【うpろだ】専用スレのないSS【代わり】

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4421/12 ◆cW8I9jdrzY
よく晴れた日の、昼には遅く、夕方というには早い頃。
一人の女がスーパーから出てきた。
手には夕食の材料が入ったビニール袋を下げ、
重そうにふくれた腹でよたよたと歩いている。

「ふぅ……」
女は妊婦だった。
全身から感じられる柔らかい雰囲気が、
彼女が幸せな毎日を送っていることを思わせる。
この街に越してきて一年以上、すれ違う通行人の中にも
挨拶をする程度の知り合いが何人かいた。

「こんにちは。いい天気ですね」
自宅近くでそう声をかけられ、女も反射的に挨拶を返していた。

(……あれ?)
しかし、目の前にいる相手は女の記憶にない。
高校生くらいだろうか。異様に整った顔立ちをした、
そのくせ不思議と印象の薄い少年だった。
綺麗な顔がニコニコ笑ってこちらを見つめている。

「お子さん、もうすぐ生まれるんですね」
極上の笑顔で少年は言った。
毒気のない微笑みに女は少しドキリとしながら、
「ええ、来月には。双子なんです」
と答えた。
4432/12 ◆cW8I9jdrzY :2009/03/19(木) 12:13:46 ID:Qx1FNbIS
「そうですか。男の子ですか?」
「いえ、二卵性らしくて、男の子と女の子が一人ずつ」
「なるほど、おめでとうございます」
ありがとう、と女は顔を赤らめて答える。

少年は視線を女のお腹に向けていたが、やがて女に言った。
「少しだけ、お腹の赤ちゃんに触ってもいいですか?」
「ええ――いいですよ」
初対面の相手に馴れ馴れしい話かもしれなかったが、
女はにっこり微笑む少年の雰囲気に安心し、うなずいていた。
その場に座り込んだ少年が、女のふくらんだ腹を丁寧にさする。

――さわさわ。なでなで。

「あっ、動きましたよ」
「そう?」
「いや嘘です。そう都合良くはいきませんね」
少年と二人で笑う。
触れていたのは数秒ほどだったが、彼はそれで満足したらしい。

やがて立ち上がると、少年は女に礼を言った。
「ありがとうございます。お腹の赤ちゃんたちに祝福を」
「祝福? そうね、どうもありがとう」
大げさな言い方をする子だなと思ったが、
少年はそのまま弾むような足取りで去っていった。

月が変わり、女は双子の赤子を出産し、夫婦で喜びあった。
兄は啓一、妹は恵。少し変わったところはあったが
二人ともいい子で元気に育っていった。
4443/12 ◆cW8I9jdrzY :2009/03/19(木) 12:18:43 ID:Qx1FNbIS
――リリリリリ……。
目覚ましを乱暴に叩いて止め、ボクは起き上がった。
寝ぼけた頭でぼんやりと周囲を見回し、最終的に自分の体に目を落とす。
目に入ったのは薄い水色のパジャマ。
胸には大きめの膨らみが二つ、呼吸に合わせてゆっくり動いている。

「ふああああ……」
あくびをした拍子に長く伸ばした黒髪が顔にかかる。
(髪、セットしなきゃ……)
女の子は男と違って大変なのだ。隣の部屋ではもう三十分ほど寝ていられるが、
こっちの体はそういうわけにはいかない。
しかも最近はママがお弁当を作ってくれなくなったので、
起きる時間が相当早くなってしまった。うう、健康的だなあ。

「さて、と……」
ようやく身だしなみを整え、ボクは啓一を起こすことにした。
といっても、隣の部屋に起こしにいったわけじゃない。

「う〜〜〜」
ボクは嫌々ながらも啓一の身を起こした。
こちらの部屋に目覚ましは必要ない。半身はもう起きているのだから。
目を開けると、緑のパジャマの下半身の部分が盛り上がっている。
こっちはこっちで健康的なことです。

「時間あるかな……」
ボクは時計を見た。啓一は着替えるだけでいいし、
弁当も冷蔵庫の残り物で何とかなる。
自然に収まるのを待ってもよかったんだけれど、
少し時間もあったからボクは一発ヌくことにした。

――ガチャ。
ボクは啓一の部屋のドアを開け、制服姿のままベッドの前に座り込んだ。
「よいしょっと」
中年くさい掛け声と共にズボンと下着をずり下ろす。
勃ったそれが露になると、ボクは躊躇なく肉棒を口に含んだ。
4454/12 ◆cW8I9jdrzY :2009/03/19(木) 12:23:19 ID:Qx1FNbIS
――ピチャ……チュパ……。

ボクの目の前で、セーラー服を着たボクがボクのをなめ回している。
すごくややこしい言い方だが、他に言いようがないから困る。
本当は彼氏か彼女でもできればいいのだが、
ボクの存在はあまりにも特殊すぎてまともな恋愛はできないだろう。
というわけで仕方なく、自分で自分の性処理をするしかない。

「うーん……寂しいボク……」
この場所からだと恵の胸が、恵の視点で見るのとは違ったアングルで見える。
巨乳と自慢するほどではないけれど、そこそこだと思うんだ、うん。
ボクは肉棒をくわえながら、制服の上から自分の胸をつかんだ。
「後でまた計ってみるか。でもこっちの成長期は過ぎたと思ってたけど、
 おっぱいの大きさはまた違うのかな?」
恵の口がふさがってるため、啓一の口でそう独り言を漏らす。

この体質の特長の一つが、自分のスリーサイズを楽に測れることだ。
あんまり嬉しくないけど。

そんなことをしている間にもボクは肉棒の先っちょ、
自分の感じる部分をひたすらに舌でいじり続けていた。
啓一の性感がどんどん高まっていくのがわかる。

「う……ううっ !!」
耐え切れず、恵の口に盛大に出す。
出るタイミングがわかっているからこぼさずに済むのはいいけど、
やっぱりこんなの苦くて飲めたもんじゃない。
ボクはティッシュを取って啓一から恵の手に渡すと、そこに液体を吐き出した。

「ふう……」
啓一のそれが萎え、ボクは息をついたが、今度は新たな問題が持ち上がった。
「あ、しまった」
スカートの中に手を入れると、ショーツがじんわり湿っている。
恵の顔を見ると、頬を赤らめて荒い息を吐いているのがわかった。
そう。ボクには鏡もいらないのだ。

だがさすがにこれ以上オナっている時間はない。
「落ち着け……素数を数えて落ち着くんだ」
ボクは啓一と恵、二つの口から交互に数を数えた。
「2」「3」「5」「7」「11」「13」「17」「えーと19」
何とか火照る恵の体を静め、ボクは学校に行く用意をした。
4465/12 ◆cW8I9jdrzY :2009/03/19(木) 12:27:42 ID:Qx1FNbIS
遅刻することもなく、ボクは校門をくぐった。
啓一と恵、外からは仲の良さそうな兄妹に見えるだろう。

「おはよー」「うっす」と朝の挨拶がいったりきたりする中、
一人の男がボクの元に近づいてきた。
「よう、啓一」
「や、栄太」
ボクは悪友に手を挙げて言った。

「恵さんも、おはようございます」
「おはよう、佐藤くん」
ボクが恵の顔で微笑んで返すと、栄太は飛び上がらんばかりに喜んだ。
ふふん、伊達に猫をかぶってはいない!
水野恵が校内の美少女ランキングに名前を連ねていることは
啓一をしていればすぐにわかる。まあ悪い気はしないが、
こうして男の下心が透けて見えるのが困ったものだ。
こちらに何かと話を振ってくる栄太を軽くあしらいながら、ボクは校舎に入った。

啓一は二年B組、恵はA組である。
ボクは二つの体をそれぞれのクラスに座らせた。
B組ではボクの前の席に腰かけた栄太と、どうでもいい話をする。

「へっへ、今週のコーナーはコレだっ」
栄太は自慢げに雑誌に載ったグラビアアイドルを見せつけてくる。
「ほー」
(やっぱり胸がでかいなあ)
ボクはA組で恵の胸を見下ろしながらそう思った。
(ボクも普通よりはあると思うんだけど……足りないのか、くそぅ!)

しかし何気ない視線を向ける啓一に、栄太は少し冷めたらしい。
「何だよー、せっかく見せてやってるのに……
 反応しろよーこの不能めー」
「ちげえよっ !!」

ボクもエロ本とか大人の雑誌は読むのだが、
女性の体を見るとつい自分と比べてしまい、興奮が冷めてしまう。
だが、そんな部分が他人からは真面目に見られているらしい。
自分ではそんな馬鹿な、と思うのだが。
4476/12 ◆cW8I9jdrzY :2009/03/19(木) 12:30:38 ID:Qx1FNbIS
「なあ啓一ぃ」
「何だよ」
「いい加減に恵さん紹介してくれよ〜。後生だから〜。
 お前からデートに誘ってくれたらうまくいきそうだからさぁ」
「駄目だな。お前じゃ間違いなく無理、賭けてもいい」
「この薄情者めっ !!」

こいつはわかっていない。啓一に見せる普段の振舞い、言動が
恵にも「そのまま」伝わってるってことを。
誰がこいつの彼女になんかなりますかい。

「ああ……お前はいーよなぁ。毎日毎日、恵さんと一つ屋根の下だもんなぁ。
 そんで『小学生までは一緒に風呂入ってた』とか
 『ドアを開けたら恵さんが着替えしてた』とかsnegな状況に――」
「やかましいっ !!」
ボクは栄太を殴り飛ばした。

まあこいつの言うことも間違ってはいない。
どころか啓一と恵は今でも一緒にお風呂に入るし(洗うのが楽だから)、
二つの体で同時に着替えをしても、どうってことはない。
啓一は恵の生理の日も、下着の色も、オナニーの回数も全て知っている。
が、それはボクにとっては当然のことで、別に何とも思っていない。
何たって、啓一も恵もどっちもボクなんだから。
4487/12 ◆cW8I9jdrzY :2009/03/19(木) 12:34:19 ID:Qx1FNbIS
「恵〜!」
ボクの元に一人の女の子がやってきた。
坂本由紀、ボクの友達だ。

「どうしたの由紀? そんなに慌てちゃって」
由紀は茶色のショートヘアを振り乱し、ハアハア息をしている。
まるでどこかから走ってきたみたい。

「聞いてよ! 亜美に彼氏ができたんだって!」
「へ〜。おめでたいわね」
「おめでたくないわよ! あたしを置いて抜け駆けしやがってえ!
 見つけたらタダじゃ済まさないわよぉ……!」
由紀は背中から炎を出しながら怒りに震えている。
「それじゃ、由紀も彼氏作――」

ドガッ !!

言い終わらないうちに、由紀の回し蹴りがボクの机を吹き飛ばした。
誰にも当たらなかったけど、一瞬ヒヤリとしたね、すごく。
「なんか言った? 恵」
「いえ、何も」
青い顔でボクは答えた。

「そりゃ恵はモテモテでしょうけどねぇ……。
 今まで何人の男子を振ったかお姉さんに言ってごらん?」
「え、いやいや――」
由紀の手がボクの頬にかけられた。
「やっぱり、恵には啓一クンがいるから他の男は要らないってことかしら?
 いいご身分よねえ……」
「いや、私と啓一はただの兄妹で――」
4498/12 ◆cW8I9jdrzY :2009/03/19(木) 12:36:55 ID:Qx1FNbIS
「うんうん、かっこいいお兄さんがいてうらやましいわ♪」
あまりの迫力にボクは言葉を飲み込んでしまう。

「よし、決めた。啓一クンを彼氏にしちゃおうっ!」
「はい?」
「だから恵、とっとと段取りを整えなさい。
 今啓一クンに彼女はいないでしょ?」
「う、うん。いない――けど……」

やだなぁ。普段はいい子なんだけど、
どうして男絡みになるとこう暴走しちゃうのかな、由紀は。
でもここで「イヤです」とでも言おうものならボクの命が危ない。

――仕方ない。

ボクは栄太を置いてB組からA組にやってきた。
「あ、啓一クン !? ちょうどよかったわ!」
「はあ……」
ボクはため息をつきながら、由紀の前に歩を進める。

「坂本さん」
「啓一クン……?」

うるんだ目でこちらを熱く見つめる由紀。
でもゴメン。やっぱ無理。
「済まない。さよなら」
短く言い、啓一は教室を出て行った。

「…………」
後に残されたのは固まった由紀と、何が起きているのか
よくわかってないクラスメート達。
でもボクにはよくわかる。早く逃げないと危険だということが。

「○△θ$%ふじこ□Ω煤` !!」
何とか逃げ出した恵の後ろから、絶叫と轟音が追いかけてきた。
4509/12 ◆cW8I9jdrzY :2009/03/19(木) 12:41:13 ID:Qx1FNbIS
生まれたときから、ボクは一人だった。
本来は「啓一」と「恵」という二人の人間のはずなのだが、
なぜか二つの体に対して、心は一つしか生まれてこなかった。
恵の視覚は啓一の脳に。啓一の味覚は恵の脳に。
全ての感覚がつながっていて、互いの全てを理解することができる。

そしてそれは思考も同じだった。
ボクの人格は「啓一」でもあると同時に「恵」でもある。
双子のテレパシーとかそんな生易しいものじゃない。
生まれたときから完全に人格が一体となっているのだ。

そのため、小さい頃は随分と苦労した。
「ねえママ、ボクは啓一なの? 恵なの?」
二つの口を揃えて尋ねるボクに、ママは不思議そうな顔をして答えた。
「いい? あなたは啓一。あなたは恵。
 双子だからって間違えちゃだめよ?」
いや、だから両方ボクなんですけど……。

自分が特異体質だと理解するまで大変だったが、
この状態でずっと生きているとさすがに適応もしてしまう。
常人の二倍の情報量にも混乱することもなく、
二つの別々の体を片方は「啓一」、もう一方は「恵」として違和感なく動かす。
ピアノの演奏で左右の手が別々の動きをしているっていう表現が近いかな?
きっと、今のボクは世界一器用な人間に違いない。
恵の体で勉強にいそしみながら、啓一の体でスポーツに励む。
そしてどちらの知識も経験もボクの中で一つになる。
という訳で「啓一」も「恵」も何でもできる万能型の優等生だった。
45110/12:2009/03/19(木) 12:44:06 ID:Qx1FNbIS
困ったのが思春期の体の変化だ。
恵が生理になったり啓一が精通を迎えたり、
成長するにしたがってはっきりしてくる男女の体の違いに戸惑ったものだ。

自慰を覚えたのももちろん同時、中学生のときだった。
もっともボクの場合、他人から見れば自慰とは言えないだろう。
自分のチンチンを自分の割れ目に挿れるのだから、
行為そのものはただの近親相姦にしか見えない。
でも信じて下さい。これはオナニーなんです。
自分で自分の唇を吸ったり、いろんな体位を試してみたり
安全日だからって生で出しまくったりするのも自家受粉なんです。
まあ、まだ受粉はしてないけれど。

今日は部活もなかったので同時に帰れた。
「ただいまおかえり」
書き置きを見ると、ママもパパも帰りが遅くなるらしい。
仕方ない、今日はボクが夕食を作るか。

「いただきますごちそうさまでした」
残りはパパとママに置いとこう。
料理するのも食器を洗うのも、啓一と恵は完璧な連携で仕上げてしまう。
連携というか、何と言いますか。まあ自分だし。
お風呂に入るまでゴロゴロするか、と思ったが
せっかくだから朝の続きをすることにした。
45211/12 ◆cW8I9jdrzY :2009/03/19(木) 12:47:30 ID:Qx1FNbIS
ベッドの上で、上半身だけ裸になった恵が顔を赤らめている。
「うむ、我ながらなかなかのエロス」
ボクの中の男の部分も興奮している。

啓一は後ろに回りこむと、恵の乳房を揉み始めた。
「んっ……」
いつものように恵の顔を上げ、啓一にキスをさせる。
自分で自分にする、丁寧で濃厚な口付け。

――はむ、ちゅ……ちゅぱっ。

今日もなかなか感度がいい。常人の二倍の感覚はダテじゃない。
たっぷり一分ほど舌を絡めて離すと、唾液の端がボクの二つの口をつないだ。
うっわ。ボクの顔、エロすぎる。
写真に取っておきたくなったが、誰かに流すのにも抵抗がある。
小遣いに困ったらやるとしよう。

ボクは両方の服を脱がせると、
四本の手を交互に互いの秘所に伸ばし、ゆっくりと刺激した。
自分の手だからどれでもいいっちゃいいのだが、
やっぱりチンチンは女の手、アソコは男の手じゃないと気分が出ない。
既に恵のアソコはぐっちょりと濡れているし、
啓一もすぐに先走りの汁が出てくる。

「はあ……はあ……」
二つの口から同時に漏れる熱い息。
これも合わせた方がなんかエロい気がする。
「ん―― !!」
恵の方が先にイキそうになり、慌てて啓一の手を引っ込めた。
中身は一つだけれど、体は恵の方が敏感らしい。

それじゃ、そろそろ挿れますか。
ボクは恵を四つんばいにさせると、後ろから啓一のを受け入れた。
45312/12 ◆cW8I9jdrzY :2009/03/19(木) 12:53:31 ID:Qx1FNbIS
――ジュポッ、ジュポッ……。
汁まみれのアソコが、嬉しそうに肉棒に絡む。

「あああああ――」
「いい……!」
どちらの腰を動かしても、両方の口から声が出る。
ボクは入れる快感と入れられる快感に喘いだ。
突きこむと、ボクの先が奥まで当たる気がする。
「あ――うう……」
恵の胸もそこそこだけど、啓一のチンチンにも自信がある。
少なくとも、自分の「女」の部分には相性バッチリ、一番奥まで届いている。
まあ、これも全部オナニーなんですけどね。

――グチュッ、ジュッ……ヌポッ……。
「ううああ……!」
「うひいいい……!」
いかんいかん、そんなこと考えてる間に高ぶってきた。
普通の人間の二倍の性感が、ボクの頭をかき回す。
入れて入れられ、突っ込んで突っ込まれ。

よし、今日は同時にイクとしよう。
安全日だし大丈夫でしょ、と軽く考えて中出しを決める。
「……はあああっ !!」
啓一と恵、二つの体がビクンと跳ね、ボクは絶頂に達した。
熱いモノを出して出されて。
ビュルルル、とボクの膣の中にボクの精液が注がれる。
「……はあ、はあ……」
どちらの体も息もたえだえ、つながったままベッドに倒れこんでしまった。

……はーあ。
している間は興奮したけど、イクとつい冷めてしまう。
ボクは一体、何をしているんだ。
傍目から見ればセックスかもしれないが、やっぱりこれは寂しい。
こんなことで性欲を発散するくらいなら、早く恋人を作った方がいい。

「恋人、なあ……」
「恋人、ねえ……」
男相手にはボクの「男」の部分が反発し、
女相手にはボクの「女」が反発する。
こんなボクに恋人なんてできるのだろうか。
でもこうして日々自家受粉に励むのも空しい。
それともボクは生まれながらのナルシストなんだろうか?

ふう、とため息をついて啓一が恵の体から抜けた。
ゴポッ、と音がして汁がシーツにこぼれる。
――はあ、お風呂に入ろう。
ボクは後始末をすると全裸の二つの体を起き上がらせ、
そのまま浴室に向かったのだった。
454 ◆cW8I9jdrzY :2009/03/19(木) 12:57:53 ID:Qx1FNbIS
以上となります。
元々はODスレ用のSSだったのですが、どこをどう間違えたのかこんな話に…
長々とスレ汚し申し訳ありませんでした。
ではこれにて失礼致します。
455名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 18:44:39 ID:1p0cWDAs
>>442
全体に漂う空しさというか、醒めた空気が妙にエロチックに感じました。
逆にセックスになると、奇妙に即物的で淡々と
あっけらかんと処理している感じになるのがまた面白いです。
良いものを読ませてもらいました。ありがとう。
456名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 00:47:00 ID:0l593Bq9
エロいな
凄くエロい
457名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 09:42:14 ID:79DiRfrS
ちょっと変わったふたなりモノって感じか。
なかなかいいっすの。
458439 ◆cW8I9jdrzY :2009/03/22(日) 15:38:07 ID:sf2g5jU8
>>439です。
あれから続きを書いてみたので投下でございます。
今回はエロなしで申し訳ないですが。
459ふたりはひとつ その2(1/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/03/22(日) 15:41:53 ID:sf2g5jU8
昼休み。2年A組の坂本由紀は珍しく男子生徒に呼び出された。
「何よ、話って」
由紀はショートヘアを茶色に染めた、活発そうな女生徒だ。
運動部には入っていないが、普段の暴れっぷりが高じて
周囲からは「格闘王」の称号を与えられている。
恋多き年頃なのだが、おかげで彼女を受け入れてくれる
寛容で丈夫な恋人にはまだめぐり合っていない。

「ああ、悪ぃな」
壁にもたれた男子生徒が軽い調子で言う。
ニヤけた顔が妙に軽薄さを感じさせる、見るからにお調子者といった男だ。
隣のクラスの佐藤栄太。顔見知りではあるが
由紀とはそれほど親しい訳ではなかった。
「坂本、お前に頼みがある」
「頼み?」
由紀の顔は不審げな表情を浮かべた。

栄太のトボけた軽いキャラは、由紀の好みとはカスリもしない。
そんな相手にいきなりお願いなどされては、つい身構えてしまうというものだ。
「これを見てくれ」
栄太が取り出したのは、郊外にある水族館の割引券だった。
「何それ。一緒に来いって? お生憎さま、お断りするわ。
 正直言って、あんたなんか全然タイプじゃないのよね」
デートの申し込みを、由紀が両断する。

「ふっ、わかってるさ、そんなことは」
ひどい言われようだったが、なぜか栄太は余裕のある態度を保っていた。
「よく見ろ。実はこの券、四名様まで使えるんだ。
 これがどういうことかわかるよな?」
「――え?」

由紀は相手の顔を見た。
たしかこいつは、あの水野啓一と仲が良かったはずだ。
そして由紀の友達の水野恵を狙っているらしい。
由紀は栄太の意図を理解し、口端をつり上げた。
「なーるほど。あんたは啓一クンを、
 あたしは恵を誘えばいいってことね」
「ご名答。どうだ? 悪い話じゃないだろ」
「いいわ。その話乗った」
「交渉成立、だな」
二人は教室の隅で、笑いながら握手を交わした。
460ふたりはひとつ その2(2/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/03/22(日) 15:44:52 ID:sf2g5jU8
よく晴れた日曜の午前。
集合場所の駅前には、三人の男女が集まっていた。
「もお、遅〜い! 佐藤のやつ、人を誘っといて最後に来るとか
 マジ人として終わってるやつよね !?」
「ご、ごめん……」
「いや、別に啓一クンは謝らなくていいのよ。
 悪いのはあの頭の軽い馬鹿なんだから」
由紀が腰に手を当てて笑う。

今日の由紀はベージュのタンクトップに紺のミニスカートだった。
本当はショートパンツの方が性に合っているのだが「啓一クンは絶対に
こっちのが好きなはず!」ということで、彼女なりに選んできたらしい。
「後で絶対あいつにおごらせてやる。覚悟してなさい、ふふふ……」
後ろを向いて赤いオーラを身にまとう由紀に、
啓一と恵は冷や汗を浮かべて一歩身を引いた。

やがて栄太がやってきて由紀の飛び蹴りを顔面に受けると、
一行は水族館方面へのバスに乗りこんだ。
「フリルの下着なんて似合わない物を……」
「あ、見えちゃった? ごめんね。
 今度は見せないようにちゃんと気をつけて蹴り飛ばすから」
「……すいませんでした」
そのやり取りを横で見ていた二人が笑う。

(恵さん、やっぱり笑顔がいいなあ)
恵は白のインナーに青のベスト、フレアスカートという装いで、
背中までふわりと伸びたツヤのある黒髪が清楚なイメージを抱かせる。
「今日こそ! 俺は! ゲットだぜ!」
「……どうしたの? 佐藤君」
「あーいやいや、何でもありません。恵さん」
バスの中で騒ぐ栄太を、恵は首をかしげて見つめた。
座席は栄太と恵、由紀と啓一が隣り合うようにしている。
バスが着くまでの十数分の間、栄太はちらちらと横を見ながら
頭の中で策を巡らせていた。
461ふたりはひとつ その2(3/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/03/22(日) 15:47:00 ID:sf2g5jU8
「へ〜え、やっぱキレイねぇ」
由紀が水槽の熱帯魚を見て声をあげる。
「こらこら坂本、あんまりウロウロしてると迷子になるぞ」
「失礼ね、大丈夫よ!」
まだ早い時間とはいえ、休日の水族館は
カップルや親子連れでそれなりに混雑していた。
この様子では、一度はぐれてしまうとなかなか合流できそうにない。
しかし栄太と由紀にとっては、それが狙いだった。

「タコって意外と愛嬌あるんだな、驚いたよ」
「うん。とってもかわいいわね」
二人の後ろでは啓一と恵が仲良く歩いていた。
似合いの美男子と美少女のカップルに見えるが、
人によっては顔立ちから二人の血の繋がりに気づくだろう。

「……よし、そろそろいいだろう。頼んだぞ」
「わかったわ。そっちも頑張りなよ」
「ふっ、タイタニックに乗ったつもりでいてくれ」
「あんたそれ意味わかってる……?」
ボソボソと小さな声で栄太との会話を済ませると、
由紀は明るい声で啓一に話しかけた。

「あ、あっちにペンギンがいるんだって! 啓一クン、見に行こ!」
「え? あ、う、うん……」
半ば強引に啓一と腕を組むと、
由紀は彼を通路の向こうに引っ張っていった。
「あ……」
恵が声を漏らすが、大騒ぎしている幼稚園児の群れに通路をふさがれ
その場に取り残されてしまった。

「大丈夫ですか、恵さん?」
その横に栄太が笑顔で立つ。
「坂本もしょうがないヤツですね。
 仕方ない、あの二人とは後で合流しましょう」
「え、ええ……」
栄太は作戦がうまくいったことに舞い上がっていたため、
恵のつぶやきは耳に入らなかった。
「――そっか、栄太も由紀も……やれやれ……」
462ふたりはひとつ その2(4/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/03/22(日) 15:49:39 ID:sf2g5jU8
由紀は啓一と手を繋ぎ、上機嫌で歩いていた。
「あれー? 恵も佐藤もいつの間にかいなくなっちゃったわね。
 仕方ないから啓一クンも一緒にさがそ?」
無論、見つけるつもりはない。
このまま出口まで二人っきりで館内を巡るつもりだった。

「大丈夫。あの二人は順路を三つ曲がった後ろにいるから、
 ここで待ってればすぐに合流できるよ」
「――はい?」
何か今、さらりと信じられない言葉を聞いた気がする。
「あ、携帯のGPS? やっぱり啓一クン、あの子が心配で
 いっつも居場所を把握してるのね。恵が羨ましいわ♪」
「GPSなんてないよ。でもわかるんだ」
「……あっそ……」

あんたはニュータイプかジョースターの血統ですか。
そう突っ込みたかったが、ここでまた啓一と恵を一緒にしては
計画が台無しである。由紀は啓一の腕をとった。
「ま、まあ場所がわかってるなら心配いらないわよね。
 とにかく、あちこち回りましょ?」
「んー、そうだね。それでもいいか」
気のない啓一の返事に怒りを隠しつつ、
由紀と啓一は順路から少し外れた展示室にやってきた。

水槽とパネルに囲まれた、円形の部屋である。
大した展示はないようで、他に人はいなかった。好都合だ。
「ちょっと座りましょ」
「うん」
由紀は啓一と一緒に部屋の隅の長椅子に腰を下ろした。
463ふたりはひとつ その2(5/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/03/22(日) 15:52:07 ID:sf2g5jU8
「ねえ、啓一クン」
「何? 坂本さん」
「ダメよ。苗字じゃなくて名前で呼んでほしいの」
「いいよ、由紀さん」
啓一は由紀の方を向き微笑んだ。
その笑顔に思わずドキリとさせられる。

(こうして見ると……恵と結構似てるのね)
もちろん啓一は恵より身長は高いし、サッカー部のレギュラーをしていて
脚や胸板も男らしく力強い。
だが筋の通った鼻や薄い唇など、顔のパーツは恵と共通点があった。
顔だけでなく、啓一と恵はともにスポーツ万能にして
成績も仲良く学年ベストテンに入る模範的な優等生だった。

テストでは二人が毎回ほぼ同じ点と解答になるため
一時はカンニング疑惑をかけられたこともあったのだが、
別々のクラスで試験を受けているのにカンニングのしようがない、
ということで潔白が証明された。その代わりしばらくの間
二人のあだ名が「フロスト兄妹」になってしまったが。

(それに、表情も似てる気がする……)
恵が男の子になったらこんな感じだろうか。
いつもの友人と同じ親しみがわいてきて、
由紀は長椅子に座ったまま啓一にもたれかかった。

「啓一、クン……」
「何だい? 由紀さん」
「この前は断られちゃったけど……その、良かったらあたしと、
 お付き合いしてください……!」

顔を赤らめて告白してきた由紀を見て、
啓一は困った顔で頬をポリポリとかいた。
「困ったなあ……それはこの前、きちんとお断りしたんだけど」
「だって、啓一クンって何だか他人とは思えないんだもん。
 まるで恵と話してるような感じがして……」
「そりゃそうさ」
「?」
啓一の意外な言葉に由紀は疑問符を浮かべた。
そんな由紀に啓一が口を開く。
464ふたりはひとつ その2(6/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/03/22(日) 15:53:36 ID:sf2g5jU8
「ごめんなさいね、由紀。やっぱり駄目なの」
「……え?」
「わからないの? 私よ、私」
「――け、啓一クン……?」
にっこり微笑んで目の前の少女に言葉をかける啓一。
だがその口調は今までとまるで違っていた。
「由紀はちょっと乱暴だけど元気が良くて、私はいつも助けられてる。
 あなたは大事な大事な、私の友達よ」

由紀は大きく目を見開き、座ったまま飛び跳ねて
啓一から一メートルほど離れた。
その弾みで長椅子から落ちそうになるが、そんなことはどうでもよかった。
「でも恋人にしたいかっていうと、ちょっと違うの。
 ……ごめんなさい。あなたの気持ちに答えられなくて……」

(――まるで恵と話してるみたい――)

さっき自分の言った言葉が頭の中に蘇る。
「あ……ああ……あぁあ……!」
肩を震わせ歯の根を鳴らし、腰を抜かして由紀は怯えていた。
465ふたりはひとつ その2(7/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/03/22(日) 15:54:59 ID:sf2g5jU8
人間の頭より大きな笠を持つ巨大なクラゲがふわふわと浮かんでいた。
「すごーい……」
「デカいですね」
恵が水槽に両手をつけて見入る。
「体は赤いのに、笠だけ白いのね」
「こっちの小さいのは全身がオレンジ色ですよ」
「あ、ホントだ」
無邪気な子供のようにクラゲを見つめる恵の様子は
普段の控え目な態度とはまた違った愛らしさを感じさせる。
(恵さんってこういう顔もできるんだ……)

ここも順路からは外れた位置にあり、先ほど嵐のような幼稚園児たちが
走り去ってからは無人の空間になっていた。
暗めの照明と幻想的に泳ぎ回るクラゲの群れの前で、
憧れの美少女とたった二人きり。
(ここで勇気を出さないと、男じゃない……!)

「あ、あの、恵さん!」
「何かしら、佐藤君?」
にっこり笑う恵の顔が間近にある。清楚で、可憐で、そして綺麗で。
栄太は恵の肩に両手を置き、震える声で言った。
「ぼ、僕は、恵さんのことが……好きですっ !!」
恵は聖母のような笑顔を浮かべ、栄太を見つめた。
466ふたりはひとつ その2(8/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/03/22(日) 15:57:57 ID:sf2g5jU8
「――やれやれ。こうなると思ったよ」
「え?」
恵の発した言葉に、栄太はとっさに反応できなかった。

「由紀と二人で、俺にコンビネーションアタックを仕掛けた訳だ。
 まあ魚もクラゲもタコも綺麗だから、来た甲斐はあったけどな」
「め、恵さん……?」
こちらを見つめる大きな瞳。癖がなく揺れる、つややかなストレートの黒髪。
薄く可愛らしい唇から漏れる透き通った声。
間違いなく、そこにいる少女は水野恵であるはずだ。
なのに――。
(け……啓一…… !?)

信じられない状況に、栄太はよろめいて一歩後ろに下がった。
恵は空いた距離を詰めるようにこちらに歩を進める。
先ほどは自分から近づいていたはずなのに、今は立場が逆だ。

「栄太。お前が面食いなのはよく知ってるけど、
 顔だけで相手に告白するのは正直言ってどうかと思うぞ。
 そんなだから、未だに彼女ができないんだよお前は」
恵はニヤリと笑った。いつもは絶対に見られない表情。
まるで啓一のようだった。

「え、えーと、あの、その……」
「仕方ないから今日は一緒にいてやるけどな。
 お前も俺なんか狙うのはやめて、もっとちゃんとした女の子に告白しろよ」
栄太はパニックになっていた。
なんで恵さんが男のように喋っているんだ?
なんで啓一みたいなセリフを吐くんだ?
なんであいつと同じ顔をする?
(な、何なんだよ……訳わかんねえよ……!」
憧れの少女と会話することも逃げ出すこともできず、
彼はクラゲの水槽の前で立ちすくんでいた。
467ふたりはひとつ その2(9/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/03/22(日) 16:00:17 ID:sf2g5jU8
「……なんてね」
「え?」
いきなり元の表情に戻った啓一に、由紀は間の抜けた声をあげた。
「どうだい? 由紀さん。恵っぽかっただろ? 俺」
「け、啓一クン?」
そこにいるのはいつも通りの凛々しい顔の啓一だった。

「俺の隠し芸なんだ。恵の物真似」
「そ――そう、なの……」
「恵にそっくりだっただろ?」
「そ、そうね……すごく似てた……さすが双子ね……」
はああああ……と思いっきり息を吐き出し、
由紀は疲れたように長椅子に両手をついた。

「という訳だから、由紀さん。ホントゴメン」
「あ……う、うん……いいよいいよ……」
この世のものならぬ光景を見せられた後では、
交際を断られたことなどどうでもよくなってしまう。
むしろ啓一には近づかない方がいいと由紀の本能が訴えていた。

「じゃあ、そろそろ合流しようか」
「え?」
「恵と栄太はあそこのクラゲコーナーにいる。
 もう昼だし、そろそろ合流してメシにしよう」
やはり、啓一には恵の位置がわかるらしい。
(せ、詮索しちゃ駄目な気がする……)
こうして、由紀の彼氏いない歴はまだ続くのだった。
468ふたりはひとつ その2(10/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/03/22(日) 16:03:01 ID:sf2g5jU8
恵は再び微笑むと、ぺこりと栄太に頭を下げた。
「ごめんなさい、佐藤君を驚かせちゃって」
「……え……?」
「今の、啓一が教えてくれたの。
 佐藤君に言い寄られたらこうすればいいって」
「そ、そーなんですか……啓一のヤツ……ハハハ……」
栄太は汗を垂らしながらうなずいた。

「どう? 私、啓一に似てたでしょ?」
「ええ……そりゃもーそっくり……」
胸をなで下ろし、ハァハァと呼吸を整える栄太。
「ごめんね。せっかく私なんかに告白してくれたのに」
「い、いやいや、別にいーッスよ……。
 恵さんと俺じゃ、やっぱ全然釣り合わねー……」
「でもさっきの佐藤君もステキだったよ?」
満面の笑みを浮かべる恵にドキリとさせられ、栄太は慌てて首を振った。

「おーい!」
その時、後ろから啓一の声がした。
「あ、ああ。啓一……」
啓一の背後には由紀が消耗しきった顔で立っている。
栄太は汗の乾かぬ顔で由紀に話しかけた。
「だ、駄目だった……何つーか俺にゃ無理……」
「あ、あたしも……諦めた……」

このあと四人はファミレスで昼食をとり、
その勢いでカラオケということになった。
もちろん啓一と恵の完璧なデュエットに、栄太と由紀が
完膚なきまでに叩きのめされたのは言うまでもない。

「あいつら一体なんなんだ……」
「悪い。佐藤、肩貸して……」

よろよろと帰ってゆく二人を見送りながら、
啓一と恵はいつものように穏やかな笑みを浮かべていた。
誰にも聞こえない声が風に乗って流れてゆく。
「まあ、たまにはこういうのもいいかもね」
469439 ◆cW8I9jdrzY :2009/03/22(日) 16:08:43 ID:sf2g5jU8
以上となります。

前の続きなので題名つけてみたりエロがなかったり
ちょっぴりホラーだったりTSことトランスセクシャルぽかったり
双子ものだけど姉or妹スレに投下したら白い目で見られそうだったり
やっぱりここのスレ向けのSSだと思ってます。

ではこれで失礼致します。スレ汚し以下略
470名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 17:04:49 ID:8J2Hs0Kf
乙乙!
続きものとかここ、あんまりないから
逆に嬉しいだろ、常識的に
エロなくても、ふいんきがよかった
471名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 20:11:46 ID:0l593Bq9
おお! 続きが来てる
面白かったよ
GJ!!
472名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 09:25:33 ID:9ZbygIO9
面白いな
473名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 12:40:32 ID:/OCfGYVg

なんか癒された
474名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 12:09:47 ID:zORcaXoH
何故か毎日のぞいちゃうんだよ、ここ
475名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 11:08:33 ID:fDWRByRC
アテクシも
476名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 11:21:57 ID:JKDAefGy
>469
ねぇ、これって、猫玄の漫画じゃないか?
477439 ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:07:43 ID:kGrMeLwS
>>439です。
ついまた続きを書いてしまったので投下投下。
今回はエロつきですが、やはり雰囲気重視にしています。
だんだんファンタジーっぽくなってますが気にしない。
478ふたりはひとつ その3(1/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:09:10 ID:kGrMeLwS
穏やかな日の夕方。
駅前のドトールに二人組の男女が入ってきた。
どちらも綺麗な顔立ちをした制服姿の高校生で、
穏やかで柔らかい雰囲気がよく似ていた。
ひょっとしたら兄妹なのかもしれない。

「いらっしゃいませ。何になさいますか?」
カウンターの向こうから笑顔で応対する店員に、
少女の方が二人分の注文を淡々と告げた。普通こんな場面では
何を頼むかとか、支払いをどうするかで会話の一つも交わすものだが、
少女は金を払うと無言で空いた席に座り、その後から少年が
二人分のコーヒーとミラノサンドを乗せたトレイを持って
黙って彼女のテーブルに運んでいった。

席についてからも、両者は何も話さなかった。
黙ったまま静かにコーヒーをすすり、サンドをかじる。
まったく会話を交わさない二人を見て、ケンカでもしているのだろうか、
と隣のサラリーマンがちらりと少女に興味深げな視線を向けたが
どうもそういう訳でもないようだ。彼女は男の視線に気づくと、
にわかに笑みを浮かべて向かいの少年に話しかけた。

「ねえ啓一。佐藤君どうしてる?」
テーブルの上には、シュガーの空き袋と
ミルクの空容器が二つずつ転がっている。
「ん、啓太がどうかしたか?」
カップを口に運んで、啓一と呼ばれた少年が聞き返した。

「それがね。今日の帰り由紀と一緒だったの。
 ひょっとしたらあの二人……付き合ってたりして」
「へえ、いまいち合わないと思ってたんだけどな。性格が」
「こないだの水族館でくっついちゃったかも。
 もしそうだったら、私たちのおかげじゃない?」
「……何言ってんだよ、お前は」
嬉しそうに話す少女に向かい、呆れた表情で少年が言った。

少女のよく手入れされた黒いストレートの髪が揺れ、
セーラー服の肩をふわりと撫でる。
やはりどこにでもいる、ありふれたカップルのようだ。
サラリーマンは隣の席から聞こえてくる高校生らしい平凡な会話を
羨ましそうに聞き流すと、コーヒーを飲み干して席を立った。
穏やかで弛緩した空気が店内を包む。
479ふたりはひとつ その3(2/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:09:55 ID:kGrMeLwS
少年の名は水野啓一。少女は水野恵。
生まれる前からずっと一緒だった双子の兄妹だ。
共に成績優秀、スポーツ万能で啓一はサッカー部に所属している。
恵は真面目で親切、清楚な感じが全身からにじみ出ており
その上校内でも評判の美少女だ。男子から告白されることも多かったが
彼女はその全てを穏便かつ迅速に断り続けていた。

啓一の方も優しい万能型の優等生で、やはり今まで
女子からの交際の申し込みの数々を残らず断っている。
二人とも決して失礼な態度は取らなかったので
大抵の相手は諦めてくれたが、断る理由については
高校の七不思議にも数えられるほどの謎とされていた。
誰もが認める優等生と美少女の兄妹が、共に恋人を作らず
ずっと独り身でいるのである。周りが不思議に思わないはずがない。

「ひょっとしてあの二人、兄妹で付き合ってるんじゃないか?」
そんな疑問が出てくるのは当然の話だったが、
啓一と恵が恋仲になっているというのは誰が見ても考えにくかった。
実は、二人はあまり仲が良いようには見えないのである。

啓一の朝練がない日はいつも一緒に登校するし、二人とも
同じ中身の(量は違うが)弁当を学校に持ってくる。
だが二人は教室や通学路で一緒にいても会話を交わす事はなく、
二人だけのときもお互い黙って何も言わないらしい。
他の人間には普通に喋るのに、兄妹の間の会話がほとんどない。
かといって仲が悪いかと言えばそうでもなさそうで、
勉強や運動をやらせれば抜群の連係を発揮する。

仲が良いのか悪いのか、それすらもわからない。
強いて言えばお互いを完全に意識していないような、
まるで二人で一人の人間かのような振舞いだった。
480ふたりはひとつ その3(3/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:10:31 ID:kGrMeLwS
啓一と恵はテーブルで話に興じていたが、そこに声がかけられた。
「隣、いいですか?」
「はい。どうぞ」
隣のサラリーマンはさっき出て行ったので空いている。
啓一は相手を見返してうなずいた。

「じゃあ失礼します」
席についたのは二人と同じ年頃の少年だった。
やはり高校生のように思われ、白いワイシャツとネクタイ、
黒のスラックスという平凡な格好である。
二人が思わず目を見張ったのは、優しい笑みをたたえた美貌だった。
啓一などとは比べ物にならないほどの端正な顔は、
美術館から抜け出てきた古代の英雄の彫刻を思わせる。

少年はにこにこした顔でアイスティーにシロップを入れた。
ストローを刺して冷たい液体を一口吸い、笑みを浮かべる。
何気ないその仕草から目が離せず、二人は彼を見ていた。
「ご兄妹ですか?」
そんな啓一と恵に、彼が問う。

数瞬後、ようやく啓一は自分が聞かれたのだと気づき、
慌てて少年に答えて言った。
「は、はい、双子なんです。俺が啓一、こっちが恵」
「やっぱり似てますね」
「よく言われます」
啓一は愛想笑いを浮かべた。

二人とも、今までこの少年と会ったことはない。
もしこの顔を一度でも見ていたら決して忘れないだろう。
それほどまでに彼の印象は強かった。
だがそれ以上に啓一と恵が気になったのは
この少年にどこかで会ったことがあるような、という
先ほどの事実とは矛盾した感情だった。
まったく記憶にないのに、なぜかどこかで見たような……。
そんな思いが頭を離れないのである。
481ふたりはひとつ その3(4/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:11:05 ID:kGrMeLwS
二人はそのままじっと少年を見ていたが、
こうしてずっと黙って相手を眺めているのも失礼な話だ。
仕方なく啓一は、気になったことを正直にぶつけてみた。
「すいません、あの……どこかで会ったこと、ありましたっけ?」

少年はストローに口をつけ、悠然と言った。
「ええ、ありますよ」
その返答に二人は納得した。
やはり思い違いではなかったのだ。
「ああ、やっぱりそうでしたか。なんとなくそんな気がしたんです。
 それでえーと、いつ、どこででした?」

疑問が解消されてほっとした顔で啓一が言う。
彼はそんな啓一ににっこりと笑って答えた。
「あれはたしか、君たちがお母さんのお腹の中に
 いたときだから……十七、八年ほど前だったと思います」
「……は?」
「久しぶりですね。ちゃんと成長していて安心しました。
 水野啓一さん、水野恵さん」

突拍子もない事を言い出した彼に呆気に取られ、
二人は呆けた顔で美貌の少年を見ていた。
「僕は知ってるよ。二人が一つの人格、一つの存在だってことを」
「―――― !!」
誰も知らない二人の秘密を口にされ、啓一と恵の顔が強張った。

「君たちは感覚、記憶、人格を共有しているよね。
 啓一さんの感じたことは恵さんの感覚でもあるし、
 恵さんの思考は同時に啓一さんの意識でもある。
 例えるなら右手と左手。そんな関係ってとこだね、二人は」
482ふたりはひとつ その3(5/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:11:42 ID:kGrMeLwS
「な、何でそんなこと……!」
啓一と恵の共有人格が、二つの口から同じ言葉を発した。
二つの体に一つの心。男にして女。兄にして妹。
これが、二人ともが万能の優等生である理由だった。
二つの体で経験した記憶が共有されているため、
勉強の知識もスポーツの経験も一つになっているのだ。
家事も遊びも、自在に連係・分担して完璧にこなすことができる。
啓一は恵であり、恵は啓一だった。存在に垣根はなく、
二つの心と思考は生まれたときから完全に溶け合い、一体となっていた。

少年は穏やかに笑いながら、透き通るような視線を二人に向けている。
「大丈夫だよ。周りは誰も聞いてないから」
細い人差し指を自分の口に当て、少年が言った。
その言葉に二人は辺りを見回したが、他の客も店員も、
誰も三人のことを気にしていなかった。
まるでそこに誰もいないかのように、誰も目を留めない。
「ほら。誰も見てないし、聞いてない」
惚れ惚れするような笑顔で少年が再び言った。

「あなたは……誰ですか?
 ボクの秘密は誰も知らないはずなのに……」
恵が強い目つきで相手をにらみつける。
「あはは、警戒されてるね。でも大丈夫さ」
「あなたは誰なんですか……!
 なぜあなたはボクのことを知っているんですか!」
「簡単だよ」
ぴんと指を立て、少年は答えた。
「君たちを一つにしたのが僕だからさ」
483ふたりはひとつ その3(6/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:12:37 ID:kGrMeLwS
「…………」
「…………」
あっさりすぎる物言いに、二人はしばし呆然とした。
少年はそんな二人に聞かせるように語りだす。
「昔むかしのことでした。大きなお腹をかかえた妊婦さんが
 家に帰ろうと道を歩いていました。妊婦さんのお腹の中には
 双子の赤ちゃんが入っていて、幸せそうに笑っていました」
おとぎ話のような語り口で少年の声が響く。

「そこに一人の男の子がやってきました。
 男の子は妊婦さんに挨拶をして仲良くなると、
 ふっくらしたお腹を触らせてもらいました。そのとき、
 男の子はお腹の赤ちゃんたちの、まだ生まれてもいない心を
 粘土みたいにくっつけて、一つにしてしまいました」
「……まさか……!」
歌うような声。楽しそうな声だった。

「やがて可愛い男の子と女の子が生まれました。
 二人はいつも一緒で仲良く育ちましたが、
 他の子供たちとは何かが違っていました」
「…………」
「そう、二人には心が一つしかなかったのです」
相変わらず少年はにこにこと笑顔で二人を見つめている。

啓一と恵は同じ驚愕の表情で、同じセリフを吐いた。
「あなたが……ボクを…… !?」
にわかには信じがたい内容だったが、先ほどからの
少年の異様な雰囲気が、二人に嘘ではないと告げている。
「いやあ。ちゃんと育ってくれるか心配だったんだけど、
 うまくいったようだね。僕も嬉しいよ」
彼の優美な口が笑みを作っていた。
484ふたりはひとつ その3(7/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:13:37 ID:kGrMeLwS
「……なんで、そんなことっ !?」
二人は大声をあげたが、周囲の客は何も気にせずくつろいでいる。
世界がそこだけ切り離されているかのようだった。
「あれ、君はその体が嫌いなのかい? 僕はいいと思うんだけどなあ」
意外そうな声を少年があげる。

「いい訳ないだろ! こんな変な体で生まれてきて、
 小さい頃からボクがどれだけ苦労したと思ってるんだ!
 ボクだけ体が二つあるんだよ !? 悩みもしたし、
 人付き合いもまともにできないこともあった!
 こんな話、誰も信じちゃくれなかったしさ!」
「うーん、君にとっては嫌かもしれないけど、
 今の君は自分が考えてる以上の存在なんだよ?」
「何がっ !?」

聞き分けの悪い子供を見つめる大人の目を、少年がこちらに向けた。
「タロットの大アルカナ『世界』のカードを知ってるかい?
 この国では時を止めるジャンプ系漫画で有名なようだけど」
「そんなの知りません!」
「四方に置かれた天使や獣たち。輪を描いて伸びている植物。
 その真ん中、『世界』の中心に位置する一人の人物。それは
 究極にして完璧な存在、始まりにして終わりであると解釈される」
少年は笑顔のまま小難しい話をし始めたが、
いきなりそんな訳のわからないことを言われても二人にはさっぱりだった。
恵は占いに多少興味があったが、タロットには詳しくない。

だが少年は二人の戸惑いを無視し、話を続けた。
「男にして女という完璧な人間。一般的には両性具有がそうじゃないかと
 言われているけれど、僕は違う方向からアプローチをしたくなった。
 そうして生まれてきたのが君ってわけさ」
「ボクが……完璧……?」
「赤子。母親。若者。老人。人間には色々あるだろうけど、
 一番基本の分け方はやっぱり男と女だよ。
 君はその両方の存在として、自己完結した心を持っている。
 互いに理解し合おうと、一つになろうと人間は愛し合うけれど、
 君たちは最初から一つになってるんだ。完全にね」
485ふたりはひとつ その3(8/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:14:42 ID:kGrMeLwS
この少年は何を言っているのだろう。
自分は何を聞いているのだろう。
「わかってるんだろう? 自分が他の人を愛せないってことを」
「――違う!」
二人は叫んだ。

「もちろん、君がただの高校生であることに変わりはない」
少年が落ち着いた声で続ける。
「完璧な人間……そんなのは言葉の遊びに近いからね。
 君は平凡な人より能力は高いけれど、それでも普通の人間の
 せいぜい二人分の価値しかないというのが現実だ。
 では百人の人格を結合すれば理想の人間になるのか?
 千人なら、万人なら? 人類全てを一つにすれば完全なのか?
 今後地球の人口が増えていくとして、今の六十億の統合より
 未来の百億の融合がより完璧と言えるんだろうか?
 君はそういった疑問を考えるためのテストケースなんだ」
「…………」
あまりに現実離れした話に、
二人は言葉に出せずに黙って少年を見つめていた。

「……とまあ、色々言ってはみたけれど――」
彼は話を区切るように楽しげに笑った。
「実のところ、僕も君にそこまで期待してる訳じゃない。
 簡単に言えば、ただの暇つぶしってことさ」
「………… !!」
ヒマツブシ。
あまりと言えばあまりの言葉に、啓一と恵が戦慄した。

「ああ、言い方が気に入らなかったなら謝るよ。
 でもこうして大きくなった君にわざわざ会いに来て、出生の秘密を
 説明してあげた意味を、もうちょっと考えてほしいな」
「……あなた、何者なんですか」
「何だっていいじゃない。楽しいんだから」
華麗な笑顔が、二人にはとても残酷に見えた。
486ふたりはひとつ その3(9/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:15:32 ID:kGrMeLwS
「という訳で、人生を思い悩む君にプレゼントをあげよう」
「……プレゼント?」
「普通の人間になりたいんだろ?」
衝撃の連続で、驚く気力も失われつつあった。
二人分の知恵と理解力を以てしても、事態の異様さについていけない。

座ったまま少年が軽く右手を上げた。
細くしなやかな指を広げ、二人の方に向ける。
「はい、終わり」
「…………?」
何もしたようには見えなかったが、次の瞬間には
少年は微笑んでその手を下ろし、席を立っていた。
「じゃあね」
ゆらりと店から出て行く美貌の少年を、
啓一と恵はただぼーっとして見送るだけだった。

「……何だったんだろ……」
「うん、さっぱり訳わからない……」
「――!?」
啓一が目を見開いた。
手はブルブルと震え、歯をカタカタと鳴らし、
なにか信じられないものを見るかのような表情だった。
そして、それは恵も同じ。

「君は……ボク?」
「――ボク、じゃないボクが……いる?」
啓一と恵。
二人は驚愕と恐怖におののきながらお互いの姿を見つめていた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 
487ふたりはひとつ その3(10/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:16:12 ID:kGrMeLwS
がっくりと肩を落として、二人は家路についていた。
珍しいことに、兄妹が二人きりで会話をしている。
「はあ……私たち、これからどうしたらいいんだろ……」
「ああ。俺もどうしたらいいのか……わからない。
 まさか、俺が二つに分かれちまう……なんてな」
「本当にお互いがわからなくなっちゃってるね。私たち」
横を歩く啓一の顔を珍しそうに見つめ、恵がつぶやく。

啓一と恵。
今まで一つだった人格が、あの時から二つに分裂してしまった。
もうお互いの見たもの、聞いたものは直接わからないし
相手が何を考えているかも勝手に想像するしかない。
啓一も恵も、一つだったときの記憶が残っているため
どちらも一人の人間として違和感なくいられるけれども、
今の二人はどこにでもいる、ただの双子の兄妹でしかなかった。

「――啓一」
名前を呼ぶのももどかしげに、セーラー服の少女が言った。
「私……誰? 私、もう啓一じゃないよね?」
「恵……お前は恵だ。ボクは……俺は啓一だ。
 俺たちは分裂してしまった。一人から二人になったんだ。
 もう俺はお前じゃないし、お前は俺じゃない」

恵の白い手を取り、啓一が夕陽に頬を染める。
そのまま腕を伸ばして少女の腰に回すと、
恵もまた同じように啓一に抱きついてきた。
誰もいない道の真ん中で少年と少女がじっと抱き合う。
十秒、二十秒、もっと。時間が止まっていた。

「これが、俺だけの感覚……」
「私、一人だけなんだ……」
密着して伝わってくる相手の体温も。背中に回された手の感触も。
かすかに漂ってくるお互いの匂いも。
これまでとは違い、共有することはなかった。
――トクン、トクン……。
静かな世界で聞こえてくる心臓の音だけが二つ感じられた。
488ふたりはひとつ その3(11/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:16:49 ID:kGrMeLwS
「……啓一」
「なに?」
いちいち聞き返さなければ、恵の言うことがわからない。
それは啓一にとって初めての不自由だった。
「私たち、分かれちゃったけど……」
「――ああ、うん。わかってる」

わからないけど、何となくわかる。
人間が逃れられない、不自由で不完全な理解。
それを啓一は今、我がこととして実感していた。
「分かれちゃったけど……私、すごくドキドキしてる。
 変、だよね……こんなの……」
「変じゃない。俺も……すごいドキドキしてる」
恵は見上げ、啓一は見下ろす。以前はその両方の視覚があった。
今はお互いが相手の顔を見つめ、頬を赤く染めるだけ。

恵のかかとが上がり、つま先立ちで背伸びをした。
自分のものでもあった顔が、見慣れた少女の顔が近づいてくるのを
啓一は緊張して見とれていた。
――ちゅ……。
触れ合った瞬間、啓一は目を閉じた。
口づけの感触を余さないよう、全感覚を動員して感じ取る。

啓一も、恵も。二人はそのまま動かなかった。
舌を動かすこともなく、抱き合う腕をきつく締めるでもなく。
二つの体が一つの彫刻となって、西からの赤い光を浴び続けていた。
それは欠けた体、欠けた心を取り戻そうとする行為。
分かれた人格が再び一つになろうともがいていた。

やがて影が離れ、二人はまた二つになった。
「えへ……キスってすごいね。私たち、一つだったときは
 フェラもセックスもあんなにしてたのにね」
「なんか……感覚は半分になっちまったけど、
 興奮は三倍にも四倍にもなってる気がする……」
「ねえ、家に帰って……続き、しよっか?」
夕陽のせいでなく真っ赤になって、啓一はうなずいた。
489ふたりはひとつ その3(12/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:17:31 ID:kGrMeLwS
もう日が暮れる。
荷物を置いて着替えをしようと啓一が部屋に入ると、
後ろから恵がぴったりついてきた。
「あれ、ここで着替えるのか?」
「うん……自分が半分になっちゃって不安なの。
 着替え見せてあげるから、啓一も見せて……」

なぜいちいち赤くなるのだろう。
互いに同じ人格を持っているはずなのに、
恵のソワソワした仕草や恥ずかしげな表情は
啓一にとって不可解で、だが嫌いにはなれなかった。

――スル……。
啓一の目の前で、恵がいつものように制服を脱ぐ。
彼自身も今までずっとやってきた当たり前の行動だったが、
なぜか啓一は妹から目を離せないでいた。
自分も脱いで着替えないといけないのだが。

「や、やっぱり気になる……?」
「え……」
頬を染めて恵がこちらを見上げてくる。
「私もそうだから……見られてると変な気分になってくるの……」
「――恵……」
「そっちも……見せて……?」

啓一も自分の制服に手をかけ、慣れた手つきでスルスルと脱いでゆく。
そして、兄妹は下着と靴下だけの姿になって向かい合った。
顔は赤く心臓は跳ね、熱っぽい視線を交換し合っている。
いつも見ていた自分の体。
もはや自分のものではない互いの体を見ながら、
啓一と恵は自分の半身に向かって口を開いた。
「とりあえず、服着てご飯作ろっか……」
「あ、ああ……そうだな」
490ふたりはひとつ その3(13/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:18:11 ID:kGrMeLwS
二人の両親は今でも夫婦仲が良く、
今日も子供たちを置いて映画と夕食に出かけていた。
啓一も恵も、自分たちのことは何でもこなせるように
なっているため、こうしたことは珍しくない。
小遣いが入るチャンスなので二人としても歓迎だった。

どちらも食欲はあまりなかった。
オムレツとサラダで簡単に済まそうとしたのだが、
今までと違い完璧な連係が取れなくなっていたので
何度もぶつかってしまい、二人の調理は少なからず混乱した。
そうして彼らは、自分が不完全な二つの半身に
分かれてしまったことを改めて思い知らされたのだった。

「一緒に一つのことをやらずに、分担した方がいいかも……」
「そうだな……何てこった……」
沈んだ顔で返事をする兄を、恵は笑顔で慰めた。
「でも、いつもより楽しかったよ?
 いつも私たち、何するにも一人だったんだもん……」
「恵……」
啓一はそんな妹の嬉しそうな顔を見てニッコリ笑うと、
ケチャップのついたオムレツの切れ端を口の中の放り込んだ。

夕食後、恵が食器の片付けを、啓一が風呂の用意をすることになった。
――ジャアアアア……。
洗剤のついた皿を洗う水音がキッチンに響く。
恵は馴れた手つきでどんどん洗い物を済ませていった。
軽く微笑んだ少女が考えているのは双子の兄のことだ。

(啓一、今何してるんだろ……)
兄が風呂掃除をまだしているのか。もう終わったのか。
啓一の感覚がない恵にはそれを知ることができない。
失われた半身の感覚。分裂した自我。
生まれて初めての事態に混乱も戸惑いもあったが、
しかし一番大きな感情が興奮であることに恵は驚いた。
491ふたりはひとつ その3(14/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:24:08 ID:kGrMeLwS
(生まれてから今まで、自分が異常だってずっと思ってて……。
 いきなりその原因の人が現れて……暇つぶしだなんて言われて……
 突然私が二つに分けられちゃって……何がなんだかわからないけど……)
それでも、心のどこかでそれを喜んでいる自分がいる。
自分は恵だと。彼は啓一だと。二人は別人なのだと。
啓一の顔。啓一の体。啓一の声。
それを「他人」のものとして見るのは素晴らしく新鮮だった。

「恵、終わったぞ。湯入れといたから」
「あ、ああ――うん、わかった」
戻ってきた啓一の声に、恵の思考が中断させられた。
こうして不意にかけられる兄の声も心地よい。

恵は片付けを終わらせると、
そのまま後ろに立ってこちらを見ている啓一に笑いかけた。
「どうしたの、啓一? そんなに見つめちゃって」
「あ、ああ……」
恵の片割れの少年は、ぼうっとした表情で妹の顔を見つめていた。
それがおかしくて、少女はつい笑ってしまう。
「あはは……わかってる。わかってるよ、啓一」

兄にとっては、自分を笑う妹の態度が気に入らなかったようだ。
「な、何がわかってるんだよ」
「何って、私のことが気になって仕方ないんでしょ?」
「そ、そんなこと……」
ムキになって否定しかけた啓一に、恵が頬を朱に染めて言う。
「……私たち、ついさっきまで一つだったんだよ?
 わからない訳ないよ。啓一が考えてることなんて」
穏やかな笑みをたたえ、少女は少年の前に立つ。

手を伸ばせば触れ合うほどの距離。
啓一は赤くなった顔をそらすように横に向けた。
「……でも、俺はもうお前じゃない。別人なんだ」
辛い、本当に辛そうな声を絞り出して啓一が言った。
戸惑いと不安、喪失感の混ざった感情に顔がかげる。
恵はそんな兄に手を伸ばし、そっと抱きついてやった。
492ふたりはひとつ その3(15/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:25:01 ID:kGrMeLwS
再びの抱擁。
自分のものではない柔らかな感触と暖かな体温が伝わってくる。
「恵……」
啓一も腕を回して、少女の華奢な体を締めつけた。
あったかい……。
自分で自分を暖めるのではなく、他人の体に暖められている
という実感が、啓一の心を溶かしていく。

「ん……啓一、痛いよ……」
「え? あ、ああ……ごめん」
知らない間に、つい力を入れすぎてしまったらしい。
彼は力を緩め、腕の輪の中に恵を包み込んだ。
「そうか……そっちの体、細いもんな……」
「そうだよ、よく知ってるでしょ?」
「うん、わかってる」

共に笑顔を浮かべ、二人は見つめあった。
うるんだ瞳の少女が言う。
「あーあ、私が啓一だったら良かったのに……」
「なんで?」
恵は少しだけ頬を膨らませて続けた。
「だって、君のことを見上げないといけないもん」
その表情が、啓一にはとても可愛く感じられた。

ふふふ、と思わず笑い声をあげて少年が答える。
「それは勘弁してほしいな。お前の顔、すっげー可愛いから」
「――馬鹿……自分の顔でしょ?」
「今は別人――だろ?」
「……ん……」
今度は目を開けたまま、兄は妹の唇を奪った。
493ふたりはひとつ その3(16/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:25:41 ID:kGrMeLwS
触れ合った口から舌を伸ばし、啓一が恵に侵入する。
彼女もそれはわかっていたようで、
こちらも舌を出して兄のものに絡め始めた。
――ちゅ、ちゅる……。
二人だけの静かな部屋に唾液を交換する音が響く。

人格が分かれていても、二人の動きはぴったりだった。
舌を絡め口内を舐め、互いの唾を吸いあう。
「はあ……ん……」
恵はトロンとした目で啓一を見上げている。
啓一もまた、荒い吐息を妹の中に送り込んで体を火照らせた。
奏でられる水音のワルツの下、一組の舌が踊り続ける。

「――ぷはぁっ……」
三十秒か一分か。呼吸が苦しくなってきたので一旦首を引く。
兄妹の混ざった唾液が、二人の唇を淫靡な架け橋でつないだ。
「……け、啓一ぃ……」
心はすっかり兄の虜になったと、恵の目がそう言っている。
きっと自分もそうなのだろう。啓一は残った理性で分析した。

「恵……」
一つになっていたときから知ってることだが、
同じ人格でも性感は恵の体の方が上だった。
自分の方がまだ衝動を抑えていられる。
それを自覚して、啓一は妹に言ってやった。
「……お前、よだれ垂れてるぞ」
ピンク色の唇の端から、一筋の雫が落ちかけていた。

その指摘に恵はハッと我に返り、怒った顔で言った。
「啓一ぃ……空気読んでよ」
「ふん、さっきのお返しさ」
啓一の舌が伸び、恵の唇をよだれごとペロリと舐める。
「………… !!」
兄の不意打ちに彼女は返す言葉を失い、
耐えかねたように熱い息を一つ吐いた。
494ふたりはひとつ その3(17/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:26:29 ID:kGrMeLwS
啓一はしてやったりといった表情で妹を見下ろした。
「続きは……上で、しよう」
今すぐ彼女に襲いかかりそうな欲望を必死で抑え、
彼はこくりとうなずいた恵を連れ、ゆっくり二階へ向かった。

自分の部屋に着くなり、啓一はベッドの上の妹に飛びかかり
荒々しく衣服を剥ぎ取った。
「あ、やだ……啓一、落ち着いて…… !!」
白いブラを取ると、恵の形のいい豊かな双丘が丸見えになった。
桃色のパンティと黒のニーソックスだけの裸体は
今まで散々見てきたはずなのに、ひどく啓一を刺激した。

ほぼ全裸の妹に覆いかぶさり、そっと頬ずりをする。
露になった少女の肌が啓一の顎にこすられて熱を持った。
「ダメだ……可愛い。恵、可愛いよ」
「そ、そんなこと……啓一に、言われるなんて……」
彼は上から恵の体をきつく抱きしめ、耳元で囁いた。
「ホントだよ。恵もこっちに入ってたら、絶対そう思うって」
「……じゃあ代わってよ」
「それはできないな……もしできても、したくない」

兄の意地悪な言葉に、恵は眉をつり上げた。
「もう……私、こんなにされて、ドキドキしてるんだよ?
 私ばっかりこれじゃ、不公平じゃない……」
「でも、やっぱりこういうのは男がリードしないとな」
そう言って啓一は、顔を下ろして妹の大きな乳房にかぶりついた。
見慣れた白い肉の塊は、今はとても美味そうに見えた。

「あ……! ……ず、ずるい……」
じらすように舌を這わせ唾を塗りこむと、恵が切なげな声をあげた。
綺麗な乳輪を口に含み、舌でコロコロと乳首を転がす。
一つだったときの記憶から、そこが感じるのを啓一はよく知っていた。
「はぁん……いやぁ……!」
甘い声で自分を咎めだてる妹にたまらない愛情を感じ、
彼はそのまま恵の乳房を慰め続けた。
495ふたりはひとつ その3(18/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:27:45 ID:kGrMeLwS
左右の塊をかわるがわる愛撫し、恵の顔から理性が乏しくなった頃、
啓一は妹の秘部を隠していた最後の布地に手をかけた。
スルスルと太ももから足首にずらし、ついに外してしまう。
「綺麗だ……恵……」
少女の裸体を見つめ、啓一はそう囁いた。

恵の肉壷は我慢できずにとろりと汁を垂らし、
今か今かと啓一を待ちかねていた。
「はぁ……はあ……」
二つの口から吐かれる熱い吐息。
それがシンクロしていくのを感じながら、啓一はズボンの中から
はちきれんばかりに膨れ上がった自分の肉棒を取り出した。

これだけ濡れていれば充分だ。
「あ……はあ、けーいちぃ……?」
啓一は、呆けた顔で焦点の合わぬ目をした恵に覆いかぶさり、
パンパンにそそり立った自分のをそっとあてがった。
「恵……いくよ……」
返事もできない妹の腰を両手で押さえ、彼はゆっくりと
少女の中を突き進んでいった。

「――あっ…… !?」
濡れそぼった膣をかき分けられる感触に、恵の目に光が戻る。
啓一は侵入を停止し、上から妹の顔を見下ろした。
気がつけば貫かれていた恵の驚きの表情は、
彼にかすかな優越感をもたらしたようだ。

「恵……どう?」
「やん……入れちゃ……!」
腰をひねって逃げようとした恵だったが、兄にがっしりと
押さえ込まれているこの状況では無駄な抵抗でしかなかった。
「嫌なはずないだろ……? こんなの、いつものことじゃないか」
「ん……でもぉ……!」
496ふたりはひとつ その3(19/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:28:39 ID:kGrMeLwS
自分でない自分と繋がるという初めての感覚。
違和感と快感と、そしてわずかばかりの恐怖に恵の顔が染まるのが
啓一の目にはっきりと映った。
「大丈夫……大丈夫だよ」
体を伸ばし、笑顔を浮かべて彼は妹の唇にそっと口づけした。
大きく見開かれた恵の瞳が、啓一のそれと至近で向かい合う。

二人はそのまま時を止めていたが、そうしているうちに少女の目に
だんだんと安堵と情愛の色が浮かんでくるのがわかった。
「――ふう……」
啓一は口を離し、わずかな距離を隔てて妹と見つめあった。

「……落ち着いた? 恵」
「うん、もう大丈夫だけど……」
心なしか、恵の表情は少しばかり悔しそうに見えた。
「なんで……私と啓一、こんなに違うの? 元は同じじゃない……」
「ん、そうだな……同じはずなのにな……」
彼は恵を見下ろし、挿入したまま腰を動かし始めた。

「んっ……あぁ……動かないで……!」
優しい兄の動きに、恵の目が細められる。
「とりあえず言えるのは、俺が恵を好きってこと。
 ……だって、こんなに可愛いんだもん」
「好き……? 啓一、わ、私が好き……?」
聞き返してくる少女に笑いかけ、啓一が繰り返した。
「ああ、好き……恵、好きだ。愛してる」

だんだんと啓一の動きが激しくなってくる。
自分も腰を使い始めていることには気づかず、恵は喘いで言った。
「ば、馬鹿ぁ……私たち、お、同じだった……はんっ、だよ?」
互いに自分。分かたれた二つの人格同士が愛し合うなど――。
襲いかかる快感に必死に歯を食いしばり、啓一が答える。
「でも、俺は恵が好きだ……今まで誰も好きに……なれなかったけど、
 俺はお前が大好きだ……。こうやって一緒に……なりたい」
「啓一……!」
497ふたりはひとつ その3(20/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:29:25 ID:kGrMeLwS
それは分裂した人格が再び一つに戻ろうとしているだけかもしれない。
だが啓一も恵も、繋がった相手のことが愛しくてたまらなかった。
こうして一つになって快感に身を任せていると、
欠けた部分が満たされていく気がしてくるのだった。

「う、あ……はあ……!」
啓一は陰茎を激しく前後させ、恵の中をかき回した。
いつもの半分、貫く感覚しか彼は感じなかったが、
愛しい自分の半身の少女を抱いているという実感に
普段の何倍もの興奮が啓一の脳を刺激してくる。

それは恵も同じようだ。
「――はん……あっ……ああんっ !!」
細めた目から涙を、喘ぎ声の漏れる口からよだれを垂らし、
彼女は快楽のおもむくままに腰を振り続けていた。

肉棒を受け入れた女陰は汁まみれで、
互いの腰が動くたびにジュポジュポと水音を響かせる。
啓一のたくましい男の体も、恵のか細い女の体も、
興奮と快感の汗で全身がじっとりと濡れていた。

思春期に入って何度も経験した自分同士の交わり。
確かに性交の感覚は常人の倍はあったはずだが、
いくらやっても心は満たされなかったように思う。
それが今、一つだった人格が分かたれ、啓一も恵も
お互いを求めて心を満たし合っていた。
498ふたりはひとつ その3(21/21) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:30:53 ID:kGrMeLwS
結局ベッドの上で三回、その後風呂場で二回。
二人は初めての他者との交わりにのめりこみ、
思う存分お互いを貪り合った。

部屋にカギをかけ、二人は恵のベッドで抱き合って眠った。
さすがにもう性交はしなかったが、狭いベッドの中でくっついて
相手の温もりを感じているだけで言い知れぬ安らぎを感じるのだった。
「恵……」
「何? 啓一」
そっと囁く声で、双子の兄が妹に言う。

「明日、一緒に起きよう。一緒に着替えして、
 一緒に身だしなみを整えよう。それで一緒に弁当作って、
 一緒に登校して、学校で一緒に栄太や由紀の相手をしよう」
「あはは、何それ。そんなの今までもやってきたじゃない」
「もう俺たち、二人だからさ……あらかじめ言っておこうと思って」
恵がクスッと微笑んだ。
「でも、もう前みたいな連係できないよ? 君と私はもう違うんだもん」
「違うからこそ、面白いかなって思ったんだ」
「ん、そうだね……」

暗い部屋の中で彼女は兄の顔を見つめた。
「でも、啓一は元に戻りたくないの?
 私たち、今までずっと一つだったのに分かれちゃってさ」
「どうだろうな……俺にはわからない」
「私も……わからないよ」

啓一は、こちらを見ている妹に向かって微笑みかけた。
「俺たち、もう一つじゃないけど……でも、もしずっと
 一つのままだったら、こんな気持ちにはならなかったろうな……」
「啓一……」
「とにかく寝ようか。あんまり騒いでると怒られちまうし」
「……うん」
うなずいた妹に、啓一はそっとキスをした。
499439 ◆cW8I9jdrzY :2009/04/05(日) 15:39:25 ID:kGrMeLwS
以上となります。
今度は分裂させてみましたが、平凡な兄妹モノになりそうだったので
そこのところが結構苦戦。難しいですね。
続きそうな展開の割には、続きを何も考えてないのも困ったものです。

>>476
読んだことがないので何とも言えません。
基本は多重人格の逆パターンなので、皆無なシチュでもないのかも?
ただ、なかなか普通のスレには投下しにくい気はしてます。

ではこれにて失礼します。
またどこかでお会いできたらいいですね。
500名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 16:09:34 ID:wVffNm5q
GJ!
離れてしまった相手を求めて以前よりもエロくなる辺りが、何か神話っぽくて素敵っす

ところでハサミと糊みたいに人の心をくっつけて切り離した諸悪の根源は、
一体どう落とし前を付けるんだろうか
敢えてスルーというのも、神話の理不尽さが出てて良いとは思うけど
501名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 23:09:18 ID:u4XbUo/y
面白いからいいけど、
なんかシリーズ物の一部に見える
502名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 00:42:32 ID:Q901TJuO
すごい!面白い!!
503名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 00:46:01 ID:s8jsyjTt
>499
本当に読んだ事無いの?第1話から第2話前半までそのまんまだったよ?
いや、あっちはそこまでで終わってるけど。
504名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 01:50:35 ID:HC79anWc
TS界の住人として言わせてもらえば、確かに一風変わった話ではあるが
全く新しい訳でもないな

例えば藤子不二夫のバケルくんは人形に乗り移る話だが、
一人で同時に複数の体を操る場面があった気がする
あとコピーロボットとか憑依だとか、これ系の話はいつの時代も隠れて存在している
名前まで同じだとかじゃない限り、普通にオリジナルの創作でいいと思うよ
かなり面白かったし俺としては充分アリだな
505名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 11:35:02 ID:k/6DAwjQ
>>501
入れ替わりで検索するといい
506名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 14:55:31 ID:7jOJCzeP
>>503
面白そうなんで読んでみたいんだけど、題名教えて。
507名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 22:34:46 ID:tg9/HE6O
保守しておく
508名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 16:45:01 ID:a1luLOSm
保守です
509名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 12:35:09 ID:8RsR4Ler
保守
510名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 21:39:15 ID:W1jJYOd4
>>503
陽気婢 にも同じ趣向の作品があった気がするな。

この作品はこの作品として面白いし、それでいいんじゃね。
511439 ◆cW8I9jdrzY :2009/04/17(金) 22:37:21 ID:WhXkaMIP
こんばんは>>439です。
一つと二つの双子話の続編を投下です。
512ふたりはひとつ その4(1/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/17(金) 22:38:54 ID:WhXkaMIP
青空の下、グラウンドを疾走する影があった。
「――水野ぉぉ! いいぞ、上がれぇえ !!」
コートの右側を、ボールを持った少年が駆け抜けてゆく。
勢いに乗った彼は、半ば怯えた敵チームの選手二人を
瞬く間に抜き去り、さらに外側にオーバーラップしてきた
もう一人の少年の前方へとパスを送る。
「…………!」
相手チームの表情が引きつった。オフサイドはない。
一人目が敵を引きつけていたためノーマークだった二人目は、
余裕の表情で深い位置へと流されたボールを受け取ると、
そのままゴールラインの近くからセンタリングを上げた。
「……うぉおおおぉっ !!」
歓声が上がる。観客もチームメイトも、そして敵の選手でさえも
高く跳び上がった彼のヘディングシュートが、
次の瞬間にはネットに突き刺さるだろうと予測していた。
そして、その通りになる。
「――ゴォォォォォルッ !!」
ゴールの隅に落ちてゆくボールはキーパーの手をすり抜け、
改めてコートの周囲の生徒たちを盛り上がらせた。

「はぁ、はぁ……」
ゴールを決めた少年は、仲間の賞賛を浴びつつ呼吸を整えている。
「ハットトリックだぜ」「さすが啓一だ」という声が
彼にとってはやけに遠くから聞こえてくる気がした。
ゴールを決めた時から、彼の目はある一点に注がれている。
グラウンドの隅にたたずんでこちらを見つめている少女。
美人、と言うべきだろう。
よく手入れされたストレートの黒髪を背中まで垂らし、
唇は薄く瞳は大きく、清楚そのものといった女の子だ。
(――恵……)
彼は声には出さず、心の中で呼びかけた。
以前はそれで通じるはずだった。いや、その必要すらなかった。
しかし今、啓一の心は恵には届かずこうして見つめ合っている。
彼女は学年でも評判の美少女だし、成績も良ければ性格も優しく
恋人にしたい女ランキングでは一、二を争うほどだった。
しかしいまだかつて、この少女に寄り添う立場になった男はいない。
その原因が自分にあることは、啓一にはよくわかっていた。
いや、自分たちに、と言うべきか。
水野啓一、そして水野恵。
引き裂かれた彼らはまだ元に戻っていなかった。
513ふたりはひとつ その4(2/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/17(金) 22:39:35 ID:WhXkaMIP
無事に勝利を収め、観客たちは自分たちの学校の代表を祝福した。
啓一もまた笑顔を浮かべ、仲間と勝利の余韻を分かち合う。
「――祐介、助かったよ」
彼は隣にいた、三点目のアシストを決めたDFの少年に笑いかけた。
中川祐介。本来はサッカー部員ではないのだが、
数の少ないこの学校のサッカー部員に怪我人や欠席者が出ると
こうして助っ人に駆り出される。
「いや、こっちこそDFの癖にあんなに前に出て悪かった。
 一点取られちまったのは俺のせいだな」
気まずそうに頬をかいて祐介が答える。
目つきの鋭い少年だが、実は気のいい男で啓一とも仲がいい。
「そんなことないって。アシスト二回も決めてくれたし充分だよ。
 あんなにやる気あるんだったら、本気でうちに入らないか?」
「悪ぃが遠慮しとく」
ニヤリと笑っていつもの返事をする。

祐介が指差した先には、黒髪をツインテールにした
中学生でも通りそうな小柄な少女が彼を待っていた。
「……祐ちゃ〜ん」
「おう、待たせたな。瑞希」
飛びついてきた彼女を汗ばんだ体で抱きとめ、髪を撫でてやると
周囲から羨望と嫉妬の眼差しが向けられた。
「……祐ちゃんってやっぱりすごいんだね。
 見てたよ? なんかびゅーんって走ってたの」
「んなこたないさ。啓一に比べれば大したことないって」
こちらを見ながらそう言ってくる、嬉しそうな顔を見ていると
祐介が部活をやらない理由が誰にでもわかってしまう。
啓一はため息を一つつき、祐介の肩をポンと叩いた。
「じゃ、お疲れ。また試合のときは頼むよ」
「都合がつけばな。あと曽根崎先生に助っ人料忘れるなって
 ちゃんと言っといてくれよ?」
「――ああ、わかった」
他校との試合に勝ったときの顧問は実に機嫌がいい。
部員でなくともあれだけ活躍した祐介には何でも奢ってくれるだろう。
彼は祐介と少女に別れを告げ、自分の相方のところへ向かった。

恵は遠慮がちに校舎のそばで待っていたが、
興味津々で迫ってくる部員たちに取り囲まれていた。
「水野さん、俺見ててくれた?」
「啓一を見に来たの? 珍しいね」
「俺たち、これから打ち上げするんだけど一緒に来ない?」
美少女に群がる汗臭い男たちに愛想笑いを振りまく恵。
その内心は、一風変わった嘆きで埋め尽くされている。
(……江崎も奥田も、私の髪に触るんじゃない! 汚いだろっ!
 キャプテンも、こないだ彼女にフラれたからって
 馴れ馴れしくしすぎだと思うんです! やめてください!)
分裂する前、彼女は恵であり啓一でもあった。
サッカー部員としての啓一の記憶は今でもしっかり残っている。
女としての意識と男の記憶の双方に照らし合わせてみても、
今の状況は決して愉快なものではなかった。
514ふたりはひとつ その4(3/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/17(金) 22:40:11 ID:WhXkaMIP
救いの主がやってきたのはそのときだ。
「……あ、啓一ぃ!」
彼女は啓一が近づいてくるのに気づいて手を振った。
――なんだ、やっぱり啓一か。期待させやがって……。
周囲の部員たちが顔に失望の色を浮かべ離れてゆく。
キャプテンなどは露骨に彼への怒りを表しつつ
「お前も早くフラれてしまえ!」
と謎の言葉を発した。

近くでは、顧問の曽根崎が笑みを浮かべて部員を集めていた。
「帰りたい者はー、帰っていいがー、それ以外の者はー、
 私と晩飯をー、食いに行くぞー」
「おおおぅっ!」
定年間近のやせた体に大勢の高校生を連れて居酒屋に行く元気があるとは
あまり思えなかったが、それがあるのだから周囲には驚きだ。
「それとー、今日は機嫌がいいのでー、ついでにー、
 試合見てた子らもー、飯を食わせてやるぞー」
「やった、先生太っ腹ぁ!」
どちらかと言えば弱小なのだが、サッカー部の試合には
女の子のファンが少しながらいる。
ほとんどは啓一目当てではあるが、中には啓一を諦め
他の部員とくっつく女子もいないではない。
祐介と瑞希は帰ってしまったが、残りの部員とマネージャー、
数人の女生徒が打ち上げに参加することになった。
「――という訳で水野さんも! ぜひ!」
「ええ?」
調子のいい誘いに恵は少し考え込んだ。
本音を言えば啓一と二人で帰りたいのだが、
あんなに勝利に貢献した啓一がこの場を去る訳にもいくまい。
「先生もいいって言ってるし、恵も行こうぜ」
「んー、啓一がそう言うならいいよ」
「ぃやったぁああぁ!」
半ば渋々だったが、こうして恵も一行に加わった。
515ふたりはひとつ その4(4/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/17(金) 22:41:10 ID:WhXkaMIP
駅前の居酒屋、奥の座敷部屋に彼らは押しかけた。
この辺りには店も多く、こうした大部屋もよく空いている。
コーラやファンタが運び込まれ、顧問の音頭で祝杯をあげた。
皆が虎視眈々と狙っている恵は四隅の席、
彼女を守るように座る啓一の隣でウーロン茶をあおっている。
向かいには部長の特権でキャプテンが座り、恵に話しかけていた。
「恵ちゃん、今日の試合どうだった?」
「あ、はい、すごかったです」
恵が当たり障りのない答えを返す。
座敷の反対側では顧問がビールを片手に
肩をすくめる部員をバンバンと叩いていた。
「はははー、あの御堂のやつのマヌケ面がー、良かったわいー」
どうやら、相手の学校の顧問のことを言っているらしいが
まともに取り合う者は誰一人としていなかった。

キャプテンは嬉しそうに恵と話し、自分の活躍をアピールしている。
「中盤の要をMFと言ってね。特に俺みたいなボランチは
 目立たないけどすっごい重要なポジションなんだ」
「そうですね。同じMFでも、攻めの啓一と守りのキャプテンは
 役割が全然違いますもんね」
「そう、俺たちが支えているからFWも啓一も攻撃できるんだ。
 何たってサッカーはチームワークが大事だからね」
「でも、やっぱり今日の啓一すごかったです。さすが1.5列目」
「ぐ……」
キャプテンの顔が少し下を向いた。
「あとリベロの中川君も素敵でした。DFなのにあんなに上がって、
 すごい距離を走ってましたよ。スタミナが違いますね」
「ああ、彼はお手伝いだからね。無理に目立たない方がいいんだ。
 彼が上がりすぎたせいで、一点取られたようなもんだし」
「でも、二回もアシスト決めてましたよ? 守りでも敵のFWを
 ちゃんと止めてましたし。もしかしてレギュラーより優秀かも」
「うぐ……」
キャプテンの顔がもう少し下を向いた。

焼きそばをちゅるちゅると食べる恵を愛しげに見つめながら、
キャプテンは諦めずに話を続けた。
「し、しかし恵ちゃんは意外とサッカーに詳しいなあ。
 もし良かったらうちのマネージャーをやらないか?」
「え、もう三人もいるじゃありませんか」
「グラウンドから水野さんが励ましてくれたら、
 きっと皆ももっと頑張れると思うんだ。――もちろん俺だって」
「でもキャプテンってこの間、一年のマネージャーの福島さんに
 手を出そうとして逃げられたって言ってませんでした?
 結構見境がない人なんですね」
「……な、なぜそれを……! ――啓一ィ!」
「俺は何も言ってませんよ、キャプテン」
そもそもあんたが泣きながらフラれたとか俺に言ったんじゃなかったか。
それを「俺たち」が聞いていただけだ。
啓一は澄ました顔でオレンジジュースを口に運んだ。
516ふたりはひとつ その4(5/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/17(金) 22:41:46 ID:WhXkaMIP
その後も大いに盛り上がり、解散した頃には
もう日が暮れ、夕方が過ぎて夜になっていた。
名残惜しそうな男子たちに手を振って別れ、
恵は啓一と二人で夜道を歩いている。
「……ホントにキャプテンしつこかったよ、啓一。
 前からあんな人だったかなぁ……?」
不機嫌な顔でそう口にする妹に、兄が微笑む。
「ま、仕方ないさ。あの人、C組の加藤と
 付き合ってたらしいけど、こないだフラれたってさ。
 加藤は可愛いけど、付き合う相手がすぐ替わるからな……」
「いいように遊ばれちゃったのかな?」
「さあ、どうだろう」
大して興味がなさそうに啓一がつぶやいた。
こんな風に二人きりで言葉を交わすのも、啓一と恵が
一つではなく、二人になったからである。
あれからしばらくこうやって暮らしているが、特に不自由はない。
ただ、いつでもお互いを求め合うようになった。
見つめあい、話し合い、抱き合わないと満たされない。
かつて一つだった頃、彼らが恵であり啓一でもあったときは
こんな飢えと乾きを感じたことはなかった。

兄と並んで歩きながら、恵が口を開く。
「……祐介と瑞希ちゃん、見たでしょ」
「ああ。仲良さそうだったな」
試合が終わった後の二人の様子は明らかに以前とは変わっていた。
「――あの二人、付き合ってるんだって」
「別にいいじゃないか、お似合いだろ」
啓一が平静そのものの声で答える。
彼らは幼馴染の仲だという。きっとうまくいくだろう。
「…………」
恵は落ち着いた兄の表情を眺め、目を伏せてぽつりと言った。
「ちょっと……うらやましいな……」
「――そうか」
腕をそっと出してやると、少女が自分の腕を絡めてくる。
啓一と恵は、街灯に照らされた夜道をゆっくり歩いていった。
517ふたりはひとつ その4(6/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/17(金) 22:42:20 ID:WhXkaMIP
深夜、かすかな物音を感じて啓一は目を開けた。
試合で肉体は疲労していたが、今夜は何となく来ると思っていたので
何とか意識を失うギリギリのラインで起きていた。
とはいえ、彼女がもう少し遅かったら眠ってしまったかもしれない。
ベッドから身を起こし、暗い部屋の中でドアを見つめる。
――キィィィ……。
そっとドアが開き、薄い水色のパジャマを着た少女が姿を現した。
こちらをうかがうような視線を真っ直ぐ見つめ返し、手招きしてやると
彼女は慌てた様子でドアを閉め、彼に近寄ってきた。
「……啓一、起きてたの?」
「ああ。何となくな」
恵は長い黒髪を揺らし驚きの表情を見せたが、見た目ほど驚いてはいなかった。
啓一が「何となく」彼女を待っていたように、
恵もまた「何となく」彼が待っていると思っていたのだ。
切り離されてもまだ通じているような気になって、
兄妹は揃って顔をフッとほころばせた。

ベッドの上、啓一の下半身の辺りに腰を下ろして恵は兄と向かい合う。
月は雲に隠され、外は街灯の明かりしかなかったが
この部屋にもささやかな電灯がともっていて、互いの顔をのぞき合える。
「……啓一」
大きな黒い瞳は細められ、うるんだ目が彼に向けられている。
自分を求めてやまない、彼しか知らない恵の表情だった。
子供のように手を伸ばし、緑の寝巻きに包まれた啓一の体を抱きしめると
兄の体の温かさが伝わってきて、恵は身を震わせた。
「恵……」
そんな妹を、啓一は微笑んで抱き返してやる。
二つに分かれてからしばしば繰り返されてきた抱擁だが
兄妹は飽きることもなく、こうして抱き合うのが大好きだった。
「ん……啓一ぃ……」
何度も何度も、少女は少年の名を呼んだ。
元は一つのはずなのに、恵の方がこうしてよく甘えてくる。
今も幸せそうに兄の体に密着し、ぎゅうぎゅう啓一を締めつけた。
啓一も気持ちよさげに妹の体を抱いていたが、
ふと思いついたように恵に小さく囁いた。
「……今日は、しなくていいのか?」
「う、ううん……して……」
頬を染め、羞恥心をむき出しにして少女が言う。
少年は笑うと、声に出さずにつぶやいた。
――やれやれ、これじゃどっちの性処理かわかりゃしない。
518ふたりはひとつ その4(7/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/17(金) 22:44:00 ID:WhXkaMIP
二人はパジャマと下着を脱ぎ、ベッドの上で裸になった。
「啓一は寝転んでて……」
恵に言われた通り彼が仰向けに転がると、その上に
一糸まとわぬ彼女がうつ伏せになり、互いの陰部がさわれる体勢にする。
「へえ……エロいな……」
「えー、初めてじゃないでしょ?」
兄の両手で膣口を広げられながら、恵が手を陰茎に伸ばす。
経験はあったが、二つに分かれてからは初めてだった。
たっぷり手淫で性欲をかき立て合い、相手の性器に口をつける。
――じゅぷっ、ちゅぱっ……じゅるるうっ……!
「はあ……恵の――やべ、止まらな……」
陰茎と女陰に唾を塗りつけ、溢れてくる汁を飲み込む。
「んんっ……駄目、吸わないでぇぇっ…… !!」
責め合いは啓一の方が若干優勢なようだった。
「……あぁあっ…… !!!」
――プシャアァッ……。
手と口を使った熾烈な争いは、少女の嬌声と潮吹きによって決着を迎えた。
顔をべたべたに汚した啓一がにやりと笑って勝利を宣言する。
「へへっ……やった」

啓一は体勢を入れ替え、肩で息をしている恵をベッドに押し倒すと
大きく実った乳房を両手で揉みしだきながら少女の唇を奪った。
「んっ……んんっ……!」
彼の腹の下では恵の膣口がよだれを垂らして啓一を待っていた。
――そろそろ、入れてやらないとな。
妹の胸と口とを犯しつつ、啓一は猛りきった肉棒に劣情をみなぎらせた。
519ふたりはひとつ その4(8/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/17(金) 22:47:23 ID:WhXkaMIP
「はあ、はあ……はぁあ……?」
白いベッドの上に、恵の長い黒髪が扇のように広がっている。
肉欲に支配された目でこちらを見つめてくる彼女の腰をつかみ、
彼はギンギンに張り詰めた自分自身を恵の中に突きこんだ。
「――はぁ……くるぅ……♪」
開いた口から下品に舌を覗かせ、少女が息を吐く。
欠けていたものが満たされる思いが、性器を中心に
全身へと広がっていくのを恵は感じていた。
満ち足りていたのは啓一も同じである。
「う……恵ぃ……!」
自分の陰茎を包み込んでくる熱すぎる膣の肉に頭を焼かれながらも
彼はグショグショになっている恵の中を往復した。
――ズチュッ、プチャッ! ジュプジュプッ……!
次から次へと溢れ出してくる妹の汁の音を聞きつつ、
何度も何度もかき回した彼女の肉壷をえぐる。

あまり騒ぐと、親にバレてしまう。
兄妹揃って理想の優等生二人が深夜に近親相姦にふけっているなどと
教師や両親が知ったら腰を抜かすかもしれない。
二人は喘ぎ声を必死でかみ殺しながら交わり続けたが、
啓一が上から恵の薄い唇に噛みつき口を封じてしまった。
体の上下で汁の合奏を奏で、どちらも激しく腰を振る。
やはり、こうしているときが一番幸せだ。
二人の体も心も一つになって、満たされた気分になる。
(――恵ぃ……ボクは……)
(け、啓一ぃ……ボ、ボク……)
少年と少女は、理性も恥じらいも捨てて貪欲に互いを求め合った。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 
520ふたりはひとつ その4(9/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/17(金) 22:50:34 ID:WhXkaMIP
二人の家の近くに、市内一の高層マンションがあった。
地上三十階、百メートルを超える高さの屋上に一つの人影が立って
豆粒のように小さな彼らの家をじっと見下ろしていた。
「――うーん……」
一見するとただの少年にしか見えない。
だが普通の少年は、こんなマンションの屋上に立って
強風の中を平然と百メートル下を見下ろしはしないだろう。
「やっぱり普通の人間に戻りつつあるね……困った困った。
 せっかく十数年かけて育てた『世界』が台無しじゃないか」
彫刻のように端正な顔が冷静にそうつぶやく。

彼はポケットからカードの束を取り出し、
常人ならバランスの取っていられない危険な場所でシャッフルを始めた。
しなやかな長い指が閃き、裏返しの束から一枚を選ぶ。
「――ふむ、『太陽』か」
カードの表には、大地を照らす明るい太陽の顔と
その下で立っている二人の子供が描かれていた。
「太陽は究極の力、あらゆる社会で輝く生の象徴とされている。
 僕の本体だって夜明けに主たる太陽を導くのが役目だった。
 ――でも、このカードは終着点じゃない。
 究極の力たる太陽の導きによって男と女、陰と陽の
 対立する二つの要素が接触し、終局たる『世界』へと向かう……」
少年は整った唇をつり上げて微笑んだ。
まるで、楽しくて仕方がないというように。
「二つにしたら、一歩下がっちゃったよ……どうしたものかな?
 もう一度あの子たちを一つにしたらうまくいくんだろうか」
白い指が虚空に躍り、22枚のカードを再びポケットにしまい込んだ。
521ふたりはひとつ その4(10/10) ◆cW8I9jdrzY :2009/04/17(金) 23:04:59 ID:WhXkaMIP
彼は悪魔。
神と共に人に生み出され、神に逆らうべく定められた者。
地獄の底で灼熱の業火に焼かれているとも、永劫の氷の中に閉じ込められているとも
言われている古代の堕天使の、小さな小さなひと欠片。
やがて来るべき破滅の時を前に、嵐の前の静けさをこの東洋の島国で過ごしている。
だがその活動は多忙という言葉とはほど遠く、
日々人間たちをもてあそんで暇を潰しているというのが実態だった。
その悪戯の一つとして、双子の赤子の精神をいじってみたのだが――。
思った以上の興味をそそられ、ついこうやって彼らを見に来てしまう。
二つのものを一つに混ぜて。
一つのものを二つに分けて。
それをまた一つに戻したら、どうなるのだろうか。
人の心、人の生。それを観察するのは今や長い時を生きてきた彼の、一番の楽しみになっていた。
夜風に乗って、透き通るような彼の声が流れてゆく。
「いやあ、面白い……人間は面白いよ、本当に」
雲が流れ、今まで隠れていた月が露になった。
南西の空に半分だけの黄金色の球体が浮かび、夜の街と大地を少年と共に見下ろしている。
次に引くべきカードは何か。
「僕としてはやっぱり、世界を引きたいところだけど――。
 まあ別のカードでも、構わない……かな」
星か塔か。月かもしくは死神か。それとも運命なのか。
少年にもそれはわからない。わからぬからこそ、面白い。
「――やっぱり、彼らに決めてもらおうか……」
その声も凍りつくような笑顔も、誰にも届かなかった。

―――――――――――――――――――――――

以上となります。
まだ終わってませんが、おそらく次回で完結させると思います。
それでは今日はこの辺で失礼します。
522名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 13:41:34 ID:OG7m/nY3
乙〜
523名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 12:09:58 ID:QwzzgXlE
そろそろ次スレじゃね?
524名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 20:56:27 ID:dfggVSM6
テンプレは>>1
【ターゲット属性】から『実在人物』を削除すればおk?
525名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 23:25:07 ID:dfggVSM6
保管庫のこと忘れてた

…と思って見ようとしたら消えてるみたいだが…
526名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 00:37:08 ID:xjKlS2p9
こっちも保管庫かな
最近更新されてないみたいだけど
http://eroparo.x.fc2.com/works/index.html
527名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 00:44:45 ID:VaHOrXQD
>>521


悪魔かあぁ・・・どうせなら天にまします神の忠実な御使いの方が好みかも
でも続き期待
528次スレ天麩羅:2009/04/22(水) 22:37:14 ID:FZbav+KM
【うpろだ】専用スレのないSS その2【代わり】

超マイナー作品、新連載始まったばかり、古典すぎて即死しそう、
シュチュエーションが特殊、ネタバレ含みで本スレには投下できない等々、専用スレが無かったり
投下先が無いSSを投下したい時、うpろだ代わりに使いましょう。


◆投下前の御約束◆
投下する人は、元作品名とジャンルを明記してくれるとイイかも。
ジャンルは以下のテンプレ参考に。
【エロ内容】
エロなし、微エロ、SM、レイプ、スカトロ、苦痛、羞恥・露出、催眠・精神改造、
手触、獣姦、痴漢、痴女、ふたなり、ホモ、レズ、人体改造、流血、フェチ、ペド
【ストーリー内容】
鬼畜、寝取られ、純愛、SF、歴史もの、ファンタジー、学校もの
【ターゲット属性】
ロリ(中学生以下?)、ショタ、女子高生、年上お姉さん、熟女、
近親相姦(兄弟姉妹)、近親相姦(親子)、近親相姦(親戚)


【保管庫】
http://eroparo.x.fc2.com/works/001/index.html

【関連スレ】
スレから追い出されたSSを投下するスレPart2
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1208076450/
練習用殴り書きスレッド5
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1239541595/


これでよいようなら立ててみる
529名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 00:16:24 ID:hR/Yu4vG
細かいが、「シチュエーション」と直しておくといいかもね
あとURLのh抜きとか

いっそ色々テンプレを弄ってもいいのかもしれないが、現状特に困ってるわけでもないし
そのままでいいんじゃないかな
必要性が出てくれば、自然に話し合うことにもなるだろうしね
530名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 09:48:06 ID:WwGB2+33
>>528
それでお願いします
>>529
自分は何もしないで文句ばかり言うタイプ
531528:2009/04/23(木) 18:07:04 ID:K8+54+qI
次スレ

【うpろだ】専用スレのないSS その2【代わり】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1240477403/
532名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 18:43:12 ID:RgGJLsgd
>>530
自分では何もしないで、建設的な意見も言えないタイプ。
533名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 18:47:17 ID:MTHFEivg
>>531
以前使わせていただいた身としては、感謝の一言です。
新スレありがとうございます。
534名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 19:12:50 ID:WwGB2+33
>>531
乙です!
535名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 21:43:54 ID:I317+6AO
>>531
乙っす!
536名無しさん@ピンキー
>>531