悲鳴をあげて大きく体をそらし、より一層深い快感を得ようと
草々兄さんの動きにあわせるように腰を振る。あのA子が。
目が、離せなかった。
一声あげれば良かったのだろうか?
それとも黙ってその場を去れば良かったのだろうか?
そのどちらも、できなかった。多分、衝撃のあまりなのだろう。よくわからない。
せめてそのどちらかでも出来ていれば、この先を見なくて済んだのに。
草々兄さんの動きが、A子の細い体が壊れそうなほどにどんどん激しくなり。
A子の中に、草々兄さんがすべてを吐き出したその瞬間。
A子が。
こちらを見ていた。
罪悪感に震える目で。申し訳なさそうな目で。
けれど、見間違いようもなくその目の中に踊るのは、残酷な愉悦。勝利の表情。
自分を見つめたままのA子の唇の端が、わずかに笑みの形を作った瞬間。
耐え切れず、喜代美はその場を駆け去った。
なんで、なんで?
後も見ず師匠の家から駆け出す。
衝撃と、みじめさとに打ちひしがれて、そんな疑問ばかりが頭に浮かぶ。
なんでこんなことに。
ひどい。
こんな、なんで?
私がふるさとやって言うてくれたのに。
脈絡もない、疑問符だけの頭の中。知らない間に目からは止めどもなく涙があふれ続けて。
そうそうにいさん、わたしの、草々兄さん…。
嫌、こんなの、嫌や…。
なのに頭のどこかでは、こうなる運命やったんやと悟っている。
嫌や、そんなん悟りたない。私は、草々兄さんと結婚しとるんやで。
(A子を東京に追い出してその間に?)
違う!
(本当は草々兄さんはずっとA子を求めとったんやないの?)
違う、違う…
(A子に向けていたような気持ちを、本当に草々兄さんは私に向けていた?)
それは…。
本当は判っていたのかもしれない。
A子に向けて草々兄さんが放っていたあの突き刺さるほどの想いを、自分は向けられていないということを。
草々兄さんの心の中には、今でも、ずっとA子が住み続けていたということを。
そして結ばれるべき2人の間に、、、自分が割って入った闖入者だということを。
「時が解決してくれる」―――
A子を想って心を焦がす草々兄さんにそう告げた。
そんなはずはないのに。
時が解決してくれるのなら、どうして自分はいつまでもいつまでも子供時代の劣等感を引きずったりする?
時は気持ちになんの解決もつけてくれない。そう自分は知っていたのに。
したり顔で、草々兄さんを騙した。A子への思いを封じてもらうために。自分を見てくれるように。
そんなつもりじゃなかった。騙すつもりなんて、これっぽっちも。
ただ―――草々兄さんが恋しくて恋しくて。
それやのに、草々兄さんとA子は。
私を愛しとるって、言うてくれたのに―――!
混乱して、もう何を考えているのかよくわからないまま、涙で目がかすんでよく見えないままに
角を曲がろうとした時、何かにどんとぶつかってよろめく。
よろめいてこけかけた自分を、向こうから来た黒い影はとっさに手を伸ばして抱き支える。
「ちゃんと前見ろ、若狭。」
その黒い影は――四草兄さんだった。
「すみ…ま、せん、し…そうに、さん」
ひっくひっくとしゃくりあげてしまい、上手く声にならない。
こんな顔を見せたくなくて、うつむいて顔をそらす。
はやく、早く行ってしまって欲しい。こんな、こんな顔。
これ以上口を開いたら、きっと涙声にしかならない。
会ったのが小草若兄さんじゃなくて良かった。
いつも優しい小草若兄さん。
こんな時に優しくされたら、その優しさにすがってしまいたくなるから。
「それ…じゃぁ、ちょ…と買い物、、行、てきます…ね」
そう言って通り過ぎれば、済んでしまうはずだった。
四草兄さんは、なんだあいつとちょっとだけ思って行き過ぎてくれるはずだった。
けれど。
「泣くな、喜代美…」
四草兄さんの腕が柔らかく自分を包み込む。
思いもかけなかった四草兄さんの行為に、頭が真っ白になり反応することができない。
けれど抱きしめられた四草兄さんの胸は、本当にしみこむようにあたたかくて。
とく、とく、と少し早いリズムで打つ胸の鼓動に、なぜか泣きたくなるような安心感を覚える。
「さっき、あの子が来るのに会うたんや…」
四草兄さんの声が、頭の上から聞こえる。
あの子…A子のこと?
「俺やったら、お前を泣かせたりせえへんのに」
四草兄さんの声がどこか切なく響いて、私を抱きしめる腕が強くなる。
その言葉に、私の涙はもうどうしても止まらなくなって。
私はいつまでも四草兄さんの胸で泣き続けた。
ああ、四草兄さんの声ってこんなに優しかったんやと思いながら。
泣きじゃくる喜代美を抱きしめながら、四草は思う。
これは罪なのだろうか、と。
喜代美の同級生の、あの同姓同名の女と師匠の家の近くで出くわした時。
もしかしたら、この女はまだ草々兄さんに未練があるのかも知れないと思った。
もしかしたら、「次の御用日」を避ける草々兄さんも、この女に未練があるのかもしれないと思った。
もしかしたら、「次の御用日」とこの女が揃えば、草々兄さんは昔の恋を思い出すかも知れないと思った。
もしかしたら、2人の行為の最中に、買い物から喜代美が帰るかもしれないと思った。
もしかしたら喜代美は泣いて飛び出すかもしれない。
そしてもし、その時を逃さなければ。
喜代美は、この手に落ちてくるかもしれない。
抱きしめた喜代美に、口づけをおとす。
だから、あの女に「次の御用日」のとおやんの話をした。
でもそれはただの世間話。ただ、それだけ。
以上です。お粗末さまでした。
話の長さにばらつきがあって、読みにくくて申し訳ないです。
>>369 GJです!!!
草々×若狭らしい初々しさがすごく良かったです!
なんか切ない気持ちになりました。
>>394 GJ!!!!
あのシーン、昼ドラならこんな感じになりそうな緊迫感ありましたよね
四草と落語も絡ませてくるなんて!すばらしい!(ありがたい!)
また投下お願いします
>>394 うぉぉ。算段の四草〜!本領発揮だw
GJです!ありがとう。
「泣くな、喜代美」 キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!
>>394 GJです!ムッハ=3
>>386 うわ…A子もB子も草々も切ないなこれは…
そして四草、なんちゅう悪い奴や
GJです!
>>394 >369です。どうもです。
四草×若狭も好きなので楽しませて頂きました!
四草悪い奴… でもセクシー…
GJ!!
400 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 13:31:26 ID:5BXQZ5X3
GJ!!!
この後の四草と若狭の関係がどうなったのか気になる。
ヤッホオォォイ!ナイス算段!
四草…おいしいとこさらっていきやがってw
>>394 読み応えありました!
エーコみたいな女を直感的に嫌がる咲さんと四草は同じ感覚持ってんな
>>404 お咲さんも四草も、いい女・嫌な女の両方をうんと知ってそうだ
ちりとて始まってから今までずーっと四草×B子(若狭)な自分だった
それなのにこのスレの存在を知らなかったなんて
今、過去ログ全部読んできた
感動した
職人さんがた、ありがとーう!!
どこぞに専門サイトはないものか・・・
>394
GJ!堪能しました。
四草、恐ろしい子w
でも結果良ければすべてよしですね。
409 :
394:2008/04/14(月) 23:50:35 ID:bpt9lTip
読んでいただいて本当にありがとうございます。
感想頂けて、めっちゃ嬉しいです!!
本編で景清リクで、草々と喜代美の結びつきの強さをA子が思い知らされるシーンでしたが、
あそこでは絶対、草々の気持ちは揺れるはずだと勝手に確信していたので、
そこから妄想が…w本編終わったのに妄想ヤバイww
自分、小草若×喜代美派のはずなのに、ここの職人さんの作品拝読して、
四草×喜代美にも目覚めてしまいそうです…。これからも楽しみにしております!
>>394 もう、GJ,GJ!
それしか言えないです!
四草が「次の御用日」教えた時に、「ひょっとして狙ってる?」と思ったら、
期待通りに進んで、四草×喜代美派としては、うひょひょひょひょ、でした。
それにしても、もっともキモのカップリングを隠して進めはるなんて、
知恵者でいらっしゃいますねぇ〜、嬉しい驚きでした。
GJ作品が読めてしあわせ(・∀・)
自分もいろいろ妄想するけど、オチが思いつかない、文章にできない・・・orz
若狭出産後、なんとなくのセックスレス状態→復活の草々夫妻の
設定を考えるんだけど、うまく出来なーい!
>>407さん、ありがとうございました!
今から読んできます!
嬉しくて泣きそう。。。
>>411 確かに繊細で難しい設定だけど、
草々×若狭大好きなので書いて下さい!
オチはラブラブであればOKです!
>>411 自分も草々×若狭大好きなので楽しみに待ってます!
若狭も「お母ちゃん」に専念するので、第一子出産を機に
堰を切ったように子供が生まれそうな気がする
上方落語の大家としてでなく、子沢山落語家として注目を集める日も近い?
>>394 GJです!裏本編みたいで生々しくて良かったですw
続き期待してもいいでしょうか?
本放送終わってから四草×喜代美にはまったので
ここで存分に読めるのが嬉しい(*´Д`)
初めから見直せば四草→喜代美なシーンがある気がする
すみません。この四草祭りに便乗して投下します。
四草→喜代美
エロあり
書いたら四草が気の毒になりすぎたんで、ファンには申し訳ないです。
上方芸能を一手に牛耳る天狗芸能。
その権力を誇示するかのように聳え建つ演芸場、天狗座の真向いに中国料理屋延陽泊はある。
立地条件と味の確かさも手伝って、昼時ともなれば厨房は戦場の忙しさだ。
午後のピークを過ぎ、裏口で一服いれていた従業員の李は
いつの間に来たのか、無言で煙草を差し出す隣の男に火を貸した。
「百円ライターか、相変わらずシケてるな」
滑らかな中国語で軽口をたたくこの男は、店の人間ではあるが同胞ではない。
住み込みのバイト、兼この国の落語という伝統的演芸の芸人で
四草という妙な名で呼ばれている日本人。
「随分ご無沙汰だったじゃないか」
ここ数年、バイトに出る以外は住家にしている二階に引籠りきりだったこの男は
最近本業に復帰し不在の時が多くなっている。
今日も朝早くから出ており、こうして顔を見るのも実に十日ぶりだ。
そういえば、と李は思い返す。
「あっちもご無沙汰のようだな。どうしたんだ、インポか?」
「おまえには関係ない」
この日本人は無愛想な外見のわりに存外な女好きで
頻繁に女を連れ込んでは昼夜問わず嬌声をあげさせていたものだ。
それがここの所、ぱったり音沙汰無しときた。
「あれが最後だったよな…ほらバイトに連れて来たちっこいの」
去年の暮れに、短期で使ってやってくれとこの男が口利きをした女を思い出す。
もっとも。
「あれはさすがにあんたの趣味じゃないよな、あんなションベン臭い女は」
一本まるまる吸い潰してから四草はその場を後にした。
(俺の趣味やない、か)
確かに、と彼女を思い浮かべ自嘲する。
今まで部屋に入れた女たちとは全くタイプが違う。顔も身体もなにもかも。
荒淫が止んだのはそのションベン臭い女のせいだ、と明かしたら
あの男はどんな顔をするだろうか。
まさかあんな少女に捕われるとは、他ならぬ四草自身さえ信じられないのだから。
しかし、まるで少年時代のような青臭い慕情は、自分の中に確実に息づいている。
今はまだ幼過ぎる相手に一指も出せないでいるのだが。
そう。
彼女はまだ幼いのだ。
少女が今、想いを寄せているのは四草の年下の兄弟子。
あんな直情型の男に胸を焦がすような子どもなのだ。
固く青い蕾を無理にこじあけることはない。
仕掛けるのは花弁が色付き綻び始めてから。
(あと三年…いや、四年か)
落としの算段は彼女の年季明け一年後からだ。
それまでは。
その算段は結局大幅に狂わされた。
子どもの恋だと侮っていた彼女の想いは、予測を大きく裏切り。
見事にあの男を振り向かせてしまったのだ。
その一途さと強さを眩しく思うと同時に、四草はそっと自身の想いを捨てた。
目のない賭けに手を出すべからず。
それが、算段の平兵衛を自認する男の矜持だった。
平成九年。正月。
草若邸は徒然亭一門を集め賑々しく三箇日を迎えた。
一門の二番弟子と五番弟子の結婚記念日でもあるその日を、
四草は四番弟子としてからかい、茶化し、言祝いで過ごした。
(少し、酔うたな…)
冴え冴えとした星空の下、首を縮めて自宅へ向かいながら独りごちる。
飲めない酒に身を委ねたのは、酒癖の悪い兄弟子たちに絡まれたからだ。
――決して、妹弟子の初々しい若妻姿に心奪われたからではない。
(…おや?)
延陽泊の店先まで来た四草はふと足を止めた。見れば二階の自室に灯が煌々と燈っている。
(…女か)
鈍る頭で思い付くままここ数ヶ月の間に引き入れた女の顔を並べてみる。
正直、都合が良かった。相手が誰であれ、こんな夜は女の柔らかな肉に沈むに限る。
冷えた指先でドアを開けると温い空気とともに朗らかな声が四草を包んだ。
その、声は。
「…なんで」
なんで おまえが ここに
そこに居たのは、つい先刻、別れたばかりの
今は、他の男の腕の中にいるはずの
「ほやけどゆうてたやないですか」
にっこりと微笑んで彼女は続けた。
「年季明けて一年になったら落としてくれなるて」
冬の白い陽は案外眩しい。
瞼の裏を刺す容赦ない光に、四草は今一度温もった布団の中へ戻ろうとする。
「いい加減起きてください!もうお昼です」
無情にも冷たい光に晒された彼は、その原因を恨めしげに見やる。
「なんや…来とったんか」
「なに言うとるんですか。さっさと起きて顔洗って下さい、ご飯冷めますよ」
ぷんとむくれた唇が愛らしい。堪らず引き寄せ、その生意気な口を吸う。
「おはよう、喜代美」
この部屋に『和田喜代美』が現れるようになって一ヶ月。
四草は彼女との生活に浸りきっている自分に気付いていた。
部屋を一歩出れば、そこには兄弟子の妻となった彼女がいる現実がある。
しかし、この部屋はその現実から遮断された、文字通りの別世界。
『喜代美』はなにもかもが彼女そのものだった。
くるくる変わる愛くるしい表情も。白く柔らかなその身体も。
違うのは。
その澄んだ大きな瞳が映すのは。
夜。
濃厚な闇が部屋を包む。
素裸で胡座をかいた男はそこに女を招き入れる。
そそり立つ中心に小さく怯えながらも健気に従う白い裸体に
四草は言い様のない愛おしさを感じる。
戸惑うようなあどけない少女の顔をした女は
それを裏切るように豊かな乳房とまるい腰を持っていた。
たっぷりと重量感のある乳を下から掬い上げるように指を這わせる。
あ、と小さく漏れた溜息に密やかに笑うと大きな瞳が四草を睨んだ。
(そんな顔、反って男を煽るだけやろ)
きゅ、と乳首を摘んでやるとふるふると揺れる白い身体。
両の乳房を弄びながら緩い快感に耐える耳元をぺろ、と舐める。
「今日はな、コレでやりたい」
え、と聞き返す喜代美にわざと下卑た声で囁く。
「パイズリさせえ言うてんのや…判るか?意味」
真っ赤になってうつむく彼女がいじらしくて益々苛めてしまいたくなる。
「兄弟子の言うこと聞けへんのか?」
「…兄弟子はふつうそんなやらしいこと妹にさせません」
「散々しとるやないか、やらしいこと」
火照る耳たぶを食みつつ言葉で煽る。
彼女はもう一度四草を睨むと意を決したように屈みこんだ。
ふわふわと蕩けるような温かな肉が一物を包む。
そのあまりの心地よさに達してしまわぬよう下腹に力を込める。
見下せばそこには自らの乳房を掴み、男に奉仕する女の淫らな姿。
「そうや…そのままゆっくり動かしてみ」
言われるままに滑らかな白い肌が脈打つ茎を磨る。
「…っふ…う…」
痺れるような快感が腰を貫き、先走りの液が登頂を濡らす。
熱に浮かされた表情で女の潤んだ目がそれを追う。
「喜代美…」
名を呼べば小さな赤い舌が滴りを舐めとる。幼さの残る唇が施す卑猥な行為。
その煽情的な光景に脳髄まで侵されるようで。
くらくらする。
「――あっ…」
ぱしゃ。
我に返ったのは、喜代美の口元に己の精が飛び散った後だった。
――情けない
「喜代美すまん、すぐに拭くもん…」
慌てる四草を尻目に、少しの間呆けてた喜代美は、白濁の液を細い指で拭うと
それをまるで見せびらかすかのように小さな口に含む。
「…苦い、四草にいさんの」
その淫奔な行為とは裏腹に、はにかむ微笑みは無垢な少女のそれで。
気付けばその白くあえかな身体を力の限り抱き締めていた。
その日の天狗座の出番は、穴を開けた他一門の若手の代理とのことだった。
ピンチヒッターとはいえ、徒然亭四草の名を売るには又とない舞台だ。
烏山からの打診に真っ先に名乗り出た四草は、寝床寄席でならした『延陽泊』をかけた。
客の反応は上々で、気分良く袖に下がった四草は
のっそりと出迎えた巨体に微かに眉を顰める。
「珍しいですね草々兄さん…どういう風の吹き回しですか」
正直、今はあまり顔を合わせたくない男だ。
そんなこちらの感情など意に介さず、年下の兄弟子は満面の笑顔を見せる。
「良かったで今の…四草、また腕上げたな」
自他共に落語に厳しい彼が、こんな風に手放しで誉めるのは滅多にない。
「寝床寄席でもかけたネタですから」
「いや、前のより格段に上手なってる。嫁への情がよう出てたで」
嫁。その単語に心中動揺する。落ち着け。相手は何も知らない。
ひとり満足げに頷く草々に、どう返答したものか思案する中、
「ずるいです草々兄さん!ひとりでさき行かんといてください!」
会いたくない人間がまたひとり現れる。
「なんや、また迷子になったんか」
しゃーないやっちゃな、と小突く草々に彼女はぷんとむくれる。
いつかの朝と同じ顔。
「そや四草、今日は差し入れがあるんや」
ほら、と促された彼の妻は慌てて持っていた包みを四草に差し出す。
「若狭が打った越前そばや、まだ飯食うてへんのやろ」
「別の容器に入った、大根おろしと鰹節とそばつゆかけて食べなってください」
「ええか四草、そばはな、忍者が手裏剣とともに持ち歩いてたんやぞ、あの身軽な忍者が」
「…草々兄さん、その話はええですさけ」
妻の手料理を大仰な身振り手振りで誇らしげに語る兄弟子と
そんな夫を愛しげに見つめる大きな澄んだ瞳。
「…おおきに」
自分は今、うまく声を出せているだろうか。
挨拶もそこそこに四草はその場を辞した。
いつものように部屋のドアを開ける。
「おかえりなさい、四草兄さん」
いつものように女は出迎える。
『彼女』そのものの笑顔で。
先刻の、天狗座でのやり取りなどまるで無かったかのように。
『彼女』そのものの容姿をした女を、四草は無言で腕の中に納める。
「四草兄さん、どねしはったんですか?」
『彼女』そのものの声色で女は尋ねる。
感づいていた、薄々は。
(これは…この女は)
――己の浅ましい執心が作り出した都合の良い幻想なのだと。
そう。これはただの幻。幻のはずなのだ。
それなのに。
「…四草兄さん?」
白い首筋に顔を埋めた四草は、そこから伝わる温もりを感じていた。
とくん とくん とくん
幻のはずの女は確かにこの腕の中で脈打っている。
温かな吐息が触れる。
柔らかな髪が香る。
もしもあの頃。
下手な算段なぞ弾かずにただひたすら喜代美を求めていたら。
この腕の温もりは現実のものになっていただろうか。
「四草兄さん…」
熱い吐息とともに自分の名を綴るまるい唇にそっと口づける。
自分ひとりに向けられる大きく澄んだ瞳。
まわされる白い腕。
四年前、自分が思い描いた通りに、否それ以上に少女は美しい女になった。
ゆっくりと色付き、綻び始めた頃、他の男に手折られてしまった女。
不器用ながらも揺らぐことのない真直ぐな彼女の恋は目映いばかりで
そこから目を背けるように棄てた自分の拙い思慕は
こんなにも歪なかたちで育ってしまった。
腕の中の『喜代美』が四草を見つめ微笑む。
現実には有り得ない情景。
(幻でも、ええ)
今、自分の腕の中にいる『喜代美』は、ただひとりなのだから。
迷いを断ち切るように、四草は静かに腕に力を込めた。
「あっ…ああっ…だめ…だめ…だめぇ…」
息も絶え絶えに漏れる嬌声が耳に心地よい。
「…やっ…こんな…にいさん…し、そうにいさん…!」
その声をもっと聞きたい。聞いていたい。貪る指に熱を込める。
今、喜代美の裸身は四草の腹の上に逆さに重ねられていた。
腰に当たる乳房が弾む。
頬に触れる太股が跳ねる。
――恐らく、現実の『彼女』でさえも夫に許したことの無いであろう体位。
真白な太股は大きく割り開かれ、秘め処は全て男の眼前に晒され。
羞恥と期待で緋色に染まり、愛液を滴らせる蜜壺を、目と指と舌で犯す。
指を奥深く埋め込み、尖らせた舌でねぶり溢れる蜜を啜り込む。
「っん…ああ…っ!!」
逃れようとくねる腰を捕らえ、敏感な芯に愛撫を施せば、一段と高くなる嬌声。
くたりと崩れ落ちた身体を抱え直し、蕩けきった蜜壺へ猛る己を一息に沈める。
「―――ッ!!!」
綺麗にしなる背中。
真直ぐに伸びる首筋。
四草の上でのけぞる喜代美はどこまでも淫らに落ちてゆき。
声にならない声は夜の静寂に消えた。
トントントン トントントン
陽も高くなり、寒さも幾らかゆるむ時分。
薄いドアを遠慮がちに叩く音で四草は目を覚ました。
「…誰や」
掠れた声で呼び掛ける。喉がひりつく。
「四草兄さん、若狭です」
よく知る女の声が応えた。
「今日は、天狗座に師匠のお使いで来とるんです」
寝起きのままドアを開けた自分に、些か怯えたように妹弟子は言葉を続ける。
「…昨日、なんや四草兄さんいつもと違ってたでえ、落語うけてたのに変やなあって」
覚えのあるふっくらとしたまるい唇が動く。
「ほしたら草々兄さんが、ちょっと寄って様子見てこい言いなって」
「…草々兄さんが」
鸚鵡返しに呟くと、勢い込んでこくんと頷く。
「あの、もしかして、昨日のおそばで具合悪うなってたらどねし…」
「いや、なんともない」
いきなりネガティブ思考に陥る若狭を急いで遮る。
(…ほんま油断も隙も無い)
「おおきに、ご馳走さん…容器はまた返しに行くわ」
「ほやけど兄さん、ほんまに具合悪いと違います?」
訝しげに見上げるその顔に既視感を覚える。
間違うな。
「大丈夫や、ええから帰…」
すっと白い指が伸びる。
かさついた唇に
指先が
触れる。
――ほら唇切れとるやないですか、声もガラガラやし、大事にせなあきませんよ
妹弟子の声はどこか遠くから聞こえてくるようだった。
あれからどんなやり取りをしたのか記憶にない。
九官鳥の羽音だけが響く部屋で、ひとり蹲る四草は己の指で唇に触れる。
かさついたそこは酷く熱を帯びて疼いていた。
「――っく…はははははははは」
渇いた笑いがひりつく喉から零れ出す。
夢の中の女は散々に暴いたというのに、
現実の彼女には指先ひとつでこうも囚われてしまうのか。
恋にならない恋に四草は生涯逃れられぬ運めを感じた。
それは、まるで、甘露のような絶望。
混濁する頭を振り切るように窓を開ける。
頬に触れる風はまだ冷たいものの、幾分和らいでいた。
もう、春が近い。
――さよなら、四草兄さん
風に乗ってどこか懐かしい声が聞こえた気がした。
中国料理屋延陽泊。
その裏口で一服する男に四草は煙草を差し出す。
「そういや、あの女どうしたんだ」
百円ライターで火を点ける男は、ふと思い出したように訪ねた。
「ほら、最近まであんたの部屋にいた、ちっこくて色の白い――」
了
以上です。
すみません、もうひとつ懺悔します。
ケータイからでも長文打ち込めるんすね…
以前、カラスだのアイスだの無駄にレス数伸ばして申し訳なかったです。
>>417 おっと、これは良いSS。
サゲが恰好いい。
GJ!
すごく読み応えがあったよ
四草は確かに気の毒だけどw
それにしても四草の妄想(現実)はエロくてええな
>>417 GJです
四草…切ないね(つд`)
サゲが気になる
夢か現実か…?
>>417 ひとくせもふたくせもある逸品でした
本当に四草は不幸なのか、それとも・・・?
余韻が味わい深い
エロもいいなあ
>>417 GJ!!! ありがとう! 切ない余韻が胸に残る変化球、お見事です。
四草が静かに狂っていく…と思ったらラスト5行と来た。
蜘蛛の巣にかかって逃れられないような、何とも奇妙な気持ちです。
あと5回ほど読んでみる。
>>417 ごめん。ちょっと追加。
カラスだのアイスだの…ってことは、、、ホント名作ぞろいですね。
正直すげーと思った。
また投下楽しみにしてます。
GJ!
切ないのう。エロエロなのに切なくて、もう…。
すごい筆力。
これもひとつの 夢でもなく現ともなく ですな。GJ!
>>417 すごく読み応えありましたGJ!
あの「喜代美」は一体…?『世にも奇妙なちりとてちん』ですね
ラストの従業員さんのひと言が後を引きます
>>417 GJです!
最近また賑わい始めて、しかも名作揃いなんで
非常に嬉しい!
>>417 GJ!エロいのに切ない…あれ?目からヨダレが。
何気に従業員の男がいい味出してる。
>417
GJ! なんかいいねぇ。すごく切ないけど、幸せかも。
四草、これで、ドラマラストみたいに、自分に似た可愛い男の子がやってくれば
楽しい生活になりそうだ。
>>417 うわぁ・・・すごく幻想的できれいだった!
こんなに「美しい」という言葉が似合う話があったろうか。
カラスとアイス・・・って、あの方ですか!!
いやはや、カラス・・・あれも美しい話だったんで・・・。
それにしても、読めば読むほど泣ける話だなぁ・・・。
いっこだけ。延陽「伯」だった気がしますです。
417さんが、あんまりにも美しい話をお書きになったので、
自分の用意してたシリアス系四草×喜代美は、ちょっと保留。
つーわけで、流れを読まずに、逆に与太話。
草々→若狭←四草っぽい話。
時間軸は……小草若が若狭のことを完全に吹っ切った辺り。
エロ度=???
天狗座から帰宅した草々は、弟子の一言に凍りついた。
――おかみさんて、色っぽい声出しはるんですね。
何でお前がそんなこと知ってんねん、と問う前に、嘘つきの弟子は姿を消した。
いや、深く考えることはない。所詮は嘘つきの言うことだ。
そう思って廊下を進んでいった時だった。
「……ああ……ん」
聞こえるうっとりとした声の主は、間違いなく若狭のものだった。
思わずその場で足を止める。
「気持ち……いいです……っ」
草々は、全く動けなくなった。
「あ……そ……そこ……っ」
快楽に身を任せているような若狭の声。
どこのどいつかは知らないが、中に入って殴り倒せばいい。
それなのに、若狭の言動の意外性からか、草々は呆然と立ちすくむばかり。
そして、さらなる衝撃が草々を襲う。
「あ……四草兄さん……上手……」
あまりにもよく知った名前が聞こえてきた。
女との関係が絶え間ない弟弟子。
それでも、まさか、若狭にまで手を出すとは思ってもみなかった。
雷に打たれたような状態の草々の耳に、
「ここは……どや」
と、四草の声が聞こえて、改めて現実だと思い知らされる。
「あああ……っ!いい……っ!」
これ以上聞いてられない、と外へ飛び出そうとした時だった。
「草々?何を底抜けにぼけーっと突っ立っとんねん?」
もう1つ、聞き慣れた声が背後からした。
すぐに返事が出来ず、草々は黙って振り返る。
今度は、若狭の声が背景となった。
ところが、小草若は平然とした様子で、その声を聞く。
「あー、四草、上手いもんなー」
あまりにも意外な反応に、草々はさらに凍りついた。
「ついでやから、俺も頼もっかな〜。四草ー!」
(はああああああ?!!)
草々が驚きのあまり声も出ない中、
小草若は颯爽と、若狭と四草のいる部屋へ侵入した。
「若狭ー、もうええやろー、今度は俺の番やでー」
「えー、小草若兄さんは、夜にしてもらいなったらええやないですかー」
よくわからないが、四草を巡って、若狭と小草若が争っている。
若狭がぎゃいぎゃいと騒ぐのを意にも介さず、小草若は言う。
「四草、四草、頼むわ〜。ここ、ここ、ここのツボやねん!」
……ツボ……?
「小草若兄さんやったら、『底抜け〜』てやっとんなったら、
ええ運動になりそうやないですか〜!」
「あのな、底抜けをビシーッ!!と決めよう思たら、疲れんねん!」
「ほやけど、私、家事と落語の両立で、肩がパンパンなんです!
四草兄さん、よう頭使っとんなるのに、何で肩こりと無縁なんですか〜?!」
溜め息混じりに、冷静沈着な声が答える。
「お前も小草若兄さんも、ろくに働かへん脳みそを無理に使うから肩がこるんや」
「なるほど」
「おい、若狭、納得すな!」
「……ええんですか、マッサージせんでも」
「あああ、わかったわかった、俺の脳みそ働かんて認めるから、頼むわ四草!」
「四草兄さんのツボ押し、上手ですもんねぇ……」
草々は、へなへなと廊下に座り込んでいた。
ややこしい声の出し方すな!と内心で叫びながら。
441 :
438:2008/04/16(水) 23:47:01 ID:zhiYHZ4C
つーわけで、箸休めにもならん、しょーもない話、でした。
いや、自分が肩こりなモンで・・・(苦笑)。
途中でオチわかった方も多いやろな・・・。
ツボ押しの報酬として、四草が何をゲットしていたか、は、また別の話w
延陽伯仕込みのツボ押しw
>>441 ナイス!ほわんと和んだよ。
若狭と小草若の屈託ない掛け合い、いいね。
底抜け、やってみたら結構大変な姿勢だもんなあ…w GJでした!!!
がっつり大作があると思えばギャグありシリアスありエロエロあり幻想的あり。
おまけに本編ベースも楽しめればアナザーストーリーも楽しめるときた。
そんないろんなおいしいとこが味わえるこのスレ最高です!!!
それぞれの職人の皆さん、ほんまありがとう!
>>441 小草若と若狭がかわいいなあ〜。
草々がちゃんとやきもち焼いたことに安心w
気持ちわかるなあ、自分もちょっと保留…。
けど小ネタはないので、感想だけ書き逃げw
>>438 GJです!
紛らわしい発言しといてさっさと消える小草々くん…素敵だ。
四草×喜代美メチャメチャ読みたいです!保留になぞしないでください!
自分ニセ喜代美書いた者ですけど、
もっともっと職人さんたちの作品が読みたいんです。
伯の字思いっきり間違えてますね…
カッコつけた文で誤字脱字とかめたくそカッコ悪いです。
それなのに、温かいお言葉かけていただき感謝の極みです。
ありがとうございました。
ちりとて職人の皆さんへ
┌──○─┐
│保 留は |∧_∧
│ 無しで |・ω・`)
└──○─┘//
ズレた、もう一回。
ちりとて職人の皆さんへ
┌──○─┐
│保 留は |∧_∧
│ 無しで |・ω・`)
└──○─┘//
>>446-
>>447 底抜けにGJ
放送終了してからスレが再活性化してるのがめちゃ嬉しい。
ビバ!常打ちスレ!
常打ちスレありがたいなー
職人の皆さん、これからもGJ!な作品お待ちしています
ホントに素晴らしい・・・
>>444です…。
考えてみれば、みんなが保留してたらスレストしてしまうわけなのでw
四草祭り、ってことでご容赦ください。
>>441さん、お先します。すみません。
ベタなドラマ風wの四草×若狭。
エロありですが、あまり強くはない、かも。
ほとんど書いたことないのであまりよくわからん。難しい…。
四草モノローグ多めなので、お嫌な方はスルーしてください。
沈丁花の香りがむせ返るようだ。
明るい日の光の下で見る沈丁花は、小さな薬玉のような可憐な花だ。
あどけない少女のような。
しかし月光の中に浮かぶ沈丁花は、香りが立ち上り妖艶な姿に見える。
ふたつの表情を、身に纏う花。
自分は、どこで間違えてしまったのか。
四草は問う。
他人の女に思いを寄せるほど、女に不自由しているつもりはなかった。
むしろ、他人のものに興味はなかった。
それが、自分の母親に対する子どもじみた反発心からきていることも
わかっていたけれども。
女の出入りが激しいように思われ、
実際にそうだったことも否定はしないが…
けれど、他人の女に手を出したことだけはなかった。
どこで間違えてしまったのか。
女として意識していたつもりはなかった。
まじめ一本槍の兄弟子に思いを寄せていることは、
出会った瞬間からわかったことだ。
「こんな男のどこがええんですか」と聞いた自分に、
きょとんとしたまなざしを返してよこした女。
まだ子どもだった。
まるで対象外だったはずだった。
あの時の自分は、今でも思い出したくもないほど荒んでいて、
堅物で暑苦しい兄弟子やら、無邪気な子どものような女やら、
まぶしくて目に付き刺さるようで、見ているのもいやだった。
だから、とっとと追い返したし、
次にその兄弟子が転がり込んできた時もわざと出て行かせるよう振舞った。
自分なぞ、見限ってしまえばいいと。
間違えたのは、おそらく。
感情のほとばしりを見られたときだ。
面倒見のいい、兄弟子。そして無邪気な女。
荒みきって、渇ききった自分だったのに、涙が出るとは思わなかった。
涙も。落語への思いも。
自分の中にすべて封じて、他人には見られないようにして。
そうやって過ごしてきたはずだったのに。
あの感情の爆発が間違いを生んだのかもしれない、と
つまりは最初から間違えていたのかもしれない、と
四草は自嘲気味に思う。
自分は、あの女を思ってなどいない。
これは決して恋などではない。
言い聞かせれば言い聞かせるだけ、自覚せざるをえないことはわかっていたけれども。
沈丁花の花の香りが立ちのぼる春先。
夕刻に徒然亭へ足を向けたのは単なる気まぐれだった。
必要な資料が、師匠の蔵書の中にあったことを思い出したからだ。
門の前に立つと、いつもとは違う静寂さが漂っていた。
いぶかしく思いながら、中へ入るとぱたぱたっと若狭が駆け寄ってくる。
「あ、四草にいさんお疲れ様です。今日は天狗座で高座でしたよね?」
「…小草々はおらんのか?」
若狭の問いには直接答えず、問い返す。
この場合、若狭ではなく小草々が出てくるべきだろう。
そう思って問うた四草に小首を傾げ、若狭が答えた。
「にいさん、小草々くんに用事ですか?」
ちゃうやろ。
内心でつっこんだが、口に出す間もなく若狭が言葉を続ける。
「小草々くんなら、草々にいさんと泊まりで城崎の落語会に行ってますけど…」
「なら、今おまえ一人か」
一瞬胸に浮かんだよからぬ衝動を押さえ、つとめて普段どおりの口調で四草が言った。
もちろん若狭がそんな四草に気がつくはずもなく、こくこくと頷く。
「そうなんです〜。高座もないですし、なんだか手持ち無沙汰でぇ」
あどけない顔で、ふうう、とため息をついた。
そんな若狭をあえてざっくりと無視し、すたすたと稽古部屋へ向かう。
なぜだか若狭もぱたぱたとついてきた。
四草はそんな若狭を振り返りもせず
本棚をざっと見渡し、目的の本を手にとった。
「これ、借りてくぞ」
やっと振り返って、若狭に声をかける。
はい!と満面の笑顔で応える若狭に、
なぜか息苦しさを感じた四草はすっと視線を外した。
「邪魔したな」
そのまま立ち去ろうとするところへ、慌てたように若狭が言う。
「あ、にいさん!今、お茶入れますさけ!」
いらん、もう帰る…という四草の返事も聞かず、若狭は台所へ消えた。
結局、なぜか居間で二人でお茶を飲むことになった。
…しかし、とくに会話があるわけでもない。
さぞかし居心地が悪かろうと思うのだが、
よほどそれまで一人で暇を持て余していたのか
若狭はにこにことそこに座っていた。
ピーナツなぞを出してきて、四草にすすめる。
仕方がないので、四草も黙々とピーナツを食べる。
そのまま時間ばかりが過ぎていくかと思われたが、
ふと、若狭がいいこと思いついた!といった調子でぽんと手を打った。
「にいさん、お夕飯まだですよね?!食べていきませんか?
カレー作りすぎたんですー」
カレー。何を突然。そういや小浜でも散々食うたな。
しかしこの妹弟子は色気のないこと、この上ない。
が、そんな若狭にちょっとほっとしているのも事実だった。
二人きりにならないように、ずっと気をつけていた。
自分がどう暴走するか、わからなかったからだ。
いつもの算段を逸脱しかけている自覚がある四草は、
近寄らないことでそれ以上の暴走を避けようとしていた。
うっかり二人きりになってしまったこの状況を、意識しなかったといえば嘘になる。
しかし、何があるというのだ?
妹弟子。あるいは、兄弟子の嫁。
この状況で「カレー作りすぎたんですー」という女と。この自分の間に。
自意識過剰だと、自分を嘲う。
だから答えた。
「そうやな、カレーならおまえでも致命的な失敗はせんやろからな。
…ご馳走になりますよ、若狭ねえさん」
致命的な失敗どころか、普通においしいカレーだった。
しかし量はとんでもなかった。炊き出しに出せそうだ、というほどの。
「作りすぎ、言うても限度があるやろ。何人分作ってんねん」
「ほやかてぇ、いつも草々にいさんも小草々くんもたくさん食べるさけ、つい…」
ぶつぶつと若狭が答えた。
「とくに草々にいさんは、おかみさんのカレーが大好きやったみたいで、
たくさん食べなるんです。オムライスとカレーライスが好きや、言うて…」
その味覚はまるっきり子どもやな。と、突っ込んでやりたかったがあえて黙る。
若狭の愚痴が、カレーのことを言っているのではないような気がしたからだ。
「草々にいさんは…いつもおかみさんが基準やさけ…」
ああ、そのことか。四草は得心する。
草々が若狭におかみさんの面影を重ねていることは、気がついていた。
同時に舌打ちしたい思いも浮かぶ。
本人に気がつかせてどないすんねん、あの恐竜頭。
しかも、このうじうじ暗い陰気な若狭に。落ち込むだけやないか。
「まあ、草々にいさんにとっては母親代わりやからな」
しゃあないやろ、と四草にしてはやさしげな返答をする。
それに力を得たのか、若狭は溜まっていたものを吐き出すかのように言葉を続けた。
「そうなんですけど。にいさんはいつも幼い言うんです。私のこと。
もっとおかみさんのようにせえ、言うて」
若狭が俯く。言うに事欠いて…と四草は内心でさらに恐竜頭をののしった。
「私は私やのに…。カレー作っても、何をやっても、
草々にいさんは私をおかみさんのようかどうかしか見てくれへんのです」
ふと、じりりと胸が疼いた。なんだ、これは。
俯いた若狭の姿が、胸を苦しくさせるのか。
言ってることは「カレー」だというのに。
四草は、自分がおかしくなり始めていることに気がついた。
間違えてはいけない。自分は、恋などしていない。
「幼い、言われても…どねしたらええのかわからんし…」
自分は、この女に焦がれてなどいない。
俯いていた顔をぱっと上げて、若狭は四草を見つめた。
そのまっすぐなまなざしを受けて、四草はますます息苦しさを感じる。
水中の金魚になったような気がした。
見るな、そんな目で。
「私、幼いですか。おかみさんのようになれませんか?
草々にいさんには聞かれへんのです。四草にいさん、教えてくれませんか?」
胸が疼く。頭の芯が痺れる。
思わず、答えた。
「おかみさんのように…て、それは無理や。若狭は若狭でおるしかないやろ」
自分のそのまますぎる返答に思わず苦笑しそうになる。
俺としたことが、若狭の真っ正直に引きずられてどうする。
「けど、草々にいさんは…多分、私のことは見てなくて…
ほんとは、私は"若狭"ですらなくて…きっとこのまま…私は私になれへん…」
俯いた若狭の膝に一筋の涙が零れ落ちた。じんわりと広がってゆく。
その涙を見た瞬間、四草は自分の中の何かが爆ぜるのを感じた。
――これは恋などではない。
草々にいさんが、泣かせるのか。若狭を。
――この思いは、感情の昂ぶりが間違わせた気の迷い。
手に入れておきながら、泣かせるのか
――この焦がれるほどの、感情。ならば、この熱は、なんだ?
泣かせるならば、俺が。
そばに寄り、頭を撫でた。何度も何度も丁寧に撫でてやる。
「泣くな、若狭」
若狭は子犬のように無邪気に、泣きながら四草にからだを預ける。
若狭のやわらかな重みを感じ、思わず抱きしめた。
きょとんとする若狭。
そのまま押し倒すと、さすがに若狭も驚いて声を上げる。
「し、四草にいさん?!何するんですか?!」
「何、って…わかるやろ。幼い女にはようせんことや」
そのつもりで、抱きしめたのだ。半ば無理やり口付け、舌を押し込んだ。
口腔内をむさぼるように舌を動かす。若狭は抵抗しない。
驚きすぎて、できないのかもしれない。
そんな若狭をかわいらしいと思ってしまう浅ましさを四草は自嘲する。
「泣くな、若狭。俺の前で隙を見せたらあかん」
驚きのあまりなされるがままになっていた若狭だったが、
そのことばを聞き、力が抜けたようだった。
「四草、にいさん…」
あどけない色を瞳に残したまま、ためらいがちに応えはじめる。
息を漏らす若狭に煽られた四草は、襟元から手を無理にねじ込み
手のひらからあふれそうな柔らかなふくらみをおさめた。
そのまま激しく揉みしだく。若狭のからだがぴくりと跳ねる。
その間も貪欲な舌は若狭を求めることをやめない。
細い白いうなじに薄い唇をあてる。
ゆっくりゆっくりと、官能を引き出すようにうなじに舌を這わせる。
「あ、ああ…ん、四草にいさん…」
けして拒んではいない、若狭の声。背中に真っ白な腕が回される。
ふと気がつくと若狭の瞳の色が変わっていた。
いつもの、幼いあどけない表情ではなかった。
欲に濡れた女のまなざし。思わずどきりとたじろぐほど妖艶な。
草々にいさんはいつも見とるんか、若狭のこんな顔を。
冷えた思いと、滾るほどの感情が同時に溢れ出す。
草々にいさんが若狭に教えこんだのか。
そのくせ幼いと若狭をさいなむのか。
ならば、そのからだに自分がもっと快楽を与えてやる。
四草の中に凶暴さと紙一重の欲望が浮かび上がった。
指と舌に性急さと激しさが加わる。
柔らかなふくらみの先端を摘み上げると、若狭の背がしなった。
その強い反応に、四草はますます煽られる。
「あ…ああっ…んっ…」
カットソーを引き上げ、やわらかなまるみの先を露わにする。
舌で嬲るように刺激を与えると、耐えられないといったような風情で
甘い声を漏らしながら、若狭は腰をくねらせた。
くっきりと浮かび上がる快楽の表情。からだが薄桃色に色づき始める。
そんな若狭を見て、四草は背徳的な充足感に満たされる。
すでに中心は昂ぶって潤っていた。
四草はその滴りを味わうかのように、そっとそこを撫でた。
「ん…っ、ああん、にい、さぁん…」
若狭がいやいや、というように首を振る。
何を欲しているのかわかっていたが、あえて周りをゆるゆると撫で回す。
「ねえ…にいさん…お願いですさけ…四草にいさん…っ」
「どないして欲しいんか、言え」
耳元で、わざと冷たく言い放った。
熟し始めた若狭は、耳に息がかかるだけでびくびくと白い背をしならせる。
「意地悪、言わんでぇ…四草にいさん…」
とろけるような声で、若狭が言った。
もっと、呼べ、俺を。草々にいさんではなく。その甘い声で俺を呼べ。
そう念じながら、若狭の瞳を見つめる。
ひたりと見つめ返した若狭が熱に浮かされたようにつぶやいた。
「四草にいさんの…目が好きや…。ずっと見つめて欲しなる…。
ずっと…好きやったのかもしれへん…」
かっと、頭の隅が熱くなった。
焦らして言わせてやろうと思っていたことばなど、頭から吹き飛んだ。
もう充分に潤っているそこへ、細い指をねじ込んだ。
するりと指を飲み込む様が、どうしようもなく淫らで。
「ああ…っ、ああん…にいさん、四草にいさん…」
貪欲な四草の指と舌に若狭は翻弄され、何度も身を昂ぶらせた。
その度に若狭は高く伸びる甘い声をあげ、熱い息で四草を呼んだ。
何度目かの絶頂の後、眉を寄せ荒い息を吐きながら若狭が言った。
「四草にいさんが欲しいのに…くれへんのんですか…」
はやく、はやくと…若狭がねだる。声が、腰が、まなざしが自分を誘う。
求められた情動に、四草は驚くほど自分が強く満たされるのを感じた。
こんなふうに女を求めたことがあっただろうか。
もう既に、自分自身も限界だった。若狭の中へ一気に沈める。
「四草にいさん…ああ…っんん…」
桜色に染まったからだをしならせながら、若狭が喘いだ。
溶けた息を漏らし、官能に震えながらささやく。
「四草にい、さん…。喜代美、って…喜代美って呼んでください…。
私を…私にしてください…」
それは必死の願い。
激しい情欲に身を震わせ、体中から熱を発していても。
ほのかに紅を刷いた肌に官能を滲ませていても。
四草がよく知る、いつものあどけない女のささやかな願い。
呼びたかったのは、自分のほうだ。ずっと、こうして呼びたかった。
「泣くな、喜代美…」
俺の――
「夢を見たんです、にいさんも、私も」
身なりを整えながら、若狭が耳元でそうささやく。
「夢です、みんな…。ね?」
なかったことに、しようということか。ぼんやりと四草は考える。
当然のことだ。けれど、諦められるだろうか。
そんなことを考えていると、くすりと若狭が微笑んだ。
まなざしに、満ち足りた艶がのる。
「ほやけど、私…」
続けられたことばを聞き、四草は目を眇め薄く笑った。
「そうか…俺もや」
ほやけど、私、おんなじ夢、何度も何度も見るんです。
また…この夢を見たいと思ったらあきませんか?
月夜の沈丁花が、四草の目の前を掠めていった。
まなざしが、香った。逃れられない、逃したくないと、叫ぶ。
手に入れたはずの朝でさえ、夢か現かわからなくなるときがある。
何度逢瀬を重ねても、何度手に入れても。
秋の金木犀が香るころ。徒然亭に顔を出す。
いつものように、小草々が愛想よく出迎える。
「おはようございます!四草師匠!」
挨拶を返しつつ、背の高い小草々の、その向こうを見やった。
若狭が、あどけない子どものような瞳でこちらを見ている。
「あ、四草にいさん。おはようございます」
「おはようさん」
いつもどおりだ。何も変わりはない。
小草々がお茶を入れるつもりか、台所へ去ると、
後を追いかけるかのように若狭が立ち上がった。
こちらに背を向け…ふと、まるで思いついたかのように振り返る。
くす、と笑ったような気がした。
いったん目を伏せ…ひたりと視点を合わせる。
うなじがやけに白い。背中を向けたまま、こちらを見たその瞳。
苛烈なまでに艶に燃え立つ、そのまなざし。夢の中の。
季節が変わっても咲き続ける、月夜の沈丁花。
視線をそらしそうになるのを、四草は必死でこらえる。
「にいさんの…目が好きや。捕らえられて…離してくれへん。
ずっと見つめて欲しなる…もっと…欲しなる」
熱に浮かされたような、若狭のことばが耳に蘇る。
捕らえたのはどっちや。
どっちが離さへんのや。
どこまで俺を縛る気や。
「にいさん、今、お茶持ってきますさけ」
夢の女が、現の女に戻る。月夜から陽光のもとへ。
ああ、と適当に答えつつ、四草は自分自身を醒めた目で眺めていた。
あのまなざしが、自分を捕らえ縛り続けていくのだろう。
これからも、夢の中の女と逢瀬を重ねるのだろう。
それも悪くない、むしろあのまなざしを諦めることのほうが…。
たとえそれが「家族」を裏切ることと同意語だとしても。
自分はどこで算段を間違えてしまったのか、四草は問い続ける。
最初から、すべて間違っていたのだと、わかっていたけれども。
おしまいです。お粗末さまでした。ありがとうございました。
久々に書いたら行間隔とかおかしいし…orz
読みにくくてごめん。
>>417さんとは全く違うスタンスですが、
「喜代美」が「夢」ってあたりが若干かぶってる気がして、保留しようかと思ったのでした。
書き始めた頃は本当に沈丁花が香っていました…。
もはや桜も散り八重桜も散りかけてる時期になってしまったことについては
若干反省している…orz
458 :
450:2008/04/17(木) 18:27:05 ID:UDODSpMR
時間軸書くの忘れてました…orz
小草々が入門してて、ひぐらし亭になる前、って感じでざっくりお考えください。
ちなみに小草若がどうしてるかは、聞かないでください…orz
>>450さん、GJ!
こういう若狭、大好きだ
自分的にもいつもこんな若狭を妄想しちゃってますw
凄く満足したー
続きが読みたいような・・・
>>450 GJ!GJです!
むせかえるような人妻の色香を、沈丁花と重ねあわせるその艶なこと!
こんな綺麗な物語を隠し持っていて、しかも保留しようとするなんて犯罪です。
ご馳走さまでした。
>>450 GJ!!
美しいしエロい!
>>459さんと同じく、こんな風に関係持っちゃう四草×若狭が好きw
そして溺れていく二人…
ああーたまらないっ!
462 :
441:2008/04/17(木) 23:23:45 ID:7f0iA/tJ
こんばんはーです。
GJ頂いて毎度ありがとうございます。
読む投稿も、自分が書くのも切ない系が続いてしまったので、
たまには、とジョーク系入れてみました。
>>450 沈丁花とは、また美しいですねぇ・・・(しみじみ)。
んで、自分が四草×喜代美にハマったのは、四草が1番、
喜代美に対して「おかみさんフィルター」かかってないからだなぁ、と
改めて初心(?)を思い出しましたです。
四草も若狭も、互いに気付かないまま惹かれあって、
しまいにそれが溢れ出して・・・な流れが好きだ♪
>>447さんにGOサインもらったんで、ちまちま出して行こうと思います。
草々×A子で、四草×若狭だったり、小草若×若狭だったりw
>>450 GJです!保留解除してくれて感謝です
自分も同じような筋書きを思いついたが、こんな綺麗に書けん…
「泣くな、喜代美」
再びキタ━━━━━━≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━━━!!!!!
なんかもう…泣けてくるよ!
GJです!
>>450 うわぁ、またまたクオリティ高い投下で嬉しい!
延陽伯の話の職人さんとはまた違ったテイストで、不倫なのに綺麗で切ないのがたまらない…
自分も若狭の立場だったら、夫に母親(おかみさん)像を求められるのは辛いよと思いながら本編を見てたから
ここに来てなんかスッキリしてるかも。
盛り上がってるところ申し訳有りませんが
草々×若狭×四草、不倫もの書けたので…
2度目の投下でございます。
エロはほんのちょっとです。
>>451さんGJです!!
リアルと美しさのバランスが絶妙です。
自分のも設定がちょっと似てるところがあります。
1階の店舗で少し遅い夕食を取っていた。
向かい合わせに座る兄弟子が箸を置き律儀に手を合わせ、
ごちそうさまでしたと軽く頭を下げた。
ほどなくして弟弟子も食べ終わり、ポケットから煙草を出し火をつけた。
「一言“吸うてもええですか?”て聞けよ」と小草若が不満を漏らす。
「居候のくせにそんなこと言える立場やないでしょ。」と、
四草は遠慮なくフーっと大きく煙をはく。
イライラするが何も言い返せない小草若の顔を、
ホンマにこいつどんくさい、と
冷めた気持ちで眺めていると、レジの横の電話が鳴った。
「倉沢、お前や」
今日この時刻にかけてくる相手に心当たりがある。
吸い始めたばかりの煙草をもみ消し席を立ち、受話器を取った。
「はい」
「四草兄さん…喜代美です。」
やっぱりな…と思いながら、誰と話しているか悟られないように
小草若に背を向けた。
「どないした」
「今日…草々兄さん、地方の落語会に出かけなってお留守なんです…
小草々くんも一緒に。今夜はあっちに泊るようになってて…」
地方で公演があることは草々本人から少し前に聞いていたので、
おそらくその日は喜代美から電話があるだろうと心づもりはしていた。
「今から行く。」
短く言うとガチャリと切り、テーブルに戻った。
椅子には座らず、煙草とライターをポケットにしまって
出口に向かおうとする四草を、小草若が呼び止める。
「おい、どこ行くねん。女のとこか。」
「いけませんか」
「今夜は俺の落語見てくれる言うたやないか。」
いい歳をしてふてくされる兄弟子にうんざりする。
ふと隣のテーブルに置きっぱなしになっていた週刊誌を見つけ、
小草若の前に置いた。
「小草若兄さんも、たまには1人になりたいでしょ」
面倒くさそうに言うと返事は聞かずそのまま店を出た。
背後でグラビアをめくっているであろう小草若の、
うひょひょひょという笑い声が聞こえた。
四草と若狭の関係に変化があったのは、
木曽山が入門してしばらくしてのことだった。
ある日、高座の帰りになんとなく徒然亭に寄った。いつものように
門を通り縁側から入り…しかし居間はもちろん
台所を覗いても誰も出てこない。
留守にしているならば鍵をかけなければ物騒や、
さては木曽山が修行をさぼって部屋で昼寝でもしてるのではないか。
もしそうだったなら、サボりを黙ってる代わりにうどんでもおごらしたろ、と
四草は内弟子部屋の、木曽山が住んでいる方のドアをノックしてみる。
しかしガタガタと物音がして開いたのは、
草々と若狭が住んでいる方のドアだった。
どことなく、落ち着きの無い様子の若狭が出てくる。
「あ、四草兄さん」
少し驚いた表情でチラっと四草の目を見ると、
ほんのりとピンク色に染まっている頬を隠すようにうつむき加減になった。
いつもきっちり結んでいるはずの髪が、確かに乱れている。
抱いた女の数は知れない。四草にはピンと来た。
「い、今、お茶入れますさけ…」
作り笑いで横を通り過ぎようとした若狭の二の腕を掴み、
四草はぐいと引き寄せた。
「お前…1人でヤってたやろ」
「えっ?」
若狭の身体が急激な速さで固まっていく。
「とぼけるな。やりたくてやりたくて、しょうがない顔してるくせに。」
誰にも知られたくはなかった、知られるはずはなかった、
夫にさえも明かせないその密やかな行為を、
他人である兄弟子にほんの一瞬で見抜かれてしまった。
羞恥心から大きな眼は充血してきて、唇はかすかに震えている。
どう返答していいのか、どんな対応をしていいのか、
わからずに怯えきっている若狭を
四草は優しく抱きしめて、その真っ赤に火照った耳に唇を寄せて囁いた。
「大丈夫や、喜代美…誰にも言わへん…」
断じて脅迫ではない。それを証明するために、
四草はそっと、喜代美の額、まぶた、頬、そして唇へといくつもキスをした。
それから2人は、草々が留守にする度に、忍んで会うようになった。
「どないしたんや…嫌なんか…」
感じているはずなのに眉間にしわを寄せ顔をそむける幼い妻に
夫は形ばかりの質問をする。
「だって、隣に聞こえるから…」
本当は愛する草々の艶のある低い声で話しかけられるだけでも感度が増した。
けれど隣室にいるはずの青年に、
夫婦の営みを聞かれるのは耐えられないことだった。
「大丈夫やって。もう寝てる。」
寝ていたって物音がすれば目も覚めるだろうし、ましてや自分の喘ぎ声など、
この薄い壁一枚筒抜けに決まっている。
しかし草々は、ごく当たり前な若狭の心情には配慮せず
自分の欲望を満たすべく、激しく腰を打ち付ける。
「…かまへん。…声…出せ…」
配慮がないどころか、わざと木曽山を刺激するように、いや、まるで
オスとしての強さを弟子に誇示するかのように、妻を攻め続ける。
「…あいつ、に… 聞かしたったらええねん…!」
かぶりを振り唇を噛み、それでも声を押し殺す若狭。
草々は、そんな若狭の頑なな唇にくらいつき、口を開けるように促す。
それでも無理矢理に差し込まれた舌に抗う若狭の脳裏からは、
昼間の木曽山の、若者らしくない太い縁の眼鏡、
そしてあの厚いレンズの奥にある鋭い瞳が離れない。
「聞かれている…」
草々が蹴り壊したのと同じ厚さであるその壁を見つめる。
静か過ぎる隣室が不自然に思われ、かえって不安を煽り、
明日どんな顔で木曽山に会えばいいのかと考えた、その時。
夫はああっと叫ぶとともに熱い息を吐き出し、絶頂をむかえた。
そして若狭は──。
達することなく、いじらしく疼いた身体をもて余したまま、
草々の腕枕で大きな寝息を聞く。
そして、内弟子を取ったことを心のどこかで後悔するのを感じながら、
孤独な長い夜を過ごすのだった。
“寝床”も、のれんをしまい明かりが消えた頃。
四草は足音も立てず徒然亭に入っていった。
こつん、と一つ、内弟子部屋のドアをノックをする。一つだけが合図。
すると真っ暗な部屋の中で人の動く気配がし、ゆっくりとドアが開かれた。
見慣れた半畳ほどの狭い玄関に、ぽつんと喜代美が立っていた。
風呂に入って来たのだろう、真っ直ぐに下ろした黒い髪が、
暗闇でもつやつやとしているのが分かる。
物音を立てぬようにそこに入り静かにドアを閉めてからやっと、
四草が口を開いた。
「久しぶりやな、…喜代美…」
何十日振りの逢瀬だろう。自分の名を優しく呼びかけるその声に、
溶けてしまったような面持ちで喜代美はそっと四草に寄り添う。
まだ湿っている髪の毛から、フルーツのような甘いシャンプーの香りがした。
押入れを開け無造作に布団を出し畳の上に広げると
四草はその上に後ろ手をつき両足を投げ出して座った。
「脱げ」
こちらを見上げている四草の視線にひるむこともなく、
喜代美はパジャマのボタンを淡々と外し、下着も全て取り去り、
胸と前を小さな手で申し訳程度に隠して、
開かれた四草の足の間にゆっくりと正座をした。
塀の向こうの街灯の半端な光が、喜代美の肉体を照らす。
抱いた女は星の数ほども…しかしそんな四草でも、喜代美の、
小さいながらも淫靡な曲線で完成された肢体には眼が眩むようだった。
触れればこの手に吸い付く、きめの細かい肌、
理想的な形と体積の乳房、薄いピンク色の先端、
大きくくびれたカーブからつながる白桃の様の丸い腰…
高価なガラスでも扱うかのように、
四草はゆっくりと喜代美の胸に手を伸ばす。
軽く乳首を触れると、痛っと小さく叫んだ。
「なんで痛い、ちょっと触っただけやのに」
困った顔をして喜代美が答える。
「昨夜、きつく…されたから…」
草々が荒っぽく愛撫したのだろう。一晩留守にすると思って、
相当激しく喜代美を求めたのに違いない。
いかにもあの恐竜男のやりそうなことだ。
“あほや。こんなええ身体してる女、乱暴に抱くもんやない…“
すっと喜代美ににじり寄り、仕切りなおしのつもりで、
耳のあたりの髪に手をいれ弄る。
優しい眼差しを受取りながら喜代美はその手に頬を寄せ、
愛おしさを込めて口付けた。
田舎育ちの素朴さと素直さがその仕草になって現れるのか。
「綺麗や…」
ふいに“らしくない”言葉が口をついて出てきた。
喜代美も四草の意外な台詞に一瞬目を丸くしたが、すぐに嬉しそうに微笑んだ。
「そんなん言うてくれるの、四草兄さんだけ。」
そう言うと、包んでいた四草の手から指を一つ選び、軽く歯を立てた。
「抱いてください…」
白いシーツの上にゆっくりと倒れこみ、2つの影が重なる。
壁の向こうには、誰もいない。
途切れることの無い四草の繊細な愛撫に、
甘美な喜代美の声が、暗く狭い部屋に響き渡る。
夜が明ける直前まで、何度も何度も求め合う。
「喜代美…お前の声が聞きたい…喜代美…」
以上です。
読んで下さった方、ありがとうございました。
四草若狭が続くからどうしようかと思ったのですが、
ま、いいかと。
あっさりした話なので、箸休めになれば…
おおお!
GJです!
四草って煙草止めてなかった?
>>466 GJすぎるー!
ここ最近の四草×若狭モノを読んでいるうちに、
2人の不倫モノが特に好きだと気づきました
2人の電話のシーンがすごくいい
そして欲求不満の若狭とそれを見抜く経験豊富な四草!
小草若もかわいかった!
大満足です
>466
GJでござる!
自分ホント四草×若狭が大好物w
親に隠れてエロ本眺めてる気分やーアヒャヒャヒャ
久しぶりにのぞいてみたら、いっぱい投下されてる!
皆さんGJGJGJGJ!!!
ほんとここクオリティ高杉w
GJ!!!
エロパロにおいておくのが勿体無い!
不倫なのに美しい
>>466 おおおー、また四草×若狭が増えとる〜!!
しかし、反道徳的なのに、何でこんなに美しい話なんや。
無邪気な小草若がええ感じですね。
あと、さり気なく本名で呼ばれている四草がよいです。
自分は若狭が既婚でも未婚でもこだわりないんですが・・・
つーか、こだわりないと言えてしまう自分が怖いです(苦笑)。
おかしいなぁ、マディソン郡やら失楽園やら苦手なのに。
>>466です。
皆様ありがとうございます!
心は草々、でも体は四草みたいにしたかったんですが…
草々の出番少なすぎますね。
とにかく読んで下さってありがとうございました!
四草×喜代美祭りの中、大変恐縮なのですが…。
小草若×喜代美 投下させて頂きます。
さらに申し訳ないことに長くて、掛け値なし本当にエロくないです。
そんなのでよろしければ読んでやってください。
時期はずれですが、喜代美内弟子時代・二年目くらい?のお正月です。
小草若の妄想wを叶えてやりたい一心ですので…。
それは新年明けて、元旦の昼過ぎのこと。
小草若は、心地よく疲れた体を引きずって、師匠の家の門をくぐった。
元旦のTV特番の生放送を終えたばかりで、寝不足の頭は少しくらくらする。
けれど、師匠への新年の挨拶と、徒然亭恒例の「あれ」が待っている…。
いささかげんなりしながら、小草若は懐かしい実家の居間へと向かう。
きっと今頃はみんなもう…。
頬をひとつぴたん、と軽く張り気合を入れてから、居間へと足を踏み入れる。
気合一発。腹の底から声を出す。
「遅うなりましたがな!そ〜こ〜ぬ〜け〜に!明けましておめでとうございます!」
「おお〜小草にゃ、きょ、小草若!やっと来たか〜!みゃっ、待とったで〜!」
…やっぱり。
すっかり座った目をした草原が、片手の一升瓶を振り回す。
「…草原兄さん、新年早々噛みまくりですやん…」
居間の惨状は目をおおわんばかり。
空っぽになった一升瓶が…何本ころがっとるねん。
机の上には豪華なおせち料理と…それよりもたくさんの徳利がごろんごろんと。
師匠は、、といえば、一升瓶を抱え込んだまま床の間で丸くなっとるし。猫かいな。
半分寝てるのか起きているのかもわからない表情で机に突っ伏して、何かぶつぶつ落語を
呟いている草々。相変わらす落語バカやな…。
もとより酒に弱い四草はといえば…早々に脱落したのか、真っ赤な顔で毛布にくるまって
頭にタオルを載せている。その枕元では九官鳥が「モウノメマセンテ」と羽をバタバタさせる。
(こいつの唯一の弱点やからな…酒)
普段のド生意気な涼しい顔を思い出すと、ちょっと溜飲のさがる思いもして思わず笑ってしまう。
そしてあの子は…。
「ふぁ、こそ、うじゃくに、いさんやないで、すか〜!」
変なところで区切られた怪しいイントネーションの可愛らしい声が、後ろからかけられる。
(やっぱり…)
観念して振り返ると、案の定ちょっとおぼつかない足取りの喜代美が、熱燗ののったお盆を手に
こちらを見つめてふにゃ〜っと微笑む。
「あ、けましてお、めで、とうございま、す〜!」
「あああ、喜代美ちゃん…おめでとさん、、やけど、、、大丈夫かいな?」
喜代美は、ほの薄く桜色に染まった頬でほやん、と笑う。
「だ、いじょ、うぶで、すよ〜」
その笑顔は、とてつもなく底抜けに可愛らしかったけれど。
(…あかんな)
ちょっと頭を抱えたくなりながら、小草若は小さくため息をつく。
今日は元旦。
徒然亭では恒例の「酒びたり」の日。またの名を「草原兄さんデー」。
その名の通り、飲んで飲んで飲みまくる。容赦は一切ない。
まだ内弟子の喜代美は、本来酒・煙草・色事(なんちゅう艶のないこっちゃ)は禁じられているのだけれど、
この日ばかりは…関係なかったようだ。大方、草原兄さんに飲まされたのだろう。
(喜代美ちゃん、まだ未成年やないかいな)
そう思わないでもないが、何しろ徒然亭の中は師匠次第でけっこうな無理がまかりとおるのである。
「喜代美ちゃん…ちょっと休んだほうがええんちゃうか?水でも飲んで…」
そう言いかけた小草若の声にかぶさるように、後ろから声がかけられる。
「なにごちゃごちゃ言うとるねん小草にゃ、小草若!! の・む・で!!!」
…仕方がない。普段はあんな人格者の草原兄さんやけど、酒が入るとそれはもう…。
「わ・か・さもや!!!」
「はいい〜わ、かりまし、た!」
…地獄や。
結局、その後草原兄さんの地獄のお酌コースで浴びるほど酒を飲まされた。
熱燗をぐいっと飲み干すと冷酒のコップが手渡され、それを飲み終わるや否やビールのジョッキ、
まだそれが空かないうちに今度は洋酒が差し出されるといった寸法の恐ろしいちゃんぽんぶり。
疲れて寝不足の体に、それはそれはよくしみこんで。
途中からは…正直、記憶がない。いつのまに寝入ってしまったのかも。
…気づいた時には、日はとっぷりと暮れていた
目を覚ますと、相変わらずの惨状の中に、さすがの草原兄さんもつっぷしていた。
(やっと、終わった…)
ほっと一息つく。
見回すと、すでに部屋に引き上げたのか師匠と草々の姿はない。
(…朝っぱらからみんなようも飲んだもんやな)
こたつの上に突っ伏した草原兄さんと、相変わらず部屋の隅に転がってすうすうと寝息を立てる四草と、
それから柱にもたれかかってこっくりと頭をたれている喜代美。
(このままやったら、風邪引いてまうがな…)
重い頭を抱えて、よっこらしょと立ち上がる。予想以上に酒が残っているのか、足元がふらつく。
とりあえず…毛布でもかけてやろう。
勝手知ったる家の中をよろよろと進み、毛布を三枚持ってきてかけてやる。ついでに平兵衛のかごにも布を。
(とりあえず、これでよし、と)
四草と草原兄さんは今日は帰れんやろけど…喜代美は起こしてやるべきだろうか?
そんなことを思いながらかがみこみ、ですうすうと寝息をたてる喜代美の顔をみつめる。
(…やっぱ、可愛い)
もし毎日、自分の傍にこの寝顔と微笑があったら。それは。
どれほど幸せなことだろう…?
柔らかい髪をそっとなでる。その瞬間。
「んん、小草若、にいさん…?」
ぼんやりとその目が開かれて、小草若は髪に伸ばした手を慌てて引っ込める。
「お、おう、、喜代美ちゃん。大丈夫かいな?」
「あ、はい…。ちょっとぼんやりしますけど、でももう大丈夫ですさけ。」
にっこりと喜代美は笑う。
「毛布…小草若兄さんがかけてくれなったんですか?」
「あ、うん。風邪引いたらアカン思うて。」
「ありがとうございます。ホンマ、小草若にいさんは、優しい…」
そう言いながら、ほやほやと目を閉じかける喜代美を慌てて揺り起こす。
「アカンて!喜代美ちゃん。部屋に戻り。ホンマに風邪ひいてまうで!」
「あ、…はい。すみません。」
そう言って何とか立ち上がろうとして、とたんにくたんと転びそうになる。
「あああ、、大丈夫か喜代美ちゃん?」
「…すみません。でも大丈夫ですさけ。」
言って喜代美は、意外としっかりした足取りで歩き始めた。
けれどいつ倒れるか怪しいもので。小草若は慌ててその後を追う。
その時、喜代美があっと叫んで突然立ち止まる。
「どど、どないしてん喜代美ちゃん?」
「寝床寄席…練習…稽古…どないしよ…?」
途方に暮れたような顔で、喜代美は立ち尽くす。意味がわからない。
「へ?」
「正月明け…寝床寄席出るんです。そやのにまだ全然よう仕上げられんで。正月に師匠か兄さんに
見てもらう約束してもらっとったんですけど…」
落胆したように辺りを見回す。そこにはすっかり撃沈した草原兄さんと四草の姿が。
これは…使えんな。
「今日は喜代美ちゃんも酔うとることやし、兄さんらも師匠もこんなんやからなあ…」
「そうですよね…」
よほどネタの出来が気がかりなのだろう。表情に影が落ちる。
自分に何とかしてやれると良いのだけれど。自分では…。
気をとりなおして、明るく声をかける。
「まあ明日頼んだらええがな!それよりネタ、何かけるん?」
「寿限無、なんです。でもいっつも噛んでしもて、あせって順番もわやになってしもて…あ!」
喜代美の顔がとたんに明るくなる。
「小草若兄さん、もしご迷惑でなかったら…ちょっとだけ見て、もらえませんか?」
「お、俺ぇ!?」
いや確かに寿限無はできるけど。妄想では教えたこともあるけれど。
「寿限無ゆうたら小草若兄さんの十八番やし、、あきませんか?」
その期待に満ちた目。そんな目で見つめられたら。
小草若の沈黙を拒否と受け取ったのか、喜代美の表情がとたんにしぼむ。
「あきませんよね…小草若兄さん疲れてはるし、お酒もたくさん飲んで酔うてはるのに…」
「い、いや!ええで!まかしとき!ほな稽古場、行こか!」
…そう答える以外にどうできたろうか? 喜代美からあんな期待に満ちた目で見つめられて。
夜の稽古場はしんと静まり返り、蛍光灯のぼんやりとした光は向かいに座る喜代美の姿を白く照らす。
「…ほな、始めよか」
思わず見とれかけたのを隠すように、小草若は少し早口で告げる。
はい、元気に答えて喜代美は寿限無をかけはじめた。
が。
予想以上に…ひどかった。
酔いが回っていて少し呂律が回っていないこともあるが、それより何より見せ場の名前の順番がめちゃくちゃだ。
「…あんな喜代美ちゃん。ちょっと今日はやっぱり…無理やで」
「…」
「寿限無は名前を繰り返しよどみのう言うとこに面白みがあるわけやろ?
それがまったくメチャクチャや言うんは…やっぱ頂けんで」
うつむく喜代美。やばい、少し言い過ぎたか?
「今日は酔うとるから!な?やっぱり明日師匠に…」
「お水飲んでぴりっとしてきますから!もう一回、もう一回だけお願いします!!!」
言って、喜代美は台所に駆けていった。よほど、気になっているのだろう…。
しばらくして帰ってきた喜代美は、お盆に2つのコップを載せていた。
「小草若兄さん。良かったらお水、どうぞ。」
「ありがとさん。でもホンマは稽古場に飲物なんてあかんで。」
「あ…すみません」
「まあ今日はええがな。ほな、始めよか?」
再び稽古が始まる。一生懸命名前をよどみなく言おう言おうとする気持ちが伝わる。
その熱意に引き込まれるように、小草若の指示にも自然、熱が入る。
初めて兄弟子らしいことができたような気がして、あたたかい気持ちがほこほことわいてくる。
けれどそうそう急に上手くはこなすことはできず。
しばらく稽古をしたところで、小草若は喜代美に声をかける。
「喜代美ちゃん、ちょっと休憩いれよか。さっきの水でも飲んで。」
「はい…」
こくり、と喜代美はグラスを傾けのどを潤す。
「おいし…。稽古すると咽、かわきますもんね…。」
そう微笑んで、また一口、二口。見る間にグラスは干されていく。こく、こくと上下する咽。
その咽の白さにぞくりとして、慌てて小草若は目をそらすようにぐいとグラスをあおる。
と。
「!!!」
思いもかけぬ灼熱の味。
「き、喜代美ちゃん!これ!…どこから入れてきた?」
きょとん、と喜代美は目を真ん丸くして小草若を見つめる。心なしか顔が赤い。
いや、心なしではないはず。なぜならこれは、この液体は…。
「冷蔵庫の、中にあった瓶ですけど…それが?」
「これ……ウォッカやでぇ…」
「ええええええ!?」
「そんだけ飲んで気づかんかったんかいな…」
少し呆れる。水だと思って大きくあおって飲んだものだから、頭がぼんやりとする。
ましてや喜代美は…ぺたん、と座り込んでなにやら目の焦点が妖しい。
あかん。
「喜代美ちゃん、今日の稽古はここまでにして部屋戻り。今ほんまもんの水持ってくるさかい。」
そう立ち上がろうとした小草若に。
喜代美は、すがりついた。
「そんな、そんなん言わんと…もうちょっとだけお願いします…」
喜代美を抱きとめるような形になり、一緒に倒れこんでしまう。
「ちょちょちょ!喜代美ちゃん!やばいて!」
何とか体を起こすが、すがりつく喜代美を胸にだきしめるような形となって。
あたたかい、柔らかい体。髪からは花の香りがして、酔いにしびれた頭を溶かしてしまいそうで。
「小草若、兄さん…お願い…やから、、して、下さい…」
自分を見つめて潤む瞳が、花びらのような唇がせがむ。それは。
稽古のことだとはわかってはいるのに。
「…判った。ほなもうちょっとだけ。」
やっとのことでそう口にすると、喜代美の顔がぱあっと輝く。
「うれしい…。小草若、にいさん…」
酔って自分の胸の中で、夢うつつのように寿限無を口ずさむ喜代美。
うたうようなそのくちびる。ゆめみるようなそのひとみ。
酔いの回った自分にも、それがゆめなのかうつつなのか。
「寿限無寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚の、水行末、ふうらいまつ、、あ」
「そこは、雲来末…」
あ、と丸い形に小さく開かれた唇を指で軽くなぞり口づけを。それは驚くほど自然に。
夢なのか現なのか、よくわからないからこんなことができるのか。
それとも脳髄をしびれさせるほどにしたたかに回った酒のせいなのか。
目を見開く喜代美に、優しく笑う。
「落語は、口移しで覚えるもんや」
「くちうつし…」
「そう、口移し」
「小草若兄さんのくちびる、、柔らかい…」
つぶやいてほのかに微笑み、小草若の胸に体をあずける。なんの警戒感もなく。
これは酔っているから。これは一時の、ほんの夢。
「先、続けて…」
「はい…。水行末、風来末、雲来末、藪ら柑子、ぶらこうじ…?」
「そこは、食う寝るところが先…」
ぬめる唇に、先ほどより深い口づけを。自分などよりずっと柔らかい、甘い唇。
唇が離れると、喜代美はふうっと放心したように息をつく。
「キスって…初めてやのに、、なんでこんな気持ちええんでしょう……」
その「寿限無」が一席終わるまでに、何度の口づけを交わしただろう。
白いうなじに、髪に、何度唇を落としただろう。
そのたびに喜代美はふうっと熱い吐息をつき。
潤んだ瞳で小草若を見上げる。
不思議なことに、口移しで教えたその部分は、二度と間違えるということを知らないようで。
よどみなく、高く低くその唇から紡がれる「寿限無」は、まるで自分の知らない歌のように響く。
「兄さんの、口移し、すごいです…」
すっかり一席をこなして、恍惚と小草若の胸に頬をよせ喜代美は呟く。
「また、お願いしても、ええですか…?」
「ええよ…喜代美ちゃんが望むんやったら、いくらでも」
自分は、寿限無しか満足にさえずることはできないのに。草々のように、輝く才能があれば。
望んでもせん無いことなのに。
「小草若兄さん、ほんまに、ありがとうございます…」
自分を見上げる喜代美の大きな目が、あまりにしっとりと艶かしく輝いて。唇がつやめいて自分を誘うものだから。
初めて、その唇に口づけた。そう、落語の口移しではない口づけを。
「今のは…なんの口移しですか?」
「今のは、、、俺の気持ちの。」
喜代美は、花が開くようにふわっと微笑んだ。それは底抜けに、花のように。
大好きな、可愛い喜代美ちゃん。これほど人を好きになったことは…ない。
きっと今夜、この子をこの腕に抱いて自分のものにするのは簡単なのだろう。
今も押し付けられた体の柔らかさに、甘い香りに、抱いてしまえとどこかが小さくささやく。けれど。
酔ったこの子を、酔った自分が抱くのは…あんまりにもあんまりで。
きっと、酔ったこの子は今夜のことは覚えてはいないだろう。そんな記憶の断片にして欲しくはないから。
とろとろと眠りに落ちかけた喜代美のために、毛布と布団を敷いて。
自分は2階の自室で眠ろう。今夜のことは、彼女にとってはすべて、夢なのだから。
…案の定その日の夢見は最悪だったけれど。
1月4日。新年寝床寄席の日。
前座の喜代美は「寿限無」をかけ、それはそれは見事にこなしてみせた。
歌うような抑揚は、小草若の胸を少し切なく焦がしたけれど。
ぎりぎりまで仕事のあった小草若はその日は高座に上がらなかったけれど、
続く四草、草々、草原兄さんに師匠の落語もそれは見事で、新年初の寝床寄席は大盛況に終わった。
「若狭!ほんまに今日は良かったな!あのド下手くそな寿限無をここまで仕上げるとはな!!」
草々が嬉しげに、喜代美の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「ほんまやで。正月前まではこれはかけられんなぁと正直思うとったからなぁ…」
草原兄さんが感慨深げにうんうんとうなづく。
「何や秘密の特訓でも、したんちゃいますか?」
四草が薄く笑う。ほめているつもりなのだろうが相変わらず判りにくい。
師匠はただ、目を細めて笑っている。
磯八さんや仏壇屋のおばはんやらも、口々にほめ言葉をかける。
喜代美はそんなほめ言葉ににっこりと笑って頭を下げて、すっと立ち上がった。
そして寝床のカウンターで酒を飲む小草若の隣へと歩いてくる。
「喜代美ちゃん、ほんま底抜けに良かったで。」
そう言って微笑んでやると、喜代美の顔がぱあっと輝いた。
「ありがとうございます。兄さんにそう言ってもらえて、ほんま嬉しいです…。
元旦に小草若兄さんが特訓してくれたから。兄さんのおかげです。」
「また、口移しで…教えて下さいね。」
(落語も、それから気持ちも。)
喜代美がそっと、うたうようにささやく声。それはやっぱり、夢の中のことのようで。
思わず自分の頬を力まかせにつねりあげる。
涙が出るほど、痛かった。
以上です。本当にお粗末でした。
無駄に長いばっかりでエロがなくて、手を加えようか迷ったのですが投下。
小草若ちゃんの妄想を現実化したらどうなるかな、と。
や、どうもなりませんでしたね。
名作ぞろいの中、大変失礼致しました…。
GJです!!!
うわあああん小草若〜!
底抜けに優しいヤツが少しでも報われて良かった!
>>483 GJ!!!!
四草祭りに今度は小草若!
毎日ありがとうございます
いやー、エロかわいかったですよ!
あの寿限無の妄想大好きで、何度繰り返し観たことか!
すごく嬉しい
小草若ちゃん底抜けにおめでとう(つд`)
その後の2人の行方も気になる…
底抜けにGJですがな!
>>466 GJ!四草、鋭すぎw小草若、無邪気すぎw
内弟子部屋の場面とか静かに艶っぽくてすごいよかったです。
>>483 キタキタ小草若〜!!底抜けにお待ちしてましたがなあ!GJGJ!!
まぁた、うちの喜代美の、かわいいこと!(Byおかあちゃん@多分スタパ)
小草若の優しさも出てて、すごいよかったです。幸せになれよ〜〜!
四草×若狭も大好きですが、小草若×喜代美も大好きだあ〜。
素敵な話がたくさん読めて、ほんとに嬉しいです。
ちなみに、皆さん書いてるようなのでこそっと書いちゃいますが。
450にたくさんレスくださってdでした。嬉しかったです。
>>483 うわああああ、小草若が幸せなのにほっとして泣いた!!
よかったな、小草若〜!!!(感涙)
もし、喜代美と一緒になれてたら、もうちょっと早く自信が持てたかな、
とか考えると切ないわけで・・・2次創作でも幸せな小草若を見ると、
本当にほっとします。
495さんと同様、四草×若狭も、小草若×喜代美も、どっちも好きだぁ〜。
ところで、第一席からずっとみてますが、上記2つの作品が多いとは言え、
割とあらゆるカップルが出て来てるように思うんですが(正平×A子とか、
鯖家若夫婦とか、草原兄さん夫婦とか、師匠夫婦とか、和田夫婦とかも)
・・・四草×A子ってのは見たことないなぁ、と気付きました。
自分も書けないんですけどねw
ずっと本編を小草若→喜代美←四草で見ていただけに。
なので、自分は四草をメインに据えると、自動的に相手は若狭になるんですが、
他の方はどうなんだろ??と、ふと思った次第です。
>>496さんがおっしゃるように自分も
子草若→喜代美←四草だなあ
自分的には喜代美のほうが少女っぽくてかわいらしいので好きなだけかも
A子はキレイだけど、何となく喜代美のほうがセクシーに見える・・・
いやあくまでも私見です、失礼w
A子と小草若だと、どっかでお互い違う人(喜代美・草々)を想ってそうで難しいんだよなあ…
それでお互いがお互いに罪悪感みたいな。
A子は後に、草々との馴れ初めを大笑いしてB子に話して聞かせるくらいだから
(by上沼ナレーション)
そこは吹っ切れてそうな気がする。
同意。
>>499 そこのナレーションを聞いた当時は、A子もB子も草々のことを吹っ切って、
「いや〜、お互い草々さんのことを好きだったことあったよね〜」って
展開になるのかと思ってたなぁ・・・。
>>497 自分も喜代美の方が好きだからかな、小草若→喜代美←四草に思うの。
空気読まずに四草×喜代美不倫エロなしです。
二次創作はほとんど初心者な上、関西弁が不自然かつ
無駄に長いので読みにくかったら申し訳ないです。
草々×若狭好きな方は避けたほうがいいかも?
とりあえず暗いです。
503 :
赤い絲 1:2008/04/20(日) 00:11:25 ID:qHwrlS0/
上手くいっていないんじゃないか、と漏らしたのは草原だった。
ひぐらし亭での落語会の打ち合わせを終え、久しぶりに兄弟子と二人で
寝床で飲んでいるときに耳にした。
「草々兄さんと若狭がですか」
言いながら、四草は先刻会った兄弟子とその妻を思い出した。
弟子も増え、子どもは四歳になった。
高らかに宣言した通り、かつて女流落語家として活躍していた妹弟子は我が子と
弟子の面倒に加え、ひぐらし亭の雑務をこなす、多忙な日々を送っている。
そんな若狭の頑張りを我が事のように自慢してきた草々に嫉妬まじりの苛立ちを
感じたというのに、実は上手くいっていないというのか。
「あんな上手くいってそうやったのに」
「俺がこんなん言うのもなんやけど、あの二人は夫婦いうより戦友というか、
同志みたいなもんやからな。子ども生まれて、弟子も増えたらもう、そのな」
草原が言葉を濁した。徒然亭の落語を守り、支えるという点ではこの上なく上手く
いっている二人だが、夫婦として――すでに遠ざかっているんじゃないかということだった。
何年経っても相変わらず夫婦仲の良い草原だからこそ、気付いたのかもしれない。
アパートへ戻る道すがら、夜の静寂に包まれながら思い返す。
浴衣は気持ちが引き締まるんですよと高座を離れても和装の若狭が笑った姿。
帰り際に見た斜め後ろ、襟を抜いた首筋に漂う色香を確かに感じた。
――もうずっと昔に封じ込めたはずの感情が白日の下に晒される。
明かりの消えた中華料理店の看板が目に入って、足を止めて深くため息をついた。
504 :
赤い絲 2:2008/04/20(日) 00:12:07 ID:qHwrlS0/
トントン、と軽いノックにおざなりに返事をし、確かめもせずにドアを開けた。
数週間前に連れ込んだ女だろうと思っていたら、夢に見た女が立っていて四草はドアノブを握ったまま固まった。
「四草兄さん、今日はオフですよね?」
「……若狭、なんで」
「ちょっと――話聞いて欲しいなと思って」
いいと言う前に四草の脇をすり抜けて部屋に上がりこんだ妹弟子は、朝ごはん作りましょうかと
明るい声で言ってにっこり笑った。
その顔に、一抹の翳を見る。
「いや、いらん」
起きてコーヒーを飲んでいたところだったので、布団もそのままだったが、若狭は気にする様子もない。
四草が動く前に、さっさとキッチンに立って自分の分のコーヒーを淹れ始める。
黙って座りながら、四草はその後ろ姿を見つめた。
いつもはまとめ上げている髪を下ろし、明るい色の洋服をまとい、綺麗にメイクを施している。
ひぐらし亭では見せない外見に、改めて妹弟子の持つ華に気付かされる。
目鼻立ちが美しい女、スタイルが良い女ならいくらでも見てきたし、遊びもした。
そういう女達に比べれば見劣りするかもしれないが、彼女の纏う空気が、柔らかくも明るい気分にさせてくれる。
だから――まだその華が一分も開花しない頃から、ずっと見続けてきたのに。
「草々兄さんは高座か」
子どもじみた恋愛感情などすぐに薄れていくと思っていたのに目論みは外れ、
目の前の妹は他ならぬ兄弟子のものになってしまった。
内弟子の頃、毎日顔を合わせていた日々。
惚れた兄弟子を想いながら涙を落とし、ため息を漏らす喜代美を何度抱きしめようと思ったかしれない。
そうして機を待っている間に、状況は変化してしまった。
人のものになった女に執着しても無駄だと割り切ったつもりでいて、ごまかしきれない劣情に自嘲した。
もう、十年以上経っているのに。
自分だけは変わらない。
「昨日から地方公演なんですよ。帰ってくるのは明日の夜です」
カップを持った若狭が、向かいに座った。会話は途切れ、コーヒーもそのままに互いを見つめる。
「女性にうるさい四草兄さんに聞きたくて来たんです」
「うるさいって、お前な」
「――わたし」
口を開きかけて、言い淀む。揺れる目線がコーヒーと四草をさまよった。
「今のわたし――女に見えますか? ちゃんと、女ですか?」
涙ぐんでいるかのように濡れた瞳、薄く開いた唇が、手を伸ばせば届く距離にある。
人生でただ一人だけの、落とせなかった女。
憎いほどに愛した女が、女であることを問うている。
「そんなん、草々兄さんに聞いたらええやろ」
内心の動揺を悟られないように目を逸らしながら言うと、なにか呟かれた。
「なんやて? 聞こえへんで」
「草々兄さんには、女は必要ないんです……。兄さんが求めてるのは、良妻賢母なおかみさんだから……」
伸びた髪が肩を滑り、頬に翳が落ちる。
今にも泣き出しそうな無防備な表情で自分を見る妹弟子に、四草ははっきりと欲望を感じた。
「昔よりずっとええ女になったな」
静かに立ち上がって若狭の前に廻ると、膝をついて目線を合わせる。
何度も繰り返し夢に見た情景――この部屋で、この腕で抱きしめる現実。
ほんの一瞬だけ逡巡したのは、その名前。
「喜代美」
懐かしい名で呼びながら抱く腕に力を込めると、ゆっくりと背に手が回された。
その動きも、聞き取れないくらい小さな声で四草兄さんと呟く声にも。
永く封じ込めた想いが溢れ出して、強く、強く抱きしめた。
505 :
赤い絲 3:2008/04/20(日) 00:12:36 ID:qHwrlS0/
落語を大事にしすぎるあまり、離れることしかできなかった。
そのやるせなさから救ってくれたのが、まだ十代の、四草から見れば子どもそのものの喜代美だった。
諦めていた落語の世界に戻る興奮に、惑わされたのだと思い込んだ。
女の欠片も感じさせない鈍くさい少女になど惹かれていない。
そう――足元の揺れに心の動きが勘違いしている、いわゆる吊り橋効果と同じことじゃないのかと。
そんな大いなる欺瞞は、後に深い後悔をもたらすことになった。
「一門会の打ち合わせ、明後日やったな」
関係を持って数ヶ月、二週に一度ほどのペースで喜代美は四草の部屋を訪れていた。
事を終えた後で、腕の中にいる女に話しかける。
「会うの、嫌ですか。草々兄さんと」
「んなことあるか。上手くやるわ」
「……でも、兄さんらに心配かけるかもわからん」
草原が気付いた頃よりも、草々と若狭夫婦のぎこちなさに首を傾げる人が増えていた。
ひぐらし亭で見る分には、ビジネスパートナーとして極めて上手くやっている。
しかし、夫婦で食事に招かれたり付き合いに顔を出したりするときに、聡い人なら
見抜くであろう不協和音が響くようになっていた。
大半の人は、落語から離れたところで見せる、草々の妻に対する態度が問題なんじゃないかと思っていた。
若狭が望んだ人生は本当にこんなものだったのかと、残念に思う人も少なくなかった。
「――喜代美」
人の道に外れているという自覚はある。
兄弟子の妻を寝取っているのだから。
それでも一度だけで済まなかったのは、喜代美が自分にだけに見せた女の貌を知ってしまったせいだ。
腕の中にいる間は無邪気といっていいほど安らかな表情をしているのに、肌が離れると不安そうな顔を見せる。
いつまでも腕の中に閉じ込めておきたいと、抱くたびに思った。
けれど、喜代美のいるべき場所はここではないということも苦しいくらい判っていた。
だからまた、己を騙す。
「もう、ここへ来ないほうがええんとちゃうか」
離れられないように快楽を教え込み、女としての喜びを与え、慣れさせた頃に言う科白ではない。
至近距離で見上げる目がひどく悲しそうで、見ないで済むようにその小さな頭を胸に抱えこむ。
「四草兄さん、ずるい……」
それは責めるというより、ただ悲嘆に暮れているというような呟きだった。
「あんな辞め方したお前が、不器用なりに頑張って今の立場築いたんやろが。全部台無しにする気か」
子どものことだってあるやろ、と言うと、腕の中で細い肩がかすかに震えた。
「昔、あんなに草々兄さんのこと好きやったやないか。今からでも遅うない、やり直せるで」
506 :
赤い絲 4:2008/04/20(日) 00:13:09 ID:qHwrlS0/
「四草兄さんは、赤い糸って信じてますか?」
それ以上聞きたくないと言わんばかりに、喜代美がそんなことを言い出した。
もぞもぞと動いたので腕の力を緩めると、顔を上げた喜代美は両手で四草の左手を掴んだ。
「小指に結ばれているって、わたしずっと信じてました。草々兄さんのこと好きになって……
ダメかもしれないって思った時期も長かったけど、結婚したときは本当に嬉しかった……」
喜代美の小さな手に包まれている、自分の左手を見る。
「わたしと草々兄さんは、赤い糸で結ばれてたんだって、運命なんだって、涙が出るくらい幸せだったんです」
まるでもう終わった過去の話をするような喜代美に、声を掛けることすらためらった。
黙っていると、さらに続ける。
「糸なんて、簡単にほどけてしまうんだって、気付かなければ良かった――」
顔を伏せて肩を震わせる喜代美の背を空いている右手でそっと撫でた。
簡単にほどけてしまうような糸が運命だとでもいうのか。
それならば、ほどけた時点で自分に絡みつけて、決して離れられないようにしたのに。
四草は自分の手を包む小さな両手と、その手に額を当てて涙をこらえる喜代美を瞬きもせずに見つめた。
あの恐竜頭の兄弟子はそんなこと微塵も考えたことはないだろう。
四草が自分の妻に執着していることさえ、今に至っても気付いていないのだから。
「どうして、四草兄さんとつながってなかったんやろ……」
つなぐ機会は、弟子入り前も、内弟子になってからも、いくらでもあった。
本音は、拒まれることを避けていただけのことだ。
まっすぐに感情をぶつけて拒絶された三番弟子の二の舞は、プライドが許さなかった。
「ほどけても、また結び直したらええやろ」
そしてまた、本心を隠してプライドを守る。
喜代美に対してだけは、上手い算段のひとつもこなせない自分を嗤った。
「草々兄さんとちゃんと向き合うて、話し合うて、そんでもって糸でもなんでも結び直したらええやないか」
「今さら、いい奥さんなんてできん……」
「大丈夫や。お前ならできる」
「やっぱり、四草兄さんはずるい」
小指の付け根に触れる唇に、胸のどこかがちくりと痛む。
その手を掴んで、ふたりだけでどこまでも逃げていく。
夫も子もある若狭が築いてきたおかみさん業や落語家の妻としての立場、そして
すでに中堅の域にある自身の落語家としてのの立ち位置。
そんな淡い夢想とは天秤にかけるまでもない。
映画やドラマのようには、現実からは逃れられないことは、もう知りすぎている年齢になっていた。
「俺がずるい男やいうことくらい、よう知ってるやろ」
ずるい――聞こえるか聞こえないかくらいの声音に愛おしさが募り、四草は小さく唇を噛んだ。
507 :
赤い絲 5:2008/04/20(日) 00:14:25 ID:qHwrlS0/
吊り橋が揺れる。心拍数が上がる。その先に、異性が微笑んでいる――。
家族があり、充実した日々を送っているかのような喜代美が見せた隙に囚われたのも、同じこと。
ひぐらし亭の楽屋や事務所へ踏み入れるときに走る緊張感と、若狭の名で働く彼女と
顔を合わせるときの秘めた空気も。
全部、同じこと。
ただの吊り橋効果じゃないかと何度も言い聞かせて、外へ出た。
「四草」
一番顔を合わせたくない男に背後から呼ばれて、険悪な表情になる自分に気付く。
「草々兄さん。まだ打ち合わせあるんとちゃいますか」
振り向く顔は、いつものポーカーフェイス。
夕暮れの暗がりの中、天狗芸能の入っているビルの前で、兄弟子がいや……と詰まる。
「ちょっと、話があるんやけど、ええか」
遠くで、カラスの鳴き声が聞こえた。それはなにかの終焉を予兆させるような、暗い声。
「ええですよ。少しなら」
一分の動揺も見せない自信はあった。連れ立って近くにある古い喫茶店に入る。
「どないかしはったんですか」
珍しいじゃないですか、と言いかける四草の言葉を遮って、草々は身を乗り出してきた。
「若狭は今、幸せなんやろか」
「……は?」
「少し前まで、よくため息ついたり、疲れた表情見せることが多かったんや。子どもも反抗期やし
弟子も増えたしで大変なせいや思ってたんやけど」
「そう思うなら少しは労わってあげたらどないですか」
ここに至っても師匠のおかみさん像を聞かされているようで、胸の奥でちりちりと不快な炎が上がる。
「いや、そう思っとったとこやったんやけど」
「けど?」
508 :
赤い絲 6:2008/04/20(日) 00:14:46 ID:qHwrlS0/
「最近、明るくなったような気がしてな。前より余裕が出てきたいうか、その――なんか
吹っ切れたような感じがするんや」
――糸を結び直したのだ。
そう思った瞬間、反射的に自分の左手を見た。
悲しそうな表情で口づけした喜代美の感触がよみがえってくる。
「だから、逆に心配になったんやけど、四草はどない思う?」
この恐竜男は、どうしてこうも無神経なのか。
もうずっと過去のことになった、草若襲名時の諍いまで思い出してさらに不快感が増した。
「なんで僕に聞くんですか。草原兄さんの方がふさわしいんちゃいますか」
「いや、草原兄さんに聞いたら、俺に女のことは聞くな、そういうことやったら四草が適役やろ言うてたから」
「全く、人のことなんだと思ってるんだか」
草原に見抜かれていた――前に置かれたコーヒーに手を伸ばし、そのまま喉へ流し込む。
苦味が体内に落ちていく。
脳裏から離れることのない喜代美の笑顔が揺らめいた。
「若狭なりに悩んだり迷ったりしたんでしょう。草々兄さんに気を遣って言わんかっただけで、
色々あったんちゃいますか」
「そ、そうなんやろか」
「でも、前向きになったんならええんじゃないですか」
残っていたコーヒーを一気に飲み干した。
目の前の男はまっすぐな目で自分を凝視している。
そう、ずっと苦手だった目だ。そして、喜代美が愛した目。
「若狭は十分幸せやと思いますよ、僕は」
鉛を吐き出すように言うと、わざとらしく店内の時計を探すふりをした。
「そうやろか……いや、そうやな、きっと」
「もう行かんと。草々兄さんも、弟子らが待ってはるんちゃいますか」
「おお、そやな。ありがとうな、話聞いてくれて」
「……いえ」
店の前で別れ、互いに背を向けて歩き出す。
カラスの鳴き声をBGMに、落陽に向かって歩く自分がはまりすぎていて、立ち止まって電柱にもたれた。
吊り橋の上を歩いてきたような、重い眩暈に襲われる。
――もう、この腕の中に温もりが戻ることはない。
人生でただひとりの、愛した女。
乾いた笑いが込み上げてきて、肩を震わせる。
電柱を勢いよく叩いた左手に看板がぶつかって、痛みが走った。
滲む視界で見ると、小指の付け根が切れ、赤い糸が流れていた。
509 :
502:2008/04/20(日) 00:16:02 ID:qHwrlS0/
以上です。
なんかもう色々申し訳ないですorz
いやいや、素敵でしたよ
やっぱ切ない四草はイイねえ
GJです!
>>502 すごい!エロなしなのになんか官能的で切なすぎる。
兄弟子たちの描写もリアルでGJ!!
ひとつだけつっこみ堪忍。草々と若狭の御子が4歳ってことは
四草は49になってもまだ部屋に女連れ込んでるのかとそこだけ笑いました。
けど四草ならありそうだw
草々ファンには申し訳ないけど
>>502さんGJ!!!!!
切なすぎる…ほんとに目がうるんできた
4ページ目のプライドのくだりは小草若エピとともに胸に突き刺さりました
草々に対しポーカーフェイスを貫く姿の描写もいい
名作が続きすぎて怖いぐらい
職人のみなさん、本当にありがとう
>>509 四草あんまりに切ない…。一度手にしただけに、いっそう切ないです。
泣きたくなるようなGJ。また楽しみにしております。
本当に四草にはこんな風景が似合いますね。なんちゅう切ない男でしょう…
>>491なのですが
読んで頂いてありがとうございます。暖かい感想を頂けて本当にうれしいです…!
あと、本当に蛇足なのですが、
>>493さん、
この後には実は、喜代美の笑顔という支えで重圧からも逃れて、
喜代美に口移しで落語を教えるという目標も加わって
落語に真剣に取り組み始める小草若…という設定でしたん。アレなので省きましたがw
さっき「寿限無」の内容間違ってることに気づいて自分恥ずかしすぎ。
チェックいれたつもりがなんてこと。『水行末、雲行末、風来末』でした。
結構省略する
(・∀・)イイ!
>>483さん、
>>502さんと小草若×喜代美、四草×喜代美の神職人様がいらしているので、
ネタ系でひとつバカバカしい投下をして逃げます。
新婚さん下ネタギャグで徒然亭兄妹ズ。
カプなし。エロなし。オチなし。
しんこん【新婚】結婚したてであること。主に結婚から一年未満をさす。
嬉し恥ずかし新婚生活スタート。
晴れわたった青空は高く、空気も澄んでいてお日さまはポカポカ温かい。
目に映る全ての景色がバラ色に輝いて、自分たちを祝福しているかのよう。
ウキウキと庭掃除に勤む若狭は、くふ、と幸せな笑みを漏らす。
てんやわんやの結婚式を終えて、ふたり初めての夜。
疲れきって寝てしまった花婿の隣りにそっと寄り添うと、長い腕が背中にまわされて。
そのまま抱き合って迎えた朝。
精悍な顔が腕の中の存在に気付き、ちょっと目を丸くしてから
染み入るような笑顔で花嫁に声をかけた。
「おはよ、若狭」
(きゃあああああああああっ)
幸せな朝の記憶。
思わず箒にすがってしゃがみこんでしまった若狭は、それをひとり噛み締めていた。
そこへ。
「なにしとんねん、若狭」
無情にも平板な声が現実に引き戻す。
「喜代美ちゃん!?大丈夫か?」
「おはよう、若狭…なんや顔赤いで」
「…あ、おはようございます、草原兄さん、小草若兄さん、四草兄さん」
うちそろってやって来た兄弟子三人に、慌てて立ち上がりぺこんと頭を下げる若狭。
その様子をじ〜っと見た四草は落胆の溜息を吐いた。
「なんや、まだか…」
「よっしゃ俺の勝ちやな、四草はよ出し」
項垂れる四番弟子から勝ち誇ったように漱石を一枚取り上げる筆頭弟子。
「…兄さんら、なにを賭けはったんですか?」
おそるおそる尋ねる妹弟子。嫌な予感がする。
「ん、おまえらの初夜」
「しょ…!!!」
とんでもない事をしれっと吐かす兄弟子に二の句が継げない。
口をぱくぱくさせる若狭に、千円ゲットした草原が神妙な顔で向き直った。
「若狭、今日はおまえにちょっと話あんねん」
庭先で話すことやないから、と言われたので。
若狭は元・内弟子部屋の新居に兄弟子たちを招き入れた。
「あのな喜代美ちゃん、底抜け〜に言いにくいことなんやけどな…」
暫くの沈黙の後、小草若が口火を切る。
が、モゴモゴと言い淀む彼に代わって草原が引き継ぐ。
「若狭、草々のアレ見た事あるか?」
「あれ?」
首をかしげる若狭。
どう言ったらいいのか…と顔を見合わせる小草若と草原を尻目に。
「チンポコや」
「なっ…!!!」
露骨な四草のセリフにまたもや若狭が絶句する。
「四草…もうちょっとオブラートに包んでもの言え。日本人なんやから」
「…で、どうなんや?」
兄弟子二人からはたかれた頭をさすりつつ四草が訪ねる。
「あ、あ、あるわけないやないですか!!」
硬直が解けた若狭はほとんど悲鳴に近い声で叫んだ。
「なんなんですかいきなり!!わ、わたしはそんな変態やありません!!!」
…いや、その変態なことをすんのが夫婦なんですけど。
未通娘丸出しの反応に三人が溜息をつく。
「あのな若狭。結婚したちゅーことは、草々とそういう関係になるんやで?」
噛み砕くように説明する草原の言葉に、ぽうっと赤くなる若狭。
「それは…そうですけどぉ…」
モジモジと畳にのの字を書く初心な仕草は、とてもじゃないが22歳の成人女性とは思えないほど可愛らしい。
いや、可愛らしいのはいいんだが。
「確認するようやけど、草々が初めてか?」
半ば確信的な質問に、こっくりと頷く若狭。
「あー…あのな、見ての通り大男やろ草々」
処女の花嫁は話が見えずにきょとんとする。
「体でかい分、どこそこ大きいんやあいつ…手も足も…あっちもな」
「………え」
「脅すわけやないけど、マグナム級やからな…草々のは」
「ろくに使えもせえへんくせに、モノだけは立派なもんぶら下げてますからね」
「ましてや初めての若狭にアレはきっついやろな」
口々に好き勝手な事を言う兄弟子たちに、どんどん若狭の顔が青ざめる。
「まあ、草々も喜代美ちゃんにいきなり襲いかかったりはせえへんやろ」
そんな妹弟子を慰めるように小草若が取り成す。
ほうですよね、草々兄さんがひどい事するはずないですもんねと
ほっとしたよう呟く若狭。
その若狭をどこか難しい顔で見やる草原。
「若狭、ちょっと髪下ろしてみ?」
兄弟子に命じられるまま、若狭はまとめ髪に手をのばす。
くせのないセミロングの黒髪が、さらりと白い頬にかかる。
兄弟子たちをひたと見つめ、不安げに揺れる大きな瞳。
うっすらと開かれた桃色の唇は、紅もひいていないのにどこかコケティッシュで。
ほぉ…という感嘆の声が男たちから一斉に漏れる。
「喜代美ちゃん…やっぱりめちゃめちゃ可愛い…」
「もともと器量は悪ないからな、若狭は」
昨日の白無垢姿を思い出して草原は目を細める。
「顔だけやないですよ?」
若狭の首から下をじっくりと眺めた四草が唐突に言い放つ。
「上から83、58、84…てとこか」
「!!!」
咄嗟に胸を隠す若狭。もちろん服は着ているのだが。
「どんなに着脹れていようと女のスリーサイズ外した事ありません」
驚く他三名に涼しい顔をして告げる四草。
「なんちゅー羨ましい能力や」
「しかも、しっかり当たってるようやな」
真っ赤になってうつむく若狭を見、呆れたように草原は言った。
「てことは喜代美ちゃん…うわ、グラビアアイドル並やん!」
あらためて若狭を見つめる兄弟子一同。
「これは…やばいかもしれん」
男たちは、ここにはいない落語バカの兄弟弟子を考える。
あまりにも落語一筋!な二番弟子は結婚前まで女っ気というものが全く無かった。
一時期、若狭の幼馴染みの清楚な美少女と付き合ってはいたが、
デート中に抱き締めた程度のことを得意げに語ってたところを見ると、
あの堅物な性格からして清い関係のまま別れたというのが妥当だろう。
つまり、何年も禁欲生活を送ってきたマグナム級のアレを持つ男の前に
愛らしい顔立ちをしたしっかりナイスバディの処女が
どうぞお食べくださいと差し出されるわけで。
飢えたオオカミの前のウサギちゃんというベッタベタなシチュエーションが
三人の脳裏を過ぎる。
「あかん、喜代美ちゃんが壊されてまうっ!!」
頭を抱えうおおおと呻く小草若。
そんな彼の妄想を笑えない残りの男二人。
「ど、どねしたらええんでしょおお」
当の若狭本人は既に半泣きである。
無理もない。
どよーんと思い空気の中、四草がおもむろに口を開く。
「ここはひとつ、兄弟子の僕らが一肌脱ぐとしますか…小草若兄さん」
「なんや?」
「小草若兄さんの貧弱なブツなら、若狭の練習台にはちょうどええんとちゃいますか?」「…なにを言ってるのかな四草くん?」
「だから草々兄さんの巨根が突っ込む前に、若狭の処女膜ぶち抜いたろゆう話です」
思いっきり倫理を踏み外した提案をする四番弟子にポカンとする一同。
ややあって。
「…誰のナニが貧弱やねん!!!」
「やらんのですか…草原兄さんは無理ですね。一穴主義ですし」
「ちょっと待て、その一穴て緑か?緑のことか!?」
「仕方ないですね。僕がヤりますか、気ぃ進みませんけど」
「て、なにヤる気満々で前突っ張らしてんねん!!!」
ベルトを外す四草を絞めあげる草原と小草若。
もはや茫然自失の若狭。
阿鼻叫喚の修羅場と化した離れの間。
そこへ
「…なに騒いでんねんおまえら。草原兄さんまで…」
噂の二番弟子が玄関先に突っ立っていた。
「そおそおにいさああああん!!!」
夫の姿を見た途端、弾かれたようにびええんと涙まみれの若狭が飛びついてくる。
「そうそうにいさんがまぐなむでおそってきてわたしもへんたいやてほんまですか!?」
「……………………………は?」
全く状況が読み込めない上に、支離滅裂の若狭語でさらに混乱する恐竜頭。
ぴーぴー泣き喚く新妻に抱き付かれた胴体の陰からひょっこり師の草若が顔を出す。
「あかんな〜草々、新婚早々ヨメいじめか」
「師匠、ダジャレてないでなんとかしてください!」
「知らんがな」
呑気なボケツッコミを交わす師弟の横を、ばつの悪い顔三つが通り抜ける。
「ほな師匠、お邪魔しました」
「草々、喜代美ちゃん大事にせえよ?」
「おい四草しゃっきり歩かんかい!」
そそくさと去って行く兄弟弟子の後、引っ付いたまま離れない花嫁と取り残される花婿。
「若狭、とりあえず泣きやめ、な?」
「子泣き爺ならぬ子泣き嫁やな」
「だから笑ってないでなんとかしてください師匠!」
「知らんて」
嬉し恥ずかし新婚生活。
晴れわたった青空は高く、空気も澄んでいてお日さまはポカポカ温かい。
ふたりの未来はきっとバラ色に祝福されてるはずさ。
God bless you !
カラオケの演奏停止のよーに 終
>>516 GJ!
笑ったー!
下ネタでほのぼのしてていいーー
シリアスも好きだけど、こういうのも大好きです。また書いてくださいね
いや〜喜代美、初夜大変だったんだろうねw
なぜか分からないけど
>「おい四草しゃっきり歩かんかい!」
がツボったw
>>502 最後の、草々と話す四草の気持ちの揺れがいい。
四草が男くさくて良かったです。
>>515 徒然亭はこうでなくっちゃって感じですよね。
山田花子風口調の喜代美を思い出しました。
久々の天然ボケキャラが可愛い!
>>516 おお〜GJGJ!!!
もしかして「終われ」と同じかたかな??
遠慮のない四草がおいしすぎるー!
さわやかな朝にぴったりですわwwありがとう!
>>513さん、直接お返事くださって感激です
気が向いたらor過疎ってきたりしたら投下してみてくださいね
>>516 朝から大笑いさせてもらいました
ここんとこ切なすぎた分はじけまくったような四草がツボでした。
コミカルもシリアスもクオリティ高くてこのスレ大好きだ〜
>>516 GJです〜。めちゃくちゃ笑えて読むのに時間がかかったよ。
自分の脳内で劇中の音楽(サントラ買ってないから曲名はわからん)が
自動再生されましたwwww
それぞれのちりとてちんやらスピンオフやら総集編やらで
職人の皆さんがいよいよ鼻息荒く創作活動に励んでくださることを祈ります
皆さん改めてGJGJGJ!!!
>>502 うわぁ・・・今までの四草×若狭の中で、1番切なかったかも・・・。
心身ともに手に入れるチャンスがあったのに、手放してしまった四草が哀しい。
そして、ラストがまた泣けました。すごい。
>>516 苦しいような話が多かったから、笑い話ありがとう!です。
若狭語上手いです! 意味不明っぷりがすてき。
ちりとての神スレってココですか?
みんなホンマにすごいオモロいです。
お久し振りです、以前鼻毛や変態柳眉書いてた者です。
最近すごい大量に投下されていてほくほくしてます!
皆さん ネ申 す ぐ る.......orz
GJGJGJ!
今更若狭←小草若・四草を考えついたけど、糞になりそうな悪寒
暫くマターリROMります。
出来上がったら投下しにきます…
>>518 ×思い
〇重い
投下する前にとりあえず誤字と改行なんとかしよーぜ>自分…orz 泊とかさあ…
神々の作品が次々に投下される中、あんなもん割り込ませる自分の厚顔無恥がすげえ。
読んで下さる方々に重ね重ね感謝です。
>>502さん
繊細で流麗な四草の物語の後に、アホ四草でぶち壊しにして本当に申し訳ないです…
四草×喜代美はやはり共犯者の関係が一番萌えます!
ラスト、落陽と流れる血のどろりとした赤の対比がたまりません。
次回作も是非!
いやいや、位置的に並んだ
>>531さんのも
>>502さんのも
よりお互いを引き立て合ってて、どっちも素晴らしかったですよ
ドラマが終わってからも、素敵な作品が次々と読めるので幸せです〜。
このスレを知ったの遅かったので
以前携帯から過去ログへの行き方を教えてもらって(その節はありがとうございました)、今第二席を読んでいるのですが523以上読めません。
第二席はここで終わっているのでしょうか?
それにしても第一席も第二席も、素敵な作品がたくさんあって作者様にホント感謝です〜。
768までレスがあるよ
何で読めないんだろ?自分は読めてますけど…
>>533 自分も第2席、進めなくなったことありましたわ。
原因はわからないけど・・・更新停止かと思ってた。
PCからなら読めるんですが・・・
皆さんにつられて保留解除しようと書き進めたのが完成しました。
草々×若狭+四草×若狭+草々×A子、みたいなものw
エロ描写は、たかが知れ(爆)。
時間軸は・・・常打ち小屋設立準備中くらいかな。
パラレルな感じで見守って下さい。
かなり長いです、場所貰います。
微妙に設定が変で、かつ美しくないのは勘弁して下さい。
しかし、過去の自分の三作品見たら、カプ宣言は前書きにだけ書いて、
ことごとく本文記事に明記忘れてるがな・・・申し訳ない(汗)。
>>533 携帯からだと第2席途中から読めないみたいです。
何とかPCからどうぞ・・・。
天狗座の楽屋。
「小草若〜、また上手くなったで〜」
草原は機嫌よく、小草若にその日の高座の感想を言った。
師匠の息子であるこの弟弟子は、すっかり持ち前の明るさを取り戻し、
いつか草若を襲名する日に向けて、次第に多くの高座をこなすように
なってきていた。頼もしい限りだ、と草原は思う。
「はてなの茶碗、すっかり板について来たで。な、草々」
一門の中でも、最も名を上げた弟弟子に話を振る。
「嬉しいことやで……小草若は草若の名前を継ぐことになるやろし、
草々は若狭っちゅうおかみさんがおって弟子取って一門を維持しとる」
「……そうですね」
草原の言葉に反応した草々の笑顔は、いつになく曖昧だった。
それも気になったが、草原は、もっと決定的な疑問を口にした。
「ところで、今日は四草は来てへんのか。予定ないはずやろ」
「ああ……」
四草と同居中の小草若は、言葉を濁した。
「何や、暇やったら兄弟子の高座見に来んかい、あいつは」
草々は不満気に腕を組む。
「近くやから、ちょっと説教しに寄ったろ」
「いや、やめたほうがええて」
小草若が慌てて止めた。
「何でや」
「いや、その……女の子連れこんどるみたいなんや。
そんなとこ行ってみい、底抜けに決まり悪いがな」
「まだあいつはそんなことしとるんか!」
生真面目な草々に対しては、小草若の言葉は、火に油を注ぐに等しかった。
「余計一言言うたらな気ぃすまんわ!」
「おい、草々、待てや!」
小草若は、勢いよく出て行った長身の後を追おうとしたが、
「小草若〜、今日のはてなの茶碗、底抜けによう出来とったで〜」
「草若も、きっと喜んでるで〜」
やってきた尊徳と柳宝につかまってしまった。
師匠方を振り払うわけにもいかず、小草若は笑顔で応対する。
「小草若、先行ってるで」
草原は一声かけると、草々の後を追った。
確かに、四草の生活態度には問題ありなのだが、うっかり草々が
頭に血が上ってしまっては、宥め役が必要だろう。
四草の部屋に着くと、草々はドアノブをがんがんと押したり引いたりした。
「……出かけたんとちゃうか」
しまいに壊しそうやなぁ、と草原は心配になって草々を横目で見る。
「サボって外出か」
説教に向けて張り切っていた草々は、忌々しそうに顔をしかめた。そして、
「ほんまにおらんのか?確認したろ」
と、鍵穴に目を近づけて部屋の中を覗き込む。
「お前なぁ……んな怪しげな行動すな」
呆れた草原は、次の瞬間、草々の表情がこわばっているのに気付いた。
「……草々……?」
草々は固まったまま動かない。
ただ、ひたすらに鍵穴を通して見える世界を凝視していた。
扉の向こうからは、微かながら女の声が聞こえる。
どう考えても、じっくり見ていて良いものだとは思えない。
「おい、草々……草々!」
声をかけただけでは気付かない弟弟子にじれて、草原は肩を引っ張った。
ようやく我に返った様子の草々は、奇妙なほどにぎらぎらとした目をしている。
「草原兄さん……この戸、破ります」
「は?」
いやいやいや、それは器物損壊という立派な犯罪やで。
そんなツッコミを入れる間さえ与えず、草々は扉に体当たりした。
元々が古い建物である。
草々の力を以ってすれば、中に押し入るのに、さほど時間はかからなかった。
「四草!お前!!」
扉を破るという作業で、怒りが増幅されたらしい草々は、
怒鳴り声と共に部屋の中に荒々しく足を踏み入れた。
「草々、落ち着け」
後について行った草原は、薄暗い部屋に瞬きをする。
ただ、はっと気付いた様子の四草が、自分は服を着たままであるからか、
急いで女の体に布団をかけながら跳ね起きたのだけは見て取れた。
「四草、貴様……!」
完全に頭に血が上っている草々は、四草を掴み上げると思い切り拳で殴った。
「草々!」
草原の止める声も耳に入らず、草々は再び四草の襟首を掴む。
「草々、止め!」
部屋の入り口から声が聞こえたかと思うと、細身の人物が飛び込んで来て、
力ずくで草々を押さえにかかった。
「下の、中国料理屋に、響いてんねん……!」
小草若が息も切れ切れに言う。
慌てて草原も草々を抑えるのに加わった。
両脇から身を固められて、草々は肩で息をしながら、
目ばかりを憎々しげに燃え上がらせて四草を見下ろしている。
四草の表情は、陰になって見えない。
「草々。何でいきなり……」
草原の問いに、草々は掠れ声で、四草を睨みながら言った。
「お前……よくも若狭を……」
「若狭?」
唐突に出て来た妹弟子の名前を、草原は鸚鵡返しする。
それで我に返った草々は、はっと布団を見下ろした。
「若狭!?大丈夫か?」
薄暗がりでよく見ると、布団から涙に濡れた顔を覗かせている女は、
確かに、この中の誰もが知りすぎるほど知っている人間だった。
若狭は頭をこっくりとさせたが、見たところ大丈夫とは言えない状態だった。
悲鳴を抑えるためにだろう、さるぐつわを噛まされている。
草々は急いでしゃがみ、若狭の後頭部にある結び目をほどいてやった。
それから、体を起こすのを手伝ってやり、背中の方を見て顔をしかめた。
あまり凝視するのは憚られたが、どうやら裸にされた上で、
後ろ手に縛られていたらしい、と草原には察しがついた。つまり……
「四草……」
さすがの草原も、弟弟子の行動の恐ろしさに息を呑む。
「お前、若狭を無理やり犯……」
「やめて!」
若狭の悲鳴が部屋に響いた。
「やめて下さい……!」
「あ……ああ、すまん」
草原は慌てて口をつぐんだ。
確かに、先ほどまでの状態を連想させるのは酷だろう。
「あ、あの、草原兄さん、俺ら、外出ましょ」
張り詰めた空気に嫌気が差したのか、小草若が引き攣った声で言う。
「四草も、出るで」
殴られた後、黙って座っていた四草は、小草若の声に立ち上がる。
「……出前行って来ます」
そう言って延陽伯の従業員服を掴んで出て行ってしまった。
「おい、四草……」
一応は呼び止めながらも、草原は内心ほっとした。
どうやって、この事態に対処していいのやらわからない。
いくら四草の女性関係が派手でも、妹弟子を、しかも兄弟子の妻を、
しかも無理やりにというのは、信じられなかった。
呆然としたまま、小草若と並んで階段に座っていると、
しばらくして草々に伴われた若狭が部屋から出て来た。
「あの……若狭。四草の処分やけどな、ちょっと考える時間くれるか」
「……忘れて下さい」
若狭はうつむいたまま、しかし強い口調で言った。
「一門内部で騒ぎ起こしたら、上方落語界での徒然亭の立場が悪なります。
そんなの師匠が悲しむでぇ……ほやさけ、今見たことは、忘れて下さい」
若狭は顔を上げて、草原や草々の顔を見てから、しっかりと頭を下げる。
「何にもせんといて下さい……お願いします」
「若狭……」
彼女の落語家としての誇りに感動したらしい草々は、若狭の手を取った。
その白魚のように透明な、混じり気なく眩しい腕を、優しくさする。
だが、それで万事解決……と行くわけはなかった。
10日ほど経った頃、若狭が心配で草若邸を訪ねた草原は、
居間から聞こえる談笑の声にほっとして中に入った。しかし、
「……A子ちゃん」
草々が楽しげに話している相手を見て、少し肩を落とした。
「こんにちは」
清海の訪問自体は、特段の驚きもない。
若狭の同級生であり、常打ち小屋を建てるにあたってスポンサーとなって
くれると言うことから、打ち合わせのためにやって来ることも多かった。
だが、先日のことがあっただけに、若狭の精神状態が心配だった。
「若狭は?」
「ちょっと、小浜に帰るて」
なるほど、その方がいいかもしれない、と草原は思う。
何にせよ客人の前であまり突っ込んだ話は出来ない。
草原は黙ってその場に腰を下ろした。
「あ、あの、お茶入れましょうか」
清海は相変わらず気を利かせる。
だが、客にさせるわけにも……と草原は思ったが、
「ああ、小草々が留守やからな、A子ちゃん、頼むわ」
草々があっさりと言う。
「すまんな、A子ちゃん、お客さんやろ」
「ええんです」
清海は屈託なく笑った。
「B子にこっち来る言うたら、ついでに、て家のこと頼まれたんで」
頼むことちゃうやろ、と草原は内心で呆れた。
旦那の元彼女、気が利く、独身。
三拍子揃った友人を自宅の台所に立たせるという発想は、どうかと思う。
いや、若狭の性格を考えれば、普通なら考えられない。
やはり、気丈に振る舞ってはいるが、参っているのだろう。
「あ、草原さん。
草々さんには話したんですけど、うちの会社、常打ち小屋に、
提灯やのうて、もっとわかりやすい看板、出させてもらえませんか」
清海の言葉に、草原は安心する。
彼女と草々の間に、今更何が起ころうというのか。
「ほんまにありがとうな……A子ちゃん」
草々の柔らかな言葉に、草原もしみじみと頷いた。
しかし、草若邸を出る時に、ふと振り返った草原は、再び不安に襲われた。
草々の瞳に狂おしく切なげな色が浮かんでいるのが、確かに見て取れた。
四草の部屋での若狭を見た時よりも、さらに苦しげな……
「草々」
思わず側に寄って囁く。
「しっかり……若狭を支えたりや。
あんなことあった後や……若狭は、お前が頼りなんや」
「……はい」
草々は力強く頷いた。
それでも、草原の胸には不安がよぎる。
あの出来事を機に、草々と若狭の間に亀裂が入ったりしたら……。
ただでさえ許せない四草の行動に、さらに憎しみを感じそうだった。
天狗座に行くと、小草若が他の一門の師匠達と談笑していた。
「あ……草原兄さん」
小草若は何故か気まずそうにする。
そう言えば、あの事件以降、小草若とも顔を合わせていなかった。
そして、勿論……
「四草は、どないしてる」
「ああ……階段から落ちて顔から着地したのが治るまで、
高座出るわけに行かんから、その間バイトする言うてます。
出前ばっかり行きよるんで……全然、喋ることないんですわ」
草々に殴られたことを誤魔化すのに、四草は、言い訳を考えたようだ。
徒然亭として事件を伏せることにしたため、小草若もその理由で通している。
「そしたら、俺が話したい言うても……無理そうやな」
「ほな、連絡取るように、てメモ書いときます」
そしたら、とそそくさと出て行こうとした小草若を呼び止める。
「小草若……お前は、大丈夫か」
若狭は、かつて小草若が恋した女。
そうでなくても、育ちのいい小草若は、女性に対する物腰は柔らかい。
潔癖な価値観を持つ草々とまた違った意味で、四草の行動は許せないだろう。
そんな弟弟子と同居を続けていて、苦しくないのだろうか。
「あれやったら、その、しばらく俺んとこに……」
「いや……バイト先がすぐ下、ってのは楽なんで……」
小草若は、口元だけ小さく笑ってうつむいた。
が、意を決したように顔を上げる。
疲弊した表情の中、目だけが大きく光っていた。
「兄さん、あの、ちょっと後で……」
「草原師匠」
天狗座の係員が、声をかけた。
「もうすぐ出番ですんで、よろしくお願いします」
草原は頷くと、小草若に向き直った。
「ほな、後で話そか」
「いえ」
小草若は、首を横に振った。
「やっぱり、やめときます」
四草には伝えますんで、と言って、小草若は帰って行った。
その態度が気にはなったが、数日間、小草若と連絡が取れなかった。
四草からの連絡も、さっぱりなかった。
若狭のことが気にかかって小浜に電話をしても、大した話にならない。
そして、草々は……顔を合わせても、どこか覇気がなかった。
気になることばかりだ、と思っていたある日、草々が思い詰めた表情で現れた。
「草原兄さん……俺……最低です」
内密の話をしたい、と草々が言ったため、寝床にもどちらの自宅にも行かず、
個室のある行きつけない居酒屋に潜り込んだ。
「若狭を……若狭を助けたらんとあかんのに……。
あんなことあった後で、俺が若狭を見捨てたら……
あいつ、どないなるかわからへん……。
そやから、思い切ろうて、ずっと思てたのに……」
「草々、何でお前が自分を責めんねん。お前も……言うたら、被害者や」
草原の言葉に、草々は頭を抱えたまま、首を振る。
「被害者て言えるのは……若狭だけです」
草々は唇を噛んだ。
あの時、草々は、確かに怒りを覚えた。
裸のまま、さるぐつわをかまされ、後ろ手に縛られていた若狭。
薄暗がりの中、四草は若狭の中に手を伸ばし、彼女が悶え苦しむ様を眺めていた。
女性に対するその行為自体が草々には許し難く、ましてや相手は自分の妻で、
一方で……胸に去来したある感情があり。
部屋に押し入ったのは、その気持ちを振り切りたいのもあったかもしれない。
その日以降、若狭は昼間こそ平然と過ごしていたが、夜になると沈み込んだ。
男に対する恐怖心が芽生えてしまったのか、草々の伸ばした手は拒まれる。
それでも、小草々に対するおかみさん役は、しっかりとこなしていた。
だから、若狭に対する不満は、なかったはずなのに……。
そう、若狭が不満なのではない。
自分が求めている「おかみさん」像に、年々近付いてくれている。
落語をやる自分には、ましてや弟子を取った身には、おかみさんが必要だ。
それなのに、清海が訪れると、なぜ胸が高鳴るのだろう。
再会した当時は、恋人時代との雰囲気の違いに、大した懐かしさも覚えず、
おかみさんをしている若狭が頼もしく見えたのだったが。
清海が本来の清純さを見せるようになると、戻れぬ日々に胸が痛んだ。
その迷いへの……罰だ。
妻が犯されるという事態は、自分の気の迷いが呼んだのかもしれない。
もっともっと、若狭に気をつけてやるべきだったのだろう。
草々には自責の念が生まれ、若狭が刻み込まれた犯された跡を
消してやらなくてはと、抱きしめようとする。
若狭は、身を縮めて、男である自分を拒む。
自分に応えられないことにすまなそうな顔をした若狭は、
しばらく小浜に戻ることにすると、草若邸から姿を消した。
若狭のことだけを考えてやらねばならないのに、
清海が若狭の代わりに家のことをすると現れた時、胸が高鳴った。
叶わぬ夢なのに。
自分は落語をしていて大阪に住み、清海は社長業があり小浜に住む。
若狭のことを抜きにしても、愛し合うには条件が悪すぎる。
そんな理性は、台所から料理を運んできた清海の姿に吹き飛んでしまった。
小草々が、柳眉の会に呼ばれていて遅くなる日のことだった。
時間が……ある。
「A子ちゃん……ちゃう、清海ちゃん……」
草々は、感情の赴くままに、清海を抱きしめた。
結婚生活が続いても、「きよみ」は、草々にとって、ただ1人だった。
出会ってすぐ、ややこしいからあだ名でいいです、と遠慮気味に笑った清海。
同姓同名がいてつらいという愚痴すら言えずにいた清海。
俺はあほや、と草々は思った。
すさんだような姿にがっかりしたなんて、何て小さい男や。
清海の、精一杯の救いを求める声だったのに。
「草々さん……あかん。草々さんには、B子がおるでぇ……」
微笑みながら、しかし目に涙を浮かべて、清海は首を振った。
「やっとB子と仲良うなれたのに……裏切れん」
「清海ちゃんは……何も考えんでええ。悪いのは全部俺や……」
罪も責めも、全部背負ってもいい。
ずっと抱えて来た思いを、止めることはできない。
「ほやけど私……B子と違て、おかみさんにはなれんでぇ……」
「ならんでもええ。清海ちゃんは、清海ちゃんでええ」
草々は、清海を抱きしめる腕に力を込めた。
理想だからではない。誰かみたいだからでもない。
ただ、目の前にいる清海という女性が愛しい。
「一門のおかみさんもいらん。清海ちゃんだけが欲しいんや」
草々は、清海を抱き上げると、自分の部屋に運んだ。
彼女を横たわらせると、ゆっくりと隠された部分に触れていく。
清海は小さく悲鳴を上げると、恥ずかしそうに「初めてやでぇ」と口にした。
咲がいつか口にした「派手なバイト」は、ただの推測だった。
名前の通りに清らかな本質を持つ女を、草々は最大限に繊細に扱った。
四草の部屋での感情が蘇る。
清海でなくて、よかった――。
話を聞き、呆然としている草原に、草々は自嘲の笑みを見せた。
「最悪な男ですよね……若狭に対しても、清海ちゃんに対しても。
そやけど、これからは、ちゃんと誠実に生きたいんです」
草原は、清海を見る草々の目を思い出す。
遅かれ早かれ、こういう日が来たはずなのだろう。
ただ、若狭のことを思えば、あまりにも時期が悪すぎる。
「若狭が嫌いになったわけやないんです。
だからこそ、どないしてええんかわからんのです。
下手なこと言うたら、若狭……四草のこと、自分を責めるかもしれへん。
あのことと清海ちゃんと俺がこういうことなったんは、関係ないんです」
それから、草々は、真っ直ぐに草原を見た。
「俺は……誰に何を言われたかて構いません。
ただ、清海ちゃんは……誰からも何にも言われんようにと思てるんです。
若狭のことと、清海ちゃんのこと……お願いします」
そう言って頭を下げる。
頼まれても、草原には、さっぱりいい知恵が浮かばないままだった。
翌日、草原は悩みを抱えたまま、延陽伯を訪ねてみた。
店先には四草も小草若もいなかったため、目礼をして2階へ上がった。
取り急ぎ直したらしい扉の向こうから、小草若の声が漏れてきた。
「……やから、あいつの気持ちも汲んだってぇや、若狭、な?」
意外にも小草若の呼びかけた相手は妹弟子だった。
その後、しばらく沈黙がある。電話らしい。
「そらそうかもしれんけど、男っちゅうのは、ええかっこしいなんや。
とりあえず、ほとぼり冷めるまで、そっちおり、な」
草原は、扉を叩こうとした体勢のまま、聞くともなしに聞いてしまう。
「ちょっと、頼むわ若狭、泣かんとき。
俺が泣かしとるみたいやないか。
『若狭は何も悪ない』、これ伝言や、な」
どうやら、若狭は落ち着いたらしく、小草若の声がほっとしたものに変わる。
「うん、わかった、大丈夫や。ほな……」
「小草若!」
聞いている場合ではなかった、と草原は扉を叩いた。
「小草若、若狭と喋っとるんなら、代わってくれへんか……」
「兄さんが底抜けに脅かしはるから、はずみで切ってまいましたがな」
部屋に飛び込んだ瞬間、草原は恨めしそうな目を向けられた。
「ほんまに……脅かさんといて下さいて」
「そやけどやな小草若、お前と会うのも久々なら、若狭とも長いこと
喋ってへんし……四草からは連絡来えへんし」
「……すんません」
小草若は小さくなる。
「いや、お前のせいちゃう。どうせ、喋ってへんのやろ」
草原の言葉に、小草若は再び「すいません」と小さく頭を下げ、
「あ……お茶入れますわ」
と立ち上がった。小草若の背中を追って、草原の目は、自然、流しの方に向く。
四草は、小草若のいない時を狙って帰って来ているのだろうか。
流しの横には、食べ終わった後の丼鉢が2つある。
「小草若……草々から、何か聞いたんか」
「えっ?!」
小草若は動揺したらしく、カップに注いでいた烏龍茶を溢れさせてしまった。
「いや、その……若狭に伝言言うとったやろ。
草々から、何か聞いたんかな、思て」
「あ、あの……そない、特別に話したわけやのうて。
若狭、家空けとるん気にしとったんで、それは悪いことちゃうで、って」
「そうか」
草原は胸を撫で下ろす。
今の若狭に、草々と清海のことを聞かせたくはない。
耳に入ったのでなければ、それでいい。
「小草若……俺達は、若狭のええ兄弟子でいてやろうな」
急にしみじみと言い出した草原に、小草若は困ったような顔をする。
「兄さん、いきなり何言うてはるんですか」
いや、と草原が口を開きかけた瞬間、小草若の携帯電話が鳴った。
「すんません、構いませんか」
頷くと、小草若は電話に出る。やがて、眉間に皺を寄せた。
「あんな、今、来客中やねん!切るで!」
携帯電話をしまうと、小草若は
「すいません、最近イタズラ電話多いですねん」
と苦笑した。
「そうか、大変やな。
……言いかけたのは、若狭のことやけどな」
口を開いて、草原は迷う。
まだ、小草若に教えるべきではないだろう。
だが……何らかの心の準備は必要だ。
若狭の支えになれるであろう人間は、小草若しか残っていない。
「若狭……たぶん、これからも、苦しい思い、残るかわからへん。
そやから、兄弟子の俺らで、支えたらなあかんな、思て」
そして、草原は、1つの決断を下した。
「それと……四草に会うたら、引退するように言おう思てる」
「え……?」
小草若は目を見開いた。
「そやけど兄さん、若狭は、そっとしといてくれ、言うてましたやん」
「あの出来事を、外に出す必要はあらへん。
理由なんて、何ぼでもつけられる」
そう、今だって、四草が高座に上がらない理由は、一門以外は誰も知らない。
「四草がおったら……若狭、稽古も高座も来にくいやろ。
若狭が落語しやすい環境を整えたらなあかんと思てな」
若狭が帰って来て、草々と清海のことを知ったら。
せめて、落語という居場所だけでも、万全のものにしてやりたい。
「兄さん、あの……」
「わかりました」
意外な声が部屋に響いた。
「四草……!!」
部屋の入り口に立った影を見て、草原以上に小草若が目を丸くしている。
「喉を痛めたでも何でも、理由は何ぼでも作れます」
四草は、平然とした調子で言った。
「落語やめ、言われてんのに、えらい落ち着いたもんやな」
「あれ見られた時に、覚悟はしてましたからね。
若狭と僕とを、同じ寄席で使うわけに行かんでしょ」
草原の言葉に、四草は薄い笑いを浮かべた。
「おい、四草……」
「小草若兄さんは心配せんでええですよ」
四草は、鋭い目で小草若を見た。
「僕がここを出ますから。
落語やめたら、天狗座にも要はないし、もっと割のええ仕事探します。
兄さんは、このまま居座っといたらええでしょ」
「そやのうて、四草……」
小草若が喋ろうとするのを、四草が無言で制したのが、草原にはわかった。
「ま、わかったんやったらええわ、四草。
ほな……早速、時期とか決めるし……場所変えよか」
小草若が、まだ何か言いたそうにしているのが、目の端に見えた。
帰りに草若邸に立ち寄り、草々に経過を報告した。
草々はうつむいて、意を決したように言う。
「兄さん、俺も、落語やめます。
若狭につらい思いをさせるのは、俺も同じですから」
それは、清海のために、落語を捨てるという草々の意思表示でもあった。
「……どないしたもんやろな……」
草原は、自宅に帰って、頭を抱えた。
「まーくん、私、思うんやけどね」
緑が側にそっと座った。
「そのA子ちゃんに、知らせたげた方がええんとちゃうかな?
草々くんが落語やめる覚悟や、言うの」
「いや、A子ちゃんにも、若狭にも、ちょっとでもつらい思いさせとない。
草々は、そない思てんのや」
「そやけど……男の人は、それでええのか知らんけどね」
緑は肩をすくめる。
「見てるだけなんは、つらいんよ。
大事な人が、自分のために傷付いたり、苦しんだりしてるの、
ただ見てる以外に何も出来ひんのは、嫌なもんなんよ。
それやったら、いっそ、自分も一緒に苦しい思いしたほうがましやわ」
そやけど、なかなか男の人て、そうさせてくれへんもんね、と緑は言う。
「ほんまに男の人はええかっこしいやね」
そう言えば、小草若もそんなことを言っていた。
「なぁ緑……女はみんな、お前みたいに思うんかな。
見てるだけよりは、一緒に苦しい思いしたいて考えとるんやろか」
「全員がそない思うわけやないやろけど……」
緑は、ふわっと笑った。
――心から愛する人がいるもんは、大概、そない思うんとちゃうかな。
次の日、草原は、緑にあることを言い置いて家を出た。
講座を終えて帰宅すると、緑が出迎えて言った。
「来てはるよ……若狭ちゃん」
居間に入ると、久々に会う妹弟子は、弾かれたように立ち上がった。
「あの、草原兄さん、四草兄さんを引退させるて、ほんまですか」
「せっかちやなぁ、座って話し」
とりあえず笑顔を向けて若狭を落ち着かせる。
「私、お願いしましたよね、何もせんといて下さい、忘れて下さい、て」
「何でそこまで四草をかばうんや」
草原は、じっと若狭の泣きそうな顔を見る。
「あんな酷いことをする奴を、そもそも一門に置いとくわけに行かへん。
ましてや、お前は妹弟子や……俺らは、お前を守らなあかん」
「私……」
若狭の目から涙がこぼれ落ちる。
「酷いことされたわけやありません。
四草兄さんが悪いんやない……私が……私があかんのです……」
若狭は、泣きじゃくりながら草原に頭を下げた。
「お願いします!四草兄さんを、やめささんで下さい、お願いします!」
その後、若狭が胸のうちを吐き出しやすいようにと、緑と交代した。
草原はその足で延陽伯に向かう。
定休日なのをいいことに、小草若と四草が階段で口論をしている最中だった。
「そやから!何でお前はそやねん!」
「小草若兄さんには関係ないでしょう」
「関係あるわ、ボケ!
何でそうやって自分1人で何でも出来るて顔すんねん!
もうあかん、もう黙ってられへん、俺の知ってること草原兄さんに話す」
「関係ない言うてるやろ!」
四草が小草若につかみかかる。
「落ち着け、四草」
草原は、穏やかな口調で声をかけた。
「小草若に言われんでも、俺はちゃーんと気ぃついとる」
弟弟子2人が呆気に取られているところに、草原はにっこりと笑いかけた。
「いつ……わかりはったんですか」
四草が決まり悪そうに言う。
「最初から、お前らしないな、とは思た。
ま、言うても、びっくりしてもうて、深う考えたんは最近やけどな」
きっかけは、四草と久し振りに顔を合わせた日。
四草の態度自体が妙だった。
崇徳院を1人で稽古し続けるほどに大事に思っていた落語を
やめろと言われても、落ち着き払った様子で。
それでいて、若狭の名前に、何の罪悪感を感じる様子もなく。
四草のことをよく知らなければ不思議はないのかもしれないが、
落語と一門への思いを知り抜いている草原にとっては、あまりに妙だった。
そして、小草若の態度。
四草と顔を合わせて、責めるよりも驚きと焦りが前面に出ていた。
あの後、四草と話をしても、違和感は消えなかった。
草々の引退発言で、そっちに気を取られたものの、緑の言葉が鍵になった。
――男は、ええかっこしい。女は、それを見るのがつらい。
草原は順番に一連の出来事を思い返した。
四草も、若狭も、そして小草若も、少しずつ手がかりを残していた。
2つあった丼。
小草若の電話での言葉。
延陽伯に住み続ける理由。
若狭が、草原からの電話を、すぐに切りたがったこと。
清海を草々と2人きりにさせたこと。
そして……事件当日。
「まさか、お前が四草に味方しとったとはな、小草若」
「すいません」
「『すいません』は何遍も聞いたわ」
草原は小さく笑った。
あの、草々が扉を破って中に入った日、小草若は、師匠方につかまって、
草々や草原から1人遅れを取った。2人を止めるつもりだった小草若は、
追い付けないことを見て取って、急いで電話をかけた。
四草は、電話の音に舌打ちをした。
受話器を取ると、同居中の兄弟子の焦った声が飛び込んで来た。
「四草、どないしょう、草原兄さんと草々が、お前んとこ行った。
俺……止めよ思て、女が来てるて言うてしもて……余計に……」
小草若の声は、四草が呆然と受話器を下ろしたため、部屋中に響いた。
さすがの四草も青ざめる。
しかし、目の前の女は、余計に生気を失っていた。
「とにかく、急いでどうにかせぇ、な?!」
早口のままで、電話は切れた。
四草は急いで受話器を下ろして、窓から外を確認した。
「私、すぐ帰ります」
「もう遅い」
窓の外には、草原と草々の姿が見えた。
今出て行ったら、鉢合わせだ。
「……喜代美、ちょっとだけ辛抱せぇ」
落語家の部屋は便利なもので、着物を着るための紐がたくさんある。
「四草兄さん、私……」
「大丈夫や」
四草は微笑むと、若狭の声が出せないようにしてしまった。
さらに、腕を後ろに回して縛る。
これで第三者から見れば、自分が若狭を無理強いしたようにしか見えない。
留守を装って帰ってくれればいいが……そうでなければ。
冷血非道な男を演じることなど、たやすいはずだった。
そう……演じさせてくれればよかったのに。
「ほんま、実の兄妹みたいに似とる、小草若兄さんと若狭は」
四草は呟く。
あの日、電話で急を知らせた直後、小草若は走って延陽伯まで戻って来た。
体を張って草々を止めるために。
そして、若狭は、四草への非難を止めようと必死だった。
「放っといてくれたら、ばれるようなことあらへんかったのに。
何をわざわざ、危ない橋渡ってんのや」
「お前が1人で何でも抱えすぎやねん」
小草若が顔をしかめた。
「何遍、小浜から俺に電話があったと思う?
『四草兄さんはどないしとんなりますか』
『側におんなったら代わって下さい』
そんなんばっかりや。
若狭はな、お前のこと、底抜けに心配しとんねん!」
「今、あいつ俺のうちにおるで」
草原は微笑んで言う。
「迎えに行ったり」
意外な言葉だったのだろう、四草は目を見張った。
「草々には、おあいこ言うといたるわ。
いつまでも、お互いくよくよ考えとんのも良うないやろ」
草原が笑うと同時に、扉を叩く音がした。
小草若は立ち上がって開けてやると、すぐに微笑んで道を開けた。
「四草兄さん!」
若狭が目に涙をいっぱいためて飛び込んで来た。
「どこにも行かんで下さい!
1人でどこか行こうやなんて、そんなん、やめて下さい……」
首にしがみつかれ、四草は戸惑ったような表情を見せる。
草原と小草若は顔を見合わせ、四草に目だけで挨拶して、部屋を出た。
「何で、知っとって黙ってたんや」
草原は小草若に尋ねる。
「前に……若狭が、相談に来たんです」
小草若は小さく笑った。
「草々兄さんは……私を好きやったんと違うんです」
若狭もまた、先ほど、草原宅で緑に打ち明けていた。
「勿論、尊敬しとるし、草々兄さんも私に親切やけど……
草々兄さんの思い描いとんなった『一門』と『家庭』の中に、
たまたま私が上手いこと納まっとっただけやったんです」
清海が、ちょくちょく大阪を訪れるようになって気付いた。
彼女のことだけは、草々は、条件など無関係に愛していたと。
自分の理想像に近いところも、納まらないところも。
それに勝とうとするには、もっと、もっと……
「『おかみさんみたいになるには、どねしたらええですか』て」
小草若は肩をすくめた。
「俺は、若狭のことが好きやった頃、お母ちゃんに似とるな、て
……そない思てましたから、言うたんです」
「そのままで、ええ思うで?」
小草若は答えた。
「若狭は、そのままでも十分、おかみさんに似とる」
「ほうですか……?」
それでも若狭は不安そうにうつむいた。
「……何でや」
横から四草が口を出した。
「え?」
「何で、おかみさんみたいになれる思うねん」
意外な言葉に、若狭の目が丸くなる。
「自分ではない他の誰かになんて、なれるわけないやろ。
そんなことせなあかん場所やったら、そこにおるのやめてまえ」
冷徹を装って発された言葉だったが、四草のことを知っているため、
小草若にも、そして若狭にも、その真意が理解できた。
「四草兄さん……ありがとうございます」
若狭は目を潤ませた。
「敵わへんなぁ、て思いましてん」
小草若は草原に笑顔を見せた。
「草々も、俺も、若狭の向こうに、おかみさんを感じとった。
そやけど四草は、そんなんなしに、若狭だけを見とったんやなぁ、思て」
それから、ちょっとしてからです、と小草若は打ち明けた。
若狭が、えらい嬉しそうな顔して、延陽伯から出て来たんを見たのは。
「嬉しかったんです」
若狭もまた、緑に打ち明けていた。
「他の誰でもない私を見てくれなった人がいる、て」
私の心を救ってくれた人を、1人には出来ません。
唇を噛む若狭に、緑は言う。
「そしたら、急いだほうがええね。
まーくんの話やと、四草くん、今日にも部屋引き払うみたいやし」
その瞬間、若狭は弾かれたように延陽伯へと走って行ったのだった。
「師匠、お客さんです」
小草々に呼ばれ、草々は居間に向かう。
「……清海ちゃん」
草々は慌てて腰を下ろし、囁いた。
「あかんて……俺がちゃんとするまで来んとき、言うたやろ」
「ほやけど、私、嫌なんです」
清海は強い眼差しで訴えた。
「草々さんだけが、皆さんに頭下げるん、おかしい思います。
私ら2人のことなんやでぇ……私もおらんとあかん思うんです」
「清海ちゃん……」
小草々の存在も忘れ、草々は清海を抱きしめた。
男はええかっこしい。
女は見ているだけではいられない。
さて、あいつらみんなの悩みを終わらすために、一肌脱いだるか。
草原は2組のややこしいカップルを思いながら、草若邸に向かった。
<終幕>
550 :
536:2008/04/22(火) 00:51:21 ID:kYSsvb8o
読んでくださった方、底抜けにお疲れ様でした!(大汗)
つーか、長っ!!
ほんまに場所とって申し訳ありません!!(土下座)
こんなに記事数使うと思いませんでした。
ちょっとミステリー仕立てにと思ったら、長くなって・・・。
「原田優夫、このヤマ、いただきっ!」
って感じにしたかったんですけど(何か違います)。
>>550 何気に一番の立役者が小草若のような気がする・・・
なら、小草若にもご褒美をやってくれぃ
>>552 そのレスを見て、なんか怪体な妄想が・・・
冬の終り、失踪中に通りすがりの名も知らぬ小さな町の片隅で、氷雨に降られ行く所も無く、
廃屋の影で座り込み膝を抱えつつ雨宿りをしていた小草若に、差し掛けられた一つの傘。
見上げた先には、雨闇に定かは判らぬながらも自分より年嵩の、着物に身をつつんだ優しげな女性が一人。
女性は、こんな寂れた町中では泊まる場所も無い、このままでは風邪を引く、家に来いと小草若を招く。
そぼ降る雨に僅かな街灯しかない道は薄暗く、案内された家もまた、小さく一昔前の時代を思わせる質素なもので。
薄ぼんやりとした電球の灯りが部屋の隅に闇だまりをつくる、どこか懐かしさを感じさせる小さな部屋のなか、
小草若は女性と向かい合って腰を下ろし、語るとも無く心情を吐露していた。
やがて夢か現か判らぬままに、その優しい声に名を呼ばれ柔らかな指に髪を梳かれて、いつしか意識が朦朧となった時、遠く耳を打つ、問うた名の答えが、しほ、と。
白々とした彼誰刻、昨夜のまま廃屋の影で柱にもたれている己に、小草若は気付く。
思い出せねど朧気に、何か夢を見たような・・大切なものを置き忘れたような心残りを覚えつつ
小草若は、ふと、朝焼けに映える空を見上げた。空は、ひたすらに美しかった。
その空を見上げながら、小草若は己が何時しか泣いている事に気付いた。何を想うでもなく、涙はとめどなく零れ落ち。
その濡れた頬を掠めて吹く風は、微かに遠い春を思わせた。
徒然亭小草若が小浜に現れたのは、その春のことであった。
なんちて・・ってすみません、妄想です。
でもってエロは無しで!泣きながら眠る子供を優しく慰めているって感じで!
どなたかこういうの書いて下さい。つか、こういうのって反則でしょうか・・?
>>553 小草若ちゃん…(つд`)
そのまま書いちゃえ書いちゃえ(゚∀゚)o彡゜
>>553 是非あなたがドゾ。
というか、あなたの抱いているイメージを一番純粋に形にできるのは
あなたです。
お待ちしております。
556 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/22(火) 19:57:39 ID:gxJk/SDQ
>>550 長かったけど、2時間ドラマみたいで面白かったです。
また思い付いたら書いて下さいね。
さげわすれ
>>550 草原兄さんの事件簿みたい。草々とA子がそうなるとは予想しなかったわ。
緑さんのアシストがとってもいい感じに効いてますね。GJ!
559 :
550:2008/04/22(火) 21:40:46 ID:kYSsvb8o
しまった、長すぎた!って時には、遅いんですよねぇ、この掲示板(削除できないし・・・)。
メモってる分には、そんなに長いって思えないのが恐ろしいです。
ほんまに場所とってすいませんでした(滝汗)。
企画自体が頭悪いですよねぇ・・・外部から見てどうするって
(ちなみに、小草若を助手役にするか共犯者にするか迷った)。
>>553 民話みたい(NOT座敷ワラシ)で美しいですね。
是非是非!書いちゃってください。
560 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/23(水) 20:10:18 ID:II9klgYf
他人の作品冒涜して
盛り上がってるのか
何ですか、この頭の悪s(ry
サスペンスドラマみたいで面白かったです。
携帯からだと途中までしか見れないんですね。残念。
でも、前スレ見れて良かったです。
ありがとうございました。
このスレを知って、自分は本人より、ちりとての四草が好きなんだ!!。
と自覚出来ました。
>>562 順番に見れないなら
ケツから遡って見てみれば?
文章へたくそで恥ずかしい限りですが、なんとなく自分の中のイメージを書いてみました。
お目汚しですが、投下してみます。
草々×喜代美、放送最終話から1年弱後(イメージ)
無駄に長くてエロなしですorz
・・・・・って、いざ投下するのって勇気要りますね
565 :
草々×喜代美 その1:2008/04/24(木) 15:46:49 ID:Tf47PK8w
小草・・・じゃなくて、草若兄さんがひょいと顔をのぞかせた。
ひぐらし亭での出番は終わったらしい。
「落子(仮名)ちゃ〜ん、ちょっと見ないうちに底抜けに大きなったなぁ」
「いや、あの、三日でそんなに大きくならないさけぇ・・・・」
「お母ちゃんに似て底抜けに可愛らしな、落子(仮名)ちゃん。草々に似なくて
よかったなぁ」
「今日は兄さん、何かけはったんですか?」などと言いながらお茶の支度をする。
出産から数ヶ月たって、ようやく生活のペースが出来つつあった。
初めての育児にはまだ慣れてないし、おかみさんとしての仕事もある。
年齢を重ねても相変わらずの不器用で両立は大変だけど、それでも自分の高座が
なくなった分だけましかも知れない。未練は全くなくはないけれど・・・。
今は、産まれた子供の母親という、誰にも代わりは出来ない役割がある。
「草々の奴、落子(仮名)ちゃんのこと、『嫁にはやらん』とか言うてるやろ」
確かに夫は子供と初めて対面したその時から涙ながらにそんなことを言っていた。
「そんな事言ってたって、年頃になったら花嫁姿が見たいとか、孫の顔が見たいとか
言い出すわ。ああ・・・男の子欲しいとかいわへんか?
そういえば俺なんか一人っ子で、でもずっと寂しいなんて思わへんかったけど、
二親とも亡くして、今頃になって、兄弟おったらなぁって思うことあんねん。
親父の弟子はいるけど、血のつながった身内がいないってのは寂しいもんや」・・・
そんな風に賑やかにしゃべり倒して、草若兄さんは帰っていった。
「二人目ねぇ・・・・」呟きながらふっと思い出す。
そういえば、ずっと草々との夜の生活が途絶えていたことを・・・・。
いつから?
振り返ってみれば、妊娠が分かったころからずっと。
自分は今の今まで目の前のことに夢中になってて、そんなことすっかり頭から抜け落ちてた。
・・・・夫はどうしていたんだろう
「落子(仮名)ちゃんも大分大きくなったろ」
草原兄さんが切り出した。
とある町の公民館での落語会を終え、居酒屋で打ち上げの席。
酒癖が悪い草原は、早くも酔っ払っているようだ。
「どや、そろそろ二人目考えんと・・・。お前も若狭もいつまでも
若いわけじゃないんだし。望んでるんやったら早いほうがええで。
そのうち・・・なんて先延ばししとるうちにあっという間に年取ってまう。
なんだかんだ状況変わったりして、子供どころじゃなくなったりな・・・
うちなんかまさしくそのパターンや。颯太に兄弟を・・・って思ったころに
俺が落語家に復帰したりして、緑にも苦労ばっかりや・・・・」
最後はいつも愛妻の惚気話になるのが草原兄さんやな、と草々は思う。
クダを巻く兄弟子に付き合いながら、なかなか相談しづらい話題を
口にしようかどうしようか迷ってる間に、すっかり草原は酔いつぶれてしまった。
二人目の子供をどうこう以前に、
若狭に対してそういう気分になれなくなってしまったことを・・・。
567 :
草々×喜代美 その3:2008/04/24(木) 15:48:32 ID:Tf47PK8w
「奈津子さん、草々兄さんもしかしたら浮気してるんと違うやろか?」
相変わらず、困ったことは奈津子さんに相談。
バシッと解決の糸口が見つかったことは少ないけれど。
むしろ「本のネタになる♪」とばかりに、茶化される。
「草々さんが浮気? ないない、それはないでしょ」笑いながら奈津子が言う。
「でもぉ、なんだかんだで1年以上何もなしやでぇ・・・・」
「うーん・・・・・喜代美ちゃんがそうやとは言わないけど・・・」
ちょっと言いよどみながら、続ける奈津子。
「女捨ててたりしてへん?子供が生まれると、すべてが子供中心で、
自分の中の「女」捨ててすっかり「お母ちゃん」になってしまって。
子供に対してそれは大事やけど、夫に対してもお母ちゃんになってしまって、
男と女の関係でなくなってまう。そこが悲劇の始まりや・・・・」
家に戻りバタバタと日常のあれこれを済ませつつ
さっきの奈津子の言葉がよみがえる。
「わたし、女捨ててるんやろか」
夜、風呂に入ろうと服を脱ぐ。
授乳やら、家事やらに都合がいいような、動きやすい服。
色気もへったくれもない、実用性重視の下着。
なにより、お産後の体形が問題・・・・?
一度意識してしまうとそれらがどうしても気になってしまって、
たとえ今夜夫に誘われても断ってしまうだろう、そう思った。
「なあ草々、芸人にとって遊びの一つや二つ、勉強や。
芸の肥やしや」
三国志落語会の打ち上げの席で、尊建がやけにしつこく、
いや熱心に誘ってくる。
「若狭には黙っとくしな、でもばれたところで別にええやん、
あいつかて芸人の嫁なんやから理解してもらわな」
そんな口車に乗せられてその手の店に行き・・・・
久しぶりに肉体的な欲求は満たされたものの、なぜか心は晴れなかった。
若狭の妊娠が分かって以来、お腹の子供に悪かろうと、
行為に及ぶことはなかった。ソロ活動も時々はしたけど・・・
高座の仕事も忙しかったし、そのうちになんだか何もなしの
状態にすっかり慣れてしまった。
若狭が出産を終え大阪に戻ってきた後は、子供におっぱいを与えている
ところなんて見ていると、「母親」の姿に感動すら覚え、
何やら侵し難いもののように思えたのだ。
そんなこんなでしばらく遠ざかってはいたものの、
男であることは枯れてなかった事にほっとしつつ、
虚しい気持ちに取り付かれる。そしてしばらく忘れていた
欲求がこみ上げて来るのを感じていた。
それでも、慣れない育児で見るからにへとへとの若狭を
なかなか誘うことは出来ず、それどころか毎日帰りが遅かったりして
プライベートな会話すら交わしていなかった。
数週間後。
疲労もピークだったのか、風邪でダウンしてしまって、
小浜のお母ちゃんが手伝いに来てくれた。
「何やちょっとやつれたみたいやけど、ちゃんとご飯食べてたん?
あんたが倒れたら落子(仮名)ちゃんが一番迷惑するんやで」
口うるさくも結局お節介焼きが好きなおかあちゃんは
子供をおんぶしながらあれこれと動き回る。
「ちょっと喜代美、あんたこんな小ちゃいパンツはいてたら
体冷えて、風邪も引くわな」
洗濯物を持ってお母ちゃんが言う。
ああやっぱりあの「勝負下着」見つかってしまった。
ついでに、ちょっとやつれ気味なのも
ダイエットのせいだとばれたら、ますます小言を言われるだろう・・・・。
そう思っていた後日。
具合も少し良くなって、小浜に帰るという母は何か気付いていたのだろう。
帰り間際、そっと言い残していった。
「喜代美ひとりで焦ってジタバタしとっても何にも解決せんで。
ちゃんと草々さんと話しせんとね」
今日はぽっかりスケジュールがあいていて、久々に小草々の稽古を
見ることが出来る。
今度の高座で「辻占茶屋」をかけるという。小草々が来る前に、若狭に三味線を頼もうと
彼女を探していると、下の楽屋で四草と彼が引き取った男児と談笑していた。
「若狭、小草々の稽古付き合ってくれ。「辻占茶屋」や。もうすぐ来るはずやから」
「はい。あ、でもこの子預かってくれって今四草兄さんに頼まれたとこなんです。
一緒に稽古場におったらあきませんか?ねぇ、大人しくできるよね?」
「しゃあないな。四草は今日昼席か」
「そしたら支度してきます。さ、一緒に上行こ。ほな兄さんまた後で」
落子(仮名)をおぶさり、男の子の手を引いて若狭が階段を上がっていく。
相変わらず口数少なく、ポーカーフェイスの何を考えているかわからない弟弟子。
だけど、子供を引き取って一緒に暮らしているところを見ると、
人の心がわからない冷血漢ではないらしい。
それどころか、時々人のことを見透かす発言をするのだ。
「草々兄さん、自分の嫁のことまだ高座名で呼んでるんですか。
もうあれから1年以上過ぎてるのに・・・・」
昼間、四草の言った言葉が引っ掛かっていた。
10年以上その名で呼び続けていて、急に変えろといわれても戸惑うばかりだ。
だけど何かが変わらなければ、いや、自分で変えなければ
状況は良くならないのかもしれない。今のままの関係で良いわけはない。
落子(仮名)を寝かしつけ、喜代美もまた決心していた。
今日こそはちゃんと草々と向き合わなければ。
意を決して口を開く草々。でもいざとなると口ごもってしまう・・・・
「・・・・・き・・・き・・・・・・喜ぃ公・・・・」
一瞬ぽかんとする喜代美。その懐かしい呼び名はいつ以来だろう。
ややあって可笑しくなってきた。草々も一生懸命、自分に向き合おうと
努力しているんだ。
笑いながら言った「喜代美て呼んでください・・・・」
久しぶりの喜代美の笑顔・・・自分だけに見せた笑顔だった。
以上です。
読んでくださった方、お疲れ様アンドありがとうございます。
どうしても最後に草々に「喜ぃ公」って呼ばせたかった、ただそれだけです・・・・
>>572 GJ!久々の草々×若狭で嬉しいなー
なんだかいつまでも初々しい二人でいいね。この後は久々のお楽しみだー
よかったらまた投下してください!
>>572 GJGJ!!! 本当、なんだかなごんでしまう2人だね。
読んでてあったかい気持ちになったよ。
本編では草々の喜代美呼び聞かなかっただけに、
何とも甘酸っぱくて可愛いよ。また楽しみにしてますね!
>>572 GJ!!
たとえ浮気をしても若狭一筋な草々がいい!
そして何気にかまいたがりな兄さんたちが素敵。
本編そのままの雰囲気で、続編をそのまま見てるような感じになりました。
>>574 かわいいお話ありがd!なんだか和みましたわー。
「高座名じゃない名前→喜ィ公」になっちゃう草々が好きだw
正直に言うと、「落子(仮名)」だけは、
その度に笑っちゃったんで、なんとかしてもらいたかったけどw
でも、草々×若狭もやっぱりいいな〜と思いました!
>>572 楽しかったー!
576さんと同じく、「落子(仮名)」には笑ったけど。
ほのぼのと笑うタイプの話だったから、逆に妙に合ってるなー、
なんて思っちゃったよw
>>572 GJ!同じく「落子(仮名)」に笑いつつ読みました。
微笑ましくていいですね〜。やっぱりこの夫婦はこうでなくては!
兄弟弟子の雰囲気も良かったです。
>>572さんの喜ぃ公呼びする草々にあまりに萌えてしまい、
自分も草々×若狭書いてみましたんで投下します。
ヤキモチ草々×若狭。エロあり。
設定はまんじゅう怖い週の前くらいな感じです。
580 :
草々×若狭1:2008/04/25(金) 04:26:41 ID:fCWhixme
すべて色情を懐きて女を見るものは、すでに心のうち姦淫したるなり―――マタイ伝第五章
十五で出合った日から、落語の世界の住人は草々の友人だった。
理想の男は『百年目』の大旦那。初恋は『次の御用日』のとおやん。
おさきさん、源兵衛、周庵先生にしっかり者の清やんとアホの喜ィ公。
まさか大人になった自分が、そのアホの喜ィ公を嫁にするとは夢にも思わなかっただろう。
「どねしたんですか急に…」
乳房に顔を埋めてくすくす笑う夫に、くすぐったいと身を捩りながら妻が尋ねる。
「いや、ちょっと昔思い出して、な」
「…人の胸で思い出し笑いせんといてください」
悪かったと詫びるかわりに、その先端を厚い唇で包む。
口腔で舌を踊らせれば、おもしろいくらいに跳ね上がる背を抱いて。
この可愛いらしい現代の喜ィ公は、たんぽぽの咲く春の庭先にひょっこり現れ、
落語の世界を失った草々と師匠と兄弟たちを、再びあの陽気な道中に引きずり込んでくれた。
どこかへ去って行ってしまうものだと思った自分をよそに、
そのまま妹となり、女噺家となり、今こうして己の妻となっている。
(それにしても)
妻の下腹へ掌を這わせながら、眼下の裸身をつくづくと眺める。
喜ィ公、妹として見ていた時は全く気付かなかったのだが。
さらさらと良い匂いのする髪。
黒目がちの大きな瞳。
つんと上をむいた唇。
えくぼの浮かぶ柔らかい頬。
鞠のようなふたつの乳と形よく張り出した尻。
白く滑らかで感度の良い肌。
正直、よくこれで無垢なままでいられたものだ。
今更ながらに思う。
(落語の神様が、アホの喜六のフリさせてたんかな?)
己のバカバカしい発想にまたも独り笑っていると、
もう草々兄さんたら、と愛らしい顔がぷくんとむくれる。
「すまん、若狭」
恥丘へ辿り着いた指で潤むそこを慰め、今一度名を呼ぶ。
若狭。
今の彼女の名。
彼女の故郷の地からとった名。
その名を呼ぶたび、草々の胸に湯を注ぎ込んだようにぽっと温もりが広がる。
あったかい海、あったかい山、あったかい家族。
それら全てにあったかく包まれて育った、彼女のあったかい人生に触れる気がして。
その春の日だまりのような温もりに、自分も包まれるような幸せな気分になる。
――俺の故郷。俺が最後に帰る場所。
あまくて ふわふわ あったかい
バターナイフを差し込むように、妻の体に沈み込んだ。
581 :
草々×若狭2:2008/04/25(金) 04:27:36 ID:fCWhixme
「どねしたらええんでしょうか?」
その日、師を交えての夕餉は若狭のそんな言葉で始まった。
今日、高座を終えた彼女の元にひとりの老婦人が訪ねて来たのだという。
――失礼ですけど、もしかして和田さん、おっしゃるのと違います?
「なんでも、うちのおばあちゃんの昔の芸者仲間だったゆうんです」
若狭の祖母は福井の色町の芸者であった。
高座に祖母ゆずりの着物で上がった姿を客席から見たその老芸妓は
――なんや懐かしゅうなって、いてもたってもいられなくなってしもて
声をかけたのだという。
「ほんで名前通しておくで、いつでも遊びきてなってゆうとんなったですけど…」
若狭が招かれたのは、いわゆる一見さんお断りの、それと名の知れたお茶屋であった。
「そらええ機会やないか。行ってき行ってき」
「ほやけど師匠、女の私が芸者遊びておかしないですか?」
「だったら草々でも連れてったらええがな」
「ほやかて、こんな立派なお店行くなんて…」
相変わらず持ち前の根性なしを発揮してぐずる若狭に、草若は真剣な顔で向き直る。
「若狭、人の縁ちゅうもんは大事にせなあかん。ましてこういう古い縁はな」
それに、
「落語家やったら色町のことも知っとかなあかんやろ」
本来なら師匠か兄弟子が連れてったらなあかんのやけどな、と付け加え
「それを自分の客でつかまえてくんのやから大したもんや…草々よりやり手やな」
草若はにやりといたずらっぽく笑って言った。
「今晩は。いやあ今夜はご馳走になります若狭姉さん」
「お茶屋さんのご贔屓さんたあ、やるやないか若狭姉さん」
「今晩は柳眉兄さん、尊健兄さん…その姉さんゆうの止めてください」
結局、この手の遊びの経験値が絶対的に足りない草々一人の付き添いでは心許無いという訳で。
丁度、上方落語三国志会の打ち合わせも兼ね、万葉亭柳眉、土佐屋尊健が加わり。
「兄弟子に芸者遊び奢るなんて、また底抜けに剛毅やな〜若狭」
「小草若兄さんには出来んワザですね」
話を聞き付けた小草若、なぜか小草若に洩れなくついてくる四草。
以上、四人の付き添いと草々夫婦の計六名で繰り出すこととなった。
「すんません師匠、行ってきます」
楽しんでくるんやで、と見送る草若はちょいちょいと草々一人を手招きで呼んだ。
「師匠?」
「草々、若狭のことやけどな。あいつ、おまえが思てるほどモテへん女でもないんやで…気ぃつけ」
582 :
草々×若狭3:2008/04/25(金) 04:28:39 ID:fCWhixme
「おこしやす…よういらしてくれはりました」
今は茶屋の女将となっている、老芸妓の出迎えで通されたお座敷。
美しく着飾った舞妓、芸妓、地方が入り繚乱と花が咲きみだれる。
「いややわあ…男前のお兄さんぞろいで」
「ほんに、こっちまでドキドキしてまう」
世辞半分とはいえ、美妓に騒がれ悪い気はしない。
「さすが小梅ちゃんのお孫さんやわ…趣味のよろしいこと」
草々たちを見渡した女将は、若狭に意味深な含み笑いをしつつ言う。
「若い頃の小梅ちゃんもよう綺麗な男衆を連れてましたんえ」
「ええ!おばあちゃんが!?」
「ほんに、モテはるとこまでそっくりやわ…」
ごゆっくり、と女将が辞す。
さすがの若狭も何を言われてたのか気付いたらしい。
「ち、違います!この人らぁは私の兄さんで…」
「まあええやないか、花街で野暮は無しや」
「俺ら全員、若狭の男ゆうことにしよか」
わたわたと慌てる若狭をよそに、柳眉と尊健はこの座興を楽しんでいるようだ。
なんとなく憮然とする草々に小草若が懐しげに耳打ちしてくる。
「なんやガキの頃思い出すな、草原兄さんに連れてきてもらった」
「ああ、緊張しすぎて徳利ひっくり返してたなおまえ」
「それはおまえじゃボケ!」
宴もたけなわ。酒も料理もすすみ、座もみだれ。
芸妓にすすめられるまま酒量を重ねた草々は程よく酔っていた。
妻の若狭はというと、舞妓たちに交ざって遊びに興じている。
こんぴらふねふね おいてにほかけて しゅらしゅしゅしゅ
座敷に散った座布団を奪い合う、椅子取りゲームのようなもので
負ければお猪口一杯の酒を干さねばならない。
意外にも、不器用なはずの若狭はこの遊びに強かった。
まわればしこくは さんしゅうなかのごおり
「がんばれ若狭!」「あと二人!あと二人!」
周囲から酔漢たちの声が飛ぶ。
(やっぱ芸者の血筋やな…)
女芸人とはいえ、着物も化粧も顔立ちも地味なはずの妻は
華やかな舞妓たちの中にあって不思議と目を引いた。
上気して赤みがさす頬。
きらきらと猫のように光る瞳。
三味線にあわせて舞う白い腕。
ゆらゆらと揺れる腰。
それらがふいに昨夜の痴態と重なり、草々は独り顔を赤らめる。
(なに考えてんのや俺は、こんな時に…)
慌てて目を逸らせた草々は、ふと周りの男たちの視線に気付く。
柳眉。尊健。小草若。四草。
彼らもまた若狭を見ていた。
――草々と同じ目で。
583 :
草々×若狭4:2008/04/25(金) 04:29:48 ID:fCWhixme
(なんやねん、こいつら)
草々はすうっと酔いが醒めていくのを感じた。
小草若は、わかる。
なにしろ若狭が師匠の家に来た時から――自分が、彼女に惹かれる以前から
一筋に想い続けていたのだから。
今でも、彼の妻に対する愛情に満ちた優しい目差しを見るたび、罪悪感が胸を刺す。
しかし後の三人は。
長い付き合いのよしみで、過去の女性遍歴は嫌と言うほど知っている。
彼らの女の趣味や、その、お世辞にも誠実とは言い難い交際を目の当たりにしてきただけに。
――なんでおまえらが若狭を見てんねん
連中の粘ついた視線が妻の姿態に絡み付く。
ふっくらと濡れるまるい唇に。
ほつれ毛のかかる項に。
鞠のように弾む胸元に。
張りのある形のよい尻に。
「はあ、もうのどカラカラ」
ひと勝負終えた若狭が歓声に包まれながら戻ってくる。
「ようやった若狭…ご褒美や」
自分の隣に座る妻の肩を強引に抱き寄せ、膳の水菓子を摘むと驚く彼女の小さな口に押し込む。
男どもに見せつけるように。
芸妓たちの黄色い声。
「ちょ、草々兄さん!」
「おまえらな、こんなとこまで来てイチャつくなや」
若狭の抗議と小草若の呆れたような声が重なる。
かまうものか。
草々はぎろりと威嚇する獣の目で睨み回す。
やれやれと微苦笑を浮かべる柳眉。
へっと嘲笑を漏らし目線を外す尊健。
静かな目で見つめ返す四草。
「ほんにまあ、あてられますなあ」
座を取り持つように、女将がくつりと艶やかに笑った。
「ありがとな若狭、今日は楽しかったで」
「徒然亭の酒で酔いっ放しゆうのも癪や、今度はこっちが奢らしてもらうからな」
「おやすみなさい、柳眉兄さん、尊健兄さん」
キタまで戻った処で柳眉と尊健は一行と別れた。どうやらこのまま新地に繰り出すつもりらしい。
「ったくええご身分やな、こちとら朝から地味ーに営業やっちゅうねん」
帰って寝るわ、今日はありがとなと帰路につく小草若を送りますと若狭が追いかける。
「おい、わか――」
「草々兄さん」
ふいに呼ばれ立ち止まる。
「なんや四草」
「若狭と夫婦になって何年でしたっけ」
とぼけた事を聞きながらこちらを見据える静かな目。
「なにも、僕ら相手にあんな真似せんでもええと思いますけど」
「…何が言いたい」
年上の弟弟子の頬に挑発じみた笑みが浮かぶ。
「男の嫉妬はみっともないて事ですよ、草々兄さん?」
584 :
草々×若狭5:2008/04/25(金) 04:31:07 ID:fCWhixme
自分たちを送り出したあと、草若はふらりと草原の自宅へ行ったようだ。
「師匠から、今夜は向こう泊まるからさき休みぃて連絡ありました。」
なんやお酒入っとったみたいでぇ、声まで酔うてました。
くすくすと揺れる白い項。
まだ粘ついた視線が絡み付いている気がする。
嘲る声が耳に甦る。
――男の嫉妬はみっともないて事ですよ
己の身の内で、黒い獣が首を擡げる。
離れの扉を締めるやいなや、妻の細い肩に抱き付いた。
「!!草々にいさ――」
「やりたい…ええか?」
欲情で声が掠れる。
自分が今、酷く飢えた顔をしているのがわかる。
黒目がちの瞳が濡れて揺れる。
白いまるい顎が戸惑いがちに引かれると同時に、帯を解いた。
「…あっ……や、そうそうにいさ……!」
白い首筋に齧り付きながら腰紐に指を掛け、性急に着物を剥ぎ取る。
「ああっ…!……いや…そんなん……っ!!」
女噺家でもない、妹弟子でもない、なまのおんなを早く感じたい。
襦袢一枚となった身体を押し倒し、裾から頭を潜らせる。
白い脹脛。
さらに白い太股。
妻の肌はどこかひんやりと湿って、熱い身体を心地よく迎え入れる。
「そうそうにいさん……!!」
草々の髪に妻の細い指が差し込まれる。
その下では厚い唇が女の一番敏感な部位に吸い付いていた。
唾液をたっぷり含ませたざらついた舌が奥を丹念に探る。
女の匂いが濃くなる。
「…っや…いやや……にいさん…っ!!」
ふだんの穏やかな愛撫とはあまりに掛け離れた求めに、妻の身体が戸惑う。
片腕で腰を抱き込み、空いた手を八口から差し入れ。
たわわに実る鞠のような乳房を掌で掴み指を食い込ませる。
びくん、としなる女体。
許せなかった。
妻の身体が。
男どもの視線を簡単に絡ませてしまうこの身体が。
(俺だけのもんやろ、俺ひとりのおんなやろ)
甘い唇も
黒い瞳も
柔らかな頬も
白い項も
乳房も
尻も
すべて
(…なんであいつらに見せんねん)
判ってる。八つ当たりだ。己の醜い妬心の。
それでも、このどうしようもない飢えは治まらない。
足袋を履いたままの足を大きく開き、まだ溶けきっていないそこへ己をあてがう。
「やっ…!にいさん、まだ早……!!!」
悲鳴をあげて懇願する妻を無視し、猛る情をそのまま打ち付ける。「っああああ!!!」
揺すぶり、引き絞られ。
熱い迸りが胎内に散る頃。
――妻は意識を手放した。
585 :
草々×若狭6:2008/04/25(金) 04:32:19 ID:fCWhixme
「わかさ、おい大丈夫か、わかさ」
白い頬におそるおそる指を伸ばす。
(…なんてことをしたんや、俺は)
苦い後悔が胸中に広がる。
ううん、と小さく呻いて開いたまるい唇は。
「……今日の草々兄さん、らんぼう」
開口一番そう告げた。
「すまん、どうかしてた俺…」
若狭の下肢はまだ萎えた草々を咥えこんだままだ。
そのくせ、草々を見上げるその瞳は約束違えを責める少年のように澄んでいる。
それが余計に草々の胸を突く。
「もう二度とせえへん、こんな抱き方は…」
「あ、それ、ちょっと困る…」
草々の謝罪をなぜか若狭は遮る。
「なんでや?」
「………たまにはええかなって…こういうのも…」
口ごもる妻を覗き込むと、ああもう!と目許を赤らめながら白い腕を巻き付かせてきた。
「わたしは、草々兄さんにメロメロなんやさけぇ」
どくん
ああ畜生、畜生め
なんて女や、こいつは
若狭の中に沈めた己が再び硬度を取り戻す。
「…や、兄さん、またおっきく…」
「おまえが可愛いこと言うからや」
たちの悪い顔で草々は笑った。
「あきらめ?」
「へえ…若狭が二日酔い、ねえ」
翌日。
床から起き上がれなくなってしまった妻の代わりに、台所に立つ草々へ、
稽古に来た四草が胡乱な視線を投げ掛ける。
「夫婦のことや」
大根に包丁を入れながら草々は応えた。
若狭が見たら怯えるような、ふてぶてしい笑みを片頬に浮かべて。
「野暮は無しやで…四草?」
〈終〉
以上です。
当方関東人なんで、関西弁とか大阪の地理はあやふやです。
お茶屋さんも実はアニメの知識のみなんで多分ウソ八百です。
生ぬるくスルーしていただきくとありがたいです。
では失礼します。
>>586 うひゃあ…草々がめっちゃオトコですやん。特に最終シーンすげ。
色と嫉妬が絡んだ絶妙なストーリーテリング、GJ!GJ!の嵐です!!!
マジ凄腕だ…。またの投下楽しみにお待ちしております。
GJ!!
話もおもしろいし、文も好きだ〜。
嫉妬する草々…情けないけど、すげぇいい!
若狭のかわいさに脱帽。
そして問題提起しつつ、サゲになっちゃう四草が好きだw
いいもの読ませていただきました。
>>586 うわっ、読んでるこっちも若狭と一緒にドキドキ・・・・。
ヤキモチ草々(・∀・)イイ!!
そうそう草々はこうでなくっちゃ!って感じ
GJ!
>>586 大丈夫です、当方大阪人ですが、何の違和感もないですさけ、
それに新地に帰り寄れる範囲で、大阪市内に思い当たる御茶屋さんありますから
思わずそのお店を想像しながら読んでました。
いや〜〜臨場感あってよかったです。
小草若がまたいい人で、四草も柳眉尊権、みんな納得出来るキャラ立ちでした。
無論若狭草々夫妻はもちろん。
お疲れ様でした。自分も御茶屋遊びに行ったような気分です。楽しませてもらいました。
>>591 大阪の中心に、お茶屋さんあるんですか?
>>592 ありますよ〜〜、大阪にも芸妓さんと遊べるお茶屋さん。戦前に較べるとぐんと減ってますが。
戦前はキタやミナミはじめ四つの花街、新地が市内にはあって、千人単位の芸妓さん、舞妓さんがいらっしゃったそうです。
京都の都おどりと並ぶ、大阪おどりも催されていたそうで。
今でもキタやミナミ島ノ内に御茶屋さんがありますし、芸妓さんのお座式遊びも出来ますよ。
特に最近は、本来一見さんお断りのお茶屋さんでも、朝日カルチャーなどを通じて
お茶屋さんでのお座敷遊びを、格安で体験させてくれる所もあります。
実は私もそういうので行ったわけですが。すごく面白かったですよ。
何より嬉しいのは、最近のブームのおかげで大阪のお茶屋さんへの芸舞妓見習希望の人が、全国からも来ているそうで。
文化の灯が、こうやってずっと続いていってくれたらなぁと、切に思います。
ってごめんなさい、スレチでした。
おお〜、草々×若狭2連発。お2人さんお幸せに。
若狭ってなんかHなんだよな。隙があるからかな。
>>572さんの少年のような草々も、
>>586さんの野獣のような草々もいい!
GJ!!
うお!本当にお茶屋さん遊びされてる方がいらっしゃった!
打った本人が一番びっくりしてます
>>586です。
『愛宕山』で「ミナミのお茶屋〜」とあったんで、漠然とそのあたりにあるのかな〜と…
あと
>>572さんの女遊びさせたがる尊建がツボで、
このひと絶対銀座とかでオサレに遊んでそうだよね→大阪の銀座なとこって北新地だっけ?
→じゃあそこがキタでいいのかな的なノリだったので。
それでも大阪の方に違和感ないと言っていただき、ほっとしてます。
話のほうは、若狭も芸者さんの孫なんだからしゅらしゅしゅやればいいと思うよ
そんでみんなに注目されて草々がヤキモチ焼いて四草にバカにされるといいよ!
みたいなノリと勢いで萌えをダダ漏れさせてアレ的な。
本当にすいません。読んでいただいてありがとうございました。
今見返したら
×尊健
○尊建 でした…
>>586 読後感はまさにGJ!の嵐!!!!
草々×若狭イチオシ者としては、こんな理想的かつ素敵でハイクオリティな
話が読めて幸せです。
実は独占欲メラメラでどうしようもなく若狭ラブ!な草々に萌え転がりました。
匂い立つエロスという感じで、586さんの表現力と文章力にも底抜けに感服。
ぜひまた投稿wktkしてます!
四草×若狭の場合は、未来の見えない、背徳の香りプンプンで萌えるのですが、
草々×若狭はどんなにエロくても爽やかというか、ほのぼのというか、
かわいらしいというか・・・・
>>586さんのGJ作品中の芸者遊び、「野球拳」だったら((;゚Д゚)などと
ちょっとだけ妄想してしまいました(ちょっと下品ですね、反省)
芸者遊びの野球拳は、脱ぐのは男性客だけだよ。
芸者さんor女性客はお酒飲むだけ。
草々×若狭は草々中の人の若狭大好きっぷりが垣間見えるとこがな。
BK見学に行った知人が全員「A木くん、マジ惚れしてんじゃない?」言ってたっけ。
>>599 >芸者遊びの野球拳は、脱ぐのは男性客だけだよ。
>芸者さんor女性客はお酒飲むだけ。
それは知らなかった・・・・・・ハズカスィ
そもそも野球拳て、脱ぐものじゃなかったんだよね
ドリフのおかげでそういう遊びと誤解されてしまったとか…
>>601 ドリフじゃなくて、コント55号の裏番組をぶっとばせじゃない?
柳宝師匠の中の人が好きなんだっけ?>お茶屋遊び
確か草原兄さんのリアル大師匠の人間国宝も好きだとか。
万葉亭師弟はきれいな女遊びをしてそうなイメージがある。
>>603 伝芸の師匠方は、だいたいお茶屋遊びは教養みたいなもんだから。
なんの脈絡もなく小ネタ投下
ヨッパライ徒然亭一門in寝床
「だーかーらー若狭は俺のや!勝手に触んな!」
「だったら名前でも書いとけや」
「おお!書いたるわ」
「ひゃ!ちょっとなにすんですか草々兄さん!」
若狭のブラウスめくりあげて、真っ白な背中にマジックでデカデカ『あおきはじめ』と書く草々。
「おいおい、若狭はおまえ一人のもんちゃうねんぞ!」
草々からマジックを取り上げた小草若、めくれてるお腹に『よしだひとし』と記入。
「…や、兄さんらくすぐったい…」
「こら!なに勝手に書いてんねん!」
「草々。若狭はおまえの嫁ちゅう前に、徒然亭みんなの末っ子や」
こんどは酔いで目の座った草原が二の腕に『はらだまさお』と書き。
「っきゃああ!」
いつの間にかテーブル下にいた四草、太ももに『くらさわしのぶ』と書き入れている。
…珍しくはいていたスカートが仇になったようだ。
「おーなんや、今はやりの(※1996当時)ペインティングちゅうやつやな」
「師匠、それちょっと古いです」
「ええやん、どれ貸してみ」
「ふえええ!?」
草若、固まって動けない若狭のほっぺたにヒグラシ紋を落書き。
「師匠うまい!」
「さすがです師匠!」
拍手喝采のヨッパライ兄弟子一同。
「…なんのプレイやいったい」
「若狭ちゃんかわいそー…」
呆れる熊五郎夫婦をよそに盛り上がる徒然亭一門。
しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく
耳なし芳一よろしく落書きまみれで放置される若狭。
寝床の夜は今日も平和に更けていくのであった。
終わる
※Jリーグバブル時代(1993〜1995)フェイスペインティングが流行
GJワロタ!
四草地味にエロいよw
つうか幼稚園児のお道具箱かよひらがなで名前かい!って思わずつっこんだw
>>605 GJ!
太ももに書いてる辺り、四草お前シラフだろと思ってしまった…
ウーロン茶で酔える男ですさけ
>>605 おかしい〜!
ひぐらし紋ペインティングの若狭かわいいw さすが師匠。
あとは草原兄さんが比較的マシなくらいで、弟子共、全員嫌なとこ書くなぁ。
四草、いつの間に移動をw
610 :
502:2008/04/27(日) 14:03:25 ID:NgoJ8xE/
前回の投下にて多数のGJありがとうございました。
ネ申職人さんが大勢いらっしゃるので出張ることはないかと思いつつ
懲りずに&空気読まずにエロ無し四草×若狭投下です。
本編11週後、草々とA子が別れた後くらいです。
今回も草々ファンを敵に回してます…そろそろ石を投げられそうな気もしますorz
師匠も他の兄弟子達も、雑用にこき使われる妹弟子もそれぞれ不在だった。
草々の後に稽古部屋を借り、一通り終えた後で居間へ移動した。
四草の向かいで茶を啜る兄弟子が、A子と呼ばれていた女と別れてしばらく経った頃。
そろそろ吹っ切れたのか、水を向けたら不機嫌になることもなく話してきた。
「別々の場所で、それぞれ目指すものに懸命に打ち込むことや思うところや」
恋愛に不慣れな男にしてはよく気持ちの整理がついたもんだ、と感心したところだったが。
「そういやな、若狭が俺のこと好きやとか小草若の奴が抜かしてたんやけど、
お前そんなん聞いたことあったか?」
あまりに今更な発言に返答するのも馬鹿馬鹿しくなった四草は、何もリアクションもせずに
黙って湯飲みを傾けていたが、草々は構わずに続ける。
「まさかと思って若狭に聞いたんやけど」
兄弟子の性格は旧来からよく知ってはいたが、そのあまりの無神経さに耳を疑った。
「聞いたんですか、本人に」
「気になったら聞くやろ」
――何考えとんねんこの恐竜頭。
四草は無表情保ったまま内心で毒づいた。
「それで、若狭は」
「あいつ、笑いながらそんなことあるわけないやないですかぁ言うてたんや。
小草若の奴、適当なこと言いよって」
その言い方に、少しだけ苦いものが混じっているのに気付いた。
本当は若狭の恋心を察していながらも、否定してくれて安堵しただけか――
そこまで思考が行き着くと、ますます苛立ちが募った。
なんでこんな男に惚れたのか、言葉で問うても意味が無いことは判ってはいても。
「小草若兄さんと言えば、前回の寝床寄席のとき――」
困ったような、どことなく悲しげな表情で遠くを見る妹弟子の顔が思い浮かぶ。
強引に話題を転換したのは、そんな若狭の視線の先に草々とA子が笑い合う場面が見えたからだ。
落語の話題を振れば延々話が止まらない草々に、話半分で相槌を打つ。
――どこがええねん、こんな落語馬鹿。
返答のない問いかけを繰り返す自分も愚かしい。
四草は妹弟子のことを頭から追い出すように、残っていた茶を一気に飲み干した。
数日後、午後の日の高い時間に師匠宅に来た四草は、いつも真っ先に出てくる妹弟子が不在であることに気付いた。
「小草若について午前中からテレビ局行って、買い物して夕方帰ってくる言うてたで」
稽古を終えた浴衣姿の草原が茶を啜りながら言った。
若狭がいようがいまいが自分には関係ないことである。
手早く支度をし、もうすぐ帰るという草原に挨拶を済ませて稽古部屋へ向かった。
――そして終えて戻っても、まだ若狭は帰っていない。
師匠はなにやら用があると言い置いてさっさと外出してしまった。
居間の入り口に立ったまま無言で眉をひそめる自分に、ぶつぶつと噺を唱えていた草々が顔を上げた。
「何やねん、四草」
「遅くないですか、若狭」
「ああ、そういやそうやな。まあそのうち帰ってきよるやろ」
日も暮れかけた夕刻、季節は秋。
目の前の兄弟子は忘れているようだが、若狭とて性別は女、まだ十代の小娘である。
ひとりで出歩いて帰ってこないことに、なぜ何も思わないのかと小さな苛立ちを覚える。
行き先などいつもと変わらないのだから、別に心配することもない。
自らにそう言い聞かせる間にも、釣瓶落としの速度で日は暮れていく。
踵を返すと、四草はそのまま師匠宅を飛び出した。
内弟子時代に足繁く通ったスーパーは三ヶ所。
曜日によって安くなるものが異なったり、品揃えに違いを出していたりするからだ。
若狭が弟子入りして間もない頃はそういう基本的なことを筆頭弟子に言われて教えてやったりもした。
師匠宅から一番遠いスーパーまでの道のりを辿りながら、すれ違う人の顔も明確ではなくなった夕暮れに舌打ちする。
何をしているのか――。
家を出るときに、自分の無言の行動に焦りを感じたのか、草々も俺も探すと言い出して
別の方向へ走っていったが、どことなく不快な気分は拭えない。
見つけるのが目的なのだからどちらが先でもいいのだが、草々に先を越されては
釈然としないのも正直なところだと思いながら人通りの少ない道を通り抜ける。
角を曲がり、商店街が見える位置まで早足で向かった。
「若狭」
気付けば繰り返し、意識もせずに呟く名。
一日何度、本人に届かないところで呼んでいるのか。
愚にもつかない行為に、自嘲めいた笑いが漏れる。
「――若狭」
商店街を一通り見て、目指す人影がいないことに焦燥感を覚えた。
一本挟んだ住宅街の道を歩く頃にはもう街灯の光が頼りなほど暗くなっている。
家並みの間の道は時折テレビの音や水を流す音などが漏れるだけで、人影もなく静かだった。
まさかと思いながら、突き当たりの小さな公園があることを思い出して駆け出す。
小さく聞こえてきたのはかさり、というビニール袋の音。
水銀灯の下、ベンチにうずくまる影――
「若狭!」
駈け寄った先には、自身を抱きしめるようにうつむいたまま動かない妹弟子。
脇に置かれたままのスーパーの買い物袋から野菜が覗いている。
「大丈夫か、おい」
その肩に手を当てて声を掛けると、小刻みに震えていた若狭がごくゆっくりと顔を上げた。
暗くて判別しがたいが、ひどく青ざめているように見える。
「――四草兄さん……」
涙を溜めた目で自分を見た若狭が、安堵したように弱々しい微笑を浮かべた。
「ごめんなさい……」
四草が言葉を挟む前に、きゅっと眉根を寄せた若狭は両腕を前に重ねてうつむいた。
だいぶ涼しい時期にも関わらず、そのこめかみに脂汗が浮いているのが見える。
――生理痛か……。
数多の女を見てきたから若狭の様子を見てすぐに判ったが、恐竜頭の兄弟子なら一生気付かないだろう。
「立てるか」
反応はない。
女だからとひとりで痛みを抱え込み、師匠や兄弟子達に悟られないように気を張ってきたのか。
不器用なくせに妙に頑固なところのある妹弟子に、鬱陶しさにも似たもどかしさが湧く。
考えるより前に、その背にそっと手を伸ばした。
一瞬ぴくりと反応したが、拒否する動きはないのでそのまま静かに動かす。
自分の手よりも温度の高い背を、言葉もなく撫でる。
少し早い呼吸のリズムとともに伝わる鼓動に、胸の奥に何かが灯るような気がした。
それは内弟子になってあの家で暮らし始めたときに感じた心地よい温もりに、とてもよく似ていた。
「あそこにいる男どもは鈍いからな、言わんとわからへん」
楽になってきたのか、若狭が少しずつ身体のこわばりを解いていくのが判った。
「しんどいときはそう言え。言えば誰だってお前に無理はさせん」
ゆっくり身体を起こして自分の方へ向いた若狭は、口元に小さく笑みを作った。
「すいません、もう大丈夫です。帰れます」
肩で大きく息を吐き出して、大儀そうに立ち上がる。その身体が、ふらりと傾きかけた。
反射的に、二の腕を掴んだ。
驚いたように見開かれる目から逃れるように、空いた手で買い物袋を持ち上げる。
「――帰るぞ」
まだ辛そうな様子の若狭に合わせ、いつもよりずっと遅いペースで歩く。
左手には、自分より体温の高い掌が握られている。
師匠宅が見えるところまで来たとき、小さく礼を言われたのには気付かないふりをした。
揃って帰ってきたときには草々はもう戻っていて、ぐったりした様子の若狭を見て本人以上に青くなった。
そんな兄弟子に買い物袋を渡し、若狭の手を引いたままさっさと内弟子部屋へ向かう。
「薬あんのか」
「――買い置き、切らしちゃいました」
母屋に鎮痛剤くらいあるはずだと記憶を辿りながら若狭とともに部屋に上がる。
室内の明かりで改めて見ると、貧血も起こしているのか、ひどく顔色が悪い。
相変わらず緩慢な動きで布団を敷き始めた若狭を見て、薬取って来てやると言い残して部屋を出た。
ドアのすぐ前には草々が焦りの表情を見せて立っていた。
「若狭、大丈夫なんか」
「薬飲ませて休ませれば大丈夫でしょう」
なおも若狭の部屋のドアと自分を交互に見る草々を横目に、早足で母屋へ向かう。
「草々兄さん」
滅多に開くことのない救急箱から、かろうじて使用期限内の鎮痛剤を取り出してポケットへねじ込んだ。
大きな身体でうなだれたように立ったままの兄弟子に軽くため息をつきながら振り返る。
「兄さんが悪いわけやないですよ。あいつが体調管理できてなかっただけです」
面倒なので若狭が具合悪い理由を口にはしない。
なにか言いかけた草々を目で制して台所へ行き、コップに水を注ぐ。
それを手にして、母屋を出た。
音を立てないように扉を開くと、明かりもそのままに布団にもぐり込んで動かない若狭が見えた。
「おい」
貧血なら何か口にした方がいいのだろうが、無理に起こすのもためらわれた。
水の入ったコップと鎮痛剤を隅へ置き、布団の横に座り込む。
額に汗を浮かべて丸くなって眠る妹弟子の姿を視界に収めた。
「若狭」
繰り返し、繰り返し。
幾度となく口にする名は届かない。
目の前にいる今も、聞こえてはいないだろう。
先刻、つないでいた手の感触を思い出して唇を歪める。
性愛以前のあんな他愛ない接触で、なぜ自分はこんなに喜んでいるのか。
それでもまだ触れたくて、若狭の額に張り付いた髪へ指を伸ばす。
「……四草兄さん」
薄く開けられた目は、まだ焦点が合わないままぼやけている。
「ええから寝とけ。どうせ、また明日から五時起きや」
手を引っ込めようとしたところで、その指が掴まれた。
予想もしなかった動きに、不覚にも息が止まった。
四草は自分の指先を握ったまま力が抜けた若狭の手が、ぱたりと布団の上に落ちるのを見つめた。
――若狭。
声に出さずに、呼びかける。
当の本人は軽い寝息を立て始めている。
「ええ気なもんやな」
水銀灯に照らされた苦痛の表情ではなく、穏やかな寝顔が目の前にあることに安堵する。
掴まれたままの左手をそっと持ち上げて、その細い指先に軽く唇を当てる。
今はまだ、この眠りを見守るだけだとしても。
その笑顔も、秘めた心も、包む体温も。
すべて手に入れてみせる――そう、遠くない未来に。
捕われたままの自身の左手に誓うと、若狭が軽く身じろぎした。
「若狭」
息を殺してじっと見つめたが、目を覚ましたわけではなかったことに安堵する。
朝はまだ遠く、指先は離れることはない。
若狭の安眠を妨げないように、届かないように。
また、名を呼んだ。
616 :
610:2008/04/27(日) 14:07:15 ID:NgoJ8xE/
以上です。
またも色々すいませんorz
いつかエロを書いてみたいもんです…
>>616 いえいえ、GJ!!
数多の女って、どれだけ見てきたのシーソー!!
そんな色男が手を握っただけで喜ぶ…セツナス
そんなシーソーのタラシ伝説も番外編でお願いしたい
618 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/27(日) 15:39:12 ID:9WBoERWA
>>616 GJ!!
左手と言うのが
また乙です!!
>>616 GJ!
やっぱり四草は切ないなぁ。
本当に欲しいモンは欲しいと言えない男、なのだと思ふ。
>616
GJ!
しかし、生理痛を見抜く男、いいような悪いようなw
おなじくシーソーのタラシ編も見たいですw
空気読まずに未来編。二代目ヒロイン落子、エロなし。
未来編嫌な人は、すっ飛ばしてください。
私の名前は…正直、本名を忘れそうなくらい、「落子」で通っとります。
お父ちゃんは落語家、お母ちゃんは元落語家のおかみさん。
そやから私は、上方落語の申し子なんやそうです。
自分で落語をするかどうかは、まだ決めてへんのですが、
着物は小さい頃から馴染んどったんで、2020年代に入って、
小浜のおばあちゃんの言う「一大着物ビーム」が来ても、
最新流行のファッションを、ばっちり着こなせてます。
私に似て着物が似合う体型のお母ちゃんは「ええ時代に生まれたなぁ」と
羨ましがってます(学生時代、ええ思い出がないんやそうです)。
そして、落語家の師匠方も兄さん達もみんな優しいて、落語界は大好きです。
今日は私の成人式。
着物は慣れてる言うても、振袖はまた違った気分です。
「ええか落子、くれぐれもな、道中、気ぃつけるんやで」
「大丈夫や、お父ちゃん。師匠方や兄さん達が、道に出てくれはるんやて」
「余計危ないわ!」
…お父ちゃんの言うことは、時々わけわかりません。
「落子ちゃん! うわぁ、今日は一段と色っぽいなぁ!」
「ありがとうございます、小草々兄さん。今日の嘘は嬉しいです〜」
お父ちゃんの1番弟子の小草々兄さんは、しょうもない嘘をつくのが得意です。
嘘やとわかってても、褒められると嬉しいもんです。
いや、嘘ちゃうんやけど。
がっくりと肩を落とす小草々だったが、やがて和風のブローチを差し出す。
「落子ちゃん、初めて会うた頃のおかみさんに、ますます似て来たなぁ。
これ、こういうブローチを振袖に合わせるのが、今の流行りや
こっち来てみ、胸元に僕が付けたげるし」
師匠である草々にぎろりと睨まれたのにも気付かず、小草々はいそいそと行動する。
「ありがとうございます〜!」
にっこり笑うひぐらし亭のアイドルに、小草々はうきうきと言う。
「それでな、落子ちゃん。成人のお祝いに、式の後に飲みに…」
どんっ!
鈍い音がして、小草々が吹き飛んだ。
「落子ちゃん、成人式、おめでとうさん」
「颯太兄さん!」
颯太兄さんは、お父ちゃんやお母ちゃんの兄弟子・草原おじさんの息子です。
落語家にはなってはらへんのですが、落語研究の第一人者として、
上方落語界や文学界では名の知れた存在です。
「落子ちゃんも、もうすっかり大人やなぁ…」
「颯太兄さんみたいに、うんと年上の人に『大人』言うてもろたら嬉しいです〜」
…んな年の差感じてくれんでもええわ。
颯太はがくん、とこけそうになりながらも、手元の包みを渡す。
「あ、今日はな、式の間退屈やろから、本持って行き、言おう思てな。
悩んだんや…あんまり笑ても泣いてもあかんし、て。
ほんで、今さっき、やっと決めてん」
「いろいろ気ぃ遣てもろて、ありがとうございます」
後ろでは草々が、兄弟子の息子を邪険にするわけにも行かず、対応に悩んでいる。
「これ、式の間、こそーっと読んどき。
そんで終わったら、うちのお父さんの高座…」
「こら颯太!落子ちゃんに何ちゅう悪いこと教えんねん!」
第三の人物がやって来て、颯太の襟首を掴んでぽいっと放り出した。
「草若おじさん!」
お父ちゃんの兄弟弟子・四代目の草若おじさんです。
落語の他にも、司会やらドラマやらに引っ張りだこで忙しいのに、
私のお祝いには絶対来る、言うてくれてはりました。
「ほんまに来てくれはったんですね!」
「当たり前やがな〜!
落子ちゃんのためやったら、高座すっぽかしてでも来るで〜」
「こら四代目!」
お父ちゃんは、自分の師匠の名前やから、って、いっつもこう呼びます。
「…お父ちゃん、いっつも、みんなから言われてるやろ。
ちゃんと『草若』言わなあかん、て」
「ええねんええねん、落子ちゃん。
そやけど落子ちゃんは優しいなぁ。
んで、見た目は、お母ちゃんによう似て、底抜けにかわいらしいしなぁ!」
「草若おじさん、小さい頃から、いっつも褒めてくれはって…。
ほんまに、もう1人のお父ちゃんやて、ずっと思てました」
お父ちゃんは、あんまりあれこれ褒める人やないんです。
そやけど、その分、草若おじさんは、いっぱい褒めてくれはって…
厳しいのと優しいのと、2人お父ちゃんがいるようなもんで、
小さい頃から、よう羨ましがられていました。
…お父ちゃん…ま、しゃあないか。
草若は苦笑する。
娘のように思うのは確かだけれど、その奥にたぎる熱がある。
親父も、若狭のこと、こないな感じに思ってたんやろか。
妹弟子をかわいがっていた父を思い出す。
草々がぎらぎらした目でこっちを見ているのは放っておいて、
草若は懐から細い包みを取り出した。
「落子ちゃん、これな、かんざしやねん。
古いもんやけど、物は底抜けにええんや。
俺のお母ちゃんが成人式の時につけたもんらしいんやけど…
もうきれいに髪したるけど、もっと華やかになるかな、思て」
「ありがとうございます!えっと…どの辺挿そかな」
「手伝うたるわ」
草若は愛らしい乙女の手に自分の手を添え、微笑む。
「ほれ、鏡で見てみ。きれいやで〜」
「落子!」
草々が怒鳴る。
「早う行かんと、式に遅刻するやろ!」
「ほんまやぁ!」
あっという間に、鏡がつき返された。
「草若おじさん、ほんまにありがとうございます!
ほな行って来ます!!」
「あ…」
草若が次の句を言う前に、彼女の姿は消えていた。
ぱたぱたと走ってる間に、尊建師匠や柳眉師匠にも会いました。
2人とも優しく話しかけてくれはったんですが、残念ながら時間がありません。
急いで会場に向かわないと、式に遅れてしまいます。
そやけど…足元のぞうり。
きれいやと言う理由だけで選んでしもて、歩きにくうて、固うて、痛い。
気付けば私は、途中で足を引きずっていました。
「落子?何してんねん」
「あ…小四草兄さん」
私の幼馴染みであり、お父ちゃんの弟弟子である四草おじさんの息子です。
兄さんの「小四草」てのは、私の「落子」と同じであだ名です。
最初に来たころ、ちっとも喋らへんで、名前も言わんかったんやそうです。
その間に、みんながそない呼ぶようになってしもて…やっぱり定着してしまいました。
「…ちょっと俺の肩に掴まり」
小四草兄さんは、ちょっとかがんで言いました。
私は、言われた通りにすると、兄さんはぶら下げた紙袋から…
「これに履き替え」
新しいぞうりを出してくれました。
言われるままに、足をちょっと上げて、兄さんに履き替えさせてもらいました。
「あれぇ、こんにちは、小四草くん。
それにしてもこの子は、まだぐずぐずしとったん?」
用事があって家を空けていた喜代美は、近所で娘を見かけて呆れた。
「足が痛なって…兄さんに新しいぞうり貰てん」
「もう、ほやから言うたやないの。
見た目だけでぞうりを選んだらあかん、て」
「お母ちゃん。私、遅刻したらあかんから」
説教が長引きそうだと感じ、娘はさっと踵を返す。
そんな娘の耳に、兄弟子の息子が何事かささやいてから、別の方向に行く。
喜代美は、その様子をくすっと笑って見守った。
「やっぱり、親子って似るもんですねぇ〜」
帰宅した喜代美は、草々に言った。
「ほんまにな」
娘につく虫どもに目を光らせるのに疲れた草々は、うめき声に似た返事をした。
「小四草くん、四草兄さんに似て、観察力あって器用なんですねぇ」
「待て。小四草も来とったんか?」
やられた、と草々は思う。
自宅まで来た奴は、待機を図った尊建や柳眉含めて追い払ったが、外で接触するとは。
「はい。あの子、やっぱりぞうりが合わんで足痛めて。
小四草くんが代えのぞうり持って来てくれたんです。
前に、あの子がみんなに振袖一式見せた時に、気ぃついたんやて」
…それだけで気ぃつくて、どないやねん。
草々は感心するより呆れてしまう。
「ほんで、式が終わった後」
喜代美は平然として続ける。
「振袖脱いで片付けるの、手伝うてくれるんやそうですよ」
…おい!
「手伝うて…何やそれ!」
「ほやから、あの子、着るのは慣れとるけど、脱いだ後たたむんが下手やでぇ。
小四草くん、それに気ぃついて、手伝うてくれるいうことでしょ。
やっぱり親子やな思います…四草兄さんも、よう手伝うてくれましたさけ」
…何やと?
「着物はしわならんように、早めに脱がなあかん、言うことでぇ。
内弟子修行中、四草兄さんに、いっぱいお世話なったもんです」
「ほんっまに親子ってもんは、よう似るわ!」
草々は怒りを込めて叫んだ。
「そやけどお前、片付けるて言うても、箱ないとあかんやろ」
「ほやさけ、四草兄さんに来てもろて、さっき移動させ終わったとこです」
「何やってんねやお前は〜!!!」
危機感なさ過ぎの母娘に、抜け目のない父子という、親子二組。
上方落語屈指の師匠も、頭が痛いようである。
627 :
621:2008/04/27(日) 21:45:26 ID:nBd/v50B
さり気なく四草→若狭オチ(苦笑)。
算段の倉沢家DNAと、眺められても気付かない総天然の和田家DNA。
草々は、あの若い頃のアフロが嘘のように、髪の毛に来るかも…
若狭落子母娘、天然カワユスw
おもしろかったですGJ!
>>621 GJ!!DNAのぶつかり合い、緊迫感あってイイ!!
>>621 GJです。
娘が成人する頃になっても仲睦まじい草々夫妻にニヤけてしまう・・・・
>>621 倉沢家DNA最高です
吉田家DNAは切ないね
小四草は20代半ばかぁ…
美青年だといいなぁ
>621
着物着替えを手伝う算段四草いいねー。
落子と四草Jr、いいカップールになりそうですね。
で、小草若おじさん、もう50代ぐらいだろうけど、まだ独身なのかな。
めっちゃかわいい〜。GJ!!
落子イイ(・∀・)!そして小四草テラカッコヨスw
それぞれのキャラがかわいくてよかったです!
直接は出てこないのに四草にいさんにドキドキしましたw
>>621 GJ!楽しい!
ひぐらし亭のアイドル母娘を守るため、禿げるほどがんばれ草々師匠!
>>616 前作『赤い絲』に引き続き、切なく美しい四草の物語に溜息が出ました。
性描写を一切排してのエロティックな文章にただただあこがれるばかりです。GJ!
>>621 落子ちゃんの語りが可愛らしかった、GJ!
このスレの新ヒロインに急上昇のヨカーン(゚∀゚)
容姿はお母ちゃん似でも、周囲にようさんおるおじさんや兄さんらに
愛されて育ったらポジティブなほんわか娘に育つのもうなづける。
幼少時や少女時代の話も読んでみたいな
GJ!!
小四草は絶対美青年に育つと思う!
>>621 GJ!落子いいよ落子
小四草は幼少時から算段を仕込まれて育てられたんだなw
いいカポーになりそうなので、ぜひ発展編もお願いしたいです。
638 :
621:2008/04/28(月) 23:35:48 ID:gAh1m4th
うわ、落子(てか、小四草×落子)人気にびっくり^^;。
妄想しか出て来ないキャラと、台詞一言も喋ってないキャラだから、
皆さん、設定はそれぞれいろいろお考えだろうと思いますので、
石が飛んで来るかと思いきや・・・好評で照れますなぁ。
本当にいいんなら、新ジャンル開拓すべく、いろいろ書く気は満々ですが。
落子は「お父ちゃんが変なあだ名つけるせいで恥かいた〜!」ってのも
考えたんですが、そうなると本名が必要なので、隔世遺伝的に、
糸子さん級の陽性天然ちゃんになってもらいましたw
倉沢家息子は・・・多分、父親よりはストレートです、育った環境的に。
吉田家DNAは、「二代目小草若(15)」も考えたんですが、
上手くキャラが立ってくれなかったんで、四代目直々に出てもらいました。
・・・冷静に考えたら、年齢設定はえらいことになってるなぁ、と思い、
ウィキで確認したところ、落子(20)、小四草(推定25〜26)の時期って、
小草々(推定50)、颯太(41)、四代目草若(63)、尊建(推定60代半ば)、
柳眉(推定60代後半)だと判明したorz どんな落語家集団やねん。
>>638 すみません、そこに
草々にそっくりな双子の兄もいて兄馬鹿で
妹に近づく男は害虫駆除しまくったお陰で
恋愛に免疫がなく
さり気なくいつも小四草に
良いところを持って行かれるなんてのは
どうでしょうか?
双子と言えば、春平・順平兄弟もかなりの強敵かもしれない。
B子の「じゅんちゃあああああああん」DNAから鑑みるに。
アホボンと松江さんのDNAが強かろう双子がそんな算段できるかねw
片割れは社長になるらしいから、算段もできそう。
母親は順子、伯母はA子、祖父は英臣だし>双子
>>643 アホボンDNAはそれらにすら勝ちそうな悪寒がするんだが…
アホボンどんだけw
顔はそっくりでも、中身はアホボンDNA・順ちゃんDNAにぱっきり分かれるというのはいかがでしょうか。
647 :
621:2008/04/29(火) 10:43:38 ID:jsk9WwOF
うん、今朝になって、春&順兄弟の存在を思い出しました(苦笑)。
小草々や颯太より、よっぽど年齢的につりあうじゃねーか自分(汗)。
つーか、自分は自分の落子物語書いちゃうんで、
皆さんもそれぞれの落子書いちゃってくださいよ〜。
こうやって設定出てくるの見たら、底抜けに他の人の読みたいです。
>>621さんの設定だと、小四草って落語家さんなのかな?
天然ちゃんの幼馴染み落子に算段をしかけつつ、
全くその気にはなってもらえず…って図が見えるよ(笑)
超美青年っぽいし、ライバルでもできたら
小四草がいつもそばにいてくれるのが当然と思ってた
落子も気付いてくれるんかなぁ…
…なんて、妄想語りすまん。
>647
落子物語(続)お待ちしております。
春順の双子、一人はA子のDNAを継いで秀才か職人肌の箸社長、もう一人は
鯖二代目、でもSABAYAとして、魚屋食堂をリストランテに改築するかもね。
二代目四草との絡みもみたい。
落子は落語家になる設定?
一卵性双子にDNAの差などないじゃないかw
>>650 某野球漫画の双子の学力差があるではないですか
652 :
621:2008/04/29(火) 21:53:11 ID:jsk9WwOF
・・・自分のせいで、落子中心子世代妄想大会になってしまってるな、
未来話苦手な方には申し訳ない^^;;;。
>>648 うーん、四草なら自分の息子に違った芸名を付けそうなので、
自分的にはあくまでも「小四草」はニックネームです。
・・・年齢的に、大学院生か社会人のはずなんだよな、よく考えると。
648さんの後半設定いいですね・・・ぜひぜひ書いてください♪(笑)
一応、小四草×落子←箸鯖双子ネタはあるんで、ちまちま書きます
(・・・何か、このスレの本来の働きから離れてそうで怖いんで・・・
こやつ暴走しとると思ったら、いつでも止めてくだされ・・・)。
なんだかんだ若狭×四草が一番好きだなー
若狭と四草
今となっては、寝床で2人が微笑みあったのは貴重な一瞬だったなあ
微笑みあったというか、結局はたかりなんだけど
自分も四草×若狭が一番好きだ!
草々×若狭、小草若×若狭読んでもそれなりには萌えるが。
それなりにとか言われるとネタ保留中の身としては出しにくい。
そのうち投下します。
…ずっと前から感じてたけど、もう我慢ならねえ。
四ヲタの人の中には、他のファンの人に全く配慮しない発言する人多過ぎる。
ここは色んな萌えをもった人が集う場であって、四草×若狭専スレじゃねえ。
ささやかで小さな言い方一つであっても、その度にずっと気を悪くしてる人間
もいて、でもスレの空気悪くしたくないからと気遣って我慢してたのに、どん
どん付け上がる一部の人には本当に悲しいよ。
あらゆる萌えがどんどん吐き出され、作品も投下されてしかるべきだけど、
一部四ヲタの方には謙虚さが足りない。
それが歯痒いし辛い。
自分はどのカプも好きだから、あえて苦言を呈した。
スレ汚しすまない。
どのカプも歓迎。出されたものは美味しく頂く。
だが656みたいな誘い受けは激しくウザー。
「そんなこと言わずに投下お願いしますよ」と言われたい気満々じゃないか。
ずっと待機してていいよ。
確かにスレのふいんきは気を使いますね。
このスレ、センスのいい作品タイトルをつけられてる職人さんが多いから、
自作にタイトルつけるべきかすげー迷う。
「部屋を開けたら自分好みの美少女がおかえりなさいvとかアニメみてーな夢見てんじゃねぇぇ!現実を見ろ現実を」
「男のロマンてもんは気がつけば数万単位で金が吹っ飛ぶから気をつけろ」
↑某アニメの影響で自作につけようと思ってたタイトルだけど、
さすがにふざけすぎかなーって思って結局カプ表記のみで自重。
なんか自分語りでスレ止めてすんません。
お詫びにしょーこりもなく小ネタ投下しときます。
ヨッパライ徒然亭一門in寝床 2
「なんたってあのでっかい胸やろ!胸!」
「お子ちゃまやなおまえは!太ももの魅力をわかってへん!」
「違いますね。あえて言いましょう一番は尻であると!」
「あのムチムチの二の腕に気付かへんとは、まだまだやな」
しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく
「今度はなんなん?女の子の前でどーどーと猥談!?」
「…ちゃうねんて。若狭ちゃんのどこがいっちゃんカワイイかで揉めてねんて」
「完全なセクハラやないの!!」
呆れるを通り越して憐れみの目になる熊五郎。
あのバカ兄貴どもに説教したるわ!と息巻く咲。
「まーまー。あいつらなんだかんだで若狭が可愛いくてしゃーないんや」
許したり?とニコニコしてる草若。
「甘いな草若さん!こーゆーことはキッチリ言っとかんと、あとあと女の傷になるんやで!」
ほら若狭ちゃんもハッキリゆうたり!
けしかけられた若狭はしゃくり上げている。
「…またや、また私ひとりのけもんや…話についていかれへん…いっつもそうや…」
「…若狭ちゃーん?ちょーとズレてるで?」
ふえええと泣き付く若狭に困り果てる熊五郎夫婦。
「おもろいな〜おもろいと酒がすすむな〜」
完全にヘベレケ状態の使えない師匠。
寝床の夜はまだまだ深い。
「…もう帰ってくれる?」
終わろ
>>661 GJ!
この手の小ネタはほのぼのしてて好きだw
また楽しみにしております
>>661 アホの子の四兄妹ネタ、朝っぱらから狂おしいほどにGJ
その某アニメはあれか、銀髪の万事屋アニメw?
>>660 タイトルつけるかは職人さんの好みでいんでない?
せっかくタイトル考えてるならつけてほしい。
ネタ元(ある場合)探すのも読む側としては楽しいよ。
あのー、どなたかまとめサイトを作ってみる気のある方はいらっしゃいませんでしょうか?
良作揃いなんで、スレが落ちた後もいつでも簡単にまとめて読める場所があれば…
自分はしばらくPC使えない状況で、しかもやり方も分からないもので、
丸投げの依頼で大変恐縮ですが
どなたか是非!お願いします。
>>665 是非ぜひ!
どなたかお願いしますm(_ _)m
携帯の自分からも一票!
うーん、自分は今、htmlいじれる状態じゃないからなぁ。
コピペしてブログ化するくらいなら出来るかもしれないけど。
ただ、第1スレが自分は見られないんですよね。
流れぶった切って、草々×A子。
17週ラストのパラレル。
公式設定好きな方、毎度すいません。
「そう言えば……A子、最近、どねしとるん?」
幼馴染み達を前に口にした質問は、何かの予感だったのかもしれない。
随分と後になって、喜代美は思った。
草々は、ふらりと海岸まで散歩に出た。
早春の風が顔に当たって、気が引き締まる思いがする。
若狭の実家があるこの小浜が、自分のふるさとになるのだ。
ずっと欲しかった家族が手に入った喜びに胸は沸き立つ。
だが、そんな思いを吹き消すかのように、細い影が目をかすめた。
草々の目が丸くなる。
見間違いか、と思った。
無論、ここにいても不思議はない。
小浜は、彼女の故郷でもあるのだから。
だが、目に入ったのは、草々の知る姿とは掛け離れていた。
服装も、表情も、滲み出る空気も。
そのくせ、華奢で壊れそうなところは、少しも変わっていなかった。
反射的に後を追う。
話をしてどうなるものでもないのに。
ただ、本能に促されるかのように。
「……A子ちゃん……?」
かけた声は、波飛沫にかき消される程度のものだった。
それでも、清海の耳は、懐かしい声を確実に聞いて取った。
「……そ……草々さん……」
やつれて白い顔の清海は、目を大きく見開いた。
「何で……何でおんなるんですか……?
私……夢見とるんやろか」
「いや、ほんまに俺やで」
服装は、大阪にいた頃の可憐で清楚なものとは違っている。
本来なら、草々が敬遠したくなるタイプの女性が着ていそうだ。
だが、その口調は、初めて出会った頃と変わらず、
側にいて支えてやりたい、守ってやりたいという思いを芽生えさせる。
「久し振りやなぁ、A子ちゃん」
清海の本質が変わっていないことに安心し、草々は笑顔になった。
「何で、小浜に?」
「ああ……」
聞かれて言いよどんでしまう。
「若狭の実家に遊びに来たんや」
それは、嘘ではない代わりに、正確でない答えだった。
「A子ちゃんは、東京ちゃうかったんか」
「お母さんが入院しとるでぇ……看病で戻って来たんです」
清海は肩をすくめた。
「さすがA子ちゃんやなぁ。
やっぱり優しいわ」
「ほやけど、ほんまは、帰る口実が欲しかったんかもしれません」
清海は泣き笑いのような顔になる。
「最初に私を見た時、びっくりしなったでしょ?
番組が半年で終わってしもた時、
草々さんらが小さい落語会から頑張っとんなるの思い出して。
何とか東京で生きて行く方法探したんです。
キャスターは飾りやとしか考えてない人らも多かったけど、
そんな飾り扱いの仕事でも、いつかほんまに報道に繋がる思て、
いろんな人との繋がり大事にしようとしてるうちに、
ニュースのアシスタントやなくて、別の番組の仕事も増えて……
そのうち、仕事やなくて、私を必要やと言うてくれなる人が出来たんです」
「今……その人と?」
つい2ヶ月ほど前、自分も若狭と結婚式を挙げたばかりだというのに、
なぜ胸がうずくのかわからないまま、草々は尋ねた。
「嘘やったんです」
清海は自嘲気味に笑った。
「付き合うて、お兄ちゃんの言う大人の階段も登って。
……結婚も、したつもりでいたんです。
みんなが感心してくれるA子やなくて……ちょっと、無茶しとなって。
家族にも友達にも連絡せんと、結婚して……したつもりで。
お金ないさけ、式は挙げられんけど、届けは出してくれた思てました。
ほやけど……それで、東京おる気なくなって。
他の当てもないし、お母さんの看病を理由に帰って来て」
清海は、風になびく髪をかき上げた。
「草々さん、がっかりしなったでしょ?
私が、大阪にいる頃と全然違てて。
みんな、今の私にがっかりしとんです。
そのくせ……何やおかしい、て心配したりして。
何か、帰って来たのに帰って来た気になれへん……」
彼女は華奢な手で何度も髪の毛を押さえる。
涙を零しそうになりながら、それでも微笑もうとしている。
(あの時と、同じや)
――化石、ほんまは、B子が見つけたもんやったんです。
申し訳なさそうに自分を責めて、そのまま消えてしまいそうな……。
「変わってへんやないか」
草々は言った。
「つらいこと、全部一人で抱えて、じーっと我慢してる。
そういうとこ、全然変わってへんやないか」
「草々さん……」
清海が目を丸くすると同時に、草々は思わず彼女を抱きしめた。
いつかの、大阪の川べりでのように、
少し戸惑った後で、清海は草々の背に腕を回す。
だが、その後は前と違っていた。
草々は清海の顔を見つめ、その唇に口付けた。
「A子ちゃん……A子ちゃんのつらい思い、俺が全部消したる。ええか」
力強い眼差しに、清海は数年ぶりに、心からの微笑を浮かべた。
草々の目は、シーズンオフで使われていないボート小屋に留まった。
人影がないのを再確認し、清海の手を引いて中に入る。
数年間も離れ離れでいたのが嘘のように、
また、離れる前は清い関係だったとは思えないほどに、
2人はごく自然に互いを求め合った。
清海とキスをしながら、草々は彼女のジーンズのベルトに手をかける。
そして、清海もまた、草々のシャツのボタンに指を伸ばした。
「清海ちゃん……」
草々の呼び方は、いつしか、初めて出会った頃のように、本名になり。
「草々さん……」
「……『一』て、呼んでくれへんか」
「一さん……」
まだ肌寒い季節なのに、清海の白い肌には、汗がじんわりと滲む。
その美しさに目を奪われながら、草々は少し後悔していた。
どうしてあの頃、構え過ぎずに、素直に欲しいものを得ようとしなかったのだろう。
そうすれば、清海の初めての思い出が、
ここまでつらいものになっていなかったかもしれない。
せめて……塗り重ねてやりたい。
そのために、今まで自分が重ねて来た正しい生き方に、傷が付いても構わない。
清海の首筋から胸を唇が辿り、腰から脚へと指が伸びる。
「清海ちゃん……俺、清海ちゃんとの子供が欲しい。今すぐに」
ええですね、と微笑む彼女は、真相を知らない。
一生知らせる気もない。
皆には、どんなに謝っても謝り切れないが、清海には罪はない。
彼女が傷付かないように、絶対に黙っていてもらう。
自分と若狭が、結婚式を挙げたことは。
どうやって。
どのように説明して、皆に納得してもらう。
頭が出す疑問は、目の前の清海の細く白い体に奪われた心にかき消される。
説得する。
それしかあらへん。
どれだけ頭を下げてでも。
結婚式と言う誓いを上回る現実を、草々は1つしか思いつけなかった。
――順子に子供が出来た、そやから責任取る、結婚して魚屋継ぐ!
頭によぎったのは、他でもない、腕の中にいる清海の兄・友春の言動だった。
(清海ちゃんに子供が出来た……そない言うしかない)
でも、嘘は苦手だ。
だから……
「清海ちゃん……俺な、清海ちゃんのふるさとになりたいんや。
安心しておれるような場所になりたいんや」
「一さんは……いっつも私を安心させてくれとるでぇ……」
その微笑に、草々の方がほっとした気分になる。
「そしたら……ええか」
こくんと頷いた清海は、その細い脚を開き、草々を受け入れる体勢になる。
草々は、清海の名を呼びながら彼女の中に入って行った。
そして……何度かの後、届け、とばかりに全てを出し切った。
腕の中で、やつれた顔に安堵の色を浮かべながら
意識を手放している女を見て、草々は改めて決意する。
どんなに謗られようとも、もう二度と、誰にも清海を傷つけさせない、と。
676 :
668:2008/05/01(木) 00:18:49 ID:eP/kLsCd
ごめん、1箇所番号ミスった(4が5になった・・・)。
677 :
676@携帯:2008/05/01(木) 00:36:48 ID:AdGjO8nP
ごめんなさい、しかもエロの有無書き忘れ…(汗)。
大した場面じゃないとは思うので…微エロ…かな(遅。
本当に不備ばかりで申し訳ありません。
乙ですた
保管庫欲しいです!
>>677 GJ! 草々×清海久しぶりに読めてとても嬉しい。
基本草々は鈍いから気づかないかもだけど、もし気づいてしまったら
傷ついた清海を草々は放っておけないだろうね…。
そんなシーンを読めて何だかとても切なく感じたよ。ありがとう。
それにしてもこのスレ立って1ヶ月半たらずでもう420KB越えたね。
本編終わったのにすごいな。保管庫が出来たら本当にうれしいな。作れたらいいんだけど。
すでに秀作が量産されてる中で恐縮ですが、四草×喜代美を投下させていただきます。
時期的には、草若師匠亡き後、小草若の失踪→復活などの問題が一段落した辺りを想定してます。
無駄に長くてエロもたいした描写ではありませんが、お付き合いいただければ幸いです。
草々ファンにはあまり気分のよくない話かもしれません。すみません。
どうして、こんな事になっちゃったんだろう――
頭の中は霞がかかって、もう何も考えられない。いや考えたくない。
忘れられもしないあの夜、除夜の鐘が鳴り終わると同時に隣から凄まじい破壊音が響いた。
崩れた壁をゆっくりまたいで、あの人は私に歩み寄り、そして抱き締めた。
「今日からおまえが、俺のふるさとや」
あれから早くも六年が経っている。
一緒になって間もない頃は、まだお互い蓄えも少ないし、せめて二年は子供を待とうと決めていた。
その後、あの人が昔から望んでやまない「家族」を増やすべく二人で励んできたのだけれど…
*******
ふーっと溜息をつきながら、喜代美は静かにトイレの扉を閉めた。
朝から感じていた下腹部の鈍い痛みは、いつもの月と全く変わらない身体のサイクルだった。
――また今夜、草々兄さんをがっかりさせるんやろか。
子供を望むようになって以来、草々はたびたび期待に目を躍らせ喜代美に尋ねてくる。
女性の生理の仕組みや妊娠については全くの無知と言っていいほどで、
単に男女が身体を重ねれば子供ができると信じ込んでいたようだ。
当初は、喜代美が「今日から一週間くらいはちょっと…」と俯きながら口にすると
途端に居心地悪そうに顔を赤らめていた草々だったが、
さすがに月日が経つにつれ、恥じらいよりも落胆の色が顔に表われるようになった。
喜代美の生理痛も心なしか重くなってきた。下腹部よりも頭がずしんと痛む。
喜代美の重荷がようやくすっきりした一週間後、入れ違いに草々は内弟子の小草々を従え
地方公演の仕事に出掛けていった。
二日間の高座を務めた後、明後日の晩に帰宅の予定となっている。
朝から慌しく仕度を整え二人を送り出し、洗濯と簡単な掃除を済ませた喜代美は縁側に座り込んだ。
暑過ぎず、まだ湿気の少ない初夏の爽やかな陽射しが全身に心地いい。
おろしたてのカットソーは若草色の七分袖で、喜代美の白い肌によく映えている。
そこへ、いつの季節も関係なくモノトーン一色の男が庭先に現われた。
「あれ、四草兄さん、今日もお稽古ですか?」
昨日は草原や小草若も一緒にほぼ終日この家にいたので、てっきり今日はバイトかと喜代美は思っていた。
「おぅ」と短く答えた四草は、一人分ほどの距離を空けて喜代美の隣に座りだした。
一度立ち上がった喜代美も再び縁側に腰掛ける。
「なんや、今日はえらいすっきりした顔しとるな」
「え?」
「昨日までとは違うようやな。今に始まった事でもないけど」
「え、どういう意味…」
四草はサッと立ち上がり、表の出入り口――ではなく内弟子部屋の棟へ向かって歩き出した。
「四草兄さん、どこへ行きなるんですか?」
喜代美は慌てて立ち上がって追い掛ける。
「ちょっと上がらしてな。冷たい茶、出してくれるやろ?」
振り返った四草は口の端をかすかに上げてニヤッと笑顔を作ると、喜代美夫婦の部屋の扉を開け
さっさと中に入ってしまった。
「もう、どうしたんやろ」
半ば呆れつつ、喜代美もさっと踵を返して母屋に戻り、冷えたウーロン茶を二つのグラスに注いで
自分たちの部屋に盆を運んだ。
「どうしたんですか、お稽古に来はったんやないんですか?」
すでに小さなテーブルの前で胡坐をかいている四草の前にグラスを置き、喜代美は訝しげに尋ねる。
「母屋で話すような事やないからな」
「え、話って…」
今日初めて四草は正面から喜代美の顔をじっと見つめた。鋭い眼差しに思わずびくっとする。
「おまえ、相当溜め込んでるやろ」
「溜め込んでるって…」
四草の思いがけない台詞に、ただオウム返しでしか言葉が出てこない。
「あのな、これだけは言うておく。おまえは昔のおかみさんの幻に縛られる必要はないんや」
「え、私…そんな――」
いったい何を言ってるんだろう。しかし考えるよりも先に、なぜか喜代美の目に涙が溢れてきた。
頬をつーっと一筋流れていく。
いつの間にか、テーブルの上に置かれた喜代美の右手が四草の掌に包まれていた。
「全部吐き出せ。聞いたるわ」
これはいつもの四草ではない。
しかし、そんな戸惑いもどこかに消え、喜代美は堰を切ったようにここ数年の心の重荷を語りだした。
新婚当初のように、あからさまに口に出して亡きおかみさんと比較することはなくなった草々。
それでも、月日が経つごとに肌身で感じるようになった。
草々にとってのおかみさんとは、おそらく亡き母親の面影も重ねられた別格の存在であるということ。
もはや越えるどころか追い着くことすら叶わない。
そして――こんなことに気付きたくはなかった。
なぜ草々が自分を選んだのか。
「私、草々兄さんは他の誰でもない、この私を選んでくれたんやと信じてました。
でも、その…なかなか子供が出来ひん中で、草々兄さんが口には出されへんけど言いたいことが
聞こえてくるようになったんです」
「家族が欲しかった。それだけやな」
ずっと黙って聞いていた四草がようやくボソリと呟いた言葉に、なぜか喜代美は救われる思いが湧いてきた。
四草は音もなく立ち上がり喜代美の隣に座り直した。
静かに肩に回された腕のぬくもりを感じながら、抵抗しない自分が別に不思議でもなかった。
心がじんわりと熱くなり、再び涙が溢れて、そのまま四草の胸に額を付けた。
「すみません…シャツ、濡らしてしもて」
どのくらい時間が経ったか分からないが、久しぶりに思いきり涙を流して頭がぼうっとする。
四草のグレーの長袖シャツが、胸のあたりだけ色が濃くなってしまっていた。
「じゃあ、乾くまでここにおるしかないな」
つと指を伸ばして喜代美の目尻をそっと拭う。そのまま親指と人差し指で顎を掴み、唇を重ねた。
「!!」
今までの行為も十分普段の四草から逸脱していたが、それでも兄弟子に甘える妹の気分から離れることはなかった。
唇が触れてきた途端、喜代美の全身が固まった。頭が急に冴えてかあっと熱くなってくる。
それでも――目をつむり、押し付けられるままの唇をかすかに開いた。素早く舌が入ってくる。
もう、ここはどこなのかも分からなくなってきた。唾液のピチャピチャという水音だけが耳に響いている。
そのまま座布団の上にゆっくりと押し倒されていく。
「あ…四草兄さん……」
カットソーの下から手を入れられ、さらにブラジャーの中にがっしりとした掌が滑り込む。
思わず声を上げそうになりながら、喜代美はかろうじて目を開けて四草を見つめた。
「どうして、ですか…?」
四草の目が一瞬鋭く光を放つ。喜代美は身体の芯がぞくっとした。
「他の誰でもない。一人の女がずっと欲しかっただけや」
あっという間にカットソーとコットンパンツを脱がされ、下着だけになっていた。
四草もシャツを脱いで半裸になり、喜代美の上に覆い被さる。
まだ裸になるには早い室温の中で、肌が触れ合っている部分が早くも熱を帯びてきた。
四草は左腕で喜代美の身体を支え、右手を背中に回し、ブラジャーのホックを素早く外す。
白い乳房がぷるんと揺れる。四草は顔をうずめ、ピンク色の蕾を口に含んだ。
「ああっ…!」
喜代美は弓なりに背を反らす。
四草の右手は胸の膨らみを揉み、頂を摘み、そのままゆっくりと身体の線に沿って指を滑らせていく。
いったん胸元から離れた唇も、耳の後ろから首筋、鎖骨へと徐々に移動していった。
この数年間に数え切れないほど夫婦生活を重ねてきたが、これほどじっくりと愛撫を受けたことはない。
とりわけ隣の部屋に内弟子を迎えてからは、物音や声が漏れるのを気にして短時間で済ませるようになっていた。
四草の唇が、指が全身を伝う感触が疼くように心地よく、喜代美の口から漏れる声が自然と大きくなっていく。
四草は喜代美が新婚当初から何を抱えてきたか、最初から見抜いていた。
というよりも、結婚する前から予感していたことだった。
それでも止められなかった。寝苦しい夢の中では何度も力づくで奪い返していたというのに。
何の算段も使えない自分を嗤いつつ、この均衡を崩すことなど考えもしていなかった。
しかし一週間前、台所でひとり重い溜息をついていた喜代美の背中を見て以来、
自分の中に沸き起こってきたものを止めることが出来なくなってしまった。
ただ一つの温もりを求めて――
「はぁっ…あぁん……あぁっ…」
もはや喜代美の全身は、四草の指と舌の動きだけを貪欲に求めていた。
触れられ、舐められている部分が熱くてたまらない。もっと長く、強く味わいたくて腰をくねらせる。
やがて両膝がぐっと持ち上げられた。秘められた部分が明るみに晒される。
「イヤ……あっ!」
すでに溢れて太腿にひとすじ流れていた蜜を、四草の舌が生き物のように動いて絡めとる。
いちばん敏感な部分を尖らせた舌で突かれ、「あぁぁっ…!」と一声、喜代美は達してしまった。
それでも四草は執拗に舌と指で責めてくる。もう限界だった。
「しい、そうにいさん……もう、お願い…」
無言のまま、四草は喜代美の大きく開かれた股に手をかけ、一気に己自身を濡れそぼった中心に埋めた。
「ああぁぁっ!」
喜代美の嬌声が一際高く響いた。電流が走るかのごとき快感が全身を襲う。
四草の次第に激しくなる動きに合わせて、夢中で腰を、中心部を押し付けるように身体じゅうをくねらせていた。
どれだけの時を貪ったか分からないまま、四草は最後に喜代美の片足を高く持ち上げ
激しく腰を打ち込み、その中にすべてを注ぎこんだ。
午後の柔らかな陽射しがカーテンから差し込む。火照りの残る肌を寄せあったたまま、
二つ並べた座布団に寝そべっていた。部屋の隅から引っ張り出した綿毛布が素肌に心地いい。
「私はもう、大丈夫ですさけ…」
「おまえが背負い込む必要はない。…こっちはそれくらい腹括ってきてんだ」
「違うんです」
喜代美は胸を隠しながら半身を起こして、まっすぐな視線を傍の四草に向けた。
「私を、ちゃんと一人の女として見てくれる人がいるって分かったから、もういいんです。
おかみさんに勝てない自分が悔しくて、意地になってただけだったのかも――」
笑って見せた。四草の目には、少し強がっているのを誤魔化せないのは承知の上だ。
それでも、予想外に女として開花を遂げようとしている喜代美が眩しく見えて仕方ない。
手放せそうにないな――
胸に新たな疼きを覚えながら、四草は喜代美の肩に回した腕に力を込めた。
―End―
688 :
680:2008/05/01(木) 23:36:04 ID:8Tlj7oNk
以上です。
容量ばっかり使ってホントすみません…
自分の文章には情緒も色気もないもので読み辛かったと思います…職人さんたちを見習って研究せねば。
GJです
>>680 するすると読みやすい文章でしたよ
GJです
やっぱり四草はテクニック相当ありそうなイメージ(笑)
>>687 GJ!こういう算段を捨てて、腹をくくった四草いいね。
不倫なんだけど、どこかすがすがしかったです。
読みにくくなんてありませんでしたよ!
職人さん達、それぞれに文章の色があって素敵ですね。
>>680 読み応えありましたよ〜。
「モノトーン一色の男」に笑い、
「全部吐き出せ」に泣いてしまいました。
さばさばした感じで気分よく読めましたので、
また次回作も期待しています〜。
小草若×喜代美投下させて頂きます。需要ないかもですが…。
時期は喜代美年季明け後すぐから。諸事情により草々と喜代美の
寝床での告白合戦と壁ぶち破り事件は存在しなかったことになっていますw
エロはありますが微弱。それよりなにより長いです。
小草若の妄想を現実化してみようバージョン2・同居編です。
「うわぁ!ええんですか!?こんな素敵な部屋!?」
扉を開いた瞬間、大きな目を一杯に見開いて歓声を上げた喜代美に、小草若はにっこりと微笑む。
「当たり前やがな。ここが今日から喜代美ちゃんの部屋やで。好きに使うてな」
喜代美が好みそうな決してごてごてとしないこざっぱりとした家具、大きな窓には明るい色調のカーテン、
ふかふかと寝心地がよいベッド、可愛らしい照明、落語の資料をそろえた本棚。
もともと小草若の衣裳部屋だったそこは、今はすっかり女の子のための部屋へと姿を変えていた。
喜代美のために揃えたものばかり。何ほどのこともない。思い続けたこの子が喜んでくれるのなら。
「これから…一緒に頑張っていこな、喜代美ちゃん」
「はい。ありがとうございます、小草若兄さん…」
今日からこの子との生活が始まる。夢にまで見た日々。
この子と一緒なら…頑張っていける。この子の笑顔があれば。
だから―――その時喜代美の瞳にほんのわずか落ちた影に、必死で気づかぬふりをした。
気づかなければ、この幸せがずっとずっと続くような気がしたから。
朝起きれば台所からいい匂いがする。
寝ぼけまなこでふらふらと寝室を出ると、キッチンから喜代美が振り返る。
「あ、おはようございます、小草若兄さん。もうすぐ朝ごはんできますさけ、ちょっと待ってて下さいね」
自分だけに向けられたその笑顔。これは夢かとしばし陶然とする。
「おはよ、喜代美ちゃん。ごめんな朝ごはん作らせてもて。明日からは替わりばんこにしよ、な?」
「そんな、ええですて!いっつも師匠の家でもしとったことやさけ、やらせてください」
あわててそんなことを言う喜代美が愛しくて、思わず微笑む。
「俺もずっと自分でつくっとったからええんやで。喜代美ちゃんだけに負担かけたないねん。
ルームシェアは平等にいかな、な? 俺の料理の腕前も捨てたもんやないねんで」
そういたずらめかしてぱちん、とウインクすると、喜代美は朝ごはんをテーブルに置きながら恥ずかしげに微笑む。
「ありがとうございます。そんなん…何かうちではおとうちゃんがそんなことすることなかったさけ、
不思議な感じです…。小草若兄さん、ほんまに…優しいんですね。でも大変な日は私が作りますさけ」
2人で囲む朝の食卓の時間は、宝物のように貴重なものに思えた。そう、まるで夢のように。
仕事から帰ると、部屋には明かりが点いている。
暗い冬の部屋は、今まではとても寒々しいものだったけれど。
「おかえりなさい、小草若兄さん。お疲れ様でした」
その喜代美の笑顔があるだけで、まるで別の世界のように明るく輝いた。
ちょうど帰ったばかりだった喜代美と一緒に台所に並んで、二人で晩ごはんを作る。
ごはんを食べながら今日一日の出来事をお互いに話す安らぎの時間は何ものにも代えがたくて。
小草若が面白おかしく話すTV収録の話に、喜代美は涙を浮かべてころころと笑い。
喜代美が話す師匠の家でや高座での話に、小草若はほんわりと和んで相槌を打つ。
――その喜代美の話の中にたびたび登場する“草々”の名。
その名を口にするたび喜代美の瞳がほんの少し輝くことからも必死で目をそらした。
この時間が、ずっとずっと続くように。
夜は2人で落語の稽古をする。
こちらを真摯な目で見つめて、喜代美は真剣に稽古に取り組む。
決して器用ではないけれど、繰り返し重ねてものにする喜代美の情熱は目を見張るばかり。
自分も兄弟子として喜代美に教えてやれるようにと必死で稽古を積むようになった。
「小草若、お前かなり腕あげたんちゃうか? 大ネタに挑戦してみたらどや?」
草原兄さんはそう目を見開き、
「ネタもかなり増やしたな!やっと師匠の息子としての自覚出てきたみたいやな!」
草々は嬉しげにバンバンと小草若の背中をどやしつけ、
「小草若兄さんのくせに、最近上手うなりましたね。女の力ですか?」
四草は唇の片端を吊り上げて意味ありげに薄く笑い、
師匠は―――
「精進しとるみたいやな?」
なぜか少しつらそうに微笑んだ。
この夜稽古が効を奏したのか、喜代美と小草若の高座での評判もゆっくりとではあるが上がり始め、
以前は寿限無だけ、とそしられた自分にも高座の声がかかるようになり始めた。
テレビの仕事は前ほどにはないけれど、落語家として―――自分が生き始めたのだと小草若は感じていた。
これほどに幸せな生活があるだろうか?
焦がれに焦がれた喜代美がそばにいて、お互いを高めあって落語に打ち込んでいけて。
なのに。
心の奥の奥にぽつんと浮かんだ小さな黒い染みが、小草若の胸にはいついつまでも残り続けて。
「小草若兄さん、ちょっとええですか?」
師匠の家で稽古をつけてもらい居間で休憩していた小草若は、入ってきた四草を振り返る。
「なんや?えらい改まってお前らしないな」
卓について茶をすすり、四草は静かに小草若の目を見つめて口を開く。
「不躾なこと聞きますよ。小草若兄さん…もう若狭抱きましたか?」
「なっ…!」
あまりといえばあまりの不躾さに、思わず言葉を失う。気を取り直すのに少し時間がかかった。
「何聞くねん。そんなんお前に…答える筋合いはあらへん」
「……抱いてへんのですね」
「っく…!!」
言葉につまる小草若に、薄く笑って四草は続ける。
「一つ屋根の下に好きな女がおるいうのに何しとるんですか。そんなんしとったら」
そこで言葉を少し切って、低い声で告げる。
「―――草々兄さんに、若狭とられてしまいますよ? 年の暮れからの草々兄さんの若狭見る目、
気づいてるんでしょ? あれは、兄弟子の目やないですよ?」
それだけ言うとふいと目をそらして、四草は立ち上がり居間を出て行った。
心の中の黒い染みがだんだんと大きくなっていく―――。
「ええっ!? 若狭ちゃん、三ヶ月以上一緒に住んどるのに小草若さんとまだしてへんの!?それは酷やで!」
お咲さんのすっとんきょうな声が寝床に響きわたる。
客が入るにはまだ早い時間帯、その場にはお咲さんと仏壇屋の菊江さんしかいないとは言え、喜代美は
思わずあわててお咲さんの口を押さえ周りを見回した。
「お、お咲さん…声大きいですて…」
「けどなぁ…そうは言うたかて仁志かて本気やで。いつまでもはぐらかすわけにはいかんのちゃう?」
少し気遣わしげに喜代美を見て、菊江さんまでそんなことを言う。
「若狭ちゃん、草々君の気持ち試せゆうてけしかけたんは私やからこんなん言いづらいけどな。
…あんな、ぶっちゃけ小草若さんとどういうつもりで同居しとるん?
向こうは若狭ちゃんのこと好きなんはわかっとるわけやから、その気持ちを受け入れる気があったからやろ?
それとも…草々くんのこと、まだ好きやのに吹っ切る気もなく曖昧なままで小草若さんとこ行ったん?」
お咲さんの声が少し責めるように響く。小草若兄さんを息子のように思う菊江さんの表情も心なしか険しい。
(当たり前や。私は…ずるい女や)
自分でも、自分の気持ちが整理できない。
あの時―――咲さんのアドバイスで草々兄さんに「小草若兄さんと住む」と話したけれど、草々兄さんは
後ろを向いたまま「それもええ」とただ私を突き放し、ただもう悲しくて切なくて外へと飛び出した時。
小草若兄さんのところへ行ってもいいかと泣きながら言う自分に、その涙の理由さえも尋ねず
「当たり前やがな。いつでも来たらええがな。なんぼでもおったらええがな!」
言いようもないほど切ない目をしてそう微笑んだ小草若兄さんの優しさが、暖かさがどうしようもなく胸にしみて。
その手を、とっていた…。
小草若兄さんとの生活は、本当に充実している。
小草若兄さんは本当に優しくて明るくて暖かくて。とても素敵な部屋まで自分のために用意してくれて。
語らいながら2人で作る料理と食事の時間の楽しさはまるで時間を忘れそうになるくらい。
毎日欠かさずする落語の夜稽古は、本当に身についていくのが自分でもわかる。
小草若兄さんも自分も落語の腕が、この三ヶ月ほどで相当上達したとよその師匠方にも褒められたほど。
けれど…自分の気持ちが分からなくて。
時折夜目が覚めると、壁のほうを見てしまう時がある。
それは、、草々兄さんとの部屋の境の壁に空いた小さな穴の方向。
そんなものは…もうないのに。
「判らへんのです…ずるい女やけど、ほんまにわからへんのです…」
思わず涙がこぼれそうになりうつむいた喜代美に、かける言葉もなくその場の2人も黙り込む。
ややあって、お咲さんが少し遠慮がちに口を開いた。
「…若狭ちゃんもいろいろ悩んどるんやな。けど、、いつまでもそういうわけにもいかんのちゃう?
こんなん言うのあれやけど、、一回、小草若さんに抱かれてみたらどない?」
「ええっ!!?」
思わぬ発言にすっとんきょうな声をあげてしまう。
「咲ちゃん!あんたなぁ…ほんまどんな人生歩んで来てん」
呆れたような菊江さん。けれどお咲さんの表情は真剣そのもので。
「多分若狭ちゃんはじめてや思うけど、一回抱かれてみたら自分の気持ちもはっきりするんちゃうかな?
抱かれたら情がわくいうこともあるし、またその逆もある。男と女のことは、体かさねてみたほうが
ようわかることもあるてうちは思う」
男と、女…。
寝床を出た後も、お咲さんの言葉がいつまでも頭の中にこびりついていた。
その日、小草若兄さんのマンションに帰り着いてからも、ぼんやりとそのことばかりを考えていた。
晩ごはんの支度にとりかかっても、鍋をふきこぼしかけたり、折角切った野菜を床にばらまいたり。
だから、小草若兄さんの「喜代美ちゃん、帰ったで」の声に、思わず飛び上がりそうになる。
「ん?どないしたんや喜代美ちゃん? あ、晩御飯用意しかけてくれてたんやな。いっつもおおきに。
そしたら続き、一緒に作ってしまおか」
いつものとおり優しく微笑む小草若兄さん。でもその姿がなんとなく直視できなくて。
ぎくしゃくと料理を作り始めても、うっかり魚を焦がしかけたり、豆腐をつぶしてしまったり…もう目もあてられない。
「喜代美ちゃん、大丈夫か?疲れとるんとちがう?休んどったらええで。俺あと作ってしまうから」
こちらを覗き込む小草若兄さんは、本当に心配そうで。
「だだ、大丈夫ですさけ!」
あわててぶんぶんと頭を振るけれど、そのはずみで鍋をひっくり返しかける始末。
「ほんまに大丈夫?風邪でもひいた?」
小草若兄さんの手が、額にすうっと伸ばされる。
ほのかに温かい、細い大きな手。
どくん、とひときわ高く心臓が跳ね上がり。
気づけば大きく後ろに身を引いていた。
体は後ろのテーブルにぶつかって、上にのった食器が派手な音を立てて床で砕け散る。
「!! 喜代美ちゃん!危ないて!」
勢いでその破片の上に倒れかけた自分の腕を、小草若兄さんの手が引き寄せて。
そのまま、小草若兄さんの胸に引き寄せられた。
「ごめん…。俺におでこ触られたん、嫌やったんやろ? やのに…」
小草若兄さんの顔は見えなかったけれど、その声はほんのわずか震えていて。
「…俺は喜代美ちゃんが、、好きや。迷惑やったら…そう言うて。」
明るい普段の声からは考えられないほどのその苦しげな声。聞いていられないほどに。
「違う…違います。触られて嫌やったんやのうて、、びっくりして…勝手にドキドキして…」
決して強い力ではなく、壊れ物をそっと扱うように自分を包む兄さんの腕。
このひとがどれほど自分を想ってくれているのかが、それだけで伝わるような気がした。
そっと、本当にそっと、小草若兄さんの唇が額に触れ、そして少し戸惑うような表情の兄さんの顔が
すっと近づいて、唇が重ねられる。
驚くほど、自然にそれを受け入れていた。
小草若兄さんの唇は、ほんのかすかに血の味がしたような気がした―――。
それは坂を転がり落ちるように。
口づけた後は、堰をきったような激しさで求め合った。
舌を絡め、お互いの味を存分に味わう。その間にも胸は揉みしだかれ、服を脱がされる。
下着のホックを外され、こぼれ出た胸の先端を吸い上げられた瞬間、喜代美の咽から声が漏れる。
言いようのない高揚感と背徳感。自分の中にこんな一面があったのかと思うほどの。
「喜代美ちゃん…もう止められへんで」
甘くかすれたその声に答える代わりに、喜代美は小草若に体を預ける。その肌の暖かさを求めるように。
ふわりと体が持ち上がる感覚とともに抱き上げられ、小草若の部屋のベッドへと運ばれる。
シンプルな部屋は喜代美の部屋とは全く違った、男のひとの、部屋…。
横たわった喜代美の髪を愛しげにすいて、小草若は喜代美に口づける。
その手は、唇は喜代美の全身を這い回る。丸い胸をもみしだき、その先端を優しく愛撫し、
背中から腰、そしてその下へ。
その手が、指が動くたび、言いようのない感覚が喜代美を乱す。体がくねり、背がのけぞるのを、
体が熱くなるのをどうすることも出来ない。下腹部にきゅうっと感じたことのない感覚が走る。
息が出来なくて口を開くと、自分のものとも思えないあられもない嬌声がもれる。
それを恥ずかしいと思う余裕すら、今の自分にはなくて。もう何も考えられない。
大きくのけぞった喜代美の白い咽に口づけを落とし、小草若は喜代美の下着の中へと手をすべらせる。
茂みの奥にその指が滑り込んだ瞬間、喜代美のそこからどくりと蜜があふれ出す。
その蜜をたっぷりと指に絡めて、小草若はゆっくりと中へと指をすすめる。
「あ…痛…っ」
「ごめん喜代美ちゃん、大丈夫?でも慣らさなかえってつらいから…」
まだ男を受け入れたことのない喜代美の中は、小草若の指一本ですら受け入れることを拒む。
そのくせあふれかえる蜜は、中の柔らかい壁は、指へと嬉しげに纏わりついて。
硬直する喜代美の体をほぐそうと、もう一方の手の指で、茂みの奥に隠れた突起をなで上げる。
「やああっ…んっ!」
跳ね上がる喜代美の体。力が抜けたその隙に、指をさらに奥へと差し入れ、ゆっくりと中をかき回す。
すこしずつ硬直がぬけた喜代美の中で指を曲げ奥を刺激すると、喜代美の口からは甘い吐息がもれて。
指の本数を増やして慣らすとともに、喜代美の喘ぎは深くなっていく。
十分に潤った入り口に自身をあてがい、小草若は紅潮した顔で快楽の波にただよう喜代美を見つめる。
こうしてこの腕に抱くことを、夢にまで見た、女…。
「喜代美ちゃん…好きや」
そう耳元でささやいて、ゆっくりと自身を喜代美の中へと埋める。
その中は慣らしたとは言えやはりきつく、喜代美はほんの少し眉をしかめ苦悶の表情を浮かべる。
けれど少しずつ腰を動かすにつれ、その表情は快楽のそれへと徐々に姿を変え、口からは小さな喘ぎが漏れる。
その腰はとまどうようにわずかに、けれどより深い快感を求めて、小草若の動きにあわせるようにうごめく。
締め付ける感覚、吸い付くような内側に、小草若の動きは我知らず、次第に激しくなる。
そしてそれにつれて喜代美の内側は小草若の精を搾り取ろうかとするように纏わりつき、締め上げる。
「くっ…喜代美ちゃん、締めすぎ…。もういってまう、かも」
「んっ、はあっ…にい、さん、わたし、もう…」
激しく腰をうちつける、喜代美に思いのたけをありったけぶつけるように。
限界を感じた瞬間、我知らず小草若は己自身を引き抜き、喜代美の太股へと精を放っていた。
ひときわ高い声をあげ、喜代美の体はくたん、と力を失い、その意識を手放して。
白濁した小草若自身で汚された太股を拭いてやりながら、小草若は思う。
よどむ黒い染みは、喜代美を抱いても消えない。なぜ。
あの瞬間、喜代美の中に出さずに外に出したのは、それは。何かを予感したからなのか。
こんこんと眠りに落ちる喜代美の髪をなでながら、いつしか小草若も深い眠りに落ちていった。
その夜、ふと小草若は目をさました。いや、もしかすると夢なのかもしれない。
暗闇の中で、白いシーツを体に巻きつけた喜代美の姿だけがぼんやりと浮かびあがっていた。
窓を開け外に目をやり、夜気にわずかに髪をなびかせてかすかな声で落語を口ずさむ喜代美。
その目からは、一筋、二筋と涙がこぼれ落ちて。
小草若の胸に浮かぶ黒い染みは、大きく大きく広がって小草若に告げる。目をそらし続けてきた真実を。
(喜代美ちゃんは…草々を。今もずっとずっと草々を)
突きつけられた真実に、心がひび割れる。わかっていたはずなのに。
こんなにも恋が苦しいものだとは。
歌うような抑揚で落語を口ずさむ喜代美は、言いようもないほどに、ただ美しかった―――
翌日、喜代美の姿はなかった。
喜代美の部屋の扉をそっと開くと、きちんと整頓された部屋の机の上に一通の手紙があった。
小草若兄さん
こんな手紙を残して、突然出て行ってしまって本当に申し訳ありません。
昨日小草若兄さんに抱かれて、ますまあす自分の気持ちが整理できなくなってしまって。
小草若兄さんは、本当に優しくて大切な人。抱かれるのは全然嫌だなんて思わなかった。
私を喜代美ちゃんって呼び続けてくれた兄さんに、支え続けられてきました。
でも…同時に草々兄さんのことも全然思い切れてへん自分を思い知らされて。
昨日夜目が覚めた時、小草若兄さん、寝言言いなったんです。
「喜代美ちゃん、俺はいつまででも待つから…」って。私が小草若兄さんのとこに
行っていいかたずねた時と同じ顔で。
兄さんにそんな顔させたない。こんな中途半端な気持ちで私がおるから。
しばらく、一人になって自分の気持ちを見つめてみたい。本当にごめんなさい。
喜代美
全く変わらない、けれど持ち主を失った部屋で小草若は立ちすくむ。
頬に、涙が一筋つうっと滑り落ちたことにも気づかぬままに。
「そっか若狭ちゃん、休業願い出したんやね…。年季明けてまだ3ヶ月ちょいやのになぁ…」
寝床にて、草若と菊江が静かに酒を酌み交わしていた。
「ま、しゃーないわな。あの子は2つのことをいっぺんによう考えるほど器用ちゃうからな」
言って、草若はぐっと杯を飲み干す。長い付き合いだが…草若の表情からは、感情はなかなか読めない。
空になった草若の杯に酒をついでやりながら、思い出したように菊江は口にする。
「そういえば草若はん、あんた若狭ちゃんが仁志んとこ行くことになった時、
『その先にあんたの笑顔が想像できん』言うたらしいね。今度のこと…わかっとったん?」
草若は少し笑う。しばらく逡巡するように間をおいて、口を開く。自嘲するような表情で。
「…正直なとこ言おか。あれは若狭のために言うたんやない。あの時の若狭には、草々をよう
思い切ることなんて出来るわけあらへんかった。小草若は…仁志は優しいやっちゃ、
俺から見たら優しすぎるくらいや。あいつは判っててそんな若狭を受け入れたんはわかっとる。
けど…出来たら、、仁志に傷ついてほしなかった。やから、若狭にああ言うたんや。
仁志な、もちろんそれだけのためちゃうやろけど、若狭のために必死で落語の腕あげとったやろ?
若狭にとっての自分の存在価値をあげるために。正直…俺は見とれんかった。師匠としては
喜ぶべきなんやろけどな。師匠失格やな。親としてもアホや。」
一息にそれだけ言って、表情を隠すように草若は杯をもう一献あおる。
「若狭ちゃんがが考えて考えて、また戻ってきた時には…何かが変わっとるんやろか?」
「さあ。俺にはわからん」
**********************
一月のち。風薫る五月の夜。
仕事を終えた小草若は、車を停め、マンションの入り口へと向かう。
部屋に明かりが点かなくなってもう久しい。けれどいつも部屋を見上げてしまうのは。
部屋の明かりは点いてはいなかった。いつものように。未練がましい、と一つ自嘲する。
五月の涼しい風がざっと吹き抜ける。
その風になびく、長い髪が小草若の目に映る。小柄な体も。白い顔も。大きな瞳も。
マンションの入り口に立つのは、紛うことなく。
「喜代美ちゃん…?」
その声にこちらを見つめる愛しい少女。これは幻なのかと。
「いっぱい…考えました。考えて考えて…一番会いたいひとの所に」
終わりまで言葉を聞くことは、できなかった。
何故なら…小草若が彼女を力の限りに抱きしめて、その唇に口づけたものだから。
以上です。お粗末さまでした。
このスレも残り少ないのにだいぶ使ってすみません。
初め台所で立ちバックの予定だったんですが、処女にはきつすぎと却下w
職人さんたちのようにエロが素敵にかけたらいいのですが、難しいですね。
>>701 GJ…!!・゚・(ノД`)・゚・。
あまりに切なく、読んでいて胸が苦しくなりました
「もしも」壁破りがなかったら、まさにこうあってほしかった
いいSSをありがとう
立ちバッk(ryは別の機会に待ってます
>700
GJ!
小草若が報われる話もいいね。
この二人も仲良う暮らせそう。
小草若x若狭なら若狭もおかみさん稼業は求められないけど、
師匠の奥さんとはどうしても重ねられそうだね。
GJ!
朝から良いものを読ませて頂きました。
小草若、幸せになれたのね。良かった〜。
底抜けにGJです!
草若の「親としての苦悩」も良かったです
そろそろ次スレですね。470越えぐらいで考えますか?
>>701 泣けた・・・(感涙)。
咲さんの煽ったことをちょっと後悔する思いや、
菊江さんや師匠の親心にしみじみ・・・。
小草若は報われて欲しいキャラNo.1だったなぁ・・・。
>>701 GJ!!
ラスト、どうなることかと思いましたが報われて良かった…!
会話がとても自然なので、見習いの一人としては羨ましい限りです。
ぜひぜひ次も腕を奮って下さい!
>>701 GJ!
てっきり草々エンドかと思ってましたが報われてヨカッタ〜(*´∀`*)
正直、本編のこの辺の草若師匠はもう少し息子の恋を応援してあげても…
ていう思いもあったので
親心の深層を補完してもらえた感じ。満足です。
この後、吹っ切れて盛り上がった二人の濃厚エチーを是非期待してます!
709 :
701:2008/05/05(月) 10:35:24 ID:XMh8aSh5
遅くなりましたが、読んで頂いて本当にありがとうございます。
暖かいご感想を頂けて、めちゃめちゃ嬉しいです…!
師匠の親心については、どんな心理なのかと拙くもいろいろ考えたり
してしまっておりましたので、感想で触れて頂いて感激してしまいました。
小草若エンドは無理やりっぽいかなと思ったのですが、ついついw
今日のちりとて総集編前編を見て泣けました…。
やっぱりちりとてちんは大好きだ。
これからもこのスレの職人さんたちのご活躍、楽しみにしております!
ここの職人さんのギャグ作品拝見して、一回でいいからギャグ書けたらなあ、と。
というわけで、しょうもないですが軽く読んでいただけたら嬉しいです。
時期的には喜代美内弟子時代くらい。エロなし。徒然亭5兄弟話です。
それはある晴れた昼下がりのこと。
(―――あれ?)
ない。
どこを探しても、ない。
今日の朝、小浜から来とったおかあちゃんと一緒に洗濯した時、確かに自分で干したはずなのに。
風に飛ばされて庭先に落ちているのではないかとあちこち探し回るが、やっぱり。
「あらへん…」
「おう若狭。どないしたんや?」
「わっ!」
振り返ると、草原兄さんが怪訝そうな顔でこちらを見ている。
「なななななな、何でもありません!!!」
「なんやねんそのあからさまに怪しいそぶりは。」
「…怪しいですね」
「うわ!出た!」
「…出たとはなんや。人を鼻ちょうちんみたいに」
…いつの間にか黒い影のように四草兄さんが後ろから現れる。
「そんな腹黒い鼻ちょうちん、底抜け〜にお断りやっちゅーねん!
で、喜代美ちゃん、どないしたんや?」
騒ぎを聞きつけて、小草若兄さんまで中から出てきて心配げに小首をかしげる。
「そそ、そんな大騒ぎしてもらうようなことや…」
「うるさい!落語の稽古の邪魔や!」
どかどかと稽古部屋から足音も荒く現れた草々兄さんの大声まで響く。
…その後ろには明らかに面白がっている表情の師匠まで。
(…はぁ。結局みんな来てしもた。)
ため息をつく若狭。改めて兄弟子達の声が重なる。
「で、若狭。どないしてん?」
「はぁ!?ぱんつぅ???」
呆れたように大声で叫んでから、草々兄さんははっと気づいたように顔を真っ赤にそめる。
「…相変わらず草々兄さんは初心ですね。若狭のぱんつごとき、なんも真っ赤になることないやないですか。
どうせ色気もへったくれも無いんですから」
どさくさにまぎれて四草兄さんに罵倒された…ような気がする。気のせいだろうか?
「おい四草!なんちゅうこと言うねん!喜代美ちゃんのパンツが消えたとなったら大問題やないかい!」
「…まあ小草若兄さんみたいな希少人種にとってはそうかもしれませんけど、少なくとも
僕にとってはゴミみたいなもんです。ねえ草原兄さん?」
「まあな…って何言わすねん!」
(ゴミて…)
草原兄さんの本音?がポロリと漏れて、若狭は何気にちょっと落ち込む。
四草兄さんと違って普段いい人なだけに、ごくたまに出る暴言の破壊力は抜群…かもしれない。
こほん、と咳払いを一つ。気を取り直して草原兄さんが仕切りなおす。
「まあそれはさておきや。確かに干したはずやのに若狭の下着が消えた言うんやったら、この辺りに
痴漢が出る言うことかもしれんし、若狭のストーカーもどきのファンがやったんかもしれんからな。
警戒せなあかんしなあ…」
考え込む草原兄さんの後ろで、四草兄さんが目を細めて腕組みをしながらゆっくり口を開く。
「その前に…一つ確認せなあきませんね」
「なんや?」
四草兄さんはゆっくりとその場にいる人物を睥睨する。主に草々兄さんと小草若兄さんの顔を。
「朝からの短い時間のことですから、まずはこの場におる人間に心当たりがないかどうかを」
…一瞬の沈黙。
「おい四草!そんなわけあるかい!」
「そんなこと底抜け〜にやるわけないっちゅうねん!!!」
一斉に抗議する2人の声を鼻でせせら笑って四草兄さんは続ける。
「可能性としては素人童貞の草々兄さんがついムラムラっときたとか、女の趣味が風変わりな
小草若兄さんがこっそり持ち帰って頭に被ってウヒョヒョヒョ〜とかが考えられるんですけどね」
「「ふ・ざ・け・る・なっ!」」
図らずも、仲の最悪な二人の兄さんの声が見事に揃った。
「…だそうやで、四草」
「そうですか」
平然とうなずいて、四草兄さんは薄く笑う。
「まあ若狭のことやからグ○ゼのでっかい色気のかけらもないぱんつでも干しとったんやとしたら、
草原兄さんが雑巾と間違えて窓拭きに使うたいうことも考えられますね」
…またしても沈黙。
「アホか!間違うかそんなもん!!!」
「違います!総レースで両側がヒモになった黒の色っぽい…あわわわ」
しまった。
「く、黒でひもで総レース…うっ」
草々兄さんは頭をくらくらさせながら鼻をおさえる。
「喜代美ちゃんがそんなセクシーなぱんつを俺のために…ウヒョヒョヒョヒョ!!!」
小草若兄さんは何を妄想したのか鼻の下を伸ばして高笑いを始める。
「ほぉ、若狭…そんなけったいなもんはいとるんか」
師匠は興味津々で若狭の顔を覗き込み。
「若狭…いつのまに大人の階段を…」
草原兄さんは別の誰かが言いそうなことを言う。
「見せたい男が目の前におるからな。努力は認めたる。その程度で色気はつかんけどな」
四草兄さんはふん、と鼻で笑う。
「まあええわ。そしたら犯人はたぶん、一人に確定したな」
「「「「ええっ!?」」」」
四草兄さんの言葉に、みんなの目がおそるおそる師匠のほうを見る。もしかして…?
にやにやと行方を楽しんでいたらしい師匠は、みんなの視線に気づいて慌てて頭をぶんぶんと振る。
「な、なんでこっち見るねん!知らんて!」
「師匠やないですよ。」
淡々とした四草兄さんの声に、皆が振り返る。
「なくなったのは黒で総レースのひもで結ぶタイプ。このタイプの特徴は?」
「???色っぽい?」
「高い?」
「勝負下着?」
「…まあそうですけど、今回は関係ありません。特徴は…布地面積が少なく、また上も浅い。
つまり、、、腹が冷えるっちゅうことです」
「「「はああっ?」」」
「今朝から今現在、つまり昼過ぎまでの間にこの敷地内にいて、しかも若狭の腹が冷えるのを気にする人言うたら?」
その時、玄関のほうからなにやらどたどたと音が聞こえた。
「喜代美〜!ちょっと来なれ〜!」
「お、おかあちゃん?」
慌てて玄関の方に走っていくと、なにやら大きな袋を抱えたおかあちゃんが、達成感にみちた顔で待ち受けていた。
「ど、どねしたんおかあちゃん?もう帰ったん違うたん?」
「喜代美!あんたなあ、あんなお腹の冷えそうなぱんつ、はいとったらあかん!
女は腰から病気がくる、言うやろ!?」
「…聞いたことないけど」
「とにかくや!おかあちゃんがあんなけったいなぱんつのかわりに、がっちりお腹をガードする
ぱんつ、買うてきたさけ!これ履きなれ!」
言いながらおかあちゃんがどさどさと袋をひっくりかえす。
でてきたのは…おなじみのグン○のぱんつと真っ赤な毛糸のパンツの山。
「ああ、皆さんの分も買うてきましたさけ、どうぞ〜。腰は大事ですさけ!」
ぞろぞろと現れた兄さんたちにも、もれなく毛糸のぱんつが手渡された…。
一仕事やり終えたすがすがしい表情で小浜に帰っていくおかあちゃんを、毛糸のパンツを手に皆で見送る。
「「「「「はあ…」」」」」
誰の口からともなくでたそのため息は、それはそれは見事にそろったのだった。
(若狭のおかあちゃんにかかったら、ま、仕方ないわな)
一人、毛糸のぱんつの難を逃れた師匠は、あとでこっそりと笑い転げた…らしい。
以上です。鼻で笑ってくだされば幸いです。
シリアス系はいくつか投下させて頂いたことがあるのですが、
ギャグはまったく別物ですね。いやはや。
木曽山粉砕時を思い出して、ちょっと名探偵四草を書いてみたかっだけかもw
>>715 GJ!!!
まさかの糸子さん!そして最強糸子さん!
もう大好き!
シリアスもギャグも書かれる職人さんなんですね…すご過ぎる。
5兄妹ギャグスキーにとって最高の作品でした!笑い転げる師匠もカワイイ!
ぜひぜひシリーズ化してください>名探偵四草
>>715 まさかの糸子さんオチ、GJ!
本編の設定がバッチリ生きていておもろいです!
あえて、ぱんつがひらがななのもらしくてよろしい。
名探偵四草いいですね。
勝手に自分は容疑者から外してるしw
こんばんは、こどもの日から遅れましたが、未来編その2です。
またの名を落子物語、未来妄想が嫌な方はスルーしてやって下さいね(汗)。
小四草×落子←春平&順平です。
・落子は基本敬語ですが、小四草に対してはタメ口(関西弁)です
・小四草、落子ともに落語家ではありません
・春平と順平の扱いは、かなり悪いです
以上の点が受け付けない方も、スルーお願いします(ぺこり)。
「兄さん、ただいま〜」
小四草兄さんの家だから、ほんまやったら「お邪魔します」が正しいんやろけど。
成人式というイベントが終わって、知らん顔も多いような場所から、
小さい頃からずっと一緒の、家族同然の幼馴染みの家に移動、となると、
気分的に「ただいま」って言いたい気分なんです。
「えらい早いな」
小四草兄さんは意外そうな顔で迎えてくれました。
「兄さんのくれはったぞうり、ものすごい歩きやすうて、ほんまに助かったぁ!」
「それやったら、そのままどっか遊びに行くとか思いつきそうなもんやけどな。
ま、別に構へんけど」
兄さんは、呆れたように鼻を鳴らしながらも、座布団を用意してくれはりました。
「そやかて、早いこと小四草兄さんにお礼言いたかったんやもん」
こういうやり取りはいつものことなので、私は構わず上がり込みます。
「四草おじさんは留守なん?」
親達と違って、小四草兄さんと私は今のところどちらも落語やってへんので、
つまり兄妹弟子の関係やなくて、兄妹同然の幼馴染みの友達なので、
お母ちゃんにはよく叱られるんですが、兄さん本人が許可してくれてはるので、
昔からこの口調で喋っています。
「ちょうど入れ替わりやな、着物の箱運んだ後、ひぐらし亭行っとるわ」
小四草兄さんが返事した瞬間、扉をドンドンと叩く音がしました。
「落子〜!!」
「落子、おるけ〜!?」
「うわぁ、びっくりしたぁ」
意外な人物の訪問でした。
「春平兄さん、順平兄さん」
春平と順平の双子が大阪・ひぐらし亭に到着したのは、ほんの30分ほど前である。
「落子のおっちゃん、落子どこや?」
いきなり真っ向勝負を挑む春平を、草々はぎろりと睨むだけで完全に無視した。
「あかんやろ、おっちゃんに聞いたかて…あれ、おばちゃんおらんのけ?」
順平はがっくりと肩を落とした。
「落子ちゃんやったらな、今成人式やけど、たぶん後で小四草のとこ行くで」
双子は同時に顔を上げ、救世主の顔を見た。
「イソギンチャクのおっちゃん!」
「ほんまけ!?あいつ、相変わらず抜け駆け上手いなぁ!」
2人は、腕に抱えた包み――恐らく、愛しの彼女への贈り物――
とともに、一目散に走って行こうとした。が。
「やめとき」
腰に手を当てて、母親がぎろっと双子を睨んだ。
「何でや、お母ちゃん」
「落子に会うために来たんやんけ」
「ええからやめとき!」
順子の般若顔も慣れているからか、2人は構わずひぐらし亭を出て行った。
そんな後ろ姿を見て、四代目草若が面白そうに笑っていたのを双子は知らない。
(底抜けに見ものやがな)
抜け目のない弟弟子の息子は、小さい頃から息子同然にかわいがってきた。
対するは、どこか立場が通じるところのある友人である野口友春の息子2人。
「あの2人くらいさばけへんかったら、落子ちゃんはやれんで、小四草。
小四草を越えてけへんかったら、落子ちゃんは無理やからな、春平に順平」
草若は呟くと、こんなおもろい対決を直接見られへんのは残念やなぁ、と伸びをした。
「何でいはるんですか?」
にこにこする少女の面影を残す娘と、後ろで舌打ちをする青年。
青年のことは完全に背景として無視して、春平は愛しの彼女に笑顔を向ける。
「イソギンチャクのおっちゃんが、ここやて教えてくれなったんや」
背景が再び舌打ちをする。
「いや、そやなくて…何で大阪に?」
「そんなん、落子の祝いのために決まっとるやろ」
双子の兄を押しのけて順平が答える。
「せっかく来たのに、落子が大人の階段上ってしもたらえらいことやさけ」
順平の言葉に、相手は首を傾げる。
「まあ、ほんなことはええねん、とにかく、成人式の記念や。
俺が初めて1人で焼いた焼き鯖!」
「1人で?」
感心したような顔を向けられ、順平は満足気に笑う。
「そや、お父ちゃんの手も、じいちゃんの手も借りんと焼いたさけ」
順平作の焼き鯖に、紅梅のような唇が付けられた。
「どや?」
わくわくした顔の順平兄さんに、私は曖昧な笑顔しか返せませんでした。
「正直に感想言うてみ」
「えっと…わざわざ持って来てもろて嬉しいです…」
「ほうけ?ほな、どんどん食え!」
「けど…焦げてて…ちょっと苦いです…」
ほんまは…「ちょっと」どころやなくて、草若おじさん流に言うたら、
底抜けに苦うてたまらんかったんやけど…そんなこと言われへんし。
すると、後ろから小四草兄さんが来て、私の手から焼き鯖を取り上げました。
「そうか?十分旨そうやけどな」
そう言うと、小四草兄さんは、ためらいもせずに焦げた焼き鯖をかじって
「おいしいですよ」
と、順平兄さんに言わはりました。
「ほうけ!?」
順平兄さんが、がっかりした顔から、一気に嬉しそうな顔になりはったんで、
私も一安心しました。
「アホか」
春平は双子の弟の頭をはたいて囁く。
「喜んでどねするんや、こいつ、落子のかじった跡、思いっきり食ったやろ。
間接キスや間接キス。んなことさしてどねすんねん」
指摘されて固まる順平は放っておいて、春平は細長い箱を差し出す。
「落子、俺からは若狭塗箸や。
工場で作ったんやのうて、伝統的な方法でやってみたんや。
落子のおじいちゃんに教えてもろたんや」
「うわぁ…きらきらしとりますね」
愛しの彼女の笑顔に、春平も笑顔で返す。
「研ぎすぎて、剥げてしもとるとこも多いけど、箸としては使えるはずや。
早速、使てくれんこ?」
「ほな…ちょっとだけ」
私の目の前にある食べ物は、順平兄さんの苦い焼き鯖だけ。
恐る恐る、ちょっとつまんで食べたけど…やっぱり苦いもんは苦いです。
「あ…下の中国料理屋で、何か貰て来るか」
「そんなん…今日、お店お休みやのに悪いです」
私は、どうしたものかしばらく考えました。
そのうち、小さい頃、遊んでもらったままごとの記憶が蘇って来ました。
「ええこと思いついた♪」
私は、焼き鯖を大きくつまむと、横を向きました。
「はい、小四草兄さん、あーん」
苦い焼き鯖が好みの範疇に入ったんやから、小四草兄さんにお願いしよう。
食べ物は無駄にしたらあかんもんね。
こないしたら、春平兄さんのお箸は、私は使えるし。
我ながら名案やと…そない思てました。
顔色一つ変えずに、箸で差し出された焼き鯖を口にする背景のはずだった男。
その姿を見て、双子は「やめとき!」と母が言った理由がわかった気がした。
春平兄さんと順平兄さんが帰りはった後、私はすぐに振袖を脱ぎました。
「着物は着慣れとるけど、振袖って帯が刺繍多いせいか、何か窮屈やわ」
襦袢姿になると、一気に楽になった気分です。
「そやけど、この後も着ることあるやろ。丁寧につっとけ」
説教しながらも、小四草兄さんは、振袖と帯を伸ばす作業をしてくれはりました。
「あと、振袖てお化粧多い目にせんとあかんのがしんどかったぁ。
何かね、皮膚呼吸が出来へんの」
「お前は両生類か。
人間は皮膚呼吸出来んと死ぬことあらへん」
「そやけど何や苦しいの!」
お面みたいにお化粧一気にはがせたらええのに、と言うたら、呆れられました。
「洗面所に化粧落とすのあるから、顔洗て来い」
行くと、確かにクレンジングクリームがありました。
助かった、と思うと同時に、私は首を傾げました。
何で男所帯の小四草兄さん家に、女用のクレンジングクリームがあるんやろ。
ようわからんけど、おもろない気分です。
余計なこと考えて顔を洗ったせいか…
戻ったら、また小四草兄さんに呆れ顔されてしまいました。
「お前…何で顔がまだらになってんねん」
再び洗面所に引っ張って行かれました。
「化粧の落とし方も知らんのか」
小四草兄さんは、さっとクレンジングを泡立てて、目つぶっとれ、と言うと、
手際よく私の顔に指で泡を乗せて行きはりました。
兄さんが器用なのは、今に始まったことやないけど…
「目の上のとこなんかは、残りやすいからな」
小四草兄さんの指が、私の顔を撫でて行くのは心地ええんやけど…
「きちっと落としとかへんかったら、ニキビも出来るからな」
文句言いながら気遣ってくれはるのも、いつものことで嬉しいんやけど…
「ほんで、こうやって頬のここのとこを…」
「兄さん」
「うわ、びっくりした。
何やねん急に…泡が口入るやろ」
「男の兄さんが、何でお化粧の落とし方知ってはんの」
ようわからんけど…さっきからのおもろない気分は、
収まるどころか、ますますイライラが募るばかり。
「昔、雑誌の企画やってんけど、親父が歌舞伎役者の人と対談したことあったんや。
テレビやないからええやろ、ってことで、横で一緒に見させてもろたんやけどな。
その時、その歌舞伎役者の人が、何か聞きたいことないか、て言うてくれはって、
あの化粧をどないするのか不思議やったから、教えてもろたんや」
「ふぅーん」
すらすらと答えが返って来るのが、余計に何やおもろない。
「何が気に入らんのか知らんけど」
私が勝手にいらついてるもんやから当たり前やけど、
小四草兄さんの溜め息交じりの声がします。
「あんまり、目つぶって、唇を前に突き出すなんてするもんやないで」
直後、私の唇を、兄さんの指が撫でて行きました。
泡を水で流し終わると、ちょっと頭が冷えてすっきりしました。
「化粧で呼吸出来へん言うて、こない大騒ぎする思わへんかったわ…」
小四草兄さんは疲れた声です。
「ほんま、これ買うといて正解やった」
兄さんは、手にしたクレンジングを見て、肩をすくめました。
「ほしたら…これ、私用?」
ようわからんけど、何や、一気に気分が晴れ晴れしました。
「そやったんや…ほな、片付けの続きしようっと」
襦袢脱いで洋服に着替えて…と思た瞬間。
私は、小四草兄さんの腕の中にいました。
「お前は、何でも簡単にしすぎやねん」
兄さんは呆れた声で話しながら、私の体を撫でています。
「目つぶって唇出して、キスしてくれと言わんばかりやったし。
今は、こないして目の前で着替えるし…」
そして…冷静に考えたら、胸とか太ももとか触られて、とんでもないんやけど…
兄さんの手が触れているのは、私には、とても自然に感じられたのでした。
その頃、ひぐらし亭では、草々が頭から湯気を立てていた。
「何で着物の片付けに、わざわざ小四草のとこ行かなあかんねん!」
「ええやないですか、どうせ嫁にもらうんやし」
四草の言葉が、火に油を注ぐ。
「誰がお前みたいな奴の息子に、大事な娘を嫁にやれんねん!」
「ほやけど、小四草くんなら安心ですよね〜」
何も考えていない妻の言葉に、草々はますますカッカするが、
喜代美は構わずにこにこと続ける。
「小四草くんのことは小さい頃から知っとるし、
そのお父さんのことも四草兄さんやし、知っとるわけやさけ」
(そやから安心出来へんねん…)
そんな簡単なことが、何でこいつはわからへんのや。
脱力する草々をよそに四草は平然と言う。
「あいつらが小さい頃、一緒に遊んでは、将来結婚するとか言うとったな」
「ほんまになったらええですね〜」
喜代美は機嫌よく言った。
布団の中、眠る乙女を見て、青年は溜め息をつく。
(安心しすぎやろ…)
幼馴染みの女を求めたところ、わかっているのかいないのか、
愛撫に笑顔を返してくれたのはいいのだが…
さあ、ここぞ、という時になって、すやすやと夢の中。
(まあ…ゆっくりでもええか)
こんなにも安心している彼女が愛しいのだから仕方がない。
青年は指でそっと、乙女の唇を撫でたのだった。
727 :
719:2008/05/07(水) 00:26:03 ID:OQMHT9Ix
>>622-626の続きでした。季節外れに成人式w
小四草と落子がカップルになりそう、と言っていただいたんで、
今回はありがたく、落子のせいで天然バカップル化しました。
そのうち、大人の階段上ってくれるはず・・・
>>727 GJ! 落子の天然ぶりがなんともキュート!
ええと、もし違ったらごめんなさい、『空中楼閣』のかたですよね?
あのラストの算段が頭をぐるぐる回ってしまい、こんな素敵に
ほのぼのした話なのに、何だか草々が哀れに思えてしまいました。
父親に似て小器用な小四草、きっとオットコマエなんでしょうねw
>>715なのですが、
読んでいただいた方、ありがとうございました!
ギャグってセンスがないと無理wと実感させられた拙い初ギャグでしたので、
感想頂けてとても嬉しかったです。
毒舌自己中名探偵四草wということで、勝手に容疑者から外れてましたが
またエロ&ギャグの腕を磨いて再挑戦…できたら嬉しいなあ。
>>719 GJ!!
小四草かっこよすぎ!!
うわーホレるわこれは
順子と双子の使い方が絶妙
全編そこはかとなくエロいのもたまらない
スキンシップから始めて徐々に落子wを開発していく描写が見たい
続き待ってます
>>719 GJ!GJです!
えと、春平順平言い出しっぺの640です。
採用していただいた上に、こんな底抜けに萌え小説が読めるなんて感激です!
なにげに鋭い四代目が素敵です。
続きを楽しみに待ってます。
>>719 GJすぎる!未来編なのに登場人物みなリアルだ〜
四代目は底抜けキャラ保ちながら父親(三代目)の面影も漂わしてるし。
落子が家にくるのをみはからって四草はひぐらし亭に向かったと思うw
>>719 GJ!!
双子がそれぞれ両親に似ててツボでしたw
親世代同様、無自覚に周囲の男性陣をやきもきさせる落子が最高です。
「空中楼閣」も書かれた方とは驚きました。
またの投下を底抜けにお待ちしてます〜!
初めて投下させて頂きます。
需要あるか分かりませんが内弟子時代の喜代美の一人エチーです。
総集編を見てたら思わず妄想してしまいました。すいません。
「何これ?」
その日指南部屋の本棚の掃除をしていた喜代美は、本棚の奥に隠すように収められていた
1本のビデオテープを発見した。背表紙を見ると爪が折られていて、ラベルに「一人寄席」
とだけ書いてあった。
「高座のビデオ…かな?」
黒いテープをしげしげと眺めることしばし、喜代美はテープを胸に抱くと弾むような足取
りで居間に向かいビデオデッキを立ち上げた。
(爪まで折って大層にしまい込んであるぅ言うことは、きっとえらい噺家さんの高座のビデ
オなんや〜♪)
ちょうど師匠である草若も兄弟子の草々も出払っていて家には自分一人だ。少しぐらいサ
ボったって…いや、落語の勉強をしたってバチは当たるまい。掃除も洗濯も一通り済ませて
あるしぃ、と心の中で言い訳しながらビデオをデッキに差し込み再生ボタンを押してテレビ
の前に正座する。
わくわくしながらテレビ画面を見ていると、簡素なベッドに座った黒髪の女が映し出され
た。女はサイドテーブルの写真立てを手に取り、物憂げにため息を落とす。どうやら彼女に
は恋人がいたようだが、出張で遠くに行ってしまうらしい。彼女は行くなと引き止めたが、
恋人は無情にも女を捨てて…
「何や、ただのドラマか。しかもベッタベタな…まったくもう、ややこしいとこに入れとか
んで欲しいわ」
がっかりやわー、なんてぼやきながらビデオを止めようとした瞬間、喜代美は固まった。
それまで恋人との別れに打ちひしがれ涙していた女がベッドに倒れこみ、白いブラウスの
中に手を差し込み自分の胸を揉みしだきはじめたのだ。
(っひゃあああぁぁぁぁ!)
声にならない悲鳴を上げる喜代美の困惑を他所に、胸を露わにした女は悩ましい声で恋人
を呼びながらピンと立った乳首を捏ねくりまわす。細い整った指は豊かな乳房から腹や腰を
なぞりながら下りていき、スカートをめくり上げ総レースのショーツにたどり着いた。
すでにショーツはじっとりと濡れていて、指がもどかしげにその上をなぞった。
(な…何やの、コレ…)
喜代美は瞬きするのも忘れて画面に食い入る。自分の顔がどんどん赤くなっていくのが分
かった。
気づけば女の指はショーツの中に吸い込まれていた。指が動くたび、女はもどかしそうに
鼻にかかった甘い声を上げる。そして、女は震える手でショーツを下ろし、ぐちゃぐちゃに
濡れた秘所を画面に晒した。
「ひゃぁ…」
自分のだって見たことないのに、他人の…しかも、こんな状態のを見るなんて。
(こんなん、見たらあかんのに…せやけど、目ぇ離されへん…何でぇ…?)
思わず唾を飲み込む。
蜜をあふれさせたそこは女の指をするりと飲み込み、ぐちゅぐちゅと濡れた音を立てた。
ぷっくりと膨らんだ箇所(喜代美はそこを何と呼ぶのか知らなかった)を白い指の腹で潰し
たり擦ったりする度、女は一段と高い声を上げた。
何度かそれを繰り返していると、別れたはずの恋人がいつの間にか部屋に上がりこんで女
の唇を唐突に貪った。荒い息を吐きながらも女は夢中で男のズボンを下ろす。女は立ったま
まの男の股間に顔を埋め、愛おしそうに半立ちの陰茎に舌を這わせた。
心の中で悲鳴をあげる喜代美のことなんて当然お構い無しにその行為は続けられ、完全に
立ち上がったそれが、女の濡れそぼった蕾に当てがわれた。ずちゅ、ずちゅ、と重い音をさ
せ何度も突き上げられた女は切ない声を上げる。
(何や…身体が熱い…この女のヒトえぇなぁ…)
喜代美の中に言い知れない何かがじわりと広がる。閉じた足の間がじんじんと疼いてどう
しようもない。
夢中で画面を見つめる喜代美の指が、自然と疼くそこへと導かれ…
その瞬間―――
ジリリリリン!
「うひゃぁ!」
突然鳴り響く電話の音に喜代美は文字通り飛び上がった。
あわててビデオを止め、けたたましく鳴り響く電話に出る。
「わ、和田でござ…いません!ちゅれ、つ、つれじゅれていです!」
『あ、すいません。間違えました』
チン、と軽い音を立てて喜代美をパニックに陥れた電話はすぐに切れた。受話器を持って呆然としていた喜代美だったが、全身の力が抜けへなへなとその場に座り込んだ。
(わ、私…なんちゅうことしようとしとったんや…こ、こんなん…ヘンタイやん…どねしよ
…)
思わず視界が滲んで、慌てて両手で顔を覆う。言い様のない羞恥心に全身が震えた。
(ほやけど……けどぉ…!)
喜代美はふらつきながら立ち上がり、ノロノロと自分の部屋に向かう。
部屋は夕陽に照らされて赤く染まっていた。畳まれた布団に倒れ込み、深い溜息ついた。そ
れは自分でもびっくりする程熱くて、喜代美はただ困惑した。
(さっきの女の人の声とぉ、男の人のアレが…頭から離れへん…)
初めて見た男自身はグロテスクで気持ち悪いだけだったけど、何故だか、それを挿れられ
てグチャグチャにされて喘ぐ女が羨ましかった。
(草々兄さんもあんなんなるんかなぁ…)
思った瞬間、カッと身体が熱くなった。
(あかん…こんなん考えたらあかん…草々兄さんに失礼や…あかん…なのに……)
抗い難い何かに導かれるように喜代美の指が恐る恐るトレーナーを捲り上げ、ブラのホッ
クを外す。フルカップのブラから白い胸がぷるんと揺れながら顔を覗かせた。触ってもいな
いのに紅色の乳首がツンと上を向いていて、喜代美は恥ずかしさに震えた。
(いやぁ…)
迷いつつ、喜代美はゆっくり自分の胸に触れた。自分の指の冷たさに一瞬身を竦める。だ
が、すぐにあのビデオの女を真似て胸の頂きを親指と人指し指で摘み、くりくりと転がすよ
うに弄んだ。応えるように紅色のそれは固さを増して、甘い痺れが喜代美の全身に渡った。
「んっ…」
(気持ち…えぇ…)
両手でふわふわとした胸を揉みながら、さっきのビデオを思い出す。同じように左手で胸
を弄びながら、右手をゆっくりと下ろして行く。ボトムスのボタンを外し、ジッパーを下ろ
す。
そしてビデオの女とは違うコットンの色気の無い下着の隙間から、薄い茂みを掻き分け、
恐る恐るそこに触れた。
くちゅ、と濡れた音がして、指先がじんわりと熱くなった。
初めて触るそこは信じられないくらい熱くて、濡れていて、喜代美は溜まらなく切なくな
る。ゆっくりと指を進ませ、微かにある突起に触れると、胸をいじっていた時とは比べ物に
なれない痺れが喜代美を襲った。
「やぁっ…!」
思わず出た声に喜代美は戦いた。自分の知らない感覚と、甘い、何かを請うような声。信
じられなかった。
それでも、また指をゆっくりと動かす。
(もっと触りたい…触って欲しい……こんな風に…触って……)
狭い部屋に浅い息と僅かなくちゃくちゃと濡れた音が響く。
熱い割れ目をなぞり、その奥に喜代美の細い指がつぷ、と小さい音を立ててゆっくりと入
る。
自分の中は驚く程熱くて、
(気持ちえぇよぉ…)
「ふ…あぁ…やぁ……あ、あ…」
胸をいじっていた左手は気付いたら下着の中で忙しなく動き回っていた。指で特別敏感な
突起をぐりぐりと押しつぶす。その度に涙が滲んで、言葉にならない声が歯の隙間から漏れ
た。愛液でどろどろになった下着を膝まで下ろし、仰向けになり指をもう1本、中に差し込
む。今までにない抵抗が、ギチ、と微かな警告の音をあげる。
(痛ぁ……でも…もっと、もっとぉ、気持ち良ぉ…なりたい…あの女の人ぉ、みたいに……
欲しい…欲しいです…)
「はっ…ん……そぉ…そぉにぃさぁ…ん……」
自分でくわえこんだ指を動かす。最初はゆっくり、段々早く。痛いだけだった指の動きが、
ふと、何か。
「やああっ、あ、ぁ、あっ…!」
全身を貫くような快感に襲われ、身体中がガクガクと震えた。息が止まるような、言葉に
ならない感覚…
恍惚と喜代美は浅い呼吸を繰り返しながら、絶頂の幸福感に浸りながら心地よい倦怠に身
を任せそのまま目を閉じた。
「何ぐーすか寝とんじゃボケェ!!」
「っひゃああぁ!!」
せっかく気持ち良く寝ていたのに怒鳴り飛ばされ喜代美は跳ね起きた。
混乱しながらも辺りを見回すと、窓の外はとっぷりと暮れていた。しまった、と思っても
もう遅い。部屋の入り口には草々が仁王様のような顔をして立っていた。
「お前メシの支度も師匠のお迎えもせんで何しとんねん!」
「す、すいませ………って……あ、あれ?」
ふと、眠る前のことを思い出す。その瞬間、喜代美の頭からボン、と音を立てて湯気が上
がった。草々をオカズに自慰行為にふけり、イッた後に疲れて下半身丸出しで寝てしまった
ことを思い出してしまった。
(下半身丸出しーーー!!!?)
首がもげそうな勢いで自分の腰から下を確認すると、何故だか布団が掛けられていた。全
く記憶にはないが、きっと寒くて無意識の内に布団をかぶったのだろう。その証拠に布団の
下はすっぽんぽんだ。
「何を赤くなったり青くなったりしとんねん。もしかして、調子悪いんか?」
草々は心配そうに眉をひそめ喜代美の側にしゃがみ込み、冷や汗がだらだら流れる額に大
きな掌をあてがった。いつもだったら「草々兄さん優しいわぁ〜(はぁと)」とか舞い上が
る所だったが、今は…
「……って」
「あぁ?」
「出てってくださいいいいぃぃぃ!!
こんな汚れた私を見んといてくださいいいいいぃぃ!!!!」
「何やねんお前ーーー!!?」
亀のように布団にもぐって泣きじゃくる妹弟子に追い出されて途方に暮れる草々を、ぽか
んと浮かんだ丸い月が見下ろしていた。
終わる。
738 :
733:2008/05/08(木) 21:28:41 ID:sf7ceGwA
おつき合いありがとうございました。
gdgdの上、エロく無くてすいませんでした。
素晴らしきちりとて職人さんのを読返してハァハァ…じゃなくて修行して
出直してきます。
>>733 GJ!GJ!GJ!GJ!GJ!
エロいよエロすぎるよvよいねよいねよいね〜
おそるおそる初ひとりえっちして寝ちゃう喜代美めちゃめちゃエロカワイイし
なんも知らんとオカズにされた上、追い出される草々兄さんバロスw
…ところでそのビデオの持ち主て………………………………師匠?
740 :
719:2008/05/08(木) 23:29:48 ID:FSI2uVpK
お返事遅れましたが、GJ底抜けにありがとうございましたー。
>>728さん、御名答です。719=306でした。
やっぱり書き方のクセでわかるものなんですねぇ^^;;。
ちなみに、あっちとこっちは完全にパラレルですのでご安心下さい(?)。
あちらの方は、四草がもっと介入して、天然には育てさせないはずです。
と言うより・・・あっちはそもそも若狭が天然じゃないので(汗)。
あと、四代目に注目してくださった方もありがとうございます。
ひそかに今回のポイントwでした(おもろいの好き遺伝)。
若狭より落子が書きやすいのが怖い今日この頃w
>>733 師匠ー!!と叫んでしまいました(推定・持ち主)。
あと、オチの「ぽかんと浮かんだ丸い月」に笑いました。
草々のわけわからん状態が見える感じでw
>>733 GJ!!
若狭かわいいよ若狭
ラストの布団は、万が一草々が掛けてやってたとしても、それはそれで
美味しく萌えます
ぎょっとして慌てて布団掛けて怒鳴りつつも、実は内心心臓バクバクとかw
>>740 いや、意外と小草若のが部屋から出てきたのかも…w
と、本編のエロ本破られた話などを思い出したりしてみたw
ま、出して来て、ビデオデッキに入れたのは誰やねん、って話はあるがw
>>743 テンプレ案ありがd!もうそんな時期か…。
ところで、古い話なんで申し訳ないんですが、
>>484さん。ほろ酔い寿限無の。
もしよろしければ「草原にいさんDay」の設定お借りしてもいいですか?
全然違うばたばた話なんですが、その設定で思いついたものがありまして…。
あのかわいらしい感動をぶっこわし気味なので、無理にとは言えないんですがw
745 :
484:2008/05/09(金) 16:04:11 ID:pghuevwi
おお〜もう新スレの時期…早! 次スレも楽しみですね。
テンプレ案thxです!
>>744 もちろんです!草原兄さんデー設定、どうぞ使ってやって下さい。
というかめっちゃ嬉しいですよ〜!
次スレで楽しみにお待ちしておりますねw
>>743 テンプレ、いいと思います。ありがとう。
あとは
うっかり途中で送ってしまった…。
無駄に消費してすまぬ…。
スレ立てできないのにorz
あとはSS投下できるほど容量もないし、立てるだけだね。
次スレも良作がたくさん投下されますように〜○
って書きたかったんだよ…。
743です。
テンプレ、あれでよければちょっくら立てて来ますです。
すみません。「無理!」てはじかれました…
どなたか、立てられる環境のかたいらっしゃいますか?
時間かかるかもですが立ててみます。
>>752 誘導は一般的に、最新50じゃなくてフル表示にするみたいです。
ごめん自分余計なこと書いたみたいだね。
>>753 乙です!次スレも楽しく参りましょうw
こちらでの小ネタも期待してまっせー
>>753 底抜けにありがとうございました!
お礼といってはなんですが、ちょっと思いつき小ネタ投下。
もしちりとてちんが少年○ャンプ連載だったら〜結婚前夜編〜
平成八年、正月二日。某所。
結婚を明日に控えた男。独身最後の夜を兄弟たちと酌み交わす。
「すまん、小草若」
「この期に及んで謝んな、けったくそ悪い」
奪った兄と奪われた弟。差しつ抑えつ盃が勧む。
「こらおまえら、今更喧嘩すな」
長兄が悪酔いする。
深夜に及ぶ酒宴。
やがて酒に呑まれる面々。
残ったのは明朝の新郎と下戸の末弟。
暫しの静寂。
「呼んでやらへんのですか」
沈黙を破り、末弟が静かに問いかける。
「喜代美、て」
――喜代美て呼んでください
まだその想いが通じる以前。
愛しい男の背に娘が呼びかけていた、哀しい独白の記憶。
「呼ばん」
「…何故」
「あいつを恋うてた男が呼んでた名前やからな」
烏龍茶の瓶が止まる。
視線が絡む。
婚儀を急いだ理由。
男は潰れた弟に目を落とす。
「小草若には悪いことしたと思ってる」
けど
「こいつみたいに諦めのいい男ばかりやないしな」
目を上げる。真正面から相手を見る。
「牽制、ですか」
牽制?
「そんな生ぬるいことしてるつもりは無い」
占有宣言や
獰猛な笑みが拡がる。
無邪気に見える、この男の本性。
「せいぜい手放さないことですね」
視線を外さず穏やかに応じる。
盃を上げる。
目を合わせる。
その奥に閃く烈火。
「結婚おめでとうございます。草々兄さん」
「ありがとう。四草」
なんかオサレっぽいアレなノリで終
>>757 うひゃ〜短いのにめっちゃGJな作品キタ〜!!!
この場面、TVでもやってくれよ思うてたのですごく嬉しいです。
というか、例の超名作ぞろいの方ですよね?(カラスにアイスに延陽伯に御茶屋etc…)
お描きになる草々の野性味あふれた獰猛さがすごい魅力的っす…!
次スレでも投下、お待ちしておりますですよ!
スゴい!GJ!
小ネタでありながら深い!そして粋!
草々も四草も男前。
次スレも2人で喜代美を取り合うのか。ワクワクするわ。
…あー、穴埋めネタなのにGJいただいてしまってなんかすいません。
ありがとうございます。
お察しの通りアレとかソレの奴です。
ノリがまんま○リーチ風なんでバレバレっすね。はい。
GJ!素晴らしい…。
小草若…そんな草々にはかなわないよ…。
ここ、かなりスレの雰囲気変わったよね。
和やかでいいと言うべきなんだろうね…。
前の流れ方に慣れてるせいか、ときどきノリがこそばゆいw
遅くなりましたがGJありがとうございました。
全板で初投下だったのでGJ頂けて底抜けに嬉しかったです。
ビデオ誰のものか考えてなかったけど師匠のだったらワロスw
>>757 おっとこ前GJ!
短いのに男の色気ムンムン。格好良ぇ〜。
>>757 男の世界のド迫力〜!!
元ネタ知らんのですが、ええ感じですな。
恐竜じゃない草々もいいですなぁ・・・強い。
このスレ終わりですか?
次スレの風呂の話も
面白かったです。
梅
>>760 乙、
何気に小草若がいい味出してますね。
このスレ、あとどこまで続くか賭けますか?
兄さん
…またそんな…
769 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/15(木) 17:58:12 ID:zJg+/ARP
底抜けに楽しみやがな
やっぱり・・・かけますか?
かけるかけるて
なにをかける気なんやねん
白い液体やないやろな
うひょひょひょ
せっかくなので、このスレもう埋めるだけなら
今まででの作品で皆さんのお気に入りを教えて下さい!
ちなみに私は、
どれも本当に力作揃いだと思うのですが、強いて挙げれば幻の喜代美のとかバレンタインのヤツです。
>>772 バレンタインってどのスレ番のどんなのだっけ?
にしても名作揃いで選べないわ
小×喜か四×喜でエロ切ないの読みたいなぁ
四はうまそうだけど四×喜でエロいのって難しい(個人的に)
小×喜だといろいろ浮かぶ
ごめん、携帯なんですぐ調べられないが、
バレンタイン→第二席の後半にあったヤツ。
このスレか前スレかハッキリしてないけど
草々×若狭の初夜の話。
草々は草原に、喜代美は咲さん菊江さんに相談して、やっと結ばれるっていう。
最後に草々が幸せで声を殺して嗚咽…
読んでて涙が出た…
>>775 第二席の320から。
自分もそれ大好きだ〜。
その作品で揺るがない草々×若狭派になった。
>>775 私もそれ好き。
小草若、四草、どのカップリングも好きだけど、
草々×若狭の公式カップリングも改めていいなと思えた作品。
四草と喜代美の着物デートシリーズも好きだなあ。
このスレでは「祭りの後」かな。
過去スレだと師匠が若狭にかんざしを贈る話。
あと五兄妹ギャグで若狭がグラビアデビューするのメチャメチャ笑った。
兄弟子連中の反応がらしくて楽しすぎる。
どなたか過去ログ読める倉庫を作って下さいませんか・・・
>>775 ノシ
自分もそれ読んで泣いた
本編見てても思い出してにやけるくらい好きだw
あとは延陽伯の幻の話も好き
というかあの職人さんはネ申だと思う…
>>779 自分がつくらせていただきまする。後ほどご連絡しまする。
神が現れた
772です。皆様レスありがとうございます。
草々×若狭の物語も良かったですよね。本当に名作ばっかりで、過去ログが出来るのスゴい嬉しいです!
神様ありがとう!
>>781 うわぁ、マジですか??
゜+。:.゜ヽ(*´∀`)ノ゜.:。+゜
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