【らき☆すた】みゆき×つかさに萌えるスレ

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12名無しさん@お腹いっぱい。
素晴らしいスレに感謝します
かがつかとは違ってあまり勢いはありませんが
みゆつかカップルと同じようにのんびりと伸びていけば良いと思います

とりあえず支持がてらにこっそりヴァレンタインSSでも投下してみます
13:2008/02/13(水) 16:08:15 ID:JpyzfqMT
いつもはこなちゃんやお姉ちゃん、そしてゆきちゃんと一緒にいる私が、今日はひとりでお買い物をしている。
こうしてショッピングに誰も同行しないっていうのは、ずいぶんと久しぶりだと思う。
二月十三日。冬の街はまだ十分に寒くて、日暮れと一緒に更に気温を下げた冷たい風が私の頬を刺す。
共ベルトのついたニットワンピースじゃ防げない寒さ。私はもう少し服装を選んでくるべきだったと後悔した。
「寒いよ〜……いつもだったら誰かに寄り添って暖めてもらうんだけどな〜」
駅から少し離れたこのショッピングモールはいつ来ても華やかで、人ごみは日暮れになっても消えない。
冬は暗くなるのも早いからなのかな? イルミネイションでキラキラに彩られている道を、私は歩く。
(やっぱりどこもヴァレンタイン一色だ……やっぱりどこも忙しいのかな)
そこらじゅうに装飾されている、ハート型の小看板や電飾。もういやというほど見慣れた『Valenine』の文字。 
それでも、今年の私には特別な意味が込められている言葉だった。
(私、本命チョコ作るんだよ……ね?)
自分がひとりでここに来た目的を思い出して、私は急に気恥ずかしくなった。
実はこんなことをもう何度も何度も繰り返していて……やっぱり何回確認しても、どこかおかしい気持ちになる。
(本命って、本命って……うう、やっぱりすごくドキドキするかも〜……)
生まれてからずっと、このヴァレンタインという日には義理チョコをあげてきた私。
お姉ちゃんからは『乙女だ』とからかわれることもあったけれど、それでもやっぱり女の子。
小さい頃から、恋愛にはいつも憧れていた。理想や妄想を積み重ねる毎日を、私は送ってきて。
この時期になると毎年、「いつかは私にも、本命のチョコをあげる人ができればいいな」なんてことを考えていた。
けれど、あげたいと思うような男の人ができないまま私はここまで大きくなって、できないならそれは仕方がなくて、
このまま恋愛には縁がないままなのかなと思って、高校二年になった私。
(私が本命チョコを作る日が、本当にくるなんて思わなかったよ。これも、好きな人のため……)
私はついに恋をして、ついに恋人っていうものを作ることが出来た。心の底から、本命をあげたいと思える人。
その人はとても賢くて、綺麗で、優しくて、暖かくて、とても愛しそうに私を包んでくれる素敵な人で。
私の初めての本命チョコを、できればこれからもずっと、捧げたいと思える人がようやく現れて、
小さい頃からの私の夢は、明後日には叶う……つもり。ただひとつ違ったことがあるとすれば……。
(とっておきのチョコ作るから。楽しみにしててね、ゆきちゃん)
そう、違ったことがあるとすれば……相手が女の子だった、ということ。

******

「ゆきちゃんはヴァレンタインのチョコどうするの〜?」
二時間目の授業が終わって、私はすぐにゆきちゃんに話しかけた。
ここ数日クラスの女子の間では、持ちきりになっているこの話題。もちろん私達の間でもそれは同じだった。
私は他の女子にその話題で話しかけられても、「家族にあげるよ〜」なんて面白みのないことを答えていた。
にっこりといつもの笑みを浮かべたゆきちゃん。今年二人の間で、この話題がでたのは初めてだった。
「そうですね……父と、親戚の兄にあげる予定ですね。泉さんやかかみさんにも、それから……そうですね」
ゆきちゃんは頬をぽっと染めると、少し俯いて囁くように答える。
「もちろん……つかささんにも。こちらは、本命になりますけれど」
本命。私の胸がとくん、と鳴った。恥ずかしそうに俯いたままのゆきちゃんの言葉に私は照れた笑みを見せた。
「うん……私も、ゆきちゃんに用意するよ〜。本命チョコ」
「ありがとうございます。では、交換するときは二人きりで、ですね」
14:2008/02/13(水) 16:09:18 ID:JpyzfqMT
普通の人が聞いたら、二人は何を言ってるんだろうって頭にクエスチョンマークを浮かべるような話をしてるかも。
だって、私の関係は普通じゃないから。私とゆきちゃんの間で話されているのは、恋人同士のチョコの交換。
私とゆきちゃんが付き合うようになって、もう半年になる。
女の子同士なのを、お互いに問題だって思ったことは無かった。想い合っている二人が通じ合うより素敵なことはないから。
半年の間にデートもキスもしたし、それ以上のことも何度かあって、私達は強く繋がっていることを何度も知ってきた。
「ただ、私はチョコを手作りするのは初めてでして……」
ゆきちゃんはどこか不安が混じっているような笑顔を見せる。今までは市販のものだったのかな?
「じゃあ、よかったら一緒にチョコ作ろうよ」
「つかささんとご一緒に、ですか?」
「うん。あっ、都合が悪かったかなあ?」
私はお菓子作りが趣味だから、ゆきちゃんにアドバイスくらいならできると思った。それよりも、一緒なら楽しい。
自分がもらうチョコを一緒に作るっていうのは少しおかしいケド、それはゆきちゃんも同じことだし。
ゆきちゃんは少しだけ迷って、それから少し顔を暗くすると、私に向かって小さく頭を下げた。
「申し訳ありません。今回はつかささんとご一緒することは……」
予想外の答えだったから、私は内心大きく驚いた。絶対に一緒にチョコを作れるなんて、妙な自信があったから。
「えっ……そうなんだあ。じゃあ、ひとりで作るの?」
「まあ、そうなりますね。申し訳ありません」
「ううん、いいよ〜じゃあ、お互いに頑張ろうね!」
「ええ、頑張りましょう。ご期待に添えるかどうか不安ではありますけれど」
「大丈夫だよ〜。ゆきちゃんが作ってくれるなら、なんだって美味しいはずだよ?」
「そ、そうですね……愛情はできるだけ込めてみるつもりです」
「ふぇ? ……う、うん。そうだね〜」
今日二度目。二人揃って頬を真っ赤に染めている。のろけるつもりはなかったんだけど……。
あのときは私はゆきちゃんの前で笑ってはいたけれど、ショックは結構大きかった。
ゆきちゃんと一緒にチョコを作っているところを想像すればするほど、残念に思う気持ちが大きくなってくる。
(ゆきちゃんにも事情があるんだし、仕方ないよね……)
だったらせめて、ゆきちゃんに心から喜んでもらえるようなとっておきのチョコを作るしかないのかも。
そう決心したら寂しさよりも、義務感みたいなものが心に芽生えてきた。
学校が終わって家に帰るとお姉ちゃんが私のお菓子専用のレシピ集をテーブルに広げて、真剣な顔で読んでいた。
私が何度も読んでいるせいで、手垢で汚れている。活字は読めないけど、これは何度でも読んじゃうんだ。
「お姉ちゃんもチョコ作るの? 今年は市販のものじゃないんだ?」
「まあね」
「やっぱり、こなちゃんに?」
「う……そ、そうよ」
「どんなチョコにするのか決まったのー?」
「いや、こなたからのリクエストは一応あることはあるんだけど……本当、どうしようかしら」
「お姉ちゃん、よかったら私と一緒に作る? 私もひとりで作るから、ちょっと寂しいんだ」
「ひとり? みゆきと一緒じゃないの?」
「うん。ゆきちゃんもひとりで作りたいんだって」
「ふーん。……じゃあ私もひとりで作るわ。ていうか、ひとりでしか作りたくないし」
それからお姉ちゃんは「こなたのやつなんてリクエストを」とか「身体にチョコ塗るって」とかぶつぶつ呟いてた。
やっぱり私はひとりで作るしかないみたい。私もお姉ちゃんと一緒に、何度も読んだレシピ集に目を通した。
15:2008/02/13(水) 16:10:10 ID:JpyzfqMT
ゆきちゃんに似合うようなチョコを作らなくちゃ。それには、普通のチョコじゃダメ。
ゆきちゃんのように綺麗で、上品で、柔らかくて、どこに出しても恥ずかしくない、そんなチョコ。
大好きなゆきちゃんの笑顔、私の名前を呼ぶ柔らかい声、それをゆっくりと想い出して、記憶をなぞっていく。
私のチョコを食べて、どんな反応をくれるのかな? ゆきちゃんの愛情が入ったチョコ、きっと美味しいんだろうな。
なんだかちょっとお話したくなってきちゃったな。ううん、会いたいかも。急に寂しさが募ってくる。
「……かさ」
「……」
「つかさ!」
「ふぇっ!?」
「あんた、何ぼけーとしてるの? 話しかけても反応無いし」
「えっ? あはは……なんでもないよ〜」
「まあ、あんたがボーっとしてるのはいつものことか」
まさかゆきちゃんのことを考えていたらボケボケしていたなんて、恥ずかしすぎてお姉ちゃんにも言えない。
今度はきちんとレシピに目を通して、その料理のページに差しかかったとき、私の手はページを止めていた。
「ザッハトルテ……これいいかも」
ゆきちゃんのように上品で、綺麗で、柔らかいチョコレート。これなら、ゆきちゃんにも似合うかもしれない。

******

デパートの食材売り場。製菓用のコーナーはやっぱり人ごみが一層多かった。
みんな、思い思いの人に手作りの本命チョコを作るんだ。自分の気持ちを、相手に伝えるために頑張るんだ。
いつものこの時期は義理チョコを作るために来ている場所だから、今日は少し違った気持ちで見ることができた。
「えと……薄力粉、アーモンド、果実酒……無塩バターはおうちにあったよね」
レシピを書き写したメモを見て、ひとつひとつ材料を手にとってカゴに入れていく。
こういうときに私はいつも凡ミスをしちゃうから、失敗できない今日だけは気合を入れて何度もチェックする。
「あと、アプリコットソース用の杏子ジャム……あっ」
ここで、私はゆきちゃんが虫歯で悩まされていることを思い出した。
今は治療が終わって痛まないみたいだけど、あまり甘いものを食べちゃったら、また歯医者にいくことになるかも。
「杏子ジャムじゃなくて〜……お砂糖の量減らしたいから、杏子からつくちゃおうっと」
それが決まると、ザッハトルテ自体もできれば甘さ控えめでほろ苦さを強くしたほうがいいかもと考えた。
そのほうが大人っぽい味がするから、ゆきちゃんも喜んでくれるに違いないし。
材料を買い終えると、もう外は真っ暗になっていた。ちょうとデパートから出たところで携帯が震える。
「はい……あ、お父さん? うん、遅くなってごめんね。今デパートにいるよ〜」
それから十数分して、お父さんが車で迎えに来てくれた。車の中は暖房が効いていて、私はようやく腰を落ち着ける。
「つかさ、それはチョコか?」
「うん、今年も手作りなんだ〜」
「つかさのチョコは美味しいからな」
「ありがと〜。あ、でもお父さんには普通のボンボンだからね」
「『お父さんには?』」
16:2008/02/13(水) 16:11:14 ID:JpyzfqMT
家に着いて晩御飯を食べ終わったら、私は早速ザッハトルテ作りを始めた。
無塩バターをしゃもじでかき混ぜたり、チョコを溶かしながら混ぜたり、卵白を角が立つまでかき混ぜたり、
チョコレートを卵白をかき混ぜたり、色々とかき混ぜたり、それとなくかき混ぜたり、かき混ぜたり、
焼きあがったスポンジに砂糖控えめの手作りアプリコットソースを塗ったり、やっぱりかき混ぜたりして、
二時間以上かけてなんだかんだで完成したザッハトルテに、私は最後の手を加えた。
溶かしたホワイトチョコレートで、ザッハトルテの上にサラサラと文字を書いていく。
『St.barentain Miyuki.』
「やったあ、かんせーい」
「あれ、つかさ完成したの?」
「あ、お姉ちゃーん。見て見て」
「へえ、これはなかなか……って、あれ? つかさ、これスペル間違ってるわよ」
「ええっ!?」
「正確には『St.valentine』ね」
「そ、そんなあ〜……最初から作り直しだよ……」
「……それ、捨てるの?」
「……食べていいよ?」
私はまた二時間かけて作りなおして、完成した頃には時刻が夜十二時を過ぎていた。
眠い目をこすりながら今度は失敗しないように、教えてもらったスペルを書いていく。
『St.valentine Miyuki』
「ちょっとなにか足りないかも。あ、そうだ〜」
『St.valentine Miyuki I love you.』
「あ、あいらぶゆーだって〜……どんだけ〜……」
自分で書いたくせに、なんだかすごく恥ずかしい。
ともかくチョコレートは完成して、あとはヴァレンタイン当日を待つだけ。ゆきちゃん、喜んでくれるかな……。

******

「ハッピーヴァレンタイン、ゆきちゃん♪」
「ハッピーヴァレンタインです、つかささん」
ヴァレンタイン当日。私達は学校が終わるとすぐに、ゆきちゃんの部屋で二人きりになった。
本当が学校で二人きりになったときにチョコレートの交換をしようと思って私も準備をしていたんだけど、
ゆきちゃんがどうしても学校じゃしたくないって言ったから、こうして部屋に集まることになって。
完全に二人きりのほうが、ロマンティックだからいいんだけど、私は早くチョコを受けとってもらいたかった。
「あのね、昨日はチョコレートひとりで作ってたんだ」
「かがみさんはご一緒ではなかったのですか?」
「うん。ひとりでしかやりたくないって。大丈夫かな〜とか思ってたんだケド」
「きっと恥ずかしかったんですね」
「それよりも、はいチョコ。開けてみて!」
私はイラストが描かれているピンクの包装紙と、黄色いリボンに包まれた箱をゆきちゃんに渡した。
この日のために包装紙とリボンは可愛い物を買っていた。ゆきちゃんは出来るだけ破らないように丁寧にそれをはがす。
箱の中から出てきたのは、ホワイトチョコで文字が書かれたハート型のザッハトルテ。
17:2008/02/13(水) 16:12:22 ID:JpyzfqMT
「これは……」
「ザッハトルテだよ。初めて作ったんだけど、大丈夫かなあ?」
「では、いただきますね」
ゆきちゃんの小さなお口に私のザッハトルテが運ばれていく。そっとかみ締めるように味わっているゆきちゃん。
私は緊張しながら、ゆきちゃんの反応を待っていた。もしおいしくないって言われたら、どうしよう……。
「美味しい……本当に美味しいです、つかささん」
その言葉に、私はほっと胸を撫で降ろした。ゆきちゃんがお世辞を言うとは思えなかったから、とりあえず安心だね。
「よかったあ……苦さがきちんと残ってるかなって思ったけど、安心したよ〜」
少し味見をしたときに苦味を感じることができたけど、それは甘さに舌が慣れていたからかもと安心できなかった。
でも、それは心配しすぎだったみたいで。アプリコットソースの砂糖を減らしたのもよかったのかもしれない。
ザッハトルテが消えたゆきちゃんの柔らかい唇を見ると、私の胸がきゅんとときめく。
そういえばこの3〜4日、ゆきちゃんと落ち着いて二人きりになれなかった。
それに、一緒にチョコを作るのを拒まれたときの寂しさもまだ残っている。今日はその理由も聞きたかった。
「……ねえ、ゆきちゃん」
「はい、なんですか?」
「……ん」
私は目を閉じて、ゆきちゃんに向かって軽く唇を突き出した。これまでに何度もしてきた、おねだりのポーズ。
少しの間があって、唇に柔らかな感触が触れる。それと一緒に、口の中にほのかな苦味が広がっていった。
(あ……チョコ)
私とゆきちゃんの口の間を、溶けたチョコが広がっていく。私は鳥肌が立つのを感じていた。
これは気持ち良すぎて立っちゃった鳥肌。ゆきちゃんの感触とチョコの苦さに、今にも身体が倒れそうだった。
「えへへ……今日のキスはちょっと苦いね」
「でも、とても美味しかったですよ」
「ゆきちゃんのチョコはどんなのかなあ?」
私がそう口にすると、ゆきちゃんの身体がびくっと跳ねた。それから何故か深呼吸を始めるゆきちゃん。
ゆきちゃんが恐る恐る差し出した箱は、特大ケーキでも入ってるのかなと思うくらいに大きかった。
「わあ、ゆきちゃんのチョコ、大きいんだねえ」
「あの……私、チョコを作るのは初めてでして、それに、何がどうなってか、予期せぬ形になってしまって」
「箱、開けるね」
「それも、すごく歪な形で、いえ、もう歪というか常識に反した形をしていまして、つかささんには失礼と言いますか」
「えいっ」
「ああっ……す、すみません!」
私ははやる気持ちを抑えきれなくて、箱を少し乱暴に開けちゃっていた。
私の前に現れた大分大きめなチョコは、大きな凸凹になっている二つの大きな膨らみの形をしている。
ふくらみの先端にはぴょこんとした突起があって、全体的に見覚えのあるフォルムだった。
(あれ、これって……)
どこからどう見ても、私が良く知っているゆきちゃんのアレだった。目が離せなくなる。
(……おっぱい?)
部屋の中に静かな空気が流れえ、ゆきちゃんは本当に申し訳なさそうな顔で涙を流していた。
「ゆきちゃん……これって?」
18:2008/02/13(水) 16:13:10 ID:JpyzfqMT
私の質問を聞いたゆきちゃんはがっくりとうなだれて、それからゆっくりと言い訳……説明をしてくれた。
「……本当に申し訳ありません。実は昨日、泉さんと一緒にチョコを作ったんです」
「こなちゃんと?」
意外な名前が出てきたから、私は少しだけびっくりした。でもそれよりも気になることは。
「こなちゃんと作るから、私と一緒にはできなかったの?」
「い、いえ、そういうわけではないんです……あれはただ、私が怖がっていただけなんです」
「怖がってたって?」
「つかささんはお菓子作りが上手ですので、教えてもらえればさぞかし助かったでしょうし、楽しかったかもしれません。
 しかし、私はできればつかささんを喜ばせるならつかささんのお力添え無しでと思って……わがままかもしれません。
 そんなときにつかささんの腕前を目にすれば、勇気が出なくなるというか……それでも誰かの教えは請いたいので……」
「それでこなちゃんなんだ?」
それなら納得がいく。こなちゃんも料理は得意だからね。
でも、ゆきちゃんが私とのチョコ作りを断ったのに、そんな理由があったなんて……でも少しだけ安心した。
私の事がイヤで、私とチョコを作りたくないって言ったわけじゃないってわかったから。
むしろ、私の事を喜ばせたくて、ゆきちゃんは頑張ろうと決心したんだっていうこともわかったんだし……。
「それで、どんなチョコを作ろうかという話になったときに、泉さんが『胸をチョコにすればいい』と」
「う〜……こなちゃんが言いそうなことだよね〜」
こんなこと、ゆきちゃんが自分から率先して言うわけないもんね。それはわかっていたよ。
それにしてもこなちゃん、考え方がふっとびすぎだよ。
「私も最初は断りました。けれど、泉さんに言いくるめられてしまったというか、それに……」
「それに?」
「以前、つかささんが……私の胸が好きだと言ってくれたことを思い出して」
そういえばそんなことを言ったような気がする。あれは、私がゆきちゃんに抱きついていたときだった。
確かに私はゆきちゃんの胸が好きだった。寂しがり屋の私には、ゆきちゃんの胸の中はなんだか安心できる場所だったから。
だとしたら、ゆきちゃんは私のためにこのチョコを作ってくれたの? 私が胸を好きだと言ったから?
(ゆきちゃんはずっと、私を喜ばせるチョコを考えてくれてたんだ)
ゆきちゃんは本当に申し訳なさそうな顔をしていた。私のことを考えて、作ってくれたはずのゆきちゃんが。
どうしてそんな顔をするの? このチョコを作るのにすごく迷ったはずだし、とても大変だったはずなのに。
「……私がどうかしていたんです。こんなものをつかささんが喜ぶと思って作っていたなんて……申し訳ありません」
「う、ううん。ちょっと驚いちゃったけど……」
ゆきちゃんが謝る必要はない。だって今の私の胸の中は、こんなに喜びで溢れているんだから。
私がゆきちゃんの事情もわからないで勝手に寂しがっている間に、ゆきちゃんは私のためにここまでしてくれたんだ。
私はそれに一番いい形で答えないといけない。気持ちを相手に伝えることが、ヴァレンタインで一番重要なはずだから。
(いただきまーす)
ゆきちゃんの胸チョコに私の手が伸びる。一口分だけパキリと割って、それを口に放り込んだ。
「あ、つかささん……」
ゆきちゃんのチョコはとても甘くて、口の中でゆっくりととろけていった。
これはミルクチョコレート。私の好きな、カカオのくせのない味だった。
まるでゆきちゃんのように、とっても優しい味。ゆきちゃんがたっぷり込めるって言っていた愛情を感じるようで。
「ゆきひゃんのヒョコ、しゅごくおいひーよ」
19:2008/02/13(水) 16:13:59 ID:JpyzfqMT
私が舌足らずにそう言うと、ゆきちゃんは両目に涙を浮かべて、それからばっと頭を下げた。
「いえ、私の至らないチョコを食べていただいてありがとうございます……!」
「なんでお礼言うの? ゆきちゃんの気持ちがこもったチョコだよ? 私がお礼を言うところだよ」
好きな人から美味しいチョコをもらって、美味しいって言っただけなのに感謝される。
それはちょっとおかしい。でもゆきちゃんは、優しすぎるからそうなっちゃうんだよね。
私はゆきちゃんのそういうところを好きになったんだし、だからこそゆきちゃんが申し訳なさそうにするところを見たくない。
「ですが、つかささん」
それでもゆきちゃんは私に言葉を返そうとした。私達はお互いにぼけぼけ〜っとしてて、ちょっと不器用だから。
だからそういうときは、私は素直な言葉をまっすぐに返してあげるんだ。できるだけまっすぐな笑顔で。
「ゆきちゃん、ありがとう♪」
それだけで十分ゆきちゃんに伝わるから。ほら、今だってこうしてゆきちゃんの顔は晴れて、
「……はい」
小さい頃からの夢だった、本命の行き交うヴァレンタイン。理想とはほんの少しだけビジョンが違ったけれど、
こんなにお互いに想い合って幸せな気持ちになるんだったら、毎年この季節が楽しみになっちゃうかも。
これから先もこんな幸せなヴァレンタインを、できれば同じ人と同じ気持ちでいつまでも過ごせますように。
そんなことを思って、私はゆきちゃんと顔を合わせて、にこにこと笑い合っていた。
ゆきちゃんもきっと同じことを考えてくれているはずだから。それがなんとなく伝わっちゃう二人だから。

******

「まつり、何やってんの?」
「なんだ、いのりお姉ちゃんか。いや、つかさが使ったチョコ、残ってないかな〜って」
「つかさのチョコ? ああ、それならかがみが持っていったわよ」
「あの子ひとりで食べちゃったの」
「まさかでしょ」
「持っていったって、どこに?」
「知らないわよ。彼氏のところじゃないの」
「彼氏、かがみに彼氏かあ〜やるね〜」
「やるね〜じゃあないわよ。今日が何の日だか知ってるの?」
「ヴァレンタインでしょ?」
「私達、彼氏も作らないで何してるのよ」
「そんなの知らないよ。それよりかがみはあれだけのチョコを直に渡す気なの?」
「まさか。向こうで調理するんじゃない?」
「身体に塗って彼氏に『さあ召し上がれ』とか言ってたりしてね」
「かがみに限ってそんなわけないじゃないの」
「そうだよね〜あはは」
「そういえばつかさにも彼氏いるみたいだよ」
「マジかい!!」
20名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/13(水) 16:14:42 ID:JpyzfqMT
以上です
みゆつかスキーが増えますように