アニメも好評のうちに終了し原作も大好評連載中、PS2版も絶賛発売中の「らき☆すた」でエロいの行ってみよ。
☆カップリングは自由
☆基本的に百合マンセー
☆801は禁止(と言っても男キャラあんまいねぇ)
☆投下した作品の保管を希望しない場合、前もってその旨を知らせること
※マナー等※
※割込みを防止するため、書き込みや投下の前等にリロードを。
※荒らしや煽り、気に入らない人・作品等はスルーで。
※グロやSM、鬱モノなどの過激な内容は断りを入れてから投稿する
※読者=主人公の作品(いわゆる俺キャラもの)についてはNGワード指定や断り文を確実に。
※480KBまたは950レスのどちらかに近づいたら、次スレの準備を。
■みゆきさんの一言メモ
・投稿の際に、メール欄に半角英数でsageと入力すると、スレッドを上げずに書き込めます
『sage』では有効になりませんので、全角・半角を確認してください
・スレッドの閲覧・書き込みは、絶対ではありませんが専用ブラウザの使用を推奨します
これにより『人大杉』のエラーが回避できます
・SS投下は、一度メモ帳やワードパッドなどで書き上げてからまとめて投下してください
投下間隔があくと、他の方がレスできなくなってしまいます
マターリはぁはぁしましょうか。
☆まとめサイト(管理人と職人に感謝!)(避難所の行方はここ参照)
ttp://www33.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1.html ☆派生サイト:てけてけかなたさん伺か化計画
ttp://neo-experiment.hp.infoseek.co.jp/index.html ☆前スレ
らき☆すたの女の子でエロパロ37
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1202745120/l50
完走が5日 だぁぁ早いってことない ぷ。
がんばっちゃ! やっちゃっちゃ! そんとっきゃーっちあんどリリースぎょ!
>>1 乙 の新スレだーりんだーりんぷりーず!!
何か神ー何か早えー何かもうー
あれ前スレ埋まってるんるー?
次スレ立てーギリギリでー間に合ってー
いい加減に
>>1乙!
5 :
こなた:2008/02/17(日) 16:50:33 ID:zsU1syg0
なんなんだろうね、この勢い…
かがみ「蝋燭に喩えるのだけはなしな」
Σ(=ω=.)んがっ!勘するどいよかがみ・・・
「速過ぎなんだってヴぁ!!」
「みさちゃん、まずはちゃんと
>>1乙しないと。ね?」
このスレはゴッドかなたさんによって見守られています。
かなた「あの子はチョコを一杯貰えたみたいで良かった。あ、私へのチョコのお供えは向こう四ヶ月受け付けてますからね」
8 :
35-215:2008/02/17(日) 17:01:57 ID:TCZOEtWE
>>1乙!
遅筆な自分に取ってはここのスレの速さについていけないという現実
それでもマイペースに書きつつ他の職人さんにGJを
前スレ490にでっかいGJ!
柊家のエロポテンシャルは半端じゃないぜ
あれ…改行した覚えないのにorz
つかさが火照ってたのは何かあったんだろうな、とは思ってたが。
まさか書いてくれるとは。GJ
>>10 Wordとかで文章を書いてHTMLの入力フォームに貼っつけると、そんな風になった気がする。
たぶん、文字飾りとかの情報が一緒に入るんだけど無視されてる感じ。
そして
>>1乙。
前スレ490
断固として続きを要求する!!
かなた「なお、私の懐には、まだ若干の余裕がありますよ♪」
こなた「おかーさん…こん平ネタは一部の人間しか分からないって…」
かなた「それを知ってるこなたも人の事はいえないわよね♪」
こなた「むぅー(=ω=.)」
そうじろう「お父さんの英才教育の賜物だな♪」
>1
新スレ乙です。
準備されている方がいなければ、投下させていただきます。
「危険な関係」 第6話
こなた&ゆたか、かがみ、つかさ
注意事項
・非エロ
・シリアス
・続き物
6.
最初に、ジャンケンで座る位置と、トランプのカードを引く順番を決めることにする。
ゆーちゃん、つかさ、かがみ、私の順で、右回りにカードを引くことがきまる。
私が全てのカードを配り終え、全員が対になったカードを捨てていき、
つかさが7〜8枚、残りの3人が10枚前後になった。
ジャンケンの勝者である私のカードを、隣にいるゆーちゃんが引いて静かにゲームは始まり、
途中までは順調にカードが捨てられていく。
しかし、残りのカードが片手で数えられる程度になってからは、急にペースが遅くなった。
ゲームは終盤に突入しており、ジョーカーは私の手元にある。
まわりを見渡すと、かがみはしかめっ面をしてトランプとにらめっこをしており、
ゆーちゃんは真剣にカードを見つめ、つかさはのんびりとした表情で手札を眺めている。
つかさが、ゆーちゃんのカードを引いて、ハートのクイーンが場に捨てられて、残り1枚となる。
ぐるっと回って、ゆーちゃんが私のジョーカーを引いてしまい、あからさまに肩を落とす。
そして再び、ゆーちゃんのカードを引いたつかさが、笑顔をみせて最後の一組を床に置いた。
「えへへ。勝っちゃった」
向日葵のような微笑をみせながら、大きく伸びをする。
しかし、ゆーちゃんとかがみは自分のカードのことで夢中となっており、
張り詰めた雰囲気のまま、ゲームは続いていく。
更に3周程回る。一旦離れていったジョーカーは、私の手元に舞い戻っている。
私は何食わぬ顔を装い、かがみの手元にあるカードを1枚抜き取る。
私は、2枚組になったスペードの8を中央に置いた。ジョーカーを含めて残り2枚となる。
続いてかがみも、ゆーちゃんのカードを引き抜き、クローバーの3を場に置いてラスト1枚となる。
きりきりと胃のあたりが痛むような展開が続く。
そして、ゆーちゃんが、私の手元からカードを引き抜き――
「あっ、揃った」
ゆーちゃんは私にカードを見せながら微笑んで、かがみは悔しそうに顔を歪めた。
現時点で1位つかさと、2位ゆーちゃんまでが確定する。
今日のルールでは、1位と4位は同じ部屋だから、私とかがみが同じ部屋になる
可能性はこの時点でゼロになってしまう。
しかし、かがみはゲームを投げることはしなかった。
「こなた、負けないわよ」
依然、闘志を燃やしているかがみに違和感を覚えながら、1対1の闘いに移る。
そして、更に2巡後――
かがみは、ババを掴んでしまっている私の手元から、お目当てのカードを引いて
皆に見せてにっこりと微笑む。
私は最下位となり、つかさと同じ部屋で眠ることが決まった。
しかし、ゆーちゃんは明らかに不満そうな表情をみせて言った。
「かがみ先輩、どうして、こなたお姉ちゃんに勝っちゃったんですか? 」
理不尽な怒りを、2年上の先輩にぶつけてしまう。
「ゆたかちゃんだけは、こなたと同室にさせたくなかったからね」
かがみの返答もかなり挑発的だ。
「どうして…… 邪魔をするんですか? 」
ゆーちゃんは涙をためながら、かがみの瞳を見据えて精一杯の抗議を続ける。
「ゆたかちゃんにこなたを渡すことなんか、絶対に許さないから」
露骨に好戦的な答えが返され、二人の間に一触即発という空気が流れる。
「かがみ先輩のいじわるっ! 」
真っ赤になってふくれるゆーちゃんはとても可愛いけれど、美少女ゲームの
三角関係のような展開には、正直言って戸惑いを隠せない。
三角関係の結末は、当然ながら鬱やダークなものが多い。
特にバッドエンドだと、選ばなかった子からグサリとやられたり、屋上から突き落とされたりで、
二股をかけた主人公の末路は悲惨の一言だ。
「お姉ちゃん、ゆたかちゃん。けんかは良くないよ」
しかし、つかさがほんわかした口調で、ヒートアップする二人をたしなめたことによって、
この時点での破局は回避された。
お風呂に入って、部屋に荷物を運んだ後に、ベッドに腰掛けていたつかさが言った。
「こなちゃん。大変だね」
「まったくだよ」
私は大きなため息をつきながら、黄色いリボンをつけた少女の顔を見つめると、
つかさは少しだけ声を落として言った。
「でも、こなちゃんも悪いかな」
つかさの言うとおり、関係を曖昧なままにしている私が、たぶん一番いけない。
しかし、女の子同士の関係にゴールなんてあるのか、という疑問が常に思考に付き纏っていて、
自分がゆーちゃんの想いにきちんと答えられないでいる理由も、まさにそれだった。
私は、つかさに思い切って聞いてみることにする。
「つかさは、同性同士の恋愛ってどう思う? 」
暫く考えた後、私の髪を撫でながら答えた。
「うーん。よく分からないけれど。人を好きになる事って大切だと思うよ。
女の子だから、好きになっちゃダメなんてことはないと思うし」
でもね、つかさ……
「今は『好き』で済まされるかもしれないけど、ずっと先はどうなのかな? 」
「私には分からないよ、こなちゃん。でも、それは女の子同士だけの話じゃないよ」
「それはそうだけど、学生時代限定のお付き合いをするつもりはないよ」
「それなら、こなちゃんもはっきりさせないといけないよ」
間髪入れずに返された言葉は、鋭い槍となって私の肺腑を直撃した。
「痛いところを突くね」
曖昧なままにしておいて、期間限定の恋愛はダメなんて自分勝手な言い訳にすぎない。
「でもね。こなちゃん」
つかさは、私の傍によって囁く。
「自分勝手な生き方の方が、ずっと楽なのもホントだよ」
「ちょっ…… つかさ」
つかさは、私に抱きついてベッドに倒れ込んだ。
「こなちゃん、あったかいね」
つかさの二の腕や太腿がまともに触れる。
下手に触れば壊れてしまいそうな、ゆーちゃんの華奢な身体つきとは違って、
芯がしっかりしているような感じがする。
「つかさ…… 顔が近いよ」
指呼の距離まで近づいて、私の瞳を覗き込みながらつかさは囁く。
「キスしたいな」
つかさが腕を絡めると同時に、柔らかい唇が迫った。
「つかさ、どうして? 」
瞳を見据えたまま尋ねると、つかさは唇を止めて軽く舌をだした。
「私、こなちゃんの事が好きなんだ」
鈴の音色のように澄んだ声が耳朶を叩く。
ホテルの窓から淡い月光が差し込み、少女の影を薄く伸ばしている。
私はつかさの事を、地上に舞い降りた神の遣いを見るような目で
見つめながら、小さな声をだした。
「今まで気づかなくて…… ごめん」
「ううん。私ね、こなちゃんを困らせるつもりはないの」
つかさはかぶりを振った。
「どういう…… ことかな? 」
不審に思って、つかさの顔を見据えて尋ねる。
覆いかぶさるように抱きついている少女の体温がじんわりと伝わってきて、
気持ちを落ち着かせることができない。
「こなちゃんが、私の方を向いていないことは、よく知っているんだ」
独白めいた言葉が漏れて、鋭い痛みが走る。
「つかさ…… 」
ほんの少し寂しそうな表情を浮かべながら言葉を続ける。
「こなちゃんは迷っているけど、その中には私はいないんだね」
つかさの口調はあくまでも穏やかで優しい。それだけに胸が締め付けられるように苦しい。
「ごめん…… つかさ」
「ううん。いいの」
小春日和のような微笑を浮かべて、つかさは首を横に振った。
「私、こなちゃんの一番になれないことは、ずっと昔から知っていたから」
笑顔を浮かべていたはずの、つかさの瞼から一筋の雫が生まれ落ちて頬に跡をつくる。
「こなちゃんが誰と付き合っても、最後まで応援するよ。みんながこなちゃんの
敵になっても、私は味方だから…… ね」
「つかさ…… 」
つかさは小さな嗚咽を漏らしながら、私の肩口に顔をあてた。
「こなちゃん…… 本当に幸せにならないとダメだよ」
「ありがと」
私の素直な返事に、つかさはようやく微笑を取り戻した。
「こなちゃん、お願いがあるんだ」
「なあに。つかさ」
「今だけ、甘えさせて…… 」
つかさは、私の小さな胸に顔を埋めて瞼を閉じる。
私は何も言わずに、彼女が寝息を立てるまでずっと見つめ続けた。
まだ東の空が白く変わらない時間に目が覚めてしまう。
布団から身体を起こして隣を見ると、つかさが静かな寝息をたてている。
喉に渇きを覚えて、私はロビーにある自販機に向かった。
エレベーターを使って1階までおりると、ロビーの端に小柄な少女が座っていた。
「ゆーちゃん」
「あ、お姉ちゃん」
オレンジジュースを差し出すと、ゆーちゃんは小さく笑った。
「ありがとう」
寝巻きにガウンを羽織ったゆーちゃんは、ジュースを両手で持って唇をつけた。
「ゆーちゃん。眠れないの? 」
私が尋ねると、ゆーちゃんは淡く微笑んだ。
「ちょっと頭が冴えちゃって…… 」
「そっか」
ゆーちゃんの隣に座ってから缶コーヒーに口をつけると、コクと同時に苦味が口に広がり、
少しだけ眉をしかめる。
私は深く息を吸ってから、目の前にいる少女に向かって尋ねた。
「ゆーちゃん。かがみの事キライかな」
「う、ううん。そんな事ないよ…… でも」
ゆーちゃんは言葉を濁した。
私は何も言わず、ゆーちゃんの次の言葉をひたすら待つことにする。
腕時計の秒針がたっぷり3回程回った時、ようやく重い口が開かれた。
「かがみ先輩は、こなたお姉ちゃんが好きだと思う。だから…… 私、先輩とお姉ちゃんが
一緒にいると嫌って思ってしまうんだ」
言葉が痛い。ゆーちゃんを旅行に誘ったことにより、妬心を招いてしまったことに、
今更ながら気がついて、自分の愚かさに愕然となる。
「ごめんね、ゆーちゃん。私が旅行に誘ったばっかりに」
「ううん。そんなことないよっ」
しかし、ゆーちゃんは強く否定した。
「どうして? かがみと一緒は嫌じゃないのかな? 」
「私、かがみ先輩を嫌ってはいないよ」
ゆーちゃんの言葉が分からない。
「かがみ先輩はとても良い人だと思う。でも、たまたま好きな人が一緒になってしまっただけなんだ」
ゆーちゃんは凄く冷静だった。
視野が広くて思いやりのある、こんな良い子を追い詰めてしまったのは、やはり私の罪なのだろう。
ひどく疲れを感じて、私はゆーちゃんにもたれかかった。
「こなたお姉ちゃん? 」
「ゆーちゃん。わるいけど膝、貸してくれるかな? 」
「う、うん。いいよ」
ソファーに仰向けに寝転がって、ゆーちゃんの太腿を枕にする。
首筋に温かい感触が伝わってくる。
「お姉ちゃん。疲れているんだね」
「そかな」
ゆーちゃんのドアップが近くに見える。相変わらず可愛くて萌える子だ。
「お姉ちゃん。私とかがみ先輩の両方に気を遣っていると疲れちゃうよ」
ゆーちゃんは、私を覗き込みながら言葉を続ける。
「私、お姉ちゃんが言うなら、かがみ先輩と仲良くするよ。だから、そんなに哀しそうな顔しないで」
同学年の友達と集まる時は、かがみやみゆきに甘えているポジションが心地良かったけれど、
年下のゆーちゃんに気遣われると、酷く恥ずかしい。
微かに残ったプライドの欠片も粉々になってしまうよ。
ゆーちゃんのあどけない顔と、柔らかい太腿によって瞼が酷く重くなっている。
心配げに見つめるゆーちゃんの顔が、靄に包まれるように輪郭線を喪い始め、
周囲は闇に包まれていき、いつしか深い眠りの井戸に誘われていった。
読んでくれた方、感想を頂けた方、ありがとうございます。
心理描写が非常に難しかったです。
嫉妬心を上手く書ききることができるようになりたいですね。
では。
気がつけばリアルタイムでした。
すわ、つかさも一線を……と思いましたが、あえて踏み切らないのがつかさらしいと申しますか。
続きも楽しみにしております。ぐっじょぶ。
>>27 リアルタイムで遭遇しましたよ♪
相変わらずGJな話をありがとう!
『Elope』とはまた違ったゆたかがいいですね。
そして、つかさが健気でいい子だ……
つかさの為にも、是非とも幸せな結末になって欲しいものですよ。
>>27 やっぱりゆーちゃんはかわいいなぁw
GJ!!
前スレ、遂にレス500を切った状態で容量オーバーしたのね…
この勢い、恐ろしや。
あれ?もう次のスレに…
レス500行かずに要領オーバーってすげーよ
まとめてで申し訳ナス
皆様GJです
同じ板に3つもスレがあるってすげえ
皆様GJ!
相変わらずの速度だなぁ
俺も埋もれないようにしないと……
というわけで誰も予定されていないなら投下します
>27
つかさ、ええ子やなあ。ちょっと前の話の
>「もし良かったら、3つに増やしてくれないかな」
の辺りから惹かれまくりですわ。ぐじょーぶ!
36 :
26-485:2008/02/17(日) 22:48:36 ID:/JQsl9KD
投下前に一つ
前作「Sweet Devil's Temptation」を
見てくださった方、有難う御座いました
最後にあれかがみが続編を思わせるような台詞言ってるのですが
あの直後の展開は恐らく書きません
ただもしかしたらこなたのチョコは流れていってしまったので
ホワイトデーにこなたのお返しの話を書くかもしれません
誤解させてしまっていたらお詫び申し上げておきます
さて、長い前置き失礼
ゆたか→←みなみの続編、投下します
・「堕ち行く闇の中で」の続き
・みなみ視点
・7レス使用
・非エロ
・シリアスな感じ
心に突き刺さるような痛みも。
胸をきつく締め付けるような辛さも。
全てはゆたかの為だと、そう思っていた。
惑う虚空の中で
休日の朝の十時頃、自宅のリビングにて。
「お見舞い……ですか?」
初めて電話越しに聞く声に、私は同じ事を繰り返した。
会話の相手はゆたかの姉のような存在の泉先輩。高校三年生にしては身長の低い、数度話した事がある程度の上級生だ。
本来ならそんなあまり面識のない人から電話が掛かってくるはずはないのだが、ゆたかが住まわせて貰っている家の住人だから、恐らくゆたかから番号を聞き出したのだろう。
受話器を隔てると直接話す時の声とは少し違って聞こえる。深い関わりを持っているわけではないけど、それぐらいは分かった。
「そうそう、昼からでも家に来て欲しいんだよ」
僅かにくぐもった声色でお願いされる。
「ゆたかに何かあったんですか?」
「実は昨日から熱が下がらなくてね」
思っていた通りの事柄が泉先輩の口から現実として再確認される。
「元気も食欲もないみたいだから。友達に会えば少しは気が紛れるんじゃないかなと」
続いた言葉に私は考え込んでしまう。
ゆたかは私と会って本当に安らぐのだろうか。
そこまで症状が悪化したのは紛れもなく私の所為なのに。
先日の一時限目、完走後肩で息をしているゆたか。
保健室のベッドに横たわり、不規則な呼吸に苦しそうな寝顔を見せるゆたか。
いたいけな目を伏せて俯き、自己満足に留まっていた私を拒絶したゆたか。
半ば悟っているかのような、昨日の電話で聞いたゆたかの声。
そして大切な友人を少しも気遣ってやれなかった、己の姿形や態度。
どれも高性能な機会で記憶されているかのように、鮮明に私の脳に再現される。
優しく接しているつもりが、実際は自分の性格の所為で何もしてあげられていなくて。
決めた事を貫き通せずに投げ出してしまって。
私なんかがお邪魔して、許されるのだろうか。
「そういうわけでどうかな」
妙に離れた感じで耳に届く機会を介した音声に、私は思考の迷宮から引きずり出された。
「良かったら他の友達も誘って是非お越し願いたいんだけど」
付け足された台詞に、私は別に一人で行かなくても良いという事に気づく。
昨晩の電話の様子からしても、私とゆたかが今二人きりになったら気まずい空気が流れるだけだ。
だが田村さんやパトリシアさんがいれば、少なくともそういう事態を免れる事は出来るだろう。
それを目的に呼ぶのは失礼かもしれないけど、二人もゆたかが熱を出したと聞けば来てくれるはずだ。我々の目的は自然とゆたかの見舞いになる。
それならいつもの四人で事は上手く進むだろう。
普通に病人を訪れて、励ましの言葉を掛け、帰宅するだけ。
それならお互いの気遣いが入り込む余裕はない。
対面しない方が良いのにゆたかの顔を見たいと望んでいる、私の心も満たされる。
「分かりました」
「本当!?」
私の承諾の返事をまるで自分の事のように喜ぶ泉先輩。ゆたかをどれだけ大事に思っているかがひしひしと伝わってくる。
こんなにも早く私よりゆたかの事を分かっていて、言いたい事もはっきりと言える人を確認して、私は喜ぶべきなのに複雑な心境だった。
泉先輩がゆたかの看病をする光景がいとも簡単に想像出来る。
「二人とも来れるかどうかは分かりませんが、誘ってみます」
微かに覚えた寂しさを無理矢理嬉しさで被覆して、私はそう告げた。
心からの感謝を受け取ってから受話器を一旦元に戻す。そしてすぐに今度は私の方から先程とは違う相手に電話を掛ける。
頭にちらつく映像は、ゆたかの笑顔ばかりだった。
「ちょっと早く来すぎたかな」
腕時計で現在の時刻を確認して呟く。針は約束より十分早い時間を指し示していた。
私は泉家の最寄りの駅で友達を待っていた。パトリシアさんはバイトがあるという事で断られたけど、田村さんは快く承知してくれた。
晴れ渡った空をふと仰ぎ見る。
限りなく広い青はとても眩しく映り、私の心情とは対照的だった。
ゆたかに会った方が良いのか会わない方が良いのかはっきりと決断せず、不安定に揺れる気持ちの狭間で彷徨っている私とは違って、雄大な自然は悠々と何事にも動じず漂っていた。
そこに答えがあるはずないのに、私は目を凝らして雲間を探るように目線を泳がす。
太陽を直視してしまい、私は反射的に目を閉じる。
自分でも何をしたいのだろうと思う。
「みなみちゃーん」
突如聞こえた私の名を呼ぶ声に、身体の向きをそちらに向ける。
田村さんが長い黒髪と檸檬色のマフラーを宙に舞わせて私の方に走っていた。
「ごめんごめん、待った?」
少し呼吸を荒げて白い吐息を吐き出しながら、田村さんが尋ねる。
「私が早く来すぎただけだから……気にしないで」
そう答えると、田村さんは安心した表情になって次第に息を整わせ始めた。
落ち着くのを待ってから、私達はゆたかが待つ泉先輩の家へと向かった。
大分通い慣れた道程は変わりない。
脇に据える商店も、所々そびえる電柱や塀も、コンクリートで固められた歩道も。
そこに微細な変化はあるのかもしれないが、大局は不変のもの。私が意識しなくても目的地まで導いてくれる。
「ゆーちゃんの事だけどさ……」
取り留めのない色々な事を喋っていると、不意に田村さんが新たな話題を切り出してきた。
今から出向く、ゆたかに関する事。
表情を窺うと、神妙な顔を真正面に向けていた。
「昨日学校で、ゆーちゃんが無理してるみたいな話、したじゃない?」
不純な感情を一切排除した真摯な眼差しを向けられて、私は静かに頷く。
「あの後ゆーちゃんと話したんだけど、やっぱり何処か変な感じだったんだよ」
その言葉に、ゆたかの荷物を届ける役目は田村さんが受け持った事を思い出す。恐らくその時に会話を交わしたのだろう。
「変な感じ、って……?」
「何か隠してるっていうか……やっぱり無理してるっていうか……」
正確には分かっていないらしく、語尾を濁してゆたかの様子を表す田村さん。
戸惑わせているのは間違えなく私の所為なのだけれど、言い出せるわけはなかった。
風が通り抜けて、髪や服がはためく。
普段は気にもならない音が、今だけは煩く聞こえた。
「本人は何もないって言ってたけど……」
本当は違うのだろうかとでも言うように眉を寄せる田村さん。
私の選択が、周囲の関係ない人間まで巻き込んで困らせている。
その事実に、私は無責任に口をつぐんだ。
暫くして泉家が見えてくると、私の中に形成された入り組んだ迷宮は更に難解な構造へと変わっていった。
今からゆたかと会うのに、そんな事を知られるわけにはいかない。
伝わる確立は殆どないと分かっていても、私は一時的に忘れようと努める。
「みなみちゃん、難しい顔してどうしたの?」
田村さんが私の顔を覗き込んで聞いてくる。
「何でもないよ」
気持ちを引き締めて、悠然と構えている家を見上げる。
素性を隠す笑壺が張りついた仮面を被り、準備は完了した。
呼び鈴を鳴らすと、すぐに返答があって屋内から足音が聞こえてきた。
「はーい……おお、みなみちゃんにひよりん、いらっしゃい」
泉先輩が扉を開けて歓迎してくれた。
「寒かったでしょ。さ、上がって上がって」
来客用と思われるスリッパを用意しながら早く入るようにと勧める泉先輩。私達は一礼して、揃えられた室内履きに足を通す。
先導する泉先輩に続いて二階へ踏み入ると、ゆたかが寝ている部屋のドアが見えてきた。泉先輩が手の甲で三度軽く叩く。
「ゆーちゃん、起きてる?」
「起きてるよ」
少々の時間差の後、聞こえてきたゆたかの声。当たり前だが今私の目の前にある部屋にゆたかがいる事を表している。
理由は分からず、心臓が高鳴る。
「みなみちゃんとひよりんがお見舞いに来てくれたよ」
その言葉を皮切りに、再び空白。
また拒絶されてしまったらどうしよう―――
浮かんでくるのは最悪と最高の紙一重の展開だけ。
「……入って良いよ」
ゆたかの下した許可に、救われたのか違うのか。
頭が混乱してきた。
先程から私に突きつけられるのは、正反対の性質を持った事物ばかり。
そのどれもが確かな答えを持たず、私を惑わせている。
全く逆の、究極の選択肢。
私が正しい方を選び取る事は可能なのだろうか。
可愛いらしいぬいぐるみや小物、暖かい色で纏められた絨毯や窓掛けは女の子らしく、ゆたからしい。
淡白な私の部屋とは大違いの部屋の壁際には、温そうな毛布と布団が重なって置かれてあるベッド。
その中に、儚い雰囲気を纏う少女はいた。
「いらっしゃい、みなみちゃん、田村さん」
ゆたかは微笑んではみせたものの、やはり泉先輩の言っていた通り元気がなかった。
それは風邪だからとかいうものではなくて、内面に秘めるその人特有の感じのようなもの。表面上のものではなく、ゆたかの本質的な部分。
いつも私を含めた周りの人を穏やかな気持ちにさせてくれる、ゆたかだけの力。
そういったものが感じられなかった。
「何か飲み物持ってくるね。ホットミルクで良いかな?」
「お願いします」
上半身を起こしたゆたかに目と心を奪われていた私の代わりに、田村さんが泉先輩の問い掛けに答えてくれていた。
泉先輩が台所へ向かってから、私達はゆたかの近くに移動して腰を下ろす。
「わざわざ来てくれてありがとうね……こほっ!」
途端に咳き込むゆたか。
やはり症状がかなり酷いようだ。今までにないくらい苦しそうに目を閉じている。
「ゆたか、大丈夫……?」
「私達の事は良いから、もう少し寝ていた方が良いよ」
田村さんの言葉に、ゆたかは火照った顔のまま半眼で見つめる。
「ごめんね、折角来て貰ったのに……」
「良いって良いって」
笑ってみせる田村さんに、ゆたかは少しだけ本来の自分自身を取り戻したようだった。
そして私はまた、自分より頼れるゆたかの友達を見つけた。
たったの一言しか掛けてやれなかった私と、気遣いの言葉を瞬時に紡ぎ出した田村さん。
どちらがゆたかの事を思い遣れているかなんて歴然だった。
保健委員の代わりなんて、幾らでも適任がいる。
寝息を立て始めたゆたかとそれを眺める田村さんを、私は少し離れて見ていた。
それは実際に距離でもあるし、心の距離でもあった。
「はーいお待たせー」
扉が開くと共に声が飛び込んできた。入り口に視線を送ると、お盆に三つのマグカップを乗せた泉先輩の姿が見えた。
泉先輩は丁寧に私達に手渡してくれた。
「頂きます」
一言断りを入れて淵に口をつける。湯気が立つほど温められた牛乳は、芯まで冷えた身体を隅々まで癒していく。
田村さんも来る中途に相当冷え込んでいたらしく、幸せそうな顔を浮かべていた。
「ありゃりゃ、ゆーちゃんは寝ちゃったか」
そう言って残った一つを机の上に置く泉先輩。
「相当酷いみたいッスね」
「昨日から結構うなされてたんだよ……今回はいつにも増してヤバそう」
泉先輩は溜め息混じりに説明してくれた。
ゆたかの様態に関する単語が出てくる度に、私は胸に棘が刺さるのを感じた。
私が原因なのに、それを言い出せない。
何をどう言うべきなのか、言った方が良いのか。
多様な感情が複雑に絡み合って、正否の判断がつけられない。
私に与えられた手段は塞ぎ込む以外になかった。
「でも、みなみちゃんもひよりんも来てくれた事だし、きっとすぐに良くなるよ」
泉先輩は打って変わって笑顔になって言った。
「ゆーちゃん、いつもみなみちゃんの事楽しそうに話すんだよ」
耳を疑った。
ゆたかが私の事を話す……?
「信頼されてるって凄い伝わってくるよ」
違う。
そう、否定したかった。
でも、心の何処かで頼られていると言われて喜んでいる、もう一人の自分がいて。
私は何も言えなかった。
「そりゃもう、『三次元の天音様』の異名持ってるぐらいッスから」
笑い合う田村さんと泉先輩。
私の事について話されているという事も、何の事か今一理解出来ない称号を授かった事も、今の私にはさして気にならなかった。
それほど私の脳内は切羽詰っていて余裕がなかった。
「何にせよ今日はわざわざありがとうね」
泉先輩はおもむろに立ち上がり、扉へと歩みを進めていった。
「私はこれからパソコンするけど、好きなだけいて良いからね」
そう言い残して部屋を後にした。
私はその後姿を眺めながら、私とゆたかが完全に別離する事は不可能なのだと悟った。
保健委員の肩書きと宿命を背負った時から、それは暗黙の了解として私に突きつけられていたのだ。
その頃はこんな事態になるとは思ってもみなかったから認識していなかっただけ。
泉先輩も、田村さんも、パトリシアさんも、成実さんも。
私をゆたかの面倒をしっかり見れている良い人だと思っているのだ。
本当は、違うのに。
私は、ゆたかを苦しめる存在なのに。
その役目は、私よりも自分達の方が適していると分かっておらずに。
「信じられるって、良いものだね」
私の胸中を知らずに、田村さんが誰にとももなく呟く。
私は相も変わらず黙秘を決め込んでいた。
否定するべきなのに、出来なかった。
信頼とか信じるとか、そういった類の言葉がとても嬉しかったから。
人と関わる事が不得手だった私には、非常に良く感激が染み渡った。
気がつけば少し前に誓った事を、なかったもののように扱おうとしている私がいた。
真実は違うのに、客観の誤解に心を躍らせて。
その真実も不確定のものだからと、別のものに置き換えようとしていて。
ゆたかから離れる事は、本当にゆたかの為になるのだろうか。
散々悩んで見出した結論を、今になって覆そうとしていて。
私はやはり、心の底からゆたかの事が好きなんだと実感する。
間違いのない、確かな道を確かめたい。
眠りの深淵に誘われている、最愛の人を見て思った。
「それにしてもこれどうしようか……っ!?」
机に目を向けた田村さんの声の最後の方は不自然に聞こえた。
「どうしたの?」
「ちょっと泉先輩のところ行ってくる!」
田村さんは勢い良く言い放って、急ぎ足で部屋を出ていった。
どうしようとは多分ゆたかの分のホットミルクの事で、このままでは誰も飲まずに無駄になってしまうという事だろう。安らかな寝顔で深い眠りについているゆたかを見ながら推測する。
しかしそれなら何故田村さんは大慌てで、泉先輩に用事があるのだろうか。
不思議に思いながら、私はマグカップがある机上に目をやった。
隣に見慣れない本が置いてある事に気づく。
もしかして田村さんはこれに何か疑問を持ったのだろうか。そうかもしれないと考えて手を伸ばす。
適当に頁を捲ると複数のコマに分割されていた。そこから私はこれは漫画だと読み取る。
しかし漫画の単行本にしては大きく、そして薄すぎやしないだろうか。雑誌と同じか一回り小さいぐらいの本は、私が見た事ないほどの薄さだった。
ふとその内容に、私は手に取るように分かるくらい思いっきり顔を真っ赤にする。
それは所謂、成人していない子供が読んではいけないものだった。しかし登場する人物は女性ばかり。
更に頭がパニックに陥る。現在の状況をどうにか理解処理しようと脳が全快になる。
どうしてゆたかの部屋にこんなものがあるのだろうか。
もしかしてゆたかが購入した……?
途中まで考えて、その可能性はありえないと首を振る。ゆたかの外見からしてまず売って貰えないはずだ。
なら一体どうして―――
「先輩ッ!何でゆーちゃんの部屋に私の作品『揺れる気持ち 〜特別な貴方に捧ぐ私の初恋〜』があるんですかっ」
別の場所、恐らく泉先輩の部屋から田村さんの叫ぶ声がここまで届いて私の思考を中断させる。
「ああ、それ?ゆーちゃんが読みたいって言うから私が貸したんだよ」
「マジで読みたいって言ったんスか!?」
「そうだよ、しかも中々返してくれないしね。気に入ってるんじゃない?」
扉を開け放つと泉先輩の声も十分聞き取れた。どうやらあちらもドアを閉めずに口論しているらしい。
ゆたかが、読みたい?これを?
急いで密室を作り、今一度漫画を手に取る。
信じられない。真っ先に浮かんだ感想。
本当に二人に言っている通りなのだろうか。
しかしその事実をどこか肯定したい気も少なからずあった。
盗み聞いてしまった事が本当なら、ゆたかはこのようになりたいと思っているのだろう。
信じ難い仮定だが、私の心臓は着実に刻むテンポの速さを激増させていた。
一旦冷静になろうと自分に言い聞かす。
しかし私の心は沈静の動向を見せる事はなく、架空の空間に生み出された己の妄想の産物に依然程度を増すばかりだった。
さっきの田村さんと泉先輩の会話が何度も私の中でエコーする。
欲望に近い想定をそう簡単に信じるわけにはいかない。
だが本音はそうであって欲しいと切実に叫んでいる。
傍で寝ているゆたかに目をやる。
いつもは結っているけど、今は解放してある桃色の髪。
開かれた時は大きく、鮮やかな碧色の瞑った瞳。
薄らと汗ばみ上気した頬。整った形の鼻。
一定の循環を保ち上下する胸。僅かに聞こえる呼吸の音。
度々開閉する、口。
柔らかそうで瑞々しい、唇。
―――私は何をしようとしているのだろうか。自我を取り戻し慌てて激しく首を左右に振るう。
しかし私の脈動は収まり方を忘れてしまったかのように、必要以上に血を運搬させているように思えた。
全体的に静寂に包まれているからであろう、自分の鼓動が気になってしょうがない。
耳に届くのは中枢器官の動静と、ゆたかの立てる寝息だけ。
閉ざされた私達だけの空間。
理性と本能が私の中で具現化して壮絶な決闘を繰り広げている。
何かの手違いという可能性もある。
ゆたかが望んでいたとしても相手は私ではないかもしれない。
思う度に前者の勢力が強大なものになっていき。
願わなければこんな本は借りない。
ゆたかも私と同じ気持ちなのかもしれない。
思う度に後者が巻き返しを図る。
「ん……」
長い死闘の末。
「みなみちゃん……」
突然耳に舞い込んできたゆたかの寝言に、本能は強靭な刃を身につけ―――
理性という対抗者を、斬り捨てた。
横たわるゆたかに顔を寄せる。やはり私の名前を呼んだのは無意識の内の行為だったらしく、ゆたかはまだ夢の世界にいるみたいだった。
鼻に掛かりそうな吐息に、私は抑えを完全に失った。
弾力のある部分に、自分の同じ形状のものを重ねる。
初めて触れる他人の唇の柔らかさ。
それがゆたかのものだからという事もあるだろうけど、私はただただ驚きと喜びが込みあがってくるのを感じた。
触れ合わせた箇所から何かが私の中に流れ込んできて、増幅していく。
正体は不明だけど、それはとても居心地が良いもので。
本質を確かめる間もなく、私はすっかり虜になってしまっていた。
ふと、風邪が窓を叩く音で私は逃避していた心の知覚を再び有する。
そっと唇を離すと、唾液で生成された細い糸が目に止まった。
私の心残りを表しているかのように張り広がり、柔らかに差し込む太陽の光を反射してほのかに煌いている。
少し淫らなその様子に、私は自分がしでかした事の重大さを初めて理解した。
たちまち身体中の熱が顔面に集結するような感覚に襲われる。
私は何という事をしてしまったのだろうか。一時的になくしていた大事な歯止めを再び手にすると同時に、欲望に身を任せた己の行為を恥じる。
激しい動悸はどうにもならないと既に諦めているので、状態をそのままにゆたかに目線の照準を合わせる。
目は閉じているが、もしかしたら起きているのかもしれない。
心の中でどうしてそんな事するのって、泣いているのかもしれない。
そんな考えが頭を過ぎった。
根拠なき身勝手な想像に淡い夢物語を描き、ゆたかの気持ちも考えずに行動してしまった事に、際限なく自責の念が溢れてくる。
今まで必死に隠し通してきて、最終的に決別を決断したのに。
たった一つの感情に掻き乱されて、全てを無駄にしてしまった。
最悪だ、私。
横溢する負の情動に紛れた今の私を表すのに最適な二文字は、決して意味を成さない謝罪の言葉と共に何度も何度も内心の迷路を漂っていた。
私だけの世界の情景を、まるで他人事のように眺めていたのは勿論私だった。
私なんだけど、私じゃない。人に伝えたら確実に首を傾げられそうな事を思う。
私だって良く分からない、感覚的な問題。
ゆたかの唇を奪ったのも私なんだけど、それを何処か別の隔絶した場所から嘲っているのも私。
二人の自分が存在しているような気分になって、違和感を覚える。
ついにとんでもない事をしてしまったと現状を嘆く声も。
念願のものを手に入れたと余韻を喜ぶ声も。
両方とも、私のもので。
本気でもう一人別の自分がいるような印象を持ってしまう。
バランスは均衡してはおらず、生得的な様式に従った方が優勢。
ゆたかは私が離れていって悲しくないのだろうか。
それは本当にゆたかの為になる最善の手段なのだろうか。
この期に及んで真理を自分に都合の良いように思い込む。
それが確かだという証拠は何処にもないけど。
それが不確かだという証拠も何処にもありはしない。
そう思えてしまい、後者の信念は無駄に膨れ上がるばかりだった。
「みなみちゃーん」
いきなりドアノブに誰かが手を掛ける音が響いて、私は跳ね上がる。
その間抜けな様子は見られなかったようで、田村さんは何も言う事はなく入室してきた。
気づかれないように、胸を撫で下ろす。
「あんまり長居したら悪いから、そろそろ帰ろうかと思うんだけど……」
畳んであった上着を羽織ながらそう言う田村さんは、もう既に帰る気満々だった。
何かあったわけじゃないだろうけど、いや、あったのかもしれないけど。
「うん……そうしようか」
聞き出しはせず、私も答えて立ち上がる。
「ん?もう帰る?」
様子を見に来たのだろうか、部屋の外に出ようとした時にこちらへ向かってきていた泉先輩に尋ねられた。
「はい……お邪魔しました」
「わざわざ遠くから来て貰ったのにごめんね。もうちょっとゆーちゃんが良くなってからの方が良かったかもね」
「早く元気になると良いッスね」
泉先輩が頷いて会話が途切れる。それを合図のように私達は頭を下げて、階段へと足を運んだ。
一段高度の低い場所に下りようとしたその時。
「……みなみちゃん」
まだ閉ざされていなかったゆたかの部屋から主の声が飛んでくる。
いつもより覇気もなく弱々しかったけど、何故か届くゆたかの声。
私は振り返れなかった。
ベッドから身を起こして私の方を見ているゆたかがいるであろう部屋を、見る事が出来なかった。
喋っているという事は、起きているという事だから。
許しも得ずに口づけを交わしてしまったシーンが、走馬灯のように蘇る。
あの時からずっと、目を覚ましていたのだろうか。
「田村さん……」
次に呼ばれた友達の名前に、私は全く関心を示さなかった。いや、正確には示せなかった。
そんなゆとりがあるわけなかった。
張り裂けそうな鼓動、水分を失い渇く喉、小刻みに震える全身。
私の勘違いかもしれない。
三人の足音で喪失していた意識を戻したのかもしれない。
けど、静かに沈んだ声には並々ならぬ志が込められているようだった。
「折角来てくれたのにごめんね……」
か細い絞り出したような小声が私を貫く。
本当に謝らなければいけないのは私の方なのに。
涙腺が崩壊するのを防ぐのに全神経を注いでいた私は、それすらも言い出せなかった。
頭が酷く痛む。総身の熱が一挙に結集するようだ。
「また月曜日、学校で会おうね」
精一杯の笑顔で答えているのであろうゆたかを、私はやはり見れなかった。
「みなみちゃん、田村さん、またね」
「またね、ゆーちゃん」
―――またね。
「じゃあね……ゆたか」
その別れの言葉に、私は背を向けたまま違う挨拶を選んだ。
それが本心から出た言葉かどうか今は考える気にはなれなかったし、結論は出ないと思った。
44 :
26-485:2008/02/17(日) 22:55:25 ID:/JQsl9KD
終了です、お粗末でした
しかしこれどういった結末にしようか未だ考えてn(ry
時間が許せば分岐させたいのですが……
俺の文章力が許してくれないかもしれないorz
ゆたか視点に続きます
読んでくださった方、有難う御座いました
あいかわらずあなたはなんというもどかしいものをかきやがりますかぐっじょぶ
先生、HAPPYが読みたいです
この2人は幸せにしてやりたい
>44
ぐっじょぶ。
透明感のある文章を、存分に堪能させて頂きました。
ゆたかのことを、誰よりも強く想っているのに、言葉に乗せることのできない、
態度で示すことができない、もどかしさ、辛さがひしひしと伝わってきました。
しかも、せっかくお見舞いに行ったのにも関わらず、ゆたかから見ると、みなみが辛く当たっていると
勘違いしてしまいそうです。
続きをとても楽しみにしております。
自分、いまゆたか×男のss書いてるけど、やっぱり、ゆたか×みなみが王道なんだと実感した。
とにかくGJ!!!
48 :
双子の兄:2008/02/17(日) 23:36:36 ID:FiczcdWz
うあ、ぎりぎりだと言う事に気付いてなかったorz
次からは気を付けます。
あんなぎりぎりの状態でスレを立ててくれた
>>1に大きい感謝を込めて乙!
49 :
14-319:2008/02/18(月) 00:42:14 ID:UltuTmwX
>>1 乙です。
そして、もうすでにこんなSSが……GJです。
大変恐縮ですが、自分も投下してみようと思います。
以下注意〜
かがみ&つかさ
7レス使用
エロなし
前回、「優しさ」の続きです。
50 :
嘘:2008/02/18(月) 00:44:10 ID:UltuTmwX
あれから一週間。時が経つのは早いね。
この前から何も変わっては居なかった。
つかさは変だし、かがみも変。
そして今、私はいつもどおりベッドの中で目を覚ましていた。
昨日は何にも手がつかないまま寝たんだよね……それより今何時だろう。
…まだ6時前じゃん。早すぎた。
電気に照らされていない部屋でそんなことを考える私。なにやってんだろ。
なぜこんなに早く起きてるかと聞かれたら、答えてあげるのが世の情け。
私はこの頃、何も手がつかなくなっていたからなんだよね。
夜遅くまで起きてることなんてあまりしなくなったし……。
とにかく、こんな早く起きてすることと言えば―――
考えるより先に体が動いていた。どこに向かってるんだと思ったら、もう目的の場所に着いていた。
そこは、ゆーちゃんの可愛い寝顔が目の前にある場所だった。
なるほど、ゆーちゃんを起こせ。と、言いたいわけですネ。
よしよし。やってやろうじゃないか。
「ゆ〜ちゃ〜ん」
「う…うぅ……ん」
小さい体をゆすって起こさせる。
「朝だよ〜」
「あ……お姉ちゃん?」
「うん、そだよ〜」
起きた後はやっぱり時計確認。それが基本だよね。基本なんだろうね。
「えっと、まだ6時だけど早くない?」
「ほら、早起きは三文の徳とかよく言うじゃん」
と、私に全く似合わない言葉を繰り出す。
この役目は本来みゆきさんの役なんだけどね。
「そうだね…。あ、忘れてたけどおはよう、お姉ちゃん」
「うん、おはよ。ゆーちゃん」
挨拶を返して二人で朝、人が集まる場所へ行く。
そこには、やっぱりお父さんが居た。
いつも何時頃に起きてるんだろう……。
そんな素朴な疑問なんていざ知らず、お父さんは私たちに気付いた。
「おじさん、おはようございます」
「おう、ゆたかちゃんおはよう。それにしても二人とも、今日は早いな」
「お父さんに変なことされないうちにね」
「いくら俺でも変なことはしないぞ〜」
「いや、お父さんだから怪しいもんだけどね」
「それより、もうそろそろパンが焼きあがるが、食べるか?」
華麗にスルーですか。そうですか。
「でもそれっておじさんの分じゃないんですか?」
「いいよいいよ。また後で作ればいいだけだからな」
「ゆーちゃん先に食べてていいよ」
「あ、うん、それじゃあ…。ありがとうございます」
お父さん、ゆーちゃんフラグでも立ててるのかな?
んなことないとは思うけど。
51 :
嘘:2008/02/18(月) 00:45:24 ID:UltuTmwX
その後、しばらくは朝の団欒を過ごす。
朝食を簡単にとり、テレビを見て……そんな感じ。普通過ぎる朝だった。
そして今日のお弁当作成タイム。現場のゆーちゃん、どんな物を作っているのか非常に気になりますねぇ。
私がお弁当の出来上がりを見るのは昼の時間。作ってる時は私は何も見ない。一人でやりたいらしいから。
けど、私が作っている時だとゆーちゃんは見たいと言ってとまらないのだ。
でもま、料理が上手くなってくれるのは喜ばしい事だけどね。
この調子でつかさ並に上手くなってくれたら毎日その、つかさの料理を楽しむ事が出来そうだし。
でも、お菓子作りは無理そうだけどね……。
「お姉ちゃん、出来たよー」
「んじゃ、お昼まで楽しみにしてるね」
「うん!あと、それとさ……お姉ちゃん、元気出してね」
「大丈夫。ゆーちゃんよりは元気だよ」
「えっと…それ、どういう意味?」
「そのまんまの意味」
私がそう言った瞬間、見る見るうちにゆーちゃんの顔が泣きそうになる。
「うぅ……酷い…」
「いやぁ、ごめんごめん。ゆーちゃん可愛いからついついいじめたくなっちゃうんだ」
「うぅ……」
どうやらご機嫌斜めになってしまった。原因はもちろん私のせい。どうしたものか……。
………どうしたもこうしたもない!
「ゆーちゃん、それより早く学校の支度しようよ」
「あっ……そうだね」
可愛らしく包まれた弁当箱を受け取り、自室に戻る。
しかし、学校に行く準備をしたって時間にとても余裕がある。
ゆっくり、亀みたいに歩いてもまだ間に合いそうな時間がある。
早く行って学校前で寝てもだいじょぶそうな時間だった。
それだったらさっさと教室に入り寝てた方がいいと、一人で脳内突っ込みをする。
そのまま何もしない時間が過ぎてしまう。その間、印象的だったものは朝の日差しがやけに眩しいことぐらいだった。
でもなぜだかただの太陽の光なのに、優しくも感じた。
52 :
嘘:2008/02/18(月) 00:46:14 ID:UltuTmwX
そしてやってきたちょうどいい登校の時。
ゆーちゃんが私の部屋の入り口から顔を出し、お姉ちゃん、先に行くね。とだけ残す。
「ゆーちゃん」
けど、私はゆーちゃんを呼び止めた。
「え?なに?」
「一緒に行こ」
「うん!」
元気よすぎるぐらいに答えてくれた。
登校中、ゆーちゃんは私を本気で心配してくれてるみたいで、学校で何があったのかを聞いてきた。
正直ほんとのことを言おうかと迷っていた。
でも、口を閉ざしていても尚もゆーちゃんは食い下がってくる。
この性格、誰に似たんだろうか。
頑固なゆーちゃんに私はKOされ、これまでのことを全て隠さずに話した。
つかさとかがみの間に絶対何かがあったこと、つかさの様子、かがみの様子、
そして、そのことについて私がとても気になっていること………。
それを言い終えたとき、ゆーちゃんの口がすぐに動いた。
「お姉ちゃん、優しいね」
「別に……」
「ううん。お友達のことをそんなに心配できるんだもん。とても優しいよ」
「ただ単に私の突っ走りだから……」
「いや、それでも……。
それと、えっとさ、力になれるかわかんないけど、私たちにもちゃんと相談してね。
みなみちゃんも田村さんもパトリシアさんも頼もしい人たちだから」
「うん、ゆーちゃんも優しいね」
「お姉ちゃん程じゃないよ」
やっぱりゆーちゃんは頑固だ。頑固すぎる。
とにかく、ゆーちゃんたちを巻き込むわけには行かないよね。
それにひよりんやパティにこのことが伝わったら、
『くぅぅ……これは萌えるシチュの予感……!』
とか
『コレはユリフラグ!もっとkwskオシエテくだサーイ!』
とか言われるオチなんだろうね。
空気を軽くするんだったらもってこいの人たちなんだけど……。
53 :
嘘:2008/02/18(月) 00:47:13 ID:UltuTmwX
一応、忠告だけはしておこう。
「ゆーちゃん、とりあえずさ、このことは他の人に言わないでね。
みなみちゃんや、ひよりんにも、パティにも」
「えっ?どうして?」
「ほんとに困ったときに相談するからね」
「うん……分かった」
でも、どこか納得が行かない表情で了承をした。
これで大丈夫かな…。
もうすぐ目的の場所に着くというとき、ゆーちゃんがみなみちゃんを見つけたようだ。
「あっ!みなみちゃん!」
と、呼んで走ろうとしたところで一旦立ち止まってこっちを向く。
「えっと、お姉ちゃん、これで。また後でね」
それだけを言い残しまた走り出す。
ゆーちゃんがみなみちゃんに追いついて、しばらく話をしていたと思ったら、みなみちゃんがこちらを見て、律儀にお辞儀をしてくれた。
なんだか、照れるけど、私は手を振ってそれに答えるように返した。
その後、私は一人で校舎に、そして教室に入る。
その中にはまだ人が少なかった。
みゆきさんはいなかたが、つかさがもうすでにいた。
つかさが早く来ていたことに疑問のぎの字も感じなかった。
その時、つかさが私に気付いたようで、いつもの笑顔で迎えてくれる。
この笑顔はどんなことを想ってしてるのかなぁ。と、知る術もないことを考える。
どうしたんだろ?問題解決?
それならもう何も考える必要はなくなるけど……。
かがみが来てくれるようになったのかな?
だけど、教室中を見渡してもつかさと同じ髪色をした人はいない。まだ隣のクラスなのかな。
「こなちゃん、どしたの?」
「ううん、なんでもない」
「そっか」
それから私とつかさは二人で取り留めのない会話を繰り返し、さらにみゆきさんまで加わってもっとカオスな会話になる。
しかし、その間に来ると思っていたかがみは来なかった。
また私は聞いてみた。
「ね、つかさ。かがみは?」
「…ごめんね、明日には来れるかもしれないって言ってたよ」
「うん、分かった」
明日にはこの終わらない会話に終止符が打たれるのか。
よかったよかった。それなら笑顔で迎えて来た理由も納得がいく。
54 :
嘘:2008/02/18(月) 00:48:03 ID:UltuTmwX
時は流れて昼休み。
いつものメンバーでランチタイム。一人欠けてるけど。
「あっ、そうだ。みんなには内緒にしてたんだけど……」
ここで突然前触れもなくやってきたつかさの告白タイム。
内緒話か。なんだろ?
「つかささん、なんですか?」
「えっとね……」
一息吐いて、口を動かし始める。
「実は今日、デートするんだ」
…え、今なんて言うたんですか?
「ごめん、もう一回」
「泉さん、つかささんはデートと言ったんですよ」
……考えてもいなかった。まさかつかさの口からそんな言葉が出るなんてね……。
「いつ、フラグ立ったの?」
「え?ふらぐ?」
「あぁ、いつ出会ったの?ってこと」
「うん、先週ぐらいにね、急いで帰っていたとき突然誰かとぶつかっちゃったの。
それでその人がやさしい人で、かっこいい人だったんだ。
そしてその次の日も偶然出会って携帯のアドレスを交換して……」
「いわゆる一目惚れという物ですね」
「うん、そうなるのかな……」
つかさの表情は照れている状態に近かったが、顔は赤くなっていなかった。
つかさならなってもおかしくないはずなんだけど……。
ま、でもそんな細かい事気にしてたらキリないよね。負けかと思っちゃうよね。
「つかさに先越されちゃったか。抜け駆けはずるいぞー」
「あ…ごめんね。こなちゃんには私よりいい人が見つかるよ」
「きっと私のお父さん見たいな人だろうけどね」
「でもさ、こなちゃんのお父さんとてもいい人じゃん」
…つかさの言葉ってあまりあてにならないよね。心底、そう思う。
「それで、待ち合わせとかはしているんでしょうか?」
「うん、みんなと遊ぶときにいつも待ち合わせしてる場所かな」
「無難な場所だねぇ」
けど、そこならつかさも道に迷う心配もないだろうけど。
「そうですか。がんばってくださいね」
「うん、ゆきちゃんありがと」
しかし、そんなぶつかっただけでフラグがほんとに立つとはね。
それなんてエロゲ?状態だよ。
55 :
嘘:2008/02/18(月) 00:49:01 ID:UltuTmwX
「あれ?家族の人たちには言った?」
私の問いにつかさは笑顔で頷く。
こんな元気な返事ならだいじょぶなんだろうね。
だけど、どんな人なのか気になるなぁ……。つかさが好きになるんだからきっとかがみみたいな人なんだろう。
つかさはかがみのことをよく優しくてかっこいいお姉ちゃんって言ってるし。
それにしても、みゆきさんでもなく先につかさに彼氏が出来るなんてね。
世の中わからないもんだねぇ……。きっとその場にかがみがいたら過剰なガードが起こっていただろう。
話に夢中で、今更気付いたけど今日のお弁当、私が好きな物ばっかじゃん。
ゆーちゃん、この頃私が元気なかったから心配してかこうくるとはね…。
弁当箱を渡してくれる時に言ってくれた、
『元気出してね』
ってそういう意味だったんだね。
そんなことしなくても元気なんかすぐ出せるのに。
会話が何もない状態で三人の昼食が終了。
私はトイレに行くと二人に言って教室を出る。
しかしそんなことは真っ赤な嘘で、お隣さんのクラスに向かう。
教室の前で立っている私の姿にかがみは気付いたみたいで、その姿は徐々に大きくなる。
「何か用?」
その一言が冷たく感じた。
「んとね、つかさが男の人と付き合うのにかがみんはどう思ってるのかなぁって聞いてみたかっただけ」
「別にどうも思ってないわよ」
「じゃあ、心配ではないと?」
「つかさはつかさ、私は私。分かる?」
「うん」
「分かったんなら戻って。これ以上は何も話さないわ」
それだけで私たちの会話は終了。かがみは最初に教室で見かけた場所へと戻ってしまった。
暖かい室内とは反対に、かがみの冷たい言葉だけが頭に残ってた。
56 :
嘘:2008/02/18(月) 00:50:16 ID:UltuTmwX
教室に戻った後、つかさとみゆきさんが笑顔を見せておかえりと言ってくれた。
その二人の笑顔を見ながら、これにゆーちゃんを加えれば向かうとこ敵無しの癒しトリオの完成だなぁと、どうでもいいことを考える。
この時、つかさにあの事を聞いてみようかと思った。
けど、今はタイミングが悪いかなぁ……。それに、なぜだか聞くのが怖い。
チャイムが鳴った後の授業中は何も頭に入ってこない。
先生の話を聞き流しているわけでもないのに入らない。脳が拒否をしている。
授業中、つかさの様子を伺ってみるが特に何も変わった事はない。いつものつかさだ。
しかし、その裏にどんなことを思っているのかは知る由もない。
そんな時間が今日の授業が全て終わるまでずっと続いた。
HRが終了したらつかさは真っ先に教室を飛び出して行った。
約束……か。
やっぱりしてるんだね。
そうと分かったら私も落ち着いてなんかいられない。
急いで家に帰って外出用の服に着替える。
遅くもなりそうだからお父さんに帰りが遅くなるとも伝える。
用意したものは適当な交通費と携帯電話ぐらい。それだけで私は出かける。
ついでに、私とは気付かれないように帽子を被っておく。
ストーカーまがいのことだろうけど、それでも行くことにした。
私はみんなと遊ぶ時に待ち合わせしている、いつもの場所に着いた。
やっぱり来るのが早かったのか、まだつかさっぽい影は見当たらない。
男の人がどんな格好をしているのかも全然聞いていない。
待ち合わせの場所から遠く離れたところ、そこで待つ。
しばらく待っていたらつかさの姿が見えた。
以上でした。ありがとうございます
まだまだ続きます
リアルタイムGJ!
乙です
これはまた気になるところで…続きが待ち遠しいです
>>27 GJですぜ。
うぅ・・・つかさいい子や・・・ほんまいい子やで・・・
結末の見えない話っていうのはいいものです。続き、楽しみにしてますよー
>>57 GJ!
うーん…つかさとかがみの間に何があったやら…
いつもの4人に戻れるのかが不安です。
続き待ってますー
最近、またしてもみなみちゃんの様子が変なんです。
うわごとのように「みんないじめる…いじめる…」って繰り返して…。
保健室は、私が連れて行く事が多くなってて…。
何かあったのかなあ…
みなさん、何か知りませんか?
62 :
ぶーわ:2008/02/18(月) 03:35:48 ID:n31SrmI0
ども、新スレで
>>1乙ぶーわです
「0から始めよう!」の続き投下させてもらいますね
*パラレル注意 オリキャラ注意 死人注意
*10レス使用
「ではかがみ、『もう一度』尋ねましょう」
天使の声が耳に届く。
その言葉は、全ての始まりだった。
『私』という始まり。
この朧な世界の、始まり。
その言葉と一緒に……開いた。
0の世界の、扉が。
「あっ」
聞き覚えのある可愛らしい声が、耳に届いた。
それに反応して、部屋に居た別の女性が顔をあげる。
「……どうか、した?」
「あっ、えと。そのっ」
その女性に聞かれ、目の前に居た少女が慌てる。
「いいわよ、ゆたかちゃん。どうせ見えないんだから」
その言葉に応じて、ゆたかちゃんが首を縦に振る。
そしてもう一人の女性に、慌てて言い訳しだす。
「な、何でもないよっ。みなみちゃん」
「……そう」
ゆたかちゃんの言葉に、視線を戻す。
ここはみなみちゃんの家。
だけど彼女に、私が見えることはない。
今はそんな存在なんだから、仕方がない。
「……あいつは?」
「?」
と、一度疑問符を顔に浮かべるゆたかちゃん。
でもすぐに該当する人物を思い出す。
まぁ、他に居ないしね。
「上?」
声を出せばまたややこしい事になると思ったのか、笑顔で天井を指差す。
上……ああ、屋根の上か。
そういや一緒にそこで一晩過ごした覚えもあったっけ。
今では良い? 思い出ね。
「ありがと、また顔出すから」
その言葉に笑顔で返礼するゆたかちゃん。
その彼女を背に、天井を抜けて上に向かう。
そして空が見えたのと同時だった。
透き通るような……『彼女』の声が耳に届いたのは。
「待っていましたよ、かがみ」
「……」
彼女の笑顔が輝く。
小鳥と戯れているその姿は、天使と言っても相違ない。
「もう一度会えた事を……嬉しく思います」
「……うん、ありがと」
私も、と付け加えようとして口を閉じる。
恥ずかしくて、言えなかっただけ。
「ゆたかちゃんは……上手くやってる?」
「……はい、昨日で3000を超えましたよ」
「そう、良かった」
少しずつでいいんだ。
焦る必要なんてない。
……だって誰も、ゆたかちゃんを殺してなかったんだから。
だから安心して、生き返ればいい。
そうすれば彼女には、平穏な日々が戻ってくる。
そう……『彼女には』。
「かがみは、大丈夫ですか?」
「……」
その言葉が優しさに溢れていて、心が温まる。
やっぱり、凄いんだな。と心で笑う。
彼女の笑顔は、全てを包む笑顔。
その前では、天使なんて言葉も失礼なのかもしれない。
「ここに居るという事は……会ったんですね、『彼女』に」
「……ええ、今さっきね」
天使の言う『彼女』。
それが誰かなんて……決まってる。
だってこいつは、全部を知ってるんだから。
「『みゆき』は今は、こなたと一緒……全部警察に伝えるって」
その全部を警察が信じるとは限らない。
残るのは、みゆきが現場に居たという事実だけかもしれない。
それでもみゆきも決めたんだ。
いつか、こなたが決めたように……前に進むことを。
あの二人なら大丈夫よ。
きっと……仲良くやっていける。
確かに対照的だけど……親友なんて、そんなものよ。
「みゆきから聞いたわ、全部……何が起きたのか」
「……そうですか」
少し、天使の表情が憂う。
彼女は頑なに、私から真実を遠ざけてきた。
でも、その理由は……私のためだった。
真実は私には、残酷すぎたから。
その重さに、命を投げようとしてしまうから。
それでももう……全てを知ってしまった。
だから、立ち向かうしかない。
「私はみゆきの事は信じてる……だから、全部本当だと思ってる」
「……」
ゆたかちゃんは誰にも殺されなかった。
ただの事故。
偶然の産んだ……悲劇。
「でも、『ありえない』」
この単語を、私が使う日が来るなんて思いもしなかった。
つかさの言葉。
みゆきの言葉。
それを、繰り返す。
「私が自分から死を選んだなんて、ありえない……あんた、言ったわよね?」
いつかの言葉を繰り返す。
つかさの、最後の瞬間。
天使が繰り返した言葉を。
「自ら死を選ぶ事は、罪……だからつかさには、生き返るチャンスは与えられなかった」
ゆたかちゃんとつかさ。
その二人の存在が……一つの矛盾を生み出す。
……私、だ。
みゆきは見た。
私が自ら、身を投げる瞬間を。
それはつまり……つかさと、同じだ。
「そうです、それは大罪……生命の輪廻を崩す、愚行」
ようやく天使が、口を開いた。
悲しそうな……辛い表情だった。
「生命には、無限の樹形図がある……幾億の可能性がある。それを彼女は自らの傲慢で、引き裂いた」
それが、自ら死を選ぶという事。
自分にある可能性の全てを、無に還す愚行。
だから、おかしい。
それが……全てを狂わせる。
「じゃあ私は、どうなるの?」
「……」
みゆきは確かに見たと言った。
私の体が、勝手に横断歩道に身を投げたのを。
目の前で……一番、近くで。
でもそれが、自殺であるはずがない。
それを『私の存在が証明している』。
みゆきは言った。
私はみゆきより先に横断歩道についた、と。
その止まってる状態から、どうやれば横断歩道に身を投げると思う?
簡単だ……誰かが、突き飛ばせばいい。
見えない、誰か。
……そんな存在が居る?
居るはずがないと、思う?
いいや、『居る』。
それは……一番身近に、居るんだ。
「そういう事なんでしょ? だから、『私がここに居る』」
それが、真実。
私の……最後の答え。
「……かがみ」
そこでようやく天使が口を開いた。
交じり合う視線に、鼓動が揺れる。
「貴方はやはり凄い……何度絶望の淵に落ちても、誰かを信じて……その頭を上げる」
その表情の奥の悲しみが、私には見えた気がした。
「……いいでしょう、かがみ。これから私は真実だけを語る事を誓います」
「教えて、くれるの?」
「ええ、ですが……どうか最後まで、心折れぬように」
心臓が暴れだす。
天使の一言一言がゆっくりと、私に溶けていく。
ううん、でも逃げちゃ駄目。
私は知るんだ……本当の事を。
「そうですね……少しずつ、振り返りましょう。まずは、ゆたかの事件から」
「ゆたかちゃんは、本当に事故……よね?」
少し緊張したのは確かだ。
もしそれが嘘なら……私はまた、誰かを疑わなければいけない。
「ええ、『小早川ゆたかの事故に彼女の意思は関係なかった』」
少し胸の奥の靄が晴れた。
彼女の言葉が、ゆっくりと私の中の氷を溶かしていく。
「悲しい偶然……その一つが、全てを狂わせた」
その一つがなければ、全ては上手く行ったのかもしれない。
突き飛ばされたのが見間違いだったのが分かれば、そのまま事故となったはずだ。
だってゆたかちゃんは信じた。
私が自ら、身を投げたという事実を。
それが……真実になるはずだった。
「それは本当は、『ありえない事』でした……本来なら起こり得るはずのない事」
「……詳しく、聞かせて」
ありえない……か。
でもそれがありえてる矛盾。
それはどこか、私の事件にも通じる所がある。
「稀に……極めて稀に『それ』は起こります」
「稀に?」
「消えるはずのない命、零れるはずのない生命……それを掬い上げるのが、私の仕事です」
ゆたかちゃんのそれは、私のそれにも該当するはずだ。
私だって、掬い上げられた。
彼女が……掬い上げてくれた。
「その意味が、分かりますか?」
「……ええ、少しね」
用は、こういう事でしょ?
あの日あの場所にゆたかちゃんが『居るはずがなかった』。
つまり……そういう事。
「ゆたかちゃんが事故にあったのは、私の所為……そう言いたいんでしょ?」
「……そうです」
本当は自分の家で、もう寝ている頃合だ。
それなのにそんな公園に深夜に居たのはどうして?
それは……私の所為だ。
「貴方の事件があったから、ゆたかはあそこに居た……だから本来はありえないはずだった」
「じゃあつまり」
バラバラだったピースがはまっていく。
完成したはずのパズル。
でもそこには、全てのピースは存在しなかった。
だから、完成するはずがない。
「私の事件も……ありえなかった」
「……」
返答がない。
これが、答えだったんだ。
みゆきの見たもの。
つかさの見たもの。
ゆたかちゃんの見たもの。
もう、ここまでくればそれしかない。
天使の言葉も、それを否定しない。
「そういう事なんでしょ? 私を殺そうとしたのは……」
みゆきは見た。
私が横断歩道に飛び込むのを。
それはまるで、見えない何かに突き飛ばされたかのようだったって。
全ての犯人。
私を殺そうとした誰か。
それはつまり……。
「私と同じ、『ありえない』存在」
あの時現場には、私が居た。
つかさが居た、みゆきが居た。
だけどきっと居たんだ……『もう一人』。
それは、誰にも見えない。
誰も存在に気がつかない。
だから、『ありえない』。
「教えて……そいつは、誰なの?」
天使を見る。
睨むような目つきで。
とうとうここまで来たんだ。
全ての答えが、今ここに……ある。
「かがみ」
天使の言葉に、心臓が暴れだす。
「言いましたね? 私は真実しか言わないと」
「ええ、聞いたわ」
「そして言いましたね? ……心、折れぬようにと」
「……覚悟、してるわ」
大丈夫。
受け入れて見せる。
その答えの全てを……絶対。
「もう一度聞くわ」
口調をきつくし、自分を奮い立たせる。
これが、答え。
私の……真実。
「私を殺したのは、誰?」
天使の唇の動きが、嫌にゆっくりだった。
スローモーションのその世界の中で。
ゆっくりと天使の言葉が……耳に届いた。
「『そんな人は、存在しません』」
その言葉はまるで、閃光だった。
雷のように私の体を駆け回っては、私の鼓動を暴れさせる。
「『柊かがみは自らの意思で死を選んだ』、これが……全ての真実です」
「なっ……」
脳が揺れる。
言葉が口から外に出て行かない。
そんな馬鹿な、と心が笑う。
でも天使の表情は……その全てを打ち砕く。
「そ、そんなはずない!」
ようやく口から出た声が、辺りに響く。
それじゃあ、だって……見たまま。
みゆきの言葉が、そのまま。
「だって、あんた言ったじゃない……自ら死を選んだ人間に、生き返るチャンスは与えられないって!」
「……」
そうだ。
私は今ここで存在してる。
それこそが、天使の言葉と矛盾してる。
そう、『私はここに居る』!
だから、『私が自殺のはずがない』!!!
「かがみ……一つ、質問をしましょう」
「なっ……」
はぐらかさないで、と怒鳴ろうとした声が止まる。
天使の視線が私を貫き……制止したから。
「私は言いましたね? 人は、生を定義出来る存在だと」
「……え、ええ」
病院で天使が教えてくれた。
生きる事の……意味。
不意にその言葉が蘇る。
「そしてこうも言いました……人は、死を定義出来る存在だと」
他の動物は、そんな面倒なことはしない。
人だけが生きることに意味を求め……死ぬことすらも、意味を持たせる。
「ですがもう一つ……人が定義するものがあります」
「な、何……なの?」
声が震えて、裏返った。
何だろう……肌がピリピリと痛む。
胃液が逆流して、心臓が暴れだす。
「かがみ、貴方は……」
世界が、反転した。
その天使の『質問』の意味が、分からなかったからじゃない。
理解出来なかったからでもない。
その答えの意味が……私を打ち砕いたから。
「えっ……あっ」
「誰かが言いましたか?」
天使が言葉を続ける。
何……言ってるの?
そんなはず、ないよ。
だって、私は……。
「貴方を『見て』、誰かが貴方を『そうだ』と言いましたか?」
そんな事、無理に決まってる。
不可能に決まってる。
そう、それこそ……『ありえない』。
「貴方は言いましたね? 事故の日の記憶は、曖昧だと」
「そ、う……だけど」
自分でも理由なんか分からなかった。
だけどその日の記憶は、何時も擬音から始まる。
不協和音の羅列……その最初に、私は確かに聞いた。
私を突き飛ばす音を。
「ゆたかは、覚えていますよ」
「えっ……」
「ゆたかは覚えています。その日、何をして……どんな最後を迎えたのかも」
もう一度、心臓が跳ねた。
先程の天使の質問が、鎖となって私を縛り上げる。
「そ、それが……何だって言うのよ」
「貴方は、覚えていない……そうですね?」
「そうよ、それが何!?」
確かにその日の記憶は、ほとんどないに等しい。
それが何なの?
私がただ、忘れてるだけじゃないの!?
そんな違いに、意味なんかあるはずがない!
「では、その……『前の日』はどうですか?」
前?
その一日前?
そ、そんなの簡単よ。
朝起きて、学校に行って……それで。
……それで?
「貴方はその日が、『その日だけが曖昧だと思い込んでいる』。本当に……そうですか?」
思い込んでる?
そ、そんなはずない!
だって、確かに曖昧じゃない!
朝何をやってたのかすら、つかさたちと何を話してたのかすら覚えてない。
そう、みゆきが居た事すら覚えてなかったのに!!!
「それは思い出せないからじゃありません」
「なっ……にを」
吐気がする。
眩暈がする。
天使の一言一言が、私の心に釘を刺していく。
呪いの五寸釘は少しずつ少しずつ……私の心を蝕む。
「そんなもの……存在しないからです」
「嘘っ!!」
思わず叫んだ。
何よ、それ。
何よソレ。
何なのよ……それ!
そんなはずない、そんなはずない、そんなはずない、そんなはずない!
「人は生を定義します、死を定義します。そしてもう一つ……」
天使の言葉の全てが、一つの事実を指す。
その事実。
「『自分』を、定義する」
それを、信じろって?
そんな妄言……信じろって?
「ではかがみ、『もう一度』尋ねましょう」
天使の声が耳に届く。
その言葉は、全ての始まりだった。
『私』という始まり。
この朧な世界の、始まり。
その言葉と一緒に……開いた。
0の世界の、扉が。
「貴方は、自分の名前が言えますか?」
ヒイラギカガミハミズカラノイシデシヲエランダ
ミズカラシヲエランダモノニ、チャンスハアタエラレナイ
ジャア、
ジャアワタシハ……
「誰かが貴方を見て、言いましたか? 貴方が、『柊かがみ』だと」
天使が言葉を繰り返していく。
そんなの……無理。
無理に、決まってる。
だって私は、朧。
誰の眼にも見えない……哀れな存在。
私を唯一知覚するのは二人。
でもこなたも、ゆたかちゃんも……そのどちらも、本当の私を知らない。
「そ、んなわけ……ない。私は……」
言葉が続かない。
真実という言葉が私の首を締めていく。
「貴方はあの日、自分を『柊かがみ』だと定義した……だから貴方は自分を『柊かがみ』だと思い込んでいた」「嘘……そんなの嘘!」
私が私じゃない?
そんなの、認めない……ううん、認められない!
「わ、私は覚えてるわ! 皆のこと……つかさやみゆきの事だって覚えてる!」
お母さんにお父さん。
まつり姉さんにいのり姉さん。
日下部に峰岸に、他のクラスの皆だって!
それが……それが全部、嘘なはずがない!!
「それは、貴方の記憶ではない……それもまた、貴方が『自分のものだと思い込んでいる』だけ」
「なっ……」
天使の言葉が、私の淡い願いを砕いていく。
「それは本当の『柊かがみ』……彼女のもの」
「だから、そんなの……っ」
「仮初の記憶は、曖昧でしかありません……だから貴方には思い出せない」
「そ……んな……っ」
体が崩れる。
私が覚えているもの。
それは、事故の日の……数分だけ。
それ以外は?
その前は、何をしていたの?
朝は、何を食べたの?
何の授業を受けたの?
それは……その、一日だけだと『思い込んでいた』。
だけど違う。
……思い出せない。
当たり前だと享受していた、日常さえも。
普通に暮らしていた、毎日さえも。
どうして気がつかなかったんだろう。
私にはそのどれもが……なかったんだ。
「もう一度言います」
天使の言葉にもう、反論は出来なかった。
体が……記憶が、心が。
その全てがそれを……受け入れる。
「貴方は……『柊かがみ』では、ありません」
いつから、涙が零れたのかも分からない。
無意識に零れたそれを拭うことも出来なくて……私は立ち尽くす。
そして言葉が……自然と口から漏れた。
「じゃあ」
天使の辛そうな表情を覚えてる。
私の顔は、どんなだったんだろう。
そんなのを気にする事すら……忘れてた。
「じゃあ私は……誰なの?」
「……」
天使の両腕が、私に伸びた。
包んでくれた両腕は、つかさの最後を思い出させた。
つかさの……私の、妹の。
でもそれは、違ってた。
私のじゃ……なかった。
私は、誰なんだろう。
何のために今まで、生きてきたんだろう。
生きて? ううん、何がしたかったんだろう。
こんな体になってまで。
柊かがみのフリをしてまで。
……ねぇ、教えてよ。
「『かがみ』」
天使の声が、頭に響く。
重なる体から響く声がゆっくりと、私に溶けていく。
でもそれは、私に向けての言葉じゃなかったんだ。
私がただ自分を、『柊かがみ』だと呼んだ。
それにただ……習っただけ。
天使の両腕は、暖かくて好きだった。
お母さんを……思い出したから。
でもそのお母さんですら、偶像。
私の中にある……『柊かがみ』の、もの。
私はただそれを、真似ただけ。
「貴方の中には、『柊かがみ』のものしかない。それは事実」
じゃあ、私は?
私は……何なの?
私のものは……何処にあるの?
そんなの、ない。
そう……何も、ない。
それは本当に『0』。
私は『0』。
ただの、空虚な存在でしか……なかったんだ。
「ですが一つだけ……あるはずです」
「……っ」
天使の言葉が、私を貫く。
その暖かさに……また涙が零れた。
「……な、に?」
「分かりませんか? それは貴方は『柊かがみ』である事とは、関係ありません」
柊かがみとは、関係ない?
そんなものが……私の中にあるの?
それがもしあるなら……それは、他の誰でもない。
……私のものだ。
「お願い……教えて」
「……」
涙で歪んだ視界が、天使の笑顔で満たされた。
彼女は私の涙を指で拭いてから、言った。
「かがみ、これが私に出来る……最後の手助けです」
そしてもう一度強く、抱きしめてくれた。
「これが、『最後』の質問です」
重なり合った体。
その耳元で、天使が囁く。
私の……『私だけ』の言葉を。
「『泉こなた』のことが……好きですか?」
「……っ」
暖かさが、胸の奥に溢れる。
彼女の顔が、私の中に溢れたから。
それは、暖かくて……愛しくて。
……そうだ。
この気持ちは、関係ない。
いくら私が『柊かがみ』を名乗っても、関係ない。
彼女に……こなたに接してきたのはいつも、『私』だった。
だから、だから……。
この、溢れる気持ちは……私の、『私だけのもの』なんだ。
「うん……『好き』」
涙で上手く、笑えなかった。
一つ、あったんだ。
0の私にも、唯一つ。
こなたが……居た。
『私も』
「えっ……」
声が、聞こえた気がした。
ううん、それは声だけど……声じゃない。
だけど確かに、聞こえた。
……伝わった。
私の胸の奥から……こなたを、通して。
『私も……好きだよ』
そっか。
共有……してるんだっけ。
「……かがみ」
その時だ。
天使の声が、遠くなった気がした。
ううん、気の所為じゃない。
本当に……遠く。
抱きしめてくれた暖かさが、冷たくなっていく。
不安にかられ、眼を開けた。
「……お疲れ様でした」
その声と一緒に……天使の笑顔が。
その全てが……消えた。
ううん、天使だけじゃない。
私の目の前にあったものは、全て……。
そしてまるで違う風景の中には、『居た』。
何処か見覚えのある……『女性』が。
(続)
73 :
ぶーわ:2008/02/18(月) 03:52:24 ID:n31SrmI0
続きます。
次回……最終回です
伏線を上手く回収できてるでしょうか? 自分でも不安で一杯です!
ED間に合わなかった……えへへ☆
>>73 リアルタイムでぐっじょ!!
ひねるなぁw
>>73 うーん、超展開すぎる…
まさかそんな展開に持って行くとは!
いや、面白いです。
良い意味で裏切られたけど、この時点だけだと…
もはやらき☆すたの二次創作を超えすぎている気がs(検閲
それでも最後にうまくまとめるのが氏ですしね。
次回、楽しみにしております。
>>73 同じくリアルタイムでGJ!
まさか「柊かがみ」ではないと来るとはね。
まぁ…「かがみ」であることは間違いない…んじゃないかな。
確かに事故以前のことが何もなくても、
今の状態になってからのことは全てこのかがみのモノなわけだ。
何もなかったかがみが得た一つだけのこと。それがどうなるか。いやぁ、楽しみだー!
>>73 ……お疲れ様でした。
これはとんだ大どんでん返しですか…っ…GJと言わせていただこう!
まさかオリキャラ注意ってそこのことだったのか!
ゴッドかなたさんとみさお兄はミスリードか、長い伏線だなぁww
パラレルにした理由もこなゆたと面識をなくすためとか、作りこみすぎてもうGJとしか言いようがないんだぜ!
そして最終回ですか・・・もうまったく想像がつきません!
……かがみですら、なかったとは……!
うううーむ、予想が外れてばっかりです。ばっかりですがさすがに魅せる。
名無しの『かがみ』の終着点、見届けていこうと思います。GJ。
ぐぅぅぅ……あいかわらず着想がすげぇ……
SSとかラノベとかじゃなくて、まさに一編の小説。
キャラをオリジナルにすれば、店頭に並んでてもおかしくない。
「ラノベもどき」しか書けない身として、もはや嫉妬すらできず羨望するのみ。
筆を折って首吊りたくなりますなorz
(大罪だけど)
そういや、0かがみは自殺という罪を持たないかがみなわけで……
これは、復活を期待してもいいのかな?
> ぐぅぅぅ……あいかわらず着想がすげぇ……
> SSとかラノベとかじゃなくて、まさに一編の小説。
> キャラをオリジナルにすれば、店頭に並んでてもおかしくない。
いや、褒めすぎだろう
少なくとも俺は、かがみが事故にあったってところからここまで話広げられないぜ?
何より主観を移動させずにスケールをこれだけ広げられるのはやっぱり凄いと思う
83 :
かなたさま:2008/02/18(月) 10:33:53 ID:TlN6JQfx
というわけでみなさーん
自身の才能に自信がなくても
吊ったりなんかしたらメッですよー
大罪なんですからねー
そんな大罪犯す暇があったら
少しでも書くことをおすすめしますよー^^
>>83 吊らしちくり
地獄の門番でもなんでもするから
>>85 小野塚こなちってことか
確かに居眠りしてそうだなww
>>73 GJ!
大逆転につぐ大逆転
さらには大どんでん返しで
もうぐぅの音も出ないんだぜ
そして最後にまたそんな引きを……ゴッドさん? はさすがに違う? あぁもう誰なんですか!
>>81 感想ってのは人それぞれなんだから自分の思うことと違うってだけで否定するのはどうかと思うよ
88 :
LD:2008/02/18(月) 13:43:27 ID:5JNkpIz1
バレンタインも過ぎ、一段落しましたね。
他に投下予定の方がいないなら「ひよ×こな」で1本投下しようと思います。
エロ初挑戦でちゃんと書けてるかわかりませんが……
・ひより×こなた
・5レス&後書き1レスを予定してます
・エロ有り。ふたなり注意です。苦手な方はスルーでお願いします
「なんでこんな事になっちゃったんスかねぇ……?」
この時のひよりにはそう呟くしか出来なかった。
放課後の保健室のベッドで、隣では先輩であるこなたが満ち足りた表情ですやすやと眠っている。
そしてこなたは下半身だけ裸で、ひよりはセーラー服は着ているが下着は……というなんとも18歳未満お断りな姿。
「誰かに見られたら終わりッスね、こりゃ……」
こなたの安らかな寝顔に思わずニヘラと笑みを浮かべながら、今日の事を思い出す。
こんな状況になったのは1通のメールが始まりだった。
ひよりはいつも通りに登校して、ゆたかとみなみのやり取りに妄想を膨らませ、パティに突っ込まれ。
そんな日常を楽しみながら一日が終わり、いつもの4人で帰ろうかという時に、携帯がメールの着信を知らせてきた。
「あれ?誰からだろ……って、泉先輩ッスね。なんだろ。今はコミケの時期じゃないし。」
「お姉ちゃんから?」
「うん、そうみたい。けどこれって?」
メールを開くとただ一行、
『助けて 保健室にいるから』
という極めて簡潔な内容だった。
「コナタはどうしたのデスか?」
「う〜〜〜〜ん……なんか呼び出しなんだけど。まぁちょっと行ってくるッスよ。みんなは先に帰ってていいよ。」
「あれぇ?天原先生はいないんスか。」
皆と別れて保健室に行くとドアには教諭不在の札が掛かっていて、だけど鍵は掛かってなかったので、
「失礼しまーす。泉先輩いますか〜〜?」
扉を開けて、小声で中に呼びかける。
「待ってたよ〜、ひよりん。こっちこっち〜〜。」
と奥のベッドの方からこなたの声が聞こえた。心なしか声に覇気がないと言うか、こなたにしてはいやに弱々しい声なのが気になるところだったが。
そちらに向かうと、こなたは毛布を被っていて、顔色は悪いと言うか、赤く上気していて……
「どうしたんスか、泉先輩?あんなメール送ってきて。」
「こんな事ひよりんくらいしか相談できなくてさ。」
「はぁ……私でどうにかなるなんて大してないっすよ?」
「まぁ百聞は一見に如かず、ってね。ちょっとカムカム。」
手招きされてベッドに近づくと手を掴まれて。そのまま毛布の中に引き入れられると、何か硬くて熱っぽい感触がひよりの手に触れる。
「何スか、これ?」
手に触れた『モノ』を軽く撫でたりしてると、大きさを増していき、ひよりにある想像が思いつく。
(もしや、これって……いやまさか。先輩は女の子だし……)
「んっ……ちょ、ひよりん、まって……」
そんな彼女の思いを余所に、こなたが切なげな、艶っぽい妙に声を漏らす。
「えっ?大丈夫ッスか、先輩?」
うっかり触れていたモノを強く擦ってしまうと、
「ひっ?!あ、やぁぁっ!」
こなたはビクッと背を仰け反らせ、弾みで毛布がベッドから落ちて……
「ちょっ!い、泉先輩?!そ、それ……!」
そこには下半身を曝け出したこなたがいて、それ以上にその股間には……いわゆる『男性器』がそそり立っていた。
「ひ、ひよりん……強くし過ぎだよ……」
肩で息をするこなたは涙目でひよりを睨むが、ひよりの視線はありえない『モノ』に釘付けで。
「せ、先輩?それ、どうしたんスか?」
「こっちが聞きたいよ……お昼くらいに変にだるくなって、ここで寝てたらこうなっちゃって。」
「それで、なんで相談相手が私なんですか?!泉先輩なら他に頼れる相手がいるでしょう?」
「いやいや、それがさ。かがみとつかさは珍しく揃って風邪引いたとかで学校休んだし、みゆきさんは委員会の仕事があるって言ってたし。まさかゆーちゃんとかに見せる訳にもいかないっしょ?」
「じゃあパティ……って今日はバイトだって言ってたッスね。」
「そゆこと。それにほら、ひよりんなら同人で色々書いててある程度は知識とかあるっしょ?」
「そりゃそうっスけど……って、実物なんて見た事ないっスよ!」
「でも他に頼れそうな人がいなくて……ダメかな?」
と半分泣きそうな声と目でひよりを窺うこなたの様子はやけに可愛らしく、ひよりは保護欲をそそられる。
(反則ッスよ、その態度は。おっかしいなぁ、私はそっちのケはないんだけどなぁ。)
そう思いつつ、
「もう、しょうがないっスね。他ならぬ泉先輩の頼みッス。なんとかしてみましょう。」
「ほんと?ありがとー、ひより〜〜ん♪」
嬉しそうに抱きつくと、問題のモノがスカート越しに太ももに押し当てられ、ひよりはなんだか妙な気分になっていく。
「で……具体的にはどうしましょう?ソレ系の本だと……だ、出しちゃえば戻ったり、しますけど。」
「そ、そうだねぇ。えっと、じゃあ……やってみるよ。」
そう言ってベッドに腰掛けて、股間のソレを握ってゆっくりしごき始めるこなた。
「ん……ふぁ、なにこれ。変な感じ……あ、ん……」
そんな声を漏らすのを見て、ひよりは変な気持ちになっていくのを感じた。
「泉先輩、すごくやらしい顔してるっスよ?気持ち、いいんスか?」
「やっ、言わないで……はぅっ、んん……」
一回り大きくなったようなモノをしごく手が段々と早くなり、それに合わせてこなたの薄く開いた口から漏れる声も熱を帯び……気がつけばひよりは間近に顔を寄せていて……
「女の子の部分も、ちゃんとあるんスね。こっちはもうびしょびしょっス。ぺろっ。」
「ひゃぅっ!ひよ、り……ん、だめぇっ!」
女の子の方を軽く舐めると、ビクビクッとベッドの上でこなたの体が跳ね、
「や、あ、あぁぁ!でる、でちゃうぅぅっ!」
と声を上げると、勢いよく白い液体が噴き出してひよりの顔を白く染めていく……
「はぁはぁ……ご、ごめんねひよりん……かけちゃった……」
「や、いいッスけど……あんまり苦くないッスね、これ。」
「そ、そうなんだ……って、えぇぇっ!?」
顔にかかったのを指で掬い取って舐めるひよりに驚きの声を上げるこなた。
ある程度舐めとったひよりがふと見ると、それなりの量を出したはずのソレは未だ元気よくそそり立ったままで、
「まだ、出し足りないみたいッスね?」
「ふぇ?あ……ホントだ……」
「じゃあもっと出してみましょうか?」
「ひよりん?何言って……ひゃあっ!」
硬いままのソレを口に含み、ゆっくりと頭を上下させる。こなたは体を、腰を震わせてぎゅっと目を閉じていて、そんな表情にどうしようもなく……欲情してしまったひよりは彼女の声をもっと聞きたくて、
「ひぇんふぁい?ひもひいいれすか?」
動きを激しくし、こなたの女の子の部分に指をそっと這わせ……もう一方の手を自分のスカートの中へ入れると、ひより自身も既にショーツがぐしょぐしょになっていて。
「あんっ!くわえたまま、しゃべらなっ!ひぅっ……そこっ、だめぇぇっ!」
ソレが口の中でビクビクッと震えると再び白濁を吐き出し、ひよりはコクコクと喉を鳴らして飲み込んでいく。
「はぁっ、はぁ……また、でちゃった、よぉ……ひゃんっ」
最後の一滴まで吸い出そうとするとまたビクビクッとなるモノを口から出し、
「またいっぱい出したッスねぇ。どうです?収まりそうッスか?」
ベッドに身を沈ませ、全身で息をするこなたはあまりの快感に声を出す事も出来ない。だが2度精を放ったにも拘らず勢いを失わないモノにひよりは妖艶な笑みを浮かべる。
「ふふふっ、まだまだ元気ッスね。ほんと、どうしたらいいんスかね?」
指で弾くと体を震わせるこなたを、股間のモノを見ながら、ひよりはゆっくりと自らショーツを下ろしてこなたと体を重ねる。
そして、こなたの唇に自分のそれを重ね合わせ、舌を差し入れて彼女の口内を蹂躙していく。
こなたはされるがままに舌を絡め、朦朧とした意識の中で熱が下半身へ集まっていくのを感じ、ひよりに強く抱きつく。
「んん。ふぁ……ひよりん、私、もう……」
「もう、何です?我慢出来ないッスか?あれだけ出したのに?先輩ってずいぶんエッチなんスねぇ。」
「はぁ、はぁ……おねがい、どうなっても、いいから。なんとかしてよぅ……」
「そうっスね。私ももう我慢出来ないッスから、一緒に気持ちよくなっちゃいますか、こなた先輩?」
耳元で囁かれて、初めて名前で呼ばれて、こなたは答える代わりにひよりを抱きしめる。
ひよりはゆっくりと腕を解いて身を起こすと、こなたの腰に跨り自分の秘所にこなたのソレをあてがう。
「それじゃいくッスよ、先輩?……んっ、いつっ……」
声を掛けると同時に腰を落とし、根元まで一気に自らの中に飲み込んでいく。
「ひっ、ひよりん?!だいじょうぶっ?」
「っ……はは、ちょっと、痛いッスけど。そんなに騒ぐほどじゃ、んん、ないっスね。」
「なら、いいけどさ……」
心配そうに見上げるこなたを安心させるかのように口付けを交わすと、
「じゃ、そろそろ、動くっスよ?」
「う、うん……無理はしないでいいよ?」
「今さらっスよ、それ。んっ……はっ、んぅ……」
こなたのお腹に手をついて上下に体を動かし始めるひよりと、腕を伸ばしてセーラー服の上からひよりの胸を愛撫するこなた。
ゆっくりと、だが確実に快感が2人の体を支配していき、部屋には2人の荒い呼吸音と淫らな水音、体の打ち合う音だけが満たされていく。
「ひよりんっ、私っ!もぅ出ちゃうよっ!」
「私もッス!一緒に、いきましょう!こなた、先輩っ!」
2人は叫ぶと同時に抱き締め合い、こなたはひよりの中に今まで以上の量の精を放つ。
「はふっ、も……だめぇ……」
こなたは最後まで出し尽くすと、気力まで一緒に放ったかのようにクタリと意識を手放した……
それと共にひよりは体の中を埋め尽くすような圧迫感がゆっくりと消えていくのを感じ、体を起こすとこなたの股間は少女らしい、なだらかな姿を見せていた。
(うぁ〜〜〜〜!それにしても、なんちゅう事をしたんスか、あたしゃ?!)
頭を抱え悶えるひより。
(いくら先輩に頼まれたからって、あーんな事やこ〜んな事まで!あまつさえ、自分から……)
「んん……ひよりん?どしたの?」
「うひゃぅ?!せ、先輩!お、起きた、ッスか?」
「んー……おはよ〜〜……って、おお?!消えてるーーーっ!」
目覚めると同時に自分の体を見て、事の元凶がなくなっている事に歓喜の声を上げるこなた。が、次の瞬間にはひよりに向き合うと勢いよく、深々と頭を下げた。
「ごめん、ひよりん!変な事に巻き込んじゃって。しかも、その……あんな、事までさせちゃって……」
次第に声が小さくなるこなたの姿に思わず苦笑すると、ひよりは顔を上げさせて触れるだけの口づけをすると、
「まぁこ……泉先輩が元に戻って良かったっスよ。ある意味貴重な体験をさせてもらったッスから、それでいいじゃないッスか?ネタ提供感謝っスよ!」
朗らかに笑いながら、ウィンクと共に親指をグッと立てる。
「いやでも……いいの?その、は、初めてがこんなんで……?」
「んー、そうっスねぇ。じゃあちょっと聞いていいッスか?」
「へ?な、なにかな?」
「先輩は私の事嫌いッスか?」
「そんな事ないよ!嫌いだったらあんな事相談しないってば!」
「ふむ。じゃあもう1つ。付き合ってる人っています?」
「はい?いや、そんなのいないけど……」
「うし、じゃあ私と付き合いません?とりあえずお試しって事で。このタイミングで言うのは卑怯かも知れないッスけど。」
「……はい?」
「いやー、なんかこう。目覚めちゃったというか、なんと言うか。先輩のアレな顔見てたらドキドキしちゃって。」
「あー、えと。ちょっと待って。それはどーゆー事かな?」
「言葉通り、恋人前提で付き合いませんか?と。や、リアルで興味がないって言ってたからダメならダメでいいッスけど。」
「……ちょっと考えさせて。」
(確かに私はリアルで興味ないと言った。じゃあ今は?ひよりんを見てドキドキ……はさっきの今じゃして当然か。でも少なくとも嫌悪感はないね。でも責任感や罪悪感で頷いたら失礼だよ。)
「……返事はしばらく待ってもらっていいかな?もうちょっと落ち着いたら返事出せると思う。」
「別にかまわないっス。あー、あと責任とかは気にしなくていいっスよ?なんか私もノリノリで嫌じゃなかったんで……ってこんな事言うのも恥ずかしいッスね。」
「ん、わかった。じゃあ帰ろっか。もう外は真っ暗だよ。」
「うわぁ、本当ッスね。こりゃ家に連絡しておかないと。」
身支度をして学校を出ると、すっかり暗くなった夜空が広がっていた。
数日後の日曜。
1本の電話がひよりを眠りの世界から引き起こした。
『あー、ひよりん?私、こなただけど。』
「泉先輩?どうしたんスか、こんな早くに。まだ9時じゃないっスか。」
『いやーこないだの返事だけどさ。うん。』
「おー、アレッスか。」
『や、その、あれだ。おっけーって事で。』
「え?本当にいいんスか?」
『うん、あれから何日か経ってるけどさ。なんかひよりんの事が頭から離れなくてね。って、アレの事じゃないよ?ほら、その後の。気にしなくていいとか色々気遣ってくれたじゃん?』
「言いましたねぇ。でも実際思った通りに言っただけッスけど。だってあんなんで罪悪感とか感じられて接しづらくなったらヤじゃないっスか。」
『ん。でね、そーいうとこが嬉しくてさ。だったら付き合ってもいいかな〜、なんてね。』
「なら、こないだも言ったッスけど、お試しから始めましょうよ。」
『んだね。これからよろしく、ひよりん。』
「ええ、よろしくッス、泉先輩。」
『で、早速なんだけどさ。今日ってこれから時間ある?よかったら遊びに行かないかな、なんてね。』
「いいすよ。初デートッスね!」
『まぁそうなるかな。じゃあ11時くらいに駅に集合でいい?』
「りょーかいっス。」
『んじゃまた後でね。あそれともう1つ。』
「はい?何スか?」
『うん……出来れば名前で呼んでくれるかな?』
「そんなんでよければ喜んで!じゃあ目一杯おめかししていくっスよ、こなた先輩!」
94 :
LD:2008/02/18(月) 13:49:55 ID:5JNkpIz1
以上です。
おかしいなぁ、本当ならありえないモノに慌てふためく2人を書きたかったのにw
気づいたらこんなひよりん暴走モードになってしまったです……まぁこれはこれでヨシ(?)
機会があればまた書いてみたいなぁ……
ふたなり恋愛超特急――――――っ!
……ぜぇぜぇ。
文章に荒削りなところはあるものの、お試しとか言いながら相思相愛な二人に穴という穴から蜂蜜を噴かざるを得ません。
ていうかおっきした時点であなたの勝ち。ぐっじょぶ!
>>94タイトルを見て『ひよりん妊娠フラグktkr!?』とか思ったのは内緒の話。
GJ
(ううう…
どうして私じゃなく、田村さんなのよ…
こなたに…奪われたかったのに;;
これなら問題なく結婚できそうだし、
子供の心配もなさそうなのに…
こなたのやつ…
こなたのやつ…)
なんだろう、どこからかものすごい視線を感じるのですが(=ω=.;)
それはそうと、
>>94はGJだよ!レアなカップリングを、
こんなレアシチュで、しかもこんなにエロく仕上げるなんて。
コナタカンゲキ♪
って…さっきの視線がものすごいプレッシャーとなって
押し寄せてくるんですが(〒ω〒.;)
ふたなりスキーの俺にはたまらん作品ですた。GJ!b
しかも、ひよりん攻めなのがレアでしたね。
>>73 貴方マジすげえよ・・・
予想はずれまくりw 先が全く読めない
完結編がめっちゃ楽しみだ
・・・ところで、男かがみTSの方はどうなってんでしょうか? wktkしながら待ってるんですがw
>>94 こいつはエロイぜGJ!
にしてもひよりん度胸あるなぁw
ぶーわ氏あなたが神か?
どこまで凄いんだ。予想の115度上をいったわ!
最終回楽しみにしてます。
102 :
久留里:2008/02/18(月) 23:24:04 ID:r0ggxffX
>>73 ずっとつかさかゆーちゃんだと踏んでいたのですが、
まんまと引っ掛かりました(良い意味で)。
それじゃあみゆきさんが犯人かと思いきや……………。
最終回に期待します!!
さて、35スレ辺りで『カケラ』の13を投下致しましたが、
あまりにも中途半端な所で切ってしまったので、続きを投下させていただきます。
『カケラ』 13.補遺
・つかさ×あゆみ(オリキャラ)・つかさ視点
・今のところ非エロ
・4レスほど使用
・シリアス/タイムリープ/平行世界/鬱展開
・オリジナル設定が多いのは仕様です。
・物語の性格上、鉄分が濃いです。
23時25分あたりに発車します。
※保管庫 管理人さま
13.が既に保管されているため、続きをこちらで編集致します。
新規に保管する必要はございません。
熊本城を後にした私は、あゆちゃんの手を引いて市街地へ向かう。
鶴屋百貨店というデパートで遅めの昼ご飯を食べ終えて、トイレに行く。
すると、個室の中で私の携帯電話がブルブルと震えた。
メールが一件、届いていた。送り主は鹿児島の時と同じく不明。
内容は、
『ホンB2-0046』
という不思議な記号の羅列だった。
次に私がしなきゃならない事だとは思うけれども、一体何なのだろう?
「どうしたの? つかさ」
「うん、それがね」
トイレに誰も居ない事を確認して、携帯電話の画面をあゆちゃんに見せる。
ウサギの髪飾りが2度揺れると、あゆちゃんはあっさりと答えてしまった。
「これってさ、アレじゃないの?」
「どれ?」
「この暗号が意味する場所に行けば、何かがあるんじゃないの?」
何かと聞いて、とっさに思い出すもの。それは──、
「『鍵』のこと?」
「ううん、このデパートの中では感じない」
残念。外れちゃった。
でも、このタイミングで(時代から考えて)来る筈の無いメールが来たのだから、
もしかしたら、ここ鶴屋百貨店で何かがあるに違いない。
「取り敢えず、このデパートの中を調べてみない?」
私から提案してみる。あゆちゃんは怪訝な表情。
「ここにあるってコト?」
「そう、たぶん……だけど」
「根拠は?」
「何となく。でもね、ありそうな気がするの。ちょっと探してみよう?」
「まぁ、ここでボケーっとしていてもしょうがないもんね。行きましょ」
私達は7階のレストラン街を後にし、ガラス張りのエスカレータを使って下のフロアへ向かった。
まずは7階。
フロアの各売り場をくまなく歩いた後、
ロッカーや休憩所のゴミ箱、トイレの掃除用具入れまで手分けして探した。
男子トイレも……………誰もいない事を確認して、2人で入った。
けど…………。
「無いねぇ」
「うん、無い」
次に6階。
「無いね」
「無いわね」
5階。
「「無い」」
4階。
「「無い!」」
3階。
「「無い!!」」
2階。
「「無い!!!」」
1階。
「「無い!!!!」」
「あー、もう!! ここまで探したんだから、ここにはもう無いわよ! 駅に戻りましょ?」
「う、うん、おかしいなぁ」
「おかしいも何も無いわよ!! つかさの思いつきでしょ?!」
そ、それは確かにそうだけど………、
「あ!!」
思わず声を上げてしまった。ここは1階の化粧品売り場。
女の人達が一斉に私達に注目する。
「ば、ばか、何大声出してんのよ!!」
「だだだだだ、だって、だって」
「だって、何?!」
「ここの百貨店、地下2階まであるから……」
あゆちゃんの恐い顔に圧倒されて思わず縮こまっちゃったけど、何とか言ってみた。
そう、鶴屋百貨店は地下が2階まである。
「それを早く言えばいいでしょ?」
「う、うん。ごめんね」
「まぁいいわ、行きましょ?」
「うん、行こう!」
そして、地下1階を経て地下2階の食品売り場へ辿り着いた私達は、
今までと同じ様に案内図で売り場のだいたいの配置を把握した後、まずはトイレに向かった。
女子トイレは……無かった。
男子トイレは………誰か居るから後にしよう。
非常階段の方へ行ってみる。こちらにも………それらしきモノは無かった。
最後に残ったのは………、
「このロッカーだね」
地下2階にある、影の薄いロッカールーム。
生鮮フロアのせいか、お魚とかを冷やす保冷機能付きのものも並んでいる。
私とあゆちゃんは、2人してずらっと並ぶ正方形の青い扉をじーっと見ていた。
『ホンB2-0046』
あれは何を意味するものなんだろうか?
……………あ!!
「どうしたの?」
頭の上でランプが付き、ぽんと手を打った私の顔を、不思議そうに見るあゆちゃん。
「………あぁ、そうか」
あゆちゃんの方が分かったみたいだった。
「46番目」
ぼそっと言う。
「46番……………あ、そっか、そういうことか!!」
何でこんな簡単なパズルが解けなかったのだろう!!?
結局答えは「鶴屋百貨店本(=『ホン』)館地下2階(=『B2』)にある、ロッカーの『0046』番」だった。
「い、言っておくけど、私は最初から分かってたんだからね」
「ホントに?」
「う、う、嘘じゃないもん!! た、ただ言わなかっただけだもん!!」
「ホントにホントにぃ?」
「……………つかさ、意外と鋭いね」
だって誤魔化してるって丸わかりだもん。
「だめだよ、嘘ついちゃ」
「は、半分はホントだもん!!」
「でも凄いね。あの時は分からなかったのに、分かっちゃったんだから」
「だ、だから、私はつかさよりもとっくに分かってたんだから!!」
「分かったよ」
「………………そんなに見るな」
あらあら、照れちゃった。私、こんな妹が欲しかったなぁ。
「ほ、ほら、さっさと開けましょうよ」
「う、うん、分かった」
ロッカーには鍵が刺さっている。つまり、いつでも開けられる様になっていた。
「せーの、で開けるよ?」
「うん」
あゆちゃんの同意を得て、「せーの」でロッカーの扉を開ける。
「……………」
「……………」
「……………これ、何?」
「…………言うまでも、無いでしょ?」
ロッカーを開けて出てきたのは、おもちゃのピコピコハンマーと怪しげな茶封筒。
茶封筒の中身は、またもや切符だった。
入っていたのは「熊本〜大阪」と書かれた乗車券と「寝台特急『なは』」「熊本〜新大阪」と書かれたの乗車券。
そう言えば西鹿児島からの切符は、あの時(……あまり思い出したくないや)に落としちゃったんだっけ。
気が利くなぁと思った一方、どうして私達が切符を落とした事が分かったのだろう。
私があゆちゃんとしなきゃいけない事は何となく分かる──鍵を揃える──けど、
疑問はどんどん増えるばかりだ。
取り敢えずピコピコハンマーをあゆちゃんのリュックに押し込み、
封筒をコートのポケットにしまってロッカールームを後にする。
そろそろお店を出ようと思った時だった。
「………ねぇ、あゆちゃん」
「なに?」
私がさっきからずっと感じていた事を、彼女に伝える。
「お風呂、入りたい」
「そう言えば……………」
ずっと走り回っていたせいか、汗の臭いが鼻につく。
気が付けば、身体はベタベタするし、臭いもキツい。それに、髪の毛もゴワゴワで何だか気持ちが悪い。
トレードマークのリボンも枯れた花の様にしおれていた。
あゆちゃんも例外ではなかった。
「それじゃあ」「行こっか」
寝台列車の発車まで、まだまだまだまだ時間がある。
私達は百貨店で服を買った後、市内電車でちょっと離れた温泉へと向かった。
私はまだ、気付いていなかった。
『私が、とんでもない忘れ物をしてしまっているコト』に。
107 :
久留里:2008/02/18(月) 23:30:15 ID:r0ggxffX
以上です。毎度スレ汚しスマソ
先が見えない? KYなのでまだ見せやしません。
>>107 GJ!
ついにつかさも大阪へ向かうか…。あれ、でもかがみの目的地は岡山だったような
「B2-0046」の謎は8秒ぐらいで解けたがwしかしこの話がどこへ向かおうというのか、
続きに期待。
それにしても、来月廃止というこのタイミングで「なは」を出してくるとは卑怯なりw
俺は鉄ちゃんじゃないが
この作品は、もうこの際、
鉄に始まり、鉄に終わったほうが
いいように思えたのだが・・・
俺だけなのかな?
110 :
久留里:2008/02/19(火) 02:49:58 ID:3aS/W5pR
久留里です。
6時間後は会社だってのにSSが仕上がってしまったので、投下します。
『カケラ』15.
・第三者視点 / つかさ×あゆみ(オリキャラ)・つかさ視点
・微エロ? (ご期待のシーンはございません)
・8レスほど使用
・シリアス/タイムリープ/平行世界/鬱展開
・オリジナル設定が多いのは仕様です。
・物語の性格上、鉄分が濃いです。
15.
結局私達が向かったのは健軍町(けんぐんまち)という電停から歩いた所にある、小さな銭湯だった。
実は温泉が熊本市街にある事が後で分かったんだけど、時既に遅し。
市内電車は水前寺駅通電停を通り過ぎた所だった。結局私達は終点まで行く事にした。
でも、その選択肢は半分合っていたのかも知れない。
あゆちゃんの「『気配』を感じる」という言葉を確かに聞いた私は、あゆちゃんと一緒に見知らぬ町をうろうろ歩いていた。
住宅街に入って数分、あゆちゃんが感じた『気配』は銭湯の前で強くなった。
「ここ?」
「うん、ここ」
折角なので、2人で中に入る事にする。
12月とはいえ、まだ陽の高い時間だったけど、銭湯は開いていた。
番台さんに入湯料を払って、『女湯』と書かれた暖簾をくぐる。
建物はこの時代を基準にしても結構古いようで、張り巡らされた木の梁が重々しい。
罅の入った白壁の両側は脱衣籠の入った棚で、黒に近い茶色のニスの臭いがつんと鼻を突く。
脱衣所はガラガラで、誰も居ない。
ただ聞こえるのは木枠のガラス戸の向こうから聞こえる、お湯の音。
私もあゆちゃんも明らかに「浮いている」恰好のせいか、番台のお婆ちゃんにじろじろ見られる。
何かちょっと恥ずかしいよ。
Pコートを脱いでオーバーオールの肩のボタンを外し、………全部言わなきゃ、ダメ?
寒いのでさっさと服を脱ぎ、備え付けのタオルを借りて木枠のガラス戸を開ける。
あゆちゃんは既に脱ぎ終わっており、私の隣の籠に脱いだ服が乱暴に投げ込まれていた。
もわっと白い湯気が脱衣所を包み、すぐに視界が開ける。
今日は曇っているにも関わらず、お風呂は自然の光でとても明るい。
早速2人並んで身体を洗う。
「………」
「………」
木の椅子に座った途端、お互い向き直る。
昨日会ったばかりの子に裸を見られるのは、ちょっと恥ずかしい、かな?
外から差し込む雪色の光に輝く白い肌。
痩せているけれど程よく肉が付いた、少女らしいスタイル。
そして、当時の私には全然無かった、少しだけ膨らんだ…………………胸。
彼女は、12歳の子にしては抜群にスタイルの良い女の子だった。
そんなあゆちゃんが、私を見て、一言。
「………私も、つかさみたいになれるかな?」
何が?
「つかさみたいに、綺麗なお姉さんに、なれるかな?」
「お、お姉さん?!」
「ツッコむトコはそこかい!!」
と、ツッコまれた。
「ご、ごめん、おね、おね、お姉ちゃんって呼ばれるなんて、お、思わなかったから」
「ご、ごめんなさい、い、嫌だった?」
「う、ううん、違うの。ちょっと、嬉しかっただけ」
「ふうん、変なの」
2人同時にホーローの洗面器にお湯を蓄えて、2人同時にタオルでごしごしと洗う。
昨日からの身体の汚れがみるみる落ちて、心も体もスッキリする。
続いて、髪を洗う。あゆちゃんは何処から持ってきたのか、シャワーキャップを被っている。
鏡に映る、年相応に見えない顔とハダカ。
これでも高校3年生なんだけど、未だに中学生と間違われることが多い。
家族や近所の人には「可愛い」と言われるけれど、
たまに遠回しに「子供っぽい」と言われている様な気がして嬉しくない事がある。
見た目もだけれど、自分自身、結構甘えてしまうコトも多いのかも知れない。
ホラー映画は嫌いだし、夜中にトイレに行くのは今でも苦手だし、
嵐の夜はお姉ちゃんと一緒に寝るコトもある。
休みの日はお昼まで寝てしまうし、宿題や勉強もやってる途中で寝ちゃうコトも多いし。
「つかさは頑張ってると思うよ?」
鏡の中の自分としばらく向き合っていると、私の心の内を察したのか、あゆちゃんが優しく微笑みかけてくれる。
「…………そうかな?」
「そうだよ」
「そっか」
「そうだよ」
あゆちゃんは、それ以上の事は言わなかった。恥ずかしいとか、そんなんじゃないと思う。
何も言わなくても、私の心に『気持ち』が伝わった。『心』と『心』が通じ合うって、このことかな?
ちょっとキツくておませさんな子だけど、この子はとても良い子だと思う。
私はこの子に会えて、本当に良かったと思う。
あゆちゃんは、可愛い。
こなちゃんの言う「萌え要素」とは違う、もっと優しい感じの、『可愛い』。
あゆちゃんの笑顔、一つ一つの仕草、
「っくち!! は、早く入らないと風邪ひいちゃう」
くしゃみ……えっと、ごめん、変な事考えてたかも。
本当に私の妹だったら、いいのにな。
「………何ジロジロ見てるのよ?」
「べ、別に、なななななな何でもないよ?!」
「女の子同士でくっついても気持ち悪いだけよ? さっさと入りましょ?」
そうだね、早く背中を流して入ろうっか。
静かな銭湯。
タイル貼りの広い広い湯船に浸かりながら、2人並んで天井を眺める。
掃除したての浴槽にほんわり立つ、白い湯煙。
漢方薬でも入っているのか、ちょっとヒリヒリする黄色いお湯。
のぼせない様に時折一段上がった所に腰掛けたりしながら、私達は至福の時を過ごしていた。
お風呂ってこんなに気持ち良かったんだなぁ。そう実感した。
そう言えば、私が以前みんなで入ったのは去年の夏だったっけかな?
みんなで行った、真夏の三浦海岸。
こなちゃんは確か、小学校のスクール水着を着てきたんだっったっけ?
あれはちょっと吃驚しちゃった。
こなちゃんは『これも一つの萌え要素』って言ってたけど、結構可愛かったかな。
「どうしたの?」
ほえ?
「うん、ちょっと………思い出しちゃって」
私の一番のお友達。泉こなたちゃん。
普段は『こなちゃん』って呼んでるの。
1年の時、外国人に声を掛けられて困っていた所を、何故か外国人を蹴飛ばして助けてくれた(?)のがキッカケなんだよね。
本当は道を訊いてきただけで、私が困っていたのは言葉がさっぱり通じなかったからなんだけど……。
外国人の男の人はちょっと可哀相だったけど、そのお陰で私はこなちゃんとお友達になれたんだ。
背は小さい──あゆちゃんとあまり変わらないかな?──けど、すっごく強くて、運動出来て、
勉強嫌いだけど本当は私よりもずっとずっと頭が良くて、とにかく、凄いんだよ。
アニメと漫画が大好きで、私の知らない作品が多いけれど、ケロ○軍曹で一緒に盛り上がったり、
お母さん居なくてもしっかり家事とか出来るし、料理も上手だし、色んな事知ってるし、
あと、あと、たまに意地悪するけれど、とっても優しくて、思いやりがあって、
二人っきりでお話する事はあまりないけれど、
一緒に居るだけでぽかぽかするっていうか、暖かいっていうか、えっと、えっと……、
「つかさ、それ同じ意味だって」
あ、そうか。えへへ、私、やっぱり馬鹿だよね。
私ね、こなちゃんに憧れてたんだ。
こなちゃんみたいに、色んな意味で『強い』人になりたいんだ。
それでね、それでね………………、
「つかさ」
「ふ、ふぇ?!」
「その『こなた』って人、好きなんでしょ?」
「か、かわからないでよぉ」
「かんでるわよ」
「ちょ、ま、あ、あゆちゃんの意地悪」
そんなにニヤニヤしなくたっていいじゃない。
「でも、」
「でもぉ?」
まだニヤニヤしているあゆちゃん。
「正直、分からない」
「好きって事?」
「うん、そう」
「あゆちゃんってさ」
「うん」
「『好き』って、どういう事だと思う?」
「う〜〜〜〜〜〜ん、まだ分からないや」
「そっか」
「ちょ、こ、子供扱いしないでよね?」
「充分子供だよ」
「そ、そりゃそうだけど………つ、つかさだってオコサマじゃん!!」
「そ、そんな事、ないもん!!」
勢いよく立ち上がる。ざばぁ、とお湯が溢れる。
今は話さないけれど、実は、一度、こなちゃんに想いを伝えた事がある。
こなちゃんもこれまで、それなりのそぶりを見せてくれたから、手応えはあった。
しかし、
『ごめん、つかさ。確かに私もつかさが好きだけど、そういう意味の「好き」じゃない』
こなちゃんには伝わったものの、それを受け取ってくれる事は敵わなかった。
こなちゃんは、『女の子が女の子を好きになる』事を拒んだわけではなかった。
こなちゃんには、別に好きな人がいた。
しかも、女の子だった。
私には、とても衝撃的だった。
今でも思い出したくはない。
だって、こなちゃんの好きな相手は───────、
支援(=ω=.)b
116 :
久留里:2008/02/19(火) 03:15:45 ID:UTI5LZn+
携帯から失礼。
専ブラ使ってるのに何故か投下出来なくなったので、
残りは保管庫に入れておきます
もう寝ぇっちゅうこっちゃな(´Д`)
>>116 めっさGJ!!!!
そろっと久留里氏は会社かな?
保管庫見て思ったけど一度カップリング別の作品人気投票とか見てみたい
みなゆたとかこなゆたの作品がどんなしのぎを削るのか気になる
いや、どうすればいいんだよw
まとめサイトにフォーム作るわけにもいかないしw
「らき☆カプ最萌トーナメントぉ?」
「はい、先程田村さんが、『こなゆきやつかゆきといった王道から、異色のひよこなまで、
様々なカップリングが出てきたので、今後のために一度どれが一番人気なのか調査したい』と」
「え゙、高良先輩そこはゆた……い、いや、何でもないっス」
「また荒れそうな企画を……」
「そうだよね、こういうのって人気より愛情だよね?ナンバーワンよりオンリーワンって言うし」
「おおっ、つかさにしてはまともな……って、ゆーちゃん?」
「ねぇ……もしこれでびりになったら、私、お姉ちゃんと別れた方がいいのかなぁ?」
「いやゆーちゃんそんな深刻に考えなくても……」
「ゆたかと、泉先輩……」
「ちょ、みなみちゃんも落ち着いて!!」
「そうよ、たかが人気投票じゃない、私は別に、そんな結果なんて……」
「そうなんですか?その割には顔が不安そう……あいたたたたやめてとめてやめてっ」
「そうだぜ柊、こういうのはやっぱ最強目指さねーとな?」
「ふふっ、みさちゃんたら……でも、泉ちゃんは競争率高そうよ?」
「そんなの関係ねえって!努力と運があれば不可能も可能になるんだってヴぁ!」
「いやだからなんでみんな私なのさ?」
「そりゃモチロン愛っス!こな☆フェチ以来遺伝子に組み込まれたデスティニーっス!」
「俺はかなたとしっぽりむふふといければ何位でもいいぞ」
「でも、やっぱり気になるな。私いつも競争ではびりだったから、1位になってみたいかも」
「ふふっ、ゆーちゃんらしいね。それじゃあ私も可愛い妹のために、一肌脱いで……って??」
「ゆたか……」
「こなちゃん……」
「こなた……」
「大好物のちびっこがぁ……」
「泉さん……ジュルリ」
「……と、とりあえずここは戦略的撤退を……全艦離脱っ!!」
「しかし、トーナメントに必要な、主催者、規則、開催場所、集計人、支援、参加者、話題性、
そして何よりも暗数(コード)が足りないと思わないか?ふゆき……(ちゅっ)」
「そうですね、桜庭先生……(いちゃいちゃ)」
まとめサイトのSSデータベースつくってくれた人って、ここみてるかな?
あのサイトの立ち位置についてちょっと聞きたいんだけれど、
あのサイト自体は、特にこのスレとかまとめサイトとは関係なくて、
ネット全体を対象にしてるんだよね?
それについては込み入った話になるかもしれないから
避難所で話したほうがいいのでは?
それもそうか、あっちはもうみてないかもと思ったんだけど
こっちはこっちでスレ違いですね、失礼しました
>>118が言いたいのは、各カップリング内で、一番良い作品を決めようということなのか?
それだと長編ものが強いよな
こなかがだと4seazonとか こなゆただとElopeとかさ
あと、表記がないやつとか
こな☆フェチはどれに入るんだろww
長編と短編で分けるとか
個人的にはパラレル、TS、オリキャラ、エロ、非エロとか細かく分けてもいいかなぁと思う
こなかが長編ならこなたとかがみのそれぞれの視点で書いてたやつが好きだなぁ
あれはいろいろと衝撃的だった
このスレの全作品のキャラで格ゲーできたらなーなんて。
例えば[ゴットかなたvsウィングかなた]とか、[かがみvsこなフェチかがみ]とk(以下自重
3Dで動き回るゴッドかなたさんを見てみたいな
もしやるとしても、全部のカプでいっせいにやると投票するだけでも大変だ。
まあ無理にやらんでも、とも思うんだがね。
でもやるなら勿論投票したいし。
135 :
ぶーわ:2008/02/19(火) 18:14:04 ID:ddNVg0iL
微妙に怖いんですけれど
ちょwwwwww3Dだけれどもwwwww
何かこう、くるものがありますねw
ドナルド増殖思い出したwwww
>>135 肝心のかなたさんが2Dwwwwwwww
なんだかモンコレナイトのエンディングを思い出してしまうwwwww
スーパーペーパーかなたさん
>>135 OK
とりあえず貴方がヤバイことだけはよくわかったぜw
>>135 シュールじゃなくて、非現実的じゃなくて、なんつーんだろう……
とりあえず、夢に見そうだwwwwwwww
145 :
23-49:2008/02/19(火) 19:23:47 ID:HAIJFuXR
どうもです
「圏外」までの続き、みなみの誕生会当日編、行きたいと思います
タイトルは「メドレーリレー・バースデー」、リミックスCD2の組曲から着想を得まして、
そのため語り部が次々と入れ替わります
受け付けない方はご注意を(白石は出ませんのでその辺はご安心を)
被りそうな方がおられないようでしたら五分後ぐらいから投下させてください
・複数視点(前半みゆき、後半つかさ)
・エロ無し
・5レス使用
・現実の事件ネタあり
途中で止まってしまった場合は例によって wiki と避難所を参照してください
【track 1 : 案ずる姉と不安な妹】
九月十六日、日曜日です。
私、高良みゆきはいつもの休日より少し早い時間に起床し、シャワーを浴びて寝汗を流すと、
母と一緒に朝食をとりました。
「いよいよ今日ね。みなみちゃん、喜んでくれるかしら?」
「ええ。きっと」
平行してテレビと新聞をチェック。特に痛ましい事件や災害などは起きていないようです。
とりあえず、一安心といったところでしょうか。
六年前は酷かったですからね。
それから軽く身支度を整えて、時計で時間を確認します。まだ少し余裕がありました。
学校の課題をしながら時間を潰すことにしましょう。
そうしながら何度か時計を見上げていると、やがてちょうど良い頃合いを迎えます。
携帯電話を手に取り、アドレス帳の三番目に登録してある番号にかけて、待つこと十秒あまり。
ちなみに一番目と二番目は両親の番号です。
『――もしもし』
っと、繋がりました。
「おはようございます、みなみさん。みゆきです」
『……おはようございます』
おや? なんだか声の調子が……いつもと違わないようでいて、ですが少し……
「みなみさん、どうしました? もしかして、お体の調子が優れないのですか?」
そう言うと、かすかに息を呑む気配が伝わってきました。
迂闊です。
考えてみれば、そういった可能性も確かにあるじゃないですか。まるで想定していませんでした。
『……いえ、大丈夫です』
「え? ……本当に?」
『はい。……身体の方は、本当に』
「……」
信じましょう。
彼女が私に嘘をつくはずがない、なんて、そんな傲慢なことを言うつもりはありません。
ただ、十年以上も実の姉妹同然のお付き合いを続けてきたのです。
嘘をついているかどうかの区別ぐらいなら、つくつもりです。
「では――何か悩みごとがあるのですね?」
今度ははっきりと驚く気配。思わず苦笑を返してしまいます。
「身体の方は、と言ったじゃないですか。――私でよければ話を聞きますよ」
沈黙。
急かすことなく私は待ちます。
やがて、時計の秒針が一周した辺りでしょうか。
『……ゆたかが、』
か細い声が聞こえてきました。
「ゆたか……小早川ゆたかさんのことですね? 彼女が、何か」
また、沈黙。
時間にして、先ほどの半分ほど。
『みゆきさん、私……』
「はい」
『……ゆたかに嫌われたかも、知れない……』
「え……」
一瞬、意味が分かりませんでした。
小早川さんが、みなみさんを、嫌いになった?
「そんなことは……何かの、間違いではないのですか?」
『……』
「だって小早川さんは――」
と、言いかけて、しかしどうにか踏みとどまります。
小早川さんは今日のことも一番熱心に――そんなことを言いそうになってしまいました。
全てが台無しになるところです。危ないところでした。
「ええと……みなみさん?」
『……はい』
「どうしてそのように思うのですか?」
『…………避けられている、気がするんです……』
避けられている?
――あ。
もしかしたら……
「それは、いつごろからですか?」
『…………二、三日前から……』
やはり。
なるほど、そういうことですか。
大丈夫ですよみなみさん。小早川さんはあなたを嫌いになってなどいません。
むしろ逆です。
そのことを今お伝えできないのは心苦しい限りですが……
「そうですか。――じゃあ、電話ではなんですから、直接会ってお話しませんか?」
『……』
「実は、久しぶりに買い物でもご一緒させていただきたいと思って掛けたんです。ですから、
気晴らしも兼ねて、どこかで落ち着いてお茶でも飲みながら……どうですか?」
『……、はい』
ああ。
ほんの少しだけ、声に元気が戻りましたね。
どうやら私は、まだ彼女にとって“頼れる姉”としての地位を保てているようです。
「ありがとうございます。では、後ほどお迎えに上がりますね」
『はい』
「それでは。失礼します」
『失礼します』
挨拶を交わし、通話を終了させます。
ふぅ。
一時はどうなることかと思いましたが、どうにか計画通りに運ぶことができそうです。
泉さんに指示された「デートしましょう」の一言は結局言えませんでしたが……構いませんよね?
さておき。
始まりました。
今年こそは――そんな想いが胸に沸き起こります。
二〇〇一年、九月十一日。
アメリカ同時多発テロ事件――俗に言う、“9.11”。
詳しく説明する必要はないでしょう。
今、ここで重要なのは、それがみなみさんの誕生日の前日に起きたということです。
彼女がちょうど十歳になろうとしていた、その直前に。
私たちの家族や近しい知り合いの方たちが直接の被害を受けたということはなかったのですが、
世界中を震撼させた事件の影響はやはり少なくなく、誕生日どころではなくなってしまったのです。
みなみさん本人も相当のショックを受けたようで……
あのときの、真っ青な顔。今思い出しても胸が痛みます。
そして、今もまだ、少なからず引きずっているのでしょう。
どうしようもないことですので田村さんやつかささんたちには敢えて言いませんでしたが、
みなみさんが誕生日のことを誰にも教えなかったのは、その辺りの理由も大きいのだと思います。
ですが、いつまでもそのままというわけにはいきません。
皆さんも協力すると言ってくださいました。
ですから。
ですから、みなみさん。今年こそは。
あなたの生まれた日を、楽しい思い出の日に塗り替えなおしてみせます。
「……さて」
決意も新たに、知らず握りこんでいた携帯電話を再び開き、アドレス帳を呼び出します。
と、そこに。
「ねぇ〜、みゆき〜?」
ノックもなしにドアが開き、母が入ってきました。
「これ、どぉかしらぁ?」
そして、身につけている妙にきらびやかな洋服……いえ、もはやドレスと言うべきでしょう。
を、見せびらかすように、その場でくるりと回ります。
……ええと。
「あの、お母さん? もしかして、それを着ていかれるつもりですか?」」
「そうよ? ……だめぇ?」
「ダメというわけでは……ただ、主役はみなみさんですから、それより目立ってしまうのは……」
「ええ〜? んん〜〜……でも、そっかぁ……わかったわ」
しゅん、と、心の底から残念そうに、そう言うと母はとぼとぼと部屋を出て行きました。
あの人は、本当に……
張り切る気持ちは分かりますし、頼もしくも思うのですが……不安です。
「……」
不安といえば、もう一人。
改めて携帯電話を見つめます。ディスプレイに表示された、先程呼び出したつかささんの番号。
ついで、と言っては失礼ですが、確認しておかなければなりませんね。
☆
「じゃあ、上手くいったんだね?」
『はい、おかげさまで。ですから予定通りの時間にいらしてください』
「うんっ!」
いよいよだ。
九月十六日、日曜日。岩崎みなみちゃんのお誕生会当日の朝。
ゆきちゃんからの計画開始のゴーサインを受けて、私の胸は高鳴った。
昨日までは楽しみに思うだけだったけど、いざとなったらやっぱり緊張しちゃう。
特に私は、パーティーのもう一つの主役とも言うべきお料理のほうを任されてるから。
ってゆーか、なんだか私がいつの間にかメインシェフみたいになってる気がするんだけど。
大丈夫だよね? みんな手伝ってくれるよね?
私一人でぜんぶ用意するなんてことはないよね?
ケーキはこなちゃんとゆたかちゃんが用意してくれることになってるけど……
あううっ、お菓子が一番得意なのにい。
「それで、あの……つかささん」
――と。
ゆきちゃんの声で我に帰る。どこか不安げな声だった。
「かがみさんの様子は……」
「あ……」
そうか。
思い出す。昨日の放課後。
どう見ても怒っているのに今にも泣き出しそうだった、酷く追い詰められたような顔。
あれがゆきちゃんの見た最後のお姉ちゃんだ。
「――うん。さっきはもう、だいぶ普通だったよ」
誰が聞いているわけでもない自分の部屋なのに、私は自然と声を落とす。
あのあと、私はすぐに後を追った。
今日のことの最終的な打ち合わせをするためにひよりちゃんを待っていたところだったんだけど、
それはゆきちゃんに任せて、一人で。もともと私はいても何かの役に立つわけじゃなかったし。
だけど廊下に出たときにはもう姿が見えなくなってて。
携帯に掛けても繋がらなかった。
どうしようもなくて、家に帰るしかなくて。それでも心配で何度もなんども掛けなおして、繋がらなくて。
だけど、夕ごはんの直前になってやっと帰ってきたお姉ちゃんは、もう普通の顔に戻っていた。
みなみちゃんへのプレゼントもちゃんと買ってくれていた。
そして、何も言ってくれなかった。
ぜんぜん欲しくなかった『ごめん』の一言以外は。
「今日も、ちゃんと行くって」
『そうですか。……いったい、何があったのですか?』
「……。うん、さっき聞いたんだけど――」
と、
コンコン、ガチャ。
「つかさー? 入るわよ?」
申し訳程度のノックを挟んでドアが開き、まさに噂をすればなタイミングでお姉ちゃんが入ってきた。
「あ、電話中? ごめん」
そして私の姿勢に気付いて、声を落とす。
「う、うん。――あ、ごめんゆきちゃん。ちょっと待って。――なに? お姉ちゃん」
「あ、みゆきなんだ、相手。いや、それよ。連絡まだかなーって。あ、終わったら替わってもらえる?」
妙ににこやかだ。
早口だし。
でもこの状況で訊いたらゆきちゃんにも余計な心配かけちゃうし……ええと、ええっと。
「う、ううん。今終わったとこ。――もしもしゆきちゃん?」
『はい。……かがみさん、ですか?』
「うん。替わって欲しいんだって。いいかな?」
『ええ、お願いします』
「ありがと。――はい、お姉ちゃん」
携帯を耳から離し、お姉ちゃんに手渡す。
受け取る顔は、やっぱりどこか不自然な笑顔。
「ごめんね。――もしもし、みゆき? ――うん、私。おはよう。――――ええ? やだ、大丈夫よ。
うーん……ってゆーか、ごめんね?」
身振りをつけて話すクセの、その動きも、どこか硬い。
思わず眉を寄せて見つめてしまうと、気付いたお姉ちゃんは私に背を向ける。
「――いやホント、なんでもないのよ。――ん……だからね? こなたのヤツがさ、また私のカバンに
ヘンな本、仕込みやがってさ。あはは。――そう。それだけのことだから」
さっき、朝ごはんを食べながら聞かされた話だ。
こなちゃんが、お姉ちゃんのカバンに、その……えっちな本をこっそり入れるいたずらをして、
それで怒っていた、って。
確かに、前にもそんなことはあった。一学期だったかな?
クラスの人に見つかりそうになって、死ぬほど恥ずかしかったって、お姉ちゃん、すごく怒ってた。
でも、そんな理由だったら昨日のうちに教えてくれてもいいはず。
一晩考えた言い訳ですって言ってるようなものだよ。私にだって分かるぐらい。
「それより、みなみちゃんの方は――――お、じゃあ計画通りね。よしよし。――うん、しっかりね。
じゃあ、つかさに替わるから。――はい、つかさ。ありがと」
「あ――う、うん」
お姉ちゃんが返してきた携帯を、受け取る。
指先同士が、触れ合わない。
「……もしもし? ゆきちゃん?」
『はい。……大丈夫なようですね』
お姉ちゃんに聞こえるわけもないだろうけど、ゆきちゃんの声も小さめだ。
「そうかな」
『ええ、そう思います。本当のことを言っていただけないのは残念ですが……』
「そっか。……ねえ、ゆきちゃん」
『はい』
「……」
開きかけた口を、目とともにぎゅっと閉じる。
――中止にできないかな。
言えるわけないよ、そんなこと。
『つかささん?』
「ううん、ごめん。なんでもない。またあとでね」
『……はい。それでは後ほど。失礼します』
ぶつり、と途切れる。
通話時間を表示するディスプレイをなんとなく見下ろしていると、お姉ちゃんが声をかけてきた。
「どうかした、つかさ?」
「……」
振り返る。
とぼけた感じの微笑みを浮かべてはいるけど、その向こう側には緊張と警戒が透けて見えている。
どうかしてるのはお姉ちゃんの方だよ。
でも、訊かれたくないんだね。
「なんでもないよ」
「そう。――じゃあ、いのり姉さんに準備してくれるよう言ってくるから」
「うん」
主に食材とか、持って行くものが多いから、私たちは他のみんなとは別に、いのりお姉ちゃんに
車で送ってもらうことになっている。そのことに気付いて、頼んでくれたのもかがみお姉ちゃん。
でもそれも、きっと目の前のことに集中しようとしてるだけで、やっぱり無理の表れとしか思えない。
「あんたも用意しちゃいなさい。忘れ物とか、しないでよ?」
「うん、だいじょうぶだよ」
だけど、こういうときのお姉ちゃんは、絶対に何も言ってくれないから。
少なくとも私じゃ聞き出すことはできないから。
がちゃり、ドアが閉ざされる。
私は、どうしたらいいんだろう。
お姉ちゃんのことと、ゆきちゃんに頼まれた今日のこと。どっちを考えたらいいんだろう。
そんなふうに迷ってみて、気付く。
私の“一番”は、もうお姉ちゃんじゃないんだ。そしてお姉ちゃんの“一番”も、もう私じゃない。
そんな当たり前のことが、今はただ悲しい。
「――んっ」
ぱちん、自分で自分のほっぺを叩く。
しっかりしなきゃ。
こんな気分で作ったお料理なんて、絶対においしくないに決まってる。
今は私も、目の前のことに集中しよう。
お姉ちゃんのことは、きっとこなちゃんがなんとかしてくれるから。私は私の、やるべきことを。
今はそれだけを考えるんだ。
151 :
23-49:2008/02/19(火) 19:35:04 ID:HAIJFuXR
以上です
ありがとうございました
9.11は不謹慎だったかも知れません
気分を悪くされたらごめんなさい
てか、みさゆたの頃の伏線を今さら回収とか阿呆すぎる
次はパテひよを予定
>>151 GJ !
みなゆたとこなかがの今後が気になる
つかさが成長していく様子がステキだ・・・
153 :
久留里:2008/02/19(火) 21:11:22 ID:3aS/W5pR
154 :
久留里:2008/02/19(火) 21:12:29 ID:3aS/W5pR
途中で送ってしまったorz
>>110から投下中にトラブルがあったため、先に保管庫に入れさせて頂きました。
>>151 GJ!!あなたのお話のファンなので、これからの展開に
期待させていただくと同時に精一杯応援させていただきますb
156 :
31-207:2008/02/19(火) 23:43:54 ID:BMwqlPxV
どうも、31-207です。前回の投下ではいろいろとすみませんでした。
また一作品書いたので、誰も投下予定がなければ投下させていただきます。
・メインはこなた、ゆたか、柊家の人たち
・エロなし
・特定のカプなどはなし
で、10レスほど使用させていただきます。
夏休みが始まったばかりのころ。
泉家にはかがみとつかさの姉妹がきていた。
家にはこなたの他にも従姉妹のゆたかがいて、四人でおしゃべりをしている。
学校のことや、家でのこと。
そんな中出てきた、ある会話。
「ゆたかちゃん、家でのこなちゃんってどんな感じ?」
「家でのこなたお姉ちゃん?」
「うん。こなちゃんって家事とかも結構できるし、面倒見が良さそうだから
家だときっとゆたかちゃんの良いお姉ちゃんになれてるのかなって思って」
「そうですね。料理とかも結構教えてくれるし、私のことも面倒見てくれるし、本当に頼れるお姉ちゃんっていう感じです」
「へえ、こなたでもゆたかちゃんの前だとちゃんとしたお姉さんになるんだ」
「もちろんだよ。ゆーちゃんは大切な妹みたいなものだからね」
「こなちゃんもゆたかちゃんのこと、大切にしてるんだね」
「そういうつかさ先輩のところも、やっぱり姉妹で仲は良いんですか?」
「そうだね。お姉ちゃんたちもみんな優しいし、家はかなり姉妹仲が良いほうだよ」
「あれ?『お姉ちゃんたち』って、かがみ先輩の上にもお姉さんがいるんですか?」
「そうよ。話したことなかったかしら。家には私たちの上に、さらに二人姉がいるのよ」
「へええ、そうなんですか。やっぱり家族が多いと、楽しいですか?」
「そうね。楽しいというか、賑やかというか、そんな感じよ」
「あ、そうだ。こなちゃん、明後日家にお泊りする予定だよね。その時にゆたかちゃんも一緒に来ない?」
「えっ、いいんですか?」
「うん。お母さんには私が言っておくから、大丈夫だよ。お姉ちゃんたちもいるし、きっと楽しいよ」
このような流れの下、つかさのいきなりな提案でゆたかも柊家へのお泊りに招待された。
本当にいきなりな話だったが、ゆたかの方も用事などはなかったためお泊りに参加することになった。
〜こなたとゆたか、柊家にお泊り〜
ピンポーン。
「はーい」
呼び鈴が鳴り、かがみとつかさの母親であるみきが玄関にでると、こなたとゆたかがいた。
「いらっしゃい、こなたちゃん。そして、ゆたかちゃんね。こんにちは」
「こんにちは。おばさん、今日はどうもお世話になります」
「いいのよ。今日は楽しんでいってね。それじゃ、あがってね」
「それじゃ、おじゃましまーす」
そう言って二人は柊家にあがる。
居間に行くと、かがみとつかさ、そしてその上の姉たちがいた。
「いらっしゃい、こなちゃん」
「あ、みんなこっちにいたんだ。今日はよろしく」
「こなたちゃん、いらっしゃい。そして、この子がこなたちゃんの従姉妹の…」
「はい。小早川ゆたかです。今日はお世話になります」
「つかさの言ってたように、可愛い子ね。私がいのりで、こっちがまつりよ。よろしくね」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
「それじゃ、かがみの部屋にでも行くとしますか」
「うん」
「それじゃ、あとで飲み物でももっていくわね」
「あ、ありがとうございます」
そうしてこなた、ゆたか、かがみ、つかさはかがみの部屋へと向かった。
かがみの部屋。みんながくつろいでいると、いのりが飲み物を持ってきた。
「みんな、飲み物持ってきたわよ」
「「ありがとうございます」」
「姉さん、ありがと」
「ありがとう、お姉ちゃん」
そう言ってみんなが飲み物を受け取る。
「そうだ、人数も多いしみんなでトランプでもしない?まつりお姉ちゃんも入れて」
つかさがそう提案した。
「お、いいね。みんなで六人かな?それだと、大富豪とかがいいかな」
「そうね。れじゃ、私がまつりを呼んでくるね」
そう言っていのりは飲み物を持ってきたお盆を置き、まつりを呼びにいった。
そして、少しするといのりがまつりを連れて戻ってきた。
「トランプかぁ。大富豪でもやるの?」
「うん。みんな知ってるし、六人でできるから」
「そうだね。言っておくけど、私けっこう強いよ?」
こなたがそう言う。こういったトランプなどのゲームもやはり自信があるようだ。
「こなたお姉ちゃんって、ゲームとかすごく強いんですよ」
ゆたかもこなたのゲームの強さを述べる。
「どうかしら。姉さんも私たちの中では一番強いのよ」
「そうね。でも、こういうのって運とかもあるから、いつも勝てるわけじゃないけどね」
そうしてみんなでゲームを始める。
六人の位置は時計回りに、いのり、まつり、かがみ、つかさ、こなた、ゆたかとなっている。
最初はみんな平民からで、普通にゲームが進む。
「う〜ん、それじゃ私はこれを8で切るね」
ゆたかが8を出し、カードを流す。
この『八切り』は、8を出せばカードを流すことができるというルールである。
「そういえばこの『八切り』とかって、だれが考えたのかな?」
つかさがふと疑問を抱く。
「そうだねぇ。大富豪は結構いろんなルールがあるから。八切りは割と知ってる人も多いけど、
ものによってはその地域だけのものだったり、学校で勝手にできたりするのもあるみたいだよ。
インターネットとかで探せば、かなりたくさんでてくるよ」
「そうなんだ、私、全然知らなかったよ」
「5のペア」
そう言ってゆたかが5のカードを二枚出す。
「そういえば私が高校の修学旅行でやったときも、いろいろあったなぁ。隣の部屋からも人を呼んだりして、
10人くらいになっちゃったから、二組のトランプでやったりとか」
まつりがそう言う。
「まあ、10人で一組のトランプだと一人五枚くらいになっちゃうしね。でも、それって大変じゃないの?」
「そうね。大富豪と富豪だけじゃ平民が四人もいてカード交換の意味がないから、さらに上にひとつ作って
平民二人にしたわね。ジョーカーも多いし、革命も起きやすいで、結構楽しかったわよ」
「へぇ〜」
「私、パス」
「姉さん、パスするの?それじゃ、私はKのペア!これでどうだ!!」
そう言ってまつりは威勢よくKを二枚出す。
まつりの手元にはあとカードが1枚だけ。これで誰も出せなければ勝ち、なのだが。
「あ、私2のペア」
こなたが言う。
「えっ、出せるの!?」
「こなちゃん、つよーい」
「よく六人でやってて2が二枚も揃うわね…」
「運も実力のうちだよ、かがみ。そして、革命!」
そう言ってこなたがジョーカーを入れて9の札で革命を起こす。こなたのカードはあと3と4の二枚。
ジョーカーは二枚とも既に出ているので、次で勝てる。そう思ったが――
「残念ね、こなたちゃん。革命返しよ」
いのりが出したのは、5が四枚。
「ええっ、ちょ、ちょっと待って!!」
「ダメよ。あとは、2を出して、最後に4を出して勝ちね」
「う…嘘……」
「あ、私あと一枚だから姉さんの次であがりね」
まつりもあがる。
「それじゃ、次が私ね。7よ」
「7かぁ。それじゃ、8」
つかさが8を出す。
「あれ、みんなパスなの?」
みんなが何とも言わないので、つかさがみんなに聞いた。
「ちがうわよ、つかさ。それ、8でしょ。八切りよ」
「あ、そっか。じゃあ、あと一枚だからこれであがりかあ」
そう言ってつかさもあがる。
「つかさ、それ気づいてて出したんじゃないの?」
「ちがうよ。八切りだって気付かなかったんだもん」
「さすがつかさっていう感じね」
「あとは、私の他にかがみとゆーちゃんか。こんなカードで勝てるわけないよ…」
そう言ってこなたが出したのは、3。
「こなたお姉ちゃん、ごめんね。私、あと2と6だけだから私もあがりなの」
「こなた、あとその一枚だけでしょ。それじゃ、3のペアを出して、最後にこのJを出せばあがりね」
「うぐ……」
初戦が終わり、勝った順に場所を移動する。
「あら、今回も強そうね」
「うぅ、ジョーカーと2を渡さなきゃいけないのか…」
今回も調子の良さそうないのりと、せっかくの強い札を渡さなければならないこなた。
「ちょっとかがみ、もっと良いカードを渡しなさいよ!」
「しょうがないじゃない、一番強いのがこれなんだから!」
そう言ってかがみが渡したのは9。
「あ〜もう、次は貧民ぐらいまで落ちるかも…」
まつりとかがみの二人は、カードの引きが最悪だったようだ。
「ゆたかちゃん、がんばろうね」
「はい!」
つかさとゆたかは平民のため特になにもなく、いたって平和的。
この調子で二回戦も始まる。
六人はそれからしばらく大富豪を楽しんだ。
大富豪をしばらくやった後、つかさが
「他にもこの人数でできるゲームってないかな?」
と言ったため、他にもいろいろなゲームをやった。
遊んだのは、ババ抜きやダウトといったみんなが知っていそうなものや、
殺しの七並べなどの少しマイナーなものなど、さまざまである。
「こなちゃん、ほんとにいろんな遊びを知ってるよね」
と、つかさも感心していた。
「まあね。前に何度か遊んだことがあって。それじゃ次は――」
こうして、時間が過ぎて行った。
「もうそろそろ、夕ごはんの時間ね」
もう長いことトランプで遊んだ後、いのりがそう言う。
「そうね。夕ごはん、今日は私が作るのよ」
とまつりが言う。
「それなら、私も手伝おっか」
「あ、私も〜」
「つかさ、私も手伝っていいかな?」
「あ、それなら私も手伝いたいです」
「いいと思うよ。ね、お姉ちゃん」
「もちろんよ。みんな、料理とか好きなのね」
「こなちゃんたち、料理とかすっごく上手いもんね」
「ところでさ、かがみ。この流れだとかがみも手伝うべきじゃないかと思うんだけど」
「わ、わかってるわよ。私も手伝えばいいんでしょ」
「さすがかがみ。それじゃ今日はかがみの料理の腕が実際どれほどのものか、見せてもらおうか」
「う、うるさいわね。苦手なものは苦手なんだから、しょうがないじゃない。
それに少し手伝うぐらいなんだから、そんなに料理の腕とか関係ないわよ」
「ところで、この人数だと多すぎないかしら?」
「大丈夫よ。それじゃ、みんなで作りましょ」
そう言ってみんなのお料理タイムが始まる。
「こなたちゃん、こっちの盛り付けをお願いできる?」
「わかりました!ゆーちゃん、いっしょにやろ」
「うん!ところで、今日はみんなで8人になるんだっけ?」
「あ、そうだね。じゃあこれとかもみんな8皿に分けるのか」
「家と違って、多いよね〜」
「うん。人数多くて、楽しそうだよね」
台所からは、六人の楽しそうな会話が聞こえてくる。
「お姉ちゃん、こっちのお肉焼けたみたい」
「わかったわ。それじゃ、次はこっちを作るから手伝って」
「うん」
「まつりお姉さん、こっちも終わりました」
「ありがとう。それじゃ、かがみの方を手伝って」
「わかりました。……ところで、かがみはさっきから長いこと何をしてるんですか?」
「そこらへんの野菜を切っておいて、って頼んだだけだけど…」
「かがみ、どうやったらそんなに時間かかるの?」
「うるさいわね。ちょっと手間取ってるだけよ」
「まったく。ちょっと包丁貸してよ」
「いいわよ。――こなた、結構上手いわね」
「本当ね。かがみよりもずっと上手いっていう感じね」
「まあ、普段から料理とか作ってますから」
「私もお姉ちゃんにいろいろ教えてもらってから、だいぶ上手くなったんですよ」
「かがみも、もっと料理はできるようになったほうがいいと思うよ。
つかさもお姉さんたちもみんな得意なんだし、教えてもらったりしてさ」
「わかってるわよ。だけど、昔から料理はなんか苦手みたいで――」
「お姉ちゃん、こっちもできたたよ〜」
「それじゃみんな、そっちに持って行って」
「はーい」
夕ごはんの時間。食卓にはいつもより多い、八人分の料理が置かれている。
「「「「「「「「いただきまーす」」」」」」」」
みんなが一斉に言う。
「お父さん、今日の料理は私が作ったんだよ」
「そういえばこの料理、前にも作っていたね。こなたちゃんたちにも食べてもらいたかったのかな」
「うん。この前友達に教えてもらって作った時、とても美味しかったから」
「そうそう、今日はこなたちゃんたちも手伝ってくれたのよ」
「本当かい?こなたちゃんにゆたかちゃん、せっかく遊びに来てくれたのに悪いね」
「そんなことないですよ。普段から料理とかしてますし、結構楽しいですから」
「見ていると、この中ではかがみが一番苦手いたいね」
「そ、そんなことないわよ。ちょっと手伝ったぐらいじゃ、料理がうまいかなんてわからないじゃない」
「だけど、こなたちゃん、料理するのに慣れてるって感じだったわよ。ゆたかちゃんもね」
「ありがとうございます。だけど、まだまだこなたお姉ちゃんほどじゃないですよ」
「ゆたかちゃん、お料理はこなちゃんに教わったんだよね」
「はい。こなたお姉ちゃん、料理とか家事とかいろいろできるんですよ。私もそのおかげで上手くなったという感じです」
「ゆたかちゃんと一緒だと、こなたちゃんでも『お姉ちゃん』っていう感じね」
「まつり、失礼よ」
「あ、ゴメンゴメン」
今日の柊家の夕食は会話も弾み、いつもより賑やかなものだった。
「「「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」」」
夕食が終わり、みんなが食器を片づける。
「こなたちゃんたち、食器は私たちが洗うから先にお風呂に入ってて」
「わかりました。それじゃ、そうします。ゆーちゃん、はいろ」
「うん。それじゃ、先に入ります」
そう言って二人はお風呂に入った。
こなたとゆたかがお風呂から上がった後は、食器洗いの済んだ柊姉妹が順にお風呂に入った。
そして、いまはみんなで居間でくつろいでいるところ。
「そういえばこなたちゃんたち、どこで寝るの?」
「私とつかさの部屋でいいんしゃない?床に布団敷いてさ」
「そうだね。そうすると、こなちゃんにゆたかちゃん、どっちの部屋がいい?」
「私、かがみの方がいい!」
「それじゃゆたかちゃんの方は、つかさといっしょでいい?」
「いいですよ。私、つかさ先輩とは結構気が合うみたいで、一緒にいて楽しいですし」
「そうだね。私も妹がいるみたいで、嬉しいな」
その会話を聞いていたまつりは、ふいに
「そういえば私がこの前借りた映画があるんだけど、みんなで見ない」
と提案した。
「どういう内容ですか?」
「夏といったら、ホラーが定番でしょ!ものすごく怖いやつで、今の時期にピッタリよ」
それを聞いたつかさとゆたかは、顔から血の気がさあっと引いていった。
「お、お姉ちゃん、私、パスする…」
「私も、怖いのダメで…」
「まつり、それ冗談でしょ。ゆたかちゃんまで怖がってるじゃない」
「あ、バレた?ちょっとつかさを脅かしたかっただけよ」
「「な、なあんだ…」」
つかさとゆたかは映画を見てもいないのに、かなり脅えていたようだった。
その後こなたとゆたか、かがみ、つかさの四人はかがみの部屋でアルバムを見ている。
「小さい頃の先輩たち、とても可愛いですね」
「そうだね。お、こっちの写真はみんなで神社の仕事をしている時かな?」
「そうね。私たちが初めてこの服を着たときのやつよ。このころは、簡単な仕事からやらせてもらってたわね」
「お姉ちゃんたちに教えてもらいながらね。お守りとかの販売はまだずっと先だよ」
「これ、いのりお姉さんとまつりお姉さんですか?こう見てみると、先輩たちと目元がよく似てますね」
「そうね、よく言われるわ。いのり姉さんと私がお母さん似で、まつり姉さんとつかさがお父さん似だって」
「それじゃ、もっと先の方を……これ、峰岸さんとみさきちかな?」
「ああ、これは中学の時ね」
「お姉ちゃんとこの二人って、中学から五年間もずっと一緒のクラスなんだよ」
「五年間も同じクラスって、よっぽど運が良いんじゃないですか?」
「そうね。腐れ縁ってやつかしら」
「そんなこともあるもんだねー」
「二人とも家が近いし、家の神社のお祭りとかにもよく来てくれるんだよ」
「ねぇ、もっと先も見てみようよ」
「うん。えーと……このへんからが高校生になってからのやつだと思うよ」
「これは入学式の時のね」
「こっちの写真、一年の時にみゆきさんも入れて四人でとったやつだよね」
みんなはゆっくりとページをめくり、柊家の写真を見ていく。
学校の友達との写真や家族の写真など、アルバムにはさまざまな写真があった。
アルバムを見ている最中、ゆたかが
「先輩、トイレ借ります」
と言い、部屋を出て行った。
ゆたかが部屋を出て行ったところで、こなたがつかさに
「ところでつかさ、さっきのやつ冗談でよかったよね」
と話しかける。
「え?何が?」
「まつりお姉さんの、映画の話。つかさ、去年くらいに行ってたよね。ホラーの映画とか見ると、ついかがみのところへ
行っちゃうって。今日はゆーちゃんと一緒に寝るって言ったんだから、かがみのところへ潜り込むわけにもいかないでしょ」
「あ、うん。でもね、この時期になるとまつりお姉ちゃんがそういうの結構借りてくるから、本当に怖かったんだよ」
「つかさ、怖いなら見なくてもいいんじゃないの?」
「そうだけど、みんなで見てるとつい見ちゃうんだよね。怖いってわかってるのに」
「もしかしてさ、つかさが怖がるの見たくてそういうの借りてくるんじゃない?」
「そうなのかなぁ…」
「あるいは、『もう高校生でしょ』とか『この時期、暑いじゃない』とか言いつつも結局は『もう、しょうがないわね』
って言って一緒に寝てあげるかがみのツンデレな面をみたいとか」
「あんたじゃないんだから。それに、それってあまりツンデレと関係ないでしょ」
「う〜ん。それじゃ、ひよりんみたいに、妹が姉の布団に潜り込んであんなコトやこんなコトをするのを妄そ――」
「ななななな何言ってるのよ! そんなこと、してないってば!!」
「そっ、そうだよ、こなちゃん! 寝るときに軽くキスとかするぐらいだよ!!」
「――あれ?」
「何の話ですか?」
「「うひゃあ!!」」
ゆたかがトイレから戻ってきていた。
「ななな、なんでもないわよ!」
「そうそう!」
「そ、そうだ!そろそろ寝よ、ゆーちゃん!」
「こなたお姉ちゃんたち、何か変だよ?どうかしたの?」
「なんでもないから!ねっ、ゆーちゃん!」
「そうなの?まあ、いいか。それじゃつかさ先輩、寝ませんか」
「う、うん。そうしよ!」
こうしてつかさとゆたかは隣のつかさの部屋へと移動する。
かがみの部屋。
つかさとゆたかはつかさの部屋に行き、今いるのはかがみとこなたの二人。
「かがみ、さっきの……」
「うるさい!いいじゃない、姉妹同士なんだから。ほら、さっさと布団敷くわよ」
「ねぇかがみ、床に布団敷くんじゃなくて、一緒に寝てもいいかな?」
「なに言ってるのよ。夏なんだし、暑いじゃない。それに少し狭いわよ」
「今日は結構涼しいから平気だよ。それに、つかさとも寝てるんだから少しくらい狭くても大丈夫でしょ。私身体小さいし」
「自分で言うか、それ。第一、あんたと一緒に寝ると何されるかわからないじゃない」
「ほーう。かがみ、何をされるかって、具体的にどういうコトをされるとマズイのかな?」
「言えるかっ!去年の冬にこなたの家に泊まったときだって――」
「あれぐらいはいいじゃん。つかさも結局起きなかったし。それで、一緒に寝てくれないの?」
「断るわ。布団敷くわよ」
「つかさとは一緒に寝てあげるのに、かがみのけちんぼ。いいもん、かがみが寝たらそっちに潜りこむから」
「させるかっ!」
いつも通りの騒がしい二人。
そして、つかさの部屋。
こっちにはつかさとゆたかの二人。
「つかさ先輩、その……せっかく泊りに来たんだし、一緒に寝てもいいですか?」
「いいけど、少し暑いかもしれないよ?」
「大丈夫です。誰かと一緒に寝てると、安心できるというか、ほっとしますし」
「あ、それ、わかるよね。私もお姉ちゃんと寝るときとか、そうだよ。それじゃ一緒に寝よ、ゆたかちゃん」
「ありがとうございます!」
こうしてゆたかはつかさと一緒にベッドに入る。
ベッドで寝る二人。
「それより先輩、さっきは何を話していたんですか?」
「あ、あれは、その……」
ゆたかの質問につかさは、しどろもどろになる。
「その?」
「ええっと……」
「ふふっ」
つかさの慌てように、軽く笑うゆたか。
こうして夜は更けていく。
朝。ゆたかが目を覚ますと、隣にはつかさが寝ていた。
「えいっ」
ぷに、とゆたかがつかさの頬を軽くつつく。つかさもそれで目を覚ました。
「おはようございます、先輩」
「あ、ゆたかちゃん、おはよ〜」
つかさが眠たそうに返事をする。
「もう、朝ですよ」
「そうだね。それじゃあ、着替えてご飯にしよっか」
「はい!」
そして二人が着替えを済ませ、一階へと降りていく。
下に行くと、こなたとかがみ、いのり、まつりの四人が既にいた。
「あ、二人ともおはよう」
「うん、おはよう」
「おはようございます」
「みんな起きたし、ご飯にしようか」
そう言ってみんなで朝食を食べ始める。
朝食を食べた後は、しばらく六人で遊んだ。
その後、神社のほうを見てみたいというゆたかの意見で、神社の見学。
ここの神主であるただおも
「別にかまわないよ。よかったら案内でもしようか」
と言い、みんなで神社を回ることにした。
「ここには文化財とかを置いてあるんだよ。この銅製の鏡はこの神社に古くから伝わるもので――」
「こっちにある古文書は、幕府からの手紙や武士の書いた文書で――」
神社について説明ながら案内をするただお。
「なんかさ、社会見学かなんかみたいだね」
「そうだね。私たちは何回も見ているし、見慣れてるものだけどね」
「お父さんもこうして説明しているの、嬉しいんじゃないかしら。神社を見てみたい、なんて言ってもらえて」
「この記念碑は――」
ただおの案内は、しばらく続く。
ただおの案内が終わり、家に戻る最中。
「そういえば、ここの夏祭りっていつだっけ?」
「今度の日曜ね。こなたちゃんにゆたかちゃん、来ない?」
「はい!ぜひ行きたいです。いいよね、お姉ちゃん?」」
「うん。去年はいけなかったし、今年は行こうかな。みゆきさんとかも誘ってさ」
「それじゃ私もみなみちゃんたちを誘って――」
後日、この神社の夏祭りにはこなたやゆたかの友人たちが集まることになる。
ちなみに、その時に集まった友人たちとは後に学園祭で一緒にチアをやることにもなるのである。
その後もみんなで楽しい時間を過ごし、こなたとゆたかが帰る時間となった。
「こなちゃんにゆたかちゃん、お泊り、楽しかった?」
「はい。とても楽しかったです。二日間、いろいろとありがとうございました」
「また遊びに来てね、二人とも」
「それじゃ、その時には怖い映画でも――」
「やめなさいって、まつり」
「夏祭りにも来てね、二人とも」
「うん。それじゃまたね」
そう言って二人は柊家から帰っていく。
家に帰り、とても楽しかったよ、とそうじろうに話す二人。
柊家へのお泊まりは、こなたとゆたかにとって夏休みの楽しい体験となったようだった。
―End
167 :
31-207:2008/02/19(火) 23:57:12 ID:BMwqlPxV
以上です。読んでくださった方、ありがとうございます。
ちなみに、寝る前のゆたかの問いは、トイレから戻るとなぜか動揺しまくっていたかがみとつかさ
に純粋に疑問をもっただけなのか。
それとも、
「そんなに慌てなくてもいいんですよ、先輩。つかさ先輩はいつもかがみ先輩にこんなコトとかしてもらってるんですよね」
「ココもかがみ先輩に弄ってもらったりするんですか?」
と続く、三人のやりとりをしっかりと聞いていた、少し黒めなゆたかの言葉なのか。
どうとるかはご自由にどうぞ、ということで。
みゆきさんはハブられる宿命にあるんだなあ
>167
リアルタイムでぐっじょぶ
ほのぼのしてて良かったです。
ゆーちゃんは小悪魔的ポジションが似合うかなw
ゆーちゃんがつかさにエッチなことをすると聞いてGJ
>>135 あーこれ確か、PEPSIかなんかのプロモで使われてたやつだー
>>171 Pic tapsですな。
自分も出た当初は色々描いて遊んだものですわ…
173 :
みゆき:2008/02/20(水) 01:00:10 ID:z+avQl+/
(´・ω・`)<アノトキ、ベツヨウガアッタノデス、ハブラレタワケデハアリマセン・・・
>>135のBGMが耳から離れず、大量のかなたさんが網膜に焼き付いてるんだが…
寝られるのか、俺(´・ω・)
175 :
まだry:2008/02/20(水) 02:08:08 ID:XABzocYw
>>135 って、エンドレス?終わりって…ないよね?
妙に中毒になりそなBGMその他。
さて、寝付けない人もいるみたいだし…
続き、行きますね。
「さって、後片付けも終了っと」
こなたが振り返る。
「おぅ、おつかれ!!んじゃ、次は、桃鉄でもやるか?」
そうじろうが声をかける。
「桃鉄かぁ〜、スピードが関係ないゲームなら負けないわよ?」
かなたが意気込む。
「お母さん、何気に燃えてるね、わたしもゲームに関しては誰にも負けないよ!!」
なんだかよくわからないが嬉しくなってくるこなた。
一同が再びPCエンジンの前に座る。
説明書を見ていたかなたが
「あら?随分とルールが変わってるのね」
ボソっと言う。
「ん〜?そういや、そうだったっけ?」
そうじろうが聞き返す。
「結構いろいろ…まずは慣れないといけないわね」
説明書を食い入るように読みふける。
「まぁまぁ、とりあえずはじめてみて判らない部分は説明するからさ、まずは練習がてらやってみよう」
こなたが、ゲームをスタートさせる。
「そうね。やりながらの方がわかり易いわね」
システムの違いに慣れてきたかなたが、徐々に強さを見せ始める。
「うぉっ…わ、わたしがゲームで遅れを取ろうとは…」
意外な強さに舌を巻くこなた。
「へへん♪」
得意気なかなた。
「かなたはサイコロの目のの出方が昔から異様においしいんだよな。正直ありえねーとか思うけど
ほぼ狙った所に行けちゃうんだよな。目押しが可能なのか?と思うほどだよ」
そうじろうが解説する。
「カードの引きも良いよね。デビルカードほとんど引かないし。カード使うタイミングも絶妙だし」
こなたが感心する。
「でも、ゆいちゃんも強かったわよねぇ〜」
かなたが当時の事を思い出す。
「ん〜あれも異常だったな。俺とゆきがいつもどべ争いだったもんな」
「な、なんと!!ゆい姉さんってば…いまや片鱗も無いというのに…もっいないなぁ〜」
こなたが驚きつつ、ため息をつく。
「もったいないって…おいおい」
そうじろうが突っ込む。
「いや、だってさ…強いライバルがいた方がより強くなれる訳じゃん。今んとこお父さんしかライバルがいないからね」
こなたが、ムフーッと主張する。
「ライバルって…はは…柊さんちのかがみちゃんじゃだめなのか?」
そうじろうが切り返してみる。
「ん〜かがみじゃ〜いまいちねぇ〜…勝てて当たり前で、どんだけ手こずらないかが勝負な状態だからねぇ〜」
のほほんとした表情のまま、サラっと返される。
「しかし、この貧乏神って、いやらしいわね…」
そうじろうにくっついてる貧乏神を見てて切実に思うかなた。
「あははは…まだ可愛い方なんだけどなこいつは。最近の桃鉄だと貧乏神が進化したりして半端なくエグイな」
すでに、勝負を放棄しかかっているそうじろう。
「お父さん…もしかしてあきらめてる?」
察知したこなたが聞いてみる。
「ああ…もう無理だろ…これ…ずーーーっと俺じゃん、ボンビーが取り憑いてんの…一矢報いてやりたいが…
カードすらまともなのが取れねぇし…」
ずぅぅぅんと沈み込むそうじろう。
「ま、いいさ。今日は、俺が貧乏くじ引くべきなんだろうし。それにまだまだ夕飯まで時間はある。次だ、次!!」
カッと目を見開き顔を持ち上げる。
「じゃ、次はNPCでも入れて貧乏神対策でもする?」
こなたがしょうがないなといった感じで聞く。
「いや、ガチンコでやるからこそ楽しいんじゃないか!!ガチでいくぞガチで!!」
ハフンハフンッと息が荒くなる。
「お、お父さん?」
「そう君?」
そうじろうが放心している。
「……1度も勝てないとは…ぐんにょり…」
コントローラーを握りしめがっくりうなだれる。
目的地へのゴールそのものは何度か勝てたが、トータルでは未勝利に終わった。
「ははは…ま、こなたとかなたが楽しめればそれで…実際楽しかったしな…はは……」
力なく笑みを浮かべる。
「久しぶりにマジ凹みしてますね?」
こなたが意地悪げに聞く。
「10回やって1回も勝てないのはさすがに凹むよ」
苦笑いのそうじろう。
「ふふ、そう君ってば…」
すっとそうじろうの隣りに座り直し、頭をなでてあげるかなた。
「……なははは…なんか…なつかしいな…」
ほおをぽりぽり照れ隠しにかく、そうじろう。
「そうね、昔、落ち込んでたときに良くやったわね」
立ち上がってそうじろうの後ろにまわり、床に座ったままのそうじろうの肩の上から腕を回し、おんぶされるようなカッコ
で、抱きつく。ちょうど、そうじろうの顔とかなたの顔が横に並んでいるようになった。
そうじろうに、そのまま頬寄せる。
「そう君…へへへ…どうしようもなく落ち込んだときにはこんな事もしてたわね〜」
(あぁほんわかいいムードなんだけど、もしもーーーし、おふたりさーーーん、目の前の娘はまたもやスルーですかー)
忘れ去られた感のあるこなたが、それもまぁ悪くはないかな?という風にニマニマと静かに見つめている。
溶けそうな笑顔のかなたと、ニマニマ顔のこながの目がふと合う。
「…あ、あ、こなた…あらら、なんか、ごめんなさいね…ついつい…ね…」
「んぁ〜〜いいっていいって、そのまま、そのまま。お父さんとお母さんの仲がいいって嬉しいものだよ。子供として」
「ふふふ…それじゃ…お言葉に甘えて…」
一度離れかかったかなたが再び、そうじろうの背中におぶさるようにして抱きつく。
「ははは……そんな風にこなたに見つめられちゃうと、なぁ〜んかはずかしいなぁ〜」
そうじろうがらしくもなく赤くなり照れる。
「普段やってる、あ〜んなことやこ〜んなことは恥ずかしくないんだ」
こなたの鋭い突っ込みが炸裂する。
「ちょっっっっ、なぁんてこと言うかな?それに恥ずかしいことではあるまい。単なる趣味だ趣味。
隠すようなことでもないしな。別にやましいことをしている訳でも犯罪行為をしている訳でもないしな」
そうじろうが力説する。
「おろ……いや〜そう言われるとそうなんだろうけど……」
そうじろうの斜め上を行く返答に、こなたが突っ込みあぐねる。
「ふふ…無駄よこなた。そう君の趣味は…昔からだし、恥ずかしいとかの前に変だってことに気がついてないし
……まぁ、お母さんも明らかに’おかしい’と気がついたのは結婚してしばらくしてからなんだけど」
かなたが、はぁ〜とため息。
「いや…その…世間様からズレてる自覚は昔からちゃんとありましたよ…えぇ…」
そうじろうが、申し訳なさそうに消え入りそうな声で申告する。
「お父さん、ちゃんと自覚はしてたんだねぇって、え”っ!?お母さん、そんな、結婚するまで全く気がつかなかったとな?」
んなあふぉな!と、こなたが目を丸くする。
「ん〜〜それまでは、ちょっとズレてるかなぁくらいにしか思ってなかったの」
「ちょっとって…今と大して変わってないんでしょ?基本的には」
「そうね、変わってないわ。ここまで物とか多くはなかったけど…」
「それじゃぁ…ちょっとどころかだいぶズレまくりだと思うんだけど…」
かなたもまた斜め上の返答をしだし、驚きの連続のこなた。
「う〜〜ん…お母さん、世間とかそういったことに少し疎くってね…あまり気にしてなかったというか、なんというか」
驚きでお口あんぐりなこなたに対して、当時の事を思い出しつつのほほんと答えるかなた。
「お母さんも、ある意味ズレてるんだね…ズレてる同士、似た者カップルでもあったのか…」
驚いたまんまの表情ながらなんだか納得しだすこなた。
「そうね…お母さんもちょっとズレてたかも…でも結婚してだいぶ世間の事とかわかるようにはなったつもりよ?」
そうじろうの肩にあごをのせたまま苦笑い。
「んん〜まぁ…今のお母さんは普通の常識人だとは思うけどさ、意外というかなんというか、昔からしっかりしてるのか
と思ってたけど、そうでもなかったっていうか、いやーははは…」
頭の後ろに手を組みつつ、困った笑顔を浮かべるこなた。
「あ、あれ?俺の趣味を理解してくれてるのかなぁ〜とか思ってたけど…」
そうじろうが、薄氷を踏む思いでそろーり静かに聞いてみる。
「いえ、これっぽっちも」
かなたが、頭を左右に振りながらそれは無いとそうじろうの耳元ではっきりと言う。
「はははは………やっぱし…」
そうじろうの頭がカックンと落ちる。
「そう君の趣味はよくわからない…理解できない…ごめんなさい、でもどうしようもないわ、わからないものは
わからないんだもの。でもね、別にそんなの気にしてないから」
「へ?」
そうじろうが頭を上げすぐそばに…自分の肩に頭を乗っけてるかなたのことを見つめる。
「どんな趣味であっても、そう君はそう君だから」
赤くなりつつ、えへっとそうじろうを見つめ返し答えるかなた。
「はは…そうか…ははは…ありがと、かなた」
「えへへへ、どういたしまして。趣味のことは理解できないけど、それ以外のことなら…ね」
抱きついている腕に再び力を込めるかなた。
「あはは〜〜……ごちそうさま…かな?お父さんにお母さん」
あちこちこそばゆくなるこなた。
「そういえばさ、さっきどうしようもなく落ち込んだ時って言ってたけど、それってどんな時なの?原稿落とした時?」
こなたがなんとなく質問してみる。
「いや〜落とすもなにも、当時連載もってなかったし。そもそも、まだまだ今で言う同人作家のレベルだったからな。
いろんな物に投稿していてんだが、なかなか入選しなくてな。あと一歩ってな評価が多くてな、ははは…
書いても書いても落ちると、さすがに…な…多分そこら辺の時だな」
当時を懐かしむように、そうじろうが答える。
「そうね、その位の時期ね。特に小説の某新人賞に落ちたときが、もうどうしようもなくてね」
かなたも懐かしむようにそうじろうの言葉に付け足す。
「ん〜あの時はなぁ〜ショックでかかったな。いろんな意味で」
「佳作すら貰えなかったものね…名前すら載らなかったのはあの時が初めてよね」
今となってはいい思い出なのか、二人とも笑顔で過去の話しをする。
「わたしも原稿のチェックしてたんだけどね…ダメだったのよね」
「推敲や校正してもらってたけど、有名どこは壁が厚かったよな。さすがに」
二人してため息。
「でもな、実はあんとき書いた原稿を加藤さんが目にする機会があってな、あれをベースに書き直したのが有ったり
するんだな、これが。しかも、思いの他ヒットしちゃって、今でも続いてたりするし」
意外な顛末を語る。
「今でも?…そういや、お父さんの小説って10年以上続いてるシリーズものが結構あるよね。どれだ?」
こなたがふーむと考える。
「あら?こなたも読んでるの?そう君の小説」
かなたが意外ねぇと聞いてみる。
「いや、別に…お父さんの小説は文字ばかりというか…堅苦しい普通の小説だから、あまり…その…」
バツが悪そうに答えるこなた。
「文字ばかりの小説って…当たり前じゃない?…普段のそう君とは180°反対のまじめな文章だけど堅いというほど
お堅い文章ではないわよ?小難しい表現を敢えて避けるように書いてるくらいだし」
もはや、作家の1ファンとなっているかなた。
「お父さんの作品の最初のファンはお母さんってところか」
にやにや〜とこなたが微笑む。
「へへへへ〜まぁね」
かなたも、にやりと微笑む。
「普段と正反対って…なはは〜加藤さんにも最初、んなこといわれたな」
あちゃーっと苦笑いのそうじろう。
「みんなそう思うんだね。かがみもみゆきさんもお父さんの書いた小説結構持ってるって言ってたけど、
かがみなんて、最初、信じてくれなかったくらいだし。内容と本人のギャプがありすぎるって」
にやにやにや〜とそうじろうにも微笑む。
「あははははは…そいつは否定できんな。ま、普段のこんなのもお父さんだし、『作家 泉そうじろう』もまた
お父さんさ。どちらもお父さんであることには変わらんさ」
「お父さん、かっこいいこと言うねぇ…でも、自分の言葉に照れるのはどうかな?」
にやりと突っ込むこなたと自分のセリフに照れてるそうじろう。
「…いつまでそうやっておぶさってるの?お母さん?」
こなたが何気に聞いてみる。
「ずっと」
「……ぉぅ…ストレートですな…しかも即答ですか…」
ちょっとびっくりなこなた。
「いやーね、冗談よ。でも、半分ほんと。こなたも早くいい人が見つかるといいわね」
きゅっとそうじろうを抱く腕に力を入れつつ、いたずらっぽくかなたが答える。
「そんなこというと、またお父さんが拗ねちゃうよ」
こなたがそうじろうを見つつ苦笑い。
「いやいや、そんなことは…ま、複雑だな、正直。こなたには幸せになって欲しい…でも居なくなるのも寂しい…
ん?そうか、婿養子をもらえばいいんじゃないか!!」
これは名案とばかりに表情が明るくなるそうじろう。
「はぁ〜…そうそう、上手く行く訳がないじゃん」
「だよな…ま、最低限、経済的にしっかりしてるのが条件だな」
そうじろうがため息まじりに自分の考えを述べる。
「そういうお父さんは、どうだったの?経済的にしっかりしてたの?」
「うぐっ、鋭いとこつっこむなぁ」
「いやだってさ、売れっ子の作家の売れてない下積み時代の話しとかごろごろころがってるじゃん」
「まーさっきのダメダメ落ち込みまくり時代がそれに当たるんだけどな。だからなんだけどさ、経済的にっての。
かなたもパートで働いてたし、お父さんも塾で講師してたよ。喰いっぱぐれないように教員免許も持ってたしな。
作家だけだとあまりにも将来が危険なんでな、そこら辺はしっかり押さえてあったさ。それでも、1DKの安アパートが
精一杯だったな。掲載がぼちぼち決まり出してからでも塾の講師は続けてたよ。こなたにはそんな苦労はして
欲しくないんだ…んまぁあれはあれで楽しかったような気もするがな。今となってはってとこなんだけどな」
当時を懐かしむように目を瞑る。
「気がするんじゃなくて、間違いなく楽しかったわ」
かなたが同じく当時を思い出しながら目を細めてこなたに言う。
「ああ楽しかったな。そもそも、かなたと一緒ならどこに住もうと楽しい訳だしな」
「あらあら…ふふ…わたしだって、そう君となら…ね」
二人が当時を振り返る。
「でもな、先が見えない時期が続いた時は、さすがに辛かったけどな」
顎に手をあて、苦しげにつぶやく。
「某有名新人賞、2回目に落ちた時に別れるって言い出したことがあったわね」
かなたがそうじろうを覗きこむように言う。
「あぁ…あったな」
「ショックだったわ、あの時は」
かなたが微妙に目を伏せる。
「…俺もどうにかしてた。でも、あの後のかなたの言葉がな…」
そう言って天を仰ぐ。
「やっそっその…あ、あの時は…必死だったし…」
そうじろうを見つめつつ言葉が途絶え、真っ赤になる。
「お母さん?なんて言ったの?」
こなたが突っ込む。
「あ…いや……その………聞かなかったことには…できないわよね…」
かなたがわたわたしだす。
「さすがにそんな訳にはいかないって。めっさ気になるじゃん」
さらに突っ込む。
真っ赤になって石化するかなたに代りそうじろうが答える。
「そう君が一人立ちできるまで、ずっとそばにいて支えてあげる。独り立ちできたらそのときにわたしが支えてもらう
一人じゃ無理でも、二人ならきっと出来る。だから、あきらめないで、小説もわたしも…ってな。」
そうじろうが赤くなりながら力強く言う。
「おお〜、お母さん!言うねぇ〜小説もわたしもあきらめないでなんてクサいセリフ」
こなたが驚嘆する。
真っ赤になり下を俯くばかりのかなたが、ぼそぼそっと話しだす。
「……だって、ず〜っとそう君のそばに居たかったんだもん……でもね、あのときは本当に心配だったんだから!!
『本気なの?』って聞いても返事してくれないし。返事したかと思えば、結婚の話はなかった事にして、俺と別れて
他の人と幸せになってくれ!!なんて言いだすし…だから、…だからわたしもわたしなりの覚悟を伝えたの…」
相変わらず下を向いたまま恥ずかしげに話す。
「…あの後かなた、泣き出しちゃったんだよな…それで我に返ってな…、なかなか泣き止んでくれないかなたに
反省してしまったよ。あのときは……スマン…」
そうじろうが深々と頭を下げる。
「……まともに収入も無いのに…生活のあてもないのに結婚してくれなんて……言えるわけないじゃないか。一番大事な人だからこそ苦労をかけたくなかったんだ!!」
そうじろうが当時の心境を吐露する。
「ななななな!なんと!!お父さんから別れを切り出すなんて!!今からはちょーっと考えられないよね」
こなたが再び驚く。
「ははは…プロポーズしてはみたものの、新人賞に入賞できる程度の実力がないと連載なんてもらえないし、そうなると
経済的に目処が立たないわけだしな…ただな、自信はあったんだ。…たはは、今考えると何の根拠もない自信でな…
ただの思い上がりだったんだが、思いっきりそのくだらない自信を打ち砕かれてな、もうダメダメモード突入で…
なははは…今考えると、なんて恐ろしいことを口走ってんだか俺は!!ってとこだ」
そうじろうが恥ずかしげに頭をかきながら、申し訳なさそうに言う。
「…でも、そう君、教員免許持ってたんだから、別に生活のあてがない訳じゃなかったのよね…」
かなたが、でもそういえば…と思い出したようにつぶやく。
「あはははは、落選がショックで完璧に忘れてたんだよな。それ」
照れ笑いしつつ面目ないっといった面持ちで自分の頭をポンっと叩く。
「ま、わたしも動揺しちゃってて、そのことどっかいっちゃって気がつかなかったんだけど」
かなたも照れ笑い。
「今考えると、なんであんな事で悩んでたんだろな…青かったよな…でも、かなた、あのとき別れないで支えてくれて
ほんと、ありがと。おかげで今がある。感謝してもしても、しきれない。愛してるよ、かなた」
「ずぅーっと一緒にいるって決めたんだもん、当然の事をしたまでよ…ふふ、わたしだって愛してるんだから、そう君」
そしてふたり、目を見合わせて沈黙してしまう。
(あぁ〜もう…結局なにが言いたかったのやら…)
そんなやり取りを見ていたこなたもほんのり赤くなる。
182 :
まだry:2008/02/20(水) 02:13:07 ID:XABzocYw
とりあえず、ここまでです。
では、また。
「おとーさんおかーさんすてきすぎだばだば」
「二人の姿みてまたファンとして惚れ直しましただばだば」
「ごふうふうにょ〜んだばだば」
「みなさん私の専売特許とらないでくださいだばだば。それはそうと、
このようなすばらしい物を書いてくださる
>>182はGJですだばだば」
「そ…そう君…例の病気が…」
「あ、ああ、どうやらいま、対象は『俺たち』らしいぞ…」
>>167 ほのぼのしててGJなのです。
こなたとゆたかが二人同時にお泊まり、それはつまり泉家から二人がいなくなるってことだから…
5巻P90の「ホームアローン」のしょんぼりそうじろうがなぜか頭に浮かんでしまった。
186 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 02:48:02 ID:RH2AQWsr
「ヒヨリ、 や ら な い か」
パティはそういって、スカートのジッパーを下げて
下着越しに自己主張したモノを見せ付けてk(ry
「トコロでワタシのモノを見てクダサイ。
コイツをドウ思うデスカ?」
「…すごく、大きいッス…」
朝から何を書いているんだ俺は…orz
>>182 ほのぼのまったりぐっじょぶ!
売れてない頃のそうじろうさんの打ち明け話がいい感じに青春ですなー。
ああ、なんて楽しい2月の「夏休み」。むしろ1年くらい夏でも構いませんとも。
>>167 てっきりこなたとかがみの熱い夜と
つかさとゆたかの熱い夜がそれぞれの部屋で展開されると思ってしまった
謝罪と賠償(ry
>>168 というより、こういうほのぼのまったり系の環境下では、なかなか動かしにくいんだよね、みゆきさんって。
逆に、シリアス系とか頭脳戦で本領発揮。
>>183 そう×かな☆フェチktkr
てかGJ!
その「佳作すら入らなかった」時ってのが、22話の寿司屋なわけね。
ほのぼの2連発…あぁ…癒される。
これから軽い話を投下いたします。
・非エロ
・3レス
こなたはオタクだ。それもオタクの中でも最高レベルの知識を持つ重度のオタクだ。
みゆきは知識を得ることそのものを趣味としていて、他人の趣味に偏見を持たない。
つかさは話すことに積極的ではなく、他人の会話を邪魔するようなことはしない。
私は普通。こなたになんとなく話をあわせられる程度でしかない。
というわけで、私たち四人の会話は今時の女子高生とは傾向が異なることが多い。
「だからさ、かがみだってオタクじゃん。ラノベ読むし」
「勝手に人をオタクにすんな。フルメタだって普通に面白いわよ」
クラスの誰かが聞いていないかどうか気になって、教室を見回した。誰だか知らない相手に
オタクと同一視されるのはご勘弁願いたい。
「オタクはみんなそう言うんだよ。Fateは文学だとかCLANNADは人生だとか」
「いや、それもどうよ。私はそんなこと言わないし」
「個人の判断にもよりますが完成度の高い作品なら誉められて然るべきだと思いますよ」
みゆきの笑顔からは邪気だとか皮肉だとかいったものは感じられない。
「おお、みゆきさんが言うと正論のように聞こえる」
「私だとダメなのかよ……」
こなたはどうしても私をオタクに認定したいらしい。
「そういえば、つかさはフルメタって知ってる?」
「お姉ちゃんが持ってる人形がそのキャラってことくらいしか……」
まあ普通は知らないでしょうね。――そうわかっていても、妹にはもう少し活字に親しんで
もらいたいものだ。
「それじゃ、かがみが説明してやってよ」
そんなことする必要あるのか、と思いつつもつかさが話題についてこれないのも可哀想なので
教えてやることにした。
「一言でいえばロボットものね。主人公がロボットに乗って戦ったりして女の子を守るっていう
もので、まあ漫画と同じノリで読めるものよ。現代を舞台にしてるんだけど、ロボットが存在して
るだけじゃなくて、世界情勢がこの現実と全然違ってて、例えばゴルバチョフが暗殺されたせいで
ペレストロイカが頓挫して、ソ連が崩壊してないことになってたり」
「それん?」
「ロマノフ朝の後に歴史上初めて成立した社会主義国家で1991年に崩壊して……まさか知らない
とは言わせないわよ」
「う、うん、大丈夫だよ」
慌てて肯くつかさに不安を覚える。このあたりは中学校でも習うことなので、いくらなんでも
知らないのは困る。
「やっぱりかがみもオタクだよね。フルメタのこと話してるときすごく活き活きしてたよ」
「こ、これはこなたが説明しろって言ったからでしょ! それよりこなたはこの辺のことちゃんと
わかってんの?」
とてもいい笑顔のこなたのペースに嵌められるわけにもいかずにやり返す。
「うん、分かってるよ。MASTERキートンとかゴルゴ13とか楽しむには必要な知識だからね」
「またそっち方面かよ」
珍しく学があると思ったらこれだ。本気でこなたのことが心配になってくる。
自分の身を守るためには知識が必要だ。例えば悪徳商法なんかも、正しい知識を持っていれば
被害にあわずに済む。そういう意味でこなたは物凄く頼りなくて、気になって仕方ない。
「私はそれでいいと思います。やはり知識があったほうが世の中楽しめますからね。……サンタ
クロースのように、知らないほうが楽しめるものもありますけど……」
さっきもそうだったけど、みゆきが言うと説得力があるように感じられる。
「そうだよネ。よく漫画とかでロマノフ朝が遺した隠し財宝の話なんかが出てくるけど、本当の
こと知ってたら面白くないだろうし」
「あんたはそっち以外に興味ないのか」
それなのに、こなたが言うと薄っぺらく感じてしまうのは私だけではないはず。
「隠し遺産の話もMASTERキートンやゴルゴ13に出てくるんだよ。他にもルパン三世とか名探偵
コナンとか、そういう話はいっぱいあるよ。なんでだろ?」
「やはり、そういうものが現実にあると言われているからでしょう。ロマノフ朝が持っている
だろうと目されていた財産と、実際に押収された金額に差額があったとき、その分が隠し財産と
呼ばれるようになります。徳川埋蔵金やヒトラーの遺産などもそうですが、この手の隠し財産の
噂は大抵そのような経緯をもっています」
いい感じに話が逸れてきた。高校生の与太話なんてそんなものよね。
「やっぱり眉唾ってこと? ニコライ二世の子供がその在り処を知ってるとか言うけど」
「アナスタシア皇女のことですね。実際には生きていないとされていますが」
「あなすたしあ?」
「ニコライ二世の四女です。ロマノフ家が処刑されたときに、ひっそり逃がされたと言われて
いまして、後に世界中から自称アナスタシアが現れました。勿論その方たちは偽者ですが、本物
なら財宝の在り処を知っているだろうというわけですね。その『実は生きていた』という話その
ものが嘘なんですけど、このアナスタシアの存在が財宝伝説をよりミステリアスなものに仕立て
上げているのも確かですね」
「その人って四人姉妹なんだ」
つかさ、気になるのはそこなのか。
「一人、男子もいましたけど四人姉妹です。ちなみにアナスタシアは三女のマリアと仲が良く、
よく一緒の寝室で寝ていたそうです」
「あはは。それって私みたいだね」
「よくそんな呑気に言えるわね」
みゆきの話が正しければ、その四人は処刑されたのというのに。
みゆきもまあ、よくもこんなに次から次へと雑学が出てくるものだ。
「それで、結局財宝はどこにあるんだろうね」
そんなの誰も知らないに決まっているじゃない。だから隠し財産っていうのよ。
「財宝はラスプーチンの子孫が革命のどさくさに紛れて持ち逃げしてしまいました。その後は
地下組織の活動資金になってしまっています」
もちろんそんな話、聞いたこともない。みゆきもたまには冗談言うのね。
「おー、ラスプーチンが関わっていたんだ」
「さすがゆきちゃん、何でも知ってるね」
「いやいや、信じるなよ」
こんなこなただったら『な、なんだってー!』って叫ぶレベルのトンデモ話を信じるなって。
『ナイジェリアの手紙』みたいな詐欺に引っかかりそうで、本気で心配だ。
「みゆきさんが言うんだから本当に決まってるじゃん」
「だよねー」
「いやいや、みゆきが言っても嘘は嘘だから」
「かがみさん……信じていただけないのですか?」
「いやいや、明らかな作り話を信じるわけないでしょ」
さっきからいやいや言い過ぎだ、私。
「あんたらもみゆきが言ってるからって鵜呑みにしちゃだめよ。自分で判断しなさい。いくら
みゆきでもそんなの知ってるわけないでしょ」
これではまるで私の方が冗談のわからない人みたいだ。
「なるほど、私がなんでも知ってると証明できればかがみさんはかがみさんの判断で私のことを
信じてくださるわけですね」
「な、なんか変な流れになってきたわね……」
眼鏡の奥の瞳が異様な光を放ったような気がした。
もしかしてみゆき、怒ってる?
「それで、どんなふうにそれを証明するの?」
「私の知っている、色々なことをお話ししましょう」
「うーん……」
どんなにマニアックな知識を披露しても、『なんでも知ってる』とは言い切れないような気が
するけど……。
「例えばですね……」
「たとえば?」
「かがみさんはこなたさんのことが好きです」
なっ!?
「な、ななななな、何言ってんのよ!? そんなことあるわけないでしょ!」
「かがみん、そうだったんだ……」
「ちょ、なんでまんざらでもない顔してんのよ!」
もしかしてこなたも私を……じゃなくって!
「そ、そんな偽情報認めないわよ!」
「昨日は海水浴に行ったときのこなたさんの水着写真を使ってオナニーしましたよね。している間、
ずっとこなたさんの名前を呼んでいらっしゃいました」
「なっ、そんなっ」
「あー、今朝お姉ちゃんの枕の横にその写真があったけど、そういうことだったんだ」
「つ、つかさあぁぁぁぁ!」
「ちなみにかがみさんは中指を第二関節まで入れて指を曲げるのが好きです。両手が使える場合は
左手で乳首を弄ることが多いですね」
「大声で言わないで、大声で言わないで!!」
なんで知ってるのよ!?
「かがみ、さっきからクラス中がこっち見てるよ」
「いやあああああああ!」
「こなたさんのお宅に遊びに行った際、こなたさんの椅子に座ってこっそり腰を振りながら」
「やめてえええええ! 私が悪かったからもうやめてええええええ!!」
――この日以来、みゆきにだけは逆らうまいと心に決めた。
197 :
3-283:2008/02/20(水) 18:52:21 ID:BVKd2gUo
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
もちろん、財宝の在り処の話は自分の創作であり眉唾です。
このオチのために前フリ2レスってのも長かったかもw
リアルタイムにて読了。
個人的には序破急で面白く読めました。つーかみゆきさん怖いよみゆきさん。
あと、かがみの一人えっちを想像してしっとりとおっきしました。ぐっじょぶ。
GJ!
でも良く考えてみたらこれは盗聴とか盗撮とか…ゲフンゲフン
>>190 みゆきさんは本来天然ほのぼのキャラのはずなのに……
質問なんだが、ゲーム版のキャラ(主人公とか永森とか)が出てくるのはアリ?
了解した
>>197 GJすぎる!
日常らきすた会話から一変
怖みゆきとこなかが要素!
こういうの好きだな〜(´∀`)
休日、珍しくつかさが早起きしたと思ったら
ダイニングの隅で、既に盛りつけが終わった朝ご飯の逹の前で、
直立不動で立っていた。
「あ、おはようつかさ、珍しく早いのね」
「サーイエッサー!」
一瞬何が起こったのか理解に苦しんだ。
耳を劈く大声でいきなり何をのたまわくかこの娘は。
「な、なんなのよつかさ、いきなり」
「サー!私はウジ虫でした。最下等の生き物でした
でも、死の司祭を目指し厳しい訓練に耐えるであります、サー!
でも、妹はファックされるのでありますか?サー!」
あーもう…たしかにフルメタは薦めたけどさ…
全身力が抜けてツッコむ気力も失せる…('A`)
>>197 みゆきさん強いw
かがみの秘め事が全部こなたにバレたなw
>>201 性別反転ならともかく、ゲームにしか存在しない男を登場させるのは抵抗あるな
それにゲームやってない人は訳分からんだろうし
>>197 海水浴の写真………スク水か!?スク水なのか!?
かがみんはいい趣味をお持ちですね
>>205 ゲームやってない人にはわからないっていうならゲームのネタは全く使えなくなる
やまとSSを誰も書かなくなるぞ
なんでゲームネタが全く使えなくなって、やまとSSを誰も書かなくなるのかわからない
ゲームやってない人にはわからないSSですって前書きつけて書けばいいんじゃないの?
ゲームやってないとわけわかんないのは当たり前だし、わかんない人がいるネタでSS書くのに
抵抗あるっていうのは十分理解できるんだけども
>>208 あ、ごめん
>>205は書き手としての話をしてたのか
てっきり読み手としての話をしてるのかと
言い出した俺が言うのもアレなんだが、『ゲーム版のキャラが出てきます』
みたいな注意書きさえつければ問題ないと思うけどなぁ…
男キャラに抵抗あるっていうのはわかるがそう言われては白石の立場もなくなってしまうんだぜ?
白石だってアニメにしかでてこないんだし
たしかギャルゲ板にSSスレあったよ。
色々あるようなら、非エロはそっちじゃ駄目かな。
そうっすよ、
原作に出ていないキャラ書くなといわれたらどうしようかと思ったw
こう×やまとはガチ鉄板だし、書けないのはきついな
ひかる×ふゆきもゲーム板で進展したし、存在としてでかい
ああ、あと、ななこセンセに男の影がわいたし(w
おいおい、今までオールオッケーでやってきたんだからゲーム版だって別にいいだろ。
ゲーム版のSSって注釈に加えれば問題ないはずなのに。
「今の時期に」桜藤祭関連がまずいのは、発売してからまだ間がないから、これから買う人へのネタバレを避けるため。
だからこそ過去に議論も行われ、「発売一ヶ月経過してから」ということで落ち着いてたんだし。
まあなんだ、残り4日推敲にあてて、24日午前0時からボジョレーヌーボーみたく解禁祭すればいいんじゃね?
24日が待ち遠しいよぉ〜
まで読んだ
途中でスノーボール吹いた
あれだろ、ゲームネタじゃなくてギャルゲ主人公に反発があるんだろ
まぁ、慣例通り注意書きすればおk
わざわざここで反発の多そうな男主人公をやるのもあれだとは思うがwいいんじゃね
ってことは、24日すごい事になりそうだな…。
男というより「俺」だろう
百合好きやオリキャラ嫌いの天敵
特に百合との共存はほぼ不可能でたいていの場合どちらかが消える
ルール的に拒絶できない百合が他へ撤退することが多いかな
>>220 んなこたぁない。
自分は百合好きだけど、保管庫の『こなたルート』とかお気に入りなんだぜ?
まあ何が言いたいかっつーと「天敵」とか「どちらかが消える」とか、
攻撃的な文言は遠慮しないか、と
百合好きだが、その一方で、『いずみけ』シリーズの熱烈支持者でもある
俺が来ますたよ
百合は好きだが、百合厨の男主人公を過度に遠ざけようとする姿勢は鬱陶しいな
男キャラとか大好きな俺は異端
そりゃお互い様。
ギャルゲの方じゃ百合だって散々な言われ様してるだろ
対立を煽るつもりはないが、この二つが共存しにくいって言うのはマジ
だから各自、注意書きとスルーを徹底するのがいいんじゃないのかね
ひより×男でがっつり泣いた俺
つまりは質の問題
ケンカすんなコラ
>>225 あれはそういう問題じゃ無いけどな
これ以上はスレチだから特に言わないでおくが
気に入らないものはスルー、注意書きはきちんとする、この2点を徹底すれば簡単には荒れない。
共存しようと思わなくても、結果的にスレが滞りなく進行すれば良い。
参加者は全員大人(18歳以上)なんだから、このくらいのことはできるはずだ。
>>228 お前が何を指してるのかわからんが、俺はやっかいな厨に対しての反応を指してお互い様と言ったわけじゃないぞ
まぁ、俺はどっちも読むけどね、注意書きあれば他人にも配慮があっていい
某書き手ですがぶーわさんや他の職人さんをmixiで発見して焦りましたよ……
>>231 さぁ早速申請するんだ!
日記に何かいてあったか報告よろしくな!
結局、24日からゲームネタもおkってことでいいの?
俺は男主人公はオリキャラのようなもんだからスルーするけど
こうややまとはちゃんとしたらきすたキャラだから、二人が出るSSを見たいし増えて欲しい
でもやまとの場合はやっぱりゲームネタですって一言加えないとダメなのかね?
>>233 こうはともかくやまとはゲームオリジナルキャラなんだから書くべきだろ
235 :
久留里:2008/02/21(木) 01:03:24 ID:Qdz7hEd8
空気の流れをぶった切って、例のアレ、行きますよ。
『カケラ』16.
・こなた視点 / 第三者視点
・今のところ非エロ
・6レスほど使用
・シリアス/タイムリープ/平行世界/鬱展開
・オリジナル設定が多いのは仕様です。
・物語の性格上、鉄分が濃いです。
・架空の町が登場します。
・富山県民のみなさんごめんなさいorz
※途中で投下出来なくなった場合、保管庫に投稿します。
16.
『ご乗車有り難う御座いました。富山〜富山に到着です。
2番のりばの列車は、金沢行きの北越号です』
「いつか、夢で」
「ええ、会いましょう」
交通の難所・親不知(おやしらず)のトンネルを抜けると、周りの雪は幾分落ち着きを見せた。
富山市内に入ってからは雪は止んでおり、積雪もそれほど多くはなかった。
特急「北越」号は若干雪で遅れたものの、無事に富山駅に到着した。
9両編成のうち、1両の窓ガラスが全て割れているせいか、ホームで待つ客が皆驚きの顔を見せる。
すでにこの車両は1両まるごと閉鎖され、居場所を失った私とかなたさんは、隣の自由席車両へと移動した。
私の服がボロボロのせいで、周りから槍の様に刺さる異様な視線に耐えつつ、なんとか富山まで平静を保った。
私はかなたさんとここでお別れ。次に会うのは………………私が天国に行ってからになるだろう。
もしかしたら、『そう遠くない未来』かも知れないけれど…………。
「気をつけてね、こなた」
「うん、有り難う、『お母さん』」
「何か、そう言われると照れるわね」
ジリリリリリリリリリリ………、
『2番のりばから金沢行き特急列車が発車しまーす。扉閉まりまーす』
笛の合図と共に、一斉に扉が閉まる。
ピーッという甲高い汽笛の音が、クールグレーの空に鳴り響く。
ボンネット型の特急列車は、静かに、静かにホームを滑り出し、
そして、雪景色の中に、消えた。
『私こそ有り難う、また何時か会いましょう』
アナウンスとけたたましいベルに紛れた、かなたさんの声。
私の記憶の中の、最後の母親の声だった。
福井・金沢と並ぶ北陸の主要都市、富山。
10時間にも及ぶ長旅の末、私は遂に2つ目の目的地へと辿り着いた。
富山駅は大きな駅だけど、改札口が一箇所しか無い。
その分、改札口は異様に広く、数人の駅員さんが切符を集めたり鋏で穴を開けていたりした。
「ふぁ〜あ、何か色々有りすぎて疲れちゃった。温泉とか無いかにゃ〜」
富山駅は富山県の中心地にあるだけあって、ホームは長く、幅も広い。
私は矢波(やなみ)の親戚の家に行く時に何度か通っているので、大まかだけどホームの様子は把握している。
4面あるホームのうち、1面は改札口に直結していて、1面は途中で欠き取られていて更にのりばがある。
残りの2面はいたって普通だけど、一番北側の6・7番のりばは富山港線専用で位置もちょっとずれている。
お父さんの話によると、富山港線は2年前にライトレールという新しい電車に変わったそうで、
富山港線のホームは無くなってしまったという。
ホームには列車が何本か停まっているけれど、人影はまばら。
この寒さなので、皆既に列車の中に乗っているか、改札口の待合室で暖を取っているのだろう。
駅そのものは今もこの時代も大して変わらない。違いと言えば、新幹線の工事現場が無いことと、
「とやま」と書かれた駅名標がJR西日本の色じゃないって事くらいかな。
ホームと改札口は跨線橋と地下通路の2本で結ばれている。
地下通路の方が近いので、こちらを利用する。
いつも列車の窓から見ていたけれど、なるほど、やっぱりこうなっていたか。
ただでさえ寒いのに、地下通路はコンクリート剥き出しで殺風景。おかげで余計寒さを感じる。
おっといけない、床もコンクリ剥き出しでしかも雪で濡れているため、転ばない様に注意、注意っと。
「おわっ?!」
危うくコケそうになった。
「ありがとうございます」
改札口で挨拶する駅員さんに思わずこちらも軽く会釈。
切符を渡して改札を抜けると、そこは意外と雪の積もらない駅前ロータリが広がっている。
取り敢えず、市街地に出ようと思ったのだが───、
ぐぅぅぅぅうううう
「お腹、空いちゃった」
──ので、富山ステーションデパート(今は「とやま駅特選館」)にある食堂で、ちょっと早い夕飯を食べる事にした。
富山と言えば、シラエビ。シロエビではない。それとホタルイカ。
というか、それしか思い浮かばない。
おそらく観光客相手だろう、「白えび天丼専門店」とうたった食堂の暖簾をくぐる。
カウンタだと足が届かないので、4人用のテーブル席を陣取って、定食をおばさんに注文する。
かなたさんの話が何処まで本当なのかは、正直分からない。
ただ、『この世界での私は』特殊な『チカラ』を持っているようで、
あの戦いの時から胸の内に燃え上がる『何か』を感じていた。
リアルの世界では存在するはずの無い、不思議な『星のチカラ』。
それを『感じた』時は、本当に恐かった。
自分が何者なのか、と。
「これ何て灼眼の○ャナ?」とツッコむ余裕も全然無かった。
かなたさんと別れて、今、ようやっと落ち着いた。
少しだけだけど、心に余裕が生まれる。
すると、不思議と前向きに考えられる。ただ逃げてるだけなのかも知れないけれど、ね。
取り敢えず、自身の『チカラ』に関して深く考える事はやめた。
考えるのが面倒になった訳でもない。考えるのが恐かった訳でもない。
ただ、『考えてもそれほど意味がない』と考えたからだ。
兎に角、『今』の私の持っている『チカラ』は、『この世界では』何らかの形で必要なモノであり、
それは恐らく、かなたさんが話してた『星のカケラ』に何らかの形で関わっているのだろう。
富山駅で別れる時、かなたさんはこう言った。
『「星のカケラ」を集めて下さい。私達自身のために、私達の世界のために。
そして、貴方の世界のために、貴方達自身のために』と。
星の『カケラ』
星の『石』が砕け散った残骸(ザンガイ)。
結局かなたさんが言いたかったのは、私がこの時代で「『星のカケラ』を集めて下さい」という事だった。
その不思議な『石』が、どうやら私……ひいては私達の時代で必要らしい。
この時代では他にする事が無かった私は、この任務を引き受ける事にした。
なぁに、これがゲームだと思えばいい────。
「白えび天丼定食ですちゃ」「よっしゃー!!」
私の掛け声とおばさんの声が同時に重なる。何という不協和音。
「…………」
「…………」
「……な、何ええことあっちゃけ?」
「え……いや、何も」
なんちゅうタイミングで来るんですか、アナタは。
まぁいいや。
早速出された白えび天丼を頂く。感じとしては、桜海老の掻き揚げだが、海老自体が桜海老よりもずっと大きい。
でも、甘海老よりかは小さい。味? ふっふっふ、美味しいよ。そのうち家で作ってみようかね。
でも幸手のマルエツじゃシラエビは手に入らないねぇ。
そういやお父さんが話してくれたっけ?
シラエビ自体は日本じゅうに生息しているらしいけど、食用として獲っているのは富山だけで、
しかも足が早いから富山以外ではそう滅多に口に出来ないレアモノなんだとか。
お父さん、ただ女の子目当てで富山に行ってたのかと思いきや、こんな美味しいものを食べてたのか。
作家故の取材とはいえ、羨ましい。
定食には白えび天丼のほか、お吸い物と漬け物、そしてホタルイカの沖漬けが付いている。
ホタルイカの沖漬けも今回初めて食べるけど、これは、うーん、お酒が欲しくなるねぇ。
飲まないけど。それ以前に飲めないけど(年齢的な意味で)。
お代を払って店を出る時、さっきのおばさんに声を掛けられた。
「あんにゃ、旅の人け?」
県外出身者かと訊かれている。私の雰囲気で分かったのだろう。
富山弁は萌えドリルで散々苦戦したので、単語レベルで何とか覚えている。
「はい、埼t……えっと、青森から」
流石に30年後の埼玉から来たとは言えない。
「青森け? そらえらい遠いとこから来ちゃがね。
これから何処行くけ? 大阪け?」
具体的な行き先はまだ分からない。お金もそんなに持ってないし。
「そうがけ。ほな、気をつけられ」
挨拶もそこそこに、店を出る。
陽もとっぷりと暮れた富山市内。
私は国鉄駅と地鉄駅に挟まれたバスターミナルの前で静かに目を閉じ、意識を集中させた。
ほうっと胸の内で数時間前に見た『常磐色の炎』が、私をそっと包む……様な感じがする。
私の立っている方角──だいたい南──の後方に何らかの『チカラ』を感じた。
周りの人の視線を感じるけど、そのまま無視してまわれ右をする。
「─────ある」
やはり、私の頭の中に、自分の持つ『チカラ』と同じ『気配』を感じた。
それは、ただじっと、その場に留まっている………そう感じた。
ちょっと、行ってみるか。
かくて、私の富山ダンジョン攻略がスタートした。
再び国鉄富山駅に戻った私は、窓口で初乗り運賃の乗車券を買い、
滑って落ちそうな地下通路を通って富山港線のホームへと向かう。
ホームは電車の停まっている部分だけ何故か低くなっていて、小柄な私は乗り降りに一苦労。
こんなに段差があっちゃ危ないでしょ。
この時代の富山港線は東武小泉線の様な地方ローカル支線らしい雰囲気を漂わせていた。
おそらく東京あたりから持ってきたのだろう、
富山港線の車両はこの時代を基準にしても明らかに古く、4箇所もある扉が「場違い感」を醸し出している。
車内は正に「三丁目の夕日」にでも出てきそうな昔懐かしい電車の雰囲気のそれであり、
茶色のシートとくすんだクリーム色の塗装を見て、何故か東武野田線のやたらと五月蠅い電車を思い出す。
やがて発車時刻となり、文字通りのベルが鳴る。
扉が一斉に閉まり、間抜けなエア音が聞こえると、
ガタンという衝動と共に「ぐるるるるるる」と豪快な音を立てて、電車はゆっくりと発車した。
この音、昔野田線で走っていたやたらと五月蠅い電車のそれに良く似ている。
……野田線で走っていた奴って、意外と大昔の車両だったのか。よく21世紀まで走っていたものだ。感心するよ。
富山港線の水色の電車は、たった2両のミニマム編成で、
まるで路面電車の様にちょこちょこと駅に停車しては、またゆっくりと走り出す。
全体的に速度は遅い。
線路の状態はあまり良くない様で、時折思い出したかの様に現れるカーブではぐらぐらと揺れる。
電車も電車で、走行中にバラバラになりやしないかと内心冷や汗をかいていた。
モータの唸り声と激しい振動、何よりも気になったのは、ギシギシと軋みまくる車体。
大丈夫? ホントに。
敢えて初乗り運賃の乗車券を買ったのは、『気配』を最も強く感じたらすぐに降りられる様にしていたからだ。
降りる時に精算する手間はあるけれど、こうすれば降りたい時にすぐに降りられる。
いっそのこと終点まで同じ運賃にすりゃいいのに。距離短いんだからさ。
と、そんな事を思っていると、ずっと感じていた『気配』が段々と近付いているのが分かった。
『東岩瀬、東岩瀬です』
すぐにでも吹っ飛びそうな轟音を立てて、電車は東岩瀬駅に着く。
隣の大広田駅がかすかに見えるので、駅と駅との間はそれほど離れていないようだ。
ポツンと裸電球の灯る駅舎は、映画のセットに出てきそうなこぢんまりとした佇まいで、
時空旅行中の私に旅情をそそる。
たった1人だけのお客さんである私は、たった1人だけの駅員さんに乗車券を渡して駅を出た。
『気配』はますます近付いた────────。
241 :
カケラ 間:2008/02/21(木) 01:10:54 ID:Qdz7hEd8
事故から2日目の18時。
東武伊勢崎線の高架橋崩壊事故からまる一日が経過した。
史上最悪の鉄道事故により、甚大な被害をもたらした現場周辺では、
今も自衛隊や県警のレスキュー隊が共同で救出作業に当たっていた。
18時30分。
それは、その事故のショックも覚めぬ埼玉県内で起きた────。
「ふぅ、疲れた疲れた。ひかちゃんも待ってるから帰らなくちゃ」
仕事帰りの宮河ひなたはJR宇都宮線の大宮駅のコンコースを歩いていた。
気が付けばすっかり綺麗に生まれ変わった大宮駅。
ただ乗り換えるための通路だったこの空間も、今では多くの店舗がひしめきあって、
イオンタウンの様なちょっとしたショッピングモールとなっている。
ひなたが宇都宮線の下りホームへ降りた、ちょうどその時だった。
ドーーーーーーン!!
鈍い爆発音が改札口の方から聞こえ、刹那、ひなたはその爆風で階段から突き落とされた。
幸い軽く打った程度でちゃんと立ち上がる事は出来たが、一体何が起きたのか、彼女には理解出来なかった。
***
ちょうどその頃、桜園市営住宅にて───。
ひかげは、自分で立てた大型掲示板のとあるスレッドに、妙な書き込みがあることに気付いた。
中国製品の説明書の様な不細工な日本語フォントで書かれたその一文には、こう書いてあった。
『ちょっと競争しない?』
あまりにも唐突で一見無関係そうな書き込み。
ひかげははじめ、この書き込みを無視して情報提供を待っていた。
突如、異変が起きた。
突然パソコンの画面が黒くなり、Linuxらしい白い文字の羅列が延々とスクロールされる。
何者かがネットワークを介して、宮河家のパソコンに侵入し、何らかのプログラムを実行させたらしい。
ひかげはすぐに停止命令をキーボードから送るが、一向に止まらない。
やがて、画面に「25687 : END」と表示された後、パソコンの電源が自動的に切れる。
そして、自動的に再起動し、何事もなかったかの様に数分前の状態に戻った。
「一体、何があったっていうの?」
あまりにも不可解な出来事であった。
何となく部屋の掛け時計を見る。時計は18時31分をまわった所だった。
242 :
久留里:2008/02/21(木) 01:13:42 ID:Qdz7hEd8
以上でございます。
こなた、久々に登場しましたねぇ。
2年半前に富山を旅行したことがあるのですが、富山ライトレールの神っぷりは異常ですた。
なお、富山弁はまちBBSの「富山弁ガンダム」ほかを参考にしました。
大阪弁は分かるけど、富山は分からんorz 不自然ですんませんですたorz
>>234 やまとの場合はやまと×○○○って書いておけばいいんじゃないか
やまとがメインじゃないなら書かなきゃいけないかもしれんが
まー、書くに越したことは無いですかね
こうややまとのSSが楽しみだけど、ここの住人さん及び職人さんはゲームやったんだろうか?
このスレはほぼ百合系のSSだから男主人公の出るゲームは手を出してない可能性が…
俺は基本的に百合スキーだけどそれはそれ、これはこれってことでゲームを楽しんでたけど
というか恋愛方面よりもキャラ同士の掛け合い目的で買った部分が大きし
ゲームといえば桜庭先生×冬木先生は公式だったんだな
そして兄沢店長×黒井先生を期待してるのは俺だけなんだろうな
俺としてはかがみがDもあったことに驚きを隠せないわけだが
>>242 投下乙です
どんどん話が壮大に…スケールは過去のSSを見てもトップクラスですね
あと、地味に本筋に絡みそうなひかげに期待
スケールかぁ・・・ぶーわ氏のが凄かったよな
まぁあの人は色々凄いけどwwww
今、やっとエロパロ36読み終わったのに、もう38に突入してるの見た俺涙目w
…嬉しい悲鳴ってやつなんだけどさ?ホントこのスレの神速っぷりはすげえww
>>251 このスレの住人の行動力は異常。
SS検索データベースまで作るってどんだけだよw
>>251 最近は連投規制やらシステム上のルールが厳しくて、
まとめwikiや避難所に上げる職人もいるのに、
それでもこの勢いだもんなあ。
直接投下できてたらもっと早いぜ。
話の腰折ってすまんがPS2ゲームネタは1ヶ月後から解禁って事で良いの?
もうあと2日ほどな訳だけど
>>254 >>201-の辺りを読み直してみてください
なんかまとまってるようなまとまってないような感じだから聞いたんだけど
・24日までは無し→25日から解禁
・書く時はちゃんとゲームの話と記述→ネタバレ防止のため
これで決定で良いのね?
>>256 それでOKってことでいいんじゃないかな?
了解。ども。
>>251-253 こっちも専ブラ使ってるとはいえ、未読の作品が山ほどあって読めずに居るんだぜ。
自分がatwikiユーザだから書くけど、
保管庫の各作品に「タグ」を付けておけば、リストの更新がしやすくなる鴨。
チラ裏すんません。
よし、それじゃあ
それをつける作業に戻るんだ
百合好きには正直、25日が来て欲しくない・・・
>>261 まあ例え解禁されても比率はひっくり返らんだろうし、気楽にかまえればいい
カップリング特になしの非エロ投下します。
「確かにひよりんの言うことも分かるよ。そういうパターンはギャップの極致とも言うべきものだからね。だけどこの点に関しては、やはり本来のイメージを損なわず、なおかつディープな需要をも満たせる方を選択すべきだと思うのだよ」
「待って下さい泉先輩。確かにそれも悪くはありません。しかしディープな需要ということは、言い換えればニッチということっス。大衆受けと言われようが、やはりここは一目見て分かりやすい方を選ぶべきでは」
「しかしだね――」
こなたとひよりが、静かに、それでいて熱く意見をぶつけ合う。昼休みの渡り廊下、その片隅で、二人は真剣そのものの表情で議論していた。
「ちょっと二人とも。何やってんの? こんなところで」
たまたま通りかかったかがみが声をかけると、二人は丁々発止の議論を一旦停止した。
「やほーかがみ」
「こんちわっス」
「こんにちは。で、何してたの? 何か言い争ってたみたいだけど」
「みゆきさんのストッキングについて議論してたんだよ」
「は?」
言ってることの意味が分からず、かがみの目が点になる。
「ひよりんと萌え談義をしてたんだけど、あの黒ストがガーター吊りかノーマルタイプかで意見が食い違ってね」
「私は優等生でお嬢様の高良先輩がガーターをしているというギャップ萌えとストレートなエロチズムを推してるんスけど」
「私はノーマルタイプのストイックさこそがみゆきさんの萌えとエロスを引き立てると考えてるの」
「……くだらなすぎて頭痛いわ」
げんなりした表情で額を押さえるかがみ。この二人に声をかけてしまったことを心底後悔していた。
「かがみはどう思う?」
「どうも思わないわよ。っていうか、実際にみゆきが使ってるのはガーターじゃなくて普通のなんだから、議論するまでもないでしょうが」
「まあまあ、そういう現実的な話は置いといて」
「置いちゃダメだろ現実を。昼休み削ってまで何でそんな妄想の議論してんのよ」
「闘争の本質だ。『それを打ち倒さなければ己になれない』そのために昼休みを引っくり返して叩き売りだ」
「また何かのアニメネタか。普通に時間がもったいないと思わないわけ?」
「別に。こないだなんてみゆきさんの眼鏡について二時間語り合ったもん」
「あれは盛り上がったっスねー」
「あんたらは本当にアホだな」
「いやいや、みゆきさんのエロ神々しさが成せる業だよ」
この点に関してはどう言っても処置無しと感じて、かがみは大きくため息をついた。
「二人ともそれだけ気が合うなら、何で今になって争ってるのよ?」
「そこはまあ、こだわりというか」
「オタク、分けても腐女子は自分の信ずる道を頑固に貫くっスから。不本意ながらこういうこともあるっス」
「そういうの、話だけでなら聞いたことあるけどね……カップリングの攻めと受けがどうとかで、ケンカ別れとかするんでしょ?」
「普通のケンカ別れで済めばいいっスけどね。場合によっちゃ親の仇のように憎しみ合いますから」
「どんだけ……」
「でも逆に好みのカップリングがシンクロすると、すごく仲良くなったりするよね」
「そうっスね。マイナーカップリングとかだと特に、なんていうか同志みたいな感覚が生まれるっス」
「じゃあ、あんた達も何か気の合うカップリングの話でもして仲直りしたら?」
「うーむ、気の合うカップリングと言われても……」
「そうっスね、すぐ思いつくところでは――」
「カップリングとは違うけど――」
「「かがみ(先輩)は受けだよ(っス)ね」」
「……」
「……」
見つめ合うこなたとひより。やがて二人は固く握手を交わす。
「同志よ!」
「人類皆姉妹っス!」
こうして長きにわたる(およそ十五分)論争は、双方による「かがみ=受け」の合意を契機として終結した。
が、
「納得いかねー……」
一人腑に落ちないかがみだった。
おわり
「ところでひよりんも受けっぽい匂いがするよね。性的な意味で」
「危ないこと言わないで下さい。目を妖しく光らせないで下さい。手をワキワキさせながら近寄らないで下さいぃぃぃ!」
読んで下さった方、ありがとうございました。
>>261 俺はあんま心配してない。
事実、これまで百合中心でやってこれてるし。
非百合め若干は増えるかも知れないが百合が淘汰されることはないでしょ。
ま、真新しいネタに飢えてる作家はそっちにも手を出しそうではあるが。
>>265 つまりある特定の限定下に置かれればかがみは攻めとしても萌えを発揮するであろうと考える自分は、GJするしかない……ということか
1レスしか使ってないのにいろいろとニヤニヤがw
やあ。百合好きなのでゲームすら買わなかった俺が来ましたよ
>>268 真萌えドリルだけは買っておけ。後悔せんぞ。
かがみとつかさが(ry
>>268 やあ、私
正直例のイベントは見たいけどその前に挫折しそうorz
こなたが男とあれやこれやするのを考えるだけで頭がバグりそうです
>>265 ヲタ組は流石良いコンビでわらわせてもらったぜ、GJ
ある種始まる前から叩くよりも陰湿感があるね?
まあこのスレはそういう傾向で出来てるからなに言った所でアウェーだろうし構わないが
ゲームに対する文句言うな
いくら注釈をつけるとはいえ職人が投下しにくくなるだろ
>>270 かがみとつかさが○○○するんですね。わかります。
みき「あらあらウフフ」
単純にPS2もDSも持ってない身としては
どっちに転んでも辛いなあ
日付跨いだのもあるけど、すべてIDが単発というのも気になるところ
流石に、自分の好みでないものを全否定するような、
大人の対応をできない人はいないと信じているが
279 :
双子の兄:2008/02/22(金) 00:16:15 ID:Yz+ioRFw
>>270 俺があれに対して一つ言いたいのは、
あれだ。アニメのキャストでもう一回出して欲しいって事だな。
正直ギャップがありすぎて違和感がありすぎた。
ゲーム系統のこういうギスギスした話題は、正直避難所に連行して行って欲しいなぁ。
桜藤祭SSは別に投下してもいいじゃないか。見たくない人はNGするなり脳内スルーで済むじゃん。
ただ、ゲーム中に頻繁に出てきたみゆきさんの腹黒設定をSSに影響させるのはやめてほしい
あれはゲームのスタッフが勘違いして勝手に作った設定だから
>>281 このスレだと別に珍しくな(ry
鼻血だしてる方が多いか
既に、黒ゆーちゃんを書きまくっている自分はどうすればorz
いや、エロパロ的な意味での黒さはいいんだw
ゲームの黒さは単なる性悪だから
>>283 俺は黒ゆーちゃん好きだから問題無い。
他の人は知らないけど俺は好きだからもっと書いて欲しい
ゲームはこう×やまの洗礼を受けられただけで、買った価値があると思いました。
やまとがゲームだけのキャラなのが実に惜しい!!
ゲームを実際に(実名推奨)プレイしたことがあれば、一々主人公に違和感があるとかは言わないと思うんだがな
ニコニコで見ただけで文句言ってる奴は黙ってNGしとけよ
>>287 百合が好きすぎてニコニコですら見れなかった俺はもうどうしようもない
避難所管理人です。
過去ログ収録庫に37スレまでの過去ログを収録完了しました。
2ch専用ブラウザで見られるようになっているので、過去ログが見てみたいという方はどうぞご利用ください。
あともう一点。
らき☆すたSS専用のデータベースを開設しました。
作品探しの一助にということで、wiki作品も登録できるように設定してあります。
ttp://shironeko.la.coocan.jp/lsss/ スレ前半に出ていたこともあり、データベース関係のお話については
避難所で専用スレを設けましたので、そちらのほうで宜しくお願いいたします。
>>265 「受けかがみん!受けかがみん!( =ω=.)o彡゜」
「そしてふたなった泉先輩が襲いかかり!散らされる乙女・・・ああっ!」
「ほお・・・散らされる前に散らせてやろうか・・・あんたらを・・・」
「「ひいいいいい〜〜〜
>>265GJアッーーー!!」」
主人公が「あんたゲーム版だけのオリキャラだから」と、遠まわしに劇中で言われてるのが吹いた
ゲーム版はこなたとかがみのキスシーン(ギリギリ未遂)もあるし、ひかる×ふゆきの告白もあるし
みなみとゆたかは相変わらずでありつつ、見たかった2人の喧嘩もあったし。
百合好きでも良かったー
>>246 こなたに揉まれたんだろ
ゆい、黒井、みゆきはどれくらいなんだろ
まあ何にせよ喧嘩しないのが一番だな
読むものが増える及び楽しめるのはいいことだ
>>292 ゆい姉さん:E〜F
ななこ先生:E
こーちゃん先輩:E
みゆきさん:F〜G
くらいなイメージ。
Dカップって案外普通に居るし、ちゃんとしたらブラをつければE〜Fくらいになる人も多い。
ゆい姉さんとかこーちゃん先輩はそんな感じかな。
ただ、背が高いと必然的に骨格がしっかりする=アンダーが細くならないから、
ななこ先生みたいな背の高いモデル体型の人は、見た目よりカップは一つくらい落ちることも。
ゲームネタで一本仕込んだけど、解禁後でも投下するには微妙なふいんき……
エロでもないし、「桜藤祭 IF SS」スレのほうに投下したほうがいいのかな。
「こな☆フェチ」を連想させるシーンがあるし、ほぼこっち専属で書かせてもらってるんで
こっちに投下させてほしいのはやまやまだけど。
もち、そうなってもこちらにはこちら向けの別作品を投下予定ッス。ここはおいらの魂の故郷。
反対意見は色々出ていても、基本ここは
・内容の概略を明示
・注意点(
>>1参照)を明示
・その他(カプなど)を明示
すれば、らき☆すたに関する2次創作である限り
何を書いてもいいことになってる
大体ここで百合好きだからゲーム買わなかったとかスレチもいいとこ
>>296 一部のがgdgd言ってるだけなんだから構わないでしょ
ただ注意書きとかはちゃんと書いておかないとね
メアリー・スーに耐えられないなら百合スレやCPスレに引き上げれ
本来なら百合は801同様に板違いなんだしさ
他にいくらでも場所があるんだからエロパロに拘る理由はなかろう
いちいち揉められるとうっとおしい
まったくもって正論
とりあえずゲームの話は解禁まで待ちましょ?
保管庫&データベースの方々乙です!
きっと
>>1を読んでいる人間は今書きこんでいないんだろう
なので自分もまらんを食しつつ次なる職人を待機
>>299 ここの職人の手にかかれば、メアリ・スーな作品は上がってこないと思うなあ。
むしろ、作品世界の虚を突いたすごいのがきそうでwktk
つか百合も非エロもエロパロでやるものじゃないだろ
スレが認めていても板違いだ
多数派なら板のルール無視してもいいのかよ
ゲーム解禁は百合排除とか言ってるけどそれも逆じゃん
今まで板違いの百合のせいで男ネタが排除されてただけ
>>304 だって絶対的に男いなかったし
精々白石とアキラ位だし、書く人がいなかっただけ
ゲーム版のネタが増えればそっちも増えるんじゃね?ここなら同居できるよ、多分
百合パロSSが板違いっていう根拠は?
レズ百合板はあくまで萌え語りするところで、
パロSSを投下するところじゃないよね?
技巧に苦言は稀にあっても嗜好に注文は付けない、
らきすた好きが集まる紳士淑女のサロンだと思ってたヨ
本来非エロがスレ違いってのはあるよな
他に投下する場所が少ないにしても
訂正
×スレ違い
○板違い
310 :
294:2008/02/22(金) 13:04:59 ID:nvwtki+U
何か流れを微妙に荒らしてるみたいなので
書き方が悪かった悪かったです
ゲームSSをNGという意図ではないので
>>269は気にしないで投下してください楽しみにしています
SSに無関係でただ、ゲームの攻略方法や内容批評みたいな
書き込みをここでしたい人には避難所に専用スレ立てて誘導
と言いたかったのです
SS投下で現状でも、本スレは中央線、阪和線並みのSS過密ダイヤ
開かずの踏み切りに割り込み事故が時々起こっていますので
SSに関してはらきすたのキャラが一人も出てこない内容でない限り
自由であると思います
たとえ投下されても支持されない作品はスルーされるだけ
来るもの拒まず、黙って去るもの追わずが28スレの長きに渡って
築き上げられたここの伝統だと思います
書き方が悪くてすいませんでした
皆さんの作品楽しみにさせていただきます
エロなしはローカルルール違反じゃないし百合もそう
別にゲームキャラ見たくないなら飛ばせばいいし問題ないでしょ
要は注意書きだけはしっかりしろと
なんか読み手側のワガママからこじれた話なのに書き手への注意で締めるのは
314 :
35-215:2008/02/22(金) 14:21:31 ID:u26dl0rz
とりあえず話が続いてるみたいですが新作が出来たのでレスがなければ投下したいと思います
・かがみ×みなみ
・例によってネタあり
315 :
35-215:2008/02/22(金) 14:24:14 ID:u26dl0rz
「みなみちゃんおはよう」
「おはようございます、かがみ先輩」
今日は土曜、前々から約束していた通り買い物に出かけている。
「それで、まずどこに行きましょうか?」
「とりあえずその辺りを歩いてからでいいかな?」
「はい」
そう言って私達は歩き出した。
歩き始めて少ししてみなみちゃんが話しかけてきた。
「そういえばかがみ先輩って本を読むんですよね?」
「うん、そうだけど」
「どんな本を読んでるんですか?」
「色々読んでるけど・・・ライトノベルが中心かな?」
「ライトノベル、どんなものですか?」
「うーん、基本的に絵が多いかな?多分見る方が早いと思う」
「それじゃあ、本屋に行きましょうか?」
その意見に頷いて私達は近くにあった本屋の中へと入った。
「あったあった、専用コーナーがおいてあるみたいよ」
「たくさんあるんですね・・・」
「うん、私の場合は絵で決めたりするかな?後は連載物とか」
「それじゃあ色々見てみます」
そう言ってみなみちゃんは色々と手にとって見ていた。私もいくつか新しく読むものを探してみる事にした。
「あ、これ・・・」
声に反応してみなみちゃんの方を見てみる、手に持ってるのは・・・
「ストロベリーパニック?」
確かこれって・・・
「読んだことあるんですか?」
「うん、面白いよ」
「それじゃあ、これにします。かがみ先輩は決めました?」
「うん、これにするつもり」
私が取ったのはレンタルマギカの最新刊、でもこれもマンネリしてきた感じがするけど・・・
とにかく私達は買って店を出た。
「次はどこに行きましょう?」
「うーん、少し早いけど・・・お昼にしようか?」
「はい」
そして私達は近くのデパートへと向かった。
「どこで食べます?」
「う〜ん・・・確かいのり姉さんがおいしいって言ってた店があるはず・・・あ、あった」
私達はいのり姉さん推薦の店に入って昼食を取ることにした。
316 :
35-215:2008/02/22(金) 14:25:01 ID:u26dl0rz
「ここがかがみ先輩のお姉さんの推薦に店ですか?」
「うん、ただいのり姉さんは辛いのが好みだからちょっと私達じゃ辛いかも、みなみちゃんは辛いの大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
その後色々と話しているうちに料理が運ばれてきた。
「それじゃ、食べよっか」
「はい、いただきます」
「いただきます」
まず一口・・・
「みなみちゃん・・・これ」
「かがみ先輩もですか・・・?」
「「かなり辛いね(ですね)・・・」」
いのり姉さん、いくらなんでも辛過ぎでしょこれ・・・
その後、何とか苦労して2人とも食べきった。量は普通だけどこれいくらなんでも辛過ぎないかな・・・まあ、好きな人は好きなんだろうけど
店を出た後はいくつかいろんな所を見て廻ることにした、一応運動しとかないと体重が気になるし・・・
「かがみ先輩、ここ覗いてみませんか?」
みなみちゃんがそう言って見つけた店は・・・アクセサリーショップ?
「そうね、入ってみましょ」
そう言って私達は中へと入った。
「いらっしゃい」
レジに居た人が挨拶をした、店員は1人なのかな?小さめだからかもしれないけど
とりあえずそんなどうでもいい心配は置いといて中を色々と見始めた。
「お二人さん、これはどうかね?」
そう言ってレジに居た・・・店長かな?が出したのは・・・
「ヘアピン?」
星の形をしたヘアピンである
「安くするよ、どうせ在庫整理だ」
その言葉に少しためらったが、安く、デザインもいいのでみなみちゃんも同意して買うことにした。
「まいどあり」
お金を払い、私達は店を出た。
その後、いくつかウィンドショッピングをした後、近くのカフェへと入ることにした。
「そういえばここって何度か見たことあるけど実際に入るのは初めてね」
「そうなんですか?」
「うん、多分他と変わらないだろうし、近いからここでいいかなって」
「判りました」
みなみちゃんも同意したので中へと入った。
中は一見普通のカフェみたいだけど・・・
「かがみ先輩、これって何でしょう?」
みなみちゃんがそう言って示したのは・・・
317 :
35-215:2008/02/22(金) 14:25:35 ID:u26dl0rz
「2人用メニュー?」
「はい」
「どうしよう・・・頼んでみる?」
みなみちゃんは少し考えていたが、頷いた。
「すみません、この胸のときめきってのを1つ下さい」
「はい、少々お待ちください」
少しして運ばれてきたのは・・・え?
「こ、これって・・・」
「多分・・・」
1つのグラスに2つのストロー・・・つまりこれって・・・
「みなみちゃん、どうする・・・?」
「飲むしか・・・ないですよね?」
「そ、そうだね・・・」
結論に至り2人揃ってストローに口をつける・・・正直恥ずかしい・・・知り合い誰も来ません様に
「あの店・・・変わってたわね」
「そう・・・ですね」
結局あの後幸い知り合いに会うことなく店を出た。恥ずかしかった・・・
「また、今度行きませんか?」
「そう・・・ね」
私も本音を言っちゃえばまんざらでもなかったけど・・・
その後、いくつか店を回った所で時間になり、みなみちゃんと別れ、家に戻った。
「ただいまーってあれ?誰もいないの?」
どうやら机の上にメモが3枚・・・どれどれ、まず1枚目
『お姉ちゃんへ、今日はゆきちゃんの家に泊まりに行ってきます』
2枚目は・・・
『かがみへ、今日はまつりと一緒に出かけてます。多分朝帰りになるかも』
いのり姉さん・・・3枚目は
『かがみへ、お父さんはお母さんとちょっと仕事の関係で出かけてるので帰れないかもしれないのでお留守番よろしく』
「ってことは・・・今日は私1人?」
と、そこで携帯がなった・・・相手はみなみちゃん?
「もしもし、みなみちゃん。どうしたの?」
『あ、かがみ先輩、ちょっと頼みたいことがあるんです』
「何かな?」
『お母さんが出かけてて、鍵がなくて家に入れないんです。出来るなら今日、泊めてもらえませんか?』
「あれ?みゆきの家につかさが泊まりに行ってるはずだけど・・・?」
『今出かけてるみたいでチャイムを押しても反応がないので・・・』
「そうなの、判った。今日は誰もいないから多分大丈夫だと思う」
『かがみ先輩の家もそうなんですか?』
「お父さんとお母さんは仕事、姉さん達は出かけてるみたい、つかさはみゆきの家に泊まりに行ったから1人なの」
『そうなんですか、でもいいんですか?』
「うん、大丈夫だよ」
『判りました。今からそっちに行きますね』
「うん、それじゃ」
そこで電話を切る、ふと気づいた・・・
「みなみちゃんと・・・2人っきり・・・?」
多分今私の顔は真っ赤だろう、家に誰も居なくてよかった・・・
「とにかく、準備しないと」
そう言って私は色々とやるべき事を考えていた。
318 :
35-215:2008/02/22(金) 14:27:29 ID:u26dl0rz
しまった、タイトル変えるの忘れてたorz
保管時のタイトルは「2人のお買い物」でお願いします
いのり姉さんは辛党、これは俺のマイジャスティス
後書き込んでから思ったけどラノベタイトル出しちゃってよかったかな・・・
>>318 かがみな新鮮だよかがみな
作品の件だけど、同じシリーズでエロありとエロなしが混じったりもするからなあ。
シリーズ物をバラで投下できないわけで。
胸のときめきはSO2ネタ?
胸のときめきとは懐かしい…
SO2はVCの為に二周やったなあ。
パソから全く規制されてしまい、うpロダにうpしたいのですが、
パスはどこらへんに書いてあるのでしょうか…
探しても見つからないorz
>>322 このスレのURLを見てくれ。
数字の前の英7文字。
把握しました、ありがとうございます!
うp完了次第報告にきます…
ええと
投下したいんですけど、待つべきでしょうかねやっぱり
ええと
どんなのを投下?
ゲームネタなら、待つべきだが?
そうでないらき☆すたSSなら、本来のスレの主役だから
待つ必要なし。
あと29時間半で解禁か…
あ、いえ、普通のを
>>324氏を待つべきなのかなあ、と思いまして
とりあえず九時まで待って、何もないようなら行っちゃいます
330 :
17-234:2008/02/22(金) 20:42:24 ID:TzrV9OWG
どうも、17-234です。
うpロダに投下完了しましたので報告致します。
「小悪魔猫の悪戯」
あきら×白石 久々のエロものです。
今日の日付ネタw
読んで頂けると幸いです。
それではまた。
携帯からはいけるので報告だけしに来ました…すいません(´・ω・`)
因みに、題名が「小悪魔の悪戯」になってますが「小悪魔猫の悪戯」が正式な題名です。
お手数ですが保管の際は、猫を入れてくださいお願いします。
URL貼ってくださった方ありがとうございます!
「耳をすませば」に登場する団地、公団じゃないな。
みさお「でも玄関出てすぐの部屋が子供部屋だってトコは同じなんだぜ」
兄「同感。でもあんな山ん中に無いな」
耳をすませヴァ
>>327 俺にとってはそれまでの時間は断頭台に向かう気分だ・・・
>>333 「ちびっこのおやっさん!これ、よんでほしいんだってヴァ!」
「なんだこれ・・・『三秒ルール』?」
一日後・・・
「荒削りの・・・ミートボールだ・・・」
「ヴァ!」
明日飛行機で熊本まで行くというのに、変な電波を受信した。
「今日は『耳をすませば』がやる日だね」
「へぇ、アンタもジブリ観るんだ。以外ね」
「私だって映画くらいは観るよ。
まぁ、今夜のはお父さんとゆーちゃんが観るから一緒に観るだけなんだけどネ」
「何だ、そういうことか」
「でもいいお話だよね、『耳をすませば』って」
「そだね。ヒロインの雫って子、結構萌えるしね。
お父さんの台詞が棒読みなのはジブリ作品らしいけど」
「おーっす、チビっ子〜、何の話だ?」
「ん? 杉村がKYだってこと」
「は? いきなりなんだよ」
「こなたの事は放っておいていいわよ。今夜やる『耳をすませば』の話よ」
「お〜、あれ兄貴が大好きなんだぜ?
兄貴が中学ん時に観て、あやのの姉ちゃんに………」
「みーさーちゃん? あまり黒歴史を広めちゃだめだよ? ね?」
「「「………………………」」」
続かない。
「耳をすませば」って、よく考えたらこなた達が小さい頃の作品なんだねぇ。
自分の歳を感じますorz
337 :
23-49:2008/02/22(金) 23:05:13 ID:R+VkuUs/
どうも、なんか上の方でグズグズしてた者です
「メドレーリレー・バースデー」第二話、上がりました
パティとひよりと予告してしまいましたが、長くなったのでパティ視点のみです
あまり間隔空いてなくて恐縮ですが、投下させていただきます
・パティ視点
・エロ無し
・5レス使用
・漢字かなアルファベット混じりで読みにくいかもです
途中で止まってしまった場合は例によって wiki と避難所を参照してください
投下支援
【track 2 : 愛しのメガネと危険なフラグ】
ディス、イズ、トーブ ・ ドーブツ ・ コーエン。
Zoo デハなく、station の名前デス。
Platform の屋根の隙間カラ見上げる空ハ、昨日とはウッテカワッテの見事な快晴。
今にも魔法以上のユカイが限りナク降り注がんばかりの、絶好の party びよりデス。
本日、September 16 は、ワタシ、Patricia Martin の classmate にシテ最強のクーデレ美少女、
ミナミ・イワサキの birthday party が開かれることになってイマス。
本当の birthday は四日前の 12th だったのですガ、ミナミはナント!
ワタシタチにそのコトを教えてくれなかったのデス! ヒドイと思いませんカ!?
ワタシは思いマス!!
ソコデ、ミナミの擬似百合姉妹であるミユキから相談を受けた、我が愛すベキ生涯の partner こと
ヒヨリ・タムラが一計を案ジ、surprize party を開催するコトになったのデス。Oh Yeah!
場所はミナミの自宅。
今ごろミユキがミナミを date に連れ出して、ドコカ適当なバショでスッポリしけこんでるハズ。
ソノ隙にワタシタチが MINAMI-KE に忍び込んでオヘヤを魔改造、という寸法デス。
フッフッフ、米国式のゴホウシでトモダチ甲斐のないミナミをパッティパティにしてやんヨ! デス!
「いやパティ、意味わかんないから」
「What?」
トナリに立っていたヒヨリが monologue に TSUKKOMI を入れてきましタ。
「モシカシテ、声に出してマシタカ? ワタシ」
「うん。思いっきり」
オゥシット。
よもやワタシがそんなドジッコを演じてしまうトハ。ドコから出てイタのでショウ。
マァイーデス。ヒヨリの TSUKKOMI がもらえましたカラ。
「……ま、そのテンションは頼もしいけどね」
Oh、さらにハミカミまで頂けマシタ。ドコゾの王子なんか目じゃナイ pretty さデス。
思わズ抱きしめたくナッテしまいマス。
「――ぅおわっ!?」
「Oh?」
思わず抱きしめてしまいマシタ。
「っちょ、パティ、なに!? なんスか?!」
「Wmm ……フカコーリョク?」
「どこがっスか! ってゆーか離して! 見てる! みんな見てるって!」
ヒヨリがマッカにナッテ暴れマス。
pretty ――否。萌え萌えデス。
「良いではないかヨイデハナイカ。ヒヨリン、イツモもっと大胆なモノ書いて見せテルじゃないですカ」
「それとこれとは全然! ――って、あ! ほ、ほら来た! 先輩たち来たから……って!
センパイ! 泉先輩! 小早川さん! ドコ行くんスか!? なんで素通りするんスかーっ!!」
ウフフ?
アナタの声の方がヨッポド人目を集めてますヨ、ヒヨリ?
ナンナラその唇、塞いであげましょうカ……?
「うう……恥ずかしかったっス……」
「ごめんね田村さん。お姉ちゃんがジャマしたらダメって言うから……」
未ダ頬を赤くシタままのヒヨリに、小さなユタカが大きな箱を抱えながら小さな頭を下げてイマス。
Birthday cake か plesent が入っているのでショウ。
その隣デ、
「いやぁ〜、朝から良いモノを見たよ」
ト、コレマタ大きな紙袋を持った小さな腕を組んで小さな胸を反らしながラ、コナタ。
ソシテそれを聞いて溜息をつくヒヨリに、フト首をかしげマス。
「どったのひよりん? なんかテンション低くない?」
「へ?」
Oh。
「コナタもソウ思いマスカ。ジツはワタシも気になってイタのデス」
ナンダカ今日のヒヨリは、元気がナイというのとは違うのですガ、ドコカ妙に大人しいのデス。
「そうなの? 田村さん、だいじょうぶ?」
「や、やだな、大丈夫だよ。――まあ、仮にも発起人っスからね。緊張気味なんスよたぶん」
「ふぅん? ま、イベントとは勝手も違うだろうしね」
ナルホド。
マァ、ヒヨリは意外とアガリ屋さんデスからネ。
『まもなく〜、ウン番線に〜、電車が参りまぁす。危険ですのでぃ〜――』
話しているとゲンドウの announce が入りマシタ。
「おっと。じゃあそろそろ行くっスか」
ヒヨリが timetable を見上げマス。
「あ、待ってひよりん。もう一組」
「ソウですヨ、カガミとツカサがマダ来てマセン」
「はい?」
ワタシとコナタの言葉に顔を戻しテ、ヒヨリはシカシ不思議そうに首をかしげマシタ。
「え? 柊先輩たちは車で行くって、連絡行ってないっスか?」
「ソウなのデスカ?」
「あ、うん。つかささんから電話あったよ」
答えたのはユタカでス。
ソレに続けて、周囲をキョロキョロと見回しながラ、コナタが言いマス。
「そうじゃなくて、えっと……」
「――おうーっす!」
ソシテそこに飛び込んでクル、聞き覚えのアル powerful な husky voice。
首を向けるト、
「ミサオ?」
間違いアリマセン。腕をブンブカ振りながら笑顔でコチラに歩み寄ってくるのハ、
隠しキャラで Cherry のヨメのミサオ・クサカベでしタ。大きく開かれた口にヤエヴァが覗いてイマス。
「よー。パトリシア田村小早川、揃ってんなー」
「うむ、タイミングばっちり」
コナタが言うのト MINAMI-KE 行きの電車が home に滑り込んできたノハ、ホボ同時デシタ。
電車は、混雑はしていませんデシタが、皆が一緒に座れるだけの space も空いてませんデシタ。
デスので吊革に捕まれないユタカのために、door のそばに陣取りマス。
「おはようございます。日下部センパイ、峰岸センパイ」
片手で手すりに捕まり、片手で cake の箱を抱えて、コナタに肩を支えられながら、ユタカ。
「おう。おはよ」
「おはよう、小早川ちゃん」
Wm?
……Oh。ヨク見ると、ミサオのトナリにモウ一人、寄り添うようにシテ Long brunet ――
長い栗色の髪をシタ、オネーサマ風の人物が立っているではないデスカ。
ナンデショウ? 妙に存在感がなくて声を聞くまで気が付きませんデシタ。
デスガ、見てみればナカナカ beutiful なオナゴデス。
「田村ちゃんも、おはよう。泉ちゃん、今日はお招きありがとうね。それと、」
彼女はユタカに続いてヒヨリ、コナタにと丁寧に挨拶をシテ、ワタシに目を止めると首をかしげマス。
「えっと……」
「Good morning! ハジメマシテ、ワタシのナマエは Patricia Martin デス。アナタは、ミサオの
オトモダチですカ?」
「あら。――ええ、みさちゃんとは小さい頃からのお友だちよ。初めまして、マーティンさん。
峰岸あやのです」
「Non non、first name で呼んでクダサイ」
「そう? じゃあ……パトリシアちゃん」
Wmm ……控え目デ柔らかく、ソレでいて堂々とシテいて、コレはナカナカの大和撫子デスヨ?
新しい type の萌えキャラデス。髪が黒くナイのが実にオシイ。
ミサオにこんな OSANA-NAJIMI がいたトハ、意外デス。
「そっか。パティとは初めてなんだっけ、峰岸さん」
「ええ。びっくりしたわ。いきなり外国の人がいるんだもの」
「あー。そーいやあんときはいなかったよな、パトリシア。バイトって言ってたっけ」
コナタ、アヤノ、ミサオが hum-hum と頷き合いマス。
ソレに対して、首をかしげるワタシデス。
「あのときトハなんでショウ?」
「ほら、夏休みにわたしとみなみちゃんと田村さんと日下部先輩とで水族館に行ったときのことだよ。
そのときに峰岸先輩もいたんだ。パティちゃん、アルバイトで来れなくて残念だったよね」
尋ねると、ユタカが少し申し訳なさソウに言いマシタ。
納得デス。そんな話もありマシタネ。
「I see。―― Oh、トいうコトは、アナタがユタカの言ってイタ 『mermaid』 デスネ?」
「ま、マーメイドって……小早川ちゃん、そんなこと言ったの?」
「パ、パティちゃん!」
二人がマッカになってしまいマシタ。
恥らいあう fairy と mermaid …… Good situation デスネー。
「――ときに、みさきちや」
「なんだちびっ子?」
一方デ、コナタはミサオと親しげに話していマス。
「さっき、私だけ名前が呼ばれなかった気がするのだがね」
「あー。小っこすぎて見えなかった」
「ゆーちゃんの方が小さいよっ!」
「あ、ひっでー。なー小早川ー? ひでーねーちゃんだなー?」
「あ、あはは……」
「うぬぬ」
会話の内容はトモカク、随分と友好的な雰囲気が漂ってマスネ。
コンナニ仲、良かったでショウカ。
「まったくもう、誘ったのは私なのに」
「――え?」
ト、
先程からズット喋っていなかったヒヨリが、驚いたような声を上げマシタ。
「ん? どったのひよりん」
「あ、いえ……泉先輩、黙ってろって言わなかったっスか? 日下部先輩には、今日のこと」
「なにぃ? ホントかソレちびっ子」
そこにミサオが割り込んで、コナタが苦笑シマス。
「いや言ったけど、それは私から誘いたかったからであってだね」
「お前あたしのこと忘れてたじゃん」
「うーん、八重歯がまぶしすぎて」
「カンケーねーだろっ!」
「み、みさちゃん、落ち着いて。いいじゃない、ちゃんと誘ってはくれたんだから」
ソシテ、再び MANZAI が始まり、アヤノが諌めマス。
「……」
当のヒヨリは、置いて行かれて微妙にケゴンノタキのような顔。……ケゴン? ケゲン?
テユーカ、
「デモ、コナタ。ミサオにはカガミをNTRレタのではなかったデスカ?」
「――ぶっっ!?」
疑問をぶつけると、ヒヨリがモンソイ勢いで噴出しマシタ。
ユタカ、ミサオ、ヒヨリはキョトンとシマス。
「えぬ、てぃ……あーる?」
「ヒーらぎがどーかしたのか?」
「?」
「いや……気にしないで。特にゆーちゃんは」
ソシテ三人を半分無視しながら半眼で、コナタ。
「――ひよりん?」
「ちちちち違うっス! 誤解っス! 私っ、そんな言い方してないっス!」
「ふーん? じゃあ、別の言い方をしたわけだ」
カタルにオチてマスネ、ヒヨリ。ニヤニヤ。
「あ、う、あうあうあう――ちょっとパティ! こっち来て!」
ト、思ったら突然ワタシの手をとって dat のゴトク駆け出しマシタ。
大胆デスネー。
ワタシは引きずられるようにシテ、そのまま二人でトナリの車両まで移動しマス。
「もーっ、いきなりなんてコト言い出すのパティ」
マッカになったヒヨリに詰め寄られマス。
頭の左右に汗を飛ばす気持ちで holdup デス。
「ナニカ ・ マズカタ ・ デースカ?」
「こんなときだけカタコトにならない! ……まあ、確かに泉先輩と柊先輩の間に日下部先輩が
上手く割り込んだらしいって言ったのは私だけどさ……本人の前で言うほど空気読めない子じゃ
なかったはずでしょパティは……」
ソシテ怒鳴ると、ヒヨリはシボムように項垂れて、額に左手を添えながら呻きマシタ。
「ソ、sorry ……デスガ、イチオウ言葉は選びマシタよ?」
そのつもりデシタガ、流石に申し訳なくなりマス。
「……まぁ、ね。泉先輩以外には通じなかったみたいだけど、だからって――」
「ソレニ、ヒヨリも気にしてイルのでショウ?」
「え?」
「サッキから様子がヘンだったのが、コナタが来てからマスマス強くなりマシタ」
コッチだって気になりマスヨ、ト、そんな気もないのに唇がとがってしまいマス。
「……それ、ほんと?」
「ハイ」
ドウヤラ自覚がなかったようデスネ。
否、こういうコトは外カラ見た方が察しやすいのかも知れマセン。
否――否。
ワタシだからこそ分かったのでショウ。
ヒヨリは、DOJIN artist の習性とシテ、常に集団ヨリ一歩下がった位置カラ周囲の人々を
観察スル癖が染み付いてイマス。デスカラ、group の中で一人だけ silent になってイテモ
ミンナいつものことと気にしマセン。
シカシ、ワタシだけは分かりマス。
ワタシは、そんなヒヨリをいつも見ていましたカラ。
「ヒヨリ、今日はユタカよりコナタを見てマスガ、ソレはミナミがいないカラじゃないでショウ?」
「? ……うん」
言うと、ヒヨリは一瞬考えて、頷きマシタ。
「デモ、楽しそうじゃナイのは、ソレが理由じゃないですヨネ?」
「……!」
ソシテ目を見開きマス。
マジマジと見つめられて、反射的に両頬に両手を添えて目を伏せてしまいマス。
「ソンナ熱い目で見ないでクダサイ♡」
「……」
Oh、トタンに視線が生温かくなってしまいマシタ。Jesus。
「いや……自分でもよく分からないんだよね。違和感、っていうか、イヤな予感っていうか……」
サラリと流して、ヒヨリは首を傾げマス。
「Hum……デモ、ワタシにはコナタは普段通りに見えマス」
「……うーん、そうなんだよねえ。なんなのかな……」
腕を組んで考え込んダリ、振り返って四人の方に目を向けタリ。
Idea を捻出しているトキに匹敵スル真剣さデスガ、萌えている場合じゃアリマセンネ。
ワタシも首を傾けて、ヒヨリの背後、車両を仕切る door の glass 越しに皆の方を伺いマス。
コナタも、ユタカもミサオも普通デス。
アヤノはよく分かりマセンガ、不審な様子はないデスシ、皆も普通に接してイマス。
敢えて言えバ、
「ミサオが手ぶらデスネ」
「え? ――あ、ホントだ。プレゼント買ってないのかな」
「アヤノが一緒に持っているのでショウか」
「うーん……分からないけど、それはたぶん関係ないよ」
はずれデシタか。
トナルト、あとハ、
「コナタとミサオが、前よりも仲が良くなっテル感じがするコトぐらいでショウか」
「うーん……」
「デスガ、flag が立ってるというほどじゃないデス」
「そんなの……――フラグ?」
Oh?
ヒヨリが突然頭を上げマシタ。
ワタシを見て、振り返って四人を見て、ソシテまたワタシに向き直りマス。
その顔ハ、驚いたようナ、困ったようナ、焦ったようナ。
Deadline 直前にナッテ原稿に重大な misstake を発見シタ、ド修羅場の DOJIN artist の顔。
「それだ……」
「What? 何がデス?」
「フラグだよ!」
迫るように身を乗り出サレ、サシモのワタシもたじろぎマス。
「あ、ごめん……いや、まだ柊先輩の方を直に見たわけじゃないから確かなことは言えないけど……」
シカシすぐに体勢をモドシ、焦燥のタメか赤味の差した頬を微かにユガメ、
慎重に口を開きマス。
「何か……嫌な立ち方をしてるフラグを見たときと同じだ。この感じ」
同時に列車が curve に差し掛かり、車両の床が僅かな間、水平を失いマシタ。
Oh …… JISSOHJI angle ……
344 :
23-49:2008/02/22(金) 23:13:50 ID:R+VkuUs/
以上です
ありがとうございました
ちなみに、JISSOHJI angle =実相寺アングル
映画監督、故・実相寺昭雄氏が得意とした、いくつかある撮影技法の総称で、
この場合はカメラを傾ける演出のこと
どちらかと言えば特撮畑の用語なのでパティが知ってるかどうかは微妙かも
てかやばいっス
パティ書くの楽しいっス
リアルタイムにて読了。
そう、かがみが問題なのですよね。
こじれっぱなしのフラグ、上手く回収できるのでしょうか。はらはらしつつぐっじょぶ。
リアルタイム読了2号。GJ!
グッジョブ、JISSOHJI angle に思わず笑いました
パティ一人称超楽しいですよね、私も以前書いてはまった口。
勝手にネタに走ってって止められないんだよなぁ。
>345
とてもぐっじょぶなのです。
パティは最近、妙に気にいっています。
さて、準備をしている方がいなければ投下しますです。
「ゆーちゃん対策委員会♪」
ゆたか& こなた、みなみ、かがみ(他、全般)
注意事項
・一話完結物
・エロあり
・SM的表現あり
・ゆーちゃん注意
岩崎家に集まったメンバーを見渡して、みゆきはこほんと咳ばらいをした。
「さて、みなさんに集まって頂いた訳ですが」
みゆきの他には、こなた、かがみ、つかさ、みなみ、ひより、パティと
3年生組と1年生組が一人を除いて集結している。
「本日の議題は他でもありません。小早川ゆたかさんのことです」
全員が一斉にうなずく。
「彼女の問題行動について、各自の報告をお願いします。まずは泉さんお願いします」
最初にアホ毛が跳ねている、小柄な少女が口を開いた。
〜 報告1 始め 〜
「おはよう、こなたお姉ちゃん」
「お、おはよう…… 」
瞼を開けるとゆーちゃんが、いつもの通りに私のお布団にもぐりこんでいた。
「ゆ、ゆーちゃんいつの間に」
「えへへ。3時間前から」
「私のカラダに、何をしたのかな? 」
「内緒だよ。お姉ちゃん」
太腿の間がじんじんと痛むのは決して気のせいじゃないし、シーツがぬめりを帯びているのも、
断じて汗の為なんかじゃない。
「『そんなこと』はどうでもいいよ」
私の言葉を無視して、ゆーちゃんは唇を塞いで舌を入れる。
「ゆ、ん、んっ…… 」
間髪入れずに、パジャマの中に手をもぐりこませてくる。
「ゆ、ゆーちゃん。ふあっ」
唇を無理矢理離して荒い息をつくと、ゆーちゃんが満面の笑みをみせた。
「大好き。こなたお姉ちゃん」
私はみかんの皮みたいに、手際よく剥かれていく。
外気に晒された下腹部に、ゆーちゃんの小さな手が伸びて、アソコを揉みほぐす。
「おねえちゃん、イってもいいよ」
小悪魔的な微笑を向けてくる。体力は圧倒的に私が上だけど拒絶できない。
上目遣いのゆーちゃんには逆らえない。
「だめっ、ゆーちゃん、んああああっ」
朝はゆーちゃんに、最低3回はイカされるんだよ。
毎朝、必ずイカされるから1週間で21回だよ。ギャルゲの女の子よりよっぽど淫乱だよっ
〜 報告1 終わり 〜
こなたが、涙ながらの訴えを終えると、全員が同情と憐みの視線を彼女に向けた。
「泉さん。ありがとうございました。次はみなみさん。お願いいたします」
今度はショートカットの少女が立ち上がった。
〜 報告2 始め 〜
「みなみちゃん。はやく〜 」
「で、でも…… 」
「ゆっくりしてると人がきちゃうよ」
「ひっぱっちゃ…… ダメ」
私は、首が痛くて悲鳴をあげました。しかし、ゆたかは空を仰ぎ見ながら微笑んでいます。
「みなみちゃん。お月様がでているよ」
確かに満月が東の空から昇っていきます。
「チェリーも一緒だったら良かったのにね」
「それは…… やめて」
私は、顔を真っ赤にしながら首を横に振りました。
「みなみちゃん。チェリーとお散歩したくないの? 」
「ゆたか。お願い、もう…… こんなこと…… やめよう」
私は羞恥に震えながら必死に哀願しましたが、ゆたかは微笑を浮かべたまま、
ぐいぐいと私を引っ張っていきます。
私を連れて公園の近くまで来た時、ゆたかは急に立ち止まりました。
不意に寂しそうな顔で私を見下ろします。
「みなみちゃん、私のことキライなのかな」
「え…… そんなこと」
私は口ごもります。どんな恥ずかしい目に遭わされても、ゆたかを嫌いになれません。
そして、ゆたかに嫌われたら、生きていくことができません。
「私、ゆたかの事、好き…… 」
「ありがとう。みなみちゃん」
リードを持つ手を離して、ゆたかは私を抱きしめます。
彼女の口付けは甘くて、優しくて、蕩けそうになってしまいます。
「さ、いくよ。みなみちゃん」
「う、うん」
私は恥じらいながらも嬉しそうな顔を浮かべて、ゆたかに連れられていったのです。
〜 報告2 終わり 〜
「みなみちゃん…… それって」
「いわゆる、えすえむってヤツっスか。濃いっスねえ」
真っ赤になるみなみに、興味の視線が集中する。
「では次に、かがみさん。お願いします」
〜 報告3 〜
「ゆたかちゃん。ちょっと来なさい! 」
ゆたかちゃんが、女の子漁りをしているって話を聞いたから、驚いて廊下に呼び出したわ。
「かがみ先輩、どうしたんですか?」
「とぼけないでよ。アンタなんて事してんの? 」
「ですから、どういう事でしょうか? 」
「こなたや岩崎さんにイヤラシイことして、何考えてるのよっ! 」
あくまでとぼけるゆたかちゃんに、カッとなって詰め寄ったわ。でも……
ふわっ
「な、なに? 」
「先輩、とても可愛いですね」
小柄なはずのゆたかちゃんが、私を包み込むように抱きついてきた。
「か、からかわないでよ! 」
顔を真っ赤になって怒ったわ。でもね。
「本当に可愛らしいです。こなたお姉ちゃんがお嫁にしたい気持ち分かります」
「ばかっ」
「ふふ。もう少し素直になると良いですね」
ゆたかちゃんは、私の唇をいきなり塞いできたわ。
「んんっ…… だめっ」
必死に逃げようとするけど、ゆたかちゃんのキスがとても優しくて、頭がぼうっとなってしまう。
「先輩、大好きです」
濃厚なキスの次に、息を耳に吹きかけられる。
「だめよっ、そこは」
「もっと素直になってください」
「だから、ダメ…… いやっ、あん」
「先輩、ここ感度がいいんですね」
「やめて、耳、弱い…… んだから、んあっ」
くすぐったくて必死に逃げようとするけど、何故か力が入らなくて絡められた腕を振り解けない。
「嫌、噛まないでっ」
「かがみ先輩、とても色っぽいです」
「そんなこと…… いうなぁ」
私はがくがく震えながら、必死で我慢していたわ。でも、ゆたかちゃんはね。
「先輩、我慢しないでください。お体に良くありませんから」
スカートの中に指が差し込まれてきて……
「そ、そこはダメよ」
「チカラを抜いてくださいね。痛くないですから」
「ダメ、みんな見てるから、やめてっ」
けれども、ゆたかちゃんはまさぐる手を緩めてくれやしなかったわ。
その後? ご想像の通りよ! さんざんよがり狂わされて、衆人環視の中でイかされまくったわ!
最後の方は周囲に人だかりができていたわよ……
〜報告3 終わり〜
ゆでたこのように真っ赤になった、かがみが着席してから、司会のみゆきが締めくくる。
「これをもちまして、第1回、『小早川ゆたか対策委員会』を終了させていただきます。
皆様、お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございました。
これにて散会いたします」
(おしまい)
えっと、読んでくださった方、ありがとうございます。
つい魔が差してしまった。反省はしていたりいなかったり……
では。
>>354 リアルタイムで読了しました。
ていうかなんてゆーちゃん無双。いちいちやること成すことえろ過ぎます。
ぜひともこの委員会は続けていただきたいところです。ぐっじょぶ。
356 :
みゆきさん:2008/02/23(土) 00:44:30 ID:8TURrsxu
>>354 そこ、全く対策になってないなんていっちゃいけませんよ
いままでのみなさんのお話を拝聴し、ゆたかさん萌えを増大させ
きたるゆたかさん攻略に全精力を注ぐのですだばだば
おっといけません、噴出が2倍に増えました。当社比でだばだば
ええ〜!?投げっぱなしジャーマン?対策は? でもGJ
貴方の名前と『ゆーちゃん注意』で全てが通じる
素晴らしい
>>354 神!神!!!
黒ゆたかスキーとしてはもう最高のSSです!!!!!!
続き!続き!!!!
ゆーちゃんの立ち位置って実は凄く恵まれているんじゃないかと思うww
360 :
38-360:2008/02/23(土) 07:28:43 ID:y5uh+BBB
朝も早いですが、どなたもいらっしゃらないようでしたら投下したいと思います。
「鏡面界 - 1」
・かがみ視点
・カップリングなし
・非エロ
・シリアス
・後日談(未来)もの
・続きます
・最終的にはそうじゃなくなる予定ですが、最初は若干鬱かも
4レスほど拝借。
受験シーズン、花粉症、開花予報……。
またこの季節がやってきた。
そんな春を思わせる単語がニュースを彩るたび、その淡い色調の画面とは裏腹に、私の胸には暗く
重苦しいものが去来する。疼くような痛みが胃の下あたりから湧いてきて、その波に合わせるように
いつかの自分がフラッシュバックする。
桜の木の下にいる私。
みんなと出会った私。
卒業証書を抱える私。
みんなと別れた私。
交互に現れては消えるそれに、否応なく現在の私は比較されてしまう。
それが嫌だった。
春色、灰色、桜色、鼠色。
そのうち、奥底に眠る記憶まで色を失いそうになるのがわかって、慌ててテレビを消してベランダ
へ飛び出した。闇のなかに体を紛らせてしまいたかったからかもしれない。この輪郭が消えさえすれ
ば、こんな惨めな私も消えてしまえるような気がして。
けれど、私はどこにいても私でしかない。それは何度も確認したことだったはずだ。
見上げる空には星一つなくて、それがかえって心を落ち着かせてくれた。
気安めの光ほど残酷なものはないのだから。
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
鏡面界 - 1
the plateaux of mirror
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
ありがたいのは、まだこの季節の夜風が肌寒いことだ。
おかげで、涙が溢れるまえに我に返ることができる。暖かい部屋に戻って、温かいご飯を食べて、
笑いの絶えないテレビと向き合うことができる。
1DKの洋室は小さなヒーターでもすぐに暖まるからいい。余計なガス代も電気代も必要ないから経
済的だし、環境にもやさしい。立ち上がればすぐにユニットバスまで辿り着けるのも嬉しかった。冬
の夜中にトイレに行きたくなっても、ぎりぎりまで毛布にくるまっていられる。無駄に広くないおか
げで、大事なものをなくしてしまう心配もない。いいことずくめだ。
3割引のシールが貼られ、さらにそのうえから半額シールが貼られた惣菜は、どれもメリハリの利
いた味つけで、いつも同じ味なのが素晴らしい。量も一定だし、カロリー表示もしっかりついている
から、自分で作るよりも健康の管理をしやすい。焼きそばにのった紅生姜は、愛用の口紅よりもずっ
と鮮やかな赤をしていてきれいだ。中華サラダのドレッシングだって、ムラのない見事な濃さに仕上
がっている。食後のデザートにいたっては選り取り見取りで、そりゃあ、つかさの手作りには見劣り
するけれど、万人向けの安定した味であるのは間違いない。
テレビのなかの人たちは、みんなけらけらと楽しそうだ。あの人たちを見ていると自然と口もとが
弛んだ。一緒に笑っていると、心が落ち着く。大したことのない話でも面白おかしく話してくれると、
落ち込んでいても元気になれる。
私は元気だ。一人でも楽しく暮らしているのだ。
それなのに、どうしてこんなに体が震えるのだろう。
それなのに、どうしてこんなに料理はしょっぱいのだろう。
それなのに、どうして口もとしか笑っていないのだろう。
その理由はもちろんわかっている。けれど、その答えを心の奥底から引き摺り出してきてはいけな
い。
だって、これは自分で決めたことなのだ。
あの賑やかな家を出てから、私は家族の誰とも会っていない。両親にも、二人の姉にも、そして、
ずっと一緒に育ってきた双子の妹にも。
もちろん縁を切ったわけじゃない。そんな勇気はないし、そうする必要もない。電話やメールは
しょっちゅう来る。その都度、当たり障りのない範囲で返事を出す。本音は厳重に包み隠して、胸の
引き出しにしまい込んでおくのだ。そうしないと甘えてしまう。
だって、心配をかけたくはないじゃないか。
だから、
「たまにはさ、ご飯作りにいこうか?」
という、つかさからの連絡も毎回断っている。あの味は恋しいけれど、今は早い。
私は元気だし、おいしいご飯を食べているし、それなりに楽しく暮らしている。
そこに嘘はないのだ。
ただ、自分自身をも騙しているだけかもしれない、とは思う。
けれど、だとして、なにがいけないのだろう?
自分を騙せるだけの演技力があれば立派だと思う。他人を騙すよりも、自分自身に嘘をつくほうが
よっぽど大変だ。少なくとも私の場合は。
だから、自分に正直になるために、私は一つだけ家族に嘘をついている。
毎日ちゃんと会社に通っている、という嘘を。
こんな嘘は遅かれ早かれ露見すると思う。隠し通せると思うほど幼稚ではない。それぐらいはわ
かっているつもりだ。だいいち、隠し通そうとも思っていない。
ただ、ほんの少しだけ勇気が足りないだけなのだ。
すべてがうまくいったら、すべてを打ち明けようと思う。だからこそ今はもっと頑張らなきゃいけ
ない。
「そう、自分で決めたことなのよ」
改めて言葉にしてみると、すべきことが明確になる気がする。
もはや単なるプラスチック製のごみとなってしまった容器はさっさと片付け、テレビも消し、私は
机に向かう。対峙するのは分厚い参考書と問題集。その隣には、愛用のマグカップにミルクティーを準備して
お
く。
これは、誰のためでもない、私のためだけの勉強だ。
私に正直になるための、はじめての勉強。
大学に入るまでの勉強だって、自分のためであったことに疑いはない。でも、それと今回のとは決
定的になにかが違う気がする。
三年前、大学を卒業すると同時に、私は東京に出てきて一人暮らしをはじめた。就職の決まった会
社が近かったからというのが理由だった。当時は本当にそれだけだった。
けれど結果的には、その選択が大きな影響をもたらしたのだろう。
こうして一人で暮らしてみなかったら、私は自分を見つめ直すことなんてできなかっただろうから。
――でも、
実家で過ごした最後の夜のことは、瞼を閉じれば昨日のことのように思い出せる。
それは、楽しかった、美しかった、輝いていた私たちの、最後の記憶。
こなたとみゆきがやって来て、盛大な送別パーティーを開いてくれた。つかさと一緒になって作っ
た豪勢な料理やらケーキやらを次々と、まるで魔法のランプでもこすったかのように出してきてくれ
て。
でもそこは私たちだから、やっぱり全然しんみりとした空気にはならなくて、いつもの調子でから
かわれたり突っ込んだりを繰り返して、そうして朝までを延々と語り明かした。
最後のころには、つかさなんて私にべったりと寄り添っちゃって、それに負けじと反対の腕に縋り
つくこなたがいて、そんな光景をいつもの穏やかな笑みを湛えて見守るみゆきがいて――
……いけないいけない、目のまえのことに集中しないと。
今の私があんな光景を思い出してはいけない。みんなを懐かしがってはいけない。
まだ、みんなに会う資格なんてないんだ。
こんな惨めで無様な私が、どの面下げて出向いていくというのだろう。
この三年間、こなたともみゆきとも、ろくに連絡をとらなかった。集まろうよと誘われても、忙し
いからと断った。
実際に忙しいというのも嘘ではなかった。会社勤めをしていたころは暇らしい暇なんてどこにも存
在しなかったのだ。
そして、時間ができたら会いたいなと思っているうちに、私は会えなくなってしまった。
結局、交友らしい交友は互いの誕生日におめでとうメールを送りあった程度。
恥ずかしくない自分になるために、もっと勉強しなくちゃいけないんだ。
勉強しなきゃ。勉強しなきゃ。勉強し……
◇
しまった、と思ったときはもう手遅れで、瞼の隙間から入り込むのは眩い朝の陽差しだけだった。 黄金に
輝く光の筋は、まるで私を詰っているかのようで、思わず睨み返してしまう。
溜め息が出た。
あれだけ頑張ろうと誓ったのに、またほとんど進まなかったではないか。
この一週間でどれだけ進んだろう? せいぜい3ページといったところだろうか。
道のりは険しいというにもあまりにも険しすぎる。Tシャツ1枚で雪山登山に挑戦するぐらい無謀だ。
こんな調子じゃいけない、そうわかってはいるのに。
さすがに朝から晩までアルバイトをしたあとに勉強をするというのは、体力的に厳しいものがあっ
た。少しでも勉強時間を作るためにと会社を辞めたのに、なんとも皮肉なものだ。
我ながら、自分の見通しの悪さに愕然とする。
もう少し想像力があれば、こんな状況は容易に想像できたはずじゃないか。
だけれど、これも自分で決めたこと。
それを全うできないということは、まだまだ覚悟が甘いのだ。
それからしばらく一人で反省会をしようかとも思った。けれど、そんなことをしてもただの自己嫌
悪で終わってしまうに違いない。
それならばと、私はシャワーを浴びることにした。
ユニットバスへ向かうまえに、マグカップの中身を一気に飲み干した。とっくに冷たくなっていた
ミルクティーは、やけに甘さが控えめに感じられた。食道を伝っていくひんやりとした液体の感覚が、
少しだけ冷静さを取り戻させてくれた。
目論見どおり、起き抜けのシャワーは、眠気も寝汗も苛立ちさえもなにもかもを吹き飛ばしてくれ
た。これでどうにか一日を生き抜くことができる。この三年間、私はずっとこうしてきた。
そして誓うのだ。
今日こそは大丈夫! ちゃんとやらなきゃならないことをやれるはず!
と。
ただ、少し上機嫌になりすぎていたのかもしれない。
髪を乾かしているときに鳴らされたインターフォンに、迷いもなく出てしまったのだ。
鼻唄なんか歌いながら。もしかしたらスキップしていたかもしれない。
ドアを開けると、そこには私と同じ色の髪をした子――つかさがいた。
366 :
38-360:2008/02/23(土) 07:42:12 ID:y5uh+BBB
以上です。
初投下なもので、若干手間取ってしまった点、
および予定レスをオーバーしてしまった点、ともども申しわけありませんでした。
読んでくださった方、ありがとうございます。
>366
ぐっじょぶ&初投下オメ
文章は落ち着いた感じを受けました。
かがみが、周囲の人たちと、今後どのような物語を刻んでいくのか……
続きをわくてかしながら待っております。
ううむ、打ちひしがれたかがみの描写が心に刺さるなあ。
夢を見失ってしまったかがみが、どんな事を感じどんな道を選ぶのか。
まずは続きを楽しみにしています。ぐっじょぶ。
>>344 GJ!
パティ視点だとちょこちょこ英語が混じるから
英語苦手な自分としてはちょっと大変だけどそんなのは気にならないんだぜ!
うーん・・・ひよりんさえも嫌な予感を感じてるのか・・・
うぅ・・・二人はどうなってしまうのか・・・
>>366 GJ!
うーむ…かがみん…がんばれ…としか言えない自分がなんかイヤ。
つかさが家にやってきてどうなるのか。楽しみですぜ!
>>327 ちょっと前のレスでは25日解禁ってあるけど結局どっちなの
発売日って24日だっけ、25日だっけ?
それと同じ日にちならいいんじゃない?
ぶっちゃけゲームものSS解禁しても、このスレの読み手書き手は百合好き多いと思うから
新しい作り手さんが来ない限り、やまとやこう関係のSSが増えるくらいで男主人公ものは増えないと予想、というか願望
いや、もちろん男ものを否定するわけではないけどね。このスレでも男ものSSは何コかあるし
もう男ものどうこうの話はするな
あー変な夢みたわ
小料理屋で飲んでて、こなたと大根の煮物とやらがメニューにあって
お椀の蓋あけたら大根にこなたが座ってて
「おにーさんも通だねぇ(>ω<.)」 って
俺は疲れてるんだろうか・・・
>>373 kwsk。
熱く激しくマグマのようにkwsk。
>>374 すまん、夢なので明確に覚えてるわけじゃない
目覚める寸前のシーンだったから記憶に残ったのかも
ただ、目覚めたとき少し癒された
夢になら長門が出てきた時があったな
まだらき☆すたのキャラは出てないが
なんかみんな色々夢見れて羨ましい。
眠りが深いのかなんなのかここ数年夢なんて全然見ないし。
たまには
>>373みたいな夢みたいよ
>>372 するなっていうのはどうかと思うけど?
俺だって百合の方を見たいけど基本ここエロパロ板だし
まあ俺はこう×やまとが見られればおkだ
>>373 その小料理屋、主人が紫髪のツインテールした女の子じゃなかったか?
給仕は紫髪の黄色いリボンをつけた子で
職場の近くに、居酒屋かがみがあるぞ
店主はヒゲのオッサンだがな。
>>344 JISSOHJI angleって、被写体の前に物を置いて半隠しにすることじゃなかったのか……orz
ソースは宇宙家族カールビンソン
どっちの手法も使うから、どっちでも合ってるよ。
>>344 被写体の前に物を置いて半隠しにするのも
JISSOHJI angleのひとつ。
>>385しゃあ、早!
品書きにない
なじみにならなきゃ出してもらえないんどろ?
ノーマルにしろ百合にしろ恋愛もエロもいらねーと思ってる俺は異端か。
>>385 なんという早さ…
改めてこのスレの住人の行動力に驚かされた
思い出しましたが保管庫の
こなたのトロもおいしいそうでしたね
あの絵はこなふぇち由来なんですか
こなふぇち全部読みましたが、作品が多いので思い出せません
ぶっちゃけ原作だとエロも百合も恋愛も無いも同然だしなぁ。
原作のふいんき(ryが好きならそれもアリだしたまにはマターリした友情モノも読みたいもんだ。
原作がゆるいからこそ二次創作が濃い目になったりするのかな。あんま関係ないか
まあ熱心に探せば、マターリした同人も結構あるよ
女キャラしかいないからといってレズに走るのは腐の哀しいサガなのかね
>>385 夢でみた映像より萌えますね、最高です!
声を大にして言いたい 「ありがとうございます!」
>>386 興奮して語尾が どろ? になってる(=ω=.)
ちょっとこちらで失礼します
今、DBで登録作業を行っている者なのですが、wikiにもタグ機能を追加ということで質問をば
初代スレ〜前スレまでの作品にタグを付けることは作品の数を考えると不可能とのことでしたが、
DB登録の際にwikiのページにもタグを付けて更新するという方法もありますが、いかがでしょうか
ただし、デメリットとして右ペインの更新履歴欄に作品がずらっと並んでしまい、流れるのが若干早くなってしまいます
「過去のものは無理にタグを付ける必要はない」とのことでしたら、現状のまま、手を加えずに残しておきますが……
面倒な作業を負ってくれるというのに否も応もないです。
やってくださるのなら是非ともお願いしたいですね。
全作品にタグが完全に貼られたら、今のCP別保管所もいらなくなるかな?
>>366 GJ
前半のつよがり連発が、それゆえのすくえなさが、
独身女性板を髣髴させる。同じ一人身としてorzオトコダガ
つかさが来ましたが、しばらく鬱展開が続くんでしょうなあ
なおも救えないと思いつつも続きを期待。
>>385 それ!俺も注文するぜ!!!
メニュー名は、「ぶり大根」ならぬ、「こな大根」って言った所か。
こな大根じゃ何かこなたを大根と一緒に煮てる感じになんないか?
すまん興奮した
しかし蓋をとる前、こなたはどうやって入っていたのか気になる
まあ夢だからいいけど…
(といいつつラフ画でもうp期待
>>397 DB登録作業乙です。
そういうタグ付け方法があるとは。自分はありだと思いますよ。
DBを見てみたら現在27作品。作業分量として大ざっぱに考えて
あと60倍……凄い作業量になりますね。お手伝いしたいけど、
あらすじを書くのが下手な自分はなかなか踏み出せないorz
ということはこなたも煮込まれているのか?
こなた汁をのんでみたいですねだばだば
ウミガメのスープの後の流れのパターンですね
>>373とその周りの書き込みを見て電波を受信した
前もって言っておく、反省はしてないし文句も受け付けない
あと一応オリジナル主人公なので注意
今日も仕事が終わり帰路に付く。
仕事熱心な上司は特別手当も出さずに残業させる事もザラであり、残業が嫌なら早めに仕事を終らせる為に
とにかく頑張るしかない。
そうなると帰る時間になる頃にはヘトヘトになるのが必然となる。
しかしこの就職難の時代に贅沢は言ってられない。仕事があるだけでも良しとしよう。
そんな事を考えながら俺は小料理屋『かがみ』に寄る。
特に趣味もなく収入もそう多くない俺にとって、帰りに寄るこの馴染みの小料理屋は数少ない癒しと贅沢である。
「あ、いらっしゃいませー」
店に入るなり店主と店員の微笑に出迎えられる。
この店は双子の美人姉妹が切り盛りしている。
料理も美味しいし、何よりその二人の笑顔に、まだ新人だった俺が常連になるまでそう時間はかからなかった。
「今日は何にします?」
この店の主人であるかがみさんが俺にそう尋ねる。
俺は適当に安目の酒を頼むと摘みを選ぶ為に壁にかけられたメニューに目を通す。
そこで『新メニューこな大根』と書かれた紙が俺の目をひいた。
…こな大根?
「このこな大根て何?ぶり大根とかじゃなくて?」
「はい、特に男性にオススメですよ」
…男性に?
スタミナ料理だろうか。気になった俺はソレを注文した。
「お待ちどうさまでーす」
程なくして出てきたのは…浅い皿に蓋がした物である。
ここまでは普通のぶり大根と変わらない。するとこの中身が違うのだろう。
俺は少しの不安と好奇心を心に宿したまま蓋をあけてみた。
そして開けて絶句した。
「やほー、お兄さんも通だねぇ」
煮込まれた大根に腰掛けた手のひらサイズの女の子。
…えーとこれはどうゆうことでしょうか?
「…こな大根?」
「そ、私こなただよ。よろしく」
ますます困惑する俺、助けと説明を求めるようにかがみさんの方を見る。
するとかがみさんはにこにこしながら言う。
「それが新メニューのこな大根です。よく味わってください」
……とりあえず味わってみた。
大根は出汁が効いてて非常に美味しかった。
こな大根のこなの部分もお持ち帰りしてじっくり味わった。
素晴らしい味でした、色々な意味で。
その後、俺はその店で大根を食べる回数が増えたのは言うまでも無い。
ちっちゃいこなたがたくさん煮込まれてるところを想像して、萌え尽きそうになった
火の通りを確認するために菜箸でつつくと「くすぐったいよ」って言ったり
お玉でかき混ぜたりすると「かき混ぜないでよぉ」とか言ったりしあqwせdrftgyふじこlp
GJ天才!
こういうネタのキャッチボールがあるから
保管庫オンリーでなくスレを覗いてしまうんだ
>>382 じ、実相寺先生!天国からわざわざありがとうございますッ!
かなたさんによろしくお伝えください。
特に被りがなければ5分後くらいに投下します
それではいきます。『4seasons』の続きです。
■かがみ→こなた
■捏造設定が沢山あります
■秋のオリキャラ祭り開催中です
■エロなしです
8レスになります。
§4
どうしてこんなことになったのだろう。
窓際の席に座って、今日何度目か知らないその言葉を頭のなかで呟いた。
「どったのかがみん? もしかして怖い?」
「そんなわけないでしょ」
「ん〜、ほんとかな? ほんとかな? 内緒にしとくから、云っちゃっていいんだよ?
んん〜?」
「だー、だから違うって。もう、突っつくなよ!」
「ほれほれ、北斗ひゃくれつけん〜」
「ちょっ、ぁん、ってこら! 変なところ触るな!」
「うわ、かがみ今の声いろっぽっ! お父さんには聞かせらんないね」
「……よいものを聞かせていただきました」
その声に振り向くと、しっかりと聞いていたそうじろうさんが後ろの席で合掌をしていた。
――どうしてこんなことになったのだろう。
熱く火照った顔を、隠すように窓に向けながらそう思う。風景に二重写しになって、
窓ガラスにこなたのニヤニヤ顔が浮かんでいた。私は、そんなこなたをこっそりと盗み見る。
まるでレアカードを一発で引き当てたときみたいな喜色満面の笑みを浮かべているこなたは、
朝からずっとハイテンションで、なにかと云ってはやたらとスキンシップを図ってきた。そんな
こなたのことを、今日はずっと持て余していた。
視線のフレームを外に向けると、ここからは空港の様子がよく見える。旅客ターミナルの
広いスペースには用途のよくわからない作業車が並んでいた。そこから伸びる滑走路は
そのまま海に続いているようにも見えて、本当にこの先が空に通じているのかと怪しくも思えた。
飛行機に乗るのは、初めての経験だった。
こなたにはああ云ったけれど、やはり少しだけ怖かった。
機内アナウンスがあり、私たちがそれぞれシートベルトを閉めると、機体はゆっくりと動き出した。
ぐんぐんとスピードを増しながら滑走路を突き進んでいく様子が、機首に近いこの席からは
よく見える。やがて機体を支える揚力を翼の下に得た飛行機は、ふわりと中空に浮き上がる。
どうして、こんなことになったのだろう。
眼下に鈍色にくすんだ晩秋の海を眺めながら、そう思う。
日本航空1279便ボーイング777-200は、そんな思いを乗せたまま、小松空港へむけて一路
羽田を飛び立った。
きっかけというか発端というか、全てを決めたのは一昨日の電話だった。そう、ほんの
つい一昨日の、しかも夜のことだった。
このところのお風呂はつい長めになってしまう。勉強で寝不足気味な最近、湯船で暖まって
いるとどうしてもうとうととしてしまうから。よくないことだとは思っているけれど、どうしようもなかった。
そんな長風呂から出て髪も乾かしたあと、居間でほこほことくつろいでいたときだった。
着替えを抱えてお風呂場に向かうつかさを横目で見ながら、なんとなくテレビ番組を聞いていた
そのとき、二階から私の着メロが流れてきたのだ。
この着メロはこなたかみゆきだ。どちらにしてもすぐに声を聞きたい人だった。ばたばたと小走りに
階段を上がり、ドアを開けてケータイを取ると、こなただった。
そして何気なく電話に出た私に、こなたは唐突に云ったのだ。
「かがみ。週末なんだけど……海を見たくはないかい?」
「――は?」
「週末なんだけど、海を見たくはないかい?」
「いや、聞こえてるわよ。今の“は?”は、“もう一度言い直せ”じゃなくて、“何云ってんだこいつ”
って意味だ」
「いや、それがね、聞いとくれよ。色々と長い話があってね?」
それは確かに長い話だった。長くて、深くて、そして哀しい話。最初に電話をとったときの
ふざけた云い方は、こなたなりの気遣いだったのだろう。
――命日。とのことだった。
11月23日は、かなたさんが亡くなった日なのだそうだ。
それは誰が悪いわけでもなく、ただどこにでもある悲劇だった。
誰もが“なんで私がこんな目に”と神を呪い、世界を罵って泣き崩れるような、けれど今も
当たり前のように誰かの身に降り掛かっている、そんな哀しい出来事の話。
かなたさんが妊娠高血圧症候群に罹っていると診断されたのは、妊娠八ヶ月が過ぎた頃
だった。元々免疫系に疾患を抱えていたというかなたさんだったから、主治医にとっても
そうじろうさんにとっても、もちろんかたなさんにとっても、それは最も恐れていた事態だっただろう。
急速に進行するめまい、溶血、血小板の減少、腎障害、肝障害。決断というのもおこがましいほど
速やかに選択された帝王切開による妊娠の早期終了。
未熟児として産まれたこなたは健やかに育っていったが、一度下がった腎機能と肝機能は二度と
回復することはなかった。
出産から半年が過ぎて、かたなさんは短い生涯を終えた。
11月23日のことだった。
「ありがとう」
涙ぐむ私にこなたが云った。
「……なにがよ」
「ん? 泣いてくれてありがとう」
「な、泣いてなんかないっ!」
「あは、そっか、ごめんごめん。じゃ、鼻啜ってるのは風邪かな? だめだよ気をつけないとー。
またお風呂上がりに薄着のままだらだらしてたんでしょ?」
「するか! ってかそれあんたのことだろ!」
あの顔が見えるようだった。目を細めて満ち足りた様子で微笑む、私が一番好きな顔。
話を切り替えたかったのかな、と思う。適当にいつものやりとりをしているうちに、さっきまでの
湿っぽい空気はどこかに行ってしまった。聞かされた私にとってそれは重い話だったけれど、
こなたにとってはある程度割り切れていることなのだろう。そうでなければ今まで生きて
こられなかっただろうから。
毎年この時期、泉家の実家に眠るかたなさんのお墓参りに、金澤まで戻っているのだそうだ。
去年の今頃もそうだったはずだけれど、そのことを聞かされた覚えはなかった。
ふと気づく。去年の今頃は、私とつかさが初めてこなたの家にいった頃だ。こなたのアルバムを
漁って、そこに写ったこなたそっくりのかなたさんに驚いて、あれこれと訊いたあの頃。
お墓参りの後だったのかな、前だったのかな。
こなたはどんな思いであの会話をしていたのだろう。
それを思うと、引いた涙が少しだけ戻ってきた。
「――かがみ? 聞いてる?」
「ん、ちゃんと聞いてるよ」
去年までは二人でいっていたけれど、今年はゆたかちゃんがいる。かなたさんはゆたかちゃんに
とっても伯母であるし、一人で残していく理由もあまりないしということで、三人で行く予定だった
そうだけれど。
今日になって、ゆたかちゃんが風邪で熱を出してしまった、と。そういうことらしかった。
どうしても今週じゃないといけないというわけでもないから、来週にしようかという話もでたよう
だったけれど、ゆたかちゃんは頑として聞き入れなかったらしい。居候の身ということもあって、
ゆたかちゃんも自分の身体のことについて色々と思うところもあるのだろう。そのプライドは
好ましく思えるものだった。
家に残されたゆたかちゃんのことは、みなみちゃんが泊まりで来てくれるそうだから心配はない
としても、どちらにしても一人分のチケットが余る。
時期的に予約じゃなくてもう買ってしまっていたし、宿も予約が入っているしで、やっぱり少し
勿体ないねという話をしていたところ、“じゃあ誰か他の人誘おうか”と。
「そ、それでなんで私?」
嬉しいけど。それは凄く嬉しいけど。他に誘うのだったらそれこそ血縁のゆいさんとか、
名前は忘れたけれど、そのお母さんとかがいるように思えた。
「や、でもゆい姉さんは…………。あ、ほら、ゆーちゃんのことみてもらわないとだし」
――今の間は。
今の間は、なんだ。
確かにこなたの云うように、ゆいさんなら真っ先にゆたかちゃんの心配をするだろう。
みなみちゃんだって、あまり知らない家で一人きりでは困るだろうし。それは誰もが納得する
ゆいさんが行かない理由だ。では、こなたは最初何を云おうとしたのか。
それが少しだけ気になったけれど、詮索するのはやめにした。こなたが隠したなら隠したなりの
理由があるのだろうし、今の私には、こなたとそのお母さんのことを考えることですでに手一杯なのだ。
「で、ゆきおばさんは……。まあ、色々あってね? それにほら、みんなお盆には帰ってるしね」
「そ、そっか」
なんだか色々とやぶ蛇だったようだ。
人が生きていくうちには色々と軋轢もあるのだろう。たとえ親族であっても。いや、きっと
親族だからこそ生まれる確執もあるのだ。
「――で。ど、どかな?」
改めて問いかけてくるこなたの言葉に、改めて悩んだ。
どうしよう。
どうしたらいいのだろう。
本来真っ先に考慮しないといけないはずの、受験勉強の山場であるこんな時期に休日を
潰していいのかという考えは、思い浮かびもしなかった。大体休日の一日や二日潰れたぐらいで
受験失敗するような学力なら、そもそもそんな学校に入学する資格なんてないのだ。
それよりなにより、友達の家族というかルーツというか、そういう深い部分の話だったから。
慶応じゃなくても法律の勉強はできるけど、その友達は一人しかいない。たとえばこれが
こなたじゃなくて、みゆきやあやのやみさおだったとしても、受験勉強と天秤にかけるようなことは
考えなかっただろう。
悩んでいるのはその部分ではなくて。
――こなたと同じ部屋に泊って、私は大丈夫なのかという。
そんな、聞きようによっては喜劇としか思えないようなことを、私は真剣に悩んでいる
のだった。
こなたと触れあうだけで反射的に感じてしまう劣情を抑えこむことには慣れてきた。けれどそれは、
ただ切なさに張り裂けそうになる痛みを抱えながら、なんでもないような振りをすることに慣れただけ。
決して痛みを感じなくなったわけじゃない。
そんな私がこなたの香りに包まれて、こなたと同じ部屋でたった二人過ごして、こなたと枕を並べて
寝て、こなたの寝顔をのぞき込んで、平静でいられるはずもない。事実、何もそうする必要もないのに、
妄想の中ではのぞき込んでしまっている。
虎穴に入らずんば虎児を得ずとは云うけれど、私は何も虎児が欲しいわけではないのだ。
うかつに虎穴に入り込んだせいで、何十匹もの虎児に甘えてすり寄られてはたまったものではない。
つい、虎の格好をしたちびこなたが大量にすりよってくる光景を想像した私は、お風呂上がりで
脳までのぼせていたに違いなかった。
「かがみ? 呼吸荒いけど……本当に風邪とかじゃないよね?」
「ち、ちちち違うわよ!」
「ならいいけど……変なかがみ?」
全く否定はできなかった。
「うん、でも、まあ……行かせてもらおうかな」
悩んだ末に、結局そう云った。
いくら迷っても、結局のところ最後には最初にぴんときた選択を取る物だ。私が最初に感じたことは
“あ、行きたい”というものだったから、どうせ私は行くのだろうと思ったのだった。
ならばその間の悩みは全く無意味なものなのかと云えばそうとも云えなくて、現状を追認するのに
必要なステップなのだとも思う。
こなたのことを、もっと知りたいと思った。
今のこなたも、昔のこなたも、産まれる前のこなたですらも。
泉家の実家には、きっとそんなこなたの痕跡が沢山あるはずだ。しかも、こなたの方からそれを
知って欲しいと招待してくれたのだから。なにはなくとも、それが一番嬉しかった。
「ほ、ほんとー!! やったー!! ありがとうかがみ様!」
その手放しの喜びように、つい私も嬉しくなってしまった。
考えてみれば別に私がいかなくても運賃が一人分無駄になるだけで、なんのデメリットもない。
それどころかチケットや宿代以外の分では負担になるわけだから、いったところでメリットも
ないのだ。だから、これは純粋に私に来て欲しいと云っているようなものだと。そう理解できたから。
「じゃ、土曜の12時40分に動物公園の改札でよろー!」
「あいよー……って、土曜? あれ? え? 今週末だっけ?」
「うん」
「……って、明後日じゃん!」
「日付回ったから明日だね」
「ちょっ、マジかっ! か、考えさせて!」
「だが断る」
「えー!」
「この泉こなたが最も好きな事のひとつは、柊かがみが慌てふためくさまをみて楽しむことだッ!」
「ネタがわかんねぇよ!」
――結局、押し切られてしまった。
ケータイを切りながら、おかしいな、どうしてこんなことになったのだろうと呟いた。そしてその
言葉は、その後何度となく頭に思い浮かぶことになるのだった。
とりあえずつかさに相談しよう。
お風呂も上がって、もう部屋に戻っているはずだった。ちょっと前に階段を上ってくる音が
していた。
声をかけてから部屋に入ると、つかさはすでに机に向かっていた。時間を惜しむように
髪の毛は濡れっぱなしのままで、肩掛けと膝掛けで身体を冷やさないようにしている。
半年くらい前なら、この時間帯ならもう寝る寸前だったはずだけれど、さすがにこのところは
遅くまで起きて頑張っている。元々は調理師志望だったつかさだけれど、専門学校ならいつでも
入れるからと、とりあえず大学にいって栄養学を学ぼうと決めたのだった。誰の手助けもなく、
ただ自分の意志で、そう決めたのだ。
「つかさ、頑張ってるのはいいけど、髪の毛濡れっぱなしじゃない。もう寒いんだから、風邪
引いちゃうよ」
「あ、うん、えっと、えへへ」
飲み込んだ言葉はきっと、“音でお姉ちゃんの気をちらさないように”というものだっただろう。
ごうごうと音の出るドライヤーをつかさの髪に当てながら、ふとそれに気がついた。
私の髪より細くてこしがあって柔らかい。
そんなつかさの髪に触るのは好きだ。
卓上の鏡をみると、つかさも気持ちよさそうに目を閉じている。
どれだけ忙しくても、どれだけ焦っていても、こんな時間を大切にしたいと思った。
「ありがとう。あ、何か用事あったんじゃなかったの?」
「あ、そうなのよ。ちょっと聞いてよ」
こなたの実家に一緒についていくと報告したら、つかさは開口一番「だいじょうぶなの?」と
真剣な顔で訊いてきた。
「なにがよ」
「なにがって……その、色々……だよ」
なぜそこで顔を赤らめる、妹よ。
反駁しようと口を開いた途端、私の部屋でケータイが鳴りだした。
「ああ、ごめん」
そう云って部屋に戻ってケータイをみると、みゆきからだった。
「今こなたさんから伺ったのですが、かがみさん、だいじょうぶなのですか?」
出た途端、みゆきはつかさと同じことを云いだした。
「なにがよ」
「なにがと申しますと……その……色々と、はい……」
なぜそこで云い淀む、親友よ。
よっぽど信用がないのか、よっぽど心配されているのか。できれば後者だと思いたい。
これだけ心配されてしまうと、あまのじゃくな私としては、意地でも大過なく楽しんできてやろうと
思ってしまう。
――それももしかしたら、二人にいいように乗せられているのかもしれなかったけれど。
§5
北陸本線美河駅から降り立てば、途端に潮の香りが漂ってくる。ああ、海辺の町なんだと思った。
電車に揺られていたときから日本海はちらちらと目に入っていたけれど、見るのと嗅ぐのでは
実感が段違いだった。
ざ、ざーと潮騒の音が聞こえる。
小松から五駅離れたこの美河町は、どこにでもある地方の町という様子の佇まいをしていて、
なんとなく鷹宮町とも似ていると思った。けれどきっとこの町が栄えているのは、傍らを流れる
手鳥川によってできた水利によるものなのだろう。川が日本海に注ぎこむ湾には小振りの漁港が
できていて、今しも漁から帰ってきたとおぼしき漁船が、そっと港に滑り込んでくるところだった。
北陸本線の路線沿いには、延々と畑が広がっていた。地平線まで敷き詰められた畑の中、
ところどころに近代的な建売住宅の集落が現れる。そのありさまは、まるで海原にぽつぽつと浮かぶ
島のようにもみえた。
そしてこの町は、本物の海に囲まれてその波間に揺れている。
近代的な駅ビルも、綺麗ではあるけれど不思議と活気というものが感じられなくて、人はいるのに
閑散とした雰囲気を漂わせていた。はしゃぎながら切符を買っている子供達の笑い声も、鈍色の空に
吸い込まれてたちまち消えていく。寂れているというわけではなく、鄙びているというでもなく、ただ
ひっそりとしている。そんな風に思った。
波間に浮かぶ箱船のような地方都市。
ここで、こなたの両親は大人になったのだ。
「寂しいところだよな」
そのそうじろうさんが笑いながら云った。
「いえ、そんなことないですよ。鷹宮や倖手とあまり変わらないと思います」
「うん、建物の数や街並だけみればそうだろうけど……人がな。息を潜めて身を寄せ合っている
みたいだろう?」
その云い方にどきりとした。さっき感じたことをぴたりと言い当てられた気分だった。
「子供の頃は凄く厭だったな。ここがどんづまりな気がしてな。まるで今にも日本海に滑り落ちて
消えてしまいそうに思えた」
しみじみという小父さんは、かたなさんとのことでも思い出しているのだろうか、すっと遠い目をした。
潮騒の音が強くなったように思えた。
「かがみー! おとうさーん! なにしてんの、タクシーきたよー!」
タクシー乗り場で車を捕まえたこなたが、ぶんぶんと手を振り回しながら叫んでいる。
「おう、ごくろうさん」
途端に普段通りの優しげな顔にもどった小父さんについていって、タクシーに乗り込んだ。
私は当然後部座席で、勿論隣にはにこにこと笑ったこなたがちょこんと座っている。
こなたは、通り過ぎる街並のランドマークを一々説明しては、身を乗り出して指さしていった。
当然腕とか脚とか胸とかがちらほらと私に当たる。遠足に来た子供みたいに落ち着きがなかった。
どうして、こんなことになったのだろう。
必死に自制しながらそう思う。
タクシーのエンジン音がしているというのに。
なぜか潮騒が耳にこびりついて離れなかった。
少し町の中心から離れた丘の中程に建つ、四階建ての建物が今夜の宿だった。鉄筋コンクリートの
きちんとした作りのビルで、前面がスモークのガラス張りになっている。建物の裏手の崖は、鬱蒼とした
雑木林が伸びるがまま放置されていて、その下はすでに海だった。
チェックインして入った部屋は、ビジネスホテルらしいシンプルな内装のダブルルームで、
ただ壁際に置かれた二つのベッドのみが存在感を主張していた。
「あ、ほら、みてよこの部屋」
「おお!」
こなたが壁にかかったカーテンを勢いよく引くと、途端に海が飛び込んできて驚いた。
壁の一面は大きな窓でしめられていて、視界の全てが海だった。窓際にたって下を見下ろせば
地面が視界に入るけれど、ベッドから眺めるとまるで海上に浮かんでいるように思える。
「こりゃ絶景だな」
「でしょー。いつもこの部屋とるんだよね。でも今年はお父さんだけ仲間はずれ」
隣のベッドに座り、脚をぶらぶらさせてニシシと笑う。
今日のこなたはずっとハイテンションなのだと思っていた。でも実はそうではないのだと、
そのとき私は気がついた。
ハイテンションなのではない。ただ子供っぽいのだ。
いつもの飄々とした態度はなりを潜めて、その中に隠されていた無邪気でやかましい、
子供のこなたが顔を出している。
それはもしかして、実家に戻ってきたからなのかもしれないと思った。ここではこなたは
泉家を支える主婦としてではなく、ただの孫や姪や従姉妹でいられるから。
普段のこなたは、きっと甘えようとしても誰にも甘えられずにいるに違いない。泉家は
長らく小父さんとこなたの二人だけだった。甘え合うのではなく支え合っていかなければ、
この世の中を渡っていけなかったのだろう。こなたがたまに際限なくスキンシップを求めてくる
のも、きっと――いや、やめよう。
こなたの気持ちを勝手に推測して、わかったような気持ちになるのはやめよう。それはきっと、
今ここにいるこなたに対して失礼なことだと思うから。
「うーん、nice boat.」
西日に照らされた海に浮かぶクルーザーを指さして、こなたがつぶやいた。太陽はすでに
水平線に掛かっていて、断末魔の赤い色で海原を染め上げて沈もうとしている。
「はいはい、中に誰もいないわよ」
「あ、見たい?」
「なにがよ」
「私の中」
「ちょっ! おまっ! 悪趣味にもほどがあるわ!」
想像したら、なんだかわからないことになった。
海鳥が翼を拡げて滑空する。上昇気流を捕まえたのか、そのままはばたきもせずに上昇して、
窓のフレームから消えていった。
海の上に浮かんで、こなたと二人きりの部屋は心地が良かった。
電気も点けず、少しづつ暗くなっていく部屋で、輝き渡る海を二人で見ていた。
くっつきすぎず、離れすぎず、隣り合ったベッドに腰を下ろして、どうでもいい会話をたまに
交わしながら、ただ海をみていた。
潮騒は続いている。
こなたも小父さんも、この町に住む皆も、この音が気にならないのだろうか。重奏低音のように
常に聞こえてくる潮騒が。
「――かがみ」
「なぁに?」
「やっぱり、こなきゃよかったって思ってる?」
「んー、そうは思わないけど……場違いなんじゃないかって心配なのよね」
「でも私だってこの町で産まれたわけじゃないし、あんま変わんないよ?」
「そんなことないだろ。あんたの実家はここなんだから。これから会う人たちだって、みんな
泉家の人じゃないの」
そう、この町は小父さんの産まれ育った町で。
だから帰郷したこなたたちは実家の親族と会うのだ。小父さんが暮らしていた家には今、
小父さんのお兄さんの一家と、そしてお父さんが暮らしているらしい。お母さんはすでに
亡くなっているとのことだった。
そしてもちろん私も、その席に同席するのだった。
「――泉家かぁ。なんかぴんとこないや。泉家っていったら、ずっと私とお父さんの二人のこと
だと思ってたから。こっちにくるようになったのも中学校に上がったころからだし」
そう云ってぽふんとベッドに寝転がる。
腰をひねったままこちらを向いて、真剣な顔で私のことをみつめている。
「かがみ、あのさ」
「なによ?」
「こ――」
云いかけたところで、がちゃりとドアが開いた。
「二人とも、兄貴きたからそろそろ出るぞー」
そう云ったそうじろうさんの顔に、こなたが投げた枕がジャストミートする。
「ノックくらいしてよ! かがみがいるんだから!」
こ――何だろう。
気にはなったけれど、改めて問い返す機会もなかったので、結局それはうやむやになった。
ざっくりした荒目のセーターにブルゾン。黒縁眼鏡に、七三に撫で上げた髪は油を塗られて
光っている。そして無地のスラックス。
どこからみても、休日のお父さんという装いだ。
「初めまして、かがみ君だね。そうじろうの兄のそうたろうです」
そういって爽やかに笑う小父さんは、今にも握手を求めて手を差し出すか、胸ポケットから
名刺を差し出してきそうなほど社会人らしい社会人だった。
「初めまして、柊かがみです。こなたにはいつもお世話になっています」
大人向けの優等生スマイルを浮かべてそう云ったとき、隣で盛大に吹き出す音がした。
「ぷぇっ! お世話になってるって、何その社交辞令120%!」
「う、うっさいな! 茶化すなよ!」
「むふー。無理しないで、いつもみたいに“迷惑ばかりかけられてます、謝罪と賠償を請求するニダ”
って云っていいんだよ?」
「そんなこと一度たりとも云ったことねぇよ!」
こなたの親族に少しでもいい印象を与えようと思ったのに、一瞬にして全て台無しになってしまった。
「ふふっ、聞いていた通りだね」
ころころと楽しそうに笑うそうたろうさんだった。
一体誰からどのように聞いていたのだろう。少し、いや凄く気になったけれど、きっと聞かぬが華と
いうものなのかもしれない。
「夫婦漫才をみてるみたいだろ。もういっそ結婚すればいいって、いつも思うんだよな」
そうじろうさん、それは親としてどうかと思う。
なんだかいきなり疲れた。この先ずっとこうなのかと思うと、少しだけ不安だった。小さく
ため息をついた私をよそに、こなたと伯父さんは楽しそうに話している。
「こなたちゃんも大きくなったなー。前はこんな小さかったのに」
そういってこなたの身長と同じ高さに手を置いている。
「またそのネタですか! どうせ私は伸びませんよ!」
こなたがふざけて出した正拳突きを笑いながら受け止めて、小父さんはこちらを向いて云った。
「かがみ君は、慶応志望なんだって?」
「あ、はい。そうなんです。学力的にはぎりぎりなんですけど」
「そうかそうか。是非頑張ってください。受かったら僕の後輩です」
もう陽は大半が没しているのに、きらりと眼鏡が光った気がした。
泉家へ向かう車中では、大学のことを色々と聞くことができた。小父さんが通っていた頃とは
随分事情も違うだろうけれど、それでも実際に通っていた人から聞く話は色々と参考になることが
多かった。
やがて陽も完全に没して、町が宵闇に包まれた頃、泉家に到着した。
年期が入った平屋の建物だった。何度かリフォームされている跡はみられたけれど、全体的に
やはりどこか古びた印象を受ける。敷地面積はこの辺りの家に比べても広く、けれどその大半は
手入れのされていない雑木林だ。庭のガレージは随分大きくて、車が二.三台収まっているとしても
まだ余地があるくらいだろう。
「車入れてくるから、中入っててよ」
そう云ってガレージにむかったそうたろうさんを後にして玄関に向かった。
こなたが呼び鈴を押すと「はーい」という子供っぽい声が聞こえてくる。ぱたぱたと跫音がしたあと、
ガラリと引き戸が開いた。
戸を開けたのは、藍鼠色の長髪を後ろで縛った小学校低学年くらいの女の子と、高学年くらいの
男の子だった。
「こなたねえちゃんだー」「ちゃんだー」
兄妹とおぼしき二人は、口々にそう云ってこなたに駆け寄った。
「久しぶり、すぐる君にゆみちゃん」
微笑むこなたは、ゆたかちゃんに見せるようなお姉さんの顔をしている。
「ねえちゃん、モンハンもってきた? 祖龍倒すの手伝ってよ。ゆみがすぐ三死して倒せないんだよー」
「ぬおっ、会った端からそれですかっ」
「むー。あんな雷避けられるわけないよぉ」
腕をひっぱるすぐる君とぷーと頬を膨らませるゆみちゃんを前にして、こなたはしめしめという
表情で目を細めて笑っていた。
「うむうむ、二人とも順調に育っているようだね、こりゃ将来が楽しみだー」
「こなたちゃん、遊んでくれるのは嬉しいけど、あんまりディープな世界に連れ込まないでくれる?」
後から現れた短髪の女性がからからと笑った。大柄だけれど太っているという感じはしない、
たくましい印象の人だった。兄妹と同じ藍鼠色の髪をしているところをみると、この人がそうたろうさんの
奥さんのなつこさんだろう。
「おかえりなさい、二人とも。それといらっしゃい、かがみちゃん」
声をそろえて「ただいま」というこなたとそうじろうさんに遅れて、私は「お邪魔します」と返事をした。
廊下の先から相好を崩した好々爺という雰囲気のおじいさんが歩いてくるのがみえる。
足取りはしっかりとしていて、未だかくしゃくとした感じだった。あれがきっとくにおさんだ。
ガレージに車をおいてきたそうたろうさんが戻ってくる。これで泉家は全員のはずだった。
一人だけ名字の違う私は、その同じ名字を持つ集団を眺めながら、朝から何度も繰りかえして
きた言葉を頭の中で呟いた。
――どうして、こんなことになったのだろう。
潮騒の音は未だ続いていた。
(つづく)
以上です。
ゆい姉さんのくだりは、保管庫で各キャラの年齢をみていて気がつきました。
一応自分なりの答えはあるのですけど、それに触れるべきかスルーするべきか
迷っています。
あと、次回も多分オリキャラが沢山出張ってきます。ごめんなさい。
それではありがとうございました。
乙でした。相変わらず心理描写と風景描写が巧み過ぎて妬ましいほどです。
ゆい姉さんの年齢ってことは……あのことかな
あと、無粋なツッコミですが、文脈を考えると重奏低音は通奏低音の間違いかなと。
繰り返される伴奏のイメージならそっちかな。
>>420 GJ。毎度ながらこのディテール描写と背景設定は
非常にすばらしく感服することしきり。
捏造いっぱい?デモソンナノカンケーネー。
読者がうなづいたりニヤニヤしたりできれば、
作品として大いに成功なのだ(=ω=.)b
そして、基本シリアスのはずなのに、さりげなく壊れるかがみに萌えたw
相変わらず上手いなー。
泉家の親戚連中も、これがオフィシャル設定ですと言われたらあっさり納得できてしまいそう。
そしてどうもかがみの金沢行きはみんなに一計を案じられたっぽいけど、どうなりますやら。
次回も楽しみにお待ちしてます。ぐっじょぶ。
>>420 GJ!やっぱり貴方の作品はへたなラノベ読んでるより深みにはまってしまう…
かがみがついていく事はどうも根回しされてた感がありますなw
しかし、かがみに聞こえ続けている潮騒はなんだろう
心のざわめき?
みなみ×ひよりの非エロ投下します。
「ただいまー」
「お邪魔します……」
田村ひよりと岩崎みなみ。午後の田村家の敷居をくぐったのは、この二人だけという珍しい組み合わせだった。
「今、家の人誰もいないから」
これがもし男と女ならさぞかし意味深な台詞になるだろうなぁ……などとどうでもいいことをひよりは考える。
「お茶入れてくるから、私の部屋で待ってて」
「うん……」
言われた通り、階段の方へ向かうみなみ。相変わらず言葉少なく、表情も乏しい。
(うーん……結構慣れたつもりだったけど、小早川さんいなくて二人きりだと、やっぱりちょっと気まずいなぁ)
台所でお茶の支度をしながら、ひよりはそんなことを思う。
「でも何だろ? 岩崎さんが私に折り入って話って……」
今日のお昼休みでのこと。みなみがひよりに「二人だけで話したいことがある」と言った。
もしこの時、ひよりがネタ出しに詰まるなどでテンパり度MAXだったりしたら、色々深読みしたり妄想膨らませたり大暴走していたかもしれない。幸か不幸かそのようなことはなかったが。
そんなわけで、学校が終わってから、みなみはひよりの家に寄ったわけである。
「お待たせ」
お茶とお菓子を乗せたお盆を手に自室へ入ると、みなみは大人しく坐っていた。ひよりは内心ホッとする。
こういう時、こうやパティならここぞとばかりにロストマウンテンを掘り起こしていたりするから油断がならない。もっとも、みなみがそのような行動に出るのはとても想像できないが。
「それで岩崎さん、話したいことって?」
向かい合って胡座をかき、ひよりは話を切り出す。みなみは「うん……」と頷いたきり、しばし黙然としていた。
(……話しにくいことなのかな……私に悩み相談とかするとも思えないし……)
気まずい静寂に耐えるひより。みなみはやがて、重々しく口を開いた。
「実は……この前、田村さんが描いた漫画を読んだんだけど……」
「ブッ……!?」
ひよりは口に含んでいたお茶を気管に入らせる。
「げほっ、げほっ」
「大丈夫……?」
むせるひよりを、みなみが心配げに見ている。ひよりは「大丈夫」と言い返そうとするが、なかなか声が出ない。
「げほっ……だ、だい……だいじょう、ぶ……それで、えっと……私の、本、見たの?」
「うん……」
頷くみなみの頬が、心なしか赤いのはどういうことか。ひよりの心臓は盛大な早鐘を打っている。
「ど……どれを、読んだの?」
「○○△△っていう題の……」
「ウボァー!?」
みなみが挙げたタイトルはまさにドンピシャ。ゆたか×みなみをモデル(あくまでモデル)にした成人向け作品だった。これはある意味、黒歴史を発掘されるよりきつい。
「そ、それは、その、小早川さんが……?」
「いや、泉先輩が……こっそり見せてくれたというか……」
(泉先輩自重しろ! いやむしろあれ描いた時の私自重しろ!)
ちなみにみなみが読んだ漫画は、胸がないことを悩む女子高生が「揉めば大きくなる説」を試そうと同性の親友に頼み、お互い戸惑いながら行為に及ぶうちにだんだんと気持ちが昂ぶり……というベッタベタな内容だ。
(ああぁぁあぁぁ、殺して! いっそ殺して〜!)
頭を抱えて身もだえるひより。
今すぐみなみの頭部を開いて、脳にあるあの漫画の記憶の部分をレーザーで焼き切ってしまいたい。それがダメならもうマリアナ海溝より深い穴を掘って埋まってしまいたい。そんな思考が渦巻く。
しかしその漫画を読んだことで、みなみから話があるとは何だろう。
(ま、まさか岩崎さん達をモデルにしてるのがばれてる!? そのことで私に報復を!? むしろお仕置きを!? いやぁぁぁっ、クールなボイスでなじられるーっ!)
既にひよりの脳内ではみなみが「変態! 変態! 変態!」と罵る映像(綾瀬さとみ画)が絶賛上映中だ。別にその想像で快感を得たりしているわけではない。多分。
「あ゛あ゛あ゛あ゛〜……」
「……あの」
「はうあっ!?」
芋虫のように体を丸めて奇妙なうめき声を上げていたひよりは、みなみに呼びかけられてたちまち意識を取り戻す。
「話を続けていい……?」
「ど、どうぞ!」
ひよりはたちまち襟元を正して正座する。普段とは違う意味で高テンションになっていた。
「その漫画の……内容についてなんだけど……」
ひよりの心音が跳ね上がる。内容について――それはやはり、ばれているということか。そのことについてなのかいざとなれば自身の佩刀(トーン用カッター)で切腹することも念頭にしながら、ひよりはみなみの話を静聴する。
「あの漫画で、描いていたのは、その……」
みなみは微かに赤くなった顔を俯かせ、恥ずかしそうに言葉を擦れさせている。
もはやこれまで――そう思い、ひよりは土下座して謝ろうかと身を乗り出しかけた。
「あれは、その……前にも言ってた、実体験……?」
「……はい?」
話の雲行きが想像と違っていて、ひよりは目を丸くする。
「変なこと聞いてごめん……その……前にゆたかと、話していた……漫画のネタを、実体験から出す、って……」
みなみは何やら焦った様子で言葉を重ねる。表情に乏しいので分かりづらいが、かなり恥ずかしがっていた。
「……あー」
ひよりはおぼろげに、みなみの言わんとすることが分かってきた。あの漫画では、主人公の女の子は努力の甲斐(?)あって少しばかりのバストアップに成功したというのが話の締めだったのだ。
「つまり、胸を大きくするのに成功したっていうのが私の実体験なのかってこと?」
確認のため尋ねると、みなみは黙ってコクコクと頷く。安堵したひよりは、大きなため息をついた。
(よかった〜ばれてなかった〜……)
しかしこのような状況で焦ることのないよう、今後二人をモデルに漫画を描くのは自粛しよう。そう固く心に誓うひよりだった。……数日後「のど元過ぎれば熱さを忘れる」を地でいくことになるが。
「残念だけど、あれは実体験とかじゃなくて……まあ、適当にそれっぽいネタを色んなとこから拾い集めただけというか」
「そう……」
みなみは残念そうに声を落とす。わざわざこれだけのために、ひよりの家まで来て話をする機会を作ったのだろう。
(そんなにまで胸が無いの気にしてたんだ……私も有るか無いかでいえば無い方だから、ちょっとは気持ち分かるけど)
しかしここまで気にするのは、何か理由でもあるのだろうか。若干の好奇心に突き動かされて、ひよりは尋ねてみる。
「岩崎さん、どうしてそんなに胸が無いの気にしてるの? スレンダーなのも悪くないし、顔も端正で十分魅力的だけどなぁ」
「そんなこと……」
みなみは俯かせた顔を横に振る。謙遜しているような気配は無い。本気で自分を大したことないと思っているのなら、ずいぶんもったいない話だ。
(歩く萌え要素である高良先輩、究極の萌やしっ子小早川さん……岩崎さんはあの二人に並んでも、決して見劣りしないポテンシャルを秘めている。それは間違いない)
胸が無いのを気にするのも、それはそれで萌えなのだが、気にしすぎてネガティブ思考まで行くのはいただけない。
「立ち入ったことならごめんだけど……何か理由が?」
ひよりの言葉に、みなみはしばらく沈黙した後、
「憧れ、だから……」
呟くように、そう答えた。
「憧れ?」
「うん……」
「それはつまり――」
ひよりは想像力を働かせ、その名を出す。
「高良先輩への?」
「……うん」
微かに頬を染めながらも、みなみは真摯な目でひよりを見返し、頷いた。
(うわぁ……これもある意味、一途な乙女だなぁ……)
みなみにとってみゆきは、家がご近所ということもあり、幼い頃から姉妹のように仲良くしていた。その頃からみゆきはみなみにとって、憧れのお姉さんであったわけだ。
時は流れ、みゆきはその柔らかな人柄に見合う豊かな肢体へとすくすく成長した。それに比べてみなみは身長こそすくすく伸びたものの、ボディラインという面では非常に貧しいと言わざるを得ず。
そんなこんなで、みなみは自分の体型、分けても胸の無さにコンプレックスを抱いたわけだ。あるいは「みゆきさんのようになりたい」「胸の問題」この二つがみなみの中で不可分になっているのか。
ことの経緯は分かったが、ひよりはというと、
(みゆ×みな……これは良い! 実に良い! でもこの二人だとどっちが攻めでも行けそうな気がするし、いっそ岩崎さんが高良先輩にカミカゼアタックよろしくその胸に飛び込――って自重しろ私! さっきもうやらないって誓ったばっかだろ!)
妄想世界に片足突っ込んで慌てて引き返していた。
「えーと……事情は大体分かったよ。確かに高良先輩って、頭良くて美人でスタイル抜群でお嬢様で眼鏡っ子で天然ドジっ子で他にも色々萌え要素満載――」
「あの、途中からよく分からない……」
「とと……まあともかく、岩崎さんが憧れるっていうのも分かるよ、うん」
軽く咳払いして、ひよりは言葉を続ける。
「あらゆる面で高良先輩みたいな人が、岩崎さんの理想なんだね。だから胸が無いのが気になってしまう、と」
「うん……」
理想。
そんなものは他人に求めるものではない。自分が理想になればいいのだ。……そんなことを言ったのは誰だったか。
(……『動物のお医者さん』の漆原教授だったっけ、確か)
まあそれはともかく。
「でも全部理想をかなえるのは無理な話だし、他の面でもっと近づけたらいいんじゃないかな?」
「それは、そうだけど……でも……」
みなみは歯切れ悪く言葉を詰まらせる。
(無い物ねだり、ってのもあるのかな……)
手に入らないとなれば無性に欲しくなる。その気持ちはひよりにも分かる。
(でも、ものが胸だしなぁ……豊胸については多分岩崎さんの方がよっぽど知ってるだろうし、私が教えられることも無いし――)
短くない沈黙の中、ひよりは何度も胸のうちで思考を繰り返し、ようやく口を開いた。
「急に私の話で恐縮なんだけど――」
「……?」
「私も漫画描く上で、理想っていうか、ああなれたらいいなって人が何人かいるの。絵が上手かったり、ストーリーの切り口が凄かったり、キャラの立ち方が半端じゃなかったり……。
商業や同人を問わず、その人の本を読んでいると、雲より高い塔を見上げてるような気分になる。そんな人達。
自分が今立ってるのは、まだまだ全然低い場所で、何とか高みまで行きたくて足を動かすけど、いつまで経ってもそこにたどり着ける気配すら感じられない」
「……」
辿々しく話すひよりの言葉を、みなみはじっと黙って聞いている。相変わらずの無表情。だが、真剣に聞いてくれているのは分かった。
「でも、それだけ絶望的であっても、私は足を止める気にはなれない。何でか分かる?」
「どうして……?」
「漫画を描くのが好きだから。だからやめられないし、やめる気にもならない」
「……」
「それに、高みに行こうとして行けない人もいるけど、行こうとせずに行く人は絶対にいないからね。だから……えーと、その」
ここまで話しておいて、ひよりはみなみの悩みの問題と上手く繋げることができず言葉に詰まる。
(何て言おうとしたんだっけ……頭の中では何かいけそうだったのに、こういうのって実際口に出すと難しいなぁ……)
「えと……岩崎さんもさ、こうなりたいっていう自分があるなら、諦めず努力は続けるべきだと思うよ。うん」
長い台詞の割に、どうにも締まらない落ちになってしまった。ひよりの服の下は、緊張と恥ずかしさのせいで嫌な汗がびっしょりだ。
(こんな話されて、岩崎さんもリアクションに困るよねぇ……)
何か考え込むように俯き黙っているみなみの様子をうかがいながら、ひよりは聞こえない程度にため息をつく。
「田村さん」
「はいっ?」
不意に呼びかけられ、ひよりは居住まいを正す。
「ありがとう。とてもいい話だった……」
(……お世辞だよねぇ?)
ひよりはそう思うのだが、みなみはあくまで真剣な目をしている。
「私も、みゆきさんのことが好きだから、諦めずに頑張ってみようと思う。今日は話が出来て良かった……」
そう言って、みなみは柔らかく微笑んだ。
「――っ!」
けれんや含みなど全くない、真っ直ぐな微笑。ゆたかの笑顔とはまた違う種類で純粋なそれに、ひよりは不覚にもドキリとした。
(うぉわぁ……これはヅカ的な意味で破壊力大。小早川さんも落ちるわけだわ)←別に落ちてはいない。
みなみはふと部屋の時計に目をやった。
「そろそろ……」
「あ、そうだね」
みなみの家は都内ということもあり、あまり長居するのはよろしくない。ひよりは家の外まで見送ることにする。
「それじゃ岩崎さん、また明日ね」
「うん、また明日」
小さく手を振るみなみの表情は、心なしか普段よりも明るい。何となくだが、ゆたかといる時の表情に近い気がする。
ひよりはというと、今日は柄にもなくくさいことを言ったり、話ベタなところをさらしただけだが、どこか気分は清々しい。
(あの漫画読まれたのはショックだったけど……ちょっと打ち解けられたみたいだし、結果オーライかな)
少し距離の詰まった友人を見送りながら、ひよりはそんなことを思った。
おわり
読んで下さった方、ありがとうございました。
>>420 GJです
本当に細かい描写がお上手です
確かに下手なラノベなんかよりずっと読み応えがあります
ところで金沢の方なのでしょうか? やたらと地理に詳しいみたいですが
ひよ&みなというのも新鮮だなあ。
一歩ずつぎこちなく距離を詰めていく感じがよいですね。ぐっじょぶ。
>429
グッジョブ!
あなたの作品は、文章が上手い上、
原作そのままの雰囲気を感じられて大好きです。
>>421 これは恥ずかしい……。保管庫には直して保存しました。
無粋だなんてとんでもない、ご指摘大感謝です。
>>430 グーグルマップって便利ですよね!
雲より高い塔……か。何か身に覚えのある話だ。
このスレには大気圏突破してるとしか思えない方が何人か。
>>420 相変わらずの丁寧な描写、毎回楽しませて貰ってます。GJ!
そして何故か『ボーイング777-200』が、
脳内で『ボーイング775-961(ナナコクロイ)』に変換されっぱなしで困る
>>430 これまたGJ!
ギャグっぽく見せておいてきっちり綺麗にまとめる展開に百合神様も大満足のはず
>>429 いいですねぇ、こういう友情関係。
まあひよりは純粋な友情じゃないかもしれないけどw
ところどころにネタが散りばめられて、
かつ突っ込みどころを逃さない文章に笑いが止まりませんでした。
パーツの継ぎ目が弱点か! ちぃおぼえた!
すると勝負の審判員は鼻血噴いてるあの人と鼻血をこらえてるあのロボの人ですか。
さて解禁まで残り2時間半
wktkせざるを得ない
どのくらいのひとがゲームネタを投下するんだろうwktk
解禁しちゃうと、凄いペースになっちゃいそうなんで、その前に投下いきます。
35-335です。
以前書いた、『再婚の相手は?』の続編です。
エロ無し
そうじろう×かがみ?
微妙に7-896氏の、『こな☆フェチ』と、ぷーわ氏の『人として袖が触れている』の設定を、
ネタとして、お借りしている部分があります。
以上の事を踏まえた上でお読み下さい。
「えぇぇぇぇえぇぇぇぇ!!」
夕焼け空に響き渡る絶叫……発信源は、泉家です。
えぇ……まぁ、しょうがないですよね?
かなり、衝撃的な事がありましたから。僕も、思わず叫んじゃいましたよ。
「ちょっと!!おとーさん!かがみ!!どーいう事」
「どう?って言われてもなー……?」
「だから、私と、そう君が結婚するんだってば」
あの?かがみさん。さらりと言っちゃってますけど、それ、かなりの爆弾発言ですよ?
『陵桜ツンデレは正義だ。かがみん萌え倶楽部』の会員115名に知れたら、学校崩壊しますから。
「そうじゃなくて!!なんで、おとーさんと、かがみが、そんな仲に、なってるのさ!!?」
ごもっともです。
「なんでって、かがみを紹介してくれたのは、こなたじゃないか?」
へ?そうなんですか??こなたさん??
「ちょっ!??紹介って、そうじゃないじゃん!!私の友達として紹介しただけじゃん!!」
あ……なるほど。まぁ、『紹介』には、違いありませんね……
「てゆーか!かがみの家の人は、ちゃんとこの事知ってんの!??
つかさが、知ってたとは、思えないんだけど?」
確かに、そうですよね。つかささん、素直だから、すぐに顔にでますから。
昨日、学校で見たところ、そんな様子は見受けられませんでしたけど。
「ちゃんと、ご両親には、挨拶に行ったぞ。『娘さんを僕に下さい』ってな。
いや〜。緊張したな〜」
「お父さんも、お母さんも、そう君の小説のファンだからね。
呆気なくオッケーしてくれたわよ」
それで、いいんですか!??かがみさんの、お父さんと、お母さん!!?
「それで?つかさには!??」
「ちゃんと今日、言ってきたわよ?
『こなたのとこに、(お嫁に)いってくるね』って」
ちょっと!!かがみさん!!?肝心な所が、()になってますけど!??
「伝わってない!!伝わってないよ!!かがみ!!!
つかさ、100%遊びに来てると思ってるよ!!?」
ですよね?今頃、大変な事になってそうな気がするんですけど……
ちょっと、見てみましょう。
「ふぇぇぇ!??結婚!?おねーちゃんが!!?誰と!?」
「こなたちゃんの、お父さんと」
「えぇぇぇぇえぇぇぇぇ!!」
やっぱり、そうなりますよね?
「あれ?でも、そうなると、こなたちゃん、つかさの、姪になるんじゃない??」
「え?こなちゃんが、私の姪??」
あれ?なんか……様子が、おかしいような気が………
「そっかぁ……こなちゃんが、姪かぁ〜……
だったら、こなちゃんに、何しても許されるよねぇ〜……」
えっ!?いや、なんか、うっとりしてますけど、基本的に、何も変わらないかと……
「そっかぁ……こなちゃんが………うふふ……」
あ〜………これは、だめっぽいですね……
↑な感じに、なってましたよ。
まあ、驚いてはいましたけど、最後の方は、どっちかって言うと、
やる気まんまんって、感じでした。
「ちょ!!?つかさ!?何する気!?この世界には、ウィルス無いよね!!?」
さあ?それは、僕に聞かれても。僕は基本的に、感染しない人ですし。
「だって、かがみは、おとーさんとくっついてるし!!」
でも、気のせいですかね?さっきから、カメラに映らない所で、
紅い噴水が上がってるんですけど?
「き……気のせいだよ……それに、それだと、かがみの事が説明つかないじゃん」
それは、あれじゃないですか?
いくつも、連なる世界の中で、かがみさんが発症しない世界だとか。
「うっ……そ………それは、後で考えるとして!!
それより、今は、おとーさんと、かがみだよ!!」
そうですね。仮にそうだとしても、被害に遭うのは、こなたさんだけですし。
「もう……皆、納得してるんでしょ?別にいいじゃない」
「そうだぞ?かがみちゃんは、俺の嫁だ!」
そうじろうさん………何故、あなたは、わざわざ地雷源を、突っ走るのですか。
「よくない!!とにかく!!私は、絶対、認めないからね!!」
こなたさん!?あー……行っちゃいましたね……いいんですか?
「良くは……ないけど………ね?こうなった時から、覚悟はしてた事だし」
「もっと、早くに言えれば、よかったんだが、こうなるって解ってたからなー……」
はぁ……とゆーか、そもそも、なんで、お二人がくっついてるんですか?
こう言っちゃうのアレですけど、全然、接点が見えないんですけど?
「それは……その………ね?」
「んー………まぁ……」
いえ、別に、無理にとはいいませんよ。
わざわざ聞かなくても、多分、
『二人が付き合い出したきっかけとは!!?』
とか、言えば、再生されると思いますし。
「へ!??再生ってなにが!?」
だから、アニメとか、小説とかでお馴染みの………
私と、そう君が、付き合い始めたのは、私が、こなたと出会ってから2年が………
ガシャン!!!
「わー!!!!」
ちょっ!!?かがみさん!?なにするんですか??
「解ったわよ!?話すから!!話すから、今のは無し!!」
はぁ……別に、今のままでも、一緒なのでは?
「違うのよ!!色々と!!!」
はぁ……?
「あ!そっか!あのまま行くと、俺と、かがみちゃんの、初エッ………チグワ!!?」
「そう君?……なぐるわよ??」
殴ってから言っても………お約束な気もしますけど。
「まぁ……その………ね?
随分前に、ここに泊まりに来た時なんだけど、夜中に目が覚めちゃって。
その時に、そう君が、リビングで独り寂しそうにしててね。
………で、なんとなく、話をして、それで、知っちゃったんだ……」
何をですか?
「そう君が、凄く一途で、優しい人だって。それを、知っちゃったらね?」
そうなんですか?
「つまり!俺は、いい男で、勝ち組なのだよ!!」
いや………貴方は、もう少し責任とか、色々考えて下さい。
娘の友達に、手を出してる訳だし。
こなたさん……大丈夫かな?
「お父さんも……かがみも……大嫌い!!」
続く?
以上です。
そうじろう×かがみ
エロシーン………入れるなら次回以降になると思います。
前回、感想を下さった方、今回、最後まで読んで下さった方、本当にありがとうございました。
>>446 GJ!
かなわぬと思いながら続きを待っていましたけど、本当に書いて頂けるとは。
かがみとそうじろうに、嫉妬するこなたという図がものすごく新鮮です。
今後の展開をとても楽しみにしております。
その発言はあまりに唐突だった。
「皆はもうエッチしたことある?」
突拍子もないことを言ったのは泉こなただった。
当然、普段そんな事は話さない他の3人は驚愕し、顔をあかくした。
かがみ「急に何言ってるのよ!ある訳ないでしょ!?」
こなた「まあそうだろうね〜、いやちょっと聞いてみただけだよ。」
みゆき「ビックリしましたよ。」
ただ、そんな中、いつまでも顔をあかくしている者が一人。
つかさだった。
彼女は一人、顔を両手で覆いながら、俯いていた。
こなた「つ、つかさ?」
かがみ「つかさ・・・?も、もしかして・・・?」
親友と、双子の姉の問いに対して、彼女は小さく頷いた。
ちょっとだけ続く。
>>446 異色カプですな〜?
かなり年下の姐さん女房ですねおもしろいGJ!
でもまあゲームに関してはそんな思った以上に投下される事は無いでしょうから
荒立てず波風立てずに過ごしましょう皆さん個人的には楽しみ
とりあえずぷーわ氏に突っ込むべきなのか?wwww
てゆうか人袖の設定使ってる?
>>446 ふーむ。なかなか複雑な気持ち。
こなたからすると、親友と父親に裏切られたような気持ちなのかも・・?
どうなるやら…仲直りは出来るのかな…いろいろ気になる部分はあれど。
先も気になる今日この頃
「ひいらぎ〜、そろそろゲームネタ解禁だな!」
「そうね、1カ月が長く感じたわ…」
「どんなのが投下されんだろな」
「ん〜…わからないわ…」
「でもあれだよな、3番目のあれはないよな」
「は?ちょ、それゲームネタ?」
「そだよ?あれむずいんだよね〜」
「ちょ、待ちなさいよ、まだ日付変わってないし」
「う〜ん、あれは苛めとしか言えないよな、うん」
「ちょ、あんたいい加減に」
「まぁあたしは激7のあれでも、2速のRainbowかけてもB判定だからなぁ…むりむり!」
「……………日下部、それなんのねた?」
「ん?ゲーム」
「だからなんの。」
「DDRのSUNKiSS DROPって知らない?今トップランカーやってるじゃん」
「ちょっとおもてでろ」
さて、言わざるを得ない。
解 禁 だ !
0時!
陵桜祭SS投下開始!
第一波は誰だ!!全力で期待する!
散々騒いでおいて蓋を開けたら何も入っていなかったとか良くあるネタ
解禁!解禁!
とりあえず期待age
なんだかんだ言って今日の夜9時位からラッシュが始まりそうな予感が
今日は桜藤祭SS以外はだしちゃだめなの?
んなこたぁない
よかった。でも桜藤祭SSも一本書こうかな…
祭りに間に合わなかった……
南こうせつ見ててすっかり忘れてた
あんまり期待していると書き手さんも投下できなくなってしまうかもしれないので
『マターリはぁはぁしましょうか。』
でも一日作業なのであんまり長いのは期待しないでくれるとありがたい、かな。
……えーと、いいのかな?
桜藤祭ネタ解禁にともない、投下します。
最初は軽いジャブから、ということでorz
*この作品は、『らき☆すた 〜陵桜学園 桜藤祭〜』をベースにしています。
*主人公xこなた、エロなし、ネタバレ注意。
*思いっきりメアリ・スーに見えるかもしれませんが、俺にとっての主人公は「操作できる登場人物」に過ぎませんので悪しからず。
*主人公の名前は、エンドロールのスタッフから適当に借りましたw
つ【
ttp://www.sonokawa28.net/lsssuploader/src/up0028.txt】
……なんのこっちゃ。
しょっぱながこんなのですいませんorz
>>464 みなみ「呼んだ?」
ゆたか「みなみちゃん、そのネタ、ニコニコで既にやられてるよ」
みなみ「そういうゆたかだって・・・盗んだバイクで走ったくせに・・・」
>>466 GJ!
宇宙人さん何やってんすかwww
>>466を読んで思ったんだが主人公ってデフォ名無いんだよな
各自好きな名でいいんかね?
>>466 GJっスー!!><
ゲームをやった身からしてみるとなんともニヤニヤできるお話というか、
設定が上手くつかわれていて楽しく読むことができました。
そしてオチ……こ れ は ひ ど い w
桜藤祭関係ありませんがこう×やまと(というよりはこう&やまと)いきます。
※自分同人誌とか出したことないので作業のあたりは100%想像です。もし間違っていたらスルーするかやさしく指摘してください
ミーンミンミーン…
響き渡る蝉の声は今が確かに夏であることを物語っていた。そんな中私は…
「こう、ベタ塗り終わったけど。」
「ありがと!じゃ次こっちお願い!」
私は、いったい何をしているのだろう。
君色に染まる
「今日うちに来ない?むしろ泊りで」
こうからそんなかんじのメールが届いたのは夏休み突入から一週間ほど過ぎ
た今日の早朝のことだった。
唐突過ぎない?とか泊まり?とかいやに簡潔ね、とかいろいろと疑問は浮か
んだが断る気にはなれなかった。ほかならぬこうの誘いだし、こうの家に行く
のならいつものように三十分待つ必要もない。それに泊り込みということは…
いや。考えるな私。別にこうとは親友であってそれ以上の関係じゃいやだから
それ以上の関係になるためにうるさいうるさいうるさーい!
「はぁ、はぁ、はぁ…」
落ち着け、クールになれ私。こうの後輩の眼鏡の子の書いてる漫画じゃある
まいし現実にそんなことがあるはずがない。ともあれ、とりあえず行く事自体
に異存がない私は承諾のメールを送ろうとして
「あ、そうだ。」
一応外泊するならお母さんに言っておかなきゃ。だけどそう簡単に許可を出
してくれるだろうか。一応私は年頃の娘だ。急に外泊するなど言い出したら心
配するのではなかろうか。
結果は一言で了承だった。こうがいつぞや持ってきたパソコンゲームのたま
にとんでもない味のジャムを作り出すお母さん並みのスピードで了承だった。
にしても甘すぎないだろうか。もしかして女子高なら男子との出会いなんてな
いと思われているのか。まぁ実際にないが。
ともあれ、私は承諾のメールを出すと荷造りをしてこうの家に向かった。
「…帰る。」
「わー!ちょストップ!早い、早すぎるよやまと!」
こうの部屋に入ったとたん、私は来たことを後悔した。
机の上は紙で半ば占領され、乗り切らなかった紙が床に散らばっている。
時期を考えればあの紙に何が書かれているか見なくてもわかる。何で私が呼ば
れたかも。
「お願い!もう祭典も近いのにひよりん熱出して倒れちゃったんだ!手伝って!」
「…私にどうしろと?」
あの文化祭から半年以上が経って、私はその間こうにいろんなところに連れ
回された。だから何を描いてるかくらいは判るし引きもしない。けれどそれを
手伝えるほどアレでもない。
「ベタ塗りとかトーン貼りとか、やまとにもできるようなのだけでいいからさ。
一生のお願い!」
土下座せんばかりの勢いで食い下がるこう。こうなるともう断る気にはなれ
ない。いや、実を言うとそんな気など最初からなかった。こうが私を頼ってい
るのだ。私が手伝わない理由などどこにもない。
「で、どれ?」
「…え?」
「手伝ってほしいんでしょ。やってあげるからかして。」
「…!
ありがとうやまと!」
私がそういうと顔をまるで太陽のように輝かせて抱きついてくるこう。まぁ
、その、こうのやたら大きい胸が当たってたりして私的にはすごくいいのだが
残念なことに私はここでずっと抱き合っているようなキャラじゃないので、
名残を惜しみながらもそれを表に出さず突き放す。
「わかったから、さっさと終わらせよう。」
「え、あぁ、うん。まずこれのここなんだけど…」
こうがなんだか寂しそうな顔をする。そんな顔をされると抱きしめたくなる
のだがそこは自重。
「わかったわ。」
内心はともかく不機嫌そうに受け取る。本当はもうあきらめてるんだけど
ここで甘い顔をすれば次何を要求されるかわかったもんじゃない。そうなったときどうせ自分は断らないのだ。
「…にしても」
これはまたずいぶんとハードな。百合、というのだっただろうか。女の子と
女の子がくんずほぐれつしている。まぁ男同士じゃないだけ見苦しくはない。けど、多分一年前の私ならきっと赤面して破り捨て、その勢いでこうと絶交していただろう。私もずいぶんと、こうに染められたものだと実感する。
こう色に染まっていく。身も、心も。
昨日の私と今日の私はきっと違っている。日に日に、こうの色が強くなって
いく。
けれど、それが。
「ふふ…」
「ん、どうしたのやまと?」
「なんでもないわ。」
あんまり、嫌じゃなかったりする。
書き忘れましたがここで終わりです
乙、そしてGJ
これは中々良いこうやま
これはいいやまと
GJ
どうでもいいが、www.sonokawa28.netっていつ見ても格のないURLだな
…元ネタ分かるやつは多分ここにはいないだろ
>>466 なんてホームラン級の投げっぷり噴いた!
しかしゲーム前提っての部分もあるけどなかなかおもろかった
特にループによる人の記憶の擦り込み方の工夫次第で面白さの可能性がでてくるね
>>475 うわ〜ニヤニヤ
こうきたかー(こうだけに!
ゲーム完済してないからやまとがまだちょっと掴めないが
本編を見る限りこの二人の友情は事象を覆すぐらい本物だからこれがなおよく感じられた
2人ともグッジョブ!!
>>478 さっきvipでそれ系のスレ見ててgkbrしたから癒されに来た俺がいますよ
>>466 GJww
笑った笑ったwww
宇宙人自重しとけwww
>>475 GJ!
そうか…やまとがあんなキャラなのは内心の本音を漏らさないためだったのか。
やけに納得したw
その練習を、私は体育館の出入り口から見ていた。
(…ここだ。)
ここでかがみさんは足を捻る。もう何度も時間を繰り返してきたが、実際に
この目で見たのは初めてだった。
やはりこの"今"は何かが違う。悪いほうに違うのではなく、極端に修正が弱
い。前回までのパターンなら私がこんなところに来れる筈がなかった。
(…でも、それもいつまで続くか)
抑圧された歪は弾けたとき、より強く元に戻ろうとする。もしそうなれば、
間違いなく時間のループに閉じ込められる。ここでの時間の脱却は諦めた方が
いいだろう。ならば…
「その凛役、私にやらせてもらえない?」
今まで出来なかったことをやってしまおう!
やまとの文化祭〜参加編〜
「えぇ〜…」
みんなから非難の声が上がる。まぁ仕方ないといえば仕方ない。少し前に
準備に参加する、しないでかがみさんに喧嘩を売ったばかりなのだ。でも
対策は用意してある。私は演技っぽく手を前にかざすと、もう何度一人で
練習したか判らないその台詞を言う。
「逃げてもいいけど辛いだけよ。どうせ勝つのは私なんだから。」
場がシーンと静まりかえった。呆気にとられているのが手に取るように判る。
自分でも人前でこれだけ出来るとは思わなかった。
「やまとちゃん、それ…」
つかささんがやっとという感じで聞いてくる。
「かがみさんの件は私も悪かったって思ってる。本当は、ずっと皆と一緒に桜藤祭
をやりたかった…けれど、私、そういうの表に出せなくて。」
「おぉ、やまとんはツンデレキャラだったか〜」
こなたさんが妙に盛り上がる。ツンデレ…確かに私の今までの言動はそうなる
のかもしれない。まったく不本意ではあるのだけど。
「で、結局どうするのさ。まぁ俺としてはやってもらえるとこっちに大役が回って
こないで助かるんだが。」
りおん君が口を挟む。正直ぐたぐたな雰囲気になりそうだったのでこれは助かる。
「どうするって、ねぇ…」
「まぁ、あそこまで完璧な演技見せられますと、ね…」
みゆきさんとあやのさんが顔を見合わせる。この流れ的に行くと…
「それじゃあ。」
「はい、ヒロイン役、辛いと思いますが頑張ってください。」
いよっしゃー!と心でガッツポーズ。ずっとこれがやりたかった。自分があの舞台
の上に立つことを何度夢見たか。それが、現実にかなってしまった。たとえその先で
ループして皆の記憶に残らなくても、きっと私は満足できる。どうやら彼も大分力を
取り戻しているみたいだし、一度くらい先送りしても罰は当たらないだろう。
それからの時間は、今までの"今"よりずっと早く過ぎた。りおんくんを余計な干渉
に巻き込ませないようにしながら、今までは一人寂しくやるしかなかった練習を皆と
やる。そこには今までにない充実感があった。そんなこんなで、もう桜藤祭の日に
なってしまった。
「がんばって。俺も裏から応援しているから。」
りおん君が私に声をかけてくる。それに私は微笑みながら答えた。
「ええ。そちらもがんばって。」
思えば、当日にりおん君と話をすることもそうなかった。もしかしたら演劇前に
話すのはこれが初めてかもしれない。
そして、演劇は始まった。
「汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
「……………アーチャー、わたし」
「ところで凛。一つ確認していいかな」
「………いいわ。なに」
「ああ、時間を稼ぐのはいいが―――
別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」
「アーチャー、アンタ――――」
「―――ええ、遠慮はいらないわ。
がつんと痛い目にあわせてやって、アーチャー!」
「それからこれは命令。
士郎、死んでも勝ちなさい。」
終わった。客席からは拍手が怒涛のように押し寄せる。今まではその光景を見て
るだけだった。まさかやれるなんて思っても見なかった。押し寄せる拍手がこんな
にも心地よいものとは思わなかった。けれど、もう終わる。
空を見た。後三分後、この時間は終わりを迎える。止めたかった。花火を打ち上
げる場所まで判っている。でも、止めようとすればきっと時は暴発する。だから―――
「きっとこの光景を、おぼろげにでも皆が覚えていますように。」
そう祈るようにつぶやいて目を瞑る。遠くで花火の音が鳴った。目を開ければ
また転校初日からのやり直し。想い出はもう得た。今度こそ抜け出す。そう誓って
私は、もう何度も見た出会いへと歩を進める―――。
fin
書き損ねたけどりおんは主人公の名前。
>>484 いきなり本文から入ってきたから、何があったかと思った。
もしかして、ここでの投稿は初めてかな?
いきなり本文でちょっとびっくりしたが中々面白かったぜ
それはそうと主人公が出る時は注意書きと一緒に名前も書くと読みやすいかもな
>>484 死ねよ
3日くらい前にあれだけゲームネタ解禁云々で揉めたんだから注意書きくらい書け。
半年ROMってから投稿しろ!つかもう2度と来んな
>>487 憤りはわかるけど、言い過ぎだと思うよ
こな大根でも食って癒されな
>>487 まあちょっともちつけ。注意すれば事足りるでしょ
/\⌒ヽペタン
/ /⌒)ノ ペタン
∧_∧ \ (( ∧_∧
(; ´Д`))' ))(・∀・ ;)
/ ⌒ノ ( ⌒ヽ⊂⌒ヽ
.(O ノ ) ̄ ̄ ̄()__ )
)_)_) (;;;;;;;;;;;;;;;;;;;)(_(
「か、かがみっ。と、とりあえずおおお落ち着くんもももすもももちづき、もちつくんだっ!!」
「……そう言いつつ、つかさのほっぺをつっついてるのはなぜ」
「じゅうろくれんしゃーモフ」
「うにょーん」
491 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 08:46:28 ID:31yg6gmr
>>487 少し言い過ぎだろ
お前もROMってろ
以下、普通のながれで
> 以下、
これを書くくらいなら最初から書き込まない方がいいとオモ
今まで通りのカップリングSSもゲームSSもどんどん投下したら良いじゃない。
書き手は一応注意書きしてね。
494 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 09:34:20 ID:SpUJV/xs
>>487は明らかに言いすぎだが、
注意書き書かないのは文句言われても仕方が無い。
「読みたくないならスルーしろ」とは言えないわけだからな。
>>485-489 すいません。二度目なのですがちょっと勢いつきすぎて注意書きする前にメモパッドからコピってしまいました。
次からは気をつけます。
注意書きが必要な理由は元をただせば読み手の我侭のせいだ
それを忘れるな
498 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 09:55:33 ID:SruNZ+EO
鬱ものとかシリアスものならまだわかるけどゲームネタでこれだもんな
>>497 かもしれんけどここはお互いに配慮しましょうや。
こんなに荒れる祭は初めてですね………
「パパパパエリヤァアアアアアアアアアアアア!!!!」
「はうぅ!? まつりお姉ちゃんが荒れてるよぅ」
「ちょっとまつり!! 落ち着きなさいよ!!」
「パエリヤァアアアアアアアアア!!!」
「……わけわかんないわ……まぁいいや、私ちょっとこなた弄ってくるから」
「……? かがみぃ?」
まぁまツンツンせずに…
お品書きは大事だからSS書きさん忘れずにお願いね〜☆
>>484 ウルトラやまとちゃん乙!
個人的にウルトラ娘ちゃんも好きなのでとても良かった
やっぱ本当は参加したいので1人で練習してたやまと萌え
ん…… 準備している方がいなければ投下しますですよ。
どうぞ
「ゆーちゃん対策委員会♪ 第2日」
注意事項
・通常SS
・一話完結物
(「ゆーちゃん対策委員会♪ 」の続きですが、ストーリー上の連続性はありません)
・ゆたか&ひより (他、全般)
・エロあり
・ゆーちゃん注意
「皆様、本日はご出席頂き、誠にありがとうございます。
これより、『第2回 小早川ゆたか対策委員会』を開催させていただきます」
司会は同じくみゆきで、メンバーも第1回と同じである。
「今日は、田村ひよりさん、お願いします」
最初に丸い眼鏡をかけたロングの女の子が、同人誌を取り出しながら起立した。
〜報告4 始め〜
「みなさん。まずは、お手元に配布させて頂いた同人誌をご覧ください」
ぱらぱらとページをめくる音が聞こえて、皆一様に頬を赤らめたっス。
「ひよりん。これってかなりやばいねえ」
この手の本には慣れているはずの泉先輩も、ごくりと唾を飲んでいます。
「手前味噌ながら、ベストのモノができたと自負しております」
「ベストはいいけど…… この本と、ゆたかちゃんの関係は? 大体は分かるけどね」
ため息混じりのかがみ先輩の質問に、私は下半身に微かな疼きを覚えながら答えたっス。
「ご推察の通りっス。詳しく申し上げますと…… 」
小早川さんが、私の家に遊びに来ていた時のことっス。
お茶とケーキを運んで戻ってきた時、小早川さんは、私がタンスの奥深くに隠していたはずの
同人誌を読んでいました。
「あ、これは…… 」
表紙を見た途端、私の血が引いたっス。
小早川さんと岩崎さんを、勝手にモデルにした百合18禁本を、本人に見られてしまったっスから。
「田村さん」
食い入るように同人誌を読んでいた、小早川さんが顔をあげました。
「は、はい」
蛇に睨まれた様な蛙のように、全く動けません。
「私とみなみちゃんだよね。この本のモデルって」
「あ、あの、参考にさせて頂いたというか、その」
小早川さんとは同級生なのに、敬語になっています。
「ふうん」
小早川さんの背中から、壮絶な怒りが立ち昇っているっス。
「参考程度じゃないよね。トレースした感じだよ」
「あう、スイマセン、モデルとしてそっくり使わせて頂いたっス。でも、トレースは自粛したっスよ」
「言い訳はしなくてもいいよ。田村さん」
「はいっ、ごめんなさい、ごめんなさい」
はっきり言って怖すぎるっス。私は、恐怖におののきながら必死で謝ったっス。
小早川さんは、酷く脅える私を見つめながら、ゆらりと立ち上がります。
「ベッドに来て」
どういう…… こと?
言われるままにベッドに座ると、小早川さんが横にちょこんと腰掛けます。
「いいよね」
決して質問ではありません。確認です。
機械のように頷くと、小早川さんは首に手をまわして唇を近づけました。
「んっ」
ファーストキスが、いきなり失われたっス。
「ちょ、小早川さん!? 」
焦って唇を離して抗議するけど、小早川さんはにこにこと笑いながら言ったっス。
「田村さんには拒否権なんて、ないんだよ」
氷のような一言っス。
私は…… 従うしかありません。
小早川さんの手が伸びて、セーターとブラウスが脱がされます。
「田村さんの肌、とっても綺麗だよ」
あっという間に上半身を剥ぎ取られて、ついでとばかりブラも取られたっス。
「恥ずかしいよ」
「ふふ…… 」
小早川さんは含み笑いを浮かべながら、自分自身も服を脱いでいきます。
可愛いブラのホックを外すと、小さな膨らみが目に飛び込みます。
これは目に毒っス。破壊力ありすぎっス。
興奮している私に、小早川さんが抱きついてきたっス。
「ひゃん」
背中を軽く引っ掛かれて、変な声をあげてしまいます。
「田村さんの肌、つるつるだね」
「そんなこと…… ひゃあ」
耳に息を吹きかけられて、身体が震えます。
「田村さん、とてもかわいいね」
唄うように囁くと、小早川さんは私に覆いかぶさり、ベッドに押し倒します。
こ、この態勢はヤバイっス。
私も小早川さんも下はスカートだけです。めくれ上がったスカートからは白い太腿が
悩ましげにのぞいています。上半身は何もつけていないっス。
身体が密着して、乳房と乳首が擦れ合わさって変な気分になるっス。
脚を絡めながら、小早川さんは舌を入れてきます。ディープキスってヤツです。
彼女の舌が私の中で這い回り、陵辱していくっスよ。
「ん…… んあっ…… 」
小早川さんの手が伸びて、スカートの中に手がもぐりこみます。ダメっす。そこだけはご勘弁を。
でも、必死の願いも叶うことはありません。
体力的には、小早川さんを強引に押しのけることができるはずなのに、何もできないっす。
おかしいっス。絶対変ですよ。
「抵抗してもいいよ、田村さん…… 」
長いキスから唇を離して、小早川さんは、私の心を見透かしたように呟きます。
しかし、彼女の表情は何故か、切なそうなものに変わっています。
先程までの小悪魔めいた顔つきとは明らかに違っているっス。
「小早川さん? 」
私は、絶対に騙されていると思うっス。でも壊れてしまいそうな、今の顔は見たくないっス。
小早川さんは、歪んだものであったとしてもいいから笑顔が似合うっスよ。
「優しくして…… 小早川さん」
私は全身の力を抜いて、受け入れる態勢を整えます。
「じゃあ、いくよ。田村さん」
小早川さんの表情がもとに戻りました。彼女は私の下着に触れながら囁きます。
「やっぱり濡れているね」
微かにくちゅくちゅという卑猥な音が耳朶に届きます。
「そんな事言わないで」
ギャルゲの攻略キャラみたいな言葉が、自分の口から出るとは夢にも思わなかったっス。
「んっ…… 」
小早川さんの手が、私の大切なところを下着越しになぞって、その度に水揚げされた
鮮魚のようにびくびくと震えます。小早川さんの愛撫はとてもむず痒いっス。
私は太腿で小さな手を挟み込んで、快感を逃さないように押さえつけたっス。
「んあっ…… くはっ」
小早川さんは、私の秘所を刺激しながら、乳首を口に含んで舌で転がします。
その度によがりながら嬌声をあげていたっス。しかし――
あれっ? おかしいな?
最初は凄く気持ち良かったのに、下着の上からだとだんだん物足りなくなってしまうっス。
もしかしたら、慣れてしまって鈍感になっている? ものすごく自分が淫乱になったようで
恥ずかしいけれど、本能の要求には逆らえません。
「こ、小早川さん。もっと強くして」
まるで、発情期の動物みたいっス。両親が見たら確実に泣くっす。
「ごめんね。田村さん」
小早川さんはにっこりと微笑むと、私のスカードと下着を脱がしていきます。
素っ裸になった私の秘所をじっくりと眺めて、耳元で囁きます。
「田村さんのアソコ、とっても綺麗だよ」
恥ずかしいっス。親父にも見られたことないのに! いや、見られたら大変だから。
一人突っ込みをする程、頭が混乱しているっス。
「もう、お嫁にいけないっスよ」
「その時は私が貰ってあげるから」
小早川さんは妖艶な笑みを浮かべています。
小早川さんに貰ってもらえるなら本望っス。
二人で料理を作ったり、あーんして、と肉じゃがをふーふーしてから食べさせたり夢が広がるっす。
食事? お風呂? それとも、ワ・タ・シ? はもちろんやりたいっス。
「ひゃん」
いきなりアソコの膨らんだ部分をつねられて、私は甲高い悲鳴をあげたっス。
「田村さん。こっちに戻った? 」
「う、うん」
強制的に妄想世界から引き戻された私は、顔を真っ赤にしながら頷きました。
小早川さんは、楽しそうに眺めながらクリへの愛撫を再開します。
「ん…… くはっ、いや、ダメっ」
どうやら、変なスイッチが入ってしまったようです。
小早川さんは、容赦のない責めを私に加えていきます。
「や、あん、いや、んはっ、ふあっ…… 」
やばいっス。本当にエロゲです。それも特濃級のヤツです。
小早川さんの妖しげに動く指によって、身体とココロがとろとろに溶かされていくっス。
「イイ、キモチイイよ。もっと…… 」
本当にえっちげーむに出演する声優さんみたいな喘ぎ声っス。
とんでもなく恥ずかしいっス。でも、羞恥が快感に変わっていくっス。
「田村さん。筋金入りのヘンタイさんだね」
小早川さんが嘲ります。
表面は天使のような笑顔なのに、裏側はとんでもなく暗黒です。
でも、私は既に小早川さんの危険な魅力に、虜になってしまっていたっス。
「んあ、ダメ、イク、いっちゃうっ」
小早川さんの手の動きが加速度を増していきます。
アソコの中心がとても熱くて、ひどく疼くっス。
「田村さん、いっちゃえ」
小早川さんの宣告とともに、更に強い一撃が加えられます。
「だめ、くぅ、んあああっ、んあああああっっつ」
ひときわ大きな絶叫を放ち、全身を弓のようにしならせながら、私は絶頂を迎えたっス。
「はぁ…… はぁ…… 」
私はベッドに横たわり、荒い息をついています。
もうダメっス。一人エッチの何十倍もの快感で頭がじんじんとするっス。
この1時間で経験値はかなり上がったような気がするっスよ。
しばらく余韻にひたっていると、小早川さんが私をぎゅっと抱きしめてきます。
「田村さん。大丈夫? 」
エッチの時の表情とは異なり、ひどく穏やかなものに変わっています。
「う、うん。もう平気だから」
「良かったあ」
小早川さんは私に唇を近づけて軽くキスをします。触れるだけの優しい口付けっス。
「田村さん。ありがとう」
小早川さんは、天使のような微笑を浮かべて瞼を閉じました。
次の瞬間、体力の限界に達したようで、ベッドに崩れ落ちたっス。
以上で私の報告をおわるっス。
あ、あの岩崎さん、そのハンマーは何? 1tって書かれているんスけど。
まるで昔のアニメの……
ダメっス、ほんの出来心っス。許してくださいっス。
「アッ―――――― !」
〜報告4 終わり〜
こほん。
小さな咳払いをしてから、高良みゆきは立ち上がった。
「それでは『第2回 小早川ゆたか対策委員会』を、終了したいと思います。
それでは散会いたします。皆様お疲れ様でした」
以上です。
読んでくれた方、本スレ及びwikiに感想をいただいた方、ありがとうございます。
ひよりんの口調は、結構難しいですね。
では。
GJ!
リアルタイムで遭遇
ひよりん可愛ぇ(*´∀`)
うわ…えろっ
早々に解散したのはナニ(ごすっ)…何のためとか思っちゃうよ
エロいのもそうだが小早川さん黒い、黒いよ。
だがGJ!
こういう語り口も面白いですね。
ってかゆたかエロすぎw
対策委員会じゃなくて告白羞恥プレイ大会だよねw
こんにちは。
35-335です。
すいません。ゲームの話では無く、
>>446からの続編です。
エロ無し
そうじろう×かがみ?
とは言え、今回は、ほとんど、こなたと、白石(ナレーター)しか出てきませんが。
4レス程お借りします。
「うぅ………うっ………うっ……えぐ………」
くぐもって聞こえるのは、こなたさんから漏れる鳴咽。
枕に顔を押し当てて、泣いちゃってます。
うーん……困りましたね。
かがみさんも、そうじろうさんも、あの様子だと、部屋に入って来る事は無いでしょうし………
へ?慰めろ??僕がですか???
いや、無理ですよ。そんな経験無いですし、第一、ナレーションが、キャラと話すのは、ご法度でしょ?
ケ○○だとよくあるから、大丈夫??
いや、そーゆー問題じゃないでしょ!??
解りました!解りましたから!!親指を、首の前で横に動かすのは、やめてください。
あの?こなたさん??
「うぐ………なに?」
いや、あの、大丈夫かな?と、思いまして。
「………大丈夫そうに見える?」
見えませんね………あはははは………
「だったら、ほっといて」
いや、ほっとけませんよ。
そりゃ、特別、親しかったりした訳じゃないですけど、クラスメイトじゃないですか。
同じクラスの女の子が泣いてるのに、ほっておける程、人間腐って無いですよ。僕は!!
「………ありがと。白石君は優しいね」
いえいえ。ていうか、こなたさん、僕の名前知ってたんですね。
「当たり前だよ。クラスメイトの名前も知らないなんて、寂しいじゃない」
いえ。ずっと、セバスチャンって呼ばれてたので、覚えられてないのかと。
「あぁ………ソレは、白石君が、いっつも、いいリアクションとってくれてたからね。面白くて、ついね」
はぁ………まぁ、別にいいですけど。
それより、やっぱり、ショックでした?かがみさん達の事。
「うん………あのさ、白石君って、好きな娘いる?」
え!??なんスか??いきなり!??
「いいから!答えて!!」
えぇと………はい。まぁ……いますね。
「どんな娘?」
そうですね。我が儘で、猫かぶるのがうまくて、自己中心的で、
「あのさ?好きな娘の話だよね??」
そうですよ?………まあ、でも、普通好きになりませんよね?そんな娘。
「うん。聞いてる限りじゃ、かなり無理がある。凄く見た目が可愛いとか?」
うーん。そうですね。それも、あるかも知れませんね。
ただ、普段、そんなんなんですけどね?たまに、見せる態度で何と無く解るんですよ。
本当は、凄く寂しがりやで、弱い娘なんだって。
それで、そんな娘が、本当は僕の事、凄く心配してくれてるって事も。
そんな事、気付いたら好きになっちゃってましたね。
「………いい娘なんだね」
ええ!凄く。
「告白しようとか、思わなかったの?」
うーん………なんていうか。
相手の娘の方が凄すぎて、別次元というか、今の自分とは、釣り合わないというか……
「そっかぁ。その娘がさ、自分の父親と結婚したら、どうする?」
………親父を金属バットで殴って埋めます。
「………やり過ぎだよ。ちょっと、雛○沢入ってるし」
いや。殺りたくもなりますよ!!歳を考えろって!!!
「うん。そうだよね。私も、そんな気分になったもん。
さすがに、殺したいとは思わなかったけどね。
ヤンデレの素質は無かったんだね。私」
こなたさん。かがみさんの事………
「うん………好きだったんだよね。ずっと前から。
ダイエットに夢中だったり、そのくせ、お菓子大好きで、失敗ばっかりで。
からかうと、すぐに怒って、でも、謝ったら、すぐに許してくれて。
気付いたら、何時も側にいてくれた。
私のいい所も、悪い所も全部受け入れて、その上で側にいてくれた。
そんな人………好きにならない方が、嘘だよ」
こなたさん……
「でもさ?私も、かがみも、女の子だから。
多分、私の気持ちは、かがみに受け入れて貰えない。
もしかしたら、かがみは優しいから、受け入れてくれたかもしれないけど、でも、世間には受け入れて貰えない。
そんな辛い恋愛は、かがみには、本当に好きな人には、させたくないよ。
だからさ、諦めようと思ったんだ。
それなのに………ね?
世の中、うまくいかないもんだね」
うぅぅ………ごなだざーん!!
「わぁ!?なんで、白石君が泣くのさ!!」
あんた、ええ娘や!!ほんま、ええ娘やで!!!
「しかも、ちょっと訛ってるし!」
よし!!止めましょう!!!
あの二人の結婚、断固阻止するべきです!!
「ちょ!落ち着いて!!
別に、私、かがみと、お父さんの結婚、本気で反対する気は無いし!!」
え?いいんですか??ほっといたら、あの二人、本当に結婚しちゃいますよ?
「いいんだよ……」
よくないですよ!!だって、そんなの、こなたさんが、辛くない訳ないじゃないですか!!
「本当にいいの!!
そりゃさ………辛いよ。悲しいよ。
好きな人が……自分のお父さんと、結婚するんだもん。
辛く無い訳ないよ。
でも、お父さんも、かがみも、私に直接、言うくらいなんだもん。
絶対、本気だと思うんだ。
私……私ね。お父さんも、かがみも大好きだから………二人に幸せになって欲しいんだ」
でも………そんなのって!!!
「わた……わ……たしだけ……我慢したら………二人共……幸せになれるんだよ?
なのに………こんな簡単な事なのに。
どうしてかな?すごく………すごく胸が痛いんだ。
悲しくて悲しくてたまらない!!」
こなたさん………
「ごめんね。迷惑だよね。急に泣かれたりしたら困るよね」
いえ、そんな事………
「やっぱり、白石君。いい人だね。
迷惑かけてるついでに、我が儘言ってもいい?」
僕に出来る事でしたら。
「朝まで泣かして貰っていいかな?」
はい………
こなたさんは、僕の背中に顔を埋めて、ずっと泣いていました。
永遠に続くかとも思われたそれは、それでも、2時間程たってから、寝息に変わっていました。
翌日。こなたさんが、向かうリビングには、既に、かがみさんと、そうじろうさんの姿。
「おはよう。かがみ。お父さん」
笑顔で、二人に挨拶するこなたさん。
どこか痛々しく見えるのは、僕だけが、こなたさんの気持ちを、知ってしまったからでしょうか?
「おはよう。こなた」
「お……おはよう」
お二人の返事もどこか、ぎこちないです。
さすがに、昨日の今日ですからね。
少しだけ気まずい空気の中、無言の朝食が続きます。
沈黙を破ったのは、こなたさん。
「あのさ?式とか、正式な入籍とか、何時にするの?」
「え?」
「どうしたんだ。こなた。急に」
「だってさ、入籍の方はいいけど、式もするなら、色々準備とかあるんじゃないの?
かがみはともかく、お父さんは、その辺抜けてそうだからね」
「おいおい」
「大丈夫よ。その辺は、私がバッチリやってるから。
入籍も、式も、卒業式の翌日にやる予定よ。
もっとも、結婚式の方は、うちの神社で簡単に済ませる予定だけどね」
「えー………お父さんの甲斐性無し」
「違うぞ!お父さんは、かがみちゃんの好きにしていいって言ったんだぞ!!」
「神社の娘としては、さすがに気をつかうのよ。
それに、一人くらい、我が家でしとけば、他の3人は、好きな形で式上げれるでしょ?」
ワイワイと、楽しそうに進む朝食の風景。
でも、こなたさんの笑顔にある影には、誰も気付かないまま……
こなたさん。本当にこれでいいんですか?
以上です。
まず、謝罪を。前回、ぶーわ氏をぷーわ氏と書いてました。
ほんっとに!すいません!!!
もう1つ。
エロシーンが………
えぇと、この話が終わるまでには、何処かで入れると思います。
前回、読んで下さった方、感想を下さった方、
並びに、今回読んで下さった方、本当にありがとうございます。
521 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 14:10:49 ID:oK3X5pFF
ゲーム主人公×やまとって書いている方いますか
>520
リアルタイムでぐっじょぶなのです。
毎回楽しみにしていますよ。
このまま一直線に、エンドとは行かなさそうですね。
続きも期待して待っています。
>>520 GJっしたー
こなた寂しい(´・ω・`)
こなたのことは誰が支えればいいんだぁぁ
524 :
双子の兄:2008/02/24(日) 14:45:22 ID:8EnbC/xA
思ったより勢いがついてないのが意外だと思った双子の兄です。
誰も投下する人が居ないのでしたら、五分後位に投下させて頂きます。
525 :
双子の兄:2008/02/24(日) 14:47:39 ID:8EnbC/xA
それでは行きます。
『指切りげんまん』
・つかさ&かがみ
・ほのぼの(だと思われ)
・非エロ
指切りげんまん この子指に誓いを立てよう
指切りげんまん もしもそれが嘘になったとしても
指切りげんまん 針千本飲ますより、前よりもっと貴女を信じよう
指切りげんまん まじないの終わりに小指を離せば願掛け終わり
"ずっと一緒に"
指切りげんまん 指切った
------------------------------------
指切りげんまん
-------------------------------------
カレンダーを見る。日付は世が入学式と言う、子供が居る家庭ならとても重要な行事が開催される前日を指してい
た。
本来ならば、明日に備えて長い休みで惚けた頭を新しい生活に向けて切り替えて、万全の状態で幸先の良いス
タートを切るべきなのだろうが、机に頬杖を着いてボンヤリと外を眺める彼女の表情は毎日の鬱積が全て襲い掛
かっているかのように憂鬱そうだった。
長期休暇の最後の一日、時刻は壁に掛かっている時計の針を信じるのならば、午前九時頃を示しており、普段の
休みは軽く昼を越えるまで熟睡する彼女にしてはかなり珍しい事だった。その証拠に、休みの日にも関わらず何時も
は八時には起きている姉も最後の休みぐらいはだらける、と言って未だに起床の兆しを見せていない。
しかし、一人窓際に設置された机に頬杖を着く少女は何時ものように姉と遊びたい素振りも見せずにぼんやりと窓
の外を眺めるだけだった。その様子からは、姉と遊びたい、と言うよりむしろ、姉が寝静まっている事に安堵している
ようにすら見える。
やがて、ぼんやりと虚空の空を眺めるだけだった瞳が、空を背に颯爽と翼を羽ばたかせる鳥を捉えた。鳥は春の来
訪に歓喜するかのように鳴きながら、滑空する。
その鳥が彼女の視界から消え去っても、彼女の瞳にはその鳥が映っているようだ。楽しげに空を飛び回る鳥達を見
て、彼女は過去の情景を思い出していたのだから。
カァ、カァ。
乾いたような震える鳴き声が夕染めの空に響き渡る。その鳴き声はともすれば宵闇の接近を知らせるように、とも
すれば地に足を着けねば生きて行けない人々を小馬鹿にした嘲笑のように響いていた。
人気の無い公園。錆び付いた遊具が無造作に鎮座して、その姿を燃える赤い太陽の光を受けて淡く染めている。
その公園の一角、一辺が三メートルほどしかない正方形の砂場に尻餅を付いて泣いている幼い少女が居た。
少女が肩を震わせてしゃくりあげる度に、頬を伝う透明な雫が砂場に落ちて砂の色を濃くさせた。彼女の姿は、服
には所々に泥が付いていて、手も同様に薄汚れて、その汚れは顔にまで及んでいた。
そんなみすぼらしい格好をした彼女に追い討ちを掛けるように黒い羽の装束にその身を覆った烏の嘲笑が物哀し
い公園の静寂を打ち破る。少女は烏の威嚇行為に幼い容姿に違わぬ恐怖心を身体を震わせる事によって明瞭に表
現した。
しかし、宵闇の接近と獣の威嚇の恐怖心に押し潰されそうになっているにも関わらず彼女はその場から離れようと
しなかった。それどころか、沢山の砂を小さな両手に一生懸命に掬い、灰色の砂地の上に乗せてはポンポンと叩い
て形を整えると言う行為を繰り返し行なっていた。
幼児がよくやるような、自己満足の為の小さな山作り。普通なら友達や家族と複数で行うようなものにも思えるが、
彼女の周りに他人は居ない。虚しくその身を段々と翳らせて行く遊具が鎮座しているだけだ。
けれど、彼女はめげずに砂を掬い続けた。脳裏に浮かぶのは、白い陽光を世界に降ろす太陽が、赤く染まる前の
映像。大きな砂山の完成した姿を見て、喜んでいる二人の少女。
そこにやって来た、意地の悪い醜悪な笑みを称えた男子の三人組。
三人組によって見るも無惨に破壊されて行く大きな砂山。
それがやがて平坦な砂地に姿を戻した時、一人の少女は泣いて走り去った。
友達が帰ってしまっても、彼女は悔しさからか、必死に砂山を作り続ける。宵闇が世界を包み込んで、頼りになる
光が街灯だけとなっても、彼女は手を動かし続けた。時折震える小柄な体、一つ二つと数を増やして行く、砂に滲む
水の跡。酷く寂寥感が漂う小さな公園で、彼女は一人だった。
手からは赤い液体が所々から滲んでいる。砂の中に潜む鋭利な角を持った小石が少女の綺麗な白い指を傷つけ
ていた。痛みはあった。幼心から、いっそ泣いてしまいたい気分だった。それでも此処で妥協してしまったら、何かが
崩れる気がしていた。三人組の男子の姿が脳裏を過ぎる。あのにやにやと笑う顔を思い出す度に手を必死に動かし
た。
だが、小さな体しか持たない少女が一人で大きな砂山を作るなど、まるで途方の無い道を歩いて行くように容易い
事ではなく、額から伝う汗を何度も拭っても完成の兆しは一向に現れない。空が茜色に染まっていた時には近くで鳴
いていた烏の声も、今では幾ら耳を澄まそうと聞こえる事はなかった。あるのは、重苦しく虚しいだけの静寂。それは
幼い少女には過酷なものだった。
涙が止めどなく溢れて来る。
寂しい、辛い、苦しい。そんな負の感情ばかりが彼女の心の中に蔓延していて、遂には静寂が広がる公園の中に
響き渡ってしまうほどの嗚咽が零れ始めた。それは静かな波紋のように、公園の中に少しずつ染み込むように浸透
して行き、無機質な遊具が散りばめられるだけの公園に彩りを加える。少女は自身の涙を砂に溶かしながら山を完
成へと導いて行った。
「つかさ!」
その時、突如公園の中に響く少女の嗚咽以外の声。それは突き刺さるようにして少女の鼓膜を震わせ、そしてまた
彼女の体を震わせた。宵闇に包まれて、頼りない街灯が照らしだす公園の入口に、新たな登場人物はその表情を心
配の一色に染めて、肩で息をしながら立っていた。
「お姉ちゃん……?」
ひっく、と一度しゃくりあげ、少女は公園の入口へと視線を投げる。それを確認して、少女の姉は息を整えながら
ゆっくりと少女の元へと歩み寄った。一歩、歩を進める度に砂利を踏みしめる音が園内に響き、そして訳の分からな
い焦燥を少女に与えた。
「あんた……こんな所まで何やってんのよ!」
少女の目の前まで歩を進めた時、彼女は有らん限りの声で叫んだ。静寂を持て余していた園内は、一瞬にしてそ
の情景を変えたかのように見えた。他に誰も居ない空間。そこに佇む二人の少女。つかさ、そう呼ばれた少女はしど
ろもどろになりながら作りかけの山を見つめた。
「私がどれだけ……!」
言って、姉の少女はつかさの肩を握り締めた。痛みが伝わって来るほどの力が込められた手が、つかさの双肩に
食い込み、思わずつかさは小さく声を漏らした。
「……っ……!」
痛みからなのか、それとも先ほどまで感じていた寂寥からか、はたまた姉が来た事への安心感か、つかさは再び
涙を流す。それでも怒られている、と自分の立場を理解した時には声を出すまい、と喉の奥から込み上げて来る激
情を一生懸命に塞ぎ込んでいた。
一思いに感情を吐き出せない為に暴れ狂う激情は体の震えと言う形で顕著に表れた。足までもが震え、肩が震え
、瞳が揺れる。最早、立っている事さえ辛そうな様子であったが、それでも姉はつかさの肩に置いた手の力を弱めよ
うとはしなかった。
「泣くぐらいなら何で一人でこんな所に居るの! こんな時間に、一人で!」
姉の怒鳴り声は針となってつかさの心に刺さった。
言いたくなかった。虐められて、山を崩されたから一人で作り直していたなどと、幼いなりの誇りと羞恥が入り混
じって、言えなかった。それは、この涙の訳にも直結している。彼女は黙秘を続けた。自分が悪いとは分かってい
ても、黙り続けた。
ただ、瞳から止めどなく流れ出る涙だけは止めようと思っても止められなかった。
「ごめん……なさい」
ただ一言、言えたのはこれが限界だった。それ以上の事は、嗚咽が妨害している所為で言葉にならず、やっと言
えたその言葉も全力で頑張った結果だった。
姉は怒気を露わにしながら更につかさの双肩に力を込める。それは大人にしたら可愛いものなのかもしれないが、
子供には大きな痛みだ。つかさは、それでも何も言わない。言えなかった。
「ごめんで済む問題じゃない! 何か……何かあんたにあったら私は……っ」
そう言って、彼女は顔を伏せた。怒りで抑え込んでいたに過ぎない悲しみの感情はとうとう壁を打ち破り、解放され
てしまった。溜め込んでいた涙が次々にその時を待っていたと言わんばかりに頬を伝う。やがて彼女もつかさと同じ
ように小さく嗚咽を漏らし始めた。
つかさの両肩に置かれた手には、もう力は入っていない。それを示すかのように、姉の体は崩れ、砂場に座り込
み、その場で泣きじゃくり始めた。
「あんたが何時まで経っても帰って来ないから……っ、何かあったのかと思って……!」
彼女が頑張って紡ぎ出した言葉も、涙に濡れていてろくに聞きとる事が出来ない。それでもつかさには、その全て
の想いが伝わったような気がした。自分に対してどれだけの心配をしてくれていたか、自分に何かあったら、姉がど
れだけ悲しむか。その全てが。
「ごめ……なさっ……!」
その内に、つかさも足の力が抜けてへたれ込んだ。姉と向かい合うようにして、その場に座り込み、年相応の幼さ
を表すかのように泣きじゃくり始めた。今は、そんな二人を嘲笑う烏も、つかさを虐める男子たちも居ない。邪魔が無
いから、二人は大声で泣いた。
姉としての威厳なんて、どうでも良くなっていた。自分が妹を安心させてあげなければならないのに、自分の涙は
止まらない。だから、涙に濡れる視界の中で、手を伸ばした。
自分が悪い事をしていたなんて分かり切っている事だった。姉の様子はそれを痛ましいまでに表していたし、自分
でもそれがどうしてか分からない訳じゃなかった。けれど、後で怒られるのだとしても、今だけは甘えたかった。だか
ら、涙に濡れる視界で手を伸ばした。
お互いが居る位置なんて、分かりはしない。だが、感覚に身を任せて伸ばした手の先には確かにお互いが望む温
もりがあって、二人は確かめるように何度か触れては離れを繰り返して、やがて堅くその手を繋いだ。恋人同士がそ
うするように、指を絡め合うと、温もりが増した気がした。
彼女が小学生低学年の時の、悲しい記憶の中に入った淡い想い出。
それは、泣きじゃくる姉妹の姿を映し出した過去の絵画。
気付けば壁に掛けられた時計の針は昼時を指している。姉は起きたのだろうか、そんな事を思いながら彼女はぼ
んやりと眺めていた空に眼を凝らした。
青い空は何も変わらない。経過した時間が少しだったからか、流れる雲の数も、空を行き交う鳥達も、先刻に眺め
ていたように何も変わっていない。そして、彼女の心に未だにへばり付く、霞みがかった気持ちも、変わらない。
頬を支えていた手を離すと、彼女は机に突っ伏した。明日に控える新しいスタートラインが頭の中を掠める度に、ど
うしようか、と机の上に転がる消しゴムを手で弄ぶ。中途半端な気持ちのままで明日を迎えても、彼女は素直に明日
と言う日を喜べないだろう。
コロコロ、と消しゴムが机の上を転がる。ぼーっとその光景を眺める彼女の表情は相変わらずぼんやりとしたまま
で、無意識の内に転がって行く消しゴムの行方を目で追っていた。それは、机の端から落ちる前に、一つの短い木
の棒に当たって静止した。
「あ……」
何かを思い出したように、彼女は小さく声を上げる。その眼の先には、やはり一つの木の棒。否、よく見ればそれは
限界と言うに相応しいほどに使い込まれた鉛筆だった。
最早、使いようが無いくらいに削られて、所々が剥げている鉛筆には、現役の時の名残か、ピンク色の塗装が少し
だけ残っていて、彼女が使っていたとなると、その女の子らしさを誇張していた。尖っているべき先端は丸まった黒鉛
しかなく、やはり使う事は出来そうにない。
「……」
彼女はそれを手に取り、眼の前に近付けた。
より鮮明になるその鉛筆の姿は傷だらけで、使用者の苦労を窺わせるようだ。
彼女は自分が求めている答えが過去にあるような気がして、そっと目を伏せる。
忘れかけていた記憶の回廊を辿る為に、彼女は自らの身を静かの海へと投じた。
勉強に対しての意識が希薄になっていた時の事だった。テストを前日に控えるまで勉強と言える行為は全くと
言って良いほどせず、それよりもテレビを見たりするのが楽しみだった。
テストの結果が出る度に父親に叱られたが、"次は頑張る"を毎回の言い訳にして結局何時も同じような結果を
辿っていた。誰にも訪れる反抗期だと、誰もが思っていたが、その実、彼女は幼いなりに抱えていた劣等感の所為
だと悩んでいた。
何をするにも片割れの姉と比べられる。自分には要領よく物事をこなす事など出来はしなかったから、何もしな
かった。どうせ比べられて自分が小さく見えるのならば、最初から何もしないで悪い結果を取るべくして取った方が
余程マシだった。
だが、そんな心の内を知らなかった父親は、彼女が何時もと同じように悪い結果を取って来た時に心を鬼にして
叱咤した。何時もとは違う父親の反応がとても酷い事をされている、と彼女に思わせた。柔和な微笑みを絶やさな
い父親の怒っている様が、とても怖く見えた。
怒られている最中は何も言わなかった。頼りにしている姉は既に自室へと引き下がっていた。それが、酷く孤独に
思えた。悪い事をしたのは自分、けれど自分が抱える悩みを知らずに色々と言ってくる父親が憎らしくさえ思えた。
『かがみはあんなに勉強しているだろう?』
父親がそう言った時、彼女は眼に涙を一杯に溜めて、泣くのを堪えた。
また、"かがみは"。どうして自分はこんなに姉に劣るのだろう。どうして周りの人達は自分を見てくれないのだろう。
そんな想いが交錯して、胸が苦しくなった。何も知らない癖に、そう叫びたかったが、彼女はそれを自制心で抑え込
んだ。全部自分が悪い。頑張ろうとしない自分が悪くて、良い結果を取る為に頑張っている姉が悪い訳が無いと、込
み上げる激情を塞ぎ込んだ。
その日の夜、彼女は咽び泣いた。声を押し殺して、誰にも聞こえないようにした。こんな事で泣いていたら、また姉
と比べられると思っていた。そんな事はあるはずがないのに幼心故の思いこみが彼女を支配していた。誰とも話した
くない。特に、姉とは。
だから、声を押し殺して咽び泣いた。
「つかさ……?」
それなのに、一番来て欲しくなかった人物は容易く彼女の部屋の扉を開いてしまった。部屋の利口に現れた姉の
姿を見て、彼女は泣き腫らした目を少しだけ持ち上げた。そこには、申し訳なさそうに顔を顰める姉。それだけで、
その場から逃げ出したい衝動に駆られた。
「その、大丈夫かな……って」
今の彼女に姉の心配した言葉などは慰めにもなりはしない。上の立場にいる者の、皮肉にしか聞こえなかった。
追い出したい。
けれど唇が震えて言葉は紡がれない。
逃げだしたい。
けれど足は脳の制御下から抜け出してしまったかのように動かない。
「……」
姉は、静かに彼女に近づいた。しゃくりあげるばかりで何も言わない彼女は黙ってその様子を見詰めていた。同情
を向けられようものならば、即座に突き放して一人で咽び泣くつもりだった。今は、姉の行動に何か物を言う気にはな
れなかった。
「……!」
姉は何も言わずに彼女を抱き締めた。ただ無言で、彼女を両腕で包み込んだ。
暖かい温もりが体全体を通して彼女に伝わり、流れ出ていた涙も止まる。驚愕に眼を見開く彼女の視界に映るの
は、姉の髪の毛と、その向こうにある白い壁。何を考えていたかなど、頭の何処かに吹き飛んでしまったかのように
忘れていた。
姉に対する劣等感も影を潜め、彼女に与えられていたのはとても暖かな温もり。安心感だった。母親に抱かれて
いると錯覚してしまうくらいに優しげな抱擁を、彼女は何も言わずに黙って受け入れていた。
「辛かったら、私に言って良いから」
そうして、腕に力を込める姉の声はただただ優しかった。荒んでいた彼女の心を微温湯で温めてくれるような、そん
な姉の行動は彼女にとって予想外のものはあったが、それでも悪い方向に向かうものではなかった。
「うん……」
しかし、その優しさに甘えて泣くような真似を彼女はしなかった。それは姉に対して抱いていた劣等感への、些細な
反抗だったのかも知れない。
その様子の彼女を見て、姉は緩慢な動作で体を離す。体に残る温もりと、鼻孔を擽る姉の甘い香りが離れていく事
に少しだけ寂しさを感じていても、彼女はそれを広言しなかった。
「つかさ、これ、あげる」
体を離して、暫くの時が経過するまで彼女達は無言のままだった。だが、そこに流れる沈黙に気まずさと言う重苦
しいものは存在しない。むしろ全てが解決したかのような爽やかな沈黙だった。その中で、姉は彼女に手を差し出し
た。握り拳のままで、中に何があるのかは彼女には分からなかったが、姉の眼を不思議そうに見つめると、姉は優し
げな光を瞳に称えて、手を開いた。
「これ……?」
その中にあったのは、誰もが持っているような何の変哲もない一本の鉛筆だった。桃色で統一された、女の子が持
つに相応しいような可愛らしい印象を与える鉛筆を、姉は恥ずかしそうに頬を掻きながら彼女に手渡す。彼女は、自
分の手の中へと渡った鉛筆をもう一度まじまじと眺めた。
「つかさが頑張れるように、私からのプレゼント」
姉はそう言って、また恥ずかしそうに髪の毛を弄る。
「……ありがとう」
彼女は、先刻のような表情を捨てて、満面の笑みでそれに応える。
顔を見合せて微笑む二人、そこにあるのは劣等感と言う重さを持った感情ではなく、美しいまでの姉妹愛を感じさ
せる光景だけだ。
上二人の姉達が、扉の隙間から顔を見合せて安心したように溜息を吐き、そんな場を邪魔してはいけないと、そそ
くさとその場を退場した事に、二人は気付かない。
彼女が小学校高学年の時の、劣等と言う複雑な感情の中に生まれた、ほろ苦い想い出。
それは、彼女が劣等感を少しの間だけ忘れられた、刹那の追憶。
これのお陰であの後は頑張れたんだっけ、彼女は手の中に転がる使い古された鉛筆を見て、感慨深く溜息を洩ら
した。当時の面影は微塵も残っていないが、それでもこの鉛筆がとうとう使えなくなった時の事は今でも印象深く覚
えていた。
辛抱強く鉛筆削りの中に差し込んで、だがそれを回せるほどの長さを持ってなかった鉛筆はそれ以上は尖った黒
鉛を見せてくれる事はなかった。何故だか、無性に悲しくなった。今までずっと使い続けていたから、愛着が湧いてい
たのかもしれないし、姉から貰った折角の贈り物が使えなくなったのが素直に悲しかったのかもしれない。
けれど、それと同時に心に湧き上がった達成感は忘れようにも忘れられないものだった。姉は、良く頑張った、と頭
を撫でてくれたし、家族みんなが物を大事に出来る子、と褒めてくれた。だから、その鉛筆が無くても頑張って行けた
のだ。
「……はあ」
昔の事は覚えていて、それを思い出すと良い気分になれるのに、何故だか今はとても虚しかった。空を仰げば空っ
ぽの空に大気が風を吹かせてそよいでいる。木々のざわめきが遠くから集まって来て、自分はその中心にいるのだ
と思うと、やはり虚しく思うのだ。
理由は、分かっていた。
幼い頃にも抱いていた劣等感が今になって浮き彫りになっているのだ。あの頃はそれを乗り越えられたから、大丈
夫だった。今だって、姉と同じ高校の入学式を控えているし、抱えている心配事は杞憂だと思っているのに、つくづく
彼女は心配だった。
新しい生活は目前に迫っている。明日の今頃には自分は入学式を終えて、姉と何処かを歩いているのだろう。しか
し、それを素直に喜んでいる自分は果してそこにいるのだろうか。もしかしたら、この気持ちを引き摺って嫌な顔をし
て姉と並んでいないだろうか。
不安は止めどなく溢れ出て、明日と言う日を憂鬱に感じさせる。姉は何もしていないのに、勝手に劣等感を抱いて、
嫌な気持ちにさせてしまうかもしれない事に罪悪感を感じ、振りきれない気持ちを未だに引き摺っている自分に対して
抱いている嫌悪感。その全てが嫌だった。
「つかさー」
再三、彼女が溜息を吐こうとした時、扉の向こうから聞こえたのは姉の声だった。気付いて時計を見てみれば、も
う午後三時。自分がどれほどの間感傷に浸っていたのかと思うと、可笑しくなって、彼女は静かに失笑した。
「なにー? 入って良いよ」
努めて彼女は明るく振舞った。一大イベントの前日に姉に心配を掛ける訳にはいかなかったのだ。幼い頃に何度も
掛けた事に対する意識からか、彼女は心配を誰にも掛けないような人間を目指していた。立派な目標かもしれない
が、彼女にとって、それは背伸びをする事のように思えた。
「ん、ちょっと散歩に行かない?」
扉を開けて入ったと同時に姉はそう言った。
いきなりの事で少し動揺はしたものの、彼女は良いよ、と言って椅子から立ち上がる。持っていた鉛筆が机に転
がって、コト、と寂しげな音を立てた。
「ここに来るのも久し振りな気がするわねー」
この季節を象徴するかのように立ち並ぶ桜の木が、何処までも続いているかのような錯覚を呼び起こすような並木
道に、彼女達は肩を並べてゆったりと歩いていた。香しい花の香りを柔らかな風が運んで来ては、二人の鼻孔を
擽ってこそばゆい感覚を与える。
姉は感慨深げに桜を見上げると、そう言った。
「そうだね。最後に二人で見たのって、去年の今頃だっけ」
「そうね。つかさがとうとう受験の時期がーって言って慌ててたわよね」
「ええっ!? そうだったかな……」
彼女はそんな事はとっくのとうに忘却の彼方に吹き飛ばしてしまっていたようで、驚いたように声を上げた。姉はそ
んな妹を見て、ふっと微笑む。それは何処か郷愁に満ちた表情だった。恥ずかしそうに考え込んでいた彼女も、そん
な姉を見て同じ表情になる。
「そう言えば、約束した時もここだったね」
桜並木が続く道の途中、二つの桜に挟まれた脇道にひっそりと身を潜める一つの腰掛けがあった。何時から此処
にあったのか、木で造られたその姿は明らかに老朽化が進んでいて、所々が黒ずんでいたり、欠け落ちたりして
いた。けれど、その上に降りかかる桜の花弁が今の季節を強調するように腰掛けに在り、何処か風情を持たせた光
景だった。
「つかさは、頑張ったよ」
姉は自身の掌を目の前に持って行ってから呟いた。
彼女も習って、姉と同じように自身の手を目の前に持って行く。
二人は指切りげんまんをする時のように手の形を変えると、二人で顔を見合わせた。
さっと風が吹き、二人を同じ想い出の世界へと誘った。懐かしい、過去の世界へと。
「とうとう受験の時期が来ちゃったよー!」
その日は中学三年生への始業式を済ました後の事だ。
二人は式が終わった後、何時ものように並んで歩きながら、何時もとは違う帰路に着いていた。
季節は春、風情のある風景を見に行こう、と姉が提案して彼女がそれに付いて行った。
最上級生へと進級した彼女は浮かれていたが、最上級生になった事がどういう事なのかを姉から聞かされた時、
彼女は大袈裟に驚いたのだった。
「あのね、まだ受検自体は後の事なんだし、そんなに悩む事じゃないでしょ」
「でもそう言う安直な考えがいけないって先生が言ってたよ」
「まあ、そうだけど……私が言いたいのは、落ち着けって事」
「だってお姉ちゃんはレベル高い所に行くんでしょ?」
「まあ、私の実力に見合った所かしらね。行く候補としては」
「そんなの私には無理だよー!」
姉から通告された残酷な返事に、彼女は頭を抱えた。
姉と一緒の所に行きたい彼女にとって当然の事であったが、悲しかな、彼女の学力は姉には遠く及ばないのが現
実だった。彼女なりの努力で頑張ってはいたものの、姉も努力を惜しまなかったので距離はこれと言って縮まらな
かったのだ。
姉と同じ位置に追い付いても、その時には姉は更にその先に行き、彼女はそれを再び追いかける。学力に置いて、二人はいたちごっこをしているようだった。
「何も私と同じ高校じゃなくても良いんじゃないの?」
彼女のあまりの慌て振りに、呆れたように姉は言った。だが、それは彼女にとっては言語道断と言う四字熟語が
当てはまってしまうほどに有り得ない事で、心外とばかりに反論した。
「お姉ちゃんと一緒が良いの!」
はあ、と姉は嘆息する。
この妹が姉離れをする時が来たらそれはそれで寂しい事のような気がしなくもないが、この様子を見ていると姉離
れが出来るようになるのは当分先の未来の事になりそうだ。
一人で唸っている妹を尻目に、姉は風に靡く髪を抑えながら桜を見上げた。桜色の花弁が中空を縦横無尽に飛び
交っている。行先など、風の気紛れで幾らでも変わってしまう。見当も付かない花弁の行先に、柄にもなく感傷に
浸っていた姉は未だにうんうんと唸る妹に向き直った。
「つかさ、ちょっとこっち来て」
手招きをして、姉は傍にあったベンチに腰掛けた。真新しいものだろうか、綺麗に塗装が施されているそれは姉が
体重を掛けても軋む素振りさえ見せなかった。
彼女は、頭を抱えるのを止めて、こちらに向かって手招きをしている姉に不思議そうな視線を向ける。桜に挟まれ
て、更に舞い散る花弁を背に手招きをする姉の姿は何だか幻想的で、妖美な美しさを放っているように見えた。
「どうしたの?」
彼女は姉の美しさに多少気圧されながらも、近付いた。姉は黙ってベンチの隣に座るように彼女を促し、体を移動
させる。そうして出来上がったスペースに、腰を落ち着けた。
「ん、」
姉は言葉少なく小指を突き出して来た。何を意図しているのかは何となく彼女にも分かったが、それでも何で今や
るのだろう、と不思議にもなった。暫く姉の細く長い小指を凝視していると、焦らされていると思ったのか、姉は再度
「ん」と言って小指を差し出した。
え、と戸惑った様子の彼女。姉はこれでもか、と言うほどに小指を彼女の前に突き出して、顔を顰めて見せた。漸
く事を理解したのか、彼女もおずおずと小指を差し出した。
「はい。指切りげんまん。つかさと私が一緒の高校に行けるように、ってね」
絡まる小指同士が上下に振られ、姉はそう言った。彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、ありがとう、と小さ
く呟いてそれに合わせた。幼い迷信のようなものであったが、焦燥に駆られる彼女にとってそれは心に平穏を導くお
まじない。だから、喜んで受け入れた。
「ゆーびきーりげんまん、ウソついたら針千本のーます」
二人の声が重なり合い、木々の梢が擦れる音の中に入り混じる。穏やかな時の中に入り込んだそのまじないの歌
は小指を通して二人に伝わり合い、姉にも彼女にも安心感を与えた。
「ゆーび切った」
そして、同時に離される二人の小指。
その後、二人は顔を見合せて、同時に吹き出した。
受験と言う中学生最後の難関を控えていた不安などは何処かに行ってしまった。
彼女が中学三年生になったばかりの、姉と過ごした仲睦まじい想い出。
桜の花弁が巻き起こす幻想的な風景が、まじないを叶えてくれたと思えた、約束の日。
――ああ、そうだ。
彼女は姉と顔を見合せたまま、本当の事に気付いた。
嫉妬なんて関係なかった。姉に対する劣等感だとか、そう言う事がどうでも良くなった。
此処で交わした約束は果たしているではないか。過去に抱いていた劣等感は姉と一緒に発散して来たではないか。
姉はあんなにも自分の事を心配してくれていたではないか。
途端に、その事で姉に対して嫌な感情を抱いていた自分が馬鹿らしくなって、彼女は自嘲気味に微笑んだ。何も
心配する事はなかった。新しい生活が始まる上で、何も危惧すべき事は無かった。一緒の高校に入って、悩みも喜
びも全て姉と共有出来る、それが全てだ。
「なに笑ってんの」
一人微笑んでいた彼女を見て、姉は怪訝な視線を向けた。
「私、頑張ったかな」
彼女はベンチの両脇に生える桜の木を見上げ、そう呟いた。その問いに含まれる意図が、姉にはすぐに理解出来
た。だから、それに対する返答は最初から決まっていた。
彼女は頑張ったのだ。足りなかった学力を努力で補い、見事に姉と同じ高校に受かる事に成功した。最初は誰も
が安全圏に行きなさい、と抗議の声を上げたが、それでも彼女はそれを頑なに拒絶して、目標の高校へといよいよ
通う事になる。それは誇るべき努力の結果だ。
「もちろん」
姉は静かにそう答えた。
彼女は、黙って小指を姉に差し出した。
老朽化が酷いベンチの上に、少しだけ前の二人が映っているかのように見えた。一緒の高校に行こう、と指切りを
交わし、まじないの歌を口をそろえて唄う二人の姉妹の姿が、鮮明に映し出されているかのようだったのだ。
それは新しい約束を小指で繋げている二人に向けて、幻想的な風景を醸し出している桜の花弁が見せてくれた過
去の幻なのかもしれない。
指切りげんまん 貴女と二人、交わした約束
指切りげんまん 私は永久に忘れない
指切りげんまん 針千本なんて怖くない
指切りげんまん この指が離れる時に
寂しいなんて、思わない
――end.
534 :
双子の兄:2008/02/24(日) 14:59:19 ID:8EnbC/xA
どうも、これで終了です。
ゲームSSじゃなくてすいません。
冒頭と最後の詩には深い(自分は深いと信じてる!)意味を込めたつもりです。
それでは、読んで下さった方々に感謝して、失礼します。
>>520 GJですー
そうかそういうことか…
こなたの本音には誰かが気付いてくれるんだろうか…
助けてみゆきさーん!!
>>534にGJね。私とつかさの愛をキレイな文章にしてくれて感謝してるわ。
つ、つまり、God Jobよ///
>>520 「こんどこそ、泉さんをモノにできる千載一遇のチャンスですねだばだば」
>>534 「ゲームSSじゃなくてすまん」だって?デモソンナノカンケーネー
たんにゲームSSが解禁になっただけですぞ兄弟。
むしろ通常モノは3割増しで受付中ですぞ兄弟。
そなたの書く柊ジェミニは、いつも切っても切れない絆がみえますな。
遅くなったけど解禁きたああああああ
これからはこう×やまとのターン!
…あ、俺は読み専です、スンマセンorz
>>534 柊姉妹好きな自分としては超GJ!
自分もあれの続き書かなきゃな……一週間前からとまってる……
こなた×かがみの非エロ投下します。
前略オフクロ様。
今日も私、泉こなたは学友達とともに楽しく健やかな学生生活を送っております。
ですが――
あまりの寒さに今にもそちらへ逝ってしまいそうです……
「こなたーっ! 校門の前で力尽きるなーっ!」
学校の敷地まであと数歩のところで崩れ落ちるように倒れたこなたを、かがみが必死で起こそうとする。
雪が降っている。吹雪いているわけではない。ただひたすら空から地面へ、淡々と降り続けている。
当たり前だが寒い。外に出るだけで肌が痛いほど寒い。この冬一番の冷え込みだ。
「か、かがみぃ……もう私のことは放っておいて、あなた達だけでも……」
「馬鹿なこと言ってんじゃないわよ。ほらっ」
ダンゴ虫のようにうずくまろうとするこなたの腕を引っ張り、かがみは校門へ歩き出す。少し離れたところではつかさとみゆきが待っている。
「みゆきさぁ〜ん、この寒さならバナナで釘打てる〜……?」
「さあ、それはどうでしょう……」
「誰かバナナぷり〜ず……」
寒さのあまりこなたがおかしくなってきた。かがみはほとんど引きずるようにしてこなたを連れ、昇降口まで歩いていく。周りを歩いている他の生徒達も、一様に寒そうだ。
「さびぃ〜……もうダメだぁ〜……」
ガチガチと震えるこなた。かがみにもその気持ちは分かる。口の中では歯と歯が小刻みな音を立てていた。
「みゆきさん、眠るときはせめてその胸の中で……」
「え、ええっ!?」
昇降口に入ったところで、こなたはみゆきにもたれかかる。豊かな胸に顔をうずめるように。
「コラこなた! セクハラする元気あるなら歩けるでしょうが!!」
「あ〜、生き返る〜」
みゆきが戸惑っているのをいいことに、心地よい感触にひたっているこなた。かがみがそれを無理矢理引きはがす。
「教室行けば暖房入っているんだから、そこまで頑張れ」
「うわああん! 殺生なー!」
至高のぬくもりを奪われたこなたは、未練がましい叫びを上げる。かがみはうんざりしてため息をついた。
「確かに寒いけど、実際死ぬほどじゃないでしょ。北海道とかもっと凄いわよ」
「そんなことないもん。本州でも毎年ホームレスの人が何人か凍死したりしてるもん」
「そういう真面目に社会的な問題はいいから」
「でもこなちゃんの気持ちも分かるなー。今日寒くってなかなかお布団から出られなかったし」
「いつものことでしょそれは」
「あぅ……」
顔を赤くして俯くつかさ。身を切るような寒さの今日も、かがみの突っ込みの切れ味は相変わらずだった。
「しかしまあ、本当に寒いわね。そういえばゆたかちゃん大丈夫? 体弱いし、風邪引いたりしてない?」
「うむ。その点のケアはばっちりだよ」
「田村さん、おはよー」
「おはよう……」
雪の降る中、ゆたかとみなみが傘を差しての登校中。学校近くでひよりの姿を見かけ、声をかけた。
「おは――」
振り向いたひよりは挨拶を返そうとして、目の前の物体にあんぐり口を開けた。
「小早川さん……その格好は……?」
学校指定のコートに、マフラー・手袋・帽子。それだけ聞けば普通のようだが、問題はそのシルエットだ。中に何枚着込んでいるのか、肥えたハムスターのようにモコモコと丸い。転がりそうなほど丸い。
「な、何かね、今日は凄く寒いからっておじさんとお姉ちゃんが……」
「はぁ……」
(心配なのは分かるけど、父子揃って何て極端な……)
泉家の父そうじろうは娘を溺愛しているが、その血は確実にこなたへ受け継がれているようだ。
「でも小早川さん。着込みすぎると下で汗かいて、かえって良くないかもしれないよ。教室は暖房効いてるし」
「そうかな?」
「とりあえず学校ついたら少し減らした方がいいんじゃない。そのままだと動きにくいでしょ?」
「うーん……」
ゆたかは悩ましげに眉をハの字にしている。そうじろうやこなたの厚意を無下にするようで、気が引けるのだろうか。
「泉先輩も一日中その格好でいろとは言ってなかったでしょ? 暑く感じたら脱がないと。ねえ岩崎さん」
同意を得ようとみなみに話を振る。が、
「え……う、うん。そうかも……」
どうにも歯切れの悪い返答。その後、小声でボソリと、
「……出来るだけ、寒くない方がいいと思うけど……」
心配そうな目でゆたかを見ながら呟いた。
(あなたも過保護ですかい!)
ひよりは心の中で突っ込みを入れる。気持ちは分かるが、過ぎたるはボンバザルが如しだ。
「まあともかく、暑かったら着てるもの減らしなよ。かえって風邪引くことになるから」
「うん。分かった。ありがとう田村さん」
にっこり微笑んでお礼を言うゆたか。その横に立つみなみの目線が、ひよりに向けて心なしか刺々しい。
(き、気のせいだよね……気のせいだよね!? だって私間違ってないでしょ!? 岩崎さんが小早川さん大事にするのは分かるけどー!)
もちろん、みなみはこんなことで怒るほど心が狭くはないので、ひよりの気のせいなのだが。
(ああ〜そんな汚らわしいものを見るような目で見ないでぇ〜っ!)
ひよりんMフィルター増殖中。
M=妄想であって他の意味ではない。……と思う。
朝の三年C組教室。雪のため遅れている生徒が多いのか、人の数はまばらだ。
「おーっす柊。今日はさみーなぁ」
「おはよう柊ちゃん」
かがみの友人二人はちゃんといた。みさおの方はともかく、あやのがいる限りこの二人が遅刻というのは滅多にない。
「おはよ。こんだけ寒い日は久しぶりね」
「だよなぁ。今朝はもう布団から出るの億劫でしょうがなかったぜ」
「それはいつもじゃないのか」
数分前つかさにしたのと同じような突っ込みをするかがみ。どこに行っても役柄は変わらない。
「にしても教室の中まで寒いよなぁ……」
「まだ暖房つけたばっかりだからじゃないの?」
「そっか……うー、さびぃ。あやの、あっためてくれー」
身を縮こめていたみさおは、あやのに抱きつくように身をすり寄せる。
「あー、あったけー」
「もう。みさちゃんたらしょうがないわね」
あやのはそんなみさおを拒むことなく、苦笑しながらよしよしと頭など撫でている。姉妹というか母子みたいだ。かがみは何やら複雑な表情で、そんな二人を見ていた。
「ん? どうした柊? お前もあったまりたいのか?」
「違うわよ。ただね、どこにでも似たようなことするやつはいるもんだなーって」
「それはつまり……柊も今朝誰かにくっついてあったまってたってことだな!」
「違うわっ!」
「じゃあくっつかれたのか」
「それも違う。似たようなことしてたのがいたってだけよ」
「ふーん。それってB組のちびっ子か?」
「よく分かったわね」
「まーな」
ただの勘だろうが、みさおは少し自慢げに胸を張る。あやのにくっついたままでは様になっていないが。
「で、ちびっ子は誰にくっついてたんだ?」
「みゆきよ。大人しいのを良いことに、セクハラまがいのことするんだから、まったく……」
怒ったような口調のかがみ。その様子を見ていたみさおは一言、
「柊にくっついてきてほしかったのか?」
「なっ……!」
たちまちかがみの顔が真っ赤になる。
「そんなわけないでしょ! そんなことされてもうっとうしいだけよ! だいいち――」
マシンガンのような勢いで否定しまくるかがみ。みさおは冗談で言ったのだが、ここまで激しいリアクションだと図星だったのかと邪推してしまう。
「悪かったよ柊。そう怒んなって」
「お、怒ってなんかないわよ。ただあんたが馬鹿なこと言うから――」
「話は聞かせてもらったぞ! 人類は滅亡する!」
いきなりC組教室の戸を開けてこなた参上。
「うわっ!? な、何しに来たのよこなた」
「かがみが私にくっつかれたがっているという電波を受信して来ました!」
「誰もそんな電波発信してないから教室帰れ!」
「まあまあ遠慮せず」
「してないから遠慮なんか!」
隙あらば飛びかかろうとにじり寄るこなた。逃れようと身構えるかがみ。
「いざ尋常に――」
「こら泉ぃ!」
今まさにこなたが飛びかかろうとした瞬間、黒井先生の怒声が飛んだ。
「騒がしい思て見に来たら隣のクラスで何しとんねん。もうホームルーム始まるで」
「ああああああ〜……」
猫の子のように襟首を掴まれ、こなたは教室の外へ引っ張られていった。
「やれやれ……間一髪か」
こなたの姿が廊下へ消え、かがみはホッと息をつく。あやのはそんなかがみの表情を見ながら、ふと尋ねる。
「柊ちゃん、ちょっと残念だった?」
「んなっ……峰岸まで何言い出すのよ!?」
「何となくそう見えたから」
「ば、馬鹿言わないでよホントに……」
小さな声でそう言い返すと、かがみはそっぽを向いて口をつぐむ。
窓の外では、相変わらずの雪模様の中、雲の切れ目から微かに暖かな日が差していた。
おわり
読んで下さった方、ありがとうございました。
これは面白い、素直じゃない(?)かがみとなんだかんだで似てるこなたとみさおに和んだ。
GJ!!
軽いセクハラとかゆたかに過保護な3人に和んだり
Mに目覚めたひよりにニヤニヤしたり
ここぞとばかりにネタに大笑いしたり
密度の濃いSSでした。GJ
>>545 嗚呼、3カプ3様可愛いったらない。
帰宅早々に、ぽかぽか温まらせていただきました。ぐっじょぶ!
あと。
>過ぎたるはボンバザルが如し
盛大に噴きました。元ネタ遊んだことはないのですが(自爆
作中でかがみが言ってた『北海道のが寒い』は、道民の俺にとって全力で同意せざるを得ない
修行が足りんぞオマエラ!
え、見所が違う?
>>520 おおう、なにやら再婚には裏事情がありそうだ・・・
続き期待 !
>>544 面白いw
こういう一般向けでも面白い作品がたくさん読めるから、このスレ大好きだ
ボンバザルが何だか思い出せなくて後でググったのは俺だけではないはずw
えーと、それとは関係ないんですが
これからエロ投下します。
・つかさ×かがみ
・多分7レス
つかさは冷蔵庫から小さめのバットを取り出すと、その中に入っている四角いお菓子を
十字に切って四等分し、用意してあった四枚の皿に盛り付けた。
エスプレッソが染み込んだスポンジ生地とホイップクリームが交互に重なって層を成して
いる。茶色と白が交互に重なったこのお菓子も完成は間近だった。
イタリア発祥のティラミスというお菓子である。作り手によっていくらでもアレンジの
しようのあるメニューであり、つかさは更にプロのパティシエよろしくホイップクリーム
で上面を飾り付けた。ティラミスもケーキの一種なのであり得ないことではないが、珍しい
アレンジではある。
この上にココアパウダーを振り掛けることでティラミスは完成する。上部がココア色で
あるということは、いくらアレンジしても譲れないようだ。
「よくできるものね」
三時のおやつを待ちわびていたいのりとまつりは感心したように呟く。
「練習すればできるよ」
「ま、私は練習しないけどね」
二人は飾り付けが終わったそばから満面の笑みでお皿を自分の前に引き寄せるが、かがみ
だけは仏頂面だった。
「お姉ちゃん、できたよ」
「わかってるわよ……」
フォークを手に持ったかがみは素っ気無く答えた。そちらを一先ず置いといて、姉二人は
ティラミスを一口大に切り分けて口に運んだ。
「うん、美味しいよこれ」
「ありがとう、いのりお姉ちゃん」
「ティラミスなんてつかさが作ったもの以外食べることないわよね。昔やたらとブームに
なったことがあったけど」
「そうなの、お姉ちゃん?」
「私が小さい頃だったかしら……?」
「ジェネレーションギャップだね」
「まつり、余計なこと言わないの」
三人の姉妹の和やかさなど他人事と言わんばかりに、かがみは表情を変えないでいる。
「……かがみ、せっかくつかさが作ったんだから食べなよ」
「ダイエット中?」
「違うわよ」
本当は図星だった。だが、現在かがみがこんなふうになっている原因はそれだけではない。
姉たちとしては気にかけてやったのにそんな顔で対応されては気分も良くないわけだが、
ここで喧嘩するのはそれこそ作ってくれたつかさに申し訳ない。
「何があったか知らないけど、食べなきゃつかさに失礼だよ」
そっちこそいただきますと言ってないじゃないか、と言い返してやりたかったが、そんな
気力もなかったので、黙って――こちらもいただきますと言わずに――フォークで一口分を
切り取った。
飾りに使ってかなり多量になったクリームとバランスをとるためか、生地は普段よりわずか
に厚めで、濃い目にエスプレッソが染み込んでいた。甘いクリームの中に、ほんのりビターな
味わいがアクセントになっている。
「で、何があったの? オトコ? 好きな子とケンカした? それとも他に好きな子がいて
泥沼の三角関係?」
やたらとそっち方面に持っていきたがるのは、そのケンカの相手を思い出させて、かがみは
ますます顔をしかめる。
「うーん、大体そんな感じかなぁ」
「つ、つかさ!?」
つかさが事情を知っているのは確かだが、そのまま肯定するには表現に語弊がありすぎる。
「へえ、かがみがついにねぇ」
「違うわよ、友達! 友達と! つかさも変なこと言わない!」
「友達? 特別な関係? こないだのメールの子?」
水を得た魚のように元気になったまつりの追及をかわしながら、さっさとティラミスを
食べ終えた。
なんとなく気疲れしたかがみは、自分の部屋に帰るなりベッドに寝転がった。先ほど摂取
したカロリーを消費しようという気にはなれない。何もする気になれない。
昨日の出来事がまだ尾を引いていた。全身が底なし沼に沈んでしまったような、暗くて重い
気持ち。どうもがいてもそこから抜け出せない。
つかさが作ってくれたものを始終不機嫌な顔をして食べたのは悪いと思っている。お菓子を
食べるときはいつもそうしているように笑顔でいるべきなのだ。
だが、今は笑おうという気になれない。問題が解決しない限り笑顔になってはならないと
決めたのだ。
難儀な性格だとは自分でもわかっている。本来、自分の状況に拘らず楽しい時は楽しむべき
なのだ。それなのにあからさまに不機嫌であることをアピールして、いざ心配してもらったら
助けを求めもしない。まるで子供だ。
それだけではない、つかさはきちんと気を遣ってくれている。あのお菓子を作るには最終
段階の直前の工程として数時間は冷蔵庫で保存しなければならない。時間を逆算すれば朝の
早いうちから作り始めなければならず、今日出かけた様子もないから、材料は昨日の時点で
買ってきていたはずである。
せっかくの休日を、つかさはそのために費やしてくれたのだ。しかもそのことを、問題が
発生した昨日のうちに決めていた。
つかさはただご機嫌をとるためにそれを作ってくれたわけではない。つかさから教わった
ことがあった。ティラ・ミ・スをイタリア語で直訳すると、『私を引き上げて』。意訳すると、
『私を元気付けて』ということになる。
そして、つかさがこれを作ることにはもう一つの意味がある。
「お姉ちゃん」
十数分か、数十分か経った後、ノックと共につかさの声が聞こえてきた。
「入っていいわよ」
それに応えてつかさが入ってきた。その手にはクリームの入ったボウルとそのクリームを
飾りつけるための絞り袋を持っていた。
「クリームが余っちゃったんだ」
「余らせたんでしょ」
そもそもティラミス四人分程度で使い切れる量ではなかった。
「たまにはいいでしょ」
「あのね、今はそんな気分じゃないのよ」
言葉とは裏腹に、これから起こることへの期待が少しだけあって。
「そんなこと言って、いつこなちゃんたちと仲直りできるの? それまでずっとそのままで
いることになるんだよね?」
「それとこれとは別の話じゃない……」
口では反抗してみせるものの、ベッドから全く起き上がろうとしないでいた。
「お姉ちゃんとこなちゃんたちがケンカしてるのって、私やだな。私はみんな好きだもん」
「私だって……」
好き、と言えなかった。素直にそれが言えなかったことがケンカの原因だというのに、まだ
直すことができない。
「私も協力するから、だからね」
つかさはボウルの中のクリームを指ですくいとって口に含んだ。かがみが抵抗したければ
簡単にできるほど、ゆっくりと顔を寄せていく。
「だからって、んっ……」
かがみが落ち込んだとき、つかさはよくティラミスを作ってくれた。
つかさがティラミスを作ることにはもう一つの意味がある。それは二人だけの秘め事。
かがみはつかさに全く抵抗せず、つかさの口付けを受け入れた。
つかさと舌を絡めあうと、クリームの甘さが口の中に広がった。甘味が好きだから、その
舌から逃れようとは思わない。意志が弱いから、甘いものには逆らえない。
それは言い訳でしかないと、自分でもわかっている。いくらそれが好きだからといっても
自分の唇を相手に委ねていい理由にはならない。結局、つかさのされるがままになっている
のは、別の理由があるのだ。
つまり、自分自身もこの行為を求めているということだ。
つかさもそれをわかっているから、いちいちかがみに伺いをたてたりしない。黙って指で
クリームをもう一口とり、口に含むと再びキスをした。
「おねぇちゃん、おいしぃ?」
「お、おいひいわよ」
唇を押し付けあいながら、くぐもった声でのやりとり。クリームは行儀よく口の中だけで
収まってくれるはずがなく、二人の唇とその周りはクリームにまみれていた。
「おねえちゃんも、おいしいよ」
かがみの口の周りの残ったクリームを懸命に舐めとるつかさ。その様子は、なんとなく
飼い主にじゃれつく子犬を連想させた。
その流れのままに、かがみもつかさのクリームを舐めとった。こちらは動作に躊躇いを
存分に含みながらもゆっくりと確実に舐めとった。
「また太る……」
視線をつかさから逸らして、口を尖らせて。
「つかさも意地が悪いわよ。私が体重気にしてるの知ってるくせに」
「でも食べてくれたよね」
「うっ……」
事実を突きつけられると、返す言葉が無い。
「お姉ちゃんは意地を張っててもちゃんと優しいから……こなちゃんと日下部さんもわかって
くれると思うよ」
つかさの声は甘くて優しくて。
「だからね、素直に好きって言おうよ」
「…………」
だからまた、意地を張って黙りこくってしまった。
甘い誘惑に一度は抗ってしまう。何か言い訳が無いと自分の気持ちに素直になれない。
そんな面倒な性格を、つかさはわかっている。
わかっていて、かがみをフォローしている。
姉とケンカをしたときも、こなたとケンカをしたときも、つかさは助けてくれたのだ。
「私は、お姉ちゃんのこと好き」
言われた方が恥ずかしくなってくるくらい、つかさは真っ直ぐに言う。
「こういうところを見せてあげたら、みんなお姉ちゃんのこと好きになっちゃうよ」
「ばかっ……」
つかさはかがみの上着のボタンに手をかけ、かがみはホイップクリームと絞り袋の方に
チラッと視線を寄越した。
「うん、完成っ!」
つかさはとても満足そうだった。
全裸でベッドに横たわるかがみの、身体のあらゆる部分に、ホイップクリームによる
デコレーションが施されている。
「お姉ちゃん、やっぱり可愛いよ」
「ばかっ……」
デコレーションケーキならぬデコレーションかがみとなってしまったかがみは、もう一度
繰り返した。
これは最高に恥ずかしい。飾り付けをされたということは見られることを前提としたこと
であり、つかさはまじまじと自分の『作品』を眺めている。こんなことをされた者は古今東西
探し回っても数えるほどしかいないだろう。そもそも実の妹にこんなことをされて抵抗しなか
った自分が恥ずかしい。しかもこれが初めてではない。つかさは普通に服を着ているため、
自分だけが異常な状況になっていることが、さらに羞恥心を高めた。
理屈を捏ねただけでも、これだけの『恥ずかしくなる理由』があるのだ。
「こなちゃんたちにも見せてあげたいな。お姉ちゃんの可愛いところ」
「だめ! それだけは絶対だめっ!」
こんなところをあの二人に見られたら……想像しただけで死にたくなってくる。
「じゃあ、他のことならいいの?」
「他のことって……」
つかさはクリームで飾り付けされた人差し指を口に含んだ。クリームを綺麗に拭き取っても
終わらず、じわじわと指を舐り続ける。
くすぐったいわけでも快感があるわけでもなく、それでも何かむず痒くて焦れったいような、
名状しがたい感覚が指先を支配する。
「い、いつまでやってんのよ」
そんなところをいつまでも舐めるなと言いたかったのか、もっと別なところを舐めてほしい
と言いたかったのか、かがみは自分でもわからなかった。
「じゃあ、こっちがいい?」
つかさはどちらの意味で解釈したのか、自分でつけたクリームを辿って、うなじの方から
かがみの鎖骨を嘗め回す。
「だめぇっ、そこ、くすぐったい」
くすぐったくて暴れだしたくなる衝動を抑え、つかさは物理的に押えるためにかがみの両肩
を掴んだ。妹に押さえつけられているという事実がかがみを興奮させる。
つかさは鎖骨のあたりは満足したのか、そこから下へと視線を移した。仰向けになってほど
よく膨らんだ両の乳房は、特に念入りにデコレーションされていた。
まずは外側から、少しずつ舐めとられていく。
「……つかさっ……」
その舌がゆっくりとゆっくりと頂点に近づいている様を目で見て乳房で感じとって、早く
『そこ』に来て欲しいという気持ちが徐々に強くなっている自分に気付いた。
でも、言い訳がないからそこに促すことができなくて……。
あと少しでそこに来るという時になって、つかさはもう片方の乳房を同じように舐め始めた。
肩透かしを食らって少し不満があって、それでもそれを口に出せなくて。
「……つかさっ……」
名前を呼ぶことしかできない。
散々待たされて、今度は乳首だけを残して舐めとられた。今度こそ待ちわびた箇所に来て
くれる――はずだったのに。
「ねえ、どっちがいい?」
いきなりそんなことを訊ねられて、意味がわからなかった。
「こなちゃんと日下部さんと、どっちがいい?」
「!?」
完全に不意打ちだった。まさかここでこう来るとは。
「どっちって……」
昨日、当のこなたとみさおに迫られた。どっちが好きなのかと。
かがみは答えられなかった。それで二人を怒らせた。
それが原因で二人の争いが激化して、あまりに苛立たしくてかがみがキレた。
誰一人その場を治めることができず、気まずい雰囲気のまま帰路についた。
何と答えればよかったのか。片方を選んだら、どんな結果になろうと自分は満足しなかった
だろうとわかっている。だからと言って――。
「お姉ちゃん、自分の気持ちに素直になって」
自分の素直な気持ちはわかっている。
二人とも、好きなのだ。
「でも……」
そんなことを言ったら二人とも怒らせるに決まっている。かがみの所有権を巡って真剣に
争っていた二人がそれで満足してくれるはずがない。最悪の場合、こんな身勝手な人間を
二人とも嫌ってしまうかもしれない。
結局、黙っていたら同じ結果になってしまったわけだが……。
そんな自分が嫌で、ずっと落ち込んでいたのだ。今更何を言っても――。
「私には本当のこと言ってよ。私は何があってもお姉ちゃんのこと嫌いにならないよ」
――言い訳ができた。つかさにだけは言える。
「……二人とも好き」
喉の奥からやっとのことで絞り出した、本音。
「やっと言ってくれたね」
つかさは右の乳首を吸うようにして口に含み、左の乳首をクリームを塗りつけるように
指で愛撫し始めた。
「つかさっ、指がよごれ、やぁっ」
「んん、気にしないで」
片方はつかさの温かい舌に、片方は肌理細かな指と潤滑油代わりのクリームに愛撫され、
その柔らかい刺激に酔いしれた。
「もっと声出してもいいよ」
わざわざ口を離してまでそんなことを言ってくれるから、かがみはそれに従った。
「それ、きもちいぃ……ひぁっ、あんっ……」
「ねえ、もっと気持ちよくして欲しい?」
「うん、して、もっと、してっ」
一秒の躊躇いもなく答える。
「こなちゃんと日下部さんに、二人とも好きって言おうよ。言うって約束してくれたら、
もっと気持ちよくしてあげる」
「そんな……っ」
気分が一気に現実に引き戻された。それだけはやってはいけないと――。
「他のことなら何でもしていいんだよね?」
そんなことは言ってない。実質的にそれに同意したようなものではあるが。
返事を待たずに、つかさは乳房から下の方へ視線をやった。かがみのへその周辺にも、
丁寧にデコレーションがなされている。
「んっ、やっ、やあっ、そこはイヤっ」
そのあたりを舐められて、こそばゆくて身をよじる。ただ動くだけでなく、自分自身は
上に行くように――つまり、つかさの舐める位置がもっと下になるように身をよじる。
もちろん、へその下にあるものは――
「わかってるよ。こっちがいいんだよね」
クリームに塗れた方の指をかがみの中に入れた。まるで中に塗りたくるかのように、
かがみの中を丹念に指で擦る。
「んっ……あぁっ……つかさ、そこ……いいっ、もっと」
指は襞の一つ一つを丁寧になぞっている。かがみの性感が一気に高まっていった。
「もっとして欲しいんなら、素直になって?」
「へ?」
天使の微笑みと悪魔の囁き。その二つが同時に、そこにあった。
「素直になったら、いかせてあげるよ」
指が中をゆっくり、絶頂には届かない程度に擦る。
「あぅ……つかさ、そんな」
「素直になる?」
少し良くなってきたところで、また指を止められた。
「今は、そんなの、関係な、んんぅ」
反論しようと思ったら、また愛撫を再開された。
「関係あるよ。そのために私はこうしてるんだもん」
中で指を曲げて、敏感な部分を強く刺激される。
「私はっ、ひゃぅ、そんなつもりで、んんっ」
もう少しでいきそうというところで、指の刺激が緩められる。その繰り返し。
「私は、お姉ちゃんに素直になってほしいな」
甘い誘惑に抗うのは、もう限界だった。
「なるっ! 素直になるからお願い!」
つかさにお願いされたから。つかさのお願いには逆らいたくないから。
自分に言い訳をして、心の中のたがを外した。
「よかった」
指の運動が途端に激しくなる。今度はかがみがどれだけ反応しようともお構いなしに、
容赦なくかがみを感じさせてきた。
「つかさっ、激しすぎっ、もういく」
「いいよ。素直になるんならね」
「素直になる、なるから、いかせてぇっ!」
つかさの指を素直に感じて、かがみはいった。
「それじゃあ、約束だからね?」
「うぅ……」
つかさにされるがままにされた上に、そんなことまで約束させられて、軽く自己嫌悪に
陥った。
「ちゃんと言える?」
「言うわよ。つかさと約束したから……」
子供を諭すようなことを妹に言われて、思わず臍を曲げてしまう。
「結果が心配だけど……二人とも好きだなんて」
「でも、それが本当の気持ちなんだから」
反論はできないが、しっくり来ないのも事実である。
それに、素直になるついでに言ってしまうならば。
「つかさのことも、好きなのよ……」
「よかった」
我ながらいい加減ね、と続けようとしたのだが、つかさの返答に面食らってしまった。
「いいの、つかさはそれで?」
「私はみんなのこと好きだもん」
無邪気な笑顔で言うつかさに、不安を覚えないでもない。みんなのことをかがみに対する
のと同じ意味で好きなのだとしたら、この先とんでもないことになりそうな気がする。
それでも、その笑顔をみて思うのは。
「つかさの性格、ちょっと羨ましいわ」
だから、つかさに倣うことにした。つかさの服のボタンに手をかける。
「もうクリームないよ?」
「いいわよ。つかさは味付けなんかしなくても甘いから」
十数分ぶりのキスは、クリームの味だった。
前途多難だが、心は軽かった。
つかさはしっかりとかがみを底なし沼から引き上げてくれたのだ。
次にこなたとみさおに会うときのためにもう少しだけ元気が欲しいから、今日はつかさを
たっぷりと味わうことにした。
−終わり−
558 :
3-283:2008/02/24(日) 21:41:17 ID:WCcQIW/n
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
いわゆる女体盛りなわけですが、
「作るのが好きなつかさ」を攻めにするか
「食べるのが好きなかがみ」を攻めにするかで悩んだ作品でした。
関係ないですが、「磯野カツオ」を発音すると、イタリア語で下品な意味になります。
ほんとに関係ないですけど。
>>558 なんという百合姉妹の女体盛り。甘みとエロみが溶け合って、とっても「元気付け」られました。性的な意味で。
というかこのまま行くと、つかかがこなみさでケーキバイキング? うわぁ、欲望番外地。
とにもかくにもぐっじょぶでした。
桜藤祭ネタ解禁という事で、こう×やまと(やまと×こう?)の非エロ(正確にはエロ直前)投下します。
(注)
1、この話はセリフだけで出来てます……早く投下したかったんで。
2、ネタバレ度・中(PS2版クリア後推奨)
3、文章が稚拙ですorz
以上の事に耐えられない方はスルーよろしくです。
それでは2、3レス消費します。
「やまと〜!」
「……どうしたの、こう。
また何か手伝って欲しいの?」
「うん、ちょっとね」
「……そう。 今度は何?
また同人誌絡み?」
「あ〜、え〜っと……えへへ、よくわかったね〜。」
「というか、ここ最近それだけしか頼まれてないから」
「あはは〜、そうだっけ〜?
……嫌かなあ? やっぱり?」
「……しょうがない。 で、何?」
「いいの!?」
「いいも何も、こうが私に頼み事をする時って、本当に追い詰められた時だけでしょ?」
「ありがと、やまと! じゃあ……」
「ちょっと」
「あ〜、そのままそのまま! 動かないで!」
「何で私がこんな……素肌にエプロンなんて着けて……」
「今度出す百合の本のイメージを膨らませる為だよ〜。
締め切りが迫ってるのにまだ全然進んでなくてさ〜。
……あ、そのアングルいいね!」
「…………帰る」
「あ〜、待って待って!
後で何でもするから!」
「何でも、ね」
「そう、何でも!」
「そっか」
「そうだよ!」
「それなら……あとじゃなくて今からでいい?」
「今から?」
「そう、今から」
「な、何を……やまとっ!?」
「抱き締めさせてくれるだけでいいから……」
「や、柔らかいよ、やまと……。
私、このままだと変な気持ちになっちゃうよ……?」
「……私はもうなってる。
こうがこんな変な格好なんてさせるからよ」
「だ、だって……」
「とにかく、私はもうこのままこうから離れるつもりは無いから。
嫌なら振り解いてくれても……え?」
「……私だって」
「こう?」
「私だってやまとから離れたくない!
何でか自分でも良くわからないけど、やまとを離しちゃいけないって、私の本能がそう言ってるの!
だから、私、私……!」
「こう、泣かないで」
「や、やまと……!?」
「……ん、こうの涙、しょっぱい」
「な、なんで……」
「今の涙の味、覚えたから。
もう二度とこうを悲しませない……これは約束よ」
「やまと……」
「ところでこう、百合のイメージは膨らんだ?」
「へ? あ、ああ、膨らんだけど……それがどうかしたの?」
「そっか。 もっとイメージ、膨らませたい?」
「そりゃまあ……ってまさか!」
「そのまさかよ。 欲しいかも、こうの事」
「……」
「嫌?」
「……冗談。 嬉しいに決まってるじゃない。
もう二度と離さないって言ったでしょ、やまと」
「……私、こうと出会えて良かった」
「私もだよ……やまと」
以上です。
本当に今見ても稚拙でスマソorz
とりあえずPS2版の一番の収穫はこのカプではないかと。
というかクリア後の隠しはご馳走だらけで……うひひ。
世界の修正(かなた的な意味で)が入る前に失礼しますー。
なんという寸止めw
乙
PS2で、こーちゃんへの好感度が上がりまくりな俺が来ましたよ
続きにwktkしつつGJb
というかそろそろ次スレの季節じゃね?
まだ約80Kはあるから大丈夫なはず
それでもすぐに埋まるだろうな……このスレのことだし
>>534 激しく同意。自分もこうとやまとのなりすましモード見て一時間で妄想がSSになったクチです。
ちょ、待て
俺本編はクリアしたがなりすましはまだ未プレイなんだぞ
バレな感じのSSくる前に早くやるべし
むしろ百合推進派な自分にはなりすましこそ本編だったりする。
いやさくら樹の咲く頃にもかなり漲りましたけどね
こんばんわ。
35-335です。
桜藤祭ネタ解禁日って事で、急遽1本、作ってみました。
滑り込みセーフかな?
ネタバレありまくりです。
非エロ
タイトルは、やまと−1年後
主人公×やまと
(おまけ)は、主人公×こなた、つかさ、みゆき、かがみ
主人公の名前は、手元にあった漫画からお借りしました。
以上のことを踏まえてお読み下さい。
高校3年……進学組の私は、それなりに、大変だし、忙しい。
それでも、
「息抜きにおいでよ!!あんまり根詰め過ぎると、身体に毒だし、試験まで持たないよ!!」
こうのこんな言葉と、確かに気が滅入り始めてた私は、最初は渋っていた、その誘いを受けた。
そして、思えば、これが始まり。
陵桜学園と書いた校門と、桜藤祭と書いたアーチをくぐると、すぐに、色んな出店が立ち並んでいる。
「相変わらず凄いわね」
私の学校にも、文化祭はあるけど、ここと比べると小規模なものだ。
こうに貰ったパンフレットを開いて、場所を確認する。
こうがいるのは………
食堂近くの教室か。
随分と、辺鄙な所に。弱小部って言ってたからしょうがないのかな。
歩き出した、私を、懐かしさが包み込む。
ここに来たのは、1年振り。しかも、まだ2回目だ。
でも……ずっと過ごした事があるような……
そんな既視感。
そう……ここを曲がって……
目の前には、枯れてしまった桜の木。
そして、私は立ち止まってしまう。
ここは、一年前、こうが、写真を持ってきてくれた………
違う!!それだけじゃない!!!それだけじゃなくて……
思い出せない。当たり前だ。私は、ここに来たのは2回目。
だから、それ意外の想い出なんかある筈が無い。
だけど………だけど、何かを忘れてる。とても、大切な事を。
その想いが、私を桜の前に立ち尽かせる。
静かに風が吹き、桜と、私の髪を揺らした。そして……
「……永森さん?」
私達は再会したんだ。
「………誰?」
呟いたのは、私。
驚いた様に、目を見開き立ち尽くす、その人。
学生服は着てないから、この陵桜の生徒じゃ無い。
目が隠れる程の長い前髪。ジーパンにシャツと言うラフな格好。
私の記憶の中に、彼は居ない。
或いは、中学生の頃の同級生なのかも知れないけど………
人付き合いの苦手な私は、異性はもとより、同性の友人だって多くない。
忘れていたとしても、しょうがない事だ。
だけど………
この焦燥感は何?私は彼を知っている??
彼は、戸惑った様に、視線を逸らし、何度か何かを言いかけ、やめる。
そして、数十秒たってから、ようやく口にしたのは、
「ごめん。知っている人に似てたから。人違いだったみたいだ」
嘘だ。彼は確かに私の名前を呼んだ。
だけど………
「あー!!やまと!!こんなとこに居た!!!迷ったのかと思ったじゃん!!」
大きな声を出して駆け寄ってきたのは、褐色の肌と、金色の髪が特徴的な、私の友人。
時計を見ると、約束の時間を十分程過ぎている。
心配させてしまったのかもしれない。
「ごめん。こう。少し迷ってた」
私の言葉に、こうは、意外そうな顔をする。
「やまとが!?珍しい事もあるもんだね!??……って、あれ??福本先輩!!」
驚いていた、こうが、彼を見て、さらに、驚きの声を上げる。
彼は、微笑しながら、片手を上げて、口を開いた。
「久しぶり。八坂さん」
「お久しぶりです。今日は、母校の文化祭見学ですか?」
「うん。それもあるけど、『ついでだから、久しぶりに、皆で集まろうよ!!』って、
こなたさんに、言われてね」
珍しく敬語で……だけど、親しげに話す、こうと、彼。
「こう?……知ってる人?」
私が、声をかけると、こうが説明をしてくれた。
「うん。私のいっこ上の先輩で、福本先輩。先輩。こっちは、私の友達の、永森やまとです」
福本……
その名前の響きに、また、私の胸がチクりと痛んだ。
「………始めまして。永森さん。福本です。よろしく」
さっきの事なんて、何も無かった様に、彼は、そう名乗った。
「永森……やまとです」
だから、私も、名前だけを告げる。
どんなに、胸が痛んでも……不思議な感覚を覚えても……
彼は、やはり他人なのだ。
今日を終え、明日を迎えれば、多分、もう会うことも無い。
そうすれば、きっと、すぐに忘れてしまう。
「ごめん。八坂さん。俺、そろそろ行くね。こなたさん達、もう来てる筈だから」
「はい。後で、アニ研の方にも、来て下さいね!!」
彼が走り去って行って……こうが振り返る。
「やまと!!?どうしたの!??」
その、こうの、あまりの、声の荒げ振りに私の方が驚いてしまう。
「別に……どうもしないけど……どうして?」
「だって……やまと、泣いてるよ?」
こうの言葉に、自分の瞳に、手をあてると涙が、次々と溢れているのが解った。
なんで、私、泣いてるの?
理解出来ない涙は、だけど、確認したことで、余計酷くなった。
「ひっ……うっ……ごめん……こう………なんでも………何でも無いから……」
「やまと………でも……」
こうは、戸惑いながら……でも、私の背中を優しく撫でてくれた。
止まらない涙の熱さと、こうの手の暖かさを感じながら、私は、一つだけ気づいていた。
私は……彼に会えて、嬉しかったんだ。
理由は、解らないけど、それだけは、確かな気がした。
あの後、落ち着いた私は、こうに案内されて、校内に作られた模擬店を幾つも廻った。
こうが、いつも以上にテンションが高かったのは、きっと、私を心配していたからだと思う。
そんな、こうに、申し訳ない気持ちもありながら、私の心は、他の事で埋め尽くされていた。
福本先輩。ううん。福本君。その方が、しっくりくる。私は、そう呼んでた?
まただ。彼とは、初めて会ったんだ。
過去に呼んだ事がある筈が無い。
彼−福本 伸行とは………
!!?
待って。おかしい。
何故、私は、彼の名前を知ってるの?
こうは、彼を、『福本先輩』と呼んだ。
彼も、『福本です』とだけ、名乗った。
なのに、何故、私は彼の名前を知っているの?
私は………彼を知っている?
「やまと!やまとってば!!!」
考えに夢中になってしまっていたらしい。こうの声に、我に帰った私は、廊下で立ち尽くしていた。
「ごめん。こう。ちょっと、ぼーとしてた」
こうは、私に近づいて、顔を覗き込む。
「やまと。本当に大丈夫?私、今から、部の片付けがあるし………
具合が悪いようなら、うちの親に迎えに来て貰うよ?」
小さく首を振ってから答える。
「本当に大丈夫だから。心配かけてごめんね。一人で帰れるよ」
こうは、それでも心配そうだったけど、渋々といった感じで、私と別れて、部室の方へ向かって行った。
何度もすぐに帰るように、私に念押しして。
言われなくても、こうと別れてしまえば、この学校に、私の知っている人はいない。
別に用事があるわけでも無いし、帰るだけだ。
校舎から出て、外へと向かう途中。もう一度だけ、あの桜の木へと向かう。
何故かは、解らない。ただ、そうしないと、いけない気がした。
!!?
彼がいた。桜の木の下で、一人佇むようにして、木を見上げていた。
「何をしているんですか?」
気がつけば、声をかけたのは私。
「何………て言われても困るんだけどね。
1年前さ、ここで、大事な友達と、お別れしたんだ。
それを、懐かしんでた……のかな?」
彼は、照れ臭そうに頭をかく。
「大切な友達?」
「うん。誰にも解ってもらえない秘密を共有して、助け合った親友かな?
もしかしたら、もう会えないかも知れないんだけどね」
彼の言葉が胸に響く。
深い霧を晴らすように、私の失われた記憶を少しづつ、呼び覚ます。
「きっと、いつか、また会えますよ」
「そうかな?」
あぁ………そうだ。私は、彼を知っている。全ては思い出せ無いけど、だけど。
「だって、私にはまた会えたでしょ?」
彼の表情が凍り付く。
「永森さん……記憶が?」
彼の言葉に小さく首を振る。
「全部じゃない。少しだけ、ほんの少しだけ、思い出したの」
彼は小さく笑い、『そっか』と呟いた。
「きっと、またすぐに忘れちゃうから……言っておきたい事があるわ」
「ん。何?」
「今日、貴方に会えて嬉しかった」
「俺もだよ」
「だから、だから………」
「ぬああああ!!無理!無理!!もう嫌だーー!!!」
叫び脱走しようとする、彼の前に立ち塞がる、こう。
「ダメですよ。先輩。今の先輩じゃ、やまとの受ける大学に合格するのギリギリなんですから」
あれから、数カ月がたって、今は受験まで、数週間を残すだけになってる。
そして、私の部屋には、もう馴染んでしまった、こうと、彼の姿。
「ほおっておいていいよ。こう。競争相手は、少ない方がいいし」
「ぬぁ!やまと!?お前は楽勝の癖に!!」
「うん。だから、来年は先輩として、勉強を教えてあげるね」
「あぁ!それいいかもね!!」
「いーやーだー!同級生ならまだしも、やまと達の後輩になるのだけは、絶対に嫌だ!!」
そういって、再び勉強を始める、彼とこう。
「最初からそうすればいいのに」
小さく呟き、笑みがこぼれる。
3人揃って合格したいな
そうすれば、きっと楽しい毎日になる。
そして、出来る事ならずっと一緒に……
578 :
(おまけ):2008/02/25(月) 00:03:50 ID:6NbAxtXY
(おまけ)
本編終了後
「ところで、忘れちゃう前に確認しときたいことがあるんだけど?」
切り出したのは、かがみさん。
『え?なに?』
「あんたって一体、本当は誰が好きなの?」
『はい?』
あれ?何故か突然、肌寒くなったような………
「とーぜん、私だよね?1番最初に口説かれたし」
こなたさん?何故に、いきなりセ○バーコス?しかも、その剣、妙に本物ぽいんですが?
「そんなの解んないわよ?初回だと、こなたか、みゆき、つかさにしか行けない訳だし」
あれ?かがみさんも、何故、遠○コスに?その玉みたいなのどうやってるんですか?
「いっぱい浮気しても、最後は私を選んでくれるよね?」
勇○王!?もとい!!ス○ル!!?しかも、リボルバー本当に廻ってるし!!?
「皆さん。強制せずに、彼の素直な答えを聞きませんか?
もっとも、答えによっては、頭を冷やして貰う事になるかも知れませんが………」
出た……魔王………な○は。
微妙に周りから何かを、収束して見えるのは、俺の気のせいだよね?
「「「「で??本当は誰!!!?」」」」
宇宙人さん。お願いです。早く皆の記憶を消してください。
僕の命があるうちに。
以上です。
主人公……キャラが決まってないから書きにくい。
開き直ってしまえば、決まってないから、好きに書いていいんでしょうけど。
読んで下さった方、ありがとうございました。
GJ!
これはまたいいやまと。
男主人公ものは悪いけどあんまり受け付けない…んだけど
いいやまと分を補給できました、GJ
ふむ、GJだ
おまけも楽しませて貰った
全員攻略した後だときっと凄い修羅場になるんだろうなと妄想した
GJ!
やまといいよやまと
GJ!
主人公死んだなw
585 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/25(月) 03:31:07 ID:MYrqcBnc
GJ
らきメモの記憶が攻略キャラ全員残ってたら洒落にならないなw
今、保管庫の方でタグ関連の作業が進んでるけど、
これ、投下されたスレ数とかも入れればスレ別保管庫も不要にならないか?
何気にタグの存在って保管庫の現行の仕様をひっくり返しかねない代物な気が…。
主人公の名前がアレなせいで、顔をイメージすると物凄い浮くな…
Mr.AGOがあらわr(検閲
>>579 夕緋ノ向コウ側の信乃さんルートを思い出した!!
これはGJ!!と言わざるを得ない
完璧に思い出さなくとも共に過ごした記憶はホンモノなのだから…
その記憶こそがこれからの絆へと繋がるんだと
あと主人公後日談でひぎぃはノーサンキュー噴いた☆
590 :
18-230:2008/02/25(月) 06:11:24 ID:WgB0k4k4
>>579 GJです!
やまといいですね〜
っていうかおまけがかなり修羅場にw
さて、昨日からゲームネタ解禁ですが、俺はバレンタインデーネタ投下します
……え? もう一週間以上過ぎてます?
はははそんなバカな(ry
……はい、それでは以下注意事項です
・ギャグメイン
・カップリング無し
・エロ無し
・11レスです
・受け付けない方はスルーで
あと携帯からなので文体がおかしいかもしれません
では
今日は2月14日。
バレンタインデーである。誰が何と言おうと。
いきなりだが、そんなある日の早朝の泉家に、
「ええーっ!!」
あり得ないぐらい大きな声が響き渡る。
「な、何っ?」
部屋で早朝までネトゲに打ち込んでいたこなたはその絶叫にいち早く反応し、急いでリビングへと降りる。
するとそこには、涙目になってへたりこんだゆいが居た。
手には携帯を持っている。
……既にオチは見えたが、話を先に進めよう。
「ど、どうしたのゆい姉さん!? 一体何があったの!?」
その様子からただ事では無いことを察知したこなたは、ゆいに事情を訪ねる。
「ううう……。こなたぁ〜。お姉さんの話を聞いとくれよ〜」
「だから何が……ってのうわっ!」
ゆいは涙をドバドバと滝のように流しながら、がっしりとこなたにしがみついた。
そしてその状態のまま、ゆいは号泣していた理由を話し始めた。
――――
「なるほどねえ……」
一通り話を聞き、感心して頷くこなた。
加えて、後からゆいに話を聞いたゆたかとそうじろうも同じように感心する。
ゆいが泣いていた理由は――もうお分かりとは思うが――夫であるきよたかの仕事のせいであった。
「せっかくきよたかさんとあんま〜い1日を過ごすつもりだったのにぃ〜! 単身赴任のバカ〜!」
「あははは……。まあまあ、ゆいちゃん落ち着いて」
「これが落ち着いていられるかってゆーんですか!」
そう愚痴を吐いて、手に持っているコップの飲み物を煽るゆい。
ちなみにコップの中身はノンアルコールドリンクである。
お酒は二十歳から!
「う〜。大体、単身赴任って何なのよ! 単身赴任の何が偉いってゆ〜のか!」
「単身赴任は偉くないよ、ゆい姉さん」
「そうだよゆいお姉ちゃん。仕方無いよ」
「他人事みたいに言わないでよ〜。大体、二人は彼氏とか要らないの〜?」
その質問に、二人はこう答えた。
「かがみは私の嫁。以上!」
「私は……みなみちゃんが居てくれれば、それでいいかな……」
二人とも彼氏は居ないが彼女は居たようである。
「……なんかズルい」
「ははは……」
それを見て苦笑していたそうじろうがふと、目をテレビ画面に表示されている時刻に向ける。
気がつけば、二人が学校に登校する時間になっていた。
「二人とも、そろそろ時間じゃないのか?」
「あ、本当だ」
こなたとゆたかはテーブルの横に置いた鞄を手に取り、玄関へと向かう。
「んじゃいってきまーす。あと、今日は帰るの遅くなりそうだからよろしくー」
「私も遅くなりそうだからよろしくお願いします、おじさん。えっと……お姉ちゃん、元気出してね! いってきまーす!」
「行ってらっしゃい」
「ううう……。姉を見捨てないでおくれ〜」
しっかり見送りの言葉を言うそうじろうと、未だに涙を流し続けるゆい。
。
そしてドアが閉じられる音が、二人が家を出たことを告げる。
「はぁぁぁぁ……」
その瞬間、途端に魂が抜けそうなぐらいに大きなため息をつくゆい。
実際口から魂が出かかっている。
その様子を気の毒そうに見ていたそうじろうがある提案をする。
「そうだな……どっかで気でも紛らわしてくるのはどうかな」
「はぃ〜。そうします〜……」
ゆいはそれに即答し、そしてそのままフラフラと玄関を出て、車の運転席へと乗り込んだ。
「とは言われたものの……」
ゆいは悩んでいた。
こんなに朝早く散策出来る場所などねーのですよ、と。
まだ早いが、下手に街になど出てみればそれこそバレンタインデーを楽しむカップルによってブロークンハートされてしまうに違いない。
公園なども同じ理由で却下となる。
ゆいの心は硝子なのだ。血潮は鉄ではないが。
かと言って、そのまま家でだらりと過ごすのも、損をしているような気がしていた。
「んー。やっぱりあそこしか無いっかなぁ……」
そんなゆいに、一つ心当たりの場所があった。
「でもなあ……。行っても良いのかなあ……」
ゆいは車中でしばらく考えた挙句、
「ま、いっか! 別に知り合い居るし!」
なんだか根拠になるのかならないのか分からない理由を付け、車のエンジンのキーを回した。
――――
「で、そういうわけだからここに来た……と」
「そうなんですよ……ぐすっ」
時は過ぎ、只今3時半。場所は変わって、陵桜学園。
ゆいが選んだ場所は、よりによってそんな場所だった。
そしてゆいは、学校の保健室のベッドに居る。
本来怪我人が寝るべき場所を一つ占領していたのだ。
もちろん保険医であるふゆきは、困った顔をしている。
「聞いてくださいよ! バレンタインデーに起こった悲しい女性警察官の悲劇をぉぉぉぉ!!」
「それはもう20回ぐらい聞きましたって」
呆れた様にぼやくひかる。
それに続くようにななこもゆいを励ます――と言いたかったが、生憎ななこは激安チョコを漁りにデパートを東奔西走している最中である。
仕事はどうした。
「あの、そろそろベッドを空けて戴けると助かるのですが……」
「私も怪我人ですっ! 丁重に扱ってやってくださいっ!」
ガバッと布団を頭まで被るゆい。
とても既婚者がやるような事には見えない。
と、その時廊下から保健室のドアをノックする音が聞こえた。
「すみませーん。天原先生居ますかー」
「あ、はい。どうぞー」
ふゆきは一瞬迷って、入室の許可を出した。
正直今のカオスな婦警を見せるのは憚られたが、怪我をしているだろう生徒をわざわざ待たせるなど、それこそ出来ない。
そしてふゆきの返事に応じて生徒が入ってきた。
「しっつれいしまーす」
「……」
「ん、峰岸と日下部じゃないか?」
驚きの表情を見せるひかる。
そう、その視線の先に居たのはみさおとあやのだった。
「どうした、こんなところに。怪我はしてないようだが……」
ひかるが言った通り、保健室に来た二人に外傷は見られなかった。
「えっと……あやのが……」
みさおはそう言ってあやののほうを見る。
「……」
あやのは何も反応せず、ずっとうつ向いたままだった。
「どうされたんですか、峰岸さん? どこか具合が悪いんですか?」
ふゆきは峰岸にそっと尋ねる。
そして峰岸から驚愕の答えが返ってきた。
「心が……痛いです」
……
「あの、もう一度よろしいでしょうか?」
「少し……精神的なダメージが大きくて……」
それだけ言うと、あやのは再びうつむいてしまった。
「ほ、ほらあやの! 元気出せって! たかが兄貴の一人や二人――」
そしてみさおが峰岸を励まそうと涙ぐましい努力をしていたが、逆効果に終わりそうである。
この状況をどうしたらいいのか分からないひかるとふゆきは、とりあえずひそひそと臨時会議を始めた。
(えーと、今日は心理カウンセラーの先生はいらっしゃいましたっけ?)
(いや、確か今日は水曜日だから来ないはずだな)
(どうしましょう……)
(お前養護教諭だろ。何とかならないのか?)
(すみません、心の傷に関しては専門外なんです……)
(じゃあどうするんだ?)
(どうしましょう……)
(……まずは話を聞こう。対処方法を考えるのはそれから、というのはどうだ?)
(そうですね。事情が分からない事にはどうしようも無いですし)
こうしてとりあえずひかるとふゆきの臨時会議は終了した。
ふゆきは峰岸のほうに近づき、再びそっと話かける。
「あの、良ければ何があったかお話いただけますか?」
ふゆきの提案に、こくんと頷くあやの。
普段の彼女から想像もつかない返答の仕方だ。
「えっと、あの……。実は――」
――――
「どうしましょう……」
「どうしような……」
あやのの話が終わると同時に、ひかるとふゆきはまた困り果てていた。
峰岸が告げた原因は、今日のバレンタインデーのことであった。
本当は彼氏と仲良く聖夜を過ごすはずだったのだが、急に泊まりの仕事が入ってしまったせいで、一人になってしまうことになったらしい。
非常に羨ましい悩みだが、本人にとっては大問題だ。
しかも、今ここに居る二人には恋愛経験など無く、相談に乗ることの出来る者も必然的に居ないということになる。
「本当にどうしましょう……」
今日何回言ったか分からない台詞を呟くふゆき。
ひかるはそれに反応せず、脳内で解決案を模索していた。
その時だった。
ガバッ。
「「「!?」」」
突然ベッドから起き上がるゆいにビビるひかるとふゆきとみさお。
そしてスタスタとあやのの前に立ち止まると、がっしりと手を握って言った。
「仲間!」
「……え?」
急に保健室のベッドから現れた怪しい女性Aにそんなことを言われたら、普通そういう反応をするだろう。
「えっと……仲間、ですか?」
「そう同じ! 君も私と同じ失恋仲間さっ!!」
失恋仲間ではない。
たまたま都合が悪かっただけである。
「いやーまさかおんなじ境遇の人に出会うとは思って無かったよ! お姉さん感動っ!」
アクセル全開であやのに一方的にまくし立てるゆい。
その目は盟友(獲物)を見つけ、キラキラと希望に満ちていた。
「あなた、お名前は? 私は成実ゆい!」
「峰岸……あやのです」
「よし、あやのちゃん! 今夜は二人で飲み明かすよ!!」
あるあ……ねーよ
保健室に居る傍観者ならそう思っただろう。
だがしかし、
「……はい!」
はっきりと答えるあやの。
その顔に元気が戻っていた。
何 故
「よーし、それじゃあ早速祝杯だ!」
「はい、成実さん!」
あやのの返事を合図に保健室という名の戦場を縦横無尽に駆け回る二人。
最早キャラの原型を留めていない。
「あ、あやのが壊れた……」
そんなあやのを、みさおが呆然と見ていた。
するとみさおにふゆきがある提案をする。
「日下部さんは先にお帰りになってもいいですよ?」
「え? で、でも……」
「私がちゃんと家までお送りしますから。 今は冬ですから、まだ暗くなるのは早いですし」
「……分かりました」
ふゆきの説得に、みさおは素直に従う。
そして、とぼとぼと保健室から去ろうとし――立ち止まる。
「天原先生」
「はい」
「あやのを……お願いします」
「はい、努力します」
その返事を聞いたみさおは、そのまま保健室から出ていった。
……結局、こちらもこちらでキャラの原型を留めていなかった。
「ふゆき。私も今夜の準備があるから、先に帰りたいんだが……大丈夫か? お前一人で」
「はい、これでも保険医ですから。頼りにしてください。桜庭先生」
「ふっ、頼もしいな。それじゃあ頑張ってくれよ。あんまり遅くならない程度に」
「はい、分かりました。それではまた夜に」
「うむ。頑張ってくれ」
そうしてひかるも、保健室から退室した。
これで状況は人数的に2対1、完全に不利になってしまったことになる。
(さて、本当にどうしましょう……)
心の中で更にその台詞を復唱するふゆき。
そのふゆきを困らせている原因――ゆいとあやのは、水道水を保健室にあったコップに入れて、天に向かって突き上げ叫んでいた。
「バレンタインなんてコノヤローっ!」
「このやろーっ!」
「きよたかさんなんてコノヤローっ!!」
「お兄さんなんてコノヤローっ!!」
……そしてその後、校舎にはバレンタインデーを嘆く2人の泣き声が響いたとか響かなかったとか。
投下終了です
最終回ほったらかしではっちゃけましたね、はい
ギャグがあったかどうかは微妙ですが、楽しんで戴けたならこれ幸いです
ゲームネタも早く書きたいなあ……
っていうか三人称もなかなかいいような、よくないような
果たして使い分けられるのか……?
あとミス発見
水曜日→木曜日でしたorz
出来れば保管されるときに直して戴きたく……
本当、すみません
リアルタイム遭遇ktkr!
GJッス!
これは異な組み合わせ、でもゆい姉さんならやりかねない。
気勢を上げるゆいみさが脳内再生されました。
そして。
「ええやないか……相方がおるだけええやないか、この贅沢者ーっ!」
以上、チョコ漁りに行ったものの直後では値崩れさせず、「遅れてごめんねチョコ」として高いまま売りつけるという
非道がまかり通る(実話)現場より黒井ななこさんのコメントでした。ぐっじょぶ。
途中まではななこを飲みに誘うかと思ってたw
これまた変な方向性の(誉め言葉)ギャグに走ったもんですなw
ななこ先生といえば店長との絡みが(ry
あの店長遂に人間の限界を越えたよな(時かけ男女的な意味で)
>>602 中盤から予想外の急展開GJ!
>>「どこか具合が悪いんですか?」
>>「心が……痛いです」
がツボってしまったw
話し変わるけど
エロパロスレまとめWIKI読みまくってると1-808氏のこなたがみんなを
お姫様抱っこしまくる話に萌えて、短編だけどその逆とオマケ書いてみました。
合計4レス使用
609 :
抱っこ1/4:2008/02/25(月) 17:51:16 ID:TymB0OWZ
ある日曜日。かがみより一足早く遊びに着たつかさと
マッタリと昔録画したアニメを見ていた。
いや、正確には耐性のない人にはちょっと刺激が強いアニメなせいで
つかさは少し落ち着きがない。
「う、うわ、女の子が女の子をお姫様抱っこしてるよ」
やっぱりつかさにはちょっと早すぎたかな?
ス●ロベリー・●ニックっていう女の子同士の恋愛を描いたアニメだから無理もないか・・
でもつかさは顔を真っ赤に染めながらも食い入る様に見ている。
「ねえ、こなちゃん」
「何?」
「お姫様抱っこって私にも出来るのかな?」
「へっ?」
一区切り見終わった所で妙な事を聞いてくるつかさ。
「このアニメの子みたいに、私も頑張ったら同じ位の大きさの子でも抱っこ出来る様になるのかな?」
「う、うーん・・これはアニメだからね・・
実際は体を鍛えてないつかさだと、おんぶとかなら出来るかもしれないけど
抱っこはちょっと無理があるんじゃない?まあ、小学生位の小さい子だったら出来るかも知れないけどさ」
「そっか・・あっ」
つかさは何かを閃いた様子で、口元を緩めながら私をジッと見てくる。
「ねえ、こなちゃん」
つ、つかさ様・・?まさか・・
「試しにこなちゃんをお姫様抱っこしてみてもいい?」
な、なんですとー!?
そりゃあ自分で言うのも何だけど私の身長は小学6年生の平均以下だけどさ・・
「さ、さすがにそれはちょっと恥ずかしいってば」
「どうしても・・ダメ・・?」
つかさ、その泣きそうな顔は反則だってば・・
「う・・つかさがどうしてもやりたいのなら・・」
「ありがと〜じゃあ早速試してみるね」
OKした途端笑顔になったつかさに問答無用に駆け寄られて
脇の下と膝の裏を手を回されると「よっこいしょういちっと」っていう謎の掛け声で
私の体は意外にアッサリと抱きかかえられてしまった。
「うわ、こなちゃんって思ったより軽いんだね、私でも結構簡単に抱っこできるよ〜」
「つかさぁ〜恥ずかしいよぉ」
誰かに抱きかかえられるなんて幼稚園の時以来で高校生にもなってされるなんて思いもよらなかった。
「えへへ、こなちゃん年下の子みたい」
つかさは何だかすっかりご機嫌で、柔らかい頬っぺたを私にこすり付けてくる。
そして私も10数年ぶりにされるスキンシップに何だか照れくさかったけど胸がキュンとなった。
610 :
抱っこ2/4:2008/02/25(月) 17:52:16 ID:TymB0OWZ
その時
「おっす、こなた来たわよ〜」
「あ、お姉ちゃ〜ん」
遅れて到着したかがみの声が玄関からして、つかさは出迎えに玄関の方にトコトコ歩いていく。
・・私を抱っこしたまま
「ちょ、ちょっとつかさ!かがみに見られちゃう!下ろしてよぉ」
「ダメ〜、もうちょっと抱っこしていたいもん」
私の願いも虚しくつかさはそのままかがみのいる玄関まで到達して
かがみに盛大に見られてしまう。
「あ、あんた達何やってるのよ!?」
「えへへ、抱っこだよ〜こなちゃん可愛いでしょ」
「か、かがみ、・・いらっしゃ〜い・・じ、実は・・つかさにもお姫様抱っことか
出来るかどうかなんていう話になりまして・・」
かがみは驚いてはいるけど何だか物珍しそうにニヤニヤしながら私を覗き込んでる。
「・・あんたまるで赤ちゃんみたいね」
そう言って私の頬っぺたをプニプニしてくる。
「う、うるさい!」
まさかかがみがからかって来るとは・・いっそ普通にひいてくれた方がマシだった。
「お姉ちゃんもこなちゃん抱っこしてみるー?」
ちょっ!つかさ様、またいきなり何を言い出すんですか!
「な、何で私がしなくちゃいけないのよ(ゴクリ)」
かがみん、口では嫌がってるけど目を輝かせてるのは何で?
「ま・・まあ・・でもせっかくだから試しにちょっとだけ・・」
うわ、かがみってば抱っこする気満々だ。
嬉々としながら両手を私の方に差し出してくるとつかさは
「はい、落とさないでね〜」
ってアッサリかがみに受け渡してしまった。
「へえ〜こなたって見た目どおり体重も軽いのね。つかさでも抱っこできるのも納得だわ」
「は、恥ずかしいよかがみ・・」
つかさより少し高く上げてるせいでかがみの顔が目の前にあってシャンプーのいい匂いが
漂ってくる・・
恥ずかしくてとてもかがみの顔なんて見れないよぉ・・
「おぉー?こなた、もしかして恥ずかしがってるのか〜?」
か・・ががみ、なんかいつもと少しキャラ違うよ・・。
こういう時はかがみも恥ずかしがって、そういう事を追求してきたりしないでよぉ〜。
「・・・・(ガバッ)」
私は真っ赤になった顔を隠すために、思わずかがみの胸の中に頭をうずめてしまった。
「うわ、こなちゃん甘えん坊さんだ〜」
し、しょうがないじゃないさ!他に隠せる所ないんだもん!
「そうね〜、何だかこなたの可愛い所を見せてもらったわ。それじゃあそろそろこなたの部屋に行こうかつかさ」
「うん」
そう言ってかがみとつかさはご機嫌そうに廊下を歩いていった。
「あの・・そろそろ下ろして欲しいんですけど・・(=ω=.;)」
611 :
抱っこ3/4:2008/02/25(月) 17:53:23 ID:TymB0OWZ
オマケ
「お姉〜ぇちゃん」
「ヒャッ!ちょ、ちょっとつかさいきなり何するのよ!」
うわっ、つかさがいきなりかがみに組み付いて来たと思ったら抱き上げてしまったよ。
「・・うう・・さすがにお姉ちゃんはこなちゃんより重いなぁ・・
私の胸より上までは上げれそうにないし、少しの間しか抱っこしていられそうにないよ・・」
「わ、悪かったわね!」
「つかさ・・意外に力あるんだね・・それにしてもかがみん・・またダイエット失敗した?」
「余計な詮索するな!つかさも恥ずかしいから早く下ろしなさいよ!」
そう言いながらも落ちない様につかさの首に両腕を回してるかがみは見ていて萌える。
「もうちょっとがんばる〜」
「かがみ、さっきの私の気持ち思い知ったかぁ〜。そうだ!いい機会だから二人にいい物見せてあげるよ」
これはさっきのお返しをするいいチャンスだ。
私は大きい姿見用の鏡を持ってくると二人の目の前に「ドンッ」っと置いてやった。
「うわぁ・・」
「ぶっ!!」
ふっふ〜、予想通り二人とも唖然としてる。
体の大きさが同じ位の女の子・・それもお姉ちゃんを、ガクガクしながらやっとの事でだけど
お姫様抱っこしてる格好いいつかさ。
顔を真っ赤にしながら妹にお姫様抱っこされてるか弱いかがみ。
そんな自分達の姿を見せ付けられたらそりゃあ恥ずかしいだろうねー。
「こ・・こなたーーー!!恥ずかしい物見せるな〜!!早くしまいなさいよー!!」
かがみはそう言って恥ずかしさのあまり、さっき私がしたのと同じ様に
つかさの胸に頭をうずめて顔を隠してしまった。
「は、はぅ〜〜〜〜お、お、お姉ちゃんが私に甘えてきてる〜〜〜」
元々一杯一杯だった所への姉のスキンシップにつかさはとうとう限界が来たみたいでかがみを下ろしてしまった。
「ハァ・・ハァ・・疲れた・・・」
かがみと一緒に自分もへたりこんで肩で息をするつかさ。
「つかさ、よくがんばったね・・GJ!」
「・・えへへ」
つかさに向けて、親指を上に立てて労いのポーズを取るとつかさも照れくさそうに同じポーズをしてくれた。
612 :
抱っこ4/4:2008/02/25(月) 17:55:43 ID:TymB0OWZ
「・・・何がGJよあんた達ぃぃいい!!」
は・・か、かがみ様・・!?
「か・・かがみ、えっと・・これはさっきのでおあいこって事で・・」
「フッフッフ・・こなたはそれで通るとして・・つかさーー!!あんた一体何やってくれたのよ!凄く恥ずかしかったんだからね!!」
かがみが凄い勢いでつかさに迫っていく。
「お、お姉ちゃんごめん!許して!」
「問答無用!!(ガバッ)」
うわ、今度はかがみがつかさをお姫様抱っこしてしまったよ。
「覚悟しなさい!姉としての威厳もあるしあんたの倍の時間は抱っこしてあげるわ。
ほら鏡を見て見なさいよ、つかさったら高校生にもなって抱っこされちゃってるね〜」
かがみ・・恥ずかしい思いをさせてようとしてるのは分かるけど
当のつかさは顔を真っ赤にしてはいるけど嫌がってはいないみたいだよ・・?
つかさは鏡に映ってる光景をうっとりと幸せそうに眺めると
「えへへ・・・お姉ちゃん大好き」
って言いながらかがみの首に回してる手の力をギュっと強めた。
「ちょ、ちょっとつかさ、あんた少しは嫌がりなさいよ!」
「嫌がっていないようだし諦めて降ろしちゃえば?」
「え!?お、お姉ちゃんそれはやめ・・」
「倍の時間は抱っこするって言っちゃったのにあっさり降ろせるかー!」
「お姉ちゃん・・(ジ〜ン)」
うわ!つかさったらかがみを凄い熱い眼差しで見ているよ。
姉妹で百合っていうのも中々ツボだねぇ。
オマケのオマケ
後日柊家
「お姉ちゃん、今日も・・いいかな?」
「全くしょうがないわね・・まあ、ダイエットにもなるかもしれないしいいわよ。いらっしゃい」
「うん!」
あれが切欠でつかさは抱っこされるのが大好きになって毎晩私の部屋を訪れては抱っこをせがんで来る
全く・・もうすぐ高校3年生にもなって子供なんだから・・
一定時間経過
「はい、さすがに疲れてきたからおしまーい」
「はぅ・・ありがとうお姉ちゃん」
「・・・ねえ・・つかさ・・・」
「なにー?」
「えっと・・その・・(モジモジ)」
「(クスッ)お姉ちゃん、私の首に腕回して」
「う、うん!」
以上です。
本当は前半の2レスだけで終わる予定でいたけど
自分はかがみ×つかさが好きなのでこの組み合わせで数行のオマケ書こうとしたら
これだけで本編以上のボリュームに・・
やべえ、悶えたwww
可愛すぎるぜGJ!
あと20Kb。もしかしたら今日中に埋まるかもしれぬ。
次スレの季節ですな。
>>617 あー…
はい。その通りです。言い方が悪かったですね。すいません
>>613 GJです、お三方とも可愛いです、萌えます・・・
また、私だけ仲間はずれですか・・・(´・ω・`)
ゲーム解禁ってことで一本書いてみました
俺の心はいつまでも厨二病だってヴぁ・・・
タイトル:non-sugar coffee. but…
非エロ4レスくらい
主人公(○○)×やまと
世界観とか設定がかなり自己解釈&オリジナルです、ご了承ください
>>619 こなた、かがみ、つかさ 「「・・・・・え、仲間?」」
某月某日、午後10時48分。
ワタシ、永森やまとは寒さに身を震わせている。
めまぐるしく過ぎていく忙しい日々。
桜籐祭の準備も今がピークなのか、こんな時間に帰宅することも珍しくない。
そう、珍しくない。毎日こうなのだ。毎日毎日……
この"毎日"もこれで何度目だろうか。
寒空の下で自身の吐く白い息を見つめながら電車を待つのも、
日々の疲れから瞼が重く感じるのも、もう数え切れないほど経験してきた。
ひときわ強い寒風が、ワタシの髪を凪ぐ。
―寒い―
見下ろせば、繰り返してきた毎日の残骸が。
見上げれば、先見えぬほどの毎日が。
いつからだろうか、毎日と毎日の狭間に取り残された私の心は、
私の世界は、この寒空のごとく凍てついてしまっていた。
――――――――――――――――――――
non-sugar coffee. but…
――――――――――――――――――――
「寒い」
ワタシの隣に座るこの男は、そう呟いて肩を強張らせた。
繰り返される毎日に現れた特異点、ワタシ以外のイレギュラー。
曖昧ながらも、前回の毎日を覚えているらしい。
それゆえに、繰り返される毎日の中にあるか細い可能性の糸を選んで手繰ることが出来る存在。
「先に帰ったら?君までここにいる意味ないでしょ」
「いや、珍しく一緒にいられるんだから最後まで付き合うよ」
「……勝手にすれば」
突き放すように会話を切る。
彼の言うとおり、ワタシ達が接触できる機会は少ない。
いや、ほぼ無いと言ってもいい。
イレギュラー同士が近づくことを世界は許さない。
その機会のほとんどは"偶然"によって修正されてしまうのだ。
その"偶然"をもすり抜けて出来たこの時間は、未来を変える一つのチャンスであるのに。
彼の視線を受け止められない。
次の毎日で、その視線が別の誰かに向けられるのが苦痛だから。
差し出された手をとることが出来ない。
掴もうとした瞬間、またいつもの朝に戻るのが怖いから。
私の心の奥底には、誰かに甘えたいという欲求がある。
しかし甘えるとは、自分の弱ささえも他人に預けるということ。
それを受け止めてもらえなかったとき、
むき出しの私の心は、この長いループの間に積もった孤独や寂しさに耐えられない。
つもりに積もった負の経験は、私の心を覆う忌々しい氷であると同時に、本来の弱さを隠す氷の仮面でもあるのだ。
ふと隣にいるはずの彼に目を向けてみる、が
「○○君?」
いつの間にか、彼がいない。
彼が、いない
ただ、それだけなのに
今までいた駅のホームがどこか別の場所のように感じる。
凍えるような夜風が肌をさす。
「……寒い」
暫く忘れていた寒さ、ひとりぼっちの寒さ、終わりの見えない寒さ。
ならばいっそ、全てを諦めてしまえば。
目を閉じ耳をふさぎ、心さえも閉じてしまえば、少なくとも凍りついたこの心が砕けることは……熱っ!?!!
「ぅわひゃっ!?!!」
「おおう!? 予想外の反応に俺のほうがびっくりだ」
「な、にするのよいきなり。どういうつもり……!!」
コイツ、頬に缶を当ててきやがった。
いったい何なの?
人が今後のことについて考えて……いなかった。
少なくともさっきまでの私はそんなこと考えていなかった。
それ以上にただ寂しかった、怖かった、そしてどうしようもなく
「ごめんごめん。なんかさ、さっきから永森さん寒そうにしてたから」
―寒かった―
「はいこれ、暖かいうちに飲みなよ。驚かせちゃったお詫びってのも変だけど、これは奢りってことで」
―寒"かった"―
でも今は、彼がいる今だけは、あの寒さを感じない。
未来が過去へ続く毎日の中で、彼のほんの小さな優しさが今を実感させてくれる。
あの寒さを過去にしてくれる。
たかが一本の缶コーヒーが、私を……
うん、ワタシね、コーヒーあまり好きじゃないんだけど。
むしろ嫌いな部類かも、甘くないし。
カフェオレとか、そういう系統ですらつい避けちゃうんだけど。
「今のうちに軽くスッキリしとかないと、電車の中で寝ちゃったら洒落にならないし」
しかもブラックかよ。
まったく、人の好みとかお構いなしなんだから。
普通、何がいいか聞いてから行くでしょうに。
……けど、
「ま、そういうことなら貰っておくし、さっきのイタズラも不問にするわ。今回は、ね」
今回はの部分を強く言って、ワタシはプルタブに指をかける。
彼の苦笑いの理由はコーヒーの苦さだけじゃないはずだ。
そう思いながらコーヒーを一口、途端に口内に広がるあの焦げ苦い味。
だけど、何故だろう。
彼の横でなら、この苦さもそれなりに美味しく感じる。
コーヒーがほんの少し好きになれそうな、そんな夜。
「……にが」
「今にがって言った? ねぇ言った?」
「うっさい、黙りなさい」
……訂正、やっぱ嫌いなものは嫌い。
end.
>>626 すみません蛇足文に注意書き忘れてた
ゲームネタバレを含みます、気にする方は・・・・・・って本文からして既に軽くバレ入ってるか
一応注意ってことで
せっかくの新キャラなのにゲームでやまとルートが無いのが哀しいところ。
というわけで俺ももやまとで何か書くか・・・
ゲーム持ってない身としては最近の流れが寂しい限りなんだぜ
これはシュークリーム分の不足に悩みそうな良いやまと。
ゲーム持ってなくてもネタバレ踏んでも無問題な俺としては、面白く拝読できました。
あと、おまけで色々噴きました。
どこぞの中の人とか最終決戦奥義とか禁壱千弐百弐拾壱式とか。
ましまろ氏ではない方の、保管庫にて保管作業をしている者です。
人が投下した直後に申し訳ないのですが、少しお話をさせていただきます。
私はゲームをやらないのでゲームネタを含むSSを読まないのですが、
その場合、なるべくタイトルをつけてくれると助かります。
タイトルをつけるためにそのSSを読まなければならないのです。
(とりあえず
>>561は自分で仮タイトルをつけました。明日保管するつもりなので、
それまでにタイトル案があれば、誰かお願いします)
というか、ゲームに関係なくなるべくタイトルをつけてくれると助かります。
タイトルがないと保管のときにちょっと手間がかかってしまうのです。
言い忘れ。
私のレスを一度読んだら関係ない人はスルーして、
引き続きSSの感想および投下を続けてください。
↓
>>631 以前もそんな提案があって「投下時には極力制限を付けない(投下自由度の優先)」、
「まとめはあくまでもスレの補助的な存在だからまとめを優先する必要はない」
的な指摘でまとまったと記憶してるのだが…
>631
保管庫に保管する為に、タイトルをつける訳ではない。
無題でいきたいという場合もあるしね。
じゃあ無題希望と投下時注意書きでいいんじゃね
ただ同じページ名は登録できないから無題(38-636)とかにする必要あるけれど
最近の保管庫の書き込み見てたら
アニメのコミケの回のこなたの台詞思い出す
イベントが巨大化して参加者が客だと思っている 云々
637 :
633:2008/02/25(月) 22:41:29 ID:oCqiKHc2
と、いいつつも補完の中の人達の苦労は容易に想像できるので、
個人的には
>>631の意見を推したいトコなんだが…(´・ω・`)
一案として「無題」というカテゴリを一つ作ってそこに放り込んだらどうか?
「無題」に分類されるのが嫌な人はタイトルを付ければいいんじゃないかな。。
タイトルの無い作品はカップリングをタイトル代わりにしておけばいい
639 :
633:2008/02/25(月) 22:43:06 ID:oCqiKHc2
>636
やりたい人はそうすればいいし、やりたくない人はそうしなければいい。
基本は本スレありき。保管庫は補助的なもん。
保管庫の都合で振り回されるなら、ここでは書かないし。
いずれにしろ無理に押し付けるのは、よろしくないってもんだ。
あと全然関係ないんだが、「伺か」掲示板が荒らされ放題の件、プロジェクトが収束したなら
一旦閉じるなり書き込み禁止にするなり、なんらかの管理をしたほうがいいんじゃないかと思うんだ。
なんかゲーム解禁前後からやたらルールやら沸くようになったな
お騒がせしてすいませんでした。
とりあえず
>>561は
>>638の案で、
これ以降同じカップリングでタイトルが無い場合は
>>636の案で
保管することにいたします。
「まとめは補助」、「まとめの為だけのルールに縛られたくない」、というのがスレの総意なら
いっその事、まとめに保管したい作者だけが自分で保管するようにすればいいんじゃね?
ボランティアで一生懸命保管してくれてる人達が救われなさすぎる。
「まとめ」=「このスレの重要コンテンツの一つ」とするなら、まとめ側からの要求をスレ内で
再検討してもいいと思うんだ。
>>644 なにか一人で突っ走ってる気がしてならない
勝手に決め付けあーだこーだ言ってるし
>>642 いい機会だからいいじゃない。きっちり決めておけば後腐れもない。
>>646 決めれれば だがな
ここは投下する人や保管する人等色々の立場の人が多いからの
まぁ自分が書くとdgdgになるだろうからさいなら
投下は自由であるのがよいしタイトルを付ける義務はないと思うが、
保管する側の人がタイトル付けてと言いたくなる気持ちも分かる
そんなに大騒ぎする話でもあるまい
そうは言ってもみんなまとめサイトが急に無くなったら文句言うんだろ?
それを考えるとまとめもこのスレと同じくらいの重要性があると思うんだけど。
書き手と読み手の立場は同等ではないけど、読む人がいるから書く人もいるわけで。
一方的に読み手の意見を棄却してるのもどうかと思う。
>>642 まあ新しい流れが加わるんだから仕方ないんじゃない?
ただこれで見えない敵との対立だけはして欲しくない
ゲームとはいえ立派ならきすたという作品なんだから歓迎するべきだね
新しいキャラもいるし幅が広がるのは良いことだ
>649
いきなり話を飛ばされても困る。まとめサイトが消えるとか、話題に関係ないし。
まあ、無理に全部保管しなくてもいいような気もするな。
各自で簡単に保管できるしね。
ただ、まとめの都合で本スレに縛りを入れるのは個人的にはNGかな。
題名なしは保管もなしでいいんじゃないか
タイトルないと保管庫が見難くなるし
VIPの保管庫はそのせいで目当てのSSが見つからない
>>647 本人のなかではかっこよく締めたつもりでも、決めれればという「ら」抜き言葉が、教養の無さを露呈してるってのが笑いどころ?
このスレらしからぬ流れ・・・
>>653 はいはい単発
>>650 新しい流れといっても一か月のルールはみんなちゃんと守っているのに
やたらバレに敏感だったり百合だとかで勝手に騒いでただけだけどな
一か月たっててバレも何もないだろうと思うけども
何でもいいから保管庫の利便性だけは損なわないでくれよ
ぶっちゃけ無題とか沢山並んでたら邪魔だ
>>651 いや、例えばの話ね。
それくらいまとめサイトも需要があるってこと。
でもこの流れだとどの答えを選んでもモメそうやね。
タイトルを強制すると、書き手の手間やルールが増える。
無題を保管しないのなら、それを知らなかった書き手や読み手が文句言うかもしれない。
無題カテゴリを作ってそこに保管するのならば、目的のSSを探すのが難しい。
結局保管する人の手間になるけど、スレ的には現状維持が一番いい気がする・・・
こういった場で何かを決めるのって難しいね。
テンプレに無題の保管はまとめ人の気分次第とでも書いておけばいい
とりあえず
>>643でFAってことでいつもの流れでおkかな
で、無題希望以外はなるべくタイトルつけてねってことで
>>656 まあ少し過敏になってたとこがあるんじゃない?それこそみんなちゃんと守ってきたんだから
ゲームの話題はオリキャラの男主人公がいるから少し反発はあるだろうけど、やまとを無視するのもあれだし…
現にやもとのSS来てるんだしいい盛り上げ材料になってると思うよ?
もう少し時間がたてばいつも通りになるさ
ええと、ちょっと早めですが次スレ立てちゃいましょうか……?
>>662 よし、やっちまえ。気分転換にゃちょうどいいさね。
>>658 >>1のまとめサイトに避難所ってあるけど
そこで議論するのはどう?このスレ使って荒れたら困るし
それで次スレからはいつもの流れ
保管庫の話題は避難所でって感じで
>>662次スレお願いします
そうだね、でこの話はこのスレの容量終了で打ち切りか避難所
ところで
>>641の掲示板って避難所とは違うの?避難所何か荒れている?
>>647 ダグダグ?ディグダグ?ダグトリオ?
こなたがポケモントレーナーになるという電波をじゅし(ry
>>667乙です
>>666 かがみは初期にゲットしたポケモンを大事に育てそうというレスを
どこかで見た気がする、すごく萌えた
あなをほる
白石「ギュインギュインギュイ〜ン♪」
あきら様「黙れ」
あなをほる
そうじろう「アッー」
こなた「お父さんうるさい」
埋めネタ投下します。非エロ。
※21スレの埋めネタと同じくクロ高21話のパロディです。
鬱蒼と茂る木々が、辺り一面に海のように広がっている。
観光客が通る遊歩道からは遠く離れた、本来ならば人が近付くはずのない場所。
千年以上の昔、大噴火で焼き尽くされ、溶岩に覆われた土地。冷えた溶岩に木の根は深く腰を下ろすことができず、蛇がのたうつように地表を這っている。
空を見上げれば、幾重にも絡み合った木々の枝が日の光を遮っている。昼なお暗く、足下には濡れた苔や枯葉が敷き詰められ、歩き難いことこの上ない。
山梨県は青木ヶ原。いわゆる富士の樹海である。
おそらくは日本で最も有名な自殺名所でもあるこの樹海には、毎年多くの人が命を捨てに来ている。何故わざわざ樹海で死ぬのか。やはり雄大な大自然の中で人知れず死んでいくのが、ある種の美しさ、ロマンを感じさせるのか。
だが実際に見る樹海の死体は、野犬や昆虫に食い荒らされ、野ざらしで無惨なものである。御世辞にも美しいとは言えないし、ロマンの欠片も無い。
そんな場所へ、今、一人の男が足を踏み入れていた。
白石みのるである。自殺志願者でもなんでもない。自分の意思で来たわけでもない。小神あきらから「樹海行って富士の名水を汲んでこい」と言われた。ただそれだけで、ここにいた。
一緒にいるはずのスタッフはいつの間にやら姿を消し、気付いた時には一人、遊歩道からはだいぶ離れてしまっていた。周りは四方同じ風景にしか見えず、方向は分からない。
遭難一歩手前というより、既に遭難していると言ってよかった。白石は青ざめた顔で、苔に覆われた地面に立ち尽くしている。
「ど、どうしよう……何とかしないと……」
一度入れば出られないと言われる富士の樹海だが、実際には入って出られないことはない。しかし木々が密集し、倒木などで極端に足場の悪い場所なので、深く入ってしまえば出るのが著しく困難となる。
もしも本格的に迷えば、多くは帰ってこられず、森の仲間達にフレッシュな動物性タンパク質を供給することになる。
そして白石は今、まさにそのコースへ足を突っ込んでいた。
「そうだ! この鞄……!」
白石は自分の背負っていたリュックを思い出す。出発の際に持たされた物だ。
「食料とか入ってるのかな……何か、ここを出られるような物が入っていればいいけど――」
期待を胸にリュックを開けると、そこに入っていたのは――
講談社コミックス『空手バカ一代』(全二十九巻)。
「これでどーせいっちゅーんじゃーっ!!!?」
白石、とりあえず空に吠えた。
「確かに大山倍達山籠もりしてたけど、状況が全然違うでしょ! 樹海で空手の修行しろってか!?」
ひとしきり突っ込んだ白石は、脱力してその場にへたり込んだ。
「困った……このままじゃマジで死ぬかも……」
何とか外界と連絡を取る手段は無いかと考える白石。
「そうだっ! 携帯! 最近はこのへんも通じるって聞いて――」
電池残量ゼロ。
「よりによってこんな時にてかちゃんと充電しとけよ俺の馬鹿――――っ!!」
再び吠える白石。富士の樹海に一人。持ち物は電池の切れた携帯と『空手バカ一代』とスタッフから渡された空のペットボトルのみ。
にっちもさっちもいかないとはまさにこのことか。
「くそぅ、どうすりゃいいんだ……ん?」
頭を抱えていた白石は、ふとリュックの底に白い封筒を見つけた。取り出すと、表に「小神あきらより」と書いてある。
「あきら様の手紙……? もしかして、何か役に立つ情報が……!」
早速中身を取り出して読んでみる。
白石さんへ
後任のアシスタントは決まってるから安心して逝ってきてね☆
PS:綺麗なのを汲んでこいよ。
「……」
白石、今度は吼えずに、手紙を握りつぶした。グシャっと。
「ふ……ふふふふふふ……」
不意に笑い声を上げ始めた。次第に体を震わし、大笑いに変わっていく。
「あーっはっはっはっはっは! わかったよ! 汲んでくりゃいいんだろう! やってやらぁコンチキショー!!」
絶叫するように声を上げながら、白石は歩き出した。もうほとんどヤケクソで。
……とココまで書いて放ったらかしたままにしてあったのでこのネタはここで終わりです
続きを考えるのは非常にめんどくさいのでここからは別な余りネタを書きます
人生一寸先は闇というが、私は今、その言葉をしみじみと心の中で噛みしめている。
「ねえかがみ。今度二人で旅行に行かない?」
不意に我が家を尋ねてきたこなたがそんなことを言ってきたのは、夏休みも半ばを過ぎた頃のこと。
「随分唐突ね。でも二人って?」
「いやー実はさー」
こなたはほくほく笑顔で白い封筒を差し出した。『特等』と墨書されている。
「商店街の福引きでペアの旅行券が当たっちゃって」
「へえ、凄いじゃない」
「うん。漫画だけかと思ってたけど、本当にこういうことってあるんだね」
「そりゃどこかに当たる人はいるだろ」
「まあね。それで、どうかな?」
「どうかなって……」
誘って貰えて嬉しいのが半分と、何故私を? という困惑が半分。
「こなたのお父さんは誘わないの?」
「仕事が忙しくて無理だって。ゆい姉さんも同じく。ゆーちゃんはみなみちゃんとの予定があるらしいし」
消去法で私、か……。
「つかさやみゆきを誘おうとは思わなかったの?」
「うーん、ちょっとそのへん考えたけどさ……」
珍しく言葉尻を濁したこなたは、黙っている私に向かって、含みありげな微笑を向ける。こいつのこういう笑いが、何となく苦手だ。嫌いなわけじゃないけど。
「ま、その辺は置いといて。行こうよ、かがみ。船で南の島。三泊四日だよ」
結局、何でつかさでもみゆきでもなく私なのかの理由は告げず、こなたは決断を迫ってきた。
……そういうわけで、私は今、夏の日射しが眩しく降り注ぐ島にいる。
白い砂浜に、水平線まで青く澄んだ海。箱庭のような規模の島は、南国情緒を思わせる豊かな自然に満ちている。
空はどこまでも広く、遠くには白い入道雲が圧倒されそうな雰囲気で鎮座していた。
地上の楽園を絵に描いたとすれば、こんな風景なのかもしれない。
ただ一つ、この島が正真正銘の『無人島』であるということを除けば。
「……乗ってた船が季節はずれの大時化に巻き込まれて、うっかり甲板に出てた私とかがみが海に放り出された後、気付いたらこの島に流れ着いてもう二日目か」
やたら説明的な台詞を呟いた後、こなたは大きく息をついた。ため息というほど悲観的なものではない。
「ここが、変なナマモノでいっぱいの南国少年な島だったり、天空都市から廃棄された生物兵器の失敗作がいっぱいの島だったり、明治時代から孤立している女しかいない島だったりしたら面白かったんだけどねー」
「全然面白くねーよ」
こんな状況でもマイペースを崩さないこなたに、こちらもいつも通りな突っ込みを入れてしまう。
人がいる島に流れ着いたならまだ対処の仕様があっただろう。……いや、だからといってこなたが言うような漫画チックな原住民は御免だが。
状況を再確認する。
今いるこの島は、一周するのに五時間とかからない小島。当然ながら四方は海に囲まれている。周囲に他の島影は無い。
植物は豊富で、食べられそうな実を生やした木もあった。こなたが率先して口にし、これらを食用に出来ると確認済み。また島のほぼ中央に小さいが湖がある。これもこなたによって、飲用に出来ると確認済み。
……警戒心がないのかこいつは。脱水症状とかなっても私には処置できないのに。
持ち物は無いに等しい。私もこなたも、着ていた服は海水に揉まれてぐちゃぐちゃだったが、それでも無いよりマシで身に付けている。水難事故だと、水に長時間揉まれるうちに衣服が脱げてしまうことも多いらしいから、この点は不幸中の幸いか。
「なにわ小吉の漫画にあったね。こういう都合の良い状況の無人島」
「また微妙に古いの持ってきたわね……」
――この話もココで終わりです
中途ハンパなのでもう一つ余ったのを書きます
ある休日。柊家に遊びに来たこなたは、何やら大きな紙袋を携えていた。
「何それ?」
「良い物だよ。壷じゃないけどね」
楽しそうな笑みを浮かべるこなたに、かがみは何となく嫌な予感がした。
とりあえずかがみの部屋で、つかさも一緒にその良い物とやらを拝見する。
「わー……こなちゃん、これって何?」
「見ての通りカチューシャだよ」
ただのカチューシャではない。猫耳やら犬耳やら、色々な動物の耳を模したアクセサリー付きのカチューシャ。それが紙袋いっぱいに詰まっていた。
「ケモノ耳はいいねぇ……ケモノ耳は心を潤してくれる。リリンが生み出した文化の極みだよ」
「どうしたのよこれ?」
「先日フリマで見つけてね。安かったからまとめて買っちゃった」
「こんなマニアックな物まで売ってるのか……」
「それがさー、これ売ってた人って別にオタクっぽくない、普通のサラリーマン風のオジサンだったんだよね。何であんな人がこんなの売ってたのか、全くの謎だよ」
「周りの人から見れば、こんな物を大量にまとめ買いしてるあんたも十分奇異に映ってたと思うぞ」
「まあ、それはさておき……」
こなたはいくつかあるカチューシャのうちから、迷わず一つを選んでかがみに差し出した。
「はいかがみ! Kanonの舞でお馴染み! ウサ耳カチューシャいってみよう!」
「来ると思った……」
予想通りの流れに、かがみはため息をついた。
「いいじゃん別に。遊びでカチューシャ付けるぐらい」
「そう言いながら、付けたらあんた絶対からかうだろ」
「天地神明に誓ってそんなことはいたしません」
「本当だろうな……」
気乗りしない様子で、かがみはウサ耳カチューシャを付けてみる。
「……どう?」
少々気恥ずかしげに尋ねるかがみ。
「「お〜……」」
こなたとつかさは二人揃って声を上げた。
「どういう意味の『お〜』だ……?」
「いやいや。凄く似合ってるよ」
「うん。可愛いね」
「正直ここまでとは思わなかった」
喋りながら、こなたは携帯のカメラでウサ耳かがみをロックオンする。
「ちょっ、何撮ろうとしてんのよ!?」
「あ、動かないでよ」
何とか写真に収めようと追うこなた。逃げるかがみ。
「こなちゃん、私もつけてみていい?」
「うん、是非とも……あーダメダメ! つかさはこっち! 同じ犬耳でも垂れてる方! こういうセオリーはちゃんと守ってくれなきゃ宇宙の法則が乱れる」
「どんな法則だよ」
ネタそうじ終了
読んで下さった方、ありがとうございました。
無人島編の続きを是非(・∀・)/
えーと。
これを すてるなんて もったいない!
さすが、没ネタでさえ輝いてますな。俺も無人島の続き希望に一票入れつつ、ぐっじょぶ。
俺は無人島で真っ先にフリテンくんを思い出したw
頑張れば脱出できるかもしれないけど孤独な白石と
二人だけど脱出の方法が見当つかないこなたとかがみはどっちが不幸だろう
無人島編が21話に本当に繋がりそうだから続編希望です!GJ
最近ニコニコだけじゃなく、ここでもみwikiさんが冷遇されてるのかと
>>621見て思ったが、
>>679のような人が居てちっと安心した今日この頃。
「やっぱり鼻血がいけないのでしょうかだばだば」
「「「まさにそれが原因です」」」
>>680癒されたありがとう
とはいえ自分のSSも他キャラの回想以外にみwikiさん出ていないことに気付いた
みwikiさんは胸が邪魔でお姫様抱っこできないからあえて外したと推測
683 :
埋めネタ:2008/02/26(火) 03:49:46 ID:PAakW8iW
誰か書いて!
「こなちゃんのアホ毛がなかったら」
「つかさのリボンが解けたら」
「みゆきの眼鏡がデジタル・ビデオ&スティルカメラ」
「かがみんのツインテールキャノン」
「そういえば、峰岸さんのカチューシャ・ネタってありませんね」
みさお「ガクガク・ブルブル…」
俺はこんなベタなネタしか出ない…
俺は無題でもきにならないな
何度も読みたいSSは無題でも勝手にわかりやすい題名つけてUSBメモリに保存
してるし
題名については各自自由で言いと思うし書いても欲しいかな?
無題でも良いけど趣旨やカプが分かってれば安心かな?
保管庫自体はあった方がうれしいし保管している方には毎度助かります
>>627 う〜んなんかループの醍醐味でもあるよね〜?
デザイア的な繋がりとリセットの繰り返しは切ないッスGJ!
あんらきもイイな
ジュワっとジュワジュワっと広がる頭の中はまるでめぇん☆
>>683 >「こなちゃんのアホ毛がなかったら」
保管庫にあったはず。弱気になっちゃうやつ。
あと地球破壊爆弾発動もあったな
688 :
683:2008/02/26(火) 10:55:28 ID:PAakW8iW
あ、すんません、こなつかみゆかがのが互いのパーツについて考えていたら
あやののカチューシャそのものをネタにした話は今まで出ていないないかなと思って
(気になって調べたら、保管庫でカチューシャで検索HITした中にもなかった)
で、各キャラの会話にみwikiさんが突っ込んだとたんに、
みさおだけが何かとんでもないトラウマになるくらいの
あやののカチューシャの秘密を知っていそうな反応をした
という単純なオチしか自分は思いつかないという意味です
あやののカチューシャネタでキャラ壊れでもしんみりな話でもいいから
埋めネタで書いていただけたらなと思ったんです
悪文ですんませんでした(ちゃんと分かっていただけるように書けているかまだ不安)
689 :
埋めネタ:2008/02/26(火) 11:37:30 ID:NodU80ft
>>688 即興で作ったんだけどうまく作れなかった、ごめん。
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最近大事件がおきた。
事件といってもあたしのなかでは大事件だ。
柊にはそうじゃなくってもあたしには事件だ。
<あやののカチューシャ>
その日は体育だったから、教室でせっせと着替えてたんだ。
もちろん、柊も、あやのも。
セーラー服脱いで、あやのが体操着に着替えたときに、あたしは違和感を覚えた。
あやのがハチマキをすると、黄色いのか。
いやいやそんなことはない、あれはカチューシャだ。
でも運動会ではどうするんだ?
カチューシャのまま出られるわけがない。
だって、黄組は存在しないんだから。
そんなことを考えながら、あやのを見ていたとき、
あやのがカチューシャに手をかけた。
その時だ。
「みさちゃんは?……どう思う?」
カチューシャを外した女がこっちを向く。
髪の隙間から見える目は、ぎょろり、とこちらを見ている。
三日月のように歪められた口から覗く白い歯が、赤く染まる唇を際立たせる。
赤い舌が、その唇をゆっくり舐める。
「ひぃあぁああああぁあごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな」
「………日下部?」
「あら?みさちゃんどうしたの?」
「妖怪だぁぁぁぁぁ妖怪がいるんだってヴぁ!」
あやのはカチューシャを外すと妖怪になるんだ、でも柊は気付いてない。
なんでだ、あの妖怪はなんなんだ!
「みさちゃん…怒るよ…?」
妖怪はこちらに手を伸ばす。
ダメだ、殺されるっ
「ひいぃぃぃぃ」
ごんっ
「いでっ!痛いぞ柊ぃ!」
「馬鹿なことやってないで早くブルマ穿きなさいよ」
691 :
埋めネタ:2008/02/26(火) 15:36:53 ID:Vne087wA
試験の時間中に書いてみた。
一応ゲームネタなのでまだ未プレイの人は注意してほしい。
話は桜藤祭より一ヶ月前に遡る。泉こなたらが所属する三年B組は、
かつてない論争の渦に巻き込まれていた。これは、彼女たちの大成功
の裏に隠された舞台の裏側の、さらにビフォーストーリーである。
暁に激情を照らしだす乙女
〜私とかがみんのラブアンドヴァイオレンスな日常を綴った一大抒情詩
byこなた 嘘を言うな嘘を!byかがみ〜
「やっぱ文化祭っつったらメイド喫茶だろ。」
「却下ー。それ男子が楽しみたいだけじゃん。」
「えー。似合うと思うんだけどなー。」
「あ、あの…意見があるのでしたら挙手で発言を…」
「…大変だねみゆきさん。」
「うん。そだねー。そういやこなちゃんはどうして何も言わないの?
私こなちゃんなら絶対コスプレ喫茶とか提案すると思ってたんだけど。」
「つかさ、着るのと見るのはまた別物なのだよ。ま、私にも案はあるんだ
けどね。確実に通すために機を待ってるってとこだよ。」
「それ、どういうこと?」
「じきにわかるよ。」
こなたがそういうとほぼ同時にドンッ!と、拳で木を殴ったような鈍い音
が響く。皆が驚いて前を向くと、そこには魔王が立っていた。
「おかしいですね。皆さん、どうなさったんですか?文化祭でやりたいこと
がたくさん出るのはわかりますけど、話し合いは喧嘩じゃないんですよ?
自分の言いたい事だけ言って、他人の話を聞かないなら、話し合いの意味、
ないじゃないですか。」
ひぃぃ、とみゆきに比較的近い前の席のほうの生徒が数人悲鳴を上げる。
それも仕方ない事と言えよう。それほどまでに圧倒的な威圧感がみゆきには
あった。
「少し、頭冷やしましょうか。」
そういうと、クラス全体が静まる。当然だ。先ほどここまで圧倒的な威圧感
を見せられたというのにまだ発言しようという勇者がいようはずもない。いや、
いた。
「どうぞ、こなたさん。」
そう、挙手をしていたその人物は泉こなたその人であった。
「演劇がいいと思うよ。フェイトで。」
エロゲーかよーとか声が上がったが、みゆきの視線を受けて押し黙る。結果
誰の反対もなく、その案は通ってしまった。
「敵を知り、己を知れば百選危うからずさ、つかさ。」
(すごい…こなちゃんが輝いて見える…)
「却下や。」
「ええ!?
っていたんですか黒井先生。」
「失礼やな。最初からずっとおったで。」
「で、却下って何でですか?」
いや、なぜと聞くほうがおかしくないか?とクラスの約半数が心の中で突っ込
むが誰も口に出さない。
「あんなー泉。フェイトやるには人数が足らへんやろ。」
ズコーッと、先ほど心の中で突っ込みを入れた約半数が吉本芸人も裸足で逃げ
出すズッコケを見せる。もちろん心の中で。
「大丈夫ですよ先生。C組もまだ決まってなかったはずですしそこと合同でやれば。」
「ふむ。まぁそれならええかもな。
ただし、C組の連中と協議してやで。」
もうもはや突っ込む気もなれないほか大勢。なるようになれの境地である。
かくして、演劇「フェイト/ステイナイト」が彼女たちの演目になったのだった。
主人公転入まで、あと三週間。
>>689あじゅじゅした〜、いえ面白かったです
こなたなら「見なかったことにしよう」で以後スルーできそうですけれど、
みさおの性格を考えると・・・
「大変だ、あやのがあやのが妖怪なんだってヴぁ!」と信じてもらおうとさらに誰かに言って回って
「ふ〜ん、日下部、で、その妖怪ってこんな顔だったかい?」
「ヴぁ───っ!」
(やっぱりセンスないな私、勝手に繋いでスミマセン)
35-335埋め投下いきます。
タイトルは
『そうじろうと、あるエロゲー』
ショートギャグかな?
1レス使用。
非エロです。
「いってきまーす!!」
「いってきます」
ゆうちゃんと、こなたが、揃って学校へ出掛け、家の中が急に静かになる。
一人家に残るそうじろうは、先日、入稿したばかりなので、今日は、わりと暇だ。
「溜まってるゲームでも、消化するかな?」
一人呟いて、自室に戻り、PCを立ち上げ、ゲームを開始した。
「これは!!?」
数分後、部屋から上がった叫び声。
それも、そのはず。モニターに映し出されてるのは、
青い長い髪に、幼い容姿。そう……まるで……
「かなた……」
これは、萌える&燃える。
なんとしても、攻略しなれば………
こうして、そうじろうは、久々にどっぷりとハマって、ゲームをしていたのである。
だから、忘れてたいた。
部屋に鍵をかけるのを。
そして、運命の神の悪戯か。はたまた、ゲームとは言え、浮気している旦那への、かなたさんの怒りか?
それは、起こる。
ゲームは佳境。
そうじろうの必死のプレイが実を結び、モニターに映し出されるのは、半裸姿の、かなたさん(仮名)。
「そう君……私、初めてだから………優しくしてね………」
「うは!!!」
会心の一撃!!そうじろうは、9999×10のダメージを受けた。
「もちろんさ!!!」
そんなことを呟きながら、片手はマウスを操作しながら、反対の手は、大きくなった息子に伸びる。
そうじろうは、ゲームに熱中してた。
だから、気付かない。
玄関が開いた音にも、小さな足音が、自室に近づいて来るのも。
『がちゃ!………ドサ!!』
自室のドアが開いた音と、何かが床に落ちる音。
それで、ようやく気がついた、そうじろうが振り返ると、そこには、真っ赤な顔した、ゆーちゃんが。
「あ……いや。その?ゆーちゃん?これは………?」
『世界』凍る時間。
その中で、ゆーちゃんの視線が、そうじろうの股間に向かう。
「すぅぅぅぅ………」
大きく吸い込まれる息。
そして、時は動き出す。
「きゃあああああああぁぁぁぁ!!!!」
その声は、家を突き抜け外まで。
そして、近くまで帰って来ていた、こなたの耳に入る。
「どーしたの!?ゆーちゃん!!」
駆け付けた、こなたが見たのは、叫び声を上げる、ゆーちゃんと、下半身丸出しで固まる、そうじろう。
「お父さん……いくらなんでも、リアルではしないって、信じてたのに……」
「違う!違うぞ!!こなた!!お父さんだって、最低限の常識くらい!!!」
「問答無用!!!!オラオラオラオラオラオラ!!オラ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
泉 そうじろう。
ある意味、漢の中の漢。暁に死す。
「死んでないよ!!!」
しまった。本文に書き忘れてた。
↑で終わりです。