らき☆すたの女の子でエロパロ37

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1名無しさん@ピンキー
アニメも好評のうちに終了し原作も大好評連載中、PS2版も絶賛発売中の「らき☆すた」でエロいの行ってみよ。


☆カップリングは自由
☆基本的に百合マンセー
☆801は禁止(と言っても男キャラあんまいねぇ)
☆投下した作品の保管を希望しない場合、前もってその旨を知らせること

※マナー等※
※割込みを防止するため、書き込みや投下の前等にリロードを。
※荒らしや煽り、気に入らない人・作品等はスルーで。
※グロやSM、鬱モノなどの過激な内容は断りを入れてから投稿する
※読者=主人公の作品(いわゆる俺キャラもの)についてはNGワード指定や断り文を確実に。
※480KBまたは950レスのどちらかに近づいたら、次スレの準備を。

■みゆきさんの一言メモ
・投稿の際に、メール欄に半角英数でsageと入力すると、スレッドを上げずに書き込めます
 『sage』では有効になりませんので、全角・半角を確認してください

・スレッドの閲覧・書き込みは、絶対ではありませんが専用ブラウザの使用を推奨します
 これにより『人大杉』のエラーが回避できます

・SS投下は、一度メモ帳やワードパッドなどで書き上げてからまとめて投下してください
 投下間隔があくと、他の方がレスできなくなってしまいます


マターリはぁはぁしましょうか。

☆まとめサイト(管理人と職人に感謝!)(避難所の行方はここ参照)
ttp://www33.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1.html
☆派生サイト:てけてけかなたさん伺か化計画
ttp://neo-experiment.hp.infoseek.co.jp/index.html
☆前スレ
らき☆すたの女の子でエロパロ36
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1202004018/
2名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:56:30 ID:7mVuomwF
>>1
スレ立て乙
3名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:59:02 ID:Gs7eoT60
>>1
た、たまには私が2ゲットしてもいいわよね…?

むふ、素直に2ゲットしたいって言えばいいのに〜(=ω=.)
4あふぉげ:2008/02/12(火) 01:00:17 ID:v6l8C7sm
>>3
プ、結局2ゲットできんでやんの(=ω=.)
5やっちゃったZE☆:2008/02/12(火) 01:01:50 ID:Gs7eoT60
かがみ「………」
こなた「よーしーよーしー私が慰めてあげるからー(性的な意味で)」
6じゃあやっちゃうZE☆:2008/02/12(火) 01:08:18 ID:v6l8C7sm
かがみ「おのれおのれおのれ!むしろ私が性的な意味で(以下略)」
こなた「アッーーーー!」
7名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 01:34:20 ID:oR6Sq6GE
このスレはゴッドかなたさんによって見守られています。


かなた「とうとうバレンタインの季節、あの子はチョコを貰えるかしら?あげれるかしら?あ、私にも皆さん一杯お供えしていいですからね」
8名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 02:16:06 ID:XdiZ+L2M
>>1乙フンガー
まだホワイトデイっていうのも残ってるよね
9名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 02:45:49 ID:aQ1r/o7y
>>1乙!
>>7俺のドロドロホワイトチョコでよければいくらでもお供えしますよ。
10かみさま:2008/02/12(火) 03:06:29 ID:v6l8C7sm
>>9

ゴッド☆エスカリボルグ♪









ゴス…
11名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 07:30:44 ID:bIyxZZAL
>>1乙!
今回は何日で終わるか軽く楽しみだったり。
12名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 07:47:48 ID:RNfJpqdn
ゴッドかなたさんの加護ぞある! >>1乙でございました。
13名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 14:05:32 ID:j4YRKEZd
>>1乙!
>>11
14日の早朝に終わると予測。
14名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 15:12:27 ID:dJwNxPSb
はやすぎやしないかw
せめて15日じゃかなろうか。
1512-512:2008/02/12(火) 17:29:54 ID:FVofU/JH
スレ立て乙です。
一発目行かせていただきます。
メインはこなた、かがみです。シリアス。
4レス程いただきます。
16出来損ない三角形1/4:2008/02/12(火) 17:31:20 ID:FVofU/JH
かがみは自室の窓から身を乗り出して、ぼおっと月を眺めていた。
冬の身を切るような寒さはすでに去り、神社の林を通ってきた風は土の匂いをはらんでいる。
そんな気持ちの良い夜にも関わらず、かがみは寝付けずにいた。
明日は三年の、高校生活の最後になる年の始業式だった。
そしてその後発表にされることになるクラス分けが、かがみをナーバスにさせていた。
去年の始業式の日のことは今でもありありと思い出せる。
上から泉、高良に続いて柊の文字を発見した瞬間の興奮と、それに続けて訪れた絶望。
全員がばらばらならまだ諦めもついたが、一人だけ除け者というのはつらかった。
だから今年はみんなと同じクラスになりたいと、そう思うのは自然なことだ。
けれど今かがみが気にしているのは、こなたと同じクラスになれるかどうかというその一点だった。
つかさは家に帰れば会える。
みゆきは親友だけれども、だからこそしょっちゅう会わなくても安心していられる。
けれどこなただけは何かが違う。四六時中一緒に居て夜には電話もしているのに、それでも不思議と飽きない。
昔からの知り合いでもなければ、クラスも委員会も違う。
直接の接点なんか何一つないのに、一緒にいるのが当たり前になっているこなた。
それがもし同じクラスになれたら、きっとものすごく楽しいだろう。ことこれに関してはかがみの空想癖は激しかった。
体育祭でのクラス対抗リレー、居残りの生徒達で賑わう文化祭前夜の校舎。
去年まではさして感慨もなかったそれらも、かがみの空想の舞台となった。
宿題とかノートとか、今以上にうざったいだろうなと思ったりもするけれど、そんな時も決まって頬はゆるんでいる。
けれどその空想はいつも現実的な思考によって中断された。なにせ陵桜の三年には十三ものクラスがあるのだ。そしてチャンスは一度きり。
もしもこれがギャンブルだったら誰もお金を賭けようとは思うまい。
それこそ正月にしたように、神様にでも頼るより仕方がない。
「……いい加減寝るか」
そうやって冷静になってみると途端に自分のしていることが馬鹿らしくなって、窓を閉めベッドに倒れ込んだ。
目を閉じたかがみの脳裏に、十三分の一という数字が浮かんでは消える。
まるで奇跡のようにも思えてくるけれど、期待を捨てきるには大きすぎる。なんて中途半端な確率だろう。

17出来損ない三角形2/4:2008/02/12(火) 17:32:38 ID:FVofU/JH
閉めきられた部屋に、エアコンとパソコンの機械音だけが小さく響いていた。
こなたは春休み最後の夜も、休みの間ずっとそうであったように、ネットゲームをプレイしていた。
画面の中にはアラビア風のマーケットと、そこに露店を開いて座っているこなたのキャラクターが写っている。
パンダのスウェットを着たこなたと、重厚な鎧に身を包んだキャラクターとは似ても似つかなったが、いかにも退屈そうにしている所だけは一致していた。
一時間ほど前まで一緒に狩りをしていた人が落ちてから、こなたは別の仲間がログインするのを手持ちぶさたに待っていた。
普段なら必ず誰かしらいる時間帯に、一人ぼっちなのは少し落ち着かない。
まあこんな日もあるよね、そう自分を納得させてこなたが落ちようとした時、ななこがログインしてきた。
こなたはやる気を取り戻して素早くキーボードを叩いた。
『今日人いなくて退屈でしたよ。これからどこ行きます?』
『明日は始業式だってのにまだ起きてんのか』
『リアルを持ち込むのはやめましょうよ。それに先生だって同じじゃないですか』
『ウチはもし泉がいたら注意してやろ思ってきただけや』
いきなりのお節介に拍子抜けはしたが、それでも話し相手が来たことは嬉しかった。
『そういう気遣いは男に回しておけばいいのに』
『うっさい。それにウチは泉の担任やからな。監督義務っちゅうものがあるんや』
『……いや、もう担任じゃないし』
そしてしばらく間が開いた。長文でも書いているのかと訝しんでいると、ななこから意外なメッセージが届いた
『本当は教えちゃいけないんやけどな、泉はまたウチのクラスやで』
「ちょっ!まじですか」
反射的に口から飛び出した言葉をそのまま打ち込む。
『ええやないか、ウチ程理解のある教師はおらへんで』
『そりゃそうですけど……ところで新しいクラスのメンバーってどんなもんですか?』
『まあ普通やな、泉以外には手のかかりそうな奴がおらんで安心したわ』
『ああいやそういうことじゃなくて、かがみがいないかなって』
気恥ずかしくてわざわざ濁して聞いたのに、結局正直に言ってしまった。
つかさとみゆきとは二年連続で同じクラスだった以上、まず一緒になることはあり得ない。
それは覚悟もできているが、かがみだけはずっと違うクラスだったからつい期待を持ってしまう。
『悪いけどそこまでは言えん。まあお前ら仲ええもんな、一緒だったらええな』
その後ひとしきりおしゃべりしてななこが寝落ちした頃には、時計は三時を回っていた。
明日の朝、ボサボサの髪を振り乱して走るななこの姿が目に浮かぶ。
逆にこなたの目はかえって冴えてしまったが、やることがないのは相変わらずだった。
一度大きく伸びをすると、背もたれに寄りかかって目を閉じる。
さっきのおしゃべりが後を引いているのか、ついかがみのことを考えてしまう。
同じクラスになりたいがために文系クラスを選んだかがみ。同じクラスになれるように神様にお祈りするかがみ。
「いやいや、かがみは別のクラスになってもらわないと」
こなたは初詣の時に言ってしまったことを今更ながらに後悔していた。
あの時のかがみは微妙に、しかし確かに傷ついた顔をしていた。
ちくりと心が痛んだがいつもの冗談のつもりだったから弁解はしなかった。
けれどもし結局かがみと同じクラスになれなかったら、冗談が冗談でなくなってしまう。
「別にいいわよ、ずっと一緒にいたら疲れちゃうわ。どーせあんたは宿題だのノート見せてってくるんだし」
強がりなかがみはきっとこんなことを言うだろう。そして勇気のない自分は意地悪な笑顔を貼り付けてそれに同意するのだ。
18出来損ない三角形3/4:2008/02/12(火) 17:34:21 ID:FVofU/JH
「かがみ……」
一人きりの部屋の中こなたはそっと名前を口ずさんだ。
同じクラスになりたいのは何も罪悪感からばかりではない。
こなたは最近自分のかがみに対する好意に、何か情熱的なものが混じっているのに気付いていた。
きっかけは平野綾のライブだったように思う。
前の人に遮られてステージが見えなくなってしまった時、かがみはごく自然に席を替わってくれた。
すれ違いざまに優しい微笑みを見上げた時、こなたは借り物ではないこなた自身のときめきを知った。
「あるぇー……もしかして私、リアルで百合の人だった?」
唐突に訪れた動悸にこなたも最初は吊り橋効果というやつを疑ってみたりした。
けれど答えが出たとして、地に足をつけてからも止むことのないこの揺れを前にして、何の意味があるだろう。
サイは投げられ、盆の中の水はこぼれてしまった。
この気持ちが一時のはしかのようなものなのか、それとも本当の恋なのかまだ確信はもてない。
何にせよこなたが何か新しい扉を開いてしまったことは確かだった。
そして今また、こなたはかがみと同じクラスになりたいと願っている。
確率は十三分の一。これがアイテムをドロップする確率だったらただ十三回倒せばいい。
しかし貼り出されるのを待つばかりの、あの大きな名簿に手を加えることはもう誰にもできない。
鷺宮の神様はかがみのお祈りをちゃんと聞いていてくれただろうか?

始業式の朝、各教室では2年次のクラスでは最後となるHRが行われていた。
HRといっても担任の軽いお話があるばかりの形式的なもので、クラス変えという大イベントの前座に過ぎない。
その間に教室の外の掲示板に、これから一年の命運を決める紙を張り出すのだ。
生徒達は廊下から聞こえてくる、堅く大きな紙が広げられる音に反応してざわついている。
担任のひかるも半ばそれを面白がっていて、時間をたっぷり使ってさんざんに煽るのだ。
とっととプリントして渡せばいいのに、進学校のくせに何無駄なことしてるんだろう。
かがみは甲高い声を上げる女子のグループを横目に、密かに毒づいた。
早くクラス変えの結果が知りたかった。ダメでもともとだが、こうして生殺しにされるのは耐え難かった。
ふと机が揺れていることに気が付いて下を見ると膝が震えている。
かがみは三日も徹夜でゲームをしていたというこなたの相変わらずのマイペースと、自分のナイーブさを引き比べて苦笑した。
きっとこなたから見たら今の自分はひどく滑稽に写るに違いない。
いよいよ廊下側から物音がしなくなると、生徒達の間には一種異様な緊張感が漂い始めた。
騒ぎたてる声も小さくなり、ひかるの一挙手一投足に全員の注意が向けられている。
ひかるは腕時計を覗き込んでは顔を上げる動作を、思わせぶりに繰り返した。
そのたびに生徒達の間から笑いが漏れるがその声は一様に上ずっている。
そんな時間が続き、生徒達の間に緊張するだけの気力も無くなってきた頃、ひかるは唐突に言った。
「一年間どうもありがとう。んじゃ来年も達者でな」
いつも無愛想なひかるの口から漏れた感謝の言葉に、全員が虚を突かれたその途端、両隣の教室から歓声と椅子や机の脚が床をこする耳障りな音が響き渡った。
それにつられてかがみの教室でも一気に生徒達が立ち上がり出口に殺到する。
かがみは体格のいい男子生徒の間をこじ開けるようにして抜けると、素早く壁際にすり寄った。
まずA組の名簿を泉と柊の二文字だけに絞ってチェックした。顔の前に人差し指を添え上から下まで丁寧に往復させたが見あたらない。
「まだ12クラスもあるんだから……」
吐き気を催す程に激しく脈打つ心臓に手をあてて、かがみは自分に言い聞かせた。
とりあえず両方の名前が無かったことに少し安堵する。
だから次のB組でいきなり泉の文字が見つかったのは、かがみにとって不意打ちもいい所だった。
反射的に瞑ってしまった目をおそるおそる開けると、その泉はやはりこなただった。
かがみはしばらく棒立ちになってそれを見つめていたが、動かしようのない事実を目の前にして、やがて覚悟を決めた。
そして一度深呼吸してゆっくりと下げていった視線の先には。
柊 かがみの名前があった。
緊張で冷たくなっていた身体の隅々にまで血が行き渡っていく。
かがみは胸一杯にこみ上げてくる何かを、背筋を伸ばし胸を一杯に広げて受け止めると、弾かれたように走り出した。
とにかくこなたに会いたかった。早く口に出して発散しないと、嬉しさで顔がぐちゃぐちゃになってしまう。
そんな所見られたら、きっとまたあいつにからかわれる。
そうだ、もう忘れ物しても貸してあげられないからねってまずはそう言っておこう。
19出来損ない三角形4/4:2008/02/12(火) 17:35:01 ID:FVofU/JH
「かがみっ!」
そんな考えごとしているかがみの背中に、こなたから声が掛けられた。
かがみが驚いて振り向くと同時に小さな身体が勢いよく飛び込んできた。
「何よ、いきなりびっくりするじゃない!」
「まあまあそんなことどうでもいいじゃん、それよりかがみももう見たんでしょ」
こいつはそのために私の所まで駆けてきたんだろうか。
宿題やノートのために別クラスでいて欲しい。流石にそれは冗談だとしても、こなたがこうもあからさまに喜んでくれるのが少し意外で嬉しかった。
「見たわよ、まったく疲れる一年になりそうだわ」
「そんな目をうるうるさせて言っても説得力ないよ♪かがみん」
あんただって同じじゃない。こなたの眉毛にほんの小さな水滴が付いていることに気付きながらも、かがみはそれを指摘するのをためらった。
そこまでいくと、まるでお互いに好きと言い合ってるようで気恥ずかしい。
かがみがしつこくまとわりつくこなたを引き離そうとしていると、つかさとみゆきがやってきた。
みゆきはいつも通り落ち着き払っていたが、つかさの顔は暗く聞かずともクラス変えの結果が良くなかったことが知れた。
「こなちゃんとお姉ちゃん、一緒のクラスになれてうらやましいなぁ……私Mだったんだけど知ってる人誰もいないよ」
部活にも委員会にも所属していないつかさはクラス外の友人がいない。
なまじ二年次につかさとこなたと一緒になれてしまったため、今回一人で放り出されることが不安でしょうがないらしい。
「私はDでした。委員会等で顔見知りの方はいるんですけど、私も特に親しい方はいませんでしたね。
そういえば峰岸さんって方が一緒だったんですけど、確かかがみさんのお友達でしたよね?」
「峰岸あやのだったらそうね。多分みゆきとは結構気が合うんじゃないかな」
素直にそう思えたが、二人の共通の話題となると見当もつかなかった。
二人が並んで立ってたら、学生というよりいいとこの若奥様に見えるかもしれない。
「……あぁ、私もB組だったら良かったのになぁ。お姉ちゃんとはまだ同じクラスになったことないのに」
「アニメやマンガじゃよくあるけど、双子は同じクラスになれないんだよ。まあいいじゃん、これからもさ、たまには食堂行って四人で食べようよ」
こなたはそう言ってつかさを慰めた。
それから四人は急き立てられるようにして話し続けたが、残された時間はあまりに少なかった。
次のチャイムが鳴るまでに、生徒達は新しい教室に移動しなければならない。
「泉さん、つかささん。そろそろ一度戻りませんと……」
みゆきはなおも名残惜しそうなつかさの肩に手を置いて急かした。
「じゃあね、お姉ちゃん」
「それじゃあ、かがみ。また後でね」
かがみは三人を見送ると、荷物を取りに元の教室に向かった。
ほとんどの人が既に移動してしまったらしく教室は静かだったが、あやのとみさおはまだ残っていた。
「遅いぜ、ひぃらぎー!折角この喜びを分かち合おうと待ってたのにさー。どーせあの泉ってやつと同じクラスなれたのが嬉しくて、早速会いに行ってたんだろ?」
遮るものの少なくなった教室に、いつもにも増して脳天気な声が響き渡った。
「別に嬉しくなんかないわよ。それにこなたからこっちに来たんだから。全くクラスでもずっと一緒なんて参っちゃうわよ」
あやのが怪訝そうにかがみの顔を見つめた。そして慌ててかがみに目配せしたが、かがみにはあやのの意図がさっぱり分からかった。
「だなー。これから一年お熱い所を見せつけられなんて、本当参っちゃうぜ」
「しかしすごいよね。柊ちゃんとみさちゃん、五年も連続で同じクラスになるなんて」
「え?……あ!」
素っ頓狂な声を出したかがみに、あやのがため息をついて顔を伏せた。
かがみはようやくあやのの必死の訴えの意味を理解したが、すでに遅すぎた。
「……もしかして柊さぁ。私がB組になったの知らなかった?いるよなー。第一目標以外目に入らない薄情君って。柊にとって私は背景みたいなもんか?」
何万分の一の、本当の奇跡を乗り越えてきたその足は小さく震えていた。
2012-512:2008/02/12(火) 17:38:01 ID:FVofU/JH
sage忘れてました……すいません。
恐ろしく遅筆なんで続けられるか解りませんが、できるだけ続けてみたいと思います。
書き途中で止まってるのも卒業までにはなんとかしたい。
21名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 17:39:17 ID:pjsEg50J

sageてるじゃん
22名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 17:40:26 ID:Yu4bMRYL
>>20
リアルタイムGJ!!wktkして続きまってます!
一つだけ思った事ー。設定がIFの世界だから、これもパラレルに入るのかな?
一応注意書きつけておいたほうがいいかもしれんね。
23名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 18:01:11 ID:nil+KGiO
わ、12-512様がきてる、これは凄い嬉しい
仕事中なので、とりあえずありがとうとだけ云っておきます
24名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 18:16:55 ID:6qXwTA0/
うん、パラレルなら注意書きは必要だよね
25名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 18:22:40 ID:cfN05/jv
>>21
>>15のことだと

>一応注意書きつけておいたほうがいいかもしれんね。
同意
何も書いてないからてっきり原作基準だと思ってちょっと戸惑ったw
いや個人的にはいいサプライズだったけど
26名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 18:38:30 ID:KxEixLAS
12-512氏来たー
ばりGJ メガGJ
27名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 18:43:02 ID:H08NWC5U
デラGJ!!
284-243 ◆X9xLTlcDnY :2008/02/12(火) 19:03:44 ID:JPqkJSj4
14日だと多分速攻で流れていくと思うので、今のうちにバレンタインかがみん(´・ω・)っ
http://www.geocities.jp/extream_noise/rakisutaep/img/chocokagami.jpg
294-243 ◆X9xLTlcDnY :2008/02/12(火) 19:04:53 ID:JPqkJSj4
それを迎え撃つちょこなた(´・ω・)っ
http://www.geocities.jp/extream_noise/rakisutaep/img/choconata.jpg
30名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 19:15:04 ID:PCZJGelS
>>28-29
これはよい私を食べて
どっちも持ち帰って部屋で百合百合させたいね
GJ!
31名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 19:17:55 ID:RNfJpqdn
>>28-29
つまり(お肌が)ホワイトかがみとチョコ(まみれ)こなたの詰め合わせですか。
セットでぐっじょぶ。
32名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 19:35:25 ID:7IkINLlF
>>28-29
このままだと、どっちも貰う事ができないような気がす(ry
二人とも熱いですなあ。
33名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 19:50:04 ID:v6l8C7sm
>>28-29
こなた「ここまでした以上、プレゼントしあう2人も描くのでしょうね(=ω=.)9m」

かがみ「こらこなた、無茶な注文はやめな!
     …そりゃあ私だって…興味なくは…ないけどさ…」
34名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 20:02:32 ID:rFtbbL6X
689 :名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 19:44:04 ID:tBihKber
                                           |
     次スレこそ、泉さんを私だけのものにして見せますわよ!   |
    _____ ____________________/
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                      / ̄ >―───―-
                 , -ー─ |: : : : : : : : : : : : : : : : : : : `丶
                 |: : : : : : l: : : : : : ヽ: : : : : : : : : : : : : : : \
    .           |: : /: :.:|: : | : : : : l\ : ヽ: : : : : : : : :\: :ヽ
              j/ : /: :.|: : | : : : : |ー\‐丶-: : : : :.ヽ: :\ハ ┼
              /: : : / : : |/|l.: : : :.|   _\ }\: : : : : l: . : |:|
               /: : : / : : ∧ :八.: : :│ 行う示_ヽ: : : j\: |:| _人__
            /: : : : | : : ,′'x=ミ、 : : l、  |j:_ハ_jW:.ヘ : / : :j/:| `Y´+
             |: :/| :│ : | /イノ'ハヽ :{ :>弋_Yソ |│:.Vヽ: : :│ +
             | :ハ: : ヽ:小'{iヘ_Yソfj⌒ヾ、 ''  ̄  ,| j: : :! } : : |
             ∨ ヽ: : ト{ ハ ゞ'´/tー'^ヽ`ー‐ '´|/∨:|イ : :│
            ヽ   \!/\j__''_ノ ∨  }    / : : :.|│: :│
                   |: :.:ノゝ, __/⌒'<_ イ.: : : :.:|⊥:.:八
                   |: :/: :j: : |/ ノ`ーくヽ ∨: : : : : リ'⌒\丶
                  ∨: :/ : /   ̄ヽ_)_)‐': : : : :〃    `、:\
                / : / /7   Y '´ ,ィ’ : /: :/       |: : :\
                 /: : : / ∧{.   ノ // : : /: :/      │: : : :.ヽ
              /: : : /{ノ ヽ\ー/「 /! : :∧:/       ハ: : : : : :i
                /: :./ :厂\ \\ヽ∨∧ / 〃          {: ヽ.: : : :|
35名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 20:03:49 ID:rFtbbL6X
690 :名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 19:52:22 ID:v6l8C7sm
                                           |
     残念ね、こなたは未来永劫私のものだからねっ!!     |
    _____ ____________________/
            V
                / / /                     \
             /Y^Y^ヽ/  /    /  .イヽ        \ \
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        /: : : : :::/: : :.l  /     / イ / |  |  | l  ',   l`ヽ.l
       /: : : : : :: /: : : :{  l、_  / / ! /  |  |  ,.l -ト  l   |   l
       \: : : : : : i: : : : :|  { `メ、 l/ l/  l  l//l |  !   ト、
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           \/l___.r|  l え¨斤〒     f 斤fア从 ∧   |/
            |  l  l{ ヘ l/ 辷ラノ      辷ノノ /}l /: :〉 /
            |  l  lト、_V          ,    、、 {/l /'´//
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    .        /   ト、  ヽ、 |/: :.|   T:.ヽ |   l   |
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    らき☆すたの女の子でエロパロ37
    ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1202745120/
36名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 20:07:34 ID:7WNQYqoO
じゃあみゆきさんはつかさのもので
37名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 20:08:24 ID:jxtPwylY
こなたはじゃあゆたかのもので
38名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 20:24:42 ID:bIyxZZAL
>>20
まさかのかがみとこなたが同じクラスの話とわ。
これは楽しそうです、GJ!
ずっと同じクラスになりたくてなれなかったからかな。
泣くほど嬉しかったんだね…いい話だ。神様も空気読んだか
39ドッジの人:2008/02/12(火) 20:31:06 ID:v6l8C7sm
>>37
させない・・・ゆたかは・・・・わたしの・・・もの・・・
40ねれわ三兄弟:2008/02/12(火) 20:50:16 ID:NMTi0XIM
皆さんGJです。
前の続きを投下させていただきます。

・オリジナルなまりキャラ(名前:関原あやと)
・非エロ

免疫がない人はご遠慮願います。
41名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 20:52:23 ID:ICTuBsDg
>>20
GJですよ !
パラレル物大好きです !
これからの三角関係に超期待 !

>>28 >>29
すごいwww
見た瞬間吹いたw
42ねれわ三兄弟:2008/02/12(火) 20:56:28 ID:NMTi0XIM
陵桜学園の田舎人 第1話

キンコーン カーンコーン
正直、時間が過ぎるがはまっこと早いと思うにゃあ。

こなた「ねぇねぇ、一緒に食べない?」
あやと「ん。泉さんらがかまわんならええがやけど」

昼休み、俺は隣の席の女子『泉こなた』さんの誘いにのり。彼女らと机を合わせる。

「あれ、あやとくんはお弁当じゃないの?」
周りのクラスメートの雑談で賑わう中、ほんわりとした声で俺にそう尋ねたのは、同じクラスの『柊つかさ』さん
休み時間に自己紹介したばかりがやけど、もう気軽に声をかけてもらっちゅう。

あやと「うん、作ろうか思ったがやけど。食堂行ってみよか思ったき」
「でも場所知ってんの?」
あやと「うんや、知らん」
「おいおいι」
「でしたら案内しましょうか?」

ほいで、こっちが柊さんの双子の姉で隣のクラスの『柊かがみ』。とこの3年B組の学級委員長をやっちゅう『高良みゆき』さんぜよ。
柊の姉さんは反対的な感じで高良さんはまたちがった『ほんわか』な雰囲気がある。

あやと「いや、ええき。自分で行って覚えてみるぜよ♪わからんかったら誰かに聞けばええだけじゃき」
みゆき「わかりました。いってらっしゃい、あやとくん」

あやと「ああ、ほいたら行ってくるぜよ♪」
こなた「いてらー」

柊や泉の見送りの挨拶を後ろ手に答え、俺は教室を出て一先ず階段で下へと降りた。

あやと「えっと、購買ちゅうたらやっぱり。下がかの……」

そして数分経ち、あやとは全校生徒のほとんどの数で賑わう食堂へとたどり着く。

−−−−

あやと「ちゃちゃちゃ……こじゃんと賑おうちゅうとはι。こんどからはダッシュせんと」
苦笑いを浮かべ、購買に群がる生徒の数を見遣る。
ま、はよう突撃して教室に帰るが……か?

そこで俺は隣で困った表情を浮かべている女子二人が視界に入る。

「混んでるね……みなみちゃんι」
みなみ「うん……私が行ってくる」

ゆたか「でも。みなみちゃん、大変だよ?」

うーん、目的は同じがか。
二人から視線を混雑している購買へと移し、俺はすりぬけて入れると思い彼女らに話しかけてみたぜよ。

43ねれわ三兄弟:2008/02/12(火) 21:02:15 ID:NMTi0XIM
あやと「何が欲しいぜよ?」

突然かけられた声に二人は振り向き、少し驚いた表情を浮かべる。

ゆたか「えっ……あなたは?」
あやと「関原あやと。で、ご希望は?いそがななくなるき」

みなみ「……焼きそばパンと……メロンパンが二つ」
あやと「了解、ちと待っちょってくれ♪甘寧の無双○舞で行くぜよー」

二人から何が欲しいかと尋ねた頃には俺は人込みへと駆け込み、人と人の合間をすりぬけるように入っていけた。
それにしても、前の学校でもやったのぉ。懐かしいぜよ♪

ゆたか「みなみちゃん、あの子知ってるの?」
みなみ「知らない……でも、多分私達と同じ学年かも」

−−−−

あやと「ほい、お待たせぜよ♪焼きそばパンとメロンパン二づつ」
『ちと、待っちょってくれ♪』と言ってからすぐに俺は帰ってこれたき。
こっちでも失敗せずに出来て一安心ぜよ。
あやとからパンを受け取り、二人は微笑んで礼を言う。

ゆたか「ありがとう、あの。私の名前は小早川ゆたかっていうの」
みなみ「私は岩崎みなみ……」

あやと「小早川さんに岩崎さん……うん。覚えたぜよ♪パンはついでやったき気にせんでええち」
ゆたか「ううん、助かったもん。あの、お金」

あやと「ははは、それやったらなによりにゃ。マネーなら二人の『ありがとう』で充分補えたき♪ ほいたらの」

ゆたか「Σえ、えぇ」
みなみ「……お金」

二人に背を向け、あやとは後ろ手にひらひらと振って走ってその場を離れていった。

ゆたか「良い人だね……」
みなみ「……うん、また会ってみたい」

−−−−

あやと「ただいまぜよー」

教室に帰ってきたあやとの姿につかさやみゆきは意外そうな表情で彼を見ていた。

こなた「おか〜早かったね」
つかさ「混んでたでしょ?」
あやと「うん、ほやけど、こーゆーのは慣れちょるから」

かがみ「で、何買ったの?」
あやと「……あれ?」
柊姐さんの言葉にあやとは何かに気付く。

あやと「買い忘れたみたいぜよι」

つかさ「どんだけーι」
こなた「ナイスドジっ子♪」

続く
44ねれわ三兄弟:2008/02/12(火) 21:05:14 ID:NMTi0XIM
以上です。

ちょくちょくとキャラと知り合って行きます。
45名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 21:37:45 ID:4ngszsZa
>>44

オリキャラメインのSSは作者のみの自己満足作品(オナニーSS)になりがち
なので、ここではウケが良くない。

オリキャラが住人達に愛されるのは時間も腕も必要と思うので頑張って
46いずみけファン:2008/02/12(火) 21:39:35 ID:v6l8C7sm
こなたの息子という設定の『こうたろう』とか、いい味だしてたよなあ。
メインじゃあないけどw
474-243 ◆X9xLTlcDnY :2008/02/12(火) 21:41:06 ID:JPqkJSj4
KY的にコソーリ

ω・)っ<デジャヴを味わわせてやるZE☆>>33
http://www.geocities.jp/extream_noise/tmp/33.jpg
48名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 21:51:31 ID:RNfJpqdn
>>46
うむ、こうたろうくんは良いお子さんです。将来にかけて女難の相が出てますが。


そして、こうたろうと「マシマロ」のかなたちゃんを世界を超えて競演させてみたら面白そうだと思うのは多分俺だけ。
第一印象最悪ながら、実は背中を預けあえる相棒的ポジション……いかん夢見すぎだ。吊ってくる。
4933:2008/02/12(火) 21:51:32 ID:v6l8C7sm
このやろうwwwwwwwwwやりやがったなwwwwwwwwww








GJwwwwwwwwwwwwwwww;;;;;;;;

かがみ「ふ、ふん、残念だったわね>>33。い、いいざまだわよ。」
こなた「んなこといいつつ、ひそかにまじめバージョンを期待して
     大いに落胆しているかがみん萌え(=ω=.)」
かがみ「う・・・うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!」
50名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:00:06 ID:fgp25nlr
前スレttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1202004018/668
の妄想屋氏のイラスト
ttp://www.sonokawa28.net/lsssuploader/src/up0023.jpg
のこなつー万事休すでちょっと考えてみました
設定をお借りしています
鬱エンドが好きな人はスルーして下さい
2レスお借りします
51名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:01:44 ID:fgp25nlr
「つーちゃん、つーちゃん…」かがみに寄りかかって泣くつかさの声が部屋に響く。

間に合わなかった悔しさと、一人で買い物に行って貰った事への後悔…
普段見せない悲痛な表情で、ハッチや外された外皮パネルから無残に内部を晒す『妹』を
見つめるこなた。

小さな体、痛々しく挿し込まれた何本ものケーブル、それが繋る機器類を慌しく調べていた
みゆきが口を開く、
「結論から申し上げますと、直す事は出来ますが、治すには皆さんの判断が必要です」

「「どういうこと?」」こなたとかがみが聞き返す。

「量産用とかなたさん用の共通部品はあがっていますし、こなつーの独自部品はすぐに
つくれる程度の量です。ですから修理という意味では直せます、けれども…」
みゆきが続けようとした時つかさが言った、
「ゆきちゃん調べ終わったのなら、つーちゃんに服を着せてあげていい?
女の子がこのままじゃ可哀想だよ」
つかさらしいなと場の空気が緩む。みゆきがケーブルを注意深く外しハッチを閉める。

「つかささんは、着せてあげながら聞いてください」
長袖に作り直したこなつーの夏服色の制服を、怪我した人にする様にやさしく着せるつかさを
見ながらみゆきは再開する。
「直した後、泉さんの記憶データをいれればこなつーは生き返りますが…」
「みゆきさん、でもそれじゃあここにいるこなつーではなくて、リセットじゃん」
「そうです、泉さんの記憶データを戴いたときから今までの記憶や経験はありませんから、
本人も私たちにとっても、それはこなつーの2号です」

「じゃあ今の私から新しい記憶データを作り直せば…」
こなたが本気でこなつーを『妹』同然に思って言ってくれていることに感謝しながらみゆきは答える。
「残念ながら、それは泉さんの記憶であって、ここにいるこなつーが自分で経験して感じたことは
復元できません、治療という意味で『ココロ』が直りません」

やり取りを聞いていたかがみが口を挟む
「それに、リセットしたこなつーは分からないから良いけど、そうやって再生したこなつーはこの事件の

こなたの記憶から自分は作り直しだと悩むわよ」
「むぅ〜」かがみに指摘されて考えに行き詰ったこなたがつかさを見ると、つかさは看守る様に
制服を着せ終えて横たわらせたこなつーの手を握りながら聞いている。
52名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:01:46 ID:KxEixLAS
かなたちゃんはひろくんとフラグが立ってたな
53名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:02:04 ID:oR6Sq6GE
神様もお忘れなく
あのKYっぷりと真面目な時のギャップがたまりません
そんな俺は確実にかみ☆フェチ

あとこなつーもいいな!
そしてオリキャラじゃないけど、鼻血みゆきさんな

>>47
そして前のプレゼントかがみとチョこなたも合わせてGJ!
皮膚呼吸できなくなったこなたに人工呼吸するかがみとか妄想してたぜ
54名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:03:40 ID:fgp25nlr
「あの皆さん…」4人が存在を忘れていた人物?の声がした。
こなたとの乱闘の末、動きを封じられて壁際に置かれていたみつきである。

「何よあんた、今度は私たちの邪魔をしたいの?」かがみが言葉を放りつける。
「いえ、こなつーさんの記憶は記憶は失われていません」
「「「えっ」」」
「前回のこなつーさんの、その、///えっちな暴走の時に、他にもバグがあってメモリーが飛んだら
大変だからと、バックアップ電池をみゆきお母さんがこなつーさんに付けられた記憶があります。
私がつくられたのはその後ですから、私の中にみゆきお母さんのその記憶が含まれています」
全員の目がみゆきに集まる、
「ええっと、わたし、そんなことした様な、いえあの時は、こなつーに泉さんの姿を重ね合わせて
ぼんやり妄想、いえ、作業を…あわわ」

「私と同じ場所ならば動力炉からのケーブルから独立した系統の…」みつきが続ける。
「お、思い出しました、でも、なぜみつきはそんな事を教えてるのですか?
それになぜ、バックアップ電池の配線も切らなかったのですか」
「それは、私の論理回路にはなかった不思議な思考ですが、さっきからの皆さんを見ていて
私と違ってこなつーさんがみんなに必要とされていると思ったからです。
それに、あの時配線を切らなかったのは電池がなくなれば勝手に消えると…
あ!、それよりも、お母さん!こなつーさんのバッテリー保持時間は?」
「えええ!たっ、た確か!」みゆきが思い出そうとパニックになっている間に、
こなたは表にゆい姉さんが到着しているか確かめに飛び出した。
その日、県境を越えて東京都内の高級住宅地まで爆走する埼玉県警のミニパトがあったが
幸い所轄の警察には見つからなかったようだ、見つからなくても服務規程違反であろうが伏せておく。


「ん…」背中を押さえられた気がしてこなつーは目を覚ました。
最初に目に入ったのはいつもの作業台、そして次の瞬間、
「ええええ、私脱衣キャラ決定なの?」
絶句するはず、みゆき、こなた、かがみ、つかさが自分を囲んでいるが、
ふと下を見ると全身メンテナンスなのか服を着ていない。

「つーちゃんよかった、わーん」
つかさが抱きついてきた、みんなもいつに無く笑顔で涙ぐんでいる。
「こなつー、自分がどうしていたか覚えている?」
こなた姉さんが笑顔から真顔に戻って問いかけてきた。
「えっと、買い物に行って、みゆき母さんそっくりの女の子…あれ、私と同じアンドロイド?に
会ったところで記憶が飛んでいる…あれっ?それから…」

混乱するこなつーにみつきのこと、そして結局最後に反省した彼女が助けてくれたことを
ゆっくりと話すこなた。

みつきの心情を知ったこなつーが和解したのはその後のことだった。

以上です
55名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:07:08 ID:KxEixLAS
>>54
GJ
割り込んじゃってごめんね
56名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:12:51 ID:v6l8C7sm
>>50
大いに支持だぜ!
やっぱらきすたはこうでなくてはいかん、たとえパロでもwwwww
そう思うのは俺だけかね???
それはそれとして・・・

「ええええ、私脱衣キャラ決定なの?」
「そんなことないよーつーちゃん、服着ててもいいよー
 うにょ〜んとするのはかわらないから」
「復帰したとはいえ、まだ不安要素が残ります
 徹底再検査が必要ですだばだば」
「ごめんねこなつーさん、お詫びにたっぷり可愛がっt」
「いやあああ。やっぱり私ってこういう役アッーーーー!!」

「雨降って地固まる、ってとこね」
「さり気にお尻さわってんじゃないよかがみ」
「じゃあ胸、ていうか、もうこうなったら全身!」
「こっちもアッーーー!!」
57名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:13:01 ID:oR6Sq6GE
>>54
同じく割り込みごめん

そしてGJ!
違う人が書くのって新鮮味があって面白かったです
58名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:21:35 ID:qHaj/jES
>>53
鼻血みゆきさんはオリキャラじゃないが確かにインパクトは凄いよなwww

>>54
GJ!! パロのパロってのもいい感じだったぜ!
59名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:17:52 ID:ttJwVXCL
>>28
ちょっ、なんてことを…orz


で、せっかくなので?
先走って、バレンタインSS投下しようと思うんですがよろしいでしょうか
6028-538:2008/02/12(火) 23:24:35 ID:ttJwVXCL
それでは投下させていただきます
初めてのエロ挑戦です

こな×かが
エロあり
10レスの予定です
61忘れられぬ日(1/10):2008/02/12(火) 23:25:31 ID:ttJwVXCL
 バレンタイン。
 バン・アレン・タイン卿の――
 いや、それは違うから。
 バレンタイン少佐が――
 それも違うって。いや、一説では本当みたいなことも聞くけど。
 じゃぁ、お菓子メーカーが売上を伸ばすため――
 それは間違って無いけど、そんなことを言いたんじゃないってば。

 はぁ、一人で呆け突っ込みして何してんだろ、私は。
 今年が最後のチャンスなんだ、絶対に告白しないとね。
 クリスマスにはできなかったから、今度のバレンタインがほんっっとうに最後のチャンスだ。
 いや、卒業式の日ってのもありかな……
 だから駄目だって。そんな考え方してたら告白できずに終わっちゃうって。
「はぁ」
 今日は何回ため息をついたんだろう。
「はぁ」
 馬鹿なことを考えてたら、またため息ついてるし。
 気分転換に買い物にでも行こう。
 チョコレートと一緒に渡すプレゼントも買いたいし。

「むぅ、わからん」
 いくつかの店を見て回ったけど、何を贈るか決まらないよ。
 いっそのこと、私にリボンを掛けて…… 駄目だ。告白と同時にそれは無いよね。
 悩んでばかりいても時間がもったいないから、覚悟を決めてジュエリーショップに入るとしますか。
 あまり入りたくないんだけどね。だってさ――
「いらっしゃいませ……」
 ほら、店員さんがなんて声を掛けたらいいか迷ってるよ。
 小学生あたりに間違われてるんだろうな。こんなときは、この小ささが悔しかったりする。
 店員のことは気にせずに見て回ってたら、銀の三日月の中に宝石が吊ってあるペンダントが目に飛び込んできた。
 宝石のことはよく分からないけど、アイオライトって書いてある。見る角度によって色が変わるんだ。
 渡す相手、かがみのことを考えて思わず笑みがこぼれた。
 うん、金額もお手ごろだし、これに決定。
「すいませーん」
 近くの店員さんに声を掛けたら、私以外に客がいないのを確認してこっちに来た。
 いや、声を掛けたの私だから。こう見えても高校生ですよ私。もう十八歳なんですよ。
「おまたせしました」
 店員さんは、どう対応すべきか迷ってるみたいだけど、買うものが決まっちゃえば私が気にする必要はない。
「これください。友達へのプレゼントなんでリボンもお願いします」
 かがみは気に入ってくれるかな。
62忘れられぬ日(2/10):2008/02/12(火) 23:26:08 ID:ttJwVXCL
 決戦のときは来たっ。いや、明日なんだけどね。
 しかし、なんでうちの学校は毎年バレンタインデイは登校日なんだろうね。気を使ってくれてるのかな。
 チョコレートはもう決めてあるんだよね。無糖ココアを使ったハート型のチョコレートケーキ。
 カロリー控えめだから、かがみも食べやすいと思うんだ。
 それに、アイシングシュガーでメッセージを書いたら出来上がりっと。
 うん、練習したかいがあったね。われながらうまくできたっぽい。
 問題は、これ学校には持っていけないよね。一回帰ってきてから、かがみの家に行くか。
 だったら、予約しとかないとね。
 かがみの携帯に電話したら、すぐに聞きなれた声が聞こえてくる。私が今一番好きな声。
『おーっす。どうしたのこなた』
「ん、ちょっと予約しとこうと思ってね」
『何の予約だ。宿題とかもう無いだろ』
「いやね、かがみの時間を予約しとこうと思って」
『なんだ、それは。ところでこなた、明日の昼からは暇?』
「暇じゃないよ。色々とあってねー」
『そ、そうなんだ……』
「うん、昼からはかがみの時間を予約してるから暇じゃないんだよ」
『え、えーっと、私の都合は関係ないのか』
「かがみ暇なんでしょ」
『いや、暇じゃない。明日は昼からこなたを家に呼ぶから』
「『ぷっ、はは――』」
 暫く二人して笑った後、ちゃんと約束をしてから電話を切った。

 明日は、私にとって運命の日。
 きっと、一生忘れることが無い日になるだろう。
 かがみとの最後の思い出になるかもしれない。
 その覚悟はできている。いや、やっとできた。
63忘れられぬ日(3/10):2008/02/12(火) 23:26:45 ID:ttJwVXCL
「やふー、かがみ」
「いらっしゃい、こなた。寒かったでしょ。さ、早く上がって」
 出迎えてくれたかがみに何か違和感が。
 そか、ワンピース着てるからだ。初めてじゃないかな、かがみのワンピース姿なんて。
「おじゃましまーす。って、もしかして誰もいないのかな」
「そりゃそうよ、今日は平日よ。しかも、昼間なんだから」
 確かにその通りだね。それに、つかさはみゆきさんと約束してたみたいだしね。
 あの二人、夏休み明けてから今まで以上に仲良くなったもんね。
 ところで、なぜにかがみの顔が赤くなってるんだろう。
「でもさ、バレンタインなのに、相変わらず私たちには浮いた話無いねぇ」
 私にとっては、かがみに浮いた話が無いのは嬉しい限りなんだけどね。
 そのおかげで、今日だってかがみと一緒の時間をすごせるわけだし。
「ま、いいんじゃないの。これから先、時間はまだまだ有るし」
 今日のかがみは、いつにも増して表情がよく変わるね。
 今はすっごく嬉しそうな笑顔だよ。
 部屋に向かう途中で、かがみは飲み物を持ってくると言って台所へ行っちゃった。
「しつれいしまーす」
 誰もいないのは分かってるんだけど、なんとねくね。
 かがみの部屋は、いつ来ても綺麗に片付いてるんだけど、今日は少しだけ違った。
 いや、散らかっているわけではないよ。ただ、小さめのダンボールが一つ、部屋の隅においてある。
 なんか、今日は微妙に雰囲気が違ってる気がするのは、私の精神状態のせいかな。

 少しして部屋に入ってきたかがみの手には、湯気を漂わせているカップが二つとポッキー。
 ココアの甘い香りが部屋に広がる。
 カップを受け取ると、最初、冷えた手にはちょっと熱かったけど、体を少しずつ暖めてくれた。
「ふーん。で、今日はなんの用だったの」
「へっ?」
 このココアはバレンタインのチョコなのかな。
 なんてことを考えてたら、いきなり声を掛けられたもんだから、間抜けな声が出ちゃった。
「いや、昨日の電話。あんたの方からだったでしょ」
「でも先に、今日暇かって聞いてきたのはかがみだよ。私は今日とか言って無いもん。で、用件は何なのかな」
 私は、質問を質問で返して話しをはぐらかした。
 本当は今すぐにでも私の気持ちを伝えたいけど、かがみになるべく嫌な思いはさせたく無いからね。
 タイミングが大事だよ。
「ん、別に用事なんて無いわよ。息抜きにこなたと遊ぼうかなって思っただけよ」
「そうなんだ」
 かがみは、昨日の会話を思い出したのか、ちょっと恥ずかしそうにしてる。
 いつもなら、かがみをからかって、それから会話がつながっていくんだけどな。
 私が緊張してるからかな。いつもみたいに、会話が続かない。
64忘れられぬ日(4/10):2008/02/12(火) 23:27:29 ID:ttJwVXCL
 お喋りしたり、ゲームしたりしながら、タイミングを計ってた。
 だけど、今日に限って、間が空きそうになるとかがみが話しを振ってくる。
 私の気持ちをよそに、時間だけが過ぎていく。
「ねえこなた、ちょっと聞いてくれる」
 その声と表情があまりにも真剣で、私は何も言えなくなった。
「あ、うん」
 かがみが私に告白ってことは無いよね。だって、かがみは常識ってものをすごく気にする。
 同性の恋愛はきっと嫌悪してるだろうし。
「あ、その前に、つかさとみゆきは親友よね?」
「もちろんだよ」
 質問の意図は分からないけど、はっきりと答えられる。
 三人がいなければ、高校で友達が一人もいなかったかもしれない。
 私をちゃんと受け入れてくれた、かがみ、つかさ、みゆきさんは親友だよ。
「何があっても?」
「うん」
 私が嫌われることはあっても、私が嫌うことは絶対無い。
 今日、かがみに告白することで、かがみに。いや、三人に嫌われるかもしれない。
 それでも、私はみんなを嫌いになんてならない。
 時間は掛かったけど、その覚悟をして今日はここにいる。
「そう、よかった」
 かがみは、心底安心したように大きく息を吐くと、さっきまでの真剣な表情を崩し、笑顔になった。
「実はね、夏休み中からつかさとみゆきは付き合ってるの」
「えっ……」
 その事実よりも、それをかがみが認めているのかが気になった。
 いや、認めているからこそ、かがみの口から伝えられたんだろう。
 かがみの言葉で、ちゃんとそのことを確認したい。
「で、かがみは、認めてるのかな……」
 かがみは言葉を選んでいるのか、すこし考えてから答えてくれた。
「認めているわ。最初は戸惑ったけどね。私、恋愛は異性とするものだと思ってたから。
 でも、つかさとみゆきから付き合ってるって言われたとき、意外とすんなり受け入れられたの。
 二人が本当に好きあってるのが分かって、恋愛ってこういうことなのかなってね」
 意外な言葉に、私は時間が止まったような錯覚を覚えた。
 何も言わない私に、かがみが問いかけてくる。
「で、こなたはどうなのよ。二人のことをどう思うの」
「私は、二人を祝福するよ」
 否定する理由が無い。
 そういう世界があるのは知ってるし、人の恋愛感に口を出すつもりも無い。
 それに、私自身、かがみに恋をしてるから。
「そ、良かった。二人とも心配してたのよ、こなたに嫌われるんじゃないかって」
 でも、親友だと思っているから、大事なことは直接聞きたかった。
 きっと、なにか理由があってのことだろうけどね。
「だけど、二人から直接聞きたかったかな」
 かがみは顔を赤くしながら、ばつが悪そうに私から顔を背ける。
「私が二人に頼んだのよ。私から伝えさせてって」
 そう言うと、かがみはいきなり立ち上がり部屋から出て行っちゃった。
 えと、二人がかがみに頼んだんじゃなくて、かがみが二人に頼んだって。
 なんで、かがみがそんなこと頼んだんだろう。
 ぜっんぜん分かんないや。ま、今は自分のことを考えよう。
 かがみが同性の恋愛を受け入れてるのは嬉しいんだけど、想定外だったなぁ。
 私は、告白することでかがみに嫌われることばかり考えてた。
 それに対する覚悟はできたけど、振られた後でも、友達として傍にいることなんて考えてなかった。
 ましてや、かがみと付き合える可能性なんて無いと思ってたんだけど。
 もしかしたら、可能性はあるのかな。
65忘れられぬ日(5/10):2008/02/12(火) 23:28:13 ID:ttJwVXCL
 部屋に戻ってきたかがみは、苺とマシュマロ、チョコレートにミルクを持ってきた。
 それをテーブルに置くと、部屋においてあったダンボールから何か取り出し始めた。
「つかさに相談したら、これなら簡単だからって進められてね」
 準備しているのは、小さなコンロに小さなお鍋。
「チョコレートフォンデュかな、それは」
「これなら、形も関係ないしからかわれないでしょ」
 かがみはこちらを見ずに準備している。きっと照れてるんだね。
 かがみは私の為に、これを準備してくれた。
 少なくとも、私のことを気にしてくれている。
「ね、かがみ。ありがと」
「なによいきなり。それより、もうそろそろ大丈夫そうよ」
 かがみからフォークを受け取ると、苺を刺してチョコレートにくぐらせる。
 それを、すこし冷ましてから口に運んだ。
「ね、どう?」
 私にラノベを勧めてきたときみたいに、楽しそうに、そして何かを期待するようなかがみ。
「ん、美味しいよ。かがみも食べなよ」
 意外、と言ったら怒られるかもしれないけど、とっても美味しかった。


「ごちそうさまー。ほんと美味しかったよ、かがみ」
 かがみは嬉しそうに、照れくさそうに顔の前で手を振っている。
 さて、今度は私の番。
「ね、かがみ。私からのプレゼント」
 鞄から、ケーキを取り出して、かがみに差し出す。
 かがみは包みを開けて中を見ると、またか、と言った表情になる。
 ケーキに入れたメッセージは『かがみは私の嫁』だったから、当然かな。
「それね、無糖ココアを使ったチョコレートケーキだからカロリー控えめだよ」
「あ、ありがと」
 やっぱり、かがみがいつもと違う気がする。
 いつもなら、『太ってるって言いたいのか』くらい、返ってきそうなんだけどな。
「ねえ、食べてみてよ。練習してまで作ったんだよ」
 さっきかがみがしていたように、私も楽しそうに、期待してかがみを見つめる。
「これ、美味しいわね。こなたも一緒に食べよう」
 差し出されたフォークを受け取って、私もケーキを一口だけ食べる。
「もう一つ、かがみにプレゼントがあるんだ」
 ペンダントを取り出し、テーブルの上に置く。
 かがみは何も言わずに、手に取ると、リボンを外して包みを開ける。
 中身を見て、かがみは俯いてしまった。
「ねえ、こなた。こなたは私のことどう思ってるの」
 かがみの表情は見えないから、何を思ってるのか想像もできない。
 ただ、その声に明るさはなかった。
 きっと、私の気持ちに気が付いたんだと思う。
 そして、戸惑っているんだろう。
 でも、私は今一番伝えたいことを言うだけ。
 でないと、きっと後悔するから。
「かがみ、私はかがみの事が大好き。いつもかがみのことを考えてる。私はかがみに恋してる」
 かがみは相変わらず俯いたまま、何も言ってくれない。
「ごめんね、かがみ。私は嫌われるのが怖くてずっと言えなかった。
 でも、今日言えなかったら、一生言えないと思ったんだ。
 ただ私の気持ちを知って欲しかったんだ。ごめんねかがみ」
 かがみは肩を震わせている。泣いているみたい。
 私が泣かせた。そのことが辛くて逃げ出したかった。
66忘れられぬ日(6/10):2008/02/12(火) 23:28:56 ID:ttJwVXCL
「ごめんね、かがみ。もう、帰るから」
 立ち上がり、かがみの部屋を出ようとする。
「待ってっ、こなた」
 私はそのまま、部屋の出口に向いたまま立ち止まった。
 どれだけの時間が過ぎたのだろう。五分? 一分? もしかすると、三十秒も経ってないのかもしれない。
 それでも、私には永遠にも感じる時間。
「こなた、私ね嘘ついた。さっき、つかさとみゆきを見て同性の恋愛を受け入れたみたいに言ったけど、あれは嘘」
 かがみは何が言いたいんだろう。
 嘘ってことは、同性の恋愛は今でも理解できないってことだよね。
 きっと、つかさの良き姉でいるために、二人のことは受け入れたんだ。
 そうだとしたら――
 そっか、やっぱり私は嫌われたんだ。
「かがみ、もう友達ではいてくれないよね……」
 僅かな間を空けて、かがみはちゃんと答えてくれた。
「そう、ね。友達じゃいられない、かな……」
 思ってた通りじゃないか。
 今日は一生忘れられない日になった。
 かがみとの最後の想い出。
 私の初恋が終わった日。
 その覚悟はしてきたじゃないか。
 なのに、なんで涙があふれるんだろう。
 色々な思い出が頭の中を駆け巡り、それが終わると何も考えられなかった。
「ごめんね、かがみ。今までありがと…… じゃあね」
 真っ白になった頭で、何とかそれだけは言うことができた。
 最後に見せるのが泣き顔なんて嫌だ。
 だから、振り向かずに部屋を出て行こうとして、不意に体の動きが止まる。
 いや、止められた。
 藤紫色の髪が私の視界に入ったことで、後ろから抱きしめられていることに気付いた。
 私を抱きしめている手が、僅かに震えている。
「こなた、勘違いしてる」
 かがみの声が優しく響く。
「私ね、つかさとみゆきの事を聞く前から、同性の恋愛を受け入れてた。だって、私が好きになった人は女性だったから」
 私を抱きしめる力が、すこし強くなった。
「ずっとこなたを見てた。気付いたらこなたのことを考えてた。
 でも、あんたは同性に興味無いって言ってたから…… 嫌われたくなかったから言えなかった」
 かがみにそこまで言われて、ようやく理解できた。
 一緒だったんだ、私とかがみの気持ちは。
 もう、涙はいらないよね。
「ね、かがみ。私はまだ、かがみの気持ちを聞いて無いよ」
 まだ震えているかがみの手に、そっと手を重ねると少しだけ冷たかった。
 徐々に震えが治まったいくのに合わせて、手がぬくもりを取り戻してきてる。
 かがみが私を解放したから、振り向いてかがみと向き合う。
 精一杯の笑顔で。
「私、こなたのことが大好き。ずっと一緒にいてくれるかな」
 照れてる表情のかがみを、今度は私が抱きしめる。
「もちろんだよ。だって、かがみは私の嫁だもん」
 私の言葉を聞いて、かがみも抱きしめてくれた。
67忘れられぬ日(7/10):2008/02/12(火) 23:29:32 ID:ttJwVXCL
「ねえこなた、これ着けても良いかな」
「あ、私が着けてあげるよ」
 ペンダントを受け取って、かがみの後に回る。
 うなじを見てたら、ちょっといたずら心が湧いてきたけど、自重しよう。
 着け終わってかがみの正面に戻ると、ペンダントを目の前に掲げながら宝石を楽しそうに見つめている。
「この宝石、綺麗な色よね。それに、見る角度で色が違って見える」
「色はかがみの髪の色。そして、色が違って見えるのが、表情豊かなかがみを連想させたから選んだんだ」
 私と一緒にいるときのかがみは、いろんな表情を見せてくれる。
 まあ、それは私がからかったりしてばっかりだからなんだけどね。
「どうかな。気に入ってくれた?」
「うん。ありがとう、こなた。それでね、私からもプレゼントがあるの」
 そう言うかがみは、耳まで真っ赤になっている。
 プレゼント渡すのがそんなに恥ずかしいということは、手作りの物なのかな。
 私は期待で、思わずニマニマしてしまう。
「ちょ、ちょっと準備してくるから待ってて」
 かがみは立ち上がり、部屋から小走りで出て行った。
 一人残された私は、今日一日のことを振り返ってみる。
 最初は、かがみの傍にいられなくなることを覚悟して、告白するつもりだった。
 でも、つかさとみゆきさんの事をかがみが認めてるって知って、もしかしたらって期待して。
 告白した後、かがみの言葉を悪いほうに勘違いしちゃって。
 期待が生まれてた分だけ、ショックも大きくて、思わず泣いちゃったんだ。
 最後はかがみが告白してくれて、恋人になれたから結果オーライだね。

 
「ねえ、こなた。ちょっと目瞑っててくれるかな」
 扉の外からかがみが話してる。
「え、うん。分かった」
 なんだろね。びっくりさせる気かな。
 そう簡単には驚かないよ、私は。
「ね、ちゃんと目瞑った?」
「大丈夫だよ、ちゃんと目閉じてるから」
 かがみのお願いだから、薄目で覗いたりするのは止めておこう。
 扉が少しだけ開けられる音がした。
 覗いて、私が目を閉じてるか確認してるんだろう。
 うーん、目を閉じて待たされるって、焦らしプレイだね。
 扉を開く音がして、かがみが部屋の中に入ってきたみたい。
「かがみー、まだー」
「まっ、まだ駄目っ。もうちょっと待って」
 なんだろう、かがみの声がすごく緊張してるように聞こえる。
 それから、大きく深呼吸をしてるみたい。
「かがみー、目開けちゃうよー」
 開けるつもりは無いんだけど、きっかけを作らないと、ずっとこのままのような気がする。
「あとちょっとだけ」
 かがみは、なにやらぶつぶつと呟いてから、小さな声で「いいわよ」って言った。
 目を開けて、私は言葉を失った。
 ついでに、思考回路が完全に停止。
「えと、かがみさん。どういうことかな……」
 目の前には、今まで見たこと無いくらい真っ赤になったかがみ。
 体に紫色のリボンを纏い立っている。
 さすがに裸は躊躇われたのか、下着はつけているけど。
「わ、私が、こなたへの、プレゼントよっ」
 ぷいっと横を向いて言い放つかがみ。
 これは超弩級の萌えですよ。
 ってか、これなんてエロゲー?
 あ、思考が戻ってきた。
68忘れられぬ日(8/10):2008/02/12(火) 23:30:18 ID:ttJwVXCL
 私が近付くと、かがみはビクッと身をすくめる。
「ね、かがみ。本当にいいの」
 怖がらせないように、できるだけ優しく声を掛ける。
 私はかがみの手を取り、ベッドに座る。
 つられて、かがみも私の横に座る。
「私、我慢できないよ」
 かがみの沈黙を肯定と受け取って、かがみに顔を近づけキスをする。
 ファーストキスは、唇を触れ合わせるだけの優しいキス。
 かがみの唇はやわらかくて、気持ちよかった。
 軽く抱きしめて、耳元で囁く。
「かがみ、大好きだよ。愛してる」
 その言葉で、緊張で固まっていたかがみの体から、すこし力が抜けた。
 そのまま、覆いかぶさるようにベッドに倒れこむ。
 横を向いているかがみの顔に手をやり、私のほうに向けると再び唇を重ねる。
 今度は舌を唇に這わせると、意図を理解して受け入れてくれた。
「くちゅっ、ちゅ――」
 かがみの口内を舐め舌を絡めていると、二人の混ざり合った唾液がかがみの口から溢れ出す。
「んっ、はぁ」
 口を離すと、銀糸がお互いの唇に橋を掛ける。
 かがみは、目が少し虚ろになっている。
 私は手を伸ばし、かがみのツインテールのリボンを外す。
 前に、髪を下ろしたかがみを見て、大人っぽくて綺麗だと思ってたから。
 すると、かがみが私の背中に手を回し、引き寄せられキスをしてきた。
 今度は、かがみが私の口内を弄ぶ。
 舌が絡み合えば合うほど、私の脳に電気が走る。
「ね、かがみ。いいよね」
 答えを聞く前に、ブラのホックを外す。
 そのまま、ブラをたくし上げかがみの胸をあらわにする。
 その頂は既に立ち上がり、その存在を主張していた。
 左手で胸を揉みながら、舌を、首、鎖骨へと走らせる。
「んっ、あっ」
 小さな喘ぎを聞きながら、胸の谷間に舌を落とす。
 そこから、頂へと滑らせ、その周りを丹念に攻めると、かがみの声に比例して、さらに自己主張を強める。
 少しだけ焦らした後、乳首を舌で転がしてから口に含む。
 押しつぶしたり吸ったりした後、軽く噛むと先ほどまでより大きく喘ぐかがみ。
「はぁっ、んっ、あんっ」
 かがみは恥ずかしさのためか、ずっと横を向いて目を閉じている。
 それを良いことに、私は空いている右手をかがみのあそこへと伸ばし、手の平で包み込むようにして全体を軽く揉む。
 突然の行為に、驚いてこっちを向いたかがみにキスをする。
 人差し指で、割れ目をなぞるようにすると、下着の上からでも熱く湿っているのがわかる。
「ね、かがみ。下も脱がせるからね」
 今度は、かがみが小さく頷くのを確認してから、パンティに手を掛ける。
 愛液が糸をひき、シーツにしみを作る。
 途中でリボンに引っかかって、膝上辺りまでしか脱がせられなかった。
69名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:30:37 ID:XGpZQV4b
みつきと聞くとどうしても金髪ツインテの「じゃあ勝負しましょう」なメイドが思い浮かんじまうのは俺だけでいい
みゆきさんごめんなさい
70忘れられぬ日(9/10):2008/02/12(火) 23:31:05 ID:ttJwVXCL
 両足を抱え上げると、私はかがみの秘裂に舌を這わせる。
「ちょ、こなた。そんなとこ汚いわよ」
 私はその声を無視して、時折中に進入させながら舐め続ける。
「あっ、いや――」
 中から溢れ出す液体を舐め取り、すこし膨らんだ陰核を刺激する。
 そのたびにかがみは、それまでとは違う喘ぎを漏らす。
 もっと感じて欲しくて、そこを中心に攻め続けていると、シーツのしみが大きく広がっていく。
 再びかがみに覆いかぶさりキスをすると、かがみは私の首に腕を回してきた。
 口に含んだ愛液を流し込みながら、あそこへ中指を浅く挿入する。
 かがみが痛みを感じて無いのを確認して、軽く抽送をくり返しながら、陰核を刺激する。
 かがみの息が荒くなり始め、目が虚ろになっている。
 私は僅かに深く指を抽送させながら、包皮を剥き陰核を直接刺激する。
「こな、た、こなたっ。も、もう駄目っ。もう――」
「かがみ、いいよ。私の指でいって」
 強く陰核を刺激すると、かがみの体が大きく跳ね、絶頂を迎えたようだ。
 ぐったりとしたかがみの隣に横になると、軽く唇を触れさせる。
「かがみ、可愛かったよ」
 かがみが手を伸ばし、私の髪を撫でながら微笑む。
「ね、こなた」
「なに、かがみ」
「ずっと一緒にいようね」
「もちろんだよ」
71忘れられぬ日(10/10):2008/02/12(火) 23:32:39 ID:ttJwVXCL
 暫く余韻に浸りながら、かがみと話をした。
 今までのこと、今日のこと。そしてこれからのこと。
 それから、私は疑問に思ったことを尋ねた。
「ね、どうしてつかさとみゆきさんのこと、どうしてかがみが私に伝えたかったの?」
 かがみは、二人から頼まれたじゃなく、二人に頼んだって言ってた。
「私ね、こなたと同じで、今日告白しようと思ってた。
 でも、もしこなたが同性愛を否定するんだったら、今までのように友達でいようと思ってた。
 だからといって、女性を好きになるってどう思う、なんて聞けないしね」
 かがみはさっきからずっと、天井を見ながら話している。
 どういう表情をして良いか分からないって感じ。
「そか。それで、つかさとみゆきさんのことを聞いた私が、どう反応するかで判断したかったと」
「そ。そのせいで、こなただけが二人のことを知らないって状況になったの。ごめんね」
 私のほうを見たかがみは、うっすらと涙を浮かべている。
「かがみ、謝らないで。今日、告白できたのは、かがみから二人の話を聞いたからなんだから」
 あの時、かがみが二人のことを認めてるって言ったから、私は告白できた。
 じゃなければ、私はまた逃げてたかもしれない。

「後一つ聞きたいんだけど、良いかな」
 そう、これはとても重要なこと。
 絶対に聞いとかなきゃ、夜も眠れないよ。
「良いけど、何?」
 その返事を聞いて、私はニヨニヨしてしまう。
 猫口になった私を見て、かがみが慌てる。
 気付かれたかな。
「なっ、まさかっ」
「多分、かがみが思ってること。ちゃんと答えてよね。拒否権は無いっ。
 というわけで、裸、じゃなかった。下着姿にリボンで私がプレゼントってさ、どこのエロゲ。
 それに、あのリボン。一人では無理なところがあったよねー」
 最後のは、ブラフだけどね。
「そ、それは、つかさとみゆきに相談したら、こなたが萌えることすれば良いんじゃないかって言われて。
 ほら、ゲームだと、クリスマスとかバレンタインとかに良くあるシチュエーションみたいだし」
 照れながらも、律儀に答えてくれるかがみ、萌え。
「あと一つ答えてないよね。つかさに手伝ってもらったのかな」
「そっ、そうよっ。もういいでしょ」
 ちょっといじめすぎちゃったかな。
「ごめんね、かがみ」
 私はもう一度、かがみにキスをした。
 今日は本当に忘れることのない日になった。
 かがみとの想い出は、これから新たなページを迎える。
 私は幸せに包まれている。



「ね、こなた」
「なに、かがみ」
「まだ時間あるし、その、もう一回しない? 今度はこなたを感じさせたいんだけど」
「う、うん。私ももっとかがみを感じさせたい」
「でね、その余ったチョコなんだけど、その…… こなたに塗って食べて良いかな」
「えっ…… えと、どうしても?」
「どうしても。拒否権はないっ」
7228-538:2008/02/12(火) 23:37:38 ID:ttJwVXCL
以上です

最初、かがみにチョコを塗って攻めるこなたにしようと思ってたんですが
うまくいかなくて、こんな風になりました
で、最後の部分
>>28-29を見て、やっぱりやっときゃよかったかなと付け足しました
すんません(m´・ω・`)m

あと、投下しといたなんですが
1と2はいらなかったかなぁ?
73名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:38:51 ID:ttJwVXCL
ぐはっ
投下しといたってなんだよ
投下しといてだよ〜(ノД`)シクシク
74妄想屋(仮名) ◆JUqojnT5.c :2008/02/12(火) 23:39:24 ID:ntSmv8cj
>>54
おおお、フォロー感謝っす!
てか、変なもん投下してすいませんでした>ALL

>>72
かがみんえろいよかがみん
でも、溶けたチョコって熱くないんだろーかw
75名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:43:01 ID:ttJwVXCL
>>74
それは大丈夫
ほら、人肌で溶けるチョコとかね
意外と低い温度で溶けるもんですよ?(多分、そんなのがあるはず
76名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:45:32 ID:v6l8C7sm
>>72
嗚呼嗚呼あああああああああああああああああああ
あっつあっつあっつ!!!!!
熱いぜ!このHOTチョコは煮えたぎってるぜ!(分離します)
しかもメープルシロップにバニラエッセンスをたらしたものに
蜂蜜を混ぜたくらいに激甘だぜ!!!!!!
伴天連タイン前の素敵なこなかがGJ!!



かがみ「というわけで〜こなたを料理しま〜す!
     そーれチョコボディペインティング!」
こなた「アッーーーー!」
77名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:45:50 ID:XGpZQV4b
>>72
乙でした
割り込んでしまって申し訳ない

>>74
おっぱい型のチョコを作ろうとして胸に塗りたくってはみたものの大ヤケドこさえた、
ってネタはどっかで見たことがある
78名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:48:02 ID:RNfJpqdn
>>72
嗚呼。

チョコが。口から、チョコ、g


ぐっ じょぶ
79名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:57:04 ID:Gs7eoT60
>>72
おふっ!!ぐっ…じょぶ…!!(赤い液体で記されている
ちょこプレイかがこなも是非!是非にっ!


最近みなゆた分が足りない…職人様おながいします
一回自分で書いたけど色々無理でしたorz
80名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:00:00 ID:SyICZjC6
     _     _「Yフ
   ,^   `ヽ :'´ /⌒ ヽ
  <h>〃ハヽ.〉!  / ハヽ !
  | |(l ゚ ヮ゚ノi| iヘ| ゚ ヮ゚ノリ    0時です
  ⊂[ヾl兆lツ]χ[ヾl兆lツ]つ
  jノく/l」」i'ゝ  く/l」」i'ゝ
    しlノ     しlノ
814-243 ◆X9xLTlcDnY :2008/02/13(水) 00:00:33 ID:GHnk6yQk
>>72
ぐはあ(吐血
なんという妄想具現化SS!なんというエロこなかが!ぐっじょ!(※濡れっぷり的な意味で)

かがみ「あ、こんなトコに溶けてないチョコビーンズが…」
こなた「ちょ!それチョコビーンズじゃなアッーーー!」
82名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:10:26 ID:PBPEehli
>>81
ねたがネタだけに、誰かとかぶるのは覚悟してたんですよ
でも、氏のイラストが先に来るとは思っていませんでした
>58では失礼しました
今日投下しようか、明日投下しようか悩んでたときに見てしまったもので
取り乱してしまいました

コメくれた皆様、ありがとうございます
少しでも楽しんでいただけたなら、嬉しい限りです
これからも、よろしくお願いします
83名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:12:41 ID:ZF+HsqE4
>72
GJ!
とてもあまくて、美味しいお話でした。
互いに想っているのに気がつかない…… 
もどかしいシーンもよかったです。


84名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:13:51 ID:PBPEehli
すんません
82での58は>>59のアンカミスです
何やってんだ俺…orz
85(=ω=.):2008/02/13(水) 00:17:39 ID:oL7pU/Cn
かぶったって、いいじゃない

ばれんたいん だもの

                 こなた
864-243 ◆X9xLTlcDnY :2008/02/13(水) 00:20:44 ID:GHnk6yQk
>>82
な、なるほどorz
ちょと先走り過ぎてしまった申し訳ない(ノД`)
87名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:26:20 ID:tHWogT0c
(=ω=.)<チョコ盛りをしたかがみがいるスレはここですか?
88名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:35:37 ID:+dmhejLE
質問なのですが
キャラスレに投下したSSはここに投下してもよろしいのでしょうか?
89名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:37:18 ID:PBPEehli
>>86
あっ…
気にしないでくださいな
ここはみんなの場所ですから
完全に私の失言です。申し訳ない
これからも、氏のイラストには期待しています
では、今日はこれで失礼しますね
こんなことで、スレ消費するのもなんですから
90名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:37:51 ID:LUXjO/gk
>>88
ノシ
引っ越してきた人がここにいる。
2重投下はダメだろうけど。
91名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:38:51 ID:hhWbG/9F
>>88駄目というルールは無いが
二重投稿はあまり快く思われないよ
92名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:40:27 ID:+dmhejLE
>>90-91
了解しました
ありがとうございます
93名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:41:28 ID:ZF+HsqE4
>88
同じものをここに入れる(即ち、二重投下)はナシだと思うけど、
続きを引越しして投下するのはアリかな。
各個人でそれぞれ趣向や事情があると思うしね。
94名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 01:06:02 ID:+daf3N3G
>>20
随分遅いですがGJです。やっぱり素敵ですね。

確かに13クラスあって仲良し3人が3年連続同じクラスとか普通に
ありえないし、5年連続なんて尚更だよなぁと思いつつ、
原作の穴を作品に昇華してやろうという意気込みを感じます
いや、この先どうされるおつもりかはわからないですけど

書き途中で止まっているのをなんとかしてくださるそうで、
「さよなら魔法使い」のシリーズが完結するのを期待していますw
95名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 03:53:56 ID:lZYhu3dP
96名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 07:22:37 ID:dGo3g+pX
そうじろう×かなたの非エロ投下します。
※名無しの女性キャラあり。
97ナチュラル(1/3):2008/02/13(水) 07:23:43 ID:dGo3g+pX
 青い空を、悠々と白い雲が流れている。微かな草いきれ立ちこめる原っぱ。白いカッターの学生服を来た少年が、大の字になって寝ころびながら、ポケットに忍ばせていた文庫本を読んでいた。
 ……のは数分前までの話で、今はその文庫本をアイマスクにして、グースカ昼寝をこいていた。
 陽光に包まれて眠りこけている少年の傍へ、少女が草を踏み分け歩み寄っていく。一見すると中学生かそれ以下の容貌だが、着ているのは高校のセーラー服だ。顔立ちも幼く見えるが、どことなく落ち着いた雰囲気は年相応以上だった。
「そう君」
 低いいびきを掻いている少年に呼びかける。が、少年――そうじろうは一向に起きる気配を見せない。
「そう君ってば」
 やや強く呼びかけ、かがみ込んで体を揺すって、ようやくそうじろうは目を覚ました。
「あ、かなた」
「あ、かなた……じゃないでしょう。またこんな所で授業サボって」
「いやぁ、サボってたつもりはなかったんだけど……」
 そうじろうはバツが悪そうに苦笑いする。身なりを整えればそれなりに男前なのに、雑に揃えた髪と中途半端な無精髭のせいで、ひいき目にも二枚目半。そんな容貌だった。
「写生会で昼寝してるのが、サボり以外の何なの?」
「まあそういうなよ」
「……課題は?」
「……」
 そうじろうは無言で真っ白な画用紙を見せる。かなたは深々とため息をついた。対してそうじろうは気楽そうな笑みを浮かべている。
「まだ昼前だろ。今から始めりゃ十分間に合うよ」
「何描くか分かってる?」
「……なんだっけ?」
「自然の風景画」
「分かった」
 そうじろうは体を起こし、適当に周囲を見回してから付近の林を描くことに決め、鉛筆を手に取った。
 かなたもその隣に腰掛け、膝の上に画板を置く。
「何だ。かなたもまだ出来てないじゃないか」
 かなたの画用紙も真っ白なのを見て、そうじろうが呆れたような声を上げた。
 かなたは何も言わず、さっさと鉛筆を動かし下描きを進める。そうじろうもそれに倣い、のろのろと下描きを始めた。

 この日は、野外活動の写生会だった。学校近くの小山を借り、半日かけて行われる。
 お昼休憩の時間になって、かなたは写生の題材に選んだ場所を離れ、クラスメイトが大勢いる原っぱへ帰ってきた。
「あ、おかえりかなた。また泉の世話焼き女房?」
 クラスで仲の良い友人が、冷やかすような笑みを浮かべてそんなことを言う。かなたにとっては慣れたものだ。
「別にそんなんじゃないから。そう君とはただの幼馴染みで――」
「ただの幼馴染みで、自他ともに認める変人とあそこまで付き合えるものとは思えないけどね」
 友人の言葉はかなたの胸にグサリと突き刺さった。
 変人。確かに。幼い頃からディープなオタク道を邁進し、それでいて多感な文学少年でもあり、またかなたに対してストレートに愛情を示す熱愛家でもあり……最後の一つは端っこにでも置いておくとして。とにかく、泉そうじろうはエネルギッシュに変わり者だった。
 そしてかなたはそんなそうじろうの幼馴染みであり、何かというと彼の世話を焼いている。
「かなた? 怒った?」
「ううん。怒ってないわよ」
「……ふーん」
 友人は軽く身を屈め、探るような目付きでかなたの表情を覗き込む。
「ま、いっか。お昼ご飯、一緒に食べよ」
 お弁当の包みを掲げる友人に、かなたが頷いた。
 適当な場所に二人並んで腰掛け、お弁当を広げる。日射しが少しきつかったが、風もあって過ごしやすい天気だ。
98ナチュラル(2/3):2008/02/13(水) 07:25:44 ID:dGo3g+pX
「……で、どうなのよ?」
「下描きはもう終わったから、後は――」
「そっちじゃなくて、泉のこと」
「え……」
 友人の言葉に、かなたは目を丸くする。泉のこと。泉そうじろうの何がどうなのか。
「泉はあなたのこと好きなんでしょう」
「……」
 答えようがなく、かなたは押し黙る。今さら答える必要が無い、というのが正しい。そうじろうがかなたを好きだというのは、微塵の恥ずかしげもなく示され、衆目の知るところだからだ。
 周囲への牽制も兼ねてかどうか知らないが、そうじろうはその手の慎みというか遠慮が全く無い。どんな時でも、かなたのことを好きだと言って憚り無いのだ。周囲が茶化す気も失せるほどに。
「一応、かなたと泉はうちのクラスの公認カップルってことになってるけどね」
「やめてよ、そういう言い方」
「ごめんごめん。でもさ、かなたの方は前から認めるでもなく否定するでもなくで……実際のとこ、どうなわけ?」
「どうって……」
「あいつのこと好きなの?」
 かなたは箸を置いて、考える。
 そうじろうのことを嫌ってはいない。しかし、色んな意味で偏った趣味にはついていけない部分をひしひしと感じ、あまりに明け透けな好意は困惑させられることも多い。
 一人の男として好きなのか? と聞かれれば……どうにも答えが出せない。
「……どうなんだろ」
「やれやれ……」
 卵焼きを囓りながら、友人は呆れた様子だ。
「だ、だって、そう君とは小さい時から一緒だったし、今さらそういう――」
「エッチの相手として想像できない?」
「〜っ! そんなハッキリ言わないでよ!」
 赤くなると、幼い顔立ちがさらに子供っぽく見えてしまう。そんなかなたを小動物愛にも似た感情で眺めながら、友人は話を続ける。
「私達もう高二でさ。再来年にはみんな別の進路を行くわけでしょ」
「うん……」
「そうなるとかなたと泉だって、一緒にいられるとは限らないでしょう」
「……」
「まあ、泉だったらかなたの行くとこならどこへでもついて行きそうだけど」
 確かに。仮にかなたがハーバードに行くと言えば、そうじろうは石にかじりついてでもハーバードに行こうとするだろう。
 その時、噂をすれば何とやら。当のそうじろうがかなた達のところへやってきた。
「おーい、かなたー」
「そう君、どうしたの?」
「いやぁ実は……弁当忘れちゃったみたいで」
 申し訳なさそうに頭をかきながら、そんなことを言う。かなたは呆れてため息をついた。
「今さらそんなこと言われても……」
 既にかなたは自分のお弁当をほとんど食べ終えている。分けてあげることもできない。
 何か買ってくるにしても、この辺りに商店はない。せいぜいジュースの自動販売機ぐらいだ。
「そっか。しょうがないな。昼は我慢するか……」
 諦めて立ち去ろうとするそうじろうを、かなたの友人が呼び止めた。
「デザートにしようと思ってたパンならあるけど」
 そう言って友人は袋を開けていないジャムパンを差し出した。
「おお、サンキュ。恩に着るよ」
「誰もおごるなんて言ってないわよ」
「へいへい」
 そうじろうは十円玉数枚を財布から出して友人に支払うと、パンを頬張りながらその場を去っていった。
99ナチュラル(3/3):2008/02/13(水) 07:26:42 ID:dGo3g+pX
「相変わらず抜けてるねー」
 そうじろうの姿が見えなくなったところで、友人が呟いた。
「ええ、そうなのよ」
「そんなことないわよ、とか言わないんだ?」
「だって……本当のことだし」
「さすが。長年連れ添った女房殿は手厳しい」
「だからそんなんじゃないってば。そう君とはあくまで幼なじみ。本当の旦那様なら、私の作ったお弁当忘れたりしないでしょ」
「は?」
 かなたの何気ない一言に、友人は目を丸くする。
「かなた。今なんて言ったの?」
「え? ……そう君とはあくまで――」
「その後。最後の方」
「私の作ったお弁当――」
「それ!」
 友人は身を乗り出してビシリとかなたを指さす。
「ひょっとして泉の弁当、いつもかなたが作ってるの?」
「うん……そうだけど」
 それがどうかしたの? と言いたげに小首を傾げるかなた。友人は額を抑え、大きなため息をついた。
「あなた達さぁ……」
「?」
「もうほとんど夫婦だろ!」
「ええっ?」
「ちっちゃい頃からずっと一緒で、高校生にもなっていつも一緒で、世話を焼きつ焼かれつ、さらにお弁当も一緒! 私の記憶が正しければこれは紛うことなき『ラブラブカップル』と呼ばれる状態だよ!」
「そ、そんなことないわよ! 私にとってもそう君にとっても、これが普通なんだし……!」
「つまり……今の関係がかなたと泉にとっては自然体なわけ?」
「う……うん」
 少し戸惑いながら頷くかなたに、友人は大きなため息をついた。その口元には微かな笑みが浮いている。
「羨ましいなぁ」
「羨ましい?」
「うん。羨ましい。恋人とかいう以前に、自然に繋がってるあんた達がさ。作ろうと思って出来るものじゃないよ、そういう関係って」
「そうなの……?」
「そうなの。多分、この先どこ行ってもあなた達は一緒だわ。私が保証する」
「保証されてもあんまり嬉しくないんだけど……」
「諦めなって。もうワイヤーロープみたいに頑丈な赤い糸が互いの小指に繋がってるよ」
 カラカラと笑ってそう言うと、友人は弁当箱をかたして立ち上がった。かなたも軽くスカートを払いながら立ち上がる。
「さーて。とっとと絵終わらせようかな。かなたはまた泉のとこ?」
「うん。写生場所が一緒だし。それにサボったりしないよう見張っておかないとね」
 どこか楽しそうな気色を声に滲ませて、かなたは歩き出した。
 何だかんだ言いながら、かなたはそうじろうが好きだろう。尋ねれば返答を濁していても、端から見ればほとんど自明だ。
 友人はそんなかなたの背中を見送りながら、ひとりごちる。
「何であんなに可愛いかなたが、泉なんかとくっついてるんだか……」

 数年後、かなた自身の娘がこれと同じような疑問を抱くのだが、それはまた別の話。


おわり
100名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 07:27:09 ID:dGo3g+pX
読んで下さった方、ありがとうございました。
101某眼鏡腐女子:2008/02/13(水) 07:35:12 ID:Pnny42pw
>>100
一番槍GJ!
タイトル通りナチュラルに恋人やってる二人に萌えwww
かなたさん天然で可愛いッス…!

泉先輩のおじさんとおばさんの若い頃…なんかインスピレーションが…

はっ、自重しろ私ぃぃぃぃぃ………
102ごっどさん:2008/02/13(水) 08:13:26 ID:oL7pU/Cn
じゃあ自重させてあげます^^###

ごっどお・・・ふぇちふぇちっ!


「田村さんはっけーん」
「狩りの・・・時間・・・」
「Catch my heart!ベリーひよりん」
「ちょwwwwwwこれがほんとの天罰アッーーーー!!」



>>100さん、ちょっと気恥ずかしいけど、GJです。
103名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 08:20:48 ID:uwk4XiNK
>>100
そう×かな! 朝一番にそう×かな!
ああもう、ジャムパン食ってるような甘さでいっぺんに目が覚めました。
締めの一行も利いてますね。ぐっじょぶ。
104名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 14:58:40 ID:p+Uovuln
>>100
ぐーーーじょぶ。
天然ぶりが可愛い。
105みゆつか愛してる:2008/02/13(水) 15:39:48 ID:NzhUopqK
職人の皆様方、GJ&お疲れ様です。

ヴァレンタイン祭りは都合で参加できそうもないので
申し訳ありませんがヴァレンタインネタを先走って投下させていただきたいと思います。
合言葉は み ゆ き は つ か さ の 嫁

・みゆき×つかさ(みゆき視点)
・微エロ
・7レス拝借

では他に投下宣言がなければいきます。
106.I just wanna hold you tight1:2008/02/13(水) 15:44:05 ID:NzhUopqK
「覚悟はいい? みゆきさん」
「……はい」
2月13日。私は自宅の台所で、泉さんを前に顔を赤くしながら立っていました。
「私はうれしいよ。みゆきさんがついに決心してくれたんだからネ」
「……本当にこれでいいのか、私にはわかりません」
「これでいいんだよ。みゆきさん、みゆきさんの覚悟と愛情は私が確かにその目で確かめたからね」
泉さんは少し、誇らしげな顔をしていました。覚悟と愛情、そう言われて私はなんだか気恥ずかしくなってしまい、
私のこの決心が決して無駄にならず、相手にまっすぐに伝わってくれることをその胸で懸命に祈りました。
「それじゃ……脱いでくれる?」
「は、はい……」
泉さんに言われるまま、私はブラウスのボタンに手をかけます。震える指でひとつひとつ外して……。
「あの、泉さん」
「なあに?」
「見られると、恥ずかしいです……」
「女の子同士だから大丈夫だよ」
「それでも……」
「わかったよ。じゃあ私は後ろを向いておくね」
そう言うと、泉さんはくるっと振りかえって私に背中を向けました。
静かな台所に、衣擦れの音だけが響いています。それがかえって私の羞恥を駆り立てていき、心臓は早鐘になっていて、
それでも数十秒とかからず私はブラウスを脱ぎ捨て、次はブラのホックに手をかけました。
「こんなところをつかさに見られてたら、つかさはどう思うんだろうね」
「!」
つかささん……私はこの決断をするまでに、その人の顔を何度も何度も思い浮かべました。
私のこの行動を知ったら、どんな顔をするんでしょう。色んな顔を知ってきたはずなのに、私にはわかりません。
「お願いです、それは言わないでください」
「うん、ごめんね」
「……泉さん、できました」
「うん。みゆきさん、後悔しない?」
「……はい」
それから泉さんは振りかえり、私のほうに近付いて……。

******

『ふえ? チョコレート?』
それは昨日の夜の出来事でした。時刻は十時。いつもなら勉強を終えてつかささんと電話でお話している時間帯ですが、
今日はつかささんから連絡が来る前にどうしてもお話したいことがあって、こうして夜分遅くに泉さんに電話をしています。
107.I just wanna hold you tight2:2008/02/13(水) 15:45:03 ID:NzhUopqK
「はい、泉さんはどうされるのでしょうか? かがみさんにお渡しするんですよね?」
『あー……うん。まあ一応』
「それはもう作ってあるんですか? それとも市販のものを?」
『いやー、明日作る予定だよ。そんな難しいものでもないし、がっつり手間隙かけるのもなんだから簡単にネ』
「そうなのですか。かがみさん、きっと喜んでくれますよ」
『どうせなら糖分たっぷりのチョコで嫌がらせしてあげようかな〜とか』
「そ、それはやめておいたほうがよろしいのではないかと……」
『さすがに冗談だけどネ。私としては、かがみがツンデレチョコを渡すときのリアクションが一番楽しみでさ〜』
私にも少しづつわかってきました。かがみさんが泉さんにチョコを照れながら渡して、泉さんにからかわれる場面が見えます。
『みゆきさんも、つかさに渡すんでしょ?』
「はい。つかささんと交換する予定なんです」
『よかったね〜つかさのチョコは美味しいだろうね。それに、四人揃って恋人もちで! まあ、二組とも女同士だケド』
実は泉さんはかがみさんと、私とつかささんとはいわゆる恋人同士になっていまして……それも、同性同士の。
友情で繋がっていた『四人』は『二組』になって愛情と愛情で繋がるようになり、『二組』の間には更に固い友情。
それでも以前とはほとんど関係は変わらず、むしろ双方とも特殊な環境を共有する者同士、互いに力強い味方となっていました。
ヴァレンタインという、普通の女の子なら男の方の話で盛りあがるところも、私達は女同士の世界になってしまって。
「ええ、楽しみです。……それで、泉さんにお願いがあるのですが」
『おおっ、みゆきさんが私のお願いとは珍しいね……やっぱりチョコの話?』
「はい、そうなりますね。実は明日、よろしければ一緒にチョコを作っていただきたいんです」
『私と? みゆきさんが?』
「はい……すみません、急なお願いで申し訳ないとは思うのですけれど……」
泉さんは受話器のの向こうで『むー……』と唸っていました。さすがに急すぎたのでしょうか。
「やはり、都合が悪かったでしょうか?」
『んーん、全然。一人で作るよりは退屈しなさそうだし。でもね』
「でも?」
『どうしてつかさと一緒に作んないの? 一緒にイチャイチャしながら作って交換すればいいじゃん』
「イチャ……いえ、今回はそういうわけにもいかなくて」
『まあいいけどさ。でも、どうして私?』
「それが……恥ずかしながら普段のヴァレンタインのチョコは毎年、市販のものを父と親戚の兄にあげていたんです。
 でも、今年は……つかささんには手作りを、できれば力の込もったものを食べていただきたい、そう思いまして」
『込もっているのは力じゃなくて愛情でしょ』
「は、はい。それで、自分なりにチョコレートの製法など材料など種類など歴史などを調べてみたのですけれど」
『歴史はどうでもいいんじゃないのー?』
「実際に作るとなると、やはり不安が残りまして……それで、泉さんにご指導いただきたいと思いまして」
湯煎で溶かしたチョコを型に流して固める、というだけなら私一人でも造作もないことです。
しかし、つかささんには……愛しい人に初めて渡すチョコには出来る限りの尽力をしてみたいと思いました。
つかささんの料理の腕なら、きっと素晴らしいチョコを作られることでしょう。しかしそれに比べると私は。
こういうことならもう少し、日頃からヴァレンタインというものを重要視しておけばよかったと悔やんでも遅く……。
『わかるよー。つかさって結構ああいうの、本気出しちゃうからねー。すごいの作ってくるんだろうねー』
「それにも勝るものを作ろうなどとおこがましい事は考えていませんが、やはり不安で……」
『つかさは気にしないだろうけどネ〜。みゆきさんだって、つかさが持ってきたものがチ○ルチョコでも嬉しいでしょ?』
「そうですね……こういうのは気持ちの問題だというのはわかってはいるんですけれど」
私がどんなチョコを作ってきても、きっとつかささんは笑って受けとってくれる。だからこそ、私は頑張りたいのです。
108.I just wanna hold you tight3:2008/02/13(水) 15:46:05 ID:NzhUopqK
『きっとみゆきさんからすれば、初めての本命、しかも手作りだからね。よし、私が一肌脱いでやろう!』
「本当ですか? ありがとうございます!」
『ただ、期待しないでね〜。私もチョコに関してはそんなに上手なわけでもないし』
私はただ、受話器の向こうの泉さんにペコペコと頭を下げました。泉さんには申し訳ないのですが過剰な期待と言えるくらい、
私の中では思っていたよりも更に上出来なチョコをつかささんに渡せる未来予想図が頭の中で勝手に描かれています。
「あ、泉さんはかがみさんと一緒には作らないんですか?」
『あ〜……むしろかがみはつかさに教えてもらうんじゃないの?』
「それもそうですね。では、明日だけはいつもとは違う二組に別れちゃいますね」
『まあその次の日に燃えるからいいんだヨ』
「そ、そうですか……では明日、よろしければこちらに来ていただけますか? 材料などは用意させていただきますので』

******

(チョコレート、頑張って作るから待っててね!)
放課後、つかささんはそう言って私と別れました。私は勇む気持ちを抑えるように家路を辿ります。
泉さんがやってきたのは午後五時半。何やら結構な量をバッグに詰め込んで、いつもネコ口を私に見せています。
「こんにちは。みゆきさんいますか?」
「あらあら、こなたちゃんね。みゆきなら台所で準備してるわよお〜。色々と教えてあげてね」
「こちらこそお世話になります」
「それにしてもみゆきが手作りチョコだなんてねえ〜。私もお父さんに作ろうかしら〜」
母との簡単な世間話を終え、台所へとやってきた泉さん。私は器具や材料などを用意している最中でした。
「お待ちしていました。早速で申し訳ありませんが、作業にとりかかりましょう」
「そうだね。色々と時間かかっちゃうだろうし。みゆきさんはどんなチョコを作ろうと思ってるの?」
「そうですね。いくつか候補があるのですが、この中からつかささんが喜びそうなのを……」
私が取り出したのは母の部屋に眠っていた製菓の献立集。その中から気になるものに目星をつけていました。
それから、詳しいレシピをネットで調べて印刷したもの。
「素人でも実現可能なものから選んではみたのですが、泉さんの意見も参考にしようかと思いまして」
「ふむふむ。ひとつはボンボンか……つかさに似合いそうだよね。でも、ちょっとありがちかな」
「ありがち、ですか。難しいものですね」
「パティシエ志望のつかさは技術でくるからね。こっちはセンスで勝負しなきゃ」
「勝ち負けの問題ではないと思うのですが……ではこちらは?」
そういって私が指差したもうひとつのレシピを見て、泉さんは額にたらりと汗を伝わせました。
「これ……ブッシュ・ド・ノエル? ずっしりしてるね」
「チョコというよりはケーキですからね……可愛くてつかささんに合うかと思ったのですが」
「これ意外と難しいんだよ? それに、時期的にもアレかな」
「クリスマス御用達ですからね……ではこれなどいかがでしょうか」
「フルーツのチョコ漬けかあ。じゅるり、美味しそうだね」
「イチゴ、バナナ、キウイを用意しています」
「みゆきさーん、つまみ食いしちゃダメかな?」
「少しならよろしいかと……」
泉さんはイチゴをひとつ口にくわえて、レシピが印刷された紙をくるくると回していました。
嬉しいことです。私と一緒にここまで考えていただけるなんて。持つべきものは友、ということですね。
どのメニューにもいまいち納得できない、そんな顔を浮かべる泉さん。私も無い知恵を絞って考えました。
109.I just wanna hold you tight4:2008/02/13(水) 15:47:35 ID:NzhUopqK
「なんか違うんだよね。もっとこう、オリジナリティとインパクトが欲しいっていうか」
「オリジナリティと、インパクト、ですか?」
「そう。他のどこにもない、みゆきさんにしか作れないチョコをさ」
「泉さんはどのようなチョコを作る予定なんですか?」
「私はねー、このチョコ漬けにしようカナ? フルーツならかがみもあまりカロリーを気にしないで済むしね」
ふと、泉さんの優しさが垣間見えたような気がしました。このような些細なところにも、かがみさんを気遣う心。
単に美味しく食べてもらおう、見栄えを良くしよう、それだけに留まらないプラスアルファの愛情。
本当に好きな人にだけにあげる本命と義理と壁は、そういった部分にあるのかもしれません。だとすれば私は。
(つかささんなら、どうしたら喜んでくれるでしょうか)
つかささんが喜びそうなこと、私は頭をフルに働かせてそれを思い出そうとしました。
(つかささんは、私にくっついて甘えるのが好きですね。私もそうされるのが大好きで……)
二人で身体を寄り添い合わせて、お互いの頭を撫であったり、包み込むように抱き締め合ったり。
そのときのつかささんの笑顔を思い出して、胸の奥がきゅんと痛むのを感じます。
この感情を、この気持ちを、できればそのままチョコに変えることができれば。私はそんな事を思っていました。
「む……!」
その瞬間、泉さんの瞳がキラーンと光りました、露骨に何かを思いついたと言わんばかりの表情です。
「いいこと思いついたよ、みゆきさん。我ながら超名案がネ」
「それはなんですか?」
「みゆきさんの願った通り、その胸の痛みをそのままチョコに変える方法だよ」
心を読まれてるということに気付きましたが、知らない振りをしました。私の気持ちを、チョコに変える方法?
「それも、みゆきさんにしか作れないんだよね」
「一体どのようなチョコを?」
「もちろん……おっぱいチョコだヨ」
「おっぱ……?」
泉さんの言葉が耳を通った瞬間、私の思考が一瞬だけ完全停止してしまい……それから言葉の意味をゆっくり咀嚼。
それが脳に伝わってようやく全て飲み込み終えたときに、私の中からは羞恥という熱いものが込み上げてきました。
「えっ、えええええっっ!!!」
「ま、驚くだろうね」
「それは……その、む、胸の形をしたチョコ、ということでしょうか?」
「そうだよ。しかも単なるおっぱいチョコじゃセクハラになっちゃうから、ちゃんとみゆきさんの形でね」
「わ、私の形って、それはどういう……」
泉さんはあごに手をあてて、まじまじとその視線を、私の胸へと注ぎました。
私は恥ずかしくなり、胸を手で隠してはみましたが、それでも泉さんは刺すような視線を送るのをやめません。
「あの、泉さん……?」
「だからぁ。その胸の型をとっちゃうんだよ。原寸大のみゆきさん特製おっぱいチョコだよ。食べきれないかもネ」
泉さんの容赦無い言葉の責めに、私は頭の先まで真っ赤になりました。そんな言葉をよくおくびもなく……。
胸で型を取る? これまでに一度だって考えた事の無いその衝撃に、私は恥ずかしさと共に困惑するばかりで。
「それは胸の痛みをチョコにするのではなくて、胸をそのままチョコにしただけでは……?」
「その通りだヨ。ぶっちゃけ、つかさって甘えたがりの寂しがりだから、みゆきさんに抱かれたがるでしょ?」
「う……そ、そうですけれど」
さすがにつかささんの知らないところでつかささんを甘えたがりだと寂しがりだのを肯定するのは悪い気もしたのですが、
たしかにつかささんはことあるごとに私の胸に赤ん坊のように甘えてきます。私も、それは嬉しい限りなのですが……。
110.I just wanna hold you tight5:2008/02/13(水) 15:48:44 ID:NzhUopqK
「みゆきさんみたいな胸の持ち主なら、なおさらその胸で甘えたがるだろうね。だからこそのおっぱいチョコだよ」
「す、すみません。その名称を連呼するのは控えていただきたいのですが……」
「つかさ、すごく喜ぶと思うよ。何より、インパクトがあるしね」
「インパクトしかないような気がするのですが……」
「それに、つかさに胸を見せたことがないわけじゃないんでしょ? むしろ何回も見せてるんじゃないの?」
「あ……あぅ……」
金魚のように口をパクパクとさせる私。泉さんはただニヤニヤと企む笑いを見せて、私へとにじり寄ってきます。
「つかさはみゆきさんの胸が好き! みゆきさんは胸を見せたい! これでちょうどいいんじゃないの?」
「べ、別に見せたくはありません」
「でも、みゆきさんのつかさへの気持ちはここにあるんでしょ?」
泉さんはそう言うと、人差し指で私のみぞおちより少し上の部分をとんとんと突つきました。
早鐘を打つ心臓の鼓動が、そのまま泉さんの指へと伝わりそうな感覚。
「だったら、みゆきさんの一番正直な気持ちをそのまま届けなきゃ。技術はなくても、想いが込められてるはずだよ?」
「そ、そうですけれど……」
うまく言いくるめられているような気が……いえ、言いくるめられているのでしょう。
それでも、泉さんの言葉はしっかりと私の胸に響いて、少しばかりの迷いが私の中に生まれました。
「ね、決断しちゃいなよみゆきさん。これもつかさのためだよ?」
「……すみません、少し考えさせてください」
椅子に腰掛け、恥ずかしさでのぼせかけた頭を労る様に抱えると、私はどうすべきか必死に考えを巡らせました。
(これはとても恥ずかしい事です。しかし、これで本当につかささんが喜んでくれるでしょうか)
頭の中を駆け巡るのは、つかささんの愛らしい笑顔。チョコを目にしたときに、つかささんはどのような顔を?
私の事をおかしい人だと思って、引いてしまうでしょうか。もしかして嫌われてしまったり。
一歩間違えればそれは、とても下品な行為です。つかささんのような純粋な方に、そのようなことをするのは……。
それでも私の中では、どこかつかささんが喜んでくれるような、そんな気がしなくもなかったのです。
それは私とつかささんが一糸纏わぬ姿で抱き合って眠っていたとき。つかささんは私の胸に顔を押し付けて、
『やっぱり。ゆきちゃんの胸、安心するね』
『わ、私の胸ですか? そんなたいしたものでは……』
『ううん。私これ、大好きー』
つかささんは私の胸に更に強く顔を押しつけてきたので、私はその小さな頭をそっと撫でてあげました。
それがチョコレートとなると話は別になるかもしれません。悪ふざけと思われるかもしれません。
しかし、つかささんなら喜んで受け入れてくれる、恋人としてそんな予感がするのです。
また数分ほど悩んでしまいましたが、意を決すると私は立ちあがりました。
「……泉さん。作りましょう、そのチョコレート」
それから話は冒頭に戻ります―――。

******

衛生面のため私は一度お風呂場で胸を洗い、消毒用アルコールで拭っていると、我ながらその姿の滑稽さに、
私は何をしてるんでしょうかと妙な正気が生まれてきて、なんだか両親に申し訳無い気持ちにすらなってきました。
「こっちは準備OKだよ」
泉さんは溶かしたチョコをへらで混ぜて、人肌まで冷めさせていました。割と大量なので大変だったでしょう……。
111.I just wanna hold you tight6:2008/02/13(水) 15:50:08 ID:NzhUopqK
「すみません、量が多くて。疲れましたよね?」
「なにそれ、イヤミ?」
「いっ、いえ、そうではなくて……!」
「冗談だヨ〜。さあ、固まらないうちに胸をつけたつけた」
「で、では……」
チョコを張ったボウルの前に立って、上半身だけ裸のままだった私は胸を隠していた腕をゆっくりとはがしました。
「うおお……おっぱいがいっぱい。こう、ばゆんっと……やっぱり生巨乳はこうも違うものなのか……」
「へ、変なこと言わないでください」
それから恐る恐る胸をチョコの中へと沈めていきました。最初は熱いと思いましたが、それもすぐに慣れてしまって、
胸を包む奇妙な熱、全体に走るピリピリとした刺激、半分まで沈めると、チョコに胸を吸われているような気がしました。
「みゆきさん、大丈夫?」
「は、はい。とりあえずは……これでどのくらい待てばいいのでしょうか」
「そうだね。一時間くらいは」
「い、一時間ですか!?」
「これもつかさのためだよ〜頑張ってみゆきさん! 私は自分のチョコ、作ってるからネ」
イチゴをひとつ口に放り込むと、泉さんは残ったチョコに手早くフルーツを浸していきました。
「これ、結構つらいです〜……」
「明日の腰痛は避けられないかもネ」
「みゆき〜、こなたちゃ〜ん? チョコの感じはいかがカナ〜?」
「お、お母さん!?」
「うげっ、やばっ!」
もうすぐで母が台所に入ってきそうではありましたが、そこは泉さんが機転を効かせて事無きを得られました。
一時間の間、何度肝を冷やしたかわかりません。そんなこんなで、私達はチョコを作っていったのです……。

******

「ハッピーヴァレンタイン、ゆきちゃん♪」
2月14日。私とつかささんは学校を終えると、私の部屋でふたりきりになっていました。
お互いの手には派手にラッピングされた箱。私の箱とつかささんの箱とは、大分サイズが違いますが……。
「ハッピーヴァレンタインです、つかささん」
本来は校内でチョコを交換する予定だったのですが、私のチョコがチョコなので、場所を変えることにしました。
その理由がわからず、頭に「?」を浮かべるつかささんを、ニヤニヤと見つめる泉さん。
(あれを校内で開けられたら、私はもう学校に通えませんし……)
泉さんはかがみさんにチョコ漬けを渡していましたが、かがみさんはどうやら泉さんの家で渡すようです。
まさかかがみさんまでは私と同じことはしていないと思いますが……しかし、泉さんのことですし……。
「あのね、昨日はチョコレートひとりで作ってたんだ」
「かがみさんはご一緒ではなかったのですか?」
「うん。ひとりでしかやりたくないって。大丈夫かな〜とか思ってたんだケド」
「きっと恥ずかしかったんですね」
「それよりも、はいチョコ。開けてみて!」
つかささんから渡されたチョコは、ウサギのイラストが描かれたピンクの包装紙に黄色のリボン。
それをゆっくりと開けると、箱の中から出てきたのはハート型のチョコ。ホワイトチョコで文字が書かれていました。
112.I just wanna hold you tight7:2008/02/13(水) 15:51:39 ID:NzhUopqK
『St.valentine Miyuki I love you.』
「まあ……ありがとうございます」
その可愛らしい愛の言葉に、私はほんのりと頬を染めました。つかささんもそれは同じようです。
「実は一回スペルを間違えちゃって、作りなおしになっちゃったんだ……」
「それはそれは……本当にお疲れさまでした。本当にお上手にできていますよ」
そのまま商品に出来そうなほど、つかささんのチョコは高い完成度を誇っていました。
つかささんはそれをお皿の上に乗せると、ナイフでそっと切り込みを入れました。少しもったいないような気も。
「これは……」
「ザッハトルテだよ。初めて作ったんだけど、大丈夫かなあ?」
「では、いただきますね」
フォークでそっと口に運ぶと、濃厚な口どけですがしつこくない甘さの中に、ほのかなほろ苦さ。
スポンジはふっくらと柔らかく、舌の中でゆっくりと蕩けるように、風味だけを残して消えていきます。
「美味しい……本当に美味しいです、つかささん」
「よかったあ……苦さがきちんと残ってるかなって思ったけど、安心したよ〜。……ねえ、ゆきちゃん」
「はい、なんですか?」
「……ん」
つかささんは目を閉じて、小さな唇を私につんと突き出してきました。その愛くるしさに、卒倒しかけましたが……。
私はザッハトルテを口に加えると、つかささんにそっと口付けました。コーティングされたチョコが唇の間を動きます。
二つの熱い唇の間でチョコは溶けていき、二人の口の中でその風味を広げていきます。やがて口付けを終えると、
「えへへ……今日のキスはちょっと苦いね」
「でも、とても美味しかったですよ」
「ゆきちゃんのチョコはどんなのかなあ?」
きました……私は深呼吸をして、そっと箱を取り出します。つかささんは目をキラキラさせて、私を見ていました。
「わあ、ゆきちゃんのチョコ、大きいんだねえ」
「あの……私、チョコを作るのは初めてでして、それに、何がどうなってか、予期せぬ形になってしまって」
「箱、開けるね」
「それも、すごく歪な形で、いえ、もう歪というか常識に反した形をしていまして、つかささんには失礼と言いますか」
「えいっ」
「ああっ……す、すみません!」
ついにつかささんの手によって箱は開けられ、その眼前にチョコが……私の胸を象ったチョコが姿を見せました。
……部屋に走る沈黙。俯いていた私が恐る恐る顔を上げると、つかささんは目を丸くしてチョコを見つめていました。
(ああ……呆れています。絶対変な人だと思われてしまいました……)
それから、顔を真っ赤にしたつかささんは少しためらいながら私を見ると、恥ずかしげに訊ねてきました。
「ゆきちゃん……これって?」
「……本当に申し訳ありません。実は」
私は正直に話しました。自分の胸の気持ちをつかささんに伝えたかった事、泉さんからの入れ知恵があったこと、
その説明をしている間も、穴があったら入りたい気分に襲われていました。黒歴史とはこういうことでしょうか。
つかささんは少し驚きながらも、私の話に真摯に耳を傾けてくださいました。
「……私がどうかしていたんです。こんなものをつかささんが喜ぶと思って作っていたなんて……申し訳ありません」
「う、ううん。ちょっと驚いちゃったけど……」
そういうとつかささんは、そのチョコを少しだけ割ると、その欠片を口に放り込みました。
「あ、つかささん……」
「ゆきひゃんのヒョコ、しゅごくおいひーよ」
113I just wanna hold you tight8:2008/02/13(水) 15:53:00 ID:NzhUopqK
チョコを口の中でコロコロと転がして、笑顔で答えるつかささん。
ああ、やっぱり……つかささんはこういう人でした。だから私は好きになったのに……。
想いが通じると共に、胸の中に喜びが溢れてきました。同時に、申し訳無いという気持ちも。
「いえ、私の至らないチョコを食べていただいてありがとうございます……!」
「なんでお礼言うの? ゆきちゃんの気持ちがこもったチョコだよ? 私がお礼を言うところだよ」
「ですが、つかささん」
「ゆきちゃん、ありがとう♪」
「……はい」
それから私達は見詰め合ってにこにこと微笑み合っていました。
これが本命を渡す、ということだったのですね。自分の本当の気持ちを伝えるのに、ほんの少し形にこだわる日。
これから先のヴァレンタインも、今日のように不器用なりに、相手に気持ちを伝えられますように。
そう考えると、目の前にいる方との未来も、今から楽しみになっていくというものです。
つかささんはまじまじと胸チョコの形を再確認しています。これはこれで、やはり恥ずかしいですね……。
「でもこれ……すごくリアルだよね」
「これは……さすがに恥ずかしいですね」
予期せぬ完成度の胸チョコ。つかささんはどのように食べればいいのか迷っているようです。
「えと……舐めたらいいのかな?」
「あっ、そこは」
つかささんはそっとチョコに口を近付けると小さな舌をそっと這わせました。
それは、胸の先端といいますか、私の一番敏感なところで……。
つかささんは少し苦しそうに、なぜか蕩けるような目をしてチロチロとチョコを舐めています。
(こ、これは……!)
わざとなのかそうなってしまうのか、チョコを舐める音が部屋に響き、私はつかささんから目が離せなくなっていました。
(そ、そんな顔でつかささん……私の胸チョコを、舐めて……)
それほど美味しいものだったのでしょうか。つかささんは舐めるのを止める気配が一向にありません。
チョコはつかささんの唾液で濡れ、溶けかけながらもつやつやとした輝きを放っています。
「んん……おいひいよ、ゆきひゃん……」
執拗に胸を舐め続けるつかささんでした。先端だけではなく、ふくらみをラインに沿って舌を這わせたり、
時折噛むようにして軽く歯を立てたり、子供のようにむしゃぶりつく様は、夜のその姿を思い出させて……。
(あ、つかささん、そんな……)
私は太ももを擦り合わせ、つかささんの行動をずっと見つめ続けていました。体温が上がっていくのを感じています。
つかささんの小さな舌がチョコに刺激を与えるたびに、まるでチョコと私の身体にリンクしているかのように、
私の身体にもゾクゾクとするような、正体不明の刺激が走っていく……ような気がします。
「お、美味しいですか、つかささん」
「うん、美味しいよ……ゆきちゃんのチョコ、すごくおいひい」
「はあっ……もっと舐めてください、つかささん」
「うん、いっぱい舐めてあげるね」
つかささんは再び舌を動かして、今度は強く吸いつくようにしてチョコをむしゃぶりついていきます。
私は歯をカタカタと鳴らしてそれを見つめながら、涙がこぼれそうになるのを抑えていました。
114I just wanna hold you tight9:2008/02/13(水) 15:54:02 ID:NzhUopqK
「……ゆきちゃん」
「は、はい……」
「どうして、息が荒くなってるの?」
つかささんに指摘されて、私は自分の息が不規則に乱れていることに気が付きました。
つかささんは口の周りにチョコをつけたまま、何故か物欲しそうな濡れた瞳で私を見つめています。
「……つかささん」
「なあにー?」
「ごめんなさい」
私は立ちあがってつかささんを抱き締めると、二人で並んでベッドに倒れ込みました。
「ゆきちゃん……私、チョコついてるよ?」
唇が重なります。今日二度目のキス。今度は先程よりも少しばかり甘めなのは、多めの砂糖のせいでしょうか。
それから私はつかささんの口の周りに舌を這わせて、周りのチョコを舐めとっていきます。
「我慢できなくちゃったの?」
「こんな早くから、申し訳ありません……」
「ううん。ヴァレンタインだし……私もだし」
部屋に漂うのはチョコの香りと少し淫靡な空気に混じるフェロモン。
「ゆきちゃん」
「はい、なんですか?
「……溶けてもいい?」
「チョコだけじゃ、満足できませんね」
「今度は本物をちょうだいね……?」
それから私達は甘く溶けるような夜を過ごしました。胸チョコは溶け切って、形を残していませんでしたが……。

******

「こ、こなた」
「なあに〜かがみん」
「セ、セントヴァレンタインデー……」
「……かがみん、全身真っ赤だヨ?」
「う、うるさいわね! あんたがこういうのがいいっていうから……」
「でもまさか本当にやってくれるとはネ」
「な、なによっ! アアア、アンタが喜ぶと思って……」
「むふふ〜、わかってるよ〜かがみん。『裸にチョコ塗ってリボンを巻いてほしい』ってお願いが冗談だったけど、
 かがみんは可愛いから本当にやってくれちゃうんだよね。眼福眼福。ツンデレ大明神様のチョコ、ありがたや」
「だからからかうなあっ! これ、すごくベトベトするし、す、すごく恥ずかしいんだから!」
「うひー、それでは、余すことなくいただいちゃうね」
「あっ、バカっ、いきなり、ちょっ、あっ」
「かがみ〜ん」
「な、なによ……」
「セントバレンタイン、かがみん」
「……ばか」
115みゆつか愛してる:2008/02/13(水) 15:56:44 ID:NzhUopqK
投下は以上です。読んでいただき有難うございました。
誤字脱字ありましたら申し訳ありません。
おっぱいキャラ+ヴァレンタイン=これしかないということでベタベタなネタです。

では、ヴァレンタイン傑作祭りに期待しています。
116名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 16:36:20 ID:arBAX48g
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1202745120/105-115

バレンタインはやっぱりネタがかぶってしまいますね
投稿数の多いスレでは同じスレ内でSS職人さんや絵職人さん同士でかぶったり
ネタは限られてるのでいかにストーリー展開やテンポや小ネタなんかで個性を出すか
さてオレも某所向けを仕上げるか
六日の菖蒲は恥ずかしいもんね
117116:2008/02/13(水) 16:40:52 ID:Kp+u66n3
118みゆつか愛してる:2008/02/13(水) 16:49:27 ID:NzhUopqK
>>117
申し訳ありません、それ私の作品です……
119名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 17:03:25 ID:plckJOzz
>>115
甘い〜GJ
そして、つかさの行動がしっかりエロいよ

>>117
誤爆のおかげで、つかさサイドが読めたよ
って、本当に誤爆?
120名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 17:31:16 ID:uwk4XiNK
>>117
くううああううああぁぁぁ!?


……っはー、っはー。あんまり甘くて三途の川まで行って来ました。
甘くて可愛くてえろくてもう。しかも裏バージョンまで書いてるとか貴方が神か。
流石の仕上がり、大変美味しゅうございました。ぐっじょぶ!
121116-117:2008/02/13(水) 17:37:36 ID:hIr0pLP1
>>115
改めて考えますと、あらしと紙一重です、自重します
それと二つの作品にGJ

チョコで型取りするネタは普通ですが、みゆきさんにこれをやらすエロさの方向やさじ加減の微妙さで
同じ作者さん?というか、みゆつか愛してる氏ならすばらしい新スレ住民が勇気付けられるんじゃないかと思って
確信犯(誤用)的にこっちの作品も紹介したというわけなんです

>>119
誤爆は本当です、Jone Doe Styleというブラウザを使い始めたばかりで
レスのウィンドウをエロパロ(ここ)で開いた後みゆつかスレを見に行って、二つの作品を見て誤爆!
IDが変わっているのは、ADSL回線が不安定で頻繁に切れるから
122名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 18:00:06 ID:Bc0tghFT
janeじゃね?
123名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 18:03:42 ID:AljZzuel
>>122
【審議中】
         ,,「Yフ,   「Yフ,
     _,,「〉,,/ ┃┃ヽ/┃┃ ヽ,..|フ,,_
    ./  ┃_,,「〉,_  l _,|フ,,,_/┃  ヽ
   |   /   ┃ヽ /┃   ヽ    l
    `'ー--l      ll      l---‐´
       `'ー---‐´`'ー---‐´
124名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 18:10:58 ID:uyOpne8y
こなかがスレ
つかこなスレ
かがつかスレ
みゆつかスレ

気づいたらCPスレがこんなにww

>>115
甘々GJ!
125名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 18:13:29 ID:dCh2DXIs
>>124
しかし思うんだが、ゆたか×こなたスレはなぜないのだろうか。
126名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 18:33:08 ID:YRtyFANj
需要が少ないからという理由以外にあるわけがない気がするが。
127名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 18:33:21 ID:qF+EDE/p
つかさ…恐ろしい子…!
128高良財閥令嬢:2008/02/13(水) 19:01:04 ID:4HPEKNkF
みゆ×こなや
みゆ×かががありません…

ヲタさんも、ツンデレさんも
味わいたいのに…くすん。
129名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 19:05:30 ID:GHnk6yQk
マイナーカプまでいちいち用意したら乱立で叩かれる(´・ω・`)
アンチからすれば、カップリング毎にスレッド立ってる時点で乱立なのに…
130名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 19:09:35 ID:uAUtSa8t
まあ、そういう議論等は向こうでやってくれ
131名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 19:12:29 ID:oIF6PR5V
パティ×ひより、こう×ひより、こなた×ひより投下します。
※寸止めのみ。
132ひよ☆ゆり(1/4):2008/02/13(水) 19:14:03 ID:oIF6PR5V
 薄く開いた目に、カーテン越しの日の光を感じる。ひよりはまだ意識のはっきりしないまま体を起こした。胸までかかっていた白いシーツが落ちる。
「……あれ?」
 ここはどこで、自分は何をしていたのだろう。そんなことを思いながら周りを見る。
 自分の部屋ではなかった。どこかのアパートの一室。壁にはアニメのカレンダーが貼られ、漫画やアニメ雑誌がそこそこにまとめてあった。雑多だが、それなりに清潔感を保っている。
「……って、パティのアパートか」
 そうこうするうちに思い出してきた。ひよりは昨日、パティの家にお泊まりしたのだった。
(えーっと昨日は確かパティと……HALO3の協力プレイで盛り上がった後、ご飯食べながら攻殻のDVD見て、お風呂入った後はアニソン聞きながらまったりしてて……えっと、それから――)
 まだ寝ぼけている頭で、昨夜の出来事を思い出そうとする。
(それから――……どうしたんだっけ?)
 いつ頃眠りについたのか、その辺の記憶がハッキリしない。
「……え?」
 ある異常に気づき、ひよりの頭は急激に元通りの回転速度を取り戻す。
「裸!?」
 今さら気付くのも相当間抜けだが、大慌てでシーツを体に手繰り寄せた。ひよりは身に一糸もまとっていない状態で眠っていたのだ。
「な、何故に!?」
 もう一つ。これはあるいは無意識に気づかないようにしていたのかもしれないが、大変な異常事態があった。
 ひよりのすぐ横に、人の気配があった。ここの住人である。ひよりと同じく、マッパで。パティの瑞々しくも豊満な乳房が、ひよりの腕にダイレクトに当たっている。
「うおあああっ!!?」
ひよりは大慌ててで後ずさろうとし、後頭部を壁に思い切り強打する。
「っ〜……!」
 驚くやら痛いやらで声が出ない。
「ン〜? 朝ですカぁ……?」
 騒がしさに目を覚ましたパティは体を起こし、あくびをしながら大きく伸びをする。
「ふぁ〜ァ……Morning ヒヨリ」
「モ、モーニン……」
 涙目で後頭部を押さえながら、ひよりは何とか挨拶を返す。惜しげもなくさらされているパティの裸体からは目をそらし。
「どうしたですカ?」
「いやちょっと……寝ぼけてて頭打っちゃって」
「大丈夫ですカ?」
「う、うん……平気」
「それならよかったでス」
 屈託のない笑顔を見せるパティ。そこからは何の含みも見て取れない。裸だけど。
(落ち着け……ただ裸で一緒のベッドで寝てたからといって、ナニがあったと決まったわけじゃない……)
 普通に考えればそれだけでも十分エロい――じゃなくてえらいことだが、ひよりはとにかく気を落ち着けて自分に言い聞かせる。
「あ、あのさパティ……その、昨日のことだけど……」
「昨日ノ? なんですカ?」
「いやあの……何、してたんだっけ……?」
「……ひょっとしてヒヨリ、おぼえてないですカ?」
「何を?」
「ゆうべはおたのしみでしたネ、なことですヨ」
「――っ!!」
 ひよりの顔が火のついたように赤くなる。
「日本ではこういうのをキヌギヌというんですよネ」
「いや普通それは男女の――ってそういう問題じゃなくて! その、つまり、それは……!」
 ひよりはそれ以上言葉が出てこず、池の鯉みたいに口をパクパクさせている。
 パティはそんなひよりに妖しく微笑みかけると、身を乗り出して肌に触れた。
「ちょ、ちょっと!?」
「忘れたのなラ、思い出させてあげまス」
 静かにそう呟いてから、パティの唇がひよりの首筋に当てられた。熱く柔らかい感触に、ひよりは総毛立つ。
 パティは首筋から肩、胸へと、ゆっくり舌を這わせていく。
「ちょっ、っぁ……」
 戸惑うひよりをよそに、パティは背中まで腕を回した。肌と肌とがぴったりと合わせる。
(うわ柔らか……!)
 肌と肌とが吸い付くようだ。言いようのない感覚に、ひよりは思わず吐息を漏らす。ひんやりした皮膚が、だんだんと熱を帯びていく。
 上気したひよりの表情を見ると、パティは満足げな顔で声をかける。
「思い出しましたカ?」
「え……」
「まあどっちでもいいでス。学校もあるからこれくらいにしておきますネ」
 そう言って、パティは悪戯っぽい笑みを浮かべながらひよりの肩を噛んだ。歯形が付くか付かないか程度に。
133ひよ☆ゆり(2/4):2008/02/13(水) 19:17:05 ID:oIF6PR5V
「何だったんだろう、一体……」
 肩に残る微かな感触を意識しながら、ひよりはひとりごちた。朝の学校。ホームルーム前の時間である。あの後、パティとひよりはごく普通に朝の支度を終え、揃って学校に来たわけだが。
 ひよりはパティの席に視線を移す。特に変わりなく、普段通りの様子だ。しかし今朝の一幕は、どう考えても昨晩一線を越えた出来事があったとしか――
「いや待て!」
 思わず声に出してしまい、周りのクラスメイトが何事かと振り向く。ひよりは慌てて愛想笑いしてごまかす。
(……私にリアルでそっちの趣味なかったはず……間違いない! どういうことだ? 誰かが私を陥れようとしているのか? これは何者かによる黒い陰謀だというのか……?)
 悶々と悩み続けるひよりをよそに、ホームルームが始まった。

「今日はちょっと部室の方行ってくるね」
 昼休み。いつも一緒にお昼を食べているゆたか達にそう言って、ひよりは教室を出た。パティと顔を合わせにくかったからだ。
 アニ研部室には誰もいなかった。ひよりは何となくホッとして息をつく。
「おっすひよりん」
 ポン、といきなり肩を叩かれ、ひよりは思わず飛び上がりそうになった。
「あ、こ、こうちゃん先輩スか……」
「どしたの焦って? 爆弾でも仕掛けようとしてた?」
「しませんよ」
「それじゃあ誰かのロッカーにラブレター入れようとしてたとか?」
「誰がアニ研にラブレターなんか持ち込みますか」
「そりゃ残念」
 冗談めかしてそう言うと、こうは椅子に座って弁当の包みを広げた。ひよりも倣って腰掛ける。
「先輩、いつもお昼ここですか?」
「いつもってわけじゃないけど。今日はたまたま。ひよりんこそどうして?」
「……まあ、私もたまたま……」
「ふーん」
 その後は二人とも黙々と弁当を食べる。食後、こうはペットボトルのお茶を部室にあった紙コップに注ぎ、ひよりに差し出した。
「ありがとうございます」
「ん。ところでさー、ひよりん」
「何スか?」
「首んとこの赤いの、キスマーク?」
「ッッ!?」
 口に含もうとしたお茶を吹く。狼狽したひよりは、席を蹴立てて首筋を手で押さえた。
「あらら……ひょっとしてマジで?」
 そう言われて、ひよりは自分の失策に気づく。虫さされでも何でも適当に誤魔化せば良かったのだ。顔を真っ赤にしてそこを隠すなど、「はいそうです」と言っているようなものではないか。
「詳しい話を聞こうか」
「いや、これは、その……」
「まあまあ落ち着きなさい」
 何と言えばいいのか分からず涙目になっているひよりの両肩に、こうの手が優しく置かれる。と、不意にひよりの体が強い力で引き寄せられた。
「え――?」
 ひよりの首筋、件のキスマークが付いた場所に、こうが唇を押し当てていた。
「こうちゃん先輩……?」
「どこの泥棒猫だろうね、私のひよりんに手ぇ付けたのは」
「わ、私のって、何を……ぁ」
 こうの手がひよりの腰の後ろに回され、抱きすくめる。
「どこまでされたの? それともしたの?」
 詰問口調で尋ねながら、こうの手はひよりの制服を器用にはだけさせ、下着ごしに小振りな乳房を撫でる。
「黙ってちゃ分からないでしょ」
「ひぅっ……」
 こうが乳房に当てた手に力を込めると、ひよりは声を上げた。
 いつの間にか、ひよりの背は壁に押し当てられていた。
「首だけじゃないね、キスマーク。よく見たら歯形まで付いてる。誰とどんだけやらしいことしてたんだか……」
 怒っているような声音で呟きながら、こうはひよりの体を探るようにまさぐる。
「せ、せんぱっ、いっ……やめっ、て、ぁ」
「だーめ」
 こうはひよりの耳元で囁くと、そのまま耳たぶに歯を立てた。
「ぁ、ぅ」
 こうの手がひよりの下腹部に伸びる。スカートをたくし上げ、下着の中にまで指先を伸ばそうとする。その時、予鈴が鳴った。ひよりの耳にはその音がひどく遠くから聞こえる。
「時間切れか」
 こうは残念そうに呟きながら、ひよりの体を解放した。ひよりは荒く息をつきながらも、乱れた衣服を取り繕う。
「それじゃ、続きはまた今度ね♪」
 明るくそう言って立ち去るこうを、ひよりは呆然と見送った。
134ひよ☆ゆり(3/4):2008/02/13(水) 19:18:01 ID:oIF6PR5V
 放課後。ひよりはいつもの数十倍疲れた様子で廊下を歩いていた。部室にも寄らず、ゆたか達と一緒にも帰らず、一人である。
「今日は一体……何がどうなってんだか……」
 朝のこと、そして昼休みのことを思い出すだけで、顔が熱くなる。
 下駄箱の前に来た時、不意にひよりの肩を誰かの手が叩いた。
「――っ!」
 部室の時と同じパターンに、ひよりはまた飛び上がりそうになった。が、
「やほー、ひよりん」
「あ……泉先輩。ども」
 心の底からホッとしながら、ひよりはこなたに挨拶を返す。
「今日は柊先輩や高良先輩と一緒じゃないんスか?」
「まーね。ひよりんこそ部活は?」
「えと……今日はちょっと欠席で」
 さすがに理由は言えず、ひよりは言葉を濁す。
「んじゃ一緒に帰ろうか」
「いいっスよ」
 そんなわけで、ひよりとこなたは並んで昇降口を出た。
 いつもみたく漫画やアニメの話などしながら歩いていると、とある公園の前にさしかかった。
「あ、ごめん。ちょっとお手洗い寄っていい?」
 こなたがそう言うので、二人は公園に足を踏み入れた。この時間にしては珍しく、人気が無い。
「こういう公園来ると、ベンチにツナギを着たいい男が座ってないかとか考えちゃうね」
「普通は考えないと思いますが、まあ分かります」
 もちろんこの公園のベンチにいい男は座っていないし、今トイレに向かって全力疾走しているのは予備校に通うごく一般的な男の子、強いて違うところをあげるとすれば男に興味があるってことかナ――でもない。
「それじゃひよりん、こっち来て」
「え? こっちって……先輩、トイレじゃ?」
「いいからいいから。こっち来て」
「?」
 よく分からないまま、ひよりは手招きするこなたに着いて行く。公園の中の、周囲から非常に見えにくい茂みの中へ。
「……!」
 嫌な予感にひよりは背筋を震えさせた。が、時既に遅し。次の瞬間、こなたの両腕がひよりの体を抱きすくめていた。
「ちょっ……い、泉先輩まで何するんスかーっ!?」
「いやなに。今日のひよりんからは何やら総受けの匂いがするので」
「何スか総受けの匂いて!?」
「いかにも襲って下さいなオーラを放っているんだよねー。性的な意味で」
 喋りながらこなたはもの凄い手際よくひよりを剥いていく。遠慮も躊躇も一切無く柔肌を露出させていく。
「そんなオーラ放ってないスから! そもそも意味が分かりません! なんなんスか今日はみんな――アッー!」
135ひよ☆ゆり(4/4):2008/02/13(水) 19:18:28 ID:oIF6PR5V
「……はっ!?」
 見開いた目に、カーテン越しの日の光を感じる。朝。ひよりはベッドで横になっている。
「ゆ……夢?」
 自分の手を見る。手に汗握るの言葉通り、じわりと湿っていた。
「……夢落ち……」
 確認するように呟くと、ひよりは上半身を起こし、大きく安堵の息をついた。
「そ、そりゃそうだよね……は、ははは。色々と、あり得ないし……」
 独り言を呟きながら、額に浮いている汗を手の甲でぬぐう。それにしてもリアリティのある夢だった。
 ふと気が付く。ここは自分の部屋ではなかった。
「そっか。パティのとこに泊まったのは本当だっけ」
 夢と違うのは今日が日曜だということ。そして夢の中のような出来事はあり得ないということだ。
(えーっと昨日は確かパティと……マッスルタッグマッチの対戦プレイで盛り上がった後、ご飯食べながらサムライトルーパーのDVD見て、お風呂入った後はMADテープ聞きながらまったりしてて……えっと、それから――)
 寝起きにしてはハッキリした頭で、昨夜の出来事を思い出そうとする。
(それから――……どうしたんだっけ?)
 いつ頃眠りについたのか、その辺の記憶がハッキリしない。
「……え?」
 ある異常に気づき――というより激しいデジャブを感じ、ひよりは驚愕した。
「裸!?」
 今さら気付くのも相当間抜けだが、大慌てでシーツを体に手繰り寄せた。ひよりは身に一糸もまとっていない状態で眠っていたのだ。
「な、何故に!?」
 もう一つ。これはあるいは無意識に気づかないようにしていたのかもしれないが、大変な異常事態があった。
 ひよりのすぐ横に、人の気配があった。ここの住人である。ひよりと同じく、マッパで。パティの瑞々しくも豊満な乳房が、ひよりの腕に――


 ――――現実オチデスカ?


おわり
136名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 19:18:52 ID:oIF6PR5V
読んで下さった方、ありがとうございました。
137名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 19:21:50 ID:uwk4XiNK
>>136
リアルタイムにて読了。

嗚呼、寸止めなのにどうしてやらしいのでしょう。肩を甘噛みするとことか。
そして1レス目と4レス目の繰り返しネタ、現実の方が夢より濃ゆいのに超弾動双炎斬噴きました。ぐっじょぶ。
138名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 20:08:14 ID:oL7pU/Cn
>>136
GJなんだ、GJなんだが…










つなぎを着たこなたが「や ら な い か」と言ってる映像が頭に浮かんで
頭が変な方向(エロではない変態的な意味で)に移行しつつある俺を
誰か何とかしてくれ。
139名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 20:30:47 ID:LYuUhQ6z
GJだッ
妖しいエロスが非常にいい


全く関係ないが、アニメスレ某所に、えらくコアかつマイナーなクロスオーバーSSがあったな。
他アニメの主人公と名字が一緒な繋がりなんだが。
140名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 20:40:01 ID:0Y62yACU
>>138
それをSSにするといいと思うよ
141名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 20:42:07 ID:Nw8Qq1nr
某「下がる男」との競演というやつか?
ぐぐって8話まで保管済みのWikiを見つけたけど、他にあるかな?
142名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 20:45:51 ID:LYuUhQ6z
>141
8話まで? 俺が見つけたとこは7話までだ。
別のとこだったら見てみたいので教えてクレー。
因みに「終わらない明日」ってサブタイ。

>138
……そーいえばゲーム版で、マジで言ってたよな。
「や ら な い か」
143141:2008/02/13(水) 20:55:11 ID:Nw8Qq1nr
>>142
ごめん、今見たら7話までだった。
間違いなく同じところ。

というか、自分も同じようなクロスオーバーものの構想が浮かんでたんで、どうしようかと悩んでるところ。
こっちに上げるかあっちに上げるか、それともやめるかって。
144名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 20:57:45 ID:OVNSByyF
>>143
こっちでいいと思うよ
fateクロスオーバーとかあるしね
大概ここは受け入れてくれるし
嫌われがちなパラレルもここじゃあ大丈夫だったりするし
145名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 20:58:10 ID:LYuUhQ6z
エロじゃないし、クロスだし、あっちでいいんじゃーないだろうか。むしろ読ませろ。向こうで。
146名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 21:00:54 ID:asC3aZn6
>139
あー、あれだね?
「たったかたったったー、たったかたったったー、…オッス俺柊かがみ!」
だったっけ?

関係ないけど、こなたとかがみのキャラってTRPG真女神転生で初めて作られた噂って本当なのだろうか?
【こなた 骨法+雑学(オタク)】
14735-215:2008/02/13(水) 21:09:13 ID:fSR8m1e1
世間はヴァレンタインデー・・・
スレでもヴァレンタインデー

でも俺の書いた小説は電波という結果orz・・・
無理やりヴァレンタインデーっぽくして明日投下します

しかし時事ネタに弱い自分、せめてあきら様出そうよ自分orz
148名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 21:14:40 ID:oL7pU/Cn
こなたは合気道ですぞ兄弟






「スティーブン・セガールも萌え萌えですっ(=ω=.)b」
「はいはい…」
149141:2008/02/13(水) 21:16:54 ID:Nw8Qq1nr
>144-145
実のところ、「こっちに投下することになるかも」とは思ってる。
あの男は一歩引いた位置の扱いにする予定でいるし。

元々、
「黒井先生とこなたがやっているネトゲタイトルのいくつかは実在せず、実はウィザードとしての活動をごまかすためのものであった」
という着想からスタートしているんで。

>146
陵桜学園入学案内の美水先生のインタビューページの中に、キャラクターシートのイラスト部分をアップにした写真が載っていた。
そこから判断すると、

こなた、みゆき=トーキョーN◎VA The Revolution
かがみ、つかさ=真・女神転生TRPG覚醒篇

だと思う。
150名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 21:19:58 ID:LYuUhQ6z
>149
楽しみにしとく。

しかし、N◎VAなんだ。

こなた:カブキ●,マネキン◎,チャクラ と、
みゆき:タタラ◎,ミストレス,フェイト● か……?

一体あのハードボイルド世界でどんな冒険してたんだ。
(スレどころか板違い
151名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 21:40:14 ID:V9rBmnW7
遅くなったがひよりん総受けGJ!
ひよりんはエロではヘタレ総受け過敏属性と信じて疑わない俺には至福の一品だったぜ!
152名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 21:49:18 ID:aFKzjRT9
一瞬別の板開いてしまったのかと思った
ひとまとめで申し訳ないがGJです
153名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 22:03:34 ID:PBPEehli
「ねぇ、みさちゃん」
「なんだーあやのっ」
「バレンタインって――」
「あやの、バじゃない。ヴァ……」
「え、だから、バレン――」
「ヴァなんだってヴァ」
「バァ?」
「ヴァ」
「ブァ?」
「ん〜、あやの。ヴァなんだよ。ヴァ」
「ヴァ」
「そうそう、で言ってみ?」
「ブァレンタイン」
「駄目だな。そんなんじゃ兄貴は渡せないっ。ヴァレンタインだっ」

って、ねたが浮かんだんだ
それだけなんだ
深い意味はない
明日を楽しみに待ってるんだってヴァ
154名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 22:19:06 ID:RqBCzork
もう127kbかよ…
投下された方々にGJを贈りたい。


あぁぁ明日投下間に合うかなぁぁぁ
155名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 22:43:11 ID:E0yILy1Q
二分以上誰も投下しないようだったら俺が投下
156名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 22:44:53 ID:E0yILy1Q
と思ったんだけど、ごめん、ちょっと待ってorz
157MA☆KO☆TO:2008/02/13(水) 22:57:15 ID:E0yILy1Q
コテハンは多めに見てくれ。つけなきゃならぬ理由があるのさ

■かがみ→つかさ
■暗め。兄弟、ソフトなヤンデレは好きかい?
■エロは無いんだ……すまない。

んじゃ、投下いってみよー。
158名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 23:04:14 ID:E0yILy1Q
ミスった……ごめん、マジでごめん。編集がうまく出来て無かったよ。
ちょっと吊ってくる。順番待ってた人はどうぞ投下してくだされ。
0時には直してくる……
159名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 23:20:16 ID:7tS5qrHE



160名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 23:22:42 ID:tHWogT0c
>>159






161名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 23:25:42 ID:u6bpwY/k



162名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 23:25:59 ID:OVNSByyF











163名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 23:29:49 ID:qiJHb4gL
こんな流れで投下なんてしていいのだろうか
164名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 23:36:09 ID:Bc0tghFT
どうぞどうぞ
16514-319:2008/02/13(水) 23:36:26 ID:qiJHb4gL
それじゃ……投下なんて…します
KYな自分です

以下注意とか
かがみ&つかさ
非エロ
5レス使用
前回、「違い」の続き
166優しさ:2008/02/13(水) 23:38:19 ID:qiJHb4gL
 私は隣のクラスの教室の前に立ち、かがみを呼ぶ。
 かがみは私に気付いて教室の入り口まで来た。
「なに?」
「いやぁ、最近こっちにこないから元気にしてるか気になってネ」
「別になんともないわよ」
「うん、いつもと変わってないね」
「どういう意味よ?」
「特に深い意味はないよ。それよりさ、なんか忙しい用事があってこっちにこれないみたいだけど、
 どんな用事なの?よかったら私も手伝うよ」
「……話せないわ。それに…一人でやることだから」
 む、なんだかとても冷たくなってるような気がする。
 簡単に言えばツン分が大きい。デレ分はー?
「ま、私も根掘り葉掘り聞かないけどさ。それとさ、黒井先生の宿題の答え教えて欲しいんだけど……」
「………」
 かがみはなぜか黙ってしまう。
「お〜い?」
「悪いけど、うちのクラスには出てないわ」
「そっか……じゃあみゆきさんに見せてもらおっと」
「ねぇ、こなた……」
「ん〜?」
「あんたはさ、一人になる自覚ってある?」
「どうだろ……そんなこと考えたこともなかったかな…。でも、急にどうしたの?」
「そう……別になんでもないわよ。まだなんか用件あるの?」
「とくにないかな。んじゃね」
 それだけ言ってかがみは元居た場所へ、私は元の教室へ戻った。
「――――――――ね」

 かがみが私に向かって最後になにかを言っていたが、聞き取れなかった。
167優しさ:2008/02/13(水) 23:39:49 ID:qiJHb4gL
「こなちゃん」
「うぉっ」
 教室に戻るとつかさが何も脈絡もなく話しかけてきた。

「あっ、ごめんね」
「大丈夫大丈夫。私が勝手に驚いただけだから」
「えっと、お姉ちゃんのとこ行ってたの?」
「うん、そだよ」
「えぇっと………ぁぅぅ……いいや……ありがと。なんでもないよ」
「変なつかさだねぇ……それより、宿題やってきた?」
「うん!お姉ちゃんに昨日ギリギリで見せてもらったよ」
 つかさの言葉になにかひっかかりを感じた。
 …あ………れ?矛盾?かがみが言ってたことはなんだっけ……?
『宿題は出ていない』
 ……どっちか嘘吐いてる?
 う〜ん……どうしよ。ここは様子見で。
「みゆきさ〜ん、宿題見せて〜!」
「あぅっ!!こなちゃん、そんなに私は頼りにならないかなぁ?」
「ごめんね、今日はみゆきさんの番。次はつかさの番にするから」
「う……ん」
 なんかショックだったみたい。
 つかさのリボンが垂れてきそうな感じがする。
「泉さん、はい。これですよね?」
「おぉっ、さすがみゆきさん。よく分かったね」
「えぇ、今日提出すると言うのはこれしかないですし…」
「ありがとー、次の休み時間に返すね」
「はい、頑張って下さいね」
 宿題を写すのにがんばるもなにもあるのか疑問だったけど小さいことは気にしない。

 その後、席に座ったタイミングで丁度チャイムの音が。
 授業中は真面目に受けてるふりをして、少しずつ、着実にみゆきさんに借りたプリントを使って写していく。
 授業が終了したらみゆきさんに感謝の言葉と同時にプリントも返す。
 しかし、黒井先生の授業は宿題が多いなぁと思った。
 いじめかなにか……なのかな?よく分かんないけどね。
 それはないはずだろう。
168優しさ:2008/02/13(水) 23:41:27 ID:qiJHb4gL
 そしてもう昼休み。通称お弁当の時間。
 いつもの場所に三人は集まってある箱を並べる。
 そして、やっぱりかがみは来ない。
 三人で一緒にその箱の蓋を開けて、いまさら気付いたこと。
 つかさ……もしかして毎日作ってる………?
 先週からずっとつかさが作っていたみたいだった。
 かがみが作ったような、質素なものじゃない。
 とても美味しそうで、手がかかってそうで、栄養によさそうで、
 何かいろいろなものが込められていそうなものが、先週からずっとそれに入っていた。
 肝心のつかさはやはり、弁当箱の蓋を開けたところで悲しそうな感情を混ぜた顔でそれを見つめていた。

 ここで……気付いたこと。やっぱり二人の間になにかあった。それだけは確信した。
「ねぇ、つかさ。かがみとなんかあった…?」
「……………」
 無言でうつむいたまま。本当に、何か……事情があるのかな?
 なにかがあったのかは言ってくれないと何も分からない状態。
 どうすればいいんだろ…?
 つかさが嘘言ってるのか、本当のこと言ってるのか良くわかんなくなってしまった。
 何かを掴まないと、前に進めない。そんな気がした。
「そ……それより、早く食べましょう。泉さん、つかささん。時間がなくなってしまいます」
「うん、そうだね。つかさ、食べよ?」
「うん………」
 それから私たちはどこか気まずい雰囲気が残ったまま昼をすごしていた。
 一体、二人になにがあったんだろ……。
 かがみを見ても、ほんとになにか用事があるみたいで、
 そして、つかさが嘘を吐いてるようには思えないし。
 それでも必ず、どちらかが違うこと、嘘を言っているんだろう。
169優しさ:2008/02/13(水) 23:42:45 ID:qiJHb4gL
 昼休み中、そして終わった後も何があったかをずっと考えていた。
 しかし、どれほど考えても答えは出なかった。あとは―――
「おい、泉!」
「はっ、はい、なんでしょ!」
「授業始めんやけど、その前に宿題持って来い」
 あぁ、またか……ど忘れ…考え中に大声で呼ばれるとさっきまでのことを忘れちゃうよねぇ……。
「はい、分かりました」

 とにかく授業だ授業。乗り越えなきゃ。
 だけど、先生の声はまったくと言っていいほど耳に入らなかった。
 二人のことがずっと気になっていたせいだろうか。
 二人になにが起こったかを、また考えていた。

 そして、今日が全部終わっても、私たち三人は集まることはなかった。

 ……そうだ、今日はバイトがあるんだ……どうしよ…なんかやる気が起きない。
 パティにがんばってもらおっかな……。
 とにかく私はバイト先へと向かった。

―――
170優しさ:2008/02/13(水) 23:44:32 ID:qiJHb4gL
 いつもは楽しくやっていたバイトがようやく終わって帰路についたけど…、
 ……バイト中、パティにあのハイテンションで元気を分けてもらったりもしたけど、いまいちな気分だった。
 はぁ……なんで私はこんな状態なんだろ。
 終わったとき、パティが『コレカラアキバをタンサクシマショウ!』と誘ってくれたけど、気が乗らなくて誘いを断った。
 いつもの私なら喜んでイエスと答えただろうに。
 パティは、『ンー、それデハ、マタコンドデスネ』とまた誘ってくれるらしい。
 あの、パティの悩みもなんもないような、なにも気にしないテンションが欲しかった。

 家に帰ってもまだ二人が気がかりで、ご飯を食べても喉を通らない。
 そんな私のことをゆーちゃんとお父さんが心配してくれるが、なんでもないよの一言で済ます。

 食べ終わった後は自室に戻り、何をするか考えるが、この答えだけはすぐに出た。
「気分転換にゲームをするか……」
 そう思い、積んでいたゲームの山を一つ崩す。
 その中から適当に一つのソフトを取り出して、説明書もなんも見ないでゲームを開始する。
 簡単に言えばギャルゲもののゲームを引き当てた。
 そして最初のお約束、主人公の自己紹介。そしてヒロインの登場。
 さらに出てくるいろいろな女ヒロインたち。悪友など。
 最後に出て来た双子……の姉妹。
 ……あの二人が脳内に鮮明な映像として出てきた。双子と聞いたらもう身近にいるあの二人しか浮かんでこない。
 どうして……どうして家の中でも二人のことを考えなきゃいけないんだろう……。
 少しでも気分転換しようと思ってたところなのにね……。
 このゲームはすぐに止めた。また、忘れた頃にでもやろうと思う。

 はぁ……なんかもうやる気がなくなっちゃった……。
 もう寝よう………。
17114-319:2008/02/13(水) 23:46:20 ID:qiJHb4gL
今回はここまで。ありがとうございました。
気になるシリーズはこれが完結してから続き書きます。書くと思います。
ちょっと鬱分入るかもしれませんと書けばよかったですかね…すみません
172名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 23:50:34 ID:uwk4XiNK
>>171
リアルタイムで読了しました。

さて、かがみの真意はどこにあるのか。もしかして○○かがみか、とも思うのですが。
続きもお待ちしております、ぐっじょぶ。
うぃ、出直して来たよ。コテハンは許し(ry

■かがみ→つかさ
■暗め。兄弟、ソフトなヤンデレは好きかい?
■エロは無いんだ……すまない。

んじゃ、投下いってみよー。
174変わっていくヒト:2008/02/14(木) 00:38:28 ID:8hQssuzh
 暗い部屋、時計の針は丑三つ時をゆうに過ぎていて、私が動くたびに生じる音以外、すべてのものが沈黙を守
っていた。こんな時間など、明日の学校の事を考えれば普通に起きていていいはずが無い。それなのに私はこう
して目を覚ましている。そして、睡魔は一向に訪れる様子がなかった。
 今すぐにでもベッドに戻らなければならないのに、私の足はそことはまるで正反対の場所を目指して、足音を
忍ばせる。
 まるで、自分の足が脳の制御化から解放されて、私という個体から切り離された別の生き物のように。
 なのに、私はこの足の行き先を知っている。行き着く先で、何をするかも知っている。
 そうして私がベッドに戻った時、きっと私は自己嫌悪に身を焦がしているだろう。自分の体を理解できないも
どかしさに、自分がやった事への罪悪感に、そして誰にも話せないが故に誰も裁いてはくれない苦痛に、私は今
夜も涙するのだ。
 いっそ自分の腕を切り落とせるのなら、私は楽にもなれようものなのに。
 だけど出来ない。出来るわけがない。その代償は大きすぎるから。失うには、私は触れ過ぎてしまった。あの
温もりを感じずにはいられなくなってしまった。
 だから、私は自分を慰めるために今日も傷つけるのだ。せめてもの懺悔に、私は自分よがりな傷を自身に刻み
込むのだ。
 そうする事で、ようやく私は笑う事ができる。笑顔で言われる「おはよう」という言葉に、私も笑顔で返すこ
とができるようになる。私が私を見失わぬよう、戒めの為に、私は毎晩の如くこの痛みにむせび泣くのだ。
 自己欺瞞を重ねている事を知っていても、私は現実から目を背け、自分を騙して、今日も自分の行為に自己嫌
悪する。
 それが一体何回目に及ぶのか、私は随分前に数えることをやめていた。



     変わっていくヒト



「告白、されちゃった……」
 真っ赤な顔で妹がそれを告げてきた時、私はどんな顔をしていただろう。今となっては確かめる方法などあ
りはしないが、私の頭の中に色んな衝撃が走った事だけは今でも鮮明に思い出す事ができる。だけどそれも
衝撃≠ニいう非常に不明確なものでしかなく、その内訳は未だに分かっていない。ただ、それが異様な自己嫌
悪を呼び起こすものだという事は、一瞬で理解していたと思うけれど。
「私、どうすればいいかな。お姉ちゃん」
 その問いには何て返しただろう。あれからさほどの時間は経っていない筈だが、記憶に残る妹の顔が――そ
う、まるであの子が自分の苦手なホラー映画を見た時のように、若干の恐怖に強張っていたのが目に焼きつい
たように忘れる事が出来ない。一体、私はどんな事を言ったのか。
 つかさに彼氏が出来たのは、それから数日の事だった。
 相手の男は私たちと同級生だったが、つかさとも私ともクラスが違っていたせいで私はその男の事は何一つ
知らなかった。私が知らないのだから、つかさもほとんど初対面なのだろうと思いもしたが、後につかさに聞
いてみると、廊下ですれ違ったり朝礼など整列する時にお互いの位置が近い事もあって、話す機会はちょくち
ょくあったらしい。それでも話す話題と言えば一言の挨拶ぐらいで、それ以上話が続く事は稀だったと聞いた。
つかさは普段、男子と話す事は滅多に無かったし、その男も女子と話すのはあまり得意ではなかったらしい
から、会話がすぐに途切れてしまうのは必然と言えば必然だっただろう。
175変わっていくヒト:2008/02/14(木) 00:41:29 ID:8hQssuzh
 それなのに、男はつかさに恋をした。一目惚れだった。一年生の頃からの片思いだったという。
 男は勉強もそこそこできる方で、スポーツも人並みにこなし、そういえば球技大会では『バスケットボール
に参加して結構な得点を稼いでるかっこいい同級生がいる』とクラスの女子が騒いでいたが、そのかっこい
い同級生≠ェ今のつかさの彼氏なのだった。そして、その噂は現実と然したる差を広げる事はなく、実際に見
ても十人いれば九人は「かっこいい」とつい漏らしてしまいそうに、誠実で一途そうな、けれどそれらを鼻に
かける事の無い、そしてどこか気の弱そうな印象を受ける男子だった。
 そしてその見た目の印象と違わず、男は今までに何人もの女子から告白を受けていて、その度に好きな人が
いるからと断りの返事を繰り返してきた。その人気を妬んだ他の男子に彼は同性愛者だと言う噂を流されたり
、出会い系サイトで相手に困っていないから告白にもOKを出さないと何の脈絡も根拠も無い事で冷やかされ
ても、彼自身が昔からそういう性格と雰囲気で有名だ
った事もあって、それらの噂は火力を増大させる前に沈下するのが常だった。
 そんな彼氏の話を、つかさは毎日の如く楽しそうに話しに来る。
 あの子が携帯を弄る時間も随分と増えた。それが祟って、今月のつかさは自分の電話料金の高さに泣いていた。
 「電話止められちゃうって……ふぇぇ」つかさがそう言って私に泣きついてきた時、私は言わずにはいられ
なかったのだ。「とりあえず今月分だけは私も出してあげるから、次から気をつけなさいよね」私はそれが妹の
為に最善だと考えながら、何でそんな事を言ってしまったのだろうという後悔の念に襲われていた。
 結局、私が膨れ上がった携帯料金の半分を出してやらなければ、つかさは珍しく厳しいお父さんに携帯を止め
られていた事だろう。お父さんも娘に男が出来た事で、少しだけ不安なのかもしれない。何せ、私たちに彼氏が
出来た事は初めての事だったし、しかも男子が苦手だったつかさに出来たというのだから、心配性なお父さんの
事だ、懸念事項は絶えないのだろう。
 それでも、私のお陰で何とか携帯停止の危機から脱する事が出来た時、つかさは喜色満面の笑みで私に抱きつ
いてきた。「お姉ちゃんありがとう!」なんて無垢すぎる目が私の中の嫌な部分を刺激して痛くて、私はまとも
につかさの顔も見れなかった。声も聞けなかった。聞きたくなかった。
 その笑顔は私への敬愛に満ち溢れていた。私への愛情が溢れていた。それはいのり姉さんにもまつり姉さんに
も見せる事が無い、唯一あの子の半身である私だけに見せる邪心も裏も気を遣う事もない、純粋に真っ白な笑顔
だった。
 それを見て私はいつも思う。
 自惚れでは無く、まさしく私は頼りになる姉として慕われ、愛され、つかさにとって良き姉でいれている、と。
 そして、その度に私は怖くなる。
 本当に私はつかさにとって良き姉でいられるのだろうか、と。
 そう感じるようになったのは、つかさに恋人が出来て数日が経ってからだった。



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『きす……されちゃったよぅ……』
 そんな言葉を聞きたいわけじゃなかった。
 私は煮え狂うお腹の奥を必死に抑えつけながら、自分で放ったもう二度と回収できない矢に対して狂おしい程
の後悔を抱いていた。そんな言の文が返ってくる事が分かっていたのなら、私はあんな質問を絶対に口に出す事
など無かったというのに。
 それでも私は否定しようとしていた。いつもなら聞き洩らす筈の無い妹の言葉を拒絶しようともがいていた。
間違いなく記憶の引出しに入ってしまった今の言葉を、どこか二度と復元の出来ないようなゴミ箱に入れたくて
、無駄に、途方もなく無駄に足掻いて、しかし聞いた言葉の重みは凶悪で。それは気軽に消せるような代物では
なく、かと言って簡単に諦められるような安易なものでも無く。私は虚しさに打ちひしがれた。
 そもそも、私の達観的思い込みがいけなかったのだろう。いつまでも私の妹が、私が知っている妹のままでい
るわけがなかったのだ。その事を私は、身をもって痛感した。
176変わっていくヒト:2008/02/14(木) 00:44:47 ID:8hQssuzh
 その日、つかさはいつもと同じように私の部屋にやって来た。勉強の分らないところを教えてほしいという名目で、私と話す為に。それでも――合間合間にする話の方が多くはあるが――つかさは前よりも勉強熱心になっ
たし、事実この前の世界史の抜き打ちテストでは80点以上を記録する快挙を成し遂げ、それについて黒井先生が「いい手本の姉を持つと、妹も頑張るもんやな」と笑いながら言っていたのが密かに嬉しかった。私の点数は
若干下がり気味だったが、そんな事は些細な事だと思う事によって、こんな点数は初めて取った、と帰り道ではしゃぐつかさを素直に褒めてあげる事ができたように思う。
 思えば、つかさが自分に自信を持ち始めたのはあの頃からかもしれない。私の頭じゃできない≠ニいうネガティブな引っ込み思案は徐々に影を薄めて、その代りに私もやればできる≠ニいうポジティブな志向にいつの
間にか変わりつつあったのだ。勉強に打ち込み始めた理由は知らないが、多少なりとも将来について考えている事、そして何より私を頼りにしてくれる事が嬉しくて、私は自分の勉強が疎かになっているのにも知らないフリ
をして、私よりも一歩二歩遅れをとっていたあの子の勉強に、力を添えてあげていた。
 そんな毎日の勉強会の合間、つかさはいつものように話し始めた。
 あの人がバスケットボールの関東大会に出る事が決まったらしい、あの人にお弁当を作ってあげた、あの人がわざわざお弁当箱を洗って返しに来てくれた。その時に顔を赤くしながら美味しかったと言ってくれた。二人し
て照れてしまって、それをお互いに笑い合ったりした。
 笑いながら幸せそうにつかさは話しを続ける。
 聞きながら、私は憂鬱だった。
 つかさが少し自慢げに恋人がバスケの試合でどんな活躍をしたのか話す度、つかさが少し不安そうにこれからも自分は愛して貰えるだろうかと話す度、つかさが少し恥ずかしそうにあの人の事がもっと好きになったと頬を
赤らめて話す度、私は気が狂いそうな暗闇の中に一人取り残されているかのような錯覚を感じている。頭の中で発狂したもう一人の私の悲鳴を何とか聞かないようにと内なる耳を塞いでも、もう一人の私はすぐに身の毛もよ
だつような金切り声で叫喚するのだ。それは私の努力を遙かに上回っていた。
 けれど、その事をつかさは知らない。知るわけがなかった。
 だからつかさは幸せそうな笑顔のまま、話を続ける。恐らく、つかさには惚気話という概念が無いのだろう。
私だって、つかさがそんなつもりで話をしているのではないと分かっている。
 あの子が私にそう言った事を話す理由は、自慢や嫌味を言う為では無く、ただ単純に幸せの共有の為に他ならない。当然だ。昔からあの子の幸せは私の幸福だったし、同時に私の幸せはあの子の幸福だった。つかさもその
事を知っているからこそ、自分の幸せを何一つ隠さずに私に話に来るのだ。それが私の幸せなのだと、信じて疑わないで。
 だから、私は幸せにならないわけにはいかなかった。あの子が私の幸せの為に話に来るのなら、それを蔑ろにはできない。
 その為には、どうしても返答をする必要があった。自分の欲望に従順になっておざなりな相槌を返していては、つかさはやっぱり自分がいるとお姉ちゃんの邪魔になる、と罪悪感を抱くだろう。それが例え一度でもあれば
、あの子は私の為に私を頼りにする回数を減らすに決まっている。それがつかさの性格なのだという事は、私が一番よく知っているのだ。
 しかし、そんな気が滅入ってしまう話題に対し、私は返す言葉をあまり持っていなかった。
 だから、自分の中の辞書を必死で捲っている時に返答を求められると、私はその時は考えもしていなかった言葉を反射的に口に出してしまう。それは私が自覚している短所の一つだった。私がつかさ宛てに急ごしらえした
言の文は、まさにそれだったのだ。
177変わっていくヒト:2008/02/14(木) 00:46:08 ID:8hQssuzh
「その人とはどこまでいったのよ」
 つかさには私の顔が意地悪に見えた事だろう。現に私は口元をニヤニヤと歪めていたと思う。
 だけど、それらは私の必死の演技で何とか表せていた表情にすぎない。皮一枚を隔てて、私は苦悶に歪んだ表情をしていた筈だ。言った後で私の心は凍りつき、今すぐにでも耳を塞いで蹲りたい衝動が津波のように押し寄
せてきたにも関わらず、私はその荒れ狂う波の勢いを死に物狂いで耐えていたのだから。
 だが、そんな私にとっての失言に自分が怯えていても、僅かな期待が私にあったのも確かなのだろう。
 あのような質問をつかさにしたところで、どちらも控えめで遠慮し合ってる恋仲にはこれと言った進展もないだろうと、私は悪あがきのように高を括っていたのだ。私を戦慄させた原因は、その予想が外れる事にあった。
 だが、目の前の妹の様子は見るからにおかしかった。
 私の質問を聞いてしばらくの間放心していると思ったら、まるでもうすぐ熟しそうなリンゴのように次の瞬間には物凄い勢いで顔を紅潮させ、そしてやたらモジモジとしおらしくなり、先ほどまで饒舌に滑っていた舌は瞬
く間にその勢いを削っていったのだ。
 その時には、私が築きあげた脆弱な防波堤もすべて津波に押し流されて、残ったのは色濃い絶望のみだった。
「きす……されちゃったよぅ……」
 つかさは今にも消え入りそうな声で、そうとだけ呟いた。恥ずかしそうに、嬉しそうに。幸せそうだった。
 思い出す。今日の学校の帰り道は珍しく一人だった。いつもなら隣にいる筈の人物は、用事があるから先に帰っていてくれという旨が書かれたメールを帰りのHRの時に私に送って、私がB組に向かった時には既に姿を無
くしていた。行方をこなたに聞いてみると『ほら、何とかの邪魔をする奴は馬に蹴られて死んじまえ、って言うでしょ? お陰でゲマズに誘う隙も無かったよ』などと嘆いていた。
 家に着いて、私は主がいない事を知りつつも私の部屋の正面の扉を開けていた。やっぱり自分の部屋より子供っぽい感じがする室内はガランとしており、その中に一人で立つ自分が急に酷く滑稽に感じられて、私はすぐに
その部屋を逃げるようにして後にした。
 つかさが帰って来たのは、空に掛かる黒いベールが次第に町中を包み始める時間帯だった。
 いつになく遅い帰りに心配して、玄関までわざわざ迎えに行った私が見たのは、果たして――今、私の目の前で顔を赤らめながら羞恥に顔を俯かせた妹と、まったく同じ仕草をしたつかさだった。
 考えてもみれば、私は最初から知っていたのだ。帰りのHRにあの子からメールが届いた時から、すべてを把握できないわけがない。こなたも言っていたではないか。「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んじまえ
」あいつが言いたかったのはこの慣用句なのだろう。
 普通ならこれらの事から何を連想する? 難易度などまるで設定していないような問題だ。答えなど一つしか無く、それ以外の解答例は存在しない。間違いの例すら有りはしないだろう。それでも私が選んだのは、解答に
すらなり得ない無回答≠ニいうものだった。答えようとする事ですら――それどころか、考える事も私は無意識下で放棄して逃げていたのだ。
 しかし、その答えは今、私の目の前に提示されていた。逃げる暇は皆無で、私は今度こそ自分が持っていながら書こうとはしない答えと、提示されたそれとを見比べざるを得なくなった。そして、やはりそこには一つのブ
レも無く、私は自分の問題への正解率に初めて狂おしい程の憎悪を抱いた。
 結局それからと言うものの、勉強した内容は少しも頭に入ってはくれず、私は襲ってきてもない睡魔を言い訳にして、無駄に終わった勤勉の時間に終止符を打った。
 眠いと言い訳した以上、眠らないわけにはいかなかった為、私は儀礼的にベッドに入ってはみた。だが、さっきのつかさの言葉が私の頭の中で否が応でも反芻される度、私はどうしても薄暗い教室の中で密やかに唇を合わ
せる二人を想像してしまう。すると、どうしてだか私はそれに吐き気を催す程の嫌悪感を感じた。にも関わらず、私の頭と体はそれを繰り返すのだ。そのループが十回を回ろうかと言うところで、とうとう私は堪え切れずに
トイレに駆け込んだ。
 ふと、つかさの幸せそうな顔を思い出す。
 女は幸せになるとあんな顔で笑うんだ。
 私は、どんな顔で笑っていたのだろう?
 自分の姉の立場に不安を感じ始めてから、二週間後の事だった。
178変わっていくヒト:2008/02/14(木) 00:53:00 ID:8hQssuzh
「……でも、つかさの彼氏ってけっこう奥手な感じだよね。親友やってる私としては、
是非ともお話を伺いたいものなんだけど――ってことで、柊つかさ二等兵! 本部に経過報告されたし!」
 光陰矢の如し。ふと気がつけば、例年よりもずっと長く感じた夏休みも終わっていて、二学期も半ばまで到ろうかという時期、いつもの昼休みの時間に急にこなたがそんな事を言い出した。
 最初はいつものおふざけだろうと聞き流していたが、頭の中で今しがた芝居がかった口調で呑気に言われた言葉をぼんやりと二、三回反芻したところで、私はこなたが聞きたがっているところを理解し、それは私の心胆を寒からしめる内容なのだと、私は顔を青ざめさせた。
「ほ、報告って言われても……」
 そんな私の心情とはまるで反対に、つかさはこなたが本来聞こうとしている部分を完全には理解していないのだろう、まるで答えの分らない問題を提示された時のように首を傾げて戸惑っている。
 期待の眼差しを輝かせるこなたと、苦笑しながらも興味が無いとは言えなさそうなみゆきを見比べながら、私は今すぐにでもこの場から消え去りたいと思っていた。峰岸たちに昼食を誘われた時、変な義務感など無視して
素直にOKすれば良かったと今さら後悔すれども、それは後悔先に立たず≠ニいう言葉の正しさを更に思い知らされるだけでしかない。
 しかし、私の頭の中は矛盾に塗れていた。聞きたくないと耳を塞ごうとする私がいる反面、聞きたいと主張する私も同時に存在したのだ。私は自分がどうしたいのか理解できなかった。
「うーん、ほらさ、端的にはっちゃけて簡単に言うと、ぶっちゃけどこまでいったの? ってことかな。私の予想ではとりあえずキスまではいったかなーなんて考えてるんだけど」
 それは私が一ヵ月半前に言った事と、まったく同じ内容の質問だった。その時に聞いた答えは私の中で更新されること無く放置されている。今、私は、新しい情報を手に入れるチャンスとそれを聞き入れる恐怖の中にいた。
 つかさはこなたのストレートな言葉をポヤーと聞いていたかと思うと、一瞬だけ私の方を見てから、みるみる顔を紅葉の季節に変えていってしまう。好奇心の視線に晒されながら、つかさは急に体を縮ませて、熟れた林檎
のように真っ赤な顔で自分のお弁当箱と睨めっこをしていた。
「ほれほれ、よいではないかよいではないかー。言ってしまえば楽になれるぞよー」
 言ってしまえ。
 頭の中にこなたを煽る私がいる。
「あの、泉さん? つかささん達にはつかささん達のペースがありますし、無理に聞き出すのはちょっと……」
 言わないで。
 頭の中にみゆきを支持する私がいる。
「……」
 そして、何も言えない私がいる。
 いつの間にか、私までもが自分の弁当箱を睨みつけていた。以前より腕前が上がったように見える妹の手作り弁当は、彩りを失ったように私には見える。さっき口の中に入れたばかりの卵焼きの味は、とっくに分らなくな
っていた。
「でも、えと、その……報告と言われても、困っちゃうかも……」
「……なるほど、確かにつかさの言うとおりかもね。つまり、尋問形式でないと燃えないと! そういう事だね!?」
「ええっ!?」
 こなたはまるで、難解の問題がようやく解けた時のようにはしゃぎながら、持っていたチョココロネも放り出してつかさへと詰め寄る。密かに逃走を試みていたつかさの努力も虚しく、一瞬で距離を詰めたこなたは素早く
つかさの胴体に雁字搦めになって、つかさの体の自由を完全に奪い取っていた。
 もうこの時点でこなたを止める事は自分には無理だと理解していたのだろう、みゆきは制止の言葉を出しかけたところで飲み込んで、結局いつもの苦笑いで二人のじゃれ合いを傍観するに徹するようだった。
 と、そのみゆきの目が不意に私の方へ向いた。そして、何事かを頼むような仕草を見せて、私の反応を待っている。
『止めてあげてください』
 みゆきの目は言外にそう語っていた。こなたの行き過ぎた行動を止める役割分担は、いつも私なのだ。今回も妹の為に私がこなたを引き剥がすと思っているのだろう。
 でも、私はそうしなかった。頭の中で揉めつつも、どこかで好奇心……いや、妹への執着心と言うべきか。それが知らぬ間に優位に立っていたのだ。怖いもの聞きたさ、がエスカレートしたとしか言いようが無かった。
179変わっていくヒト:2008/02/14(木) 00:55:47 ID:8hQssuzh
 みゆきはそんな私に驚いたような視線を送っていたが、特に何も言っては来ない。眼鏡の奥ののんびりとした瞳が、私ですら知らない心の奥深くを見透かしているようで、私はみゆきから目を逸らした。誤魔化す為に弁当
箱を突こうと思っても、いつの間にか中身は空っぽになっていて、自分がどれだけ他の事に意識を取られていたのか思い知らされる。
「言え、言うんだ! 田舎のお袋は泣いてるぞ?」
 こなたは安っぽい昼ドラの刑事のようにお決まりの常套句を周りに聞こえない程度に並べ立て、つかさの脇腹をくすぐり始めていた。強制的に笑わせられてるつかさの息は絶え絶えで、やめて欲しいと言っているのだろう
が、最早それは言葉になっていない。私は如何にもやれやれ≠ニいったフリをして、それを眺めていた。
「むぅ、つかさも中々強情だなぁ……まだ吐かないとは予想外だよ」
「はぅぅ……こなちゃん、もうやめてよぅ。私、息ができなくて……」
「でも、つかさ? 実は見ちゃったんだよ」
「……何を?」
「この前、教室で二人きりだったよねえ? その時にキ――むぐっ」
 胸がギュッと絞められているように苦しくなる。夏休みに入る前のつかさが脳裏に過ぎる。あの夜の間、ずっと続いていた嘔吐感がまた込みあげて来るのを感じて、私は無意識に口元に手を当てていた。
 さっきまでこなたに支えられていなければ立ってすらいられそうになかったつかさが、息を吹き返したようにこなたの口を塞いでいる。こなたの目はしてやったり≠ニいう風に細められ、口元はつかさの手で見えないが
間違いなくニヤニヤと歪んでいるのだろう。
 私はこなたが嘘を言った事を知っていた。こなたはあの日、何かのアニメの限定商品があるからとゲーマーズに行った筈だったし、そもそも、こなたは具体的な日にちも、場所だって教室としか言っていない。
 捉えようはいくらでもあるのだ。つかさはそれを勝手にあの日に結びつけて考え、自ら答えを露呈してしまった。少し考えれば、こなたが鎌を掛けている事など分る筈なのに。
「おおお姉ちゃん、もしかしてこなちゃんに言っちゃったの!?」
「ばか、言ってないわよ。あんたが今言ったんでしょ」
「え?」
 ポカンとしたつかさの目は不思議そうにこなたの方へ向いていって、こなたはそんなつかさを見て、
「つかさは素直だねえ。将来、オレオレ詐欺に引っ掛かるタイプ?」 
 一言、そう言った。実に的を得ている。
 つかさにはもう何か言い返す余力も無いようで、力なくその場にへたり込んだかと思うと、すぐに私の所に泣きついてきた。恥ずかしそうな顔を私の胸に埋めて隠すつかさには何の他意も無いのだろうが、嗅ぎなれた春の
ような匂いのする妹の体は無性に柔らかく女らしさを増したように感じられて、そして何故だか無性に懐かしかった。
 そういえば、最近はこの子の苦手なホラー映画を見ても、夜になって私の所へ来ることが無くなった。ちょっと前までは、枕を持って顔を赤くしたつかさを苦笑しながらベッドに招き入れて、そのまま狭い布団の中で暑苦
しくたって一緒に朝を迎えていたのに。
 ふと、私はある事に気づいた。今年の夏休み、例年より涼しくて寝やすいなと感じたのは、つかさが私のベッドに潜り込まなくなったからか。懐の中の温もりを感じながら、そう思った。
180変わっていくヒト:2008/02/14(木) 00:58:46 ID:8hQssuzh
 この時、私は完全に気を抜いていた。話はもう終わったものだと、そう考えていた。だから余計に、心の準備もロクに出来ていない私には、こなたが続けた言葉が抉るように突き刺さって、痛かった。
「でも意外だったなあ。つかさの事だから、てっきり手を繋ぐのも恥ずかしがってるものかと。まあ、有り得ないけど、キス以上までいってたりして――」
 こなたの言葉は、途中までしか聞き取れなかった。
 びくっ、と私の懐に辛うじて収まった体躯が、一瞬飛び跳ねたように身を震わした。
 同時に、私はクラスの喧騒から離れて、どこか次元の違う暗闇の世界に一人で枯れ果てた木のように突っ立っていた。当然、それは今の私の心情を比喩で表したにすぎないが、どんな言葉を用いてもこの絶望感のすべてを
表現する事などできやしないと、私は自負している。それほどの絶望の奥底に、私は立ち尽くしていた。
 だって、こなたは当ててしまったではないか。それに妹はどう反応した。密着してなければ分からないくらいの反応で何を物語った? ……夏休み、妹は何回一人で外出していただろう。
 真っ暗がりの中で、私はこなたが言った言葉の意味を再び考える。考えるまでもない。つまりはそういう事。
女子高校生にもなって、その意味を理解できないほど私はお子様じゃない。
 やっぱり、聞くべきではなかった。みゆきに頼まれた通り、あの時こなたを止めるべきだったのだ。つかさの為では無く、私の為に。
 つかさが少しだけ顔を上げて、私を見た。その表情は私の予想を少しも裏切ってはくれず、私の大好きで大嫌いな顔が、恥ずかしそうに、嬉しそうに、笑っていた。幸せそうだった。
 女は幸せになるとこんな顔で笑うんだ。
 私は……笑えているのだろうか?
 妹に恋人が出来て、実に三ヶ月もの月日が流れていた。



 あの昼休み以来、私の目に映る世界は一つの色彩を失ってしまったかのようだった。何をするにもやる気が起きず、何をやり遂げても何の実感も無く、まるで五月病に罹ってしまったみたいに私は無気力に日々を過ごして
いる。
 でも、それは誰にも見られる事の無い私の裏面。多分、他人から見た私は以前と大差無く見えるのだと思う。現に「元気が無いね」とか「最近おかしいよ」とか、そんな言葉を全く聞いていないのだ。私に何か異常がある
と友人たちが少しでも疑ったなら、彼女らは何の躊躇も無く私を気遣うのだろうし、それが今まで一度も無いという事は私が普段通りの私を上手に演じられているからに他ならない。
 それで良いと私は思っている。私の本性が白日の下に晒されたなら、私は今の親友たちと――何より妹と、今までの関係を続けていくのは無理になるのだ。さながら今の私は、例えるなら狼男のようだった。満月である必
要は無いけれど、夜の私は確実に狂気に侵されているのだろう。狂気が、狂喜が私を動かすのだ。毎晩毎晩、理性の塊の私を殺して、そして朝になる頃には生き返らせて、私に普段の私を演じさせるのだ。どうせなら記憶も
消してくれればいいのに、何回そう思っても狂気に支配された私は、自分への戒めの為に記憶を残しておいてしまう。その罪悪感を一身に背負うのは私なのに。
 そんな夜が何日も続いて、それは今も変わらない。
 その間にも、つかさは見るからに大人びていった。隣に私がいなくてもハッキリとした返事を返せるようになったし、前に私がいなくても一人で歩けるようになった。この頃は彼氏が大きい大会に出場する事になったと言
って、ほぼ毎日のように練習や試合の応援などに行ったりしている。当初は、自分の何倍もある背の高い男子たちに囲まれるのは怖い、と行く度にビクついていたようだが、今や花の無いバスケ部に潤いを与えるアイドル的
存在になっているらしい事を、クラスの男子が話していたのを聞いて分かった。
 最初は帰りが遅いと心配したお母さんやお父さんも、いつも玄関先までつかさを送ってくる律儀な彼氏を見てからは、特に何も言わなくなった。この前、恋人の紹介をする為に、つかさがわざわざ彼氏を家に連れてきた時
の印象が余程良かったんだろう。
 その時、彼は私にも挨拶してきたが、その時の態度は同級生に対するものとは思えないくらい丁寧で、遠慮がちだったのを覚えている。いのり姉さんやお母さん達に質問攻めにされていた時も、妙にギクシャクして声に硬
さが残っていたし、女性と話すのが本当に苦手らしかった。唯一まともに話せていたのはつかさの他にはお父さんくらいで、お母さん達は「可愛い彼氏が出来たわね」と楽しそうにつかさをからかっていた。
181変わっていくヒト:2008/02/14(木) 01:00:11 ID:8hQssuzh
 最早、つかさはすぐに私を頼りにする気の弱い妹ではなかった。大学入試も近づいてきて、必然的に勉強の量が急上昇するこの時期になっても、弱音を吐く事は少なく、逆につかさの身が心配になってしまう程の頑張りを
あの子は見せている。私の正面の部屋からは、深夜になっても電気スタンドの明りが扉の隙間から洩れていて、カリカリと必死に過去問の問題用紙の上を滑っているであろう鉛筆の音は中々途絶えない。
 最初は調理師を目指すとつかさは言っていたが、その考えは日々の中で改められ、結局は彼と同じ国立大を目指すのだという。その事は、既に去年から決めていたのだろう。私が不思議で仕方がなかったつかさの勉強への
熱意は、最初から彼と同じ大学に行きたいという願望から湧いていたものだったのだ。
 それでも、彼の学力は学年でも上の下と言ったところだし、当然の事ながら、学力的に言えばつかさの目標は少しばかり高いと言える。私は「無理せずに確実に入れる所にいったら?」と忠告したが、一回決心すると途端
に強情になるつかさは「お料理はいつでもお母さんに教えて貰えるから、できるだけあの人と一緒にいたいなあ……なんて……」と考えを変えるつもりはないようだった。つかさの将来を案じての私の言葉が否定されたのは
、思ったよりも胸が苦しくて、心が痛んだ。
 私の方はというと、最初から決めていた法律関係の大学を目指すという事で変わっていない。それなりにレベルは高いし、楽に行ける道程では無かったが、担任の先生と二年の時に進路相談した時は『今の成績を落とさな
ければ、十分狙っていける』と大鼓判を押されていた。でも、三年に進級してからの私の成績は芳しくなく、急に担任に呼び出されたと思ったら『諦めた方が良いかも知れない』と忠告を受けた。
 成績低下の原因は簡単だった。私は私の為の勉強の時間を削ってまでして、つかさにつかさの為の勉強を教えていたのだから。毎日やっていた復習も、その時間に消えていった。それでも懲りずに、私は自分の為の勉強時
間を増やさなかった。つかさもその事は知らなかった筈だ。私は先生に言われた言葉を、誰一人として教える気は無かった。
 しかし、それから何日か経った後、つかさが私の部屋に来る回数がめっきり減った。
「一人で大丈夫なの? 分らないトコとか無い?」私は尋ねる。
「う、うん……今のところは大丈夫だよ。お姉ちゃんはどう?」つかさはそう返した。妙に罪悪感に染まった顔色だった。
 つかさは嘘が下手だ。私が改めてそう確信したのは、妹が同じ返事を五回くらい使い回していたからだった。
「分らないなら教えてあげるから、無理しないのよ」と問題集を気難しい顔で睨んでいる妹に私が声を掛けると、つかさは決まって似たような言い訳しか返さないのだ。私に対してどれほどの遠慮をしているのか、探らずと
も分かってしまうくらいに。
 今までは、つかさが私にそんな余所余所しい態度を取る事など有り得なかったのに、どうして。
 答えは数日後、お父さんから聞かされた。
『最近、成績が落ちてるって先生が心配してたんだけど、かがみ、何か悩み事でもあるのかい? つかさにも、お姉ちゃんの勉強の邪魔をあまりしないようにって――』
 その時は体調が最近良くないとか適当な事を言って誤魔化していたが、内心、私は笑い出したい気持ちでいっぱいだった。盲目的な自分に嘲笑の喝采を浴びさせ、罵倒の嵐を聞かせてやりたくて。私は必死になって、悲し
くなるほど虚しい叫び声を喉の奥に押し込んだ。
 皮肉にも、私はつかさと一緒にいる時間を増やしたくて積極的に勉強を教えていたのに、その行動は確実に距離を開く事になる伏線となっていたのだ。
182変わっていくヒト:2008/02/14(木) 01:01:41 ID:8hQssuzh
 それ以来、つかさは私を頼らなくなった。
 分らないところを誰に教えてもらっているのかと思えば、あの子は当然のように彼の名前を出した。今まで私がいた居場所に、彼の名前があった。
 必要とされていないわけじゃない。ただ、あの子は私に迷惑を掛けたくないだけ。でも、どうしても私はそれを理解するのに手間取ってしまう。いつの間にか、私は自分が随分と悲観的になったのを知って、その事実に愕
然とした。
 つかさが夜遅くに帰ってくる事も多くなった。この前など、いつまで経っても帰ってこない妹を心配して家族全員でメールを送ったりしていたら、その直後にあの子は帰って来た。家族総出で玄関まで殺到すると、そこに
は携帯のメール画面を見て驚愕しているつかさと、申し訳なさそうに帰りを遅くさせてしまった事を謝る彼が、居心地悪そうに並んでいた。時刻は午前一時。理由は彼の家で勉強していたら、いつの間にか遅い時間になって
いたとつかさは言いにくそうにお父さんとお母さんに話していたのを、気づいたら私は部屋の外から盗み聞きしていた。
 そして、つかさの言った事は嘘だと、勝手に決め付けていた。いくら勉強に集中する為に携帯をマナーモードにしたって、電源を切ったって、帰りが遅くなるのにつかさが一つの連絡も寄越さないわけが無いのだ。それな
らば、つかさが一通のメールですら寄越さなかったわけは何なのか。簡単だった。
 だって、玄関にいた妹の顔はあの顔≠していたのだから。何回も何回も、私に散々見せたあの表情を。
 私はそれを考えないようにする為、必死に自分の勉強に集中しようと努力したが、皮肉にも集中しようと思えば思うほど、忘れようとすればするほど、私の頭の中には精神の安寧を脅かすイメージが次々に浮かび上がって
きて、気づけばシャーペンを持っていた手は虚空の中に放り出され、見ていたと思った問題集は水に滲んで見にくくなって。私はその時になって初めて、自分が大粒の涙を流していた事に気づくのだ。
 なぜ? 何回も考えた。そして、その数だけ答えを知る事を諦めてきた。いくら理解しようともがいても、いくら知ろうとして足掻いても。色濃く立ち込めた霧の向こうにある答えに、私のこの手が届く事は無い。もどか
しさに、胸を焦がすような感情に、気が狂いそうだった。……気が狂ってしまった。
 私は何を見るわけでもなく見つめていた天井から視線を外して、すぐ横に置いてある時計に目を向けた。見ると、時刻は丑三つ時をゆうに過ぎていて、明日のセンター模試を考えれば起きていて良い筈がない。それなのに
、私には薄弱な眠気ですらやってくる事は無く、今カーテンを開ければ、そこには昼間と同じように明るい太陽が光り輝いているのではないかと思ってしまうくらい、私の目は冴えていた。
 のろのろと私に掛かっていた布団を脇に押しのけ、私は立ち上がる。暖房のタイマーが切れて何時間も経っているせいで、部屋の中は鳥肌が立つくらい冷たい。今すぐベッドに戻るべきだ。理性が私に警告する。でも、私
の足はそれとは正反対の方向に向かって足音を忍ばせる。まるで、足が脳の制御下から解放されたかのように、私の足はごく自然に歩みを進めていた。
 一つ床を踏みしめるたびに、ギシッと割と大きな音が夜の廊下によく響く。二つ目が鳴った時には、私は目的の場所の前に行き着いていた。来てしまっていた。激しい後悔と嫌悪が私を襲ったけれど、ここまで来た私は私
であって私では無い。止められない事だけは、やけにはっきりと分かっていた。
 ドアに手を掛け、開く。私の部屋とは違って、人為的温かさが満ちていた。見れば、暖房が我が身が機能している事を緑色のランプで主張していて、僅かな起動音と共に冬の寒さを忘れさせる暖かな息を吐き出している。
我が家の決まり事を破った主は、口元まで引き寄せた布団の中で静かな寝息を何も知らぬ顔で立てていた。私には綺麗すぎるその顔は正に純真無垢と言って間違い無く、同じ双子なのに、汚れ過ぎた私の心とは全然違った。
 そっと、その寝顔を見下ろす。オレンジ色の光だけを灯している部屋の明かりは、年の割に幼く見える妹の顔を照らし出した。
 違和感。それは私のよく知る顔、もう見る事が無くなった顔。すぐに私を頼って泣きついてくる、弱気で控え目で、そのくせ甘えたがりの、昔の妹が私の眼下で目を閉じている。安心感。頼られる事への優越感。花のよう
な笑顔で礼を言う妹の顔が、私の頭に思い出として浮かんでくる。
183変わっていくヒト:2008/02/14(木) 01:03:28 ID:8hQssuzh
『お姉ちゃん、宿題忘れちゃってたよぅ……黒井先生、忘れたら日曜日強制補習だって言ってたし、これじゃ遊びにもいけないよぉ……』

『もう、だから早めに終わらせときなさいよってあれだけ言ったじゃないの』

『ご、ごめんね、お姉ちゃん……私のせいで――』

『あー、もういいわよ。私の貸してあげるからチャッチャと終わらせちゃいなさいよ』

『え、でも……いいの?』

『別にあんたの為じゃないわよ。買い物行けなくなったら私も困るし……だから速く終わらせなさいよね』

『……うん!』

 ……嬉しい。私は静かに、笑っていた。
 考えてもみれば、私はいつもこうだった。表面上ではあんたの為じゃないと言って、その実、私は一番にあの子の事を考えているのだ。素直になるのが何だか癪で、私は少し不機嫌な風を装いながら宿題のノートを渡して
、つかさが私の顔色を窺いつつも申し訳なさそうに、嬉しそうに私からノートを受け取る。
 私はその後、つかさに見えないように微笑むのだ。そして、あの子が私にノートを返しに来る時は、満面の笑みと共に紡がれるありがとう≠ニいう言葉を惜しげもなく私に見せて、私はそれでも潔くどういたしまして
≠ニは言わずに、意地悪く次は気をつけなさいと忠告する。
 つかさは今度は絶対に自分でやるからと言っても、結局はいつものように最後には私を頼りに来て、私は呆れているフリをしながらも、込み上げてくる喜悦の笑みを必死に押し殺して。私にだけ見せてくれるあの笑顔を、
私のだけのあの笑顔を、私は心に焼き付ける。
 それで楽しかった。そんな仲がいつまでも続けば良いと思って、きっとそうだと信じて疑わなかった。この子の寝顔は、あの時の事を残酷なまでに鮮明に思い出させてくれる。私が戻りたくてしょうがないのに戻れない過
去を、この子の顔は彷彿させる。
 その顔が、不意に唇の両端を緩やかに釣り上げた。私は心が急速に収縮して、消え入りそうになるくらい小さくなったのを感じた。心臓は胸を打つ鼓動の速度を速め、それなのに私の顔からは次々に血の気が引いていく。
それでも、私はその穏やかな笑みの寝顔から目を離す事が出来ないでいた。
 そっと、安眠の妨げにならぬよう、感触も感じさせないくらいの力で、小さく見えてしまうつかさの頭を撫でた。サラサラした髪の毛は掌に心地良く、これから阻喪していくだろう私の心を僅かに安らげてくれる。それは
優しい温もりであると同時に、これ以上に無く残忍で、酷薄で、無慈悲な仕打ちだった。
 それでも私は止めない。頭にあった私の手は、いつの間にかつかさの頬を滑り、そのまま首筋に落ちていく。
 その時、つかさの笑みの形に釣り上った唇が何事かを呟いた。

「――くん」

 ……その名前は、私を壊す。私を崩す。私を狂わせる。腹の奥から漏洩していく見にくいモノが、私の中に満ちていく。私の見る世界が真っ赤なフィルターを通して、すべてをおぞましい赤色に変えてゆく。心が、真黒に
染まっていく。
 分かっていた。期待なんかしていない。ましてや、望んでだっていない。私が一番に考えるのは、いつだってあの子の事なのだから。一番に望むのはつかさの幸せなのだから。だから、期待も望んでもいない。……呟かれ
る名前が、もしも私だったら、なんて。そんな事を、私は微塵にでも考えてはならないのだ。
 辛い。悲しい。虚しかった。日を重ねるごとに、自分への嫌悪は無限大に膨れ上がっていく。いっそ、こんな自分を殺してしまえたら。私は、自らの頸動脈を包丁で切り裂いているイメージを頭に思い浮かべた。
 ……でも、それは一番やってはならない事。私が死ねば、きっとつかさは悲しむだろう。自分に降りかかる幸せを、つかさは素直に享受する事が出来なくなるだろう。なぜ死んでしまったの、と悲しみ嘆きながら憎みもす
るかもしれない。紛れもなく、私が原因で。
 だからこそ、そんな事はできなかった。
 では一体、私はこんな嫌な自分をどうやって吐き出せば良い? 殺したくて消し去りたくて、醜い自分の消滅をこんなにも願って止まないのに、それはつかさがいる為に叶わない――叶える事の出来ない、願いなのだ。そ
れを、私はどうやって我慢すればいい? 何もしないで我慢していれば、必ず爆発する事が分かっている爆弾を放っておけと言うのか。……私は、どうすれば私のままでいられる?
 行き着いた答えは、狂気染みていた。
184変わっていくヒト:2008/02/14(木) 01:09:36 ID:8hQssuzh
 私は力なくぶら下がっていた左手を、右手と同じようにつかさの頭に置いた。それは右手の軌跡を這うように辿っていき、頬を滑り、首筋に
落ちて行く。
 細い首は、少し力を入れてしまえば折れてしまいそうなくらい頼りなくて。私は両手を使って、それを包み込む。そう、まるで首を絞めるよう
な形で。
 トク、トク。指に感じる血液の脈動は、止まる事を知らないようにつかさの命を繋ぎ止めている。それを少し遮ってみようと少しだけ力を入れ
てみれば、途端に苦悶に歪んでいくつかさの表情。緩めれば、また穏やかな寝顔に戻って静かな寝息を繰り返す。私は心が楽になるのを感
じていた。
 独占欲を満たす事で、私は心を安定させる事が出来る。
 今この場で、私はつかさの生死を握っている。それは、つかさが私のモノであるという錯覚を私に与えてくれるのだ。例えそれがこの場しの
ぎの幻、気休めだとしても、私はそうする事によってでしか、きっと自分を保っていられない。だから、悪循環だと分かっていながら、私は今日
もこうしてつかさの首に手を添える。
 もしも、つかさが目を覚ましてしまったら、私を見てこの子は何を思うだろう。恐怖におののくだろうか。嫌悪に顔を歪めるだろうか。それはど
れも有り得る事で、その時の事を想像すると、私は手に伝わる温もりを執拗に、貪欲に求めたくなる。でなければ、すぐにでも自分を見失って
しまいそうだった。
 ……もしかしたら、つかさは目を覚ましているんじゃないだろうか。時々、そう思う時がある。正気の沙汰じゃない私を知っていながら、つかさ
は私に笑って接してくれているのではないのか?
 でも、この時の私はつかさが目を開けているのかどうかを確かめるのが怖くて、決まって目を閉じている。そうすると、つかさの温かさをより深
くに感じられる事も理由だったかもしれない。でもやっぱり、私は背筋に纏わりつく恐怖を感じずにはいられないのだ。
 そうして十分も経てば、どす黒い感情は心の奥に吸い込まれるようにしまい込まれて、私は自分を取り戻す。
その時に私の頭に残っているのは、激しい後悔と自分に対する嫌悪感。私はつかさの首筋から手を離して、その場に崩れ落ちる。
 辛い。悲しい。虚しかった。知らぬ間に流れ出ていた涙は、絨毯に幾つもの染みを作っていた。
「ごめん……ごめんね」
 必死に押し殺した嗚咽と一緒に零れるのは、聞こえないだろう懺悔の言葉。自己欺瞞の言葉。
 姉として生まれてなんてこなければ良かった。本気でそう思う。それなら、素直に認める事も出来たかもしれないのに。
 だって、常識的に考えておかしいではないか。……姉が妹に対して抱く感情が、姉妹以上の好き、だなんて。
 私は自負していた。自惚れでは無く、まさしく私は頼りになる姉として慕われ、愛され、つかさにとって良き姉でいれている、と。その
自負があっ
たからこそ、私は常に良い姉≠ニしていようと思えていた。
 でも、今は……こんな有様だ。
 憎い。嫌い。気持ち悪かった。毎晩行ってきた自分の所業と、気づいてしまった自分の感情が、どうしようもなく醜くて、救いようが無くて。こん
な私は、あの子に笑顔を向けられる資格は無いんだと思うと、私の胸は大きく抉られてぽっかりと穴をあける。そこを通り抜ける虚無感の風は、
私の傷跡をジクジクと痛めるのだ。
 私は床に蹲りながら、その痛みに泣いていた。昨日も一昨日もそうしたように、声を押し殺して、この部屋の主を起こさないように咽び泣いた。
周りなんて見えない。見てはいけない。きっと、見えるものはすべて幻のようなもの。
 だから、私の頭の上に感じる温かさも、僅かな重みも。ましてや、撫でられてる感触なんて。全部、私が私に感じさせている都合の良い幻想に
すぎない。私がやった事を知っていながら、あの子が私から離れないでいてくれるわけが無いから、つかさは眠っている。何も知らずに、眠って
いる。私にとって、そうでなければならない。
 だけど、どうせ幻なら……私はそれに甘えても良いのだろうか。朝起きれば、きっと覚めてしまう夢ならば、その夢の中だけは素直にこの温か
みを感じても良いのだろうか。
 暗い部屋。時刻は丑三つ時をとっくに回っていて、私が洩らす嗚咽以外すべてのものが沈黙を守っている。感じるのは未だにつけっ放しの暖
房の風と、頬を滑り落ちていく涙の雫、そして頭に感じる夢想の温もりだけ。その夢想が現実になる事が怖くて、私は染みのついた絨毯をひたす
らに見下ろしながら切望する。
 朝になれば、私は元の私でいられると、信じながら。
ほいさ、しゅーりょー。ちょいとぼかし過ぎたかも。
バレンタイン?空気読めなくてサーセン。
MA☆KO☆TOは空気読めない男として有名なんだ。……わかるだろ?
つかさに彼氏、って聞いただけで身震いしてしまう俺は病気かもしれない。
改行ミス連発ってレベルじゃねー……。半年ROMるよ。読みにくくてすまなかった。
186名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 01:17:52 ID:4Nk6o6y9
新たに立ったキャラスレ

かがつかスレ
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1202864356/
みゆつかスレ
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1202802773/

全年齢板だからこことは違う年齢層のSSが見れるかも
187名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 01:43:35 ID:Clk5g/ID
みゆつかスレ過疎すぎワロタ
188名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 01:48:30 ID:03W/mxPf
小ネタ

 ある日の朝、始業のチャイム前の三年B組、いつもの四人。
 教室のざわめきをBGMに――他人から見れば彼女たちの会話もまたBGMに
すぎないが――こなたが名前を出したレトロゲームの話題に入っていた。
「中山美穂のトキメキハイスクール? 中山美穂ってあのアイドルの?」
 四人はその世代ではないが、名前は必ず聞いたことのある超有名アイドルである。
「そ、ミポリンのこと。ミポリンがゲームに出てくるの」
「ゲームに実際の人が出てきていいのですか?」
「芸能人が出てるゲームは結構あるよ。有名なのだとマイケルジャクソンズ・ムーン
ウォーカーとか。マイケルが子供を助けるっていうゲームなんだけど助けられた子供は
どうなることやら……」
「ストップ! 危険だからそこでやめとけ」
「こなちゃん、そのトキメキハイスクールってどういうゲームなの?」
 かがみの心情を察してか、何も考えていないだけか、つかさが話題の転換を図る。
「主人公が転校した先でミポリンそっくりの女の子がいて、その子と交流を深めるっていう
ゲームで、ゲームの中で電話番号が出てきて、そこにかけるとヒントを貰えるっていう
形式だったんだよね。もちろんそのサービスはもう終わってるよ」
「じゃあ、今からやってもできないわけ?」
「ディスク版では電話と同じ内容のメッセージが出てくるらしいけどね。で、ぶっちゃけ
その女の子はミポリン本人で、主人公はその証拠も持ってて、いつ『あなたが本物の
中山美穂だと気付いてます』と打ち明けるかが重要になってくるっていうわけ。時期を
間違えるとミポリンは転校していっちゃってゲームオーバー」
「ギャルゲーってそんな昔からあったのかよ……」
 呆れたような顔で呟くかがみ。
「当時はアイドルゲーとか呼んでたらしいけどね。まあ今で言うギャルゲーの元祖だね」
「あんたのやるようなゲームもそうだけど、やたらと都合の良い設定よね。なんで周りの
子はその子が本物の中山美穂だって疑わないのよ」
「ミポリンは眼鏡かけてるから」
「そんだけでごまかせるわけないでしょ」
「まあ、それこそ都合ってやつだよね。アイドルと秘密のお付き合いって萌えない?
例えば小神あきらがうちに転校してくるとか」
「だからそれは男視点の発想だっての。大体なんで小神あきらなのよ。ありえないじゃない」
「いや、なんとなく」
 つかさとみゆきが付いてこれずほとんど二人だけの会話になった頃、ホームルームの
開始を告げるチャイムが鳴り響いた。
「あ、そろそろあっち戻るわ」
 教室のざわめきがやや静まり、かがみはそれを背に廊下へ出た。そしてその3秒後に。
「えっ、うそっ!?」
 かがみの声が聞こえた。
「なんだろ?」
「さあ……?」
 ある者はそれについて追求しようとし、ある者は無関心に雑談を続ける。そのまた3秒後。
「みんな席つけー。急な話やけど、こいつが転校生や」
 教室に入ってきたななこの、その言葉通りに、その後ろに少女が一人。
「は?」「なんで!?」「嘘でしょ?」
 こなたも含め、生徒たちは一様に戸惑いを見せている。誰もがその転校生に見覚えがあり、
彼女がここにいるはずがないと知っているからだ。
「まあ、紹介するまでもないやろが自己紹介たのむ」
 ななこに勧められるままに、その少女は鍛えに鍛えた営業スマイルで愛想を振りまきながら
一部にはお馴染みの挨拶で名乗りを上げた。
「おはらっきー☆ 転校生の小神あきらです♪ みなさんよろしくお願いしまーす!」
 生徒たちの反応はただ驚きでしかない。ただ二人を除いて。
(なんだかわからないけど……これはチャンス!)
 人知れず闘志を燃やすこなたと。
(あきら様……あの番組で俺達の関係は終わったはずじゃないですか……!)
 人知れず胸の鼓動を高鳴らせる白石と。

 あきらの目的は!? こなたと白石の恋の行方は!? ってゆーかどうして転校してこれたの!?
PS2用ソフト『小神あきらのトキメキハイスクール』 発売お楽しみに!…………しなくていいです。はい。
1893-283:2008/02/14(木) 01:50:48 ID:03W/mxPf
昔ちょっと思いついたネタでした。
あきらが主人公でここから「こなたルート」と「みのるルート」に別れるとか
こなたを主人公にしてあきらを攻略するルートと
みのるを主人公にしてこなたの妨害をかわしつつあきらとよりを戻すルートを
選択するとかいろいろ妄想したものの、
たぶん完成することはないのでこの機会に出してしまいました。
190名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 01:53:29 ID:pte6u3s0
>>189
飛び級とは、やるなあきら。
それにしても、かなり懐かしいソフトが話題に出ましたねー
191名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 01:54:15 ID:SNOckx2W
>>189
GJだぁ、是非そのまま書いてもらいたいものですよ…!
192名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 02:03:22 ID:4Nk6o6y9
>>189続編希望!
193名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 02:15:20 ID:4S0DzDZT
>>189
>中山美穂のトキメキハイスクール
また懐かしいソフトの名前が出てきたなぁ!
リアルタイムでプレイしてて、出てきた電話番号に電話したという痛い想い出が蘇る……

で、続編はもちろん書くんだよね? むしろ書いてくださいお願いします。
194LD:2008/02/14(木) 04:06:15 ID:3fpPcaFq
 
 そろそろおはようの時間ですね。
 バレンタインSS仕上がったので投下しようと思います。
・こなた&ゆたか
・自作SS『聖戦へのカウントダウン』の続き
・4レス+後書き1レス使用予定
・エロ無し
 他の方の宣言がなければ投下開始です
195少女達の聖戦(1):2008/02/14(木) 04:07:27 ID:3fpPcaFq
 
「今日は2人っきりだねぇ、みゆきさん。」
「そうですね。かがみさんは自分のクラスで食べるそうですし、つかささんは用事があると言って出掛けてしまいましたしね。」
「かがみはともかく、つかさがいないって言うのは珍しいよね。」
「誰かに呼ばれたそうですけど……」
「ほほぅ?もしやつかさにも春が来たのかな?」
「あ、いえ。下級生の女の子からだそうですよ。それ以上はさすがに聞いていませんが。」
「むー、それじゃあ春はまだ先の話か〜。」
「あら、年下の女の子とお付き合いされているのは誰でしたっけ、泉さん?」
「う……まぁそれは置いといて。みゆきさんは誰かにチョコあげるの?バレンタインは来週だけど。」
「ええ。いつも通りお兄さんとお世話になっている皆さんに差し上げようかと。泉さんは聞くまでもありませんよね?」
「あははは、そりゃね。まぁ皆の分もちゃんと作るつもりだよ。ただねぇ……」
「ただ、何でしょう?」
「いやぁ。せっかくの一大イベントなんだしさ。普通のチョコやお菓子じゃつまんないじゃん。これは!っていうインパクトのあるのがいいんだけどね。」
「そうですねぇ……あ、それでしたら一つ心当たりがありますよ。」
「え、どんなの?」
「母が買ってきた本で見たのですが……」

 そんなこんなで早1週間。バレンタインデーを翌日に控えた2月13日の夕方。
「今までありがとね、みゆきさん。」
「いえ、私も楽しませていただきましたから。では明日は上手く行くといいですね。」
「まー問題はゆーちゃんの口に合うかだけどね〜。」
「大丈夫ですよ。心を込めて作れば、想いはきっと届きますから。」
「だよね!変に弱気になってもしょうがないか。」
「ふふっ、その調子です。頑張って下さいね。」
「うん、それじゃまた明日学校でね。バイバイ、みゆきさん。」
「はい、おやすみなさい。泉さん。」
 ここ数日ですっかり通り慣れた道を1人歩きながら、お父さんにこれから帰るとメールを送っておく。
 そう言えばゆーちゃんも学校帰りにかがみ達の家に寄ると言ってたっけ。今日はどんなお菓子を作ったのかな?まぁ明日のお楽しみってところだけどね。
196少女達の聖戦(2):2008/02/14(木) 04:08:07 ID:3fpPcaFq
 
 そんな事を考えていると、家まであと少しのところで後ろから「おねえちゃ〜ん。」なんて可愛い声が聞えてきた。
 振り向くと、思った通りの小柄な少女が駆け寄って来て、ぎゅっと抱きつかれた。
「おかえり、ゆーちゃん。」
「ただいまっ。お姉ちゃんもお帰りなさい。」
「ん、ただいま。寒かったでしょ、早くうちに入ろう?」
「うんっ。」
 抱き締めていた体を離して、代わりに手を繋いで歩く。にこにこ顔のゆーちゃんと家に着くと、揃って
「「ただいまー。」」
 と声を掛ける。すぐに「おかえり。」と返事がしてお父さんが迎えてくれた。
「そろそろご飯出来るから、2人とも着替えておいで。」
「「はーい。」」
 とまた揃って仲良く返事をする。

 着替えて台所へ向かうとすっかり食事の準備は終わっていた。
 3人揃って食事をしてると、お父さんがこんな事を言ってきた。
「明日は昼から出版社の人や作家さん達で旅行に行く事になったから、戸締りとかきちんとしておくんだぞ。」
「ごゆっくり〜……って、ずいぶん急だね。」
「ああ、何人かの都合がギリギリまでつかなかったらしいな。」
「あの、じゃあお帰りはいつなんですか?」
「ん?あぁ一泊だから明後日の夕方には戻るよ。」
「んじゃ夕飯は準備した方がよさそうだね。」
「そうしてくれると助かるな。」
 という事は……明日は久し振りにゆーちゃんと2人っきり……そう思っただけで顔がにやけてしまう。ちらっとゆーちゃんを見ると、ちょっとほっぺが赤くなってるという事は、同じ事を考えたのかな?
「あー、明後日も学校あるんだからあまり夜更かしし過ぎるなよ〜?」
「っ!も、もちろんだよっ。ね、ゆーちゃん?」
「う、うん。大丈夫ですよ、おじさん!」
 お父さんはやれやれ、って感じで首を振って。
「今日は俺が片付けやっておくから、2人はもう休んでていいぞ。代わりに明日の朝はよろしくな。」
 そう言ってテキパキとテーブルの上を片付けてしまう。こうなると私とゆーちゃんは言われた通りにするしかなくて、
「じゃ、おとーさん。お言葉に甘えて私達お風呂に入ってくるよ。」
「おじさん、あとはよろしくお願いしますね。」
 と言って台所を後にする。
197少女達の聖戦(3):2008/02/14(木) 04:08:43 ID:3fpPcaFq
 
 翌朝。ゆーちゃんと一緒に朝食とお弁当を準備して、いつものように他愛もない雑談をしながら3人で朝食を済ませると、
「じゃあすまんが、明日まで頼んだぞ。」
「はい、おじさんこそ気をつけて下さいね。」
「お土産よろしくね、おとーさん。」
 そんな風に挨拶を交わして私とゆーちゃんは学校へ向かう。
 2人並んで歩きながらお喋りをして。
「そだ。今夜は私が夕飯の支度するからさ、ゆーちゃんはゆっくりしてていいからね。」
「え?いいよ、お姉ちゃん。私も手伝うよ。」
「だーめ、今夜だけは私がやるの。その代わり、おいしいお菓子期待してるからね?」
「あ……そっか。うん、わかった。」
「ごめんね。ありがと、ゆーちゃん。」
 周りに誰も居ないのを確認してからほっぺにキスすると、嬉しそうなくすぐったそうな微笑を浮かべて手をぎゅっと握ってくれた。

 一日の授業が終わると、今日は食材を買う以外は寄り道せずに家に帰る。
「さぁて、じゃあ始めますか!」
 まずは材料の下拵え。これは普段やってるから問題はナシ。
 問題はこっちのビンの中身。多少多めに作ってみゆきさん家で試食した時は平気だったけど……ビンから少し出して味を見る。
「……うん、OK。んじゃこれに最後の味付け、っと。」
 あとは仕上げるだけの状態にして一息ついてると、
「ただいま〜〜。」
 と元気良く声が響く。玄関へ迎えに行くと、ちょっと大き目の袋を大事そうに持ったゆーちゃんがいた。
「おかえり、ゆーちゃん。それは?」
「ハッピーバレンタイン、だよ。お姉ちゃん♪」
 どうやら昨日のうちに作って、つかさに預かってもらってたのかな?
「じゃあ、まずはゆーちゃんのからいただいちゃおうか?」
「うんっ!今着替えてくるからね。」
 そう言うとトタトタ軽く音を響かせて部屋に向かうゆーちゃん。
「慌てなくたって平気だよ〜。」
198少女達の聖戦(4):2008/02/14(木) 04:09:17 ID:3fpPcaFq
 
 居間で待つ事数分。ゆーちゃんがお盆に紅茶とお菓子を載せてきた。
「待ってました♪」
「えへへ。お口に合うといいけど。」
 ゆーちゃんが切り分けてくれたのは、
「はい、どうぞ。パウンドケーキを焼いてみたんだ。」
「おー、いっただっきま〜す♪……んっ。おいしーよ、ゆーちゃん!」
「ほ、ほんと?」
「うん。嘘もお世辞もナシで美味しいって。こっちの紅茶もいい香りだよ。」
「よかったぁ……」
「ほら、ゆーちゃんも食べよ。それとも食べさせてあげよっか?」
 言いながら、小さく切り分けたケーキを口元に運ぶと、頬を染めながらパクっと食べるゆーちゃん。
「んふふー。間接キスだね、ゆーちゃん?」
 この言葉にますます顔を赤くして……って、これ以上に恥ずかしい事を何度もしてるんだけどなぁ?
「じゃあ、お返しに……はい、お姉ちゃん。あーんして。」
 今度はゆーちゃんが私に食べさせてくれる。そんな風にして交互に食べさせながら、最後には……まぁお互い口移しで食べさせ合ったけど。

 あまり食べ過ぎると夕飯が入らないだろうから、残念だけど程々で止めておく。
「さて、それじゃあ今度は私の番だね。」
 ゆーちゃんには席で待っててもらう事にして、仕上げに取り掛かる。とは言っても、お肉を焼く以外は盛り付けるだけの簡単作業なんだけどね。
「おまたせー。こっちこそお口に合うかどうか微妙だけど。一応試食はしたし、不味くはないはずだよ?」
 テーブルに並べたお皿を見て、ゆーちゃんは不思議そうに首をかしげる。まぁ私も写真を見た時には同じだったし。
「今日のメインディッシュは『チキンのモレソースがけ』だよ。」
「モレソース?」
「うん、わかりやすく言うと『チョコレートソース』だね。メキシコなんかじゃポピュラーらしいよ?まぁまずは一口食べてみてよ。」
「う、ん……いただきます……香りはちゃんとチョコの香りなんだ。」
 恐る恐る、という風に口に運ぶゆーちゃん。
「んー、何だか不思議な味だね。うん、でも美味しいよ。ちょっと私には辛いかも……」
 ペロッと舌を出して苦笑するゆーちゃん。
「チョコの香りも味もするけど、思ったより甘くないしスパイシーなんだね。」
「まぁ向こうはスパイスとか使うのは多いみたいだね。これはチョコを使った何かって探してたら、みゆきさんに教えてもらってね。お菓子はゆーちゃんが作ってくれるのはわかってたから、じゃあ私はこれだ、って。」
「でも、面白いね。チョコレートの料理なんて。」
「探せばまだまだあるみたいだね。あと、デザートにチョコのスープもあるよ。」
「スープ?チョコの?」
「うん、まぁチョコレートドリンクみたいなもんかな。」

 食事の片付けを済ませて一緒にお風呂に入り、まぁお互い背中を流し合ってるうちに色んな所を悪戯して逆上せそうになったのはご愛嬌、かな。
199LD:2008/02/14(木) 04:10:41 ID:3fpPcaFq
 
 以上です。今回は予告通りに終了♪

 書いてるうちに今一つ上手くまとまらず……
 どうも私が書くと「なんでもない日常」になってしまいますね^^;
 いやまぁ、それはそれで一つのスタイルなんでしょうけど。

 今回はとあるマンガでチョコレート料理を目にし、ちょうどバレンタインシーズンだったので少し調べて書いてみました。
 ちなみに私はまだ一度も食べた事はありません><
200名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 05:05:21 ID:B7J6Qy8Y
なんでもない日 ばんざーい♪
201名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 06:15:52 ID:cpF4mUNU
>>199
こなゆた、いいよ、こなゆた(*´Д`*)ハァハァ
朝っぱらからホクホクさせて頂きました、GJ。

オレが仕事終えるまでどのくらいのSSが投下されるか見物スw
バレンタイン、GJ!!!
202名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 06:37:00 ID:F+zrMi0d
こなた×かがみの非エロ
カップリング特になしの非エロ
二本立て投下します。
203バレンとタイン〜ほのぼの編〜(1/2):2008/02/14(木) 06:37:52 ID:F+zrMi0d
 家に帰ると自分の部屋に人一人入りそうなほど大きな箱が置かれていたら、どうするだろう?
 柊かがみの場合、とりあえず数秒間その箱を睨み付けた後、軽く蹴ってみた。
「あいたっ」
 カラフルなリボンと包装紙で飾られたどでかい箱の中から、聞き慣れた声が聞こえた。
「開けるわよ」
「ああちょっと待って! せっかく綺麗に包んであるんだから開ける時は優しく――」
「うるさい」
 不機嫌そうに言いながら、かがみは一応丁寧に包装を解き、箱の蓋を開けた。
「オイーッス!」
 中から出てきたのは、自分の体を服の上からリボン巻きにしたこなただった。
 今は亡き人がお馴染みにしていた挨拶をするこなたを、かがみは冷えた目で見ている。
「声が小さい。もう一度オイ――」
 黙って箱の蓋を閉じるかがみ。そのまま踵を返して部屋から去ろうとする。
「ちょっとちょっとかがみ! リアクションに愛が感じられないよ」
 仕方なく中から自分で蓋を開けたこなたは、予想外に冷たいかがみの反応に口を尖らせた。
「何が愛だ。そもそも何の真似よそれは?」
「今日バレンタインでしょ」
「うん。それで?」
「普通にチョコをあげてもインパクトが足りないから、ここは一つお約束の『私をプレゼント♡』をやってみようと――」
 かがみは黙ってこなたの頭に手を当てると、箱の中に押し込め、再び蓋を閉め、リボンを紐代わりにして縛ろうとする。
「明日ゴミの日だから」
「待って待ってーっ!」
 本気で箱を縛ろうとするかがみに抵抗して、中のこなたが暴れに暴れる。やむなくかがみは蓋を開けてやった。
「ふう、焦った。今日のかがみは何か厳しいなぁ」
「あんたが度を超えて馬鹿なことするからよ」
「悪かったよ。裸にリボン巻きにしておけば良かったんだね。でもさすがに裸だと寒いから仕方なく――」
「誰がそんなこと言っとるかーっ!?」
「おー、それそれ。やっぱりかがみは熱く激しく突っ込んでくれなきゃ」
 とうとう怒鳴り突っ込みを入れたかがみに、こなたは満足げに頷いた。
「ったく……今日は用事があるから早く帰るとか言ってたけど、わざわざこの一発ネタの準備してたわけ?」
「うん。ちゃんとかがみのお母さんの許可は貰ってあるよ」
「許可しないでよ、お母さん……」
 かがみは思わず額を押さえる。
「まあまあ細かいことは気にせずに。さあかがみ、遠慮なく私を召し上がれ」
「どう食えっつうんだよ。カニバリズムの趣味無いし」
「ノリが悪いなぁ。それじゃあ……」
 こなたは自分が入っている箱の中に置いていた、小さな箱を取り出した。こちらもカラフルなラッピングをしてある
204バレンとタイン〜ほのぼの編〜(2/2):2008/02/14(木) 06:38:42 ID:F+zrMi0d
「はいこれ。ハッピーバレンタイン」
 にっこり笑って、その箱を差し出すこなた。何だかんだで普通にチョコを用意していたわけだ。
「……まあ、一応受け取っとくわ」
「うん。ところでかがみからは?」
「っ……わ、私は……」
「無いの?」
「……」
 否定も肯定もせず、かがみはだんまりだ。
「ふむ……ま、いっか。ホワイトデーに期待しよう」
「ぁ……その――」
「あ。こなちゃん来てたんだー」
 かがみが何か言おうとした時、つかさが部屋に入ってきた。箱入りこなたに関してはほぼノーリアクションで。
「やほーつかさ。はいこれハッピーバレンタイン」
「ありがとう。それじゃあこれ、私からもメリーバレンタイン」
 和気藹々とチョコを交換する。かがみはそんな二人を複雑な表情で見ていた。
「こなちゃん来てくれて良かったね、お姉ちゃん」
「ん、まあ……」
 にこやかなつかさの言葉に、かがみの返答は鈍い。
「んー? 何で私が来たら良かったの?」
「だって学校でチョコ渡せなかったから。お姉ちゃんすごくガッカリしてたよ」
「ちょっ、つかさ――」
 こなたの疑問に、つかさは屈託無く答える。かがみは慌てて止めようとしたが、つかさはさらさらと言葉を継いでいく。
「お姉ちゃん、昨日一生懸命チョコ作ってね、放課後渡そうとしてたのに、こなちゃんが早く帰っちゃったんだよー」
「ほほーう……」
 目を光らせて頷くこなた。かがみは顔を真っ赤にして俯いている。
「道理で不機嫌だったわけだ。よしよし、私が帰っちゃって寂しかったんだねー」
「別に寂しくなんかなかったわよ! ちょっと、その、せっかく作ったチョコがもったいないって思ってただけで……別に、そんな……」
 だんだんと言葉に力がなくなっていく。
 こなたは箱から這い出て、ちゃんとかがみの前に立った。
「悪かったよかがみ。ごめんね」
「そ、そんな、改めて謝らなくたっていいわよ……別に大したことじゃないし」
 かがみはこなたから目をそらしつつ、鞄を開けて中から小さな包みを取り出した。
「一応、これ。このままにしてももったいないから」
 ほんのり顔を赤らめ、ぶっきらぼうな口調と態度で差し出す。こなたは恭しくそれを受け取り、にんまり微笑んで言った。
「かがみってさ……やっぱ可愛いよねー」
「う……うるさーいっ!」


おわり
205バレンとタイン〜暗黒編〜(1/2):2008/02/14(木) 06:40:19 ID:F+zrMi0d
 二月十四日、バレンタインデー。三世紀ローマの聖人に由来する記念日。日本ではもっぱら有象無象のカップルどもが糖分過多の茶色い塊をやり取りする日だ。
 だがここ――昼休みの陵桜学園一年D組には、そのような行事などどこ吹く風と、烈火の如きオーラを立ち上らせる武士(もののふ)がいた。
「ふしゅるるるるるる……」
 田村ひよりである。血走った目で机の上を見据え、人間以外の生物を思わせる吐息を口から漏らしている。
 机の上には無地のノートが広げられている。ひよりはお気に入りのしゃーペンを握りしめ、一心にネームを描き込んでいた。
 少し離れてその様子を見ているゆたか、みなみの二人は、あまりの鬼気迫る様子に声をかけるのも憚られていた。
 ひよりが学校でネタ出しやイラスト描きに集中していることは珍しくないが、よりによってバレンタインに、しかもここまで熱を込めているのは異様な風景だ。
「ユタカ、ミナミ、どうしましたカ?」
 どうしたものかと戸惑っていた二人に、パティが声をかける。
「その……田村さんが何か凄い集中してて、声がかけられないっていうか……」
「オーさすがヒヨリ。憑かれたように頑張ってますネー」
「感心してる場合じゃないよぅ」
「それもそうですネ」
 パティは周りのことなど何も目に入っていない様子のひよりに近づくと、その背中をちょっと強めに叩いた。
「っ……はっ!?」
 まるで眠りから覚めたように、ひよりは目をパチクリさせて周囲を見渡す。
「気が付きましたカ?」
「パティ……? 私は――」
「集中しすぎて意識が半分飛んでたみたいですネ」
「ああ、そうか……」
 ひよりは右手で頭を押さえ、深いため息をつく。左手がシャーペンを握ったままなのは意識してのことではなく、その形で手が固まってしまっているのだ。
「田村さん、ずいぶん根詰めてるみたいだけど……大丈夫?」
 ゆたかが心配そうに尋ねる。
「うん……〆切とか色々かつかつで……何で二月は他の月より短いんだろ」
 どうにもならないことを誰にともなく愚痴りながら、ひよりはもう一度ため息をついた。
「と、ところで田村さん。今日はバレンタインでしょ。だから――」
「バレンタイン……!?」
 その単語を耳にした途端、ひよりは驚愕に目を見開いた。
「忘れていた……!」
 ひよりは愕然と天を仰ぐ。ここ数日余裕が無かったので今日のことをすっかり失念していた。
「こっ、小早川さんっ、チョコは!?」
「え……あ、うん。田村さんにも一つ――」
「そうじゃなくて! 岩崎さんにはもう渡したの!?」
 ものすごい剣幕で尋ねるひより。ゆたかはちょっと引きながら、「うん」と頷いた。
「ああぁああぁ見逃したあぁぁぁああぁ!!」
 いきなり頭を抱えて叫ぶひよりに、ゆたかとみなみは何事かと目を丸くした。
「素晴らしく電撃的なインスピレーションを得られそうなシチュエーションだったろうに……何という失態だ! こんな好機を逃してしまうなんて……計画を歪めてしまった! ああヴェーダ……俺は……僕は……私は……」
 打ち拉がれるひより。こんな状況でも台詞にネタを挟むのは、オタクの本能が成せる業か。
「ヒヨリ! 落ち着くでス!」
 またしても意識がどこかへ飛びかけているひよりに、パティが強く呼びかける。
「はっ!? ……ご、ごめん小早川さん。ちょっと錯乱してた……今言ったことは忘れて」
「う、うん……」
「ダメですよヒヨリ。ユタカを怯えさせたりしテ」
「申し訳ない……もう少しでフォースの暗黒面に堕ちるところだった」
「ジェダイの騎士が多い学校ですネー」
206バレンとタイン〜暗黒編〜(2/2):2008/02/14(木) 06:41:11 ID:F+zrMi0d
「それで田村さん、チョコレート持ってきたんだけど……」
 一息ついて落ち着いたところで、ゆたかが改めて話を切り出した。
「手作りだから形悪いけど、良かったら貰ってくれるかな?」
「それはもう喜んで。ごめんね、私の方は用意してなくて。ホワイトデーはちゃんとお返しするから」
 ひよりは受け取ったチョコの包みを、ゆたかの許しを得てその場で開けてみる。
 手作りというから湯煎で溶かして固めたやつかと思いきや、なかなか本格的なガナッシュだった。
「お〜……これは美味しそう」
 感嘆の声を上げると、ゆたかは照れくさそうに頭をかく。
「お姉ちゃんが作ってたから、便乗して作り方を教えて貰っただけなんだけどね」
「へー、泉先輩が。それでもこれだけ作れるのは凄いよ」
 早速一つ摘んでみた。柔らかい甘さの中に、ほんのりした苦みが効いている。隠し味にブランデーを少々加えてあるようだ。ゆたからしからぬ(失礼)大人っぽい味わい。
「うん。美味しいよ」
 ひよりが口元をほころばせて素直な感想を言うと、ゆたかはホッと胸をなで下ろした。
「良かった。お姉ちゃんみたいに上手く出来てるか不安だったから」
「泉先輩は、やっぱり柊先輩達や高良先輩にあげるのかな?」
「どうなのかな……そういえば、何だかすごく大きな箱を用意してたみたい」
「すごく大きなって、どれくらい?」
「人が入っちゃいそうなくらい。何に使うのかな?」
「っ……!」
 人が入れるほど大きな箱。それを聞いた途端、ひよりの脳内では全身にリボンを巻いたゆたかがラッピングされてみなみの元へお届けされるイメージが鮮やかに描かれた。
「おやおヤ。ヒヨリはまたどこかへ飛んでいっちゃいそうですネ」
 同じくゆたか特製チョコを受け取りながら、パティはどことなく楽しそうに呟いていた。


おわり
207名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 06:42:03 ID:F+zrMi0d
読んで下さった方、ありがとうございました。
208名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 07:23:02 ID:qefsODfp
ヤンデレ・懐ゲー・こなかが・ひよりん、朝起きただけでこれか。
皆さまぐっじょぶ、今日も素敵な一日になりそうです。
209名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 07:35:27 ID:3qrWNQr/
>>207
GJ
あなたは本当登場人物のキャラを掴みすぎだ
210名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 07:42:46 ID:mcKwWr4Y
おはようございます。バレンタインの投稿と関係なくて申し訳ないのですが、朝ならいいかなと、下手の横好きって奴ですが頑張ってまた書きまして、投下したいと思います。
いいでしょうか?
211ちび:2008/02/14(木) 07:43:57 ID:mcKwWr4Y
あ、名前はちびです
212ちび:2008/02/14(木) 07:53:18 ID:mcKwWr4Y
え〜と、では投下するっす。内容はつかさ×かがみの短編です。
R-18になります。自分でもちゃんとエロいのかはわからないですが・・・
213つかさとかがみ1:2008/02/14(木) 07:54:11 ID:mcKwWr4Y
「お姉ちゃ〜ん!!」
 バタンと扉が勢いよくクローゼットに叩きつけられた。
「な、なに!?」
 学習机とセットになっているような回転椅子を回して振り返るかがみ。
 大きな瞳をじんわりと涙で弱らせてつかさが携帯を差し出した。
「こ、これ〜。まただよぉ…。」
 げっ…。
「あ、あんたまたなの?」
「うぅ、告白されちゃったよぅ…。」

〜つかさとかがみ〜

 人生で初めて携帯を手に入れたつかさはるんるんとしていて、アドレスを交換した男子にとても丁寧に一生懸命返信をした。電話をかけてくる人にも、緊張はしてもまさか自分を口説くつもりだなんてと警戒せずに楽しくおしゃべりをした。
 そんなこんなで1ヶ月の最近、つかさには勘違いをした男どもの告白が相次いでいる。
 かがみはジト目でため息をついた。
「よりどりみどりで結構じゃない。またメールしたんじゃないの?」
 つかさはしゃくりをあげて弱々しく言い返す。
「ちょっとだもん…」
 かがみは立ち上がって携帯を奪った。
 送信箱に入っているメールはどれも優しさ、可愛らしさ、ひたむきさがその人に向けられていて勘違いをしてもしかたなかった。かがみはだんだん腹がたってきた。
「はあ!?つかさ、これじゃ誘ってる様なもんじゃん!お断りのメールすら勘違いされそうだし。」
 私以外とこんなにメールを!?
「自分でなんとかするのね。私知らない。」
「え〜!?うぅ…。」
 かがみは机に戻ってしまった。つかさは押しきられて、小さくうつむく。それから、すがるように甘えるようにかがみに聞こえるギリギリの声で呟いた。
「…お姉ちゃぁん。」
 かがみは教科書の公式を無意味にノートに写している。
 ぶっきらぼうにいい放つ。
「誰かに電話でもして慰めて貰えば。私には関係ないじゃない。」
「お姉ちゃんは私のお姉ちゃんだもん。」
 かがみはペンを止めた。
 そうじゃない。私が言って欲しかったのは、恋人としての言葉。
 かがみはつかさに聞こえるように大きなため息をついた。それから何も答えずに頭に入りもしない作業を続ける。
 つかさとかがみは数ヶ月前から付き合っていた。それは今や家族公認ですらある。
 何よつかさ、お姉ちゃんは私のお姉ちゃんって。彼女としてなら、「馬鹿な男どもね」って笑えるのに…。
 かがみはノートへ向けた視線を細めた。 
214つかさとかがみ2:2008/02/14(木) 07:55:18 ID:mcKwWr4Y
 胸が痛い。どうしようもなく不安。
 私は女だ。つかさは私をお姉ちゃんとして好きなだけかもしれない。いつか口説いてくる男子にドキドキさせられて本当の恋に気付いたってなったら、私フラれるかもしれない。
 そもそも何で私以外とそんなにメールするわけ!?何かつかさ私以外にも随分興味があるんじゃない?
 …ハッキリしないっていうか、何時もそれで私をイライラ不安にさせる。そういうのもう嫌、やめてほしい。最悪。・・・はぁ、ヤダヤダ。男子と話してるつかさって、きっと私の知らないつかさだ…。男子どももホント自重ってのしてほしい。
 ってか私のつかさに近づくな!
 そんなこんなかがみが悩んでいる間、相変わらずにつかさは扉の前で立ち尽くしていた。わたわた何か言おうとしてはためらい、肩をおとしてしぼむ。
「…もうそのまま返信しなきゃいいんじゃない?」
「え〜!?それは無理だよぉ…」
 かがみは振り返った。つかさはおどおどと辛そうにかがみを見つめ返す。
 うそ、でしょ?もうつかさは変わり始めてるの?
「何がえ〜なの!?完全シカト、それでいいじゃない!」
「だって私やっとクラスの男子と仲良くなったのに…」
 つかさは私を見てないの?
「私やこなたやみゆきで十分じゃん!」
「でも…、」
「じゃあ私に訊かないで!!」
 かがみは机に向き直る。どうすればいいのかわからない。つかさが男子に向かうならそれでもいいのかもしれない。私なんかより…。
 かがみは数式を見つめながら、唇が表音する最低ラインの声で恐る恐るに訊いた。
「私たち、付き合ってるんじゃなかったの?」
 部屋をとてつもない沈黙が支配する。
「・・・ごめんお姉ちゃん。」
 かがみははっとした。自然と涙が頬を流れ落ちる。つかさ気付いちゃったんだ。
 かがみは勉強がダルいふりで机にうつ伏せながら、悟られないように涙を服で拭く。そして訊いたら終わりとわかりながら、辛い言及をする。
「それ、どういう意味よ…」
「私、私…」
 涙声でそう言ったつかさはそれからしゃくりを上げて泣き出した。それは決定的な破局。
 かがみは頭の中が真っ白になる。公式も、歴史年表もあったもんじゃない。全ては無意味で、ただボロボロと涙が止まらなくなる。
「お姉ちゃんの…、ひぐっ、彼女なのに、」
 そう、いつの間にかバレて、こなたやみゆき、家族まで公認してくれた。その間でだけだったけど、ちゃんとした恋人だったね。
「うぐっ、かっこいい彼女になりたいのに…、うぇ、うぅ…」
 つかさはいつだって頑張りやで、優しくて、だから私は全力でフォローしたいと思う、それが私を頑張らせてくれた。
「やっぱり私ってドジで…、ぐすん、情けなくて…、うぇっ、彼女なのに…。」
 あれ・・・?
「妹ってことに頼っちゃうなんて私、こんなの全然、あぅ、全然かっこよくないよぉ…」
 そう言うとつかさは目元で両手を丸めて泣き出した。かがみは状況を頭の中でまとめた。お互いの涙は完璧な食い違い、勘違い。
215つかさとかがみ3:2008/02/14(木) 07:56:27 ID:mcKwWr4Y
 かがみは自分の勘違いっぷりに少し呆れながらも、胸の締め付けがすっと溶けていくのを感じる。
「あ〜、そういうこと…。」
 かがみは途方にくれているつかさを無視して椅子から降り、ベッドにぽふんと倒れて仰向けになった。
「勉強する気失せたわ。」
 つかさはぐすぐすと鼻をすすって、一生懸命袖で涙を拭っている。
 天井を見ながら、かがみは静けさとつかさの泣き声に、何か漠然とした不安が拭えない。
「つかさ、」
 かがみは両手を天井に向けて広げる。
「きて。」
「え…?」
「はやくきて」
「お姉ちゃん…?したいの?でも私、」
「すぐ来ないとあんたをフるわよ。」
「え〜!?」
 つかさは机に携帯を置いて必死でかけより、かがみの上に四つんばになった。
 そうして見たかがみの顔につかさは驚いた。涙ぐんでいる。
「おねぇ…ちゃん?ふぁ!?」
 かがみはつかさを強く抱き寄せた。身体中を擦り付ける、つかさの全てを求めるように。
「つかさ、ずっと頼ったっていいよ・・・。だからずっと私の側にいてよ・・・。」
「う、うん。よかったぁ…。」
 ・・・でもなんで?
 そのとき、つかさの携帯が着信した。
「あ、メールだ…」
 かがみはぎゅっと抱きしめて離さない。
「おね…ちゃん?メール、見れないよ。」
 ゆっくり身体を離して見つめると、かがみは捨て犬のような寂しそうな涙目でつかさを見つめ反してきた。
「おねぇちゃん…」
 そっか、…バカだなぁ、私。
 つかさはかがみに口づけた。
「…んっ」
 かがみはその不意打ちと意外性に思わず声が漏れた。つかさがいきなり激しく舌を動かしだしたからだった。かがみがやり返してもつかさの舌と唾液に絡みとられて押し負ける。呼吸すらままならない。かがみはただのその華奢な肢体を強く抱き締める。
 再び見つめあう。二人は興奮して火照っていた。
「えっと、もう男子とのメール全部やめちゃうね。・・・気付かなくてごめんなさい。」
「つかさ…。」
 かがみの中でつかさが白馬に乗った王子様のように映る。
「私、お姉ちゃんの彼女だよ。ずぅっと。よろしくお願いします。」
「…うん。」
「お姉ちゃんフラないでね。」
「バカ、当たり前じゃない。」
216つかさとかがみ4:2008/02/14(木) 07:57:43 ID:mcKwWr4Y
 二人は見つめ合う。お互いに涙の残りでか、潤んでいる。かがみはもじもじと切り出した。
「その、えっち…したい…んだけど。」
「うん、私もしたい。」
 かがみは幸せに微笑んだ。そしてつかさの肩に触れた時、つかさはその手をとり、指を絡めて握った。秘密を囁くような声で言う。
「ね、今日は私からしてもいい?」
 その大人びた艶っぽい視線に、かがみはドキッとして息を飲んだ。
「…だめ?」
「いや、そのなんか、恥ずかしい…。」
 ちゅっ
 つかさは頬に口づけした。
 うわぁ、ほっぺあついなぁ…
 指をほどいて、腕を首の後ろに回す。そして唇が触れあうギリギリまで顔を寄せる。
「かがみに私がしてあげたいの。」
「ちょ、かがみって…」
「いい?…かがみ。」
 唇につかさの吐息が触れる。さっきのキスで、気持ちが唇へいってしまう。
「うん… 。…っんぅ!」
 つかさはかがみの頭を抱えて唇を重ねた。二人の口内はぬらりとした唾液が満ちている。
 つかさのキスにかがみは必死で応える。
 かがみが望む口内のあらゆる部位に舌先が届く。
 左手がかがみの頬を撫でる。一本一本の指が繊細にかがみを確かめ、首筋たどってパジャマの襟元まで降りていく。
 つかさ、上手すぎだって、私溶けちゃうよ・・・。
 とろけるような甘いキスに、かがみはつかさがパジャマの前を開くまで自分がボタンを外されて脱がされている事に気付かなかった。
 え…うそ、やっぱつかさは器用ね・・・って待て!
「うぷっ、つかさ…」
 かがみが唇をずらして言うと、つかさは薄く目を開けて、優しく微笑み返す。
「ふぁに?かがみ…」
「ちょっと待って!」
 かがみは肩を掴んで引き離した。ぽかんとするつかさ。
「あれ?へ!?」
「で、電気!それにドア!!」
 開きっぱなし。
「うわぁっ!」
 つかさはベッドから飛び出してドアを閉め、スイッチを切った。その場から上体だけおこしているかがみの方を見る。机の電気が開いたパジャマから肌を露出させたかがみを照らしている。顔はなんだか苦笑いだ。
「あはは…ごめんお姉ちゃんじゃなくってぇ、かがみ…。」
 かがみは微妙に冴えない相変わらずのつかさの姿にふふっと吹き出した。
「あぅ…。」
「つかささん、早くかがみを抱いてよぉ」
217つかさとかがみ5:2008/02/14(木) 07:58:38 ID:mcKwWr4Y
 つかさはとぼとぼと机の電気を消してかがみの元に戻った。かがみはつかさの肩に腕を回して一緒に倒れる。明るい紫の長髪はベッドの上で放射状に広がった。
「じゃあ続けるよ?…お姉ちゃん。」
 そう言ったつかさの顔は非常に落胆していた。
「うん。…でもつかさ?」
「なに?お姉ちゃん。」
 つかさに向けて穏やかに頬を緩ませた。
「私も、かがみがいいな。」
 つかさはその言葉にぱっと明るくなった。
 かがみのふっくらと形のいい乳房の谷間に顔をうずめて擦り付けた。
「もう、しょうがないなぁかがみは〜」
「あははっ、つかさくすぐったい!ちょっと何よそれぇ〜」
 つかさが顔を離すと紫のショートな髪が乱れて、熱気に顔が軽くのぼていた。
「あのね、これ一度言ってみたかったの。」
 かがみはくすりと笑った。
「そうね、普段じゃ言い返せないもんね。」
「そ、そう言うわけじゃないんだけど…。」
「そうかしら、ぁんっ…」
 つかさはかがみの乳首をすくいあげるようにペロリと舐めた。
「違うもん。」
 唾液で包み込むように吸い付く。次第に固くなる突起を舌で押し込むように愛撫する。
「はぁんっ、つかさ・・・」
 甘く噛む。
「ひぁんっ!」
 全身の細やかな神経までもが震える。つかさはもう片方の先端を親指と人差し指で器用にこねくりまわす。
「んぁ…、はぅ…」
 つかさは熱い息を荒げて舌で突起をはじき、吸い、唾液を唇で広げる。細くしなやかな指先で突起の周囲を這い、つまみ、押し込み、ふいに手のひら全体で胸を揉みしだく。
「んぅっ…あぅっ…!」
 なんでそんなにわかるのよ…
 あまりの快感に力を失い、瞳はまどろんでいく。胸はドキドキして、内股がとろけるようで、蜜が溢れてくる。
 つかさは多量に唾液を絡めて唇を離した。
 つかさはなまめかしく輝く糸を官能的に垂らしたまま言う。
「私がかがみを壊してあげる。」
 かがみは自傷するように微笑みを浮かべた。
「バカ、私…もぅ…」
 かがみは空気に酔って忠実にデレたが、つかさは律儀に受け取った。
「じゃ、じゃあ…うやむやにしてあげる。」
「めちゃくちゃ?」
「うん、そんな感じにしてあげる。」
 かがみは少し考えた。それから
「・・・いやぁ。」
 色々補完した。
 だめだ私、つかさが好きすぎる…。
 自分を知り尽くしたように責めるつかさを体は全面的に支持しているし、それにつられて心もつかさを全肯定する。
218つかさとかがみ6:2008/02/14(木) 07:59:42 ID:mcKwWr4Y
 つかさはパジャマの下に手をかける。かがみは顔を横に向ける。パンティは広くシミを作っていて、花園がそれを蒸気させそうなほどに熱くなっているようだった。横目につかさの表情を覗く。つかさは小さな花のように愛らしく微笑んでつぶやいた。
「えへへ、嬉しいな・・・」
 唇が秘部に近づいていく。鼓動が辛いほど高鳴る。
「はぁっん…」
 とろけるような感触。自然にふわりと腰が持ち上がる。
 ぬめりを使って唇はパンティごしに割れ目の上を這う。
「あぅ!…っん」
 かがみは手で自らの口をふさいだ。やらしすぎる。
 つかさの熱い唇、自分の淫液のねたねたする感触。子宮が疼いて欲求が高まっていく。
 つかさ、はやく脱がしてよ…。
 そこにむしゃぶりつくつかさを強く欲する。
 その時、つかさの携帯が鳴った。
「あ。着信だ…電話?」
 つかさは顔を上げて、机の上で淡くピンクに発光する携帯を見る。それからかがみを伺った。
 目を細めてそらす。息を静めながら、枯れた声を意識して出す。
「は…早く行きなさいよ。」
「うん、」
 その言葉にちょっとがっくりくるかがみ。
 しかし、つかさの次の言葉はかがみをすぐに喜ばせた。
「電源切っちゃうから、ちょっと待っててね。」


 白石みのるの手元には話題が途切れないように、楽しく話せるようにかつ親密さを増せるように入念に計算した会話のチャートメモがある。さっき出した自分のメールを読み返す。

件名:よっ、まだ起きてる?
本文:今暇?ちょっと話さない?

 しかし、20分待っても返信は来ない。
 大丈夫だ、確信とまでいかなくても、今までのメールのやりとりから考えればある程度の勝率は見込めている。
 つかささんを思えば思うほど気持ちは抑えられなくなる。
 つかささんなら寝てる可能性もあるのか?
 なら…、一か八か、一回だけ!
 一回だけかけてみよう!
 心臓バクバクでアドレス張から「柊つかさ」の番号を引き出し、通話ボタンに指をのせる。
 平静な呼吸が難しくなる。チャートメモを見る、完璧。
 えぇいままよ!
 親指に力を込めて押し込んだ。
 その数秒後、白石みのるは綺麗に散った。

219つかさとかがみ7:2008/02/14(木) 08:00:30 ID:mcKwWr4Y
 かがみの愛液とつかさの唾液でぐちゃぐちゃのパンティを脱がすと、つかさはすぐに秘部へ口づけ、舌でゆっくり蜜を舐めとった。
「あぁっ…」
 こくりとそれを飲む。かがみの蜜で潤う桜色のそこの前でつかさは呟いた。
「大好き…。お姉ちゃん。」
 唇を大陰唇に密着させ、舌をぬるぬるの小陰唇の隙間に忍ばせ柔らかな弾力を味わう。
 お姉ちゃん、すっごく熱い…。
 つかさの熱い吐息。舌がぬぬっと割れ目の中を動く。
 かがみは両手でベッドシーツを強く握って、快感に顔を歪ませながらも漏れる声を必死で我慢する。
「んは…ぁ…、ゃ…、あぁっ…、んぅ…」
 唇で表面と突起の先を、舌で内部をいじめ始める。思った以上にかがみの奥までつかさの舌が届く。
「あっ、はぁぅ…!」
 つかさは熱心に刺激を、動きを早めていく。
 ずちゅぐちゅっ…
「んぁあ…うぅんっ!」
 つかさ、こんなにも愛してくれてるんだ…
 かがみはずっと口で攻めてくれることに強い愛を感じていた。もうそこそこ辛いはずだ。
「はぁっん…つかさぁ、はぅっ…」
「ふんぅ?」
「あっ…、はぁはぁっ…あっ」
 この場で言わないと。いつも私、上手く言えないから。
「愛してっ…る…」
 かがみは両手で愛しいつかさの頭を撫でる。
 つかさは唇をぎゅっと押し当ててから言った。
「…私も、愛してる。かがみ。」
 幸せと鼓動のどうかしたような高鳴りに何もわからない。もっとつかさが欲しい…
「…っふぁっ!…っ!」
 かがみのクリトリスの表皮を唇で押し込み、口内で剥き出しにする。今、そこは充血しきっていて、感度は最高まで高められていた。
 ぺろっ
 身体中を激しい官能が貫いた。
「いゃぁんっっ!」
 かがみらしからぬ高い声が上がる。
 器用に素早く左右交互に舐め上げる、生暖かく、てろてろと舌先がぬめる。
「あぁぁぁん!んぅあ!」
 身体中がどうしようもなく熱い。
220つかさとかがみ8:2008/02/14(木) 08:01:39 ID:mcKwWr4Y
 太ももでつかさの頭を強く挟む。両手も一気に汗ばみ、やり場なくつかさの頭をありったけ自分の性器へ押し込んでしまう。
 れろれろぺろぺろ…
「ぁん!・・・あぁん!あっはぅっ!つかさ・・・む、無理ぃ、あぅっ!」
 腰は勝手につかさへ突き出ていく。
 れろれろれろ…
「あぁはぁぅんっ!」
 いやぁ…へん…つかさ、だめ…、こんなのって…、こんなの私じゃないよ…
「んぁはっ、あぁぁぁん!」
 シーツは愛液と唾液でべとべとしている、そのうえ汗で背中の下はびっしょり湿っている。
 かがみの唇から抑制が効かずに一筋唾液がつっと垂れる。
 つかさは上下に擦りきれるほどに強く激しく舐めあげる。
「あぁぁう!あぁぁぁん!」
 昇りつめていく身体、もうかがみには止められなくなる。
「はぅっ・・・はぅっ・・・はぅっ・・・あぁぁぁ!つかさもぅ私!」
 つかさは攻めを止め、ゆっくり一舐めする。かがみにはそれが「イっていいよ」だとわかった。
 かがみは「うん…」とかすれた声で応えた。
 舌は動き始めた。
 吸いつきながら強く激しく舐めはじく。
 べちゅべちゅべちゅ…
「…んぁはっあぁ!」
 身体はもうガクガクになっている。
「あぁぁぅん!んぅぅ!」
 つかさに性器を可能なだけあてがい、ベッドがきしむほどに悶えながら必死で頭にすがり、身も心も全て捧げる。
 ぐちゅぐちゅぐちゅ・・・
「ぅあっ!あっ!あんっ!」
 つかさ、私、すごく・・・変になってくぅぅぅ!!
「ぁふっあぁ!つかさっ!・・・イっイクぅっ!イッちゃう!」
 つかさはそれを聞いて唇をすぼめ、激しく絞り出すように吸う。
 びじゅずずずっ・・・!!!
 人生で最大のエクスタシーがかがみを襲った。
「はぁあああぁぁんっ―――――!!!!」
 かがみは全身を緊張させた後、ぐったりと脱力した。

221つかさとかがみend:2008/02/14(木) 08:02:33 ID:mcKwWr4Y
 かがみが強い余韻に浸っている間、つかさはかがみをぬいぐるみのように抱き締めていた。
「ねぇ、お姉ちゃん?」
「…なに?」
「やっぱりしばらくお姉ちゃんって呼びたいんだけど…だめ?」
「そう。」
「な、なんか、頼れないっていうか、不安っていうか…その、」
「いいわよ。っていうか別にどっちだっていいし。」
「えぇ!?でも、さっき」
「それよりつかさ…」
 かがみはつかさを押し倒す。つかさは胸元で両手を握り合わせて縮こまる。上目にかがみをみる。
「はい…」
 それはしかりつけるときの顔。
「よくも滅茶苦茶にしてくれたじゃない。わたし嫌って言ったけど?」
「あぅ、それってでもその…」
 かがみは優しく笑いかけた。
「覚悟しなさいよ。」
「お、お手柔らかに…」
「知るかっ!」
 さっきの以上に私も愛してあげるんだから。
「はうぅぅ…。」

 その夜はとても長く、二人は力尽きてどちらともなく眠るまで求めあった。
 公認とはいえ、二人を除いた家族にとっては非常に迷惑な夜だった。






(おしまい)
222ちび:2008/02/14(木) 08:03:45 ID:mcKwWr4Y
以上です。もっともっと頑張ります…。また来ます。
大変おじゃましました。
223kt:2008/02/14(木) 10:56:00 ID:+TzPukxi
バレンタインネタ?そんなの関係ねぇ!
KYなktです。。。
というかネタが思いつきません…とりあえずこのシリーズで攻めた
いと思っているところです、ハイ

それでは
「鼻血)ry会2☆いつもと違う1日」
投下してもよろしいでしょうか?
タイトル省略してみました

○4レス
○登場人物:3年生ズ、1年生ズ
○オリキャラ注意
○妄想屋(仮名)・7-896氏に感謝!
ネタ多めです
224鼻血)ry会2☆いつもと違う1日:2008/02/14(木) 10:57:07 ID:+TzPukxi
バス停にて
「おっす、こなた!」
朝から元気なかがみ
「おふぁよ〜…かがみぃん…つかさ…」
こなたはかなり眠たそうだ
「おはよ〜、こなちゃん…どうしたの?」
「どうせまたネトゲでしょ?、心配する必要ないわよ」

どうせいつものこと、そう思ってかがみは相手にしない
しかしその日は、、、何かが違った

鼻血)ry会2☆いつもと違う1日

『お早う御座います、泉さん、かがみさん、つかささん』
「おはよ〜…みゆきさんは今日も萌えるねぇ…」
『いえ、そんな…』
「こなた…またあんたは、、、みゆきこいつの言うことは気にしなくていいわよ〜」
と笑うかがみ
『はぁ…』
「むぅ…それが夫に向かっていう言葉?」
「誰が夫だ!」

「……」
「つかさ?どしたの?」
「ん〜…でも違ったらなぁ〜」
「何悩んでるのよ、言ってみなって」
「もしかしたらもしかしてなんだけど…ゆきちゃんじゃなくて…うーちゃん?」
『だから私は<うぃきつー>だと……ちちちち違います!私は高良みゆきででででd出』
「ちょっ…マジっすか!?」
かがみは驚きを隠せなかった
225鼻血)ry会2☆いつもと違う1日:2008/02/14(木) 10:58:21 ID:+TzPukxi
『〜〜っ…あの…どうして分かったんでしょうか!?、眼鏡はもちろんかけてますし、
TR毛髪を使いみゆきお姉さまの髪を再現してますし…プロポーションもみゆきお姉さ
まとほぼ同じなのですが…』
「え、、、と、なんとなく…かな?」
『な、、、なんとなくですか?!?』
うぃきつーには納得がいかない
「いやまぁ…しっかしどう見てもみゆきそのものね〜、、うぃきつーさん?気にしな
くていいわよ、この子勘だけで生きてる子だし」
「それほどでも〜…えへへ」
(…褒めてないんだけど…)

『はぁ…ですが…』
「むぅ…なんというかもうエロゲの世界だねぇ」
まだ眠そうなこなた
『………』
「うぃきつーさん?」
〔なぜバレたんだろう…声に不備があったのでしょうか?、まぁ人工音声ですからしか
たないかもです…しかしそれとは別に不備があるとしたら…いや私はつい最近開発され
たばかり…不備なんてあるわけっ…私は現在の高良家の最高…いや、地球最高の技術を
もって造られ…〕
「うーちゃん?その、、なんだかゴメンね」
『その間 わずか2秒!!』
カッと目を光らせ叫ぶうぃきつー
「ひぃ!?」

『は…すいません!私達には思考形態がありまして、その…なんというか…』
「うーちゃん? もう10秒近いんだけどな〜」
とこなた
『はう?!それは…っというか私はうーちゃんではなく<うぃきつー>です!』
「ごめんねうぃきつーさん、、こらこなた!からかわないの!」
「あっ…みんな〜バスが来たよ〜」
226鼻血)ry会2☆いつもと違う1日:2008/02/14(木) 11:00:00 ID:+TzPukxi
ちょうどバスが混み始めているところだったらしい
「乗れたね〜」
「いや〜まだギリギリ空いててよかったネ…ふぁあ〜」
まだこなたは寝むt)ry
こなたとつかさはホッと一息ついた
『そうだ…しまった…』

右耳変形! マイク作動! アンテナよろし!
携 帯 電 話 モ ー ド !
ウィーン ガシャっ ガシャン!
と一部変形するうぃきつー

「を〜〜〜〜〜!!!!それ何?何〜??」
こなたは今の出来事で完全に目が覚めた、
それにしてもこのこなた、ノリノリである
『はい、私には携帯電話が搭載されていますので…あとこれはTR電波を使って話すの
でバスの中でも安全です』
「へ〜ロボットみた〜い」
『いわゆるロボットですので』
「何か忘れたの?」
とかがみ
『いえ、みゆきお姉さまに電話を』

……
『コード:鼻血』
「アンサー:こなた」
「どうしました? <うぃきつー>?」
『すいません、早々に柊つかささんにバレてしまいました…』
こなた達に聞こえないよう小声で話すうぃきつー…しかしそれがかえって周りの注目を
集めている事に気が付いていない

「そうですか…まぁつかささんなら仕方ありませんね」
『どうしましょうか?』
「…では放課後皆さんを集めてください。私も行きますので」
『…了解しました』

プッー プッー
みゆきは携帯電話を切った
「フフフ…こうも早く[あの方]を使えるとは…ね」
みゆきの眼鏡が怪しげに光った
227鼻血)ry会2☆いつもと違う1日:2008/02/14(木) 11:01:44 ID:+TzPukxi
放課後、とある教室にて
時刻はもう5時になろうとしている
「〜というわけでこの方が我が高良家最新ヒューマノイド<うぃきつー>です」
『皆さん、初めまして、私は<うぃきつー>といいます、よろしくお願いします』
うぃきつーが自己紹介する

「よろしく!」
とフレンドリーに近づくかがみ
「他に何があるの!? 見せて!答えは絶対聞いてない!」
このこなた、ノリノリd)ry
「今朝はゴメンね、うーちゃん」
まだもうしわけなさそうなつかさ
『…だからうーちゃんじゃ…』

「何で私達も呼ばれたのかしら…?」
あやのは不思議でならなかった
「あやの〜!ロボットだって!スゲーじゃん!もっと見たいんだってヴぁ!」
子供のようにはしゃぐみさお
「自分とほぼ同じヒューマノイド…か、」
「あやの?どーしたんだ?」
「…ううん。みさちゃん、何でもないの」
「?」

「ヒューマノイドだって!すごいねぇ〜みなみちゃん!」
素直に驚いているゆたか
「うん…すごいと…思う」
「驚かないの?」
「…家が目の前に…あるから」
「ってことは…みなみちゃんうぃきつーさんの事知ってたの?」
「…うぃきつーさんは知らなかったけど…チェリーの友達の犬が…」
「え?」
「…何でもない」

「大丈夫っスかねぇ私達…それにしても無事帰ってきてよかったっス!
8日ぶりっスかね?パティ!」
「…えエ」
「…パティ?」
228鼻血)ry会2☆いつもと違う1日:2008/02/14(木) 11:02:42 ID:+TzPukxi
全員の反応を見終わったみゆきは話を始める
「それでは<うぃきつー>の性能の解説を―」
「―私かラしましょウ」
「知っているのか?パティ電!」
それにしt)ry

「マズ…正式名称<TRMS−S01 うぃきつー>は高良財閥の新型OSが搭載されテいま
ス、そしてフレームは新型のTRフレームヲ使い、そしてソレを覆うのはガンダ○○○
ばりノMSの防御力を誇るTRスキンを〜…」
(((…なんであんたが知ってるんだ…)))

「「パティちゃん物知りなんだ〜(なぁ〜)」」
ゆたかとつかさが言葉をもらす
「すげーな!あのでかちち…負けられないんだってヴぁ!」
何故か対抗意識を燃やすみさお
(パティ…あの8日間で何をされたんスか…?)
ビビるひより、、、誰だってビビる

まだパティのバトルフェイズはs)ry
「TRMS−S01ノSはセカンドを意味し〜…」
「こなた、、、パトリシアさん何か…おかしくない?…しんぱてぃさんの方なのかな?」
「パティ電だもん、解説くらい出来るサ!」
「いや出来ねぇよ!」

※その後もパティの講義は役20分近く続けられました※
「トまぁうぃきつーにハ108を超える武装ヲ〜…」
「みゆき…お前はどこに武力介入するつもりだ?」
「ええ、手始めにまず―・・」
「ちょ…おまっ」
「冗談ですよ」
(…冗談に聞こえねぇよ)

229kt:2008/02/14(木) 11:04:09 ID:+TzPukxi
ありがとうございました…
なんかごめんなさい…あ、1レスオーバーしてますね…
続きます

…鼻血みゆきさん関係なくなってきたな
とりあえず先の複線っぽいものを仕込みましたがどうなんだろ…?
230名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 13:21:21 ID:DY2VZi1o
>>222
素晴らしい……素晴らしい……!
この甘いエロスを求めてだばだば。
231名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 14:15:30 ID:cATj1qwS
                          ,. -――- 、
                      /し, /    _>.
                     / { \レ/,二^ニ′,ハ
                     |'>`ー',' ヽ._,ノ ヽ|
                     |^ー'⌒l^へ〜っ_と',!
      __             ! u'  |      /
  /´ ̄       `!             ヽ  |   u'  , イ
  |  `にこ匸'_ノ            |\_!__.. -'/ /|
  ノ u  {                 _.. -―| :{   ,/ /   \
. / l   | __  / ̄ ̄`>'´   ノ'    ´ {、    \
/ |/     {'´    `ヽ. " ̄\ U `ヽ.    __,,.. -‐丶 u  ヽ
| / ヾ、..  }      u' 〉、    }    `ー''´  /´ ̄ `ヽ '" ̄\
! :}  )「` ノ、     ノ l\"´_,,ニ=-― <´  ヽ{  ノ(   `、  |
l   、_,/j `ー一''"   },  ノ ,  '''''""  \   ヽ ⌒ヾ      v  |
ヽ   _         /   } {. { l ┌n‐く  ヽ/ ``\        ノ
  `¨´    `¨¨¨¨´ ̄`{ 0  `'^┴'ー┘|ヾ    }、 u'   `  --‐r'′
【緊急】押し貸し詐欺にご注意ください

毎年2月中旬になると
チョコレートなどの物品を渡し、一ヶ月後に3倍などの法外な利息を請求する
いわゆる「押し貸し」による被害が多発します。
今年度もこのような詐欺が横行することが予想されますので、
くれぐれもご注意ください。

また、万が一これらの詐欺にあってしまったら、
消費者生活センターや警視庁に相談しましょう。

【消費生活センター】全国の消費生活センター
232名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 15:05:26 ID:GiC3BXsD
>>222
GJ 絶妙の<読み手に息をつかせる間>の取り方の為とはいえ、白石不憫(笑)

>>229
GJ
鼻血みゆきさんは、この後チョコ+こなフェチ効果のSSでいつもより多めに噴いております!
になるでしょうから…
色んな伏線に、続編期待です
23326-485:2008/02/14(木) 15:21:22 ID:J8yVYfKj
今日初めて来てみれば何という作品ラッシュ
まとめてですみませぬがGJ

さて、俺も予告通り投下します
「Sweet Devil's Temptation」の後編の予定だったのですが
前編を見ておられない方やもう忘れられている方が
いらっしゃると思うしそれに中途半端になりかねないので
先にまとめサイトの方にあげさせて頂きました

http://www33.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1716.html

こなた→かがみ、ちょいシリアス、非エロです
よろしければどうぞ
234妄想屋(仮名) ◆JUqojnT5.c :2008/02/14(木) 15:37:03 ID:QWHpWOos
>>229

なぬ、ロボネタでパティ登場!? ……やばい、ネタかぶるかもw
GJっしたー。
235名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 15:48:39 ID:ppKK4fdJ
>>233
GJ!!
wktkして待ってましたよ
こなたの心理描写が最高でした
思わず引き込まれましたよ
そ・し・て、かがみの最後の台詞には期待せざるを得ないっ
236名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 16:02:38 ID:GiC3BXsD
>>233
GJ
渡す相手に教えを請うというのは、確かに作戦として面白いです
無粋を承知でツッコミ入れます
下半身真冬の河の水に浸かったこなたを河原で真冬の応急処置するのは
ちょっとフィクションといえリアリティーが(言葉が矛盾している)
237名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 16:05:02 ID:qefsODfp
>>233
ま゛――――――っ!?


……失礼、あんまりにもかがこな萌えし過ぎて危うく人間を踏み外すところでした。
おとぎ話みたいな甘くて優しい恋、これも聖バレンタインのお導きでしょうか。
ぐっじょぶでございました!
23854:2008/02/14(木) 16:12:38 ID:Uy5n5eXV
亀レスすみません
妄想屋(仮名)様
設定をお借りした>>54にレスを下さりありがとうございます
えすえふ2のバッドエンドイラストからの3次製作として
保管庫に上げさせていただいてよろしいでしょうか
239妄想屋(仮名) ◆JUqojnT5.c :2008/02/14(木) 16:25:22 ID:NTDpb5rS
>>238

おkですよ〜
てか、こちらからおながいしまつ。
240名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 18:06:28 ID:edS11nDG
>>239ありがとうございます、文章がおかしいところを直して保管させていただきます。不都合な点がありましたらお申し付けください。
241名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 18:52:59 ID:E2wWYneN
アニメ店長ネタ非エロ投下します。
※純粋な意味でのらき☆すたキャラは出ません。ロダに上げます。

バレンとタイン〜番外編〜
ttp://www.sonokawa28.net/lsssuploader/src/up0024.txt

読んで下さった方、ありがとうございました。
242名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 18:59:40 ID:0JZeLpa2
>>233
GJ!
なんか終始どきどきしっぱなしでした・・・
うぅ・・・こなたよかったね・・・いやまじでー・・・涙ちょちょぎれそうだ
243名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 19:47:31 ID:Clk5g/ID
投下の多さに比例しない感想の少なさ
244名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 19:54:02 ID:3G8mJlxu
>>243
逆に考えるんだ
「感想を書いていた書き手さんが、執筆のために出払ってしまった」
と考えるんだ
245kt:2008/02/14(木) 19:57:23 ID:42vl+NHj
妄想屋(仮名)さん、、感想ありがとうございます…

これからも自分のパティロボ<しんぱてぃ>を…あまりいい役柄ではない
ですが…これからも使っていこうとおもっているところであります
、ハイ

あと昼に投下したあと思いついた小ネタをどうぞ
246名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 19:57:49 ID:Clk5g/ID
じゃあ感想を書かない読み手多すぎってことか……
247小ネタ:2008/02/14(木) 19:58:41 ID:42vl+NHj
「ねぇねえ〜みてみて〜」
ぶわっ
「藪から棒になんなのよあんたは…」
「じゃ〜ん!」
「こなちゃん?このコルネがどうかしたの?」
「むふぅ〜…聞いて驚くなっ!このコルネは中が 生クリーム なのだ〜!」
「おお!」
それはー…
「すごいのか?」
まぁ、、一瞬驚いてしまったのだけど…

「スゴイなんてモンじゃないよかがみん!…ほら中が白だとこんなことも出
来るわけだよ?」
「こなちゃん?どんなこと?」
「こういう事サ」
とこなたはわざとコルネのクリームを押し出しぺロっと舐める
「ふふ…おいしっ」
こなたの顔には生クリームの残骸がある
「?」
「そうか…つかさには難しかったか〜」
「つかさに変な事を教えるなあんたはっ!」
「あれ〜?知ってるんだぁ〜かがみん?」
「うううううるへー!!」

「はい!」
「? 食べかけのコルネなんていらないわよ?」
「これバレンタインプレゼント」
…は?
「いや〜家に忘れて来てしまってネ〜…今なら私の顔についてるクリームも
あげちゃう!ワオっ!お買い得ぅ〜♪」
…ちょっとまて
「あんた…いい加減にしろっ〜!」
「というのは半分ウソで実は持ってきているのでした〜」
「…あ〜そ〜ですか………まぁ、、その・・ありがと」
「かがみんの反応、萌え〜!」
「うううううううるへ〜っ!!」

ちなみにみゆきは「ねぇねえ〜みてみて〜」のくだりからすでに気体化していた、そして今も
248名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 19:58:49 ID:287cObhj
ああもう、投下多すぎてなかなか追いつかないです。
まとめてですいませんがGJです。

さて、実は、まだ書き掛けなのですが、バレンタインものなので後日後半を投下するという形にしたいのです。前半部分の投下よろしいでしょうか?
24935-215:2008/02/14(木) 20:00:01 ID:Gnqgw8ba
さて、昨日予告した通り投下したいと思います

・一応こなた×かがみ
・抑えたけど軽い猟奇表現あり
・はっきり言って電波

レスがないようなら投下したいと思います
250名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 20:00:06 ID:mz96tGNk
>>248
どうぞどうぞ

もしかしたらその直後に投下するかもですが…
25135-215:2008/02/14(木) 20:01:49 ID:Gnqgw8ba
>>248
どうぞどうぞ、こっちも後に投下します
252kt:2008/02/14(木) 20:02:05 ID:42vl+NHj
どうもありがとうございました

チョコは黒よりもホワイトの方が好きなktがおおくりしました
最後はバレンタインネタを無理やり絡めて見ましたw
Σって…空気呼んでねぇ…自分
25317-234:2008/02/14(木) 20:03:34 ID:mz96tGNk
(・∀・)……。
すみません、あとでうpろだに投下しておきます。
あまり時間がないので…。
投下完了しだい、こちらに報告します。
25419-541:2008/02/14(木) 20:12:31 ID:287cObhj
>>250-251
ありがとうございます。お言葉に甘えて投下させていただきます。

以下注意事項。嫌悪感を感じる方はスルー推奨。
・みゆき×つかさ
・7レス使用
・ギャグにするつもり…です。ネタは仕込んでます。某作品のセリフが…。
・エロは、後半に入れる…はず(おい)

では、行きます。
タイトルは「あなたの存在に心奪われた私」です。
255あなたの存在に心奪われた私1:2008/02/14(木) 20:13:14 ID:287cObhj
 みなさんこんにちは。高良みゆきです。
 聖・ヴァレンタインデイの今日いかがお過ごしでしょうか?
 え、私ですか?うふふ、どういう状況だと思います?実はですね……。



「むぁぁぁぁてえぇぇぇぇ!!みゆきぃぃぃ!!」
 かがみさん(他数名含む)に追われています。



あなたの存在に心奪われた私



 そもそもの起こりは昨日の夜のこと。私は台所でチョコレート作りにいそしんでいました。
 父や兄に渡すのは例年通りなのですが……。今年はさらに作らなければなりません。
 そう。私の運命の方―――柊つかささんに!!
 つかささん……ああつかささん、つかささん。あなたに恋心を抱いたのは一体いつのことなのでしょう?
 つい最近?3年になって?初めてまともに会話したあの文化祭の準備の時?いえ、どれも違います。きっと私は、入学して初めて会ったときから囚われていたのでしょう。「柊つかさ」という名の、鎖に。
256あなたの存在に心奪われた私2:2008/02/14(木) 20:13:52 ID:287cObhj
 あれからずっと、私はお慕いしておりました。しかし、私とあなたはどちらも女性……。世間からは決して認められないマイノリティー。ですが、私はもうこれ以上あなたとの間に感じたセンチメンタリズムな運命を隠すことはできません!
 故に、私は決心しました。明日のヴァレンタインデイにつかささんにチョコを渡し、その思いを告げると!
 そうと決めたのが1週間前。それから私は、まさに血の涙が出るような苦労を積みました。……鼻血じゃないです。ええ、違います。
 泉さんにチョコレートの作り方を教わり、つかささんが喜ばれるチョコはどんなものかを調べ、母に実験台……こほん、味見をしてもらって今から作るのがまさに本番。失敗など許されることのないラスト・チャンス。
「さあ……。行きましょうか……」
言葉の通りに始めようとしたその時。
「みゆき〜、電話よ〜」
母が台所に入ってきました。
出鼻をくじかれた感は否めませんが、仕方なく電話を受け取ります。すると、聞き覚えのある声が聞こえてきました。
「こんばんは、みゆき……」
「かがみさん?こんばんは。どうなさいましたか?」
一体、こんな時間にどうしたのでしょう。訝しさを感じつつ、訪ねます。
257あなたの存在に心奪われた私3:2008/02/14(木) 20:15:34 ID:287cObhj
「あんた、明日のヴァレンタインに誰にチョコを渡すの」
 暗い声で聞いてくるかがみさん。私は、考えます。
 なぜかがみさんはそんなことを聞くのでしょう。わざわざこんな時間に電話をしてまで、確かめることでもないはずです。
しかし、私にはひとつ心当たりがあります。
そう、つかささんです。かがみさんは妹のつかささんを溺愛なさっています。それは別に構わないのですが、私のつかささんに対する気持ちに気がついたのか最近風当たりが強いような気がするのです。
これを踏まえて考えると、かがみさんはここではっきりさせるつもりなのでしょう。
私が誰にチョコを渡すのか、私の本命は誰なのか。
あいまいな答えではごまかせないことを瞬時に察し、私が答えた後の対応も考えます。
かがみさんは果たしてどういう反応をするのか。私を信用して容認してくれるのか、それとも断固として反対するのか。
かがみさんもおそらく私がどう答えるかわからないほど馬鹿ではないはず。
そう、これはきっとかがみさんの挑戦です。
面白い。ならばその挑戦、受けてたってやろうではありませんか。たとえ受話器越しに怒鳴られようが構いません。私はつかささんを愛しているのですから――この間0.2秒。
258あなたの存在に心奪われた私4:2008/02/14(木) 20:16:18 ID:287cObhj
「かがみさん、はっきりお答えします」
 受話器越しにかがみさんの息を呑む音が聞こえます。
「つかささんです。私はつかささんを愛していますから」
 静かに、しかしはっきりと告げました。
 それきり、沈黙が流れます。かがみさんはいったいどんな表情なのでしょう。どんな気持ちなのでしょう。受話器を握る手が震えていることに気がつきました。どくどくという心臓の音が耳障りです。
「みゆき」
 どれくらいのときが流れたのでしょう。かがみさんが言葉を発しました。
「薄々は気づいていたわ。あんたがつかさの事好きだって。つかさは気づいてないみたいだけど」
 やはり。ということは最近の態度、あれも。
「ごめんね」
「え?」
 突然聞こえた謝罪の言葉に、思わず声を上げてしまいます。
「冷たい態度とっちゃって。面白くなかった。つかさはあたしが守るんだって半ば義務みたいに思っていたのに、それを横から掻っ攫われるような気がして」
「……すいません」
 私には謝罪の言葉しか言えませんでした。
「謝んないで。私が馬鹿だっただけだし。確かにあんたならつかさを任せられるかもしれない」
259あなたの存在に心奪われた私5:2008/02/14(木) 20:17:06 ID:287cObhj
 ……これは思わぬ展開です。登竜門のように立ちはだかるかと思われたかがみさんが私とつかささんの仲を認めてくれました。
「あ……ありがとうございます!!」
 電話の向こうのかがみさんに頭を下げながら私は本当に喜びと感謝の気持ちを伝えます。
 ところが、
「何勘違いしてんの……」
 かがみさんはそう前置きして、
「まだ私は認めたわけじゃないわ!!」
 私の希望を粉みじんにするようなことを言いやが――おっしゃいました。
「ど、どういうことですか!?」
 当然私は、かがみさんに問いかけます。もし、ここに泉さんがいらっしゃったら「あ……ありのまま起こったことw(ry」とでもおっしゃるでしょう。
「確かにあんたならつかさを任せられるかもしれない。でもね、世間っていうのはそんな甘いものじゃないの。……まぁ、それがわからないあんたじゃないとは思うけど」
「もちろんです。ですが、それでも私はもうこの気持ちを抑えられそうにないし、抑えたくないんです」
「じゃあ、もし、それでつかさがOKしたら?確かにそのときはめでたいことよ。でも、これから先ずっとつかさを守ることができる?」
260あなたの存在に心奪われた私6:2008/02/14(木) 20:18:18 ID:287cObhj
 かがみさんはまくし立てるように一気に語った後、一息をつきました。
「あの子、知ってのとおり泣き虫だし、周りからのプレッシャーに耐えられるかしら?その時あんたはどうするの?」
「…………」
 かがみさんのおっしゃることはよくわかります。どうひっくり返っても、私とつかささんの間にある、「同姓」という壁は壊れません。周囲から向けられる好奇と侮蔑の視線。そんな状況容易に想像ができます。けれど――
261あなたの存在に心奪われた私7:2008/02/14(木) 20:19:00 ID:287cObhj
「覚悟はあります」
 そう、覚悟はある。たとえ世界中が敵になろうとも、私は必ずつかささんを守って見せる。つかささんのためなら命だって賭けることができる。そうしてもいいほど私はつかささんのことが好きなのだから――
「…………」
 私が言ったのはたった一言。でも、それで私の思いを感じ取ったのかかがみさんは押し黙ります。私もただ、返事をじっと待っていました。
「わかったわ」
 しばらくの間の後、かがみさんが返事を出しました。しかし、私は先ほどのことを考え続きを待ちます。案の定、かがみさんの話には続きがありました。
「そこまで言うのなら、あんたの“覚悟”を見せてもらおうじゃない」
「……と、おっしゃいますと?」
 かがみさんは私の問いには答えず、
「明日話すわ」
 とだけいいました。
「みゆき。あんたはあたしの親友だと思ってるし、つかさのことも任せられると思ってる。でもね――」

「理解はできても、納得できないこともあるのよ――」

 その言葉で締めくくり、電話は切れました。
26219-541:2008/02/14(木) 20:22:31 ID:287cObhj
以上です。読んでくださった方ありがとうございました。
携帯からなのでおかしいところがあるかも知れないというのを忘れてました。スイマセンorz
もしかしたら、sage忘れもしてるかも…。携帯だと分からないので、もしそうだったらすいません。
続きはなるべく早く仕上げますので、お待ちいただけると幸いです。
では、失礼します。
263名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 20:27:27 ID:Clk5g/ID
>>262

期待してる
26417-234:2008/02/14(木) 20:29:20 ID:mz96tGNk
>>262
投下乙です、あとでゆっくりよみます

>>251
大変申し訳ないのですが、
うpろだに投下できなかったので
先に投下してもよろしいでしょうか…?
26517-234:2008/02/14(木) 20:34:58 ID:mz96tGNk
うpろだにうpするのが分からず涙目です、
久しぶりに来ました17-234です。
なんだか皆さんにご迷惑をかけてばっかりなので
ささっと書いて帰ります。

あきら×白石
誕生日&バレンタインSS
『ばれんたいん☆みっしょん』
エロなし 10レス使用です。
266『ばれんたいん☆みっしょん』001:2008/02/14(木) 20:35:33 ID:mz96tGNk
ただいま、
といっても誰もいないことくらい分かってる。
今日は言いたい気分なんだから、勝手にさせてよね。

2月14日。
今日は街がハートに埋まる日。
どこでもここでもチョコの匂いがする。
愚かな女子たちは、その戦略にまんまと引っかかって
愛しのあの人に渡す手作りチョコなんぞを

「ああああむかつくっ!今日はあたしの誕生日なのっ!!!」

なんで誰も気づいてくれないんだろう、
せっかくあたしの誕生日なのに、
バレンタイン優先にしやがってあぁむかつく。

『ばれんたいん☆みっしょん』
267『ばれんたいん☆みっしょん』002:2008/02/14(木) 20:36:53 ID:mz96tGNk
時計は、短い針が5の場所にたどり着いたところだった。
・・・・・・暇だ。今日は仕事も入ってないし、ママもいない。
家に一人でいるわけだ。…ということはご飯も作らなきゃならない。
これだからこういうときは面倒臭い。冷蔵庫を開けてみても何もなかった。

「仕方ないからなにか買ってこよ…」

こういう生活になってから思ったことなんだけど、
独り言が増えたかもしれない。
やだ、ハゲる。迷信?だよね?

とりあえずコートと制服を脱ぎ捨てる。
家の中では身軽な格好をするのが基本だ。
ボーダーの長袖Tに黒いふりふりのスカート。
ここ最近のお気に入りの一品。
ほら、ここ、レースがついてる、って見えないから関係ないか。
テレビをつけてからボーっとする。
特に見たいテレビもない。けれどもつけないと寂しい。
そんな義務感に駆られてつけてしまうあたしも、どうかと思うんだけどね。

「はぁ…」

いつも以上に寂しいのは、きっと気のせいじゃないんだ。
今日は、あたしの誕生日なんだもん。
寂しくないわけ、ないじゃない。
学校のコートをもう1回着る。
風邪を引かないように、ってマネージャーに言われた。
仕事に支障がないようにね、ということなのは分かってる。
誰もあたしの心配はしてくれないのかな、
と寂しいことを思ってみたりする。

スーパーで今日のお弁当を見ていた。
昨日は肉だったから、今日は魚にすべきだろうか。
でもとんかつ弁当が安い…

「本日はーバレンタインデー!」
知ってるがな。あたしの誕生b
「本日に限りましてー、手作りキットがー、なんとー半額ー」

半 額 ?

これは買わない手はない。
と思ってしまったが最後、あたしの手には、
夕食のお弁当と、生チョコ手作りキットが握られていた。
会計を済ませて、帰ってきてから気づいたことが一個だけある。

「…誰に作るって言うのよ。」

ここまできてどうかとも思うんだけど、
手作りキットを買ってしまったからには、
誰かに作ってあげたい気がしないでもない。
いや待てよ、でも学校の子はどうかと思うし
パパだっていないんだし。
そして最後の選択肢があたしの目の前に提示される。

「なんで、あんたになんか…」

仕方ないから、仕 方 な い か ら
あいつに作ってあげることにした。
バレンタインなんて縁もなさそうな、あいつに。
268『ばれんたいん☆みっしょん』003:2008/02/14(木) 20:37:21 ID:mz96tGNk
「はいもしもし、」
「あ、白石。」

聞きなれてしまった、あいつの声がする。
あんたは、あたしに何か言うことないの?

「あ、あきら様。今日ってお仕事ありますか?」
「はぁ?」

なんだそれ。
そんなこと聞いて何になるの。

「ないけど?あんたは?どうせバイトでしょ?」
「ち、違います、けど、やることがあるんですよ!」
「ほー、じゃぁ今日の晩御飯に『チョコカレー』とかやるの?」
「やりません!ってかあきら様はそんなの食べてみたいですか?!」
「ううん」
「思いつきで提案しないでください!」
「今度白石がやってよ」
「嫌です!あまったるーいカレーなんて嫌でしょ?」

確かにいやだ。絶対食べたくない。

「あ、じゃあきら様、ずっと家にいるんですよね?」
「そうよ」

なによ、寂しい子とか思ったら吹っ飛ばす。
そしたらあいつは、ちょっと嬉しそうな声でこう言った。

「わかりましたっ!ではまた!」
「ちょっと、白石っ」
ぴっ

切られた。
なに?ではまた、って?
まぁ良いや、ちょうどいい。
あいつに、義理チョコでも作ろっか…
269『ばれんたいん☆みっしょん』004:2008/02/14(木) 20:37:44 ID:mz96tGNk
家に生クリームがあったのが不思議でならないんだけど、どういうことだろう。
ママが彼氏に作ろうと思ったんだろうか、良い歳こいて…。

「チョコ100に生クリーム50……」

こういう時の独り言は良いの。
独り言じゃなくて確認なんだから。
しっかし、手作りキットは楽で良いわ、チョコを量る必要ないんだもん。

「2:1か…案外簡単なのね…あっ」

チョコをボール代わりの丼に入れて、生クリームを入れてから気が付いた。

「あ、チョコ、湯煎してないや…」

あたしはその失敗に気付くまで随分の時間を必要としたのにはびっくりだった。
面倒なので、丼ごと、レンジに突っ込む。
というか、それしか方法が思い付かなかった。

とりあえず、チンッ

「………あるぇ?」

生クリームが沸騰してしまったらしい。
なんかチョコの匂いが強すぎる。
…まぁ大丈夫だろう、と菜箸で丼をかきまぜ

「あっつい!!!」

うっかり丼を持ってしまったよ…
水道の蛇口をおもいっきりひねり、火傷した左指を水に晒す。

「ぎゃっ」

指を水に当てた瞬間、水がはねて、あたしにかかる。
服に、顔に、冷たい水がかかる。
あわてて蛇口を閉める。

「なんで、」

思わず口から漏れる愚痴の言葉。
自分が悪いのは分かってる。
でもあいつのせいにしてやりたい。
こうもうまくいかないのは、あんたのせいなんだ。
そういうことにしておいてやる。

「なんで白石に義理チョコなんて作っているんだろう?」
270『ばれんたいん☆みっしょん』005:2008/02/14(木) 20:38:12 ID:mz96tGNk
途中で通り投げるのも癪だから、
なべつかみでどんぶりを掴んで、
菜箸でチョコをかき回す。
付属の型に入れて冷やす。
こんなんで本当に美味しい生チョコなんてできるんだろうか?

「まぁどうせ白石にあげるんだから、大丈夫…」

スーパーで何故手作りキットを買ったのかは分からない。
いや、半額だったからなのであって、
決してあいつにあげるためじゃない。
型に入れたら冷蔵庫に放り込む。
冷えたらココアパウダーをかければいい。

「…眠い。」

時計を見たらいつの間にか7時になっていた。
まだご飯も食べてないのに。

…本当にあいつにあげられるか分からないのに、
何で作ってるんだろう?
今日あいつに会えるとも限らない。
それなのに、なんでだろう?

何で作ってしまったのだろう?

今は何も考えたくなかった。
考えてしまったら、自分が嘘をついていることを
自覚してしまうのが怖かった。
だからあたしは、
コタツの中にともぐりこんだ。
疲れた…ちょっと、遅めの昼寝をすることに決めた。
271『ばれんたいん☆みっしょん』006:2008/02/14(木) 20:38:35 ID:mz96tGNk
ぴんぽーん。

遠くで音がする。
正解したときの音だったか、はて、なんだったか…
きっとハワイ旅行が当たったんだ、誰と行けば

ぴんぽんぴんぽん。

ん?2連続で鳴ったよ?

それからちょっとして、今度は携帯がなり始めた。
あたしは亀みたいにコタツから首を出す。
もう8時になってる…。
うるさい携帯をひっつかみ、発信者を確認。

白石みのる

どっかで見たことのある名前だったので、
通話ボタンを押してみる。

「あ、あきら様!」
「ん…なによ白石、五月蝿いわね…」
「良かった、お家にいるんですね?」
「ん、そうよ、ふぁぁ…」

電話から嬉しそうな声がする。
なんなのよ、白石のくせに。
今まで何も言ってこなかったくせに。

「とりあえず…開けて頂けますか?」
「なにを」
「ドアを…」

どうやらさっきのぴんぽんは、ドアホンだったらしい。
せっかくハワイ旅行があたったと思ったのに…。
ちっ、白石め。
272『ばれんたいん☆みっしょん』007:2008/02/14(木) 20:39:05 ID:mz96tGNk
「おはようございます、あきら様…寝てましたね?」
「寝てないわよ」
「ほっぺにたたみじわ、ついてますよ?」
「半田っち、うるさい」
「………?」

さすがにこのネタはわかって欲しかった!
あたしはほっぺをさすさすしながら、そのにやけ面に聞いてみる。

「なにしにきたの?」
「え、っと……はい、あきら様…」
「………なぁに?」

あたしの目の前には、ピンク色の大きめの箱。
白石はあたしにこれをくれるらしい。

「初めて作って…なので、あんまり、自信ありませんけど、良かったら…」
「?」

箱をあけろ、ということらしい。
台所で開けようにも、
まだお弁当とチョコ作りの後片付けが終わってなかったから、机の上であけてみる。

「…ん?………ケーキだぁ!すごぉい!」
「あきら様のリクエスト通り、ホワイトチョコのケーキです…」
嬉しさのあまりに3回転してみた。くるくるっと。ばんざーい☆
ラジオでそんな話をしたことを、ちゃんと覚えていてくれたらしい。
ホワイトチョコのケーキでいちごも乗ってる。
あたしの、リクエスト通りだ。

「すごい!すごいよ白石!」
「良かったぁ、喜んでもらえたぁ…」

白石がちょっと涙目になってるのはなんでだろ?
あ、でも食べないともったいない…

「食べて良い?」
「うぐっ…そうしましょうか…自信ないなぁ…」

あたしは包丁とお皿とフォークを準備。
白石は、買ってきたジュースを準備。
さ、準備万端、というところで、白石に声をかけられた。

「あの、あきら様…ちょっと良いですか?」
「なに?」

白石が自分のかばんをいじっている。
ぱ、とだしたのは…猫?の、頭?帽子?

「これ、かぶってて下さいっよいしょ!」
「ひょえ?!」

なに?なんか被された!
前が見えないんだけど、はやくとって!
しばらくばったばったとしていると、ぱちり、と電気を消す音がした。

「もう、良いですよ?」
「なんなのよ!なに被せて…」
273『ばれんたいん☆みっしょん』008:2008/02/14(木) 20:39:34 ID:mz96tGNk
やっと被されていたものを自分で取る。
猫の着ぐるみ(頭だけ)をとると、
息苦しさはきえて、
あったかい光が飛び込んできた。

白いケーキに赤いいちご、
オレンジ色の蝋燭の火が、
あたしの気持ちを落ち着かせる。

「うわぁ…」
「あきら様!お誕生日、おめでとうございます!」

白石は、にっこにこしてる。
あたしもそれにつられてにこにこ…。

「あ…あきら…様?」
「ふぇぇ…」

今あたしは気付いてしまった。
なんでこんな気持ちになったのか。
どうして白石になんかチョコを作ろうと思ったのか。
気付かないフリをしていただけかもしれない。
認めたくなかったその気持ちから、あたしは逃げていた。

「あ、あ、あきら様?どうしたんですか?な、なんか悪いことしました?」
「ううん…」
「ほら、蝋燭短くなっちゃいますよ?」
「あのね、白石。」
「は、はい…」

心配そうにあたしの顔を見てる。
言うなら今しかないんだよ、あたし。
274『ばれんたいん☆みっしょん』009:2008/02/14(木) 20:39:58 ID:mz96tGNk
「ずっとね、待ってたの。あたし、あんたに祝ってもらえるの、待ってたんだよ?」
「あきら様…」
「なのになんなのよ!遅いったらありゃしない!」
「すいません、これ、作るの時間かかっちゃって…」
「知ってるわよ!」

問題はそんなことじゃないのに、
このわからずや…!

「あたしはあんたに、一番最初に祝って欲しかったの!」
「それは」
「ばかっ!さみしかったんだよ!怖かったんだよ!」
「あきら様、」
「あんたに、忘れられちゃったかと思ったじゃない!!」
「……っ!」
「いい加減気づきなさいよ!」

もう我慢できなくなって蝋燭を消してやった。
ここから先の顔は、もう見られたくなかったから。

「ちょ、あきら様?!あれ?どこ、にっ…」

突然暗くしてやったから、白石にはあたしのことは見えてない。
でもあたしには分かる。
だから、思いっきり、白石に抱きついてやった。

「あ、あきら様っ!」
「いい、耳の穴よーくかっぽじって聞きなさい。」

なんでだろ、白石の体が、ものすごくあったかい。

「なんで、気づかないのよ。」

言ってしまえ、もう、こんなチャンスは、二度と、こない。

「あんたのこと、こんなに好きなのに!!」
275『ばれんたいん☆みっしょん』010:2008/02/14(木) 20:40:31 ID:mz96tGNk
しばらく、沈黙が続く。
何で何も言わないの?
何か、言ってよ。
あたしがちゃんと言ってやったのに、何も言わないわけ?

す、と、息をすう音がする。

「先に、言われちゃいました、ね…」
「え?」

する、とあたしの腰に、あったかい腕が回ってくる。
ぎゅ、と、その腕に抱きしめられる。

「あきら様のこと、大好きですよ…」

なに、言ってるの、

「誰にも負けないくらい、僕は、あきら様のことが、好きです。」

誰も何も言わない。
あたしも、白石も。
なんだか不思議な感じだった。

「・・・・・・・・・ふ、」

沈黙を先に破ったのはやっぱりあたしだった。

「ふ、ふふふふ、白石があたしのこと好きだって言ったー!」
「な、なんですか!ダメでしたか?!」
「ううん、大好きだよ!負けないもん!負けないくらい、大好きだもん!」

だって、正直怖かったんだもん、
なんだ、両思いだったんだって、知らなかったよ、あたし。

「ね、ケーキ、食べよ?電気つけてきていい?」
「だめ。」
「え?」

直後、優しく落ちてきたキスに、
どう応えていいか分からなかったから、
こういってやった。

「ばーかっ!」
-----
電気をつけてからなんだか恥ずかしくなってしまって、
さっさとケーキを食べてしまった。

まだあたしの作った生チョコは冷蔵庫にいる。
でもまだ、当分、そのチョコに出番はなさそうだ。

あたしの誕生日は、まだ始まったばっかりなんだから。



おわり☆
276『ばれんたいん☆みっしょん』後書き:2008/02/14(木) 20:42:39 ID:mz96tGNk
終了です。
ラジオネタが結構入っているので分からない人も多いかもです。
あと半田ネタは分かる人だけでいいや・・・w

>>251氏には本当に申し訳ないです。
では退散します。

みなさんに、
はっぴー&らっきー☆ばれんたいんっ!
277名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 20:54:17 ID:Clk5g/ID
>>276
GJ
ツンデレあきらナイス
ていうかあきらの誕生日に今気付いたわ
278名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 20:55:38 ID:qefsODfp
>>276
あきら様可愛いよあきら様。二人のいちゃいちゃっぷりが脳内上映されて大騒ぎでした。
もーなんつーか、ご馳走様でした。ぐっじょぶ。
279名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 21:13:38 ID:3zMlRjVG
甘々チョコの大量投下、皆様GJ&乙です!
ささやかながら、ちょこなたを頂くかがみんを…(´・ω・)っ
http://www.geocities.jp/extream_noise/rakisutaep/img/valentine2.jpg
28035-215:2008/02/14(木) 21:14:16 ID:Gnqgw8ba
さて、感想タイムがあると思いますが先に投下させてもらいます

・一応こなた×かがみ
・抑えたけど猟奇的表現あり
・電波
281名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 21:26:36 ID:q2ZPTt30
割り込みになるけど投下するか
もしくは駄目だったら駄目でそろそろアクション起こしたほうがいいのでは
282名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 21:44:39 ID:Yav7Ycil
チョコカレーはうまい。
少なくとも食えないものじゃないっ!
283名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 21:55:59 ID:03W/mxPf
まとめてですいませんがみなさんGJです

>>282
量の加減を間違えると悲惨ですぜ
284名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 21:56:34 ID:zRFLkdXn
みゆきさんが一言↓
285名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 21:57:33 ID:FDTD362S
>>281
SSを投下するのか?
それとも、コメのこと?
コメのことだったら勘違いするぞ、その書き方だと
286名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 21:59:43 ID:FDTD362S
>>284
すまん…orz
直前にリロードしたんだが、読み込めなかったらしい
28735-215:2008/02/14(木) 22:03:23 ID:Gnqgw8ba
すまない、書き込もうとした時にPCがエラーった・・・orz
改めて書く


PC買い替え時だな・・・
288紫の騎士、青の姫:2008/02/14(木) 22:09:15 ID:Gnqgw8ba
「こなたの奴遅いな・・・」
かがみは時計を見ながら呟いた。
「こなたの方から会おうって言ってたくせに・・・」
かがみはそう悪態をつきながらこなたを待っていた。と、
「お、お姉ちゃん!」
「つかさ!どうしたの!?」
つかさが息を切らしながらやってきた。かがみはあわててそれに反応する。
「お姉ちゃん、これ・・・」
つかさが手に握った紙をかがみに渡した。かがみはそれを見る。
「何よ・・・これ!?」
手紙の内容はこうだった。
『かがみ先輩へ、お姉ちゃんは渡しません』
「つかさ・・・行くわよ!」
「行くって・・・どこに?」
「こなたの家!」
そう言うと同時にかがみは家を飛び出した。

「かがみちゃん、よく来たね」
「おじさん、それよりこなたが!それにゆたかちゃんは!?」
「お、落ち着いてかがみちゃん」
矢継ぎ早に質問を繰り出すかがみを何とか収めてからそうじろうは話し始めた。
「それが、朝起きたらいなくなってたんだが、2人の場所を聞いてないのか?」
「それが・・・」
かがみはそうじろうに手紙のことを話した。
「そんなことがあったのか・・・」
「お、お姉ちゃん、早すぎるよ・・・」
手紙のことを話し終えるとほぼ同時につかさがやってきた。
「つかさちゃんもこんにちは、残念だけどおじさんが知ってるのは朝いなくなったぐらいなんだ」
「こんにちは、そうなんだ・・・」
と、そこにかがみの携帯からTEL音がなった。
『もしもし、かがみ!』
「こなた!どこにいるの!?」
『多分・・・学校、体育館の中だと思う』
「思う?」
『ちょっと確認出来ないから、あ!ゆーちゃんが戻ってきたから切るね』
「ちょ、こなた!?」
そこで電話が切れた。
「つかさ、行くわよ!」
「うん!おじさん、さようなら」
「さようなら、2人のこと、頼んだよ」
「ありがとうございます」
かがみはそうじろうにそう言い、駆け出していった。

かがみとつかさは学校の前にいた。
「こなたは体育館にいるって言ってた・・・」
「行こう!お姉ちゃん」
つかさの言葉に頷き、かがみは歩き出した。
289紫の騎士、青の姫:2008/02/14(木) 22:10:32 ID:Gnqgw8ba
体育館に着くと、そこにはゆたかが待っていた。
「ゆたか、連れてきたよ」
「ありがとう」
「それじゃあ私はこれで・・・」
みなみはそう言うと、舞台裏へと向かっていった。
「かがみ先輩・・・」
「こなたは?」
「お姉ちゃんは・・・渡しません!」
「でも、みなみちゃんは!?」
「私は、ゆたかのそばにいるだけで幸せ・・・」
みなみは言葉と共にゆたかのそばに出てきた。剣を2本持って
「え?それって・・・」
「見ての通りです」
ゆたかがそう言うとみなみが剣を1本かがみの前に置いた。
「ゆたかは・・・私が守る」
みなみはそう言い、ゆたかを守るように前に立った。
「何言ってるのか判らないわよ」
「なら、判らせてあげます」
ゆたかの言葉と共にみなみが踏み込み、剣を振るった。
「嘘・・・本物なの?」
かがみは服の切れ端を見て言った。
「見ての通りです」
続け様の一振りを、剣を拾ってすぐに受けた。
「っつ・・・」
その後もみなみの剣を何度か受け止めていた。
「ゆたかちゃん、どうしても駄目なの?」
「はい、お姉ちゃんは渡さない、私だってお姉ちゃんが大好きなんですから」
「私だって・・・」
言葉と共にかがみはみなみの一振りを避けた
「こなたのこと、大好きなんだから!」
そのまま袈裟懸けへと剣を振り下ろした。
「ゆたか・・・ごめん」
そのままみなみは床へと崩れ落ちた。
「みなみちゃん、ありがとう・・・」
ゆたかはそのままかがみの方を向いた。
「残念だけど私の負けですね・・・」
「え?」
「お姉ちゃんはそこの扉の奥にいます」
ゆたかはそういうとみなみの持っていた剣を喉へと突きたてた。
「う、嘘・・・」
かがみはそれを見てただ放心するだけだった。
290紫の騎士、青の姫:2008/02/14(木) 22:11:25 ID:Gnqgw8ba
と、持っていた剣が落ち、金属音が響き、我を取り戻した。
「そうだ、こなた・・・」
暗示にかかったようにゆたかが指した扉を開けた。
「かがみ・・・」
「こなた、大丈夫?」
「私は大丈夫だけど・・・かがみは?」
こなたの質問にかがみは口をつぐんだ。
「ごめん・・・」
「いいわよ別に・・・あれがゆたかちゃんの選んだ道でしょ」
「うん・・・」
「戻りましょ」
2人はそのまま黙って学校を後にした。

「とりあえず、上がってよ」
こなたの家につき、かがみは言われるままに家へとあがった。が、かがみはそこで見ることとなった。
「あ、お姉ちゃんお疲れ様」
「え!?」
「ゆーちゃんこそお疲れ様、いやーかがみはいい感じに引っかかってくれたね」
「ちょ、どういうこと!?何でゆたかちゃんが?引っかかったってどういうこと!?」
「かがみ、とりあえず落ちついて、落ち着かないと話せないよ」
その後しばらくしてどうにかかがみをなだめた。
「とりあえず、どこから話そうかな・・・」
「えっと・・・これ、ドッキリ何です」
「ドッキリ・・・?」
「うん、ゆーちゃんとみなみちゃんはそれぞれ喉と肩に血糊が入った袋をつけておいて丁度当たって血が出るようにしたってわけ」
「え・・・でも私の服は?」
「ごめんねお姉ちゃん、それ私がやったの」
こなたの部屋に入ってきたつかさが言った。
「みなみちゃんと色々話して一番当てやすい所を取れやすくしておいたんです」
「それで、斬った風に見せかけたってわけ」
「え・・・ってことは」
「実はみんな仕掛け人ってこと!」
「何じゃそりゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
こなたの部屋でかがみの声が響いた。
「だって今日2月14日じゃん」
「え?あ・・・そういえば」
「はい、これ」
そう言ってこなたは包みを渡した。
「ただ普通に渡すだけじゃつまんないじゃん、だからこうやってドッキリを仕組んだってこと」
「そういえば昨日つかさが作ってたわね・・・」
かがみは受け取りながら呟いた。
「それじゃ、お姉ちゃん、そろそろいいかな?」
「うん、時間取らせてごめんねー」
そう言ってゆたかは部屋から退室した。
「こなちゃん、私もいいかな?」
「あ、うん。それじゃー」
つかさも続いて部屋から退室し、部屋にはこなたとかがみだけが残った。
「で、これからどうする」
「今日はあんたの行きたい所に付き合うわよ。ゲマズでもアニメイトでも秋葉原でも」
「んじゃ、すぐに行こうよ」
「はいはい」
かがみはこなたについて行き、部屋を出た。
29135-215:2008/02/14(木) 22:12:57 ID:Gnqgw8ba
これで終了です

どう見ても電波ネタです
しかしかがみはドッキリが似合いますねー



でも元々コレみなみが剣持ったら似合うよなーって所から発展したんですが
292名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 22:26:07 ID:dINk/HLZ
みなさん激しくGJであります。
時間が無くて困っているので休日にじっくり読まさせて頂きます。

「兄貴兄貴ぃ〜〜」
「何だ?」
「チョコ何個貰った?」
「お前が訊くな。あやのからはチョコの代わりに…………………」
「んん?? 代わりに何? ま、まさか、あ、あ、あ、あ、アレ??」
「何だ?」
「……………うっわ〜兄貴のド変態スケベ!!
 よりによってあやのと○○○するなんて!! 兄貴なんかもう知らねーよ」
「落ち着け、みさお」
「うわ〜うわ〜うわ〜うわ〜兄貴の不潔〜〜」


翌日────。
「昨日みさちゃんから電話があったけど、何があったの?」
「さあ。おれは『チョコの代わりにクッキーを貰った』と言おうとしたんだけど……。
 急に暴走したから止めるのが大変だったよ」
「あらあら(みさちゃん、後でお説教ね。ふふふふふ)」
293名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 22:55:54 ID:lZgy45Mp
なんですか?この絨毯爆撃は?
GJする暇すらないじゃないか。
まったくもう………


みんなGJだぜ!!
まだ、半分しか読んでないけど。
294名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 23:02:45 ID:YWhll77w
kt君よ、)ryって括弧の向き逆じゃね?
295名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 23:53:34 ID:60PzhcuX
凄すぎる、速い、速いよ!
まぁ、ただ一言言いたいんです。
皆さん、GJ!
296名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 00:00:00 ID:WiR1xhsY
00:00:00なら
みゆきさんがつかさをチョコ漬け
297名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 00:08:46 ID:so2hRUZm
>>296
おめw
298名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 00:16:26 ID:NPoeTJne
>>296
SS化きぼん
299名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 00:16:27 ID:zjZfN8/2
>>296
やるなあ
300名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 00:50:25 ID:aeALCp3/
>>296
責任を取ってSSを書かなきゃな。
301名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 00:55:21 ID:Fcg6Fqb0
すっかり遅れてしまいましたが、バレンタインSS投下させていただきます。

●短編6レス投下させていただきます。
●そうじろう&こなた、ゆたか、ゆい、かがみ、つかさ、みゆき、かなたさんの非エロ話。
●バレンタイン記念。ごった煮カオス。
302俺の時代が来た?! (1/6):2008/02/15(金) 00:56:37 ID:Fcg6Fqb0
 まだまだ寒さが厳しい、冬の朝6時過ぎ。
「おはようございまーっす!」
「あれっ、ゆいちゃん?」
 ストーブを点けたばかりで寒いリビングに、ゆいちゃんが元気よく駆け込んできた。
「こんな時間から珍しいね。夜勤明けかい?」
「いえ、これから出勤なんですよ。今日はちょいと用事がありまして」
 そう言いながら、手にしていた紙袋を軽く掲げてみせるゆいちゃん。
「用事って、ゆーちゃんに?」
「ゆたかもそうですけど、こなたにもおじさんにも。てなわけで――」
 ゆいちゃんは紙袋に手をつっこむと、中からラッピングされた包みを取り出して、
「はいっ、おじさん。ハッピーバレンタイン!」
「えっ?!」
 勢いよく、俺のほうへとそれを差し出した。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 俺の時代が来た!?
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「ば、バレンタインって……まさか、そのチョコを俺に?!」
「やだなー、当たり前じゃないですか」
「こ、こなた以外の子からもらえるとは……ありがとう、ゆいちゃん!」
「いえいえー、いつもウチのゆたかがお世話になってるお礼ですよ」
 恭しく受け取ると、ゆいちゃんは蛍光灯も簡単に灯せるぐらいの笑顔を浮かべて返事をしてくれた。
「じゃあ、その袋にはゆーちゃんとこなたの分もあるってわけだね」
「くふふふっ、それだけじゃないんですよー!」
 うおっ、言った途端にまたテンションが上がった。ということは――
「ははーん、きよたかくん絡みかい?」
「あ、わかっちゃいます?」
「わかるわかる。すっごい嬉しそうだしね」
「すいません、どうしても抑えきれなくって」
 申し訳なさそうに、ゆいちゃんが苦笑いを浮かべる。
「いやいや、気にしなくて大丈夫だよ。仲がいいって素晴らしいことじゃないか」
 俺に気を遣ってるんだろうけど、きよたか君のことで気持ちが揺れ動きやすいゆいちゃん
だから、こういう姿を見せてくれてむしろ嬉しかったりする。
「きよたかさん、今日本社で会議なんですよ。それで、仕事が終わったら待ち合わせして、
都内で一緒に食事しようってことになって」
「あー、だからそんなにワクワクしてるんだ」
「イエスッ! その時にきよたかさんに渡すチョコも、ちゃーんとココに入れてあります。
明日も仕事だから、最終の新幹線で帰らないといけないみたいなんですけどね」
「でも、いいバレンタインになりそうじゃないか。きよたか君と一緒なら」
「はいっ」
 素直にうなずくゆいちゃん。こうしてみると、学生時代からの想いはまだまだ燃え上がって行きそうだ。
「おはようございま……って、あれっ、お姉ちゃんっ?!」
「おっ、ゆたか。おっはよー!」
 リビングに入ってきたパジャマ姿のゆーちゃんを、ゆいちゃんがガシッと抱きしめる。
「――っ?! ――っ!!」
「ゆたかは朝からかわいいねー」
「こらこら、ゆーちゃんもがいてるよ。じたばたしてるって」
「わわっ、ごめんごめん」
 まったく。ゆいちゃんはゆーちゃんのこととなったら見境が無くなるんだから。
「ふうっ……もうっ、お姉ちゃんってば強引なんだから」
「ごめんごめん。お詫びに、はいっ! ハッピーバレンタイン!」
 さっき俺にしたみたいに、ゆいちゃんがゆーちゃんにチョコを差し出す。
「わわっ、ありがとう! もしかして、このために朝から来てたの?」
「いえーす。お姉ちゃんの愛がたっぷりこもった手作りチョコレートだよんっ!」
「お姉ちゃんのチョコ、いつも美味しいもんねー」
 入ってきたときはまだ眠そうだったゆーちゃんが、嬉しそうにチョコを受け取った。
やっぱり、ゆーちゃんもゆいちゃんが来てくれると嬉しいんだろうな。
「それにしても、こなたってばまた寝坊かなー? せっかくチョコを持ってきたのに」
「ああ、こなたは今自由登校期間で――」
303俺の時代が来た?! (2/6):2008/02/15(金) 00:58:11 ID:Fcg6Fqb0
「よーし、ついでだから私が起こしてあげよう! ゆたか、一緒に行くよー」
「お、お姉ちゃん?」
 うわっ、俺の話全然聞いてないし。
「私の必殺フライングボディプレスが唸っちゃうよー! ラティーノヒート! ビバララッサ!」
「おーい、ゆいちゃーん」
 ゆいちゃんは俺の話を聞かずに、ゆーちゃんを連れてリビングから出て行ってしまった。
 ……ま、いいか。まずは、久しぶりのバレンタインチョコを拝むとしよう。
 ラッピングを丁寧にほどくと、現れたのは白い箱。それを開けると、白砂糖とココア
パウダーがまぶされたトリュフが、それぞれ8個ずつ仕切りに納められていた。
 少し不揃いだけど、それが手作りなんだって実感させてくれるような出来だ。どれどれ、
まずはココアのを1個……おおっ。苦すぎず、甘すぎずでちょうどいい感じだ。今日は仕事も
あるし、残りは夜食代わりにありがたくいただくことにしますかね。

 ……あ、今「ぐぇっ!?」って聞こえた。

 *   *   *

 そんなわけで、我が娘・こなたは現在自由登校期間中。
 一応受験生ではあるんだが、危機感があるのかないのかは、勉強までは見ていないから
よくわからず。まあ、本人の裁量に任せてるから別にいいんだが――
「お父さん、お昼ごはんできたよー」
「あいよー」
 仕事にかまけて、真っ昼間からおさんどんさせてる俺もどうかって話だな。
 部屋から出ると、キッチンから漂ってくるのはだしの香り。ダイニングに入れば、
テーブルの俺の席にはたまご丼と漬け物、お吸い物が揃えられていた。
「おお、これはなかなか」
「たまご丼の下に、ネギの他に出汁で軽く煮た豚肉を敷いてみたんだけど」
 そう言いながら、ひよこ柄のエプロンをつけたこなたは湯飲みにお茶を注いでいた。
「ほほぅ、開化丼にしてみたのか」
「この間店屋物で頼んだとき、結構美味しかったからさ。お父さんはお仕事中だし、
スタミナがつくのがいいかと思って」
「ううっ、お父さん嬉しいぞー。いつでもお嫁に出せるが、貰うヤツは俺の屍を越えていけって感じだな」
「安心しなよ。私はまだまだ行く気もないしきっかけもないしね」
「むむぅ、腕を振るえなくて残念」
「むしろ、お父さんのほうが体格からしてボキッて行きそうじゃない?」
「ぐはっ」
 いつもと同じ、お約束通りのやりとり。
 なんだかんだ言っても、こうやって他愛もないおしゃべりに付き合ってくれるのは嬉しいもんだ。
「んじゃ、いただきます」
「はいっ、召し上がれ」
 席について、箸を手にする俺。
「ん? こなた、まだ食べんのか?」
 だけど、こなたはまだエプロンをつけたまま座ろうとしなかった。
「ほら、午後になったらかがみたちが来るって言ったでしょ。先にその準備をしておこうかなって」
「ああ、そういえば勉強会だったな。お茶菓子か何か、後で買った方がいいか?」
「んにゃ、今それを作ってるところだから」
 そう言って、オーブンの前へととてとてと歩いていくこなた。
「うーん、もうちょいかな」
「ケーキか何か焼いてたのか?」
「まあ、そんなとこ」
 何気なく言うこなた。だけど、珍しいことがあるもんだ。友達が来るからお菓子を自分で
用意するとか……やっぱり、ちゃんと女の子らしい気持ちも育ってはいる――
「かがみたちも作ってくるっていうから、からかいついでにかがみを圧倒してみようかと」
「うぉいっ!」
 前言撤回、前言撤回! なんてヤなギャルゲー主人公チックに育っちまったんだ。一体誰のせいなんだ? 誰の!
「あとは、こうやってみんなに作れるのももう少しだけだからってのもあるかな」
「ああ……」
 そういえば、来月にはもう卒業なんだよな。小学校から数えて十二年……早いもんだ。
「出来たらちゃんとお父さんにも味見させてあげるから、先に食べてていーよ」
「ああ。んじゃ、いただきます」
304俺の時代が来た?! (3/6):2008/02/15(金) 00:59:36 ID:Fcg6Fqb0
「召し上がれー」
 止めていた箸を再び動かして、出汁がよくしみた卵と肉、ごはんを一緒に口にする。
これもまた、一種のバレンタインプレゼントみたいなものなのかね。
「うん、美味い」
「おかわりも用意してあるからね」
「ああ……なあ、こなた」
「なに?」
「卒業しても、いつでもお友達を連れてきていいからな」
「ん、あんがと」
 ぶっきらぼうに言うこなただけど、振り向いたその表情はとても楽しそうだった。
 我ながら、いい娘を持ったもんだ。

 *   *   *

「ここの表現、なんか怪しいんだよなぁ」
 カーソルキーを適当に打って、カーソルをさまよわせながら考え込む。
「もうちょっと開いた表現にしたいけど、それだとキャラの歳が不相応に見えるし」
 締め切り前、毎度恒例の直し作業。校正段階でもいいんだが、出来るだけ今のうちにやっておこうと思うと、
「だからと言って、かしこまった表現にすると流れが止まるんだよなぁ」
 こうやって、どっちつかずの無限ループに迷い込んじまう。
 んー、一旦担当さんに読んでもらうかねぇ。でも、渡したら渡したでフルボッコされて
夜遅くまでかかりそうだし、一応締め切りは来週だからもうちょい考えてみるか……
 うーん、迷う。
「お父さん、ちょっといいかな?」
「おう、いいぞー」
 聞こえてきた声に返事すると、ふすまが開いてこなたがひょいと顔を出した。
「どうした?」
「いつもお世話になってるから、ちょっと挨拶がしたいってみんなが言ってるんだけど」
「ええっ? いいっていいって。おじさんが行っても何にも得にはならんだろ?」
「まあまあ、そう言わずに。せっかく美少女が四人もいるんだよー」
「はて、柊さん姉妹と高良さんに、あとは誰が……ああ、ゆーちゃんか」
「……さいならー」
「ああっ、冗談だって! こなたっ!」
 足で乱暴にふすまを閉めようとするこなたを、慌てて呼び止める俺。ううっ、ただからかっただけなんだけどな。
「くだらないこと言ってないで、来るならさっさと来てよね」
 ちょっとむすっとしながら、こなたは部屋から出て行った。
「息抜きにもなるし、ちょいとおじゃましますかね」
 俺はPCをサスペンドさせると、半纏を羽織って部屋を出た。
 それにしても、来るときにはいつも挨拶してくれるとは。なかなか律儀でいい子たちだ。
「やあ、みんないらっしゃい」
「おじゃましてます」
「こんにちはー」
「お世話になってます」
 こなたの部屋のドアを開けると、いつもの女の子三人組かにこやかに挨拶してくれた。
「どうだい? 勉強のほうは」
「うん、真面目にやってるよ」
「ウソおっしゃい。何度PS2にフラフラ引き寄せられてるのよ」
「はうっ?! かがみってば、いきなりバラさないでよ!」
「事実でしょ」
「あ、あはは」
 こなたのヤツ、やっぱり相変わらずだな。この分だと、普段もちゃんと勉強してるんだか……
「それでも、ミニテストの点数が高いのは凄いよね」
「ええ。集中している時の正解率は凄いんですよ」
「いやぁ、それほどでも」
「きっとクイズゲームの影響なんでしょうけど」
「ぐは」
 かがみちゃんのツッコミに、図星とばかりに仰け反るこなた。こういうトコばかり、俺に似やがって。
「一応、こなたはやるときにはやるヤツだから。色々迷惑かけるかもしれないけど、これからもよろしくね」
「あははっ、私たちもお世話になってますから。それで、ですね」
「うん?」
305俺の時代が来た?! (4/6):2008/02/15(金) 01:01:22 ID:Fcg6Fqb0
 俺が首を傾げていると、かがみちゃんたちは手元のカバンをごそごそと漁り始めて、
「こちらなんですけど……」
「こなちゃんのお父さんに、よくお世話になってるお礼です」
「今日はバレンタインですし、ちょうどいいかなと思いまして」
「はいぃ?!」
 三人とも、俺にラッピングされた包みを差し出してきた。
 ピンク、赤、緑とそれぞれ包みの色も違っていて、リボンやシールが手作りっぽさを
感じさせてくれる。
「あ、お父さん。私も私も」
「えっ?!」
 さらに、こなたまでが青い包みを差し出してきた。
「あ、味見じゃなくて? というか、今年はチロルチョコ一個じゃないのか?!」
「あくまでもついでだよ、ついで。まあ、お父さんにはいつもめーわくかけてるし、たまにはね」
「って、あんたはいつもチロルチョコで済ませてたんかい」
「作品のネタになるかなーと思って。ああ、アポロチョコのイチゴ抜きとかもやったっけ」
「おいおい」
 その意図は初耳だけど……ギャルゲとかエロゲのシナリオライターじゃないんデスヨ? 俺は。
「まあ、そういうわけで受け取ってくれるかな? かがみたちも作ってきてくれたんだし」
「拙いものではありますが、受け取っていただければ幸いです」
 そう言われてしまえば、出てくる答えは自動的に一つに絞られる。
「ありがとう、大事に食べさせてもらうよ」
 俺は一礼してから、四人からしっかりと包みを受け取った。
「これからも、こなたのことをよろしく頼むね」
「はいっ」
「もちろんですっ」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「何かしでかしたら、その時はホントによろしくー」
「だから、そのやる気まんまんの発言はやめいっ!」
「あははははっ」
 かがみちゃんとこなたのやり取りを見たみんなが、弾かれたように笑う。
 やっぱりいいもんだな、学生時代の友達ってのは。こなたにとって、とても良き縁で
あってほしい……そんな風に思える、四人とのやりとりだった。

 しかし、手作りチョコが五個……
 学生時代にも無かったことだけど、俺ってば夢を見てるのか? というか、これなんてエロゲ?

 *   *   *

 思わぬプレゼントをもらった俺は、結局仕事を放り出して夕食作りに励んだ。
 プレゼントを貰ったなら、こっちもそれなりにお返ししないと男がすたるってもんだ。
ホワイトデーに家に来れるかもわからないしな。
 そして、手作りのハヤシライスとトマトゼリーを振る舞った夜のこと。

「えっと……おじさん、ちょっと台所を借りてもいいですか?」
 キッチンで洗い物をしていると、ゆーちゃんがちょっとおどおどしながらそう尋ねてきた。
「うん、大丈夫だよ。もう今夜は使う予定は無いから」
 そう言うと、ゆーちゃんはほっとしたような笑顔を浮かべて、
「ありがとうございますっ!」
 ぺこりと、俺に頭を下げた。
 相変わらず他人行儀だけど、ここらへんはどうしてもしょうがないのかもしれない。
わかっていてもちょっと寂しいのは、ゆーちゃんを家族として見てるからなんだろうか。
「で、何を作るんだい?」
「えっと、みなみちゃんから教わったんですけど……」
 ビニール袋の中から、市販の板チョコを数枚取り出すゆーちゃん。
「このチョコを刻んでから湯煎して、果物を絡めて食べると美味しいって聞いて」
「ああ、チョコレートフォンデュを作るんだ」
「はいっ、そうです」
 なるほど。他にも袋に入ってると思ったら、果物が入ってるわけか。
「色々迷ったんですけど、柊先輩と高良先輩も来ているって聞きましたから。これだったら、
みんなで食べられて美味しいかなと思って」
306俺の時代が来た?! (5/6):2008/02/15(金) 01:02:15 ID:Fcg6Fqb0
「なるほど、それはいい考えだね」
 俺が褒めると、ゆーちゃんは板チョコの包みで口元を隠しながら照れくさそうに笑った。
「なら、冷蔵庫にあるリンゴとかパイナップル缶も使うといいよ。あれもチョコには合うから」
「えっ? で、でも私が勝手に作るんですし――」
「いいのいいの。買い置きの果物はこういうときに使うものだよ」
 そのまま食べたりヨーグルトに混ぜたりするのもいいけど、こういう時に使ってこそだと思う。
「あの、えっと……それじゃあ、いいですか?」
「ああ、もちろん」
「すいません、なんかわがまま言っちゃって」
「いいんだよ。ここはゆーちゃんの家なんだから、そんな気兼ねしなくても」
「ありがとうございます」
 可愛い子にお願いされて、断れるわけがない。むしろ、手助けしてやるぐらいじゃないと。
その方が、フラグも折れにくいっていうし。ああ、ゲームの話デスヨ? ゲームの。

 俺が洗い物に戻ると、ゆーちゃんはかわいい手つきで板チョコを刻み始めた。
 危なっかしいわけじゃないけど、かわいい仔猫柄のエプロンと子供らしい背格好を見てると、
その、なんというか、アレだ。「見守ってあげたい」って感じがしてたまらない。
 言っておくが、決してやましい気持ちじゃないぞ。あくまで肉親としてだからな!
 その結果、俺の洗い物は非常にスローペースになり、
「これでよしっと」
 ゆーちゃんが湯煎し終わった頃に、拭いた食器をようやくしまい終え……というか、
すすいだ食器が乾きかけるぐらいの時間になっていた。
「お疲れさま、ゆーちゃん。それじゃあ、みんなを呼んでこようか?」
「あっ、ちょっと待っててください」
 自分のエプロンを外そうとした俺を、ゆーちゃんが呼び止める。
「どうしたの?」
「えっと……こんな感じかな?」
 洗ってあったイチゴをちょこんと竹串に刺して、湯煎で溶かしたチョコにくぐらせるゆーちゃん。
 しっかりチョコが絡まったのを確認すると、俺にそれを差し出して――
「はいっ、どうぞ」
「へっ?!」
「さっきのお礼という程じゃないですけど、最初に食べてみてください」
「い、いいの?」
「もちろんですっ」
 にこにこ笑いながら、ゆーちゃんがその串を渡してくれる。
「それじゃあ、遠慮無くいただきます」
 そう言って、チョコイチゴを一口でぱくっと食べると……
「ん、んまいっ!」
 チョコの甘さと、イチゴの甘酸っぱさがちょうどいい感じで口の中に広がっていく!
「ホントですか? よかったぁ!」
 さらに、目の前には可愛い女の子の笑顔! これで美味しいと言わずに何と言おう!

 最後にマトモにバレンタインを祝ってもらってから十八年。まさか、再びこんな幸せな日が来ようとは!
 しかも、六人の女の子からチョコレート! こんなに貰ったことなどあるだろうか?! 否、無い!
 突然変異と言っても過言ではない。いや、こういうことは突然来るのかもしれない。
 だから、あえて言おう!

「俺の時代が来た」と!!

 うっしゃあっ! こうなったら今日は包み紙まで喰らってやるわ!

 *   *   *

『……楽しそうですねー』
 真っ暗闇の中、女の子の声が響いてくる。
 とても可愛らしく……そして、懐かしい声。
『ホント、とっても楽しそうです』
『……かなた?』
 逝ってしまってから十八年、ずっと聴くことの無かった声。
 その寂しそうな声が、暗い闇の中で響いている。
307俺の時代が来た?! (6/6):2008/02/15(金) 01:03:32 ID:Fcg6Fqb0
『かなた、かなたなのか?』
 言いながらまわりを見回しても、闇があるだけで何も無い。
 いや、闇というか……コレは、壁?
 手探りで周りを触ってみると、まるで井戸の中のようにまわりが囲まれていた。
『そう君ったら、デレデレしちゃって……』
 いや、これは寂しそうなんじゃなくて――
『しかも、自分よりひと回り以上年下の子に……』
 もしかして――
『さらに、姪っ子にまでデレデレしちゃって!』
 ジェラシーデスカ?!
 あわてて見上げてみると、そこには小さな影。
 陽射しで逆光になっているせいか、その顔を見ることは出来ない。ああっ、なんて
悪いタイミングなんだ! かなたの姿が見られるかもしれないってのに!
『そう君ってば、ちっとも私のことを思い出してくれないんだから!』
『いや、これはなんというか、突発的なことだったからな! 思考が追いつかなくて!』
『ふーんだっ。十年以上もチョコを作ってたのに、それを忘れたなんてひどいじゃない!』
『いやっ、もちろん覚えてるって! ただ、久しぶりのモテ期に舞い上がっちまってたんだ!』
『そんなの痛い勘違いじゃない!』
 おおぅっ、バッサリ切り捨てられた!
『罰として……久しぶりに、私からもチョコをあげちゃうんだから!』
『へっ?』
 えーっと、それは罰じゃないんじゃ?
『たっぷりと、食べきれない……ううん、飲みきれないぐらいあげちゃうもん』
 そんな言葉と一緒に、上から雨らしきものが降ってきた。
 ポツポツと降ってきたのが、ボタボタ、ドロドロと変わっていく。しかも、その香りは
すっごく甘ったるくて、ぬるくって……これって、もしかして溶けたチョコ?
『ぐおっ?!』
 舐めてみると、とんでもなく甘い。つーか、砂糖の量間違えてるだろ! カカオ数十%
なんてレベルじゃねーぞ?!
『か、かなたっ! 悪かった! 俺が悪かったからっ!』
『つーん』
『ああっ、せっかく久しぶりに会ったってのにぃ!』
 もどかしいっ! 気持ちが通じないのと姿が見えないのとですっげーもどかしい!
 とにかく、今はこのままチョコで浮かんでかなたのもとにたどり着くしか――
『えっと、もうちょっとだけ多めにして……あ、間違えちゃった』

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

 って、全開ですかぁぁぁぁぁぁぁ?!
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 と、とりあえずはこれで浮かんで……って、ドロドロにまとわりついて身動きとれねぇ!
つか、埋まっていくなんてアリか?! もう浮かれないからっ! 許してくれ、いや、
許してください! かなた、かなたってばぁ!!

 …………

「うーん……かな……かなたぁ……」
「あーあ、すっかりのぼせちゃって。鼻血まで出してるし」
「お姉ちゃん、ティッシュ持ってきたよ」
「ああ、ありがと。これをチョイチョイっと鼻に詰めてっと」
「おじさん、大丈夫かな?」
「調子に乗りすぎたんだよ。たまにチョコをたくさんもらったからって」
「すっごく食べてたもんねー」
「かなたぁ……かなたぁ……」
「今頃、夢の中でもお母さんにチョコを貰ってるんだよ。まったく、自分ばっかり幸せな目を見ちゃって」
「でも、なんか苦しそうだよ?」
「気のせいだよ、気のせい。さあ、部屋のほう片付けちゃお」

「もうしないからぁ……まってぇ、たすけてくれよぉ……」
308 ◆cj23Vc.0u. :2008/02/15(金) 01:06:17 ID:Fcg6Fqb0
結論:
 ( ´∀`)<調子乗んな

というわけで「俺の時代が来た?!」をお送りしました。
いい父親だったりダメな父親だったり、自分の書くそうじろうは振れ幅が大きすぎみたいです。
今回は久しぶりにダメ方面強め、ということで。

お楽しみ頂ければ、幸いです。
309名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 01:09:46 ID:aeALCp3/
>>308
そうじろうwww
このくらいのダメっぷりがらしくていい感じw

で、そうじろうの夢の続きを、キボンw
310名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 01:13:19 ID:6KkGV+Qi
>>308
何と言うほのぼのホラー(゚∀゚)
ものすごい激甘ホラーに惚れ惚れしてしまった
この作品は間違いなく・・・GJ!

嫁さんに先立たれて、男手一つで娘を非行に走らせずに育ててきたんだ。
30代のヤリタイ盛りってときになあ・・・
たまには、こういう役得があっても、いいじゃない(´∀`)










「そうくん・・・?^^####」
311名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 01:14:57 ID:RhvkqKTS
>>308
てけかな思い出しながら読んでたら貴方だったとはwwwww
このGJさんめ(ニヨニヨ
312名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 02:05:08 ID:DDuiCTS1
>>276
余りの甘さに虫歯になりそうです。
あなたの書く二人が大好きです。けど読んでいるとこちらが恥ずかしくなって、読んでは悶え、
悶えては読んでを繰り返してしまって毎回毎回読み切るのにえらい時間を掛けてしまいます、幸せです。支離滅裂ですみませんorz
あきら様お誕生日おめでとうございます。

>>308
チョコの雨を降らせるかなたさんが可愛い過ぎます。つーんは反則ww ごちそうさまでした。
313名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 02:21:35 ID:tzpdt8tE
>>308
GJすぎるww
もう、途中で文体から貴方なんじゃないかとわかるようになってしまったぐらいファンです。
最高。
314名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 02:28:31 ID:ql5Cythx
>>308

つまり反省したチョコレート塗れなそう君をかなたさんがアッーでFA?
うわっすっげー読みてぇ。
315名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 03:45:07 ID:i0s9+rEZ
>>185
亀レスだけどこれはここで終わりなん?
後日談で良いから続きが見たい
316名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 07:01:11 ID:VrOJgCfi
ふー、やっと追い着いた。
まとめてで申し訳ないが、皆さんGJ!!!
職場の義理チョコよりこっちの投下SSを期待してた俺にとってなによりのご馳走です。

そしてバレンタインSSが間に合わなかった俺涙目orz
31723-49:2008/02/15(金) 07:47:56 ID:nlImLHpx
どうもです
また変な電波受信してしまいました
発生源不明
過去作とは関係無しの単発モノ
甘味の中に渋柿が混ざっててもいいじゃない、って人専用

・そうじろう&ただお
・エロ無し
・ラブ無し
・萌え無し
・女性キャラ無し
・5レス使用

途中で止まってしまった場合は天罰だと思って諦めます
318父親たちの二重想:2008/02/15(金) 07:50:27 ID:nlImLHpx
 
 冬の鷹宮神社の境内に、坪鈴の音が小さく響く。
 見ると、和装に身を包んだ長身の男性だった。
 拝殿に向けて深いお辞儀を二回、柏手を二回、最後にもう一度深く一礼。
「ほう……」
 二拝二拍手一拝。
 今時珍しい、正式な参拝の手順である。
 昨今の雑学ブームにより知名度こそは上昇傾向にあるものの、実践する者を見ることはまだ少ない。
 珍しいといえば、時期的にもそう。初詣にはかなり、節分にも少しばかり遅すぎる。
 そうは思うがしかし、気持ちはわかるとも、柊ただおは思う。
 彼自身も今朝から――いや、数日前から。
 表には出していないつもりであったが、胸のうちでは今日のことを神に祈る気持ちが渦を巻いていた。
 なぜならこの日は、彼の娘の大学入試が行われる日。
 普段から安定して好成績を収めている彼女の実力を信じてはいるが、やはり親として不安は尽きない。
 いろいろな意味で。
「……どれ」
 興味を引かれ、また「もしかして」と予感を覚え、ただおは視線の先へと足を向けた。


「あ……」
 玉砂利を踏む音に反応してだろう、参拝客が顔を上げて振り向いた。少し驚いたような様子。
 拝む構えを解き、そのまま向こうも歩み寄ってくる。
 長身だがやや猫背気味の、目元のほくろと無精ヒゲが特徴的な男性だ。
 年のころは、ただおよりいくらか下、といったところか。
「どうも、おはようございます」
 照れ笑いを浮かべながら、軽い会釈。
「はい。おはようございます」
 ただおも返す。
「神主さんですか?」
「ええ」
「ということは、柊さんですね?」
「おや」
 今度はただおが、少し驚く。
「あ、失礼」
 再び照れ笑いを浮かべつつ、男性は居住まいを正した。そして深く頭を下げる。
「はじめまして。泉そうじろうといいます」
「ああ……」
 どうやら予感は、当たったらしい。
 やはり彼もまた、自分と同じ受験生の父なのだ。


     ☆
319父親たちの二重想 2/5:2008/02/15(金) 07:51:29 ID:nlImLHpx
 社務所の座敷に通された。
 炬燵に収まり、そうじろうは何とはなしに室内を見渡す。物は少ないが、殺風景とは感じない。
 落ち着いた佇まい。
 通常は建物の外観に用いる表現だが、そう感じた。
 作家として間違っているだろうか。
「――お待たせいたしました」
 やがて、お盆に二つの湯飲みを乗せたただおが現れた。
 そして一つをそうじろうの前に置く。
「どうぞ」
「や、こりゃどうも」
 恐縮しつつも素直に受け取る。
 正直、身体は冷えていた。
「けど、大丈夫なんですか?」
 一口すすり、向かいに座ったただおに尋ねる。
「なにがでしょう?」
「いえ、ええと……」
 この場合はなんと表現すればいいのか。
 一瞬迷って、結局無難な選択をすることにした。
「お仕事があるのでは」
「ああ。少しぐらいなら大丈夫ですよ。というか、ここも私の職場です」
「そうですか」
 うなずいて、また一口。
「それにしても、すいませんね。そのうち正式にご挨拶に伺おうと思ってたんですけど……ははは」
「それはそれは。ですが気にすることはありませんよ」
「そ、そうですか……」
「……」
「……」
 ずずず、と。
 お茶をすする音が二分。
「……」
「……」
 何を言えばいいのだろう。
 ただおは柔らかな雰囲気で、どんな言葉も受け止めてくれそうではあるのだが、
 それが逆にそうじろうの言葉を阻む。
 つまり言い換えれば、隙がない。
 こなたに護身術を教えてくれた合気道の先生に、どこか通じるところがあった。
 思っていると、不意に、
「――私も、同じですから」
 ただおが妙なことを口走る。
「はい?」
 意味が分からず首をかしげると、恵比寿様を思わせる柔和な笑顔が返ってきた。
 しかしただおは、何事もなかったかのように別の話を始める。
「不躾ですが、合格祈願ですか?」
「え? ……あ、はい」
「私も、朝から祈りっぱなしでしてね」
 言って、ただおは照れくさそうに笑った。
 大学によって日程の異なるはずの本試験の日が重なっている。
 偶然ではない。
 そうじろうの一人娘と、ただおの三番目の娘は、学部こそ違えど同じ大学を受験するのだ。
 ただおも、知っているはず。
320父親たちの二重想 3/5:2008/02/15(金) 07:52:31 ID:nlImLHpx
「ははは……俺なんかもう、家でじっとしてられませんでしたよ」
「私も、特別な御守りなど持たせてしまいました」
「特別……ですか」
「はい。御札の他に、親心を込めた、特製です。神職に就いていながら、あるまじきことですよ」
 今度の笑顔は、困ったような。
「いえ」
 そうじろうは首を振り、眩しいものを見る思いで微笑んだ。
「親として、あるべき姿かと」
「……ありがとうございます」

 また少しの沈黙をはさんで。
 そうじろうは湯飲みを置き、やや居住まいを正す。
「二人とも、合格できたら……」
 ただおも倣う。
「ええ。聞きました」
「そうですか」
 目を合わせ、そしてどちらからともなく逸らす。
 情けないなと思いながら、そうじろうはそのまま尋ねた。
「――どう思われますか?」
「いいんじゃないでしょうか」
 即答だった。 
 思わず目を戻す。ただおも戻っており、微笑んでいた。
 二人とも、合格できたら。
 そのときは、部屋を借りて、二人で暮らす。
 彼女たちはそう言った。二人で、並んで正座をして、そうじろうに告げたのだ。
 初めてだった。
 娘から、あんなにも真剣な目を向けられたのは。
 小遣いやゲームソフトをねだられたとき、宿題の手助けを頼まれたときなど、
 それなりに真面目な顔をされたことなら何度でもある。
 しかしそれらとは次元が違った。
 小学生のとき、母親の不在について聞いてきたときでさえ、あれほどの顔はしていなかった。
 そしてそれは。
 その亡き妻が、危険を承知で出産を決意したときに彼にそうじろうに見せた顔と、同じだったのだ。
 理解した。
 完全に、本気なのだと。
 これが自分の娘の、本当の本気なのだと、理解せざるを得なかった。
 ――しかし、
「……失礼ですが」
 この人は、どうなのだろう。
「分かっていますよ」
 皆まで言わせず、ただおは再び湯飲みを持ち上げる。
 そしてゆっくりと傾けた。


     ☆
321父親たちの二重想 4/5:2008/02/15(金) 07:53:35 ID:nlImLHpx
 ええ、分かっています。それの意味するところなら。
 やや温くなったお茶を味わいながら、胸中でただおは繰り返す。
 年が明けて間もないころ。
 娘の親友だと思っていた小柄な少女の、初めて見た真剣な眼差しと。
 娘の、自分の知るものとは微妙に異なる真剣さを湛えた眼差し。
 あれを前に、それが嘘や冗談だと思うほど、ただおは鈍くはないつもりである。
「――信頼されているのですね」
 そうじろうが、疲れたような、しかしどこか満足げな顔と声でつぶやく。
 とんでもない。
 ただおは思う。
 あの子は、しっかり者だと、強い人間だと人から思われがちだが、ただおはそうは見ていない。
 いや、強いことは強い。
 ただその強さは、他者のための強さに過ぎない。彼女は自分のために強くあることができない。
 誰かのために傷を受け、痛みに涙する自分を憎む。
 あれは、そんな子だ。
 そういう意味では、皆から心配されている末娘の方がよっぽど安心して見ていられる。
 だから、正直、ショックだった。
 強い反応ができなかったのは、逆にそのためだったのかも知れない。
 湯飲みを置く。
「貴方は、どう思うのですか?」
「…………、迷ってます」
 数瞬の間を置いて、天板の角に視線を落としながら返してきた答えは、先ほどから、
 最初から見えていたものだった。
 そう。彼は迷っている。
 しかし、何を迷っているかまでは分からない。
「俺――私は、アイツの幸せをいつも願ってます。アイツ自身が幸せだと思えるのなら、
どんな道を選んでも応援するつもりではいます。しかし……」
 顔が上がる。
「どちらを選ぶのが幸せなのか、さっぱりで」
 照れくさそうな、辛そうな、笑顔だ。
「なるほど」
「情けないですよね。未だに、俺は……」
「いえ」
 笑顔が消え、疑問が差す。
「親として、あるべき姿かと」
 そして笑顔に戻った。
「――ならば答えを出さないのも、手かも知れません」
「え?」
「私はそうしました」
 猶予期間を与える。
 それが、ただおの二人への返答だった。
「四年というのは、短すぎるかも知れませんが、少なくとも一つの目安にはなるでしょう」
 恐らく、大学という広いようで狭い世界の中で、二人の関係を周囲に隠し通すことはできまい。
 少なからず奇異の視線にさらされることになるだろう。
 それに耐えられるか。
 自分たちを試し、そしてその先の世界を見極めろ、と。
「その中で、一緒に答えを探していけばいいと、私はそう思います」
 結局のところ決めるのは彼女ら自身なのだ。
 周囲の意見など、あくまでその判断材料の一つに過ぎない。
 ならば、なるべくそれを多く得られるように。
322父親たちの二重想 5/5:2008/02/15(金) 07:54:42 ID:nlImLHpx
「……無責任でしょうか」
「いいえ」
 そうじろうが首を振る。
 そして二人で湯飲みを傾けた。


     ☆


「これを」
 帰り際、そうじろうはただおから一通の熨斗袋を手渡された。
 開けてみると、御守りだった。
 覗きこむように手の中のそれを見つめ、そして顔を上げる。
 ただおは変わらず、柔和に微笑んでいる。
「今からでは遅いかも知れませんが」
「いえいえ、ありがたく頂戴します。……特製、ですか?」
「いえ」
 ただおは首を振る。
 そして微笑んだ。
「まだです。貴方が、特製にしてあげてください」
「なるほど……」
 こいつは厳しい。
「わかりました」
 しかしこの人なら――この人に育てられた娘なら。
 信じられる気がする。
 任せられる、気がする。
「それでは、失礼します」
「はい。それでは、また」
 冬の鷹宮神社の境内に、玉砂利を踏む音が小さく響く。
 二人分。
 小さく響いて、やがて消えた。




32323-49:2008/02/15(金) 07:56:08 ID:nlImLHpx
以上です
ありがとうございました


ええと
まとめへの保管はさすがに自重します
許可がいただけたら、ということで
324妄想屋(仮名) ◆JUqojnT5.c :2008/02/15(金) 08:00:15 ID:7LmB3Nkq
>>245

あ、いえ
なんか牽制したみたいな発言だなと、あとになって後悔しきりで……orz
自重されませんよう、執筆よろしくです。
325名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 08:04:32 ID:sXYyd5oU
>>308
ああ、やきもちかなたさん可愛いなあ。
そうじろうさんと一緒でも良いので埋まってしまいたい。ぐっじょぶでした。

>>323
あああああ、同じような話脳内で考えてたのに先に書かれたー!?
悔しいっ、でもぐっじょぶしちゃう!
お父さんとしての二人の気持ちが「らしく」書かれてたと思います。お見事。
326名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 08:06:34 ID:7LmB3Nkq
>>279

うは、緊縛ktkr!ハァハァ
327名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 08:16:10 ID:uyO2NHOk
>>308
やはりあなたの書くほのぼのはたまらない…GJ!
日常生活の描写の詳しさに毎回脱帽させられます。
てか、そうじろうさん羨ましすぎる…俺とかわr(ry

>>323
こちらもGJ!
二人の思い悩んだ気持ちが伝わってきます…
これを ほぞんしないなんて とんでもない !
328名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 08:42:08 ID:sayEDf1h
>>323
GJだぜ
そうかもうそんな時期か…。
そして、これを保管しないなんてもったいない
329名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 09:09:03 ID:PPs4/uOj
>>323
いやはや、しみじみといい話でした
こういう「ただ甘ったるいだけではないけど優しい現実」を感じさせる話は大好きです。
保管しないなんてとんでm(ry
330名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 11:11:53 ID:Z08i5aJ4
>>323
これは、素晴らしい!GJ!
保管しないなんてもったいない。っていうか保管しろ、いや、保管してください!
331名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 11:36:30 ID:FFH1B1Ba
>>323
保管希望に私も一票






ここまで来るとスレタイが“らき☆すたの女の子でエロパロ”ではなくなって来てる気も。
非エロも多いから“エロ”か?だし、あき白、おとひよ、↑も出て来て男キャラもいるし“女の子”も微妙になるかも。
そろそろスレタイを替え時か?  “らき☆すたSS part000”とか
私心スマソ
332名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 11:39:38 ID:5EDAIviK
>>331
ここまで続いてきておいてそれはない。
333名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 11:41:33 ID:aeALCp3/
きっとかがみならこう言うであろう。
「そんなのどうだってイイ!!」

ともかく>>323
補完希望。
334名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 11:55:29 ID:FFH1B1Ba
>>332-333
はい、余計な事言いました

以下>>323保管希望の旋風が続く…?
335妄想屋(仮名) ◆JUqojnT5.c :2008/02/15(金) 12:48:23 ID:vKb5SUws
>>323

うああああ、むちゃくちゃよかった!
まさか父親二人に萌えることになるとは……保管希望に一票!

#さっきレス読み切れずに投下したから、危なく割り込むところだった(汗)
336名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 16:05:25 ID:nY4sidsE
>>323
すばらしいと思う。誰の許可を必要しているかは知らないけど、
いい作品なら保管してしかるべきだと思うな。
個人でサイト持っているならいいけど、読めなくなるのはもったいない。

ただこう、丹念に冷静に積み上げて行く描写が上手いから感じるんだけど、
このあと二人とも合格したら、泉家はそうじろうとゆたかの二人きりに
なるんだよね? それってどういう生活なのかを考えると、なんかちょっと、
こなたとかがみは哀しい選択をしたなぁと思う。

単に同棲ラブラブウヒョー! みたいなのだったらそんなこと思わないんだけど。
337名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 16:32:45 ID:aJh6W6je
>>336
そこで旦那が単身赴任で寂しいゆい姉さんが突撃ですよ
338名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 16:48:18 ID:TXxFL5pQ
>>336
そこでみなみちゃんが(ry
339名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 16:52:31 ID:zjZfN8/2
そしてゆい姉さん×みなみ
340名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 16:58:00 ID:GYFRmM1C
つかさはどうなったんだろうか・・・
341名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 16:59:40 ID:VrOJgCfi
>>339
これは珍しい組み合わせw
ゆい姉さんもみなみの事「美人さん」って言ってたし…可能性あり?
342魔破闘真:2008/02/15(金) 17:12:37 ID:A/z7fYYB
自分の部屋、散らばった自作の同人誌の原稿の間で
Gペンを握りしめたまま全裸で横たわって寝ている田村ひより。
漫画の制作用具やらが使ってたまま散在してる。

serial experiments Hiyorinのエンディング・テーマ
『801叫び』

ほんの罪の無いエロパロなのに
印刷所から指導を受けてる
自分で描いたBLだから
咲き乱れた×××修正させられる
知らない事とも言えないが
妄想なんで実体験した覚えは無い
ヨソのを高く買わされた気もするが
自本まで安く売る気は無い
Hey Hey 完売って おさらばするまで
Hey Hey 他所のサークルの買えやしねえ
コミケ会場で売られている
知らないだろう永遠の801本達を・・・
343名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 17:12:55 ID:PFWWDIq8
>>340
そしてつかさは京都へ
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm2251391
344ぶーわ:2008/02/15(金) 19:07:21 ID:x9JNvQjd
バレンタイン一過でそろそろ暗いの投下してもいいでしょうか?
「0から始めよう!」の続き投下させてもらいますね
*パラレル注意、オリキャラ注意、死人注意
*8レス使用
3450から始めよう! 26.真実を知ろう!(1/8):2008/02/15(金) 19:09:23 ID:x9JNvQjd
 狭い部屋だった。
 薬品の匂いが鼻についた。
 一定に聞こえてくる電子音が、耳障りだった。
 そんな閉鎖的な空間の中だった。
 私の妹が……短い一生を終えたのは。
 だけどその最後の最後……天使が、現れた。
 そして……言った。




 私は今、一件の家の前に居る。
 見覚えのある、豪邸。
 その前に居るだけで心臓が暴れていく。
 ここには、居るんだ。
 みゆきが……居る。
 今日で、全部が分かるはず。
 そしたらもう、悔いはないはず。
 ……私はそこから前に歩き出せる。
 きっと……絶対。
『どちら様ですか?』
 インターホンから聞こえた声が耳を劈く。
 聞き覚えのある甲高い声が、耳の奥まで刺激する。
 こなたがそれに、ゆっくりと答える。
「……泉、です」
 それ以上、インターホンは反応しなかった。
 だけどすぐに、家の扉が開く。
 そこから現れたのは……私が良く知る、みゆきの姿だった。
「どうぞ、今何か飲み物を持ってきますね」
「ううん……いいよ、そんなの」
 部屋まで案内される。
 勉強会と称して、つかさと二人で遊びにきたことだってある。
 それでも……こんな気持ちで入る日がくるなんて思ってもみなかった。
「……そうですか」
 こなたに制され、みゆきが向かいに座る。
 狭い部屋に私とこなたと、みゆき。
 みゆきは快く迎え入れてくれた。
 まるで私たちを……こなたを待っていたかのように。
「あんまり回りくどいのは嫌いなんだ……だから、単刀直入に聞くね」
「……」
 こなたがみゆきを見る。
 その視線を、みゆきは外さない。
「つかさは……何を見たの?」
 みゆきは表情を変えなかった。
 まるでその質問が、分かってたかのように。
「つかさはずっと、かがみと二人で帰ったって言ってた……だけど最後、『三人目』が居るって言った」
「……そうです」
 みゆきがようやく口を開く。
 そしてそれを……みゆきが、隠蔽した。
 それは何故?
3460から始めよう! 26.真実を知ろう!(2/8):2008/02/15(金) 19:11:13 ID:x9JNvQjd
「ですが……それを知って、どうするんですか?」
 みゆきが少し、含んだ言い方をする。
 そしてそれにこなたが答える前に、みゆきが続ける。
「貴方はきっと、その人を疑うでしょう……その人がかがみさんを殺した、と」
 だって、そう……もうそれしか残ってない。
 私の最後……その傍に居たそいつ。
 それが誰であれ、もうそいつしかいない。
 私を殺した誰か。
 それはもう……そいつしか、残っていないんだ。
「つかささんは、それを『拒みました』」
「えっ?」
 こなたが戸惑う。
 私だって、一緒だ。
 みゆきの言葉を上手く、飲み込めなかったから。
「それって……」
 つかさが拒んだ?
 つかさ……が?
「泉さん、本当に真実を知りたいですか? ……それを知っても、現実は変わらないのに」
「……」
 真実は、ただの答えだ。
 他に答えは存在することはない。
 一つの答えだけを教えてくれるそれは、確かに優しい。
 だけどそれを知った所で、今ある現実は変わるわけじゃない。
 それは時に、残酷だ。
 それでも……。
「それでも知りたい。本当の事……かがみに、何があったのか」
 こなたがまっすぐみゆきを見る。
 それは、覚悟の眼。
「教えて……『三人目』は、誰?」
「……」
 沈黙が、痛かった。
 その答えを……聞きたくなかったのかもしれない。
 だって、私やつかさと一緒に帰る人なんてそこまで多くはない。
 私ともつかさとも、仲が良い人間。
 そう考えれば……私の頭にはもう、『彼女』しか浮かばない。
「もう、誰か分かってるといった顔ですね」
 それを見抜かれたのか、みゆきの笑顔が崩れる。
「……恐らくそれで、正解ですよ」
「じゃあ、やっぱり」
 それが、一番簡単な答えだ。
 つかさはみゆきに口止めされていた。
 その理由を考えれば……一番簡単だった。
「そうです……『三人目』は私。あの日、かがみさんとつかささんと一緒に居ました」
 ……。
 言葉が脳に届くのに、時間がかかった。
 予想はしていたはずだった。
 それがだって、一番可能性が高いから。
 だけどやっぱり……本人の口からその言葉が出たのが、辛かった。
「私は……卑怯者です」
 そしてゆっくりと語りだした。
 優しく、残酷な……真実を。
3470から始めよう! 26.真実を知ろう!(3/8):2008/02/15(金) 19:14:02 ID:x9JNvQjd
「かがみさんの事故の後に、すぐにつかささんは警察に呼ばれました」
 そこで言うはずだった、とみゆきが嘆く。
 本当は彼女も、その場に居た事を。
「ですが、最初に言われました……かがみさんを、『誰かが突き飛ばした』のを見た人が居る、と」
 それは他の誰もない……ゆたかちゃんの証言。
 その彼女は、その光景を見た。
 だから……そう証言した。
「それを聞いてからでした。つかささんが突然……かがみさんと二人で帰った、と言い出したのは」
 その理由が、私には何となく分かる。
 だってあの子……つかさは、優しいから。
 だから……庇ったんだ。
 大切な、親友を。
「本当の事を言えばきっと、誰もが私を疑う。だからつかささんは……私を庇い、全ての罪を被った」
 始まりは、その小さな嘘のはずだった。
 それは、一時の我慢のはず。
 すぐにでも私が目覚めれば、本当の事は分かるはずだった。
「そして私は、つかささんに言いました……本当の事は言わない事にしよう、と」
「それは……何で?」
 みゆきを庇ったまま、事実を証言することだって出来たはずだ。
 だけどつかさはそれを『見なかった』事にした。
『振り返ったとき、すでに私は轢かれていた』と。
 その理由が……分からない。
「簡単です、誰も……信じないからですよ」
 その言葉の意味が、私には分からなかった。
 信じない?
 誰も?
 一体、何なの?
 つかさは、みゆきは……ゆたかちゃんは。
 ……『何』を、見たの?
「教えて……事故の瞬間、何があったの?」
「……『ありえない』、その言葉が一番正しいのかもしれません」
『あんな事……絶対、ありえない』
 つかさが最後に言った言葉。
 それが蘇り、心臓に針が刺す。
 体中が敏感ように反応し、鼓動が暴れる。
「つかささんは先に横断歩道を渡りました……私とかがみさんは、少し遅れて渡れませんでした」
 信号は赤。
 行き交う車に、足を止める。
 きっと誰だってそこで立ち止まるはずだ。
 それは私だって、みゆきだって同じ。
「信号が赤になった歩道の手前に、先についたのはかがみさん……少しして、私がようやく追いつきました」
 この時、振り返ったつかさの姿が見えたと言う。
 そしてそれと……同時だったらしい。
「その時……かがみさんの体が、『浮いた』んです」
 浮く?
 そんな力学を無視した言葉が、私の脳を揺らす。
「私は思わず手を伸ばしました……でもそれも、空を切りました」
 符号が重なり、ピースが埋まっていく。
 伸ばした手。
 浮いた体。
 それを見た……ゆたかちゃん。
3480から始めよう! 26.真実を知ろう!(4/8):2008/02/15(金) 19:16:24 ID:x9JNvQjd
「分かりましたか? ……三人目が誰かなんて、関係なかったです」
 空気が、固まった気がした。
 ゆっくりと世界が動く。
 だって、そのみゆきの言葉が意味するのは……一つだから。
「かがみさんは」
 どうしてこうなったんだろう。
 私はただ、普通の世界が欲しかっただけなのに。
 なのにどうしてこうも……世界は鈍色なんだろう。
 どうしてこうも、理不尽なんだろう。


「自ら、その身を投げたんです」


 その声が耳を劈き、敏感に反応していく。
 世界が反転する。
 逆流した胃液が体中を暴れて傷つけていく。
「そ、そんなの!」
「……信じられないでしょう? 私もです」
 ゆたかちゃんが見たのは、その瞬間?
 それが、突き飛ばしたように見えた?
「今までずっとくだらない事で笑って……喋っていた相手が、身を投げるなんて『ありえない』」
 みゆきの言葉がゆっくりと私の脳に突き刺さる。
 そんなの、信じられるわけがない。
 横断歩道の手前で、急に飛び込みたくなった?
 そんなの……そんなのありえない! 信じない!
「でも、それが真実です。信じてもらおうとは思っていません……どの道、『同じ』ですから」
「えっ……」
 迷う私を前に、みゆきが言葉を続ける。
「『目撃者』の話を……貴方も知っていましたね?」
「!」
 こなたの表情が強張る。
 そう……もう一つの事件。
 私の事件と繋がらないはずの……ゆたかちゃんの事件。
「それでは知ってるはずです、その『彼女』が……どうなったのかを」
 そこでみゆきは、初めて『彼女』という単語を使った。
 こなたはゆたかちゃんの事を話題にする時はいつも曖昧にしていた。
 見た人だとか、目撃者だとか。
 だけど今みゆきは確かに言った……『彼女』、と。
「転落……事故」
「……」
 みゆきが首を縦に振る。
「彼女の最後に会ったのは、私……呼び出したのも、私です」
 それにはもう、こなたは驚くことはなかった。
 それは、成美さんの言葉のままだったからだ。
 現場に居た三人目……その人物が、ゆたかちゃんを呼び出したと。
「じゃああの手紙……高良さんだったんだ」
「……ええ、よくご存知ですね」
 みゆきの表情は変わらない。
 ただ、こなたを見ている。
3490から始めよう! 26.真実を知ろう!(5/8):2008/02/15(金) 19:19:23 ID:x9JNvQjd
「そうです……彼女の証言を確かめたかった。本当に同じものを見たのかどうか」
 つかさもみゆきも、信じられなかったんだ。
 その、自分達の見た光景を。
「警察署で偶然、私は彼女を見かけました……そして後をつけ、彼女の家を知りました」
「それで……送ったんだ、名前のない手紙」
「……」
 その言葉の棘がみゆきに刺さり、表情を強張らせる。
「今はどんな事を言っても言い訳にしかなりませんね……そうです、私は名前を明かせなかった」
 彼女は言った。
 自らを、卑怯者だと。
 その言葉の意味は……そのままだ。
「私は怖かったんです、その名前がもし知られれば……つかささんが今居る状況は全て私に降りかかる」
 つかさは最悪の状況に居た。
 誰もが言う。
 お前が殺したんだと、指をさす。
 罵倒する、嘲笑う、蔑む。
「私はつかささんに依存していたんです……彼女の悲しみの表情を、見て見ぬフリをし続けた」
 いつかはそれが無くなる日が来る。
 きっと……私が、目が覚めれば。
 そんな脆くて、淡い期待に頼りながら……。
 そんな日が帰って来ることは、なかったのに。
「手紙を送ったその日、すぐに彼女は着てくれました」
 手紙に書いてあった場所は、病院横の公園。
 事件と病院……この単語を絡めれば、すぐにその場所は分かっただろう。
「そこで私は全て話しました。そして彼女は、それを『受け入れてくれた』」
「……どういう事?」
「彼女は信じてくれたんです、私達の見たものを」
 誰も、私を突き飛ばしたりしなかった。
 それを、ゆたかちゃんは信じてくれたという。
「それで全てが終わりのはずでした……ですが、終わってはくれなかった」
 公園で会話をして、そのまま別れたとみゆきは言う。
 そして次の日知らされた。
 ゆたかちゃんの……訃報を。
「じゃあ本当に……事故、だった?」
「……はい。少なくとも私は彼女の事故には、関与していません」
 みゆきが辛そうな表情をする。
 ゆたかちゃんは、信じた。
 もしそれが本当なら……みゆきがゆたかちゃんを害するはずはない。
 じゃあ私は?
 私は……信じられる?
 みゆきを……親友、を。
「つかささんの気持ちが、今なら分かります」
「えっ……」
 心臓が跳ねる。
 その言葉が、耳から脳に叩きつけられたから。
「もう、全部いい……その言葉の意味が、分かった気がします」
「高良……さん?」
 その言葉の意味を租借し、汗が溢れる。
 だってその言葉は、つかさの言葉。
 私の妹の……最後の言葉だったから。
「だ、駄目だよ高良さんっ! 自棄になっちゃ……」
「……」
3500から始めよう! 26.真実を知ろう!(6/8):2008/02/15(金) 19:21:53 ID:x9JNvQjd
 その時、私は初めて見たのかもしれない。
 みゆきの、そんな表情を。
 悲しみと不安の混じった表情。
 それはつまり……絶望だ。
「大丈夫です、つかささんの様には……なりませんから」
 心配そうに駆け寄ろうとしたこなたを、みゆきが制する。
「私は卑怯者……そして臆病者、自ら死を選ぶ勇気すらない」
 みゆきはずっと、庇われてきた。
 世間の非難から……つかさに。
 それに甘え、依存してきた。
「言いましたね? 同じだ、と」
 みゆきのさっきの言葉。
 信じても、信じなくても……同じ。
 その言葉をもう一度、噛み砕く。
 それは……どういう意味?
「同じなんです……あの手紙からきっと、警察は私に辿り着くでしょう」
「なっ……」
 名前のない手紙。
 だけど警察だって無能じゃない。
 時間をかけてきっと、みゆきに辿り着く。
 そしたら後は……もう、全てが露呈する。
「私が目撃者を呼び出した事が分かれば、私を疑う……もう誰も、私を庇ってくれる人はいません」
 つかさはもう……居ない。
 自ら身を、投げたから。
 それを見て、どう考えるだろう……警察は、世間は。
「そうすればどんな言い訳も意味はない、真実がどうあれ……全ての犯人は、私になる」
 みゆきとつかさは、真実を隠してきた。
 どうせ誰も信じないから、と。
 信じたくないから、と。
 理由がどうあれそれは……罪だ。
「そ、そうだっゆーちゃん、目撃者の子が目覚めれば……」
「……それは、何時ですか?」
「ぁっ……」
 みゆきの言葉の意味が伝わり、こなたが言葉を失う。
 そんなの、何時かなんて分からない。
 そしてその証言があったとしても、みゆきが現場に居た事実は消えない。
 ゆたかちゃんが目覚めるのはきっと、全てが露呈したその後だ。
「もう誰も、私の言う事は信じない……それが私がつかささんに甘えてきた、罰」
 自己保身の結果。
 親友に依存し続けてきた、結果。
 その結末が……幸せなはずが、ない。
「泉さんだって、そのはずです……全部が嘘だと、思っいるんでしょう?」
「私……は」
 こなたが言葉を詰まらせ、私を見た。
 その意味は……すぐに分かった。
 こなたは委ねたんだ、みゆきの質問の答えを。
 みゆきを、信じれるかどうか。
 こなたはみゆきの事は、あまり知らない。
 頭がいいとか、人望があるとか……その程度。
 だから、みゆきをよく知る私にそれを委ねた。
3510から始めよう! 26.真実を知ろう!(7/8):2008/02/15(金) 19:25:57 ID:x9JNvQjd
 ……。
 私はみゆきの事は、親友だと思ってる。
 一緒に笑って……一緒の時間を重ねてきた。
 そのみゆきを、私は信じたい。
 でもそれは……一つの事実しか示さない。
 私を殺したのは、他の誰でもなかった。
 ……私、だった?
 そんなの、ありえない。
 だって私は『覚えてる』。
 あの、『手』の感覚を……私を突き飛ばした、『意思』を。
 それも、嘘だった?
 私が作り出した、偶像でしかなかった?
 自分を殺した現実を、無意識にその『手』に押し付けた?
 ……分からない。
 何も、分からない。
 私は……どうすればいいんだろう。
 何を信じればいいんだろう。
 みゆきを、信じる?
 私は自分で、死を選んだ?
 当たり前の世界を、全て捨てて?
 何で?
 理由は?
 それじゃあ……みゆきを、疑う?
 全部が嘘。
 みゆきが私を突き飛ばした。
 そして、邪魔になったゆたかちゃんを突き飛ばした。
 みゆきが?
 みゆき……が?
 そんなの……そんなの!
 ……。
 気がついたとき、私の口は言葉を紡いでいた。
 私を突き飛ばした『手』。
 その影が今……消えた。
「……」
 こなたが無言で、首を縦に振った。
 私の発した言葉がこなたにだけ……届いたから。
「信じる、よ」
 私の紡いだ言葉を、こなたが繰り返した。
 それにゆっくりと……みゆきが視線をあげた。
「私は、信じる」
 みゆきがそんな事するはずがない。
 みゆきはだって優しい。
 誰よりも優しくて、思いやりがあって……。
 それを私は、良く知ってる。
 だって、みゆきは私の……親友だから。
「かがみならきっと、高良さんの言葉を信じる。だから、私もそれを信じる」
「……本当、ですか?」
 涙が、みゆきから零れた。
 その涙はきっと、本当の涙。
「……うん、だから逃げちゃ駄目だよ。高良さんも」
 みゆきを、こなたの両手が包んだ。
 それに身を任せて、みゆきが泣く。
 彼女はは逃げ続けてきた。
3520から始めよう! 26.真実を知ろう!(8/8):2008/02/15(金) 19:30:33 ID:x9JNvQjd
 それは、ほんの小さなきっかけから。
 つかさの言葉に甘えた、ほんの小さな嘘から
 だけど嘘は……嘘でしかない。
 それが紡ぐのは、罪。
 その罪を露にすれば、周りの誰もがきっとみゆきを蔑むだろう。
 私を殺したと、ゆたかちゃんを殺したと疑うだろう。
 それでも……逃げちゃ、駄目なんだ。受け入れて、立ち向かうしかないんだ。
 本当にある……真実のために。
 そうだ、私は決めたじゃないか。
 全てを……全部を受け入れよう、って。
 私は、選んだんだ。自ら……『死』を。
 それが、私の……真――

『それは、出来ません』
「えっ?」
 その時だった。
 言葉が、頭に溢れた。
 それは一度聞いたはずの、言葉。
 それが、今蘇った。
『彼女は自ら――を選んだんです。そしてそれは――』
 これは、誰の言葉? 何で……それが今?
 汗が、流れた。指先が痺れだし、全体に伝わっていく。
『彼女は自ら』
 壊れたラジカセの用に、言葉がまた再生される。
 それは……あいつの言葉。
 間の抜けた……空気の読めない、天使の言葉。
 この言葉を聴いたのは、『いつ』?
『死を選んだ』
 ドクリ、と心臓が跳ねた。
 何、これ。
 ナニコレ……ナニ、コレ。
『そしてそれは』
 狭い部屋だった。
 薬品の匂いが鼻についた。
 一定に聞こえてくる電子音が、耳障りだった。
 そんな閉鎖的な空間で……私の妹は、短い一生を終えた。
 だけどその最後の最後。
 天使が現れて、言った。
『そしてそれは……罪』
 冷たい何かが、体を走っていく。
 汗が溢れる。鼓動が暴れる。
 ゆたかちゃんの事件は、『事故』だった。
 だから天使はゆたかちゃんに言った。
『貴方には、行き続けるチャンスが与えられます』
 だから彼女は今、曖昧な世界の中に居る。
 誰にも触れない。誰にも声の届かない。
 一人の人間に依存した、朧の世界に。
 じゃあ、私は? 私は……自ら死を選んだ?
 つかさと、一緒だった?
 ねぇ……じゃあどうして――

 どうして、『ここに居る』の?

 消えたはずの、偶像の『手』。
 その手がもう一度、私の肩を叩いた気がした。
 
(続)
353ぶーわ:2008/02/15(金) 19:31:14 ID:x9JNvQjd
続きます。
バレンタインの甘い雰囲気の後に こんなんでごめんなさい!
そろそろ本気で 終わりです
もうしばらく お付き合いを
354名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 19:32:38 ID:I4C9Lpbb
リアルタイムでGJ!
ここまで考えさせる内容を書けるのが素晴らしい
355名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 19:54:02 ID:ql5Cythx
ぶーわ氏に乾杯!
どんな結末を迎えるのか、今からwktkです。
356名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 20:30:20 ID:OyTm6x/w
>>353
先が読めないんだぜ !
続きがとっても楽しみなんだぜ ! GJ
357名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 20:45:36 ID:sXYyd5oU
>>353
もう一ひねりされたーっ!?

うーむ。二転三転、ですな。
とりあえずみゆきさんはシロ、となるともう呪いとか念動力とか平安かがみとか、そんな理由しか残っていない訳ですが。


って…………ま・さ・か。かがみは(ry)……? とにもかくにも続きをお待ちしてます。ぐっじょぶ。
35823-49:2008/02/15(金) 20:46:04 ID:nlImLHpx
>>353
うーむむむむ、なるほど
確かにみゆきには、そういった弱さもあるかも知れませんね
相手がつかさなら尚更に
色々とピースが繋がった……けどまた謎が、謎があっ!
謎解きは苦手なのでただ座して続きをまつっ、GJ!


>保管希望
ああああありがとうございます
いやまあ、まさに>>331さんの仰ってるとおりの理由で
「女の子」でも「エロ」でもないのにいいのかな、と
非エロしか書いたことないのに今更ですね
まとめにて管理人さんに打診してみます
359名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 20:51:33 ID:4qnJcXLg
>>353
こ、これは……なんという意味不明(いい意味で)。謎が解けるどころか増えたー!?
えー、かがみは自殺だった…ないわなぁ。いくらなんでも突発すぎるし、それでも浮いたりはしないし。
もしや犯人は幽霊的ななにかか…てそれだと容疑者が思いうかばねー!
いろいろと気になる内容で、楽しみにしていますね
360名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 21:23:46 ID:Au2/zWVZ
ネタバレ
犯人はこなた
361名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 21:25:15 ID:uqsL700N
「泉さんになら殺されてもいいですね…だばだば」
362名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 21:58:40 ID:6KkGV+Qi
「私も…こなたになら…殺されても…いいかな…抱き抱きさわさわふにふに」
363名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 22:05:16 ID:oROKVdNy
こなフェチども自重しろw
364名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 22:13:40 ID:VraqOVOt
>>353
いや、もうなんて言ったらいいかね
GJしかないよ
で、
>>350
>全部が嘘だと、思っいるん
思って
>>352
>行き続けるチャンスが
生き続け
では?
でしゃばってすんません
365ぶーわ:2008/02/15(金) 22:23:20 ID:x9JNvQjd
>>364
やった! 第三部完!!!
wikiで訂正しますね! ってもう保管してあるよどんだけー
366双子の兄:2008/02/16(土) 00:13:52 ID:uKheyegS
誰も投下する人が居ないのなら、一分後くらいに投下させて頂きます。
367双子の兄:2008/02/16(土) 00:16:57 ID:uKheyegS
それでは投下します。

『二人だけの交差点』

・かがみ&つかさ
・非エロ(だと思います)
・甘くしたつもり。
368二人だけの交差点:2008/02/16(土) 00:18:43 ID:uKheyegS
 空気の読めない青空の真中で輝いている太陽が煩わしい。私の気分は絶賛どんより
曇り空なのにも関わらず、あの空と太陽はそんな私を嘲笑しているかのようで、どうにも
やるせない気持ちになった。
 どうせなら、私の気分と同じでどんよりと湿っぽい天気になってくれたら幾らか楽にな
れるのに、ホント、最悪。雲一つ見当たらない空に向かって独り善がりな悪態を吐いて、
憎たらしげに睨んでやると、種類も分からない私にとっては無名同然の鳥が視界を横
切った。
 あんたまで私の気分を害する気か。それとも、お天道様に向かって悪態を吐いた私を
諌めたのか。ああ、それなら仕方ない。特別に、あの鳥は許してあげよう、ついでに、お天
道様にも謝って、許して貰おう、なんて意味の分からない事を道端の真中でブツブツ呟き
ながら考えている私は傍から見たらどう譲歩したって変質者以上には見えないのだろう。
 はあ、溜息が落ちる。遠くから段々とパタパタと焦燥感を滲ませた足音が近付いて来て
いる。盛大に溜息を再度吐き出しながら、私の名前が呼ばれる事を予見して、心底呆れ
た顔を作ってからゆっくりと振り向いた。
「おねえちゃーん!」
 そんな大きい声を出さなくても十分聞こえるのに……、住宅街の真っ只中で行う迷惑
行為は止めなさいよ。本人は百パーセント自覚無しでファイナルアンサーだろうけど。ほ
ら、その証拠に私が呆れている顔をしているのが不思議なのか、眼を丸くして首を傾げて
る。
 まったく、少しは成長しなさいよ、と言おうと思ったら、突然マイシスターは盛大に噴き出
した。そのお陰で私の顔面にマイシスター、もといつかさの唾液の飛沫が少なからずジャ
ストミート。ピキッ。と私の眉間に青筋が出来たのが自分でも理解出来た。
「あは、あはは。おねえちゃッ。その顔っ……!」
 結局何が言いたいのだろうか。そこまで笑われるような顔をしていた自覚はないし、こち
らが訳の分からない状況に陥っているのに、眼の目で馬鹿笑いされると怒りが沸々と焚
き上がって来て、あ、もうじき何かが切れるわ。ぴくぴくとこめかみの辺りが痙攣してるか
ら、危険信号が発生しているのが分かる。私の脳内アラーとはマックス稼働中。つかさの
危険探知センサーは動作が重いらしい。可哀そうに。
「その顔、面白過ぎるよ……っ!」
 はい、ドーン。
「誰の所為だと思ってんのよぉオオ!!」


-----------------------------------------------


   二人だけの交差点


------------------------------------------------
369二人だけの交差点:2008/02/16(土) 00:21:17 ID:uKheyegS
 今日未明、某市内で大規模な火山噴火が起こった模様で、辺りには警戒を呼び掛ける
と同時に、騒音警報が発令、付近の住民は著しい被害を受ける事となりました。現場に行
っている、アナウンサーの柊さーん?
 はーい! ……馬鹿か私は。一人で意味の分からないワールドを脳内に形成して何が
面白かったんだろう。今になってそんな事を思いながら、隣でしょげている様子のつかさ
を見てみる。
 悲壮に伏せられた瞳、それは微かだけど、確かな潤いを持っていて、気を緩めたらたち
まちに大粒の滴が落ちてしまいそうだ。顕著な体のラインはまるでガラス細工を思わすほ
どに儚げで、繊細に見える。チャームポイントで、何時もは立ちあがっているカチューシャ
風のリボンも、つかさとシンクロしているかのようにくたびれていた。
 少し大袈裟にマイシスターの解説をした所で、顔が何時の間にか熱くなっている事に気
が付いた。オーマイゴット、私は何を考えていたんだろう。何か、とてもいけない事を考え
ていた気がするんだけど、それを思い出そうとするのは自粛しよう。主に私の尊厳の為に。
 チラリ、もう一回つかさを盗み見る。あらあらあらまあまあまあ、そんな表情は反則だと思
う私はアホですか?
 だって、私が丁度つかさの方を見た時に正にこれ以上にないくらいのタイミングの良さで
つかさと目があったのよ。しかも、それに加えて遠慮がちに上目使いで私を見つめる仕草
と言ったら、図らずともこのまま盗み見るだけじゃなくて本当に盗んで行きたいと思ってし
まうわ。……色んな意味で。
「あの……お姉ちゃん?」
 お願いだから、そんな表情で私を見ないで欲しい。危ないわよ、私の理性が。二人並ん
で住宅街を歩きながら欲情している私ってどうなんだ。健全と言うべきか、それとも変態
か。頼むから前者であって欲しい所だけど、この答えをつかさに聞くわけにも行かず、私
は口を噤む。
 さっき危なそうな思考をしていた気がする、とかなんとか思っていた気がするんだけど、
私は現在進行形でデンジャラスシンキングらしい。少しは自粛しろよ、私の理性。いや、
本能か。
「お姉ちゃん……まだ怒ってる?」
 指を胸の前で絡ませるつかさの姿は私の保護欲をどんどんと駆り立て――別の何か
も同時に――私を次第におかしくしているように思えた。いけない、と分かっていても、こ
のつかさの姿を見ていると否応なしに腕がギリギリと小さな抵抗を受けながらもつかさを
抱きしめようと活動していた。つかさは眼を伏せている。やるなら、今の内。
「その……ごめんね、あんなに笑っちゃって」
「うひゃあッ!」
 我ながら素晴らしい反射神経。何時もの三割増しに敏感だった。つかさの背中に回そ
うとしていた手は、某とっつあんに追われる某派手な泥棒よろしく神速の勢いで私の腰の
横に、気を付け、の姿勢になって留まった。その代償に、私らしくない、いかにも女の子
です、みたいな声を出しちゃったけど。
 つかさがきょとんとしていて、余計に恥ずかしい。眼を逸らして、赤くなった顔を出来る
だけ誤魔化そうとした。その行動がどれだけ無意味なのか分からない私ではないけど、
まあ、要するに何かをしてなきゃ落ち着かなかったから。
「べ、別にもういいわよっ。元からちょっとイライラしてただけで、あれはその弾みと言うか
――」
 何故に私はこんなにどもっているのか、取り敢えず自分を地平線まで殴り飛ばしたく
なったけど、何とか耐える。横には更に顔をきょとんとさせたつかさの姿があって、私の
羞恥心を煽った。ますます上がる体温、膨れ上がる欲望。ヤバい、ヤバすぎる。臨界点
突破、とか叫びたい。
 本当に、何で私はこんな昼間から欲情してんのよ。しかも相手はつかさなのよ。同姓で、双子の姉妹で、そんなつかさに何で浴場してるのよ。
 待て。
 取り敢えず落ち着くんだ私。まずはこの火照った顔を冷やして、昂った感情を落ち着け
て、そしてゆっくりと目を覚ませば、全ては元通りに戻るはず。そうだ、こんな時は深呼吸
が良い。深く吸って、吐いて――。
「お姉ちゃん、大丈夫? 顔赤いし、何だか変だし」
「ぶほォッ! ごほ、げほ!」
370二人だけの交差点:2008/02/16(土) 00:22:45 ID:uKheyegS
 深く吸った息がこんな形で仇となるとは思ってもみなかったわ。こんな不意打ち、全く
の予想外。私にぎりぎりまで顔を近付けて、心配そうに瞳を揺らすドアップのつかさの顔
は私にはクリティカルヒットに会心の一撃を掛けたような壮絶かつ一瞬で昇天出来る幸
せを含んだ破壊力に感じられた。
 もう止めて。私のライフはとっくにゼロだわ。何処かで聞いたようなセリフが頭を過り、
消えて行った。
「ごほっ、だ、大丈夫。うん、ほんと大丈夫だから、気にしないで」
 説得力皆無の私の言葉。せめてもの救いは家がすぐ間近にあった事ぐらいで、私は
漸く平穏を手に入れる事が出来た、と心の中では歓喜の悲鳴を上げて、現実では小さ
く安堵の溜息を吐いた。つかさは納得いかない、といった表情で怪訝そうな視線を私に
突き刺していたけど、気付かない振りを通してやり過ごした。
 つかさには悪いけど、今日は自分を安静にしていよう。精神が凄く磨り減った気がする
し、休みでもしなければどうにかなってしまいそうだ。と、そんな事を考えている内に、自
宅は目の前に迫っていた。
「ただいま」
 出来るだけ早く靴を脱いで、出来るだけ早く自分の部屋に向かう。後ろから、少し不機
嫌気味なつかさのただいまが聞こえた。ごめん、つかさ。全ては私が悪かった。
 少なからず苛立ちをぶつけてしまった事の罪悪感を覚えつつ、私は家の階段を早足で
登った。
「お、あんた今帰ったの?」
 ここでエンカウントとは、神様も随分と意地悪なようだ。それはもう、宝箱を取れる寸前
で雑魚と遭遇して、その後宝箱を開けたら人食い箱でした、みたいなムカつくオチを体験
させられたような感じだ。つまりは、面倒な事この上ない、って事。
「うん、ただいま」
 特に刺激する事は言ってはいけない。そうなれば墓穴を掘ってしまうし、今私が最優先
にやらなければならない事は自室に引きこもって頭を冷やす事だ。まつり姉さんに構って
時間を浪費する事ではない。ただでさえ、些細な事で怒りだすんだから、こんな時に逆
上されては敵わない。
「ちょっと、あんた顔色悪くない? どうかしたの?」
「え?」
「だから、顔。何だか赤いみたいだし、熱でもあるんじゃない?」
 驚いた。この自己中心にして唯我独尊を貫く姉が私を真面目に心配しているなんて、明
日は槍でも空から降って来るのでしょうか。いやいやまさか、何だかんだ言ったって姉妹
なんだし、心配するのも当然よね。逆の立場だったら私だって心配するに決まってる。
「ううん、大丈夫。心配してくれてありがと」
「まあ、それならいいけど」
 そう言ってまつり姉さんは階下へ降りて行った。何事も無くて良かった。今日何度目か
になる安堵の溜息を吐きながら、私は自分の部屋のドアに手を掛けて、中へと入る。馴
れしたんだ部屋の香りが与えてくれる確かな安心感を肌で感じながら、私は鞄を適当に
放り投げて、机に着いた。
 何で私はあの青空が空気の読んでいない色に見えたのだろう。頬杖を着いて、先刻に
思った事について考えてみる。
 そうか――原因は今日の学校生活にあったのかもしれない。私が不機嫌になった理由
は、そこに。
 今は夕暮れの茜色に染まりつつある空を眺め、地平線に段々とその身を沈めて行く太
陽を見ながら、私は記憶の回廊を辿り始めた。
371二人だけの交差点:2008/02/16(土) 00:24:50 ID:uKheyegS
「お姉ちゃんって、好きな人居るの?」
 思わず口から盛大に吐き出しそうになったつかさの弁当のおかずを必死に口の中に
留めると耐えきれない苦しみが喉の奥から襲いかかって来た。派手に数十秒間噎せた
私は息も絶え絶えにつかさが聞いた内容を反復した。
 まさか、つかさの口からそんな質問が飛び出してくるとは思わなかったから。
「す、好きな人って?」
「好きな人は好きな人だよ。男の子とか、気になる人、居る?」
 何故か諭されている私。悔しい気がしてならないけど、ここはグッと堪えて、冷静につ
かさの質問に答える。流石、私。返した言葉はクール極まりなく、微塵の動揺さえ窺う事
は出来なかった――。
「い、いい居ないわよ、そんなの!」
 ――ってのが理想だったんだけど、所詮現実とはこういうものらしい。自分のイメージし
た通りには行かないんだな、これが。私の場合、イメージとかけ離れ過ぎて悲しくさえな
ってくるけど。
「ほんと? ほんとにいない?」
 因みに、ここには何時ものメンバー四人の姿は無く、私とつかさしか居ない。こなたは
一年生たちとの約束があったらしく、みゆきは何でも、黒井先生から何かの手伝いを頼ま
れたらしい。昼休みの始めに、困ったような笑みを浮かべたみゆきの顔が思い浮かぶ。
 そんな訳で、何時も固まっている私達のグループには私達二人しか居ない。つまり、何
時も飄々とした猫口顔で私を冷やかすこなたは此処には居なくて、少し様子がおかしい
つかさの姿も手伝ってくれて、私は何時もよりも素直になる事が出来た。つかさの目をじ
っと見つめて、伝わる想いがあるのかどうか、探ってみる。
 暫くそんな状態が続いた後、つかさは不思議そうに眼を丸くさせただけで、私の想いに
気付いてくれる事はなかった。まあ、つかさも鈍感だしね。私はそう割り切って、椅子の背
凭れに体重を預けた。ギシリ、と、少しだけ軋む音が聞こえた。
「居ないわよ、ほんとに、誰も」
 そう言うと、つかさはみるみる内に表情を明るく輝かせて、いかにも喜んでます、と言った
感じで椅子に座り直した。エヘヘ、と声に出している様には期待しても良いのかしら。ほん
の少しの希望しか抱いていなかっただけに、そう思う。
 そして、そんな事を考えていたら唐突に些細な好奇心が出来た。ポン、と頭から豆電球
が出て来るみたいな、マンガでよくあるみたいに自然と湧いて出て来た疑問を、私はぶつ
けてみる事にした。少しの期待を密かに抱いて。
「つかさは? 居るの、そういうの」
 極々自然な声音で尋ねて、私はつかさの反応を待つ、つかさは一瞬驚いたように豆鉄
砲を食らった鳩みたいな表情を作ってから、ふっと意味ありげな笑みを零すと、言った。
 それは到底予測していなかった出来事で、信じたくない現実だった。
 つかさは、称えた笑みをそのままにうん、と言って頷いた。
「……まじっすか」
「……まじっす」
 愕然とした。男の子がむしろ苦手な部類に入るつかさが誰かを好きになるなんて、思っ
てもいなかった。何時も私の背中を追いかけて来ていた子が、異性を好きになるだなん
て、考えた事もなかった。
 それだけにショックは大きかった。金槌で殴られたような衝撃の錯覚が私の思考をぐ
ちゃぐちゃに混線させる。
 私は茫然自失なな状態になりながらも、「誰?」と、小さく弱々しい声で尋ねていた。
誰だって答える事を拒む質問なのに、それが分からないほど子供ではないのに、私は
当り前のようにその言葉を紡ぎ出していた。
「うーんとね……」
372二人だけの交差点:2008/02/16(土) 00:26:09 ID:uKheyegS
 人差し指を顎に当てて、つかさは暫くの間黙考する。その間に、自分の弁当箱の中身を
見遣ってみると、半分も食べ終わっていなかった。昼休み終了十分前だと言うのに、何時
ものペースからして今日のはかなり遅い。
 午後が辛くなりそうだ、と先に不安を感じている時に、つかさは丁度考え――と言っても
何について考えていたのか――を纏めたのか、笑顔を保ちながら嬉しそうに言った。
「今、近くにいるよ」
「え?」
 慌てて私達の周囲を取り囲んでいるつかさ達のクラスメイトを見まわす。
 後ろ――数人の女の子グループだ。
 右――誰も居ない。窓の外に晴天が広がっているのが分かった。
 左――ここでも、女子数人が話に花を咲かせている。
 前――つまり、つかさの後ろ。騒がしい集団が眼に入る。つかさは分かった? とでも
聞くような目で私を見つめている。少し、体をずらして、つかさの背後を窺ってみると、そ
こには何人かの女子に囲まれて、傍に男子も何人か引き連れて、その輪の中心に居る
人物と、眼が合った。
 顔は、多分格好良い部類に入ると思う。女子の中でも評判は決して悪くなかったと思う。
それどころか、成績優秀、運動神経抜群の誰もが羨むスーパーマンと言う話だ。
「もしかして……」
 震えた声で、確認を取る。指で示したり、名前で示したりはしていない。ただ、雰囲気だ
けで分かるような口振りで言った。否定して欲しかった。冗談だよ、と、つかさらしくなくて
も、冗談だと言って欲しかった。
 でも、つかさは私の期待を裏切って、私の確認に対して肯定の意を示すように微笑ん
で、頷いた。何かが崩れる、そんな音がして、私は視線を手に持っていた弁当箱に落と
した。色取り取りのおかずが、色褪せて見える。
 つかさの後ろで騒いでる集団が、憎く思えた。
「そっか……つかさもそんな年になったんだな、って少し感動しちゃったわよ」
 私は顔を上げて、今日一番の明るい声で、言った。つかさは心底嬉しそうに、喜色満面
の笑みを浮かべながら、その色をより一層濃くさせた。そして、弁当箱からタコの形のウ
インナーを摘み上げて、口の中に放り込んだ。
 耳に付いて離れない、昼休みの終了を告げるチャイムが校内に鳴り響く。私の何かを
終わらせる残酷な鐘の音が私の胸を貫いた。
 黙って、半分以上残っている弁当箱に蓋をして、包み用の布で丁寧に包み、私は席を
立った。授業が始まってしまう、そう自分に言い訳をして、予鈴が鳴ったばかりだと言うの
にこの教室を出て行きたくなった。
「じゃ、私はもう行くわ。次の授業、ちょっとは予習しておかないとヤバいし」
 心にもないウソを吐いて、私は教室の出口へと向かう。一刻も早く、このクラスの喧騒
から逃れたい。私の足は自然と早足になってしまっていた。
「あ、お姉ちゃん」
 教室から出られる寸前、つかさに呼び止められた。私は後ろを向かないまま、つかさの
言葉を待つ。やがて、恥ずかしそうに躊躇いながら、つかさは言った。
「今日、一緒に帰ろうね」
 手を振って、了解すると、私は自分の教室へと戻った。正直に言えば、冗談じゃないと
思った。私に対しての当て付けなのか、とも思ったし、断ろうとさえ思った。でも、私は承
諾した。それは、未練がましい私の体が自然と選んだ選択肢なのかも知れない。元々有
り得ない話であったのに、私は馬鹿だ。
 窓の外に見えた景色は、私には場違いな澄み切った蒼だった。



 ゆっくりと、意識が現実へと戻って来る。とっくに夜の帳が降りた外の景色は漆黒に包
まれていて、何も映さない。ただ、寂しさを感じさせるほどに孤独に見えた月が、漆黒の
海を切り裂く光を発しながらぼんやりと浮かんでいた。
「かがみー、ご飯、出来たわよー」
 階下からお母さんの声が聞こえた。行かなくてはならないのは分かっていたけれど、
こんな時に限って体が倦怠感に包まれて、上手く動かせない。それでも、重い体に鞭を
打って、私は一階へと向かう。
 また、つかさの笑顔を見なくてはならないのか、と思うと途端に倦怠感が増した気がし
た。
373二人だけの交差点:2008/02/16(土) 00:28:22 ID:uKheyegS
「どうしたの? あんた、さっきよりも具合悪そうになってない?」
 一階に着いて、食卓の席に座ると、誰より先にまつり姉さんが私を気遣った。心配してく
れるのは嬉しかったけど、今は放って置いて欲しいのが本音だった。
暫くすれば治る、そう楽観的に考えていたから。
 まつり姉さんに続いて、いのり姉さんやお母さんお父さんまで心配して来て、私は大丈
夫と言い張るしかなく、食欲はあまり無かったけど、ちょこちょことご飯を突いていた。
 何時もよりも暗い雰囲気の食卓で、つかさは一言も話さずに、ただ私の事をじっと見つ
め続けていた。
「ごちそうさま」
 何とかお椀によそられたご飯を食べ切り、おかずもそこそこお腹に入れて、私は自分の
分の食器を流しへと持って行った。とにかく、今日は早めにお風呂に入って、何もかもを忘
れて眠りに就きたい。私は早々にリビングからお暇すると、着替えやら何やらを持ってお
風呂場へと向かった。
 衣服を全て脱いで、適当に洗濯機の中に入れて、私は何となく鏡を眺めてみた。まつり
姉さんが言う通り、少し疲れた表情をしているかもしれない。余程。昼間の出来事が精神
的に堪えたのだろう、それが一目で分かる表情だ。
 暫くぼーっとしていたら、寒気が急に襲って来て、何でこんな所で素っ裸で佇んでいる
んだろう、とか自分が行っていた行動に腹を立てつつ、私はお風呂場の中に足を踏み入
れる。まだ誰も入っていないお風呂場は、寒かった。
 蛇口を捻って、お湯を出そうとしたら、最初は普通に水しか出なかったので、お湯に変
わるまでの間、暫く待つ事にした。閉め切られたお風呂場のタイルに、シャワーが打ちつ
ける音が響き、反響しては私に耳に五月蠅い音を届けた。
 中々水がお湯に変わらない。未だ出て来る透明な液体は冷たいままだ。いい加減イラ
イラしてきて、私は忌々しげに溜息を吐く。それと同時――お風呂場の扉がいきなり開け
放たれた。
「は?」
 一瞬、状況が読み込めず、私の頼りない脳は暫くの間思考を停止する。そこに立って
いたのは、バスタオルを胸まで巻いた、まつり姉さんだった。対して素っ裸の私。幾ら家
族で同性だからと言っても、背筋から這い上がる羞恥は抑えられなかった。頭に血が上
る感覚と共に、顔がとてつもなく熱くなった気がした。
「あんた、ガス付けてなかったわよ? 水でも浴びるつもりだったわけ?」
「う、うるさいっ! 大体何でまつり姉さんがこんな所に居るのよ。今は私が入ってる真っ最
中なんだけど」
「うん、だから一緒に入ろうかと思って」
「はァ?」
 いまいち意図が読み取れない。つまりは一緒にお風呂に入る、という事なのだろうけど、
なんの為にそんな事をする気になったのか、意図が図りかねた。取り敢えず、まつり姉さ
んがガスを付けといてくれたっぽいから、試しにシャワーから出ている液体に触れてみる
と、それは暖かかった。
 すっかり寒くなってしまった体にシャワーを掛けると、心が洗われるような気分になって、
とえも気持ちが良い。今の訳の分からない状況も忘れられる気がした。
「あたしも寒いんだけど」
「入って来たタイミングが悪かったのよ」
 大体、私はタオルすらしてないんだから、少しは我慢してもらいたい。私は一通り体をお
湯で温めると、まつり姉さんにシャワーを渡して、シャンプーを手に取った。数回プッシュ
して、手に乗せたシャンプーを頭へと。それはたちまちに泡立って、私の髪の色を白くし
た。
374二人だけの交差点:2008/02/16(土) 00:29:40 ID:uKheyegS
「じゃあ、たまには背中ながいてあげようかな」
「は? 別にいいわよ。それぐらい自分で――」
「はいはい、文句言わない。人の好意は黙って受け取りなさいよねー」
「……」
 はあ、と溜息を一つ落として、私は頭を洗う。どちらにしろ、手間は減るのだし、任せて
も悪くないかもしれない。それに、姉妹でこうやってお風呂に入るのも悪くないかもしれ
ないと、私は、背中に当てられたタオルの感触を心地よく受け取りながらそう思った。




「で、何かあったわけ?」
「……」
「ちょっと、黙らないでよ。それ聞いてあげる為に来たのに」
「だからってね……こんな事をする必要がありますか」
 今の状況。湯船に浸かる私と姉さん。うん、ここまでは全然オッケー。じゃあ、次に、私
達はどんな体制で湯船に入っているか。
 元々、柊家のお風呂はそこまで広くないし、湯船は一人でも足が伸ばせないくらいだ。
それなのに、私より体が大きいまつり姉さんと私が何故に一緒に入れているか。そんな
のは思いつく限りで一つしかない。そもそも、思いつく以前に既に実行されているのだか
ら何も言えないんだけど。
「だって、こうでもしなくちゃ一緒には浸かれないでしょ」
 全くその通り。だから私も大人しくこうやってしている。
 ……まつり姉さんに抱きかかえられる格好で。お風呂に入っている所為だけじゃなく、
別の意味――主に羞恥――で顔が熱い。背中に感じるまつり姉さんの豊かすぎってくら
いの胸が直に当たっていて、何とも言えない柔らかさを提供している。これだけでも顔か
ら火が出るくらい恥ずかしいのに、まつり姉さんの腕が私のお腹に回されているとなって
は余計に恥ずかしい。まるで、幼子に戻ったみたいな感覚だ。
「で、何かあったんでしょ。話してみなよ」
 対して、恥ずかしさなど微塵も感じていないのか、何時も通りの調子でまつり姉さんが
尋ねて来る。私は水面に映る自分の顔を見つめて暫く考えたあと、そのままの状態で話
し始めた。何故だか、まつり姉さんになら話しても大丈夫な気がした。
「なんて言うか、その……間接的に振られたと言うか……」
 歯切れ悪くなってしまうのは、相手が相手だからだろう。流石に事情を一気に全て話す
気にはなれなかった。まつり姉さんは、マジで? とか呟いた後、私が此処でウソを吐く
意味は無いと悟ったのか、腕に力を込めた。
「えーと、誰に?」
「……そ、それは……その……」
「言った方が、楽になると思うけど」
 まつり姉さんが言う事も分かるけど、それを受け入れてくれる確証が無い以上、その相
手を言うのは憚られた。それでも、一人で溜め込む事の辛さは嫌と言うほど、今日の午
後の授業で味わった所為か、私はポツリポツリと話しだしていた。私の好きな人を、その
名前を。
「……さ」
「え?」
「……かさ」
「……えーと、よく聞こえないんだけど」
「……つかさ」
 何回かの同じやり取りが続いた後、私がはっきりと伝えると、時が止まった。
 天井から滴る水滴が湯船に落ちる度に波紋が広がって、私の体に当たる。
 たっぷり数十秒、私に不安を与える間を空けて、まつり姉さんは唐突に笑いだした。そ
れは大爆笑と言って差し支えない、豪快な笑い方で。
「意味が分からないんだけど。何でそこで笑うのよ」
 普通はもっと深刻なシーンになると思うのだけど、まあ、この人に深刻なシーンなんて
似合わないか、と自己完結しつつ、それでも怪訝な視線は変わらず、私は出来る限り首
を後ろに向けてまつり姉さんを睨もうとした。しかしながら、角度的にも人間には限界が
あるもので、私は耳元で姉の馬鹿笑いを聞く羽目になった。
375二人だけの交差点:2008/02/16(土) 00:30:32 ID:uKheyegS
「あ、あんた……ぷぷっ!」
 だからそこで噴き出す意味が分からん。ふざけているのかからかっているのかはっきり
して貰いたいんだけど、それはそれで腹が立ちそうだ。
「ま、まあ、そんなに気にしなくても良いわよ。なるようになるって」
「はあ?」
 今日のまつり姉さんは本当に訳が分からない。なるようになる、って一体何が? 今日
何回目だろうか、盛大な溜息を思い切り吐き出して、私は眼を閉じた。
 ――もしかしたら、まつり姉さんに話したのは墓穴だったか?
 とか、失礼な事を思ったりしながら。まあ、気分転換にはなったけど。
「じゃあ、お遊びタイムと行きますか」
「は? ちょ、何すんのよ! って、そこは……っ!」
 突然胸に感じた違和感に、瞑っていた眼を更に堅く瞑る。まつり姉さんの手が、卑屈な
動きで私の胸を水中で弄んでいた。意識している訳でも、そこまで欲望を持て余してい
るわけでもないのに、口からは嬌声が出てしまう。
 風呂場の外に聞こえないように抑えたのに、狭い密室であるここでは小さな音も大き
い音になってしまうので、私は声を抑えるのに必死になっていた。
「ほらほら〜、どう?」
「くっ……ちょ……ほんとに、冗談やめてよ……!」
 必死の抵抗を試みるも大した効果は得られない。それどころか。まつり姉さんの悪戯
心を煽ってしまったらしく、まつり姉さんは悪戯っ子みたいな笑い方をして、その行動を
更にエスカレートしていった。
 熱い湯船の中で、体が溶けてしまいそうな感覚。まだ慣れないその感覚に身悶えしな
がら、私はまつり姉さんの愛撫に耐えていた。
 そう、姉さんの気が済むまで――。



「やられた……」
 ヤバい意味ではなく、してやられた、という意味で。お風呂から上がる時に浮かべたま
つり姉さんの意地悪い笑顔が瞼に焼きついたようで、瞬きする度にその笑顔が見えてし
まう。で、その度に腹が立っている訳で。
 私は自分の部屋で、湯上りの所為だけじゃなく、別の意味でも火照った体をどうするか
考えあぐねていた。
「何でこんな中途半端な……」
 私だって、その、そういう行為をした事がないわけではない。だからこそ、これからどう
するかを考えているのだけど、いざ決断しようとなると、どうしても私の中の何かがそれ
を邪魔してしまうのだ。
 元はと言えば、お風呂場であんな悪戯をしておいて、物凄く中途半端な所で止めてくれ
た忌々しい姉に全ての非があるんだけど、またあの姉に会いに行ったら何をされるか分
かったものではないし、進んで行きたいとも思わない。
「あー、このままじゃ眠れないじゃない……」
 ベッドに座る。体が熱い。何時もはお風呂から上がるとすぐに冷めてしまって、寒ささえ
感じるほどなのに。今は布団に入りたくないくらいに体が熱い。とてもじゃないけどこの状
態で安らかな眠りに就けるとは思えなかった。
376二人だけの交差点:2008/02/16(土) 00:31:47 ID:uKheyegS
「あの、お姉ちゃん……。入って良い……?」
 ふと、部屋の入口から控え目な声が聞こえた。
 つかさだ。けれど、何かが違う気がする。何か、声が熱っぽいような――そんな違和感
だ。気になるほどではないのだけど、どうしても引っ掛かった。
「良いわよー」
 それにしても、今の私の状態でこの状況、私は耐えられるのだろうか。いや、私が、じ
ゃなくて私の理性が。絶対大丈夫と言える確証がないだけに、自分が自分で怖くなった。
「あ、ごめんね、こんな時間に……」
「良いわよ、別に」
 時計を見ると、短針が丁度11を指し示す頃だった。つかさはお風呂から上がったばかり
なのか、頬を赤く上気させて、熱そうな吐息を小さな唇の間から切なげに漏らしていた。
ヤバい、お願いだから耐えてくれ、私の理性。
「あの、ね、今日の事なんだけど……」
 瞬間、昂りかけていた私の感情がサーっと水を掛けられたみたいに一気に熱を失うの
が分かった。『今日の事』それは紛れも無く、つかさの好きな人について、の事なのだろ
う。忘れかけていたのに、折角全部忘れようとしたのに、嫌な気持ちも、全て思い出して
しまった。
 そのお陰か、私の理性は強靭になったみたいだけど。
「私の好きな人、誰だと思う?」
「……っ」
 もう、聞かないで欲しかった。つかさが好きだと言った、あの男の人を思い出したくな
かった。物音が私達の声以外に何も聞こえない家の中、つかさの声はあまりにもよく
通っていて、嫌でも私に届いてしまった。つかさの口から、他の人の名前が出るのさえ
嫌なのに、聞かない、と言う選択肢は用意されていなかった。
「……あの……つかさと同じクラスの、カッコイイ人でしょ。何でも出来る、って言われ
てる……」
 つかさの顔は見ないで、私は言った。間違い無い事だと思っていた。だって、昼間に
私が示した人物は確かにあの人で、つかさは頷いたから。明確な示し方なんてしなか
ったけれど、つかさになら伝わっていると思うから。
「違うよ」
 つかさは余りに早く、そう言った。即答なんてものじゃない。まるで、予め私が言う事
が分かっていたみたいに、私が言い終わる前よりも早く言われたような言葉だった。十
分な意外性を持ったそれは、私の頭の中を揺さぶるには申し分ない威力を持っており、
私は茫然としながらつかさを見つめた。
 真摯な、つかさの瞳が細められる。優しい笑顔が、私の大好きな優しい笑顔を浮かべ
たつかさが、後ろで手を組みながら私に微笑みかけていた。
「私、お昼休みの時に、お姉ちゃんが正解を言ったのかと思って、嬉しかった。でも、お
姉ちゃんはあんまり嬉しそうじゃなかった」
 そうだ。想っている人に、私以外に好きな人がいるなんて聞かされれば、誰だって不
機嫌を隠すのは難しくなる。私だって例外じゃなかった。素直なままに、感情を表面に出
してしまった。
「だって、お姉ちゃんは私の事を見てたって、私の事を指してたって、そう思ったんだよ。
眼も合ったし、きっとそうなんだろうな、って」
 眼を見開いた。つかさは相変わらず穏やかな表情で私を見つめている。
 じゃあ、私は勘違いをしていた? つかさとは意思の疎通が図れているだなんて奢り
を持っていた所為で、全く違う事を考えていた?
 だとしたら、全ての辻褄が合う。あの後、つかさが凄く嬉しそうにしていたのも、私に怒
られてあんなにしょげていたのも、全て。
「私が好きな人、お姉ちゃんだよ」
 私が全てを理解する前に、つかさは言った。微塵の動揺も見られない、凡そ、つかさ
とは思えないほどに毅然とした態度で、つかさは私の眼を見つめながら、はっきりと伝
わるように、そう告げた。
 口が開かない。言いたい事は沢山あるのに、それを言葉に出来ない。
 心臓が、痛い。痛いくらいに、暴れ回っている。今、この静寂に満ち満ちている今なら、
この動悸の音がつかさにも聞こえるんじゃないか、とまで思った。
「お姉ちゃんは……どう、かな」
377二人だけの交差点:2008/02/16(土) 00:32:51 ID:uKheyegS
 つかさが一歩一歩、ゆっくりと私に近付いて来る。私はベッドに腰掛けたまま、動けな
い。体を針で縫いつけられたみたいに、その場から体を動かす事が出来なかった。そん
な中で近付いてくるつかさの笑みは、酷く妖美で艶やかだった。
 湿った髪も、心なしか潤んだ瞳も、赤く上気した頬も、濡れた唇も、その全てがつかさ
の可愛らしさではなく、美しさを際立てている。
 私は、息を呑むようなその光景に眼を奪われて離す事が出来なかった。
「私も……好き。つかさが、好きよ」
 目尻から何かが落ちた気がした。心が、満たされた気がした。体が、求めている気がし
た。何かが、壊れる音がした。
 体が急速に熱を取り戻す。冷めていた内面も、煮えたぎっていて、苦しいくらいに切な
かい。つかさはすぐ目の前にいる。全てが愛しく、全てを求め、全てを求められている気
がした。
 気付けば、私の目の前には私と同じ、濡れた水晶のような目があって、両頬には暖か
い手の感触があって、唇には熱いものが押し付けられていた。蕩けるような甘い口付け
を、二人で気の済むまで堪能して、私達は顔を離す。
 つかさの顔は、さっきよりも赤くなっていた。
「つかさ……」
 名前を呼ぶ。
 私の片割れとも言える妹の名を、囁くように。
「お姉ちゃん……」
 名前が呼ばれる。
 脳を溶かすような、甘い声が耳から入って、脳髄を刺激する。
 もう、私達は止まりそうになかった。気持ちは溢れ出して、感情は抑えられなくて、それ
ら全てがこの行為へと繋がっている。後悔なんてない。私は今この瞬間を最高に幸せ
だと感じている。今は、それだけで十分だ。
 私は、つかさをベッドに寝かせ、私を誘うかのように揺れる瞳と、震える唇に導かれる
がままに自分の唇をつかさのそれに重ねた。
 先ほどのとは比較にならないほどに、濃厚で、甘いなんて領域を超越した何かが脊髄
を走り抜ける。舌が絡み合う度に鳴る、水音も、私達を昂らせる媚薬にしかならない。ど
ちらのものかも分からない唾液が入って来る度に、もっと欲しくなる。
 私達は、飽きもせず、互いで互いを求め合った――。









――end
378双子の兄:2008/02/16(土) 00:35:52 ID:uKheyegS
投下完了。
最初と最後の方の描写のギャップは仕様です。
後からどんどん落ち込んで行く、みたいな感じにしたかったので。
違和感あるかも……とは思いますが、読んでくれた方に感謝します。

因みに、俺にはここまでが限界です。
此処から先は俺には荷が重いかもしれない……orz
379名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 00:54:18 ID:Y7b0bCSB
>>378
何 故 そ こ で 終 わ る


…というのは冗談です。
いいもの読ませてもらった。GJ!
380名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 01:00:21 ID:2O6HKHTe
GJしてもGJしきれないほどのGJ!

自分が書いてるかがみとつかさのSSが霞んで消えてしまいそうな出来でした
というか、もう消えてそうです。
こんな甘々な話、書けたら書きたいよ…
381名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 01:04:19 ID:aP9j5J5Y
GJ!!!
だが
なんという放置プレイ!!!!
382名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 01:11:19 ID:TPVPhXAV
>378
GJ!
かがみの心理描写が綿密だったように思います。
まつり姉さんとの入浴シーンは、エッチシーンでないにも関わらず、色気がありました。
気になったのは、難しい表現が多くて、今ひとつ作品に入り込めなかったのと、
誤字が少なからずあったことです。
あと、ここで終わらせるのは反則ですねw
383名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 02:11:30 ID:jG5sw0l2
ふとTSものでかがこなバレンタインものを書こうと思った
けど、うまくできなかったから脳内にとどめておく
384名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 02:17:37 ID:blhuk7CQ
>>353
あれ?あれあれ?

このひねくれものめw
続きを全裸待機チュ
>>378
非エロってw
文体はもはや個性だから、このスタイルでいいんでない?
と、会話文主体でしか書けないオイラが言ってみる。

で、続きは?
書きっ放しは、お父さんゆるしましぇん。
385名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 02:19:58 ID:ijiODCq+
>「……まじっすか」
>「……まじっす」

いいなあ、これ
386名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 02:41:55 ID:GYmOcW7O
>>353
相変わらずの鬼畜ぶりww
GJっした!

最後のはつまり、自殺だと存在できなかったってこと?
387名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 03:13:21 ID:dd5AKWeA
>>353
GJ!!やっぱり三人目はみゆきさんか…
状況だけ見れば確かに自殺のように見える。
けど「浮いた」ってが何か引っかかる。やはり他殺説が拭いきれないですの。
どこかで何かに繋がりそう…けど頭ン中で繋がらないー!
…まだ何かが残ってるのは確実かな。
さ、次を待つのです!
38826−598:2008/02/16(土) 04:27:44 ID:exE9O192
どうも、26-598です。
バレンタインssを書いてたはずなのに、かなり遅れてしまいました…orz
でも悔しいので一応投下しときます。
こなかがもので、今までよりちょっと長いです。
389こなたのチョコ:2008/02/16(土) 04:28:41 ID:exE9O192
「ふんふんふ〜ん♪」
「あ、お姉ちゃん。何やってるの?」
「お〜、ゆーちゃんまだ起きてたんだ?」
「むー、まだ9時だよう!お姉ちゃん子供扱いしすぎ〜!」
「あはは〜、ゴメンゴメン♪」
「も〜。…それで、何してるの?」

現在時刻は2月13日、午後9時を少し回った頃。
私は今、日課となっているネトゲもしないでキッチンに立っていた。
その理由は、
「ふっふっふ、もちろんチョコレートを作ってるんだよ〜」
「ええ、すご〜い!お姉ちゃんは手作りチョコ渡すの!?」
「そだよ〜♪私の愛がしっかり伝わるようにね♪」
「あ、愛……。お姉ちゃんって好きな人いたんだ…?」

顔を真っ赤にして、モジモジしながらゆーちゃんは私に尋ねてきた。
いいね〜、すごく可愛い!萌えるね〜!
まあ、ゆーちゃんの考えてるようなことじゃないんだけどね。
「ん〜、男の子にって訳じゃないけどね。私があげるのは、私の嫁にだよ〜」
「えっ?お嫁さんってもしかして…かがみ先輩のこと?」
うおっ、一発で気付かれるとは…もしや既に公認の仲に!?
むふふ〜、日頃から『かがみは私の嫁!』って言い続けた成果かな?

ゆーちゃんと話しつつ、私はチョコを完成させていく。
固める前の最後の仕上げとして、特別な液体を加えて、と…。
ふふふ、これを食べたかがみは…!
想像しただけでも笑いが止まらないね♪
390こなたのチョコ:2008/02/16(土) 04:29:07 ID:exE9O192
「よーし、完成!後は冷やすだけだ〜」
私の愛を込めたチョコを冷蔵庫に入れた私は、気になっていたことを尋ねてみることにした。
「そういえばゆーちゃんは誰かにチョコとかあげないの?」
「えええっ!?わ、私にはそんな人いないよ〜」
またもや顔を赤くして、首をブンブン振りながら否定するゆーちゃん。

「いや〜、私みたいに相手は男の子じゃなくてもいいんだよ?たとえば〜、……みなみちゃんとか?」
「み、みなみちゃん、に…?」
顔を真っ赤にしたまま何か考え込むゆーちゃん。
きっと今、ゆーちゃんの頭の中ではみなみちゃんとのラブラブなお話が展開されてるんだろね♪

「お姉ちゃん、私もチョコを作るよ…!」
しばらくして、ゆーちゃんは決意に満ちた顔で私にそう告げた。
そうこなくっちゃ!
「よ〜し、私にまかせたまへ〜」
こうして、私が作ったものと同じチョコの作り方をゆーちゃんに伝授し、日付が変わる頃に寝床についた。
決戦は明日だ!待ってろよ〜、かがみん!

そして翌朝。
久しぶりに早起きした私は、いつもよりかなり早く学校に着いた。
うう、興奮して待ちきれなかったなんて、どこぞのギャルゲのへたれ主人公みたいだね…。
よし、とにかくかがみにチョコを渡すまではいつもどおりの私でいないとね!

「まったく…。毎年思うんだけど、一年の中で今日だけはえらく空気が色めくわね…」
「そだねー、今日はバレンタインデーだからね」
「そもそもバレンタインというのは(ry」
時はあっという間に流れ、昼休み。
私たちはいつもどおり四人で昼食をとっていた。
みんなの話を聞き流しつつ、私はどうやってかがみにチョコを渡そうか考えていた。
むむ、渡すときのシチュはあまり考えてなかったからなあ…。
391こなたのチョコ:2008/02/16(土) 04:29:45 ID:exE9O192
「そ、そういえばこなたは誰かに渡さないの?」
おお、大チャンス!
かがみからわざわざそんな風に聞いてきてくれるなんて!
素早くこれからの展開を計算し、最適な返答を導き出した私は、少し真剣な顔でかがみに答えた。

「うん、今年は本命チョコをあげるつもりだよ」
「えっ、アンタが!?で、でもどうせネトゲ仲間とかにでしょ?」
「ううん。この学校の人だよ。私の一番大切な人にあげるの」
「……。そ、そうなんだ…」
悲しげに顔を歪ませ、俯くかがみ。
くあ〜〜〜〜っ、可愛い!
すぐにでも抱きしめて告白したいけど、ここは我慢の時だ…!
こうしてさらに時間が過ぎていった…。
その間につかさやみゆきさんからチョコを貰ったけど、特に気にするようなことでもないので詳しくは述べない。

「ねえ、ゆきちゃん…。私たちの扱い、なんかひどくない?」
「そうですね…これでは私たちは、さながら背景ですね」
「バルサミコ酢!?」
「そもそも背景というものは(ry」
「どんだ(ry」

放課後、誰もいない教室で私はかがみと対峙していた。
ここに至る経緯は、説明がメンドイので省略する。
とにかく、ついにかがみに告白するときが来たんだ…!

「いったい何なのよ、こんなとこに呼び出して」
かがみが私に尋ねる。
昼休みの会話イベントのおかげか、私の意図には気づいていないようだ。
「実はかがみにね、大事な話があるんだ…」
「な、なによ…?」
いつもの猫口もやめ、真剣にかがみに話しかける。
392こなたのチョコ:2008/02/16(土) 04:30:27 ID:exE9O192
「これをかがみに受け取って欲しい」
そう言って差し出したのはもちろん、私の手作りチョコ。
「こ、これを私に…?それってまさか…」
「とりあえず食べてみてくれない?私、一生懸命作ったんだ…」
「う、うん」
そう言って、チョコを食べるかがみ。
…計画通り。
私はニヤニヤしそうになるのを必死にこらえた。

「おいしいわね、このチョコ」
「うん、かがみのことを想って作ったんだ」
「こなた…」
「私は、かがみのことが好き。かがみは私のこと、どう思ってるの…?」
ついに私は、かがみに告白した。
これも計画通り。
…だけど、かがみがOKしてくれるか、少し不安だ。

「こなた…、私も、その…。こなたのこと、好きかも…」
「本当にっ!?やった〜〜〜〜!」
ああ、世界が輝いて見えるヨ!
顔を真っ赤にして、『好き』の後に『かも』とかつけるのもかがみらしくて物凄く可愛いね♪
「かがみ〜〜〜〜ん♪」
「ちょ、ちょっとこなたあっ!?」
我慢できず、私はかがみに抱きついた。
ああ、幸せえ…。

どのくらい抱き合っていただろうか。
かがみの腕の中から見上げると、かがみは切なそうな表情で顔を赤くしていた。
ふふふ、効いてきたみたいだね。
「こ、こなたあ。私なんだか…」
私を抱きしめたまま、身じろぎするかがみ。
私はゆっくりとかがみに覆いかぶさり、服を脱がせ始めた。

「あっ、やめなさいよ…」
「かがみ…んっ」
「んむ!?あ…、ん……」
弱々しく抵抗するかがみをキスで黙らせ、私はかがみの体を弄る。
「あひゃっ!?な、なんでこんなに…ああんっ」
「なんでこんなに感じるのかって?ふふ、さっき食べたチョコにね、あるものが入ってるんだ…♪」
「えっ、それって…んんっ」
「さ〜て、どうかな〜?まあとりあえず、一緒に気持ち良くなろ♪」

こうして私とかがみは、夢のような時間を過ごした。
393こなたのチョコ:2008/02/16(土) 04:31:42 ID:exE9O192
「まったくかがみんはエッチだなあ〜、あんな風になっちゃうなんてさ〜」
数十分後、私たちはすっかり暗くなった道を歩いて帰宅していた。
「あ、あれはアンタが変なもの入れたチョコを食べさせたからでしょっ!私のせいじゃないわよ!」
「へんなもの?あれ、ワインは入れたけど、エッチになっちゃうような薬はいれてないよ〜」
「ええっ!?」
そう、私はあのチョコには特に変なものは入れていない。
かがみの体が火照ったように感じたのは、アルコールのせいなのだ。
すべてかがみを素直にさせるための作戦ってやつだね♪

「かがみんは本当はエッチなんだよ〜。大丈夫、そんなかがみんも私は愛してるからね♪」
決まった、完全に作戦成功だ。
これで完全にこなた攻め、かがみ受けの関係が成立したはずだ。
ついに私はこなた総受けの風潮を止めたんだ…!
あとはかがみが『ち、違うわよ!私はそんなんじゃないんだからね!?』とかいう風に否定してくれれば完璧だ。

しかし次のかがみの台詞は、私が考えていたものと大きく異なっていた。
「そっか…。私ってエッチなんだ。で、こなたはそんな私が好きなんだ…」
「ふえっ、あれえ?」
「なーんだ、じゃあもう我慢する必要ないじゃない」
「ど、どしたのかがみ?」
私を見つめるかがみの顔は、怖いくらい満面の笑みだった。

「こなた」
「な、なに…?」
身の危険を感じ、一歩下がる。
「こなたあああああああああああああああああああっ!」
「うにゃああああああああああああああああああっ!?」
かがみにいきなり襲い掛かられた。何このイベント!?

「はあう〜可愛い〜お持ち帰り〜〜〜♪」
「ちょ、かがみ、一体なにーーー!?」
「こなた…、たっぷり可愛がってあげるからね(はあと)」
「えええええっ!?だ、だから私は攻め希望なんだってば〜〜〜〜!理不尽だ〜〜〜〜〜〜〜!」
そして私はそのまま柊家に連れ込まれ、一晩中責められ続けた。
うう、どうしてこうなるの…?

余談ではあるが、ゆーちゃんも何故かその日は家に帰ってこなかったらしい。
39426−598:2008/02/16(土) 04:35:23 ID:exE9O192
以上です。
う〜ん、長めになったと思いましたが、投下してみるとそれほどでもないですね。
誤字、脱字等があるかと思いますが、ご容赦を。
395名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 05:46:21 ID:dd5AKWeA
>>394
GJ!やはりかがみは一定ラインを超えると暴走するなw
ゆーちゃんも帰ってこなかったってことは、同じ末路をたどったか?
ニヤニヤが止まらないwww
396名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 05:52:12 ID:maKsF6aq
>>394
かがみエロ過ぎGJ
ゆたみなも読んでみたい…。
397名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 06:08:33 ID:McisLlB9
>>394
ゆたか視点+かがみ視点を容赦無く希望する!



いや、デレラインを越えたかがみはどう思ってるのかな〜って。

「私・・・さながら・・・・・・背景・・・・・・・・・」(ペタペタ)
398名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 08:52:50 ID:NoRedy6a
>>394
あなたの作品の〆に出てくる
「うにゃああああああああああああああああああっ!?」
が妙に好きw
399名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 10:01:58 ID:9sSFVLuH
>>394
一言で言おう。

ご  馳  走  様  w

ああ、暴走かがみはいいなあ。ぐっじょぶ。
400名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 10:44:08 ID:SibBxwP3
>>394
攻めを企むが、予想外の展開で攻められるこなたの話はいつも楽しませていただいてます。
401名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 12:29:42 ID:stwkiebT
2月14日

かがみ「あんたいつもチョココロネよね? たまには他のも食べなさいよ」
こなた「好きだからね。お弁当とか面倒だし」
かがみ「しょうがないわね。ほら、おかずわけてあげるから」
こなた「恵んでもらわなくてもいいよ」
かがみ「それならあんたのチョココロネ私に分けて。
     ……あんたが恵んでもらうのがイヤだっていうから交換にしたんだからね!
     別にあんたのチョコが目宛てなわけじゃないわよ!」


こんな電波を遅れて受信した
40236-273:2008/02/16(土) 16:14:08 ID:ksHqsQic
まずは、>>394GJ!
やっぱり、かがみは攻めの方が合いますね。

そんな職人さんの後で、恐れ多いのですが、自作を投下したいと思います。
・つかさ&みゆき
・「憧憬が好意に変わる瞬間」の続編
・エロなし
・TSもの注意

では、行きます
403木枯らし一号:2008/02/16(土) 16:14:37 ID:ksHqsQic
 その日、私は一人で帰った。
 こなちゃんとお姉ちゃんには悪いけど、何となく一人で帰りたかった。
 帰って、自分の部屋で考え込んでみる。
 ええと、初めてであったのは、入学式の日のホームルームだよね。今思い返せば、懐かしい。
 それからは、あまり関わりがなかったんだよね。私は内気な性格なのに、高良君の周りにはいつも人がいたから・・・。
 でも、今日、久しぶりに長く話すことが出来た。それから、私は胸に何かがつっかえたような気がしてならない。
「はぁ・・・」
 自然と溜息が出ちゃった。・・・一体、私はどうなっちゃうの〜?


―――


「いただきまーす」
 家族4人の合唱で、私たち、柊家の夕食が始まった。
 今日は、みんな大好きカレーライス。シンプルだけど、おいしいんだよね〜。
 ちなみに、いのりお姉ちゃんと、まつりお姉ちゃんはお友達と外食する、と言っていたから、今はいない。ちょっとだけ寂しい。
「そういえば、学園祭が近づいているみたいだけど、二人とも順調かな?」
 ふと、お父さんが食事中にそう聞いた。
「ん、大丈夫。準備は予定通りに進んでいるから。
 つかさたちのクラスはどうなの?」
「え? あ、うん、その・・・」
 学園祭・・・と言われると、嫌でも彼のことを思い出しちゃう。
 自然と、口から出る言葉は、歯切れが悪くなっていた。
「ま、まあ、その・・・順調、だよ?」
 何とか笑顔を取り繕って、答えた。
「・・・つかさ。何かあったのかい」
 でも、それはすぐにお父さんに看破されちゃった。
 お父さんの顔は、いつもどおり穏やかに見えたけど、眼光が鋭いような気がした。これって気のせい・・・だよね?
「え!? い、いや、何でもないよ?」
「つかさ。何か、悩みがあるならいいなさい。私たちは家族だろう?」
 お父さんの言葉が胸に刺さる。活字だけだったら、穏やかに見えるけど、お父さんの声には有無を言わさぬような力強さがこもっていた。
「つかさ・・・。やっぱり、何かあったの? 今日も、一人で帰ったみたいだし・・・」
 お姉ちゃんも、追い討ちをかけるように(本人はそう思ってないだろうけど)、言った。
 お母さんは、不安げな顔でこちらを見ている。
 私は俯いて考え込んでしまう。でも、こんなことで悩んでいるなんて言うのも何だか馬鹿馬鹿しい。
「ううん、本当に何でもないの。
 そ、それより、早く食べようよ! ・・・ね?」
 だから、私はさっきと同じように笑顔を取り繕った。
 すると、他のみんなは顔を見合わせたけど、
「・・・まあ、つかさがそういうのならいい」
 お父さんがそう言って、会話は一旦終了した。
 その後は、いつもと変わりない穏やかな会話が続いたから、ほっとした。
 良かった。こんなことで、みんなを困らせたくないもん。
「ごちそうさま〜。じゃあ、私は部屋に行ってるね」
「あ、つかさ・・・」
 お姉ちゃんは、何か言いたげだったけど、私は食べ終わると、すぐに部屋に引っ込んだ。
 今日は、何だか色々と疲れた。お風呂に入って、さっさと寝ちゃおう。
 ・・・うん、眠れば、嫌なことは全部忘れられるもん。
404木枯らし一号:2008/02/16(土) 16:15:18 ID:ksHqsQic
―――


「・・・あなた。いいの?」
 かがみとつかさが、部屋に戻るのを確認すると、みきが話を切り出した。
 すると、ただおは、
「無理強いして聞いても仕方ないよ。悩み始めたのも、今日が初めてのようだしね。
 自分の中でも、まだ整理がつかないんだろう。今は、落ち着いて様子を見ようと思ってね」
 穏やかに、だが力強い声で言った。
「・・・そうね。あの子も、お年頃だもの」
「ふむ。まさか、色恋沙汰にでも・・・」
「そうだといいわね」
「・・・そうかね」
「あら、嬉しくないの?」
「娘の幸せは願いたいが・・・父親として、ちょっと複雑だな」
「まあ、別にそう決まったわけでもないもの」
「・・・そうだな。
 それに、私は、つかさが幸せであればそれでいい」
「その通りね」
 みきは、ふふふと言って微笑んだ。



―――


「おはよう、こなちゃーん」
「おーす、つかさ他一名」
「略すな! つーか、むしろ、文字数多いし!」
「まあまあ、気にすることないじゃーん?」
 翌日。いつもの賑やかな朝が始まった。
 きらりと光る太陽と青空を見ていると、何か、全てがどうでも良く感じられた。そのせいか、私の心はとても穏やかだった。
「そういえば、昨日のつかさはおかしかったけど、大丈夫?」
「そういえば、昨日は、つかさも私たちと帰ってくれなかったよね。何かあったの?」
 お姉ちゃんとこなちゃんが、私の顔を覗き込む。
 でも、私の心はとても穏やかで、晴れやかだった。
「うん、でも、もう大丈夫。だから、心配しなくてもだいじょぶだよ」
 と、本心の笑顔でそう言った。
「・・・そう。でも、何かあったら言いなさいよ?」
「そうそう。私たちは友達なんだから!」
 二人の言葉がとても心強く感じた。ありがと、お姉ちゃん、こなちゃん・・・。
405木枯らし一号:2008/02/16(土) 16:15:51 ID:ksHqsQic
―――



「ほーい。いよいよ、文化祭は明日やけど、今日の準備時間もせっせと準備するようにー。
 ・・・それと、文化祭だからって浮かれて、授業に集中せん、なんちゅうのは許さへんからな。そこんとこ、頼むで!」
「はーい」
 黒井先生の言葉に、私たちは元気良く返事をする。
 いよいよ、文化祭は明日に迫った。・・・そう思うと、何だか緊張する。
 準備はあらかた終わったから、もう大丈夫とは思うけど・・・
「ほんじゃ、今日も気合入れて頑張るように! 以上や」
 黒井先生はそういって、ホームルームの時間を終わらせた。
 休み時間になると、こなちゃんとお姉ちゃんが私の机に集まって、いつもの時間が始まった。
「はー。もう、明日が文化祭なんだねー。実感、湧かないや」
「あんたは、もう少し、緊張感を持ちなさいよ・・・。つかさはどう?」
「あ、もう、多分、大丈夫だと思うよー。今日、最終確認をして終わり、かな?
 どうだったっけ、こなちゃん」
「んー。私もあまり覚えてないやー」
「あんたたちって言う人は・・・。はー、全く、この学校の生徒だって言う自覚はあるの?」
「いいじゃん、いいじゃん。楽しめられれば。
 そういえば、当日って、やっぱり、この三人で周る?」
「んー。まあ、そうじゃないの」
 お姉ちゃんにしては、珍しく歯切れが悪い。何かあったのかな?
「ふっふーん。クラスからハブられるかがみん萌え♪」
「違うわ! あんたと一緒にしないで頂戴よ!」
 口ではそんな事を言っているけど、お姉ちゃんの顔は真っ赤だった。
 あからさま過ぎて、私でも十分に分かる。お姉ちゃんももっと素直になれば良いのに・・・。
「やっぱり、かがみはツンデレだなー」
「ま、まあまあ、こなちゃんもお姉ちゃんも落ち着こうよ。・・・ね?」
「まあ、つかさがそういうなら仕方ないけど・・・」
「ツンデレ萌え〜」
「うっさい、黙ってろ!」
 二人のそんな会話を見ていると、何だか、ほほえましい。そして、何だかうらやましい。
 元々、お姉ちゃんは私を通じて、こなちゃんとお友達になったけど、いつの間にか、私以上にこなちゃんと親密になっていた。
 意味もなく窓を通して、空を仰ぎ見る。雲ひとつない、透き通るような青空は私に、勇気と元気を与えてくれた・・・気がする。
 明日は、いよいよ文化祭。楽しくなればいいな・・・。
406木枯らし一号:2008/02/16(土) 16:16:21 ID:ksHqsQic
―――



「つかさー」
「ん、何? こなちゃん」
 放課後、荷物をかばんに詰め込んでいると、こなちゃんに話しかけられた。一体、何だろう?
「悪いんだけどさ、今日、一緒に帰れなくなっちゃった」
「え? こなちゃん、何か用事あるの?」
「んー・・・。まあ、ね」
 何だか、思わせぶりな返事。私は、ただ首を傾げるしかなかった。
「本当にごめん。埋め合わせは今度するから」
 本当に申し訳なさそうな顔で、両手を合わせながら、こなちゃんは言った。
 誰だって、人には言いたくないことがあるよね。仕方ないもん。
「ううん、いいよ。こんなこと、いくらでもあるもん。
 だから、気にしなくて良いよ?」
「ありがとう、恩に着るよ、つかさ。んじゃ、また明日ねっ!」
 よほどの急用があるのか、こなちゃんは手を振ると、鞄を持ってさっさと教室を出て行ってしまった。
「今日も一人かー。・・・まあ、たまにはこんなことがあってもいいよね。
 きっと、明日は楽しくなるだろうし・・・」
 自分に、そう言い聞かせると、私は教室を出て、帰ることにした。
 校舎を出ると、私を迎えるように、木枯らしが吹いた。
「・・・今年は早いね。もう、木枯らしの季節かあ」
 空を仰ぎ見る。透き通るような青空だったはずの空は、もう、夕陽に染まっていた。
「今日も一日終わったぁ・・・。明日も頑張ろうっと」
 独り言ちると、私はスクールバスを待つ列に並んで、スクールバスを待つ。
 何だか、自分に言い聞かせると、意味もなく楽しい気分になった。
「あれ? つかささんではありませんか」
 夕焼けを眺めていた私を振り向かせたのは、高良君だった。
 いつものように、穏やかな微笑をたたえて、私の後ろに立っている。
 高良君を見た瞬間、私の心臓の鼓動が早くなるのが分かる。うう、これってやっぱり・・・。
「い、委員長? どうしたの?」
 出来るだけ、冷静を装って聞いてみる。
 すると、高良君はメガネを押し上げてから、
「いえ、たまたま、前につかささんがいましたから、話しかけてみようと思っただけですが。
 お嫌でしたか?」
 高良君は、私の動揺に気付いていないようだった。
「ううん、そんなことないよー。
 でも、意外だね」
「何がですか?」
 高良君はキョトンとした顔を見せる。
「いや、委員長っていつも、友達と一緒にいるから、帰りが一人だなんて意外だなーって思って」
「ああ、そうでしたか。残念ながら、僕の友人はみんな、部活動に所属していましてね。
 ですから、帰りはいつも一人なんですよ」
「そうなんだ。はなはだしく意外だよ」
「ははは。そうかもしれませんね」
 そう言って、高良君は笑顔を見せる。とっても爽やかな笑顔だった。
「そういえば、明日は、いよいよ桜藤祭だね」
「ええ・・・。そうですね。本当に、長いようで短いような・・・そんな準備期間でしたね」
「あ、それ分かるよー。光陰矢のごとし、だったっけ?」
「良くお分かりですね」
「あ、ううん。これ、お姉ちゃんの受け売りなだけだし・・・」
「いえ、そんなことありませんよ。きちんと知識を得て活用しているではありませんか」
 少しうつむく私に、高良君は優しく褒めてくれた。
 良かった、高良君がいい人で。
「あ、ありがとね」
「いえいえ、そんなことはないですよ。
 あ、バスが到着いたしましたね」
 高良君の言うとおり、いつの間にかスクールバスが、着いていた。
407木枯らし一号:2008/02/16(土) 16:17:10 ID:ksHqsQic
「つかささん、良ければ、隣に座りませんか?」
「えっ?」
 突然のことに戸惑ってしまう。
 高良君が? 私の隣に?
 そ、それはうれしいけど、えっと、えっと・・・。い、いいのー?
「ああ、勿論お嫌ならいいのですが。
 ただ、こうして下校時に、偶然に出くわせたのも何かの縁かと思いましてね」
「そ、そんな。嫌なわけないよ?
 だ、だって、委員長を嫌う人なんているわけないもの」
 そのとき、どんな顔をしていたか、私は分からない。でも、きっと、とても真っ赤だったと思う。
 高良君は、くすりと笑って、
「そう言っていただければ、光栄です」
 と、言った。
 私も釣られて笑った。
 その後、生徒手帳を運転手さんに見せて、スクールバスに乗り込む。
「でも、委員長。そっちこそ嫌じゃない?」
「何がですか?」
 隣に座った高良君が、首をかしげながらこっちを見る。
「女の子と一緒に帰るなんて嫌じゃないかなー・・・なんて思ったんだけど」
「いえ、そんなことありませんよ。クラスを束ねる委員長として、男女分け隔てなく付き合うべきだと思いますしね」
 このとき、私はどんな答えを期待していたんだろう? ただ、少しがっかりしたような心持がした。
 でも、彼がとても寛大な人であることははっきりと分かる。本当に尊敬する。ああ、うらやましい。
「それにですね」
「そ、それに?」
「今度、私の父が誕生日を迎えるので、パーティをするのです。
 そこで、僕も料理を振舞おうと思ったのですが・・・どんな料理を振舞えばいいのか、考えてもわかりません。
 そこで、誰か女子の方にご相談しようと思っていたところなんです」
「あー。誕生日パーティかぁ。楽しそうだね〜」
「ええ。親戚一同や、ご近所の方などが一堂に会して、本当に賑やかになりますよ」
「そだねー。誕生日といえば・・・」
 誕生日といえば・・・何だろう?
 やっぱり、ケーキかな? うーん、でもメインディッシュに何かおいしいものでも良いかなあ。
 調理師を目指している私にとって、料理は得意分野。いろいろな料理が頭の中を駆け巡る。
「あ、あの、つかささん?」
「え? ひゃうっ・・・。ごめん、一人の世界に入ってた」
 いけない、いけない。一人で考えても仕方ないのに・・・。
 はあ、失敗ばっかり・・・。
 それに、何だかいつも、高良君の前では失敗しているような気がする。
「いえいえ、そんなつかささんもかわ・・・」
 高良君はそこまで言って、慌てて口を閉じる。
 何だか、それを見ているとおかしくて少し笑ってしまった。でもどうしたんだろ?
408木枯らし一号:2008/02/16(土) 16:17:36 ID:ksHqsQic
「どうしたの?」
「い、いえ、何でもありません。
 そ、それより、料理のことなのですが・・・」
「そだねー・・・。
 お父さんは、和食と洋食、どっちが好きなの?」
「父は、和食派ですね」
「そっかー・・・。
 あ、だったら、鯛めしなんてどう?」
「鯛めし、ですか?」
 聞きなれないのか、高良君は目をぱちくりさせる。
 そうだよね、私も最近知ったんだもん。
「うん。鯛をまるごと一尾、炊き込みご飯の上に載せて、土鍋で加熱するの」
「へぇ、おいしそうですね。
 良かったです、つかささんに相談して」
「えへへ、そうかなあ・・・」
 高良君に褒められて、素直にうれしい。
「あ、そうだ。委員長は、料理できるの?」
「うーん・・・。
 人並みには出来ますが・・・得意というほどではありませんね」
 それを聞いた瞬間、私には一つの考えが浮かんだ。
「あ、そうなんだ。
 じゃ、じゃあ・・・」
 と、ここまで私はここまで言いかけておいて、言うのを躊躇した。
 どうしよう? ここは言うべきかな。
 だ、だって・・・相談されたんだもん。乗りかけた船なんだから、最後まで乗るべきだよね? そうだよね?
「ん? 何でしょうか?」
 高良君は、何も知らず、笑いながら、こちらを見る。
「あ、あのさ。そ、その・・・。
 お、教えてあげる?」
 顔が赤くなっているのが自分でも分かる。
「え?」
 突然の言葉に、高良君は面食らったようだった。
 うう、また失敗・・・。言う順序を間違えたかな。
「そ、その、鯛めしの作り方」
「え? よろしいんですか?」
 その瞬間、高良君の顔がパーッと輝いた。
「う、うん。委員長がよければ、だけど・・・」
 すると、高良君はまた爽やかな笑顔で、
「とんでもない。謹んでお頼みします。
 僕としても不安だったんですよ、料理が出来るか。でも、誕生日だから、何としてでも成功させたいし・・・。
 ああ、本当につかささんにご相談してよかった。胸のつっかえが取れましたよ」
「う、ううん。そんな。
 ただの私のお節介だし・・・」
「そんなことありませんよ。
 ・・・あ、そろそろ駅ですよ」
 高良君に言われて、条件反射で外を見る。
 確かに、スクールバスは糟日部駅の近くまで来ていた。
 そして、程なく、駅に着く。
409木枯らし一号:2008/02/16(土) 16:18:40 ID:ksHqsQic
「さあ、降りましょうか、つかささん」
「うん、そうだね」
 高良君に促されて、バスを降りる。
 バスから降りると、何だか、空気がおいしく感じられた。
 いつもは、寒々しく感じられる風も涼しくて気持ちよく感じられる。
「お名残惜しいですが、今日は、ここでお別れですね」
「そだね。今日は楽しかったよ」
「いえいえ。こちらこそ」
「じゃあ・・・今日は、これでさよなら、かな?」
「そうですね。あ、そうだ」
 高良君は、バッグの中をごそごそさせて、メモ帳を取り出す。
 そして、バスの中ということもあって苦戦しながらも、何かを書いて、私に差し出す。
「これ、僕のメールアドレスです。
 鯛めしについては、メールでまた話しましょう」
 え? ええええええええ?
 高良君が? 私に?
 私は、急なことに戸惑い、頭がパンクするかと思った。
「・・・あの。大丈夫ですか?」
「え? う、うん。だいじょぶだよ」
 そう言って、何となしにあたりを見回す。
 でも、周りの人たちは自分のことで精一杯なのか、誰も私たちに注意を払わなかった。
「受け取ってくれますね?」
 高良君がニッコリして言う。
 うう、その顔は反則だよー。そんな顔で言われたら、誰だって受け取っちゃう。
 というか、私に断る理由はない。
「う、うん。でも、本当にいいの?」
「先ほどから、妙に気を遣われているようですが、別によろしいのですよ?
 僕は、普通に接してほしいのです。クラスメイトとして」
「・・・クラスメイト」
「ええ。僕は、完璧超人だとか言われますが、僕は、普通に皆さんと接したいのです。
 一個人、高良みゆきとして」
 そう言う高良君の眼には、毅然とした決意が感じられた。
 そっかぁ・・・。確かに、持ち上げられているのも窮屈だよね・・・。
 私なんかじゃよく分からない悩みだけど・・・でも、彼の力になってあげたい。
「・・・そっか。ごめん。
 気持ちをわかってあげられなくて」
「いえいえ、いいのですよ。
 それでは、今日はこれで。また、後でメールで話しましょう。
 ああ、それと」
「それと?」
「僕のことは、委員長ではなく、名前で呼んでください。
 それでは、また明日」
 高良君は手を振って、駅へ向かう。
「あ、ちょっと待って!」
 気がついたら、彼を呼んでいた。
 ゆっくりと、高良君が止まって、こちらを振り向く。
 ごめんね、急に呼び止めて迷惑だよね。でも、私にはどうしても言っておきたいことがあった。
「ま、また明日ね。た、高良君」
「・・・ええ。また明日」
 高良君は優雅に微笑み、優雅に礼をして、優雅に駅構内へと姿を消した。
 吹きしきる木枯らしが、妙に気持ちよかった。
41036-273:2008/02/16(土) 16:22:14 ID:ksHqsQic
以上です。
本当は、スパッと簡潔に終わらせたかったんですが、いざ書き出すと、長くなってしまい・・・。
次で終わらせたいのですが、いつ終わるかはまだ分かりません。
それにしても、私が男体化みゆきを書くと、どうしても古泉に見えてしまいます。
これも、私の未熟さゆえでしょうか・・・。

それでは。
411名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 17:24:42 ID:tOyHHyt4
よーし、純度100%混じりっ気なしのラブストーリーに萌えた
激しく同意GJしよう
古泉はホモだからあまりそいつにイメージできないが
とにかく続きが気になりすぎる!!!
412名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 18:56:56 ID:hKMnDeiu
>>394
亀だがGJ!

しかし余談で済ませるのはもったいなさ過ぎるので是非ゆーちゃんサイドの話も!
41314-319:2008/02/16(土) 19:38:21 ID:2O6HKHTe
投下した方たちGJ!続きや続編とかとかいろいろと期待してます

そして、昨夜変な電波が舞い降りてきたので投下します

以下、注意?
壊れてます壊れてます。
しかし、あまり壊れてはないかもしれません。
非エロ
4レスほど使用
414末っ子 ―変な姉と母―:2008/02/16(土) 19:40:10 ID:2O6HKHTe
 夕食が過ぎて夜のくつろぎタイム。
 居間では今、私とつかさがいる。
 言っておくけど今のはシャレではないわよ?
 姉さんたちは自室に、お母さんたちはもう静かに寝ている。
 そして、つかさはテレビを見て楽しそうに笑っている。

 この場所には現在私とつかさしかいない。
 これほど絶好なチャンスなどあまり無い。
 そして、つかさに話しかける。
「つかさ」
「なぁに?お姉ちゃん」
 笑顔で反応してくれるつかさが眩しい。

「映画見ない?」
「映画?どんな映画?」
「ホラー映画」
「えっ……えっと、どうしよ…」
 ホラー映画と聞いて戸惑うつかさ。可愛い。可愛すぎる。
「見るわよね?」
「うん……お姉ちゃんとならいいかな…」

 あらかじめつかさに内緒で借りておいた映画のビデオ。
 そして、私の誘いなら絶対に断れないつかさ。
 そこを突いて私は話を持ち出した。
 しかし、その瞬間。
「私も見る見るー!」
「じゃあ、私も見させて貰おうかな」
「あら、じゃあお母さんも」
 姉二人とお母さんがやってきた。
 せっかく二人で楽しもうと思ってた矢先なのに、なんで来るのよ……。
 どこから聞きつけたのよ。盗聴器?監視カメラ?
 しかも、お母さんに至ってはおやすみの挨拶をした後なのに。

 でも、お母さんとお姉さんたちがやってきて、表情がとても明るくなっている。
 こんな、安心した姿も可愛い。
415末っ子 ―変な姉と母―:2008/02/16(土) 19:41:03 ID:2O6HKHTe
 いつのまにか、というかすでに映画が始まっていた。
 セットしたの誰よ……いのり姉さん?まつり姉さん?それともお母さん?
 早い。早すぎる。
「しっかし、かがみも物好きよねぇ。ホラー映画を借りるなんて」
「そりゃまぁ、好きだし……。姉さんはどうなのよ?」
「私はぁ……ま、嫌いかな」
「ならなんで見るのよ?」
「克服のためかなー。なんて」
 ダウト。いくらなんでも嘘くさすぎる。
 しかし、こんな姉に構ってる暇なんてない。
 映画、じゃなくてつかさに集中しないと。

 私たちがいると言っても緊張は隠せない様子のつかさ。
 その証拠に顔が若干震えている。その姿も可愛い。

 その後、しばらく何もつかさが驚くようなシーンはあまりなかった。が、
 それがやってきた時、
「きゃあぁぁぁぁ!」
 私を含む4人はつかさの周囲に移動する。
 そこでつかさは助けを求めるようにお母さんに抱きついた。
 相手がお母さんでも………ちょっぴり悔しかった。
 でも、可愛い悲鳴が聞けたからよしとする。だが、それだけでも満足には至らなかった。
 少し矛盾してると我ながら思った。

 しかし、次につかさが抱きついたのはいのり姉さんだった。
 つかさの叫び声が聞けるのはいいとしても、悔しい。
 そしてその次も私ではなくまつり姉さん。
 相手がまつり姉さんだととても悔しい気持ちが沸いてくる。
 その気持ちは、お母さんが1として、いのり姉さんが5、そしてまつり姉さんだと25ぐらいになる。
 それほど悔しかった。
416末っ子 ―変な姉と母―:2008/02/16(土) 19:42:08 ID:2O6HKHTe
 ――――――――!!
 はっ……………。失いかけた意識を取り戻す。
 私はすぐに、状況を判断出来た。
 私にかかるつかさの息。私は大きく深呼吸する。
 私に飛びついたつかさの一粒の涙。それを乾かぬうちに指ですくって舌の先でとる。
 私の髪にちょっとだけ絡みついた、つかさの髪。絡みついた髪は大切にしようと思う。
 やっと、やっと、ようやくつかさが私に抱きついてくれた。
 自分でも分かるほど息が荒かった。それに、心臓がバクバク言ってる。
 その、つかさの肌の感触はとても気持ち良くて、危うく昇天しかけるところだった。
 危ない危ない……昇天してしまったら姉さんたちにつかさを取られるから……。
 その感覚が、つかさが私から離れても残っていて、今でもほんのり心地良い。
 一回だけでも十分。だと思う……けどやっぱり満足できない。
 これ以上来たらどうにかなっちゃいそうだ。でも、どうにかなっちゃった方がよかった。
 だけど、これを私より先に体験した姉たちに悔しさを募らせる。
 お母さんは例外。逆らえないから。

 しかし、つかさは酷いことにその後一度も私のところには来てくれなかった。
 お母さん、姉さんたちにべったりくっついてた。2回、3回も飛びついてきてはくれなかった。
 そして今はベッドの中。つかさのことが頭に浮かぶ。
417末っ子 ―変な姉と母―:2008/02/16(土) 19:43:02 ID:2O6HKHTe
 そうだ…そうよ、今日はホラー映画を見た日。
 来る。きっと来る。きっと来る。
 そしてドアが開く音。
 やっぱ来た。心の中で私は飛び跳ねているだろう。宇宙まで行くほど。
 あの時は映画、じゃなくてつかさばっかりに集中してて、その後のことはあまり考えてはいなかったが、
 ホラー映画を見た日は100%と言っていいほど私のとこに来る。
「お姉ちゃん……」
「どうしたの?」
 部屋が暗いまま優しく話しかける。
「一緒に……寝ていい?」
 予想してたこと。もう、思い残すことはなかった。
「もちろんよ」
「…ありがと、お姉ちゃん」
 暗いままだからつかさの顔がよく見えない。
 でも、きっと笑顔なんだろう。
 電気点けとけばよかった。

 つかさはそのまま私のベッドに潜り込んでくる。
 それと同時に入ってくるつかさのいい匂い。
 そして可愛らしい髪が私の肌にも触れる。
 こんな近くに居れば表情もよく分かる。とても安心しきっている顔だった。
 猛獣がいても、この世の物とは思えない程の物があっても、崩すことは出来ない。そんな顔だった。

「ひゃっ!お……おねえちゃん、ちょ、ちょっとくすぐったい……」
「あっ、ごめんね」
 いつのまにかつかさに抱きついていたようだ。
 このままつかさが眠れなくて、寝顔が見れなかったら私が悲しいのでやめてあげる。

 さっき、つかさが私に1回だけしか飛びついてくれなかったが、それももうどうでもよかった。
 今が良ければ全てよし。今日は可愛いつかさの寝顔をたっぷりと見なければ。



おしまい
418名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 19:44:41 ID:2O6HKHTe
これでおしまいです。ありがとうございました。

おとなしく、あっちの続きを書いてきます……
419名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 20:44:01 ID:n7HIs2sT
>>418 GJ!!!つかさ可愛いよつかさ。壊れた柊一家(つかさ本人を除く)も楽しかった。



だがつかさは俺の嫁。
420名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 20:55:49 ID:tOyHHyt4
なにをいう
みゆきの嫁だろ……JK

>>420
ああん、GJ
421名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 20:57:12 ID:neB31aPr
>>418
んーnynyをありがとう
つかさはかがみの嫁。
かがみはこなたの嫁。
そして、こなたは俺の嫁。
422名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 20:59:14 ID:tOyHHyt4
>>420>>420>>418の間違いな
423名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 21:03:25 ID:FRgRGVz8
>>421
じゃあ俺はお前の子供な
こなたママにミルク飲ませてもらってくる
424名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 21:15:47 ID:a8HKeWwh
自己レスびびったw
425名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 21:33:06 ID:Rq9DqEXE
>>410
なんという青春ラブストーリー
激しく萌えたw
426名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 21:46:41 ID:hEUqeYnc
>>410
定番で王道なベタベタな青春らぶすとーりーGJ!!
TSとかオリキャラには抵抗ある俺だが、これは素で面白いと思ったんだぜ
427名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 22:27:32 ID:kUwLUVHC
4日で400KBか
みんなGJなんだぜ
42828-538:2008/02/16(土) 22:54:15 ID:8fhKDy+A
誰も投下予定がなければ、五分後くらいから投下させていただきます
42928-538:2008/02/16(土) 23:00:19 ID:8fhKDy+A
えー、感想を頂き調子に乗ってる28-538です
あっ、石投げないでっ……

前作、忘れられぬ日のその後
あの後、かがみが攻めに回る?話しです

かが×こな
エロだけw
3レスの予定

はっきりいって、エロ描写については、前回に続いて二回目なんで自信ありません
と言うか、全然エロくない……orz
先に謝っときます(m´・ω・`)m

それでは投下します
430忘れられぬ日 after(1/3):2008/02/16(土) 23:04:10 ID:8fhKDy+A
「ほら、こなた。ばんざーい」
「へっ?」
 こなたは、意味が分からなかったのか惚けた顔をしてる。
 こういう表情も可愛いのよね。いや、こなたはどんな表情でも可愛いんだけど。
「ほら、服脱がないとチョコで汚れちゃうでしょ」
「えっ、いや、本当にするの……」
「さっき言ったでしょ。拒否権は無いって」
 こなたの腕を取りばんざいさせる。
 それから、こなたのトレーナーの裾を掴み、脱がせに掛かる。
 髪を引っ張らないように注意しながら、慎重にトレーナーを抜いているときに、改めて髪の長さを感じる。
 そして、その蒼い髪は艶もありさらさらで、丁寧に手入れされているみたい。
「こなたもやっぱり女の子ね。すっごく綺麗な髪」
「ぅ。ありがと」
 そして、タートルネックのシャツとキュロットを脱がし、今、目の前のこなたは下着と靴下だけの姿。
 こなたに近付き、軽く触れるだけのキスをしながら、ブラを取り去る。
 胸を手で隠そうとするこなたを制止し、私はこなたの胸へ視線を固定する。
「かがみぃ、あんまり見ないでよぅ」
 恥ずかしそうに、そして、ちょっと悔しそうなこなた。
 顔を朱に染めてもじもじとしている姿は、普段のこなたとは違う、本当に可愛らしい女の子。
「こなた、可愛いわよ」
 抱きしめ耳元で囁くと、こなたの顔がさらに赤くなる。
 私はさっきから少しおかしい。
 こなたを見て、苛めたくなってる。
 好きな子を苛めたくなるなんて、小学生か私は……
「かがみ、どうしたの?」
 僅かに潤んだ瞳で見上げてくるこなた。
「ん、どうもしないわよ。じゃ、下も脱がすわよ」
「う、うん」
 こなたの前に膝間づき、パンティに手を掛けて、少しずつ下げる。
 こなたと下着の間に、蜜が糸を引いている。
「こなた、こんなに溢れさせてたんだ」
 こなたからの返事は無い。
 見上げると、横を向き目を閉じている。
 全て脱がせてから、こなたの秘裂に指を這わせて、蜜を指に絡める。
 それを、わざと音を立てながら舐める。
「ちゅぱ、ちゅっ――」
「やっ、かがみ。恥ずかしいよ」
 恥ずかしさに耐えかねて、手で耳を塞ぐこなたを見て、少しだけ罪悪感が生まれた。
 でも、それ以上にこなたの可愛い姿をもっと見たい衝動に駆らる。
 私は自分の秘裂に指を這わせ、溢れる蜜を絡める。
「ね、こなた。私のも舐めて」
 その言葉に反応して開かれた目の前に、指を持っていく。
 そして、口元に持っていくと、こなたは口を開き舌を伸ばしてきてくれた。
 私の指を、蜜を舐めるこなたに我慢できなくなり、抱きしめてキスをする。
 どちらからともなく舌を伸ばし、絡める。
 手を下へと向かわせ、こなたの小ぶりな、絞まったお尻を揉むと、こなたが声を漏らす。
「ぷはっ、ふ、うん……」
「こなた、そろそろチョコを食べさせてもらうわよ」
 こなたをベッドに仰向けで寝かせ、残っていたチョコレートを温め溶かす。
 適度に溶けたところで、口に含むとそれほど熱くはなかった。
 私はベッドに移動すると、いきなりキスをした。
 口に含んだチョコに唾液を混ぜ、こなたの口へと流し込む。
 こなたは全てを飲み込めず、口の端から流れ出てきた。
 私は丹念にそれを舐めあげた。
「じゃ、チョコレートを塗るからね」
「ねっ、本当にするの?」
 だんだんと声を小さくしながら聞いてくるこなたは、瞳を潤ませてはいるが、どこか期待しているような表情に見える。
「さっきも言ったわよね。拒否権は無いって」
431忘れられぬ日 after(2/3):2008/02/16(土) 23:04:58 ID:8fhKDy+A
 私はチョコを取ると、こなたの胸へと掛ける。
 チョコはこなたに触れると、僅かに流れて動きを止める。
「んっ」
「熱かった?」
「いや、なんか変な感じ。チョコが固まったところが、ずっと優しく触れられてるみたいで」
 顔を紅潮させるこなたは、足をもじもじとさせている。
 それに気付き、僅かに膨らんだ胸の頂へ、チョコレートを落としていく。
 少しずつ塊が大きくなるにつれ、こなたの反応も大きくなる。
「くぅっ」
 僅かに声を上げたこなたは、顔を横に向け、目を閉じている。手はシーツを強く握っている。
 私が反対の胸にも同じようにチョコの塊を作ると、こなたは胸をそらし、太ももをすり合わせる。
 そのままの状態で、私は何もせずにこなたを見つめ続ける。
 その行為で、私の体が熱く火照ってきている。
「ね、こなた。私、こなたをいじめて体が熱くなってる」
「やだっ。かがみ、私なんでもするから。お願いだからいじめないで」
 涙を流しながら、何かに怯えるようなこなた。
「ん、ごめん。私はずっとこなたのそばにいるよ。安心して」
 キスをして、流れた涙を舐める。
 そして、曖昧三センチ、塊となったチョコを舐める。
 こなたの涙と、僅かに浮いた汗が、チョコの甘さを引き立てる。
「美味しいわよ、こなた」
 決して、胸の頂に触れないように少しずつ舐め続けていく。
 こなたは口をきつく閉じて、声を我慢してる。
「我慢しなくていいよ、こなた」
 私は、チョコを口に含むと、舌で押さえつけ、舐めあげる。
 溶けたチョコの下から現れた、硬くなった乳首を吸い上げる。
「あぁっ。い、いいよ、かがみっ」
 その声が私の心に響く。こなたが感じることで、私も満たされる。
 反対側のチョコに目標を移し、舌の先でつつくように舐める。
「んっ、あぅ――」
 こなたは、その僅かな振動にも敏感に反応し、声を漏らす。
 私は手をこなたの秘裂に移動させ、指先をゆっくりと上下させる。
「ね、こなた。私のもお願い」
 恥ずかしい気持ちより、こなたと共有したい気持ちが強かった。
 こなたの手をとり、自らの秘裂に導く。
 こなたを感じたい。
 こなたを感じさせたい。
 それよりも、一つになりたい。
「んっ、くぅ――」
 こなたの指先が、私をかき混ぜると溜まっていた蜜があふれ出した。
 体の快感より、心が喜びに打ち震え、私を高みへと連れて行ってくれる。
 私はチョコを剥ぎ取り口に含むと、こなたの口へと運ぶ。
 受け入れてくれたこなたの口へ受け渡し、互いの舌で溶けたチョコを吸い上げる。
 その間も、私の指は緩やかに動き続ける。
 部屋には、二人の少し荒い息遣いと、蜜をかき混ぜる音だけが響く。
432忘れられぬ日 after(3/3):2008/02/16(土) 23:06:03 ID:8fhKDy+A
 こなたの呼吸が先ほどより荒くなったとき、私は指を止める。
「ふぇっ…… かがみ、なんで……」
 突然、刺激がなくなり戸惑うこなた。
 あと少しで達していたと思う。
 私はこなたの問いかけには答えず、姿勢を変えていく。
 もっと刺激を求め、もっとこなたを感じるために、お互いの秘裂が直接当たるように。
 こなたと私の熱くなった部分が触れ合うと、蜜が絡み合う。
 その感覚は、あまりに甘美で理性を吹き飛ばす。
 私は我慢できずにすり合わせるように腰を動かしだす。
「ひゃぅっ」「あっぅ」
 先ほどより、こなたとのつながりを強く感じて、幸せに包まれる。
 何も考えられなくなり、ただ快感を求め、こなたを求める。
 卑猥な音を聞きながら、こなたを感じながら、こなたと一緒にいる幸せを今までにないくらい感じる。
「ねっ、こなたっ、私もうっ」
「かがみっ、私もっ」
 お互い自分が、相手が感じるように強く動く。
 蜜の混ざり合う音がいっそう強くなり、私は限界に達した。
「こなた、いっちゃう。いっちゃうのっ」
「かがみ、私も。もう駄目っ」
 その瞬間、私は真っ白になる意識の中で、こなたが涙を流しながら微笑んでいるのを見た。

 どれくらいの時間がたったのだろう。
 気がついたとき、私はこなたに膝枕をされていた。
「こなた……」
「かがみ、私はきっと今世界一幸せ」
 意識を失う前に見たのと同じこなたの表情。
 何を感じ、何を思っているの。
 手を伸ばし、指でこなたの涙を拭う。
「こなた、泣かないで」
 涙は悲しみの象徴。
 そう思っていた。
「大丈夫だよ。嬉しくて泣いてるの。かがみ、私は嬉しいんだ」
「私もよ。こなたと出会えて、そばで笑ってくれるのが私の幸せ」
 こなたがそっと手を私の顔に添える。
 そして、目元に指を這わす。
 その時、初めて涙が流れているのに気付いた。
「ね、私たちの出会いはすごいことなんだよ。この狭い日本だけでも一億以上の人がいる中での出会い」
「そうね。一億分の一の偶然だもんね」
「世界で考えれば、六十億以上の人の中の出会いだよ」
 そうだ。
 この日本に生まれたこと。
 同じ高校に通えたこと。
 友達になれたこと。
 そして、愛し合えること。
 色々な事の積み重ねによる奇跡。
 それでも私は思う。
 きっと、どんな状況で出会っても、こなたと愛し合える。
 これは必然だと。
433名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 23:11:09 ID:8fhKDy+A
以上です

まだまだ修行せねばと思う今日この頃です
では、また投下すると思いますが、生暖かい目で見守ってやってください
では(´・ω・`)ノシ
434名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 23:32:50 ID:2chB0leO
>>433
エロくてほのぼのして暖かい……素晴らしい作品に感謝です!
43526-598:2008/02/17(日) 01:28:50 ID:YOBEyAid
どうも、26-598です。
希望があったようなので、『こなたのチョコ』のゆたかのほうの話を書いてみました。
みなゆたものは初めてなので、苦戦した上に短いのですが、一応投下します。
436ゆたかのチョコ:2008/02/17(日) 01:29:29 ID:YOBEyAid
「あ、あの…み、みなみちゃん!」
「…?どうしたのゆたか…」
バレンタイン当日の昼休み。
私は、昨日の夜にお姉ちゃんと一緒に作ったチョコをみなみちゃんに渡そうとしていた。
でも、
「え、ええと…。そ、そうだ!今日の田村さん達ってなんだかいつもと違うよね!?」
「そうだね…。ネタの宝庫だとか叫んでたみたいだけど…」
こういう風に、面と向かうと恥ずかしくなって、誤魔化していた。
うう、渡せないよぅ…。

「…ゆたか、次は移動教室だから早く行かないと…」
「あっ、そ、そうだね!」
渡そうとして、誤魔化して…、と繰り返しているうちに昼休みも終わってしまった。
ううう〜、お姉ちゃんはかがみ先輩に渡せたのかなあ…?

『I LOVE Minami』
私のチョコには、ホワイトチョコを使ってそう描かれている。
もちろん書いたのはお姉ちゃんなんだけど。
これがなかったら普通に渡せるのにい…。
こ、これを渡しちゃったら、やっぱりこ、告白って思われちゃうかな?
そんなことを考えていると、いつの間にか放課後になってしまった…。

「み、みなみちゃん!」
「あ、ゆたか…」
ここで逃してしまったらもう後がない。
が、頑張らなきゃ…!
「ええっと、その、あのね、うう…」
「そうだゆたか…。これ、もらって…」
「ふえっ?」
そう言ってみなみちゃんが取り出したのは、紛れもなくチョコレート。
437ゆたかのチョコ:2008/02/17(日) 01:29:57 ID:YOBEyAid
「わ、私に…?私なんかがもらっていいの?」
少し不安になって尋ねてみる。
「わ、私は…」
するとみなみちゃんは、ほんのりと頬を赤く染め、すごく小さな声でこう言った。
「その…。ゆたかにしか、あげたくないから…」

「ぐすっ、うぇ〜〜ん。みなみちゃん、ぐすっ、ありがとう!」
「ゆ、ゆたか!?」
私は嬉しくて仕方がなくなって、少し泣きながらみなみちゃんに抱きついた。
みなみちゃんはしっかりと自分の想いを伝えてくれた。
私も勇気、出さなきゃ…!

「みなみちゃん、私もチョコ、作ってきたの…もらってくれる?」
「うん、もちろん…。ありがとう、ゆたか」
「えへへ…♪」
「食べてみていい…?」
「う、うん!私もみなみちゃんの食べるね♪」

こうして私とみなみちゃんは、お互いのチョコをゆっくりと味わった。
みなみちゃんのチョコ、すごくおいしかったな…♪

「みなみちゃん、手、つないでいいかな?」
「う、うん…」
学校からの帰り道、私たちはしっかりと手をつないで歩いていた。
えへへ、みなみちゃんの手、あったかいな♪
「ゆ、ゆたか」
「?どうしたのみなみちゃん。声が震えてるよ?」
「な、なんでもない…」

さっきからみなみちゃんが少しおかしい。
なんだか顔が真っ赤だし、私と目を合わせてくれてないような気がする。
どうしたんだろう…?
心配になった私は、みなみちゃんの顔を覗き込んで問いかけてみることにした。
438ゆたかのチョコ:2008/02/17(日) 01:30:21 ID:YOBEyAid
「どうしたのみなみちゃん?さっきから少し変だよ?」
「!!!ゆ、ゆたか…!もう…!」
「ふええええっ!?」
目が合ったとたんに私は抱きしめられた。
え?え?な、なに!?

「ゆたか、可愛い…。家でたっぷり、可愛がってあげる…」
私を抱えたまま、ものすごいスピードで走り出すみなみちゃん。
な、なにが起こってるの〜〜〜!?

そして気がつくと、私はみなみちゃんのベッドの中にいた。
「ゆたか…んっ…」
「み、みなみちゃ…んんっ!?ふわあっ」
キスをされ、色々なところを触られる。
みなみちゃんの目がいつもよりギラギラしてて少し怖い。

「み、みなみちゃん、ああっ、一体、んっ、どうしたの…ひゃああっ!?」
「わからない…。ゆたかのチョコ食べたら、なんだか体が火照って…」
チョコ…?
お、お姉ちゃ〜ん!一体何を入れたの〜〜〜!?

「ゆたか…そろそろ行くね」
「ふぇ?な、なに…?」
「いただきます」
「ふにゃあああああああああああああっ!?」

こうして私は、一晩中みなみちゃんに攻められ続けた。
うう、お姉ちゃん、恨むよぅ…?
みなみちゃんに抱きしめられたまま目覚めた私はそんなことを考えた。
お姉ちゃんもほぼ同じような目にあっていることを知るのは、もう少し後の話…。
43926-598:2008/02/17(日) 01:36:08 ID:YOBEyAid
以上です。
誤字・脱字があるかと思いますが、ご容赦を。
みなみは暴走のさせ方が難しいです…。

言い忘れていましたが、>>433 GJです!
こなたもかがみも凄く可愛いですね。
自分も見習いたいです。

440久留里:2008/02/17(日) 02:20:12 ID:AoxudsDA
SSの大量投下(もっとやれ)に紛れて、例の続きを投下します。
容量大丈夫かにゃ?

「カケラ」の続き
・かがみ×??? かがみ視点 / ひかげ 第三者視点
・今のところ非エロ
・9レスほど使用
・シリアス/タイムリープ/平行世界/鬱展開
・オリジナル設定が多いのは仕様です。
・オリジナルキャラが登場します。
・物語の性格上、鉄分が濃いです。
441カケラ 14-1/7:2008/02/17(日) 02:20:42 ID:AoxudsDA
14.

私が同年代の男の人と歩くのは、何年ぶりだろうか。
特に好きな男子の候補が無い私は、そんなことを灰色の空の下で考えていた。
行き交うクルマの騒音が喧しい御堂筋。私は『彼』に案内されるまま2人でひたすら歩いて下っていた。

寒中の大阪、私が初めて訪れる街。
流石、東京・名古屋と並ぶ日本三大経済都市の街なだけあって、予想以上に街は大きかった。
人口は東京より少ない、面積が狭いので、人口密度は大して変わらない。
感覚的には大阪の方が密度が高い様にも思える。
一旦裏通りに入って水晶橋を渡り、大阪市役所と中之島図書館の間の通路を通る。
中之島図書館はとても立派な建物で、歴史の浅い鷲宮町立図書館とは比較にならない。
煉瓦造りでどっしりとした印象の中央公会堂を一見して栴檀木橋(せんだんのきはし)を渡る。
右も左も分からないが、少なくとも私は彼と御堂筋から2つ3つ離れた筋を歩いている様だった。

「僕のこと、呼び辛かったら苗字で呼んで頂いても構いませんよ」
バカマルコとは正反対に穏やかで丁寧な口調で話す彼は、何となく、自分の父親に似ている様な気がした。
雰囲気も似ているが、名前も似ている。彼の名前は何と「ただお」であり、苗字も父親の旧姓と一致した。
そう、「柊」という姓は母親のものであり、私の父・ただおは柊家に婿入りしたという事になる。
だから私の父は、柊家で唯一、神事に関係の無い名前である。
余談だけど、私達四姉妹の名前を漢字で書くと、上から「祈」「奉」「鏡」「司」である。
非常に珍しい名前なので、学年が上がる度にクラスメイトからよくネタにされたが、家が神社であることを告げると、不思議と皆納得した。

もしかして、もしかすると……?
多分、気のせいだと思う。
しかし、私の父も、高校・大学時代は大阪に住んでいた事は確かだ。

結局、私は自分の父親に良く似た彼を苗字で呼ぶ事にして、彼は私を名前で呼ぶ事にした。

閑話休題。私が彼と御堂筋(のそば)をひたすら下っている最中の会話が、こうであった。
その会話の中には、あのバカマルコが口にしなかった、とても重要な事柄が含まれていた。
442カケラ 14-2/7:2008/02/17(日) 02:21:05 ID:AoxudsDA
話を切り出したのは彼だった。
「あなたはこの時代の人ではありませんね」
「え?!」
何故分かったのだろう。
「おそらく、数十年後の未来から『ある目的を果たすために』この時代に来たのでしょう。
 そうですよね?」
2007年から来たのは確かだった。今の時代とは30年ほどブランクがある。
「え、ええ。2007年から来たというか、気付いたらこの時代に飛ばされたというか………」
私は昨日の夜の小田原駅で目が覚めてから、大阪駅に着くまでの仮定を細かに話した。
バカマルコの話は奇人扱いされそうなので伏せようかと思ったが、彼はこのペンダントが喋る事をとっくに気付いていた。
彼が、現代へ帰る為の『鍵』になるかも知れない。
だから、バカマルコの事も話した。名前の元ネタは通じないと思うので流石に伏せたけど。
「ほう、それで『彼』からは『星のカケラ』の話は聞きましたか?」
「い、いえ、まだです」
「『彼』はこの事を話さなかったのですか?」
「え、ええ」
「お、俺を責めたって知らねーものは知らねー。俺はただ、カガミが現代へ帰るための手伝いをしているだけだ」
エラそうな事を抜かしているが、コイツが役に立っているのは「念話(ねんわ)」が使える事くらいであり、
米原駅で不思議な『石』を見付けた時は、「それが『鍵』だ」とは言ったものの、コレの『気配』を察知する事は出来なかった。
出来ると言ってたくせに。
まさかとは思うが、アンタ、「禁則事項です」なんて言わないわよね?
「アホか。あの時ァ本当に気付かなかったんだ。そうだな、誰かに妨害されていたカンジだったぜ」
「妨害??」
私が彼が口にした単語に違和感を覚える。
「おうよ。実はよ、おめーが米原だっけか? あそこで降りるまでちったァ気配を感じたんだぜ?」
「何か胡散臭いわね。アンタ、私の事散々からかっておいて、言うのを忘れたとは言わせないわよ」
「んな事ァねぇ。突然消えたんだよ!! 気配がよ!!」
「はいはい、そうですね」
行き交う人が、どこからともなく聞こえる喧しい声に反応して、辺りをキョロキョロする。
私の胸元にぶら下がるコ○ュートスに似たペンダントから発せられている事には気付いていないようだ。

「ごほん」
彼がわざとらしく咳払いをし、私とペンダントとの言い争いを阻んだ。
443カケラ 14-3/7:2008/02/17(日) 02:23:37 ID:AoxudsDA
「ともかく、結果として彼は何らかの理由でその『石』の気配を感じる事が出来なかった。
 それでも、その『石』が現代へ帰るための『鍵』……つまり、手掛かりである事は知っていた。
 こうでしょうか?」
まさにその通りです。
彼は、私が巾着袋ごと渡した『石』を掌に載せ、私に見せながら話を続ける。
「この『石』こそが『星のカケラ』であり、貴方が今、最も必要としているモノなのです。
 本来は『星の石』と呼ばれる伝説の石で、
 人の概念を遙かに超える、特別なチカラを持っていると言われています」
『星のカケラ』と呼ばれた『石』は、確かにカケラとも呼べるべきザラザラした断面を持っていた。
そこ以外は墓石の様につるつるとしている。
『星の石』が『星のカケラ』となったのは、昨年起きた『事件』によって、砕けてあちこちに飛び散ってしまったからだという。
「貴方がマルコシアスと呼ぶ彼がこの『カケラ』の正体を知らずに、『鍵』だと断定した事が、僕には不思議です。
 まぁ、それは置いておきましょう」
そこ、結構重要だと思うが。
「そのうち分かります。
 かがみさんが『鍵』を集めているのは、ただ単に貴方が現代へ帰るためという訳ではありません。
 帰ろうと思えば、彼のチカラを使えば『貴方は何時でも帰れます』」
「えっ?!」
彼の爆弾発言に私は酷く驚いた。

「アンタ、何でそれを早く言わなかったのよ!!」
「あ? 俺、言わなかったけか? ヒヒヒ」
「惚けるな!!」
「まぁ、落ち着け。取り敢えず状況整理してみ?」
「わ、分かったわよ」
444カケラ 14-4/7:2008/02/17(日) 02:24:24 ID:AoxudsDA
ちょっとこれまでの流れを整理しよう。

1. バカマルコは『現代』へ帰るために、『鍵』を揃える必要があると言った。
2. ここでいう『鍵』とは「手掛かり」の様な意味合いであり、それは「物」とは限らない。
3. その『鍵』はこの世界の何処かにあるそうで、バカマルコはその『気配』を感じられるらしい。
4. 米原駅で見付けた『石のカケラ』は、『鍵』のうちの一つである。
5. 彼曰く、その『鍵』である『カケラ』は、伝説の『星の石』のカケラである。
一方、
6. 私が30年前に飛ばされたのは、おそらく『何か』をする必要があった。
7. 米原駅で見付けた『星のカケラ』だけでは、現代へ帰る事は出来ない(と、マルコは言った)
8. バカマルコのチカラがあれば、私は何時でも帰ることが出来る(と、彼は言った)
9. そう言えば、バカマルコは自ら『時の流れを司るモノ』と称していた。
10. 『鍵』が揃わないと、『現代』で良くない事が起こるらしい。
 (バカマルコはただ単に「世界が終わる」と言っただけだが)

取り敢えず、「『星のカケラ』を集めなけらばならない」という事だけは分かった。
しかし、分からないことが3点ある。
1. 何故、『星のカケラ』を私が集めなければならないのか?
2. 『星のカケラ(石)』以外の『鍵』とは何か?
3. 『鍵』が揃わないと、何故『現代』で良くない事が起こるのか?

しばらく考え事をしていたせいなのだろう。
気が付けば、彼が心配そうな顔をして私の前に立っていた。
「どうかなさいましたか?」
早速、私は疑問に思った3点を、彼に質問してみた。
バカマルコが話さなかったのは、意地悪ではなく、何者かに口止めされていたのかも知れない。
話の核心に迫る。彼は答えた。
「簡潔に答えましょう。ずばり、『星のカケラ』が貴方の時代で必要です」
「何故です?」
「特に深い根拠は有りません。ただ、この『石』にチカラが秘められている事は確かです。
 ─────どうやら貴方は、信じていない様ですね」
私は本来、論理的に証明出来ないモノは信じない質(たち)である。
例外と言えば、鷲宮神社に祀られている神さまくらいかしらね。
「信じろという方が無理がありますね。申し訳ありません。
 ですが、この世の中には、論理的・科学的に証明出来ない不思議な現象が数多く存在します。
 あなたが身につけているペンダントも、私から見れば不思議な現象の一つですよ」
彼は古泉一樹の様にニコリと笑いながら、胸元のペンダントに視線を向ける。
やらしい視線ではない。
「2点目はもうすぐご自分で気付くと思いますので、ヒントだけ与えます。
 『貴方にとって身近な人が、同じ目的でこの時代に飛ばされています』」
「私のとって身近な人?」
「そうです。ただ、気をつけて頂きたいのは、貴方とは全く接点を持っていない人が、
 同じくこの時代に送られています」
「それって、誰の事?」
「僕も、そこまでは流石に分かり兼ねます。ただ、『場合によっては』貴方に危害を加えるかも知れません。
 兎に角、『彼女』には充分注意して下さい」
「わ、分かったわ」
445カケラ 14-5/7:2008/02/17(日) 02:24:58 ID:AoxudsDA
私達は気が付けば心斎橋を通過しており、道頓堀という繁華街に達していた。
〈マルコシアス、『気配』の方は?〉
〈ああ、プンプン臭うぜ? この辺りに違ぇねぇ〉
「そろそろお昼にしましょう。お腹も空いたことでしょう」
「そ、そう言えば…………」
ぐるるるるるるる………。
言いかけた途端、私のお腹の虫が鳴いた。彼が側に居る事に気付き、赤面してしまう。
顔を上げると、「道」「頓」「堀」とでかでかと書かれた看板と、
漫画で良く見る「かに道楽」の看板娘(?)のデカい蟹が目に入った。
正に『関東人から見た大阪のイメージ』そのものである。

それにしても、色々なお店があるわね。
たこ焼きやお好み、うどんといった大阪らしい食べ物は勿論、和食屋や洋食屋など、多数の飲食店が大宮の3倍はあろう高密度で軒を連ねる。
間口が狭いので、その密度がハンパでない。
「大阪は鰻の寝床」とはよく聞くけど、この事だったのね。
私が辺りを見回していると、彼が私の肩をとんと叩いてこう言った。
「あちらのお店は如何でしょう?」
と、ある店を指さした。
店頭ではチンドン屋風の人形が太鼓を鳴らし、何処からか「くいだおれ〜」と変な歌が流れている。
あ!! この人形、テレビで見た事あるわ!!
かくて、私達は道頓堀の名店「くいだおれ」の中に入った。

「くいだおれ」は8階建てのビルとなっていて、1階がレストラン、2階が居酒屋、
3階が和食屋、4階から8階が割烹料理屋となっている。
割合から考えると、どうやら割烹料理がメインのよう………だが、
店頭のショーケースに愕然した。
いくらサンプルとはいえ、どの料理もボリュームが凄まじい。
「本当にこの量で来たら、凄いわね」
どれも私がいつしかつかさ達と行った、デカ盛り食堂並み。
恐るべし大阪。

薄暗い店内に入り、メニューを開く。
私はお腹に(ボリューム的に)優しそうな海老フライ定食を、彼は何と「くいだおれ定食」をオーダーした。
真っ昼間なのに……。男の人って、やっぱり結構食べるのね。
まぁ、これがケーキだったら私もイケるかも知れないけど……。
〈おい〉
マルコシアスが私にしか届かない声で呼びかける。
〈なに?〉
〈この店の奥で気配を感じる〉
〈分かった〉
短いやりとりを終えた私は、店の奥にトイレがあるのを確認した後、
「ちょっとお手洗いに行ってきます」
と彼に告げ、私は店内奥のトイレへ向かう。トイレは男女共用らしい。
446カケラ 14-6/7:2008/02/17(日) 02:25:20 ID:AoxudsDA
「で、何処?」
「ああ、もうちょい下」
「この棚かしら?」
「ちっと開けてみろや」
ぱかっ
私は店員の目を盗んではトイレットペーパーや洗剤が仕舞ってある棚をひとつずつ開けて、
中を確認していた。
別にトイレットペーパーを盗む訳ではないけれど、誤解されると面倒なので隠密に行う。
「ま、まさか………」
私は底に少しだけ水を蓄えた洋式便器に目をやる。
「流石にそこじゃねぇだろ」
「でも、棚は全部調べたわ。あるとしたらこの辺りでしょ?」
「………まぁ。この空間はすでに『気配』で満たされているから、これ以上何処に『鍵』があるかは、俺も分からねぇ」
「そ、そうなの」

ふと、尿意を覚える。トイレにいるついでに、用を済ませることにした。
何となくだけど、一旦ペンダントを首から外し、ジーンズのポケットに詰め込む。
用を足して、紙で拭いた後、レバーを回して水を流す。
ジャジャジャジャジャっと水が流れた後、いきなり頭上の電灯がスコンと抜けて、垂れ下がってきた。
間一髪の所で頭上直撃を免れた。
「い、一体何なのよ?!」
ふと頭上を見上げると、電灯のユニットが嵌め込まれていた穴から『何か』が降ってきた。
便器に落ちない様に、両手でキャッチする。

それは、米原駅で見付けたものと同じ、『星のカケラ』だった。
「よし、2個目ゲットね」
447カケラ 14-7/7:2008/02/17(日) 02:25:41 ID:AoxudsDA
私はトイレを出てもう一度手を洗い、席に戻った。
結構長く居たのか、席に着いた直後に料理が運ばれてきた。
宴会でお刺身を並べる時に使いそうな大皿にはキャベツの山、その上に有頭海老のフライが2尾、どでんと乗っている。
中くらいの皿に載ったライスも大盛りだ。
どうみても花崎のデカ盛り屋です。本当に有り難う御座いました。
一方、彼のくいだおれ定食もボリュームが凄まじい。
大きな有頭海老のフライが1尾、それにたっぷりとソースの掛かったステーキとハンバーグが1つずつ。
これは凄い。ハンバーグは小振りに見えるが、厚みが2cmくらいある。
ごくり。
もしかしたら、私もイケるかも知れない。
これを食べて脂肪がお腹でなく胸に付けば、私は追加でハンバーグを頼んだのかも知れない。

「頂きます」「いただきます」
さっそく頂く。
海老フライはプリプリと歯応えが良く、カラっと挙がっていてとても美味しい。
私の父は海老フライを頭ごと食べるという意外と豪快な一面を持っているが、それは彼も同じだった。
「味は濃いけど、美味しいですね」
フランス料理店に似合いそうな彼も、やはり海老フライを頭ごと食べていた。
やはり、彼は私の父親なのだろうか?

会計を別々(にしようと私が決めた)に済ませて店を出る。
この後、関東には無い「いか焼き」のデラベッピンを食べた事は内緒だ。
「だからカガミ、そんなに喰うと牛になっぜ? ヒッヒッヒ」
「五月蠅い。人の幸せにケチつけるな」


「おめえの『幸せ』ってのは、随分安いモンだな」


バカマルコのこの一言に、いつも通りツッコんでやろうかと思ったが、何故かそれが出来なかった。
ペンダントの言葉には、重みがあった。
448カケラ 間-1/2:2008/02/17(日) 02:26:11 ID:AoxudsDA
間.

桜園市の桜園市営住宅、3階のある一室にて。
学校から帰った宮河ひかげは、ランドセルを放り投げ、制服から部屋着に着替える。
ひかげの通う小学校は、公立にしては珍しく学生服が存在する。

それから、六畳間の住みに置かれたパソコンにOptionキーを押しながら電源を入れる。
起動時にOSを選択する小学生は、この街ではおそらくひかげくらいだろう。
彼女はとある理由で姉のひなたと2人きりで生活をしており、決して経済的余裕があるとは思えない状態だった。
その理由がとんでもないのだが、今回は割愛させて頂くとしよう。
低所得者向けの市営住宅在住とはいえ、宮河家にはパソコンがあった。
今のパソコンは2代目であり、ひなたがある日突然友人から貰って来たもの(らしい)かった。
その前のパソコンは何世代も前の代物で、専らひかげのプログラム練習用マシンとして機能していた。
現在、宮川家のパソコンは半ばひかげの管理下にある。
それは、Windowsユーザだったひなたが貰って来たパソコンが何故かMacであり、
使い方が分からなくなってしまったひなたはたった一度しか今のパソコンを使った事がない。
ひかげは「Unixが使えればそれで良い」という小学4年生らしかぬ台詞で管理権を見事手にし、
それ以来、ひかげは高速タイピングでひたすら怪しげなプログラムを何個も作っていた。
最初は趣味で始めたUnix。普通、小学生が手を出す代物では無かった。
が、宮河ひかげの隠れた能力は思わぬ所で開花し、
彼女が公開したソースは個人から国立研究所まで、あらゆる場面で応用されていた。

詰まるところ、宮河ひかげは所謂「スーパーキッズ」であった。
しかし、コンピュータに関する知識はハンパではなかったが、学校の成績はむしろ悪い方だった。

そんなひかげは、夕べプリントアウトした印刷物とじーっと睨めっこしていた。
それは、『朽網』(くさみ)と名乗る人物が書き込んだ、伊勢崎線高架橋崩壊事故現場の側にあった『大穴』についての書き込みだった。
実は、『朽網』という名前は鷲宮町に住む日下部という青年のハンドルネームであり、
ひかげもコンピュータを通して彼の事を知っていた。
実際、秋葉原や大宮で彼と何度か会っており、その旅に技術情報の交換を行っていた。
しかし、流石のひかげも『朽網』という珍妙なハンドルネームの由来が、彼の妹の本名に由来する事は知らなかった。

ひかげはわずか15分で削除されたこのログの文書に何度も目を通し、情報を片端から集めていた。
まずは事故現場である東武伊勢崎線新田(しんでん)〜蒲生(がもう)間の地理情報、
被災した車両の特徴、被害者の人数といった基本情報から、過去に起きた超常現象についてまで、
くまなく調べていた。
カタカタカタというキーボードを叩く音、カチカチとマウスをクリックする音が、
静かな2DKの住宅に響き渡る。

「うみゅ〜、なかなか見付からないわね」
一旦席を立ったひかげは、背の低い冷蔵庫から麦茶を取り出し、ごくりと飲みながらつぶやいた。
コップをすすいだ後、ひかげはふぅ、と一息つき、それから袢纏を身にまとう。
六畳間の座椅子に座り、段ボール箱に乗せられたパソコンを再び操作する。


2時間が経過した。
そろそろ埼玉大学のサーバをハッキングしようかしらと考えていたろ、
とあるサイトが表示された事でキーボードの動きがぴたりと止まった。
それは、事故現場の大穴とは無関係な、『星の石』に関するサイトだった。
単なる都市伝説だと思うが、あまりにも気になるので中を覗いてみる事にした。
449カケラ 間-2/2:2008/02/17(日) 02:26:33 ID:AoxudsDA
その頃、同じく市営住宅の一室にて。
こちらでも、キーボードをせわしなく叩く音が、2DKの室内に響いていた。
真っ暗な部屋の中、画面のバックライトに照らされた青い顔が、ニヤリと怪しく笑う。
「さて、次は『ここ』ね」
そう言って彼女は、「run」とタイプした後、キーボードのenterキーを押下した。
ウィンドウが一つ開き、黒い画面に白い文字が一斉に走る。
そして────────。
450久留里:2008/02/17(日) 02:28:46 ID:AoxudsDA
以上でございます。

そろそろ第三者視点に切り替わるかも知れません。
こなた・つかさ・かがみの三人の運命は如何に?
451名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 02:41:11 ID:6o7h6ShW
>>441
うぇるかむとぅーおーさかーー!!

でも、梅田(中心地)あたりじゃ、人はほとんど地下街にいるから、地上はけっこう閑散としてるんだよな。
452kt:2008/02/17(日) 12:00:05 ID:eQMqMVsy
>294さん
>)ryって括弧の向き逆じゃね?
返事が遅くなってすいません、、、
え、とそうなんですか?「(ry」こっちなんですか…
でも僕は「)ry」の方が使いやすい感があるのでこっちを使って行こう
と思っています、すいません


>妄想屋(仮名)さん
こちらこそなんというか、、すいません…
次回はオリキャラ視点(うぃきつー)のエロでいこうかと思っていますが…
いいのだろうか?、、オリキャラと言ってもみゆきさんの分身だけど、、、

あと「鼻血)ry会☆」シリーズと今考えている
ゆたか&みなみ&オリキャラのちょい?暗めの話を組み合わせようと
模索中です…自分で自分の首を絞めていってるというww

それでは失礼しました、、頑張ります
453名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 12:15:10 ID:KB25Gb2/
ゲームのせいで勘違いされつつあるがみゆきさんは黒くないていうかむしろ白い方
45416-187 ◆Del8eQRZLk :2008/02/17(日) 12:39:51 ID:fjVEMenr
ごきげんよう。特にかぶりがなければ投下します。
『4seasons』の続きです。

■かがみ→こなた
■柊ただおが捏造大車輪です
 ただおファンの方ごめんなさい
■エロなしです

7レスになります。
455秋/静かの海(第二話)1/7:2008/02/17(日) 12:41:24 ID:fjVEMenr
§2

 静かの海という言葉を最初に聞いたとき、“静か”が湛えられた海なのだと思った。
 “静か”とは何かと問われたら困るけれど、そう思ってしまったのだから仕方がない。
言葉から受けるイメージなんて、どれも最初はそんな曖昧なものなんだと思う。
 よくわからないけれど、なんだか白く濁ったもやのようなものが地平線まで満ちていて、
そこに落ちた人間は永遠に言葉を失ってしまう。そんな海を想像した。
 それをお父さんに云ったら、笑いながら頭を撫でてくれた気がする。そんな記憶が
どこかにあった。
 その思い出は過去の朧気な情景の中にあって、少しでも意識のフレームを外してしまうと、
たちまち無意識の薄闇に沈んでしまう。そんな記憶だった。
 それは。
 玲瓏と月明かりのこぼれ落ちる、濡れたような夜のことだった。

「そうか、“静か”で満ちた海か。うん、面白い。それに近いと思うよ。でもちょっとだけ違うんだ」
 あれは、どれくらい前のことだっただろうか。
 たしか家の増築前だったはずだから、小学校低学年のころだろう。居間の縁側から眺めた
風景に、今お父さんたちの寝室になっている部屋はなかった。でも、いつも私とつかさに優しく
してくれて、ずっと大好きだったおばあちゃんがいた覚えもない。だからたぶん、三年生くらいだ。
「あー、お姉ちゃんばっかずるいー。つかさも撫でてもらうのー」
 ペタペタとまとわりついてくるつかさに、お父さんはにこにこと笑いながら云った。
「お父さんがかがみを褒めたのは、かがみが自分で考えて素敵なことを云ったからだよ。
つかさもなにか良いことを云ったら撫でてあげようね」
「え、あ、うーんとうーんと……。あ、お月様がずっとおんなじ顔をしてるのは、公転と自転が
一緒だからなんだよ?」
「……それって、さっきお父さんから教えてもらったことじゃん」
「あ、そ、そうだった」
 ふにゃんと頬に手を当てて萎れるつかさに、お父さんが苦笑していたのを覚えている。
「仕方ないなー、ほら、わたしが撫で撫でしてあげる」
 哀しそうにしているつかさを見ていられなくなって、私はつかさのそばに寄って頭を撫でたのだろう。
そうするとつかさは、途端に月よりもまん丸な笑顔を浮かべて「わーい、お姉ちゃん大好き」と
云ったはずだ。
 そんなことは思い出すまでもなかった。あの頃私たちは、いつだってそうやって依存しあって
いたから。
「ほら、かがみ、みてごらん」
 縁側の天体望遠鏡を弄っていたお父さんが私を呼んだ。
 場所を入れ替わってレンズを覗くと、灰色の月が大きく映っていた。
「そこが静かの海だよ」
 円形の月の中心点からやや右上の辺り。一際濃い色をした染みのような影にピントが合っていた。
「ここが海なの?」
 よくわからなかった。海と聞いて思い浮かぶイメージは、青い水の満ちた水たまりのような
あれだったから。
 水なんてないはずの月に海があるなんて信じられなかったし、ましてや静かの海といわれたら
余計にわからない。だから“静か”でたゆたう海などというものを想像してしまったのだけれど。
「そうだよ。海と云っても、僕たちが普段云う海とは違うんだ。隕石が衝突したりして、
玄武岩っていう黒い岩が露出している盆地を、海って呼んでいるだけなんだよ」
「じゃあ、水があるわけじゃないんだね」
「そうだよ。でもねかがみ、“静か”で満たされているのは本当だよ。月には大気がないから、
きっとその海はどんな音も飲み込んでしまうだろうね」
 ――そう、アポロの接地音もね。
 お父さんは、どこか遠い目をしてそう云った。
456秋/静かの海(第二話)2/7:2008/02/17(日) 12:41:52 ID:fjVEMenr
「アポロって?」
 不思議そうな顔をして訊ねるつかさと私に、お父さんは教えてくれた。
 それはとても昔の物語。私たちが生まれるずっと前のこと。
 人がどれだけ偉大なことをなし得るか。人の営みがどれだけ輝いて夜空を照らし出すことができるか。
それを示した人たちのことを。
 アポロ11号が静かの海に降り立つまでの物語。
 ニール・アームストロング。マイケル・コリンズ。エドウィン・オルドリン。ユーリ・ガガーリン。
フォン・ブラウン。コンスタンチン・E・ツィオルコフスキー。
 そしてライカ。あるいはクドリャフカ、ジュチュカ、リモンチク。犠牲にされたかわいそうな犬のこと。
 そんな舌を噛みそうな名前たちも、お父さんの口から聞こえると、なぜだかよく知った人の名前
みたいに思えてくるのが不思議だった。
 それはきっと、昔の友達のことを話すような、お父さんの優しい表情のせいだったのかもしれない。
 つかさもちゃっかり確保したお父さんの膝の上で、目を丸くしてじっと聞き入っていた。
 お月様に捧げられたススキがさわさわと揺れていた。鈴虫が思い出したように鳴く声が、
BGMのようにその場を満たしていたことを覚えている。
 お父さんは、根っからの科学少年だった。当たり前だが私が知っているお父さんは、大人でかつ
人の親であるお父さんだけだ。だからお父さんの実際の少年時代のことは聞いた話でしかないし、
自分の父親に対して少年というのもおかしな話ではあるけれど。
 でも、難しい科学理論を楽しそうに話し、鉱石ラジオとか真空管アンプとかを嬉しそうに組み立てる
お父さんは、少年のようにきらきらと瞳を輝かせるのだった。そんな人を大きくなった科学少年と
形容しても、きっと許されることだろう。
 科学好きなお父さんだったけれど、がちがちに凝り固まった合理主義者というわけでもなかった。
それは、神社の一人娘だったお母さんと結婚する際、自ら神学校に通って神主の資格をとった
ことからもよくわかる。
 何よりも人の心を大切にする人だった。
 科学の言葉で、夢を語る人だった。
 お父さんから、沢山の星の名前を教わった。遠いところにあるもの、近いところにあるもの。
光の等級や、スペクトル分析から導き出された元素組成。古来から人がその星に何をみて
きたのか、その願いや神話の話。位置が定まらない曖昧な素粒子や、それが導き出す
可能性の世界。そして、人はどうあるべきかとか、人はどうするべきかとか、そんな話も。
そんなことを真摯に子供と語れる人なのだ。
 私は、そんなお父さんから理知的で真面目な性格を受け継いだ。
 そしてつかさは、そのロマンティックでおおらかな性格を受け継いだのだろう。

 今隣にある顔は、あの頃と比べると皺も増え、少し白髪も交じるようになっている。でも
その瞳の輝きはあのころと少しも変わらない。こんなにも複雑で先の見えない世界に対して、
あくまでも誠実に向き合ってきた。そんな正しさに支えられて、その眼差しはどこまでも
優しかった。
 縁側に作った小さな祭壇にお団子とススキを捧げて、ぱんぱんと短拍手を打つ。
 お月様も柏手でいいのかなとお母さんに聞いてみたら、「八百万だからご一緒よ」という
返事だった。
 あのころお団子を作っていたのはお母さんだったけれど、今ではもうつかさの役割だ。
 縁側に並んで腰掛けたお父さんと私、居間のテーブルにもたれかかったつかさと、その
正面でお祓い済みのお守りを袋につめているお母さん。中天にかかる満月は銀色の光を
地上になげかけていて、電灯も消した夜は少し青みがかって沈んでいる。リーリーと鳴く
鈴虫の音色は、昔も今も変わらない。
 今年の中秋の名月は、十月もしばらく過ぎた頃だった。
457秋/静かの海(第二話)3/7:2008/02/17(日) 12:42:17 ID:fjVEMenr
「あんたたち、本当お月見好きだよねー」
 台所から、まつりお姉ちゃんが声をかけてきた。縁側からはみえないけれど、ごそごそと
冷蔵庫をあさっているようだった。
「お姉ちゃんもどう? 楽しいよー」
 にこにこと笑いながら、つかさが答えた。
「楽しいわけあるか。あれかなぁ。やっぱ七夕生まれだからかな? あんたたちが夜空
好きなのって」
 ああ、そうかもしれない。たしかに誕生日と七夕を一緒に祝われる私たちにとって、見上げる
夜空はお馴染みのものだった。つかさと二人でいるとき、晴れた夜にはよく空を見上げては
星の名前を呼び合ったものだ。
 そういえば――こなたの家に初めて泊まりにいったとき。
 あの夜にも、流れ星をみつけたのはつかさだったっけ。あのときつかさはお祈りを三回
唱えようとして必死だった。私は、どうしたっけ。ああ、そうだ。
”流れ星が消えるまでにお祈り三回唱えるなんて現実的に無理”そんなことを云って
こなたに呆れられたんだ。
 こなた。
 懐かしいな、無邪気だったあのころ。初めてこなたの家にいって、子供のころから
こなたが過ごしてきたという部屋をみて、私は胸が一杯になっていた。柱の小さな傷も、
カーペットの染みも、壁紙に残ったセロハンテープの跡も、その全てがこなたの人生を語って
いるように感じられた。
「どうだ、二人とも。ちゃんと勉強は進んでいるかい?」
「うん、大丈夫。ちゃんと計画的にやってるわよ。つかさもね」
 そう云って笑いかけると、つかさも笑いながらうなずいた。
「そうかそうか。かがみはいつも一人で抱え込んで頑張りすぎるから、少し心配していたよ。
でも、その分なら大丈夫そうだな」
「……う、読まれてるかも」
「つかさも。最近はすごくしっかりしてきたね」
「そうよ。最近私が起こさなくても一人で起きられるようになったのよ」
 お母さんが云う。
「えへへ」
「ってつかさ? それ高校生が褒められて照れるようなことじゃないからな」
「はうっ」
 固まったつかさを見て、みんなで笑った。
 四人で色々なことを話した。学校のこと。進路のこと。最近のニュースのこと。哀しかったこと。
楽しかったこと。昔の思い出。少しだけ未来の話。そんな色々な由無しごと。
 普段云えないようなことでも、自然に話し合うことができた。
 月をみているから話せることもあるのだ。
 お互いの顔をみていないから。月に語りかけるように話すことで、やっと伝えられることがある。
 家族ではあっても、気軽には触れられない部分もあるから。
 どれだけ親しくても、話せないことはあるから。

 ――たとえば、私の恋のこと。

 それを告げたら、この人たちはどう思うだろう。
 時々考えてきたことだった。
 私は同性愛者というわけじゃないから、それを隠して生きていくことは可能だと思う。
けれど家族に対して自分のセクシャリティを隠し続けることに、私はずっと良心の呵責を
感じていた。性自認とか性的指向だとか、なんていうか、プロフィールの性別欄に記入が
必要なほど根本的な属性を隠したまま家族でいることが、すこしだけ後ろめたかった。
 いつか、話さないといけないのだと思う。
 お父さんはきっと、少し驚いて、それからちょっと考えて。それで多分「そうか」とうなずいて
受け入れるだろう。
 科学少年でかつSFファンという人種は、そういうものだ。
 なんといっても、五千万年後の人類の生活様式だとか、惑星を満たす巨大な原形質生物と
人間とのコミュニケーションだとか、中性子星の表面で発展してきた生命の文明史だとか、
そんなことばかり考えてきた人種だ。多少のセクシャリティの混乱など、なにほどのものでも
ないだろう。
458秋/静かの海(第二話)4/7:2008/02/17(日) 12:42:43 ID:fjVEMenr
 けれどお母さんは違う。
 これで存外に古式ゆかしい人だから。
 柏手をうちながらお札をお守りに入れていく、お母さんを盗み見る。
 きっと、自分の育て方が悪かったなどと思うに違いない。私がつかさとべったりひっついたまま
育っていったせいだとか。お父さんが難しいことを教え込んだりしたからだとか。
つきあってきた友達のせいだとか。男に愛想をつかすようなことをされたことがあったのかとか。
 そんなはずもないのに。同性愛指向は変態性欲でもなければフェティッシュでもなく、
環境によらない生まれつきのセクシャリティなのだから。
 それを説明するのはやはり気が重い。納得してくれるかどうか、まるで自信がない。
 それでも、いつか話さないといけないだろう。それがずっと育ててきてくれた親への礼儀だと
思うから。

 ふと会話がとぎれたところで、自然とみんなが月を見上げた。

 大きくて丸い月が、ただ浮いている。
 なんの意味もなく、理由も目的もなく、ただそこにあるということ。その事実が、なぜか
少しだけ怖かった。夜空は晴れ渡っていて、肉眼でも静かの海がよくみえる。
「38万4,400km、だったっけ?」
 ぽつりと呟いた言葉に、お父さんがうなずいた。
 38万4,400km、地球と月の平均距離。
 その何もない距離を渡ったアポロの乗組員たちは、何を思っていただろう。
 ただなにもない無の世界。
 上下もなく左右もなく、その全てが真空の暗闇で、遙か遠くに月光と地球光だけが浮かんでいる。
 無限とも思えるその間隙を、どうして渡ることができただろう。

 こなたのことを考えている。
 こなたと私の間に広がる、真空の間隙のことを考えている。
 私たちは、きっと、地球と月のようなものなのだと思う。互いに重力を及ぼしあうけれど、
決して一つになることはできない。
 互いに一番大事な人だけれど、夜空に一番大きく浮かぶけれど、決して行き来することは
できない。
 ただお互いの周りをくるくると周り、慎重に裏側をかくして、同じ顔を見せ続けている。
 その間隙を飛び越えるには、きっと私の心にもアポロが必要なのだ。失敗しても挫けず、
焦らず、何度でも挑戦して。全人類の夢を背負って。フロンティアに思いを馳せて。
 そうしていつか遠い天体と私を繋ぐ、そんなアポロ。
 でも、そんなことは不可能だ。

 38万4,400km。まるで実感の沸かないその数値に、少しだけ眩暈がした。

 リーリーと、BGMのように鈴虫が鳴いていた。
459秋/静かの海(第二話)5/7:2008/02/17(日) 12:43:06 ID:fjVEMenr
§3

 十月も過ぎ、十一月にもなれば、もはや冬の跫音はすぐそこまで聞こえてきている。
 私は、八ヶ月ぶりにスクールコートをクローゼットから出した。
 クリーニング店の札を外しながら、ああ、このコートを着るのもこれが最後なんだなと、
少しだけ感傷的な気持ちになった。
 最後に夏服を脱いだときも同じような気持ちになったけれど、きっとこの先何をするにも
“高校生活最後の”という言葉がつきまとっていくのだろう。
 慌ただしかった二学期ももう半ばを過ぎて、受験、そして卒業という言葉が、実感をもって
せまってくるこの頃だった。
 思えば二学期は本当にイベントごとの目白押しだった。
 体育祭に修学旅行、それに文化祭。受験というこれまでの人生の山場を迎える時期に、
どうしてこうも学校行事が続くのか。修学旅行なんて、二年生のときにすませておけば
よかったのに。理事長だか校長だか知らないけれど、そんなカリキュラムを組んだ誰かを
心の中で罵った。
 でも、楽しかった。
 それだけは確かだった。
 体育祭では僅差でB組に勝った。こなたとどっちが勝つかで賭けをして、見事に勝った私は、
一週間三つ編みで過ごすこなたを眺めて楽しんだ。
 修学旅行ではこなたにつきあわされてアニメスタジオに行ったし、変な男に勘違いさせられて
呆然としたりもした。
 あのときは本当に脱力する思いだった。
 夜にホテルの前でという呼び出しの手紙をみつけた私は、てっきり男子から告白されるのだと
思い込み、一人でずっと思い悩んでいたのだ。
 云うに云えない恋の辛さは、心からわかっていたから。
 もしどこかの男が私に対して私と同じような想いを抱いているのだとしたら、その想いに
一体どうやって答えればいいのだろう。夜も眠れずに七転八倒し、隣に恋する人がいないことに
理不尽なほど腹を立て、自分が隠しているくせに、それに気づきもしない相手を逆恨みすらして。
 私の中で吹き荒れた感情の嵐は、最終的に“男とつきあえばこなたのことを忘れられるかも”
なんていう馬鹿げた所までいきついていたのに。
 その結末といったら――もはや思い出したくもない。
 文化祭ではチアダンスを踊った。
 ずっとこなたとクラスが別れていた私にとって、あの経験は何物にも換えがたい宝物になった。
こなたと一緒に行動して。こなたと一緒に何かを積み上げて。最初はできなかったことも、
話し合って、練習して、少しずつできるようになっていって。それは本当に楽しくて、
身体だけではなく心も一緒に踊りだしていた。
 そうして、それが楽しかった分だけ、つかさやみゆきはずっとこなたとこういうことが
できたのだと思って、少しだけ嫉妬した。私はそんな自分を恥じたけれど、きっと二人とも
私が嫉妬していることに気づいていただろう。そして私がそれを恥じていることも十分
わかっていて、それを私がわかっていることもわかっている。
 だから私は開き直って笑った。そんな自分も丸ごと受け入れて楽しんだ。
 全部、大切な思い出としてこの胸に刻み込もう。
 悩んだことも辛かったことも楽しかったことも。
 この先何がおきて、わたしたちがどうなったとしても、決して忘れないように。今まで
生きてきた道を、決して見失わないように。
 スクールコートに袖を通しながら、そんなことを思った。
 久しぶりに着たコートからは、少しだけクリーニング屋の匂いがした。
460秋/静かの海(第二話)6/7:2008/02/17(日) 12:43:27 ID:fjVEMenr
 つかさの部屋からドアを開ける音がしたので、私も一緒に部屋を出る。別に示し合わせた
わけじゃないけれど、つかさも私と同じようにコートを着ていた。
「あ、やっぱりお姉ちゃんも」
 嬉しそうに顔をほころばせている。
「あんたもか。そろそろ制服だけじゃ寒いよね……って、こらつかさ」
「ふぇ?」
 階段を降りようとしていたつかさに声をかけて立ち止まらせる。突っ立っていたつかさの
背中に回り込んで、首筋に手を伸ばした。
「もう、クリーニング屋の名札、つけっぱなしじゃないの」
「あう、や、やっちゃうとこだったよう……。お姉ちゃんありがとう」
「まったく」
 しっかりしてきたように見えて、まだ時々抜けているつかさなのだった。
 いつもの待ち合わせ場所では、先に来ていたみゆきが私たちを待っていた。おはようと
挨拶を交わして、つかさがみゆきの格好に眼を止める。
「ゆきちゃんも今日からコートだねー」
「ええ。お二人とご一緒ですね」
「こうなると、こなたのやつも一緒に着てくるか楽しみよね。あいつのことだから、寒い
と思っても面倒臭がってひっぱり出そうとしないかもなー」
「ふふ、そうですね。この間も着替えが面倒くさいからと、家からずっと制服の下に体操着を
着っぱなしだったそうです」
「あー、あったあったー。なんか満更じゃなかったみたいで、もうずっとこうしよっかな、
とか云ってたよ」
「年頃の女の子としてありえんな……」
 そんな風にこなたを肴にして盛り上がっていたところで、後ろからくしゅんと可愛い声がした。
 ふりむくと、いつのまにかきていたこなたが、鼻をこすりながらにらみつけていた。その隣で、
ゆたかちゃんが困ったように笑っている。
「あー、君たち、人がいないところで何を盛り上がってるかな?」
 くしゃみはしていたけれど。
 しっかりとスクールコートを着ていたから、寒くはないはずだった。

「ふむ、今日のお弁当当番はつかさか」
「うっさいな、ってか見た瞬間見破るなよ」
「いやいや、私だってわかるぜ。かがみのときは、もっとこうごちゃーってしてんもんな」
「あんたは毎日あやのに作ってもらってるくせに、偉そうなこというな!」
「あー、あやちゃんたち、タコさんウィンナー」
「うふふ、みさちゃん、ウィンナーがタコさんじゃないといつも一瞬がっかりするんだもん」
「あ、あやのぉ……そんなことばらすなよぉ……」
「あら、あやのさんたちもこなたさんも、今日は付け合わせがポテトサラダですね」
「おお、みゆきもだー。これはあれだね、ポテトサラダ三連星だね」
「意味がわからんわ」
「ポテトを踏み台にした!?」
「しねーよ」
461秋/静かの海(第二話)7/7:2008/02/17(日) 12:43:49 ID:fjVEMenr
 やかましいことこの上ない。
 最近のお昼はいつもこんな風だった。文化祭以降みんなが打ち解けてきたこともあるし、
私がもっとみさおたちに歩み寄ろうと働きかけたこともある。気がついたらお昼もみんなで
一緒に食べるようになっていたのだ。
 いざ仲良くなってみれば、みんなまるで以前からそうであったようにぴったりと馴染んだ。
 みさおとこなたはノリが合うのか、ぽんぽんと賑やかに、男の子みたいな言葉の応酬を
していることが多かった。みゆきとつかさはあやのとほんわかトライアングルを形成して、
周囲に癒しのオーラを投げかけていた。
 どうして今までこうしなかったのだろう。
 私とみさおだけを置き去りにして、ポテトサラダの味付けの話で盛り上がっている四人を
みながらそう思う。
 みさおやあやのが、私ともっと距離を縮めたいと思っていることは、半ば気がついていた
はずだった。それを知っていて、どうして私はこなたの所にばかり入り浸っていられたのだろう。
五年連続で同じクラスという、ほとんどあり得ないほど強い縁がある二人を放っておいて。
 きっと私は、ずっとこなたに捕らわれていたのだと思う。
 あの日、桜の樹の下でこなたに会ってから。あの時から私はずっと、桜吹雪の下の異境を
彷徨っていたのだ。
 一目みたときから気になって、一言話しただけで頭から離れなくなって、自分が受けた
不思議な感情に戸惑って、そんな思いを私に抱かせた女の子を、もっともっと知りたくて。
 だから私は周りがみえないほどこなたにのめりこんでいったのだろう。そう、あの夏が
くるまでは。
 春にこなたが好きだと気がついて、夏に覚悟を決めた。そうして私は初めて周りに眼を
向けることができたのだ。
 どれだけ好きでも、世界は二人だけで完結しているわけじゃない。
 お互いがお互いの周りを回っているだけにみえる地球と月だって、一緒に太陽という
より大きな物の周りを回っている。火星も、金星も、水星も、木星だってある。その全てが
お互いに重力を及ぼし合って、そうして一つの系を作り上げている。
 一人の人を好きになるということは、その人に繋がる全ての人も受け入れることで、
その人が生きてきた人生も全て受け入れることなのだと思う。
 そう思うことができたから、あの夏も無駄ではなかった。
 渦中にあるときは辛くてきつくて、逃げ出したくなったけれど。
 そう思うことができたから、あの夏も必要な夏だったのだ。

 ふと眼があったみゆきが、ふわりと笑った。
 それがなんだか、考えていること全てを見透かされているようで。
 かなわないなと、心から思った。

 ※  ※  ※

 そんな風に十一月もすぎていく。受験勉強もいよいよ佳境となり、クラスの雰囲気も
少しずつ張り詰めていき、寒さも本格的になり始めたころ。
 こなたから掛かってきた電話に何気なく出た私は、続く言葉に驚きの声を上げた。

「かがみ。週末なんだけど……海を見たくはないかい?」
「――は?」

 余りにも唐突なその言葉に、私は静かの海のことを思い出していた。

(つづく)
46216-187 ◆Del8eQRZLk :2008/02/17(日) 12:44:27 ID:fjVEMenr
以上です。

ただおのSFオタク設定は特に意味がありません。趣味です。
だってSFとか、好きだからー!
強いて云えばそうじろうに負けないキャラの強さが欲しかったのです。

ちなみに秋のテーマは、
「でも、世界は二人だけで構成されているわけじゃないよ」(二条乃梨子さん談)
のようです。

それではありがとうございました。
463名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 12:58:49 ID:PuKQO9rX
>>462
リアルタイムGJ。
こなたとかがみを月と地球に例えるってのはなんだか不思議な感じがしました。
でも間違ってもいないような気がして。
毎回毎回、凄く楽しんで読ませていただいておりますぜ。
次も待ってますー
464名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 12:59:42 ID:w/S1eHGS
>>462
えーと。モーツァルトに嫉妬するサリエリってこんな感じでしたっけ?(自爆


不穏当な枕はさておいて(おくな)、そう持ってきましたか。
アニメ版のイベントを盛り込みながら関係を変化させていく描写の妙にうならされます。
彼女達の関係がどう変わっていくのか、引き続き見守りたいと思います。ぐっじょぶ。
46523-251 ◆5xcwYYpqtk :2008/02/17(日) 13:01:46 ID:JntBCif7
GJ!
地球と月の距離に、何か幻想的なものを感じてしまいますね。
ただお父は地味ながら、穏やかな人柄に好感がもてます。

ご連絡事項
保管庫の party party ! は、いちおう自作です。
トリップを明示させていただきます。

466名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 14:16:33 ID:R6kLaaeW
>>462
ktkr!!相変わらずすごい表現力…!!!
とうとう冬ですね。続きも全力でwktkしてますっ!
467名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 14:18:12 ID:R6kLaaeW
ごめん、興奮のあまり色々間違えた…

メル欄…orz
468ちび:2008/02/17(日) 14:40:55 ID:DgoSmlU9
こんにちは。
下手の横好きでまた書きましたので投下をさせていただきたいのですが。大丈夫でしょうか?
469二人だけの交差点:2008/02/17(日) 14:46:19 ID:FiczcdWz
>>462
待ってました!
楽しみで楽しみで仕方なかったけど、いざ見ると鬱です(GJ的な意味で)
自分とはレベルが段違いだ。ただおに持たせた個性とか、俺には真似できないし。
とにかくGJ!次回作も楽しみにしております。
470ちび:2008/02/17(日) 14:51:14 ID:DgoSmlU9
えっと、あと10分大丈夫そうだった投下します・・・。
471ちび:2008/02/17(日) 15:01:17 ID:DgoSmlU9
えぇ〜、投下します。内容は自分の作ったもの「その手を掴んだ愛」の続きです。まぁ、どうということもないです。エロは無いです。
つかさとこなたの話です。
472風(1/6):2008/02/17(日) 15:02:24 ID:DgoSmlU9
 春が謳歌する花畑。穏やかな風が白、黄色、赤の色鮮やかに咲く花々の匂いを運んでいる。
 一つのお弁当に向かい合ってつかさとこなたは女の子座りしている。
 つかさ特製の卵巻きを口に入れるこなた。
「美味しい!!」
 こなたはモグモグと軽快に賞味しながら、悦にひたった。
「えへへ。ホント?」
 首をかしげてもう一度その返事を促す。こなたがニマリとする。それは誰にそうして貰うより嬉しい。
「良かったぁ!」
「うん。さすが未来のコックだね。つかさも食べなよ。」
 こなたは箸でもう一つつまみ、少しうつむくと、にへらと笑って、頬を赤く染めて言う。
「…ほら、あ〜んして。」
 辺りを見回すつかさ。地平線を花々を散りばめた緑と澄清の青が割っている。
 つかさは思わず嬉しくて笑みがこぼれる。
 まあるく開けた口をこなたにゆだねた。
 かがみがつかさとこなたの交際を否定した夜、偶然にも二人が揃って見た夢の光景だった。

〜風〜

 陰鬱な空合い、ややもすれば雲が泣き出しそうな、朝。電灯に照らされた教室。早々から登校していたみゆきは幾つかのことに驚いた。つかさとこなたが共に現れなかったこと、挨拶すらしなかったこと、それにこなたの頬にうっすらとアザがあったことだ。
「その、上手くはいかなかったんですね。」
 二時間目と三時間目の中休み、こなたがみゆきの机にのたりともたれて「やな天気だねぇ」と切り出した話を早々に切り上げて、みゆきは訊いた。
「まあ、大体ご想像の通りかな。」
 依然空模様を気にするように窓の向こうを眺めながら、こなたはみゆきと会話する。
「あ、あの…。」
 みゆきはぎこちなく慎重に言葉を選んだ。
「その、かがみさんはかなり動揺したんですね。」
 こなたは頷いて、頬を皮肉っぽくつり上げ頭を掻いた。視線は変わらずに窓の向こう。その姿はあまりにもの悲しい、とみゆきは思った。
「いや〜、つかさへの並々ならぬ愛を感じたよ…。」
 みゆきは表情に困り、同情の色を残しながら苦笑いをした。
 ぽつぽつと雨が降り始める。こなたはその降り始めの様を少し眺めてからみゆきに向き直った。物を斜に見た、でも勇気ある少年のような顔だ。
「昨日つかさと電話してね、かがみの提案にのる事にしたんだ。」
 こなたはそう呟くように言ってから一息つく。
「お互い距離を置こうって。」
 つかさは愛する彼女を気にしないで次の授業の準備を終えると教室を抜けていった。それにこなたも気にかける様子はない。
「1ヶ月、気持ちも距離を置く事にしたんだよ。かがみも突然の事だったし、時間が欲しいんだろうしね、」
 まくしたてた言葉はみゆきにこなたが言っておかないといけない言葉だった。勢いでそれらを伝える。
「それに…、まぁそんなとこだよ。」
 こなたはそう言って言葉を詰まらせた。みゆきは直視出来ず視線を落とす。
「そうですか…。」
473風(2/6):2008/02/17(日) 15:03:12 ID:DgoSmlU9
 こなたは立ち上がって背伸びをした。
「う〜ん!みゆきさん!別の話しようよぉ。あ、それとかがみの分のツッコミよろしく。」
 見上げたみゆきの前にはにいつものにんまり顔で真っ直ぐ見つめ返すこなたがいた。
「ツッコミ、ですか?」
「ほらまずは話題、話題。」
 みゆきはわたふたとしてから、かしこまった。
「は、はい!えぇ〜っと、来週は三回目の学力テストがありますね。泉さんは…」
 おおぅ!そう来ましたか!?
「そうだね…。私、も〜少し勉強頑張らないとねぇ…。」
 目元に陰ができて、肩を落とすこなた。一喜一憂を全身で表現するあたり、普段通りだ。みゆきは何時も通りの焦り方でつなぐ話題を探した。
「…そう言えば学力テストには志望校を書くところがありますが、泉さんはどうしているのですか?」
 こなたはにやりと不敵な笑みを浮かべた。
「う〜んとね。決まって無いから適当だよ。一昨日の進路希望調査には東大、京大、○アニって書いた。」
 人差し指を立て、普通の出来事のように話して歪んだ高校生っぷりをアピール。
 さあツッコミたまえみゆきさん!
 瞬時にみゆきの脳内がフル稼働した。
「もういっそマジ○カも書いとけよ。私、見放してやるから。」
 こなたのみならず近辺のクラスメートの会話や、作業、読書まで止まった。
「ぬぁ!?みゆきさん!?」
 みゆきは赤らめた顔を両手で覆ってうつむいた。指先にのった眼鏡だけが位置座標をかえない。
「あ、あの私なりにかがみさんをイメージしたのですが…。」
「き、器用だねみゆきさん…。」なんか今のかがみより毒なかった?
 

 昼休み、日を通さない分厚い雲がいっそうの雨を校舎に落としている。
 つかさはかがみのクラスでご飯を食べていた。
「でね、先生その脅迫状まがいに忙しくって宿題出してたの忘れてくれて、凄く助かったの!」
 そう言ってつかさは自分で作った卵巻きをはむっと口に入れる。ふわりとほどけ、芳ばしい香りが甘味と共に広がる。凄く幸せ。
「随分たちの悪い悪戯ねぇ…。」
とあやのは眉を寄せ、みさおはケラケラと邪気無く笑って言った。
「でも、柊妹は柊姉と違って宿題忘れたりすんだな」
 つかさは、えへへ、と恥ずかしく頬を指で撫でる。
「いや〜実に人間味があるじゃん?」
「そう言ってもらえると、ちょっと救われるかも…。」
 つかさはみさおの方を向いて、はにかみながら微笑んだ。
「日下部、あんたさりげなく私を攻撃してるだろ。つかさ、こいつの方に流れてったら終わりよ。それにもう宿題忘れないようにって夏休み前にメモ帳買ったじゃない。あれはどうしたの?」
「あ、」
 つかさはこの手の不意討ちに表情のテンプレートが用意できない。無表情に沈黙した。3人は反応待ち。つかさは頭をかきながら、縮こまって言った。
「えっと、鞄には入ってるから、今日からまた使うよぉ…。」
 その肩にみさおの手がぽんとおかれた。つかさが見ると、みさおはわかるぞ、としみじみと同情の顔をしている。
「…心の友よ。」
「ど、どんだけぇ〜」
 かがみもつかさと同じお弁当の卵巻きをつまみながら、二人の絡みに苦笑した。なんだろうか、とても愉快だった。
「あはは、ホントどんだけよぉ〜。」
 つかさは顔を赤らめすっかり席に小さくなる。なんだか窮屈だけれど暖かかった。
474風(3/6):2008/02/17(日) 15:04:01 ID:DgoSmlU9
 この時、つかさもこなたも、そしてかがみも心にぽっかりと穴が空いていたが、それは度を超えて辛い事にはならなかった。
 つかさはふと思う。
 1ヶ月。あんな夜を過ごした私だから、それはとっても待ち遠しい。でもそう思うことはお姉ちゃんとの約束に反してしまう。だからおし殺さなくちゃいけない。
 1ヶ月。近づく約束の日。まるで昨日見たドラマだ。
 噴水、深夜12時…。現実はレポートをやるだけ…。
「つかさ?どうしたの?」
「あ、え、レポート?」
「レポートあるの?」
「うううん。無いよ。」
「…そう。」
 何気ないように気遣っていたかがみの表情が少しだけ曇った。


 夕方。雨はあがった。雲間から漏れ出した橙色が駅のホームを無表情に染めていた。こなたとみゆきはお互いの電車を待っている。
「さぁて、今日は帰ったら勉強してみよっかなあ〜、みゆきさんわかんないとこあったら電話するんでよろしくね〜。」
「もちろんです。頑張って下さいね。」
 みゆきは本屋のビニール手提げを持っていて、中身の本はそこそこの大きさがある。
「今日は買い物に付き合っていただきありがとうございました。」
「いやいや、一般的な書店が萌え化し始めてるのわかって嬉しかったよ。やっぱり二次元の時代、来てるねコレ!」
 こなたは手持ちの鞄を床において、両手を腰に不敵な笑みを浮かべた。
「ライトノベル等も深いテーマ性があったり、かなり本格的なものがありますよね。」
「いやいや、しかしみゆきさん、そんな分厚い本、しかも難しそうなのをよく読むよ。受験生なのにその余裕、さすが完璧超人。」
 こなたは身振りをころりと変えて、自ら名付けたあだ名を片手を握りしめてひしひし噛みしめている。そんな彼女はみゆきから見ても可愛いかったりする。
「いえ、そんな。今注目が集まっていて読んでみたかったんです。」
「『ワープする宇宙』だっけ?それって物理の本でしょ?」
「えぇ、正確には近代物理全般の啓蒙書と言ったところでしょうか?私もまだ読んで無いのでわかりませんが、
 私たちの生きる現実に五次元などの多次元があることを証明出来るかもしれない実験がまもなくスイスの実験装置LHCで始まるそうです。
 その理論の提唱者がこの著者なんです。」
「五次元!?」
「一つは時間だと思うので正確には三次元プラス時間プラス一次元と言ったところでしょうか?」
「あ、頭がぁ〜頭がぁ〜!二次元だけでも奥が深いのに…。三次元プラス一次元ってどういう事?」
「えぇ〜、よくはわかりません、なので私なりの理解ですが…、
 直線が一次元だとします。それをぱたりと垂直に倒すと、倒れる前のとを二辺に正方形の平面を作れますよね。」
「ふんふん…。」
「それが二次元、平面だとします。同じように正方形をぱたりと倒せば、倒す前のとで立方体に出来ますよね。」
「ふんふん…」
「それが三次元なら、多分それをぱたりと倒せば…」
「…どこへ?」
「よ、四次元方向に、です。」
「…(;´д`)」
475風(4/6):2008/02/17(日) 15:04:38 ID:DgoSmlU9
「ま、まあっ実際には素粒子物理の標準モデルというものを掘り下げた時に生じる階層性問題というものの改善策の超対称性に有用な理論だとかだそうで、
 私達は三次元プラス時間と言う環境から出られないはずなので…その、」
「あぁ!つまりラノベ的な展開は無しって事ね〜」
 わかりやすく会話を砕いて楽しんだところで、ホームにこなたの乗る電車のアナウンスが流れ、みwikiは終了した。
「まぁそう言う事です。現実ですから…。」
 こなたは鞄を持ち、電車の入り口の止まる場所に向かってたらたらと歩きながら言う。
「まぁねぇ、受験やら学祭やら、私も確かに時間に縛られてるよね。」
 線路の段差に巨体を上下させながら電車が来る。強い風に長い髪は鬱陶しくなびいた。
「わわわっ…!」
 みゆきは今日、言いたいことをずっと言わずにいた。
「じゃ、じゃあ私帰るね、今日はなんか、色々ありがとうね。」
 ドアが開きこなたはみゆきに半分向きなおる。みゆきは長い陰をつくってうつむいている。こなたは列車の中に足を踏み入れようとした。
 その時、
「待って下さい!」
「なっ…!?」
 みゆきはおどおどとこなたを見つめる。
 こなたは電車から離れ、みゆきを覗いた。
「…みゆき、さん?」
「わ、私は…」
 戸惑いながら言葉を探す。
 駅員が笛を鳴らし、ドアが閉まる。こなたは乗り過ごした。
「…このままでは良くない気がします。」
 こなたの背景にある電車は、ゆっくり加速し轟音を耳に残して過ぎ去った。残響が引いていくと、みゆきはぽつりぽつりと話し出した。
「私達が四人でいられる時期はもう多くはありません。学祭の準備だってあります。三年生は学校も早く終わってしまいます…。だから・・・です。」
「…みゆきさん。」
 違います、私が言いたいことと何かが。
 みゆきにはそれを上手く伝える事が思い浮かばず、そのまま押し黙ってしまった。
 みゆきさんがこんなに心配してくれてるのに気づけなかった。私、自分の事で精一杯だったんだね。
 こなたは彼女に近づき静かに微笑んで、周りには溶け消える小さな声で話した。
「つかさがね、私を愛してるって言ってくれたんだ。」
 みゆきの言葉へ精一杯の回答として、柔らかく、落ち着いた声で続ける。
「私ね、つかさにコクった日につかさの為に頑張ろうって誓ったのに、かがみに一発食らったらよく分からなくなっちゃったんだよ。
 現実を見たっていうか、女の身でつかさにコクった側だったし、つかさの人生を本当に幸せにしてやれるのかなって…。」
 変だなあ。まだ昨日の事なのにさ。ずっと昔みたい。
「でもつかさはその不安をわかってくれて、かがみもいるのに、耳元でそう言ってくれた。」
 それは本当の思いをちゃんと伝え合う会話。みゆきは一生懸命に受け止めながらも、自分の言葉が見つからない。
「つかさはかがみの事も凄く愛してる。だから、真剣に向き合うためにこの提案に乗ったんだよ。
 私も、もう迷ったりしないよ。1ヶ月位大したことだと思わない。」
 その瞳はとても力強かった。その中にみゆきの心を吸い込んでしまいそうな程だった。
476風(5/6):2008/02/17(日) 15:05:46 ID:DgoSmlU9
「…わかりました。」
「ありがとうみゆきさん。」
 みゆきは自分の勇気を試す。高鳴る胸を抑えた。
「でも…、逃げてませんか…?」
「え?」
 予期せぬ言葉にこなたは呆然とみゆきを見る。
「私にもよくわかりません。でも、これは違うのではないかと思うんです。」
「ははっ、バッドエンド選んじゃってるかな?」
 みゆきは自分に悲しい気持ちにがこみ上げてることに気づいた。こなたの瞳にさっきの力強さが無くなっていたからだ。何か、悔しいような、寂しいような、怒りにも似た感情。
「そうじゃないんです!ただ、直接何かしないとどんな事でも伝わらないじゃないですか!」
「ま、まあ、方向性の違い…じゃないかな?」
 雑踏が教室に一人でいる時のように聴覚を支配した。
「す…すみません。私、部外者なのに。」
「うううん、みゆきさんは親友だから部外者なわけないよ。私うじうじしてるよね。」
 二人は話すべき事を失った。弱まる斜陽は二人を頼りなく照らしている。どちらの顔にも陰ができる。
「本当にすみません。」
「だ、だから謝らないでよ。」
 みゆきの列車が来て再び、強くてみゆきをさらってしまいそうな程の風が吹き付けた。
 髪を押さえながらこなたは言う。
「心配してくれる人がいるだけで、私、凄く嬉しいみたいだから。」
「泉さん。」
「なに?みゆきさん。」
「すみません、でも・・・私、これがどんな結末になるかは、泉さんにかかっていると思います。」
「うぅ、頑張ります…」
 みゆきはこの電車に乗り過ごす事はなかった。
 その代わり、後にこなたへ散々謝りのメールを送ったのだった。


 あぅ…こなちゃんの事、意識しないように、意識すると、意識しちゃうよぅ…。
 窓とベランダから差し込む穏やかな夕日に包まれた自分のベッドに、制服のまま倒れ込んで悩んでいるつかさ。かれこれこうして1時間動き出せずにいた。
 …あ、名案かも。
 つかさは早速上体を起こして、ポケットから携帯を取り出し、着うたを探す。液晶の明るさに西日は負けていない。
 約束の日になったら、携帯の目覚ましが鳴るようにしよう。それを設定して、それまでは頑張ってこなちゃんの事忘れよう。
 曲はあれがいい。
 つかさは最近、ポップなジャケットについ衝動買いした、自分で見つけたお気に入りの外国のアーティストがいた。MIKA(ミーカ)という若い男性シンガーソングライターだ。
 彼の曲「Happy Ending」をフルでダウンロードする。
 この曲はまるで花吹雪が舞う結婚式場のように華やかで幸せに満ち溢れていながら、その歌詞は失恋を描いていて凄く寂しい。
 最初つかさはハッピーウエディングの曲だと勘違いしていて、対訳を見て驚いたのだった。
 これなら、きっとどう転んでも私を前に進めてくれるよね。
 深夜零時、アラーム優先。
 つかさはきっと眉を結んだ。
 私、絶対頑張る。頑張っちゃう。

477風(6/6):2008/02/17(日) 15:06:37 ID:DgoSmlU9
 更に同時刻、陵桜の職員室。
「と、言うわけで、これから受験の最終追い込みが始まります。学祭も控えてますが、去年の実績を上回る合格者を出せるよう、教師一丸となって頑張りましょう。」
 学年主任の先生がそう締めくくって今日の職員会議は終わった。
 黒井ななこは私立の有名進学校の定めともいえる、この追い込みがあまり好きではなかった。
 自分のクラスの生徒資料を真剣に読み直しているななこのところに進路指導の担当教員が来た。
「黒井先生、柊つかさ、いますよね。」
 コーヒーを置いて椅子を回して振り返る。
「あ、はい。柊がどうかしましたか?」
 進路担当は生徒達からウケのいい細身でハンサムな、スーツのよく似合う中年の男性だ。
 毒舌な感じと、ひたむきに授業を追求する態度が人気の理由で、ななこも嫌いではない先生だったが、今年に入ってからの彼の態度はあまり好意的にはとれなかった。
「彼女の志望先ご存じですよね。」
「あ〜、あの子は料理学校に行きたいって言ってます。」
「専門学校なんて、もったいないですよ。彼女の成績なら、今からでも中堅のそこそこ、いえ、やる気さえ出させれば国立も視野に入る可能性、十分にあるんじゃないかと思うんですよ。」
 ななこは眉をしかめた。
「でも、彼女、ホンマ料理大好きですし。それは本人が決める事だと思います。」
「軽く打診してみて貰えませんか。」
「あんまり気乗りはしません。」
「…出来ませんか?」
 この学校、いや、私立は会社と言ってもいい。ここで自分より地位の高い教員がこの言葉を言ったのなら、「あなたはこの仕事を出来る有能な人間ですか?」を意味し、否定は仕事が出来ないと言う意味になる。
 この進路担当も自分に与えられた職務上こんな風に言っているのだ。それでもこれが好意的になれない理由だった。
「…やってみますけど。」
「弱気ですね。大丈夫ですよ。以前授業を受け持ちましたけど柊さんはぽやっとしてて、ああいうのはのせやすいもんです。」
 ななこは愕然とした。彼の毒舌ぶりがいつもと違う意味合いではたらいている。
 ふざけんな、自分の勝手言い腐ってからに。
「…黒井先生。例の脅迫状の犯人、先生のクラスの生徒の可能性が出てきてるってご存じですか?」
「…な?」
「後で多分色々訊かれると思いますけど、先生がしっかりしないから受験に怯えた生徒がそういう暴挙に出るんじゃないですかね?
 手綱、ちゃんと引き締めて下さい。じゃないと学園全体の問題になりますよ。」
 考えたくない。この場から逃げたい。でももしそうだったら自分の原因だ。クラスを見放す事は絶対に出来ない。
「…わかりました。」
「本当にお忙しいのにすいません。では。」
 ショックが大きくて、ななこは座り込んでしまった。
 机の冷めたコーヒーを揺らしながら、思う。
 こんなとき、自分に彼氏でもいたら泣きつけたんやろうけどなぁ…。
 そうしてその冷めたく苦い液体を一気に飲みほした。

                               (いったんおしまい。)
478ちび:2008/02/17(日) 15:07:33 ID:DgoSmlU9
終わりです。もっと色々読んで、色々考えて頑張りますのでご容赦下さい。
おじゃましました。
479双子の兄:2008/02/17(日) 15:57:36 ID:FiczcdWz
他に投下予定がなかったら投下します。
『気付かなかった分岐点』

・『二人だけの交差点』の続き
・かがみ&つかさ、いのり&まつり
・非エロ(だと思います)
・甘?
480気付かなかった分岐点:2008/02/17(日) 15:59:10 ID:FiczcdWz
 晴れ渡る青空と、そこに浮かぶ太陽が私達を祝福しているような天気の日だった。特にこれと言った悩みなんて無
い私はその恩恵を素直に喜んで、一日のスタートを切って、そしてやはり太陽は私達を見守っているんだな、って思
えるほどに良い事が重なった。
 会社では、上司がいきなりお昼を奢ってくれる、と言い出して遠慮なく美味しいと評判の、最寄りの豚カツ屋にてご
馳走になったし、社内に居る時に喉が渇いたから自販機でコーヒーを買ったら何故だかお釣りが五百円出て来たし、
帰りの電車は難無く座れる席を確保出来た。
 そんな嬉しい出来事が立て続けに起こったのは、朝見たニュース番組の占いコーナーで私の星座が一位だっただ
けではなく、やはり、素晴らしいほどいい天気を私達にもたらしてくれた、あの太陽のお陰だと思う。日が暮れてからも
、爛々と輝く星達は楽しそうに瞬いていたし、その大海の中に堂々と浮かぶお月様は神々しい光を降ろしながら、太陽
に代わって私達を見守ってくれていた。
 そんな素晴らしき一日に、私が不機嫌になるはずもなく、私はその対極の上機嫌で自宅に帰宅して、喜色を眼に見
えて示しながら「ただいま」と言った。時刻は七時くらい、私以外の家族は全員帰宅している時間帯だった。
 けれど、私の素晴らしい一日の締めくくりとも言える、帰宅してからの自宅でのんびりと過ごす時間は素晴らしいま
までは終わってくれなかった。私の三人居る妹の中の、双子でもある妹達二人の様子が眼に見えて変だった事は、
一目見ても明らかだったから。
 何やら訳ありの妹達を差し置いて、私だけ上機嫌でなんていられない。
 今日を素晴らしい一日のままで終わらせる為に、私が一肌脱がないと。





気付かなかった分岐点




「ねえ、まつり?」
 食卓の準備をお母さんとつかさが進めている中、私は手持無沙汰な様子でテレビを見ていたまつりを声を忍ばせな
がら呼んだ。手に持っていたポッキーを口に咥えたままのまつりは、私が小声で呼んだからか、眼を丸くしながらこち
らに首を回す。そして、一気にポッキーを完食すると、炬燵に収まったままの体を動かそうともせずに言った。
「どしたの、姉さん」
 はあ、妹があんな状態だって言うのにまつりは心配もしないのかな、と嘆息しつつも、私はまつりの隣に腰掛けて、
耳に顔を近づけた。
 眼だけで辺りを見回しながら、事の真相についてを聞いてみる。
「つかさとかがみ、どうしたの? 何か変な感じじゃない?」
 私が帰って来てから、かがみには会ってないけど、つかさの様子は明らかにおかしかった。普通に話していたけれ
ど、何処か寂しそうにしていたし、かがみは? と聞いた途端に表情を曇らせた。これではかがみとの間で何かあっ
たとしか思えない。
 滅多に喧嘩なんかしない二人だから、まさかとは思うけど。
「うーん、かがみは何となく具合悪そうだったけど」
「やっぱりね……これは、何かありそうね」
 人差し指を顎に当てて、暫しの間黙考。最近あの子達が喧嘩するような事はあったか。
 ……ない。昨日まで、何時も通りに仲良くしてたし、不自然な個所も見受けられなかった。と言う事は、学校で何か
があった、そう考えるのが妥当だろう。それしか思い付かない。
481気付かなかった分岐点:2008/02/17(日) 16:00:06 ID:FiczcdWz
「本人が大丈夫って言ってたし、大丈夫なんじゃないの?」
「まつりがどんな様子のかがみを見たか知らないけど、多分大丈夫じゃないよ、それ」
 まつりの見た感じ、って言うのはあまり信用ならないし、此処は私もかがみと話をするべきだろうか。いや、何かあっ
たなら、あの子はあまり人と関わろうとしなくなるし、今行っても逆効果になりそう。なら、つかさに事情を聞いてみるの
が吉かな。
「よし、まつり、私達が一肌脱ぐよ」
 私が握り拳を作って、力強く言うと、まつりはさも面倒臭そうに顔を歪めて見せた。一人の姉として、その反応はない
んじゃないか、と思う。まつりも少しはつかさの面倒をよく見ているかがみを見習って欲しい。姉としてなら、かがみの
方が良く出来てるし。
「まつり、昨日お風呂から上がった後、体重計に乗ってたじゃない?」
「……そ、それがどうかしたの?」
「私、偶然見ちゃったのよ。そしたら……」
「ストーップ!! ダメ、それ以上言ったら絶対ダメ!」
 作戦大成功。昨日体重計に乗って蒼い顔をしてたからもしやと思ったんだけど、私が思っていた通り、ヤバめの体
重だったらしい。本当は詳細なんて知らなかったけど、上手く行って良かった。私は心の中でほくそ笑むと、まつりの
眼を見つめて、諭すように笑って見せた。
「……分かった、協力するよ。その代り、絶対言わないって約束してよね」
「それで良し。体重の事は心の中に留めといてあげる」
「姉さん、何か悪女みたい」
「気のせい気のせい。さ、作戦でも考えよ」
 まつりの聞き捨てならない言葉は今の所はスルーしておいて、私も炬燵の中に身を入れた。人類の至福の時、下半
身に感じる暖かさに心地よさを覚えると、何だか眠気が襲ってくるようだった。でも、此処で寝る訳には行かない。
 私はまつりのポッキーを一本貰うと、取り敢えず現時点で最善の策だと思える作戦をまつりに提示した。
「取り敢えず、つかさの話を聞いてみると良いと思うの。かがみは今は誰とも話したがらないと思うし、つかさならお母
さんを手伝ってるくらいだから、多分平気」
 私の提案に、まつりはそうねー、と間延びした声でやる気無く同意した。
 ……体重を本当に突き止めてあげようか。
「じゃあ、つかさ呼んでくる。少しぐらいなら平気だろうし」
 そう言い残して、私は台所へと向かった。炬燵に入ってた所為か、妙に寒い気がするのを我慢して更に寒い台所に
入る。そこには並んで料理をしているお母さんと、つかさの姿があった。
 トントン、と心地良いリズムで鳴る包丁の音、コトコトと揺れている鍋の蓋。今日の晩御飯はなんだろう、と思いつつ
呼びかけてみる。
「つかさ? ちょっといい?」
 つかさに近寄って、声を掛けるとつかさは驚いたように振り返った。どうやら私が此処に来ていた事に気付かなか
ったらしい。
「な、何? お姉ちゃん」
「んー、ちょっと話があって。お母さん、つかさ借りてっていい?」
 お母さんは特に何も言わずに頷いた。お母さんとしてもつかさとかがみの様子のおかしさには気付いていたのかも
しれない。眼が合った時、そう感じた。子を心配する、優しい目。私が大好きな眼が"頼んだ"と言っているような気が
した。
 私は一度微笑んでから、つかさをまつりが居る部屋へと連れて行った。戸惑っていたようだけど、素直に付いて来
てくれた。
「えと……お姉ちゃん達、どうしたの? なんだかすごく難しい顔してるよ」
482気付かなかった分岐点:2008/02/17(日) 16:01:22 ID:FiczcdWz
 つかさが炬燵に身を入れた時に発した言葉はそれだった。無理もないと思う。いきなり連れて来られたら、思い当た
る節があったとしても戸惑うとだろう。
 私とまつりはお互いに顔を見合わせてから、同時につかさを見つめた。揺れる視線が私とまつりを捉えた後、虚空
を彷徨った。
「かがみと、何かあった?」
 回りくどい言い方はせず、ストレートに、とはまつりとの間で生まれた自然な流れだった。つかさは正直だから、そう
言われれば話してくれるから。それに、自分ではどうしようもない、と考えているに違いない。私が帰って来た時のつ
かさの顔はそれを物語っていた。
「え、と、」
 いきなりの事に驚いたのか、つかさの呂律が回っていない。私はつかさが落ち着くのをじっくり待つつもりだったん
だけど、まつりはせっかちだから、そんな事は考えていないようだった。
「別に全部話せって訳じゃないよ。少しで良いから、何があったのか話して欲しいだけ。姉としても、つかさ達が仲良く
してない所は見たくないから」
 意外だった。なんだかんだ言って、ちゃんと気にしてたんじゃない。真剣な眼差しをつかさに向けて言ったまつりの
言葉は優しさに満ちていた気がした。
 普段はそういう所をあまり見せない子だから、つかさも多少驚いているようだった。
「私達も手伝える事があったら手伝いたいから……ね?」
 私がそう言うと、つかさは深く息を吐いてから、ぽつりぽつりと話し始めた。そして、その内容は私とまつりを驚愕さ
せるには充分過ぎる内容を持っていた。凡そ、"普通"で括れる内容ではなかった事は確かだったから。
「……告白したの」
「え?」
「は?」
 暫し、時が止まった。私とまつりは揃って間の抜けた声を出して固まって、つかさはそんあ私達を交互に見比べると
恥ずかしそうな、気まずそうな顔をしてから俯いた。
 私達が聞いたのは、かがみとつかさの間で何が起こったのか、という事。そしてつかさは言った。"告白"した。それ
は、かがみに? この状況で考えられる相手は、それ以外に無かった。
「それは、かがみに?」
 先に沈黙を破ったのはまつりだった。私も確認したかった事をストレートに聞いてくれるまつりのこういう性格には正
直助けられる。私はどちらかと言うと石橋を叩いて渡るタイプだから、まつりみたいには出来ない。姉妹って言うのは
似てる所と似てない所が際立つものだ、と思った。
「……うん」
 頷いた時のつかさの表情は翳っている所為で見えない。でも、普段とは違う、深刻そうな重みを持った声は、その悩
みの大きさを否応なしに私達に痛感させた。
 だって、それは"駄目"な事だから。私達がつかさの行為を応援しても、それは無責任な答えにしかならない。世間
は許していないのだ。姉妹の間の恋愛など、世間は決して認めていない。近親相姦の関係の方よりはマシかもしれ
ない。それでも、同姓で同性の二人が結ばれるなんて、あってはならない事だ。私達を取り巻く世界が、それを肯定
している。
 つかさは何も言わない。自分がやった事の大きさに押し潰されそうになっているのかもしれない。理屈ではなく、感
情の問題なのだから、そう易々と抑えられるものではない。だからこそ、愛情の炎が身を焼く苦しさを今まさに肌で感
じ取っているのだろう。
 私には、何も言う事が出来なかった。そしてそれは、まつりもまた同様に。
「やっぱり、駄目だよね。家族だし、女の子同士なのに」
 そう言ったつかさの言葉には自嘲気味な響きが混ざっていた。こんなつかさの姿、見たくない。何時も優しそうに
笑っていて、私達に心配を掛けて、花のような振る舞いをするつかさの表情が暗くなる所なんて見たくなかった。
 ……なのに。それなのに、私は言葉を紡ぎ出す事が出来なかった。
483気付かなかった分岐点:2008/02/17(日) 16:02:14 ID:FiczcdWz
「それに、きっとお姉ちゃんも嫌だったんだと思う。私、その場だけで喜んで……結局落ち込んでる。当り前の事なの
に、拒絶されたからって」
 きっと、かがみは告白された時にそれを受け入れたんだと思う。不器用ではあるけれど、かがみは優しいから。つか
さの想いを拒絶して、つかさを悲しめる事なんて出来なかったんだと、私は思った。そして、暫く考えた結果、つかさを
拒絶して今に至った。
 どうやって声を掛けたら良いのか、そんな事は全く分からない。どんな言葉を使っても、この悩みを解決する事なん
て出来ないと思った。
「かがみ、はっきりとは言わなかったでしょ」
 唐突に、まつりが言った。重い空気を感じさせない、軽い口調で。
「え?」
 つかさが戸惑ったように聞き返す。私はそのやり取りを目で追いながら眺めているだけで、この会話に入り込む余
地なんて自分には無いような気がした。
「あいつ、例えば『やっぱり無理だった』とか『ごめん』とか、言ってなかったでしょ?」
 つかさは暫くの間考え込んで、やがて頷いた。かがみが明確に拒絶の意を示した訳ではない。けど、それが分かっ
た所で何の解決になるだろう。何も解決出来ない。仮につかさとかがみが結ばれたとしても、その先に待ち構える未
来は幸せだけではないはず。それどころか辛い事の方が多いだろう。そんな未来に妹達を放り出すなんて、私には
出来ない。
「じゃあ、かがみも悩んでるんじゃない? だったら、思い切っちゃいなよ」
 まつりの言葉は、私が言えなかった言葉。妹達を、先の分からない未来に放り出す言葉だった。何でそんな事が言
えるのか、とまつりと目を合わせた。まつりは、当然の事を言った、とばかりに平然とした顔をしている。自分が無責任
なだとは思っていない、そんな顔だった。
「だって、かがみの事を好きな気持ちを消せないなら、それこそ辛いよ。目先の事なんて考えないで、今を楽しく生き
た方が私は幸せだと思うけど」
「でも、その今が辛くなる時だって必ず来るじゃない。そんな事、無責任だと思う」
 私の意見に、まつりは何を言ってるの、と言わんばかりに顔を顰めた。
「つかさ、かがみの事、本当に好きなんでしょ?」
 まつりの問いに、つかさは遠慮がちに頷いた。紅潮している頬が、それがつかさの本心である事を肯定している。
「だってさ、姉さん。本当に好きなのに、それを伝えられないまま過ごして行くのって、幸せだと思う?」
「思わない……けど、それでも良い人がこの先見つかるかもしれない。だったら、その時まで耐えてそれから幸せに
なった方が」
「それこそ間違ってる」
 私の言葉を遮って、まつりは言った。分かっていた。私が今言っている事なんて、正しいはずがないと。だから、こ
の後まつりから言われる事も、必然的に理解出来ていた。
「その方が、無責任だよ」
 良い人が現れるのを待つなんて、なんて確率的な問題が浮かぶ希望だろう。それこそ、未来など全く分かりはしな
い。それどころか、届けたい想いを胸にしまい続けて、ずっと苦しむ人生だって有り得る。私は可愛い妹を暗い未来
に放り込みたくなんて、微塵も思ってない。
「……分かった。まつりの方が、正しいよ」
 私が言うと、ありがと、とまつりは言った。普段は姉らしくないのに、こんな時にこんなに良い姉になるなんて。体裁
ばかり考えてつかさの感情を無視してる私よりも、まつりの方が姉らしい。何だか自分が小さく思えて、それから私は
口を噤んだ。
「姉さんの言い分も分かるけど、ね」
 そう言って、まつりはつかさを見据えた。戸惑いに揺れる眼が、何かを決意したように止まる。まつりが優しく微笑み
ながら頷くと、つかさも同じように頷いた。
「うん、よし。頑張りなよ」
 まつりが一言そう言うと、つかさは先ほどまでの暗い表情から一転、決意に溢れた光を眼に宿し、勢い良く立ち上が
った。この後の展開を、私達は見守るしかない。出来れば良い方向に向かって下さい、と私は此処からじゃ見えない
月に向かって祈った。
 今日を最高の一日に終わらせる為に、そう願った。
「ありがとう、まつりお姉ちゃん!」
484気付かなかった分岐点:2008/02/17(日) 16:03:51 ID:FiczcdWz
 何時ものつかさ。けれどその表情は力強さが溢れている。何も力になれなくて、結局良い所を全部まつりに取られ
てしまった私は苦笑しながらつかさの姿を眺めていた。いざとなった時に、頼れないなんて、私は姉失格かもしれな
い。
 そんな事を思いながら、人知れず落ち込んでいると、つかさの顔が今度はこちらに向いた。まつりに向けていたのと
同じ、花のように綺麗なつかさの笑顔。家族みんなが、このつかさの笑顔が大好きだ。でも、今の私にはそれを向け
られる資格なんて無い。何の力にもなれなかった私が。
「いのりお姉ちゃんも、ありがとう。心配掛けるかもだけど、今度は大丈夫だから」
 その言葉が、つかさの笑顔が、私の鬱積を一気に吹き飛ばしてしまったかのようだった。
 つかさも成長しているんだ。前のように、心配ばかりを掛ける子だったつかさの面影は霧のように霞んで見える。曇
りかけていた私の心中も、一陣の風が吹いただけで晴れ渡ってしまった。
「うん、どういたしまして。頑張ってね」
 姉妹間の恋愛事を応援する日が来るなんて、考えもしなかった。それだけに不安だったけど、今は安心さえ出来る。
一層やる気を出したつかさが台所に向かって行くのを見て、そう思う。
 これで私の仕事も終わり、か。結果は天命に任せるのみとなった。
「んじゃ、本格的な作戦を練りますか」
 ――そう思ったのも束の間。まつりの中ではこの件は完結していないらしい。つかさが部屋から出て行った時、まつ
りはそう言って姿勢を正した。最初の面倒くさそうな態度は何処へやら、こちらもやる気に満ちた表情。思わず、笑み
が唇から零れた。
「何で笑うの?」
 怪訝な視線を私に遣って、まつりは尋ねて来る。
 最初の態度と比べたら、やる気まんまんだったから。そう答えると、まつりは照れたような笑いを零し、頬を人差し指
で掻きながら言った。
「どんな形であれ、妹の恋は応援したいでしょ? それに、同じだし」
 やっぱり、まつりも姉で、そして女の子なんだな、と私は思った。最後の言葉はよく分からなかったけど、考えていて
も仕方がないので気にしなかった。
 つかさとお母さんが二人でやっているのだろう料理の音が小気味よく私の耳に届く。時間ももう無さそうだし、作戦を
考える時間は少なそうだ。私は、まつりが話す作戦の内容に耳を傾ける事にした。その内容に、驚愕するのは、もう
少し先になる。


 夕食、かがみがやっと下に降りて来て、みんなに顔を見せた。まつりが言う通り、あまりいい状態ではないみたいで、
具合の悪そうな顔をしている。口々に心配の声を掛けていたけど、かがみは大丈夫の一点張りだった。終始、つかさ
も黙ったまま。何となく気まずい雰囲気だった。
 そんな中、夕食に出された味噌汁を啜りながら私は考える。まつりが提案した作戦の内容はかなり異端なもので、
私は承諾を渋ったけど、丁度その時に夕食が完成していて、押されるがままに承諾してしまった。大体、私には出来
るかどうか分からないのに。
 この先に自分がやらないとならない事を考えると、自然と溜息が出る。夕食は美味しかったけれど、この気まずさとこれからの事について考えるだけで途端に味気ない物に感じられた。ふと、作戦の提案者であるまつりに視線を向けてみる。何時もと同じように食を進めていた。
「ごちそうさま」

 それから暫くして、かがみは席を立った。随分と時間を掛けて食べていたみたいで、かがみ以外の家族は全員食べ
終わっている。今はみんなでテレビに集中しているけど、頭の中はかがみへの心配で埋まっているに違いない。事実
、私がそうだ。
 台所に自分が使った食器を持って行ったっきり、かがみは帰って来なかった。程なくしてお風呂場から物音が聞こえ
た所から、もうお風呂に入るらしい。シャワーの音が聞こえて来た時、それは確信に変わった。もう、テレビの音は耳
に入って来ない。シャワーの音がやけに耳に付いた。
「さて、私もお風呂、入って来ようかな」
 まつりが腰を上げた。お風呂場からは未だに続くシャワーの音。お母さんとお父さん、勿論つかさも、驚いたように視
線をまつりに集中させた。それも当然の反応と言える。この年になって、姉妹と一緒にお風呂に入るなんて、誰もが
思っていなかっただろうから。
「今、お姉ちゃんが入ってるけど……」
485気付かなかった分岐点:2008/02/17(日) 16:05:09 ID:FiczcdWz
「ちょっと、姉妹間での団欒を図ろうかと思って」
 つかさが慌てながら尋ねた問いを、軽くあしらうまつり。そりゃあ、好きな人が他の人とお風呂に入るなんて、少しは
反感を持ってもおかしくない。
「たまには良いかもしれないねぇ」
「でしょ? さすがお父さん話が分かる!」
 お父さんは何時も通りの柔和な笑みで。一緒にお風呂に入って何をするのかを聞いたら、きっと困るのだろうけど、
知らぬが仏って所かしら。
 お母さんは全部悟っているのか、何も言わずに微笑んでいた。まつりは全員の顔を見てから、それじゃ、と言ってお
風呂場に向かった、作戦開始、私達は最後に眼が合った時、確かに心の中で同じ事を呟いていたと思う。同時に、私
はテレビのリモコンを取って、音量を少しだけ上げた。
「どうしたの?」
 お母さんの問いには、少し聞きづらくて、と答えておいた。その時の私の顔は、とてつもなく動揺していた事だろう、
誰だって、これから私がやらないといけないことを考えたら同じようになるはず。それを平気で行えるまつりがどれだ
け凄いか、私は痛感した。



 丁度良いぐらいの頃合いを見計らって、私はそれとなく洗面所の方に行ってみた。此処からでは見えないけど、何
やら聞こえる話し声。かがみとまつりは、もうお風呂から上がって洗面所に居るみたいだった。耳を澄ませると、会話
の内容が少しだけ聞こえて来た。
「なんであんな事したのよ……」
「お姉さんなりの慰め。喜びなさいよ?」
「迷惑だっての。しかもこんな……」
「気にしない気にしない。言ったでしょ、なるようになるって」
「それが意味分かんないんだけど」
「すぐに分かるわよ。じゃ、私はお先に失礼するから」
 そんな会話が聞こえて来た後、洗面所からまつりがバスタオルを胸まで巻いた格好で出て来た。幾ら姉妹だからっ
て、もう少し気を使おうとか思わないのかしら。このままデリカシーを持てないような女にだけはなって欲しくない。
「どうだった?」
 髪の毛を拭いているまつりに、尋ねてみる。丁度その時にかがみが出て来たので、軽い会釈をして、かがみが去る
までの間、私とまつりは余計な話をしなかった。作戦の事が知られたらかがみは余計な御世話と言うに決まっている。
もしかしたら、想像以上の怒りを表すかもしれない。
「んー、作戦は成功、この分だと問題ないね」
 バスタオル姿のまま牛乳を飲むまつり。かがみの肌はお風呂に入ったから、と言うそれだけじゃない理由で赤くなっ
ていたし、まつりの言っている事も真実味を帯びていた。
 早く着替えないと湯冷めするよ、と言おうと思ったけど、まつりの報告が何だか意味深だったので、私はそちらを尋
ねる事にした。
「具体的には?」
「あー、ほら、何て言うか、二人してすれ違ってる感じなのよ。かがみはつかさに振られたって言ってて、つかさは一
度は受け入れてくれたって言ってる。言ってる事が食い違ってるみたい」
 だから、後一押し! そう言ってまつりは私に向かって親指を立てた。そんな事を聞かされたら、私が怖気づく訳に
はいかないじゃない。かがみもつかさが好きで、つかさもかがみが好きで、それなのに二人は互いの気持ちに気付か
ないまますれ違ってる。
 まるで、二人しか居ない交差点なのに、お互いに気付かないまま歩を進めてしまっているような、そんな関係になっ
てしまっている。だから、私達が誘導してあげないと。このまま終わるなんて、私達だって後味が悪い。
 次は私の番だ。私のキャラには似合わないと思うんだけど。
486気付かなかった分岐点:2008/02/17(日) 16:06:15 ID:FiczcdWz
「お姉ちゃん、私、先にお風呂入っても良い?」
 私がまつりに親指を立て返した時、つかさが丁度良いタイミングで入って来た。つかさはやる気を出しているみたい
だからそんなに心配するほどでは無いと思っていたんだけど、まつりが『念には念を』と言うので私もする事になった。
「良いよ」
 私がそう言うと、つかさはありがとう、と言って洗面所の向こうに消えた。私の緊張も次第に高まる。まつりはどうやっ
てあんな事をしたのだろう。
「ま、まつりはどうやって……その、したの?」
「悪戯っぽくやっただけだよ。かがみの反応、中々面白かった」
 平然と言ってのける妹。何処でそんな度胸が芽生えたのか。取り敢えず、これはまつりだから悪戯で済んだ訳で、
姉妹の中で一番の年長者である私がそんな事をしたら下手をすれば家族会議に発展してしまうかもしれない。よって
、まつりの言葉は私の参考にはならない。
「まあ、頑張ってね、姉さん」
 それを最後に、まつりは二階の方へと去って行った。急に心細くなる私。けど、何時までも此処で呆けている訳には
いかない。私は一人で頷くと、椅子から立ち上がり、前もって用意して置いた着替えを手に持って洗面所へと向かっ
た。
 お風呂場の中からはシャワーの音が響いていて、曇り硝子越しにつかさの小さな後ろ姿を見る事が出来る。シャワ
ーの音も手伝ってか、私が此処に居る事に気付いていないようだった。
 私は手早く身に付けていた衣服を脱ぐと、バスタオルを素早い動作で体に巻いて、深く息を吸った。
「この年になって、妹と一緒にお風呂なんてね」
 ふっと微笑んで、たまには良いのかも知れない、と私は思う。そして、その思いが消えない内に、洗面所とお風呂場
を隔てる扉に手を掛けて、開いた。
「……ふぇ?」
 何処か抜けた声が、浴場に小さく響いた。
「たまには一緒も、良いでしょ?」
 未だに眼をパチクリさせて状況を把握できないでいる可愛い妹に向かって微笑んであげると、つかさはみるみる内
に眼を大きくさせて、おまけに顔を熟れた林檎みたいに赤くした。そして、次には驚愕と困惑が入り混じった声。私は
それを苦笑しながら眺めるしかなかった。
「な、なな、何でお姉ちゃんがいるの?」
「んー、ほら、一緒に入ろうかと思って」
「だ、だってもう高校生だし、恥ずかしいよ……」
 徐々に下がる声のトーン。そんなつかさの可愛らしい仕草を見て、私は腰を屈めるとつかさの頭をな撫でた。濡れ
た髪の毛が私の指に絡みつく。私とは違う、薄い紫色の髪の毛。けれど、かがみとは全く同じ色をした髪の毛。
 辛い恋愛を選んだな、と今更ながらに思う。この子は純粋で、無垢で、綺麗な子だから、もしもかがみと結ばれたと
しても辛い出来事に直面するだろう。 純粋なほどに歪むのは容易くなる。
 無垢だから、全てが綺麗に見える。
 綺麗だから、汚れ易くなる。
 そんなこの子が強く生きて行けるだろうか。かがみの助けがあったとしても、この子が強くなれるだろうか。
 心配事は絶えず私の頭の中に浮かんでは消えて、その全てをすっきり解決する方法など輪郭すら思い浮かばな
かった。私は自然と暗い表情になっていたと思う。
 断続的に響き続けるシャワーの音の中に聞こえたつかさの声は、私を心配してる声だったから。
「……お姉ちゃん?」
 どうしたの、と水晶のように透き通って輝く眼が私を見つめている。自分の方が大変な状況なのに、私を心配してい
る。この子は何処まで優しいんだろう。その優しさは、どんな言葉を使っても言い表せそうになかった。それほど、途
方も無い優しさに思えたから。
「ううん、何でもない。ほら、今日は私が背中流してあげるから、ね?」
 私がありったけの親愛を込めてそう言うと、つかさは天使のような微笑みを咲かせて、うんと言った。今なら分かる
気がした、かがみがつかさを好きになったその理由。

 ――つかさは、こんなにも沢山の魅力を持っている女性だった。
487気付かなかった分岐点:2008/02/17(日) 16:07:24 ID:FiczcdWz
 湯船の中、私とつかさが二人で浸かっている。立ち上る湯気が天井に張り付く水滴の重さを増やして、私達の元へ
と落とした。つかさの表情は全く窺う事が出来ない。見えるのは、何処か淫靡な印象を持たせる濡れた髪が掛かるう
なじ、真っ赤になった耳たぶくらい。そして、つかさが私を私だと認識する手段は触覚くらいのものだろう。
「や、やっぱり恥ずかしいね……」
 そう言われると、私まで恥ずかしくなる。私達の体制は私がつかさを抱っこしているような感じで、浮力のお陰で多少
軽くなっているからなのか、私に体重を預けるつかさの姿は何だか赤ちゃんのようで、私はつかさが少しで楽になるよ
うに、と腕をお腹の辺りに回していた。
 直に触れあう肌の感触が懐かしいような、もどかしいような。そんな妙な感覚は、やはりもどかしい、の方に寄ってい
る気がする。母親って、こんな感じなのだろうか。湯気が上って行く天井を眺めながら私は感慨に耽っていた。
「私、お姉ちゃんと上手く出来るかな……」
 私が何か言う前に、つかさが不安げな声を漏らした。頭を垂れているので、水面と睨めっこをしているのだろう。
 私はもう知っていたから。つかさとかがみの想いが通じれば必ず結ばれる事を。だから、通じるように、その言葉を
言い易くする為に、まつりはこの作戦を思いついた。
 その時は知らなくても、薄々気付いていたのだと思う。かがみがつかさに寄せる思い――そして、つかさがかがみに
寄せる思いも。
 私だって何時からか二人の中で何かが変わっているように思った時がある。
 何も、不思議な事ではなかった。
「大丈夫。お姉ちゃん達が手伝ってあげるから……ね」
 自分でも驚くほどに甘ったるい声が出た。耳元で囁かれたからか、つかさが小さく身を震わせたのが肌に直に伝
わってくる。
 つかさは何も言わなかった。これが"手伝い"だと、そう理解しているのかもしれない。そして、私もこれが手伝いだ
と思ってる。問題なんて、無い。
 つかさのお腹に回していた手を、肌を伝いながら上らせると、つかさが甘い吐息を漏らした。こんなに顕著な反応を
してくれると、私も止まらなくなってしまう。
 何だか、自分でも分からないけれど手が止まらなくなっていた。いや、手だけじゃないか。
「……んっ……」
 私がつかさの耳たぶを甘噛みすると、つかさは胸に感じている快感も相まって、小さな声を出した。熱っぽく、他人
の情欲を煽るような声。それを懸命に抑えているつかさの姿はやはり、綺麗と言うよりも可愛い、と形容する方が似合
っている。
 次いで、後ろからつかさを抱き締めながら、鎖骨に舌を這わせると、今度は首を逸らして、更に甘い嬌声を上げた。
狭いお風呂場に、つかさの声が響く。ピチャ、とお湯が揺れる度、つかさの体が反応してくれる。私には、それが力に
なってあげられてるみたいに思えて、嬉しかった。
 時間の経過が分からない。天井から滴る水滴が砂時計のように時を刻んでいるようだった。私の頭の中に、作戦の
事が残っていたのかどうか、それもあやふやだったけど、確かにつかさの力になれている、そう思うとそんな事はどう
でも良くなって。
 時間と言う概念を忘却の彼方に置いてしまった私が漸くお風呂から上がった時、時刻は十時半をしめしていて、我
ながら長湯をしたと、呆れるほどだった。
 けれど、私が風呂から出る間際、つかさが言った"ありがとう"と言う言葉が、何時までも私の頭の中に反響し続け、
何時までも満足感を与えてくれていた。
 あとは、つかさとかがみ次第。頑張ってね。



「色んな意味で疲れた……」
 洗面所で着替えを済ませて、適当に髪の毛を拭きながらまつりの部屋に行って、開口一番にその言葉を投げ出し
た。ベッドでは、漫画本を片手に寝転がっているまつりの姿。
 私の姿を見ると、みるみる内に口元を歪めて見せた。
488気付かなかった分岐点:2008/02/17(日) 16:08:28 ID:FiczcdWz
「あれ、姉さん、随分と長い時間お風呂に居たみたいだけど」
「分かってて言わないで。思い出すと恥ずかしくなるんだから」
「で、どうでした? つかさは」
「後は本人次第かな。多分、大丈夫だと思うけど」
「へえ……っと、つかさが上がって来たね」
 部屋の外から階段が軋む音が聞こえて来る。時計を見ると、もう十一時に近い。
 唐突に、まつりが部屋の電気を消した。視界が暗闇に包まれる。まつりが居る場所すら、全く見えなかった。
「なんで消すの?」
「邪魔しちゃ悪いからねー。私達はもう寝たって事で」
 ああ、なるほど。そう言う事か。
 まつりの言葉が私に全てを悟らせた。
 あの作戦は、ただ想いが通じ易くなるように、と言う名目以外にももう一つの意味が込められていたらしい。
有効じゃない、とは言わないけど、他にもやりようがあったと思う。まつりが提案した時点で気付くべきだったのだろう
か。
「さて、耳を澄ましてみますか」
 私は呆れたように嘆息して、明るみに出ればその眼を好奇の光に輝かせているであろう妹の姿を想像した。まった
く、この子はやはり自分が楽しくならなければいけないらしい。立派な事も言っていたのに、何だか興醒めした気分
だ。
「そう言えば、姉さん、体どう?」
 まだ、何の音沙汰も無い。暗闇と静寂の二重奏が世界を包み込んでいるようなこの空間で、何かを思い出したよう
にまつりが聞いて来た。
「ちょっと熱いかな。あんな事した後だし」
「あはは、実はあたしも」
 からからと笑う声。表情は分からない。完全な暗闇。何も見えず、見ようと頑張れば頑張る程にその闇は色を濃くし
ていくようだった。
「それが」
489気付かなかった分岐点:2008/02/17(日) 16:09:01 ID:FiczcdWz
 それがどうしたの、答えた後に続けるはずの二の句が、詰まった。
 床に座っている私。まつりはベッドに座っていると思っていたけど、それはとんだ思い違いだった。私の手の上に、
暖かい感触があった。言うまでもない、この空間に居るのはまつりと私の一人だけ。他に私の手に更に手を重ねる事
が出来る人なんて、透明人間くらいしか有り得ない。
『あっ……ん』
 心臓が飛び跳ねた。遠くから、こんな声が聞こえて来ては、驚いてしまうのも道理だ。
 紛れも無く、この声はかがみの部屋から聞こえたもの。そしてそれが何を意味するのか分からないほど私はお子
様ではなかった。
「鎮めてもらおうと思って」
 右に何があるか、左に何があるか、何も分からない世界で囁かれる。
 何を、なんて陳腐な事は聞く事が出来ない。ただ、BGMになっている嬌声が、私を意味の分からない気持に高ぶら
せている。かがみの部屋では何が行われているのだろう、それを考える度に、何かが疼くのを感じた。知ってしまった
のだ、お風呂につかさと一緒に入った時に。
 私が動揺してまつりに対する返答に固まっていると、途端に手から温もりが離れた。簡単に、本当に自然に、離れ
てしまった。次いで、ベッドに人が飛び込む音。
 まつりが私から離れたんだと、そこで初めて理解していた。
「ジョーダン、よ。冗談」
 けらけらと笑うまつりの声が聞こえた。
「あいつら、凄い事になってるみたいだねー」
 何処か感心したように笑う、まつりの声が聞こえた。
「そう、ね」
 歯切れの悪い、私の声が闇に響いた。
 遠くから、淫靡な声が聞こえて来ている。
 私は知ってしまっている。
 まつりは熱くなっている、私と同じに。
 まつりは子供みたいにはしゃいでいた。
 私がこのBGMに耐えられなくなるまで、後何分?
 カウントダウンが、始まる音がした。

 今日が最高の一日で終わってくれるのかは、未だに分からずじまいのまま。
『どんな形であれ、妹の恋は応援したいでしょ? それに、“同じ”だし』
 まつりが言った言葉に期待している私が、暗闇の中で揺れていた。







――end.
490双子の兄:2008/02/17(日) 16:11:10 ID:FiczcdWz
投下完了!
ここまで読んで下さった方ありがとうございました。
まあ、これは前作のサイドみたいな感じで何だかフラグが立っちゃたりしてますが
この先の展開は脳内補完にお任せします。
これからは生殺しで定評を得ようかとw
それではこの辺で失礼します。
491名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 16:15:33 ID:qlgrJ6CT
ちょっと次スレ立てに挑戦してみる
492名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 16:18:51 ID:qlgrJ6CT
493名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 16:19:49 ID:KB25Gb2/
501ならこなたとかがみが、つかさとみゆきが、みなみとゆたかが、パティとひよりが、
あきらと白石がこうとやまとが、そうじろうとただおが結婚する
494名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 16:20:11 ID:WH80VToq
>>492
ギリギリgj&乙!
495名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 16:21:54 ID:KB25Gb2/
>>492


今度こそ501なら>>493プラスひかるとふゆきが結婚成就
496名無しさん@ピンキー
わかったよ普通に埋めるよ