らき☆すたの女の子でエロパロ40

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1名無しさん@ピンキー
アニメも好評のうちに終了し原作も大好評連載中、PS2版も絶賛発売中の「らき☆すた」でエロいの行ってみよ。


☆カップリングは自由
☆基本的に百合マンセー
☆801は禁止(と言っても男キャラあんまいねぇ)
☆投下した作品の保管を希望しない場合、前もってその旨を知らせること

※マナー等※
※割込みを防止するため、書き込みや投下の前等にリロードを。
※荒らしや煽り、気に入らない人・作品等はスルーで。
※グロやSM、鬱モノなどの過激な内容は断りを入れてから投稿する
※読者=主人公の作品(いわゆる俺キャラもの)についてはNGワード指定や断り文を確実に。
※480KBまたは950レスのどちらかに近づいたら、次スレの準備を。

■みゆきさんの一言メモ
・投稿の際に、メール欄に半角英数でsageと入力すると、スレッドを上げずに書き込めます
 『sage』では有効になりませんので、全角・半角を確認してください

・スレッドの閲覧・書き込みは、絶対ではありませんが専用ブラウザの使用を推奨します
 これにより『人大杉』のエラーが回避できます

・SS投下は、一度メモ帳やワードパッドなどで書き上げてからまとめて投下してください
 投下間隔があくと、他の方がレスできなくなってしまいます


マターリはぁはぁしましょうか。

☆まとめサイト(管理人と職人に感謝!)(避難所の行方はここ参照)
ttp://www33.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1.html
☆派生サイト:てけてけかなたさん伺か化計画
ttp://neo-experiment.hp.infoseek.co.jp/index.html
☆前スレ
らき☆すたの女の子でエロパロ39
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1203951840/
2名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 17:41:28 ID:GemLzjkS
やめとけ
3名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 17:59:52 ID:elfWN/5v
>>1
あっ、3年B組ぃー! >>1乙せんせーい!!
4名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 18:00:15 ID:SHd1Vd7r
はいはい…>>1
5名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 18:01:23 ID:kHxmRdN0
【中国】スター三人、無修正写真流出「セックス?スキャンダル」

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[?思慧]-37P-
http://page.dreamhosters.com/page97.php?tid=13/2008-2-9/63187_2.shtml
http://page.dreamhosters.com/page97.php?tid=13/2008-2-9/63187_1.shtml
http://page.dreamhosters.com/page97.php?tid=/13/2008-2-9/63187.shtml

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[梁雨恩]-40P-
http://page.dreamhosters.com/page97.php?tid=13/2008-2-9/63186_2.shtml

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[??思]-10P-
http://page.dreamhosters.com/page97.php?tid=/13/2008-2-9/63185.shtml
6名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 19:06:31 ID:mOK/gvCy
このスレはゴッドかなたさんとゴッドかがみん(見習い)によって見守られています


かなた「ホワイトデーまでやはり間に合いませんでしたか、ちなみに私へのチョコもまだま・・・」
かがみ「しつけぇー!!!」かなた「ギャー!」
7名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 20:42:05 ID:/QPftUCQ
>>1

8名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 21:03:53 ID:tpz8gKWP
ところでゴッドさんって、ハングマンに指令とか出す人?
それはそうと>>1
9名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 21:32:32 ID:W/Gb9jaX
ようこそ混浴風呂という名のカオス鍋へ
でも味は一級だYO!

>>1乙!!
10名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 21:52:33 ID:YpI0mK4t
>>8
ザ・ハングマンって知ってる人このスレにどんだけいんだよww
ところで>>1
11名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 22:01:09 ID:x9fvGdHr
>>10
パグマンなら知ってるが>>1
12名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 22:25:04 ID:0aJeG4Jo
モルモット小父さんなら知ってるぜ。

それはそうと>>1乙。
13そうたろう:2008/03/05(水) 22:47:57 ID:lTVu2pe2
すみません(><)39で書いた「いつもと同じ、“お前”と」
の続きです!規制かかってしまったので
続きこっちに投下します!前のは39にあります!!
14そうたろう:2008/03/05(水) 22:48:37 ID:lTVu2pe2
「・・・はっ?!」
「これでいいか?」
「と、友達として・・・とかじゃなくて・・・?」
「ああ、女としてお前を見てる」
「で!でも、鏡・・その、胸が、大きい人の方が、好きなんじゃないの・・・?」
「は?何でだよ?」
「だって、この間さ、鏡の家行ったとき、私一人になったでしょ・・・」
・・確か、司がお菓子とかを取りに行くとかいって、
二人きりにするのが嫌だったらしく俺まで連行した事件だ。
嫌な事件だったらしいね。By時(ry
「そうだな、それで?」
「その時さ、ちょっと本借りようと思って、ちょっと探したらさ
・・その、エロ本が出てきてさ・・巨乳本みたいの・・・」
「・・・」
そんなの持ってたか、俺?俺はいつもばれない場所に・・って
ちょっと脱線しちまったけど、確かそんなのは持ってないはず・・・
「あ!!」
「!?」
思い出した・・奴だ。この間、日下部が遊びに来たときに峰岸に見つかりそう、
とか泣き言を言って無理やり俺に預けたやつだ・・・
帰ったら全部焼却処分してやる・・
「違う!あれは友達、つーか日下部が勝手に俺の部屋においていったやつだ!」
「・・それじゃあ、あれは鏡のじゃないの?」
「そうだ!」
「えと・・・本当?」
「ああ、本当だって」
「でも、でも!私チビだし、胸だって大きくないし、オタクだし、頭悪いし、」
「ああ、もう!だから全部ひっくるめてお前が好きなんだよ!」
「・・・鏡、ロリコン?」
「はっ!!?」
何を言う、こいつは!!
「違うわっ!」
「だって・・・私、こんなだよ?」
ったく・・・こっちだって恥かしいんだぞ

「俺は小さいやつが好きなんじゃなくて、お前だから、こなただから
好きになったんだよ」
15そうたろう:2008/03/05(水) 22:50:13 ID:lTVu2pe2
いかがでしたでしょう?
一応、続き(本番?)も考えているんですが、まだできてませんし
皆さんの反応を見てからにします
では
16名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 22:52:48 ID:cFmIhNgR
規制というか
容量オーバーでっせ
17名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 23:18:13 ID:++a23079
>>1

どうでもいいけど
>☆基本的に百合マンセー
これっているのかなぁ。
18名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 23:28:56 ID:/fStq3De
いるんじゃないか?
一応スレ名が「らき☆すたの女の子で(ry」だし。
あ、でも男×らき☆すたメンバーでも間違いじゃないか…

それはともかく>>1乙ザマス。
19名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 23:34:32 ID:Iau/Wp0z
いままでにこんだけやってきて異論なかったんだから今更テンプレ変えなくてもいいんじゃない?
ここで議論すると空気悪くなりそうだし、どのみちうちらスレ住人は百合マンセーだし
まあ「基本的に」ってだけだから、このスレは百合傾向の流れがありますよっていう注意書きみたいなもんでしょ
20名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 23:46:23 ID:++a23079
いやまぁ他所でそれ以外で書きづらいって話を見かけたからさ。
21名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 23:49:10 ID:u7ZOtB+0
>>15
あえて評価するなら
ストーリーもキャラも無個性で平凡
といったところ。
もっと努力がほしい
22名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 23:53:24 ID:tuCGf6rC
まぁレズばっか投下されてたからレズ苦手な人が去ってっちゃったってのもあるかもしれんな。
かくいう俺もそればっかりになるとちょっと辟易するが。
23名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 23:58:27 ID:wrs1Selz
去ってったっていうかここは昔からこんなだぞ
それに百合じゃなくても良作はちゃんと評価されてるから、投下したいならするがよろし
24名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 00:00:57 ID:Zb2OoNi0
そうそう、エロなしでもパラレル尽くしでも素晴らしいものは素晴らしいんだぜ
25名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 00:01:30 ID:AimbT9yH
百合要素満載だから仕方ない気がしないでもない。
男が少なすぎるんだし…。

あぁ、>>1に盛大な乙を!
26名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 00:02:32 ID:SHd1Vd7r
身も蓋も無い事言うと『良作であれば大抵の物は許される!』
27名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 00:10:58 ID:Yy+DHRNz
確かに。
TSやパラレルものも投下されてるし、百合以外のものが投下されてもいちゃもんつける人達はいないと思うな。ここの住人達は。
28名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 00:15:06 ID:jH26ShaC
まあぶっちゃけるとそうだよなw
良作ならちょっとくらい男出てようがオリキャラいようが関係ない
つまりは、書き手さんの好きなように書いてくれたらいい
29名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 00:15:15 ID:H/6UIaA2
>>1

自分も読んで面白いと思えればなんでも大丈夫かなぁ
自分が受け入れられそうもないと思ったらスルーすればいいと思うしね。
30名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 00:15:18 ID:e+JMlwbz
流れ早すぎて投下したそばから流されて行くけどなー。
31名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 00:18:22 ID:iXK3wF/e
このスレのおかげで、作品が投下されると第六感がはたらいて即座に感想を付けられるようになりました
32名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 00:45:46 ID:qb+cu1d+
どんな作品でも美味しく頂くのがオレの流儀
33名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 00:57:26 ID:nVHUfEpM
ここでの雑談も好きだったりする。
本スレとかはどうもな…
34名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 01:01:28 ID:Pbf5Aj/O
>>1乙。
とうとう40スレ目ですか。
美水先生の年齢とスレの数、どっちが上なんだろうかwww
最近スピードがゆるくなってきているので、
このスレでは801レス目を通過できるかなあと期待。

>>15
初投下乙です。

感想は『悪くはないけど、練りこみ不足』ってとこかなあ。
着眼点は悪くないとは思うけど、セリフだけでつないでいるように見える。
あと、自分も初投下のときに言われたけど、
『場所や視点が変わるときは何行分かあけたほうがいい』と思うよ。
それから、「TSもの注意」等の注意書きは箇条書きにした方がわかりやすいと思う。

悪くはなかったので、また投下してくれるとうれしい。
35名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 01:07:54 ID:Zb2OoNi0
かが男×こなたは茨の道かもなww
強敵が多すぎるんだぜ
36名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 01:16:40 ID:wUNIAzN2
まぁ男少ないと百合に走るのは同人エロの常・・・なんだろうか?

>>25
原作だと百合要素殆んど無いような
37名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 01:17:43 ID:DzDl7tBD
あえて茨の道を行くのが漢というものよ。
38名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 01:18:22 ID:d4rFxxC9
>>34
14回生ということは判っているので、そこから導き出される結論は……
39名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 01:25:49 ID:AimbT9yH
>>36
ここの見すぎでそうみえるのかもしれない

百合は書いたこと無いがな。
40名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 01:40:47 ID:2CmPuZMH
基本的に百合マンセー、応用的にはそれ以外もアリ。言うまでもないだろうが。
41名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 01:46:27 ID:imM77m7s
ひよりんのネタくらいかな。原作にまで持ち込まれると流石に引くけど・・・

>>22
1の文があってもなくてもぶっちゃけ住民は変わらんだろうしそれなら無くてもいい気はするがね。
ま、割とどうでもいいが。
42名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 01:53:26 ID:wUNIAzN2
何が言うまでもないのかわかんないのだが

>>20
まぁ明記する必要は無い罠
43久留里:2008/03/06(木) 01:58:30 ID:J92cJGNd
おばんです。またいつもの続きを投下致します。

『カケラ』
17.
・かがみ×ただお(学生時代)・かがみ視点
・今のところ非エロ
・4レスほど使用
・シリアス/タイムリープ/平行世界/鬱展開
・オリジナル設定が多いのは仕様です。
・物語の性格上、鉄分が濃いです。
・架空の町が登場します。

18.
・つかさ×あゆみ(オリキャラ)・つかさ視点
・微エロ
・3レスほど使用
・シリアス/タイムリープ/平行世界/鬱展開
・オリジナル設定が多いのは仕様です。
・物語の性格上、鉄分が濃いです。

※途中で投下出来なかった場合は、保管庫へ直接投下致します。
44カケラ 17-1/3:2008/03/06(木) 02:00:06 ID:J92cJGNd
17.

「ご馳走様。中々美味しかったわ」
「まぁね。僕もたまにしか行かないけど」
「へぇ、そうなんだ」
『くいだおれ』を出た私と彼──ただお・未来の私の父──は、四方山話で盛り上がりつつ市内を南下する。
道頓堀川に沿って繁華街を歩き、日本橋が見えた所で堺筋に入る。
東京の日本橋(にほんばし)とは違って、こちらは真上に高速道路は無い。
ロケーションは良いのだが、ただ、肝心な橋はそれほど古くは無さそうだ。
堺筋を下ってすぐに、関西最大の電気街「日本橋でんでんタウン」へ。
『東のアキバ、西のポンバシ』とは言うが、まさにその通りであり、電気製品を扱う店がびっしりと軒を連ねる。
規模の大きな家電量販店から、ラジオの部品(らしきモノ)を売る怪しげなお店。
何故かプラモデルしか売っていないお店などの例外もあったが、
今日が平日であるにも拘わらず、街はそれなりに賑わっていた。
因みに『現代』のでんでんタウンは秋葉原同様、徐々にヲタク街と化しているそうだ。

ふと、手に持っている紙袋に目をやる。
ずっしりとピンクな同人誌が詰まった紙袋。
この『紙袋の持ち主』はおそらく、ヲタク街と化した『現代の』でんでんタウンを好みそうだ。
どんな人なんだろう。持ち主はおそらく『男』だろう。中身が中身なだけに……。

気が付けば恵美須町(えびすちょう)まで下っていた。
交差点を地下道──地下鉄駅の通路も兼ねる──で抜けて、3番出口の階段を上る。
すると、白いブロックが敷き詰められた広い通りに抜ける。
「ここって……」
そう、ここは大阪のもう一つの名所、新世界。その向こうに見えるのは通天閣。
テレビや雑誌でよく見る光景が、そこにはあった。
道頓堀はたこ焼き屋とお好み屋が冗談の様に林立していたが、
こちらは串カツ屋と居酒屋が何軒も軒を連ねる。そして、当たり前のようにたこ焼き屋もある。
もっと賑やかなところだと思っていたのだが、新世界は意外と閑散としていた。
まぁ、お店がお店だから、夕方になればお勤め帰りのお父さん達で賑わうのだろう。
45カケラ 17-2/3:2008/03/06(木) 02:00:44 ID:J92cJGNd
「どう、感じる? 『気配』」
「あぁ、感じるぜ? ただ、ここじゃねぇな。もっと、南の方で感じるぜ。ヒッヒッ」
相も変わらず緊張感が無い奴ね。まぁいいわ。

「今日は色々と有り難う」
「いいえ、どう致しまして。お役に立てられて何よりです」
「兄ちゃん、恩に着るぜ? あんがとよ。ヒッヒッ」
「こちらこそ。元の時代に帰るまで、かがみさんをお願いしますよ」
「おう、まかせとけ!」
「私はすんげー心配だけどな。本当に帰れるか」
バカマルコに軽くツッコんで、再び彼の方を向く。
ちょっと癖のある短髪をかき上げる仕草をして、彼は柔らかく笑う。
やっぱり、お父さんと同じ『あたたかさ』を感じる。そりゃそうだ。本人なんだから。
「それじゃあ、僕はここで………あ、そうだ!」
別れ際、彼は突然何かを思いついたようで、詰め襟のポケットに手を入れてガサゴソさせる。
そして中身を取り出し、私の前に差し出される。
それは、小さなお守りだった。
「これを、貴方に」
「い、いいの?」
私は差し出されたお守りを本当に受け取って良いのかどうか迷っていると、
彼は「ええ」と短く答え、それから、
「『貴方に天下最強の幸運を』」
と何処かで聞いた事のある台詞を残してその場を去った。
その場に取り残された私とオマケ約1『名』は、何故か呆然としていた。

ぴゅうっと、天気の安定しない空から乾いた風が一吹き。
それではっと我に返った私は、バカマルコが感じる『気配』を頼りに、恵美須町駅から阪堺電車で更に南を目指した。

***

「この街には、もう『気配』が感じねぇ」
「てコトは、そろそろ次の場所に移動って訳ね」
「そういうコトだ」
我孫子町(あびこちょう)駅から国鉄阪和線の通勤電車に乗った私達は、
両側に迫る住宅街を眺めながら大阪駅へと向かっていた。
南海電鉄阪堺線(現:阪堺電軌阪堺線)の我孫子道(あびこみち)駅で降りた私達は、
住宅街を東へと進み、市営南住吉住宅という団地の敷地内で『星のカケラ』を発見した。
「我孫子」という地名は埼玉県のお隣、千葉県に都市名として存在するが、
まさか500キロ以上も離れた大阪にも全く同じ地名があるとは思わなかった。
おそらく、大阪の我孫子に住んでいる人は、千葉県に「我孫子市」という町がある事に驚くだろう。
天王寺駅から今度は環状線に乗り換える。駅の構造が複雑で、成り行きで外回り電車に乗る事にした。
天王寺から大阪までは、外回りも内回りも時間的には大して変わらないらしい。
車両は阪和線と同じやつだが、オレンジ色の車体は数年前までの武蔵野線を連想する。
たぶん武蔵野線で走っていたやつも、今乗っているコレと同型だろう。
鉄道興味は生憎持ち合わせていないので、あまり良く分からないけど。
46カケラ 17-3/3:2008/03/06(木) 02:01:19 ID:J92cJGNd
『まもなく、西九条、西九条。安治川口、桜島方面と、阪神電車はお乗り換えです』
時代が時代なので、車内アナウンスに「USJ」の単語は出てこない。
最寄り駅は、確か「ユニバーサルシティ駅」だっけか?

『まもなく、野田、野田です。地下鉄千日前線玉川駅は、当駅でお乗り換え下さい』
これまた千葉県の地名だ。
野田と聞くと、つかさの中学時代の友達を思い出す。今年のクリスマスはどうしようかしら?

『次は、福島、福島です』
えぇ?!
これは驚いた。
大阪にも「福島駅」があるとは思わなかった。
『福島、福島です』
駅名もズバリ「福島」。福島県出身の人が見たら感動するかも知れない。
〈随分と楽しそうだな、可憐なる鉄道旅行者・ヒーラギカガミ?!〉
〈うるさいうるさいうるさい。放っといて!!〉

『有り難うございました。大阪、大阪です。
 東海道線、阪急電車、阪神電車、地下鉄電車はお乗り換えです』
環状線の電車はあっと言う間に半周し、大阪駅に到着した。
電車の窓から景色を眺めるのは、幾つになっても楽しいわね。

個人的には大阪駅から阪急梅田駅に行き、そこから甲陽園まで行きたかった。
理由? 簡単よ。あのラノベの舞台が甲陽園の周辺だからよ。


一旦改札を出て、財布から岡山行きの乗車券を取り出し、再び改札口を通る。
途中下車した場合、再び列車に乗るには、下車した駅まで戻って改札しなければならない。
当然と言えば当然だけど、何か面倒だ。
『まいどご利用有り難う御座います。この列車は、姫路行き、新快速です。
 停車駅は三ノ宮、神戸、明石、西明石、終点・姫路です』
大阪駅からは東海道線での新快速に乗る。車両は、2つ扉の旅行用の電車だった。
この電車、塗装は白地に青帯と塗装は異なれど、客室設備は昨晩乗ったあの大垣夜行を連想して嫌になる。
このトラウマはあと10年は引きずる事になろう。
ボックスシートだけの車内に身を預けると、自然と瞼が降りてくる。
やがて私は、モータの駆動音と線路のジョイント音をBGMに、いつしか深い眠りについていた。

〈良い夢を。儚き時の旅人・ヒーラギカガミ〉
47カケラ 18-1/3:2008/03/06(木) 02:01:59 ID:J92cJGNd
18.

「なは」という名前にどうも違和感がある。
「なは」と聞いて真っ先にイメージするのは、沖縄の都市「那覇」。
九州と関西を結ぶという、沖縄とは全く無縁のこの特急列車は、どういう経緯で生まれたのだろう。
今、ここにゆきちゃんが居れば、寝台特急「なは」について色々と話してくれるのかも知れないね。
ゆきちゃん、今、どうしているのかな?
こなちゃんのコトも心配だけど、ゆきちゃんのコトも心配だよ。

「で、人の話、聞いてた?」
「え?! あ、メンゴ」
「もう、しっかりしてよね」
今目の前にいるのはゆきちゃんでもこなちゃんでもなく、あゆちゃん。
本当は「あゆみ」という名前なんだけど、呼びやすいから『あゆちゃん』と私は呼んでいる。
「ごめん、で、何の話だったっけ?」
「ベッド」
「ベッド?」
「そう」
「……あ、思い出した!!」
「上? 下? どっち?」
単語だけで聞いてくるあゆちゃん。ちょっと機嫌が悪いのは、私がぼうっとしていたからだろう。
「あゆちゃんの好きな方でいいよ?」
「私、どっちでもいい」
「私もどっちでもいいんだけど」
「じゃあさ」
「ジャンケンで決めよっか?」
「そうね」

結果、私が上のベッドを、あゆちゃんが下のベッドを使う事になった。

寝台特急「なは」号は、西鹿児島から熊本まで乗った「有明」号と全く同じ車両だった。
けれども、車内の雰囲気は「有明」号のそれとは全く違う。
ゆったりとしたボックス席だった車内は、今は3段式のベッドになっていた。
何て言うのかな? クルマで言うとキャンピングカーみたいな感じかな?
あの変な『出っ張り』の中はベッドだったんだね。まるで収納家具みたいで面白い。
各ベッドはカーテンで仕切られていて、通路は丁度、カーテンの『壁』に挟まれた恰好になる。
客室の天井が高いので、何とも不思議な感じ。
ただ、天井が高いと言ってもベッドは3段式なので、それぞれのベッドの天井はかなり低い。
けれども私達の区画だけはなぜか2段式になっていて、3段目が無い分、上のベッドは天井が高かった。
あゆちゃんの寝る下のベッドは、私が寝る上のベッドよりも25センチくらい低い。
代わりに、ベッドの幅が30センチくらい広かった。
それと、大きな窓が独り占め出来るのは、ちょっと羨ましかった。

そして、やっと洗面台が3つ、トイレが2つもある理由が分かった。
長い距離を一晩掛けて走るのだから、トイレに行く機会は自ずと増える。
朝起きたら、まず顔を洗う(今朝は洗わなかったけど)。
もしトイレと洗面台が1つずつだった場合、今はガラガラだからいいけれど、
混んでる時はトイレを待つだけで大渋滞してしまう。
なるほど、関心関心。
48カケラ 18-2/3:2008/03/06(木) 02:02:46 ID:J92cJGNd
梯子を登って、用意されたベッドへ。
青地のベッドには、枕、シーツ、毛布などのリネン類、そして「エ」模様の浴衣が用意されていた。
ベッドメイキングはセルフサービスで、各自で行う仕組み。
枕元には小さな小窓と小さな照明、壁側の四角く窪んだ所は物置き台となっている。
照明の下には「寝台内では禁煙」というステッカが貼られているけれど、
寝ながら煙草を吸う人はそんなに居ない……と思う。
私は高校生だから吸わないし、大人になっても吸うつもりは無いけれど。
斜光カーテンを閉めて、電気を付ける。味気ない蛍光灯だけど、その白い光には暖かみが感じられた。
ほのかに照らされたベッド内で、座った状態で浴衣に着替える。何だか旅館に居るみたい。
寝ている時に誰かに覗かれるコトは無いだろうけど、『見られる』のは嫌なのでキャミソールは着たままにした。
ちょうど着替え終わった時、カーテンの隙間から突然、手が伸びてきた。
「!!?」
最初は凄く驚いたけど、その白くて細い手は、あゆちゃんだった。
手に持っているのは……炭酸飲料、かな?
「どうぞ」
そう短く言って、あゆちゃんは炭酸飲料の缶をベッドの上に置いて、手はカーテンの外へと消えた。
「有り難う」
丁度喉が渇いていたので、受け取った炭酸飲料のプルタブを開ける。
この時代の缶飲料はプルタブが缶から外れる。へぇ、昔のやつとは形が違うね。
ぐいっと一口。
「……………」
あゆちゃん、この飲み物、変な味がするよ?
何か、カラダが火照って来ちゃったし…………。


頭の中に広がるのは、一面南国のアカバナが広がるお花畑。
いつの間にか、夢の中の世界へ入ってしまったようだ。
『お姉ちゃん』
誰かが誰かを呼ぶ声がする。
『お姉ちゃん』
女の子の声。何処かで聞いた事のある声。
『お姉ちゃん』
え? もしかして、私のコト?
『もう、お姉ちゃんってば!』
えへへ、お姉ちゃんって呼ばれるの、初めて、かな?
『お姉ちゃ〜ん』
何か、照れるよう……。
49カケラ 18-3/3:2008/03/06(木) 02:03:16 ID:J92cJGNd
むに。

私のカラダの『ある部分』を、誰かに摘まれた。
「??!!」
一気に目を覚ます。
「もう、お姉ちゃんったら、ボケーっとしてるんだからっ」
一面のお花畑から打って変わって、私の目の前には、何故かあゆちゃんの姿があった。
しかも、何故か顔が赤い。
「お姉ちゃ〜〜ん、にゃんにゃん」
「あ、あゆちゃん?」
何か様子がおかしい。それに、このにおい…………。
もしかして、もしかすると?
「にゃに? どしたの〜」
はぁ〜っと私に息を吹きかける。
あゆちゃん、この炭酸飲料って、お酒でしょ?!!
「うにゃ〜、お姉ちゃん、だぁあい好きっ」
子猿の様に顔を赤らめた、大人とも、子供とも区別のつかない微妙な年頃の少女は、
私の上に乗りながらにゃんにゃんと猫撫で声を上げる。
どうしよう、可愛い。
それに、『お姉ちゃん』って呼ばれるのが凄く嬉しい。
私もまた、酔っていた。
だからかな?
真上に乗っかっているあゆちゃんに対して、私は文字通り、無抵抗だった。
「…………って!!」
やっと気付いた。
あゆちゃん、何と浴衣を脱がして、キャミソールをたくし上げて、そしてブラ越しに私の胸に触れている!!
一体何が……って酔っぱらっているのか。
「うみゅ〜、お姉ちゃんのえっち〜」
「ど、ど、どんだけ〜〜」
私もだんだんパニックになってきた。
と、同時に、何とも言えない感触が、胸(おっぱいの方じゃない)の中からこみ上げてくる。
や、やだ、どうしよう。
「にゃ〜に〜? お姉ちゃん」
だ、ダメだよ、ダメだよ私。何で小学生(?)に胸揉まれて発情してるの?
わ、私のバカ、バカバカバカ!!
「やっぱり大きいね〜、私もお姉ちゃんみたいになりたいにゃ〜」
そう言って、あゆちゃんはたった一枚だけ着ていたキャミソールを脱ぎ捨て、そのまま密着する。



「あ、あじゃぱ〜〜〜><」
結局私は、『ある意味』おマセな少女に一晩中身体を弄られた。
どんな感じだったって?
そ、そんなの恥ずかしくて言えないよぉ。
50久留里:2008/03/06(木) 02:04:53 ID:J92cJGNd
以上でございます。

次の次あたりからは第三者視点に変わりますので、
展開がどっかの赤い人(ry並みになるかと思います。

デハ
51名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 02:19:51 ID:iXK3wF/e
クハっ、またいいところで……GJです

モロに展開が変わると聞いちゃ黙っていられねぇ!
タキに打たれながら全裸待機してきます
52名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 03:32:41 ID:UTx1xdin
>>50大阪巡りしてるみたいで、凄く読んでて楽しかった。
 
そしてなにより「福島」ネタにやられたわww 
福島から関西に引っ越してきたんだが、環状線で弁天町の交通博物館に行く途中に、初めて福島って聞いて驚いた時を思いだしたww
凄く懐かしいwwニヤニヤが止まらねえよwwww
 
GJ!!そして急展開フラグにwktk
53名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 03:44:35 ID:SkOhPZ5o
>>45
武蔵野線ってモロ地元です・・・。


鉄ちゃんメモ
大阪環状線は101系を使用していた気がします(大阪には何回か行ったことがあるので)。
また、武蔵野線は103系が主となっています(それも去年の今頃位までの話でしたが)。
54名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 07:17:19 ID:5IJ7gf8u
>>50
起きぬけのつかさ受けで糖分の補給は万全だ!(待て


というわけでぐっじょぶです。
かけらも集まってきてるし、そろそろこなかがつかが出会う頃かな?
55名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 08:00:05 ID:aQn7f+Vs
>>51

モハっw
56名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 08:44:33 ID:vAfjFLEc
>>51
そのタキに流れているのはもちろんガソリンか何かだよなw
57名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 15:14:01 ID:6OrU9/wj
外が大雨の日は一日中セックスに明け暮れてそなカップリングは誰と誰なんだろう
58名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 15:22:02 ID:XSQWLjPT
雨が嫌いなかがみんが誘いうけでさまざまに展開!とかどうだろうか
59名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 15:29:11 ID:EPdYN1YM
つかさはずっと寝てます
60名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 15:32:33 ID:6OrU9/wj
こなたはゲームだろうし
61名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 16:07:40 ID:dmfXlL44
そしてかがみは不貞寝
62名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 16:15:40 ID:EPdYN1YM
ひよりはずっと妄想
63名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 16:32:04 ID:AimbT9yH
あやのは楽しくお菓子作り
64名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 16:52:54 ID:jtkN83pF
>>60

かがみをネトゲに引き込んで、エロチャットを仕掛けるこなたを妄想した
65名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 17:02:42 ID:p9iG0Nzy
ゆたかとみなみじゃね?
雨で気分が悪くなったゆたかを(ry
66名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 17:06:43 ID:e+Pj8PCj
こなたは高校生になっても家に友達呼んでゲームしてそうだから困る
そんな夢のような時代を再現されたらおじさん無職になってゲームしたくなっちゃう!
67名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 17:07:43 ID:waBIEo67
>>66
高校生でも別に普通じゃね?
と思ってしまう自分はだめか
68名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 17:26:55 ID:p9iG0Nzy
そもそもこなたは既に高校生じゃないの?
69名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 17:29:16 ID:+9kFBsqz
そもそもこなたは俺の横にいるんじゃないの?
70名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 17:39:38 ID:iXK3wF/e
俺がこなただ
71名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 17:39:41 ID:xJqfCIdQ
>>69
それはないww

ひーちゃんは暖房の無い家でお腹を空かしていると予想。
72名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 17:47:16 ID:cdbLbxT2
みゆきはこなツーメンテナンス中
みゆき「こなツーさんの腕
ロケットパンチにしてみたらどうでしょうか?」
73名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 17:50:16 ID:6OrU9/wj
みゆきさんとかがみは性欲強そう
74名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 17:56:03 ID:cdbLbxT2
かなた「そろそろお彼岸の時期ですね…そう君とこなた…元気でやってるかしら…」
75名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 17:56:44 ID:ROH8ig4/
>>72
みゆき「新機能つけてみました!」
こなつー「ナドレ……開放!」

勿論 全裸な
76名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 18:07:39 ID:+wEmoLTR
みゆき「かがりさんにも新機能つけてみました」
かがり「月光蝶である!」
77名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 18:24:33 ID:B7zunQNM
>>72

飛んでったこなつーのロケットパンチって いわゆるフツーの撃ちっぱなし
どこいった?片方だけ?捜索人海戦術だだだだだー!


それなんて「日常」?w
78名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 19:21:27 ID:Ys3J0pwB
>>75


こなつーヴァーチェ=寒くて着膨れ
79名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 19:24:20 ID:DLSUbbn8
せめてマジンガーくらいの能力はつけてやろうぜ
(パンチが戻ってくる的な意味で)









うぃきつー「お母さん・・・おっぱいミサイルはさすがにいやです・・・」
80名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 19:34:42 ID:3sjheUSY
前スレ612です。投下したSSに反応して下さった皆さんありがとうございました
続きは正直考えてなかったですorz
書けたらまたここに投下させて頂こうと思います

そしてついつい…な♂こな絵。TS注意!
らくがきなので保存は無しでお願いします
ttp://www2.uploda.org/uporg1288344.jpg.html
かっこいい♂こなたが描きたくてやった。そろそろ自重します…orz
81名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 19:39:38 ID:ctEeb9vm
こな☆フェチに感染した者を全て制御下におく。
これがこなつーナドレの真の能力、こなつーのみに与えられたこな☆フェチ感染者へのトライアルシステム!
82名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 19:45:46 ID:TRTph5mx
こなつー
「ガ○ダムによる武力挿入を開始する!」
こなた
「Σこなつー!? 介入、介入っ!!」


こなつー
「介入はステータスだ! 希少価値だっ!!」
かがり
(……殴りてぇ……激しく殴りてぇっ!!)
83名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 19:48:42 ID:5IJ7gf8u
「どれほどの性能差があったかて……今日のウチは、阿修羅すら凌駕する存在や!!」


……すまん。
84名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 19:55:32 ID:waBIEo67
>>83
せんせーーー!!

フラッグで頑張って下さい
85名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 19:59:49 ID:DLSUbbn8
>>80
性格設定まで出来て行く・・・これはいい♂こな

此方「しっかしさ、確かに女子に堂々とこんな話したら、
   通常ドン引きだよなーww
   やっぱりこれって、愛なのかな?カナ?」
かがみ「う・・・うるさぃ・・・(///」
86名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 20:00:42 ID:D26OTUi+
>>81
そもそもあなた達は姉さんに相応しくない。
そうとも
萌死に値するっ!!

えっ!?システムが強制解除され・・・アッー!
8743Hev0JB:2008/03/06(木) 21:06:49 ID:tJPz7vv1
かがみ「ヒイラギ・かがみ、目標を狙い撃つ!」
こなた「アッーー!!!!」
88名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 21:08:26 ID:CcL7U6WZ
もうなんかよくわからんから、ひよりんが男になってくれ
俺の誕生
89名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 21:26:51 ID:J92cJGNd
これ何て電波放出祭り?

折角だから、>>74のお彼岸ネタで何か書いてみるか。
90名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 22:29:26 ID:ROH8ig4/
ttp://www.geocities.jp/je104049/konatu.png
こんなわけですか!!!! 良く分かりません!!!!
91名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 22:40:40 ID:W0FUsEn8
>>90
ぶーわさん! なにしてはるんですか!?w
92名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 22:42:30 ID:NxM4oezu
ゆかり×みなみの非エロ投下します。
93ゆかりとみなみ(1/1):2008/03/06(木) 22:49:16 ID:NxM4oezu
 ある休日の午後。高良家のインターホンが鳴った。
「は〜い、どちら様?」
『岩崎です』
「あらみなみちゃん。ちょっと待ってね」
 ゆかりがすぐに玄関を開けると、岩崎みなみが参考書とノート片手に立っていた。みゆきに勉強のことで質問があって来たのだろう。
「こんにちは〜」
「こんにちは……みゆきさん、いらっしゃいますか?」
「ごめんねぇ。今ちょっとおつかいに行って貰ってるの。すぐ帰ってくると思うから、上がって待っていくといいわ」
 マイペースなゆかりに言われるまま、みなみは家に上がらせて貰う。
 お茶を入れに行ったゆかりを、みなみは居間のソファで座って待つ。テーブルの上に、何冊かのアルバムが雑然と並べてあった。
「今ね、みゆきがちっちゃい頃のアルバム見てたのよ。みなみちゃんもよく写ってるわよ」
 お茶を持ってきたゆかりは、そう言って一冊のアルバムを捲った。みゆきが小学校に上がった頃の写真だ。幼稚園児のみなみも写っていた。
 ページを捲るたびに時代が進んでいく。みゆきが小学校三年生になった頃。高良家のアルバムなのに、何故か入学式のみなみの写真があったりした。
「みなみちゃん可愛いかったわね〜。今も色んな意味で可愛いけど」
「……」
 何を言ってもやぶ蛇になりそうなので、みなみは黙っている。
 みゆきが小学四年生に上がる頃の写真が出てきた。それを見て、みなみの胸中に小さな波が立つ。
(この頃から既に……)
 背丈は平均よりやや上といったところだが、一部分の発育が著しい。五年生の写真になると、既に他の女子を圧倒していた。
 ちなみにその時三年生のみなみはペタンコである。当時にすればおかしくない。だが高校生となった今でも、あの頃からほとんど増量なしというのは由々しき事態だ。
(みゆきさんと私……何が違ってこんなに差が出たのだろう……)
 やはり遺伝も重要なのだろうか。しかしみゆきの母ゆかりは、せいぜい中の上といったところだ。遺伝以外にも原因があると見るべきだろう。
 考え込んでいるみなみ。その横で、ゆかりは無邪気にアルバムのページを捲っている。
「そういえばみなみちゃんのおっぱいの大きさ、この頃からあまり変わってないわねぇ」
 グサリと音が鳴りそうなほどストレートなゆかりの言葉に、みなみは暗いオーラを漂わせた。
「みなみちゃん? どうかした?」
「いえ、何も……」
 擦れ声で返事をするみなみ。端から見れば気にしているのが丸わかりだが、ゆかりはそれに気付いているのかいないのか、悪気など欠片も無い様子で話を続ける。
「みゆきは昔っから発育が良かったのよねぇ……四年生でもうブラジャーが必要だったし」
 知っている。初めてブラを着けたみゆきに、その頃のみなみは羨望の眼差しを向けていたのだから。
「みなみちゃんは、やっぱり今でも胸が無いこと気にしてるの?」
「はいっ……?」
 不意打ちの質問に、みなみはらしくもなく素っ頓狂な声を上げる。そんなことをゆかりに話した記憶は無い。
「ど、どうしてそんなこと……?」
「あら、憶えてない? 小学校の四年生ぐらいだったかしら。どうしたらみゆきみたいにおっぱいが大きくなるのかって、私に聞いたじゃない」
(お、憶えてない……何故この人はそんな昔のことまで……)
 何かというとゆかりに恥ずかしい場面を見られたりすることが多いみなみだが、まさか何年も遡って恥ずかしい過去を突きつけられるとは。
「それに今だって、毎日牛乳飲んだりしてるでしょ?」
「そ、それは、健康のためで……」
「ふ〜ん?」
 ゆかりの細い目の奥に、どこかいたずらっぽい光が浮かんでいる。みなみはあうあうと口を動かすばかりで、それ以上何も言い返せない。
 相性というか、ゆかりの前では普段のクールさが鳴りを潜め、向こうが言うところの「可愛いみなみちゃん」になってしまう。
「で、本当のところはどうなの?」
「だ……だから、その」
 すっかり狼に追いつめられた羊だ。その時、
「ただいま戻りました〜」
 メシア降臨。みゆきが帰ってきた。
「みっ、みゆきさん、帰ってきたので、失礼します……っ」
 みなみは逃げるように居間を出た。廊下でみゆきと顔を合わせる。
「あら、みなみさん。いらしてたんですか」
「はい、あの、聞きたいことがあって……」
「聞きたいこと? 何でしょうか?」
「どうしたらみゆきみたいに胸が大きくなるのか知りたいんですって〜」
「ちっ違いますーっ!!」
 居間から茶々を入れたゆかりに、顔を真っ赤にしたみなみが吼える。大人しいみなみにこれほど激しいリアクションをさせる人間は、地球広しといえどもゆかり一人だろう。多分。

おわり
94名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 22:49:45 ID:NxM4oezu
読んで下さった方、ありがとうございました。
95名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 23:02:58 ID:5IJ7gf8u
嗚呼、いっぱいいっぱいなみなみちゃんが可愛いのです。ぐっじょぶ。
96名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 23:08:48 ID:/oq8/RZn
>>95
いいっ。みなみちゃん、可愛いっっ!!
GJっっすっ
ゆかりさん、あんまりみなみちゃんいじめないでっwww
97名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 23:09:37 ID:/oq8/RZn
アンカミス…orz
↑は>>94でふ
98名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 23:22:19 ID:0g17rMD+
>>90

クチュクチュする!!!!
99名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 01:42:07 ID:cOfSiEkN
>>94 みなみん可愛いよみなみん。そしてゆかりさん最強説浮上。
100名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 08:28:39 ID:Lj+z3CeU
おはよークチュクチュ(=ω=.)9m
101とりとどん:2008/03/07(金) 12:38:45 ID:9QKMIrex
ポワァーオクチュクチュ
102名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 12:45:40 ID:ac2u5lI6
じゃあ俺はコリコリするか
103名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 12:56:10 ID:xazugQD9
>>90
エロス!!!!!!

クチュクチュ!クチュクチュ!
104名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 12:56:37 ID:tBC9y2Zs
じゃあ俺はレロレロするか
105名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 13:12:39 ID:V6p776w4
どこを?
106名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 13:30:19 ID:yg9TINu6
みゆきさんの眼鏡
107名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 14:10:34 ID:5nSzWnL0
>>106
鼻血の味しかしないぞ
108名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 15:19:53 ID:zOC6iMvf
こなツー「なんか退屈だな…そうだ!ネットでこの前一発芸のサイト見つけて覚えたからかなたお母さんに披露しよう…」
こなツー「お母さん〜」
Wかなた「何?こなツー?」
こなツー「コマネチ!シュッシュ」
109名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 15:29:36 ID:pE2UzJEM
>>101
ちょっ、急に出てきて笑わせるなww
110名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 17:32:19 ID:webqRPCk
>>108

かなこなこなの「ジェットストリームあっぷっぷぇ」で、そうじろう陥落。
111名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 18:02:55 ID:G23SoDKt
一週間ばかり顔出さないうちにもう40いってる…
112名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 18:07:52 ID:ZYCdVTCB
関係ないけどつかさ単体の同人誌って一つも無いんだな…
つかさ派の俺にはツンデレブームが恨めしいといわざるを得ない
113名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 18:09:56 ID:G23SoDKt
つ「つか☆すた」
114名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 18:48:29 ID:Z2E8sHPN
かがみはツンデレじゃな(ry
ツンデレって名称ついただけで昔から人気の性格なんだけどな

つかさ単体は数冊あったはず
委託してないの合わせれば10冊は超えてるんじゃない
115名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 18:52:14 ID:ZYCdVTCB
まじか…
もう少し探してみるか…
116名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 19:37:06 ID:Lin/3Ltf
久しぶりにSSを投稿させていただきます。

●中編11レス投下させていただきます。
●そうじろう×??? 10レス目まではオリジナルらしきキャラがいます。
●現時点では非エロなお話。
117にゃにゃにゃ? (1/11):2008/03/07(金) 19:38:07 ID:Lin/3Ltf
 しとしとと、外の雨音が部屋にまで響く。
 それと一緒に聴こえるのは、無機的なPCの駆動音と、
「はあ……」
 俺の不細工なため息だけ。
「ネタ……出てこねーなぁ」
 一つぼやきながら、座椅子の背もたれにぐいっと寄りかかる。
 頭の中でネタがぐるぐる回っていても、まぜこぜになっているばかりで全然まとまる
気配は無い。よく経験してることではあるんだが、今日は特に重症っほい。
「こういう展開じゃ、池原さんも怒るだろうし」
 担当の池原さんの怒り顔を思い浮かべながら、エディター上の文章をバックスペースで消していく。
 いつも温厚な人だけど、物語のこととなったら人一倍厳しい。俺が納得行ってないまま
見せたりしたら、絶対ダメ出しするに決まってる。
「もっと主人公が気になっていく動機付けとか、自然に出て来ないもんかね」
 何度考えを巡らせても、納得行く書き出しすら浮かんでこない。下手したら、アタマっから
書き直したほうがマシかもしれないとまで思えてくる。
「昨日まではいい感じだったのに……」
 言いたくない独り言も、つきたくないため息もキリがないほど出てくる。
 いい話になりそうだって思ってる時ほど、どうしてこう壁にぶつかるんだろうな。
「とりあえず、一休みするか」
 ゆっくりと立ち上がり、軽く伸びをしてから台所へ。確か、一昨日買っておいたリンゴ
ジュースがあったはず……おお、あったあった。
 冷蔵庫を開けると、目当てのジュースがポケットに入っていた。これで頭をスッキリ――
「ぐぁ」
 と思って手にしたら、ほとんどカラでやんの。そういえば、昨日はこなたの友達が来てたから、
その時に飲まれたのかもしれないな。
 だからといって、雨の中をジュースだけ買いに行くのもめんどくさい。でも、このまま
鬱々とした気分のままじゃいいネタも書けるはずがないわけで。
 そう思いながら時計を見てみると、午後三時を少し回ったところ。買い物に行くには
まだ早い時間だが、PCの前にただ座ってるよりはずっとよさそうだ。
「んじゃ、行ってきますかね」
 居間に戻った俺は、ノートPCをスリープモードにしてから傍らにある車のキーを手にした。
寒さ対策に半纏は着てるし、家の鍵も持ったし……よし、これでいいか。
 廊下に出ると、居間や台所とは違って冷い空気が容赦なく襲いかかってきた。これだけ
寒いとさすがに堪えるが、車に乗ればエアコンもあるし大丈夫だろう。
 靴を履いてから戸を開ければ、外はまだ本降りの雨。こなたとゆーちゃんが帰る頃には
上がって欲しいもんだが、それも難しい空模様だ。
 また憂鬱になりそうなのを振り切って、とりあえずは外に――
「みゃあ」
「ん?」
 一歩出たとたん、か弱い声が俺の耳に飛び込んできた。
「……お前か?」
 声がした方を見下ろすと、そこには小さな黒い影。
「みゃ〜」
 雨に濡れた仔猫が、軒下に座り込んで俺のことを見上げていた。
「どうしたんだ? 雨宿りか?」
 かがんで視線を近づけながら、判るはずもないのにしゃべりかけてみる。
 まだ幼い猫みたいで、近づいてみてもかなり小さい感じがする。普通、こうやって
近づけば警戒されるはずなんだが、
「みゃあ」
 仔猫はとてとてと俺に近づいてくると、可愛らしく鳴いてみせた。
「あははっ、ここがお気に入りか?」
 人差し指で軽く撫でても、嬉しそうにすり寄ってくるだけ。もしかしたら、どこかに
飼われてて慣れてるのかもしれない。
「俺はこれから買い物に行かなきゃならないんだ。気が済むまで、ここにいていいからな」
118にゃにゃにゃ? (2/11):2008/03/07(金) 19:39:00 ID:Lin/3Ltf
 ぽんっと指で触れてから、立ち上がる俺。ここで雨宿りするぐらいなら、いくらいて
もらってもかまわない。
 気をとりなおして、ガレージのほうへ――
「おーい?」
「みゃあ?」
 行こうとすると、仔猫まで俺についてこようとしていた。
「おーい、濡れちまうぞ?」
 そう言っても通じるはずがなく、仔猫は俺にぴたっとついて離れようとしない。
 このまま行けば、こいつまで一緒についてきそうな勢いだが、このままじゃ買い物に
までついてきかねない。
「……参ったなぁ」
「みゃ」
 途方に暮れる俺をよそに、仔猫は濡れた身体を俺の作務衣の裾にすり寄せていた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 にゃにゃにゃ?   その1・雨の中から
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「……で、こうなったってわけ?」
 天ぷらそばをちゅるちゅるすすってから、こなたが呆れたように言い放つ。
「面目ない……」
「だけどお姉ちゃん、たまにはいいと思うよ? こういう店屋物も」
 かき玉うどんのスープを飲んでいたゆーちゃんが、フォローするように言ってくれる。
ううっ、ホントにええ子や。
「まあ、確かにたまにはいいけど。でもまさか、理由が仔猫に引き留められたからだなんて」
「だって、ちょこちょこついてくるもんだから危なっかしくてさ」
「だからって、家にまで上げるかなぁ。普通」
 苦笑いしながら、畳の方に視線を移すこなた。そこには、お皿にちまっと載せられた
蕎麦――別個に頼んでおいたざる蕎麦を懸命に食べている仔猫の姿があった。
「仕方ないだろ。俺についてきてるのに、すぐに追い返すわけにもいかないじゃないか」
 ため息混じりの俺の言葉にも、仔猫は我関せずとばかりに蕎麦を食べ続けていた。

 どこまでもついてこようとする仔猫に参った俺は、結局買い物を諦めて家へと戻った。
ついには家の中にまで入ってきた仔猫だが、さすがに濡れたまま入れるわけにはいかず、
軽く身体を拭いてから家に上げた。
 普通、猫は他人にそういうことをされるのは嫌がるはずなんだが、この仔猫は暴れる
どころか、むしろ自分からすり寄ってくるほどだった。それだけ、人に馴れてるってこと
なのかもしれない。
 で、そのままじゃれてくる仔猫に懐かれていた結果、こなたとゆーちゃんが帰ってくる
時間になってしまって、そのままそば屋の出前を頼む羽目になったというわけだ。

 ゆーちゃんは仔猫を見て喜んでいたし、こなたも出前の事に関しては全然文句を言わなかった。
「でもさ、この子ってどこかの飼い猫じゃないの?」
 代わりに、こなたにとってはそのほうが気にかかっていたようで。
「俺もそう思ったんだが、首輪とかタグとかの類が一切無いんだ」
「どこかのおうちから逃げ出しちゃったとかじゃないんですか?」
「だとしたら、普通はこんなに人には懐かないと思うんだけどな」
「だよねー」
 家に上げる際に確かめてはみたんだが、この仔猫の身元が判るようなものは一切無い。
それどころか、首輪をしていたならあるはずの痕跡も無かった。
「でも、野良にしては妙にお行儀もいいよね」
「そうなんだよなぁ」
 見ると、蕎麦をたいらげて舌をぺろりとさせている仔猫。
「みゃあ」
 ひと声鳴くと、仔猫はそのままうずくまって満足げに目を閉じた。
119にゃにゃにゃ? (3/11):2008/03/07(金) 19:39:35 ID:Lin/3Ltf
「まさか、捨てられてたとか……」
「だとしたら……どうしたもんか」
 言われてみれば、捨て猫という線も無いわけではない。人に飼われていて大事にされていたけど、
止ん事無き事情で手放さざるを得なくなって、街をさまようことになって……たまたま、
俺の家の軒下を借りていた、と。
 もしそうだった場合、もう飼い主がいないわけだから俺たちに打てる手は本当に少ない。
「ねえ、お父さん」
「ん?」
「昔言ってた『オキテ』って、まだ有効かな?」
「『オキテ』?」
 こなたの言葉に、ゆーちゃんが不思議そうに首を傾げる。
「『オキテ』……なぁ」
 俺はというと、小さく呟いて思案するしかなかった。

 我が家、というかこなたと俺の間には、昔作ったある決まり事――『オキテ』があった。
『オキテ』の中身はというと『家では動物を飼ったりしない』ということ。昔、こなたから
そんな相談をされて決めた事だ。
 ある種、俺の身勝手から作った決まり事だったんだが、それからはこなたが相談を
持ちかけてくることはなかった。
 理由としては……まあ、昔あったことが元だとだけ言っておこう。
 そんなわけで、我が家とこういった動物は無縁だったはずなんだが。

「まだ決まったわけじゃないけどさ。もしも、この子が一匹っきりだとしたら……
どうにか、できないかな?」
「えっと、私からもお願いします。私もいっしょに手伝いますから」
 こなたといっしょに、『オキテ』のことを察したらしいゆーちゃんが俺のことを見つめてくる。
 どっちも切実そうな瞳で、確かに俺もその気持ちはわかる。わかるんだが……
「でもな、こなたにゆーちゃん。動物を飼うってことは、軽くない責任をたくさん負うことになるんだぞ?」
 最終的には、そういう考えに行き着くことになる。
「もちろんわかってるよ。『生きている命を預かる』ってことだもんね」
「私も、みなみちゃんからお話を聞いたことがあります。みなみちゃんの家も、チェリー
ちゃんっていう大きな犬を飼ってますから」
「むぅ」
 俺の言葉にも、二人の瞳は切実なまま。こういう風に真摯に言われると、さすがにぐらついてくる。
「そりゃ、もしかしたら飼い主が見つかったりするかもしれないよ? でも、その時までは
ちゃんと預かっててあげたいし、それがお父さんの言う『責任』の一つとも言えるでしょ。
もしもの時のことも、ちゃんと考えておいたほうがいいと思うしさ」
「まさか、この子をすぐに外に出しちゃうとか……しませんよね?」
「うっ」
 理路整然と言ってくるこなたと、ストレートにココロへと訴えかけてくるゆーちゃん……
ああっ、ゆーちゃんってばそんなに涙目にならんでくれっ!
「わかったわかった、わかりましたってば。ただし、とりあえず一週間は待ってくれないか?
飼い主が見つかる可能性だってあるし、それまではちゃんとここで世話するよ。それに、
もしも何も動きがなかったとしても、その時は俺もしっかり結論を出すから」
「ホントっ?!」
「本当ですかっ?!」
「ああ、ちゃんと約束する。だから、二人とも心配しなくても大丈夫だよ」
「わーいっ! ありがとう、お父さんっ!」
「おじさん、ありがとうございますっ!」
 二人とも両手を上げながら、俺のほうに駆け寄ってきて、
「おおぅっ?!」
 い、いきなり抱きつきデスカっ?!
「こっ、こらこら、まだ決まったわけじゃないんだぞ?」
「だけど、しばらくはちゃんと面倒見てくれるんでしょ? それだけでも嬉しいってば」
「私も、優しいおじさんですっごく嬉しいですっ!」
「い、いやぁ、二人からそう言われたらなぁ」
120にゃにゃにゃ? (4/11):2008/03/07(金) 19:40:29 ID:Lin/3Ltf
 きわめて平静に言う俺だけど、女の子二人から密着されりゃあそりゃもう心臓はバクバクですよ!
まさか、娘と姪のサンドイッチだなんて! ゼロ距離だよ?! ゼロ距離! 俺、すっげー
感無量っス! いいって言ってよかったっス!
「あいたっ」
 ……とか思っていたら、足の裏の痛みで一気に現実へと引き戻された。
「ん? なんだ、自分を放っておくなってか?」
 見ると、うずくまっていたはずの猫が俺の足元に来てカリカリと足を軽く引っ掻いていた。
「ありゃりゃ、ごめんごめん。キミのことを面倒見てもいいって言ってくれたからさー」
「しばらくの間、よろしくねっ」
 仔猫の姿に気付いた二人も、俺から離れると仔猫のことをのぞき込む。
「みゃあっ」
 俺が主役だと言わんばかりに、可愛らしく鳴く仔猫。はいはい、今日はお前さんが我が家の主役ですよ。
「ほれほれ。二人とも、さっさと食べんと蕎麦とうどんが伸びるぞー」
「あっ、そうだね。猫ちゃん、おいでー。いっしょに食べよ」
「おじさん、おそばもう少しもらってもいいですか?」
「ああ、いいよ。但し、あんまり食べさせすぎないようにな」
「「はーいっ」」
 元気に言ってから、向かいの席に戻りまた箸を手にする二人。仔猫はというと、とてとてと
歩いていって二人の間にちょこんと座った。
 警戒心が強いはずなのに、見知って間もない二人にもすぐ懐くとは。大物というか、
のんびりしすぎというか。でも、二人とも喜んでるしよしとしよう。
「あっ、お姉ちゃん、ちゃんと食べてくれたよ!」
「おー、キミってばいい食べっぷりだねぇ。その仕草も実に萌えるヨ!」
 わいわいはしゃぎながら、仔猫に蕎麦をあげているこなたとゆーちゃん。こうして見てると、
こなたも普通に女の子してるんだなって思える。
「名前は何にしよっかー。『ぴろ』がいいかな? それとも『うたまる』とか『シャモン』がいいかなぁ」
「おいおい、こなたサン。まだ飼うって決まったわけじゃないぞ」
「でも『ネコ』って呼ぶのもしっくりこないじゃん。ちょっとの間だけでも、ちゃんと
呼んであげないと」
「そうだよね。えっと、私はどんな名前がいいかなぁ」
「おーい、『さばみそ』。もうちょっと食べるかい?」
 ……が、つけようとしてる名前は全然普通とは言えないな。
 そんな二人を横目に見てから、ほんのちょっとだけ後ろのほうに視線を移す。

 ――結局、俺は怖がりすぎてるだけなのかね。

 いつも俺たちを見守ってくれているほうを見やりつつ、俺は心の中でつぶやいた。

  *   *   *

 せいろと蕎麦猪口、三つの丼が乗ったお盆を、ゆっくりと玄関先に置く。
 あとは、明日の朝にでも軒下に移せば蕎麦屋さんが持っていってくれる。
「これでよし、と」
「みゃあ」
 仔猫はというと、こんな何でもない時でも相変わらず俺の側についてきていた。
 こなたと話していた『オキテ』の手前もあって最初は複雑な気持ちだったんだが、
こう気を許してみると、仕草の一つ一つが可愛らしく感じられる。
「ほーんと、俺ってば単純」
「みゃ?」
「ただの独り言だから、お前は気にすんな」
 か細い鳴き声を聴いてるだけで、なんだか構いたくなってくるほど。
 かがんで頭を撫でてやると、うっとりとした瞳で俺の指にすり寄ってきた。ああっ、
可愛いなぁこんちくしょう! 猫にやられる人の気持ちがようやくわかってきたよ。
「よし、俺の部屋に来るか?」
121にゃにゃにゃ? (5/11):2008/03/07(金) 19:41:30 ID:Lin/3Ltf
 片手でもしっかり持てるぐらい小さな身体を抱き上げても、仔猫は嫌がる素振りを
かけらも見せずにされるがまま。
 ――猫ってのは警戒心が強いと思ってたんだが、もしかしたらただの思い込みなのか?
 そう考えてしまうほど、この仔猫は俺たちに対してすっかり懐いている。でも、よく
動物番組を見てると馴れるまでが大変とか言ってたし……うーん、よくわからん。
「ほれ、着いたぞ」
 部屋に入ってから猫を下ろすと、仔猫は興味津々とばかりにあたりを見回し始めた。
「あんまりおいたしちゃダメだぞ」
 家に入れてからずっと大人しくしてるとはいえ、ちゃんと見ておかないといつイタズラ
されるかもわからない。キーボードに粗相をされたりしたら、たまったもんじゃないからな。
 だけど、仔猫はそんな心配をよそに、デスクトップPCの前に座った俺の膝の上へ
ぴょんと乗っかってきた。
「むぅ、そんなに俺の側がいいのか?」
 俺の言葉を肯定するように、そのまま丸まってあくびをする仔猫。どんだけ俺のことが
好きなんだよ、この子は。
「まあ、別に乗っかられても問題ないけどな」
 左手で仔猫を撫でながら、俺はPCの電源を入れた。しばらくしてデスクトップの画面が
出てきたのを確認して、右手のほうでマウスを握る。
 ポインタをデスクトップにあるワープロソフト……はスルーして、そのままスタート
ボタンへ。それをクリックしてから、出てきたアイコンの中から最近プレイしている
エロゲのアイコンを選んでクリックした。
「グッドエンドルートがわからないんだよなぁ。だからといって、攻略サイトはまだ見たくないし」
 こなたから「このゲームは難しいよー」と渡されたエロゲ。確かに、一歩間違えれば
即ゲームオーバーだったり、男だらけルートに飛ばされたりと手応えがあってなかなか
クリアできずにいた。
 ……ん? 仕事? そんなのは後だ後。今はエロゲでクールダウンするほうが先決だ。
 ロード画面から最新のデータを読み込んで、プレイ開始。確か、前は下の選択肢を
選んでバッドだったから今度は上で行ってみることにするか。
 ゲームを進めていくにつれ、ヒロインとのイベントに入るたびに選択肢が出てくる。
前回間違ったときに学んだんだが、どうやらこのヒロインには出来るだけ厳しいほうで
接した方がいいらしい。普通にプレイしてるとどうしても優しいほうを選ぶんだが、
このメーカーは一癖も二癖もあるシナリオで攻めてくるようだ。
 その考えは正解だったようで、だんだんヒロインがツンからデレへと変わってきた。
しかし、ここで優しく転換したほうがいいのか、このまま厳しく接したほうがいいのか……
むぅ、迷うところだ。
『大丈夫だよ、君ならきっと』『そんな弱気な君なんて、失望しちゃうな』という選択肢を前に、
俺は背もたれに寄りかかって考えを巡らせることにした。
「…………」
「ん?」
 ふと膝元を見ると、さっきまで寝かけていた仔猫がお座り状態で画面を見ている。
もしかしたら、こいつもこういうゲームに興味があったりするのかな?
「お前も興味あるのか? よしよし、おとーさんがしっかり見せてあげようじゃないか」
 せっかくウチに来たんだ。ゆーちゃんを染めるのはさすがに無理だったけど、こいつも
この家の一員ってことでエロゲに染めてやろう。
 とりあえず、ここで一旦セーブして、と。あとは選択肢なんだが、ここはせっかくヒロインが
デレって来たんだから、それに見合うよう『大丈夫だよ、君ならきっと』のほうを選んでみるか。
 んで、結果は……おおっ、ヒロインが元気になって抱きついてきたぞ? このままなら
先に進めそうな感じがするな。
 続いてクリックしていくと、すっかりデレデレになったヒロインが主人公に依存していく
展開が待っていた。よしよし、このまま行けば……って、いきなりきたぁぁぁぁぁぁっ!!
「空いてるとはいえ、体育の授業中に教室でって凄い展開だなぁ」
 呟いてる間に画面に映し出されたのは、ヒロインと主人公のキスシーン。このまま体操着で
突入だなんて、スタッフも実にわかってるじゃないか!
122にゃにゃにゃ? (6/11):2008/03/07(金) 19:42:21 ID:Lin/3Ltf
 頭の中で大音響の「やっちまえっ! やっちまえっ!」コールが鳴り響く中、クリックし
続けると二人の間に甘ったるい雰囲気が流れ始める。しかも、今度はディープキスかいっ!
いきなりそういうシーンに行かずに前菜をしっかり用意してくれるとはっ!
 濃厚なオトナのシーンが展開されようとしていて、俺の心臓もすっかりフィーバーですよ!
「ふーっ……」
 ん? なんかこいつは唸っているが……まあいいか、このまま続けよう。俺たちの冒険は
まだ始まったばかりだ!
 ディープキスから逃げようとしたヒロインは、結局主人公に抱きしめられて陥落。
そのまま服に手を入れられて、甘い声を出して軽く嫌がり始めた。だからといって抵抗する
わけでもなく、そのまま主人公に体操服を脱がされ――
「みゃあっ!!」
「おわっ?!」
 CGが変わった瞬間、仔猫は突然鋭く鳴いて液晶モニターに飛びかかった!
「ちょっ、おまっ、いくらなんでもそれははしゃぎすぎだ!」
 しかも、カリカリとモニターをひっかき始めてるし! 保護シートを着けてるとはいえ、
ひっかかれ続けたらさすがに傷がつく!
「おっ、おいっ、ダメだってばっ!」
「ふみゃっ! みゃあぁっ!」
 なんとか両手で引きはがしても、仔猫はじたばたと暴れたまま。いくら小さいといっても、
こう力強くじたばたされると――
「あっ、こらっ、逃げるなっ!」
「ふーっ!」
 仔猫はするりと俺の手から離れると、デスクのパームレスト部分に座って俺のことを睨みつけてきた。
 えーっと……まさか、これってもしかして?
「おいおい、いきなりエロゲを見て発情か?!」
 猫は発情すると気が立つって聞いたことがあるけど、まさかエロゲを見て気が立つって、
なんて仔猫だよオイ。
 そう思っているうちに、仔猫はツンとそっぽを向くとトコトコとパソコンデスクの上を歩き出して、
「……おーい」
 俺に背を向けた形で、マウスの上に座り込んでしまった。
「あのー、このままじゃ先に進められないんですけどー」
 どかそうとして手を伸ばすと、しっぽをふりふりさせて俺の手を払いのけようとしてる。
「せっかくこのシーンまで来たんだから、一緒に見ようぜ?」
「ふみゃっ!」
「おぉぅっ?!」
 猫なで声で言ったのに、振り向きざまにしっぽを逆立てながら鋭く鳴く仔猫。
 えーっと……これって、もしかして怒ってるのか?
「お父さん、『ヒメ社長』、猫砂買ってきたよー……ってうぉいっ! 何やってんの?!」
「ん?」
 声がしたほうを見ると、襖を開けたままの体勢でこなたが口をあんぐりと開けてこっちを見ていた。
「いや、こいつに我が家の教育をほどこしてみようかと思って」
「私だけじゃ飽きたらず、仔猫にまでって……お父さんはどこまで鬼畜なのさ」
「あっはっはっはっ、冗談だって冗談だって」
「だったら、そのモニタに映ってるCGも冗談って言うんだね?」
 おおっと、そういやヒロインが半脱ぎなままだった。こいつぁいけねぇ。
「あ、えーっと、いや、その……ゴメンナサイ」
「別にいいけどさ。お父さんに染められる前に私色に染めるつもりだから」
「お前も同類か!」
「みゃ〜……」
 俺が呟くのと同時に、なんだか疲れたような鳴き声を上げる仔猫。
「まあ、冗談はおいといて……はい、ちゃんと猫砂とか買ってきたよ。多分これでいいと思うんだけど」
「おお、お疲れさん」
 ドラッグストアの袋を受け取って中を見ると、中にはトイレ用の砂やキャットフード、
猫用のミルクやネズミの形をした,猫のおもちゃが入っていた。
123にゃにゃにゃ? (7/11):2008/03/07(金) 19:42:58 ID:Lin/3Ltf
「当分はこれくらいでいいと思うんだけど、どうかな?」
「本格的に飼うって決まったわけじゃないんだし、だいたいこれくらいでいいだろ」
「りょーかい。よーし、『ねねこ』おいでー」
「みゃあっ」
 その呼びかけに、仔猫はマウスから飛び降りて素早くこなたの足元へと駆けていった。
 ……しかし、これだけいろんな名前を呼ばれてもすぐに駆け寄るとは、利口なのか、
それともよくわかってないのか。飼うとなったら、これからの行く先がちょっと不安だ。
「それじゃ、お風呂に入れてくるねー」
「お、おい、お風呂か?」
 両手で仔猫を抱き上げるこなたに、俺は思わず確かめるように問いかけた。
「うん。ほら、この子雨に濡れてたって言ってたでしょ。だったら、お風呂に入れてあげようと思って」
「おいおい、猫ってお風呂嫌いなんだろ? 下手したら暴れたり嫌われるかもしれないぞ?」
「その点は大丈夫。ネットでいろいろ調べてみたんだけど、小さい猫なら風呂桶に浅めに
水を溜めて、それに浸からせながら汚れを洗い流すんだってさ。逆にシャワーとかは音で怖がったりするから、あんまりやらないほうがいいって書いてあったよ」
「なるほど。それにしても、お前よく調べたな」
「今のところはしばらくの間だけど、いっしょに暮らす子だもん。色々知っておかないと」
 当然とばかりに、胸を張って言うこなた。自分から言った手前、その分責任を感じてるのかも
しれないが……ゆーちゃんのことといい、本当に面倒見のいい女の子に育ってくれたなぁ。
「だったら、俺も手伝うよ」
「えっ、本当?」
「どうせ、ネタが浮かばなくて時間もあるしな」
 ――それと、頑張ってくれてるこなたへのご褒美も込めて、だ。
 心の中でそう付け加えていると、こなたは嬉しそうに仔猫を抱き寄せた。
「ありがと、お父さんっ。拭いたり乾かすのはゆーちゃんにお願いしてるから、お父さんは
ゆすぐのとかお願いしようかな」
「それぐらいだったらお安いご用だ。おい、お前さん。これから俺らが風呂に入れてやっからなー」
「みゃあっ」
 顔を寄せてそっと撫でてやると、さっきまでの不機嫌が嘘のように可愛らしく鳴く仔猫。
「できるだけ優しく洗ってやるから、あんまり暴れないでくれよ」
「みゃ〜」

 こなたの言葉がわかったのか、それとも俺たちの気持ちが伝わったのか……
 お風呂に入れてる間、仔猫は心地よさそうに鳴きながら温もりに身を任せていた。
 
 *   *   *

「お父さんに『モカ』、行ってくるよー」
「おじさん、猫ちゃん、行ってきまーす」
「おうっ、行ってらっしゃーい」
「みゃ〜」

 次の日の朝――こなたたちが登校する時間。
 俺と仔猫は、玄関でいっしょに二人のことを見送っていた。
「良い天気だな」
「みゃあ〜」
 玄関に腰掛けて喉のあたりを撫でてやると、仔猫は気持ちよさそうな鳴き声を上げた。
 見上げてみれば、夜半頃までの雨が嘘のように空が晴れ渡っている。散歩をするのにも、
ちょうど良さそうな日和だ。
「さて、と」
 腰掛けたまま、下駄を履いて履き心地を整える。
「俺も、ちょいと行ってくるとしますかね」
 俺は立ち上がりながら、内ポケットから家の鍵を取り出した。
「みゃ」
「って、おい」
 鳴き声とともに、俺の頭の上にほんの少し重みがのしかかる。
124にゃにゃにゃ? (8/11):2008/03/07(金) 19:44:45 ID:Lin/3Ltf
 その重みの原因らしきものを取ろうと、頭に手を回すと――
「お前なぁ、俺は出掛けなきゃなんないんだぞ?」
 ほーら、やっぱりいたよ。ちまっこい仔猫が。
「ほれほれ、家でおとなしく留守番しとけー」
「みゃっ!」
「のわっ!」
 だが、かがんで床へと下ろした途端に仔猫はまた頭へと飛び乗っていた。
 も、もう少しでフローリングとキスするところだったぜ……
「お、お前なぁ」
 しかし、ここまでするってことは、もしかして『連れてけ』ってことなのか?
「わかったわかった。連れてってやるから、逃げたりするんじゃないぞ?」
「みゃあっ」
 ――近所に散歩するだけなのに、いらん心配はかけてくれるなよ。
 苦笑いしながら、俺は仔猫を頭に乗せたまま外へと出た。

 空気はまだ少し冷えているが、陽射しが暖かくて気持ちいい。
 本当ならこのままぼーっと散歩していてもいいんだが、今日はそうもいかなかったりする。
 お目当ての物を見つけようと電信柱や壁を見ていくものの、なかなかそれは見あたらない。
「さすがに、昨日の今日じゃまだ無いか」
 残念なような、ちょっとほっとしたような……そんな気持ちで、小さくため息をつく俺。
「ふぁ〜」
 頭の上の仔猫は、逃げるそぶりをみせるどころかあくびをするほどリラックスしている。
 まったく、無防備にも程があるっての。

 こうやって馴れてくれるのは嬉しいんだが、あくまでもこいつは『迷い猫』であることを
忘れちゃいけない。もしかしたらどこかの飼い猫かもしれないし、そうだとしたら飼い主
だって心配していることだろう。
 こなたやゆーちゃんも……たぶん、俺もきっと寂しがるというのはわかる。だけど、
やはり飼われていたのなら元いた場所に帰るべきだと思う。

 しかし、ある程度散歩してみてもそれらしき貼り紙が見つかることはなかった。
 これからしばらくは、この朝の散歩が日課になりそうだ。

「もうしばらくは、お前もウチの子のままか」
「みゃあ」
 家に入る前、頭から離して抱き寄せると安心したようにすり寄ってくる仔猫。
 陽射しのせいか、黒いはずの毛並みがほんの少し青がかったものに見えた。
 
「ほいっ、昼メシできたぞー」
「みゃっ」
「さてと、俺も昼飯にするかね」

 日曜や休日以外は、一人で静かな昼飯。だけど、今日は仔猫がいたせいがほんのちょっと賑やかだった。
 用意したのは、冷ましたご飯とかつお節を混ぜた『ねこまんま』。キャットフードは
好きじゃないのか全然食べなかったけど、こっちは量が少ないながらもちゃんと食べてくれた。

「ほらほら、この子が昨日来たお客さんだよ」
「わあっ、ちゃっちゃくてかわいいね!」
「まだ生まれたばかりなのでしょうか?」
「まるでこなたみたいね。ちんまりとしてて、のんびりしてて」
「そっ、それって喜んでいいんだかフクザツだなぁ」

 土曜ってこともあってか、午後にはこなたのクラスメイトがやってきた。
 みんな楽しそうに仔猫のことをかまってあげて、仔猫も楽しそうにみんなと遊んでいた。
 もう少しで卒業という時期だけど、こうやって変わらず仲良しなのはいいことだ。
125にゃにゃにゃ? (9/11):2008/03/07(金) 19:45:44 ID:Lin/3Ltf
 
「みゃぁ〜」
「お、おおっ! ねっ、猫がっ、猫が触らせてくれてるっス!」
「よかったね、田村さんっ」
「……とっても人なつっこくて、いい子」

 よっぽど仔猫が来たのが嬉しかったのか、ゆーちゃんもクラスメイトの二人を連れてきた。
 田村さんのほうはどうも動物に好かれないタイプらしいのだが、仔猫はまったくお構いなし
という感じで田村さんの手にじゃれついていた。
 抱き上げてたときは感極まって涙目になっていたけど、そんなに嬉しかったのかね。

「くー……」
「すー……」
「みゃ〜……」
「おーい、そろそろ夕飯の用意するんだけど……って、おいおい、実に仲が良いことで」

 夕方頃、居間を覗くとこなたとゆーちゃん、それに仔猫が川の字になって寝ていた。
 きっと遊び疲れたんだろうけど、それにしてもみんなして仲が良いことで。
 結局、夕飯はいつ起きても食べられるようなものを用意しておくことにした。

 とまあ、仔猫に振り回されっぱなしな俺たちの一日。
 エロゲの続きをするヒマもなかったし、むしろこいつに振り回されてる時間のほうが
長かったかもしれない。

 ……えっ? 原稿? ナニソレ、食べられるの?

「酒も持ってきたし、つまみも持ってきたし……よし、これでいいな」
 そんなこんなで、俺としては珍しくほとんどゲームやワープロを立ち上げることなく
夜更けを迎えた。
「みゃ?」
 昨日はこなた・ゆーちゃんと一緒に寝ていた仔猫だが、今日は俺の部屋で就寝することに。
「あっ、こらこら。猫はスルメを食べたらダメだぞ」
 その仔猫は、布団の上で虎視眈々と畳の上に置いておいたスルメ入りの皿を狙っていた。
 昨日の晩にネットで調べてみたんだが、海の物なら大丈夫と思っていたらいろいろと
ダメなものもあるらしい。魚だって、生では与えてはいけなかったり骨をしっかりと
取り除いたりしないとダメだということが書いてあった。
「お前のは別に用意してるから、もうちょって待ってろな」
「みゃ〜……」
 待てないとばかりに鳴いて伏せる仔猫だが、それ以上はスルメを追いかけることなくおとなしくしていた。
「よいせっと」
 部屋の灯りを消して、枕元の灯りを点けようと手を伸ばす。
 しかし、俺は途中で手を止めて窓から空を見上げた。
「……今日は、いらないか」
 空に浮かんでいるのは、昨日の雨雲とは正反対に明るく輝いた半月。
 優しい明かりが、暗いはずのこの部屋の中をほのかに照らしている。
 俺はそのまま布団に座って、枕の横に置いておいた猫用のおやつを手にした。
「ほれ、お前のおやつはコレだぞー」
 袋を開けると、中から出てきたのは小さなカニかま。ちゃんと、猫用に成分を調整して
作られたものらしい。
 目の前に差し出すと、仔猫はカニかまをぱくんと口にした……が、一度には食べきず、
畳の上に下ろしてからちまちまと食べていった。
「んじゃ、俺もいただきますか」
 そう言いつつ、俺もお銚子からお猪口にお酒を注いで、ちびっと飲み降す。
 ほんのりとした辛さが、喉の奥へと流れていくのが心地良い。スルメの塩辛さも、この味によく似合うんだ。
「みゃあ」
126にゃにゃにゃ? (10/11):2008/03/07(金) 19:46:25 ID:Lin/3Ltf
「ん、まだ欲しいのか? あんまり食べすぎるなよ」
 催促の声に、俺はまた袋の中からカニかまをちょいとつまんで仔猫に食べさせてやった。
「"仔猫"、か」
 一つ呟いて、お猪口の中に残っていたお酒を飲み干す。
「そろそろ、そう呼ぶのはお前さんに失礼かもしれないな」
 そして、苦笑しながらまたお銚子を手にした。
 こなたは昨日からずっと名前を――そのどれもがどっかで聞いたような名前にせよ――
考えているし、ゆーちゃんも今日は試行錯誤しながら仔猫の名前を考えていた。
 そうなると、俺だけ"仔猫"呼ばわりなのはどうかと思う。一時だけかもしれない仲とはいえ、
ちゃんと名前を呼ばないっていうのは相手に対して失礼にあたる。例え、それが小さな仔猫だとしてもだ。
「名前、かぁ」
 酒をお猪口に注ぎながら、思案に暮れる。
 名付けは俺の職業にとって当たり前のことだが、こうやって猫に対しての名付けというのは
初めてだし、フィクションのキャラたちとはまた気持ちが違う。
 考えているうちに、ぼんやりと浮かんでくる名前はあるんだが……
「さすがに、この名前だけはな」
 打ち消すように首を振りながら苦笑するが、代わる名前はなかなか浮かんでこない。
 こなたのようにいろんな猫キャラの名前を思い浮かべてみても、そのどれもがしっくりとこなかった。
「どうしたもんか」
 独りごちながら、満足そうに舌をぺろりと舐める仔猫を見やる。
 小さいけど、いつもとことこと追いかけてくる仔猫の姿。
 出会ったときから、俺にときどき見せるその仕草。
 その姿が重なってしまうのは、気のせいなのかもしれないけど。
「あいつにも、それにお前にも失礼だもんな」
 脳裏に浮かぶ面影を思い出しながら、お酒をちびりと飲む。
 喉の奥を酒の辛さが流れていくけど、想いまでは流れていってくれない。
 そういえば、ここでこうやって一緒に酒を呑んだこともあったな……
「……――た」
 思わず、その名前が口から漏れる。
 ほんの小さなつぶやきだったけど、
「みゃあ」
 仔猫はひとつ鳴いて、俺の手にすり寄ってきた。
「おいおい、ただ言ってみただけなんだぞ」
 こうして懐いてくれるのは嬉しいんだが、さすがにその名前をつけるわけにはいかん。
 まあ、まだまだ時間はあるんだ。今夜はじっくり考えてみるとしよう。
 月明かりを浴びる仔猫を見ながら、俺は残っていた酒を喉へと流し込んだ。

 *   *   *

 けだるさが、体全体にのし掛かってくる。
 重いまぶたを開けると、そこは掛け布団の上。
「……んっ」
 頭の中に重り入ったような感じがして、覚めかけの意識もはっきりしてくれない。
「あのまま寝ちまったのか……」
 言うことを聞かない体をどうにか起こして、頭を軽く振る。
 空を見上げてみれば、まだ半月が夜空に浮かんだまま。
 月は呑んでいた時からかなり傾いているとはいえ、相変わらず部屋を淡く照らしていた。
 しみるような寒さも、じわじわと体の芯へとしみていく。
 ――酔ったまま寝ると眠りが浅いともいうし、これじゃ起きて当たり前か。
「んじゃ、もう一度寝直すか」
 心の中で自嘲しながら、寝直そうと布団をめくる。
 明日はこなたたちも休みだし、あとはゆっくりと寝れ……ば……
 そう思っていた俺だったが、ある一点で視線が止まる。
127にゃにゃにゃ? (10/11):2008/03/07(金) 19:47:57 ID:Lin/3Ltf
 敷き布団で眠っているのは、小さい影。
 確かに、黒い耳と尻尾をつけた小さな影。
「えーっと……」
 眠気と酔いで視覚がおかしくなったのかと、思わず自分の頬をつねってみる。
「……痛い」
 だけど、頬に走る痛みを感じても目の前の影は変わらない。
 頬を叩いてみても、引っ掻いてみても全然変わらない
 それどころか、目がだんだん慣れてその姿がはっきりと見えていく。

 頭の上にちょこんと乗っかった、黒い猫耳。
 それが埋もれるように、敷き布団の上に流れる長く青い髪。
 そして、月明かりに照らされた白い裸体に……あの、あどけない寝顔。

「く〜……」

 ちんまりサイズのまま、寝息を立てる仔猫……じゃなくて"彼女"。

「ま……マジ?」

 それは、十八年前に逝ってしまったはずの妻――かなただった。
128 ◆cj23Vc.0u. :2008/03/07(金) 19:49:15 ID:Lin/3Ltf
というわけで「にゃにゃにゃ? その1」を投下させていただきました。

元ネタはキャラ個別板のかなたさんスレで「猫として戻ってきたかなたさん」
というネタが数スレ前に振られて、以来書く人出て来ないかなと思っていたのですが、
以来投下されることはなく、最近読んだ「みかん絵日記」「南くんの恋人」という漫画で
up@t 火を点けられ、こういう形で書いてみることにしました。

相変わらずかなたさんばっかりなSSですが、お楽しみいただけましたら幸いです。
129名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 19:50:57 ID:Lin/3Ltf
訂正
>up@t
は誤入力ですので、お気になさらず。
あと、2個目の(10/11)は(11/11)の謝りです。
130名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 20:00:04 ID:VQQ5XQUl
>>128

かにゃたキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
131名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 20:05:06 ID:IvuM9xdG
>>128
素敵な文章だと思っていたら、あなたでしたか!
一瞬で作中に引き込んでくれる文章に胸が高鳴ります!

GJ!
132名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 20:12:21 ID:PUtLPEB7
>>128
素朴で、どことなく物悲しさの漂う文章が素敵です。
ここにきて新シリーズが始まるとは。
133名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 20:17:47 ID:F99qNlkl
>>128
ハァハァ
続きを、続きをプリーズ !!
134131:2008/03/07(金) 20:20:17 ID:IvuM9xdG
これを思い出したので貼っておく。
ttp://www.youtube.com/watch?v=CTlW2Cyq_bI
135名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 20:21:11 ID:V6p776w4
>>128
そのネタは覚えてるぞー。
多分そうじゃないかなーって思いながら読んでましたよん。

でで、最後の所。
かなたさん、子猫サイズの猫耳付きですか!!
続きを全裸待機中!!
136名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 20:33:32 ID:cOfSiEkN
かにゃたさんだかにゃたさんだ!今後の展開がどうなるか楽しみです。GJ!!
137名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 20:36:56 ID:ZYCdVTCB
これは…続きが気になってしょうがないではないか!

全力で楽しみにしております
138名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 20:37:55 ID:y8jTu2Zk
かにゃたさーん!!!
続きが wktkしすぎます!!!!
にゃんにゃんかなたさんに 期待大!!!!
139名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 20:55:34 ID:HQNj21mc
なんというソレナンテ=エ=ロゲ
死んだはずの可愛い妻が猫に猫に猫に!!!!!
新キャラかにゃたさんに大いに大いに大いに期待だ!!
140名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 21:12:35 ID:kE/r5bJ0
>>128
ふ、ふはははははははー!! かーにゃーたーさぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!


……失礼。
ヘッダーで貴方とは分かっておりましたし、猫の性格から恐らくそうだろうとは思っておりましたが、
それでもなお萌え狂わされてしまいました。ああもう。
新シリーズ始動おめでとうございます、次回も楽しみにお待ちしております。


といいますか。
「現時点では」非エロなら、お話が進めばかにゃたさんとそうじろうさんの夜の営みも期待しt(みゃー!
141名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 21:44:48 ID:ve3s9j4V
>>128
やはりあなたでしたかっ
いや、もう本当にGJ
続きを楽しみに、またーり待っております
14236-273:2008/03/07(金) 21:51:49 ID:BOyCcjr/
職人さんの後で、まことに恐れ多いのですが、自作を投下します。

・「木枯らし一号」の続き
・TS注意。苦手な人はスルーしてください。
・つかさ&男みゆき
・非エロ
143岐路:2008/03/07(金) 21:52:35 ID:BOyCcjr/
 家に帰って、机の上に置いた携帯電話をじっと見る。
 見てるからってメールが来るわけないし、そもそも、私のメールアドレスは教えていないから、こっちから連絡してくれ、ってことだよね。
 でも、本当にあの時は、気が動転した。正直言って、あれからどうやって帰ってきたのかも、良く覚えていない。
 と、ともかく、ここはメールを送ってみる・・・べきだよね? あれ、誰に聞いているんだろう、私。
 とりあえず、携帯を開いて、メール送信の準備をする。
「で、でも、どんな内容のを送ればいいのかなあ。うう、私にはこんなの初めてだから分かんないよー」
 お姉ちゃんに聞けばいいのかな。でも、お姉ちゃんも、常日頃から彼氏が欲しいみたいなことを言っているから、聞いても無駄かなあ。
「うーん・・・。と、とりあえず、世間話からかな? 明日は、文化祭だし・・・」
 その後、十分くらい、携帯と睨めっこして、やっと、本文を書き終わった。
『今日は、色々とありがとう。高良君と話せて、楽しかったよ。
 明日は、文化祭だから、頑張ろうね』
 読み返してみると、実に白々しい。ああ、私って文才、ないんだなあ。
 でも、高良君なら、笑って許してくれそう。でも、これは、私の甘えかな? 兎にも角にも、送ってみないと分からないよね。
 私は、意を決して、メールを送信した。


―――


「つかさー。ごはんよー」
「あ、はーい」
 お母さんに返事をしてから、時計を見ると、もう六時半だった。本当に、時間が経つのって早いなあ。
 そのまま、食べに行こうと思ったけど、何だか気になったので、携帯を手に取ってから、居間に行くことにした。
 居間に行くと、もう、夕食が並べられていた。・・・そういえば、今日は、夕食の手伝いをしていない。
「お、お母さん、ゴメン! 今日は、手伝えなかった」
「あら、いいのよ。いつも、手伝わせるのも悪いしね」
 お母さんはそう言って、ニコニコと笑ったけど、やっぱり、何だか悪い。
 やりきれない、モヤモヤした感じが私の頭を駆け巡ったけど、いざ食卓に着けば、そんなのも吹っ飛んだ。
「いただきまーす」
 家族六人の合唱で、今日の夕食が始まる。
 今日は、いのりお姉ちゃんも、まつりお姉ちゃんもいる。かがみお姉ちゃんも、いつの間にか帰ってきていた。
 いつもどおりの賑やかな夕食の時間が続く。
 夕食が終わったら、家族全員でテレビを見る。みんな、クイズ番組に釘付けだった。
 私はというと、さっき送ったメールの返信が気になって気になって、仕方がなかった。
 携帯電話を開け閉めしては、溜息をつく。まだかな、まだかな・・・。ちらりと時計を見ると、午後七時半を回っていた。
「さっきから、何してんの?」
「ふえぇっ!」
 お姉ちゃんに急に話しかけられて、変に痙攣してしまった。うう、みんな、見てる・・・。
「め、メールの返信が来ないかなあ〜って・・・。気にならない?」
「まあ、確かに気になるけど・・・。でも、あんた、家族以外にメルアドを教えている人っていたっけ?」
「あ〜、もしかして彼氏かぁ〜?」
 かがみお姉ちゃんの後に、すかさず、まつりお姉ちゃんがニヤニヤしながら聞いてきた。・・・意地悪。
 で、でも、何て答えればいいんだろう? 男の子とメールしてるなんて言ったら、誤解されそうだし・・・。
 心なしか、お父さんの醸し出す雰囲気が違うような気がするし・・・。
「え、ええっとお・・・。友達、だよ?」
 100%怪しい、しどろもどろな答えだったけど、
「ん、そっか。まあ、私が知らない友達がいてもおかしくないわよね」
 と、かがみお姉ちゃんは納得したようだった。
 良かった。思わず、溜息が出る。
 でも、何でかがみお姉ちゃんは目をつぶって、腕を組んでいるんだろう。しかも、「まさか・・・先を越されて・・・?」と、呟いている。一体、何だろう?
 それに、お父さんの目が、一瞬、光ったような・・・。それにそれに、何だか、空気がおかしいような・・・。
 これって・・・私のせい?
 空気を察して、自己嫌悪する。ああ、私って本当にダメな人だなあ・・・。
144岐路:2008/03/07(金) 21:53:30 ID:BOyCcjr/
―――


 結局、返信が来たのは、夜八時近くのことだった。
『返信が遅れて申し訳ありません。東京という自宅の場所の都合上、糟日部からはどうしても時間がかかる上に、夕食作りなど、ばたばたと忙しく、返信が遅れてしまいました。
 いえ、何だか、弁解がましくて、ダメダメですね。お気に障らなければ良いのですが・・・。
 ともかく、メール、ありがとうございます。僕も、今日、つかささんと話せて楽しかったです。
 また、今度、こういった機会があれば、と思います。そのときは、またよろしくお願いします。
 そして、明日は、いよいよ、学園祭(桜藤祭)ですね。僕も、これまで奔走してまいりましたので、つかささんを始めとして、全校生徒全員に楽しめていただけたらと思います。
 それでは、失礼致します』
 うーん、実に高良君らしいメールだね。読んでるこっちが気後れしそう・・・。
 それにしても、全校生徒全員に気を配るなんて、私には出来そうもない。本当に、高良君は凄いなあ。私なんか、足下にも及ばない。
 そんな高良君が、私なんかとメールしてくれるなんて・・・。これって、よくよく考えてみると凄いことなのかなあ? もしかして、夢?
 そ、そういえば、これってまた、返信したほうがいいのかな? でも、するなら、どんな風に返そうかな。
 そんな風に考えながら、また、携帯電話と睨めっこするのが、十分近く続いた。
『返信、ありがとう。
 返信が遅れたことだけど、全然気にしてないから、気にする必要はないよ?
 それと、お姉ちゃんとも話してたけど、明日の学園祭はみんな、楽しみにしてるよ。
 私も楽しみにしているし、きっと、高良君の願いは通じると思うよ。
 それじゃあ、お休み』
 ・・・やっぱり、私は文才がない。伝えたいことをうまく伝えられないなあ・・・。
 でも、ありのままの自分を伝えたほうが良いよね。うん、きっとそうだよ。
 私はそんな想いを胸に抱きつつ、メールを送信した。



―――



 翌日。いよいよ、桜藤祭当日となった。
 結局、高良君とはあれから何回もメールを交換し合って、とても楽しかった。
 今日は、楽しい日になるといいな。これまで、色々準備してきたし、きっと、今日はいい日になる。・・・気がする。
 というわけで、今は体育館で開会式の開会を待っている状態。実は、今朝、寝坊で遅刻して色々とあったんだけど、それはまた別のお話。
「テスト、テスト。
 えー、では、只今より桜藤祭を開会いたします。まず、初めに、実行委員長より開会宣言を行います」
 司会の人の挨拶で桜藤祭が始まった。実行委員長らしい人が壇上に立ち、挨拶を始める。
 いよいよ、学園祭が始まった。そう思うと、何だか興奮と緊張が入り混じった複雑な気分になった。
145岐路:2008/03/07(金) 21:54:06 ID:BOyCcjr/
―――


 それから時間が経って、時刻は午前十一時半。体育館でのオープニングセレモニーが終わって、自由時間となった。
 私は約束どおり、こなちゃんとお姉ちゃんと一緒に校内を回ることになる。
「いやー、オープニングもなかなかに面白かったねー」
「そうね。
 でも、三番目のお笑いのときに、ステージに上がった瞬間、警備員に取り押さえられた人がいたでしょ? あれ、結局、何なの?」
「あはは、あの人、かっこよかったね〜」
「・・・お前は、いつも見当違いなことを言うな」
 苦い顔をしてお姉ちゃんが言った。活字だけだと、嫌な人に思われるかもしれないけど、決して、お姉ちゃんはそんな人ではない。
 それもまた、会話を楽しむ為の潤滑油だったりする。
「あ、あはは・・・」
「まあまあ。それがつかさの長所でもあり短所でもあると思うわけですよ」
 こなちゃんがすかさずフォローを入れてくれた。こなちゃんは、見た目によらず、観察眼がとても鋭い。だから、状況に応じて、すぐ言葉が出せる。
 私も見習いたいね。私、口下手だし、人見知りするし。本当に、二人を見てると、凄いなあ、と尊敬する。
「まあ、そうね。つかさとはいつも一緒だから、良く分かってるし」
「と、ともかく。二人とも、は、早く行こうよ! ・・・ね?」
 何となくばつが悪くなった私は、移動を促す。
「では、辺境の地へ参るぞ、皆の衆〜」
「ごめん、だるいからつっこまなくていいか?」
 口先では、そう言っているけど、お姉ちゃんの心は躍っているに違いない。



―――


 それからいろいろなところを回って、いつの間にやら午後二時になった。
 どこも楽しかった。焼きそば店だったり、お化け屋敷だったり、糟日部市の名産品である桐箪笥の考察だったり・・・。
 お昼は、カレー屋さんでメンチカツカレーを食べた。それにしても、あのときの店員さんは、やたら張り切ってたなあ。
 ともかく、言葉で言い表せないけど、本当に楽しい気分だった。
「だいぶ回ったわね〜」
 たこ焼きをほおばりながら、お姉ちゃんが言った。それはいいんだけど、ダイエットはいいのかな?
 でも、言うと悪いので、
「そだねー」
 と、返した。こなちゃんは、今川焼きをほおばっている。かくいう私も、たい焼きを食べている。
 そういえば、高良君はどうしているのかな・・・。
『生徒の皆さんにお知らせします。まもなく、自由時間が終了します。
 午後二時十五分までに、全校生徒は体育館に集合して下さい。繰り返します。・・・』
「おおっと、そろそろタイムアップときましたよ、皆さん」
 放送に真っ先に反応したのは、こなちゃんだった。触角の髪の毛がしきりに揺れている。
 いつの間にか、今川焼きも食べ終わっていたようだった。
「じゃあ、そろそろ戻りましょうか」
 お姉ちゃんの一言で私たちは、体育館へ戻ることにする。今は二階にいるので、階段を経由して体育館へ向かう。
「ゲームだと、階段とかで転んで他の人とぶつかって、運命の出会い、なんてのがあるよね〜」
 階段を下りながら、こなちゃんがそんな事を言った。お姉ちゃんはすぐ苦い顔をして、
「あのなあ。そんなの、ゲームの世界だけだろ」
「いやいや、分かんないよ? この前、何かの本に「世界のほとんどは偶然によって成り立っている」って書いてあったんだよ?
 なら、偶然が起こってもおかしくないよね?」
「はいはい、わかったわかった」
 そのときだった。後ろから叫び声がしたのは。
「危なーーーーいっ!!!」
 その声が聞こえたときはもう遅かった。
 突然のことに振り返った私の目の前に襲い掛かってきたのは、上から落ちてきた一般生徒だった。
146岐路:2008/03/07(金) 21:55:07 ID:BOyCcjr/
―――


 目を開ける。するとそこには、白い天井があった。
 私、どうしたんだろう・・・? ここはどこだろう・・・?
 事情がつかめないまま、まずは頭の中を整理する。
 ・・・そうだ。確か、階段から落っこちてきた人にぶつかっちゃって、気絶しちゃったんだっけ。
 そうなると、ここは保健室のベッド、かな? でも、保健室にいるってことは、さほどひどい怪我でもなかったみたい。
 ゆっくりと半身だけ起き上がり、腕や首を動かす。・・・うん、なんともない。普通に動く。
 とりあえず、先生を呼ぼう。そう思った私は、ベッドから起き上がって、ベッドを囲っていたカーテンを開ける。
「・・・あら? 起きたのですか?」
 机で何かを書いていた、保健の天原先生が振り返る。
「は、はい。あ、あの・・・私、な、何だか、事情がつかめなくて・・・」
「ああ、そうですねえ。あの後、すぐ気絶したと聞きましたから・・・。
 でも、安心してください。奇跡的に軽度の脳震盪だけで済んでいますから、もう、何の心配も要りませんよ。
 ああ、そうそう。あなたは、階段を踏み外した一年生とぶつかって、気絶してしまったそうですよ。でも、先ほど言いましたように、軽い脳震盪だけですから。かがみさんとこなたさんとみゆきさんが、すぐに運んでくれましたしね。
 それに、相手の生徒も奇跡的に軽傷で済みました。本当に、奇跡としか言いようがありませんが、まあ、不幸中の幸いといったところですかね」
 そう言って、天原先生は口に手を当て、ふふふと笑った。
「え、た、高良君も来たんですか?」
 それを聞くと、天原先生はキョトンとした顔になって、
「え? ええ。何でも、悲鳴が聞こえてすぐ駆けつけてきてくれたみたいですよ。
 事故の発生当時は、みんな、浮き足立っていたようですから、高良君がその場を収拾して、冷静に判断して、指示を出してくれたようです」
「あ、そ、そうだったんですか」
 何だか悪いことしちゃったなあ。本当に、高良君には借りをつくってばかり。いつか返せるかな・・・。
「あ、そういえば、今は何時ですか?」
「今ですか? えーと、午後三時十八分ですね。丁度、さっき、一日目の終了式が終了したところです。
 そろそろ、皆さんがお見舞いに来てくださると思いますよ。あなたを運んできたとき、そう言ってましたから」
「あ、そ、そうですか。ありがとうございます」
 私はそう言って、頭を下げる。
「ふふ、私に感謝の念を示す必要はありませんよ。
 さて、それまで残っていますか? それとも、もう帰りますか?
 帰るなら、私の方から、皆さんに説明しますけど」
「あ、だ、大丈夫です。
 そんなに気を遣わせちゃ悪いし、みんなにも悪いと思います」
 だって、これだけ心配させておいて、勝手に帰っちゃ、何だか悪い。
 それに、ちゃんとみんなに「ありがとう」と言っておきたかった。
「あら、そうね。ふふふ」
 二度目の微笑を天原先生が浮かべていると、保健室のドアがガラッと開き、
「つかさ(さん)!」
 お姉ちゃん、こなちゃん、高良君の三人が一斉に声をあげて、入ってきた。
「あらあら、おそろいね」
 天原先生がそう言って、また笑う。そして、自分はお邪魔虫と言わんばかりに、私のそばから離れた。
「つかさ、大丈夫なの?」
 真っ先に声をかけてくれたのは、お姉ちゃんだった。大分、顔が青ざめている。
「あ、うん。もう大丈夫だよー。
 それより、相手の人の方は大丈夫なの?」
「あの、そのことなのですが」
 高良君が切り出す。
「相手は、越谷さんというお方なのですが、どうも前方不注意で転落されたようでして。
 ですが、幸いにも、軽傷で済んでおられます。今は、ショックで自宅にお帰りになられましたが、明日にでもお詫びしたいと申しております」
「あ、そうなの? でも、相手の人も無事でよかった」
 本当に、心の底から思ったことだった。だって、私だけ助かってもうれしくないもの。
「いやー、でも、本当につかさも無事でよかったよ。
 さすがに私も気が動転しちゃってさ・・・。どうしていいか分からなかったよ。それに、かがみんの慌てようもまた凄くてさー」
「こ、こら、こなた! 余計なこと言わないの!
 ・・・まあ、私もあんなこと初めてだからさ。本当に、みゆきが来なかったらどうなることかと思ったわよ」
「そうそう。委員長が来てくれなかったら、どうなっていたことか!」
 お姉ちゃんの発言に、こなちゃんも頷きながら賛同した。
147岐路:2008/03/07(金) 21:55:45 ID:BOyCcjr/
 すると、高良君は照れそうに後頭部に手をやり、
「い、いえ。僕は、ただ、委員長としての責務を果たしただけですから。いえ、委員長である前に人として当然のことですよ」
「そ、そんなことないよ? 何も、そんなに謙遜しなくてもいいんだよ?」
 あまりの卑下っぷりに、私は驚いたけど、
「どうもすみません」
 高良君は笑ってそう言っただけだった。
 そして、
「では、僕は実行委員の仕事があるので、先に失礼します。
 つかささんが無事で何よりでした」
「あ、じゃ、委員長、バイバーイ」
「じゃあ、またね、みゆき」
「あ、ま、また明日ね、高良君・・・」
 三者三様に別れの挨拶を送った。高良君は笑顔で返しながら、保健室を出て行く。
「それじゃあ、私たちも帰ろっか」
「そうだね。何だか、疲れたよ・・・」
「あ、私もー。何だか、色々あって疲れちゃった・・・」
 本当に疲れた。でも、学園祭は楽しかった。これで、プラマイゼロだね。
 私たちは、天原先生に礼を言うと、保健室を出た。


―――


 それから、二日目の桜藤祭を経て、事故から三日経った火曜日のこと。ちなみに、月曜日は振り替え休日で休みだった。
 登校した私に、越谷さんが真っ先に謝ってくれた。まあ、私自身、あまり気にしてなかったし、相手があまりにも真剣に謝ってくれたから、すぐに許した。
 その後は、何事もない生活が始まり、また、終わろうとしていた。
「でも、本当にあの時はどうなることかと思ったよ」
 放課後、帰る用意をしながら、こなちゃんがそんな事を言った。
「そうなの?」
「そうそう。つかさも、相手の・・・越谷さんだっけ? まあ、その越谷さんも気絶しちゃってさあ。
 一瞬、死んだかと思ったよ」
「そんな・・・大げさだよ〜」
「いや、本当だよ? かがみんも、もんのすごくうろたえちゃってさ。
 本当に、血の気が引いたね。まあ、無事で何よりだけどさ。・・・本当に大丈夫?」
 こなちゃんは、本当に心配そうな顔だった。少なくとも、今まで見たことがない。
「うん、大丈夫だよ。別に、何もないし・・・」
 私は、破顔一笑の顔で言った。
 すると、こなちゃんは顔を緩め、
「そっかそっか。まあ、でも、少しけちがついたけど、桜藤祭は楽しかったね〜」
「そだね〜。本当に色々と。こうしてみんなと過ごせる何でもない日々が、幸せなのかなあって思うよ〜」
「つかさはロマンチストだね・・・。まあ、そこが長所なんだけれども」
「あはは。
 そういえば、お姉ちゃん、遅いね?」
 もう、放課後になってから、十分くらい経っている。今までなら、いつもはすぐ、お姉ちゃんが来ていたはずなんだけど・・・。
「そういえば、そうだね。何かあったかな? 私は何も聞いていないんだけどね」
「あ、じゃあ、捜してくるね」
「うん、行ってら〜」
 こなちゃんの声を背中に受けながら、私は教室を出て、お姉ちゃんを捜す。
「どこかな、どこかな・・・」
 まずは、隣のクラス、つまりはお姉ちゃんの所属クラスを捜してみる。でも、ほとんど人がいなかった。
 残っていた人に聞いても、「どこかへ出かけていった」という答えしか返ってこない。一体、どうしたんだろう?
 それから、くまなく校内を捜すけど、なかなか見つからない。だんだん、不安も高まってくる。
 捜し始めて十五分。私は、やっとお姉ちゃんを見つけることに成功した。
 でも、後々、この出来事は一生後悔することになった。思えば、私が捜すなんて言ったから、こんなことになったのかもしれない。
 これが、人生の分岐点ってことなのかな・・・。


―――
148岐路:2008/03/07(金) 21:56:07 ID:BOyCcjr/
 三階廊下。傾きかけた太陽の光が、窓から差し込み、反射している。
 そして、その光の中に、やっとお姉ちゃんを見つけた。でも、誰かがそばにいる。誰だろう?
 その誰かを見て、私はびっくりした。いや、びっくりしたなんて言葉で片付けることが出来ないような気持ちになった。
 何故なら、それは他ならぬ高良君だったからだった。
「いやー、それにしても参るわ。急に、明日の集会の資料を頼む、なんて言われてもねえ」
「仕方ありませんよ。羽生先生も、お忙しそうでしたし」
「まあ、でも、みゆきが手伝ってくれて助かったわ。私一人では、どうにもできそうになかったから」
「いえいえ。人として当然のことですよ」
「そんなことないわよ。ああ、本当に、みゆきみたいな人たちばっかりだったら、助かるのにね」
「ふふ、そうかもしれませんね。でも、僕だって万能なわけではありませんよ」
「そりゃあね。人間、弱点の一つくらいもってなきゃ、おかしいわよ」
「他人の弱点をその人自身の口から知ることが出来たら、それはその人と立派な信頼関係が築けた証拠になるでしょうね」
「あー、なるほどね。何をもって親友と定義すべきか、って時々思うけど、そういうのもありか」
「人の心は覗けませんからね。そこが、人間関係の難しさ、といったところでしょうか」
 集会の資料を持ちながら、二人は楽しく喋っていた。ずっと会話が途切れることがない。笑いも絶えない。
 傍目から見ると、まるで恋人のように見えた。
 そうだよね。二人とも、頭がいいし、学級委員長だし、きっと話も合うんだよね。うん、お似合いだよ。
 ああ、何だか全てが馬鹿らしい。様々な考えが頭の中をぐるぐると回った後、私は静かに、気付かれないように、三階の廊下から逃げた。
 何だか、無我夢中だった。追いかけられるわけでもないのに、走った。自分が涙ぐんでいるのもはっきりと分かった。あれ、私、何で泣いているんだろう? 私は一体、何を期待していたんだろう?
 ああ・・・私の馬鹿、馬鹿!


―――



 気がつけば、私は家に帰って、机に突っ伏していた。こなちゃんにもお姉ちゃんにも何も告げずに。
 ああ・・・一体、どうすればいいんだろう。
『他人の弱点をその人自身の口から知ることが出来たら、それはその人と立派な信頼関係が築けた証拠になるでしょうね』
『あー、なるほどね。何をもって親友と定義すべきか、って時々思うけど、そういうのもありか』
 目をつぶると、嫌でも、あの二人の仲のよさそうな情景が浮かぶ。
 そして、
『僕は、ただ、委員長としての責務を果たしただけですから。いえ、委員長である前に人として当然のことですよ』
 保健室で言われた、その一言も思い出した。
 ああ、そうか。高良君は、自分の使命だとそう信じてやまなかっただけだったんだ。私が変なことを期待したばかりに・・・。ごめんね、ごめんね・・・。
 その瞬間、いつか読んだ本の一文を思い出す。
「ああ・・・。これが失恋ってものなんだあ・・・」
 私は独り言ちると、毛布もかけずに、そのまま眠りこけた。
149名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 21:56:25 ID:nh6Ynufe
【中国】スター三人、無修正写真流出「セックス?スキャンダル」

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[?思慧]-37P-
http://idol2.jpger.info/page97.php?tid=13/2008-2-9/63187_2.shtml
http://idol2.jpger.info/page97.php?tid=13/2008-2-9/63187_1.shtml
http://idol2.jpger.info/page97.php?tid=/13/2008-2-9/63187.shtml

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[梁雨恩]-40P-
http://idol2.jpger.info/page97.php?tid=13/2008-2-9/63186_2.shtml

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[??思]-10P-
http://idol2.jpger.info/page97.php?tid=/13/2008-2-9/63185.shtml
15036-273:2008/03/07(金) 21:59:43 ID:BOyCcjr/
以上です。
なるべく早く終わらせたいと思っているのですが、どうもグダグダに長くなってしまい・・・申し訳ありません。
それに、書いている最中で、つかさが携帯を買ってもらったのって、二年生じゃなかったかと気付いてしまい、慌てたり。
ですので、携帯の点については、パラレルワールドということで、どうかご容赦願います。
その上、なんだかこなたさんが空気のような感じがしてなりません。これが終わったら、こなかがでも書いてみようかと思ってます。あくまでも、希望的観測ですが。

でも、やっと終わりが見えてきました。恐らく、次回でこのシリーズも終わりになると思います。
それでは。
151名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 22:13:55 ID:ZYCdVTCB
それくらいの矛盾なんて全然気にしないんだぜ!
恋するつかさも実にいいもんだな、GJ
15220-612 ◆xdkSnUtymI :2008/03/07(金) 22:24:28 ID:r3lcoRD3
36-273さんの投下からあまり時間がたっていませんがよろしいでしょうか?

37スレ目の141と前スレの144でお話しました、ナイトウィザードとのクロスSSの第1話が出来上がりましたので。
153名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 22:25:58 ID:bSqCJ1t4
恋する乙女はすばらしいな
最後の引きが次に期待してしまう
続編まってます^^
154名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 22:28:09 ID:UuImFCqp
>>150
GJ!これは素晴らしい、少女漫画。
青春してますね〜。
15520-612 ◆xdkSnUtymI :2008/03/07(金) 22:30:11 ID:r3lcoRD3
では投下いたします。

・7レス分です
・オリジナル設定です。
・死の描写あり。
・柊蓮司はまだ登場しません。
・「灼眼のシャナ」とかぶる描写をわざと入れてあります。
『きのう』と同じ『きょう』が過ぎ、『きょう』と同じ『あした』がくる。
世界はくりかえし時をきざんでいき、たいして変わらない日々が続いているように見えた。

だが……

人々の知らないところで、世界は滅亡の危機と戦い続けていた!

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

闇祓う光明    − ナイトウィザード in らき☆すた −

第1話『幻影 〜 赤く照らされる鏡 〜』

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夕暮れの校舎の中庭で、セーラー服の少女が座り込んで泣いている。
学生服を血まみれにした少年を抱きかかえながら。

校門に書いてある学校の名は三岬中学校、ふたりは中学生である。

やがてふたりの周りには大勢の生徒が集まってきた。
何が起こったのかを知ろうとして。

誰かが言う、少年は屋上から落ちて負傷したのだと。
だが、この言葉を誰が言ったのかは、何年たってもわからなかった。
だれひとり、どこから聞こえた声なのかすら思い出すことができなかったのだ。

だがその言葉を疑うものはいなかった。
なによりも、少年がかなりの重態であることが見て取れたからだ。

事態を理解した生徒の一人が職員室へと走り出す。

後に残った生徒はふたたび目をふたりに転じる。
そのせいであろう、だれも気がつかなかったのである。
一人の少女が非常階段を下りてくることに。

そしてその少女が一抱えもあるほどの大きな本を抱えていたことに。

大勢の生徒が見つめる中、何も言えずにすすり上げるように泣く少女。
少年はそんな少女を見つめほほえみながら言う。

「……」

だがその言葉に力はなく、聞き取れたのは少女だけであった。
少女は首を大きく横にふって、その言葉の中の何かを否定する。
少年は困り果てたように笑うが、体中に感じる苦痛は隠せなかった。

「……」

少年がふたたび言葉を発する。

途切れ途切れに。

少年の言葉が途切れるたびに少女は力なくうなずく。
やがて少女は、少年を見つめてほほえんだ。

ほほえむ少女の顔を少年は、残された力の全てを使ってなでた。
少女は涙まみれでほほえみながら、少年のするままに任せた。
これが少年にできる最後のことであると理解して。
やがて、少年の腕が力なく落ちていく。
少女は少年の名を呼ぶが、少年は答えることしなかった。

この瞬間、血まみれの少年は15年の生涯を閉じた。

「いやあっ!」

多くの生徒が見つめる中庭に、少女の叫び声だけが響いた。



それから数週間の後、少女はひとり列車に乗っていた。
三岬中から幸手中へ転入することが決まったためだ。
理由は親元に戻るため。

少女はもともと幸手市の出身である。
とある理由から、親元を離れ三岬町で暮らしていたのだ。
少女が三岬町で暮らしていたのは約2年。
中学時代のほとんどを三岬町で過ごしていた。

幸手中から転入してきた当初は、友人も作らず、孤立気味であった。
だがやがて、徐々にクラスに打ち解けていくことになった。

転落事故で死んだ、あの少年のおかげで。

少年はクラスで人望も厚く、友人も大勢いた。
少年と係わるうちに、ひとり、またひとりと友人は増えていった。
無愛想で近寄りがたいオーラを発していた少女も、ほほえむことが多くなっていく。
すると少女自身に『友人になりたい』と話しかけてくるものが増えていった。

とはいえ、少女に『つきあってほしい』と声をかけてくるものはいなかった。

なぜなら、少年と少女はクラスの公認カップルと言われるほどに仲がよかったのだ。
そして、そんなふたりの仲に割って入ろうとするものは、誰もいなかった。

それゆえ少女の落ち込みは激しかった。
数日は学校を休むほどに。



少女が学校に出てくるようになっても、数日は誰も声をかけることができなかった。

だが、誰いうとなく少女を支えようとクラス中が動き出した。
少年とすごした日々を、無駄にしないでほしいと。
それから二週間が過ぎ、少女は心からの笑顔を取り戻すようになった。
そんな矢先の転校であった。

転校を指示したのは幸手小学校時代から通いなれた道場の師範。
もともと三岬中学への転校も師範の指示であった。

高校受験のこともあり、一度親元に帰ったほうがいい。
それが師範の判断であった。
事故の記憶が蘇りにくい場所にいた方がいいとの判断もあったのではないか。
少女は師範の指示の裏にある配慮を感じていた。

「戻ったら、また友達になってもらえるかなあ……」

少女は一人つぶやく。
乗り継ぎに乗り継ぎを重ね、少女は幸手の駅に着く。
軽い手荷物だけを持って改札口を出ると、中年男性が少女を待っていた。

「お帰り」

男性は少女を優しく見つめながら言った。
少女は男性に駆け寄ると、大きな声でほほえみながら言った。

「ただいま! お父さん!」

少女は父親に抱きつき、およそ2年ぶりになる父親との再開を喜んだ。
見ると、父親のそばにはふたりの従姉妹が、少女と父親の再開を喜んで涙していた。

「ゆい姉さん! ゆうちゃん! 来てくれたの?」

少女は満面の笑みでふたりを見つめる。
少女の目にも涙が浮かんでいた。

「あたりまえじゃない……」

ゆいが涙声で言う。
ゆうちゃんと呼ばれた少女は言葉が出ないらしい。
ただ少女に抱きついて泣きじゃくるだけだった。

「ゆたか、大丈夫?」

ゆいに声をかけられ、ゆたかはやっとの思いでほほえむ。
誰もが落ち着いたところで、改めて少女は言う。

「みんな……ただいま!」

少女はふたたびそうじろうに飛びつく。
そして、ゆたかは少女に飛びつく。
ゆいは3人を見つめ、目頭を熱くしていた。

「こなた、お帰り」

「お帰りなさい、こなたお姉ちゃん」

「お帰り、こなた」

ゆいが、ゆたかが、父親が口々に少女の名を言う。

少女の名は、『泉こなた』と言った。



こなたの新たな日々が、きょうここに始まることになった。
そしてこなたは、進学した陵桜学園で生涯の親友と出会うことになる。

大勢と親しくしていたにもかかわらず、三岬中時代のこなたに親友はいなかった。
死んだ少年と『もう一人の少女』を除いては。

けれど、その少女とは事故以来、顔を合わせることはなかった。
なぜなら、こなたが中学に復帰して以来、その少女は行方不明になっていたからだ。
こなたはふたりの友人を失ったことに、ショックを受けた。

クラスメートや教師、宿泊先の人たちのフォローがなかったら、自暴自棄になっていたかもしれない。
気持ちの落ち着いた今、みんなに感謝しているこなたであった。
事故の翌日から少女は姿を消していた。

警察が懸命に捜索したにもかかわらず、少女の足取りを追うことができなかった。
ショックを受けた家族は引っ越し、来年三岬中に入るはずの弟も転校していった。
少女を知るものは深い悲しみにつつまれた。

幸手に戻ってからも、こなたはかつてのクラスメートにその後の様子を問い合わせていた。
メールはもちろんのこと、電話や手紙でも。

だが何年たっても少女が見つかったという話を聞くことができなかった。
やがて誰もがそのことに触れることを望まなくなり、こなたの問い合わせに答えることはなくなっていった。
こなた自身も少女が見つかることをあきらめ、思い出すこともなくなっていく。
事件のことは忘れ去られようとしていた。

それが新たな悲劇を呼ぶことになるとは、誰も予想しなかった!






さらさらさらさらさら……

シャープペンシルが紙にこすれる音だけが部屋に響く。
柊かがみは参考書を広げ、予習復習に余念がない。
宿題も夕食前には終わっており、明日の準備は万全のはずだった。

「きょうはここまでかな? なんか、調子出ないし」

だいぶ前からケアレスミスが続出しており、能率がかなり下がっていた。
なぜかはわからないが、気分が乗らなくなっているのだ。

それは、あと数日で夏休みだという日のことであった。
参考書を閉じ、かがみは伸びをする。
ふと脇においてある時計を見ると、針は午前1時を指していた。
いつもなら、これから調子が出てくるはずの時間だった。

(どうしたんだろ、特に気になることがあったわけでもないし……)

ぶるんと頭をふり、かがみは仕方なしに席を立つ。
ふいに、すぐとなりの部屋にいる双子の妹、つかさのことが頭に浮かんでくる。

(陵桜は進学校だっていうのに、だいじょうぶなのかな?)

やっとの思いで入学できた陵桜学園は、受験の時だけではなく授業のレベルも高かった。
教師の説明にわからないことが多く、かがみは必死になって付いていこうとしていた。
とはいえ勢いあまったせいか、中間テストでは学年で10位以内に入っていたのだが。

引っ込み思案で、かがみの友人としか友人になれていないつかさのことを心配する。

「つかさ、そろそろ自分で友達作ることを覚えないとね……」

ため息混じりにつぶやくと、時間割表に目をやる。
すぐに手馴れた動作であすの予定を確認し、テキパキと教科書やノートなどをしまい始める。
もっとも夜遅いこともあり、音をあまり立てないように気を配りながらではあるが。

「……よし、準備OK」

予定どおりのものがカバンの中に入ったことを確認し、登校準備を終える。
ふだんならこのまま着がえて就寝するはずなのだが、きょうのかがみは違った。
カバンのふたを閉じたあと、ひざ立ちのままで考え込んでいたのだ。

 − 何を考えることがあるのだろう? −

家族が見たらそんな問いが帰ってくるに違いない状況がしばらく続いた。

「しばらくぶりに……やるか」

ふいに立ち上がり、ドアへとむかう。
息をひそめ、音をなるべく立てないように気を配ってドアを開け、そのまま部屋を出る。

トン、トン、トン、トン……

しのび足で階下へ降り、まっすぐ玄関へ向かう。
そして靴を履き、そっと外へ出る。
音を立てないようにドアを閉めると、寒さにぶるっと震える。

「ううう、もう夏だといっても夜は寒いか、やっぱり」

そのまま足早に鷹宮神社の拝殿へと向かう、かがみ。
社務所兼用の自宅から拝殿まではあっという間であった。

拝殿手前の手水舎で手や口を濯ぐ。
それから、あまり音を立てないように軽く鈴をゆらしてから参拝。
自分とつかさの、はじまって間もない高校生活が、よりよいものになるように祈った。

中学に入ってからかがみはたまに、就寝前に参拝に行くことがあった。

ふだん現実的なことを言っているだけに、人目のある時間帯には行きづらいためだ。
素直になれない性格がうらめしいと思うときもある。

だが、どうしても日中に参拝に行く気にはなれなかった。

(さて……と、そろそろ戻らないとね。誰かお手洗いに起きてくるかもしれないし)

戻ったらトイレに行ってから寝ようと思いながら空を見上げる。
東の空に下弦の月が輝いていた。

(月がきれい。雲ひとつ見えないし、明日も暑くなるわね)

そう思って空を仰ぎ見た時、ふいに違和感を感じるかがみ。

(なんか……変な感じ。何か違う気がする)

よく見てみると、南の空に満月が輝いている。
東の空に下弦の月が輝いているのに。

「えっ?」

見間違いではないかと何度も見直すが、天空に二つの月が輝いて見える事実に変わりはなかった。
そこでかがみは気づいたのだ、南の空の満月が紅く輝いていることに。

「赤い……月?」

あたりが急に静まり返り、虫の音やカエルの声すら聞こえなくなる。
かがみは何が起こったのかと、あたりをキョロキョロ見回すしかなかった。

「あら? おとり作戦が成功したと思ったら、こんなところに伏兵がいたなんて」
ふいに頭の上から聞こえてくる声に驚き、東の空を見上げる。
そこでかがみは信じられないものを目にした!

「え? 女の子? なんで?」

かがみが目にしたのはひとりの少女。
少女は、どこかの学校の制服の上にポンチョを羽織っている。
それだけなら、何もおかしなところはなかった。

だが少女は、空中に立っていた!

「どうやらまだ覚醒前みたいね…… こんなのを配置するなんて、『やつら』も甘いわね」

少女は不適に微笑むと、左手をかざす。

ズン!

少女が手をかざした先から、大きなものが落ちるような音が聞こえる。
その音に、かがみは反射的にそこにあるはずの建物、神楽殿に目を向けた。

そしてそこに、とんでもないものを見てしまったのだ!

神楽殿を背後に立っていたのは、異形の存在。
首を痛くなるほど見上げるほどの巨人が立っていた。
月に照らされたデコボコした肌は土色。

土くれでできた巨大な人形、伝承の怪物ゴーレムである。

かがみは以前読んだファンタジー小説を思い出していた。
ゲームでは何度も退治したことはあるが、それはかがみ自身の力ではない。
ゲームの中のキャラクターが倒しているのである。
実際に目の前に立つゴーレムを倒す力は持っていない。

なんでこんなところにこんなのがと、思う間もなく後ずさる。
気づくと空に浮かんでいた少女の姿は……ない。

「え? うそ?」

思わず驚きの言葉を発するかがみ。
だが、驚いてばかりもいられなかった。

ゴーレムの目のない顔がかがみを見つめる。
その瞬間、かがみの背すじに寒気が走った。
このままじゃ殺される。
そう思ったとき、怪物から少し離れた場所が円を描いて赤く輝きだす。

(魔法陣?)

まるでラノベの世界に入り込んでしまったようだ。
かがみは目の前で起きていることに見とれていた。

そして……奇跡は起こった!

輝きが収まると、そこに立っているのはひとりの少女。
低い身長、スレンダーな体形、腰までの長い髪。
かがみが見たところ、少女は小学校の高学年くらいに見えた。
だが少女には、目の前の怪物に対する恐怖を感じている様子は見えなかった。
少女はふいに、黒いコートの中から鈍い光を放つ日本刀を取り出す。
それは、かがみがはじめて見る不思議な光景。
だがかがみは、その光景を何度も目にした気がしてならなかった。

瞬間、赤く輝く炎が少女を取り囲む。
そして刀を構え、気合と共に一閃!
炎の塊がゴーレムに直撃、一瞬にしてゴーレムは崩れ去る。
その間、かがみは少女の行動を見つめるだけだった。

紅い炎のゆらぎの中で少女の髪と瞳が紅く輝く。

(炎髪……灼眼?)

かがみの脳裏にラノベで読んだことのあるフレーズが浮かんだ。

「フレイム……ヘイズ、なの?」

思わず発した言葉に少女が鋭い目つきでかがみを見つめる。
炎のゆらぎは消え、少女の手元に刀はない。

『あら、そこのウィザードはおとりだったってわけね』

先ほどの少女の声が聞こえる。
だが、いくら探しても姿が見えない。

『まあ、いいわ。ゲームはしばらくお預けね。
次に会ったときは覚醒していてね。
じゃ、楽しみにしているわよ』

「どこ? どこにいるの? あなた誰?」

答えが返ってくるとは思わなかったが、かがみは叫ばずにいられなかった。

『裏界の大公、蠅の女王、大魔王ベール=ゼファーよ。覚えておいてね、未熟者のウィザードさん』

クスクス笑いが小さくなっていくと共に紅い月が姿を消す。

残ったのはかがみと、ゴーレムを倒した少女だけだった。
少女を見つめるかがみは何も言えずに立ち尽くす。

「……」

「えっ?」

少女が小声で何かをつぶやくと、再び魔法陣が現れる。
かがみが驚きの言葉を発する目の前で、少女は姿を消してしまった。

「待って!」

あわてて少女の下に駆け寄るが、たどり着くころには魔法陣の輝きは消えていた。
あきらめきれずに周囲を見ても誰の姿もなく、東の空に下弦の月が出ているだけだった。

− つづく −
16320-612 ◆xdkSnUtymI :2008/03/07(金) 22:36:22 ID:r3lcoRD3
てなわけで、第1話お届けいたしました。

とりあえず、PC(1)泉こなたとPC(2)柊かがみのオープニングシーンはこれで終了。
次回はPC(3)とPC(4)が登場する予定です。
164名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 23:56:17 ID:ZYCdVTCB
んー…結構色んな物を受け入れる此処だけど…こう言った物はありなんかね?
原作を知らないから内容についてはどうこう言えないが
165名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 00:05:28 ID:Zcr1KmL7
>>164
前例はあるんだぜ。Fateネタとかスパイラルネタとか
まぁあくまでらきすたが主軸なら俺的にはあまり文句は無いんだが
166名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 00:25:15 ID:2K99cpwf
>>165
そうなのか、他スレじゃまずありえない事だよな…
167名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 00:29:31 ID:hFgelVbd
どんな作品でも受け入れてきたこのスレでも、
さすがにこれはみんな引くかなぁ……という作品を書いてしまいました。

「ひよりの描いたBL漫画の中で♂ゆたかと♂みなみがエロ」
というものを書いてしまったのですが、投下はまずいですかね?
性描写は下手で淡白で、801板に投下する勇気もないのですが。
168名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 00:33:13 ID:Zcr1KmL7
ただしクロス先を知らない人が多くて反応が無くても泣かない。これ鉄則
まぁパラレルだの性転換だのあるから今更クロスの一つや二つどうってことないでしょ
しかしクロス先とカップリングとかやるとややこしい事態になるのでそこだけは慎重かつ自重を求めておく
169名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 00:33:47 ID:2K99cpwf
…流石にそれは…難しいな
てかテンプレに801はダメって書いてないか?
個人的には少し気になるが
170名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 00:35:49 ID:2K99cpwf
>>168
まぁクロスに関してはそれは常識の範囲だな
171名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 00:40:07 ID:hFgelVbd
あ、>>1に禁止って書いてありましたね。
性描写を省くとか他のスレ探すとか
ごまかす方法を考えます。
このことは忘れてください。
172名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 01:29:31 ID:3H9RXi92
>>171
個人的には気になるから、良ければどこかに投下してくれ
801はwiki投下でも駄目なのか
173167:2008/03/08(土) 02:29:34 ID:hFgelVbd
スレから追い出されたSSを投下するスレ
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1161043643/481

こちらに投下しました。801を読んでも平気という方は読んでやってくれると幸いです。
174名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 09:23:31 ID:mFAFwrMJ
そういうのは801板に行けばいいのでは?
ただしTS物は、801でも男女でも嫌われがちだし、難しいよな。
175名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 09:47:21 ID:h1+aP0Hn
>>173
面白かったですよ。
ただひよりはもうとっくに何もかも知ってるんじゃないかww
176名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 10:31:19 ID:cXUDvZJd
ああ、なんか目覚めたかもしんない
♂みなみがぶっきらぼうな喋り方、というのはなるほどと思った
177名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 11:43:38 ID:qG+NmwYw
ある日こなたに男性器が生えてオドオドしているとかがみが来て、
理性崩壊してかがみにフェラさせてしまうが、そのままかがみが暴走してつかさ達を強制フェラさせる。
そしてつかさ達もそのまま暴走して範囲拡大、ついにはこなたの周りの女は1日にして暴走する。
その翌日にはこなたはいつもの状態に戻るが、周りには『子供ができたから』と結婚をしようと迫ってくるかがみ達・・・



重要なのは、精液をかけた時に何らかの作用で淫らに暴走するのと、
誰がこの電波を送ってきたということだけだ・・・。
178名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 13:56:21 ID:ejcOUCpB
たぶん7-896氏あたりじゃね?
受け攻めを見る限りw
179名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 14:53:46 ID:ujnowBG6
> 誰がこの電波を送ってきたということだけだ・・・。
そこはあまり重要じゃない。
なのでそれを
180名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 14:54:20 ID:ujnowBG6
SSにするんだ、と書こうとしたのに俺の阿呆…_| ̄|○
181名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 15:08:40 ID:KP1kWQkV
>>180
どどんまい
182名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 15:20:25 ID:89vhrXf+
結局こなたも「全☆フェチ」だしなあwww
皆から責めを受けるのも、自らの欲望の招いた結果。ゆえに自業自得だしwww
183名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 15:53:51 ID:CcoE7qsm
>>173
ひよりんのおかげでライトな801で済んでよかった
このくらいがちょうどいい。おもしろかった!

>>182
つまり口では嫌といっても心は望んでしまう
普段は余裕を見せているこなたが逆に責められて
息も絶え絶えになるというシチュエーション
すばらしい
184アホ毛の女:2008/03/08(土) 16:43:07 ID:eGEKEILO
普段はダンボールに隠れてる私だけどさ……一応健康的な女性なワケだし、時々体を持て余したりするんだよね……。

みんなに見つかると無理やり色々されるから嫌なんだけど、逆に何もされないと体が疼いて困っちゃうんだよ。

そういう時はダンボールの中で自分を慰めるわけなんだけど、その時のスリルは最高だネ。

誰かに声を聴かれないように服の端をくわえて、必死で声を殺すんだよ。

みんなの事をオカズにイッちゃう私は、本当はみんなの中で一番えっちなのかもね……。

あーあ、見つかりたくはないけどさ、誰か私の事を見つけてくれないかなあ……。
185名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 16:56:21 ID:I5cuxKrE
こなたが授業中寝てるのは、ネトゲとかじゃなくて心労からかもしれない
油断していると襲われる日々、先生以外誰も介入出来ない授業中が最も心休まる時なのだろうか
186名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 17:03:00 ID:Nic2oeLJ
そして、黒井先生による公開処刑が行われるんですね。
187名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 17:16:37 ID:89vhrXf+
そもそも、学校ですら安住の地はないから
ダンボール生活を余儀なくされてるんじゃなかったのかwwww



拝啓 柊かがみ様

私は今、遠い地で旅芸人をして暮らしています。
そっちのみんなは、元気で暮らしていますか?
まあもっとも、禁断症状でみんな死にかける頃じゃあないかとおもうけど。
そろそろまた戻ってくるからね、私もいい加減、体疼いてきたし。
ではまた会いましょう。

本来なら最愛の人へ
                  敬具敬白不一早々かしこ



さて、手紙送ったし、そろそろ帰り支度でもするかネ。
あ・・・また追っ手だ・・・とりあえず今は逃げなきゃ。
来るべき戻る日に向けて、体力は温存しなきゃいかんとです。
でわっ ε====┌( =ω=.)┘
188177:2008/03/08(土) 18:20:33 ID:qG+NmwYw
>>178
あの(いい意味で)バカ作者か・・・やってくれる!
>>179(>>180)
俺はエロ書けないから・・・勘弁。

あと、みんなの設定だけど、
・こなフェチ未発症・・・てか存在しない。
・こなた→←かがみ。つまりこなたとかがみが両方片想い。
・射精時の精液が体にかかると、かけた精液の持ち主に対して暴走する不思議設定。
・しかも暴走し始めには必ず騎乗位(個人差はあるが基本的に淫ら且つ強気に暴走する設定のため)で、
 強引に自ら子供を孕ませる行為にでて、結局おめでたな設定。
・かがみ達は暴走した時に、暴走してないキャラにフェラさせて暴走させる。
・かがみ、つかさ、みゆきの3人以外は、中出しで強制気絶な設定。
・途中からこなたがみゆきに催眠術をかけられて、フェラ+孕ませマシーンと化す。



駄目だ、電波が・・・俺を・・・・・・かゆうま・・・(交信途絶
189名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 18:42:08 ID:2K99cpwf
だ、だめだ、良いネタ思いついたのに内容が俺のキャパシティを越えて書けない…!
190名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 20:38:26 ID:twP8zLNV
>>184
そういや、自分で慰めるといえば、ダンボールの中とかじゃなく自分の家(除く一人暮らし)
でもそれなりのスリルを伴ったりするなw
こなたの場合はゆーちゃんやそうじろうに見つかる危険性が否定できず、
かがみの場合はいきなりつかさが部屋に来るかも。
191名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 20:42:43 ID:2PCB3tjl
むしろゆーちゃん(つかさ)の部屋で
192名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 20:49:06 ID:3H9RXi92
一番リアルなのは、みなみが一人で安心しきってたら、突然ゆかりさんが覗きに来るパターンだろ
193名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 20:50:01 ID:2K99cpwf
>>190
かがみの場合は〜って部分ならニコニコでそんなMAD見たけどURL貼る?
194名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 21:02:32 ID:A1EuLbUg
草草動画なんて犯罪者御用達のサイトまだ潰されてなかったんだ
195名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 21:19:16 ID:I5cuxKrE
今、ふと思ったがこな☆ふぇちの世界では、こなたが働いているコスプレ喫茶ってどうなっているんだろう
こなチュウなどのネタでかがみたち以外も感染していることがわかっているし、やっぱりカオス状態なのだろうか
 
店の前には長蛇の列ができ、テレビでもコスプレ喫茶が報道されるようになり、全国にこな☆ふぇち感染者が……
という電波を受信した
196名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 21:28:51 ID:UQdzkwXo
俺もこな☆フェチは実はこなたがイジメられて引きこもりになる世界をゴッドかなたさんが世界改変したって電波が来た

彼女の仕業だから結局段ボール生活で引きこもって、あんま変わってない。みたいな

ゴッドかがみん(見習い)がそれを助ける的な、コラボ作品を誰か書いてくれないかなぁ
197名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 21:38:41 ID:jFATYAfk
実際、こな☆フェチが蔓延したら、新型インフルエンザくらいの騒ぎになるだろうな・・・
198名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 22:06:47 ID:2K99cpwf
近未来、こなフェチが世界に広まって出産率が極端に下がり、人間は絶滅の危機に陥る
それに気づいたかがみが…という電波を受信した
199名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 22:09:48 ID:eVmbN8Q4
ゆかりさんって一昨日誕生日だったんだ……今知った。
>>92氏が知ってか知らずかゆかりさんモノを書いてくれたから良かったけど、
それが無かったらここ最近で一番報われない誕生日を迎えた人だったんじゃ……((( ;゚Д゚)))
200名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 22:37:57 ID:S3NJ5znB
ゆかりさんには俺が二人っきりのバースデーパーティーを開いてあげたから安心してくだしあ
あ〜んとかしてあげたぜ!
201名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 23:33:12 ID:sElO12I+
『えす☆えふ外伝』の世界では、「こな☆フェチ」は
「こなたがみんなに愛される子であってほしい」
というかなたさんの願いを拡大解釈したキューピッドが、なにやら大チョンボをやらかした、
ということになってるとか、なってないとか。
んで、かなたさんはそれを解決するという裏の任務を負ってるとか、負ってないとか。
202名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 23:59:10 ID:5J1httlh
まな板買ってきて組み立てれば
ほら、みなつーの出来上がり
203名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 00:26:21 ID:MN9Sa1ed
>>202
後ろ見てみろ、後ろ
204名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 00:34:01 ID:6sv6IEOB
おい、203も後ろ後ろ
205名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 00:57:17 ID:SPzaYdm1
20623-49:2008/03/09(日) 01:24:36 ID:s/3DwQJ0
おばんです
「メドレーリレー・バースデー」第四話、上がりました
ここらでもう一人の蚊帳の外、みなみの様子をお届けします
被りそうな方がおられないようでしたら、五分後ぐらいから投下させてください


・みなみ&かがみ、みなみ&みゆき
・みなみ視点
・エロ無し
・6レス使用

途中で止まってしまった場合は例によって wiki と避難所を参照してください
207名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 01:28:52 ID:rtNOWvdO
始まる前に割り込み失礼だけど、>>205のコンセプトって何?
208メドレーリレー・バースデー (4) 1/6:2008/03/09(日) 01:30:25 ID:s/3DwQJ0
【track 4 : 二等辺三角形 (4)】


 柊先輩に会った。

 昨日、土曜日の放課後。
 ここ数日に続いて、またしても何か用があるという友人たちと教室で別れ、一人でバスに乗り、
 糟日部の駅前に降り立った私、岩崎みなみは、ロータリーの片隅に置かれたベンチに
 見知った人物が座っているのを発見した。
「……柊、先輩……?」
 思わず、声に出して呟く。
 見間違いかと一瞬思った。
 たった一人で、傍目にもひどく落ち込んだ様子で項垂れているその姿は、私の中にある力強い
 イメージとは懸け離れていたから。
「……」
 少し、迷う。
 見知った相手ではあっても、直接話したことはほとんどない。だからどうしたものか、ためらった。
 単に一人でいるというだけなら素通りしたかも知れない。会釈ぐらいはしただろうけど。
 しかしあの落ち込みようを見てしまっては、放っておくのはさらにためらわれる。
「……」
 ふと、記憶がよみがえる。
 半年前。
 今の学校で、今とは違う制服を着て。
 入学試験の日、たまたま立ち寄ったお手洗いで、青い顔をして俯いていた小さな少女。
 あのときの私は、しかしどんな思いで声をかけたのだったか。
 その後、何度も同じような状況にあって、何度も上書きされてしまった感情は、既に曖昧だ。
 同情か、気まぐれか、共感か、好奇心か。
 分からないけど、でも――そうだ。
 今の私には、ある。彼女に手を差し伸べる、明確な理由、義務がある。
 彼女は制服を着ている。私も制服を着ている。
 ならば素通りはできない。
 だって私は、保健委員だから。


 近くに寄ってみると、その憔悴ぶりはますますもって明らかだった。
 落ち込んでいるというよりは疲れきった様子で、完全に脱力してベンチに全身を預けている。
 すぐ目に前に立ち止まった私のことにも、気付いているのかどうか。
「あの……」
 声をかけると、随分と細く見える肩が、ぴくりと動いた。
 ゆっくりと頭が上がる。
 能面のような顔。そのうつろな目の焦点が私の顔の辺りで結ばれて、そして大きく見開かれた。
 赤く、充血している。
 ポケットからハンカチを取り出した。
「……使ってください」
 柊先輩は、しかし反応らしい反応をしなかった。
 視線だけは私の顔からハンカチへと移ったけど、それだけで、あとは引き続き凝視してくるのみ。
「……」
「……」
 まさか本当に人違いなんてことは……そんな不安すら抱き始めたころ、ようやく先輩は動いた。
 だけどそれは予想とは違って、ハンカチを受け取るでもなく、いらないと拒絶するでもない。
 ただ、ふ、と。
 皮肉げな笑いをこぼしたのだ。
 或いはそれは、嘲笑だったのかも知れない。

「あんまり……誰にでもこういうこと、しない方がいいわよ……」
209メドレーリレー・バースデー (4) 2/6:2008/03/09(日) 01:31:32 ID:s/3DwQJ0
「え……」
 意味が分からなかった。
 何を言われたのか。
 しかし、頭で理解できなかったはずのその言葉は、私の内部に突き刺さるように沁みこんだ。
 そして軋む。
 ギシリ、と。
「――ごめん、なんでもない」
 抑揚のない声に、我に帰る。
 我に帰ったことで、気付く。
 自分の意識が数瞬、何処かへ飛んでいたということに。
「ありがと、岩崎さん。洗って、明日返すわね」
 ハンカチで目元を押さえながら、やはりぼそぼそと抑揚のない声で先輩が言う。
 いつの間に渡したのだろう。差し出した憶えはあるが。
 というか、
「……明日は、日曜ですけど……」
「え? ……あ、ああ、そっか。そうね。あはは……」
「?」
 なんだろう?
 今、ちょっと、何か必要以上の焦りが見えたような。
「あの、さ」
 視線も微妙に逸らしたままで、先輩は口を開く。
「はい」
「えっと、その……何か用?」
「……、いえ……」
 用、というか。
「――って、そっか。これか。……心配してくれたのよね。ごめん」
 ハンカチが握り締められる。
「ごめんね。……今、ちょっとヘンなのよ。わけわかんないってゆーか……見れば分かるか」
 そうしてまた、今度は自嘲気味に、力なく笑う。
「なんなのかしらね……空回りってゆーか、取り残されたってゆーか……何やってんだろーなー……」
 ぼそぼそと、聞き取りにくい声。
 最初から聞かせるつもりはないのかも知れない。独り言のようなものだろう。
 しかし耳にするだけで不安が増していくような、危うげな声。
「……何か、あったんですか?」
 我慢できなくなって、口を挟んでしまった。
 何を訊いているんだろう、私は。あったに決まってるじゃないか。
 何もない人間が、こんな、目元を赤くするようなことになるわけがない。
「――何も」
「え?」
「……何もなかったわ。なぁんにも、ね」
 けれど先輩はあっさりと否定の言葉を吐き出した。
 静かな口調で、瞳で、無理をして強がっているといった様子はない。
 しかし冷静というのとも違う。嵐が通り過ぎたあとのような、見捨てれた廃屋のような、虚ろな静寂。
「何もなくても――何もないからヘンになるってこともある、のかもね……」
 そういう、ものなのだろうか。
 人生経験が乏しいせいか、よく分からない。
「……私ってさ」
「え? ……あ、はい」
「私って……なんなのかな」
 相変わらず視線をずらしたままで、先輩が不思議なことを言う。
 ええと……
「……柊先輩、ですよね?」
 いや、そんなことを訊かれたわけじゃないだろう。何を言っているのだ、本当に。
 もう少し気の利いたことは言えないのか。
「ひいらぎ、か……」
 先輩の反応は、さらに俯くというものだった。後悔が募る。
210メドレーリレー・バースデー (4) 3/6:2008/03/09(日) 01:32:34 ID:s/3DwQJ0
 焦って口を開くが、言葉が出てこないまま閉じてしまう。それを数回繰り返す。
 何が「私は保健委員だから」だ。何の役にも立たないどころか、悪化させているじゃないか。
 そんなことだからゆたかも……ゆたかも?
「あ――ああ、ごめん」
 と、
 先輩が顔を上げ、少し慌てたような声を出す。
「気にしないで。ただちょっと、つかさと区別付かないな、とか、思っただけだから」
 つかさ、さん?
 そうか、双子の妹さんがいるんだ。
 彼女が関係しているのだろうか。――いや、そんな詮索よりも、今は。
「すみません……」
 頭を下げ、侘びる。
 先輩の気配が、さらに慌てたような、困ったようなものに変わる。
「だ、だから、いいのよ。ってゆーかこっちこそごめん。……やっぱ私、ヘンだわ」
「いえ……じゃあ、か――」
 言いかけて、喉に空気がつっかえる。
 意地で飲み下した。何の意地かは、分からないけど。
「か?」
「か……かがみ先輩、と、呼ばせてください」
「……」
 沈黙。
 気配も消える。
 そろりと視線を上げると、先輩は、
「……ええ」
 薄っすらと、微笑んでいた。
 儚げで弱々しい、しかし皮肉げでも自嘲気味でもない、きれいな笑顔。
 安心より先に、呆気にとられる。
「ありがとう、みなみちゃん」
 そして戸惑う。礼を言われるようなことはしていない。
 言葉に詰まってしまって、先輩がさらにくすりと笑う。
「そう呼んでもいいかな、私も」
「え?」
 ……ああ、そうか。今、私の方も名前で呼ばれたんだ。
「はい。……ぜひ」
「ありがと」
 もう一つ微笑んで、立ち上がる。
「……うん。なんか元気出たかも。ありがとうね、みなみちゃん」
「あ、いえ……」
 まだいつもの力強さは戻ってないけれど、それでも本当に、いくらかは元気になってくれたみたいだ。
 少しでも役に立てたのだろうか。
「じゃあ、私行くから。ちょっと買うものとかあるし」
「はい」
「また明日……じゃなかった。また、今度ね」
「はい。また」
 微笑んで、頷いて。
 危うげない足取りで去っていくかがみ先輩を、私はなんとなくその場に立ち尽くしたまま見送った。
 それが昨日の話。
 かがみ先輩に会った。
 ただそれだけのこと。
 でも、他に理由は思い当たらない。
 その夜、夢を見た。



『――――みなみちゃん、誰にでも、そういうことするんだ』
211メドレーリレー・バースデー (4) 4/6:2008/03/09(日) 01:33:35 ID:s/3DwQJ0

「――っ!?」
 跳ね起きた。
 まだ日も昇りきらない時間。薄暗い部屋の、自分のベッドの上。
 全身を汗でぐっしょり濡らして荒い息をつく私がいた。
 くぅん、と、異変を察知したらしいチェリーの声が聞こえた気がしたが、構うだけの余裕がない。
 なんだ、今のは。
「……ゆめ?」
 そう、夢だ。
 細部は憶えていない。全体像すら既にほとんど忘れ始めている。
 残っているのは、たった一つ。
 暗い、昏い、闇そのものような冥い声。

“――みなみちゃん、誰にでもそういうことするんだ”

「……っ!」
 心臓が引き絞られて、さらなる汗がどっと噴き出す。
 そんなはずがない。
 そんなはずがない。
 ゆたかが、そんなことを言うわけが……だって彼女は言ってくれた。
 他の人を優先してもいいと。
 寂しくなったらちゃんと言う、と。
 だからこんなのは、夢だ。ただの夢。私の中のネガティブな部分が見せた、ただの幻。
 現実の、本当のゆたかは――

“――ごめんね、みなみちゃん”

 え?

“今日はちょっと用事があるんだ。えっと……お姉ちゃんと”
“あ、今日も……ごめん。言えないんだ”
“べ、別にそんな、ぜんぜん大したことじゃないんだよ? でも大切な……じゃなくってっ”

 あ……れ?

“違うのっ! みなみちゃんとはぜんぜん関係ないことだから”
“ほんとに、ほんとにぜんぜん関係ないから”
“だから……ごめんね?”

 ゆたか?

“ごめんねー、岩崎さん”
“Sorry、ミナミ”

 ……田村さん? パトリシア、さん?

“――ばいばい”

 ……
 ……これも……
 ……これも、夢なの…………?

212メドレーリレー・バースデー (4) 5/6:2008/03/09(日) 01:34:42 ID:s/3DwQJ0
     ★


「――なるほど」
 私が話を終えると、みゆきさんは小さく息を付くように呟いて、アイスティーのグラスを持ち上げた。
 あのあと――いったいどれだけの時間固まっていたのか。
 勉強机の上で震えだした携帯電話の音で我に帰った私は、かけてきた相手であるみゆきさんに
 泣きついた。
 そして連れてこられたのがこの喫茶店。
 みゆきさんお勧めだというこの店は、駅よりも私の家がある住宅街に程近く、静かで落ち着いた
 雰囲気が漂っている。時間帯のせいか、客も私たち二人の他には誰もいない。
 ことり、とグラスをテーブルに置く音。
 反応してかすかに視線を上げると、みゆきさんは優しく微笑んでいた。
 どうして笑っているのだろう。
「大丈夫ですよ、みなみさん」
「……」
 こんな、根拠のない慰めを口にするような人だっただろうか。
 分からない。
 ほとんど物心ついた頃からの付き合いであるこの人のことすら信じられなくなっている。
 ため息が聞こえた。
 困ったような。聞き分けのない子どもに手を焼く母親のような。
「何か、心当たりはあるのですか? 皆さんに嫌われるような」
「……」
 ない。
 何度も考えた。考え抜いた。
 でも、分からない。少なくとも私から何かをしたという記憶はない。

“何もなくても――何もないからヘンになるってこともある、のかもね……”

 かがみ先輩の言葉が甦る。
 そういうことなのだろか。
 何らかの義務を無自覚に怠って、それがゆたかたちを怒らせて、傷つけたのかも知れない。
 でも、それは何?
「……そうですか」
 優しく――そうとしか解釈できない調子で頷いて、みゆきさんはまたグラスを持ち上げる。
 私の方は手を伸ばしてすらいない。
「私には、ありますよ」
「……え?」
「皆さんの態度に、心当たりが」
 目を見開く。
 なんて言った?
 なんて言った!?
「お――教えてくださいっ!」
 思わず身を乗り出した。
 テーブルが揺れ、グラスの中で波が立つ。
「お、落ち着いてください、みなみさん」
「でも――」
「とにかく、座ってください」
「…………、はい」
 浮かせていた腰を下ろす。
 するとみゆきさんは、しかし困ったような表情になった。
「ですが、今は言えません」
「そんな……っ!」
 再び声を荒げかける私を、彼女は両手を掲げてやんわりと制する。
213メドレーリレー・バースデー (4) 6/6:2008/03/09(日) 01:35:43 ID:s/3DwQJ0
「いえ、いじわるをしているのではないんです。ただ、申し訳ないのですが……田村さんの了解を
得ないことには、お話しするわけにはいかないんですよ」
「田村、さん?」
 ゆたかではなく?
「ええ。先週のお昼休みに、彼女とお昼をご一緒する機会があったのですが……そのことは?」
 ……ああ。
 そういえば、三、四日前だったか。
「漫画の……」
「あ、ご存知でしたね。はい、お恥ずかしながら、インタビューを受けさせていただきました」
 照れたように首を傾げて、みゆきさんは言う。
 漫画を描いている田村さんが、新しい作品の取材を、生徒会長でもあるみゆきさんに
 受けてもらえることになったと、昼休みに抜けていったことがある。
「そのときに、ついでにした別のお話が、関係しているのだと思います」
「……」
 確かに、時期的には一致する。
 しかし、
「……なんなんです?」
「ですから、言えません」
 にべもない。
 俯いて、歯噛みする。
 この人に約束を破らせるのは容易ではないと知っているから、余計に焦りが募る。
「ですがもし、私の想像している通りなら――最初に言ったとおりです。何も心配いりませんよ」
 言い方は曖昧だけど、この顔は確信している顔だ。
 信じてもいいのだろうか。
 しかし、理由を聞かされなくてはとても納得などできない。
「……では、田村さんに連絡してみましょうか」
「……お願いします」
「分かりました」
 そう言うと、みゆきさんは手提げカバンから携帯電話を取り出しながら席を立った。私も続く。
「あ、みなみさんは座っていらしてください」
 聞かせるわけにもいかない、ということか。
 相変わらず義理堅い人だ。安心もできるけど、もどかしい。
 みゆきさんはお店の人に「電話してきます」と一言断りを入れて、そのまま一旦外に出てた。
 窓の向こう、私から見える位置で立ち止まり、電話越しに誰か――恐らくは田村さんと話し始める。
 時間にして、数分。
 壁の時計を見なかったらその十倍ぐらいに思ったかも知れない。
 戻ってきたみゆきさんは、座りなおすことなく伝票を手に取った。
「――では行きましょうか」
「行くって……」
 自分も立ち上がりながら、この人にしては珍しく唐突な物言いに首を傾げる。
 田村さんのところだろうか。
 しかし返ってきたのは、まったく予想外の言葉だった。
「お買い物です」
「……は?」
 間抜けな声が口からこぼれる。みゆきさんは可笑しそうに笑った。
「田村さんに連絡したのですが、もう少しお時間が欲しいそうです。ですから――最初に言いました
よね? お買い物をしながら時間を潰しましょう」
「……」
 ええと。
 しかし、迷う――というか、混乱している私を置いて、みゆきさんはさっさとレジに向かってしまった。
 釈然としない気持ちのまま、仕方なく後を追う。
 結局手をつけられることのなかったグラスの中で、融けかけた氷が所在なさげに揺れていた。




21423-49:2008/03/09(日) 01:36:53 ID:s/3DwQJ0
以上です
ありがとうございました


別に二等辺でも三角形でもないような
215名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 04:11:56 ID:niT7CuTg
お早うございます。久留里です。いつものアレ、発車致します。

『カケラ』19+間
・こなた視点 / 第三者視点
・エロ無し
・8レスほど使用
・シリアス/タイムリープ/平行世界/鬱展開
・オリジナル設定が多いのは仕様です。
・物語の性格上、鉄分が濃いです。
・架空の町が登場します。

※途中で投下出来なかった場合は、保管庫へ直接投下致します。
216名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 04:13:13 ID:niT7CuTg
19.

単線の出来の悪い線路に沿った県道を、『気配』の感じる方へと進む。
この界隈、ほとんどの地名に「岩瀬」が付く辺り、かつては一つの村だったのだろう。
それがおそらく、近代史の試験に出てきた『昭和の大合併』で富山市に編入された───。
まさか日本史の授業の内容を、こんな所で思い出すとはねぇ。
やがて県道が富山港線から離れ、100メートルほど歩いた先に三叉路が見えた。
この際どちらが県道とかどうでもいい。私は『気配』の感じる左側の道へと足を進めた。

「今頃かがみん、どうしているんだろうねぇ」
もしこの世界にかがみも飛ばされていたとして、もしかがみも同じ富山に居たとすれば、
今の私のチカラでかがみの気配を感じる事が出来るだろう。
しかし、それは敵わなかった。

ふと、先月の、桜籐祭での記憶がよみがえる。
『かがみは私の嫁だ!!』
いつもの面子でお喋りしている時、私は何度かこの台詞を使った。
相手には冗談に聞こえるように言っていた。
そう、この台詞、半分本気だったんだよネ。私が。

私は同性にはリアルで興味が無い。
むしろ嫌悪感を抱いていたくらいだ。
同性同士の恋なぞ、例え鍵製のエロゲでもお断りだった。
かつては、『そうだった』。
でも、今は違う。

『全くしょうがないわね』
初めは散々嫌がっていたかがみを見るのが面白くてからかっていたんだけど、
何時しかかがみは、私が『私の嫁だ』と言うたびにこの台詞で返すようになっていた。
こちらとしてはツンデレかがみのツン全開を見るのが楽しみだったのに……。
ちとやり過ぎたかにゃぁ。

かがみは、優しい。
普段は強がっているけれど、本当は寂しがりで、心もガラスの様に脆く、壊れやすい。
かがみは、暖かい。
時折、冷酷非道(に見える)な態度をとるけれど、それは私が本当に怒らせた時だった。
そして、かがみは…………、
217カケラ 19-2/7:2008/03/09(日) 04:13:52 ID:niT7CuTg
「!!」
後で『鍵』とは違う『気配』を感じた。
「誰?!」
気を全身に放ち、警戒したままそっと後を振り向く。
暗がりの中、そこに立っていたのはボロボロの布を身に纏った明らかに不振な男の人だった。
「ぐっしっしっし、いやぁ、こんな所で逢えるとはねぇ」
その笑い方、癇に障るから止めてくれない?
見るからにホームレスの恰好をしている……が、ホームレスにありがちな独特の悪臭は無い。
街灯に照らされ、雪に反射され、ぼんやりと見える薄汚いボロ布も、わざとそうしている様に思えた。
背は高く、おそらく私のお父さんくらいあるだろう。
つまり、彼はホームレスではなく、ホームレス『風』の変人である。
一体、何のために?
「こんな寒い中ご苦労だね。捜し物かい?」
雪で凍り付いた無精髭が、ニヤける口に連動する。
……この声、何処かで聞いた事がある様な?
「ええ、まぁ」
私が無愛想にそう答えると、彼は向こうを指さして、こう言った。
「しっしっし、探すんならあのお寺の方を探してみな。
 きっと見付かりますぜ。ぐっしっしっし。」
彼が指さす先には『上行寺』というお寺があった。
「ああ、どうも」
私はわざと顔を下に向けたまま、『わざと』無愛想に礼を述べ、その場を離れた。
「ぐっしっし、安心しな。オレはお前さんに手を出そうという気は無いさ。しっしっし」
それ、私を余計警戒させる事になるから。

夜のお寺ほど不気味なモノは無い。
が、不気味に感じるのは幾多もある怪談話のせいであり、
幽霊に鉢合わせして酷い目に遭う事はそう滅多にない。
それは神社にも同じ事が言えるけど、鷲宮神社でそう言った話は『そこに住んでる本人』ですら聞いた事が無いし、
私もそこで幽霊に遇った事は一度も無い。
でも、やっぱり幽霊には遇いたくない。だって何されるか分かったもんじゃないからね。
私にだって恐いもの位あるんだいっ!!
さて、私が意識を『気配』に集中すると、自然に足が本堂の裏手へと赴いた。
その裏手は、墓地。
ちょっと嫌だけど、幽霊が出ない事を祈りつつ、裏手の墓地に進入する。
無名の小さな墓石がズラリと並んだ辺りで、何かが光っているのを感じた。
そこに最も強く『気配』を感じる。間違いない。『鍵』だ。
私は墓石と墓石の間に手を延ばし、『それ』に手を延ばそうとするが………、
「ふにゃ?!」
バランスを崩してその場で転んでしまう。
雪の中に沈んだ顔が、ジンジンと痛む。
そういや『北越号での事件』で、私は幾らか怪我をしていた事を今更思いだした。
「?!」
またもや背後で人の気配が。しまった、住職さんには挨拶してなかったんだ。
どう考えても私は不審者です。本当にありがじゅしたー。
「ぐっしっしっし、捜し物は『これ』かい?」
俯せで倒れた私を起こすと、彼は目の前にぼんやり黄色く光る『石』をちらつかせた。
これが、かなたさんの言ってた『星のカケラ』というモノだろう。
私は起きあがって雪を払い、彼から『石』を受け取る。
私の胸の内に秘めている『チカラ』と『石』が持つチカラが一致する。
「ど、どうも」
彼にそう礼を述べて見上げて、私は驚愕した。
「あ、貴方は?!」
「あっはは、やっと気が付いてくれたかい?」
218カケラ 19-3/7:2008/03/09(日) 04:14:20 ID:niT7CuTg
彼は、青森駅で会った青年だった。
無精髭はニセモノで、ボロ布もやはりわざとそう作ったらしい。
そして、雰囲気と声から予想していた通り、彼は私の父・泉そうじろうの若き姿だった。
ボロ布で出来た服と頭巾を取った彼は、あの時と同じ詰め襟姿であった。
ところで、学校はどうしたの?
「いやぁね、こんな可愛い子がオレの地元でうろうろしているからさ、
 何があったんだろうと思って尾行していたのさ」
どう見てもストーカーです。ありがじゅしたー。
それに貴方の地元は富山じゃなくて、能登町の矢波でしょ?
ていうか、青森で会った時と明らかに喋り方が違うし。
やっぱり私の父は学生時代からこんなんだったのか。
こんな父親と数年後結婚した母親──かなたさん──は、もしかしたら相当な変わり者かも知れない。
「へぇ、キミも泉って名前なんだ。へぇ」
恥ずかしいから苗字でも呼ぶのはやめてくれる?
「でも、『こなた』って名前は変わってるね」
えーっと、名付け親は貴方なんですけどねぇ。
「でも、だからと言ってホームレスの恰好なんてしなくていいでしょ?」
「いやぁ、オレがこんな所に居たらきっと驚くと思ってねぇ。だからこんな恰好をしていたんだよ。
 いやぁ、寒かった寒かった」
「だから、そっちの方が驚いたって」
『普通』にしていれば誰にでも自慢出来る父親なのだが、蓋を開ければこんなんだ。
ああ、ちょっとショック。でもお父さんらしくていいや。

「そう、それで、だ」
「なに?」
「これを渡そうと思って」
「へ?」
今までのは前置きだったんデスカ?
「まあ、受け取っておくれ」
そう彼が渡したのは、またしても茶封筒。中身は乗車券と急行券が1枚ずつ。
行き先は、水の都・大阪。
「突然だがキミに渡すように頼まれてね。オレの用はそれだけ」
そう彼が言い終えると、富山港線の電車は富山駅のホームに滑り込み、
ガクンという衝動と共に所定位置にぴたりと停止した。
「じゃあ、気をつけて」
「ちょっと待って!!」
地下道の階段を降りようとする未来の父親を呼び止める。
「この切符、『誰が』渡せって言ったの?」
これも現代へ帰る『鍵』となるに違いない。だから、彼に訊いた。
しかし……、
「すまん、これだけは言えない。キミの好きな言い方だと『禁則事項です』ってトコかな?」
そのネタ、何で知っているの? いやいや、ツッコミ所はそこではない。
「本当にすまない。そういう約束でね」
ボロ頭巾を被った青年は優しく頬笑んだ。その笑顔の裏には、少しだけの寂寥感。
「それじゃ、オレはそろそろ行くよ。じゃあな、『泉こなた』さん」
彼は、そう言って私に手を振り、そのまま地下道の階段を降りて消えていってしまった。
219カケラ 19-4/7:2008/03/09(日) 04:14:41 ID:niT7CuTg
視界が白一色に変わった。
雪ではない、もっと暖かく、ふんわりとした、『何か』。
こういう時、どう表現したら良いのだろう。
お父さんと違って私には言葉のバリエーションというモノが皆無に等しい。文系なのに。
そんな事を思っていると、ふと、視界の向こうに、少女の姿が見えた。
天も地も前後左右も真っ白な空間の中にぽつんと立つ、少女。
少女……と言っても私より背は高い。真っ白なワンピースに藤紫色の長いツインテール。
思ったよりも白く、程よい体格の少女。後ろ姿だけど、すぐに誰だか分かった。
私の大好きなひと。一番大切なひと。
その少女が私に気付いたのか、くるっとこちらを向いて、微笑みかけてきた。
『……………』
何も言わず、笑顔で手を振るかがみ。
今、一番会いたいひと。
『かがみー!!』
私は彼女に向かって走り出す。駆け足は陸上部のみさきちにも負けないぞ。
たったったったったっ
『早く早くー!!』
かがみが私を呼んだ。
優しい笑顔で。
『待ってー!!』
『置いてっちゃうわよー!!』
かがみが走り出した。
早く追いつかなきゃ。
『早く早くー!!』
『だから待ってよー!!』
いくら走っても追いつかない。
一生懸命走っているけど、追いつかない。
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、
息が切れる。
『早くおいで〜!!』
おかしい。
どんなに走っても彼女には追いつかない。
右も左も分からない真っ白な空間。
『かがみ〜!!』
『ほら、早く〜!!』
私はひたすら走り続けた。
走って走って、兎に角走りまくった。
そして、ついに。
『はぁ、はぁ、はぁ…………、はぁ……………』
『早くおいで〜!!』
かがみの声がどんどん遠ざかる。
『待っ………て、か…が………み』
急に視界が真っ暗になり、激しい目眩が起きる。
痛い、苦しい、誰か、助けて。
かがみ!! みさきち!! ゆーちゃん!! お父さん!! お母さん!!
220カケラ 19-5/7:2008/03/09(日) 04:15:00 ID:niT7CuTg
ふと、真っ黒な暗闇の中、白いワンピースを着た少女が現れた。
かがみと同じ、藤紫色の髪。こちらはショートヘアだ。
カチューシャ風に結んだリボンがトレードマーク。どこかふんわりとした雰囲気の少女。
『非道いよ、こなちゃん』
何で私の名前を知っているの?
『非道いよ、こなちゃん』
何故? 私は『知らない』のに。
『だ、「誰」?』
『本当に「覚えていない」の? 本当に「忘れちゃった」の?』
『…………………』
分からない。
『非道いよ、こなちゃん。私のこと………私のこと…………うっ………うっ……………』
少女はその場でうずくまる。嗚咽が真っ黒な空間に響き渡る。
少女の柔らかそうな頬を流れる、一筋の、涙。
彼女は、『泣いていた』。
『うっ……うっ…………好きなのに……………好きなのに……………』
『好きって……私の事?』
『好きなのに………えぐっ………うっ…………こなちゃんの…………こなちゃんの…………』
『ごめん』
『ばかぁぁぁあああああああああ!!!!!!!!』
彼女は大声でひたすら泣き続けた。
『ばかぁ、ばかぁ、こなちゃんの、ばかぁああああああ!!!!!!』
ひたすら、ひたすら、彼女は泣き続けた。
泣き続けて、泣き続けて…………。

ガン!!!!!

「痛っ〜〜〜〜、!?」
気付いたら、私は寝台列車のベッドの中に居た。
あれ? 私、どうしていたんだろう?
ひょっとして、夢を見ていた?
221カケラ 19-6/7:2008/03/09(日) 04:15:32 ID:niT7CuTg
全く記憶がなかった。
私が富山駅に戻り、未来の父親となる泉そうじろうと別れてから、夜行列車に乗るまでの記憶が。
実を言うと、半年前ばかりか、私は時たま意識が吹っ飛ぶようになった。最初は夏休み明けの最初の授業。
たまに居眠りをする所を(特に)黒井先生からゲンコツで叩き起こされるのだが、
この時ばかりは違っていた。
みゆきさんと────(誰だったっけ?)、『もう1人の友達』に心配され、保健室に連れて行かれたんだ。
あの時保健室で世話になったのは、去年体育の授業で突き指をした時以来だった。
10月の最期の試験で吹っ飛ばなかったのは、不幸中の幸いか。
その後も、電車の中で吹っ飛んだり、歩いている途中で意識を失う事が多く、
秋の終わりにはお父さんに連れられて幸手総合病院で検査を受けることとなった。
しかし、特に異常などは無く、夜は早く寝るようにと言われただけだった。

この時代に飛ばされてからは、あの事件以外では初めて意識が飛んだ。
いや、意識が無ければ列車には乗れない筈。飛んだのは『記憶』の方だ。
記憶………そう言えば、気掛かりな事が1つだけ、ある。
さっきの夢にも出てきたけれど、私には『どうしても思い出せない』人が一人だけ居る。
お父さんやゆーちゃんは勿論、かがみやみゆきさん、みさきちや峰岸さん、
ゆーちゃんやみなみちゃん、ひよりん、ゆい姉さんにななこ先生、近所のおばさん、
みんな思い出せる。
けれど、1人だけ、思い出せない。
誰だったっけか?
ただ、ものすごく大切な、少なくとも私の数少ない『友達』の1人だった、と思う。
もしかしたら、私を飛ばした人が、意図的に記憶を『消した』とか?!
まさか。そんなこと出来る筈が無い。
「そんな事、出来る筈が無いよね」
いや、
待てよ?
私は、この時代では『星のチカラ』とやらが使うことが出来る。
常磐色の炎。今第二期が放映中のアニメを思い出す。
ラノベヲタクのかがみも原作で知っていたから、話が通じて嬉しかったんだよね。
まぁ、そのかがみは「アンタと違ってちょっとだけ読んだ事があるだけだ」とは言ってたけど、
その心の内は相当喜んでいた事は手に取るように分かった。素直に喜べばいいのに。
かがみが16巻全部揃えて、更に外伝とコミックス版とガイドブックまで持ってるの、知ってるんだかね。
それはさておき、私が持つ『チカラ』は私が自分で手にしたモノでも無ければ、
アッチの世界の人と契約した訳でも無い。幸手に人間喰らいの化け物はまず出ないと思うし。
さては、第三者が私にチカラを与えたとか。
その対価として私から『ある人』の記憶を全て取り去った、と。
じゃあ、何の為に??
ああ、やっぱり考えるのは後回しにしよう。
急に意識や記憶が飛んだり、妄想とリアルがごっちゃになる辺り、
私はそろそろ『終わり』が近付いているのかも知れない。


いや、まさかね。
『本当にタイムリミットが迫っている』なんて、この時は全然思わなかったよ。
生身のカラダはゲームの様にリセットが効かない。だから、終わりが訪れればそこでジ・エンドとなる。
222カケラ 19-7/7:2008/03/09(日) 04:16:18 ID:niT7CuTg
大阪行きの寝台急行「きたぐに」号は、「ゆうづる」号と同じ3段ベッドだった。
が、「ゆうづる」と違ってベッドの向きが90度違うし、ベッドの幅も狭い。
それでも、私が寝ている下段はまだマシな方で、上はもっと狭かった。(上2つは空っぽだった)
いくら華奢で小さい私でもね、この幅は狭いって。これが昭和クォリティなんだろうね。
ベッドが3段あるので、当然一区画辺りの高さはそれほど無い。
寝られればそれで良い。本当に機能一辺倒な時代だ。悪くはないけどね。
通路側には壁に収納する折り畳み椅子が用意されており、数人の旅行客が浴衣姿のまま真っ暗な日本海を眺めていた。
行きの奴は「電車」だったのでモータの音が五月蠅かったのだけど、
こちらは機関車が引っ張るタイプなのだろう、車内はそれなりに静かだった。
可哀相なのは隣の車両。ガラガラガラと発電用と思われるエンジンの音が車内に響き渡り、寝心地は悪そうだ。
ちなみに現代のきたぐには「ゆうづる」と同じ電車で、車体の色だけが違う。
矢波へ幾たびに何度か見た事があるけれど、私が大阪にでも引っ越さない限り、乗る事は無いだろう。

使い勝手の悪い水道で顔を洗い、それから自分のベッドへと戻る。

そうだ、『星のカケラ』を探す時にかがみの事を思いだしていたんだった。
あの挙動不審な未来のお父さんに声を掛けられたせいで思考を中止していたんだった。
まぁ、お陰様で『カケラ』は見付かったんだけどさ。

ツンデレと言うとすぐ怒るかがみ。
恥ずかしがり屋で寂しがり屋。そのくせ素直じゃない。
プライドが高いというよりは、ただの意地っ張り。
気が強い様でいて、実はガラスの様に脆い。
そして、私に、甘い。
あまり悪戯をするとすぐ怒る。
どうでもいい話でもちゃんと聴いてくれる。
ボケたら必ずツッコんでくれる。
好きなアニメの原作がラノベだと、その話題に乗ってくれる。
一緒にテレビゲームで対戦もする。
とにかく世話好きで、私にも色々と世話を焼いてくれる。
確か双子の妹がいて、面倒見も良い──────

───────双子の妹?!
「も、もしかして、あの夢に出てきた子?!」
むくっと起きあがる。そして、

ガン!!

「あたたたたたた……」
またもや頭をぶつけた。


早朝6時半────。
急行「きたぐに」号は、静かに、静かに、大阪駅のプラットホームに滑り込んだ。
223カケラ 間:2008/03/09(日) 04:18:00 ID:niT7CuTg
間.

崩壊事故から2日目、夕刻。
何ともミステリアスな少女が、春日部市の中心部を歩いていた。
見た目は、12歳くらい。少なくとも彼女が小学生
──それも、春日部から十数キロ北にある桜園市立桜園小学校──
であることは、その服装が当校の制服であることから明らかであった。
桜園小学校は公立にしては珍しく、制服があった。

そんな彼女が春日部市民病院に姿を現した。
入口付近で稜桜高校の制服を着ているが、とても高校生には見えない少女とすれ違ったが、
彼女は少女を一睨みし、嘲笑うかの様な不気味な笑みを送り、そのまま奥へと進んだ。
向かった先は、集中治療室。
その中では、昨日の事故で意識が戻らぬまま眠っている泉こなた・柊かがみ・柊つかさの3人が居た。
アイボリーに塗られた分厚い鉄板の扉の前で、彼女は呟いた。
「あなた達も、そろそろ『用済み』になるわね」
そして、クスリと鉄壁の向こうの3人に向けて、嘲笑の笑みを送る。

病院を後にした少女は、春日部駅前で別の稜桜高校の女子生徒とすれ違った。
先月都内のミッションスクールから転校した、永森やまとだった。
東京都民である彼女が転校した経緯はさておき、
少女以上にミステリアスなオーラを放つやまとは、すれ違った少女に開口一番、こう忠告した。
「あまり、調子に乗らない方が良い。貴方の願いは、決して叶わない」

少女は彼女の忠告を無視し、代わりにこう言った。
「『妹』の為なら私は手段を選ばない。例え何千人の犠牲が出ようとも、ね」
桜園小学校の制服を着たこの少女、肩まで伸ばした髪は縹(はなだ)色であった。
224久留里:2008/03/09(日) 04:21:42 ID:niT7CuTg
以上でございます。

うちの知人の娘(小5)が典型的なツンデr(ryである件。
性格はひかげよりも、かがみに似て(ry
225名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 05:17:57 ID:xms+LP05
>>214
GJです
みなみちゃんがかがみを見つけた日、っていうのは
誕生日会の前日だから…
かがみがこなたのことを追いかけて、学校を出て行った直後にあたるのかな。

改めて読み返してみましたが、二人がちゃんと笑い合うことができるようになれるかが心配
226名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 07:00:33 ID:A4P9RqU9
>>224
かがみ→岡山へ
こなた→大阪に到着
つかさ→大阪へ

ついにこなたも大阪へ……もしやつかさと合流するのか!?
でもこなたは思い出せるのか?
そして大阪を離れたかがみは!?
さらに間で登場したやまとの言葉の意味は!? 続きに期待。

そんな中、俺はちょっとこれから大阪行ってくるw赤穂線経由でwww
227名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 07:02:06 ID:zGMxK2EH
【中国】少林サッカー主演女優などスター三人、無修正写真流出「セックス?スキャンダル」

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[?思慧]-37P-
http://4.idol-photo.org/page97.php?tid=13/2008-2-9/63187_2.shtml
http://4.idol-photo.org/page97.php?tid=13/2008-2-9/63187_1.shtml
http://4.idol-photo.org/page97.php?tid=/13/2008-2-9/63187.shtml

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[梁雨恩]-40P-
http://4.idol-photo.org/page97.php?tid=13/2008-2-9/63186_2.shtml

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[??思]-10P-
http://idol.idol-photo.org/page97.php?tid=/13/2008-2-9/63185.shtml
228名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 10:27:48 ID:rtNOWvdO
>>224
やまとktkr!
229名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 14:19:01 ID:H7vKHYd2
縹色って「明度が高い薄青色」らしいな…誰だ…?
230名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 14:25:40 ID:iogEdNx/
>>214
かがみん、随分キてるなぁー
早く解決してあげてほしいけど、やきもきする姿もそれはそれで・・とか思いつつ続き待ってます
231名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 14:56:25 ID:oL41FHUp
>>214
あなたの作品が大好きです!!!!
続きまってます!
232名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 16:27:21 ID:dmhDL3Oz
カップリング特に無し、童話「シンデレラ」のパロディ投下します。非エロ。
ひよりキャラスレの書き込みを見て思いついた話です。インスピレーションをくれた620さんに感謝を。
 むかしむかしあるところ、元ネタの設定としては中世フランスあたりに、ひよりという名の可愛らしい女の子がいました。
 ひよりは良いとこの生まれで、幼い頃から何不自由なく暮らしていました。
 そんなひよりが思春期に差し掛かる頃、年上の友達から「これ面白いよ」と、ある漫画を勧められました。
 801系同人誌でした。内容としては比較的ソフトな方でしたが、朱に交われば赤くなる。それをきっかけにして、ひよりは瞬く間に腐女子としての下地を作り上げてしまいました。
 ノートへのイラスト描きを手始めとして、本格的な漫画創作に至るまでそう時間は掛かりませんでした。よく読みよく描くひよりは、視力が落ちたため眼鏡っ子になりました。
 そんなある日のこと。ひよりのお母さんが病で亡くなってしまいました。お父さんもひよりも、深く嘆き悲しみました。
 しばらく経ってから、お父さんは母のいないひよりを不憫に思い、とある未亡人と再婚をすることにしました。
 お父さんの再婚相手、そしてひよりの継母となる人は、みゆきといいました。え? ええ、はい。確かに言いたいことは色々有ると思いますけどね、他に適当な人が……いえ、決してみゆきさんが老けて見えるとかそのようn

 前任者が失踪したため、ここからナレーターを交代します。
 継母のみゆきには三人の連れ子がいました。上からかがみ、つかさ、こなたといいます。三人ともひよりより年上でしたので、義理の姉ということになりました。
 家族も増えて賑やかになれば、ひよりが母を失った悲しみも次第に癒されていくだろう。お父さんはそんな風に考えていたのでしょう。
 ところがみゆきが再婚した目的は、ひよりのお父さんが持つ財産目当てだったのです。
 再婚から間もなく、お父さんも急な病で亡くなってしまいました。泣きっ面に蜂とはこのことです。
 お父さんが死んでしまうや、意地悪な継母とその連れ子達は本領を発揮しました。ひよりを屋根裏部屋に追いやり、召使いの服を着せて、来る日も来る日もこき使い始めたのです。
 逆境は人を強くします。
 実の両親の死。突如みじめな境遇に落ちた自分。このような環境の中で、ひよりは飽くことなく同人作家としての技術と妄想力に磨きを掛け続けました。
 休む暇もなく命じられる家事の合間に、思いついたネタをメモし、僅かに与えられた食事と睡眠の時間を削って漫画の執筆に当てました。
 強烈なバイタリティと創作意欲が、ひよりを支えていました。
 ただ一つ困ったのは、画材のことでした。漫画を描くのに最低限必要なのは紙とペンです。召使いとなったひよりでは、その二つを揃えることもままなりません。
 買い貯めていた原稿用紙とインクが底をついた時、どうしようかと思案しました。
 ひよりは小枝を削って尖らせ、それにかまどの灰を付けてペン代わりにしました。それからチラシの裏を原稿用紙の代わりにしました。涙ぐましい努力です。
(いつか本格的な画材と、パソコンとタブレットと複合機とフォトショップが欲しいなぁ……)
 そんなことを思いながら、ひよりは小枝と灰のペンで毎日せっせと漫画を描きます。
 しょっちゅうかまどの灰を拾って汚れているひよりは、いつしかシンデレラ(灰かぶり)と呼ばれるようになりました。
「お〜い、シンデレラ〜!」
 義姉のこなたが呼ぶ声に、シンデレラは窓掃除をしている手を止めて振り向きました。見ればこなただけでなく継母のみゆき、かがみ、つかさと、意地の悪い家族みんなが揃っていました。
「何でしょうかお姉様?」
「今日は夕飯の支度しなくていいから。今夜は私達みんな、お城の舞踏会に行くからね」
 えっへんと自慢げに胸を張るこなたですが、シンデレラとしては、継母と義姉がいなければ思う存分漫画を描いていられるので万々歳でした。舞踏会? 何それ食えんの?
「そうスか。分かりました」
「……シンデレラ。羨ましくないの?」
 淡々としたシンデレラの反応に、長女のかがみが訝しげに尋ねます。
「ええ。私は分相応ってものを弁えてますから」
 実際には、舞踏会への興味<漫画、というだけなのですが、こう言っておけばいじわるな継母と義姉達は満足するだろう。そう思ってシンデレラは答えました。
「ふーん……ま、確かにね。あんたみたいに地味なのが舞踏会なんか行っても、誰にも相手――」
「そろそろいいスか? 仕事途中なんで」
「え? あ、うん……」
 嫌みったらしい台詞を中断されたかがみは、鼻白んで口を噤みました。いじわるな義姉としては、どうにも締まらないキャラです。
「シンデレラ。今日の舞踏会は国中の若い娘が集められて、王子様が花嫁選びをする場でもあるのですよ」
 窓掃除を再開するシンデレラの背中に、継母のみゆきがそう告げます。
 シンデレラは振り向きもせずに一言。
「異性同士の恋愛とか意味が分かりません」
「意味が!? どんだけ重症なんだひよりん!」
 つい本名の方を出してしまったこなたです。
「まあ、いいでしょう……とにかく今夜はあなたはお留守番です」
「了解っス」
「我々三人は玉の輿を狙って美少年と噂の王子様とフラグを立てまくってくるよ!」
 こなたは握り拳を振り上げて気合い十分です。
「そういえば王子様だけじゃなくて、そのお付きの従者さんも格好いいんだよね」
 それまで空気だった次女のつかさがそう言った時、シンデレラの動きがピタリと止まりました。
「あ〜そうらしいね。いつでもどこでも王子様と一緒だから、ちょっとあやしい関係なんじゃないかって噂もあるそうだよ」
「アホくさ……そんなのありえないでしょ」
「分かってないなぁかがみは。実際にどうとかじゃなくて妄想の材料になるだけで一部の人種には十分なのだよ」
 義姉達の会話を耳ダンボにして聞いているシンデレラは、まさしくその「一部の人種」でした。
(迂闊……このような美味しい材料を見逃していたとは……! い、行きたい! 舞踏会に行ってその二人を見てみたい〜!)
 妄想にも限度があります。実際に見聞きすることで、新たな創作の地平が開けることも大いにあるのです。
「それじゃあシンデレラ、お仕事ガンバ〜」
「あ、ちょっ、まっ……お母様! お姉様〜っ!」
 悲痛な叫びも空しく、シンデレラはその夜、屋敷に置いてけぼりになったのでした。
「はぁ〜……王子様と従者さん……見てみたかったなぁ……」
 屋根裏部屋で机に突っ伏しながら、シンデレラはため息をつきます。今夜はがっつり漫画を描こうと思っていたのに、その気力も湧いてきません。
 こんな時にこそ、机の引き出しからドラえもんの一つや二つ出てきてくれればいいのですが、残念なことにシンデレラの机に引き出しは付いていませんでした。
「いや、付いてても出ないだろうけどさ」
「そんなことないですヨ」
「え?」
 まさか本当にドラえもんが!? 不意に聞こえた声に一瞬そう思ったシンデレラですが、どう考えても大山のぶ代の声ではありませんでした。
「Good evening!」
 振り向いたシンデレラの目の前にいたのは、黒いローブを着たハイテンションな少女でした。
「だ、誰!?」
「私は魔法使いのパトリシアでス。パティと呼んで下さイ」
「はぁ……」 
「今夜はシンデレラ、あなたを魔法の力で助けようと思って来たのでス。お城の舞踏会に行きたいですカ?」
「そりゃ、行けるものなら行きたいけど……私には舞踏会に着ていけるドレスも無いし……」
「ですから私が来たのでス! ドロ船に乗ったつもりで安心してくださイ!」
「安心できないだろそれは!」
「間違えましタ。タイタニック号に乗ったつもりでいて下さイ」
「それもダメだろ!」
「ま、細かいことはNo problemでス。では早速準備に取りかかりましょウ。まずはドレスや乗り物なド……」
 パティは不意に言葉を止め、所在なさげに立つシンデレラをじーっと見つめました。
「あの……?」
 何をしているのかシンデレラが疑問に思った頃、パティは口を再び開きました。
「そのためにはシンデレラの体に私の魔力を馴染ませる必要がありまス」
「ふーん」
「というわけデ……」
「ひぁっ!?」
 いきなり小ぶりな胸にタッチされて、シンデレラは驚き固まります。その隙に、パティはシンデレラの体を抱き竦めました。
「なななな何を……!?」
 慌てふためくシンデレラに構わず、パティは服の下にまで手を潜り込ませます。
「ですかラ、シンデレラの体に私の魔力を馴染ませるんでス。こうやるのが一番手っ取り早いんですヨ」
「いやそんなっ、だからっていきなりこんなこと……ちょっ、やめ……アッー!」

 ――数分後。

 解放されたシンデレラはペタリと床に腰を落としました。顔は赤く火照り、呼吸は微かに荒くなっています。乱れた衣服を取り繕いながら、
「もうお嫁に行けない……」
 と、擦れた声で呟きました。どうやらR指定くらいのことを色々とされてしまったようです。
 ショックの大きいシンデレラとは対照的に、パティは非常に満足げな表情でツヤツヤしていました。
「これくらいは役得でス♪」
「ホントにこんなことする必要あったの!?」
「もちろン! ……ほとんどありませんヨ」
 最後の一言はもの凄い小声だったのでシンデレラには聞こえませんでした。
 大人の階段を多少歪んだ方向に半歩上ったシンデレラですが、これも舞踏会へ行くためと気を取り直しました。
「じゃあ頼むよパティ。魔法の力で」
「Yes ma'am!」
 パティはうなずき、黄色く輝く玉をいくつか取り出しました。全部で七つあり、それぞれ数の違う星の印が描かれています。
 パティはそれを屋根裏部屋の床に並べると、深呼吸をしてから呪文を唱えました。
「出でよ神龍! そして願いを叶えたまえーッ!」
「それ魔法違うーっ!?」
 シンデレラの突っ込みなど意に介さず、狭い屋根裏部屋に巨大な神龍が現れました。狭苦しいことこの上ありません。
「さあ願いを言え。どんな願いも一つだけ叶えてやろう……」
「こちらのシンデレラがお城の舞踏会に行けるだけの用意をしてもらえますカ?」
「よかろう……」
 神龍が頷くと、次の瞬間シンデレラは眩い光に包まれました。
 光が消えた時、灰で薄汚れていたシンデレラは、どこのお姫様かと思うほど美しい姿に変身していました。純白のドレスにガラスの靴。加えて一流アーティストによるメイクが施されています。
「屋敷の外に馬車と馭者を用意してある。舞踏会の招待状もな。願いは叶えた。ではさらばだ……」
 そう言って神龍は消えていきました。
 いきなり高そうなドレスを着せられたシンデレラは、どうにも居心地が悪そうです。
「ン〜、ビューティフルですネ〜」
「ドレスの方はね。何というか、ドレスに着られてる感じがひしひしと……」
「まあいいじゃないですカ。これで舞踏会にいけるんですかラ」
「それもそっか」
 踊りに行くのではなく、漫画のネタとして王子様×従者を取材するのが目的なのですから。格好など二の次です。
「あ、でも眼鏡は外しておいた方がいいかな」
 シンデレラがそう言って眼鏡に手を掛けた時、
「それをはずすなんてとんでもなイ!」
 突然パティが大声を上げました。シンデレラはびっくりして目を白黒させます。
「そんなの絶対ダメですヨ! 眼鏡っ子が眼鏡を外すなんテ、バナナパフェからバナナを抜くようなものでス!」
「いや、そんなこと言われても……」
「それに眼鏡が無いと王子様の姿もよく見えませんヨ」
「確かに」
 あっさり思い直したシンデレラは、きちんと眼鏡を掛け直します。
「じゃあ早速行ってくるね」
「その前に一つ注意ヲ。魔法の効果は今夜十二時までです。日付が変わったら魔法のドレスや馬車は全て消えてしまいまス」
「え? だってこれドラゴンボールで……」
「あれはパチモノのマジックアイテムなのデ、願い事の効果が長続きしないのでス」
「あーそうなんだ。一応、魔法だったのね……」
 中途半端に納得しながら、シンデレラは馬車に揺られてお城に向かいました。
 舞踏会の会場であるお城の大ホールには、国中から若い娘達が集まっています。どいつもこいつも玉の輿を狙おうと虎視眈々……のはずでしたが。
「あれが、王子様ですの……?」
「確かに美少年だけど……」
「何というか……」

  ざわ・・・
        ざわ・・・

「うわ王子様、背ちっちゃ!」
 誰もが言うのを我慢していたことを、ストレートにぶちかましたのはこなたです。慌ててかがみが口を塞ぎます。
「ちょっ、おまっ……何を……!」
「いやだって本当にちっちゃいし」
「だからってそんな大声で……うわあ、何か偉い人から睨まれてる」
 そう、この国の王子様であるゆたかは、非常に背が小さかったのです。百四十センチもありませんでした。顔立ちも小さな子供みたいです。
 玉の輿は惜しいけど、さすがにあれはちょっと……という女性が少なくありませんでした。しかしごく一部のショタ好きはよだれをたらさんばかりでした。
 当の王子様は、ホール上座の椅子に座りながら、不安げに周囲を見渡しています。やがてその視線が、すぐ傍らに立つ従者に留まります。
 この人こそ、色々噂の種になったりしている従者でした。名前はみなみ。スラリと背が高い美男子で、評判が立つのもうなずけます。
「あの……」
 それだけ声をかけると、みなみはゆたかの顔を見てすぐにうなずき、その手を取ります。
「休憩室の方へお連れします」
 傍輩にそう言って、みなみはゆたかを連れて大ホールを出ました。赤い絨毯の敷かれた廊下をしばらく歩き、王子専用の休憩室としてある部屋へ入ります。
「ねえ、みなみちゃん……どうしても、あの人達の中から私の、その……結婚相手を選ばなきゃいけないの?」
 ソファに座り込むと、ゆたかは沈んだ声でそう問いました。
「はい……王様のお言い付けですので……」
 みなみは静かな口調でゆたかの質問に答えました。途端に、ゆたかの表情が曇ります。
「どうしよう……私は結婚なんて……」
「すぐに結婚するというわけではないでしょう。今夜王子が選んだ方が、許嫁ということになると思われます……」
「どの道、選ばなくちゃいけないんだね……」
「はい……」
「……みなみちゃんは、何とも思わないの?」
「この国に仕える者として、王のご命令は絶対です……」
 みなみは表情を動かさず、淡々と答える。
「ただ――王子の友人としての発言が許されるのならば……」
「うん、いいよ。言って」
「……強引な話だと……思います……」
「……それだけ?」
「……はい」
「そう……」
 ゆたかは俯き、口を噤みます。そんなゆたかを見つめるみなみの瞳には、どうにもならない悲痛のようなものが、微かに浮かんでいました。
(うおおおぉぉおおおぉぉぉおぉ!! あくまで噂だと思ってたら何スかこのモノホンな雰囲気全開なお二人は――っ!!)
 シンデレラ自重しろ。
 じゃなくて、ゆたかとみなみのいる休憩室で、何故か隠れて様子を窺っているシンデレラです。
 少し時間を遡りましょう。
 魔法使いパティに見送られて舞踏会に繰り出したシンデレラは、招待状を見せて城門をくぐった後、ふと思いました。
(普通に舞踏会に出席したって、王子様と従者を直接観察できるチャンスは限られている……それならいっそ――)
 シンデレラは舞踏会の行われている大ホールへは行かず、城の中で情報収集をすることにしました。
 そうと決まれば善は急げです。単独でのスニーキングミッション。性欲をもてあます。
《無茶をしてますネ、シンデレラ》
 不意にシンデレラの頭の中で、パティの声が響きました。
《パティ? どうしてパティの声が?》
《いわゆる一つのテレパシーでス。これも魔法の力ですヨ。それよりシンデレラ、舞踏会に行かないんですカ?》
《うん。せっかくだからネタになりそうな情報集めるのに集中しようと思って》
《そんなことじゃないかと思いましタ。でも素人がお城の中をうろうろしていたラ、すぐに捕まっちゃいますヨ》
《それじゃあ、どうすれば……》
《私が魔法の力でバックアップしてあげまス。こちらで見張りの動きや状況を随時モニターして伝えますのデ、いざという時はこちらの指示に従って下さイ》
《分かった》
《それからもう一人サポートがいまス》
《サポート?》
《はじめましてシンデレラ。本名はひよりだっけ》
《シンデレラでいいっスよ。どちらさまで?》
《私はこう。パティと同じく魔法使いだよ。親しみを込めてこうちゃん先輩と呼んでくれたまえ。このミッションでは潜入データの記録を担当することになった。よろしく》
《こちらこそ、よろしくお願いします》
《私もあなたの得る情報を楽しみにしているよ。頑張ってね》
 パティ、こうとのテレパシーを終え、シンデレラはミッションを開始しました。
 魔法使い二人のバックアップを得たシンデレラは、城中を嗅ぎ回り、あの手この手でゆたかとみなみに関する情報を掻き集めました。
 しばらくして、疲れたので一休みしようと、空き部屋へ忍び込みました。
 その部屋が、ゆたかとみなみが入ってきた休憩室だったのです。パティが二人の接近を知らせた時には、既に脱出のタイミングを逃していました。
 しかしこれはシンデレラにとって僥倖でした。
 ゆたかが王子様だというのは会話からすぐに分かりました。付き添っているのが噂の従者だというのも。
 そしてその二人は、息を潜めているシンデレラの目の前で、まさにど真ん中ストライクなワンシーンを演じているのです。
(望まぬ結婚を迫られる王子と、苦渋の思いでそれを見守る従者……そんな二人の間には熱く激しい絆が……ああ〜! イイッ! 凄くイイッ! 今すぐこの猛る想いを純白の原稿用紙にぶちまけたいッ!)
《シンデレラ。聞こえてる?》
 妄想大暴走なシンデレラに、こうからテレパシーが入りました。
《何スかこうちゃん先輩? 今いいとこなのに》
《一つ気になってね。そちらの様子はこちらでも見えているんだけど……その二人が王子と従者なんだよね?》
《そうっスよ。それが何か?》
《二人とも、女だよ》
《……へ?》
 こうが言うことの意味が分からず、シンデレラの目が点になります。
《間違いない。私ヅカとか好きでよく見てるからさ。上手く変装してるけど、私には分かる》
《なっ、何で……!?》
《多分だけど、跡継ぎの問題かな? ゆたか王子は女に生まれながら、王子として育てられたんでしょう。王が早く結婚させようとしてるのもその辺りに理由があるのかね……》
 呆然としているシンデレラは、こうの台詞などほとんど聞こえていません。
(ゆたか王子が女の子……? それじゃあ従者さんとの関係も普通の純愛……? いや待て)
《二人とも女って言いましたよね?》
《うん。従者の方は、ゆたか王子のために用意されたのかな? あれだけ親しそうなら、お互いの本当の性別を知らないってのはないだろね》
(つまり……薔薇ではなく、百合?)
 その瞬間、シンデレラの脳内でピーナッツのような物体が弾けました。
(百合!! 上等っ!! いいじゃないか百合ネタも!! こちとらあのカタコト魔法使いに青年誌レベルまでやられた身だ! 今さら気後れなどするもんか!!)
 何かが吹っ切れたシンデレラは、今まで薔薇系成人向けとして考えていたネタを全て脳内から取っ払い、百合ネタを再構築しはじめます。
「王子、そろそろ……」
「うん……」
 隠れた所で妄想を爆発させているシンデレラを尻目に、ゆたかとみなみは部屋を出て行きます。
「あっ、追わなきゃ」
 すぐさま二人を追いかけようとしたシンデレラに、パティからテレパシーが入ります。
《王子達はどうやら大ホールに戻るようでス。潜入任務はそこまでにしテ、舞踏会に参加した方がいいのでハ?》
《う〜ん……出来れば間近で観察したいんだけど、ステルス迷彩とか無い?》
《今は持ち合わせてないですネ》
《そっか……仕方ないね》
 シンデレラは名残惜しそうに潜入任務(というか違法な探索)を終え、大ホールへ向かいました。

 シンデレラが大ホールへ足を踏み入れると、舞踏会に集まっていた人々の間に、一際大きなざわめきが広がりました。
(何? 何かあったの?)
 シンデレラは状況が分からず周囲を見渡しましたが、何を隠そうシンデレラ自身がそのざわめきの原因でした。
 自覚していませんが、元々の素材が悪くない上、魔法で用意された極上のドレスとメイクにより、シンデレラはそんじょそこらの幼なじみやメイドさんなど及ばないほどの萌えキャラと化していたのです。あとはケモノ耳さえあればパーフェクトだウォルター。
「何者だあれは……?」
「どこのご令嬢かしら?」
「もしやどこかのお姫様なのでは……」

  ざわ・・・
        ざわ・・・

「あ。シンデレラじゃん」
 あっけらかんと言ってのけたのはやはりこなたでした。横のかがみはすぐに否定します。
「何言ってんのよ? シンデレラがこんなところにいるわけないでしょ。ドレスも招待状も持ってないんだから」
「でもあの眼鏡とおでこは間違いないと思うけど」
「ただのそっくりさんじゃないの?」
「うーん、そうなのかな……?」
 言われてみれば、シンデレラにしてはあり得ないほどの萌えオーラ。そう思い、さすがのこなたもつい半信半疑になってしまいました。
 シンデレラの持つ萌え度のキャパシティを見誤っていたのは、こなたにとって一世一代の不覚というべきでしょう。
 それはさておき、シンデレラはホールの上座にゆたか王子と従者みなみの姿を見つけるや、蜜に吸い寄せられる蜂のようにそちらへと歩を進めます。
 端から見れば、麗しき乙女が臆することなく王子の元へ向かっていくという、大変絵になる光景でした。
 気が付いたら、シンデレラは王子様のすぐ目の前に立っていました。
(し、しまった! 無意識のうちにこんなところまで……!)
 ゆたかは少し戸惑ったような目でシンデレラを見つめています。何か言わなければいけない雰囲気です。
《シンデレラ! もうこうなったら当たって砕けろでス! 粉砕・玉砕・大喝采!》
 パティの言葉に後押しされて、シンデレラは腹を決めました。女は度胸です。
「王子様。私と一曲踊っていただけますか?」
 こうなると人間不思議と肝が据わるもので、シンデレラは表面落ち着いて台詞を出すことが出来ました。
 ゆたかは戸惑いを露わにしてみなみに目をやりました。みなみはシンデレラの顔をしばらく見つめてから、ゆたかに向けて優しく微笑み頷きました。
(何という旦那っぷり……私は人畜無害と判断されたのかな?)
 そんなことを考えているシンデレラに、ゆたかから手が差し出されました。ダンスの申し出を受けてもらえたのです。
 誰かが楽団へ指示を出しました。軽やかなワルツがホールに流れ始めます。
 ダンスなどやったことのないシンデレラですが、そこは気合いと根性でカバーです。元気があれば何でもできると昔の人も言っていました。
《ほう、なかなか独創的なダンスだねぇ。上手いもんだ》
《いっぱいいっぱいなんで茶々入れないで下さいこうちゃん先輩!》
 どうにかリズムに乗ってステップを踏みながら、シンデレラは裾を踏んでずっこけるなどのお約束はしないかと冷や汗ものです。
 ゆたかの方は、さすがにしっかりダンスの練習をしてあるようで、落ち着いてシンデレラをリードしています。ただ背丈の差があるせいで、シンデレラがリードしているように見える場面が多々ありましたが。
 しばらくして動きに慣れてきたシンデレラは、ゆたかの顔を見る余裕が出来てきました。
(確かに……女の子だ)
 職業柄(?)人の顔を観察するのには慣れているので、これだけ間近で見ればシンデレラにも分かりました。
 確信したところで、既に百合ネタウェルカムなシンデレラは何のショックも受けませんでしたが。
 シンデレラの思惑はさておき、ゆたかは緊張しているのか、華麗にステップを踏みながらその表情は硬いです。
(初対面の私が相手だからかな……もし相手があの従者さんだったらそれはもうさぞかし――)
 シンデレラはダンスをしながら妄想に浸っています。いついかなる時でも妄想が可能なのは、同人作家として必須のスキルです。
「あの、どうかされましたか……?」
「はうあっ!?」
 ステップを踏みながらトリップ状態になっていたシンデレラは、ゆたかに呼びかけられ慌てて正常な意識を取り戻しました。
「す、すみません王子様……緊張していたもので」
「気にしないで……私も、結構緊張してるから。実は本番でダンスを踊るのは、これが初めてで」
「そうだったんスか?」
「ええ……練習はよくしてたんだけど」
「……あの従者さんを相手に?」
「え? どうして分かるの?」
「……勘ですよ」
 曲が終わりを迎えました。無難に踊り終えた王子とシンデレラに、周囲から拍手が送られます。
 シンデレラは見様見真似でなるべく上品にお辞儀をしました。
「ありがとうございました、王子様」
「こちらこそ。ところであなたのお名前は?」
「ひよりです。人からはシンデレラと呼ばれています」
「シンデレラ……?」
「私も王子様に聞きたいことがあります」
 シンデレラは不意に声のトーンを落としました。
「王子様……あなたは、女性ですね?」
「!!」
 ゆたかの目が驚愕に見開かれました。
「な、何を……!」
「間近で見て確信が持てました。そしてあの従者さんも同じです」
 ゆたかは怯えたような目で周囲を見渡しました。ダンスの直後なので、二人の会話が聞こえる場所に人はいません。
「誤解しないで下さい。私は決して、王子様達に危害を加えようとは思っていません」
シンデレラは真剣な目でゆたかの目を見据えます。
「王子様、よろしければお話をさせてもらえませんか? 私のような者が、僭越なことだと承知してはいますが……」
「……」
 ゆたかはしばらく黙って考え込んだ後、軽く頷いてからシンデレラの手を引きました。壁際に控えていたみなみの所へ行き、耳打ちをします。その途端、みなみも驚いた様子でシンデレラに視線を向けました。
 シンデレラはゆたかとみなみに先導され、大ホールを出て廊下を歩いていきます。
 シンデレラがゆたかと話をしたがったのは、漫画のための取材というのもありますが、二人をこのまま放っておけないような気がしたからです。
 やがて、先ほどシンデレラも隠れていた休憩室にやってきました。
 ドアを閉めると、まずみなみが口を開きました。
「シンデレラと言いましたね」
「はい」
「言いたいことが二つあります。まず一つ。私達の性別について、決して他言をしないように」
「分かってます」
「それからもう一つ。出来ればこのまま城を去っていただきたい。話せることはありませんし、話す必要もありません。むしろこれはあなたのために言っています。シンデレラ」
 その言葉は、忠告というより警告の響きを持っていました。
「だが断る」
 しかし意外に頑固一徹なシンデレラはそれしきで引き下がりはしませんでした。
「私には事情は分かりません。でも、このままじゃ誰も良い結果にならないのだけは分かります」
「あなたが首を突っ込むようなことではありません……」
「だから言ったでしょう。事情なんて分かりません。私が言いたいのは……あなた達二人は大馬鹿ってことっス」
「なっ……!?」
 みなみは怒るよりも呆れてしまいます。
 一国の王子とその従者を馬鹿呼ばわり。場合によっては首が飛んでもおかしくない発言です。しかしシンデレラは言わずにいられませんでした。
「今夜の舞踏会は王様の言いつけで、無理矢理に結婚相手を決めさせられるのでしょう? このままじゃ王子様は望んでもいないのに結婚させられるんスよ。しかも同性と!
 こちとらネタとしては大歓げ――いや何でもありません。とにかく! 王子様の一生を台無しにしかねない瀬戸際でしょう!」
 シンデレラは口角泡を飛ばして捲し立てます。
「いい加減に――」
「待ってみなみちゃん」
 身を乗り出しかけたみなみを、ゆたかが留めました。
「この人と少しお話をさせて」
「しかし……!」
「お願い」
 真剣な眼差しのゆたかに、みなみは渋々その場を譲りました。
「シンデレラさん。どうして私のために、そこまで必死になってくれるの?」
 王子様の質問に、シンデレラはしばらく逡巡してから、口を開きました。
「私は……人が生きたいように生きられないのが嫌なんです。自分でも、他人でも。お節介なことだと自覚はしてますけど……どんな境遇であっても人は、そうなりたい、そうありたいためにあがくことは出来ます」
 シンデレラは一旦言葉を句切りました。改めてゆたかの目を見据え、軽く深呼吸してから話を続けます。
「でも王子様。あなたは、自分がやりたいこと以前に、自分自身の正体を偽らされている。そしてあがくことすら許されていない。違いますか?」
「……」
 ゆたかは悄然と肩を落とし、シンデレラの言葉を無言で肯定しました。
「王子様。私には王室やお城の世界でのことなど、難しいことは分かりません。でも、どんなに厳しく辛い場所でだって、自分が変わろうと努力すれば、少しずつでも何かが変わるはずです」
 シンデレラはゆたかの手を取り、熱っぽく語り続けます。
「どうか勇気を出して下さい。ずっと秘密にしていられることなどありません。今夜私が気付いたように、誰かに気付かれる日がいずれまた来ます」
「でも……私は……」
「一人では不安かもしれません。しかしあなたには、いついかなる時も支えてくれる人がいる。そうでしょう?」
 シンデレラはそう言って、ゆたかの傍らに寄り添うみなみへ視線を送りました。しかしみなみが少々厳しい目をしていることに気付き、ハッとします。
 シンデレラはゆたかの手を取り、かなり近い位置まで顔を寄せていました。なかなか際どい構図です。
「すっ、すみませんつい! 興奮して……」
 すぐさま手を離し、しどろもどろになって謝ります。
(漫画のネタ探しに来たのに、私が漫画みたいなことしてどーする!)
 心の中でセルフ突っ込みを言えるシンデレラです。
 シンデレラがゆたかから手を離すと、みなみの表情が柔らいでいました。
(……つまりアレ? ジェラシー? 「私のゆたかに近寄るな」ってこと? うおおおおっ、意外に焼き餅焼きなみなみさん萌え〜!)
 やはり舞踏会に来てよかった。シンデレラはしみじみそう思いました。
「シンデレラさん」
「はひっ!?」
 またしても妄想世界へダイブしかけていたシンデレラは、ゆたかに対してつい素っ頓狂な返事をしてしまいました。幸いそれは気にされなかったようです。
「勇気を出して行動すれば、今より良い方向へ向かえるかもしれない……確かにあなたの言うとおりだね」
「王子、それは……」
 何か言おうとしたみなみを目で制して、ゆたかは噛みしめるように言葉を継いでいきます。
「私も、このままではいけないと感じていたから。今夜あなたに会えて良かった……今すぐに変わるのは無理だけど、私もこれから、少しずつあがいてみるよ」
 そう言うと、今度はゆたかからシンデレラの手を取りました。
「ありがとう、シンデレラさん……」
 澄んだ瞳で見つめられたシンデレラは、不覚にも胸を高鳴らせてしまいました。
(ぐはぁっ……何という破壊力……この人が真っ当にお姫様として育っていたら、確実に我が国の男達の士気を変えていた……!)
 アゴに良いパンチを貰ったようにフラフラしているシンデレラを、ゆたかとみなみは訝しげに見ていました。
(あ、そうだ)
 ふと思い出したことがあり、シンデレラは頭の中でパティへ呼びかけます。
《パティ、今の時間は?》
《十一時四十五分でス。あと十五分ほどで魔法が解けてしまいますヨ》
《分かった》
 時間にある程度の余裕を持って行動するのは、社会人として、また同人作家としての心得です。分かっていても出来ないことが多々ありますが。たとえば〆切とか〆切とか〆切とか。
「王子様。私はもう帰らなければいけません」
「そうなの?」
「はい。名残惜しいですが、これで……」
「待って! その前に一つ聞かせて欲しいの」
 踵を返したシンデレラを、ゆたかが呼び止めました。
「あなたはどうしてシンデレラ(灰かぶり)なんて呼び名を?」
「……私は漫画を描いています。私の趣味で、生き甲斐です」
「?」
「今はチート使ってこんな格好してますけど、本当は召使い同然の身なので画材を買うお金が無いんです。だからかまどの灰を拾ってインク代わりにしてるんです。それでシンデレラ」
 そこまで聞いたゆたかは、同情の色を目に浮かべました。しかし、
「私にとって、誇らしい呼び名です」
 シンデレラはそう言うと、底抜けに明るい笑みを浮かべて、去っていきました。

 お城を出てしばらくした所で、魔法が解けてシンデレラは元の召使い姿に戻り、馬車も馭者も消えて無くなりました。
「これでおしまい、か……」
「シンデレラー、お疲れ様でしタ」
 夜闇の中から、パティの黒いローブ姿がにょっきり湧いて出てきました。その横に立っている同じくローブ姿のこうが、気さくな笑顔で手を振ります。
「改めて、はじめましてシンデレラ。ネタ探しで行った舞踏会が、色々と大変だったね」
「あはは……何と言いますか、キャラに合わないお説教みたいなことまでしちゃって」
「いいんじゃないの? 向こうは前向きに受け止めてくれたみたいだしさ」
 話をしながら、こうは懐から名詞を取り出し、シンデレラに差し出しました。
 そこに書かれた文字を見て、シンデレラの目が点になります。
「アニケン出版……?」
「魔法使い業の傍ら、出版社に勤めててね。気が向いたら原稿持ってきな。私の評価は辛口だけど」
「で、でも、私、まともな原稿用紙も持ってなくて……」
「それは自分で何とかしなよ。どんな境遇でもあがくことは出来る。誰かさんが言ってたよね?」
「あ……」
 ぐうの音も出ないシンデレラでした。

 その後、シンデレラは召使いをしながら寝る時間をさらに削って内職でお金を稼いで原稿用紙と画材を買い揃えました。
 何度も漫画を描いてはこうの所へ持ち込みますが、そのたびにボツを食らいます。
 しかし諦めずに何度も何度も漫画を描き続けたシンデレラは、ようやく会心の一作が認められ、ある漫画雑誌に読み切りデビューすることになりましたとさ。


めでたしめでたし
 読み切りデビューが決まってしばらくした頃。昼間は家事に忙しいシンデレラの元へ、何とお城から使いがやってきました。
 何事かと驚いている継母や義姉を尻目に、使いの白石卿は召使い姿のシンデレラに恭しくお辞儀をしました。
「シンデレラさん。あなたを王子様の婚約者としてお迎えに上がりました」
「………………はい?」
 言われたことが理解できず、ハタキを手に持ったままシンデレラは固まっていました。
「では、早速お連れいたします」
 白石卿が合図をすると、屋敷の外から複数の男達が入ってきます。石のように固まっているシンデレラを、立木文彦ボイスの男達が直接担いで運んで行きました。


「シンデレラさん、怒ってるかな?」
 お城の一室で、ゆたかは不安そうな声で呟きました。
「そうかもしれません。けど、話せばきっと分かってくれます……」
 みなみはゆたかを安心させるため、静かな口調でそう答えます。

 実はあの舞踏会の後、王様の言いつけでどうしても許嫁を決めなければいけなかったゆたかは、シンデレラを指名していました。本気で結婚するつもりではなく、あくまで一時的な方便として。欲を言うなら協力者としてです。
 ただ、名前以外何も分からなかったので、今までずっと国中を探していたのでした。


「ちょっ、ちょっと待って下さい! 私はお后なんてなりたくないっスよ! 頼むから、おっ、おろして〜っ!」
 叫び声も空しく、シンデレラはおみこしよろしくワッショイワッショイとお城に運ばれていきます。
 その後、シンデレラは早く解放されて漫画を描きたい一心で、陰謀渦巻くお城の中で八面六臂の大活躍をしましたとさ。


おわり
244名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 16:44:45 ID:dmhDL3Oz
読んで下さった方、ありがとうございました。
245名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 17:09:21 ID:RZbzYeIm
どこまででもネタのために頑張るひよりん素敵!面白かったです、GJ!!
246名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 17:21:45 ID:iKln99QH
お城に行く目的がいかにもひよりんらしくてよかったですwGJ!
247[sage]:2008/03/09(日) 17:27:54 ID:Dws3Cfmk
ついついボロが出そうになるひよりん最高。
248名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 17:37:34 ID:Xl0g5YvV
なんだこれはww
まさにひよりんとでも言うべきか
面白かったぜ!
249名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 17:44:38 ID:/+vpNZwt
>>247
お前もボロがでてるぞ
250名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 18:17:20 ID:9Dy1G3ur
なんという神ひよりん!!

究極の灰かぶり姫!

コレはもはや童話界の『高貴なる腐敗』やあああああ!
251名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 18:25:22 ID:ylEtg7yD
すいません、板違いなのですがらき☆すたSSスレのよしみ、ということでお願いがあるのです…


ギャルゲ板の「らき☆すた 陵桜学園 桜藤祭 IF SS 」に投下中にヘビーな方の連投規制(バイバイさるさん)を喰い、ちょっと出勤時間も迫ってて投下できない状態になりました。
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gal/1201370191/
の「みんなのまこと」の書き主です。

どなたか規制を喰った旨書いていただけるのと助かります。
投下再開は月曜の午後6時半ごろからになると思います。

勝手なお願いですが、なにとぞよろしくお願いいたします。
252 ◆NuURLereXM :2008/03/09(日) 18:27:04 ID:ylEtg7yD
あ、トリップ忘れてました。
253名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 18:27:32 ID:g47fEssQ
>>244
ただを名前を置き換えるようなパロディものと違ってしっかりキャラが立ってて
しかもネタも作りこまれてるのがすごいwGJ!
254名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 18:29:45 ID:HAAHD0DN
>>252
やっといたよ
255名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 18:38:32 ID:Rvn6rQHw
乙だけど、一般の板にここのURLを直に全部張ってよかったのかな?
記憶が確かならここ成人用だった気がする
256名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 18:39:18 ID:ylEtg7yD
>>254

ありがとうございます、ほんとに助かりました。
それじゃ仕事の準備します。
257名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 19:41:56 ID:GH0wb+nl
>251
仕事から帰ってくるまで位我慢しなよ…



こっちで他人に頼んでまですることじゃない。
258名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 20:21:51 ID:Q2YEPcsL
どっかに規制代行とかあった気がするんだが
259名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 20:33:12 ID:QNHgFemq
>>244
吹いたww
ひよりん逞しいなぁw
260名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 20:43:00 ID:BUj1SwBH
わからんが代行くらいかまわないんじゃ
『情けは人のためならず』と古来より(ry

>>244
終始ギャグで進行するかと思ったら、不覚にもひよりんに漢を見たww
締め方も笑わせるwGJっした!!
261名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 21:24:36 ID:niT7CuTg
>>244
激しくGJ!!
クライマックスのひよりんが恰好ヨカタ!
パティのボケと最後のオチに盛大に吹いたww

てか、『801系』で電車の形式を思い出した漏れは
明日朝イチで病院へ行くべきだと思ったorz 実在せんわ!!
262名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 23:35:56 ID:Rzjn7PxH
>>261
『801系』ですが『現存』はしていないが、『実在』はしたらしい……。
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/801%E7%B3%BB
263名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 00:13:13 ID:BWO3hVPj
>>262
なるほど、今は引退して三○鉄道に……うちの近所だよこんちくしょー!
しかもラッピング801系とかひよりん大喜び。

「ムハー!? しゃしゃしゃ車体全面にガンダムマイスターのご尊顔がぁぁぁ! あぁん、ロックオン兄さぁん♪」
「Ah! コチラのシャリョーはOver-Flagsしばりデスネ? Asuraすらリョーガしそうなほどグラビリデス!」
「二人とも、落ち着いて……」
「なんだかお姉ちゃんみたい……あれ、みんなお酒飲んでるみたいだけど、なんだろう?」
「コーラサワーだって。なんだか、赤毛の男の人が模擬戦がどうこう言いながら売ってるみたい」


ちなみに最後の一両は某荒熊の人が存分に男くささを振りまいています。
ネタがネタだけに山も落ちも意味もなく終わる。
26416-187 ◆Del8eQRZLk :2008/03/10(月) 00:29:03 ID:za13ysW9
ごきげんよう、特に被りがなければ投下させていただきます。
『4seasons』の続きです。

■かがみ→こなた
■エロなしです

8レスになります。
265秋/静かの海(第五話)1/8:2008/03/10(月) 00:29:45 ID:za13ysW9
§8

「あ、ほらほら、ハチクロが一週遅れだよ。こういうの見ると、ほんと地方にきたって感じが
するよね〜」
 カチカチとリモコンを弄っていたこなたが、テレビに映し出された番組を見て云った。
「へー、ちょっと意外。あんたハチクロなんて見てたんだ」
「あれあれ? 私、何気になんか馬鹿にされてる?」
「いやいや。だってあんたが好きなのって、男の子向けの漫画とかアニメばっかりじゃないの」
「むー、失礼だなぁ。普通に原作漫画好きだよ? これでも一応おにゃのこなんだから、
少女漫画だって読むもん。ほら、CCさくらとか?」
「CCさくら……確かに少女漫画だけど、なんか違くないか?」
「じゃ、セラムンとか?」
「いつの時代の少女だよ」
「なにを云う、ほんの十五年前じゃないか」
「だから幾つなんだおまえは」
「伊代はまだ、18だから〜♪」
「ええと、すまん、何のネタだそれは」
「センチメンタル・ジャーニーだよ。松本伊代のデビュー作、一九八一年の。知らないの?」
「知るか! だから幾つだよおまえ!」
「シュビドゥバ♪ シュビドゥバ♪」
「だーー!! もう歌うな! 踊るな! はしゃぐな! 回るな! っていうか、勉強しろ!!」
「ぶーぶー。せっかく遠くまできたんだから、一晩くらいいいじゃん。ほんとかがみって
真面目なんだから……」
 なんて文句を云ってはいたけれど。
 ちゃんと座って勉強を再開するのだから、こなたも随分真面目になったのだ。
 ホテルに戻った私たちは、着替えをすませて楽な格好になると、早速ノートと参考書を
拡げて勉強を始めたのだった。元々泊まりの晩もさぼらずに勉強をするという約束だった
からついてきたのだし、その点こなたに否も応もないはずなのだ。今のはちょっとふざけて
みせただけだろう。
 ――どちらかというと、私の方が気持ちを切り替えるのに大変だった。
 泉家からの帰り際こなたが無邪気に語ったすぐる君絡みの話は、私の心を覆う鎧にひびを
入れてしまっていた。『かがみは私の嫁』。こなたはよくふざけてそう云うけれど、このときほど
その言葉が毒を孕んで突き刺さったことはなかった。
 なんと云っても、そこにはきっとこなたの本心が篭められていただろうから。
 こんなところまで連れてきたのだ。母親のお墓参りにつきあってと、実家まで連れてきたのだ。
こなたが私に好意を抱いていないはずがない。大事に思っていないはずがない。
 こなたはそんな好意をあからさまに示してくれていた。そうしてきっと、そのことで私が喜ぶ
だろうと思ってくれている。
 その気持ちが心から嬉しくて、だからどうしようもなく辛いのだ。
 こなたが私に抱いている好意は、私がこなたに抱いているものとはまるで違うものなのだから。
 ホテルの部屋に戻って、最初にサニタリースペースに向かった。こなたと二人の部屋で、
こなたと二人の夜を過ごす前に、立ち直らないといけなかった。この旅行を、なんとしても
いい思い出にするんだ。出発前に抱いたその気持ちは今も減ずることなく抱き続けている。
 パウダールームの鏡に写った自分の顔をにらみつけて、気合いを入れた。昔ならこんな
ときには顔を洗ったりしたものだけれど、化粧が崩れるからそんなことはできなかった。
女であることが少しだけ恨めしく感じる瞬間だ。
 大丈夫。私は隠し通すことができる。そうだ、一番大切なことを思いだそう。私はこなたが
好きだから、こなたを悲しませたくはない。
 それは単純な二段論法で、単純だからこそいつも私を救ってくれる魔法の言葉だった。
道を見失いそうになったとき、感情の隘路に嵌りこんでどうしたらいいかわからなくなったとき、
その言葉を思い出せばいつでも元の自分に戻ることができたのだ。
 ――サニタリースペースから出てきたとき、私のつけた仮面はすっかり修復できていたはずだ。
「長かったね、さては大だな!」
 なんて子供みたいに喜んで云ったこなたに、即座に枕を投げつけることができたのだから。
266秋/静かの海(第五話)2/8:2008/03/10(月) 00:30:28 ID:za13ysW9
「ふわぁあああ、疲れたぁぁ」
 そう云って伸びをすると、そのままこてんと横になるこなただった。二時間ほど勉強に
集中していて、もういい時間になっていた。
「へー、よくまとめられてるじゃないの」
 テーブルに開きっぱなしになっていたこなたのノートを眺めて云った。
「ま、ねー。やっぱりさ、書いていかないと覚えらんないよね」
「うんうん。……って、なにやってんのよ」
 横になっていたこなたはもぞもぞとテレビの方にはいずっていき、投入口にかしゃんかしゃんと
コインを入れていた。
「ん? むふふ、ご・ほ・う・び」
 猫口になってにまにまと笑うこなたをみているうちに、厭な予感がわき上がってきた。
案の定「ぽちっとな」なんていいながらこなたがリモコンを押すと、テレビに映し出されたのは
巨大なモザイクの塊で。
 胸が悪くなるような媚態に塗れた艶声が、大音声で響き渡った。
「こ、こここここらーー! なんて番組見るんだあんたは!」
「えー、いいじゃん。これが楽しみでホテル泊まってるのにー」
 ニヤニヤと目を細めて笑うこなたの目の前で、裸の男女があられもない格好で腰を振り合っている。
「うわぁ、そんなことしちゃうんだ」
 こなたが少しだけ頬を染めて呟いた。
 その光景をみて、全身の血が沸騰するような劣情を感じた。桃色の靄が体中の毛穴から吹き出して
くるような感覚。
 これは危険すぎる。
 いつも通りのいたずらの延長なのだろうけれど、今の私には洒落にならなかった。
「こら! まじでやめろって、リモコン渡せ!」
「やだよーだ。お金入れてるんだからもったいないじゃん」
 リモコンを高く上げてとられまいとするこなたに、私は飛びかかった。
「だー! もう怒るぞ本当!」
「ぷくく、かがみ顔真っ赤だー。本当は興味あるんでしょ?」
 こなたは相変わらずすばしっこかった。
 つかもうとした腕からするりと逃れ、体重で抑えこもうとしてもバランスを崩されて気がついたら
転がされている。
 跳ねるように動くしなやかな身体。それに合わせてこなたの髪がひるがえる。
 ひらり。
 ひらり。
 青い髪がひるがえる。
 それはまるで床に広がった海にも似て。
 その海の間に間にちらほらと、こなたの楽しそうな笑顔がかいま見える。
 小さくあがる嬌声。息を荒げるこなたの吐息。私より少しだけ高い体温。

 気がつくと、こなたの身体が私の下にあった。
267秋/静かの海(第五話)3/8:2008/03/10(月) 00:31:03 ID:za13ysW9
 視界をいっぱいに占めるこなたの顔。ほんの少し顔を下げるだけで、触れあってしまいそうな唇。
楽しさを湛えてきらめいた青竹色の瞳。頬にかかる甘い匂いの吐息。額はほんの少し汗ばんで、
はりついた髪の毛が肌に流麗な曲線を描き出している。触れあう足の、すべすべとした感触。
そのしなやかな弾力にみちた肢体。そして抑えつけた私の胸を押し返す、激しい運動にはずむ
こなたの胸。小さいけれどちゃんと柔らかく膨らんだ、こなたの女の子の部分。
 テレビから流れるバックグラウンドノイズ。
 それは今にも気をやりそうな女性の艶声に満ちていて。
 ぬるりと、下半身で何かが零れおちた。
 魔法の言葉は、もう届かなかった。
 頭の中は桃色の靄に包まれていて、思考が上手く結べない。
 あと少し、ほんの少し顔を突き出すだけで、こなたの唇を奪える。
 艶めいて、誘うようにぱくぱくと開閉するその桜色の唇を。
 私はそのとき、本気でこなたにキスをしようとしていた。
 事実そうしようと首筋に力をいれた。
 そのときだった。
 壁から甲高い電子音が鳴り響き、その警報のような音が私の動きを止めたのだ。
「あ、お風呂わいた」
 何事もなかったように快活に云って、こなたはテレビの電源を切ったあとするりと私の下から
抜けだした。そして壁に設置されていた全自動風呂のパネルに歩いていき、アラームを止めたのだった。
「かがみ、先入る?」
 振り返って訊ねるこなたに、私は霧散した理性を必死でかきあつめて、普段通りの口調で答える。
「あんた先入っていいわよ」
「ん。それとも一緒に入ろっか?」
 なんて嬉しそうに目を細めて云うこなたに「入るか!」と怒鳴って、私はちらばった筆記用具を
かきあつめていった。
 顔を背けながら。

 お風呂場にこなたが消えたあと、私はその場にうずくまって泣き続けた。


§9

 ただ月だけが見下ろしている。
 この部屋は、月明かりに満ちて夜の海に浮かぶ難破船のようだった。
 カーテンがあけはなたれた窓からは、鏡のように凪いだ静謐な海と、ただ中天に浮かぶ
満月だけがみえている。
 月の光は死んだ光なのだということを思う。
 自ら輝くことなく、太陽の輝きを反射しているだけの存在。何も生み出せず、惑星も衛星も
ひきよせることができず、ただ地球と太陽に依存して在るだけの存在。
 そんな月の雫を浴びて佇む私も死人のように青醒めている。
 あの辺り、餅つきをする兎の胴体の辺り、そう、あそこが静かの海だ。
 アポロが着陸した海だ。
 人は、そんなことすらなしうるのに。人の営みは宇宙を渡ることすら可能にするのに。
 私はこんなところでこんな海に惑っている。
 そんな自分の余りの小ささに、自嘲しかでてこなかった。
268秋/静かの海(第五話)4/8:2008/03/10(月) 00:31:45 ID:za13ysW9
 眠れようはずがなかった。
 なんでもないふりをしてお風呂に入って、たわいないお喋りをして、おやすみといってベッドに
入り込んだけれど。
 目はどこまでも冴えていて、身体は熱病に罹ったように火照っていて、思考はぐるぐると
同じ所を回り続けていた。
 ――私は、こなたを裏切ろうとした。
 こなたの意志に反して、こなたの思いも無視して、一方的に奪うようにキスをしようとした。
 最低だ、私は。
 あのときお風呂のアラームが鳴らなかったらどうなっていたことだろう。それを思うと
背筋が凍る思いがするのだった。
 背後からはすーすーと規則正しい寝息が聞こえてくる。まるで安心しきったようすで、
満ち足りた笑顔を浮かべながらこなたは眠りについている。
 その信頼が悲しかった。その充足を哀れに思った。
 私は同性だけれど、だからと云ってこなたが安心していいような存在ではないのだ。
 あのときの様子を思い出す。私の下になって、息を荒げていたこなたの様子を思い出す。
 顔を赤らめることもなく、恥ずかしがることもなく、ただ楽しそうに笑っていた。友達なら
それが当たり前で、同性ならそれが普通の反応で。わかっていたことだけれど、あらためて
こなたが私にそんな感情を抱いてはいないことを思い知るのだった。
 布団をはだけ、股をおっぴろげてすーすかと眠るこなたを見下ろして思う。
 本当に好きだ。
 どうしても、この子が好きだ。
 ――こんな感情なんて、なければよかったのに。
 そうしたらこんなに惑うこともなく、ただ無心でこなたの一番の親友でいられたのに。
そうできていたら、私もこなたもどれだけ救われたことだろう。
 顔をそむけながら布団をかけなおして、浴衣から普段着に着替えて部屋を出た。せっかく
こんなところに来たのだから、散歩でもしてこようと思ったのだ。少し身体を動かせば眠れる
ようになるかもしれない。そう思った。
 そっとドアを閉めると人心地ついた。こなたの姿がみえなくなることで、やっと私は安心する
ことができたのだ。
「――かがみちゃん?」
 突然聞こえてきたその声に振り向くと、月明かりに照らされた廊下の先、海を見下ろす
ラウンジに、そうじろうさんが座っていた。
 くゆらせた紫煙が、月光を浴びて銀の糸のように中空をただよっている。逆光でできた
影に閉ざされて、そうじろうさんの表情はよくみえない。手に持っていたウィスキーグラスの中で、
氷がピシリと音を立てて割れた。
「……小父さん?」
「どうした、こなたのいびきがうるさくて眠れないかな? あいつ、そんなにいびきかかないと
思ったけど」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」 
 ふと、小父さんは泣いているのかもしれないと思った。
 声はしっかりしているし、涙がみえたわけでもないのだけれど、不思議とそう思った。
 元々どうしても散歩にいきたかったわけじゃない。ただ少しこなたの傍から離れたくなった
だけ。気持ちを切り替えたかっただけなのだ。
 だから、ここで小父さんと話をしていくのもいいなと思った。訊きたかったこともあるし、
こんな夜に尊敬できる大人と差し向かいで話をするというのも、きっと素敵なことだと
感じられたのだ。
 私がそうじろうさんの向かいのソファに腰を下ろすと、小父さんは薄く笑ってウィスキーを
差し出した。
「いえ、未成年ですから」
 そう云って断ると、小父さんは声を立てて笑った。
「はは、やっぱりかがみちゃんは真面目だな。こなたの奴は目を輝かせながら一息で飲み込んで、
盛大にむせてたっけ」
「……それ、いつくらいのお話ですか?」
「ん、中一だったかな。初めてこっちにつれてきた時だ」
「それは……。飲んだことがなければ子供は飲んじゃいますよ。私だって、好奇心にかられて
飲んでみたことはありますし」
「へえ、優等生のかがみちゃんでも、そんなことあるんだな」
269秋/静かの海(第五話)5/8:2008/03/10(月) 00:32:15 ID:za13ysW9
 そう云ってわざとらしく驚いてみせる小父さんだった。
 手にもっていたタバコの火がフィルター近くまできている。小父さんはそれに気がつくと、
長く伸びた灰を灰皿に落として火を消した。
「それは……ありますよ。タバコだって、一応。っていうか私そんなに優等生じゃないですって。
こなたを基準にされても困りますから」
「はははっ、違いない。あいつに比べたら誰だって優等生にみえるか」
 そう云ってそうじろうさんは、壁に掛かっている時計をちらと見上げた。
 私もつられてそちらを見上げる。
 三時四十分。さすがのこなたでも、普段なら起きているはずもない時間だろう。
「十一月二十三日、四時五分」
「――え?」
 ぽつりと漏れ出たおじさんのつぶやきに、私は訊ね返す。
「十八年前、あいつが逝った日時だよ」
 しみじみと云って、ウィスキーを一口含んだ。
 そういえば今日は十一月二十三日だった。普段のお墓参りはその前後の休日のいつかに
くるという話だったけれど、今年は丁度命日にくることができたのだ。
「――あ、それで。……ごめんなさい、お邪魔でしたか」
「いやいや、とんでもない。かがみちゃんさえよければ、できれば一緒にいて欲しいくらいだよ。
あいつも喜んでくれるだろうさ。娘にこんな大切な友達ができたことをね」
 その言葉は照れくさくて、そして少しだけ後ろめたい。
「こなたは、一緒に迎えないんですか?」
「ん。時間まで云ったことはないな。なんていうか、こなたにとってあいつは最初から亡き者だった
だろうし。四時五分は、逝くところを見届けた俺だけに意味がある時間なんだな」
 ふと、十八年前の光景を想像する。
 どことも知れぬ、真っ白な病室で。
 それよりなおいっそう白く、青ざめた蝋のような顔色をしたかなたさん――そのイメージは
私にとってこなたに他ならない。
 そっと瞳を閉じたこなたは、かなたさんは、もう二度と動くことはない。どんな箇所の、
どんな小さな動きさえ、もはや二度とみることはかなわない。
 その瞬間に永遠に失われて、決して取り戻すことはできない何か。
 それまで生きてきた迷いも、努力も、誠実さも、夢も、思い出も、愛情も。すべて根こそぎ
消え失せる、完全なるフラット。
 それが死だ。
 そのとき私は、そんな死のイメージにとらわれて、少しだけ涙ぐんでいたと思う。
「……ありがとう」
 私をみつめて、小父さんは優しく云った。なんだか同じことをこなたにも云われた気がする。
「……いえ、そんな……。なんだかかなたさんのことを勝手に思い描いてしまって。そんなこと
本当はしちゃいけないと思うんですけど……」
「いや……。それもあるけどな。俺がお礼を云ったのは、今生きているこなたのことだよ」
「え?」
「こなたは明るくなったよ。陵桜に入って、かがみちゃんやつかさちゃんやみゆきちゃんが
友達になってくれて。今日だって、こんなところまで来てくれてなぁ」
 泣いているように見えたのは錯覚だったのか。小父さんは意外なほどさばさばとした表情で、
こなたの話を続けていく。
「それまでが暗かったってわけじゃないんだけどな。根っこのところでは変わってないと
思うんだが、前までは周りの状況に合わせて的確に演技をしていくようなやつだった」
「……そうなんですか」
 それは、前から思っていたことではあった。こなたのバランス感覚の高さは、例えばまだ
仲良くなる前のみさおやあやのに対するしゃべり方や、みなみちゃんやゆたかちゃんと一緒に
いるときの表情などからもうかがい知れた。どんな状況でも波風を立てず、水のように表情を
変えて自然と溶け込むあの如才なさ。
「それが、場の雰囲気を一変させるようなオタクな発言も平気でするようになった」
「……それ、子供っぽくなったってことなんじゃ……」
「ははっ、そうかもしれないな。でも、子供っぽくない子供よりは安心できるんだよ。無理して
作った仮面をみせられるよりはね」
270秋/静かの海(第五話)6/8:2008/03/10(月) 00:32:39 ID:za13ysW9
 そう云ってちらりとこちらをみつめる小父さんの視線は、なにやら言外の意味を含んで
いるようにも思えて、背筋がぞわりとする。
 まさか。いや、そんなはずはない。
 いくらなんでも、小父さんと顔を合わせて話したことなんてごくわずかだ。そんな時間で
私が被っている仮面を見破れるはずもない。こなたにだって隠し通せているのに。
「――小父さんは!」
 気のせいだとは思うのだけれど、ごまかすように云った私の言葉は、つい語気が荒くなって
しまっていた。
「う、うん?」
 そうじろうさんはきょとんとした顔で目をぱちくりとしている。してみるとやはり私の気の回し
すぎだったのだろうか。でも、云いだしてしまったからには、話を続ける他はなかった。
「そ、その。かなたさんが亡くなって……でもお一人でこなたを育てて……その、偉いと云うか、
どうやって立ち直ることができたのかとか……」
 何を云っているんだ私は。
 確かに、かなたさんが亡くなったあと小父さんがどうやって前を向くことができたのか、
訊きたいと思ったけれど。そんなことは普通直接訊くようなことでもないし、なによりなんで
そんなことを訊きたいのかと不思議に思うだろう。
 けれどそうじろうさんは、面白いものをみたとでもいうように興味ぶかげな表情を浮かべながら、
淡々と喋りだした。
「うーん、そうだなぁ。正直云うと、立ち直ろうと思う暇すらなかったっていうのが本当だな」
「……というと?」
「とにかく俺が動かないと、乳飲み子のこなたが死んじまうからさ。必死だったよ。ひたすら
ばたばたばたばたしてて、気がついたらそれが日常になっていたな」
「そうか……そうです、よね」
「当時俺とゆきは東京に出ていて、なんていうか、俺だけじゃなくてゆきも色々あったんだよ。
親父はかんかんになって片っ端から勘当を云い渡すは、お袋はそんな親父に逆らってこなたの
面倒を見に東京まででてきたりして、またそれでぐちゃぐちゃになってさ。まあ、今思い出すと
冷や汗がでるよ。本当にガキだったんだ、俺は」
 自嘲するようにそういって、グラスを傾けるそうじろうさんだった。
 こなたのお父さんだからと、ついなんでもできる大人のように思ってしまうけれど。考えてみたら
こなたが産まれたときこの人は確かまだ大学生で。二十代の前半だったと聞いた。してみると、
今の私とそう大きく歳が違うわけでもないのだ。これから先の数年で私がどう変われるのかは
わからないけれど、少なくともそれで人の親になれる覚悟が身につくかというと、到底そうは
思えなかった。
「でも……」
「ん?」
「あ、いえ、生意気なことを云うようですけれど。そうじろうさんは、こなたをあんな子に
育て上げることができたんですから……その、それは素晴らしいことだと……」
「んー? ふふ、あんな子っていうのはあれかな。ツンデレツインテ萌えーとか云って
かがみちゃんの髪をひっぱって遊ぶような子っていうことかな?」
「そ、そうじゃなくて! っていうかなんでそんなこと知ってるんですか!」
「お、当りか。まあ、あいつがやりそうなことなら大体わかるよ。俺がしたいことと変わんない
からなぁ」
 そういってカラカラと笑うそうじろうさんだけど、要するにそれは、目の前のこの小父さんが
私の髪を引っ張って遊びたいといっているようなもので。
 私は少しだけ、ソファーを後ろにずらした。
「じょ、冗談だってばかがみちゃん、やだなー」
「……なんで棒読みなんですか」
 そう云いながらも、なんだかそんなやりとりが可笑しくて笑ってしまった。そうじろうさんも
苦笑しながらウィスキーをグラスに注いでいる。
「こなた、優しい子ですよね。普段はあんなだけど、それでも学校のみんながこなたのことを
好きなのは、みんなそれを知ってるからだと思います」
「――うん、そうだな。もう少しだけ自分のことも大事にしてくれると安心できるんだけどな」
「それは……。私もそう思います。それがなんだか悔しくて、つい色々口出してしまうんですよね……」
「うん。そのあたりはかがみちゃんたちに任せるよ。……本当にあいつはいい友達をもった。
俺があいつにしてやれることなんて、もうなにもないんだな」
271秋/静かの海(第五話)7/8:2008/03/10(月) 00:33:28 ID:za13ysW9
「そんな……私たちもまだ子供ですから、まだまだ大人の手助けが必要ですよ」
 私がそう云うと、そうじろうさんはなぜか薄く笑いながら、グラスのウィスキーを飲み干した。
グラスを振ると、残った氷がカラカラと音を立てる。
「そうかな? 俺が家を出たのは大学入学と同時だったよ。こなただって、そうしてみて
もいいんじゃないかな」
「――え?」
 それは、なんだか不思議な言葉だった。かなたさんが亡くなって、その忘れ形見である
こなたをずっと育ててきて。それこそがそうじろうさんの生きる糧だったのだと、そう理解していた
けれど。
「こなたが家を出て、寂しくないんですか?」
 そうじろうさんの云い方は、そう云っているように聞こえたのだった。
「まぁな。なんていうか、必ずしもこなたが近くにいる必要はないんだよ」
 混乱して言葉を継げられない私に、そうじろうさんはいたずらっぽく目を光らせながら
重ねて云った。
「たとえどこにいたとしても、こなたがこの世のどこかに存在してると信じられたなら、
俺は生きていけるんだな」
 その言葉に、私は一瞬はっとする。
 ――それはなんだ。
 その境地は一体なんだ。
 私は、何も云うことができずに絶句していた。
「そりゃ、近くにいてくれたら嬉しいし、俺が望むような人生を送ってくれるにこしたことは
ないけどさ。でもなんていうかな、こなたは神様みたいなもんなんだ」
「か、神様? それってその、“俺が新世界の神になる”的な?」
 混乱した頭で私がそういうと、そうじろうさんは「なんでデスノネタなんだ。かがみちゃんも
こなたに染まってきたかな」なんて楽しそうに笑うのだった。
 それが堪らなく恥ずかしくて、顔に血が昇っていくのを感じていた。私の顔はきっと耳まで
赤く染まっていたことだろう。
「天にまします我らが父よ、の神だよ。クリスチャンがあらゆる森羅万象に神の御業をみ
て、直接その姿を偶像としてみなくとも神を身近に感じられるみたいにな。俺にとってこなたは、
そういう存在なんだよ」
 ――ただ、在ればいいんだ。
 そう云った。
 それはまるで信仰のようだと私は思った。
 家の職業柄、私にとって信仰と神は身近だ。
 不可知論者の私は、神の実在を信じることはできないけれど。それでも信仰という物が
この世界を受容するための方便として機能してきた、その功績を否定することはできなかった。
 どんなに辛い目にあっても、どれだけ悲惨な運命に弄ばれても、ただ一言“御心のままに”と
云えば、その全てに意味をもたせることができる、そんな人生を受け入れることができる。
 この世のどこかにこなたがいるのなら。
 こなたがいる世界のことならば。
 そうじろうさんは、こなたがそういう存在なのだと云っているのだった。
 それは、なんという強さなのだろうと思う。なんという愛し方なのだろうと思う。
 私にはそんな風にこなたを愛することはできなかった。
 そばにいて欲しいと願った。
 顔を見たいと願った。
 触れたいと願った。
 だから、傷つけた。
 だから、裏切りそうになったのだ。
 でも、そうじろうさんは違う。
 こなたに何も求めない。こなたに何も願わない。こなたのどんなことも受け入れて、なおそれを
世界の中心において考える。
 ――敵わない。この人には敵わない。
 敗北感に押しつぶされそうになった私に、そうじろうさんはぽつりと云った。
「人の親なんて、多かれ少なかれそういうもんだよ。きっとただおさんもね」
 そっとグラスをおいて、窓の外に視線を向けた。
272秋/静かの海(第五話)8/8:2008/03/10(月) 00:34:18 ID:za13ysW9
 海が広がっている。

 涯もみえぬほど、世界を覆い尽くすほど、広い海が。
 茫漠としてやがて空へと繋がっていく、暗い海が。
 ――なんて広くて、なんて深くて、なんて暗いのだろう。
 その海のあまりの豊穣さに、少しだけ眩暈がした。

 そのとき、そうじろうさんの浴衣のたもとから、携帯の振動音が聞こえてきた。
 手を差し込んで振動を止めると、そうじろうさんはしみじみと云った。
「――四時五分。十八年前の今この瞬間、あいつは逝ったんだ」
 その言葉に溢れそうになった涙を隠して、私は黙想をする。
 かなたさんに、こんな思いの全てを伝えられたらと思う。
 あなたの娘さんのことを、私がどれだけ好きかとか。
 旦那さんが、今もこうしてあなたのことを偲んでいることとか。
 この世界のすばらしさとか。
 月が綺麗なことだとか。
 そんなこと全てを。
 でも、それを伝えることは叶わない。
 死んでしまった人に、想いを伝えることは決して出来ない。
 亡くなってしまった人には、もう二度と出会えない。
 それがこの世の理なのだから。
 だから私たちは、せめて日々を誠実に過ごすのだ。
 この一瞬の命の輝きを信じて。

 そっと眼を開けた私を、そうじろうさんは優しい眼差しでみつめていた。
「かがみちゃん」
「――はい」
「辛いかもしれないけれど、こなたのことをずっと好きでいてやってくれないか」
「――はい?」
 なぜ、“辛いかもしれないけれど”なのだろう。
 そのとき私は不思議に思った。
 けれどその意味がわかるのは、それから随分後になってからのことなのだった。

(つづく)
27316-187 ◆Del8eQRZLk :2008/03/10(月) 00:36:21 ID:za13ysW9
以上です。
なんていうか、この人たち誰だろうとちょっとだけ思います。
本人としては大まじめで原作らしくしようとしているつもりなのですが…。

とりあえず次回で秋が終わるとして、まだ冬がまるまる残っています。

それでは、ありがとうございました。
274名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 00:41:49 ID:BWO3hVPj
眠れぬ夜にリアルタイムにて読了。


うーーーん、近寄るようで近寄らず、もどかしいやら切ないやら。
薄々はかがみの気持ちに感づいているだろうそうじろうさんが、「辛いかもしれないけど」とわざわざ断るのが
少々気になりますが、さて。ぐっじょぶでございました。
275名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 00:48:23 ID:iWqMLA6W
なんか読んでてゾクゾクしましたよ。

ありがとうございました。
276名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 01:11:44 ID:zXT+/DqY
巧いなあ……本当に凄いな……
乙でした。言葉がありません。
277名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 01:14:53 ID:8L1SqYSN
まさかリアルタイムで読めるとは…感極まります…
278名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 01:24:57 ID:ZHG0WrHQ
4/8、5/8と読み進めていくうちに「早くこの先知りたい、でも読み終わるの勿体ない」
何なんだろう、この葛藤。もう、ただGJとしか。
279名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 02:01:10 ID:9/z6TtPC
最近SS読んで涙腺緩む事が多くて困っちゃったね・・・・
もうGJとしか。かがみんタバコ経験者なのねw
280名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 02:22:08 ID:NAJmnytj
フー… ウー…

さ、最近かがみってば…おもっくそ様子が変すぎるよ…
本能むき出しで今にも襲いかかろうって按配なのに、
目に見えない戒めに逆らえずその場を一歩も動けない
ってな感じで…。

ウゥゥゥ… オォ…

そ、それでいてその泣きそうな目は一体何!?
あううう…もう勘弁してよかがみ…

そ、それにしても>>237GJ!
前々から君のファンしてる者から言わせてもらえば、
今回、そのディテール能力、情景描写能力が
一番生きた瞬間だよね!
これほんとにお父さん!?ってくらいお父さんが、
悲しく重く、そしてかっこよく描かれてたよ!
そして、葛藤つづきのかがみんの心理動向が、
相変わらず読者をはらはらさせつつ、一つの岐路を迎える描写!
さあさあどうするかがみ!…ってまさか…
さっきからかがみを戒めてたのって、その心理葛藤!?

フー… ウウゥゥ… コォ… ナァ… タァァァァァ!!

いやあああああ!ついにキタアアアアア!
襲われるいやかがみそこだめアッーーーー…あれぇ?あれぇぇ??
かがみどーしたの?

ウウウウ… こなた… ゴナダアアアアァァァ…
あーもー、どうやらかがみ、このあまりにもよくできたお話に
感情移入しちゃって、私を襲うに襲えない状態らしいです。
助かったは助かったけど…何か複雑な気分やね(=ω=.;)
281名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 02:41:45 ID:7DSoL25x
柊姉妹が男の集団からガッツリレイプされてビデオ撮られたりボコボコにされたり
ダルマにされたりするような作品書いてスレを混沌とさせる職人はいないものか
282名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 02:49:15 ID:v9/wScxZ
俺でも鬼畜なものは書けないわ
レイプまでぐらいしか出来ないなぁ俺だったら。
283名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 02:59:22 ID:oPUCBp48
>>281
そーいうのが好きならこっちで職人を待った方がいいかも
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1199817686/l50

こっちはまったりゆるーく進めていくような雰囲気なので。
284名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 03:05:11 ID:7DSoL25x
別に好きじゃないよ
むしろ大嫌い

でもスレの反応が面白いことになるのかなって
285名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 03:05:47 ID:oPUCBp48
とはいいつつも百合鬼畜なら見たい俺ガイル
ゆたみなで鬼畜エロ希望
286名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 03:50:58 ID:g7dKUHNi
>>273
いつものそうじろうは一体何処へやら…かっこいいですな
もうホントGJです


反抗期特有の何か背伸びしたいという気持ちと好奇心に押され、ある日かがみはタバコを買っていた。
部屋と外のどちらで吸おうか悩んだが、外だとお巡りさんとか居るかもしれないから、という事で自分の部屋で吸うことにした。

(買ってみたは良いけど、なんかドキドキするわねー…)

パッケージを開け、そこから一本取り出し人指し指と中指で挟む。
タバコを持つ手が震える。心臓の音がいつもより煩い。

チッ、チッ、ボゥッ…

ライターの火にタバコの先を近付ける。チリチリと先が燃えていくのが分かる。

そして意を決し
スゥー…
「ゲホッゲホッ!!」

盛大に咳き込むかがみ。
タバコの灰が床に落ちそうになるまでそれが続いた。
口や喉がいつまでもイガイガする。煙が目に入りすごく痛い。

「とてもじゃないけど無理…人間が口にするもんじゃ無いわ…」

一吸いしただけで、タバコを空き缶の飲口の所でガリガリと擦り付けて消火した。

(はぁ…もう二度と吸わないわ。ところでコレ、どうしようかしら…)

少しの間、ほとんど残ったタバコと灰皿代わりの空き缶の処理に困っていた。
外に捨てに行こうと思ったが、誰かが起きてしまうかも知れないと思い、明日捨てに行くことにして、それを机の引き出しにしまった。
変な疲れを感じたかがみは、ベッドに寝転がると知らぬ間に眠っていた。


次の日

コンコン
「お姉ちゃん、英語の参考書貸して欲しいんだけど…ってお姉ちゃんまだ寝てたんだ。珍しい〜」

つかさは英語の宿題を終わらせるべく、珍しく早起きをしていた。

「ゴメンね、起こしちゃ悪いし勝手に借りてくね」

だいたい参考書の有る引き出しは検討がついている。
案の定、つかさの引いた引き出しには参考書が入っていた。
しかし、未成年の部屋に有ってはならない物もそこには…

「ほえぇぇ!?お、お姉ちゃん!?」


その夜柊家では緊急家族会議が開かれ、かがみはこっぴどく叱られた。


タバコを吸っちゃったかがみんの図が浮かんでしまって…
携帯からなんで見苦しい所&作品汚しすみませんm(__)m
287名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 07:14:00 ID:wg7kycRi
>>273
GJです…!
やはり引き込まれてしまう
そうじろうは何を思って、
どこまでかがみのことを知ってあえて「辛いだろうけど」って言ったのかな?
普段はあんなだけど、男手一つで女の子を育てるってどれだけ大変だったのかな…
それでいてあんなにいい子に育ったのは、父親として素晴らしい人だったからか。

やっぱり貴方の作品大好きです!
288名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 08:38:58 ID:SyAthReb
俺も百合鬼畜は大好物だ
鬱物は苦手なはずなのに、初期にあるつかこなやリレーBADのかがこなとか読んで好物になった
鬼畜じゃないが、「夕暮れ」とかも好きだ
289名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 11:01:51 ID:dshXGBsr
今起きたんだけど電波な夢みた・・・
修学旅行のような感じで、バスの中では隣がかがみで、なぜか日本酒一升瓶で
一緒に回し飲みしてて
現地に着くとなにかのテーマパークにいたんだけど
そこにあったアトラクションで、宝さがしの不思議な館っぽいのがあって
その一室はなぜかうちの部屋で宝は見つけたんだ、そして本棚みたらなぜか
ずいぶん昔のルビー文庫の花鳥風月とかあって、見つけた宝のかわりに
花鳥風月を入れて『腐女子専用』って書いたメモを張ろうとしたんだけど
腐って字が思い出せなくて悩んでると、ひよりんがきて字を教えてくれたんだけど
「お礼は花鳥風月でいいっすよ!」って言って持っていかれた

何の暗示だろうか・・・
290名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 13:45:12 ID:NTy2VNSG
>>273
想いが抑え切れなくなりそうな余裕のないかがみが
こなたの見えないところで密かに泣いている描写に胸が熱くなります
秋の最後の章に期待待ち!
291名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 16:21:11 ID:LFB5pGxf
かがみが法学部志望という設定を思い出して受信した電波で書いた『逆転裁判』短編パロを投下します

微妙にかが×こな気味?
短編なのでかなり短いです、1レスで終わり
292らきすた IN 逆転裁判 〜逆転のかがみん〜:2008/03/10(月) 16:21:59 ID:LFB5pGxf
某月 某日 某時刻
地方裁判所第三法廷控室


「うぅ…やっぱり緊張するわね」

私の名前は柊かがみ、今日初めて法廷に立つ新米弁護士。

「かがみさん、大丈夫ですか?」

この人は高良みゆき、高校時代からの友人にして私の先輩。
昔は医者になろうと思っていたらしいんだけど…まぁ色々とあって今は弁護士になって法律事務所を立ち上げている。
かくいう私もその事務所に所属する弁護士である。

「あ、うん。だ、大丈夫。これくらいで緊張なんてしないわよ、あはは…」
「…本当に大丈夫ですか?それにしても驚きましたよ。最初の仕事依頼が殺人事件なんて」

確かに、私も最初は驚いた。
殺人事件という大きい事件の弁護を新米弁護士に依頼するというのはかなり勇気がいる行為だ。
普通は依頼しないし受けるほうも断る物である。
しかし今回は大きな理由がある。それは…。

「まぁ…依頼人が依頼人だからね。あいつも私を信頼してるから依頼してきたんでしょ」
「ふふ、相変わらず仲が良いんですね」
「な、そんなんじゃ…。私はただアイツが殺人なんてするわけないって思っただけで…」
「それを仲が宜しいと言うんですよ。それでその依頼人さんは…」

『終わりだー!もう何もかも終わりだー!』

みゆきと話をしていると突然ヒステリックな叫び声が聞こえてくる。
この声は忘れもしない…。あいつである。

『殺してー!私を殺してー!』

「…死にたがってるようですね」
「まったくアイツは…」

二人揃って呆然としていると控え室の扉が開いて小柄な人物が一人入って来た。
そう、こいつが私の今回の依頼人。

「何騒いでるのよこなた」

泉こなた、私とみゆきの高校時代の友人である。
当時から多少浮いた存在であるこなたではあったが、まさかこんな大事件にまで巻き込まれるとは…。

「かがみん…殺してくれよう。私をさっぱりとさぁ…」
「い、いやいやいや。何言ってるのよ」
「だって…アレが無くなったらもう生きて行く価値なんてぇえええ…」
「いちいち大げさなのよアンタは…」

こなたは殺人を犯すような人ではない。それは私が一番良く知っている。
ただ今回は運が悪く事件に巻き込まれただけだ。
絶対助けてあげるから…私の手で。
293名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 16:25:30 ID:LFB5pGxf
異常、いや以上

文句は受け付けるが反省はしていない
294名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 16:37:51 ID:5JSRiJ/T
>>293
ちょっとまて、肝心の殺されちゃった人は誰なのよ
295名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 16:39:51 ID:pTXOEjwV
>>293
途中でやめたことに反省しろ。





つまりは続き書け。
296名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 16:52:58 ID:aR42Nxlo
>>293
そこでおわらせてしまうなんてとんでもない!

裁判モノといえばかがみが検察になったこなたと争うやつを思い出します。
あの方はひよりんモノの続きはもう書かないのだろうか…。

他に誰もいらっしゃらないようでしたら、あと少しで投下いたします。
2979-727:2008/03/10(月) 17:06:22 ID:aR42Nxlo
専ブラの調子が悪くて再起動等していたら遅くなってしまいました。申し訳ありません。

ひより×ゆたか投下します。
ぬるいエロシーン有り、12レス使用します。
298「そんなこともある」の? (1/12):2008/03/10(月) 17:08:21 ID:aR42Nxlo
 締め切り。
 それの順守は同人作家にとって死活問題である。
 そしてその言葉自体は、彼ら、または彼女らにとって悪魔のような意味を持つ。
 一体何人の作家がこの言葉に恐れ、そして苦しめられたのだろう。
「うー……あと5P……頑張れ私〜……」
 机に向かい、鬼のような形相でペンを走らせているこの田村ひよりもまた、そんな作家のうちの一人だ。
「ごめんね、小早川さん、せっかく来てもらったのに」
「んーん、大丈夫、こっちで漫画読んでるから。終わったら呼んでね?」
 そう言ってゆたかはまた読みかけの漫画に目を落とした。

 ゆたかは今、ひよりの部屋に居る。
 しかし締め切りを間近に控えたひよりは何日か前から教室でもずっと絵を描いており、
 ゆたかと遊ぶ約束をしていたこの日曜日でさえも、
 ひよりは友人との安らげる一時を無下にし、その貴重な時間を原稿に割いている。
 友情と原稿、どっちが大事か、などという質問をゆたかはしないだろうが、
 もしされたとしたならば、ひよりはどう答えるのだろうか。
 よもや原稿、と答えることはないだろうが、今の時間に限って言えば、心情的にはそうなのだろう。
 そうでないとするならば、せっかく出向いてくれた友人に背を向け、
 ギリギリまで酷使された左手を尚も動かし続けているはずはないからだ。
 人間、追い詰められると力を発揮するというものだが、
 作家というのは追い詰められないと力を発揮できない人種が多いのだろうか。
 尚、これを書いている本人も、間違いなくそんな人種のうちの一人であることを明記しておく。

 しかし、ひよりとてさすがに友人を気遣えない人間ではない。
 少なくともひよりは、ゆたかと約束をしている日曜日だけは遊びに当てようと決めており、
 そのために、あと数時間で当日の日曜日になってしまうというギリギリの時間まで手を動かした。
 だが、締め切り前のひよりに、一日遊ぶ時間を作るという器用なことができるはずもなく、
 もう無理だと分かった瞬間にゆたかに電話を入れ、今度のイベントに出す本の締め切りがちょっとまずいということと、
 そういうことだから急なことで申し訳ないけれど、明日の約束をキャンセルしたいということを隠すことなく伝えた。
 しかしゆたかも次の日はすっかりひよりの家に行く気でおり、突然そんなことを言われても、
 特に勉強が忙しい時期でもない今、空いた一日を勉強に当てる気もおこらないので、
 ゆたかは迷惑でないならお邪魔したい、とひよりに伝えた。

 ひよりは教室で堂々と漫画を描くほどタフな度胸と集中力を持っているので、
 ゆたか一人が部屋に居ても気が散るということは無い。
 よってひよりがこのゆたかの申し出を断わることはなく、案の定喜んでOKしたのだが、
 実はひよりはゆたかにある『お願い』をしようと考えており、
 ただ単純に友人が家に来てくれるということ以上に、ひよりにとってそれは嬉しいことだった。
 そのようなことがあって今、ひよりが漫画を描き続ける音をBGMに、
 ゆたかがベッドで横になって漫画を読んでいるという珍妙な構図が出来上がっている。
 ちなみにかがみがこなたの家に遊びにきた時は、大抵このような構図になる。
 もっとも、かがみの場合はこなたのギャルゲー(時にはエロゲー)のBGMなのだが。

 尚、ゆたかがひよりの家に行きたかった理由は、ただ単に暇になるから、というだけではない。
 前にひよりの家に行ったときに見た漫画の続きがそれ以来少し気になっていたから、ということと、
 これはついでの理由だが、その漫画を読み始めた日にひよりの本棚の隅の方で見つけた、
 表紙に自分とみなみにどことなく似たような人物が書かれた薄い本を、もう一度見てみたいということもあった。
 そのときはひよりに「そ、それはダメーっ!!」と慌てた様子で言われ、すぐに隠されてしまったのだが、
 元の場所に戻っていないかな、とゆたかは漫画を本棚から取るときに隅の方を見てみた。
 しかしやはりどこかに隠されてしまったらしく、その本は姿を消してしまっていたが、
 そこまで気にしていたわけでもないので、ひよりにも聞くこともなく、すぐにそのことは忘れてしまった。
299「そんなこともある」の? (2/12):2008/03/10(月) 17:09:22 ID:aR42Nxlo
 ゆたかが来てから、順調に聞こえていたように思えたカリカリというペンの音はいつからか止み、
 不思議に思ったゆたかがひよりをちらりと見てみると、ひよりは頭を抱えて机とにらめっこをしていた。
「大丈夫? 田村さん」
 ゆたかはいつまでも動かないひよりが心配になり、声をかけた。
「う、うん……いや、大丈夫じゃないかも……」
 ひよりは搾り出したような声で返す。
「何かあったの?」
「うーん、ちょっと構図取りが上手くいかなくて……」
 ゆたかは自分でも絵本を描いてみたりすることはあるが、
 画力において、ゆたかはひよりには到底及ばないと思っている。
 それ故、ゆたかは絵のことについて自分が手伝えることはないだろうなと思っていた。しかしひよりは、
「し、仕方ない……こうなったら奥の手を使うか……」
 と呟いた後、
「ごめんっ、小早川さん、ちょっと手伝ってくれる?」
 とゆたかに向かって両手を顔の前で合わせた。

「ええっ、私?」
「うん、そう。ちょこーっとポーズをとってほしいんだよね。……ダメかな?」
 ひよりは手を合わせたまま、片目だけを開け、窺うようにゆたかを見ている。
 ゆたかは最初、絵の手伝いを頼まれるのかと思い、驚いたが、
 ひよりの話を聞いて、それなら自分でも手伝えそうだと思い、
「そういうことだったら、もちろん協力するよ!」
 と、いつもの屈託のない笑顔で言った。
「ありがとう小早川さん、これで結構進むよ。
 でもなるべく頼らないようにしたいとは思ってたんだけどね……。
 なにせ一人じゃちょっと無理があるポーズで……」
 そう言ってひよりは視線を逸らし、人差し指で頬の辺りを掻く。

「どんなポーズなの?」
「えーと、それじゃあ、ちょっと顔を上げてくれる?」
「顔を? うーんと、こうでいいのかな」
「もうちょっと下かな……そうだねぇ、大体岩崎さんくらいの人を見上げる感じで……」
(みなみちゃん、かぁ……)
 ゆたかはいつもみなみと話すときに見上げるくらいの位置まで顔を動かした。
 みなみのことを思い浮かべると、それは不思議なほどに上手くいった。
「そうそう、そんな感じ!」
「これだけでいいの?」
「ううん、それから、目を閉じて。それで、ちょーっと唇を突き出してくれると嬉しいかなーなんて……」
「唇……? って、ええええっ!?」
 ゆたかはひよりの言うとおりにしかけたが、何かに気付いて思わず目を開けた。
「これって、キス、してるみたいになるんじゃ……」
 それもみなみちゃんと、と続けようとしたが、少し恥ずかしくなって止めた。
「あ、あはは……やっぱり、わかっちゃった? なんとか誤魔化せないかなーと思ったんだけど……」
 ひよりはこうに「ひよりん、原稿出来た?」と言われて「いやー、それがまだなんですよ〜」と言うときのような、
 すっかりお馴染みの愛想笑いを浮かべた。
 目を閉じて、少し顔を上げて、そして唇をほんの少し突き出す。これでキスだと気付かないほうが難しいわけだが、
 まさかゆたかに「じゃあ、岩崎さんとキスするみたいな感じでお願い」と言えるはずもなく、
 なるべく遠まわしに頼もうと思ったのだ。結局、バレてしまったわけだが。
300「そんなこともある」の? (3/12):2008/03/10(月) 17:10:38 ID:aR42Nxlo
「やっぱり、恥ずかしいよね……?」
「ううん、大丈夫。確かにちょこっと恥ずかしいかもしれないけど、田村さんのためだもん、協力するよ」
「よかった、ありがとう、小早川さん」
 ゆたかが協力してくれると聞いて、ひよりはほっと胸を撫で下ろした。
 今回の新刊は例の如くみなみとゆたかがモデルの百合モノである。
 一般向けのため、二人のカラミのシーンは無いが、それだけに、ひよりは物語を締めくくるキスシーン、
 特にゆたか――がモデルの人物の顔のアップには一番力を入れたいと思っていた。
 しかし、日常的な表情なら学校でいくらでも観察出来るのだが、そういう顔はさすがに見ることが出来ず、
 いっそ参考となる資料を見たり、想像で描いてもいいのだが、出来れば直に見て描きたいと思っていたので、
 こうしてゆたかの協力が得られたことは非常に大きい。
「えっと、こう、でいいんだよね?」
 ゆたかはさっきひよりに言われたとおりに顔を上げ、目をつむり、ほんの少し唇を突き出した。
「うん、バッチリ! なるべく早く終わらせるからね。もう少し我慢してね」
 ひよりは今度ゆたかに何かお礼をしないといけないな、と思いながら、スケッチを始めた。

(なんか、ドキドキするな……)
 目を瞑ってからというもの、ゆたかは落ち着かなかった。
 ポーズがポーズだけに、もしかしたらキスされてしまうんじゃないか、などと、
 あり得ないことだろうが、そんなことを考えてしまって、
 ひょっとしたらひよりの顔が近づいてきているんじゃないと、度々薄く目を開けて前を確認した。
 もちろんそんなことはなく、ひよりは黙々と自分のことをスケッチしているのだが、
 再び目を閉じるとどうも気になってしまい、また目を開けてしまうのだ。

 御幣があるかもしれないが、ゆたか自身は、ひよりにキスされることが嫌なわけではない。
 人間、目を瞑るとどうも不安になってしまうものなのだ。
 ゆたかは子供の頃、ゆいと歩いているときに、「ゆたか、目を瞑って歩いてみない?」と言われて、
 遊びのつもりで二人で目を瞑って歩いてみたことを思い出した。
 前方に何も危険がないことを確認した上で目をつぶり、まっすぐ歩いていたつもりでも、
 どこか不安になって、結局はすぐに目を開けてしまったのだ。
 ゆたかは今の自分の感覚が、なんとなくそれと似ているなと思った。
 しかしゆたかも最初は何度か目を開けたり、閉じたりを繰り返していたが、
 何も不安に思うことがないと分かると、目を開けることは無くなっていった。
 ただ、やはりこのポーズは慣れないらしく、少しだけドキドキする感覚はいつまでも治まらなかった。

(うぅ、小早川さん、やっぱり可愛いな〜……)
 ひよりは何度キスしてしまいたくなる衝動に駆られたか分からない。
 自分が男で、目の前でこんな表情をされたら、キスしないはずがないだろうと思った。
 しかし今はゆたかにキスすることが目的ではない。ましてや自分は女だ。
 ゆたかに対してキスすることなど、許されるはずがない。
(でも、女だからこそ……?)
 ひよりは百合や薔薇といった同性愛間の恋愛モノを好む傾向があるが、
 自身がそういう嗜好なのかといえばそうではない。
 しかし、今はゆたかにキスすることに、何の嫌悪も感じていなかった。
 スケッチが終わっても、ひよりはゆたかにそのことを告げず、目を瞑り唇を突き出すゆたかのことを見ていた。
 きっと、自分が同じポーズを取ってみても、ここまで魅力的にならないだろう。
 ひよりは自分の胸が、なぜか普段よりも数割増しで早く鳴っているのを感じながら、そう思った。
301「そんなこともある」の? (4/12):2008/03/10(月) 17:11:37 ID:aR42Nxlo
「た、田村さん、まだかな……?」
 ゆたかは自分の心音だけがいやに響き渡る奇妙な静寂に耐え切れず、口を開いた。
「う、うん……もう少しだから……ごめんね」
 そう言ってひよりはとっくにスケッチの終わった紙を置き、
 そして、ゆたかに気付かれないように、ゆっくりとゆたかの前に移動した。
 ゆたかとひよりの身長差は十センチ強といったところで、丁度ゆたかのおでこの上あたりにひよりの口がくる。
 このまま自分が少し顔を下げれば――そこまで考えて、ひよりはようやく自分がしていることに気が付いた。
(わ、私、何してるんだろう……)
 しかし、冷静さを取り戻すまでには至らない。
 相変わらず心臓は大きく自分の胸を打ち、軽い風邪でも引いたのかと思うほど呼吸も深い。
 目の前には、所謂「キス待ち」状態のゆたか。そして自分は、そんなゆたかの目の前。
 なぜ、自分はこんなことをしているのだろう。
 しかし、ひよりはその理由を考えなかった。
 また、理由など初めからないのかもしれない。
 ひよりは甘い蜜に誘われる蝶のように、今こうしてゆたかの前に居る。
 性別という枠を超えて、人間の本質的な欲求を刺激するほどに、ゆたかは“あまりにも可愛すぎた”。
 敢えて理由を付けるとするならば、そういうことだろう。

 ひよりはゴクリ、と自分が生唾を飲み込む音を聞いた。
 そして、ゆっくりと顔を下げ、ゆたかとの距離を縮めていった。
 もう、自分が何をしているのかは考えなかった。
 ただ、ゆたかと唇を重ねることにしか頭は回らず、
 少しづつ、少しづつゆたかとの距離が小さくなるごとに、自分の心臓は大きく高鳴っていく。
 そして、もうあと数センチで二人の唇が重なる、そんな時だった。
「!!」
 スケッチの音が聞こえなくなっておかしく思ったのか、目を開いたゆたかと、ひよりはバッチリと目が合った。
 ゆたかは声こそは出さなかったが、驚いた目で固まったままのひよりを見つめている。
 ひよりはショートしたようになって、何も考えられなくなった。
 ただ、「キスしようとしていたことが気付かれた」という事実が、ひよりに突き刺さっていた。
 時間にして数秒、しかしその何倍もの時間を体感し、ひよりはようやく顔を遠ざけようとした。

 ――しかし、ゆたかはひよりとは全く逆の行動を取った。

 ゆたかは、その大きく見開いた目を、また先ほどのようにゆっくりと閉じていった。
 ひよりは、何故ゆたかが目を閉じたのか分からなかった。
 ひよりはてっきり、ゆたかに拒絶されると思っていたからだ。
 しかし、ゆたかが取った行動は、少なくとも拒絶ではない。むしろ、自分に対する許容だ。
 ひよりは少し躊躇した後、確かめるようにゆっくりとゆたかに顔を近づけた。
 そして、二人の柔らかな唇が優しい音をたてて一つに繋がった。

 ゆたかは、どうして自分が目を閉じたのか分からなかった。
 目を開けたとき、ゆたかは確かに自分が今にもひよりにキスされようとしていることを理解した。
 しかし、そこに拒絶の気持ちは生まれなかった。
 何故、と問われれば、答えは明確である。ゆたかは、ひよりとのキスを嫌だと思わなかったからだ。
 ただ、ゆたかはそれが不思議だった。
 どうして自分はこんなにもすんなりと、ひよりを受け入れられたのだろうと。
 はっきりとした答えは分からない。
 ただ、少なくともゆたか自身にも、ひよりとキスしたいという気持ちがあったことだけは確かである。
 ゆたかは気付いていないかもしれないが、その思いが、ゆたかに目を閉じさせた確かな一因なのだ。
302「そんなこともある」の? (5/12):2008/03/10(月) 17:12:25 ID:aR42Nxlo
「んむ……」
 ゆたかとひよりは、長い間唇を重ねていた。
 数秒程度の軽いキスではない。数十秒、おそらくは数分間も触れ合っていたかもしれない。
 その間、ずっと二人は一つだった。
(小早川さんの唇、柔らかくて、温かい……)
 ひよりは初めて触れた友人の口先の感触に、そんなことを思った。
 あまりの心地よさに、いつまでも触れていたかった。
 手持ち無沙汰な手が寂しくなってゆたかをそっと抱きしめると、先ほどまでの距離がさらに縮まり、
 ゆたかの小さな体の温もりが洋服を通り越して自分の中に入りこんで、体の奥底にまで浸み込んでいった。
 触れている唇はじっとしていられず、
 ゆたかの頼りない吐息とシャンプーの甘い香りに惑わされながら、ゆたかを求めてその口先を何度も撫でた。
 二人の時間は過ぎていく。
 二人の空間は、誰にも邪魔されない。
 高鳴る心臓とは裏腹に、二人の周りは穏やかだった。

 やがて、どちらともなく二人は二人になった。
 火照った顔を見合わせ、湿った口元から震えた息を零し、そのまま数秒間見つめあった。
 しかし時間が経ち段々と冷静になるにつれて、ひよりは自分の血の気が引いていくのを感じた。
「ごっ、ごごごごごごめんっ!!」
 ひよりは言い訳を考える前に、ゆたかに向かって深々と頭を下げていた。
「え、えーと、何でこんなことになっちゃったか分かんないんだけど……その、とにかく、ごめんなさいっ!!」
 ひよりがそう大声で謝ったので、しばらくぼんやりとしていたゆたかもどこかから戻ってきたようにはっとして、
 ようやく自分に頭を下げているひよりに気が付いた。
「う、ううんっ、謝らなくていいよ、田村さん。嫌だったわけじゃなかったし……。
 えと、そんなことより、スケッチは出来た? 役にたったならいいんだけど……」
「あ、う、うんっ、バッチリだよっ! ありがとうね、小早川さん」
「よかった、どういたしまして」
「じ、じゃあ、私は残りを仕上げちゃうから、もうちょっと待っててね」
 少しぎこちない会話を終え、ひよりはまた愛想笑いをしながら机に向かった。
 しかし、描きかけの原稿はいつになっても完成する気配はなかった。
 ペンを取り、原稿に筆先を付けても、ひよりの頭の中には先ほどのゆたかとのキスのことばかり浮かんでくる。
 生まれて初めて、あんなにも長い間キスをした。
 そのときの唇の感触、感じたことのない心地よさは、すぐに忘れられるものではなかった。

 むしろ、忘れたくない。もう一度、ゆたかを感じたい。

「小早川さ……」
 ひよりがもう一度「お願い」しようとゆたかのほうを向くと、
 ゆたかは先ほどの緊張が解けたからか、心地よさそうな顔を枕に埋め、静かに寝息をたてていた。
 時計を見るとキスした後からすでに十分近く経っており、ゆたかが眠ってしまうには充分な時間だったのだろう。
 ただ、その行為は「あまりに危機感がなさ過ぎる」とひよりは思った。
 仮にも目を瞑っているゆたかに無断でキスしようとした自分に対して、もう少し警戒する等あってもいいだろうに、
 そんな無防備な顔で眠られては、悪戯な心を芽生えさせるなというほうが無理な話だ。
「小早川さん……」
 ひよりは椅子から降り、ゆたかを起こさないようにようにそっとベッドに上り、
 寝ているゆたかの体の両側に肘を付いて、その無垢な寝顔を覗き込む体勢になった。
303「そんなこともある」の? (6/12):2008/03/10(月) 17:13:19 ID:aR42Nxlo
 間近で見るゆたかの顔は、綺麗だった。
 肌を汚すものは何もなく、どこを見ても真っ白だった。
 幼い外見と相まって、じっと見ていると赤ちゃんのようにも見えてくる。
 すべすべの柔らかそうな肌にひよりは思わず手を触れてみたくなったが、
 ゆたかを起こすといけないのでぐっと我慢した。
 そして一しきり美しい肌を見つめ終えた後、
 ひよりはさっき自分と長い間触れ合っていたゆたかの唇に目を向けた。
 キスしたときの感触で分かっていたのだが、やはりゆたかの唇は少しふっくらとしていた。
 病弱な子だとは思えないほど血色もよく、リップを塗っているのかと思うほど艶々としている。
 この唇と自分の唇が触れ合っていたのだと思うと、急に贅沢なことをしていたんだなという気になった。
 そしてこの先ゆたかの唇に触れる輩がいるのかと思うとなんだか腹立たしくなってきて、
 ずっと自分一人のものに出来ればいいのになどど、勝手な空想すら描いた。
 寝ている隙にキスをするということはしたくないが、
 このままずっと見ていると、いつかは吸い寄せられてしまいそうだった。
 いっそ、軽くでもいいからキスしてしまおうか――そう考えたとき、
 不意にゆたかが寝返りを打ち、体が自分の腕に当たって目を覚ました。

「ふぇ……田村さん……?」
 寝ぼけ眼で自分を見上げるゆたかは思ったほど動揺しておらず、
 むしろ動揺していたのは自分のほうだった。
 前科があるにも関わらず、懲りずにこんなことをしているのだ。もし嫌われても仕方がないと思った。
 しかしゆたかはあの時、キスを終えた時に、確かに「嫌ではなかった」と言った。
 それが本当なら、もしかすると今こうしていることも許されるのではないか。
 そればかりか、ゆたか次第では、もう一度――そこまで考えて、ひよりはゆたかを見た。
 ゆたかは相変わらず自分をまっすぐ見上げており、若干、普段よりも顔が赤くなっている気がした。
 口元は何かを言い出そうとしているが、声にはならない。
 見つめ合う時間がだけが過ぎ、ようやくゆたかは意を決して、しかし初めて目をそらしながら言った。

「田村さん……キス、したい……?」

 誰と、とそこまで頭が回らないほど冷静さを失っているわけではない。
 しかし、その問いはひよりの頭を一瞬真っ白にするのに充分な威力を持っていた。
(これって……誘われてるってことなのかな……?)
 所謂「誘い受け」。そんな言葉がひよりの頭の中を過ぎる。
 もしゆたかがキスしたいと思っていなければ、おそらくこんなセリフは出てこないだろう。
 ただ、優しいゆたかのこと、自分を気遣ってそう言ってくれているという可能性もある。
 ひよりは無理強いはしたくないという自分の意思を伝えようと、口を開いた。
 しかし、
「私は――」
 先に言葉を発したのはゆたかだった。
 そらされた目は再びひよりの目をまっすぐに見つめている。
「田村さんと……したい、な……」
 そう言ってまた恥ずかしそうに目を伏せるゆたかに、ひよりはもう自分の気持ちを抑えることが出来なかった。
304「そんなこともある」の? (7/12):2008/03/10(月) 17:14:27 ID:aR42Nxlo
 そっと、傷つけないように唇を重ねた。
 重なる瞬間、自分もゆたかも目を閉じた。
 そこから先は、理性の立ち入る隙が無く、
 初めは触れているだけの唇も、やがてお互いを求めて落ち着かなかった。
「ん……んんぅ……」
 意識しているわけでもないのに勝手によがった声が出て、
 ますます「そういうこと」をしているんだという気にさせられる。
 心臓はドクドクと音を立てて全身に忙しなく血液を運び、
 それにより蒸気機関のように熱を帯びた体から、荒く深い息が何度も押し出された。
 ひよりは、未だかつてないほどに興奮していた。
 同級生の友達の、女性であるはずのゆたかに、性的な欲求すら感じてしまっている。
 それはひより自身が一番よく分かっていた。
 いつも、自分がそういう本を読んだときに感じる、あのどうしようもなく苦しくて、むず痒い気持ち。
 それを何倍にも濃くした抑えようのない衝動が、ひよりの中で渦巻いている。
 しかしひよりは今、それを静めることができない。
 静めるどころか、ゆたかとこうしてキスしている以上、それはどんどんと積もり積もっていく。
 ひよりはゆたかを求め続けることでしか、それを崩していくことができなかった。

「くちゅ……ちゅぷ……んぅ」
「ふぁ……んん、んん〜……」
 唇が触れ合う音と自らの声、そしてゆたかの声はひよりを昂らせ、行為をエスカレートさせていく。
 体は疼いて仕方がなく、太ももは無意識にもじもじと擦りあわさった。
 しかしどうしても止まらない欲求は、ひよりにゆたかの口の中へと舌を捻じ込ませた。
「ん、ふ、ぁあっ……んんんぁあっ……」
 瞬間、おかしくなってしまいそうなほどの、はっきりとした快感がひよりに流れ込み、
 淫らに色づいた声が口から捻り出された。
「ちゅぱ……じゅくじゅく……ぴちゃ」
「ん、ん、ふぅぅ、んん〜……んふぁぁ……」
 ゆたかと舌を絡ませると胸がきゅうぅと縮み、息苦しさと気持ちよさが混ざりあった。
 ぬるぬるとした舌の触覚は本来心地良さとは無縁だが、今はそれが堪らなく愛おしかった。
 これ以上続けると本当にどうかなってしまう、そう思うところまできて、ひよりは口を離した。
「こ、小早川さ……んっ」
 しかし、ゆたかはそれを許さなかった。
 ゆたかもまた、ひよりを強く求めていたのだ。
 手を伸ばしてひよりの頭を寄せ、今度はゆたかのほうから口付けた。
 ゆたかの舌がひよりに入ってくるのと同時に、ひよりの体にぴりぴりと熱いものが駆け巡った。
 下着の湿り気はもう誤魔化せない。ひよりはゆたかとのキスで、完全に感じてしまっていた。
 何度も離れたり、一つになったりを繰り返しながら、二人は夢中でキスをし合った。
 

「ぷは……はぁ……はぁ……」
 二人がようやくキスを終えたのは、部屋に差し込む日がすっかりオレンジ色になっている頃だった。
 うつ伏せで枕に顔を埋めていたひよりは、赤く照らされているゆたかの顔を見てそれに気付く。
「ふぇ……もうこんな時間?」
 スケッチを始めたのはいつ頃だったかはもう思い出せないが、少なくとも一時間、
 もしかすると二時間以上はこうしてゆたかとベッドにいたかもしれない。
「ホントだ……そろそろ、帰らなきゃ……」
 ふぅ、ふぅ、と息をついて、ゆたかがぼんやりと言った。
「小早川さん、大丈夫?」
「うん……でも、ちょっと、力が抜けちゃったかな……」
 そう言って天井を見上げるゆたかに辛そうな表情は見えないが、
 声の調子から察するに若干の疲れが残っているようで、
 ゆたかをこんな状態にした原因が自分であることに、ひよりは申し訳ない気持ちになった。
305「そんなこともある」の? (8/12):2008/03/10(月) 17:15:12 ID:aR42Nxlo
「よいしょ、っと」 
 ひよりは体を起こし、ゆたかの背を支えて起き上がる手伝いをした。
 ゆたかはベッドから床に足を付けたときに少しふらついたが、
 そばに居たひよりにしがみついてこけずに済み、えへへとはにかんで笑った。
 それにつられてひよりからも、自然と笑みが零れた。
「今日はありがとうね、田村さん」
「ううん、こちらこそ。結局何も出来なかったけど、よかったらまた来てあげてね」
 二人とも敢えてさっきまでベッドでしていたことには触れなかった。
 気まずかった、というわけではなく、どちらかというと恥ずかしさのほうが先行したのだろう。
 ひよりは玄関までゆたかを見送り、ゆたかが見えなくなるまで手を振り続けた。
 本来ならば、ゆたかがあんな状態なので、最低でも駅までは送っていかなくてはいけないのだろうが、
 今のひよりにそれは出来なかった。
 一つは、ゆたかを見ていると、また求めてしまいそうだったから。
 そしてもう一つは――

「んっ、はぁ、んんっ……」
 ひよりは、自室に戻るとすぐにベッドに寝ころがり、布団を被った。
 そして、そっと自分のスカートの中に手を入れ、湿った下着越しに自らの秘所を撫でた。
 みっともないかもしれないが、ひよりはもうとっくに我慢できなくなってしまっていたのだ。
 いくらゆたかと激しくキスをしても、体は焦らされるだけで性的欲求自体が解消されるわけではなく、
 こうして自らを慰めることでしか、それは成し得ない。
 まさかゆたかの前でするわけにもいかなかったので、
 実のところ、ひよりはゆたかが早めに帰ってくれて助かったという気持ちもあった。
「ふぁ、ああぁ、ん、ん、あぁっ……」
 ぐしょぐしょの下着が気持ち悪くなってすぐにそれを脱ぎ、直に指を沿わせた。
 初めてキスをしてからの数時間分、たっぷりと焦らされたそこはこの上なく敏感になっていて、
 少し触れただけでも声を出さずにはいられないほどの快感が全身を突き抜けた。
 顔を埋めた枕にはまだゆたかの匂いが残っていて、意識してやったわけではなかったが、
 そうするとゆたかとのキスの感覚が鮮明に思い出されて、ますますひよりの快感を募らせた。

「小早川、さ、ん……んん、はぁ、はぁぁっ、気持ちいいよぅ……」
 ひよりは頭の中で、自分の手をゆたかの手にすり替えた。
 友人をネタにして自慰をする日が来るとはひよりもまさか思っていなかったが、
 そうすることで今まで経験したことのないほどの快感を手に入れることが出来た。
 ぐちゅぐちゅといやらしい音を立て、
 尚もひよりの太ももを濡らすそこが限界を迎えるのは、それほど時間のかからないことだった。
「はっ、あっ、も、ダメ……小早川、さぁん……」
 ひよりはぎゅっと目を瞑り、右手の人差し指を噛んだ。
 ぞくぞくと毛穴が開き、何かが自分の中を駆け上がってくるのを感じて、そして、
「ん、ふっ、あっ、ああっ……んふぁ、ああぁあぁっ!!!」
 と声を上げ、びくびくと体を痙攣させた後、ひよりは力尽きてぐったりとベッドに仰向けになった。
「ふぅ……ん、ふぅ……」
 薄暗くなった部屋でひよりは先ほどのゆたかのようにぼんやりと天井を見上げた。
 どっと疲れが押し寄せたのか、やがて目を閉じ、そのまま眠りへと落ちていった。
306「そんなこともある」の? (9/12):2008/03/10(月) 17:16:04 ID:aR42Nxlo
 翌朝。
 登校途中の電車の中、ひよりは二つのことで頭を抱えていた。
 一つはあの後、ご飯が出来たことを告げにきた母親に起こされたのはいいが、
 それ以降も疲れが取れず、結局原稿に手を付けていないせいで、
 ますます締め切りが危なくなってしまったということ。
 そしてもう一つは今日、ゆたかにどんな顔をして挨拶をしたらいいのかということだ。
 前者のほうはこれから教室で一秒も無駄にすることなくペンを走らせればいいのだが、
 後者は避けられない問題であり、なおかつこれといった対策も思いつかないので厄介である。
(でも、普段どおりにすればいいんだよね、きっと)
 おそらくゆたかも自分と同じことを考えているに違いない。
 意識しないことを心がける、というもの変な話だが、ひよりはそのつもりでゆたかに接しようと決めた。


「おはよう、田村さん!」
「う、うん、おはよう、小早川さん」
 いつも通りを心がけていたのに若干詰まってしまったのは、
 ゆたかがあまりにも普段通り過ぎる挨拶をしてきたからに他ならない。
 明るく後ろ暗いことが何もないような態度は、
 昨日あんなことがあったのをすっかり忘れてしまっているような印象すら受ける。
(もしかしてホントに忘れちゃったのかな……?)
 確かにキスの後、ゆたかはぼんやりとしていたが、
 まさか家に帰って寝てしまったら全て忘れてしまったなどということは、
 いくら少しうっかりしているところがあるゆたかとはいえ、あり得ないことだろう。
 念のために確認を取りたいところでもあるが、
 ヘタに昨日の話題を出してギクシャクしてしまうよりは、今の状態のほうが二人に取って都合がいい。
「あ、おはよう、みなみちゃん!」
「おはよう、ゆたか」
 ゆたかがいつも通りにしているのなら、自分もいつも通りにするまでだ。

「Hi,ヒヨリ、ドウかしましたカ?」
「あ、パティ。どう、って、別にどうもしてないけど……」
 後方から話しかけてきたパティに対し、ひよりは普段通りに対応したが、
 パティの言葉に対してひよりは少しだけ体を緊張させた。
 パティはこう見えてカンが鋭いところがある。
 おそらくさっきのひよりがゆたかを見る目が、普段通りではなかったのだろう。
 しかしそのことに気付いたからと言って、昨日、ゆたかとの間にあったことを察することはできないはずだ。
「ソウですカ? ユタカのホウを見て、何かムズかしい顔をしていたヨウに見えましタが……」
 だから、慎重に、ボロを出さないように話していけば、きっと大丈夫なはず。
 ひよりは、そう心の中で自分に言い聞かせた。

「マァいいでス。ソレより、『シンカン』のほうはジュンチョウでスか?」
「う、うーん、実は結構マズかったりして……。
 今日もココで描くためにもってきたんだけどね。なかなか最後がビシっと決まらなくて……」
「Oh,ユタカのkiss sceneのトコでスね?」
「しーっ! 声が大きいよっ!」
「S,sorry...とイウことは、結局ユタカにはキョウリョクしてもらえなかったんでスね?」
「いやー、協力はしてもらえたんだけどね……」
 そこまで言って、ひよりは一瞬しまったと思ったが、
 嘘を隠すために嘘を付いてはいつかは取り返しのつかないことになりそうだったので、
 瞬時に思考を切り替え、何食わぬ顔で昨日描いたゆたかのスケッチをカバンから出した。
「Oh,コレはvery prettyなユタカでス。コンナ顔をされたら、オモわずkissしたくなってしまいまスね」
 しかし、この言葉にはさすがに動揺せざるを得なかった。
 元々ひよりは隠し事は得意なほうではない。
 みなみのようにポーカーフェイスならまだしも、漫画を描いているせいで表情が変わりやすいこともあって、
 ひよりの顔には明らかな動揺の色が浮かんでいた。
307「そんなこともある」の? (10/12):2008/03/10(月) 17:16:51 ID:aR42Nxlo
「ヒヨリ? マサカ、ホントにkissしてシマったのでスか?」
「そ、そそそんなわけないよっ!! 確かに可愛かったけど、さすがにそんなことしたりはしないよ〜」
「Mmm,ソレもソウでスね。危うく二次元とサン次元を混同するトコロでシた」
 思いっきり上ずった声で喋ってしまったが、パティは気付かなかったのか、
 それとも敢えて突っ込まなかったのかは分からないが、ひよりはなんとかその場を凌ぐことができた。
 もっと気を楽にしなきゃ、と気持ちを改め、ゆたかのキスの表情は後回しに、
 ひよりは他のページの執筆へと取り掛かった。


 休み時間をフルに使って左手を動かし続けようと決めていたひよりだったが、
 今日の四時間目は体育であり、その直前の休み時間は体操服に着替えないといけないため、
 さすがのひよりもその場で漫画を描き続けることは出来なかった。
「ううー、マズいなぁ〜……間に合うかなぁ〜……」
「Relaxして下サイ、ヒヨリ。
 マンガのコトばかり考えてイては、またミナミにdodge ballをブツけられてしまいますヨ?」
「いや、それは関係ないんじゃ……あ、私トイレ行ってくるから、先に行ってて、パティ」
「リョーカイしましタね」
 そう言ってパティと別れてトイレに入り、用を済ませ、
 今月始まったお気に入りのアニメのOPを鼻歌で歌いながら、洗面台で手を洗った。
 しかしその歌は、
「田村さんっ!」
 と、背後から突然名前を呼ばれたことにより、「わっ!」という自らの驚きの声を最後に止められてしまった。
「こ、小早川さん?」
 ひよりが振り向くと、そこには体操服姿のゆたかがいた。
「どうしたの、こんなところで……岩崎さんは?」
「先に行ってもらったんだ……。それより、昨日のことなんだけど……」
 昨日のこと、と言われれば、話すことは一つしかなかった。
 ひよりはゆたかが忘れているわけではなかったことに安心したが、
 深刻そうなゆたかの話に耳を傾けるためにすぐに心を切り替えた。
「あれ以来、なんだかずっと胸がドキドキしてるんだ……。
 ちょっと苦しくって、最初は風邪引いちゃったかな、と思ったんだけど、熱は無いみたいで、
 でもあの時のことを思い出すともっと変な気分になっちゃって……」

 ひよりは、ゆたかの言葉を聞いてようやく気付くことができた。
 あのとき興奮していたのは、何も自分だけではなかったのだ。
 ひよりは勝手に、ゆたかは純粋故に興奮などしないと思っていたが、
 発達の差はあるものの、同じ高校一年生の体だ、
 知識の有無とは関係なく、あのように長い間キスをしていれば反応してしまうのは当然だった。
 しかもゆたかの場合本当に無知であったから、自分を慰める手段も知らず、
 ずっと胸のモヤモヤを抱き続けることになってしまった。
 それが何かも分からないゆたかがどれだけ辛かったかを思うと、ひよりはいたたまれない気持ちになった。 
308「そんなこともある」の? (11/12):2008/03/10(月) 17:17:53 ID:aR42Nxlo
「お風呂に入って、眠っちゃったら良くなったんだけど、
 今日はなるべく昨日のことは考えないようにしようと思って、普段通りにしようとしてたんだ。
 でも、田村さんのことを見るとどうしても思い出しちゃって……。
 だから……お願いっ、田村さん! もう一回、私とキス、してくれないかな……?」
「こ、小早川さん!?」
「そしたら、きっとこの気持ちも治まると思うから……でもやっぱり、ダメ、かな……」
 ゆたかは目を伏せ、今にも泣き出しそうだった。
 ここでゆたかの頼みを断われば、ひよりは困っている友人を見捨てることになる。
 ひよりはまさかそんなお願いをされるとは思っておらず、突然のことに返答を考える余裕は無かった。
 しかしゆたかは昨日、自分の突然の、勝手な頼みをどうしただろうか?
 ゆたかは、「田村さんのためだもん」と言って、迷う素振りも見せずに協力してくれた。
「一回だけ、だよ……? でないと、また変な気分になっちゃうといけないから……」
 昨日手伝ってもらったことへのお返し。
 そして、なにより自らの、「ゆたかともう一度キスしたい」という願望も含ませ、ひよりはゆたかを受け入れた。 
「ありがとう、田村さん……」
 ゆたかが目を瞑ったのを見て、ひよりは唇を近づけた。
 この行為も三回目となるが、やけに慣れてきたようだった。

「んっ……ん、ふっ……」
 唇が重なったと同時に、ゆたかの舌が滑り込んできて、ひよりの口の中をかき乱した。
 ひよりは予期せぬ強烈な刺激に思わずゆたかの肩を持ち、引き離した。
「こ、小早川さん……ダメ、だよ……また、止まらなくなっちゃう……」
「お願い、田村さん……今だけでいいから……」
 少しだけ目元を潤ませて、上目遣いで自分を見つめるゆたかに、ひよりは駄目だと言えるはずもなかった。
「小早川さん……」
 ひよりはゆたかを離さないようにそっと抱きしめ、また一つになった。
「ん……ちゅく……んぅ」
 互いのドクドクと音を立てる胸を鼓動を感じ、それに触発されて二人の行為も一層熱を帯びた。
 二人きりの空間に、二人分の吐息と、一つ分の水音だけが響いていた。
 授業開始を告げるチャイムが鳴っても、二人はそこから動かなかった。
 ひよりも、ゆたかも、今は動きたくなかった。
 

 二人がグラウンドに到着したのは、授業が始まってから十五分程過ぎた頃だった。
 遅刻した理由について、ゆたかは自分の調子が少し悪くなって、
 しばらくひよりに付き添ってもらっていたと話し、
 先生もクラスメイトもそれを疑うことは無かったため、事なきをえた。
 見学席に移動するゆたかにみなみが心配そうに話しかけたが、
 もう大丈夫だからと返すゆたかと、
 みなみはひよりのことも信頼していることもあって、それ以上に心配することはなかった。
「ユタカ、ダイジョウブでしタか?」
「うん、もう良くなったって」
 今のゆたかは完全に仮病なため、心配いらないことは確かなのだが、
 今日二回もパティに嘘を付いてしまったことに、ひよりは少し罪悪感を抱いた。
309「そんなこともある」の? (12/12):2008/03/10(月) 17:18:46 ID:aR42Nxlo
「はぁ……今日もキスしちゃったな……」
 帰宅後、夕飯を済ませて自室に戻り、漫画の原稿をカバンから出しながらひよりはそう呟いた。
 もしこのままゆたかとキスし合う日が続けば、いつかはみなみやパティにバレてしまうだろう。
 そもそも、ひよりとゆたかは付き合っているわけではない。
 今日のゆたかは、自分のモヤモヤした気持ちをどうにかしたくてひよりにキスを求めたのであって、
 そこに恋愛感情の類はなく、そのようなキスが望ましいかと言われればそうではない。
 しかし、今のゆたかにはそうする他に選択肢はなく、
 そんなゆたかをあっさりと突き放せるほど、ひよりは薄情な人間でもない。
 おそらく、明日も、明後日も、その次の日も、ひよりはゆたかのキスを求められたら、断われないだろう。

「いっそ、小早川さんにアレのやり方を教えちゃうとか……って、何言ってんだ、私は……」
 しかし、ひよりもまた、自分の欲望を抑えられないのも事実。
 ひよりはゆたかとのキスが癖になりつつあり、その証拠に、
 今日もチャイムがなったにも関わらず、授業に行くことよりもゆたかとのキスを優先してしまった。
 今も、本来なら漫画を完成させなければならない状況だが、
 原稿を机の上に出しただけで一向に手をつけず、することと言えばのはゆたかのことを考えることだけだった。
「小早川さん……」
 顔を赤く火照らせたひよりは、昨日のように少しずつ左手をスカートのほうへと伸ばしていった。
 そして指先がそこに触れかけた、そのとき、
「ピリリリリリリ……」
「わっ! って、電話? 誰からだろ……」
 ひよりを制止するかのように携帯電話が鳴った。
 しかし、その電話の主――小早川ゆたかは、ひよりを制止するどころか、
 この後さらに良くない方向へと進ませることとなる。
「こ、小早川さん!? も、もしもし?」
「田村さん……私、また昨日みたいな変な気分になっちゃって……どうしたらいいのかな……」
 ひよりは少しの間、躊躇していた。
 この先、自分の取ろうとしている行動が、どのような意味を持つかを考えたからだ。
 しかし、ゆたかのことを助けたいという思い、そして自らの好奇心と欲求が、その躊躇いを簡単に乗り越えた。

「小早川さん……私の言うことを、よく聞いてくれる……?」

 電話越しに、二人の吐息が重なった。





【続】
3109-727:2008/03/10(月) 17:20:07 ID:aR42Nxlo
次回、テレホンH編に続く?
マイナーCPでマニアックなプレイとはこれ如何に!!
単発の予定だったのですが、予定よりもかなり長くなったために分けさせていただきました。
三人称は久しぶりだったので、読みにくいところ、又誤字等ございましたらすみません。
あと今後みなみちゃんとドロドロ展開になる予定はありませんのでご安心を……
やっぱりほのぼのH(?)が一番ですからね!
読んでくださった方、ありがとうございます。
311名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 17:50:08 ID:jDGmbDrt

!?
ひよ! ゆた! これは やばい!
甘い! 甘い! 甘い!
ゆたかえっちぃよゆたか! もうくっついちゃえよ!
続きに 全裸待機!!!!!!
312名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 18:31:11 ID:LFB5pGxf
はっはっはっ、こやつめ
甘いなこんちくしょう、甘ったるくてもうどうしたらいいkくぁwせdrftgyふじこ

続き楽しみにしてる
313名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 18:54:14 ID:pP7jv1Ts
>>310
こなた×ななこでチャHを書いた者から言わせてもらえばどんどん行けですよ。
自分のやってることを変だと思いつつも抗えないっていう描写に引き込まれます。
314名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 21:46:57 ID:sVLL4OP1
おお!ひより×ゆたか書こうかなと考えていたところに
こんな素晴らしい作品が!
続きに大いに期待です、GJ

誰もいないようでしたら数分後に投下させて頂きます
31526-485:2008/03/10(月) 21:49:21 ID:sVLL4OP1
・みなみ→←ゆたか
・みなみ視点
・4レス使用
・「私が選ぶ道」の続き
・若干シリアス

予告通り、行きます
316私の決める未来(1/4):2008/03/10(月) 21:49:48 ID:sVLL4OP1
 人生の中で度々突きつけられる複数の選択肢。
 人間は与えられた道の中から最良だと思えるものを選んでいく。
 一寸先が不安定に揺れる漆黒の闇に包まれていようとも。





 私の決める未来





 だるい。今の私の状態を表すのに最も相応しい形容詞だろうと朧げな意識の中ぼんやりと思う。
 平日の午前中、学生は学校で勉学に勤しむ時間帯。
 私は自室のベッドに仰向けになりぼんやりと天井を見つめていた。
 脇に差した体温計が測定を終了した事を告げる電子音を鳴らした。のろのろと手を動かして抜き取り、ディスプレイに表示された数値を見てみれば、ここ暫く観測した事のなかったほどの高熱を示している。
「三十八度六分か……」
 平熱を軽く凌駕する熱量に、道理で身体が重いわけだと納得して体温計をケースに仕舞う。久し振りに風邪をこじらせたという理由も少なからずあるだろうけど、上半身を起こすのさえ億劫に感じるまでとは思いもしなかった。
 肺に溜まった空気を大気中に逃がして、再びシーツに背中をつける。
 酷く痛みを発する頭と喉。感覚こそ違うものの、同時に引き起こされた病状は私を十分に苦しめる。
 こんな辛さをゆたかは頻繁に体験しているのかと思うと、ゆたかがどれだけ心の強い女の子だったか痛いほど分かる。どんな人の前でも明るく振舞って、自分の素性を隠して、心配を掛けさせまいと努力する姿が目に浮かぶ。
 病床という同じ立場に立ってからやっと分かった、友人の一面。
 しかし、そこに新たな知識が増えた事への喜びは湧かない。
 今までの私達の関係がどれだけ上辺だけのものだったかを証明しているようで、生まれてくるのは負の感情ばかりだった。
 悲しさとも虚しさともつかない、胸にぽっかり大きな穴が空いたこの感じ。
 確かに私達は親友と呼べるほどの間柄だったと思う。
 けれど、著しい変化を見せる情動が、新たに解き明かされた事実が、まるでそれを否定するかのように私の心に揺さぶりを掛ける。
 あなたは、ゆたかの大切な事を何一つ分かってはいない。
 ゆたかも、あなたの大切な事を何一つ分かってはいない。
 何処からか悪魔の囁きが聞こえる。そんな事はないと打ち消したい私と、そうかもしれないと受け入れてしまいそうな私が対立する。
 勢力は圧倒的に後者の方が強大だった。
 事実、私は初めて知るゆたかの情報に虚無感のようなものを抱いているし、ゆたかが私の隠れた心の内まで知っているとは到底思えない
 片想いしていてそれに気づけなんて都合が良い願望にも程があるけど、この感情の所為で私も周りの人も、そして誰よりもゆたかが傷ついた。
 伝えられないなら、諦めた方が良いと思ってしまう。
 暴走してしまわないように、ゆたかから離れた方が良いと思ってしまう。
 これ以上皆が傷つかないよう、私の負担を今以上に増やせば良いと思ってしまう。
 そんな道辿っても、破滅の未来しか待っていないと容易に予測出来るのに。
 私は自らの手で、その道以外へのルートを潰そうとしていた。
317私の決める未来(2/4):2008/03/10(月) 21:50:09 ID:sVLL4OP1
「みなみ」
 自室の外から母親の声が聞こえて、私は遠のきかけていた意識を引き戻す。
 それと共に耳に飛び込んできた戸が引かれる音。発信源に目を向けると、お盆を手にしたお母さんが立っていた。
「気分はどう?」
 倦怠感や頭痛といった様態を言葉にしても感覚的にしか伝わらないと思い、私の知りうる最も正確な情報である計った体温だけを教えた。
「まぁ……高いわね」
 瞳の中の不安げな光を微かに揺らし、お母さんが私と同じ感想を漏らす。ここ暫く家族で重い病症にかかる者がいなかったから、抱いて当然だろう。
 不意にお母さんの手が私の前髪をかき上げて、手の平で額に触れた。
 ふわりと身体が浮かぶような感覚になった。
「熱い……冷まさないとね」
 それだけ呟いて、お母さんは冷却シートの用意を始めた。
 接触した時に感じた不思議な感じは、お母さんの心配の表れなのだろう。使用する準備をひたすらに進めるお母さんの横顔を、半眼で見つめながら思う。
 風邪というのは心身共々虚弱に、不安定な状態にしてしまうものなのだろう。
 そこに看病という名の他人の優しさが入り込む事で、安らぎや安心感を得て治癒されるのだろう。
 やはり久方振りに味わうものだからかもしれないが、自分の考えを大袈裟だとは思わなかった。
 気遣いとか思い遣りは、心に効能を施す最も身近な薬なのだ。
 面と向かってお礼を言うのは恥ずかしいから、私は丁寧な手つきでおでこに冷却シートを張ってくれているお母さんに、感謝の気持ちを心の中で並べた。

「食べれるだけちゃんと食べるのよ?」
 目線で傍に置いてあるお粥の事だと説明を付け加えて、お母さんは穏やかな目をした。私は頷いて了解の意図を示す。
「薬も忘れないようにね」
 優しげな目元で、今度はすぐ隣の水が注がれたグラスと未開封の錠剤数錠に視線を移す。
 私が再び首を縦に振るのを見届けてから、お母さんは一瞬微笑みを浮かべて私の部屋を後にした。
 腹の虫が煩く鳴いているわけではなかったが、折角作ってくれたのだし冷めない内に頂くとしよう。私は蓮華を手に持って、柔らかく炊けた米を生温い水と一緒に掬う。
 仄かな湯気と香りを立てる、匙の中の粥。口に運ぶと喉越しが想像を超えて存外に良く、どんどんと食が進んだ。
 あっという間に容器を空にした私は、病人が食後にすべき事をこなす為ガラスコップと薬剤をお盆ごと自分の方に引き寄せた。机上のみの移動に過ぎないけど身体を乗り出さなくても手が届く、幾分かは飲みやすい位置に変わったはずだ。
 裏面から押し出してタブレットを取り出し右手に握り、空いているもう片方の手でコップを持ち口内に冷水を流し込む。間髪を容れずに錠剤を放り込んで、そのまま飲み下した。
 嚥下し終わって一息つき、所持していたものを全て机の上に戻す。
 特に睡魔は訪れていなかったが、他にする事もないしすぐに到来するだろうと考え横たわり布団を被る。
 少し気になって額を押さえると、ひんやりと冷たい感覚が直接脳に呼びかけているようで、そこから更に癒しの冷感が全身へと影響範囲を拡大していった。
 これが装着されてからは格段に快適な睡眠が約束されるだろう。数時間前とは比較の対象になり得ないぐらい落ち着いた頭の状態の中、確信する。
 そして今一度、弱っているときほど人の心遣いが染み渡るものだと思った。
 事実私は親から好意を受け取って、結果過ごしやすい環境を得ている。私しかいなかったら、確実にもっと苦しい時間は増えていただろう。
 ある意味健康な人間は希望の光のような、救世主のような存在なのだ。
 そこまで考えて、ふとゆたかの顔が浮かんできた。
 私はゆたかにとって、そういう存在だったのだろうか。
318私の決める未来(3/4):2008/03/10(月) 21:50:37 ID:sVLL4OP1
 ゆたかが体調不良を訴えてきたら、保健室まで連れていく。
 そして自由な時間の許す限り、傍にいる。
 話し相手になってあげたり、励ましの言葉を掛けてあげたり。
 私が選んだ保健委員、いや、親友としての一連の流れ。
 ゆたかはそんな私を、どういったように見ていたのだろうか。
 今の私が母親に重ねた理想像と似たようなものを思い描いていたのだろうか。
 全く同じイメージを浮かべたというわけはないだろうけど、恐らく酷似したものを想像したのだと思う。
 私の身勝手な妄想かもしれない。私はゆたかの全てを知っているわけではないのだから。まして胸の内など、他人がそう簡単に踏み込んで良い領域ではない。
 けれど、過去を遡ると鮮明に蘇ってくるゆたかの笑顔は、紛れもなく本物の安息から出てきたものだ。
 根拠はないけど、何となしに伝わってくるのだ。
 だとしたらゆたかが私に心の平安を求めていたと考えるのも、あながち道理に適っていないとは言えない。
 一時でも支えになっていたのなら、離れてしまうと崩れてしまうのではないだろうか。
 以前察知したとおり、私がゆたかと完全に縁を切る事は不可能なのだ。
 中途半端にしか距離を取れないのなら、まだ密接に関し合っていた方が―――
 そこまで考えて、ようやく気づいた。
 私がいかに自分勝手な人間であるかという事に。
 今の考えは全て私の思うように作られた、何の確証もない都合を優先した解釈なのだ。私の主我を優遇した、夢物語に過ぎないのだ。
 自覚している以上に、どうやら私は相当のエゴイストらしい。
 どれだけ拒絶されても、好きだから。
 どれだけ苦しめてしまっても、ゆたかの近くにいたいから。
 掛かる迷惑も考えずに、知らぬ間に私欲を何よりも先んじたくなるのだろう。
 虚無の仮想空間に推し量った予測は、私が理想とする未来に繋がる確たる証拠のない主観的な信念でしかないのだ。
 ゆたかが私と同様の考えを持っていると思うのも。
 完璧に別離するのは出来ないと思うのも。
 私がゆたかと離れ離れになりたくないと切実に願っているから思うのだ。
 叶ってはいけないと理解をしてはいる。あれだけゆたかを傷つけたのだから、私にそんな事を願望する資格なんてない。
 道理に適っているなんて真っ赤な嘘。
 道理に適うように私が事実を歪めているのだ。
 現実から逃げているのだ。
 ゆたかが私を避けていると一概に絶対だとは言えないが、その確率は明らかに高いだろう。
 少し前なら僅かな可能性、ゆたかが私を慕ってくれているかもしれないというもしもの道がまだ残されていると思えただろう。そんな証拠存在しないが、私を拒んでいると間違いなく証拠立てる事もまた出来ないのだと立ち上がれただろう。
 だが今の私は、すっかり臆病者になってしまっている。
 そしてゆたかとの関係に悩み、どちらともつかない場所で左右からそれぞれの誘惑に振られている優柔不断な者にもなってしまっている。
 距離を置くのと、詰めるのと。
 どちらがゆたかの為になるのかは、明白だ。
 でもその道を選択した時、欲望で形成されたもう一人の私は黙っていられるのだろうか。
 きっと、無理だろう。
 だからといってもう片方の道を進めば良いのかというと、決してそうではない。
 結局私は双方のどれを正しいと判別する事が出来ず、狭間で彷徨い続けるしかないのだろうか。
 破滅の未来を迎えるのは、私かゆたかか、はたまた両者か。
 誰も傷を受けない理想的な選択肢なんて、あるのだろうか。
319私の決める未来(4/4):2008/03/10(月) 21:50:58 ID:sVLL4OP1
 夢を見ている。
 やけに暗い周囲や見覚えのない風景から悟った。ベッドに身を預けていたのに、自室に微塵も関連のない場所にいつの間にか移動しているなんてあり得ないのだから。
 服装は現実のものと変わらず寝巻きのままだった。辺りには誰もいないから気にする事なんてないけど。
 見渡す限りの薄暗い闇。どんなに遠くを、はたまた手が届くぐらいの近くを見ても色彩に一切の変化はない。外界なら様々な表情を織り成す雄大な空も、この空間では果てしない薄墨色のみと多様な面は持ち合わせていなかった。
 右方も左方も、上方も下方も、たったの一色にその全てを支配されている。
 そんな感じを持たせる空間だった。
 ふと気づいたが、私は浮遊していた。状況の理解を終えたところで多少の余裕が生まれ、足裏が何かを押している感覚が全くないのに思い至ったのだ。
 それなのに身体に無理が生じてないのだから、私は無意識に浮いているのだろう。常闇の世界では正確な地面の位置は把握出来ないが、足が地表に着いていない事は認識する。
 非科学的な事だけど夢だし何でもありなんだろうと思い、散策しようと移動を開始する。足を動かさずとも動こうと思うだけで身体が進むのは実に不思議な感覚だった。
 際限なしに広がる単調な景色は、一体私の何を表しているのだろうか。目的もなくぶらつきながら思う。
 夢とは当人の将来に対する希望や願望、またはこれから起き得る危険を知らせる信号を指すという話を聞いた事がある。
 私の物覚えの通りだとしたら、この夢はどちらかに繋がりがあるのだろうか。
 私が暗色系統の色から受ける印象は陰鬱、沈静、有罪、絶無といったところ。一般的な感受性と比べても大いに差異があるわけはないだろう。
 当然だがあまり良いイメージではない。呆けかけた頭で虚ろに考える。
 私が進むべき道と直結しているのだろうか―――
「みなみちゃん……」
 ふと聞こえた声に思考を中断する。
 夢現に動き回っていたからだろう、私は目の前に人がいるのに気づかなかった。
 ゆたかと、私、正確に言えば夢の世界のもう一人の私が、今にも唇を重ねてしまいそうなほど接近して見つめ合っている。
 私はその光景に、ゆたかの見舞いに行った時の出来事を思い出す。
「私、知ってるんだよ」
 昔の記憶に浸る前に、ゆたかの声が私の追憶に歯止めを掛けた。
「みなみちゃんが、私が寝てる間に何したか」
 続いた言葉が棘となり、私の心に突き刺さった。呼吸が荒くなり心臓が早鐘を打つ。
 ゆたかの表情は、その華奢な身体を支えている私じゃない私の背中に阻まれて窺えなかった。
「だから……」
 そうゆたかが呟いて、聞こえないほど小さくなって継がれた言詞にゆたかの目の前の人が頷く。
 途端、世界は音もなく崩壊を始め、暗転した。

 飛び起きるように上半身を起こす。
 視界を占める景色は昨晩からずっと私がいる自分の部屋の他なかった。
「夢……覚めたのか」
 誰もいない室内で独り言を言い、息を吐く。
 今のは、何だったのだろうか。
 夢には違いないのだが、ただの夢ではない気がしたから心の中で問い掛けてみた。
 まるで実際に体験したかのように憶えている、ゆたかの台詞を繰り返し脳内で再生する。
 だから、何だったのだろうか。
 後を受け継ぐ言葉は幾通りかは思い浮かぶ。
 しかしどれもが不安定に揺れて、確実性を少しも示そうとしないのだ。
 それとも、全ては私が生み出した偽りなのだろうか。
 夢が真実を表す事は少ない。自分自身に微かな希望を与える為、作り出された虚偽なのかもしれない。
 幾つもの可能性が扉となって新しい未知の未来へと私を導くが、混乱しきってしまった私にどれかを決めるなんて無理な話だった。
 色んな想い、色んな道、色んなしがらみ。
 複雑に絡み合って、締めつけられる。
「ゆたかっ……!」
 愛しい人の名前を呼んでも、何も解決しない。
 一滴落ちた水滴が、シーツに染みを作った。
32026-485:2008/03/10(月) 21:53:26 ID:sVLL4OP1
読んでくださった方、有難う御座いました

これは各エンドの共通ルートに当たります
次回最終回で、HappyとBad同時投下したいと思います
中々筆が進まず遅くなるかもしれませんが
お付き合い願えたら幸いです
321名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 22:05:55 ID:Mss7usv/
>>273
相変わらず繊細な描写がすばらしい
続きもwktk

>>310
これは珍しいカップリングw
背徳感漂う続きにも期待
322名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 22:57:17 ID:pTXOEjwV
>>320
これまでが共通ルートだとは・・・人間やればできるもんだな・・・。



とにかくGJ!
323名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 00:14:01 ID:KK3ID7bj
>>320
首をながーーーーーーくしてお待ちしておりますわ。
324名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 00:43:09 ID:3y89eIfx
皆さんGJなのであります……が、


残業帰りで眠くて死にそうなのであとでじっくり読まさせて頂きます。
(で、未読作品が20を越えている件orz)
325みなみんいじめられすぎw:2008/03/11(火) 01:21:11 ID:xORhgbA9

               '"´ ̄ ̄ `丶、
             /          ヽ
           /                '.
          ハ  |    /     j/│
           | .ハ | ' |/      ││
           |∧.V|/ | )     ││
            レ仏l |ヘ|      ! ハ.│
             Y ト-|ヘ.   ∧|∧|
                 ∨∠ ∨∨゙ヽ
              r^7⌒l|    l|
             匸7ー' |l    l|   イジイジ
                r'/    |l______,l|
            ヽ   ノ  ̄ ̄ 丁
             \_,イ\    |
                /   <><>
326名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 02:08:25 ID:b2N7Ma7U
Elopeやガラスの壁みたいなどろどろしたのを読みたいんだけど、どれがお勧め?
327名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 02:20:19 ID:VaSkV0az
>>326
どろどろとは少し違う気もするが、「レイニーロジック」シリーズがお勧め
個人的にぜひ復活して欲しい作者さんの一人

……まあそういう人は「残し物」の人とかサンシャイン氏とか挙げればきりがないんだが
328名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 02:23:21 ID:iRljjQ88
Elopeみたいなどろどろ系はあんまり見ない気がする。
ヤンデレならオススメたくさん上げられるのに。
329名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 02:26:45 ID:b2N7Ma7U
>>327
ありがとう
Elopeそのものが俺にとっての『友情』みたいな感じで、友人関係でいろいろあった俺のバイブルみたいになったからちょっと興味があったんだ
さっそく読んでみるお
330名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 02:30:55 ID:b2N7Ma7U
>>328
ヤンデレも好きだけど、俺自身がヤンデレっ気があるらしくて読むと発症するから自粛してるんだ
ヤンデレ−デレ対象は死に等しいからね(´・ω・`)
331名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 04:00:12 ID:5FA26sYT
>>320
グッジョブ!!
よかった、happy endも用意してくれたんだ。
bad endだけだったら、きっと切なくて生きていけなかったよ。
332名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 05:11:03 ID:G8mLe+U1

悲しみの向こうへと 辿り着けるなら   僕はもう要らないよ ぬくもりも明日も
333名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 07:56:08 ID:xA0BehcN
ひよゆたにみなゆた、春のゆたか祭り勃発ですな。
両氏ともぐっじょぶ!
334名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 08:31:30 ID:DnY0Pzcc
>>327
レイニーロジックかなり好きなんだけどあれで完結なのかな?
最後辺りにこなた視点、来るかと思ったんだが
335名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 09:26:33 ID:sY6/Av6y
仰るとおり、作者本人は「あとはこなた視点を書いて終わりかな」と
いっているんだけど、一向に書く気配がないね
336名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 10:01:31 ID:DnY0Pzcc
>>335
なるほど
でもこればっかりは無理に頼むのもあれだしな
作者がまたその気になった時にでも書いてくれればいいか
337名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 10:34:50 ID:tjYAMjco
>>336
一旦なんらかの理由で書くのを中断したら、再び書こうとしてもリズムをつかめずに
ものすごく時間がかかる、ということもあるしな
今の俺がまさにそれorz
 と、ある話の続きの執筆に、書こうとは思ってwordも開いてるのに2ヵ月以上
かかってる俺が言ってみる
338名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 10:43:30 ID:IMvwmC4Z
>>337
なんという俺
書きかけ1つに、全く書いてないのが1つですがなにかorz
339名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 11:46:37 ID:gD37/efk
>>336
一応「思いついたときに素で書いてる」「不定期になるかも」との談なので、
期待できなくもないかもしれないと思わないでもない

サンシャイン氏は自分も待ってるんだけど、音沙汰ないなぁ
改名した直後にいなくなったから、書く気はあるはずだったと思うんだけど
340kt:2008/03/11(火) 12:38:04 ID:mTY0qA0P
どうも
ktです

それでは
「鼻血)ry会4.5☆高良家に行こう!」
投下してもよろしいでしょうか?

・前作「鼻血)ry会3☆人工少女の興味」の続き
・8レス
・山崎春のロボ祭開催中
・みゆきさんが壊れてます
・視点切り替えあり
・妄想屋(仮名)氏に感謝です
ネタ多めです、どうぞ
341鼻血)ry会4.5☆高良家に行こう!1:2008/03/11(火) 12:39:42 ID:mTY0qA0P

――
昼休み、食事中
「皆さん、明日私の家に来ませんか?」
それはみゆきの一言から始まった

鼻血)ry会4.5☆高良家に行こう!

「みゆきさん家?!?、他のヒューマノイドはいるの?」
こなたは目をキラキラさせてみゆきに尋ねる…おまえはどこの少女漫画の住人だ?
「ええ、沢山いますよ」
みゆきは眼鏡を光らせながら答える
「そっんじゃぁ〜決っ定〜〜〜!!」
「じゃあ私も〜」
こなたとつかさは即答だ
…私は―
「んー、、、みゆきには悪いけど止めとくわ」
「な、なんだってーー!?」
こなた…リアクション大きいぞ…

「まぁ、色々と用事があるのよ」
「ツッコミ役がいないと話になんないジャン!」
「んな役引き受けた覚えはない!」
「お姉ちゃん?…用事って何かあったっけ?」
「ほら…明日は月初めじゃない」
「あ〜、すき焼きのことか〜…確かにこれは絶対に外せない用事だね…」
まぁ柊家伝統のすき焼きのこともあるのだが……みゆきには悪いが行きたくない、、田村さんから
パトリシアさんがあんなことになった経緯を聞いたからだ…どうやら最近パトリシアさんは何でかは
知らないが元に戻ったと聞いている、だから私の心臓はさっきから警告しっぱなしなのだ

「それは、、、大事な事なんですか?」
みゆきの声がやけに怖く感じる…やっぱり悪い気がする…
それにしても―
「何でいきなり―」
「自慢したいんです」
とみゆきは笑顔で答える
どういえばいいんだろう…最近のみゆきは…なんというか… こわい のだ
「そ、それじゃあほら!代役連れてくるからさ!」
自分が行きたくないからといって他の人に押し付けるのもどうかと思うけど…
「…それなら良いです…沢山集めてきてくださいね?かがみさん」
みゆきの眼鏡が怪しげに光る
…これも怖いんだよな

342鼻血)ry会4.5☆高良家に行こう!2:2008/03/11(火) 12:41:12 ID:mTY0qA0P
まず、日下部達からだ
「へ〜!どでかちちの家か〜行ってみたいんだってヴぁ!」
日下部は ○ と、
「峰岸〜!私の変わりにみゆきの家に行く気ない?」
峰岸は少し考えたあと
「そうねぇ…考えておくわ」
これは来ない反応だな…
とりあえず峰岸は × と、

続いて1年生の階だ
「昨日は面白かったよね〜!」
『ええ、また6人で行きたいですね』
「マッタク…うーちんってバもう少シ手加減シテもイイじゃないデスカ!」
『…すいません』
「それはそうと〜…」
盛り上がってるわね…これ話しかけづらいな
「あれ?かがみ先輩どしたんスか?」

「あぁ、ちょっと話があって―」
私は事情を説明する
「う〜ん、行きたいけどなぁ…でもその日はみなみちゃんと…」
「…ゆたかの気持ちを…優先するよ」
「それじゃあ、みなみちゃんと一緒がいいな〜」
「……わかった」
このラブラブカップルめ!ずっとストロベリってろ!
小早川さん・岩崎さん共に × と

「だから、その…ゴメンねうーちゃん…」
『まぁ…その…行きたくない気持ちは分かります、田村さんとパティさんは―…』
「現在 原稿 逆境」
田村さんは某自転車レース漫画のセリフを…ってまだ余裕あるんじゃ…
「…私ハ ヤメテおきまス…ナンだか……怖クテ…うーちんにハ会いたいのデスが…」
どうやら高良家の出来事がトラウマになっているらしいパトリシアさん…どんな目にあったんだ…
『なんだ?しんぱてぃの家に来ないのかぁ?』
『まぁまぁ、みなみさんの家は近くですし…いつでも行けると…』
『まぁ、うん』
『それに、昨日も遊びましたし…』
田村さん・パトリシアさんも × と

…どうするかな、峰岸しか――
その時私のケータイが鳴った
…峰岸からだ


343鼻血)ry会4.5☆高良家に行こう!3:2008/03/11(火) 12:43:20 ID:mTY0qA0P

――
今日はみゆきさん家に行く日だ〜!
ヤバい…遠足前の、いや、修学旅行前日の学生の気分だZE!!
―で今、みゆきさんの家の前に集まっているのは…
私を含めてつかさ・みさきち・峰岸さんの4人
あり?少なくない?
「皆さんよくお越しくださいました」
みゆきさんが挨拶し中のほうへ案内する
…ふとみゆきさんの方から
「どなたも解説役に向いてませんねぇ…」という声が聞こえたんだけど…どういう意味なんだろ?

『では、こちらへ』
玄関からはうーたんが案内役を勤めるらしい
『こちらのソファーに―』
すると突然うーちゃんに絡んできた人がいた
『あぁん? なんでこんなに人がいるわけぇえ?』
「…小神あきらさん?」
峰岸さんが首をかしげている
目の前にいるのは、まさか、、、本当に―
『大大姉さん、オイルの飲みすぎです!…没収します』
『ちょ?!?うぃきつー!? あたしの生きがいを返してぇぇぇぇぇ〜〜!!!』
…えー…と
『…失礼しました…あの方は<T-R0 あきつー>…最初に造られたヒューマノイドです』
「皆さん、お見苦しいところをお見せしてすみません、ではこちらにどうぞ」
そんなに軽く流すんだ…

広間に出るとそこには黒い毛並みの犬が椅子に座っている
「うわ〜!犬が椅子に座ってるよぉ〜」
「…いやみんな見てるから」
むぅ、かがみのようにツッコミが出来ないな〜…まだまだツッコミ職人への道は遠いでござる、、
『犬やない!おいらにはブロッサムちゅー名前があるんや!』
「い犬が喋ったんだってヴぁ!」
『この方は<TR-A1 ブロッサム>、大大姉さんの次に造られたアニマロイドです』
うーたんが説明する
『ま!よろしゅうな!』
「むぅ、なんてシュールな…」
と私は言葉をもらしていた

『大兄さん、かがー=みんお姉さまは…?』
『あぁ、かがー=みんなら買い物に行ったで、みゆきさんの命令で』
「?、、かがみんなら来てないよ?」
『あ、こなたさん…違うんです、かがみさんじゃなくてかがー=みんです』
『柊かがみを模して造られたメイドヒューマノイドや』
「…へぇ〜」

344鼻血)ry会4.5☆高良家に行こう!4:2008/03/11(火) 12:45:27 ID:mTY0qA0P
かがみんのヒューマノイドもいるのか〜…ん?これって―
「そういえばさ〜」
「何でしょうこなたさん?」
「ここにいる私たちやゆーちゃんたちのヒューマノイドはいるの?」
『ええ、います…でも、、』
「でも?」
『でも…こなたさんを模したTRMS-01は見かけないというか…家にはいるんですけど…』
なんだそりゃ?、どゆこと?
『あぁ、そりゃ01はみゆきお姉さま専用部屋の―』
「…ブロッサム?」
みゆきさんが言葉を発する
『…ってな、、ハハそんなわけないやん…』
それ、かーなーり気になるんだけど
でも知ったらヤバげなことになりそうだ…

「私のはいんのか?」
《何でさっさと紹介しないんだってVA!》
「ふぇえっ!?」
つかさが驚く…うむぅ、実にナイスリアクション♪
『この声は<TR-OS3V:A>、高良家を中心にこの地区一帯を警備・守護しているOSです』
《よろしくな〜!面白い事歓迎なんだってVA!》
「なんというか、任せられない感がするわ…」
峰岸さん…いくらなんでもそれは―
「あやの!」
ほら、みさきちも怒ってるし
「私もそー思う!、私を模してってとこが特にな〜!」
…そこ怒るトコじゃないの!?
「つーかさぁ…V:Aってなんつーかまんまなネーミングだよな」
「何か言いましたか?私が名付け親なのですが」
「い、いんや…なにも」
みさきちにも怖いものってあるんだなぁ、、というかみゆきさんはいつの間にこんなキャラになったんだろう…

「私のそっくりさんもいるのかなぁ?」
つかさが尋ねる
「ええ、いらっしゃいますよ、でも今は家にいないんです」
「どおしてぇ?」
「黒井先生を模したヒューマノイドと共に各国の戦j…各地を旅しているんです」
戦場って言いかけたような、、気のせいだよね…
「へ〜そうなんだぁ〜、お名前はあるの?」
「 あんぶれら です」

345鼻血)ry会4.5☆高良家に行こう!5:2008/03/11(火) 12:47:39 ID:mTY0qA0P
「あん…ぶ…れら?」
つかさは戸惑っている
「あんぶれらです」
「…あんぶれらちゃんかぁ〜会ってみたいな〜、、これもゆきちゃんが名付けたの?」
「ええ!よくネット等で[つ 且]というものを見かけるでしょう?」
…まさか
「それで[つ 傘]というのを思いついたんです」
みゆきさんは自信満々の笑顔で答える
[ つかさ→ つ傘 →傘は英語でアンブレラ ]
…あ、安易過ぎる、、今時の小学生でもこんなのっ…ネーミングセンス悪すぎだよ…みゆきさん

「何か、可笑しなところでも?」
みゆきさんは笑顔だ、、なんだかその笑顔が怖くなってきたような…
私だって空気ぐらい読める、今日はカレーってことぐらいは…なーんて…
「何か?」
今のみゆきさんになにか言えるような雰囲気じゃない…
なんというかこう、、バァーっと紫のオーラが出てるような―
「高良ちゃん、私のヒューマノイドはいるの?」
おお!峰岸さん!この状況を打開できるのはあなたしか!
「え?」
「「……」」
「…さっ、さぁ次は小早川さんのですね―」
峰岸さんの表情が読み取れないけどたぶん怒っているんだろう、うん
「<TRMS-027 もえ>は小早川ゆたかさんを模して造られたヒューマノイドです」
『うぃきつーの教育係にもなってたんやでぇ』
「へぇ〜すごいねぇ〜」
「ええ、そして―…」
みゆきさん…逃げたか…ってんん?
私はふと窓の方を見ると隣の岩崎さん家の2階の様子が丸見えだった

…いやいや!私は出歯亀する気はなかったというか、、不可抗力だよ、うん!
だって見えてるんだもん…そりゃ観るっしょ!
まぁその、、ゆーちゃんとみなみちゃんがストロベリってるところだし、観ない方が嘘でしょ?
…でもせめてカーテンぐらいしてからイチャイチャして欲しいもんだヨ
でも、なんか、、みなみちゃんが嫌がってるような―…

346鼻血)ry会4.5☆高良家に行こう!6:2008/03/11(火) 12:49:27 ID:mTY0qA0P
「こなたさん、聞いてますか?」
「え、あ、ハイばっちし聞いてますよ!みゆきさん!」
…まぁ嘘なんだけド
「もえは少々、、いえかなり性格に難がありまして―…」
もう1度窓の方に目を向けようとしたけど…止めた!
まぁ理由なんて家でいつでも聞けるしネ♪、こいつは話のタネにもってこいですなぁ…
「では他のロボットを紹介します」
「ロボット?ヒューマノイドじゃないの?」
「人型ロボットはヒューマノイド、それ以外のものはロボットと区別しているんです」
そう言ってみゆきさんは指をぱちんっと鳴らそうとした、んだけど鳴らなかったので結局うーたんが指を鳴らした
「皆さんから見て左から順に…
テレビロボット:てれび君 冷蔵庫ロボット:れーちゃん リモコンロボット:リモコン君 ゲームロボット:the立平くん
洗濯機ロボット:まわるさん ベットロボット:寝れるさん DVDロボット:うつす君 パソコンロボット:すごいちゃん
辞書ロボット:物知りさん 掃除機ロボット:きれいさん 時計ロボット:ゴジラ ライトロボット:ひかーる…」

私が覚えているのはこれくらい、、確かまだまだあったはず…これだけ聞いても
ネーミングセンスなさすぎるよ…みゆきさん
「どうです?高良家自慢のヒューマノイド&ロボット達は?」
「まぁ…どうって…」
「感想ですよ」
つかさとみさきちは悩んでいる、まぁみんな思っていることは同じなんだろう
…でも言えるような雰囲気じゃな―
「高良ちゃん、やっぱりネーミングセンスが酷いというか…無いと思うな」

私やつかさ、みさきちが黙ってる中、口を開いたのは峰岸さんだった
「…今、、なんと?」
「いや、高良ちゃんセンス無いなって」
峰岸さんは引かない、そこに痺れるけど…憧れないよ!
でも今からなら挽回できる!峰岸さん戻ってきてっっ!
みゆきさんの方を見ると手に何かリモコンのようなものを持っている
うーたんはおろおろしながら2人を見ている
そして…みゆきさんの指がそのリモコンのボタンに触れ―

347鼻血)ry会4.5☆高良家に行こう!7:2008/03/11(火) 12:51:08 ID:mTY0qA0P
―…ようとした時にキッチンの方から声が聞こえた
「みゆき〜!ご飯できたわよ〜!皆さんも呼んでらっしゃ〜い」
「……はぁい!お母さま!」
どうやら難は逃れたらしい…つかさやうーたんをはじめみんなホッとしている様子だった
そして私達はごちそうになり、高良家をあとにするとき
帰り際に何度もうーたんに謝られた
、、みゆきさんはというと笑っているのか泣いているのか分からない表情をしていた



そして帰り道
「なんだかすっごく疲れた気がするよ〜…こなちゃんは?」
「うん…私も同じ…」
…なんというか今ならかがみの気持ちも分かる気がする、私そういう顔してるだろ?
「みさちゃん、私ちょっと用事があるから先に行ってて」
「ん? おー分かった」
「ばいばーい峰岸さ〜ん」
つかさがさよならを言う
「また明日学校でね〜!」
私も続けて言ってみた

ヴー!ヴー!
ふぅ…ん?ケータイが鳴ってる、、ゆーちゃんからだ
「ゴメン!つかさ、先行ってて〜ちょっと電話が…」
「うん、分かった〜!」
ピっ!
「もしもし、ゆーちゃんどしたの?、、それにしてもさっきの観て…うん?、、話が?、うん…
みなみちゃんと一緒に暮らしたい!?、どっ…みなみちゃん家で!?!みなみちゃんが言った
んだ?、、で、ゆーちゃんは…嬉しいんだね、、父さんには? あっこれから電話するんだ!…
うん、頑張ってねお2人さん!応援してるよ〜!ばいばーい」
私はピっ!とボタンを押し電話を終わらせた
…むぅ、、なんというサプライズ!
…でもさっきのは―
ま、いっか!今夜は赤飯だ〜!

348鼻血)ry会4.5☆高良家に行こう!8:2008/03/11(火) 12:53:11 ID:mTY0qA0P

――
…私はまだ迷っていた

本当に…話していいのか、、、まだ迷っていた

この話をするために一緒に来たんだ、無駄骨には…したくない

話すんだ
―あとで…淫乱と思われようと関係ない、話そう

「ふぅ、結局解説役が…誰も…」
『あの…みゆきお姉さま、、それはもういいです…』
「しかし遅いですね、かがー=みん…ただの買い物でこんなに時間をかけなくてもいいのに」
『ですね…いつもならもっと早く―…あれ?、峰岸さんどうしたんですか?』

言うんだ!…勇気を振り絞って―
「高良ちゃん、少し話があるんだけど…いいかな?」

349kt:2008/03/11(火) 12:55:07 ID:mTY0qA0P
ありがとうございました
やっぱり前のはオリキャラ視点で動かしたのがいけなかったんだ
と思う今日この頃…思い付きから始まったのでキャラが練りこま
れていないというもの事実です…ハイ…とりあえず考えてるとこ
までは投下したいと思っています

「4.5」となっているのは「5.」シリーズのあとに「4.8」を
投下しようと思ってるからです…アニメ本編じゃ高良家訪問して
るじゃんって言うのは禁句ですw
350名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 13:06:21 ID:RFhs6g7V
オリキャラってむずかしいしな
ちなみに参考に人気のオリキャラってどんなのだろう
自分の書いてるのにだしたいけど叩かれそうだから怖いな
351名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 13:32:11 ID:Yu5okdle
「こなつー」なんかのコピーロボットや、かなたさんの体を借りてたとこから命名された「ゴッドかなたさん」が人気では一番だと思う。
SSの中に登場させたりしている人もいるし。
352名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 16:07:20 ID:b7QE2jqc
>>351

こなつー一味は微妙だよな
CVとか見るに、広橋こなた(萌えドリル/ドラマCD)のキャラ改変、とも取れる
353名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 16:43:20 ID:hg6hPd12
鼻血みゆきさんはオリキャラに入るんだろうか……?
354名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 16:44:01 ID:gVZzVYMC
オリジナル設定の類じゃないか?
355名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 16:59:47 ID:4bcd9wdN
アンブレラってお前・・・カプコンの回し者か?

何にせよGJ。
356名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 17:44:28 ID:kfDboAa+
>>349
GJ!
 
>>326
ドロドロしたやつじゃないけど、ゆた→こなの歯車シリーズと、かがみ→こなた→つかさ→かがみ→(ryのseasonシリーズが選択肢間違えたら、修羅場になる危うさを持っていた
357名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 17:51:35 ID:u56aAH73
みゆき「うぃきつーさんに桐箪笥アーマー付けてみましょうか?」
358うぃきつー:2008/03/11(火) 19:58:55 ID:4fQytk29
最近、お母さまの暴走改造癖が富みに激しくて萎えます…
おっぱいミサイルに反対したら次はそれですか…
359名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 21:32:14 ID:u56aAH73
みゆき「桐箪笥アーマーは嫌ですか?なら…このステルス迷彩の方がよろしいですか?これなら泉さんの入浴シーンやお着替えのシーンが…だばだば…」
360名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 21:40:07 ID:yH3c0Fdq
>>286さんの1レス煙草ネタ見て思わず続きっぽい物を書いてしまった
それの物になってる>>273さんの作品とは一切繋がってないパラレル物です。

・3レス使用
・キャラ崩壊スマソ
・★死亡や強姦は無いけど後味悪い鬱展観でバットエンド★
観覧注意です
361非行かがみん その1:2008/03/11(火) 21:41:28 ID:yH3c0Fdq
「なんなのよみんなして…」
煙草の件でこっぴどくしかられて、かがみは自分が悪いとは分かっていても
ムシャクシャせずにはいられなかった。
「つかさもつかさよ!見つけた途端、問答無用に言いつけるなんて!」

どの道もう懲りてて二度と吸わないつもりだったのに散々叱られたせいで
逆に反抗心か募っていく。

気づいたら私は再び煙草の自動販売機の前で立ち止まっていた。
ネットで調べてみたんだけど煙草にも吸った感じのキツさとか味とか色々あって
この前私が吸ったのは初心者にはかなりキツい銘柄だったらしい。
「えっと…これよね」
前回は好奇心だったのに対して今回は反抗心から、私は再び煙草のボタンを押していた。
ただし銘柄は前回と違って、初心者におすすめと載ってた銘柄だ。

さっそくその日の夜、つかさが寝たのを確認してから
少し中身が残ってる空き缶を灰皿代わりに
再び煙草に火をつけた。

「すぅ〜…はぁ〜…」
意外な事に今度は咳き込むことなくアッサリ吸える。
(なんだろう…なんだか不思議な感じ…でもやっぱり変な味…)
吸った強さだけ先頭がチリチリと灰になっていってるのを見ていると
数秒の時間差をおいて頭の中が何だかモワ〜んとしてきた。
(うわ、何この感じ!?)
初めて体験する、頭の中がクラクラする様な感覚に酔いながらも
せっかく点けたんだしと思って再び煙草を口に持っていった。

「ヒャ!ううう…」
途中何度か煙草を近づけさせたせいで煙が目に入って涙を浮かべながらも
灰になった部分を定期的に空き缶の飲み口に人差し指でポンポンと落としながら
吸い続けて、気づいたら葉の部分の3分の2は吸い終わってた。

吸い終わった煙草を空き缶の中へポイッと放り込むと
「ジュッ」っと中の水に浸かって消える音がした。

「普通に吸っちゃった…」
煙草自体はそんなにおいしい物では無かったけど
さっきまでのムシャクシャは消えていた。
代わりに罪悪感はあったけど、先日散々どやされた事や
言いつけたつかさの事を思い出すとそれもあんまり感じなくなった。
362非行かがみん その2:2008/03/11(火) 21:41:56 ID:yH3c0Fdq
それからかがみは煙草の箱と空き缶を、今度は見つからない様に一番下の引き出しを
取り外したら僅かに出来る空間へと隠して、
それ以降何か嫌な事があった時にストレス発散に吸う様になった。

出来るだけ部屋に臭いが染み付かないように、灰皿は蓋がある車用の携帯灰皿にして
吸う時は窓を開けて顔を出してしまわない程度にその傍で吸って
臭い取りスプレーを入念にかけた。
(つかさの部屋だったらベランダがあって便利なのに…)

そんな生活が数ヶ月間続いたある日
「お姉ちゃん…良かったら一緒に寝…お、お姉ちゃん!?」
たまたま吸ってる所を部屋に入ってきたつかさに見られてしまう。

「お、お姉ちゃん…もう二度と吸わないってお父さん達と約束したのに…」
「うるさいわね…最初はそのつもりだったけどムシャクシャしてたら腹いせに吸いたくもなるわよ」
自棄になって開き直ってしまうかがみ。
「な、何で!?何か嫌な事があったの?」
「よくそんな事が言えるわね。誰のせいだと思ってるのよ!」
つかさの言葉が気に障って思わず声を荒げるかがみ

「…もしかして私のせいなの?私がこの前お父さん達に話してしまったから…」
「………」
「……っ…」
かがみが無言の肯定につかさは涙を流しながら部屋を飛び出していった。

一瞬つかさを傷つけてしまった後悔の念がかがみの頭を駆け巡ったけど、
同時に半端自棄にもなってしまい、かがみは追いかける事も無くその場で吸い続けた。
「なんかもう…どうでもいいや」
363非行かがみん その3:2008/03/11(火) 21:42:18 ID:yH3c0Fdq
今回はつかさはすぐに親に報告しなかったけど、それ以来つかさとかがみは気まずい関係になってしまった。
時々物悲しそうな目で見てくるのが苦痛で、晩御飯の時に顔を合わせるのが嫌でわざと外をほっつき歩いて
一緒にならないようにした。
当然両親は、夜遊びしてるのを何度も叱りつけたけど直る事は無かった。

そんなある日、両親に問い詰められたらしいつかさが煙草の件を自供してしまい
怒りを通り越して落胆した家族はかがみ一切注意しなくなってしまった。



「はあ…何でこんな事になってしまったんだろう…」
夜の繁華街の一角で煙草を吸ってるかがみの目には生気が感じられない。
こんな事になった切欠はつかさを怒鳴ってしまった時?
イライラを我慢しきれないで約束を破った時?
いや…違う…一番最初に好奇心から煙草を買ってしまった時だ…

(好奇心は身を滅ぼすか…今更だけどね…)
そう思いながら2本目に手を伸ばそうとするけど既にもう煙草は空になっていた。
「チッ」
寂しさを紛らわせてくれる物が無くなったのに腹を立ててると…
DQN「ねえ、今一人〜?」
かがみに興味を持った3人組の男達が声をかけてきた。
DQN「良かったら俺らと遊びにいかない?」
本来のかがみだったらこんな誘いには絶対に載らないのだけど
今のかがみには晩御飯をただで食べれるチャンスでかえって好都合だった。
「いいわよ。…ねえ、所で煙草持ってない?」
こうしてかがみは見知らぬ男達と夜の街へと消えていった。
364名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 21:42:52 ID:yH3c0Fdq
以上です。
鬱展開ご視聴ご苦労様でした。
ようするにちょっとだけと思うと
それが切欠で凄い事になるかもしれないので自重しましょうという事で。

365うぃきつー:2008/03/11(火) 21:44:15 ID:xORhgbA9
>>359
異議なし!!早速取り入れますだばだば










* * 今日の買い物 * *
オイル      10缶
SD 2G     20ケ
ティッシュ    500箱
・・・        ・・・

お母様・・・このアーマー迷彩じゃなく明細です・・・
いくら私が会計係だからって・・・(´・ω・`)
366名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 22:30:12 ID:G7pKQDBM
このレスを見たあなたの部屋に近日ゆりしーが現れます

その方法はただ一つ
↓このスレに行き
http://ex21.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1204608839/


ゆりしーがいちばんかわいくてすごい


と書き込んでください。
書き込めば確実にゆりしーがあなたの前に現れますよ
367名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 22:33:56 ID:Yar9Ckkg
>364
ぐっじょぶなのです。
やさぐれかがみんが良い感じ。
続きが読みたかったり。
368kt:2008/03/11(火) 22:41:31 ID:5uc+TnNN
おお!なんだか盛り上がってらっしゃる…
357〜359・365さん、ネタにしてくれてありがとうございます

でも次回からは少しうぃきつーが空気っぽくなります…
あとステルス迷彩はどこかに取り入れたいですw
369名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 22:44:59 ID:ikNXQ4wu
えー、投下予定の人がいなければ投下したいんですが
もうちょっと、待ったほうが良いですかね?
37028-538:2008/03/11(火) 22:53:33 ID:ikNXQ4wu
それでは、投下させていただきます
相変わらず空気読めなくてすんません

カップリング無し
こなた視点
相変わらずのエロ無しです
飲酒の表現あり
5レスです

黒井先生とゆい姉さんから
「最近出番無いよねー」
って電波受信して、書いてしまいました
371先生と生徒(1/5):2008/03/11(火) 22:54:38 ID:ikNXQ4wu
 土曜日の夜。と言っても、時間は既に日曜日へと突入している。
 呼び鈴が鳴らされ、誰かが訪ねてきた。
「お父さーん、ちょっと手が離せないから出てー」
 私は、現在エロゲ中。それも、最後に取っておいたツンデレヒロインの攻略が佳境に入ったところ。
 こういう大事なところは、途中で中断すると気分が盛り下がっちゃうんだよね。
 それに、こんな時間に訪ねてくるのは、ゆい姉さんくらいしかいないし。
「こんばんわー。こなたいるー?」
 予想通りの声が廊下から聞こえてきた。
 どうせまた、きよたかさんと会えない憂さ晴らしをしてきたんだろう。
 そして、うちで愚痴をこぼしてる間に寝ちゃうんだよね。
「はいはい、ゆい姉さん、いるよー。ゆーちゃん寝てるから静かにねー」
 私はパソコンの前から動かずに返事をする。
 もう十八歳になってるから、隠す必要も無いしね。
 それに、以前からゆい姉さんが来たときに、目の前でエロゲしてたことは何度もあるんだ。
 でも、気付かなかったのか素でスルーされたのか、注意されたことは無いんだよね。
「おーす、こなたー。遊びに来たよー」
 部屋の扉が開けられ、姿を見せたのはゆい姉さん…… だけじゃなかった。
「ちょ、待って」
 その姿を見て、私は慌ててゲームを終了させる。
 あちゃー、セーブして無いよ。私の三時間を返せーっ。
 モニターに向けた顔を、再び部屋の入口へ戻す。
 目の錯覚だったんじゃないかと、淡い希望を持って。
 しかし、そんな私の気持ちは裏切られた。
372先生と生徒(2/5):2008/03/11(火) 22:55:22 ID:ikNXQ4wu
「おーっす、泉ー。エロゲやっとったんかー」
 赤ら顔のゆい姉さんと一緒に現れたのは、やはり赤ら顔の黒井先生。
「なんで黒井先生がいるんですかっ」
 私のツッコミに答えてくれたのはゆい姉さんだった。
「それはねー、私と黒井先生が一緒に飲んでたからだよーん」
 あー、そういえば学園祭のとき、一緒に飲みに行ってらっしゃいましたね。
 その後、飲み仲間になってたんですね。
 そういうことですね。
 でもそれは、私が聞いたことの答えになってないですよ。
 ツッコミにボケで返すのはどうかと思うんですよ。はい。
「ゆい姉さん。私が聞きたいのは、なんで先生と一緒にうちに来――」
「あ、おじさん。黒井先生を御手洗いに案内してもらえますか」
 ありゃ、先生がやけに静かだと思ったら、我慢してたんですか。
 それよりも、お父さんはずっと廊下で待機してたんですか。ご苦労様ですねぇ。
「でね、こなた」
 突然、ゆい姉さんが普通の声で話しかけてきた。
 いや、普通と言うか普段聞かないと言うか……
 うん、真面目な感じの声で、だ。
「黒井先生はこの時期になると、いっつも不安になるんだってさ」
「不安に?」
「そ。一年間担任として、ちゃんと先生でいられたのか不安になるんだって」
 ゆい姉さんは廊下の方に目をやり、先生が戻ってこないことを確認すると、話を続けた。
「で、飲んでる間に、『泉はどう思っとるんやろ』って言ってたから連れて来たんだよ」
 いつもの元気いっぱいの笑顔ではなく、優しく微笑むと「後はよろしくー」と言って部屋から出て行った。
 あれ? ゆい姉さん、今日はお酒の臭いがほとんどしなかった。
 先生の愚痴に付き合って、聞き手に回ってたのかな。
 それよりも、先生にも先生としての悩みが有った方が驚きだよ。
373先生と生徒(3/5):2008/03/11(火) 22:56:15 ID:ikNXQ4wu
 程なくして、先生が私の部屋に戻ってきた。
 先生は結構な量飲んでいるようで、かなり酒臭い。
 そして、私の部屋に入ってテーブルの前に座ると一言。
「泉、酒くれー」
 これにはさすがの私も呆れたよ。
 でも、先生の表情に覇気が無いように感じた。
 それに、ゆい姉さんから聞いた話も気になったんで、おとなしく従うことにしよう。
「ちょっと待っててくださいね」
 私は先生を残して、台所へ向かう。
 台所では、ゆい姉さんがお父さんと日本酒を酌み交わしながら、愚痴をこぼしていた。
 やっぱり今日は、自分の愚痴言ってなかったのかな?
「ね、ゆい姉さん。わざわざ黒井先生を連れてきて、私に何を話させたいのかな?」
 ゆい姉さんは、顔を背けると「な、なんのことかなー」と言って笑っている。
 ま、その反応だけで十分だよ。
 わざわざ連れてきた、ってことが分かったから。
 何を期待しているのか知らないけど、なんにもできないと思うけどねー。
 私は冷蔵庫を開けると数本の缶ビールを取り出す。
「お父さん、ビール何本か貰ってくね」
 お父さんは、ちらりとこちらを見るとウィンクしてきた。
 えーと、それは私も飲んでいいってことかな。
 でも、教師の前で生徒が飲酒はさすがにまずい気が……
374先生と生徒(4/5):2008/03/11(火) 22:57:29 ID:ikNXQ4wu
 部屋に戻ると、先生は座ったまま私の部屋を見回していた。
「はい、先生。ビールしかないですよ」
「おおきに……」
 持ってきたビールをテーブルに置くと、すぐに先生は手に取り飲みだした。
 私は呆れてその様子を見ている。
 その視線に気付いたのか、先生がようやく声を掛けてきた。
「なんや泉。呆れた顔で見よってから」
 目がすわり気味の先生を見ながら、私はわざとらしく大きくため息をつく。
「そりゃ呆れますよ。酔っ払って生徒の家に押しかけて、お酒を催促する教師を見れば」
 わざと「教師」の部分を強調した私の言葉に、先生の体がびくっと反応した。
 ゆい姉さんの言葉が本当なら、これで先生は話してくれると思うんだけど。
 いや、別にゆい姉さんを疑ってるわけじゃないですよ。

 先生は、手に持っていたビールを一気にあおってから、私を真っ直ぐ見つめてきた。
「なあ、泉。ウチは先生やれとるんやろか」
 ゆい姉さんの話を聞いてから色々と考えてみたけど、私にはどういう人が「先生」なのか分からなかった。
 だから、私が先生をどう思っているかを伝えればいいのかな。
「先生は体罰が問題になるご時世に、平気で殴るし」
 先生は「うっ」と唸って、すこし俯く。
「連休明けなんかに、遅刻ぎりぎりで教室に飛び込んでくるし」
 今度は「ぐぅ」と言って更に俯いちゃったよ。
「学園祭でお酒を注文したりするし」
 ごんっ、と音がしたと思ったら、先生、テーブルに頭ぶつけてるじゃん……
 ちょっと虐めすぎたかな。
「それに、今日みたいな事は普通の教師じゃ有り得ないと思いますよ」
 先生はその姿勢のまま「ウチ教師に向いてないんかなぁ」とか呟いている。
 そして二本目を開けると、今度はちびちびと飲みだした。
375先生と生徒(5/5):2008/03/11(火) 22:58:08 ID:ikNXQ4wu
 ふぅ、と一息ついて、私はビールを手に取る。
「先生、私も飲んでいいですか」
 そう言って、先生の返事を待たずに一口飲む。
 うーん、やっぱり美味しいもんじゃないよね。
 今度は先生が呆れた顔をして、私を見ている。
「先生、私はどんな生徒ですか?」
 先生は、人差し指をあごに当て、すこし上を向いて考えている。
「ん、そやな。遅刻する、五月病で休もうとする、居眠りするはでろくでもないやっちゃな」
 反論の余地無しです。仰るとおりです。
 今度は私がテーブルに頭をぶつける番だったようだ。
 でも、先生は学校の中のことだけを指摘する。
 エロゲのことや、コスプレ喫茶でのバイトのことには一切触れない。
「しかも、教師の前で飲酒するしな。停学もんやな」
「いや、それは、その……」
 さすがに私も、このことには慌てて言い訳をしようと顔を上げると、先生は笑っていた。
 先生は、つん、と私のおでこを指で押すと、真顔になる。
「でもな、ウチの生徒に悪い奴は一人もおらん。もし何か悪いことしたら、それはウチの責任や」
 真面目で、真剣な表情の黒井先生。
 やっぱり、先生は優しくて、強くて、私にとって最高の先生だよね。
 でも、そんなこと恥ずかしすぎて言えないですよ。
「先生。私は他の先生じゃなくて、黒井先生が担任で良かったと思ってますよ」
 これが限界。おまけに、恥ずかしさを誤魔化すために猫口作ってニヨニヨしてますよ。
 すっと手が伸びてきて、私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
 先生は再び笑顔になっていたけど、目じりに光るものが見えた。
「ありがとな、泉」
 へ? 私、なにもしてないよね。
 なぜそう言われたか分からずに、私が腕を組み首を傾げると先生が突如笑い出した。
「やっぱり、泉は泉やな」
 ますます訳が分からなくなったから、私は考えることを放棄した。
 ま、先生が元気になったからそれで良いよね――
37628-538:2008/03/11(火) 23:00:25 ID:ikNXQ4wu
以上です

なんか、うまく区切れなくてレス数が増えてしまい、すんません

最初は、ゆい姉さんとななこさんが、酔っ払って泉家を訪れて騒ぐだけの
どたばたコメディを書くつもりだったのに、書き上げてみればこんなことに

しかし、相変わらず表現力がなくて申し訳ないです
うん、わかってるんだ
文才云々以前に、言葉を知らないのが問題なのは…orz
377名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 23:20:56 ID:TubIkJwF
>>376
言葉を知らない?
大丈夫、伝わったよ。
大事なのはハートなのさ。

ぐーじょっぶ
378名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 23:36:59 ID:3y89eIfx
皆さん激しくGJなのであります。
ここまで読むだけで3時間掛かったorz

>>364
このかがみをそのまま20歳にすると、大生板の大学生かがみになる件。
やさぐれGJでした。

拙作品がバッドエンドになってしまったら、ネタ借用するかも知れま千円。
その折は、是非。
379名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 23:41:40 ID:b2N7Ma7U
>>376
GJ
元漫画家のおかんが言ってた
キャラが勝手に動き始めたらそれは誇っていい作品だって
380妄想屋(仮名) ◆JUqojnT5.c :2008/03/11(火) 23:44:46 ID:ODAqQcfr
頑張れ先生……(涙)
そして、かがみん。タバコはやめといたほうがいいよ。俺みたいになるよー?orz


>>116
勝手ながら落書きを投下させていただきます。

●1レスお借りいたします。
●こなた&かにゃたさん かにゃたさんのイメージはオリジナルです。
●現時点では(?)非エロな絵。

つ【ttp://www.sonokawa28.net/lsssuploader/src/up0035.jpg



なんか、CGのお仕事もらっちゃった、わーい。(ボランティアだけど)
でもそのせいで、投下もの書く時間が……orz
381名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 23:44:46 ID:hqeDRJ0A
>>376
久々の黒井先生に先生らしさが伺えました

GJ!!
382名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 23:47:13 ID:Nq44v/Q2
>>376
GJ
自分としてはここからエロに入ってくれればさらに良かったのですがw
383名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 23:47:24 ID:TU00Ba3Z
煙草経験=常吸ではないと思うが
というか試しに一回くらいであれば誰でもあるんでね?普通そこでやめるけど
384名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 23:51:48 ID:kfDboAa+
>>380
非常にけしからん、風紀が乱れる恐れがあるのでお持ち帰りしておこう
385名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 23:55:54 ID:GAgPgCQh
>>380
GJ!!
ところで、かにゃたさんってばスッポンポン?
386名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 00:07:35 ID:aMxunx25
>>380
かはっ(吐血)

これであと10年、10年は戦える……!
描いていただきありがとうございました!
387名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 00:22:24 ID:Vbqc4Yat
>376
ぐっじょぶです。
ほのぼので、かつ、しんみりとさせられました。
教師にとっては、3月は何かとメランコリーになるかもしれませんね。
気持ちは上手く伝わっていましたよ。
388名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 00:29:37 ID:+h1zRLio
>>376
GJ、何か良いなこうゆうの
>>380
けしからん!実にけしからん!
罰としてお持ち帰り…いや没収してやる!
389名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 00:59:26 ID:xVVC40mO
これから投下します。

・2レス
・こなた&ななこ
・非エロ
390名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 01:00:57 ID:xVVC40mO
「神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世は対立しとったローマ教皇グレゴリウス7世に破門を
取り消してもらうために三日間もカノッサ城の前で待たされて、ようやく謝罪が受け
入れられた。これを『カノッサの屈辱』いうて、教皇権と王権の力関係を決定付けた
出来事として――」
 ああ、眠い。春眠暁とかそんなことに関係なくて、眠い。
 黒井先生の子守唄、じゃなくて授業がちょうどいい感じに私の思考力を奪って、瞼を
重くさせる。昨夜遅くまでネトゲをやっていたっていうのもあるけど、この授業――
 かくっ
 その勢いで少しだけ目が覚めた。でもそれはほんの数秒のことで、またすぐに――
 かくっ
 今度はいい揺れだった。このまま眠れるかも。
 ああ、眠……
 眠…………
 だめ。このまま寝てはいけない。
 寝ちゃいけないって決めてる。別に真面目に授業を聞くとかそんなことじゃなくて、
もっと別の理由があって……でもねむい……
 かくっ
 ちょうど目線を降ろしたら、先生の足が見えた。っていうことは先生がすぐそこに
いるっていうことであって――
「泉!」
 いたっ!
「泉ー居眠りすなー」
「〜〜〜っ」
 痛くて返事できない。頭を抑えてうずくまってる。
「目ぇ覚めたか?」
 覚めました。覚めましたとも。
「体罰が禁止のご時世で、先生けっこう普通に殴りますよね。別にいいですけど」
「せやな。けど、誰も彼もやなくて殴る相手は選んどるよ。いろんな意味で」
 見上げると、先生は気持ちいいくらい爽やかな笑顔。
 何気にすごいことを言ってると思う。
 でも周りの皆は、あと黒井先生も気付いてないだろうな……先生に殴られて、私が
こんなにも胸をドキドキさせてること。
 この授業の間は、もう寝ることはないと思う。頭が痛いからじゃなくて、胸がこんな
にも苦しいから。誰ともしたことないキスを想像したときだって、こんなにドキドキしな
かった。
 先生とはプライベートでも付き合いがあるけど、いつの間にかそれだけじゃ飽き足ら
なくなって、授業中にも構ってほしいって思うようになった。授業中に私だけに構って
もらう方法は何か、私が思いついたのは、殴られればいいっていうことだった。それが、
いつからか殴られること自体が素敵だって思うようになって……。
 先生。先生に殴られるとドキドキしちゃう、こんな生徒でごめんなさい。殴られる
ために居眠りしてしまってごめんなさい。
 こんな気持ち、絶対に言えないから、せめて私が生徒でいる間は、私のことを殴って
ください。
391名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 01:02:11 ID:xVVC40mO
「神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世は対立しとったローマ教皇グレゴリウス7世に破門を
取り消してもらうために三日間もカノッサ城の前で待たされて、ようやく謝罪が受け
入れられた。これを『カノッサの屈辱』いうて、教皇権と王権の力関係を決定付けた
出来事として――」
 自分の説明の中に出した人名や地名を黒板に書いて、それを線や矢印で結ぶ。
 『カノッサの屈辱』の部分は赤字で。
「屈辱いうても、ローマ教皇が屈辱を与えたくて三日も放っぽっといたわけやないで。
ハインリヒ4世が武装しとるから自分が何かされるんやないかって思ったわけや」
 この辺は別に知らなくてもええんやけどな。
 ここで生徒を見るために教室を見回すと――
 泉は案の定、寝とる。正確にはこれから寝るところなんやろうけど。
 まったく、泉は毎回毎回。そんなにウチの授業がつまらんのか。
 つかつかと、わざとらしく足音を立てながら近寄うても、泉は起きる気配なし。
 なら、ウチのすることはただ一つ。
「泉!」
 ゴスッ
 なかなかええ音がした。
「泉ー居眠りすなー」
「〜〜〜っ」
 泉は頭を抱えとる。
「目ぇ覚めたか?」
「体罰が禁止のご時世で、先生けっこう普通に殴りますよね。別にいいですけど」
 ああ、泉……。そんな上目遣いで見られるとウチは……。
「せやな。けど、誰も彼もやなくて殴る相手は選んどるよ。いろんな意味で」
 生徒たちのリアクションを見るに、ウチの心の内には気付いとらんはずや。
 知られるわけにはいかん。泉を殴ると、こんなに胸が高鳴るなんて。
 初恋だとか思春期だとか、そんな時期はとっくに過ぎとるはずやのに、泉を殴ると
目眩がするくらい苦しくなるんや。平静を装うのに精一杯で授業を続けられん。とり
あえずの雑談でなんとか間をもたせとる。
 ウチも変やってことはわかっとる。授業中はずっと泉に見つめてほしくてただ起こす
ために殴っとったはずやのに、なぜか殴ること自体が気持ちよくなった。
 泉。ウチは泉の一番になりたいんや。このままこうしていれば、きっとウチはずっと
泉に覚えていてもらえるはずやから……こんなことでしか気持ちを表現できない先生で
すまん。
 生徒を相手にこんな気持ちになって、それを素直に言うこともできなくて、ウチは悪い
先生やな……。
3923-283:2008/03/12(水) 01:03:21 ID:xVVC40mO
昔、同じアイディアで小ネタを投下したことがありましたが、
それのリメイクということで。
タイトルはまだ決まってないんですが、後で決めてから
保管庫に収録させていただきます。
393名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 01:07:22 ID:Tc+alvI/
拳で語る愛情、ぐっじょぶ!


バイオレンスだなーーw
394名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 01:13:11 ID:CuNBnvAC
SSいきます。

エロ無し。
みゆき視点。
4~5レス。
基本・王道(とする予定)・甘党


「恋するみゆき」
3951:2008/03/12(水) 01:14:39 ID:CuNBnvAC
「かがみぃ〜、今日の帰り、またアニメイト付き合ってヨ」
「ま、またあ!?先週行ったばかりでしょ!」
昼休み。いつも4人で集まる時間。泉さんがかがみさんにおねだりをしています。いつも、私たちがよく見る光景です。

「いいじゃ〜ん、今日はコンプの発売日なんだからさ〜」
「あのねえっ!あんたと出かけると帰りがいっつも遅くなるのよ!」
「む…じゃー分かった。もういいもん、かがみなんて」

「ちょ…ちょっと待ってよ…!!別に私は断ったわけじゃないんだから……付き合ってあげるわよ…」
かがみさんは、最後の言葉を言った時は顔が赤くなっていました。結局、いつも泉さんについていくことになってしまうのですが。

「…むふふ。ホントは私と一緒に行きたいくせに。さびしんぼかがみ萌え」
「…く…こいつっ!」
「ほら、かがみ〜ん」
「…!!」
泉さんは、かがみさんの腕にしがみついて、じゃれついているようです。かがみさんのことがよほど気に入ってるのですね。
「かがみんたら〜」
「…う…ぅうるさいっ!!」


「お姉ちゃんとこなちゃんて本当に仲がいいよね〜」
その時、つかささんが一人ごとのように、二人の方を見ながら言いました。
「うふふ、そうですね」
私は言いました。確かにあの二人の様子は見ているだけで微笑ましく思えますものね。




「いいなあ…」
つかささんの口から自然と出た小さな言葉が、私の耳に聞こえてきました。

つかささん…とてもうらやましいのですね…小さなその一言が少し寂しげです。


そこで、私は放課後、つかささんに言いました。
「つかささん」
「なあに?ゆきちゃん」
「よろしかったら、明日の休日に私とショッピングでもご一緒しませんか?」
「わあ、いいよ!ゆきちゃんと二人だけで?」
「ええ。たまにはこういうのもどうですか?」
「うん!分かったよ。ゆきちゃん!」
つかささんの顔がぱあっと明るくなりました。

私などでは、泉さんとかがみさん程、仲良くなれるのかどうかは分かりません…
でも、せめて…私との交流で、つかささんが心の隙間を埋めてもらえれば…

次の日の休日、私はできるだけ、つかささんを楽しませるよう心掛けました。
私はとても楽しい時間を過ごさせて頂きました。つかささんも楽しそうでしたので、良かったです。
3962:2008/03/12(水) 01:15:57 ID:CuNBnvAC
それからも、私とつかささんは、二人だけで外出したり、お互いの家に遊びに行ったりして、二人だけの時間を作りました。
もちろん、今までの4人の時間も大切にしつつ、私はつかささんと二人だけの時間を作ろうとしました。



いいなあ…



つかささんが言った、ほんの小さな言葉がとても印象に残ったのです。もしかしたら、寂しがっているのかもしれませんし…
でも、私がつかささんをお誘いするたびにとても嬉しそうにしてくれて…その度につかささんは喜んでくれます。

私は、つかささんとの仲が親密になっていくように思えて嬉しかったです。


でも、その頃から…私の中である想いが生まれました。
恥ずかしいようで…とても温かくなる気持ち。
つかささんのことをいつも気にしてしまいます。
お話をしている時、お食事をしている時、顔を見るだけでも…



私は…つかささんに恋をしてしまったのです。


…好きです、つかささん。

同じ女性同士という戸惑いで、言うに言えない言葉なのですが…
でも…つかささんが…     …とっても可愛らしいから…



ゆきちゃん。

つかささんは私のことをこう呼んでくれます。
親しい友人だけに使う、大切なあだ名。

私は、今まで彼女ほど仲良しになれた方はいません…

意識してしまうのです。

3973:2008/03/12(水) 01:17:22 ID:CuNBnvAC
ある日の放課後。
いつものように、4人で帰ろうとしている時。

「おーす、帰るわよ〜」
「お〜、かがみ〜ん、今日も私とでえとしませんかぁ?」
「また、どこへ連れ回す気よっ!!」
「いいじゃ〜ん、ほら、行こ♪行こ♪かがみん♪」
泉さんはまたかがみさんとどこかに寄り道していくようです。うふふ、あいかわらず仲良しですね…


「ね、ねえ、ゆきちゃん…」
つかささんが私に話しかけてきたのですが…なんだか、いつもと違う印象を受けます。…少しためらいがあるような…
「…なんでしょうか?つかささん」
「…こなちゃんて…可愛いよね…」
「えっ…?」
「私さ…こなちゃんの事、好きになっちゃったみたいなんだよね…」
「ええっ…!」

「そ、それはいけません!」
「え。どうして?」
「い、泉さんは…かがみさんのことを想っていらっしゃるので…」
「それは…こなちゃんから聞いたの…?」
「いえ…これは…私の予想ですが…きっと…かがみさんも、泉さんを…」
「え〜〜、そんなの、本人に聞いてみないとわかんないよぉ」
「え…で、ですが…!?」

「私、告白しちゃおっかなあ…」
口元に指をあて、横目で私を見ながら、そう言ってつかささんが泉さんの方に向かって歩き出します。




「だ…!だめですっ!!!」

私は、両手でつかささんの手をぎゅっと握りしめました。
大声を出してしまったことも含めて、私は恥ずかしい気持ちでいっぱいになって目をつぶりました。

「…どうして?」
つかささんがあどけない口調で、聞いてきます。

「だめですよ…つかささん…」

つかささん…気付いて下さい…どうか、私の気持ちに気付いて下さい…!

「ゆきちゃん、どうして?」

「だって…! だって…!! 私……!!!          ……………つかささん…!!!」


顔が熱いです…目の奥が熱いです…どうして、こんなことに…!


「ゆきちゃん」


つかささんはもう片方の手で、私の手を握ってきたのです。
3984:2008/03/12(水) 01:18:39 ID:CuNBnvAC
「…?え…?つかささん…?」

「ごめんね、ゆきちゃん…私ね…
どうしてもゆきちゃんの気持ちが知りたかったんだ… でも、これで分かったよ…  これでやっと言えるよ…」


つかささんは、目を潤ませながら、頬を赤く染めながら、握った両手を胸の前に上げて、言いました。


「大好きだよ。ゆきちゃん」



私は今まで、どんなに、その言葉を心の中で繰り返したのでしょう?


「…!!!」
驚いた私は、両手を口にあてると、目からぽろぽろと涙が落ちていくのが分かりました。


「良かった…良かったですよぉ…!私、私…ずっと前からつかささんのことが好きでした…」
「うん…うれしいよ…ゆきちゃん」
「でも…女性同士の恋なので…ためらいがありましたのに…このまま黙っていようとしていましたのに… つかささんが…」

「ごめんね…私、臆病で…お姉ちゃんやこなちゃんみたいに、自分の思ってることをうまく言えないから…
思いきって告白する勇気なんてなかったの…ごめんね。騙して。ひどいことしちゃったよね、私…」
つかささんの顔も真っ赤になっています。目は涙ぐんでいます。


「じゃあ…くすん、つかささんも…くすん…」
「うん…私…ゆきちゃんなら…好きになれるよ…私ね…お姉ちゃんとこなちゃんがとっても仲がいいの…うらやましかったんだ。
でもね、いつからか、ゆきちゃんがよく私と二人だけでいろんな所に誘ってくれるのが、嬉しくて…」

つかささんの目から涙が流れ落ちました。でも、とても綺麗な表情でした。

「だから…だからっ、ゆきちゃんがさっき私を止めてくれたの…すっごく嬉しかったんだよ!
えへへ…あ、あれ………なんで……泣いちゃうのかな……   ぅ、っ、うぅぅ  …ゆきちゃぁん…!!」
泣いているつかささんが私に抱きついてきました。

「つかささん…!」

私たちはお互いの体を抱きしめ合いました。
「うぇ〜〜ん…ふぇぇぇん…ゆきちゃぁん…」
私は、つかささんの頭をなでてあげました。

その後、つかささんが顔を上げて見つめ合った時の、嬉しそうに笑ってくれる顔がとても可愛らしかったです。

もう、寂しい想いはさせませんよ…私の、大好きな人。
3995:2008/03/12(水) 01:20:23 ID:CuNBnvAC
  

「お〜い、ここ教室だぞ〜…  …って私ら、空気かよ!」
かがみがちょっと呆れながら言った。

「かがみぃ〜…私も☆」
こなたが、かがみのスカートの裾を引っ張って言った。
「!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
完。
萌えるみゆきさんの恋を書いてみたいと思ってこのSSでつ。
私じゃこの程度の文しか書けないが。

やはり、
こなたの相手はかがみ!
ゆたかの相手はみなみ!
ひよりの相手はパティ!
みさおの相手はあやの!

というわけでみゆきさんの相手はつかさしか思いつきませんでした。

みゆきさんのキャラを壊さずに書くってすごい難しい…
つかみゆ愛してる氏に捧げまつ。
400名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 01:22:44 ID:Ni3XKLn4
ああ、要するにはぶられカップルっていうやつね
401名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 01:23:11 ID:CuNBnvAC
>>392
っとお、ちょっと早く投下するの早すぎたか…スマンorzノローマなリロードで…
402連投スマソ:2008/03/12(水) 01:35:13 ID:CuNBnvAC
>>400

違うっっっ!!!断じてちがうわあああああああっっっっっっっ!!!!1orz…グスン
403純日本風眼鏡貴腐人:2008/03/12(水) 01:57:17 ID:EcoRiKEh
>>400
否!断じて否!世はコレを適材適所と呼ぶッ!!

ヲタアホ毛にはツンデレを!
ぽやぽやボケにはボインボケを!
病弱っこには寡黙スレンダーを!
元気系には清楚系を!

なるべくしてなった組み合わせ!
この結びつきが合わさるとき!
いかようなる奇跡も!自在ッ!!
ならぬときはッ!!私が起こしてみせるッ!!ペンでッ!!



って・・・みなさん・・・なぜ全員大挙して私のところへ・・・
パティ・・・何で涙目で迫る?
みなさんそのワキワキした手は一体どういうことッスか・・・





アッーーーー!!
404名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 02:17:50 ID:YXsQjng2
>>403
田村ひより・・・死亡確認!
405名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 02:27:23 ID:VAP/pwGC
>>400
ここは某カップル好きには合わないんだから無理して読まなくても良いよ
406名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 03:02:40 ID:+h1zRLio
>>400
テメーは俺を怒らせた
407みゆつか愛してる:2008/03/12(水) 03:19:10 ID:JdY5pcMd
>>399
うああ……これは素晴らしいです!
萌え転がらせていただきました、最大級のGJです!
みゆきさん視点は割と書くのが難しいんですよね。このスレでは割とキャラがアレがちだったりしますケド
しかしこの作品はみゆきさんらしさがあってとてもよかったです!

>>400
^^
408名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 08:17:47 ID:+XnvCeL9
お前らはなんでわざわざ>>400を煽ってんだ
409名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 08:47:20 ID:r4S4vRvR
>>392
先生・・・胸が・・・苦しいです・・・GJ。
>>399
壊れてないみゆきさんを書くのが難しいって・・・GJ。


>>400
貴様の発言と人気に嫉妬した
410名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 08:57:19 ID:SHfjuopU
>>408
「こなかが、みゆつか、こなゆき、つかこな、かがつか、かがみゆ、
ゆたみな、みゆみな、ひよりん総受け、ゆたこな、ゆたかが……
それぞれ好みのカップルがあるのはいいと思うんだ。

でも>>400はやっちゃいけないことをやっちゃったのさ。
気に入らない組み合わせを貶めるという行為をね!」


かがみ「……こなた、あんた何やってるの?」
411名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 10:33:31 ID:rae9771h
>>410
背景「^^^^」
412名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 11:00:37 ID:LeAmyuqr
>>410
らき☆ちゃんコンビ「………」
413名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 11:45:10 ID:7mjiVsLL
>>410
そうxかな…
414名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 12:35:17 ID:PL+Mqzhp
ゆたかの思わぬ攻勢で落ちるひよりんも最近は見れてうれしいですよ
そんなこともシリーズとかゆたか対策委員会とか
415名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 13:33:54 ID:+XnvCeL9
貶める意図はないと思うんだけどな
416名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 15:21:40 ID:5q3NHmDp
はぶられカップルか否かなんてどうでもいい。
重要なのは萌えるか萌えないかだ。
つまり、>>399さんGJ!!
417名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 15:27:32 ID:AsZgkL0B
こなた「ちょっと気分転換にかがみ誘って秋葉原いってこよう」
かがみ「よし行くか!」
こなた「そういやかがみ知ってる?」
かがみ「何?こなた?」
こなた「この前TVで秋葉原特集やってたんだけど餅を使って作ったベルギーワッフルってのがあってね
名前がモッフルって言うだよそれ食べに行こう♪」
かがみ「変わったお菓子ねいいわ行こう」
418名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 15:51:04 ID:veaVX57Z
>>417
それを食ったかがみがとんでもないリアクションをやらかすんだろうな…
と、思ってしまった俺は最近あるパンマンガにハマった
419名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 19:03:55 ID:2D8Ktem8
アンパンマンって案外奥深かったりするもんね
420名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 19:07:06 ID:zTwEk4G9
ナニが君の幸せ
421ひよりん:2008/03/12(水) 19:25:45 ID:0bc12LyB
ユリ描いて喜ぶ
422ひよりん:2008/03/12(水) 19:36:44 ID:dPwue14u
(ネタ)思いつかないまま終わる
423名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 19:38:13 ID:PIPlAu2X
>>419
「こなパンマン!新しい顔だよっ♪」
「ありがとつかさ(=ω=.)」
「こ、こなた…お腹空いちゃった…」
「むふー♪私の顔をお食べよかがみん」
「あぁっ!こなたおいしいよこなたぁ」
「あー、ずるいよお姉ちゃん><」
「じゃあ、こなパンマンの新しい顔は全部私が頂いていきますね」

…なんかこんな電波が降りてきた。地上波で(´・ω・`)
424名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 19:38:43 ID:PIPlAu2X
sage忘れたゴメンorz
425名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 19:45:32 ID:LzWtJoje
>>399
GJ ! 俺はみゆつかをはぶられカップルだなんて思えない ! 不器用で危なっかしいつかさに、母性に溢れていて
それでいて頼もしいみゆきさん
最高のカップルじゃないか ! 普通に王道カップルだと思うぞ?

>>400
↑そんなわけだから、考え直してくれ
426名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 20:10:25 ID:YXsQjng2
こなパンマンだと良い子の味方っぽいが、コナちゃんマンだと微妙かも・・・

コナちゃんマン「ナハッナハッナハッ・・・コマネチ!」
ブラックミノル「見事な貧乳だ、コナちゃんマン」
427名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 20:19:05 ID:PIPlAu2X
>>426
ばかー(><)
そのネタは>>423の電波と一緒に受信したんだけど自重したんだw

…ブラックミノルは思いつかなかったけどw
428名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 20:24:09 ID:YXsQjng2
スマン /(´・ω・`)
429名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 20:34:36 ID:hMkATX0T
色々資料のために桜藤祭プレイしてたら何か訳の判らない電波をキャッチしたので投下したいと思います

・桜藤祭ネタバレあり・・・なのかなこれは?
・ネタ
43035-215:2008/03/12(水) 20:35:09 ID:hMkATX0T
って名前付け忘れたorz
43135-215:2008/03/12(水) 20:35:38 ID:hMkATX0T
朝といえばアニメ!学校前のアニメ、いやー朝のアニメって何故か見ちゃうんだよねー
「のぞみー!遅刻するわよー」
「はーい、今準備してるからー」
あ、準備で思い出した・・・学校の場所知らないじゃん私・・・
「のぞみー、もう時間ないわよー!!」
「判った、もう出るから!」
こうなった以上結論は1つ、走る!

た、たどり着いた・・・死ぬ・・・
「いやー、しかしこの時期に2人も転校生が来るとは珍しいなー」
「そうですねー」
もう1人の転校生の永森さんは黙ったまま、うーん・・・話しかけづらい
「もうすぐ桜藤祭や、気張って頑張りやー!」
「は、はい・・・頑張ります」
永森さんは相変わらず黙ったまま、私1人じゃ間が持たないから何とかしてー!
「おーいどこまで行くんや、教室はここや」
「あ・・・」
「とりあえずあんま緊張せんでええで、案外寝とる奴もいるし」
受験生なのに大丈夫なのかなその人・・・
「みんなー、こっち注目やでー」
ともかく黒井先生が教室に入り、HRで紹介される事となった。
「とりあえず2人を紹介する前に・・・」
先生はそう言って机に突っ伏してる子の所へ行き・・・
「泉ー!起きんかー!!!!!」
「はぷしゅ!」
うわー、見事な音したけど・・・
「泉ー、もしかして昨日うちが寝た後もやってた訳やないやろな?」
「いや、流石にそこまではやってませんよ」
「そうか、ならうちと同じ所で落ちたはずやな」
「い、いやあの後メンバーに呼ばれてちょっと移動してから落ちたので」
「そーかそーか、ならアイテム補充とかもまだやったよな、そんで・・・」
「あの、先生・・・」
「あ、悪い悪い、転校生の2人や、適当に自己紹介しとけ」
い、いいのかな・・・?
「かまへんかまへん」
「はあ・・・始めまして、青葉のぞみです」

続く?
43235-215:2008/03/12(水) 20:37:37 ID:hMkATX0T
見ての通り主人公を男じゃなくて女です
名前はどこかで聞いた事あるようなのも仕様です
続くのかどうかも不明です

「てかそんなの書いてる暇あるならさっさと私達の話書きなさいよ」
おっしゃる通りです・・・てか肝心のシーンがうまく書けねえorz
433名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 20:58:20 ID:+h1zRLio
なんと女が主人公か…
あれ、てことはこの女主人公が士郎役やるの…?

だが続き期待しているぜ
434名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:31:20 ID:Ew+drS9h
女性名でプレイしてたから全然余裕

ということで続きよろしくお願いします
43531-207:2008/03/12(水) 21:33:41 ID:KEHlUlME
 他にどなたも投下予定がないようなら、ひとつ投下します。
 小ネタの集まり、といった感じのものです。

 ・みゆき&こなた、みゆき&かがみ
 ・非エロ

 で、4レスほど使わせていただきます。
436みゆきさんもたまにはこの二人と 1/4:2008/03/12(水) 21:34:52 ID:KEHlUlME
 1.怖がりなみゆきさん

 夏休み。今日は泉さんたちが家に泊まりで遊びに来ました。
 遊びに、といっても午前中は泉さんやつかささんの宿題を手伝ったりもしましたが……
 このような機会は珍しいですし、とても楽しいものです。
 楽しい時間というものは早く過ぎるようで、もう夜になりました。
 みなさんと一緒に部屋にいると、お母さんが
「ねえ、みんな。これ借りてきたんだけど見ない?一人じゃ怖くって」
 と言って、とても怖そうなホラーの映画をもってきました。
 泉さんが
「見る!!」
 と、元気に返事をしてしまったので、みんなで見ることに。
 ……正直、怖いです。
 つかささんも同様で、怖いと顔に書いてあります。

「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」」
 怖いっ!怖いですっ!!
 情けないことに私は、自分よりもずっと小さな泉さんの体にしがみついていました。
「みゆきさんって意外と怖がりなんだね〜」
 泉さんはニヤニヤしたようにそう言います。
 でも、怖いものは仕方ないじゃないですかっ!
 つかささんだって、かがみさんにしがみついていますし。
 泉さんはなぜ平気なでいられるのでしょうか。
 私は始まってからずっと震えているのに。
 映画が終わると、私とつかささんはクタクタになってしまいました。
「それじゃこのまま怪談話でもしよっか?」
「泉さん、やめてください!!」
「今日寝られなくなっちゃうよ、こなちゃん!!」

 結局、映画のあとに怪談話まで聞かされてしまいました。
 その怪談話もとても怖いもので、本当に寝られそうにありません。
 私の部屋に布団を四つ敷いておいたのですが……
「おねえちゃ〜ん、一緒に寝てよぉ〜」
「泉さん、私も一人だと心細くて……」
 私とつかささんはこの状態でして。
 泉さんに一緒に寝てもらうというのは少し恥ずかしかったのですが、
 どうしても映画のシーンが頭に浮かんできてしまって。
 その夜、私は泉さんにしがみついたまま寝てしまいました。

「みゆきって意外と怖がりよね」
「みゆきさんは完璧に見えるから、こういう欠点が可愛いんだよ」
 次の日の朝、みなさんにいろいろと言われてしまいました。
 今思い返すと、少し恥ずかしくなってしまいます。
 でも、あのときは本っ当に怖かったんですからっ!!

437みゆきさんにもたまにはこの二人を 2/4:2008/03/12(水) 21:36:21 ID:KEHlUlME
 2.天才なみゆきさん

 みゆきさんは天才だ。
 勉強の話から雑学まで、知らないことはないのだ。
 私たちが会話をしていると必ずと言っていいほどそれに関係した話をしてくれるし、
 テスト前などに知りたいことがあれば、すぐにそれを教えてくれる。
 この前、
『テストの範囲とか、完璧に覚えてるんじゃないの?』
 って聞いたら、
『そうですね。授業の内容などは全て覚えていますよ』
 と言って、ノートに書いてあることを最初から順に一字一句間違わずに言ってみせた。
 またあるときは、参考書のページ数と問題番号を言っただけで答えを当てたこともある。
 私やつかさはその記憶力にいつも驚いていた。

 みゆきさんは天才だ。
 どんな質問をしても、わからないことはない。
 この前の昼食のときに、
『かがみがこっちのクラスで食べるのってどれくらいの頻度なんだろう?』
 と口にしたときも、
『そうですね。では、二学期を例にとってみましょう。
 まず二学期は、日曜日や土曜日、祝日の他に始業式や体育祭、学園祭、試験期間、終業式などを除けば
 教室で昼食をとる機会が67回ありました。そのうち、13回は自分のクラスで食べているので、
 67分の54回、約80.597パーセントになります』
 と、瞬時に小数第3位までを瞬時にだしてみせた。
 私やつかさはその頭脳を前にいつもあぜんとしていた。

「……っていうふうにはできないの?」
「さすがにそれは無理ですね」
 私は冗談でみゆきさんに聞いてみた。
 まーそりゃみゆきさんでもそれはムリでしょ。
「すみません」
 いやいやいちいち謝らなくても。
 そういうのがあっても面白いかな、って思って冗談で聞いてみただけだし。
「でも……」
 みゆきさんが一旦言葉を切る。
「泉さんのことなら、なんでもわかりますよ」
 その言葉に、私は顔を少し赤らめた。
438みゆきさんもたまにはこの二人と 3/4:2008/03/12(水) 21:37:43 ID:KEHlUlME
 3.甘えんぼなみゆきさん

「かがみ、あとで宿題みせて〜」
「お姉ちゃん、世界史の教科書忘れちゃって……貸してくれないかな?」
「なーなーひいらぎー、一緒に帰ろーよ」
 泉さんにつかささんに日下部さん。
 みなさん、いつもかがみさんのところに集まってきます。

『かがみって凶暴なイメージがあるよね〜』
『ひいらぎは怖いよなー』
 泉さんや日下部さんはよくそのように言っていますが、二人ともかがみさんの面倒見がの良さを知っています。
 だからこそいつもかがみさんと一緒にいるのでしょう。
『お姉ちゃんに勉強を教えてもらうと、すごくわかりやすいんだよ』
『怖い映画とか見たとき、お姉ちゃんが一緒に寝てくれると安心できるの』
 いつもそう話してくれるつかささん。
 つかささんにとってのかがみさんは、本当に良いお姉さんなのでしょうね。

 今日もかがみさんのところへみなさんが集まっています。
「コイツらと一緒にいると、疲れるわ…」
「ふふっ」
「? どうかしたの、みゆき」
「いえ、どうもしてませんよ。ただ、みなさん、かがみさんのことが好きなのでしょうね、と思いまして」
 そう。みなさんは面倒見の良いかがみさんのことが好きなのです。
 だからみなさん、かがみさんに甘えるのでしょう。
 かがみさんにぺたぺたとくっつく泉さんに日下部さん。
 隣でそれを見ているつかささんも、家ではいつもかがみさんのところにいるのでしょうね。
 疲れる、と言いながらも面倒を見てくれるかがみさんのことが好きなのでしょう。
「だから…」
 普段の私のイメージからすると、こういうことをするのは珍しいと思います。
 ですが、今いるのは泉さんたちだけですし問題ないでしょう。
「どうしたのよ、みゆき」
「私もかがみさんに甘えてみようかな、と思いまして」
 泉さんや日下部さんに混ざり、私もかがみさんに抱きついてみました。
「こなたや日下部じゃないんだから……それに、みゆきにやられると何か恥ずかしいってば」
「ゆきちゃんがそういうことするのって、珍しいよね」
 隣にいたつかささんがそう言います。
 私と一緒にかがみさんに抱きついている泉さんと日下部さんも、少し驚いているようです。
 やっぱり私がこういうことをするのは珍しいのでしょう。
 でも、たまには私だって誰かに甘えてみたいんですよ?
439みゆきさんもたまにはこの二人と 4/4:2008/03/12(水) 21:39:25 ID:KEHlUlME
 4.ヒツジなみゆきさん

 授業も終わり、私はつかさのクラスへ向かう。
 ちなみに、今日は私とみゆきは委員会の仕事がある。
 仕事っていってもたいしたことのないものだけど。
 ……それより私、誰に説明してんだろ?

 私が教室に入ると、みゆきはこなたたちと話をしていた。
「みゆきさん、ウサギについて知りたいことがあるんだけど」
「ウサギ、ですか?」
「うん。このまえね、みんなを動物に例えたらっていう話をしてたんだ。
 私がキツネとか、つかさがイヌとか。でさ、かがみがウサギってことになったんだけど」
「勝手に人をウサギにするなっ」
「あ、かがみいつのまに来てたんだ。でさ、ウサギって性欲が強いって聞いたけど、本当なのかなって」
「何聞いてんのよっ!それに、私がウサギという前提で話を進めるな!」
「私も聞いたことがありますね。人間以外で一年中発情をする哺乳類はウサギくらいだ、ということで
 性的な誘惑を表すシンボルにもなっているそうですよ」
「ほぉ〜う。かがみんってやっぱやらしいんだぁ」
「うるさい!それにみゆき、真面目に答えないでよっ」
 確かに聞いたことはあるけど、こなたの前でそんなこと言うな!
「そういえば生物の授業の食物連鎖の話で、ウサギはキツネに食べられちゃうって習ったよね」
「つかさまで変なこと言わないでよっ」
「まあ、良いじゃないですか。そろそろ委員会の時間ですよ、かがみさん」
「そ、そうね。それじゃ、行きましょ」
「え〜、もう行っちゃうの〜?もっとウサちゃんと遊びたいのに〜」
「うるさいっ!」
 こなたのやつ、人をからかいおって……!

 それからしばらくし、委員会の仕事が終わったころ。他の委員たちもみな、帰ろうとしているところである。
「お疲れ様です、かがみさん」
 そうみゆきが私に話しかける。
「ところでかがみさん、先ほどの泉さんの話ですが、私はどのような動物に例えられたのでしょうか?」
「みゆき?つかさはみゆきのことヒツジみたいって言ってたわね。こなたはウシみたいって言ってたけど」
「ヒツジ、ですか…」
 みゆきが何かを考えるような顔をする。きっと、ヒツジにまつわる話でも考えているのだろう。
「かがみさんも、古くから世界の各地でヒツジが人間に飼われてきたというのはご存知でしょう。
 それでは、なぜヒツジがそのように世界各地で飼われてきたのかはわかりますか?」
「えっと、食用にしたり、毛を刈り取ったりと人間にとって役に立つから?」
「そうです。その他にも、乳を搾ったりもするようです。また、エジプトでは穀物の種を踏み固めるのにも
 使われていたそうですね。また、ヒツジはとてもおとなしい動物なので、人間にとってもいろいろと
 都合の良い生き物だったのでしょうね」
「へぇー。さすがみゆき、詳しいわね」
「他にも人間にとって都合のよいこととして、繁殖力の強さがあります。
 ヒツジは精力絶倫で、生殖力がとても強い動物なのだそうですよ。
 群れの中でも優位の雄は発情期になると、一回に数十頭の雌の相手をするそうです。
 そのため、ヒツジは豊穣の象徴として扱われたりすることもあるそうですね」
 ……ちょっと、みゆき?
 あんたまでこなたみたいなこと言わないでよ。
 その、どう答えれば良いかわからないし。
「ですから」
 眼鏡の奥で、みゆきの瞳が光る。
「えっちなウサギさんは、私が相手をしてあげようかと思いまして」
 その言葉に、背筋が寒くなった。
 そのときのみゆきの表情は、おとなしいヒツジのようなものではなかった。

 ちなみに、この時の私の様子はみゆき曰く『怯えるウサギのようだった』らしい。
44031-207:2008/03/12(水) 21:40:19 ID:KEHlUlME
 以上です。
 お気づきかと思いますが、前半二つが みゆき&こなた で みゆき視点→こなた視点、
 後半二つが みゆき&かがみ で みゆき視点→かがみ視点 になっています。
 みゆきはつかさと一緒の場合が多いので、この二人と一緒にいる話を書いてみました。
441いぬにたとえられた子:2008/03/12(水) 21:48:10 ID:EcoRiKEh
わん、わん。ぐっじょぶ。
でも、そろそろもどってきて〜、ひつじさん。
442名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:49:08 ID:PIPlAu2X
羊の皮を被ったみゆきさんktkr!
443名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:57:34 ID:nSLsOT1t
>>440
ほんわかしててとってもよかったです
その空気が一転した最後の展開には笑わせていただきました、GJ!ww
444名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 22:02:07 ID:J+GFDpoK
>>440
こなゆきパートもゆきかがパートも、最後のみゆきさんの台詞がびしっと決まりますねー。
まさに殺し文句、ぐっじょぶでございました。
445名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 22:32:51 ID:ajvbX15x
>>440
みゆき&かがみが素晴しくGJ!!
なんで今までこのカプのSSが無いのか不思議なんだよなー
実際、みゆき&かがみって対等な目線で付き合える一番よいコンビだと思うんだが・・・
446名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 22:42:58 ID:SI1ESYO6
>>440
動物の例えから話を広げるのが上手い!
そっかぁ、ウサギはキツネに……
そっかぁ、ヒツジは精力が……

で、イヌってヒツジを追い回すよね?
447名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 23:07:10 ID:2D8Ktem8
連鎖的には鷹がウサギとかにも脅威だと思うんだがそういう話はないのかね、まったく・・・
448名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 23:10:36 ID:4CzQDgNW
>>440 面白かったよGJ!!こなたが例えた牛ってのは、きっとホルスタ(ry
449名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 23:15:44 ID:YXsQjng2

こなた「ああそうか、みゆきさんは羊の皮を被った狼だったんだね」
みゆき「泉さん、ちょっと後で・・・よろしいですか?(満面の笑み)」
450名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 23:34:30 ID:CA7xIJbC
>>448
お前は今更何を言ってるんだw

あれ?誰か来たようだ…
451名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 00:04:22 ID:UnTf4Gv7
>>364
続きを仕事中に思いついたのだが、勝手に書いて投下しても良い?
452名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 00:15:27 ID:46DrEzKY
>>440もうコンプに送っちまえYO!!
GJ!
453名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 01:23:17 ID:M25s4D0o
和んだ、GJ
45426-598:2008/03/13(木) 03:31:55 ID:GIOF0eFc
よし、誰もいないうちに…。
先日の「かがみが煙草を吸う」という設定を見て思いつきました。
しかし、所詮こなかがです。
455かがみの禁煙:2008/03/13(木) 03:33:18 ID:GIOF0eFc
「お姉ちゃん、もうやめてよ〜」
涙目で私に懇願するつかさ。
「かがみさん、喫煙はとても健康に悪いんですよ?それに…これ以上つかささんを悲しませないでください…」
必死に私を諭そうとするみゆき。
わかってる…わかってるのよ、やめないといけないことくらい!
でも…やめられないのよ…。
誰か……私を止めてよお…。

始まりは、ただの好奇心。
大人に近づきたくて、こっそりタバコを買い、一本だけ吸ってみた。
そのときはただ不味くて、もう二度と吸うもんかって思った。
でも、そのことが親に知られ、こっ酷く怒られてからは意地と反抗心が強まり、何度もタバコを吸った。
…気がつくと、もうやめることが出来なくなってしまっていた。

何度も止めようと思った。
でも、やめることができない。
吸って、やめて、また吸って、やめて…。
繰り返していくうちに時は過ぎていき、私の大切な友人たちも異変に気づき始めた。

「どうしたの?最近顔色悪いよ?」
「ひいらぎい、何イライラしてんだ?」
「お姉ちゃん、もしかして…。まだタバコ吸ってるの!?」
「かがみさん、いけません!」

…そして私は、その人たちからも逃げ出した。
夜の公園で一人蹲り、私は泣いていた。
ワタシハ、ヒトリボッチ。
無意識にポケットからタバコを取り出す。
こんな時でも我慢することが出来ない自分が、心底情けなかった。
456かがみの禁煙:2008/03/13(木) 03:33:44 ID:GIOF0eFc
「うっ、うう、ぐすっ…」
どれぐらい時間が経ったのだろうか。
私はずっと泣いていた。
「かがみん…?」
「ぐすっ、こ、こなた…?」
「よかった…。ずっと探してたんだよ、かがみ」
そして、そんな私の前に、彼女はやって来た。
私の一番愛しい人…泉こなたが。

「こなた、こなたあ!わ、私、私はあ…!」
たまらずこなたに抱きつく。
こなたは少しよろけながらも、その小さな体で私をしっかりと支えてくれた。
「大丈夫だよ、かがみ。かがみは少し間違えちゃっただけ。私も協力するから、またみんなで楽しく過ごそう?」
「うん…うん!」
こうして、私は本格的にタバコから離れる決意を決めた。
ありがとう、こなた…。

「さ〜て、それじゃあかがみん禁煙大作戦スタート!」
「ずいぶんとさっきまでのテンションと違うなあ…。いいのか?こんなんで」
「いいのいいの♪こっちの方が私たちらしいじゃん?」
「はあ…。ま、いいけどね」
こなたの部屋に移動した私たちは、二人でこれからのことを話し合っていた。
いつもどおりに接してくるのは、こなたなりの気遣いなのかもしれない。

「じゃあかがみ、どうしてタバコやめらんないの?」
「えらい直球だな…。ん〜、なんていうか、やめちゃうとどうしても吸いたくなっちゃうのよね…」
「う〜ん、重症だねえ。しょうがない、私が直接治したげますか!」
そう言うとこなたは、私に持ってるタバコをすべて捨てさせた。

「これでよしっと!かがみん、これからもし吸いたくなったら私に伝えてね♪」
「何言ってんのよ?あんたに言ってもどうにかなるもんでもないでしょ」
「ふっふっふ、どうかな〜?」
不敵に笑うこなた。
『我に秘策あり』とでも言いたいのだろうか。
でも、とりあえず…。
457かがみの禁煙:2008/03/13(木) 03:34:05 ID:GIOF0eFc
「実は今、吸いたいのよねえ…」
さっきの公園では結局吸わなかったし。
「えっ、もう!?…まったく、しょうがないな〜かがみんは♪」
そう言うと、こなたは満面の笑みで私に近づいてきた。

「なんであんたはそんなに嬉しそうに…んむっ!?」
「んっ…」
な、ななななななによこれーーーーーーー!?
「んんっ、かがみい…、ちゅっ、んむ…」
こ、こなたが私に、きききききき、キスをっ!?
思考回路がすっかり停止した私は、それから五分ほどこなたにキスされ続けた…。

「ん…、ぷはあっ」
「ん、はあ、はあ…」
ぼーっとして何も考えられない。
顔が物凄く熱い。
こなたとキス、しちゃったんだ…。

「どう、かがみ?まだタバコ吸いたい?」
こなたが私に問いかけてくる。
私は上手くしゃべることが出来そうになかったので、ゆっくりと顔を横にふった。
タバコなんてもう、どうでもいい…。
こなたとのキスのほうが、甘くて、美味しくて…。

「ふふっ、よかった!じゃあこれからは、かがみがタバコを吸いたくなる度に私がキスしたげるね♪」
「こなたあ…」
愛しいこなたの最高に嬉しい言葉を聞きながら、私は眠りについていった…。

「こなたあ、私また吸いたくなっちゃったよう…」
「またあ?しょうがないなあ、かがみんは♪んっ…♪」
「ちゅ…こなた…」
あれから一ヶ月、私はタバコをまったく吸わなくなった。
「んん、こなたあ、もっと…」
「かがみ、好き…」

そしてその代わり、毎日こなたを『吸っている』。
これはもうやめられないわ。こなた中毒ってやつね…。

「あのな、お前ら…。今は授業中なんやけどなー?」
「こなた、も、もう一回しよ?」
「ふふ、いいよ。かがみとなら、何回でも♪」
「柊、お前は隣のクラスやないんか?」
「んん、ちゅうう…って!かがみそこはまだダメだってば!」
「こなた、こなたあ…」
「……。人の話を聞かんかーーーーーーーい!!!!!!」

「ねえゆきちゃん、結局私たちって何だったんだろうね?」
「背景…というやつじゃないでしょうか?所詮こなた&かがみの話ですからね」
「どんだけ〜…」
45826−598:2008/03/13(木) 03:37:20 ID:GIOF0eFc
以上です。
即興で書いたから物凄く短い…orz
次こそは、職人の方々に負けないような長めのやつに挑戦したいと思います。
ではまた。
459名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 03:51:11 ID:v0qd0y+4
「なっなんなのよ!シリアスかと思ったら結局いつものバカップル話じゃない!
 ・・・べっ別に嬉しくなんかないんだからっ!・・・(//Д//)」

こなチュウGJ!
460名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 05:09:23 ID:RPHPt5CK
正にこなちゅう!GJ
461名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 07:51:12 ID:IFAm8L3J
>>458
まさにこなかが。どこからでもこなかが。


ああもう、幸せになっちまえお前ら。ぐっじょぶでした。
462名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 09:00:53 ID:jM8T1gmZ
>>458
まさにこなた依存症…いいぞもっと甘いオーラを…!
463名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 10:24:38 ID:aFo7YLjT
亀レスだが436からの話が本当に有り得そうで良かった。
464名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 11:22:54 ID:la8WqQZA
>>458

これが狂愛の始まりだった・・・
46536‐300:2008/03/13(木) 12:45:27 ID:fagokNC+
>>440のネタをお借りして小ネタを作ってみました。1レス使用、短いので保管はナシでお願いします。会話形式注意!
466見ればもふもふしたくなる:2008/03/13(木) 12:47:52 ID:fagokNC+
「…ってなことがあってね」
「へえ、それじゃみゆきさんは羊ってか狼だねぇ」
「あらあらうふふ」
「ゆきちゃんどんだけー」

「あ、お姉ちゃん!」
「……(ぺこり)」

「おお、ゆーちゃんにみなみちゃん!」
「ねえねえすごく盛り上がってたみたいだけど、お姉ちゃんたち何の話してたの?」
「むぅ、それがだねえ…」

「…つ…つかさ先輩…」
「どうしたの岩崎さん?」

…ぽふ。

「ひゃぅ!?」

なでなで。
なでなでなでなで。

「いっ、岩崎さん…?」

なでなで。
なでなでなでなで。

「岩崎さんてば!い…いきなりどうしたのっ?」
「……はっ!!…す、すみません…つかさ先輩見てたら…なんだか…急に、頭撫でたくなって…」





「犬だね」
「犬だわ」
「犬ですね」
46736‐300:2008/03/13(木) 12:51:51 ID:fagokNC+
以上です。こんなん書いてみたら、みなつかなんてのも良いかなーなんて…

…え、あの、なんですか、ピンク髪なお二人が鈍器なんかもって……アッー!
468ピンク髪の女性:2008/03/13(木) 15:20:53 ID:0NtN1wlh
つかささんはあたしの大切な人です^^
さてうぃきつーさんの次は誰を…あっ!?かがりさんがまだでしたね♪
かがりさんはオリジナルの方も凶暴な素養がありますので
いっその事かがりさんはプ〇デター仕様にでもしましょうか…
469名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 15:34:36 ID:c4NpifuL
わんわんつかさ、チェリーとあそぶ
470名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 15:58:40 ID:VEudHn2Q
こんこんこなた
ぴょんぴょんかがみ
ふもふもみゆき








いぢめる?ゆたか
皆「いぢめないよぉ」
471名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 16:23:09 ID:Qw+KINqz
>>468

光学迷彩でこなつーの背後に回り込むかがり
そして、何もないのに悶え始めるこなつー
472名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 16:45:38 ID:ontLLRJG
>>471
カガリ違いだが、中の人が共通な某漬物女の人も得意技それだったなw
473名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 16:56:55 ID:1KuRzp7a
>>472
無理矢理すぎないかw
474名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:00:09 ID:ontLLRJG
>>473
無理矢理は好きおすえ
475名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:03:01 ID:ontLLRJG
あ、俺のID、ブリッジしてるみたいだな

ont ← orzの裏返し
476名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 18:59:30 ID:hBK0cc5z
>>470
ゆたか「ククルコルテアダムスチーヨボール!!!!」
477名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 20:20:54 ID:LiYpw81j
ttp://www.death-note.biz/up/img/1936.jpg
右上完全に男と女にしか見えないんだけどwwwwwww
478名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 20:52:56 ID:N+kDHdEL
>>458
同じネタを書いてる途中で、先に投下されてもうた。
こっちの方がエロパロスレらしくて面白いので、激しくGJ


さて、ベタな展開で無駄に長い漏れのやつは、封印っと。
479名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 21:04:37 ID:3bywkvh0
>>478
それを ふういんするなんて とんでもない!
480名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 21:25:29 ID:Y/Toiwnp
>>478
いや、君にしか表現できない個性があるはずだ
というわけで執筆活動に戻るんだ

>>458
GJ ! なんちゅーか絵に描いたようなバカップルだなw

>>467
ワラタw
481名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 22:46:52 ID:6hYm7Tc6
高校の時に女子に「好きな子がタバコを我慢できなくて、じゃあこれからは吸いたくなったら私が口をふさぐね」
ってノリの少女漫画があって、その主人公が可愛いなぁとか言ってたのを思い出した

「俺も我慢できないんだけど〜」って言ったら知らんって即答されたっけ・・・( ´ー`)
482名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 00:00:03 ID:shwkHO9T
そのうち俺も書こうかと思うんだがふたなりでもおk?
483名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 00:07:45 ID:PkW1ENoT
今までも何回か投下されたしいいんじゃね?
484名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 00:18:34 ID:6Ff9sEeE
>482
全裸待機してまってるぜ!
485名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 00:31:07 ID:INw4FcRu
>>482
確かそんなネタが前に・・・ゲフンゲフンいやなんでもない。
486名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 00:34:37 ID:bWzsGDb+
>>482
投下の際に注意書きをちゃんとすれば問題はないかと
487名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 00:41:30 ID:0CcqGlkp
良い作品ができるよう努力するわ
488名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 03:17:53 ID:/CxBZSyU
>>464
狂愛ってことは、あの異常なまでのこなたへの愛に変化するって事か…
いやいやそんな事は無い、ずっとこの二人は甘いままだ。
あんな感じにヤンデレ化する事は無い…ハズ…
489名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 08:09:01 ID:DqiIEybm
ふたなりwktk
490LD:2008/03/14(金) 10:43:03 ID:KtRMT1c9
 
 皆さん、こんにちわ。LDです。
 今年は花粉症が大変なようですが、皆様大丈夫ですか?
 ホワイトデーSSが書き上がったので、他の方と重ならなければこのまま投下しようと思います。
・「こなた&みゆき+ゆかり」のつもりが……
・4レス+後書き1レス使用予定
・エロ無し
・「受験、卒業式は終了。在校生はテスト休み中」という事にしてあります

 もし規制その他で投下出来なくなった場合は、まとめwikiにUPしておきますね。
491チョコレートトラップ(1):2008/03/14(金) 10:44:22 ID:KtRMT1c9
 
「みゆきさん、お皿はこれでいい?」
「はい。ありがとうございます、こなたさん。」
「みゆきー。このお鍋はもういいのかしら〜?」
「えっ?あ、お母さん。それはまだ……」
「ゆかりさん、わたしがやりますよ。それよりこっちの方お願いできます?」
「は〜い。わかったわ、こなたちゃん。」

 今日は3月14日。俗に言うホワイトデーという奴だ。
 以前の私ならバレンタインと併せて素材チョコの安売りで喜んでいたところだけど、今はまぁ……好きな人と大手を振っていちゃいちゃする口実に使えて楽しみだったりする。
 ……こんな口実がなくても普通に付き合ってるけどさ。
 で、今日はバレンタインの時に忙しくてあまり時間が取れなかったから、その振り替えって感じでみゆきさん家にお邪魔してる訳。
 さすがの私でも受験で忙しいみゆきさんを引っ張りまわすなんてしないよ。
 私はと言えばバイト先での受けがいいらしく、コスプレ喫茶でチーフに昇格する事が決定済み。責任は増えるけど、やり甲斐があっていいかな、と思ってる。
 まぁそんなこんなで、2人とも卒業後の進路に何の心配もなく今日を迎える事が出来たのだ。
 ちなみにみゆきさんのお父さんは仕事で忙しいのか不在で、私のお父さんは取材で旅行中。ゆーちゃんはテスト休みを使ってみなみちゃん家にお泊りだ。
 という感じで今ここ――高良家の台所――には私とみゆきさん、ゆかりさんの3人がお喋りをしながら料理をしてる訳。
 で、さっきの会話に戻るんだけど。ゆかりさんが「いつもみゆきがお世話になってるから、たまにはご馳走しちゃいましょう。」なんて言ってくれたけど、どうも待ってるだけってのが落ち着かなくて手伝っちゃったってのが今の状況だね。
 私達の仲はゆかりさん公認で、何度かみゆきさん家に遊びに来ると、ゆかりさんを「おばさん」と呼ぶとぷくーっとほっぺを膨らませて、
「おばさんじゃなくて『ゆかりさん』って呼んでね?」
なんて拗ねるので、今じゃこの呼び方がすっかり定着してる。さすがに
「『お義母さん』って呼んでもいいのよ♪」
と楽しそうに言われた時には、みゆきさんと2人して真っ赤になってしまったけど。
492チョコレートトラップ(2):2008/03/14(金) 10:45:03 ID:KtRMT1c9
 
 一通り準備や料理が終わると、女3人でのお食事会のスタート。
 みゆきさんの子供の頃の話や普段の家での様子を話すゆかりさんは本当に楽しそうで。それを必死に止めようとするみゆきさんが可愛くて。やっぱり皆でする食事っていいよね、なんて思いながら気づけば私自身も色んな事を話していた。
 
 食事が済むと、みゆきさんが席を立ってどこかへ行っちゃったので……って言っても多分自分の部屋かトイレだろうけど……ゆかりさんとお喋りでも、と思ったらゆかりさんも
「いいもの取ってくるから待っててね〜。」
と言い残していなくなっちゃった。
 食卓に1人ぽつんと残された私は、2人が戻るのを待ってるしかなくて。こんな広い家に2人で住んでるなんて寂しくないかな?なんて思ってしまう。
 しばらくして先にみゆきさんが戻ってくると、手にはお菓子らしきものを載せたお皿を持っていた。
「ホワイトデーですから、こんなものを作ってみたんですよ。」
 そう言ってお皿に載ってるものを見ると、沢山の小さなドーナツだった……チョココロネ型の。
「こなたさんがいつも食べていらっしゃったので、形を真似してみたんですけど。いかがでしょう?」
「面白いね、こういうの。中は……色んなクリームが入ってる?」
「はい、食べてからのお楽しみです。お母さんが戻ってきたら食べましょう。」
 そう言ってみゆきさんが席に着くと、ちょうどゆかりさんも戻ってきた。
「お待たせ〜。ゆかりさん特製チョコレートドリンクよ〜〜♪」
 と、グラス3つと幾つかのビンをお盆に載せてウェイトレスみたいに私達にグラスを配ってくれた。
「みゆきのお菓子もおいしそうねぇ。」
 子供のように指をくわえてドーナツを見てるので、グラスを持ち上げて
「それじゃあ乾杯しましょー。みんなの健康と、いつまでも仲良く過せますように……」
「「「かんぱーい!」」」

 チンッ、というグラスの触れ合う小気味いい音は、パーティーの第2幕の始まりの鐘の音だ。
「一口サイズで食べやすいねー。そんなにしつこくないから、いくらでも食べれるよ。みゆきさん。」
「ありがとうございます。お母さんの飲み物も美味しいですね。」
「んふふ〜、そうでしょー。今日の日の為に教えてきてもらったのよ〜。お代わりもあるから言ってね。」
「あ、じゃあお願いします。」
「はいはーい。みゆきはどう?」
「それでは私もいただきます。」
 ゆかりさんは慣れた手つきで大きなグラスにチョコレート色の液体とミルクを注いで、スプーンでくるくるとかき混ぜたものを私達のグラスに注いでくれる。
「それ、ドリンクの元なんですか?」
「そうよ。ミルクや生クリームと混ぜるだけで美味しく出来るの。」
 そう言ってビンを見せてくれるゆかりさん。金のラベルの可愛らしい青いボトルには「GODIVA」と書いてあった。
「へー、ゴディバってこんなのも出してるんですね。」
 なんて言いながらお代わりを口にする。ミルクが1杯目より控えめのようで、チョコの風味と舌を刺激する独特の感じが強いけど、これはこれで美味しいと思う。
「あ、そだ。2人にプレゼントがあるんですよ。」
 リビングにバッグを取りに行く時にふとさっきの刺激が気になった。どっかで味わった気がするんだけど……まぁ美味しいからいいや。
493チョコレートトラップ(3):2008/03/14(金) 10:45:55 ID:KtRMT1c9
 
 湧き上がった疑問を放り投げて、用意しておいた包みを取り出して2人に手渡す。
「開けてみていいかしら?」
「うん、いいですよ。」
 2人に贈ったのは、それぞれの星座マークのペンダント。
「いつもお世話になってるお礼を込めてです。3人のお揃いですよ。」
 そう言って私も服の下から自分のペンダントを取り出して2人に見せる。
「あら、私までいいの?2人の記念品じゃなくて?」
「はい。みゆきさんの大切なお母さんですから。受け取ってくれないと寂しいです。」
「あらあら。じゃあもらわない訳にはいかないわね。ありがとう、こなたちゃん。」
 嬉しそうに身に着けてくれるゆかりさんの顔を見ると、こっちまで楽しい気分になってくる。
 みゆきさんは、と見ると……あれ、いない?
「こーなーたさん♪」
 後頭部にぎゅっと柔らかいものが押し当てられた。
「え?え?みゆきさん?どしたの、急に?」
「ありがとうございます。一生の宝物にしますね〜〜……んん。」
「ちょ、んっ……んぅ……」
 顔を後ろに向けられたと思うと、唇を重ねられた。そのまま舌が入ってきて、みゆきさんの唾液とチョコの味が口の中に広がっていく。心なしかさっきの刺激が強く感じられ、体も火照っていくのがわかる。これって、まさか!
「あらあら。やっと効いてきたみたいねぇ。」
「んっ。ぷはっ!ちょ、ゆかりさん?!まさかさっきのって!」
「ええ、チョコのお酒よ〜。みゆきはお酒に弱いからすぐ回ると思ったのに。最初のはミルクを入れ過ぎたみたいね〜。」
 みゆきさんのグラスを見ると、ミルクを混ぜてない、チョコそのものの色をしたのが入っていた。ゆかりさんはイタズラが成功した子供のように、心底楽しそうに笑っていて。みゆきさんは離れてもすぐ唇を奪いにきて……嬉しいんだけど!その前に!
「こなたちゃんが荷物を取りに行ってる間にストレートで飲ませてみたの♪」
「『飲ませてみたの♪』じゃないですよ!」
「だーいじょ〜ぶよぅ。それほど強いお酒じゃないから〜。」
 ケラケラ笑いながらいつの間にか持って来たカーディガンを羽織ったゆかりさんが続けてこんな爆弾発言をした。
「これからみなみちゃん家に遊びに行ってくるわね〜。明日の夕方くらいまで戻らないから、ごゆっくり〜〜♪」
「ちょっと!ゆかりさんってば何言ってるんですか?!」
「えー、私と2人っきりじゃ嫌なんですか〜〜?」
「そんな事はっ、ひゃん!み、みゆきさん、首筋舐めちゃダメだってば!」
「今夜はゆたかちゃんもいるのよねー。みなみちゃんの可愛いところがいっぱい見れそう♪」
494チョコレートトラップ(4):2008/03/14(金) 10:47:08 ID:KtRMT1c9
 
 と足取りも軽く部屋を出て行くゆかりさんを
 みゆきさんにがっちりとホールドされた私は見送ることしか出来なくて
 バタン、という扉の閉まる音がすると
 ひょいっとみゆきさんにお姫様抱っこされて
 私はみゆきさんの部屋で一晩中啼かされ続けた訳で……

 翌朝、顔を真っ赤にしたみゆきさんが甲斐甲斐しく私の世話をしてくれた。どうやら記憶はしっかりと残っていたらしい
 ……いやまぁ私も嫌じゃなかったから良かったけど、お昼過ぎまで起き上がれなかったのはどーかと思う。
 夕方にゆーちゃんとみなみちゃんがこっちに来たけど、顔を真っ赤にしていたよ。理由は聞かないでいてあげた方がいいね、多分。
 ただ1人、昨日以上に上機嫌なゆかりさんが全てを物語っていたのは勘違いじゃないはずだ。
 最後に、昨日の事はゆかりさんの単独犯だと言う事を、みゆきさんの名誉の為に言っておく。
495LD:2008/03/14(金) 10:50:53 ID:KtRMT1c9
 
 以上です。
 本当はバレンタイン用に考えていたんですが、投下タイミングが掴めずにホワイトデーSSとして転生しましたw
 季節ネタは旬の時期を外すと投下しにくくなっちゃいますね……

 それはさておき、皆様GJの嵐ですよ。
 >>440(31-207氏)のゆきかがなど、以前から読みたくて書きたかったCPなので、もっとやって!って感じです^^

 ところで、みなみのお母さんの名前っていつになったら出てくるんでしょうね?
 あと、みゆきの父親とか……出てきても、声が大型の海洋哺乳類だったらどうしよう?w
49617-234:2008/03/14(金) 11:55:05 ID:5hxYpgqI
>>495
投下乙です、
投下のタイミング逃すとなかなか出来ないですよね…

こっそり自分も便乗して
ホワイトデーSSをうpろだにうpしました。
よければどうぞ…

17-234
あきら様×白石
エロなし
「3倍返しの日」
http://www.sonokawa28.net/lsssuploader/src/up0036.txt
497名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 11:57:33 ID:V12vioRE
「こなあああああああああゆきいいいいいいいい」
「み、みゆきさんっ!?」
「なんとすばらしい作品なのでしょう。>>495さんGJですだばだば」
「みゆきさん…後ろから抱きかかえるのもいいけど
 鼻血拭かないと距離とるよ?」
「…つれませんねえこなたさんだばだば」
498名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 12:10:09 ID:v3kFNIhd
>>495
どう見てもゴディバミルクです。本当にありがとうございました。
というかなんというゆかりん無双。ニヤニヤが止まりませんでした。
俺もチョコリキュール買ってくるかなあ、と思いながらぐっじょぶ。

>>496
白石滑ってるよ、滑ってるよ白石。あと袖でぺちぺちするのは非常に可愛いと思います。
この締まらなさこそ白石の真骨頂ですね。ぐっじょぶでございました。
499名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 12:41:00 ID:A+gCZeII
>>497

こなたがシャナになってしまうでわないかw

LDさんGJ!
500名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 15:11:03 ID:wm6uq10v
みゆき「今日は全国的に雨ですね、泉さん達は今頃何をして過ごしてるのでしょうか?」
501名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 15:32:22 ID:JHmPSf8o
つかさはみゆきの横で寝てるじゃない
502名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 15:55:01 ID:XxFzZW6o
>>499
こなた+シャナ=しゃなた
というオリキャラ電波が舞い降りたがただの髪が赤いこなたになってしまったorz
503名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 16:12:32 ID:/rwICqwZ
>>502
シャナたんと紛らわしいw


↓うるちゃいうるちゃい禁止
504名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 16:13:42 ID:/rwICqwZ
あ、「らき☆ちゅたのこなたん」は許可するので誰か作ってくれたまえ
505名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 16:14:16 ID:LVlGcf3Z
しゃなた「そうじろう、子供の作り方教えて」
そうじ  「うん。じゃあまず服を脱ごうか」
しゃなた「変態変態! へんたいーい!!」

こうですか? わかりません><
506名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 16:26:48 ID:X1cY0cPt
かがみ「ちょっとお、こなたあ!人の頭の上でチョココロネ食べないでよ!髪の毛がべっとりになっちゃうでしょ」
こなたん「それじゃあかがみの真似してポテチにしてあげようか〜」
かがみ「ちょ、もっと髪の毛ボロボロになっちゃうでしょ!とにかく物食べるの禁止!」
こなたん「ひっど〜い、私のかがみんへの愛情は元のままなのにー」
かがみ「うっさいうっさいうっさい!だいたい何であんたが私の頭の上に……」
こなたん「あ〜!!かがみがそれ言うなんて反則じゃ〜ん」


つかさ「偶然だよね?偶然頭の上に乗ってるんだよね?」


みたいな感じ
507名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 17:48:39 ID:jGd8w7+A
>>506
まんまだ・・・ww
508名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 18:51:52 ID:6xuXvb+l
>>495
改めてゆかりさん最強説浮上ですな。GJ!
欲を言えばinみなみちゃん家も…頼みたい(頼むな。欲張るな。自重しろ俺)
509364:2008/03/14(金) 19:38:22 ID:wHlhlrNy
>>458
発見遅れて亀レスすいませんorz
今更ですがタバコネタ鬱END書いた>>364です。
我ながら後味悪かったのですが見事にハッピーエンド(?w)に
導いてくれてありがとうございました!GJ!
510名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 19:40:25 ID:mAHju1vr
>>506
ダメだ、情景が頭の中に浮かんできてしまうw
51135-215:2008/03/14(金) 20:17:18 ID:UYNTjIDe
ホワイトデーな流れですが時期系列に流されず空気読まず投下したいと思います

・桜藤祭ネタ
・オリキャラ有
512桜藤祭IF 女の子が主人公だったら?:2008/03/14(金) 20:19:46 ID:UYNTjIDe
「よろしくねー、のぞみさん」
休み時間、先ほど先生に殴られた子が話しかけてきた。そばに紫色の髪の子とピンク色の髪の子もいた。
「よろしくお願いします、えっと・・・」
「こなたでいいよー」
「始めましてのぞみさん、高良みゆきと言います」
「私は柊つかさだよ」
「お願いします、こなたさん、みゆきさん、つかささん」
3人を見て思うけど・・・こなたさんとみゆきさんの背の差が凄い・・・これで2人とも同い年なのかな?
「ところでさのぞみさん」
「何かな?」
「実は男で女装好きで芸能界入ってたりとかしない?」
えーっと、こなたさーん。その話題だけは避けて欲しかったようなある意味振って欲しかったような・・・一応全部コミックスで持ってるけど
「その4番目の話とは何にも関係ないから、一応私は2番目の話が好きだけど」
「へー、中々通だね」
「そうかな?これ知ってる人だと結構2番目も人気あるみたいだけど・・・」
「はいはいストップ、また脱線してるわよ」
話を止めたのはつかささんと同じ紫色の髪の子、つかささんに比べて気が強そうなのかな?
「あ、お姉ちゃん」
「お姉ちゃんって事は・・・」
「こっちはかがみ、つかさの双子の姉でツンデレだよ」
「ツンデレ言うな!」
何だか納得
「あんた、今納得した?」
「い、いえ・・・とりあえずかがみさんですね。のぞみと言います」
「よろしく、とにかく私はツンデレじゃないから」
「判りました・・・それで何か用があったのでは?」
「うん、みゆき。劇の事何だけど・・・」
劇?桜藤祭の出し物かな?
「あ、のぞみさんにも説明しますね。私達とかがみさん達のクラスで合同演劇をやることになってます」
「そうなんですか、それで私は何をすればいいんでしょうか?」
「そうね、配役はもう決まってるし・・・」
となると裏方かな?
「それじゃあ小道具係を手伝ってもらえないかな?」
「出来れば進行係の方も手伝ってもらいたいのですが・・・」
小道具と進行が難航してるみたいだけど・・・私は・・・
51335-215:2008/03/14(金) 20:22:28 ID:UYNTjIDe
誰ルートで行くかを未だに決めてないのでここで切ります。

この小説のネタ出しのために再び桜藤祭を1からプレイ
村崎さん、全ルート頑張っていきましょうか(資料プレイの主人公名、村崎ツトム、判る人には判るネタ)


誰ルートにしようかな・・・
むしろこれ最後までやるべきなのか・・・
514名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 20:33:38 ID:PkW1ENoT
これは最後までやるべきだろ…常考

本当はIF(女主人公)ならではの展開のほうがいいんだけどな
とにかく次も期待してるぜ
515名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 21:03:57 ID:fEsP/RyG
>>513
 新鮮っちゃ新鮮なんだろうけど、記憶違いじゃなきゃ続き物だよね?
 もしそうなら、その点を明記した方がいいんじゃないかな……違ってたらゴメンなさいだか^^;

 それはそれとして、今後の展開に期待してるよ♪

 ゲームはまだ星一つだがな!
516名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 21:18:52 ID:DqiIEybm
>>515
とりあえず星を一刻も早く埋めてくるんだ
517名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 21:21:33 ID:SlzKO6sV
>>513
俺も読んでたよ…連載でなw
現役時は見向きもしなかったのに今頃W10使ってるしなw
518名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 21:37:14 ID:nqTF0e0c
こなた×かがみの非エロ
みなみ・ひより・パティ×ゆたかの非エロ
二本立て投下します。
519白い日〜ほのぼの編〜(1/3):2008/03/14(金) 21:38:26 ID:nqTF0e0c
 夜。部屋でくつろいでいたかがみの携帯が鳴った。こなたからだ。
「はい、もしもし」
『もしもしかがみんかがみんや〜♪』
「夜中に電話かけてきて歌うな。切るぞ」
『寂しいこと言うね。歌はリリンが生み出した文化の極みだよ』
「どうでもいいっつの」
『さてスネーク。君に新しい任務がある』
「もう突っ込むのもだるいから。普通に用件を言え」
『りょーかい。ところで卒業式からその後変わりない?』
「ないわよ。私もつかさも。あんたこそ、入学の準備とか色々大丈夫?」
『うぃ、ご心配なく。さて用件だけど、明日渡したい物あるから、かがみんち行ってもいい?』
「……」
 かがみはカレンダーを目をやる。明日は三月十四日。ホワイトデーだ。
「ん……まあ、いいけど」
「あ、ひょっとしてかがみがこっち来てくれるつもりだった?」
「ばっ……んなわけないでしょ! 用はそれだけ?」
『うん。あ、それとね。明日だけど、ハプニングに備えて半脱ぎにされてもいい服を着ておくこと』
「そんな服はこの世に存在しねぇ」
『以上。交信を終了する』
「はいはい」
『なおこの携帯は通話後自動的にFOMA905iになる』
「人の携帯を勝手に進化させるな! また何かのアニメネタか」

 そんなこんなで翌日。ホワイトデーの朝。
「……ん〜」
 春浅い日の光をカーテン越しに感じて、かがみはぼんやりと目を覚ました。昨夜はどういうわけか寝付けず、少々寝不足気味だ。
「ふぅ……もうじき新生活なんだから、シャキッとしないと――」
 独り言をしながら、かがみは上半身を起こそうとする。
 むに
 と、何か柔らかいものを感じた。どこでというと、ほぼ全身で。
「へ……?」
 かがみは間の抜けた声を上げ、その感触の正体を確認した。
「んぅ……かがみぃ……zzz」
「ッッ!!?」
 こなただった。何故かかがみと一緒の布団で眠り、寝言を呟きながらよだれを垂らしていた。
「なっ、なななな……!?」
 混乱しているかがみの体に、こなたは木の幹につかまるコアラよろしく両手両足で抱きついている。
 かがみが離れようとしても、こなたの腕と足はガッチリしていて微動だにしない。
「……zzz」
「ちょ、ちょっとこなた! 起きろ! おい!」
「何を言ってるのさ、みゆきさん……あんなウサギが化け物だなんて……zzz」
「何の夢だよ!? 放せこら!」
「よーしみさきち、君に決めたー……zzz」
「決めんな! 起きろ! ってか起きてるんじゃないのか!」
「今だかがみ……聖なる手榴弾を……zzz」
「知るかっ! はーなーせー!」
 騒ぐかがみと寝言のこなた。両者の力は拮抗し、完全な膠着状態となった。
「こんのぉ〜寝坊助が〜……!」
 こうなったら力尽くだと、かがみは両腕に力を込めてこなたを剥がそうとする。
 しかしこなたは不動。本当に寝ているのか疑問に思うほど強固な抱きつきっぷりだ。
「ん〜……zzz……んちゅ」
「!?」
 寝ぼけてのことだろうが、こなたはかがみの胸元に唇を押しつけてきた。
「なっ、ちょっ、こなた……!」
「おね〜ちゃんおはよ〜。今朝は何か騒がし――」
 目をこすりながらかがみの部屋にやって来たつかさは、一瞬の間を置き、パタリと部屋の戸を閉めて去っていった。
「ああああ! ちょっと待ってつかさあああ! 誤解! 絶対誤解してるから! ていうか助けてーっ!」
「かぁがみぃん……うへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ……zzz」
「お前もいい加減に起きろ!!」
 とうとうグーでこなたの頭を殴るかがみだった。
520白い日〜ほのぼの編〜(2/3):2008/03/14(金) 21:39:46 ID:nqTF0e0c
「ふわあぁ‥…おはよーかがみ」
 クレヨンしんちゃんみたいなたんこぶを頭に拵えながら、こなたはあくび混じりに朝の挨拶をする。
「おはよう。とりあえず着替えるから部屋を出ろ」
「ああ、お気になさらず。是非ともこのまま着替えて下さい」
「馬鹿なこと言ってないでとっとと出ろってば!」
「ぶー。かがみのケチんぼー」
「何がケチだ。そもそも何であんたこんな朝早くに来てるのよ。確かに時間は聞いてなかったけど」
「早く来すぎたんで朝参りしとこうと神社の方行ったら、掃除してるかがみのお母さんに会ってね。上がって待ってるよう言われたもんで。かがみんちはお父さんもお母さんもめがっさ早起きだね」
「そりゃまあ、自営業みたいなもんだし……って、上がって待ってろと言われて何で私のベッドに潜り込んでたんだ!?」
「いやほら、しばらく会ってなかったから、かがみ分の補給をしようかと」
「何だよかがみ分って!? わけわからんわ! ……あーもう、朝から疲れる……着替えるから早く出て」
「へーい……」
 渋々かがみの部屋を出て行くこなただった。
「……ドアの隙間から覗くな」
「ちっ」

 パジャマから普段着に着替えたかがみがキッチンに向かうと、こなたはつかさと一緒に食卓を囲んでいた。
「お姉ちゃんおはよう」
「おはよう……さっきは驚かせて悪かったわね」
「かがみ朝から大騒ぎだったからねー」
「原因は100%あんただろうが!」
 こなたのおかげで朝からテンションの高いかがみである。
「こなたちゃん。朝ご飯は?」
「あ。済ませて来たんでどうぞお構いなく」
 みきにそう答えてこなたはお茶だけいただく。かがみとつかさは朝食のパンをトースターに入れる。
「そういえばつかさ。今日は珍しく早起きね」
 こんがり焼き上がったトーストにマーガリンを塗りながらかがみ。つかさはまだ眠たそうに目をしばたかせながら、照れ笑いを浮かべる。
「もうすぐ大学生になるんだし、少しは生活習慣ちゃんとしなきゃと思って」
「感心ね。三日坊主でなければなお感心だわ」
「あぅ……」
 痛いところをつかれて、つかさは酸っぱい表情になる。しかし、そうしようと思って実際に早起き出来ているのだから、かなりの進歩と言えるだろう。
「「ごちそーさま」」
 かがみとつかさが揃って朝食を終えた。
521白い日〜ほのぼの編〜(3/3):2008/03/14(金) 21:43:41 ID:nqTF0e0c
「で、こなた。渡したい物って何なの?」
 食後のコーヒーを飲みながら、かがみはやや突っ慳貪な口調でそう尋ねた。今朝のことでまだ少し機嫌が悪い。聞かれたこなたは迷ったように小首を傾げた。
「んー……今ここで渡しちゃってもいいのかな?」
「それが何なのか分からないんだから、私に判断しようがないでしょ」
「それもそだね。じゃあ、はいこれ」
 そう言ってこなたが無造作に胸ポケットから取り出したのは、ダイヤの指輪だった。1カラットはある。
「んなっ……!?」
 かがみの頭の中が白くなる。呆けているその左の薬指に、こなたはそっと指輪をはめた。あつらえたようにぴったりだ。
「給料の三ヶ月分だよ」
「あ…………アホかあんたはっ!?」
 あまりに突っ込みどころが多すぎて、結局ありきたりな文言になってしまった。
「新婚旅行はサイパンでOK?」
「まだ返事してねえだろ! ……ってそうじゃなくて! 何なのよこれは!? どうせ本物じゃないでしょ!」
「うん、まあ。やっぱり学生の身じゃイミテーションがせいぜいで」
「心臓に悪い冗談はやめろ! ったく……」
 興奮で顔を赤くしながら、かがみは薬指にはめられた指輪を外す。胸がドキドキしているのはこなたが馬鹿なことをしたせいである。おそらくは。
「その指輪は本当にあげるけど?」
「いらないわよ。どうせフリマとかで買った安物でしょ」
「まあね。悪くないデザインだと思ったんだけど」
 偽物めいた派手派手しさが無く、シンプルで、それでいて細部をそれなりに凝っている意匠。確かに、イミテーションと割り切れば、悪くない品である。しかし、かがみが惜しむ気持ちを芽生えさせた時、その指輪はこなたの手に返っていた。
 では改めましてと、こなたは持ってきていた紙袋からホワイトのラッピングをした箱を二つ取り出した。
「はい、かがみ。つかさも」
「わー。わざわざありがとうこなちゃん」
「ん……ありがと。それじゃあ、ちょっと待ってて」
 かがみは一旦自室に戻ると、机の上に置いてあった包みを取って、すぐキッチンに戻ってきた。
「これ。私からもバレンタインのお返しね」
「おー、さんきゅ。感触からするとつかさ先生監修の手作りお菓子かな?」
「昨日はつかさ出かけてから、私一人で作ったクッキーよ」
「……こいつぁいい度胸試しだ」
「文句あるなら返せよ」
「いやいや。楽しみだよ色んな意味で」
「こなちゃん。私からもこれお返し。フルーツケーキ作ってみたんだ」
 つかさもラッピングした箱をこなたへ差し出した。
「おー! あんがと。こっちは良い意味で普通に楽しみ」
「引っかかる言い方だなオイ」
 こなたに向けて目を釣り上げるかがみだが、ふと疑問に思ったことがあり、つかさに尋ねる。
「つかさ、いつの間にそんなの作ったの? 帰ってから台所使ってなかったでしょ?」
「うん。向こうで自分の分まで済ませたから」
 つかさの説明は要領を得ない。重ねて尋ねようとした時、こなたが紙袋を持って立った。
「こなた。もう帰るの?」
「うん。そんじゃね。お邪魔しましたー」
 挨拶もそこそこに、こなたは慌ただしく去っていった。
 かがみは自室へ戻り、椅子に腰掛けると、小さくため息ついた。
「あいつ何くれたんだろ? まあ、多分お菓子とかだろうけど……」
 呟きながら、こなたのくれた箱のラッピングを解こうとする。
 とその時、何かが床に落ちた。小さく、白く輝いている。
「……指輪?」
 件のイミテーションだ。包装紙の隙間に挟んであったらしい。
「いらないって言ったのに……」
 呟きながら、かがみはその指輪を優しく握りしめていた。箱の中身を見てみると、案の定、ホワイトチョコを使ったロールケーキだった。どうやらこなたの手作りらしい。見た目の出来は、つかさほどではないが、かがみよりずっと上手い。
「まったく、らしくもなく凝った物作って……ん?」
 ロールケーキと一緒に、名刺大の白いカードが入っていた。表面には一言だけ、
『大学行ってもまた一緒に遊ぼうね』
 と書かれていた。
「……ホント、らしくないわね」
 口元を綻ばせながら、かがみはしばらくそのカードを眺める。頭の中では、たまにはこっちがからかってやろうと思い、こなたに送るメールの文面を考えていた。

おわり
522白い日〜闘争編〜(1/3):2008/03/14(金) 21:45:18 ID:nqTF0e0c
「ファミコンウォーズが出〜るゾ〜!」
「「ファミコンウォーズが出〜るぞ〜!」」
「こいつはどえらいシミュレーション!」
「「こいつはどえらいシミュレーション!」」
 春休みまで間もないある日の放課後。グラウンドのトラックを、三人の生徒が歌いながら走っている。先頭を行くのはパティことパトリシア=マーティン。後ろについてきているのは、クラスメイトの田村ひよりと岩崎みなみだ。
 ひよりもそうだが、みなみはとても恥ずかしそうでほとんど声が出ていない。
 しかしそんな羞恥心はどこ吹く風と、先頭を行くパティはまだまだ走り続ける。変な歌とともに。
「詩織を気取って髪ピンク〜!」
「「詩織を気取って髪ピンク〜!」」
「会社を追われて今漁師〜!」
「「会社を追われて今漁師〜!」」
「染みついたッ」
「「染みついたッ」」
「女装癖ッ」
「「女装癖ッ」」
「俺だけのッ」
「「俺だけのッ」」
「パラダイスッ」
「「パラダイスッ」」
「ぜんた〜〜い……ときめけ!」
 即興の割には揃った足並みで、三人がその場に直立する。
「パティ! 質問が!」
 ひよりが手を挙げた。
「何ですカ?」
「何故に私達がいきなりランニングを? あとパロネタをパロった漫画の歌詞をそのまま持ってきてもうわけが分からないんだけど」
 ひよりの質問に、横のみなみもコクコクと頷いて同意した。
「ヒヨリ! 今日は何日ですカ?」
「え……三月十三日だよね」
「明日三月十四日は何の日ですカ?」
「ホワイトデーだけど」
「一ヶ月前のバレンタインにチョコを上げましたor貰いましたカ?」
「小早川さんから貰ったけど。パティもそうだし、岩崎さんもそうでしょ」
 みなみが頷き、パティも「そのとーりでス!」と同意する。
「つまり我々にハ、来る三月十四日ホワイトデー、ユタカに心の籠もったお返しをするという崇高なる使命があるのでス!!」
 握り拳を高々と天へ突き上げ、パティは威風堂々宣言した。
「三倍返しならぬ三人返し! ヒヨリ! ミナミ! ユタカにジェットストリームアタックをかけるゾ!! というわけデ! 我々三人は明日のために即席の強化訓練を受けることにしたのでス!」
「そういうことならちゃんと事前に言ってよ……って、さっきの半分羞恥プレイみたいなのが強化訓練?」
「ノンノン。あれはただの余興でス。間もなく教官殿が到着しまス。本番はそれからでス」
「教官殿……?」
 ひよりとみなみが疑問符を浮かべたその時、上空からヘリコプターのエンジン音が聞こえてきた。
 爆音は風を切って陵桜学園の敷地に近付き、その音がひより達の真上から聞こえたと思うと、次第に遠ざかっていた。
 もちろんこのヘリコプターはひより達に何の関係も無い。ただ近くを通っただけである。
523白い日〜闘争編〜(2/3):2008/03/14(金) 21:46:58 ID:nqTF0e0c
「お待たせー」
 片手にスーパーのビニール袋を提げながら歩いてきたのは、三人の二つ上の先輩、柊つかさだった。既に卒業しているので私服である。
「Master Chiefに敬礼ッ!!」
 その姿を認めた途端、パティが稲妻のような勢いで号令を掛けた。
(つかさ先輩が教官なの……?)
 色々と疑問を感じながらもひより、次いでみなみも見様見真似の敬礼をする。
「ますたち……?」
 状況がよく分かっていない様子のつかさだが、パティは構わず続ける。
「教官殿! 今日はよろしくお願いしまス!」
「う、うん。ホワイトデーのお菓子作りだよね? みんな一緒に頑張ろうね」
 ここでようやくひよりとみなみにも話が飲み込めた。
 天然ドジっ子なつかさだが、料理とお菓子作りに関しては相当な猛者である。そのつかさに、明日のホワイトデーに向けてのお菓子作りを訓練してもらおうというわけだ。
「……ってことは、お返しを手作りお菓子にするってのは決定事項なわけね」
「当然でス! 目には目ヲ! 歯には歯ヲ! ダイヤモンドにはダイヤモンドヲ! 手作りチョコのお返しは手作りお菓子に決まってるでス!」
「分かった分かった。で、どこでやるの?」
「私のアパートでス。既に準備は万端ですヨ♪」

 前言の通り、パティ宅のキッチンには、お菓子作りに必要な器材等が一通り揃えられていた。つかさはそれらをくまなくチェックしていく。
 万一不備が見つかれば、たちまちつかさは鬼教官と化すであろう。そんな想像が冗談にならないほど、その横顔は真剣だった。
「うん。それじゃあ始めようか」
 無事にお菓子作りスタート。一年生三人は軽く胸を撫で下ろした。
 まずはつかさが用意したレシピで、パティ、ひより、みなみの三人が協力してクッキーを作ってみる。
 数十分後。出来上がったクッキーをつかさが試食する。 
「……ちょっとシナモンの量が多いかな。あと、小麦粉をふるいにかけるの横着にしたでしょ。できあがりの木目が全然違ってくるんだよ。それから――」
 つかさは妥協することなくガンガン批評していく。ことごとく的を射ていたので、ひより達は反論の気すら起こらなかった。
「それじゃあ、このクッキーは失敗作ってことスね……?」
「失敗ってほどでもないと思うよ。でもそれ、ホワイトデーの贈り物にするの?」
 つかさの言葉には悪意も裏表も一切ない。だからこそ辛辣に耳を打った。
「先輩! もう一度ご指導お願いします!」
「お願いします……!」
 ひよりもみなみも、珍しく体育会系のテンションになってきている。
「うん。それじゃあ次はフルーツケーキを作ってみよっか。今度は私も一緒に作るからね」
 その後、厳しい先輩の指導の元、後輩達は真摯にお菓子作りを学んでいく。三人にとって非常に密度の濃い時間であった。


 翌日のホワイトデー。朝の一年D組教室。
「どうしたのみなみちゃん? 田村さんに、パティちゃんも、目の下に凄いクマ……」
 揃って寝不足丸出しな顔を並べるクラスメイト達に、ゆたかはいささか困惑気味だ。
「いやぁ、私はいつも通り原稿に追われて寝不足で」
「私もいつも通り徹ゲーで寝不足で」
「私もいつも通り…………寝不足で」
 みなみは理由が思いつかなかったらしい。ともあれ、三人とも寝不足の真の理由は言うまでもなかった。
「決戦は放課後でいいですカ?」
「異議なし」
「うん……」
 三人は小声で会話を交わし、ひとまず解散となった。
524白い日〜闘争編〜(3/3):2008/03/14(金) 21:48:32 ID:nqTF0e0c
「ユタカ!」
「小早川さん!」
「ゆたか……」
 授業が終わって放課後になった途端、三人から一斉に呼びかけられ素でびびるゆたか。ハムスターなどの小動物は、驚かせるとショック死することもあるというのに。
「な、何?」
「私達からバレンタインのお返しでス」
 我先にと争うようなことはなく、三人は足並み揃えてそれぞれのプレゼントを差し出した。色とりどりのラッピングをされた三つの箱を前に、ゆたかは目を白黒させている。
「あ……今日、ホワイトデーだったね」
「そのとーりでス!」
「さあ小早川さん」
「開けてみて……」
 三人の気迫に半ば押されるようにして、ゆたかはそれぞれの箱を開けてみる。
 みなみはホワイトチョコをまぶしたクッキー。ひよりはドライフルーツのパウンドケーキ。パティは旬の苺を使ったイチゴ大福。全てつかさからレシピを伝授されたお菓子だが、完成度はかなりのものだ。
 和洋揃った三種類のお菓子を見て、ゆたかは目を輝かせた
「うわあ……これ、全部みんなが作ったの?」
「Yes! 三人力を合わせればこれくらい軽いでス。一本や二本の矢は簡単に折れますガ、三本束ねるとなかなか折れないのでス。これぞ毛利のサンコンの矢!」
「三本の矢、ね。そっちはギニアの人だから」
「実は柊先輩にコーチしてもらって……」
「へえ、そうなんだ」
 ゆたかは手作りのお菓子をそれぞれ一つずつ摘んでみる。
「ん〜……美味しい〜!」
 ゆたかは両頬を押さえて満面の笑みを浮かべた。
 その様子を見て、ひよりは思った。『ほっぺたが落ちる』という表現は、きっと昔の人が小動物系萌やしっ子のこのような仕草を見て考えたのだろうな、と。
「どれもすっごく美味しいよ! こんなに美味しいお菓子がこんなに沢山あって、私虫歯になっちゃいそう」
「日にちをかけて、分けて食べれば……」
「あ……でもクッキーはともかく、フルーツケーキとイチゴ大福はあんまり日持ちしないんじゃないかな?」
 そう言って、ゆたかはしばらく俯いて考える。やがて、何やらひらめいたのか、パッと明るい顔になった。
「そうだ。良かったら、これからみんなで食べようよ」
 ゆたかの提案に、みなみ、ひより、パティの三人はちょっと顔を見合わせた。
「いいの?」
「うん。こんなに美味しいお菓子、私一人じゃもったいないし、食べきれないもの」
「んー……それじゃあ」
「お言葉に甘えますカ」
「うん……」
「そんじゃあ、ひとっ走りお茶買ってくるね」
 そういうわけで、手作りお菓子を四人で囲み、ちょっとしたお茶会になった。
「ところでユタカ。どのお菓子が一番美味しいですカ?」
「え、ええっ? そんなの決められないよぅ……」
「こらこらパティ。小早川さんを困らせない。物が違うんだから優劣付けようないでしょ」
「それもそうですネ。Sorry ユタカ。お詫びニ……はい、あーン」
「え?」
 にっこり笑ったパティが、ゆたかに向けてイチゴ大福を一つ差し出す。
 ゆたかは少し戸惑いながら、口を開けてパティの手から直接それを食べさせてもらった。
「美味しいですカ?」
「うん。とっても」
 照れ笑いを浮かべながら、ゆたかは頷いた。
 その様子を横目で見て、静かに対抗心を燃やしているのはみなみである。
「ゆたか……こっちも、良かったら……」
「う、うん……」
「あーん……」
 クッキーを差し出すみなみ。
「あーん」
 ゆたかは口を開けてそれを受け入れる。
「……美味しい」
「うん。もちろんだよ」
 眩い笑顔を浮かべるゆたかに、みなみは嬉しさと恥ずかしさが綯い交ぜになった表情で俯いた。
 そんな一連のやり取りを見て、ひよりが妄想世界へ旅立ったのは言うまでもない。
 何はともあれ、一年生達のホワイトデーは和気藹々と過ぎていった。

おわり
525名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 21:49:14 ID:nqTF0e0c
読んで下さった方、ありがとうございました。
52635-215:2008/03/14(金) 21:50:09 ID:UYNTjIDe
>>514
ヘッポコ文士ですがいくつか変えようと頑張りますので期待しないで待っていてください

>>515
続き物表記忘れてたorz・・・
一応
>>431の続きです

>>517
あまりにも好きで全巻そろえてる人です、今じゃ7作目が手に入りづらいらしいという情報を弟から聞いたが真実なのだろうか?
ちなみに作者が好きなのは2作目だったり

かがみなの方はorz・・・
偉い人はいいました、エロシーンは体力を使うと
527名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 22:18:03 ID:W4+LYh3l
>>525
キャラの動かし方が上手いですね。GJ

>ほのぼの編
こなたの寝惚け方は全部計算ではないのか……?

>闘争編
いきなりファミコンウォーズと意味もなく現れたヘリにワラタw
ひよりが登場すると話が真面目に終わらないなぁw
528名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 22:18:21 ID:SlzKO6sV
>>526
俺は3作目かな?つーか、それしか知らん。
しかし、あの人プロデューサーも女装少年に縁あるなw
529名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 22:25:31 ID:v3kFNIhd
>>525
こなかがで浮かされて一年生チームでめでたくノックアウト。
ああ、俺もつかさ先輩に厳しく教えられたい……あれ?

それはそれとしてぐっじょぶでした。読み返すだに頬が緩むよ、ママン。
530味噌煮込みうどん:2008/03/14(金) 23:40:18 ID:c6JpqZKr
>>525 GJ!
終わり方がすっきりで、読後感がなんとも
 
ここの職人様に触発されたので、小ネタ投下します
3レスほど
微ヤンデレ
こなた総受け気味&みなみ→???→こなた
非エロ
悪い意味でキャラ壊れてます
531こなたの1日 1/3:2008/03/14(金) 23:41:39 ID:c6JpqZKr
【05:04】何かの気配で目を覚ましたら、至近距離でゆーちゃんと目があった。とりあえずゆーちゃんを部屋から追い出す。
【05:17】することもないので新聞を読む。妙な雑学がまた増えた。
【06:32】朝食とお弁当の準備をする。ゆーちゃんが何やらごそごそしていたが、気にしないことにする。
【07:37】ゆーちゃんと一緒に家を出たら、かがみたちが家の前で待っていた。
待ち合わせ場所が、だんだん私の家に近くなっていってることを考えるといつかは家の中で待っているかもしれない。
【08:08】通学中、空気が妙にギスギスしている。気分が重い。
【08:28】学校に到着。クラスが違うかがみたちと別れずにそのまま教室へ。
【08:29】みゆきさんに癒される。みゆきさんは私の天使だ。思わず寄りかかりそうになった。
【08:35】かがみたちが、しぶしぶ自分のクラスへ帰って行く。つかさは上機嫌だった。
【08:55】授業開始。1日で一番安らげる時間なので寝る。ぐぅ。
【12:37】気が付いたら四時間目が終わっていた。
【12:41】昼食の時間。かがみとゆーちゃんたちが来る。再びギスギスした雰囲気。
みなみちゃんに終始睨まれるが気付かない振りをした。
532こなたの1日 2/3:2008/03/14(金) 23:42:22 ID:c6JpqZKr
【13:08】ひよりんのネタで少しだけ空気が和む。このなかでひよりんが一番常識人に思えた。
【14:47】体操服に着替える。つかさとみゆきさんに視姦されているような気分になる。気のせいだよね?
【15:02】準備運動でつかさとペアを組む。みゆきさんのつかさを見る笑顔が怖いと感じた。
【15:11】バレーボール。またつかさと同じチーム。みゆきさんは落ち込んでいたが、私とみゆきさんが組むとバランスがとれないので、三人で組めないのは仕方ない。
後でみゆきさんを励ましておこう。
【16:08】下校時間。パティと一緒にバイト先へ。後ろのツインテールは見なかったことにした。
【16:37】『普通のメニューには興味ありません。この(ry』「こなたを一つ」当店では「こなた」を取り扱っておりません。メニューにあるものでお願いします。
【19:35】店先で待っていたかがみたちと一緒に帰る。毎回来てるけど、お金は大丈夫なんだろうか?
【20:09】帰宅。お父さんが作ってくれた夕食を食べる。なんとなく和んだ。
【20:47】入浴中、ゆーちゃんが乱入してくる。何かもう色々と諦めた。
【21:04】下着がまた減っているような気がしたけど、気にしないことにした。
533こなたの1日 3/3:2008/03/14(金) 23:43:05 ID:c6JpqZKr
【21:11】明日の朝の準備をする。といっても米を炊くだけ。
【21:28】ネトゲにIN。黒井先生に色々と心配される。涙が出そうになった。
【22:14】ゆーちゃんの部屋から物音が聞こえてくる。いつものことなので放っておいた。
【22:58】みゆきさんからおやすみのメール。やっぱりみゆきさんには癒される。
【22:59】携帯を確認するとかがみんからの着信履歴が22件。いつものように携帯を見ていなかったことにした。
【23:45】黒井先生も心配してくれていることだし、早めにログアウトする。
【00:06】お父さんに夜食を作ってあげることにする。
【00:32】退屈なので漫画を読む。
【02:13】ゆーちゃんが私の部屋の前まで来たようだったが、すぐに引き返していった。
【02:47】今日はゆーちゃんがもう来ないことを確認すると、ベッドに入る。おやすみなさい。
534味噌煮込みうどん:2008/03/14(金) 23:47:17 ID:c6JpqZKr
投下終了です
ここの職人様に比べなくとも文才ないですが
こういう文なのは仕様です
535名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 00:24:52 ID:LoRTBTRt
何だコレwwww

これはこな☆フェチの類なのかな?
536名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 00:31:39 ID:Kd2PW4iC
>>534
こな☆フェチのこなたの生活をこんな感じで冷静に想像してみると…


(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル  
537名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 00:38:32 ID:wLdQ/rqx
>>534
嗚呼、かがみとゆーちゃん……この二人はもうどうしようもないと言わざるを得ないな…

しかし真のこな☆フェチではこの上さらに鼻血みゆきが(ry
538名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 00:56:13 ID:a5W1glRU
シュールすぎて吹いたw
539名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 01:02:02 ID:LCeL69rV
アンパンマンですな
懐かしい
540名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 01:25:42 ID:qZXWN1hA
兄沢×ななこの甘エロ書こうと思ったのに
店長扱うの難しすぎワロタ
541名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 01:29:47 ID:9o5SKZtg
>>534
こういうのもいいね!GJ!
個人的にこなた受けが好きなんで激しく萌えたw
542名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 01:36:22 ID:LoRTBTRt
>>540
なりすましのアレかww
とりあえずやたらと熱くすればいいんじゃね
それがダメならアニメ見直せばいいんじゃね
543名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 02:45:15 ID:THraZCkY
さりげなくこなたを虎視眈々と狙いつつも、
萌え要素と表面上のおおらかさゆえにこなたを巧く
懐柔しているみゆきさんが、すごく…恐ろしい…です……

【07:06】近隣の犬の声で目を覚ます。マシになったとはいえまだ外気は冷たい。
【08:04】学生服の人たちが走っていくのを眺める、何もかも皆懐かしい。
【09:15】ハトにえさをやる。やたら和む。
【10:30】柔らかな日差しをいっぱい浴びつつ、体を丸めて過ごすことしばし……
【13:02】もうこんな時間だ。ただでさえネコっぽい私。本気でネコ化が進んでないか?
【13:28】昼食、こんな状態でもチョココロネだけは欠かさない。
【14:35】視線を感じた。認識青、確実にアレ系だ。このツンとしながらも
     甘さが見え隠れする感覚……一人しか思い浮かばない。
     とりあえず迷彩レベル=仮死に上げておく。
【18:55】やっと撒けたようだ。なんという粘着性だろうか。生きた心地がしない。
【19:43】近場の立ち飲み屋に行き、ウーロン茶にて軽く夜食を摂る。
     うん、やっぱり外気に晒されながら頂くヤキトリはいいもんだネッ!
【20:32】飲み屋の親父さんに事情を話したら、涙ながらに受け答えしてくれた。
     なんだか知らないけど意気投合。しばらく常連させていただくか。
【22:45】夜もとっぷりと更けてきた。隠れるにいいとめぼしをつけた雑居ビル横に、
     頑丈なダンボールを持ち込んで組み立て、宿を取る。
【23:22】そろそろ残金少ないな……明日は久しぶりに路上パフォーマンスでもやるかな。
     でもあまり目立ち過ぎると追ってが来るしな……
     なんて事を考えつつ、今日一日を無事に過ごした事に感謝し、オヤスミナサイ。

>>534に感銘を受け、
勝手にこんなバージョンを書いてしまった。なんかもう色々とスミマセンorz
544名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 07:36:13 ID:4dsk07Ss
>>534>>543シュール過ぎて吹いたwwwwww
でもこういうの大好きwwいいぞもっとやれwwww
 
 
んで、こな☆ふぇちかなた様に監視されてるverはまだですか?
545名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 08:36:19 ID:uW/pSYUq
>>519
> 『なおこの携帯は通話後自動的にFOMA905iになる』
> 「人の携帯を勝手に進化させるな! また何かのアニメネタか」
噴いた
これはミカベルネタであってるんだろうか
546名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 15:22:50 ID:sfnmAWI8
ちょっとした小ネタ
みゆき「今日はお母さんと銀座に行きました」
ゆかり「銀座に来たんだだしせっかくだからデパートでお揃いの下着でも買いましょ」
みゆき「下着…ですか?」
ゆかり「そうよぉ〜♪あっ!?これなんてどうかしら…」みゆき「ちょ!?お母さんそれ…ふん…どしですよ」
ゆかり「いゃね〜♪みゆき今はふんどしなんて呼ばないわクラシックパンツって言うんだから♪」
547名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 17:58:10 ID:UPHK3dG5
>>540
個人的にゲームで一番気に入ったカップリングだから物凄く期待してる
無論全裸で
548双子の兄:2008/03/15(土) 18:08:41 ID:pt5OeGNk
投下する人も今は居なさそうなので、投下します。

『紫煙に溶けゆく』
・カップリング無し
・少しだけ鬱要素が入ってるかも。
・非エロ
549双子の兄:2008/03/15(土) 18:10:22 ID:pt5OeGNk
 疲れた。
 漸く大学の講義が終わり、私は校門の前で一息を吐いた。辺りには私と同じように講義の疲れを友達ら
しき人に訴えている人や、早々に帰宅している人が眼に入る。私と違う点と言えば、傍に友達が居る事ぐ
らいだった。
 雑踏に賑わう校門前は騒々しい喧騒に包まれていて、その煩さが私をより一層暗い気持ちにさせる。周
りが悪い訳ではないのだけれど、どうしても心中で毒づきたくなるのは人間の性なのだろう。
「はあー、疲れたー」
 何となく心の中だけでは収まらない気持を吐露してみると、思いの外気分が楽になった。校門の前で佇
んでいるのは私くらいで、他の人達は私を置き去りにするかのように歩みを進めて行く。何だかそれが妙
にやるせなくて、そして寂しかった。昔の事を思い浮かべると、それがまた色濃くなるのだ。
 私は鬱積を晴らそうと首を勢い良く振り、肩に掛けたショルダーバッグを掛け直すと帰路に向かって足
を踏み出す。ハイヒールがコンクリートを踏みしめて、カツ、と小気味良い音を鳴らした。それが何だか
私が大人になった事を示しているみたいで、嬉しくもあり、また寂しくもあるのだ。私が望んだ大人の理
想像は、今の私ではないのだから。
 空を見上げれば、晴天が広がっている。澄み切った蒼い空に漂う綿菓子のような雲はその進路を固定す
る事なく自由気ままに風に乗って流れて行くのだろう。そんな雲に、少しだけ憧れの念を抱いた。我なが
らセンチメンタルな思考回路が形成されたと自嘲気味に笑みを零して、私は小気味良い音を二、三と続け
て行くのだった。





紫煙に溶けゆく




 歩き慣れた大通り、道路を自動車が喧しい音を立てながら走り去って行く。私はその傍らに設けられて
いる歩道を淡々と歩いていた。排気ガスの臭いが鼻に付く。前に住んでいた所も十分に都会だったはずな
のだけど、私が越してきた此処は空気の味と言うか臭いが、全然違うように思う。あまり、好きではな
かった。
 都会に出れば何かが変わる、そんな時代錯誤な期待を胸に秘めて此処に越してきたのが三年前。
 私は大学三年生になり、二十一歳と言う立派な成人女性として新たな人生をスタートした。今でも私が
引っ越して一人暮らしをする、と言った時の皆の表情を覚えている。忘れようにも忘れられない、色んな
表情を見た。
 お母さんは表情を暗くしていたけれど、それでも頑張ってね、と激励してくれた。私が此処に来る前に
食べた、お母さんとつかさが作ってくれた柊家での食事は文字通り涙を飲むものだった。
 家を出る、たかがそれだけの事なのに、私は声を出すまいと喉に力を込めながら食べていた所為で上手
く食べ物を咀嚼出来なかった。そんな私を、お母さんは何時もと同じ優しい目で見ていてくれた。私が家
を出る決意を固める事が出来たのも、お母さんのお陰だったと思う。
 子供を四人も生んで、特に私はつかさと二人一緒に生まれた訳だから子育ても楽ではなかったはずだ。
私はまだ母親の気持ちになって考える事は出来ないけれど、それでも母親が持つ強さと言う物を実の母親
から常に教えられていたのだ。だから、小さい頃から私の理想の大人像は常にお母さんだった。
 最後の食卓、いのり姉さんは嗚咽を必死に堪える私の背中をずっと撫でていた。お母さんに一番似てい
ると、他の家庭からも言われている姉さんは私にとって羨ましい人だった。きちんと自立して、毎日私や
つかさの事も気遣ってくれて、何時も優しいお母さんを映したような人だった。そんないのり姉さんを、
私は目標の対象にして生きていた。
550紫煙に溶けゆく:2008/03/15(土) 18:11:51 ID:pt5OeGNk
 お母さんよりも私と年が近くて、だからこその目標だった。若い私にはお母さんのような人になるには
まだまだ時間が掛かる事だと思っていたから、そう言う意味では私の本当の目標はいのり姉さんだったの
かもしれない。
 だから、兄妹の中でも特に姉さんと似ていると言われた時は何時だって嬉しかった。
「……」
 ふう、と一息、溜息を吐く。そろそろ春だろうか、真冬の寒さは最近になってめっきり影を潜めている。
夜になればそれなりに寒いと感じるけれど、今の時間帯では暖かな春の陽気さえ感じる事が出来た。もう少
し空気の綺麗な所であったのならば、私は大きく深呼吸をしていた事だろう。此処ではそんな気も失せて
しまうけど。
 人通りが先ほどに比べて多くなってきた。歩道ですれ違う人々はスーツを着ているサラリーマン風の男
性であったり、疲れた表情をしているOLの人だったりと、みんな一様の姿をした人だった。他から見た
ら、私も大学帰りの一般人に見えるのだろうけど、そう見られていると思うと言い知れない恥ずかしさが
込み上げて来た。
 私は大学に通っていても、立派な人間ではない。学歴社会で高学歴が色んな所から求められているこの
世の中から見たら立派な人間なのかもしれないけれど、もっと根本的な所で私は立派ではないのだ。
 それを考えれば気分が悪くなってしまうので、考えないようにはしているけど、それでも胸の蟠りは何
時だって残ったままだ。それが私を蝕んで、この眼にモノクロのフィルターを掛けてしまう。
 私は見るもの全てがモノクロに見えてしまうほどに、淡白な人間に成り果てていた。
 以前は何処にでも彩りがあって、見ているだけで楽しい事ばかりだったのに。
 途端に、春の陽気が恨めしく思えた。いっその事なら真夏時の熱い日に晒されれば、真冬の寒さに身を
震わせる事が出来たなら、こんな嫌な事は考えないのに。こんな心地の良い陽気は今の私には場違いに思
えた。
「……」
 人通りが多くなっていたのは駅が近付いていた証拠だ。程なくして私は目的の駅へと到着した。此処か
ら電車を一本、その後はバスに乗って、自宅近辺のバス停で降りれば数分で自宅に着く。こんな暗澹たる
気持ちだと、どうしてもそんな道のりがとても長く思えてしまって、私は再び溜息を吐いた。
 駅は多種多様な人々で賑わっている。外国人だって少なからず見受けられるし、老人や若者まで、年齢
層も様々だった。こんな光景も見慣れているはずなのだけど、酷くその光景が異質に見えた。以前とは違
う、全く別世界に居るかのような錯覚だ。ラノベでよくある、多次元世界に迷い込んだとでも例えようか。
 私は人々の雑踏の中に紛れ込んで、改札を定期で通りホームへと向かった。座る席が確保出来たら良い
のだけど。そんなどうでもいい事を考えながら。
 別に座れなくともいい。ただ、もしも座れたなら足に溜まる疲労も多少は和らぐだけのこと。
 ――私はとことんまで淡白な人間だった。
 階段を降りると、丁度良いタイミングで電車は到着した。扉が開くと、溢れかえるようにして人が出て
くる。私は端の、出来るだけ人ごみから離れてその光景を見守り、人波が収まった頃にゆっくりと電車に
乗った。けれど、そんな緩慢な動作では勿論座れる席を確保するなんて出来るはずがなく、私は手頃な位
置に立つと吊革に捕まった。
 それをスタートの合図とするかのように、電車はがたんと揺れて、やがてそれは定期的なものへと
変わって行った。
 私の前は電車のロングシート。したがって、窓の外も良く見える。普段なら席を確保してラノベに読み
耽るのだけど、生憎立ったままではそれも難儀なものになってしまう。
 どうしようもないので、私は吊革に捕まりながら流れる外の景色を車窓から眺める事にした。
 映るのは、モノクロの世界だけだけれど。
551紫煙に溶けゆく:2008/03/15(土) 18:13:22 ID:pt5OeGNk
 お母さんよりも私と年が近くて、だからこその目標だった。若い私にはお母さんのような人になるには
まだまだ時間が掛かる事だと思っていたから、そう言う意味では私の本当の目標はいのり姉さんだったの
かもしれない。
 だから、兄妹の中でも特に姉さんと似ていると言われた時は何時だって嬉しかった。
「……」
 ふう、と一息、溜息を吐く。そろそろ春だろうか、真冬の寒さは最近になってめっきり影を潜めてい
る。夜になればそれなりに寒いと感じるけれど、今の時間帯では暖かな春の陽気さえ感じる事が出来た。
もう少し空気の綺麗な所であったのならば、私は大きく深呼吸をしていた事だろう。此処ではそんな気も
失せてしまうけど。
 人通りが先ほどに比べて多くなってきた。歩道ですれ違う人々はスーツを着ているサラリーマン風の男
性であったり、疲れた表情をしているOLの人だったりと、みんな一様の姿をした人だった。他から見た
ら、私も大学帰りの一般人に見えるのだろうけど、そう見られていると思うと言い知れない恥ずかしさが
込み上げて来た。
 私は大学に通っていても、立派な人間ではない。学歴社会で高学歴が色んな所から求められているこの
世の中から見たら立派な人間なのかもしれないけれど、もっと根本的な所で私は立派ではないのだ。
 それを考えれば気分が悪くなってしまうので、考えないようにはしているけど、それでも胸の蟠りは何
時だって残ったままだ。それが私を蝕んで、この眼にモノクロのフィルターを掛けてしまう。
 私は見るもの全てがモノクロに見えてしまうほどに、淡白な人間に成り果てていた。
 以前は何処にでも彩りがあって、見ているだけで楽しい事ばかりだったのに。
 途端に、春の陽気が恨めしく思えた。いっその事なら真夏時の熱い日に晒されれば、真冬の寒さに身を
震わせる事が出来たなら、こんな嫌な事は考えないのに。こんな心地の良い陽気は今の私には場違いに思
えた。
「……」
 人通りが多くなっていたのは駅が近付いていた証拠だ。程なくして私は目的の駅へと到着した。此処か
ら電車を一本、その後はバスに乗って、自宅近辺のバス停で降りれば数分で自宅に着く。こんな暗澹たる
気持ちだと、どうしてもそんな道のりがとても長く思えてしまって、私は再び溜息を吐いた。
 駅は多種多様な人々で賑わっている。外国人だって少なからず見受けられるし、老人や若者まで、年齢
層も様々だった。こんな光景も見慣れているはずなのだけど、酷くその光景が異質に見えた。以前とは違
う、全く別世界に居るかのような錯覚だ。ラノベでよくある、多次元世界に迷い込んだとでも例えようか。
 私は人々の雑踏の中に紛れ込んで、改札を定期で通りホームへと向かった。座る席が確保出来たら良い
のだけど。そんなどうでもいい事を考えながら。
 別に座れなくともいい。ただ、もしも座れたなら足に溜まる疲労も多少は和らぐだけのこと。
 ――私はとことんまで淡白な人間だった。
 階段を降りると、丁度良いタイミングで電車は到着した。扉が開くと、溢れかえるようにして人が出て
くる。私は端の、出来るだけ人ごみから離れてその光景を見守り、人波が収まった頃にゆっくりと電車に
乗った。けれど、そんな緩慢な動作では勿論座れる席を確保するなんて出来るはずがなく、私は手頃な位
置に立つと吊革に捕まった。
 それをスタートの合図とするかのように、電車はがたんと揺れて、やがてそれは定期的なものへと変
わって行った。
 私の前は電車のロングシート。したがって、窓の外も良く見える。普段なら席を確保してラノベに読み
耽るのだけど、生憎立ったままではそれも難儀なものになってしまう。
 どうしようもないので、私は吊革に捕まりながら流れる外の景色を車窓から眺める事にした。
 映るのは、モノクロの世界だけだけれど。
552紫煙に溶けゆく:2008/03/15(土) 18:16:03 ID:pt5OeGNk
「ねえ、寝るのー?」
「うーん……ちょっとだけ……」
 ふと、そんな会話が下から聞こえてきた。気になって視線を車窓からロングシートに移してみると、ま
だ幼い、小学生高学年くらいの女の子二人がそこに座っていた。
 一人はリボンで髪の毛纏めて、小さなツインテールを作っている可愛らしい印象を受ける女の子、もう
一人は肩に掛かるくらいまでの髪をストレートに伸ばしているもう一人とは対照的に大人っぽい印象を受
ける女の子だ。
 ツインテールの女の子はどうやら春の陽気に当てられたらしく、頻りに首をカクンと揺らしては隣のス
トレートの女の子に意識を強制覚醒されている。そんな姿が微笑ましくて、私は二人に気付かれないよう
に微笑んだ。
 まるで、私とつかさを見ているみたいだ。二人の様子を見て、初めて思ったのはそれだった。
 つかさが寝そうになって、私がそれを起こす、そんな何気ない日常の一ページがとても昔の事のように
思える。昔と言えば昔だけど、昔と言う言葉を使うにはまだ経過した時間は短すぎるだろう。それなのに
昔に思えてしまうのは、やはり今の生活に前のような面白さを見出せていないからかもしれない。それは
痛いぐらいに理解していた。
「ねえってば。私だって眠いのに……」
「うーん……あと……少し……」
 最早会話さえ成り立っていない。何だかストレートの子が不憫に見えてしまって、そう思った時には私
はその子に声を掛けていた。ツインテールの子はもう完全に睡魔に敗北を喫したのか、穏やかな寝息を立
てながら電車の揺れに身を任せていた。電車が揺れる度に動くツインテールの髪の毛が可愛らしい。
 本当につかさみたいだと思った。
「君たち、何処の駅で降りるの?」
 出来る限り身を屈めて、困った表情できょろきょろしているストレートの女の子に尋ねると、その子は
一瞬びくりと身体を分かりやすいくらいに震わせて私を見た。なるべく怖がらせないように、私は自分の
出来る最大の笑顔で彼女を見つめる。丸い瞳が不思議そうに揺らぎ、やがて私の質問に対する答えが小さ
な唇からか細く紡がれた。
 聞けば、彼女が降りる駅は私が降りる駅よりも早く着く位置にあった。これは好都合、むしろこういう
答えを期待していたのだから、私は密かに喜んでいた。目の前の女の子は何だろう、と言った表情で私を
見つめている。黒で縁取られた丸い瞳が更に丸くなり、未だ何も行動を起こさない私に対して首を傾げて
いた。
「そこなら私が降りる駅よりも早いから、良かったら起こしてあげるよ」
「え……でも……」
「眠いんでしょ? 隣の子も、もうぐっすりだよ」
 私がそう言うと、その子は今度は困ったように隣のツインテールの子と私を見比べていた。コロコロと
変わる表情に、つかさに与えられていたような安心感が芽生えてくる。つかさは私に心配ばかりかけてい
たけれど、それでも言葉では説明出来ない癒しがあった。私はつかさのそんな所が大好きだったのだ。
「あの、じゃあ……お願い……しても、大丈夫ですか……?」
 ストレートの子は何度かちらちらと私を見てからそう言った。やはり眠いのだろう、早く眠りたがって
いるように瞳が微睡んで見えた。私は満面の笑みで頷いて、その子の頭に手を置いて撫でてあげた。さら
さらの糸のような黒い髪の毛が抵抗なく私の指の隙間を流れる。触っているだけで心地良い。このままだ
と私にも睡魔が襲って来そうだ。
「ん、じゃあ着いたら起こすから、今は寝てても大丈夫。安心してね」
 彼女は私の言葉に笑顔で頷いて、恐らくは既に夢心地の状態なのだろう。途切れ途切れにありがとうご
ざいます、と言っていた。どうやら頭を撫でてあげると睡魔はその強さを増すらしい。
 私はこの子が静かな寝息を立て始めた後も、暫く頭を撫でてあげていた。
 我が子が居たら、こんな気持ちになるのだろうか。何とも言えない、優しい気持ち。全てを包み込める
ような寛大さが身に付いた気さえする。此処が電車の中ではなかったのなら、私はこの子達を抱き締めて
いたかも知れない。
「私達にも、こんな時期があったわよね……」
 また吊革を掴み直し、私は寄り添いながら眠る二人の少女を眺めながら昔を思い出す。どうしても最近
は昔の事ばかりが私の頭を過ってしまう。一種の懐郷病だろうかと疑ってしまった程だ。
553紫煙に溶けゆく:2008/03/15(土) 18:17:24 ID:pt5OeGNk
 つかさは私が家を出る決意の旨を話した時、泣きながら私に縋り付いて来た。あまりにも豪快で子供み
たいな泣き方だったので、深く印象に残っている。行かないで、と捲くし立てるつかさの姿を思い出す度
に胸が熱くなるのだ。あそこまで私を慕ってくれていた事が素直に嬉しくて、私も子供みたいに泣きそう
になってしまった。
 それでも姉の威厳を保ちたいと言う今になって思えば下らない理由で、私は必死に涙を堪えていた。結
局最後には泣いてしまったけれど、その時はつかさの前で涙を見せまいと必死だった。
 まつり姉さんには泣きたかったら泣けば良いのに、と言われたし、お父さんからも無理しなくて良い、
と言われた。その気遣いの所為で、私の涙腺は最終的に決壊してしまったのだ。それでも何とか声は押し
殺したけど。
 結局つかさは最後まで泣いていた。
 友達間の送別会をやった時も、終始泣きっぱなしでみんなが困っていた事もよく覚えている。みゆきや
こなたも、困った笑みを浮かべていた。日下部なんて、柄にもなく慰めようと頑張っていたくらいだ。
 私が傍から離れる、ただそれだけの事で泣いてくれるのが本当に嬉しかった。
 傍から離れてもつかさは私を覚えてくれている、そう思う事が出来たから。
 ……今の私は何なのだろう。
 高校時代には確かにあった将来の夢も何だか薄れてしまった。ただ、行かなければならない、と言う使
命感に突き動かされて大学に通っている、それだけの日々。勉強に勤しんでも、それに意義を見出せな
い。何の為にこんな事をしているのだろう、と疑問に思う時さえある。私には、何も無い気がした。
 高校の時は楽しかった。友達も沢山居て、その誰もが良い人ばかりで。学校に行く事が億劫とは思えな
くなったのも高校に入ってからだった。毎日に彩りがあった。毎日に幸せがあった。ただ友達と話してい
るだけで楽しくなれる、そんな毎日が当り前のように感じられていた。いや、私にとって、それこそが紛
れもない当り前の事だったのだ。
「……」
 窓に顔を向けると、そこには顰め面で私を睨みつけている私が居た。
 そんな私を、私も睨みつけている。途端に、気分がどん底まで転げ落ちた気がした。先ほどまでの安ら
かさなんて何処にも感じられない。むしろ、安らぎを感じていた自分に腹が立った。
 私はこんなに意味のない日々を送っているのに、何でこの子達はこんなに幸せそうに寄り添って眠って
いるのだろう。
 以前の私達姉妹を彷彿とさせる光景、それが煩わしく思えた。
 独り善がりだと、分かっている。
 自分勝手だと、分かっている。
 この子達には何も非はない。私の過去にだって、そんなものは存在しない。
 悪いのは、今の私。こんな考え方しか出来ない私が悪い。そんな事は重々承知だった。
 けれど、私は此処まで分かっておいて、それなのに感情をコントロールする事が出来そうになかった。
この、嫉妬にも似た感情が暴走してしまいそうな、そんな身の毛がよだつような感覚がお腹の奥から迫り
出してくる。ズルズルと、生暖かな蛇が身を這いずるような感覚に対する嫌悪感。それと必死に戦ってい
た。
 景色の流れが遅くなってきた。電車が止まろうとしている。目的地――彼女達の――に近付いているの
だ。
 電車のブレーキ音の甲高い音が聞こえてくる。もう何秒としない内にこの電車は停止するだろう。そし
て、乗客を吐き出し終えたら再び発進するのだ。何も言わなければこの子達は目的地を過ぎた事も知らな
いまま眠り続けるだろう。束の間の不幸を、その幼い精神に受けて泣き喚くかも知れない。それは私の望
んでいる事だろうか。
 この心の蟠りを無くす事が出来るだろうか。この幼い子供達に、私が原因となって不幸を与える事で、
この嫌悪感から抜け出す事が出来るだろうか。他人を捌け口にして自分の鬱積を晴らすだけの事だ。それ
は、度が過ぎているといっても他人に愚痴る行為と然程変わるものはないだろう。だから、私にとっては
その方が楽なのかも知れない。
554紫煙に溶けゆく:2008/03/15(土) 18:19:31 ID:pt5OeGNk
 景色が、止まった。アナウンスと共に扉が開け放たれる。私の前には、安らかに寝息を立てる少女が二
人。
 起こさなければならない立場に居る私は、何もしないで吊革を掴んだまま突っ立っている。人々が吐き
出されるようにして電車から出て行く光景を遠巻きに見ている私は訳の分からない葛藤に苛まれていた。
 どうしようもなく、白黒の世界を見ている事が辛かった。
 何がそれを変えてくれるのか、私には全然分からなかった。
 何かから置き去りにされた私を乗せた電車がアナウンスと共に重い音を立てて発進する。金属を擦り合
わせるような不協和音が耳に聞こえ、動くのが気怠いとでも訴えるかのように電車は走り出していた。
 流れる景色は、相変わらず気分が悪くなるくらいのモノクロだった。




 流れる人波の中を歩いている。後ろの人に押されて、前の人を押して、それでも移動するスピードは変
わりはしないのに。それが不毛な争いのように思えて、小さく喉を鳴らして嘲笑した。
 ――頭の中に先ほどの光景が思い浮かんでくる。
 寝息を立てる二人の少女。その姿が。
 けれど、私が最後に見た二人の姿は眠り続ける子達ではなかった。人の波に押されて、でもそれに必死
に抵抗して私に手を振る姿が、最後に見た二人の姿。周りが五月蠅くてまともに聞こえなかったけれど、
それでも一生懸命に伝えようとしていた感謝の言葉が唇の形だけで私に伝わってきた。何故だか、それが
心に重く圧し掛かっている。
 あれで良かったのだ。二人を不幸晒す事に意味は無い。それをしてしまえば、今度は訳の分からない感
情よりもその行いに対する罪悪感で余計に悔恨する羽目になる。私のした事は正しかったのだ。
「ちゃんと、駅から出れたかな」
 その呟きはまるで第三者が罪を滅ぼす時のような響きを称えていて。自分が行ったとも知れない客観的
な呟きが滑稽に思えた。何故なら私は、一時でもあの子との約束を破ろうとしたのだから。
 それも、自分の為だけに、自分の鬱積を晴らす為だけに。最低な、自分を擁護する為だけの行為だ。
 だからこそ、あの子達の身を案じる事で少しは救われる気がした。
 誰かに、"何も悪い事はしていない"と優しく言われたかったのに周りには誰も居ない。自分の目的の為
に他人を押し出している人間しか存在しなかった。
 狂おしい程に、誰かに優しくされたかった。
「……」
 改札を抜けて、駅の外に出てみればそこには漆黒の帳が徐々に降りて来ている街の情景があった。
 薄っすらと暗くなった道路を車のライトが裂き、足元が見え易くなるように街灯が光を提供していた。
街の様々なネオンは鮮やかな色彩を醸し出している。私にはよく見えなかったけれど、私以外の人が見て
いるのならば、このネオンは心が躍る色彩を出しているのだと思った。
 ふと、駅前のバス停に足を止めた時。何処にでもあるような書店が眼に入った。硝子越しに見える店内
には、丁度良い時間だからか結構な数の客が入っていて、立ち読みをしている人が何人も居た。
 また、懐かしい昔の記憶が舞い戻ってくる。今になって私を苦しめる思い出の日々が。
 丁度、あんな感じの書店だっただろうか。私より頭一つ分くらいの背丈の親友と肩を並べて立ち読みを
していたのは。買う所は殆どその手のマニアックな店だったけれど、アイツが新刊などを確認する時は近
場のこういった書店で済ませていた。その為だけに私は付き合わされていたのだけど、それが嫌だとは微
塵も感じていなかった。
 アイツ――こなたは本当に楽しそうにアニメ雑誌を眺めていた。まるで、女性がカタログに載っている
ブランド品を見て眼を輝かせるように、雑誌の中の内容を食い入るようにして眺めていた。そこに載って
いるのは私にはよく理解出来ないものばかりだったけれど、純粋に楽しんでいるこなたを見ると私も楽し
くなった。
555紫煙に溶けゆく:2008/03/15(土) 18:21:17 ID:pt5OeGNk
 口では決して言わなかったけれど、二人で黙々と本を読んでいる時間が心地良かったのだ。たまにこな
たが「あー、もう少しで発売日じゃん」なんて話を振ってきて、私は適当な相槌を打って。そんな他愛の
ないやり取りが今ではどんな宝石よりも輝いていたように感じる。今、アイツは何をして過ごしているの
だろう。
 何時ものようにネトゲをしている?
 それとも、この時間だったらバイトをしているかも知れない。
 でも、こなたの事だから面倒くさいなんて理由で家でアニメを鑑賞しているかも知れない。
 もしかしたら、大学で出来た友達と一緒に遊んでいる、なんて事もあるかも知れない。
 その全ての光景が眼に見えるように浮かんできて、こなたと過ごしたのは高校での三年間だけだったけ
れどその分密度の高い日々を送っていると私に実感させる。そして、それすらも私を苦しめる一つの材料
になってしまうのだ。
 あんなに輝いていた日々が過去になり、それが今の私には眩し過ぎた。今の生活には色が無かったか
ら。
「……」
 日々募る過去への想いを全て吐き出せたらと思い、私は長い溜息を吐いた。
 けれど、それが徒労になるなんて事は私がよく分かっている。今までに幾度と試してきた事だ。いい加
減に諦めを付けた方が良いとは思うのだけど、それでも肺に溜まる嫌な思いを吐き出さずにはいられな
かった。
 と、長い溜息を全て吐き出した時、丁度良いタイミングでバスが到着した。この土地にあるこのバスは、
外見も前の場所とは全然違う。私は並んでいた列が動き出したのを見計らって、自らもバスの方へと歩き
出した。
 車内は暖房が掛かっていて、私には少し熱いくらいだった。
 春と言っても、まだ少しだけ肌寒い季節だから暖房をつけるのも分かる気はするけど、今日の気温なら
必要無いだろう。確か、今朝に見たニュースでは今日の最高気温は十八度くらいだった。それならば、こ
の時間でも暖かい。
 私は着ていた上着を脱いで膝の上に乗せると、窓枠に肘を付けて窓の外を見遣った。
 人々と自動車の群れが、それぞれ一様の方向に向かって流れていた。
 車内が人によってすし詰めにされた頃、バスは重苦しいエンジンを唸らせて走り出した。それと同時、
ズボンのポケットから震動が伝わった。メールか、着信があるらしい。直ぐに震動が止んだ所から、メー
ルだと分かった。
 誰からだろう、と緩慢な動作で携帯をポケットから取り出すと、高校生の時からずっと変えてない同じ
姿の携帯が姿を現した。傷などは増えたものの、携帯としての本来の機能は普通に使える。これもまた、
過去を忘れられない私の悪あがきみたいなものだった。変えるに変えられないのだ、思い出が沢山詰まっ
ているこの携帯を。
「……みゆき?」
 携帯を開いて、メールの受信ボックスを開いてみれば、そこに表示されていた名前は"高良みゆき"と言
う文字だった。越して来た最初の頃は頻繁に連絡を取り合っていたのだけど、最近はあまりしていなかっ
た。
 それだけにディスプレイに表示されているこの名前は私が安堵の溜息を洩らすには充分過ぎる要素を持
ち合わせていた。
 少しの間逡巡した後、私はメールを開いた。
 丁寧な文体は紛れもなくみゆきのもので、私は再び安堵の溜息を吐く。そして、メールの内容を黙読し
始めた。
 お久しぶりです、そんな挨拶から始まった文章だった。メールでもこんなに丁寧なものだから、前に一
度からかった事があった。メールぐらいはっちゃければ良いのに、と。その時のみゆきははっちゃける、
と言うのがどういったものなのか今一つ分かっていなかったらしく、おろおろと狼狽していた事を覚えて
いる。
 メールの中に記された文章は続く。それは、私にとって見た方が良いものなのか、それともそうでない
ものなのか、判断が難しい内容だった。結局は、見た事を後悔する事になるのだけど。
 私は他愛のない近況報告だろうと、その時は何も気にせず読んでいた。自らの行動が軽率だと考える間
も無く。
556紫煙に溶けゆく:2008/03/15(土) 18:23:08 ID:pt5OeGNk
 お久しぶりです。
 そちらでは障害なく生活を送れていますでしょうか。こちらは何の問題もなく、穏やかな日々が続いて
います。
 今日、メールを送らせて頂いたのは、少し聞きたい事があるからです。
 先日、つかささんが私の家に尋ねて来られました。元気が無かった様子だったので、一先ず上がって頂
いてその理由を聞かせて貰ったのですが、その原因はかがみさんにあるらしいのです。
 最近、つかささん――引いてはご家族の方々に連絡を取っていますでしょうか。
 つかささんの話を聞いた限りでは、最近になって連絡が来なくなったらしいのです。何でも、メールを
送っても返信が来ない、電話を掛けても出て貰えない、などが続いているみたいで、それが心の負担に
なっているようです。
 私に話を聞かせてくれている間も、苦しそうな表情をなさっていました。
 だから、お願いです。忙しい事は重々承知の上ですが、少しでも暇を見つけられたなら、その時にでも
つかささんやご家族の方々に連絡を取ってあげてくれませんか。
 大切な家族から連絡が来なくなる事はとても悲しい事だと思いますし、心配を掛ける事だとも思いま
す。
 前に企画した同窓会にも出席なさらなかったので、私も心配になってしまい、こうしてメールを送らせ
て頂いている次第です。このメールを見たなら、どうかお願いです。つかささんはとても寂しそうでし
た。私としても、こういった事でつかささんが悲しんでいる所を見たくありません。
 重複になりますが、どうかつかささんとご家族に連絡を取って下さい。お願いします。
 P.S
 今度の祝日、もう一度同窓会を企画しようかと考えています。かがみさんも是非いらして下さい。泉さ
んやつかささん、峰岸さんに日下部さんなど、多くの友人を招く予定ですので、きっと楽しくなると思い
ます。
 開催場所は私の自宅の予定ですが、詳しい事などは追って連絡致します。それでは、これで失礼しま
す。

 携帯の右上にあるボタン。それを押すだけでこのメールに対する返信画面が開けるのに、私の指先はま
るで凍ってしまったかのように動かなかった。押すだけ、ただそれだけの行為までがとてつもなく遠い。
それを押すよりも、電源のボタンを押して画面を待ち受けに戻してしまう事の方がとても近く思えた。
 指が震える。バスの揺れの所為かも知れないけれど、別の何かがそれに加担している事は理解出来る。
そして、それが何なのか、それさえも。ただ考えたくなかっただけだ。物を言わず、何も考えない人形の
ようになれたらどんなに楽だろうか。考えても無駄な事ばかりを考える自分が居て、それに嫌気が差し
た。
 私は返信ボタンを押さなかった。
 押す勇気云々ではなく、押してはならなかったのだ。
 数か月前。私はみゆきが主催した同窓会を欠席した。思えばそれが私がこうなった原因の一つなのかも
知れない。終わらない負の連鎖は繋がり続けている。それを断つ事が出来る機会を私はみすみす逃したの
だ。
 あの時、同窓会に参加して悩みの全てをみんなに吐き出していたなら、私はこんなに卑屈になっていな
かったかも知れない。
 けれど、それは出来なかった。私はみんなと過ごした想い出に縋り付いている。高校に居た時から何も
変わらないままなのだ。あの時に戻れたら、そんな有り得ない事ばかりを望んでいる。そんな醜態は晒し
たくなかった。
 でも、気付いてしまった。それこそ私達の想い出を汚す行動なのではないかと。
 私達が過ごしてきた時は本物で、そこで培ってきた私達の友情も紛れもない本物で。それならば何故私
は悩みを打ち明けなかったのだろう。友達だからこそ、全てを晒し出すべきだろう。それを隠すなんて、
友達を友達と思っていない何よりの証拠ではないか。私は想い出だけでなく、みんなさえも裏切った。
 こんな私が同窓会に行ってはならないのだ。これは、私なりのケジメ。破ってはならない自分への戒め
だ。
557紫煙に溶けゆく:2008/03/15(土) 18:24:20 ID:pt5OeGNk
 バスが停車する。軋むブレーキの音を響かせて、私が降りるべき駅の前でゆっくりと止まった。
 私はすっかり重くなった足で立ち上がり、開きっ放しだった携帯を閉じてポケットに仕舞い込みながら
バスを降りた。漆黒の帳が下りたバス停。街灯に照らされた暗い道。自宅への帰路は果てしなく遠く、暗
く見えた。




 嗅ぎ慣れた家の匂いが私の鼻孔を擽り、微かな安心感をもたらしてくれた。
 家の敷居を跨いで、ワンルームの然程大きくはないリビングに持っていた荷物を投げ出して、私はソ
ファに倒れ込んだ。シャワーを浴びる気力が湧かない。明日は休みだったはずだし、朝に浴びるのも良
いだろう。今日は何もしないで此処に倒れ込んだまま眠りに落ちるのも悪くない。夕食はあっても食べる
気にはならなかった。
 思慮深い人間になったものだと思う。何もせず、ぼんやりとしていると色んな事を考えている。いや、
思い出しているのだ。昔あった出来事。楽しかった事や、苦しかった事、悲しかった事も嬉しかった事
も。その全部が彩りを持っていて、荒んだ私の心を癒してくれる。けれど、それも刹那の間だけだ。気休
め、この言葉がぴったりかも知れない。
 つかさ。
 例えば困ったようにおろおろして私に助けを求めてくる時。私は嘆息を交えながらも助けてあげるの
だ。そして、その後に見せてくれるだろう満面の笑みの為に尽力する。それを知っているかのように、事
が終った後、つかさは見る者全てに癒しを与えるかのような明るい笑顔を振り撒いてくれるのだ。それが
大好きだった。
 こなた。
 例えば私をからかっている時。私は羞恥やら屈辱やらでこなたを怒鳴る。こなたはその反応が分かって
いるかのように「かがみんが怒ったー」なんて軽く言いながら何時もの猫口顔で躱してしまう。私の三歩
先まで走って逃げて、口元を押さえながら含んだ笑い方をするのだ。表面では怒っていても、内心はそん
なやり取りがとても楽しかった。
 みゆき。
 例えば些細な心境の変化を鋭く読み取ってくる時。私が些細な事で悩んでいると、みゆきは真っ先にそ
れに気付く。幾ら私がみんなの前で何時も通りに振舞っていても、必ず気付いていまうのだ。その時のみ
ゆきは少し強引だ。有無を言わさぬ態度で私の悩み事を聞いてくる。結局私が折れて、悩みを吐き出すと
実に合理的な解決方を教えてくれるのだ。そして最後には聖母のような微笑みで私を見つめ、応援してく
れた。私はみゆきに何度も励まされていた。
 峰岸。
 例えば私が峰岸を少しだけからかっている時。私が峰岸の彼氏との経過を聞くと、峰岸は分かり易く顔
を熟れた林檎みたいにして俯いてしまう。それは聞かないで、と言うニュアンスを秘めているのだろうけ
ど、好奇に駆られた私は構わずその奥に踏み込んで、尋ねるのだ。すると峰岸は赤い顔を更に赤くしなが
らもそれに答えてくれる。前髪を上げている理由や、髪を伸ばしている理由、他にも色々と。そんな峰岸
が羨ましくもあり、また見守りたいとも思うのだ。
 日下部。
 例えば体育の授業ではしゃいでいる時。バスケットの授業では率先してキャプテンをやりたがって、そ
れに見合うプレーを見せて、その度に私の方を見ては八重歯を光らせて自慢げに笑うのだ。私は悔しいか
ら食い掛るけど、運動神経が良い日下部には敵わなくて、最後には日下部の運動神経を認めて笑う。その
時に見せるアイツの表情は照れ臭そうな、嬉しいような、歯痒い表情で。生き生きとスポーツをしている
時の顔よりも私はその顔が好きだった。
558紫煙に溶けゆく:2008/03/15(土) 18:25:35 ID:pt5OeGNk
 色んな事があって、色んな事を感じて、色んな事を好きになって。
 思えば私の人生の中で一番充実していた時は高校での短い三年間だった。
 けれど、それはもう過ぎてしまった。色褪せない過去の記憶となってしまった。
 ふと、ソファの前に置いてある硝子製の簡単テーブルに眼を遣った。
 透き通った硝子のテーブルの上には一つの箱が置いてある。その横には銀色の灰皿。中には吸殻が何本
かと、崩れた灰が溜まっている。私はおもむろに煙草の箱に手を伸ばした。
「……」
 その箱の中には白く細い円筒が入っている。残り数本、その内の一本を取り出し、一緒に入れていた安
物のライターも同時に取り出すと、私はベランダへと足を向ける。
 窓を開けて、上着を脱いだ体には少しだけ寒い外気に身を晒すと、街の光が私を出迎えた。点々と彼方
此方で光る光を見て、私は夜空を見上げる。汚れた空気が蔓延するこの街では、星は数えるくらいにしか
見当たらず、その代わりに銀色の光を漆黒の帳が降りた街へと注ぐ月が爛々と輝いていた。
 ベランダの柵に肘を乗せて、体重を預ける。そして持ってきた煙草を口に咥えた。火の付いていない煙
草はほんのりと独特の香りがして、それを少しだけ愉しんでから、私は浅く息を吸い込みながら煙草に火
を付けた。
 赤い炎が円筒の先を焼き、そこを赤く色付ける。立ち上る紫煙は一つの筋を作りながら遠い夜の空へと
浮かび上がった。一度、煙草を咥えながら息を吸い込み、それが体を駆け巡る感覚を味わってから吐き出
す。そうすれば程よい倦怠感を覚えている体には心地良い悦楽を得る事が出来た。
 吸い始めた当初は噎せてばかりだったけれど、今ではもうすっかり慣れた。
 此処に越してきて、少しの時間が経って、私が見る世界がモノクロになった頃、私は初めて煙草に手を
付けた。喫煙者が煙草を吸う理由の一つに、"嫌な事を忘れる為"と言うのがあって、それを見かけたのが
動機の理由。
 最初はこんな物吸うんじゃなかった、と後悔していたけれど、諦めずに吸い続ける内に煙草の味を覚えた。
 そのお陰なのか知らないが、鬱積は少しだけ晴れた。
 頭がぼーっと遠くなる感覚に体を預けると、鬱積も一緒になって遠くに行ってしまったように思えた。
少なくとも、煙草を吸っている少しの間では私は救われている。それを実感できるこの時が、今の私が唯
一安らげる場だった。
「……」
 もう一度、煙草の煙を含んで、吐き出した。
 立ち上る紫煙に溶けて、私の過去を持って行ってくれたなら私はどんなに楽になれるだろうか。
 この紫煙が夜空に溶けて行くように、私の想いも全て溶けてくれたなら。
 何時だってそう思う。明日の事を考える時、明後日の事を考える時、昨日の事を思い出す時、一昨日の
事を思い出す時。そして、今も見ているモノクロの世界を眺めている時も。
 これからもこの淡白な生活は続いて行く。
 何時までも、私はこのままで生きて行くのかも知れない。
 それでも私は何時か私に訪れる未来を想像するのだ。
 同窓会に抵抗なく行けるようになった自分とか、日々を楽しく感じられる生活を得た自分の事とか。
 確証なんか微塵も持てない願いだけれど、何時かは何かが変わってくれる。そう思わずして日々を過ご
す事なんて出来るはずがなかった。
 円筒の先端が今にも崩れそうになっていた。
 私がもう一度煙草を吸うと、それはベランダの下へと落ちて行く。灰は中空に投げ出され、ばらばらに
なって、地面に着く前に風に吹き飛ばされるだろう。
 空を見上げた。
 私の煙草から立ち上る紫煙が月を隠している。私はその様を眺めながら一つ願い事をした。
 "あの頃のような生活に戻れますように――"
 無駄な願いが私の心を揺さぶって、目尻から何かが溢れた。煙草の煙が眼に染みたのかも知れない。眼
が痛くもなっていないのに、私はそんな事を考えて煙草の火を消した。
 眼下に広がる世界は、何も変わらない黒白の世界だった。




――end.
559双子の兄:2008/03/15(土) 18:27:27 ID:pt5OeGNk
これにて投下終了です。
途中同じものを連続して投下してしまい、申し訳ありません。
専ブラの調子が悪くて投下の最中に何回も動作が停止してしまったものでして。
それでは、読んで下さった方、ありがとうございました。
560名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 18:45:11 ID:LoRTBTRt
な…!
こ、これで終わりなのか!?
かがみんが不憫すぎる!続き書け、いや書いてください!
561名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 18:52:30 ID:f3KixNDV
GJなんだが・・・全米が泣きそうだ_| ̄|○
562名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 19:24:04 ID:2Y8HK0d0
GJ、そして全俺が泣いた・・・
これで物語が終わりになったらマジで全住人が泣くと思う
563名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 19:50:16 ID:G/wFC2jJ
続くん……だよね?
564名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 19:55:44 ID:a7Qd/hR9
・・・・・一瞬ぼっちスレに迷い込んだかと思った・・・・・
565名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 20:35:28 ID:yQLosJPp
実はこの後、隠れていたこなた、つかさ、みゆき、峰岸、日下部の5人に唇を奪われてかが☆ふぇちに発展。
持ち前のツンで全員を突き放そうと試みるも、久しぶりに会えた喜びからデレ発動。
以来、かがみはタバコの代わりにキスに明け暮れる毎日を過ごした。
柊家にも帰宅し、見事な社会復帰を果たすところまでが俺の未来予想図ですが何か問題でも?(笑)
566名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 20:52:47 ID:fN5YsqOR
問題ないので執筆に取り掛かかっちゃいなさい
567名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 20:59:06 ID:G/wFC2jJ
ちと質問。ゆーちゃんって携帯持ってたっけ?

みなみと電話で話してるときは子機だった気がするんだが
568名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 21:09:59 ID:fN5YsqOR
ストラップひっぱると防犯ブザーが鳴ってGPSのイマドコサービスの付いてる衛星電話を持ってるよ!
569名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 21:11:09 ID:LoRTBTRt
携帯くらい持ってるんじゃね?
ゲームではルート次第でゆたかからメール来るし
…まぁあくまでゲームの話だけど
570名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 21:17:57 ID:2zGNAo9M
ゆたか両親なりそうじろうが安全の為に持たせる筈、に一票
571名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 22:02:41 ID:wLdQ/rqx
>>567
「携帯はあるけど、みなみと話すときに携帯だと、ついつい長電話になってしまうから
電話代がとんでもないことに…」というのを想像した。
572名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 22:05:01 ID:GW6t+qkv
みなみから電話かけることは滅多になさそうだから
ゆーちゃんが受けの場合はあんまないだろうしね
573565:2008/03/15(土) 22:43:47 ID:yQLosJPp
>>566
いや、俺文才無いですから(苦笑)

思ったんだけど、みなみがヤンデレでゆたかにベタぼれなSSとかって今まであったっけ?
574567:2008/03/15(土) 23:09:18 ID:G/wFC2jJ
みんな、ありがとうww
参考になったwww

575名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 23:16:19 ID:FS4+F9cO
>>525
両作品とも可愛らしくて萌えたw
かがみはその指輪を結局どうしたんだろう?

>>559
すまん・・・こういうの苦手なんで途中から読めなくなった orz
こなた辺りかがみを助けてあげて・・・
576名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 23:24:45 ID:FmjU1uY8
>>573
結構多いと思うよ
俺が強烈に覚えてるのは鈍色プライオリティーとかかな
577まだry:2008/03/16(日) 00:59:50 ID:j3IlqdaT
短いですが続き投下します。
えーと…
かなたxそうじろうxこなたになるのかな?
非エロです。
578続 ここにある彼方:2008/03/16(日) 01:00:29 ID:j3IlqdaT
(いや〜〜〜しかし、身動き取りづらい空気ですなこれは。恋人モードに突入ですか。空間が隔離されてますよ〜
まぁ見てても悪くはないんだけど、この後が困ったな。ここから動けないじゃん…どうしたものかねぇ〜)
片付けもほぼ終わったこなたが、さて、どう声を掛けたものかと思案しだす。
(しょうがない、邪魔するのもなんだし、そろ〜〜と二人の後ろを抜き足差し足忍び足って感じで…)
持ち前の運動神経の高さを発揮して、そろりと二人の後ろを抜けて、開けっ放しのドアからそのまま逃げ去りが成功した、
と思った時に、かなたに見つかってしまった。
「あ、あら、こなた…ご、ごめんね…その…ついね、えへへ…」
少しバツが悪そうに、でも幸せそうな笑顔でこなたを呼び止める。
「あちゃっ、見つかっちゃったか。とりあえず、お邪魔虫は退散するよ。先にお風呂でも入ってるからさ」
「あ、ちょっと待って。お風呂ならわたしも一緒に入るわ」
かなたが、あわてて立ち上がろうとする。
そんなかなたを制するようにこなたが
「いや〜わたしは昨日一緒に入ったしさ、今日はお父さんと一緒に入ってあげてよ」
「へ?そ、そう君と?……」
虚をつかれたようにキョトンとしたあと、言葉の意味を理解して一気に赤くなる。
「ちょっちょっと…べ、べつにそんなに気を使ってくれなくても…ねぇ…」
あたふたとしつつ、後ろのそうじろうの顔を覗き込む。
「あははは………お、おれは……」
覗き込むかなたに対して、ちょっと目線を外しながら
「……かなたと、入りたいかな……」
恥ずかしげにほほの辺りをぽりぽりとひっかく。
会話が続かず二人とも黙ってしまう。
「「………………」」
沈黙が恥ずかしさを加速させたのか、頭から湯気でも出てきそうな勢いで二人とも赤くなって固まってしまう。
(あらら〜〜ま、放っときゃ治るかな?)
「んじゃ、先にお風呂入ってるね」
逃げるようにこなたが出て行く。
残された二人。
しばらく、無言で固まっていたが
「…はははは…一緒に入りたいだなんて、ちょっと調子に乗り過ぎちゃったかな?」
そうじろうが話し出す。
「…ううん…そんなことは…………」
下を向いたままのかなた。
再び、長い沈黙が空間を支配する。
かなたを引き寄せるように抱きかかえている腕に力を込める。
「………かなた…」
「そう君……」
頬寄せるそうじろうにそのまま背中をあずけされるがままになる。
そこへ、風呂上がりでほくほくなこなたがひょいっと顔をだす。
二人をにまーとなめるように見た後に
「お風呂空いたからどぞー」
とだけ言って立ち去ろうとする。
「…おいおい、随分と早いな」
そうじろうが、なんとか返事をする。
「んあ〜シャワーしか浴びてないしね、二人の時間を無駄に使う訳にもいかないしね。わたしはしばらく部屋で
ゲームでもしてるからさ、わたしのことなんて気にしないで二人で入ってきなよ。そいじゃ〜ね〜」
それ以上の会話を受け付けないように、素早く立ち去っていくこなた。
しばらくして
「そ、そいじゃ、お言葉に甘えて、ふ、ふろに、いこうか?」
ロボットのようにカクカクとしながら言い終えて、かなたを膝上から降ろし立ち上がる。
「さ、先に入ってて、そう君。わたしは後から行くから」
「あ、あぁ〜〜うん…じゃ、先に入ってるよ」
そうじろうがぎくしゃくとしながら、一人風呂へと向かっていく。

579続 ここにある彼方:2008/03/16(日) 01:01:00 ID:j3IlqdaT
さっさと身体と頭を洗い、湯船につかり、ふぅ〜と一息いれる。
「うーんなかなかこないな…まさか、水着に着替えてるとか?……いや〜さすがにそれはないか……」
ぼーーーと特になにを考え込む訳でもなく、入り口付近を見ていた。
と、そこへ人影が写りこむ。
「そ、そう君?…いい?」
ためらいがちに、少し小さな声が掛かってきた。
「!!!!」
瞬間、ドキッと心臓が止まり、鼓動が一気に激しくなる。
「あ あ あ あ ど、 ど、 ど う ぞ」
ぎこちなく返事をする。
スッと風呂のドアが開きかなたがお風呂へと入ってくる。
胸元から太もものあたりまである長めのタオルで前側を隠してはいるが、一糸まとわぬその姿。
はずかしそうに、そうじろうの方をちらっと見るも直視できず下の方に顔を向けてしまう。
「………………!!」
その姿に心を奪われてしまい見とれる。
(………う、お、あ、や、やばい、か、かわいい!!かわいすぎるぞ、かなた!!とっとと声を掛けるべきなんだろうが、
し、しばらくこの姿を見ていても、いいよな?な?な?…そんなのいいに決まってるじゃないか!!そうだよな、俺!!)
自分に許可を求め、自分でOKを出す。
(………ってあ、あれ?なんだこの既視感は……初めてじゃ……ないな……前にもこんな感じの記憶が…
あ!あああ〜そうだ、初めて一緒に入った時もこんな感じだったな…ん〜〜〜これは、ものすんごく……)
「懐かしいな……」
思わず言葉が漏れる。
「え?」
ちょっと想像していなかった言葉にそうじろうを見つめる。が、すぐに気恥ずかしくなり、またうつむいてしまう。
「ん?いや、なに、昔かなたと一緒に初めて風呂に入った時もこんな感じで、今のかなたの仕草とダブって見えてさ
おもわず、懐かしいなって口から漏れちまったよ、ははは」
「そ、そう?」
「そうそう、その恥ずかしげな仕草とか…もう、そのまんまじゃないかな?ん〜〜なんにせよ、かわいい!!
かわいいよ!!かなた!!そして、きれいで美しい。もう一度拝むことができるなんて!!あぁ〜生きててよかった…」
はらはらと涙を流す。
「もう…大袈裟ね」
だいぶ緊張もほぐれ堅さがなくなってきたかなたが、椅子に腰掛けシャワーを浴び始める。
そんなかなたを、ついつい食い入るように見てしまう。
(こうして、一連の動作を見ているとほんとに昔に戻ったみたいだよなぁ〜)
髪の毛を洗う仕草、身体を洗う仕草、当たり前なのだがその全てが当時のままであり不思議な感覚がする。
(まるでタイムスリップしちまったみたいだな。ここまで来たらもはや夢オチでも構わんな。良い夢見れたぜ。てな。
ま、夢じゃないけどな……いや〜〜でも夢みたい。そういや、髪を伸ばし始めたこなたに髪の毛の手入れ方法というか
洗い方として教えたやり方は、かなたがこうしてたなぁと思い出しながらだったんだよなぁ〜〜意外と覚えてた自分に
驚いたもんだったな)
かなたが髪をクルクルっと頭の上にまとめ始める。
(おっ!?そろそろ、終わりが近いか…)
タオルを手に立ち上がり、前側を隠すようにして浴槽の方へと近づいていく。
「そんなに見つめられると……なんか…やっぱり……ちょっと、恥ずかしいわね…」
浴槽を跨ぐ時に、タオルの隙間から内股やら小さく膨らんだ胸元などがちらりと見えた。
一瞬ではあったが、そうじろうにとって破壊力は抜群だった。よくある漫画なら鼻血大量出血もの。
(チラリと見えるのがこれまた、たまらんなぁ〜ああああああもう〜萌え死にそ)

580続 ここにある彼方:2008/03/16(日) 01:01:29 ID:j3IlqdaT
湯船につかりタオルを畳んで浴槽に置き、以前していたように、そうじろうに背中を預けるような格好で寄りかかる。
そうじろうも、かつてと同じように、寄りかかってきたかなたを後ろから抱きしめる。
「なんにも変わってないな…あの当時と…俺が年を取ったくらいか…」
「でも、あそこは年を取ってないみたいね……んもー、あたってるわよ?おちんちんが」
「あはは、いやーー、まぁ久しぶりだしな、コレばっかりはしょうがないさ」
「ばか…やっぱり、したかったの?」
「あった棒よ!!」
「確かに、棒ね…はぁ…したかったんなら、昨日、あんな格好つけた事言わなければ良かったのに。
今日はもう時間的にも無理でしょ?」
「いや、いいんだよ。俺の性欲なんかより、こなたの方が大事なんだから」
「ほんとに?」
「ああ。こなたにお前との想い出を持ってもらう方がよっぽど大事さ。こなたには無かった訳だからさ、今まで。
持ってて欲しかったんだ、母親の記憶を、想い出を」
「………そう君ってばやっぱり、ちゃんとお父さんできてるよね。ちょっとうらやましいかも」
「ははは、そうか?ちゃんとお父さんできてるかな?」
「ええ、ちゃんと」
「そうか…良かった、安心したよ俺」
ふぅ〜と安堵のため息をつく。
「ねぇねぇ、そう君、いつぐらいまでこなたとお風呂入ってたの?」
何気にかなたが質問する。
「うーん、小5辺りかなぁ〜いや、6年生の途中までか?いまいち覚えてないけど、ま、そこら辺だ」
記憶をたどりながら返答する。
「こなたからもう入りたくないって言われたの?」
「いや、俺からだ。そろそろ、こなたも子供の女の子から大人の女性になりつつあるんだ、いつまでも
一緒はまずいから、そろそろやめようか?ってな」
「へぇ〜そう君からっていうのが意外というか、なんというか」
「ん、まぁ、俺の理性というか、息子がだな、反応寸前になってきて危険だっつーのもあったんだがな」
少し申し訳無さげに語る。
「まっ!!そう君ってば。年端もいかない実の娘に欲情してどうするの!!」
きゅ―――――っとそうじろうの息子を握る。
「ちょ―――――っま―――――イテ――――――――!!だってしょうがね――――だろ―――――!!」
顔を苦痛に歪めつつ
「かなたにそっくり過ぎなんだよ、こなたは!!」
そのセリフに、はっ!となり、きゅっとにぎっていた物を離す。
「そうね…わたしも、自分でビックリしちゃうくらい似てるものね…まるで鏡でも見てるみたいだったもの…」
「だろだろ?不可抗力ってやつだよ。だから、早めにけじめをつけたんさ」
ほっと一息のそうじろう。
「………でも、やっぱりダメ!!ちょっとお仕置き」
袋の部分をきゅっとつねる。
「!!!!っぐがっつっ」
「ぷっふふふふ」
そのリアクションに、笑顔が戻るかなた。
「あたたたた…ひでーぞ、かなた〜」
「ふふふ…そう君のばーか」
そう言いつつ、目をつむりおもいっきり背中を押し付けるようにあずける。
「あぁ…ばかで結構さ…」
そうじろうも後ろからかなたを抱きしめる。
「バカだけど、オタクだけど…世界中の誰よりもかなた…お前のことを愛してる…これだけは誰にも負けない
誰にも譲れない!!」
熱く語るそうじろう。
ほぼ真横に位置しているそうじろうの顔にほほ寄せ
「…そう君…それはきっとわたしも同じ…誰よりもそう君のことを愛してる」
と、クルッと身体半分をひねり、すぐ横にあるそうじろうのほっぺに「ちゅっ」と軽くキスをする。

581まだry:2008/03/16(日) 01:02:24 ID:j3IlqdaT
短くて申し訳ないです……
さて、この後の展開でどうしたものか…非エロで通すか微エロ入れるか……
悩みます……


>>559
ワッフルワッフル!!





582名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 01:11:32 ID:KHEUmNB9
>>581
あまああああああい!
なんという新婚夫婦……
つーかかなたさんに「おちんちん」とか言われたらドキドキが止まらない俺淫語属性。

個人的には微エロどころかガチエロでもいいくらいだけど、
書き手の側としては何か神聖なものに触れるみたいで凄く書きにくいよね(´・ω・)
俺は罪悪感で挫折しちゃったクチだしな……

とりあえず次回に期待
583名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 01:19:32 ID:6yYouHYH
GJ!オヤジ格好良過ぎですw

話が面白いのであえて非エロでもいいかもと思いつつ
そうじろうにも少しは美味しい思いをさせてあげてもいいような・・・ダメかな?
584名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 01:20:16 ID:kLwr9fdn
>>581
夫婦の営みを! 甘く切ない夫婦の営みを要請します!


とりあえずぐっじょぶ。嗚呼、そうじろうさんがうらやましい。
585名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 03:12:26 ID:LuyADO/2
何でこのスレのそうじろうさんは総じて男の中の男なんだ!!!
とにかくGJ!続きに期待しまっせ!
586(=ω=.):2008/03/16(日) 03:40:27 ID:qQnhLpX8
>>581
もちろんガチエロを望みます。
だってさ、おとーさん、男手一つで
私を虐待も育児放棄もすることなく、
非行に走らせず……まあヲタだけどwwww
この歳まで育てたんだよ。
それも、30代前後のヤリタイ盛りってときにさwwwwww
だからさあ〜たまにおとーさんにも、いい思いさせてあげよーよ、ね!











いや、リアルで「ゆうべはおたのしみでしたね」と一度いってみたいんだよwwww
かなた「こ・・・こなたっ!?」
587名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 05:28:29 ID:0ztpF1kA
>>548
こんな鬱を待っていた...
描写が丁寧だし、展開に説得力があるし、徒に悲劇的にしないし、
後味もそんなに悪くない。素晴らしいっす。
588名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 08:34:26 ID:kmJQb8LC
>>581
朝から何てものを見せてくれるんだ
罰として非エロでも微エロでもいいから夫婦の営みを書いてきなさこい
589名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 09:27:09 ID:K+zut4/Y
準備されている方がいなければ投下するのですよ。
59023-251 ◆5xcwYYpqtk :2008/03/16(日) 09:37:48 ID:K+zut4/Y
「ゆーちゃん対策委員会♪」

※ ゆたか×つかさ(他、全般)

注意事項
・続き物
・微エロあり
・ゆーちゃん注意
591ゆーちゃん対策委員会♪ 第5日 1/5:2008/03/16(日) 09:39:38 ID:K+zut4/Y
 メイド服姿のみゆきが立ち上がって挨拶する。
「みなさん。おはようございます。それでは『第5回 小早川ゆたか対策委員会』
通称、『ゆーちゃん対策委員会♪ 』を開催いたします。
 前回に引き続いて、柊つかささん、お願いいたします」
「いいけど…… ゆきちゃん、その服どうしたの? 」
「気分です」
「そっか、じゃあ始めるね」


 〜報告7 始め〜

「ゆたかちゃん、駄目だよう」
 ゆたかちゃんは、私の制服のスカーフをそろりと抜き取りながら、にっこりと微笑んだの。
「つかささん。動かないでくださいね」
「で、でも…… 」
 ゆたかちゃんは私より身体が小さいのに、何故か逆らえないんだ。
「次は、両手をあげて、バンザイしてくださいね」
 反射的に両手をあげると、ゆたかちゃんによってセーラー服が脱がされてしまった。
 素肌が冷たい空気に晒されて、からだが震えちゃう。
「さ、寒いよ〜 」
「私が、暖めますから…… ね」

 ゆたかちゃんは、私をベッドに押し倒して、ぎゅっとしてくれたんだ。
 体温が私より高いみたいで、まるでゆたんぽを抱いているみたい。
 それにとても柔らかくて、気持ちいいんだ。

「つかささんも、あたたかいですよ」
 少し前に感じていた不安は遠ざかって、身体を重ねていることに安心しちゃうんだ。
「ゆたかちゃん…… くすぐったい」
 私の脇をくすぐっているゆたかちゃんが悪戯っぽい瞳を向けてくる。
 きらきら光っている瞳はとても魅力的で、こなちゃんやみなみちゃんが、
ゆたかちゃんに夢中になる理由がよく分かるよ。

 でもね。
 ゆたかちゃんにはとっても悪いんだけど、小悪魔って表現がぴったりくる。
 外見はいかにも護ってあげたいって感じだけど、本当はすごく強引なところに惹かれちゃうのかなあ?

「つかささん。何を考えていたのですか? 」
「えっ、えっとお…… あ、あはは」
 私は、笑ってごまかしたけど、ゆたかちゃんは見逃してくれない。
「えっちの最中によそみしないでください」
 風船のようにほっぺたを膨らませる、ゆたかちゃんはとっても可愛いな。
 月見だんごだと、ピンク色かなあ?
592ゆーちゃん対策委員会♪ 第5日 2/5:2008/03/16(日) 09:40:05 ID:K+zut4/Y
「つかさ先輩、ホントに、今何を想像しているんですか? 」
 ううっ、ゆたかちゃんが睨んでくるよお。かわいいけどちょっと怖いなあ。
「あのね。ゆたかちゃんが月見だんごの何色かなってこと」
「…… 何色だったんですか? 」
 ゆたかちゃんが、呆れたような顔つきになっている。
「うん。やっぱりぴんくかなあ。とっても甘くて美味しいの」
「つかさ先輩って、本当に子供っぽいんですね」

「あうっ」
 自分より、小さくて、童顔のゆたかちゃんに言われるととてもショックだよ。
 だけど、ゆたかちゃんだって、スイカの種の話はこどもっぽいと思うんだけど。
「それ…… 誰から聞いたんですか? 」
「田村さんからだよ」
 ゆたかちゃんは、恥ずかしそうにして顔を赤くした。
「でもゆたかちゃん可愛いと思う。私だって流れ星にお祈りするんだ。願い事が叶いますようにってね」
「とってもロマンチストなんですね」
「こなちゃんには夢見がちって言われたよ」
 私はちょっと微笑んだ。ゆたかちゃんとは案外似ているのかなって思ったから。

 暫く沈黙が二人を包んでから、ゆたかちゃんはポツリと呟いた。
「先輩ってとても優しいんですね」
「そんなことないよ」
 お人よしとか天然とかは言われたことはあるけれど、優しいって言われたことはなかった。

 ゆたかちゃんは首を振ってから、私の瞳を見つめながら聞いてきたんだ。
「つかさ先輩、私のしている事をよく知っているのに…… どうして天使のような態度でいられるんですか? 」
「それはね、ゆたかちゃんが本当は寂しがりやで、いい子だということを知っているの」
「でも…… 私、酷い子なんです。寂しくて、でも素直になれなくて。
 こなたお姉ちゃんや、みなみちゃんや、かがみ先輩や、田村さんや、黒井先生に酷い事をしてしまったんです。
 だから…… 絶対にいい子じゃなんかありませんから! 」
 小さな両手を握り締めて、ゆたかちゃんは自分が悪い子だって訴えかけるの。
 それはそれで凄く可愛いのだけど、反論しなくちゃいけない。
593ゆーちゃん対策委員会♪ 第5日 3/5:2008/03/16(日) 09:40:42 ID:K+zut4/Y
「ううん。みんな、怒ってなんかいないよ。だけどね。ゆたかちゃんの事、とっても心配しているんだ。
もしかして、すごく疲れているんじゃないかって」
 私の言葉に、ゆたかちゃんは反論した。
「だけど、わたし、わたしっ、今更いい子になんかなれません。もう後戻りなんかできないんです」
 華奢な身体を震わせて、あふれそうになる涙を必死に堪えている、。
「だから、つかさ先輩にも酷いことしようとして…… でも、つかさ先輩はとても優しくて」
 ゆたかちゃんは、私に顔を埋めて泣いた。
「ごめんなさい。つかさ先輩。ごめんなさい…… 」
 私は、ゆたかちゃんの震える背中をずっとさすり続けた。

「本当にごめんなさい。つかさ先輩」
 ゆたかちゃんは頭を深く下げて立ち上がった。
「ゆたかちゃん、何処に行くの? 」
「家に帰ります…… 」
 力なく微笑むとゆたかちゃんは、鞄が置かれている場所まで歩き出す。

 しかし、私は立ち去ろうとするゆたかちゃんの手を掴んだ。
「だめだよ」
 振りほどこうとするゆたかちゃんを抑えながら、言葉を続けた。
「だって、ゆたかちゃん…… 寂しそうなんだもん。一人にしないでよって心の中で言っているもん」
「放っておいてください! 」
 激しく叫んで、私の手を離そうと力を込める。でも離してなんかあげないよ。
 私は強引にゆたかちゃんを引っ張って、ベッドに押し倒したの。
 ゆたかちゃんの身体の感触が伝わり、匂いが鼻腔をくすぐった。

「どうして、私なんかに構うんです? 」
 ゆたかちゃんは、全てをあきらめたような表情を見せてから、形だけの笑みを浮かべた。
「ゆたかちゃん。我慢は身体に悪いと思うんだ」
 私は、ゆたかちゃんに近づいてゆっくりと唇を塞いだ。
594ゆーちゃん対策委員会♪ 第5日 4/5:2008/03/16(日) 09:41:23 ID:K+zut4/Y
「ちゅっ…… 」
 ゆたかちゃんの唇はとっても柔らかいの。ぷりぷりと弾力があってぞくぞくしちゃうんだ。
「んっ、んんっ」
 微かにゆたかちゃんの喘ぎ声が聞こえる。

 ゆたかちゃんの髪はとってもいい匂いがするんだよ。
 こなちゃんに言わせると私は動物なら犬だそうだから、敏感なのかなあ?
「ちゅっ、くちゅっ…… ちゅ」
 唇が触れ合う音が微かに聞こえる。ゆたかちゃんが唇をもぞもぞと動かしていて、とっても気持ちいいの。
「くちゅ、ちゅばっ、うむぅ」
 だいぶ気分が出てきて、ゆたかちゃんの制服を脱がしていく。薄いブラウスもついでに脱がしちゃえ。
膨らみかけの胸と白い飾り気の無いブラが、外気にさらけ出される。

「ゆたかちゃん。とっても綺麗だよ」
 ゆたかちゃんのお腹に手のひらをあてると、とてもすべすべして触り心地がいいの。
「ひゃん」
 くすぐったいのか、ゆたかちゃんが身を捩る。
 私は反応を確かめながら、指先を動かしてブラを絡め取る。

「い、いやです。つかさ先輩」
「駄目だよ。ゆたかちゃん。純情そうなふりをしてもね」
 私は悪戯っぽい笑みを浮かべてから、ブラのホックを外した。
 ゆたかちゃんを護る布地がシーツに堕ちて、薄い桜色の突起が小さな膨らみの上に乗っているのが見えた。
「とっても可愛い色だね」
「言わないでください! 」
 ゆたかちゃんの怒った顔もとっても可愛くて、愛しくてたまらない。
「ゆたかちゃん。もう食べちゃうからね」
 乳首に歯を当てると、凹凸が少ない身体を微かに振るわせる。
「あくぅ、せんぱい…… 」
 切なそうな悲鳴が耳に届く。
「ちゅばっ、くちゅっ、ちゅぶっ」
 私は、とってもいやらしい音をたてながら、ゆたかちゃんの乳首とそのまわりを丹念に刺激していくんだ。

「ひゃん、んんっ、くぅ…… いやあっ」
 舌の先端で乳首をつつく度に、ゆたかちゃんの嬌声が聞こえてきて、なんだかぞくぞくしちゃう。
ほんとうに変態さんになっちゃったのかなあ。
595ゆーちゃん対策委員会♪ 第5日 5/5:2008/03/16(日) 09:42:17 ID:K+zut4/Y
「んんっ、つか…… さ…… せんぱいっ、んあ」
 ゆたかちゃんの身体から汗が噴き出しはじめている。
 私は、ゆたかちゃんの乳首からゆっくりと舌を這わせて、鎖骨、首筋、そして耳を丁寧に愛撫していく。
「だ、だめ、そこ弱いんです! 」
 駄目といわれると、どうしてもやりたくなるのはどうしてなんだろう。
「ゆたかちゃん。耳たぶ、感じるんだね」
「駄目、駄目です。ひゃああ」
 ゆたかちゃんが悲鳴を浴びてしがみついてきた。

「えへへ…… 気持ちいい? 」
 舌をちょびっと出しながら、耳元で囁く。
「つかさ先輩のいじわる…… 」
 うーん。かわいいなあ。みなみちゃんが夢中になる気がよくわかるんだ。
「ホント、ゆたかちゃんは可愛いね」
「私、子供じゃありません」
 ゆたかちゃんは頬を膨らませて抗議するけど、それがまた可愛いの。
 こなちゃんが、歩く萌え要素って言っていた気持ちが凄く良く分かるよ。

「ううん。ゆたかちゃんは絶対、絶対に可愛いんだから」
 私は断言すると、ゆたかちゃんの唇を塞いだ。
 ゆたかちゃん。今日はこなちゃんの家に返さないからね。


〜報告7 終わり〜

「これは…… ハッピーエンドなのか」
 かがみは、難しい顔で考えている。
「終わりよければ全て良しって、ちょっと都合よすぎっス」
 ひよりは、納得いかねーと言い出しそうな表情をしている。
「うーん。天然ドジッ娘が攻めとは意外だねえ」
 こなたは、腕を組みながら首をかしげている。
「…… ゆたか、どうして」
 みなみは、顔を青くしながら手元にあるぷちぷちをひたすら潰している。

「ゆたかちゃんは本当はとってもいい子なんだよ」
 つかさは、いつもと同じのほほんとした笑みを浮かべて満足そうにしている。

「さて、『第5回 小早川ゆたか対策委員会』はこれにて終了させていただきます。
 申し遅れましたが、これにて最終回とさせて頂きます。
 長らくお付き合い頂きまして、誠にありがとうございます。これにて散会させていただきます」


 皆が席を立って、次々に会場を後にしている中――
「ま、待ってクダサーイ、ワタシの出番アリマセンヨ! 」
 金髪碧眼の留学生が、ひとり絶叫していた。

(おしまい)
59623-251 ◆5xcwYYpqtk :2008/03/16(日) 09:45:12 ID:K+zut4/Y
読んでくれた方ありがとです。
今回の話は、これにて終了です。
何故か、つかさ攻めの話になってしまいましたが、これはこれで。
ではでは。
597名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 10:10:33 ID:ovfVhEOY
哀れパティー!
まさかのつかゆたEND
対策らしい対策はなかったものの
手綱を握る人ができたみたいでよかったね
598名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 10:18:18 ID:3ny70m9M
>>559
ちゅ。
「かがみん……ガラムとは通だね」

というわけで、俺も救済編キボン。


>>581
ワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワ(ry
そうじろうの息子さんで遊ぶかなたさんにハァハァ

そして、そう君立派に父親だよそう君


>>596
攻めつかさGJ!
最終回なんて言わないで、ここから攻守逆転で全員ルートを!

そしてゆーちゃん覚醒へw
599名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 10:28:27 ID:kLwr9fdn
>>596
最後に天然は勝つのか。ていうかこれなんて北風と太陽?
つかゆたGJでした。
600名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 14:39:56 ID:mCyUkNRw
>>596
この展開を何て表現するか喉に引っかかってたけど、そうか、北風と太陽か。
これはこれで想像の膨らむオチでした。


これから投下します。

・6レス(全体で約250行)
・ひよりメイン
・オリキャラ(ひよりの兄・次男の方)登場。オリジナル設定満載
・非エロ
601おさんぽ日和:2008/03/16(日) 14:40:47 ID:mCyUkNRw
「ん、んー……」
 朝日を受けて目を覚ました。枕元の時計を見ると、時刻は朝の十時。
 いつもに比べるとかなり遅い時間だけど、夜中の二時まで原稿をやっていたから、そこ
から数えれば八時間睡眠をとれたことになるわけで、十分に寝たということになるのかも。
まだまだ寝たりないけど、私も女子高生の身でいつまでも寝転がるわけにはいかないよね。
 とりあえず眼鏡をかけて起き――
「兄さん! 何やってんの!?」
 不法侵入者こと兄さんの手から、昨晩仕上げた原稿を取り上げた。
「妹の部屋に同意なしに入り込んでしかも原稿を勝手に読むなんて!」
「ノックはしたんだけど起きてなかったみたいだから。心配しなくていい、寝顔を眺める
ことと原稿を読む以外には何もしてないから」
「それでも十分問題だよ!」
 まったく、自作の漫画を身内に読まれるなんてこの上なく恥ずかしいことなのに……。
え? 寝顔を見られたことのほうがよっぽど恥ずかしいって? そんなことはないっス。
兄さん曰く『妹の寝顔を見られるのは兄の特権』らしく、もう慣れたっス。
「ひより、最近百合ものが増えたよな。オレとしちゃその方が嬉しいんだけど」
「うん、まあ……」
 それはいいモデルがいるからなんだけど……言っちゃまずいよね。
 ちなみに私たち兄妹は漫画や小説の蔵書をある程度共有してて、私が百合ものを読むよう
になったのは、兄さんが百合にハマっていったからだったりする。『マリみて』のような入門
編や、『トリコロ』や『苺ましまろ』みたいな萌え漫画、『百合姫』のような専門者向けの
漫画、『バニラ』のようなややマイナーなライトノベルまで取り揃えてある。
 一部の蔵書は共有してないんだけど、それは多分……私の描くものと同類のものが。
「……ってごまかしてもダメだよ!」
「オレも今起きたところだから、朝飯食おう。パンでいい?」
 うわ。またごまかした。
「それとさ、食ったら散歩行こ。今日はいい日和だからさ」
 兄さんは中指で眼鏡の位置を直した。時々やってる癖だ。
「いいよ。疲れてるし面倒だし」
「おまえ、高校生だろ……」
「いいよね、兄さんは気楽で」
「三月の大学生ほど暇な人種はいないからね」
 朝食のパンを食べながらごねたりしたけど、結局散歩に行くはめになった。
602おさんぽ日和:2008/03/16(日) 14:42:03 ID:mCyUkNRw
「陽光を遮る雲はなく、空は爽やかな青一色だった。通りを行く人々の装いはその彩を鮮やか
にしている。それは暖かくなったそよ風や小鳥の囀りと共にもうすぐ訪れる春の息吹を感じ
させるものであり……あー鬱陶しい!」
 私たちの見ている風景を言葉にするなら、兄さんが読み上げたような感じだったと思う。
「鬱陶しいと思うんならなんでそんなことやってたの?」
「よく小説とかで長ったらしい情景描写があるじゃん。文豪気取りで無意味に表現を詳細に
する奴がよくいるんだけどさ、実際やってみたら鬱陶しいだけだなって思ったんだよ。まあ、
主人公が感じている退屈さを読者に共有させるために冗長な文章を書くってのは一つの手法
ではあるんだけど、明らかにそうする必要のない場面で話の進行を止めてまで情景描写で
引き伸ばすのは作家の怠慢だと思うんだ」
「ふーん……」
 純文学を読まない私にはよくわからない。ぶっちゃけどうでもいいと思う。
 ただ、小説で散歩のシーンを書くとしたらやっぱり情景描写は必要なんだとも思う。散歩
の目的は、その景色を体で感じることなんだから。
 私が見ているものを言葉にするとしたら……以下略。
「でも、兄さんの言ってることってお兄ちゃんの仕事を全否定してない?」
 私には二人の兄がいて、上の兄をお兄ちゃん、下の兄を兄さんって呼んでる。お兄ちゃんは
物書きとして仕事をしているはずなんだけど……。
「お兄ちゃんがやってるのはゲームのシナリオライターだよ。純文学じゃない」
 お兄ちゃんは私が小さい頃、自分をお兄ちゃんと呼ぶように躾をしていた。そのせいで、
兄さんまで自分の兄をお兄ちゃんって呼ぶようになった。お兄ちゃんは弟にはお兄ちゃんって
呼ばれたくなかったみたいだけど、『お兄ちゃん』の呼び名を奪われたことの当てつけを
含めて、昔からの呼び名で通してる。説明すると随分ややこしい話だ。
 それはともかく、今はお兄ちゃんの話だった。
「今やってる仕事でそのへんのことで揉めてるみたいで、なんか愚痴ってた」
 お兄ちゃんがそんな苦労をしているなんて初耳だった。っていうか……。
「お兄ちゃんがそんな仕事をしているなんて初耳だったよ」
「いや、それは……ひよりには教えられない仕事だったんだよ」
 ……どんな種類のゲームなのかなんとなく察しがついたけど、これ以上追及しないほうが
いいのかな。
「今回は堂々と内容を言えるゲームだったから、気合入ってるみたいだった。今日も原画家
と打ち合わせかなんかあるらしいよ」
 携帯で、お兄ちゃんとのそんなメールを見せてくれた。
 ちなみに兄さんのメアドは『メガネっ娘全力LOVE』をローマ字にしたものらしい。
最初は『メガネっ娘』、次は『メガネっ娘LOVE』、次は『メガネっ娘激LOVE』に
しようとしたけど、どれも先に使われてたとか。世の中広いなぁ。
603おさんぽ日和:2008/03/16(日) 14:42:49 ID:mCyUkNRw
「まあ今までの仕事も好きでやってたんだけどね……むしろそっちの方が好きっていうか」
 それじゃあ、私の漫画がそっちの方に行っちゃうのは……血?
「だから、ひよりがそういうの描くのを否定はしない。だけど、ひより自身の年齢を考えて
もう少し内容をなんていうか……な?」
「うっ……」
 何て言いたいのか、わかる。分かり易すぎる。
 兄さんはお兄ちゃんに比べてルールに厳しいところがある。私の持っていたBL漫画が
見つかったとき、兄さんは私に説教をして危うく家族会議になりかけた。お兄ちゃんが
『年頃の女の子はこういうのに興味を持つものだから』って説得したおかげで事なきを得た
けど……。
 ……そういえば、兄さんの本棚に百合ものが現れたのはそれ以降のような気が……。
 気にしないことにしておこう。
「イベントの主催者によってはRやXに厳しいだろうから」
 ちなみにRは15禁、Xは18禁のこと。私の年齢だとXの方に引っかかる。
 私が昨晩描いたやつは……エロっスよ。それはもう、かなり濃厚な。
「だから、描くのは構わないけど見せる相手は選べよ」
 兄さん、勝手に読んだのは兄さんっスよ。
 ルールに厳しいっていうのはちょっと違うかもしれない。兄さんのスタンスは『悪いことを
するならしてるって自覚して行動しろよ』っていう感じだ。
 兄さんの言いたいことはわかる。これを出版するのは流石にまずい。っていうかこれって
私の友達をモデルにしたものだから、万が一本人の目に触れたら……。
「うん……」
 確かに、見せる相手は選ばないといけない。勢いだけでやっちゃいけないこともある。
 例えば、男性アイドルを題材にした801同人誌は本人に見せてはいけないという掟がある。
それを守ることでギリギリ成り立っている危ういジャンルだから。誰かがそれを破ったら、
同ジャンルの人たちに迷惑がかかることになる。
「まあ、分かればそれでいいんだよ、な?」
「うん」
 BL漫画の件以来、兄さんはキツイ言い方はしてこない。遠回しな表現を使って浅い角度
で本題に切り込んで、大事なことはいつも最後に言う。私が自分で理解するのを待ってくれ
てるんだよね。
604おさんぽ日和:2008/03/16(日) 14:44:23 ID:mCyUkNRw
「回避できるトラブルは回避しないとな。いつも言ってるけど、何かあったらオレたちに言えよ」
「大丈夫だよ。今んとこは」
 同人業界はトラブルの種があちこちに転がってるらしいっていう話。
 便利な通信手段の無かった時代から、その本に作者の住所や電話番号を記載するのが今も
習慣として残ってるけど、初めて自分の本を出した時にそれをやりそうになって、お兄ちゃん
たちに慌てて止められたことがあった。それがどんなに危険なことか、今はわかってる。
 かと言って連絡手段がないと、知らぬ間に他人を騙る人が現れるらしい。誰かが私の本を
持って、『私は田村ひよりです』と名乗って悪いことをするとか。嘘みたいな話だけど、昔から
そんな事件はよくあるって聞いた。
 サイトを持っている場合、同じように騙られるケースもある。悪質な場合だと、勝手にその
人のサイト上の作品を製本して売ってしまうとか。お兄ちゃんたちは、まだ私がサイトを持つ
ことを許してくれてない。
 お兄ちゃんたちもそれを心配してるみたいで、いつも口うるさく言ってる。幸い、私はまだ
そんなことには巻き込まれてないけど。一応の妥協として、メールアドレスだけを私の本に
記載してある。
「せっかくひよりは才能を持ってるんだから、つまらないトラブルで躓いちゃいけない」
「才能なんて、そんな……」
「練習して絵が上手くなる人もいるけど、練習しても上手くならない奴だっているんだ。
努力できるってだけで、一つの才能だよ」
 そういえば、兄さんの描いた絵って見たことがない。探せば黒歴史ノートがあるかもしれ
ないけど……今度探してみようかな。
「世の中には自分に才能がないからって才能のある人の足を引っ張るような連中がいるんだ」
 そんな人たちがいろいろトラブルを起こすわけで……。
「オレにはそういう奴らの考えは理解できない。オレにはお兄ちゃんのような文才もなければ
ひよりのような画才もない。オレはただ羨ましいって思うよ」
「…………」
 兄さんは手で顔を隠しながら、指で眼鏡の位置を直した。
「だから、オレはせめてひよりの助けになれれば……ってね」
「お兄ちゃんは?」
「いいよ、あれは」
 ぶっきらぼうに言い捨てた。なんだかんだで仲いいのに。
「そういやお兄ちゃんは仕事が大詰めのときはボロボロになってたよ。ひよりはあんなんに
なっちゃダメだぞ」
「それは……」
 無いとは言い切れないのが情けないところ。それもこれも、みんな締め切りが悪い。
 ……ごめんなさい、悪いのは私っス。ギリギリにならないと出来なくてごめんなさい。
「っていうかひよりもあんなんになりかけてた。あんまり無理するなよ」
「ごめんなさい……」
 いつも反省してるけどやめられないんだよね。できるなら私もやめたいんだけど。
「まあ、その、なんだ……そういうわけだから、たまには外に出ないとなって思ったんだよ。
ずっと篭ってると心が淀んでくるから。今日は散歩にはいい日和だろ?」
 ……そうだ、兄さんはこんな風に私のことを気にかけてくれてる。自分ではいろいろ言って
ても、世間的にはいいお兄さんなのかもしれない。
「それに、ひよりと出かける口実が欲しかったし」
 兄さん、小声で言ったみたいだけど聞こえてたよ?
 訂正。あんまりいいお兄さんじゃない。
「まあ、せっかく散歩に出たんだから景色を楽しむとして――」
 兄さんが辺りを見回して、私もそれに倣った。
「ひより、ここはどこだ?」
「……知らないよ」
 いつのまにか、見覚えのない商店街に来ていた。
605おさんぽ日和:2008/03/16(日) 14:45:21 ID:mCyUkNRw
「来た道を引き返せば帰れるんだろうけど、あえて別の道を行ってみるのはどう? どうせ
目的地なんかないんだし」
「いいのかなぁ……」
 来た道を覚えてないんだから、引き返せば帰れるっていう保証もないんだけど……。
回避できるトラブルは回避しろって、兄さんが言ったんじゃなかったっけ? ま、いっか。
 今まで目的のなかった散歩に『知ってる道を見つける』っていう目的が加わっただけで、
さして切迫した状況でもないから別にいいのかもしれない。『景色を楽しむ』ことはしなく
なったけど、『景色を観察する』ことに力が入るようになった。
 知らない道といっても、商店街の店舗のバリエーションがそれほど違うわけでもなくて、
総菜屋、揚げ物屋、八百屋、本屋、床屋、眼鏡屋と大した違いはないように思う。
 漫画家として、観察することは大事なんだけど、それを楽しめるかといえばそうでも
なくて……。
「ひより、ちょっと眼鏡洗ってもいいか?」
「うん、いいよ」
 兄さんは眼鏡屋の店先にある洗浄器で超音波にかけて、慣れた手つきで水を拭き取って
クリーナーをレンズに薄く塗った。その指で鼻当てや耳に当たる部分にもそれを塗る。
「こっちの方にも塗っとくと、劣化を防ぎやすくなるらしい」
「それなら、真ん中の部分も塗らないの? よく触ってるし」
「ブリッジは……そういえば、よく触ってるか」
 そこ、ブリッジって言うんだ。
 一通り塗った後は眼鏡拭きでさっと拭いて終わり。
「ひよりのも洗うぞ」
「あっ」
 いきなり眼鏡を外されて、洗浄器に入れられた。超音波をかけるのに、一分待たされる。
 その時間が暇なのはわかるけど、なんで私をまじまじと見てるんスか?
「眼鏡っ娘は眼鏡をかけていてこそ眼鏡っ娘であって、眼鏡を外すと可愛いっていうのは
邪道だって言うんだけど」
「そうなんだ……」
 誰が言ったんだろう。
「例外もいるんだよね」
「そうなんだ……」
 もうなんと言っていいやら。時々ついていけないことを言い出すのは、同じオタクの血が
流れてるからかもしれない。
「蝶番は緩んでないしクリングスは変な曲がり方してないし、大丈夫だね」
 いつの間にか拭き終わったみたいで、その眼鏡をかけてくれた。
 なんだかちょっと照れくさい。
「店員さんに言われたことあるんだけど、眼鏡は自分の眼と同じくらい大事にしろって」
 その眼鏡を通して見ると、さっきまでとは比べ物にならないほど、視界が綺麗になった。
見上げる青空も、通りを行き交う人たちも、全てが鮮明に見えている。
 今まで、自分の眼鏡がこんなに汚れてたことにも気付かなかったんだ……。
「世界は、なるべく綺麗に見えたほうがいいよ」
「うん……そうだよね」
606おさんぽ日和:2008/03/16(日) 14:46:46 ID:mCyUkNRw
 この商店街は、確かに『特徴が無い』の一言で纏められるかもしれない。
 でも、よくよく観察してみれば、そんなことはない。
 コロッケ屋の店の奥のテレビは、競馬番組が映っている。あのおじさんは仕事の合間を
縫ってレースの結果を待ちわびているのかもしれない。
 八百屋の店主とおばさんが立ち話をしてる。単なる世間話かもしれないし、値段の交渉を
してるのかもしれない。
 そこにいる人たちは、活き活きしてる。中にはそうでない人もいる。
 それに気付くかどうか、世界がどんな風に見えているかは、私次第なんだ。
 それは、なるべく綺麗に見えていたほうがいい。
 美容院から出てきた若い女性は、恋人とのデートを待ちわびているのかもしれない。
 さっきのコロッケ屋のおじさんが嬉しそうなのは、馬券が当たったからかな。
 本屋から、高校生っぽい女の子二人が出てきた。今日は暖かいのに手を繋いで歩いてる。
……うわ、すごく嬉しそうに見詰め合ってるよ。なんか、左の女の子が右の子の耳に口を
寄せて囁いてるよ。あれは愛の囁きってヤツっスか? 『好きだよ』『何言ってんの』みたい
な感じで百合百合な睦言を交し合ってるんスか? それとも左の子が持ってる本は『カーミラ』
みたいなエッチな雑誌で、これから初体験をするためにその本を……。
 二人きりの部屋、一緒にそれを読んで、文字通り手探りで互いの体を……
 自重しろ、自重しろ私ー!!
 いかん――こんな腐った目で世界を見てしまっては……。
「ひより、前から聞こうと思ってたんだけど……」
「へ?」
 兄さんは、いつになく真剣な顔つきだった。
「問題は沢山あると思う。父さんたちも許してくれないかもしれない」
 何を言ってるんだろう?
「オレも……正直、戸惑いはある。それでいいのかって」
 いいから、本題に入って欲しい。
「だけど、ひよりがそれで幸せになれるっていうんならオレは受け入れる。何があっても
オレはひよりの味方だから」
「はあ……ありがと」
「正直に言ってくれ。ひよりは女の子が好きなのか?」
「ちょ、ちょっと! 何言ってるの!?」
「もしオレが百合ものを読ませたのが原因っていうなら、オレにも責任あるから……好きな
子はいるのか? アメリカ人の留学生か? 部活の先輩か? 真剣に愛し合っているんなら
オレは全力で応援する。どうせオレはひよりとは結ばれないんだから」
「違うって! しかもどさくさに紛れて変なこと言わないで!」
「まだ告白してないっていうんなら、経過をオレに逐一報告して……」
「兄さん、変なこと考えてない?」
「オレは別にやましいことなんか――ん?」
 また急に辺りを見回したから、私もそれに倣うと、私たちの知ってる道だった。
「もしかして、いつもと通りが一本違っただけ?」
「……そうみたいだね」
 それで迷子って……。
「……あははっ」
 なんだか可笑しかった。笑いがこみ上げてくる。
「意外と身近に知らないところがあったんだな」
「そうだね」

 ……そんなことがあるから、たまには散歩に行くのもいいかもしれない。

「だからさ、オレもひよりのこと全部知ってるわけじゃないけど、それでも受け入れるから」
「だから違うって!」
 でも兄さんと行くのはやめておこう。どうせまたどっか連れて行かれるんだろうけど。
 今日はいい日和だ、とか言って。

−おわり−
6073-283:2008/03/16(日) 14:49:31 ID:mCyUkNRw
オタクのきょうだいなら、きっと互いに影響している部分ってあると思うんですよ。

あまり語ることではないのですが、田村次男の設定として
・オタク
・百合好き
・大学生
・眼鏡をかけている
に加えてシスコンであり、それが行動や口癖に現れているということになってます。

読んでくださった皆様、ありがとうございました。
608名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 15:51:44 ID:mCyUkNRw
容量が残り少ないので次スレ立てました。

らき☆すたの女の子でエロパロ41
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1205650229/

当方、規制でもあるのかなぜかwikiの編集ができないので、
どなたかお願いします。
609名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 18:05:18 ID:t/i9czfG
>>608
アイヨー
610名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 20:29:32 ID:hqUXZuAo
鬱からほんわか甘甘まで幅広さにワロタ
611名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 20:44:31 ID:M9KW8yLq
>>596
GJだが、みなみ涙目だなww

>>607
同人活動に詳しいですね
俺は全く知らない事ばかりで驚いた
兄がシスコンすぎてワラタw
61223-251 ◆5xcwYYpqtk :2008/03/16(日) 23:34:56 ID:p2vDLdwm
埋め立て用SSを投下します。

「Inter Lude」 こなた&ゆたか

・Elopeの続き ・非エロ ・2レス使用
613Inter Lude 1/2:2008/03/16(日) 23:36:03 ID:p2vDLdwm
 3月に入り、厳しい季節はようやく終わりを告げようとしている。
『仰げば尊し、わが師の恩〜 』
 夜のローカルニュースでは、高校の卒業式を放送している。
 私の卒業証書も、今日、埼玉から送られてきた。
 三学期は、一度も登校していないのに卒業してしまったことに、とても複雑な気分になる。
 でも、私はまだいい。
 頭を痛めているのは、私の同居人のことだ。

「ゆーちゃん。バイトしたいの? 」
「こなたお姉ちゃんばかりに迷惑かけられないから」
 バイト先から家に帰って食事をしている時に、ゆーちゃんがお願いをしてきた。
「でも、ゆーちゃんは、学校に行かないと駄目だから」
 ゆーちゃんには、地元の学校に転校して欲しい。
 幸いにして学力は十分なのだから、受け入れ先に困ることはないと思うのだけど、本人の意思が問題だ。

「私、お姉ちゃんを助けたいの」
「お金には困っていないから大丈夫だよ」
 駆け落ちした恋人同士としては、ありえない事だけど、今のところ生活費には困っていなかった。
 もちろん、仕送りにはなるべく手をつけないようにしているけれど、高校生のバイト収入だけで
生活することは、売春をしない限り不可能である。
 小説家として一応の成功を収めているお父さんからは、かなりの額の仕送りが送られてくるし、
ゆい姉さんや、ゆーちゃんの両親からも、必要以上の額が口座に振り込まれてくる。
 残念ながら、通帳に刻まれる金額を見る限り、私たちは駆け落ちをしているというよりも、
下宿しているといった方が正しい。
 よって、ゆーちゃんが家計に貢献したいと思うのは自然なことだけど、今すぐ必要というものではなかった。
614Inter Lude 2/2:2008/03/16(日) 23:36:48 ID:p2vDLdwm
「うーん。でも、学業は大切だし」
 数ヶ月前の自分からみたら仰天するような、真面目な事を考えていることに気づいて苦笑する。
 見知らぬ土地であり、ゆーちゃんを護るのは自分だけだから、責任感みたいなものが強くなっているのだろう。

「私、ちゃんと高校に通うから。だからお願い」
 ゆーちゃんは、両手をあわせて懸命にお願いしてくる。
「でも、高校に行って、バイトをするのは大変だよ。ゆーちゃん身体壊しちゃうかもしれないよ」
 腕組みしながら逡巡する私に向かって、ゆーちゃんは必死に説得を続ける。
 今日のゆーちゃんはやけに粘り強い。
「大丈夫だよ。お姉ちゃん。私、最近調子良いから。それにお姉ちゃんと一緒に働きたいの」

 ゆーちゃんは、私と同じメイド喫茶で働くことを希望している。
 たぶん、いや絶対に、ゆーちゃんが面接を受ければ、即採用だろう。
 萌え要素のカタマリだし、性格も真面目で、仕事をこなすことはそれほど難しいことではない。
 健康さえ維持できれば何ら問題がない。無いはずだけど。
「お願いっ、お姉ちゃん! 私、役に立ちたいのっ」
 迷う私にむかって、必死の形相で懇願を続けて――

 結局、私は折れざるをえなかった。
 誰かの役に立ちたいと願う心と、自立したいという気持ちは、抑えてはいけないと思ったからだ。
「明日、店長に話してみるから」
「ほんと!? 」
 ゆーちゃんの瞳が煌く。
「だけど、身体の調子が悪かったら絶対に休むんだよ」
「ありがとう! こなたお姉ちゃん」
「うわっ」
 満面の笑顔を浮かべたゆーちゃんは、飛びつくように抱きついてくる。
 ゆーちゃんの心底からの笑顔は、何にも代え難い貴重なもので、仕方がないなと思いながらも、
自然と頬がゆるんでいた。

 ゆーちゃんが寝静まった後、私は、カーテンを開けて夜の空を見上げた。
 街の中であり、決して見える星の数は多くないけれど、それでもいくつか見覚えがある星達が、
静かに己の存在を誇示している。
「甘い…… のかな? 」
 春の星座を東の空に臨みながら、天空のどこかにいるお母さんに問いかけた。 
 
(終)
615名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 23:38:50 ID:ovfVhEOY
>>612
がんばっているんだなぁ・・・二人とも
ぐっじょぶです!
61635-215:2008/03/17(月) 00:03:13 ID:bXfCXB/T
いい2人ですなあ・・・
それに対してこっちのかがみなも同設定だけど、文章力がなくてうまく表現出来ないorz
「その前にさっさと完成させなさいよ!何別小説に浮気してるのよ」
「早く完成させないと・・・色々な人を敵に回す」
お二方のおっしゃるとおりですorz
617埋めネタ(みかベルパロ):2008/03/17(月) 00:42:44 ID:PwvfH0X5
「うおーっ!」
 ああーっ、なんの前置きもなくかがみんが公園の池に!
「ブクブクブク あなたの落とした柊かがみはこの完璧超人で男前な柊かがみですか?」
 ああーっ、そしてなんかお母さん? のような奇抜なファッションのが!
「それとも平々凡々なほうですか?」
「えっと。ツンデレで鹿の睾丸みたいなフェロモンだしてるほうです」
「貴方は正直者ですね……ではどちらも差し上げましょう ブクブクブク」
 お母さんは池に沈んでいきました
 そしてなんか二人ほど池から這い上がってきました
 どっちもすごく……かがみです
「うぇ〜、水飲んじゃったわ。って何か居る! 私が居る!」
「ふぅん、こいつが柊かがみ(平々凡々)ね」
「(平々凡々)とか言うな!」
 同じ顔をしたかがみが睨み合う間に挟まれましたよどーしましょ
「悪いけど今日からこのスレの主役はこの私……妃夷螺戯 華臥魅(ひいらぎ かがみ)が貰ったわ!」
 うわーっ! 字柄まで煌びやか?に!!!!
 そしてなんかドキドキ愉快のポーズとってる!? 馬鹿みたいだ!
「ふふふっ、私はあらゆる点でそこの平々凡々とは違うわ……見なさいっ!」
 そう言うと無駄に服を肌蹴させ、無駄に背景に集中線が!

妃夷螺戯 華臥魅の秘密☆
・魔族の血を引く日本人とイギリス人のハーフ(髪は天然の金髪だ!)
・普段の瞳の色は右→紫、左→青
 しかし怒ると両の眼が金色に光る!(魔族である母方の力)
・生まれ持ってのフェロモンで見たものを全て虜にしてしまう
・豊満で美しい彫刻のような体
・普段は隠しているが背に四つの翼が生えている
・魔族の力を持つゆえの辛い過去がある(でも負けないで強く生きてるんだ)
・スポーツ万能
・射撃の名手
・絶対音感の持ち主
・ソムリエ並みの舌
・ピアノもプロ級
・IQ350
618埋めネタ(みかベルパロ)
「痛ぇえええええええええええええええええええええええええ」
「過ぎたるはおよばざるがごとしいいいいいいいいいいいいいいいい」
「黒歴史ッスううううううううううううううううううう」
 ん? 何か多かった
「つ、捕まえて返品しようよ。あんなのとラブコメなんてごめんだよっ!」
「ええ、ほのぼのマターリがとんだ超設定よ!」
「ふふっ……私を止める気? そうはさせないゾ☆」
「はぅあっ!!」
 華臥魅んのウィンクで私の腰が抜けた! 恐るべき鹿の睾丸!!
「ま、まだよ! 私には効かないわ!」
「あら、まだやる気?」
 そう言ってとっくみあう二人
 おおっ、さすがかがみん(凡)「凡言うなっ!」
 自分の魅惑には負けな……ん?
「ど、どうしても通りたいなら……私ごと連れていけば、いいじゃない……!」
 変なツンデレになった!!!!!!!!!!!!
 く、くぅ……こうなったら仕方がない!
 とうっ!!
「こ、こなたっ! 何で池に……」
「ゴボゴボゴボ、貴方が落としたのはこのスーパーヒロインな泉こなたですか?」
・微乳
・小食
・非オタク
・パンチラ
「こ、こんなのこなたじゃないわ! 私のこなたは……あのこなただけだよ!」
「貴方は正直者です、どちらもさしあげ……」
「お母さん邪魔っ!」
「ンゴブゥっ……うう、とうとうこなたにまで」
 池から飛び出して、かがみんと抱き合う
 やっぱり私の嫁、信じてたよ!
「よぅし、スーパーヒロインな私! 任せたよ!!!」
 頷き、パンチラしながら華臥魅んに歩いていく私
「華臥魅……ここは私たちのいる世界じゃないよ」
「子鉈……」
 私字面酷くねっ!? つーかまだパンチラしてるし!
「こんな世界も……あったのかもしれ」
「「てめーは黙ってろ!!!!!」」
「……うぐぅ、ゴブゴブゴブ」
 諸悪の根源はやっと、池に帰っていきました
「さぁ、帰ろう……華臥魅」
「……うん、そうね」
 おお、無意味な全裸発光!!
 最終回の種っぽい!!!!!!
 そしてVFXに包まれて、二人は帰って行きました
 ……池に
 ん?
「ゴボゴボゴボ 貴方が今落としたのは
『もっと超絶すごい柊かがみ』と『もっと美し神々しい泉こなた』ですか?」
「「もういいっつうの!!!!!!!!!!」」
「……あなた達は正直者ですね、ごほうびに」
「「空気、嫁!!!!!!!!!!」」

「そうです」と言えば居なくなることに、小五時間ほど繰り返してから気がつきました

(終われ)