ツンデレのエロパロ7

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1名無しさん@ピンキー
ここはツンデレのSSを書くスレです
SS職人さんによるSSの、二次創作も随時募集中です
GJなSSには素直にGJと言いましょう。職人さんたちのやる気の糧になります
そしてみなさん、和の心を大切に
2名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 16:27:35 ID:mHFfm4hJ
初代スレ
ツンデレにこれって足コキだよなって言ったら
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1123282035/
ツンデレのエロパロ
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148839761/
ツンデレのエロパロ2
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1156287579/
ツンデレのエロパロ3
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1162741169/
ツンデレのエロパロ4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1172665361/

前スレ
ツンデレのエロパロ5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179331229/


テンプレをツンデレ口調でやろうと思ったが挫折した俺ヘタレorz
3名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 17:20:00 ID:eX5wajti
いっ・・・>>1乙なんて死んでも絶対にしてあげないんだからね!!
この早漏!変態!馬鹿!低学歴!オタク!ニート!デブ!クズ!カス!ゴミ!豚!童貞!包茎!
 
 
でも・・・嬉しい・・・わ。わっ・・・私のためにしてくれたのよ・・・ね? 
 
 
あ・・・ありがとっ・・・ね。
あっ・・・あと・・・その・・・いっ・・・>>1乙!
4名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 20:21:24 ID:9vW7DUj2
ツインテール=ツンデレ、って公式を打ち立てたキャラって誰?
5名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 20:27:55 ID:EMVMhy99
>>3のセリフの前半、かなりきついなw
6名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 20:40:10 ID:mHFfm4hJ
(;´゚Д゚`).。○(ちょっと前に立てたばかりなのにもうレスついてる・・・・)

前スレURLを前々スレURLにしてしまってることに
誰一人気づいて無くてよかった・・・
でも、このスレ落ちるまでさらされるとカキコしながら気づいた俺
もう、死んでいい・・・

てことでせめてもの償いとして正真正銘の前スレ↓
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187117606/
7でぃすぱ ◆g5uZET9koI :2008/01/27(日) 23:35:59 ID:zRXTAJ+m
>>1お疲れ様でした。
新スレ記念というわけではありませんがどうぞ。
http://imepita.jp/20080127/844530
http://imepita.jp/20080127/844280
http://imepita.jp/20080127/843700
特徴がなくて申し訳ないです。全員どこかで見たような顔になってしまいました。
8名無しさん@ピンキー:2008/01/28(月) 04:37:48 ID:GpH2+L+c
でぃすぱさん絵まで上手いとか…やりますね

>>1の為にちょいツンデレやろうとしたが
ストーリーメチャクチャになったので
普通に>>1乙ということで
9名無しさん@ピンキー:2008/01/28(月) 10:10:29 ID:Itx0Li9q
>>1
10名無しさん@ピンキー:2008/01/28(月) 10:34:27 ID:yzONjBjc
>>1
そして
>>8 NICE TSUNDERE
11名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 02:39:22 ID:p0T+jgTH
ツンデレ保管庫
http://www37.atwiki.jp/tunderesure/
12名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 22:46:17 ID:nAaVUV8T
 
13名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 22:03:16 ID:toomXUM+
やっと前スレが5Kだな
14名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 00:23:06 ID:J43XPEMX
アフタヌーンにヘンなマンガが
15名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 13:28:29 ID:oc7YWxb3
>>14
どんなやつ?
16名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 02:36:05 ID:N3QKWdd4
前スレ埋め用に書いていたら、普通のサイズになってしまった
いつもはこれくらいの量を2,3ヶ月かけて書いてるのに。つかれた。

テーマは「べ、別にあんたのこと(以下略」ではないツンデレの模索、です。
なので、読む人によってはツンデレ認定がおりないかもしれません。ご了承ください。
17名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 02:38:44 ID:N3QKWdd4
「つまらなかったわ」
「いやその……スンマセン」
 映画館の入り口を出るなり、ばっさり切り捨てられた。いや、確かにつまらんかったけど。それは俺のせいじゃなくね?とは思うが、言えない。残念ながら彼女とは、そういう力関係だ。
「だから『ラヴスカイ』はやめようと言ったのに。“中高生の絶賛”なんて、まったくアテにならない! 「たまには流行りのを見よう」なんて、あなたの口車に乗った私が莫迦だったわ。これだったら『劇場版漂白』のほうがよっぽどマシよ」
 やばい、相当怒ってる。白い頬がほんのり紅くなってるし。いや、これは寒いせいか?
 それにしても、彼女が怒ってる表情はとても素敵だ。薄い眉をちょっとしかめ(化粧品で描かれたものではなく、自前だ)、猫を思わせる瞳が、すっと細くなる。そして、薄い唇から紡がれる、きっつい言葉の数々。
 嗚呼、ちょーキュート。
 ――え? このM男が、って? それがどうした。
 しまった。彼女の眉がさらに鋭角になってる。これ以上怒らせるとさすがに怖いので、謝らなければ。
「ほんとゴメン……。って、もしかしてアニメでも良かった?」
「もしかしても何も。『漂白』の原作はひととおり目を通してるわ」
 なんてこったい。俺も見たかったのに。
「じゃあ来週にでも『劇場版漂白』見に行こうか」
「な、ん、で、それを今日にしなかったのよ……!!」
「ゴメンナサイ」
 ひたすら恐縮。そんなに『ラヴスカイ』がお気に召さなかったとは。
「ふん、まあいいわ。お昼にしましょう。今日は何?」
 助かった。話題が変わった。
「高嶋屋のレストラン街にパスタ屋が新しくできたんだけど、結構評判だそうで」
「ネットの口コミ?」
 うぐっ……なぜわかった。
「変更ね。あなたが行ったことのある、一番おいしい店に連れて行きなさい。値段と内装ばっかり立派な店なんかに連れて行ったら、承知しないわ」
「イエス、マム」


 彼女は“お嬢様”だ。中学から大学まで、地元では『お嬢様学校』として知られる私学に通っていた。親は実業家。名前はあまり知られていないが、高品質の工作機械を生産する企業グループの、創業家の三代目だそうだ。
 それに対して自分は、サラリーマンとパートタイマーの次男坊。両親ともに農家の生まれだ。公立でそれなりに頑張って、市立の大学に通っている。
 人から「なんでそんなつまらない男相手にしてるの?」と良く言われる、と彼女が言っていた。彼女には秘密だが、俺はもっと酷いことを言われている。巨根で篭絡したとか、レイプしたとか、そんなのは序の口だ(俺はでかくも小さくもない、平均サイズだっつの)。
 なぜ彼女は俺と付き合ってるのか。そんなのは俺も知らん。俺は彼女を愛してると断言できるが、彼女が俺をどう思っているのか、俺からは推測することしかできない。
 だけど――


「ごちそうさま、おいしかったわ。――こんなおいしい店を今まで秘密にしておくなんて、良い度胸ね」
「いや、秘密にしてたわけじゃないけどさ……」
 二度ほど駄目出しをくらい、結局、ラーメン屋に来た。スープは旨いし麺には気合が入ってる、俺のお気に入りの店だ。が、せまっくるしいカウンター席だけの、店主には失礼だが小汚い店で、彼女を連れてくるには失礼だと思っていた。
 意外にも、彼女は嫌悪感を示さなかった。「大学に入るまで外食をしたことがない」と言っていたのに。
「さて、午後は私につきあってもらうわ。具体的にはというと、春物の靴が見たいの」
「もう春物なんだ。早いね」
「そんなものよ。安心なさい、荷物持ちさせるほどは買わないわ」
 嫌悪感どころか、非常に気に入ってもらえたらしい。機嫌がなおってる。
「まずは地下街から。そのあと百貨店を全部まわるわ」
「……イエス、マム」


 なぜ彼女は俺と付き合っているのか。
 そんなのは俺が知りたい。
18名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 02:40:03 ID:N3QKWdd4
 宣言どおり、地下街も百貨店もすべて回った。買ったのは一足だけ。
「……つかれた」
「確かにたくさんまわったけど、歩いただけじゃない」
 それはそうなんだが、女性ものの靴屋だけを見てまわるってのは、精神的にも疲れる。基本的に暇だし。
 口数の少ない俺たちを、地下鉄が郊外へと運んでいく。繁華街をすぎたとたんに人が減って座れるので、楽で良い。
 淡々と駅が過ぎ、俺の下宿の最寄り駅に着いた。
 降りるために、立ち上がる。来週は『漂白』を見よう、と声をかけようと思ったら、彼女も立ち上がった。
「なにぼぉっとしてるの。閉まるわ」
「ああ、うん」
 一緒に降りる。……なんで?
「あなたの下宿、近いの?」
「まあ、歩いて10分ほど……く、来るの?」
 聞いてない。
「『私と付き合うための十二の要求』、三番目」
「『下宿は常に整理整頓』……だ、だけど、事前に言っておいてほ」
「五番目、『デートは一日予定がない日だけ』――まさか、守ってないの?」
「まさか、守ってるって。守ってるけど……」
 『私と付き合うための十二の要求』とは、彼女に告白したときに突きつけられた条件だ。
 別に無理難題を突きつけられたわけじゃないし、ぶっちゃけ守ってなくてもばれないたぐいのばっかなんだが、俺は律儀に守っている。“身分差恋愛”の引け目からか、と言われれば、否定しない。
「では、案内なさい」
「い、いえす、まむ……」
 なんてこったい。まさか我が下宿に彼女をご招待することになるとは。
 ……なんてこったい。


「綺麗にしてるじゃないの」
 どうやら日ごろの努力は実ったようだ。
「お褒めに預かり感謝の極み」
「なに、その大げさな言い方」
 僅かに笑う。怒った顔も好きだ、といったが、やはり笑顔にはかなわない。この笑顔のためなら死ねる。
「ささ、とりあえずお茶でも。コーヒーしかないけど」
 ちょっと良いコーヒーメーカーに、そこそこの豆と水をセットする。あとはお茶菓子(コーヒー菓子?)を用意して、待つだけ。
「……少し、驚いたわ。ちゃんと用意してあるのね」
「まあま、これくらいは」
 『彼女がうちに来たらどうする?!』という妄想の結果だとは言えない。つか、来ることがわかってたら、もっと良い豆とお菓子を用意する。
 芳ばしい香りが部屋を包む。砂糖とクリーミングパウダー、ティーカップ(これだって、もっと良い以下略)を並べ、できたコーヒーを注ぐ。
「どうぞ」
「ありがとう」
 彼女はストレートで口をつけ、一言「おいしいわ」と言ってくれた。妄想も捨てたもんじゃない。良くやった、俺。いやでも、やっぱりもっと良い豆を用意しとけば……
「で、夕食は何にするの?」
 ……夕食?
「なぜに夕食?」
「食べないの?」
「食べるけど……え、食べるの?」
「なんであなただけ食べて私が食べないのよ」
「それもそうだけど……あれ?」
 事態が飲み込めない。
19名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 02:41:19 ID:N3QKWdd4
「今日の夕食は、私が作るわ」
 幻聴か? 彼女の手料理?
「でも、帰り、遅く」
「ならないわよ。帰らないし」
「へっ?!」
 やめて、俺のライフはもうゼロよ! ――とか、素で考えてしまった。俺の脳はこれ以上の負荷に耐えられない。
「父は出張、母は絶好の機会と、友人と旅行。帰ってもひとりなのよ。暇だから、泊めなさい」
「……アイアイマム」
 やばい、緊張する。手が震えてきた。
 彼女はというと、冷蔵庫と台所の棚を物色している。
「ちゃんと自炊もしているようね。まあ、自炊も条件の一つだから、当然だけど」
 あなたはなんで、そんな冷静なの?
「鍋にするわ。こんな狭い台所じゃ、たいした料理もできないし。カセットコンロは?」
「ああ、こっちに――て、手伝うよ!」
 立ち上がって台所に駆け寄ろうとするが、
「大人しく待ちなさい」
 包丁を突きつけられました。
 とりあえず、テーブルの上のティーカップを片付け、カセットコンロを用意する。ガスは、まあ足りるだろう。
 彼女の手際は、驚くほど良かった。
 気がつくと、出汁の具材の入った鍋が火にかけられ、残った野菜と豆腐がざるに盛られていた。
「いただきましょう」
「い、いただきます」
 うまい。普通にうまい。出来合いの出汁の素を使ってない(そんなのはうちになかったはずだ)のに、見事。何をどうやって作ったんだか。
「ごちそうさま」
「おそまつさま」
 ひたすら食べた――二人きりの食事が気まずかったのもあるが。
 彼女は後片付けまでやってくれている。そりゃ、一人暮らし用ワンルームアパートの台所なんてたいしたもんじゃないから、二人一緒に台所に立つ、なんてできないけど。
 皿を洗う彼女、ぼんやりとテレビを眺める俺。“まるで新婚夫婦”という言葉を、なんとか思い浮かべないようにする。といっても、こういうふうに考えている時点で駄目な訳だけど。
 こっそりと、彼女を盗み見る。彼女は細い。和人形のよう、という形容を本人は嫌っているけど、俺はぴったりだと思う。長めのおかっぱ、といった具合の黒髪も、色艶ともに文句なしだ。
胸は、まあ、高校時代には巨乳派でならした身としては、物足りない、っちゃあ物足りないが、
「――」
 無意識だろう、何かの歌を口ずさみ、それとともに、腰が揺れる。
 いや、もちろん大げさに振っているわけではない。僅かに、だ。これも無意識なのだろうが。
 彼女の腰は、エロい。デカ尻という訳ではない。が、ウエストが細いので、女性らしい腰のラインがとても艶かしいのだ。きっとロングスカートの下は――
(まずい、妄想モードが)
 入りかけた。急いで視線を彼女から離す。あらぬ方を向き、深呼吸。これで落ち着ける、はずだったが。
(あれ、あれは――)
20名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 02:41:58 ID:N3QKWdd4
「こ、こんっ!?」
 彼女の鞄の近くに、コンドームがひと綴り。
(コンドーム?! なんで?!)
 神速で回収してポケットにねじ込む。
 心当たりが、ないわけではない。『彼女がうちに来たらどうする?!』という妄想の、延長だ。なんかの飲み会の帰りに、調子に乗って薬局の自販機で買ったことがあった。
(すて、すてたはずじゃあ)
 家に帰るなり、莫迦ばかしさと情けなさですぐにゴミ箱に放り込んだはずだ。が、酔った上での行動なので、確証がない。
(いや、まてよ、買ったのってこれだっけ? ――覚えがない)
 そもそも、だいぶ前の出来事だったはず。
 問題は、そんなことではない。
(彼女に見られたかどうか、だ)
 見られていたら――ま、ろくなことにならないだろうな。
「終わったわ」
「はいぃっ!」
「……?」
「あはは……なんでもないです」
 心臓に悪い。
 彼女が隣に座る。
 俺も彼女も、しゃべらない。ただぼんやりとテレビを眺めている。
「――お風呂は、毎日炊いているの?」
 沈黙を破ったのは彼女のほうだった。
「いや、シャワーで済ませてる」
「では、シャワーで我慢するわ」
 鞄から数種類の化粧品(と思われる)と、圧縮袋に入った着替えを取り出す。泊まるつもりで来た割に荷物が少ないとは思っていたけど、そんな便利グッズを使っていたとは。
 そのまま何も言わず、風呂場へと入っていった。かすかな物音の後、ドアの閉められる音。シャワーの音。
(気まずい)
 普段俺がシャワーを浴びている場所で、彼女がシャワーを浴びている。妄想するなというほうが無理な話だ。
「さて、世界の経済は、と……」
 もちろん頭に入らない。ハーフの美人キャスターですら眼中にない。
 ぱた、という音。おもわず飛び上がりそうになったが、どうやら彼女のシャワータイムは終わったらしい。まもなく、パジャマ姿の彼女が出てきた。
 色っぽくもなんともないチェック柄の普通のパジャマが、とんでもなくエロく見えるのは、きっと俺の修行が足りないからだ。
「つぎ、どうぞ」
「うん。あの、ドライヤー、これ」
「ありがとう」
 彼女にドライヤーを渡し、下着とTシャツ・ジャージ(パジャマ代わりだ)を引っつかんで風呂場に飛び込む。なんだか甘いにおいがするような気がするが、きっと気のせいだ。とにかく手っ取り早く済ませ、出る。
 彼女は、まだテレビを見ていた。少し逡巡したあと、彼女の隣に座る。
 再度、沈黙。ニュースも終わり、見たこともない深夜番組が始まった。
(つまらん)
 安っぽい番組だ。深夜なんだから、もっと刺激的でアグレッシブなのを作れっての。彼女なんか、隣に座ってるだけで俺をアグレッシブにさせるのに――何を考えてるんだ、俺は。鬱だ、氏のう。じゃなくて。
 頭の中が、ぐるぐると撹拌される。何がなんだかわからないし、冷静になれない。と――
 こてん。
 まさにそんな感じ。彼女が寄りかかってきた。恐る恐る窺うと、どうやら寝てしまったようだ。
(軽く自己嫌悪だ)
 彼女を退屈させてしまった。歩き回って疲れていたのかもしれないが、初めてのお泊りで、こんなに会話が少ないのもいかがなものか。
 ゆっくりと抱きかかえ、ベッドに横たえる。彼女の身体は、わかってはいたけど、とても細かった。
 掛け布団を――かける手が、止まる。
21名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 02:42:29 ID:N3QKWdd4
 彼女の、ゆっくりと上下する胸から、視線が離せない。控えめなものの、確かなふくらみが、呼吸とともに動く。その上には、華奢な肩、すらりとした首筋、シャープな顎のライン、そして、僅かに開かれた、薄い唇。
(あ――)
 気がつくと、自分の唇を彼女のに重ねていた。駄目だ、と思う暇もない、脊椎反射のように、俺は彼女にくちづけをした。
(最悪だ、俺)
 寝込みを襲った。これはもう、言い逃れのできない事実だ。しかし本能が、彼女の柔らかな唇をもっと堪能しろ、と命令する。
 進むか、引くか――葛藤の末、ようやく唇を離すことができた。申し訳ない気持ちよりキスの感動が上回り、それを自覚してさらに自己嫌悪に陥る。きっと、明日の朝に正直に話してしまったほうが気が楽になるだろう、と思えるほどに。
 とにかく、今は彼女の安眠を妨げないことしかできない。潤んだ瞳でこちらを見上げる彼女に掛け布団をかけて――かけ、かけかかかけかけ、
「い、いつから目がさめてたんで、す?」
「キスされて」
 ――終わった。そうだ、土下座しよう。
「あなたに、寝込みを襲う度胸があるとは、思わなかったわ」
「ごめん。ほんとに、ごめん」
 深く、深く土下座した。
「なぜ、謝るの?」
「――へ? なぜって……」
「言葉どおりよ。今、あなたは私に謝った。なんで?」
 彼女の真意がわからない。
「だって、そりゃ」
「今の行為は、あなたにとって、謝らなければならないもの?」
 彼女が上半身を起こす。
「も、もちろん」
「……私とのキスは、あなたにとって、そんなにも」
 そこまで言って、俯いてしまった。そんなにも、なんなのだろう。
 沈黙に耐えられず、俺は口を開いた。
「その、同意のないキスって、レイプ同然だってのは、わかってる。わかってる、つもりだった。だから」
「一般に」
 彼女が、遮る。
「一般に、男性の家に泊まる女性は、その気があるもの、と、いわれているわ」
 少しの間の後、もう一度「一般に、ね」と加えてくる。――そういう言い方をされると、
「つ、つまり、その気が、あるの……?」
「野暮は嫌いよ」
 恐る恐る聞くと、そう切って捨てられた。伏せられた彼女の瞳は、いまにもひとしずく、涙が零れ落ちそうだ。
 覚悟を、決めよう。
 彼女の肩に手を置いて、目を覗き込む。彼女はひとすじ涙を流し、瞳を閉じた。
 二度目の、キス。
22名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 02:42:58 ID:N3QKWdd4
 三度目のキスは深くなってしまった。自制が効かない。
「んっ……」
 逃げようとする彼女。反射的に、後頭部に手を回す。
 深く、もっと深く――いきたいが、彼女の手が胸板に当てられ、少し突っ張ってくる。
「がっつきすぎね」
 彼女の甘い粘液のせいだ。
「じゃあ、もうすこしソフトに」
 四度目。彼女の唇をつつくと、ゆっくりと舌が出てきた。どうやら彼女の意図を誤らずに済んだ。
 今度は、彼女が深くまで求めてくる。一方的に掻き混ぜられるのは、確かに辛い。
 気が済んだのか、ゆっくりと舌を引き抜いていく。雫が垂れないように唇をひと舐めしていくあたり、彼女らしい。
 「君もがっついているよ」とお返ししてやろうかとも思ったけど、大人気ないので止めて――
「……あなたにくらべれば、ましよ」
 顔に出ていたらしい。にやけてた?
「ふん」
 身体を横たえてしまった。
「一般にその気がある、の、その気って、どこまで?」
「野暮は嫌いといったはずよ」
 うん、まあ念押ししたかっただけだし。
 ゆっくりと、彼女の上に覆いかぶさる。彼女は耳まで赤くして、そっぽを向いている。
「あ、そうだ。私、結婚するまで避妊を怠らない主義なの」
 う、しまった。避妊を考えてなかった。避妊に気が回らなかったとは、リアルに凹む。
「そりゃ、そうだよね。うん」
「当たり前じゃない。妊娠したらあなたとできなくなるし」
 そこまで言って、自分の失言に気付く彼女。慌てて口を押さえるが、言葉はとっくに俺の耳に届いている。
「……そのにやけ顔をやめなさい。勘違いしないで、この莫迦。レイパー。一般論よ一般論」
 いや、そういわれても、無理。にやける。表情筋が崩壊する。
「もういいわ、勘違いするなら、勝手にしてて」
 ふてくされる彼女の髪に指を通し、触れるだけのキスを額に落とす。
 しかし、避妊をどうするか。ゴムがあるにはあるが、出所の知れないやつだしなあ。
「持ってないの」
「いやまあ、そこまで準備万端ではなくて……」
「持っているはずよ」
 彼女が強く言ってくる。
「持ってるでしょう? 良く思い出して。あなたは持ってる。ねえ、持ってるじゃない?」
「あ」
 そこまで言われて、やっと気付く。急いで穿いていたジーパンを探し出し、ポケットの中身を取り出す。
「うん、持ってた。準備してたよ。すっかり忘れてた」
「ほら、やっぱり。この助平」
 うん、まあ深く突っ込むのはやめよう。彼女の機嫌をこじらせて、良いことなど一つもない。
23名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 02:44:01 ID:N3QKWdd4
 経験のない者同士だったので、行為は酷く稚拙なまま終わってしまった。
 まるで、ままごとだ。
 でも、翌朝の彼女は上機嫌だった。朝御飯が食べたい、あれを作れこれが良い、無いなら買ってこい、と、やりたい放題だ。
 が、俺も機嫌が良かったので、それら全てを受け入れた。結果、金のかかった豪勢な朝食になってしまった。なまじコンビニなんてものがあるからたちが悪い。
 おなか一杯食べた後、自転車に二人乗りで彼女を家まで送った。早朝の道路はすいていて、とても気持ちよかった。「中学生じゃあるまいし、恥ずかしい」と彼女が言ったので「俺らには、中学生からはじめるくらいでちょうどいいんじゃない?」と返したら、殴られた。
 彼女の家の玄関で、キスをした。「これくらいからが、ちょうどいいのよ」と言われたので、もう一度キスして、別れた。
 キスに飽きたらもう一回しよう、と言ったら、グーで殴られた。「一生飽きないわよ」と怒鳴られ、追い出されてしまった。そういう恥ずかしいことは大声で言わないでほしい。
 けど――

 確かに、飽きなかったらどうしよう。困った。
24名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 02:52:20 ID:N3QKWdd4
何なんでしょう。バカップルになってしまいました。

えー、ちゃんと推敲したつもりでも、投稿してから気付く間違いってのはなぜかあるもので。
誤字脱字つじつまが合わない等の苦情は受け付けます。
ちゃんと推敲したはずなのになあ。

それでは。
25名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 08:44:40 ID:hkVWBEhK
>>24
あえて言おうGJであると!!俺的にはこれはツンデレ認定です。
しかしお嬢様とツンデレは相性良いなぁ
26名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 22:44:20 ID:98OvA4pp
ベタなデレじゃないけどこんなのもいいよね。
こんなん好きだなー、シリーズ化して欲しい。
GJでした!
27名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 08:30:46 ID:4ozll+DV
雅だね。風流だね
GJ
28名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 18:18:21 ID:E41MGCMe
ニヤニヤが止まらなかった。GJ!
29名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 15:39:06 ID:jXjWLPVm
面白かった! GJ!! 
30名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 19:02:26 ID:FyrzHptV
前スレ埋めネタぁっっっ!!!

  _  ∩
( ゚∀゚)彡 続き!続き!
 ⊂彡
31名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 22:28:11 ID:unLZkSHf
>>293
・ツンデレとお風呂

かなみと一緒に風呂に入ることになった。
と言ってもここは、2家族合同でやってきた温泉旅館。混浴露天風呂などあるのが当たり前で。それに入っていると偶然はち合わせになる……というのも、まぁ……ある……はず。うん。
「こ……こっち見ないでよ、す……すけべ……」
向かいの岩に腰かけて湯に浸かっているかなみも、この状況ではいつもの様な元気がない。
白いバスタオルを巻いた胴から、すらりと伸びた手足がまるで人形みたいに真っ白なのが、夜のくらやみにとてもよく映えた。他の客を避けて夜中に来て本当に良かったと思う。
やや上目遣いに見てくる、かなみの頬は、湯煙で分かりにくいがほんのり桜色に染まっている。熱い湯のせいか。恥ずかしいのか。
「一緒に入るの、ひさしぶりだな」と緊張しながら言うと、かなみは何を思い出したのか顔を伏せてしまった。しばらく俯いて、何か言いにくそうにする。待っているとようやく小さく口を動かす。
「……うん」
「最後が……しょ、小学校、2年、くらいだったか」
「……よく、覚えてるわね。わたしも忘れてたのに」
「う、いや、まあ、それは」
「すけべ。ヘンタイ」
貶された。
「いや、で、でもだな、お前さんがそんなに犯罪的なスタイルしてるからだろうに」
胸も腰も手足も。
「な……に、よ、いきなり……」
こちらから見ても分かるくらい真っ赤になった。桜のピンクから林檎の赤くらいの変化だ。
「……」
かなみはうつむいてしまう。そりゃ女の子だから、体の事を言われるのはアレだろう。失念していた。反省である。
でも少しすると、かなみは何か決意を固めたような表情になって見上げてくる。
さっきからくるくる変わる表情だが、恥ずかしさの中に何か強いものを感じさせる顔だ。一体何だ。待つと、かなみはこう言った。
「み、見たい……?」
「え?」
唖然として問い返す。
「その……おんなのこの、はだか、とか……」

スマン調子に乗っ、あ、ああどうも婦警さん。手錠? いえ、未遂じゃ……は、はい、何でもありません。
32名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 22:28:46 ID:unLZkSHf
誤爆したオァアッー!
33名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 22:35:23 ID:DgjIYNG2
VIPからきますた
34名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:21:03 ID:p0vduY5y
VIPからきますた
35名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:21:57 ID:V5fMEhCX
晒すなハゲ
36名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:47:26 ID:SiHNtW1P
>>24
すげーよかった GJ!
どっちもなんか可愛くてニヤニヤしてしまったよw
37540:2008/02/06(水) 00:18:10 ID:xeWucux1
前スレ埋めネタの続きを書いてみた。


 屋上では予想通りに菜々美が待っていた。
 待っていたという言い方は正確じゃないな。落ち込んでいた、だ。
 相対する隅を結ぶ対角線の交わる位置、つまりど真ん中に体育座りで座り込んでいる。
 屋上のドアをゆっくりと閉める。固いドアはそれでも軋む音をたてた。

 菜々美のところへと向かう。あと一歩、というところで声をかけられた。
「何しに来たのよ」
 それはもちろん、菜々美の泣き顔を拝むため、ではない。泣いてないだろうし。
「いやさ、ここ寒くない?」
「ない」
「でも、僕は結構寒いな。ほら、僕って猫と同じような習性をしているから、寒さに敏感なんだ」
「くだらないこと、言いに来たわけ?」
「別にそういうつもりじゃ……」
「いいわよ、別に。他の友達と一緒の班でも作れば? 一人増えたって大丈夫だ、っていうところもあるでしょ」
 これはなかなかに重傷だ。
 以前菜々美がお昼のデザート代わりに持ってきたカスタードプリンを誤って落とした時もここまで酷くはなかった。
 そんなに僕と一緒に京都の街並みを歩きたいんだろうか、菜々美は。
 京都と言えば、着物を着た芸妓さんが真っ先に頭に浮かぶ。なんとなくだ。
 着物かぁ……菜々美が着たらどうなるんだろう。
「見てみたいなあ……」
「何をよ?」
「そりゃもちろん菜々美の芸妓さんのコスプレに決まってるじゃないか」
「は……はああ?!」
「菜々美は結構スタイルが良さそうだから似合いそうだ」
「いや、あんた、いきなりそんなわけのわからないことを、どうして? わけわかんないのはいつものことだけど」
 大きなお世話だ。だいたい、わけわかんないのは菜々美だって同じじゃないか。
 毎日僕が登下校するときに限って校門の前で待っているし。
 なのに、もしかして僕のこと好きなのか? って聞いたらかばんを顔面に当ててくる。鼻に八割ヒットしてるんだぞ。
 僕の鼻から吹き出る真っ赤な血潮に悪いと思っているなら今すぐ理由を説明してほしい。

「スタイルがいいって、どこを見てそんなことを言えるわけ?」
 菜々美が顔だけで僕の方を振り向いた。
 体はまだ最初に見た状態のまま。僕の返答次第でそれも変えられるだろう。
「まず、菜々美は髪が綺麗だ。君の髪を見ていると夜中のナイアガラの滝を思い浮かべるよ」
「滝みたいな髪の毛だ、って言いたいの? ……ていうか、あんた夜にナイアガラの滝まで行ったわけ?」
「行ったことあるわけないじゃないか。なんせ僕は生粋の日本人、だから育ちも日本。
 海外に行くのは僕の骨が火葬されて灰になり、それが風に乗って大陸や海を渡るときになるだろう」
「そこまで行きたくないわけ? 海外に」
 頷く。首をあげてもう一度頷く。
 菜々美の質問がアンケート形式だった場合、僕は丸だけではなく、二重丸を付けているだろう。
 だって、僕は日本の土地でまだ行きたいところがたくさんあるのだ。
 手始めに北海道。これはバイクを買ったらやろうと思っている。免許もとっていないけど。
 次は沖縄。最初の二回で最北端と最南端を制覇するつもりだ。
 それから、僕が住んでいるこの県を廻るつもりだ。
 全国の都道府県を巡るまで、一体何年かかるかわからない。
 もしかしたらおじいさんになってもまだできないかも。
 人生が二度あるならば、海外に行ってもいい。
 僕の命は一個だけだから、つまり一生涯行くことはない、というわけだ。
38540:2008/02/06(水) 00:20:20 ID:xeWucux1
「ま、いいわ。で、スタイルと髪の毛、どう関係があるわけ?」
「知らないのか、髪の毛が綺麗な女の人は体内に毒素が溜まっていないらしいぞ」
「……本当?」
「冗談に決まっているじゃないか」
 菜々美のシューズが飛んできた。股間にヒット。僕はその場でうずくまる。
「適当なことばっかり言ってんじゃないわよ。私は、あんたのそういうところが悪いと思う。
 こっちがあれだけあからさまな態度に出ているのに気づかないのも、多分そんなおちゃらけた性格のせいよ」
 おちゃらけた性格? 僕がふざけているとでも?
 そこまで言うなら、やってやろうじゃないか。
「わかったよ。なら、真面目になる。これから」
 あと三分だけ。

「いやに素直ね、今日は。……で、私のどこを見てスタイルがいいと思ったの?」
「その理由は、菜々美が一番わかっているんじゃないのか?
 菜々美が努力していること、僕はよく知っているんだよ」
「へ?」
「お昼にお弁当を持ってくるだろう? 君は自分で作った、と言っていたね。
 その時点で努力賞をあげたいよ。家族の誰かに任せっきりにしていたら、一体どんなものを作るかわからない。
 だから君は自分で作る。昨日のメニューのお米、あれには玄米が入っていただろう?」
「う、うん」
「育ち盛りの女子高生が玄米ご飯。なんと健康に気を配っている女の子だろう。すごいことだ。
 もちろんそれだけではなく、みんながジュースを買ってきているのに一人だけ持ってきたドクダミ茶を飲んでいる」
「あー、あれはただお金がもったいないだけ」
「そして肉類や塩分を控えめにして、野菜などの青物を頻繁に摂っている」
「あんた、そんなところまで見てるの? 毎日? ……異常ね」
「違うよ、菜々美」
 僕は声の調子を落とした。菜々美の目を正面から見据える。
 菜々美の顔が怪訝なものから、戸惑いの色を多量に含んだものへと変わる。
「急に真剣にならないでよ。……あまりにもいつもと違いすぎるわよ」
「聞いてくれ。僕がそこまで目を光らすのは菜々美だけなんだ」
「………………はへ?」
 菜々美の顔からガスが抜けた。幼稚園児が描くお父さんとお母さんの似顔絵みたいになっている。
「正直に言うよ。僕がいつも君を見ている理由」
「ぇ……ちょ……っと。いいの? あれ? なんか色々すっ飛ばしているような?
 普通、あんたの方からも反応があってこうなるはずなのに」
「真剣な話なんだ! 聞いてくれ!」
 肩を掴む。そして、お互いの顔だけが見えるような距離で見つめ合う。
 菜々美の目が忙しなく僕の顔中を見回す。口はぱくぱくと開き、動揺を表現していた。
 ――あ、僕もそろそろやばい。
 カウントダウン。……3。
「君のスタイルがいいって最初に言った、その理由は」
「あう、ぁう、あぁう」
 ……2。
「菜々美の魅力をアピールしている、そのほっそりとして」
「ななな、なに? ほ、ほっそり?」
 ……1。
「白磁の器みたいに白くて、危うささえ感じさせるほど美しい……」
「え、え、え、えええええ? 何なの?」
 ……ゼロ。
39540:2008/02/06(水) 00:21:31 ID:xeWucux1
「普段はスカートで隠れているふとももを見て、スタイルがいいと言ったんだよ」
「…………………………………………何ですって?」
「あえて言うけど、その二つに挟まれたショーツがさらに美しさを際だたせている」
 菜々美がわなわなと震えている。頭が下がり、額に垂れた前髪も下っていく。
 あ、これは本当にまずい。ここまで怒気を噴出させている様子は初めてかも。
 肩から手をどけようとした。だができなかった。
 菜々美が僕の手首を握っている。血流を無理矢理食い止めている。
「痛いよ、菜々美」
「痛い? 痛いのね? ……いいじゃない。あんた、痛いの好きでしょ?」
「いつそんなことを言ったかな?」
「覚えてないの?
 昨日の朝、私が足の小指を机の角で打ったときの話をしたら、そういう話が好きだ、って答えてたじゃない」
 はて、覚えがないのだが。
 もしかしたら聞き流しているうちに頷いたか、うんと言ったかもしれない。
「確かにそう答えたけど、僕は痛い思いをするのが好きな訳じゃないよ」
「……ふうん、あっそう」
 ああ、手首の軟骨が形を変えていく。このままでは二十歳を迎える前に関節が悲鳴を上げてしまう。
「言ってないわよ。昨日そんな話もしていないし、一昨日足の小指を打ったりもしていない。
 だから、あんたは頷いてもいないわけ。おわかり?」
「な、菜々美、貴様! 謀ったな!」
「どやかましいわよっ! 人にさんざん期待させておいてっ!」
 熱を測るみたいに額と額をくっつけあう僕ら。オブラートに包まずに言うと、ヘッドバットされた。
 僕は屋上のコンクリートに背中をつけ、激しくのたうちまわった。
「お、女の子が、頭突きなんて……」
「あんたにはこれでも温いぐらいよ! いいわ、いいわよ!
 こうなったら、二度とそんなふざけた態度がとれないようにしてやるわ!
 修学旅行の行き先! これは全部私がその場で、思いつきで立てる!
 あんたは絶対に完全に、一分の隙もなく従うこと! いいわね!」
「なにを……そんなことをさせるわけには……」
 顔を踏みつけられた。シューズを履いていない足の方だったのは、菜々美の優しさだろう。そう思うことにする。
「いいこと? 修学旅行で私に尽くす楽しさ、その結果に味わうことのできる達成感と喜びをあんたに与えてあげる。
 ありがたく思いなさい? スタイルのいい菜々美様に尽くせるなんて、光栄の至りだわよ」
 ちくしょう、女王様気取りの暴力女め。
 お前のスタイルがいいのは認める。
 だが、実はBMIの数値が標準値を上回っていることを気にしているって、僕は知っているんだぞ。
 なぜ知っているかって? それは簡単、通知表に載っている体重を覗き見たから。
「ほら、言いなさい。僕は菜々美様の下僕です、ってね。そしたらこの足をどけてやってもいいわよ」
「ふっ……そんなことを僕が言うわけがないだろう。だって、足をどけて欲しくないんだから」
「あら、強がり?」
「違うよ。わからないかな? このアングルからだと、菜々美の白い三角地帯がばっちり見えるからさ」
「! こんのっ、ド変態のマゾ男っ!」
 蹴られた。星が瞬くというより、自分自身が流れ星になって飛んでいきそうだった。
「そんな態度をとってられるのも今のうちよ! 絶対に! 絶対に……えと……そう、あれしてやるんだからっ!」
 菜々美は出口へ向かって駆けていった。だがすぐに引き返し、シューズを回収してからようやく去っていった。

 上体を起こす。少しくらくらするが、ダメージは根深くない。
 だって菜々美は女の子だから。おしとやかじゃないから、僕の理想のタイプじゃないけどね。
 でも、おしとやかな菜々美というのも恐ろしい。
 考えるだけで、菜々美の前で吹き出すのをこらえる作業に忙しい僕の様子が浮かんだ。
 でもまあ、あれはあれで。
「結構可愛いところもあるしね。やっぱりあのまんまがいいかな」
 誰にも聞こえないよう、呟く。
 空を見上げると雲が浮かんでいた。菜々美の禁断の領域みたいに白かった。
 ピンク色の小さいリボンがくっついていたらそっくりだったのにな。
40名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 00:24:09 ID:xeWucux1
終わり。
勢いで書いているので、後先を考えてないッス。
41名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 01:43:33 ID:s6mYT4Vm
済まない
素直に悶えまくったw
そしてGJ!
42名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 05:43:12 ID:mg//NaUl
GJすぎるw
お嬢は好きだし最高にニヤニヤした
43名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 13:56:45 ID:ZbFFPMZS
あなたにGJを送ろう。
44名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 02:22:18 ID:XHUwpuq6
高校生じゃなくて中学生で脳内再生された。GJ
45名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 07:24:36 ID:7fHl2qu3
46名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 03:21:56 ID:aQ1r/o7y
47名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 18:23:45 ID:yW5QFHqU
これは?携帯だけだけど
ttp://courseagain.com
48名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 03:33:23 ID:lZYhu3dP
49名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 21:56:53 ID:UG+RcpJT
バレンタインデー記念保守。
50名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 02:10:42 ID:dRq/POvU
保守
51名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 02:25:53 ID:A0M8cHzs
メタミドほす
52名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 02:47:21 ID:RH2AQWsr
53名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 00:33:53 ID:S7DPa/yz
某スレではスレ歌他なる物が議論されてるが。

ツンデレガールに合う歌ってないのかな?


俺にはどうしてもつ○き○の歌しか浮かばない。
54名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 01:28:35 ID:p1SRhI1q
ツンデレのうた
55名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 01:46:12 ID:Xa+SnTdy
ムーンライト伝説だろJK
56名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 02:41:59 ID:eGayh8sW
ツンデロイドとかしぇいむおんのOPとか
57名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 05:17:52 ID:zwPz1vw/
ツンデレでは無いかもしれないけど、初小説投下させてもらいます。
長くなりそうなので時間がある時にでも読んでくれたら嬉しいです。
58名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 05:18:56 ID:zwPz1vw/
「そこ!何してんだ!!」
怒鳴り声と同時に、鞭が頬をかすめていく。

「・・・っ!」
毎日、毎日石を運んでいる。
この作業は隣の国が攻めてこないように、城壁を作る工事だと聞いている。

私の暮らしていた村はもともと豊かではないのに、戦のせいで、田畑はめちゃくちゃになっていた。
戦に借り出されていた男達が戻って、やっと田畑を元に戻そうという時だった。
それなのにある日突然役人がやってきた。

まだ十四の弟も、戦から戻ったばかりの父様も、結婚が決まったばかりだった兄様も。
村の男は、皆連れて来られた。それだけじゃない。
役人たちは、村に残っていたわずかばかりの食料を奪い、女たちも連れて行った。
見目が良い女性は王や上役への貢物に、若い女性は兵士の慰み者に。
母様も例外ではなかった。何かを感じ取った母様が役人の目を盗み、私の髪を短く切り
さらしを締め、男装をさせてくれた。
採石場の方はめどがついたら解放されるだろうという淡い期待を込めて。

「女という事が悟られないよう上手くやるんですよ。」
「……母様」
「ふふ……。あなたは私に似て美人だから無理かもしれませんが、採石場にいる間だけでも何とか偽りなさい。」
そう言って私に不安を与えないようにしてくれた母様。
だから私も何でも無い事の様に努めなくてはならない。
「また会える事を切に願っています。どうかご自愛を」
「そうね。……林(リン)元気で。」

いつか母様に再会出来ると信じ耐える日々を送った。だけどここに来てから半年は経とうとしている。
そして村に残されたのは年寄りと幼い子供たちだけ、働き手がいなくなってしまった村。

「手を止めるな!!!」
思いを馳せる暇さえない。
少しでも休んでいると役人の鞭が飛んできた。逆らったりしようものなら、気を失うまで殴られる。
……仲間が殺される事も珍しくなかった。
最低限の食事ときつい労働。病人や怪我人が後を絶たなかった。
59名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 05:20:08 ID:zwPz1vw/
「……ん?おい!そこの聞こえないのか!?立て!!」

役人に鞭を振られ叱咤されているのは、三日前から高熱を出している弟だった。
本当は働ける状態では無いのに休む事すら許されず、石を担ぎ上げたまま倒れこんでいた。

「止めろ!!!この体調じゃもう無理だ!!それくらい分かるだろ!」

私は慌てて弟と役人の前に駆け寄った。ただでさえ生まれつき体が弱いのにこれ以上何かされたら
……考えたくもない結果がよぎる。
「……リン。だ、めだ。に……げろ」
弟は立ち上がる体力が無いのだろう、真っ青な顔をして弱々しく首を振る。
「バカ!何言ってるんだ!!」
弟を担ごうとしてドサリと派手に地面に転げる。
力が完全に抜けきってしまった体は何て重いんだろう、私は弟一人も担げないのか……。
あまりの無力さに腹が立つ。

「いいから……おいて、いけ。」
「うるさい兄弟だ。どけ!」
「……っ!!」
役人に思いきり横腹を蹴飛ばされ骨が軋んだ。
脆い体は簡単に飛ばされ、私も地面に這い蹲るような格好になる。
「リ…ン…」
「お前もだ!!」
弟を容赦無く殴りつけ、蹴飛ばす。鋭い鞭の音と、蹴りつける鈍い音。
辺りに響く役人の怒鳴り声。
グシャッと嫌な音がして、弟の鼻から地が流れ落ちてきた。

「やめろ!!!!」
立ち上がり、唇を噛み締め役人に体当たりをしようとした。
その肩を誰かに掴まれた。
「止めて下さい。そいつを殴るんなら俺を代わりに」
「……父様?」
「ふん、お前は父親か。」
役人は嫌な顔でにたりと笑った。
「お前ら一家はどいつもこいつも怠け者らしいなぁ!いい機会だから思い知らせてやろう!」

足を振り上げると、弟の腹を思い切り踏みつけた。
一度だけじゃない。何度も、何度も繰り返し弟の腹を踏みつける。
ピクリとも動かない弟をまるで砂袋か何かのように踏み続ける。

「!!」

「やめろぉぉぉーーーー!!!!!!」
怒りに任せて前に出た私を思い切り押し退け、父様は役人に向かって持っていた『のみ』を振り上げる。

ギラリと何かが光った。鋭い閃光が走り
瞬間、真っ赤な血が空に飛び散った。
雨の中の泥人形みたいに地面に崩れ落ちていく父様。
役人が剣を抜き、喉を貫いていたと判断出来た時には遅かった。
そのままそれは弟にも突き立てられ、同じように空に赤が舞った。
60名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 05:20:58 ID:zwPz1vw/
「……ふん、黙って働いていればいいものを。」
役人は、父様の服で剣をぬぐうと辺りを見回した。
「おい!誰かこいつらを捨てて来い。」

「……ぁ、」
悪い夢だ。きっと明日の朝になれば、いつもと変わらない顔で二人は笑っているに決まっている。
だけど二人の見開いたままの虚ろな目が、そんな夢は掻き消した。
今起きた事は現実だ。ここにいる二人はもう息をしない。

……

何でもなかったかの様に立ち去ろうとする役人の背中を追いかける。
「リン、やめろ。」
不意に誰かが、私と役人の間に割り込んできた。
「兄様……」
「無茶をするな。お前まで殺される。」
「それでもいい………」
「お前まで死んで、それで親父たちが喜ぶと思うのか!?」
弟は自分を置いていけと言った、父様は私を止めて役人の間に割って入った。
二人とも私を助けようとしていた。そんな事は分かっている。
分かってるからこそ、一人ここでのうのうとしていられるわけがない。
止める事も出来なかった、見ているだけだった自分が何より許せない。

「頭を冷やせ。今追っても殺されるだけだ。時期を待つんだ」

時期?兄様は何を言っているのだろう。

「リン、よく聞け。たぶんここに居ても解放される可能性は無い。」
分かってる……。
「……気付いています。」
死体置き場を見るともう随分古い骨がある。何年も前に連れてこられた人のものなのだろう。
「そうか。お前は相変わらず賢い子だね。」
幼かった頃よくしてくれた様に、大きな掌で頭をくしゃくしゃと撫でられる。
「……よ、して下さい兄様。」
そう言ったが、表情が和らぐ兄様を見ているのは私も悪い気がしなかった。
61名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 05:22:04 ID:zwPz1vw/
「まずはここを逃げよう。仇討ちはその後確実にやるんだ。」
一刻も早くあの役人を殺したい衝動を押し込めて、頷く。
「よし。手筈だが見回りの剣兵はここ、弓兵はそこを担当で定時に巡回してる。
見つかってしまったら弓兵は俺が引きつける。剣兵だけなら、俺たち二人とも足は速いからどうにかなる。
勿論見つからないようにするのが最善だが。」

砕石作業をするのに与えられた道具では逃亡の邪魔になるだけで、何かに使用出来るという事が無い。
良い策とは言えないが、以前から脱出の事を考えていた私もそれ以上に良いものが出てこなかった。

「弓兵は私が引き付けます。私の方が足は速いので兄様よりマシです。」

「駄目だ。」

「かえって邪魔になります。」
「……」
兄様は、はーー、と盛大に溜息をついた後「言い出したら聞かないからな。」と笑顔で言ってくれた。
納得してくれたことに私は胸を撫で下ろす。

大切な人が死ぬところを見るのは……もうごめんだ。
62名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 09:24:10 ID:bvJOQbGs
今のところ男装スレ向きの展開だな。
63名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 22:52:15 ID:zwPz1vw/
>>62
確かにそうかも、そっちのスレ行ってみます。
64名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 09:31:12 ID:SpUJV/xs
65名無しさん@ピンキー:2008/02/25(月) 03:48:24 ID:MYrqcBnc
66名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 15:10:30 ID:Pka8FoPg
67名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 21:57:56 ID:OFxmN9dA
誘導しちゃだめだろ・・・
過疎りまくってるじゃまいか
68名無しさん@ピンキー:2008/02/27(水) 01:48:05 ID:DNn4S5PK
そういやここって雑談あんまり見かけないような。。
69はと:2008/02/28(木) 02:25:01 ID:6nsoe835
投下します。
このスレでは初めてです。
70「パンケーキ」:2008/02/28(木) 02:25:32 ID:6nsoe835
「おかえり…なんだ、兄貴か」
エプロン姿の妹の千尋が、廊下の奥からやってきて言い放った。
「早く帰ってこないから、パンケーキが冷めちゃうでしょ!?」
ぼくは、高校の補習で春休みなのに登校していた。
補習は午前中まで。家にはお昼ごろ帰り着き、丁度昼食の時間というわけだ。
しかし、中学生の妹・千尋はひねくれているのか、このように素直ではない。
思春期特有のものでもなさそうなのだが、妹のひねくれはやや異常だ。

「兄貴は、パンケーキが大嫌いでしょ?」
ぼくの無類のパンケーキ好きだ。
そのパンケーキが、ダイニングのテーブルに、二つポンポンと皿に乗せてあった。
焼き立ての仄かにまだ湯気が昇るパンケーキ。狐色の表面がぼくのおなかを鳴らす。
「いい匂いだなあ」
くんかくんかとパンケーキに鼻を近づけ、香りを楽しむと
「もー!兄貴はそんなに腹ペコなの?そんなにパンケーキが気になるんだね?この、いやしんぼ屋さん!」
ハチミツを用意している千尋が、くるりとこちらを向いてプンスカと怒る。
一緒に回ったツインテールが、少女の甘い香りを台所に振りまく
71「パンケーキ」:2008/02/28(木) 02:26:23 ID:6nsoe835
「兄貴、ホ・ン・トに食べたいの?」
手を後ろに組み、ぼくをネコ目で見上げて詰め寄る千尋。小悪魔という言葉が本当に似合う。
「腹減ったよう…」
ぼくは、わざと小悪魔に甘えてみた。
ぎゅうう!!!
牙を向いた小悪魔・千尋に足を踏まれた。
「ばっかじゃないの?おこちゃまなんだから」
千尋はツンツンとしているが、ぼくには可愛らしく映る。
小悪魔の牙も、ぼくにとっては子猫の甘噛み。いくらでも噛んでおくれ。

「ただで、このパンケーキ作ったわけじゃないのよ!」
「ふーん。お幾らですか?」
からかい半分、意地悪をする。千尋は困ったように
「うう…えっとお、3千円!」
「誰が払うか。バーカ」
ぼくは、小悪魔を完璧におもちゃにする。
「誰が売るもんかあ!」
涙目の千尋は、ぼくのすねを蹴るが、本気でないから痛くない。
三回目を蹴ろうとした時、ぼくは千尋の頭を上から押さえつけ、グリグリと横に動かす。
「泣いてやがんの。へへへ」
「泣いてないもん!!」
千尋は頭をブンと振り払い、泣きべそを見られまいと、くるりと踵を返す。
髪が乱れふわっと踊っているように見えた。
思わず、千尋のツインテールを手綱のように引っ張ると、ムキになって肘鉄を食らわせてきた。
チョット痛かったが、ぼくは嬉しい。からかい甲斐のある妹に遊んでもらえるなんて、ぼくは果報者だ。
千尋が向こうを向いている隙を見て、パンケーキをひと欠けらちぎって味見をしてみた。
「んまーい」
「ちょっとお!バカ兄貴!」
眉を吊り上げて、ぼくにつっかかる。怒った千尋も可愛いなあ。
平手打ちをしようとする千尋をかわしてぼくは、自分の部屋に引っ込んだ。
「兄貴はもう、食べなくていいからね!!美味しいんだぞ!後悔してもしらないからね!」
72「パンケーキ」:2008/02/28(木) 02:26:51 ID:6nsoe835
ぼくが、学生服から私服に着替えている間に、千尋は最後の仕上げを終えている。
妹が作ったパンケーキにはそれぞれ
「CHIHIRO」
「ANIKI」
の文字がハチミツで薄っすらと書かれていた。ご丁寧に隣同士に二つを並べると
ハートの形になるようにハチミツが垂らされている。
「ばっかだなあ」
ぼくはニマニマしながら二つのパンケーキを見つめていると、千尋が戻ってきた。
「もー!!」
あっという間に、千尋はパンケーキの文字をナイフで表面に伸ばしてしまい
見えなくしてしまう。
「あーあ」
「冷めちゃうでしょ!」

千尋が冷蔵庫からいつもの小岩井牛乳のパックを出す。
「兄貴は牛乳大嫌いだからね!」
ぼくは、牛乳は大好きだ。
「兄貴の為の牛乳じゃないんだから」
トクトクとぼくのマグカップに牛乳を注ぐ。ドン!とテーブルに叩きつけるように置くと
牛乳が千尋の頬に跳ねて掛かる。しかめ面の千尋。
「兄貴のせいだからね!」
頬についた牛乳を指でふき取り、ピチャピチャとなめる千尋。

ぼくと、千尋は向かい合ってパンケーキを食べる。
「うまうま」
ぼくは、もくもくとパンケーキを口にするが、千尋には少々不満のようだ。
「兄貴さ、他に感想ないの?」
「うまうま」
「だから、おいしいの?まずいの?」
「うまうま」
千尋は少々不機嫌になった。
突然、千尋が自分のパンケーキを3分の1程切り、ぼくの皿に切った断片を乗っけた。
「わたしのパンケーキはおいしいでしょう?」
「うまうま」
ぼくは、千尋が勝手にくれた分もペロリと平らげた。
「今度、作ってやっても美味しく食べるんだぞ!」
73「パンケーキ」:2008/02/28(木) 02:27:18 ID:6nsoe835
「ごちそうさま」
千尋が立ち上がり、自分お皿を流し台に持っていく。
「もー!兄貴のお皿も片付けてあげるんだから、そっとしといてよ!」

いきなり、ぼくは千尋を後ろから抱きしめる。この子のひねたまっすぐさに、
いとおしくなったのだ。実の兄とかはもう関係ない。
「…!!」
千尋の甘い髪の香りがぼくを惑わす。お皿で両手がふさがった千尋は固まっている。
「兄貴の思い通りにさせないよ…」
しおらしい声で千尋は小さくなる。少し、鼻に掛かった声のよう。
更にぎゅっと抱きしめる。
「千尋もすっかり、女の子になったなあ」
「……」
「昔っから、素直じゃなかったもんな」
「やめて…」
「わざとバレンタインデーを『そんな日、知るもんか』ってすっぽかして、3日遅れで渡したり、しょっちゅうオレのことをグーで叩いたりして…」
千尋は泣いていた。さっきまでのツンツン千尋はもういない。
「お兄ちゃん…」
千尋が「お兄ちゃん」と言っているのは初めて聞く。
「お兄ちゃんのこと、嫌いだなんて一度も言ったことないからね!ホントだよ!」
鼻声の千尋はぼくの腕を振り解いて、走り去ってしまった。
ぼくの両腕には、千尋の暖かさが残った。

翌日の朝、食卓にまたもパンケーキがあった。千尋が早起きして作ったらしい。
横から、無造作ヘヤーの千尋が覗いているのがバレバレだ。
ぼくは、わざと棒読み口調で
「うれしいなあ。きょうもパンケーキだあ」
と、妹を挑発してみる。
「兄貴、ホントに食べる気?味わって食べなさいね!」
いつもの千尋らしさに安心した。
74はと:2008/02/28(木) 02:28:55 ID:6nsoe835
以上で、おはなしは終わり。
投下終了です。
75名無しさん@ピンキー:2008/02/28(木) 10:54:16 ID:uJEO0a3o
乙。
すまんが、何となく分かりづらくて楽しめなかった。
76名無しさん@ピンキー:2008/02/28(木) 18:30:16 ID:JowCFAQ1
そうか?かなり典型的なツンデレだと思うが
gj
77名無しさん@ピンキー:2008/02/28(木) 22:44:00 ID:ewGXn8fA
なんでツンデレには






ツインテールが合うんだろう…

21世紀人類が産み出した最初の偉大な発明だよ…
78名無しさん@ピンキー:2008/02/29(金) 01:32:47 ID:DahTuDsf
乙。
ただ言わせてもらうと、若干描写が少なくて、俺が書いたのを見てるようだった。
79名無しさん@ピンキー:2008/02/29(金) 03:12:31 ID:Ycf4+qQ9
レスリングツンデレ娘がパンケーキで相手の男を頭から落とす話だと思ったら違った
でもまあ楽しめたしいっかw
80名無しさん@ピンキー:2008/02/29(金) 16:37:22 ID:NEZyAVTJ
>>77
シャナ乙
81名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 06:41:51 ID:rKzKSjC1
俺、高島賢治の17年の人生のうち、3分の2は美崎にケツを引っ叩かれてたような気がする。

小学校の時点で、口も立ち手も早く、何よりズバ抜けて可愛い彼女に太刀打ちできる男子は
既にいなかったんだけど、特に俺に対する風当たりは、なぜか常に台風級だった。
まあでも、体ばっかりデカくてへタレだった俺を、見るに見かねてなのか、ただ面白がって
なのか、とにかく近所の柔道教室に、文字通り耳を引っ張って連れて行ってくれた事には、
今でも感謝してる。
地味な練習を黙々と積み重ねるのがちっとも苦にならない俺の性格と柔道は相性ピッタリで、
一時は全国大会まで見える程にまでなっていた。
そんな俺の柔道人生も、地区予選の決勝で、俺が相手の無理な投げを変に堪えてしまい、もつれ合うように
倒れた結果、俺の左膝靭帯がブッツリいっちゃった事でハイ終了!となってしまったワケだが。
でも、鍛えられた体と、多少はタフになったハートは、紛れも無く彼女がくれたきっかけのおかげである。
彼女の家は5軒隣なので、その方角には足を向けて寝ないようにしてます。

「…何ジロジロ見てるのよ」
美崎が、きれいな眉を顰め、黒々とした大きな瞳でキッと俺を睨みながら、パタリとノート
パソコンを閉じた。
2人きりの生徒会室に夕日が差し込み、彼女のほっそりした体や、肩先まであるつややかなストレートヘア、
整った小さな顔をオレンジ色に染めていた。
「え!あ、ムハハハ…」
いつの間にか、彼女に見惚れてしまっていた俺は、慌ててゴマカシ笑いをした。
「そんなアホ面してるって事は、最終稿ができたって事?」
「あ!そうそうコレコレ」
と俺が手渡した書類に目を通していた彼女の表情が、徐々に和らいでいった。
「まあ、ゴリケンにしては上等か…さーて、帰ろっかぁ」
と、彼女は思いっきり伸びをした。
制服のブラウスの胸元にクッキリと浮かびあがった、小さめだけど形のいい膨らみをなにげに盗み見た。

生徒会室の鍵を閉め、二人でもう人影の無くなった廊下を歩いた。
「…でもさあ、思ったより早くまとまったよな」
と,
俺が少し前を歩く彼女の細い背中に話しかけると、彼女は歩きながら、「…そうね」と生返事をして、その
まま自分の考えに浸りこんでしまった。

俺は足の怪我が治った後、競技としての柔道は諦めろと医者に言われ、呆然としたまま抜け殻
のような日々を送っていた。
だが、
「そんなにヒマなら手伝いなさいよっ!!」
と、1年生にして後期の生徒会副会長になってしまった美崎が、「書記補佐代行」というナゾの
肩書きを俺に張って、生徒会活動に引きずり込んだのだ。

で、さっき俺が彼女に言ったのは、生徒会が掛かりきりになっていた、次年度の部活動の予算
編成の事だった。
優秀な運動部がひしめくこの学校では、予算の争奪戦は熾烈極まりないものだった。
事務処理など全くできない俺は、運動部が持ち込んでくる数々の予算案を見る役目に廻された。
部も辞めてしまった今、誰に遠慮のいる立場で無くなった俺は、『この予算は無理だ』と思ったら、
相手が3年生でもにはっきりそう言った。
逆に、頑張ってるのにまだ結果に恵まれず、遠慮がちな申請しかできないような部活には、
忙しそうな美崎を捕まえて口添えをしてあげ、彼女にイヤーな顔をされたりもした。
でも、そんな俺のお節介や、美崎の大胆な改革のせいでかなり大幅な予算の異動があった
割には、なぜか各部から最終承認はスムーズに集まり、結局去年より1週間以上も早く最終案が
仕上がったというわけだ。
82名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 06:44:14 ID:rKzKSjC1
気付くと、彼女が独り言のようにブツブツつぶやいていた。
「…そうよ、あんたがあんなに柔道ガンバってたとこ、皆見てたんだから、毎年お決まりらしい、
 『執行部のヒョロヒョロ野郎どもに俺達の苦労が分かるかよ!』なんてセリフ誰も言えるわけ無い。
 『チェッ、あの1年坊が言うならしょうがねーか』なんてヤツさえいた位だし…」

「え?いやあ、まいったなあ、ハハハ…」
と、珍しく彼女の口から出た褒め言葉らしきものに、俺は頭を掻いた。
すると、彼女はハッと我に返り、
「な、何よ!『筋肉バカは筋肉バカをもって制す』っていう私の作戦が完璧だっただけなのっ!
別にあんたを褒めたわけじゃないんだからねっ!!」
と、何か顔を赤くしてまくし立ててきた。
「はあ、さいですか…」
と、一転ヘコむ俺。

「そ、そうよ!だいたい何よ!女子バレーのキャプテンにデカ乳グイグイ押し付けられながら、
『なあゴリケン、この案通せよぉ』なんて言われてデレーンとしちゃってさ!ほんとにみっと
もないんだか…ア…いや、あの、これは、同じ生徒会のメンバーとして恥ずかしいって意味で、
別にあんたが誰と何してたって私は別に…アッ!!」
俺を睨みながら、半ば後ろ向きで歩いていた彼女が、突然大きくバランスを崩した。

ここは、新館と本館をつなぐ通路で、廊下に微妙な段差があった。結構ここでズッコケる者は
多く、密かに「よし○と新喜劇」と呼ばれる魔のスポットだったのだ!!

俺はとっさに、大きく踏み込みながら彼女の体に手を廻した。
何とか支えるのには間に合ったが、その細い体が、勢い余って俺の胸に飛び込んできてしまう。
すでに薄暗くなりかけた廊下で、俺は彼女を抱き締める形になっていた。

「何よこのドヘンタイ!!」
とすぐに突き飛ばされでもするかと思ったが、彼女はなぜかジッとしたままだった。
俺の鼓動が、そして、俺の腕の中の彼女の鼓動が、どんどん激しくなっていくのが分かる。
彼女が、俺の胸に埋めていた顔をツッと上げた。
その瞳が、なぜか潤んだように光っていた。
しばらく見つめ合っていた俺達は、やがて引き寄せられるかのように、自然に唇を重ねていた。

そうだ。俺は、ずっと昔から彼女が好きだった。
でも、成長するにつれ眩いばかりに綺麗になっていく彼女を間近で見ながら、俺はいつしか、
その気持ちを自分の中に閉じ込めるようになっていた。
柔道で全国大会への切符を手にしかけた時には、一瞬夢を見た事もあったが、今はもうそれも
消え失せていた。
だから、どん底の気分だった俺に彼女が声を掛けてくれたのにはビックリしたし、生徒会活動
で少しは役に立てた様子なのも純粋に嬉しかった。
もうこれで彼女を吹っ切れるとさえ思った。

でも全然違った。
彼女を抱き締めた時、自分でもビックリするほどの感情の激流が、心の底から溢れ出てきた。
それを全てぶつけるかのように、俺のキスは、どんどん激しいものになっていく。
可愛い小さな唇を、何度も何度もむさぼられるように吸われ、切なげに彼女が喘ぐ。
こんなに長い付き合いなのに、それは俺が全く初めて見る顔だった。

彼女の…彼女の全てが知りたい!!

狂おしい思いに駆られ、彼女の細く柔らかな体をまさぐっていた俺の手は、いつしか後ろから
彼女のお尻越しに股間に入り込み、下着の上から彼女の小さなワレメを夢中で擦っていた。
薄い布地越しに、はっきりヌルリとした感触が感じられる。
さすがに恥ずかしがって体をくねらせる彼女だったが、猛牛のような俺の勢いを止められる
はずもない。
やがて、下着をずらす様にして入り込んだ俺の太い指が、もうヌルヌルになってしまっている
柔らかな合わせ目を直接なぞり始めると、彼女は小さな悲鳴を上げながら体を震わせ、必死で
俺にしがみ付いてきた。
83名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 06:48:12 ID:rKzKSjC1
もうズボンを突き破らんばかりにギンギンになってる俺のチンポが、彼女にグイグイ当たって
いた。
でも彼女は、その感触を嫌がるどころか、むしろその熱や固さを感じ取ろうとでもするかの
ように、柔らかい下腹部を俺のチンポに自分から押し当ててきた。

彼女の大切な部分を『クチュッ…クチュッ…』とヤラしい音を立てて弄り回していた俺の指が、
ついに彼女の中にヌルッと入り、彼女が甘く呻きながら体を反らせたその瞬間…!

キーンコーンカーンコーン…
『総下校の時間でーす!校内にいる生徒は、速やかに下校しなさーい!』

チャイムとともに、生活指導担当のダミ声が、スピーカーから全校に響き渡った。
思わずパッと離れた俺達は、我に返った顔を見合わせて一瞬呆然としていたが、やがて二人
とも真っ赤な顔で、気恥ずかしげに俯いてしまった。

「予算編成かあ、ご苦労さんだなあ」
と、閉まりかけの校門で生活指導担当に声を掛けられ、顔を上げる事ができなかった。
だが、一つ角を曲がれば、もう辺りに生徒の影も無し。
俺はとっくに、自分の気持ちに正直になる事に決めていた。
少し前を歩く彼女の小さな手をギュッと握ると、彼女はピクンとしたが、やがてキュッと手を
握り返してきた。
そのままズンズン歩く彼女は、意地でも振り向くまいとしてるようだが、耳まで真っ赤なのが
後ろからでも分かる。

しばらく2人とも黙って歩いていたが、やがて彼女が憤然とした調子で言った。
「こ、このエロゴリラっ!何で突然あんな事したのよっ!」
「うーん、したのは突然だったけど、もうずっとずっと昔から思ってた事だからなあ」
「それにしたって、順番とかあるじゃないのよぅ」
「あ、そうか」
と俺は彼女の肩を掴んでクルリと振り向かせ、何の躊躇も無く言った。
「美崎、お前が大好きだ。お前の全部を俺のものにしたいんだ」
彼女の目が、ボウッと霞むように潤んだ。
やがて、その桜の花びらのような唇が開いた。
「わ、私は…」
「うんうん私は?」
「…お…」
「お?」
「…教えないっ!」
俺は、ここがまるで魔の「よし○と新喜劇」かと思うほどズッコけた。

「何だよソレ!」
「どうしてこの私が、バカゴリラにそんな事言わなきゃならないのよっ!」
「…そ、そりゃアレか…嫌い…って事なのか?」
ガックリと肩を落とした俺に、彼女が慌てて言った。
「え、あの、そんな…そ、そうやって勝手に決めるから、あんたはバカゴリラだって言うのっ!」
彼女が、顔を真っ赤にして下を向いてしまう。
「…だ、だって…もし、もし仮に私があんたの事、す、好きとか言ったら…私あんたの、あの
 …あのもの凄いので、メチャクチャにされちゃうんでしょ…」
消え入りそうな声でスゴい事を言う彼女を、俺は思わず抱き締めてしまう。
「…うん…多分俺、今お前を抱いたら、自分を押さえられないかもしれない…イヤか?」
「バ、バカッ!女の子が、そんな質問に答えられるかよぅ…」
彼女が、乱暴な口調で言いながら、真っ赤な顔で俺の首にしがみ付いてきた。
しばらく俺の頬に、その滑らかで柔らかいほっぺたを擦り付けていた彼女は、やがてポツリ
と俺の耳元で囁いた。
「…優しく…してね…」


以上
つまり、私はこの程度の軽いツンが好みだと言う話デス・メッセンジャー
84名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 08:16:11 ID:IVw6YlOT
>>83
朝から何書いてるのよ!!






続き書かないと許さないんだから!!





………ばかぁ。
85名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 12:15:40 ID:wVtuvYrN
うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
朝からごくろうさん!!
gj!
86名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 01:31:56 ID:S8ZJHhAJ
いやっふぅううううううううううううううううううううう!!!!!
つ・づ・き!つ・づ・き!!!
87名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 23:06:37 ID:ayhZxaDH
文章から若さが溢れてるねぇ
88名無しさん@ピンキー:2008/03/04(火) 21:01:07 ID:ykOpHuq8
>>81-83の続きを書いてみました

お互いの家の前にたどり着くころ、美崎は完全にプンむくれていた。
これは、帰り道で俺がつぶやいた、
「…そっかあ、美崎も俺の事好きになってくれてたのかあ」
という、不用意な一言のせいであった。
「ハァ?!誰がいつアンタなんか好きになったって?!勝手に決めるなって言ったばっか
なのに、何なのこの自己中ゴリラ!ちょっとその手離してっ!!」
と、たちまち真っ赤になった彼女が、自分で握ってたくせに手をピッと振り解いてズンズン
歩き出し、今に至るという訳で。
彼女はそのまま、明かりが灯る自分の家にドスドスと足音を立てて消え、後にはただ呆然とした
アホ男が残されたのみであった。

俺は真っ暗な自分の家に戻り、パートに出てるお袋が作り置いてった晩飯をチンして食べ、風呂に
入り、テレビをつけた。でもその間、ず−っと心ここにあらずってヤツだった。
勝手に怒り出した彼女に『何なんだよもー』って気持ちも少しはあったけど、正直俺の頭の大半を
占めていたのは、夕日に照らされ、俺の腕の中で可愛く悶える彼女の姿だった。
こりゃ、1,2発抜いた位じゃ治まらんぞと覚悟を決め、新しいボックスティッシュを探して
いたら、ドアチャイムがなった。
もう宅配便なんかが来る時間でも無し、何だよーと思いつつドアを開けたら、美崎が立っていた。

彼女は、コンタクトを外して黒ブチメガネ、胸に名前の縫い取りのある中学ジャージという、
かなりぶっちゃけた御姿。
学園ではたぶん俺しか知らないだろう、彼女の定番リラックススタイルである。
風呂上りらしい、いい香りが玄関に漂った。
その彼女が、赤い顔でそっぽを向いたまま、妙に早口で喋りだした。
「あ、あのさ、最近あんた授業全然わかんなくて怒られまくってるじゃない。『生徒会が忙くて勉強
が…』とか言い訳にされても困っちゃうから、せめて明日の分くらいは教えてあげようかと
思ってさ。だ、だけど!!」
と、彼女がその細い指でビシッと俺を指差す。
「へ、へ、変な事したら絶対ダメだからねっ!全然そういうんじゃないんだからねっ!」
俺はあっけにとられたまま、「は、はぁ…」と間抜けな返事しかできなかった。

確かに、俺も勉強については『何とかしなきゃなあ…』とは思ってたから、ちょっと唐突っぽい
彼女の申し出も、ありがたくお受けするだけである。
で、コタツで彼女に久々に勉強を教えてもらい、改めてその教え上手っぷりにビックリさせられた。
これは、彼女が内容を完全に分かってるからってだけじゃなく、相手をちゃんと見てるからだ。
彼女は医者を目指してるんだけど、俺もそれはすっごく彼女にピッタリな仕事だろうと思ってる。

さて、その教え上手のおかげで、全然歯が立たなかった問題が少しずつほぐれてきたのが分かる。
こうなると面白い。唸りながらもなんとかその問題を解き、最初全然別物と思ってた次の問題も
1問目との繋がりが分かり…と、我ながら鈍い頭がゴトゴトと動き出す感覚はなかなか気持ちいい。
89名無しさん@ピンキー:2008/03/04(火) 21:02:04 ID:ykOpHuq8
かなり時間は掛かったが、なんとかそのページの問題を全部やっつけ、満足のため息をつきながら
顔を上げると、なぜか美崎がムーッとした顔で俺をにらんでいた。
俺が「???」と彼女を見つめ返してると、彼女がメガネを冷たく光らせ、
「勉強がお好きみたいでよござんしたねっ!何か一人でも全然いいみたいねっ!帰るっ!」
と言って、いきなり立ち上がろうとする。
一瞬ポカーンとしかけた俺だったが、珍しくフル回転してる頭で、今すべき事を電撃的に悟った。
腰を上げかけた彼女の手を掴んで軽く引くと、俺のアグラの中に彼女の体がポトリと落ちてくる。
そのほっそりした体をキュッと抱きしめ、
「お前ほんと、最高の先生だよ。ありがと美崎」
と、さりげなくチューをする。
…つもりだったけど、腕の中の彼女の感触に不意に夕方の記憶がよみがえってきて、気づくと俺は
やっぱり夢中で彼女の唇を吸いまくってた。
「…ん…んっ!…バカッ…ヘンな事…ヘンな事しちゃ絶対ダメだって言っ…ん…アッ!…」
と言う彼女の手は俺の首にしっかり回されていて、厚かましく進入してきた俺の舌に、その小さな
舌を一所懸命絡めようとしていた。

激しいキスを繰り返しながら、俺は彼女のジャージをあっさり剥いてしまう。
彼女は、淡いブルーの可愛らしい下着を身に着けていた。
俺が「ほ、ほんとに可愛い…」と思わずため息交じりの感想を漏らすと、彼女は黙ったまま真っ赤
な顔でプィッ!とそっぽを向いてしまう。
俺は、恐らく新品のその下着も取り去ってしまう…つもりだったんだけど、ブラの外し方が分かん
なくてモッサモサしてて、結局彼女が「んもおっ!」と言いながら自分でプチンと外す事に。
うーん、こっち方面も勉強します…

彼女を裸にした後、俺も、まあ一応紳士のたしなみで、後ろを向いて裸になりクルッと振り向いた。
すると、俺の後ろ向きストリップをジーッと見つめてた彼女の目が大きく見開かれ、息を飲むのが
分かった。

彼女が現在大注目中の俺のアレは、人と比べた事は無いけど、まあ俺の体格に見合った程度の
大きさはあるんじゃなかろうか。
それがもう、既に興奮度マックスで反り返ってるわけだから、まあ不気味だよね。

俺は彼女をヒョイと抱えあげ、ベットに一緒に横になる。
キスを繰り返しながら、柔らかなオッパイや、すでに潤み始めたアソコを出来るだけ優しくいじり
はじめると、彼女は早くも小さく喘ぎながら、恐る恐る俺のカチカチのアレに触れてきた。
「な、何か…ヘンな感触…」
とつぶやきながら、ほっそりした片手では握り切れないほど成長してしまった幹の部分を、キュッ
と掴んできた。
その温かくしなやかな手が上下にゆっくり動き出し、俺は思わず呻き声を上げてしまう。
90名無しさん@ピンキー:2008/03/04(火) 21:02:33 ID:ykOpHuq8
きつく抱き合い、激しく舌を絡ませつつ、お互いの大事なとこをイジればイジるほど『もっと深く
繋がりたい』という欲望が、二人の間に堪え切れないほど盛り上がってくる。
俺は彼女に覆いかぶさり、赤黒く張り詰めた亀頭を、彼女のもうクチュクチュに濡れてしまって
いるアソコにグニッと押し当てる。
彼女は、その感触にピクリと体を震わせ、
「は…入るかなぁ…」
と不安げな声でつぶやいた。
実は俺も、彼女のアソコを弄り回してるうち、これ、俺のが入るサイズじゃ無いんじゃないか?
…とは思っていた。
「俺、初めてでよく分かんないから、とにかく痛かったり、無理だと思ったらすぐに言えよ。
絶対お前を傷つけたくないんだ」
と言うと、彼女が心細そうな顔でコクリとうなずいた。

さあ、いよいよだ。
俺は、彼女を改めて抱きしめると、腰を前にグッと押し出した。
俺の先っぽに、きついゴム輪のような彼女の入り口がメリメリと押し拡げられる感覚がはっきり
伝わってくる。
でも、大きく張り出した先端のせいぜい半ば過ぎってあたりで、もうどうにも進めなくなって
しまう。
俺は、脂汗を流しながら苦しげに浅く息をする彼女を見ながら、『絶対傷つけたくない』という
自分の言葉を思い出し、思わず腰を引き掛ける。

すると、突然彼女の汗ばんだ細い足がグルッと俺の腰に巻きついてきた。
「み、美崎!大丈夫なのか?」
「女の子に…そんな事聞くなって言ったでしょ…このバカゴリラっ」
と、彼女の燃えるような瞳が、眼鏡越しに気丈にも俺をキッとにらむ。
俺は、不意に湧き上がってきた彼女への思いに胸を一杯にしながら、彼女のメガネをそっと取り、
汗まみれの額にキスをした。
そして、一気に腰を押し出した。

プツリ、というよりは、ズルリと何かをこそげ取るような感触とともに、ついに俺の先端が彼女の
中に呑み込まれた。
彼女が大きく呻きながら体をのけ反らせる。
彼女の内側は、気持ちいいを通り越し、痛みさえ感じるほど超キツキツだった。
その圧力をしばし感激とともに味わったあと、俺は、慎重に抜き挿しをはじめながら、徐々に彼女
の奥へと入っていった。

彼女の中はそれなりに潤っていて、とにかくキツくはあるものの、何とか出し入れはできた。
俺の張り出した先端に狭い内部をこすられる度、彼女がたまらず呻き声を漏らす。
でもその声の中に、痛みだけじゃなくて、なんつーか、甘いような響きがまじってるのが俺にも
分かった。

抑えなきゃ抑えなきゃと思いつつも、俺の腰使いはついつい激しくなってしまう。
でも彼女は、切なげに喘ぎながらも、その細い両手両足で俺にしっかりしがみつき、健気にそれを
受け止めていた。
そのうち、俺のチンポの出入りに合わせて、彼女のアソコから『プチュッ、クチュッ』とヌメった
エロかわいい音がし始める。
ベッドは壊れんばかりにギシギシなってるし、俺も彼女も結構夢中でお互いの名前なんか呼び
合っちゃったりして、今思えばなかなかにご近所迷惑な感じであった。
91名無しさん@ピンキー:2008/03/04(火) 21:02:53 ID:ykOpHuq8
そのうち、彼女のアソコがキュッキュッと更に強く締まり始め、俺も、我慢できないほど熱いもの
がこみ上げてくる。
やがて、彼女が小さなお尻をブルブルッと激しく震わせるのとほぼ同時に、俺はものすごい量の
精液を彼女の奥深くに放出してしまった。
「アアッ!…シゲルのが…私の中で…ビクンビクンってなってる…」
と、美崎がトロンとした表情でつぶやいた。
「おお、今いーっぱいお前の中に出しちまってるからな」
と、抱きしめた彼女の耳に囁く。
「もー…バカ…」
と彼女は俺にギュッと抱きつき、俺の汗まみれの胸に真っ赤な頬をペタリと押し当てた。
彼女の中が、ヒクンヒクンしながら、俺の精液を胎内深くに呑み込んでいくのがはっきり分かった。

ティッシュを箱から抜き出し、彼女のアソコを拭いてあげようとしてパシッと手を叩かれ、逆に
チンポを優しく拭われた。
そして、お互い裸のまま、彼女は仰向けに寝転んだ俺に抱きつくと、俺のアレを、ネズミを弄ぶ
ネコのように、興味深々って顔でいじくりまわし始めた。
「…もお…ほんっと信じらんないよ…勉強を教えに来た可愛い幼馴染を…こんな…こんな凶悪なの
でイキナリ犯してさ…とどめに目いっぱい中で出しちゃうなんて…ほんとケダモノだよぉ…」

彼女のしなやかな指でいじくられるうち、俺のチンポはすっかり元気を取り戻してしまう。
美崎は頬を赤らめながら、そのビクンビクン脈打つアレを、しごいたり、キスしたり、頬擦り
したり、ペローンと舐め上げたりと、やりたい放題。
そして、不意にその可愛い唇を大きく開け、真っ赤に膨れた先っぽをパクリと咥えてしまった。
思わず呻く俺を、いたずらっぽく光る目でチラリと見て、彼女は口いっぱいに頬張った俺のアレを
音を立ててしゃぶり出した。
長年あこがれ続けた彼女が、ぎこちなくも夢中で俺のアレをしゃぶる姿は、ウーン、何か現実とは
思えない光景だ。

「…んっ…(ちゅぱっ)…ネットとか見ると…ちょっとクツジョク的な行為だなーとか思ってた
けど…(ちゅるっ)…好きな人のだと…胸がドキドキするような…ヘンな感じがするねー…」
『好きな人』とかポロッと言っちゃってますが、俺もこみ上げる快感を堪えるのに必死でそれどこ
ろじゃない。
「み、美崎…ヤバい…もう出る…ちょっと口離しなって…美崎ほら…」
と俺が息も絶え絶えに言うが、彼女はニッと笑うとかえって深々とチンポを咥え込んでしまう。
ついに俺は、腰を震わせながら彼女の喉奥に、1度目に負けないほど大量の精を出してしまった。
彼女は一瞬その勢いに目を丸くしたが、結局次々に放たれる俺のアレを、喉をコクンコクン鳴らし
ながらほとんど全部飲み込んでしまった。
92名無しさん@ピンキー:2008/03/04(火) 21:03:58 ID:ykOpHuq8
やがて、「ぷはっ!」と俺のチンポから口を離した彼女は、ピシャッと思いっきり俺のお腹を平手で
叩いた。
「もおっ!なんでこんなバカみたいにいっぱい出すのよっ!!粘ついて喉に引っかかるし、死ん
 じゃうかと思ったわよっ!!」
彼女はプンプンしながらも、握ったままのチンポがまだ時々吐き出す白いネバネバを、残らず
舐め取っていく。
「…もう…(ペロリ)…生臭いし、苦いし…(チュパッ)…この味も何とかしなさいよっ」
彼女は、赤い顔で無茶を言いながら、俺の太腿や腹に垂れ落ちた精液までもきれいに舐め尽して
行く。何か、やけに楽しそうに見えるのは気のせいだろうか…

何となく離れ難くて、裸でイチャイチャふざけあってるうち、結構な時間になってしまった。
さすがに彼女の母親も気にするだろうし、俺のお袋ももう少ししたら帰ってきてしまう。
おなじみのジャージ&眼鏡スタイルに戻った彼女だったが、歩き出してみると何か足元が怪しい。
思わず支えて、一緒に歩きだした俺のわき腹に、ドスンドスン肘打ちを喰らわせつつ、
「もーっ!何か…何かヘンなのっ!あんたのせいだかんねっ!このレイプ魔!野獣!赤点野郎!」
と最後にすごくキツい事を言いつつ、彼女はフラフラと自分の家に消えていった。

翌朝、なぜか緊張しながら彼女の家の前を通り過ぎ、ホッと息をついて学校に向かおうとすると、
いきなり後ろから尻をボスンと蹴られた。
「お、おお美崎、お早う」
「お早うじゃないわよっ!!もぉ、あの後大変だったんだからね!母さんが目を細めて『ン?何
そのおぼつかない足取り、トロリと溶けそうな表情、整えきれない髪の乱れ…ムムムム…』
とか言いながらズーッとつきまとってきたんだから!」

俺は、実は美崎のお母さんがチョイ苦手というか、いや好き嫌いで言えばかなり凄く好きなんだけ
ど、スレンダーで超美人で明るくてサバサバしててというその姿が、未来の美崎を見てるようで
何か落ち着かないというか…

「…ほんとにもー、いきなり犯されて、口にもアソコにもいっぱい出されちゃって、あげくにエロ
い目した母親にセクハラされるって何なのよっ!」
思わず周りに聞こえないかとハラハラしてしまう彼女のお言葉には、反論すべき点もあるような気
もしたけど…まあいっか。
とにかく俺にとっては最高の夜だったし。
それに、途中までだったけど教えてもらった勉強だって、今日絶対役に立ちそうだしな…
「あ、そうだ。よかったら今夜もうちに来ないか?昨日は何か中途半端だったし…」
「え?!そ、そんな無理だよぉ!そ、そりゃあんたはまだその…げ、元気だったみたいだけどさ、
私あれ以上したら絶対壊れちゃうもん…ウーン…でもなあ…もしかして、このヒリヒリするのって、
夜までには治まるのかなあ…」
と言いながら、彼女がたぶん無意識に、自分のアソコをスカートの上からそっと押さえた。
俺はあわてて彼女の前に回り、周りの目からそのはしたないアクションを隠しつつ言った。
「ち、違うよ美崎、勉強!勉強の事だよ!」
「え?…ア!…ば、バカッ!ま、紛らわしい事言わないでよこのヘンタイ!!」
耳まで真っ赤になった彼女が、俺のスネを思いっきり蹴り上げ、ピューッと走り去ってしまう。

スネも痛いし、周りの視線も突き刺さってくるし…
何か、仲良くなったらなったで、また別の苦労が出てくるって感じだよなぁ…
もちろん、全然OKだけどさ

おしまい
今はこれが精一杯(手から花も出ず)
93名無しさん@ピンキー:2008/03/04(火) 22:16:04 ID:9aZA6BVA
女とヤってお金が貰える♪
まさに男の夢の仕事!
出張ホストっておいしくない?
ttp://neets.net/2ch/01_info.html
94名無しさん@ピンキー:2008/03/04(火) 22:31:51 ID:Cdbtffjt
>>92
処女GJ!!

ツンデレ最高!!!!


しかし業者なんかに先を越されたのが悔しい!!
95名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 22:27:38 ID:PlIvqGzh
gj
惜しむらくはシゲルって誰だって事だな
96名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 23:08:16 ID:sWHaO6rs
推敲不足スンマソン 修行の旅に出ます…
97名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 23:21:37 ID:PlIvqGzh
いや、脳内補完出来るレベルだから無問題ッス
だからどこにもいかないで
98名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 03:44:16 ID:UTx1xdin
99名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 04:12:19 ID:4iuFkGGl
もう神だよwwww

やっぱツンデレはいいね
100名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 05:10:41 ID:0K7cyyC2
ツンデレさいこうぅぅぅぅううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!!!
101名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 05:21:17 ID:gkK3H59u
【中国】スター三人、無修正写真流出「セックス?スキャンダル」

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[?思慧]-37P-
http://idol1.jpger.info/page97.php?tid=13/2008-2-9/63187_2.shtml
http://idol1.jpger.info/page97.php?tid=13/2008-2-9/63187_1.shtml
http://idol1.jpger.info/page97.php?tid=/13/2008-2-9/63187.shtml

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[梁雨恩]-40P-
http://idol1.jpger.info/page97.php?tid=13/2008-2-9/63186_2.shtml

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[??思]-10P-
http://idol1.jpger.info/page97.php?tid=/13/2008-2-9/63185.shtml
102名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 05:24:50 ID:gkK3H59u
【中国】スター三人、無修正写真流出「セックス?スキャンダル」

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[?思慧]-37P-
http://idol1.jpger.info/page97.php?tid=13/2008-2-9/63187_2.shtml
http://idol1.jpger.info/page97.php?tid=13/2008-2-9/63187_1.shtml
http://idol1.jpger.info/page97.php?tid=/13/2008-2-9/63187.shtml

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[梁雨恩]-40P-
http://idol1.jpger.info/page97.php?tid=13/2008-2-9/63186_2.shtml

02-09?冠希裸照事件2月7号最新?[??思]-10P-
http://idol1.jpger.info/page97.php?tid=/13/2008-2-9/63185.shtml
103名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 11:08:01 ID:+jzhlCYM
>>92
GJすぎて涙が出そうだ
104名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 08:59:33 ID:tXR0dxt8
105でぃすぱ ◆g5uZET9koI :2008/03/09(日) 22:59:56 ID:Y/Y/OtWj
Slowly×Slowly第8話投下します。
106Slowly×Slowly:2008/03/09(日) 23:00:33 ID:Y/Y/OtWj
 ただいま朝の7:13。凍夜に割り当てられた部屋のカーテンの隙間からほんのりと柔らかい光が差し込
む。外で吹く風は海が近くにあるためとても冷たい。
 普段の凍夜ならこの時間寝ぼけ眼を擦りながら朝食を作っているが、ゴールデンウィーク中の今日はもち
ろん休日なので時間に追われることはない。目覚まし時計の無機質な音もなければ、平日の朝に送られてく
る冒頭が鶏の絵文字で始まるメルマガもない。
 凍夜は日曜日のサラリーマンみたく昼までゴロゴロするはずだったのだが、それはドアの向こう側にいる
3人によって阻止される。夢をまだ見ている凍夜はまだ気付いていない。人間どんなに祈っても災難は降り
かかることを。今日もまたその災難が身に降りかかることも。
 「………………」
 「………………」
 「………………」
 凍夜の部屋から見たドアの向こう、つまり廊下では3人が仁王立ちしており誰も言葉を発さない。
 季節は5月のはずだがここだけはタイムスリップをしたかのように極度に気温が冷えていた。猛吹雪の中
マンモスが走っている姿が思い浮かぶ。
 「2人ともこんな朝早くどうしたの?今日はもうちょっと寝ててもいいんだよ?わ、私は別に凍夜の寝顔
をじっくり見たいとかそんなのじゃなくて、あのバカは寝起きが悪いから幼馴染の私が面倒だけど、仕方な
〜く起してあげようっていう親切心から来ただけなんだけどね」
 最初に口を開けたのは玲奈だった。親友の菜月と敵の緋莉を睨んでは遠まわしに部屋に戻れと促す。
 「何を言っているんだ有澄?お前もゆっくりと寝たらどうだ。昨日あんなに皿を割ったから疲れているだ
ろう。あ、違うか。あれは故意にやったのではなく事故だったか。まああそこまで行くとどちらでも同じに
見えるがな」
 「ぬぅあんだって〜っ?」
 緋莉は玲奈を見下ろしながら淡々と毒を吐く。その毒は鋭利な刃物に変わり玲奈の心臓をグリグリと抉る
が、眉間に皺を寄せ眉毛を逆八の字にする玲奈にとってはおもちゃのナイフにしか見えないのか。刺さる刃
物を次々と抜き出しては地面に叩きつける…………ように思うのは菜月だけではないはず。
 「なんだ、こんな簡単なことも理解できないのか?仕方ない、もっと優しく言ってやる。お前は」
 決定的なとどめのセリフを緋莉が言おうとした瞬間、菜月が身を挺して2人の間に入り込む。
 「はいはーい、ストップストップ!!もう2人ともこんなとこで争わないでよ。どうせ私たち凍夜君を起
こしに来たんでしょ?だったら3人入ればいいじゃない」
 「「菜月は黙ってて(くれ)!!」」
 「はぁーっ!?」
 大人な意見を言った菜月だが冷静さを失った2人には馬の耳に念仏。仕舞いには怒号を浴びるはめになり
さすがの菜月もこれにはキレた。
 「もういい!わかったよ!」
 (いいもんいいもん、黙ったまま凍夜君の部屋に入ってやるんだから!)
 菜月がドアノブに手を付けた瞬間、両肩に重みが掛かった。
 「「そこ抜け駆けしない!!」」
 身体に掛かるのは手の重さだけではなく禍々しいオーラ。
 逃げられない。戦うしかない。この世に平和なんてもとから存在しない。なぜならその平和のために人は
他人を殺すから。行くんだ、菜月。逃げちゃ駄目だ……逃げちゃ駄目だ……菜月、行っきマース!!
 決意したその瞳からは電撃系魔法が出て2人を威嚇するが、玲奈たちからもバチバチと火花を散らして電
気の三角形が完成した。
107Slowly×Slowly:2008/03/09(日) 23:01:03 ID:Y/Y/OtWj
 「ぬぅ〜…………」
 「むぅ…………」
 「きぃ〜…………」
 お互いがお互いを睨み始めて10分が経過した。3人の身体から放たれる威圧的なオーラは留まることを
知らず、外へ溢れ出し、近くの木でチュンチュンと歌っていたスズメも今はいない。邪気が届かないとこに
でも飛び立ったようだ。
 先ほどまで静かだった海は荒々しく風も強い。強風を叩きつけられる窓ガラスはミシミシと悲鳴を上げて
いる。
 「…………………………さむっ」
 呑気に寝ていた凍夜も寒気に目を覚ます。布団を蹴っ飛ばして身体を出しているから寒いのかと勘違いを
するが、首から下はちゃんと布団に包まれており露出している肌は顔だけ。
 「ふぁあ〜〜……今何時だ?…………まだ余裕じゃん……寝よ」
 知人の家だろうが関係ない。眠いものは眠いのだ。たとえもう起きた方が良い時間だとしても眠ければ寝
る。修学旅行では教師の放送で起きるのではなく、同じ班の人間に起される凍夜は睡眠に関してはマイペー
スだ。
 「……………………アレ?」
 の○太君のように寝るのが早い凍夜は二度寝など0.5秒あれば夢の世界に旅立てるのだが、今日に限っ
て目蓋が閉じない。しかも背筋に悪寒がゾゾゾと走る。
 すっかり眠気が抜けてしまった凍夜は水を飲もうとベッドから出てスリッパに足を入れた。今まで暖かい
布団に包まれていたからか、冷えたスリッパは足を伝い脳に刺激を与える。
 扉の向こうで何が起こっているか知らない凍夜は寝起きの目を擦りながらドアノブに手を伸ばし、開けた
瞬間、ほんの瞬間。数cmのわずかな隙間から濁った空気が勢い良く身体に当たる。その風は凍夜の身をす
り抜けるのと同時に睡魔を吹き飛ばし、どんよりと部屋一面に広がった。
 驚いた凍夜はすぐに扉を閉め、自分の目を疑うように瞳を擦る。ドアという一枚の壁越しに広がっている
戦場の存在にはまだ凍夜は気付いておらず、その戦に出兵している玲奈らも凍夜が起きていることは知らな
ずに不吉オーラを出している。
 「あのバカは私がちゃんと起すから2人は部屋に戻って!」
 「いーや、有澄には任せられない!ここは私が行く!」
 「ダメダメッ。どうせ2人じゃ凍夜君を満足に起せないよ。私が凍夜君を華麗なるテクニックで優しくあ
だるてぃーに……」
 まだ男性経験がないわりにファッション雑誌から仕入れているアッチの知識は、数学の公式や英単語より
多い菜月と比べ玲奈と緋莉はあまり詳しくない。一応興味はあるが羞恥心が大きくそういったページをまと
もに見れない。
 もちろん今も菜月の冗談にさえも顔を赤くさせるという過剰な反応を示している。
 「いや、そこはツッコんでほしかったんだけど……」
 2人が先ほどまでの勢いを減速というより、ブレーキを踏んで停止してしまい赤く俯いているのを見て菜
月もなんだか恥ずかしくなってきた。
 「と、とにかく!凍夜は私が蹴りでもなんでもして起すから安心して菜月たちは部屋に戻ってっ!」
 (えっ……俺蹴られるの?何故に?何で?つーか、もう起きてるんだけど……)
 その標的はすでに目を覚ましてドア一枚挟んだすぐそこにいることにはまだ気付いていない。
108Slowly×Slowly:2008/03/09(日) 23:01:30 ID:Y/Y/OtWj
 (いっそのこと俺から廊下に出た方がいいかな……?でもそしたら文句言われそうだしなぁ。「何勝手に
起きてんのよ!空気ぐらい読みなさいよ、ばかっ!」みたいな?)
 そこでうだうだと悩んでいたのが間違いだった。すぐにベッドに戻り狸寝入りでもしていればやり過ごす
ことができただろう。

 玲奈がドアを開けた。

 躊躇せず勢い良く開けたのだがその目の前にいた凍夜には空気に舞い上がる塵も、玲奈のサラサラと靡く
髪の毛も、目と目が合い驚いて開かれる瞳も、口も、スローモーションに感じた。
 とても気まずい空気が流れる。女子3人は先ほどまでの会話全てが聞かれていたのかと思い、口を開いた
まま赤面して「あう、あわわ」などと情けない声を出す。
 「ぐ、ぐっもーにん……なんつって」
 「アンタ……グッモーニンじゃないわよ……いつから起きてたの?」
 玲奈は怒りを沸々と表し凍夜に詰め寄る。右手をグーにして。
 「え〜っと……凍夜君大好き!結婚してぇん、はぁとぐらいから」
 玲奈は黙ったまま凍夜の胸ぐらを掴み、緋莉に負けず劣らずの右ジャブ→ジャブ→ストレート→裏拳の4
コンボを繰り出そうとしたが
 「ちょっ!?おまっ、待て!冗談、ジョーダンだって!」
 必死になって謝るので止めた。
 しかし眉間に寄せる皺は戻さずに凍夜を威嚇している。
 「で?実際のところどこから聞いていたんだ?」
 緋莉も詰め寄りプレッシャーを加える中、菜月は1人頬をぽりぽりと掻きながらうわあ、こりゃヤバイな
ぁなどと思っていた。所詮殴られるのは自分ではなく他人なので余裕を持っての高みの見物。
 「え〜と……言わなきゃダメ?」
 「イヤなら言わなくてもいいわよ。ただそうすると、どこからともなく拳が飛んできますけど?」
 「強制っすか……」
 「どうする?答える?それとも……」
 圧力に屈した凍夜は意を決して口を開くことにした。正直に答えても拳は飛んできそうだが。
 「なんつーか、誰が俺を起すか揉めてたとこから、かな。具体的には菜月がadlutで優しく起してく
れるとか……期待していいですか?菜月さん」
 「や、ヤダなー凍夜君。あんなの冗談だって、期待なんてしないでよぅ」
 まさかあの馬鹿げた会話が意中の相手に聞かれていたなんて思わなかった菜月は、両手をパタパタと振っ
て顔の熱を冷ます。
 だが彼女の身体から熱はすぐに引いてくれない。それどころか玲奈、緋利にも移ってしまったのか顔が十
分なほどに熟れている。
 「なぁ、玲奈。正直に話したんだからもう離してくんない?」
 「…………ダメよ」
 「which!?」
 「……だって聞いちゃったんでしょ……?あんな会話聞かれたなんて恥ずかしいもの……ゴメンね凍夜。
お願いだから……死んでっ!!!」
109Slowly×Slowly:2008/03/09(日) 23:02:15 ID:Y/Y/OtWj
 腹の底から出された台詞は女の子には似合わないモノ。
 死んでなんて使われる覚えなどないのに!そんな思いを込めての
 w=ワテがなぜ死ななきゃアカン!?
 h=人が折角正直に言ったのに!
 i=一体俺が何をしてってんだ!
 c=違うだろ!?
 h=フツーに考えて悪いのはあんなとこで話してたお前らだろ!!
 だった……のだが
 「凍夜、whichの意味は“どっち”だ。ここではwhy(なぜ)が正しい。あと発音がおかしいぞ」
 使う英単語を思いっきり間違えていた。
 「そんなのどーでもいいっ!緋莉、頼むから玲奈をなんとかしてくれよ!!」
 住宅地なら迷惑極まりないほどの大声を上げて助けを求めるが緋利は首を横に振る。そして絶望を与える
かのごとく、地を這うような声を出した。
 「残念だが凍夜、私もできればあの会話を忘れてほしい。だからすまない。悪いが星になってくれ」
 正直者は馬鹿を見る、とはまさにこのことか。求められた答えを言ったら責められた。じゃあ嘘を吐いた
ら?あの状況下で嘘なんて吐けるか。確実に死亡エンドだ。正解なんてなかった。嘘を吐いても馬鹿正直に
答えても殴られるのには変わらないらしい。
 意を決した、と言えば聞こえはいいが実際のところ“諦めた”と言った方が正しいだろうか。目を力強く
閉じ思い浮かべるのは青い春。
 (せめて童貞を捨てたかった……!)
 などある種余裕ある考え。ただこんなことを口にしていたらもっと酷いことになるだろう。
 「バイバイ……凍夜」
 「さよならだ……凍夜」
 2人が同時に別れを告げ同時に拳を振り下ろした。躊躇うこともなく。
 その瞬間だった。
 〜〜〜〜〜〜♪
 この場に不似合いなクラッシク音楽の着信メロディが流れた。天の助けがあってか凍夜に振り下ろされた
2つの拳は彼の頭上、髪の毛に触れるところで止まり、凍夜はほっとため息を吐きながら力強く閉じた目を
開ける。
 この場の空気を壊した音楽の出所は緋莉のポケットからで、彼女は聞き慣れた曲を流すKY(クズ野朗)
と話すべく通話ボタンを押した。
 「………………もしもし」
 100人中100人が彼女は不機嫌だと言い切れるほどの声とこめかみから血管を浮き立たせ通話のKY
(かなり、ヤバイ人)を威嚇する。だがそんなもの浩二に通用するわけない。
 「ぐっもーーーーにん!!!あかりん!!はーわーゆー!?あいむ、ふぁいん!Oh、いえすいえす!」
 などと朝っぱらから薬中のようなハイテンションで実の娘の血管を増幅させる。無駄に元気良く話すため
周りにいる凍夜たちの耳にはもちろん声が届くわけで
 (うわぁ、朝からテンション高っ。つーかキモっ)
 と、自分の評価を下げてしまう。
 「何のようだ馬鹿親父…………?」
110Slowly×Slowly:2008/03/09(日) 23:02:42 ID:Y/Y/OtWj
 「朝から馬鹿親父だなんてパパ…………ゾクゾクしちゃう(はぁと」
 ピキピキピキと緋莉のこめかみにまた1つ血管が現れ、携帯電話を握る手は力を解放しすぎてコントロー
ルできないのか小刻みに震えている。殴りたくて仕方ないのであろう、実の父を。
 表情も女らしい顔を残しつつ鬼の形相になって周りを怯えさせる。その証拠に
 「これ以上下らないことを言うならばキルぞ」
 (((その『キル』は電話を“切る”と“KILL”のどっちだーーーっ!!)))
 『キル』の一言でこんなにもリアクションを取ってしまう。
 先ほどまで凍夜を亡き者にしようとした玲奈さえもこんなに驚いて、3人仲良く緋莉から距離を取り肩を
抱き寄せながらビクビク怯えた。
 「ヤダなぁ緋莉。私はお祝いを言うために電話したんだよ」
 「お祝い?」
 「あぁそうだ」
 緋莉はその意味が解らず首を傾げた。凍夜たちも身を寄せつつそのお祝いのことが気になり、耳を再度電
話の方に傾ける。
 「お祝いって一体何だ?祝われることなど何もないぞ」
 通話口から浩二の咳払いが聞こえ、部屋の空気が一瞬張り付いた。
 「お祝い……というのはな……」
 ゴクリとその場にいた全員が息を呑む。
 「緋莉が真の女性になったってことだ!!!」
 「……は?」
 意味が解らない。私は元から女だ。何を今更。ついに脳が腐ったか、やれやれ。などと思う緋莉。凍夜た
ちもサッパリで頭にクエスチョンマークを描く。もう5月だもんな。頭の中にも花が咲いてお花畑になって
もおかしくないか、あの人の場合。
 「は?って緋莉、昨夜凍夜君とベッドの上でイチャイチャ、にゃんにゃんしたんだろ?」
 「ぬぁ!?」
 立て続けの予想外な言葉に驚き顔が赤くなる。
 もちろん浩二の声は凍夜の耳にまで届いており先ほどまで願っていた事実無根発言に声を失い、玲奈は何
がなんだか解らずにパニくり、菜月は羨ましそうに指を咥え緋莉を見つめていた。
 「えっ!?嘘よね凍夜!凍夜が緋莉と昨日の夜……その……い、イチャイチャしてたなんて。私絶対認め
ないからねっ!」
 「信じていいんだよね!?凍夜君ならちゃんと私を誘ってくれるもんね!?」
 「何もしてねーよ!そして誘わねーよ!」
 「ぶーぶー」
 大声で騒いでいるので浩二の方にも聞こえているはずなんだが
 「男は初めてだろうがなんだろうが痛くはないんだが……」
 フィルターが体内に備わっているのか、それとも自分の世界に浸かりすぎて何も聞こえないのか凍夜の声
は届かない。
 「女性の初体験はとても痛い。私は男だからどれほど痛いか解らないがまぁ少し安静すれば大丈夫だろ。
ようやく緋莉も女になって父さん嬉しいよ。」
 あなたが死体になってくれると私も嬉しい。
111Slowly×Slowly:2008/03/09(日) 23:03:11 ID:Y/Y/OtWj
 「もちろん出産費用は払うから安心しなさい」
 私はあなたの脳内がちゃんと作動しているか心配です。
 「お前は由香里似だから結構性格が変わるんだろうな、ベッドの上なら。いやぁアイツは飽きるほど求め
るから一回や二回で終わった例(ためし)がない。知ってるか?由香里の初めての男って実は……私なんだ
なあ〜HAHAHA」
 子供の聞きたくない話No1の親の性生活を雄弁に語る浩二。
 緋莉その逆で怒りからか恥ずかしさからか俯いたまま。
 「そうだ緋莉、緋莉は弟と妹どっちが欲しい?まぁ別に両方でも構わないんだがなHAHAHA」
 パキッと携帯電話の側面に亀裂が入る。
 もう聞くに聞けなくなった緋莉は携帯電話を凍夜にポイっと渡し部屋のドアに手を掛けた。
 「おい!緋莉どこ行くんだ!?っていうかこれどうすりゃいいんだ!?」
 「……聞いていれば解る」
 「聞くって何を……って……行っちゃった」
 どうすんだよこれ、と思いながら携帯電話を眺める凍夜。その電話からは未だに浩二の声が聞こえ、3人
のストレスを無駄に溜める。
 だがそれも束の間、
 「いやな、緋莉。先日なんて由香里がな……って。アレ?何で緋莉がここにいるんだ?」
 「「「えっ!?」」」
 電話口からありえないセリフが出て来た。なんと緋莉は瞬間移動が出来たのです!!ってか?バーロー。
普通じゃねーよ。
 そう頭の隅で考えながら電話のディスプレイを凝視する。そこには『河原 浩二』と通話時間しか映って
いない。だが凍夜たちは画面に穴が開くかのごとく眼に力を入れて凝視する。
 「まさか……緋莉、お前……私の武勇伝(もちろん性的な意味で)が直接聞きたくなったのか〜。アッハ
ッハッハッハ!!だったら瞬間移動が出来て当然だな!!!」
 「全然当然じゃないですよ、緋莉パパ……」
 菜月がツッコんだ。
 「そうだな〜……じゃあ取って置きの話をしてやろう!!アレは私が大学生のときだったんだが」
 「……………………………………………………………………………………黙って……………………死ね」
 「それは夏のぶぐふぅ!!!?」
 緋莉の鉄をも壊してしまうほどの拳が空を切り裂き、浩二の右頬にぶち当たり『ゴキッ』と鈍い音を上げ
る。緋莉のバトルフェイズは右ストレート一発で終わらない。
 立ち上がろうとする浩二の顎を下から蹴り上げ、浮かぶ身体の鳩尾めがけ格闘技選手顔負けの拳とキック
の乱れ打ち。連打が目にも留まらぬ速さのためか身体が1mm落ちることなく一定の高さを保っている。
 「ゴフガハッドッッグリュッヘバッ!!!!!」
 床に落ちた携帯電話を通じて凍夜が持つ緋莉の携帯電話から浩二の断末魔が部屋に響く。
 「緋莉止めて!!緋莉パパのライフはもうゼロよっ!!」
 菜月の声が届いたのか、それとも緋莉の気が済んだのかターンエンド宣告代わりの止めの一発が浩二の顔
面にクリティカルヒット。
 「グフッ…………あかり…………もっと、お願いしま」
 ドカッッ!!
 余計な一言でターンエンドがデュエル終了になった。
 緋莉の打撃音が両方の部屋に轟き凍夜たちは身体を震わせ、緋莉は恥ずかしさと怒りや興奮で顔を赤くさ
せ、浩二は満面の笑みで倒れた……どう見ても救いようがありません、本当にありがとうございました。
112でぃすぱ ◆g5uZET9koI :2008/03/09(日) 23:07:04 ID:Y/Y/OtWj
以上でSlowly×Slowly第8話終了です。読んでいただきありがとうございました。
次回でまたお会いしましょう。それではノシ
113名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 05:01:40 ID:wrfTbDsr
俺さぁ…最近このスレに癒しを求めに来てるんだ……

何が言いたいかというとGJ。今回は一番笑いましたww
114名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 21:51:12 ID:ESj9Ohkz
保守

あと>>113。癒しを求めるとは………

リアルでツンデレに冷たくされたのか?
115名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 23:21:07 ID:nWLaLzTC
>>112
GJ!浩二パパにワロタwww
暴力的に平和ですなしかし
116□ボ ◆JypZpjo0ig :2008/03/14(金) 01:39:28 ID:mYpH4oVI
お久しぶりです
取り敢えず新作です
今回は本文8レス投下、全13話です
117セミの抜け殻:2008/03/14(金) 01:40:31 ID:mYpH4oVI
 誰にも止められないものがある。
 誰にも断ち切れないものがある。
 誰にも分からないものがある。
 それは理不尽な瞬間にやってきて、理不尽なままに進んでいって、理不尽なままに全て
包み込み終わらせてしまう。それは誰にも分からないから勝手に進んでしまうし、誰にも
断ち切れないから膨らんでいくし、誰にも止められないから終わってしまう。
 理不尽だ、と少年は思った。
 少女も理不尽だと思ったし、誰もが理不尽だと愚痴を溢してしまう。
 だが全員の顔に最後に浮かんだのは「仕方ない」という笑みで、その笑みに囲まれ少年
は少女の手を取って駆けだすのだ。目的地も無いし目的すら無い、それでも少年は少女と
駆けださずにはいられなかった。
 それを背後から数人の影が追いかけてきて、その足音に少女は振り返った。
「居ないわね」
 何かを探すように少女は数度視線を巡らせ、そして気が付いたように目を丸くした。
 少年に手を握られたままの少女の視線の先、隠れるように大木に寄り添い、もう一人の
少女が立っていた。その少女の、安物の指輪が填められている右の掌の中。握られていた
紙が風に吹かれて宙に舞った。
「ねぇ」
「分かってる」
 分かっているから、だから走るんだ。
 そう少年は告げ、少女の掌を握る力を強くした。
 風が吹く。秋の到来を告げる、残暑を僅かに持った風が。
 少女は笑みを浮かべ、風の速度に負けぬよう加速した少年に合わせて自らも加速する。
 少年に引っ張られている、という状態だった少女は並び、やがて少女が少年の手を引く
形へとなった。背後の集団と距離が開いて、やがて振り返っても、もう一人の少女の姿も
確認出来ない距離になった。
 しかし二人の疾走は止まらない。
「馬鹿みたい」
 少女の言葉に少年が笑うと、少女は急に足を止めた。
 驚き、少し遅れて足を止めた少年に、少女は力の無い拳を打ち込んだ。
「どうしてアンタを選んだんだろ、世の中には男なんて三十億人も居るのに」
「人を見る目が無かったんだな。よりにもよって、俺なんてな」
「馬鹿みたい」
 少女はそっぽを向いて、もう一度呟いた。
 しかし今度は、口元に小さな笑みを浮かべながら。
118セミの抜け殻:2008/03/14(金) 01:41:37 ID:mYpH4oVI
♢ ♢ ♢

「難儀な奴じゃのう、お主も」
 ゴールデンウィークが明けてから早二週間。例年より少し早めと予想されている梅雨や
間近になってきた中間テストの事を考えていたが、その声に蝉彦は思考を中断させられた。
視線を上に向ければ美女と呼べる外見の、しかしながら性別は男であるという奇妙な親友、
葵の姿がある。彼はスカートの裾を揺らしながら蝉彦の机に腰掛けると、はぁ、とわざと
らしく溜息を吐いた。そして購買で買ってきたパンの包みを開くと、既に昼食を開始して
いた亀彦に少し遅れる形で昼食を開始する。
 何が難儀なのか、親友の言葉の示すものは亀彦自身が一番分かっている。
 昨日の放課後の事だ。
葵と帰宅していた途中、不良に絡まれている女子を見た。それだけならば蝉彦自身には
危害が及ぶものではないが、しかし絡まれていたのがクラス委員長であったことと、蝉彦
が人並み外れて世話焼きであること。それが「難儀な奴」と葵に言われたことの原因だ。
 不良を殴り倒し、委員長を救ったまでは良かったが、それからが問題だった。
 委員長は「最低」と、そう一言を残して帰ったのだ。しかも運悪く喧嘩の様子を教師に
見られていて、停学寸前にまでなった。人を助けるという大義名分が有ったとは言え不良
と喧嘩をしていたのは事実だし、何よりも助けられた委員長自身の姿が存在しないのだ。
葵と周囲で見ていた通行人のフォローに助けられる形になったが、もしそれが無かったら
今は自宅で昼食の準備をしていたところだ。
 だが「難儀な奴」と言われる最大の原因は、その際に蝉彦が何の弁明もせずに教師から
言われるままになっていたことだ。
 昔から、だ。
 幼い頃はまだ色々と意見を言う人間だった、と蝉彦は記憶している。だが現在は、意見
を言うことが極端に少なくなっている。口数が少ない訳ではないが、他人の意見に対して
自らの意見を言う機会が極端に少ないのだ。何かを言いたくなることはあるが、その際に
自分を殺す癖のようなものがある。一人分の意見が減れば、その分だけ話が円滑に進むと、
そう思考してしまい、結果意見を言わなくなる。良く言えば大人しいタイプ、悪く言えば
引っ込み思案や事なかれ主義というものだ。
 いつからだろうか、と考えていると、舌打ちの音が聞こえた。
「委員長の奴、随分と良い身分じゃのう。能天気に笑いくさってからに」
「良いさ、俺が黙れば済む話だ」
 再び舌打ちの音。
「儂には意見を言うのに、何で奴には言わんのじゃ」
 葵が顎の先で示した先、そこに視線を向ければ昨日とは正反対の表情を浮かべた委員長
の姿や、幼馴染みである八重の姿が見えた。手作りの弁当のおかずを交換し合ったりする
姿は微笑ましいと思うが、葵の表情はそれに対して険しいものだ。
119セミの抜け殻:2008/03/14(金) 01:42:12 ID:mYpH4oVI
「あんなのと幼馴染みというのも厳しい話じゃしのう、本当に難儀な奴じゃ」
 声に反応したのだろうか、二人はこちらを向き、しかしすぐにそっぽを向いた。
「あの腐れビッチ共が」
「そう言うなよ、二人とも善人だ」
「助けられて礼を言わんのは悪人じゃ」
 上手いフォローが思い付かず、蝉彦は黙り込んだ。
 だが悪人ではない、と思う。
例えば委員長は確かに例も言わずに立ち去ったが、その際に告げられた「最低」という
言葉の意味を考えれば、納得出来る理由は見付かる。「最低」という言葉が出てきたときに
委員長の視線が向いていたのは、彼女に絡んでいた不良と殴りあったときに付いたらしい
返り血だった。シャツを点々と染めた血を見て嫌悪感を抱かない者は多くないし、真面目
という言葉がそのまま当て嵌まるような委員長だったら、それは確実だ。今にして思えば
殴り合いなどをしなくてももっと平和な解決方法は有っただろうと思えるし、それが彼女
の機嫌を酷く損なった原因になったのだと理解出来る。どこまでも真っ直ぐなのだろうと、
そう蝉彦は思った。もしかしたら彼女は真っ直ぐ過ぎる性格故に不良に注意などをして、
それが原因で襲われそうになったのかもしれない。自業自得とは思わない、彼女の長所故
の不幸な事故のような出来事だと思う。
 そして幼馴染みである八重も、悪人ではない。多少乱暴な部分はあるが、それは自分と
舞鶴の気の置けない関係からのものだと蝉彦は思っている。中学に入って男子のグループ
が出来上がるまでは常に一緒にいたし、現在でも異性の中では昔から変わらず一番の友達
だと思っている。小学生であった頃の時代に比べると確かに付き合いは格段に減ったし、
一緒に下校したことなど中学に入ってから高校二年生となった現在までの四年間、一度も
していない。素っ気ない部分は多く、減った付き合いの中でも喧嘩をする割合などは葵を
ダブルスコアで抜く程だ。今朝も隣接している部屋の窓越しに喧嘩をしてきた。傍目から
見れば険悪とすら見えるような、そんな状態になっても、しかし嫌いにならないのは八重
が悪人ではないからだと蝉彦は思う。
 何気なく自分の掌を見て、思い出すのは保育園に通っていた頃のことだ。
 八重と二人で公園の砂場で遊んでいた時に、野良犬が迷い込んできた。学校でも注意を
呼びかけていたが、いざ見付かってしまえば子供の足で逃げ切れるものではない。二人は
必死に逃げたが最終的に追い付かれ、蝉彦は右の掌に七針も縫う傷を負った。その傷跡は
今でも蝉彦の掌にしっかりと残っている。 
「覚えているだろうか?」
 問う訳でもなく呟くと、葵がこちらを向いた。
「何じゃ?」
 何でもない、と応え、そして蝉彦は中断していた昼食を再開した。
120セミの抜け殻:2008/03/14(金) 01:43:09 ID:mYpH4oVI
♢ ♢ ♢

「そこの不良、ちょっと止まりなさい」
 委員長の声を聞いて一旦足を止めかけたが、少し考えて蝉彦は歩みを再開した。確かに
他校生や不良連中との殴り合いになることは多いが、それは趣味や歪んだ精神から行うも
のではなく、飽くまでも純粋な人助けの過程に起きてしまい、仕方なく行っているものだ。
だから自分は不良ではない、そう結論して教室を出る。しかし他人に暴力を振るうことは
確かに良いものではないし、これからは殴るのを控えめにしようと考える。
 その他にも今日の夕食は何にしようかと考え、取り敢えず家族のリクエストを募ろうと
携帯を開いた瞬間、いきなり背後から襟首を掴まれた。先に授業が終わった姉か妹が来て
いたのだろうかと首だけ捻って背後を確認すれば、僅か数十cmの距離で委員長の双眸が
こちらを睨んでいた。
「もう不良の相手は終わったのか?」
 それにしては背後から声が聞こえてこなかったが、どのような方法で不良と会話をして
いたのかと考える。何故か不良と手話で会話をしている委員長の姿が思い浮かび、思わず
目を逸らしてしまった。目を逸らしたら負けだと理解をしているが、あまりにもシュール
な姿なので直視が出来ない。
「何? 急に吹き出して、人をバカにしているの? それに不良は貴方のことよ」
「俺は不良じゃねぇよ」
「人を殴って黙らせるのは悪人よ」
 昨日のことを指しているのだろう、委員長の視線は空いた左手で脇腹辺りを軽く打った。
そこは昨日、不良が倒れ込んできた際に大量の返り血が付着した場所だ。普段ならばその
言葉一つで黙り込んでいるところだが、しかし何故か反抗心のようなものが湧き上がって
くるのを感じた。言い返したくなる、と言うより、先ほど既に「俺は不良じゃねぇよ」と
言い返している。それだけでも言った本人としては驚くものだが、口は既に次の思考を声
として吐き出している。
「なら世界各国の軍人はどうなる? 国家で悪を認めているということになるぞ」
「あれは需要があるからだし、仮に悪だとしても必要悪でしょ? でも高校生の身分では
悪なんて必要ないわ。殴って黙らせるなんて間違ってる」
「正しい言葉だけじゃ世界は回らないし、委員長も今日登校出来たか分からないぞ?」
 言うと、反論は来なかったが更に鋭い目付きで睨まれた。
「……付いてきて」
 どうしようか、と考え、
「早くしなさい」
 蝉彦は仕方なく委員長を追いかけることにした。

121セミの抜け殻:2008/03/14(金) 01:43:45 ID:mYpH4oVI
♢ ♢ ♢

委員長に言われるままに付いていき、学食に入って席に着くと目の前にガラス製の容器
を差し出された。中に盛られているのは織浜第二高学食の裏メニューであり、同時に一番
の名物でもある太平洋式パスタパフェ、通称P3だ。容器の下方の部分では通常のパフェの
ようにコーンフレークや生クリームが層を作っているが問題は上の部分だ。通常はアイス
などが置かれる部分には冷えたパスタ麺が乗っており、その上、フルーツが置かれる部分
には大量の海鮮がトッピングされている。特に腹が立つのは頂点に乗せられたチェリーの
代わりのイカの塩辛だ、好物が一つ減った。甘い香りと磯独特の臭気が混ざりあったもの
が漂い、それから顔ごと目を背ける。
 これは何の嫌がらせだろう、確かに昨日の事は不味かったと思うが、それにしてもこれ
は幾ら何でも酷過ぎるのではないだろうか。そう恨みのゲージを溜めながら委員長の方を
向いてみれば、頬杖を付き体ごとそっぽを向いていた。
「勘違いして欲しくないから先に言っておくけど」
 ぼそり、と呟く声がする。
「これは昨日のお礼よ、別に好意とかじゃないから」
 好意ではないのはメニューを見れば分かるが、しかし何故これを頼んだのだろうか、と
小さな疑問が浮かぶ。「お礼」ではなく「お礼参り」というい言葉が頭に浮かんできた。
「今日、自分の手を見ていたでしょう。昨日、不良を殴っていた手を。手を傷めたのかと
思ってP3をチョイスしてあげたんだから感謝しなさいよ、タンパク質と炭水化物、糖分と
塩分を同時に摂取できるわ」
確かに体を癒すのには必要だが、それを同時に摂取する必要があるのだろうか。せめて
これよりも安いもので良いから、定食など味のバランスの良いものを選んで欲しかったと
思いつつ先割れスプーンで容器の中身を掬う。海鮮パスタの一部に生クリームが絡み付き、
思わず視界がぼやけてしまった。
「委員長よ、昨日」
 何でわざわざ不良に絡まれるようなことをしたんだ。
 別に理由に興味がある訳ではないが、少しでも口の中に広がる不快感を消す為と、沈黙
の気不味さに問いかけた。答えは期待していないので一口目を無理やり水で流し込んで、
勇気を持って二口目に取り掛かる。幸いなことに量はあまり多くはないので、ギリギリで
完食は出来そうだ。食べ物は粗末にしてはいけない、例えどんなグロ物でもだ。
 二口目を飲み込んだ辺りで、委員長は顔をこちらに向けてきた。
 染めも脱色もしていない黒い髪が風で僅かに揺れ、化粧っ気のない、だが透き通る程に
白い頬を一瞬覆い隠した。
122セミの抜け殻:2008/03/14(金) 01:44:38 ID:mYpH4oVI
「嫌いだからよ、争いが。貴方の言った通り綺麗事じゃ世界は回らないわ。実際、争いが
嫌いと言った私も、不良と争うわ。でも私と不良が争い、その結果不良が大人しくなれば、
その後に起きるもっと沢山の争いが消えるかもしれないでしょう?」
 それと、と委員長は目を細め、
「委員長は止めて。その呼び方はあまり好きじゃないし、私には親が付けてくれた「縁」
という立派な名前があるわ。だから、今度からそちらの名前で呼んで頂戴」
 一瞬言葉に詰まり、パスタが喉に詰まった。手を伸ばして視界にあったグラスを掴み、
一気に飲み干すと楽になる。口の中の奇妙な味が一緒に流れていったのは思わぬ幸運だ。
 そして僅かに残る涙で滲んだ視界には、大きく目を見開いた縁の顔がある。何故だろう
と首を捻れば自分の手元にはまだ水が幾らか残っているグラスがあり、自分が先程飲んだ
ものは縁のものだったと理解した。
「すまん、今汲んでくる」
 P3も残り少なくなってきているとはいえ、これから先に水がなしという状況は中々結構
辛いものがある。自分の水も少なくなってきているし、両手にグラスを持って席を立つ。
 ちらりとだけ縁の方に振り替えると、見えるのは目を見開いたままの顔だ。たかが水と
言えども、勝手な行動だったと蝉彦は少し後悔した。温厚な自分でも、切羽詰まっている
とはいえ、されると少し腹が立つ行動だ。あまり親しくない者が勝手にものを取るという
行動は、縁にとってそれだけ信じられない出来事だったのだろう。
 それに続いて思い出すのは、縁の言葉だ。
「必要悪か」
 必要悪など必要ないと言いながら、しかし必要悪を行っていると縁は言った。その矛盾
が示すものは何だろうか、と蝉丸は考える。
 もう一度振り返る。
 校則に触れないよう、セミロングの黒髪をポニーテールにしている。今日に限らず化粧
をしていることなど見たことはないし、制服も改造などしていない。寸法も定規で測った
ようにきっちりとしていて、上着のブレザーはどんなに激しく動いたとしても揺れること
すらないだろうと思える程だ。スカートも八重は丈を詰めているが、縁はそれすらせず、
膝が隠れるような長さのものを履いている。いくら真面目な性格とはいえ、蝉彦の知って
いる人物の中でここまでしているのは縁くらいのものだ。
 その要素も加えて矛盾の意味を考え、
「分からん。非暴力主義や無抵抗、とは違うしなぁ」
 考えるのを止め、水を汲んで戻ると縁も元に戻っていた。
「ねぇ、貴方にお願いがあるのだけど」
「何だ、まだ何かあるのか?」
「またとは何よ。それより貴方、私と……」
 それは消え入りそうな声だったが、しかし、はっきりと聞こえるものだった。

123セミの抜け殻:2008/03/14(金) 01:45:15 ID:mYpH4oVI
♢ ♢ ♢

 忘れ物を取りに行こうと教室に戻ると、小柄な人影が見えた。中間テストが迫っている
今の時期、この時間まで教室に残るようなクラスメイトは居ない。姉は背が高いし、妹は
先に帰っているとメールを寄越してきている。ならば誰だろうか、と教室に一歩踏み込み、
そして蝉彦は首をかしげた。
 平均よりも少し低い身長に、足首まで流れる色素の薄い髪。
 校庭の樹木の葉が擦れる音が響き、少し遅れて開け放した窓から強い風が入ってくる。
 八重の長い髪が揺れ、横顔が確認できた。
 視線は遠くに向けられていて、方角でいえば自分たちの家があるものだ。
「何してんだ、こんな時間まで」
「アンタには関係のないこと」
 今まで何度も聞いてきた言葉だが、何故か胸の辺りに小さな痛みのようなものが走った
ような気がした。八重に見える筈はないが、しかし顔に出ないように気を付けて、蝉丸は
一歩進むという行為をした。体に馴染んだ感覚で言えば自分の席、窓際まではその七倍、
七歩の距離で辿り着く。大した労力の要らない距離だ、意識をするまでも無い。
「アンタさ、今日の昼休み」
「アンタじゃない、俺には親が付けてくれた「蝉彦」という立派な名前がある」
 幼馴染みなので言うまでも無い、既に知り尽くしていることだ。だが蝉彦のその言葉に、
八重は振り返った。逆行が強く表情は確認出来ないが、その代わりとでも言うように、は、
と吐息を吐く声がはっきりと聞こえてくる。
 沈黙。
 八重が歩を進めぬ蝉彦の代わりに歩みを開始して、手に持ったものを突き出してきた。
見れば持って帰ろうとして忘れていたノートで、軽く礼を言って蝉彦はそれを受け取った。
鞄を開き、しまおうと身を屈めると、頭上から二度目の吐息が聞こえてくる。
「縁と会ってたんだ」
 後ろめたいことなど何もない筈なのに、鼓動が跳ね上がる。
「さっきのヤツ、縁のパクリでしょ? それ、アタシも最初に言われたし」
「昨日の礼だとさ。お前も多分聞いたと思うが、昨日縁に絡んでた不良から助けてやった」
 沈黙。
 時計の針が動く音が響き、呼吸音すらも打ち消してゆく。それなのに心臓の音がやけに
大きく響いているような気がして、蝉彦は一歩後退した。
「それより、さっきの話だが何だ? 昼休み?」
「……昼休み、手、見てたでしょ?」
 見られていたか、と小さく舌打ちを一つ。見せるつもりはなかったし、寧ろ見られない
ようにしていた筈だった。こんなことで人に気を遣わせるのは、それも現場に居た八重に
気遣いをさせるのは、蝉彦が一番嫌うことだ。
124セミの抜け殻:2008/03/14(金) 01:46:01 ID:mYpH4oVI
「痛い?」
 労わりや怯えに似たものを僅かに含んだ声に、目を背け、背を向けて一歩。
「痛くないし、跡が残っているとはいえ傷自体は完治した。もう過去の事だ」
 昼休みに思い出したとはいえ、それは本当に蝉彦の中では過去になっている。痛みも、
涙も、辛さも苦しさも後悔も、既に解決している。今日のこととて、本当に何気なく見た
だけのことだ。それをしなかったら思い出すことも無かっただろうし、これからも誰かに
聞かれるまでは思い出したり話したりすることも無いだろうと思う。だから気にすること
じゃない、と、そう言うように歩みを加速する。
 しかし、それを引き留めるものがあった。
 背後で強い踏み込みの音がして、一瞬の後には目の前に八重が来た。
「だったら何で逃げるのよ?」
「逃げてねぇよ、お前こそ妙な事を言うな。気にすることじゃない」
「気にしてないわよ、アンタのことなんか」
 だったら、と言いかけ、熱くなっている自分に気が付いて呼吸を整える。こんなことを
言っていたら気にしていると自分で言うようなものだし、あまり我を出してはいけないと
冷静な部分が告げてくる。だから昔、あんなことになったのだと。
蝉彦の黙り込む様子を見て、八重も黙りこんだ。
情けない、と吐息をして苦笑を浮かべ、歩き始めると、隣に八重が並んできた。
「意気地なし、弾で黙るのよ? 蝉は元気に鳴くもんでしょうが」
 あ、それと、と八重は蝉彦の顔を見上げ、
「アンタ、いつの間に委員長から縁に呼び方変えた訳?」
 喧嘩腰な喋り方も不満そうな顔をしながらなのも、それはいつもと同じなので構わない。
それにしても良く喋る、と思いながらも、蝉彦は少しだけ歩く速度を落とす。保育園時代
から蝉彦の方が歩く速度が速く、こうして落とすのが日常だった。そして速度を落とせば
少し懐かしくなる。一緒に歩くのは久々だが、昔も今も変わっていない。
 下駄箱にた辿り着き、靴を履こうと身を屈めると、低くなった視線に八重が目を合わせ
てきた。夕日が反射してるのか、やけに赤く見える。
「ねぇ、蝉彦。久しぶりに二人で」
「あ、言い忘れてた。お前は友達だから既に縁からメールか何かで聞いていると思うけど、
俺達付き合うことになった。正に奇妙な「縁」と……何だ?」
 目を向ければ、先程までの場所に八重の姿はない。視線を巡らせれば、既に八重は靴を
履き終え歩き出したところだった。しかも普段よりも歩く速度が速い。
「何だよ、久しぶりに一緒に帰ろうぜ?」
「一人で帰る!! アンタと一緒に帰るなんて……まっぴら御免よ!!」
 言うなり、八重は駈け出した。
125□ボ ◆JypZpjo0ig :2008/03/14(金) 01:49:13 ID:mYpH4oVI
今回はこれで終わりです

今回は真面目でしたが、次回からは大体『ツルとカメ』と同じノリです
各話完結ではありません
126名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 01:52:33 ID:9XYKMIYw
しかくぼさん久しぶりGJ
言っておくが、葵は俺の嫁だッ!
127名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 06:11:21 ID:EHxbXby6
GJ!!
ところで今保管庫でツルカメを読み直してきたんだが、
エニシ先生と委員長は同一人物なのか?
128名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 08:13:53 ID:4dsk07Ss
ツルカメ終わって結構時期経ってたんだな。なんかつい最近の事みたいだ。
そしてロボ氏GJ!今後も続きにwktkしてます。
129名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 08:14:35 ID:4dsk07Ss
ついで捕手
130名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 15:03:51 ID:jpDAnpMh
なかなか良いモン見せてもらいました
これからの展開に期待ですな
しかし、主人公が時々蝉丸だったりするのは間違いでしょうか
あと、マイナーなネタですが葵はやっぱり性別「秀吉」なんでしょうか
外見的特徴といい喋り方といい>>126の反応と良いよく似てる
131名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 21:36:01 ID:aUvLyIpO
 
132名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 06:24:57 ID:P/5eG7wP
133名無しさん@ピンキー:2008/03/23(日) 09:18:58 ID:lbrHanJK
134名無しさん@ピンキー:2008/03/24(月) 04:35:43 ID:zA7XvpOi
135名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 04:02:00 ID:7zKIr5Xq
136名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 21:17:53 ID:TSkfURDK
上のツンデレガール5人は何を怒ってるんだ?

黙ってちゃ分からないよ
137名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 22:19:18 ID:9p0ZGeny
誰もかまってくれないから怒ってるんじゃないか?
138名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 05:27:09 ID:m74JuDyo
>>137そうよ…この大馬鹿!!
139名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 07:54:01 ID:QY5x8Jnw
140名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 19:38:52 ID:4uevTg+d
………も?

「も、も、もっとSSを投下しなさいよ!!
あ、あんたのSSなんか読みたくないけど、待ってる人がいるんだから!!」

の『ら』!!
141名無しさん@ピンキー:2008/03/27(木) 01:33:15 ID:jSLu3zyB
らめぇぇぇぇぇ

142名無しさん@ピンキー:2008/03/27(木) 21:40:52 ID:T8VfrP0p
え、エッチな事考えてるんじゃないわよ!!
そ、そりゃあんたの事嫌いじゃないけど…心の準備が!!……



↓↓以下神SSが投下されます↓↓
143名無しさん@ピンキー:2008/03/28(金) 23:06:51 ID:R+tgvSxa
が、次の瞬間!!
なんと男がツンにプロポーズしたではないか!
これにはさすがのツンも嬉しさで泣き出してしまった。
焦る男、ツンはなんとも嬉しそうだ。
「あの時は本当に嬉しくて驚いてしまったわ。もう生意気な態度なんてしないわ。」(ツン:本人)
144名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 15:58:36 ID:nAKCBPIg
しかしツンデレは死ぬまで治りません。
145名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 05:22:36 ID:/EH90+FD
明日はツンデレにとって鬼門だよな。
「あ…あんたの事なんか大嫌い」→「あ…あんたの事大好きよ」と本音を暴露しなきゃいけないし
146名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 08:50:56 ID:LL+JugXXi
それなんてツンデレ機構
147名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 11:45:24 ID:Ue0oBEix
むしろ力いっぱい「だいっきらい」と言える日
148名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 12:34:45 ID:Kb6x9eDX
「あ、あんたのこと大好きなんだからねっ! あっ、誤解しないでよ!?
 今日はエイプリルフールだから、だからこんなの嘘なんだからねっ!」

こうですかわかりま(ry
149名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 18:27:19 ID:no9OV3yg
敢えて言おう。

「今日は3/31だぞ」

その一言で全国ツンデレ娘150万人はパニック状態に……
150名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 23:04:11 ID:k6fnGTO8
>>149
一昨年だかは3月32日だったんだよな。
あの日はみんなで頑張ってアンセーしてたっけ。
151でぃすぱ ◆g5uZET9koI :2008/04/01(火) 01:10:20 ID:2y00oOWP
 高校を卒業し大学の入学式まで春休みのため家でゴロゴロと暇を持て余す少年と少女が2人。
 「ねぇねぇ大変!アンタの好きなラルクアンピエルが解散だって!!」
 「なに!?マジで!!!?」
 「……プッ……クスクス……っぷは、あはははは!!!もうダメ!今日はエイプリルフールよ!ば〜か。あはははは!!」
 「何言ってんだ?お前?今日は3月32日だぞ?アタマ大丈夫か?」
 少年の言葉に騙され慌ててポケットの中にある携帯電話を取り出して確認。もちろんディスプレイには4月1日と表示されている。
 「なっ!?アンタ騙したわね!!」
 「イヤイヤ、先に吹っかけてきたのはお前だろ」
 「私はいいけどアンタはダメなの!!」
 「どういう理屈だよ、それ」
 「うっさい!アホ!バカ!アンタなんか大っ嫌い」
 「……その大嫌いは大好きって受け取っていいのか?今日はエイプリルフールだもんな」
 思わぬとこを突かれ茹蛸のように顔を赤くさせる少女。
 「違うわよ!バカ!いや違うの!そうじゃなくて本当は好きなんだけど、さっきの嫌いってのはそう意味で言ったんじゃなくて
勢いで、私の本心はもちろん好きなんだけど、ここで好きって言ったら逆になるから……あーもう意味わかんないよ!!」
 エイプリルフールのルールに混乱し頭がごっちゃになり自分の本心をさらけ出す少女。その反対に少年はニヤニヤと顔を歪ませている。
 「じゃあ今はエイプリルフールは無し!俺はお前が好き。お前の返事は?」
 「えっ……今好きって……私を?でも今日は」
 まだ混乱しているのか少女はまだ理解していない。
 「今は無効!……もう一回言うぞ?俺はお前が一番好きだ。お前は?」
 「………わたしも、すき……ううん、大好き!!」





 今日がこんな日だったらな、っていう保守。
 さよならノシ
152名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 01:50:08 ID:S8mYcS/M
>>151GJです。
一行目を読んで悲しい気分になった俺は浪人生。
153名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 07:56:11 ID:ryWjHuNe
gj
このスレほど俺をニヤニヤさせるスレはないなw

>>152
べ、別にアンタのために応援してあげてるわけじゃ…ないんだからねっ!?
154名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 10:59:23 ID:cWBSatj3
>>152
よォ兄弟、今年も頑張ろうぜ。
155ツンデレのエロパロ5スレの54 ◆223206156M :2008/04/01(火) 20:59:18 ID:055ZkAsl
よし! 今日こそ続きを書いて投稿するぞっと。
156名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 03:17:48 ID:C+rr0hJx
157名無しさん@ピンキー:2008/04/06(日) 21:42:03 ID:J21aZHT3
 
158□ボ ◆JypZpjo0ig :2008/04/06(日) 22:10:46 ID:sxcvXA0l
投下しますよ
159セミの抜け殻:2008/04/06(日) 22:12:45 ID:sxcvXA0l
「オラァ、蝉彦!! 勝負じゃぁ!!」
「ば、番長だぁ!! 番長が出たぁ!!」
 実際に番を張っている訳ではないが、しかし番長と呼ばれている少年の叫び声に蝉彦は
振り向いた。今月に入ってから幾度も繰り返されたことだ、特に気にすることでもない。
だが周囲の怯えた表情を見て蝉彦は吐息、どうしようかと考えて視線を巡らせ、そこで机
の上に乗っているものに気が付いた。織浜食品の新作ドリンクで、パッケージには『酸』
とシンプルな一文字のみが書かれている。
「よし、勝負を受けて立とう。じゃぁ、まず手の甲を出してくれ」
 素直に差し出された右手を確認すると、蝉彦はペットボトルのキャップを捻り外した。
そのままキャップに中身を満たし、手の甲に置く。
「どういうゲームじゃ?」
「おっと動くなよ、キャップの中身が零れるぞ? そうしたら、お前の袖口はジュースで
ベトベトになるぞ? その地獄を味わいたいのか?」
 く、と番長は歯を噛んだ。
「卑劣な……」
 卑劣でも何でも良い、そうでもしなければ戦場では生きていることすら出来なかった。
それに蝉彦だって困っている。番長が毎回勝負を仕掛けてくるのは単純な理由、妹が蝉彦
に惚れているから負けたら付き合えというものなのだ。絶対に嫌だ、と思う。相手は番長
と両親が違うのではないかと思う程の美少女だが、しかし性格がヤバいのだ。悪い奴では
ないのだが、それを補って余りある程のヤバさを持っている。
 『そいつ』の言動を思い出し、
「おはよう、蝉っち。元気そうで何よりだね?」
 実物が来た。
「こんなに簡単に兄貴を破るなんて、流石はオイラの見込んだ相手だ……堪らんバーイ!!
 そんなにクールにキメやがって、オイラをどうするつもりだーい? お前の心に潜む獣、
恋のUMAはオイラの心の中でしっかりと確認済み&チェックウィーン!! さぁ、初夜は
和風にするか洋風にするか!? 堪らんゾナもしぃ!!」
 不味い、このまま進めばめでたく妻帯者になってしまう。小高い丘の上の白くて小さな
一軒家に花畑と白くてフワフワの大型犬までセットで付いてくる。子供は二人で男女一人
ずつ、しかも一姫二太郎の言葉の通りに女の子が先の出産だ。
その光景を想像して逃げ出そうとしたが、しかし逃げられない。気が付けば足元はガム
テープで固定済み、今日は暑いせいで裾を捲っていたから、生の脛に粘着麺がしっかりと
張り付いている。このままでは酷いことになる。
「さぁ、収穫祭の時間じゃぁい!! 根こそぎ脱毛してスベスベ世界の住人になるが良い!!」
 ウェルカーム、という言葉と共に魔の手が迫り……

160セミの抜け殻:2008/04/06(日) 22:13:43 ID:sxcvXA0l
? ? ?

「……夢か。しかし何ちゅう夢だ」
 雀の声に目を覚まし、蝉彦は顔を洗うべく廊下に出た。洗面所は階段を下りて、廊下を
突き進んだ場所にある。通常なら歩いて一分も掛からないが、朝に弱いため現在の蝉彦の
速度では二分程掛かる。数歩の度に壁に頭を打ちながら洗面所を目指し、
「……で、その……」
「あらまぁ、蝉彦ったら」
 聞こえてきた声に、一気に意識が覚醒した。
 声のする方向に掛けてゆき、扉を開くとエプロン姿の縁が立っていた。
「あら蝉彦おはよう、可愛い彼女が来てるわよ」
「Good morning、Mr.ダメージヘア」
 エプロンが異常に、それこそ長年主婦をしている母親以上に似合っているが、今はその
ようなことを考えている場合ではない。何故、縁がこんな朝早くから自分の家に居るのか。
何故、母親と一緒に朝食を作っているのか。そして何故、朝からやたらと不名誉な名前で
呼ばれなければならないのか。大体、自分は髪の傷みが激しい訳ではない。生まれつき、
そう生まれつき紙質が固いだけなのだ。見るからに柔らかそうな髪の縁にはリンスを毎回
多目に付けなければならない人間の気持など分からないだろう。仕方ないのだ、朝が弱い
から朝シャワーなど出来ないし、それで夜に風呂に入れば毎回このようになってしまう。
世の中誰もが神に愛されている訳ではない。
「あら、喜ばないのね。恋人はニックネームで呼び合うものだとユッキーに教えられたの
だけど。どうしたの、そんなに悲しそうな顔をして?」
 まず同級生が母親をニックネームで呼んだことがショックだったが、それ以上に驚いた
ことが本気で良い名前だと思っていたらしいことだ。
「お前よ。心意気は嬉しいが、別の名前はないのか?」
「だったら、そうね……手汗」
「……それは別の主人公の特徴だ、十二年後の。それに、お前は「手汗」と言うあだ名の
恋人と一緒に街を歩きたいとでも思うのか? 普通に最悪だろ、そんな状況」
 言うと、縁は心の底から驚いた表情をした。
「盲点だったわ」
 普通ならば見落とす場所など無い筈だが、本気で思っていたらしいことに蝉彦は溜息を
吐いた。今更だが縁のキャラを掴みかけてきた、どうやら真性のアホだ。
 だが分かったこともある。
 告白してきたのは向こうの方からなので本来なら疑うべくも無いが、今になってやっと
理解したものだ。どうやら自分を彼氏だと認識はしてくれているらしいし、彼女である事
を実行しようと努力はしているらしい。
161セミの抜け殻:2008/04/06(日) 22:14:49 ID:sxcvXA0l
 ならば自分のすることは決まり切っている、その心意気に応えることだ。
 少し考え、蝉彦は結論した。
「朝から女子高生の生オッパイ&生パンツゲットだな!? そのけしからんサイズのバスト
を俺が成敗してくれるわぁ!! ライト、レフト、ダブルアターック!!」
 何故か縁に白い目で見られた。
「気は済んだ?」
 冷たい声で言われ、肩を落とした。そして何が間違っていたのか考える。論理的に見て
自分の行動は間違っていなかった筈だ。今までの人生で彼女が出来たことはなかったので
実体験はないが、エロ漫画やエロアニメ、エロゲーなどのものから仕入れた知識から論理
的に考察すると、間違ったことはしていない。主人公は片っ端から乳を揉んで尻を撫でて、
違法レベルのセクハラまでするが、最終的にはヒロインと仲良くなり見事にアホカップル
となっていた。見ているときは随分と非常識であると思っていたが、それは自分に彼女が
居なかったからだし、また見本通りにしていないからこそ自分には彼女が出来ないのだ、
と思っていた。だから実際に縁の前で実践してみたが、まだ足りないものだったらしい。
しかしこれ以上の事を親の前でしても良いのだろうか、下手をしたら縁を辱めるような事
になりはしないだろうか。
 考え込んでいると、母親の笑う声が聞こえてきた。
「蝉彦もそんな年頃なのね。部屋を掃除した時にエロ本が出てこないから少し心配だった
けれど、ママ安心したわ。それにパパに似てきているし、ぶっちゃけヤッた?」
 何故親に性体験の有無を確かめられなければならないのだろうか、惨い状況にも限度が
ある。それに上手い言葉が思い付かないが、このまま黙っているとまた妙な状況に誤解を
されかねない。救いを求めて縁を見ると、彼女は頬を赤らめてそっぽを向いていた。
 不味い、誤解が加速してしまう。
「パパの高校時代なんか凄かったわよ。ママと付き合ってその日にエッチしたんだから」
「ちょっと待て母さん、親父は母さんより九つ年上だよな?」
 それがどうした、という視線で問いかけら、深く追求することを止めた。これ以上その
話を聞いたら二度と親を信じられなくなりそうだし、恐ろしい事実を確認することになる。
そうしたらもう、正気の世界に戻ることはできなくなるだろう。何と言ったって九歳差、
仮に親父が高校三年だったとしても母は九才。そして考えたくないが、もしも親父が高校
一年だったとしたら相手は恐ろしいことに小学……
「おはよう、兄さん。楽しそうなお話をしているわね、あたしも混ぜて頂戴」
 突然の声に振り向くと、蛍が立っていた。未だにパジャマ姿で、しかもズボンを穿いて
いないので下着が見えているが、気にするものではない。家族だからそのような妹の姿も
見慣れているし、だらしない、と思っても劣情を催したりする対象にはならない。体系も
小学生と似たり寄ったりだから、それは尚更だ。
162セミの抜け殻:2008/04/06(日) 22:15:38 ID:sxcvXA0l
 そう、俗に幼児体型と言われるものだ。
 もう高校一年生だというのに胸が欠片も張り出すことはなく、尻も丸みという単語とは
無縁の状態だ。身長も低く、蝉彦が大柄であるということを差し引いても、みぞおちまで
しか伸びていないという状況に、蝉彦は時たま不安に思う。幼馴染みである八重も成長は
あまり良い方ではないが、それでも身長は平均よりも低い程度というところにまではして
いるし、胸だって辛うじてAサイズでブラも付けている。別に姉や縁くらいにまで成長を
してほしいという訳ではない、と言うか現状から考えると物理的に不可能だ。だがせめて
人並みに、そう、八重くらいにまでは成長して欲しいと思う。毎晩一緒に風呂に入った際
に確認しているコンプレックス、劣等感に妹自身が一番心を痛めているのは分かっている。
股間の毛がないのはどうでも良い、しかし胸だけは、身長だけは、
「頼む、お前の乳を分けてくれ!!」
 縁の肩を掴み、言うと、物凄い表情で睨まれた。
「頼みならわたしに任せろ弟よ、片方くれてやる!! しかしタダという訳にはいかんなぁ、
そうだ!! お前の股間の宝物のミラクルボール一個と等価交換だ!!」
 来た、来てしまった。一番嫌な状況となってしまったことに、蝉彦は吐息した。背後に
視線を向ければ蝉彦にとって一番縁に会わせたくない人物、姉の羽子がそこに居た。
 友達からは美人でエロい体付きをした姉が居て羨ましいと言われるが、それの何が良い
ものか。元々意見をあまり言わないゆえに口にすることは少ないが、いつも思うのは一つ。
お前らは何も知らないからそのような言葉を平然と言えるんだ、と、そう心の中で叫ぶ。
理由など言うまでも無い、今の言葉で分かる通りに頭の中身がカッ飛んでいるし、あまり
にも常識というものを弁えていないからだ。中学時代、それで何度も好きになった女子に
振られてきたのだ。高校生になったのを機に何故か猫を被ることを覚え始めたが、今でも
母校では幾つもの伝説が語り継がれているという話だ。今朝の素っ頓狂な夢だってきっと、
この姉の電波を朝起ち何かで受信してしまっただけだ、でなければ常識人である自分が、
あんな頭の悪い夢など見る筈がない。
 色々な意味で隠したかったものを見られ、恐る恐る縁の方向に目を向けると、縁は驚愕
に目を見開いていた。それはそうだろう、学校の中では真面目な生徒会長なのに、現在目
の前に立っているのは紛れも無いアホで、しかも、
「ねぇ」
「言うな」
「妹さんは寝起きで少しラフなのは分かるけど、何であの人はマッパなの?」
 縁の言う通り、パンツ一枚すら身につけない状態で、しかも仁王立ちしているのだ。
「ん? わたしは寝るときは全裸派だ、そして朝シャワーをしに風呂場に向かう途中で弟
の何かを懇願する声が聞こえてきたから寄り道した。姉として愛する弟の苦しみを放って
置くことなど出来ないし、屋外ではないから法にも触れない。どこに問題がある?」
 問題有り過ぎだろう、と蝉彦が言う前に、縁が一歩詰め寄った。
163セミの抜け殻:2008/04/06(日) 22:16:49 ID:sxcvXA0l
「そんな恰好でウロウロしないで下さい、家の中でも裸は問題です」
「法には触れないと先程も言ったし、起きてすぐにシャワーを浴びるのだからその度に服
を着るのは効率が悪いだろう。第一お前は何者だ? 朝から他人の家に入って、その住人
に文句を言うなんて、そちらの方が問題だろう?」
 大体、と続けて羽子は縁を睨んだ。背を反らして腕を組んで、只でさえ巨大な存在感を
放っている胸が寄せられて凶悪な絵面になり、それを見た蛍は床に片膝を着いた。両親が
同じなのに何故こんなにも差が出てしまうのだろうか、その嘆きが薄い唇から零れ落ちる
のを聞いて、蝉彦はそっと柔らかな髪を撫でた。今の自分に出来ることはこれだけだが、
それでも何かをしてやりたくなるのが蝉彦の人格だ。
 しかし地獄は続く。羽子に対抗するように縁も腕を組み、一歩という距離を前進。距離
がゼロになり、互いの胸が存在を押し付け合い、結果的に蛍の頬に一筋の線が作られた。
 思った通りだ、と蝉彦は溜息を吐いた。最初から予想していたことだが、予想以上に縁
と羽子の愛称は最悪だ。会わせたくない理由は羽子が非常識だから、というのもあったが、
一番の理由はこれだ。真面目な、どこまでも真っ直ぐな委員長タイプである縁と、表では
猫を被っているが本来は家族でもドン引く時があるくらいの変人である羽子が仲良くする
ことが出来る筈がなかったのだ。例えるなら水と油、いや、そんな生温いものではない。
ハブとマングース、白虎と青流、勇者と魔王の関係。いや、どちらも魔王だろうか、蛍の
嘆きっぷりを見ているとそんな風にすらも思えてくる。はっきり言って怖過ぎる、どこの
世界に朝から巨乳を押し付け合って喧嘩をする女子高生が居るのだろうか。
「で、お前は何だ?」
「貴方に名乗る名前などありません、それより先に服を着たらどうですか?」
「言われんでも着るさ、但しお前の名前を聞いてからだ」
「全裸の癖に随分立派な喋り方ですね」
 全裸は関係ないだろう、そう言おうとしたが、「ぜ」の発音をした瞬間に二人に睨まれた。
 恋人も姉も鬼のような形相だし、乳を押し付け合っているし、どう反応したら良いのだ
ろうか。母はいつの間にか朝食作りに戻っているし、蛍は立ち上がろうとする度に乳合戦
を見て再び体力をゼロに戻されている。せめてこの場所に尊敬している父が居たならば、
例えロリコンで二十年前は現役児ポ法的性犯罪者だとしても今は立派に世界を股に掛けて
いる父が居たならば、少しは状況が変わっただろうか。世界の人間の心を繋ぐ仕事をして
いる父ならば日本人同士の心を簡単に繋ぐことが出来たのかもしれない。思い出すのは昔、
小学生だった頃のことだ。親の仕事について作文を書くという宿題があったが、面倒臭く
思って真面目にやらなかった。それのツケが今になって回ってきたのだろうか。
 親父ゴメン、もう二度と親父の事を恨んだりしない。家に居る時間が短くなるのも仕方
がない、だって人は生きているだけで、こんなにも憎しみ合ってしまう生き物だから。
「でも、さ。それ故に人は……」
 蝉彦が何かを悟りかけたとき、トースターの音が響き、
「ご飯が出来たわよ」
 母親の声が響いた。
164セミの抜け殻:2008/04/06(日) 22:17:38 ID:sxcvXA0l
? ? ?

 食卓は重苦しい雰囲気に包まれていた。
 現在テーブルを囲んでいるのは蝉彦、縁、羽子、蛍、母である雪枝、そして、
「何でお前らまで居るんだよ」
 何故か、八重と葵まで席に着いていた。
 苦しい、という次元ではない。蝉彦は全員を見て溜息を吐く。何しろ、ここに居る者の
殆どの仲が悪いという状況だ。例えば葵は雪枝以外の全員と仲が悪いし、羽子と蛍も実の
姉妹だというのにあまり仲が良くはない。しかし縁や八重と仲が良いという訳でもなく、
二人ともそれぞれに縁や八重を敵視しているという状況だ。それに気のせいかもしれない
けれど、親友である筈の八重と縁も喧嘩をしているように思えた。八重が数年振りにこの
家の玄関を潜ってから交わした短い朝の挨拶以来、何故か一言も口を聞いていない。
 醤油、という妹の声が聞こえて手元にあった小瓶を渡した。姉は何もかけずに食べるが、
蛍は蝉彦と同様に醤油派だ。しかし今回は何故か羽子が瓶を奪い、それを全員で連続して
奪い続けた結果、僅か一分足らずで瓶の中身が空になった。どう考えても異常な状況だ、
中身が少なくなっていたとはいえ、何故醤油が一瞬で空にならなければならないのだろう。
それに全員が醤油のかかった目玉焼きを食べている光景というのはシュールにも程がある。
旅行か何かならともかく、ここは普通の家だというのに。家族以外が大量に押し寄せて、
しかも個性が被っているのなんておかしいにも程がある。全員キャラの被りにはうるさい
と思っていたのだが、ここではルールが通用しないらしい。
 暫く静寂が続き、それを壊すように羽子が箸を置いた。自分用の湯呑に注がれた温い茶
を一口含んで、は、と息を吐き、
「何故こいつが普通に家で飯を食ってるんだ?」
 尤もな意見だが、それに応えたのは雪枝だ。彼女は笑みを浮かべると噛んでいたレタス
を飲み込み、牛乳で口を潤すと一瞬だけ八重を見て、
「だって、エニッチは蝉彦の彼女だもの」
「何でアタシを見るんですか? 悪いですけど、蝉彦はタイプじゃないですし……そんな
付き合うなんて死んでもしませんよ。それこそ只の幼馴染みで、誰と付き合おうがアタシ
には何の関係も無いですから」
 嫌われちゃったわね、と苦笑しながら雪枝は吐息。そうでもないさ、と蝉彦が答えると
何故か八重の顔が一瞬で赤くなった。
 嫌われている訳ではない、と思えるのは自意識過剰だろうか。続いて、八重の反応とか態度がこうなったのはいつからだろうか、と考える。そして、それに慣れてしまったのは
一体いつからだろう、と。忘れていることが多すぎる、それとも忘れているのではなく、
忘れたことにしたがっているのだろうか。少し考えたが、答えらしいものは出てこない。
当然だ、少し考えただけで出てくるのならば忘れること自体していない。
165セミの抜け殻:2008/04/06(日) 22:18:18 ID:sxcvXA0l
 それにしても、と蝉彦は吐息した。
「久しぶりだな、お前が俺の家に来るなんて。一年振りか」
「まぁ、儂にも事情がある。それよりも、じゃ。笹塚はともかく、何で委員長が居る?」
 葵の声は縁を強く攻撃する意思を伴ったもの、しかも視線というものまで付いたものだ。
どのような理由があるのかは分からないが、嫌っているのは知っている。中学の三年間は
同じクラスだったが、去年だけは葵が離れて縁と同じクラスだった。この面子で言うなら、
幼馴染みとそれ以外という組み合わせになるが、そのときから葵のクラスの委員長も縁が
務めていたらしい。その際に何かあったのだろうか、と考えたが、すぐに考えるのを止め
トーストを齧った。他人の詮索をするのは趣味ではないし、それが本人にとって言いたく
ないことならば尚更だ。本人が言おうと思うまで深入りしない、それは誰に対してもする
蝉彦の性分だからだ。
 聞き返す事を止めれば必然的に答えることになり、それにどう答えるか蝉彦は考えた。
このまま本当の事を言うべきだろうか、それとも誤魔化した方が良いのか。
 数秒。
「恋人だからよ」
 八重が答えた直後、羽子と蛍と葵が同時に茶を噴き出した。
「兄さん、分かりやすい説明を要求するわ。返答によっては今夜新しい一等星が出現する
ことになるわよ。ロマンティックな感じの星が」
「そうじゃ、考え直せ。今ならまだ間に合う」
「……ゆ」
「ゆ?」
 何だろうか、と考えた瞬間、いきなり羽子に胸倉を掴まれた。
「ゆるさん!! お前もだ、委員長とやら!! わたしは絶対に認めん、こんなのは!! 母さんも
母さんだ、何でこいつを家に入れた!! それにお前もだ、糞チビ!! お前はこいつがアゲハ
の食器を使っていても何とも思わないのか!?」
 答えは、沈黙というものだ。
 蝉彦だけはでなく全員が黙り込み、時計の針音と荒い息のみが空間に響く。
 数分。
「姉貴、あれはもう終わった話だ。今はもうアゲハは居ないし、俺の中では決着した」
 終わった話だ、と念を押すように言い、羽子の手を無理矢理に離した。締められていた
襟首が解放され、新鮮な酸素を補給して大きく吐息。それを数度繰り返して、珈琲を一口
含んだ。澄んだ苦味と酸味が口の中に広がり、減りかけた食欲を刺激してくる。
 そして口の中で「アゲハ」と呟き、懐かしい名前だと思考する。
166セミの抜け殻:2008/04/06(日) 22:18:50 ID:sxcvXA0l
 記憶というものは過去によって作られるもので、過去とは決して変えることの出来ない
現実の集合だ。加えて言うならば同時に脳の中に存在するもの、優先順位は存在するが、
優劣が着けられるものではない。今だって飲んだ珈琲の味が一つの記憶として残っている、
それは自分の中で現実として捉えたものだ。
だから感傷はしても、
「それに引きずられてはいけない」
 矛盾しているわ、と呟く声が聞こえた。声の方向を見れば呟いた当人の縁は珈琲を口に
含んでおり、軽く目を閉じている。どういう意味だ、と問い返すと、縁は薄く眼を開いて
こちらを見返してきた。冷たい目だ、と蝉彦は思う。今まで見たことがないような、感情
という色の存在しない瞳だ。こんな表情もするのか、とも思う。
「矛盾しているもの、その理屈は」
 何故、という疑問と、お前こそ、という言葉が同時に浮かんでくる。
 それは昨日の放課後にも考えたことだ。
 必要悪すらも必要ないと言いながらも、自分から進んで悪者になろうとした縁の態度に
覚えた疑問や矛盾が再び湧き上がってくる。その他にも色々と矛盾していると思う。
例えば自分から付き合おうと言ってきたのに、今になって考えてみると、どうにも腑に
落ちない部分が多すぎるところだ。彼氏彼女の仲になったのならば、付き合い始めだから
こそ一緒に帰るということをするのではないだろうか。それなのに少々いざこざはあった
ものの、結局昨日は数年振りに八重と一緒に帰ることになった。どうして彼女ではなく、
幼馴染みの八重と一緒に帰ることになったのだろうか。考えてみれば理由は単純で、縁が
一緒に帰るのを拒んだからだ。その結果、教室に残っていた八重と一緒に帰ることになり
奇妙と言えるような事態が発生した。それに今朝からのことも、冷静な状態になって思い
返してみれば妙な部分が多いと思う。確かに恋人らしく、それこそ過剰とも思えるような
こともあった。付き合った次の日の早朝に家に来てみたり、そこで朝食の手伝いをしたり、
ここで一緒に朝食を食べたりだ。しかし、だからこそ妙に思える部分が湧き上がってくる
のも事実だ。朝早く、自分が起きてくる前からこの家に居るにも関わらず、縁とした会話
は多いものではない。この食事中を見てみれば、明らかになることだ。今はもう殆ど誰も
喋らないが、ぎこちないながらも最初は会話が存在していた。しかし、どちらかと言えば
蝉彦自身、八重や蛍と交わした会話の方が多かったし、縁は喧嘩しかしていないが、葵や
羽子とばかり会話をしていた。
 それに好意が薄く見られる部分が少なくもないし、薄いどころか全く見られないように
感じられる部分もある。普段は明るく活発だが、今のように静かで落ち着いた、悪く表現
するならば感情の起伏が少なく感じられるような部分もある。
「それに……」
「蝉彦君、そろそろ時間よ。私が彼女でいる間は遅刻なんて許さないわ」
「待て、わたしは認めんからな!!」
 姉の地団駄する音を聞いて思考を中断され、蝉彦は時計を見た。
 現在七時二十五分。
167□ボ ◆JypZpjo0ig :2008/04/06(日) 22:23:06 ID:sxcvXA0l
今回はこれで終わりです

質問コーナーはありませんが、少し聞いてくれる人が居たので
縁=エニシ先生
バーロー=工藤新一

そして俺のIDが葵な件
168名無しさん@ピンキー:2008/04/09(水) 22:21:23 ID:p9u4AnRB
test
169名無しさん@ピンキー:2008/04/09(水) 22:22:47 ID:p9u4AnRB
>>167
GJ!
だがなんという修羅場☆ラ☆バンバ……
170名無しさん@ピンキー:2008/04/09(水) 23:06:10 ID:KuGtJ8SD
>>167
GJです。
縁=エニシ先生と言うことは、ツルカメ51話質問の結婚できない理由が分かるのですか。
171名無しさん@ピンキー:2008/04/10(木) 00:51:12 ID:rjZkwjES
ツンデレの最高傑作
http://pinknotora.net/2D/pc/img.php?src=../src/577-11.jpg
この前後はヤバイよ
172名無しさん@ピンキー:2008/04/11(金) 01:25:31 ID:IW374o/A
媚肉の香り〜ネトリネトラレヤリヤラレ〜なんてタイトルだから
どれだけ鬼畜ゲーだよと思ってたのに!
いざフタを開けてみたらド純愛ゲーだなんて!

悔しいけど沙耶がかわいすぎるよ!
このスレの人もネトラレがあるんじゃないかと思って敬遠せずやって欲しいわー。
ネトラレっぽいのは1個しかないし普通にスルーできると思う。
173名無しさん@ピンキー:2008/04/11(金) 01:37:24 ID:uGThObWY
>>172
知ったことかーーーーーーーー!!!!
174名無しさん@ピンキー:2008/04/11(金) 01:40:30 ID:eVLMAOmF
>>172
その娘はツンデレなのかね?
175名無しさん@ピンキー:2008/04/12(土) 01:53:01 ID:qlDeOFOI
電撃文庫のおおかみさんと毒リンゴが効かない白雪姫が良いツンデレ
176名無しさん@ピンキー:2008/04/12(土) 12:07:43 ID:VjEORcJT
買ってくる
177名無しさん@ピンキー:2008/04/12(土) 13:59:27 ID:iAlKcAs6
>>174
ツンデレと言って問題無いと思う。正確にはクーデレなのか?

最近の雑なツンデレが嫌いだった俺にはぐっと来たよ。
寝取り寝取られスレに常駐している自分には、そこら辺の属性は満たされなかったが
良い娘だったよ。
178名無しさん@ピンキー:2008/04/13(日) 14:33:41 ID:PLpNUcyv
179名無しさん@ピンキー:2008/04/19(土) 16:39:48 ID:ccPP9/01
素直クールスレに良いツンデレ発見。
180名無しさん@ピンキー:2008/04/19(土) 21:39:33 ID:3FwNphwU
テレビでツンデレなんて出るとドキッとしちゃう。
「冷甘」でツンデレだっけか……。 さっき見たけど。
181名無しさん@ピンキー:2008/04/20(日) 16:10:31 ID:TX/cIHvp
182名無しさん@ピンキー:2008/04/23(水) 22:58:31 ID:12qxmNE+
ほ、保守したわけじゃないんだからねっ!
183名無しさん@ピンキー:2008/04/26(土) 10:32:03 ID:vcf34UbE
「貴方みたいな男見てるとイライラすんのよ!!」
「…君の様な考え方ではこの先、苦労するな」
「カレー嫌いなんて日本人やないで!!」


だらしない少年を悪の道から救うべく、5人の少女が奮闘!!


『強気戦隊ツンデレX』

日曜八時 AHO系列にて放送中


こんなネタを考えた俺の頭は発酵しているorz
184名無しさん@ピンキー:2008/04/27(日) 20:05:25 ID:Jm25kA0I
>>>183
書 か な い か
185名無しさん@ピンキー:2008/04/29(火) 09:51:38 ID:VUOJBv8y
 
186名無しさん@ピンキー:2008/05/04(日) 09:04:08 ID:4BaN4Koz
 
187名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 20:35:10 ID:4SvgP2zA
 
188名無しさん@ピンキー:2008/05/10(土) 23:50:10 ID:bTxTB0zC
189名無しさん@ピンキー:2008/05/11(日) 18:42:38 ID:nVYcbqjV
ずいぶん人がいなくなったな
190名無しさん@ピンキー:2008/05/11(日) 23:10:42 ID:pM9vuozq
俺がいるぜッ!
191名無しさん@ピンキー:2008/05/15(木) 17:35:43 ID:U0IxJ7Ft
保守
192名無しさん@ピンキー:2008/05/21(水) 03:05:48 ID:JwRiQVwb
193名無しさん@ピンキー:2008/05/21(水) 10:06:51 ID:ZDSJO6WR
作者さんたちがツンツンしているスレはここですか?
194名無しさん@ピンキー:2008/05/21(水) 17:28:46 ID:m41DPL4Y
age
195名無しさん@ピンキー:2008/05/24(土) 17:16:18 ID:9WAK0tzX
だめだ…完全に過疎ってきてる…
196名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 08:27:53 ID:DypU4XEU
いっそのこと気の強い娘スレに合流したらどうだ?
197名無しさん@ピンキー:2008/05/27(火) 23:23:33 ID:CB/tExMX
>>196
それはちょっと……
198名無しさん@ピンキー:2008/05/28(水) 17:16:07 ID:excL/etX
199名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 10:13:15 ID:5g9UrTnY
200名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 17:41:10 ID:p03O/lNg
201名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 19:48:03 ID:SAXQFpFY
やすもり
202名無しさん@ピンキー:2008/06/01(日) 01:32:43 ID:xpzNvMU/
>>201
狐。スレに帰るぞ
203名無しさん@ピンキー:2008/06/05(木) 21:34:44 ID:3vyPAioE
保守age
204名無しさん@ピンキー:2008/06/06(金) 23:08:55 ID:2OzSwCl3
 
205名無しさん@ピンキー:2008/06/08(日) 18:21:16 ID:e4WM9aPR
あんたの為に過疎ってるんじゃないからね!
206名無しさん@ピンキー:2008/06/11(水) 13:30:39 ID:SNvCmcmL
age
207名無しさん@ピンキー:2008/06/13(金) 17:27:54 ID:Nsr5j5vw
僕とフリルと校庭でみたいにエロいやつを希望
208□ボ ◆JypZpjo0ig :2008/06/14(土) 00:37:38 ID:PAhLzQ0Z
エロくはないですが、投下しますよ
209セミの抜け殻:2008/06/14(土) 00:39:03 ID:PAhLzQ0Z
「ヘイ、少年。君は奴のことが嫌いかい?」
「そんなことないさ」
 だったら、と少女は笑みを見せ、先程まで腰掛けていた場所に立ち上った。危ない、と
少年が思考するより早く、少女は呑気に両手を広げて見せる。
「パンツ見えるぞ」
 フェンス一枚分の高低差から少女は少年を見下ろし、ギャハハ、と歪な笑い声を響かせ
少年の隣に飛び降りた。足音すら響かないことに少年は驚かない。この程度の事は毎度の
ことだし、少女の運動神経が人並み外れているのは一年間の付き合いの中で嫌という程に
思い知らされている。
 少女は少年の肩を叩き、歯を剥いた笑みを見せた。
「捻りがないね、せめて性器が見えるくらいは言いなよ」
「それはエスパーだ、勝手に人を人間のカテゴリから外すな」
「さっき覗かなかったのかい? オイラ今日はノーパンなのさ」
 驚愕に目を見開く少年の顔を覗き込み、少女は再び笑った。冗談だよ、というシニカル
な言葉のオマケ付きで、だ。わざとらしくスカートを揺らし、ステップを踏んで、まるで
踊るように少女は少年から距離をとる。そのまま両手を広げて回転を続け、更には歌声と
いうものが付けばそれはそのまま舞踊と呼ばれるものになる。染めていない天然の金髪は
夕暮れの光を受けて赤く染まり、腰まで届く真っ直ぐなそれは一種の装飾品にすら見える。
 穏やかな時間だ。
 スローテンポな歌声と踊りは周囲の時間の流れも変化させているような錯覚を感じさせ、
しかし確実に流れている時間は、風の流れで経過を知らせてくる。
「少年、もしオイラが居なくなったらさ」
「言うな」
「いいや、そりゃ無理な話だよ。夢見る少女じゃいられない、ってね」
 そこから紡ぎ出されるのは、一つの歌だ。
 少女が歌うのは過去に何度もあったが、それは毎回同じ曲だった。
 しかし今回は違うもの、今までに一度も聞いたことのないもの、メロディこそ同じだが
違う歌詞で紡がれるそれは、
「オリジナルか?」
「いんにゃ、二番だよ」
 今まで聞かせたくなかったんだ、この歌詞は嫌いだから。と、そう言って、繰り返して
唇から流れ出してくるものは、先程と同じ、少女が「嫌い」と表現したものだ。
 少年はその言葉の意味を考え、結論した言葉を吐くが、少女はそれに対し困ったような
笑みを浮かべただけだ。そして再び、少女が嫌う歌詞が吐き出される。
「なぁ、アゲハ、お前は……」
210セミの抜け殻:2008/06/14(土) 00:39:49 ID:PAhLzQ0Z
? ? ?

気不味い、そう心の中で呟きながら蝉彦は茶を啜った。
現在目の前にある物は数冊のノートと教科書。そしてお茶請けの羊羹が一つと、珈琲と
チーズケーキが二つずつ。何ともバランスの悪い組み合わせだ、と蝉彦は思う。勉強道具
と息抜きセットが、ではない。和物と洋物が同時に存在していることがだ。
 視線を少し上げて左側を見れば、いつもの機嫌の悪そうな顔をした幼馴染み。その逆の
方向に視線を向ければ、つい最近彼女となったクラス委員長の顔がある。その蝉彦の視線
に気が付いたのだろうか、二人に同時に視線を向けられて、蝉彦は背中に冷たい汗が伝う
のをはっきりと感じた。
 何故こんな状況になっているのだろうか、それは三時間前に遡る。
 もう中間テストも近いということで、蝉彦はテスト勉強をしていた。勉強をしなくても
何故かテストで高得点を取れる羽子や、既に諦めの境地に入っている蛍と違い、人並みに
勉強をして人並みの点数を取る。それが蝉彦のスタイルだ。いつもなら葵と図書館にでも
行って勉強をするのだが、どうしても抜けられない用事が入ったしまったらしく、ならば
誰も居ない自宅で勉強をしようかと思い、最初は一人で黙々と教科書を開いていたのだ。
人込みは好きではないし、いつもの世話焼き根性が働いてトラブルに巻き込まれるよりは
何倍も良い筈だ。事実、それが原因で一度、単位を落としかけたのだから。
 しかし、そこまでは珍しいことでもない。
 だが勉強を始めて数分経った頃、珍しい事が起きた。どうやら八重もテスト勉強をして
いたらしいが、今一つ捗っていなかったらしい。数年振りに窓から身を乗り出し、部屋に
侵入してきた。最後に一緒にテスト勉強をしたのが中学一年の最初の中間テストの頃だ。
数えて四年越しになるのだから、珍しいと思いながらも蝉彦は快く一緒に勉強することを
受け入れた。このまま小学生の時のように交流をすることが出来るようになれば、という
考えもあった。いや、流石にそこまではいかなくても、せめて喧嘩をしなくても会話する
ことが出来るくらいには。何と言ったって幼馴染みなのだ、喧嘩ばかりじゃ寂しすぎる。
だから敢えて、突っ込みたい衝動に駆られながらも、「仮にも異性の部屋に入るというのに
ジャージ姿は無いだろう」という意見を飲み込んだのだ。「年頃の女子なのにヤバすぎる、
只でさえ色気が無い体系なのに」という落胆の息も吐かずにいたのだ。
 そこまでも、まだ良い。
 問題はそこから更に三十分後、二人並んで英文の和訳に頭を抱えていた時だ。
 玄関のチャイムが鳴り、蝉彦は客人の対応をしに玄関に向かい、ドアを開けたところで
自分の目を疑った。
211セミの抜け殻:2008/06/14(土) 00:40:21 ID:PAhLzQ0Z
 そこに立っていたのは間違いなく自分の彼女だが、その格好は想像を超えたものだった。
いつも膝丈のスカートと革靴に覆われている脚はデニムのミニスカートとブーツに飾られ、
その上半身はと言えば小躍りしそうになったものだ。何しろ普段のかっちりとした制服姿
でも高校生に相応しくない色気を放っていたというのに、スカートに合わせたデニム素材
の上着の下、巨大な胸はタイトなTシャツに絞られて恐ろしい程に自己主張をしている。
普段の名残と言えば、ポニーテールに結んだ長い黒髪ぐらいのものだ。更に嬉しいことに、
片手には『極楽日記』とプリントされたビニール袋。お土産持参なのが生真面目な性格を
表している。美人で気も利いていて、何と良い彼女なのだろう。
 改めて幼馴染みの事を考えてみる。
 ジャージ姿で窓から罵倒の言葉と共に侵入し、手に持っていたのはノートと教科書だ。
一分前の光景と言えば、はしたなくもシャーペンの尻を齧りながら何故か自分に対し悪態
を着くものだ。天と地程の差があった。
 だから喜んで招き入れて、そして現在、休息の時間となったのだが、
「俺のアホ!!」
 どうして気付かなかったのだろうか、少し考えてみれば分かることだ。縁が持ってきた
ビニール袋に入っていたチーズケーキは二個、言うまでも無く自分と縁用に、二人分だけ
用意されていたものだった。当然だ、まさか自分と八重が一緒にテスト勉強しているなど
思う訳がない。幼馴染と言っても常に一緒に居る訳ではないし、それが自分と八重ならば
それは尚更だ。そもそも、微妙に気合の入っている縁の格好を見れば、彼氏と二人きりで
何かをしたいと思っている意図など透けて見える筈なのに。そしてその結果、蝉彦は八重
に気を遣い、自分だけ和風の間食をすることになったのだ。改めて自分は馬鹿だ、と思う。
自分用にわざわざ買ってきてくれたのに、それをよりにもよって幼馴染みに食わせている
自分が憎い。自分を見る縁の目が何となく痛い。そして何となく、空気が重い。
「ねぇ、八重。貴方、そんなにチーズケーキ嫌いだったっけ?」
「そんなことないわよ?」
 何か二人の言葉に温度が込められていないような気がして、蝉彦は思わず目を背けた。
「それより縁、クッションを交換しない?」
「何で?」
 疑問の言葉は八重に向けられたものだが、縁の視線は蝉彦に向けられていた。だが何故
と言われても、蝉彦には分からない。この空気自体が、親友である筈の二人の間に流れて
いる空気が重いこと自体が分からない。ねっとりと、いや違う、ドロドロとしたヘドロの
ようなこれは、その場に居るだけで胃がきりきりと痛んでくる。
「それはね、蝉彦のお気に入りのやつなの。いつも使用しているやつ」
「何で知ってんだよ?」
「どんな性病伝染されるか分からないわよ? こいつ、非童貞だから」
 縁から問い詰めるような視線が飛んできて、慌てて頭を振った。
「そう、良かった。童貞なのね」
「いや、それは……」
212セミの抜け殻:2008/06/14(土) 00:40:50 ID:PAhLzQ0Z
 違うけれども、どう説明すれば良いのだろうか。
「それより、日本の凄さについて話そう!!」
「うわ、出た出た。この右寄り野郎」
「右寄りじゃねぇよ、何を根拠に言ってやがる」
 少し縁は俯き、数秒黙り、
「今の世界で一番偉大な人間は?」
「天皇陛下に決まっているだろうが。英語を学んでいるのもお情けだ、本当ならば大日本
帝国が勝利を納めていたのを、勝ちを譲ってやったんだ」
 数分間の沈黙が流れた。
 その後で縁は無言で八重を見ると、八重は顔の前で、無言で手を振った。
「さて、続きをしましょうか」
 縁が伸びをして、凶悪なサイズの胸が突き出される。
「なぁ、縁よ。少し良いか?」
「真面目な話なら。……大日本帝国以外でね」
 そんなことではない、もっと大切な、家族の人生に関わるものだ。
 だが大切な内容であるから蝉彦は質問内容を心の中で何度も反復し、推敲を何度も重ね、
そして言葉が適切かどうかを考える。言葉を重ねるが本当に大切なものだし、しかも急に
言われたら驚くかもしれない、家族の、正確に言えば一人の人間の人生を左右しかねない
問題だからだ。この質問の返答如何では、その人物の人生は大きく狂ってしまうだろう。
表情を真剣なものに変え、縁の顔を正面から見て蝉彦は手を伸ばした。そして実物を確認
するべく対象を揉んだ。柔らかな感触が五指に伝わり、自分の意見が間違っていないこと
を弾力と言う形で伝えてくる。
 本物だ。
 疑いはしていなかったが、見るのと触れるのでは全く違う。
「蝉彦君、どうして真顔で私の乳を揉んでいるの?」
 触れるだけで重さと張りが伝わってくるし、少しでも力を込めれば自分の指に合わせて
自在に形を変化させる。さらに力を込めれば飲み込むという表現になる程に指は沈むし、
食い込ませた指の力を抜けば元の形状に戻ろうと遠慮なく押し返してくる。乳を何か別の
もので比喩する者が居るが、それは間違いだと蝉彦は思う。乳は乳であり、何かに例える
ことが出来るものではない。飽くまでも乳は乳だと思う。
「ちょっと、蝉彦君?」
 蝉彦は更に左手でもう片方を掴み、
「止めなさい!!」
 頭を抱え込まれて顎に膝の一撃を受けた。
「何しやがる!! 布製の純白な三途の川が見えたじゃねぇか!!」
「それは私のパンツでしょ!? それより何でセクハラしたの!?」
 違う。
213セミの抜け殻:2008/06/14(土) 00:41:23 ID:PAhLzQ0Z
「違う!! どうすれば乳がそんなに巨大になるのか資料の確認をしていただけだ!!」
「弁解までセクハラなんて!?」
 いけない、このままでは水掛け論だ。蝉彦としてはそれは望むものではないし、八重と
言うオマケが付いているものの、折角休日に彼女と過ごしているのだ。ここで喧嘩などを
するのはもったいない。今日と言う日を大切にしたい、つい先程思い付いた言葉だ。
 確かに何の断りも入れずに触るのは失礼だったかもしれない。大切な妹の乳が余りにも
小さく、それが心配になっていたので解決策をと結論を急いでしまったが、せめて断わり
を入れるべきだった。そう反省し、蝉彦は何度も頷き、未だに揉んでいた縁の乳から掌を
話して床に着けた。胡坐だった脚も綺麗に折り畳み、そのまま背を丸めて頭を擦るように
床に着ければ、その姿勢は完成する。土下座だ。
「何!?」
「お願いします!! 揉ませて下さい!!」
 数秒。
 視線を上げると、何故か軽蔑するような二対の眼があった。
「サイテー、プライド無いの? この腐れ蝉には?」
「うるせぇ、トーテムポール女。距離を取ると起伏が存在するのか判別出来ない体系の癖
に偉そうなことを言うんじゃねぇ。スカートも穿いてねぇからパンツも見えねぇしよ!!」
 ぷつり、と何かが頭上で切れる音が聞こえてきたと思うと同時、八重の細い腕が蝉彦の
首に回された。蝉彦はそれを外そうとしたが、しかし外れない。意外と腕力が強い上に、
ロックもしっかりと極まっている。腕が細いせいでしっかり頸動脈に食い込んでいるし、
もがけばもがく程に締まっていくのが分かる。腕から力が抜け、指先の感覚が消えていく。
脱出しようと足を伸ばし、回るように背を上げて逃れようとするが中々上手くいかない。
立っているときは当然、座っているときですら視線の高さに差が存在するが、それは蝉彦
の方が上だ。そのときならば上手くいく方法だが、しかし今回は開始時に蝉彦は土下座の
姿勢をしていたし、その差は簡単に埋まるものではない。加えて言うならば足からも力が
抜け始めている。
 ふと、綺麗な光景が見えた。どこかの山の中だろうか。菜の花なのか、黄色の花畑の先、
底が見える程に澄み切った川が見える。木で出来た小振りのボートが清流の流れに僅かに
揺れていて、とても穏やかな風景だ、と思った。黒の長いストレートに、ノースリーブの
白いワンピース、華奢な白のサンダルに白い肌の美幼女が控えめな様子で手を振ってきて、
思わずそちらに駆け寄りたくなるが、
「来るな!!」
 小学校を卒業したすぐ後に死んだ筈の曽祖父の声が聞こえ、我に帰った。
 諦めない、ここで死んだらセミの抜け殻も最終回になってしまう。
 まずは脱出だ。乱暴に腕を振り回すと、掌に何か柔らかい物の感触が来た。それと同時、
何故か八重のロックする力が緩み、少量であるが酸素が流れ込んでくる。
214セミの抜け殻:2008/06/14(土) 00:41:47 ID:PAhLzQ0Z
 そこからの動きは連続だ。
 腹筋を中心に全身のバネを利用し、空中前転の要領で身を回して下半身を跳ね上げる。
 廻る。
 不意の重心移動で八重のバランスが崩れたのを好機と思いながら、蝉彦は脚を右横へと
突き出した。重力に引かれて体は下降を始め、予想通りに脛は八重の喉元へと吸い込まれ、
引っかかるような形でヒット。むせるような声と共に八重の体はクッションの上に倒れ、
蝉彦は細い体をクッションにするように八重の体に乗った。そのまま腹に座るようにして
両腕を足で押えれば、マウントポジションと言われる姿勢になる。
 蝉彦は舌なめずりを一つ、
「さぁて、どう料理してやろうか? 煮るのと焼くの、どっちが好みだ?」
「降りなさいよアホ蝉!! エロシーン以外でヒロインにガチでマウント取る主人公なんて
聞いたことないわよ!!」
「お前みたいに萌えないジャージ幼馴染みはヒロイン様と言わん」
 と、そのまま首を絞めようと若干危ない目付きで手を伸ばしたときだ。
 鈍痛。
 頭に衝撃が来た、と自覚してから、腹を抱えられていることと、背中に柔らかなものが
当たっていることに気付いた。視界が通常と上下反転していることでバックドロップされ
ていることに気付き、冷静になって、とんでもない展開だったと気付く。危ない所だった。
危うく人の道を踏み外し、凌辱ものになるどころかサスペンスホラーの展開になるところ
だった。物理的な意味で上手く軌道修正してくれた彼女に感謝だ。
 剥がすように腕を外し、立ち上がって二人を見ると、物凄い光景があった。
 最初に目が行ったのは、縁の下半身だ。バックドロップの独特な姿勢のためかスカート
は上まで捲れ、雪のように白い太腿が惜しげもなく露出している。八重や蛍のように棒の
ように細いものではない。決して太くはなく、しかし年齢相応以上に発達したそこは丸く
柔らかな曲線を描いて、どこまでも女性であることを蝉彦に意識させるもの。その二本の
足の間にある下着は一回見たものだが、しかし直接見るのとでは次元が違う。上半身に目
を向けると、そこも一種の桃源郷だった。衝撃でTシャツの裾が胸の上までずり上がり、
胸元を隠すという意味を成さなくなっている。おまけにフロントホックだったらしく胸の
先端部分までもがはっきりと見えていた。急な運動のせいか頬も赤くなっていて、そこが
また色気を過剰なものにさせている。
 続いて八重の描写をしようとしたところで階段を駆け上がる音が響き、
「どうしたの蝉彦!? 帰宅して早々物凄い音が!?」
 ドアを開き、蝉彦の母、通称ユッキーは固まり、
「……何してるの?」
「プロレス、って言ったら信じてもらえるか?」
 説教が始まった。
215セミの抜け殻:2008/06/14(土) 00:42:08 ID:PAhLzQ0Z
? ? ?

 自分は正しい事をしているのだろうか、その疑問に少女は顔を上げた。
 これは救済だ、とは思わないし、罪滅ぼしとも違うとも思う。
 何故ならこの方法では誰も救われない、精々自分で救われたような気持ちになるだけだ。
それでも、止める気はない、と少女は思う。ここで止めてしまったら今までの行動の意味
は無くなってしまうし、それこそ更に酷い結末になるのは目に見えているからだ。
 大丈夫、と自分に言い聞かせるように少女は呟いた。
「大丈夫」
 今度は、はっきりと言葉にして視線を上げる。
「大丈夫、だから」
 痛いだけだから、だから何ともない。それに痛みには慣れている。物理的な痛みなどと
違って、精神的な痛みならば、大丈夫の一言でケリが着く。今までに何度も味わってきた、
そんな痛みだ。何かを捨てる度に味わってきた、そんな痛み。今までずっと、絶えること
が出来たのだ。今回に限って耐えられない筈がない。苦しいだけ、だから何ともない。
 髪の先を弄ぶように指先で巻き、深く呼吸をする。
 視線を元に戻せば、そこにあるのは少女の部屋だ。
 だが、普通とは若干違ったもの。
 そう感じさせるのは、時が止まっている印象を与えるからだ。埃が積もっているという
訳ではない、寧ろ普通の部屋よりも掃除が行き届いている。フローリングは淵や角にまで
埃の姿は見えないし、窓のサッシもそれは同様だ。壁紙の方も新居同然の純白で、画鋲を
刺した形跡すらも見当たらない。
だが、古いのだ。
例えば本棚を見れば年季が入ったものだと分かるし、そこに並べてあるのは一年遅れの
月刊誌だ。机の上に並べてある教科書は日光の影響を浴びて黄色く変化し、一緒に置いて
あるノート類もそれは同様だ。引き出しの中の電子辞書も電池切れ、少女が取り換えよう
として、しかし出来なかった結果だ。時間の経過を認めることが出来なかった結果だ、と
少女は自嘲するような笑みを浮かべた。
「こうしていることこそが、認めた結果なのに」
 それでも、電池交換などという小さなことに拘って、そんなことで認めていないなどと
下らない悪あがきをしている。矛盾と言うよりも、単なる馬鹿だ、と少女は笑った。
「戻って来い」
 少女は窓の外を見て、空に問いかけるように呟く。
「アゲハ」
 失くしてはならなかった、少女の名前を。
216□ボ ◆JypZpjo0ig :2008/06/14(土) 00:43:25 ID:PAhLzQ0Z
ここで終了、と思わせて下にオマケがあります
217□ボ ◆JypZpjo0ig :2008/06/14(土) 00:45:19 ID:PAhLzQ0Z
下のストーリーと本編は一切関係ありません

セミの抜け殻番外編「縁の憂鬱」

 三人で勉強をしているといっても、基本は無言の状態だ。成績優秀な縁は元より、蝉彦
も別に勉強が苦手と言う訳ではない。八重も基本は真面目なので黙々と勉強をするタイプ
なので、時折、分からない部分が出てきたときに質問をするくらいだ。基本的に無駄な話
などは無縁のメンバーなので、室内にあるのは時計の針が時間を刻む音とシャーペンの芯
がノートの上を走る音、ページを捲る音、外の小学生の声が反射しているくらいのものだ。
 だが、開始してから数分のこと。縁は蝉彦が何か呟いているのが聞こえ、耳を澄ました。
良く聞けばそれはポップなメロディに乗ったものであり、どこかで聞いたような歌なのだ
と気付いた。それは何だっただろうかと注意を向ければ、歌詞がより聞こえてくる。
「……おーじゃま、おーじゃま、おじゃーまだって♪」
 何の歌だったかを思い出し、一瞬耳を疑った。
 思い出すのは近所に住む会社員の姿だ。どこで聞いたのか思い出せなかった理由、その
理由はイヤホンから流れ出る音を僅かに聞いていたからだ。日常に僅かにずれた体験なら
思い出せないが、しかし忘れる程のものでもない。頭の片隅に僅かに残る、そんなことは
珍しいことでもないが、何故忘れて……思い出した。
「ねぇ、別の歌にしない?」
 何故忘れていたのか、それは青年が友人と真顔で幼女の話をしていたからだ。その姿を
記憶から放り出す為に、関連することを全て忘れようとしていたのだ。
 まさか、まさかとは思うが、彼氏がよりにもよって精神病患者、意訳するとロリコンで
あるかもしれない。そんな幻想を抱いてしまったからだ。そう言えば巨乳である羽子には
厳しく接していたが乳が無い蛍には優しくしていたし、巨乳である自分よりも、平原乳の
幼馴染みと打ち解けているように思える。未だに僅かな壁を感じるのも、乳脂肪が二人の
距離を作っているからかもしれない。何と言うことだろうか、自分だって好きで巨乳へと
進化していった訳ではないというのに。可能な事なら、自分の親友のような幼児体型へと
変わりたいと思っているのに。……因みに以前、同じことを本人に言ったら殴られた。
 その思考に一応の結論が出ると同時、蝉彦は口を開き、
「……げっちゅ♪ ルールにしばってピンチ! 泣いたたた♪ げんなりぱっつり……」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 もっと病気だ。
 縁は蝉彦に容赦なく乳押し付け式バックドロップ、その衝撃で家が揺れた。
 これが後に、蝉彦の巨乳苦手意識に繋がっていく伏線だとは誰も気付かない。
 今は、誰も。

218□ボ ◆JypZpjo0ig :2008/06/14(土) 00:45:42 ID:PAhLzQ0Z
今度こそ投下終了です
219名無しさん@ピンキー:2008/06/14(土) 01:51:07 ID:gbUSUTDT
1番槍GJ
220名無しさん@ピンキー:2008/06/14(土) 08:35:26 ID:1Z97geaK
GJですだ。
縁かわええ。そして蝉はネトウヨ?
221名無しさん@ピンキー:2008/06/15(日) 00:34:52 ID:N4pmiFst
GJ!待ってたぜー!!
222名無しさん@ピンキー:2008/06/19(木) 22:37:02 ID:nIJHCyzP
GJ そしてage
223名無しさん@ピンキー:2008/06/20(金) 19:18:55 ID:mJAAnmoj
224名無しさん@ピンキー:2008/06/21(土) 04:19:43 ID:6dzjsCIu
225名無しさん@ピンキー:2008/06/21(土) 09:55:35 ID:PJdYXt3w
226名無しさん@ピンキー:2008/06/21(土) 16:07:27 ID:CCzbiKhP
227名無しさん@ピンキー:2008/06/21(土) 19:19:59 ID:fBY0YIfM
228名無しさん@ピンキー:2008/06/21(土) 23:00:25 ID:8EA3HmUR
229名無しさん@ピンキー:2008/06/21(土) 23:01:41 ID:nG7LO/lr
230名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 00:24:29 ID:3bYZoMvu
231名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 01:50:36 ID:loOovdv3
232名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 01:57:12 ID:0PvqMN/x
233名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 12:00:53 ID:i/X/BKm1
234名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 16:50:34 ID:0PvqMN/x
235名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 19:26:45 ID:/K1EYQ1S
236名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 20:25:34 ID:0PvqMN/x
237名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 20:33:46 ID:loOovdv3
238名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 21:05:57 ID:0PvqMN/x
239名無しさん@ピンキー:2008/06/23(月) 13:09:51 ID:YkQz8swF
240名無しさん@ピンキー:2008/06/23(月) 13:20:24 ID:eeldm/8r
241名無しさん@ピンキー:2008/06/23(月) 17:55:26 ID:N39aoz/b
242名無しさん@ピンキー:2008/06/23(月) 18:25:14 ID:eeldm/8r
243名無しさん@ピンキー:2008/06/23(月) 20:06:09 ID:Ew/AFaPe
244名無しさん@ピンキー:2008/06/24(火) 22:35:27 ID:Bbxk+N02
郎…なんて書くわけ無いでしょバーカと言いながら百舌谷さん1巻を読む俺
245名無しさん@ピンキー:2008/06/24(火) 22:43:56 ID:gVTQIHLu
俺はSS投下をただひたすら待ち続ける
246名無しさん@ピンキー:2008/06/28(土) 20:59:21 ID:UmwU++Tg
ゲインロス効果
247名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 21:24:25 ID:yf1NWmNK
そして誰もいなくなった…
248名無しさん@ピンキー:2008/07/02(水) 00:16:15 ID:gwTjktrL
それでも待ち続ける。
べ、別に蝉の人のを読みたい訳じゃないんだからっ
249名無しさん@ピンキー:2008/07/05(土) 17:36:19 ID:g0huQTtI
ほしゅ
250名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 14:41:35 ID:Z4KFomsd
251名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 23:47:10 ID:DqWk8fr+
カメェェェーーーッ!!!
252名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 22:01:12 ID:4w/WNFDn
hoshu
253名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 23:07:42 ID:PeQjTd5B
ネタを…
新鮮なシチュを…
254名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 10:58:04 ID:/yxY7hGz
ツルゥゥゥーーーッ!!!
255名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 23:32:01 ID:meGKiSvr
本当に情けないわね!こんな時期に風邪で寝込むなんてあんた大馬鹿よ!!
・・・な、何よ泣きそうな目は!
折角の夏休みをあんたなんかの看病で潰されて、あたしの方が泣きたいくらいなんだから!

全くもう・・・・・・はい、これお粥。お粥ぐらい自分で食べなさいよね!

はぁ!?頭がクラクラしてこぼしそうだから食べさせてくれですって!?
わ、分かったわよ・・・やれば良いんでしょ!

もう、ブツブツ・・・ふ〜、ふ〜はい、口開けなさい。あ〜ん・・・(以下略)

さあ、次は体を拭くわよ。サッサと服脱ぎなさい!

え?体が寒い?
布団を何重にも敷いてるのになんで寒がってんのよ!でも、もうこれ以上掛ける物はないし・・・

も・・・もし寒くて我慢できないって言うなら・・・わ、私が暖めてあげてもいいわよ!
・・・何よその顔は!言っとくけど、この私に風邪を移したらただじゃ済まさないんだから!!

責任取って看病しなさいよね!
256名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 16:22:15 ID:1v591Zt8
風邪ひいてきます
257名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 01:49:50 ID:gTeZZXRK
【領土問題】竹島への投票をお願いします。
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1216307076/
258 ◆223206156M :2008/07/18(金) 23:29:35 ID:YJjwWFSC
書き上げるのに一年以上もかかりました。
我ながら遅筆で嫌になります。
ツンデレと呼べるのか、エロと呼べるのかも怪しい代物ですが、
暇つぶしにでも読んでくれれば飛び上がるほど喜びます。
 
レイプ気味なので、そういうのが苦手な人はスルーしてください。
 
ちなみに、続編も考えていますが、これを書くのにも一年以上かかったくらいなので、
書き上がるのがいつになるやらわかりません。期待しないでください。
 
くどいようですが、無理矢理なので苦手な人はスルーしてください。
259ツンデレな幼馴染 ◆223206156M :2008/07/18(金) 23:30:10 ID:YJjwWFSC
「必要ないって言ってんでしょ! あんたなんかどっか行っちゃってよ!」
 
ああ……。 またやってしまった。いつもあたしはこうだ。
素直になれない。こいつの前ではどうしても……。 
相馬晶(そうまあきら)、あたしの幼馴染。学校一のモテ男。
彼とは同じクラスだけど、まともに話したことはほとんどない。いや、一度もない……かもしれない。
それも全部、あたしのせい。彼を目にするといつも喧嘩腰になってしまうあたしの。
晶は、ふんっと鼻を鳴らすと、あたしに無言で背を向け、倉庫の扉に手をかけた。
260ツンデレな幼馴染 ◆223206156M :2008/07/18(金) 23:30:36 ID:YJjwWFSC
あたしは第四体育倉庫にいた。
グラウンドの隅っこにあるこの倉庫は、体育館の陰になっていて、普段滅多に使われることがない。
しかし、あたしは確かに頼まれたのだ。
クラスの女子に、「高跳びに使うマットを第四倉庫から持ってくるように」と。
その女子はと言えば、高跳び用の棒だの何だのの器具を抱えていて、手一杯のようだったから、
仕方なく引き受けたのだ。
しかし、一人でマットを運ぼうなんて、無謀過ぎた。誰か友達を誘うべきだったかもしれない。
いや、誘うべきだったのだ。この後訪れる出来事を思えば……。 あたしは迂闊だった。
 
「もう、おっもーい! なんでこんなに重いのよ!」
 
少し湿ったマットは予想以上に重かった。
こんなの投げ出して、知らん顔で校庭に戻ってしまえば良い。
そんな考えがちらっと頭をかすめたものの、変なところで真面目なあたしにはできないことだった。
なんとかひきずって扉の1メートルほど手前まで持って来たとき。
 
「一人で何やってんだ? 椎名」
 
苗字を呼ばれて振り返ると、そこには晶が立っていた。
 
「手伝ってやろうか? 一人じゃ大変だろ」
 
そう言って、彼は私の背後からマットに手を伸ばした。
吐息が耳元をくすぐる。さっと顔が赤くなるのが自分でもわかった。
どうせ私には手に余っていた。手伝ってもらえたらありがたい。でも……。 
 
「い、良いわよ。一人で十分」
 
赤く染まった顔を見られたくない。
長い髪も縛っているから、顔を隠すには十分じゃない。
 
「無理すんなって」
 
更に近付く晶。胸の鼓動を聞かれてしまいそうなほどに。
いやっ……見ないで! 聞かないで! 触らないで! 
そして冒頭に戻る。
261ツンデレな幼馴染 ◆223206156M :2008/07/18(金) 23:31:03 ID:YJjwWFSC
晶が立ち去るのを、あたしは背中越しに待っていた。
しかし、次の瞬間、あたしの耳に届いた音は、期待していたものとは違っていた。
 
ガチャン! 
 
金属音? 驚いて振り返ると、扉がしまっていて、内側に晶がいた。
薄暗かった倉庫の中が、更に暗くなった。
 
「な、何すんのよ! 閉めたらマット出せないじゃない」
 
晶は答えずに、扉の側で何かをいじっている。
かちゃかちゃと何かを操作するような音。何だろう……? 
よく見ようと近寄ったその瞬間、あたしは肩を掴まれ、身動きがとれなくなった。
 
「いたっ……!」
 
そのまま後ろに突き飛ばされた。
ちょうどマットの上だったから、怪我をすることはなかったけれど……。 
長年降り積もっていた埃が宙に舞い、喉を痛めつけた。
 
「ごほごほっ……な……何……?」
 
咳き込みながら、涙目で見上げると、仰向けに倒されたあたしの上に、晶がまたがっていた。
そして、着ているジャージの上着をおもむろに脱ぎ始める。
 
「ちょっと! 冗談にしてはタチが悪過ぎるんじゃない? どきなさいよ!」
 
嫌な予感がした。
見下ろしているのは、あたしのよく知っている幼馴染の顔ではなかった。
 
「それこそ冗談じゃない。せっかくここまでセッティングしたのに」
 
なっ……何? セッティングって何なのよ? 
わけがわからず戸惑っているあたしを、容赦なく晶は縛り上げる。
気付けばあたしの両手はベルトで締められていた。
その両手をあたしの胸に押し付けているのは晶の右手一本だ。
悔しい。片手しか使わないヤツに身動きをとれなくさせられているなんて……。 
262ツンデレな幼馴染 ◆223206156M :2008/07/18(金) 23:31:27 ID:YJjwWFSC
「ひ、人を呼ぶわ! 変なことするんじゃないわよ!」
 
そう叫ぶことがあたしができる精一杯の抵抗だった。
にもかかわらず、晶は涼しい顔だ。
 
「ふん。呼んだって誰も来ねえよ、こんな場所に」
 
そして、手荒くあたしの胸を掴んだ。乱暴に揉み始める。
痛いのもあるけれど、ちょっと変な気分になってくるのが不思議だ。
 
「ちょっ……、や、やめなさいよ!」
「だからやめるわけがないっての。人の話はちゃんと聞いておくもんだぞ」
「なんであんたなんかの話を聞かなきゃいけないのよ!」
「ほんっと生意気なヤツだな。お前、今置かれてる状況わかってる?」
 
そう言って晶はあたしの下半身に手を伸ばした。まずい。運動着は脱げやすいのだ。
いや、この場合脱がせやすい、と言った方が良いかもしれない。
いともたやすく晶の手が運動着の中に入って来る。イヤ……触らないで……! 
そんなあたしの願いもむなしく、晶は運動着の中で直接あたしの太腿を撫で始める。
 
「お前、三上に頼まれてここに来たんだろ?」
 
愛撫の手を止めることなく、晶が訊いて来た。
三上とはマットを取ってくるようにあたしに頼んだ女子だ。
 
「そ、そうよ。それが何よ?」
 
言いながらあたしは気付いた。そうか。晶が三上さんに頼んであたしをここへ来させたんだ。
あたしがここに来るように仕向けたのは晶なんだ。
 
「そういうところは素直なんだな。いつもそうなら可愛げがあるのに」
「う、うるさいわね。あんたに可愛いなんて思われたって嬉しくないわよ」
 
嘘だ。あたしは誰より晶に可愛いって思われたい。でも、口ではそんなこと言えない。
言えるわけがない。今更……。 
263ツンデレな幼馴染 ◆223206156M :2008/07/18(金) 23:31:57 ID:YJjwWFSC
「けどな、この倉庫に入ってるもんなんて、今じゃゴミかがらくたしかねえぞ」
 
晶はあたしのパンツに手をかけながら言った。ていうか、いつの間にそんなことしてたのよ。
手が動かせないあたしは身をよじらせて抵抗するけれど、何の効果もない。
あたしは晶に言われてみて初めて気付いた。そうだ。こんな場所に来る必要なんてなかったんだ。
グラウンドの近くにもっと新しい倉庫があったんだから。
 
「んでまあ、うちの部の先輩が中から鍵がかかるように改造したんだ」
 
衝撃の事実。ていうか、そんなことして良いの? 一応学校の設備なのに。
晶の部活というと……バスケ部か。
どの先輩なんだろうと思いをめぐらせかけて、あたしは目の前の現実に引き戻される。
 
「まさか本当にお前が来るとは思ってなかったけどな。迂闊だよな、こんな手に乗るなんて」
「な……何よっ。どうせあたしはばかよっ」
 
悔しい。本当に悔しい。どうして気付かなかったのだろう。
涙が一筋、耳に向かって流れ落ちるのを感じていた。
 
「なんだお前、泣いてんの?」
「な、泣いてなんかいないわよ!」
 
言葉とは裏腹に、ひとしずくこぼれると、次から次へと涙は溢れて来た。
別に悲しくて泣いているわけじゃない。ただ、悔しいだけだ。
 
「ふうん。ま、良いけど」
 
そう言うと、晶はあたしの唇にキスした。
不意をつかれて、あたしは避けることができなかった。
まあ、がっちり体を固められている時点で拒否したって詮無いことなのだけれど。
 
「何すんのよ!」
「何って、キスだろ?」
 
平然と答える晶。罪悪感なんて微塵も無さそうだ。
264ツンデレな幼馴染 ◆223206156M :2008/07/18(金) 23:32:22 ID:YJjwWFSC
「もしかして、初めてだったのか?」
「そ、そんなわけないでしょ!」
 
また嘘だ。あたしは嘘つきだ。
物心ついたときからあたしは晶が好きだった。
晶以外の男子となんてキスどころか手を握ることさえ考えられなかった。
そんなにも好きだったはずの晶がまさかこんなことをする男だったなんて……。 
嬉しいはずのファーストキスも素直に喜べない。
 
「すず」
 
晶があたしを呼ぶ。けれど、あたしはそんな名前じゃない。
 
「美鈴よっ!」
 
どうして変な略し方をするんだろう。あたしの頭に血がのぼる。
 
「めんどくせ。すずで良いだろ」
 
面倒くさいって、あたしの名前をきちんと呼ぶことがだろうか? 
それとも……あたし自身が面倒くさい女だと思って……? 
あたしが何を考えていようがおかまいなく、晶はあたしの服を脱がせにかかる。
やっぱり運動着は脱げやすい。あたしの素肌は簡単にむき出しにされてしまった。
まだ下着は残っているけれど……。 
 
「意外と着やせするタイプなんだな。でかい胸だ」
 
やめて……あんまり見ないで……。 
そんなあたしの心の内など知る由もなく、晶はブラジャーに包まれたあたしの胸を撫で回す。
生まれて初めての感触に、あたしの体はなんだか火照ってくるようだ。
時折晶の指がブラジャー越しに乳首の敏感な部分を刺激する。何なの? この感じ……。 
気持ちが悪いような……それでいて続けて欲しいような……。 
265ツンデレな幼馴染 ◆223206156M :2008/07/18(金) 23:32:49 ID:YJjwWFSC
「……もう許して……気は済んだでしょう……?」
 
我ながら声のか細さに驚く。また涙があふれてきた。晶の顔が見えにくくなる。
それはあたしにとって好都合だったのかもしれない。
見なくて済むのなら見たくはない。好きな人のこんな姿なんて……。 
 
「何言ってんだよ。こんな中途半端なところでやめるわけないだろ」
 
ぷちん、と音がしたような気がした。気がしただけだ。
ブラジャーのホックが外れる音がそんな音のわけがない。
 
「いやっ……!」
 
そう、ついにあたしのブラジャーが外されてしまったのだ。
でも、どんなに嫌がろうと、晶が手を止めることはない。
むき出しになったあたしの胸の上を晶の舌が滑っていく。
くすぐったいって感触よりも、恥ずかしくてたまらない気持ちがあたしの心を占領する。
 
「やめて……もう……どうして……? どうしてこんなことするの?」
 
辛くてたまらなくて、苦し紛れに漏らしたあたしの声に晶は反応した。
舐めていた乳首から口を離し、あたしの顔を覗き込んで目を見つめた。
どきっとした。あまりにも熱い視線……。 流れていた涙も引っ込んだような気がした。
 
「お前が欲しいだけだ」
 
それだけ言うと、晶は呆気にとられたあたしの口を塞いだ。
あたしの身体を舐め回していたせいで、その唇は唾液でぬらぬらと濡れていた。
ひどいことを言われると思ったのに、意外な答えでびっくりした。
あたしのよく回らない頭が晶の一言の意味を探ろうと必死にフル回転している。
どういう意味なの? 本気でわからない。
もしかして、これっていわゆる愛の告白ってヤツ……? 
肉体的にも、精神的にも、息が詰まってしまって苦しい……。 
266ツンデレな幼馴染 ◆223206156M :2008/07/18(金) 23:33:17 ID:YJjwWFSC
「なーんて。そんな風に言われたら嬉しいんだろ? 女って」
 
キスされている間は必然的に目を閉じてしまうものだ。
顔が近過ぎて目なんて開けていられない。
だから、それまでまぶたは閉じていた。
そして、思いもよらない言葉に目を開くと、そこには先ほどとはうって変わって
氷よりも冷たい視線がそこにあった。
 
「お前、生意気だから。立場ってものを思い知って欲しいと思って」
 
一瞬、意味がわからなかった。
そして、よく考えてもやっぱり意味がわからなかった。
あたしが生意気って……どういうこと? 
 
「どういうことよ?」
 
尋ね返すなんて馬鹿みたいで恥ずかしいと少しだけ思ったけれど、訊かずにはいられなかった。
晶は冷たい視線であたしを見下ろしながら、淡々と語った。
 
「お前、なんで俺に女紹介してくんないの? 何人の女に紹介すんの断ってんの?」
 
そう訊かれて初めて、晶の言葉が意図することがわかった。
あたしが晶と幼馴染だと言うことは、同じ学年の子たちには知れわたっている。
ひょっとしたら、全校生徒全員知っているかもしれない。
だから、何人ものキレイな女の子があたしの元に、晶との仲をとりもって欲しいと頼んできた。
その中には学年の違う女の子もいたような気がする。
あたしは勿論断った。紹介なんかできるわけない。だってあたしは……。 
 
「俺に直接言って来る女も結構いてさ……。 感じ悪いってよ、お前」
 
あたしは晶が好きなのだ。好きな人に他の子を紹介するなんて心が張り裂けてしまう。
それに、別に友達でも何でもない女の子のためにあたしが動く必要がどこにあるのだろう。
当然、そんな気持ちは心の奥底に隠して、「そんなに晶と仲良くないから」などと
理由をつけて断っていたが。
267ツンデレな幼馴染 ◆223206156M :2008/07/18(金) 23:33:53 ID:YJjwWFSC
「今度からはちゃんと俺に紹介しろよ。な?」
 
晶は口を動かす間も手は止めなかった。
あたしの素肌を撫で回したり、時にはつねったりして、刺激を与えてくる。
そうして触られるのにも段々慣れてきた自分が怖い。
火照って来た身体がもっと強い刺激が欲しくてたまらなくなってきた。
もっと触れて欲しい。身体に晶が触れたという印を刻み込んで欲しい……。 
 
「嫌よ。どうしてあたしが……」
 
顔も火照って来た。明るい中だったら、赤くなったあたしの顔が見えていたかもしれない。
でも、ここは薄暗い。顔の色を知られなくて良かったと思う。
 
「ふーん。そう。そんなら……」
 
そう言いながら、晶はあたしの脇の辺りから、なぞるように指を滑らせ、下半身に向かった。
そして、一気に脱がせた。
 
「やっ……!」
 
下着さえつけていない下半身を男の目の前に晒すだなんて、初めてのことだ。
恥ずかしいなんてものじゃない。あたしはすぐに脚をぴったりと閉じた。
 
「何抵抗してんだよ。初めてじゃないんだろ?」
 
初めてよ。初めてに決まっているでしょ! この鈍感! 
わめき散らしたいのに、言葉は浮かんでくるのに、声にならなかった。
晶は容赦なくあたしの股の間をこじ開けようとする。
手が直接脚に触れているのもどきどきしてしまうけれど、毛が生えている大事な部分に
無理矢理指を滑り込ませようとするのを拒む術は、脚をかたく閉じることしかないあたしは、
なんて非力な存在なのだろう。
268ツンデレな幼馴染 ◆223206156M :2008/07/18(金) 23:34:18 ID:YJjwWFSC
「……は、じめて……よ……」
 
やっとそれだけ声になったとき、晶の指があたしの大事な部分にもぐり込んで刺激し始めた。
初めての感触は気持ち良いと呼べるのか気持ち悪いと言うべきなのかわからない。
ただ、くすぐったいなどという生やさしいものではなかった。
甘い声が鼻から出てきてしまいそうで、必死にこらえる。
でも、くっ、くっ、と声が漏れているのは晶には確実に聞こえているだろう。
悔しい……。 せめて手が使えたら……。 
 
「へえ。初めてなんだ。さっきキスは初めてじゃないって言ってたけど? 
その男とはやってないんだ?」
 
先ほどのあたしの出まかせをしっかり覚えていることにちょっと驚いた。
でも、手を止めてはくれない。むしろ、もっと奥に入り込んでかき回そうとする。
あたしは頑張って脚を閉じようとするけれど、晶はもう一方の手でそれをおさえる。
 
「うるさいわね! あんたに関係ないでしょ!」
 
顔をそむけて見ないようにしても、強い刺激は伝わってくる。
息が荒くなってきた。
ぴちゃ……ぴちゃ……と晶の指の動きに合わせて水音が聞こえてくるようになった。
恥ずかしい……。 一体どうしてしまったのだろう、あたしの身体は。
 
「まあ、初めてだろうが遠慮なくいただくけどな」
 
その言葉にどきっとしたときにはもう遅かった。
 
「いっ……!? 痛っ……」
 
晶の指はあたしの中に侵入してしまった。
指が細いからか、それほどの痛みはないが、そんなところに物を入れたのは初めてだから、
その驚きが「痛い」という言葉に変化したのだろう。
だが、こんなものは序の口だ。あたしもそれはわかっている。
こんな程度で終わらせるはずがない。最後までするつもりだろう。
受け入れるつもりなんてなかったが、もう諦めの気持ちだけがあたしの心を支配していた。
269ツンデレな幼馴染 ◆223206156M :2008/07/18(金) 23:34:46 ID:YJjwWFSC
「これくらいで痛いのか? じゃあ気絶しちゃうかもな」
 
そう言いながら、晶は器用に片手だけで着ている物を脱いでいく。
やがて現れた「それ」にあたしの目は釘付けになった。
こんな大きなモノが下着の中におとなしく収まっていたなんて信じられない。
長くて、太くて……。 
怖かった。そんなモノをあたしの身体が受け入れられるはずがない。
 
「まだそんなに濡れてないみたいだけど大丈夫だよな」
 
あたしの大事な部分をびっくりするほど優しく撫でながら、冷酷なことを言う。
嫌だ、怖い、いろんな負の感情があたしの胸の中を駆け巡る。
しかし、容赦なくその瞬間はやってきた。
 
「んっ……! んんーーーっ!!」
 
いつの間にか晶の片手があたしの口を塞いでいた。
大声をあげさせないためだろう。実際、塞がれていなければ物凄い大声をあげていたに違いない。
痛い、などという次元のものではない。気を失いそうになるほどの激痛。
初めてだからだろうか。それとも、しっかりと準備できていなかったからだろうか。
あたしは痛みの中で文字通り頭が真っ白になるのを感じていた。
270ツンデレな幼馴染 ◆223206156M :2008/07/18(金) 23:35:28 ID:YJjwWFSC
 
「中に出しちゃったけど、良いよな」
 
首を振る元気もなかった。
晶は嫌になるほどすっきりとした顔で手早く衣服を身に着けていく。
あたしを縛り付けていたベルトは外してくれていた。
でも、もう動くのも億劫で、あたしは寝転がったままだ。
身体中がじんじんと痺れているような妙な気分だった。
脚の間からは収まりきらなかった晶の体液が漏れ出している感触が伝わってくる。
 
体育の時間は終わってしまっただろうか。
早く戻らなくては叱られてしまうかもしれない。
あたしは重い身体をのろのろと起こした。
271 ◆223206156M :2008/07/18(金) 23:36:09 ID:YJjwWFSC
おそまつさまでした。
272名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 00:03:09 ID:gTeZZXRK
('A`)
273名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 01:33:36 ID:7VAON1eZ
気味というか普通にレイプだよね。

久しぶりのSSなのは嬉しかったけど。
274名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 02:15:19 ID:4NJJnbPx
乙でしたー
ただこれはツンデレか?
275名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 04:25:33 ID:yquiqQON
おつ
なんとまあ荒れそうなSSだこと
276名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 07:16:51 ID:aXKd6wFI
投下乙。
このまま続くとツン堕ちとかになりそうだなあ。
277名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 09:53:23 ID:FnUnoiFJ
GJ
そして一年以上の大傑作 乙!
・・漏れもSS書きたくなってきたおぉぉ
しかし到底叶わぬ夢・・orz
278名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 11:44:22 ID:VI7qFU0y
晶の方に、強烈なツンデレ補正をかけてしまう自分は、かなり末期だと思う
279名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 04:19:04 ID:lcyJuIqd
ツンデレカップルだな
ツンデレがツンデレをレイプ
280名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 21:32:43 ID:u1jEmt4W
保守
281名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 21:49:45 ID:p7zmjdgX
どうやら280と見てるスレがかぶってるようだな
282名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 01:40:13 ID:+TOFUWju
勝手な妄想を垂れ流しですまん


「−−でさあ、俺はその子の事が気になって結構話し掛けてるのに、
その子は全然気付いてないっつうか・・・一緒に話してても機嫌悪そうなんだよね〜」

さっきからこんな相談ばかり。
何よ!人の気持ちも知らないで・・・
「その子はアンタに気が無いんじゃないの?さっさと諦めて次の子探した方が良いわよ」

「・・・やっぱ俺じゃ駄目なのかなぁ・・・」
「駄目もなにもアンタと付き合ってくれる女の子なんて一人もいないわよ!」
「はぁ〜・・・今年も駄目なのか」

だからそんな女さっさと諦めて、アンタは私だけを見てればいいんだから!
それなのにいつもいつも私にばかり相談してきて・・・本当に鈍感なんだから!!
「でもその子の事がどうしても諦めきれないんだよな〜」

な・・・・・・!そ、そんなに好きなの?
なんで?どうして分かってくれないのよ!?
私は小さい時からアンタだけしか眼中になかったのに・・・
「そうなの・・・だ・・・だったら・・・玉砕覚悟でお、想いを伝えれば?」

「ん〜、じゃあお前の言う通り告ってみるよ。お蔭で勇気が湧いてきた・・・ありがとな!

・・・ずっと前から・・・お前が好きだった。俺と付き合ってくれ!!」

「−−−−っ!ば、ばかっ・・・いきなり何言うのよ!!」
そんな事言われてもまだ心の準備が出来ていないんだから!

「・・・やっぱり俺なんかじゃ駄目だよな。悪かったな、変なこと言って」

「そ・・・そんなの良いに決まってるじゃない!
わ、私だって・・・小さいときからアンタの事が大好きだったんだから!!」



ダメだ、俺の脳味噌じゃコレが限界orz
283名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 01:49:20 ID:Oo1GnF4a
や 十分GJ
284名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 09:32:24 ID:/S/HHdKc
GJ!!
続編キボン
285名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 01:05:28 ID:Ys8S2Wqo
登場人物を1から創作するのは難しいもんだな・・・
どこかしら既存キャラと被ってるしorz

何より名前を考えるのが一番大変だ
286名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 23:16:36 ID:Lokl+dB9
短編なら彼と彼女で通すのもありだと思う
287名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 04:30:31 ID:3sGVcN+D
>>282 を見た瞬間、いい発想が浮かんだので、ちょっとまとめてみた。


エロ無しですが、投下してみますね。
288名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 04:31:27 ID:3sGVcN+D
ある休日の出来事。

この日、俺、霧村司は柳生香澄の家を訪れていた。
俺と香澄は小さい頃からよく遊ぶ仲で、中学の頃までは俺が香澄の家に行ったり、香澄が俺の家に来たりということを普通に続けていた。
だが、ここ最近はお互い時間が取れないで、そういうことができなくなっていた。
「そういえば、久しぶりよね。あんたがあたしの家に来るのって」
「そりゃあ、この頃は時間が取りづらくなってからな」
「ふぅ〜ん。別に無理して来なくて良いのに」
「俺が来て嬉しいくせに」
「だ、誰が嬉しいもんですかっ!べっ、別にあんたが来たって、嬉しくともなんともないんだから…」
「顔、にやけてるぞ?」
「っ!ぅ、うるさいわよ、バカ!」
香澄をからかうのってホントに面白いなぁ、なんて思ったのはこれが初めてじゃない。
なぜなら香澄をからかうと、いつもこんな感じで本気にしてくるからだ。
「…で、今日は何の用で来たの?」
「おいおい、いきなり冷たくすんなって」
「ふん。どーせあたしは、気持ちを素直に表せませない女の子ですよーっだ」
「いやいや、そんなこと誰も言ってないだろ。…少なくとも事実だけど」
「あんたはいちいち一言多いのよっ!」
289名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 04:31:47 ID:3sGVcN+D
香澄の正拳突きが見事、俺の腹部にクリーンヒットした。
「ぐふぅっ!?」
「あっ…ご、ゴメン。つい昔のノリで…」
「い…いいパンチを持ってるじゃないか。これなら…神の子にもk」
「前言撤回。もう一発叩きこもうかしら?」
「や、冗談。ホント勘弁して下さい」
「ふふん」
香澄は幼い頃から空手を習っており、今では初段の実力を持っている。
本気でやり合えばただじゃすまない。
ということで、からかうのをやめることにする。
「じゃ、話を本題に戻すけど…」
「あんたがわざと延ばしてたんじゃない」
「ま、まぁそうだけどさ…。今日来たのは、ちょっと勉強を教えてもらおうと思って、な」
「へぇ、珍しいこともあるのね。あんたがあたしに勉強を教えてもらいたいなんて」
「まぁ、色々と事情があるんだよ」
「変なの。まぁ、立ち話も難だから、上がって」
「それじゃ、お邪魔しまーす」
廊下を歩くだけで、ほんの数ヶ月前を思い出す。
芳香剤の置き場所、掛軸の位置、どれもまったく変わってなくて、俺にとって、妙に落ち着く空間となっていた。
「ふふっ」
「な、何?突然笑い出して。気持ち悪っ」
「いや、何もかも変わってないんだなって思ってさ。つい」
290名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 04:32:52 ID:3sGVcN+D
「頭、おかしくなったんじゃないの?」
「別にそれでもいっか」
「何よそれ。バッカじゃないの?」
香澄の罵声をBGMに部屋に向かった。



あれから30分が経って。
「疲れた〜。ちょっと休憩にしようぜ」
「ちょっ、まだ30分しか経ってないでしょ?」
「それでも疲れたもんは疲れたんだよ。だぁ、休憩!」
俺、必死の抵抗。
「はぁ、しょうがないわね…。じゃあ、ちょっと待ってて。飲み物とお菓子用意するから」
そう言って香澄は部屋を出て、一階に降りていった。
「…勝った」
周りに人がいれば確実にツッコミが入りそうな独り言。
その場でゴロンと寝そべる。
しばらくして、香澄がジュースとお菓子を持って戻ってきた。
「はい、まったくもう…。家にある物全部持ってきてあげたんだから、感謝しなさいよ?」
「そうか、俺のためにわざわざそこまで…」
「べ、別に、あんたのためだけに持ってきてあげたわけじゃないんだからねっ!勘違いしないでよね!」
「……」
「な、何よ、黙りこんで」
「いや、ナイスツンデレ発言ぐぱぁっ!」
…即座に蹴っ飛ばされた。
「どこをどう扱き上げればそんな言葉が出なくなるのかしらね」
291名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 04:33:18 ID:3sGVcN+D
うずくまる俺の前に仁王立ちして冷酷な笑みを浮かべながら、そんなことを言う香澄。
いや、まぁその、個人的に下腹部を要求したいんですけどね、むしろ足k…
なんてことを瞬間的に考えてしまった俺、多分、末期的症状。
「ほら、バカなこと言ってないで。ねっ、食べよ?」
「お、押忍。かたじけない」
ちぇ、残念…なんて思わないかんな!多分、絶対に。
「それにしても、あんたもホントに変わってないわよね。昔から」
「そうか?内面的には微妙に変わったと思うんだけどな」
「ま、まぁ多分、内面的には、ね。昔からのあんたを見てるから、なんとなくそう思っちゃうのかな」
「そうだな。結構ちっさな頃からの付き合いだもんな」
お互いのことは知り尽くしていると言っても多分過言じゃないと思う。
相手の好きなことから嫌いなことまで…何もかもほとんど全て。
「あ〜あ、もったいないなぁ」
「何が?」
「いや、こういった幼馴染みって、恋人になる確率すごく高いじゃん。だから、なんか損してるなぁ、って思って」
「なっ…!?だっ、誰があんたなんかを好きになるもんですか!」
「おいおい、いくらなんでも話が飛躍し過ぎだろ」
292名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 04:33:50 ID:3sGVcN+D
「あっ…。そ、そうね。何期待なんかしてるんだろ…バカだな、あたしってば」
「ん?何か言ったか?」
「う、ううん、何でもないの!何でも…」
首をブンブン横に振って答える。
「ふ〜ん。…でさ、その、話を飛躍させるけどさ、実は俺…好きな奴がいるんだよな」
「えっ…。そ、そうなんだ…。いつから?どんな人?」
「そうだな。まず、思い始めたのは高校入ってからなんだ。髪は短くて、さっぱりした性格で、それから…もし付き合ったら確実に俺と雰囲気の合いそうな、そんな人だ」
「へ、へぇ〜。その娘、よっぽどあんたと同じような根がうるさそうな人なんでしょうね。で、その娘に告白はしたの?」
「いや、まだなんだ。」
「だらしないわね〜。いい?こういったものは告白した人勝ちなの。ましてあんただったら、ちょっとはかっこいいから、意中の相手がいない限り一発で決まるわよ」
「そういうもんか?」
「そういうもんなの。頑張りなさいよ。あたしも応援してあげるから」
「…そっか。ありがとな。おかげでなんか言えそうになってきた」
「そうそう、その意気その意気。あっ、なんだったら今、練習してみる?」
293名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 04:35:24 ID:3sGVcN+D
「いや、いいよ。その代わりと言っちゃなんだけど、俺が好きな奴の名前教えてやるよ」
「いいの?というより、そういうのって心の中で留めておくものじゃないの?」
「いいんだよ。お前から告白の仕方なんか教えてもらったから、そのお礼?みたいな、そんな感じだから」
「ふ〜ん、そうなんだ。じゃ、改めて。その人って、誰?」
俺はわざとらしく深呼吸を一回した。
「俺が好きなのは……お前だ」
「えっ…?」
「霧村司は柳生香澄のことが本気で好きだ」
「ちょっと、えっ?何?冗談…よね?」
「いや。俺はお前のことが好きなんだ、香澄」
思い始めたのは高校に入ってからだった。
それまでは普通に接していたけど、いつの日からか、俺は香澄のことを意識していた。
俺のこの気持ちは多分…いや、間違いなく、ずっと前から分かってたことだったんだと思う。
ただ、このことを言ってしまって、香澄との関係が崩れてしまうのを一番恐れていた。
だけど、いつまで経っても言わないでいたら、永遠に片想いのままで終わってしまっていたかもしれない。
その方が、俺としてはもっと嫌だ。
294名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 04:36:05 ID:3sGVcN+D
そもそも今日、香澄の家に来たのはこれがメインのはずだった。
それなのに俺は、どのタイミングで告白すればいいかを悩んでいた。
なんて臆病だったんだろう、俺は。
でも、それも今この瞬間で終わりだ。
「もう一度言う。俺はお前のことが前からずっと好きだった。出来ることなら…俺と付き合ってくれ」
沈黙の時間が流れていた。
返事をどうするべきか、悩んでいるんだろう。
それからしばらくして…香澄は答えた。
「…ずるいよね、司は」
「え…?」
「あたしだって…あたしだって、司のことが好きなんだよ!?司よりも、ずっと昔から!それなのに…あたしより先に言っちゃうなんて…ずるいよぉ…」
香澄は泣きながら、俺の胸に飛び込んできた。
「っく…。あたしも、司のことが、好きなんだからっ!」
多分、分かってたことだったんだ。ずっと、昔から。
俺が香澄の気持ちをいつの間にか気付いていたのと同時に香澄も俺の気持ちをいつの間にか気付いていたんだと思う。
ただ、お互いが相手を傷つけるのを恐れたが故に、香澄は素直になれず、俺は香澄をからかい続けてきた。
「ありがとう、香澄」
香澄さは顔を上げ、その唇にキスをした。
「んっ…」
俺も香澄も、初めてのキス。
どれだけ相手を求めても、届かない気持ちが――



――今、ようやく届いた。
295名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 04:38:02 ID:3sGVcN+D
以上です。
ありがとうございました。


てか、これ小説か?
書きながら、そう思うような一作でした。
296ABC:2008/07/24(木) 06:43:36 ID:5YbofCCN
誰よりもh(ry
GJ!
297名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 09:47:41 ID:rbbR9Smk
何か目から汗が…

いやいやGJ!!
298DEF:2008/07/24(木) 14:23:01 ID:nAwhXzFS
gj!
続きはエロ?
299名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 15:07:24 ID:GNQ2CoAI
ツンデレって素晴らしいね。GJ
300名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 17:03:33 ID:Hr8GT0fU
香澄がヤリチン野郎に寝取られてはじめてGJだろ。
301名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 17:20:40 ID:9XUOD6WT
スレ違いだぞ
302名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 02:32:02 ID:uMxiNg3m
ゲームやっててふと思ったが、軍人+幼馴染み+ツンデレってどうよ?
303名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 11:26:45 ID:nSOidCxo
komusume
304名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 23:11:34 ID:WHJHuGdt
べべべ、別にあんたのために戦ってるわけじゃないんだからね!!
じょ、上官だから言うこと聞いてあげてるんだからね!!
え?拷問された時のために訓練をする?
ちょ、やめなさいよ!!だめっ!はなし、てぇ……あっ

幼馴染って入れにくいと思うんだ
305名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 23:23:44 ID:47q7s2oH
>>303
連載決定から連載開始まで2年かかったくせに16話で突き抜けた漫画を思い出した。
306名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 23:48:55 ID:FYJIDNDJ
(病院のベッドで包帯グルグル巻きで寝てる男の横に立つ女下士官)

ありがとう軍医殿。しばらく二人きりにしてくれ…

…全く、馬鹿じゃないのかお前!私を庇ってそんな大怪我なんかして!

大体お前は小さい頃からそうだ!近所のバカ犬から私を守ろうとして尻を噛まれたり、
池に落ちた私を助けようとして溺れかけたり!だれがいつそんな事頼んだ!

あの時…お前があんな血塗れになって倒れて…ピクリとも動かなくなって…
てっきり私はもう…もう…

…(クスン)…は、はァ?だ、誰が泣いてなんかいるかバカもん!お前みたいな阿呆の
ために泣く訳など…え、ど、どうした急に!どこか痛むのか、どこが…

アッ!ば、バカッ!何するんだ離せ!病院のベッドで、ど、どういうつもりだ!
傷に触るだろ!そんな、そんな事したら…あ…んっ…や、止め…あ…

…でどうだろうか

307名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 23:50:52 ID:ZFb56O8g
よろしい、続けてくれたまえ
308302:2008/07/26(土) 01:04:00 ID:6VaNQgMY
この流れの言い出しっぺである自分が何も投下しないのは気が引けるので只今執筆中。

べ、別に早く投下すればいいなんて思ってないんだから!
意外と難しくて手間取ってるだけなんだからね!!
309名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 01:05:30 ID:6VaNQgMY
言いたいこと逆だったorz
310名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 19:21:28 ID:bkeBRDz3
早く頼むぜ☆
311名無しさん@ピンキー:2008/07/30(水) 21:33:59 ID:XVWjLxbl
圧縮回避保守
312名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 23:19:36 ID:KxKzcS6P
尊大系のエロがみたい
313保守:2008/08/02(土) 21:46:13 ID:BE2nqfpZ
付き合ってるんじゃね?と噂が立ってる幼馴染み
「べ、別にあんたなんか好きじゃないんだから!」
「そうかい、僕は君の事結構好きだけどね」
「え・・・?」
「不快の思いにさせてすまなかった。これからはなるべく会わないようにする。じゃ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!私は、私は、あんたが・・・」
「また明日な。気をつけて帰「好きなのよ!!」へ?」
314名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 00:54:45 ID:GIm1ZlFf
>>313
べ、別に続きが読みたいわけじゃ…、ないんだからっ!!
315287:2008/08/03(日) 23:12:59 ID:/OwoMOAR
どうも。
この間書いたものの続きを書いてみました。


相変わらず文章力のない自分ですが、投下してみますね。
316名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 23:13:27 ID:/OwoMOAR
俺と香澄が恋人という関係になって、早くも3週間が経った。

付き合い始めた次の日から、なぜか学校中に知れ渡っていたらしく、その事を茶化しに来る奴らが大勢いた。
そんなことも、今ではすっかり無くなり、ようやく落ち着いた雰囲気の毎日を送れるようになった。
学校からの帰り道、香澄と二人で歩きながら、俺は今日のこの後の事を考えていた。
今日は近くの河川敷で花火大会がある日なのだ。
今までの俺は、野郎どもとつるんでよくこの祭に繰り出していた。
だが今年は違う。
俺には香澄という彼女が出来たのだから。
ましてやこの祭を香澄とのデートが出来る絶好の機会として使える。
最高じゃないか!
…そう考えただけでつい笑みがこぼれてしまう。
「ふふふ…」
「何ひとりで笑ってるのよ?相変わらず気持ち悪いわね」
「それも私だ」
「はぁ?」
「いや、まぁ今日は夏祭りがあるわけだし、香澄とデート出来るいい機会だなぁ、って思ってさ」
「なっ…。そ、そういうこと、普通こんな所で言う?」
帰り道。
帰宅途中の学生やおばちゃま達がいるこの時間帯。
はっ、と我にかえる。
周りの視線がかなり痛い。
「ご、ゴメンな。調子に乗ってつい…」
「まったく…。少しは周りを見てから話してよね」
「そうは言っても、楽しみなんだろ?俺と一緒に行くのが」
「べっ、別にあんたと一緒に行くのが楽しみなわけじゃないんだからっ!その…そ、そう!今日の花火を見るのが楽しみなのよ!うん…」
「ったく、相変わらず素直じゃないなぁ、香澄も」
「なによ。あたしはこれでも素直な方ですーっ!」
「はいはい…、先、行くぞ」
香澄の言い訳など聞かず、さっさと歩く。
「あっ、ちょっと待ちなさいよっ!」
追いかけてきて横に並ぶ。
俺はそのまま黙りながら歩き続けていたが、その隣で香澄が一人ぶつぶつと何かを呟いていた。
「…何か言いたいことでもあるのか?」
「べっ、別に。誰があんたなんかに言いたいことがあるもんですか」
ぷいっとそっぽをむく。
あるんじゃないか。
まぁ隣にいるわけだし、十分に聞こえてるんだけどな。
317名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 23:14:05 ID:/OwoMOAR
辺りが段々と暗くなり、香澄との約束の時間が刻一刻と迫っていた。
俺は待ち合わせ場所に5分ほど早く到着して、香澄を待つ事にした。
周りを見回すと、人、人、人の大衆。
その中には当然、恋人同士の人たちもいるわけで、なんかこうイチャイチャした感じで…
「ああっ、何かムカつく!」
俺もああいう風に香澄とイチャイチャするのか?
…。
……。
………。
「…すごく…素敵です…」
俺、屈服。
そこに丁度いいタイミングで香澄がやって来た。
しかも、浴衣&下駄の姿で。
「ゴメンね、待たせちゃった。…どうかな?」
香澄がその場で回転する。
うはっ!やべぇ…すごく萌える。
「…すごく…素敵です…」
「なっ…!ぅ、うるさいわよっ!別に嬉しくとも何とも無いんだから…きゃっ!?」
回転の勢い余って尻餅をつく。
自分で言っておきながら、そりゃ無いだろ。
てか、転ぶな。
「大丈夫かよ…ほら、立てるか?」
俺は香澄に手を差し出す。
「痛たた…ご、ゴメンね…」
「まったく…どじっ娘の属性なんてねぇぞ、俺」
「だ、誰がどじっ娘よ!?たかが回って転んだだけでしょ!」
「世間ではそういうのをどじっ娘って言うんだ。You see?」
「うぅ〜…何か納得いかない。まして司なんかに言いくるめられるなんて…」
どんなだよ。
「ほら、拗ねてないで行くぞ。とりあえず何か食べるか?」
「あっ、あたしたこ焼き食べたい!」
気持ちの転換早っ!
まぁ、元気になったからいっか。
…それからしばらく、俺たちは花火の打ち上げの時間帯になるまで適当にブラブラして屋台巡りをしていた。
たこ焼きの一件から、香澄からのリクエストが次々と殺到し、それらを全て応えていって今の時間帯になる。
更に悪い事に、それらの出費は全て俺負担。
おかげで、俺の財布の中が氷河期を迎えようとしていた。
「えへへ…」
人通りの少ない場所で笑顔でリンゴ飴を食べる香澄。
「…そんなに食べてたら、太るぞ?」
そして呆れつつ、そんな香澄を指摘する俺。
この構図、なんだかなぁ…。
「何よ。大体そういうこと、女の子に面と向かって言う?」
「知るか。俺の無言の抵抗だと思え」
「だって…ねぇ?」
「なにが、ねぇ、だよ!俺はまだ何も食べてねぇんだよ!」
「じゃ、買えばいいじゃないの」
「お前のペースに合わせていった結果が現状だよ!」
「はぁ?それじゃまるであたしが悪いみたいじゃない!」
318名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 23:15:37 ID:/OwoMOAR
そう回りくどく言ってるつもりなんだけどな…。
「しょうがないわね…。じゃあ、はい、これ」
そう言って自分が食べかけていたリンゴ飴を渡す。
「別にあんたが可哀想だなんてこれっぽっちも思って無いけど、あんたがうるさいから…しょうがなくあげるだけなんだから」
「そうか。じゃあ、ありがたく頂くとするか」
リンゴ飴を受け取り、香澄が食べていた部分から食べていく。
そしてふと思う。
「…これって、間接キスだよな?」
「う、うるさいわね、一々!大体…あたしと司は、その…こ、恋人同士なんだし、いいじゃない」
「そうだよな。俺たち、恋人同士だもんな」
そう、別に誰が何と言おうとも、俺たちは恋人同士なんだ。
俺は香澄の彼氏であって、香澄は俺の彼女であるのだから。
しばらく二人はその場で立ち止まり、互いを見つめあっていた。
ちょうどその時、花火が上がり始めた。
「わぁ…、凄く綺麗な花火ね…」
「…確かにな。だけど俺は…花火に照らされたお前の姿の方が、もっと綺麗だったと思うけどな」
な、何言ってんだ俺?
こんな恥ずかしい台詞、俺のどこから出てきたんだよ…。
「なっ、何言ってんのよ司…」
暗くてあまり顔が見えなかったけど、見えていたら絶対に俺も香澄も顔が真っ赤だったに違いないだろう。
「その…、あ、ありが、とう…ね。んっ…」
柔らかな香澄の唇が、俺の唇に触れた。
「…大好きなんだからね、司…」
どれだけ時間が経ったのかも分からないけれど―――



―――そのキスの時間は、永遠に感じられた。



―――花火大会が終わってからの帰り道で。
ゆっくりと歩きながら、家に向かう俺と香澄。
もうすぐ別れなければならないと分かっているから、それが少し切ない。
出来れば今日は香澄と一緒に居たい。
それでもって……。
そんなことを考えていると、すぐに香澄の家に着いてしまった。
「あ…」
「着いちゃったね。じゃあ、また明日…」
「あ、ああ。また明日な…」
そうだよな…時間的にもアウトな時間帯だし、所詮は叶わぬ願いだった訳だ。
「…帰るか」
そのまま帰ろうと進行方向を自分の家へと向けた時だった。
「あ、待って!」
香澄が俺を呼び止める。
「どうしたんだ?」
319名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 23:16:03 ID:/OwoMOAR
「いや、それがね…、うちのお母さんが何か急用が出来たから今日は帰れないって」
「そうか。それ…で?」
まさかこれって…?
いやいや、あまり期待はするな。
「でね、出来れば…ちょっとでいいから、家に寄ってもらいたいな…って」
うわ、マジかよktkr!
「一人じゃ寂しいからか?」
こんな状況でもついからかってしまう俺の性分。
「…い、嫌なら、いいのよ?別に、寂しい訳じゃないんだから…」
「冗談だって。今日は香澄と一緒に居てやるって」
「ホントに?」
「嘘ついてどうなるんだよ」
「そうよね…。じゃあ、上がって」
そのまま香澄の家に入り、部屋に向かった。
ベッドに二人並んで座り、しばらくそのままでいた。
俺の胸の鼓動が高鳴り続ける。
「ねぇ、司」
「どうした?」
「ほんのちょっとでいいから、あたしと一緒に居てくれる?」
「もちろん」
「ふふっ、ありがと。…大好きだからね、司」
このフレーズを聞いた瞬間、多分、俺の理性がぶっ飛んだに違いない。
俺だって香澄が大好きだ。
そんな大好きな香澄を……俺はめちゃくちゃにしてやりたいと思った。
「なぁ、香澄」
「ん?何、司…きゃっ」
香澄をベッドに押し倒し、覆い被さるような体制でキスをする。
「んっ…ちゅっ…ち、ちょっと、何するのよ、んん…」
じたばたと抵抗をする香澄だったが、次第に抵抗しなくなっていた。
「俺と香澄って、恋人同士だよな」
「そ、それはそうだけど…いきなりそんなことされたら、びっくりしちゃうじゃない…」
香澄の言い訳を無視して、もう一度キスをする。
「んん…ふぁ、ちょっ、激しいよぉ…んぁっ…ひゃあっ!」
浴衣のすき間から手を突っ込み、胸を揉みしだく。
「やぁっ…あん…、ち、ちょっと…うぅんっ」
「まだ胸触っただけだぜ?」
「ちょっ…やめ、んっ!…だ、だって司がぁ…ふぁあぁっ!」
軽い愛撫でから徐々に執拗な揉み方へと変わっていく。
「あっ…、っあ、はぁ…、はぁっ…、やだ…あぅっ!っくぅ…」
香澄の息がだんだん荒くなり、身体も火照りが止まらなくなる。
俺は、浴衣を脱がせていきつつ、ブラの上から乳房を揉み続ける。
「こういうの、嫌なのか?」
「…い、嫌じゃないけど…恥ずかしいよぉ…」
「そうか、じゃあ…続けるぞ」
320名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 23:17:32 ID:/OwoMOAR
それと同じくして、香澄の膣内に入り込んだ肉棒は熱を帯び、今にもはちきれそうな脈動を感じさせ、限界が近いことを知らせている。
「香澄、俺、もう…」
「え…っ!あっ!んっんっ…んあっ!やん…っ、ちょっ…激し、ふぁああっ!!」
更に激しく出し挿れを繰り返し、それに乗じて香澄の身体もビクビクと反応する。
熱きものが最高潮に達し、そして――
「ああっ!あああああ〜〜〜っ!!」
その白い液体を膣内て放出し、二人とも力を失った。



「信っじらんない!いきなり犯しにかかるなんて!」
「だから、悪かったって」
その後俺は、いきなり襲いかかったことに関して香澄に怒られた。
「おまけに膣内にまで出しちゃうし!あぁ、もう最悪っ!」
「…ホントに悪かったよ…」
「まったく…」
「そんなに嫌だったか?俺と…するのが」
「それは…、嫌じゃ、なかったけど…」
香澄はそっぽむいて答えた。
「でも次からは、もうちょっとムードを考えてからしなさいよね」
「ホント申し訳ない…」
「はぁ…、もういいわよ。それより、そろそろ帰らなくていいの?」
時計の針は、もう少しで12時を指そうとしていた。
「確かにやばいな。じゃあ俺、帰るな」
俺俺が立ち上がると、香澄は俺を呼び止めた。
「ちょっと待ってよ。その…、おやすみのこれは?」
香澄は自分の唇に指を当てた。
「なんだ、それか」
意図を理解した俺は、香澄に口づけをした。
「…おやすみ。司」
「おやすみ、香澄」
どんなことがあろうとも―――



―――未来永劫、こんな関係がずっと続けばいい。
そう思った一日だった。
321287:2008/08/03(日) 23:19:13 ID:/OwoMOAR
以上です。
ありがとうございました。


完成

確認

まさかの急展開

自分の文章力の無さに絶望
ってやつですね。
322名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 23:25:12 ID:Hwx0rAU1
スーパー急展開ww

でもGJ!!
323名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 23:56:09 ID:IvIZYfdi
あまりに展開速すぎで超わろた
とりあえずGJ
324名無しさん@ピンキー:2008/08/04(月) 01:38:35 ID:WCLbRDkZ
キスとペッティングと挿入を同時にこなすだと!?
なんという巧みの技w

だがそれがいい。GJ
325名無しさん@ピンキー:2008/08/04(月) 23:31:29 ID:LzVYO60w
吹くわwwwGJwwwwww
326名無しさん@ピンキー:2008/08/05(火) 21:29:03 ID:4YbZuYl+
一カ所抜けてない…?
後はGJ!!
327名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 22:24:30 ID:oV7KmtMn
夏なので保守しておきます。
328名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 19:58:40 ID:Ybc9VP7F
「あ〜暇だ〜」
「アンタねぇ・・・夏休みだからってだらけてんじゃないわよ!」
「だってココ最近やること何にも無いんだぜ?」
「バカ!やることなら見つければ良いでしょ!?」
「見つけるって、何を?」
「そんなの決まってるでしょ!それ位自分で考えなさいよね!」
「なんだよ・・・いきなりそんなこと言われてもわかんねえって。教えてくれよ」

「バ・・・バカ・・・そんなの私の口から言えるわけないじゃない」
「じゃあ俺も何もしない」
「ちょ・・・」
「俺はお前じゃないから、言ってくれなきゃお前がしたいことだって分からないんだぜ?」
「わ、分かったわよ・・・言えばいいんでしょ!言えば!!

わ、私は・・・あ、ああアンタと・・・・・・保守がしたいの!」
329名無しさん@ピンキー:2008/08/13(水) 00:32:27 ID:sTZ3MTYB
ツンデレラ
330名無しさん@ピンキー:2008/08/15(金) 23:01:23 ID:PU2rj7hN
単発とか短編が増えると住人も増える気がするな。

…べ、別に私はこのスレが気になるとかそういうんじゃないぞ?
ここがどうなろうと、し、知ったことではないしな!ほ、本当だぞ!?

…むぅ…何をにやけているんだ?
ええい、ニヤニヤしながらこっちを見るんじゃない!!////
331名無しさん@ピンキー:2008/08/16(土) 10:36:45 ID:clc+Zz1W
とか言って、ホントは期待してるんだろ?
このスレだって、お前のかちゅ〜しゃのお気に入りに入ってるしなぁ?
332名無しさん@ピンキー:2008/08/17(日) 12:03:44 ID:BIx/gFX9
ahgrr
333名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 03:45:49 ID:eZNZv0a/
スイーツ&ファンタジーツンデレ置いていきます。
334名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 03:56:46 ID:eZNZv0a/
「ルイーズ。お茶」
「自分でいれろ。」
「何で俺が。」
「……逆に聞きたいくらいだ。」
「えー。何を?」
「いいか、リカルド。私がお前の家に来ているのであって、私が客なんだ。
私は客。主人はお前。お前だ。いいな?
だから何故私がお前なんぞに、お茶を出してやらなくていけない?」

だらしくソファへ寝転がったまま動かないでいる男。
その旧友を赤味の強い瞳で睨みつける銀髪の女。
女は落ち着いた物腰をしていた。
滅多なことでは表情を崩さず、勿論この状況にも怒鳴ることはしなかった。
冷静に順序立て説明をすることで、愚かな男に分からせてやろうとする。
いつもの事だが、その落ち着き払いすぎている姿は何処か不可思議だ。
見た目の年齢は20歳そこそこだが歳不相応な空気を纏っていた。
同性でさえ見惚れる美貌を持っているというのに、冷厳な態度を崩さないせいで、誰も寄せ付けなかったが

「だってー」

男はびくともせず視線だけを女に向けて言う。

「俺がいれるより、ルイーズがいれてくれたほうが美味いんだもん。」

氷の様な眼差しで射られようと、男にとっては慣れっこな事であり動じることなど一つも無い。
駄々を捏ねてた後いつも通りニカリと笑う。
確信的に笑う。

「お前は子供か……」
「ガキでいいから、ね? お ね が い。」

太陽のようにまぶしい笑顔を向けられたルイーズは、尚一層不機嫌そうに眉根を寄せる。

「……。」

先日、男の家に日本人の友人が訪ねて来た際、美味い茶葉を二人は譲り受けていた。
ホットの湯でいれるんだよ、と友人の嬉しそうな笑顔が忘れられない。
リカルドもルイーズも、日本産の「ぎょくろ」というのは口にした事が無かったからだ。
自分が二人に美味い物を紹介出来たのが嬉しかったのだろう。
友人はこの茶専用の独特のポットまで置いていってくれたのだ。
はじめ二人はどうして良いのか解らず、子供のようにただじっとその茶を並んで覗き込んでいた。
そして冷めきった頃にようやく作り終え、やっとリカルドがはじめの一口を。

「ルイーズ!美味い!美味いぞコレ!」
「うるさいぞ……だいたい紅茶葉と同じなのだから、味は大して変わらないだろう。」

言った言葉に反して興味があったらしい彼女も、キラキラとした瞳でいるリカルドの手にしたゆのみを見つめていた。
彼が「ほれ、飲んでみ」と手渡すと大切そうに受けとめる。
そして彼女もまた一口。
「……っぁ、」
大して感想を言わなかったが「少し残してくれよ。」と言う彼の言葉を無視して全て喉に通してしまった。
それからすっかり二人はお茶の虜なのである。
335名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 04:01:16 ID:eZNZv0a/
ルイーズが茶の準備をし終え階段をゆっくりと昇っている。
ついでに貰ったボンと言うらしい大きな皿(だと二人は思っている)に二つの湯飲みも乗せながら。

「っく、カップに比べ、ゆのみとやらは……」

縦に長いのだ。
慣れない手つきで不安定さゆえ、グラグラとさせながら階段を一歩一歩登る。
肩までついた髪が邪魔だった。結っておけば良かったと今更後悔しながら

「だから、何で私がこんなことを……!」
盛大に舌打ちをした。

「待ってました。って、あれ? 」
「……」
「いい匂いがするけど、それクッキー?」
「……洗い物はお前だぞ。」
「わかってるよ。つうか、このチョコチップはわざわざ焼いてきてくれたんだ。」
「そうじゃない。出掛けになって時間が中途半端に余っていたから。」
「この間のベリィパイも旨かったけど、今回のも旨そー」
「別に、ぎょくろには合わないのだから、後ででもいいし、無理にとは……」

ぽそぽそと尻つぼみになっていく言葉を聞いたリカルドは、子供の様に無邪気に笑う。
先程までの無気力はどこへやら、ソファから勢いをつけて起き上がると
床に置かれたボンの上をワクワクとして見つめだした。
乗せられたクッキーと、茶葉と、白い華奢な手を代わる代わる見ている。
「……やり辛い。」
真剣な眼差しをしたルイーズがで二つの湯飲みにこぽこぽと茶を注ぐ。
「気にすんなって。後蒸らすだけだろ。」
「……お前が見てるだけで、お茶が不味くなる。」
「そりゃすげぇな。」
「もういいから黙っていろ。」
そう言って、きっかり教えられた通りに腕時計で計っている辺りが彼女らしいなぁとリカルドはまた笑う。
「よし。」
「ok!じゃあ」
さぁ頂くかとなったその瞬間、二人きりのこの家の中にけたたましいベルの音が響き渡った。
「えー……誰だよ、これからって時に」
「向こうはこちらの都合を知らないのだから、文句を言ってないでさっさと行け。」
「はいはい。分かったよ。あ!先に飲むなよ!?」
そう釘を指して階段を降りたリカルドの足は少し急ぎ気味だ。
ドタドタと派手な音を立てたのを最後に、シンっと部屋の中が沈黙で満たされる。

「さて……」

「冷めないうちに頂くか。」
彼が帰ってくるのを待ちきれないわけではない。
そうではなく、何故待ってやらなくてはいけない。という思いが先にたった。
茶は自分でいれてきたわけだし、何より素直に待ってやるのが癪に障った。
そしてあの、太陽のような笑顔が腹立たせた。いつもの事だが……
「別に……」
何やら独り言をもらしつつ、自分の近くに置いてある同じ柄の湯飲みのうちの一つを手に取り、持ち上げた。
鼻腔をくすぐる茶の良い香り。
口をつける前に唇を細めて息を吹きかけた。
「ふぅ……ふぅ……ん?」
湯飲みの中を覗き、ピタリと動きを止める。
そして一瞬表情を変えた。
手にした湯飲みをもう一度降ろし、玄関先でまごついている彼の湯飲みとそっと入れ替え、置いた。
336名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 04:02:46 ID:eZNZv0a/
「おかえり。」
「明日町でバザーをするらしいから覗きに来てくれって連絡だった。」
「誰から?」
「市長から。」
「市長がわざわざ?」
「チャリティーらしいからなぁ。次の選挙活動絡みだろ?街中全部には回らないが、目ぼしい奴んとこだけ回ってんだよ。
嫌だねぇー建前だらけの『人間』とやらは。キライだよ。」
「我慢するかいい加減慣れろ。もう何年こっちにいるんだお前は……」
「だってさぁー」
「どうでもいい。そんな事を言っている内に冷める。」
「あ……」

湯飲みの中の茶は減っていない。わざわざ温めたらしいクッキーも、冷めてしまっていて手が付けられていない。
待っていろと冗談で言ったのだが
「悪い。」
待たせてしまっていたのだろうか。
そう思い彼らしからぬ真面目な態度で謝罪するが、彼女は鼻で笑っただけだった。

「突っ立っているなら先にいただく。」
「あー何だよ!んじゃ俺もいただきます!」

床に急いで腰を降ろし、リカルドも一つ湯飲みを持ち上げた。
まだ熱いその陶器。両手に抱えた瞬間、湯飲みの中の物に気がついた。
浮かんでいる、葉とは異物のその物体。

「なぁ!おい、見てくれ。」
「どうした?」

意気揚々と湯飲みから口を離し、ルイーズに小さく手招きをした。
屈託無く笑う彼が差し出した湯飲み。
その中に浮かぶ、小さな小さな――

「茶柱ってのが立ってるぜ。あいつ言ってたよな?
これが立つ茶はすげぇ縁起がいいって。じゃあ、きっと何かいい事が起こるよな。」

太陽のようにポカポカと微笑む男。
赤い眼は直ぐに視線を逸らしてお茶をすすり直す。

「運を使い切ったな。明日死ぬぞ。」
「えぇー!!」

茶は上品な音を立てて喉を下っていく。
湯のみで隠れてしまっている口角の端が緩やかに上がっているのを、彼女自身まだ気がつかない。
337名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 04:03:43 ID:eZNZv0a/
取り合えず今日の投下ここまでです。
おそまつ。
338名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 08:04:59 ID:6qkFxwix
あー、この雰囲気良さげ。
GJ。期待して待ってます。
339名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 10:00:51 ID:afNEVbRC
なんというGJ!
340名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 00:40:52 ID:8ns6oypJ
デレてるデレてるw
GJだ!
341名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 18:22:52 ID:VuMuyw+K
いいね、いい雰囲気だね。
342名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 00:09:08 ID:NiivIMc5
書きながら投下とかマジでやめろ
343名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 09:00:03 ID:vWJIX6Wn
誰に言ってんだ?
344小ネタ 1/4:2008/08/24(日) 18:20:53 ID:gsS5ppF3
 これは夢だろうか、と思う時は必ずと言っていいほど現実の中にいる。

 ベッドの端に腰掛けた俺の膝の間に、ショートカットの黒髪が魅力的な小柄な女性が
跪いてマジマジと俺の股間を眺めている。
「ほ、本気でこんなことして欲しいわけ?」
 こんな姿勢から上目遣いで見つめられれば、普通は嬉しいはずなのだが、勝気な彼女が
やると睨まれているとしか思えない。
「ええっと……して欲しいなぁ、と」
 彼女の大きな黒い瞳が揺れる。
「ふ、ふん。女の子にこんなことさせたいなんて、あんたはヘンタイよ、ヘンタイ!」
「ダメ?」
「バカ!……あんたがして欲しいって拝み倒すから、仕方なくやってあげるのよ。感謝しなさい!」
 別に拝み倒してまで頼んだ覚えはない。彼女が「やってあげるわけじゃないけど、一応、
あんたがして欲しいことがあるなら聞いておいてあげるわ」などとエッチの前に言い出したのが
事の発端だ。
 いざ前々から興味があったことを口にすると、彼女はあらん限りの言葉で散々に俺を罵った。
そのケがある人ならきっと大満足なのだろうが、残念ながら俺にはそんなケは毛頭ないわけで、
浴びせられる言葉の数々を項垂れて大人しく拝聴するしかなかった。
 一通り罵詈雑言の洗礼が済むと、何故か俺は強制的にベッドの端に座らせられ、彼女は
真向かいにしゃがみ込んだ。繰り返すが、決して俺が頼み込んだわけではない。
 そして、彼女が俺のズボンをくつろげ、分身を取り出してからもう十分以上が経つものの、
彼女は俺の”もの”を前に固まったまま動こうとしない。
「無理しなくてもいいよ。そのここまででも、結構感激しているからさ」
 と俺が言った途端に彼女の眉が釣り上がる。これは彼女がムキになった時にでる仕草だ。
次の瞬間、彼女の掌が俺の性器を包み込む。
「えっ」
「あっ」
 ただ、それだけでも互いに見合って固まってしまう。
「……まだ、掴んだだけでしょう!男なんだから、ジタバタしないの!!」
 何故か俺は怒られてしまい、ただ頷くことしかできなかった。それよりも彼女のひんやり
とした白い指先に掴まれたことで、俺の身体は一箇所を除いて硬直してしまう。硬直して
いない一箇所に全身から血が注ぎ込まれ、硬度と熱が増していく。
「ヘンタイ。もう興奮している」
「ご、ごめん」
「何で謝るのよ、バカ」
 急に彼女の握る手に力が籠もった。
「ちょっ……い、痛っ!」
「うるさい!これから、やってあげるんだから我慢しなさいよね!」
 彼女はどうやら本気で”やる”つもりらしい。口をポカリと開けて、少しずつ性器の先端に
顔を近づけていく。まるで、ホットドッグでも食べるかのように仕草に不安が募り、思わず
静止しようと声が出てしまった。
345小ネタ 2/4:2008/08/24(日) 18:22:27 ID:gsS5ppF3
「ねぇ……っ!?」

 ハムッ!

 いや、そんな音がするはずはない。幻聴だ。しかし、それでも俺の鼓膜は確かに
聞こえたのだ。
「んんっ……」
 眉間に皺が寄り、目をギュッと瞑りながら口元を窄め、まるで苦虫を潰したかのよう
な表情の彼女が言葉にならない声を漏らした。
 そんなに嫌ならやらなくても、と思っていると、それを鋭く察して彼女が「あんたのため
だからね」というような顔でこちらを見上げてきた。しかし、彼女はどんな顔をしても、
美しく魅力的だ。特に吸い込まれるような円らな黒い瞳に見つめられるだけで、
恋人同士になった今でも心拍数が否応無しに上がってしまう。
 そんな彼女が男特有のグロテクスな器官をその桜色の唇で包み込んで、体温の籠もった
口腔に含んでいる──この光景に興奮しない男がこの世にいるのだろうか。
 当初は、恐る恐る舌先で突くように刺激してきた彼女の控えめな愛撫も少しずつ大胆に
なっていき、やがて前後に頭を動かし出すと病み付きになりそうな快感が襲ってくる。
 異物を咥えた彼女の口からは絶え間なく唾液が染み出し潤す。そして、飲み込んだり
引き抜いたりする動きに合わせて、彼女の口元からイヤらしい水音が零れ出る。おまけに
彼女の唾液の量は相当で、口の中に収まりきらない分は唇の端から顎を伝いフローリングの
床に小さな溜まりを作るという、何とも淫靡な光景が展開されている。
「んっ……んくっ……ふっ……」
 必死に俺を気持ちよくさせようと動く彼女の吐息混じりの声が俺の劣情を煽る。
 俺が彼女の頬にかかる髪をかき上げてあげると、彼女が潤みを帯びた目で俺の表情を
伺ってくる。その頬がほんのりと紅く染まっている。断続的に込み上げてくる射精感に俺は
目を閉じ歯を食いしばって堪え、一秒でも長く快楽を味わおうと余計な刺激を遮断することに
努めた。
 すると、途端に刺激が止まった。彼女が口を離したのだ。
「……良くないわけ?」
 詰るような口調とは裏腹に少し声が震え、彼女には珍しく不安げな声色だった。
 きっと、俺が我慢しようとした姿に、彼女は俺が不快感を覚えているとでも思ったのだろう。
「いや、気持ちいい……う、上手いよ」
「……あ、当たり前よ!」
 言ってから、自分がトンデモないことを言ってしまったことに気づいたのか、彼女は顔を
真っ赤にして視線を合わせないように目を伏せてしまった。「当たり前」というからには、
どこかでやったことがあるのだろうか。ムクムクと不安と疑念が湧き上がってきて、
それを問わずにはいれなかった。
「以前に、誰かにやったことが……」
「バ、バカァァ!!!」
346小ネタ 3/4:2008/08/24(日) 18:23:45 ID:gsS5ppF3
 凄まじい彼女の大音声が狭い俺の部屋に響き渡る。
「そんことあるわけないでしょ!!こ、こんなことをしたの、あんたが初めてよ!」
「……」
「本当なんだから!……本当……よ」
 最後は弱々しく、消え入りそうだった。
「分かったよ。ねぇ、だから、続けてくれない?」
 俺の答えに、彼女はパッと表情を明るくする。
「し、仕方ないわね」
 不承不承という感じだが、やけに声色は軽やかで嬉しそうにすら聞こえる。そして言うなり、
彼女は再び俺の先端を飲み込み、先程までよりも一層激しい口戯を施してくる。
 キュッと窄まった桜色の唇、柔らかな舌、潤滑油代わりの湧き出る唾液、時々触れては
違った刺激をもたらす歯、そして口腔の粘膜、全てが極上の快感をもたらしてくれる。
「ふぅっ……んっ」
 そして彼女が時折、口の端から洩らす舌足らずな吐息が心なしかエッチする時の喘ぎに
似た近い感じに聞こ、俺の興奮を最高潮に押し上げる。
 やがて腰の辺りが熱くなり、背筋を痺れにも似た特有の刺激が駆け上がってくる。
「や、やばい……出そう……だ!」
 思わず口をついて出た言葉で、彼女が全身をビクリと震わせ、慌てて首を振って口を離す。
「ダメよ、ダメ!我慢して!」
 正直に言おう。彼女が口を離した最後のストローク、それが俺の限界ギリギリだった。
 そして、彼女が言葉を発した瞬間、俺の先端に向けて吹きかけられた彼女の息が暴発寸前だった
俺の砲身の引き金を引いてしまった。
 スローモーションみたいに先端がビクビクと震え、白濁した粘液が噴き出す。そして、
飛び出したそれが、目を見開いて呆然と俺を見つめる彼女の端整な顔に付着する。
 二人とも硬直したまま、俺は奔流を遮ることもできず吐き出し続け、彼女はただ顔で精液を
受け止めていった。

◇ ◆ ◇ ◆

「バカ!バカ!ヘンタイ!」
 彼女はベッドの端に座って縮こまった俺の前で、腰に手を当てて仁王立ちになっている。
 顔は憤懣やるかたない様子で、眉を吊り上げ俺を責めるように睨みつけている。
 
 あの後、慌てて正気に戻った俺は濡れタオルを用意し、彼女の顔にヘバリ付いた精液を
拭い取った。彼女の方は放心状態でされるがままだった。それから正気を取り戻すまでには
暫く時間を要した。そして、正気を取り戻した途端──

「最低!恋人の顔にあんなものかけるなんて、最低!」
347小ネタ 4/4 :2008/08/24(日) 18:25:07 ID:gsS5ppF3
 時には、直接的な暴力よりも言葉の暴力の方がこたえることがある。罪の意識に苛まれた
今の俺には、まさに心を抉るような攻撃だ。
「大体、私が『我慢して』って言ったのに、少しも堪えられないなんて……信じられない!」
 荒げた声が部屋中に響き渡り、それが俺の心を苛む。責任は全て、俺にある──のだ。
「もう、あんなこと二度とやらないんだから!」
 きっと、言葉通り、もう二度と彼女が口でしてくれることはないだろう。ここまで
怒っているのだから当然かもしれないが、彼女の与えてくれた快楽を思い出すと悔やんでも
悔やみ切れなかった。
「な、何よ……その表情(かお)」
「……ゴメン。俺が悪かったよ。その、あまりに気持ちが良かったから、つい。ゴメン」
 俺は最大限申し訳なさを表現して、謝罪の意を表す。ここは快楽のことは忘れて平身低頭、
何とか彼女に嫌われないように最善を尽くすべきだろう。
「ゴメン。もう二度と頼まないから」
「……バカ!」
 彼女はそう言うと、プイとそっぽを向いてしまった。
「未練タラタラな顔して、そんなこと言わないでよね」
 自分ではそんな顔をしているつもりは毛頭ないが、彼女にはそう見えるのだろうか。彼女が
長い溜め息を吐いて、再び視線を戻して俺の顔を覗きこむ。
「分かったわよ……仕方ないから、またやってあげる。だから、そんな顔をしないの!」
「えっ!?い、良いの?」
「でも、今度は顔にかけないで我慢してよね!」
「う、うん」
「……もったいないから」
 意外なその一言に俺は完全に思考停止に陥り、身体が硬直してしまう。
「ど、どういうこと?」
 彼女は顔を真っ赤に染めて、何だかモジモジと口籠っている。そんな彼女をジッと見つめ、
答えを催促する。彼女は目を伏せたり、こちらを見たりを繰り返して何とか誤魔化そうと
しているが、俺が視線を外さず凝視するので、観念してついに口を開いた。

「……だ、だって、ああいうものは…………わ、私の中に出しなさいよ!」

-------------------------------------------------------------------------

うん、前フリなく、エロいのが書いてみたかっただけなんだ。
うん、今は反省している。
348名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 18:38:11 ID:wMwyGygh
GJ!
最後のセリフに萌えた
反省することはない
俺の息子はしっかり反応しているw
349名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 19:38:05 ID:OMBpQQEJ
やべぇGJ!
おっきしたww
350名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 19:54:25 ID:IcLo76QB
良いなwww
おっきした。
351名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 01:10:22 ID:/row+mOD
なんだこの自己申告大会wwwGJ!
おっきした。
352名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 01:19:01 ID:I+pN/Zx/
おめえらおっきした以外の感想書けよw
っていうかこれで終わりなのか?
きちんと最後まで書いてくれんとむず痒くてしゃあない。
しかも寸止めってのがタチが悪いんだ、はよ続きを書いてくれ。
ただし、しっかりした骨組みのある奴をよろしく。
353名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 01:20:12 ID:wwwesMLA
なお、おっきした
354名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 04:04:20 ID:H9k5foMM
途中までは(やっぱツンデレっていいなー)とか思ってニヤニヤしてただけなのに
最後の一言で布団の上で転がりながら萌え死んだwww
355名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 04:05:24 ID:H9k5foMM
途中までは(やっぱツンデレっていいなー)とか思ってニヤニヤしてただけなのに
最後の一言で布団の上で転がりながら萌え死んだwww
356名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 04:06:24 ID:H9k5foMM
携帯の接続が悪くて二重になってしまった。スマソ
357名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 23:21:06 ID:AAiKOtj/
おっきした
358名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 10:20:40 ID:bO7TW5Lu
>>347
真っ昼間からおっきした
359名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 01:24:45 ID:tr4vSqde
>>347
……ふぅ
360名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 04:53:46 ID:CXSZmTtz
>>347
……ふぅ
361名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 18:54:03 ID:BSkUvQUb
「…何ため息ばっかついてるのよ」
「いや、>>347 のあまりの人気に思わずため息が出ちゃうんだ」
「何よそれ。あたしを放っておきながら…」
「で、何か用か?」
「べ、別に!あんたなんか>>347 の作品ばっか見て一生おっきしてなさいよ、バカ!」
「何怒ってんだよ。…はっは〜ん、さては俺と一緒に保守したいんだな?」
「ち、違うわよ!どう考えたってあんたと保守したいだなんて思わないんだから!」
「はいはい…そういうことにしておきますよ」
「ふんだ。……そんなこと、絶対に…思わないんだからね…」



最早、小ネタにすらなりません、っと
362名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 00:18:38 ID:jQ1ZkWyS
誰かネタを・・・
363名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 00:51:37 ID:eQljQ0fw
では。

ツンデレの魅力は各人にとって様々だが、ツンデレの口調はどれが好き?

・ノーマルツン
「なによ!!あんたなんて〜なんだから!!」
・ボーイッシュツン
「なんだよ、お前になんか関係ないだろ!!」
・甘えん坊ツン
「くすん。○○ちゃんなんてどこか…」
・無口ツン
「………………(プイ)」
364名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 17:14:41 ID:bcpS9Kic
全部?
365名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 18:31:26 ID:jQ1ZkWyS
意表をついて「お嬢様ツン」で
366名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 18:35:19 ID:N1SivqE+
無口だな
367名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 23:51:34 ID:mhcK/nll
敬語タイプだろ
「もう、〇〇さんなんて知りません!」

義理の妹や委員長に適用できる
368名無しさん@ピンキー:2008/09/02(火) 01:30:51 ID:DhJEZZJH
やべえ全部好きだわww


最近ツンツンでも何処かにデレがあるんじゃないかと思う俺は重傷だな。
369名無しさん@ピンキー:2008/09/03(水) 05:50:44 ID:3DV1Cd6e
そうだな
では俺と共に病院へ行こうか
370名無しさん@ピンキー:2008/09/03(水) 11:54:51 ID:GkvnqANr
奇遇だな。俺も今病院に行くとこなんだ。
一緒に行こうぜ!
371名無しさん@ピンキー:2008/09/03(水) 12:40:53 ID:lGXFGMVr
みなさん、お気の毒ですが…


医学での治療の限界を遥かに越えています。
一生ツンデレラーとして重い十字架を背負って生きなければ…


私同様に。
372名無しさん@ピンキー:2008/09/07(日) 23:50:20 ID:wTylhKch
ほしゅ
373名無しさん@ピンキー:2008/09/12(金) 21:18:13 ID:BlLpzJ84
374名無しさん@ピンキー:2008/09/16(火) 20:54:06 ID:8wAQkACE
375名無しさん@ピンキー:2008/09/16(火) 21:16:45 ID:D07GnsUO
376名無しさん@ピンキー:2008/09/16(火) 23:35:20 ID:ORNKHrdl
377名無しさん@ピンキー:2008/09/17(水) 00:28:40 ID:SvoUKjEC
378名無しさん@ピンキー:2008/09/17(水) 00:30:44 ID:evjAOIhP
379名無しさん@ピンキー:2008/09/17(水) 00:38:02 ID:aUBGyWFa
380名無しさん@ピンキー:2008/09/17(水) 07:37:11 ID:Pv2mAtS6
381名無しさん@ピンキー:2008/09/17(水) 21:34:55 ID:G/zIfnqQ
こるぁ宗一郎っ!アンタまた掃除サボってどこ行くつもりよ!
欠けたあんたの埋め合わせを毎回毎回誰がしてると思ってるのよ!
ゴ、ゴメンって・・・ゴメンで済めば警察は要らないんだからね!

・・・何よその何か言いたげな目は!
言い訳するつもり?往生際が悪いわね〜それでも男なの!?
まあ良いわ。折角だからアンタの言い訳とやらを聞いてあげる。
ただし私が納得出来ない内容だったらその時は分かってるわね!
さ、白状しなさいよ

・・・え?
今週末は私の誕生日だからプレゼント買うためにアルバイトしてたですって?

(バカっ・・・私はアンタからプレゼントを貰うより
アンタと一緒にいる方がよっぽど嬉しいんだから・・・)
な何でもないわ!何も言ってないわよ!
ちょ、ちょっと!いきなりこんな所で抱きつかないで!
そ・・・そんなとこ触っちゃ・・・ん・・・・・・あ・・・
382名無しさん@ピンキー:2008/09/18(木) 16:41:44 ID:rewjNW3k
(´Д`*)
383名無しさん@ピンキー:2008/09/18(木) 22:02:51 ID:c42+IiHv
宗一郎いいよ宗一郎
384名無しさん@ピンキー:2008/09/22(月) 19:14:42 ID:n1N3ekFa
さて、今面白そうな電波が飛んできたんだが…
385名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 11:29:02 ID:t7pkJj/m
さあ、それを吐き出すなりSSにするなりして晒すんだ!
386名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 04:51:36 ID:XStlk9pB
誘い受けは犯罪です。
387名無しさん@ピンキー:2008/09/28(日) 01:18:50 ID:GM/GZrih
保守ついでにあげてみるか
388名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 13:21:33 ID:DRJGpksa
>>384に期待
389ツンデレと英単語:2008/10/05(日) 05:17:20 ID:h41G7kY9
男「ヤベッ、宿題忘れた!仕方ない、居残って英単語20回書きさせられっか…」
女「貴様はまた忘れ物か…情けない。特別に十回書きのみで済む様にしてやろう。」
男「サンキュー!うおっ、日本語訳つきだ!先取り完璧じゃん!」
女「但し、昼休みまでに返却する事。単語20に私が付けた例文も訳せ。」
男「オーケィ!三時間目までには終わらす!」
1.american アメリカの… 〜20. I 私は  十回書き開始
男「I love Otoko. 私は男を愛している…」
女「何、惚けているっ!さっさと書き終えろ馬鹿者っ!少しのサービス如きに浮かれるな!」
390名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 03:17:05 ID:9WD5X5sL
あげ
391名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 17:36:57 ID:0T1oAdzH
久しぶりに北
本家もここも過疎だな…
392名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 22:53:30 ID:qIcf4X8j
ニヤニヤ
393名無しさん@ピンキー:2008/10/09(木) 00:13:35 ID:+HuuvWll
本家ってとvipか。あそこもすっかり腐敗しきったというか…
古参でまだ見てる人とかいるんだろうか
394名無しさん@ピンキー:2008/10/11(土) 10:54:49 ID:hKWmGH2p
【】の人とパンダの人がいる限り諦めない
395名無しさん@ピンキー:2008/10/21(火) 01:55:34 ID:gvxHTFkl
>作者各位
投下はslowlyじゃなくてもいいんだからねっ///



保守
396名無しさん@ピンキー:2008/10/22(水) 16:04:37 ID:VR2CcMzW
このスレは久し振りですが、ちょっと書いてみました。

ちなみにノンフィクションの体験談&エロまで長いです。
397名無しさん@ピンキー:2008/10/22(水) 16:06:51 ID:VR2CcMzW
今年の春に新社会人になった19才の俺なんですが(住宅設備メーカー)この間、会社の開発部に立ち寄る用事があったんです。
課長以下、ずらりと並んだ席の中から一人の女性が俺を見つけ立ち上がりました。
第一印象は「うわ、小さっ」でした。
パンプスの踵を鳴らしながら、つかつかと歩み寄って来た彼女(後で分かりましたが24才だそうです)は、着込んだスーツの上に作業着の上着を羽織っていました。
一見すると「出来るオンナ」って感じです。
「はい? 何でしょうか」
って、すごく冷たく聞かれて、少しイラっとしながらも俺は新人なんだからと割り切り、用件を伝えて書類を渡しました。
ちなみに俺の身長は175センチ弱で彼女は140センチくらいなんです。
やり取りの中でも100%上から目線になります。
先輩なのに見下されている感じなんでしょうか。そうさせまいと無理に虚を張って偉そうに(冷たい感じ)振る舞ってる様に見えました。
書類を受け取ると、彼女は睨むような視線で俺を見上げ、
「分かりました、預かります」
って、言い終わらない内に踵を返して席に戻ってしまいました。
398名無しさん@ピンキー:2008/10/22(水) 16:10:07 ID:VR2CcMzW
なんだかなーって感じで、俺はしばらく、ぼう然とその背中を追いかけてました。
長めの髪の毛が洋犬の尻尾の様に左右に揺れてます。過剰に身体を屈伸させて歩いてる感じなのに、背筋はぴんと伸びてるんです。
作業ジャケットがぶかぶかで、スカートは裾の数センチしか見えてないし。
感じ悪かったんですが、でも、なんだかカワイイなぁ……なんて思ってしまいました。顔も、キツめですが、よく見たら愛嬌があって綺麗だし(可愛いというより綺麗)。

その日から、何だか無性に彼女の事が気になり出し、朝晩の通勤時なんかに、開発課の棟の回りに立ち寄ったりしてました。偶然に会う事を期待しながら。
同じ会社なんですが敷地内で建物が違います。彼女のいる建物に行く用事はまずありませんし、行ったら明らかに不審なのです。
残念ながら偶然なんてなかなか無い訳で、彼女とはそれきり会う事もありませんでした。

そんなある日、俺の働いている部署の昼休みに、会社の女子社員の話が上がり皆でわいわいと盛り上がっていました。
誰々が可愛いとか、誰とヤった云々、他愛の無い話でした。
399名無しさん@ピンキー:2008/10/22(水) 16:24:47 ID:VR2CcMzW
そこで俺は、
「あの、開発のちっちゃい子、オレ結構スキなんすけど……知ってます?」
って、先輩に聞いてみました。
「ああA子やろ、ちょいウザいけどなぁ可愛いやん。どうしたん? お前いくの?」
「いやぁ開発とか絡む機会ないし、無理っすわ。それにあっちは大卒やし……そういうのわりと気にしてまうんすよ」
「おいおい、なんでお前そんなマジなん?」
そう笑われてしまいました。
「でも、A子さんってキャリアぶった感じないです? なんか自分は苦手ですわ」
と、同僚のB。
「アホか、それがええんやんけ、ツンデレみたいな?」
「デレかどうか分かりませんやん」
と、Bが笑う。
「あの身体やったら、ハード駅弁とか出来るで」
下品に笑いながら先輩たちは、腰をカクカクとジェスチャーを始める始末です。
A子さんを散々に凌辱した頃、昼休みも残り少なくなり、俺は先輩と連れ立って外へ煙草を吸いに出ました。
「……でもお前、マジで本気なんやったら今度、飲み会に呼んでもろたろか?」
煙草の煙をゆっくりと吐き出しながら、ふいに先輩が言いました。

400名無しさん@ピンキー:2008/10/22(水) 16:29:12 ID:VR2CcMzW
実際、一度しか会った事がない訳だし、微妙な身分違いを感じてしまってる俺は、一瞬躊躇し、押し黙ってしまいました。
あの、つんとした表情と冷たい視線、素っ気ない態度が蘇ります……年上ですし。
……でも、だからこそ彼女の笑顔が見てみたい気もします。彼女に猫の様に甘えられたり……そんな事を考えたら背筋がぞくりとしました。
それに実はさっきから、俺に両股を抱き抱えられた彼女が、切ない顔で俺の目を見つめ、激しくあえいでる様が脳裏でずっと再生されているんです。
「ん、どうする?」
「先輩、ちょ、お願いします!」
「おう」
先輩は、ぽいと煙草を灰皿に投げ捨て、
「じゃあ決まったら連絡いれるわ」
と、微笑し、職場へと戻って行きました。
401名無しさん@ピンキー:2008/10/22(水) 23:16:23 ID:VR2CcMzW
えーかなり需要なさそうですが続き、明日投稿しますw
402名無しさん@ピンキー:2008/10/22(水) 23:28:08 ID:L19sZaFH
>>401
エロパロ板でリアルの話書かれても……
需要はあると思うけどここではない
でも過疎ってるしなぁ…判断任せるわ
403名無しさん@ピンキー:2008/10/22(水) 23:36:29 ID:VR2CcMzW
ok
やめときますw
またねー
404名無しさん@ピンキー:2008/10/22(水) 23:40:52 ID:VR2CcMzW
つか、過疎ってるなぁ
俺的に何かネタくれたら真面目に書くよ。
いちお、このスレのファンなんでw
405名無しさん@ピンキー:2008/10/23(木) 06:21:36 ID:jJTnIDNo
とりあえず過疎ってるんだから書いてみたら?
酉かなんかつければ見たくない人はNGするだろうし。
406名無しさん@ピンキー:2008/10/23(木) 19:31:07 ID:Bxee4jCp
なんていうか、思考が中学生っぽいし童貞臭がする。
407名無しさん@ピンキー:2008/10/25(土) 11:06:13 ID:xnT765A5
保守
408名無しさん@ピンキー:2008/10/25(土) 11:56:46 ID:jjjjYbgi
>>403
”えっちねた”へいけば
409名無しさん@ピンキー:2008/11/01(土) 22:18:49 ID:amH1AE0P
保守
410名無しさん@ピンキー:2008/11/02(日) 03:47:18 ID:GVrCDhgd
べ、別に好きで保守するわけじゃないんだからね! ここが落ちたらあたしが困るのよ!
それだけなんだから。わかった?
411名無しさん@ピンキー:2008/11/02(日) 15:59:55 ID:m+9sl9vF
ツンデレと食事シーンの相性は異常だ
412名無しさん@ピンキー:2008/11/03(月) 00:05:34 ID:gGFIUlB3
>>411
例えばどんなシーン?
413名無しさん@ピンキー:2008/11/03(月) 00:07:44 ID:4e1Mm4WC
>>411
・男料理の場合
「!?…べ、別に大した味じゃないわね。ま、まあ食べられる方ではあるけどね…」
・ツンデレ料理の場合
「べ、別に美味しくないなら食べなくてもいいんだからね。他に食べたいって言ってくれる人も…
えっ、『こんな料理作れる彼女が欲しい』って…あ、甘えるんじゃないわよ!!!!」


どちらの場合でもこの後ツンデレが美味しく食べられるのは様式美だね。
414名無しさん@ピンキー:2008/11/03(月) 01:06:58 ID:ScSD7ut4
「こんな不味いの食べれるわけないじゃない!今日から私が作り方教えてあげる。」
これを口実に男の家に出入りする。無駄にくっ付いて教えたり。
ジーって見つめてるの男に気付かれて「どうしたの?」聞かれたら
顔真っ赤にして「な、何でもないわよ!鍋に集中しなさい!」
415名無しさん@ピンキー:2008/11/03(月) 12:06:51 ID:4e1Mm4WC
>>414に毒電波パスを受け勢いで小ネタ投下。


だめっ、その豆腐まだ入れたばっかりじゃない。ちゃんと中まで火が通ってからにしなさいよ。

ってなんで戻すのよ!!
一度箸を付けたら食べるのがマナーでしょ!!
…はぁ、いいわよ。私に寄越しなさい。
いい、仕・方・な・く・よ!!食べ物は粗末にしら罰があたるの!!


あぁ〜!!その肉あたしが育てていたのに!!
信じられないこのバカバカ!!
…なによ…この箸。まさか『あーん』しろって?
そ、そんなこと出来るわけ無いでしょこのスイーツ脳!!

…ど、どうしてもって言うならやってあげても…


ふ〜、食べ過ぎた…
でも二人鍋もわ、悪くないわね。あんたと一緒ならどんな…

って独り言聞いてんじゃないわよ!!

あれ?動けない?食べ過ぎて動きが…
ち、ち、ちょっと待ちなさい!!動けないのを襲うなんて…そ、それにあんたはどうして動け…

『この後に備えてセーブしてた』って…まさか全て計画通り!?
ばかぁ!!そんな事考えなくてもいいの!!
……やめて!!今お腹タヌキみたいだから脱がさないでよ!!!!

はぅっ!!

……お、お、美味しく食べてくれなきゃ…許さないから…ね…



後悔はしてないが、推敲もしていない。すまん。
416名無しさん@ピンキー:2008/11/05(水) 22:37:03 ID:ECPw5gCy
いい話だ。。。
しかし過疎だな・・・。あげとくね
417名無しさん@ピンキー:2008/11/09(日) 23:03:31 ID:/qNBKK7g
418名無しさん@ピンキー:2008/11/10(月) 00:46:01 ID:IWQDtBbU
しいなんて全然思ってないんだからね! ほんとうなんだからねっ!!
419小ネタ-1/5 ◆GK0/6l5f56 :2008/11/11(火) 01:20:15 ID:5N2cALEk
エロ薄々なので、そっち方面を期待の方はスルーしてください。

------------------------------------------------------------------------------

 彼女は僕の前に膝をつき、硬度と熱を帯びるペニスを白い指で捏ねくりまわしている。
プライドの高い彼女が跪いているという眼前の光景と彼女の挑発的な愛撫に、理性が
吹き飛びそうになるぐらいの快感を覚える。
「んん……はぁっ……ぁぁ」
 先端から滲み出るカウパー液が彼女の指に絡まり、いやらしい水音を立て始めている。
このままやり続けられると、手だけで達してしまいそうだ。
「っぁ、ああ…………はっ、んん」
 滑らかな彼女の指先と、そして快感を呼び起こす術を心得ている手つきに僕は頭が
白くなっていく。
「ぁああ……んっ」
「ねぇ?」
「はん……っ……な、何?」
 僕の視線の先の瞳は、夜の猫のように黒目がちで円らだ。

「あのさ…………どうして、ヤラレている僕よりヤッている君の方が息が荒いの?」

「えっ!?はっ!?な、な、な、何言っているのよ!そんなことあるわけないじゃない!!
あ、あんたにして欲しいって言われて渋々やっている私が、どうして興奮しなきゃいけない
わけ!?」
 僕は確かに「して欲しい」とは言ったが、それは彼女に散々誘導された結果だ。そんな
ことをお構いなしに、焦った様子の彼女は僕の硬くなった性器から手を離す。その瞬間、
粘性を帯びた先走りが彼女の指とペニスの間に淫猥な糸を引いた。
「いや、だってさ」
「だって、じゃないわよ!空耳なのよ、この変態バァッカ!」
 空耳ではない。事実、彼女は結構艶っぽい吐息を瑞々しいその唇から零していたの
だから。キッと目尻を吊り上げて、こちらを睨んでいる彼女の迫力に今日は大人しく従う
つもりはない。

 ◇ ◆ ◇ ◆

 数日前──
「プラシーボ効果って、薬と偽って何の効用もないものを服用させると、患者の心的作用に
より薬と同じ効果をもたらすっていう、あれ?」
「ああ、それだ」
 友人は大きく頷く。何故、僕の彼女の話をしている最中に偽薬効果の話が突然出てくる
のかは、サッパリ分からない。
「お前の彼女は、絶対ツンデレだ」
 ツンデレ──と言われれば、そうかも知れない。
 普段は僕のことを「バカ」「変態」「最低」と罵る彼女の姿を見れば、誰も二人が恋人だとは
思わないだろう。実際、僕でさえ自分が彼女の隣を歩いて良いものか時々、首を捻ってしまう。
420小ネタ-2/5 ◆GK0/6l5f56 :2008/11/11(火) 01:21:03 ID:5N2cALEk
 でも、恋人同士であることは紛れもない事実だ、キスだって、肌を重ねたことだって何度もある。
ただいつも彼女は「あんたがしたいって思うから、仕方なく付き合ってあげているのよ、まったく!」
と言うのだが──。
 おまけに彼女はハッキリと僕のことが「好き」だとは、口には出さない。元々、彼女は
容姿端麗、才気煥発型の完璧人間だからプライドが高いのは分かるのものの、僕のことを
本音のところでどう思っているのか知りたいと思うのは、高望みではないと思う。
 勿論、どストレートに彼女に質問しても答えてもらえるはずがない。「バカ」とか「あんたの
クセに生意気」と言われるのが関の山だ。そこで僕は友人にそのことを相談していたのだ。
「ツンデレっていうのは、自分の本音を正直に口に出せない人間だ。お前の彼女もお前のことを
好きなはずだ。でなければ、あんな可愛い子がお前の相手をする理由がない」
 言われていることは最もだが、我が友人ながら中々痛いところを突いてくる。
「それはさておき、彼女がお前のことを好きだがうまく伝えられずに、つっけんどんな態度を
取ってしまうということは、言い換えれば、本当の自分に嘘をついているということだ」
「はぁ」
「だから、何か適当なものを飲ませて、それを自白剤だとか本音を語っちゃう薬だとか
嘘をつく。プラシーボ効果じゃないが、疑心暗鬼になった彼女は本音を喋り出すかもしれないぜ」
 と、友人は提案してきたが、そんな簡単に行く筈がない──そう思っていた。
 が、ものは試しだ、と思ったのも事実。

 ◇ ◆ ◇ ◆

「さっき、僕の出したジュースを飲んだでしょう?」
「……な、何よ、いきなり」
「変な味しなかった?」
 彼女は少し考えてから、小さく頷いた。僕はフルーツジュースにスポーツドリンクの粉末を
混ぜ、苦味が出るように仕向けた。
「あれさ、自白剤を少し薄めたものが入っているんだよね」
「自白剤!?……何でそんなものを!」
「だって、君に正直になってもらいたかったから」
 彼女は目を丸くして、僕を見ている。
「しょ、正直って何よ!私が嘘をついているとでも言うの?」
「さっき、本当は興奮していたでしょ?」
 意地悪く尋ねてみる。彼女は口を噤んで、僕を恨めしそうに睨んでいる。
「薬、そろそろ効いてくる頃だから、無駄な抵抗は止めた方が良いよ」
 最後の一押しだ。これでダメなら、冗談でしたと言って誤魔化すしかない。効果がない
のに嘘を押し通して、彼女が本気で怒り出すようではどうしようもない。唇を噛み締める
彼女の次の言葉をただ待つことしかできなかった。
「………………してた、と思う」
421小ネタ-3/5 ◆GK0/6l5f56 :2008/11/11(火) 01:21:56 ID:5N2cALEk
 彼女が蚊の鳴くような小さな声で恥ずかしそうに呟くと同時に、僕は心の中でガッツポーズを
作った。どうやら、彼女はこちらの企みに嵌ってくれたようだ。
「どうして?」
「どうしてって何よ!?」
「薬の効きが足りないのかなぁ?質問に答えないなんて」
 後は何もかも、ありもしない薬のせいにして、彼女に逃げ道を作るのだ。そうすることで、
本当のことを喋りやすくしてあげる。だが、これは僕にとっても諸刃の剣だ。本当に彼女が
僕に渋々付き合っているだけならば──。
 不安が膨れ上がるよりも先に、彼女の唇が躊躇いがちに動く。
「……だ、だって、触るとドンドン硬く大きくなって、いつもこれが私の中に入っている
んだって思うと……」
 顔を真っ赤に染めながらも、彼女は澱みなく答えた。これはもう一種の羞恥プレイと
言えるだろう。赤面しながら答える彼女の姿はそれだけでそそるものがある。
「そう。でも、どうして入っていると思うだけで興奮するわけ?」
「えっ……そ、それは…………気持ち良い……か、ら」
 薬のせい、という言い訳を受け入れることができたからか、彼女は存外素直になってきた。
「でも、普段は言ってくれないよね、そんなこと」
「い、言えるわけないでしょう!…………恥ずかしいもの」
「でも、今は薬が効いているから、僕の質問には何でも正直に答えてしまう」
 彼女はコクリと頷く。
「し、仕方ないもの。あんたが変なもの飲ませるから!」
「そうだね。結構、強力だって聞いているから、さすがに君も口を割るしかないと思うよ」
 普段の覇気はどこへやら、彼女は完全にか弱い一人の女の子になっていた。
 ふと、気がつくと僕は愚息を出しままだった。何とも情けなく、恥ずかしい格好だったの
だろう。とりあえず、仕舞っておこうとした瞬間──
 彼女は素早く僕の手首を掴むと同時に、もう一方の手でペニスに指を絡めてくる。
「えっ!?」
 驚きのあまり間の抜けた声を出した僕の視線から、顔を反らした彼女はか細い声で
とんでもないことを呟いた。
「も、もう少し触らせて……」
 最初は、「スケベなあんたに付き合って渋々やってあげているだからね」とかって言って
いたクセに本当は彼女もそうしてみたかったのだ、と気がつくと何だか、少し嬉しい。
「薬が少し、濃過ぎたみたいだね」
 あくまで彼女のプライドを傷つけないよう、言動が薬のせいであることを強調する。僕の
言葉に彼女は微かに頷き、ゆっくりと僕のペニスを扱き出す。それが徐々に激しくなるに
つれて、彼女の口から甘い吐息が再び漏れ出す。
「……んぁ……ぁぁ……熱い」
 早くも彼女はさっきの興奮状態を取り戻し、より積極的に僕の性器を愛撫する。
422小ネタ-4/5 ◆GK0/6l5f56 :2008/11/11(火) 01:22:27 ID:5N2cALEk
「興奮するんだ、やっぱり?」
「……うん」
 もう完全に従順に質問に答えてくれるようになった。
頬を染めて、少し嬉しそうに僕の性器を捏ねくり回す彼女の瞳は徐々にトロンと虚ろな
様子になっていく。
「で、君は僕のこと好き?」
 本当に聞きたかった事は”これ”。ハッキリと彼女の口から、僕のことを掛け値なしに
好きだ、と答えて欲しくて、わざわざこんな猿芝居を打っているのだ。
「……えっ……あっ、そ、そんなこと……」
 これにはさすがに、困惑の表情で彼女が固まった。
「もしかして、好きじゃない?」
「…………ば、ばかじゃないの、そんなこと聞くなんて」
 彼女は首を振って、イヤイヤしながら質問に答えることを拒もうとしているが、薬を飲まされたと
思い込んでいる彼女の内側にはきっと、本心を告げるようにと囁く悪魔と、それを阻止しようとする
理性という名の天使が葛藤しているのだろう。
「おかしいな、薬はまだ効いてきているはずなんだけど?」
 俯き、苦しそうに悩む彼女の姿に心が痛むが、友人からは手は緩めるなと言い含められている。
 もう退くことはできないのだ。
「っう!?」
「さっ、答えて」
 彼女は俯き加減のまま押し黙ってしまった。顔を伏せているせいで、表情は伺えないものの
肩が小刻みに震えていることはハッキリと分かる。もしかして、怒らせてしまったのだろうか、
嫌な予感がする。
「……きぃ」
 あまりに小さい声だったために、僕はうまく聞き取れなかった。
「えっ?」
「好きに決まっているじゃない!」
 ヤケになったのか、耳まで紅く染まった顔を挙げ思い切り彼女は叫んだ。目尻には
薄っすらと透明な涙の粒すら、浮かんでいる。余程、僕が好きだということを言うのが
悔しかったのだろう。
「バカ、バカ!あんたが変な薬を飲ますからいけないのよ!」
 彼女はそのまま僕に抱きついてきて、胸を痛いぐらい強く何度も叩いてくる。
「そ、そうだね。僕が悪い」
「そう、思うなら…………慰めなさいよね」
 上目遣いで睨めつけてきた彼女の強請る口調に僕の理性は沈没した。
423小ネタ-5/5 ◆GK0/6l5f56 :2008/11/11(火) 01:23:28 ID:5N2cALEk

 ◇ ◆ ◇ ◆

 薬を飲まされていると思い込んだ彼女は──凄かった、激しかった、そして、可愛かった。
 誰に教えたくないぐらい素敵な交わりが終わって、彼女と僕はベッドの上で抱き合っていた。
「今度、変なもの飲ませたら……ただじゃ済まさないわよ!」
 僕が薬の効果が切れたと告げてすぐに、彼女は普段の調子を取り戻した。
「……は、はい」
「まったく。自分の彼女に自白剤なんて飲ませようなんて信じられない!」
 強い言葉とは裏腹に、彼女は余韻を愉しむかのように目を閉じて、鼻先を僕の首筋に
押し当てたまま黙ってしまった。
 そんな彼女の柔らかな髪の毛を撫でながら、芳しい香りに鼻を擽られながら僕は行為に
入る前に浮かんだある疑問を思い出した。
「そう言えば、僕のこと好きって答えてくれた時、ちょっと泣いていたよね」
 あの涙の滴を僕は忘れないだろう。きっと、あれは彼女のプライドを傷つけてしまった
証なのだ。
「泣くほど悔しかった?」

「……バ、バカ!……嬉しかったのよ。薬のせいだとしても、ちゃんと本当のことが
伝えられて、ね」

 嘘をついたことは墓の中まで持っていかなければならないと、僕は悟った。
 彼女が真実を知ったら、僕の命は恐らく風前の灯となってしまうだろう。

「何、にやけているのよ!このバカァァ!」

 (了)
424名無しさん@ピンキー:2008/11/11(火) 02:58:02 ID:gVFKQLqm
これは間違いなくGJ
425名無しさん@ピンキー:2008/11/11(火) 11:56:07 ID:15fCCHjy
小ネタでこれなら本格的に書くとどうなるんだ……

GJ!彼女かわいいw
426名無しさん@ピンキー:2008/11/11(火) 14:19:01 ID:t2F8FFMk
やりやがる……GJ。
427名無しさん@ピンキー:2008/11/11(火) 16:04:12 ID:lKMZyG2v
よいな。
ぐっじょ!!
428名無しさん@ピンキー:2008/11/11(火) 21:44:55 ID:fv63etCv
スポーツドリンクの粉末、買ってくる。
フルーツジュースはあるからな。








問題は飲ませる相手がいないことだ(涙
429名無しさん@ピンキー:2008/11/11(火) 22:33:17 ID:K8PcDyLt
>>428
強く生`
430名無しさん@ピンキー:2008/11/11(火) 22:47:34 ID:iU42scxu
自分が飲めば、きっとあの子に告白できるぞ
431名無しさん@ピンキー:2008/11/12(水) 06:48:48 ID:H2+A6tkt
本格的に書いてくれることをキボン
長く続けて欲しい
このスレのファンとして
432名無しさん@ピンキー:2008/11/12(水) 06:55:53 ID:H2+A6tkt
気持ちが先走って忘れた
GJ!!
433名無しさん@ピンキー:2008/11/12(水) 07:13:33 ID:lURRbyMz
ただただGJ!と
もっと賞賛したいけど、
自分の語彙と文章力が出来ないorz
434名無しさん@ピンキー:2008/11/18(火) 17:31:33 ID:0wGwLrnp
435名無しさん@ピンキー:2008/11/21(金) 12:54:29 ID:PN9hZgrQ
436名無しさん@ピンキー:2008/11/22(土) 02:13:57 ID:qkbk9R9+
437名無しさん@ピンキー:2008/11/22(土) 06:51:41 ID:79JX+J1E
とにー・ひゅーすとん
438名無しさん@ピンキー:2008/11/22(土) 14:53:01 ID:/tPQZR5L
「エンヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ♪」
439名無しさん@ピンキー:2008/11/22(土) 17:00:32 ID:OWMpgm6C
ものまねで男の気をひくツンデレ…

いやなんでもない…
440名無しさん@ピンキー:2008/11/23(日) 10:25:04 ID:a0NqhCmj
>>439ツンデレとはちと違うが


[216]名無しさん@ピンキー[sage] 2008/11/05(水) 11:08:57 ID:DKUhMeYn
AAS
 兄が好きなゲームとかアニメキャラの声優を妹がして……
 んで普段は地声だけど、ワガママやオネダリをする時だけ、そのキャラの声をするとかの、声優ネタは好きだけどな。
例えば……


 初雪も終わった寒い冬の朝。兄がソファーで新聞を広げて見てると、左耳に温かな吐息が吹き込み、首には細くひんやりとした腕が回される。
 「なぁアニキ、サマンサタバサのバッグ買ってよ。友達もみんな持ってるしさ、無いの私だけなんだよねー」
 囁かれるのはいつものやりとり。妹に欲しい物ができた時は、毎回この形で兄にねだっていた。
 「しらん。声優の仕事で貰ってる金はどーした? 学生と兼業とは言え、CD出したりしてるんだろ? 自分で買えよ」
 兄も必ず断る。ねだられて、すんなりオーケーした事は一度も無い。
 欲しがってるからと言って何でも買い与えていては、妹がダメになると考えているからだ。
 しかし悲しいかな。その思いは一向に通じない。
 「ふぅん。じゃあ……アレ、だな」
 いつものように回されていた手は下へ移動し、
 いつものようにズボンのファスナーを下げて、その中へと潜らせる。
 「ヤメろ。そんな事をしても買わんぞ?」
 兄は広げた新聞を眺めたまま。余裕の表情で妹を窘め諭す。
 対する妹も余裕の表情。深く呼吸し、自らの声を極限まで変化させる。
 「手が、痒いわ……ねぇキョン? 私にバッグを買いなさい。そうしたら、キョンを使って手を掻いてあげてるわ。このガチガチに硬くなってる棒に手を擦り付けて、手掻きに使ってあげても良いわよ?」
 その変わった声を聞いた途端、兄の身体は雄として反応した。
 余裕だった筈の表情は恥辱で赤く染まり、新聞を持つ手はプルプルと震えて握り潰している。
 「ちっ、くしょ……」
 いつもと全く同じ展開。妹は何気なくアニメを兄に見せ、のめり込ませ、その後で主役の声をしてるのは自分だと暴露した。
 

 ――――――――。


 その夜。
 「ほらよ、買って来たぞ」
 「おぉ、さすがアニキ♪」

 「ところで、お前は自分で稼いだ金はどうしてるんだ?」

 「はっ? えぇ……っと、あっ、あにきと…………てるん、だよ」
 「何て言ったんだ? 小さくて聞こえなかったぞ?」


 「っ!? アニキと結婚式をあげる為に貯めてるのっ!!!」




みたいなさ。
441名無しさん@ピンキー:2008/11/24(月) 05:00:19 ID:Md4N0haK
そのスレを教えるんだ
早急にだ
442名無しさん@ピンキー:2008/11/24(月) 08:26:57 ID:49UrROn2
>>440
激しくツボに入った
どこのスレか御教授願います
443439だが:2008/11/24(月) 10:19:08 ID:nkvlObHJ
>>441>>442
キモ姉&キモウトスレだよ。ただツンデレ成分を求めていると、ちょっと物足りないかもしれん。

他のスレ話題はここまでにして。
何かツンデレの新しい可能性を発見したい所なんだが、行き詰まった…
444名無しさん@ピンキー:2008/11/26(水) 17:46:37 ID:MGdO8zYf
「なんなの…コレ??」

これは新学年がはじまってすぐの話。
私、津野亜姫は高校2年生になった
自分で言うのもアレなんだけど、同姓の中ではかなり上位に入るのでないかと思う
1年の序盤はちゃらちゃらした異性が私によく近づいてきたんだけど、今ではそれも無くなった

多分、それは私の性格に問題があるのだろう
私は異性に対して、どうしても高いレベルを求めてしまう。接してるうちに悪いところばかり見えてくる。それを思わずきつい言葉で指摘してしまう。ハイ、さようなら。という感じがお決まりのパターンであった

だから私は異性と付き合ったことが無い
しかし、今、私の下駄箱の中には、確かに「恋文」らしきものがある

〜今日の放課後、屋上で待っています〜

字は震えていたように見えた
(い、今時古いわね…)
そう思いながらも、私はかなりドキドキしていた
昼間でも様子が変だったのか、友人が心配してきた
異性にはきつい性格になってしまう私も友人はそこそこいる

自分自身、告白されるのは初めてである。前述で述べたようにそういう場面まで進展することは皆無であったためである
相手がどういう人なのか、断る、断らないなんて考える余裕さえなかった

私は放課後の誰もいない教室で冷静になろうと深呼吸を何回もしている
なぜ早く屋上に行かないかというと
屋上に行こうとしたときに、もしコレがいたずらだったらと思ったためである
いたずらでなければこれぐらい遅くたっているはずであるという計算である

(もうそろそろいいかな…)
いすから立ち上がると私は屋上へ向かった
445名無しさん@ピンキー:2008/11/26(水) 17:47:47 ID:MGdO8zYf
ふと気が付くと私はもう屋上へ繋がるドアの前に立っていた
教室からここまでの距離はそう遠くない
しかしその短い距離さえ感じないほど、頭は真っ白になっていた
私は意を決してドアを開けた

ガチャ

屋上には心地よい風が吹いている
しかし、そこに人影はない。死角となるところも探したが、やっぱりだれもいない

「はぁ…やっぱり、いたずらだったのね……き、緊張して損したわ!!」
私は急いでこの白けた屋上から逃げようと走ってドアへ向かう

ガチャリ

(えっ!?)
予想もしない出来事。私は足を止めることができない。次の瞬間

どんっ!!

「いてて…」
「ねぇ、ちょっと!いきなりなんなのよっ!?」
私は声で男だとわかった。そして男の顔を覗き込んだ
よく知っている顔だ。かなり前から知っている。うーん名前は・・なんだったっけ?
「あ、あんた平本じゃない!」
思い出した。平本信斗――

彼とは小学、中学、ついには高校までいっしょになった腐れ縁がある
去年は同じクラスで、今年は違った
共通して、そんなに接点は無かったし、会話をしたことさえ数回しかないだろう
私の印象としては「地味」な奴だったし、それは今も変わらなかった

「つ、津野さんいんのかよ…!!さっき来たときはいなかったはずなのに……」
彼はものすごく驚いていて、怯えていたが私は体の力が抜けていった
(なんだ…期待して損した…平本かよ……)
私は何事も無かったかのように帰ろうとした
446名無しさん@ピンキー:2008/11/26(水) 17:50:49 ID:MGdO8zYf

「つ、津野さん!!待ってくれよ」
彼は私の制服を引っ張った
「平本ぉっ!放しなさいよ!!」
拒否の言葉に聞き耳持たず彼はこう放った

「俺は津野さんのことが好きだっ!」

彼の言葉と同時に、見つめ合ってしまった。そのとき彼の顔を見て思った

悪くない

断るつもりだったのを、私は考え直した
(この年で恋愛経験は一度はしたいし、OKしてもいいかもしれないわ…でも平本は圧倒的に私の求めるレベルではないわ…。わるくないんだけど。でも、どうする?これが「最初で最後」だとしたら……」

完全に瞑想モードに入った私を彼が遮る
「あの…津野さん…返事は……」
「ちょっっ、ちょっとまってよ。今考えているんだから!」
「考えてる?もしかして迷ってんの…?よかったぁ、オレ速攻で断られるかとおもっ」
「勘違いしないで!今のところ、99%×の方なのよ」
思いっきりのうそを大きい声を発してしまった。すると彼が申し訳なさそうに
「ゴメン……つい舞い上がっちゃったんだよ…中学のときからさ…いや、やめた。帰るよ俺……」
「そ、その中学のときからなんなの?男ならハッキリ言いなさいよ。」
「いや、さ…俺たち小学校のときもいっしょだったけど、中学になったらさ、なんか段々綺麗になってくる津野を意識しちゃってさ……
いつ告白しようか迷ってるうちに中学が終わってさ、でも、偶然、津野とまた同じ学校になってこれはチャンスと思ったんだ
勿論狙って同じ学校にしたんじゃないからなっ…ストーカーじゃあるまいし」

(こ、こんなに前から、私のこと……)
しかし私は、あることが疑問に浮かぶ

「じゃ、じゃなんで今なのよ……」
447名無しさん@ピンキー:2008/11/26(水) 17:54:27 ID:MGdO8zYf
「それは……」
「それは?」
私は無性に聞きたくなった。その「理由」を

「焦ってそうだったから…って失礼か」
「!!」
光の速さで私の顔が赤くなっていくのを感じ取ることができた

(な、なんでわかったの!?気にしていることを)
私の頭は屈辱でいっぱいだった。しかし間違ってはいない。それに気づいたのか彼が、
「あのさ…図星だっ…た…?…って違うよなーははは」
「図星なわけないでしょ。この、根暗地味優柔不断マイナス思考チキン野郎がーー!!」
「な、なっ!?」

(あっ、私はなんてことを……)
気づいたときはすでに遅かった。彼がうつむいている

「そうだよな…オレってなんにもいいとこがないよな。それなのに津野さんに告白してさー」
「あ、いや、ねっ、待って…」
いじけモードに突入した彼は、次に衝撃の一言を放つ
「オレ、自殺しよ。ここから飛び降りる」
「!!」

私は考えた。どうすれば彼が飛び降りないのかを。その答えは…
「ね、ね…ちょっと待ってよ。あ、あのね…」
なかなか口に出てこない
「つ…」
やっと一言目がでた。偶然にもそれと同時に彼がつぶやく
「冗談だよ。オレみたいなチキンさんが飛べないって」

(私ったら…なに先走ってんのよ。そう簡単に飛べるわけ無いわ…)
「それよりさー、さっき言いかけた『つ』ってなに?」
「え、えーとそれはね…」
(思いつけ、私。このままでは彼の思う壺よ)
必死で考えても、思いつかなかった。なので仕方なく本当のことを言うことにした
448名無しさん@ピンキー:2008/11/26(水) 17:59:02 ID:MGdO8zYf

「つ、付き合っても、いいって言おうとしたの…」

数秒間の沈黙のあと、彼は幸せそうに
「ほ、本当!?いやーうれしいな」
「ねぇ勘違いしないで!平本なんて私の理想とする男性像になんかこれっぽっちも近づいてないわ
というかそういう風に言わせたのだって『自殺する』なんて脅しするからじゃない、ずるい!!
それに仮に付き合ったとしても経験、将来のため。って割り切るわ
平本は私の踏み台。踏み台に特別な感情なんてあるわけ無いでしょ!!」」
「……」
ありったけのきつい言葉を浴びたのに、まったく聞いていない。上の空である
「ねぇちょっと聞いてるの!?」
「は、はい。聞いてるよ。聞いてるって」
彼が正気に戻る
「じゃぁさっき私のいった言葉をそのままいってみてよ」
「えーとね…『つ、付き合っても、いいって言おうとしたの』…かな」
彼の悪ふざけに私の顔が赤くなる
「それじゃないでしょ!」

私はその後、仕方なく彼とメールアドレスを交換した
「さっきあー言ったけど、付き合うわけじゃないから」
「えっなんで!?……あの言葉はうそだったんかい……!」
多少落ち込む彼に対し、私は続ける
「それと、学校では絶対に話しかけないで。そ、そのメールならいいけどさ…だからってくだらない用件だったら無視するからねっ」

「なんて送ろうかな…」
「そ、そんなの今言いなさいよ!」
屋上ではそんな2人を笑うかのようにすがすがしい風が吹いていた
449名無しさん@ピンキー:2008/11/26(水) 18:09:33 ID:6dqQ6d4z
面白いね
続き気になります
頑張って書いて欲しいです
450名無しさん@ピンキー:2008/11/26(水) 18:48:29 ID:ABzMfOie
>>444
GJ ツンデレ視点もなかなか面白いね。
続きを待つ。
451名無しさん@ピンキー:2008/11/26(水) 19:30:14 ID:Xp5e1id4
>>448
GJ
452名無しさん@ピンキー:2008/11/26(水) 23:03:53 ID:Z1xy+xZD
>>448
つ、続きは勿論あるんでしょうね?
453名無しさん@ピンキー:2008/11/27(木) 03:34:15 ID:S4ve7zIE
打算から本気になる恋愛って好きです。
その心の葛藤が。
面白かったから続きよみたいです。
454名無しさん@ピンキー:2008/11/29(土) 06:33:11 ID:TRGdwRUo
GJ!!すばらしい
続きを頼む
455名無しさん@ピンキー:2008/12/03(水) 18:24:00 ID:HewTcviI
べ、べつにあんたのために保守する訳じゃないんだからねっ!
勘違いしないでよねっ!!
456名無しさん@ピンキー:2008/12/04(木) 11:16:09 ID:f7ey3Xi1
だ、誰がアンタなんかに保守して欲しいって言ったのよ!
勝手なことしてんじゃないわよ!

…え、じゃあ、もうしないって?ち、ちょっと別にそこまで言ってないわよ!
ただ、1人で勝手にしないで2人で一緒に…
な、何でもないわ!
457名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 00:13:45 ID:LWDz5rWp
>>444-448の続きです
458名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 00:14:28 ID:LWDz5rWp
「あー、眠い」
私は欠伸をしながら、携帯電話の受信履歴を確認する

―おはよう−

彼、すなわち平本信斗からのメールだ
メルアドを交換してから、毎日続いている挨拶のメール
コレに加えて夜の“おやすみ”メールもデフォルトだ

「削除…と…」
私は彼からのメールは
朝は忙しい、夜は眠いという理由をつけ、返していない
さらに、いちいち削除している。これが面倒だ
やっぱり、万が一にでも友人に携帯電話を見られたら困るわけで……


あの日の出来事を一ヶ月たった今でも思い出す
私の足元を見た上での…数々の暴言、脅し、屈辱の言葉を

『考えてる?もしかして迷ってんの…?』
『焦ってそうだったから』
『自殺しようかな…』

弱みを突かれた私は付き合うことを承諾してしまった

しかしあの日ごろから私は少し気が軽くなったような気がする
それはきっと、新しいクラスに馴染んできたからかな?
そうに違いない…


(しかし、毎朝毎晩よく“迷惑なメール”を送ってくるわね……こっちはいちいち削除するのが面倒くさいのに!)
と突っぱねる私だが
迷惑なメールのはずなのに、止める気がおこらない。どうして…?
まぁ深く考えないようにしよう
因みに私は日記などの習慣を続けられたことはほとんど無い
459名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 00:15:40 ID:LWDz5rWp
そういう点に関しては、悪い意味でだが彼を評価した

(やばっ、遅刻する)
私はいつものように焦りながら家を出て、学校へ向かった

―学校―
私が休み時間中、廊下で友人たちと会話していると…
(まただ……)
遠くから誰かの視線を感じる…
わずかに平本がこっちを向いているのが、見えた
(ちょっと平本、あんまり遠くからジロジロ見ないでよ)
挙動不審になる私を心配したのか、友人が
「どうしたの?誰か怖い人でも回りにいるの?
いや、それはないよね。亜姫がもう既に(男性から見て)怖い人だから。ハハっ」
「そ、そうよ。だから心配しなくていいわ。なんでもないから」
50%冗談なのに100%本気で受け取る私。かなり頭が固いです

その後の授業中、机の下に隠しながら携帯電話で急いで彼にメールを送ろうとした
内容は苦情である
『あんまり、ジロジロ見ないでよ。変態ストーカー』
(これはさすがに無いか……それに自意識過剰だし…)
メール文を変えようとしたときにふと、思う
(そういえば、私から平本にメール送るのは初めてよね…確か、
怪しい誘いを断るときだけだわ…送ったの…)
彼からは以前数回、誘いが来ていた
まぁ私は、用事があるとか、休養優先でいずれも断った

ポチッ

(あっ)
余計なことを考えてたら、つい押してしまった…!

(やばっ。やっちまったよー)
私は数分間頭が真っ白になった
しかし冷静になって、プラスの方向で考えてみた
(コレで平本が私のこと嫌いになってくれて、別れられるんだったら、結果オーライかな……)
460名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 00:16:32 ID:LWDz5rWp
彼からのメールは返ってこないまま、夜を迎える
私は自分のベットに寝転がっていた
(そろそろいつものメールが来るはずよね…)
毎日その類のメールが来ているのだから、嫌でも彼の生活リズムを覚えてしまう
(遅いわね…あーぁ…ねむぃょ……ZZZ ZZZ〜)
私は彼からのメールを確認することなく眠りについた

翌朝、必死で起きた私は
習慣で携帯電話を確認する。意図しない習慣は身につけられるようだ
「あれ、メールがない…。あっそうか……」
今まで寝ぼけていた私も一気に目が覚める
(まぁいいわ。これで自然消滅ね。やっと迷惑メールも来なくなる〜。やったわー……)
言葉とは裏腹に体が重い
(………)

―学校―
(あっ、平本!)
私は休み時間中、友人と廊下でいつものように会話をしているとき、彼が移動教室で私達の前を通ろうとしていた

スタ、スタスタスタ

私はつい、あっという間に通りすぎる彼を頭全体を使って目で追ってしまった
そしてその固い頭で一生懸命考えた
(様子はいつもと同じ…な気がするわね……って別にどうでもいいじゃない!)

しかしそのことに気を使いすぎたのか、友人に鋭く突っ込まれる
「あらー?亜姫にも頭全体をつかって目で追ってしまうぐらい好きな人できたのー!?」
「うぐっ。ち、違うわ。あんな奴…」
私は必死に否定する
「そうよね。高級志向の亜姫があんな平凡で地味な奴をねー。失礼しましたっ!」
「そう、そうそう、よーー、け、軽率な言動はやめてっ!」
私はいろいろ痛いところを突かれて、歯切れの悪い返事をした
461名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 00:17:40 ID:LWDz5rWp
その夜自宅
(うぅ、なんで眠いのに、眠れないのよ……)
私はベットで、原因不明な状態に悩んでいた
彼からのメールはなかった。認めたくないけどそれも関係しているのかも……


そして朝
(うぇー眠い。これも、あいつのせいだわっ!!)
昨晩はいろんなことを考えていたせいであんまり寝れなかったが、
今日は早く学校へ行くことを決めていた

(確か、去年同じクラスだったとき、平本は、いつも私より早くに来てたはずだわ……)
数少ない記憶を頼りに私は学校へ向かった


私は遅刻とは無縁の時間に学校へ着いた
(はぁ、はぁ…あっ、平本)
幸運にも前方には彼の姿が
私は彼と同じの速さで階段を上り、時を伺った

(今だ!)

「う、なんだっ!?」
私は平本を登校時には人気の無い場所へ引きずった

「あーいきなりなんだよぉ。津野さん……あっ、そうだお…」
「ねぇいくらなんでも自然消滅って形は酷くない!?」
「えっ!?」
彼にも言いたいことがあったみたいだが、完全に戦闘体制の私には聞き耳がなくさらに続ける
「確かに私はさー、あなたのメールに対して返事しなかったり、誘いだって邪険に扱ったけど、、
メールは朝の忙しいときや夜の眠いときで返信できないだけだし、
誘いは本当に用事があって断っただけなんだから!
だから…私が嫌がってるわけじゃないんだから、これからももっとメールしてきなさいよっ!!」
462名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 00:18:11 ID:LWDz5rWp
私は怒涛の勢いで、ありったけの言葉を彼に投げつけた
もう途中から何を言ってるのかはわからなくなっていたけれど
それは偽りの無い言葉だというのは自信もって言える

「ハァ、ハァハァ…わかった?」
息が切れて話すのをやめた私に代わって、彼が口を開く

「あのーなんのことでしょうか津野さん……(汗
おれ、2日前から携帯電話が壊れてさー……まぁ今週中に買い換えるんだけど…」
「えーっ!?」
彼のそんな言葉は、私の顔を激しく赤に染めた


「け、携帯が壊れてるんだったら、すぐに言えばよかったのに!!平本がうじうじしてるから私…私っ、変なこと言っちゃったじゃない!!」
「ご、ゴメン!い、いやさ…学校で話しかけないでって言うからさ…。やめといたんだけど…」
「時と場合によるでしょ!?」
申し訳なさそうにしている私は彼を激しく責めた
それもそうだ。直接的ではないにせよ
認めたくなかった、彼に『気持ち』があることを、自ら暴露してしまったからだ

「そ、それにしても…」
「それにって…何よ?」
やっと落ち着いてきた私は冷静になったつもりで尋ねる

「実はさ…朝と夜のメールやめようと思ってたんだ。返信がなかったからさー
でも、うれしいな……『もっとメールしてほしい』なんて…
け、携帯壊れてよかったぁ……!!」
「い、いや…さっきのは……あーあー、もう知らないーー」
再び赤く染めた顔を彼から隠すようにして、私は教室へ走って逃げ出した
チャイムはもう鳴る寸前であった
463名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 00:55:11 ID:pDc6MJM1
何これ。めっちゃ萌えるんですけどww
かわいいなー。GJ!
464名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 12:38:01 ID:dtI71/Cu
御願いだからこれ以上俺の顔をニヤケさせないでくれwww
465名無しさん@ピンキー:2008/12/08(月) 22:48:38 ID:ggJt5FDI
・・・あっ、そうだお・・・ に不覚にも萌えたw GJ!!
466名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 03:34:46 ID:7qjf3aOl
ふ、ふんっ! 例え誰もいなくっても、あたしは一人でこのスレを守ってみせるんだから!
一人ぼっちでも、全然平気……なんだから……。










………………寂しいよぅ。
467名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 06:21:18 ID:UhKWFENa
>>466
ごめん…風邪移したくなかったから…独りで寝てたんだ…
心配なんかしないと思ってたし
468名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 12:14:47 ID:HACA7WZS
>>467
ばか、誰もあんたの心配なんてしてないの。
このスレ保守する人間がいなかったら、落ちちゃうじゃない。

あ、あたしは……まああんたのこともほんの少しだけ心配してたけど…








>>466ってどこの女!?
白状しなさいっ!!
469名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 01:10:38 ID:ZJg6aLZC
保守
470名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 00:36:50 ID:cOZ3ATjm
誰か保管庫おしえてくれ
471名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 04:23:59 ID:3UxK3qOy
472(,_´ゞ`):2008/12/17(水) 15:37:20 ID:Xb0mdxeE
ちょっと時間が出来たから小ネタ程度に


『姫と僕』

「何をもたもたしているのかしら? 本当に役立たずなんだから」
会長こと有栖川レナに罵られながら僕は荷物を運ぶ。
正直、自分よりも大きな荷物を運ぶのは辛い。
何故か会長は毎日の様に仕事を僕にやらせようとする。
そして会長は何をするのかというといつも僕の側で仕事が遅いだのと嫌味を言ってくるのだ。
なら自分がやればいいのに……と言いたいがそれは出来ない。
何故ならこの学園は資産家である会長の父親が運営しており、その父親の寵愛を受ける会長が学園を支配している様なものなのだから。
会長に逆らえばどうなるかなんてもう決まっている…この前も会長に意見を言っただけでに退学なった女子がいた。
なのにかかわらず誰も会長に文句を言わないのはひとえに彼女のカリスマ性によるものだろう。学力、身体能力、手腕、どれを取っても穴がない。
おまけに彼女の母親が外国の人だからか容姿端麗ときたものだ。
可愛らしい顔立ちに腰まで伸びた金色の髪に動く度に揺れる大きな胸……男子も女子も慕われているその姿はまさに王家のお姫様そのものだ。
473(,_´ゞ`):2008/12/17(水) 16:33:20 ID:Xb0mdxeE
『姫と僕』


それに比べて僕、朝比奈あすかは酷いものである。
今年で15歳になったにもかかわらず、女子よりも低い身長、なよなよしい女の子みたいな身体と顔……何回女の子と間違われた事か。
臆病な性格でいつも女子達に馬鹿にされたり、からかわれたりとなんとも情けないものだ。
まさに『貧弱ゥッ!』の称号がピッタリ。
友達にはいつも男らしくしろなんて言われるけど、それは無理だよ……だって僕には他人に誇れるものなんてひとつもないんだから。
そんな僕が会長から名指しで生徒会に呼ばれたのは半年前の事だ。
生徒室に入った瞬間に待ち構えていたのは会長からの叱咤の声だった。
「私を待たせるなんて良い度胸をしているわね?」
この理不尽とも呼べる言葉と周りにいた女子の鋭い視線に僕は
「ごめんなさい」
と謝ってしまった。
やっぱり僕は臆病だ。
僕のその言葉に会長は満足した様な表情をして言葉を続けた。
「次から気をつける事ね?それよりもあなたを今日より『生徒会長・側近』に任命するわ。
今日から会長側近として私に尽くしなさい…よろしいわね?」
474(,_´ゞ`):2008/12/17(水) 17:12:40 ID:Xb0mdxeE
『姫と僕』



会長直々の任命に何故僕なのだろうと疑問には思ったが会長に逆らう事は出来ない。
僕はこうして生徒会会長・側近として任命される事になった。
後ろから女子達からの恐ろしい視線に泣きそうになったのはナイショですよ?



会長側近……名前だけ見れば名誉な役だけど、仕事内容ははっきり言うと『召使』以外の何ものでもない。
荷物運びから始まり、会長の椅子の掃除やカバン持ちに果ては肩揉み等を常に会長の嫌味を聞かされながらやらされるのだ。
しかも僕が会長と共に行動する事に他の生徒の皆さん(主に女子)が嫉妬しているらしい。
この前なんて何人かの女子に闇討ちされそうになった……もしその場に友達がいなかったらどうなっていただろう。
そんなこんなで会長の側近になったあの日から僕の学園生活は苦労の連続です……。
ああ……僕は貝になりたい。






続けるべきなのだろうか思いつつここらで終わらせます。
475名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 17:47:25 ID:z/+dTDlu
タイトルをいちいちレス毎につけなくてもいい。
なんか空白が多すぎて読みにくいな。それと三点リーダの多用も止めた方がいいと思う。
しかしなんとも気弱な主人公だ。名前・容姿・性格と貧弱の三冠王だな。
とりあえず続きが読みたい。そうでないと栄養分が足りずに死んでしまいそうだ。
乙。
476名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 18:53:16 ID:zOKK3Exu
空白以外はおk。




続きなんて期待してないんだからねっ!
477名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 02:16:15 ID:Kai+a4n3
ヘタレ君が不満が爆発するのwktk
478名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 02:17:46 ID:Kai+a4n3
接続詞がおかしかった
すまん
479名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 07:01:44 ID:K8eZyy/E
内容的には良いと思う
続きを書いてくれ GJ!
480(,_´ゞ`):2008/12/20(土) 01:28:25 ID:vxhVleQ0
>>475
どうも色々な悪癖がありまして……以後気をつけます。

続きです

『姫と僕』


「お勤めご苦労だったな、あすか」
放課後に荷物を運び終えて教室で休んでいた僕の肩を太陽がポンと叩く。
太陽とは付き合いが長く闇討ち事件でも僕を助けてくれた一番の親友だ。
「うん……ちょっと重い物を運んだせいか体中が少し痛いけどね…」
「おいおい大丈夫かよ?かなりテンションダウンしてるじゃねぇか」
「まぁ……これが側近の仕事なんだから仕方ないと言えば仕方ないよ……」
「ふーん、側近ってのは本当に大変なんだな。それにしてもなんで会長はお前を側近にしたんだろうな?」
何故会長は僕を側近に任命したのか――それは今だに僕も気になっている事だ。
なよっちくて良い所なんてない僕なんかよりも優秀な人なんてこの学園には沢山いるはずなのに。
まぁ会長は恐らく僕みたいな弱者が困ったり苦しんだりしている様子が見たくて任命したんだと思う。
会長に馬鹿にされていると分かっていても僕は会長に逆らう事は出来ない…いや、そもそも逆らう勇気がない。
悲しいけど……僕は真っ事の臆病者なんだ。
481(,_´ゞ`):2008/12/20(土) 01:30:42 ID:vxhVleQ0
しばらく教室で話をしていたけど事情を思い出したとかで太陽は帰っていった。
本当なら一緒に帰りたいけどそうはいかない…これから生徒会長室に行かなければならないからだ。
会長曰く側近というものは会長自身が学園から出るまで勝手に帰ってはいけないとか。
「はぁ…」
また今日も会長に馬鹿にされる…そう思うと僕の口からため息がこぼれる。
生徒会長室の扉を恐る恐る開けたその先には――会長がかなり機嫌悪そうな顔で椅子に座っていた。
「放課後になったらすぐ私の所に来る様にしなさいと何回も言っているわよね?
あなたは学習するって事を知らないのかしら?」
また始まった……会長による罵りタイムだ。
会長は僕に対しての罵詈雑言が実に大好きらしく僕はそれに耐えなければならない。
「すいません会長……ちょっと用事がありまして…」
と僕は小さな声で答える。
その言葉に反応した会長は椅子から立ち上がりズイッと僕に詰め寄ると
「あら、この私よりも大事な用件って一体何かしらね?ぜひ分かる様に教えていただきたいものだわ!」
と言い放った。
482(,_´ゞ`):2008/12/20(土) 01:31:52 ID:vxhVleQ0
会長のもの凄いけんまくにすっかり縮こまってしまった僕は
「ごめんなさい……」
とか細い声で謝るしかなかった。
「また出たわあすかの『ごめんなさい』が。
あすかが私の側近になってからこれで何度目なのかしら!?あなたって本当に謝ってばっかりでまるで進歩がないわ!」
会長はキッと僕の顔をにらんで後ろを振り返る。

……謝らせるのはそうやって僕を責める会長なのに……どうして会長は僕にきつく当たるのだろう…。
他の人には普通に接するのに僕だけには嫌味ばっかり言って来る……。
もうやめたいよ……側近なんて…毎日毎日馬鹿にされている僕が惨めなだけじゃないか。
どうやら会長の怒りは鎮まったらしい、再び僕の方に振り返る。
「あなたは私に尽くしていればいいの…分かった?」
「……はい」
……本当に僕は臆病だ。
483(,_´ゞ`):2008/12/20(土) 01:37:32 ID:vxhVleQ0
今回はここまで…!すまないっ…!
484名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 02:25:37 ID:C2d+vOnj
NAMAGOROSHI!
485名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 10:30:48 ID:55sCTfum
いやー面白いGJ!!
これからの展開が楽しみだ
486名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 12:20:58 ID:ECVczED8
ツンデレな従姉妹が欲しい。
487名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 01:46:53 ID:/VnN1WKO
な、生殺しなんてひどい!
クリスマスまでにうpさなかったら許さないんだからね!!
488(,_´ゞ`):2008/12/25(木) 01:07:47 ID:ghsKqTni
OK・・・・続けようじゃないかっ…!


『姫と僕』


この日の仕事は会長と二人で書類の作成をする事になった。
会長を慕っている生徒からみれば羨ましいかも分からないが、僕にとっては会長からの言葉責めを受け続けるという…苦痛な時間だ。
「私が頑張っているのに手を休ませるなんて随分と余裕な事ね…あ・す・か?」
早速1嫌味入りました…手を休ませているつもりは全然ないのになぁ。
「ところであすか……」
おもむろに会長が口を開く。今度はどんな嫌味を言って来るのだろうか…。
「あすかには………いるの……?その………ええと……………彼女…」
「…はい?」
予想外の質問に僕は思わず間の抜けた返事をしてしまった。
「だから!彼女はいるのかって聞いているのよこのおバカあすか!」
バンッと机を叩きながら会長は叫ぶ。何故そんな事を聞いて来るのだろうか僕は理解に苦しむ。
「いえ…いませんけど…」
いる訳ないじゃないか……昔から女子に馬鹿にされているのに。
「そ…そうよね!あすかみたいな情けない男に彼女なんている訳ないわよね!」
会長はニヤニヤと笑いながら僕の方を見る。
489(,_´ゞ`):2008/12/25(木) 01:15:46 ID:ghsKqTni
確かにそうだけど…そうなんだけど…そこまで馬鹿にする事ないじゃないか。
「ま、あすかは一人じゃ何も出来ない弱虫だものね」
――カチン
僕の頭の中で何かが弾けた。
「役立たずで馬鹿で無能な人間をからかって楽しいですか会長?」
僕は会長に対して怒りがこもった返事をする。

「……………あすか?」
「どうせ僕は…人に軽んじられけなされ続ける人生がお似合いですよ」
会長が立ちあがって僕の方を見る。
「違う…そんな事…」
「会長には分からない…どんなに頑張っても認められない人間の気持ちなんて。
会長みたいに…誰からも認められる人にはね」
僕はうつむきながら言った。

会長室を静寂な空気が包む…その空気を破ったのは会長だった。
「あすかだって……」
会長が机の上に置いて分厚い本を手に取り
「あすかだって私の気持ちなんて全然分からない癖に!」
と怒鳴り、手に持っていた本を僕に向かって投げつける。
危ない――そう思った瞬間『ゴンッ』という音と同時に僕の頭を激痛が襲った。
「痛ッ!」
鈍器で殴られた様な強い痛みに耐えかねた僕はその場にうずくまる。
490(,_´ゞ`):2008/12/25(木) 01:17:31 ID:ghsKqTni
どうやら会長が投げた本の角が僕の右こめかみに命中したらしい、僕は両手で痛みの中心を押さえる。ズクン、ズクンと鈍い鼓動が僕の頭の中で鳴り響く。
「あすか!」
会長が慌てた声で叫びながら僕の方に駆け寄って来る。
直接押さえている右の手のひらが段々温かくなってきたのを感じた僕は恐る恐る右手を離してみる。

――――血。

僕の手のひらは赤く染まっていた…本がぶつかった際に切れてしまったのだろう。
「ごめんなさいあすか!私…なんて事を…」
会長がポケットからハンカチを取り出して僕の顔の血を拭こうとする。
『パシン!』
僕は―――その手を強くはじいた。会長のハンカチがヒラヒラと宙を舞う。
「……あ…あす…か…?」
「僕は会長側近として一生懸命に頑張ってきた…その結果がこの仕打ちなんて。
これじゃあ今まで頑張ってきた僕が馬鹿みたいじゃないか」
僕は泣きながら会長を睨む。僕は完全に逆上していた。
「会長も人が悪いですね。僕をいじめたいならいじめたいと最初からはっきり言ってくれれば良かったのに。
そしたら僕だって側近なんてやりませんでしたよ」
491(,_´ゞ`):2008/12/25(木) 01:20:37 ID:ghsKqTni
「違う!私は……」
「もう嫌だ!もう我慢の限界だ!もう側近なんかやめてやる!!」
僕は胸に付けてあった生徒会のバッジを毟り取ると床にたたき付け、荒々しく扉を開けると会長室から駆け出した。
「あすか!」
会長が呼ぶ声も今の僕の耳には入らなかった。


夕日を背に僕は帰り道を一人歩く。
いつもなら会長が帰るまで帰る事は出来ないのだけど今はもう……。
側近をやめたかったはずなのに
惨めな思いから解放されたかったはずなのに
今、その望み通りになったはずなのに
本当にこれで良かったのだろうかと僕は頭の中で自問自答を繰り返している。
一体僕は何をすればいいのだろう…その答えが分からない。
「……でレナお姉様の事なんだけど」
後ろの方で女子達の話し声が聞こえる。
レナお姉様とは会長を崇拝(?)している女子生徒が会長を呼ぶ時に使う言葉だ。
「私、いつかレナお姉様のお近づきになりたいわ〜!」
「無理よ無理!私だってなりたいけどお姉様は私達庶民と違うんだから!私達とは生きている世界が違うのよ!」
「はぁ…やっぱりそうね…私達なんかが話せる訳ないわよね」
492(,_´ゞ`):2008/12/25(木) 01:34:02 ID:ghsKqTni
その会話を聞いていた僕の歩みが止まる。
そういえば会長と話している時に疑問に思っていた事がある。
会長はこの前高級料理を食べたとか休日にどこに行ったとか(もちろん嫌味付きの)私情的な事でも話してくるのに
自分の友人や学園での日常についての話は一切した事がない。
いや…そもそも会長が他の人と話したり一緒にいる姿を思い出す事が出来ない。
朝に登校する時も…昼休みに食事をする時も…放課後に会長室で仕事をする時も…帰りの車を待つ時でさえ常に僕と一緒だった。
それはまるで僕以外に話す人がいないかの様に…。

その瞬間、僕はある推測をした。
皆、『資産家の娘』としか見てくれず『優秀な生徒会長』としか見てくれず本当の自分をさらけだす事が出来なかったのかもしれないと。
そう…まるで王家のお姫様みたいに。

学園の生徒会の会長で誰もが慕う天才……本来なら僕なんか口も利けない人間。
けど似ている………会長は僕に。
もしかしたら会長も僕と同じく孤独な人生を送ってきたのかもしれない。
そして…本当の自分をさらけ出す事が出来る人間をずっと探していたのかもしれない。
そして会長は側近を……。
493(,_´ゞ`):2008/12/25(木) 01:35:48 ID:ghsKqTni
僕も昔一人ぼっちだった…臆病で泣き虫で人と話すのが怖くて……そんな僕を救ってくれたのは太陽だった。
太陽は僕の初めての友達になってくれた。
いつも僕と一緒にいてくれた。本当の僕を見てくれた。
どんなに弱音を言っても八つ当たりしても太陽は絶対に僕を一人にしなかった。
それなのに僕は……僕は…!


僕は走り出す学園を目指して走り出す。
太陽は逃げなかった、僕から逃げなかった。
それなのに僕は逃げた、会長から逃げた、自分の弱さから逃げた。

僕は馬鹿だ
臆病者で最低な大馬鹿野郎だ

会長に謝らないといけない。会長から逃げてしまった事を。
もう帰ってしまったかもしれない、謝っても許してくれないかもしれない。
それでも僕は走らずにはいられなかった。
494(,_´ゞ`):2008/12/25(木) 01:39:06 ID:ghsKqTni
今回はここまでにさせていただきますっ…!
すまないっ…眠いんですっ…!
495名無しさん@ピンキー:2008/12/25(木) 09:05:53 ID:kU1hFV3p

次はあすかがデレるターンですね
496名無しさん@ピンキー:2008/12/25(木) 12:07:27 ID:e6M0RDwW
お疲れ、gj。
497名無しさん@ピンキー:2008/12/25(木) 21:27:13 ID:aXbp+wGe
>>495
名付けて「アスカターン」
498名無しさん@ピンキー:2008/12/25(木) 21:38:16 ID:/Oe16q5M
あの娘、アニメ版だとツンデレになってたな。
499 ◆POBrm2R/G2 :2008/12/25(木) 23:58:31 ID:81l0VkiI
「ふぅ…ギリギリクリスマスに間に合ったわ…」
私が今手にしてるのは、孝史が前から欲しがってたゲームソフト。
「全く、いい年してゲームなんて…」
もう25になるのにゲームなんて子供っぽいんだから。…そこに惚れちゃった私も私か。
苦笑しながら向かう先は、一人暮らしをしている孝史のアパート。


「しかし、このカッコは恥ずかしいわね…」
所謂ミニスカサンタのカッコで、既に寝入っている孝史の寝室に向かう。
孝史が起きないように、そーっとそーっと。
「…改めて見ると、意外とかっこいいのよね…」
思わず孝史の顔に触れそうになり、恥ずかしくなる私。
取りあえず枕元にゲームソフトを置いてっと。
「うーん…まりぃ…」
いきなり名前を呼ばれてドキッとする。お、起きてないわよね?
「…すぅ…すぅ…」
起きてないことに安堵した私はそのまま寝室を出ようと、扉に手をかける。
「真理サンタ、ありがと」
そんな声が後ろから聞こえ、慌てて孝史の家を飛び出した。
気付いてたなら気付いたって言いなさいよ〜!!


翌日、孝史に夜のことを聞いたら、
「ああ!朝起きたら枕元に欲しかったゲームがあってビックリしたよ〜!ん?サンタが居たかって?寝てたししらんよ?」
ととぼけられた。何か悔しいんだけど、孝史の笑顔を見たらなんだかどうでも良くなっちゃった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

クリスマス終了間際。ツンデレとしては微妙かも。お粗末様です。
500名無しさん@ピンキー:2008/12/26(金) 10:58:32 ID:wYoKdqWV
ぇい・・・・・!ぇい・・・・・・!GJ・・・・・・!
501名無しさん@ピンキー:2008/12/26(金) 15:21:58 ID:HVH8+oBQ
「姫と僕」の続きはまだか・・・ 
502名無しさん@ピンキー:2008/12/26(金) 19:45:55 ID:ZEXPvFhf
ツンデレに脅されたい
503名無しさん@ピンキー:2008/12/27(土) 19:38:51 ID:WzRsl67e
ツンデレな女の子にメイドをやらせるとどうなるのかなと思ったけど東鳩にすでにあったことを思い出した。
504名無しさん@ピンキー:2008/12/28(日) 10:35:32 ID:KZzC6zJj
ツンデレ同人誌(漫画SS問わず)なんかいいのないですか
505名無しさん@ピンキー:2008/12/30(火) 15:40:09 ID:OOruIaPR
保守
506名無しさん@ピンキー:2008/12/31(水) 09:23:05 ID:5re8d9K/
誰か保管庫教えてくれ
507名無しさん@ピンキー:2008/12/31(水) 10:03:27 ID:nA0sRVBT
>>11

あとsage推奨ね
508名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 00:10:14 ID:nhgbx160
あけましておめでとうツンデレ
509世界のヘイポー:2009/01/01(木) 03:50:04 ID:67ZbupvF
最後です……!

『姫と僕』

「はぁ……はぁ……」
今までの人生の中でこんなにも走った事があっただろうか?
運動が苦手で身体を動かす事があまりない僕にとって、いきなりの全力疾走は辛い。
普段の僕だったらもうあきらめて立ち止まっているだろう。
でも今の僕に立ち止まるなんて考えはない。
会長に謝りたい…その思いだけが僕の足を動かしているから。

ようやく学園の建物が見えて来た…僕はさらに足を早める。
突き当たりの角を曲がろうとした時、ひとつの人影が僕の視界に入る。危ない……そう思った時にはもう手遅れだった。
ドンッ!
人にぶつかった衝撃で僕は尻餅をついてしまう。
「……大丈夫?」
僕が顔を上げると三つ編みの髪型で柴色の髪の毛に子猫の様な可愛らしい顔立ちをした男子生徒が心配そうに立っていた。
「だ、大丈夫です…僕の方こそぶつかってしまってごめんなさい!」
僕は急いで立ち上がるとぶつかった男子生徒に対して頭を下げながら謝った。
「……気をつけてね」
その男子生徒は一言そう言うと歩き去っていった。
今の男子生徒……どこかで見た様な?
いや、今はそれよりも会長の所に行かなければ!僕は再び走り出す。
510世界のヘイポー:2009/01/01(木) 03:51:35 ID:67ZbupvF
僕が学園に辿り着いた時には辺りはすっかり暗くなっており閑寂な空気が流れていた。
僕は靴を履き替えると階段を一気に駆け登る。学園内を走ってはいけないなんて悠長な事は言ってられない。
ようやく生徒会長室の扉の前までたどり着いた僕は気付かれない様に呼吸を整える。
会長室には明かりはついていない…やはり帰ってしまったのだろうか。
いや、ただ明かりをつけてないだけでもしかしたら会長はまだいるのかもしれない。
(うう……緊張するなぁ…)
あの会長に対してあんな事を言ってしまったんだ、頭を床に何回も打ち付けて謝ったとしても絶対にタダじゃあすまないだろう。
どんな恐ろしい処罰が待っているか想像するだけでも足の震えが止まらない。
でも、これは自分自身がまいたタネなんだ…もう後戻りは出来ない。
僕は覚悟を決めると扉をノックし
「失礼します!」
の掛け声と共に会長室に入った。

――そこに…会長はいなかった…やっぱり帰ってしまったのだろう。当然といえば当然なのだがやはり辛いものだ。
僕はガックリと肩を落としながらフラフラと歩みを進める。
ふと涙が頬を伝う……僕は本当に情けない男だ。このまま…消えて無くなりたい。
511世界のヘイポー:2009/01/01(木) 03:53:01 ID:67ZbupvF
その時、自責の念に駆られていた僕の背中からガチャッという物音が鳴った。
まさか……僕は後ろを振り向く。
――そこにいたのは無表情な顔で僕を見つめる会長だった。
突然の出来事に僕は困惑してしまう…会長は帰っていなかったのだ。
「あ……あの…」
うう…あまりの恐怖に言葉が出ない…。
会長は眉一つ動かさず無表情のまま何も言わずに僕の目をジッと見続けている。
今までとは違った威圧感に僕はまた逃げ出しそうになる。
どこまでいってもやっぱり僕は臆病者なんだ……。

―――違う

僕はここで臆病になるために来たんじゃない。
僕は会長に謝るため、自分自身の気持ちを伝えるためにここに来たんだ。
そう思った瞬間に身体中の震えが止まる。
今なら言える……そう決断した僕は頭を下げ口を開く。
「すいませんでした!会長の気持ちも分からないくせにあんな事を言ってしまって!
側近をやめるなんて言ってしまいましたけど僕…本当は会長と共にいたいんです。
どんな罰も受けますから…会長のために頑張りますから…これからも会長側近として側に居させてください…お願いします!」
これが今の僕の本当の気持ちなんだ。
512世界のヘイポー:2009/01/01(木) 03:54:44 ID:67ZbupvF
「………………」
会長は何も言わずに無表情のまま僕の方に向かって歩き出す。
そして僕の目の前まで来た会長はおもむろに右手を上げる。
(ビンタされる…)
そう直感した僕は怖さのあまり目をつぶってしまった。
「……あすか」
会長の呼び掛ける声が聞こえた瞬間、体全体が柔らかいものに包まれる。
僕が目を開けると…会長が両手で僕の身体を包む様に強く僕を抱き締めていた。
会長の胸の鼓動が僕の身体全体に強く伝わって来る。
「………本当に馬鹿なんだから」
僕の耳元で会長が小さく呟く。会長の吐息が僕の耳にかかる……熱い…。
会長が再び僕の顔を見つめる……会長の目から涙が溢れている。
「あすかが先に謝ったら……私が謝る事が出来ないじゃない………馬鹿…」
「会長………」
僕はただ会長の顔を見つめ続ける事しか出来ない。
そっと会長の手が僕の右こめかみの傷跡を優しく撫でる。
「ごめん…なさい……あなたを傷付けてしまって……痛かったよね…?」
会長の柔らかく温かな手の感触が心地よい。
513世界のヘイポー:2009/01/01(木) 03:56:43 ID:67ZbupvF
「大丈夫です会長…僕は男の子ですから」
会長の心の痛みに比べればこんな傷は傷の内に入らない。
「優しいのね……あすかは本当に…。
ごめんね…散々ひどい事を言って……こんな馬鹿な私だけどこれからも一緒にいてくれる…?」
……もう答えは決まっていた。
「はい…頼りない僕ですけど…会長とならどこまでも」
「ありがとう…あすか…」
会長が涙を拭きながらニコリと笑う。
嫌味を言う時や生徒会の時とは全く違う見た事のない会長の美しい笑顔。
もしかしたら今の姿が本当の会長なのかもしれない……ううん、この姿こそが本当の会長自身なんだ。

「ところであすか…」
突然会長が話を切り出す。
「どうしました会長…?」
「どんな罰も受けるって言っていたけどあれは本当かしら?」
まずい…なんだか嫌な予感と悪寒がして来た。
「この私を怒らせたのですもの。何をされても文句は言わないわよね……あ・す・か?」
会長の顔がいつも通りの意地の悪い笑顔に戻る。
一体どんな罰を受けるのだろうか。
首輪を付けられ犬として会長の命令通りに働かされるなんて事も…考えるだけでも恐ろしい。
514世界のヘイポー:2009/01/01(木) 03:58:30 ID:67ZbupvF
「……して」
ふと会長の声が耳に入る。
「…はい?」
「だから!……して…」
会長の声が小さくてよく聞こえない…一体をするのだろう?
「あの〜僕は何をすれば…」
僕が聞き返そうとした瞬間、会長がキッと睨み付け
「だからキスしてって言ってるでしょうがこのバカー!」
と顔を耳まで真っ赤にしながら大きな声で叫んだ。


ちょっと待ってください…思考回路が今の現状に全く追い付かない。
つまり…僕は会長と喧嘩して、謝って…そして罰としてキスをするという事なのかな?
…キス。キス?キス!?
「なななななな!?」
鏡を見ずとも自分の顔が見る見る内に真っ赤になっていくのが感覚で分かる。
「そんなにびっくりしないでよ!…私だって恥ずかしいんだから…」
会長はそう言うと頬を赤らめ静かに目を閉じた。会長の方は準備OKらしい。
どうしたら良いのか分からない僕は取り敢えず会長の肩に手を添える。
会長が震えてる…会長のしおらしい姿に胸の鼓動が高まる。
僕は覚悟を決めた。
この先どんな事があっても会長から離れないという覚悟を。
僕は静かに目を閉じ、そして――。
515世界のヘイポー:2009/01/01(木) 04:00:11 ID:67ZbupvF
僕の唇と会長の唇が一つに重なる。
「んっ・・・!」
会長の口から甘い声が漏れる。
柔らかくて熱い唇の感触に頭の中が真っ白になりそうだ…。
会長が僕の腰に腕を回してくる。僕もそれに応える様に会長を抱き締める。
会長のシャンプーの匂いが僕の鼻をくすぐる。
二人だけしかいない生徒会長室での一時。
この時間がいつまでも続いて欲しい……僕は心の底からそう思った。

スッと会長の唇が僕から離れる。
僕と会長はしばらくの間見つめ合っていた。
「……帰ろっか」
「………はい」
会長の言葉に僕はうなずく。

「待ってあすか」
会長室の扉を開けようとした僕を会長が呼び止める。
「どうしました会長?」
「その…あなたの制服の上着を一晩貸して欲しいのだけど……それと」
会長が僕に耳打ちをする。
「えっ?そんな事…よろしいのですか?」
「どんな罰も受けるんでしょ?」
「分かりました…」
「じゃ、明日からよろしくねあすか!」
会長が僕に命じた事それは――。
516世界のヘイポー:2009/01/01(木) 04:01:44 ID:67ZbupvF
「何をもたもたしているのかしら?もう本当にあすかはとろいんだから!」
会長に怒鳴られながら僕は荷物を運ぶ。
あの出来事から一週間が過ぎた。
僕は相変わらず会長に嫌味を言われながら側近として頑張っている。
でも、今の僕には不満なんてものはない。
会長が素直な性格じゃない事も分かっているし本当はとっても優しい人だって分かっているから。
胸についている生徒会のバッジが揺れる。
あの出来事の後に会長が僕のために縫い直してくれたものだ。
会長曰く僕の力では絶対に毟れない様に固く結んだらしい。
そんな事をしなくても僕はもう毟らないのにと僕は思う。
「何をボーッとしているのかしら?」
会長が僕の頬をぷにぷにとつっつく。
「ごめんなさい会ちょ…」
「もう…忘れたの?二人の時は会長じゃなくて…」
「あっ、すいません…レナさん…」
「それでよろしい!」
会長がニッコリと笑う。
あの時に会長が僕に下した罰…それは二人の時は『会長』ではなくて名前であるレナで呼ぶ事だったのだ。
とはいえ会長の方が僕よりも年上なので『レナさん』と呼ぶ様にしている。
517世界のヘイポー:2009/01/01(木) 04:03:47 ID:67ZbupvF
「やっぱり会長以外の呼び方ってしっくり来ない様な…」
「駄目!あすかは私の言う事を聞いていれば良いの!分かった?」
「…はい」
うーん、やっぱり僕は会長には逆えないなぁ。
でも僕はそれでも構わない。僕は会長と共にいる事を選んだのだから。
なんの迷いもない、満足だ……会長が笑ってくれるならこれでいい。
「……ねぇレナさん」
「何、あすか?」
「レナさんの事…好きですよ」
「なっ…!」
会長の顔がみるみる内に真っ赤になっていくのが分かる。
「い、いきなりそんな…私も…」
「生徒会長として」
「……!この馬鹿〜!」
どうやら会長のからかいスキルが僕にもうつってしまった様だ。
会長からの猛攻を避けながら僕は荷物運びを再開する。
会長…これからも僕は側近としてずっとあなたの側にいますから安心してください…!
518世界のヘイポー:2009/01/01(木) 04:06:20 ID:67ZbupvF
――幕間――



荷物を運び会長との食事を終えた僕は教室で休憩していた。
ふと僕は一週間前に走っていた時にぶつかった男子生徒の事を思い出す。
確かに僕はあの少年の事をどこかで見た事あるんだけど、名前を思い出す事が出来ない。
一体誰だったっけ…?

『勝負しろ!』
突然の女子の叫び声に僕は声のした方向に顔を向けた。
そこには苛立ち気味のスカートの下にスパッツを穿いた女子と大きなくるくる眼鏡を付けた男子が向かい合っていた。
その男子を見た瞬間僕は気が付いた。
顔はくるくる眼鏡でよく分からないが、柴色の髪の毛と三つ編みの髪型が一週間前にぶつかった男子生徒と全く同じである事に。
「佐々木…炎」
僕はその男子生徒の名前を呟いた。
519名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 04:14:11 ID:tSp7or9E
sien
520世界のヘイポー:2009/01/01(木) 04:21:19 ID:67ZbupvF
元(,_´ゞ`)です
姫と僕の話はこれで終わりですけど新しい物語を考えています。
舞台は「姫と僕」と同じ学園だけど別の主人公での物語……ですので「幕間」という形で主人公を交代させたいと思います。
それではおやすみなさい。
521名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 06:33:38 ID:dd71bliK


> 顔はくるくる眼鏡でよく分からないが、柴色の髪の毛と三つ編みの髪型が一週間前にぶつかった男子生徒と全く同じである事に。
これのビジュアル想像したら気持ち悪いなw
522名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 10:28:22 ID:vtcXhvqC
島本和彦の漫画に出てきそうな名前だ
523名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 13:58:15 ID:TAVBevy1
gj
524名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 19:03:50 ID:KO0msuq6
gjすぎる!

あげてみる
525名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 00:05:51 ID:TrFU+IjL
GJ!
526名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 19:50:37 ID:7GhQnf06
ナイツン! ナイデレ!
527名無しさん@ピンキー:2009/01/05(月) 23:39:40 ID:A2c4GuND
528世界のヘイポー:2009/01/08(木) 00:08:33 ID:6pYDeKQe
新章いきますっ…!

『犬猫合戦』


(一体何回やれば気が済むんだろう?)
僕、佐々木炎(ささき えん)は目の前で勝負しろと息巻いている坂崎香(さかざき かおり)を見て思う。
「坂崎さん頑張ってー!デカ眼鏡男なんかに負けないで〜!」
「坂崎さんが本気になればこんなお化け眼鏡あっという間なんだから!!」
クラスの女子共がアホみたいに騒ぎ出す。やれやれ…デカ眼鏡だのお化け眼鏡だの酷い言われ様だこと。
坂崎香は明るくてボーイッシュな性格で特に女子に人気があり、坂崎を何回も負かせている僕はまるで悪役の様な扱いだ。
しかし、はっきり言ってこれは言い掛かり以外の何物でもない。
何故なら僕からは何もしていないのに坂崎の方から勝手に挑戦を仕掛けてくるのだから。

全ての発端は半年前の入学式の放課後に坂崎と二人で将棋で勝負した事から始まる。
本当は嫌だったのだが男なら戦えだの何だのとあまりにもしつこいのでイラッとした僕は徹底的に負かしてやった。
それがいけなかった……奴はその日から毎日勝負を挑んでくる様になってしまったのだ。
坂崎がいうにはプライドを傷付けられたから許せないんだと……馬鹿じゃないのか。
529世界のヘイポー:2009/01/08(木) 00:11:02 ID:6pYDeKQe
こういう動物いるよな…普通に道を歩いているだけなのにいきなり吠えかかってくる野良犬だっけ?
その野良犬と坂崎がダブってしょうがない、五月蠅い所なんて実にそっくりだ。
「……やれやれ。君が僕に勝った事が今まで一回でもあるの?いい加減あきらめて欲しいんだけど」
僕はうんざりした口調で坂崎に言う。
「今まで負けたからとって今回も負けるとは限らないだろ!?今日こそ炎を負かしてみせる!」
坂崎は指をバキバキ鳴らしながら答える。
(……哀れな)
僕はため息を吐きながら頭をかく。一体どこをどう考えたらそういう答えに至るのだろうか?
一見、坂崎の言葉は絶対にあきらめない不屈の精神を物語っている様に思えるがなんて事はない、ただ単純に学習能力がないだけの話に過ぎない。
そんな簡単な事にどういう訳か坂崎だけが気が付いていないのだ……。

まぁ、そんな坂崎に付き合ってやっている僕も僕なのだろうけど。
面倒なら無視すれば良いのに勝負に付き合う僕もまだまだ子供だって事。
だがあくまでも僕は坂崎が勝負に負けて悔しがる様が見たいだけなのでそこの所を勘違いしないで欲しい。
530世界のヘイポー:2009/01/08(木) 00:13:19 ID:6pYDeKQe
「逃げるな眼鏡大帝!」
「坂崎さんと勝負しろメガネキング!」
さっきから女子共が眼鏡眼鏡とやかましくてしょうがない。僕は女性という生き物が好きではない……むしろ嫌いだ。

正直に言うと僕は女が怖い…話す程度ならどうにか堪える事が出来るけど近付かれると強い不快感と恐怖感に襲われてしまう。
僕が大きくてくるくるした眼鏡を付けているのもその時の表情を皆にバレない様にするためだ。
ちなみに僕の視力は両目とも2.0を超えているのでかけているのは伊達眼鏡である。
こうなってしまったのも全部過去のある出来事のせいだ。あの事件のせいで僕は…。


「おい!聞いてんのか!?」
坂崎の怒鳴る声で我に返る。そうだ僕は坂崎に勝負を挑まれていたんだっけ、すっかり忘れていた。
「ああ…やるよやるよ、やれば良いんだろ」
僕はやる気のない返事をする。どうせ断ったって食い下がるのだろうし。
「よーし!それでこそ私のライバルだ!試合内容は……」
坂崎が僕の腕をつかむ…けど僕はそれに対して恐怖感を抱く事はない。
不思議な事に坂崎にだけは普通に接する事が出来るのだ。
531世界のヘイポー:2009/01/08(木) 00:15:02 ID:6pYDeKQe
理由は分からないが坂崎の女らしさの微塵もない男の様な性格と外見のおかげだと僕は考えている。
まぁ……毎日勝負しているせいで女というよりもただの五月蠅い挑戦者として見ているからかもしれないが。
だからと言って僕が坂崎に対して特別な感情を持っている訳じゃない。ただの『挑戦者』として見ているだけなのでそこを勘違いしないでいただきたい。
「炎!お前はさっきから人の話を聞いてんのか!?」
「はいはい、分かってる分かってる」
さて、今日はどんな勝負をするのかな?今回も全力で負かしてやるさ。


「やれやれ…今日も疲れたな」
放課後、僕は腕を回しながら廊下で呟く。勝負内容は腕相撲で今日も僕の余裕勝ちだった。
しかし負けた坂崎サイドが再戦を挑んできたために何度も腕相撲をやる羽目になったのである…もちろん全部勝利したが。

「あの…」
後ろから小さな声で呼ばれた僕が後ろを振り返ると比較的小柄な僕よりもさらに身長の低い少年がそこに立っていた。
「君は確か……朝比奈あすか君だっけ?」
そうだ、彼は確か一週間前に帰る途中にぶつかって来た同じクラスの少年だ。
532世界のヘイポー:2009/01/08(木) 00:17:53 ID:6pYDeKQe
「あの…すいませんでしたこの前はちゃんと謝る事が出来なくて…」
彼はそう言うと深々を下げる。ぶつかっただけでそこまで謝る必要はないんだけどなぁ。
「…頭を下げる必要はないよ、僕にも過失があった訳だしね。
後、同じ学年なんだから敬語じゃなくて普通の話し方でいいよ。その方が僕も話しやすいから」
「あ…うん…確かにそうだね…分かったよ佐々木君…」
「炎で構わないよ、そっちの方で呼ばれる事が多いからさ。ところであの時かなり急いでいたけど何かあったのかな?」
「あれは…ちょっと大変な事があって…でももう解決したから大丈夫だよ」
彼はそう言いながらわずかに微笑んだ。
事情はよく分からないが、彼の様子を見る限りでは心配する必要はないみたいだ。
「僕……実はあの時ぶつかったのが炎君だって気が付かなかったんだ…。
炎君って学園では大きな眼鏡をかけているから…」
「あっ……」
そういえばあの時、僕は素顔を見られていたんだっけ。
まぁ周りには誰もいないし、普段を見るからに彼なら実直な性格で信頼出来そうだから今は素顔を見せても大丈夫だろう。僕はゆっくりと眼鏡を外した。
533世界のヘイポー:2009/01/08(木) 00:19:27 ID:6pYDeKQe
「意外だったでしょ?デカ眼鏡と皆から言われていた男がこんな顔をしていたなんて」
「うん…本当にびっくりしたよ…その…綺麗な顔立ちで…」
「はっきり言っていいよ?女みたいな顔をしてるって」
僕が大きな眼鏡をかけているもう一つの理由、それは自分のこの女顔にあった。
僕は男なのに女みたいな自分の顔が大嫌いだ。何よりこの顔は僕の…。
それに男の癖に女顔なんて事が皆にバレたらたちまちクラス中の物笑いの種になる。特に坂崎に知られようものなら奴は絶対に僕の事を馬鹿にし続けるだろう。
そうならないためにも学園では常に眼鏡をかけているのだ。
「ごめん…余計な事を言っちゃったみたいだね」
彼が再び謝り出す。
「あすか君が気にする必要はないよ?僕が勝手にやった事なんだから」
僕は眼鏡を付け直すと彼の肩をポンと叩く。
どうも彼は卑屈になり過ぎる所があるみたいだ。でもその優しい心が彼の良い所なのだろう。
「ありがとう炎君…ところで炎君っていつも坂崎さんと揉めているみたいだけど…」
「ああ、奴の事なら気にしなくて良いよ奴の方から勝手に絡んで来ているだけだから」
彼まで坂崎の事を言うとは僕は呪われているのだろうか?
534世界のヘイポー:2009/01/08(木) 00:21:01 ID:6pYDeKQe
「そうなんだ……僕はてっきり炎君と坂崎さんって仲が良いと思ってたんだけど…」
「はい?」
僕は自分の耳を疑った。どこをどう見たら僕と坂崎が仲が良く見えるのだろうか。
「ちょっと待った、君は勘違いをしている。僕と坂崎は決して仲が良くはない……むしろ奴は僕の事をライバル視しているんだ」
「炎君は坂崎さんの事をどう思っているの?」
くっ、卑屈になったと思えば急に強気になるとは……彼は意外と油断出来ない人間なのかもしれない。
「別に…僕は奴を単なる挑戦者としか見ていないよ?」
「そうなんだ、それにしてはなんだか楽しそうだったけど?」
楽しそう?僕が?馬鹿な、そんなはずはない…何を言っているんだ彼は。

「でも…どうして坂崎さんは炎君にだけ勝負を挑んでくるんだろう?」
「さあ?単純に負けず嫌いなだけじゃないかな」
坂崎の考えている事なんて僕が知る必要はないだろう。それに奴に深い理由があるとは到底思えない。

「じゃあ僕はそろそろ生徒会長室に行かないといけないから」
「そうか。それじゃ気をつけて」
「うん…じゃあまた明日ね炎君!」
彼はそう言うと会長室に向かって行った。
535世界のヘイポー:2009/01/08(木) 00:22:40 ID:6pYDeKQe
「おーい炎!」
再び僕を呼ぶ声が聞こえる、この声は坂崎だな。
後ろを振り返ると案の定、坂崎が大きな荷物を持ちながら立っていた。
まずい、さっきの会話の内容を坂崎に聞かれてしまったか?
「……何か用?」
「体育祭に使う道具を運んでんだけどちょっと重くて手伝って欲しいんだ…。
ほ、本当は一人でも大丈夫なんだけどな!」
僕は内心ホッとする、どうやらさっきの会話については何も知らない様だ。
「はいはい分かったよ……」
僕はしぶしぶ荷物運びを手伝う事にした…結構重いな。
「なぁ、さっきお前が朝比奈と話していた事なんだけどよ……あれ本当か?」
「……何が?」
まさか眼鏡の件についてバレたのか?
「ほら…炎が私の事を挑戦者としか見てないって話…」
なんだその事か…女顔の話を聞いていないみたいで僕は安心した。
「ああ、そうだよ…僕にとって坂崎はただの挑戦者さ。坂崎だって僕の事をライバルだって言っていたじゃないか?」
本当は少し気になってはいるんだけどね…もちろん別の意味で。
「そうか…そうだよね…」
僕の言葉を聞いた坂崎が急に立ち止まる。一体どうしたというのだ。
536世界のヘイポー:2009/01/08(木) 00:26:02 ID:6pYDeKQe
「…坂崎?」
僕が呼び掛けても反応がない。よく見ると坂崎が悲しそうな表情をしながらうつむいている。
一体どうしたというのだ。
急に坂崎が荷物を早いスピードで運び始める。いきなりの行動に僕は転びそうになった。
「坂崎、ちょっと早過ぎ…」
「五月蠅い!さっさと荷物を運ぶぞ!」
坂崎……なんか怒っていないか?僕が一体何をしたというんだ。
階段に差し掛かろうとしても坂崎が足を緩めようとしない。
「坂崎…かいだ」
「五月蠅い!」
坂崎は僕の言う事に全く耳を貸そうとせず階段を下ろうとしたその時
「――あっ…」
という声と共に坂崎が足を踏み外した――坂崎の身体が宙を浮く。
「……!」
僕は咄嗟に坂崎の身体を庇う様に抱き締める。
僕の身体が床に強く叩き付けられた……身体中が痛みに襲われる。

「……大丈夫?」
僕は坂崎の安否を確認する様に聞く。
「う……うん…私は大丈夫…」
坂崎がキョトンとした表情で答える…良かった、どうやら坂崎は無事の様だ。
「…全く、だから危ないって言ったのに…」
僕はそう言って坂崎の身体から手を離して立ち上がる。
その時、僕は自分の右腕に激しい痛みを覚えた。
537世界のヘイポー:2009/01/08(木) 00:28:02 ID:6pYDeKQe
僕は右腕を動かそうとするがその度に痛みが走る――指すら動かす事が出来ない。
「いったか…」
僕は小さく呟く。どうやら階段から落ちた衝撃で右腕がやられたらしい。
「炎…」
坂崎が今にも泣きそうな表情でうろたえている。
「坂崎、今から保健室に行くから手伝って欲しい…」
僕は坂崎をなるべく動揺させない様に冷静な口調で頼む。
「う、うん!分かった!」
僕は坂崎に支えられながら保健室に向かって行った。
もちろん眼鏡に気をつけながら歩いたのは言うまでもない。
538世界のヘイポー:2009/01/08(木) 00:29:59 ID:6pYDeKQe
今回はここまでっ…!それではおやすみなさいっ…!
539名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 01:41:05 ID:bDjyg3Ng
おお、GJ!
続き期待してます
540名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 03:07:12 ID:cJZ3k5Lc
これはいいな。GJ
男もツンデレに見えるんだが
541名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 10:17:43 ID:bjmDwCRY
Uooooここからという所でお預けかあぁぁぁぁぁ
542名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 12:57:30 ID:/MO5iyQg
どちらもツンデレで構わない。
続き待ってるよ。
543名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 21:20:24 ID:UV2EzwFT
生殺しw
さあて全裸に蝶ネクタイをしなくては
544名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 22:46:38 ID:+x3mW3ox
gj
いい仕事するぜまったくよー
545名無しさん@ピンキー:2009/01/11(日) 23:39:05 ID:s5socLXD
ほしゅ
546名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 15:56:42 ID:BYwcQt8A
つ、・・続きはまだか・・
547名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 23:44:35 ID:fQC6+nOc
ツンデレに『これって婚姻届だよな』って言ったらどうなるの?
548世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:13:19 ID:ZgxzQK+q
再びGOだっ……!


『犬猫合戦』


―――僕が階段から落ちてから三日が過ぎ、休みが明けた昼休みの教室で僕はあすか君と話をしていた。
「炎君その手…大丈夫?」
あすか君が心配そうに僕の右手を見る。
「まぁ……多少は不自由だけど特に心配はいらないよ」
僕は右手に巻かれた包帯を撫でながら微笑む。
あの後――坂崎と共に保健室に行った僕は病院に行く様に言われ病院で治療を受けた。
あれだけの衝撃を受けたにもかかわらず手の甲の骨に軽くひびが入った程度で済んだらしい。
とはいえ当分の間、右腕を固定しなければならず僕は慣れない左腕での生活を余儀無くされた。
「そういえば坂崎さん…今日は元気がないけど何かあったのかな…?」
「さあ……たまには静かな日もあるんじゃないの?」
確かに今日の坂崎はあの騒がしさが嘘の様に静かで元気がないな。
いつもならこの時間に勝負を挑んでくるはずなのだが全くその気配がない。
もしかしてこの前の事を気にしているのだろうか…たかが右手にひびが入っただけなのに。
(そうだ…右手なんて優しいものだ……あの時の苦しみに比べたら……ね)
549世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:14:27 ID:ZgxzQK+q
「おーい、炎」
やる気のない掛け声と共に太陽が僕の肩を叩く。
「…どうしたの?」
「ちょっと廊下を見てみな…」
彼の言う通り廊下の方を見てみると教室の入口で坂崎がジーと僕の事を見つめていた。
坂崎は僕の視線に気が付きサッと物影に隠れる。
「……何をやっているんだあいつは?」
「さあな。取り敢えずお前が坂崎の所に行った方が良いんじゃねぇの?」
太陽が僕に坂崎の所に行くように促す。あすか君も彼に同意見のようだ。
「仕方ない……ちょっと行ってくるよ」
僕はそう言って坂崎の所に移動する…坂崎は鞄を持ちながら立っていた。
「何やってんの…?」僕はいつも通りに話し掛けてみる。
「あ、いや、その…なんだ…」
坂崎が何かを躊躇するように言葉を濁す。
「…炎!今から屋上に来い!」
いきなり坂崎が大声をあげる。さっきからこいつは何がしたいのだろうか?僕は理解に苦しむ。
「なんで僕が……」
「いいから何も言わずに来い!」
どうやら奴はいつものように僕の都合は考えていないご様子。逆らっても埒が明ないので仕方なく僕は坂崎と共に屋上に行く事にした。
550世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:15:27 ID:ZgxzQK+q
「それで……屋上まで一緒に来てやったけど何か用でもあるのか?」
奴に連れられて屋上までやって来た僕は坂崎に問う。
奴はしばらくの間黙り込んでいたが鞄を地面に置き
「……すまん!この間は悪かった!」
とパンと手を合わせながら軽く頭を下げる。やはり坂崎は僕の右手の事を気に病んでいたらしい。
「……坂崎が謝る必要はないだろう、あれは僕が勝手にやった事だ。
だから右手を怪我したのは僕の責任であって坂崎には何の落ち度はないと思うよ?」
「で、でもよ!」
「まぁ、幸い僕の右手もこの程度で済んだ訳だし…少し不便な事もあるけどね」
「その事なんだけどさ……決めた事があるんだ」
何かを決意したかの様な顔で坂崎が僕の方を見る。一体何を決めたというのだろう。
「私…お前の右手が治るまでの間、お前の右手になる!」
「…はい?」
坂崎の突然の宣言に思わず僕は間の抜けた返事をしてしまった。
「炎がどう言おうとお前が怪我をしたのは私のせいなんだ…。だからお前の右手の代わりに動く事にする!
何か困った事があったら言ってくれよな!」
――なるほど、坂崎は自分なりのやり方で責任を取るつもりらしい。
551世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:16:31 ID:ZgxzQK+q
坂崎も責任を感じている様だしそれをフイにする事もないだろう。それにいつまでも喪中みたいな顔をされたら僕としても心地好いものではない。
僕は坂崎の申し出を受け入れる事にした。
「分かった…坂崎には治るまでの間、僕の右手の代わりになってもらおうかな」
「本当か!?ありがとな炎!私、頑張るから!」
僕の返事を聞いた坂崎の顔が明るくなる。その表情はどこか嬉しそうだ。
「それにしても意外だな…坂崎が僕の手助けしてくれるなんてね」
僕は少し意地悪く坂崎に言う。
「なっ…!?何を勘違いしてんだよっ!ライバルが困った時に助けるのは当たり前だろうが!
それに…お前が勝負に負けた時に手の怪我を持ち出されたらたまんねーからなっ!」
坂崎があたふたしながら僕に怒鳴りかかる。
「はいはい、分かってる分かってる」
僕はいつもの台詞を使って受け流す。
やれやれ、しばらく坂崎のせいで五月蠅い日々を送る事になるだろう。やっぱり断った方が良かったのだろうか?
それにしても不思議なものだ…あれほど坂崎にうんざりしていたはずなのにまるで嫌な気がしないのだ。
だが、特に嬉しいという訳でもないのでそこを勘違いしてはいけない。
552世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:17:30 ID:ZgxzQK+q
「ところでお前、もうメシは食ったのか?」
急に坂崎が昼食を食べたか聞いて来た。そういえばまだ僕は昼食を摂っていなかった。
「…今から摂るよ」
僕はポケットから小さなビンを取り出す――市販の栄養ドリンクだ。
「なんだそれ?」
「何って栄養ドリンクに決まっているだろ?」
毎日弁当を作るのも面倒だし女子の多い食堂に行くのは自殺行為だ。それに僕にとっての昼食は単なる栄養補給に過ぎない。
「駄目だ駄目だ、座れ!そんな変なものに頼るからお前は身体が細いんだよ!男ならメシ食えメシ!特に肉!」
坂崎は僕からドリンクを取り上げると鞄から何かを取り出した。
「ん…まぁ……これなんだけどよ…」
坂崎が取り出したのはおせち料理とかに使う重箱だ。
「これってもしかして…弁当か?」
「……弁当以外に見えるのかよ…?」
弁当にしてはかなり大きな箱だと思うのは僕だけだろうか?
「僕のために…作ってくれたのか?」
僕は坂崎と重箱を交互に見ながら質問してみる。
「いっ、言っておくけどお前の怪我を早く治すために作ってやったんだからなっ!お前に食べて欲しいとかそういう訳じゃないからなっ!?」
坂崎はそう言いながら箱を開ける。
553世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:18:42 ID:ZgxzQK+q
重箱の中には色とりどりの料理が詰まっていた。見た目は中々上手に出来ている。
「へえ…坂崎って料理作れたんだ……」
「へへっ、どうだ驚いただろ?料理は得意な方なんだっ」
坂崎は得意気な顔をしながら箱から箸を取り出して唐揚げをつまみそして――。
「ほれ」
なんと僕の顔の前に唐揚げを突き出して来たのだ。奴の突然の行動に僕は呆気にとられてしまった。
坂崎は一体何をしようとしているんだ?
「………何やってんの?」
「何って…利き腕じゃない方の手で食うのは辛いだろうから代わりに私が食べさせてやるってんだよ!悪いか!?」
坂崎がまたまた怒鳴る。そんなに怒鳴って喉は大丈夫なのか。
(どうしよう…)
坂崎の行動に僕は困惑する。坂崎に物を食べさせてもらう事自体が恥ずかしいし、もしこんな恥ずかしい所を他の誰かに見られでもしたら僕の面目は丸潰れだ。
しかし……左手で食べるのははっきり言って辛いし、坂崎の表情も真剣そのものだ。奴の真面目な気持ちを無下には出来ない。
(こうなったらやるしかないなっ……!)
僕はそう決心すると口をアーンと開けて唐揚げを頬張った。
554世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:20:06 ID:ZgxzQK+q
「ど、どうだ?」
坂崎が不安そうな声で僕に聞く。
「……美味しい」
僕はそう言って坂崎に微笑む。もしかしたら見た目だけかもと思ったが味もしっかり出来ている…本当に美味い。
「ほ、本当か!?まだまだ沢山あるからもっと食えよな!」
坂崎は嬉しそうな顔をして再び料理をつまんで僕に突き出す。僕はまた口を開けて食べる。僕にはもう抵抗感なんてものはなくなっていた。

「ふぅ……」
結局僕は箱にあった料理を全部食べてしまった…美味しかったんだから仕方ない。
「お前……意外と沢山食うんだな…知らなかったよホント…」
坂崎が呆れながらも嬉しそうな顔で箱を片付ける。
「まぁね……それにしても久し振りだな…誰かと一緒にご飯を食べるなんて……」
「えっ……?」
「あ、なんでもない…ちょっとした独り言だよ」
僕はそう言いながら視線を落とす。
本当に久し振りだ…誰かにご飯を作ってもらうなんて事…。
多分、僕は今とても悲しそうな顔をしているだろう……眼鏡があって本当に良かったと思う。
「まぁ、こういう日も悪くないって話だよ」
僕はそう言って立ち上がる。そろそろ昼休みが終わる頃だ。
555世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:21:01 ID:ZgxzQK+q
しかし僕を待っていたのは衝撃的な言葉だった。
「それじゃ炎、明日も屋上で待ってるから必ず来いよなっ」
僕は坂崎のその言葉に仰天する。『明日も』とはなんだ『明日も』とは。
「……どういう事?」
「どういう事ってそりゃあお前、怪我を早く治さなきゃならないんだから毎日一杯メシを食う必要があるだろ?
早く治すために明日からもっともっと作ってやるから楽しみに待っとけよ!」
この言葉に僕はサッと己の背筋が寒くなるのを感じた。
つまり…その、右手が治るまで毎日僕は坂崎に昼食をさっきの様に食べさせられる事になるのか?しかも他の生徒がいつ来てもおかしくないこの屋上で…?
「と、とにかく早くその右手の怪我を早く治せよなっ!お前を倒すのはこの私なんだからっ!」
坂崎は慌てた様な口調でそう言うとそそくさと鞄を持ち僕の左腕を掴む。
「ほら、早く行くぞ!」
「あ…うん……」
坂崎に引っ張られながら僕は今だに呆然とする。
(この先本当に大丈夫なのだろうか…?)
僕はそう思いつつも何故か嬉しそうな坂崎を見て不思議と安心感を感じていた。
無論、眼鏡には気をつけていたのは言うまでもない。
556世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:22:20 ID:ZgxzQK+q
あれから毎日、僕は坂崎と屋上で昼食を食べている。料理の量も最初に比べるとかなり量が増えていた――僕は相撲取りじゃないぞ全く。
「ほら」
坂崎が卵焼きを箸をつまんで僕に突き出す。
「ん…」
僕はそれを口にくわえる。最初の頃は恥ずかしさで躊躇していたけど次第にそういう感情も薄れ、今では普通に食べる事が出来る。
時の流れとは人を変えるものだなぁとつくづく思う。
「はい」
坂崎が再び料理を向ける。
(それにしても……)
僕は坂崎の顔をまじまじと眺めてみる…やっぱり坂崎は可愛い顔をしているなと思う。
怪我をする前は勝負やらなんやらで顔をジッと見る機会なんてなかったが、こうやって落ち着いて眺めると本当に可愛い。
「……何見てんだよ」
僕の視線に気が付いたのだろう、坂崎が頬を赤らめながらにらむ。
「いや……別に…」
「なんだよ…言いたい事があるなら言えよ」
「………坂崎が何を言おうとも僕のために今まで弁当を作ってくれた事に僕は感謝しているし…本当に嬉しく思う……その………いつもありがとう…」
僕はそう言って恥ずかしそうにうつむいた。
正直、こんな事を言っている自分自身にびっくりしている。
557世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:23:31 ID:ZgxzQK+q
僕が顔を上げると坂崎は瞳を潤ませてジッと僕を見続けていた。
「ば、馬鹿野郎…。いきなりお礼なんて言われても…私…」
「坂崎……」
坂崎の細々とした声を聞きながら僕も坂崎を見つめる。数秒の間、僕と坂崎はお互いを見続けた。
「むぐっ!?」
不意に坂崎が僕の口に料理を押し込む。
「ばーか!まんまとひっかかってやんの〜!」
坂崎がゲラゲラと膝を叩きながら笑う……やられた。
全く、ちょっと正直になったらこれだよ。僕は不機嫌そうにモグモグと口を動かす。
「怒んなよ〜!ちょっとからかっただけじゃねーか!」
坂崎は今だに笑いながら箸を動かす…真っ事腹立たしい。
――ゴクン。
「そうだな、そろそろ僕の右手の包帯も取れる事だしこのくらいは許してあげるよ」
「――え?」
ピタッと坂崎の箸の動きが止まる。
「そういえばまだ言ってなかったね。昨日病院に行ったんだけどそろそろ完治するんだって。
これで再び勝負をする事が出来て良かった良かった」
僕は嫌味を含んだ口調で坂崎に告げる。ちょっと気が引けるけどからかって来た坂崎が悪い。
558世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:25:30 ID:ZgxzQK+q
「それ…本当なのか?」
「嘘を言ってもしょうもないだろ?良かったじゃないか、これでもう僕のために手助けも弁当を作る事がなくなった訳だ。
坂崎も憂い無く僕に勝負する事が出来るよ」
「そう……か…」
坂崎は呟き箸を置いてうなだれる。その顔はどこか寂しそうだ。
(また僕をからかうつもりだな…もう騙されるものか)
僕はそう思い敢えて話し掛けない様にする。
けれども坂崎はずっと下を見たままで全く動こうとしない。さっきから暗い顔をしたままだ。
「炎、私……実は…」
坂崎が口を開いたちょうどその時、昼休み終了のチャイムが鳴り響く。

「坂崎……悪いけどまた後でね…」
僕が逃げる様に立ち上がろうとしたその時。
「炎!」
突然、坂崎が僕の肩を掴み僕を押し倒した――僕は何が起きたのか理解出来ぬまま背中から地面に倒れる。
「さか……ざき…?」
呆然とする僕を坂崎が頬を赤く染め、とろんとした目付きで見下ろす。僕はただ坂崎を見つめる事しか出来ない。
「炎……」
表情を変えぬまま坂崎が僕の眼鏡に手を伸ばす。
(まさか…!)
坂崎は僕の眼鏡を外すつもりなのだ。もし坂崎に素顔を見られたら……!
559世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:26:39 ID:ZgxzQK+q
眼鏡を外されない様に僕は首を横に振る。絶対に見せるものか。
「よせ!やめろよ!いくら僕の眼鏡を外すためとはいえ、ここまでやる必要はないだろ!?からかうのもいい加減にしろ!」
「からかってなんかねぇよっ!」
坂崎が僕の言葉を遮る様に叫ぶ。
「坂崎………?」
「炎……私だって………私だってな………」
泣き出しそうな目をしながら坂崎が小さく震える様な声で呟く。
「私だって…………女の子だよ……?」
「………!」
坂崎のその言葉に僕はドキッとする……こんな坂崎…初めて見た…。
急に坂崎が僕の体の上に倒れ込んだ。坂崎の大きな胸が僕の胸の上でむにゅっと潰れると同時に柔らかい感触と温かさが僕の身体を襲う。
坂崎が自分の顔を僕に寄せて来た……坂崎はキスをするつもりなのだと僕は瞬時に理解する。
する……が、身体が金縛りにあったかの様に動かない。
坂崎と坂崎の顔がお互いの熱い吐息がかかるほどに近付く。うっとりとした瞳に見つめられた僕に抵抗する力は残っていなかった。
いや、抵抗する気なんて元からなかったのかもしれない。そして坂崎の唇が僕の唇が重なる―――。
560世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:27:53 ID:ZgxzQK+q
ゾクッ…。
唇が重なろうとした瞬間、何かが身体中を走り僕は身体をビクッと震わした。坂崎がびっくりして少し顔を離す。
(なんだ、今のは?)
僕は突然の出来事に動揺した。
僕はこの感覚を知っている……何故ならこの嫌な感じは昔から僕を苦めているものだからだ。あの強い不快感と耐え難い恐怖……まさか。
「炎……?」
坂崎が心配そう僕に呼び掛けたその刹那。

ゾクゾクゾクゾクゾクゾクゾクゾクゾクゾクゾクゾクゾクゾク

再び強い恐怖が、不安が、不快感が、一気に僕に襲いかかる。
「うわああああああああああああ!!」
これ以上の苦しみに耐えかねた僕は絶叫しながら坂崎を突き飛ばした。
「きゃっ!?」
坂崎が小さく悲鳴をあげながら尻餅をついた。
「はぁ……はぁ…」
僕の呼吸を荒らげながらも確信する。
間違いない、これは僕が女性に対して起きる拒否反応だ。
何故だ?どうしてだ?さっきまで僕は彼女に触れる事が出来ただろ?
なんで急に坂崎に対して恐怖を感じてしまうんだ?坂崎は何も悪くない、むしろ僕のために今まで頑張ってくれてたのに。
落ち着け、落ち着くんだ僕。
561世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:28:55 ID:ZgxzQK+q
「炎……大丈夫…?」
坂崎が僕の方に近付く、それに合わせる様に僕は後退りする。
駄目だ、そんな事したら彼女が傷付くだけだ……頭ではそう分かっているはずなのに身体が勝手に反応してしまう。
「・・・・」
坂崎の顔が次第に悲しそうな表情になる。
違う、違うんだ、僕はそんなつもりじゃ…。

「そこにいたのか佐々木、坂崎!もう授業は始まっているぞ!」
その時、授業の教員が屋上にやって来た。
「す、すいません…」
「……すいません」
僕と坂崎は返事をしながら立ち上がる。坂崎の声には元気はなかった。
「全く…勝負も良いがほどほどにな」
教員はそう言って教室に戻る。僕もそれにつられる様に歩き出した。教室に戻る間、僕は坂崎の方を振り返る事が出来なかった。

教室に戻った僕はどうでも良い授業を聞き流しつつ、坂崎の事を考えていた。
どうして今まで坂崎と一緒にいる事が出来たのにもかかわらず、急に彼女に対して拒絶反応を起こしてしまったのだろう…。
僕は坂崎の方をチラリと見る。彼女は机にうつぶせになったままピクリとも動かない。
やはりさっきの事が坂崎を傷付けてしまったのだろうか。
562世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:30:07 ID:ZgxzQK+q
思えば怪我をしたあの日から全てが変わってしまった。あの日から坂崎と一緒にいる時間が増え、色々と話をする様になったんだ。
今まで奴の事を勝負を挑んで来る五月蠅い奴だと思っていた僕は、いつしか坂崎をもっと知りたいと思う様になった。
僕は自分の知らないうちに坂崎の事を異性として意識し始めたという事なのかもしれない。
そして今日、坂崎に押し倒された時に僕は坂崎を『女』として完全に意識してしまったんだ。
それは同時に坂崎が恐怖の対象になるという意味だったのに。
(全く……皮肉な事だな…)
僕はハァッとため息を吐く。とにかく、さっきの事を坂崎に説明する必要があるな。

授業終了のチャイムが鳴った。僕は坂崎の席に視線を移す。
(あれ?)
坂崎が机にいない、トイレにでも行ったのかな?いや、まさか……。
「炎…」
この声にゾクッと僕の体が震える…、僕は声のした方向に首を動かすと坂崎が立っていた。
「………!」
再びあの不快感が身体中を襲って来る、僕は坂崎から逃げる様に離れた。
この騒ぎに教室にいた全員が僕と坂崎の方に注目する。
563世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:31:25 ID:ZgxzQK+q
「炎、どうして避けるんだよ…?嫌いになったならはっきり言ってくれよ…」
坂崎が涙を浮かべて僕に歩み寄る。
「そんな事はない…僕は坂崎の事を…」
「じゃあなんで私から逃げんだよ…?ふざけんなよ…」
坂崎が近付く度に僕が後ろに下がる――頭の中ではやめろと言っているのに身体が勝手に動いてしまう。
「炎!」
しびれを切らした坂崎が僕の左腕を掴んだ瞬間、心臓が裂ける様な感覚が襲った。
「うわああああっ!」
僕は叫びながら坂崎の腕を振りほどく。
と、力一杯振った手が運悪く当たった僕の眼鏡も吹き飛ばす。
カランカラン……
眼鏡が音を立てて床に落ちる。坂崎、そして教室にいた生徒達が僕の素顔に注目した。
僕が絶対に見せたくなかった素顔を女の子みたいな顔を皆に坂崎に見られてる――最悪のシナリオだ。
「お前……」
やめろ坂崎。僕の顔を見るな、見ないでくれ。
どうしてこんな事になってしまった?僕が一体何をした?
どうして?どうして?どうして――?
急に頭の中が真っ白になる。もう何も考えられない……僕はその場に倒れこんだ。
「炎君!」
「炎!」
あすか君と太陽が叫ぶ声を朧気に聞きながら僕は――――気を失った。
564世界のヘイポー:2009/01/16(金) 02:34:07 ID:ZgxzQK+q
今回はここで限界っ……!グットナイツ…!
565名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 12:04:30 ID:gPru2Y6J
ここで…続く……だと?
566名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 12:42:33 ID:yc/1jXjO
誰もGJしてないから、かわいそうに思ってGJしたげるんだからね!

べ、、べつに続きが早くよみたいとか
気になって仕方ないってわけじゃないんだからねっ!
567名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 13:28:53 ID:WqrV9nx4
ほら、早く続きを書きなさいよ!
かっ、勘違いしないでよね!?
別に面白いからもっと読みたいとかそういうんじゃないの!
ただいつまでも全裸でいると寒いってだけなんだから!
568名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 00:43:16 ID:B50jrgTb
えい!・・・えいっ!・・GJ!!
569名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 02:08:44 ID:NQ31QBK+
うああああ
続きが気になる・・GJ!
570名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 14:44:38 ID:H1V+nl6v
顔が緩みまくるじゃねえかこのやろーww
GJ。そして続き期待。
571名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 15:06:51 ID:B7VpWCnv
A.C.E
572名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 21:50:42 ID:MuU4dDNa
右手=恋人 坂崎=右手
よって恋人=坂崎
どう考えても告白だろ…炎
573名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 00:50:17 ID:20WWq8wc
ね、ねえ・・・つ、続きはまだなの!?か、勘違いしないでね!べ、別に続きが早く見たい訳じゃないんだからね/// 
574名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 02:16:17 ID:LR7kU3oX
べ、別に眠れないからココに来た訳じゃないんだからね!
とっとと何か投下しなさいよ!・・・・・・一人は寂しいよ。誰か来て・・・
575名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 01:28:59 ID:5+sCZkf3
寂しがらせてごめんね、来たのは良いけど誰もいない・・・寂しいよぅ・・・
576名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 01:47:32 ID:xsK8w2Kx
俺が傍にいるじゃないか
577名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 02:08:21 ID:XWhMm++A
失礼します
自分はツンデレが探偵なるスレでエロ無し2,3レス小話を書いてます
改変(微エロ追加Ver)でよければ投下します

おkなら明日ぐらいに。 投下済みの改変ですので2,3本あります
ただし小話なので
ツンデレ「〜なんだからねっ!」
↑みたいに表現するかもしれません、よろしく
578名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 02:36:08 ID:axSwYTJc
そういうのは誘い受けと取られるぜ。





べ、別に待ってるわけじゃないんだからねっ!?
579577:2009/01/22(木) 04:44:27 ID:XWhMm++A
そうでしたね、エロパロ板では誘い受けになるのを忘れてました。すみません
ともかく改変した前編を、5分後に投下してみます
1レスづつが短いのは仕様です
季節は真夏
プロローグは共通設定です、よろしく


ツンデレ探偵事務所
所長の計画、避暑地のできごと 【前編】
580プロローグ:2009/01/22(木) 04:55:11 ID:XWhMm++A
 
 私達は探偵。 職業上、関係者の本名とか詳細を明かすことが出来ないわ
だから呼び合うときも 所長、助手、とか言ってる。 
 ちなみに、姉さん、妹ちゃん、警部B、犯人X、とか記号でも言ってるの
慣れるまでは違和感あるかもね。 フフ

 でも私の事務所の、大事な決まりだから。
 だって私の名前が”ハルヒ”とか”凛”だったら
なんかの固定イメージが沸いちゃうでしょ?

 アンタの好きな声優の声で脳内再生する為でもあるのよ、わかった?
他の理由は教えてやんない。 め、メンドクサイんじゃないからねっ! べーだ。
 ・
 ・
 ・

 さて、私と助手の彼は、長〜い付き合い。
幾たびの事件を乗り越えたし、公私とも二人きりで夜を過ごした事も何度かある。
 仕事の信頼関係は無二の戦友。
 個人的には、助手の彼は私にベタ惚れよっ!

 …私の態度と詳しい経緯とかの説明はパス。
知りたかったら自分で調べなさい。 は、恥ずかしいからじゃないわっ!

 一つだけ言えるのは、まだ……しか……し、してないの。
私がまだ成人式を超えてないとはいえ、二人とも社会人なのに! もうっっ!!

5811/5:2009/01/22(木) 05:01:16 ID:XWhMm++A
 
 ちりん、ちりん
 縁側の頭上で風鈴が揺れ、まだ暑い昼下がりの避暑地に音を紡ぐ。
 続いて ケホン、と正座した私の膝の上から乾いた音がした。
 ちらりとそちらを見れば、私の助手が膝枕の上で寝返りをする。

 彼の紅い顔が、私の浴衣のおへその辺りを最短距離で見つめてる
 えっち。

「…もぅ、いけない人ね」
「貴女が僕に今夜の予告なんてするから、見つめたくなるんですよ!」
「ああ、もう…お腹の前で怒鳴らないでよ。 夜が待てないほど飢えてないでしょ!」
「所長の香りが僕を誘うんだ、……怒鳴ってすみません」

 渋々言いながらも、謝るあたりが彼らしい。
 ゆったりとしてそうで落ち着いていない、二人だけの世界。
 彼も、機嫌を壊すのは良くないと推察したのだろう、スグに上を向いた。
 全く、普段はデリカシーが無いくせに
二人きりの夜を控えて、使う気づかいは流石だ。
5822/5:2009/01/22(木) 05:03:15 ID:XWhMm++A
 
「…ちょっと右脚が痺れたわ、頭を上げててちょうだい」
「あ〜ぁ、もう終わりなんですか?」
 残念そうに言いながらも、頭を浮かせてしばし我慢する彼…ホント律義なんだから。
 私は身体の向きを90度変えて、彼の頭を両膝の上に降ろす。

───今度は正面からの膝枕よ。
「ど、どう かな?」
「おおっ、これは気持ちいいです!」
 こんな事ぐらいで嬉しそうに私の顔を見上げてる、そんな彼が愛しい
だからもっと許してあげよう。
5833/5:2009/01/22(木) 05:06:24 ID:XWhMm++A
 
「ね、ねえ見つめられてると恥かしいわ。 うっ…うつ伏せになってくれない?」
「へっ?、?…………ハ、ハイ!わかりました!」
 私の恥かしいトリックを即座に見破るアナタ、探偵として最高よ
そう、女性の股間に顔を埋めてもアナタは合法なの、ああ私はなんて事を

「もぅ、そんなに顔を押し付けないでよ! 」
───やだ、脚の力が抜けてきちゃう。
 私は咄嗟に彼の後頭部を抱えこんだ、彼も私の腰に手をまわしてくる
下腹部への圧力に身体が芯から熱くなった…目が眩みそう。

「…あ、暑いわね」
「ん? お盆は過ぎたから、少しは涼しくなったけど…」
「…多分、暑苦しいのは浴衣の下にスパッツを履いているせいね」
「ちょっと待てぃ〜」

 何か言いたそうにしている彼を無視して、大事に大事に彼の頭を撫でる。

 さらり、さらり
5844/5:2009/01/22(木) 05:12:55 ID:XWhMm++A
 
「あ、アナタが涼しくしてちょうだい。 ゆ…浴衣を捲ってもスパッツだから構わないのよ」

「……ま、でも、これなら… 確かに僕の望みが叶います…」

 彼は私の浴衣を捲り、頭を裾の隙間へ潜り込ませてきた
私のスパッツを直に頬や顔で、スリスリしてている。
「熱中しちゃうなぁ。 貴女の体、メチャクチャ熱いですよ」

 風も少なくなり、風鈴が声を出さずに私達を じぃっと見つめているようだ。
他から見ると女の浴衣の中でもぞもぞ動く男の頭、破廉恥でいやらしいわ。
「その程度で熱中するほど…童貞じゃないでしょ、アンタは」

「…む、ひょっとしたらと言う事も」
「有り得ないわ」

 断言すると、彼は少しだけ唸った。 
その呆れた顔がスパッツのお腹に押しついてくる。

 ピクン

 彼の鼻が、偶然なのか私の恥かしい所をノックした。
「…くぅん…」
 少し声が出た。 でも平静を保つ、だって彼のしてる事だから。
5855/5:2009/01/22(木) 05:15:31 ID:XWhMm++A
 
 私の脚が少しずつ開いていくが、これは膝枕。
 この浴衣はアナタの為に着ているんだから、捲くろうが乱そうが好きにしていいの。
「ああ、このスラリとした脚が素敵です」
 スパッツの上から彼に色々触られていく
ええ、色々なトコロを…

「…や、やあん…」
 後方でお尻を撫でられた、前方は彼の顔が両脚の間で暴れている
それでも大人しく助手にこの身を任せるの。
 私は探偵なのだから、信用できる助手に全てを任せて当然なのよ。 …ええ。

「ああ柔らかい。 貴女の身体は、どこも全て気持ちいいですよ」
 もう彼は堂々と私を撫でまわし、この乙女の肌に痴漢な行為をしている
私は探偵である事を忘れ、助手の犯罪を許してる。 ……もうめちゃくちゃだわ。


「……ここで止めましょうか? 荒過ぎる貴女の呼吸が心配です」

 ハァハァ、ハァハァ
 息が辛いわ、胸が苦しいの、でもでも止めないでっ

「今日は本当に暑いからよ! わ、私がドキドキするのは、そのせいなんだからね!」
586577:2009/01/22(木) 05:25:50 ID:XWhMm++A
所長の計画、避暑地のできごと 【前編】 ー了ー


---
俺はエロパロ板に作品投下は初めてなんで、なんか有ったら言ってくだされ
よろしく



587名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 23:44:41 ID:5+sCZkf3
いいと思うよ、素直にGJ!
588名無しさん@ピンキー:2009/01/23(金) 23:33:41 ID:c95rt7x1
投下はまだか・・・
589名無しさん@ピンキー:2009/01/24(土) 02:31:44 ID:pqyIPT6S
てめーはアホかそれともマヌケか
雛鳥よろしく口開けてピーピー鳴いてりゃ誰かが餌くれると思ってるのか、めでてーなオイ
590名無しさん@ピンキー:2009/01/24(土) 03:05:44 ID:s8kUwJW5
>>588そんなこと言う前に、SSの一つや二つ書いてみなさいよ!
べ、別にアンタのが読みたいってわけじゃないんだからね!
ただ単にこのスレのためだけなんだからっ!
591名無しさん@ピンキー:2009/01/25(日) 01:44:24 ID:WYVEm8OF
ずっとツンのターン
592名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 22:02:52 ID:ygmkDid7
保守
593名無しさん@ピンキー:2009/01/30(金) 01:21:17 ID:vep8hCur
久しぶりに来たけど誰もいない・・・
594名無しさん@ピンキー:2009/01/30(金) 01:25:20 ID:ZUIL7zS+
ツン
595名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 09:28:58 ID:UkPxM6UB
ツン
596名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 00:53:10 ID:Mu2tV/IW
俺がいるじゃないか
597名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 07:51:21 ID:2PqkcxYY
ツン
598名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 23:52:47 ID:Mu2tV/IW
デレ
599名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 01:10:31 ID:VF7yeSLA
しちゃ
600名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 07:51:35 ID:nX/aYF/7
600
601名無しさん@ピンキー:2009/02/04(水) 16:38:08 ID:KetHw1+B
気づいたらこのスレ一周年過ぎてるな
602名無しさん@ピンキー:2009/02/04(水) 20:24:19 ID:aJ4lA0Vn
あっとゆうまだったな
603名無しさん@ピンキー:2009/02/05(木) 00:31:39 ID:RBGRIqf7
色々な漫画・ラノベ等のキャラで、これこそが「ツンデレ」と言えるのは誰なんだ?
ツンデレと一口で言っても違いがあるとは思うけども。
604名無しさん@ピンキー:2009/02/05(木) 00:49:17 ID:JstFeokN
ラノベならベクトルはそれぞれ違うが「ご愁傷さま二ノ宮くん」北条麗華とか「9S」の峰島由宇とか。
漫画なら「ロザリオとバンパイア」の赤夜萌香(裏)が最近著しい伸びを見せている。
605名無しさん@ピンキー:2009/02/05(木) 03:26:22 ID:nGrcZ4Tr
ToHeart2の十波由真がそのまんまかなー、と。
606名無しさん@ピンキー:2009/02/05(木) 12:01:11 ID:O5NfVvWh
フルメタル・パニック!の千鳥かなめ
あれはよいツンデレだった
607名無しさん@ピンキー:2009/02/06(金) 00:16:42 ID:+7E883Bz
そこは、やっぱりゼロの使い魔のルイズだろ 
608名無しさん@ピンキー:2009/02/06(金) 00:56:15 ID:H1dxwCCo
あれは最早ただのメンヘラ
609名無しさん@ピンキー:2009/02/06(金) 07:19:56 ID:7+9mD7W7
マイナーだが綾瀬貴子ちゃん
610名無しさん@ピンキー:2009/02/06(金) 08:31:52 ID:gCunsR2g
>>609
いいとこいくなー。あの子は好きだ。
611名無しさん@ピンキー:2009/02/06(金) 15:29:01 ID:7+9mD7W7
ヒロインより好きでエピソード飛ばし飛ばし呼んでたよw

やっぱりツンデレは努力してもなかなか報われないほうがいいね
612名無しさん@ピンキー:2009/02/06(金) 17:54:58 ID:XvBijyg5
>>611
禁書目録のビリビリは報われないいままであって欲しい
613名無しさん@ピンキー:2009/02/08(日) 11:25:04 ID:TBnoQAvn
>>612
御坂さんのことかー!!!
614名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 16:59:24 ID:wuvVZKds
ツン
615名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 17:03:06 ID:wuvVZKds
デレ
616名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 21:16:46 ID:wuvVZKds
久しぶりに来ても誰もいない・・・またか
617名無しさん@ピンキー:2009/02/12(木) 22:19:00 ID:geUnqU7N
あげ
618名無しさん@ピンキー:2009/02/14(土) 22:06:35 ID:dEmcHYhk
バレンタイン保守
619名無しさん@ピンキー:2009/02/15(日) 21:33:24 ID:KN/drogg
ツン
620名無しさん@ピンキー:2009/02/16(月) 01:35:28 ID:Bbf5S49u
デレ
621名無しさん@ピンキー:2009/02/18(水) 17:26:55 ID:TbNpJcTG
久々に来たけれど作品の続きがないな…
622名無しさん@ピンキー:2009/02/18(水) 17:38:28 ID:NOWHMNKe
バレンタイン×ツンデレの破壊力ってリバーブロー→ガゼルパンチ→デンプシーロールくらいはある。
ToLOVEる読んでそう思った。

版権物で独自スレが無いのとかも投下されないかなあ。
623名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 23:07:52 ID:VKl4EA4I
保守
624名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 18:48:05 ID:O/rlmw5j
あげ
625名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 16:40:40 ID:l4WioSuQ
あげ
626名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 17:48:43 ID:2oO4OBOx
最近vipの某ツンデレスレの保管庫を読み耽ってる
627名無しさん@ピンキー:2009/02/25(水) 18:01:14 ID:pjpiiuZc
ssの続きがでないな
628名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 22:56:49 ID:TX5nom1L
ツンデレブームは終わったのか……
629名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 23:23:20 ID:ReWu0RPL
ツンデレ作品は良く見るけど、
ツンデレいもうとなら、いもうとスレに。
ツンデレ幼馴染みなら、幼馴染みスレに。
みたいな感じで投下されてるからな
630名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 09:22:34 ID:JsBpA62W
見つけたらリンクくれよ
631名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 16:13:04 ID:HGyIf01F
79氏 神作「Le souhait」や
ロボ氏 神作「ツルとカメ」
のような神が再び現ることを祈り 長い月日をロムってきたが その夢も儚く散りそうだ
今のツン(ry住人に この二大神を知ってるのは居ないだろう多分
今じゃここも過疎り あの時が嘘のようだ・・
632sage:2009/03/01(日) 23:40:52 ID:z9ofp0zu
slowly×slowlyも神だとおもうのだが
633名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 02:46:30 ID:Ly2p/hfQ
ラスエやツルカメに匹敵するほどの作品はなかなか出てこないだろ…



…俺?
書いてみて挫折余裕でした
634名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 03:18:11 ID:1lonSTqL
>>632
…それはsageれているのか?
635名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 18:08:08 ID:KeuDQVv5
>>632
同じく
636名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 19:48:48 ID:5jlO1Gd1
まだ知ってる香具師いたか ちょっと嬉しいな
slowly×slowlyも確かに良かったが もう少し続けてほしかった
二大神の あのぐらいの長編を書けてこそ神と呼べる存在だとオレは思うのだが
それに一つも駄作がなかったのは やはり神だよなぁ
>>633
オレも神が現れないなら自分が神に昇りつめてやる!!
って意気込んだものの一瞬にして その夢は散ったよ
SS職人の才能はオレにはなかったみたいだ・・
637名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 22:06:16 ID:huZsRhj6
童貞の俺に濡れ場は書けない
638名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 20:43:43 ID:bSwPtNcM
>>637
同じくorz
文章力は多少自信あるんだが…。
639名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 20:44:38 ID:9CBI3mNt
じゃあ濡れ場なしで書いてみようぜ

俺は文章力すらねーよorz
640名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 07:39:50 ID:0Ceoacea
むしろ童貞の方が夢一杯のエロが書けると知り合いが言ってた
641□ボ ◆JypZpjo0ig :2009/03/06(金) 03:42:02 ID:dMeckeFA
お久しぶりです
エロゲをプレイしてたら、とんでもない程に月日が経っていました
私のことを覚えていてくれた方が居らっしゃって感謝感激です

セミの方ですが、一週間後には投下できそうな見込みがつきまして
ついでに要望があればリハビリがてらオマケで数本書きたいと思っております

オリジナルの予定はしておりますが、
御要望であれば過去作過去キャラお好きなカップリングでかまいません
お気軽に御注文下さい

かしこ
642名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 08:56:39 ID:ws7Gsc9+
キタ━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(`)━(Д`)━(´Д`)━!!
エロゲ…だと…?
643名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 10:07:38 ID:BOCU7/MT
キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)-_-)=゚ω゚)ノヨォ━━━!!!!
ロボ氏だーーーー!!!!!!!!!!!1
嬉しくて目から液体が・・・・・
ツルとカメをキボン!!!ツルカメマンセーーーーーーーーーーー
644名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 13:09:48 ID:4IqbPzup
>>641
期待してます。

ところで
何よ!ボインは赤ちゃんのためにあるんだから!あなたのためじゃないんだからね!

というのはどうだろうか?
645名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 17:46:07 ID:8jpcD9k2
可朝 乙
646名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 20:30:04 ID:SQclthDJ
>>641
エロゲでキングクリムゾン
までしか読めなかった。

涙で読めなかったんさ・・・
           
647名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 21:12:35 ID:KxZMUPvp
そして一週間たったわけだが・・・。せかしちゃいけないのは重々承知の上で、
ロボ氏、ひたすら待っております。●○で。。。
648名無しさん@ピンキー:2009/03/14(土) 21:08:07 ID:x1YSY/Kr
ロボ氏が投稿するまでの間の暇つぶしに作ってみました。
一応、短編の予定。
では、逝きます。
649短編予定:2009/03/14(土) 21:08:57 ID:x1YSY/Kr
俺は、エビ。言っておくが、海にいる奴ではないので。
まぁ、そんなことはいいとして
Q.自分が今いるところはどこだ?
A.ア○メイトのエロゲー売り場
でまぁ、新作エロゲーを買いに来たわけだが、ものすごいわかめなことが起きている。
「あんた、こんなところで何買いに来てるのよ。」
この声の主こそ、俺の幼なじみサエだ。
幼なじみだから、BBSPINKだからガールフレンドに決まっている。
「なに独り言いってんの」
ちっ、声に出ちまった。
まぁ、自分でも独り言が多いと思うが。。。
で、サエだが高校に入ってから異様にツンツンしている。
中学まではそんなにツンツンしていなかったのだがなぁ。
「あんたはまた、こんなゲーム買いに来て・・・・」
「うっ、うるさいな。人の勝手だろ。おまえに買ってくれと言ってるわけじゃないんだから。」
「当たり前でしょ。こんなモンあんたにかってやるわけないでしょ。」
「ていうかおまえ、高校生なのになんてとこでバイトしてんだよ。」
「あっ、あの。えーと。たまたまこの売り場の担当が休んだのよ。ていうか、あんたも高校生でしょ。」
「俺はいいんだよ。健全な高校生男子だから。」
「関係ないでしょ。」
いい加減、こんな会話するより早くPCにインストールしてやりたいのだが。。。
「わかった、わかった。会計お願いしますね。」
「話かえないでよ!」
やれやれ。まだ続きそうだ。
そうだ。
チラッ(後ろを見る)
「な、なあ。後ろのお客様が「何エロパロ的な会話続けてるんだよ!」って顔で見られてるぞ、俺ら」
「あ、やばっ。仕方がないわね。8800円になりますねっ。」
それが客に対する態度かよ。。。。
「あ、はい。えーと、5000円が一枚と、1000円札が3枚と800円ね。」
「はい、確かに。ありがとうございましたっ!」
おいおい、商品をカウンターに打ち付けるなよ。
まぁ、いい。帰ろう。
650短編予定 2:2009/03/14(土) 21:12:09 ID:x1YSY/Kr
「あと少しで終わるから、店前で待ってなさい。」(←小声で)
なんだよもお。アニ○イトだから袋が青色で助かった。
パッケージを見られたら周りからどんな目で見られることか。
ガァー(ドアが開く音)
「さてと、今の時間はっと」
3:10か・・・・
ってことは、たぶんサエが終わるのは3:30かな。
・・・・5分後
「ねぇ、お母さん。あのお兄ちゃん顔が笑ってるよ?」
「見ちゃだめっ」
おいおい、笑ってたか俺?
・・・・15分後
「待たせちゃったわね」
「ずぇんずぇん、待ってなかったぜぇ〜」
「あっ、そう」
口調から察しろよこのやろう。
「で、なんか俺にようか?」
「いや、ただ単に一緒に帰りたいなっと思っただけよ。文句ある?」
「一切ございません」
「じゃあいいわ。」
ちなみに、サエの家と俺の家は隣同士にあるのだ。
家族も仲がいいわけであり、サエとは昔っからの遊び相手だったわけだ。
駅まで歩き、電車に乗ってる途中にふと思い、サエに聞いてみた
「なぁサエ?なんで、バイトをアニ○イトにしたんだ?」
「べ、別に私の勝手じゃない。」
「それに、ちょっと遠い俺のよくいk」
「あっ、エビもうすぐつくわよ!」
「あと少しで終わるから、店前で待ってなさい。」(←小声で)
なんだよもお。アニ○イトだから袋が青色で助かった。
パッケージを見られたら周りからどんな目で見られることか。
ガァー(ドアが開く音)
「さてと、今の時間はっと」
3:10か・・・・
ってことは、たぶんサエが終わるのは3:30かな。
・・・・5分後
「ねぇ、お母さん。あのお兄ちゃん顔が笑ってるよ?」
「見ちゃだめっ」
おいおい、笑ってたか俺?
651短編予定 3:2009/03/14(土) 21:13:23 ID:x1YSY/Kr
・・・・15分後
「待たせちゃったわね」
「ずぇんずぇん、待ってなかったぜぇ〜」
「あっ、そう」
口調から察しろよこのやろう。
「で、なんか俺にようか?」
「いや、ただ単に一緒に帰りたいなっと思っただけよ。文句ある?」
「一切ございません」
「じゃあいいわ。」
ちなみに、サエの家と俺の家は隣同士にあるのだ。
家族も仲がいいわけであり、サエとは昔っからの遊び相手だったわけだ。
駅まで歩き、電車に乗ってる途中にふと思い、サエに聞いてみた
「なぁサエ?なんで、バイトをアニ○イトにしたんだ?」
「べ、別に私の勝手じゃない。」
「それに、ちょっと遠い俺のよくいk」
「あっ、エビもうすぐつくわよ!」
話の途中で切るなよ・・・

で、家に帰る途中。
「ねえ、エビ?ちょっとあんたのうちに行っていい?」
「えっ」
や、やばい。PCつけっぱなしの上、エロ本出しっぱなしだ。
けど、断れないだろうし。
「いいけどよ、少し待ってくれないか。」
「なんでよ?」
「えーとな、ちょっと部屋が散らかってて、さすがに女性を迎えるために掃除しなければならないからな。」
ナイス、俺のいいわけ!
「へー、そうなの。私は別にいいけど。。。わかったわ、待ってる。」
フー助かった。

・・・・家の前
「じゃあ、待っててくれよ。」
「わかったわ。」
「ただいま。アァァンデュサエが遊びにきまーす。」
うちには、親がいない。いるのは、姉のマサだ。
「ふーん、あんたの部屋ちょいとやばかったからそのまんまよ。」
見たのかよ!
「ああ。わかった」
さてと、ダウンロードの完了率はっと。
95%か。タスクバーに入れておこう。
本は・・・・ベットの下でいいか。
よし、おk、おk。
「サエ〜〜。いいぞ。」
「窓から叫ばないでよ!」
怒りながらも入るんだな。
「お邪魔するわね。」
「別に邪魔じゃねえけど?」
「一応いっておくものでしょ?」
「で、何のようだ?」
「いやね、このあのいやな理科の教師が出した課題が終わったから、あんたに見せに行こうと思って。」
「ああ、そんなモン有ったな。忘れてたぜ。」
「忘れないでよ。で、写すんでしょ?」
「ありがたく、写させていただきます。」
珍しく、サエがいいもの持ってきたな。
652短編予定 4:2009/03/14(土) 21:14:12 ID:x1YSY/Kr
カリカリ(←シャーペンの音)
ああ、疲れた。
サエは何してんだ?
シャ○読んでるよ。俺のを勝手に。。。
まぁいい。ちゃっちゃと写してエロゲをやろう。

「終わったーーーー!」
ていうか、ワーク20ページって、大杉だろ。
「やっと終わったの?」
なんだこいつ、○ャナ読み終わってるよ。
今何時だ?
なんと、7:00。
ていうか、俺何時にいえ帰ってきたんだっけ?
まぁいいや。(作者の都合により、家に帰った時間は割愛)
「飯食ってくか?」
「もらうわ。」
とんとんとん(←階段を下りる音)
「なあ、姉さん。サエが飯食ってくって。」
「そんなことだろうと思ったわ。用意してあるわよ。」
「サンキュー」
お盆で持って俺の部屋へ行くと、サエがベットの上で寝転んでいた。
「サエ、俺のベットだっていっても、一応男のベットだぞ?」
「別にあんたならいいわよ。」
なんだ、こいつうれしいこといってくれるじゃん。
「で、飯は?」
「はい、ここに。」
俺は、セバスチャンじゃねえぞ。
「よっと」
サエがベットから下りてきた。
軽くパンツが見えていたのは黙っておこう。
「へー。あんた姉さんにこんないいモン作ってもらってるんだ。」
「文句あるか。」
「ないわよ。いただきます。」
「ふぅ、」
箸を手にして、食おうと思ったときに
パシッ(←手をたたかれた音)
「なんだよ、サエ。食わせろよ。」
「いただきます言いなさいよ」
「いいじゃねえか、厨房じゃないんだから・・・」
「いわないと、食べさせてあげません」
おまえは俺の母親か。
「わかりました。言えばいいんだろう。いただきます」
「わかればいいの。はい。」
「ふう。」
653短編予定 5:2009/03/14(土) 21:15:34 ID:x1YSY/Kr
「そういえば、サエちゃん。お母さんに電話かけといたよ。晩ご飯食べて、泊まっていくって。お母さんは、OKだって。」
「ぶっ。ね、姉さん。今なんていった?」
「いや、だからサエちゃんのお母さんに電話かけといたよって。」
「その次だよ。」
「ああ、晩ご飯食べて、泊まっていくってこと。」
「そうそう、なんで泊まっていくっていったの?」
「だって、遅いから泊まっていくと思って。」
姉さんが軽く、暗黒な笑みをしたように感じた・・・
「わ、私は別に行けど。布団ってありますよね?」
「ありますよ。今もって来ますね。」
「サエ、いいのか?」
「何が?」
「いや、泊まっていくの。」
「あんたがいやならやめとくけど・・・」
「いいいいいやじゃねえよ。逆に大歓迎だ。」
「じゃあ、いいわ。」
「お二人さん、晩御飯食べ終わらないとしけないから、早く食べてね。」
「あっ、はい。」

結局、サエが家に泊まることになった。
しかも俺の部屋に。
普通だったら、「ktkr」っていってるところだけど、あまり嬉しくないのはなぜだろう。
気持ちとは裏腹に、脳はwakwakしているみたいだが。。。。

「サエ、風呂先いいぞ。」
「ああ、そう。」
「一緒に入る?」
キタコレーーーー!
「ええええええ、いいのかいいのか。入っていいのか!!!!!!」
「何興奮してるの?うそよ。」
わー、テンション下がる。
「テンション下がるぞ。おい」
「マサ姉さん。お風呂借りますね。」
無視かよ。

「エビ、出たわよ。」
「ああ、わかった。今入る。」
「そこら辺に、シャ○があるから読んでもいいぞ。」
「ああ、ありがと。」
654短編予定 6:2009/03/14(土) 21:17:00 ID:x1YSY/Kr
「エビ、寝るわよ。」
何なんだこいつは。俺が風呂出て、部屋に入った瞬間言うことそれかよ。
「ちょっと待てよ。」
多分、落とし終わってるだろうからPCを切ろう。
「ていうか、早すぎだろ。」
「いいのよ、別に。」
俺がよくないのだが・・・
「マサ姉さん。じゃあ、寝ますね〜〜〜」
「あら、早いわね。まぁいいわ。姉さんは下で寝るからね。」
どういう意味なんだ、姉さん。。。
バタン(←ドアが閉まる音)
「さてと。」
何がさてとなんだっ
ガッ
「ボヘッ」
サエに後ろからけられたぞ?
何やった俺。コマンドは?
・逃げる
・逃げる
・逃げる
俺の馬鹿
逃げれねえよ
「エビ〜〜〜?」
「Yes?」
「ただで理科のワーク移して終わりだと思ったら間違いよ。」
い、今気がついたが何だこいつ。
ニーソはいてるよ。しかも黒。
俺の好み熟知してるなこいつ。
「!」
サエが、俺の股間に足の裏を!
「サ、サエ?」
「何、ため口で聞いてるの?」
グリっ
「ウッ」
サエが結構強い力で股間を踏んできた。
「サ、サエ様」
「あはは。素直ね。ご褒美よ。」
サエが、顔に乗ってきた。
サエってたしかSだったような。。。。
ちなみに俺はM
「んーんー」
息ができん!
「何よ?」
サエが腰を浮かせてきた。
「息が、息ができません。ゼーゼー」
「ふーん」
「で、どうしてほしいの?」
俺のコマンド
・そのまま
・息ができるスペースを作ってもらう。
・もっと、股間を蹴ってくれ
「ちょっと、息ができるスペースをください。」
「ください?」
「お願いします。サエ様。」
「ふふ、上出来よ。」
俺のコマンドに「どいてくれと頼む」というコマンドがないなんて。
ああ、だんだんサエのスカートの中へ顔が入っていく。
655短編予定 7:2009/03/14(土) 21:17:34 ID:x1YSY/Kr
ボフッ
のわ、なんか偶然なのか知らんがあそこが口に当たる。
「ふふふ。」
ゲシゲシ
「エビ〜〜?なんで、足で蹴られて勃ってるのかなぁ?」
うう、男としての威厳は?
「ま、いいや。顔からどいてあげるから、いい顔見せなさいよ。」
なんか。お嬢様的なSに・・・・
グニグニ
ああ、黒ニーソがちょうどよくすれて気持ちがいい。
「あ・・・ん・・・・っく」
「あは、こんなのが気持ちいいの?」
グリ
「クッ」
「こ・た・え・な・さ・い」
「は・・・い、気持ち・・・いいです。」
「ふふ、この変態ドMが」
グリ
「ああ・・」
亀頭を足の指で軽くつまんできて、黒ニーソでこすれて痛くなくて、逆に気持ちいい。
ああ、なんか出そうな気がしてきた。
「で・・・・出そうです・・・」
「あはは、こんな足で蹴られて気持ちよくてしかも出しちゃうの?足の中に?」
「エビってそこまで変態だったんだ〜〜」
サエが嘲笑していて逆になんか気持ちがいい。
「クッ、出ます。」
「いいわ、そのまま出しちゃいなさい。」
俺は、サエの足の中に出してしまった。
「あぁ、せっかくのニーソが汚くなっちゃったわ。」
そういいながら、サエは足の裏を俺の顔の前に持ってきた。
「舐めて。」
「はい?」
「あんたがやったんだからきれいにしてよ。」
俺は、逆らえないと思いやった。
「あは、くすぐったい。もっとしっかりやりなさい。」
なんなんだ、このサエの変貌は?
656短編予定 8:2009/03/14(土) 21:18:14 ID:x1YSY/Kr
「ごめんエビ。なんか、最初はこんなにやるつもりはなかったんだけど、途中あたりから頭が真っ白になって・・・」
「もういいよ。なんか、貴重な体験ができたし。」
「ば、バカ。。。」
「さ、寝るぞ。」
「うん。」
サエはさりげなーくおれの布団に入ってきた。
「なんだ、ベットになるんじゃなかったのか?」
「なんか、今日はエビと寝たい。」
「そっか。いいぞ。」
「サエ、好きだぞ。」
「その言葉忘れちゃだめよ。」
「ああ。」
そういえば、エロゲPCにインストールしてねえ。
まぁいい、それ以上の体験ができたし。


次の朝
ああ、助かった。今日が土曜日で。
眠すぎる。眠すぎる。
「エビーーーーー!起きろーーーー。朝だぞ、朝だぞ!」
なんか。一人やけにハイテンションな方が・・・
「姉さん、一応まださえいるんだから。。。」
「ああ、そうだったな。」
「ん、なにエビ。」
サエが、起きた。
「あっ」
「あっ、やべ」
「お二人さん、仲ががよろしいことで。」
ああ、姉さんの俺ユスリネタ帳にまた項目が増えた・・・・
657648:2009/03/14(土) 21:20:23 ID:x1YSY/Kr
すいません、全然短編ではありませんでした。
たぶん、間違いがあったり、読みにくかったりするかもしれません。
見てくれた方、ありがとうございました。
658名無しさん@ピンキー:2009/03/14(土) 22:04:11 ID:gYkPPzOA
>>657
GJ!
王道は良いものだ。良いものが王道になるのかもしれない。
俺も踏まれたい
659名無しさん@ピンキー:2009/03/15(日) 14:13:09 ID:sxqq1Twa
おぉ! いいじゃん面白いよ!!
GJ!!!!!!
660名無しさん@ピンキー:2009/03/17(火) 06:53:38 ID:ZaCOLeHT
面白い!!
661やれ夫:2009/03/21(土) 21:44:00 ID:aCBh/j0d
>>657 
662名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 18:26:11 ID:4Js+z07H
663名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 18:11:54 ID:5IUTx38m
あげ
664名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 19:39:12 ID:Si8jjqmb
明後日は素直になれないツンデレが一世一代の告白ができる日だな。
665名無しさん@ピンキー:2009/03/31(火) 22:57:36 ID:FrR/pnwy
これは、必ずしもエロがないとダメですか?
666名無しさん@ピンキー:2009/03/31(火) 23:52:06 ID:EW6asFOV
自分はどっちでもOKドンと来いだよ。
667名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 00:06:51 ID:J20VmYyT
エイプリールのネタみたいと激しく思う。
668名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 01:21:29 ID:Fqc2wYSg
>665
エロ無し・・おk!!!
669名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 08:50:56 ID:rPB9oWY1
というか、このスレではあまりエロないような…
670ケチャップ:2009/04/01(水) 18:37:25 ID:tFDZ+Y/0
ツルとカメは?
671名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 18:57:21 ID:7ObL4xUl
エイプリルフールで嘘をついていいのは午前中だけだと聞いたことがあるが本当なのかな。
その話自体が嘘なんじゃないかと半信半疑になってしまう。
672初ツンデレ:2009/04/01(水) 19:20:32 ID:Tkx5gSTQ
―俺のことが好きなのか?
『違うよ、こんな事を頼めるのがユージだけだったんだよ』
―で、なんでこんな事をするんだ?
『別に、いいだろ、細かいこと気にするなよ』
かれこれ、こんな会話が30分近く続いていた
結局、要約すると、こんな感じだ
俺のクラスの女の子、ちょいと前に引っ越してきたのだが、たまたまうちの隣だ。
おふくろ同士が仲良くなったせいで、彼女もこっちにきての初めての友人ができたわけだ。
転校生というとなかなか、友人ができなくて、相談相手もいなくて、そんな彼女が、俺に頼ってくるのはわかった。
―でも、わざわざ、今日でなくてもいいじゃん
『でもっ、だけどっ…』
彼女は、綺麗な美人というより、可愛い美少女というか、美少女の2歩手前というか
どちらかと言えば、委員長タイプだが、転校してきたばかりの彼女がクラス委員とかになれるわけもなく。
目立たないメガネ娘の秀才タイプだ。
体系は、ツルペタとは言わないが、小さめの胸と、それを隠すほどの長い黒髪が印象的だ。
声は、どちらかというと、声変わり前の少年のような声。
短パンにTシャツ、帽子を深めにかぶっていれば、少年と間違われそうな雰囲気だ。
その彼女が、さっきから、俺にねだっていることは…
『ちんちんみせて』だった。
思春期の頃の俺は、むしろ毛の生えはじめたあれを見せるのは抵抗あった。
都合よく、母親たちは、町内会の旅行に出ている。このチャンスをものにするべく、彼女が言い寄ってきたとしか思えないのだが、なかなか素直に認めない。
さんざんもめた挙句、最終的には俺は『ちんちんを見せる』ことになった。
交換条件としては『一緒に風呂に入ろう』というあたりで妥協した。
―それじゃ、一緒に風呂に入ろう。それなら、言い訳もできるし(できるのか?)どっちも公平だろ?
『わかったよ、でも、じろじろ見るなよっ!』
そして、二人の、夜ははじまったのである。

『なんだか、ぴくぴく動いてるよ?』
―仕方ないだろ、こんな状況なんだから
『それって、もしかして、私のせいだったりするの』
―お前のせいじゃないよ、お前の身体のせいだよ
『うるさい、さっきから、遠慮なくじろじろ見やがって…』
―……
『で、どうやったら、小さくなるの?』
―…エッチな事をして、逝けば小さくなるよ
『それじゃ、それ、やってあげようか?』
―本当に?やっていいの?
『いや、だから、小さくなったのが見たいんだからね』
―もう、どっちでもいいよ。早く、やってよ
『どっちでもよくないっ!…で、どうしたらいいの?』
ほとんど、経験のない俺は、普段、一人でやっているように、彼女にやらせてみた。
なんだか、普段、自分でやるよりも、全然ぎこちないくせに、やたらと、そのもどかしさが、さらなる、興奮をかきたてる。
『まだ?早くだせよな。早く、小さくなったのを見せてよ』
俺は、彼女の問いに喘ぎ声で対応するだけだった。
『なんだよ、まだ、続けないといけないのかよ』
なんだか、男の子のような言葉使いだが、今のおれは、それどころじゃない。
―なぁ、ちょっとだけ、さわってもいいか?
『ちょっ!なにするんだよ。』
―いや、ちょっとだけだから
『やめろよぉ…』
彼女が、俺のを強く握りしめた瞬間に、逝ってしまったのであった

673初ツンデレ:2009/04/01(水) 19:22:13 ID:Tkx5gSTQ

これって、ツンデレしてますかねww
男の逆襲をしたら、なんだか、ツンデレにならなくなりそうで、カットしちゃいましたww
674名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 19:43:51 ID:6Jc6zY4j
www
675名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 23:31:57 ID:E0bBIwTj

ちょっと投下しますね。
676名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 23:33:22 ID:E0bBIwTj
***

気がつくと僕はベッドに縛りつけられていた。

どうしてこんなことになったんだっけ…?

起きたばかりでまともに働かない頭を使っても思い出せない。

「あら、目が覚めたみたいね。おはよ」

声がする方向に目をやると、そこにはクラスメイトの鈴(すず)が立っていた。

「あぁ…、おはよう、鈴」

って、あれ?
どうして僕の家に鈴が?
考えれば考えるほどどんどん分からなくなる。

「ところでさ。どうして僕はベッドに縛られてるの?」
「あぁ。それ、私がやったのよ」
「鈴が?どうして?」
「だって、可愛いかったんだもん。あなたの寝顔。…ふふっ、それを見てたら何だか悪戯したくて」

いや…悪戯の域を越してると思うけど…。

「…分かったからさ、ちょっとこれ、外してよ」
「嫌よ。だって…」

そう言うと鈴は僕に覆い被さってきて…キスをしてきた。

「んぅ…ぁ…」
「だって、本番はこれからだもん」

カチャカチャ…
鈴は僕のズボンのベルトを外して、息子をさらけ出した。
そしてそのまま、それを口にくわえた。

「んちゅ、ぴちゃっ…、ふぅ…。あなたの、小さくてかぁわいい。…はむっ…ん…」
677名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 23:33:56 ID:E0bBIwTj
「あっ…、だ、駄目だよ鈴…、んくっ…」

何が何だか分からないまま、僕は鈴の玩具にされ感じたことのない快感に、ただ耐えていた。

「ん…あむっ、んん…っ、んっ、ちゅぷ…」
「ぅあ…っ、ちょ…待って、うぅ…」

次第に複雑に舐めていくせいで、僕は我慢出来なくなっていた。

「あっ…、くぅ…っ、鈴…ちょっと離れ…」「んん…っ!」

どぴゅっ!びゅるるぅっ!

最後まで言い切る前に僕は果ててしまった。

「けほっ、けほっ…。…結構濃いね。もしかして、初めて?」

当たり前だ。
こんなことする相手も居ないし、かといって自慰する訳でもない。

「はぁ…っ、はぁ…っ。な、何してるの!?」

突然、鈴が服を脱ぎ出した。
ブラジャーから、スカートから、そして…パンティも。
全てを脱ぎ捨て、生まれたままの姿となった鈴は…とても綺麗だった。
って、言ってる場合じゃなくて!

「ま、待って!こんなの、訳分かんないし、一体どうしちゃったの!?」
「私…、ずっと前からあなたのことが好きだったの」
「え…」
678名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 23:34:36 ID:E0bBIwTj
「あなたのことを考えるだけで、身体中が火照っちゃって。でもあなたは気付いてくれなくて。だから、毎日毎日、たった一人で自分を慰めてたの」

鈴は、自分の指を割れ目に挿れて、そのまま弄くり始めた。

クチュ…ピチャ…ッ

「んんっ…、これを、毎日…はぁ…っ、あなたのモノだと、やっ…ぁ、お、思って…ずっと、慰めて…ひあぁっ!」

淫らな声で鈴が喘ぎ、卑猥な音が鈴の割れ目から聞こえてくる。

僕にはもう、情報を処理することが出来なくて、ただじっと鈴の自慰に見ることしか出来なかった。
鈴の割れ目からは汁が流れ出ていた。

「んぁ…。だからね、私…あなたと一緒になりたいの」

そう言って鈴は、痛いまでに勃っている僕の息子に割れ目をあてがって、

「…あなたと繋がっていたいの…」

――腰を一気に降ろした――
679名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 23:35:09 ID:E0bBIwTj
***

「わぁっ…!」

僕は怖くなって身体を起こした。
…ん?あれ、動ける?
じゃあ今までのって…

「全部、夢、かぁ…」

何か夢で良かったような、ちょっと残念だったような…。

「っていうか、普通に考えたらあり得ない、よね…」

そうだ。
あれは夢で当たり前なんだ。
だって鈴は…

ピンポーン

家のチャイムが鳴り響く。
この時間、間違いなくあの人だ。

急いで玄関に向かい、扉を開く。

「おはよ!…って、まだ準備出来てないの?」
「おはよう、鈴。毎朝大変だね、鈴の家から僕の家まで」
「い、いいじゃない、別に!それとも何?私が来たら迷惑だって言うの!?」
「いや、そんなこと言ってないけど…。でも、目当ては朝ごはんでしょ?」
「ぅ…」

と、こんな感じでかなり活発な娘なんだ。

「今から作るから待っててよ」
「早くしなさいよ!」
「ハイハイ…」


今日から新学期。
また変わらない日常が始まるんだ。

それでも僕は、何かが変わると信じて――毎日を過ごすんだ。
680名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 23:36:31 ID:E0bBIwTj

終了です。
ありがとうございました。


衝動に駆られて書いてみたものの…やっぱり難しいorz
681名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 04:53:23 ID:GdasgGpX
>>671
地域によるらしいよ
682名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 18:42:41 ID:UF8D24Ht
ツンでヤンなのもいいね
683名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 18:55:45 ID:i6Kb7cLD
ツンデレでヤンキーか。悪くないな
684名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 12:15:18 ID:7N3McBUC
依存スレッドで取り扱う程度が個人的には丁度良い。
685名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 15:09:08 ID:ZYj8WR9h
675>
すげー面白かった!!
GJ!!!!!!
686名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 17:16:01 ID:k5uD0412
ロボ氏はエロゲに帰ったのかorz
687世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:23:26 ID:xnBLku1c
【犬猫合戦】


「う……ん…」
何かがざわつく音に僕はベッドの上で目を覚ます。どうやら僕は教室で倒れた後、保健室に運ばれたらしい。
窓を覗いてみると運動部が練習をしている……放課後まで僕は眠っていたみたいだ。
「なんで……あんな事になってしまったんだろ…」
ベッドに寝たまま僕は小さく呟いてため息を吐く。
こうも悪い事が立て続けに起きるなんて今日は本当についてない。
しかも僕の素顔を坂崎や皆の目の前で晒してしまうとは………明日からどんな顔をして学園に来れば良いんだ?
「坂崎……」
そうだ、坂崎はあの後どうなったのだろう……もう帰ってしまったのだろうか。
多分、今回の件で一番の被害者は坂崎だ、僕にあんな風に避けられてかなり傷付いたに違いない。
なんであんな事を僕は坂崎にしてしまったんだろう……僕は心の中で自分を責め立てる。
全部、全部あの事件のせいだ、あの事件のせいで僕は苦しんでいるんだ……あれが原因で僕は…。

「炎……」
ベッドを仕切るカーテン越しに僕を呼び掛ける小さな声が耳に入る、その声は……声のした方を見ると人影がカーテンに映っている。
「坂崎……か?」
「炎……身体の方は大丈夫か…?」
688世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:25:03 ID:xnBLku1c
「うん……僕の方はもう大丈夫だよ…」
「そうか……良かった…本当に…」
坂崎は安心した様にホッと息を吐く。
「……もしかして、坂崎はずっと保健室で僕が起きるのを待っていたのか?」
「ああ……早乙女に『炎君のそばにいてあげて欲しい』って頼まれてな……。
さっきまで早乙女も一緒にいたんだけど、生徒会長の奴に呼び出しをくらって帰ったよ」
「そうか、あすか君も……色々な人に迷惑をかけてしまったな…」
僕がそう言うと坂崎は静かにカーテンを開ける。
「炎、本当にごめんな……あんな事してしまって…」
坂崎は今にも泣きそうな表情で僕に頭に下げる、いつもの坂崎の笑顔はそこにはなかった。
「……坂崎は悪くないよ、僕が勝手に倒れただけだから……」
「違う!悪いのは全部私のせいだ!炎が私の事を嫌っていたのにあんな事をしたから…!」
「それは違うよ坂崎!」
「じゃあなんで!なんで炎は私から逃げるんだよ……教えてくれよ…炎…」
「それは……」
僕は思わず口ごもってしまった。自分の秘密を他の人に話すのは初めてだったからだ。
けれども誤解を解くために坂崎には言わなければならない……僕は覚悟を決めた。
689世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:27:43 ID:xnBLku1c
「僕は坂崎が嫌いなんじゃない……僕は女の人が怖いんだ…」
「……はぁ?」
僕の言葉を聞いた坂崎は面食らった様に間の抜けた声をあげる。
「馬鹿馬鹿しい話だろうけど…本当に怖いんだ。昔から女性が近くにいるだけで強い恐怖感を抱いてしまうんだよ……」
「……それは本当の事なのかよ?」
「ああ……信じられないだろうけど本当さ。それが原因で色々と誤解されて嫌な思いも沢山して来たよ」
「そんな……一体何が原因なんだよ…?」
「・・・・・・」
「炎……?」
「原因は……幼い頃に受けた暴力さ……」
「……えっ?」
「虐待されてたんだよ……母親に…」
「そんな…!」
坂崎は驚いた表情で僕の顔を見る、予想していたとはいえ辛い気持ちになる。
それでも僕はポツリポツリと自分の過去を始めた。

僕は父さんと兄さん、そして母親の四人家族だった――。
けれども僕が4歳の時に父さんと母親が些細な事で喧嘩した原因で父さんと母親は離婚する事になり兄さんは父さんが、僕は母親が引き取る事になった。
そこからはよくある話……優しかった母親は豹変してまるで父さんと別れた悲しみをぶつけるかの様に僕に暴力を振るい始めたんだ。
690世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:28:43 ID:xnBLku1c
毎日毎日、繰り返される母親の暴力…それでも僕は必死に耐えた。
僕は信じていたんだ、いつか必ず昔の様に優しかった母さんに戻ってくれる事を。
そしてまた、僕を愛してくれる事を……。
でも、僕のそんな願いは脆くも崩れさってしまった。
ある日の夜、母親の帰りを待っていた僕の元に父さんがやって来た。
そして父さんは涙を流しながら僕を抱き締め、残酷な事実を僕に告げる。

母サンハ僕ヲ捨テテ逃ゲタ

その日の朝、母親は父さんに電話をし僕に対して暴力を振るっていた事、そしてもう僕の面倒は見たくないから引き取って欲しいという事を父さんに告げ、逃げたらしい。
その話を聞いた後の記憶はあまり残っていない。父さんの話によれば僕はかなり錯乱していて落ち着かせるのにかなり大変だったんだって。
そして父さんは母親に捨てられた僕を引き取って育てる事になった。
僕は母親から受けた暴力による心の傷と捨てられたショックでしばらくの間、話す事も表情を変える事も出来なかった。
それでも父さんや兄さんが優しく僕を慰めてくれたおかげで少しずつだけど立ち直る事が出来た。
父さんや兄さんがいなかったら今でも僕は人形の様な日々を送っていただろう。
691世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:29:57 ID:xnBLku1c
それ以来、僕は女性に対して恐怖心を抱く事になった。
自分の外見が嫌いなのもそれが原因……皮肉な事に僕の顔は自分を苦しめた母親とそっくりなんだ。
僕は少しでも自分の外見を母親に似せないために髪を伸ばし、大きなくるくる眼鏡をかけたりした。
その姿を馬鹿にされようとも笑われようとも僕は構わなかった……母親の姿をして生きるよりもよっぽどマシだったからだ。
それでも、僕は努力したんだ…女性恐怖を治そうと頑張った。
でも駄目だった……女性が近くに寄る度に来る強い不安感を消す事が出来なかった。
いつしか僕は…ずっとこのまま女の人に恐怖を抱いて生きていくのだろうと…すっかりあきらめてしまった。

「女の人がみんな母親みたいな人間じゃないのにね……本当に情けない話だろ?」
僕はふぅっとため息を吐いて窓の方を見るとさっきと変わらずに運動部が練習に励んでいた。
「じゃあ……お前は一生、女の子と付き合わなくても良いってのかよ…」
「ああ…そういう生き方も悪くないって思っているよ…」
「そうか…」
「……坂崎?」
坂崎の声が震えている事に気が付き、坂崎の方を見た僕は言葉を失ってしまう。
692世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:31:11 ID:xnBLku1c
……坂崎が泣いていたからだ。
「炎がそう思っているなら……あきらめるしかないよな…」
「坂崎…?」
「私な、お前と最初に勝負して負けた時凄く悔しかった…。
だから炎にだけは絶対に勝ってやるって決めたんだ……なのにいつもいつもお前に負けて…。
でも…お前と戦っている内に勝ち負けなんかどうでも良くなって来たんだ……少しでも長く炎と一緒にいられればそれで良かった。
私…炎と話をしたくなったんだ。勝負とかじゃなくて趣味や夢とか…普通の事を。
だけど、その事をお前に言って拒否されたらと思って……言う事が出来なかった…。
だから炎が私を庇って怪我をした時…怖かったんだ……もう私と勝負してくれなくなるんじゃないかって…」
「だからあの時、僕の右手になるって言ったのか?」
「そう、炎が承知してくれた時は本当に嬉しかった…まだ炎と一緒にいられる、炎と普通の話が出来るって…」
「坂崎…」
「私って馬鹿だよな…炎が苦しんでいる事なんて全く知ろうとせずに…。勝手に一人で舞い上がって喜んであんな事になってしまって……本当にごめん……」
坂崎は胸ポケットから僕の眼鏡を取り出して僕に渡す……その手はとても震えていた。
693名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 03:31:33 ID:W10nAlM7
アルフィー?
694名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 03:33:01 ID:xnBLku1c
「…もうお前の近くに寄らない事にするよ。これ以上、私のせいで炎が苦しむ所を見たくないからさ……」
「えっ…?」
「でも、嬉しかった……炎が私の事を嫌いじゃなかった事や、こんな乱暴でがさつな私を女の子として見てくれていた事が分かって…」
坂崎は涙を流しながら悲しそうに微笑む。
なんでそんな事を言うの坂崎?
君も僕から離れていくの?
僕はまた一人ぼっちにされちゃうの?

「今まで付き合わせて悪かったな炎…それじゃ…」
坂崎は僕に背中を向けて保健室から出ようとする。
嫌だ、捨てられるのは嫌だ、もうあんな辛い思いをしたくない。
「坂崎…!」
気が付けば僕は彼女の腕を掴んでいた。坂崎はびっくりした表情で僕の方を見る。
「炎……お前、女が怖いんじゃなかったのかよ…?」
確かに坂崎の言う通り、強い不快感と恐怖が身体中を襲っている…でも…。
「僕は坂崎がいなくなる方が怖い……」
「炎…」
「お願いだ坂崎……いなくならないで……僕を見捨てないで…」
僕はまるで幼い子供の様に涙をポロポロと流しながら坂崎の腕を掴み続んだまま離さない。
もしここで離してしまったら坂崎が僕の前からいなくなってしまうかもしれないから。
695世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:34:17 ID:xnBLku1c
「もう捨てられたくない……一人ぼっちになるのは絶対に嫌だ…」
幼稚で情けない事をしているのは分かっている、それでも僕はこの手を放したくはなかったんだ。
「炎……手を放してくれよ……」
そんな願いも虚しく坂崎は静かに手を放すように僕に言った。
やっぱりそうだよな…坂崎だってこんな情けない奴なんかと一緒にいたくないんだろう……。
全てをあきらめた僕はがっくりとうなだれて、坂崎の言う通りゆっくりと彼女の腕をつかんでいた手を放した。
「ごめん坂崎……帰る邪魔をして……」
「…そうじゃねぇよ……バーカ…」
「えっ…?」
坂崎の言葉に反応して僕が顔をあげると、坂崎が僕の頭を優しく抱き締めた。
「もし嫌だったら言ってくれよな……」
僕の頭を撫でながら坂崎は優しく僕にささやく。
何故だろう、女性に触られているはずなのにいつもの恐怖感が全く襲って来ない…むしろ心が安らいでいく。
思い出した…この感触は母親がまだ優しかった頃に僕を抱き締めた時と同じ感触だ。
もう二度感じる事はないとあきらめていた、優しくて穏やかなあの温もり。
この懐かしい温もりに僕はしばらくの間、静かに目を閉じて坂崎の胸の中で泣き続けていた。
696世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:35:45 ID:xnBLku1c
スッと坂崎の身体が僕の頭から離れる。彼女はとても穏やかな顔で笑っていた。
「少しは落ち着いたか?」
「ああ…らしくない所を見せてしまったな…」
「…たくよっ、普段あんな偉そうにしておいてビービー泣きやがって…。これからは泣き虫炎ちゃんって呼んでやろうかにゃ〜?」
「うう…」
恥ずかしながら反論する事が出来ない。人の前で泣くなんて本当にらしくない。
「炎がそこまで言うんだったら……これからも一緒にいてやるよ」
「えっ…?坂崎……それって…」
「あんな風に泣き付かれちまったら仕方ねぇだろ!お前がどうしてもって言うから、一緒にいてやるんだからな!
………感謝しろよ、馬鹿…」
坂崎は顔中を赤らめながらプイッと顔を逸らす。
「ありがとう…僕なんかと一緒にいてくれるって言ってくれて…」
「『なんか』って言うな馬鹿、いつものお前はどこに行ったんだよ…本当に泣き虫だなぁ…」
「そうだな、まるでさっきまでのお前と同じだな…」
「なっ…!?あれはお前がいきなり湿っぽい話をして来たから思わずホロリと来ただけだ!
もうお前とは一緒にいられなくなると思って泣いた訳じゃねぇからな!」
「はいはい…分かってる分かってる」
697世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:37:05 ID:xnBLku1c
僕は笑いながらいつもの台詞を言う。
(良かった……僕はもう一人じゃない、一人じゃないんだ…)
そう思った瞬間、ドクンと心の中で何かが高鳴った。
(えっ……?)
恐怖感や不安感とは違う胸の高鳴りに僕は戸惑いを感じていた。

「どうかしたのか炎?」
そんな僕の様子に気が付いた坂崎が心配そうに顔を覗き込む。
「坂崎……君は昼休みに僕を押し倒したよね…」
「あっ……あれはちょっとした事のものの弾みって奴だ!まぁ……悪いとは思っているけどよ…」
「その事なんだけどさ、坂崎がしようとした事をしようと思うんだ…」
あれ?急に僕は何を言っているんだろう?
「えっ…!?炎、それってもしかして…」
「駄目…かな?」
僕の発言に坂崎は目を丸くして驚いている。正直、こんな事を言っている僕自身も驚いている……情けない事に僕は今、自分が何を言っているのか理解出来ていない。
「……しょーがねぇな……。お前がそこまで言うんだったら…してやってもいい…」
坂崎は恥ずかしながらも嬉しそうな表情で僕の肩に手を添える。
「いや、坂崎…僕はだな…」
「なんだよ…自分から言っておいて…こっちだって死ぬほど恥ずかしいんだからな…馬鹿」
698世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:38:07 ID:xnBLku1c
プイッと坂崎は再び恥ずかしそう顔を逸す。
「悪い……じゃあいくよ…」
「うん……」
僕は覚悟を決めると坂崎の唇に自分の唇を重ねる。
「んむっ……!ん…」
坂崎の手が僕の肩を掴む……彼女の身体はフルフルと震えていた。僕はそんな彼女の震える身体を包み込む様に抱き締める。
僕は恐る恐る舌を入れる……坂崎はビクッと身体を震わせたがゆっくりと僕の舌を受け入れた。
ピチャ…ピチャ…とお互いの唇は離れ、次第に舌を絡め合う激しいキスに変わっていく。
「んあ…!はぁ……ん……んん…」
坂崎はとろんとした目つきで小さく声を漏らしながら拙く舌を動かしている。
僕の方は頭の中が真っ白になるような感覚に耐えながらゆっくりと舌を動かす。
スゥッ…と舌を離すとお互いの舌の間で唾液が糸を引いてポタリとベッドの毛布へと落ちた。
「ふにゃあ……」
坂崎の身体が僕の胸の上に力なく倒れ、彼女の荒い息遣いが僕の顔にかかる。
「可愛いよ…坂崎…」
「うるさい……馬鹿…」
僕に対して怒る彼女の声はとても小さくて可愛らしい。僕は身体を起こし坂崎をベッドの上に寝かせる。
彼女は抵抗する事もなくジッと潤んだ目で僕の顔を見続けている。
699世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:39:16 ID:xnBLku1c
僕はゆっくりと彼女のシャツのボタンを外していくと、たぷん…と大きな胸があらわになる。
「大きい……」
「言うな…馬鹿ぁ……気にしてるんだからぁ…」
坂崎は泣きながら恥ずかしそうに視線を逸らす。僕はゆっくりと坂崎の胸を掴む…ムニュッとした感触が僕の手のひらに伝ってくる。
「はぁ…!や……ぁ……んん…」
小さく喘ぐ坂崎。僕は胸を揉みながら右胸の乳首に口をつけた。
「んああっ…!」
坂崎はビクッと身体を震わせて甘い声をあげる。
ちゅっ……ちゅっ……と強く吸い上げると乳首が段々と固くなっていく。もう片方の乳首も優しく弾くとそれに合わせて坂崎の身体がビクン…ビクン…と反応する。
「乳首…コリコリに勃って来たよ」
「うるさ…い…馬鹿ぁ…」
僕は胸から手を離すと下の方に伸ばす。スパッツの上からそこを触ってみると、にちゃ…と僕の指にいやらしい液が絡みついて来た。
「そこは駄目ぇ…炎…恥ずかしい…」
「ごめん……坂崎…僕もう止まれない…」
僕は乳首から口を離し両手でスパッツを掴むとゆっくりと下げていく。
「やめろぉ…馬鹿ぁ…」
口ではそうは言っているけど坂崎は全く抵抗しようとしない…ちょっと意外である。
700世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:40:12 ID:xnBLku1c
僕はスパッツを脱がし終えると彼女の膝を手を添えて足を開こうとする。
「そこは駄目ぇ…」
坂崎は足を閉じて抵抗するも、僕が力を入れるとあっさりと足が開き…彼女のあそこがあらわになる。
「凄い……もうトロトロだ…」
「うるさ…い……炎の馬鹿ぁ…」
「あれ…坂崎のあそこ…毛が生えてないよ……?」
「……!言うなぁ…そこも気にしているんだからぁ…馬鹿ぁ……馬鹿ぁ…!」
坂崎は両手で顔を隠しながら、ぶんぶんと小さく首を振る。
僕は坂崎のあそこに手を添えて優しく割れ目を開く。
「あああっ…恥ずかしい…」
僕は坂崎の恥ずかしがる声を余所に指を入れてみる。
「はぁんっ!指はっ……ダメェ!」
坂崎はビクンッと身体を大きく震わせ僕の手を掴む。それでも僕は構わずに指を動かし続けた。
ぐちゃ…ぐちゅ…ちゅぶ…
いやらしい水音が耳の中に入っていく。
「ひああっ!ん…ああ!」
指を動かす度に割れ目から愛液が溢れ、僕の手を濡らす。
僕はゆっくりと割れ目から指を抜くとそこはすっかりビショビショに濡れて、ヒクヒクといやらしく動いている。
「はぁ…!はぁ…!」
坂崎はビクッ…ビクッ…と身体を痙攣させながら苦しそうに息をしている。
701世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:41:30 ID:xnBLku1c
「大丈夫か坂崎?少し休もうか……」
彼女が心配になった僕は坂崎に話しかける。坂崎は無言でゆっくりと起き上がると僕の方をにらみ付ける。
「……坂崎じゃない」
「えっ…?」
「坂崎じゃなくて……その…名前で呼んでくれよ…」
「あ…分かった…。その……香…?」
「なんで疑問形で言うんだよ……馬鹿…」
坂崎…いや、香は頬を赤く染めながらそっぽを向く。
「悪い、次からは気をつけるよ香……」
「本当に気をつけろよな……炎」
香はニッと凄く嬉しそうな顔で僕に微笑む。香にとって名前を呼ばれる事がそんなに嬉しい事なのだろうか?
「ああ…分かってるよ…」
そう言いながらも僕は照れくさそうに頬をかく。なんというか…香って呼ぶのはちょっと恥ずかしい。

「じゃあいくよ……」
僕はすっかり大きくなった自分のソレを香の割れ目にあてがう。
「あ……うん…」
その様子を香は少し怯えた表情で見つめている。
ズブズブ…と少しずつ押し込んでいくにつれてもの凄い快感が身体中を襲って来る。
「は…っ…あ!来てる……炎のが…私の中に…入って来る…!」
香は全身を反らしながら苦しそうな声をあげる……本当に大丈夫かな…。
702世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:43:29 ID:xnBLku1c
香を心配している内に自分のソレが全部、香の割れ目の中に収まった。
「くっ……奥まで入ったけど……大丈夫か香…?」
「こんなの…!全然っ……ヘーキだ…あっ…!」
健気に強がる香もまた可愛い。
「それじゃあ動くぞ…」
僕はゆっくりと腰を動かす……最初はかなりきつかったが、腰を動かし続けている内に段々と柔らかい感触が僕のソレを包み込んでいった。
「はぁ…!香の中…とてもヌルヌルしていて凄く気持ち良いっ…!」
「はぁんっ!ふぁぁっ!私もっ!わたしもぉっ!」
僕は香の名前を呼びながら一心不乱に腰を動かす。もっともっと香を愛したい、香と繋がっていたい。
「炎っ!わたしっ!わらしぃっ…!」
香はいやらしい声をあげながら自分の手を僕の手に重ねる。
「炎が好きっ!大好きっ……!」
「香……!」
僕は香の愛の告白にドキンと胸が高鳴る…こんなにまで香が可愛いと思った事が今まであっただろうか。
「僕も…僕も香の事が好きだ!この世の誰よりも香の事が大好きだ!ずっとずっと……香と一瞬にいたい!」
「炎っ!えんんっ!」
僕は涙を流しながら香の手を強く握り締める。香もそれに答える様に僕の手を握り返す。
703世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:45:44 ID:xnBLku1c
しばらくの間、腰を振っている内に僕のソレに何かが込み上げで来る…これ以上は限界みたいだ。
「ごめん香…!僕…もう…我慢出来ないっ……!」
「私もっ!私もいきそう……!一緒に……炎も一緒にぃ!」
香はさらに強い力で僕の手を握り締める。僕も強く握り返してさらに激しく腰を動かし、そして――。
「イッ!ああああああっ!」
香が身体を大きく反らし、声をあげながら激しく絶頂を向かえる。
「駄目だ…出る…!もう僕……出ちゃう……ふわぁぁ!」
香が絶頂を向かえたと同時に僕も我慢の限界を超え、一番奥の方でどびゅうううっと激しく射精をする。
「はぁ…あ…!射精してる…!炎の熱いのが私の中に入って来る…」
香ははぁ…はぁ…と荒らい息遣いをしながら身体を小さく震わせ、満足そうにゆっくりと自分のお腹の下を擦る。
「はぁ…!はぁ……香…」
ようやく射精を終えた僕は快感に震えながら静かに香の上に倒れた。
「炎……」
香が僕の名前を呼ぶ……僕は無言で彼女の身体を抱き締めた。
「……バーカ」
香はそう言って僕の頭をそっと撫でる。僕の心の中で何かが満ち足りていく……僕は静かに深い眠りについた。
704世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:48:07 ID:xnBLku1c
そして……短い時が流れた。
「ふぅ……眠い…」
僕は首をコキッと鳴らしながら下駄箱を開ける。
パサパサパサ…
数枚の手紙らしきものが僕の足元に落ちた。
(またか……)
僕は小さくため息を吐いて手紙を拾っていると
「よお、炎!おはよー!またラブレターか?」
という掛け声と共に後ろから香が僕の肩を叩く。
「あっ、おはよう香。多分そうだと思う……きちんと断っておかないとね」
「全くモテる男は大変だな〜!このこの!」
「茶化すなよ香……僕だって眼鏡を外しただけでこうなるなんて思ってなかったんだから…」
僕はポケットからもうかける事はない眼鏡を取り出す。
自分の素顔を皆に晒した次の日から僕は眼鏡をつけるのを止めた。
隠す必要がなくなったためと少しでも自分を変えるため……最初は恥ずかしかったけど今はもう平気だ。
でもちょっと悩んている事がある……それは毎日の様に女の子に話しかけられる事。
今まで眼鏡マンだの、眼鏡大帝だの、馬鹿にしていた事をまるで忘れたように女の子達は僕に擦り寄って来る。
今みたいに下駄箱に手紙を入れて来る事も珍しくない。
もちろん、僕は全部断っている……僕にはもう大切な人がいるから…。
705世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:49:07 ID:xnBLku1c
それにまだ僕は香以外の女性に対しては恐怖感を感じてしまう……まぁ、それは少しずつ治していけば良いだろう。
「ま、炎には私がいるからな!あのお前の泣き顔は今でも忘れられないな〜!一人にしないで〜見捨てないで〜ってな!」
「むっ……香だって僕と同じじゃないか。好き、大好きってさ」
「あ、あれは……その……本当に好きなんだからしょーがねぇじゃねぇか!」
「あっ…開き直った」
「とにかく!浮気なんか絶対にするんじゃねぇぞ!お前は私のパートナーなんだからな!」
「はいはい、分かってる分かってる…」
僕はいつも通りの言葉を言って手紙をしまう。
パートナー、か……確かに彼女は僕にとって最高のパートナーに違いない。
「それじゃあ……行こうか香…」
「……ああ!」
僕と香は手をつなぎながら教室へと向かう。
僕はこの手を離さない……どんな事があっても、絶対に。
706世界のヘイポー:2009/04/07(火) 03:54:07 ID:xnBLku1c
続きを書くのが遅くなってすいませんでした…。
皆さん…今回続きを書くのが遅くなったのは、私の責任です。私が未熟だから、遅いから…。
   しばらくROMります…。
707名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 07:35:23 ID:wiwJPmrS
>>706
GJ!
708名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 08:04:22 ID:xgZSmvTz
次からは完成してから落とせ
709名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 19:26:00 ID:VFcCFp94
続き見れるとは思ってなかったから超嬉しい。
個人的に気に入ってるから頑張ってくれ
710名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 20:20:43 ID:XpecYnvF
続きを楽しみに待っていたよ
とても良かった
GJ!!!!
711名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 22:30:58 ID:jlPe7PEa
まったく3ヶ月も焦らしおって……。


待っていた甲斐があったGJ!!!!!
712名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 00:20:04 ID:2TbzjAPK
>>706
753乙w
良かったよーGJ!
713名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 01:26:11 ID:cDIS1LjC
ヘイポーの顔が脳にこびりついてしゃーない
714名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 00:04:32 ID:L72w1upg
保守。
715 ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:29:12 ID:1rLHKxab
こんにちは。
真理を追い求めていたらツンデレの世界に迷いこんでしまった通りすがりです。
せっかくだから俺はこの赤のSSを投下するぜと思って書き始めたのですが、
幼馴染やら甘えん坊やら混ざりに混ざって訳がわからなくなりました。
ツンデレ小説って難しいですね。

それでは投下。
716亮と真耶(1/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:30:17 ID:1rLHKxab
……どうもこの頃、眠りが浅い。
眠っていても休めないというか、意識がずっと残っている気がする。
目が覚めた後、覚えているのは突拍子もない、非現実的な記憶ばかり。
海の底を歩いていたら大きな魚に飲まれたり。
追いかけられて高層ビルからふわりと飛び降りたり。
自分はこんなに夢見がちな人間だったのかとつい苦笑してしまう。

今夜も亮は夢を見た。
何もない真っ白な部屋に、所在なさげに立っている自分。
(――りょーくん)
呼ばれた気がして振り向くと、小さな女の子がこちらを向いていた。
(誰、だっけ……?)
忘れるはずのない相手なのに、夢の中の亮はなぜか思い出すことができない。

女の子は四つか五つくらいのあどけない娘だった。
大きな黒の瞳が真っ直ぐこちらに向けられている。
ふわりと揺れる白いワンピースが、何も無い白一色の世界によく似合っていた。
(ああ、この格好、あいつが気に入ってたんだっけ……)
そんなことを考えて、またも自問する。
あいつとは誰なんだ? この少女は誰だ?
記憶の蓋をこじあけようとして、それができないことに苛立つ。
ここはそんな不条理な世界だった。

(りょーくん、りょーくん)
少女はずっと彼の名を呼んでいる。笑顔でゆっくり近づいてくる。
やがて体が触れ合い、少女の手が亮の首に回された。
(りょーくん……ずっといっしょにいようね♪)
誰なんだ。ここはどこだ。今はいつだ。
なぜ、俺は思い出すことができない?
大事だったはずのこいつを、なぜ――。

そして亮の目が覚めた。
717亮と真耶(2/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:31:05 ID:1rLHKxab
薄目を開けて見えたのは暗い天井だった。
窓の外からはチュンチュンと鳴く鳥の声。
カーテンのせいで見えないが、そろそろ日が昇りだすようだ。
時計を見ずとも、起きるにはまだ早すぎる時間だとわかっている。
「…………」
亮は仰向けのまま、首を横に向けた。
やや広めのベッドの中で、隣の少女は安らかな寝息をたてていた。
「りょーくん……」
ぴったり密着して、離れないように亮にくっついているその格好は、
彼女を実際の年齢よりも幼く見せていた。

「ったく……こいつか……」
少し不機嫌な声で亮はつぶやくと、少女の体を揺さぶった。
「おい、真耶、起きろ」
ぺしぺしと柔らかな頬を叩く。
「ん……」
少女はゆっくりと目を開き、亮の姿を瞳に映しこんだ。
次の瞬間、彼が驚くほどの勢いで飛び上がる。
「お、おはよう !! 亮くん……!」
「ああ、やっと起きたか」

少女の長い黒髪がふわりと揺れ、青いパジャマの前にかかった。
一番上のボタンが外れていて白い肌の一部が見えているのが妙に艶かしい。
「まだ早いけど目が覚めちゃってさ。
 二度寝するのも面倒だったから、一緒に起きようと思って」
「うん……えっと、ひょっとしてあたしのせい?」
「……んなこたないさ」
こんなところは妙に勘がいいから困る。
落ち込んだ顔も可愛いが、亮は彼女の笑顔の方が好きだった。

彼女を励ますように、パジャマ姿の真耶を抱きしめてやる。
「ん……亮くん……」
ぎゅっと密着していると、少女の体温が直に感じられ心地よかった。
それは真耶も同じようで、穏やかな笑みを浮かべ亮に抱きつきながら
全身から幸せそうな温かみを発していた。
718亮と真耶(3/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:31:45 ID:1rLHKxab
やがて二人は身を離す。
「――着替えてこいよ。時間かかるだろ?
 パンでも焼いて待っててやるって」
「そ、そんな悪いよ……」
「いいっていいって。その代わり、今日も弁当よろしくな」
亮が笑うと、真耶は顔を真っ赤にして頭をぶんぶんと縦に振った。

――ジャアアアア……。
トーストにバターを塗り、ベーコンと玉子をフライパンで炒める。
自分の分は、一緒くたにトーストに乗せてしまった方がいいだろうか。
悩ましいところだったが、真耶は普通に食べるだろうから
亮もそれに合わせることにした。
真耶は亮と別のことをするのを極度に嫌がるのだ。

テレビをつける。最初に聞こえたのは日本代表が勝ったというニュースだった。
「僕は持ってますね。神が降りてきた」
ああ、ついに人間をやめてしまったのか、イチロー。
やはりいつかは神社に祭られるのだろうか、などと思いながら
チャンネルを回す。民主のイチローはどうでもいい。
特に見たいものもなく、スポーツの特番をつけておいた。

階段から足音がしたので振り向くと、制服姿の真耶が降りてきた。
小柄で華奢な体格。スカートからのぞく細い脚。
亮が頼んで毎日履いてもらっている黒のニーソックス。
幼馴染の目から見ても、充分に可愛いと思う。
真耶の分の朝食はテーブルの向かい側に並べておいたのだが、
彼女はやや遠慮がちに椅子を彼のすぐ横に移動させると、
亮にくっつくようにちょこんと座った。
(まあいいけど……)
目いっぱい手を伸ばして皿を取る姿が何ともいじらしい。
719亮と真耶(4/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:32:18 ID:1rLHKxab
先に食べはじめていたので、亮はすぐ朝食が終わってしまったが
なんとなく席を立つと真耶に怒られそうな気がしたため、
牛乳をちびちびと飲んで暇をつぶす。
真耶はその間パンをかじりながら、ちらちらとこちらに視線を向けていた。
「――真耶」
「な、何、亮くん !?」
「……いや、いい」
気になるなら遠慮しなくてもいいのに。
そう思いながらも口には出さず、少女の食事が終わるのを待った。

「ごちそうさま。じゃ、お弁当作るね」
「ああ、頼んだ」
時間はたっぷりある。制服の上にエプロンをつけて台所に立つ真耶と、
椅子に座ってだらだらとテレビを見る亮。
(新婚さんですか。いやあ、いいですなあ)
これも口に出すと彼女を困らせてしまいそうなので、胸にしまっておく。
朝の緩やかな光の中、火と包丁の音が部屋に踊っていた。

「さて、んじゃ行きますか」
「忘れ物はない? 亮くん」
「まー多分ないだろ。弁当は入れたし」
玄関でそう言うと、彼はドアを開けた。
春の風が吹き込んでくる心地のいい感触に、亮の頬が緩む。
「うむ、余裕のある登校って素晴らしい……!」
その後ろでは真耶がガチャガチャと家の鍵をかけていた。
ピッキング対策にとドアには二つ鍵があるのだが、
幸いにも今までそれが役立ったことはない。

道に足を出した亮に、真耶が声をかけた。
「――ちょっと待ちなさいよ! あたしを置いてく気 !?」
……始まった。いつものことに苦笑しつつも、亮は振り返った。
「別に。お前こそ早く来いよ。遅刻しちまうぞ?」
「何言ってるの! あんたがあんな早くに起こしたから
 余裕ありすぎじゃない! まったくもう……」
「はいはい、いいから行くぞ」
ブツブツ言う少女にそう言って彼は駆け出した。
「あ、こら待て! 待たないと後で後悔するわよ!」
怒って追いかけてくる真耶を尻目に、亮は朝の風を全身に浴びていた。
720亮と真耶(5/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:32:47 ID:1rLHKxab
亮の両親は海外出張に出かけていて、数ヶ月は帰ってこない。
彼は多少家事ができたし、一人暮らしの経験も何度かあったため
今回もひとり気楽に過ごそうと考えていた。
だが時を同じくして、男手一つで真耶を育てていた彼女の父が
やはり海外へ転勤になってしまったのだった。
今さら外国に転校するのも辛いだろうと、父親は単身赴任を決めたが
娘を一人で生活させるのはやはり不安だった。

「……という訳で亮君、うちの真耶を頼んだよ」
突然押しかけてきて幼馴染との同居を頼まれ、亮は少なからず戸惑ったが
結局真耶との二人暮らしを受諾することになってしまった。
「でも、いいのか真耶? 俺なんかと暮らすなんて」
親はああ言ってるが、年頃の少女としてはやっぱり嫌だろう。
幼馴染で今も一緒に過ごしているとはいえ、真耶はややキツい性格のため
自分に好意を持っているとはあまり思えなかった。

だが真耶は彼女らしくもなく頬を桜色に染めてうなずき、
「……りょ、亮とでしょ? それならまぁ……別に、いいかな……」
ボソボソと小さな声でそう言った。
「え……それって真耶……?」
「――う……」
まだツンツンし始める前、小学生の頃彼によく見せた内気な表情だった。
もう忘れてしまったのかと思っていたが、お互いに覚えていたらしい。
「そ、そうよ……あたし亮……くんのことが……」
出会った頃から十余年。あらん限りの勇気を振り絞った告白だった。

こうして二人は晴れて付き合うことになったが、
真耶の猛烈な主張により、周囲にはそれを隠すことにした。
「……だって恥ずかしいもん」
そんな我がままを受け入れるあたり、自分も物好きだな、と亮は思う。
もちろん双方の親にはバレているが、どちらも遠い異国の地。
「ちゃんと避妊しろよ」としか言ってこない。
が、それはそれで真耶が真っ赤になるので困ったものではある。
721亮と真耶(6/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:33:20 ID:1rLHKxab
校門前で見慣れた女子の姿が見え、亮は足を止めた。
栗色の髪をお下げにした、童顔の少女だ。
「お、斉藤。はよっす」
「清水君、おはよう。今日は早いのね」

そのとき、後ろから息を切らした真耶が追いついた。
「はぁ、はあ……亮ぉぉぅ!」
ツヤのある黒のストレートヘアを汗で湿らせ荒い息を吐きながら
鬼のような形相でこちらをにらみつけてくる少女に、
亮は爽やかな笑顔で言い放った。
「遅いぞ真耶。危うく遅刻するとこだったじゃないか」

真耶は怒りと恥辱、全力ダッシュのせいで顔を真っ赤にしていたが
十秒ほどで怒鳴れるほどの呼吸を整えたようだ。
こういうところは無駄にすごい、と亮は感心してうなずいた。
「そんなわけないでしょうが! 時間は余裕すぎるわよ!
 あたしはか弱い乙女なんだから、もっとゆっくり走ってよね!」
「真耶だからこれくらい平気だと思ってた」
「あんたみたいな体力馬鹿と一緒にするな!」

そんな二人の会話を聞いて、斉藤留美はクスクスと笑った。
「遠藤さんもおはよう。相変わらず仲がいいわね」
「はあ !? 留美、ひょっとして今日は眼鏡忘れた?」
「私、元から眼鏡かけてないけど……」
「皮肉よ皮肉! どこをどーしたらあたしと亮が
 仲いいように見えるってのよ。馬鹿言わないでよね」

留美は微笑んで真耶を見つめている。
「だって同居してるんでしょ? 親公認の仲ってことだもんね。
 ちゃんとした相手がいる真耶が羨ましいな」
「だから勘違いしないでってば。あたしはおじさんとおばさんに
 頼まれて、何もできないこいつの世話してやってるだけよ。
 まあ、わかりやすく言うと飼育係ってところね」
「とか言って家の中でいちゃついてたり……」
「なわけないでしょ。ちゃんと廊下にも部屋にもテープ張って、
 絶対に近づけさせないようにしてるわよ」
普段あれだけべったりしておいて、
冷や汗一つかかずにこう言い切るのはある意味すごい。
おかげで、こちらまで演技がうまくなってしまった。
722亮と真耶(7/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:34:43 ID:1rLHKxab
あまりにも自然に否定する真耶の様子に
留美は半ば以上騙されたようで、こちらにも確認をとってきた。
「……そうなの? 清水君」
「ああ。こいつの性格知ってるだろ?
 同じ檻に入れられて困ってるのは俺の方さ」
心の中で少しだけ嘆きつつ、これ見よがしにため息をつく。

しかしその態度も少女は気に入らなかったらしい。
「なぁにぃ? 誰が百獣の王ですって……?」
「いやいや、強いて言うなら密林の野獣ってとこだろうか。
 ピューマとかナルガクルガとか、あの辺のイメージ……がはぁっ!」
会心のストレートを左頬にくらい、盛大に吹っ飛んでしまった。
しまった。回避性能+があれば……。自分の迂闊さを嘆く亮であった。

――キーンコーンカーンコーン……。
昼休みになり、亮のクラスに真耶がやってきた。
真耶と向かい合って同じ中身の弁当(量は違うが)をつついていた亮を
悪友の健司がにやけ顔で茶化す。
「……なんだ、また今日も愛妻弁当か。恵まれてるやつはいいよな」
「――何言ってるの、自分のついでに作ってるだけよ。
 こいつがパンでも昼抜きでもあたしはどうでもいいんだけど、
 朝お弁当作ってたら亮が卑しい目でこっち見てくるのよね。
 一人分も二人分も手間は変わらないから、仕方なく作ってやってるの」
ふん、と澄まし顔で真耶が答えた。

「へえ、よくわからんが大変なんだな」
健司は真耶の顔と手の込んだ弁当のおかずとを見比べていたが、
ひょいと手を伸ばして亮のおかずのロールキャベツをかすめとった。
「む……結構うまい。くそ亮め、死んでしまえ」
「あ、こら何すんのよ! ドロボー!」
「なんで遠藤が怒るんだよ。俺は亮のを取っただけだろ?」

口から唾を飛ばして真耶が怒鳴った。
「作ったのはあたしなんだから、怒るのは当たり前でしょ!
 せっかく毎日亮の馬鹿を餌付けしてやってるのに……」
「おい亮。よくわからんが人間扱いされてないみたいだぞ、お前」
「気にするな。俺は気にしてない」
無表情を装って、亮は残ったロールキャベツを口に放り込んだ。
723亮と真耶(8/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:35:22 ID:1rLHKxab
学校の帰り、二人は駅前のスーパーで買い物するのが日課になっている。
「あーあ、なんであんたなんかと今日の安売りコーナーを
 主婦みたいに回らないといけないのかしら……」
ため息をついて言うその顔も、家に帰ると豹変するのだから面白い。
真耶に先導され、亮はカゴを持ってついていった。

買い物は全て真耶が仕切るため、亮は荷物持ちでしかない。
退屈だったのでぼーっと辺りを見回していた亮だったが、
ふとその視線が一点で止まった。
「――おい、真耶」
「……何よ?」
「あれ見ろ。水野兄妹じゃないか?」
彼が指さした先には、学校でも優等生として有名な双子の兄妹、
水野啓一と水野恵が揃って食材を眺めていた。

「へー、あの二人ホントに仲がいいわねー」
「さすがフロスト兄妹、何かが通じ合ってるんだろうな」
水野兄妹は勉強も運動も人一倍でき、共に優れた容姿を持ち
さらに性格も穏やかな、周囲の憧れと嫉妬の的の完璧超人たちだった。
だが彼らが有名なのはそれが原因ではない。
二人とも恋人がいないはずなのに、
合わせて百を超える告白を断り続けているからだった。
ひょっとして兄妹で付き合っているのか。
当然のようにそういう噂が流れ、亮もそれを半ば信じていた。

「……まさかあいつら、料理までできるとか言わないよな?」
呆れ顔で口にした亮に、真耶が教えてやった。
「あの二人、最近お弁当持ってきてるみたいよ?
 どっちか知らないけど、ちゃんと作れるみたいね」
「マジかよ……うぜー」
「妬まないの。あんたにはあたしが毎日作ってやってるでしょ?」
そういうことを言ってる訳ではないのだが。
そのとき、水野の妹の方がこちらに気づき、近寄ってきた。
724亮と真耶(9/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:36:00 ID:1rLHKxab
水野恵が微笑みながら挨拶してくる。
「こんにちは、清水君、遠藤さん」
よく手入れされた黒の長髪が光を反射して輝いた。
真耶も充分以上に可愛いと思うのだが、客観的に見ると恵に一歩譲るだろう。
かといって、亮はこの少女にホレたことはない。

「ああ、水野も買い物か? 兄貴と一緒に」
「今日うちの両親が出かけちゃっていないから、夕飯作ろうかなって……。
 清水君と遠藤さんはデート?」
笑顔で突拍子もないことを言ってくる恵を真耶が咎めた。
「なんでデートでスーパーに来るのよ! 頭大丈夫 !?」

一方、啓一の方は三人に構わず、惣菜売り場に陣取っていた。
妹が同級生と顔を合わせてるんだからこっちに来ればいいのに、
相変わらずよくわからない二人だった。
水野恵はこちらがドキリとするほどの笑みを浮かべて話している。
「いや、仲良さそうに見えたから……なんかうらやましいなぁ」
「それは水野の目が悪いだけよ。こいつはただの荷物持ち!」
「……だそうだぞ、水野」

お前が俺たちにうらやむとこなんて何もない。そう言おうとした亮だが、
恵が一瞬だけ寂しそうな顔になったのを見逃さなかった。
「――でも、二人って付き合ってるんじゃないの?
 みんなそう言ってるけど……」
「違うってば、あたしはこいつの飼育係。こいつの親が海外に行って
 当分帰れないから、頼まれて世話してやってるだけよ」
「え、まさか同居? 押しかけ女房?」
「そりゃ一緒に住んではいるけど……
 あんたが考えてるような状況は一切ないから、誤解しないでね」
「……うん、わかった」

うなずいてはいるが、彼女の頭の中では「親がいないのをいいことに
同居してキャッキャウフフ」という図式ができあがっているのだろう。
亮としては事実だから反論の余地はなかったが、真耶は恵の反応が
気に入らなかったのだろう、まだしばらくあれこれ言い続けていた。
(まったく……まぁこんなとこも可愛いんだけどな)
買い物カゴを持ったまま、亮は二人の美少女を眺めていた。
725亮と真耶(10/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:36:40 ID:1rLHKxab
家に帰るなり、真耶が泣き出した。
「――うわぁああぁぁああぁん!」
やれやれ、また始まった。
買い物袋をテーブルの上に乗せ、亮はため息をついた。
「真耶、落ち着けって」
「だって、だってだってぇぇえ!」

彼女は床の上にひざまずいて濡れた目をこすっている。
泣き顔もまた亮のお気に入りではあるが、できればさせたくない。
亮は真耶の正面に座り込んで、泣き喚く少女を優しく抱いてやった。
ぎゅっと抱きしめ、髪を撫でてやるとだんだん真耶が落ち着いてくる。
「りょ、亮ちゃんごめんなさいぃ……。今日も殴ったり怒鳴ったり、
 ひどいことしちゃってぇぇえ……」
「俺のことは気にしなくていいから、真耶。だから泣くなって」
「う、ヒクッ……う、ゔゔっ……」

いつもこうだ。
家の中では真耶は亮にベタベタに甘えてくるくせに、
外に出るとああやってツンツンしてしまうのだった。
そのため家に帰るとこうやって反省会が始まってしまう。
(フツーに振舞ってくれれば、それでいいんだけど……)
しかし真耶が言うには、今までずっと強気で通してきたために
今さら大好きな幼馴染と同居して毎日ベタベタ甘えていますとは
死んでも言えないのだった。

最初はあまりのギャップに二重人格を疑ったこともあったのだが
父親は優しいし、離婚した母ともしょっちゅう会っているはずなので
真耶は一応真っ直ぐ育っていると思う。精神に異常をきたすような娘ではない。
やっぱりこれは見栄と本心の葛藤なのだろうと、
亮はあえて真耶のやりたいようにさせてやることにした。
そのうちこれも治まって、周囲にも自然に振舞えるようになるだろう。
それに――。
(表情がコロコロ変わるのも、こいつの魅力なんだよな……)
真耶の背中をポンポン叩きながら、亮はそう思った。
726亮と真耶(11/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:37:15 ID:1rLHKxab
数分もくっついていると、落ち着きを取り戻したようだ。
真耶は彼から体を離し、申し訳なさそうにうつむいた。
「ごめんなさい、亮くん……またやっちゃって……」
「別にいいって言ってるだろ? いちいち謝ることないって」
「う、うん……」
「それに、俺は真耶のことなら何でも全部好きだから。安心しろ」
「…………っ !!」
真耶は顔を真っ赤にし、頭から盛大に湯気を噴き出した。

夕食はハンバーグと味噌汁、ポテトサラダだった。
亮は濃い目の味付けが好きなのだが、真耶は薄味好みだ。
だが真耶の作る料理はどれも美味く、嗜好の違いで揉めたことはない。
たまには俺が作ろうかと言っても、首をぶんぶんと振って断られた。
「いいの! 亮くんはじっとしてて!」
「と言われてもなぁ……」
所在なさげにたたずむ亮。
真耶の気持ちはわかっているが、やはり悪い気がしてくる。

「――あ、そーだ真耶」
「何? 亮くん」
ピンクのエプロン姿で振り向いた少女に、彼は笑いかけた。
「せっかくだから、裸エプロンというのはどーだろう」
「な !? ――だ、ダメ、ダメダメダメぇっ!」
ゆでダコのようになった真耶が面白かった。

並べられた料理を、向かい合ってではなく隣り合って食べる。
ぴたりとこちらに寄り添って明らかに食べにくいと思うのだが
真耶は満足げに食べながら亮にくっついてきた。
(……うーむ……)
ふと思いついて、亮は小さく切ったハンバーグを箸でつまみ
隣の少女の口元に運んでやった。
「……? ありがと♪」
嬉しそうに開けた口に肉の塊を放り込むと、
真耶は嫌がるでもなくもぐもぐとそれを咀嚼した。
727亮と真耶(12/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:37:59 ID:1rLHKxab
その幼馴染の様子を、亮は横からじっと観察している。
第二段階として彼は味噌汁を自分の口の中に含んだ。
(さて、これにはどう反応するか――)
ちょんちょんと真耶の肩をつついて振り向かせ、
亮はきょとんとした少女の唇に自らのそれを押し当てた。
「………… !?」
驚いた真耶の中に葱や揚げ物の混じった熱い液体を注ぎ込んでやると、
彼女は目を見開いて飲み込んだが、うまくいかず少々咳き込んでしまった。
「――かはっ! ゴホゴホっ! り、亮くん…… !!」

苦しさゆえか恥ずかしさゆえか、真っ赤になってこちらを咎めるような
視線を送ってくる。どうやらお気にめさなかったらしい。
(ふむ、これは駄目か……難しいな)
亮にしてみればこれも全て気難しい真耶の心を量る
スキンシップのつもりだが、この少女にしていいことと
してはいけないことの基準が未だにわかりにくいから困る。

(口移しと裸エプロンはNGで、くっついたり抱きしめたり
 箸で食べさしてやるのはOK……要はエロいのは駄目ってことか?)
確かに真耶は小柄ではあったが、普段から気が強く
亮以外には子供っぽいところは決して見せなかった。
逆に言うと、亮にはつい昔のように振舞いたくなるのかもしれない。
亮は素直に謝り、何とか真耶の機嫌をとろうとした。

そうしているうちに夕食が終わり、やがて風呂に入る時間になった。
「仲直りということで、一緒に入るってのはどーだろう」
亮のその提案に、真耶はかなりの間悩んでいた。
「え……あ、うーん……亮くんと、んー……」
本音を言えば入りたいのだろう。
子供の頃は何度も体を洗い合ったことがあるし、
真耶には今日もツンツンしてしまった負い目がある。
しかし高校生にもなって二人で洗いっこ、というのは
彼女の見栄がなかなか許さないのだった。
728亮と真耶(13/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:38:26 ID:1rLHKxab
真剣に悩んでいる少女に、彼が言ってやる。
「……やっぱり恥ずかしいか?
 でも、今は二人きりで誰を気にする必要もないぞ」
「んー、そうなんだけど……その、あたしが気にするかな……」
明らかに逡巡している。

亮はそんな幼馴染にニヤリと笑うと、こう提案した。
「んじゃそうだな、外でやってる強気の態度で入るってのはどうだ?
 あれなら強がりも言えるし、何やっても恥ずかしくないだろ」
「えー、何それ……?」
意外な言葉に、真耶の顔が驚きの表情を浮かべた。

「いいからいいから、俺が許す。
 いつものツンツン口調で一緒に風呂に入ろうぜ、頼む」
あの態度なら、いつも遠慮しがちな真耶も
思ったことをありのまま、亮にはっきり言うことができる。
彼に頭を下げて頼まれると嫌とは言えない真耶は、
仕方ないといった顔でため息をついた。
「……やれやれ、わかったわよ。でも変なことしたら許さないからね!」
それでこそ真耶だ。
そう言いたげに亮は少女を風呂場に連れて行った。

パパっと服を脱ぎ、亮は全裸になった。
年頃のスポーツ少年のたくましい裸身が露になり、
下着姿の真耶は頬を朱に染めて顔をそむけてしまった。
「な、何してんの! タオルくらい巻きなさいよ!」
「いや、まぁいいかなって。ここにいるのは俺と真耶だけだし」
「調子乗らないでよね! 親しき仲にも礼儀あり―― !?」
彼は少女の顔にそっと手を伸ばすと、
桃色に染まった頬に軽く口づけをしてやった。
「――何すんのよ !? 変なことしたら許さないって言ったでしょっ !!」
「気にするな。俺は気にしてない」
亮はタオルを肩にかけ、一足先に浴室に入った。
729亮と真耶(14/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:39:29 ID:1rLHKxab
彼の後から、真耶がバスタオルを体に巻いて風呂に入ってくる。
こちらから顔をそむけている癖に時折ちらちらと向けてくる視線が
亮にはとても微笑ましいものに映った。
「……何笑ってんのよ!」
「笑ってない笑ってない」
「――嘘! 今絶対ニヤけてた!」

表情を隠すように頭から湯をかぶる。
狭い浴室の中で飛沫が真耶にかかるも、彼女は軽く顔をしかめただけで
何も言わなかった。先に頭も体も洗い終え、亮は湯船につかり
タオルで覆われた真耶の裸を後ろから見つめた。
全身の手入れに加えて長い髪も洗うのが大変だとかで、やはり女は時間がかかる。

一分か二分か、そんな真耶を眺めていた亮だったが
また何かを思いついた表情で湯船から上がり、彼女の背後に立った。
「――亮……?」
無言で後ろから手を回し、少女のバスタオルを剥ぎ取ってしまう。
「ちょ、ちょちょちょちょっ !! あんた何すんのよ!」
「いや大変そうだから、ちょっと手伝ってやろうと」
彼はボディソープのついたスポンジを真耶の背中に当て、優しくこすり始めた。
「い、いいわよ! 余計なお世話!」
頬を赤く染めてそう言った彼女を無視し、真耶の背中を洗い続ける。
はじめのうちはぶつぶつ言っていた真耶だったが、
すぐに何も言わなくなり大人しく亮に従った。

――ゴシゴシ、ゴシゴシ。
本当のところはやはり心地よいのだろう。
力任せでない、程よく加減された亮の手つきに真耶は文句一つ言わなかった。
「よし、こんなところかな」
「……終わったの?」
ほっとした様子で、そして少し残念そうに真耶が言う。
730亮と真耶(15/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:40:12 ID:1rLHKxab
しかし亮は後ろから彼女を抱き寄せ、ぴったり密着すると
手を回して少女の白い腹部を洗い出した。
「り、亮……そこはいいから…… !!」
「ついでに洗ってやるよ。気持ちいいだろ?」
「いや……く、くすぐったい……!」
腹やわき腹といった敏感な部分をごしごし擦られ
真耶は逃げようと身をよじるも、彼はそれを許さなかった。

「や、やめなさい……亮……!」
「逃げんなよ、やりにくいだろ」
スポンジはどんどん移動し、今度は真耶の控え目の乳房をこすり始めた。
小ぶりだがぷにぷにと気持ちのいい感触がスポンジ越しに
亮の手のひらに伝わってきて、彼は目を細める。
「――やだ……そんなとこ、やめてぇ……」
気がつくと、何も持っていない左手も勝手に動いて
真耶の左の胸を揉み始めていた。そんな気はなかったのだが
これも彼女に魅了されたせいだと、亮はそう結論づけた。

泡のついた白い双丘が彼の手でもてあそばれている。
既にスポンジをどこか浴室の果てにやってしまい、
亮は後ろから真耶の乳房を両手で優しく刺激し続けた。
「真耶のココ、こんなに勃ってるぞ……」
「ち、違うわよ……んあっ !?」
ぴんと張り出した乳首をぎゅっとつまむと
少女は細い体をのけぞらせ、軽い喘ぎ声を発した。

亮はもう我慢できないといった様子で後ろから真耶の首に手をかけ
横を向かせると、その半開きの唇に吸いついた。
「ん……んんっ……」
劣情に半ば焦点の合わなくなった真耶の瞳が目の前にある。
口をつなげたまま舌を伸ばし歯をノックすると、
真耶はぼーっとした表情で亮の舌を口内に受け入れた。

亮の舌が真耶の歯を、壁を、舌をなめ回す。
真耶は理性を失いつつ、それに応えようと
こちらも舌を出して亮のそれと絡めあった。
――ちゅ、ちゅる……ずるっ……ちゅぱあっ……。
唾液と舌の躍る淫靡な音が浴室に響く。
少年と少女はそうしてしばらくの間、お互いを貪っていた。
731亮と真耶(16/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:40:46 ID:1rLHKxab
「……あ……?」
口を離したときの真耶の顔に浮かぶ感情は、失望以外の何物でもなかった。
「いやぁ……亮くん……」
目を細めて彼を求めてくる少女に、亮は笑って言ってやった。
「今のお前は、強気な真耶――だろ?」
「う……」
自分の立場を思い出し、不満そうな顔をする真耶。
まったく、どんな顔をしても可愛いから困る。
彼は口には出さず、照れた顔でそう思った。

シャワーを手に取って亮が言う。
「じゃ、流してやるから」
「うん……は、早くしなさいよ……」
精一杯の強がり。
ついでに胸や腹を揉みながら、亮は彼女の体を洗い流した。

――シャアアアア……。
シャワーの音が湯気の立った浴室を覆う。
すっかり真耶の体は綺麗になったが、
さっきので火照った体と物欲しげな顔は治まりそうにない。
亮はニヤニヤ笑いながらシャワーの先を真耶の下半身に持っていった。

「――な、何やってんのよ…… !?」
一番恥ずかしいところに湯をかけられ、真耶の顔が歪む。
「いや、別に? 洗ってるだけさ」
「う、嘘――そんな訳……う、ああ……!」
左手を回して指で軽く陰部をこすってやると、彼女は耐え切れず
亮の耳元で大きな声を上げ始めた。
丹念にこすり、撫で、揉む。
彼の指遣いとシャワーの責めに、徐々に真耶の声が甘みを帯びてきた。

一旦シャワーを止め、指で割れ目をなぞってみると
真耶の汁がべっとりと彼の指に張りついた。
「……おかしいな。洗ったはずなのに、汚れが取れない」
「――ば、馬鹿言わない……で……」
息も絶え絶えといった声で真耶が反論してくる。
亮は笑みを浮かべて彼女の陰部を両手の指で責めたてた。
732亮と真耶(17/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:41:29 ID:1rLHKxab
真耶は熱い息を吐きながら、亮のされるがままになっている。
膣から漏れ出た汁で彼女の陰部も彼の指もベトベトだった。
「ん……はあ……ああ、はぁんっ……」
そろそろ頃合だろうか。
亮は真耶の体に手をかけると、自分も椅子に座って
彼女をこちらに向かせてやった。

「真耶……」
「――り、亮……」
濡れて肌に張りついている黒い髪も、こちらを見つめるうるんだ瞳も
ヒクヒク蠢く膣の入り口も、全てが亮を高ぶらせた。
「いくぞ……こっち……」
軽い体を抱き上げ、向かい合ったまま自分の上に座らせる。
硬くそそり立った肉棒がぷちゅっと少女の下の口に当てられるのを確認し、
亮は真耶を下ろしながら自分のを突き入れていった。

――ズブ……ズブリッ……。
「うあ……り、亮……くるよぅ……」
怖がるような口調とは裏腹に、彼女の目は細められ
口元はいやらしい笑みの形に歪められていた。
お互いの顔が、卑しい表情が見えてしまい、二人は見つめあって笑った。

「ん、熱いな……真耶の中、すごく熱い……」
「やだ……言わない、でえっ……」
イヤイヤと彼女は首を振ったが、亮が中で動き出すと
見栄も体裁も捨てて、喜んで腰を振り始めた。
――グチュ、ブチュ……ヌチャアッ…… !!
見下ろせばつながったところが丸見えで、卑猥な音が響いてくる。
「あんっ……はあぁあっ、いいっ……いいよぅっ……!」
開いたままになった可愛らしい少女の口から喘ぎ声が聞こえる。
きつい締めつけと熱い肉の感触に、亮も理性を失いかけていた。
733亮と真耶(18/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:42:40 ID:1rLHKxab
「ひぃぃ……はぁぁっ……やだ、奥っ、おくぅっ !!」
「うう、ああ……くぅう……」
いつも強気で勝気な少女が、自分の上でよがり狂っている。
十年以上前には想像もできなかった光景だったが、
亮も真耶も幸せそうにお互いの温もりを感じ合っていた。

「ん、はあぁ……亮ぅ……りょおおぉぅ……!」
(………… !!)
自分の名を呼ぶ切ない声に、亮の脳内にまたあの映像が浮かび上がった。
白のワンピースを着た、幼稚園児くらいの幼い少女。
じっとこちらに向けられる大きな黒の瞳。
「りょーくん、りょーくん」と彼を呼ぶかん高い声。
(真耶……まや……まやちゃん……)
今はもう記憶の淵に沈めてしまった、過去の記憶だった。

「りょう……ふあぁっ、りょうっ !!」
「く……真耶、まやぁっ !!」
たけりきった陰茎で真耶の中をかき回しながら、亮も相手の名を口にする。
「――りょ、りょう、りょうくぅんっ !! あんっ!」
「ああ……まや、ちゃん……まやちゃん!」
幼い頃の呼び名でお互いを呼び合い、二人は絶頂へと突き進んでいく。

亮のたくましい体の上で、真耶は思いきり弾み続けた。
――ズンっ! ズン、ズズンっ !!
彼のモノに貫かれつつ、本能のままに激しく動く。
「ん、んぁ、ああぁあっ !! りょうくん、りょうくぅぅぅんっ !!」
「まや、ちゃぁん……まやちゃあんっ !!」
一挙動ごとに真耶の膣は喜びの音を発し、彼の肉棒に喘がされた。
対する亮も限界が近い。
股間から湧き上がってくる熱い奔流の欲求を感じ、
よりいっそう勢いをつけて真耶の肉を奥までほじくりかえした。

求め合うように、二人の手が互いの背中に回される。
絶頂の宣言をしたのは同時だった。
「あぁああっ !! ぅあぁああぁっ !?」
「う、ぐぅううぅぉぉお……っ !!!」
――ドクドクドクッ !! ビュルゥッ !!
亮の先から爆発したかのように子種が噴き出し、真耶の奥深くに注ぎ込まれた。
痙攣した彼女の体が、繋がったまま亮にもたれかかってくる。
彼もぐったりしながら、腕だけは離すまいと無意識のうちにそう思っていた。
734亮と真耶(19/18) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:43:50 ID:1rLHKxab
その晩も、二人はいつものように一緒のベッドで寝た。
亮の両親が使っていたものでサイズは決して小さくない。
彼の部屋にも真耶の部屋にも専用のベッドは置いてあるのだが、
彼女はこうやって夫婦用の寝室で寝るのを好んだ。
「……だって、亮くんとぎゅーっとできるもん」
そう言ったときの彼女の表情は幼い頃と何も変わらず、
ああいう風にしばしば亮の夢を侵食している。
少しだけ困った顔で、彼は青いパジャマ姿の少女を抱きしめた。

「亮くん……さっきあたしのこと、まやちゃんって……」
「ああ。そう言えば昔、そう呼んでたなあって」
「ん、覚えててくれたんだね……」
幸せそうな真耶を見つめて亮が言う。

「あー、真耶。今夜は強気口調になってくれ」
彼女は少しだけ頬を膨らませた。
「えー、またー?」
「何となく、あのお前と一緒に寝たいなって思ったからさ」
これは彼の我がままだ。そして同時に彼女の我がままでもある。

「もう……こうやってホントのあたしを見せるのは亮くんだけなのに……」
そう言いながらも真耶は目をつり上げ、彼を怒鳴りつけた。
「それはいいけど、もうお風呂であんなことはやめてよね!
 まったく恥ずかしいったらありゃしない……!」
「――その割に、お前も興奮しまくってなかったか?」
「ふん、子供っぽいイタズラに付き合ってやっただけよ。
 いつまで経っても、あんたはガキのままなんだから笑っちゃうわ !!」
余裕のある笑みを浮かべ、横目でこちらをにらんでくる。

亮はベッドの中で細い真耶の体を抱きしめ、耳元で囁いた。
「そうだな、お前はもうこんなに強いからな。驚いたよ」
「はいはい、お世辞はいいからもう寝るわよ。
 お風呂で大分のぼせちゃって疲れてるんだから……」
真耶も亮の体に手を回し、ぴったり密着してくる。
「――でも、ぎゅーってのはしたいんだな……?」
「そんな訳ないでしょ。ゲスの勘繰りもいいとこよ、まったく」
夜は静かに更けてゆく。
735 ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 17:46:10 ID:1rLHKxab
以上となります。
レス数を間違えて19/18になったのは内緒です。
きっとこれもクリムゾンの呪いということで。

しかし、ツンとデレの混ぜ具合が難しいですね。
電子の狭間をさまよってもっと精進することにします。
それではこれにて、ごきげんよう。
736名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 18:05:03 ID:bl5T3blz
GJ!
これだけ設定を用意したんだから この話の前後あたりの話も面白そう
737名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 18:27:09 ID:T6alalnm
GJ!!
ある意味ツンデレの正しい姿ですねw
738715 ◆cW8I9jdrzY :2009/04/12(日) 23:49:11 ID:1rLHKxab
>>736-737
GJありがとうございます。

設定に関しては、基本的に読み切りではありますが
他のスレに投下したキャラを再利用してあれこれ繋げています。
私はスカッとさわやか、短編で終わらせるのが好きなんですが
続編やサイドストーリーを希望される方がたまにいらっしゃいますので
感謝をこめたささやかなサービス(のつもり)です。

という訳で、途中に出てきた水野兄妹のSSはこちら。
ツンデレではありませんし、ちょっと奇妙な話ですがよろしければどうぞ。
【うpろだ】専用スレのないSS【代わり】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1185814173/442-

スレ汚し失礼致しました。それでははいちゃ。
739名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 01:55:17 ID:ChPO+c0/
久々のGJだ!
740名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 20:24:22 ID:dStl61mP
素晴らしいGJ
741名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 23:47:42 ID:t+8PT92K
フロスト兄妹で吹いてしまった
742名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 00:05:42 ID:WhXkaMIP
保守
743名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 23:26:25 ID:V5XT5Fye
79氏のしのた編、たると編マジでキボン
誰でもいいから頼む
744名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 21:47:12 ID:azYIGT4S
ほしゅ
745名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 22:53:29 ID:T7ZSNAGi
746名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 23:09:45 ID:X3qMGKKE
ツンデレは終わったのよ!
747名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 07:30:12 ID:flRZLfAa
というか流行りを越えて空気のようにそこら辺で馴染んでるから、ここじゃなくても補給出来るんだよなぁ。
748名無しさん@ピンキー:2009/05/05(火) 13:13:43 ID:N4IRUztX
どんな物語にも一人はいるもんな。
749名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 00:09:34 ID:l4s4HSPP
詰んでれ
750名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 20:02:46 ID:SPknSm+5
今週のジャンプが二次元から飛び出てきた件について

不覚にも夢かと思った
751名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 22:26:19 ID:skgaz6gG
めだかボックスのこと?
752名無しさん@ピンキー:2009/05/11(月) 23:05:10 ID:QCWkOlPy
保守
753名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 20:17:26 ID:Cie2Mga1
>>751
ツンデレじゃないよなあれ
素クールとかツン素直みたいな感じだな
754名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 22:46:36 ID:fCxp9b3q
めだかボックスどう見ても主人公のがツンデレ
755名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 23:28:33 ID:LTWKmp2a
一話読んだ限りだと
「ああ、富樫の穴埋めですねわかります」
だった
756名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 17:09:53 ID:L1+ock8D
富樫またバックレたの?
757名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 20:42:17 ID:wTwL+zQV
「またバックれた」より
「まだバックれてる」の方が正しい状況…かな?
758名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 09:59:30 ID:AUdJ3mKG
「三巻王」と呼ばれるバックレ常習犯の原作者(小説家)も居るんだぜ?
759名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 16:36:19 ID:nCOoG9SS
 
760名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 01:26:45 ID:W76aH8VF
みさくらなんこつ
761名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 01:58:42 ID:ccMx+Srm
>>758
タイタニアのことか?
762名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 03:39:13 ID:onoKw8i8
>>758
佐藤大輔か?
763名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 03:44:20 ID:jSauLH9m
slowly×slowlyの続きを待っているのは俺だけか?
764名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 11:42:46 ID:LxQHprTQ
俺もだよ
765名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 01:14:19 ID:MYeqxoQe
俺もずっと待ってる
766名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 21:46:35 ID:WwQaVM2d
 その少女はかわいいとかキレイとかそんな表現じゃ伝わらない、伝えられないほどの顔の持ち主で、どこかの
有名な彫刻家もしくは画家が作り出したんではないかと疑ってしまう。まだ5月にも関わらず、その少女を見
たいがために頭の上で太陽が輝いている。燦々と彼女に降り注ぐ光は、まるで舞台に立つ女優とそれを引き立た
せるスポットライトのようだ。
 「……夏でもないのにこの暑さは何かしら?」
 太陽の猛烈なアタックは嫌われているようだ。なぜなら彼女の隣には
 「これが俗にいう温暖化現象ってヤツでーす。温暖化ばんざーい」
 うちわをパタパタと扇ぐ彼氏がいるからだ。
 「……温暖化ねぇ」
 退屈そうに呟く彼女の唇は真っ赤に熟れてとても艶かしく、雪原の大地のような肌に滴る汗さえ真珠のように
光輝いている。
 「温暖化だからオレがこうして扇いでるんでしょー?交代プリーズ」
 「暑さで疲れている彼女に扇いでもらうの?貴方って鬼畜なのね」
 「いやー、正直オレもけっこー辛いですよ。ってか、さっきから独りで涼むとかセコイって」
 縁側に座り、たらいに張った水スラリと細長い脚をに浸けるその季節はずれな光景は、名画からそのまま切り
取ったように思えるほど。
 「私は暑さに弱いの。貴方と違って」
 静かで透き通る声と冷たいセリフは彼の心を決して傷つけない。今まで数多くの男を切り捨てていたった彼女
が唯一心を許せる男性。その証に彼女は安心して母の胸の中で眠る赤ちゃんのように、反対に煌びやかな女性の
上品な笑み。その笑顔を見られるのは伊織だけだ。少年はそれを知っている。
 「しょーがないのぅ。暑さに弱い葵ちゃんのためにアイスを持ってきてしんぜよう」
 どこか芝居がかった口調は葵の笑顔を見たいから。日頃の決しておもしろいとは言えない冗談も葵のためであ
り、他の者が笑わなくても十分。1000人の笑顔より愛する彼女の笑みが見たい。それだけ。
 「お待たせしました女王様。ささっ、こちらが例の品です。どうぞお納めください」
 「うむ。でかしたな」
 お互いに良く解らないまま演じる。まるで客席が空白の演劇。舞台には役者2人にそれを包む太陽のスポットラ
イト。それはとても自己満足の世界だが、彼らにはとても心地よい世界になる。
 「……食べないの?」
 「あら、女王に苦労させるつもり?………………察しなさいよバカ」
 朱に染まる頬は太陽のせいか。伊織は黙ってアイスを葵の口元に寄せ
 「あむ…………冷たい」
 「いかがですか女王様?」
 「1口の量が少なすぎ。貴方の目には私が小動物に見えてるのかしら」
 「失礼しました。ただ……小動物のように愛おしいとは思っています」
 口の中と心は甘くなってしまった。ただ心は口内と違って熱い。
 「ごっ、ご託はいいから速くアイスを……」
 「はーい。次は……口移しでどうでしょうか、葵さま?」
 「ふえええええええええええええっ!?かかか、か、からかうな!…………んっ……ふぅ……はん」
 いきなりの口付けはとてもヒンヤリと冷たく甘いのに、少女の身体と頭は熱くなる。甘い雰囲気にクラクラし、
まるで雲の上を歩いてるかのようふわふわする。
 「おかわり……もっと…………ちょうだい?」
 アイスが無くなっても2人の口移しは止まることなく、ずっと繰り返された。
 まだ5月。夏本番には冷凍庫の中がアイスで一杯になるだろう。
767名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 21:55:48 ID:HokPd9By
>766
久しぶりにいいのがきたぜ!GJ!
768でぃすぱ ◆g5uZET9koI :2009/05/24(日) 21:58:58 ID:WwQaVM2d
お久しぶりです。読んでいただきありがとうございます。
以下に私の状況(言い訳)が記されていますので、そういったものが嫌いな方は
身勝手ですがスルーしてください。









実は大学の編入試験やらバイトやら予備校でSSが書けないでいます。
slowly×slowlyも1レス分しか書けていない状態で完成するのが未定です。
気晴らしに&生存を伝えたくキーボードを叩きました。上の方でお褒めいただいたときは
嬉しく、期待に応えられなく複雑でした。SSを書くのを辞めていないのでまた
気晴らしに投下しますのでよろしければ読んでください。
このような言い訳を徒然と申し訳ありません。
また次の投下時にお会いしましょう。ノシ
769名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 22:42:18 ID:AeWC7SBb
>>768
いつでも、いつまでも待ってます
770名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 23:57:51 ID:cFwkHeJR
>>768
書けなくて焦る気持ちはわかるが大丈夫だ
気に入ったSSなら住人はいつまでも気長に待ってるんだぜ
時間ができて、気持ちに余裕ができて、書きたくなったら書けばいい
はやる心とかプレッシャーとかはその辺に置いて、今は目の前のことに集中してくれ
頑張れよ。それまで俺が間を持たせ…




  i                             i  
  l!   |!   il    |      !           ||
  |!l   |i!   |    l|     i!     |      |i|    
_l|i|_|_li|__l!__liil___li|__l!___l|i|_|_
771名無しさん@ピンキー:2009/05/25(月) 01:16:31 ID:BkklQUm1
頑張ればあなたは神職人と呼ばれることになるであろう
いつまでもまっているぜ
772名無しさん@ピンキー:2009/05/25(月) 21:11:14 ID:M5XnfobA
>>770ーーーー!!
773715 ◆cW8I9jdrzY :2009/05/26(火) 20:18:58 ID:dUGrlTPU
こんばんは>>715です。
また一本書いてみたのですが少々長くなったので前後編となります。
とりあえず今回は前編だけで、後編はまた後日に投下したいと思います。

前編はエロなしで後半はエロメインとなります。
他の注意点は特にありませんが、強いて言えばタシロ。
774鬼教師の裏事情(1/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/26(火) 20:20:34 ID:dUGrlTPU
気だるい雰囲気の中、唯一教壇に立った教師だけがいつもの調子で淡々と授業を進めていた。
あくびをかみ殺しつつ説明を聞くふりをしている者が多い中、
一人の男子生徒が大胆にも机に突っ伏して高いびきをかいている。
「――このオーストリア=ハンガリー帝国の崩壊とソビエト連邦の成立が、
 当時のヨーロッパの軍事バランスを崩してしまいました。1930年に連合国が
 ラインラントから撤兵すると、ドイツに対するフランスの優位性は完全に失われます」
そこまで話して教師は言葉を止めた。細い眼鏡を光らせて教室を見回し、
その真ん中で熟睡している彼を鋭い目でにらみつけた。
「……佐藤君」
緊張が走る中、彼女は静かな声で告げる。彼以外の生徒はみな背筋を震え上がらせ、
慌しく視線を交換して音のないざわめきをあげた。
教壇を降りて彼女が彼に近づく。眼鏡の奥から放たれる眼光も細身の長身も、
そして若く整った顔立ちもまた、その教師にふさわしいものだった。
肩の辺りで切り揃えられた黒いショートヘアが彼女の理知的なイメージによく似合っている。
「――佐藤君!」
ついに彼女の手がかけられ、一同は哀れな子羊に同情を寄せた。
状況を全く理解していない彼がようやく起き上がり、間の抜けた声をあげる。
「……へ? ん、あれ……」
首を振った彼が見たものは、揃って自分を見つめる同級生の哀れみの眼差しと、
自分の隣に仁王立ちして冷ややかに彼を見下ろしている女教師だった。
「佐藤君、ぐっすりおやすみだったみたいね……」
「え? あ、は、はい」
やっと自分に危機が迫っていることに気づき、彼が小さな声でうなずく。
彼女はそんな生徒の肩に軽く手を置いて息を吸った。
「――よくも毎回毎回、同じことしてくれるわねぇえぇぇっ !!
 ちょっとは反省しなさぁぁあぁぁぁいっっっ !!!」
鼓膜が破れそうな怒号に震えたのはこの教室だけではないはずだ。
怒り心頭に達した彼女のお説教は、チャイムが鳴るまで続けられた。

「……あー、死ぬかと思った」
今度は眠気のせいではなく、疲労と消耗に倒れ伏した彼がつぶやいた。
佐藤栄太。クラス一のお調子者の男子生徒である。
「むしろ生きてるのが驚きだな。あのクイーンをあれだけ怒らせる奴なんて
 この学年じゃお前くらいじゃないか、栄太?」
彼の後ろの席で弁当を広げだした男子生徒がそう言った。
端正な顔をした優しそうな少年で、名前は水野啓一。栄太の親友だ。
栄太は冷静に告げる啓一にうらめしそうな視線を向けた。
「誰がクイーンだよ、キラークイーンかっての。ありゃ大魔神か阿修羅の類だろ。
 あの肺活量、間違いなく人間辞めてるぞあれ。しかも何で俺ばっかり
 目の敵にするんだか……もしかして俺は不幸の星の下に生まれついてるんですかね?」
「単に居眠りしないだけでもだいぶ違うと思うんだが。
 前にお前が『彼氏いますか?』とかあの先生に聞いたときは、こっちが死ぬかと思ったよ」
そのとき腹の虫が鳴り、栄太は顔をしかめた。
彼は弁当を持ってきておらずいつも購買でパンを買っている。
しかし今日は先ほどの世界史のダメージがたたり、買いに行くのが遅れてしまった。
今から行ってもまともな物は買えないかもしれない。
775鬼教師の裏事情(2/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/26(火) 20:21:48 ID:dUGrlTPU
彼は軽くうなり声をあげ、ひとり弁当に箸を伸ばそうとする友人に絡み始めた。
「啓一、俺にも食わせろ」
「断る」
「いやあ悪いなあ、それ恵さんの手作り弁当だろ? 本当に食っていいのか?
 やっぱり持つべきものは頼れる友達だよなあ、感謝するよ」
「断る」
「学年一の優等生、水野啓一さんが、生死の境をさ迷ってる大事な友人を
 まさか見捨てるはずがない! 皆そう思ってますって、よっ大統領!」
「断る」
「うおぉぉぉん、腹減ったよぉぉぉぉぅ……」
栄太が三たび机に突っ伏して泣いていると、二人の女生徒が彼らの元にやってきた。
一人は長い黒髪をストレートに伸ばした、見るからに清楚な印象の少女。
繊細な顔のパーツといい穏やかな雰囲気といい、どことなく啓一に似ている。
もう一人は茶髪を短く切って動きやすくした、活発そうなつり目の女の子だった。
「……栄太、あんた何やってんの?」
「おお由紀か。残念だが俺はここまでだ。
 俺の墓には姓名、階級と生没年月日だけを簡素に記しておいてくれ……ぐふっ」
そう言って栄太はわざとらしく力尽きた。
「啓一クン、この馬鹿どうしたの?」
よくわからないといった顔で、茶髪の少女が栄太を指差す。
「いや、こいつさっきの世界史の授業で居眠りこいててさ。
 それで升田先生に大目玉くらって、パン買いに行けなくて飢えてるだけだよ」
「……やっぱりあれ栄太だったのね。こっちのクラスにまで聞こえてたわよ」
半分は納得したように、もう半分は呆れた口調で彼女が言った。
「あの鬼教師の前で寝るなんてあたしでもしないのに……本当に馬鹿ねあんた」
「うう……死者に鞭打つお前らなんか、友達じゃねーやい!」
「あら、そんなこと言っていいのかしら?」
不意に茶髪の少女――坂本由紀は口元をニヤリと歪めた。
後ろ手に持っていたビニール袋を取り出して、息も絶え絶えの栄太に見せつける。
「そ……それは!」
「珍しくあんたが購買に来ないから、こんなことだろうと思ってさ。
 適当にパン買っといたわよ。ちゃんとお金払ってよね」
「うおぉぉぉぉっ、ありがとう由紀ぃ! 大好きだぁぁあ!」
栄太は救われた表情になって涙を流し、由紀にすがりついた。
「あ、コラやめなさい! 人前で抱きついたら張り倒すっていつも言ってるでしょ!」
「――てことは、二人っきりならいつもイチャイチャしてるんだね……?」
横で静かに話を聞いていた黒髪の少女、水野恵がぽつりと言った。
繊細で清楚、優美を絵に描いたような女生徒で、啓一の双子の妹である。
啓一と恵はギャーギャー騒ぐ二人をじっと見つめていたが、
「ま、こいつらは放って飯食っとこうか」
「……そうだね、啓一」
と同様に呆れた顔で、それぞれ同じおかずの弁当をつつき始めた。
776鬼教師の裏事情(3/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/26(火) 20:22:41 ID:dUGrlTPU
やがて昼食も終わり、午睡の倦怠感が校内を覆いつくした頃、
生気を取り戻した栄太が急にガタンと音を立てて立ち上がった。
「――諸君に問う!」
三人は同じ表情で彼を見上げ、何か言いたそうにしている。
「本日俺は、あの極悪教師のせいで危うく飢え死にするところであった!
 あの升田とかいう鬼畜をこのままにしておいていいのだろうか !?
 ……いや、いいはずがない!」
(やれやれ、また始まったか……)
周囲の冷めた視線にもめげず、栄太は語彙の限りを駆使して升田の悪逆非道ぶりを非難し、
不当な体罰や精神攻撃を改めるよう力説した。
「そんなの、本人に直接言えよ」
「ふ、愚かだな啓一! そんなことしたら俺の命がないのは火を見るより明らか!」
「……派手な演説するわりには、すっごい弱気よねえ……」
力のない声で、由紀が横から言う。
一応栄太とは付き合っている仲なのだが、彼女にとっても未だにこの男がよくわからない。

そのとき、啓一が虚空を見上げて何とはなしに後を続けた。
「まあ確かにあの先生は怖いよな。誰に聞いても皆そう言うし」
「そうねー。顔もスタイルもそこそこいいのに、皆震え上がっちゃってるもん。
 あんなヒステリー、あたしも正直言って関わりたくないわ」
「でも、あれがいいっていう隠れファンも結構いるって聞いたよ?」
「えーそう? 信じられんないわね。男ってやっぱりMが多いのかしら……」
彼らは顔を見合わせて、知っている限りの升田の噂を交換し合った。
曰く、今年で二十七。結婚はしていないが彼氏持ちらしい。
曰く、気に入らない相手は容赦なく怒鳴りつけ、校長でさえ彼女には逆らえない。
曰く、身体能力も高く、痴漢を半殺しにして警察に突き出したこともあるとか。
どこまでが本当かわからないが、実際にあの罵声を聞いた者からすれば
どれも事実に思えてしまうようなものばかりだった。
栄太が拳をぎゅっと握り締め、三人に語りかける。
「そう! そんな暴虐の覇王をのさばらせておいていいはずがない !!
 今こそ団結してあの鬼婆を懲らしめないといけないのだ!」
「いや俺パス。死にたくないし、第一俺は被害蒙ってないから」
「この軟弱者め! お前は自分の成績さえ良ければそれでいいのかっ !?」
「うん」
次に発言したのは由紀だった。
「でも懲らしめるって、どうすんのよ栄太。
 いくらあたしでも教師相手に殴り合いなんてしたくないわよ。停学くらうもん」
「大丈夫だ、ちゃんと策は考えている!」
自信満々に答える栄太。目はキラキラと輝き、全身に活気が溢れている。
子供のように悪戯っぽい表情で笑う栄太を、三人は不安そうに見つめていた。
777鬼教師の裏事情(4/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/26(火) 20:23:39 ID:dUGrlTPU
次の日、栄太は持ってきた物体を机の上に置いて三人に見せびらかした。
「という訳で、俺の用意した秘密道具はこれだ」
「……これ、携帯のストラップ?」
テカテカ光る金属部分から伸びる茶色の革。その先には小さな円形の飾りがついている。
どこからどう見ても、携帯電話につける革製のストラップである。
だが恵や由紀のような女子高生には、少し地味な感じが否めない。
全体的に落ち着いたデザインで、もっと大人の人間が持つにふさわしいものと思われた。
「啓一と恵さんには、何とかしてこれをあの死の教師に渡してほしい」
「……え、俺たちが?」
思いもしないことを言われた双子の少年少女は目を見開いた。
「当たり前だろ。俺や由紀がいきなりこんなの渡したって怪しいだけじゃねーか。
 教師に気を遣ってプレゼント、なんてのは君たち優等生のお仕事ですよ」
「私たちが贈っても充分怪しいと思うけど……」
「まあ大丈夫でしょう。先生方にも受けがいい水野兄妹ですから、
 升田も怪しまずに喜んで受け取るはず。
 可愛い生徒からの贈り物ということで、間違いなく使ってくれますよ」
周囲の生徒に聞こえないよう小さな声で由紀が問う。
「で、こんなストラップが何の役に立つのよ? ご機嫌取りのつもりでもないでしょ?」
「うむ、よくぞ聞いてくれた」
栄太は学生服のポケットからラジオのような機械を取り出した。
短めのイヤホンがついていて、ラジオか音楽プレーヤーにしか見えない。
「そのストラップの受信した音声をここで聞けるわけだ。ついでに録音機能つき。
 特別製の小型電池を使ってるから、当分電池は切れないぜ」
「これ、まさか盗聴器 !?」
「――しぃっ!」
思わず声をあげた恵に向かい、指を自分の口に当てて咎めだてる栄太。
幸いにも周りで今の言葉に気づいた者はいないらしい。栄太は胸を撫で下ろし、
声をひそめて三人に説明を続けた。
「ま、そういうことですよ。これであの女の私生活を暴いて
 弱みを握ろうという実に賢く理にかなった、まさに柔よく剛を制す方法ですね」
「それ、バレたら停学で済むのか……? 下手したら警察沙汰になるんじゃ……」
「なんかすっごいイヤなんですけど……こんなの渡すの……」
露骨に嫌悪感を示す双子を栄太が説得する。
「大丈夫、バレないよう細工は完璧だ。
 盗聴器がバレるのは大抵、電波を発信してるのが発覚してしまうからだが、
 普段から電波を出している携帯につけるんだから何の問題もない。まずバレないって」
「……それって、電波が混線とかしないのか?」
「多分しないと説明書に書いてあった」
「あんた、どっからこんなもん手に入れてくるの……?」
疲れた顔で由紀が言った。
「企業秘密だ。という訳で啓一、恵さん、頼んだぞ。
 俺たち善良な生徒たちの身の安全は、二人の双肩にかかっている!」
「啓一、どうする……?」
「うん、やっぱり聞かなかったことに――」
逃げようとする二人を必死で押さえつけ、栄太は説得に強要と強迫を重ねて
とうとう水野兄妹に協力を約束させてしまったのだった。
778鬼教師の裏事情(5/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/26(火) 20:24:20 ID:dUGrlTPU
升田美佐は午後の授業でも猛威をふるっていた。
「ヴェルサイユ条約ぐらい覚えておかないと駄目でしょう !!」
「そこ、ちゃんとノート取ってる !? 後で見せてもらうわよ !!」
「人の話は聞きなさいっ !! 私の授業をサボるなんていい度胸だわっ !!」
講義は淡々と氷のように冷静に行うくせに、ひとたび生徒が自分の意に沿わぬときは
口から灼熱の炎を吐いて怒るのだ。
気の弱い生徒の中には泣き出す者すらいて、それがまた彼女を刺激する。
一日が終わり肩をいからせて職員室に帰っていく升田美佐の姿に、
廊下にいた者はみな畏怖を覚え、慌てて端に寄って道を譲るのだった。
「まったく、この学校のコはたるんでるわ……!」
自分の席に座って頭から湯気を出す女教師。
周囲の同僚も愛想笑いを浮かべるだけで彼女に近寄ろうともしない。

そんな升田に声をかけてきたのは二人の生徒だった。
「――升田先生」
「あら水野君、二人揃ってどうしたの?」
そこに立っていたのは成績優秀で評判の双子、二年の水野兄妹だ。
「ちょっと今日の授業のことで、先生に質問があって……」
妹の方、恵の言葉に升田は表情を緩めた。
優等生の二人はたまにこうやって授業中の疑問点を質問しに来る。
彼女としても、積極的に学ぼうとする二人のことを気に入っていた。
「そう? どこかしら」
いつになく優しい声で升田が問う。
もし栄太や由紀がこの声を聞けば、差別だと大声をあげるに違いない。
兄妹の質問によどみなく答え、升田はいい気分で説明をしてやった。
「――どうもありがとうございました」
「いいのよ。またわからないことがあったら、いつでも聞きに来てちょうだい」
「はい、わかりました」
そう言って二人は教師に頭を下げた。
そのまま帰るかと思ったのだが、ふと恵が顔を上げて言葉を続けた。
「あの、先生……」
「? まだ何か聞きたいことがあるの?」
「いえ、そうじゃなくって……その、先生、携帯のストラップはお持ちですか?」
「いいえ、持ってないけど?」
急に話を変えた生徒にきょとんとしつつも、彼女はポケットから自分の携帯を取り出した。
彼女らしく飾り気も何もないシンプルな銀のデザインだ。ストラップはついていない。
「えーと、先生に使ってもらおうかなって、私たち何人かで先生に似合いそうな
 ストラップを選んでみたんですよ。よ、良かったら使ってくださいませんか?」
そう言って茶色の革製のストラップを差し出す恵。
やや怯えたようなその表情と声に、升田が気がつくことはなかった。
「え、私に……?」
思いもしなかった贈り物に少々驚いたが、彼女はにっこり笑ってそれを受け取った。
「ありがとう。それじゃ使わせてもらうわ」
「あ、そ、そうですか! じゃあ私たちはこれで……あははは……」
硬い笑顔を浮かべ、何度も頭を下げて去ってゆく双子の生徒を笑って見送り、
彼女は再び机に向き直った。
「へえ、嫌われてるかと思ってたけど……そうでもないのかしら、私……」
そうつぶやいて、女教師は細い指でストラップをつけ始めた。
779鬼教師の裏事情(6/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/26(火) 20:25:10 ID:dUGrlTPU
戻ってきた二人を栄太は上機嫌で労った。
「――ご苦労だった! これであの鉄の女の鼻をあかしてやれるぞ!」
「か、勘弁してくれ……すっげー緊張したんだから……」
「ホントよ……私、手がブルブル震えてたもん……」
疲れた声で言う双子に構わず、栄太は受信機を手に笑っている。
「俺の調査によると、噂の彼氏とやらは毎週あの女を学校まで車で迎えに来るらしい。
 そしてちょうど今日がその日なのだ! フハハハハ、なんと好都合!」
「あ、それ知ってる。白い車に乗った男の人じゃない?」
「それならあたしも見たよ。なんかひょろっとした兄ちゃんだったような?」
女子二人が記憶の淵からその事実を拾い上げた。
「さすがのやつも、彼氏と一緒ならば油断のあまり弱点の一端も露にするはず!
 それが狙いよ、あとはそれをネタに笑いものに……クックック……!」
低い笑い声をあげる栄太の隣で、由紀が双子に話しかける。
「恵、啓一クン。あんたたちもうこの辺で身を引いた方が……」
「いや、残念だけどもう深みにはまっちゃってる気が……」
「捕まるときは絶対、皆一緒だよね……ううぅ……」
こうして四人はそれぞれ帰宅し、私服に着替えてから水野家に再び集合した。

夕暮れ時、学校の裏門に白い乗用車が止まった。中から出てきたのは若く長身のやせた男。
穏やかな顔に笑みをたたえ、じっとそこで待っている。
そこに現れたのは、小奇麗なスーツを身にまとった若い女だった。
鋭い目を眼鏡で覆い、黒いショートヘアは乱れ一つなく整えられている。
「やあ、美佐」
男はへらへらした笑顔で彼女に声をかけた。
だが女はにこりともせず、冷たい声で吐き捨てる。
「愛想笑いはやめてっていつも言ってるでしょ?」
「ごめん。でもこないだ言ってた店、ちゃんと調べておいたから、
 今日は君にもきっと満足してもらえると思うよ」
「無駄口はいいから早く連れてって。グズは嫌いなの」
そう言って女は車に歩み寄り、そのまま助手席に乗り込んだ。
肩をすくめた男が運転席に乗り、車を走らせる。
夕日を浴びた白い車は、長い影を従えて街に飛び出していった。

“無駄口はいいから早く連れてって。グズは嫌いなの”
「……うっわー、升田先生、やっぱり彼氏相手でもきついね」
マイクから聞こえてくる会話に、恵は感嘆の声をあげた。
「まあ、でもいつも通りじゃない? 相手も慣れてるみたいだしさ。
 やっぱり男はMが基本なのよね、うんきっとそうだわ」
「言っとくけど俺は違うからな。いつもポンポン俺を殴りやがって……」
座布団に座った少年少女がそんな会話を交わす。
ここは啓一の部屋で、広くはないが真面目な彼らしく適度に片付けられていた。
盗聴器とマイクを持ち込んだ栄太は、由紀を連れて水野家に上がりこみ
四人で升田と恋人の会話を盗み聞きしているのだった。
その升田の台詞によると、相手の男の名は秀行というらしい。
780鬼教師の裏事情(7/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/26(火) 20:26:41 ID:dUGrlTPU
“あれ、携帯にストラップつけたんだね。いい感じじゃない”
“もらい物よ。うちの可愛い生徒たちが私にプレゼントしてくれたの”
その会話に啓一と恵はひやりとしたが、自信に満ちた栄太の言う通り、
この盗聴がばれている様子は皆無のようだった。
“へえ、意外と子供たちに慕われてるんだね”
“意外とってどういう意味かしら、秀行?”
“ご、ごめん……”
男の謝る声がする。どうやらひょろりとした外見通りの気弱な性格のようだ。
やがて信号で止まったのか、エンジンの音以外に何も聞こえなくなった。

「……あ」
そのとき突然、由紀が声をあげて三人の注目を浴びた。
「先生たち、これから晩ご飯食べに行くのよね。
 あたしたちいつまでこれに付き合うの? ご飯どうする?」
「あー、そういや考えてなかったな」
栄太が頭を軽くポリポリと掻いて言った。
「一応録音してるし途中で解散してもいいけど、せっかくデートを生中継してるんだから
 晩飯の会話くらいは聞いてやろうぜ。俺たちの飯はその辺に食いに行くということで」
「でもうちのお母さん、いつも通り晩ご飯の買い物に行っちゃったけど……」
恵が困った顔にそう言葉を添えた。
「二人だけに食べに行かせて俺たちだけいつも通りってのもな……うーん……」
少しの間啓一は考え込み、数秒後に答えを出した。
「んじゃ恵、悪いけど由紀さんと夕飯の材料、何でもいいから買い足してきてくれ。
 作るのは俺も手伝うからさ」
「えー、みんなうちで食べるの? いいけどけっこう大所帯だね」
家主の双子の提案に、客の二人は歓声をあげた。
「恵さんの手料理ですか、イヤッホォォォゥ!」
「でも、とんだ夕食会になっちゃうわね。人のデートを肴にするなんて」
「気にしない気にしない! せいぜいあの地獄の使者を笑いものにしちゃいましょう!」
栄太の発言に、三人は揃って笑った。
最初は反対していた啓一と恵も少しずつこの悪戯を面白く思い始め、
今は栄太に協力しようという意図が見え隠れしていた。

賑やかな調理と夕食を手早く終わらせ、栄太と由紀はそれぞれの自宅にその旨電話を入れた。
「さて、じゃあ続きといきますか!」
ドタバタと啓一の部屋に戻り、静かに盗聴器のマイクに耳を傾ける。
「……あっちはお店に入ったとこみたいね。何か注文してる」
「さあて、どんな会話があるのかなっと♪」
すっかり悪乗りを始めた四人は、楽しそうに教師の私生活に聞き耳を立てた。
“ちょっと混んでるけど、いい感じの店じゃない”
“だろ? 土日はなかなか予約もとれないんだよ”
それからしばらくの間、食器を鳴らす小さな音と店内を流れるクラシックの曲が聞こえた。
彼らの期待に反して、二人はあまり多くの言葉を交わさなかった。
会話をリードしたい男に対して、淡々と物を述べる女教師。
「もっと喋れよな升田め。面白くねえ」
「やっぱりあの人、普段からあんな感じなんだね……」
781鬼教師の裏事情(8/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/26(火) 20:27:23 ID:dUGrlTPU
そのとき、男が眼鏡の女教師に向かって話しかけた。
“――美佐”
“何よ秀行、改まって”
“僕たち、付き合って何年だっけ”
“学生の頃からだから、もう十年近くになるわね……それがどうしたのよ、突然”
“うん……実は今日、き、君に大事な話があるんだ……”
その台詞に生徒たちはにわかに色めきだった。
「十年って、先生意外と一途じゃない。びっくりだわ!」
「大事な話って何だろうな? ただ事じゃなさそうだ」
ごくりと息を呑んで少年たちが待つ中、升田は男を見つめて訝しがっている。
“何よ、早く言いなさい”
“え、えーと、そ、それが、その……”
男はもじもじとしたまま続きを言えずにいた。
その態度に四人が、そしてそれ以上に升田が苛立っているのが感じられる。
「あーもう、じれったいなあ。早くしろよ」
「これじゃ先生も怒っ――」
“早く言いなさいってば !! あんた人舐めてんのっ !?”
水野兄妹が、そして栄太も由紀も飛び上がり、彼女の怒声に背筋を震わせた。

震え上がったのは男も同様だった。
こちらをにらみつけている升田の視線におびえ、体を小刻みに振動させている。
大学生のとき知り合って以来、彼は未だにこの女に口で勝ったことはなかった。
だが、今日だけは気圧される訳にはいかない。
彼は震える手でポケットから小さな箱を取り出し、彼女に差し出した。
受け取った彼女の顔から急速に憤怒が消えうせ、やがて呆然としたものに変わる。
「……何よ、これ」
そのつぶやきにも力がない。こんな彼女は今までに見たことがなかった。
秀行は一生に一度の勇気を振り絞り、はっきりとその言葉を口にした。
「――美佐、その指輪を受け取ってほしい」
「…………」
「お願いだ美佐。僕と結婚してくれ」
それからしばらくの間、マイクからは何も聞こえてこなかった。
782鬼教師の裏事情(9/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/26(火) 20:27:59 ID:dUGrlTPU
ようやく声を絞り出した彼女ができたのは、小さく笑うことだけだった。
「あはは……何よ秀行、冗談でしょ?」
「僕は本気だ。結婚してくれ、美佐」
「な、なんで……なんで……」
彼女は糸の切れた人形のようにテーブルに倒れ込んだ。
「なんで……あんたが先に、その言葉を言っちゃうのよぉ…… !?」
「美佐……?」
「こんな指輪まで用意してぇ……! あんたにその気がないって思ってたから、
 いつ言おうか、どうやって言おうか、ずっと考えてたのにぃ……っ!」
彼女は泣いていた。大きな喜びとわずかな敗北感に涙を流し、
そのまま愛する男の前で嗚咽を漏らし続けた。
「ごめん……美佐……」
「なんであんたが謝るのよ……嬉しいに決まってるじゃない……っ !!」
その言葉に反して、彼女は顔をくしゃくしゃにして泣いている。
「――すまなかった。ごめんよ、美佐」
「謝るなぁっ !! 謝るくらいならもっと言ってよ! 好きだって!
 私のこと愛してるって、結婚してくれって!」
こんなに取り乱した彼女を見るのは初めてのことだった。
子供のように駄々をこねて泣き続ける恋人に優しい目を向け、秀行が続ける。
「ああ、君がそうしてほしいなら何度でも言うよ。好きだ美佐。愛してる。
 そ、それで近くのホテルに部屋を取ってるから……今夜はその、い、一緒に……」
後半は緊張に固まりつつも彼女の了解を取りつけ、彼はほっと胸を撫で下ろした。

一方、啓一の部屋も大騒ぎになっている。
「うおぉぉっ !!? ま、まさかの急展開っ !!」
「ちょ、ちょ、ちょっとちょっとちょっと !! どうするのよ !?
 すっごい決定的瞬間じゃない !! ヤバすぎないこれ !?」
「まさかプロポーズとはなあ……先生、おめでとう」
「先生泣いてたね。ちょっと可愛かったかも」
顔を少し赤らめて恵がつぶやく。鬼教師の意外な姿に、彼らは驚きを隠せずにいた。
「しかもホテルに直行とか、相手は準備万端ね!
 今どきレストランで指輪贈って告白後にホテルなんて、実際にあるもんねぇ……」
「ん、待てよ皆 !? 落ち着いて俺の話を聞いてくれっ !!!」
荒げた声の栄太に三人は動きを止め、彼に続きを促した。
だが栄太はいつになく静かな声音になって、吐き出すように重々しく言った。
「この後、先生がホテルでえっちぃことする訳ですが……中継、続けますか?」
真っ赤になった三人がうなずいたのは言うまでもなかった。
783名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 21:29:30 ID:bXyCSXdF
>>782
不謹慎な感想だがこれがスピンオフ的な面白さなんだなぁと素直に感嘆したい


で、大学生の時に知り合って10年って事は(某C大的なミラクルがない限り)28歳以上って事であって
先生は実年齢より若く見られてたんだなぁと
784名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 22:05:43 ID:T6L/loh2
GJ
なんか修学旅行のエロDVD鑑賞会っぽくて好きだな、こんな雰囲気
寸どめなので早く続きを…
785名無しさん@ピンキー:2009/05/27(水) 09:56:24 ID:H+MJ56Yk
>>782
GJ
後編の投下早く来い
786鬼教師の裏事情その2(1/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/29(金) 21:04:14 ID:kUY7zt/8
こんばんは>>715です、後編の投下となります。


暗黒の夜空の中、星は大地に落ちて灯火となって空を照らしていた。
この部屋からは夜景が丸見えで、いつもなら彼女と二人で肩を並べて
街を見下ろし、甘い気分に浸ることができたに違いない。
だが今夜は違った。いつにない緊張が彼を、そして彼女を包んでいる。
「美佐……」
秀行はベッドの中の恋人に呼びかけた。
白い布の海に浸かった裸の女のなめらかな肌は、彼が思わず
触れてはならないと畏怖してしまうほどの美を備えていた。
女は短い髪を軽く揺らし、眼鏡の奥から彼を見つめて――いや、にらみつけている。
決して今の状況が気に入らない訳ではない。
ただ突然の求婚に対する戸惑いと、それを嬉しく思う本心を露にしたくないという
意地が鋭い視線に込められ、矢となって秀行を射抜いていた。
「……いつから?」
「え?」
軽く歯を食いしばった口からそう問いかけられる。
「いつから、結婚しようって思ってた?」
「え、うーんと……そうだなぁ……」
至近で見つめあって、わずかに考える。

その間に彼の頭をよぎったのは、彼女と過ごした日々の思い出だった。
学生時代に出会って、強気な女だなと思っているうちに
なんとなく一緒に食事に出かけたり、映画に行ったりするようになって。
やがて冷たい態度の中に時折混ざる本音にも気づくようになって。
いつしか自分が彼女の数少ない理解者であることを誇りに思っていた。
教職を取って教師になると聞いたときは彼も賛成した。
実際の授業風景は見たことがないが、きっと毎日生徒たちを怒鳴り散らしているのだろう。
いつからだったろうか。ずっと彼女の隣にいたいと思い始めたのは。
初めての頃からだった気もするし、ふと先月くらいに思い立ったような気もする。
「うーん、いつからだっけなぁ……?」
「早く言いなさい。まさかわからない訳ないでしょ?」
「ごめん。やっぱりわからない」
隠したり気取ったりするのは性に合わない。
秀行は正直に自分の思った通りのことを口にした。
「……何よそれ、あんた馬鹿じゃないの?」
「そうかもしれない。でも君が好きだってのは本当だ。信じてほしい」
「馬鹿……」
美佐は頬を朱に染めてそっぽを向いた。
秀行もベッドの中に潜り込み、姫を迎える王子のように礼儀正しく彼女に手を伸ばす。
「美佐……」
軽く抱き寄せ唇を合わせる。
彼女は抵抗せず、大人しく秀行の口づけを受け入れた。
そのまま彼が舌を侵入させると、それに応えるように美佐も自分のを絡めてくる。
男女の唾と呼吸の交じり合う音が部屋に響いた。
やがて二人は満足したのか、名残惜しそうな唾液の線を虚空に描いて離れる。
「今日は、積極的……だね?」
「馬鹿……そんな訳ないじゃない……」
眼鏡に覆われた瞳がうるんで、今にも涙がこぼれそうだ。
不意に秀行の手がすっと伸ばされ、彼女のレンズを取り去ってしまった。
「あ、ダメ、眼鏡……!」
「今日は取ろうよ。何もつけてない美佐の顔、見たいんだ」
「…………」
男の手に頬を撫で回される感触に、彼女は軽く目を閉じた。
787鬼教師の裏事情 その2(2/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/29(金) 21:05:57 ID:kUY7zt/8
秀行の手が、今度は豊かな乳房に這わされる。
ぎゅっと握った手からややはみ出すこのサイズがいい。彼はそう思った。
美佐は気持ち良さげに身をくねらせ、なすがままになっている。
しかしその口は、いつものように彼に文句を言うのを忘れなかった。
「もう、そんなとこばっかり……」
「だって気持ち良くてさ」
「まったく、男ってホントにケダモノね」
体を震わせ熱い息を吐いて、彼に愛撫される若い女。
その扇情的な姿は、普段の彼女からはなかなか想像できないだろう。
秀行以外には決して見せない、女としての升田美佐の姿だった。
静かに彼女の双丘を揉んでいた秀行だったが、やがて彼女の体に口を寄せると
赤子のようにその乳首に吸いついた。
「あっ……!」
「うん、美佐のおっぱい、おいしいよ」
「ああぁっ……そ、それ、はあぁぁんっ…… !!」
乳房を口に含み、その先端を舌で転がすように舐めまわす。
優しくも激しい恋人の責めに、美佐は耐え切れず声をあげた。

生々しい男女の声は、盗聴器を通じて生徒たちの元にも余すことなく届けられていた。
“ああぁっ……そ、それ、はあぁぁんっ…… !!”
聞こえてくる嬌声に、彼らはそれぞれ顔を火照らせている。
「せ、先生……すごいね……」
「ああ……とてもあの鬼教師とは思えねー……」
息を荒くしてそんなやり取りを交わす。
“ひ、秀行ぃぃ……っ !!”
“今日の美佐、いつもより可愛い……”
“やだ、言わないでぇぇっ!”
ふと栄太が顔をあげると、自分と同じく劣情に染まった顔の由紀と目が合った。
恋人の淫らな表情に彼は思わず目をそむけたが、マイクから流れてくる音声は
狭い部屋の中に響き、彼らの意識を肉欲で覆い尽くそうとしてやまない。

「――あ、俺ちょっとトイレ……」
「う、うん。行ってらっしゃい……」
このままここに居ては由紀に襲いかかってしまうかもしれない。
理性の危機を感じた栄太は、気をまぎらわせようとトイレを借りることにした。
部屋に残されたのは、真っ赤な顔で男女のさえずりに耳を傾ける三人の少年少女。
いつの間にか啓一が恵に寄り添い、その細い肩をぐっと抱いていた。
それを見た由紀がからかうように恵に尋ねる。
「恵……大丈夫? 顔真っ赤よ……」
「そんなの由紀だって……ね、啓一」
「ん? あ、ああ……」
力なく少年が答えたが、彼の意識の大部分が視覚と聴覚に注がれていた。
聞こえてくるのは女教師の甘い声と男女の絡み合う音。
そして見えるのは自分の分身たる黒髪の少女の熱っぽい横顔。
ふと気がつくと啓一の腕が恵の体に回され、指が彼女の柔らかい肉をつかんでいた。
(あっ、け、啓一……? ダメ、由紀が見てるのにぃ……!)
(わ、わかってるよ……でも体が勝手に――)
(それなら……ね? あっちの部屋で……)
などと囁き合う双子をうらめしげに見つめ、由紀はひとりで座り込んでいる。
「ご、ごめん由紀。私たち、ちょっと気分悪くなってきちゃったから、向こうで休んどくね。
 この部屋使ってていいから、あとお願い……」
「あー、はいはい。あたしに構わなくていいわよ。お大事に」
由紀はそう言って部屋を出て行く二人を見送った。
「くそ、恵のやついいなあ……。栄太、早く帰ってきてよぅ……」
“あぁっ、やめ、そこやだあぁぁっ!”
升田の喘ぎに下着がじんわりと濡れ、由紀は火照った体を持て余していた。
788鬼教師の裏事情 その2(3/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/29(金) 21:06:49 ID:kUY7zt/8
生まれたままの姿の女の秘所を、男の人差し指が貫く。
「や、あああぁっ !!」
美佐は声をあげたが、秀行の指は何度も抜き差しを繰り返して執拗に彼女を責めたてた。
陰部から止めどなく熱い液体が溢れ、激しい汁の音を響かせる。
「美佐のココ……すごいよ。溢れてる……」
「やめてええぇっ…… !!」
「ごめん、でもやめられないんだ……」
秀行の手が陰核に触れ、彼女は体をびくりと震わせた。
そこを責められるのは初めてではないのに、電流が走ったような衝撃が頭を駆け巡る。
美佐はベッドの上で跳ね回って子供のように叫んでいた。
普段しているセックスとはまるで違う快感に、彼女は逆らうこともできない。
男を待ち焦がれている女陰からとろりと汁が垂れ、シーツに染みを作った。
(こ、こんな……この私が……)
自分がここまで理性を失うことなんて考えられない。
それなのに、秀行の指が肉壷をえぐるたびかん高い嬌声をあげてしまう。
いつもなら怒りを込めた視線でこの男をにらみつけて震え上がらせるのに、
今は抵抗もできずに秀行の玩具になってしまっている。
悔しい。わずかに残った矜持はそう歯ぎしりしているものの、美佐の体は
恋人の指の動き、体温、息遣いの一つにまで反応して淫らな悲鳴をあげた。
「――んあぁぁあぁっ !?」
ひときわ大きく体が跳ね、彼女は自分が達してしまったことを知った。
まさかこの自分が、指だけでイカされてしまうとは。
美佐は呼吸を荒くして、よどんだ瞳で秀行の顔を見つめた。

「――み、美佐、大丈夫……?」
その気遣いが彼女に理性を取り戻させることとなった。
不意に目をつり上げて自分を憤怒の表情でにらみつける恋人を、彼は不思議そうに見返した。
「ど、どうしたの……大丈夫?」
「いちいち……き、気にしなくて、いいから…… !!」
「ご、ごめん……」
そのとき、美佐の目から一筋の雫がぽたりと垂れて二人を驚かせた。
「――美佐、泣いてるの……?」
「な、なんで……私…… !?」
「……安心して。僕は美佐のことが大好きだから、ずっとそばにいるよ。約束する」
そう言って秀行は彼女の体をぎゅっと抱きしめた。
「ち、ちが……秀行、やめて……!」
「美佐、美佐……!」
何とかして男の腕から逃れようとする美佐だったが、やがてそうしているうちに
暴れるのをやめて、じっと秀行に抱かれたままで大人しくなった。
「美佐……落ち着いた?」
「……ほんと、あなた馬鹿ね……」
小さなつぶやきが空気を揺らす。
裸の男女は、白いベッドの上で一つに重なり合っていた。
789鬼教師の裏事情 その2(4/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/29(金) 21:07:33 ID:kUY7zt/8
秀行のやせた体が強い力で美佐を押さえつける。
荒々しい男の動きに興奮と恐怖を感じ、彼女の声が裏返った。
「――秀行…… !?」
「ごめん……でも、僕もう……」
彼は辛そうに息を吐き、獣のような視線をこちらに突き刺していた。
自分の腿に当たる硬い男性器の感触に、美佐の心に怯えと期待が湧き上がってくる。
「もう……ムード考えてちょうだい。それにゴムくらいつけてよね……」
「き、今日は要らないと思って、持ってきてないや……あはは」
「ちょっと、あなたねぇ……」
口ではそうぼやきながら、美佐は自分にのしかかってくる男を愛しげに眺めていた。
硬くそそり立った肉棒が待望の挿入を果たそうと彼女の肉をかき分ける。
美佐はすっかり濡れそぼった膣に太くたくましい男性器を突き込まれ、嬉しそうに鳴いた。
「あぁっ……だ、だから入れちゃやだって、言ってるのにぃ……!」
「ご、ごめん……でも、すごく気持ちよくて……」
「馬鹿、で、できちゃったらどうするのよぉ…… !?」
「ちゃんと求婚はしたから、別にいいと思うんだけど……」
「わっ、私、そ、そんな……あぁっ、はしたない女じゃ……ない、わよぉっ……!」
自分の中を激しく前後する男に言葉だけは抗うものの、彼女の腕は秀行の背に回され、
結合部も盛大に汁を溢れさせて性交の喜びに震えていた。
それに応えるように、劣情に理性を溶かされた男も乱暴に女の腰をつかんで
力の限り自分の男性自身を打ちつける。

「はっ、はぁんっ、は、激しい……のぉっ!」
「み、美佐……! ミサぁ……好きだよぉっ……!」
「ん、もう……ひ、ヒデユキの……バカァっ!」
愛情を込めて恋人の名を呼ぶ女の顔は幸福感に満ち足りていた。
普段職場では決して目にすることのない、いや今まで付き合ってきた彼ですら
見たことがないほどの升田美佐の乱れようだった。
男の名を口にするたび彼女の体は喜びに震え、その相手に貫かれているという実感が
ゾクゾクとした快感となって背筋を這い上がってくる。
鋭利な眼差しも冷徹な罵声も、トレードマークの細い眼鏡も失った彼女は
いつもの生真面目で冷徹な女教師ではなかった。
グチャグチャと肉壷をかき回されて体をくねらせ嬌声をあげるその姿は
一人の淫らな女、一匹の雌に成り果てていた。
柔らかな寝床の上、二人の交わりはまだ終わるところを知らない。
790鬼教師の裏事情 その2(5/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/29(金) 21:08:22 ID:kUY7zt/8
水を流す音と共に、ようやく栄太がトイレから出てきた。
「あー、やっとチンコ収まった……」
げっそりした顔でそう漏らし、冷たい水で手を洗って部屋に戻る。
まさかあの鬼教師の絡みであんなに興奮するとは思わなかった。
少し甘く見ていたな、と苦笑いを浮かべて栄太は啓一の部屋のドアを開けた。
するとそこには――。
「……はぁっ、ああぁっ !!」
「――ゆ、由紀…… !?」
フリルのついた下着を足首までずらし、ミニスカートの中に手を伸ばして
自分の性器を愛撫し続けている栄太の恋人、坂本由紀の姿があった。
“はっ、はぁんっ、は、激しい……のぉっ!”
「ああぁ、升田のやつ、すごい……!」
水野兄妹は別の部屋に行ったのか、ここには姿がない。
由紀は教師の寝物語を聞きながらひとり自分を慰めていた。
「お、落ち着け、由紀!」
そんな由紀の自慰を止めようと、必死で彼女を押さえ込もうとする栄太。
だが校内でも有名な女傑たる由紀の力は栄太を軽く凌いでいる。
「え、栄太ぁ……あたし……」
「ちょ、ちょ、お前―― !?」
押さえ込むつもりが逆に押さえつけられ、彼の方が下になってしまった。
自分のあまりの情けなさに憤慨していると、由紀の手が伸びて栄太の顔を挟んだ。
「栄太、遅いぃぃ……ずっと待ってたのよぉ……?」
そのまま強引に唇を奪われ、口内に舌まで入れられる。
いつもより激しく情熱的なキスに翻弄され、栄太は彼女の思うがままになっていた。
「んむ……じゅるっ、ふぇーはぁ……はむぅ……!」
少女の短い茶髪が揺れ、一時的に彼の視界を覆った。
教師の情交の様子が赤裸々に流され、発情した恋人に口を貪られる現状にあっても
栄太は奇妙なほど冷静にこの状況を観察していた。
“ん、もう……ひ、ヒデユキの……バカァっ!”
(升田のやつ、意外といい声で鳴くんだな。いつもあんな大魔神してるくせに。
 あーくそ、でもこれ録音してるし、こうなったら後で何度も何度も聞き直してやる。
 しっかしそれにしても、由紀の唇って柔らかいよなぁ。吸い心地抜群っつーか……)

そのとき急に由紀が彼から離れ、息を切らして床に倒れかかった。
「由紀、どうした……?」
「ダメぇ……あたし、もう我慢できないよぅ……」
彼女は髪を振り乱し、物欲しそうな淫欲の眼差しで栄太の方を振り返った。
四つんばいになってヒクヒク蠢く性器を隠さずこちらに向けている。
「栄太……お願い、きてぇっ……!」
自分を求めて恥ずかしい姿を露にする少女を前に、栄太はごくりと唾を飲み干した。
他人の家、しかもいつ主が帰ってくるかわからない親友の部屋で恋人と交わるのは
かなり抵抗があったが、彼も一人の男、この状況で断れるはずもない。
(――やれやれ、とんだ乱交騒ぎになっちまったな……ま、いいけど)
栄太はズボンの中から再び立ち上がっていた陰茎を取り出すと、
犬のような格好でこちらを待っている由紀に勢いよく侵入を開始した。
「ああぁ――入ってくるぅ……!」
快楽に蕩けた至福の表情で由紀が言い、積極的に腰を振り始める。
性器の繋がる至高の快楽に栄太は思わず息を漏らした。
791鬼教師の裏事情 その2(6/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/29(金) 21:09:00 ID:kUY7zt/8
栄太と由紀が交わっている部屋のすぐ隣、恵の部屋でも男女の営みが行われていた。
鍵のかかった部屋の中のベッドの上で、双子の兄妹が座って抱き合ったまま繋がっている。
「ん、はぁ……」
恵の桃色の唇が兄のそれを吸う。
彼女はとろんとした目で啓一を見つめ、上下ともに体を繋げていた。
彼らにしか聞こえない囁きが愛の言葉を交換していく。
(啓一……私、すっごい興奮してる……)
(俺もさ。お前の心は俺の思い……だろ?)
(こんなになってるの、やっぱり先生のせいだよね……)
(確かに、普段怒鳴り散らしてるあの声で、あれだけやられちゃ興奮するよな。
 まあもう充分堪能したし、続きはあの二人に任せよう)
(そうだね啓一。君は私が……)
恵の膣は双子の兄をくわえ込んで離さない。
妹の強い締めつけと彼の肉を擦る柔らかな襞の感触に、啓一は目を細めた。
上を下への激しい性交ではなく、静かに抱き合ってお互いを見つめ合ったり
唇を寄せて相手の粘膜を食み合ったりする、そんな緩い交わりに二人は溺れていた。

「あはは、啓一の……私の中でビクビクしてるよ……」
「恵のだって、こんなに俺をぎゅーぎゅーしてるじゃないか……人のこと言えないぞ」
「そ、そんなこと……んっ、ないもん」
「嘘つけって。お前の考えてること、俺には全部わかるってのに……」
結合したまま笑顔で交わす、双子の穏やかな会話。
熱を持った息遣いと動悸した胸の高鳴り、そして相手を想う心を共有した兄妹は
優しく丁寧に愛撫を重ね、少しずつ絶頂への坂を上り始めている。
そして座っていた二人の体がふらりと揺れ、繋がったままベッドに横になった。
「あ、私が下でいいから……」
「いや、恵が上に乗れよ。たまには騎乗位もいいだろ?」
「でもあれ、啓一に入れてもらってる感じがいまいちしなくて……。
 わかるでしょ、私の気持ち? お願い、啓一」
「やれやれ、わがままな片割れを持つと大変だ……」
そう言いながらも啓一は妹をベッドに仰向けにし、のしかかってゆっくり腰を振り始めた。
「あぁっ……や、やっぱり……これ、いい……!」
「ホントにもう、エッチな優等生もいたもんだ。学校の皆が見たら幻滅しますよ?」
「そ、そんな、こと言うと……怒る、よぉっ…… !?」
「おっと、また体を取られちゃたまらんからな。今日はがっちりガードしとくよ」
「け、啓一の……意地悪ぅっ……!」
体も心もよく似た双子の愛の語らいは、今夜も遅くまでかかりそうだった。
792鬼教師の裏事情 その2(7/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/29(金) 21:10:12 ID:kUY7zt/8
結局、あれから二回、休憩を挟んでもう一回。
秀行に散々犯され、何度も中に出された美佐だったが
ようやく行為が終わり、冷静になって相手と見つめ合うことができた。
細い縁無し眼鏡の奥から冷ややかな視線が彼に注がれている。
「美佐、どうしたの……?」
「……どうもしてないわよ」
いつもの口調で冷たく告げる。その恋人の様子に秀行は少々不安になって、
慌てて美佐に向けて言葉を続けた。先ほど告白の際に見せた勇気は既にどこかへ消えうせ、
普段通りの彼女に逆らえない気弱な彼に戻っていた。
「ひ、ひょっとして怒ってる?」
「別に怒ってないわ」
「い、いや、なんか怒ってる……気がする……!」
「しつこいわね! あんたそんなに私を怒らせたいのっ !?」
「……ひぃっ!」
その怒鳴り声についびくりと縮こまってしまう。
恋人の情けない姿から目をそらし、美佐は突き放した声で言った。
「……まったく、いいようにしてくれちゃって。できちゃったらどうするの?
 いくら結婚をOKしたからって、無計画に赤ちゃん作っても困るわよ」
「ご、ごめん……」
「だいたいあなたはいつもそう。こっちに気を遣ってるフリしてる癖に、
 肝心なところで気が利かないんだから。指輪もホテルも用意しといて
 避妊具の一つも持ってきてないなんて、逆にこっちが恥ずかしいわ」
「う、うぅ……」

そこまで言ったところで、不意に彼女が表情を変えた。
こちらを横目で見つめ、軽く微笑んで囁いてくる。
「まあ、しちゃったものは仕方ないから、今回はいいわ。
 でもこれから一緒になるんだったら、もっと私を満足させてよね?」
「み、美佐……?」
まさか聞くとは思わなかった彼女の優しい言葉に、秀行が呆然とする。
「ほら、ぼーっとしない。先にシャワー浴びてくるから、後始末お願い」
「え? あ、う、うん……」
「式の日取りも決めないといけないし、ご家族にもご挨拶しないと。
 この忙しい時期にとんだ災難だわ、まったく……」
ぶつぶつ言いながら足を弾ませシャワーを浴びに行く。
いつになく明るい美佐の姿に驚きつつも、秀行は救われたような気分になった。
「ぼ、僕は……やったのか…… !? 美佐……ありがとう!」
告白したときの彼女の表情。ベッドで乱れる彼女の痴態。
そして自分を受け入れてくれた、聖母のように安らかな彼女の微笑み。
彼にとっては千夜のようにも感じた長い一夜が、やっと終わろうとしていた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 
793鬼教師の裏事情 その2(8/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/29(金) 21:11:09 ID:kUY7zt/8
昼前、人間が一日で一番空腹を感じる時間。
廊下の角まで届きそうな女教師の叫びが教室を凍りつかせた。
「――佐藤君っ !!」
「……んあ? ふ、ふぁい……?」
「まったくあなたは、いつもいつも居眠りばかりで……!」
栄太の席の隣では、世界史担当の升田美佐が立ったままブルブル震えている。
クラスメートはみな氷のように固まって、次の瞬間には訪れるであろう彼女の怒号、
そしてそれに続く長時間の説教を覚悟していた。
だが全員の予想に反して女教師はキッと目を吊り上げて佐藤栄太をにらみつけ、
「……これからはちゃんと話を聞きなさい。わかったわね?」
と不機嫌な声で言っただけだった。
栄太は眠そうに目をこすり、へらへら笑いながら謝罪した。
「はい、すいません。どうも寝不足で」
「ちゃんと夜は寝なさい。ろくに寝ずに翌日の授業に支障をきたすなんて、もっての外よ」
「わかりました。先生は睡眠、ちゃんと取れてますか? 昨日とか」
「な、何言ってるの。もちろん私は規則正しい生活を送ってます」
「そりゃそうですよね。つまんないこと聞いてすんませんでした」
少しだけ言いよどんだ教師に栄太はにやけ顔でうなずいた。
そのまま教壇に戻っていった彼女の姿に、クラス中が静かにざわめく。
升田は何事もなかったように講義を再開し、穏やかに授業は終了した。

そのすぐ後の昼休み、栄太の親友の啓一が彼に話しかけた。
「――おい栄太、何やってるんだ?」
見れば、彼はイヤホンをつけてにやにや笑っている。
「ん、音楽鑑賞」
「絶対違うだろ。また今度は何をやってるんだか……」
どこからどう見ても不審な友人の様子を怪しく思いつつ、啓一は机の上に弁当箱を広げた。
そこへ短い茶髪の少女が現れ、パンの入った袋を彼に差し出した。
「ほら、三百七十円」
「おう、悪いな由紀」
いつも由紀に頭が上がらない栄太が、彼女に昼食を買いに行かせるとは驚きだった。
怪訝な顔の啓一の目の前で、由紀は嬉しそうに栄太のイヤホンの
片方を手にとって自分の耳につける。
「だってあたしもこれ聞きたいし。ねえ、啓一クンもどう?」
「? 何の話――」
そのとき、聞き返そうとした啓一の顔に突如閃きが走り、彼は全てを理解した。
顔を強張らせてひったくるように栄太のイヤホンを奪い取り、聞いている内容を確認する。
“美佐、可愛いよ……大好きだ……”
“――んあぁっ、はぁん、いいのぉ……!”
「…………!」
予想通りの男女の痴態に、啓一は言うべき言葉を見失った。
794鬼教師の裏事情 その2(9/9) ◆cW8I9jdrzY :2009/05/29(金) 21:12:02 ID:kUY7zt/8
そんな彼に、栄太が面白くて仕方ないといった表情で説明する。
「いやーあの日以来、二人ともすごい激しくてさあ……俺も先生の寝不足が心配ってわけよ。
 だから心配のあまり、最近はこうやって先生の私生活が乱れていないか
 こっそりチェックしているんだ。偉いなあ俺、いやマジで」
「んでこれ、昨日のやつ? 升田もだいぶあの人に懐いたもんねえ……」
「…………」
いつかお前ら痛い目見るぞ、と思いながら啓一は窓の外を見上げた。
空は高く雲は細く、広々とした開放感が世界を覆っている。
「なあ、啓一」
不意に意識を呼び戻され、彼は栄太と由紀の方を向いた。
ああ、そういえば弁当食べないと、という心の声が聞こえてくる。
「何だよ。俺はもうそれ聞きたくないぞ。こないだはそれで大変だったんだからな」
「これ、いくらで売れると思う?」
「さあな」
心の底からため息をつきたくなって、啓一は椅子にもたれかかった。
「いっそ升田先生本人に売りつけたらどうだ。プロポーズの会話を録音してる人なんて
 ほとんどいないから、いい記念になるかもしれない」
「なるほど! さすが啓一、やっぱ賢い!」
ポンと手を叩き、目から鱗が落ちたと言わんばかりに栄太が感嘆する。
「このデータを裏に流されたくなかったら、とあの女を脅迫するわけだな!
 となると最初は匿名で、ちょっとずつ後からちらつかせて恐怖心を煽るのが効果的――」
「恵ぃぃっ! 何とかしてくれぇぇっ !!」
周囲が何事かと視線を向ける中、水野啓一は彼らしくもなく頭を抱えていた。

その頃、職員室では升田が上機嫌で座っていた。
稀有なことに鼻歌など歌いながら、薬指に光る指輪を優しく撫で回す。
「――おや升田先生、どうしました?」
偶然その横を通り過ぎようとした老人、校長が彼女に問いかける。
白髪頭の上司を眺め、彼女は嬉しそうに答えた。
「校長先生。実は私、結婚するんです」
「ほう、それはおめでとうございます。お相手はどんな方で?」
「そうですね。気弱で臆病、ついでに馬鹿で、しかも気が利かなくて……」
はにかんだ笑顔で婚約者の欠点をあげつらう女教師。
「は、はあ……そうですか……まあ、とにかくおめでとうございます」
校長は呆気に取られた表情でその場を去っていった。
「――でも」
誰にも聞こえない声で、最後に彼女はこう付け加えた。
「……とっても素敵な人なんですよ」
795名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 14:19:06 ID:EvI+4/73

栄太がうらやましすぎるw
796名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 23:14:53 ID:QU+lAqsx
これはいい裏事情w
まったく盗聴とかこそこそしやがって



いいぞ、もっとやれ
797名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 01:10:03 ID:xZGOa1P8
まさか、あんたの作品をこのスレで見ることになるとは…!
GJ
798名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 21:29:12 ID:9ijK8Q1H
gj 次作に期待
799名無しさん@ピンキー:2009/06/03(水) 20:50:16 ID:q7pyywwI
面白かったよ
GJ!!
800名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 22:11:59 ID:ByuVhWm1
800
801名無しさん@ピンキー:2009/06/05(金) 21:13:11 ID:FADmgVMj
1000
802名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 20:33:10 ID:Qjvs8bE0
やばいぐらい過疎ってるな
803名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 17:56:09 ID:JZYgguPd
ツンデレ補給は随時可能だからな。オオカミさん、沙代、箒、文乃etc.
専用スレが無い版権ツンデレキャラのSSとか欲しいな。
804名無しさん@ピンキー
つか2週間前に投下があったじゃないか。
このくらいならまだまだ平気。
連レス失礼。